提督の野望 (艦これ放置勢)
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1話 問題児が鎮守府に着任しました

見切り発車()


深海棲艦との戦争が始まって、素質があるからと海軍士官学校に入学させられた。

 

入学してからトップに立ち続け、趣味の発明を妖精さんと成していた。

 

そして高待遇で横須賀鎮守府への着任が卒業の半年前に決まった。

 

絵に描いたエリート街道。誰もが憧れるであろうそれ…。

 

それが酷くつまらなかった。

 

「敷かれたレールの上なんざ興味ねぇんだよ!!!!」と叫びながら開発した20.3cm超電磁砲を校舎にぶっぱなしたら軍法会議にかけられた。やったぜ(歓喜)

 

そしてなんやかんやあって俺は…

 

「こんな絶海のド田舎クソボロ鎮守府に放り込まれたって訳…ッ!!」

 

やったぜ(諦観)

 

―――

 

そんで放り込まれた鎮守府が中々に癖があった。

 

ヒソヒソ…

 

「また来たわよ…これで何人目かしら…」

 

「どうせ今度もろくでもねぇよ。国も軍も信用出来ねぇよ」

 

「いつ居なくなってくれるのかねぇ…」

 

ヒソヒソ…

 

全部聞こえてるんだよなぁーってのは無粋っぽい。ここの住民親の仇を見るような目でこっちを見てくる。気分が良くない。これで酒が飲める(愉悦)

 

…まぁ、こんなテロ紛いの事やってる奴が配属になるくらいだから、それはそれはヤバい鎮守府なんだろうなぁ。

 

一応軍の護衛がついた民間の船でここに辿り着いたが、まあ少し離れた所に見える鎮守府はボロかった。まあ、ある程度の予想は付いていた。横須賀や舞鶴の様に立派な庁舎があるのは本土などの重要拠点くらいだろう。

 

なけりゃ造れば良いだけだ。

 

しかし、くっそ暑い中の軍服はキツい。着任初日だからと言ってキツイな。まあ、あんまラフなのも良くはないがよ…。

 

「着いた…ここか…」

 

鎮守府の入口

 

高校生の作った秘密基地なのだろうか。トタン板を張り巡らせたお世辞にも良いとは言えない造りに、鉄格子で出来たお飾り程度の両開き門扉。そして罵詈雑言で埋め尽くされた落書き。某長編格闘ドラマの世界にでも来たのだろうか。いや、おそらくこれがここの答えだろう。

提督のみならず、艦娘に向けての誹謗中傷には流石に顔を顰めてしまった。俺は別に愉悦部員では無いんだ。

 

国民を守る為の軍が、こんなにも地域から浮いているなんてな…正直本土では考えられなかったし、俺の住んでいた田舎では駐留している兵士に定期的に差し入れしてたからな。こんなにも受け入れられないなんて、一体何すればこうなるんだよ…。

 

「…あ、貴方が提督…ですか?」

 

「…ん?あぁ。本日付で配属になったホルティ・小沢新米少佐だ」

 

「ほ、ホルティ・小沢…提督…」

 

随分と警戒心が強い。随分と強ばった顔をしているし、恐怖心が内から見え隠れしている。もっと言うならば、服装もボロボロだった。

 

「何かな?」

 

「い、いえ!?な、なにも…」

 

少し言葉を強くするだけでこの怯え様…一体前任の無能共は何をしていたんだよ…。

 

「そ、それではご案内しますね…」

 

とても歓迎ムードは出てないがね。

 

敷地内は雑草で覆われていた。もっと言うなら、敷地の入口付近はゴミが散乱していた。おそらく投げ込まれたものだろう。随分と下らない事を…。

 

「ここが庁舎です」

 

庁舎は木造二階建てのものだったが、塩害やこの付近の気候も相まってか腐食が激しかった。

壁沿いにそって石が並べられていたがおそらくここは花壇だった場所だろう。案の定手入れはなされていなかった。

 

「こちらです…」

 

中は随分とカビ臭かった。腐敗が進んだ板材に、昨日降っただろう雨で湿っている床や天井にはやはりカビが生えていた。窓ガラスは割れており、わざわざ窓を開けなくても空気を換えられる…はずなのにな。

 

「こちらが執務室と提督のお部屋です」

 

「…ッ!」

 

執務室はやけに綺麗だった。…随分と自分の部屋に金かけてるんだな。この絨毯触った感じほとんどシルクだ…ペルシャかそっちの方のやつだろう。執務机と椅子も中々のアンティーク物…カーテンまでシルク製品とは、一体どれだけ身の回りに金かけてやがる…今のご時世、どれも中々流通しない代物だ。わざわざ危険な航海路を利用して取り寄せたのだろうか…。

 

自室も例外無く綺麗にされている。この毛布はカシミアか?なんて贅沢品を…。羨ましいが、正直この惨状を見ると使いたいとは思えない。

こんな外観は酷く貧しいのに、この一部だけこんな絢爛豪華なんて、正直どうかしている。

 

「…そういや、名前聞いてなかったな」

 

「…はっ!?し、失礼しました!私は大淀と言います!この身を削る勢いで提督にお仕えします!」

 

随分と忠誠的…いや、これじゃあまるで奴隷とさほど変わりが無い。忠誠を誓ってるやつがこんな脅えた様に震えるなんて異常だ…。

 

「それじゃあ大淀。暑くて申し訳ないがここに配属している艦娘一同を、庁舎の前に集めてきてはくれないか?」

 

「は、はい!承知しました!直ぐに集めてきます!失礼します!」

 

「お、おい…」

 

…本当に大丈夫だろうか。先に俺が鬱になったりしないだろうか。

 

しかし…

 

全員が大淀の様になっていると考えると…これは相当やっていくのに苦労するぞ…。

頭の中でやる事やることは構築しては居るが、こりゃあ前途多難と言うのが容易に想像つく…。

 

「それじゃあ妖精さん」

 

ヨンダ?

 

「そこら辺に生えてる木を使ってちょっとした倉庫を建てて。それからここにある金目になりそうな物を全てそこに移してくれ」

 

ヤッパリヤル?

 

「そうだな。これは徹底的にやるよ」

 

タノシミ!ミンナデジュンビスルネ!

 

「あぁ、頼んだよ」

 

さて、早速俺も仕事するか…。

 

「お疲れ様です今中々やり甲斐のある仕事を思いついてー、部下の管理の甘いテメェらに要求があるんだけどよー―――」

 

 

「―――出さねぇっつんなら、俺が出した特許は全て金つけることになるんだが…お!わかって頂ければ結構!じゃあすぐに取り掛かってくれ」

 

『まったく貴様は別の意味で問題児じゃのう…校舎の建て替えだって安くない出費じゃったのに…。お陰で陸と揉めに揉めたわい…。まあ、仕方ない。艦娘の為じゃ。儂も腹を括ろう。ただし妥協は許さん。いいな?』

 

「上等だジジイ。目に物見せてやる」

 

『…儂上官なんだがの』ピッ

 

「さぁて。そろそろ集まった頃だろ」

 

老人の話は長くてダルい。小言ばかり言われるのが目に見えるからな。

 

さぁて、こんな臭い建物とはおさらばだ。

 

外に出ると艦娘が並んでいた。

 

…軒並み顔色が悪いが。

 

怯えた感情と憎しみの感情、視線から何も感じられない奴はもう諦観しているのだろうな。

 

向けられる感情はほぼほぼ悪感情だった。見通す悪魔様なら大変美味に感じるだろうが、俺は鳥肌が立った。

 

「そ、総員注目!」

 

こちらに気付いた大淀が上擦った声を出す。俺の知っている大淀は冷静沈着だと思ったが、ここでは違うらしい。個性と言ってしまえればどれ程楽だったか…。

 

「ありがとう大淀。…集まったようだな」

 

ピリッとした空気が流れる。海軍入ってから2回目か?1回目は俺が被告人の軍法会議。

 

「そう緊張しないで良い…と言っても聞かぬか。警戒したままで良いがそのまま耳を立ててくれ」

 

「本日から『絶海鎮守府』の提督を拝命したホルティ・小沢新米少佐だ。よろしく頼む」

 

『………』

 

無言、否。緊張が走る。どう見ても日本人、明らかな偽名。おそらくそんな表情だろう。

 

「ふ、ふざけているのか!?」

 

「て、天龍ちゃん!落ち着いて!」

 

「俺はそんなふざけた提督なんか認めねぇ!」

 

「そうよ!前任共みたいなクソ提督に違いないわ!」

 

「ば、バカ!曙!また殴られるわよ…や、やめなさい!」

 

「そんな弱腰になってどうするのよ霞!そんなんじゃまた良いように使われるだけよ!」

 

「お、男…いや…イヤ…ッ!」

 

「あ、足柄さんお、落ち着いて!」

 

初期コンタクトは、まあ、なんと言うか最悪だった。数名形だけ拍手をしているだけで、俺に飛んできたのは彼女達の溜め込まれた『怒気』と『恐怖』だった。自分にぶつけられたその悪感情は、ドミノの様に連鎖を続け阿鼻叫喚の嵐に包まれた。

 

…本当に前任共は何をしたんだ。

 




シリアスとか苦手なんで早く打開しなきゃ(使命感)


補足

主人公
ホルティ・小沢

名前は
ホルティ・ミクローシュ
(オーストリア・ハンガリー帝国の提督
後のハンガリー王国の摂政)

小沢治三郎
(大日本帝国の提督。
瑞鳳がよく口にするあの人)


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2話 やはり俺の鎮守府再建は間違っている

あんまシリアスな展開書ける気がしねぇなぁ


「うーん、これは酷い」

 

辺りは阿鼻叫喚の渦に包まれた。

正直艦娘の名前はあまり覚えられていないから誰が叫んでいるのかは分からない。唯一分かるのは、ここにいる全員が心に大きな傷を負っていること。

士官学校で勉強中、艦娘に触れる前に卒業させられたからなぁ。厄介払いもあったが、戦争が激化しちまって士官不足だった海軍は候補生を繰り上げ卒業させた。いやちゃんと履修させろよ。ドクトリンとか設計とかは覚えたが。

大艦巨砲主義はやっぱ時代遅れな気もするが、空母は費用が重いからな。

 

いや、そんなことはどうでも良い。

トラウマスイッチの入った艦娘たちを落ち着けないと話も出来ん。

 

「すまないが静かにしてはくれないかな?」

 

『…!』

 

身体に染み付いてしまったのか、こんなにも命令を聞くなんてな…。

 

「…それじゃあ話を進めよう。俺の命令は絶対…とは言わない。俺は途中で卒業となったが学校では勉学と後は趣味でやってた開発以外はなにも学んでこなかった。言ってしまえば実戦経験はゼロに等しい。実戦経験ならばまだ諸君の方が高いだろう。だからこそ俺は1人で判断をするつもりはない。それが最善手であるならば命令を違反する事を厭わない」

 

「諸君らと技術を高め合い、共に勝利を刻む事を目標に精進する。よろしく頼む」

 

怯えた感情は少なくなったが、やはり嫌悪感は拭いきれて居ないようだ。天龍と曙、あとはロングヘアーでセーラー服の子が特に顕著だった。

 

「まだこの鎮守府についての情報が薄いから、指示がまだ出せそうに無い事、申し訳ない。情報をまとめ次第逐一で指示を出す。挨拶だけで申し訳ないが、今はここで解散する。集まってくれてありがとう」

 

正直視線が辛い。悪感情と分かりきった上でずっと浴びようだなんて正直思えない。でもそれ以上にこの鎮守府について知らないことが多すぎる。資材状況も官舎についてもまだ把握しきれていない。やることが多すぎる…。

 

「すまない大淀。引き続き案内を頼んでも良いか?」

 

「わ、分かりました。次はどこに行きますか?」

 

「官舎の方にお邪魔しても良いか?庁舎がこれだからな…」

 

「し、承知しました」

 

庁舎があんな惨状ならば、官舎も同じなのだろうか…。あんまり想像したくないがな。工廠も食堂も不衛生なのは精神衛生上でも好ましくない。

 

「こ、こちらです…」

 

「…おいおい嘘だろ」

 

そこに広がっていたのは錆びたトタン板の平屋だった。

 

「…水道は繋がってるのか?」

 

「共用の上下水道が備わっています。そんなに驚くことですか?」

 

流石にそれはあるか…なきゃ不衛生に拍手をかけるところだったからな。

 

「この平屋は元々なのか?」

 

「…いいえ。元々は庁舎と同じ木造で、水道も各部屋にありましたよ」

 

「…やはり老朽化か?」

 

「お察しの通りです」

 

趣味とかなら別だが、老朽化による建て替えは国から金が下り、同じものもしくは新しい物で建て替えて貰える。もちろん自分でも造れるが…。

 

「この平屋はいつ誰が造った…?」

 

「…前提督の友人と名乗る人です」

 

なるほど…息のかかった人間ということか。

 

「こんな激戦の最中、軍人というのはここまで腐っているのか…粛清、もできないほど人手不足なんだろうな…」

 

しようと思えば出来るだろう。反感は間違いなく買うが、それさえも適当にでっち上げて粛清なんざあのジジイは容易くできる。

 

ただ将校の大粛清を行い後に苦労したのは国もある以上、下手に手出しも出来ないのだろう。

 

ここで立ち止まる訳にはいかないか。

 

「…次に行こう。工廠はどうなってる?」

 

「工廠、ですか…ええ。行きましょう」

 

「…随分と暗い表情だな。先程よりも酷いぞ」

 

「…なんでも、無いんです…」

 

それは明らかな嘘だった。多分顔を舐めれば「この味は!…ウソをついている『味』だぜ…」となるだろう。セクハラで今度こそ捕まるか死刑やな。テロで流罪になった俺が言うんだ(前科持ち)

 

「何を抱えているか知らないが、兎に角情報が欲しいんだ。悪いがここは我慢してもらいたい」

 

「……」

 

無言

 

ただ、歩き出した以上それを止める訳にはいかない。

 

その先で鬱展開が待っていようと、俺は止まらねぇからよ…。

 

 

 

工廠についたが、建物は蔦が張り巡らせているが、腐敗していると言うよりは、放置されているような印象だった。

 

「失礼する」

 

工廠の中に入ると先程は見なかった艦娘が1人、ただぼーっとしているだけに過ぎなかった。

 

「提督…さん?」

 

中は随分と綺麗だった。開発の積極的な工廠とかならば辺りに鉄くずやらが散らばっていたり、煤汚れが着いているはずなのに、酷く綺麗だった。それこそ、何も活動していないくらいは。

 

「ここは…工廠で間違いないのか?」

 

「…ええ。ここは工廠ですよ」

 

無気力な顔をしている。やる気が無いと言い換えれば良いだろうか。

 

「君の名前は?」

 

「…工作艦明石です。それすらも知らないんですか…?」

 

「艦娘の名前までは履修できて無いんだ。気を悪くしたなら謝罪する」

 

「別にいいですよ…私は影が薄いですし」

 

どうやら俺は知らぬ間に地雷原に足を踏み入れていたようだ。

 

明石から目を逸らすと、錆びた工具が散乱していた…うわぁ…マジか。

 

「なあ…」

 

「…何ですか?」

 

「最後に仕事したの…何時だ?」

 

「いつでしたっけね…開発が上手くいかないと前の提督が私を罵ったのを最後に仕事なくなりましたね…あれでも本土で提督やってた人なんですかね…随分とラリってましたけど」

 

『………』

 

「…それは2つ前の提督ですよ…」

 

「あれ、そうなんだ。その次の提督見てないや」

 

思ったよりも深刻だったか…。そりゃあそうなるわな…。

 

「…工廠には、専門の妖精が居るはずだが…」

 

「…さあ。気付いたら居なくなってましたね」

 

『………』

 

く、空気が重い。重すぎる…。

マジかよ…新米でも工廠は重要な拠点だろ…。だから艦娘が少ないのか…?いや、それだけじゃないだろう。

 

「…幸い妖精は連れてきてる。また仕事が出来たら指示を出す」

 

「一体何年したら仕事来るんですかね…あー、働きたくないな…」

 

「…んんっ。それじゃあ、他を見るか…食堂はどうなってる」

 

「…食堂でしたら…」

 

―――

 

「ここが…食堂?」

 

ネズミってこんな南国でも生きてるんだなぁ…ハハッ!

 

いやいやいやいやいやいや、どう考えても青空レス○ランンンン!?

 

「随分と喰われてるな…」

 

「真っ先にシロアリの餌になりましたから…」

 

壁は穴だらけ、天井は果たして存在していたのだろうか。キッチンは錆び付いて、こちらはカビだけではなくネズミや虫の巣窟になっている。

 

「食堂…と言えば給糧艦の2人が居るはずだが…」

 

「…こんな惨状になってしまい引き篭ってしまいました…」

 

えぇ(困惑)

 

「ここの食糧事情は…」

 

「軍支給のレーションと冷や飯です」

 

そんなんじゃ士気ダダ下がりだよ…何考えてるのか。さっき明石が提督ラリってるとか言ってたな…マジでラリってる…。

 

「提督もそんな飯を…」

 

「あの人たちは美味しそうな物を見せつけるように食べてましたね…」

 

うわ、それすげぇ腹立つわ…。

さあて、そろそろ実行に移そうかねぇ…。

 

キレちまったぜ…。

 

「ふむふむ…なあ、今更だが、この書類に書いてある事に間違いは無いか?」

 

「えっ?……はい。間違いないです」

 

「そうか……妖精さん」

 

ヨンダ?

 

「…例のアレ、持ってきてくんない?」

 

マタヤルノデスカ?

 

グンポウカイギグンポウカイギ!!

 

「…で、設置の状況は?」

 

バッチシ!!

 

ドカントイクヨ!!

 

テントモツクッタヨ!!

 

「…よくやった。この氷菓子をやろう」

 

\ヤッタァ!!/

 

…やっぱ妖精さんは可愛いわ。

 

「あの…提督、一体何を…」

 

「解散してもらって早速なのだが、再度みんな招集してくんない?」

 

「は、はぁ…」

 

こうなりゃやるっきゃねぇ…!!

 

モッテキタヨ!

 

「ありがとう妖精さん。じゃあいっちょ準備するか」

 

「…キャノン砲?ですか…。でもそのサイズだと」

 

「20.3cm砲。これは野戦砲と同じく単装砲にしているが、これの連装砲だと主に重巡洋艦に装備している中型のあれだ。だが、それとは訳が違うぞこれは」

 

おっと、画面の向こうに居る奴らは想像ついたようだな…。

 

そうだね!超電磁砲だね!

 

「ったく。提督サマは一体今度はなんの用だ…ってテメェそれ使って何をするつもりだよ…!」

 

「確か、天龍だっけか。そうだな…皆に1つ問う」

 

「…」

 

「この中に、今まで提督あるいはそいつらの息がかかった奴らに『怨み』を抱えている奴は居ねぇか?」

 

「…!」

 

「おっと、手を挙げなくて良い…。その表情を見れば全て分かるさ…」

 

「…」

 

「過去の清算ってよ、必要だよな…」

 

「過去の…」

 

「清算って…具体的に何を…」

 

俺はボロボロに朽ちている庁舎に指さす。

 

「あの庁舎、執務室と提督の自室だけ無駄に豪華なんだよな…おかしいよな」

 

軍人は質実剛健であるべきだ。だらしない腹した中年の将校共は自身の生活態度を悔い改めて。

 

「どう見てもおかしい…こんな内地の木材を湿度と気温が高い地域で、ろくな手入れもしなかったらカビは生えるし腐っちまうし、暑い日差しが照りつける地域でトタン板だけの家なんて自殺行為だ」

 

ケチり続け、自分の私腹を肥やし自分だけ贅沢など言語道断。大淀に確認とったのはここの活動実績。出撃回数、船渠の稼働状況が纏められた引継書だ。ジジイに渡されたのをここに来てから思い出した。工廠の活動実績が載ってないのは、まあ、つまり、そういう事だろう。

 

因みにこの中に所属している艦娘が乗ってた。見てなかった…が、正直写真と違いかなりやつれていて、中には別人のような雰囲気の奴もいた。明石とか。

 

「稼働されず朽ち果てていく工廠、もはや本来の力を発揮できない船渠。無謀な作戦、沈んでいく仲間…」

 

ここにいる艦娘の練度は軒並み低い。それもそうだ。練度の高い奴らは、無能共の評価を上げるため、無理な出撃をして全員沈んでいるのだから。

 

「仲間を沈めた奴が、この建物で、自分の私腹を肥やしていた。自分の評価の為に、お前らを駒にしてな。悔しいだろ?」

 

「…悔しいに決まってるだろ!!分かったよう口聞きやがって!テメェも俺たちを駒に使う気か!?」

 

「駒としての価値もねぇよ。今のお前らじゃ」

 

「なんだと…!?」

 

「私たちを侮辱するつもり…?」

 

「実戦経験も少なく、碌な装備も整えられていないお前らを客観的に見た事による判断だ」

 

「くっ…!」

 

「悔しいだろ。憎いだろ。提督が、人間が」

 

「だからよ…ぶつけるんだよ…これでよ。怒りを込めて、ぶっぱなせ!この建物ごとよ!!」

 

「は、はぁ!?何言ってるの!?馬鹿なの!?アホなの!?」

 

「おっと、威力は折り紙付きだ。舞鶴士官学校の校舎に大穴開けて修理4ヶ月にさせたのはこいつだ」

 

「まさかここに配属になった理由って…」

 

「…絶対それよね」

 

おいそこぉ?

 

「代表して、天龍。お前が放て」

 

「あぁ!?俺に指図するつもりか!?」

 

「怖いか?」

 

「…やってやろうじゃねぇか!?」

 

うわー、チョロ…。軽く煽っただけでこうも乗るとは…。

 

「妖精さん、準備できた?」

 

バッチリ!!

 

ヒナンジュンビカンリョウ!!

 

「よし…おら天龍!1発決めてやれ!てめぇの日頃の鬱憤をここで果たせ!!!」

 

「俺に!指図するんじゃねぇぇ!!!」

 

さて、ここで問題

 

俺は1話で妖精さんに指示を出したのだが

さて、何を仕掛けていたでしょうか…。

 

 

 

正解は

 

\ドゴォォォォォォォォォ!!!!!!/

 

『うわわぁぁぁぁ!!??』

 

『キャァァァァァァ!!!???』

 

 

 

大量の爆薬を設置して居ました。

 

 

これを人は『爆発オチ』と言うのである。

やったぜ(歓喜)







爆発オチって最低!!


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3話 ゼロから始まる鎮守府生活




なぜ、これからの話を作者が見えていない作品に評価を頂けるのか、プレッシャーがやばい。


庁舎は跡形もなく消し去った。ついでに平屋(中身は妖精さんに回収してもらった)も食堂も消し飛んだ。文字通りの更地がそこには出来ていた。

 

放った張本人はその爆発の威力で腰を抜かしていた。

 

「あ、あんた…こんな事してタダで済むとは…」

 

「普通なら、タダでは済まないだろうな」

 

それは普通ならの話だ。生憎ここに普通など存在しない。

 

「言ったろ。過去の清算をするってよ。……まさか地下にこんなもんが眠っていたとは、それは想定外だったがな」

 

剥き出しの基礎が見えるのかと思ったがそういう訳じゃなかった。それは鋼鉄製だろうか、執務室付近に随分と異質で頑丈なものがあった。

 

「しかも厳重にロックがかかっている…憲兵も見逃したか?」

 

普通に開けられそうに無かった為、工具で穴を開けた。

 

「こいつは…金だな。中々の大金だ。あの札束の量をみると、100束、いや、1000束あるかもしれん…」

 

目測が正しければ10億…これだけあれば遊んで暮らせる。ひでぇ荒稼ぎしてらぁ。

 

生死の関わる軍人、しかも将校クラスだ。貰える金も大きいが、だからと言って10億円PON!と貰えるほど稼げない。下手したら生涯年収だ。

 

果たしてこの資料の轟沈数、本当に合っているのか…。うわぁ、闇が深いなぁ。

 

「なんでこんなに…」

 

大淀がワナワナと震えている。まあ、想像したくないだろう。

 

「資源の管理してたのは提督だけか?」

 

「わ、私も管理してました。提督に雑用ばかり押し付けていたので」

 

ふむ…随分とツケが甘い提督だったのか…。ここにいる子達が疑問を覚えなかったらどうするつもりだったのだろうか…。

 

「出撃回数、船渠の回数、遠征回数、工廠の稼働数。まだこの鎮守府が力を遺していた時のデータがあってな。それと収入で差し引きしたんだが…鉄鋼とアルミの数が大きく違う。この鎮守府は船渠実績と工廠の実績があまりにも少ない」

 

空母は居ない様な鎮守府だ。使用用途は工廠くらいしか無いはずなのにその工廠が稼働していない。にもかかわらず書類上は少数しかない。鉄鋼も似た様な理由だ。入渠などほとんどされていないのに、こちらも少数だ。

 

「て、提督さんが使わないからとご友人に送ってたみたいで」

 

「…で、それは友人か定かでは無いが、売りつけて賄賂を得ていた。しかも艦娘の資源を横流ししたのにもかかわらず艦娘に寄与されない結果がこれだろうな」

 

「そんな…!」

 

「流石に金の管理はしてなかったか」

 

「ええ…『兵器なんかには関係ないものだ』と」

 

「ふーん…」

 

随分となめ腐っていたもんだ。

だが、資源の値段など知る由もない…。

 

ジジイに聞けば分かるだろうがな。着いた時にでも聞こう。

 

「まあ、この金の使い道はここの復興に充てるとして…」

 

「な、なによ…」

 

「確か、川内だっけか?」

 

「そ、そうよ。一体なんなのよ!」

 

「君と言う通りだ。こんな事したら、タダじゃ済まない。全くその通りだ。俺は管理不行き届きで憲兵、で実行犯の天龍は解体処分が妥当だろうな」

 

そりゃそうだ。放ったのは俺じゃないからな。

 

「な、なんだよそれ…俺に罪を擦り付けるって言うのかよ!」

 

「俺も牢に放たれているか、同じ事やってるから今度こそ物理的に首が飛びそうだけどな」

 

まあ、間違いなく俺も処刑される。

 

「責任はお前だろ!?なんで俺まで巻き込むんだよ!!」

 

「まあ、もっと言うなら、ここで傍観していた全員が共犯者だ。日本人は連帯責任が大好きだからな」

 

『なっ!?』

 

何故止めなかったと間違いなくなる。

 

「だが、今の状況は普通じゃない」

 

「は、はぁ?」

 

「『建物の腐食が激しく、いつ崩れてもおかしくないため解体しました』とでも言えば問題ない。解体に手段は問わないからな」

 

大量に爆薬を詰めて弾と一緒に放電しましたとかなら、めっちゃお叱りを食らうだろうがな。

流石に解体方法までは問われないだろう。案外海軍の中枢部は馬鹿ばかりだからな。

 

「で、でもこんな爆発じゃ」

 

「トラウマが蘇るとでも言いたいのか?」

 

「そ、そうよ!ここにいる子達は敵の砲撃で大爆発して沈んで行った仲間達を…何度も…何度も!見てきた子達なのよ!!」

 

「そうなんだ」

 

「そうなんだって…あんたも今までの提督と同じよ!同じクズよ!!私たちのトラウマを呼び覚まして何がしたいの!?」

 

そうよ!とただヤジが飛ぶ。弱々しいながらも何人も駆逐艦が叫ぶ。顔が蒼白になってでも。

 

軽巡洋艦が叫ぶ。俺の人格を否定するように、苛烈なほど叫ぶ。喉を潰すほどに。大淀はただオドオドしていた。

 

重巡洋艦…っても1人しかいないが。彼女は気絶している。これは蛇足だったか。

 

明石はただぼーっとしていて、給糧艦の2人は座り込んでのの字を書きながら口をゴモゴモと動かして……ねぇ、俺の事批判するならいっそのこと全員でやってくんない?君たち温度差激し過ぎない?

 

だが、まあ。こんな爆発程度でトラウマを呼び寄せてもねぇ…。

 

「トラウマが呼び起こすだって?じゃあ戦場に出れんな?って事は使命を果たせないって事だとは思わないか?」

 

「それがなんだって言うのよ!!」

 

「理解できないのか曙。練度も低い、そして爆発はダメ…そんな奴は戦場で足手まといになるだけだ。自分だけが沈むならまだしも、誰も守ろうとせずトラウマを言い訳にし、何もしない…そんな奴先に解体した方が全員の為になるんじゃないか?そこんところどうよ」

 

「本気で言ってるの…?」

 

「本気だよ。望むなら今すぐにでも行ってやる」

 

軽く睨みつけると曙はたじろいだ。

言いたいことは分かる。激しいトラウマを持っているのはこの短い時間に嫌でもと分からせられた…ッ!

 

だが、それはそれだ。

 

俺たちは国民の命を護る『軍人』だ。そこに人も艦娘も関係ない。

 

命を散らすことも覚悟しないといけない。

 

それはトラウマもクソも関係ない。

国民も事情を知れば気の毒には思ってくれるだろうが、それは何の解決にもならない。

 

深海棲艦の殲滅、若しくは恒久的な和解…つまりこの戦争を終わらせないといけない。

 

トラウマを原因に足を引っ張ってしまえば守るべきものも守れない。

 

この国を守ろうと散った者の為にも、悲惨な戦争は終わらせなければならない。

 

それが軍人の使命だ。

 

前任共にはそんな意識は無かっただろうな。勿論俺にも無い。こんなの出任せだ。心の中だけど。

 

そんな意識ある奴はテロなんて起こさん…が、ある意味その行動が正解だったのかもな…。

 

これが戦場の現実だ。力に物を言わす奴は、味方にそれを強要する。実にクソッタレだ。それでいて自分は甘い汁を吸うのだから。

 

守りたいのは国民ではなく自分。実に保身的だ。

 

そして、そんな奴らを見本として、挙句嬲られた彼女らも、実に保身的だった。

 

「自分の事が可愛い可愛い皆さんはどうしたい?人間が嫌いなら人間を守る必要などない。戦うが無いなら軍にいる必要も無い。即刻解体を言い渡そう」

 

『…ッ!』

 

「だが、仲間の怨みを晴らしたいと思うなら、戦え。トラウマを血で塗り尽くすくらい戦え。深海棲艦を、お前らのトラウマの元凶を跡形もなく葬り去るほどに戦え。俺はそんな奴を拒む気は無い。寧ろ手助けしてやろう。復讐に手を貸そう。惜しむつもりは無い」

 

『……』

 

「俺が配属されるなんて運がなかったなお前ら。俺はなあなあで済ませるつもりは無い。やるなら徹底的にやる。まあ、俺は直ぐに決断を押し付けない」

 

新たな提督が来て、新たな方針に対してその場で答えを決めろなんざ無理がある。考える時間が必要だ。

だが、時間を設けなければなあなあな結果で時が流れるだけだ。だから俺は期限を設ける。

 

「1週間だ。1週間待つ。その中で探れ。俺と言う人物が、お前らの信頼に値するか。勝手ながらここに決めさせてもらう。絶望に抗うも、流されるもお前らの勝手だ」

 

俺は抗う

 

例えそれが茨の道でも

 

明日砲撃を喰らおうとも

 

腕が何本も無くなろうとも

 

俺は平和が来るまで抗ってやる

 

救うなんて戯言を吐く気はない

 

ただ、闇に触れちまったからにはきっちりと落とし前をつけに行く

 

トラウマと闇金しか残されていない鎮守府。ゼロからどころかマイナスからのスタートだ。

 

それでも始める。始めてやる。

 

1から…いいや。ゼロからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これ以上不和を引き起こすような事やると本気で腕無くなるよなぁ…。






自分でも何書いてるか分からなくなった(丑三つ時なう)


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