灰と四方世界 (楽しく遊びたい一般不死人)
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プロローグ 終わりと始まり


初めまして。ビクビクしながら描き始めました。始めたばかりで分からない事も多いので何卒よろしくお願いします。



その男は最初の火の炉の篝火の前で呆然と立ち尽くしていた。そこには螺旋状の剣が刺さっており火が灯っているが、今にも消えそうな篝火の火がこの世界の終わりが迫っている事を伝えているようだった。

 

男は今までの記憶を思い出していた。ロードラン ドラングレイグ ロスリック 様々な時と場所を放浪していた男の精神は擦り切れ摩耗し今では最初の男と今の男は別人となっていた。だが、それは当然と言える。

今までの旅路で殺され続け、殺し続けていた。時には怪物を、時には人を、時には神すら殺した男のソウルはもはや人とは呼べない。今思えば協力してくれた者たちの最期も拍車を掛けていただろう。非道な裏切りに遭った者、悲痛な最後を迎える者、殺し合う事になった者、それらを変えようと何度繰り返しても救えた者は少なすぎた。それでも諦めなかった男は世界を続けた。それが誰かの救いになると信じて。だがこの世界の真実を知った時、男は全てに絶望し、慟哭した。世界を続けた意味は無く誰の救いにもならず、むしろ苦しみを増しただけだった。もはや男の救いはこの世界を終わらせる事だけだった。しかし、それすらも叶う事は無かった。何度終わらせようと世界は続いた。それを理解した時男はただ機械の様に火を継ぎ続け、世界の延命を続けた。

 

その時には既に男は変わっていた。どれだけ効率的に殺せるか、せめて他の者の使命や願いを果たす助けをしたい。例え自分が死ぬとしても。そんな事ばかりを考え、永遠とも思える中続けていた。

せめて自分が殺し、糧にしてしまった者たちの為に自分だけは折れてはいけない。亡者になってしまってはいけない、そう思い放浪の末、男は莫大なソウルをその身に宿し神々にすら並ぶモノとなった。

遠い昔になってしまった事を思い出していたが、ふと目の前の篝火を思い出し何度繰り返したか分からないこの選択とも言えない選択を迷い、いつかの様に消す事にした。篝火の横にあるサインに触れ、火防女を呼び出し、火を消す。その時、男は静かに喋り始めた。

 

「貴公にはいつも感謝している。ありがとう。」

 

その時の火防女はそっと微笑んでいた様に見えた。火が消え、世界が闇に包まれる。薄れゆく意識の中、男はもう二度と目覚めなければ良いなと、考えていた。だが篝火は不自然な大きさの火を灯しながら燃え、次の瞬間には消え、世界が闇に包まれる中、男の姿は消えていた。そして静かで優しい女性の声が聞こえた。

 

「灰の方、貴方に寄る辺がありますように。」



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第一話 八年前と辺境の地

続けられるように頑張ります。拙かったり駄文だったりしますが、何か間違ってたりしたらご指摘していただけると助かります。後今回は一人称視点になります。


 

 

 

木々の隙間から差し込む日の光と小鳥のさえずりに気付き目が覚めた私は、目が覚めると同時に何が起きても対応出来る様に即座に体を起こしていた。

あの呪われた旅路の中いつの間にか身に付いていた行動にいつもの様に呆れ、違和感を感じて周りを見渡し、違和感の正体を理解した時、信じられなかった。

「ここには亡者がいない?」

 

その考えに至った時に持つべきではない考えを持ってしまった。ここはあの呪われた地では無いのではないか?ようやく終わらせる事が出来たのではないか?だがその考えを私は捨てた。ロスリックの時もそうだった。北の不死院ではなく灰の墓所で目覚めた時も同じ考えを持ち、裏切られた。だからこそ私はあまり先の事を考えないようにしていた。

 

そして再度周りを確認し、周りの安全性を確保し、何が出来るのかを調べようと思った。無くなっている武器や防具、アイテムが今どの程度残っているのか。自分にも何らかの変化は起きていないのか、まず自分の体を確認しようと動かし始め、鎧も見る。頭は逃亡騎士、胴はミルウッド、腕はファランの籠手、足は胴と同じミルウッド。私の最後の記憶の時と同じ装備である事に満足し、次は武器がソウルから取り出せるかを確認する。私は決して強い訳では無かった。一つの武器を極めようとしてもその努力は実を結ばず、他の何かに特別優れていた訳でも無かった。それならばと、私は対応力を伸ばした。多種多様な武器や、魔術、奇跡、呪術、それらを身に付け如何なる場所、状況にも耐えて、対応出来る様にした。

故に武器の多さや様々な効果を持った武具や触媒、これらが私の戦闘力に直結する。武器をイメージし、ソウルから取り出す。すると手に馴染む重さを感じ目を開ける。手の中にはよく協力の時に使っていた半葉の大刀、時間稼ぎや毒や出血といった派生にも優秀でダメージも高く、高水準な武器だ。その後も他の武器を少し確認し、アイテムの方も残量を確認し、疑問を口にした。

 

「アイテムは全てあると思うが、幾つかは効果を失っているのか?いや、篝火に触っていないからか?」

 

螺旋剣の破片や帰還の骨片等は使用しても効果は無かった。残りの確認は休息できる場所で行う事にし、辺りの探索をしようと歩き始める。だが私はこの時失念していた。一人で森を歩き回るというのは必ず迷うという事と同義だというのに、少なからず新しい場所で気分が高揚していたために何の準備もせずに森を歩き始め、その後七色石くらい置けば良かったとすぐに後悔したのは言うまでもない。

 

 

 





灰の人のステータスは802の何でも出来るマンと思って下さると嬉しいです。書き終わってからステータスの事を思い出して、軽くパニックになりました。細かい所を気にせずに書いてるので間違ってる箇所があると思います。そのあたりは指摘して下さった場所を可能な限り直していく所存です。


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第ニ話 出会い

始めての戦闘描写で自信が無いです。なのであまり期待せず、緩く見ていただけると嬉しいです。これから改善できるように頑張ります。
後あまり関係ないのですがダークソウルの好きな武器や防具、スペル等を教えていただけると助かります。防具は組み合わせでも全然大丈夫です。単純に聞きたくなっただけなので深い意味はないです。



 

 

森の中を彷徨いそろそろ本当に不味いと思い何か方法は無いのか考えていた所で洞窟を見つけ、僅かに金属音が聞こえたので急いで洞窟の中を確認する事にした私は、始めてこの世界の害悪に出会った。

 

 

 

ゴブリン退治なんて楽勝だと思っていた。受け付けの女の人の注意を気にせず相方の女神官にこんな依頼すぐに終わると言い合い、笑っていたのが今では昔の様に感じる。

 

現実は残酷で女神官は俺が後ろから突然現れたゴブリンの相手をしていた時に洞窟の奥から出て来たのだろう図体のデカイゴブリンに投げられて、洞窟の壁に当たった後頭から血を出しピクリとも動かずに横たわっている。俺は女神官を守る様に戦っていたが、さっきデカイゴブリンに棍棒で殴られた時に飛んでいった盾を気にしすぎたせいで足を刺されもう終わりかと思った。

それでも最後まで諦め無いと思ったもののどうすれば良いのか分からず、我武者羅に剣を振り回していた俺に数匹のゴブリンが飛びかかって来た。一匹でも殺してやる、と覚悟を決めるのと同時にゴブリンの首が飛んでおり、その光景に驚いた俺の耳にやけに落ち着いた声が届いた。

 

「良い目をしているな、貴公。」

 

 

 

 

私は洞窟に入ると同時に指輪の一つを静かに眠る竜印の指輪に付け替えて洞窟の中を走っていた。そして遠目に最後まで諦め無いという覚悟を決めた良い目をした青年と恐らく神官であろう頭を怪我した娘を見つけ更に速度を上げた。

 

そして青年に飛びかかっていた緑色の皮膚をした醜悪な怪物共をソウルから取り出した墓守の双刀で首を刎ね、彼らを背にしながら怪物共を静かに観察していた。

 

残りの敵は小さいのが三匹、そしてやたらと体のデカイのが一匹の計四匹で防具は付けておらず武器は錆びた剣や棍棒だった。

目の前の三匹は死んだ仲間を指さしゲタゲタと嗤っており危機感といものが欠如している様に思える。だがデカイのだけはこちらを見ており私の様子を見ている様に見えるので警戒を強めておき、今の状況を確認する。

壁際で青年達を守りながら戦う事を基本とし、洞窟の広さ的に特大剣は振れそうに無いが短い刀身の大剣ならば振れる広さがある。武器を双刀から竜血騎士団の大剣に入れ替えて相手が動くの待っていると小さいのが痺れを切らして襲って来た。

 

飛びかかって来たのを刀身のギリギリで皮膚を切り裂くと案の定叫びながら武器を落として転げ回っているので危機感の無い残りの二匹を横薙ぎで頭を切り、ローリングで後ろに戻る。その時にデカイのが棍棒を前に出しながら歩いてきたのを確認しながら先程地面を転がっていた奴が怒りを抑えられずに突進して来たのを足をずらして避け、鉄製の籠手で顔を強打すると崩れ落ちたので横にローリングをする。棍棒を避けると小さいの叩き潰したデカイのが歯を剥き出しにし、先程の頭の潰れた死体を投げてきたので元々装備していた投げナイフを投げ、死体を刀身で受け止める。その時に後ろの青年から掠れた悲鳴の様な声が聞こえたが無視をして敵を見るとしっかりと投げナイフが目に刺さっており叫び声を上げていた。その隙に近付き首元を貫き、念の為そのまま横にずらし首を切っておく。

 

絶命したのを確認し、後ろの怪我をしている娘の容態を見るため近付き呼吸や怪我の具合を確認する。幸いまだ生きている様なので奇跡の触媒の聖鈴を取り出し、大回復を発動する。すると呼吸に落ち着きが戻り始めて来たので青年を警戒させないように少し下がり腰を下ろして声を掛ける。

 

「大丈夫か?貴公、彼女の怪我は治しておいたので安心してほしい。

もう話せるのであれば少し聞きたい事があるのだが良いだろうか?」

 

すると青年は荒い息の中答えてくれた。

 

「すまないが、相方が起きるまで待って欲しいんだが構わないか?」

 

私はその言葉に頷きながら今の内に質問をまとめておこうと考えた。

 

 

 




めっちゃグダってすみません。ほんとに戦闘描写難しくて泣きそう。
それはそれとして読んでいただきありがとうございます!ずっと言うのを忘れていたんですがある程度進んだら日常回を多く出したいと思っていますのでのんびりとした日常回を見たい方は待っていてもらえると嬉しいです。コメントして下さった方には出来る限り返信していくつもりなのでよろしくお願いします。


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第三話 ひとつの道

もっと早く出したかった。文才が無いのが辛い、何で皆さんすごい早いのに良い文が書けるのでしょう?あ、後関係無いんですが久しぶりに白痴のロマに挑んだら全然勝てないです。


 

あらかた聞く事も決め、まだ気がつかない娘が起きるのを待っているとゆっくりとした動きで起き上がったので、

 

「貴公、体は大丈夫かね?先程大回復を使ったので問題は無いと思うのだが念の為確認しておいた方が良い。」

 

すると彼女は慌てて周りを見渡していた。そこに少年が今までの説明をし、現状を知った彼女は、一度少年と顔を見合わせてからこちらを向いて、

 

「助けていただきありがとうございます!」

 

と、同時に声を揃えて頭を下げてきたので私はかなり困っていた。こういった経験はほとんど無いのでどうするべきか考え、まずは二人の頭を上げさせるのが先決かと思い未だに頭を下げている二人に声を掛けた。

 

「気にする必要は無い。私は貴公らに頭を下げられる様な者では無い。それとすまないが、そろそろ質問をしても良いだろうか?」

 

そう言うと二人はやっと頭を上げ、少年が口を開く。

 

「ああ、大丈夫だ。助けて貰った礼として答えられる事は何でも答えるつもりだ。」

 

その言葉を聞き、私は質問を始めた。

 

「まず私は旅人でな、ここに来たのはつい先日なのだ。右も左も分からないまま来てしまった。なのでここはどこか教えてくれないか?」

 

すると二人は驚いた様な顔をしていた。

 

「驚いたな、あんた旅人だったのか。てっきり奇跡が使えるからどっかの国の聖騎士かと思ってた。あ、すまん話がずれたな、ここらは西の辺境といって俺らみたいな駆け出しの冒険者がよく集まる街がある所だ。」

 

その説明に隣にいる娘も頷いているので間違ってはいない様だ。だが冒険者とはなんだろうか?

 

「すまない。その、冒険者?とはどういったものだろうか?教えてほしい。」

 

そう言うと二人はまたもや驚いた顔をしていた。

 

「冒険者を知らないってあんた、余程遠くから来たんだな。冒険者ってのは・・・」

 

少年曰く冒険者といのは、彼らの拠点としている街では冒険者ギルドというものがあり、そこで人々の依頼を主に受け、依頼の達成報酬で生計を立てているらしい。

 

「冒険者は私の様な根無し草でもなれるものだろうか?」

 

「勿論だ。と言っても冒険者は誰にでもなれるもので家を継げない三男坊やら、何かしら事情がある奴が多いんだ。」

 

「では次に、火継ぎやダークリングというものを聞いたことは?」

 

「いや、聞いたことないな。お前はあるか?」

 

「えっと、私も聞いたことないですね。お役に立てなくてすみません。助けて貰ったのに。」

 

「いや、構わない。重要な事ではあるが急いでいる訳でも無い。むしろ無い方が良い。」

 

私の発言に二人は不思議そうにしていたが今の私はこれからどうするかを考えていたので良く見えていなかった。当面の間は冒険者となり情報を集める事に専念しよう。もしかしたら私の願いも叶うかもしれない。

 

「すまないが二人が拠点にしている街まで一緒に行っても構わないだろうか?勿論道中で何かあったら私も協力する」

 

私の発言に二人は顔を見合わせ、笑いながら答えた。

 

「勿論だ。むしろこっちから頼むつもりだったから願ったり叶ったりだな。」

 

「はい、私もそう考えていたのでとても助かります。でも私たち、特に私は助けて貰ってばかりで何もお返しできていないので、街に着いたら案内をしますね。」

 

「それは私としてもとても助かる。街に着いたらよろしく頼む。」

 

その後二人とちょっとした会話をしながら街を目指した。その時私はこの新しい歩みをとても楽しみにしていた。

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。この作品を楽しみにして下さってる方がいたらとても嬉しいです。まだまだ励まなければ。


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第四話 登録と趣味

オバロのクロスオーバーが書きたくなっているのでもしかしたらいつの間にか増えているかもしれませんが、その時はよろしくお願いします。


私は二人が拠点にしている街への道すがら冒険者について詳しい説明を聞き、新たな問題に対して頭を悩ませていた。それは冒険者登録をする時の確認事項の事だった。そんな私に気づいたのか女神官が助言をしてくれた。

 

「事情のある方もいるのでそこまで詳しくは聞かれませんから肩の力を抜いても大丈夫ですよ。」

 

助言をくれた彼女に礼を言い、彼女の認識を改めていた。周りを良く見ており気遣いも出来る者がパーティーにいると生存率は大きく高まる。そして相方の騎士(見習いらしい)も動きこそまだ荒削りだがしっかりと前線に出て仲間を守っていた事からパーティーの人数が増えればとても良いパーティーになるだろうと考えていると騎士が質問をしてきた。

 

「あんたは何で旅なんてしてるんだ?あんた程の腕がありゃ騎士とか、奇跡も使えるんだから聖職者とかになれたんじゃないのか?」

 

「私はなれんよ。騎士の様な気高さも、聖職者の様な信心深さも待ち合わせていないからな。それに、貴公たちは助けられたが今までの旅路で助けた者より助けられなかった者たちの方が多い。旅に出た理由も特に無い、強いて言うならば自分探しだろうか?」

 

私は久しぶりの会話を楽しんでいた。あの旅路では最初の頃は話をしていた記憶があるが途中から事務的な会話しかしなかったからか久しぶりに人と話をする喜びを感じていると騎士が訝しげな視線を感じたので顔を騎士に向けると意外な質問が飛んできた。

 

「なあ、あんた今いくつ何だ?最初は俺達と同じ二十歳とかそこら辺かと思ったが今の話し方とかを聞くとそうは思えないし、神官もそう思うよな。」

 

すると女神官も頷きながら聞いてきた。

 

「はい。失礼でなければ私も聞きたいです。とても同い年とは思えないので。」

 

その時私は二人の年齢に驚いていた。まさか少年ではなく既に成人していたとは、神官も十六か十七だと思っていた。そして私は何と言えばいいのか分からず黙ってしまっていたが、素直に話す事にした。

 

「実を言うと覚えていないのだ。二十を超えたのは覚えているのだが、あまり自分の事に執着も無かったからな。」

 

私の発言に二人は固まっていた。何か不味い事を言っただろうか?二人が動くのを待っていると神官が気まずそうな顔をしながら言ったきた。

 

「すいません!私達が無遠慮なばっかりに辛い事を思い出させてしまいました。」

 

「俺もすまなかった!そんなつもりは無かったんだが、」

 

何か不味い誤解が生まれている気がするので軌道修正をしておく事にした私は目の前の街を指差しながら話した。

 

「すまないが今目の前にある街が貴公たちの拠点だろうか?中々大きいのだな。」

 

すると二人は慌てて答えてくれた。

 

「はい!そうなんです。色々なお店があるので大抵の物は揃いますよ。」

 

「ああ、そういえばそうだな。俺は武器屋しか行かないから詳しく無いんだよな。」

 

その言葉を聞き質屋に行った後は武器屋に行くべきだな、と考えた私は街に入り、感動した。




やっぱり上手く書けないですね。どうすればいいのか分からない。だけど挫けず頑張っていきます!そして、すいませんでした!タイトルの所まで行けませんでした。次の話では確実に行きます。


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第五話 新たな呼び名

確認したらお気に入りが17件もあってビックリした作者です。なんかもうホント、ありがとうございます!としか言えないです。これからも頑張って書いてきいますのでよろしくお願いします!そして長い話を書きたいけど書けない。


街に入った私は驚き、感動した。今までに見てきた街や国は活気などもはや無く、少数の不死人か意識を無くした大量の亡者しかいなかった。だが、今目の前にある街は人が行き交い活気がある。確かに他の者が見ればそれだけでしかない光景だが私や他の不死人が見ればほとんどの者は同じ事を思うだろう。素晴らしいと、あの呪われた世界では遂ぞ叶う事の無かったまともな世界が今ここにある事が私は本当に嬉しかった。そして感動と同時に少しの懐かしさも私は感じていた事に驚いていた。今までに街や国を見ても感じ無かったこの懐かしさは元々の、不死人になる前の私が感じたのだろうか。感動に身を震わせ、動かない私を不思議に思ったのか女神官が声を掛けてきた。

 

「どうしました?立ち止まっていますが、何か不思議な事でも?」

 

その声に我に返った私は急いで言葉を発した。

 

「いや、すまない。久しぶりにこういった人通りのある場所に来たので懐かしさを感じていた。だが、やはり素晴らしいな。」

 

私と女神官の話を聞いていた騎士が不思議そうに聞いてきた。

 

「素晴らしいって何の事だ?いたって普通の街だと思うんだが、」

 

「私が見てきた街はどれも廃れ、亡者や化け物が蔓延っていた。だからこの街の様に大勢の人がいる街はやはり素晴らしいと思ったのだ。」

 

私の発言に二人はまたもや驚いていた。小声で「そんな街を沢山見てきたのなら確かに」「だよな。やっぱ早く酒場とかに連れて行って美味いメシとかの方が良いんじゃないか?」など話していたが、私が登録をしたいと言うと案内を再開してくれた。私は道すがら店など色々な者を見ていたため飽きる事は無かった

 

歩き始めて数分程し、目的の場所にたどり着いた。二人の後に続き中に入ると、いくつもの視線を感じた。興味深げに見る者、好奇の目で見る者、訝しげに見る者、注意深く見る者、正直なところあまり私を見ないでほしいと思っていた。せめて見るなら少しは視線を隠してほしい。私は視線を敏感に感じてしまうため思わず反応しそうになってしまう。先程も投げナイフに手が伸びかけた。やっとの思いで受け付けに着き、こちらに気づいた女性が声を掛けてきた。

 

「冒険者ギルドにようこそ。どういったご用件でしょうか?」

 

「まず依頼が終わったので報告を、」

 

「分かりました。ゴブリン退治ですね。—はい、問題無いですね。では報酬はこちらになります。」

 

「ありがとうございます。」

 

二人の報告が終わった様なので後ろにいた私が話しかける。

 

「すまないが冒険者登録をしたい。」

 

「かしこまりました。ではこちらの用紙に記入をお願いします。文字の読み書きは出来ますか?代筆ですと料金がかかりますが」

 

「あ、私が代わりに書きますね。助けて貰ったのでこのくらいはやらせて下さい。」

 

女神官のお陰で記入はどうにかなりそうだ。さてこれからが問題だ。生まれや年齢はどうにか誤魔化したが職業に関してはどうするか悩んだ。仕方無いので二人に協力してもらう事にし、女神官や騎士に私がどう見えるか聞いてみた。

 

「私はどう見える?」

 

「ええと、私は騎士の様に見えますけど、騎士じゃないんですよね。見た目からはちょっと分かりません。」

 

「俺もサッパリだな。あんた分かりやすい見た目してないからなぁ。無難に戦士でいいと思うが」

 

悩んでいる中、受付嬢が私を見ながら頷き、答えを出した。

 

「でしたら、先程の報告にあった様に様々な武具を使って状況に対応できるとの事から、万器使い(オールラウンダー)というのはいかがですか?」

 

その言葉を聞いて器用貧乏の方が私には合っていると思ったが、二人は私を見ながら頷いていたのでそうする事にした。

 

「ではそれで頼む。」

 

「かしこまりました。今ので記入は終わりましたのでこちらの認識証をどうぞ。」

 

白磁の認識証を受け取り首に下げる。動くと少し音が出るので後で音が出ないようにする必要がある事考え、受付嬢に礼を言い女神官に質屋へ案内をしてもらう事にする。

 

質屋に着き、中に入ると店の奥に店主らしき人物が居た。店の棚には買取ったのであろう品々がある。興味をそそられる物が多くあり、暇があればまた来たいと思える。

 

「ここの店主だろうか?路銀を持っていないので幾つか売りたいのだが良いか?」

 

「勿論だ。珍しいモンなら高値で買い取るよ。」

 

「なら、これを頼む。」

 

私は机の上に炎の貴石と祝福の貴石を置き鑑定を頼んだ。後ろの二人が息を飲んでいるがどうしたのだろうか?店主の顔つきも忙しく変わり見終わった後は鋭い目でこちらを見ながら聞いてきた。

 

「あんたコイツをどこで見つけたんだ。こらぁ相当な値打ちモンだ。鍛冶屋とかに持っていけば金貨三十枚だろうとポンと出すレベルのな。上手くいけば渋るだろうが四十枚はいける。都とかで売れば買いてぇ奴が雪崩れこんでくる。そんな代物だ。俺は二つ合わせて金貨八十枚で買いたいと思っている。どうだい?」

 

正直私はそこまでいくとは思っておらずどうするか迷っていたが、使い道も余り無い事から店主に売ることにした。

 

「それで構わない、交渉成立だな。また何かあったら頼むとしよう。」

 

「ハハハハッ!良い商売が出来た。ありがとよ!あんたならいつでも歓迎だ。だがまぁ、偶には買っていってくれよ?あんたの持ってくるモン買ってたらこっちの金が無くなっちまう!」

 

店を出て二人に金貨四十枚が入った袋を渡した。

 

「貰っておいてくれ今までの恩返しの様な物だ。」

 

すると女神官は固まってしまい、騎士は困った様な顔をしていた。また私は何かやってしまったのだろうか?心当たりが無いのだが。

 

「こんな大金頂けません!そ、それに恩返しというならまだ私達が出来ていません!」

 

「こればっかりは俺もそう簡単には貰えないな。こいつの言う通り俺達はあんたに命を助けて貰った上にこんな大金を貰える様な事はしてないからな。」

 

「ではその恩は将来的に返してくれれば良い。取り敢えずは貰っておいてくれ、私としてもそちらの方が助かる。」

 

そう言って半ば無理矢理に渡しておく。さて次は武器屋に行こう。

 

 



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第六話 準備と決意

読んで下さる皆さんのお陰で楽しく書かせて貰っています。作者です。やっぱりコメントを読むと元気が出ますね。コメント書ける方はどんどん書いて下さると嬉しくて作者が跳ねまわります。それではどうぞよろしくお願いします!


質屋から少し歩くと武器屋が見えてくる。店に入ると数多くの武器や防具が目に入り足の動きが早まる。私は趣味で様々な武具を集めていたため自分では使いこなせない武器や防具、触媒等を大量に所持している。私は昔から収集癖があるらしく旅路の途中、目についた物はほとんど集めていた。そのため手持ちには収まり切らず、篝火にも仕舞い込んでいた。だがその甲斐あって目利きや手入れは自然と身に付いた。店に置いてある品を見ていると質の良い武具であると分かる。値段の低い物であっても手を抜かず丁寧に作られている。こういった物であれば充分実戦で通用するだろう。そんな事を考えていると騎士が声を掛けてきた。

 

「なあ、あんたはもう充分良い武器を持ってると思うんだが新しい武器でも買うのか?」

 

「いや、武器の出来を見ていた。どれも良い出来の物だ。こういった物であれば安心して振るえる。後は趣味だな。」

 

「趣味、ですか?」

 

女神官が不思議そうに聞いてきた。

 

「ああ、私は様々な武具を集める趣味があってな、今までの旅路で数多くの武具を集めた。中には呪われた物もあるが、上手く使えば頼もしく強い武器になる。」

 

「呪われた物を使う度胸は俺には無いなぁ、まあ確かに使い方によっては変わるもんか。」

 

「気になったのですがその呪いは祓えないのでしょうか?」

 

「いや、祓った場合力を失うかもしれんからな。それよりかは呪われた物でも使い方を探す方がいいだろう。」

 

その後騎士は新しい盾や剣を探し、女神官は私のすすめもあり鎖帷子を探し始めた。私は私でこの二人に渡す指輪を考えていた。私は旅路の中で後進によく指輪や武具を渡しており共に進む事が多かった。

そしてなにより、世話になったこの二人に少しでも長く生きてほしかった。話す事で分かったがこの世界には不死人はいないのだろう。であれば彼ら彼女らの命は一度切りのモノだ。小さな失敗から命を失う事は珍しい事では無い。実際私はそういった事で何度も命を落とした。私であれば死んでも次があるが彼らには無い。たった一つの、一度切りの命を簡単に失ってほしくは無いという考えから出たものだったが、存外私は失ったモノを取り戻したいだけなのかもしれない。

 

その後私はフレイルという武器を買った。化け物や怪物より対人戦で活躍するだろうが私では完全には扱い切れない様に思える。騎士は目当ての物が見つからなかった様だが女神官は鎖帷子を買った様で今は動作確認をしているようだ。私は二人に指輪を渡そうと思い近づいた。

 

「貴公ら、余り物で良ければ私の持っている指輪を貰ってくれないか?正直な話私のポーチも限界が近いのでな。」

 

私のポーチは魔法のポーチで大量の物が入るという事にしている。本当に魔法は説明に便利なものだ。

 

「それは俺らには願っても無い話だが、今回ばかりは遠慮したい。俺達はまだ何も恩返し出来てないし、黒曜の俺らじゃ返せるものもない。だから気持ちだけ受け取らせてもらう。」

 

「はい。私もお気持ちだけ受け取らせて頂きます。彼の言う通り私達は何もお返し出来ていませんのでご遠慮させていただきます。」

 

「そうか。であればもし必要になればいつでも言ってくれ。だが私も貴公達に感謝している事を覚えておいてほしい。何か私に出来る事があれば必ず協力する事をここに誓おう。」

 

その後は組み合いに戻りつつ混沌の勢力について話を聞いていた。二人に会った時に殺した怪物はゴブリンと言いデカイのはホブゴブリンと言うらしい。二人の話を聞いている内に私は新たな使命を見つけた。この世界に蔓延る化け物や怪物共を殺し、一人でも多くの者を助けようと心に決めた。だがそれと同時に私は自分を自嘲した。結局の所自分を使命という鎖で繋がなければどうにも安心出来ないらしい。あの頃と何も変わらない事を再認識し、組み合いに向かった。



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第七話 初仕事と螺旋剣

評価とコメントが増えていて本当に跳ねまわっていた作者です。嬉しい限りです!これからも早め早めに投稿できる様、心掛けていきますので
よろしくお願いします!


 

 

 

組み合いに着いた私は休憩する二人と別れ依頼を探していた。先程女神官から貰ったメモのお陰で文字はどうにかなりそうだ。依頼を眺めているとやはり白磁の私が受けられるものはそう多く無い様だ。そして何故か下水道関連の依頼が多い。

冒険者になったばかりの者にこれは不味いのではないだろうか?下水道はかなり危険な場所だと思うのだが、この街の下水道も話に聞いた通りであればやはり白磁ではかなり難しい場所だと思われる。

 

そして基本的に夢見がちな白磁の冒険者達はこんな依頼じゃなくもっと冒険者らしいものをと言い身の丈に合わない依頼を受け、死んでいく。中々な悪循環だと思い受付嬢を不憫に思う。彼女達はこんな悪循環を間近で見続けていたのだろうか。警告や注意、危険性の高さを説明してもまともに聞かれず、そのまま帰って来ず次見た時は認識証になって帰って来る。そんな事ばかり起きているとすれば当然心は死んでしまうだろう。私は下水道の依頼を二枚持ち受付に向かった。

 

受付に行くと私の登録をしてくれた受付嬢のカウンターが空いている様なのでそちらに向かう。

 

「すまないが今は大丈夫だろうか?依頼を受けたい。」

 

「はい、大丈夫ですよ。え、二件、ですか?すみませんが、いきなりニ件も受けるのはおすすめできません。白磁の方はまず一件ずつお受けなった方が良いと思います。」

 

「それは重々承知だ。だが、私は見ての通り武器を振る事しか出来ない者だ。それに一応こういった事には慣れている。すまないが受けさせて貰えないだろうか?」

 

「・・・かしこまりました。お任せしますが充分気をつけて下さい。」

 

「忠告、痛み入る。それでは行ってくる。」

 

私は下水道を目指して組み合いから出た。

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、大丈夫でしょうか。あの人は慣れている様に見えますがやっぱり心配になりますね。」

 

先程来た登録したばかりの白磁の冒険者の方はなんだか今まで見てきた冒険者の方とは違う様に思い、彼の姿を思い出す。ボロボロの外套を纏った騎士の様に見えましたが、本人は騎士ではないと言っていましたがどうなんでしょうか。それにあの人は英雄に憧れている様には見えないし、富や名声、地位や権力を求めている様にも見えない。私は自然と彼がどのような冒険者になるのかが気になっていた。うんうん唸って考えていると依頼を持った冒険者の方が近付いて来る。私は笑顔を作り、また仕事を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は下水道を歩きながら依頼の討伐内容を確認していた。巨大蟲五匹と巨大鼠六匹の討伐なのだが、鼠は分かるが蟲の方の外見が分からない事が問題だと考えていた。受付嬢に聞いてみたのだが「見れば分かりますよ。」と暗い顔をしていたが何故なのだろうか?

 

暫く歩いていると鳴き声らしきものが聞こえた私は手に持っていた松明を消してファリスの弓を取り出し、音のした方を見る。

 

私は元からなのか不死人になってからかは記憶が無いので分からないが夜目が利く。なので松明に頼る必要はあまり無いのだが松明は武器になるため持っていた。

 

だが、私に気付いていないらしく何かに群がっている。ファリスの弓をソウルにしまい杖に持ち替え、見えない体を使用して鼠に近付きつつ観察する。ロードランやドラングレイグ、ロスリックの様な鼠ではなくただ大きいだけの鼠の様だ。ソウルからツヴァイヘンダーを取り出す。

鼠のすぐ後ろを取り、武器を大上段で振り下ろす。見えない体と静かに佇む竜印の指輪を用いた奇襲攻撃に反応できず三匹程叩き潰れ、残りの鼠も何が起こったのか理解できずにいる所に更に振り下ろす。問題無く殺せたことに満足しつつ数を確認する。

 

「計七匹か。一匹多いがまあ問題は無いだろう。後は巨大蟲だが、どこにいるのか。また歩き周るしかないか?・・・ん?」

 

残りの巨大蟲をどうするか考えていると聞き慣れない音が聞こえた。キチキチという聞くだけで不快になる音が聞こえた私は後ろを振り返り音の正体を見てしまった。なるほど確かに受付嬢が言っていた見れば分かるというのも頷ける。だがこれは確実にデーモンよりも悍ましい怪物であり決して白磁が相手をするモノでは無いだろう。

私は最速でツヴァイヘンダーをしまい呪術の火を取り出し大火球を投げつけていた。正直な話私は虫の類がかなり苦手なので勘弁して欲しいと思っていたがまさか奴が出て来るとは、目標数駆除した私は足早に下水道から出ていった。

下水道から出た私は人目が無い事を確認し、確認が終わっていない武器を見ようと思い、ソウルから火継ぎの大剣を取り出した。まず触った時に違和感を感じ取った。熱い、今までに戦技を使えば確かに熱を発していたがその時とは別の熱さを感じる。

まさかと思い人気の無い森まで走り、地面に剣を突き刺す。そこに手を翳すが火は灯らない。確かに先程感じていた熱は篝火から感じたものと同じだと断言できるが火は灯らない。理由を考えていた私は篝火を思い出し、違いに気づいた。

 

「燃料が無いからか?・・・であれば余っている不死の遺骨を周りに敷き詰めてみるか。」

 

火継ぎの大剣の周りを不死の遺骨を敷き詰め、もう一度手を翳すと火が灯り始めた。私は予想外の成果に満足しつつ篝火に腰を下ろす。

やはり、落ち着く。幾度となく座った篝火の感覚を懐かしく思い私は少し休憩しようと考え、篝火に仕舞ったアイテムがあるか確認しながら時間を忘れた。

 

 

 



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第八話 自由意志

評価バーに色が着いている!?確認した時に本当に固まってました。読んで下さる皆さんのお陰で楽しく書かせてもらっています。
文才の無い未熟者ですが、まだまだ励んで参りますので宜しければお付き合い下さると嬉しい限りです!



篝火特有の落ち着く感覚を久しぶりに感じた私は篝火に仕舞い込んでいたアイテムや武具、素材やスペルを確認しながら休憩していた。この世界に来てから気を張り続けていたため少し精神的に疲労を感じていたのでちょうど良いタイミングだと思い一時間程度の休息を挟んだ。

 

篝火の熱に当たりながら私はこの先を考えていた。恐らく不死人や火継ぎの無いこの世界に来た私は何をするのか?いや、何をしたいのかを考えなければならない。あの呪われた世界では使命がありそれを果たす事だけを考え、行動に移していた時とは違い今は何も無い。新たに立てた使命とは違う、自分の人間性を保つ為の人の真似事を見つけなければならない。

 

私は自分の事を人とは思っていない。初めの頃はまだ人だと、自分は亡者ではないと思っていたが次第に自分は既に亡者であって、自分の中の何かがギリギリの所で繋ぎ止めているのではないかと考える様になっていた。その頃から私は趣味や他の不死人達との会話の時間を増やしていた。私はこの「人らしさ」に固執する様になっていた。そして時間が経つに連れて最初の人に繋ぎ止めるという所から亡者にならない為の工夫になっていった。

 

物思いに耽っていると既に一時間は過ぎている事に気付き慌ててギルドに走り出す。ただの休憩の筈が昔を思い出してしまっていたせいでかなり時間を使ってしまった。あまり思い出したくなかった記憶まで思い出してしまったが私は叶う筈の無い夢を思い出した。多くの人を助け不幸な思いをしている人を少しでも減らしたいという、今となっては私の夢なのかあの旅路で出会った誰かの夢なのか、はたまた殺して糧にした誰かの夢なのか判らないが私は小さな目標を見つけた。

 

 

 

 

ギルドの扉を抜け、受付に向かって行く。声を掛けると驚いた様に書類から私に目を向ける。

 

「すまない。休息を挟んでいたせいで少し遅れたが依頼が終わったので報告に来た。」

 

「え、早いですね。では報告と討伐証をお願いします。」

 

「ああ、それと文字の資料はあるだろうか。文字の読み書きは出来た方が手間が省ける。あるなら少し借りたいのだが、大丈夫だろうか?」

 

「はい。少々お待ちください。えっと、この棚に・・・はい!こちらになります。でも珍しいですね、気にしない方も多いので、」

 

「そうなのか?読み書きが出来た方が何かと役に立つと思うのだが、一党の中で読み書きが出来る者が休んでいる時は余計な手間が増えると思うが、」

 

「え、普通は一人休んだら依頼には行かないと思うんですけど、万器使いさんの所は欠けてても依頼に行くんですか?」

 

「ああ、そうだな。私の故郷は補助が出来る者が多くいた。他にもその場で対応する柔軟な者もいたが、大抵は全員で補ったりしていた。まあ、中には構わず進んで行く者やそういった状況に慣れて一人でどうにかする歴戦の強者もいるが私にあれはできんな。」

 

あんな一対四の状況を覆す闇霊やホストはどんな思考をしているのか私には理解出来ない。何度か聞いて実践したが私には真似出来なかった。今日はよく昔を思い出すと考えていると受付嬢が目を白黒させて驚いていた。

 

「万器使いさんは凄い所から来たんですね。私はそんな話全然知りませんでした。」

 

「私の故郷はだいぶ遠いからな、知らなくて当然だろう。私は登録の時にも話したが転移の魔法の事故で飛んで来たからな。特に思い残した事も無いから構わないが。」

 

その後も軽い雑談をし、資料の料金を支払い酒場で休憩していた騎士と女神官に合流するため酒場を見渡すとこちらに気付いたのか手を振って場所を教えてくれた。

 

「もう依頼終わったのか?凄え早いな。二時間くらい・・・か?」

 

「そうですね。でも、万器使いさんなら納得しちゃいますね。」

 

どうやら思ったより時間は経っていなかったらしい。二人が食事に誘ってくれたので騎士の隣に座り適当に注文する。正直私は食事の必要が無いので遠慮したかったが二人の厚意を無下には出来ない。

 

二分程だろうか。直ぐに料理が運ばれて来た。エールとソテーを見て久しぶりの料理に懐かしさを思い出す。あまり眺めていると不審に思われると考え食べ始める。口に入れ、咀嚼して嚥下する。

 

最初に感じたのは驚き、今まで食べていた物とは比較にならない程美味い。次に感じたのは喜びだった。私はまだ味覚が残っていた事に喜んでいた。ジークの酒は彼が特殊な製法で作っているため味を感じるものかと思っていた上に苔玉なぞ食べられた物ではない。気付くと直ぐに食べ終わっていた。そんな私を二人は笑顔で見ていた。

 

「やっぱり早めに飯にしとけば良かったな。良い食いっぷりだったぜ。あんたの話を聞いた感じまともな飯は久しぶりなんじゃないかと思っていたが当たりだったな。」

 

「ふふ、万器使いさんの珍しい姿かもしれませんね。やっぱりここの料理は美味しいですよね。値段も安いですし私たちみたいな駆け出しにも嬉しい限りです。」

 

その後は二人に礼を言い、宿を取り文字の資料を読み耽っていたら朝が来ていた。睡眠が必要無い私は一晩でかなり文字が読める様になっていたが、少し心配なのでもう少し練習をしてからギルドに行く事を決めた。




会話の文章量を増やしてみました。難しいですね。もっと上手く書きたいなあと考えていますが中々上達しなくて四苦八苦してます。

良ければ感想聞かせて欲しいです。そして皆さんの感想をいつも嬉しく思っています。ありがとうございます!



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第九話 頭目の認識

どう書こうか迷っていた一般不死人です。あと数話(何話かは未定)書いたら時間が飛んでイヤーワンに行きますのでその間の灰の方の活躍をお楽しみ下さい。


私が宿から出たのはまだ日が出てそこまでたっていないと思っていたのだがギルドには多くの冒険者達で賑わっていた。私は「冒険者の朝は早い」と聞いてはいたがここまでとは考えていなかった。借りていた資料を受付嬢に返しながら少し話すことにした。

 

「資料を返しにきた。」

 

「あ、万器使いさん!はい、確かに。でも一晩だけで大丈夫ですか?次の方が借りるまでの間は平気ですよ?」

 

「いや、ある程度は読めるようになったからな。残りは追々覚えるとするさ。それと、今時間に余裕はあるだろうか?出来れば聞きたい事がある。」

 

「はい、大丈夫ですよ。今は特にお仕事もありませんから。」

 

「感謝する。さっそく質問なのだが、朝はいつもこうなのか?中には殺気だっている者もいるが、」

 

「そうですね。依頼の張り出しがあと少しで始まりますから皆さん良い依頼を狙ってるんです。」

 

「ふむ。選ばなければいくらでもあると思うのだがな。依頼を選ばない者は少ないのか?」

 

「そうですねぇ。うーん。やっぱり万器使いさんのような方は珍しいですね。ほとんどの方は報酬の良さを見ますから。」

 

そう言った受付嬢の顔はどこか諦めたような印象を受けた。それにしても驚いた。ほとんどの者が利益を選んでいるとは、まあ私は余った依頼をこなしていくとしよう。

 

冒険者の多くが受付に歩いてくるのを見た私は受付嬢に礼を言って掲示板に向かった。

 

 

 

 

「やはり報酬が悪い依頼は余るのか。今日はどうするか。」

 

掲示板を眺めていた私は今日の受ける依頼を迷っていた。下水に行くべきか村の方面に行くのか。掲示板の前で迷っていると聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。

 

「おお、まさかあんたが依頼を迷うとはな。てっきりもう行った後かと思っていたんだが、そうでも無いみたいだな。」

 

「騎士か。私は昨日冒険者になったばかりの白磁だぞ?そう簡単に決められんよ。」

 

「なーに言ってんだ。明らかに俺よりあんたの方が優秀だろ?白磁だどうのってのはたまたま俺の方が冒険者になるのが早かっただけだろ?」

 

「ふふっ、どうやら私は知らぬ間に過大評価されているようだな。」

 

騎士は私の言葉を聞くと笑いながら依頼を見ていた。私も依頼を決めようと思いゴブリン退治の依頼を三枚持って離れようとした時に騎士に声をかけられた。

 

「三つもやるのか?・・・だったらこっちと一緒にやらないか?正直俺はあんたから色々教えてもらいたいからな。聞ける範囲で教えてほしいんだ。それにあんたがいる方があいつも怪我しなくて済むと思うしな。」

 

「本当に良いのか?余り身入りの良い依頼ではないが、それにゴブリンだぞ?大丈夫か?」

 

昨日の一件を思い出した私は大丈夫なのか騎士に聞いていた。勿論女神官も平気なのかの確認だ。

 

「ははっ、大丈夫だ。寧ろやらなくちゃ不味いと思ってな。正直ゴブリンを舐めてたからな、俺はもっと経験を積まないといけないんだよ。それに俺が強くならないと後衛のあいつを守れないからな。」

 

「そうか。であればよろしく頼む。」

 

「おう!任せろ、とは言えないが俺もついていけるように頑張るから頼むぜ。」

 

そう言って騎士は女神官に伝えに行った。その間に私は依頼を持って受付に向かった。

 

「依頼を受けたい。今回は一党を組む事になった。」

 

「一党を組むのはあのお二方ですか?」

 

「ああ、ありがたい事に私のようなモノを誘ってくれたのでな。期待に応えられるよう励まなければならないな。」

 

「ですが一党を組むのは良い事ですよ?依頼も達成しやすくなりますし、一党を組んだ方が円滑に進む事の方が多いですから。・・・はい!終わりました。それではゴブリン退治を三件ですね。気をつけて下さいね。」

 

「ああ、行ってくる。」

 

 

 

私は酒場で朝食を取っている二人の席に近づき話し掛ける。

 

「依頼を受けてきた。二人とも今回はよろしく頼む。」

 

「はい!私もよろしくお願いします!万器使いさんがいれば安心ですね。あと、出来ればで良いんですが、万器使いさんの授かっている奇跡を教えて頂いてもよろしいですか?」

 

「ああ、分かった。それは移動中に話そう。それと貴公、私に聞きたい事とは何だ?私はあまり博識では無いが、」

 

「色々あるんだが、主に戦い方だな。洞窟での戦い方とか、武器の振り方、あとは後衛の守り方に、数え出したらキリがないな。」

 

「なるほど。そういう事であれば役に立てるだろう。そういった経験はあるからな。ちょうど今回はゴブリン退治だ。洞窟もあるだろう。そこで訓練と行こう。」

 

「分かった。気を引き締めてかないとな。これは。」

 

「そうですね。私も足を引っ張らないようにしないと。あ、万器使いさん。今回の一党の頭目をお任せしてもよろしいですか?」

 

「私か?構わないが、良いのか?」

 

「俺からも頼む。あんたの方が頭目に向いてると思うしな。」

 

「了解した。期待に応えられるように励むとしよう。」

 

こうして私達三人の依頼が始まった。

 

 



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第十話 小鬼退治

投稿遅れてすみません!この最近また忙しくなり始めたのでちょっと投稿出来るか怪しいです。


最初の目的地に向かう途中で私が使える奇跡を話した所どうやらこの世界は奇跡も勝手が違うようだ。女神官は日に三回しか使えないらしいが、彼女が使える奇跡は小癒と聖壁と聖光が使えるらしい。効果を聞いた所どれも優秀そうだ。目眩しや敵の封じ込め、上手く使えば場を制圧できるだろう。攻撃にも防御にも使えるものは戦いにおいてとても重要だと私は考えているため今回の小鬼退治で使えると思い作戦を考える。

 

「考えてる所悪いんだが、俺もそろそろいいか?」

 

「ああ、すまない。それで確か、洞窟などでの戦闘だったか?」

 

「そうだ。正直下水で慣れたと思ってたんだが上手く戦えなかったからな。」

 

「まず貴公の場合は直剣と盾を見直す方が良いかもしれん。直剣はもう少し短い物にし、盾を体が隠れる大きさに替える。それだけでも変わると思うが後は、武器を振るのでは無く突きを主体にし、盾で殴りつけるなどはどうだ?」

 

「なるほどな、そういやあんまり突きはしたこと無かったな。にしても盾で殴るか。ちょっと練習が必要だな。」

 

その後も私の独自の戦闘法や考え等を話しつつ時折り注意点を伝える。すると目的地の村が見えて来たので話を切り上げつつ村長にゴブリンについて質問をする。

 

いつ来るのか、数はどの程度なのか。武装はしているのか、どの方角からどの方角に帰るのか。聞いた所近くに洞窟がある方向に帰る様なのでそこが恐らく巣になっているのだろう。私は二人にすぐに向かうことを伝えて三人で洞窟を探す。

 

「なあ、あれじゃないか?」

 

そう言われて騎士が指を指している方を見ると洞窟らしきものが見える。

 

「そのようだな。隊列は私が先頭で次に神官、殿は騎士で大丈夫か?」

 

「はい。私は特に異論はありません。」

 

「俺も特に無いな。じゃあよろしく頼むぜ。」

 

隊列を組み洞窟に入る。暫く歩くとシャーマンのトーテムが見え、足を止める。

 

「周りの岩陰を確認する。警戒を怠るな。」

 

「分かった。神官は俺の近くに来い。すぐ後ろに下がれるように準備をしておいてくれ。」

 

「はい。」

 

近くの岩陰を見るとやはり横穴があった。そこではゴブリンが四匹程集まっていた。

 

私は傭兵の双刀を持ち走りだす。幻視の指輪と静かに眠る龍印の指輪の効果で奇襲が成功し、急に現れた私に驚いたのかゴブリンは慌てて武器を持とうとしているがそれより早く二匹の首を刎ねる。残りの二匹が声を上げようとしていることに気づいて双刀を二本とも投げると頭に突き刺さる。

 

隠れている者がいないことを確認し二人の元に帰る。

 

「中にいたのは全て片付けたがそちらは大丈夫だったか?」

 

「大丈夫だ。あんたが声を上げさせなかったから気づかなかったみたいだな。」

 

「そうか。ならばこのまま進むとしよう。」

 

松明を持ちながら前進する。この洞窟は奥に行くとそこそこ広いようだ。武器を持ち替えようか考えていると奥から焚き火の光と騒がしい声が聞こえてくることに気づき屈みながら中を確認する。

 

一番奥にシャーマンがおりホブが二匹、残りは弓持ちが一匹と棍棒持ちが五匹の計九匹。少し数が多いがこちらにも策があるため上手く行くだろう。

 

「数が些か多いが手筈通り行くぞ。準備は出来ているか?」

 

「はい。奇跡の準備は出来ています。」

 

「俺もいつでも行けるぞ。」

 

「では、先に行くぞ。」

 

武器を幽鬼のジャベリンとヴァローハートに替え、シャーマンの喉元に向かってジャベリンを投擲し、ヴァローハートに持ち替え迎撃体制に移る。

 

こちらに気づいたゴブリンが次々と走ってくる。

 

「聖光を頼む。」

 

「はい!」

 

女神官の聖光によりゴブリンたちの視界が奪われ、足を止めるものや転ぶものが出てくるのを狙いその隙を狩る。

 

「やるぞ。」

 

「了解だ。」

 

騎士と共に隙だらけのゴブリンを始末する。剣で斬りつけ盾で殴りつける。これだけで死んでいく。

 

やはりゴブリンは脆い。故に慢心することになるのだろう。楽勝だったと、弱かったと、そう言って侮りゴブリンだからと油断する。そして死ぬ。まったくもってどうしようもない。人間は痛い目に合ってから認識を改める者が多い。特に夢見がちな駆け出しの冒険者はその傾向が強い。だが冒険者の場合は痛い目に合ってからでは遅過ぎる。一歩間違えれば死が待っている。そんな環境で油断や慢心をして良い筈がない。

 

棍棒持ちが全て死に、残りはまだ目を閉じている弓持ちとホブの二匹。ホブは距離を取りつつこちらを伺っているが弓持ちは先に片付けるべきだろう。ホブの前まで走り出し振り上げた棍棒を避けて弓持ちを切り裂く。騎士は既にホブと戦闘を始めており、私は騎士の反対側で戦い始める。

 

振り下ろされる棍棒を盾でそらし、腹に剣を突き刺す。刺した剣を抉るように動かし、傷口をより酷くする。喧しい叫びを上げながら棍棒を振り回す。ローリングで避けつつ騎士の方を見ると危ない所は無く冷静に立ち回っているようだ。安堵した私はこちらを睨み付けているホブに向かって戦技を使い獅子の咆哮で怯ませ、体勢を崩した所を狙い首元に剣を突き立てる。死んだ事を確認し、騎士を見ると今まさに止めを刺している所だった。少し怪我をしているが女神官が既に詠唱をしているためすぐに治るだろう。

 

シャーマンに近付き、ジャベリンを顔に突き立てる。死んだふりをしていたシャーマンが叫び声を上げながら絶命した。

 

二人が息を整えている間に辺りを確認しているとゴブリンを見つけた。産まれたばかりのゴブリンだ。この時の私は殺すことが最善だと理解した。ゴブリンの目には憎悪が宿っていた。ここで逃がせばまたどこかで誰かを殺すだろう。もしかすると私を殺すために街まで追いかけてくるかもしれない。ジャベリンを握り直し、刺し殺していく。何かを訴えているが私は刺し続ける。こうして私の頭目としての初めてのゴブリン退治は終わりを告げた。

 

「万器使いさんは大丈夫でしたか?」

 

「大丈夫だ。特に怪我も無い。騎士は大丈夫か?」

 

「おう。少し怪我したが神官が治してくれたからな。もう平気だ。」

 

「なら次の依頼に向かうとしよう。」

 

「はい。」

 

「了解だ。」

 

その後は二件の依頼を片付けたが特に危ない所も無く無事に終わった。帰りには二人とも疲れていたが今回で良く成長していた。

 

「報告は私がしておくが二人は先に休むと良い。今日は疲れただろう?」

 

「そう、だな。俺は先に休ませてもらうか。助かったぜ。」

 

「私もそうさせて頂きます。今日はありがとうございました。」

 

「また機会があれば頼む。」

 

報告を終わらせてから私は宿に戻らずに篝火で休息し、今日起きた事を思い出しながら夜を越した。




戦闘描写がキツいのでサクサク描いてしまいました。申し訳ないです。

赤頭巾さん 誤字報告ありがとうございます。ありがたい限りです。


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第十一話 過ぎ去る時間



更新が遅れに遅れてしまいすみません。一般不死人です。
待って頂いていた方、お待たせ致しました。
更新頻度を上げられる様に頑張ります!




「昇級審査?待ってくれ。聞いていた話と些か違うと思うのだが、私はまだここに来て一ヶ月程度も経っていないと記憶しているが、」

 

その時の私はいきなりの事で理解が追いつかなかった。確か昇級にはもっと時間がかかるものだと騎士と女神官の二人から聞いていたのでどういう理由か気になった。

 

「はい。その通りです。ですが何事にも例外があります。試しに聞きますが貴方は日に何度依頼を受けているか分かりますか?」

 

その時の受付嬢の表情は恐怖を感じた。表面上は笑顔だが目が笑っていない上に圧がある。こちらに来てから恐らく一番の恐怖だといえるだろう。

 

「朝に一件、昼に一件、夕方に一件。確実に白磁の方のペースではありません。しかも多い時は五件も受ける時がありますね?」

 

受付嬢の圧に押され受け答えしか出来ない私はその言葉に同意を示すが、同時に弁解する。

 

「ああ、だが私はこの通りいたって問題無い。今まで一度も体調を崩したり失敗もしていない。それならば問題は無いと思うのだか、」

 

そう言った時だった。ピシリと音がなった気がした。

 

「確かにそうですね。万器使いさん。貴方は一度も依頼を失敗していません。それどころか依頼先で見つけた村などで孤児になった子供や、他の冒険者の方の救出及び保護もして下さっていますね。」

 

早い。口調がより早くなった。

 

「確かにそれは素晴らしい事ですよ?ええ、確かに素晴らしい事です。ですが貴方は白磁です。白磁等級なんです。万器使いさん、貴方のその活躍は銅等級の方の様なベテランの方と遜色ありません。救出され保護された方々は口々に貴方の等級が詐称された物では無いかと言っています。分かりますか?そういった事はほとんど私に集まってきます。ギルド内でも貴方は問題視されています。なので一足早い昇級になったという話なのですが、

理解出来ましたか?」

 

「りょ、了解した。その、すまなかった。」

 

「はい。分かって頂けたなら良かったです。私も説明した甲斐がありました。あと、謝る必要はありませんよ?」

 

このままのこの会話を続けるのはあまりよろしく無いようだ。

 

「それで審査はいつだろうか。」

 

「早ければ明日を予定していますが、恐らく二日後になると思いますので今の内に準備をしておいて下さい。簡単な確認が多いですがしておいて損はありませんから。」

 

「なるほど。では準備をしてくるとしよう。ありがとう。」

 

「はい。ああ、それと先程はあの様に言いましたが貴方の活躍は本当に素晴らしい事です。胸を張って下さい。」

 

「分かった。その評価に見合うように私も心掛けよう。」

 

酒場に移りこちらに気づいた騎士と女神官にいつものように招かれる。

 

「ハハハ!受付さんに大分言われてたな。さすがに万器使いも受付さんには敵わないか。」

 

「そうですね。でも受付さんの仰っている事も分かりますけどね。」

 

「ううむ。私は私の出来る事をしようと思っていただけなのだが、彼女には悪い事をしたな。」

 

「まあ、とりあえず飯にしないか?それから話にしようぜ。」

 

「そうだな。二人はもう決まったのか?」

 

「応!俺は決まってるな。」

 

「はい。私も決まっています。」

 

「そうか。ならば頼むとしようか。」

 

その後は二人と情報を交換したり他愛ない話をした。二人は私の依頼に良く付いて来てくれることが多く、この最近は一人の時が多いが今もこうして時折り一党を組むことがある。

 

「それで、次の依頼は下水道の方だっけか?」

 

「ああ、巨大鼠と巨大蟲だな。」

 

「巨大鼠は平気ですが、巨大蟲は苦手ですね。」

 

そう言う神官の顔は少し困ったような表情だった。

 

「まあ、俺もアレはキツイな。万器使いは平気なのか?」

 

「私も苦手だ。だがやはり人気が無いからな。誰かがやらねばならん。放置した結果もし街に出たら不味いからな。」

 

「相変わらず真面目だな。まあ何事も経験だしなぁ。」

 

「そうですね。私もこの最近は少しは戦えるようになってきたので頑張りますね。」

 

食事を済ませた私達は下水道へ歩みを進めた。










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第十二話 トラブルと負傷



はい。短編書いて満足してたらですね。思ったより時間が経っていました。すみません。
今回は下水道といえばアイツを出しました。



 

 

一党で下水道に着き、依頼内容である巨大鼠と巨大蟲を探していると私は違和感を感じた。

 

「ふむ。貴公ら、ここまで来る間に何か違和感を感じなかったか?」

 

「ああ、確かにそうだな。なんていうか、変だよな。理由は分からんが。」

 

「そう、ですね。・・・あ!静かすぎると思います。」

 

その答えに私と騎士が納得する。この下水道に着いてから巨大鼠や巨大蟲の鳴き声どころか足音すら聞いていない。

 

これは異常だ。

 

「貴公ら、周りを警戒しろ。何か、妙だ。」

 

静かすぎるという女神官の指摘を聞いた時に私の経験から何が原因かを考える。

音が聞こえ無いという事はここから離れた?いや、違う。何か見落としているものがある筈だ。

考えろ。何故ここにいない?巨大鼠、巨大蟲がいない、理由。

 

ふと視線を床に落とした時に見落としていた事に気がついた。

 

床だ。床が綺麗なのだ。つまり奴らが食事も、排泄もしていない事になる。だが、それはありえない。奴らは生き物だ。ならば答えはこうなる。

 

巨大鼠と巨大蟲は消えた。

 

「騎士、正面の道を警戒してくれ。神官は私と騎士の間に入り詠唱を出来るように準備を。」

 

二人は私の指示に頷き行動を開始する。その間に私は気づいた事を話す。

 

「恐らくだが、巨大鼠と巨大蟲は消えている。この下水道に何か異常事態が起きていると見るべきだ。私は原因を探した方が良いと考える。」

 

「分かった。俺は賛成だ。」

 

「私も賛成です。」

 

「では、このまま隊列を維持しつつ原因を探すぞ。」

 

辺りを警戒しつつ原因を探す。

彼の地ではあまり無かった事だ。あそこでは兎に角殺す事が重要だった。どうすれば効果的にダメージを与え、殺せるか。どうやって目の前の敵を殺し、糧にするか。ほとんどの行動に殺しがついてくる。

 

だが、今は違う。こうしてお互いの身を案じ、協力し合い、目的を果たそうと励む。

 

 

どこか、懐かしい。

 

 

そう思いを馳せていると、不自然な音が聞こえる。

グチャグチャと、ズルズルと。何か、這いずる様な音。その音に、

覚えがあった。

 

「下がれ!」

 

私の声に驚きつつも即座に動いていた二人は確実に前と比べ成長しているのだろう。その動きはどこか体に染みついているかのように見えた。

 

そして、遅れて聞こえるべちゃりという音。

 

「やはり、貴様か。」

 

そこにいたのは動く腐肉。ここではスライムと言われるもの。確かに私の知っているヤツとは違う見た目をしている。旅路の中で見た腐肉の寄せ集めではなく、少し透明な粘性の塊。しかし同じ点はある。それは未だ消化しきっていない巨大鼠と思しき肉片。

やはりこういったモノ達はどこも同じ方法で来るらしい。死角から現れ取り込む。末路は言わずとも分かる。

 

「まずいな、俺の武器じゃ相性が悪いぞ。」

 

その騎士の言葉を聞き、懐からアイテムを渡す。

 

「これを使うといい。そう長くは持たないが火のエンチャントが出来る。神官は松明を頼む。」

 

「松明ですね。分かりました。」

 

「助かる。相変わらずアンタのポーチは何でも入ってるな。」

 

「流石に何でもは入っていないが、気をつけろ。まだ潜んでいるはずだ。出来る限り死角を無くせ。」

 

武器を持ち替える。炎派生のロスリックの直剣と栄誉の大楯、指輪を緑花の指輪に替える。

突きを主体に戦えるロスリックの直剣はこういった閉所でも使いやすい。そして栄誉の大楯はスタミナの回復が遅くなるが、デーモンやドラゴンの攻撃する耐えうるため仲間を守りながらの戦いに向いている。デメリットは指輪で補助し万全の状態になる。

 

私の準備をしている間に騎士も松脂を使ったようで武器に炎を纏わせていた。神官も周りを見渡し、警戒に力を入れている。

 

ジリジリと、いやズルズルとスライムが近づいて来る。距離が近いモノから攻撃する。切り、突く度に焼ける音が聞こえ、弱点も変わらない事が分かる。

騎士も私と同じように縦での振り下ろしや、突きを主体にしているようだ。状況判断がしっかりと出来ている。

 

「このまま数を減らしてから移動をするぞ。」

 

「おう!にしてもなんだって急にスライムが湧いてきたんだ?」

 

「それは分かりません。それでも私達で原因を探しましょう。」

 

スライムを相手にしながら少しづつではあるが移動する。

 

そして十字路に差し掛かった時、見えた。かなり遠いが冒険者がいる。装いから見るに魔女、いや、魔法使いだろうか。スライムから逃げようとしている。

 

「騎士!少しの間持たせられるか!」

 

「分かった!それで、何をするつもりなんだ。」

 

「遠方に冒険者だ。恐らく一党が襲われ、一人になっている。」

 

「良し。回収は頼んだ!」

 

「助かる。神官は奇跡の準備を頼む。怪我をしているかもしれん。」

 

「はい!任せて下さい。」

 

そうして私は走る。スライムを避けながら走る。足音が聞こえたのだろう。少女がこちらに振り向く。

 

「こちらに来い!逃げるぞ!」

 

叫ぶ。少女に聞こえるように。泣きそうになりつつも頷きながらこちらに走って来る。

 

「後ろは私が守る。このまま真っ直ぐ走れ!」

 

「わ、かった。」

 

息も絶え絶えだがまだ走れそうで安心した。少女の後ろから着いて来るスライムを火炎壺で燃やしながら後退する。

 

「来たな!」

 

「大丈夫ですか?すぐに治療を始めます。」

 

「頼む。足を少し焼かれているようだ。」

 

私の発言に魔法使いが目を丸くした。

 

「どうして、分かるの?」

 

「先程走る時に少し焼けたような匂いがした。それと貴公が走る時に左足を庇いながらだったからな。」

 

「ハハハ!流石だな。俺には分からなかった。」

 

「・・・はい。どうでしょうか?まだ痛みますか?」

 

「あ、うん。大丈夫。痛くない。」

 

「では、少し休んだら外に出るか。それと貴公、スライムの出所は分かるか?」

 

「分からない。私は巨大鼠が見つからなくて、もっと奥を探していたら、そう、戦士が、目の前、で、食べられて、それで、」

 

思い出してしまったのだろう。仲間の最期を。

 

「大丈夫だ。もう、大丈夫だ。貴公は必ず助ける。外に出るまでに全て吐き出してしまえ。」

 

「うぅ、ああぁ、ごめん。ごめんなさい。」

 

その光景を騎士は悲しそうに見つめ、神官は背中をさすっている。私は泣いている彼女を抱きしめ、背負う。

 

私は冒険者をしていて彼女のような者を何人も見ていたが、やはり、これは堪えるな。何も感じない自分がいるというのは。

私は慣れてしまったのだろうか?こんな事に。だとしたら、それは、

 

「とても悲しく、辛いことなのだろうな。」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「いや、独り言だ。気にしないでくれ。ここからは、走ればすぐだ。速度を上げるぞ。」

 

「ああ、分かった。やっぱり、こういうのは慣れないな。」

 

その言葉に私が返す。

 

「言っておくが慣れる必要は無い。むしろ慣れては駄目だ。もし慣れてしまったらそれは四肢や、感情を失うのと同義だ。耐性が付くのはいい。だが、決して慣れてはいけない。」

 

「そう、ですよね。」

 

「涙は死者の為に、それ以上に生者の為に。私の地に伝わる言葉だ。」

 

目算にして後八十メートルといった所で異変が起きた。大量のスライムが壁のようになりながら迫って来た。

 

「おいおいどうすんだよアレ!」

 

「このままでは呑まれてしまいます!」

 

後ろの光景を見て魔法使いが顔を絶望に歪ませた。

 

私は先程彼女に何と言った?「大丈夫だ」と言った。

であれば彼女にこんな顔をさせていて良いのか?良い筈が無い。

 

「騎士!魔法使いを頼んだ!」

 

騎士に向かって魔法使いを投げる。

 

「おお!危ねえ!大丈夫か!?」

 

「う、うん。」

 

「何するつもりだ!万器使い!」

 

「守る。それだけだ。」

 

そして仕舞っていた栄誉の大楯を取り出して構える。

この道は狭い。スライムの群れは私の身長より少し高い所まである。であれば私が少し焼ける程度で済む筈だ。

 

「おお!」

 

気持ちを奮わせ、受け止める。

 

「むう、くっ、」

 

盾の上から受け止めきれなかったスライムが落ちてくる。焼ける音と匂いがする。

 

時間にして数十秒程度だろう。だが、これだけ稼げれば十分だ。盾を仕舞いながら後ろに跳ぶ。

 

「ふう、どうにか、なったな。」

 

一人呟いていると二人が駆け寄って来ていた。

 

「おい大丈夫か!」

 

「今すぐ治療を!」

 

「いや、大丈夫だ。大した怪我はしていない。少し、焦げた程度だ。」

 

そういうと神官が声を荒げた。

 

「こんな無茶しないで下さい!心配だったんですから!」

 

「俺も同じ意見だ。今回はどうにかなったけどよ、毎回上手くいく訳じゃないだろ。」

 

その二人の声に少々居心地が悪く感じるが、これも、懐かしく感じる。

 

「ハハハッ、すまないな。次から気をつけよう。」

 

そういって先に外に避難させられていた魔法使いをもう一度背負い、ギルドに帰った。

 

 

 

 

 

 

 






三千字超えが書ける!嬉しい!ということで万器使いの事がちょっとだけ垣間見えた今回でしたが如何でしたでしょうか?
感想、コメントお待ちしております!




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第十三話


タイトルが思いつかなくなって来た。



 

 

「・・・なるほど。スライムの大量発生、ですか。」

 

私の報告を聞き受付嬢は重々しく言葉を発した。

どうやら今回の出来事はそう簡単に済ませて良い案件では無いらしい。

 

「私から出来る報告に関してはここまでだ。先程保護した魔法使いの彼女に聞けば他に分かる事もあるかもしれんが、今の状態ではおすすめできんな。」

 

「そう、ですよね。・・・ありがとうございました。万器使いさんにはまたお聞きする事があるかもしれないのでその時はよろしくお願いします。」

 

「承知した。」

 

一党の元へ戻ると今日はもう休む事になり解散となった。私自身暇を持て余すのもどうかと思ったので町へ足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。家を買うというのも視野に入れた方が良いか?」

 

町を歩いている時に私はふと篝火について考えていた。今は人気の無い森に刺してあるが家を買えば堂々と篝火を灯せる。だが私はまだ冒険者になったばかりの新参者。今家を買っては色々と目立ってしまう可能性がある。

 

「目星だけでも付けておくか。」

 

そう思い町を歩く。私が買うとすれば余り人が多くない、端の方が望ましいだろうか?利便性という面に重きを置かなければ案外直ぐに見つかるかもしれない。

 

 

 

 

「ふむ。買うとしたらこの辺りか。」

 

下見に来たつもりが存外あっさりと見つかってしまった。

 

「そこを買うのかい?」

 

「いや、まだ決まった訳ではないが。」

 

「そうかい。なら早く金を集めて買ってくれないか?正直そこは人気が無くてね。全然買い手がつかないんだよ。」

 

「ほう。ではしばらくは取られる心配は無いか。」

 

「だな。あんただったら直ぐ金を用意出来ると踏んでるからな。早めに頼むぜ?」

 

「何故そう思うのだ?私は黒曜の冒険者だが。」

 

「勘だな。そこそこ冒険者を見て来たが、あんた、訳ありだろ?黒曜の冒険者ってのはもっと動きがうるさいんだよ。あんたにはそれが無いからな。」

 

「なるほどな。であれば私は依頼でも探すとしよう。資金が用意出来たらまた顔を出すのでよろしく頼む。」

 

「あいよ。待ってるぜ。」

 

店主との会話も切り上げ私はギルドに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ〜、スライムの大量発生。原因を探る為には、規模的に最低でも紅玉以上の一党が必要ですよね。どうしましょうか。」

 

受付では万器使いの報告を受けた受付嬢が頭を抱えていた。

 

「・・・いや、でも。確かこっちに、ありましたね。あの人は色々心配なので合同依頼にした方が良いですよね。」

 

そう言った受付嬢は上司に確認を取るため受付の奥へ歩を進めた。

 

 

 










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