ネプテューヌ短編まとめ (よっしー希少種)
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ある日のうずめとくろめ【天王星うずめ 暗黒星くろめ】

うずめとくろめがめちゃくちゃ仲良しな話が見たかったので書きました。原作の二人の関係とはかなりかけ離れています。


「ただいま」

「ん、おかえり〜」

 

 コンビニの袋を持ったくろめが部屋に入ってくる。うずめはテレビを観ながら返事をした。

 

「はい、言ってたヤツ買ってきたよ」

「ありがと」

 

 くろめは袋の中からパックのジュースを取り出した。うずめはテレビから視線を外さずに左手を差し出した。渡せ、と解釈したくろめはジュースをうずめの手に乗せた。うずめはジュースを受け取ると、口元に持っていくと、またくろめの方へ差し出した。

 

「ストロー刺して」

「そんくらい自分でやれよ」

「今良いとこだから」

「オイ」

 

 テレビには録画していたであろう刑事ドラマが映っている。どうやら今犯人を問い詰めているシーンのようだ。くろめは大きなため息をつくと、ジュースを受け取った。

 と、ここであることを思い付く。袋の中には、自分用に買ったパックのコーヒーがある。それも無糖のブラックコーヒーだ。くろめはそれを取りだし、ストローを刺すと、うずめの手に乗せた。

 

「ありがとう」

 

 うずめはなんの疑いもなくそれを口に運んだ。

 

「ぶふっ!!!??」

「んふっ……」

 

うずめはコーヒーを吹き出した。その様子を見てくろめは小さく笑った。

 

「おいテメェ! これどういう……」

 

 隣を見て怒鳴ったが、そこにくろめの姿はなかった。かわりに、くろめが入ってくる時に閉めたはずのドアが開いているのが見えた。これから考えられることは一つ。

 

「逃げてんじゃねぇーー!!!!」

 

 うずめは、くろめを探すために部屋を飛び出した。

 

 

(くそっ、あいつどこ行きやがった?)

 

 適当に教会内を走り回る。が、くろめがどこに逃げたか、どこに隠れたかは検討もつかない。当たりを見回しながら走っていると

 

「うわっ!」

「ねぷっ!」

 

 曲がり角で誰かにぶつかってしまった。目の前に居るのは白いパーカーの少女……そう、ネプテューヌだ。

 

「いたた……ちょっと! ちゃんと前見て歩いてよね!」

「悪いねぷっち! でも今はちょっと人探ししてて……」

「ん……? なんか、コーヒーの匂いしない?」

 

 ネプテューヌの目はすぐにうずめの方に向いた。うずめの着ている服にはコーヒーのシミができている。

 

「うずめ……もしかして自分で着替えれないの?」

「着替えれるけど!?」

「いやいや、だったらコーヒー零してそのまま走り回ったりしないでしょ!」

「これには深い訳が……」

「どんな訳があっても普通零したら着替えるでしょ! もーまったくうずめったら……」

 

 ネプテューヌはうずめの手首を掴んで引っ張った。

 

「な、どこに連れていくんだよねぷっち!」

「まずは着替えなきゃダメでしょ? 服のシミ落ちなくなる前に洗濯してもらわなきゃ」

「そんなことより俺は……」

「ハイハイ口答えしない」

 

 ネプテューヌは半ば無理矢理にうずめを引っ張っていった。

 

 

 一方その頃くろめはと言うと……

 

「お、ぎあっち、ここに居たのか」

「わあぁーーーー!!!!???」

 

 教会の大浴場の脱衣場に居た。そこでたまたま、風呂上がりのネプギアと鉢合わせしていた。

 

「覗きですか!!?」

 

 咄嗟にバスタオルで体を隠した。

 

「安心しな、覗きに来たわけじゃない。同性の裸に興味は無いしね。オレはぎあっちに用があってきたんだ」

「私に?」

「ああ。それに、風呂上がりならなお好都合だ」

「?」

「ほら」

 

 くろめはパックのジュースをネプギアに差し出した。

 

「これは……?」

「二個買って一本飲んだんだけど、どうも口に合わなくてさ。ぎあっちにやるよ」

「でも……うずめさんにあげるのじゃダメなんですか?」

「飲まないって言ってた」

「あぁ、そうなんですね。では……ありがとうございます」

 

 ネプギアはジュースを受け取る。まだ冷たい。

 

「じゃ、そういう事で」

 

 くろめは背を向けてヒラヒラと手を振りながら脱衣場を出た。

 

「さーて、あいつはまだ私を探し回ってそうだし、ちょっと散歩にでも行くか」

 

 その後、くろめはコンビニの袋を持って帰ってきた。中には同じジュースと、うずめが好きなスイーツが入っていたとか。



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変わらない日々【ブラン】

いつかのワンライで書いたやつです


「ふぅ……今日の分は終わりね」

 

 座ったまま伸びをする。今日の分の書類仕事は全て終わらせることが出来た。時計を見ると、夕飯までしばらく時間があることが分かる。こうなれば、ブランがやることは一つである。

 自室に戻り、本棚の中から一冊の本を取り出す。小説だ。クッションの上に座り、栞が挟まっている頁を開いた。ブランは、一人で読書をするこの時間が好きだ。本の中の話に集中することができる上に、本を読むことで気持ちが落ち着く。夕暮れ時のオレンジの光が差し込む部屋の中には、頁をめくる音だけが響いていた。

 

「……」

 

 

 

 ふと、ブランの頭の中にある記憶が蘇ってきた。それは、今と同じ夕暮れ時の静かな時間、同じように読書していた時のことだ……。

 

「ねーブランー。読書してないで遊ぼうよ〜」

 

 その日はネプテューヌが(勝手に)遊びに来ていた。読書の邪魔をされて煩わしく感じていたが、追い返そうとしても面倒な事になると思ったため、そのまま部屋に入れている。

 

「今はその気にはなれないわ」

「えー。せっかく遊びに来たのに」

「勝手にね……」

 

 退屈したのか、ネプテューヌはブランの隣に座り、本を覗き込んだ。しばらく目を通した後、つまらなそうな目でブランを見た。

 

「面白いの?」

「面白いわよ。途中から読んだから面白くないと思うんじゃない?」

「うーん、どれだけストーリーが面白くても、文字を眺めるだけってのはわたしは苦手だなぁ」

「そう……」

「……あれ? 終わり?」

「え?」

「そこはなんか……魅力を教えたりするんじゃないの?」

「そんなことはしないわよ」

 

 ブランは本に栞を挟み、テーブルの上に置いた。

 

「私は好きで読書しているからね。文字を眺めるのが苦手なネプテューヌに強要したりはしないわ」

「へー。ブランって自分の好きな事には全力で誘い込むタイプだと思ってたよ」

「趣味が合うならそうするけど……」

「私とは合わないって言うの!?」

「そうじゃなくて……それぞれ好き嫌いがある訳だから、嫌いを強要するのはその人にとって一番苦なことだからやらないだけよ」

「……以外と優しいんだね」

「以外と、は余計よ」

 

 そんな話をしていると、部屋のドアがノックされた。そして向こうから電話を持ったフィナンシェが現れる。

 

「おくつろぎのところすみません、ブランさまにお電話です」

「どこから?」

「プラネテューヌの教会からです」

「ねぷっ!? きっといーすんだよ! わたしを連れ戻すつもりだよ」

「なら好都合ね。また読書に集中できる……」

「ちょっとブラン!? 見捨てないでよ!」

「そもそも仕事ほっぽって遊び歩いてるあなたが悪いんでしょ。自業自得よ」

 

 ブランは電話を受け取り、ネプテューヌが居ることを伝えた。イストワールが迎えに来るまで、逃げようとするネプテューヌの服を掴んで拘束しながら待っていた。

 

 

 

「……あの時間も悪くはなかったわね」

 

 普段静かなこの時間を賑やかに過ごすというのも悪くない、そう思えたからだ。

 

 

 いくら時間が経っただろうか、三十分? 一時間? 読書に集中していると、時間の流れがわからなくなる。日が落ちてきて、さっきより部屋の中が少し暗くなる。この時間になると、ブランの集中を切らす存在が現れる。静かな空間に響く足音。段々と部屋の前に近付いてきて

 

「ただいまー!」

 

 バンッ! と勢いよく開けられたドアの音と共に、元気な声が聞こえてくる。他国の女神候補生達と一緒にクエストに行っていたロムとラムが帰ってきたのだ。

 

「ラムちゃん、まだ手洗ってないよ……」

 

 後ろからロムが声をかける。が、構わずラムはブランの傍に行った。ブランは本に栞を挟み、テーブルの上に置いた。

 

「ラム、帰ってきたらまずは手を洗って……」

「その前にお話したいの! あのね、今日ね……」

 

 余程良い事があったのか、ラムは興奮気味に今日の出来事を話した。ブランはこの時間も好きだ。ロムとラムの元気な姿を見ると、なんだか嬉しくなってくる。

 

「……って事があったの!」

「そう、それは良かったわね」

 

 ブランは優しく微笑んでラムの頭を撫でた。

 

「でね! 後はね……」

「後はご飯の時に聞くわ。そろそろご飯の時間だから、早く手を洗って来なさい」

「はーい! 行こ、ロムちゃん!」

「うん!」

 

 二人が部屋を出るのを見送り、そして本を持って立ち上がった。本を本棚に戻し、いつもの白いコートを羽織って部屋を出た。今夜は二人からどんな話を聞けるのか、それも楽しみにしながら食堂へ向かった。



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思い出の味【クロワール】

クロワール元イストワール説な解釈が含まれています


「はぁー……今日は野宿かぁ……」

 

 愚痴を零しながらネプテューヌはテントを組み立てている。

 

「仕方ねぇだろ。こんな荒廃した場所に宿なんてないからな」

「こんな場所に飛ばさないでよー」

「テキトーに飛ばしたからな。第一、どこでもいいって言ったのはお前だろ?」

「それはそうだけど……。でもまぁ、たまには野宿でもいいか! 今を楽しまなきゃ」

「ポジティブな奴だな……」

 

 ネプテューヌはテントを組み立て終えると、調理セットと食材を取り出した。

 

「夕飯はカレーで良い?」

「任せる」

「何か入れて欲しい食材とか、辛さのリクエストとか無い?」

「任せる」

「もー、素っ気ないなぁ」

 

 なんて言いつつ、ネプテューヌは調理に取り掛かった。クロワールはなんとなく、空を見上げた。澄んだ空には雲一つなく、満天の星空と綺麗な三日月が浮かんでいた。

 

(……いつぶりだろうな、こうやって空を見上げたのは)

 

 本の上に横になって空を眺める。見てるだけで心が洗われそうなくらい綺麗な空だ。

 

(前は……確か……)

 

 

 

 

『あ、イストワール、ここにいたのね』

『あら……□□さん、何か用ですか?』

『うん、ご飯の時間だから。イストワールは、ここで何をしていたの?』

『空を見ていました。今夜は快晴で、星も月もよく見えるんですよ』

『本当だ……。凄く綺麗ね』

『□□さんも少し見ていきませんか? 女神としての仕事も大事ですが、気分転換も大切です』

『そうね、そうするわ』

『……』

『……』

『ねぇ、イストワール』

『はい』

『私って、料理出来ると思う?』

『唐突ですね。うーん、歴代女神は料理はしてきませんでしたし、正直に言うと……出来ないと思います』

『やっぱり?』

『はい。ですが、なぜ急にそんなことを聞いたのですか?』

『そう答えると思ってね、私料理作ってみたんだ』

『……はい?』

『大丈夫、味は保証するよ。だからイストワールも食べてみて』

『え、えぇ……』

『ほら、行くよ!』

『わ……』

 

 

 

 

(……変なこと思い出しちまったな。あれはあの後……)

 

 クロワールは小さく溜息をついた後、口を開いた。

 

「……なあ」

「ん? どうしたの?」

 

 ネプテューヌは野菜を切る手を止めてクロワールの方を見た。

 

「今どこまで作った?」

「まだお米炊いてるとこだよ。カレーはこれから作る」

「そうか……じゃあさ」

 

 クロワールは起き上がり、ネプテューヌに背を向けて胡座をかいた。

 

「……甘口で、肉多めのカレーにしてくれ」

「……わかった。クロちゃんって甘口好きなんだね」

「そういう訳じゃねーよ。ただ……」

「ただ?」

「……久しぶりに食いたくなっただけだ」

「……? ……あ! 母の味ってことね」

「ちげーよ! お前にはわかんねーよ!!」

「照れなくたって良いのに〜。いくつになっても母の味って忘れられないものだからね」

「だから違うって!!」

 

 茶化すネプテューヌと、それに反論するクロワール。賑やかで(ネプテューヌにとっては)明るい雰囲気の中、カレーは出来上がった。

 

「じゃあ、食べようか」

「あぁ」

 

 クロワールはカレーを口に運んだ。ごく普通の甘口のカレーの筈なのに、懐かしさを感じる、そんな味だった。



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友人を迎えに 【アイエフ】

初めてワンライで書いたやつです


 プラネテューヌのギルドの前、アイエフは携帯電話を耳に当てながらイライラした様子で立っている。

 

「出ない……もう五回はかけてるのに」

 

 通話を切り、携帯電話をしまうと、小さくため息をついた。

 

「……迎えに行くか」

 

 行き先はプラネテューヌの教会。アイエフは小走りで向かった。

 

 

 教会内、ネプテューヌの部屋の前。

 

「ネプ子ー? 居るー?」

 

 ドアをノックしながら声をかける。返事は返ってこない。

 

「ネプ子ー? ネープー子ー!?」

 

 やっぱり返事は返ってこない。部屋に入ろうと、ドアノブを軽く回すと、鍵がかかっていない事がわかった。アイエフはゆっくり扉を開けながら、部屋の中を覗いた。

 

「ネプ子、居……た」

 

 ネプテューヌはソファの上で寝ていた。

 

「寝てる……嘘でしょ」

 

 アイエフは部屋に入ってネプテューヌに近付いた。

 

「ネプ子、起きて。起きなさい」

 

 全く起きる気配がない。幸せそうな顔をして寝ている。見ると、手にはコントローラーが握られている。テレビには高難易度で有名なゲームが映されていた。

 

(なるほど、徹夜で攻略しようとして力尽きた……ってとこかしら?)

 

 アイエフはちょうど一人分空いてるスペースに座った。傍に寄っても起きる気配無し。眠りは深いようだ。

 

「はぁ……一緒にクエスト行くって約束したのに……。普通前日に徹夜でゲームする?」

 

 アイエフは愚痴をこぼしながら暗い部屋の中でネプテューヌを眺めていた。

 

(こうなったら起きないだろうなぁ……いいや、別の日にしよ。……その時はネプ子に何か奢ってもらおう。コンパの分も)

 

 アイエフはなんとなく、ネプテューヌの頬をつついてみた。柔らかい。なんだか歳下の子の面倒を見ている気分になる。相手は女神だが。

 アイエフは立ち上がると、部屋のカーテンを開けた。昼の暖かな陽の光が射し込んでくる。そしてベッドの上にあったタオルケットをネプテューヌにかけると、ネプテューヌの持っていたコントローラーを手に取った。

 

(どうせ帰ってもやること無いし、ネプ子が起きる前に攻略しちゃお)

 

 アイエフは操作方法を一通り確認すると、攻略を始めた。と言っても、このゲームは所謂死にゲー。ボスに向かう道ですら余裕で死ねる。

 

「何よこれ。なんで頭しか装備してないのよ。…………なるほど、他を装備すると重くなって回避の性能が落ちるのね」

 

 十分後……

 

「うわ……そんなのあり? いや、覚えたわ。二度は引っかからない」

 

 三十分後……

 

「ここはパリィで……よしよし」

 

 一時間後……

 

「やっとボスにたどり着いたのに瞬殺……。道中だって楽じゃないのに」

 

 一時間半後……

 

「半分削ったら行動パターンが変わるのね。初見殺しすぎるわ……」

 

 二時間後……

 

「後少し……二、三発で……」

 

 アイエフが操作するキャラはボスの攻撃を回避し、攻撃が終わったタイミングで大剣で攻撃した。

 

「よし……焦らない焦らない……」

 

 そして遂に……

 

「……よしっ!」

 

 アイエフは遂にボスを倒し、ステージをクリアすることが出来た。

 

「はぁー……疲れた。でも面白かった」

「ん……アイちゃん?」

 

 横から声が聞こえる。どうやら、ネプテューヌが目を覚ましたようだ。

 

「起きた? おはよう、ネプ子」

「おはよう……? なんでアイちゃんが私の部屋に居るの? それに、私タオルケットかけて寝たっけ? ……あぁーー!」

 

 ネプテューヌはテレビの画面を指さした。

 

「私が昨日倒せなかった墓石王ミト倒されてるじゃん! まさか……アイちゃんが!?」

「えぇ。かなりやりごたえあったわ」

「ちょっとー! 人に無断でゲーム進めるなんて酷いよ!」

「そお? 約束すっぽかすより全然マシだと思うけど?」

 

 アイエフは嫌味っぽく言った。ネプテューヌはハッとした顔でカレンダーと時計を交互に見た後、アイエフの顔を見る。

 

「……今日だっけ?」

「今日です」

「えーっと……その、ごめん」

「別にいいわよ。また違う日に行けばいいし」

「本当にごめん……明日だと思ってた」

「次行く時は何か甘い物でも奢ってね。コンパの分も」

「えぇー!? ゲームしたんだしさ、それでチャラにしない?」

「しない」

「そこをなんとか!」

「ならない」

「そんなぁー……酷いよアイちゃん……」

 

 ネプテューヌはガックリと項垂れていかにも落ち込んだ様子を見せた。

 こういうやり取りができるのも、二人が親友であるからこそ……なのかもしれない。



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