いや、人ん家の前で何やってんの? (ライムミント)
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俺の家の前での出来事

はじめまして。初めての投稿ですが、皆様に楽しんでもらえるように頑張ります。


夕方。それは小学生は遊びから帰る準備をし始め、中高生は部活に励む者や家でゴロゴロする者に分かれ、大人達は仕事が終わる時間が近づきソワソワし始める時間である。

 

そして俺も学校が終わり、今は自分の部屋で漫画を読みながら惰眠を貪る最中だ。

 

仮にも花の中学三年生であり、来年には最も入るのが難しいとされる高校の受験を控えた学生の生活がこれでいいのかと言われそうだが気にしない。俺はやるときはやる人間なのだ。やる気スイッチさえ押すことができれば問題ない。

 

人間というものは休憩を挟まなければ生きてはいけないのだ。その比率が人によって多いか少ないかだ。たまたま俺の休憩比率が勉強2:休憩8という割合なだけだ。俺は何も悪くない。受験生だから勉強という風習を作り上げた世間が悪いと思う。

 

 

 

しかし今日は実にツイている日だった。

 

朝の占いでは見事に1位を獲得し、面白い一日を過ごせるでしょうというお言葉を得た。学校に向かっている最中では曲がり角で食パンを加えた女の子にぶつかり胸に手が当たるというテンプレ的男子わっしょい型イベントに遭遇。

 

その後ビンタをされたが何も問題はない。感触を脳内保存しておく。

 

 

 

学校に到着すると目の前の女の子がサマーソルトを決めたかのように派手に転倒し、盛大に下着を見せびらかす事件が発生。

が、周囲には俺しかいなかったため紳士的に救助する。

その間に下着の柄を脳内アルバムに最高画質で保存し色褪せない思い出にする作業を俺は忘れない。一瞬の隙であろうと見逃さない。俺は出来る男なのだ。

その時に「かわいい柄だね」という女子が喜ぶような誉め言葉も残しておく。ちょっとした気遣いも俺は忘れない。もう一度言うが俺は出来る男なのだ

 

その後お礼と共にビンタをされたが依然問題はない。俺の脳内は潤った。

 

 

 

帰り道、隣のクラスのイガグリ型の瞬間湯沸かし器が絡んできた。

何かと優劣をつけたがる思春期真っ只中を体現したかのような性格をしているが、根は真面目なので非常に扱いやすい。

魔法の呪文「出来ないの?」を使うと、「出来るわ!」と言いながら率先してやってくれる。非常に扱いやすいツンデレである。

今日は家に帰ってお母さんの手伝いをするように言っておいた。クソクソ言いながらキレていたけど魔法の呪文を使うと「出来るわ!」と言いながら帰っていった。イガグリは優しい。

 

キレながら帰るイガグリを携帯で保存しておく。普通に面白いからフォルダが潤った。

 

 

 

さて、今日の流れを振り返ったが中々充実した一日を過ごしたよな。

そうそう、俺は早急に帰って気づかなかったがどうやらヘドロ型のヴィランがどこかで暴れていたらしい。そしてその人質の友達が助けに行ったらしい。美しき友情かな。ヒーロー仕事しろよ。

 

で、そのニュースを見たわけだが被害者がバリバリ顔見知りのイガグリ型瞬間湯沸かし器だった。助けに入った友人らしき人物は湯沸かし器が目の敵にしているもさもさワカメ君だった。

 

どちらも知り合いという奇跡にびっくりしたよ。湯沸かし器とワカメなんて絶対相性いいのになんであんなに仲悪いのか。一度ワカメを助けたことがあるが、それ以降湯沸かし器に絡まれるようになったしな。

 

関わりなんてその一度だけだから名前も知らんが、よく廊下でぶつぶつ言ってるの見かけるから頭のネジが外れたやつなんだろうな。

 

まぁ、テレビ出演おめでとう少年たちよ。あいつらは体頑丈そうだし怪我の心配は大丈夫だろ。知り合いをテレビで見るという貴重経験をしたわけだし、ゆっくり晩飯まで今日の復習でもします「デク!!!」か。いや何事?

 

 

 

えっ、なんで俺の家の前に湯沸かし器とワカメの相性抜群コンビがそろってんの?お前らさっきまで元気にテレビ出演してたじゃねーか。

 

 

「俺は…てめぇに助けを求めてなんかねぇぞ……!助けられてもねぇ……!!あ!?なあ!?一人でやれたんだ!!」

 

いつにもまして荒ぶってるしあいつプライド高いもんな。だがよそでやれ。近所迷惑だ。俺の部屋からばっちり見えてんだよ。

そしてワカメよ、湯沸かし器が去っていった背中を回想が始まりそうな物思いにふけった顔して眺めるんじゃねぇよ。お前の心のモノローグが聞こえてきそうで怖いんだよ。まぁ、静かになったから全然いいけ「私が来た!!」ど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オオオオールマイトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっ!オールマイト!?なんで!?

なんでこんな何の変哲もない路地にオールマイト!?

 

うわ凄ぇ!やっぱり画風が違う!テレビで見るより実物で見る方が5割増し濃く見えるぜ!

 

 

それよりもナンバーワンヒーローがワカメ君と親しげに話しているのが今世紀最大級に気になるんだけ「ゲボォッ!!!」ど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……おいおい、目の錯覚か……?

オールマイトが目の前でひょろひょろホラーマンに変身したんだけど…?

 

えっ…理解が追い付かないんだけど?

 

 

 

「君がいなければ…君の身の上を聞いていなければ口先だけのニセ筋になるところだった。ありがとう!!」

「そんな…いや、そもそも僕が悪いです!仕事の邪魔して…無個性のくせに生意気なこと言って…」

 

 

ちょっとそこ普通に話し進めないでくれます?

こちとら普通に混乱の真っただ中なんですけど?ていうか何普通に話出来てんの、ワカメ君。

 

いや、そもそも話が成立しているのはワカメ君があのオールマイト?の姿を知っていたってことなのか?もし知らなかったのならばものすごいスピードでぶつぶつ言いながら自分の世界に入り込むはずだろうし。それに彼が重度のヒーローオタクだというのはよく耳にするしな。

 

 

 

ということは、やっぱり彼はオールマイトの知り合いで、アレがオールマイトの本当の姿であると…

 

 

 

うん…いろいろ言いたいことや聞きたいことがあるけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人ん家の前で何やってんの?

 

 

 

 

 

 

 

 

何そんな堂々と街中で正体晒してんの?

オールマイト危機管理能力低くない?

たまたま見ているのが俺だけだからいいけど、周りに見られていると思わないのかな。オールマイトはナンバーワンヒーローなんだからパパラッチとかいっぱいいるでしょうに。

 

 

「君はヒーローになれる」

 

 

あっ、話聞いてなかった。

でもワカメ君が号泣してるところを見るにオールマイトに認められたのか?

そりゃ、あこがれているヒーローからヒーローになれると言われたら嬉しいわな。

俺だって言われたら目から滝を流す自信がある。おい、そこ代われ。

本当なら外に出てサインでも貰おうかと思ったがおとなしくしてるか。わざわざ大ニュース案件の現場に自分から首を突っ込む道理もないしな。今日見たことは墓場まで持っていく秘密としておこう。俺が気遣いができる優等生でよかったな、オールマイトよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君ならわたしの"力"を受け継ぐに値する!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おい、何を口走ったあの骨は!?

 

いや、いきなり何言ってんだこいつは!?4月1日ならとっくに過ぎたぞ?

 

オールマイトの個性と言ったら誰もが知らない今もなお推測され続けている不思議の一つだろ!

 

 

「私の個性は聖火のごとく引き継がれてきたものなんだ!!」

 

 

どうもご説明ありがとうございます。

いや、それ以前にオールマイト危機管理能力低すぎぃィィィィィィィ!!

 

 

「力を譲渡する個性(ちから)……それが私の受け継いだ個性!冠された名は……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワン・フォー・オール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワン・フォー・オールかー。そっかー、すごいなー。

うん、ほんとにね…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人ん家の前で何やってんの!?

 

 

 



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俺とワカメとホネ吉と

まさかの赤バー!?
それにお気に入り100!?

嬉しいです!がんばります!


オッスオッス、俺の名前は石楠花 鱗(しゃくなげ うろこ)

今をときめく自称グッドルッキングオールラウンドガイだ。

昨日はナンバーワンヒーローホネ吉が国家機密並みの爆弾を街中で爆発させたせいで眠れなかったよ。俺、暗殺されたりしないよね?

 

幸いにも俺以外の誰も話を聞いていなかったからホネ吉の秘密は言いふらされる心配もない。

 

えっ、何で分かるのかって?

そんなこと、()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

現在は朝の日課であるランニングの最中だ。

例え寝不足でもヒーローになるためにはサボることは許されない。何事も日々の積み重ねが大事ってやつさ。

だがとてつもない睡魔に襲われた状態でのランニングは危険だ。う○こを踏む危険性がある。みんなも気をつけようね(2敗)。

 

 

さて、そろそろ本題に入ろう。

俺は毎日ランニングと一緒に行っていることがある。

それは海浜公園を綺麗にすることだ。

 

あそこはゴミを捨てる人が多いからか大型ゴミや小型ゴミと溢れている。ヒーローを目指す男がゴミの放置で汚れている海を見過ごすわけにはいかない。ヒーローはヴィランを倒すだけじゃない、社会奉仕精神を忘れちゃいけないと俺は思うね。

 

社会奉仕しつつ自分の体を鍛えることができる。ついでに腹も減るから飯がうまい。一石二鳥どころか一石三鳥だ。やはり俺は天才だと思う。

 

 

 

 

よし、じゃあ今日の日課を……あれオールマイトじゃね?

 

今はホネ吉モードだから一般人は気づかないだろうが俺は昨日この目でしっかりと見たからまず間違いない。昨日の口から十二指腸が出るかと思ったほどの衝撃を俺は忘れない。

 

ていうかオールマイトがここでウロウロしてるってことは考えていることはまさか目的が一緒か?ワカメ君にここでトレーニングさせるための視察か?

 

 

おい、やめてくれよ?

綺麗になることはうれしいことだがあんたらだけはやめてくれ!

これ以上俺を知らずに巻き込まないでくれ!

 

 

「よし!ここの掃除を兼ねて緑谷少年のトレーニングにしよう!」

 

 

 

 

ジーザス!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、あの後元気にランニングをし、学校で真面目にイガグリを煽り、格闘技の練習して、飯食って寝た石楠花 鱗です。

今日もランニングをしていますが正直気が気でなりません。

 

なぜなら今日から俺のお気に入りのトレーニング場でワカメ&ホネ吉の国家機密ペアのトレーニングが始まるからです。あの二人は元気に労働に励んでいるでしょうか?

 

えーと……どこだ…?

あっ、いました!ロープで括られたワカメ君がオールマイトの乗った冷蔵庫を引っ張っています!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、どういう状況???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだ?オールマイトはSでワカメ君はMだったのか…?

あっ、引くぐらい泣いてるワカメ君を携帯で連射しながら近づいてる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっ…石楠花 鱗はクールに去るぜ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は何も見なかった…そうだろう?ブラザー。

まぁ、人様の関係に首を突っ込めるほど俺は偉くないからな。

あとはお若い二人に任せましょうか。

 

でもこれ以上あの二人について考えていても仕方がない。俺は自分のことでいっぱいいっぱいだからな。人の心配をしていられるほど自分ができているとは思わないし。努力はどれだけしても足りないんだよ。なんやかんやで入試まであと10か月だしな。

 

さて、ランニングランニングっと。……おや、あれは…?

 

 

 

 

 

 

 

「君は夢のテレビ出演を果たしたドロヘドロ カイマン君じゃあないか!」

「誰がドロヘドロ カイマンじゃクソが!!死ね舐めプ野郎!!」

 

朝から元気な挨拶をいただきました。いつも通りの口の悪さに、今日も一日が始まったんだなという安心感を感じます。

 

「何を人の顔見ながら和んどんじゃクソが!!」

 

彼はクソ下水煮沸機こと爆豪 勝己君です。彼との出会いを簡単に説明すると、彼がワカメ君をいじめていた現場に偶然遭遇しまして、喧嘩を吹っかけてきたところを取り巻き纏めてコテンパンにしたのが始まりです。それ以来、出会うたびに突っかかってきます。今まで3年間関わってきた印象としては非常に残念な性格をした真面目君といった感じかな。

 

それと今気づいたけど、俺ワカメ君の名前知らなかったわ。

 

「おい、話聞いてんのか!」

「おぉ、聞いてるよ。丸井デパートでスポンジの詰め放題してるんだろ?」

「全然聞いてねーじゃねーかクソが!!」

 

今日も元気そうで何よりだ。暴言の切れがいつもより鋭いね。

学校で聞こうと思ったけど会ったついでに今聞いとくか。

 

「それよりもヘドロ事件は大丈夫だったのか?これでも一応心配してたんだぜ?」

「俺の前でその話題を出すんじゃねぇ!!俺は助けられてもねぇ!自分で脱出しようと思えば出来たんだ!!」

「そうか。じゃあ…う〇こまみれ事件は大丈夫だったのか?これでも一応心配してたんだぜ?」

「変な気ぃ使って悪化してんじゃねぇか!!殺すぞ!!」

「そうかっかするなよ。思春期?」

「てめぇのせいじゃクソが!!!」

 

これだけいつも通りの罵倒パフォーマンスができるなら大丈夫そうだな。

一昨日の感じだと何か抱え込みそうだなと思ったけど、ここまでいつも通りなら逆に安心通り越して尊敬の念さえ覚えるわ。

 

「それじゃ、また学校で。いつもみたいにキレすぎて尻から大腸出すなよ?」

「いつもだしてるかぁ!!死ねぇぇえええ!!」

 

 

やっぱり爆豪ほど面白い逸材はこの世界にいないんじゃないかな?

よし、息抜き終了!みんな頑張ってることだし、俺も残り10か月頑張っていこう!

 




主人公'sネーム…石楠花 鱗だヨ!いい名前だネ!
主人公's身長…約180センチあるヨ!
主人公's髪型…可もなく不可もないどこにでもいるような黒髪だヨ!
主人公'sアイ…よく見えるヨ!めっちゃ見えるヨ!引くほど見えるヨ!
主人公'sフェイス…非常に整っているヨ!でも性格が残念だヨ!
主人公'sスペック…非常に高いヨ!これからに期待だネ!
主人公's個性…秘密だヨ!そのうち出るネ!


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試験会場前

お気に入りが増えていく過程をにやにやしながら眺めています。
思った以上に好評で嬉しい限りです。
ルーキー日間2位になりました。ありがとうございます!!


長いようで短かった10か月間が儚く過ぎ去り、ついに待ちに待った入学試験当日の朝を迎えたわけだが…

 

 

「わああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」

 

 

廃材の上で朝日に向かって叫んでいるワカメ君を見かけました。青春だね!

でもどうやってあの量の廃材を積み上げたんだろ?彼は無個性だと聞いたんだが、どう見ても人間が持ち上げられる重さの限界点を超えた軽トラが混ざっているんだが…?

 

まぁ、考えても仕方がないね!

オールマイトも「オーマイグッネス!!」って現在進行形で叫んでるし。

 

「ホラ見ろよ!」

「これは…」

「10か月前の君さ。よく頑張ったよ、本っっ当に!!!」

 

いやほんとよく頑張ったと思うよ。オールマイトが10か月前の写真見せてるけどまるで別人だもん。10か月前が生まれたての小鹿だとしたら、今は道具の使い方を覚えたホモ・サピエンスってところかな。ラ〇ザップもビックリのビフォーアフターさ。

 

 

でも、正直本音を言えばまだまだかな。()()()()()()()では爆豪にも勝てないし、ましてや俺に勝つなんてことは宝くじに当たるぐらいありえない。これは自分の実力を過信した自惚れじゃない、単なる事実だ。

 

まぁでも努力家なのは認める。毎日さぼらずトレーニングしていたようだし、学校でも頑張ってたみたいだ。ヘドロ君が独り言のようにキレながら教えてくれた。

 

だからこそ彼はいいヒーローになると思う。人が嫌がるようなことを率先して行い、トレーニングでは嫌事一つ吐かない。そして息をするかのように人助けに関わる。当たり前のように聞こえるが、言うは易し。実際に行動に起こせる人物が一体何人いること「食え」か……オールマイトが自分の毛を抜いてワカメ君に渡した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頑張れよ少年!!俺は陰ながら応援してるぜ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、ついにやってきました!雄英高校の校門前に!

危なかった…ワカメホネ吉食毛事件を見てたら入試まであと3時間だった…

 

しかし、さすがは天下の雄英だな。人が朝の満員電車の5倍ぐらい多い。

それよりもワカメ君は間に合ったのか…?まさか髪の毛食わされて終わりってわけじゃないよな。もしそうだとしたらかわいそう通り越して道で通り過ぎるたびに拝むレベルになるぞ。

 

「間に合った…」

 

良かった、間に合ってた。しかしいつもなんてタイミングがいいんだ彼は。実は俺のストーカーだったのか?

 

「どけデク!!」

 

おぉ、勝己様がご降臨なされたぞ!拝め拝め!!

 

「俺の前に立つな殺すぞ……それとそこの舐めプ野郎!こっち見ながら拝むなクソが!!」

「さすがは勝己様だ…ワカメ君への暴言を吐きながら俺への暴言を忘れない。尚且つ周りへの牽制も同時に行う。さすが爆弾ウニ!俺たちにできないことを平然とやってのけるッ、そこにシビれる!あこがれるゥ!」

「うるせえ死ねぇぇぇぇぇぇぇええ!!」

「落ち着けよ、落雁(らくがん)食うか?」

「あああああああああああああ!!」

「凄い!あのかっちゃんがいじられてる…!これが雄英…!」

 

受験前だというのににぎやかな奴だ全く。

見ろ、あまりの騒ぎに受験生たちが腫物を扱うように離れていったじゃないか。それとワカメ君、校門前でぶつぶつモードに入るな。お前に怖がってより一層俺たちの周りから人が去っていったぞ。

 

「これ以上門前に留まっていても人の邪魔になるだけだから、とりあえず行くとしましょうか。」

「てめぇ俺の前を行くんじゃねぇ!!」

 

元気で何より。誰が前に行っても一緒でしょうに。

 

「あっ…!思い出した!!」

 

おっ、どうしたワカメ君。考え事から解放された瞬間俺を見ながら叫んで。

 

「あなたは一度僕をかっちゃんから助けてくれた折寺中学の有名人!よくわからない行動やよくわからない発言をするけど学力や運動能力は全国で上位に名を連ねる男!決め台詞は『落ち着けよ、落雁食うか?』で有名の『折寺の奇行種』石楠花 鱗君じゃないか!!」

「ちょっとその話詳しく」

 

俺の中で変人認定していたやつに変人認定されていた件について。

それ以上に学校中で変人認定されていた件について。

 

まって俺そんな風に思われてたの!?

俺は慎ましく真面目に花畑のチューリップのように過ごしていたはずなのにいつから変人だと思われていたんだ!?

 

「へっ、ざまあww」

「お前もどっこいどっこいだろ?ブラザー」

「一緒にすんなや!!!」

 

まぁこの際変人認定されていた件についてはどうでもいい。それよりもこのワカメとイガグリよりも変人認定されているのが気に食わん!

 

俺はいつも通りに腹減ってそうな奴の口に落雁を突っ込んだり、親切心から女子にダイエットを勧めたり、体育やテストで常に1位をキープしてきただけなのに!

 

「嘘だろ…あれが落雁の石楠花か……!」

「気をつけろ!近づきすぎると口に落雁詰め込まれるぞ!」

「俺のきいた話じゃあ、排水溝から『ハーイ、ジョージィ♪』って出てきたらしいぞ!」

「頭のおかしい言動が多いが実力は折り紙付きらしいぜ…!」

「あぁ…!()()()()は隣町にまで届いてきたぜ…!」

「もうダメだぁ…おしまいだぁ…!」

 

俺の噂がよく知らない奴らにまで知られていることに突っ込んだ方がいいのかな?俺の存在自体がすごい牽制になってきた気がする。

 

「もう行こう…これ以上ここにいたら胃に穴が開きそうな気がする…」

「ざまぁww」

「そう褒めるなよ」

「褒めてねぇわ!そのプラス思考どうなっとんじゃクソが!!」

 

まぁいい、聞き逃せない噂が満載だったがこれからの俺のとても礼儀正しい行動で上書きしていこう。人の噂も75日さ!!……長いな。

 

そういや、ワカメ君はどこ行ったんだ?

あっ、まだ後ろにいた。

 

 

 

 

 

あっ、面白いぐらい足震えながらこけた。

 

あっ、女の子に助けられた。

 

あっ、顔が気持ち悪くなった。

 

あっ、嬉しさのあまり叫んで周りに引かれてる。

 

 

 

 

ワカメ君よ、場所が場所なら捕まってるぜ?

絶対に俺よりこの2人のほうがやばいと思うんだが……

 

 

 

 



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試験開始ィィィィィィ!

気づけばお気に入りが500に迫る勢い!
沢山の方に読んでいただいて感謝の極みです!
お待たせしました。本日、ついに石楠花君の個性が出ますよ(笑)

5000文字以上書いている方の凄さが身にしみてわかりました。これからも頑張ります!


さぁやって参りました実技試験。

まるでライブのように人が満員ですよ。人酔いしそう。

 

えっ、筆記試験?

スラスラですけど何か?心の中では常に「あっ、ここ進研ゼミに出たところだ!」って気分だった。101点ぐらいありそう。

 

そうそう、この会場に着くまでの間にワカメ君と交流したよ。想像の3乗ぐらいヤバい奴だったけど。

 

名前は緑谷君というらしい。名前に「緑」が入ってるとか、いかにもワカメを連想させるよね。天日干ししなくちゃ(使命感)。

 

えっ、血圧高めの解体処理班こと爆豪勝己君はどうしたかって?

もちろん仲間外れにせず、俺と緑谷君の間に(無理矢理)セッティングさせたよ。楽しそうに話を聞いてくれたぜ。

 

 

 

 

(回想)

「オッス、オラ石楠花 鱗。落雁ボールを8つ集めて、ラクチュウと共に落雁マスターになるのが夢の中学生さ☆」

「どうしようかっちゃん……内容を1つも理解出来ないよ…」

「話しかけんなカス、こいつはデフォでこんなんだ。」

 

俺の渾身の自己紹介がまさか通じないとはまだまだよのぅ。

そうか、まずは見本がないから返してくれないのか。

 

「というわけで爆チュウ、まずは俺たちが見本を見せよう。」

「誰が爆チュウだ!!巻き込むなクソが!!」

「おいおい、そんな感じでこれからやっていけるのか?郷に入っては郷に従えって言うだろ?ヒーローにはユーモアも求められるんだぜ?」

「っっっつ!クソが!一回だけだからな!!」

「凄い!あのかっちゃんが言いくるめられてる!」

「というわけで…… オッス、オラ石楠花 鱗。落雁ボールを8つ集めて、ラクチュウと共に落雁マスターになるのが夢の中学生さ☆」

「その落雁ボールはどこにあんだよ」

「そんなもんあるわけねぇだろ。お前頭おかしいのか?」

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!」

「落ち着いてかっちゃん!?ここで暴れないで!?」

 

(回想終了)

 

 

 

と、まぁこんな感じで束の間の休息を楽しんだよ。緑谷君の名前はこの後にサラッと教えてくれた。爆豪がキレ散らかしてる時にサラッと教えてくれた。もしかすると彼は非常に出来る人材なのかもしれん。

 

そして俺が思考の海に沈んでいる間にチキンラーメン型スピーカーことプロヒーローのプレゼントマイクが壇上に出てきた。

 

「まだ出会って間もないけど、石楠花君が静かにしていることが珍しく感じるのは僕だけかな?」

「こいつが静かにしてる時は大抵アホなこと考えてる時だけだ。それと話しかけんなカスが。」

 

失礼なガキどもだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は俺のライブにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!」

 

 

シーン………

 

「面白いぐらいの総スカンだな」

「石楠花君静かにして!」

「横でぶつぶつ呟いてる奴に言われたくない」

 

「聞こえてるぜそこのリスナー!!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?YEAHH!!!」

 

あの人一人でも人生楽しそうだな。

 

「リスナーにはこの後10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!」

 

鱗がちらっと爆豪と緑谷の配布プリントを見ると、それぞれに違う試験会場のアルファベットが書かれていた。

 

「演習場には“仮想ヴィラン”を三種・多数配置してあり、それぞれの『攻略難易度』に応じてポイントを設けてある!各々なりの個性で仮想ヴィランを()()()()にし、ポイントを稼ぐのが君達(リスナー)の目的だ!!」

 

なるほど、簡潔でわかりやすい。それと破壊ではなく行動不能にすればポイントが入るなら攻撃型の個性以外でも立ち回り次第でどうとでもなるといったところか。

 

「もちろん他人への攻撃などアンチヒーローな行為はご法度だぜ!?」

 

えっ、爆豪大丈夫?

 

「質問よろしいでしょうか!?」

 

静寂を切り裂くかのような声が鱗の斜め前から放たれる。

 

「恐ろしく速い直立挙手、俺でなきゃ見逃しちゃうね。」

「黙っとけカス」

 

「プリントには()()のヴィランが記載されています!!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」

 

何千、何万人といる中で堂々と大声で問題を指摘出来るのも一種の才能であろう。非常に好感が持てる性格と同時に鱗が最も苦手とする部類であると瞬時に悟った。そして、次の彼の矛先がどこに向かうのかも予測できた。理由は簡単。鱗たちは先ほどまで()()()()()()()()

 

「ついでにそこの縮毛の君!!そして隣の黒髪の君!!」

 

予想大当たり。ジャックポットだ。

 

「先ほどからボソボソと…気が散る!物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」

「言われてるぜ?緑谷と爆豪」

「ええっ!?」

「お前のことだわクソが!!」

 

さて面倒なことになった。こういう真面目タイプはそれ相応の理由がなけりゃ許してくれないからな。ここはプランUSO(うそ)でいこう!

 

「すっ…すみませ「いや~、すまんな。個性の副作用でずっと話し続けなくちゃいけなくてな。なかなかつらいのよ。」ん!?」

「そうだったのか!?それはすまなかった!理由も聞かずに注意してしまった!」

「いやいや、俺も注意が足りなかった。これで手打ちとして、これからの試験に集中しようぜ」

「そうだな!お互いに頑張ろう!」

 

 

 

 

 

「「「「(こいつ平然と嘘ついて乗り切りやがった!?)」」」」

 

会場が満場一致でそう思った。

 

 

 

 

「HEY!!じゃあさっきのお便りの説明をしよう!!四種目のヴィランは0P!そいつは言わばお邪魔虫!!スーパーマリオブラザーズのドッスンみたいなもんさ!各会場に一体所狭しと大暴れしている『ギミック』よ!!」

「有難う御座います!失礼致しました!」

 

「俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう!!かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Plus Ultra!!(更に 向こうへ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは皆良い受難を!!」

 

 

 

 

「…ははっ…!」

 

 

 

これほどの説明・啖呵を聞いてテンションが上がらない学生なんているのだろうか?現に鱗たちは誰も一言も話すことなく話に聞き入っていた。胸を突き破って外に飛び出してしまいそうな荒ぶる気持ちを押さえつけながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてやってまいりました演習場に!!

さっきの解説から胸が高鳴り続けてたいへんだったぜ!戦いたくてウズウズしてたからな。

もう少しで爆豪やバスに乗ってた他校生徒に手が出るところだったぜ…!

 

あとはもう戦うだけだ。やっぱり頭使うことより体を動かすことの方が性に合ってる。きっと今からは始めるための合図を流すだけだろう。よって俺の取るべき行動は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生たちは困惑した。

先ほどから良くも悪くも目立っていた男、石楠花 鱗。近づけば落雁を口に詰められるという噂を聞いたことがあるものはこの場に多い。説明会でも悪い意味で目立っており、移動中のバスの中でも『ねるねるねるね』を作るという奇行に出て、遺憾なく存在感を発揮していた。

 

そんな男が会場についた途端、一言も話すことなく、陣取った位置から一歩も動くことなく、微動だにせず突っ立っている。

 

嵐の前の静けさというべきか。先ほどまで惜しげもなく発していた存在感もほぼ無と言っていいほど感じない。それはまるで存在感を極限まで消し、獲物を狙う肉食動物のように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイスタートー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピクッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンッ……!!

 

 

 

 

 

 

 

「「「えっ…?」」」

 

「どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざされねえんだよ!!走れ走れぇ!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

「「「っ…!」」」

 

 

 

この瞬間、学生たちはようやく理解した。

変人という皮をかぶった肉食獣はこの瞬間を今か今かと狙っていたのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「標的捕捉!!ブッ「ハーイ、ジョージィ♪」殺……ッ!!」バキッ!!

 

なんてすばらしいスタートダッシュを切れたのでしょう!

ロボットがゴミのように溢れているよ。まぁ、別にどこにいようとも直ぐに見つけ出せるんだけどもww

 

ロボットが比較的柔らかくて助かったよ。まだ()()()()()()使()()()()乗り切れているよ。でもカメラで見られてるんだよな。『個性を使ってない=舐めてる=アウト』の方程式が成り立ってしまったら最悪だからそろそろ個性使うか。

 

このロボットの製造者さんごめんね♪今から粉々に壊しちゃうから♪

 

 

 

さーて、()()()()()()()()()()()()()、ご笑覧あれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある一室。

 

 

「今年はなかなか豊作じゃない?」

「そうだな。よく動けている子が多いな」

「特にこの子なんて誰よりも早く動いて誰よりもポイントを稼いでいるわよ?」

 

そこに映っていたのは鱗だった。

 

「アッ!このリスナーは総スカンって言ったリスナーじゃねえか!!」

「実際にその通りだっただろうが」

 

所々に私情の会話が挟まれたが話が続いていく。その時一人の男が話し始めた。アングラ系ヒーローとして活躍している抹消ヒーローイレイザーヘッドこと相澤消太だ。

 

「確かにこいつならこのくらい動けて当然ですね。」

「相澤君、彼のことを知っているのかい?」

「ええ。1年前の飲食店にヴィランが侵入し、客を人質に籠城した事件を覚えていますか?」

「確かにあったわね。覚えているわ」

 

みなその事件がどうしたのか気になるのか、次の言葉を待っている。

 

「その時応援として私が呼ばれたのですが、私が現場に到着した時には事件は解決していたんです。」

「現場に居合わせたヒーローが解決したんじゃねえのか?」

「ああ、俺も最初はそう思っていたんだが話を聞いたところそうじゃなかったんだ」

 

それはどういうことだろうと思うと同時に、相澤の次の一言によって衝撃に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一部始終を見ていた客によると、その場に居合わせた客が武装した4人のヴィランを()()()使()()()()()()()()()素手で制圧したらしい」

 

「「「はぁ!?」」」

 

 

 

その反応ももっともだ。何せ無個性で個性・武器持ちのヴィランを倒したというのだから。

 

「事件制圧後、その客に事件の事情聴取、そして本当に個性を使っていないか確認したところ警察・俺を含めたプロヒーローが個性を使っていなかったと判断した。なぜならその客の個性は使うと()()()()()()()()()()()

 

 

そして追い打ちのようにさらなる衝撃が襲い掛かる。

 

「そしてその客の名前は……石楠花 鱗

「「「っ!?」」」

 

プロヒーローたちは一斉にモニターを見る。なぜならそこには今まさに話題に上がっていた男が映っているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、異形型の個性の話をしよう。

異形型の個性は普通の個性と違い、人としての見た目が違っている。あるものは動物の特徴をそのまま反映している人もいれば、身長が3メートルを超える人間もいる。腕が複数の人間もいる。

 

だが鱗の個性はそれに合致しない。

普通の人間の見た目と全く変わらず、しかし個性を使わずとも異形型特有の身体能力を使うことができる。

 

そして何より決定的な違いとして、彼らは常に発動しているのに対し、鱗は個性を使うことによって体の部位が変形する。

 

「個性発動…!」

 

最初に変化するのは腕そして肩。

拳から肘にかけて肥大化。それは鱗を纏ったかのように強固であり、オールマイトの腕以上に分厚く力強い。そして肩を守るように、より強い拳を打ち込むために甲殻が出現。

 

そして額からは2本の触角が流れるように聳え立ち、上半身には筋肉に沿うように薄い鱗が鎧のように現れ、足には膝から脛にかけて細かな棘が生える。

 

異形型だが、限りなく人の形を残した異形型。

 

 

 

その生物はまるで子供がデザインしたかのような『全身・兵器』

 

 

 

有名な拳打によっての狩り方法に加え、驚異の視力。

更に甲殻類故の硬い殻はもちろん、全身の棘は敵を近寄らせない。

尾で切りつける一撃も必殺の威力。

 

そして何より、他の追随を許さない()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の名は石楠花 鱗  その個性の名は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シャコ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すべての生物が等しく同じ大きさで戦うとしたら、人々は口々にこういうだろう。

 

 

『シャコは最強生物の一体として数えられるだろう』と。

 

 

 

 

 

そして、あろうことか今この場に『人間大の大きさになった青龍蝦(シャコ)が誕生した。

 

 

 

 

 

 

「さぁ、久しぶりの本気(マジ)モードだ。頼むから簡単に壊れてくれるなよ?」

 

鱗は懐から常備していた落雁を一つ取り出し、口に含んだ。

 

 

 




石楠花 鱗
個性「シャコ」
シャコっぽいことができるぞ!これからの活躍に期待だぜ!





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変人の力

日間4位ィィィィ!!
ありがとうごぜぇます!!


躱しては打つ、打っては躱す。

男はその練習に命を懸けた。

 

 

 

 

「ヒャッハー!落雁パーンチ!!」

「ブッ殺…!?」 メキャッ!

「おらっ!ねるねるねるねを食え!!」

「標的ほ……!?」 グチャッ!

 

 

現在個性を使って無双中の石楠花 鱗です。

ついでに個性コントロールの練習を兼ねています。

 

この個性は近接戦闘では他の追随を許さないぐらい強い。そのかわり、デメリットとしては遠距離攻撃ができない点、少しでも力加減を間違えてしまうと相手が『きれいな花火だ』状態になり、俺がブタ箱生活を送る羽目になるという問題点がある。それだけは何としても避けたい。

 

ヒーローがヴィランを殴ってゲルニカのような壁画にしましたなんて洒落にならん。だからこそ相手が無機物である今が絶好のチャンスなんだ!

 

「軽めに小突く感じでこう!」

 

メキャッ

 

「親父に肩たたきする感じでこう!」

 

メキャッ

 

「お年寄りの背中を支えて「さあどうぞ」って感じでこう!」

 

メキャッ

 

「アンパ〇マンに新しい顔を投げる感じでこう!」

 

メキャッ

 

「決めた!俺もう親切しねぇ!」

 

石楠花 鱗 15歳 一世一代の決断である。

 

 

 

 

「こんな茶番してる場合じゃねえや。だんだんと人が多くなってきたな。そろそろ場所移動するか。まだまだ動いている奴はたくさん見えるし、お邪魔虫とやらもまだ動き出さないだろうし。特有の電磁波も見えてないしな」

 

 

 

シャコの持つ"驚異の視力″については研究が進められている途中である。シャコは人間や昆虫以上に可視域が広く、紫外線・赤外線・果ては電波まで()()()いるという説がある。暗闇においても暗視スコープのように見ることもできるとされている。

 

更に人間の目では三色分しかない色覚がシャコには十二色あるため幅広い色を認識し、また地球上の生物で今のところシャコだけが自然光に加え、デジタル技術などに使われる″円偏光(えんへんこう)″がなぜか()()()いる。

 

詰まるところシャコは人間から見える世界に慣れてしまった我々からすると()()()()()()()()()()()()()()()()目が良い訳である。

 

そして人間大のシャコであり、人類で最も目がいい男になった感想は…

 

 

「ナメック星見えるんじゃね?」

 

 

このザマである。

 

 

 

 

鱗がポイントを稼げた理由、それは説明した通り、一重に目の良さにある。シャコの目は電磁波を映す。電磁波とは無機物は勿論、()()()()()()()()()()も日常的に発しているのだ。

そして鱗曰く、「電磁波は遮蔽物があろうと捉えることができる」と断言している。

つまり鱗は機体や人体から発せられる電磁波を目で捉え、絶好の狩場を探していたのだ。

 

更に戦闘能力もさることながら、鱗は幼少の頃からボクシングを習い、それだけでなく中国武術・タイ武術を学び、頭の先からつま先まで全てが『武』に浸かっている。実は唯の変人ではない、努力が出来るハイスペック変人だったのだ。

 

余すことなく発揮される変人由来の運動能力・格闘センスをシャコ特有の目の良さ・攻守の高さで補うことで無類の強さを発揮する。

 

目が良いことはスポーツの上達に繋がると言われている。何故なら上手とされる相手の動きを細部まで観察することができるからだ。その目で見た情報を行動に伝達することによって人は自分の動きを修正していく。もし、常軌を逸した目を持った人間が相手の動きを観察した場合どうなるか?

 

これが蝦蛄(シャコ)という生物の強みであり、この力が地球上で最も賢いとされる人間に、あろうことか行動を予測出来ない生粋の変人に搭載されてしまったのだ。

 

 

 

 

「この入試は敵の総数も配置も伝えていない。限られた時間と広大な敷地…そこからあぶり出されるのさ」

 

一匹のネズミが徐に口を開いて話し出す。

 

状況を早く捕捉するための ()()()

 

遅れて登場じゃ話にならない ()()()

 

どんな状況でも冷静でいられるか ()()()

 

そして純然たる ()()()

 

「市井の平和を守るための()()能力がP(ポイント)数というかたちでね」

 

「一人可笑しな存在がいて目が眩みがちだけど、今年はなかなか豊作じゃない?」

「いやー、まだわからんよ」

「真価が問われるのは…」

 

 

「これからさ!!」

 

 

そして誰かがYARUKI SWITCH(やる気 スイッチ)を押した。

 

 

 

 

最初に気づいたのは誰だったか。

 

小刻みな地響きから始まり、徐々に揺れが大きくなり始め、ついにそれは市街地を蹂躙しながら突如現れた。

 

まるでビルが歩いているかのような巨体。前足のような機体を巧みに使い、市街地を押し退け、建物を粉砕しながら前に進む機械の悪魔。

 

人々がヴィランに抱く恐怖心を具現化したかのような圧倒的脅威が年端も行かぬ受験生達の前に降臨した。

 

 

 

 

 

「「「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 

 

当然の反応だろう。命の危機に瀕したことがない受験生たちの前に初めて現れた脅威なのだから。

 

一度攻撃に当たれば即死亡してしまうような、簡単に人を殺せる存在が目の前で暴れていれば逃げてしまうのも無理もない。

 

 

 

そしてこの圧倒的脅威は鱗の前にも現れた。

とてつもない存在感を放ちながら一歩、また一歩と逃げる受験生たちを追いかけるかのように移動する。

 

その圧倒的脅威を前にして鱗は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいおい、IKEA(イケア)が歩いてきやがったぜ。

これ本当に試験か?人死出るんじゃね?

 

でもアレ頑丈そうだな。

簡単に壊れないだろうな。

 

これは……行くしかないだろう!!

 

今まで1発スクラップ製造機と化していた俺の落雁パンチに耐えうる存在なんて中々お目にかかれないぜ?

 

それと…「おいお前逃げないのか!?」…ん?

 

そこには銀髪で目が大きく、如何にも暑苦しそうな男が立っていた。

 

「お前は?」

「俺は鉄哲徹鐵(てつてつてつてつ)だ!…じゃなくてお前が全然動かないから心配になって見に来たんだ!」

「なんだ、お前いいやつだな」

「おうありがとな!…いや大丈夫なら逃げろよ!?流石にアレはヤバいって!?」

 

いや動かない奴がいるからって逃げるのやめて確認に来てくれるとかめっちゃヒーローじゃん。女だったら惚れてたね。

 

「おい聞いてんのか!?」

「おぉ、サッカーでホームラン打って横綱になったんだろ?」

「いや言ってねえよ!?」

「まぁ落ち着けよ、落雁食うか?」

「今いらねぇよ!ってか食うなよ!早く逃げるぞ!」

「いや、アレ俺倒すわ」

「はぁ!?」

 

なんて切れのいいツッコミだ。ここまでの切れを俺はかっちゃんしか知らねぇぜ?世界は広いんだな。でもな~、ピンチで逃げるって……俺の思い描くヒーローとは違うんだよな。

 

「これは俺の持論なんだが……」

「ん?」

 

「もし仮に今逃げたとしてヒーローになったとしよう。でもさ、そいつは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今と同じ状況になった時、命を懸けて人々を、大事な人達を守れるのか?」

 

「っ……!?」

 

「俺は思うのよ。別に人に笑われてもいい。例え試験だろうが、練習であろうが、命を懸けて本気を出せない奴が本番で命を懸けて人を守れるかよ」

 

 

鉄哲は頭に側頭部を殴られたかのような衝撃を受けた。今までの自分は何を考えていた?

 

逃げる?勝てない?諦める?

 

自分はヒーローになるためにこの試験を受けたはずだ。にもかかわらず、目の前に勝てない相手が出てきた瞬間、敵に背を向けて逃げたのだ。困っている人を助けずに。

 

 

だが心の中で渦巻いていた恐怖心という感情は、出会ったばかりの名も知らないヒーロー候補生の一言によって露散した。

 

それと同時に、この男からは()()()を感じた。この男ならこの場を切り抜け、受験生全員を守り抜き、あの鉄の悪魔を倒してしまう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

そこからの鉄哲の行動は早かった。

 

 

「俺も手伝うぜ!これ以上醜態をさらすわけにはいかねぇ!」

「おっ、助かる。じゃあ逃げ遅れた人の手助けをしてやってくれ。そこのビルを曲がったところにある小道に一人と、向かいのビルの裏に二人いるから」

「おう!いや、なんで人のいる場所まで分かるんだよ!?」

「そういう個性だ」

「そうか!凄ぇな!」

 

なんて真っすぐな気持ちのいい性格をしているんだ。心が浄化される気分だ。かっちゃんに見習わせたいぜ。

さて、俺は俺の仕事しますか。腕がうずうずして今にも勝手に動きそうだ。

 

「手始めに、振り下ろしてきた腕を躱してカウンターでオラァ!!」

 

 

 

グシャッ!!

 

 

はい、まずは腕一本いただきましたよ。じゃあ次は…

 

「顔面ボコボコの刑だぜぇぇぇぇぇ!!」

 

はっはっはぁ!!今の俺はもう止められないぜ!トカゲのように張り付き、ゴキ〇リのようにカサカサ上る!上るのに邪魔なパーツは排除する!するとどうでしょう、まるで匠の手によって生まれ変わったロボが完成するではありませんか♪♪

 

「エベレスト登頂ゥゥ!!じゃあ…ボクシングやろうぜ!お前サンドバッグな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受験生たちは開いた口がふさがらなかった。

自分達がかなわないと感じた敵が轟音を響かせながら次々と壊れていく。

爆音が雨のように連続で響きながら、ロボの原型を変えていく。

そしてほんの10秒ほどだろうか…?あれほど恐怖を感じた存在が今はスクラップされたかのように叩き潰されている。

 

そして爆音が鳴りやむと同時に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終了~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わりの合図が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや~、最っっ高に「ハイ!」ってやつだアァァァァァァ!!

これほどまでに本気で個性を使う機会がなかったからスッキリしたぜ!

 

 

鱗が最高の気分に浸っている間に、救助を終えた鉄哲がこちらに向かって走ってきた。

 

「なぁ、お前名前は!?」

 

俺の気分転換スクラップ作業が終わった瞬間飛んでやってきたな。俺のファンか?

 

「ん?俺は石楠花 鱗。ヒ-ローを目指すシャコシャコ星のプリンスだ」

「シャコシャコ星が何かは分からねぇが石楠花だな!改めて俺は鉄哲徹鐵だ!よろしくな!ってか石楠花って()()石楠花か?」

「どの石楠花よ」

「ルールを守らない奴の口に『悪い子はいねが~』って言いながらパサパサしたお菓子を詰める妖怪だって聞いたことあるぞ!」

「人違いだな」

「そうか!」

 

多分それは違う石楠花君だろう。俺が詰めていたのはパサパサしたお菓子じゃなくて落雁だからな。

 

とりあえずこれで試験は終わりか。長いようで短かったな。あとは合否だけで神のみぞ知る世界。とりあえず合格を願いながら、カバディの練習でもしとこ。

 

 




楽しいシャコフラグだよ♪

・パンチラを見逃さない目
・しゃ くなげうろ こ
・シャコを揚げると石楠花の花のような綺麗な色になるよ♪地方によってはシャコはシャクナギなどと言われたりしてるよ♪石楠花の色をした鱗を持つ生物、それがシャコだぜ♪


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結果発表ォォォォォォォォ!!

日間1位だとォォォォォォォォおお!?
バカな!?まさか新手のスタンド使いの攻撃を受けているのか!?

ありがとうございます!頑張ります!


とある一室

「実技総合成績出ました」

 

そこでは上位の成績を残した者達について話し合われている。

 

「救助ポイント0で2位とはなぁ!」

「『1P』『2P』は標的を捕捉し近寄ってくる。後半他が鈍っていく中派手な個性で寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」

 

「対照的に敵ポイント0で8位」

「アレに立ち向かったのは過去にもいたけど…ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

「思わずYEAH!(イヤー!)って言っちゃったからなー」

「しかし自身の衝撃で甚大な負傷…まるで発現したての幼児だ」

「妙なやつだよ。あそこ以外は典型的な不合格者だった」

「細けぇことはいんだよ!俺はあいつ気に入ったよ!!」

 

それぞれが賛否両論の意見を出し合う中、()()()()の評価だけは満場一致で決定していた。

 

「まぁ…1位のやつはなぁ…」

「あぁ…とんでもない男が受験してくれたもんだ…」

「戦闘能力は圧倒的。敵の位置を瞬時に把握し、最短ルートで移動。近くの受験生に指示を出して行動を促した様子もあり。そしてロボットやアレを粉砕するほどの戦闘力を有する」

「そして筆記試験においても平均90点を取るほどの地頭の良さも持ってるときた」

「本当にとんでもない逸材だぜ!なぁ、イレイザー!」

 

言葉で表すととんでもないことこの上ない。

戦闘能力も頭脳も持ち合わせた少年がヒーローを目指している。その事実にヒーロー達は未来のトップヒーロー誕生に立ち会うかのような高揚感を覚える。

 

しかしイレイザーヘッドこと相澤だけは鱗のことを実際に見たこと、話したことがある。そのため彼だけは実力だけでなく鱗の()()()()()を知っている。

 

「そういえばさっき話した飲食店籠城事件…この話には実は続きがあるんですよ」

「続き?」

「ええ。石楠花は確かに()()()()()非常に頼りになる存在です。状況判断能力も申し分ない。しかし、私を含めた 彼に関わったプロヒーロー、そしてお客さん、そしてヴィラン。口々に皆こう言いました………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

疲れた…      と」

 

「「「いや何があった!?」」」

 

 

こんな一幕があったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして話の渦中に上がった鱗は……

 

 

 

「カバディカバディカバディ!!」

 

 

家で一人でカバディの練習をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

実技試験を終えてから一週間がたった。もうそろそろ通知が届くタイミングだと思うんだが、待ち時間があまりに暇すぎたからカバディの練習をしていた。カバディの世界大会で活躍しているレイダー並みにうまくなったね。

 

カバディはマイナーなスポーツだが馬鹿にしちゃいけない。

「カバディカバディ」と声を発し続けなければいけない肺活量、相手を捕まえるための捕獲力や避けるための回避力、これらの力を鍛えることができる。

 

まぁ今は一人だけだから想像で相手を思い描きながら取り組むしかない。現在戦っている相手はオールマイト。俺の頭の中のオールマイト、カバディめっちゃ強いんだよね。力任せの突破や常軌を逸した動きで俺の守りを突破してくるから。

 

 

 

はっ!?1㎞先に郵便配達の兄ちゃんの電磁波を確認!

あのフォルム、あの色、あの波長はいつも俺の家の前を通る郵便配達員で間違いない!

 

試験後から経過した時間や郵便局からの距離、郵送物の経由通路から推測し、このまま家の前で止まりポストに入試結果を投函する確率は鱗様の計算によると約97.85%!!

 

さぁ距離が近づいて残り500メートル。

 

400メートル。

 

300メートル。

 

200メート…あっ、信号に引っかかった。

 

200メートル。

 

100メートル。

 

その路地の角を曲がれば……?     

 

 

 

 

 

ビンゴ!!

 

 

 

 

 

ガチャッ 「ありがとうございます!!」

 

「うおぉッ!?ど……どうも…」

 

郵便配達の兄ちゃんをビックリさせてしまったのは悪いと思うが、それよりも結果が気になって仕方がなかったんだよぉぉぉ!

 

そして俺の計算通り雄英のマークがついた郵便物!これは勝った!でも小さい!これはどっちだ!?

 

「とりあえず確認すれば分かることか」

 

どれどれ中身は………円盤?

 

「…投げろってことか」

 

なんでこんな円盤を送りつけてきたか知らんが俺には分かってしまったぜ。投げることで結果が分かるんだろ?

 

最高峰の雄英のことだ。普通に合否発表じゃつまらないからエンターテインメント性を付け加え、投げて受験終わりのストレスを発散しろというメッセージに違いない。そして空に向かって投げることで上空で爆発して花火のように結果が表示される。きっとそうだ。

 

不合格なら公開処刑のようだが、あの天下の雄英なんだ。それぐらいの覚悟がなきゃヒーローにはなれないというプロヒーロー達からの挑戦だな。さすが俺、このメッセージに気づくなんて。IQ3万はダテじゃないね。

 

そうと決まれば空に向かってシュー『私が投影されたのさ!』トォォォォォォォォ!?

 

ナニコレ!?

よく分からん円盤からよく分からん齧歯類(げっしるい)が映ったんだけど!?とりあえず投げない方が正解パターンか。よくも引っ掛けてくれたな雄英…!

 

『ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は…

 

 

 

 

 

校長さ!

 

 

キェェェェェェアァァァァァァシャベッタァァァァァァ!!

 

おいおい、ネズミが喋っちまったよ。個性って何でもアリだな。しかも校長という名のブランドのハッピーセットまでついて。

 

『早速だけど結果を報告していくのさ!石楠花 鱗君、君の合否は考える間も無く決まったよ。』

 

考える間も無くって言葉怖いね。合格なら実力が認められてるってことだけど、もし不合格なら見る価値もない論外ってことになるもんね。まぁ俺は前者かな!きっとそうだ、そうに違いない、ってかそうであってくれなければ校門前で永遠にカバディするからな!?

 

『筆記試験では平均90点以上をマークして全体を含めて上位の成績さ!すごいね君!』

 

すごいな俺。

 

『さらに!実技成績もヴィランポイントも81ポイントと全体でトップの好成績!しかし僕達が見てたのはヴィランポイントだけじゃないのさ!救助活動P(レスキューポイント)!しかも審査制!我々が見ていたもう一つの基礎能力さ!」

 

なんだそのパチスロの確定演出みたいな胸熱ポイントは。

 

『君は危険が迫っていた受験生達を守って行動していた!さらに居合わせた子に指示を出して救助を促していた!』

 

まぁ危なそうな奴結構いたしな。いくら脆いといっても頭に攻撃が当たれば致命傷になりかねないし。

 

『でも女の子を助けるたびにビンタされていたのは減点対象さ!一言多いのも考えものなのさ!』

 

いや、『パンツ見えてるよ』とか『ブラジャー透けてるぜ』は一言多いに入らないと思う。身だしなみは大事よ?きっとアレは感謝のビンタだと俺は信じてる。

 

『そんなわけで!敵P81Pに加え、救助活動Pが少し減点されて25Pの合計106Pで君は首席合格なのさ!』

 

 

エンダァァァァァァァァァァイヤァァァァァァ!!

 

 

 

 

 

 

首席。なんて甘美な響きなのでしょう。

この一言だけで今日はご飯5杯は食える。

 

『さらにここで提案があるのさ!』

 

提案?俺を教師として採用するってか?

 

『君はそうそう現れることがない100P超えの合格者さ!だからこそ君を特別推薦枠として勧誘したいのさ!』

 

特別推薦枠ぅぅぅ?

 

『特別推薦枠は筆記、実技共に良好である生徒に送る、謂わば特待生さ!メリットとしては学費がほぼ免除になるのさ!』

 

是非入学させて下さい!

 

『さらに学食が半額で食べれるのさ!』

 

是非入学させて下さい!

 

『さらにさらに!プロヒーローとマンツーマンで行えるヒーロー講座(性格矯正プログラム)を受けられるのさ!』

 

「一生ついて行きますぜ兄貴!!」

 

なんて素晴らしいんだ特待生!最後の講座は何か打算的で不穏な策略の波動を感じるがそれを差し引いてもなんて素晴らしいんだ!!

 

『来なよ少年!ここが君のヒーローアカデミアさ!』

「一生ついて行きますぜ兄貴!!」

『あっ、相澤君が君ならここで『一生ついて行きますぜ兄貴!!』と言うと予想していたよ。当たったかな、ハハッ!』

 

誰よ相澤君。

それとアンタは「ハハッ」って笑っちゃあダメだ。夢の国から訴えられるぞ。

 

だが嬉しい!自分の努力が実を結ぶ瞬間はどんなことであっても素晴らしいもんだ。早口言葉大会で優勝とかな。

 

しかしここで慢心してはいけない。俺は今ヒーローへの切符を手に入れただけでスタートラインにすら立っちゃいねぇ。

 

雄英高校で何を成し、何を学び、どう過すか、全ては自分次第だ。

 

とりあえず今のところはオールマイト以上のヒーローになるために基礎をみっちり学ぶ、友達100人作る、女の子と話してもビンタをされないようになる、この3つが大事だな。

 

何処かのヒーローが言っていた、プロはいつだって命懸け。確かにその通りだ。生半可な覚悟じゃ人々を救うヒーローになれねぇ。

 

さぁここからだぞ石楠花 鱗よ。

ここからがあらゆる人を救うヒーローになるための第一歩だ。

 

 

 

雄英高校に入学し………

 

 

 

 

 

 

 

皆を守るプロヒーロー(ハジケリスト)に俺はなる!!

 

 

 

 



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ミッション:インパクトを残せ!

やはりハジケリスト、ハジケリストはすべてを解決する。

感想欄でのハジケリスト祭りがすごい。


危なかった。本当に危なかった。

危うく浮かれすぎて寝坊するところだった…

ウキウキしすぎて眠れないからって落雁の可能性の探究なんてするんじゃなかったな。

 

そして遂にやって来たぞ新世界へ!

へへっ、流石雄英高校…!門がデカいぜ…!

入試に来た時とプレッシャーが違ぇや…!

 

とりあえずクラス分けを確認して「おぉ!石楠花じゃねぇか!やっぱり受かってたんだな!!」…お?この暑苦しい声は聞き覚えが…あ。

 

「オッスオッス。久しぶりじゃあないの、鉄哲」

「おう!お互いおめでとうだな!」

「だな。クラス表見たか?」

「いやまだだ!今来たところだからな」

「同志よ。じゃ、一緒に見ようぜ」

「おう!」

 

改めて思うけどめっちゃ好青年だよな。

出会って2回目でここまで気持ちのいい返答できる?俺は出来ない。何聞かれても「サラダバー!」としか言えない自信がある。

 

そうこうしてるうちにクラス表の前まで着いた。

 

「俺は………A組だわ。鉄哲は?」

「俺はB組だ!クソー、違うクラスになったか!だが石楠花!違うクラスになっても俺はお前に挑むぜ!試験では遅れをとったがもう怖気付いたりしねぇ!俺は逃げねぇヒーローになる!じゃ、またな!お互いがんばろーぜ!!」

 

そう言って鉄哲は去っていった。

 

なんて暑苦良い奴なんだ!

体感的にはゲリラ豪雨にあった気分だが、心の中は春一番が来たかのようだ!お陰で巫山戯る暇もなかったぜ!

 

なら俺も我が教室まで向かいますか。

せっかくの初日だ。未来のヒーロー仲間たちに未来永劫思い出に残るプレゼントをしたいところだが…

 

 

 

あれ?A組の前で突っ立ってんの緑谷君じゃね?

 

 

「オッスオッス、緑谷じゃあないの。受かったんだね、おめおめ」

「あっ、石楠花君!君も受かったんだね!」

「当たり前じゃあないの。なんたって落雁の貴公子だぜ?」

「ハハッ…そうなんだ…」

「全力の愛想笑いをありがとう」

 

俺は心が広いからな。愛想笑い程度じゃ口詰め落雁の刑にはしないのよ。

それよりも緑谷君がA組の前にいるってことは……

 

「お主もA組でごじゃりまするか?」

「えっ、話し方どうしたの!?ぼ…僕もA組だけど…石楠花君も?」

「もち」

「そっか…!知ってる人がいてよかったよ。実は教室に入るのが不安で不安で…」

 

不安なのか。そうか~(大歓喜)♪

 

「よし、ここは俺に任せろ。石楠花家は先祖代々印象良く教室に入ることに長けた一族なんだぜ?」

「それ噓でしょ!?嫌な予感しかしないからやめて!?」

「そうか、泣くほど喜んでくれるか。優しいな緑谷は。その意気込みに応えて俺の全身全霊を懸けて成功させてやるよ!」

「話聞いて!?」

 

 

 

 

 

 

ガラッ…

 

 

 

 

 

「ええーい、控えい控えーい!!このモサモサヘアが目に入らぬか!ここにおわす御方をどなたと心得る!こちらにおわすは、折寺のアルティメットヒーローマニア、緑谷出久公であらせられるぞ!頭が高い、控えおろう!!」

 

 

「「「……」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ?ものすごい勢いでクラスの輪に溶け込めただろ?」

「大失敗だよ!?」

「えぇー…インパクトを残せたのに何が不満なんだ?」

「全部だよ!?」

 

注文が多いなぁ…インパクト残せたらそこから自然に「お前カッケェな!」となって。ベルトコンベア並みの安定した生活を送れるというのに。

 

「見てみろよ緑谷。羨望と期待の目で皆お前のことを見つめてるぜ?」

「僕には憐憫と同情の目に見えるよ………」

「諦めるな、これがハジケリストへの道だ」

「ハジケリストって何!?」

 

最高のスタートダッシュを決めれたな緑谷。

これで3年間友達に困ることはないぜ!じゃ俺もまずは挨拶から「君達は!」おい俺にも挨拶させてくれよ。

 

「俺は私立聡明中学出身 飯田 天哉だ!」

「えっと…僕緑谷。よろしく飯田君…」

「聞かれたならばお答えしよう!俺は愛と正義の名の下にラブリーチャーミーな敵役ではなく、銀河を守るシャコット団として白い明日を待ち続けている石楠花 鱗様だ!よろしく頼む!」

「ああ!名前以外何を言ったか全く分からなかったがこれからよろしく頼む!」

 

 

「「「(いやなんで会話成立したの?)」」」

 

「考えるな、感じろ」

 

「「「(コイツ心のツッコミにまで反応しやがった!?)」」」

 

考えたら負けだ。

 

 

すると前からずかずかと足音を立てながら近づいてくる存在がいた。

 

 

「おい舐めプ野郎!」

「何かな?ソウルメイト」

「うるせぇ!!キショいんじゃクソが!さっきからうるせぇんだよテメェ!!」

「その言葉めっちゃブーメランじゃん。ウwケwルww」

「うるせぇ死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

おいおい初日から引くほど元気じゃないかよ。

 

「気付いてるか?皆お前を珍獣を見るような目で見てるぜ」

「見てんじゃねーよ!!」

「それはきっと自己紹介をしてないからだと思うんだ!だからyouも自己紹介しちゃいなyo☆」

「誰がするか!!」

「えっ…まさかデ☆キ☆ナ☆イ☆ノ?」

「出来るぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

はっ、チョロさチョロチョロチョモランマだな。

 

「俺ぁ爆豪勝己だ!!これでいいかクソが!!」

「つまんね」

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!」

 

鱗は流れるように爆豪を弄びながら先程から声が聞こえなくなっていた緑谷が気になり振り返ると、そこには衝撃的な光景が広がっていた。

 

「プレゼント・マイクが言ってた通り受かったんだね!そりゃそうだ!パンチ凄かったもん!!」

「いや!あのっ…!本っ当あなたの直談判のおかげで…ぼくは…その…」

 

あの緑谷が照れながら女の子と話していたのだ。

もう一度言う、あの緑谷が照れながら女の子と話していたのだ。

 

 

鱗は膝から崩れ落ちた。

 

 

「どうした石楠花君!?膝から崩れ落ちたぞ!?大丈夫なのか!?」

「飯田ぁ……俺ぁもう…ダメだ…!」

「一体何が起きたら先程まで元気が溢れていた君が崩れ落ちる事態になるんだ!?」

 

まさか女の子と話すと意気込んでいた俺が緑谷に抜かされるとは…!何という体たらくだ!初日からもうダメかもしれねぇ…

 

死にかけの鱗にクラス中が困惑するが、捨てる神あらば拾う神あり。鱗の元に救世主達がこの後現れることとなる。

 

「大丈夫?いきなり崩れ落ちたけど」

「大丈夫かしら石楠花ちゃん?」

 

透明な見た目の女の子とカエルのような女の子だ。

 

「……救世主(メシア)?」

「違うわ石楠花ちゃん」

「頭も打ったのかな?」

 

まさか心配で話しかけてくれるとは…!

君達はヒーローだ!誰がなんて言おうとヒーローだぜ!

クソしょうもない理由で崩れ落ちた俺の心配をしてくれるなんて絶対メシアだろ!いや、ヴィーナスか!

 

はっ!周りをよく見てみろ石楠花 鱗よ!

他の女の子達も心配そうに見てくれているじゃあないか!

えっ、男も心配してくれてる?馬鹿野郎!鱗ちゃんフィルターには女の子しか映ってねぇよ!だがありがとよ!

 

「ありがとう、もう大丈夫さ!今なら富士山からパラグライダーでバク宙決めながら飛び降りれるわ」

「無事でよかったけどそれだけはやめてほしいわ」

「良ければお名前をお聞きしても宜しいかな?お嬢さん達」

「私は蛙吹 梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

「私は葉隠 透だよ!」

 

成る程、如何にも天使って名前だな。どのくらい天使かっていうとマジ天使だわ。

 

「オッケー、梅雨ぽんにトーちゃんだな。原子配列の覚え方並みに覚えたぜ」

「梅雨ちゃんと呼んで」

「トーちゃんはお父さんみたいでイヤだよ!!」

 

ていうか葉隠さん透明なんだな。透明人間って本当にいたんだ。ならツチノコも何処かにはいるな。

でも俺の目には透明でも見えるんだよね。可愛い顔してるレディだよ。こんな子が透明を利用して全裸でいたら鼻血の勢いで天井に刺さる自信があるね。

 

ワイワイ話す新高校生。ヒーローを目指す卵といってもやはりまだ若いのだ。友達を作ろうと皆が各々周りと話している。だからこそ扉に近づく不審者(ヒーロー)の存在に気付かなかった。

 

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここは…ヒーロー科だぞ」

 

 

「「「(なんか!!いるぅぅ!!!)」」」

 

そこには寝袋に入りながらゼリーを一息で食べる不審者が寝そべっていた。しかし皆が動揺する中、この男一人だけは次なる行動のため動いていた。

 

 

「あっ!野生のポリスメンが!!」110番!

 

「通報はやめろ石楠花」

 

不審者は皆口々にそういうんですよ。そんな言葉で止まるほど俺は甘くは……でもこの不審者何処かで見たことあるんだよな。

 

「ハイ静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君達は合理性に欠くね」

「「「(先生!?)」」」

「担任の相澤 消太だ。よろしくね」

「「「(担任!?)」」」

 

まさかの先生。そしてまさかの担任。皆が不審者だと思った男はまさかのヒーロー科の担任だったのだ。その事実に多少なりとも動揺する中…

 

「貴方が齧歯類が言ってた相澤君か」

「何様だお前は。あと齧歯類じゃない、校長先生だ」

 

マイペースだった。

そしてクラスメイト達も鱗の初対面でのキャラが濃すぎたため、この短時間でありながら鱗の発言に段々と慣れて来てしまっている。

 

 

クラスを石楠花色に染め上げられる時間は刻一刻と迫っている…

 

 

 

 

 

 



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個性把握テスト

ハジケを絵なし文章のみで表現する難しさよ…


「早速だが体操服(コレ)着てグラウンドに出ろ」

 

そうメッセージを残して先生は去っていった。きっとグラウンドに移動したのだろう。

 

「じゃあみんなで移動しようぜ!最下位はカブトボーグの刑な!」

「待って石楠花君!?切り替え早すぎない!?」

「緑谷よ、今グラウンドに出ろって言われただろ?なら移動するだけだ。他に何かあるのか?」

「えっ…急に正論?」

 

そう言って鱗は移動していく。初めは不安に思ったが先生からグラウンドに出ろと言われたのだ。次々と更衣室に移動して行く。何より鱗の放ったカブトボーグの刑が恐怖心を煽り、早足気味で。出会って初日だが「アイツは必ずやる」、何故かそう思えた。

 

 

 

 

 

「「「個性把握…テストォ!?」」」

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ」

「ミートローフ早食い大会は!?」

「そんなもん初めからねぇよ、黙ってろ石楠花」

「先生俺にだけ当たり強くない?」

 

俺先生に何かしたっけ?

 

「雄英は"自由"な校風が売り文句。そしてそれは"先生側"もまた然り」

「「「……?」」」

「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈、中学の頃からやってるだろ?"個性禁止"の体力テスト」

 

そこで一区切りつけ、先生はまた話し始める。

 

「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だよ」

 

そして周りを見渡し、嫌そうな顔をしながら鱗を見てボールを手渡す。

 

 

「今年の首席はお前だな、石楠花」

「うい」

 

 

 

 

 

 

「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「うぉっ!?急に叫んでどうした、思春期?」

 

無理もない。出会って30分も経ってないのに数々の奇行を繰り広げてきた男が自分達ヒ-ローの卵の中で最も良い成績を残したというのだ。驚かない方がおかしい。

 

「この頭のおかしい奴が入試1位なのか!?」

「そうだぜ!ここまで頭のおかしい奴なんてそうそういないぜ!」

「頭のおかしい奴と思ってたのに、実はすごい奴だったの!?」

「頭のおかしな奴にもしかしたら筆記負けてんのかよ!?」

「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「よし、お前らそこ並べ。『きたねぇ花火だ』の刑だ」

 

こいつら失礼すぎるだろ。まだ一言も話したことない奴ばかりなのに何をもう頭のおかしな奴認定してんだ。俺なんてまだマシな方だろ。もっとヤバい奴なんてそこら中にいるって。

 

「こいつは確かに奇行が目立つが実力は折り紙付きだ。奇行は目立つがな」

 

おい、なんで二回言ったんだ。俺はわりかし普通で健全なんだよ。

 

「それより石楠花、中学の時ソフトボール投げ何mだった?」

「91m」

「…個性無しだぞ?」

「マジよりのマジです」

 

そりゃ小さい頃から体鍛えてんだ。それぐらいは投げれるよ。

 

「…じゃあ個性を使ってやってみろ。円からでなきゃ何してもいい。早よ」

 

個性を使ってやる…か。まぁとりあえず…

 

「まずは個性を使うか。…ふん!」

 

鱗が力むと同時に腕が変形していく。シャコフォルムだ。

 

「すげー!なんだあれ!?」

「腕がでかくなって触角生えた!異形型か!?」

「かっこいい~!!」

「アレは一体何の個性なんだ?」

 

そうだろうそうだろう!シャコのカッコよさがみんなにも伝わってきたということか!そうだよ、シャコはカッコイイんだよ!

 

「性格がアレじゃなかったらもっとカッコいいんだけどな」

 

金髪、お前の顔は覚えたぞ……!

でもシャコって殴ることにはエグイぐらい特化してるけど投げることに関してはどうなんだろ?ボールを殴って飛ばしてもいいけど本気で打てば多分ボールが死ぬ。というか意地でも投げたい。投げろって言われて殴ればなんか負けた気がする。

 

ならばパンチを打つ時の腕のスナップを使うか。シャコのスナップの速さなめるなよ。パンチスピード時速80㎞やぞ?

 

では早速……他人のズラを扱うように優しく持ち、サバをアザラシの口に狙って投げ込むように腕を引いて、元気の出る掛け声を一発。

 

 

 

 

「かいわれぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!」

 

 

「「「(かいわれ?)」」」

 

うん、我ながらいい掛け声だ。カスピ海まで飛んだな。

 

「まず自分の『最大限』を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

相澤がこちらにモニターを見せる。そこに表示された距離は……

 

 

 

 

 

938.7m

 

 

 

 

まずまずの成績ってとこかな?まだもうちょい飛ばせる気がする。女の子が声援をくれたら多分2000m超えるぜ。

 

「なんだこれ!?すげー()()()()!!」

「900m越えってマジかよ!?」

「個性思いっきり使えるんだ!流石ヒーロー科!!」

 

みな口々に感想を吐き出していく。目の前の結果に興奮するもの、個性を使えることにテンションが上がるもの、反応はさまざまである。だからこそ相澤の纏う雰囲気が変化したことに気づかなかった。いや、気づけなかった。

 

「……面白そう…か

 

 

 

ヒーローになるための三年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?

 

 

この瞬間に生徒たちは雰囲気が違うことに気づいた。だが気づいたところでもう遅い。相澤は次にとんでもないことを口にした。

 

 

「よし、トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し……

 

 

 

 

 

 

 

除籍処分としよう

 

「「「はあああ!?」」」

 

おいおい、除籍ってヤバいじゃん。しかも()()()()()()()()()()()。俺は人の放つ電磁波まで見ることができる。だからこそ人が嘘をつくときは少なからず電磁波が乱れる。それを見ることで俺は人が嘘をついているかいないかを判断することができる。よく言うじゃん?『体は正直だねぇぇぇ!』ってやつ、ようはそれだよ。

 

でもさっきの言葉に電磁波の乱れは全くなかった。つまり最下位が除籍っていうのは少なくとも嘘じゃないってことだ。

いやヤバくない?何がヤバいって先生初日からフィーバーしすぎじゃない?

 

「生徒の如何は先生(おれたち)の“自由”。ようこそこれが……

 

 

 

 

 

 

 

雄英高校ヒーロー科だ

 

 

 

 

 

 

おいおい、なんて楽しそうなこと考えやがるんだよ。ようは全力で取り組んで先生に実力を認めさせりゃいいんだろ?

 

「因みに石楠花、お前ふざけたら除籍な?」

「ファッ!?」

 

俺だけなんでそんなハードモードなんだよ!?しかも嘘じゃねえし!!

俺からハジケを取ったら完璧すぎるイケメンクールガイしか残らねえじゃねえかよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

[50m走]

俺が走る相手は障子君というらしい。個性は“複製腕”で自分の体の部位を再現できる。俺なら足を複製して動物みたいに走るかな。でも傍から見たら新種の生物みたいになるから却下で。

 

「俺は障子だ。よろしく」

「よろよろ、俺は石楠花。それより体を複製できるなら背骨とか横隔膜とか複製できんのか!?」

「いや…考えたこともなかった…」

「そっか…まぁ…うん、頑張ろうな…」

「お…おう(露骨にがっかりしたな…)」

 

 

記録:2秒72

 

 

[握力]

「ミドリンのことかー!!!!」

「えっ、僕!?」

 

記録:1030キロ

 

「おいこっちにもゴリラがいたぞー!!」

 

シャコの捕手ってハサミの進化系なんだぜ?

 

 

[立ち幅跳び]

「HEY!!海に向かって大ジャンプだ!」

 

記録:10m60㎝

 

 

[反復横跳び]

「影分身作ってやるぜぇ!!」

「うわ!石楠花のやつめっちゃカサカサ動いてる!?」

 

記録:282回

 

「来年あたりには影分身でも作るか」

「石楠花、お前イエローカードな。あと一枚で除籍だ」

「なんで!?」

 

 

[ボール投げ]

「お前はさっき投げたから見学だ」

「うぃーっす」

「返事は『はい』だ」

「はい」

 

さてと、急に手持ち無沙汰になってしまった。ただ見るのも詰まらねぇから素数演算しながらクラスメイトの結果を見て政界の今後について考えるか。あっ、無限出た。凄ぇな緑谷と話してた女の子。名前は知らん。

 

鱗がクラスメイトの個性について考えている間に何やら周囲が騒がしくなったように感じ、周りを見ると初めて見る顔が後ろにいた。

 

「お前さっきから凄ぇ記録連発してたよな!可笑しな奴だと思ってたけどすごい奴だったんだな!あっ、俺切島 鋭児郎!よろしくな石楠花!」

「ああ、よろしく鉄哲」

「今切島だって言っただろ!?」

 

ごめんな、素で間違えたわ。何かものすごく性格が似てたから。しかも個性が硬くなる系だろ?生き別れの兄弟か何かか?

 

「アンタ凄かったんだね。ごめんね、頭のおかしい奴だと思ってたよ。うちは耳郎 響香、よろしく」

「よろしく、耳 たぶ子ちゃん」

「アンタイチイチ名前間違えないと気が済まないのか!?」

 

いや、耳が特徴的だったからつい…ね。

アレだろ?その耳でヴィラン味方問わず叩きまくって調教するんだろ?

 

「…何かアホそうなこと考えてそうだから一発殴らせてくれ」

「女の子がそんな下品な言葉を話しちゃいけねーぜ。落雁食うか?」

「何も下品なこと言ってねーよ!?それとどっから出したのソレ!?」

「何処って…内ポケだろ」

「何で今日配られた体操服に内ポケ着いてんの!?うちの無いんだけど!?」

 

落雁に対する愛は次元を越えるんだよ。願えば内ポケが生まれる、それが自然の摂理だろ?

 

「なぁ、俺も混ぜてくれよ!俺は上鳴 電気!よろしく!」

「ただし金髪、てめぇはダメだ」

「えっ何で!?ちょっ…そんな無言で関節極めに来るな…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺は忘れない。お前が「性格がアレじゃなかったらもっとカッコいいんだけどな」と言ったことを。

 

「ギブギブギブ!!誰かこの可笑しな奴から俺を解放して!?」

「そうか。パロスペシャルも受けたいってか。物好きだなお前も」

「言ってねーよ!?わかったから技を…あぁぁぁぁぁぁ!?」

 

鱗が元気よく上鳴に関節技を決めている。その時、掛け声と共に凄い音が鳴り響いた。

 

「SMASH!!」

 

うおっ!?何事?

緑谷めっちゃ飛ばしてるじゃん。流石オールマイトパワー。でも指変色してるな、骨がバキバキやん。オールマイトパワーを使って骨が折れるってことは…自分の体に個性がついてきていないってことか。

 

周りに頭がおかしいと言われても、この男は地頭は良いのだ。現場の状況や人を見ることで瞬時に状況を把握する脳を持っている。だからこそ、次に起きうる事態も予測して動き始めた。

 

「どーいうことだこら ワケを言えデクてめぇ!!」

「うわああ!?」

 

緑谷を見下していた爆豪なら必ず動くと感じていた。無個性だと思っていた相手が実は個性を持っていて、尚且つ大記録を叩き出したのだから。だからこそ先回りして爆豪の首根っこを掴む。動き出していた相澤先生より先に。

 

「ぐぇっ!?」

「おいおい、何突っ込んで行ってんだ?」

「離せ舐めプ野郎!?あのデクが個性を使ったんだぞ!?あの無個性で道端の石っコロだった奴が!?」

「頑張ったんじゃねーの?お前には何が見えてんの?緑谷が見えてねぇの?その目は落雁だったのかよ。いや、和三盆か?やっぱりラムチョップだな」

「だあぁぁぁぁぁぁぁ!!俺の目を食べ物にたとえるんじゃねえ!?イライラするわ!?」

「美味しく食べろよ?」

「うるせぇ死ねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ふぅ…何とか抑えることができたか。

絶対動くとわかってたからな。目の前の人に襲いかかる、コイツの習性だよ。だからさっさとこの場から離れな緑谷。ほら、シッシッ。

 

石楠花のジャスチャーが通じたのか緑谷は感謝を述べながら飯田と無限女子の元に帰っていった。

 

それと入れ替わるように相澤先生がやって来た。

 

「よく止めた石楠花。俺の個性を何度も使わせるな。俺はドライアイなんだ」

「良い個性なのに先生が残念ですよね」

「黙れ」

 

 

 

 

 

この後長座体前屈、上体起こし、持久走と測ったが、どれも平均以上の記録を叩き出すことができた。『長座体前屈の石楠花』と言われた俺を舐めてもらっちゃあ困るぜ。

 

あと持久走を原付で走っている女の子がいた。とりあえず並走しながら横乳を眺めておいた。

 

照れてた。可愛い。

 

 



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ヒーロー基礎学

ハジケリストのハジケ度合い…!
一体何ハジケすれば読者の期待に応えられるんだ…!?


「んじゃパパッと結果発表」

 

トータル成績が最下位の者が除籍。その事実に生徒がドキドキしながら先生の動向を見守る。特に緑谷は最下位争いをしていたせいか必死に願っている。鱗は歴代征夷大将軍について考えていた。

 

しかしいい意味で皆の予想を裏切る一言が先生から放たれた。

 

「ちなみに除籍はウソな」

 

「「「!?」」」

 

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

「はーーーーーーーーーー!?」

 

皆が一様に驚く。それもそうだ。結果次第で自分の人生が左右されるかもしれない場でのこのウソなのだから。緑谷に至っては人相が変わるぐらい驚いている。

 

「緑谷その顔どうやってんだ?顔面がゲシュタルト崩壊起こしてんぞ?英文法にでもなるつもりか?」

 

鱗だけはマイペースである。

しかし内面は一応驚いている。除籍という言葉に嘘はなかった。だが今は合理的虚偽と言っている。つまり全員の個性や動き方を見て、まだ見込みがあると思われたのだろう。

 

「あんなの噓に決まってるじゃない…ちょっと考えれば分かりますわ…」

「いや原付パイねーちゃん、あれはやるときはやるハジケリスト予備軍の目だぜ?」

「八百万 百ですわ!?」

「石楠花、俺をお前と同じ扱いするな。今回は見逃したが次度を越えてふざけたら除籍だからな?」

 

そして順位が発表される。

1位は原付パイねーちゃんこと八百万 百、2位は石楠花 鱗、そして最下位は緑谷 出久となっていた。

 

こうして入学早々もっとも精神的に過酷な行事が終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これらは個性把握テストが終了してすぐ、校舎裏での出来事。

 

「相澤君の嘘つき!」

 

相澤を待っていたのはこっそり自分の後継者である緑谷を見守っていたオールマイト。そのオールマイトが相澤に自分の考えを話し始めた。

 

「『合理的虚偽』て!エイプリルフールは一週間前に終わってるぜ。君は去年の一年生…()()()()()()()()()()にしている」

 

一クラス丸々除籍。雄英高校でなければ大問題になりそうな出来事だ。しかし、去年一クラス丸々除籍した男が今年は誰一人除籍せずにいる。

 

「『見込み無し』と判断すれば迷わず切り捨てる。そんな男が前言撤回ッ!それってさ!

 

 

 

 

 

 

 

君も緑谷君(あの子)に可能性を感じたからだろう!?

 

「……()()?」

 

本当に隠す気があるのかと言われるぐらい何の事情も知らない相澤でも流石にオールマイトが緑谷を気にかけていることがわかる言葉である。これがナンバーワンヒーローで大丈夫かを思うくらいに。

 

「随分と肩入れしてるんですね…?先生としてどうなんですかそれは…」

「(ギクッ)」

「“ゼロ”ではなかった…それだけです。見込みがないものは即座に切り捨てます。半端に夢を追わせることほど残酷なものはない」

 

相澤が去っていたあと、一人残されたオールマイト。そしてぽつりと呟いた。

 

「(君なりのやさしさってわけかい相澤君…でも)やっぱ…合わないんだよなー」

「あっ、そうだオールマイトさん」

「えっ!?何だい相澤君!?(シット!まだ近くにいたとは…まさか聞かれて!?)」

「俺とあなたが合う合わないは置いといて…」

「(やっぱり聞かれてたー!?)」

「石楠花 鱗、言動や話す言葉に問題しかありませんが、あいつは可能性の塊です」

「へぇ、君がそこまで言うなんて珍しいね。明日は雨かな!?」

「もう一度言いますが言動や話す言葉に問題しかありませんが、ボールを投げる瞬間…あなたのような気迫を感じました。磨けば光る、ただそれだけです。では」

 

そう言葉を残し、相澤は本当に去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

下校時間。今日作った友達と帰る者もいれば一人で帰る者もいる。鱗は当然後者だ。いや、後者だった。

 

「よお石楠花!一緒に帰ろうぜ」

「帰りにマック寄っていかね?」

「オイラも混ぜてくれよ!石楠花とは仲良くなれとオイラの直感が告げてるんだ!」

「おお、切島と上鳴、それに腸内細菌か。じゃ、帰ろうぜ」

「おっ、やっと名前覚えられたんだな!」

「覚えられてねーじゃねぇかよー!!何でオイラだけ腸内細菌なんだよー!?」

 

鱗はハイスペックな割に人の名前を覚えるのが苦手だ。一度目は必ずと言っていいほど間違える。そして自己紹介をしていない人ならなおさらだ。

 

「オイラは峰田 実!石楠花!お前はおっぱいは好きか!?

 

なお、ここは教室のど真ん中である。

男子が尊敬するような目で見つめ、女子はドン引きの視線を向ける中、質問された鱗の反応は決まっていた。

 

「アホかそんなもん………半額セールよりも好きだが?

「同志よ!!」

 

連合軍誕生の瞬間である。この男に羞恥心という感情はほぼ無い。だからこそ女子がいても堂々と話すことができる。「サイッテー!!」という女子の声が聞こえてくるが気にしない。

 

「おいおい戦隊ピンクよ、出会って初日でそう非難するもんじゃねーぜ?」

「出会って初日に教室のど真ん中で猥談する奴に言われたくないよ!?あと芦戸!あ・し・ど・み・な!?」

「男ってのは猥談してこそ存在価値を認めさせることができるんだよ。ほら、あそこで見てるガルウィング砂藤も混ざりたそうにしてるじゃあないか」

「おい俺まで巻き込むなよ!?」

 

この男は息をするかのように平気で他人も巻き込む。哀れ砂藤、男子たちは心の中で砂藤に合掌する。

 

それを見かね、この会話を終わらせるために一人の女性ヒーローが立ち上がった。

 

「そこまでにしときな。アンタ今でもヤバいのにもっと頭のおかしい奴になっちゃうよ?」

 

みんなの代弁者、耳郎である。

 

「どうした…まさかそんなに混ざりたかったのか!?ごめんな…今度からいの一番に誘うからよ。だからそんなメソポタミア文明が滅んだかのような顔するなよ」

「誰が混ざるか!?あとそれどんな顔だ!?」

 

だがこの男に常識は通用しない。そしてその波に乗るかのように峰田が口を開いた。

 

「そうだぞ!おっぱいが無いからってオイラ達の会話にやっかみを付けるなよ!?」

「あぁ…!?」

 

この出来事を切島はこう答えた。「般若がいた」…と。

だが鱗はマイペースだった。

 

「落ち着け耳郎!よく聞け…お前はかわいい!

 

「……ふぇ!?」

 

男子たちには石楠花が変態から勇者に見えた。

 

「いいか耳郎!お前はかわいい!そのクリっとした目にプリっとした口。肌も綺麗で何より耳がキュートだ!もっと自信を持てよ!そう思うだろみんな!!」

「わかったから…もう……やめて…っ」

 

この時みんなは思った。「あっ、かわいい」と。

 

「だからこそよく聞け!いいか!」

「うっ…うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貧乳はステータスだ!!」

「ふんっ!!」バキッ!

「あべし!?」

 

 

「「「えぇ…」」」

 

悪は倒された。

うるさかった元凶が成敗されたことで、静かになった教室から一人また一人と家に帰っていった。

 

とりあえず鱗の亡骸に手を合わせてから帰る生徒が続出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英高校の1日を紹介しよう!

午前は必修科目の英語などの普通の授業!

 

「おらエヴィバディヘンズアップ盛り上がれー!!」

 

初日のインパクトが強すぎて当たり前の授業が普通すぎるように感じる事態が発生。ヒーローの卵といえど義務教育は必須、だからこそ普通の高校生のように勉強をするのだ。

 

「(普通だ)」

「(普通だ)」

「(普通だ)」

「(普通だ)」

「(くそつまんね)」

「(関係詞の場所が違うから…4番!)」

「(校長室にネズミ捕りぶん投げたらどうなるんだろ?)」

 

 

昼は大食堂で一流の料理を安価で頂ける!

「ランチラッシュ先生ー!俺、ババロア〜そっと落雁を添えて〜を一つ!」

「いや〜石楠花、流石にそれはないんじゃ「あるよ!」あんのかよ!?」

 

 

そして午後の授業、いよいよヒーロー基礎学!

 

「わーたーしーがー!!」

 

「来っ…!」

 

「普通にドアから来た!!」

 

「オールマイトだ!すげぇや、本当に先生やってるんだな…!!」

銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだ……!画風違いすぎて鳥肌が……!」

 

確かに画風が違うな。特にあの目元どうなってんだろ?どう頑張れば人は目元に天然のサングラスをつけることが出来るんだ?

 

鱗が素っ頓狂な事を考えている間にも話は進んでいく。

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作る為様々な訓練を行う科目だ!早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」

 

戦闘訓練。確かにその言葉だけでご飯3杯はおかわりできるぐらい熱い言葉だな。爆豪なんて顔がヤバいことになってるし。

 

「そしてそいつに伴って…こちら!!」

 

オールマイトの言葉と共に壁が少しづつ飛び出してくる。その中には番号が書かれたスーツケースのような入れ物が人数分入っていた。無駄にハイテク。

 

「入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえた戦闘服(コスチューム)!!!」

「「「おおお!!」」」

 

コスチューム。その言葉だけで一つの物語が書けそうな程の素晴らしい言葉だ。ヒーローを夢見る少年少女にはサンタさんからのクリスマスプレゼント並みに嬉しいことだろう。

 

「着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!」

「はーい!!!」

 

そうして各々が自分のコスチュームを手に更衣室へ向かって行く。さて俺のコスチュームは、まぁ()()()()()()()()()()()()()()()()()から今回で2度目なんだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

[男子更衣室]

「テストの時は急いでたしそこまで見てなかったけどよ…」

「あぁ、言いたいことはわかるぜ…」

 

上鳴と切島がコソコソと話を進める。だが視線はある1人の男に集中している。話しているのは2人だけだが、みな同じことを考えているのだろう。視線の向きは皆同じだ。

 

「お前ら何ジロジロ俺を見てんの?そっち系か?ごめんな…俺は純粋に女の子が好きだからお前らの気持ちには応えられねぇよ…」

「「「俺達も女の子が好きだわ!!」」」

 

「あっ、そう。なら何でお前ら俺のこと見てんの?」

「この際言うけどよぉ…石楠花お前……

 

 

筋肉の化身か!?」

 

そう、鱗の筋肉を見ていたのだ。男子たる者、筋肉に憧れないものはいない。ヒーローも目指すものなら身体はある程度鍛えられているであろうことは分かっていた。しかし鱗のような使い込まれた筋肉はそうそういない。

 

大きすぎるような無駄な筋肉ではなく、全身が引き締まり、且つ最大限のパフォーマンスを発揮できるよういつでも万全の態勢で整っている人類の到達点と言っていい筋肉である。

 

「そんなアホなこと言ってないでさっさと着替えろよ?俺は着替え終わったから先行くぜ?」

「着替え終わったってお前もまだ何も…何で着替え終わってんだよ!?しかもそんなピチッとした宇宙服みたいなやつ!?いつどうやって着替えたんだ!?」

「石楠花式二毛作水稲早着替えだよ」

「何それ!?」

 

そう言い残して鱗は更衣室を後にした。筋肉やら早着替えやら多くの疑問に頭を悩ませたが、まずは授業に遅れまいと早々に着替えていく。

 

そんな中、緑谷は男子の中で着替えるのが一番遅かった。

母が買ってくれた服を元に考えられたコスチューム。だからこそ丁寧に着替え、忘れ物がないかを確認し、演習場に向かって駆け出した。

 

そして一番最後に演習場へ到着し、最初に目にした光景は…

 

 

 

 

 

 

 

「お前何があったらこんなことになるんだ!?」

「しっかりしろ石楠花!?」

 

「うぅ……もうお嫁に行けない……」

「シュ☆ク☆セ☆イ☆しなきゃね……!」

 

 

 

血塗れで器用に顔だけ天井に突き刺さっている石楠花だった。

 

 

 




コスチュームはテラフォーマーズで鬼塚 慶次が来ているアネックスのユニフォームにごちゃごちゃした小物を付けた感じです。


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戦闘訓練(の前のハジケ)

楽しみにしておられた方お待たせしました。いや、待たせすぎてしまったのかもしれません!


時は少し遡る。

 

早くコスチュームに着替え終わった鱗は演習場へ向かう。

演習場には早く着替え終わった女子達や爆豪、轟など比較的早く着替え終わっていた面子が揃っていた。

 

「おう早いねバッきゅん。随分とお洒落な小手を付けてるじゃないの。俺の腕の真似か?」

「誰がテメェのクソ腕なんか真似するか!?自分の個性を活かす為じゃクソが!!」

「そう照れるなって。中学1年生の時のお前の将来の目標は『石楠花 鱗様のようなクールな男になる!』だっただろ?俺は嬉しすぎて号泣したの覚えてるぜ?」

「勝手に俺の過去を捏造すんなやクソが!!誰がテメェみたいな奴になるか!!」

 

も~、ツンデレ率99%のかっちゃんめ、俺に憧れてるのなら素直にそういえばいいのに。シャイの極みかよ。

 

そういえば俺まだあの氷の個性の人と話してなかったっけ?まだ人数が少なくて授業も始まっていないこの時間なら親睦を深めるのにちょうどいいや。探せばすぐ見つかるしな。

おっ、見っけ!壁にもたれかかってた。そういうことがカッコいいと感じるお年頃だもんね。しかもあそこまで氷を自己主張するタイプの人間初めて見たわ。ハジケリストの鑑かよ。

 

「オッスオッス、おれ石楠花 鱗。よろしくな、ソーダ味」

「ソーダ味って俺のことか?俺は轟 焦凍だ」

「それ左目見えてんの?落雁食う?」

「俺はなれ合うつもりはねぇよ。あっち行ってろ」

「連れないこと言うなよ~!HAHAHA!」

「ッチ…!」

 

舌打ち程度じゃ俺は折れないね。今までに1万回以上の舌打ちをくらってきた俺からしたら今のはまだ「もうちょい話しかけてもいいですよ?」という意味合いの舌打ちだな。舌打ちコンシェルジュを舐めるなよ?

 

「あっ、石楠花君の服かっこいいね!」

「ありがとう!そんなハッピーな君には落雁をあげよう!」

 

まぁ、舌打ちするクールイケメンよりも目先の女の子だよね!

 

 

「石楠花君の服と腕がマッチしてかっこいいね!それに比べて私は要望ちゃんと書けばよかったよ…パツパツスーツんなった。はずかしい…」

「大丈夫だよモチモチ∞モチ。そのパツパツ具合がいい感じにヴィランの煩悩を刺激して動きを鈍らせてくれるよ」

「モチ!?それに嫌やわ!煩悩を刺激して鈍らせるなんて!?」

「大丈夫、田楽(でんがく)マン辺りが止めを刺してくれるから」

「田楽マンって誰!?」

 

流石三重県出身、いい感じに大脳に響くツッコミをしてくれる。えっ、何で出身地を知ってるかって?普通に話していることが聞こえてきただけですが何か?(シャコイヤー)

 

「またアンタは息を吐くようにセクハラ発言して…」

「そうですわ!そのような発言するものではないですわよ!」

 

おっと、この声は耳郎と八百万か?

おいおいセクハラする人間に自ら近づくとは焼きもちかよ。

まぁ何処にいても俺の『いともたやすく行われるえげつない行為(D4C)』からは逃げられないがな…!

 

そして鱗が振り返ったと同時に動きが停止した。

しかしその目はある一転に集中していた。

 

「…?どうしたのでしょうか?」

「ウチは石楠花が言いたいことが分かった。それと同時に非常にムカムカしてきた」

「えっ?えっ?」

 

そして鱗は深く息を吸い込み……

 

 

 

 

「痴女がいるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!」

 

 

 

全力で叫んだ。

そりゃそうだ。目の前に胸元のはだけたハイレグみたいな痴女御用達の服をコスチュームとして着ているA組一発育がいい女子がいるのだから。

 

 

 

「まぁ!失礼ですわね!個性の都合上このような構造が適正なのですわ!」

「適正でももうちょい隠しなよ!ウチも最初は要望不伝達のコスチュームだと思ったんだから」

「某としては目の保養でありがたいでごじゃるよ、デュフフフ!」

「石楠花は黙ってろ!?あと妙にムカつキショイ話し方すんな!!」

「痴女を前にして『ムカつキショイ』なんて新語を作るなんて中々やるな耳郎。今年の流行語大賞は耳郎の一人勝ちだよ、おめでとう」

「黙ってろ!!」

「あの……これでもかなり当初よりは布の面積が増えたのですが…」

「「痴女かよ!?」」

 

この日、石楠花の入学後初ツッコミが確認された。

耳郎との親密度が5上がった。

 

 

「とにかく!石楠花はこれ以上やらしい目でヤオモモを見ないこと!」

「それ腹ペコの動物の前に餌を置いて『3年間食べずに待っててね』って言ってるようなもんだぞ?」

「そんなわけねーだろ!?」

「わかったよ、とりあえず耳郎の(無い)胸見とくから」

「何でそうな…待て今非常にムカついたのは気のせいか?」

「気のせいだろ、更年期か?」

「イヤホンジャック!!」

「ぐあぁぁぁああ!?」

 

こいつ…!的確に俺の思考を読み取り、躊躇なくイヤホン爆音攻撃してきやがった…!まさか…殺し屋か!?あの濃密な殺気は間違いなく殺し屋だ!エージェントペタコンMarkⅡかよちくしょう…!

 

「石楠花…?」

「ういっす」

 

いい笑顔だね。顔に影が差した黒い笑みじゃなかったら向日葵ってあだ名をつけるぐらいよかったのに。

 

「もうその辺りで勘弁してあげなよ。石楠花君もわざとじゃないんだよきっと!」

 

おいおい天使が降臨なされたのか?

この声は葉隠か?なぜ女子は俺の後ろから声をかけることが多いんだよ。俺の男らしい背筋に見とれちまったのか?ならしょうがないな。

 

そこで待っててくれよマイラブリーエンジェル葉隠。今稀代の天才石楠花様があなた様のお顔を崇拝するために振り向きますからね。

 

 

……ていうか葉隠って透明だからコスチュームどうしてるんだろ?

まさか全裸なんてことはないよな。きっとそうだ、そうに違いな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てっ…手袋と靴のみ着用の全裸美少女だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカなぁぁぁぁぁ!?」ドガンッ!!

 

「「「石楠花/君/さん/ちゃん!?」」」

 

 

石楠花は何かに殴られたように10m程吹っ飛び壁に激突した。石楠花に10のダメージ!

 

 

「アンタ急にどうしたの!?何急に吹っ飛んで壁にヤ〇チャ倒れポーズでめり込んでんの!?」

「どうなされたのですか!?」

「ごめん!?私透明以外の新しい力でも獲得したの!?」

「サッ…!」

「「「さ?」」」

「サイバイマンめ…!!」

「「「あっ、よかった。いつも通りだ」」」

 

 

あぶねぇ……!俺じゃなかったら5回は死んでたな…!

なんて破壊力なんだ…!まるで童貞から進化した魔法使いが待ち続けている夢のような存在が目の前に降臨なさるとは…!

 

葉隠の全裸を視界に収めた瞬間から脳内ブルーレイをフル稼働して大脳皮質にフルHDで保存し、俺の息子に送られる元気エネルギーを中学の時教員のBBAが全校集会中にパンチラをして大多数の生徒を保健室送りにした忌まわしき事件を思い出すことによって強制的に押さえつけたことにより、何とか吹っ飛ぶだけに留まった訳だが……葉隠半端ないって。

 

今だけは何でも見通す石楠花アイが憎い…!

葉隠のおっpゲフンゲフン…ハリのある乳房と桃色に聳え立った乳頭。

普段あらわになることはない、新たな生命の誕生を迎えるため必要不可欠な象徴たる女性器、+おけけ。

全てが鮮明に色褪せない思い出となって俺の頭の中でチューチュートレインして来やがるっ…!

 

まさか自分の体を使ってまで俺の魂を取りに来るとは、その根性天晴なり!だが裸で登場レベルなら毎日ビデオで目に焼き付けてるんだよ!!残念だったな!

 

まぁクラスメイトの全裸という背徳感でもう既にヤバいが、童貞界のハジケリスト筆頭の俺を倒すなんて10年早い「ごめんね石楠花君!?怪我してない!?大丈夫!?」わ……

 

 

 

 

 

 

 

クラスメイトの美少女の全裸+上目遣い涙目内股胸お股強調フルコンボだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブハぁぁぁ!?」ズドンッ!

「「「ええええええ!?」」」

 

 

葉隠の凶悪コンボの完成により、天井に突き刺さった石楠花が完成した。

 

 

「何でアイツはまた吹っ飛んだの!?しかも血塗れで上に!?」

「知りませんわ!?何があったのでしょう…」

「えっ!私やっぱり新たな個性に目覚めちゃった!?」

 

三者三様の意見が飛び交うが解決には至らない。

しかしそこで精神的支柱こと梅雨ちゃんが名案を思いつく。

 

「爆豪ちゃんなら同じ学校だったらしいから、何か知ってるんじゃないかしら?」

「「「それだ!」」」

「アアッ?」

 

その言葉と同時に女子達が爆豪の元に集まる。しかしそんな状況でも一切喜びを見せないのが爆豪 勝己と言う男だ。

 

芦戸「ねー爆豪!石楠花は何で刺さってるの?」

耳郎「お願い、気になって眠れないんだ爆豪」

麗日「何でなん爆豪君」

蛙吹「何故かしら爆豪ちゃん」

八百万「何故ですの?」

葉隠「教えて爆豪君!」

 

「だあぁぁ!うるせぇんだよ!誰だテメェら!」

 

この通り平常運転である。

 

「えぇー教えてよ爆豪…あっ、まさか知らないの?」

「はあぁ!?知ってるわクソが!」

 

チョロい。

 

「で、何で吹き飛んだの?」

「あぁ?そんなもん簡単だろ。アイツはアホみたいに目が良い、それこそ気持ち悪いぐれぇにな。だからそこの透明女の裸でも見えたんだろ。アイツ前に透明でも見えるって言ってたしな。これでいいかクソが!」

 

これ以上にないほど簡潔にわかりやすい説明であった。だからこそ約一名は思考が停止する。まさかと思った可能性の一つが実現してしまったからだ。

 

「今…目がいいって言った…?」

「…言ったね」

「透明でも…見えるって……言った…?」

「…言ってたわ」

「裸も…見える…?」

「…そうらしいね」

「私…何したっけ…?」

「…裸で近づいていましたわ」

「裸を…見られた?」

「…そうだな」

 

なんて声を掛けていいのかわからない…!女子たちの思考は偶然にも一致した。

 

「ねぇ…もしかして石楠花君から見たら私って…痴女?」

 

その問いに対して誰も答えなかった。いや、答えられなかった。誰も「痴女っていうのはこのハイレグポニーテールのことを言うんだよ?」とは言えなかった。

そしてそんなお通夜みたいな雰囲気の中…

 

「俺復活!」

 

石楠花復活、カオスの誕生である。

 

「どうしたそんな葬式みたいなテンションで。ペットのところてんが食われたのか?」

「いや、その…石楠花ってさ?透明でも見えるの?」

 

この一言で賢い石楠花はおおよそ理解した。そして先ほどの光景を思い出して息子が暴れださないように脳が円周率のループ再生を始めた。この男、気が利くのである。

 

「そのことか…葉隠!!」

「はっ、はい!!」

「俺が今からいうことは一つだけだ。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国宝級の裸体をありがとうございました」

 

「いっ…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 

 

 

全裸の女の子を前にした直球の誉め言葉である。

そして目の前で女の子を汚される瞬間を見た女子たちの行動は早かった。

 

 

 

「「「おらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

女子の恨みがこもった5人分の渾身のアッパーカットが顎に直撃。

再び石楠花は天井に帰っていった。逆生け花の完成である。

 

そしてすべての出来事が終わったと同時に着替え終わった男子たちが演習場に到着し、石楠花(生け花モード)を目撃する。

 

 

 

 

「お前何があったらこんなことになるんだ!?」

「しっかりしろ石楠花!?」

 

「うぅ……もうお嫁に行けない……」

「シュ☆ク☆セ☆イ☆しなきゃね……!」

 

 

そして最後に緑谷が演習場に到着することでこの騒動はようやく終了した。

 

 

「えっ…これどういう状況!?」

 

 

 




オールマイト「(若い子たちの会話の中に入っていいものなのか……えっ!?何で石楠花君器用に天井に刺さってるんだい!?)」

この間オールマイトはずっとオロオロしていた。


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戦闘訓練(本番)

もうすぐUA20万越えだと…!
これがハジケリスト効果というやつか…!


俺は現在日本に伝わる由緒正しき謝罪の礼法、DOGEZAを実践しているところだ。いや、土下座をより進化させた謝罪の究極五点倒地態勢、「土下寝」に昇格したところだ。何故かって?

 

目の前に修羅がいるからさ。

 

「言い残すことはあるか?石楠花」

「おっ…御慈悲を…!」

「言い訳無用!」

 

クソっ!魔女裁判ぐらい話を聞いてもらえねぇ!

周りの男共は修羅の覇気にやられて使い物にならねぇ。それ以前に話の顛末を聞いた瞬間に全員去って行きやがった!

 

特に峰田は血涙流しながら呪詛吐いて去りやがった。俺呪われてないよな?完成度凄かったぞ。

 

「石楠花ちゃん、裸が見えたのは個性の性質上、それと裸のままだった透ちゃんに非があるかもしれないけれど、その後のデリカシーのない発言は見直すべきだわ」

「蛙吹大明神…!」

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

デリカシーか。俺は今までデリカシーに欠けた発言をしていただろうか?心の底からの賛辞だったはずなんだが。

 

「で、どうだった?うら若き乙女の裸を見た感想は?」

「耳郎ちゃん!?」

「最高でした!」

「石楠花君!?」

「天誅!!」

「あああああああ!?」

 

容赦なくプラグ攻撃してきおって!俺は質問に答えただけなのに!はっ、これが誘導尋問ってやつか!

 

だがここで石楠花にとっての天使が動いた。

 

「もっ…もう気にしてないよ!実際個性を考慮せず裸のままだった私が悪いんだし…!」

「えっ…天使か?エンジェル透か?」

 

なんていい子なんだ…!まさか被害者自身が解決に動くなんて…!じっくりと裸を貪るように眺めて堪能したやつを許してくれるのか…!

 

なら、俺が出来る限りの援助をするか。今回の問題はお互いの個性の性質上起こってしまった問題だ。もしヒーローになった時に知らない人とこんな問題になったら嫌すぎる。

 

「なぁ、葉隠よ?」

「はっ…はい!」

「本当にすまなかったと思っている。だからこの問題を解決しよう。だからさ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前の遺伝子を俺にくれないか?」

 

「…ふえぇぇぇぇぇ!?」

 

時が止まった。誰もが言葉を発することを忘れた。

目の前で変態行為を行なった者がより高度な変態発言をしたからだ。

 

真剣な石楠花!

赤面する葉隠!

血涙を流す峰田!

 

これにてカオスフィールドが完成した!

このカオスすぎる事態にいち早く復活したのが…

 

「石楠花くん、ちょっと向こうでO☆HA☆NA☆SHIしようか」

 

女性陣だ。

 

「えっ、お前ら何か勘違いしてない?」

「いやいやしてへんよ?ちょっと向こうでO☆HA☆NA☆SHIするだけやから」

「いや、お話って何!?ここですぐ終わる話だか……なっ…何いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?縛られているだと!?いつの間に!?」

 

馬鹿な!?いつの間に!?

ロープ何てなかっ…いや違う!これは形状記憶合金だと!?

一体誰が……はっ!?まさか!?

 

「私ですわ!」

 

貴様か痴女おォォォォォォォォォォォォ!!

捕縛道具に加えて瞬時に縛る技術だと!?お前はヒーローと兼任でSM嬢にでもなるつもりか!!

 

だが甘い!

俺はシャコぞよ、我が筋肉の前では拘束物など無力!

ハハハハハッ!この勝負もらっ「はい、無重力」た……

 

 

貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

クソっ!踏ん張れないから力を籠められねぇ……!!

 

 

「じゃあ、あっちの人がいないところに行こっか」

「まて落ち着け!」

「大丈夫大丈夫、ちょっとO☆HA☆NA☆SHIするだけだから」

「やめロォォォォォォォォォォォォォォォォ!」

「「「まぁまぁ」」」

 

 

オ…オレは何をされるんだ!?

あっちに連れていかれたら俺はやられる!?

いっ…いつ『襲って』くるんだ!?

オレは!!

オレはッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレの側に近寄るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひと悶着終わり、ついにグラウンドβに全員到着した生徒たち。

約一名後ろで伸びている男がいるが誰も触れない。オールマイトでさえ触れない。触らぬ神に祟りなし、いや触らぬハジケリストに祟りなしだ。

 

「始めようか!!有精卵共!!戦闘訓練のお時間だ!!」

 

緑谷を見つけたオールマイトが自分をリスペクトして作られた耳のような部分を見つけて笑いをこらえるが幸いにも不審には思われなかった。

 

そこで飯田が動く。

 

「先生!ここは入試演習場ですがまた市街地演習を行うのでしょうか?」

「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での()()()()()()さ!!」

 

戦闘訓練、その言葉に色めきだす生徒もいる。

 

「敵退治は主に屋外で見られるが統計で言えば屋内のほうが凶悪敵出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売…このヒーロー飽和社会…ゲフン…真に賢しい敵は屋内(やみ)にひそむ!!君らにはこれから「敵組」と「ヒーロー組」に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!

 

ナンバーワンヒーローからの言葉だ、説得力が違う。敵の情報を聞き、少し不安になるがこれから戦うかもしれない敵たちへの対策授業なため、より一層力が入る。

 

「基礎訓練もなしに?」

「その基礎を知るための実践さ!ただし今度はぶっ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ!」

 

そして早く内容を知りたいのか生徒たちが口々に質問をする。

 

「勝敗のシステムはどうなります?」

「ブッ飛ばしていいんスか」

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか…?」

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか」

「このマントヤバくない?」

 

「んんん~~聖徳太子ィィ!!!」

 

それもそうだ。オールマイトは一人しかいない。いくらオールマイトでも聖徳太子のように10人一気に話は聞けないのだ。

そしてそんなプロヒーローがカンペを読みながら説明し始めた。

 

「いいかい!?状況設定は「敵」がアジトに「核兵器」を隠していて「ヒーロー」はそれを処理しようとしている!」

「「「(設定アメリカンだな!!)」」」

「ヒーローは制限時間内に「敵」を捕まえるか「核兵器」を回収すること、「敵」は制限時間まで「核兵器」を守るか「ヒーロー」を捕まえること、コンビ及び対戦相手はくじだ!」

「適当なのですか!?」

 

飯田の質問は緑谷の即席説明によって解決され、いよいよくじ引きの時となった。

 

「そういえば私たちのクラスは21人ですが、そこはどうなるんですか?」

「それも心配ない!1チーム3人となるだけさ!しかし!メリットもあるがデメリットもある。3人チームは2人捕まった時点でアウトだ!さらに知らない個性の力と即席で協力するため、人数が多いと把握できなくなってしまうから、そこには注意が必要だよ!」

 

 

 

 

 

 

Aチーム:緑谷・麗日

Bチーム:轟・障子

Cチーム:八百万・峰田・石楠花

Dチーム:飯田・爆豪

Eチーム:芦戸・青山

Fチーム:砂藤・口田

Gチーム:耳郎・上鳴

Hチーム:蛙吹・常闇

Iチーム:葉隠・尾白

Jチーム:切島・瀬呂

 

「あの……先生」

「どうした葉隠少女!」

「服…着てもいいですか?」

「アッ…そうだね。着てくるといいよ…」

 

誰も何も言えなかった。個性の都合上服を着ないほうがいい。しかしこのクラスにはあらゆるものを看破する目を持った変人がいる。

 

「あの……先生」

「なっ…何かな八百万少女!」

「石楠花さんが目覚めないのです「俺がどうしたんだい?マイフェアレディ」きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

石楠花復活。

しれっと復活し、しれっと話に加わり、驚かすという打算ありきでそっと八百万の肩に手を置く。すると当然ビックリする。

 

「お前いつの間に復活してたんだよ!?」

「それは『始めようか!!有精卵共!!』の下りらへんからだな」

「ほぼ最初!」

 

この男、再生能力がハンパない。

だがこの再生能力の高さからある程度の傷では気絶すらしない男の一瞬でも意識を刈り取った女性陣の怒りというのは恐ろしいものである。

 

「よし!じゃあ戦闘訓練やろうぜ!それと葉隠!」

「えっ!?はい!」

 

鱗が葉隠を呼んだことで、視線をシャットアウトする様に女子が割って入る。

 

「石楠花、まさか学習しなかったのか?」

「いや違うって。葉隠専用のコスチュームを作らないかって言う提案をしたいだけだよ」

「コスチュームを!?」

 

衝撃的な発案である。まさかこんな真面目な、それも専門家のような話が出て来たからオールマイト含め全員が仰天した。

 

「いや、何で石楠花君がそんなことできるん!?」

「ん?俺じゃないよ?俺の親父がコスチュームを作る会社の()()()()()やってるから」

「「「はあっ!?」」」

 

衝撃のカミングアウト。

石楠花パパは実は凄い人だった。

 

「お前の親父さんそんな凄い人なのかよ!?」

「実はヒーローを裏から支える凄い人なのよ」

「そんな凄い人から何でこんな変人が誕生するんだよ!?」

「覚えておけ。『一寸先は変態』。有名なことわざだ」

「そんな言葉あってたまるか!?」

 

一体どんな生後を送れば偉い人の息子が変人になるのか、そこが気になる一同だった。

 

「だからさ、葉隠。お前の髪の毛やら細胞やらから個性に合ったコスチュームを作れるかもしれないんだ。個性使うたびに服を透過して全裸になる人が全裸にならないコスチュームにしてほしいとか、バラバラになる個性でコスチュームごと再生できるようにしてくれって言う要望が来てたりするから多分作れるよ」

「そんなこと出来るの!?」

「大丈夫だろ?俺も俺自身の細胞を元に作られた()()()()()()()()()()()()()()を個性発動のたびに付けてるし」

「本当に!?それならお願いしたいよ!」

「よし、なら任せろ。家帰って親父に頼んでみるわ」

「ありがとう!」

 

まさかの鱗の意外な縁によって、無事に?当人同士の和解は成立した。だがしかし解せない点もある。その点を上鳴が指摘した。

 

 

「その提案をもっと早くに言ってれば折檻されなくて済んだんじゃね?」

「ん?いや提案したら容赦なく天誅だったじゃねーか」

「えっ、お前いつ提案したんだ?」

「えっ、思いっきり言ったぞ?

 

 

 

 

 

お前の遺伝子(髪の毛)をくれないか?って」

 

 

「「「いや紛らわしすぎるわ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか無事?に石楠花全裸視姦事件が解決し、いよいよ授業が始まる時が来た。

 

「さぁ、色々あったが一段落ついたところで授業を始めるぞ!最初の対戦相手はこいつらだ!!」

 

そこで引かれた文字はAとD。

運命の悪戯か、入学早々因縁の戦いのカードが切られる。

 

「Aコンビがヒーロー!Dコンビがヴィランだ!!」

 

非常に面白い男の戦いの幕が上がる。

その時石楠花はというと……

 

 

 

 

 

 

「(パッパに頼んで絶妙な可視域に設定して作ってもらい、俺の目には全裸に見えるように頼んでみるか)」

 

この後、秒で却下された。

 




ホネ吉「石楠花君のお父様が働いているコスチューム会社って何処だい?」
バカ「ここですよ」
ホネ吉「(ここ私がよくお世話になってる会社じゃないか!?)」


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戦闘訓練開始ィィィィィィ!

いつも誤字報告ありがとうございます!
思ったより間違えていることが多くて申し訳ない…
これからも書き続けられるよう頑張ります!


今回は少し短いかもしれないです。


「さぁ遂に始まりました、男と男の一番勝負!男同士の因縁がぶつかり合い、血で血を洗う地獄の宴!先に調理されるのはどちらだ!ワカメとウニの海産物デスマッチの開幕です!!」

「アンタ急にどうしたの?」

「ノリって大事だろ?」

 

耳郎からマジレスされるとは思っていなかったが、この勝負は見届けないといけないだろう。

 

あの2人に何があったのかは知らないが、俺が中学に入って直ぐでもあの2人の噂はよく聞いた。ものすごく合わない2人だと。

 

「そういや石楠花はあの2人と同じ中学だったんだよな?」

「そうだな」

「あの2人の関係って何なんだ?あっ、緑谷スゲェ!爆豪の一撃を躱して背負い投げしやがった!」

 

純粋な質問だね、切島君よ。

それと確かに今のは凄かったな。おばあちゃんがスポーツカーでドリフトするぐらい凄かったわ。

 

「あの2人は幼馴染らしいんだ。だが一つ問題がある」

「問題?」

 

鱗と切島の会話が気になったのか、観戦している誰もがモニターを見ながら耳を傾ける。

 

「あの2人は…致命的に合わない」

「「「えぇ…」」」

「どれくらい合わないんだ?」

「S極とN極ぐらい合わない」

「「「そんなに!?」」」

 

いや、事実だし。あの2人を見ていないから驚くんだよ。見てて面白いぐらいに合わないんだよなあの2人は。挨拶したら暴言が返ってくる。前を歩くと暴言が返ってくる。同じ方向に歩いても暴言が返ってくる。何処の世紀末よ。でもS極とN極は両極端だけど、別々のSとNを近づけたら引っ付くようにちょっとの弾みがあれば相性抜群になりそうなんだけどな。

 

 

 

「アイツ何話してんだ?定点カメラで音声無いとわかんねぇな」

「大体わかるよ。『クソが!クソがクソがクソが!』ってところだろうな」

「いやそんなわけねぇだろ!?」

「いや、アイツは決め言葉が『クソが』だし、話す言葉は長文で話しても訳せば大体『クソが!』に完結する。それが爆豪という男よ」

「嘘だろ!?」

「(どうしよう、音声を聞いていて納得できてしまった自分がいる)」

 

オールマイトも爆豪の生態を理解した。だからこそ全てが『クソが!』に訳せてしまう彼の精神に危険を覚えた。

 

「(爆豪少年は緑谷少年、それと今の石楠花少年の会話から聞いた感じ自尊心の塊なんだろうが…肥大化しすぎているぞ…ムムム…!)」

 

そしてその危機感は的中した、いや、してしまった。

 

「(それってまさか…!)爆豪少年ストップだ!殺す気か!?

 

オールマイトが突然不穏な言葉を発したため、生徒達は不安を覚える。それと同時にモニターに映っていた建物が盛大に爆発した。

 

「マジかよ!?何だアレ!?」

「大方爆豪の爆破の力を籠手に溜めて一気に放出したんだろうな。遠距離攻撃を考えてたってわけだ。でも威力すげぇな。何を目指してんだよアイツ」

「そんな冷静で大丈夫かよ!?緑谷巻き込まれちまったぜ!?」

「大丈夫大丈夫、爆豪と聞いて最初に連想できるのは『みみっちさ』だから。アイツはみみっちさに関しては他の追随を許さない。全日本みみっちさ測定総合大会があれば2位と大差をつけて優勝できるぐらいにみみっちいから」

「そんなに!?」

 

その証拠に煙がはれて映し出されたのは、ボロボロに壊れた建物と少しの火傷程度で目立った怪我をしていない緑谷だった。

 

「よかった生きてる!」

「なっ?絶妙にコントロールして「自分が上だ」マウントを取りたかったのよ。すごくいい笑顔してるぜ?七五三の写真もあの顔なら一発オッケーだろ」

「フフッ……!」

「あっ、笑ったな切島。これで俺たちは共犯だ。一緒にぶっ飛ばされようぜ」

「えっ!?」

 

『(妙な部分で冷静ではある…そして石楠花少年の言う通りみみっちいというか何というか…とにかく)爆豪少年、次それを撃ったら…強制終了で君らの負けとする。屋内戦において大規模な攻撃は守るべき牙城の損壊を招く!ヒーローとしてはもちろん敵としても愚策だそれは!大幅減点だからな!』

 

そしてそのオールマイトの忠告を聞いた直後、緑谷と爆豪の接近戦が始まった。

結果は明白、爆豪が優勢して攻撃を仕掛け続ける結果となっている。

そしてその現状に対し、轟や八百万といった博識な生徒たちが補足を入れる。

 

「目くらましを兼ねた爆破で軌道を変更、そして即座にもう一回…考えるタイプには見えねえが意外と繊細だな」

「慣性を殺しつつ有効打を加えるには左右の爆破力を微調整しなきゃなりませんしね」

「才能マンだ才能マン、ヤダヤダ…」

 

確かに爆豪の戦闘センスはすごい。しかし戦闘を進めていくにつれ、一つの状況があらわになっていく。そのことに誰もが気づいた。

 

「しかし変だよな…爆豪の方が余裕なくね?」

「そりゃそうだろう」

「石楠花?」

 

ここで補足するのが鱗だ。しかし今の鱗にはいつものふざけた雰囲気がない。本気の補足をするようだ。その雰囲気を感じ取ったのか誰もが黙って耳を傾ける。

 

「爆豪は中学の時から見てたけど何でも卒なくこなすタイプ。自分が一番すごいと信じて突き進んできたんだ。そんな奴の人生の中には無個性で何もできないデクと呼ばれた存在がいた。しかしどうだ、今まで見下していたやつには自身も破壊してしまうほどの強力な個性が宿っていた。プライドの高い爆豪君なら舐めてんのかと思うだろう。さらに自分より下だった奴が自分の研究をして、今このように渡り合ってるとは言えないが同じ舞台に立っている。プライドの権化と言われる奴からしたら屈辱以外の何物でもないし、内心はもうぐちゃぐちゃだろうね」

 

想像以上に真面目な語りと思ったより深い彼らの因縁に誰も何も言えなかった。しかしこの場の雰囲気を変えたのは何の因果か画面の中の二人と焦ったオールマイトだった。

 

先ほどの比じゃない衝撃が画面越しにも伝わってくる。次に画面に映ったのはボロボロで倒れる緑谷と上に撃ち抜かれたビル、そして核兵器のハリボテにしがみつき、回収を成功させた麗日だった。

 

『ヒーローチーム…WIIIIIN(ウィーーーーーン)!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けた方がほぼ無傷で、勝った方が倒れてら…」

「勝負に負けて試合に勝ったということか」

「訓練だけど」

 

いや~、あいつらものすごい白熱した試合をしおって。

これは俺も白熱した試合をしろっていうお告げかな?

 

その後講評の場となり、八百万に予想以上の勢いで意見を言われ若干震えるオールマイト、感動に震える飯田が完成した。

 

 

そして場所を移して第二回戦となったが、こちらは一回戦と比べ、すぐに終わる事態となった。

理由は簡単、強個性轟ソーダ味だ。

 

「まさかのビル丸ごと凍結とは…夏場もクーラーいらずだな」

「言ってる場合か!?」

「仲間も巻き込まず核兵器にもダメージを与えず尚且つ敵も弱体化!」

「最強じゃねえか!!」

 

それよりも葉隠は服着ててよかったな。こんな氷の中で全裸とか地獄だからな。俺に感謝してもらいたいぐらいだ。

いやちょっと待って!?アイツ火も出してない!?

マジかよ!そんな個性ありかよ!氷と火とかアイツ普通のソーダ味じゃねぇじゃん!氷と火か…合わせてトドロキ君落雁味だな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい葉隠大丈夫かよ?」

「あっ、石楠花君!うん、服着てたから少し寒いだけで平気だよ!」

「よろしければこちらの毛布をお使いください」

「ありがとヤオモモ!」

 

うん、女子の友情美しきかな。

 

「オイ石楠花ェェェェェェェェェェ!何しれっと女子と話してんだよオォォォォォォォ!!女子の裸を見るとか何てうらやまけしからんラッキースケベイベント起こしてんだよぉぉぉぉぉぉ!オイラにも少し分けてくれよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「峰田よ…ラッキースケベとは、自ら行動し続けない限り起こりえない神の如き崇高な行為なんだよ?そのことを理解して君は頑張り続けてきたのかい?」

「いや…そこまでは出来てねぇ…どうしても勇気がなく明日声かけようと考えて…中学が終わっちまったんだよ…!」

「峰田よ、ならこう考えるんだ…『明日から頑張るんじゃない、今日、今日だけ頑張るんだ!今日頑張った者、今日頑張り始めた者にのみ……

 

 

 

 

 

 

エロスが来るんだよ!』とな…!」

 

「あっ…ああっ……!!」

 

峰田は涙を流しながら膝をついた。鱗は悟りを開いた聖母のような眼差しで峰田を見る。男子は尊敬した眼差しで二人を見る。女子は変態を見る眼差しで二人を見る。

 

「ヤオモモ、ペアあの変態二人だけど大丈夫?」

「不安になってきましたわ…」

 

「さっ…さあ次の試合に行ってみようか!次の対戦相手はこいつらだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Cチームがヴィラン、Hチームがヒーローだ!!

 

選ばれたのは石楠花・峰田・八百万、そして常闇・蛙吹だ。

 

「おっ?ついにビル破壊の申し子石楠花様の出番だ!」

「ビルは壊すなよ石楠花!?」

「不安ですわ…」

 

「ケロッ、強敵ね」

「あぁ。混沌(カオス)を操る実力者…か。ふっ、悪くない」

「どうしたの?常闇ちゃん」

 

 

カオスの申し子、いざ出陣!!

 

 

 

 

 

 

 

 



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ハジケの申し子

ついに登場我らの石楠花君!

覚醒の石楠花&微エロ要素ありでお送り致します!
後悔はしていない!!


いよいよ始まる戦闘訓練!

そのために現在鱗たちはミーティングの途中だった。

 

「よっし!なら情報共有しようぜ!」

「そうですわね。共有しておかないと作戦も立てられませんし、連携もとれなくなってしまいますわ」

「オイラの個性は『もぎもぎ』。超くっつく。体調によっちゃ一日経ってもくっついたまま。もぎったそばから生えてくるけどもぎりすぎると血が出る。オイラ自身にはくっつかずにブニブニ跳ねる」

 

「そんなに引っ付くんですの?これ『ブニ』…あ」

「マジかよ、アレか?タンスとかの滑り止めに間に入れる『ブニ』…あ」

「今説明したばかりじゃねえかよお前らぁぁぁぁぁぁ!?」

 

八百万と石楠花の共通点として非常に賢いが、片や天然、片やハジケリストという似通った要素がある。

 

だからこそ二人とも興味本位でもぎもぎに触り、手に引っ付くという奇跡が発生した。

 

「マジかよ手にくっついた。興味本位で触るもんじゃないな」

「まぁ!どうしましょうこれ!?」

「ほんと何なんだよお前らぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

強個性の二人が揃って片腕が使えなくなった事件が発生。会話を聞いていたオールマイトは頭を抱えた。

 

「とりあえず俺の個性は『シャコ』。シャコっぽいことは全部できるぜ!」

「今じゃねえだろぉぉ!?」

「私は『創造』ですわ。生物以外なら創り出すことができるのですが、構造を知っていないと作ることができません。それと使うたびに脂質を使用しますので、作ることができるものには限りがあるかと…」

「なんでどっちも強個性なのに使用者がコレなんだよぉぉぉぉ!!」

「落ち着けよ、落雁食うか?」

「うるせえよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

「まぁ、何ですのこれ?」

「マイペースかよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

八百万自体は優秀であるが、育ちが優秀であるため常識が何処か欠如している点がある。だからこそ、彼女は鱗をどうこう言える立場ではないのだ。

そのため、天然×ハジケリスト=カオスという方程式が完成し、変態であるはずの峰田が常識人枠となりストレス値が格段に上がる結果となってしまった。

 

 

 

 

 

 

そして追い打ちをかけるようにさらなるアクシデントが峰田を襲う。

 

 

 

 

 

「キャッ!」

「え?」

「危ない!」

 

座っていた八百万が立ち上がったと同時に足元がふらつき、鱗に向かって倒れるという事態が発生。鱗も変人ではあるが根は紳士なため、受け止めるべく動く。しかし一つ失念している点があるとすれば両者とも手に『もぎもぎ』がついていたということだ。

 

結果…

 

 

 

「「あっ」」

 

 

 

両者抱き合った状態で『もぎもぎ』によって固定され、離れることができなくなった男女(足手まとい)が完成した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チクショぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?お前ら何オイラの前でイチャイチャしてんだぁぁァァァァァァァァァァァァ!?」

 

 

 

 

 

「動けないですわ!?ちょ…八百万家の淑女がこんな…恥ずかしいですわ!?」

「落ち着け動くな」

「でも石楠花さんこのままでは何もせず負けてしまい、この醜態を皆さんに見られてしまいますわ!?」

「そうだな動くな」

「石楠花さんどうしましょう!?」

「そうだな動くな」

 

表面上は冷静に取り繕っているが内心はこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ぐあァァァァァァァァァァァ!?ヤオヨロッパイがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!横向きゃいい面、下向きゃおっぱい、手はくびれにフィットだとぉぉぉ!?静まれ我が煩悩ぉぉぉぉぉ!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大変だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカな!?本日二回目のラッキーすぎるスケベだと!?死ぬのか!?今日俺死ぬのか!?

 

モチ搗け!いや、落ち着け!落ち着いてタイムマシンを探せ!過去の俺に心の準備をさせろ!

 

 

いや、いったん落ち着け石楠花 鱗よ。俺は生粋の日本男児であり理性最強の漢だ、そうだろう?これも煩悩を抑える鍛錬だと思うんだ。戦闘訓練もできて理性も鍛えられる、最高だろう?そうだいいぞマイサンよ。そうだ、これは訓練だ、だから荒ぶる怒りよ鎮まりたま「ん……っ!」ヤメロぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?耳元で色めかしい声を出すなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

「チクショォォォォォォォォォォォ!石楠花そこ代われェェェェェェェ!」

「いいぞ峰田!そのまま話し続けてくれ!お前の声は性欲減退効果がある気がする!」

「黙れよォォォォォォォォ!?そんな効果嬉しくねぇよォォォォォォ!!」

「石楠花さん耳元で話さないでください!ムズムズして…んっ!」

「エロい体勢でイチャイチャするなよォォォォォォォォ!!」

 

いいぞ…!かなり落ち着いて……来ないな。峰田の声でマイナスになった側から、八百万の声で余裕でプラスになりやがる!

早く落ち着いて相手の対策とどうやって離れるかの対処法を考え…『では時間になったからスタートだ!!』

 

 

 

空気を読めポンコツ骨野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

お前この体勢と荒ぶる本能を抑えながらどう戦えっていうんだ!!鬼か!シャコパンチを鳩尾に打ち込むぞ!

 

だが始まってしまったなら俺達もやるしかない!相手さんはもう動き出してる!

 

「峰田!」

「おっ、おう!」

「とりあえずもぎもぎで窓枠やドアを固定して入れなくしろ!蛙吹は窓から侵入を試みている!だからこそ核兵器にももぎもぎをつけて舌で回収されないようにしな!」

「りょっ、りょーかいだぜ!」

「俺達は常闇を相手するから俺達が出たらドアを固定しろ。それでも、もし蛙吹が入って来たらセクハラしてでも止めろ。俺達はヒーロー志望だが今は敵役だ。そんな奴も世界には必ずいるだろ」

「けどそれだけもぎもぎを用意できるか…もぎりすぎたら頭から血が出るんだよ!」

「頭皮が捲れるぐらいもぎり続けろ」

「お前は鬼かよ!?」

「いや、シャコだ」

「知ってるんだよそんなことはよぉ!!」

 

ちっ!そろそろここに到着するな。とりあえず階段とか壊して妨害するか。

 

「とりあえずここは任せたぞ峰田!ほら、事前に用意してた八百万式自己防衛セット残していくから」

「確保テープとスタンガンで何しろってんだよぉぉぉ!」

「石楠花さん本当にこの姿でいくんですの!?」

 

そうして鱗は部屋から八百万を引っ付けて退出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって常闇サイド。

彼の個性は『ダークシャドウ』。自立型の個性で自我がある珍しい個性だ。

 

「ちっ!階段が壊れていて動きづらい。これは石楠花の仕業だな?本当にこっちから音が聞こえたのか?ダークシャドウ」

『コッチダヨ!』

 

側から見れば鳥と鳥が話しているようで非常に和む光景だ。だが実力はかなりの物。接近戦では非常に力を発揮する手数タイプだ。

 

そしてダークシャドウの報告通り、鱗と八百万を見つけることが出来た。しかし…

 

 

「…何をしているんだ?お前達は」

「…見ないで下さいませぇぇ…っ!」

「フハハハハ!我がパンチの藻屑にしてくれるわ!」

 

そこにいたのはノリノリの石楠花と…腕を首の後ろに回し、動きやすさを確保するため足もガッチリと腰に絡みつき、まるでコアラのようにガッチリと抱きついている八百万の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

[モニタールーム]

「「「いやアイツら何してんの!?」」」

「HAHA…ちょっとした事故で離れないらしい…」

「「「いやほんと何してんの!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

動きやすさを重視したらとんでもない体勢になった件について。

いやマジで何でこの体勢になったよ…確かに動きやすいけどさ…

 

「お前達のその姿…まるで性こ「「それ以上言うな!/言わないで下さいまし!」」…すまん」

 

やめろ常闇!それ以上先は言わせんぞ!

お互いその部分は意識しないようにして折り合いをつけてんだよ!意識したら俺の社会生命終了なんだよ!誰かこの状況で理性を保ち続けている俺を褒めてくれ!

 

「八百万!とりあえず手筈通りに行くぞ!」

「はっ…はいですわ!」

「ふっ!たとえどんな状況でも手加減しないぞヴィランよ!」

『ヤッテヤルヨ!』

「行け!ダークシャドウ!」

『アイヨ!』

 

たとえどんな状況であっても鱗は武術の達人だ。幼少の頃から格闘技に慣れ親しんでいる。だからこそ八百万を抱えながら腕一本で戦うというハンデ付きでも渡り合うことができた。

 

そして理由はもう一つ…

 

「どうした!人質に攻撃が当たってしまうぞ!?その程度かヒーロー!」

「くっ!」

 

八百万を人質と見なして立ち回ることで、人質を取ったヴィランと戦っているという想定概念を作り出した。これは3人いるからこそ発案、そして実行出来た作戦である。

 

「貴様の個性は確かに強い!だがな、自我を持つ個性というのは宿主と同じように常に考えながら攻撃しているということだ。だからこそ攻撃する場所を考えている瞬間が……致命的な瞬間となる」

『ギャン!?』

「ダークシャドウ!?くっ!やはり強い!」

 

手加減をしながらダークシャドウを殴り飛ばす。

人1人を抱え、右腕一本しか使えないにも関わらず決定打を与えることが出来ない。金城鉄壁、城の如く硬い守りに加え、一撃一撃が大砲の如く致命の一撃。これが石楠花 鱗という男の強さである。

 

「フハハハハッ!どうした、その程度か!深淵の使者よ!」

「ふっ、まだだ。我が闇はそう簡単に消えはしない。今からが闇の宴の開演時間だ!」

「そうこなくちゃ!」

「石楠花さん…っ!もう少し……っ!優しく動いてくださいまし…っ!」

「そんなギリギリの発言を耳元でするな!」

 

八百万は呪いのアイテムだったのか!?理性がゴリゴリ削られていくぅぅぅぅ!!

こういう時は14の言葉を数えろ!らせん階段・カブト虫・廃墟の町・イチジクのタルト・カブト虫・ドロローサへの道・カブト虫・特異点・ジョット・天使・紫陽花・カブト虫・特異点・秘密の皇帝!よし、最後に北緯28度24分、西経80度36分の場所を目指せば天国に…「あん…っ!」

 

 

いや…何でそんな顔を赤らめて俺を見てんの?

なんでそんなハァハァ言ってんの?

それと俺の胸に当たってる二つの硬い突起は何?

えっ…いや…えっ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイド・イン・ヘブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明らかに鱗の雰囲気が変わった。

それは相対して戦っている常闇は勿論、画面越しに見守っている生徒たちにもはっきり分かった。

 

纏う雰囲気、研ぎ澄まされた闘気、全てが別人のように一言も発することなく常闇を見据えている。

 

「(何だ?雰囲気が変わった?だが一つわかることがあるとすれば、迂闊に近づけばやられる(死ぬ)!!)」

 

常闇の頬から一筋の汗が伝い落ちる。

常闇の人生で獣に狙われた時のような、一秒が遅く感じる濃密な時間を過ごしたことは初めてであった。

そして……

 

「ガッ…!」

 

気づけば顎を小突かれていた。いつ近づかれたのかわからない。腕の動作すら見えなかった。だが顎を揺らされたことで脳も揺れ、正常な判断すらできなくなっていた。

薄れゆく景色の中で見えた光景は、確保テープを巻く腕と…悟りを開いたような仏のような笑みだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

峰田は焦っていた。

核兵器の部屋を頑丈にもぎもぎで守ったというのに、まさか蛙吹が入れなさそうとわかった瞬間窓を蹴破って入ってくるとは。

 

だが今はヴィラン、合法的に女体に触れるチャンスなのである。だからこそ頑張った、本当に頑張った。触るために神にさえ願った女体が目の前にあるのだから。

 

蛙吹も峰田の個性が何かは知らないが、持ち前の警戒心で部屋中のもぎもぎを触らないように立ち回り、さらに峰田のエロに対する気迫に押され、近づきたくない気持ちが発生し、何とか均衡を保てている。

 

だがもぎった箇所から血が出始め、峰田の体力も限界に近付いてきた。

だからこそ取るべき選択は一つ。

 

『石楠花助けてくれェェェェェェェ!!』

 

無線による応援である。だがそのためには石楠花が常闇を倒してないといけない。その無線に対し石楠花は…

 

『おk』

 

肯定をもって答えた。

その返事と共に壁をぶち破りながら現れる影が。

 

「峰田目をつぶれ!」

 

その掛け声と共に室内に放たれる閃光。

 

「ケロッ!?」

 

一瞬ではあるが蛙吹の視力を奪うことに成功。その瞬間を石楠花は見逃さない。変態じみた動きで右手一本で蛙吹に確保テープを巻き付けるという偉業を達成。そして…

 

 

 

 

 

 

『敵チームWIIIIIN!!』

 

 

終了の合図が鳴った。

 

 

 

 

 




禁欲による無我の境地の向こう側!その名も悟りフォーム!
それを世間ではゾーンというぞ!

集中力を高めるのに頑張るのも、エロいことを我慢するのも、結局ゾーンに入れるんだったら一緒だね!


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戦闘訓練終了後…

はっはっ!!二次創作史上最低の戦闘訓練を超えられる猛者はいるのか!
評価が急に増えてびっくりしたよ!やはりエロス、エロスはすべてを解決する!


スゲーッ爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによぉ〜〜〜〜!

これが悟りの境地かゾーンかスーパーサイヤ人か。

八百万の喘ぎを聞いてから一瞬意識が飛んだが、本能のままに戦闘出来た気がする。あとで常闇には謝っておこう。

だが俺はまた一歩新たなステージに足を踏み入れたようだな。ありがとうエロス。ありがとう八百万。ありがとう俺の煩悩。

 

「石楠花ありがとうよ!ていうか目は大丈夫なのか…何そのサングラス!?」

「あぁ、これは俺のコスチュームだ。目が良すぎるから光系の攻撃を防ぐために俺の可視域に合わせて作ってもらったサングラスだ。外部からの衝撃を可能な限り低減し、俺にしか見えないようになっている」

「すげえな!?」

「これの存在を思い出してから八百万とこの作戦を考えたんだ。俺と八百万は視界を守りつつ、創り出した閃光弾を投げ込んで一瞬の隙に捕縛する」

「オイラの安全も考えろよ!?」

「お前はしぶとく生き残るから大丈夫だ」

「オイラの何を知ってんだよォォォォ!!」

 

まあまあ勝ったのだからいいじゃないか。

それよりさっきから八百万が静かなんだが大丈夫か?

 

「私は…役に立てたのでしょうか…?ずっと石楠花さんに抱きっ…ついたまま、何もできませんでしたわ…」

「いや普通に大活躍だったけど?」

「え?でも…」

「俺は殴る蹴るしかできないけど、道具を出してくれたり作戦を考えてくれたりいろいろ助かったよ。もし八百万いなかったらこのまま核回収されて負けてたよきっと。絶対に。絶っっっ対に」

「絶対を強調するなよ!!」

「峰田黙れ」

「辛辣!?」

 

何を落ち込んでるのかはわからんけど、俺が言えることなんて一つ…

 

「ありがとな八百万、めっちゃ心強かったよ」

「あっ…!」

 

イヤほんとマジで心強かったね。サポートアイテム量産可能って強すぎない?閃光弾とか銃とか遠距離攻撃道具出されたら俺勝てないよ?マジで。

 

それにいい感じに豊満なお胸様が俺に勇気を与えてくれたし。八百万を装備する以上にやる気の出るシチュエーションなんてこれからの人生訪れないね。

 

それよりいつになったら俺達解放されるの?一度悟りを開いて退散した煩悩が大歓喜しながら戻ってくるんだけど?何なら今の方が性欲マシマシなんだけど?

 

ていうか女子ってなんでこんなにいい匂いするんだよ。適度に運動した後だからありのままの匂いが鼻腔にダイレクトアタックしてくるんですけど?

 

誰か助けて、俺このままじゃ一夜の過ちコースになる。

 

「ありがとうございますわ石楠花さん!私ももっと個性の出来る幅を増やして、これからも石楠花さんの足手まといにならないように頑張りますわ!」

「うん、お互い頑張ろう。それとあまり動かないでくれ」

 

クソォォォォォォォォ!!かわいいよォォォォォォォォ!!

プリプリと擬音が聞こえるぐらいはしゃぐ八百万かわいいよォォォォォォ!!

ちょっと動いて俺の股間を刺激しないでくれ!そのまま起立してフライアウェイしても知らんぞ!

 

「お迎えに来たぞみんな!」

 

オールマイトォォォォォォォォォ!!

お迎えありがとう!あとこれから解放して!

 

「私はそのような分野に関しては専門外だぞ!!」

 

オールマイトォォォォォォォォォ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、時間が来るまで待つしかないさね」

「「嘘でしょ!?」」

 

あのあとモニタールームに戻ろうとしたが八百万が拒否。そりゃそうだ、こんな恥ずかしい姿でみんなの前に出たくはない。八百万が提案してなかったら俺が提案してた。ていうか提案してなくても無理やり保健室に連れて行ってたと思う。

 

だというのに雄英高校の屋台骨ことリカバリーガールから『あたしゃ無理』の言葉。正直心が折れそうだ。

 

「怪我したのなら治せるが、怪我じゃなく外部の要因で引っ付いてるだけときた。本人が時間がたてば取れると言ってるなら大人しく待つのが吉さね」

「嘘だと言ってよ、バーニィ!」

「そもそも触らなきゃ何ともなってないんだよ。それは戒めだと思って反省しな」

「「ごもっともで…」」

 

やっぱりうまいこと出来事は回らないか。なるべく早く解放されないとヤバいことになるぞ。お互い長時間くっつきすぎてムラムラゲージ上昇&保健室という特異空間だぞ?年頃の男女舐めんなよ?耳元でハァハァ言いながら何かに耐えている美少女と約1時間以上合体してるんだぞ?

 

いや、案外逆転の発想かもしれないぞ?俺よ。この個性は峰田の個性だ。だから…

 

「峰田を殺ればいいのか!」

「何をいい笑顔で恐ろしいこと言っているんだい」

「ダメですわよ!?」

 

だが俺はこれぐらいしか思いつかねぇんだよ!どうすればいいんだよ偉い人!コスチュームを引き破ろうにも八百万の服がよりきわどくなるだろ!

 

「でも…だんだん安心感が湧き出まして…、これはこれで落ち着くと言いますか…、いや、違うんですのよ石楠花さん!?ずっとこうしていたいとか考えてないですわよ!?ただ偶にはこうして落ち着きたいなと思っただけで…いや、違うんですのよ!?」

「急いで病院コースさね。脳の病気だよ」

「どういう意味だ豆ババア!!」

「誰が豆ババアだい!口に気をつけなシャコ小僧!!」

「痛ェ!杖でたたくな!」

 

いや、だが本当に脳の病気か?ハジケリストと一緒にいすぎて気でも狂ったのか?

 

「今の発言は忘れてください石楠花さん!!」

「おけおけ。だからそんな全裸見られた女みたいな顔で俺を見るな。このままだと本当に俺の家までこのままお持ち帰りコースになるぞ?」

「なっ…!?やはりケダモノでしたか!葉隠さんを全身くまなく見たように私の体も見るのですね!?」

「大丈夫だ。ビデオ撮りながらじっくり優しく観察するから」

「より悪化していますわよ!?」

「冗談だって」

「石楠花さんが仰ると冗談に聞こえないですわ…。でも石楠花さんなら女性を気遣ってそんなことしないでしょう?現に戦闘中でも私を気遣って行動してくださる場面もありましたし」

「お?俺のことわかってきたな。そんな君には石楠花検定5級の資格を進呈しよう」

「フフッ、濃密な時間を共に過ごしているんですもの。石楠花さんの体は正直ですわ!」

「それ絶対外で言うなよ?あともっとオブラートに包んで言ってくれ。俺の残りの理性が溶け切る」

 

とんだじゃじゃ馬お嬢様だよ、全く…

 

 

 

石楠花と八百万がいい雰囲気になっている時、怪我で意識を失っていた緑谷がこのタイミングで起きる事態が発生した。

 

 

 

「う…ん。ここは…?そうだ!僕はかっちゃんと戦っていて攻撃に当たって気絶したんだった。もう授業は………、ごっ…ごめんなさい!邪魔するつもりはなかったんです!おっ…おおおおお二人は続きをどうぞ!僕はカーテンを閉めていいいますので!」

 

起きた緑谷が目にしたのは保健室という場で抱き合い、とてもいい雰囲気の男女。性知識がある緑谷はこれから()()()()()()をすると勘違いし、即座に見なかったことにするファインプレーを発動。

 

 

「「待って!弁明させてくれ!/下さいまし!」」

 

 

弁明に時間がかかったが、終始挙動不審だったから絶対解けてないと思う。あの童貞め。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局解放されずに荷物を取るため教室に追い返された。

長いこと抱き合っていると、まるでその体勢がいつも通りであるかのように認識して、実は俺達2人で1人なのでは?と錯覚してくるから恐ろしい。

 

固定されたままだからコスチュームも着替えることが出来ない。幸い放課後だから人が少ないし、人がいても俺の目で分かるから避けて誰にも見つかっていない。

 

こんなギリギリのコスチュームの男女が、駅べ…ゲフンゲフン、対面座…ゲフンゲフン、だいしゅきホールドで汗と制汗剤の混ざった匂いを漂わせながら廊下を歩いているのだ。見せつけプレイしていると勘違いされたら俺達の社会生命が死ぬ。

 

緑谷は俺達より先に教室に戻っていった。戻っていくスピードが戦闘訓練の時より早かった気がするが気にしない。元気になって何よりだ。ちゃんと誤解が解けていることを願う。

 

でも本当にキモがられなくて良かった。もし固定された時に耳元で「キモっ…」なんて言われてみろ、全身の毛穴から血が噴き出していたと思う。

 

「まぁ…とりあえずお疲れだな…」

「そうですわね…疲れてしまいましたわ…」

「結局他のペアの試合見れなかったしな」

「あっ、それなら試合記録は録画されているらしいですので、資料室で見直し出来るそうですわよ?」

「それはありがたい。まだ全員の個性を把握できていないからな。もう少しで一人ずつ個性を見せるまでストーキングするところだった」

「それはやめた方がいいですわ。まだ解放されませんし、後で一緒に見ましょう」

「オケ丸水産」

「おけ…?」

 

おや…?前から歩いてくるのは爆豪の兄貴じゃねぇですかい。

 

「爆豪君じゃないの、今帰り?」

「けっ…まだ乳繰り合ってんのかよ」

「違いますわ!?」

「何だよ、うらやましいのか?落ち込んでいてもしっかり見てるのな」

「違うわ!!誰が公衆の面前で変態プレイする奴らを羨ましがるんじゃクソが!」

 

うーん…元気そうに見えるけど元気じゃないこの雰囲気。それとツッコミのキレが少し甘いな。全盛期の爆豪は3割マシ声が大きいんだよ。

 

「おいおい、そんなんじゃキングオブツッコミストになれねぇぜ?」

「ッチ…!」

 

あ、これ本気で機嫌悪いな。

いつものかっちゃんならどんなことにも必ずキレ散らかしてたのに今日は控えめかっちゃん。

 

「八百万、ちょっとだけ俺の用事に付き合ってくれ」

「はいですわ。今の私たちは一心同体ですもの」

「ああっ!?さっさと行けや変態ども!!」

「いや、俺は話すことあるから」

「俺がねぇわ!!」

 

やれやれ我が儘だねぇ。

この後なんやかんやでお節介な緑谷とかオールマイトとかが話しに来そうな雰囲気だけど火に油っぽいから俺が話すか。

 

 

 

 

「どうよ?舐め腐ってた奴に負けた気分は?」

「アアッ!?」

「いきなり何を言うんですの石楠花さん!?」

 

食いつきが凄いな。よっぽど負けたことが心にきてんだね。

 

 

「いや、元気よく負けてたじゃん。面白いぐらいに」

「テメェうるせえんだよ。俺の何がわかんだ!アイツは確かに道端の石っころだっただろーが!?」

「でも今日負けただろ」

「だからウルセェって言ってんだろーが!!わかってるんだよそんなことはよぉ!!自分が見下してた奴に負けて!氷の奴にも勝てねぇんじゃと思っちまって!お前にも勝ったことがねぇ!!今、俺はどうしたらいいかわかんねぇんだよ!!」

 

思いの丈を鱗にぶつける。爆豪の内心はぐちゃぐちゃなのだ。これからどうしていいか分からず。その問いに対して鱗は…

 

 

 

 

「いつも通りでいいだろ」

 

 

 

いつも通りの答えを出した。

 

 

 

「俺の知ってるお前はそんなクヨクヨ悩むようなタイプじゃない。負けず嫌いな当たり屋みたいなもんだ」

「誰が当たり屋じゃクソが!!」

「喧嘩以来俺に突っかかってきては跳ね返され、それでも尚挑んできたタフネスの塊のような奴だ。そんな奴が何だ?自分より格下の1人に固執して、見下して、負けたらどうしていいかわからねぇ。何を寝ぼけたこと言ってんだ。いいか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下らねぇことをいちいち気にして人と比べてるような奴が真の負け組なんだよ」

 

「ッ…!」

 

「お前はどっちだ?このまま格下に負けて自尊心へし折られたままの下らない負け組でいるのか、それとも俺に突っかかってきたように周りを気にせずに勝つために突き進み続けるバカでいるのか、このままだとお前、真の負け組になっちまうぜ?」

 

いつもの鱗からは考えられない辛辣な言葉。だからこそ爆豪も八百万も驚愕した。それと同時に発破をかけられているのだと理解した。

 

だが爆豪も思い当たる節がある。目の前に自分よりも格上がいて、勝ってもいないのに自分より下の相手に勝って喜んでいた。まさに井の中の蛙。自分の憧れるヒーローは格下に対してマウントを取るような性格をしているのか?いや、していない。

 

だからこそ鱗の言葉を聞き、霧が晴れたような気がした。

 

「俺はナンバーワンヒーローになるって誓ったんだよ!!負けたぐらいでクヨクヨしてられるか!!俺ぁもう気にしねぇ!負けた程度で逆恨みって俺ぁ何様だクソが!」

「おっ、いつものボンボンになってきたじゃあないか」

「誰がボンボンだクソが!いいか!?こっからだ!俺はここで氷の奴やテメェを超えて一番になってやる!!」

 

やーっと、いつも通りの爆豪大明神に戻ったかな?

余計なお節介だったかも知れないが、いつまでも教室内でギスギスしてて欲しくないからね。今回は特別に無料で問題を解決するよ。次からは有料な?

 

「俺を超えるとかお前が「一生ついて行きますぜ兄貴!」って言うぐらいあり得ねーよ」

「あぁ!?あり得るわ!!」

「えっ、一生ついて行きますぜ兄貴!って言うの?」

「そっちじゃねーわ!!気づけカスが!!」

 

叩けば叩くほどツッコミが出てくる、これがいつもの爆豪だな!

 

「チッ!余計な時間使っちまった。俺ぁ帰る。まぁ、何だ…ありがとよ石楠花」

「えっ、お前が名前で呼ぶとか明日は雨か?槍か?いや、雄英廃校か?」

「失礼すぎだろがテメェ!!それぐらい呼ぶわ!!」

「冗談冗談!また明日な、爆豪」

「ケッ…!」

 

素直じゃないツンデレボーイめ。男のツンデレなんて需要ないから卒業までにはキチンと気持ちを伝えられるようにならないとダメだぜ?

 

「これが男の友情なのですね!」

「ちょっと違うが。まぁ似たようなもんだ」

 

まぁ、これで大丈夫だろ?何か緑谷みたいな電磁波の奴が爆豪に突貫してるが、喧嘩にはならないだろ。さてと、俺も教室に向かいましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「石楠花ヤオモモと現在進行形で抱きついてる感想は!?詳しく教えて!」

「テメェ何て羨ましいことしてやがる!!」

「ヤオモモ〜、どう?石楠花とラブラブして」

「違いますわ!?あの…えっと…」

 

 

ジーザス…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはとあるバー。

「見たかコレ?教師だってさ…」

 

真に賢しいヴィランは闇に潜む…

 

「なぁ…どうなると思う?平和の象徴が…」

 

途方もない脅威が今…

 

「敵に殺されたら」

 

動き出し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが敵は知らない。

今の雄英高校には常識が通じない男がいることを…

 

敵は知らない。

その男の実力を…

 

敵は知らない。

敵でさえ恐怖する存在だと言うことを…

 

 

敵は知らない。

とある男(ハジケリスト)の恐ろしさを…

 

 

 



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外堀とマスコミは埋めるもの

私がいつekbn状態が二話だけだと言った?
鏡花水月からは逃げられないのだよ。


「ふあぁ〜〜っ、眠た」

 

昨日が濃すぎて今日は休みでも良かったぐらいの疲労を感じる。

 

あの後結局7時ぐらいまで解放されなかった。頼みの綱、相澤先生に希望を託してみたが何故かダメだった。それどころかお説教をいただいた。

 

やれ状況判断がどうとか、やれ警戒心がどうとか。これを合体状態で職員室のど真ん中でだぜ?周囲のヒーロー達の生温かい視線が妙に気恥ずかしかった。俺と八百万は終始真っ赤だったと思う。何あの羞恥プレイ?先生の「これがお仕置きだ」的な小悪党顔がまた妙にムカつく。ミッドナイト先生は鼻血で大変なことになっていた。

 

ムカついたから「先生はこんな経験なさそうですもんね」と煽ってみたら俺だけ反省文が増えた。解せぬ。でもプレゼントマイクが大爆笑してたから良しとする。

 

その後は時間を潰すためにヒーロー実習の続きを頼んで見せてもらったけど…

 

 

 

 

(回想)

『コレ、ビデオ見るために座ったらよりエグい体勢になったな…』

『この体勢…物凄く恥ずかしいのですが、画面を見るためにはこれしかないのです!』

『おう、わかったから揺れないで。振動と体温と匂いがダイレクトに伝わってヤバいのよ』

『まぁ!女性に向かって臭いとは許せませんわ!石楠花さんは…とても落ち着く匂いがしますわ…何でしょう?さっきからポカポカ、ジンジンしますわ…』

『だからギリギリの発言やめろ!!この体勢だと俺の聖剣がスタンドアップ(意味深)するとホールインワン(意味深)してしまうんだぞ!?』

『石楠花さん耳元で話さないで、そして動かないで下さいまし!何故かゾワゾワして何か込み上げてくるものが……!んっ…!石楠花さんに擦れて…!あっ…!』

『ほあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 

 

 

 

 

 

 

本当に大変だった…

あの後何とか耐え切った俺を褒めてくれ。本当に褒めてくれ。めちゃくちゃ褒めてくれ。最近、俺は実は仙人だったのでは?と思うぐらい禁欲してると思う。まぁもう少しで危うく2人仲良く自主規制だったけど。

 

更にトイレ問題だよ。流石に7時までは我慢できなかった。

ミッドナイト先生付き添いのもと、女子トイレで乗り換えたよ。あの地獄は思い出したくもない。男女が絡み合いながら用を足すという恐ろしい取り組みを。更に片手しか使えないという苦難を。

 

側から見たら恐怖以外の何物でもない。耳栓とアイマスクを交互に装着して何とか乗り換えた。

 

たった1日で俺達は世界中の変態達と渡り合えるぐらい特殊なプレイをし続けたのだよ。このやりきれない気持ちが分かるかいワトソン君。

 

あの後恥ずかしさからか、無言でひたすら戦闘訓練を見てた。それはもう画面に穴が空くぐらい見た。クラスメイトの個性の理解を深めまくったよ。今なら改善案を出せるぐらいだ。

 

その後ポロっともぎもぎが取れたからコスチュームを着替えてやっと解散となった。それとお互い下着は履き替えて、消臭剤を浴びるようにかけた。何故って?言わせるなよそんなこと。

 

しかし運命の神様はそう簡単に俺を帰しちゃくれなかった。

八百万家のリムジンが学校の前に止まっており、家まで送ってもらえるとのこと。いやぁ、リムジン所持してる学生なんて初めて見たよ。乗り心地ハンパないね。

 

八百万家の執事さんがお出迎えしてくれたが、質問攻めにされた。やれ「お嬢様とはどういったご関係か?」とか「お嬢様のことをどうお思いか?」とか。それから八百万の個人情報をウィキペディアかと言いたくなるぐらい教えてもらった。八百万は顔を真っ赤にして怒っていた。かわいい。

 

今度俺のことを知るためにご飯に招待してくれるらしい。入学して少ししか経っていないのに俺と八百万の知らないところで外堀がゴリゴリ埋められている気がする。一体相澤先生は親御さんに何て説明したのか知らないがロクでもない説明じゃないことを願う。

 

そして家に着き、やっと1週間ぐらいの濃密な時間を感じた1日が終わった。何故か晩御飯に赤飯が出てきた。本当に何て説明したんだよ。

 

 

 

とりあえず昨日を振り返って言えることは…これからは真っ赤な顔して抱きつきながら俺の顔を見つめて、よだれを垂らしながら不定期にビクビクしないでほしい。性少年には刺激がキツすぎる。何処のビデオだ?と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今日だ。若干疲れが抜け切ってないから本音を言えば休みたかった。

 

だが俺の真骨頂は一歩進んで二歩下がるなのさ!少しずつ進んでいくぜ!そのために今日も学校だ!

 

学校に向かう道を歩いていると後ろから上鳴と切島が現れた。

 

「オッス石楠花!」

「おう石楠花!おはよう!」

「朝から元気だな赤金コンビ」

「「赤金って何だよ!?」」

 

いや昨日の今日で元気だよ本当に。俺は昨日の戦闘訓練で多くのものを失ったというのに。公衆駅○という羞恥プレイでな。

 

「「昨日はお楽しみでしたねw」」

 

言うと思った。童貞達は女子とイチャイチャしているところを見ると必ず言わなければいけないという呪いにかかっているのか。可哀想に。

 

「何だよその俺たちを憐れんだ目は!?」

「いや…、ふっ…!」

「クソォォォォ!羨ましいぃぃ!」

 

それよりも門の前に人が多くない?

 

「おいおい!マスコミが騒いで入れねぇじゃねぇか!?」

「クラスの奴らも捕まってんぞ!?」

 

本当だ。揉みくちゃにされてる緑谷や麗日、饒舌に語っている飯田を見つけた。無視してさっさと通り過ぎればいいのに、変なところで律儀だなアイツら。

 

「マスコミに昨日の石楠花の公然わいせつ罪を話せば俺達楽に通れるんじゃね?」

「おい何を血迷ったことを言っているんだい上鳴君。それをするなら俺は今ここでお前の服を破いてマスコミ共の群れのど真ん中にお前を放り込まなきゃいけなくなる」

「じょーだんに決まっているじゃないか石楠花くん〜、ハハハ!」

「上鳴顔引き攣ってるぞ、大丈夫か?」

 

だがアレは邪魔だな。しかも朝っぱらからオールマイトオールマイトうるさいし。でも目立つチャンスか?とりあえず聞かれてもいつも通りに返答すればオッケーだろ。

 

「よし、とりあえず行くぞ」

「マジかよ!?アレに突っ込むのか!?」

「おいおい、それは危険だぜ石楠花!?」

「だがアレを突破しないと遅刻になるぜ?大丈夫、いつも通り対応すればサクッと通り過ぎれるさ。俺がお手本を見せてやろう」

「あっ、おい!」

 

そう言って鱗は堂々とマスコミの群れに歩いていく。そしてマスコミの1人が鱗の存在に気づき話を聞こうとした。

 

「あの!そこの君!オールマイトについて一言お願いします!」

「オールマイトの授業ですか?すごかったですね」

「えっ!?どんな風にすごかったのですか!?」

 

やっとマトモな回答にマスコミ達は期待する。だが良くも悪くも話を聞く相手を間違えた。

 

「いや〜オールマイトの授業はプルガシオンでしたね」

「えっ…プル…?」

「オールマイトパワーのトランスファーがトランスフォームしまして、俺もぐあーっとなったんですけど、うまい具合にバナルカデス呪術が発動しましてネガティックフォースをコミッションできたんですよ」

「…へー、そうなんですか…。ありがとうございまーす…では、私はこれで…」

「それでですね、俺のイグニッションコイルがパルプンテしましてね」

「あの……もう大丈夫ですので…。ちょっ!なんでついてくるんですか!?」

「それからネガティックシードがエキスパンドメタルになりまして、そこで俺は「ワムウ!」と言ったわけですよ。その時のレクイエムがもう最高で…」

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?来ないでェェェェェェェ!?」

 

 

「すげえな石楠花。マスコミが全員逃げて行ってるぜ。お蔭で楽に入れたわ」

「ああ。しかも追い越すというドS仕様だぜ。話してる内容も全くわからねえ」

 

おい、何で逃げるんだよ。人がせっかく話してやってるのに。

 

その時、鱗がハンカチを落とした。それに気づいたマスコミの一人が丁寧に拾い、鱗に渡すために声をかけた。新たなトラウマを植え付けられるとも知らずに。

 

 

「あっ、あの…君、ハンカチを落とし………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「うわあァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」」」

 

 

 

「あっ、届けてくれてありがとうございます」

「「「いやそれよりもコレ何!?」」」

「えっ、マスコミなのにご存じない?これは今若者達の間で大人気の『ぬ』のハンカチじゃないですか。一枚いります?今スペアで100ぐらい持っていますが…」

 

そう言ってカバンの中から大量の『ぬ』のハンカチを取り出す。

 

「「「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」」」

 

マスコミ達は逃げ出した。鱗は経験値を1500獲得した。

 

 

「ふっ…!ちょろいぜ」

「何がちょろいだバカ」

「ぐえっ!」

 

いつの間に背後に相澤先生が!?そして何故捕縛布で拘束を!?

 

「面倒ごと起こしやがって、全く…。だが、これはマスコミどもの自業自得だな。石楠花、よくやった」

「なら捕縛布で拘束するのやめてくれません?」

「それとこれとは別だ」

「先生このままつれてってくださいよ?」

「遅刻したら反省文倍な?」

「理不尽の権化かよ!?それより昨日晩飯に笑顔で赤飯出されたんだけど!?なんて説明しやがった!?」

「そうして男は強くなるんだ」

「知るか!」

 

 

 

この後滑り込みセーフで間に合った。

そして教室内で『ぬ』のハンカチを布教する鱗の姿が見られたが全否定されて撃沈する姿が見られた。

 

だがそんなものであきらめる男ではない。こっそり全員のカバンに忍び込ませることに成功。八百万だけは笑顔で受け取ってもらえたので2枚になった。やったね!

 

 

 



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委員長&ちょっとした事件withハジケ

たくさんの評価・感想ありがとうございます!
これからもハジケていきますよ!


「昨日の戦闘訓練お疲れ、Vと成績見させてもらった」

「「「!!」」」

「爆豪、お前もうガキみてえなマネするな。能力あるんだから」

「…わかってる」

 

爆豪君怒られてやんの〜〜、プププっ!

 

「石楠花お前もだからな?それと八百万」

「「うっ…!」」

「昨日も散々言ったが、本番でアレじゃ殺してくださいと言ってるようなもんだ。その辺気をつけろ。後でミッドナイトさんに感謝しておけよ?より特殊なプレイをしたらしいな」

「「「より特殊なプレイって何!?」」」

「「思い出させるな!/思い出させないで下さいまし!」」

「「「いやほんと何したの!?」」」

 

思い出させるな。アレはハジケリストの範疇を超えたエロステロだ。だが俺は男として成長したのだ。ありがとう峰田、お前のお陰だよ。

 

「何そんな笑顔で俺のこと見てんだよ石楠花ぇぇ!!」

「おいまだ途中。で、緑谷はまた腕ブッ壊して一件落着か」

 

あらら、今度は緑谷に飛び火して。ビクついちゃってまぁ。

 

「個性の制御…いつまでも「出来ないから仕方ない」じゃ通させねぇぞ。俺は同じことを言うのが嫌いだ。それさえクリアすればやれることは多い。焦れよ緑谷」

「っはい!」

 

元気良い返事でよろしい。やっぱり俺との扱いの差が違わない?俺まだマスコミ追い払った後のよくやったしか言われてないんだけど。

 

「さてホームルームの本題だ…、急で悪いが今日は君らに…」

「「「(何だ…!?また臨時テスト!?)」」」

「えっ!?まさか今から札幌雪まつりに参加ですか!?」

 

「違う。学級委員長を決めてもらう」

 

「「「学校っぽいの来たーーー!!!」」」

 

学級委員長かー。そういえば中学時代は担任に「お前だけは禁止な?頼むからやめてくれ」って言われたよな。うわっ、懐かし。

 

「石楠花は委員長禁止な。クラスが崩壊する」

「デジャブかよ!?」

「お前中学ん時も言われたって噂出てたよな?ザマァ!!」

「爆豪が委員長になると備品爆破するって折寺では有名でしたよ?」

「んなわけあるか!!嘘つくなカスが!!」

「爆豪も禁止な」

「なんでだよクソが!!」

 

ふっ、旅は道連れ世は情けってやつさ。

 

そこからは各々が自己主張しながら手を挙げるがここで待ったをかける男が現れた。

 

「静粛にしたまえ!!“多”をけん引する責任重大な仕事だぞ…!「やりたい者」がやれるものではないだろう!!周囲からの信頼があってこそ務まる聖務…!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら…

 

 

 

 

 

これは投票で決めるべき議案!!」ビシッ!

 

「そびえ立ってんじゃねーか!!何故発案した!?」

 

流石飯田!ものすごく正当な意見を発案しつつ、自分のエゴを隠せない言動!これは俺も見習わなければ!手始めにポイ捨て批判しつつバナナの皮を投げるか!

 

 

そこからの流れは速かった。投票というシステムを導入し、最もふさわしいものに投票する。自分でも可。とりあえず俺は八百万にでも投票するとしよう。講評でビシッと意見を言って引き締めていたしぴったりじゃん。

 

結果………

 

 

 

 

「僕3票ーーーー!?」

 

緑谷と八百万が同率3票で同点。その後じゃんけんして緑谷が勝ち、委員長が緑谷、副委員長が八百万となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の時間は昼休み。鱗は特待生入学なため、学食が安く食べられる。そのためお金を気にせず多く食べられるというわけだ。

 

「あー、やっぱランチラッシュの料理最高。こんな料理自分で作れるようになれないかなー?今度練習しよ」

「やあ!この席は空いてるかい!」

「ええ、俺一人なんで空いてますよ」

「ありがとう!いやー助かったよ!人がいっぱいで二人分の席が空いていなくてね!」

 

えげつないぐらい元気な人が来たな。あれ?でも服がちょっと違う。先輩か?心配になるくらいオドオドした人と、パックマンのモノマネしてる人なんだけど…

 

「いやー急にごめんね?あっ、俺は3年ヒーロー科の通形 ミリオ!それでこっちは同じくヒーロー科の天喰 環!」

「…どうも」

「ご丁寧にどうも。俺は1年ヒーロー科の石楠花 鱗です。よろしくです」

「…ミリオ、本当にここで食べるのか…?石楠花の迷惑になるし…何より初対面の人とご飯を食べるハードルが高い…!」

「そんなこと言うなよ!俺たちの後輩だぜ?それにもう席が空いていないしせっかくの厚意を無駄にしちゃいけないぜ!」

 

ヒーロー科ってのは話していて気持ちのいい人しかなっちゃいけないのか?俺のハキハキ話すタイプの遭遇率がすごいことになるぞ。

 

まあ、せっかくの機会だ。先輩と話してヒーロー科の知識を深めよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、言うわけですよ!「ナポリタンだ!」ってね!」

「ハハハハハッ!そいつはすごいね!傑作じゃないか!」

「ノリについていけない…!怖い…!」

 

何て話しやすい先輩達なんだ!

これがヒーロー科に3年間在籍して己を鍛えた人たちか、心の余裕が違うな。他の奴なら返答が返ってこないところを的確にフォローできる精神の強さ、これが雄英!

 

「ここまで気持ちよく話せたのは久しぶりですよ()()()()()!」

「それは俺もさ()!」

「意気投合している…!怖い…!」

()()()も意気投合仲間に決まってるじゃないですか!同じ飯をくらえばソウルメイト、常識でしょ?」

「そうだぜ環!仲間外れじゃないぜ!俺達はもうソウルメイトだ!」

「そのテンションに巻き込まないでくれ…!目立ってしまう…!」

 

引っ込み思案な先輩だな。対照的な二人だが、対照的だからこそ仲良くなる何かがあったんだろうな。

 

「そういえば鱗はどんなヒーローを目指すんだい?俺は“全て(オール)”とはいかないが、“百万(ミリオン)”を救うヒーローになるんだ!だからヒーロー名も『ルミリオン』!」

「かっけぇですね!俺はあらゆる人に笑顔を!そして安心感を覚えてもらえるようなハジケリストになるのが夢ですよ」

「いいねそれ!それとハジケリストって何だい?」

「ハジケリストは不可能を可能に、常識では考えられない事象を巻き起こし、絶対に倒れることはない不滅の称号ですよ」

「そんなすごい称号があったんだね!俺も目指そうかな!ハジケリストに!」

「ミリオ先輩も環先輩もなれますよ!『思い立ったがハジケリスト』、そんな言葉もあるくらいです」

「いい言葉だねそれ!」

「…俺は初めて聞いたよ」

 

ウソは言っていないよ。ハジケリストってのは不可能を可能にできる唯一無二の職業だからね。俺も早く()()()()を出せるように修練し続けないとな。

 

 

 

楽しく話している3人。その時、その場を割くかのように警報が鳴り響いた。

 

 

 

ウゥーーーーーーーーーーー!

 

 

 

「目覚まし時計の止め忘れか?」

「違うよ鱗君…、これは警報だよ…、でもこんな事態は今までで初めてだ…!」

「ああ!誰かが雄英内に侵入したようだね!急いで避難を…と少しまずいね」

 

警報を聞いた生徒たちが一斉に出口へ殺到する。一人でも倒れてしまうと一大事だ。だが如何せん人が多すぎて身動きもとれない。

 

「うん、個性を使っても人に押しつぶされるし、裸になるだけで却って混乱を招きそうだよね!環は今日食べたものの中に使えそうな動物はいなかったかい?」

「あぁ…今日は牛丼だから使い道を思いつかないな…ほら」

 

すると天喰の腕がヒズメに変わる。

 

「凄いですね。聞くだけじゃ全く何の個性か分かりませんよ。それと侵入してきたのはマスコミのようですよ」

「分かるのかい!?それが鱗の個性か!すごいな」

「ええ、目が良いです。あとはこの事実をどう伝えるかですが…ああ!?環先輩が流されていく!」

「何!?無事か環ぃぃ!!」

「人多い…、苦しい…、前に進めない…」

 

俺が追い払ったマスコミ達よ、何でまた帰ってきたんだ!『ぬ』のハンカチじゃまだ足りないというのか欲張りさんめ。人様に迷惑を現在進行形でかけるな!

 

まずいな。どう解決する?俺が個性を使って音を出して注意をひきつけるのもいいが、何かしらの備品が壊れるか、近くの人が俺の力に巻き込まれて紙切れのように飛んでいく未来しか見えない。

 

さてどうしたものか「大丈ー夫!!ただのマスコミです!何もパニックになることはありません、大丈ー夫!ここは雄英!最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」…アレは飯田か?

 

「彼は凄いね!簡潔に伝えて落ち着かせちゃったよ!」

「ええ。俺のクラスメイトですよ。いやぁ、ビックリだ」

「彼はすごいな…、あんなに注目されても堂々として…、それに比べて俺は…」

「あっ、おかえりなさい」

 

こうして警報騒動は幕を閉じた。この後、なんやかんやあって委員長が緑谷から飯田に変わった。ついでに非常口というあだ名がついていた。俺もあだ名が欲しいが口には出さない。どうせ変人か変態の2択になるからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただのマスコミが()()()()()出来る?」

 

そこにはバラバラにされた門の残骸が残っているだけだった。

 

「そそのかした者がいるね…、邪な者が入り込んだか…、もしくは宣戦布告の腹づもりか…」

 

時間は刻一刻と迫っている…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵の胃に穴が空く時間が……

 

 

 



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USJ事変 〜綺麗なハジケリストを添えて〜

気づけばもうすぐお気に入りが1万人到達目前!
正気かお前ら!?ありがとうございます!


5時間目、それは昼ご飯を食べて適度に眠くなってきた時間に襲いかかる授業である。そんな時間に今日は『ある授業』が行われようとしていた。

 

「今日のヒーロー基礎学だが…、俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった」

「ハーイ!何するんですか!?」

 

瀬呂、それ以上でもそれ以下でもない男が相澤先生に質問する。彼は実力はあるのかも知れないが爆豪からもしょうゆ顔と呼ばれるように、生粋のしょうゆ顔である。

 

「何か失礼なことを考えられてる気がする…」

 

勘も中々鋭いな。だが俺からすればお前はどんまい顔だ。予測しよう!お前は将来きっと『どんまい』と言われるッ!これは確定事項だ!!

 

鱗がアホなことを考えている間にも話は進んでいく。

 

「災害災難なんでもござれ、人命救助訓練(レスキューくんれん)だ」

「レスキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

「石楠花黙れ」

 

いやー、レスキュー沸るね!レスキューって言葉だけで茶碗3杯はいけるぐらい沸るね!俺の個性を何処まで活かせるか調べないと!

 

「今回のコスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を制限するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上準備開始」

「任せてくだせぇとっつぁん!」

「石楠花黙れ」

 

ボキャブラリーもっと増やしましょうぜイレイザーヘッド!

 

「あっ、そうだ葉隠」

「どうしたの?石楠花君」

「前言ってたコスチューム出来たぜ」

「えっ、本当に作ってくれたの!?」

 

当たり前じゃないか。毎日裸を拝めるのはありがたいが、俺がマトモに動けなくなる。常に前傾姿勢のヒーローなんてカッコ悪すぎだろ。

 

「その商品がこちらです」

「テレビショッピングみたい!」

「葉隠仕様に作られた戦闘服でございます。耐冷、耐熱、衝撃吸収仕様に裂傷にも強い。破れにくく通気性も抜群。更に動きやすさを重視した逸品となっております」

「「「いや機能のデパートかよ!?」」」

 

恐ろしく高性能なコスチュームを持ってきた鱗。そんなコスチュームを作ってしまう鱗のお父さんの会社が気になる一同だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はコスチュームで出陣だぜ!

コスチュームを着るとあの日の出来事が脳裏によぎって大変だぜ!

 

八百万もコスチュームを着るたびに顔を真っ赤にしてるしな。かわいい。あっ、目が合った。イヤンイヤンしてる。かわいい。

 

それよりも緑谷はまだ体操服らしい。コスチュームの修復は作った会社が行うから俺は手出しできないんだよな。葉隠のコスチューム?あんなもん手袋と靴だけなんだから修復もクソもないだろ。だから俺が間に入っても大丈夫。OK?

 

「石楠花君!これすっごく着心地いいし動きやすいよ!」

 

そこにはコスチュームを着こなした葉隠の姿があった。

このコスチュームは葉隠に合わせて任意で透明にしたり、皆に見えるようにしたり出来る。だからこそ今は制服みたいな感じで服だけが動いているように見える。

 

「それは良かった。俺も頑張った甲斐があるってもんだ」

「えっ!?石楠花君も開発に関わったの!?」

「うん。一応コスチューム開発のライセンス持ってるし」

「「「お前本当に何者なんだよ!?」」」

 

 

衝撃、クラスメイトがコスチューム開発に関われる件について。

 

まぁいいじゃないか。親父に教えてもらったらメキメキ上達してライセンス取れるまでに至った経緯なんて。

 

「でも葉隠のコスチュームってエロいよな。なんか対魔「当て身」グエッ…!」

 

それ以上は言わせないよ峰田。俺の誇りにかけて。

 

と、ここまで黙っていた緑谷が急に大声を上げた。

 

「あーーーーーーーっ!?」

「ウルセェカスが!急に叫ぶんじゃねぇぞクソが!!」

「そそそそのコスチュームっ!何処かで見たことあるデザインだと思ったら!もしかして石楠花君!そのコスチューム会社って"COSMOS(コスモス)"!?」

「えっ、よくコスチュームの外見を見ただけでわかったな。変態か?」

 

なんで見ただけで分かるんだろ?ヒーローオタクの目って俺よりいいんじゃね?

 

「だってCOSMOSは有名なんてレベルじゃないよ!?あらゆる今をときめくプロヒーロー達のコスチュームを作り!オールマイトのコスチューム開発にも携わり!自分ではどうすることもできない個性をサポートアイテムで制御できるようにして日常生活を送れるようになった人は数知れず!今最も有名なコスチューム会社で!他にも…ブツブツブツブツ…」

「逃げろみんな!耳がゲシュタルト崩壊起こすぞ!!」

 

こいつ一つに集中するとお経のように何かを唱え出すんだよな。寺の関係者か?

 

そうして飯田の指示に従ってバスに乗り込んでいく。修学旅行タイプじゃなく、市営バスタイプだったので指示は無駄になったが。

 

 

 

 

 

バスの中では各々が話し始める。その中でも蛙吹が緑谷に聞いた言葉がみんなの耳を集中させた。

 

「私思った事を何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」

「あ!!ハイ!?蛙吹さん!!」

「梅雨ちゃんと呼んで」

「あなたの個性オールマイトに似てる」

 

ファっ!?遂にバレたか緑谷!お前の挙動はいつかバレると思っていたがもうバレたのかお前!

 

「そそそそそうかな!?いやでも僕はそのえー」

 

その隠そうともしないキョドり方、俺は他人事だからすげぇ面白い。引くほど面白い。こんな大事な話を俺の家の前でしてたって事実がより面白味を加速させてる。家なら心配されるぐらい笑ってた。

 

「待てよ梅雨ちゃん、オールマイトは怪我しねぇぞ。似て非なるアレだぜ」

 

何故止める切島!!ここから面白くなったと言うのに!!

お前は後で鼻フックデストロイヤーの刑に処す!

 

 

こうして話は進んで行き、誰の個性が派手で強いと言う話題に変わっていった。

 

 

「派手で強えっつったら爆豪と轟と石楠花だな」

「ケッ」

「バッキュン、褒められて嬉しいならちゃんと言葉に出さないとダメよ?」

「うるせぇ石楠花!!ババアかテメェは!!」

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」

「んだとコラ!!出すわ!!」

「ホラ」

「ハハハハハハハハハハハハ!!ヒーっ!!」

「腹抱えながら笑うな石楠花!!ブッ殺すぞ!!」

 

おいおい核心つかれてるじゃあないか爆豪君ヨォ。事実その通りだしね。

 

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」

「テメェのボキャブラリーは何だコラ!殺すぞ!!!」

「確かにコイツは糞に糞尿をぶっかけてルーブルに飾って金取るくらい最低な性格をしてるけど、根は良いやつなんだよ」

「テメェのボキャブラリーも何とかしろや石楠花!!全然褒めてねぇじゃねぇかクソが!!」

「「「ブァッハッハッハww」」」

「笑うなクソどもがぁぁ!!」

 

ちゃっかりいじられキャラに定着しちゃって。俺のおかげかな!!

 

「もう着くぞ、いい加減にしとけよ…」

「「「はい!」」」

 

こっちも調教具合がいいね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっげーー!!USJかよ!?」

 

いやマジで広いな。近所の公園何個分よ?なんか湖も見えるぜ。ラブラブデートできるじゃん。

 

「私の家の敷地より広い気がしますわ」

「それはいったいどれほど広い家なんだい?」

 

このお嬢様はいきなり何を言い出すんだ。広い気がするって何?一回広いって意味を辞書で調べさせないといけませんわ。

 

八百万と話していると相澤先生とスペースヒーロー13号がいた。しかし3人と言っていたのにあと一人がいない。多分オールマイトだろう。なんかニュースでヒーロー事件を解決したって書いてあったし。

 

「水難事故、土砂災害、火事…etc、あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も…

 

 

 

 

 

ウソの災害や事故ルーム(U S J)!!

 

本当にUSJとは…訴えられたりしないよな。

 

「えー始める前にお小言を一つ二つ三つ四つ…」

「「「(増える…)」」」

 

ヤバい増えすぎだ。多すぎて俺の耳が言葉を拒み始めた。とりあえず主要単語だけ聞き取って、あとは必ずスケベを成功させる魔法の言葉でも考えとくか。

えーと?「ブラックホール」、「簡単に人を殺せる力」、「可能性」、「人に向ける危うさ」、「どう活用するか」。なるほど人を殺せる力でも使い方によっては人を助ける可能性を秘めている。訓練で実際に体験して、それをどう活用して素晴らしいヒーローになるか考えよう、そんなところだな。

 

「以上!ご清聴ありがとうございました」

「ステキー!」

「ブラボー!ブラーボー!!」

 

いい話だよね。

 

「そんじゃあまずは…」

 

 

 

 

 

だが奇しくも人を助ける力を学ぶ機会に異変が訪れてしまった。最初に気づいたのは石楠花、次に相澤。いち早く発生した靄に気づき一歩前に出る。そして相澤が号令を出す。

 

「一かたまりになって動くな!!13号!!生徒を守れ!」

「何だアリャ!?また入試みたいなもう始まってんぞパターン?」

「動くな!あれは………

 

 

 

 

 

 

 

(ヴィラン)だ!!!」

 

 

 

 

 

「13号に…イレイザーヘッドですか…、先日()()()教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが…」

「やはり先日のはクソどもの仕業だったか…」

「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…オールマイト…平和の象徴が…いないなんて…

 

 

 

子供を殺せば来るのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然現れた悪意。その現実に頭が追い付かない者やまともに動けない者がいる中、一人の男は違った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ、ファッション界のドンが降臨なされたぞ!?今最新のファッション、『全身熊手コーデfeat.黒トリュフの中からコンニチハ』の完全再現かよ!!原宿に行ってみな!みんなが崇め奉るぜ!」

 

 

「何だ?…お前…」

 

 

 

 

 

運命のゴングが今鳴らされた。

 

 

 

 

 

 



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一心同体の剣

意味のないハジケがヴィランを襲う!

私の小説を見てくれている方々、たくさんの感想をくれる方々、ありがとうございます。応援を糧によりハジケの高みを目指して頑張ります!


おいおい、ヴィラン界のファッションキングがお仲間をたくさん引き連れて遊びに来たじゃないか。

 

「敵ンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

「アホがアホを連れてアホしてるのか。アホはアホらしくアホしてろアホが!」

「石楠花ってありがたいよな。ここはビビる場面なんだけど雰囲気をぶち壊していつも通りにしてくれるよね」

「おいおい、褒めてもアホしかでねぇぞ?」

 

いや本当にアホだな。どのくらいアホかって言うとマジアホだわ。でも乗り込んでくるってことは何かあるってことだよな。アホはアホでも戦略を練ったアホってところか。

 

「先生、侵入者用センサーは!」

「もちろんありますが…!」

 

これは反応してなさそうだね。

 

「現れたのはここだけか学校全体か…、何にせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういったことができる個性(やつ)がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間割…、バカだがアホじゃねぇ、これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」

「速報!アホだと思っていた奴がバカだった件について!」

「石楠花うるせぇ」

 

まさかバカだったとはな…、見誤ったぜ…!俺を精神的に追い詰めてくるなんて、流石はヴィランだな。褒めて遣わす。あのバカのファッションリーダーめ…!俺に恥を掻かせた罪は大きいぞ!!

 

「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサーの対策が頭にある敵だ、電気系の個性が妨害している可能性がある。上鳴お前も個性で連絡試せ」

「っス!」

「先生は1人で戦うんですか!?あの数じゃいくら個性を消すっていっても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ、正面戦闘は……「緑谷」石楠花くん?」

 

その時鱗が口を開いた。

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらねぇんだよ。状況に応じて戦闘スタイルを変えていく。それにヒーローが任せろと言ったんだ。俺達はまず生きることと先生の無事を考えろ」

「石楠花の言う通りだ。13号任せたぞ」

 

そう言い残してイレイザーヘッドは広場に飛び降りる。そこから先はイレイザーヘッドの独壇場だ。ゴーグルで目線を隠し、誰を消しているか悟られないように、そして相手の力を利用した戦闘で次々と敵を薙ぎ倒していく。

 

「すごい…!多対一こそ先生の得意分野だったんだ!」

「分析している場合じゃない!早く避難を!!」

 

 

「させませんよ」

 

 

だが無情にも黒い靄のヴィランが生徒達の前に瞬時に移動して立ちはばかる。

 

「初めまして。我々は敵連合(ヴィランれんごう)。僭越ながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは……

 

 

 

 

平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして

 

 

 

 

 

突然の敵のカミングアウトに生徒達は思考が停止する。何せあのオールマイトを殺すと言ったのだ。

 

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが何か変更があったのでしょうか?まぁ…それは関係なく…私の役目はこれ」

 

と同時に靄が噴き出そうとするが待ったをかけた生徒がいた。爆豪と切島だ。先に攻撃を仕掛けるが相手は霧状、攻撃は通用しなかった。

 

「危ない危ない……、生徒といえど優秀な金のたま「落雁ショット!」ごっ!?」

 

 

 

 

待ったをかける人物はまだいた。不可能を可能にする男石楠花 鱗だ。

 

 

「くっ!?誰です!?」

「おいおい黒トリュフさんよ。ヒーローの前でペラペラ話すのは落雁を投げてくださいって言ってるようなもんだぜ。落雁ってのは食べてもよし、投げてもよし、時には武器にもなる万能食品なんだぜ?」

「いや作った人は食べてもらいたいに決まってるだろ」

 

 

耳郎よ、ここで普通のレスはやめてくれ。後で美味しくいただくに決まっているじゃないか。

 

「また貴方ですか…、さらに私に攻撃を当てるなんて…」

「いや普通に危ないって言ったから体ある証拠じゃん。なら狙うだろ?オリンピック」

「どうやら頭のおかしい人のようですね。こういうタイプは関わらないに限る。私の役目は散らして嬲り殺す

 

靄を出した瞬間に鱗は逃げられない事を察知。そして近くにいた八百万と耳郎を守ることに専念する。そして生徒達は散り散りに飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うわぁ、靄に包まれたと思ったらよく分からん山岳地帯に飛ばされちゃったよ。あの黒トリュフめ、次あったら白トリュフにしてやる!

 

高い場所から落とされたが、俺はシャコ。ある程度の高さから落ちても何とでもなる。それより生身の女性2人は無事でも何かしらの傷を負う高さだから俺が抱えて着地したけどね。

 

「ありがとうございますわ、石楠花さん」

「助かったよ石楠花…っていつまでヤオモモと抱き合ってるんだよ!?」

「あっ、気づかなかったわ」

「本当ですわね。気づけば引っ付いてることが当たり前になってましたわ」

 

慣れって怖いね。助けた拍子の抱き合った体勢に疑問を覚えないなんて。なんて恐ろしいんだ峰田の個性。俺と八百万が揃って常識改変されている現実に冷や汗が止まらないぜ!学校の外では絶対にしないようにしないと!フリじゃないからな!

 

3人がアホな会話をしていると、また空から人が落ちてきた。上鳴だ。

 

「あぁぁぁぁぁぁあ!?助けてくれぇぇぇぇ!?」

「ちょっ!?石楠花!アイツの個性であの高さからの落下は洒落にならないから助けてあげて!」

「じろぽんは優しいな。よし!お兄ちゃんに任せなさい!」

「いつからアンタはウチのお兄ちゃんになったんだ!?」

 

ほいジャンプからの〜?上鳴キャッチ!エキサイティング!

 

「あのー、ありがたいけどもう少し優しく助けて?」

「野郎をお姫様抱っこで助けるわけないだろ。えっ?お前そっち系?」

「ちげーよ!?それと何で人を助けるための持ち方が猫を掴むような持ち方なんだ!?」

「一秒間熟考した結果、これが最適解だったんだ」

「嘘だろ!?」

「まぁ無事でいいじゃないか。俺がいなかったらお前は地面に綺麗な薔薇を咲かせていたんだから」

「助けていただきありがとうございます!!」

 

素直でよろしい。

 

しかしここで鱗のシャコシャコセンサーに敵の気配を察知した。そして瞬時に考える。バラバラに飛ばしたのは各地に配置した敵で1人ずつ倒していく為の策であると。

 

現れた敵の数は50を超える。おまけに本気で自分たちを殺すつもりの敵が。その中には当然下卑た輩もいる。

 

「おいおい女もいるじゃねぇか!」

「あぁ、これは楽しめそうだぜ!」

「あっちのねぇちゃんいい乳してんじゃねぇか!」

 

女性2人は固まる。もし捕まってしまった時の最悪の想像が頭をよぎる。だが自ずと不安はなかった。

 

 

何故ならここには挙動はおかしいが確固たる信念を持ち、そこらのヒーローを超える実力を有する、女性を守るためには一万倍以上の力を発揮するヒーロー(変態)がいるのだ。

 

 

 

 

 

「おい…何言ってやがるテメェら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そいつらの体はもう俺が予約済みだぜ?」

 

 

 

「イヤホンジャック」ドクンっ!

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

すぐに悪は滅びた。

 

 

「いや普通助けるために現れたヒーローに背後から攻撃するか?じろぽん」

「誰がじろぽんだ!?それと何が予約済みだ!?もっと他のセリフあっただろ!?」

「顔真っ赤にしちゃって〜、いや、アレを見てみろ」

 

耳郎は鱗が指を差した方向へ顔を向ける。そのには怨念を漂わせた敵達がいた。

 

 

「あのガキっ!あの歳でもう2人も…!」

「許せねぇ…!アイツは人類の敵だ!」

「俺なんて女は母ちゃんとしか話したことないのに…!」

「この恨み晴らさねばっ…!」

「テメェは敵だ石楠花ぇぇぇ!!」

 

約1名バカも交ざっていたが。

 

「ほらね」

「いやヘイトが全部アンタに向いただけだけど!?」

「何だよ心配してくれてるのか?ツンデレかよ」

「黙れ!」

 

かわいいねじろぽん。とりあえず敵に交ざりそうなバカを回収だ。

 

「カムバック」

「また猫を持つみたいに!?」

 

バカ回収完了。さてここからはおふざけ無しの本気で相手しないとね。

 

「上鳴、八百万と耳郎と協力してそっちの10人ほど相手してくれないか?残りは俺が相手するから」

「いやいやいや!?残りって軽く4〜50人はいるぞ!?大丈夫かよ!?」

「石楠花さんだぞ?」

「だから心配なんだよ!?」

 

一丁前に心配してくれて、それよりもまずは倒す事を考えなさいな。

 

「石楠花!」

「石楠花さん!」

「大丈夫大丈夫。だからまずは自分達の命を優先して、尚且つ協力して倒す方法を考えな。敵さんは手加減なしで来るから。ピンチになれば呼んでくれ、すぐ倒しに行く。そしていざとなれば上鳴が盾になるから」

「何で俺盾なんだよぉ!?」

 

ツッコミが出来るってことは元気な証拠さ。じゃあ俺は俺の役目を果た「石楠花さん!」す…ん?

 

「どったの八百万?」

「…死なないでくださいね?」

「大丈夫、戦う前に自分の死を頭に入れるバカがどこにいるんだ」

 

やっぱり優しいな、自分も怖いだろうに。なら心配される間も無くヤるとしますか。

 

「行くぜ?必殺!…

 

 

 

 

 

ナントカカントカパトローナム!!!

 

 

 

「「は?」」

 

 

耳郎と上鳴は呆然した。さっきまでかっこいいこと言って八百万と恋愛ドラマの最後の戦闘の前に交わすような会話をして見せつけていたというのに、その10秒後に落ちてる木の枝を拾ってナントカカントカパトローナム。耳郎は後頭部をしばいてやろうかと思った。だが…

 

 

 

 

「「「やっばギャアァァァァァァァァァ!?」」」

 

 

効いた。

 

 

 

「「嘘だろ!?」」

「ふっ…これで10人ぐらいは片付いたな」

「いやちょっと待って!?今の何!?」

「何って…言わせるなよそんなこと」

「だから何なんだよ!?」

「落ち着け耳郎!石楠花について考えた時点で負けだ!」

 

ふっ、考えたら負けだぜ?耳郎よ。これで後40人程度、こいつらに俺の拳を使うのは贅沢だ。ならば…!

 

 

「八百万!アレを作ってくれ!」

「アレですわね!」

「どれ!?」

 

耳郎よ、ツッコミで体力使って戦えませんなんて言うなよ?

 

「俺と八百万が一心同体となったことで、俺達の絆の力により作成できる唯一無二の武器だ!」

「そうですわ!私達はお互いの尿の匂いまで知る仲ですもの!今更私達が揃って出来ないこと、出来ないプレイ、創れない武器なんてありませんわ!!」

「ちょっと待って!ここで暴露しないで!」

「「「お互いの尿の匂いを知る仲って何だぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 

ほら見ろ!童貞達が更に殺気立ったじゃないか!?今更気付いて顔を覆い隠してプルプル震えながら座り込んでもダメだからね!可愛いから許しちゃう!!

 

「とりあえず八百万!アレを創るぞ!反省は後でだ!」

「はっ…はいですわ!」

 

 

そうして創られていく一振りの武器。その武器を八百万から抜き放ち、演舞を決めるようにポーズをとる。その武器とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで俺は負けねぇ!!!」

 

「「「いやネギじゃねーか!?」」」

 

 

 

ネギをカッコよく構える男がそこにはいた。

 

 

 

 



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敵にとっても未知の存在は怖い

UA40万突破ァァァァァァァ!!
ありがとうございます!
これからも如何にしてハジケとシャコを混ぜるか考えながら突き進んでいきます。

今回は後先考えず書いたハジケ回です。
これから先ここまでハジけるのとはないので楽しんでください。



ハジケたっていいじゃないか、チンピラ戦だもの    らいむ




「なんでネギなんだよォ!?」

「うるさいぞ上鳴、これは俺達の愛の結晶、八百万産のネギだ。言わば息子だ」

「ただのネギじゃねぇかよォ!!」

「覚えておけ上鳴…シャコの腕力で振るネギは次元が違う」

「ネギじゃなくてもいいじゃねぇかよォ!!」

 

普通のネギと俺たちのカオスを乗り越えた愛の力で創ったネギの違いが判らんとは…、これだから素人は…

 

「耐久力と魅力が違う」

「ただのネギじゃねぇかよォ!!」

「何を言うのですか上鳴さん!!私たちの武器の完成度が見えないのですか!?アレはまだ完成ではありません!より力を注ぎこむことで私達の息子は立派な大人になるのです!」

「ただのネギじゃねぇかよォ!!」

「本当どうしちゃったのヤオモモ!?」

 

何やら騒がしいがまぁいい。ここからは俺の世界だ、ただのチンピラ風情が指一本でも触れると思うなよ?

 

「お前ら、やっぱりここにいる全員俺がもらうわ。泥船に乗った気分でいてくれ」

「泥船だったら沈むじゃねぇかよ!?」

「俺の泥船はアメリカ製だ」

「産地変わっても沈むもんは沈むんだよ!?」

「アルミニウム加工されてるから大丈夫」

「それもう泥船じゃねぇだろ!?」

 

そこにこだわりなさんな、沈まなければ何でもいいんだよ。さて、そろそろ最後の仕上げと行きますか。覚悟しなヴィラン達よ!

 

 

 

 

 

 

「なっ…何する気だアイツ?」

「分からねえ…、だがヤバそうだ…」

「ええい!何かされる前に倒しちまえば問題ない!」

「それもそうだな!じゃあ…死ねぇ!!」

 

「危ない石楠花!!」

 

 

だがそれでも鱗は動じない。そして()()()()と共に()()()()を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次元越え“ファースト”じゃがいも」

 

 

 

 

 

 

 

その言葉と共にネギの先端にじゃがいもを装着する。すると同時に鱗が放つ圧が一段階上がり向かい来る敵を吹き飛ばした。

 

 

「何だこの圧は…!?」

「なんでネギにじゃがいも挟んだだけでここまでの圧を出せるんだ!?」

「まさかこいつ…ヤバい奴だったのか…!?」

 

 

 

敵は口々に鱗に対しての意見を出すが解決策は出ない。現在進行形で恐ろしい圧を目の前で出しているのだ。そしてあの攻撃の威力がどれほどのものなのかわからない。それ以前に今から何をしてくるかわからない。わからないことが多すぎると人は動けなくなるのだ。それにかまうことなく、鱗は口を開く。

 

「俺はヴィラン相手に手加減するほど甘い相手じゃない。今からより力を開放する」

「「「!?」」」

 

驚くのも無理はない。今の段階でも恐ろしいというのにまだ上があるのだ。その言葉に耳郎や上鳴、そして八百万も驚いた。

 

「俺の拳は目の前に迫る危機から人を守るためにある。お前らのようなすべてが中途半端な奴らに使うまでもない。だからこれで我慢しろ…

 

 

 

 

 

 

 

次元越え“セカンド”生タマゴとゆでタマゴ」

 

 

 

 

 

「ぐあああああ!?」

 

敵の一人が鱗の放つ圧に負けて吹き飛ばされる。じゃがいもの上から生タマゴとゆでタマゴを挟んだだけ、にもかかわらず冷汗が止まらない。そして鱗は仕上げにかかる。

 

 

 

 

 

「やっと理解したか。俺とお前たちの圧倒的なハジケ力の差を……、これで終いだ…

 

 

 

 

 

 

次元越え“サード”レタス」

 

 

 

最後にレタスを挟む。そして遂に完成した。ハジケリストのみが持つことを許された武器、それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生誕!!真説シャコヨロズソード!!!」

 

 

 

 

 

 

愛の結晶を持った敵も恐れるハジケリストが爆誕した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけた武器だ、とは誰も言えなかった。なぜならそのふざけた武器を前にして敵はもう誰一人として動けないからだ。この男には敵わない、そう刷り込まれた瞬間だった。

 

「…何かすげえってのはわかる…わかるけどネギなんだよな…」

「素敵ですわ…!」

「嘘だろ!?」

 

 

 

 

「さて、もう終わりだヴィラン共。最終形態に進化した真説シャコヨロズソードに倒せない者はいない。さぁ…行くぞ?」

 

「ひっ…!?」

「バカ野郎!ビビるんじゃねえ!!所詮はネギだ!何とでもなる!」

「そっ…それもそうだな!!」

 

「武器を持った俺に挑みに来るとは…、武器を持っている時のみ使える『真拳』を見せてやろう!」

 

 

一斉に鱗に向かって襲い掛かる。だが鱗は戦闘の天才だ。一瞬の隙があれば瞬時に撃退できる技量を持つ。そして真説シャコヨロズソードという最強クラスの武器を持つ。

 

ヴィラン達は対応を間違えた。ハジケリストを前にして逃げなかったことが唯一にして絶対の敗因だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真説・極悪斬血真拳奥義(しんせつ・ごくあくざんけつしんけんおうぎ)!カボス!!」

 

「「「ギャアァァァァァァァァァァァ!?」」」

 

「「(不穏な名前で最後がダサい!?でも強い!?)」」

「凄いですわ!!」

 

 

 

50人を超える人数を一瞬の隙にして切り伏せる。傍から見るととんでもない光景だ。名前や武器に問題があるが実力はプロヒーローをも超えている、そんな思いが浮かぶ耳郎と上鳴、恍惚な顔で見つめる八百万、ネギを持った石楠花、倒れ伏すヴィラン達。場はカオスの一歩手前だが確固たる実力をまざまざと見せつけた。

 

 

「安心しろ、峰打ちだ」

「逆にネギのどこに刃があるんだよ?」

「みんなの心の中さ」

「ムカつく…!これに少し見とれていた事実にまたムカつく…!!」

「観念しな、体は正直なんだぜ?」

「言い方がよりムカつく!!」

 

耳郎そんな青筋たてるなよ、ストレスでハゲるぞ?無事に敵を倒せたからいいじゃない…おっと。

 

「耳郎、その地面に萌え萌え衝撃波当てて」

「名前が残念過ぎるんだよ!?嫌だからな!?」

「いいからいいから」

「クソッ!何かあるんだよな!?何もなかったらぶっ飛ばすぞ!?」

 

そして地面に衝撃波を当てると…

 

 

「グアッ!?くっ…バレてたか!」

「「「えぇっ!?」」」

 

ヴィランが土の中から出てきた。

 

「当り前さ、何人たりとも俺の目からは逃げられねぇぜ?俺から逃げたいならトゥクトゥクで逃げな!!」

「っち!せっかく一人を人質にして逃げようと思ったのによォ!」

「甘い!人質を取っても俺達の友情パワーの前では無力!」

「やってみなきゃわかんねえだろ!くらえ!『電気ショック』!!」

「お前が電波を乱していた張本人だな!だが俺達の友情パワーの前ではどんな攻撃も無駄無駄無駄無駄!うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!上鳴ガード!!

 

「「「友情のカケラもねぇ!?」」」

 

「ギャアァァァァァァァァァァァァァ!?」

「ふぅ…助かったぜ」

 

 

上鳴に直撃。こうして鱗の安全は守られた!

そして鱗が上鳴の安全を確認する。

 

「大丈夫か!?誰にやられた!?」

「石楠花…」

 

くっ…!おのれ石楠花!俺の大切な友達によくも!

 

「任せろ上鳴!お前の仇は俺がとってやる!」

「えっ…こいつ関わっちゃいけない奴か…?」

 

おのれ石楠花!ヴィランからも怖がられるなんてなんてひどい奴なんだ!

 

「俺はお前を許さない!俺の大切な友達によくも!」

「いやトドメを刺したのお前だろ!?」

「言い訳無用!」

「ギャアァァァァァァァァァ!?」

 

そのままヴィランを殴り、ヴィランは壁にめり込んで気絶した。

 

 

「八百万、ロープ作れるか?こいつらを縛っときたい」

「そう言われると思いまして作っておきましたわ!さぁ捕縛していきましょう!」

「いや上鳴は!?」

「いや大丈夫だろ?上鳴の個性は『帯電』だろ?電気を貯めて使うんだから、電気攻撃が通用するわけないよ。逆に充電される感じになるんじゃない?」

「えっ?そういえば痛くないかも…」

「自分の個性なんだから早く気づけ!!」

「いてぇ!?」

 

元気で何より。さすがに俺も普通の人間を電気攻撃の盾にしないよ。でもハジケるためには必要な犠牲か?考えておこう。

 

 

「とりあえず全員縛り終わったかな?」

「こっちもですわ!」

「それよりよく器用に意識だけ奪ったな?」

「反復練習すれば簡単に意識だけ刈り取れるようになるぜ?」

「意識を刈り取る練習なんてどこでするんだよ!?」

 

大丈夫、全てはイメトレで解決するんだ。やっぱ時代はイメトレだよな。それよりも俺たちのいる場所でこれだけのヴィランがいるんだ。ということは他のやつらのところにもヴィランがいるってことか、心配だな。あいつら変に真面目でハジケてないからな。大丈夫か?

 

「こいつらはここに放置で広場にでも向かうか。クラスの奴らも心配だし相澤先生も心配だ。大勢と戦ってたし」

「それもそうだな。じゃあ移動しようか」

「よしそれじゃあ…ん?」

 

あれは………ちょっとマズいな。よくわからん脳みそマンが動き出しやっがた。

 

「すまん、俺先に向かうわ。ヤバそうなやつが動き出しやがった」

「えっ!?それだったら逆に向かわないほうがいいんじゃね!?」

「その逆だ。先生が危ない」

「だったら猶更だろ!?今は大丈夫だったけど今度こそ死ぬぞ石楠花!プロでも勝てない奴に俺達が「覚えときな上鳴」えっ?」

 

 

 

「ヒーローってのはいつだって命がけさ」

 

「「「!!」」」

 

「それに近くに緑谷、蛙吹、峰田もいる。あのままじゃ巻き添えくらっちまう。だからこそ向かう。大丈夫!何たって俺は頑丈で不可能を可能に変える男だからな!」

 

 

誰も何も言わなかった。引き留めても無駄だ、必ず現場に向かうと。この男は頭はおかしいが根っからのヒーローなんだと理解させられた。だからこそ出来ることは……

 

 

「わかった!なら私達も向かう!私たちは梅雨ちゃん達を助けに行くから石楠花は先生の方をお願い!」

「あーもう!!腹くくるよ!俺はやるぜ!このまま何もしないヒーローがいるかってんだ!」

「石楠花さん……先ほども言いましたが死なないでくださいね?私達も今できることに全力で取り組みますので!」

「おう、ありがとよ!お前らも気をつけてな。可能な限り注意を引き付けてやるよ!」

 

見た感じファッションマスターと黒トリュフ、それと脳みそが主犯格だろう。あれらを抑えれば何とかなるか。あっ、そうだ!

 

「八百万!………創れるか?」

「出来ますわ!でも脂質が足りるかどうか……」

「何ということでしょう!ここに天の恵みである落雁が大量に御座います」

「まあ!それならば何とかなりそうです!」

 

よし!これですべてのピースは揃った。

シャコの視力でここから敵は隈なく観察した。1人は『ワープゲート』、もう1人はよく分からんけど触ったら崩れる系の奴。

 

強そうなヴィラン達じゃないか。だがシャコの腕力の前では無力。今から始まるのはシャコとハジケが混ざった憂さ晴らしだ。

 

さぁ、楽しみにしてな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷は考えを誤っていた。自分たちの力がヴィランに通用した、いや()()()()()()()()からこそ何とかできるのではと考えてしまった。

 

だが現実はどうだ?プロの世界を何も見えちゃいなかったのだ。プロヒーローがハエをあしらうかのように簡単に倒されてしまった。

 

だがそこに生徒たちが待ち望んだ吉報がもたらされることになる。

 

「死柄木 弔」

「黒霧、13号はやったのか?」

「行動不能に出来たものの散らし損ねた生徒がおりまして…一名逃げられました」

「は?はー…、はーー…、黒霧おまえ…おまえがワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…」

 

一名逃げられた。それすなわち助けを呼びに行かれたということだ。

 

「さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ、あーあ…()()()ゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

 

その言葉に峰田が喜ぶが不審な点がいくつもある。だんだん気味が悪くなる緑谷と蛙吹。

 

「(オールマイトを殺したいんじゃないのか!?これで帰ったら雄英の危機意識が上がるだけだぞ!?ゲームオーバー?何だ…何を考えてるんだこいつら!?)」

 

だがこの緑谷の予想は当たる。それも最悪な形で。

 

 

 

「けどもその前に平和の象徴としての矜持を少しでも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へし折って帰ろう!」

 

 

 

 

 

 

気づけば目の前まで来ていた。イレイザーヘッドの肘をボロボロに崩した手が蛙吹の顔に迫る。その間峰田と緑谷は気づくことに精一杯だったが、一人の女性を助けるために動いた男が2()()いた。

 

一人はイレイザーヘッド。個性を発動されないように気力を振り絞って個性を使って死柄木を見る。そしてもう一人は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?何だ…?急に暗くなって…」

 

死柄木の手は蛙吹を触るほんの手前で止まった。それよりも異変と仲間の声が聞こえたからだ。

 

「死柄木 弔!?上!!!」

「上?」

 

誰もがその声に上を見上げたそこで見たものは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロードローラーだぁぁッ!!!!」

 

 

 

「「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 

上空から降ってくるロードローラーだった。

 

 

「ちぃッ!?」

 

死柄木は何とか躱すことができたが気分はそれどころではなかった。何せいきなり空からロードローラーが降ってきたのだから。だがヒーロー側にとっては降ってきたのはロードローラーだけではない。この状況を変えることができる希望も一緒に降ってきたのだから。

 

「あっ………!ああッ…!」

「ケロっ…!!」

「まさか…!」

 

その男は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着けよ、落雁食うか?」

 

 

 

 

 



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ストマッククラッシャー

書いててだんだんシャコなのかハジケリストなのか分からなくなってきた今日この頃。

だがシャコシリアスパートもやってくるのだ…



少し分けた方がカッコよさが上がるかなと思って分割していたのですが、同時に投稿できず時差が出ました。

一度戦闘シーンにギャグを入れたかった…、それだけだったんだ…

ガチ戦闘始まります!


希望は降り立った。ロードローラーと共に。

ヴィラン達は突然の出来事に混乱し、ヒーロー含めたヒーローの卵達はとんでもない登場の仕方だがこれ以上ないほどの安心感を覚える。何故ならコイツに関しては考えたら負けだからだ。

 

「石楠花ェェェェェェェェェェェェ!!」

 

遂に死柄木とハジケシャコが相対した。

 

 

 

 

 

 

「誰だお前?危ねぇな…いきなりロードローラーごと降ってくるなんて常識ないのかよ…!」

「常識とは覆すためにあるのだよワトソン君」

「あぁ〜〜…イライラするなぁ。もう少しで1人殺せたのに…!」

「イライラすると血便出るぞ?ボラギノールいるか?」

「そして話を聞きやがらねぇ…!もういい!脳無(のうむ)!このガキを殺せ!」

 

その一言でイレイザーヘッドを押さえていた脳無が鱗目掛けて突進する。鱗は慌てることなく迎撃する構えを取る。だが…

 

「うおっ!?おっも!何この力!?だんじり祭りかよ!?」

「ははっ!そりゃそうさ!何せオールマイトとやり合えるように改造された改造人間だからな!お前みたいなガキに止めれるわけないんだよ!」

「すぐ人に頼るその態度、大人になってから苦労しますよ」

「いちいち癪に障る奴だな…!ブッ殺せ脳無!」

 

そこからは肉弾戦が始まる。片やオールマイトのような力を持った怪人脳無。片やオールマイト並かそれ以上のパンチを打ち出せる変人石楠花。両者とも互角の力であるからこそ均衡は保たれていた。いや、石楠花の方が武道を学んでいたからこそ少し余裕があった。

 

「何か全然攻撃が効いてる気がしないんだけど」

「そりゃそうさ!脳無は対オールマイト用に作られたサンドバッグなんだからな!『ショック吸収』の個性を持ってるのさ!お前のゴミみたいな攻撃じゃ傷一つ付けられないぜ!」

「人の褌で相撲取って楽しいか?」

「うるせえ奴だな…!テメエは…!!」

「気持ちは分かりますが落ち着いて死柄木 弔!?」

 

戦いながら煽る余裕、それは簡単なようでとても難しい行動だ。本を読みながらラクロスをするぐらい難しいだろう。そしてその間に密かに八百万達も緑谷達と合流していた。

 

 

「(今の状況は?)」

「(石楠花君が3人を相手に戦ってくれているところ!)」

「(なら今の内に先生を安全な場所へ運ぼう!)」

「(でも石楠花君が…!)」

「(石楠花さんなら負けませんわ!まずは目の前の人を助けましょう!)」

「(っ…!うん!)」

 

 

そして6人で相澤を安全な場所へ避難させようとする。だが簡単に逃すような敵ではない。黒霧はいち早く気付いていた。

 

「残念ですが逃しませんよ!」

 

だがハジケリストは黙っちゃいない。

 

「羽化の時間だぜー!!」

「何故地面から出てきた!?」

 

黒霧の目の前の地面から鱗が飛び出してきた。あまりの出来事に黒霧は個性を使うことができなかった。因みに緑谷もびっくりした。

 

「寝心地よさそうな地面があったら掘って飛び出るのが常識だろ?小学校でも習うぜ?」

「嘘をつくな!私の人生に地面から登場した奴はいない!」

「俺がいるじゃないか」

「お前は例外だ!」

 

とりあえず時間を稼ぐか。熊手野郎と黒トリュフは後回しで。

 

そして鱗は脳無と相対する。

 

「近くで見るとよりグロいな。お前らの趣味?」

「違う!気づけばそうなってたんだよ!」

「あっそう、あんま興味ないけど」

「テメェ…!」

 

でも改造って言ってたよな?ってことは、コイツを造るために亡くなった人がいるってことだ。それは…

 

 

「だんだん腹が立ってきたな」

「何だいきなり…俺達はお前に腹が立ってんだよ!やれ脳無!」

 

そして脳無が物凄いスピードで突撃してくる。

その脳無を鱗は…

 

「邪魔だよ」

 

同じく力を以ってして迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳無の拳と渡り合う鱗。

それは本来あり得ない光景だった。

 

 

「何でアイツはあの脳無と打ち合ってるんだ!?対オールマイト用の兵器だぞ!?」

「ええ…私もびっくりです。考えられる可能性は一つ……彼はオールマイトと同じくらいの力を持っているということです」

「何でそんなチートが生徒にいるんだよ…!」

 

 

鱗の奮闘に生徒達も大盛り上がりだった。

 

 

「すげぇよ石楠花!!あの怪物と殴り合ってるぜ!!」

「ええ!!」

「勝てるぞこれ!!」

 

 

 

 

 

 

興奮する外野、その声をききながら鱗は…

 

 

「(さて、どうするか。殴っても全然手応えがない。これがショック吸収か…厄介だな。でもそれならショック吸収を上回る力で殴ればいいだけだ)」

 

冷静に対処していた。

 

脳無の動きは鱗の目にかかれば完璧に捉えることが出来る。だからこそ的確に攻撃を弾き、奮闘していた。

 

「脳ミソ君、少し強めに殴るけど…死なないでね?」

 

黒霧は首筋が冷えた。まるで悪いことの予兆のような…そんな気配がした。

 

 

 

そしてそれは現実になる。

 

 

 

 

鱗の拳は脳無を捉え、くの字に曲げて吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に言葉を発したのは死柄木だった。

 

「嘘だろ…?脳無が飛ばされた?おいおい嘘だろ!?脳無だぞ!?クソがぁぁぁ!お前は一体何なんだ!?」

 

「ハジケリストです」

 

 

安定の答えを出した。

 

 

「ハジケリストって何なんだよ…!?聞いたことねぇぞそんな言葉…!」

「自分の勉強不足を他人のせいにするんじゃあない。全てはお前のハジケ不足のせいだ」

「だからハジケが何なのか聞いてんだよ!!??イライラするなぁ…!!」

「落ち着けよ、落雁食うか?」

「ああああああ!!殺す!お前だけは絶対殺す!!」

「落ち着いて死柄木 弔!!確かに!いや確実にムカつきますがこの男を前に冷静さを欠くと悔しいですが負けてしまいます!」

 

知らないことが出てきただけでキレるとかガキかよ。そんなんじゃ一生ハジケリストにはなれねぇぜ?

 

 

 

 

「勝った…!石楠花が勝ったぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「やりましたわ!」

「流石石楠花!何が起きたか全く理解できないがやってくれたぞ!」

 

生徒たちは鱗の勝利を喜ぶ。

しかし喜ぶにはまだ早い。さすがは主犯格といったところか、体力は奪えたが戦闘不能にすることはあと一歩足りなかった。そして、脳無の個性は一つだけであると勘違いしてしまっている。だからこそ反応が遅れる。

 

 

 

 

 

 

「いつまで倒れてるつもりだ!!殺せ!脳無!!」

 

 

その言葉とともに再び脳無が起き上がり、こちらに走ってくる。

 

 

 

 

 

「え?何で動けんの?」

「誰が脳無の個性が1つだけと言った!脳無には『超再生』の個性もあるんだよ!!」

「ショック吸収と超再生とかサンドバッグの極みかよ。ならその上からぶちのめすだけさ!いらっしゃい脳みそマン!」

 

そして脳無は鱗に向けて拳を………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り抜くことなく素通りする。

 

「…はッ?」

 

 

その時に鱗は気づいた。最悪な事態を。

俺の後ろにはいったい誰がいた?

 

 

 

 

 

そこからの行動は早かった。自分の限界の力を足に集中させ一気に加速。大切な友の命を守るため、覚悟を決めた。そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブチッ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り下ろされた拳は大切な友の目前で止まった。

 

その代償として鱗の()()()()()()()()、それでもなお止まることのない拳が鱗に叩き込まれ、衝撃が全身を突き抜けた。

 

 

 

 

 

 

 



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石楠花 鱗

いつ私がシャコとしては戦わないと言った?

残念だったな!ハジケは帰省していったよ!




「「「石楠花/くん/さん!?」」」

 

最初に叫んだのは誰か…それすらわからないほど生徒たちは動揺し、鱗の容態を確認するために急いで鱗の元へ駆けつけた。

 

「はははははッ!!なんだ!口ほどでもないな!!よくやったぞ脳無!!」

 

後ろで何か叫んでいるが気にしない。生徒たちの目には腕を引きちぎられながら吹き飛んでいく仲間の残像が脳裏にこびりついていた。

 

そしてたどり着いた先で見つけた仲間の姿に絶句した。

左腕は肘より上あたりから引きちぎれ血が大量に出ている。そして左腕をクッションにしても止まらなかった拳が左頬を捉え、左目も危険な状況だ。吹き飛ばされて障害物に叩きつけられた衝撃で体中がボロボロ。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!?石楠花ぇぇぇぇぇぇぇ!」

「そんな………!?酷い…!!」

「石楠花さん!?死なないでくださいまし!?」

「石楠花!?しっかりしろ!!」

 

仲間たちが口々に名前を呼ぶ。死んでしまったのではないかという最悪が脳裏によぎるが振り払うように声をかけ続ける。その声が聞こえたのかゆっくりと目が開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、手ぇ取れた」

 

 

いつも通りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッテェ…、あの脳みそクロスケめ…!

腕が痛い、死ぬほど痛い。泣き叫びたいぐらい痛い、でも声には出さん!心配されるからな。

 

あと左目がイカれた…シャコが目を怪我するとか致命的じゃん。だが俺は止まらないがな!

 

「石楠花ぇぇ!!大丈夫かよ!?」

「ああ、余裕シャクシャクだ」

「逆に何で大丈夫なんだよ!?腕取れたんだぞ!?」

「俺は長男だから我慢できた。次男だったら我慢できず泣き叫んでいただろう」

「お前一人っ子だって前に言ってたじゃねぇかよぉぉぉ!?」

「覚えておけ、一人っ子と長男は紙一重。リピートアフターミー?」

「いつも通りで安心したよバカやろぉぉぉぉぉ!!」

 

皆が石楠花が生きていたことを喜ぶ。

八百万は特に凄かった。

 

「石楠花さん!!」

「イダダダダ!?傷口がより死ぬ!それにまだ勝ってないから!!」

「あっ!申し訳ございません!」

 

解放され、鱗はゆっくり立ち上がる。見つめる先はニヤニヤした顔のヴィランだ。

 

「なんだよ生きてたのか…残念だな。でももうその腕じゃ戦えないなぁ…!」

「心配してくれるのか?熊手男。生憎だが俺はここからだぜ?よし耳郎!」

「なっ…何だよ?」

 

 

「頑張れお兄ちゃんニャンニャン♪と言ってくれ」

「誰が言うか!?」

 

「えぇ〜、言ってくれないの?言ってくれなかったらパワーアップ出来ないんだぜ?」

「何で言わなきゃいけないんだよ!?」

「いいじゃねぇか、言ってやれよ。言ったところで結果は見えたんだからな。どの道片手のガキに何が出来るかって話さ」

「何でヴィランにまで待たれたんだよ!?」

 

意外と優しいじゃないか。それが後々自分の首を絞めることになるんだが待ってくれるってんなら待ってもらおうか。お前達はハジケの何たるかを分かっちゃいない。ヴィランにとってハジケリストは超越した存在なんだからな。

 

「さぁ、耳郎!」

「耳郎さんお願いします!!」

「「耳郎!」」

 

 

「うぅ……っ、がっ…頑張れお兄ちゃんニャンニャン…!!」

 

 

 

「よっしゃあぁぁぁ!力がみなぎってきたぁぁぁぁ!!テッテレ〜〜!新しい腕〜!!」

 

「「「はぁっ!?」」」

 

千切れた箇所から新たな腕が生えてきた。それもそうだ。脱皮を繰り返して成長する甲殻類の多くは、脱皮を繰り返すことで失われた脚や触角などの部位が再生していく。さらにはたった一回の脱皮で失った部位がほぼ元通りになる甲殻類も実際にいる。鱗は人型のシャコ、人間をベースにしているからこそ体に蓄えられた栄養分を消費することにより、瞬時に手足の再生を行えるまでに至っていた。

 

 

 

 

「はぁ!?何で腕が生えんだよ!?お前も『超再生』の個性持ちか!?」

「そんなわけないだろ、バカかお前。お兄ちゃんは時に次元を超える、それだけさ」

「ほんと何なんだよお前は!?ロードローラーと降ってきて!脳無と殴り合えて!腕千切れても元気で!腕が生えてきた!お前は一体何なんだ!!??」

「ハジケリストです」

「だからハジケリストって何なんだよぉぉぉぉぉぉ!?」

「落ち着いて死柄木 弔!?」

 

はぁー、煽り耐性ミドリムシ以下かよ。この煽りなんて俺の会話レベルでまだまだ序の口なのにもう掻きむしってるよ。敵なのにずっと見てられる、クラゲのアクアリウムみたいだ。

 

「石楠花!?お前どうやって腕生やしたんだよ!?」

「ん?簡単だよミノルン君。甲殻類は腕や足が生え変わる、緑黄色野菜でも知ってる常識だぜ?」

「おいら達野菜以下かよぉぉぉ!?」

 

でも腕生やすのに結構エネルギー使うんだよな。しかもちょっと細いし。また鍛え直しだ。おっと、落雁落雁。エネルギー補給は大事だよね。

 

「やはりあなたはここで殺しておかないと後々邪魔になる存在ですね!!」

「ワープゲートってトイレどうすんの?ワープさせんの?それって漏らしてんのと一緒じゃね?うわっ、汚な。えんがちょ」

「このクソガキがァァァァァァ!!」

「そう怒るなよ、落雁いるか?あっ、食ったら漏れるか。ごめんごめん」

 

「黒霧、お前が乗せられてどうするん「お前尻拭く時どうすんの?えっ、まさか拭かない派か。『きのこの山』、『たけのこの里』に続いて人気の『拭かない尻』か。マイナーだけど俺は応援してるぜ?」殺れ脳無!!あのクソガキを後悔するほどにブチ殺せ!!!

 

めっちゃキレますやん。脳無君も大変だね?こんな尻をふかないすぐキレるパワハラ上司の指示に従わなきゃいけないなんて。俺なら術式展開しちゃうね。

 

ぶっちゃけ脳無君の対策はもう出来た。ようは当たらなきゃいいだけの話だ。今度の俺は一味違うから仲間を狙われることなんてバックスクリーン3連発ぐらいないね。

 

よーし!じゃあお兄ちゃん頑張っちゃおうかな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で…!?何で脳無の攻撃が当たらない!?」

 

戦闘が始まって現在まで鱗に脳無の攻撃が当たった回数は未だゼロ。対する鱗の攻撃は脳無に面白いくらいに当たる。そして攻撃が当たるたびに脳無は動きが鈍る。

 

 

脳無も心なしか焦って見えた。

当然だ。人間など叩けば粉砕できる筈のこの拳が…

 

対オールマイトのため改造され『筋力』『俊敏』『個性』全てが強化され、オールマイト並の力をオールマイト並のスピードに乗せて放つこの拳が…

 

()()()()()!!

 

 

(いや)、当たるわけがなかった!

 

 

当然だ。男は躱して打つ、打っては躱す。この動作に命をかけてきたのだ。

 

鱗が脳無に対して行っているのは『真拳』でも『ハジケパワー』でもない。只々純粋な『ボクシング』。

 

躱して『水月(ストマック)』!

 

潜って『脇腹(リバー)』!

 

普段はハジケている男は、幼少の頃から毎日毎日毎日毎日この動きばかりを練習してきた。

 

そんな武道の道を歩んできた男に対して力、スピードに任せたテレフォンパンチなど当たる筈がなかった。

 

 

「何してる脳無!?早くそのガキをブチ殺せ!!」

「やかましい!!白滝でも食ってろ!」

「ぐえっ!」

 

戦いながら顔面に白滝をヒットさせられるぐらい、今の鱗には余裕がある。積み上げてきた努力、相手との圧倒的な差、そして何より…

 

 

自分の背には守るべき存在達がいることが鱗を強くする何よりの根拠だった。

 

 

「いいよ脳無君!かなり強めの俺のパンチでも壊れてくれない!こんなヴィラン(サンドバッグ)を俺は待っていた!」

「本当に何なのですか彼は!?援護しようにも風圧で近づけない!!とんでもないことを仕出かすバカだと思いきやオールマイトと同威力の連撃、更にヒーロー以上の身体能力だと!?何でこんな変人(バケモノ)が雄英にいるんです!?」

「何なんだ…、一体何なんだお前はァァァァ…!!」

 

その問いに対し、鱗は…

 

 

 

 

 

「ハジケリストです」

「「だからハジケリストって何なんだァァァ!?」」

 

 

 

安定の答えを導き出した。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ脳無君、今から()()()殴るから…おたく自慢の『ショック吸収』で…耐えれるものなら耐えてみな

「「「ツッ…!?」」」

 

 

 

雰囲気が今までの比にならないくらい冷たいものに変わった。それこそ敵も味方も背筋に冷たいものが通るくらいに。

 

腕を引き、力を溜める。そして………

 

 

 

 

 

 

 

青龍蝦(シャコ)の持つ最も有名な特性ー"パンチ"について

 

前二本の捕脚をスナップさせ打ち出すこの一撃は()()()()()()()()()()()

 

()()()ダイバーの指を折り…

 

()()1()5()c()m()()()()()二十二口径の拳銃と同じ威力があると言われている。

 

しかしこれらは水中での出来事。陸地では自分の余りの力に耐えきれず、自身も傷ついてしまう可能性があるから加減をすると言う説がある。

 

 

だがこの説は否である。いや、()()()に限っては否である。

 

 

彼は人の枠組みでは考えられないことを易々とやってのける。脳がセーブをかける?いや、かけない。自身の力で傷つく?いや、傷つかない。ハジケリストには当たり前の常識は通用しない。

 

 

 

 

 

 

 

考えたくもないが………

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()ー!!

 

 

 

 

 

 

限界まで溜められた力を解放した時、光るのだ。その現象の名は『ソノルミネッセンス』。シャコはパンチの威力で真空の泡"キャビテーション"を引き起こす。キャビテーションによって発生した泡が高温になり、原子・分子が放棄されて発光するのだ。

 

ではこのキャビテーションはどこで発生するのか?

 

 

答えは簡単。殴られる対象の()()()だ。鱗は中国武術も嗜んでいる。そしてこのような言葉が存在する。

 

 

 

『人は水の溜まった皮袋だ』と…

 

 

人の水分量は80%を占める。だからこそ鱗はパンチの当たる瞬間に"発勁"を乗せる。するとどうだ?シャコのパンチによって放たれる発勁は相手の体内でキャビテーションを発生させ、淡く光り、体外からも体内からも崩壊させる。

 

 

 

 

 

 

その名も……『青龍蝦パンチ・改』

 

 

 

 

 

鱗の拳が脳無に直撃した時、置き去りにした音が森羅万象全てを支配し、脳無の胸を拳型に陥没させ、轟音と共に紙切れのように吹き飛ばした。

 

 

 

そして吹き飛ばされた脳無がもう立ち上がることはなかった。

 

 

 

「…勉強になったか脳無君。ただ打ち合うのが"喧嘩"なら、打たせず打つのが"格闘技"、でもって…()()()()()10秒以内に立ち上がるのが『ボクシング』だ

 

 

 

 

吹き飛ばされた脳無に背を向け、高々と右手を挙げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鱗は目が良いが流石に空間を超えてみることは出来ない。

だからこそ気づかなかった。

敵は()()()()だけではなかったことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()

 

 

 

 

 



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まだ見えぬ敵

本日はハジケ要素の前半後半でお送りいたしまぁす!

バトルはまだまだ続くぜ!




「…はっ?」

 

死柄木は理解出来なかった。いや、理解していたが脳が理解することを拒んだ。

 

対オールマイト用に造られた脳無が目の前のふざけたガキにたった一撃の下倒されたのだ。

 

「おいおい嘘だろ…?脳無だぞ…?対平和の象徴のために造られた怪人脳無だぞ!?それが何でよりにもよってこのふざけたクソガキに倒されたんだ!?まさか()()()欠陥品を送り付けやがったのか!?」

「ならそのふざけたガキが現実を見ようとしない熊手コーデ君に教えてあげよう」

 

後ろを向いていた鱗が振り返り、目を見据えながら口を開く。

 

 

「世界の大半を占める力無き者にとって、自らを肯定するに不都合な“事実”こそが悉く真実なのだ」

 

「っ…!?」

 

ぐうの音も出ない正論。脳無は目の前で倒された、それは真実。だからこそ子供のように癇癪を起こすことしかできなかった。

 

「何でオールマイトでもないお前が脳無を倒せるんだよ…!?おかしいだろ!?このチートがぁ…!!」

「ニュートンは『万有引力』を発見した。アインシュタインは『相対性理論』を提唱した。ならば俺は『ハジケリスト=チート』という『ハジケ最強理論』を学会で発表しよう。これでノーベル平和賞は俺のものだ」

「何で脳無を倒したのがコイツなんだよぉぉぉぉぉ!?」

「落ち着いてください死柄木 弔!?」

 

 

おいおいおいおいおいおいおいガキかアイツ。おいおいコーラおいおい。とりあえず漫才みたいな取り組みをしている間に炭酸抜きコーラで栄養補給しとこ。

 

「落ち着いてください!今から二人であのガキを殺せば万事解決です!まだプロヒーローも来ていない!そして何より脳無の攻撃が直撃した体が元気のはずがない!」

「そうか…そうだよなぁ…!!あいつはボロボロなんだ…!殺すなら今しかない!このままだと俺はストレスで二度と安眠できそうにないからな…!!」

 

ん?何か勘違いしとりゃしませんかい?誰がボロボロで元気がないだって?

 

「やるぞ黒霧!あのガキをぶち殺す!」

「ええ!真っ二つにして差し上げます!」

「「石楠花危ない!?」」

 

最近の若いもんは元気だねぇ。おじちゃんは元気な姿を見ているとこっちも元気が湧いてくるよ。とりあえずまずは………

 

「おらぁぁぁぁぁ!見えてるんだよ!」

「ぐはっ!?」

 

黒霧を吹き飛ばす。

 

「ワープ移動してるのか知らんが俺の目には何処にどう出てくるか見えてんだよ!!ついでに熊手野郎!お前は触られたらヤバい系男子だ!だから…」

 

そうして鱗は地面を殴る。すると地面が割れ、大小様々な岩の破片が死柄木を襲う。

 

「クソッ!いてぇ!」

「触る個性なら触らせないように立ち回るだけだ!ほら!割れた地面にはまって土に埋まってろ!それと黒トリュフ!見えてるって言ってるだろ!」

「ぐっ…!」

 

地面を割り足場を崩して連携させない。連携してもワープ場所を看破される。

 

またしても的確に捉える攻撃で圧倒されていく死柄木達。もうプライドが限界だった。

 

「黒霧ぃぃぃぃ!!ワープゲートで真っ二つにしろぉぉぉぉ!!」

「ええ!これでどうです!」

「だから効かねえと…範囲広すぎない?」

 

ワープゲートを展開し、胴体と足を別の場所に出現させる。

 

「これで私がワープゲートを閉じたらあなたは真っ二つです!あなたの内臓が散らばってしまいますが止められるのなら構いません!さぁ、死になさい!」

「石楠花さん!?」

 

そしてゲートが閉じられる瞬間………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォッフォッフォ…まだまだじゃの」

 

「はっ?」

 

黒霧の後ろに()がいた。

 

 

 

「いや…えっ!?あなた今ワープゲートに挟まれて………!」

「フォッフォッフォ、それは残像じゃよ」

「何でもありですかあなたは!?あとその話し方が妙にムカつく…!」

WRYYYYYYYYY(ウリイィィィィィィィィィィ)ーッ!!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

ボコボコに殴られる黒霧。だが捕らえたはずが『残像だ』の一言で済まされただけで諦めるような男ではない。黒霧は次なる作戦に出る。

 

「だったら貴方の存在を別の場所にワープさせればいいだけのこと!火山の火口にでも飛ばしてあげましょう!今度こそサヨナラだ!!」

 

そうして今日一番の速さで鱗の足元にワープゲートを展開する。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「「「石楠花/くん/さん!!」」」

 

今度こそ鱗はワープゲートによって飛ばされ、目の前からいなくなった。

 

「はははははっ!!よくやった黒霧!やっと目障りな奴が死んでくれたか!!」

「そんな………!」

「石楠花ぇぇぇぇぇ!!」

 

ヴィランは喜び、仲間たちは絶望の表情へ変わる。

 

だがしかし彼らは忘れている。鱗がハジケリストであることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁーい、ジョージィ!」

「「「嘘だろ!?」」」

 

 

黒霧の中から変人が現れた。そのまま何事もなかったかのように出てきて戦闘態勢を取る。

 

 

「いや…えっ!?どうやって帰ってきた!?」

「そんなもん、ゲートから放り出されて閉じる瞬間に空中で天空×字拳(てんくうぺけじけん)決めて俺が飛ばされたゲートに再び入って帰ってきたに決まってるだろ?ちゃっかり火山にまで飛ばしてくれちゃって。もう少しで石楠花ビビンバになるところだったぜ」

「いい加減死ねよテメエェェェェェェェェ!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

「「ぐべらッ!?」」

 

 

段々見ている側があまりの理不尽に可哀そうになってきた。そして死柄木自身の牙も着実に折られていく。ネギで戦い、パンチは即死レベル、致命傷は「残像だ」で躱され、ワープゲートからも自力で脱出、そして意味の分からない攻撃で終始圧倒。

 

 

 

 

 

だが真の敵は着々と近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴボッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ?空間からう〇こ出てきたぞ?ああなるほど、これが黒トリュフのトイレの光景か」

「違いますよ!それよりもあれは………」

「………()()?」

 

空間から泥水のようなものが溢れ、その中から180センチ程の人影が出てくる。

 

 

筋骨隆々で全身が真っ黒な体、頭から生えた触覚、瞼のない大きな目、およそ人には見えない顔つき。そして首からラジカセをかけている。

 

 

全身があらわになった時、一言だけ話した。

 

 

 

 

 

 

 

「じょうじ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…!」

 

鱗は危機管理能力が高い。だからこそ一言、たった一言聞いただけで目の前の存在がヤバい存在だということに気づいた。何かヤバイ、あの謎の生物とラジカセは脳内警鐘をガンガンに鳴らしている!

 

 

「お前らここから早く逃げろ!!」

 

 

鱗からは想像もできない大声に生徒たちは混乱する。そして鱗が声を発したと同時にラジカセから音声が流れてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やあ弔、大丈夫かい?』

 

 

途方もない巨悪の声が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレはヤバいな…どれくらいヤバいかというと、動けない状態のところにダンプカーで突撃されるくらいヤバい。

 

佇まいがとんでもないな…、油断すれば一瞬でやられる。ふざけてる暇すらない。でも心なしか雰囲気が俺に似ているような…

 

 

『やあ弔、大丈夫かい?』

「…先生?」

 

先生って誰よ?ていうかやっぱり今回の襲撃の主犯はアイツじゃなかったか。だってアイツ幼稚すぎるもん。すぐ癇癪起こすし。絶対ブレーンがいると思っていたけど、やっぱり居たか。

 

『この脳無が出動するということは…対オールマイト用脳無が倒されたってことだ。流石に今の弔にはまだキツいだろう。一度帰るといい、この敗北が君を強くするんだよ』

 

すると死柄木と黒霧の口から泥のようなものが溢れる。

 

「次会ったときはお前を絶対殺してやる…!テメエに虚仮にされたこと忘れねえ「落雁を食え!」ぐえっ!?」

 

 

顔面に高速で落雁を投げつける。死柄木と黒霧はそのまま泥に飲まれるように消えていった。残ったのはラジカセを首からかけた脳無だけだ。

 

 

帰るならさっさと帰れ、口からう〇こマンズ。本当ならそのまま気絶させて捕まえるつもりだったんだが………いま目を離せば目の前の脳無に少なくとも一人は必ず殺される。だから目を離すわけにはいかねェ。

 

「お前ら早くここから離れろ。こいつはさっきの奴と同じぐらい強い」

「じゃあお前はどうすんだよ!?」

「俺は足止めだ」

「でも石楠花君はもうボロボロじゃないか!」

 

事実鱗は「ハジケだ!」と言っているが、度重なる戦闘によって体はもうボロボロだ。それでも尚アイツには自分が戦わなくちゃいけないと本能が訴えかけてくる。

 

「ならさっさと離れてプロヒーローでも呼んできてくれ。こんなことしてる間に他の奴らはピンチかも知れないし、気絶させたヴィランが目を覚ますかも知れない。そして相澤先生の方が俺より怪我が多くて危険な状態だ。大丈夫!後は俺に任せとけ!オールマイトが来るまでの最後の時間稼ぎでも何でもしてやるよ」

 

 

 

 

 

その瞬間、脳無がこちらに向けて駆け出した。だが速さは先程の脳無と同等かそれ以上のスピードだった。

 

しかし鱗はシャコの目を持つ。たとえ途轍もなく早いスピードであろうが、鱗の目にとっては捉え切れる範囲内のスピード。しかし他の生徒達にとってはまるで瞬間移動したかのように見えた。

 

「またテメェは俺以外狙いやがって…!」

 

持ち前の動体視力で動きを先読みし、クリンチで相手の動きを拘束する。

 

「早く行け!!お前らの黒歴史探しまくるぞ!!」

 

その言葉を聞き、次々と生徒達は立ち上がる。ここに居ては邪魔になる、だからこそまずは目の前の人を助けるために動いた。

 

「石楠花!このやり取り何回もしたけど、絶対に死ぬなよ!?」

「すぐ応援を呼ぶから!石楠花君!」

「信じてるぞ石楠花!」

「絶対勝てよ!お兄ちゃ……石楠花!!!」

 

仲間からの声援を糧に拘束する腕の力を更に込める。

 

 

「石楠花さん!私はあなたが勝つと信じています!!だから石楠花さん!!無事でしたら()()()()()お願いを聞きますわ!」

「おっぱいをしこたま揉ませてくれ!!」

「「「即答!?」」」

「わっ…わかりましたわ!」

「「「いいの!?」」」

 

 

石楠花、更に力が入る。

そして仲間達が無事に移動して行くところを見送った。

 

仲間達が離れたタイミングを見計らったかのように、お腹に鋭い膝蹴りが入り、吐きそうになる。

 

「ぐっ!」

 

いってぇ…!何これ!何食ったらこんな膝蹴り打てんの?俺の口から胃でも出すつもりかよコイツ。

 

 

そして再びラジカセが再生され、話出す。

 

『流石は一体目の『ショック吸収』『超再生』の個性持ち脳無を倒しただけはあるね。褒めてあげるよ。でも僕の予想では一体目に力の殆どを使ってしまうと思ったんだ。何せ君にしか倒せないように作ったんだからね。そこから二体目の登場だ。絶望感は計り知れないんじゃないかな?そんな衰えた体で生徒達を守れるのかい?…()()()()()()

 

 

あの…思いっきり人違いですよ?

 

 

 



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格闘家の意地

ハジケ帰ってこォォォォォォォォォォい!


あの…俺はオールマイトったら名前じゃないですよ?みんな大好きプリティー少年石楠花 鱗ですよ?

 

『君は衰えた。だからこそ確実に始末する為にニ体目を寄越したんだ』

「衰えたも何もまずは人違いなんですが…この場にオールマイトのオの字も見当たらないですよ?」

『だから….オールマイト、君を信じている生徒達の前で死んでくれ』

 

コイツ全然話聞かねぇ。

あっ、録音放送か。

 

そして脳無が動き出す。

 

「早い…が!俺の動体視力の前では見切れない速さじゃない」

「じょうじ」

「俺じょうじじゃないよ?よく言うけど。」

 

躱して打つ、打っては躱す。

だが何だろうかこの違和感は…

こちらの攻撃は当たる。だが当たる瞬間に衝撃を減らす為に絶妙にズラされている。

 

そして鱗にも相手の攻撃が少し当たっている。普通ではあり得ないのだ。素人の攻撃に当たるという行為自体が。

 

だが当たっている。そして目の前の相手の行う動きに妙な既視感があった。

 

 

「(何でアイツ『ボクシング』を知ってるんだ?いや、それよりも何故『中国武術』や『タイ武術』を戦闘に組み込んでいるんだ?これじゃあまるで俺と……)」

 

 

 

その問いに答えるかのようにラジカセが起動する。

 

『手こずっているようだね。それもそうさ。この脳無は特殊でね?普通の脳無と違うんだよ。違いは元にした個性と作り方だね。実験として()()()()に個性を与えてみたんだ。するとどうだ!個性を持ったゴキブリが誕生したわけさ!それを人間大に改造してね。人間大のゴキブリは初速度で時速300kmのスピードを出せる。そして全身が筋肉だから人間を遥かに超えたパワー、そして痛覚がない。いいことずくめじゃないか。だからこそゴキブリの運動能力を最大限に活かせるように体を改造しているのさ!ゴキブリに個性を与えるだけでここまで強くなるなんて大発見だよ……!』

 

 

じゃあ俺みたいな奴かよ。俺は人間大のシャコだけどこいつは人間大のゴキブリか…そこに俺達以上の体に改造したと…えっ、詰んでね?めっちゃ詰んでね?

 

てかゴキブリに個性を与えるって何?個性ってあげれるもんなの?しかもゴキブリに?絶対友達いねぇわコイツ。

 

 

『与えた個性の話をしよう。それが『()()()()』さ!君の個性までは模倣出来ないが、戦い方はまるで本人の様に全て模倣する。素人には効果が薄いが、戦闘能力の高い者に対しては無類の強さを発揮する。そりゃそうさ!鏡に映った自分と戦っているようなものだからね。もちろん力も君に近づけて造ったから君の個性を模倣出来なくても問題ないんだけどね』

 

 

やっぱり自分と戦ってたわ。えっ、じゃあコイツは俺が学んで来たことを使えるってこと?俺並みの技術を持ったオールマイト?詰んでね?

 

 

『だからこそこの脳無は特別なのさ!この脳無の名前は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()

 

 

 

名前かっこいいなおい。

 

 

『録音だから君が何を話しているのかも知らない、どんな絶望した表情をしているのかも分からない。君を直接見れないことがとても残念さ!頑張ってくれたまえ、オールマイト!生徒達が目の前で死んでいくぞ?さぁ、テラフォーマー…殺せ

「じょうじ」

 

その言葉を残してラジカセは役目を終えたかのように壊れた。そして壊れた瞬間に飛び出してくる。

 

「あぁぁぁぁぁぁラジカセがぁぁぁぁ!知らない人の黒歴史がぁぁぁぁぁぁ!!」

「じょうじ!」

「お前はカサカサ動くな!夢に出るだろ!」

 

 

 

人間大のシャコVS人間大のゴキブリ、異種族対戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロ対プロの試合は長くなることが多い。その理由としてはどちらもその種目を長い年月かけて練習してきた確固たる実力があるから。

 

攻撃が当たる瞬間に少しズラす。

より的確な部位を狙う。

 

技量が似ていれば似ているほど、明確なチャンスを物にしない限りずるずると長引いていく。

 

ことこの試合にしてもそうだ。

 

 

「じょうじじじょうじ」

「何話してるか知らんが、俺はやはり強かったということだけは分かる」

 

クソッ…全然決定打がねぇ。

俺凄かったんだな。絶妙に当たる瞬間に衝撃を流されてる。

 

石楠花 鱗。シャコの視力を用いた動体視力でゴキブリの筋力を上乗せした脅威のスピードで放たれるパンチ、キックを紙一重で躱していく。

 

テラフォーマー。ゴキブリの体だからこそ体も強靭で熱に強く、多糖類アミロースで出来た甲皮を全身の気門から入る酸素で直に燃焼させることで爆発的な運動量を得ている。さらにお尻の辺りに尾葉(びよう)という感覚器官があり、空気中の僅かな空気の流れも察知することができる。だからこそ鱗が動いたときに生じる空気の変動によってどう攻撃されるかを予測し、的確に躱していく。

 

 

 

 

だが差は着々と開いていた。

鱗の度重なる戦闘、そして全身に受けたダメージによる疲労、左腕再生のためのエネルギー使用、左目の負傷、ハジケすぎによる体力の消耗。

 

片やテラフォーマー。痛覚無視、疲労無し、人間を一捻りできるパワー、新幹線の最高速度と同じスピード、尾葉による空気の流れの把握。

 

 

その差は圧倒的であった。

 

 

 

 

 

 

 

パキッ…

 

「くっ!」

 

拳が軽く掠るだけで簡単に折れていく骨。ひび割れを含めると全部で10か所以上折れている。それでも尚鱗は攻撃することをやめない。今ここで攻撃する意思を放棄してしまうと自分を含めた生徒達が殺される未来しか見えないから。

 

「クソったれ!毎度毎度俺の骨をウエハースみたいに折りやがって!!ミートローフにしてやろうか!」

 

 

攻撃は止めない。

 

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

躱して打つ。打っては躱す。

 

 

 

 

打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して打って躱して、そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズルッ……

 

 

「は?(滑った?何だこれは………血?)」

 

 

 

目の前の存在に気を取られ周りが見えていなかった。掠るだけでも皮膚が裂け、骨が折れ、血が飛び散る。だからこそ気づくのが遅れた。辺りは大量の自分の血で濡れていることに。

 

 

 

 

 

だからこそ………

 

「ヤベ……ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

ドンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の隙をつかれて打たれた。

それが、格闘技の世界なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鱗とテラフォーマーの戦闘は生徒達にも見えていた。

だからこそ生徒達は信じられなかった。

 

クラス内で最強と言われ、オールマイトしか勝てないような相手にも勝った、今を生きて乗り切るための希望。そんな男に衝撃が広場まで届くオールマイトのような一撃を叩き込まれ、倒された。

 

 

皆が絶望に覆われる中、石楠花をよく知る人物たちは信じていた。あいつはこんなところで死なない!必ず立ち上がると!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じょうじ…」

 

テラフォーマーは次の獲物を探していた。

命令はただ一つ。『殺せ』。

先ほどの男は強かったが渾身の一撃を叩き込んだ。もう動かないだろう。そう見切りをつけ、人が多い場所へ向かうため背を向ける。

 

この男の戦闘を模倣した瞬間、自分が明らかに強くなったことを自覚していた。突然強くなったことを自覚した生物がとる行動は主に二つ。

 

一つはより高みを目指すために努力を続け、自分を強くしてくれた人や事象に対して感謝すること。

 

 

 

 

 

 

そして二つ目は………『()()

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ()()した。勝負に勝ったと思い込み、背を向けてしまった。

 

 

テラフォーマーは造られた存在。だから知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()』を知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()?」

 

 

 

気づけば背後から声をかけられ、肩に手を乗せられていた。

 

テラフォーマーに心というものは備え付けられていない。にもかかわらず冷汗が止まらない。後ろを振り向くことができない。体が震える。今振り返れば殺されるのは自分だと理解してしまった。

 

 

 

それは生物なら忘れることができない感情………それは『()()()

 

 

どんな強者でも心の奥底に眠る感情。

 

 

 

 

 

そこからの行動は早かった。

殺られる前に殺る。そのために振り向きざまに渾身の一撃を顔面に叩き込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、止められた。

 

 

 

 

 

渾身の一撃を受け止められた。

まるで打たれる場所が分かっていたかのように。

 

 

「うん、やっぱりか」

 

 

 

そしてテラフォーマーは腹に拳を受ける。

先ほどまで受けていた拳。にもかかわらず重さが先ほどの比ではなかった。

 

 

「やっぱり俺は強いな。戦っていて分かったよ、俺の強さが身に染みて。だから感謝しているんだ。俺をまた一段階強くしてくれて」

 

テラフォーマーは理解できなかった。この男が何を言っているのか。

 

「やっぱり気づいてないね。そりゃそうか、それは俺の技術だから」

 

そして鱗はお構いなしと言葉を続ける。

 

「どうやら俺はジャブを打つ時、()()()1()()()()()()()()()()()()

 

何を言っているんだこの男は?死にかけなのだ、さっさと殺してしまおう。そう思い繰り出す攻撃が………先ほどまで面白いように皮膚を割き、骨を折っていた一撃が………当たらない。

 

「うん。やっぱり右腕を使う時も、避けるときも、足を使う時も、全部に特有の癖がついていたようだ。客観的に自分を長時間見る機会なんてないから初めて知ったよ」

 

何故だ!何故当たらない!?そう焦るように次々と繰り出すが悉くいなされる。

 

 

「本当にありがとう、テラフォーマー。客観的に自分の動きを見続けて、自分の攻撃をくらって打撃の威力を分析できる機会をくれてありがとう。そのおかげで俺は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉と同時に鱗の腕が轟音を響かせながら落ちた。いや、落ちたように見えた。

 

テラフォーマーはよくわからなかった。落ちたのは手から肘までを覆い守っていたシャコの甲殻?鱗?

 

 

 

 

だが一つ言えることは………()()()()()()()()()()()()()

 

 

地面に落下したと同時に地面が陥没する。

それは人が身に着けるには重すぎて扱いきれない重り。

それは攻防一体型の鎧。

 

石楠花パパ率いるCOSMOS社が鱗の細胞で一から作った心身一体型の武器。その名も………

 

 

 

 

 

 

 

 

甲殻一体式パワーリスト"ガナ・フライ・ナウ"

 

 

 

 

 

 

怒れる獣の(おもり)が今外された。

 

 

 

 

 



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USJ事件 閉幕と傷跡

USJ事件閉幕です!

それと私生活が忙しくなってきたため、毎日投稿ができないかもしれないです!これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします!!


軽い…

 

最初に感じた鱗の感想だった。

今ならどんな攻撃が来ても当たらない、そして自分の攻撃が全て当たるような全能感の中にいた。

 

「これより後ろには行かせない」

 

テラフォーマーは一瞬攻撃することを躊躇した。それでも『殺せ』という命令を遂行する為に動く。

 

そして先ほどまでと同じような鱗を追い詰めたパンチを打つ。

 

打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唯一の違いがあるとすれば…お互いの立場であろうか?

 

 

 

 

先程と違い、攻撃を繰り出し続けていたテラフォーマーが気づけば地に倒れ伏していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僅かに残った知性で必死に考える。

 

何故倒れているのが自分なんだ?

何故攻撃が当たらない?

何故自分が見下ろされている?

 

何故?何故?何故?何故?何故?

 

考え出すと止まらない。

そして畳み掛けるように鱗が話す。

 

「どう?地に伏した感想は?」

「じょうじ…!」

 

 

テラフォーマーは憤慨する。今まで圧倒していた男に自分が負けているのだ、沸き上がる殺意を胸に今一度起き上がる。しかし…

 

 

 

「じょっ………?」

 

 

起き上がれない。足元がふらつく。

視界がぶれて思うように立てない。

 

そしてまた地に伏すこととなる。

 

 

「立てないだろ?そりゃそうだ、()()()()()()()()()

 

 

脳震盪。それは的確に顎を撃ち抜かれたことによって起こされた症例。人間の脳は少しの揺れで平衡感覚を失ってしまう。あの一瞬でピンポイントで顎を小突き、脳を揺らしたのだ。

 

 

「じっ…!」

「無理に起きないほうがいいぜ?痛くないとはいえ、無理をすれば体にガタが来る。まぁ、造られたお前たちには分からないことだろうな」

「じょうじ…!!!」

 

それでもなお目の前の存在を殺すためだけに気合で起き上がる。テラフォーマーは痛覚がない。だからこそどのような状態でも活動できる。テラフォーマーは無理やり自分の頭を叩くことによって脳震盪の症状を緩和させた。

 

 

 

 

 

そしてそのタイミングで………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が来た!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

希望がUSJに到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいおい、やっとかよオールマイト………

遅すぎて待ちくたびれてコサックダンスを踊るところだったぜ。

 

「じょうじ!!」

「おっと…よそ見するなってか?まずはお前を倒さないとな」

 

再びテラフォーマーは常人の目には捉えることができないレベルの連撃を繰り出す。しかし鱗、その全てを丁寧に躱す。

 

シャコの目は非常にいい。だからこそ、もう慣れたのだ。速さというものに。

 

 

「じょうじじじょう!!」

 

それでもなお繰り出し続ける。自分の勝ちを手に取るために。自分の命令を遂行するために。目の前の男に勝つために!

 

 

 

 

だからこそ見ていなかった。いや、見えていなかった。

 

 

 

 

躱し続けている男が右腕を後ろに引いていることを。

男が力を溜めているところを。

 

 

 

テラフォーマーは知らなかった。最初の脳無を倒した(シャコ)の一撃を。

 

 

 

 

「感謝してるよ。俺を強くしてくれて」

 

 

 

 

そして…全てを穿つ高速の一撃(シャコパンチ)がテラフォーマーに向けて放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テラフォーマー…ねぇ。強かったよ…1人の戦士として敬意を表すくらいにはな…だからどうか被害者達よ、安らかに眠ってくれ………でも、もうこりごりだわ…」

 

 

 

鱗は手を合わせ、目を瞑り、祈る。

そしてそのまま眠るように立ったまま意識を失った。

 

 

 

 

 

テラフォーマー、捕獲(ノックアウト)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイトが到着してからは早かった。次々と残党は倒されていく。そして飯田が呼んだヒーロー達や警察も到着し、次々とヴィラン、脳無、テラフォーマーを逮捕していく。

 

鱗はいち早くオールマイトによって救助され、病院へ運ばれていった。

 

「石楠花少年すまない!!私が遅れてしまったばかりに君に大けがをさせてしまった…!それでも言わせてくれ…!!生徒達を守ってくれてありがとう!!!」

 

 

こうしてUSJ事件は重傷者が出たものの、誰の死者を出すこともなく幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

現在生徒たちは警察によって人数確認をされていた。

 

「全身重傷の彼を除いて…ほぼ全員無事か」

 

主犯以外の全てのヴィランは逮捕された。それでも生徒達の表情は暗いままだった。そして生徒達が最も気になっていることを蛙吹が聞いてくれた。

 

「刑事さん、相澤先生と石楠花ちゃんは…」

 

その後告げられた症状に血の気が引いた。

 

「相澤さんは両腕粉砕骨折に顔面骨折…脳系の損傷は見受けられないが、眼窩底骨が粉々になっており眼に何かしらの後遺症が残る可能性あり…だそうだ…」

「ケロ…」

「次に石楠花君だが…こちらもかなりひどい。全身の裂傷に左目の眼底骨折、肋骨や鎖骨など、小さな骨やひび割れを合わせると計18ヶ所。更に両腕の筋肉が著しく千切れており、何故か体の必要栄養素も低下している。すぐさま治療しなければ危険な状態…だそうだ」

「そんな…!!」

 

クラスメイトの怪我が酷い。そして何より腕が千切れる瞬間を見た6人は酷く後悔していた。あの場で何も出来なかった、もっと出来ることがあったのではないかと。

 

だからこそ生徒達は心に誓う。目の前の人を守れるくらい強く!足手まといにならないように強く!オールマイトのようなヒーローになると。

 

今は兎に角鱗の無事を信じる、その事だけを生徒達は願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィラン達が捕まっている頃、とあるバーで。

 

「クソっ!!何なんだよあのガキは!!」

「落ち着いてください死柄木 弔。気持ちは分かりますが…」

「次会ったら必ずぶち殺してやる…!」

 

死柄木が荒れに荒れていた。それもそうだ。ふざけた様子でも真面目な様子でも確実に煽られながら負けたのだから。

 

『弔、今日の負けは必ず役に立つ。覚えておくといい』

「そうだ先生…一人オールマイト並みのパワーを持つガキがいた…!!クソっ!あのクソガキがぁぁぁぁぁぁあ!!」

『ん?脳無はオールマイトが倒したんじゃないのかい?』

「違う!ハジケリストを名乗るオールマイト並みのパワーを持ったクソガキが倒しやがったんだ!あのガキさえいなければ…!!!」

『…へえ』

 

 

『(どうやら新たな個性の譲渡先を見つけたようだねオールマイト。その子が脳無を倒したのか、なかなか優秀な子供じゃないか。だがどれだけ個性を譲渡し続けても結局僕を倒せない。滑稽な話さ。さて、今回の継承者はどんな子なのか楽しみだなぁ…!でも…ハジケリストは初めて聞く単語だよ)』

 

 

 

 

 

 

AFOは気づかない。未だ勘違いを続行中であることを。

AFOは気づかない。確かにオールマイトは個性を譲渡しているが、脳無を倒した男と何の因果関係にもないことを。

緑谷は気づかない。自分の知らないところで巨悪にターゲットにされたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知らない天井だ」

 

いや、一度言ってみたかったのよこの言葉。

だが実際に言う当事者になってみると恐ろしく怖いね。なにせさっきまでテラフォーマーと戦っていたのに気づけばベッドの上よ?怖くね?よく漫画や小説の主人公は自分の現状をそのまま鵜吞みに出来るよね。つかここ何処よマジで。

 

その時鱗の病室のドアが開き、看護師の方が入ってきて

 

「「あっ」」

 

目が合った。

 

 

 

「先生!!石楠花さんが目を覚ましました!!!」

 

 

そして大声を出しながら大慌てで去っていった。

 

なるほど。ここは病院なのね。道理でそれっぽい機材があるわけだ。ならそんなに大声出したらダメじゃね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後…

 

 

 

 

 

 

 

 

白衣を着た医者が病室に入ってくる。

 

「体は大丈夫なのかね?」

「元気ハツラツオロナミンCです」

「成る程…頭に後遺症が…」

「ハハハ、ドクタージョークですか?ぶん殴るぞこの野郎」

 

なんて失礼なおっさんなんだ。俺の頭は正常すぎてスパコンを超えそうなのに。

 

「君は…かなり重傷だったはず何だが…もうかなり治ってるね…」

「シャコですので」

「1週間は目覚めないと思っていたんだが…まさか丸一日で目覚めるとはね…」

「まだ見ぬハジケが俺を待ってるので」

 

怪我の治りは生まれつき早いんだから仕方ありゃせんよ。親も言ってたよ、「元気な証拠だ!」って。その辺は俺の個性が関係してるのかもしれないが別に不利益を被っているわけじゃない。早く学校に行ってハジケられるんだ、素晴らしいじゃないか。

 

 

そうして軽い診断を受けて、医者は部屋から出ていった。そして静寂が訪れる。

 

 

いや〜守れて良かった!

急に敵の強さがインフレ起こしたけど何とか勝ててよかった!テラフォーマーのお陰で自分自身を超えて、1週間前の俺よりは強くなっただろう。でもまだ課題点はある。俺も何処か慢心していたようだ。だからこそまた一から鍛え直しだな。

 

そして暇潰しのために携帯を手に取る。するとそこには大量のメールが届いていた。

 

 

めっちゃメール届いてる…、でもサプライズ登場したいのですまんがスルーの方向で。別に俺死んだわけじゃないから何も全員でメール送らなくても大丈夫ですよ?いや、ありがたいけども。

 

 

 

 

するとその時電話が鳴った。そこに表示されたクラスメイト達ではない名前を見てから手に取る。

 

 

「はいは〜い、みんな大好き鱗ちゃんだよ!………うん、めっちゃ元気、有り余りすぎて暴れ出しそうだ。………えっ、何でもう知ってんだよ、昨日の今日だぜ?ザルかよ。………負け…いや、ギリ勝ったよ。うん、めっちゃ強かった。えっ、どう勝ったかって?これ以上先は有料になりまーす。…………えっ!?その内アンタも来んの!?仕事しろよ!!…………冗談だって!じゃあ、また今度……うん、心配してくれてありがと。じゃあね…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

 

 




オールマイト「(何か嫌な予感が…、いやなぜかわからないが安心感もある)」
校長「聞いているのかい?オールマイト」
オールマイト「はっはい!(うん、大丈夫だと信じよう)」


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カムバック日常

久しぶりの日常回!
なんとお気に入り登録が1万人まで秒読み状態!頑張れ!

書き始めたころにはここまで見てもらえるなんて考えてもなかったなぁ…

あとヒロアカの総合評価検索で1ページ目に来るの凄い嬉しい!


USJ事件から1日休み、当たり前の日常がやってくる。生徒達も鱗以外全員登校していた。

 

「皆ーー!朝のホームルームが始まる!席につけー!!」

「ついてるよ、ついてねーのおめーだけだ」

 

いつも通りの日常。そして…

 

「お早う」

「「「相澤先生復帰早えええ!?」」」

 

ボロボロだが先生の登校。口々に先生への安堵を零す。そして先生が無事なら心配になるのが石楠花だ。同等かそれ以上の怪我をして、メールも既読がつかないため、未だ意識が戻っていない(と勘違いしている)男への懸念の声が聞こえ始める。

 

そしてその先生の口から言葉が放たれる。

 

「皆落ち着いて聞け。石楠花のことだ。実はアイツは昨晩未明ごろに……」

「「「ッ……!?」」」

 

 

最悪が脳裏をよぎる。テレビでもよく聞くセリフ。このまま昨晩とくれば続く言葉は………

 

 

 

 

 

 

 

 

「病院を抜け出して回転寿司屋でカレーを10皿食っていたらしい」

「「「は?」」」

 

 

 

めちゃくちゃ元気だった。左腕がもげ、全身傷だらけで骨折も酷い男がまさかの目覚めて即脱走、からのカレー。しかも10杯。生徒達は開いた口が塞がらなかった。

 

「そして現在は………

 

 

 

 

 

 

天井に張り付いてる……全く…」

 

その言葉と同時に生徒達は首が折れるのではという速度で上を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁい!サンタクロースだよ!」

「「「ギャアァァァァァァァァ!?」」」

 

 

いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあやあみんな!教室に入ってきた瞬間からお通夜みたいな雰囲気になっちゃって、何あったの?」

「お前…!心配してたんだぞ!?腕取れたり全身血まみれになってたからよぉぉ!?」

 

バカの復活。一応全身に包帯が巻かれているが、生きて登校していたことに皆安堵して次々に言葉をかける。

 

「おい!石楠花!!」

 

その中でも爆豪は険悪な表情で鱗に近づく。

 

「テメェ…大丈夫だったのかよ…?」

「みんな!かっちゃんがデレたよ!!」

「茶化すんじゃねぇぞゴラァ!!」

 

爆豪が心配する。これは知る人達にとってはとてもレアな光景なのだ。

 

「俺はテメェに負けねぇ!!俺はお前が戦ってる間、何も出来なかった!!だが次はこうはいかねぇ!!ビビったりしねぇ!ヴィランにも勝ってテメェにも勝つ!それだけだ!文句あるかクソが!!」

 

爆豪の懺悔にも似た叫びを聞いて皆似たような気持ちを覚えた。たった1人で圧倒的な脅威を2体も倒し、主犯格を撤退させたのだ。その代償として大怪我をした友に対して罪悪感を覚えるのも当然だろう。

 

そして鱗は……

 

 

「やっぱりキレ具合があのファッションリーダーと似てるよな」

 

緊張感皆無だった。

 

 

「テメェ真面目に話聞きやがれ!!」

「聞いてるよ、聞いた上でふざけてるんだよ。終わったことをいつまでもウジウジ気にしてどうする?お前がそう思ったんなら、次同じ状況下でどう行動するか、その為にはどのように強くなればいいか、その事だけ考えてろ」

「言われんでもわかっとるわそんなこと!!次はテメェを助け殺したるからな!覚悟しとけ!!」

「俺がお前に助けられる瞬間なんざSTAP細胞が見つかるぐらいあり得ねーよ」

「あり得るわクソが!!テメェ絶対追い抜いてやるからなクソが!!」

「……ふっ!」

「鼻で笑うな!!死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

爆豪の皆の気持ちの代弁、鱗の相手を煽り倒す返答ですっかり空気はいつも通りの雰囲気になっていた。もう気にする者はいない、もし今回のような事態になった時いつでも動けるように強くなる。その事を考え、努力しようと誓った。

 

 

そして一段落ついたところで、ふと気になった疑問を投げかける。

 

「そういえばお前いつから天井に張り付いてたんだよ!?」

「バッカそりゃおめぇ…お前達が教室に来る30分前からに決まってるだろ?」

「怪我人が何してんだよ!?」

 

いや、サプライズ必要だろ?眠気が襲いかかる脳で必死に考え抜かれた最高のサプライズなのだよ。

 

「ていうかどうやって天井に張り付いてたんだよ!?」

「上鳴、そんなもん決まってんだろ?腕力で」

「化け物かよ!?」

 

天井を見上げると丁度手のあった位置に左右5個ずつ穴が空いていた。天井に指を刺してずっとしがみついていたのだ。

 

「アンタどうやって天井まで上がったのよ?」

「そんなに俺のことが気になるのか?耳郎、いや我が妹よ」

「誰がいつお前の妹になった!?」

「お兄ちゃんニャンニャンって言ってくれたし、去り際にお兄ちゃんって言いかけて訂正したことを俺の石楠花イヤーは聞き取っていたぜ?」

「お前が何回も言わすから間違えただけだ!!」

「正直になれよ?お前は俺の妹だったんだ。俺に「お兄ちゃ〜ん!」って甘えたくてウズウズしてんだろ?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

「待て耳郎!?怪我人にそれはマズい!!」

 

半狂乱になりながらのイヤホンジャックを間一髪で防ぐ鱗。生徒達はその光景に何処か安堵の表情を浮かべていた。

 

「なんか…もうこの光景が日常って感じやね」

「そうね、お茶子ちゃん。これが石楠花ちゃんだもの」

「なんか安心するわ」

「石楠花君はこうでなくちゃね!」

「これが石楠花さんですわ!」

 

 

何故か女子にふざけてセクハラする奴というイメージが固定化されつつある現状をどう打破すればいいでしょうか?

 

おいおい、俺ほど紳士な男はいないだろう。だいしゅきホールドを我慢し続けた男だぞ?俺がセクハラしたことなんて一ミリもないね!!

 

「石楠花と言えば特殊プレイって感じするもんなー」

「ただし峰田、テメーはダメだ」

「何だよぉぉ!人前で特殊プレイした男が何言って……あぁぁぁぁぁ!!関節はそっちに曲がらねぇように出来てんだよぉぉぉ!!」

 

元気よくプロレス技を峰田にかける石楠花。そして今はまだホームルーム。相澤はそろそろ注意しようかと思ったが、クラスメイトが死にかけたのだ。だがその男が元気に振る舞っている、そんな茶番も時には必要だと思い、微笑を浮かべながら只々その光景を眺め続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば本当にどうやって天井まで上がったの?」

「簡単だよ緑谷少年!プロヒーロー達に手伝ってもらったのさ!職員室で全力でお願いしたらOKしてくれた。なんやかんやで皆さんノリノリで手伝ってくれた」

「何それ!?すごく豪華!」

「その時の写真がコレ。相澤先生は手がミイラマン状態だからリカバリーガールに撮ってもらった」

「何このヒーロー勢揃いの写真!?しかも全員カメラ目線でピース!?そして石楠花君、オールマイトに肩車してもらってるじゃないか!!いいな〜!!」

「頼めばしてくれるよ。二つ返事でOK貰ったから」

 

 

 

 

 

 

この後オールマイトに肩車してもらっている緑谷の姿が確認された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お祭りムードがフィーバー状態になる前に相澤先生が止め(主に石楠花)、ホームルームが再開。

 

そして大事な話が始まる。

 

「雄英体育祭が迫っている!」

「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!」」」

 

ヴィランに侵入されたばかりで開催するのか?と言った声も上がるが、開催する事で危機管理体制が万全である証明と、ヒーローの卵達の最大のチャンスであるため開催するらしい。

 

 

体育祭ねぇ。てことは俺がテレビデビューするってことだな!!でも一学校の体育祭が「かつてのオリンピック」に匹敵するって凄いよね。どんだけ視聴率凄いんだよ。放映権勝ち取った会社はウハウハだな。

 

「当然名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に一回…計3回だけのチャンス、ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」

 

 

おいおい燃えるじゃないか。これはもう目立ちに目立つしか道はなさそうだな。頑張るぜぇぇぇ!!

 

 

 

「テレビに映ることになるが……石楠花、変なことだけは絶対にするなよ?」

 

 

名指し……だと!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだかんだテンション上がるなオイ!!活躍して目立ちゃプロへのどでけぇ一歩を踏み出せる!」

 

まぁそりゃヒーロー候補生だもんね。テンション上がるわ、俺も現在進行形で上がってる。飯田のテンションの上がり方は独特だな。

 

 

「頑張ろうね体育祭」

「顔がアレだよ麗日さん!?」

 

どうやら麗日は顔がアレらしい。アレって何だよ緑谷、もう少しマシな言い方あったろ。

 

「どうした?全然うららかじゃないよ麗日」

「生…」スパァン!

 

峰田ぁぁぁぁぁぁ!!

 

「大丈夫か峰田!しっかりしろ!傷は浅いぞ!」

「石楠花…おいらはもうダメだ…だからあとは任せた…ぞ……」

「峰田ぁぁぁぁぁぁ!!」

 

くっ…峰田の仇は俺が取ってやる!!お前は天国で俺の勇姿を見てな!行くぜ!!

 

「生…」スパァン!!

 

やっぱり梅雨ちゃんは強いな……俺でもダメだったぜ…すまない峰田、お前の遺志を継げなかった俺を許してくれ…!

 

「何しょうもないことしてんのよアンタら」

「何だ妹、お前も交ざりたかったのか?」

「誰が交ざるか!?あと妹言うな!?」

 

そんなやり取りをしているところに、トコトコと八百万がやって来た。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「石楠花さん……あの…いつ頃私の胸を揉まれるのでしょうか…?」

「「「はぁ!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コイツ……!教室のど真ん中でツァーリ・ボンバを落としやがった…!!

 

 

 

 

「石楠花お前…!お前ェェェェェェェェ!!」

「寝てろ上鳴」

「くぺっ…!」

「確かにあの時約束してたけどお前ェェェェェェェェェ!!」

「寝てろ峰田」

「かぺっ…!」

 

クソっ!油断した…!

まさか教室のど真ん中で暴発してしまうなんて!!バカ二人は眠らせたが全員がこっち見てやがる…!

 

どうすればいいんだ俺の脳内選択肢!教えてくれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

①その場でしこたま揉みしだく。

②抱きしめて背後からしこたま揉みしだく。

③形が変わるぐらい情熱的に揉みしだく。

④レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事しろ俺の頭ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

いや、まだだ…!俺の考えが足りていないだけで第四の選択肢があるはずなんだ!考えろ石楠花 鱗!思考と倫理の空に舞え!この場で「そっか~、なら仕方がないな!」と思ってもらえるような回答を探すんだ!ただでさえ女子の目が据わってきているんだ!この場の最適解は………!

 

 

 

 

 

「八百万」

「はっ…はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の家来るか?」

 

 

「「「おらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

この後、傷が開いて保健室へ緊急搬送される鱗が目撃され、リカバリーガールに死ぬほど怒られている鱗が目撃された。

 



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宣戦布告と帰宅

遂にお気に入り登録数1万人突破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

書き始めてもうじき一カ月で1万突破はものすごい偉業を成し遂げたような達成感がありますね!

これからも応援よろしくお願いします!!


いや~怒られたね。めっちゃ怒られたね。

「血圧上がりますよ?」ってアドバイスしたら、より怒られたね。

 

まぁあの後何とか昼飯を食えていつも通り授業を受けれたけどね。女子からと一部の男子からの視線が人を殺せそうなぐらいすごかったけど、きっと俺に向けられたものじゃないだろう。きっとみんな必死に黒板にメンチ切ってただけさ。

 

 

 

そして放課後………

 

 

 

 

「何事だあ!?」

 

何事だぁ麗日、入り口で大声なんか出してはしたな…何事だぁ!?

 

 

教室の入り口には人があふれかえっていた。USJ事件を乗り越えたヒーロー科を一目見る為か、それとも体育祭に向けての視察か、どちらにせよ人の波ができていた。

 

「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」

「敵情視察だろザコ」

 

ナチュラルに罵倒される峰田。そんな目でこっち見んな。

 

「どうしたのだ?峰田伯爵」

「うわあぁぁぁぁあ!石楠花ェェェェェ、アレ何なんだよォォ!?」

「アレがニュートラルで、その残念すぎる性格のせいか絶滅してしまった珍妙生物『バクゴサウルス』なのだよ」

「「「バwクwゴwサwウwルwスww」」」

「うるせえ!!聞こえてんだよテメエら!!」

 

元気マンかよ。喧嘩売るのは前か後かどっちかにしろよ?

 

「敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな、体育祭の前に見ときてえんだろ。意味ねぇからどけモブ共」

「知らない人のことをとりあえずモブっていうのやめなよ!!」

 

飯田よ、その程度の注意では暴君バクゴサウルスは止まらねえぜ?俺が見本を見せてやるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなの大好き!愛されたいが為にいじられ続けるピュアボーイ!爆かっちゃんのお出ましだよ!みんなは握手するためにここへ来たんだろ!?さぁ並んで並んで!握手は一人一回で5秒経ったら交代だよ!下手に触りすぎて爆破されないように気を付けて触れ合おうね!あっ、そこ爆かっちゃんに餌を与えないで下さーい!」

 

 

「殺されてェのか石楠花ェェェェェェェ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっ、これで空気は守られた。俺に感謝するんだな。見ろよ、所々で爆かっちゃんがツボに入ってる音が聞こえるぜ?心なしか爆豪に対する視線も「何だこいつ?」から「あっ!ミーアキャットだ!」みたいな優しい視線に変わってるしな。感謝しな爆豪、お前の学生生活は守られたぜ?後ろの奴らは腹抱えて笑ってるけど。

 

「テメエら笑ってんじゃねえ!!」

 

キレるのに忙しすぎない?キレ痔かよ。

 

 

 

だが、それでもなお人込みをかき分けて爆豪に話しかける者がいた。

 

 

「どんなもんかと見に来たが随分と偉そうな奴と面白い奴がいるなぁ」

「偉そうな奴と面白い奴、二人合わせると爆豪じゃん。お前案外種類が豊富だよな?」

「テメエのせいだろーが!!ああ?それで何だテメエは!!」

「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」

 

 

急にどうしたよ?この幸薄そうな顔ナンバーワンに選ばれそうな奴は。

 

「普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴けっこういるんだ、知ってる?体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ…」

 

なるほど。つまり俺達に頑張ってね!というエールを送りに来たと。

 

「敵情視察?少なくとも普通科(おれ)調子乗ってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり

 

全然違った。すげえな、こんな堂々とヒーロー科の教室の前で全員に宣戦布告するって。俺なら宣戦布告ついでに一人か二人沈めちゃうね。

 

「それとお前にも勝つぞ、石楠花 鱗」

 

名指し指名で俺!?ってかどっかで面識あったっけ?

 

「石楠花君知り合いだったの!?」

「思い当たる節はある。多分遊園地に入るための待ち時間の時、俺の3つ前でいきなり服を脱ぎだした人だ」

「誰がするかそんなこと!?」

 

アレ?違ったかー、じゃあもうお手上げだわ。

 

「お前、『落雁の石楠花』だろ?」

「そうです。私が落雁の石楠花です」

「前々から思ってたけど、そのあだ名何なの?」

 

マジレスはやめたまえ妹よ。

 

そしてその謎を解決するかのように名前を知らない幸薄少年が話し始める。

 

 

「俺の通ってる中学で悪い方面に有名な先輩達がいたんだ。だがある日を境にめっきり大人しくなった。理由を聞けば『落雁の石楠花』にやられたと言っていたらしい。そして暇があれば『落雁怖い落雁怖い…!』とつぶやくようになった。理由はどうあれ、お前のおかげで被害にあう生徒が減ったんだ。ありがとう」

「偶々動物をいじめている奴らがいたから口に落雁を詰め込んで、逆さづりにして川に沈めて、持ち物を全部ハッピーセットにしてやっただけさ。礼を言われる筋合いはないぜ?」

「それでもお前に救われた奴らはいるんだ、ありがとう」

「そこまで言うならその言葉、受け取っておくよ」

「ああ」

 

 

「「「(いやいい話っぽいけどやってること凄く物騒!?)」」」

 

 

みんなの心は一つになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから何故かいい雰囲気で話が終わり険悪な雰囲気になることなく教室前に集まっていた生徒たちは帰っていった。ヒーロー科はより一層鱗への謎が増えた。

 

鱗はというといち早く帰っていた。

 

 

「ただいま~」

 

元気よく帰ったが返事はない。父も母もまだ仕事中だからだ。

ここで石楠花家の間取りを紹介しよう。石楠花家は八百万家には及ばないが中々のお金持ち一家だ。だが街中の一軒家に住んでいる。これは石楠花パパママの「住むなら普通のところがいい」という意見が取り入れられ、一般家庭と何ら変わらない家に住んでいる。

 

2階建ての一般的な家。()()()()そういうことになっている。

 

では実際は……

 

 

 

 

 

鱗はまず家に帰り、手洗いうがい、おやつに落雁を食べて、()()()()()

 

 

 

鱗パパは技術開発長、そして鱗ママは()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

石楠花家周辺の土地を買い取り、技術開発部の総力、あらゆるツテを使い、地下に秘密のトレーニング部屋や開発部屋、()()()()()()()()()()()()を作ったのだ。

 

そして地下の一室、トレーニング部屋。

そこで鱗はひたすらに基礎能力の徹底向上を測る。幸いにも父が技術開発長であるため、まだ世に出ておらずプロヒーローでも使えないような最新機器や設備を自分のペースで使うことができる。

 

何処にでもある平凡な一軒家だが、地下には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()があるとても重要な場所なのだ。

 

 

 

「(あのゴキブリ野郎には強くもしてもらったが、最初にこれ以上ないくらい負けたからな……、俺はもう負けねぇぜ!慢心はしねぇ!そして勘違いラジカセ野郎の顔面を一発殴りたい!待ってろ千秋楽!)」

 

 

体育祭まで気合は十分だ。

 

 

 

「(そう言えばラジカセ野郎、オールマイトと知り合いみたいなこと言ってたな。それに個性を与えるとか。オールマイトは個性を譲渡する個性だし。アレ?俺また国家機密に一歩近づいた?)」

 

 

石楠花は国家機密並みの秘密をまた知った。

石楠花は賢さが5上がった。

石楠花家の地下室は国家機密並みだった。

石楠花は賢さが8下がった。

 

 

 

 

 

「(ついでにUSJで敵が持ってたラジカセを直すという名目で預かったから、ラジカセを直してあの勘違い発言を復活させよう)」

 

 

自称魔王は煽られ素材を最も危険な男に取られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鱗ちゃん日記!

〇月✕日

今日から雄英体育祭まで日記を書こうと思う。

 

二週間はあっという間だが、自分がどう成長したか分かるため書いていく。

 

今日は朝は学校に行き、爆豪を煽った。そして帰ってからトレーニング。

 

休憩のため自分の部屋に戻ると、窓から家の前の道で切島と上鳴が「グリコ」をしているのが見えた。こいつらの家近所なのかとか、何で家の前でグリコしてんの?とか思うが、俺だったらパーはパイナップルじゃなく『パイナップルービックキューブレイドランナースマッシュークリームーンウォークォーターミネーター』とかにする。これで1番間違いなしだ。

 

とりあえず近所迷惑とかになりそうだから上鳴に俺監修サポートアイテムでヘッドショット決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月□日

今日は学校休み、腹筋の向こう側を見るためにひたすら腹筋を鍛え抜いた。

 

腹筋が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月△日

今日も今日とて爆豪を煽り、妹と戯れ、峰田が血涙を流した。

 

昼休みに学校を歩いてたら青いプルプルした普通科の生徒がいた。個性は「ところてん」らしい。

 

ところてんがどんなのか気になったので腹パンしてみたらお腹のところてんが飛んで行った。とりあえずこの技に『ところてんマグナム』と名付けよう。

 

めっちゃ怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月〇日

最近忙しかったから書けなかった。

 

毎日毎日トレーニングしたり、個性を伸ばしたり、新しいサポートアイテムの発案をしたりしてた。

 

それと今日学校で面白い奴を見つけた。サポート科の工房が目の前で爆発してパワーローダー先生が吹っ飛んでいった。とりあえず笑い転げた俺は悪くない。それと一瞬爆豪が暴れたと思った俺も悪くない。

 

爆心地からボロボロのいいおっp…お胸をお持ちになったレディが出てきたではありませんか。

 

しかも片乳モロにはみ出てますよお嬢さん?

 

俺に気づいても普通に直すだけで羞恥心のカケラもなかった。全世界の女性はぜひ彼女を見習ってほしいもんだ。

 

とりあえず今から捗ると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月◇日

今日も勉強&煽り祭りだ。そして遂に耳郎が授業中に俺のことをお兄ちゃんと呼んでくれた。

 

兄はうれしいぞ!妹の照れた顔は格別にかわいいと思う。

 

俺の鼓膜は死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

〇月▼日

最近やたらと八百万のボディタッチがすごい。

 

これが焼きもちというやつか?俺の息子がオッスオッスしそうだ。

 

それと自分の部屋で休憩してたら窓の外に珍しい服装の人が見えた。

 

全身黒スーツに工業用マスクみたいなフルフェイスマスクをかぶった男がスーパーの袋を引っ提げて歩いていた。あのマスク前見えんのかな?

 

オールマイトといい工業用マスクマンといい、俺の家の前は変人の出没率が高い気がする。

 

 

 

 

 

 

〇月▲日

明日は遂に雄英体育祭。

 

目立ちに目立つため頑張ろうと思う。

 

とりあえず選手宣誓で一発決めよう。

 

 

 



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雄英体育祭開幕!

沢山の人に見られて感謝!


時間が…!時間が足りねぇ……!これからも頑張りますが遅くなったらすみません!


雄英体育祭 本番当日!!

 

ここは控え室。生徒達は各々の方法でリラックスしている。その中でもいつも通りなのが1人。

 

「皆準備は出来てるか!?もうじき入場だ!!」

 

今日も元気な飯田。まぁ体育祭なんてめっちゃアガるよね。朝から全力で起床出来たもん。

 

その時人に話しかけることが少ない轟が緑谷の名前を呼んだ。

 

 

「緑谷」

「轟くん……何?」

「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」

「へ!?うっうん…」

 

アイツスナイパーかよ。真顔でヘッドショット決めてきたぞ。何だあの曇りない眼は。ガリガリ君自信味かよ。

 

「峰田、お前がアレ言われたらどうする?」

「イケメンは滅べと思う」

「お前らしい答えで安心したぜ」

 

非モテを擦らせた男の回答がコレなんだ。さぁ、緑谷は何て答える?

 

 

「おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな?別にそこ詮索するつもりはねぇが……おまえには勝つぞ」

「おぉ!!クラス最強候補が宣戦布告!?」

 

まだ轟のターンでごじゃったか。オールマイトに目ぇかけられることがそんなに嬉しいか?ここは補足しておかないと!

 

「まぁ待て轟」

「石楠花……」

「確かに緑谷はオールマイトに目をかけられている。2人でご飯食べたり、2人でイチャイチャしたり、2人で誰にも見られないようにこっそり仮眠室に入って行くぐらいにはな。だが2人には秘密の関係性ってものがあるんだろう。察してやれ」

「そうか…そんな関係だったのか…、すまなかった緑谷、デリカシーに欠けた」

「待って!!??違うから!?」

 

我ながらナイスフォローだろう。イチャイチャしてるのかは知らんが秘密の関係性(個性関係)であることは確かだしな。うん、嘘はついてない。

 

若干みんなの緑谷を見る目が優しくなった気がする。気を強く持てよ緑谷少年!

 

「石楠花、俺とお前には差がついちまったかもしれねぇ。だが俺は俺の目的のためにお前にも勝つ」

「おぉぉ!!今度は最強が最強に宣戦布告!?」

「オイテメェ!俺抜きで話してんじゃねぇ!!」

「どうしたかっちゃん。話に交ざりたいのか?」

「違うわ!殺すぞ!テメェに勝つのは俺だ!!」

 

みんな血が沸っちゃって〜。そんなにギラギラした目で見られても俺そっち系じゃないから気持ちに応えられないぜ?まぁでも……

 

「俺は別に自分が最強!とか思い上がっちゃいないが、売られた喧嘩は買うのが『落雁の石楠花』としての本分だ。負けねぇよ?」

「上等だテメェ!!」

「ああ」

「ぼっ….僕も負けない!」

 

 

 

そして入場して行く。

 

雄英体育祭開幕!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらアレだろこいつらだろ!?敵の襲撃を受けたにも拘らず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!ヒーロー科!!1年!!A組だろぉぉ!!??

 

「わあああ…人がすんごい……」

「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか…!これもまたヒーローとしての要素を身につける一貫なんだな。そして彼を見てみろ緑谷君」

「えっ?」

 

 

飯田が指さす方向には鱗がいた。

 

 

 

 

 

 

 

ムーンウォークしている鱗が。

 

 

 

 

 

「何で!?」

「いや、周りを見てみるんだ」

 

観客達はと言うと……

 

 

 

「すげぇ!アイツムーンウォークめっちゃ上手いじゃねぇか!」

「この大舞台で入場の場からインパクトを残す登場、肝が据わっている子だな」

「アレが『雄英のマイケル』か…」

「周りがソワソワしている中、1人だけムーンウォーク登場か……やるね」

「ヒーローは実力だけじゃなく人気も要素の一つだ。彼はそれをよく分かっているようだ」

 

 

 

 

「思いの外高評価多くない!?」

「やられたよ…!僕も今からムーンウォークをするべきか…?」

「やめて飯田君!?」

 

 

『B組に続いて普通科C・D・E組…!サポート科F・G・H組も来たぞー!そして経営科…』

 

今気づいたけど雄英ってクラス妙に多いよな。サポート科が3クラスもあるなんて知らなんだ。どっかにぶっ飛んだ奴いねえかなー?

 

 

 

 

 

 

 

全クラスが集合し、いよいよ始まろうとしていた。司会はミッドナイトがしている。

 

「選手宣誓!!」

 

「18禁なのに高校にいていいものか」

「いい」

「18禁だからこそいるべきだと思う」

「静かにしなさい!選手代表………!」

 

 

そして選手代表が発表される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1-A!石楠花 鱗!!」

「「「正気か!?」」」

「どういうことだてめーら」

 

 

おいおい、俺が選手代表に決まってるだろ?何がおかしいんだよ?

 

「おいちゃんとしろよ!?テレビに映ってるんだからな!?」

「A組のヘイトを買うんじゃねーぞ!?」

「放送事故一直線だろ!?」

「変に目立つ気しかしない………」

 

失礼な奴らの集まりだぜ全く…

 

「俺がそんなに信用無いか?」

「「「ない」」」

「即答は傷つくぞ」

 

仕方ない…真面目方向で行くか

 

「まあ見てな?最高の開会式にしてきてやるよ」

「「「不安しかない!?」」」

 

 

そして壇上に上がり、ミッドナイトからマイクを預かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあみんなこんにちは!!雄英の物理的ロケットパンチこと石楠花 鱗ちゃんだよ!みんな盛り上がっていこうぜ!あっ、このテンションに関してはノーコメントで!A組みんなこんな感じだから!!」

 

「「「アイツやりやがった!?しかも巻き込みやがった!?」」」

 

 

 

会場は微笑に包まれる。それもそうだ、入試1位がどんな奴かと思ったらあらゆる方向にぶっ飛んだキャラが濃い男が出てきたのだから。

 

 

「おいおい、そんなテンションじゃ体育祭乗り越えられねーぜ?テンションが低すぎて地面から藻が生えそうじゃねーか。そんなテンションの低さで雄英生やプロヒーロー名乗れんのか!ああん!?」

「「「(アイツ何でヒーローにまで喧嘩売ってんの!?)」」」

 

生徒達の考えが一致した。

 

 

「よっしゃもう一回行くぞ!盛り上がってるかお前らぁぁぁぁぁぁ!!」

「「「おぉぉぉぉぉ………」」」

「まだ声が小せぇ!!一番大きい声上げた人にはこの『俺監修18禁ヒーローミッドナイトセクシー日常写真集』を贈呈するぞ!!」

「「「おぉ………」」」

「何でテンション下がってんのよ!?そしてアンタは何でそんなもん持ってんのよ!?」

「作りました」

「無駄に器用ね!?」

 

ミッドナイト写真集では威力にかけるか…後で峰田にでも売りつけよう。

 

「ならこれでどうだ!!『俺監修オールマイト写真集』でどうだ!!」

「「「うおォォォォォォォォォォォォォォォ!!」」」

「オールマイトに魅力負けしましたねミッドナイト」

「アンタの秘密ここでバラすわよ?」

「すみません!!」

 

まあ存分にふざけたから良しとしよう。下で緑谷が荒ぶってるし。どんだけオールマイト好きなんだよ。

 

さて、ここからは本気モードだ。

 

 

「この中で我こそはヒーローになりたい!って考える人どれくらいいる?」

 

今までふざけまくっていた奴がいきなり真面目な雰囲気を出したので全員困惑する。

 

「まぁ事前に話聞いてたから結構いると思って話を進めるね?今のままじゃヒーローなんて夢のまた夢だよ?」

 

コイツは何を言っているんだ?

いきなり喧嘩を売られたような気分になる生徒が多数出現し、一触即発の雰囲気になる。

 

「だってそうだろ?今みた限りヒーロー科の引き立て役だ!なんて思ってる奴が多かったからな。見れば分かる、俺目がいいからね。やる気が全く感じられない。何でそんなに牙を折られちゃったの?実力が足りなかったから?個性がヒーロー向きじゃなかったから?」

 

その言葉が図星な生徒は多数いた。ロボ退治の試験をクリア出来なかったものが、ヒーロー向きではない弱個性と言われたものが普通科や経営科に多数在籍している。

 

そしてテレビ中継なんてお構いなしに言葉を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺……無個性や弱個性だって考え方、大っ嫌いなんだよね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時が止まった。

それもそうだ、誰もが口にしないようにしていた事柄を何の躊躇もなく、それも生中継の舞台で言い放ったのだ。

 

 

「まぁ、ガキが何言ってんだ!って思っちゃう人がいるかもしれないけど、ヒーローがヴィランを倒すだけの職業だと勘違いしてない?戦闘向きでない個性であっても必ず何処かにはその個性を必要としてくれる人がいる。別に敵を倒すだけがヒーローじゃない。ゴミ拾いをする人や率先して小さな事でも人の助けをする人は、誰かにとって『ヒーロー』となる」

 

 

先程までガヤガヤしていたはずの声が聞こえない。スタジアムが無音となり、鱗の声だけが響く。

 

 

「無個性って考え方もそうだ。無個性だから目指しちゃいけない?そんなはずはない。大昔は個性なんて無かったし、『個性』が無いなら『人間』を鍛えればいい。人間の能力なんてまだ誰もゴールを知らない。なのに皆個性ばかりを鍛えたがる。面白い話だ。確かに命を懸ける仕事だ。力が無ければやっていけないって意見も守れないって意見もある。でもみんながヴィランを倒すことに特化していたら、誰がサポートするんだ?誰が市民を守るんだ?」

 

誰もが聞き入った。鱗ではない人が同じことを言っても非難されるだけだが、聞き入ってしまう『何か』が鱗にはあった。

 

「『ヒーロー』ってのは難しい言葉さ。人によって意味が変わっちまう。だから各々が模索して自分なりのヒーロー像を描くんだ。俺にとっては皆が見て見ぬフリをする中、『大丈夫?』と声をかけてくれた人が『俺のヒーロー』だった。個性が無いから?ヒーロー向きの個性じゃないから?考え方が甘いんだよ。何の変哲もない行動や、ちょっとした一言で人は救われるんだ。個性が有る無い?関係ない、個性が強い弱い?関係ない、個性がヒーロー向きヴィラン向き?関係ない……

 

 

 

 

 

 

 

人を救う権利ってのは、みな平等にあるんだよ

 

 

たった1人、そして体育祭の選手宣誓という何の変哲もない状況。時間にして5分も満たないこの一瞬が、人々の未来を大きく変えた。凝り固まった思考をほぐすのには十分すぎる程の言葉の重みがあった。

 

 

 

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」

 

 

会場が、テレビを見ていた人達が、個性というどうしようもない悩みを抱えていた人達が歓声を上げるほどに。

 

 

 

 

 

「そういうわけで!本当にヒーローになりたいなら元気出してかかって来い!!ヒーロー科普通科サポート科経営科、そんな括りは関係ねぇ!今のところは俺がお前らの1番だ!ヒーローになりたきゃ俺を引きずり下ろしてでも勝ち取ってみな!それでも俺は宣言する!やる気溢れるお前らに勝ち、もう一度俺が天に立つ!最初の体育祭だ!盛り上がって行こうぜぇぇぇ!!」

 

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」

 

 

雄英史において、これ程までに会場が一つになったことがあっただろうか?それほどのヒーロー生徒関係なく盛り上がりを見せている。

 

 

『おいおいイレイザー!!アイツ最高かよ!?会場を!テレビの前のリスナー達までもまとめ上げやがったぜ!!』

『ああ、これがアイツの才能だろうな。アイツは言動はバカだが人を惹きつけるカリスマ性がある。そこらのヒーローをもう超えてるんじゃねぇか?言動はバカだが』

 

 

聞こえてますぜ先生?ちょっとバカバカ言い過ぎてねぇですかい?それよりもミッドナイトがビクンビクン恍惚な表情で震えてるんだけど大丈夫?より18禁指定されない?落雁食う?

 

「石楠花お前最高かよ!?」

「やる気が湧いてきたぜ!!」

「その通りって思っちゃったよ!」

「漢らしいぜ!!」

 

出迎えが凄いな。俺金メダル取ったっけ?

 

「な?俺だって真面目にやれば出来るんだよ」

「最初がアレだったけど後半で帳消しだな」

「ありがとな、しょうゆ顔」

「ここで名前間違えるか!?」

 

まぁみんなやる気満々になったみたいだし、バッチオーライ!後は結果を残すだけだ。これだけ啖呵切った奴が最後まで残れませんでしたなんてフリが効き過ぎてるだろ。がんばろ。

 

「石楠花くん!!」

「どったの緑谷?」

「スッキリしたよ!ありがとう!」

「う○こでも漏らしたか?保健室行けよ?」

「違うよ!?」

 

どーいたしまして。コイツもオールマイトに出会ってなかったら今ここに居なかった可能性があるんだもんな。人生ってのはどうなるか分からねぇもんだ。

 

 

さぁ、俺は俺の出来ることを頑張りますか!

 

 



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閑話 そうだ!八百万家に行こう その1

お待たせしましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
失踪はしておりませんよ!
やることが多すぎて中々手が付けられませんでした!

今回は初めて番外編として体育祭までのある出来事を書いていきます。
体育祭をお待ちの方はごめんなさい!もう少しで入りますのでもう少しお待ちください!!

これからも遅くはなるかもしれませんが更新します!楽しみにしていてください!


普通科の生徒が教室前に集まった事件から1日後の放課後、まだ誰も帰っていない教室の中である会話が行われていた。

 

 

「石楠花さん。明日私の家に来ていただけませんか?」

「いいよ。挙式はいつにする?」

「いやその会話の流れはおかしい!!」

 

 

誘うヤオモモお嬢様。

安定のハイスペックバカ。

即座に異変に気づく妹。

 

いつもの会話の流れだが内容が内容のため、皆の注目を集めた。

 

「この会話の流れの何処がおかしいんだ?妹よ」

「妹言うな!二度とあんたのことをお兄ちゃんなんて呼ぶ機会はない!!それと話はどう考えてもおかしかった!」

 

 

授業中に皆の前で鱗のことを「お兄ちゃん」と呼び、盛大にやらかすまで、あと5日。

 

 

「何をバカなことを。家に呼ぶということは結納をすますということだろ?」

「何一つとして違うんだよ!?ヤオモモ!考え直して!男はオオカミなんて言うけど、このバカはオオカミなんてレベルじゃないよ!!下半身直結型の未確認ワーウルフ生物だよ!?」

「落ち着けよ、落雁食うか?」

「黙れ!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

コイツ…!躊躇なくプラグ攻撃してきやがって…!いくら俺が頑丈でも限度があるぞ!?

 

しかしかなり注目を浴びたようだな。

俺もまさか八百万直々にお誘いがかかるなんて思ってもなかったからな。

 

「石楠花お前…!お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「当て身」

「かぺっ…!」

「テメェ何で女の子にお呼ばれしてんだぁぁぁぁぁぁ!!」

「当て身」

「くぺっ…!」

 

 

悲しき童貞2匹が逆恨みで襲ってきやがったか…

だがお前達の拳は俺との間に立ち塞がる壁を壊さない限り届きはしないぜ?

そう…女の子と親しく話すという壁がな…!!

 

 

 

童貞達の襲撃が一段落ついたタイミングに合わせて、耳郎の問いに答えるように八百万が話し始める。

 

「石楠花さんは真面目な方ですわ。密着して半日過ごしましたが私が嫌がることや大変なことはなさらなかったんですもの。それどころか優しくフォローして下さりましたわ!」

「八百万よ、もっと俺を褒めてくれ」

「えっ…?この変態を凝縮したかのような存在の男が…?」

「妹よ、蔑みはノーサンキューだ」

 

全く…俺のことを何だと思っているのかね。

 

 

「石楠花はやる時はやる変態って感じだよね〜」

「その言葉には悪意しか感じないぞ?濡れ濡れヌルヌル芦戸よ」

「その言い方にも悪意しかない!!変態!!!」

「落ち着けよ、落雁食う………待て!酸はダメだ!!」

 

 

危ねぇ!もう少しで溶けてドロドロ殺人事件になるところだった…!だんだんと女子が俺に対して躊躇なく攻撃するようになってきた気がする…、俺ほどの空気が読める男に攻撃など言語道断だよ諸君。

 

 

「あんたは話さなければ印象違うのにね」

「わかる!石楠花君は話すから残念なんだよ!」

「話さなければ優良物件なのにね!」

「口は禍の元よ」

 

 

 

 

「女子がいじめてくるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!助けてくれよ口田先生ぇぇぇぇぇぇ!!」

「………!?」

「口田ちゃんが困っているわ。やめてあげて頂戴」

 

なんだよ!俺に味方はいないのかよ!!困りながらも慰めてくれる口田優しすぎる!俺に話すなとか死ねと同義だろ!!

 

 

「はぁ…、うちらは静かな石楠花を見る日なんてあるのかな?」

「妹よ、悩み事かい?どしたん?話聞こうか?」

「ふん!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!?心配しただけなのに!?」

 

 

やっぱり話す話さない以前に狂暴すぎるだろ!?

 

 

 

 

 

石楠花と女子とのやり取りが一段落ついたタイミングで八百万が話しかける。

 

 

 

 

「石楠花さん、予定は大丈夫ですか?」

「ああ、明日は日曜日だし予定も無いから大丈夫よ」

「ありがとうございます。なら明日の朝にお迎えに上がりますわ」

「うい」

 

 

おいおい、遂に俺が女の子の家にお呼ばれされちゃったぜ!なんて素晴らしいんだ!外面は取り繕ってるけど内面は嬉しすぎて狂喜乱舞してるぜ!

 

とりあえず今日中にスーツをオーダーメイドで作るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございますわ、石楠花さん」

「おはよう、とりあえずリムジンを移動させようか」

 

前送ってもらったときにも思ったことだが、よくこの大して広くもない路地にリムジンを通せるよな。運転手の運転技術には脱帽だよ。

 

それと俺の服装はファッション雑誌に載ってそうな無難な服装になった。家に帰って「女の子の家に行くからオーダーメイドでスーツ作るわ」って言ったら、母親にフライパンで張り倒された。熱されたフライパンで息子を全力で叩く親なんて半径十キロ圏内で探しても我が家だけだと思う。

 

「では我が家に向かいましょうか。お父様とお母様が会いたがっていましたので」

「えっ、お父様とお母様が俺に会いたがってんの?」

「はい!」

 

えっ、親が俺に会いたがるとかヤバい気配しかしないよな。ただでさえいろいろやらかして、我が担任のせいでそのヤバいことがバレてるんだぜ?それで会いたいとか俺今日死ぬんじゃね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着きましたわ!」

「えっ、ここ?国会議事堂前じゃないの?」

 

ナニコレ?さっきから同じ塀ばかり見るな~と思っていたら、その塀の奥にあるバッキンガム宮殿ばりの建物が家とかもう笑うしかねぇわ。どんだけ金持ちなのよ。庭でガ〇ダム飼えるぜ?

 

「さあ、行きましょうか」

「待って心の準備させて!それと遺書を書かせて!」

「どこに向かうつもりなのですか!?」

 

いや遺書必要だろ!?ただでさえ心の整理で忙しかったのに、畳み掛けるように豪邸で止め刺しやがって!しかもこの宮殿の中に俺を殺すために待ち構えている大魔王と大魔王婦人がいるんだろ!?勇者もしっぽ巻いて逃げるわ!

 

 

「さあ!行きますわよ!」

 

 

そのまま首根っこをつかまれて引きずられながら門をくぐる。

 

 

「ドナドナってこんな気分なんだな………」

「なら自分で歩いてくださいまし!」

「よし、覚悟決めた。骨は拾って遺灰で焼き芋を焼いてくれ」

「物騒なこと言わないでくださいまし!」

 

そうして並んで中庭を歩いていく。噴水や庭園など一般の家ではお目に掛かれない光景が多数存在するが、自分の家の地下はもっとヤバいことを思い出すことで平静を保っていた。

 

横並びで歩き、話を弾ませながら歩いていると、家の玄関らしき場所にたどり着いた。そこには以前リムジンで送ってもらった時にいた壮年の男性執事と八百万によく似た女性が立っていた。

 

 

「ようこそいらっしゃいました石楠花さん。私は百の母でございます」

「こちらこそ本日はお招きいただきありがとうございます。私は百さんの友人である石楠花 鱗と申します。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、本日はよろしくお願いいたします」

「いえいえ、百の初めての男性のお友達ですもの。こちらこそ末永く百のことをよろしくお願いします」

「恐縮です」

「えっ、誰ですのこの方!?」

 

失礼だな八百万よ。俺が敬語を使うのがそんなにおかしいのかい?そんな疑った目で見ても俺は俺だぜ?

そんなにぺたぺた触らなくても別人と入れ替わっているとか無いから。額に手を当てても熱とか無いから。ほら、お母さんもほほえましいものを見るような目で見てるから。

 

「ふふっ。百と石楠花さんはとっても仲良しなのね!」

「ええ、それはもう」

「いえ、普段の石楠花さんから想像もできないような綺麗な言葉が発せられましたので」

「それは失礼すぎやしないか?」

 

 

俺は気丈に振舞うことすらできないの?

まあいいや。ひとまずお土産を渡そう。ずっと持ち続けるのもどうかと思うからな。

 

 

 

「こちら、行きつけの店の新作なのですが、よろしければご笑納くださいませ」

「まあ!こちらは世界的人気のle fe de rosage(ル フェ ドゥ ロザージュ)のお菓子ではないですか!!」

「ええ。その店の店長が私の母でして」

「「そうなんですの!?」」

 

息ぴったりだなこの母娘。やはり女性は甘いものが大好きなようだ。母から情報を聞き出しておいてよかった。母があの時力尽くで俺を止めてくれていなければ、今頃スルメの詰め合わせを持っていくところだった。あぶねぇ。

 

「石楠花さんは父が技術開発長で母が有名パティシエールとは…、凄い方々が身近におられるのですね!」

「そのセリフそのままブーメランだからな?」

 

 

何をどう成功したら国会議事堂みたいな家に住めるのだろうか?どう考えても八百万家の方がすごいと思う。こんなに金持ちなら伝手もすごいんじゃね?それこそ俺を秘密裏に処理できるぐらいに………なんかこの玄関くぐるのが怖くなってきた。ここをくぐれば俺は暗殺されるのか…遺産はペットのコアラに全額寄贈しておくれ…

 

 

 

 

「石楠花さん、お昼ご飯をもう食べられましたか?」

「いえ、まだですね」

「それはよかったです。お昼ご飯の準備ができていますので、みんなで食べましょう!そして学校内での百の生活を私たちに教えてくださいませ」

「もう!お母様!」

 

おっとよだれが。プリプリ母娘の日常ほど心が安らぐ瞬間はないな!出会ったばかりだけど一生見ていられる気がする。余程この家族は仲が良いんだな。我が家だと………バイオレンスになる未来しか見えないな!!

 

 

その時八百万母が俺達二人を見据えて言葉を発した。

 

 

「百の学生生活も、石楠花さんの人柄なども知りたいですが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石楠花さんと百の馴れ初めや、()()()()()()()など、たくさんのお話をお伺いしたいですわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、今日やっぱり死ぬんじゃねぇかな?

 

 

 

 

 

 



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閑話 そうだ!八百万家に行こう その2

お気に入り登録11000突破ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
気づけばめっちゃ増えてた!ありがとうございます!
それとヒロアカ二次小説の総合評価順で上から4番目の位置に…!
なんてこった!こんなふざけた小説を気に入っていただき、ありがとうございます!




それと本日は八百万パパが出てきますが、漫画でも小説でも出てきたことがないので独自で話し方を考えさせていただきました。紳士ってこんな感じなのかな?

これからも頑張ります!では、どうぞ!


やベぇよ…!冷汗が止まらねぇよ…!

 

長い廊下を歩いて食堂に向かっているはずなのに、処刑台に向かってんじゃねぇかなって錯覚しちまうよ…!

 

へへっ…膝が笑って上手く歩けねぇぜ。脳無と相対した時以上に俺の体が危険信号を発してやがる…!しっかりしろ俺の足!後でしこたまドコサヘキサエン酸を補給してやるから今だけは持ってくれ!

 

「どうしましたの?石楠花さん。顔色が悪いですわよ?まさか体調が悪かったのですか!?」

「大丈夫だ八百万。俺は今一人で死の宿命と戦っているだけだ」

「一大事ですわ!?我が家に何がありますの!?」

 

説明し難いオーラで充満してるよ。きっと目の前の扉の先に鬼がいるね。開けた瞬間にギロチンが降ってくるトラップとかあるだろ絶対。

 

 

扉の前で八百万母が止まり、振り返って鱗に話しかけた。

 

 

「ここが食堂ですわ石楠花さん。それと私も百も同じ八百万ですので間違ってしまうこともありますから、『百』と呼んであげてください」

「お母様!?」

 

なんてハードルの高いことを要求するのだろうか。

俺に女の子を名前で呼べる勇気があると思うのか?呼べる勇気があるならすでに呼んでるさ。えっ?意味の分からないあだ名をつけてるじゃないかって?それとこれとは話が別さ。昔、女子を名前で呼んで全力で引かれてたやつを見てしまって以来怖くて仕方がない。あいつは無事に思春期を乗り越えたのだろうか…

 

それと何だ八百万のその目は。照れ半分期待半分みたいな目で俺を見るんじゃない!それとお母さんの目の奥に潜む圧がすごい。「意地でも言わせてやる。早く娘の名前を呼びやがれ!」って覚悟が伝わってくるんだけど。

 

 

ふっ…逃げ場はない…か。覚悟を決めろ石楠花 鱗。俺は出来る奴だ。ここで逃げたら女の子の名前も呼べない癖にCの関係に近いことを仕出かした変態チキン野郎になってしまうぞ!

 

 

 

 

 

 

 

「………百」

「……!はいですわ!」

「あらあら、二人は仲良しね~」

 

 

何だろう、この究極の茶番は。

ドキドキする場面のはずなのに「計画通り」という二文字が頭をよぎるんだが。

 

「ではご飯にしましょうか。主人も中で待っていますので。シェフの方々が腕によりをかけて作って下さいましたので、きっと気に入っていただけると思いますわ」

「そうですわね。私もお腹が空いてきましたわ」

 

そして目の前の扉が開かれる。そこには何十人も会食が出来そうなほどの広い部屋に大きなテーブル。煌びやかに彩られた装飾品。そして……

 

「君が鱗君かい。百から話は聞いているよ。一度会ってみたいと思っていたんだ」

 

 

魔王(お父様)が堂々と座っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怖ぇ…!怖ぇよ…!

運ばれるお皿や料理が尽く高級感溢れる物ばかりなのもそうだが、空気感がもう怖ぇよ…!

 

優しい感じのジェントルマンな風貌なのに、全身から発するオーラが四皇級だよ。お父さん覇王色覚醒してんの?

 

それと所作一つ一つに気を使う。テーブルマナーを一つでも間違えると「ヒャッハァァァァァ!」と言いながらナイフで切り落とされそう。そうと錯覚するぐらい謎のオーラに満ちている。何で八百万一家はこのオーラの中で悠々と食事出来んの?実は範馬一族だったの?

 

鱗が見当違いなことを考えている時、八百万パパが鱗に話しかけた。

 

「鱗君は所作が綺麗だね。テーブルマナーを何処かで習ったのかい?」

「幼少の頃に家族に教わりまして。「外に出ても恥ずかしくないよう、マナーは守りなさい」と。そうして色々教わりましたね」

「そうなのかい。とても素晴らしいご家族なんだね」

「恐縮です」

「本当に誰ですの!?この方!?」

「本日二度目の失礼だな。石楠花家は礼節を重んじる一族なのだよ。俺の普段の行動を見ていればおもてなしの心が伝わってくるだろ?」

「1ミクロンも伝わってこないですわ!?」

 

1ミクロンって何だよ、1ガロンの間違いだろ?俺の行動にはおもてなし精神しかないじゃないか。落雁を詰め込むのも、追いかけ回すのも、ハッピーセットに入れ替えるのも、ハジケ奉るのも、全ては礼節を重んじて日本をより好きになってもらうための行動に決まっているだろう。

 

「石楠花君は素晴らしい少年なんだね。そして一つ礼を言わせてくれ。ヴィランから娘を守ってくれてありがとう。君の活躍や重傷具合は娘から聞いていた。君がいなければ少なくとも誰かが犠牲になっていたかもしれない。君の行動は親の意見としては心配や不安が勝つが、大勢の生徒の命を守ったんだ。本当にありがとう」

 

 

そうして鱗に向かって立ち上がり礼をする。八百万母も、待機していた使用人達全員も。

 

 

「頭を上げてください。当然のことをしたまでですよ。感謝の気持ちは受け取りますが、過剰な感謝はどうもむず痒い。娘さんも僕も生きているので、その気持ちは五体満足で生き残った娘さんにかけてあげて下さい」

「君は…本当によく出来た人間なんだね。約束しよう、君に何かあれば八百万家が君の後ろ盾となろう。そのくらいはさせてくれ。何かしすぎるというのは失礼かもしれないが、何もしないという選択肢はもっと失礼だからね」

 

 

また一つ巨大な後ろ盾が出来てしまったぜ。やっぱり後ろ盾になってもらえるほど八百万一家は権力持ってるんだな。そりゃそうか、家も胸もでかいもの。

 

それとどうした?ヤオモモよ。さっきからもじもじしながら俺を見て。トイレ行きたいのか?自分の家だから迷うこともないだろ。

 

「それとあと一つ話すことがあるのだが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人で半日以上密着して、尚且つトイレも一緒に入ったという情報を聞いたのだが………本当かな?

 

 

 

 

あぁ………いい人生だったな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうする…!どう言い訳する…!?

ここで言葉を間違えれば俺は間違いなく世界中の拷問を体験の末に人権と共に抹消されるだろう…!

 

だがここで問題が一つ。俺は現に八百万のことをエロい目で見ている。そして今、八百万パパに言われたことを実際に二人で行動に移してしまっている。しかもプロヒーローという証人までいる。さて、このどう考えても逃れられない現実からどうすれば逃れられるだろうか?選択肢は3つだ。

 

 

 

 

選択肢

①普通に謝る→98%の確率でギルティ

②その場で抱き寄せる→勘違いされなければギルティ

③揉みしだく→この世の全ての苦痛を味わう

 

 

 

 

さてどうしたものか?お先が真っ暗だ。ならば自分が親になった目線で考えよう。自分が手塩をかけて育てた娘がどこぞの馬の骨かもわからん奴と半日密着して、アブノーマルプレイを………100万馬力でギルティだな。いや、ギルティだけじゃ我慢ならん、生きていることを後悔させる。そしてその加害者が今は俺だから100%ギルティだな!さよなら俺!

 

 

「どうなんだい…?石楠花君」

ちょっと待ってくださいませ!お父様!

 

八百万!!まさかかばってくれるのか…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「石楠花さんは息をするかのようにセクハラ行動やセクハラ発言をし、辱めたり気持ちよくさせたりする天才ですが根はいい人ですわ!私は石楠花さんほどヒーローに向いている方はいませんもの!それと石楠花さんに触れられるたびにドキドキしますわ!」

 

 

死んだ………

 

 

 

 

 

 

「そうなのかい………石楠花君…」

「はっ…はい!!何でございましょうか御大将!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「百をよろしく頼むよ」

「「は?」」

 

 

 

 

 

いや、今の話の流れで何でそうなるの?八百万だって驚いてるじゃん。

 

 

「親としては怒ろうかなと思ったんだが、百の表情を見ていると君のことを心底信じているのが分かる。そして今君の行動を見て、話してみて、君は信じるに値する人間だと思ったんだ。君はユーモアを交えた会話をしても人が本当に嫌なことはしないタイプだろう?現に男女が半日以上密着していても間違いが起こっていないことが証拠だ。同じ男として分かる、さぞ気持ちを押さえつけて我慢したのだろう…と」

「分かっていただけましたかお父様」

「ああ。よく頑張った。それだけで君の人となりは理解したつもりでいたよ。石楠花君は女性には紳士なんだなって」

「石楠花さんは紳士ですわ!あっ、そうですわ!胸を…」

「ちょっと黙っててくれないか?」

 

 

ああ…!ついに理解者が現れて下さった!それがまさか被害者の父親だとは。世界って狭いね。それよりも周りの執事さんやメイドさんも心なしか泣いているように見えるんだが…この話に泣く要素あった?はぁ~、話が分かる人でよかった…もう少しでストリートファイター並みのハメ技で殺されるかと「ただ…」ん?

 

 

 

 

 

 

 

「まさか娘をあられもない姿にし、責任も取らずそのまま過ごす訳は………ないよね?」

「責任取ります!!」

 

 

 

凄い黒い笑顔をなさるよね!

 

 

 

「ハハッ!冗談だよ!そういうことは本人の意思次第だからね。強制はしないよ。それでも私の予想では…」

「もう!お父様!!」

「すまないね百。石楠花君、一人の親として百のことをこれからもよろしく頼むよ。親の一番の願いは娘が幸せになってくれることだからね」

「任せてくださいお父さん。百さんの友として恥じない行動を約束します」

「友…」

「ん?何か言ったか?」

「いいえ何も!」プイッ

 

急にどうしたそっぽ向いて。急な思春期か?

それよりも何故家族使用人全員で微笑ましいものを見るような目でこっちを見るんだ?そんな目で見ても懐から落雁しか出ないぞ?

 

 

「さあ!長く話しすぎてしまったね。料理を食べてしまおう、せっかくの料理が冷めてしまうよ。それと食後に学校での百の活躍を聞かせてくれ」

「いいですよ。赤裸々にお伝えしましょう」

「やめてください石楠花さん!?」

「それと後で石楠花君の、明日のための制服や必需品を部屋へ運ぼう。先ほどご家族の方から預かったからね」

「何それ初耳」

 

 

えっ?オカン勝手に何してんの?しかも今日八百万家に泊まり?聞いてないんだけど?

 

 

 

「荷物整理で空き部屋が使えない状態になっているから、百の部屋を自由に使っていいからね」

「それは聞いていませんわ!?」

 

 

 

しかも相部屋?

それでいいのかご家族よ………えっ、いいって?あっ、そう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は違う意味で潔白のまま明日を迎えられるのか………!?

 

 

 



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閑話 そうだ!八百万家に行こう! その3

お待たせしましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
お久しぶりの投稿です!ようやくかけました!

本日で閑話が最後となり、次回からようやく体育祭編に突入します。
本日の内容は少々おスケベくなっておりますが、楽しくお読みください!

これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします!


オッス!おら孫 鱗!

海賊王になるために、ひとつなぎの大落雁を探している雄英高校ヒーロー科の1年生だってばよ!

 

拙者は苦手なことが特にない自他ともに認めるパーフェクトヒューマンでござる。しかし、そんなまろでもどうしようもない現実というものが存在するのでおじゃる。

 

それは………

 

 

「鱗さんっ………触って…いいですわよ…っ」

 

 

いい感じの(エロい)雰囲気だ…!

いやほんとどうしてこうなった………!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前…昼ご飯を食べ終えた鱗たちは少し八百万ファミリーと世間話をしてから有意義な時間を過ごしていた。

 

その1 八百万家にて

「学校での百の活躍はどうだい?」

「それはもう大活躍ですよ。向かい来る敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、獅子奮迅の活躍によりランニングホームランを決めて千秋楽を優勝していましたね」

「いったい何の話をしておりますの!?そんなこと1度もしていませんわ!?」

「まあ!百は大活躍ですのね!」

「お母様!?」

 

 

その2 玄関にて

「ではお買い物(デート)に行ってきますわ!」

「鱗君、百のことをよろしく頼むよ」

「任せてください。ロードローラーも隕石も峰田も、危害が及びそうなら殴って粉砕します」

「一人クラスメイトがいましたわよ!?」

 

 

その3 ショッピングモールにて

「鱗さん!どちらの服が良いでしょうか?」

「(よく考えろ石楠花 鱗。この意図の質問が来る場合、正解が一つと地雷が一つだ。どっちだ…?一体どっちが八百万のお気に入りなんだ…!?ここで外せばテンションがワンランク下がり俺の心に深い傷を負う確率が99.8%…!いや、確か右手に持っている服を見ていた回数が左手に持った服に比べて4回多かった。時間に換算すると約6.4秒長かった。その結果を踏まえて俺が選ぶべき答えは………!)ミニスカポリスなりきりセットの方がいいと思う」

「ふんっ!!」

「目があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

その4 喫茶店にて

「まさか服選びに2時間かかり、俺の着せ替え人形タイムに1時間かかるとは…」

「女性の服選びは時間がかかるものですわよ。それと鱗さんもとても似合っておりましたわよ?」

「ありがとよ。それと、ほら…これやるよ」

「これは………私が先ほど選んでいた服?どうしてこれが欲しいとわかったのですの!?」

「いや、それぐらい分かるわ。見てる回数が多かったし。その服は今日一日のお礼とでも思ってくれ」

「鱗さんっ…ありがとうございます!大切に着ますね!」

 

 

その5 帰宅&夕食タイム

「今日はとても楽しかったですわ!」

「良かったですね、百」

「娘さんのプリプリ具合がたまりませんでした」

「鱗さん!?何を言ってますの!?」

「異議なし」

「お父様!?」

 

 

 

その6 お風呂タイム

「お風呂ばったり遭遇ハプニングとか起きないかな~、お風呂失礼しまーす」

「キャッ!?石楠花さん!?」

「まさかのお母様遭遇イベントだとぉぉぉぉぉぉぉおお!?」

「覚悟は出来たかい?私は出来ている」

「そして後ろから猟銃を構えたお父様出現イベントだとぉぉぉぉぉお!?」

 

 

 

 

 

 

いやマジで今日は濃い1日だったよな、マジで…

朝から八百万家に召集され、お父さんに会い、買い物という名のウィンドウショッピングデートを楽しみ、八百万の良い所発表会を開催し、お風呂に入るときに裸の八百万ママにばったりイベントに遭遇し、猟銃を持った八百万パパと殺意マシマシDeath鬼ごっこを繰り広げたのはいい思い出だよ、うん。

 

ついでにヤオママヌードは大切に脳内保存しております。

 

 

 

 

 

その後、話をしたりしているうちに夜が更けてきたため就寝する流れとなった。だがここで昼間に話していた就寝部屋ご一緒事件がぶり返す。流石に女子と、更にクラスメイトの女子と、また更に先程まで鬼の形相で追いかけてきた男の一人娘と同じ部屋で1日を過ごすのは、あの倫理観が欠如している言われている鱗でもヤバいと感じた。

 

八百万も年頃の、更にクラスメイトの気になる男子と一夜を過ごすのは恥ずかしい気持ちがあるのか意見を唱えた。

 

しかし抵抗むなしく二人そろってメイド達に拘束され、そのまま八百万の部屋にぶち込まれた。その場には状況を把握したいが本能が事態を把握することを拒んでいる男女が取り残された。

 

 

 

 

 

 

本当にやりやがったあのおっさん!

実の娘と年頃の男を二人きりで部屋に放り込むとか正気かよ!?はっ…これが八百万一族か!!

 

「部屋は完全防音だからね、HAHA☆」と言われたときはグッと挙げられた親指をへし折ってやろうかと本気で考えたぐらいだからな。

 

しかしさっきから八百万が大人しいが大丈夫か?顔がゆでだこぐらい赤くなっているけど沸騰して蒸発しないよな?

 

しかし八百万の服装がヤバいな。薄々のネグリジェを着てるとか俺を殺す気か?事前にヤオママの裸を見ていなければ俺の理性は死んでいた。ありがとうヤオママ。

 

 

鱗が良いようで悪い頭を使って脱出方法を考えているさなか、八百万が言葉を発した。

 

 

「鱗さん…約束を果たす時が来ましたわ…!」

 

 

はて?約束?約束なんてあったか?

いや、あったはずだ。思い出せ石楠花 鱗よ!女の子との約束を忘れるなんて男として最低だぞ!頑張れ俺の使えるようで使えない脳よ!プルスウルトラだぁぁぁぁぁ!

 

 

 

 

 

キュピーン!シャコシャコシャコーン!

 

よし、今電波を受信したぞ!そう、あれはUSJ熊手ファッション男乱入事件の時だ!

確かあの時に………

 

 

 

『石楠花さん!私はあなたが勝つと信じています!!だから石楠花さん!!無事でしたら()()()()()お願いを聞きますわ!』

『おっぱいをしこたま揉ませてくれ!!』

『『『即答!?』』』

『わっ…わかりましたわ!』

『『『いいの!?』』』

 

 

あっ………

 

 

 

 

「鱗さんっ………触って…いいですわよ…っ」

 

 

 

みっ…自らパンドラの箱をこじ開けるだとぉぉぉぉぉぉ!?

 

「バカな!?こんなよく分からない男に自ら胸を強調させながら差し出すだと!?正気か!?」

「まじまじと見ながら状況説明しないでくださいまし!」

 

まさかこれは全くの予想外だった…

教室で爆弾を発射するのはまだわかるが、まさか○○しないと出られない部屋みたいなシチュエーションの時に自ら死地に飛び込んでくるなんて思わなかった…!

 

くそっ…!どうする!?

ここで揉むのは簡単だ。しかし揉んだら最後、俺はあの低反発枕よりも柔らかそうなボールから手が離れなくなるだろう。よく考えろ!石楠花 うろ「それに…」ん?

 

 

 

「鱗さんだからこそ…いいのですのよ…?」

 

 

「うわっ…うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「鱗さん!?何で吹き飛びましたの!?」

 

なんて破壊力だ!これが緑谷だったら過呼吸になって死んでたぞ!

クソ…!落ち着け…!ここで落ち着けなかったら一夜の過ちコースに…………ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何ィィィィィィィィィィィィ!?俺がベッドに座っているだとぉぉぉぉぉぉぉ!?

 

噓だ!いつの間に………はっ!まさかあまりの可愛さに吹き飛ばされ、そのまま近くにあったベッドに座ったのか…!それこそ無意識のうちに!

 

 

そのまま八百万はベッドに座る鱗の隣に着席する。

 

 

やめろ!俺の隣に座るんじゃない!少し考える時間を………何ィィィィィィ!?体が勝手に動くだと!?

落ち着け俺の体!勝手に動くんじゃない!クソっ…これが抗うことができない人間の本能だとでもいうのか!

 

 

 

そのままベッドに座り、向かい合う二人。見つめあったまま数分が経過する。顔を真っ赤にしながら見つめる八百万。すました顔をしているが頭の中がカーニバル状態の鱗。そのまま時間が過ぎ、とうとう鱗が口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

覚悟を決めろ俺。確かに本人から許可をもらったが今この場では流石にまずい。本当に…本っっっっっっっ当に惜しいが今日はお預けだ。だからこそNOと伝えるんだ。そして重要なのは『今は』NOだということだ。そう『今』はね。ここが一番大事。せっかく与えられた機会を自分からみすみす捨てるバカが何処にいるんだ。さて言うぞ…!

 

 

 

 

 

 

今は大丈夫だよ(揉み揉みさせてくれ)

 

 

 

 

 

 

おのれ俺の口めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 

 

 

「どっ…どうぞ…っ!」

 

ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

こうなったのならもう仕方ない…覚悟を決めろ俺!親がいるとかワンナイトとか知ったこっちゃねぇ!据え膳食わぬは男の恥ってやつだ!

 

大丈夫…そっと触ってさっと手を離すだけの簡単のお仕事さ。所詮は脂肪の塊、これぐらいのミッションをサクッとクリアできなければ全国のリア充共に笑われちまうぜ。そう…平常心平常心、そっと触ってさっと離すそっと触ってさっと離すそっと触って………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふにょん………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、鱗の脳内に電流(ビッグバン)が襲った。

倫理と創造の宙を舞い、無数もの小惑星が誕生しては崩壊、新たなる生物の誕生に立ち会い滅びを迎え、また新たなる宇宙が生まれる。人間の一生を悟り、存在意義を悟り、石楠花 鱗という一人の生命の意義を見つける。そう、ユートピアを発見する(おっぱいを揉み揉みする)ことこそ我が生まれた瞬間から背負った使命だったのだ………と!

 

 

 

えっ…ナニコレ、Yogibo(ヨギボ)?人をダメにするおっぱいなのかこれは?いや…そんなちゃちなものじゃ断じてない!これは世界だ!世界そのものだ!感触を知ったが最後、こいつは世界の一部にするための世界システムだ…!

 

クソっ…!さっきまでの強固な信念が一瞬で塵になって崩れ去った…!

何て恐ろしい世界を知ってしまったんだ…!手が止まらねえ…!仮に俺がヒーローになるという確固たる夢を持っていなかったら「俺、将来乳揉み屋になるわ」とか言い出していたに違いない。それほどまでに強力…!何て魔性なる妖気を放つけしからん乳よ…!

 

 

「あのっ…鱗さ……っ!」

 

 

しかし俺は腐ってもヒーロー志望だ。こんなところで敗北を知るわけにはいかねえんだよ!うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!負けるかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!

 

 

「あ………っ!」

 

 

モミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミ

 

 

 

 

 

 

 

 

はっ…!いかん、魅力に取りつかれていた…!

もう少しで乳揉み大明神に連れていかれるところだったぜ…!それと何か忘れているような………あ。

 

 

「しっかりしろ百ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

その場にはビクンビクンしながら大変なことになった八百万と、犯人である元気な変態だけが残された。

 

「嘘だろおい!?体の汁という汁が出てるぞ!?それとその顔はダメだ!人に見せちゃいけない顔になってるぞ!?」

 

気絶する八百万。主犯格の変態。もはや寝るどころの騒ぎではない。ならこの夜をどう切り抜けるか。そこからの鱗の判断は早かった。

 

 

 

「責任もって自害します」

 

 

流れるように自分の顔に拳を振り切る。そのまま流れるように気絶し、八百万の横に倒れる。そうしてカオスな現場が完成した。

 

 

 

 

八百万 百 鱗テクニックにより気絶。

石楠花 鱗 自らの拳で顎骨を粉砕し気絶。重傷。

 

 

 

 

 

 

その後、昨日の出来事が夢であったかのように何事もなく二人そろって起床し、一緒に登校。終始顔を真っ赤にした少女と顔半分に包帯を巻いた男がヒーロー科で確認されたそうな。

 

 

 

 

 

 

 



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障害物競走の異端児

31話目にしてようやく体育祭編突入だよ♪
スムーズに進めようかと思ったんだが、鱗が簡単に終わらせてくれねえんだよ…!

やるときはやる石楠花 鱗君の活躍をどうぞ!

先日久しぶりに投稿し、多くの読者の皆様が楽しみに待っていてくれていて、歓迎してくださったことが非常にうれしかったです。これからも頑張りますので、お付き合いお願い致します!


鱗の最高級の演説の余韻が残る中、この空気を逃すまいとミッドナイトが司会として体育祭を進める。

 

「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!」

「雄英って何でも早速だね」

「おっと麗日、その真理に辿り着いても声に出しちゃいけない。襲ってくるぜ?」

「何が!?」

「何ってマルハーゲ帝国に決まってんだろ?」

「どこそれ!?初めて聞いたよ!?」

 

うむ、麗日もツッコミとして光るモノを持っているな。磨けば光る原石ってやつだ。これからも是非精進してほしいものだ。

 

「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を呑むわ(ティアドリンク)!」

 

ティアドリンクって言い方カッコ良すぎない?俺もこれは真似すべきだな。乗るしかないでしょ、このビッグウェーブに。

 

「日はまた昇る(ライジング)!」

「そこカッコいいけどうるさい!」

「アーネスト・シャコングウェイです」

「石楠花君減点1ね」

 

いきなり減点とかありなのね。おい峰田笑うな、いろいろもぎ取るぞ。

 

「ごほん…!気を取り直して…運命の第一種目!今年は………コレ!!」

 

 

そう言って上空のモニターに映し出された言葉は………障害物競走。

 

 

「障害物競走……!」

「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4㎞!我が校は自由さが売り文句!ウフフフ…コースさえ守れば()()()()()()構わないわ!」

 

 

何…だと…!?

何をしたってかまわないだって!?じゃああんなことやこんなことやそんなことまで!?大変だ!早く落雁を用意しないと!

 

「石楠花君!直ちにその物騒なものをしまいなさい!」

「落雁の何処が物騒ですか!」

「落雁自体に罪はないけど、あなたが持てば物騒になるのよ!没収!」

「あぁぁぁぁぁ!相棒ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

クソ!落雁に何の罪があるってんだ!

 

「気を取り直して…さあさあ!位置につきまくりなさい…」

 

しゃーない、位置につきまくるか…

しまった、落雁の乱の間にいつの間にか場所取られてた。今俺いるの最後尾じゃん、どないしよ。ヒーロー科の皆は最前列に行っちまったしな~、今頃人の波にのまれて押しくらまんじゅう状態か。ご愁傷さまなこって。

 

 

 

 

 

それから少し時間がたち、ゲートの明かりがともり始めた。もうすぐスタートする合図だ。生徒たちが思い思いの表情で試験に挑もうとしている。ヒーローになるために結果を残そうとする者。ヒーロー科に勝とうとする者。夢をあきらめきれない者。そして…鱗の演説によりやる気を取り戻した者。皆がそれぞれの感情を抱きながら、運命の体育祭が始まろうとしていた。そして………

 

 

 

 

 

 

「スターーーーーーーーーーーート!!」

 

 

 

体育祭が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さーて実況してくぜ!解説アーユーレディ!?ミイラマン!!』

『無理やり呼んだんだろうが』

 

解説が始まると同時にスタート地点が凍り付く。このような大規模氷結が出来るのはただ一人、轟焦凍だ。

 

普通科やサポート科の生徒たちは足場を取られて動けなくなる中、彼を知っているヒーロー科の面々は各々が個性や予測を立て突破していった。しかしそのことに対して別段驚きはしない。そうなるだろうと思っていたからだ。

 

「クラスの連中は当然として、思ったより避けられたな………それに…」

 

ポツリと呟き横を見る。そこには…

 

 

 

「ヤベーヤベー、危うく冷凍保存産地直送コースだったぜ」

 

 

いつの間にか余裕そうに並走しているバカ()がいた。

 

 

「やっぱりお前は引っ掛かりもしないか」

「いやいやこれでもギリよ?あと1マクロでもタイミングがズレたらロケットキックする羽目になるところだった」

「その割には随分と平気そうじゃねぇか」

「日頃の行いのおかげかな?」

 

お互いが軽口を叩く。しかし周りは突然現れた鱗に瞠目している。それはプレゼントマイクも然り。

 

 

『おいおい!石楠花リスナーは最後尾にいたはずだろ!?どうやって先頭に躍り出たんだ!?』

『アイツならスタートと同時に壁ジャンプして、ピンボールのように壁を飛び跳ねながら氷にも触れず先頭に躍り出てたぞ?』

『ハアッ!?マジかよ!クレイジーだな!てかそんなことできるか!?』

『普通なら無理だ。だがアイツだから出来たとしか言えないな。全く…どんな運動神経してんだか…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり一人マ〇オブラザーズごっこは最高だな。誰しもがマ〇オであり、同時にル〇ージなのだ。最下位からのごぼう抜きは清々しいぜHAHAHA!

さて、とりあえずガリガリ君と並走してるのはいいが…ここからどないしよ?

 

 

その時、大きな音が響き渡った。出てきたのは入試に出た仮想ヴィラン。その仮想ヴィランに何か話していた峰田が吹き飛ばされ、アスリート張りの回転を決めながら転がっていった。

 

 

みっ……峰田ぁぁァァァァァァァァァァァァ!!

峰田が仮想ヴィランによってGOシュート!されちまった!あの回転ぶりはまさしく左回転エルドラゴ!まさか峰田はエルドラゴの生まれ変わりだったのか!?

 

峰田エルドラゴ事件をきっかけに続々と仮想ヴィランが出現する。その中には0ポイントヴィランの姿も。

 

 

『さぁいきなり障害物だ!まずは手始め…第一関門 ロボ・インフェルノ!!』

 

 

おいおい何体いるんだよ…

そんなどんがらでうじゃうじゃ湧くんじゃない。

 

いや、逆に考えよう。これだけいるってことは何体か倒しても大丈夫ってことだろう。そうなれば太鼓の達人がやり放題てことだ。よっしゃ!もう一曲遊べるドン!

 

 

鱗が考え事をしている間に轟が動き出す。地面に手をつき、振り上げると前方が大規模に凍り付く。仮想ヴィランを巻き込みながら。

 

仮想ヴィランが凍り付いたタイミングで鱗が動いた。名案を思いついたと言わんばかりに。

 

「道端に不気味なオブジェを作るな!ストリートパフォーマーか!それと教えてやろう!オブジェやモニュメントってのは壊れた瞬間に思い出に変わるんだぜ!ってなわけで、はいドーン!」

 

 

飛び上がり凍ったロボットに向かって腕を振り抜く。するとロボットは冷やされて脆くなったのか粉々に粉砕され、凍った欠片が太陽を反射し、キラキラと体育祭を忘れさせるような幻想的な光景を作り出した。

 

「うわあぁぁ…!」

「すげえ…」

「綺麗!」

 

この光景を作り上げた主犯格はというと…

 

 

「アイスボーイよ、氷というのは破壊までがセットなのだよ」

「そうなのか、覚えておく」

 

轟は間違った知識を覚えた。

 

 

『ひゅう!すげえ綺麗な光景だぜ!バチバチやりあってるが何だかんだいいコンビなんじゃねーか!?どう思うよミイラマン!?』

『ああ、コンビネーションはよかったが人に向けては使えないな』

 

 

鱗と轟はそのまま走り去る。轟が凍らせて鱗が粉砕する。凍らせては粉砕、凍らせては粉砕を繰り返し、二人の前に立つ仮想ヴィランはいなくなった。他の者たちは一瞬ぼうっとしていたがこれが体育祭なのだと思い出し、各々が仮想ヴィラン対策を始める。

 

目の前で巻き起こる光景はめちゃくちゃだが、鱗を知る者たちは「石楠花 鱗だから」という概念が根付いているため、さほど驚くこともなく追いつくためにおのれを奮い立てる。

そんな中、上空を飛ぶ影が一つ………

 

 

 

 

「待ちやがれ!半分野郎!石楠花ェェェェェ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オイオイ第一関門チョロいってよ!!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーーール!!』

 

おいおい、下が見えないじゃないの。まあ俺の目にかかれば余裕で見えるんだけどね。そんなこと考えてる間に轟が先に行っちまったよ。器用だな、ロープを凍らす勢いで渡るとか。俺もやってみたいが如何せん俺はシャコだ。ならどうする?走るしかないだろ(迫真)!!

 

 

そのまま鱗はロープの上を平地と変わらぬように走っていく。細く、耐久力が脆く、少しの振動で軸がずれてしまう、バランスを取ることで精一杯なはずのロープの上を何の小細工もなく走っていく。ヒーロー達はあり得ないものを見るかのように見る。その後に偉業を称えるかのような莫大な歓声が上がった。

 

 

『アイツロープの上を走ってるぜ!?どんな体幹してんだよ!?イレイザーお前授業で何を教えたらあんな神技出来るようになるんだよ!?』

『何も教えてねーよ。あいつの運動神経は何度も驚かされる…いや、あの神技も選手宣誓でアイツが言ってた個性ばかりでなく『人間』を鍛えれば出来るようになるのかもな』

 

 

 

褒められてうれしいでござる。大好評じゃないか俺の『アルティメット綱渡り』は。ロープの上で走れたらかっこいいんじゃね?と思った中学1年生の時の俺の思考よ、ありがとう。まさかこんな大舞台で披露するなんて思ってもいなかったよ。

 

普通に走ってるだけで第二関門クリアしてしまったけど、他の生徒達はどうやってここをクリアするのかね?けっこう距離あるけど俺の目にかかればハッキリ見えるね。

 

まあ普通にゆっくり慎重に渡ってる生徒が多いが………あれはこないだ工房を爆発させてパワーローダー先生を吹き飛ばしたサポート科の方乳(かたちち) ポロリちゃんじゃないか。名前は知らん、きっとそんな名前だと思う。ポロリちゃん中々いいもの(お胸)をお持ちで…違う違う。いいもの(アイテム)を持っているじゃないか。中々いい発想をお持ちであるとお見受けする。是非とも今度話してみたいものだ。

 

飯田は独創的なポーズを取りながら綱を渡っているじゃないか。今度から彼をTT兄弟と呼んであげよう。

 

緑谷は………ナマケモノの物真似か?体育祭中に物真似を披露するなんて飯田といい、緑谷といい、なんて努力家な奴らなんだ。俺もここで爆発さん太郎の物真似を披露するべきか?

 

いや、そもそも肝心の爆発さん太郎はどこ行った?アイツならそろそろボンボン言わせながら「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」とか言いながら攻撃してくると思ってたんだけれども。全然見当たらな「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」…そうそうこんな感じに…ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を上げると鬼がいました。

 

 

 

 

 




教室での一幕
野郎ども
峰「石楠花よ!八百万と何かあっただろ!?お前を見るたびに赤くなってんだよ!!」
鱗「HAHAHA☆」
峰「何余裕ぶった笑いしてんだよオォォ!!」

女子
芦「本当に何かあったの!?」
百「なっ…なななななんでもありありありませんわわ…!!」
芦「絶対何かあったじゃん!!」


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障害物競走終了

多くの方々に見ていただいて嬉しいです!
真面目に書こうとすると俺の中の鱗が勝手に動き出すんだ…

皆様の感想をいつも楽しく拝見しております!
これからも石楠花ワールドにお付き合いください。


BOOOOOOOM!!!

 

 

『A組爆豪が石楠花に向けて特大の爆発をお見舞いだぁぁ!!てかあれ大丈夫か!?生きてるか!?』

「クルッペクルッペ」

『生きてたぁぁ!!意味の分からん単語を唱えながら平然とした顔で爆風の中から出てきやがったぞオォォォォ!!』

 

いや~まさか上空から鬼が降ってくるとは予想外だったね。僕ちんビックリしちゃったよ。

 

「僕ちんじゃなかったら大変なことになっていたでごんすよ?イタター、今の一撃で骨粗鬆症になったわこれ。酷いでごんす」

「ならもっと痛がりやがれ!ピンピンしてる奴のセリフじゃねーんだよ!!あと変な語尾ムカつくからヤメロや!!」

「その顔やめな?テレビの前のちびっ子達がビビッて泣き叫ぶぜ?」

「ビビんなや!!」

「ばっきゅん面白~い、マジバイブス~」

「ぶっ殺す!!」

 

障害物競走に新たな障害が誕生した。

 

 

『おっとオ!?爆豪と石楠花の壮絶なバトルが始まったぞ!?あそこ大丈夫かよ!?爆発しまくってるぜ!?しかし石楠花は爆発を悉く躱す躱す躱すぅ!!』

『私怨が凄いが、ちゃんとレースをしつつ後続の妨害も行っているな。目的を忘れてそうに見えるが器用な奴らだ』

『おっと!?アイツらが戦っている間に先頭は早くも最終関門!!かくしてその実態は……一面地雷原!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になってんぞ!目と脚酷使しろ!!』

 

轟早いね。もう少し俺達に興味を持ってくれてもいいんじゃないかな?しかし地雷か…目で見えるならお茶の子さいさいですね。今から地雷原突破するのに俺の周りには地雷が飛び回っているという理不尽これ如何に。

 

『ちなみに地雷!威力は大したことねえが!音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!!』

『人にもよるだろ。だから石楠花、そんな「名案思いついた!」みたいな顔をするな。嫌な予感がするだろ』

 

名指しで注意されちまったよ。俺はただ地雷を掘り起こし、後続に向けてひたすら投げ、漏らすことによって出来る地面の模様の芸術性を審査しようとしただけじゃないか。

 

「テメエは顔に出やすすぎんだよ」

「ヤダかっちゃん!そんなに私の顔を見ていてくれていたのね!嬉しいわ!」

「気色悪いことぬかすなクソが!!誰がテメエの顔なんざ見るか!!」

「はいはい、ツンデレ乙」

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

暴力的だねぇ。ツンツンのツンかよ。1%のデレを拝める日は来るのだろう………はっ!?

 

そのまま体をくるりと翻し、スタートダッシュを決める。元来た道に向かって。

 

「なっ!?テメエ石楠花!!どこ行く気だ!ああん!?」

「美女が俺を呼んでいる!!」

「アホかテメエ!!何逆走してんだ!!」

 

いや、俺の美少女センサーに引っかかった!俺の後ろで女の子が困っているはずだ!

待っていな!かわいい子ちゃん達よ!!

 

『現在2位の石楠花がまさかの逆走!?フリーダムかよ!?』

『あのバカ…』

 

 

 

 

そのころ、観客&ヒーロー達は…

「おい、逆走してるぞ!おもしれえじゃねえか!」

「競走中に逆走とは…やるな!」

「開会宣言と言い、アイツは他の奴とどこか違う気がしたんだ!」

「試験中であろうとユーモア精神を忘れない……見事」

「キャーー!石楠花くーーーん!!」

「もっと見せてくれーー!」

「彼はきっと次世代を担う大きなヒーローになるだろう…」

 

鱗の評判が爆上がり中だった。

 

 

『いや好印象多くない!?もう観客たちの心を掴んでるじゃねえか!?クレバー!!』

『石楠花は言動がバカだが、人の心を掴むのが異常にうまい。人を笑顔にするのもまた才能だからな。しかし言動がバカ過ぎて何がしたいのか見当もつかん。とんでもないことしでかすなよ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけでお兄ちゃんが駆け付けたぞ!妹よ!」

「アンタバカなの!?」

 

鱗は走った。ただただ走り、愛しの(架空の)妹の前まで馳せ参じたのだ。ザ・フォールの綱を逆走しながらもう一度渡った。笑顔で走った。誰もが二度見した。耳郎は殴りたくなった。

 

「そう言うなよ。俺のシャコシャコレーダーがF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の誕生を教えてくれたのさ」

「アンタの頭のおかしさは1年部門優勝だよ。頼むから一発殴らせてくれ」

「落ち着けよ、落雁食うか?」

「なんでポケットから落雁が出てくるんだ!?」

 

元気だね。元気が有り余ってるじゃないか。だからイヤホンジャック連打は今すぐやめようか。躱すのが辛くなってきたのだよ。

 

「で、結局何で石楠花はトップ争いから逆走してきたのよ?」

「ふっ…何、簡単なことなのだよジロポン君」

「ジロポン言うな!!」

「レース中に逆走する奴なんて早々いないだろ?それだよ」

「どれだよ!?このおバカ!」

「まあまあ、そうかっかしなさんな。レース中に逆走したらどんな反応するかと気になったのも事実だけど、俺のセンサーがビンビンに反応したのも事実さ!」

 

そう、確かに俺のセンサーが反応したはずなんだが……あ。

 

そこで鱗は発見した。八百万の尻にもぎもぎをつけて犯罪者顔してる峰田を。

 

 

「逮捕」

「何だよオォォォ!?」

 

犯人は峰田だったか。とりあえず奈落に落としましょうか。

 

「石楠花、全力で崖下に峰田(ゴミ)を投げろ」

「イエッサー」

「おいィィ!早まるな耳郎!石楠花!!助けてくれェェェェ!!」

「犯人は皆そういうんだよ。女子の敵は抹殺だ!」

「耳郎陛下の言うことは絶対だ。峰田…お前はいい奴だったよ」

「あきらめるな石楠花ェェ!オイラを助けてくれェェ!!」

 

しかし、今にも投げようとする鱗を八百万が止める。

 

「うっ…鱗さん!私は気にしておりませんのでその辺りで…!」

「よかったな、八百万神のお許しが出た。無事釈放だ」

「助かったぁぁぁ………「ただし…」へ?」

 

鱗は峰田を掴んだまま投擲のフォームを取る。

 

「百の尻にしがみついたのは万死に値する!よって、うらやま死刑!峰田実の遠投デスボンバーの刑に処す!」

「完全に私怨じゃねえかよオォォォォォ!?」

「fire!!」

「ああああああああ!?」

 

峰田は弧を描くように綺麗な放物線で飛んで行った。地雷ゾーンまで飛んで行き、大爆発を起こしたような気がするが鱗も耳郎もスルーすることに決めた。

 

「悪は滅びた。じゃあ出発するか」

「そうだな」

「やりすぎですわ!?」

 

何事もなくレースを再開する鱗。便乗する耳郎。ツッコむ八百万。ヤムチャしやがって峰田。カオスフィールドがここに誕生した。

 

 

「じゃ、急ごうぜ。何位までが2回戦進出とか言われてないし。上位になった方が確実でしょ」

「自分からその切符を捨てたバカがここにいるけどな」

「褒めるなよカルデラπ」

「それはうちのπが陥没してるってことかぁぁぁぁ!!」

「落ち着いてください耳郎さん!?競技中ですのよ!?」

「止めないでヤオモモォォ!!奴は今全国の同志をバカにした!!それに背中に押しつける貴様も同罪で敵だ!!」

「ええっ!?」

 

まさにカオス。ザ•フォールは違う意味でカオスの場となっている。そのカオスを生み出した張本人はロングブレスダイエットを実践していた。

 

「ふぅ…やっとここまで……って耳郎ちゃんどうしたの!?」

 

そこに事情を知らない葉隠が合流。葉隠が耳郎を宥めてくれたおかげでこの場は事なきを得た。

 

「俺の目測では葉隠もヤオモモ属だ。耳郎属ではない」

 

が、この男は石楠花 鱗(常識が通じない男)なのだ。

 

「フシャアァァァァァァァァァ!!」

「落ち着いて下さい耳郎さん!?鱗さんもむし返さないで!」

「落ち着いて耳郎ちゃん!?石楠花くんの妄言だよ!」

 

 

 

その直後、前方で大きな爆発が起きた。

 

 

 

 

 

「何事ですの!?」

「おー、緑谷がぶっ飛んでらぁ。ワロスワロス」

「笑ってる場合か!!ていうかここから誰か分かるとか一体どんな視力してんのよ…」

 

何で緑谷が爆発サーフィンしてんだ?かっちゃん怒らせたのか?

まぁいいや。俺は俺の心配しとくか。とりあえず俺も頑張りましょう!

 

そして八百万と耳郎を小脇に抱える。

 

「きゃっ!?」

「うわっ!?」

「よし!葉隠、背中にしがみつきな!」

「えっ!?……えっ!?」

「早くしな!サジタリオが飛んでくるぜ?」

「えっ!?…うっ、うん!」

「よし乗ったな?では出発しまーす。エリート号シャコスプレス発進!」

 

女子一人を背負い、女子二人を俵持ちしたまま鱗は走り始める。女子とはいえ3人分の体重を抱えているにもかかわらず軽やかな足取りで走り回り、ロープの上を走って行く。

 

「おろせー!!なんで3人も抱えたままロープの上を走れるんだよ!?」

「足が沈む前に次の足を踏み出せば水の上を走れるっていうだろ?それだよ」

「出来るか!?それより早くおろせ!こんなはっ…恥ずかしい体勢で…!」

「前から見たら二つの桃が近づいてくるみたいに見えるな」

「おろせェェェェェェ!!」

「おろしてくださいまし!」

「イタタタ!二人ともここで暴れないで!ロープから落ちちゃうし私の腕と足が潰れちゃう!」

 

HAHAHA☆元気なのは良いことだよ。この調子で…危なっ!?それ以上暴れたら流石の俺もバランス崩して崩落エンド迎えるわ!というわけでスピードアップしまーす。

 

「「「きゃあぁぁぁぁぁ!!」」」

 

鱗は疾く駆けた。誰よりも疾く駆けた。人を3人担ぎ、誰しもが二度見した。野を越え山を越え、荒れた道を行き、英気を養うために尻を揉む。背中に双房の感触を楽しみながら地雷地帯に辿り着く。

 

だがこの男に地雷など意味はない。全て視えている。今の目的は安全第一。わざわざ見えすいた罠に引っかかる道理もない。周りの生徒が爆発し、減速していく中、鱗だけトップスピード且つ爆風を浴びることなく悠々と走り去る。

 

 

「何で石楠花だけ地雷爆発してないの!?」

「おにゃのこを堪能した俺は無敵なのだよ」

「石楠花くんってやっぱり凄かったんだね!」

「鱗さんは凄いのですわ!」

「もっと褒めてくれ!……やっぱり3人は重いな」

「「「ふんっ!!」」」

「あべし!?」

 

お馴染みのデリカシーの無さでボコボコにされるがスピードは緩めない。そして……

 

 

『みんな待ちに待った話題のリスナーが女子を侍らして帰ってきたぜ!!トップ争いから逆走して再びごぼう抜きなんざ誰が想像した!?それより死にかけてるが大丈夫か!?』

 

 

「葉隠様ごめんなさい!首締まってる!締まってるからぁぁぁぁ!!」

「二度と女の子に向かって重いなんて言っちゃダメだよ!?」

「それが覆らない真実であ…首がぁぁぁ!おい!イヤホンはやめあぁぁぁぁぁぁ!!…って百もか!…ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!関節が逆方向に曲がるぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

 

 

 

 

 

 

石楠花、八百万、耳郎、葉隠、一回戦突破。

 

 



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グループを作れって言葉は恐ろしいよね

もう少しでお気に入り登録12000人達成という現実にドキドキしてきた…!

沢山の方の応援ありがとうございます!いつも感想を楽しく読んでおります。新着感想って言葉だけで興奮するようになりました。これからも頑張りまっす!


死にかけたぜ!3人もの体重を抱えていれば重いなんて当たり前のことだが、それでも口に出しちゃだめだよ?鱗お兄さんとの約束だぜ!まあ俺が自分から抱えて自爆しただけなんだがな!

 

女子3人を抱えても障害物競走の順位は八百万17位、耳郎18位、俺19位、葉隠20位と中の上という結果に入れたのは僥倖だな。流石俺、足腰を鍛えてよかった。峰田もギリギリで1回戦突破してたし無事にA組全員突破よ。だが峰田は何で全身ボロボロの上に焦げてたのかな~、分からないな~?(すっとぼけ)

 

それより緑谷が1位って感慨深いな。まだ調整できてないはずなのに1位とは、それって自分の力と発想力だけで俺達に勝ったってことだろ?すごいじゃないか。

 

「そんな君には落雁を上げよう」

「えっ!石楠花君急にどうしたの!?あっ…ありがとう」

「それより仁丹なんて食ってないで見てみろよ。かっちゃんの顔を」

「これ落雁じゃないの!?それとそっちに指ささないで!?」

 

やべーかっちゃんマジ活火山。緑谷に負けてフラストレーション溜まってらっしゃる。イライラがイライラを超えてエボリューションイライラからのオラオラに変わっちゃうぜ?

 

「ぬあぁぁぁぁぁにこっち見てんだぁぁぁテメエらぁぁぁぁああ!!」

「ヤベー視線を合わせるな。バクゴーマンと視線を合わせたら最後、視線が外れた瞬間に眼前にワープして襲ってくるぞ。だが無事に討伐出来たらバクゴーパールを低確率で落とすはずだ」

「テメエは誰と間違えてんだぁぁ!!」

「目を合わせてもないのに眼前ワープとか、まさかの亜種だったか。そして亜種は過酸化グリセリンを落とす…と。要チェックや!」

「おおおおおお落ち着いてかっちゃん!?石楠花君はこれ以上何も言わないで!?」

 

落ち込んでたから場を和ませようとしただけなんだが、人生ってのは儘ならないねぇ。なぜか俺が励ますとみんな怒っちまうよ。ユーキャンで励まし検定6段でも受講するか。

 

 

鱗と緑谷と爆豪がわちゃわちゃ戯れている間に時間は進み、ミッドナイトが説明を始めていた。そして宣言される。

 

「さーて第二種目よ!私はもう知ってるけど~~…何かしら!?言ってるそばから!」

 

緊張感が漂う空間で、誰かの生唾を飲み込む音がする。

 

「コレよ!!!」

 

そして映し出されたのは………

 

 

 

 

 

 

 

騎馬戦

 

 

 

 

「なるほど。チョコラテ・イングレスか」

「石楠花君は今すぐ黙りなさい」

「俺にだけ風当たりが強い件について」

 

しかし、騎馬戦か~…あんまり得意じゃないな~。参加するとしたら俺は下の騎馬かね?

 

「参加者は2~4人のチームを組んで自由に騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど一つ違うのが…先程の結果に従い各自にポイントが振り当てられること!!」

「入試みたいなポイント稼ぎ方式か、わかりやすいぜ」

「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」

「あんたら私が喋ってんのに直ぐ言うね!!!」

「更年期か?」

「黙れ石楠花!!」

 

ボソッと呟いただけなのになんで俺の声だけピンポイントで注意されるんだ?まあ女性は負の言葉ほど聞き取りやすいっていうしな。しょうがないからミッドナイトの魅力をもっと世に伝えるために俺監修写真集シーズン2の作成に取り掛かりますかね。

 

鱗が頓珍漢なことを考えている間にも説明が続き、終盤に差し掛かる。そこでこの試験の最も重大な事実が教えられることとなる。

 

 

「そして…1位に与えられるポイントは…1000万!!!!上位の奴ほど狙われちゃう………下剋上サバイバルよ!!!」

 

 

生徒達の視線が一斉に緑谷へ向く。現に渦中の緑谷は汗が凄いことになっている。今まさに1位の重圧というプレッシャーを感じているだろう。そんな中鱗は……

 

 

「ふっ……ふふっ……!」

 

 

全力で笑いを噛み締めていた。

 

 

いやー、緑谷ご愁傷様。めちゃくちゃ面白い展開だし緑谷本人が面白いことになってんじゃん。ワロスワロス。

 

しかし1位だけポイントインフレしすぎだろ、株価かよ。こんな事なら1位取ればよかったな、そっちの方が面白そうだ。

 

「制限時間は15分、振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイント数が表示されたハチマキを装着!終了までにハチマキを奪い合い保持ポイントを競うのよ」

 

緑谷ぶっちぎり1位じゃん。俺が何ポイントか数えるの面倒くさいから分からんが1000万の前じゃ霞みまくりだね。ロードローラーと三輪車ぐらい違う。

 

「取ったハチマキは首から上に巻くこと、取りまくれば取りまくる程管理が大変になるわよ!そして重要なのはハチマキを取られても、また騎馬が崩れてもアウトにはならないってところ!」

 

わーお、制限時間いっぱいまで動きまくって強奪しまくって保守しまくれってことね、分かります。要はスマートに獲物を取り、敵に捕まらなければいいってことだろ?

 

「対魔忍になりきれってことか。マッサージ(意味深)トラップとか何処かにあるのかな?」

『石楠花、−100ポイントな』

「とうとう大会本部から苦情が来た!?」

 

いやいや、本当にマイナスになるわけじゃ……画面に映る俺のポイントがゴリゴリ削られていくぅぅぅぅうう!!やめろオォォォォォォォォ!!

 

クソッ!相澤ヘッドめ…!本当に削りよって…!下から数えた方が早くなっちゃったよ。

 

 

「個性発動ありの残虐ファイト!でも……あくまで騎馬戦!悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード!一発退場とします!それと教員の話し合いの結果、石楠花君に騎手は危険という意見が満場一致で出たので騎馬固定です!」

「おい!俺の扱いが峰田以下になってるじゃねーか!」

「オイラ以下ってどういうことだよ!?」

 

確かに俺の個性は騎手になれば危険だよ。しかしまさか満場一致とは…もっと危険な個性とかいっぱいいるぜ?例えば某爆発ウニとか。

 

「あんまりだよ!確かにシャコのスナップで鉢巻を取ろうとすると最悪頭ごと吹き飛ばしてしまい血の花が咲き誇ることになるけどあんまりだよ!」

「「「騎馬固定で」」」

「どうして!?」

「それじゃこれより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!!」

 

 

クソッ!みんなして俺のことを無視して!石楠花は寂しいと死んじゃうんだよ!

いいもん!マイベストフレンドに慰めてもらうもん!

 

 

「てなわけで匿ってくれよ爆えも~ん」

「こっち来るな疫病神が!!消えろ!!」

「いいじゃねえか。今ならお前の我儘にも対処できる不死身の騎馬がついてくるぜ?」

「いるかぁぁ!!テメエは取り巻きの女共のところでも行ってこい!!」

「えっ…?まさか……羨ましかったのか?」

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

爆豪と鱗がひと悶着起こしている間に2人の周りには人が集まってきた。性格はアレだが腐っても2位。片や運動神経の化身。2人の周りに人が集まるのは必然だった。囲まれる2人だが、先に動いたのは事態が面倒臭くなった爆豪だった。

 

「っち…!おい石楠花、俺と組みやがれ。他の奴らの個性は知らねえがテメエの個性はよく知ってるし、テメエが言ったように無茶が利く」

「おーっとぉ!?ついにあの爆発ヤンキーでお馴染みの爆豪くんのデレ期が来たかぁぁぁ!?…………知ってるか?男のツンデレに需要は無いぞ?」

「ちげぇわ!!デクをブッ殺すためには耐え切れる足が必要なんだよクソが!誰が好んでテメェと組むか!」

 

爆豪が鱗を騎馬と決めた同じタイミングで動き出す赤い髪の男気溢れる男がいた。

 

「轟の奴ソッコーチーム決めやがったぜ!爆豪!!俺と組もう!おっ、石楠花と組んだのか!こりゃ心強いぜ!!」

「クソ髪」

「切島だよ覚えろ!!」

「ミスターブシドーじゃないか」

「カッコいいなそれ!」

 

確かに切島なら硬化で爆豪の爆発に耐えられる頑丈な騎馬となるだろう。

 

「おめぇどうせ騎手やるだろ!?そんならおめぇの爆発に耐えられる前騎馬は誰だ!!?」

「…………根性ある奴」

「違うけどそう!!硬化の俺さ!!ぜってーーブレねえ馬だ!奪るんだろ!?緑谷(1000万)…!」

 

我の強いセールストークを見た気分だ。

それとかっつぁんよ、もう少し笑顔の練習しな?子供泣くよ?

 

そんな暑苦しく、笑顔が凶悪で、狂人な男達3人衆に近づく物好きが一人。

 

「はいはーい!私も入れてー!!」

「おお!芦戸じゃねえか!」

「プリケツピンクちゃんじゃないか!」

「石楠花の変態!私はあ・し・ど・み・な!!」

プリプリ、プリケツ!(大丈夫、覚えてるよ!)

「……」

「ちょっ…!?無言で酸を飛ばしてくるな!?」

 

あぶねぇ!?かかれば溶けるだろ!?

 

「石楠花はほんとデリカシーがないよ!」

「プリケツをプリケツって呼んで何が悪いんだ!!」

「何で私が怒られてるの!?」

「まぁまぁ!でもこれで4人揃ったじゃねぇか!」

「何テメェら勝手に決めとんだクソ共が!!」

 

詰め寄る芦戸、逆ギレの鱗、仲裁する切島、キレ散らかす爆豪。ここに不器用な騎馬が一騎完成した。

 

『さぁ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経てフィールドに12組の騎馬が並び立った!』

『……なかなか面白ぇ組が揃ったな』

『さぁ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!』

 

さーて、いよいよスタートよ。個人的には1位を目指したいが…爆発さん太郎は1位しか見据えてないしちょうどいいや。1位を狙いつつ、いい感じに楽しみながら遊ぶ。これが重要だね。轟の騎馬は言わずもがな危険そうだし、他にも危険そうな騎馬はいっぱいあるから慎重に行動だね。まあ無理だと思うけど!

 

「よーし!目指せ1000万ポイントだ!」

「おー!」

「行くぜ!ボンバー・アーチン号発進!!」

「誰が爆発するウニじゃ!!テメエからブッ殺してやろうか石楠花ェェ!!」

 

 

見せてあげようじゃあないか!海の中で高速に動くシャコの足さばきという奴を!!

 

 



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騎馬戦で図に乗る=死亡フラグ

あけましておめでとうございます。
隙間時間を縫って書き綴り、ようやく完成しました。が、まさかもうじき1月が終わるまでかかるとは思いませんでした。

お気に入り12000人ありがとうございます!
今年も石楠花君の活躍をお楽しみに!


『よォーし組み終わったな!!?準備はいいかなんて聞かねえぞ!!いくぜ!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!』

 

遂に始まる第2回戦。各々が今から始まる騎馬戦に緊張している。休憩なしの時間いっぱい動き回り続けるエンドレス騎馬戦。点数を狙い、点数が増えれば増えるほど狙われ続けるこの試験、安全策を取るかひたすら上を目指し続けるか。いよいよカウントダウンが始まる。

 

『3!』

 

「爆豪どうすんだ?この試験」

 

『2!』

 

「かっちゃ~ん、『現代の李徴』と言われた自尊心二郎系男がまさか逃げるなんて言わないよねェ~~?」

 

『1!』

 

「当り前だクソ共が!!逃げるなんて三下見てぇなこと誰がするか!!目指すは……」

 

 

『START!』

 

 

「完膚なきまでの1位だろぉが!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうですかベイビー達は!!可愛いでしょう!?可愛いは作れるんですよ!!」

「機動性バッチリ!すごいよベイビー!発目さん!!」

「でしょー!?」

「浮かしとるからやん…」

 

 

開始早々狙われるのは緑谷チーム。やはり1000万は狙われる確率がグンと高くなる。多くの騎馬に襲われるがサポート科の生徒である発目のサポートアイテム、麗日の無重力、常闇のダークシャドウが死角を捉え続けることにより奇襲を防ぎ、生き延びることができていた。

 

 

『さ~~~~まだ2分も経ってねえが早くも混戦混戦!!各所で鉢巻の奪い合い!1000万を狙わず2位~4位狙いってのも悪くねぇ!!』

 

 

響き渡るアナウンス。開始わずかで戦場は目まぐるしく動く。それはこの男のチームも当てはまる。

 

 

「おいおい!石楠花!爆豪!芦戸!前から障子が一人で突っ込んできたぞ!?いいのかアレ!?」

「ホントだよ!どうする石楠花、爆豪!?」

 

障子が複製腕で背中を覆いながら走り寄る。その複製腕のわずかな隙間から飛び出す紫のボール。さらに舌。そしてダメ押しのテープ。

 

「オイラ達はここだよォ…」

「ケロ。私もいるわ」

「俺もいるぜ!」

「はあっ!?一人で3人とかマジかよ!?」

 

驚くのも当たり前だろう。障子は1人で峰田、蛙吹、瀬呂の3人を背負いながら走り回るという偉業を成し遂げたのだ。普通ならば無理であろう。しかし障子は自身の背丈と背中の広さを活用し、個性で落下防止することによって可能としたのだ。だが、そんな偉業の裏にはとあるバカが関わっていた。

 

「フォッフォッフォ。どうやら障子君は真面目に取り組んだようじゃのう」

「ああ、石楠花が相談に乗ってくれたおかげだ。お前が『膝を鍛えろ。膝を鍛えればレゴブロックの収穫量が増える!』と言ってくれたおかげで俺は安定したフィジカルを手に入れた。ありがとう」

「なに、礼には及ばん。そこまで言うのなら結果で証明してみな!」

「…!ああ!」

「テメエはなんで敵に塩を送っとんだクソが!!そんでそのウゼぇ師匠面ヤメロや!!」

 

フォッフォッフォ、仲間は時として師匠になるのじゃよ。覚えておくがよい爆豪少年や。生徒と師匠は紙一重、これで俺もR2D2だね!

 

『峰田チーム圧倒的体格差を利用し、まるで戦車だぜ!』

 

各々がどうポイントを奪い取るか頭を悩ませる。しかし一人の男は何かを見つけたかのように爆破しながら飛び上がり、雄叫びを上げた。

 

 

「調子乗ってんじゃねえぞクソが!」

 

 

その男の名はボンバー・アーチン。またの名を爆豪。

そして今まさに暴言を吐かれた男の名はドライ・ケルプ。またの名を緑谷。

 

2人の関係性はミレニアム検証問題より複雑であり、爆豪が一方的に目の敵にしている節がある。そんな男が1000万をぶら下げて視界に入ればどうなるかなんて火を見るよりも明らかだ。当然襲い掛かる。明らかに襲い掛かる895%襲い掛かる。というか現に襲い掛かった。

 

「おい!バクゴーの奴、一人で飛び出しちまったぞ!?」

「よし、ここは落ち着いて…あっ、防がれた。とりあえず落ちてくる爆豪回収隊行くぜ!大丈夫、扱いはホームランボールと一緒で落下地点を見極めて力尽くでキャッチだ!」

「オーライオーライ、でいいの?」

 

『騎馬から離れたぞ!?良いのかアレ!!?』

「テクニカルなのでオッケー!!地面に足ついてたらダメだったけど!」

 

流石ミッドナイト、懐が広いね!でも乱発はさせないようにしようか。横から邪魔されて爆豪が落下したら大惨事だからな。次は襟首掴んで死守しよう。

 

『やはり狙われまくる1位と猛追しかけるA組の面々共に実力者揃い!現在の保持ポイントはどうなっているのか…7分経過した現在のランクを見てみよう!』

 

観客の誰もがA組の実力や知名度を知っている。だからこそA組が勝っていると思っていた。いや、思い込んでいた。

 

『……あら!!?ちょっと待てよコレ……!A組緑谷以外パッとしてねぇ……ってか爆豪あれ……!?』

 

モニターに映るのは0の文字。いや、緑谷チーム以外のA組チームに表示される0の文字であった。爆豪チームも何故か0、なぜなら表示される瞬間にとある人物に取られたからだ。わちゃわちゃしている隙を狙われた、言い訳に聞こえるが試験とは結果が全てなのだ。たとえ強くてもポイントを奪われると0ポイントとなる。それが試験であり現実である。

 

「単純なんだよ、A組」

 

その男は満を持して話し始める。起爆剤とハジケ爆弾に向かって。

 

「んだてめェコラ!返せ殺すぞ!!」

「やられた!」

 

おいおいかっちゃんさんよ、死角からあっさり取られてるじゃねえですかい。そして誰だ?B組か?

 

「ミッドナイトが第一種目と言った時点で予選段階から極端に数を減らすとは考えにくいと思わない?」

「!?」

 

おい、いきなり話し始めたぞ。誰なんだこのとっちゃん坊やは。

 

「だからおおよその目安を仮定し、その順位以下にならないよう予選を走ってさ、だいたい40位以内。後方からライバルになる者たちの”個性”や性格を観察させてもらった。その場限りの優位に執着したって仕方ないだろう?」

 

と、話し終えたタイミングでB組騎馬が爆豪たちの周りを囲む。

 

「組ぐるみか…!」

「まあ全員の総意ってわけじゃないけど良い案だろ?()()()()()()()()みたいに仮初の頂点を狙うよりさ」

 

えっ?めっちゃかっちゃん煽られてるじゃん。面白すぎィィィィ!!

 

「あ、あとついでに君有名人だよね?「ヘドロ事件」の被害者!今度参考に聞かせてよ。年に一度敵に襲われる気持ちってのをさ」

「えっ!?かっちゃん煽りに煽られるじゃん!!激レアよ!?「今日はまぼろし島が見えるのじゃ!」って言われるよりもレアじゃん!!」

「おい石楠花!これ以上爆豪を煽るなよ!?」

「それと君も有名人じゃない?」

 

ん?アイツ俺を見てどうした?サインでも欲しいのか?

 

「場をかき回すことが趣味の落雁マニアじゃないか。セクハラや頭のおかしい挙動で有名だよ?『雄英の奇行種』か…ふふっ、言いえて妙だね。一度病院に行くことをお勧めするよ」

「……あ?」

 

この日初めて鱗の表情から笑みが消えた。だがすぐに笑みが戻る。底冷えするような笑みが。それは爆豪とて同じこと。この二人に「やられっぱなし」という言葉はない。もし、あるとすれば……何十倍にしてやり返すかということだけだ。

 

「切島……予定変更だ」

「ん?」

「デクの前にこいつら全員殺そう…!!」

「おい落ち着けよ爆豪!?」

「そうだよ!石楠花からも何か言ってやって…」

 

 

 

 

 

 

「ブッ殺ブッ殺☆」

 

 

 

 

 

この時、芦戸と切島は奇しくも同じことを思った。

ああ、ご愁傷様…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石楠花は中学時代から有名人だった。

曰く、落雁を口に詰め込んでくる。

曰く、言動が未知数すぎて、逆に最先端。

曰く、武装した敵を個性を使わずに素手で鎮圧した。

曰く、ハッピーセット大使。

 

有名だからこそ物間は石楠花のことを理解していた。いや、()()()()()()()()()()

 

物間が石楠花を理解できる日はない。なぜならベクトルが違うから。たとえ理解できたとしても、それは思考の浅瀬部分でしかない。

 

 

そして物間は一つ間違いを犯した。

爆豪を煽るまではよかったが、そこから先に進んだのがいけなかった。むき出しの爆弾ほど怖いものは無い、彼は無意識のうちに自ら爆弾に触れてしまった。そう、特大の爆弾(石楠花 鱗)に。

 

 

『さぁ残り時間半分切ったぞ!!B組隆盛の中果たして1000万ポイントは誰の頭に垂れるのか!!!』

 

 

男は嗤う。極上の獲物を見つけたように。

男は嗤う。どのようにして遊ぼうか。

男は嗤う。如何にしてベイブレードのようにバーストさせるか。

 

さあ、ショータイムだ…!

 

 

 

 

 



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バカとウニと騎馬戦終了

お待たせしましたぁぁぁぁぁぁ!!
皆様、お久しゅうございます。
私は元気にしております。ただ、忙しくて各時間が取れませんでした…

前回の更新から時間がたちましたが、これからも時間を見つけて更新しますので応援よろしくお願いします!

PS.お気に入り登録、UA数共に更新し続けている現状を見てニヤニヤしています!


「あんま煽んなよ物間!同じ土俵だぞ それ」

「ああそうだね、ヒーローらしくないし…よく聞くもんね、恨みを買ってしまったヒーローが敵に仕返しされるって話」

 

煽る物間に注意をする拳藤。外野からは何を話しているのかよく聞こえないが、今にも爆発しそうな騎手の男を見て状況を把握した。

 

 

 

 

「おっ おっ おおォォ…」

「爆豪落ち着け!冷静になんねえとポイント取り返せねえぞ!!」

「おォオオ…っし進め切島…!!俺は今…すこぶる冷静だ…!!」

「頼むぞマジで。石楠花も何か言ってやって…」

 

石楠花に話しかけるために後ろを振り返る。そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寿限無 寿限無 五却のすりきれ海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末食う寝る処に住む処 藪ら柑子の藪柑子パイポパイポ パイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の 物間ブッ殺☆」

 

満面の笑み、しかし目だけは一切光を映さないほど黒く濁った眼で笑みを浮かべる男がいた。

 

切島は何事もなかったかのように前を向き、これから死にゆく相手に憐れみの目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、物間ブッ殺RTAはーじまーるよー!!

いや~、言ってくれますねぇ物間選手。君のような勘のいいガキは嫌いだよ(大物感)。

 

でもまあ、俺よりもうちの騎手の方が怒りに打ち震えてるけどね。ハハッ、うける。何気に爆きゅんが煽られるとか中学時代から見ていても中々無いしね。俺の煽りはノーカンで。

 

ここまで煽られちゃ、それ相応のお返しを用意するのがスジってもんよ!そこで石楠花選手が用意できるお返しラインナップはこちら!

 

 

①ブッ殺☆

②ブッ殺☆

③ブッ殺☆

④ラララライ体操(意味深)

 

 

以上のラインナップでお送り致しま~す。

いや~、実に素晴らしいラインナップでございますね。惚れ惚れ致しちまうぜ!

 

だがしかし俺が開発した自作秘密道具が使えないから選択肢は絞られてくるのが難点だな。サポート科ならいざ知らず、ヒーロー科は許可をもらえないと使えないからね。試しに聞いてみたけど、「自作の道具を使わせてください!」という言葉に対して出だしの「自」の時点で「ダメ」という言葉が返ってきたよ。別にいいだろうがよォォォ!!ケチケチすんなよォォォ!!

 

というわけで使えるものは俺の体と3人の個性。以上の要素のみで害悪敵退治を始めていきたいと思います!

 

と、その前に決め台詞でかっこよく相手さんへの敬意を表そう!

 

 

「おい、デュエルしろよ」

「君は何を言っているんだい?」

「おいおい、素人かよ。話が通じねーじゃねえか。このレベルでこの俺様達を煽ってきたというのかい?一体どこのメーカーだよ?」

「いや、本当に何を言っているんだい?」

「バカ野郎!どうしてサテライトの犬に成り下がっちまったんだよ!?」

「誰かこの変人を止めてくれ!?話が通じない!?」

 

青ざめるB組と物間、呆れるA組、不敵に笑う爆豪。

ここに最高クラスの状況が完成した。さ~て、やっちゃうぞ~!

 

「いくぜ、俺のターン!俺はレベル6の『熱血の漢キリシマン』とレベル4の『プリケツの女神アシ・ドミナント』をチューニング!リミッター解放レベル10、メイン・バスブースター・コントロール、グリセリン・爆豪ゲージ、オールクリア!無限の力、今ここに解き放ち、煽りの彼方へ突き進め!  GO!アクセルシンクロ! カモン、『BG(バックゴーナス)ー カツキボンバーイェー』!!」

「ぶっ飛ばすぞテメエェェェェ!?」

「熱血の漢…!いい響きじゃねーか!」

「あー!またプリケツって言ったー!?」

 

三者三様の反応。A組にとっては普段通りの光景ではあるが、B組にしてみれば異常に映るのだ。現に、もうすでに物間はターゲットにする相手を間違えたと思っている。だがもう遅い。地雷原に丸裸で突っ込んでいく愚行を見逃すはずもない。

 

誰かが言った。石楠花 鱗という存在は、自分が負ける確率が100%であると分かっているのにストーリー上必ず巻き込まれなければいけない強制バトルイベントであると。

 

逃げるという選択肢は許されない。コマンド上に表示されない。運よくバグが起きて遠くの町に逃げ切れたとしても、気づけばしれっと主人公の旧知の友かのように肩を組んで隣に立っている。そうして幾人もの主人公たちを絶望の淵に陥れてきたマインドブレイク系モンスター。

 

石楠花は中学生の頃から個性を使わずにヴィランを捕縛していた。そのうちの一つの事件として、暴力を一切起こすことなく、いや…一度もヴィランに触れることなく逮捕にまで漕ぎつけた。その時の犯人はこう供述している。

 

 

 

 

 

 

曰く、「何処に逃げても気づけば後ろにいた…!」と。

 

 

 

 

 

 

 

『落雁の申し子』、『雄英の奇行種』などと呼ばれているが、まだ可愛いものだ。その本質は言動の意味不明さと追跡能力のベストマッチにある。

 

故に狂気(ハジケ)追跡者(チェイサー)と一部のヒーロー達から呼ばれている。

さらに一部のヴィラン達からは教えてもいないのに電話がかかってきて背後に立っていることから『メリーさん』と呼ばれていることを本人はまだ知らない。

 

 

 

そしてその狂気(ハジケ)の波動を一身に受けている物間とその騎馬達はというと、戦ってもいないのに冷汗が止まらなかった。なぜなら本能が告げている、『今すぐここから逃げろ…!!さもなくば……』と。

 

 

 

 

 

 

「さぁ…俺達と遊ぼうぜェ…!!物間君よォ」

「ひっ!?後退だ!今すぐこの場から離れるんだ!」

「させないよォ…?切島ちょっと硬化して地面をしっかり踏みしめといて。そんでプリドはしっかり掴まっといて」

「えっ!?おっ…おう!!」

「略すなー!!」

 

そういうと鱗は足を高く上げ、振り下ろす。

その瞬間、地面が激しく揺れた。

 

 

「うおっ!?」

「きゃっ!?」

「ぐっ…!?」

 

足を振り下ろしただけでバランスを崩すほどの衝撃が地面を走る。

蝦蛄を含め、甲殻類は全身が筋肉と言っていいほどに引き締まっている。その全ての筋肉を一点に集中させ地面を踏む。たったそれだけのことだが、人間サイズで放たれるその一撃は地を割るには十分すぎた。

 

さらにインパクトの瞬間に満遍なく力を分散させる。例えるならば「点」ではなく「面」。

石楠花 鱗という一個人が努力の末に手に入れた人間の技という到達点を、バランスを崩させるためという、まるで小さな動機のために、息をするが如く放たれた。

 

 

名を『剄震(けいしん)

 

 

その道を究めし者のみが披露出来るその技は、相手の機動力を奪い、僅かな隙を作る。その隙を我らが負けず嫌いの獣が見逃すはずもない。

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「くっ!円場(つぶらば)!!」

 

円場 硬成の個性『空気凝固』、空気を固めて壁や足場にできる。この場合は爆豪から身を守るための壁となるだろう。

だが忘れてはいけない。この場にはどんな壁でも強行突破できる、瞬間出力オールマイトの男がいるのだから。

 

「壁なんて俺の前では無力!!くらえ!『ネオアームストロングサイクロンジェットネオアームストロングキャノン』!!」

 

声高らかに必殺技を叫ぶ男、石楠花。その技の実態は極限まで力を圧縮した腕で空気を殴るだけ。だがオールマイト並みのパンチ力で放たれる一撃は空気すらも圧縮し、空気砲のように前方へ押し出される。そこにシャコ特有の腕のスナップの速さが付け加えられる。

 

ここで問題だ。もしオールマイト並みの力でパンチを打てばどうなるか?答えはパンチに対して風圧や余波が生じ、周りにも被害を被っただろう。

 

ならば腕を振った時の風圧さえ置き去りにする速度でパンチを打つとどうなるか?

答えは瞬間的に指向性を持った衝撃波(ソニックブーム)が打ち出される。

 

子供が考えたような必殺技名で放たれたソレは、空気の壁を突き破り、物間の顔の横を通過し、空に向かって打ちあがった。

 

「はあっ!?」

「危ねえじゃねえかこのクソシャコ野郎が!!当たったらどうすんだ!!?」

「大丈夫!どっちにも当たらない擦れ擦れを狙ったから」

「大丈夫じゃねーから言っとんだクソが!!」

「お前なら避けると信じてたぜ」

「死ねぇ!!」

 

どのような場でも漫才を忘れない二人。そして空気砲の影響で物間の首からかけていた他騎馬のハチマキが風圧によって巻き取られ、空を舞った。

 

ここで爆豪のみみっちい反射神経が発動。もれなくすべて回収し、物間を守る空気の壁が壊されたことによってがら空きになった守りを突破し、追撃にかかる。

 

「オラぁ!!死んどけクソ共がぁぁあ!!」

 

BOOM!!!BOOOOM!BOOOOOM!!!

 

「ついでにハッピーセットだ!」

 

爆破。とにかく爆破。くまなく爆破。

そして爆破後に石楠花による無駄技術ふんだんに使ったパンチが炸裂。

 

圧縮した空気は、時には壁を砕き、時には物を切り裂く風となる。

石楠花のパンチによってかまいたちが発生。さらに石楠花無駄技術を発動。よって物間の衣服のみを切り裂くかまいたちとなる。

 

 

その場に残ったのは、ギャグ漫画のように黒焦げになった物間騎馬と、ご丁寧にパンツだけは切り刻まれなかった素っ裸の物間だけが残った。

 

 

 

 

「覚えておくがいい少年たちよ。これが……実力(ギャグ補正)というものだよ」

「いや読み方が違う!?」

 

 

こうして、波乱に満ちた騎馬戦は石楠花 鱗という一人の武人を、技術の高さを、敵に回してはいけないという暗黙の了解を世に知らしめた。

 

 

チーム爆豪、2回戦突破。

 

 

 

 

その後、なんとか勝てて地面にめり込み噴水のように泣いている緑谷を見て、衣服のみを溶かす武器を作ろうと心に決めた。

 

 

 



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人はみな秘密を持ってるのだ

お待たせしました。
いつも誤字報告ありがとうございます!非常にありがたく思います!
お気に入り登録や感想欄を見て毎度毎度ニヤニヤしておりますよ!

みんな秘密を持ってるかい?人であろうとキャラクターであろうと少なくとも1つは秘密を持ってるものだよね!
石楠花君の秘密がちょろっと出てきます。

これからも頑張りますので応援よろしくお願いします!


『1時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!オイ、イレイザーヘッド飯行こうぜ…!』

『寝る』

『ヒュー!』

 

解説席が盛り上がっていますね!俺も内心盛り上がているんだけどな!

いやー楽しかったね。目の前のおもちゃで遊ぶことに夢中で順位なんてまったく気にしてなかったけど、まさかの2位よ!2位だぜ!2位なんだよ!俺てっきり568位ぐらいかなと思ってたわ。

 

「オイ!完膚なきまでの1位になれなかったじゃねえか!」

「まあそう言いなさんな若いの。儂は楽しくワッショイ出来たから満足じゃよ」

「何処のジジイだテメエはよォ!!テメエの無駄な言動が一々時間食ってたんだよ!」

「すぐ人のせいにするその態度、将来苦労しますよ?」

「うるせェ死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

隣のポメラニアンは元気爆発してるね。今から飯でこのテンションなら、最終戦始まったらどうなんの?『ヒャッハァァァァァァァ!!!』とか『ワカチコワカチコォォォォォォ!!』とか言いながらスタジアム内走り回んのかな?それはそれで見てみたい気もするから後で頼んでみるか。

 

とりあえず今は飯だ。飯食って飯食って飯食わないと、顔が濡れて力が出なくなるからな。栄養補給と愛と勇気は大切だから……おっと?緑谷と轟が人の目をかいくぐりながらどこかに移動しているぞ?これは密会か?密会なのか?

男女の密会ではなく男男の密会なんて……はっ!俺は寛容だから幸せを祈っているぜ!

 

 

 

でもちょっと気になるから覗きに行くけどな!……飯食ってから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『お前の左側が醜い』と母は俺に煮え湯を浴びせた」

 

おっと?俺がゼリーと落雁で10秒チャージしていた間にどんな話し合いがあったら、こんなペヤングの麺を湯切りと同時に奈落にぶちまけたようなセリフが出てくんの?

 

俺の目の前で堂々と盗み聞きしている先客のポメラニアンでさえもドンヨリーヌになってるじゃないか。

 

「ざっと話したが俺がお前につっかかんのは見返す為だ。クソ親父の個性なんざなくたって……いや…使わず"一番になる"ことで奴を完全否定する。本当なら石楠花も呼ぼうと思っていたんだが…アイツの性格とオールマイトの性格は全然違うから関係ないと判断した」

 

何でだよォォォォォォ!!俺も関係あるかもしれないだろォォォォ!?

もし俺が「実はオールマイトの戦友なんだ」とかいうかも知れないだろ!?目測の推論で判断するのはちょっとどうかと思うな僕は!まあ何の関係もないんだけど!

 

「で、さっきから黙ってるポメラニアンはどうしたのよ?」(小声)

「誰がポメラニアンだクソが!」(小声)

「あっ、そういう配慮は出来んのね。気を遣っていつものクソデカボイスを自粛していると…なるほど、成長したね。母さん泣きそうだよ」(小声)

「うちのババアを詐称すんなクソボケが!気色悪い真似すんじゃねえ!!」(小声)

 

 

物陰でいつも通りのやり取りをしている中、二人の存在に気づいていない二人は話を続けている。だが本人を除き、部外者も含めた3人とも少なくとも表情には出さないだけで驚愕している。人には人の人生があるが、生まれる環境が違えば、ヒーローを志す理由も目指す先もすべてが違ってくる。人生という名の闇を垣間見た気がした。

 

それでも、それでもなお少年たちには譲れない思いがある。たとえ主人公のような背景を持っていたとしても、かける言葉が見つからずとも、同情してしまう気持ちがあったとしても、それでもヒーローにならなければいけない使命が、理由が、目標がある。

 

 

「僕は…ずうっと助けられてきた。さっきだってそうだ…僕は誰かに(たす)けられてここにいる。オールマイト…彼のようになりたい…その為には1番になるくらい強くなきゃいけない。君に比べたら些細な動機かもしれない…でも僕だって負けらんない。僕を救けてくれた人たちに応える為にも…!」

 

子供の頃から誰よりもヒーローに憧れ、一度は夢を絶たれ、1番から夢を託された。この男にも誰よりも負けたくない、負けられない気持ちがある。だからこそ相手の目を見据え宣言する。

 

「さっき受けた宣戦布告改めて僕からも…僕も君に勝つ!

 

 

少年たちの意思のぶつかり合い。互いに譲れない思いがある中、お互い万全の状態で戦い、決着をつけるためにそれぞれの岐路に立つ。そしてその場に残るのは外野の2人だけとなった。

 

 

「緑谷、強くなったよね」

「ケッ!クソナードが…」

「あんなもん聞かされたら、頑張るしかないよね。うかうかしてたら緑谷に後ろから抜かされちゃうかもよ?」

「アア!!?誰があのクソナードに負けるってェ!?向かってきたら力の差を思い知らせてギッタギタのボッコボコにしてやんよ!!」

 

この場にいた4人のヒーロー志望達のやる気は十分。それぞれの思いが交錯し衝突する中、最終戦がもうすぐ始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆豪が闘志を燃やして立ち去ってから、鱗はまだその場にいた。よく知る人物が()()()()こちらに向かってきているのが見えたから。

 

その人物は鱗を見つけると目の前に降り立った。

 

「やあ、久しぶりだね。元気にしてた?いや~疲れた疲れた!」

 

その人物は羽を伸ばし、如何にも疲れてますよ感をアピールしながらストレッチをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりですね……()()()()()()

 

その男の名はホークス。またの名を『速すぎる男』。

 

「で、なんでここまで飛んできたんですか?美人ヒーローでも襲いに来たんすか?」

「そんなことするわけないでしょ、仕事のついでに来たんだよ。それとここにいれば荒ぶるエンデヴァーさん見れそうだし」

「ワロスワロス」

「なんて?まあいいや。それと選手宣誓で暴れてたね~、思わず笑っちゃったよ。やっぱり君は凄いね、誰もが思っても実行できないことを平然とやってのける。そしてその行動、発言全てに「こいつならやってのけるだろう」という意思さえ抱かせるんだから」

「そんなに褒めても落雁しか出ませんよ?1袋要ります?」

「1個で十分」

 

お互い落雁を食べながらなんてことはない世間話をする。傍から見れば生徒とホークスが談笑するという羨ましい光景だろう。そしてどこぞのヒーローオタクが見れば発狂するほど喜ぶであろうシチュエーションだろう。

話が一段落したところ、ホークスが本題を告げる。

 

「そうだそうだ、本来の目的を忘れるところだった。鱗君個人に向けた連絡とメッセージだよ」

 

そうして放たれる言葉。それは事情を何も知らない一般人ならば何を言っているか分からないだろう。なにせあまりに普通の内容過ぎてホークスが伝える必要があるのか?と思うからだ。それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君のところの()()が、この体育祭の君の活躍を上から見てるんだって」

 

分かる人には分かる完結された言葉。それに対して鱗は…

 

 

「ふーん」

 

普通に答えた。

 

 

「あれっ?思ったより反応薄いね。もっとびっくりするかと思ったよ。現に公安はびっくりしてたし」

「いや、びっくりしたよ。わざわざお金かけて何してんの?って思ったもん」

「親戚の成長を見たかったんだって」

「そのために()()まで飛ばしたの?バカじゃねーの?」

「金と地位と権力には困らないんだって」

「答えたやつ誰だよ。全員頭がイかれてるから分かんねーよ」

 

笑いながら話すホークス。少し顔をしかめながらも返答する鱗。一通り話し終えたのか、「それじゃあ」と言い鱗から離れる。

 

「伝えることは伝えたよ、俺も見学していくから頑張ってね。それと君のお父さんによろしく言っといて。コスチュームやら色々と助けられてるからね」

「言われなくても。俺はいつも通り暴れ(ハジケ)るだけだから。それと、努力次第で人間は人間を超えられるってことを証明するだけだ」

「何気に凄いこと言うよね。まあ、俺もあの人たちも応援してるよ。じゃあね」

 

 

そう言って何処かに飛び去るホークスを見送る。

その場に残ったのは鱗唯一人。

 

「さーて、俺は俺で頑張りますか!とりあえず『衛星 撃ち落とし方』で検索するか」

 

鱗はその場を去り、グラウンドに向かう。いよいよ本選に向けての組み合わせ発表が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本選ならもしかしたら俺の大天才発明道具たちを使えるんじゃね?使えるよな?使えるはずだ!とりあえず選りすぐりたちをスタンバっておくか」

 

これより先、雄英史に残る戦いが始まろうとしていた。

 

その名を『絡繰双乱(カラクリそうらん)』。観客たちはみな口を揃えてこう言った。…規模が違う…と。

 

 

 



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石楠花とは鱗とはそれがなにか見せつけてやる

筆が進んだよ、どうもライムミントです。
お気に入り登録、誤字修正、いつもありがとうございます!
皆様のおかげで作品を書き続けられています!
これからも応援よろしくお願いします!!


昼休憩終了

 

『最終種目発表の前に予選落ちの皆に朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!本場のアメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ……ん?アリャ?』

『なーにやってんだ…?』

 

そこにはチアリーダーの格好をした真顔のA組女子の面々がいた。

 

『どーしたA組!!?』

 

昼休憩の時刻、まんまと峰田と上鳴の策略に嵌り、今に至る。喜ぶ峰田と上鳴だが、他の男子たちも見ないようにしているが、チラチラとみているものもいる。

 

「峰田さん上鳴さん!!騙しましたわね!?」

「アホだろアイツら…」

「まあ本選まで時間空くし張りつめててもシンドイしさ…いいんじゃない!!?やったろ!!」

「透ちゃん好きね」

 

落ち込む者、呆れる者、楽しむ者、それぞれ三者三様の反応を見せる中、耳郎がいち早くこの状況に乗じてはしゃぎそうなバカがいないことに気が付いた。

 

「あれ?そういえば変態バカはどこにいる?」

「え?峰田君と上鳴君ならあそこにいるよ?」

「いや違う違う。そのバカたちの親玉的存在バカの方」

「あー、そういえばどこに行ったんだろう?」

 

バカという単語で伝わるぐらいにA組にはありふれた存在がいない。各々が探したところ、麗日が迷子のバカを見つけた。

 

 

「あっ!いた!あそこ!」

 

麗日が観客席の方面に指を差す。そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「You are beautiful, How about tea after this?」

「I'm so happy I'm about to burst into tears!!Now, open your mouth, darling!」

「Thank you. If you let me eat it, it's several times more delicious than usual.」

「Oh dear!」

 

足を組みながら豪華な椅子に座り、チアガール達を周りに侍らしながらフルーツを食べさせてもらい、口説いているバカがいた。

 

 

「「「いや何やってんのアイツ!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや~、本場のチアガールは違うね。なんたって本場だもん。今なら別に全員分の実りに実った夢の果実を揉みしだいても許されるんじゃ……あっ、下から絶対零度の視線を兼ね備えた女鬼(めおに)が睨んできますのでやめます、はい。

 

「石楠花ェェェェェ!!何うらやまけしからんことしてるんだァァァァァ!?」

「裏切りやがって貴様ァァァァァァァァ!!?」

 

何やら下で悲しき負け〇貞たちが叫んでいますねぇ、あぁ愉悦愉悦。とりあえず肩を抱き寄せますかねぇ。ちょいと失礼しますよ?

 

「「ファアァァァァァァァァァァ!?」」

 

あっ、バカたちが真っ白に燃え尽きちまったよ。鱗さん大勝利!

 

『おい、そこのバカ。早く下に降りてこい』

 

おっと?相澤先生も実は羨ましいという感情をお持ちで『10秒以内に降りないと除籍な?』……おりまぁぁす!!

 

クソっ!職権を濫用してまで俺の邪魔をするというのか!?

ふっ、まぁいいさ。何せまだうちのクラスが誇る6人の花がチアガールのコスプレをしているじゃないか!

 

初めは気でも違えたのかと思ったけど、まさか相澤先生の策略か?俺がチアガールと戯れることを予め予測して、スムーズに俺を指定の場所に向かわせるように花の女子高生にコスプレを強要したのか…?それなら辻褄が合う。いや、そうとしか考えられないな。

 

まさかそこまで欲求が高まっていたなんて…!気づいてあげられなくてごめんよ、先生。だが俺は寛容だぜ!先生がどんな趣味を持っていようと俺は温かい目で見守るぜ!

 

『なぁイレイザー…石楠花が親が子を見守るような目でこっち見てるぜ…あっ、親指立てて応援してるぜ的な顔してるぞ…』

『アイツもう不戦敗でいいだろ』

 

何でだよぉぉぉ!?俺の応援が伝わってないというのか!?こうなったら俺のとっておきの応援歌を熱唱して………アレ?気づいたら網で捕縛されてるんだけど?誰か地引網漁でもしてんの?こんな陸地で漁をしてもシャコしか捕まえられてないけど?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鱗さん…?何してらっしゃいましたの…?」

「…ッ!?」

 

 

バカな!?なんだこの濃密な殺気は…!?

振り返っては駄目だ…!今振り返れば瞬く間に命を刈り取られる…!今俺の後ろにいるのは形を持った爆弾だ…爆弾は少しの刺激でも爆発してしまう恐れがあるからゆっくり慎重にだ…!慎重に少しずつ後ろを振り向くんだ俺!大丈夫、何も怖くない、後ろにキラークイーンなんていない…そう、後ろに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キラークイーン・レクイエムが6体だとォォォォォォォォ!?

 

 

レクイエムは駄目だ!?レクイエムは永遠に爆発させられてしまう!早急にこの場から退散して……バカな!?網がほどけない!?強化アラミド繊維だと!?破れないし動くたびに段々と締め付けてきやがる!

 

 

 

「さて……覚悟はよろしいですか?」

「まっ…待て!早まるな!この世界は話し合いで何とかなるって親戚の伯父さんの友達の妹の婚約者の親友のトムが言ってた!」

 

やっ…やめろ!?やめてくれ!?どうか創造とイヤホンジャックと透明化と酸と蛙とゼログラビティだけは…!?

 

 

 

 

……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで鉄哲と塩崎が繰り上がって16名!!組はこうなりました!」

 

んおっ…?寝てた。確かさっきまでキラークイーンに襲われてそれから……っていつの間にか最終戦の組が発表されてるやないかーい!

 

「あっ!石楠花君目を覚ましたんだね!」

「おは…って擬人化したモズクかよ…何でもかんでも擬人化すりゃいいってもんじゃねえぜ?というわけでこれはまだ夢だな。おやすみ」

「違うよ!?僕緑谷だよ!?」

「何だよ緑谷かよ。大人気ゆるキャラのモズ・クーガに似すぎなんだよ」

「モズ・クーガって誰!?聞いたことないよ!?」

 

相変わらず元気だね。だが少し静かにしてくれ。騒いでいるとまた恐ろしい雌のハイエナたちに狙われてしまう。

 

さて、情報を整理しよう。今まで気絶していたけど、ミッドナイトが話していたであろう内容は無意識に聞き取って頭の中にインプットしているから大体今からするであろう最終戦の内容は理解しているのだよ。兎に角俺はサッと対戦相手を確認して、早急にこの場を離れよう。ここにいればまた命の危険を感じる。

えーと?俺の相手は「フフフっ、石楠花ってあなたですか!?」……ん?

 

 

「如何にも。吾輩こそが超越至高の存在である石楠花 鱗様じゃよ」

「やっぱりそうで…あっ!あなたは何時ぞやの私の片方の乳房をガン見していた方ではありませんか!」

「そういう君は全女性の鏡で、俺に癒しを与えてくれた 方乳(かたちち) ポロリちゃんじゃないか。その節はどうも。おかげで捗りました」

「いえいえ!こちらこそどうも!」

「何この会話!?僕がおかしいの!?」

 

どうしたんだよ緑谷。こんなの極普通の会話だろ。

 

「私は発目 明です!それでですね、ここまで来た以上対等だと思うし対等に戦いたいのです!つきましてですね!私の開発したベイビー達を使っていただきたいのですよ!」

 

ほう?ふんふん、なるほど。そういうことね、完全に理解したわ。理解しすぎたのかもしれない。

前に一度見た時にビビっと反応するものがあったからもしかしてそうかな~と思っていたけど、今完全に理解したわ。

 

 

「成る程…話は分かった。さては君もこちら側だな?」

「…っ!?もしやあなたも?」

「ああ、こんな機会を逃すのは愚の骨頂よ」

「成る程、あなたもやりますね?」

「いやいや、君ほどじゃないさ」

「「ハハハハハハっ!!」」

 

鱗と発目はその場で深く握手を交わす。その目はお互いに同志を見つめたような、しかし外野から見ればお互いに深淵をのぞき込んでいるかのように深く、底が見えなかった。この場で言えることは一つだけ、とんでもない化学反応が起こってしまっとということだけだ。

 

「そうと決まれば早速打ち合わせだ。その前に俺は許可を取る必要がある」

「分かりました!私もお手伝いしましょう!そして私のどっかわいいベイビー達を紹介します!」

「助かる。それならば俺も丹精込めて作り上げたギミックや絡繰達をお見せしよう」

「「フフフフフ……!!」」

 

そのまま二人そろって通路という闇の中に消えていく。その場に残されたのは話についてゆけず、唯々とんでもないことが起こったと理解した緑谷だけだった。

 

「これは…とんでもないことになったぞ!?」

 

 

混沌を造りし者達の邂逅。混沌と混沌が混沌融合(カオスフュージョン)して生み出されるものなど、より純度の高い混沌(カオス)のみ。

 

その後、とにかく今は目先の試合に集中するために頭を切り替え、緑谷はその場から移動し、心操に話しかけられ、尾白に助けられたそうな。

 

 

 

 

 

これより始まるガチンコバトル。勝敗がどうなるか、何が起こるのか、それは神のみぞ知る。

 

 

 

 



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一回戦と王の登場

お久しぶりです!
合間を縫って、何とか投稿まで漕ぎつけられました…!

これからも頑張って投稿しますので応援よろしくお願いします。


P.S. プログラミングって難しいね!
誰か分かりやすく教えてくれェェェェェェェ!!?


『ヘイガイズアァユゥレディ!?色々やってきましたが結局これだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな!!心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!』

 

そして始まるトーナメント。血沸き、肉躍る対戦が始まろうとしていた。

 

『一回戦!!成績のわりになんだその顔!ヒーロー科、緑谷出久!!対 ごめんまだ目立つ活躍なし!普通科、心操人使!!

 

プレゼント・マイクの紹介と共に割れんばかりの歓声がスタジアム内に響く。その歓声を直に聞き、選手たちは一層気が引き締まる思いがした。だが、中には緊張ではなくやる気が沸き上がる猛者もいれば、ウキウキに仕込みを仕上げるバカもいる。

そして、A組の観賞席にはそんなバカが一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うんうん、盛り上がっているじゃないか。ワロスワロス」

「あっ!何処に行ってたんだよ石楠花!もう緑谷が始まっちまうぞ!」

「気にするな切島よ。ちょっとした最終調整を終えたところだ」

「気にするわ!?一体何してたんだよ!?」

「なぁ切島、芸術とは爆発だと思わないか?」

「本当に何してたんだよ!?そんな物騒なことやめろよ!?」

「嘘に決まってんだろ。冗談は爆豪だけにしとけ」

「何が冗談だクソが!!お前が爆発しろや!!」

「落ち着け爆豪!石楠花の掌の上だぞ!?」

 

 

全く…冗談が通じないとは、なんと嘆かわしいことか。

そもそも爆発なんてバクゴサウルスで見飽きてるだろ。もし俺が爆発させるなら、もっと理知的に爆発させるわ。

 

まっ、冗談はゴミ箱に捨てといて……ていうか緑谷がいつの間にか頑張って、いつの間にか心操の個性の餌食になってるじゃあないの。早くない?

 

「おい!?緑谷が振り返って歩き始めたぞ!?このままじゃ場外になっちまうじゃねえか!アイツは一体何してんだよ!?」

「ああ緑谷!?忠告したってのに!?」

 

そう言えば誰一人として心操の個性を知らなかったっけ?いや、尾白は実際に体験して知ってんのか。

だが緑谷は大丈夫だろう。なぜなら俺のサイドエフェクトがそう言ってる。

 

「落ち着けお前ら!!心操の個性は強力だが対処方法はある!!」

「本当か石楠花!?どうすれば緑谷は解放されるんだ!?」

「まかせんしゃい!この鱗様が教えてしんぜよう!!その対処方法とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心のメスガキ度の高さだ

「「「いや何言ってんの!?」」」

 

 

 

おいおい、信じてねえな?正しいことを言ったというのに。

だからその汚物を見るような目はやめてくれませんか?

 

「で、何か弁明の余地はあるか汚物?」

「お口が悪いぜ耳郎ポン。正確には心の中にいるメスガキのレベルが高ければ高いほど有効だ」

「よし、死ね」

「話し合いをしよう!?何のために口がついてると思ってんだ!?」

 

クソっ!?いつの間に女子たちは俺の命を的確に狙うゴルゴになっちまったんだ!?

 

「まあ聞け。奴の『洗脳』を搔い潜るには強靭な心を持つ必要がある。そこでメスガキだ。だが『ザァ~コ♡』だけしか言わないメスガキ力では勝てない。奴の洗脳を乗り越えるには、『お兄さんの社会的地位ってミジンコ以下なんだ~♡』ぐらいのメスガキ力が必要だな。中々厳しい戦いになりそうだ」

「いや何その持論!?言いすぎだろ!?」

 

 

 

だがその瞬間響き渡る轟音と強風、スタジアム内に衝撃が走った。

見るとそこには緑谷が。なんと場外ラインギリギリの所で洗脳を自力で解いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、A組の生徒の脳内に溢れ出した存在しない記憶。

 

緑谷がメスガキに罵られ、心を抉られながらも喜んでいた光景が。

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ…、どうやら心の奥底に潜むメスガキを掌握したようだな。天晴れだ、緑谷出久。もうお前に教えることは何も無い。お前が信じるメスガキを信じろ」

「いや、何カッコつけてんだよ。お前のせいで緑谷の背後にメスガキがちらつくようになったじゃないか」

「まさかもうスタンドまで使役するとは…やるな緑谷」

「おい話聞けバカ。こっち見ろバカ」

 

メスガキを掌握した緑谷ならば負けることはないだろう。

おっ、ナイス背負い投げ。IKKOも大喜びだ。

 

 

 

『二回戦進出!!緑谷出久ー-!!』

 

緑谷勝ったじゃん。おめおめ。

中々いい勝負だったけど、メスガキを掌握した緑谷には勝てなかったか。もう少し心操が体を鍛えてたら結果は変わったかもしれないけど終わったことをとやかく言ってもしゃーない。結局は負けから何を得たのかと言うこった。

 

いつの日か一緒に戦える日が来るといいね。

 

「爆豪も背負い投げられてたよな」

「黙れアホ面…!」

「背負い投げ~!!」

「黙れクソシャコ…!」

 

考え込んじゃってまぁ。毎度毎度突っかかって飽きないものかね?

まあ爆豪には爆豪にしかわからない爆豪があるはずだから、スピードシャコンはクールに去るとしましょう。

 

 

緑谷の退場を見届けると同時に、鱗は何処かに移動しようとしている。すると八百万が気が付き、話しかけてきた。

 

 

「あら?鱗さん、何処かに行かれますの?次の試合が始まってしまいますが?」

「うん?俺の出番が2試合後にあるから、その最終調整。楽しみに待っててくれて構わないぜ?」

「楽しみにしていますが、何をするつもりですの?」

「………」

「本当に何をしでかす予定ですの!?無言で笑みを浮かべないでくださいませ!?」

 

笑みを浮かべたまま、鱗は走り去っていく。その場に残されたのは、何をしでかすか分からないという一抹の不安のみ。

 

「大丈夫かよアイツ…」

「選手宣誓でも良い意味でやらかしてるからな…」

「次は悪いことでやらかしそうだよね☆」

「不安を煽らないで!?」

 

皆が皆、口々に不安を語っているところに保健室で回復した緑谷が戻ってくる。

 

「みんな、何話してるの?」

「「「おかえり、メスガキ使い」」」

「メスガキ使いって何!?」

 

全員から生温かい目で見られるオールマイトの後継者 緑谷出久。

 

今日もA組は平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、石楠花 鱗サイド。

 

「バッキバキに~折れ~♪何を~?♪心を~だ~よ~♪」

 

さ~て、再々再調整を終えて最高クラスの一品を作っちまたぜ。これで地球温暖化問題も解決だ!

 

俺の予想だと試合はすぐに終わると思うんだ。

轟と飯田の戦いは轟が氷結ブッパするだろう。一回はレシプロ何とかで氷を壊して切り抜けられるかもしれないけど、何回もブッパされたらなすすべなくなるから轟の勝ちで終えるだろう。

 

上鳴とトゲトゲちゃんの戦いは、上鳴が秒で捕まって瞬殺されるだろう。これは予想ではない、確定した未来だ。花京院の魂を賭けてもいい。

 

言ってるそばからモニターにアホ面晒して棘でグルグル巻きにされてるバカが映ってるではないか。これで私の仮説が正しいことが立証されたのだよ。実に面白い。

 

と、言うことは次が俺様の出番というわけか。

ふむふむ、なるほど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Show Timeだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てなわけでもう一度戻ってきました!A組と見守る閲覧席へ!!」

「颯爽と去っていったと思ったら、もう戻ってきた!?」

 

驚いた表情を浮かべるA組の生徒達。

それもその筈、試合の準備のために控室へ向かったはずの男が、もうすぐ試合が始まるというのにスタンバイもせずのこのこと戻ってきたのだ。

 

「石楠花君次試合だよ!?ここに居ると間に合わないよ!?」

「心配するなメスガキマスター、お前だけのサーヴァントはきっと見つかるさ」

「何の話!?そしてそのさっきから皆が言うメスガキって何!?」

 

次が試合だというのに元気よく緑谷と漫才を繰り広げる鱗。本当にここに居ていいのか、何か問題を引き起こすのではないかという不安からA組の面々が鱗に話しかける。

 

「本当に大丈夫なの?石楠花ちゃん」

「大丈夫大丈夫!!あとは開始を待つだけ。呼ばれたらここから向かうさ」

「ここから向かうって……フィールドまで離れてる上に、下には観客の波だぞ?まさか観客を押し退けて突き進む気か?」

「まぁ見てなって。それと一つ覚えておくといい」

「何を?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「道が無いのなら、造ればいいじゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ!いよいよ第4戦目だ!!次の対戦カードは………なぁイレイザー、嫌な予感しかしねぇんだが………』

『奇遇だな、俺もだ。よりにもよって今大会一番の問題児同士が当たるとはな。単品でもパワーローダーの胃に穴を開け、意味不明なことをしでかすって言うのに、なんでセットなんだよ…』

『俺も今すぐ組み合わせを変更したいが、ここまで来ちゃ腹をくくるしかねえ!!プロとして最後までやり切ってやるぜ!!さあ、選手の紹介だ!!』

 

その瞬間、けたたましい轟音を轟かせながら、何かが会場の上を飛んでいた。

そう、サポート科の狂人 発目 明である。発目が自ら開発したエンジン付き空気噴出バックパックを使い、空を高速で飛んでいたのだ。そのまま空中で一回転し、あろうことか空中でエンジンを停止させ、スタジアムのリングに向けて自由落下しながら落ちてくる。

 

 

『危ない!?』

 

 

その言葉を誰が発したかはわからない。しかし彼女はあざ笑うかのように妖艶な笑みを浮かべ、第二の発明を起動した。

すると靴の裏から勢いよくエアバッグのような物体が噴出し、鮮やかに地面へと着地。しかし勢いがつきすぎたのか、そのまま二転三転とし、リング外へ。だが、空を飛ぶ技術と安全性を考慮した落下防止措置という2点においてアピールを果たした。

 

『なぁイレイザー…俺の知ってる登場方法と違うんだが…』

『さっさと紹介を済ませろマイク。俺はもう諦めた。発目でアレだ。次のバカが何しでかすかと考えると胃が痛くなる』

『現実を見ろよイレイザー!?』

 

発目の大胆登場と解説席での漫才を終え、観念したプレゼント・マイクが次へと進める為に進行を進める。

 

『雄英高校の奇人その1!!入学してから現在までに数々のサポートアイテムを開発しては爆発し、工房とパワーローダーの胃に穴を開けたクレイジーガール!!余興の科学力よろしく、一体どんな戦いを見せてくれるのか不安でしょーがねえゼ!!発明の母 発目 明!!』

 

 

大盛り上がりのスタジアム。未だかつて空から入場を果たした選手がいただろうか?観客たちは期待に胸が膨らむ。

そして次に入場してくる選手が入場から選手宣誓、競技や言動で数々のインパクトを残し、人々の心に刻まれた今大会一番と言ってもいい選手が登場するのだ。観客のボルテージは最大値に達していた。その観客の気持ちに呼応するかのように、覚悟を決めたプレゼント・マイクが次の選手を呼び掛ける。

 

『OK!待たせすぎると何しでかすか分かったもんじゃねえからさっさと呼ぶぜ!!全員コイツを待ってたんだろ!!?対戦相手はこの男だ!!』

 

 

そのセリフと共に入場口へと皆が目を向けるが、そこには誰もいない。それも当然、鱗はまだ観客席にいるのだから。

 

 

「さて、そろそろ移動しますかね」

 

そう言うと鱗はその場で立ち上がり、二度手を叩く。

 

 

 

「「「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」

『なっ…何だぁ!?一部の観客たちが一斉に移動し始めたぞ!?』

 

 

 

するとどうだ。四方八方に散らばっていた一部の観客たちが一斉にある場所へと移動を始めた。

そう、A組の観客席の前へと。いや、鱗の眼下までへと。

 

そのまま鱗の前で4列縦隊で一直線に観客席場を並び、全員が天に向けて両手を上げる。その後、鱗の前に並ぶ一人の男が円形の筒のような何かを、観客の上に掲げた手の上を転がし、伸ばしてゆく。完全に最前列まで伸ばし終え、全ての工程が完了した時、全容が明らかとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「じっ…人力のレッドカーペットォォ!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

それは赤い道。選ばれし者のみが通ることが許される英雄の道。

それが今、鱗の目の前に人の手によって築かれた。

 

鱗はゆるりとレッドカーペットの上へと降り立ち、一歩 また一歩と歩みを進める。その姿はまさしく王と呼べるような、堂々とした歩みであった。

 

見ている者たちは息を吞む。即興で始まった一連の出来事、誰もが実現したことが、見たことがない連携し尽くされたパフォーマンス。だがその動作のどれをとっても一般人では不可能なほど完成されている。

 

 

人を上手に遣うカリスマ性。

先を見据えた鋭い眼光。

今までのヤバい言動からのギャップ。

武を体現したかのような佇まい。

一つ一つの所作の美しさ。

見る者を引き込む、迷いなき覇道への歩み。

 

 

誰しもが文句のつけようのない登場に見惚れた。そこに性別や身分、種族でさえも関係ない。

なぜなら王の素質とはそういうものだから。

 

 

その中でも流石はプロというべきか、プレゼント・マイクは誰よりも早く復活し、人物紹介を始める。

 

 

 

 

 

『びっ…びっくりしちまったが再開だ!!雄英の歴史上最大の問題児!だが、その歩みには人を引き付ける何かが確かにある!!素手で武装勢力を鎮圧!敵を落雁で鎮圧!数多の問題児達をハッピーセットで鎮圧!幼少の頃から現在まであらゆる偉業を、あらゆる功績をその身一つで体現してきた超越者!!今宵はどんな偉業を成し遂げるのか今から楽しみだぜ!! 唯我独尊!石楠花 鱗!!!』

 

 

「「「うおおォォォォォォォォォォォォォ!!」」」

 

 

 

鱗は観客席ギリギリでレッドカーペットの上から飛び上がり、華麗にリング上に着地する。

その場には今から戦う選手が二人。

 

観客のボルテージが最高潮の中、パフォーマンスの優れた二人が雌雄を決する。

 

 

雄英史上最高潮の戦いが今から始まろうとしていた。

 

 




某皇帝様の入場でした(笑)
鱗と言えば唯我独尊なので、ぴったりかと!

次回予告 会場死す!デュエルスタンバイ!!


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天才と狂人は紙一重

お久しぶりです!
ようやく更新することが出来ました……
前回から5カ月空いてしまい、さらになんとその空き期間中に私の活動が1周年を迎えました!

1年……早いようで短かったです。

感想や評価もしていただき感謝の気持ちでいっぱいです!
これからも頑張って更新しますので、応援よろしくお願いします!



我ながら素晴らしい登場が出来たな。

会場が沸き上がり、自分が目立ち、相澤先生の胃が死ぬ。なんと素晴らしい三拍子が揃っちまったんだ。これを実行できた自分が恐ろしい。

 

鱗がしみじみと先程の出来事を振り返っている最中、プレゼントマイクが入場方法の謎を問い正そうとしていた。

 

『Hey石楠花!前例の無いテンション上がる登場だったが……そのカーペットを持ってる人達は誰よ!?』

「誰って……山中さんですけど?」

『誰が山中さん!?そんな100人以上いる人全員が山中さんな訳ねーだろ!?そして山中さんって誰よ!?』

「信じる者の心の中にのみ、山中さんはいるんだよ」

『山中さん一体何なんだよ!?そして結局その人達誰よ!?』

「石楠花家に代々仕える石楠花ブラザーズです」

『お前ん家一体何なんだよ!?そして結局その人達誰よ!?』

 

おいおい、どれだけ俺に興味津々なんだチキンラーメンこのやろー。今はそんなことどうだっていいんだ、これ以上目の前の同士を待たせる訳にはいかんからな。

 

「すまない待たせたな、同志発目よ。どうもチキンラーメンが気になる病を発病しちまってな。」

『気になる病って何!?それにチキンラーメンって俺のことか石楠花リスナー!?』

「いえいえ!チキンラーメンが気になる病を発病されたのでは仕方ありません!」

『やっぱりチキンラーメンって俺のことだよなリスナー!?そして何気に口が悪くない!?』

『黙ってろチキンラーメン』

『イレイザーお前まで!?』

 

流石我らの相澤先生!絶対に乗ってくれると信じてたぜ!

 

『ヒデェリスナー達だぜ!?もういいよこのままスタートだ!!どうした!?もう賽は投げられたぜ!!』

「すぐ先に進めようとするその態度、子供達が幻滅しますよ?」

『キイィィィィィィィィィィィィ!?』

 

鱗に煽られ奇声を上げるマイク。両者の歪んだ信頼関係による問答が会場をほっこりさせる中、開始の合図が出たことを確認した両者は行動を起こすために足を一歩先に進ませた。

 

「試合開始されたことだし、そろそろやっていきますか」

「そうですね!ではまず私のドッ可愛いベイビーを見てください!」

 

発目は懐から直径5センチほどの黒くて小さな塊を取り出す。

 

「おいおい…、しょっぱなから技術力を見せつけてくれるじゃねぇか。携帯型GANTZだろ?」

「フフフ、これは携帯型発信機です!転送はされませんが、私の持っているデバイスが電波を受信して位置を表示してくれます!さらにこちらからコマンドを入力することでアラーム機能やバイブレーション機能、発熱機能や冷汗機能を発動させることが出来ます!」

「なるほど、電動GANTZね。理解した」

 

観客たち、その中でもアイテム開発に携わるものたちは感心したように発目を見ている。齢15歳でアイデアを構成し実現、尚且つ小型化に成功する技術力の高さに息巻いていた。

 

アイテム製作会社のスカウトマンみたいな人も興味津々で見ているし、何ならウチの会社のスカウトマンもいる。このまま発目がウチの会社に興味を持ち、取引を承諾した場合は俺の部下になるのかな?よろしくよろしく。

 

「これが私の発明です!次は石楠花さんの番ですよ!」

「ならば次は俺の番だな。そして刮目しな!俺が発明した武器を!」

 

鱗は自分のポケットから長さ1メートル程の棒切れを取り出した。

 

『いやちょっと待て!?何処から取り出した!?』

 

いち早くプレゼントマイクが反応する。

うるせぇチキンラーメンだな。ポケットとは無限の可能性を秘めているのだ。ポケットを叩けばビスケットは増えるし、近未来には4次元に繋がる代物なんだよ。今更深さ10センチ程度のポケットから1メートルの物体が出てきたところで驚いてちゃこの先やっていけねぇぜ?

 

「やれやれ、これだからポケットの素晴らしさを理解していないお子ちゃまは……」

『えっ!?俺が悪いのかリスナー!?』

「さぁ!このなんの変哲もない木刀をご覧いただきましょう!」

『さらっと話を戻しやがった!?』

 

ラーメンにかける時間なんて3分で十分だ。それ以上は麺が伸びちまうからな。

 

「こいつは武器の常識を変える逸品と言っても過言ではない!ただの木刀と馬鹿にしてる奴は痛い目見るぜ?」

「成る程!そして一体どんな機能が!?」

「ああ!今から見せてやる!まずは切先を相手に向ける!そして柄の頭を押すと〜?」

「押すとどうなるのですか!?」

 

観客たちも固唾を飲んで見守る。自分たちはこれからどんな素晴らしい機能を目の当たりにするのかと。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「切先から醤油が出る」

『『『いらねぇ!?』』』

 

 

しょうもない機能だった。

 

「素晴らしいですね!その細い刀身の中に液体を入れ、尚且つ勢いよく多量の醤油を発射させる技術!正直脱帽ものです!」

「わかってくれるか同志よ!」

「「「いやその機能いらないだろ!?」」」

 

俺の発明にケチをつけるたぁどういった了見だ!アァン!?

しかしこの素晴らしさが分からない有象無象しか会場にいないとは嘆かわしいことだ。同志は別として。

 

「会場のみんなが危惧していることも分かる。だが安心しろ。これは減塩対策した薄口醤油だ。健康的だぜ」

「「「いやいらねぇよ!!?」」」

「実は刀身と柄は取り外し可能で、今お電話されたお客様には詰め替え用の柄が5セット付いてくるよ」

「「「いやいらねぇよ!!?」」」

「更になんと今なら奮発して木刀をもう一本プレゼントしちゃう」

「「「いやいらねぇよ!!?」」」

「そしてこの醤油は私の手作りです」

「「「いや知らねぇよ!!?」」」

 

木刀2本と詰め替え柄カートリッジが5セット、そしてこの鱗様の手作り醤油がつくお得なバリュエーションなのに何が不満なんだコノヤロー。

 

さてはまだ実用性に気がついてないな?

ならば実戦で使えることを証明しようじゃないか。

 

「よし同志よ。そろそろ動いて有用性を証明じゃないか」

「そうですね!まだまだ紹介しますよ!」

「その意気や良し!いくぜ!秘技・減塩醤油目潰し!」

「なんの!オートパーテーション!」

 

発目の背中に背負われた物体から半透明な板が飛び出し、発目の顔を醤油から守った。

 

「フフフッ!これはオートパーテーションといって、私の耳に取り付けたセンサーが飛来物を察知し、自動的にアームに取り付けたパーテーションが飛沫物から顔を守る仕組みです!しかし感染症対策にはまだ弱いので改良の余地アリです!」

「普通に凄いの出てきた」

 

普通に便利な道具が出てきたんだけど。ほら、コスチューム会社の人が興味津々じゃん。ならば俺も負けてられないな!

 

「ならば俺の装備を披露しようじゃないか!まずは自分の腕を取り外すじゃろ?それをこうしてこうじゃ!」

「「「はぁ!?」」」

 

鱗は自分の腕を肘辺りから切り離して投げつける。その行動にA組を含む観客全員が驚いた。自分の腕を切り離して投げる行動は外から見れば狂人の行動としか言いようがない。

 

しかし投げた腕は発目とはかけ離れた場所に飛んでいき、地面に突き刺さるように着弾する。

 

「覚えておきな。これが本当のロケットパンチだ。そして俺のロケットパンチは他の追随を許さない」

 

 

 

 

その言葉と同時に鱗の投げた腕からカチッという電子音が鳴り、そして………爆発した。

 

 

観客たちが唖然とする中この雰囲気を作り出した元凶はゆっくりと言葉を口にした。

 

 

 

「前回の戦いで腕を千切られてから考えたんだ。引きちぎられた腕が地面に落ちたままなんてもったいないな…と。ならばどうするか………そうだ、爆発しようってね!

 

 

天才と狂人は紙一重と言うが、それすらも飛び越えたハジケリストには常識という概念は存在しない。常識を遥かに凌駕した行動を起こすことに遠慮はない。人に絶妙に迷惑をかけるぐらいに突き進んで行く。そしてそれは目の前の狂人予備軍にも当てはまる。

 

「それは良い発想ですね!使えなくなったものを武器に変換する考え、参考にさせていただきます!しかし攻撃を受けた際に勝手に爆発しないのですか?」

「そのあたりは大丈夫だよお嬢ちゃん。外部からの衝撃では爆発しない様に、そして自切した時のみ爆発するように設計されてるのさ!流石は俺様の科学力!」

「流石ですね!」

「だが自分で腕を切り離して投げるから、当然俺の腕は無くなる。そして腕を生やすためには栄養が必要だ。会場にいる人たちや、テレビの前の皆さんも経験したことがあるだろう、『あっ!腕を生やしたいけど栄養が足りない!』…と。」

 

 

この試合を見ている人たちは思った。『そんな経験あってたまるか!』…と。

 

 

「しか〜し!俺はそんな全人類の夢を遂に叶えた!それがこれだ!」

 

鱗はズボンのポケットの中から細長く小さな筒状の棒を取り出し、自身の腕の切断面に突き刺した。

 

すると次の瞬間、突き刺した切断面から失ったはずの腕が生えてきたではないか。そしてその腕は切り離す以前の腕よりも分厚く、強固で、あらゆるモノを粉砕する気迫を纏った腕に進化していた。

 

「失った腕に新たな腕を。体の栄養を使うことなく新たな腕を与える俺の専用武器。その名も………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貧栄養時用圧縮再生芽 カフカス・スヴィエート

 

 

 

 

 

 

 

 

観客たちは空いた口が塞がらなかった。

前代未聞の入場を果たし、自作した醬油と木刀を改造したかと思いきや自分の腕を切り離してぶん投げる。そしてその腕が爆発するおまけつき。自分の腕を爆弾に改造する頭のイカれ具合、瞬時に腕を生やすための謎の武器、それらを実現するだけの技術力の高さ。

 

観客たちの目にはそれらが異質に映る。

世間体に言えば、石楠花 鱗という人物は完全に狂人の部類であろう。

 

しかし人々はそんな狂人(ハジケリスト)の背に言いようのない何かを感じてしまう。こいつならオールマイトでも成し得なかった『ナニカ』をやってのけるのではないか、観客席越しに見る小さくて大きい背中に期待を見出してしまう。

 

 

 

 

それは愛か信仰か、憧れか羨望か、もしくはそれらの感情を超越した何かか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場の何処かで見学していたホークスは口角を上げた。

 

「相変わらず人間を引きつける力は正直脱帽ものだね。それを無意識のうちに行ってるってのがもっと凄いけど」

 

ホークスは意味深に笑い、同時に一筋の冷汗が頬を伝う。鱗が放つ雰囲気はかつてホークスが一度だけ会ったことがある『とある一族』に類似していた。

 

「流石だね……、真正面から彼と戦って勝つことが出来るプロヒーローが果たして何人いるかどうか……。『ヒーローが暇を持て余す社会』、それを実現するためには彼らの力が必要だな」

 

そう言って飛び去って行くホークス。その目には何が映ったのか、それは本人にしかわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わってスタジアム内。

新たな腕を生やした鱗と発目が向かい合っている。

 

「よし。新たな腕も生やしたことだし、紹介したい絡繰たちも少なくなってきたし、そろそろ決着を付けるとしようか!」

「そうですね!では最後に()()()()()を紹介するとしましょう!」

「奇遇だな。俺も()()()()()を使おうと思うんだ。どんな結果になっても恨みっこなしだぜ?」

「望むところです!」

 

少年少女は不敵な笑みを浮かべる。その笑みはまるでこれから先の展開を暗示しているかのように。

観客たちは固唾をのんで見守る。

プレゼント・マイクはすでに嫌な予感を覚えた。

イレイザーヘッドはすでに胃が痛かった。

 

 

 

これから先の未来は誰も分からない。

 

しかし分かることが2つあるとすれば、会場は破壊されるという事実と、イレイザーヘッドの胃に穴が開くという事実のみだ。

 

 

 

 



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会場?あぁ、いい奴だったよ…

いつも応援ありがとうございます!

評価・感想・誤字報告ありがとうございます!

皆様の応援を糧に早く投稿できるように頑張ります!


鱗と発目が『とっておき』を使うと公言してから数分、事態は混沌を極めていた。

 

「5メガネ!!!」

「なんの!わりばしです!!」

「なっ…フェイントだと!!? じゃあこの明太子は使えない!!!」

「そしてこのウーロン茶で私のコンボは完成します!!」

「しまった!暗黒コンボか!!! ならば仕方ない! ここで雑巾を発動だぁぁぁぁ!!!!」

「嘘でしょ!!? 2枚もですと!!? あなた正気ですか!!? くっ!!」

「アイルトンセーナー!!!」

 

観客たちは今眼前で行われている勝負についていけなかった。いや、理解が出来なかった。

 

IQが20以上違うと会話が噛み合わないという言葉が存在するが、まるで強制的にIQを底上げされたかのような、専門的な知識が飛び交う学会に素人が放り込まれたかのような錯覚に陥った。

 

簡潔に述べるとすると、脳が理解することを拒んだのだ。

 

観客たちの目には、より高次元の高みへと至った至高なる存在の様に映っていることだろう。

 

 

「石楠花が雑巾を使っていなかったらオレ達も死んでいた…」

「そーなの!!?」

 

観客の中には理解することができる者もいた。

 

 

 

 

 

 

「流石は石楠花さん…!まさかここまでとは…!」

「俺もまさかここまでついてこられるとは思ってもいなかったよ。まだまだ俺自身も修行が足りねぇな」

 

まさかここまで出来る側の人間だったとはな。久しぶりに熱くなってつい本気を出しそうになったが元気そうで良かったぜ。

 

『イレイザー…、アイツら一体何やってんだ…?』

『知るか。常人が理解できないことを俺達が理解できる訳ないだろ』

 

おいおい、それだと俺とポロリちゃんが常人じゃないように聞こえるぜ?

 

理解出来ている人間もいたから俺達は常人。OK?

ここから見える上段5列目の左から4番目に座っている普通科のオレンジ色で太陽を擬人化した様な生徒も理解していたっぽいから俺達は普通さ。

 

「私は今ので体力的にそろそろ厳しくなってきましたので、とっておきを紹介して終わろうと思います!」

「ならば拙者もとっておきをお披露目して終幕とさせていただく。いざ尋常に勝負でござる!」

『なぁイレイザー? 石楠花の一人称と語尾がコロコロ変わるのは何か理由でもあんのか?』

「理由はチキンラーメンで候!」

『リスナーはこっちの会話に入ってこなくていいからな!!?しかも理由にもなってねぇし!?』

 

 

何だよ、折角最終お披露目に向けてテンションが上がる話し方に変えたってのに疑問を持たれちまったぜ。

 

まぁこんな茶番は置いといて、最終絡繰の初お披露目会だ!

あとはボタンをポチッとするだけだが、同志発目がどんなモノを作ってくるかだな。構造や造形、形の端々にもどんな技術が使われているかと観察して想像し、自分のインスピレーションを奮い立たせる。今後のヒントとなりうるかもしれないからな。

 

日常のちょっとした一コマにもヒントは点在しているから、同じ技術者として発明を近くで見れるチャンスなんて早々あることじゃない。現に彼女の発明を見て新たな設計図を頭の中で組み立てることも出来た。だからこそ、ようチェックや!!

 

「ではお見せしましょう!私の発明はコレです!」

 

 

発目が懐から取り出したリモコンを操作する。

すると会場外から正方形の機械のような物体が発目に向けて飛来してくる。

 

飛来した機械が発目の背に背負われた機械とドッキングし、起動音を鳴らしながら金属製のアームが4本飛び出してきた。その4本のアームは手の様な形をしている物もあれば、先端が鋭利に尖っている物もある。普通のアームと違い、関節部分が多く取り入れられているためしなやかな動きを可能としている点が印象深い。

 

「これこそが腕を増やすことによって作業効率をグッと向上するのではないかという私の願いから生み出された『ベイビーナンバー2 自立可動式アラクネアーム』です!ちなみにナンバー1は爆発四散しましたので2代目です!」

「スパイダーマンの背中に付いてたやつみたいなの出て来た」

 

一つ一つの腕?が生きているかの様に動いている。可動域が広いためか動き方が腕よりもスムーズだ。

 

成る程、大変素晴らしい技術である。作成にも起動にも随分と時間がかかっただろうに。俺ももっと見聞を広げないとダメだな。発想力と着想力では負けてるかもしれん。

 

「素晴らしいな。ちなみにロケットパンチは可能か?」

「ロケットパンチは出来ませんが、前方2〜3メートルの範囲内であればズームパンチは可能です!」

「これにはツェペリ男爵もニッコリだぜ!」

 

ズームパンチ。関節を外して10センチ程度離れた相手に当てるパンチ。

 

正直腕の関節を外したパンチに威力があるのかと疑問が噴出してしまうパンチだが、本家よりも射程が約30倍になり、尚且つ鉄の強度を手に入れて帰ってきたパンチ。

 

「それがあれば誰でも波紋使いになれるということか」

「波紋が何なのかは分かりませんが、実生活は便利になります!」

「成る程、それがツェペリ魂か」

 

素晴らしい発明を紹介してくれるじゃないか。

まさか1部から2部への伏線を用意してくれるなんて、一定層のファンの魂をガッチリと掴んでいるよ。

 

さて、ならば俺も盛大にいきたい。

今回は発明品を持ち込むことと引き換えに、発明品を使って勝負はしないという条件なので、見せるだけで攻撃は出来ない。醤油飛ばしは大目に見てもろて。

だからこそ見物客がカートゥーンのような驚き方をするぐらいド派手な絡繰を選定する必要がある。

 

えっ?どうやってアイテム持ち込みの許可を貰ったかって?

そんなの感謝と尊敬の念を露にし、清らかな心を持って弾ける様な笑顔で『オハナシ』したところ、胃を押さえながら胃薬を飲む我らの相澤先生から許可を貰ったよ。先生は優しい。

 

だからこそ先生と同志へ感謝の気持ちをぶつけるべく、今起動して紹介することができる 数ある絡繰の中から一つ選びたいんだが、一体どれが感謝の気持ちを伝えられるだろうか?

 

先生が感涙し、同志が狂喜乱舞し、民衆達が俺を崇め奉るような、そんな素晴らしい何かが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ! ア レ だ ぁ !!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで見せつけてくれるというのなら、俺も出し惜しみは無しだ。存分に紹介してやろう。その清らかな魂の輝きに敬意を称して、我が最高傑作に近しい絡繰を見るがいい! というわけで、ポチッとな」

 

鱗はポケットから取り出したリモコンのスイッチを押す。

するとゴゴゴゴゴッという地響きとともに会場が音を立てて揺れ始めた。

 

『なっ…何だぁ!?Hey!一体何したよ!?』

「見ていれば分かりますよ」

 

次の瞬間、鱗が立っているリングの少し後ろの地面が電子音を響かせながら二つに裂け、開き始めた。

 

「「「ええええええっ!?」」」

「おいおい、地面が開いたぐらいで驚いてたら新時代じゃやっていけねぇぜ?真骨頂はここからさ!」

 

すると開いた地面の中からゆっくりと『ナニカ』が迫り上がってきた。

 

まずそれは驚く程に大きなナニカであるが、生物ではなく機械であることが分かる。

 

しかし機械であると分かるが、それはまるで人間の様な形をしていた。細長い手足に筋肉の様な形をした装甲が取り付けられ、アスリートのような体型をしていた。

 

紫色の装甲をしており、四ツ目が光る異形のような迫力のある様相。電力供給機が伸び、今にも襲い掛かってきそうな尖った雰囲気を醸し出しているが、胸の装甲部分に刻まれた『鱗様参上!!』という文字が残念さを演出し、いい具合に調和している。

 

 

 

現在の科学から数世紀も進歩した技術により石楠花 鱗(バカ)の手から生み出された新世代ロボットの名前は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新世紀シャクナゲリオン

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英体育祭であるという事実すら忘れてしまうほどの発明品がそこに鎮座していた。

 

 

「これが俺の最高傑作達の一つに数えることが出来る傑作絡繰の新世紀シャクナゲリオンだ。俺がプーケット島でサンマを焼きながらセパタクローを楽しんでいる時に襲ってきた第十使徒を見て思いついた絡繰だ」

「経緯はよく分かりませんが、ここまでの代物を見せられては知識や発想力、技術力の全てにおいて私の完敗です!それよりもどうやって作ったのですか!!?」

「それはギャグ補正で創ったのだよ、ワトソン君」

「弟子にしてください!」

「よかろう」

 

発明がお披露目され、発目と少し話したところで発目が自発的にリング外に出た。

よってこの発明対決は鱗に軍配が上がる。

 

しかし会場は目まぐるしい情報の変化についていけていなかった。

 

 

『いや…えっ…?何からツっこめばいいんだ…?』

『やっぱり薬には白湯が一番合うよなぁ…』

『イレイザー!?隣で現実逃避しないでくれよ!?Hey石楠花!まずそれ何よ!?』

「シャクナゲリオンです」

『シャクナゲリオンって何よ!?そして何で会場の地下から出てきてんのよ!?』

「会場の地下をシュシュっと改造して、パパっと組み立てました。褒めてください」

『勝手に会場を改造するんじゃねーよ!?』

「勝手に改造してもよろしいでしょうか?」

『事後承諾制!?』

 

いや、事前承諾なら280%却下される未来が見えましたので。まあ、大会終了したら元通りに戻しますのでお気になさらず。それとシャクナゲリオンはそれ以上でもそれ以下でもない。唯一無二のシャクナゲリオンさ。

 

『それと次に発目がしれっとリング外に出てるんだけど!?』

「はい!私の完敗です!私のベイビーも紹介できたのでもう悔いはありません!それに師匠も見つかりましたので!」

『ハァっ!?いつの間に師弟関係が成立してんのよ!?』

「我、師匠ぞ?崇め奉れ」

「ははぁー-!」

『混ぜるな危険だろこの二人は!?フリーザの初期状態から一気に最終形態になっちゃったぐらいの絶望感ダゼ!?』

 

 

 

 

その後鱗がシャクナゲリオンに乗り込んで様々なパフォーマンスを行い、観客たちや視聴者は熱狂し、大興奮した。

 

この瞬間だけはヒーロー、市民、ヴィラン関係なく鱗の絡繰パフォーマンスに酔いしれており、犯罪発生件数は0件であり、つかの間の平和を童心に返って楽しんでいた。

 

余談であるが、体育祭終了後に全国の小学校でなりたい職業アンケートを取ったところ、ヒーローに次いでアイテム作成エンジニアが人気職になっていたことに世間は大層驚いた。

 

 

 

『ああもう!さっさと勝利コールだ!今回の発明対決、勝者は1-A!石楠花 鱗ォォォォォ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝者:石楠花 鱗

発明力を披露し、弟子を1名獲得。体育祭後、石楠花家が関わるコスチューム会社「COSMOS」に入社希望者が激増。嬉しい悲鳴である。

 

被害者1:イレイザーヘッド

白湯がうまい。

 

被害者2:プレゼント・マイク

振り回されすぎて胃薬が手放せなくなった。もうじき白湯の境地へと至る。

 

 

 



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男は裸がユニフォーム

お久しぶりです!
遂に更新できました!

感想、登録、評価ありがとうございます!

これからも頑張ります!

そんなわけで今年初投稿です。


俺氏、一回戦突破でござる。

 

拙者の技術力を公衆の面前で披露できたので、余はもう満足でおじゃる。ついでに弟子が出来たし。

 

次の試合までは特にやることもないので、次の自分の番が来るまでは落雁を食べつつ爆豪という名のリアクション芸人を弄んでいようかね。

 

えっ、フィールドに登場させたシャクナゲリオンはどうしたかって?

 

何処ぞのバカが打ち上げた衛星を叩き落とすために空に向かって飛んで行ったよ。周りは何か騒いでいるけど気にしない。バカ盛り上がったし結果オーライだよね。

 

で、今はフィールドの修理時間中。

石楠花って奴がフィールドで暴れ回ったり、変なロボットを出すためにフィールドを改造したせいらしい。おのれ石楠花。

 

だから修理時間+次の俺の出番が回って来るまで暇なわけよ。

なので休憩を兼ねて座席でクラスメイトと戯れながら試合観戦して体力の温存でもしていようかね。別に元気モリモリだけど。

 

 

「というわけで、我が勝利を手にして試合から帰ってきたぞよ。もっと敬え」

「おー、おかえり!!それよりさっきのアレってロボットか!?アレなんだったんだよ!?」

「そうだぜ石楠花!気になって眠れねぇよ!!」

「シャクナゲリオンですが何か?」

「「シャクナゲリオンって何だよ!?」」

 

 

元気な髪色赤黄コンビだぜ。緑谷も含めると信号トリオだな。

 

 

「シャクナゲリオンを分からないとは…全く嘆かわしいな。これが義務教育の敗北というものか」

「知らねーよ!?完全オリジナリティなもの出されて正解できるやつの方がおかしいだろ!?」

「そんなことねーよ。きっと砂藤なら気づいてたはずだぜ?見てみろ、あの目の輝きはシャクナゲリオンの大ファンのはずだ」

「えっ!? あっ…しっ…シャクナゲリオンだろ?もちろん知ってるぜ!!」

「うるせぇ。そのくちびるを捥ぐぞ」

「ひどくねぇか!?」

 

 

悪・即・斬、慈悲は無い。

それよりもいつの間にか試合が始まってたじゃねぇか。

しかも気づいたら芦戸の綺麗なアッパーカットが炸裂してたじゃねぇか。

 

すげぇな。何がすげぇって近年稀に見る一発KOだったよ。顔面が縦に残像を残して動いてたよ。

ウチのクラスの女子たちって、みんな世界狙えるレベルの鋭い一撃を打つよね。

 

 

「女子たち限定に『変質者の意識を一撃で刈り取る方法講座』とか放課後に開催されんの?」

「急にどうしたの石楠花ちゃん?開催されてないわ」

 

 

マジかよ。開催されてなくてアレかよ。

的確に俺の意識を刈り取るキラークイーン・レクイエムはヒーロー科女子たちの潜在能力ってわけか。

 

流石雄英、将来有望潜在ゴリラを見つけるのが上手いね。

 

 

「ケロッ、今 石楠花ちゃんから失礼な波動を感じたわ」

「女子たち限定に『エスパー的思考盗聴方法講座』とか放課後に開催されんの?」

「それは肯定と捉えるわ」

「オーケー梅雨ちゃん、一旦その舌をしまおうか」

 

 

女の子が易々と舌を見せるものじゃないよ?

その舌で俺の意識を刈り取る一撃が打てることを僕ちんは知っているんだからね?

 

でも蛙だからといって舌という概念は中々リスキーと言わざるを得ないな。

 

 

「危機感も無く舌を出すつもりならこちらも相応の手段を取らせてもらおうか。もし舌で叩こうものなら…」

「ケロ?」

「叩かれる瞬間に高速で舌をペロペロするね。それはもうディープばりに」

「ケロっ!?」

 

 

おや?いい顔するねぇ!(ネッチョリスマイル)

お兄さんは女の子が羞恥に悶えている表情が大好きなのさ!(峰田スマイル)

 

「セクハラは死刑」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

イヤホンジャックを直接耳に突っ込んできやがった!?しかも大爆音でお届けだと!?あばばばばばばばばば!

 

あっ、ありがとう梅雨ちゃん、ジロポンを止めてくれて。

こんなセクハラ野郎も助けてくれるのね?優しいね。

 

梅雨ちゃんはいいお母さんになるよ、俺が保証する。安産型だし。

あっ、ちょっと待って。そのプラグこっちに向けないで。

 

「危うく鼓膜がパーンとなるところだった…そして中々アグレッシブな行動力を有する女の子に育ったね、お兄ちゃん嬉しいよ」

「ならその妹のためなら鼓膜の一つや二つ、どうってことないだろ?妹の友達をセクハラしたツケは鼓膜で返済しろ」

「戦略的撤退!!」

 

こんなところにいられるか!俺は帰らせてもらう!

 

あれ?いつの間にプラグで体を縛られたの?

あれ?何で葉隠にも捕まってんの?

あれ?いつの間に芦戸帰ってきてたの?ついさっき?あ、そう。

 

 

………絶望的だね!!退路を断たれたよ!!

 

 

「さて、今からヤオモモと麗日の試合が始まるから、その応援が終わり次第鼓膜も終わりを迎える。言い残すことは?」

「裁判長!判決があまりにも無慈悲です!意義を申し立てます!」

「セクハラ即断、慈悲は無い」

 

くうぅぅぅぅ!あまりにも俺に対する命の興味がなさすぎる!

 

現場での即断即決は非常に頼もしい限りだが、今この場面での即断即決はあまりにも無慈悲すぎる!

 

だがしか〜し!女の子たちに捕まって拘束されて鼓膜を狙われる場面を想定していない俺ではない。

 

何故なら私は女の子に優しいジェントルマンだからさ!

 

ジェントルマンとは、いついかなる状況においてもスマートにジェントリーにスケベに余裕を持って拘束された際の対策を立てておかなければならない。

 

無理矢理脱出する、なんてことは論外。

女の子に傷をつけることになっちまう。

 

スケベを追い求めるジェントルマンは常に無限の可能性を想定し続けなければならないが、その想定の中に女の子に傷をつけるなんて選択肢は存在しちゃいかんのさ。

 

だからこそ、この場面で行える選択肢は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緊急脱皮(エマージェンシー脱皮)!」

「「何それ!?」」

 

説明しよう!緊急脱皮とは、女の子たちに拘束されて振り解けない場合に使う必殺技である!身体中の関節を外して足首のバネだけで跳躍、その瞬発力を利用し衣服を残して本体を脱出させるのだ!

 

デメリットは下着一枚のみになることかな!

 

「そして身体中の外した関節を嵌め込めば脱出成功さ!」

「「気持ち悪!!」」

 

失礼な!関節外しは男のロマンだろ!

 

「あっ!よく分からない技術で忘れかけてたけど、逃げられてるじゃん!」

「そういうことさ、あばよとっつぁ〜ん!」

「逃げ足速っ!?」

 

葉隠と芦戸と梅雨ちゃんとジロポンを後目に俺は爽快に逃げるぜ!

ほとぼりが冷めるまで何処かに身を隠しつつ、百ちゃんの応援をしないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物間は激怒した。

かの邪智暴虐なバカを倒さねばならぬと。

 

A組ばかりが注目され、世間の話題はA組ばかり。

B組との知名度は広がるばかり。

 

同じスタートの筈なのにどうしてこうも違うのか。

B組も頑張っているというのに、何故なのか。

 

そのためにはまず大舞台で目立たねばならぬ。

幸いなことに体育祭という大舞台は世間にB組という優秀な集団がいるという事実を知らせるには絶好の機会だ。

 

しかし一念発起して騎馬戦に挑んだものの、悉くA組の騎馬に敗北し、挙句の果てに理解不能なイカレ野郎に全裸に剥かれる始末。

 

自分は無様をさらしてしまったが、B組からも2人が本選に出場することになったので何とか溜飲が下がった。

 

イカレ野郎はよく分からない技術を披露してべらぼうに目立っていたが、一体どうすれば奴を蹴落とすことが出来るのか……今はその結果をもたらすにはどうすればよいのかを考えるばかりだ。

 

 

 

考え事に集中していて周囲の確認がおろそかになっていたせいか、周りが騒がしくなっていることに気づく。そして自分に影が差していることも。

 

恐らく座っている自分を誰かが見下ろしているのだろう。

B組の誰かならばそのまま呼びかければいいし、そもそも騒ぐ必要がない。そうすると自分を見下ろしている相手はB組以外の誰かとなる。

 

先生が来たのか、何処かのクラスの誰かが交流を図りに来たのか………もしかするとA組の誰かが煽りに来たのか?

 

隣の人物がいつからいたのかは分からないが、気づいたからには顔を上げなければ。どちらにしても待たせすぎるのも悪いし、自分も長時間見下ろされるのはよい気分はしない。

 

ていうか、この影やけに煩いな。

影からでも分かる動きの煩さだ。

 

一体誰だ?と顔を上げるとそこには………

 

 

 

 

A組の石楠花 鱗(パンツ一丁のイカレ野郎)がいた。

 

 

 

物間の視界は真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいおい、衣服を剥ぎ取られちまったぜ。

 

返して貰いたいが、今突っ込んでいくのは愚かの極み、火に油を注ぐ行為に等しい。

 

だが俺の服を女性陣が持っていることは周知の事実、どのみちボコボコにされることは確定している……

 

ならば今ボコボコにされて服を回収するのも手だが、女子にボコボコにされて喜ぶような特殊な性癖持ちではないので却下。

 

助かる可能性があるならば最後まで足掻いていたい。

 

しかしパンイチでウロウロしすぎるのもダメだ。周りの観客やヒーロー達の視線が痛いほど突き刺さっている。

 

さっきまで試合をしていたから顔を覚えられて捕まってはいないが、これ以上公衆の面前で、俺自身もパンツの中の息子もブラブラしすぎると一発タルタロスだ。

 

 

さて、どうしたものか……そうだ!B組がいるじゃないか!

A組には戻れないが、B組にいけば周りの観客達にも「あっ、パンイチでクラス内交流をしてるのか〜」と思われ、俺がドナドナタルタロスされるリスクが減る!

 

ならば今やるべきことは一つ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊びに来たぜ!」

「「「変態だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

 

彼らはどうしたのだろうか?

急に叫ぶからびっくりしただろ。

 

「変態?俺の人智を超えた目から見ても変態なんて何処にもいねぇぜ?」

「いるよ!?今目の前に!!」

「おいおい、まさか俺か?俺は違うぜ?そして覚えておきな。変態とは自ら己を解き放つ者。俺は自ら己を解き放たざるを得なかった者だ」

「カッコ良く言い換えても、辿り着いてる結末は同じなんだよ!?」

 

中々B組も元気が有り余ってるじゃないか。

パンイチなんてそこら中探せばいくらでもいるだろ?

だから別に死者に遭ったような表情をしなくていいと思うんだ。

 

アレ?鉄哲がいないな。

ジャージでも借りようかと思ったのに。あっ、もうすぐ試合か。

 

しかしB組を一瞥する機会は今まで無かったから気づかなかったけど、すごく仲良さそうだな。

 

見たところ問題児もいなさそうだし、いたとしても視界の端で俺が来たことに気づかず考え事をしてるモノマネ太郎ぐらいか。すこぶる平和そうだ、見習えよ爆豪。

 

「それで?石楠花はパンツ一枚でどうしたんだよ。ていうか何があったんだ」

 

オレンジサイドテールちゃんが話しかけてくれたよ。

パンイチの男に話しかけるとは中々ヒーローしてるじゃないの。

 

「あっ、自己紹介がまだだったね。私は拳藤一佳、よろしく。」

「うむ。ならば答えてしんぜよう!我輩はシャコ星雲第58番惑星ハジケ侵攻軍特殊先行工作部隊隊長!ウロロ軍曹であります!」

「うわぁ…想像以上にヤバいやつだった…」

「そう褒めるな、照れるだろ」

「どう聞いたら褒め言葉に聞こえるんだよ…」

 

いい子じゃないか。

ウロコ様調べではハッキリ問題点を指摘出来る女の子に悪い子はいないからな。

 

いいね、中々興味深いレディと知り合うことが出来た。

やはり女の子と知り合いになれた瞬間とは男にとっては人生で嬉しい瞬間ベスト1000にランクインするよな。

 

よし、今は非常に気分が良いからこの嬉しさを分かち合うためにモノマネ太郎と交流を図ろう。

 

騎馬戦の時に気づいたが、彼はどうやらA組に思うところがありそうな鼻筋をしてる。あの鼻は絶対にそうだ。クラス単位で恨んでいそうな鼻だ。だからこれを機に仲良くなれたら良いなと思う。

 

とりあえずモノマネ太郎に向かって足を進める。

全然気づかない。

 

目の前に到着する。

全然気づかない。

 

とりあえず見下ろしてみる。

全然気づかない。

 

とりあえずスクワットしてみる。

全然気づかない。

 

とりあえず連邦に反省を促してみる。

やった気づいた。

 

 

顔を上げたは良いが、コイツどうしたんだ?

死んだ目をしながら俺のパンツを眺めて。

 

アレか?女子のパンツを見たすぎて殻に閉じこもり、そこに蜘蛛の糸のごとく垂れてきた俺のパンツに一筋の光でも見出したか?

 

まぁ、たとえ欲求不満すぎて男のパンツを食い入るほど見つめる変態であろうと一応自己紹介はしておかないとな。

 

「やあ!僕はウロコ!悪いシャコじゃないよ!」

「君は……頭がおかしいのかい?」

「開幕罵倒とは中々やるじゃないか。この出会いを記念して、君に名前を付けてあげよう」

「会話すらも通じない…?」

 

なんか勝手に一人で現実逃避し始めてるけど、一体どうしたんだ?もしかすると本当に具合が悪いのかもしれない。

 

死んだ目をしながら現実逃避する奴が怖いことを初めて知ったよ。

 

そしてさっきから小さな声で「僕はこんな奴に…」とか「世間には同じように見られてるのか…?」と呟いて軽く絶望しているんだが、一体何のことだろうか?心当たりが無さすぎる。

 

だがしかし!!

俺は俺でB組に来た当初の目的を果たさなければならない。

 

本当ならば鉄哲かモノマネ太郎にお願いしようと思ってたのだが、不在と現実逃避ならば仕方がない。

 

知り合いがいない状態ならばここで少しは焦ったかもしれないが、今の俺には新たな知り合いが出来たのだ。何も焦る必要はない。

 

 

「拳藤!!」

「なっ…何!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着ている物を脱いでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

全力で殴られた。

 

 

 



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心とは磨くもの、パンツとは見せるもの

気づけば体育祭13話目です。

試合以外にキャンプションを当たることが多く、内容的には全く進んでないような気がしますが、石楠花君のぶっ飛んだ人生と共にお送りいたしておりますので、いろんなことをやりたがる石楠花君をどうか温かい目で見守ってあげてください。

今後とも応援よろしくお願いします!

※新たな小説も書き始めました。


「きゅっ…急に何を言い出すんだお前は!?」

「前が見えねぇ…」

 

恐ろしく的確に顔の中心を穿つパンチ、俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

俺の顔面はアスタリスク型にめり込んでいる事だろう。セクハラ、ダメ、絶対。

 

「そもそもなんで私に聞くんだよ!変態か!?」

「知り合いがいないなら、目の前の美女の服をもぎ取りたいと思うのは男の心理、当然だろ?」

「ヒーローの皆さま、ここに変質者がいます」

「通報はやめろぉぉ!?」

 

この女っ!容赦なく俺に指を刺差してヒーローを呼ぼうとしやがって!

流石はヒーロー志望、迷いが無さすぎるっ!!

 

「俺はただズボンが欲しかっただけなんだ!!」

「どの角度から聞いても変態の発言にしか聞こえないからな!?」

 

そうだろうか?

俺はただズボンが欲しいだけ、そこにスケベ心は1TBぐらい詰まってるかもしれないけれど俺は本当にズボンを履きたいだけなんだ。

 

別に見られて困るような身体作りはしていないから、見られることには何の恥ずかしさもない。むしろ俺の人間を超越した肉体美を目に焼き付けて帰って欲しいぐらいだ。

 

「まぁまぁ拳藤、石楠花もきっと悪気があったわけじゃない……こともないかもしれないけど…」

 

庇ってくれるならもう少しハッキリと言い切って欲しかったなぁ。悪気はないこともないかもしれないけれど。

 

だがまさか庇ってくれる誰かがいた事に驚きだ。

しかも女子。しかも女子!しかも女子!!これ大事。

 

「庇ってくれてありがとう、麗しの少女。よければ君の素敵なお名前を聞かせてもらってもいいかな?」

「ハハハハっ!急にキャラ変わるじゃん!アタシは取蔭切奈、よろしく石楠花」

「とても可憐で素敵な名前だね。一瞬君が花の妖精のように見えたよ。名は体を表すとはまさにこのことのようだ。ズボンをくれないか?」

「石楠花は上げて落とす天才だな。ダメに決まってんじゃん♪」

 

いい笑顔で断られた。

いい印象を与えることによって自分のお願いを聞いてもらえやすくなると本で読んだんだが、どうやらガセネタだったようだな。

 

さて困ったぞ。

今のところ2打席0安打、断られるたびにB組との心の距離が離れていっている気がする。

 

現に野郎どもは俺のことを信じられない生物を見るような目で見てくるし、女性陣は先ほどから手で顔を覆い隠したりしているが指の隙間からチラチラと股間を凝視してるのを俺は知っている。

 

思春期の女子に俺様の黄金比で統一された神々しい肉体はまだ早すぎたようだ。

 

でも別に見られるのが嫌なわけじゃないからとりあえずポージングでも決めて俺の固定資産税がかかりそうな胸筋でも見せつけておこう。

 

あれ?拳藤ちゃんも顔真っ赤にしちゃって。

初々しいねぇ、顔を背けちゃったよ。

 

とりあえず拳藤ちゃんの周りを高速カバディで取り囲んでおこう。

 

 

全力で殴られた。

 

 

「だっ…だからやめろ変態!」

「前が見えねぇ…」

 

2連続で顔面を凹ませられるとは思わなんだ。

 

「それより…そっ…そのパンツは一体何なんだよ….」

「何だ?欲しいのか?」

「そんなわけあるか!!?」

 

何を隠そう俺のパンツはホワイトブーメランパンツ。股間の部分には達筆な「ぬ」という文字を添えて。

 

我が家の技術を集結して作られた、耐刃、耐熱、耐寒機能付き、伸縮性抜群で通気性最高の理想的なパンツだぞ。

 

「ぬ」の文字も俺が丁寧に書いたのだ。よってこのパンツはこの世にただ一つだけ、俺だけの素晴らしい一張羅さ!

 

「食い入るように俺のパンツを凝視しちゃってるじゃないの。思春期?」

「違う!出鱈目言うな!」

「ならお互いの信頼関係が一定以上になると男女間のパンツ交換イベントが発生すると聞いたんだが、それの下見か?俺はいつでもウェルカムだぜ」

「もっと違う!何だそのイベントは!!?」

「百ちゃん頑張れぇぇぇぇぇぇ!!!」

「話を聞け!!」

 

なんてこった!!

俺のズボン候補を探している間に百ちゃんと常闇の試合がもう直ぐ始まっちまうじゃねぇか。

 

どちらも戦闘訓練で敵味方として戦った間柄、たとえパンイチだろうが俺は俺の責務を全うする!

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!常闇と百ちゃん、どっちも頑張れぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

『おいイレイザー!石楠花がパンイチで暴れてるぞ!何でパンイチ!?てかあのパンツ何処に売ってんだよ!?』

『誰かあのバカを摘み出してくれ』

 

先生とチキンラーメンが何か言ってるが応援を続行するぜ!

 

常闇は呆れた表情、百ちゃんは……赤面して顔を手で隠しつつ隙間からチラチラ逸物を見てますね。

 

照れてる表情可愛い眼福ですありがとうございます。

 

よーし!この試合は全力で応え…

「当て身」

「くぺっ」

 

俺の意識は刈り取られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ…?」

 

うん?ここは?

何処かの控え室か?

それにさっきまで外にいたはずなんだが…

 

確か百ちゃんの試合が始まるから全力で応援していたところ、急に首筋に強烈な痛みが走り…

 

あっ、ふーん?成る程、完全に理解したわ。

 

要は当て身されて気絶した俺は何処かの控え室にぶち込まれたってわけね。

 

そして俺を的確に気絶させられる当て身使いといえば、100%パンツ大好きサイドテールちゃんの仕業だな?

 

だが不意打ち当て身は感心しないな。

まさか不意打ちした挙句、パンツ以外の身包みを剥がして放置するなんて。

 

えっ?元からパンツ一丁だったって?

存在しない記憶ですね。人類の到達点である俺が自分からパンイチに、ましてやそのまま歩き回るなんてことするはずがないだろう?

 

さて、俺の近況は一旦置いておいて。

今は何時だ?試合はどこまで進んでる?俺の出番はまだか?

 

『今回体育祭 両者トップクラスの成績!!まさに両雄並び立ち 今!!緑谷 対 轟!! START!!』

 

ん?ワカメとガリガリ君の試合が始まるってことは、1回戦が終了して今から2回戦開始ってことか。

 

ということは百ちゃん常闇コンビと切島鉄晢の個性駄々被りコンビ、爆豪麗日のヤンキー美少女絵面危ないコンビの試合を見逃したってことか…!

 

クソっ!

俺が気絶という名の爆睡をかましている間にこんなにも面白い試合が終わってしまうなんて…!

 

まぁ家で中継を録画してるから帰ってからじっくり見るか。

生で見て煽り散らかしたかったが、見れなかったものを悔やんでも仕方がない。

 

とりあえず席に戻るかと思ったが、この試合の後は俺が試合なんだよなぁ。

 

でもあの2人が戦うってことは確実にステージの修繕が入るはずだから席に戻るか。服も回収したいし。

 

それにさっきからものすごい轟音が響き渡っているから、これはきっと100%ステージ修繕コースですね。セメントス先生とパワーローダー先生頑張ってください!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまぁ!切島の鋭ちゃんは腕相撲に勝ったらしいじゃないの。おめ!」

「おう!ありがとな!それで…何で石楠花はパンイチなんだ!?」

「大人の事情だよ」

「何がだよ!!?」

 

やれやれ…俺がパンイチの事情を察することができないとはまだまだよのう。

 

「「ヴルルルルルル…!」」

「で、何で俺は女性陣に睨まれながら唸られてんの?教えてくれ峰田」

「テメェの心に問いかけてみろよ変態がよぉォォ…!!」

 

ダメだ何処もかしこもヘイトが高すぎる。

心当たりが無さすぎる、何故だ?(すっとぼけ)

 

「鎮まりたまえ荒ぶる獣達よ。争いは悲しみしか生み出しませんよ?」

「「ヴルルルルルル…!」」

「口田の力でこの荒ぶる獣達を鎮静化できないか?」

「……………!!?」(全力首振り)

 

ダメか…

口田の個性なら獣判定されて鎮静化できると思ったんだがなぁ。

これはいよいよ俺がレクイエムされる道しかなくなるじゃないか。

 

それよりも百ちゃんがかなり落ち込んでいるように見受けられる。常闇に反撃の機会なく負けたらしいからな。心にくることもあるだろう。

 

「お疲れ百ちゃん、惜しかったね」

「鱗さん…」

 

パンイチで隣に座ったというのに赤面どころか動揺すらしないなんて、これは相当落ち込んでいるな。

 

「私は…何も為すことなく負けてしまいました…」

 

想像の5倍ぐらい落ち込んでた。

ここで励ませなければ男を語れない。

 

「そうだな…でもその負けから得たものは大きいはずだ。何がダメだったのか、最善策は取れたのか、振り返って思考し、改善策を模索する。これは試合だが、本番じゃない。練習でたくさん失敗して、その経験を糧にして次に繋げることができるのは人間の特権だ。だから今俺たちができることは、それぞれの反省を抱えながらも前を向くことだ。誇れ、胸を張れ。この悔しさを乗り越えて、人の心に寄り添える優しいヒーローになってみせろ」

「鱗さん…!」

 

何を言ったかあんまり覚えてないけど涙ぐんでいるってことはそれっぽいこと言えたってことかな。

 

「鱗さんっ…!今はこのままでいさせてください…!」

「よしよし、頑張ったね。お疲れ様」

 

女性の泣き顔は大衆に見せるべきではない。だから今は俺の大胸筋の中でお泣き。轟と緑谷の戦闘余波が冷気を乗せて運ばれてくるから俺の広背筋で防いでおこう。

 

 

「格好とセリフの寒暖差で風邪引きそうだ」

「見ろよ上鳴、あれが法律で裁けないクズだぜ」

「もしもしヒーロー?変態が女の子を拐かそうとしてます」

 

 

失礼な外野が多すぎる。

 

「鱗さんっ、その…もう大丈夫ですわ。お見苦しいところをお見せしました」

「見苦しい?とんでもない。男がどんなに理屈を並べても、女性の一滴の涙にはかなわないものさ。悔しさを糧にし、前を向くために流す涙はこの世のどんな宝石にも勝るほど美しいものだ。その涙を笑うような輩は俺が本気でぶん殴ってやる」

「鱗さん……!」

 

 

 

 

「アレ誰?」

「アレかい?あれはね、石楠花ボケクソウンコ鱗って言う変態の一種だよ」

「服を脱ぎ捨てることに快感を覚えるタイプのフレンズさ!」

「わぁ!世界は広いや!」

 

本当にうちのクラスには人の心を胎盤に忘れてきた奴が多すぎる。

 

おかげで気を取られて緑谷が轟に向かって何かカッコいいセリフを言ってたのに殆ど聞き取れなかった。

 

でも緑谷はすごいな。

指をバキバキにしながらも、轟をしがらみから助けるために自損の覚悟を決めてるんだもんな。

 

中学の頃の緑谷とは全然違うな。まだビクビクしたりする時もあるけど、あそこまで覚悟決めた顔はしてなかったもの。

 

俺なら出来ないかもしれない。

痛いものは痛いし、俺に出来ることとすれば発破をかけながら落雁を全力で投げつけるぐらいだ。

 

あっ、炎でた。

おめでとう緑谷。パッションバトルは君の勝ちだ。

 

「さて、俺も準備するか」

 

こんなにも熱い勝負を見たんだ。

俺も血がたぎってくる。

 

100%ステージの修繕コースだけど、こんな試合を見たら今直ぐにでも体を動かしたくなる。

 

「じゃ、行ってくるよ百」

「えぇ、いってらっしゃい。応援していますわ」

 

血がたぎり、美人からの応援の声、クラスメイトたちの奇異の視線。

ここまでお膳立てされて燃えないわけがない。

 

俺の次の相手は上鳴を瞬殺したB組の茨少女。

 

さぁ、お兄さん頑張っちゃうよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「石楠花、またパンツ一丁でどっか行ったぞ」

 

 

 




P.S.
新たな小説を書き始めました。

原作:ポケットモンスター
未知なる島の歩き方 〜そっと規格外を添えて〜

オリ地方や設定、オリポケモンを考える時間が面白く、気づけば筆が走ってました!笑

ぼちぼち更新していくので、お気に入り登録や評価、感想をもらえると嬉しいです!

これからもよろしくお願いします!



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我が道を通す

140万PVありがとうございます!


『さぁ!やっとスタジアムの修繕が完了したぜ!イェア!今年は例年に比べて修繕が多いし犯人が全員A組だが、そこんとこどう思うよイレイザー!!』

『知らん』

『フゥーー!!』

 

ステージの修繕が完了し、プレゼントマイクとイレイザーヘッドの会話が始まる。

 

会話に出た内容の通り、今大会のステージ修繕回数は合計2回。例年なら多くても1回あるかないかのところ、2回は確かに多い。

 

1度目は石楠花と発目の対決。石楠花が手造りロボットを出現させるためにステージ上とステージ地下をいつの間にか改造、地崩れの恐れもあるため大規模に修繕。

 

2度目は先程の緑谷と轟の対決。緑谷の超パワーと冷やされた空気が熱せられたことで発生する爆発の衝撃によってステージがボロボロに。形を整えるため大規模に修繕。

 

理由は違えどステージが2度破壊されたことに変わりはない。

 

相澤は両者の被害を見比べ、後ほど石楠花を説教することに決めた。理由はロボットを披露したときの達成感溢れた笑みを思い浮かべると純粋に腹が立ったから。

 

そして今から1度ステージを好き勝手に改造し破壊した男が、もう一度舞台に上がる。

 

これを警戒しないわけがない。

他の生徒ならばそこまで危険視しなかったが、この男だけは別だ。

 

入学してからの、ましてや入学以前からの奇行が多すぎる。余罪は十分だ。

 

現に塩崎はもうステージ上にいるのに、バカはまだ来ていない。もう不安だ。そして先程までパンツ一枚で歩き回るという奇行に出ている。とてつもなく不安だ。

 

バカにとって人前で裸になることは恥ずかしくもなんともないのだろう。でなければ人前で、ましてや中継されて全国に晒されているというのに平然とパンツ一枚でウロウロするなんて普通は出来るはずがない。

 

奴は羞恥心が欠如してるのではないか。

だがこれ以上、奇行に走らせるわけにはいかない。何故なら雄英の評価を落とすわけにはいかないからだ。

 

万が一、いや億が一でもヒーローではなく変態を育成していると勘違いされてみろ。屈辱以外の何物でもない。

 

だから何としてでもバカの奇行を止めなければならない。だが今のところ止める術がない。

 

たとえプロヒーローであったとしても、バカが真面目に頑張るように祈るしかできない。なんて無力なんだ。

 

頭の中でバカに対しての一縷の可能性を考えていたところで歓声が上がった。

 

何事かと思いステージに目を向けると、案の定パンツ一枚で堂々とした歩みでステージに向かうバカがいた。

 

相澤は天を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない、待たせてしまったようだ。落雁食うか?」

「あぁ…人間性を欠如させてしまうなんて、人とはなんと不平等なのでしょうか…」

「その気持ちよく分かるよ。俺もオクラだと思ってたものがマグロだったと言われたらびっくりするね」

「日本語さえも通じないなんて…なんてこと…」

 

一体どうしたんだろうか?至極正論を言っただけなのに何故目を瞑って祈るんだ?もしかしてマグロに祈ってる?えっ、マグロ教?

 

『石楠花…一応聞いておくが、服はどうした?』

「俺は裸がユニフォームです」

『ぶっ飛ばすぞ』

『まぁまぁ、いいじゃねぇのイレイザー!!何やら盛り上がってるし!!』

 

話が分かるチキンラーメンでよかった。

相澤先生ももう少しユーモアを身につけたほうがいいね。試しに服を脱ぐところから始めるといいと思うんだ。

 

 

 

『さぁ始めるぞ第2回戦!前試合の瞬殺劇が今回も見れるのか!?近づくものは縛り上げるイバラのクイーン!塩崎 茨!!』

 

『相対するは雄英史上歴代一の奇人!!TV中継なんて奴には関係ない!パンツ一枚己の道を突き進む漢!!石楠花 鱗!!』

 

『両者見合い今!!STARRRRT!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

スタートの合図と共に塩崎が鱗に話しかける。

 

「本当によろしいのですか?私のツルには棘がついております。裸となれば傷だらけになりますよ?」

「対戦相手に気を遣ってくれるなんて優しいね、ありがとう。でも大丈夫!俺、頑丈なので!」

「そうですか。なら遠慮なくいかせてもらいます」

 

瞬間、視界全てを覆い尽くすほどのツルが現れ、ツルの波に鱗は飲み込まれる。自在に動いて鱗を覆い尽くし、一つの繭のように見える。

 

塩崎は既にツルを切り離し、距離を保つ。相手は不可能を可能にする変態。備えあれば憂いなしだ。

 

『おっとぉ!?開始早々石楠花がツルの波に飲み込まれて拘束されたぁ!?これはもしかしてかァ!!?』

 

会場の観客たちはみな驚いた。今まで常識を覆してきた男が簡単に拘束されたのだから。

 

だが観客たちもヒーロー科の生徒たちも、教員たちも塩崎も、ここで終わるだなんてことは一ミリも考えていなかった。

 

何故なら奴は………

 

 

『ああっとォ!?絡まって雁字搦めに拘束されていたにもかかわらず!何層にも絡まったツタを引きちぎって脱出したぁァァ!!』

 

奴は不可能を可能に変える男。力だけなら最強クラスの実力を誇るのだ。ミルフィーユ状に絡まったツルであろうと石楠花の前では紙切れに等しい。

 

「中々激しく絡みつくツタじゃないの。だが激しく絡みつかれるなら女性がいいね」

「先ほどから思っておりましたが、かなりの色狂いのようですね。神様に裁かれなさい」

「女神様なら喜んで」

 

瞬間、石楠花の体が加速する。

 

プロヒーローでさえ視認することが困難な地面を踏み砕く最速の一歩、1秒にも満たない時間で石楠花は距離を詰め、塩崎の懐に潜り込む。

 

「ッ!?」

「一歩目から最高速度を叩き出せる生物は、この世でゴキブリか俺ぐらいだね」

「くっ…!!でしたら…ッ!!」

 

すると無数のツタを展開され、塩崎と石楠花の周りが取り囲まれる。

 

それはさながら鳥籠のようで入ったが最後、外に出ることは出来ない。そして内部の様子を映すことも、外部の様子を映すこともない情報が遮断された空間と化す。

 

「何だ?自分から個室に連れ込むなんて。欲求不満?」

「いいえ全く。この限られた空間の中ならスピードを出すことも、回避することも出来ません。そして貴方は近年稀に見る助平、女性に手を挙げられないと踏みました」

「おっ、中々いい推理をするじゃないの。お兄さん一本取られたぜ」

 

この閉鎖された空間を構成しているものはツタ。上下左右がツタなのだ。だからこそ塩崎の攻撃は全方位から攻撃をすることができる。

 

先ほどの会話の最中も攻撃を()()()()。そう、()()()()()()

 

しかし一度も当たっていない。正確には一点を集中して狙う攻撃は、背中に目でも付いているのかという精度で全て回避される。

 

ならば物量ではどうかと試してみたものの、腕の一振りで薙ぎ払われる。

 

有利な状況を作り出したものの、今のところ石楠花に有効打は決まっていない。

 

「ふっ…!」

「いいねいいね!だがパンツ一枚の俺に攻撃を当てるのは至難の技だぜ?それに俺ばっかり回避するのもフェアじゃないから、そろそろ反撃といきますか!」

 

そして、蹂躙劇が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『塩崎のツタが自身と石楠花を取り囲んだところまではいいが、中の様子がまるで見えねぇな!』

『あぁ、だがあのツタは全て塩崎の支配下だ。いくらあのバカでも狭い空間内で全方位からの攻撃を捌き切ることは厳しいだろう』

『そうだな、だから早くどっちか出てきて情報をプリーズ!!』

 

この試合を見ている者たちが固唾を飲んで見守る。そしてあのツタはの中ではどんな激しい攻防が行われているのか。

 

もしかすると塩崎が前代未聞の行動を取る石楠花を完封しているのではないかという憶測も飛び交い始めた時、沈黙を保っていたツタのドームが開き始める。そこには………

 

 

 

 

『おっと!遂に隠された試合の結末のお披露目かァ!?一体ツタの中でどんな激しい戦闘が………いやほんとどんなに激しい戦闘があったんだ!!??

 

 

 

いい笑顔でパンツ一枚でカメラに向かってピースサインをする石楠花と、上気した顔で白目を剥き、ピクピクと小刻みに痙攣しながら仰向けに倒れている服がはだけた塩崎がいた。

 

「しっ…塩崎さん戦闘続行不能!!よって石楠花くん3回戦進出!!」

 

石楠花の勝利が宣告された瞬間、石楠花は急いで塩崎を抱え込み、視認出来ぬ速度で保健室に直行した。

 

 

 

 

 

 

 

後ほどA組のもとに戻ったところ、修羅のような女性陣全員からフルボッコにされ、八百万主導のもとスタジアム外の木にパンツ一枚のまま逆さ吊りにされた。

 

 

 



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試合の合間に

感想嬉しい!感想嬉しい!


やぁみんな!俺だ!

 

俺は今何してると思う!?

正解は木に逆さ吊りされてるのさ!

 

良い子のみんなは女の子を怒らせちゃダメだぜ!

じゃあな!

 

 

はい、というわけで逆さ吊りにされてます。

いや〜まさかレクイエムされるとはね!試合から帰ってくると修羅がいるなんて誰が予想できるよ?女の子は笑顔が一番だぜ?

 

えっ?試合中に密室で何してたかって?言わせるなよ恥ずかしい。

 

あれは最善の選択だったのよ。俺も塩崎もwin-win。誠に素晴らしい選択であった。

 

えっ?何故白目向いてピクピクしてたかって?言わせるなよ恥ずかしい。

 

というわけで誰か助けてくれませんかね?

長時間逆さに吊られてると、内臓が口からゆっくりと飛び出してくるらしいね。その事実を知ってるから、さっきから怖くて堪らんのよ。

 

鱗が一人で考え事をしながら百面相しているところに声がかかる。

 

「全く….君はいつも話題に事欠かないね」

「助けに来てくれたのか鳥野郎!!」

「じゃあね」

「ごめん!もう一回チャンスちょうだい!!」

 

鳥野郎ことホークスである。

 

今完全に帰るつもりだったよ、この鳥野郎。

ていうか何で俺がここにいること知ってるんだ?

 

「君の試合も女の子たちに吊るされる瞬間もばっちり上から見てたよ。100%君の過失だったから助けなかったけど」

 

この野郎、ヒーローが困っている人を見捨てるなよ。100%俺の過失だけど。

 

「それに俺が助けなくても君なら勝手に脱出できるでしょ?ただのロープ程度で君を拘束できるわけないし。それは彼女たちも承知の上だろうし」

 

そう、その通りなのだ。

別に逃げようと思えばいつだって逃げることができる。女子たちも気持ち緩めに縛ってくれてたし。そもそも鉄でも引きちぎれる俺を縄程度で捕まえてられると思ってもいないだろう。

 

なら何故逃げなかったのか?

 

今は助けが来るまでミノムシごっこを楽しんでたんだよ。こんな経験あまり出来ないぜ?自分から縛ってくれと言わないと縛ってくれないだろうし。そもそも自分から縛ってくれなんて言わないし。

 

これは俺と女子たちの信頼関係を表した拘束なのだ。もし本当に拘束しようと思うならばチタン製金庫に閉じ込められて海に沈められてるね。

 

「ホークスさん、これも愛の形さ」

「そんな歪な愛、俺はごめんだね」

 

まだまだ甘いなホークスさんも。ホークスさんといえば速すぎる男、だから恋も愛も失恋が速すぎて真っ当な恋愛感情を育めなかったんだな。可哀想に。

 

「大体君の考えてることは分かるよ。ムカつく顔してるもん」

「嫉妬ですか?」

「上空500メートルから紐なしバンジーでもしてみる?」

「ごめんなさい」

 

トップ5入りヒーローがとんでもない提案をしてくる件について。

 

この人はやる。必ずやる。今平気で上空に俺を引っ張り上げて笑顔で突き落とす光景まで頭に浮かんだもん。

 

「こんな人の心無さそうなケン○ッキーフライドチキンが公安所属ヒーローだなんて世も末だね」

「本当に俺自身もそう思うよ。それもこれもこの腐った世界が悪い。だから鱗君が早くヒーローになって、俺を暇にしてよ」

「カオスが極まってしまいますよ?」

「却下」

 

 

公安所属ヒーローと雄英高校の一生徒が楽しげに話す空間。本来ならばありえない光景だろう。一方は空中に浮いた状態で、一方は逆さ吊りの状態という理解できない光景だが。

 

そしてふと今思い出したかのように「あぁ!」と相槌を打ってホークスが話を変えた。

 

「伝言があったの忘れてたよ。鱗君が吊るされてようがボコボコにされようが猥褻罪で捕まろうがどうでもいいんだが、これだけは伝えておかないと」

「おい」

「今回の試合で君の技術力や肉体を皆さん集まって見てたらしいよ。だから久しぶりに手合わせをしよう、だってさ」

「げっ…」

 

衛星飛ばしたりみんな集まったりって暇すぎるだろアイツら。偉い職業持ってる奴らばっかりなんだからもっと真面目に働けよ。

 

それに漏れなく全員頭のネジが10本ぐらい外れてるから手合わせはしたくないって此間言ったばかりじゃん。忘れるの早すぎない?あっ、ネジ外れてるからすぐ忘れるか。

 

「手合わせはまぁ、別に良いとして、問題は誰が言ったかだ」

「それはお楽しみだね」

「ヒント…!ヒント頂戴!せめて頭文字!俺としては『ファ』か『金』がいい!じっくりねっとり寝技をかけたい!」

「残念、『ハ』だ」

「クソォォォォ!!!」

 

鱗は体に巻かれた縄を引きちぎり地面に着地、そのまま流れるように地面に倒れ伏し咽び泣いた。

 

「『ハ』はダメだ!年がら年中ππ(パイパイ)言ってるイカれた奴だぞ!?」

「じゃあちゃんと伝えたから。それじゃあね」

 

おい!特大の地雷を残して颯爽と飛び去るんじゃない!しかも速ぇ!流石速すぎる男!

 

 

ホークスが飛び去ったことにより先ほどまでの喧騒はなく、誰もいないスタジアムの外でパンイチの男が一人咽び泣いているという地獄の光景だけが残った。

 

だがこの男の気持ちの切り替え速度は半端なく速い。

 

「まぁ落ち込んでいても仕方がない。もし来たる日が来たら俺は逃亡する。そして『ファ』の胸をじっくりと揉み込んでやるぜ…!」

 

鱗は雄英の生徒が聞いても誰も分からないであろう人物への正直な気持ちを露わにし、歓声が上がるスタジアム内へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やぁみんな!2度目の俺だ!

 

俺は今、切島とかっちゃんの試合を観戦しているんだ!

 

ん?女の子たちからは許してもらえたのかって?

 

2リットルのソーダとコーラで鼻うがいをして許してもらったぜ!

 

その誠意に免じて、遂に俺の手元に俺の服が返ってきたぜ!俺の服のはずなのに随分と俺の手から離れていたな!

 

良い子のみんなは女の子を怒らせちゃダメだぜ!

じゃあな!

 

 

というわけで、やっとゆっくり試合を観戦することができる。

といっても次が俺の試合だからもう直控え室に行かないとダメだけどな。

 

で、何故かさっきから百ちゃんが俺に引っ付いて俺を離してくれない。これが夫婦になるということ…?

 

「で?どうしたの?まさかヤキモチ?」

「ちっ…!違いますわ!?これはその…そう!捕まえていないと周りの女性の方々に破廉恥なことをするかもしれないので引っ付いているだけですわ!そう…!だから別にやましい気持ちなんてありませんわ!!?」

 

アッ…!!(語彙力消失)

 

何このカワイイ生き物。えっ、嫁?まさか知らない間に俺に嫁が出来た?

 

八百万家では男を逆さ吊りにすることが婚姻だったのか、知らなかったな。てことは俺はクラスの女子全員と結婚してるってこと…?(超理論)

 

「成る程。百、子供は何人欲しい?」

「ふぇっ…!?」

「石楠花…アンタまだ懲りてないようだな」

「まさか耳郎が俺のことをそんな風に思ってくれていたなんて…俺も愛してるぜ」

「……ふぇっ!?」

 

まさかこんなにも愛されていたなん……ごめんごめん冗談だから6人がかりチョークスリーパーはやめよう。俺の首が黒髭が危機一髪するやつみたいになる。

 

そして峰田と上鳴が血という血を噴き出しながら俺に向かって黒魔術的なナニかをかけてくる。やけに完成度高いから怖い。他の野郎どももやれやれみたいな雰囲気を出すだけじゃなく助けてくれ。

 

俺の嫁(仮)たちと戯れてたら良い時間になったので、そろそろ控室へ移動するか。轟もいねぇし。

 

だがこのまま移動するのは癪だから、かっちゃんを応援してから行こう。

 

 

 

「かっちゃん愛用のウサちゃんパンツが安かったから3ダース家に届くようにしておいたぜ!送料は気にするな!頑張れぇぇぇぇぇ!!!」

「うるせえそんなパンツ穿いてねぇ死ねぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」

 

うん、元気だ!俺も頑張ろう!

 

 

 

 

 

 

 

 

切島と爆豪の試合は爆豪の勝利で終わった。

 

その試合を控え室で見届け、石楠花は準備を始める。次の試合はA組でも屈指の実力者、そしてトーナメントが始まる前に緑谷との会話も聞いてしまった。

 

家族の事情は他者が口を挟めるものでもない。

それでも緑谷という男は自分の全てをぶつけ、轟の心に光を灯した。

 

轟は今変わろうとしている。言い換えれば人生最大の思春期の真っ只中だ。

 

ならば、友達…と轟は思っているか分からないので、クラスメイトとして真っ向から向き合わないといけない。

 

それが石楠花 鱗に出来ることだ。

 

 

 

 

 

だからこそ……

 

 

「おっ、君が石楠花君か。君の活躍を見ていたよ」

 

 

だからこそ……

 

 

「君の身体能力はオールマイト並みだったね。焦凍はオールマイトを超える義務がある」

 

 

だからこそ……

 

 

「君との試合は緑谷君の時もそう思ったがいいテストケースになる。決してみっともないところをみせ五月蝿え(うるせえ)……何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当事者でもねぇ外野がごちゃごちゃと五月蝿ぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

「俺を動かすことが出来るのは…」

 

 

 

 

「この天上天下で…」

 

 

(ただ)…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我独(おれだけ)だ」

 

 

 

準決勝 轟VS石楠花 開戦まであとわずか。

 

 




今気づいたけど、石楠花君のフォルムが不透明だったので書き記しておきます。

某到達点の黒髪verです。


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思春期

お気に入り、評価、感想をいただきありがとうございます!
流石は某到達点のジョ○フ似の兄貴だぜ。
やることがちげぇや!

今回は石楠花くんが久しぶりに真面目に頑張っています。



会場のボルテージは既に最高潮にまで達していた。

 

今大会最強クラスの実力者。いや、プロヒーローを含めたとしても上位クラスの実力を誇る両者の対決だ。注目しないわけがない。

 

『さぁ始まるぜ準決勝!!相対するは最強クラスの男達!範囲殲滅能力最強クラスの男!轟 焦凍!!そして単体殲滅能力最強クラスの男!石楠花 鱗!!』

 

ステージの中央で互いが見つめ合う。

どちらもやる気は十分、しかし轟は前の緑谷との試合で考えることができたのか、少し浮かない顔をしている。

 

『一体どっちに勝利の女神は微笑むのかぁ!?運命の準決勝!START!!』

 

そして試合は始まる。

しかしお互いに攻撃をするどころか、一歩たりとも動かない。

 

『アレ?あの…もう始めてくれていいぜ?えっ、どうした本当に!?』

 

プレゼントマイクも観客たちも戸惑いが溢れる中、先に行動を起こしたのは石楠花だった。

 

「どうしたソーダ味。浮かない顔しやがって。トイレでも行き忘れたか?」

「いや、そうじゃねぇ」

 

開幕石楠花のペースで話しかけるが轟に一蹴される。

そして自分の意見をポツポツと言い始めた。

 

「俺は緑谷と戦ってから、自分がどうするべきか、自分が正しいのかどうかわかんなくなっちまってんだ」

「ほう?」

「今、どうしていいかわかんねぇ。さっきは一瞬アイツを忘れたから炎を使えた。でも今は思い出しちまったから使っていいのかどうか…俺にはまだ清算しなくちゃいけねぇことが沢山ある」

 

轟の自問を聞き、噛み締めるように目を瞑る。

家族の問題、自分自身の問題、それらは簡単に「はいそうですか」と切り替えられるものではない。

 

じっくりと考え、石楠花が出した答えは……

 

 

 

 

「ふんっ!」

「ぐっ…!?」

 

ビンタだった。

 

 

「テメっ…!」

「たしかに色々な事情があるんだろう。お前がそう思わなきゃいけないような事情が。まぁ、試合が始まる前に緑谷と話してるところを偶然聞いちまったからある程度は知ってるんだけどな」

「お前っ…聞いてたのか!?」

 

少なからず轟に動揺が走る。誰にも聞かれたくない自身の秘密を、あろうことかシリアスから無縁のような男に聞かれていたのだから。

 

「それを聞いてたから、さっきエンデヴァーに会ったけど「五月蝿え」って言っといた」

「あのクソ親父っ…!」

 

自分の父が目の前の男に接触していた事実に衝撃を受ける。そしてそれに対する石楠花の反応にもびっくりするのだが。

 

仮にも世間ではNo.2ヒーローと呼ばれている人物に向かって、事情を知っていたとしても「うるさい」と言えるであろうか?

 

やはり目の前の男はちょっと変わっていると思った。そして胸が空く思いもした。

 

「たしかに清算しないといけないことは沢山ある。話し合わないといけないことも沢山あるだろう。そして…お母さんともな」

「…ッ!?」

「母の個性だけで1位を取る、父の個性は使わない。その考えを否定する気はない。でもさっきの試合で緑谷に言われたろ?どっちも君の個性じゃないかって」

 

そうだ。言われたばかりだ。

そしてその事実が轟の原点を思い出させ、同時に迷いも生ませた。

 

だから今石楠花が出来ることは迷いを取り除いてあげること。

 

「どっちも凄ぇ個性だ。凍らせる個性に燃やす個性。それらは今お前の体の中にある。でも凍らせれば母の力を借りたことになるのか?ならねぇだろ。燃やせば父の力を借りたことになるのか?ならねぇだろ。今のお前はただ現実を見ようとしていないだけ。お前の力はお前の力だ。誰のものでもない自分だけの力だ。そこに家族の意思はない。

 

 

 

 

 

 

自分が本気を出さない言い訳に家族を使うなよ」

「…っ!?」

 

 

ぐうの音も出ない正論がいつもふざけた石楠花から飛び出し、轟は動揺する。だが言っていることは正しかった。

 

今までも、そして今も自分の気持ちを押し殺し、復讐に取り憑かれていた自分は真剣に戦いを挑んでくる相手を見ていなかった。いや、見ようともしていなかった。

 

それは緑谷との戦いで気付いたはずなのに、また自分のことばかりを考えてしまっていた。

 

自分の夢を緑谷が思い出させてくれて、そして力との向き合い方を石楠花が気付かせてくれた。

 

轟の左半身から僅かながらに炎が噴き出る。いや、炎とは言えないほどの火種程度の出力であるが。それほど自分でも気付かぬほど無意識に個性が噴き出ている。

 

つまりこの試合の向き合い方を、覚悟を決め始めているという証拠。

 

「轟、お前はまだ真の意味で自分の個性を知らないガキみたいな状態だ。その個性を家族の個性としてじゃなく、自分の個性として使ってこい」

 

瞬間、轟の体から炎と氷が展開される。本日2度目の、緑谷という男がぶち壊した概念を、石楠花もまたぶち壊した。

 

 

 

 

だが炎を使うことによって生じる問題が、この会場にはある。いや、いるといった方が正しい。

 

 

 

 

「焦凍ォォォォォオオオ!!!そうだ!それでいい!!考えることは何もない!血を受け入れ、己を受け入れ、俺の宿願を達成しろ!!」

 

「五月蝿えぇぇぇ!!父親だかNo.2だか知らんが人の夢に介入すんな!!自前の炎で裏庭で焼き芋でも焼いてろ!!」

 

「「「(えええええぇぇっ!?何でアイツNo.2ヒーローに喧嘩売ってんの!?)」」」

 

肩書きなど石楠花の前には関係ない。

 

石楠花は『運命』というものが大嫌いだ。

誰かに決められたレールの上を走るだけの人生なんて、彼にとっては死んでいるも同然なのだ。

 

だからこそ、息子の人生を強制する行為などクソ喰らえだ。

 

自分の人生は自分で決める、自分がどうありたいかも自分で決める。だからこそ、今までの轟は見るに堪えなかった。

 

「よく聞け、轟 焦凍。俺は俺の道を違える気はない。これから先もずっとな。だから困ったことがあったら俺にいいな。友達の悩みは聞くものだ」

「俺たちは友達…なのか?」

「一緒に授業受けて、飯食って、話して、今から本気の殴り合いをするんだ。友達に決まってるだろ?だから何でもいい、困ったことがあったら相談に乗る。親のことを気にしているなら、そんなもの俺にとっては障害にすらならない。

 

 

プロヒーローだの何だの、そんな肩書き俺には関係ない。友達(ダチ)が困ってるなら俺が助ける。邪魔する奴はブッ飛ばす

 

 

 

轟を含めて、人々は開いた口が塞がらなかった。

 

邪魔する奴とはヴィランも、そしてプロヒーローも含まれているのだろう。だからこそ多くのプロヒーローたちの前で、テレビでも見ている多くの観客たちの前で、全員を敵に回すような発言には度肝を抜かれた。

 

 

まさに天上天下唯我独尊。

 

自分だけの道をただ真っ直ぐにひた走る男。

 

 

だが不思議なことに、この試合を見ている全ての人は、不快な気持ちにはならなかった。

 

自分勝手な考え方だろう。

それでも観客たちの心には春風のような暖かな風が吹いた。

 

ひどく懐かしいような、そして背中をずっと追いかけていたくなるような生き様に、人々は高揚感を隠せなかった。

 

そんな観客たちの心の変化を石楠花は感じたのかどうかは誰にも分からないが、それでも石楠花の話は続く。

 

 

 

 

「俺はこの試合でお前の攻撃を避けない。全部迎え撃つと決めた。今決めた。」

 

 

「そうじゃないとお前と向き合えない気がする。今まで自分の感情をぶつける術がなかったが、今お前の目の前には俺がいる」

 

 

「だから全力でかかってこい。大丈夫……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の思春期、俺が受け止めてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互いが微笑を浮かべた後、先に動き出したのは轟だった。

 

轟が初手に使ったものは……左手。

 

つまり今まで頑なに使わなかった戒めの象徴でもある炎の個性を使ったのだ。

 

これには石楠花もニッコリ。

自分の覚悟が轟に伝わった証拠でもあるのだから。

 

その初手に放たれた炎を石楠花は…

 

 

 

 

避けずに仁王立ちで迎え入れた。

 

 

 

 

炎の着弾点には依然変わらぬ姿勢で立つ石楠花がいる。

だが炎の直撃を受けて無傷というわけでもなく、ところどころが赤くなっていた。

 

「中々熱いじゃないの、お前の思春期」

「やっぱり…お前はイカれてるよ」

「褒め言葉として受け取っておこう」

 

一言二言会話をした後、轟は大氷壁を放つ。

会場を突き抜け空にまで届くような氷が石楠花を包み込み、その姿が見えなくなった。

 

『おおーっと!氷の塊が石楠花を包み込んだァ!?大丈夫かアレ!?生きてるか!?』

 

身動きが取れぬ程の氷に覆われ、観客たちは石楠花が動くことができず凍死するのではないかという考えがよぎり始める。

 

しかしそれはいい意味で裏切られる。

 

『何だ…?氷の塊から異質な音が聞こえて…嘘だろ!?石楠花の奴!凍らされたことなど関係ないかのように歩いて脱出しやがったァ!?』

 

腕を振るうこともない。足を振るうこともない。ただ真っ直ぐに歩いていただけ。それだけで氷は割れ、悠然と氷塊の中から現れた。

 

「焼くか冷やすかお好きな方を選びな。それでも俺はボイルや刺身にはならないがな」

「やっぱり…これぐらいで倒せるわけねぇか」

 

石楠花は氷塊に拳を叩き込む。すると氷塊は跡形もなく砕け散った。たった一発のパンチで自身の何十倍も大きい氷塊がガラスよりもさらに粉々に砕け散る様を目の当たりにしても、轟は怖気付かない。

 

「初めて本気で人に向けて両方を使う……だから…」

 

 

 

「早々に負けてくれるなよ?」

「上等だ、思春期小僧」

 

 

 

戦いは過熱していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟が炎を使えば、石楠花が拳の風圧で吹き飛ばす。

轟が氷を使えば、石楠花が氷を粉砕する。

 

ステージには炎と氷が吹き荒れ、正反対の物質が混合するこのステージは幻想的な雰囲気を醸し出す反面、まさに地獄を体現していた。

 

地面は荒れ果て、一人の男が歩みを進めるたびにひび割れていく。

 

さらに容易に近づくことができない冷気や熱気がステージを覆っており、常駐していたセメントスとミッドナイトは既に避難している。

 

まず人が踏み入れられないであろう環境へと変わり果てたステージの中心では、その元凶たちがしのぎを削っている。

 

「おおおおおおぉぉっ!!」

「いいねぇ!楽しくなってきた!」

 

片や石楠花、炎と氷を避けることなく迎撃しているため上着は吹き飛び、体が顕になっている。幸いなことにズボンは破れていない。体には霜がおり、ところどころが焼け爛れている。

 

片や轟、自身の個性の使い過ぎによって損傷し、さらに石楠花の放つ拳の衝撃波によって吹き飛ばされ、全身隈なく傷を負っている。

 

お互いに接近戦はなく、石楠花は轟を殴り飛ばすことはしていない。もし石楠花が轟を殴るとすると、紙切れのように吹き飛び、壁に真っ赤な花を作り出すことになるだろう。

 

それをわかってか轟も石楠花に近づくことはせず、遠距離から今までの鬱憤を晴らすかのように全力で個性を使い続けている。

 

それでも石楠花を倒すことはできない。

 

どれだけ凍らせても動作一つで粉々に砕かれる。どれだけ燃やし続けようと動きが止まることはない。全身が燃えていようが拳を繰り出し、熱波と衝撃が轟の体を突き抜ける。

 

轟の攻撃は確実に効いている。

確実に効いているが、身体中が燃え盛りながらも恐ろしい笑みを浮かべて動き続ける化け物への決定打にはならない。

 

轟は自身の個性を限界を超えて使い続けるため、今にも倒れる寸前だった。

 

しかし石楠花の限界も近づいている。

 

避けることなく全ての攻撃を一身で受け止め続け、平然としているがダメージは蓄積される。

 

ハジケリストとして人外じみた体力を持っているが、シャコとは水中に生息する生物。熱さにも寒さにも本来ならば弱いのだ。

 

しかし持ち前の人外じみた体力と精神力で痛みを内に抑えつけ続けているだけ。

 

だからこそ、この試合の決着は着々と近づいてきている。

 

 

それは両者も分かっている。

自分の体力の限界を悟った2人の行動は奇しくも同じだった。

 

 

 

「石楠花……次の一撃で最後だ…」

「あぁ。それでどうよ?個性を全力で使って少しはスッキリしたか?」

「あぁ……なぁ石楠花…」

「あん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとな」

「どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

膨冷熱波(ぼうれいねっぱ)

 

 

羣堕璃(ぐんだり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

力と力が衝突し、閃光が迸る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタジアム内に衝撃がほとばしって数秒、漸く粉塵に覆われていたステージの全容が見えてきた。

 

見るも無惨に変わり果てたステージ。そのステージで起こった爆発の中心にいた元凶の2人は大丈夫なのだろうかと観客やヒーロー、クラスメイトたちが心配になったころ、ぼんやりと一つの影が見え始める。

 

 

『マジで何つー衝撃だよ…!大丈夫かアイツら!?それでこの試合の結果はどうなった!?クソっ、煙で見えやしねぇ!いや!ぼんやりとだが見え始めてきたゼ!そしてステージ!ステージか?まぁいいステージ上に立っている人影は一つだけ!ハッキリ見えてきたぜ!hands up盛り上がれ!準決勝一回戦!この地獄の宴の勝者は……………

 

 

 

 

 

 

 

石楠花 鱗だァァァァァァ!!』

 

 

 

 

 

ステージ上で片腕を天に突き上げ立っている石楠花が映し出される。

 

轟は衝撃によってステージ外の壁際まで吹き飛ばされていた。

 

余波で無事なところが見つからないほどに荒れ果てたステージの中央に立つ石楠花。湧き上がるスタジアムの中、石楠花は倒れた轟に向けて歩みを進める。

 

互いにボロボロである。それこそ無事なところが見つからないほどに。

 

倒れ伏した轟の元に辿り着くと目が合った。

 

「よぉ、Mr.思春期。今の気分はどうだ?」

「ふっ…悪くねぇな」

 

互いに微笑を浮かべ、石楠花が轟を担ぎ上げる。保健室へ運び込むためのロボットがやって来たが、思春期を脱出した友の搬送をロボットが行うのは味気ない気がしたからだ。

 

瓦礫を踏み分け、出入り口へと歩き出す。そんな2人の背中には称賛という名の惜しみない歓声と拍手が注がれた。

 

出入り口へと向かう道中、2人は笑顔で会話をしていたという目撃が上がっているがどんな会話をしていたのか、それは2人にしか分からない。

 

 

準決勝 勝者 石楠花 鱗

 

 



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決勝までの暇つぶし

お久しぶりです!
石楠花は四六時中元気でした。


 

全身ズタボロだぜ!

 

いや〜、轟半端ないって。めっちゃ炎と氷を放ってくるやん。あんなん出来ひんやん普通。出来るなら言っといてーな。普通に死んだかと思ったよ。

 

今は保健室のベッドの上でゴロゴロしてます。リカバリーガールの治癒のおかげで完治とはいかないけど、ある程度治ったよ。

 

リカバリーガールに「どんな治癒力してんだい」って静かにキレられた。治癒力高すぎてキレられるって何?

 

それと俺の体は凍傷寸前と重度の火傷だったらしい。クソウケる。

1人で爆笑してたら、傷口を杖で叩かれた。クソ痛い。

 

本当なら治療してから病院に搬送されてもおかしくないような怪我も、俺の治癒能力が高すぎてリカバリーガールの個性だけで痕も残さず普通に治り始めてるってもんだからびっくりだよね。そらキレるわ。

 

治癒力の高さに心当たりはないかと聞かれたので、落雁を食べてるおかげと答えておいた。落雁はスーパーフードなのだ。

叩かれた。

 

轟の方も結構重症だったらしく、俺が保健室に運び込んだ瞬間に気絶した。

 

治療を受けて今はぐっすり寝てるけど、気絶した時は死んだんじゃねぇかと普通に焦った。引くほど焦った。焦りすぎて保健室でタイムマシン探した。

叩かれた。

 

どうやら疲れと心労が溜まっていたとのこと。まぁ苦労してそうだったもんな。

まだ解決してないが自分の気持ちに踏ん切りがついたことで疲労が一気に襲ってきたのだろう。

 

今はぐっすり寝てな。燃え盛る石焼き芋製造機が保健室に来たら俺がカスピ海までぶっ飛ばしておくから。

 

俺もリカバリーガールから決勝戦もどうせ無茶するだろうから今は休んでおきなと言われたので保健室でくつろいでいる。

 

ちなみに準決勝二回戦はまだ始まっていない。

 

どうやらステージをこれでもかというほどぶっ壊したせいで修繕に時間がかかるそうだ。

 

頑張っておくれ、セメントス先生にパワーローダー先生。

 

そして重症にもかかわらず気絶することも寝ることもなくピンピンしているため気付いたら試合が始まっていたという事態もなく、ただただ時間が有り余るだけだった。

 

「なぁリカバリーガール、暇すぎて死にそうだ」

「何言ってるんだい死に損ない。あんたは目を離したら無茶すると決まってるさね。今ぐらいゆっくりおし」

「暇すぎるから保健室を割り箸畑に改築するわ」

「バカ言うんじゃないよ」

 

また叩かれた。俺の頭をドラムか何かと勘違いしてないか?何回も叩いたところで重低音は出ないよ?

 

しかし暇だ。保健室を抜け出すのは簡単だけど、抜け出した後が絶対に面倒くさい。保健室が利用できなくなるなんてことが容易にあり得る。

 

もう2度と保健室利用ができなくなった場合、俺は死ねる自信がある。何故なら女子にボコボコにされた後は保健室コースだからだ。

 

これから訓練も厳しくなり、俺たちはヴィランを制圧するための訓練を受けることだろう。そしてその技術を女子たちによって容赦なく俺も体験することになるのも時間の問題。

 

その際に保健室を利用できなければどうなるか、即ち死だ。

 

女子に保健室送りにされるなんてと思うかもしれないが、彼女たちは着々と対俺用バーサーカーに進化し始めている。

 

聖杯戦争にバーサーカーとして召喚されても遜色はないくらいの戦闘力だ。きっと最後まで勝ち抜いて願いを叶えると思う。

 

俺がその内、「やっちゃえ♪バーサーカー!」されるかもしれないので、保健室が利用できなくなることだけは何としてでも避けたい。

 

なら大人しくしていればいいじゃないかと思うだろうが、それとこれとは話が別だ。

 

暇すぎて俺の体がウズウズしてる。保健室を割り箸畑に改築したい欲やおでんデスマッチしたい欲が高すぎる。

 

ウズウズしすぎて小刻みに震えてきた。残像を残すぐらい震えすぎて今の俺は画質がブレてると思う。誰かハンペンを呼んでくれ。

 

 

あまりの暇さに禁断症状が出始めたころ、急に保健室のドアが開いた。

 

「鱗さんっ!?大丈夫ですか!?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!? バーサーカーが6体も召喚されたあぁぁぁぁぁぁぁ!? この聖杯戦争はもう終わりだぁぁぁぁぁっ!?」

 

ドアの向こうから女性バーサーカー6体と、召喚の触媒にされそうな男子どもがいた。

 

「なぁ、重傷なのは頭では分かってるんだけど、一回ぶん殴らせてくれ。そしてウチらの心配を返してくれ」

「落ち着けよ耳郎オルタ。怒るとプリティーなお顔が台無しだぜ?聖杯に胸を大きくしてくださいと頼みたそうな顔してるけど、俺は前に貧乳はステータスだと言ったろ?落雁食うか?」

「ウガァァァァァァァァァ!!」

「耳郎落ち着いて!? 石楠花の言葉には悪意しかなかったけど一応重傷者だから!? 石楠花腹抱えて笑うなっ!!」

 

素晴らしい。

この退屈の無限地獄から俺を救ってくれるのは、やはり仲間達しかいないね。

 

それと芦戸、耳郎を押さえ込んでくれてありがとう。もしその手が解放されると俺は挽肉にされそうだから絶対にその手を解放しないでくれ。100%俺のせいだけど絶対に解放しないでくれ。

 

「コラっ!静かにしな!轟が起きちまうよ!それとこんなバカでも一応は重傷者さね、傷が開いちまう」

「そうだぞ、吾輩重傷者でござるぞ。おら、騒ぎの元凶名乗りでろ」

「「「いや、元凶お前だろ!?」」」

 

うん、元凶俺だね。

でもクラスのみんながお見舞いに来てくれたらテンション上がると思うんだ。情状酌量の余地はあると思う。

 

「見舞いに来たらまずはフルーツを納品、常識だろ? 早く出しやがれフルーツ。我に献上しろ。えっ、フルーツを持ってきてないって?ダメだな〜君たちは」

「何この太々しい重傷者!?なんで俺たちが怒られてんの!?」

「やっぱり怪我を治すには落雁が一番効果的だな」

「しかもフルーツ関係ねぇ!?何処からその落雁出てきたんだ!?」

 

バカだなぁ、何処でも食べられるから落雁なんだ。落雁の出所をいちいち気にしていたらこの個性社会を生きていけないぜ?

 

「で、何だ?俺と轟の心配でもしてくれたのか?爆豪と常闇の試合がもうすぐ始まるかもしれないのに、全員で来てくれるとは嬉しいもんだな。暇なのか?」

「上げて落とす天才かお前は!?」

「おいおい、そう褒めるな……ZZZ」

「話の途中で寝たぁ!?自由人か!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起床っ!!」

 

起きる時も全力で。素晴らしき我が家訓だ。

リカバリーガールが驚愕の表情でこちらを見ているが気にしない。

 

どうやら眠ってしまっていたようだ。

さっきまで見舞いに来てくれていた人がいたような気がするが、いなくなっているところを見ると帰ったのだろう。

 

「びっくりさせるんじゃないよ全く!!年寄りの心臓を止める気かい!!」

「大丈夫、これぐらいじゃ人は死なないと俺のサイドエフェクトが言ってる」

「その口を縫い付けてやろうか?」

「ごめんなさい」

 

時には謝ることも肝心だ。覚えておきな少年少女たちよ。

 

しかし余程眠っていたのか人の気配がしない。

轟も寝てたはずだがいなくなっている。

 

「轟ならさっき戻って行ったよ。アンタも元気になったんなら早く戻るか準備をしな。もう準決勝は終わったよ。爆豪って子の勝ちさね」

 

【悲報】準決勝が終わっていた件について。

 

マジかよ。準決勝見たかったのに終わっちまうなんて…

常闇と爆豪を応援しながら爆豪を煽り散らかすという俺の野望が達成出来なかったなんて…

 

しかも次は決勝じゃん。

俺の出番じゃん。

相手爆豪じゃん。

煽り散らかせるじゃん。

テンション上がってきたじゃん。

ハジけULTRAじゃん。

 

「フオォォォォォォ!!テンション上がってきたあぁぁぁァァァ!!」

「一々叫ぶんじゃないよ!」

「このままフィールドに突入してくるぜ!待ってろ千秋楽!」

「先にクラスメイトに顔見せてから控え室に行きな!!まだ試合じゃないさね!」

 

楽しみになってきた!決勝戦は元気よく戦わないと!

よし、まずは安否確認のため座席に戻るか。

 

 

リカバリーガールに治療のお礼を述べ、席に戻って行く。

先程までの振る舞いが嘘であったかのように丁寧な言葉遣いと礼儀を持って保健室を退出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなただいま!そして見舞いありがとう!!」

「石楠花くん!良かった!怪我は治っ………なんで上半身裸なの!?」

「こんなテンション上がる時に上着を着てるなんて正気の沙汰じゃないだろ?逆になんでお前ら上半身裸じゃないんだ?」

「待って!?僕たちが可笑しいの!?」

 

祭り事では裸、常識だよなぁ!!?

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!元気が有り余ってるぜえぇぇぇぇぇぇ!!ヒャッハァァァァァァァァァァ!!」

「おっ…おい、石楠花!?元気が有り余ってるのは分かったから一旦落ち着けって!?」

「フデバコ」

「うわぁ!いきなり落ち着くな!」

 

ふぅ…、上鳴の声を聞いた瞬間舞い上がっていたテンションが一気に落ち着いた。

 

奴の声にはテンション低下作用があるようだな。女子と2人きりでも発動するんじゃね?致命的だな、可哀想に。

 

「なぁ緑谷?石楠花が俺のことを「あぁ…明日死ぬんだな…」見たいな目で俺を見てくるんだけど何か知ってるか?物凄く不穏なんだが…」

「ごめん、分からないや…。でも全身全霊で憐れまれている気がするのは僕の気のせいなのかな…?」

「何で急に半裸の変態に憐れまれなきゃいけねぇんだよぉ!?」

 

なんて可哀想な奴なんだ上鳴っ…!これから女子といい感じの雰囲気になったとしても話すたびにテンションを低下させてしまい、そのままマサラタウンにさよならバイバイされるのか…っ!

 

「おい、石楠花が哀れみの表情でさめざめと泣き出したぞ」

「だから何で急に半裸の変態に憐れまれて泣かれなきゃいけねぇんだよぉ!?」

「今日のA組も平和だね!」

 

石楠花たちが茶番を繰り広げている最中、唐突にプレゼントマイクの声が辺りに響いた。

 

『さぁ!いよいよリスナーたちが待ちに待った決勝戦を初めるぜ!!対戦カードは過去に類を見ないほど盛り上がりが確定されているコイツらだ!!』

 

その言葉と共に爆豪がスタジアムに登場した。一方石楠花はと言うと……

 

「やべぇ、準備しとけと言われてたけど思いっきり忘れてたわ。どないしよ?」

 

A組の観覧席で茶番を繰り広げていたため、完全にスタジアムに出遅れた。そのためスタジアム上には爆豪しかいない。プレゼントマイクも石楠花が登場しないためか石楠花を探している。

 

「バカ!おバカ!とんでもなくバカ!!時間を忘れて馬鹿騒ぎする奴がいるかバカ!?」

「落ち着けよ我が妹ジロポン丸、このままじゃ語尾にバカと着けて話すキャラに間違われるぜ?」

「そんな奴いてたまるか!?」

「まぁ落ち着け、こんな時はとりあえず落雁食うか?」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

発狂しながら石楠花の襟を掴み前後に振る耳郎、首が大変なことになっているが呑気に落雁を食べる石楠花。オロオロする周囲。

 

緑谷も石楠花の奇行にオロオロしている一人だが、スタジアムを見てしまい一気に顔が青ざめた。

 

「しゃっ…石楠花くん!?かっちゃんが凄い形相でこっちを見てるよ!?」

「マジで?うわすげぇ、顔が血管ピキピキ赤メロンじゃん。大草原不可避。そんな顔を見せられたならばこちらも動かねば無作法というもの」

 

その言葉を皮切りに「とうっ!」という軽やからな掛け声と共に石楠花はその場で跳躍する。

 

人間では考えられない跳躍力を持ってクラスメイトを、観客を飛び越え、爆豪の待つフィールドにこそ届かなかったがスタジアムに片膝をついてカッコよく着地した。

 

「遅せぇんだよクソシャコ野郎!!俺を待たせ殺す気か!!」

「あっ待ってこれ、膝負傷したわー。これ絶対膝負傷したわー。これ爆豪のせいだわー。いてぇよー」

「ふざけんなクソカスが!!テメェで勝手に自爆しただけだろうが!!それよりテメェ怪我で実力出せませんでしたなんて言うんじゃねぇぞ?」

『石楠花、次遅れたら1年間便所掃除な?』

「さぁ始めようぜ爆豪君!準備は出来てるかい!」

「クソ元気じゃねぇか!!俺の心配返せカス!!」

 

常時賑やかな2人がフィールド内に揃った。前者は凶暴だが持ち前のタフネスと戦略をねじ伏せる実力で決勝まで上り詰めた猛者。

 

後者はイかれた行動が多々見受けられるが、技術力や直近の試合で見せた異常なまでの攻撃力と耐久性、さらにカリスマ性などを合わせ持つ猛者。

 

このカードの組み合わせに会場のボルテージは一気に高まった。

 

『さぁ!遂に両翼向かい立つ!今回の雄英体育祭のラストを飾るに相応しい男たちが出揃ったゼ!!被害が甚大でステージが破壊されることが始まる前から確定しているこの試合を彩るのはコイツらだ!!』

 

 

『駆け抜ける爆走列車こと、1-A組爆豪 勝己!!!』

 

『理解不能なハジケ甲殻類こと、1-A組石楠花 鱗』

 

 

『雄英史に残る一大決戦になるであろうこの勝負!今、STAAAAAAAAAAART!!!!!』

 

 



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出会い 〜そっとハジケを添えて〜

エイプリルフール3日目

新年明けまして、おはこんハロシャコ



 

「死にさらせえぇぇぇェェェェェェェ!!」

 

Booooooooom!!

 

開幕の狼煙は爆豪による暴言と特大の爆破で始まった。

 

『さぁ!いよいよ始まったぜ決勝戦!ド派手な個性とド派手な人物がどう激突するか見ものDAZE!てか何で石楠花上半身裸なのに誰も何もつっこまないの?』

『あいつらは同じ中学の出身だ。そして日常のあいつらを見る限り因縁なんて腐るほどあるだろ。裸なのは知らん、後で反省文書かせる』

『What's!?そんな偶然もあるんだな!じゃあそんな仲良し2人組のどちらに勝利の女神が微笑むのか!リスナーのみんなも要チェック!!それより石楠花生きてるか!?ズボンは無事か!?』

 

おいおい、チョベリグな2人組だって?照れるじゃないか。ついでにズボンも無事です。俺は裸がユニフォームだから慣れてくれみんな。

 

「仲良しな2人組だってよ、帰りにタピオカ飲んで帰る?」

「誰が飲んで帰るか!!それに仲良し2人組でもねぇわボケが!!つか躱してんじゃねぇ!!」

『石楠花生きてたーー!!てかピンピンしてる!?どうやって躱したんだ!?』

 

確かにスタジアムが爆風で覆われるぐらいド派手な爆発だった。ミッドナイト先生も風圧で吹き飛ばされていったし。ごめんよ先生、全部爆豪が悪いんだ。

 

なら何故元気ハツラツで今にもファイト一発しそうなのかって?そんなものは簡単さ。

 

「爆風殴って相殺した」

『………??』

「ケっ…、バケモンが!」

「それほどでも」

 

爆風なんてこっちからそれ相応の力で相殺してやればいいだけさ。直接攻撃は当たってないのだから風圧ごときなんとでもなる。

 

「そうだよなァ…!お前はこんなもんでくたばるワケねェもんなァ…!!」

「我、石楠花ぞ?」

「だったら疾く死ねェ!!」

 

罵声とともに爆豪は石楠花に対して爆破を連続で叩き込む。

 

爆破の風圧によって体の向きを変え、空中を動き回り全方向から攻撃を浴びせられるように駆動するその動きは天性のセンスと言えるであろう。

 

「フォッフォッフォ、サイドステップは得意なんじゃよ」

「だぁ!?クソッ!相変わらず気色悪い動きしくさりやがって!!よけんじゃねェ!!」

「気持ち悪いという枕詞を使っていいのは排水溝の滑りを表現する時だけだぞ?」

「だぁっとれボケナス!!」

 

だが当たらない。爆豪の攻撃は奇怪な動きによって悉く躱される。

腐っても相手は石楠花鱗、並の攻撃では掠りすらしない人間の中の人間。

 

それでも爆豪は歩みを止めない。爆破を止めない。

 

相手は認めたくはないが、血涙が出るほどに認めたくはないが遥かに格上。

 

今でこそ手数で押しているが石楠花の気分が変わればどうなるか分からない。

 

石楠花という男と爆豪は中学時代からの知り合いとなるが、未だ理解出来たとは思っていない。いや、思えない。

 

だからこそ最大限の危険を加味して考えられる結論は一つ、攻撃を止めてしまえばそれ即ち敗北である。

 

「おおおおぉぉぉォォォォォォ!!」

 

己を突き動かす原動力はたった一つ。負けてたまるかという不屈の心。

 

 

それは2年前のとある出来事。

 

 

何でも出来ると過信していた、周りなんて大したことないと決めつけていた、全能感の中に浸かっていたころに得た初めての敗北。

 

「テメェに最初に勝つのは俺だァァァァ!!」

 

初めて出会えた好敵手(ライバル)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは観客席から石楠花が飛び降り、試合が始まるまでの一幕。

 

「ねぇデクくん?」

「なっ…何かな麗日さん!?」

「デクくんと爆豪くんと石楠花くんって同じ中学校の出身なんだよね?デクくんと爆豪くんは幼馴染だけど石楠花くんも幼馴染だったのかなって気になって…」

「あっそれ俺も気になる!」

「私もですわ!」

 

皆の視線が一斉に集まる。視線を独り占めにし、緑谷は挙動不審になるが、質問に答えようと奮起して麗日の問いに回答した。

 

「僕とかっちゃんは幼馴染だけど、石楠花くんは違うんだ。そもそも僕と石楠花くんには雄英に入るまで接点があまり無かったんだ」

「そうなのか!?石楠花のことだから学年中の誰とでも分け隔てなく話して仲良くなってそうなイメージだが…」

「僕はそもそも石楠花くんがまるで物語の主人公みたいだったから話しかけるどころか近づく勇気がなかったし、石楠花くんは学校が終わると同時に「ヤハハハハハハハ!!」って言って直ぐ走り去っていくんだ…」

「「「あぁ…納得」」」

 

話を聞いてその映像が鮮明に脳裏に浮かび上がるのだから、石楠花という男の影響力は凄いのだなと改めて実感すると同時に、中学時代から何も変わってない石楠花に安堵を覚えた。

 

「でも一度だけ石楠花くんに助けてもらったことがあるんだ」

「おい何だその胸熱展開は!?」

「あれは僕たちが中学2年生になった頃……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中学2年生 夏

 

「おいデクテメェ!まだヒーローになるだ何だぬかしてやがんのか!アァ!?」

「ヒィっ!?」

 

緑谷と爆豪は幼馴染だった。ご近所さんだったこと、ヒーローが好きだった共通点で昔はよく遊んでいたが齢5歳にして厳しい社会の現実に直面した。

 

ある者は爆破という強力な個性が発現し、ある者は珍しき無個性という結果だった。

 

そこから少しずつ関係が変化していき、ガキ大将といじめられっ子という構図になり、その関係は中学生になっても続いている。

 

「大体無個性のテメェがヒーローになれるわけねぇだろうが!」

「そっ…そんなことわからないよ!?無個性のヒーローがいないっていうデータしかなくてもやってみないことには…」

「うっせえ!!やるやらない以前に結果が分かりきったことだろうが!!」

「勝己〜、その辺りでもうやめてやれよ〜!ハハハ!」

 

爆豪とその取り巻きに絡まれては文句をつけられる生活を送っていたが緑谷は我慢をし続け、ヒーローになることを諦めなかった。

 

 

 

そしてこの日、絶望(バカ)はやって来た。

 

 

 

「ん?」

 

最初に異変に気づいたのは取り巻きの2人いるうちの1人、仮に取り巻きAと名付けよう。

 

「なんか音聞こえねぇ?」

「あ?音だァ?」

 

取り巻きAが音が聞こえると言った直後、それは確かにこの場にいる4人の耳に届いた。何かが高速で動くような音、そしてそれは段々とこちらに近づいてくるように大きくなっていく。

 

「おっ、おい!?だんだんこっちに近づいてき……!」

 

取り巻きBの話している途中だったが、それを遮るかの如く音の正体がこの場に到達した。

 

 

 

 

 

「舞台化決定おめでとおぉぉォォォオ!!」

 

 

 

 

 

「なっ…!?誰だテメェは!」

「勝己ヤベェよ!!あの奇行…アレ石楠花だ!」

「見りゃ分かるわクソが!!」

 

流石の爆豪も石楠花の名前は知っている。学年を、いや折寺中学歴代在校生の中でも群を抜いてイカれた男だ。知らないはずはない。

 

爆豪という男に対して、石楠花 鱗は目に見える地雷だった。

 

己が人生の輝かしいキャリアを歩んでいくにあたり、知り合いだというだけで汚点になり得るような存在と関わりを持つのはリスクが高すぎる。そのため極力関わらないように細心の注意を払っていた。

 

だがそんな努力も無に変わる。

 

「やぁみんな!俺だ!出迎えありがとな!」

「急に湧いてきて何だテメェは!!早よどっか行けや!!それに敷地内で何しとんじゃ!?」

「改造セグウェイの試運転に決まってんだろ?お前愚か小僧か?」

「誰が愚か小僧だクソがァァァ!!」

「おっ、おい勝己…!関わるのは止めとけって…!」

 

石楠花の突然の乱入、からの煽りによって緑谷をいびっていたことが頭から抜け落ちた爆豪が食ってかかる様を取り巻きが必死に抑えている。

 

石楠花の登場によって解放された緑谷だが、理解が追いつかないのか今では空気だ。

 

「君は見たことあるぞ?えっと…確か同じ学年のバクゴナガル君だったかな?」

「爆豪勝己だ覚えとけカス!!」

「バクゴナガル君たちはこんなところで何してんの?」

「話しきけやクソボケ野郎が!!」

 

人がキレてようが何のその。石楠花という男のペースを崩すことはできない。元より会話がほとんど成立しないことは知っていた。

しかし爆豪は想像以上の石楠花の話の聞かなさに頭が沸騰寸前だった。

 

爆豪が怒りでどうにかなりそうな時、視線を向けた先に、壁際に座り込んでいる緑谷を見つけた。IQ53万の石楠花は瞬時にこの場で何が起き、かつ最適解を見つけ出す。

 

「サッカーやろうぜ!」

「「「誰がするか!?」」」

 

結論、石楠花だった。

 

「だあぁぁぁぁァァァ!!さっきから鬱陶しいんじゃボケが!!さっさと消えろや!!!」

 

爆豪を知っている者たちの意見としては我慢した方なのだろうが、ついに爆豪の堪忍袋の緒が切れ、強制的に石楠花を排除しようとする。

 

「勝己!よせって!!」

 

取り巻きたちが止めようとするがもう遅い。ことの成り行きを見守っていた緑谷もこの後の爆豪の行動が予想できたのか、力強くギュッと目を瞑る。しかしそんな爆豪に待ったをかけるものがいた。

 

「まぁまぁ、一旦落ち着けよ」

 

何を隠そう石楠花本人だった。

自分のせいだという自覚がまるでなく、子供の癇癪をなだめる大人のように爆豪に優しく語りかけ、落ち着かせるように自身の手でそっと爆豪の肩を抑えた。そして……

 

 

 

 

「なんだテメ…」

「ぐぼでろぼしゃああぁ!!」

 

吐血しながら盛大に吹き飛んだ。

 

 

「なん…っ!いきなり何しとんだテメェはよォ!?」

「お…折れ ごふっっ!!い…今…肩を…叩いたアレで全身の骨が…粉々に…!」

「肩を叩いたアレでって何だクソが!!テメェが自分で叩いたんだろーが!!」

 

急な出来事に爆豪の頭は混乱する。今までの人生において、今目の前にいる人間の範疇を超えた理解の及ばない生物を見たことがあるだろうか?いや、ない。

 

急な出来事に緑谷の頭は混乱する。結果的にやっかみから助けて?もらった相手が人間の範疇を超えた理解の及ばない生物であると信じられるだろうか?いや、ない。

 

「なっ…なぁもう行こう……!?」

「そうだぜ勝己!やべぇよ!何がって言葉に出来ないぐらいやべぇ……!?」

 

取り巻きたちはそれ以上話すことはなかった。何故なら口に落雁を詰め込まれ、白目を剥いて倒れていたからだ。

 

獣は虎視眈々と狙っていた。油断させて大きく口を開ける瞬間を。自身が大好きな食べ物を味わってもらう瞬間を。

 

先程まで吐血して醜態を晒していた男はもういない。落雁の袋を片手に背中で語る男が1人、風を靡かせ立っていた。

 

「私、いじめ撲滅委員会会長の石楠花というものです」

「テメっ…!」

 

爆豪が殴りかかるがもう遅い。

片手で捌き、相手が目を見開いてる隙に落雁をプレゼントする。

 

たとえセンスの塊である爆豪であろうとも彼の前では子供に等しい。さっきまでの狂人感がなりをひそめ、爆豪を片手間に完封する強者がそこにはいた。

 

簡単に3人を沈めたその男は、スタスタと未だ呆然とする緑谷の前まで足を運び……

 

 

「この落雁をもじゃる丸に預ける。俺の大切な落雁だ。いつかきっと返しにこい。立派な電ボになってな…」

 

 

そう言ってセグウェイに乗って帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

なお落雁の袋を持っていたせいで、この一件の犯人が緑谷ということになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の学生生活は変わりはなく、石楠花も爆豪も緑谷も日常生活に戻った。

 

いや、一点だけ変わった点がある。

 

それは違うクラスであるにも関わらず爆豪は石楠花に対抗心を燃やし、勝負を仕掛けるようになったことだ。

 

 

「おい舐めプ野郎!体力測定の結果で勝負しやがれ!!」

「我、結果学年1位ぞ?」

「ああおあァァア!?クソがぁァァ!!」

 

 

 

「見ろカス!!期末の英語の点数俺は100点だ!テメェはどうせ赤点だろ!!」

「拙者は102点でござる」

「その2点は何処から湧いて出たんじゃクソが!!」

 

 

 

「おいボンバーマン!帰り道にコンビニで北海道買ってヘラクレスオオカブト捕まえに行こうぜ!」

「理解できる日本語で喋りやがれや!!あと誰がボンバー…おい離せひきずっていくなボケがあぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、こんな感じで助けてもらったんだ」

「「「いや濃っ!?」」」

 

 

「何も変わってねーじゃん!ツッコミどころしかねーじゃん!!お前犯人にされてんじゃん!!?」

「まぁ…でも助けられたのは事実だし…」

「いい子が過ぎる!!」

 

 

 

中学生とはいえ、石楠花は石楠花。

何も変わってないなと感心する者、ヤバすぎんだろと驚愕する者、何してるんだと呆れる者、流石ですわ!とプリプリする者、皆が三者三様の感想を浮かべていた。

 

 

中学時代の石楠花の奇行に戦々恐々とする中、特大の爆発を耳にする。

急いでステージに目を向けると、そこには信じられない光景が広がっていた。

 

元々目にしていた者たちは驚愕し、会話していた者たちは目を疑った。

 

 

 

 

 

その目に映るは腕を振り切った爆豪と、吹き飛ばされた石楠花。

 

 

 

 

「ようやく一発だ…、やっと届いたぜ石楠花さんよォ!!」

 

『おーっとぉ!!ついについに爆豪の一撃が石楠花にクリーンヒットォォ!!これは効いたんじゃねーの!!』

 

 

 

 

 

涓滴岩を穿つとはまさにこのこと、中学時代の因縁が今まさに実を結ぶ時。

 

石楠花の横顔に渾身の一撃が直撃する。

並の生徒ならもう負けていただろう。爆発する一撃が直撃し、無事な人間などまずいない。普通なら。

 

 

 

 

 

そう、普通なら。

 

 

 

 

 

大怪我では済まないような一撃を受けてもなお石楠花は………

 

 

 

 

 

 

 

 

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