二人目の生き残り (主義)
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巡り合い

よく人は誰かを愛することで変わると言われることが多くあったりする。それは愛に執着してしまい自らの性格すら変わってしまうということ。それほどまでに『愛』というものは強い。今まで頑固だった人が愛を知ることで優しい人間に変貌を遂げてしまったりすることもあったりする。

 

これは武器の事にしか目のなかった少女が初めての『愛』を知るまでの物語

 

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『うちは一族』というのは木の葉の一族の中でも日向一族と同じ最強と呼ばれる一族。写輪眼を保持して相手を倒したり、情報を引き出したりする。所謂、生まれつきの戦闘一族。その戦闘一族も十年ほど前に全滅したと言われている。うちはイタチによって一族は皆殺しにされたと……だがそれには一つだけ間違っていることがある。それは皆殺しにされたということは真実ではない。

 

うちはの生き残りは『うちはイタチ』を除けば二人存在する。

 

 

まず一人目はうちはサスケ。うちはイタチの弟でイタチには心酔しているようだった。だが今では一族の復讐心に取りつかれたようにイタチを是が非でも倒したいという気持ちだけが強いあまりに彼は悪へと身を落としてしまった。兄への執着が彼を悪へと導いてしまった。

 

 

そして二人目はボクこと、うちはシオリ。サスケくんは自分だけがうちはの生き残りだと思っていたようだが真実はそうではない。ボクはその時任務で外に出ていた事もあって死ななかった。イタチくんが何でそんなことをしたのかも知っているからボクは決してイタチくんを憎むことは出来ない。ボクの両親も殺されてしまったがそれでもボクは……彼を恨まない。

 

 

 

今、ボクは暗部として火影様からの任務を完遂することに命を懸けている。暗部は勿論、火影直轄の忍である以上、ある程度の自由が制限されることもあったりする。任務などに関する事は一切他言無用。そしてこれはボクだけだけどボクの存在は隠されている。だからこそ、うちはの生き残りは『うちはサスケ』だけだという認識が広がっている。

だから事実とは異なるが……うちはシオリはイタチに一族と共に殺されてしまったと記述されている。ボクの存在は言わば機密。存在を知っている人物もかなり絞られていて木の葉の上層部と僕を預かってくれた日向一族の人間だけのはずだ。

 

 

 

 

そして今日もボクは任務を終えて里へと無事に帰還した。夜中と言う事もあって外を出歩いているような人は居なくてとても静かだった。昼間とは天と地の差だと思ってしまうほどに静か。そしてボクは火影様の待つ、執務室へと歩みを進めていると…道端に倒れている少女が目に入った。チャイナ服とお団子頭をした女性で見た目を見る限り、年はまだ二十歳を過ぎていないぐらいな気がする。

 

 

最初は怪我でも負っているのかと思って近づいてみたがどうやらこの人は酔っ払いのようだった。放っておいても別に問題ないかなと一瞬は考えたけど…いくら人通りが居ないと言ってもここに放っておくのはさすがにマズイという結論に至り、彼女を運ぶことにした。運ぶことにしたのは良いんだけど…この人の住所全く知らないしな。

暫く考えた末にボクは火影様のところまで運んで後は火影様にお任せしようと考えた。押し付けるようで悪いですがそれしか方法が思いつかなかった。

 

ボクは横たわっている彼女をお姫様抱っこしながら火影様が待つ執務室に向かった。こんなところを誰かに見られるわけにはいかないので建物の屋根を渡りながら全速力で向かった。

 

 

 

これが…彼女との出会いだった。

 



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日向一族

あの後、火影様に事の経緯を話してお団子頭の女性を預けて、任務の報告もしてボクは帰路に付いた。それから一週間が経過して僕はそのことについて忘れていた。毎日、多忙な任務があり、任務のことばっかり考えているとお団子玉の女性のことなんてすぐに消えてしまう。

 

 

 

「最近…なんか付けられている気がするんです」

 

 

 

「付けられている?」

 

 

 

ボクの目の前に座っている人物は日向ネジ。木の葉隠れの里の上忍の忍でとても優秀な人間。両親を亡くした僕に住む場所を提供してくれたのは日向一族宗家の当主である、日向ヒアシ様だった。

 

 

何でボクなんかを迎え入れてくれたのかが分からないが…素直に感謝している。日向ネジ様や日向ヒナタ様とは年が近いこともあってよく話すことが多い。僕の今の仕事についてやボクの存在に関しては…極秘ということになっているので日向一族の人間以外は僕のことを知らない。

 

 

 

「はい、暗部としての仕事をしている時は付けられている感じはしないんですけど普通に街中を歩いていたりする時に誰かの視線を感じる事が多いんです」

 

 

 

いつからかは忘れてしまったが……視線を感じる。ボクを付け狙うような忍者がいるとは思えないからこそ疑問なのだ。後、この事に関しては僕の想い過ごしと言う可能性も零ではない。

 

だから日向家の人々に話すと妙な心配を掛けてしまうのではないかと話すことは正直、ためらった。だけどどうやら最近のボクを見ていて何か不自然な感じを感じ取ったらしい日向ネジ様がボクに「悩みはないか?」と話し掛けてきた。それが今の状況を作り上げている。

 

 

 

「…変な輩じゃないと良いが…一応、俺の方からヒアシ様に伝えておこう。何かあってからでは遅いからな」

 

 

 

「いや、そこまでの事では「お前に怪我があってからでは遅い!」」

 

 

こうなってしまうとネジ様は一歩も後ろに引いてくれない。

 

 

 

「分かりました。僕の事を心配して頂きありがとうございます」

 

 

 

「それで次の日曜日は休みが取れそうか?」

 

日曜日?

 

 

 

「え、何かありましたっけ?」

 

 

 

「おいおい、忘れたのか。ハナビ様が知ったら悲しむぞ」

 

 

 

「あ、ああ、ハナビ様のお誕生日でしたね。た、たぶん大丈夫だと思います。何分昨日、休暇にしてくれるように頼んだもので」

 

 

こんな事はハナビ様には言えないがハナビ様の誕生日を忘れていた。思い出したのが一週間前で急いで火影様に頼みに行った。

 

 

それを聞いたネジ様は少しため息を漏らしていた。

 

 

 

「もっと早く行っておけば良いものを」

 

 

 

「すいません」

 

 

これに関しては謝るしかない。

 

「まあ、休暇にしてくれるように火影様に言ったのならどうにかなるだろう。それでハナビ様への誕生日プレゼントは考えたのか?」

 

 

 

「はい、決まっております。正直に言いますとかなり悩みましたが最終的には購入まで至りました」

 

 

このプレゼントでハナビ様が喜んでくださるかは分かりませんが…喜んでくださるといいな。もしかしたら気に入って下さらないかもしれないがそうなってしまったら仕方ない。

 

 

「そうか。それなら安心だな」

 

 

 

「安心?」

 

 

 

「ああ、お前が一番忘れてそうだからな。誕生日の事も忘れていたみたいだしな」

 

 

 

「………確かにそうかもしれないけど……」

 

 

少し不満そうな顔をしているボクを見てネジ様は少し笑みを浮かべていた。

 



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