【WR】虹ヶ咲RTA_称号『虹の楽園』獲得ルート (一般紳士君)
しおりを挟む

1章 みんなで叶える物語
Part1/n


初投稿です。

ふと思いついたので書きました。


 はーい、よーいスタート。

 

 ヒロイン達を口説きまくるRTA、はーじまーるよー。

 

 今回走っていくのはスクスタのPC版です。

 PC版とされていますが、実際にはスマホ版とは全くの別ものです。本作はスマホ版の設定を元に、主人公がメインキャラ達といろいろな形で関わることができるゲームとなっています。マネージャーとしてサポートしたり、ファンとして応援したり、恋人になったりもできます。ちなみに、本作ではあなたちゃんが高咲侑ちゃんとなっています。

 発売当初は虹ヶ咲学園ルートしかありませんでしたが、最近の大型アップデートで音ノ木坂学院ルートと浦の星女学院ルートも解放され、虹学メンバーだけでなくμ'sやAqoursのメンバーともイチャイチャできるようになりました。このアップデートに驚いた兄貴達も多いのではないのでしょうか。俺もそーなの。

 

 さて、今回は虹ヶ咲学園ルートで称号『虹の楽園』の獲得を目標とします。計測開始はオープニング開始と同時、計測終了は称号獲得の文字が表示されるまでとします。

 この称号の獲得条件ですが、主人公が虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバー全員と恋人になることで獲得できます。なお、このメンバーの中には侑ちゃんと栞子ちゃんも含まれています。11股とはたまげたなぁ……。ちなみに、ランジュちゃんとミアちゃんはまだ未実装なので含まれません。早く実装してくれよな~頼むよ~。

 

 今回RTAをするにあたって先駆者様を探したのですが見つけることができませんでした。そのため私がレギュレーションを作成しました。先駆者がいないため私が世界1位です。皆もRTAやって、どうぞ。

 

 では早速キャラクリをやっていきましょう。キャラクリはタイムに含まれないのでじっくりとやっていきます。

 まずは名前ですが、入力速度を考慮せずに『堀口(ほりぐち)元樹(もとき)』君にしました。略してほも君です。

 次に容姿作成です。オート作成もありますが、ここは拘ってやっていきます。というのも、主人公の容姿がキャラの親密度の上昇に深く関わってくるからです。容姿がそのキャラの好みならば親密度が上がりやすくなります。今回は全員を堕とす必要があるため、なるべく全員にプラス補正がかかる容姿にします。動画時間の都合上ここはカットです。

 次にステータスにポイントを振り分けます。ステータスは『筋力』『持久力』『技能』『学力』『魅力』の5つがあります。筋力と持久力は同好会の手伝いをする際に必要となります。技能が高いとメンバーの衣装作成や作曲などの手伝いをすることができます。これらの手伝いをすることで親密度が上昇します。学力は定期テストや小テストの成績に関わります。テストの結果が悪いと補習イベントが発生し、メンバーとの交流時間が減ってしまいロスとなります。魅力は親密度と友好度の上昇にプラス補正がかかります。

 初期ポイントは5ポイントなので、技能2、学力1、魅力2で振り分けます。筋力と持久力は同好会の手伝いをする中で少しずつ上昇していくためポイントを割り振る必要はありません。技能に振る理由は衣装作成で上昇する親密度が非常においしいからです。作曲には技能が4必要ですが、衣装作成は2で解放されます。だから技能に2振る必要があったんですね。学力に1振る理由ですが、ランダムで発生する抜き打ちテストを乗り越えるためです。先程も言った通り、テストの成績が悪いと補習イベントが発生しロスとなります。勉強会イベントなどで学力を上げることも可能ですが、そのイベントが発生するより前に抜き打ちテストされるとまずいです。だから学力を上げる必要があったんですね。魅力を上げる理由は言わずもがなですね。

 

 これでキャラクリが終わりました。学年や学科などはゲーム開始時にランダムで決定されます。目的のものを引くまで祈れ。

 

 では、オープニングにイクゾー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オープニングはスキップができないので、その間に今回のチャートの簡単な解説をしたいと思います。

 

 今回はりなりー幼馴染、栞子ちゃんクラスメイト、スクールアイドル同好会所属ルートでやっていきたいと思います。幼馴染などの要素は先程言った通り完全にランダムなので、目標の条件を引くまでひたすら祈ります(n敗)

 

 りなりーが幼馴染である理由ですが、それはりなりーが幼馴染の時にもらえるコンディションが目的です。

 このゲームにはコンディションなるものが存在し、主人公に様々な効果をもたらします。例えば、『世渡り上手』は教師や生徒会との友好度が上がりやすくなります。『ダジャレ上手』は侑ちゃんと愛さんの親密度が上がりやすくなります。といっても、元々この2人は親密度が上がりやすい方なので今回のRTAではそこまで意味がなかったりします。

 りなりーが幼馴染の時にもらえるコンディションは『コミュニケーション○』です。これはメインキャラの親密度とモブキャラの友好度が少しだけ上がりやすくなります。私スタイルコミュニケーションです。

 また、りなりーは二股しやすいのも理由の1つだったりします。幼馴染は初期親密度が高く、基本的には一番最初に付き合うことになります。このゲームでは最初に付き合ったキャラによって二股のしやすさが変わります。りなりーは寛容なのでほったらかしにしない限りはそこそこ二股しやすいです。歩夢ちゃんだと二股はまず無理です(1敗)

 

 次に栞子ちゃんとクラスメイトである理由ですが、栞子ちゃんが本RTAにおける最大の強敵だからです。

 皆さんご存じの通り、スクスタで栞子ちゃんはスクールアイドル同好会を目の敵にしていましたが、それは本作でも変わりません。そのため、主人公がスクールアイドル同好会に所属していると初期親密度が非常に低くなってしまいます。というかほぼゼロです。この状態から栞子ちゃんを堕とすためには栞子ちゃんを優先して口説きに行く必要がありますが、そうすると他のキャラの親密度上げが微妙に間に合いません(5敗)

 しかし、栞子ちゃんとクラスメイトでスタートすると初期親密度がやや低いで収まります。また、本来であれば栞子ちゃんとは生徒会長選挙まで関わることができませんが、クラスメイトであればそれ以前でも関わることができるため親密度が上げやすくなります。

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子) それだったら栞子ちゃんと幼馴染になればいいだろ! と考えた兄貴も多いと思います。残念ながら栞子ちゃん幼馴染ルートはかなり厳しいです。その理由ですが、栞子ちゃんが生徒会長に当選した際に親密度が高いと仲違いイベントが発生してしまいます。仲違い状態では親密度が一時的にゼロで固定されてしまい、これは栞子ちゃんが同好会に加入するまで解消されません。この仲違いイベントは栞子ちゃんと恋人になっていても発生し、恋人状態も一時的に解除されてしまいます。よって栞子ちゃん幼馴染ルートでは大きなロス要素があるため最終タイムが遅くなってしまいます(2敗) めんどくせぇ女だな(直球)

 

 スクールアイドル同好会所属ルートですが、これは単純にメンバーと一番接触しやすいからです。他にも生徒会ルート、ファンルートが考えられますが、どちらもメンバーとの接触機会が減ってしまうため親密度上げが間に合いません(4敗) あと、同好会に初期から所属していると初期メンバーの初期親密度がやや高くなるため、少しだけ親密度上げが楽になります。

 

 さて、ざっくりとしたチャート解説ですが、まずは最速でりなりーを堕としにかかります。具体的にはストーリー3章、侑ちゃんがAqoursに会いに行くまでにはりなりーの告白イベントを発生させたいところです。それ以降堕とす順番はそこまで大きな差はないので適当でいいです。ですが、栞子ちゃんだけは最後に堕とします。これは仲違いイベを回避するためですね。ですが、栞子ちゃんの親密度を全く上げていないと後が大変になるため仲違いイベが発生しないレベルまでは上げます。

 

 

 

 

 

 やっとオープニングが終わりましたね。オープニングだけで5分あってスキップできないとか、ふざけんな!

 

 まずはほも君のステータスを確認しましょう。

 幼馴染欄に『天王寺璃奈』の文字確認、ヨシッ! 部活動欄に『スクールアイドル同好会』の文字確認、ヨシッ!

 コンディションは『コミュニケーション○』と『睡眠不足』、『勉強苦手』が付いていますね。睡眠不足だと低確率で授業中に居眠りしてしまうイベントが発生します。このイベントが発生するとクラスメイトの親密度、友好度が少し減少してしまいます。また、勉強苦手は学力がやや上昇しにくくなります。

 う~ん、どちらも全く嬉しくないコンディションですが、これでもし栞子ちゃんがクラスメイトならこのまま続行することにしましょう。(リセゲーはもうやりたく)ないです。

 

 ステータスの確認が終わったので辺りを見渡してクラスメイトを確認します。栞子ちゃんは……おっ、見つけました。しかもほも君の右隣に座っています。これはかなりラッキーですね。

 へいっ、しおってぃー、元気にしてる?

 

「元樹さん、今はHR中ですよ。あまりキョロキョロしないでください」

 

 栞子ちゃんがほも君のことを下の名前で呼びましたね。栞子ちゃんは親しくならないと下の名前で呼んでくれないはずなのですが……。ほも君がスクールアイドル同好会所属ということで初期親密度もやや低いくらいで、この程度だと下の名前で呼んでくれることはないのですが……おかしいなぁ。

 ま、えやろ。下の名前で呼ぶ程度ではまだ仲違いイベは発生しないため、むしろ親密度上げが楽になったと考えましょう。

 しおってぃー今日暇? この辺にぃ、うまいラーメン屋、できたらしいんすよ。

 

「ラーメン、ですか? すみません、今日は用事があるので……」

 

 ふむふむ、今のやり取りで分かりました。栞子ちゃんとはやや親密ではありますが、一緒に遊びに行くような仲ではなさそうですね。これならば仲違いイベは発生しません。栞子ちゃんが生徒会長に当選するまでは今の親密度を維持する感じでいきましょう。

 

「ですが、明後日は用事がないので……その、連れていっていただけませんか?」

 

 ファッ!? これはまずいですねぇ。親密度が仲違いイベラインです。これを敢えて断って親密度を下げに行ってもいいのですが、親密度は一度下がると上がりにくくなるためできれば下げたくないのが本音です。うーむ……。

 

「ありがとうございます。明後日、楽しみにしておきますね」

 

 冷静に考えたのですが、別に当選まで待つ必要はないんですよね。当選までに全員と付き合っても称号を獲得できます。だから栞子ちゃんの親密度もガンガン上げにいくことにします。素晴らしいチャートだぁ。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




続くかもしれない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part2/n

思ったよりいい感じの評価がもらえたので初投稿です。


 開始早々にチャートを変更するRTA、はーじまーるよー。

 大胆なチャート変更はRTA走者の特権。

 

 前回はキャラクリをして栞子ちゃんにデートのお誘いをする所までやりました。

 続きを始める前に、前回栞子ちゃんの初期親密度が高かった件についてわかったことがありましたので皆様にお伝えします。どうやら主人公が『コミュニケーション○』を所持していて、尚且つ栞子ちゃんと席が隣同士の場合初期親密度が高くなるようです。視聴者兄貴から教えていただきました。どうやら専用イベントも用意されているようです。ですが、そのイベントはサブストーリー扱いのためこの動画では当然倍速で読み流します。RTAなんだから当たり前だよなぁ?

 以上、前回の振り返り終わり!

 

 

 

 

 

 HRが終わったためようやくほも君の自由行動が解放されます。部活に行く、家に帰る、遊びに行くなどのコマンドが使えるようになります。家に帰るコマンドは特別なイベントがない限り即その日を終了して翌日に移行します。遊びに行くコマンドでは様々な恩恵を得ることができます。例えばゲームセンターに行けば主人公のやる気が上がり、本屋に行けば学力が上がり、時々コンディションを得ることができます。

 初日は部活に行くコマンドでスクールアイドル同好会に訪れるのが安定です。その理由はかすみんの親密度を下げないためです。現状のほも君は理由を説明せずに同好会を休んでいる状態です。そのため、このまま同好会に行かないままでいると、1人で生徒会から同好会を守っているかすみんの親密度がどんどん下がっていってしまいます。それは美味しくないため、初日に同好会を訪れるのが安定というわけです。どうせ初日は何もやることがありませんし。

 りなりーから一緒に帰ろうと連絡が来ていますが、用事があるから先に帰っててと返しておきます。悪いね、今から可愛い女の子達を口説いてくるんだ。

 では、同好会にイクゾー!デッデッデデデデ!

 

 

 

 同好会の前に着きました。ほも君は瞬間移動の使い手なので学内を一瞬で移動することができます。ドアを開けて中に入ろうと思いましたが、先客がいるのか既にドアが開いてますね。おっ、開いてんじゃ~ん!

 

「あっ! もと男!」

 

 皆さん大好き中須かすみことかすみんのお出ましですね。もと男はほも君のことです。かすみんのネーミングセンスはよくわかりませんね。

 ほも君はかすみんに会うのが久し振りなのでしっかりと挨拶しましょう。

 (同好会)冷えてるか~?

 

「もと男がいない間に大変なことになってるんだから!」

 

 ここからかすみんが同好会の現状を説明してくれますが、これはRTAなので当然ボタン連打で流し読みします。メインストーリーには倍速機能がなく、メインストーリーに関係のないサブストーリーのみ倍速機能があります。さらに、本作はメインストーリ―がフルボイスとなっていて、キャラがセリフを言い終えるまで次のセリフに進むことができません。そのため、メインストーリ―を効率的に読み飛ばす方法はセリフの終盤まで来たらボタンを連打するか、ちょうど読み終えるタイミングでボタンを押すかの2択です。私にはタイミングよくボタンを押すことが安定してできなかったため、ボタンを連打することにしています。コントローラー壊れちゃ~う!

 

 かすみんの話した内容を要約しましょう。

 同好会内でちょっとした衝突があり、そのせいでかすみん以外のメンバーが同好会に来なくなってしまいました。部員が足りておらず、活動実績もない同好会は解散だ、と鬼生徒会長がスクールアイドル同好会を取り潰そうとしているようです。同好会が取り潰されるのは月末なので、それまでに何とかして阻止しようとかすみんは頑張っているみたいですね。

 同好会の現状はわかりました。けど、さっきからかすみんの隣にいる可愛い女の子は誰だよ、かすみんの彼女か?

 

「私? 私は高咲侑、よろしくね!」

 

 はい、この子は皆さんご存じ高咲侑ちゃんです。Part1で言った通り、本作ではあなたちゃん=高咲侑ちゃんです。侑ちゃんはかすみんの彼女じゃなくてほも君の彼女(将来的には)です。

 

「私、スクールアイドルの皆を応援したくてここまで来たんだけど、まさか同好会がこんなことになってるなんて……。でも、同好会がなくなるのは嫌だから、私にできることならなんでも手伝うよ!」

 

 ん? 今なんでも手伝うって言ったよね? じゃあ君もやろっか、スクールアイドル。

 

「わ、私が? 私なんかがやっても似合わないよ……」

 

 ここは『なら仕方がない』と『可愛いから大丈夫』の2つの選択肢がありますが、ここは当然後者を選びます。侑ちゃんはとにかく可愛いと言っておけば2人きりで遊びに行けるラインまでは親密度が上がります。ちょろいぜ。

 

「可愛い!? 私が!?」

 

 照れる侑ちゃんは可愛いなぁ。ああ^~たまらねぇぜ。

 侑ちゃんは馬のコスプレをして踊るのがいいと思います。レースをするのもいいと思います。キミと夢をかけたいですね。

 

「もぉーからかわないでよー」

 

 照れる侑ちゃんを観賞するのはここまでにして、そろそろ話を進めます。親密度はまだまだ足りませんが、現時点でこれ以上上げようとすると上昇量がガクンッと落ちてしまい、効率が非常に悪くなります。ここからさらに親密度を上げようとするとロスになってしまうため、親密度上げはまた別の機会にすることにします。

 それじゃあ、生徒会室行こっか。

 

「なんで生徒会室に行くの?」

 

 生徒会長に直談判しに行きます。生徒会長が取り潰そうとしているなら、直接話をつけに行くほうが早いですしお寿司。交渉は侑ちゃんがやってくれますしね。

 

「私が交渉するの!?」

 

 さっきなんでも手伝うって言ったよね?

 

「確かに言ったけど……うぅ」

 

 時間も惜しいのでとっとと移動しましょう。

 では、生徒会室にイクゾー!デッデッデデデデ!(カーン)

 

 

 

 生徒会室前まで着きました。辿り着くまでに侑ちゃんが正反対の方に走り出すランダムイベントが発生しましたが私は元気です。幸先が悪いですね。そんな確率の高いイベントではないはずなんですがねぇ……。

 今から生徒会長とご対面ですが、どうやら侑ちゃんは緊張している様子です。ほも君がリラックスさせてあげましょう。生徒会室は初めてか? 力抜けよ。

 

「……うん、そうだね。私頑張るよ!」

 

 どうやら上手くリラックスできたようです。こうやってキャラの緊張をほぐすだけでも親密度が上がったりするので、こういったイベントはしっかりと回収していきます。

 

コンコン

 

「どうぞ」

「失礼します! 今日は会長にお願いしたいことがあって来ました!」

 

 鬼生徒会長と呼ばれるくらいだからどんな怖い人なんだろう、と予想していましたがどうやら生徒会長はとても可愛らしい人のようですね。おさげがとても似合っています。実はスクールアイドルとかやってたりしない?

 

「あなたは確か2年生の高咲侑さんですね」

「え? なんで知ってるの?」

「この生徒会長、学校にいる全員の顔と名前を記憶してるんですよ」

「すっごーい……」

「そういうところが、かすみんは苦手なんですけどぉ。ロボットっぽいていうかぁ……」

 

 私だってやろうと思えば(王者の風格) なんたってチャートをちゃーんと暗記してますからね。―――ごめんなさい、嘘です。滅茶苦茶カンニングしてます。

 

「はじめまして、私は生徒会長の中川菜々です。……それで、ロボットみたいな私に何か御用ですか?」

「やばっ、聞こえてた……」

 

 ロボット菜々さんは現時点では親密度を上げることができないため、ここは特に干渉しません。もう少し後にかすみんの親密度を上げることができる場所があるため、そこまでボタン連打です。

 

 一応話をまとめておくと、スクールアイドル同好会の解散の取りやめはできないようです。

 この学校はスクールアイドル活動を盛り上げるために同好会を設立して、スクールアイドル活動を希望する生徒の編入の受け入れもやっていました。そういうこともあって最初は順調に進んでいましたが、唯一実績を作った優木せつ菜という生徒が同好会に亀裂を入れてしまいました。人が戻ってくるかどうかわからない同好会より、きちんと活動している同好会に部室をあてがうべき、と生徒会長は言います。

 ここのシーンはかすみんの良さがわかる非常に良いシーンです。かすみんはせつ菜ちゃんが亀裂を入れたなんて思っておらず、そもそも誰も怒っていない、わかったようなこと言うな! と生徒会長に言い放ちます。ええ子やでほんま……。

 

「あの、ちゃんと人数もいて活動していれば、存続を認めてくれるの?」

「それはもちろんです」

「だったら、部室の使用期限までに同好会に足りる人数を集める! それならいいよね!?」

「……」

「同好会を潰さないでください!」

「……わかりました。ただし、ひとつ条件を出させてください。11人。11人の部員を集めてきたら同好会の存続を認めましょう」

 

 1ヶ月で、11人!

 本作では主人公君の存在があるため、スクールアイドル同好会所属ルートだと11人集めることになります。ですが、これは主人公含めて11人なので新たにメンバーを集める必要はありません。

 

「えー!? なんで11人なんですか!? 同好会は5人いれば成立じゃないですかぁ!」

「確かに。でも、今現実に6人が2人になってしまっているのです。また同じ人数では二の舞になるのではないですか?」

 

 生徒会長の意見も一理ありますね。どうやら11人集めるしかなさそうです。

 

「11人もいれば、同じように何人かが活動しなくなっても残りでなんとかできるという判断の下です。私に直談判しにくる情熱があれば、難しくないことでは?」

「うぅ……無茶言わないでくださいよぉ……」

 

 さて、ここからがほも君の出番です。かすみんにかっこいいところを見せましょう。

 11人集めれば部室返して頂けるんですか?

 

「もちろんです」

「もと男?」

「元樹君?」

 

 たかが11人、パパパッと声かけて、終わりっ! だから2人とも一緒に頑張ろう!

 

「……そっか、そうだね。かすみちゃん、やってみようよ! 絶対スクールアイドルでいたいって言ってたよね!? 私も手伝うから!」

 

「もと男……先輩……。……わかりました! 11人集めましょう! やってやりますよお~!」

 

 かすみんが元気になってくれてよかったです。かすみんはやっぱり元気が一番だぜ。

 

 ここでは主人公自ら集めると言い出すことでかすみんの親密度を大きく上げることができます。やったぜ。やっぱり自分のために動いてくれるっていうのはすごく嬉しいことだからね。親密度も上がるよね。

 

 では、早速同好会に入ってくれる人を探しに行きましょう。といっても、入るメンバーは知ってるんですけどね。探し回る必要はないんだ。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part3/n

気持ちはいつでも初投稿です。


 素敵な仲間を探すRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は生徒会長に啖呵を切ってかすみんの親密度を上げた所で終わりました。今回はその続きからで、同好会のメンバー集めをします。生徒会長から指定された条件は11人でしたが、9人集めた所でメインストーリーが進み、10人目と11人目が加入します。現在はほも君とかすみんの2人なので、集めるべきメンバーは残り7人ですね。えっ、侑ちゃんはどうしたって? 侑ちゃんは11人目だよ(ネタバレ)

 

 早速メンバー探しに行きたい所ですが、ここは一旦部室に戻って作戦会議をします。このイベントを踏まないと先に進めません。部室に戻らずに生徒会室から歩夢ちゃんの教室に直行しても何のイベントも起きません(13敗)

 

「よーし、じゃあ作戦会議ですよ!」

「私、このスクールアイドル同好会がどうして今みたいになったのか、これまでの経緯を全然知らないから、いろいろ教えてほしいんだ」

「わかりました! なんでもかすみんに聞いてください!」

 

 ん? 今なんでも聞いてくださいって言ったよね?

 まぁ、ほも君はかすみんに聞くことは何もありませんが。ほも君もどうしてこうなったのか詳しい事情を知りませんが、かすみんと侑ちゃんの会話だけで必要な情報は集まります。なので、ほも君が何を聞いてもロスにしかなりません。

 

 かすみんの話を要約すると、部活動研究発表会でライブを開こうとしたけど、各々のやりたいことがバラバラでうまくまとめられず、結局発表会に出られなかったらしいです。この件でかすみん達は一緒の方向に行けないんだと気付き、お互い遠慮するようになってしまい、皆だんだん来なくなって自然消滅してしまった、という流れです。

 ちなみに、この件にほも君は一切関わっていません。大事な所でメンバーを支えてあげられないマネージャーの屑。このゲームの主人公は同好会所属スタートだと毎回何かしらの理由で発表会前から部活に来なくなります。今回のほも君は学力がやや低いので、多分補習地獄だったとかじゃないですかね(適当)

 

「情熱があればなんでもできるわけじゃないってわかったのはいい勉強になりましたよ、ほんと」

 

 ん? 今なんでも(以下略)

 

「……でも、情熱って大事だと思う。きっと、近江さんも桜坂さんもエマさんもスクールアイドルへの情熱は捨ててないと思うよ。新しい人を集めるより、まずは元々いたメンバーに戻る意思がないかちゃんと確かめてみようよ」

「さ、さっきは会長の前で大きなこと言っちゃいましたけど、戻ってきてくれますかね……」

 

 大丈夫だって安心しろよ~。

 

「もと男は何を根拠に大丈夫って言えるの?」

 

 根拠は私の経験です。試走を含めてこのRTAを100周以上やっていますが、一度も戻ってきてくれなかったことはありませんからね。

 

「元樹君は皆のこと信頼してるんだね」

 

 皆大切なほも君の彼女(予定)ですからね。

 それに、情熱はそうそう消えないということはかすみんだってよく知ってるはずですからね。

 

「かすみんがですかぁ?」

 

 誰も来ない部室を1人で守ったり、1人で練習を続けたり、そんなの情熱がないとできませんからね。これって……勲章ですよ。

 

「な、なな、何言ってるの! 私は別にそんな……」

 

 じゃあその足のテーピングは何なんですかねぇ。練習の時に足をやったんじゃないですか?

 

「……なんか、もと男、目良すぎない?」

「ふふっ、元樹君、かすみちゃんのことちゃんと見てるんだね。大切に思ってるのが伝わってくるよ」

「もぉ、先輩までぇ……」

 

 かすみんに対してはお前のことちゃんと見てるぜ(イケボ)というのをしっかりとアピールすることで効率よく親密度を上げることができます。ほも君がちゃんと自分のことを見ていてくれて嬉しくなるかすみん可愛い。泣き顔も笑い顔も全部見てあげるからね。

 恋愛にすら効率を求めるほも君はRTA走者の鏡で人間の屑。視聴者兄貴達は現実の恋愛で効率を求めるのはやめようね。

 あと、気持ちを込めて可愛いと言ってあげることでも親密度が上がります。かすみんは可愛さでは絶対に負けられませんからね。

 

「こほんっ。この話はここまでにして、早速行きましょうか。試しに話してみるだけでも損はしませんしぃ」

「かすみちゃん、耳、赤くなってるよ」

「赤くなってなんかないです! もと男も勘違いしないでよ! 照れてなんてないから!」

 

 照れてるのを必死に隠そうとするかすかすは可愛いなぁ。

 

「照れてないってば! あとかすかすじゃなくてかすみん!」

 

 適度なかすかすは何故か親密度が上がりますが、あまり言いすぎると親密度が下がるので気を付けましょう(1敗)

 

 では、同好会メンバーの説得にイクゾー!デッデッ

 

 

 

 説得に行くと言ったな。あれは嘘だ。

 今度の同好会は前とは違うというのをわかってもらうため、侑ちゃんの意見で頑張っていける人に入ってもらうことにしました。

 

「ええっ!? わ、私がスクールアイドル同好会に!?」

「お願い! 頼れるのは歩夢だけなんだ!」

 

 皆さんご存じ上原歩夢ちゃんです。

 本作においても歩夢ちゃんの独占力は遺憾なく発揮されています。歩夢ちゃんと幼馴染や恋人だとすぐに嫉妬してきますし、他の女の子と2人で出かけると平気でストーカーしてきます。全キャラの中でバッドエンドになりやすいキャラ堂々の第1位です。今までに何人ものほも君がバッドエンド行きになりました。歩夢ちゃんは嫉妬心を隠しやすいため、気付かないうちに気持ちが爆発していることが多いです。そんなの対応できないよ~。あと、本作はご丁寧なことにどのキャラも全バッドエンドパターンフルボイスです。迫力があって普通に怖いのでちびらないように気を付けましょう(1敗)

 あと、歩夢ちゃんの親密度が低いときに侑ちゃんを露骨に口説きにかかると歩夢ちゃんの親密度が下がるので気を付けましょう(3敗) こんな所でも独占力発揮しないでくれよな~頼むよ~。

 ここまでだと歩夢ちゃんがただただめんどくさい女みたいに見えますが、当然そんなことはありません。まず親密度がかなり上げやすいです。遊びに誘えば簡単に2人きりで出かけられます。それに加えて、歩夢ちゃんは純粋なのでほも君が愛を囁けば簡単に騙せ……想いを伝えることができます。

 また、歩夢ちゃんは面倒見が良いので主人公が困っている時はすぐに手を貸してくれます。特に今回のほも君は学力が低めなので勉強会でお世話になることが多いと思います。学力が10になるまでは積極的に勉強会をしましょう。学力が10になると優等生扱いになり、果林さんやかすみんに勉強を教えられるようになり、親密度を稼げます。同学年のかすみんはともかく、先輩の果林さんにはどうやって勉強を教えるんですかねぇ。

 

「あ、あんな風に歌ったり踊ったりするの、私には無理だよ! 私なんかとは世界が違う感じだったし……」

 

 大丈夫大丈夫。頑張れば宇宙一のスクールアイドルにだってなれるから。どのくらい頑張ればいいかは知りませんが。

 

「歩夢って昔からどんなに苦しい時でも頑張れる子で、すごいなってずっと思ってたんだ」

 

 ふむふむ。侑ちゃんがそこまで言う人が同好会になるなら、他の人も一緒に頑張ってくれるかもしれないですねぇ。

 

「うん、私もそう思うよ」

「……」

 

 おや? かすみんの様子がおかしいですね。進化するのかな?

 

「かすみんだって……頑張れるけど……」

 

 ほんとぉ?

 

「ほんとだってば。もっとかすみんのこと信じてよぉ……」

 

 侑ちゃんの発言に対して嫉妬しているのかと思いましたが、どうやらほも君の発言に対して嫉妬しているみたいですね。これはいい感じにかすみんの親密度が上がっている証拠ですよ。『コミュニケーション○』と練り上げたチャートがかなり効いてますね。

 ここは、かすみんがいっぱい頑張れることはもちろん知ってる、と答えてあげましょう。もちろん侑ちゃんは頼りになりますが、それでも助っ人は多いに越したことはないですからね。1人で部室を守ったり、練習を続けたりできる子が頑張れないわけがないんだよなぁ。

 

「もと男がそう言うならいいけどぉ……」

「そっか、元樹君は私のこと頼りにしてくれてるのかぁ……」

 

 そうですね、これから侑ちゃんに頼りまくります。具体的には同好会の音楽関係は全て侑ちゃんに丸投げします。あと、親密度の上がらない無駄なランダムイベが発生しないことにも期待してます。侑ちゃんは無駄なランダムイベがかなり多いですからね。ランダムイベでタイム伸ばすのやめちくり~。

 

「あはっ、侑ちゃんはやっぱりすごいなぁ」

「えっ、そう?」

「だって、スクールアイドル部を探しに行って、そこが潰されそうって聞いたらすぐ部員集めに走って……。それに……それに、会ったばかりの後輩君にこんなに頼りにされてるなんてすごいよ!」

 

 もちろん歩夢ちゃんにも期待してますよ。具体的にはバッドエンドに行かないことに期待してます。嫉妬心を隠さないで、全部ほも君に伝えてほしいな。最低限の対応はするからさ。

 

「……ねえ、幼稚園の時のこと、覚えてる?」

 

 始まりました。歩夢ちゃんお得意の幼馴染マウントです。これを遮ってしまうと親密度がガクンッと下がります。また、主人公と歩夢ちゃんが幼馴染の時はこの幼馴染マウントが主人公に飛んでくることがあります。この時に覚えてないなどと返してしまうとバッドエンドに大きく近づいてしまうので気を付けましょう(無敗)

 

「……私、侑ちゃんがいたからいろんなこと頑張ってこられたんだ。だからね、あなたと一緒に、スクールアイドル頑張りたい」

「ほんとっ!?」

「えっ、いいんですかぁ!?」

「ありがとう、歩夢! 一緒に頑張って、たくさんの人を笑顔にしようね!」

「うん! これからよろしくね! 後輩ちゃんと後輩君も……えっと、かすみ……さん? それから元樹君……でいいのかな?」

「歩夢先輩は先輩なんですから、かすみんって呼んでくれていいですよ!」

 

 私のこともほも君って呼んでもいいですよ。

 

「でも、部活ではかすみさんの方が先輩だし……」

「も~! もっとフレンドリーにしてくれていいんですよっ! だってこれから同好会の仲間になるんですし~!」

「フレンドリー……あだ名とか? えっと……中須かすみちゃんだから……かすかす?」

「ぎゃー! なんで昔のあだ名知ってるんですかー!? かすかすはダメですー! 禁止禁止!」

「か、かすみちゃんでいいよね? ねっ、かすみちゃん!」

「それで! それでお願いします!」

「ご、ごめんね、これからよろしくね、かすみちゃん。元樹君のことは何て呼べばいいかな?」

 

 ほも君だっつってんだろ(半ギレ)

 

「じゃあ……もと君なんてどうかな?」

「あ、いいねそれ! どう、もと君?」

 

 そう……(無関心)

 

「それじゃあ、これからよろしくね、もと君」

 

 オッスお願いしまーす。

 

「私、スクールアイドルって全然勉強したことないからわからないことだらけだけど……頑張るから、たくさんいろんなこと教えてね」

 

 経験豊富(100周以上)なほも君がその素晴らしい体にみっちりと教えてあげます。

 

「もちろんです! スクールアイドルとしては、かすみんの方が先輩なんですからねっ!」

「よーし、じゃあ、残りの人達にも戻ってきてもらえるよう皆で頑張ろう!」

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




『かすみん→同級生』の時のかすみんの口調が難しいナリ。

ちょっとしたアンケートを作成したので、回答していただけるとありがたいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part1/m

実況じゃないので初投稿です。


現状アンケートの結果だと1話丸々使ってメンバー視点小説パート書けよオラァという感じだったので書きました。
これからメンバー視点小説パートは『サイドストーリー Part○/m』というサブタイトルで投稿していきます。

今回はかすみん&侑ちゃんでお送りします。栞子ちゃんとぽむぽむはもうちょい先。


 突然スクールアイドル同好会の部室に訪れた侑先輩と話していた時だった。

 

「ちわーす。誰か来てるのか?」

「あっ、もと男!」

「おっ、かすみじゃん。おひさ~」

 

 もと男こと堀口元樹。

 スクールアイドル同好会所属で私と同じ1年生。同好会内でマネージャーみたいなことをやってくれていて、いつも私達を助けてくれた。パワーもスタミナも同好会の中では一番なかったけど。だから力仕事だけはもと男の代わりに他のメンバーでやっていた。可愛いかすみんより力がないのはさすがにどうかと思います。

 でも、もと男はいつも私のことを応援してくれていた。いつも私のことを可愛いと褒めてくれて、そして練習を頑張った時はたまに頭を撫でてくれた。……他のメンバーにもいつも可愛い可愛いと言ってましたけど……。

 同好会での話し合いではいつももと男がまとめてくれた。もと男は人の気持ちを読み取るのが得意で、話し合いがうまくまとまらない時はもと男が皆の意見を皆が納得できるようにまとめてくれた。

 普段はおちゃらけた態度でいることが多く、たまによくわからないことを言うこともあるけれど、それでもやる時は普段からは想像できないくらい真面目にやってくれる。そんなもと男は同好会の中で大きな存在になっていた。そしてそれは私の中でも……。

 

「もと男がいない間に大変なことになってるんだから!」

 

 でも、もと男はある日突然同好会に来なくなった。置き手紙には『補習のためにしばらく休みます』と書いてあった。もと男が勉強できないのは少し意外だった。

 

「大変なこと?」

 

 部活動研究発表会でライブを開こうとしたけど、それぞれのしたいことをまとめることができず、結局ライブをすることはできなかった。そしてそれから皆だんだん部活に来なくなってきてしまい、自然消滅してしまった。そして、部員が足りず、実績もないスクールアイドル同好会は生徒会長の手によって取り潰されようとしている。

 同好会の現状を説明すると、もと男は真剣な表情で聞いてくれた。もしあの時もと男がいれば今までのようにうまくまとめてくれて、同好会も今みたいにならなかったかもしれない。

 

「なるほど、同好会の状況は把握した。で、そっちの女の人は?」

「私? 私は高咲侑、よろしくね!」

「侑先輩ね、よろです。新入部員……ってわけではなさそうだ。一体何の用で?」

「私、スクールアイドルの皆を応援したくてここまで来たんだけど、まさか同好会がこんなことになってるなんて……。でも、同好会がなくなるのは嫌だから、私にできることならなんでも手伝うよ!」

「なんでも? じゃあ先輩もスクールアイドルやってみない?」

「わ、私が? 私なんかがやっても似合わないよ……」

「侑先輩は可愛いから大丈夫」

「可愛い!? 私が!?」

 

 ほら、もと男はすぐ女の子に可愛いって言う。いつも他のメンバーに言ってたから見慣れてはいるけど、それでも会って間もない人に言うのは少し納得いかない。確かに侑先輩は可愛いけど、久し振りに会ったんだから最初は私に言ってほしかった。

 

「もぉーからかわないでよー」

「別にからかったつもりはないんですけどね。まぁ、おしゃべりはここまでにして、早速生徒会室まで行きましょうか」

「なんで生徒会室に行くの?」

「生徒会長に直談判しに行きます。ここを取り潰そうとしてるのが生徒会長なら、本人に直接話をつけに行く方が早いです。生徒会長との交渉は侑先輩にお願いしましょうかね」

「私が交渉するの!?」

「ええ。だってさっきなんでも手伝うって言ったじゃないですか」

「確かに言ったけど……うぅ」

 

 ……なんか、もと男と侑先輩仲良すぎませんかぁ?

 もと男はコミュニケーションが上手で、誰とでもすぐに仲良くできるのは知ってたけど、それでも仲良くなりすぎな気がする。

 なんだろう。初めて侑先輩と会ったはずなのに、もと男と侑先輩が仲良くしているのを何度も何度も見たことがあるような気がする。仲良くしているのを見るたびに侑先輩に嫉妬している自分。テレビで似たような場面を見たことがあるのかな。でも、それにしては妙な現実味がある。気のせい、なのかな……。

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 最初に元樹君に会った時はおちゃらけた子という印象を受けた。でも、かすみちゃんの話を聞いているうちにどんどん真剣な表情になっていって、根は真面目な子で、この同好会のことを大切に思ってるんだろうなと思った。

 でも、私と話す時にはまたおちゃらけた態度に戻っていて、多分相手と仲良くするためにわざとそういう態度をとっているんだろうなと感じた。実際嫌な感じは全くしない。むしろ親しみやすさを感じる。可愛いって褒められちゃったし♪

 でも、元樹君に会った時に感じた違和感は何だったんだろう。初めて会ったはずなのに、全くそんな感じがしない。むしろ何百回何千回と会話を交わしたことがあるような、そんな感じがした。一体何なんだろう……。

 

 そんな私を悩ませている元樹君の提案で今は生徒会室に向かっている。

 

「生徒会室ってこっちで合ってるよね!」

「違いますよ侑先輩! そっちは生徒会室とは正反対ですぅ!」

 

 こっちが生徒会室だと思って走り出したけど、どうやら逆方向だったみたい。そういえば私生徒会室に行ったことないから道知らないんだった。うっかり。

 

「もぉー、いきなり走り出さないでくださいよぉ……」

「ごめんね。……あれ、元樹君は?」

「もと男なら……」

 

 かすみちゃんが呆れながら指差した方を見ると、元樹君が床に斃れこんでいた。

 

「あれ? 疲れるほど走ってないと思うんだけど」

「もと男はスタミナがないですから……」

 

 あの疲れ方を見る限り、日常生活に支障をきたすレベルのスタミナだと思うんだけど……。

 

「元樹君、道間違えちゃってごめんね」

「はぁ……はぁ……次から……気を付けて……」

「大丈夫? 肩貸してあげようか?」

「貸して……」

「はいはい。ほらっ、ちゃんと掴まって」

 

 元樹君がスタミナないの、なんか意外だなぁ。ヘロヘロになって私の肩に掴まる姿を見ているとなんだか可愛く思えてくる。

 

「もっとスタミナつけた方が良いと思うよ」

「侑先輩の言う通りだよ」

「めんど……」

「めんど、じゃないよ……」

「これはかすみん達と一緒に走るしかないですね」

「そうだね。同好会が再開したら元樹君を走らせてあげてね」

「かすみんにお任せください!」

「やめてぇ……」

 

 

 

「ここが、生徒会室……」

 

 道を間違えたりしたけどちゃんと生徒会室まで辿り着くことができた。元樹君は途中で復活して、今は私の肩から離れて普通に歩いている。

 

「なんだか緊張しちゃうなぁ」

 

 生徒会長とは初めて会うけど、一体どんな人なんだろう。怖そうな人じゃないといいなぁ。

 

「大丈夫ですよ、肩の力抜いてください。生徒会長っていっても俺らと同じ生徒なんですから、怖がる必要はありませんよ。相手は1人、こっちは3人なんですから。3人に勝てるわけありませんよ」

「……うん、そうだね。私頑張るよ!」

 

 元樹君のお陰でいい感じに肩の力が抜けた。うん、これなら大丈夫!

 

コンコン

 

「どうぞ」

「失礼します! 今日は会長にお願いしたいことがあって来ました!」

 

 怖そうな人を想像してたけど、生徒会長は私と同じ女の子だった。しかも可愛い。

 

「あなたは確か2年生の高咲侑さんですね」

「え? なんで知ってるの?」

「この生徒会長、学校にいる全員の顔と名前を記憶してるんですよ」

「すっごーい……」

「そういうところが、かすみんは苦手なんですけどぉ。ロボットっぽいていうかぁ……」

 

 失礼ではあるけど、かすみちゃんの言う通り確かにロボットっぽい。この学校の生徒は3000人以上いるって聞いたことがあるけど、ほんとに全員の顔と名前を憶えているのだとしたらとてもすごいことだ。

 

「はじめまして、私は生徒会長の中川菜々です。……それで、ロボットみたいな私に何か御用ですか?」

「やばっ、聞こえてた……」

 

 菜々ちゃん、見た目は可愛いけど、雰囲気が少し怖い。うぅ、今からこの人との交渉に勝たなきゃいけないのか……。

 

「私はスクールアイドル同好会から来ました! 同好会の解散を取りやめにしてほしいです!」

「それはできかねます」

「ど、どうしてですか?」

 

 菜々ちゃんの口から取りやめられない理由が語られる。理解はできる。でも、同好会を潰させたくはない。

 助けを求めるように元樹君の方を見るが、私の視線に気付かないくらい考え込んでいる。何を考えているかはさすがに読み取れない。この劣勢を一気に覆す方法だろうか。

 

「あの、ちゃんと人数もいて活動していれば、存続を認めてくれるの?」

「それはもちろんです」

「だったら、部室の使用期限までに同好会に足りる人数を集める! それならいいよね!?」

「……」

「同好会を潰さないでください!」

「……わかりました。ただし、ひとつ条件を出させてください。11人。11人の部員を集めてきたら同好会の存続を認めましょう」

 

 11人!? 期限ももう近いのに、元のメンバーを呼び戻すだけじゃなくてそこからさらに5人も集めるなんて……。

 

「えー!? なんで11人なんですか!? 同好会は5人いれば成立じゃないですかぁ!」

「確かに。でも、今現実に6人が2人になってしまっているのです。また同じ人数では二の舞になるのではないですか?」

 

 菜々ちゃんの言いたいことはわかる。でも……。

 

「11人もいれば、同じように何人かが活動しなくなっても残りでなんとかできるという判断の下です。私に直談判しにくる情熱があれば、難しくないことでは?」

「うぅ……無茶言わないでくださいよぉ……」

 

 どうすればいいんだろう……。

 

「11人集めれば部室を返してもらえるんですね?」

「もちろんです」

「もと男?」

「元樹君?」

 

 さっきまで考え込んでいた元樹君が動き出した。

 

「もっと無理難題を押し付けられると思ってましたが、案外簡単ですね」

「11人も十分難しいよ?」

「元メンバーを全員呼び戻して6人。俺の幼馴染を誘って7人。侑先輩は幼馴染とかいませんか?」

「1人いるけど……」

「じゃあその人で8人。あとはまぁ適当に友達とかクラスメイトとか、そこそこやる気ある奴誘えばいいでしょ」

「適当って……」

「そんな人都合よく見つかるとは限らないでしょ?」

「そうでもないと思いますよ。侑先輩がスクールアイドルを応援したいと同好会に来てくれたように、スクールアイドルを応援したいっていう人は身近にもそこそこいるはずです。生徒会長はスクールアイドルを集めろと言ってるわけじゃなくて部員を集めろと言ってるんですから、別にマネージャーとかお手伝いとかを入れてもいいんですよ。応援したい人達ならマネージャーとかお手伝いとかなら入ってくれるかもしれませんよ」

「……そっか、そうだね。かすみちゃん、やってみようよ! 絶対スクールアイドルでいたいって言ってたよね!? 私も手伝うから!」

「もと男……先輩……。……わかりました! 11人集めましょう! やってやりますよお~!」

 

 根拠があるのかないのか微妙なラインだったけど……でも、元樹君ならやってのけるような気がする。会ったばかりなのに、元樹君なら、と何故か思える。どうしてだろうか。

 

 突然頭にズキンッと痛みが走った。その痛みと共に流れ込んでくるいくつもの見覚えのない光景。

 かすみちゃんと元樹君、それからノイズが乗って誰だか確認できない人が9人。場所はスクールアイドル同好会の部室。似たような光景がいくつもある。これは菜々ちゃんから与えられた課題をクリアして、同好会の存続が認められた時の光景だろうか。

 次はまた別の光景が流れ込んできた。私と元樹君の2人っきりの光景。一緒に出掛けたり、手を繋いだり、キ、キスをしていたり、それからあ、あんなことまで……。これは私と元樹君が付き合っている時の光景だろうか。

 頭に流れ込んでくるいくつもの光景。でも、私はこんな光景見たことがない。なんでこんなものが私の頭に流れ込んでくるんだろう。元樹君と会った時に感じた違和感と何か関係があるのか。考えても考えても何もわからない。一体何なんだろう……。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part4/n

初投稿を引退しようと思ったけど引退の仕方がわからなかったので初投稿です。


 仲間を探して三千里なRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は歩夢ちゃんが同好会に入った所で終わりました。今回はその続きからで、しずくちゃんを連れ戻しに行きます。

 しずくちゃん帰還イベントには2種類あり、スマホ版通りのイベントと、据え置き版で新たに用意されたイベントの2つです。前者のイベントは主人公が数日の間にしずくちゃんを連れ戻せなかった場合に起こり、主人公以外のメンバーが勝手に連れ戻してきてくれます。後者は逆に主人公自身でしずくちゃんを連れ戻すイベントです。こちらであれば歩夢ちゃんが加入した当日に連れ戻すことも可能です。他のメンバーの加入イベントはしずくちゃんを連れ戻した後にしか発生しないため、本RTAでは当然後者のイベントを選択します。

 

 さて、肝心なこのイベントの発生条件ですが、『しずくちゃんと知り合いであること』と『しずくちゃんと2人きりで下校すること』が条件になっています。ほも君は元々同好会所属であったため、前者の条件は当然満たしています。後者の条件を満たすために今から演劇部の練習場所に行きます。演劇部の練習場所は日によって変わります。当初はランダムで決定されると思われていましたが、どこかの演劇部ガチ勢兄貴が日にちで固定されていることを発見しました。今回はその情報を参考にさせてもらい、速攻でしずくちゃんに会いに行こうと思います。初日の演劇部は講堂で練習をしているため、早速講堂に向かいます。2人きりになるため、かすみん達には今日は皆解散と言って別れましょう。

 

 

 

 講堂にやってきました。情報通り演劇部が練習をしています。無事にしずくちゃんを発見することができました。うまいぞ演技(空気) 演劇部ガチ勢兄貴には感謝しかありません。

 これで帰還イベ発生……とは残念ながらなりません。ここからもう1つ隠し条件があります。それは練習中にしずくちゃんがこちらに気付くことです。しずくちゃんがこちらに気付いてくれないと一緒に下校することができません(25敗)

 このしずくちゃんがこちらに気付くイベントですが、発生する時と発生しない時があり、親密度が高くても発生しないことがたまにあるため、現状ではランダムイベントだと考えられています。私が行った検証では、親密度が高いと発生する確率が高く、親密度が低いと発生しにくいという結果になりました。ですが、もしかしたら親密度とか関係なく何かイベントのフラグが別にある可能性もあるため、余裕のある兄貴はぜひ検証してください。そしてRTAも走れ(豹変)

 

『演劇部の練習風景を眺めていると、舞台の上にいるしずくと目が合った。どうやらこちらに気付いてくれたようだ』

 

 おっ、今回はちゃんとしずくちゃんが気付いてくれたようですね。これで最速でしずくちゃんを連れ戻すことができます。後は帰宅時間になるまで数分ほど待ちます。ですがこの数分間は何も話すことがないため、編集の力で16倍速にして垂れ流しにしたいと思います。ちなみにここはRTA走者にとって貴重なトイレタイムです。まぁ、まだまだ序盤なので行く人はいないと思いますが。

 

 

 

「お待たせしました」

 

 練習終わりのしずくちゃんがほも君の元に来てくれました。練習が終わるまでの数分がすごく長かったです。なんでスキップできないんですかねぇ……。

 まぁいいでしょう。ゲームの仕様に文句を言っても仕方ないので、とにかくイベントを進めていきましょう。……進めていきましょう。進めて……進め……

 

 

 進 め ま せ ん

 

 

 ここで視聴者の皆様にお知らせです。今リアルでは走者が水分補給のために部屋にいません。あのさぁ……。なんでRTA開始前に飲み物を用意しないんですかねぇ……。馬鹿じゃねぇの(嘲笑)

 

 ようやく走者が戻ってきました。30秒のロスです。悔い改めて。

 

「久し振りだね、元樹君。今日は何の用?」

 

 しずくちゃんオッスオッス。一緒に帰ろうぜぇ。

 

「一緒に? もちろんいいですよ。帰り支度してくるからちょっと待っててね」

 

 これでしずくちゃんと帰りの約束を取り付けられました。やったぜ。まぁ、ここまでくれば約束に失敗することはないんですけどね。

 

 さて、しずくちゃんと並んで帰っているシーンに変わりました。この時にしずくちゃんとの距離でしずくちゃんの親密度がわかります。今回は……拳1個分くらいですね。これは初期値としてはかなり高い方です。というより過去最高値です。ほも君からしずくちゃんに告白すれば普通に付き合えるレベルです。お前のことが好きだったんだよ! 栞子ちゃんといい、今回は親密度運がすごくいいですね。これも『コミュニケーション○』による効果なんですかね? 私はわからないので、検証が好きな視聴者兄貴はぜひ検証してみてください。

 なんだか初期親密度で運がいい分、他で屑運を披露しそうな予感がしますね。ですが私が練り上げたチャートと有り余るアドリブ力で完璧に対応して見せましょう。

 あっ、そうだ(唐突) 先程告白すれば付き合えると言いましたが、本RTAでほも君から告白することはありません。なぜならほも君から告白して付き合うと2股ができなくなるからです。だからヒロインから告白してもらう必要があったんですね。当然しずくちゃんからも告白してもらって容赦なく11股します。人間の屑がこの野郎……。

 

「元樹君とこうやって2人っきりで一緒に帰るのは初めてだね」

 

 そうですね。この周では初めてですね。最後に一緒に帰ったのは3周前ですかね。この間の2周はどちらもしずくちゃんが気付いてくれませんでした。ちなみに、幼馴染などの初期値厳選をしていた分も含めれば最後は200周以上前になります。

 

「なんで私と一緒に帰ろうと思ったの?」

 

 しずくちゃんとお話しすることがあるからですね。

 

「お話し?」

 

 なーんでしずくちゃんは同好会に来なくなっちゃったんですかねぇ。

 

「やっぱりその話だよね……。……わかりました。元樹君にはちゃんとお話しします。私は昔からお芝居が好きで、でもそれと同じくらい、スクールアイドルという存在にも憧れがあって……。だからスクールアイドル活動ができる間はそれに集中したくてこの学校に編入したの」

 

 スクールアイドルをやるために編入するって、いくらスクールアイドル時代といえどすごい行動力ですよ。しかも毎日鎌倉から学校まで通ってますからね。

 

「実際にスクールアイドル同好会に入って、そしたら皆やりたいことが違って、私はすごい面白かった。私はスクールアイドル活動をゆくゆくは演技に活かせたらなあって思ってたし、皆さんの目指すもの、表現の仕方を見るのは楽しくて刺激的だった。なかでもやっぱりせつ菜さんはすごかったです。彼女について行けば皆が望むスクールアイドル像に近づけるって思ったの。……でも、せつ菜さんが導いてくださる方向は確かに正しいんだけど、私はこっちの方向に行きたいっていう提案をうまくできなくて……。それが未熟だな、悔しいなって思って……。だからせつ菜さんに感じ取ってもらえるだけの表現力を磨きたくて、演劇部で修行をさせてもらってたの」

 

 そうだったんですね。それならそうと最初っから言ってくれればよかったのに。

 

「余裕がなくて……それに元樹君は同好会に来てませんでしたし……」

 

 補習だったので。

 

「ほんとに補習だったんだ……。もうっ、ちゃんと勉強しなきゃダメですよ?」

 

 ああ^~「めっ!」ってするしずくちゃん可愛ええんじゃ~。視聴者兄貴達スクショタイムですよ。

 

 話を戻しますが、しずくちゃんはスクールアイドル活動のために演劇部で客演をしていったってことですよね。スクールアイドルへの情熱はまだなくなってないと考えてもいいですかね?

 

「ええ、もちろんです。スクールアイドル活動をしたくて編入してきたんだもん。そう簡単にはなくならないよ」

 

 じゃあ同好会に戻ってきてほしいですね。今同好会解散の危機なんすよ。

 

「ええっ!? 私が勝手をしていたせいで……本当にごめんなさい! 私も同好会に戻ります!」

 

 ありがとナス!

 

 これでメンバーが4人になりました。残り7人ですね。

 

「私以外の人は今はどうしてるの?」

 

 彼方さんもエマさんもせつ菜ちゃんも来てないよ。行き先は知ってるけど。

 

「来てない? じゃあ今の同好会には誰がいるの?」

 

 ほも君とかすみんと歩夢ちゃん、それからたった今加わったしずくちゃんですね。侑ちゃんはまだ同好会に入っていません。

 

「その歩夢さんという方は?」

 

 今日入ったばかりの新入りです。

 

「……その人は可愛いんですか?」

 

 そうですね……うーん、難しいですね。歩夢ちゃんが可愛いのは誰もが認める事実なんですが、しずくちゃんにはどう答えたらいいんでしょうか。こんな質問初めて飛んできたのでチャートには何も書かれていません。困りましたね……。とりあえずしずくちゃんと同じくらい可愛いと答えておきましょう。この回答ならばしずくちゃんの親密度も歩夢ちゃんの親密度も下がることはないでしょう。このゲーム、数ヶ月前の会話が親密度に影響することがたまにありますからね。そういう所にも気を付けます。

 

「私と同じくらい……。では、元樹君は私と歩夢さんのどっちが好みですか?」

 

 は? あまりチャートにない質問をするなよ。答えられないだろ。

 正直言ってどう答えればいいかわかりません。走者自身が完全にフリーズしています。こんなんじゃRTAになんないよ~(棒読み)

 ここで悩みすぎるのは非常によくないので大人しくしずくちゃんを選んでおきましょう。

 

「そうですか、私の方が……。ふふっ、ありがとうございます」

 

 ここで歩夢ちゃんを選ばなかったことで将来悪い影響があるかもしれませんが、そんなのはどれだけ考えた所で無駄なので、未来よりも今を取ります。

 

 

 

 

 

 しずくちゃんと別れて自宅に辿り着きました。自宅では自宅専用コマンドが用意されており、同好会メンバーと連絡を取ったり、勉強したり、寝たりすることができます。普段は即寝るで大丈夫ですが、今日は明日のためにとある人物に連絡を取りましょう。

 明日の放課後時間ありますかね?

 

『あるけど、どうして?』

 

 相手は幼馴染のりなりーです。Part4にしてようやく登場です。まだ連絡ツール上のやり取りだけですが。

 ちょっと手伝ってほしいことがあるんすよ。できればりなりーの友達も連れてきてほしいっすね。

 

『私だけじゃダメなの?』

 

 おや、いつもは即諾してくれるんですが、何故か今回は渋っていますね。これはほも君と友達を会わせないようにしてるんですかね? りなりーには悪いけど、絶対にりなりーの友達も必要なんですよねぇ。

 

『わかった。元樹がそう言うなら』

 

 少しりなりーが渋りましたが、どうやら連れてきてくれるようです。これで明日りなりーとその友達、つまり愛さんの加入イベントが発生します。着々と人数が集まってきてますね。

 

『今から少しだけ通話できる?』

 

 これは通話イベントですね。自宅にいる時に稀に起きます。リアルタイムで数分取られますが、その分親密度が大きく上昇するので、発生したら確実に踏みたいイベントです。

 初日はこれ以上自宅ですることはないので当然りなりーからの誘いは受けます。

 へいっ、りなりー元気?

 

『うん、元気。元樹は?』

 

 もちろん元気です。

 

『今日なんで一緒に帰れなかったの?』

 

 久し振りに同好会に顔を出して可愛い女の子を口説いてましたね。

 

『同好会……。もしかしてしばらく一緒に帰れない?』

 

 それはどうでしょうかね。りなりー次第だと思います。

 

『? どういうこと?』

 

 どういうことかはいずれわかると思いますよ。

 

『そう。なら大丈夫。……そういえば今日ね―――』

 

 

 

 あの後はりなりーと今日あったことなどを話しました。これでいい感じに親密度が稼げたでしょう。初日からこのイベントを引くのはかなりおいしいです。今後もどんどん引いてほしいです。

 今日はもうやることはないので寝ちゃいましょう。(セーブはし)ないです。チキンセーブなんて誰がするかよ。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




しずくちゃんに「めっ!」ってされたい人生でした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part5/n

(評価バー)すっげえ赤くなってる、はっきりわかんだね。

評価バーが赤くなって、お気に入りの数も倍以上になって、びっくりしました(小並感)
皆様のおかげでルーキー日間でランクインしてました。たまげたなぁ。
今後ともこの作品をよろしくお願いします。

というわけで初投稿です。


 運に全てを任せるRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はしずくちゃんを仲間にして初日が終わった所で終わりました。今回はその続きからで、りなりーと愛さんを仲間にする……前にいくつかやることがあるのでそれをやります。そのやりたいことは2日目の昼休みにするので、それまでは栞子ちゃんを可愛がりながら普通の学校生活を送りたいと思います。

 

『しまった。宿題をやり忘れていた』

 

 おっと、2日目にして宿題イベントが発生しましたね。

 このイベントは平日の学校で発生するイベントで、始業前か昼休みのどちらかに起こります。今回は始業前に起きました。このイベントが起きるとその時間が潰れるので始業前に起きてくれてよかったです。昼休みに起きていれば即リセットでした。

 この宿題イベントは主人公の所属クラスによって効果が変わります。かすみんか果林さんと同じクラスであれば宿題を見せてくれるだけで、親密度も上がらず、何の効果もない時間がかかるだけのイベントになります。つまりロスです。逆に栞子ちゃんを始めとする学力優秀組とクラスメイトであれば……

 

「宿題を忘れた? 仕方ないですね……。私が教えてあげますから、今から一緒にやりましょう」

 

 このように宿題を見せてくれるのではなく解き方を教えてくれます。こちらはイベントが成功すれば親密度が少し上がり、学力経験値までもらえます。うん、おいしい!

 ですが、このイベントは学力優秀組の方では失敗することがあります。折角教えてもらっても残念ながら制限時間内に解くことができなかったのです。失敗すると親密度は上がらず、学力経験値も取られ、時間がかかるだけのゴミイベに早変わりします。かすみんと果林さんは失敗することはないため、安定性という観点から言えば2人の方が優れていると言えるかもしれません。

 

「ここはこうやって式変形をして……違います、そうではありません。ゼロで割ってはいけません」

 

 あっ、ふーん……(察し) ダメみたいですね(諦観) ゼロ除算してんじゃねぇよバーカ!

 

「そうです、その通りです。いい感じですよ」

 

 おっ、どうやら持ち直したみたいですね。やればできるじゃなーい。

 

「そこでこの定理を使って……はい、解けました」

 

 無事に問題を解くことができました。ヨシッ! 学力経験値を10もらいました。ヨシッ! あと10もらえれば学力が2になりますね。ほも君に『勉強苦手』さえついていなければこれで2になっていたんですがねぇ……。

 とりあえず、しおってぃーありがとナス!

 

「どういたしまして。元樹さんのお役に立てて嬉しいです」

 

 やっぱ……栞子ちゃんの……笑顔を……最高やな!

 

「ですが、次からは気を付けてくださいね」

 

 それは乱数次第なのでどうしようもないですね。自宅専用コマンドには宿題コマンドが用意されていないので。ほも君がいくら気を付けても忘れる時は忘れるし、乱数が悪ければイベント失敗を連発してしまうかもしれません。

 

「運のせいにしてはいけませんよ」

 

 違う! 違うんだ栞子……! 運やチャートのせいじゃなくて……俺が悪いんだよ。RTAで好タイムが出ないのは俺のせいだ! もう……嫌なんだ周回が……。ガバを……なくしてくれ……。もう……終わりたい……。

 

「わからない所があれば遠慮なく聞いてください。学校でなくても、連絡をくれれば教えますから」

 

 失礼、少し取り乱してしまい、内なる戦士が目覚めてしまいました。栞子ちゃんの言う通り運のせいにするのはダメですね。私のミスによるガバをなくせば自然とタイムは縮むはずですから。さっすが栞子ちゃん。いいこと言いますね。これはRTA走者の鏡ですね。

 

「話は変わるのですが、昨日した約束は覚えてますか?」

 

 約束というのはラーメンの話ですかね。もちろん覚えてますよ。確か明日の放課後にラーメン巡り全国ツアーをする約束でしたよね。

 

「少し違いますね。全国ツアーまではできません」

 

 冗談ですよ冗談。近くに新しくできたラーメン屋に行くっていう話でしたよね。

 

「はい、そうです。なんで最初に冗談を言ったのですか。本当に覚えていないのかと心配したじゃないですか」

 

 大切な大切なしおってぃーとの約束を忘れるわけないじゃないですか。

 

「た、大切……」

 

 はい、とてもとても大切です。なので栞子ちゃんも私の作ったチャートを大切にしてください。チャートに書かれていない行動は決してしないでください。ほも君からのお願いです。おい、しずく。お前のことだぞ。

 ところで、栞子ちゃんはなんで今その話をしたんでしょうか?

 

「え? えっとですね……その、笑わないですか?」

 

 おう考えてやるよ(笑わないとは言ってない)

 

「その、元樹さんともっとお話がしたかったので……。けど話す話題が思いつかなくて……」

 

 ほも君と話したいけど話題が思いつかないしおってぃー可愛い。大好き。けど付き合った後の栞子ちゃんはもっと可愛いから見とけよ見とけよ~。

 どうせHRまで時間はあるのでたっぷり栞子ちゃんとお話ししてあげましょう。宿題イベントを成功させてくれた恩もありますしね。

 

「本当ですかっ! ありがとうございます!」

 

 やっぱ……栞子ちゃんの……笑顔を……最高やな!(2回目)

 

 

 

 

 

 さて、お昼休みになりました。

 2日目午前は『睡眠不足』による居眠りイベントを引くことなく無事に過ごすことができました。できれば一生居眠りイベを引かないでくれ。

 

「元樹さん、今日も一緒にご飯を食べましょう」

 

 このほも君はいつも栞子ちゃんとランチタイムを楽しんでいるみたいですね。昼ご飯は元々教室で食べる予定だったので、ほも君が食べ終わるまでは栞子ちゃんと一緒にいてあげましょう。

 ほも君の今日の昼ご飯はパンとおにぎりみたいですね。

 

「元樹さんは今日もそのセットなんですね。一緒に食べるようになってしばらく経ちますが、別のものを食べている所を見たことがありません」

 

 ちょっと待ってしおってぃー。このおにぎりの具材をよく見てください。ほら、わさびまぐろですよ。いつもは多分鮭おにぎりなので、今日はいつもと違います。知らんけど。

 

「具材の話をしているのではありません。いつもパンとおにぎりのセットばかり食べていますねという話です。もっとちゃんとしたものを食べないと体を壊してしまいますよ?」

 

 そう……(無関心)

 

「元樹さん自身のことなんですから、もっとちゃんと興味を持ってください。元樹さんに何かあったら悲しいですから」

 

 栞子ちゃんが心配してくれるのはとても嬉しいですが、プレイ中にほも君の食生活を気にすることはありません。

 このゲームでは食事や生活リズムが主人公の体調に影響を及ぼします。例えば偏った食事を続けていれば体調を崩しやすくなり、入院するなんてこともあります。今のほも君のようにですね。では何故ほも君の食生活を気にしないのかですが、それはほも君が朝夜はちゃんとしたご飯を食べているからです。だから昼ご飯は気にしなくても問題ないのです。まぁ、運が悪いと体調を崩してしまいますが。ですがまぁ、そこは攻めチャーということで妥協します。運が良ければ体調を崩すこともないですからね。

 

 さて、ほも君がご飯を食べ終えたので、栞子ちゃんには悪いですが早速移動しましょう。

 

「どこか行かれるんですか?」

 

 中庭で人に会ってきますね。

 

「……その方は女性の方なのですか?」

 

 女性です(無慈悲)

 

「……なるべく早く戻ってきてくださいね」

 

 栞子ちゃんがしょんぼりしてますが、時間が惜しいのでここは無視していきます。ここは無視しても親密度は下がらないので問題ないです。ごめんね栞子ちゃん。では、中庭にイクゾー!デッデッデデデデ!(カーン)

 

 

 

 中庭に到着しました。2日目昼休みのここにはとある人物がいます。

 

「やぁ、今日はどんな情報が欲しいんだい?」

 

 据え置き版限定のオリジナルキャラ、情報屋さんです。この人は虹ヶ咲学園内の様々な情報を教えてくれます。メインキャラのクラス、よくいる場所などの情報、校内で起きた出来事などあらゆる情報を扱っています。メインキャラのスリーサイズや性癖などを教えてくれることもあるようです。

 今日この人に会いに来たのは2日目昼休みがこの人が確定出現する時間だからです。情報屋さんは基本ランダム出現で、学園内のあらゆる場所に出たり出なかったりします。ですが確定で中庭に出現する日がいくつか存在しており、その中の1つが2日目昼休みなんですね。次の確定日は来月なので今日会っておく必要がありました。

 さて、早速この人から彼方さん、せつ菜ちゃんの居場所について情報をもらいましょう。エマさんは何もしなくても同好会に戻ってきてくれるので情報をもらう必要がありません。聞いたところでただのロスです。

 

「近江彼方ちゃんは保健室や中庭で寝ていることが多いみたい。彼女の教室に行ってもなかなか会えないかもね。彼方ちゃんはこの前のテストの成績が悪かったらしくて、勉強のために部活に行ってないみたい」

 

 無事彼方さんの情報がもらえました。これで明日の昼休みに彼方さんに会うことができます。この情報がないと保健室に行っても彼方さんに会うことができません。

 

「次は優木せつ菜ちゃんだけど……この子の居場所についての情報がないの」

 

 はい、このようにせつ菜ちゃんの居場所は教えてもらうことができません。じゃあなんで聞いたんだよ、ガバか? とおっしゃる兄貴もいるかもしれませんが、これはガバじゃないんです。せつ菜ちゃんの親密度を爆上げするためにはこの情報がとても大事なんです。

 

「せつ菜ちゃんを校内で見たことある人が誰もいないの。正確に言えば部活中以外で、だけどね。私でさえも彼女がどのクラスに所属してるかわからないの。それどころか学年も学科もわからない。そのせいか、一部の生徒からは学外の人間じゃないかと言われているわ。……でも私はね、優木せつ菜はただの偽名で、その正体はこの学校の生徒じゃないかと考えているの。その正体が誰かまでは見当がつかないけどね」

 

 そうです。この情報が知りたかったんです。

 

『優木せつ菜が偽名……。そういえば生徒会長はせつ菜先輩が実在しているかのように話していた。生徒会長は全生徒の顔と名前を憶えている。ならば優木せつ菜という生徒が実在していないのも当然知っているはず。もしかして……』

 

 このように、先程の情報を手に入れることで勘のいいほも君がせつ菜ちゃんの正体に気付くイベントが発生します。これがすごく重要なんです。このイベントが発生させていると、せつ菜ちゃん加入イベントが通常と変化し、せつ菜ちゃんの親密度が爆上がりします。だからせつ菜ちゃんについて聞く必要があったんですね。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




りなりーの登場は次のパートで。幼馴染なのに登場させてもらえない作品があるってマジ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part6/n

ようやく幼馴染回なので初投稿です。


 天使天才天王寺系女子な幼馴染が歌って踊って束縛してチャートを破壊するRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は彼方さんとせつ菜ちゃんの乙女の秘密を情報屋からもらった所で終わりました。今回はその続きからで、りなりーと愛さんを仲間に加えに行きます。皆様お待たせしました。Part6にしてようやく幼馴染の登場です。

 と、その前にしずくちゃんと現同好会メンバーの顔合わせのために部室に行きます。

 

「桜坂しずくです」

「私は高咲侑、同好会のメンバーではないけど、よろしくね」

「上原歩夢です。よろしくね、しずくちゃん」

「はい、よろしくお願いします」

「むぅ~」

 

 しずくちゃん、侑ちゃん、歩夢ちゃんの3人はすごくいい感じですね。ですがかすみんだけむくれていますね。何に怒っているのでしょうか。

 

「なんでもと男は私達に内緒でしず子に会いに行ったの?」

 

 だってほも君以外に誰かいたらイベントが発生しませんからね。

 

「演劇部にいる確証がなかったって……。それでも、しず子は大事な仲間だから、かすみんも一緒に話がしたかったですぅ」

 

 やっぱりかすみんは良い子ですね。頭を撫でて褒めてあげましょう。

 

「もう! 髪が崩れちゃうから撫でないで!」

 

 そんなこと言いつつ嬉しそうですね。照れ隠しにポカポカ殴ってきていますが。かすかすが効かねぇんだよ(虚勢)

 

「うぅ……恥ずかしいからぁ……」

 

 顔赤くなってんぜ? やっぱりかすみんは可愛いですね~。今すぐ抱きしめて押し倒して○○して○○したいところですが、今の親密度ではできないのでやりません。親密度が上がってもロスなのでやりませんが。

 

「もと君とかすみちゃん、やっぱり仲良いね」

「うん。なんだか恋人みたい」

「恋人!? もと男とはそんな関係じゃないですから!」

 

 そうですね。かすみんとはまだ恋人じゃないです。まだ……ね。こちらの時間で2、3時間後に恋人になります。ちゃんとチャート通りに進めばですが。

 

「こほんっ」

 

 しずくちゃんが咳払いをしてほも君のことを睨んでいるので、大人しくかすみんを撫でるのをやめます。しずくちゃんに睨まれてもちっとも怖くないですけどね。

 

「ごめんね、かすみさん。勝手にいなくなったりして」

「事情くらい話してほしかった……けど、ちゃんと戻ってきてくれたから、かすみん、許してあげますっ!」

「ふふっ。かすみさん、ありがとう」

「もう! しず子まで撫でないでよ~」

 

 ああ^~しずかすたまんねぇぜ。今はまだ効果がないですが、しずかすはいずれ癌にも効くようになります。

 

 話は変わりますが、今から次の仲間候補がいる場所に行きましょう。

 

「次の仲間?」

「彼方先輩? エマ先輩?」

「それともせつ菜さん?」

 

 いえ、そのどれでもありません。新しい人を勧誘しに行きます。

 

「それって、昨日言ってたもと君の幼馴染?」

 

 そうです。言った記憶はありませんが正解です。幼馴染とその友達を仲間に加えます。

 

「勝算はあるの?」

 

 ありまくりですね。勝算は100割です。全部ほも君に任せてください。

 

「うん、もと君に任せるね」

「でも、今回はかすみん達もついて行くからね」

 

 ええ、自由についてきてください。ただし、勝手に突っ走って道を間違えるイベントだけは勘弁してください。なぁ侑ちゃん、君に言ってるんだよ? 今のほも君は持久力がまるでないので、道を間違えられるとスタミナ切れになって通常より時間がかかってしまいます。だから侑ちゃん、あなたは何もしないで。

 では、1年情報処理学科教室にイクゾー!カンカンカカカカーン!(デッ)

 

 

 

 到着しました。侑ちゃんはちゃんとほも君についてきてくれました。ありがと侑ちゃん。愛してる。

 

 さて、あそこにいる人物は我らが幼馴染の天王寺璃奈ことりなりー、そしてりなりーのお友達の宮下愛さんです。視聴者兄貴もりなりーもお待たせ! アイスティーしかなかったけどいいかな?

 

「あっ、元樹」

「あの子がりなりーの幼馴染の元樹君?」

「うん。元樹、アイスティー頂戴」

 

 僕がさっき飲んじゃいました(自白)

 

「あー、嘘ついた。さっきあるって言ったのに。璃奈ちゃんボード『ぷんぷん』」

「えっと……この人が元樹君の幼馴染さん……?」

「なんていうか……その……」

 

 おっ、なんだなんだ? 私の可愛い可愛い幼馴染に何か不満でもあるのか?

 

「そういうわけじゃないんだけど……」

 

 わかってますよ。璃奈ちゃんボードが気になるんですよね。

 

「ごめんなさい。私、これがないとうまくコミュニケーションがとれなくて」

 

 りなりーは感情をうまく顔に出せず、それを解決するために璃奈ちゃんボードを使用しています。この璃奈ちゃんボードは一見ただのスケッチブックですが、各ページに顔が書いてあり、ページをめくることで自分の今の感情を表現できるという仕組みです。

 

「アタシとりなりーで作ったんだもんね~、この璃奈ちゃんボード!」

「そうなんだ! 個性的で、私はすごくいいと思う!」

 

 やっぱり侑ちゃんは優しいですね。お世辞とかじゃなくて、本心で言っているのが侑ちゃんのいい所です。そんなんだからイケメンって言われるんだよ。

 

「イケメンなのは私じゃなくてもと君でしょ?」

 

 えへへ(照れ)

 

「元樹ちょっとこっち来て」

 

 りなりーに呼び出されたので、教室の外に出ていくりなりーについて行きます。りなりーに呼び出されるなんてチャートには書いてありませんが、一体何の用でしょうか。

 

 教室の外に出ると、ボードを外したりなりーがこちらを向きました。りなりーの親密度が高くなると、「紙なんか必要ねえんだよ!」とボードを外してくれるようになります。こんな風にですね。やっぱりりなりーの素顔は最高ですね。ほっぺたぷにぷにしたいです。

 

「あの人達、誰? 元樹とどういう関係?」

 

 りなりーに壁ドンされてしまいました。ほも君の方が身長が高いので、壁ドンされる側がする側を見下げる変な構図ですが。なにやらりなりーの様子がおかしいですね。いつもは可愛らしいおめめが今はぐるぐるおめめになっています。ちょっと掛かり気味かもしれません。一息つけるといいのですが。

 

「誤魔化さないで」

 

 ただのスクールアイドル同好会の仲間です(即答)

 

「スクールアイドル同好会? 元樹も入ってるの?」

 

 皆と付き合うためにマネージャとして頑張ってます。力仕事は何もできませんが。

 

「いつから入ってたの? なんで教えてくれなかったの?」

 

 そんなもん知るかよ(豹変) ほも君が真のほも君としてこの世に生まれたのは昨日ですからね。それ以前の記憶は一切ありません。日記とか、書かなかったんですか?

 

「さっきツインテールの人に褒められた時、元樹デレデレしてた」

 

 可愛い侑ちゃんが悪い(責任転嫁)

 さっきからりなりーが滅茶苦茶詰め寄ってきますね。もしかしてバッドコンディション『ヤンデレ』がついてますか? ……いや、確認しましたがバッドコンディションは何もついてませんね。じゃあなんでこんな状況になっているのでしょうか?

 

「お互い隠し事はしないって昔約束したのに、元樹は約束破った」

 

 なるほど、幼馴染特有の昔の約束でしたか。幼馴染のキャラとはたまになんらかの約束を交わしていることがあり、その内容はゲーム開始時には明かされないので、知らずのうちに約束を破っていることもしばしばあります。約束を破れば当然親密度が下がります。今回は隠し事をしないという約束みたいです。ヤンデレじゃなくてよかった……。ですが、これは同好会に入った頃のほも君が悪いですね。お前のせいで親密度下がっちゃったじゃんかよ。視聴者兄貴は約束はちゃんと守ろうね。じゃないと刺されるよ(2敗)

 

「これは約束を破った罰」

 

 りなりーに両頬を引っ張られました。随分と優しい罰ですね。天使かな? もう約束は破らないようにできる限り善処する方向で前向きに検討するからオニイサンユルシテ。

 

「じゃあ仲直りのアレしてほしい」

 

 アレ? アレとは何のことでしょうか?

 

「むぅ……」

 

 りなりーがフグみたいに頬を膨らませて怒っています。親密度がまずいですよ!? ここは一先ずりなりーを抱きしめてお茶を濁しましょう。りなりーの言うアレではないでしょうが、まぁ悪い結果にはならないでしょう。

 

「は、恥ずかしい……。昔は頭を撫でてくれるだけだったのに……」

 

 そっちかー。

 

「でも嬉しい」

 

 りなりーがすりすりしてきます。はぁー、なんだてめぇ、天使か? ついでに頭も撫でてあげましょう。

 

「んっ……。……元樹はなんで私と愛さんを呼び出したの? 顔合わせのため?」

 

 実は今月中にメンバーを11人集めないとスクールアイドル同好会は解散しなくちゃいけないんですよね。当時は若くりなりーの助けが必要でした。というわけでスクールアイドル同好会に入ってくれませんか?

 

「私を頼ってくれて嬉しい。スクールアイドルやってみたいけど、私自信ない」

 

 りなりーは可愛いし、さっき侑ちゃんも個性的だって褒めてくれたし、自信なんてこれからつけていけばいいって。ほも君も全力でサポートしますから。

 

「元樹がサポートしてくれるなら、私スクールアイドルやってみる。でも、できれば愛さんと一緒にやりたい」

 

 任せてください。ほも君の華麗な勧誘術で愛さんも仲間に加えてみせます。

 

「うん。お願い」

 

 じゃあ中に戻りましょうか。おっ、開いてないじゃ~ん!

 

「あっ、2人ともおかえりー」

「何話してたの?」

 

 りなりーを同好会に勧誘してました。りなりースクールアイドルになることになったんだけど、愛さんもやらない?

 

「りなりーもスクールアイドルやるの!? 実は愛さんもやることにしたんだー」

 

 なぬ?

 

「さっきゆうゆ達の話を聞いて、アタシもスクールアイドルやってみたいなーって思ったんだ!」

 

 どうやらほも君がりなりーとお話ししている間に侑ちゃん達が愛さんを勧誘してくれたみたいです。これは嬉しい誤算です。ほも君が勧誘する手間が省けたのでかなりのタイム短縮になりました。やっぱり幸運の女神様は私に微笑んでくれていますね。ありがとナス!

 

「というわけで、これからよろしくね! 愛さん頑張っちゃうよー!」

「私も頑張る」

「かすみんも2人に負けないように頑張りますよー!」

「私も頑張ります!」

「わ、私も!」

「よし、皆で頑張ろー!」

「「「「「「おー!!」」」」」」

 

 りなりー愛さん勧誘イベはなかなかの好タイムで終わることができました。最初りなりーに呼び出された時はどうなることかと思いましたが、りなりーはヤンデレじゃなかったし、愛さんの勧誘は侑ちゃん達がやってくれたし、終わってみれば普段よりも早いタイムでした。この2人の勧誘イベでこのパターンのものは初めて見ましたが、何故このパターンに派生したのかわかりません。Wikiにもこのパターンが存在することは書いてありませんでしたし、超低確率で派生とかでしょうか? 理由は謎に包まれたままですが、好タイムなのでヨシッ!

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




次回サイドストーリーを1回挟んでから本編の予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part2/m

調子に乗って初投稿ナリ。


久し振りのサイドストーリーじゃい。

最近のマイブームはこの小説をゆかりさんやきりたんに読んでもらってRTAっぽさを感じることです。


 正直に言うと、後輩君への第一印象はあまりよくなかった。後輩君に何か失礼なことをされたわけではないけれど、スクールアイドル部を探しに行ったはずの侑ちゃんが隣に男の子を連れて帰ってきて、しかもその子と親しげに話していたから。つまりはただの嫉妬だ。自分でも子供っぽいとは思うけど、なんだか侑ちゃんが取られちゃった感じがして思わず嫉妬してしまった。

 

「ええっ!? わ、私がスクールアイドル同好会に!?」

「お願い! 頼れるのは歩夢だけなんだ!」

 

 そんなことを考えていたら、侑ちゃんにスクールアイドル同好会に入らないかと誘われた。

 

「あ、あんな風に歌ったり踊ったりするの、私には無理だよ! 私なんかとは世界が違う感じだったし……」

「そんなことないですよ。歌も踊りも最初はできなくても、頑張って練習を続ければだんだんとできるようになりますから」

「歩夢って昔からどんなに苦しい時でも頑張れる子で、すごいなってずっと思ってたんだ」

「へぇ。侑先輩がそこまで言うってことは、ほんとに頑張れる人なんですね、歩夢先輩は。すごい人ですね。尊敬します」

「うん、私もそう思うよ」

 

 さっきまで後輩君に嫉妬してたけど、褒められた途端に嫉妬心よりも嬉しさの方が上回ってしまった。人に褒めてもらえるのは嬉しい。けどこの名も知らない後輩君に褒められるといつもより嬉しく感じる。なんでかな? 後輩君が褒め上手なのかな? それとも……

 

「……」

「ん? かすみ、どうした?」

 

 かすみと呼ばれた後輩ちゃんがぷっくらと頬を膨らませていた。可愛らしいけど、何かに怒っているように見える。その視線は後輩君の方に向きつつも、時々私の方にも向けられていた。もしかして私、何か怒らせるようなことしちゃった……?

 

「かすみんだって……頑張れるけど……」

「本当に頑張れる?」

「ほんとだってば。もっとかすみんのこと信じてよぉ……」

「ごめんごめん、冗談だって。かすみが頑張れるやつだってことは前から知ってるから。かすみのこと信じてるから。1人で部室を守って、練習も続けて、そんなことができるやつが頑張れないわけないだろ。でも、これからのスクールアイドル同好会は昔とは違うってことを示すためには、かすみ以外にも頑張れる人が必要なんだ。それが歩夢先輩なんだよ。かすみを信じてないってことじゃ決してないから」

「もと男がそう言うならいいけどぉ……」

 

 ふふっ、2人とも仲いいなぁ。まるで私と侑ちゃんみたい。後輩君が侑ちゃんで、後輩ちゃんが私。褒められて顔が赤くなっちゃう所なんかも私にそっくり。

 

「それに頼りになる人は多い方がいいからな。もちろん侑先輩のことは頼りにしてるけど」

「そっか、元樹君は私のこと頼りにしてくれてるのかぁ……」

 

 ―――なんとなく察してはいたけど、この子はやっぱり人たらしだ。侑ちゃんと同じ天然なのか、それともわざとやっているのかまではまだわからないけれど。

 

「ええ。滅茶苦茶頼りにしてますよ」

「あはっ、侑ちゃんはやっぱりすごいなぁ」

「えっ、そう?」

「だって、スクールアイドル部を探しに行って、そこが潰されそうって聞いたらすぐ部員集めに走って……。それに……それに、会ったばかりの後輩君にこんなに頼りにされてるなんてすごいよ!」

 

 後輩君は会ったばかりの私を褒めてくれたけど、頼りにされるかどうかはまた別問題だ。会ったばかりの人から頼りにされる人なんてそうそういない。

 

「……ねえ、幼稚園の時のこと、覚えてる?」

 

 昔のことを思い出す。私が辛い時、苦しい時、いつも侑ちゃんが隣にいてくれた。いつも侑ちゃんが支えてくれた。

 

「……私、侑ちゃんがいたからいろんなこと頑張ってこられたんだ。だからね、あなたと一緒に、スクールアイドル頑張りたい」

「ほんとっ!?」

「えっ、いいんですかぁ!?」

「ありがとう、歩夢! 一緒に頑張って、たくさんの人を笑顔にしようね!」

「うん! これからよろしくね! 後輩ちゃんと後輩君も……えっと、かすみ……さん? それから元樹君……でいいのかな?」

「歩夢先輩は先輩なんですから、かすみんって呼んでくれていいですよ!」

「でも、部活ではかすみさんの方が先輩だし……」

「も~! もっとフレンドリーにしてくれていいんですよっ! だってこれから同好会の仲間になるんですし~!」

「フレンドリー……あだ名とか? えっと……中須かすみちゃんだから……かすかす?」

「ぎゃー! なんで昔のあだ名知ってるんですかー!? かすかすはダメですー! 禁止禁止!」

 

 私がかすみさんのことをかすかすと呼ぶと、かすみさんがすごい拒否反応を示した。何か踏んじゃいけないものを踏んじゃったかな……。

 

「か、かすみちゃんでいいよね? ねっ、かすみちゃん!」

「それで! それでお願いします!」

「ご、ごめんね、これからよろしくね、かすみちゃん。元樹君のことは何て呼べばいいかな?」

「俺のことは何と呼んでもらっても構いませんよ」

 

 なんでもいいかぁ……。なんでもいいって言われると困っちゃうな。変なのを挙げてかすみちゃんみたいに何か踏んじゃったら申し訳ないもんね。

 

「じゃあ……もと君なんてどうかな?」

「あ、いいねそれ! どう、もと君?」

「いいと思いますよ」

 

 気に入ってもらえてよかった。もと君はあんまり興味がなさそうだけど。本当に気に入ってもらえたのかな……? それともあだ名とかに興味がないだけ?

 

「それじゃあ、これからよろしくね、もと君」

「はい。こちらこそよろしくお願いします、歩夢先輩」

 

 差し出されたもと君の手を握る。もと君とは初めて会ったはずなのに、なんだか懐かしい感じがする。どうしてだろう。もと君の手が温かいからかな? 握っていて安心できるというか、心が満たされる感じがしてずっと握っていたくなる。こんな気持ち初めて。

 

「歩夢先輩? どうかしましたか?」

「えっ? あっ、ごめんね」

 

 もと君に指摘されてぼぉーっとしていたことに気付いた。その間もずっともと君の手を握ったままだった。迷惑だったよね? 名残惜しいけど手を離す。

 

「私、スクールアイドルって全然勉強したことないからわからないことだらけだけど……頑張るから、たくさんいろんなこと教えてね」

「もちろんです! スクールアイドルとしては、かすみんの方が先輩なんですからねっ!」

「俺も全力でサポートしますから」

「よーし、じゃあ、残りの人達にも戻ってきてもらえるよう皆で頑張ろう!」

「「「「おー!!」」」」

 

 もと君のためにも、かすみちゃんのためにも、そして何より侑ちゃんのためにも、まずは部員集めを頑張らなくっちゃ!

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 彼との再会は突然のことで驚いたけど、それ以上に久し振りに会えたことが嬉しかった。

 講堂で演劇部の練習をしていると、椅子に座って私の演技を眺める元樹君の姿が目に入った。元樹君に会うのは久し振りのことで、演技中なのに思わず元樹君の方を向いてしまった。元樹君と目が合うと、彼は小さく手を振ってくれた。さすがに手を振り返すことはできないので、小さく微笑んで答える。

 

 

 

 練習が終わって、私はすぐに元樹君の元に向かった。

 

「お待たせしました」

 

 けど、元樹君は何の反応も示してくれなかった。

 

「あの、元樹君……?」

 

 呼びかけても反応してくれない。よく見ると元樹君は目を閉じていて、うっすらと寝息のようなものも聞こえる気がする。もしかしなくても寝てる? 起こしてあげなきゃ。でもその前に元樹君の寝顔をスマホで撮影しておく。いつものキリッとしたかっこいい顔も素敵だけど、寝顔は可愛らしくていつもとのギャップがあっていい。

 

「元樹君、起きてください。元樹君」

 

 軽く彼を揺さぶる。

 

「んぁ……?」

「あっ、起きましたか? こんな所で寝たらダメですよ?」

 

 寝起きの元樹君は少し辺りを見渡した後、私の方を見ていつものキリッとした顔に戻った。

 

「ごめんごめん。ちょっと眠たくて」

「もう、だからって寝たらダメでしょ?」

「ごめんて。次から気を付けるからさ」

 

 仕方ない人だと思いつつも、こんなやり取りがとても懐かしく感じる。

 

「久し振りだね、元樹君。今日は何の用?」

「しずくと一緒に帰ろうと思ってな」

「一緒に? もちろんいいですよ。帰り支度してくるからちょっと待っててね」

 

 まさか元樹君にそんなお誘いをされるなんて思っていなかった。元樹君が誰かを誘って一緒に帰っている所を見たことがなかったから。

 

 

 

「元樹君とこうやって2人っきりで一緒に帰るのは初めてだね」

「そうだな」

 

 元樹君の横に並んで一緒に帰る。2人の距離は拳1個分くらい。恋人ではないけれど、友達という言葉では包み隠せない私の気持ち。まさに私達の関係を表したような距離感だ。……『私達の関係』というよりも『私の気持ち』の方が正しいかな。元樹君が私のことをどう思ってくれているかわからないから。ただの友達か、それともそれ以上なのか、元樹君の態度からは全く読み取れない。

 

「なんで私と一緒に帰ろうと思ったの?」

「ちょっとしずくと話したいことがあってな」

「話?」

 

 話って何のことだろう。私が期待しているようなものでないことだけは確かだろうけど。同好会のことかな? 元樹君との接点は残念なことに同好会以外はないから。

 

「俺が言えたことではないけど、なんで同好会に来なくなったんだ?」

「やっぱりその話だよね……。……わかりました。元樹君にはちゃんとお話しします」

 

 私が同好会に行かなくなった理由をちゃんと元樹君に伝える。

 スクールアイドルのことが嫌いになったわけではないということ。スクールアイドル同好会のことが大好きだということ。そして、せつ菜さんに自分のやりたいことを上手く伝えられなくて悔しいと思ったこと。

 元樹君は私の話を真剣な表情で聞いてくれた。

 

「せつ菜さんに感じ取ってもらえるだけの表現力を磨きたくて、演劇部で修行をさせてもらってたの」

「そうだったのか……。そういう理由なら俺らに伝えてくれればよかったのに」

「余裕がなくて……それに元樹君は同好会に来てませんでしたし……」

「補習だったからさ」

「ほんとに補習だったんだ……。もうっ、ちゃんと勉強しなきゃダメですよ?」

「えぇ……やだなぁ……」

 

 本当に嫌そうな顔をする元樹君。いつも頭の回転がすごく速いから、勉強も得意なんだと思ってた。今度勉強を教えてあげようかな。かすみさんも一緒に。

 

「勉強の話は一旦置いといて……しずくはスクールアイドル活動のために演劇部に所属していた、っていう認識で間違いないか? スクールアイドルへの情熱はまだなくなってないって考えてもいいよな?」

「ええ、もちろんです。スクールアイドル活動をしたくて編入してきたんだもん。そう簡単にはなくならないよ」

「それなら同好会に戻ってきてくれないか? 今同好会が大変な状況なんだ。今月中に11人部員を集めないと解散させられるんだよ」

「ええっ!? 私が勝手をしていたせいで……本当にごめんなさい! 私も同好会に戻ります!」

「本当か!? ありがとうしずく!」

 

 感謝の言葉と共に手を握られる。あまりにも突然のことで心の準備ができておらず、恥ずかしさと嬉しさで全身が熱くなっていくのを感じる。多分顔も赤くなっちゃってるよね? 元樹君にもバレちゃってるよね……?

 

「私以外の人は今はどうしてるの?」

 

 誤魔化しと言わんばかりの変な質問をしてしまった。

 

「実は彼方さんもエマさんもせつ菜さんも来てないんだ」

「来てない? じゃあ今の同好会には誰がいるの?」

「俺とかすみ、それと歩夢先輩。あと同好会には入ってないけど、部員集めを手伝ってくれる先輩が1人」

「その歩夢さんという方は?」

「今日同好会に入ったばかりのスクールアイドル界期待の新星」

 

 スクールアイドルっていうことは、その歩夢さんも女の人だよね?

 

「……その人は可愛いんですか?」

「そうだな……しずくと同じくらい可愛い人だよ」

「私と同じくらい……」

 

 私のことを可愛いと思ってくれているのはすごく嬉しいけど、知らない先輩と同じと言われるのは複雑だ。

 

「では、元樹君は私と歩夢さんのどっちが好みですか?」

「へっ?」

 

 かなり意地悪な質問をしてしまった。だけど気になってしまったのだから仕方ない。もし歩夢さんの方が好みだなんて言われたらどうしよう。今日の夜は多分泣いちゃうだろうし、立ち直れないかもしれない。やっぱり聞かない方がよかったかな……?

 

「うーん……」

 

 元樹君はなかなか答えてくれない。この空白の時間が私の不安をかき立てる。判決が出るのを待っている気分だ。

 

「かなり迷ったけど、俺はしずくの方が好みかな。しずくは清楚と可愛いが奇跡的なバランスで両立してるから」

「そうですか、私の方が……。ふふっ、ありがとうございます」

 

 私の方が好みかぁ……。恋愛感情とまではいかなくても、元樹君も私のことをそんな風に思ってくれてたんだ……。心の底から嬉しさがこみ上げてくる。今日の夜は泣かなくてもよさそうだ。

 

 心に余裕が生まれたからか、今の自分を少し客観的に見ることができた。

 なんで私は会ったこともない歩夢さんのことをこんなに敵対視しているのだろう。元樹君が取られるのが嫌だから? きっとそうだ。歩夢さんに元樹君への恋愛感情は当然ないだろうけど、でもそれはあくまでも現時点での話だ。これから先どうなるかはわからない。元樹君は誰にでも優しいから、歩夢さんもコロッとやられちゃうかもしれない。もしそうなった時、歩夢さんに元樹君が取られちゃいそうな気がするんだ。……ううん、気がするじゃなくて確証がある。絶対に歩夢さんに取られちゃう。

 何故かはわからないけど、そう断言することができた。歩夢さんには会ったことなんてないはずなのに……。どうしちゃったんだろう私……。




りなりーと愛さんの分も書こうと思ったけど、りなりーは幼馴染特権で1Part分使いたくなったし、愛さんは前回あまり活躍させてあげられなかったせいで書くことがありませんでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part3/m

初投稿依存症になってしまったので初投稿です。


前々回、サイドストーリーを1回挟んでから本編と言ったな。あれは嘘だ。


『明日の放課後時間ある?』

 

 私には幼馴染が1人いる。堀口元樹。気持ちを上手く顔に出せない私だけど、元樹はそんな私の気持ちをいつもわかってくれる。小学校も中学校もずっと同じクラスで、楽しい時も、嬉しい時も、悲しい時も、苦しい時も、いつも一緒にいてくれた。高校では学科が違うから同じクラスにはなれなかったけど。それでも昔から変わらず元樹は私の友達で、とっても大好きな人。

 そんな元樹からこんなメッセージが突然きた。元樹から連絡がくるのは何か重要なことな時だけだから、これもきっと重要なことなんだろうけど……。違うとはわかっていても少し期待してしまう。お出かけのお誘いだったら嬉しいけど……。

 

『あるけど、どうして?』

『実は璃奈の手を借りたいんだ。できれば璃奈の友達にも手伝ってほしい』

 

「むっ」

 

 私を頼ってくれるのは嬉しい。けど、元樹を愛さんには会わせたくない。元樹は可愛い子がいたらすぐ口説くから。愛さんは同性の私から見ても魅力的だから、元樹が口説かないわけがない。愛さんも優しいから無下にすることはないだろうし。大好きな元樹が愛さんに取られちゃうかもしれない。

 

『私だけじゃダメなの?』

『今は詳しくは言えないけど、とにかく人が必要なんだ』

 

 こういう時の元樹は絶対に嘘はつかないから、人が必要というのも本当なんだろうけど……。私を頼ってくれたんだから、元樹の力になってあげたい気持ちは当然ある。あるけど……。

 

『頼む。信頼できるのは璃奈だけなんだ』

 

 ……ずるい。こんなことを言うのはずるい。こんなことを言われたら嬉しくなるに決まってるし、自分を信頼してくれてる元樹を信頼してなかった自分が嫌になる。

 

『わかった。元樹がそう言うなら』

『ありがとう。助かるよ』

『今から少しだけ通話できる?』

 

 なんだか無性に元樹の声が聞きたくなってしまった。本当は直接会って声が聞きたいけど、もう時間が遅いから電話越しで我慢する。もちろん元樹がOKしてくれればだけど……。

 

『いいよ、好きなだけしようか』

 

 そのメッセージがきてすぐに元樹から電話がかかってくる。きっと私の気持ちを汲み取ってくれたんだろう。

 

『よっ、璃奈。元気か?』

 

 この声が聞きたかった。電話越しでもわかる優しい声。私が一番大好きな声。

 

「うん、元気。元樹は?」

『もちろん元気』

「今日なんで一緒に帰れなかったの?」

『ちょっと同好会に顔を出しててな。しばらく補習のせいで行けてなかったから』

「同好会……」

 

 元樹が何か部活に入ってるのは知ってたけど、どこに入っているのかはわからない。そもそも部活に入ってること自体教えてくれなかったから。お互い隠し事はしないって約束したのに。でも私は元樹から無理に聞き出そうとしたりしない。元樹が自分から話してくれるのを待つことにする。だって私も約束を破ってるから……。

 

「もしかしてしばらく一緒に帰れない?」

『うーん……』

 

 元樹と一緒に帰れないのは寂しいけど、元樹が同好会での活動を頑張りたいのなら私は応援する。私が何かをやりたいと思った時、元樹はいつも応援してくれたから。今度は私の番。

 

『それはまだわからないな。一緒に帰れるかもしれないし帰れないかもしれない。まぁ璃奈次第だな』

「? どういうこと?」

『秘密。明日になれば意味がわかるさ。どちらにしても、一緒に帰りたいって気持ちは璃奈と同じだよ』

「そう。なら大丈夫」

 

 ずるい。元樹は本当にずるい。顔が熱くなっていくのがわかる。電話越しでよかった。今の私を元樹に見られるのは恥ずかしい。私の元樹への気持ちを知ってるかのような発言だけど、元樹は私の本当にわかってもらいたい気持ちをわかってくれない。鈍感。私も精一杯アピールしてるのに……。

 いつかはこの気持ちをちゃんとわかってもらいたい。できれば自分の言葉で直接伝えて。今はまだその勇気はでないけれど……。

 でも私にあまりうかうかしている時間はない。元樹のことを密かに狙っている人達がいるかもしれないから。実際元樹と親しげに話している子を何度か見たことがある。身長が高く、緑っぽい髪の可愛い子だった。多分元樹と同じクラスの子なんだと思う。元樹があの子のことをどう思ってるかはわからないけど、少なくともあの子は元樹に対して好きに限りなく近い気持ちを持ってると思う。元樹と話すあの子はいつも笑顔で、すごく楽しそうだったから。私にはわかる。だって同じ気持ちだから。

 泥棒猫、なんて言うつもりはない。だって気持ちを伝えられない私が悪いんだから。それでも嫉妬はしてしまう。もし元樹からあの子のことが好きだって告げられたらどうしよう……。応援してあげたい気持ちはあるけど、本当の気持ちを抑えられるだろうか。元樹のことをきっぱりと諦められるだろうか。元樹と今まで通りの関係でいられるだろうか。

 

「……そういえば今日ね―――」

 

 そんな不安をかき消すように言葉を紡ぐ。私の不安を知ってか知らずか、元樹も私との会話にずっと付き合ってくれた。

 

 この日の通話は珍しく日を跨いでも終わることはなかった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「りなりーちーすっ!」

「愛さん、来てくれてありがとう」

「いいっていいって。それで、今日はどうしたの?」

「私の幼馴染が私とその友達に手伝ってほしいことがあるって言うから」

「えっ!? りなりー幼馴染いたの!? 愛さん初耳! どんな人なの!?」

「どんな人……一言で言えば変わった人、かな」

 

 うん。これが一番しっくりくる。

 

「よくどうでもいい嘘つくし、たまに意味のわからないことも言うし、頭の回転は私よりも速いのに勉強だけはできない。あと運動もダメダメ。私よりも力がないし、100メートル走で体力が尽きちゃう」

「それは確かに変わった子だねー」

「でも優しくてかっこいい人なの。私の気持ちをわかってくれるし、いつも私のことを1番に考えてくれるし、困った時はすぐに助けに来てくれる。昨日も私が通話したいって言ったら何時間も付き合ってくれた。それに普段はおちゃらけてるけど、真面目にやる時は誰よりも真面目にやってくれるの。リーダーシップもあるし、話をまとめるのも上手。中学校の時はいっつも話の中心だった」

「うんうん。りなりーはその子のことが大好きなんだね。すっごく伝わってくるよ」

「……うん、大好き。璃奈ちゃんボード『てれてれ』」

 

 元樹がいない時なら、元樹のことが好きだってちゃんと口に出して言える。早く目の前で言えるようになりたい。

 

「でも、可愛い子がいたらすぐに口説きに行くとこだけはダメ。璃奈ちゃんボード『ぷんぷん』」

「それはいけないなぁ。りなりーっていう可愛い幼馴染がいるのにね。これは愛さんがビシッと言ってあげないとダメかな?」

「ううん、大丈夫。なんだかんだ本気では口説いてないし、私がやめてほしいって言ったら1週間くらいはやめてくれるから」

「実はその子はりなりーの気を引きたくてやってるんじゃない? その手段が他の子を口説くっていうのはどうかと思うけど」

「そうなの、かな?」

 

 そうだったら嬉しいな。元樹も私のことを意識してくれてるっていう証拠だから。

 

「もっとりなりーとその子のお話聞きたいな」

「うん、いいよ」

 

 

 

「お待たせ、璃奈。ちょっと遅れた、悪いな。お詫びはアイスティーでいい?」

「あっ、元樹」

 

 愛さんに元樹との思い出を話していると、待ち合わせ時間に少し遅れて元樹がやってきた。……後ろに知らない女の子を4人も連れて。私と同じ1年生が2人、先輩の2年生が2人。

 

「あの子がりなりーの幼馴染の元樹君?」

「うん。元樹、アイスティー頂戴」

「ごめん嘘。アイスティーなんて持ってない」

「あー、嘘ついた。さっきあるって言ったのに。璃奈ちゃんボード『ぷんぷん』」

 

 噓だってなんとなくわかってたから、本当は怒ってないけど。

 

「えっと……この人が元樹君の幼馴染さん……?」

「なんていうか……その……」

 

 ()()君……。呼び方からして1年生の2人は元樹と仲がよさそう。なんだか距離も近いし。特にリボンをつけた子なんて肩が触れそうな距離だ。むぅ……。

 

「どうした? 俺の幼馴染に何か?」

「そういうわけじゃないんだけど……」

「わかってる。あのスケッチブックが気になるんだろ?」

「ごめんなさい。私、これがないとうまくコミュニケーションがとれなくて」

「アタシとりなりーで作ったんだもんね~、この璃奈ちゃんボード!」

「そうなんだ! 個性的で、私はすごくいいと思う!」

 

 ツインテールの2年生の人がこれボードを褒めてくれた。愛さんと作ったものを褒めてもらえて嬉しい。褒めてくれたのは元樹に続いて2人目だ。すごくいい人。

 

「……なんていうか、侑先輩のそういうとこすっごいイケメンですよね。いつでも本心から相手を褒められるのってすごいと思いますよ」

「えへへ、ありがと!」

 

 ……元樹とこの侑先輩? なんかいい雰囲気……。

 

「でも、イケメンなのは私じゃなくてもと君でしょ?」

「……そういうとこですよ、マジで……」

「もと、君……?」

 

 元樹には元樹の交友関係があるのはわかってる。でももう我慢できない。昨日から積もっていた不安が今ので爆発してしまった。

 

「元樹ちょっとこっち来て」

 

 元樹を教室の外に呼び出す。不思議そうな顔をしながらも、ちゃんと私についてきてくれた。

 

「どうしたんだよ、璃奈。何かあったのか?」

 

 私を心配してくれる言葉を無視して、いわゆる壁ドンで元樹の逃げ場を塞ぐ。元樹は力がないし、何よりも優しいから無理やり手を振り払って逃げることはない。身長は私の方が小さいから、周りからは壁ドンをする側がされる側を見上げる変な構図に見えるだろう。でもそんなことはどうだっていい。

 

「あの人達、誰? 元樹とどういう関係?」

「あの人達は、まぁ、ただの知り合いだよ」

「誤魔化さないで」

「スクールアイドル同好会の仲間です」

「スクールアイドル同好会? 元樹も入ってるの?」

「マネージャーとして入ってます」

 

 スクールアイドル同好会……私の知らない所であの人達と仲良くやってたってこと?

 

「いつから入ってたの? なんで教えてくれなかったの?」

 

 元樹から言ってくれるまで聞かないつもりだったけど、もう我慢できない。

 

「入学してから割とすぐに入部した。教えなかったのは璃奈に聞かれなかったから」

「さっきツインテールの人に褒められた時、元樹デレデレしてた」

「だってイケメンだって褒められたし……」

「お互い隠し事はしないって昔約束したのに、元樹は約束破った」

「っ! ……そうだったな、ごめん……」

「これは約束を破った罰」

 

 罰として、元樹の頬を引っ張る。少し強めに。

 

「いたいれふ……」

 

 溜まっていた不満を吐き出したことで少し冷静になれた。

 私の知らない所であんなに可愛い人達と仲良くしていたのは許せないけど、でもそれを責めるのは間違っていた。だって元樹には元樹の交友関係があるんだから。私も愛さんと元樹が会わないようにしてたのに。それに、私だって元樹との約束を破っている。元樹は数ヶ月しか破っていないけど、私なんてもう何年も破り続けている。好きな人ができたら教えるという約束を……。

 それでもやっぱり許せないことは許せないので、軽い罰だけは与えることにした。元樹と触れ合えるので私にとってはご褒美だし。

 

「ゆるひて……」

「じゃあ仲直りのアレしてほしい」

 

 いつも仲直りの時にやってくれたことをお願いしたけど、元樹はピンときていないのか首をかしげる。

 

「むぅ……」

 

 でも元樹が覚えてないのも仕方のないことかもしれない。だって最後にやってくれたのは小学校低学年の時だから。それ以降は喧嘩することもなかったし。

 

「璃奈、ごめんな……」

 

 そうやって仕方なく諦めようとしていると、元樹に抱きしめられた。

 顔が熱い。沸騰しそうだ。でも心は満たされていく。嬉しい。幸せだ。ずっとこのままでいたい。でもやっぱり……

 

「は、恥ずかしい……。昔は頭を撫でてくれるだけだったのに……」

「そっか、そういえばそうだったな……」

「でも嬉しい」

 

 私も元樹を抱きしめ返して、その胸に頬をすりすりする。周りで誰かが見ているかもしれないけど、そんなことは気にせず続ける。むしろ見せつけるつもりだ。恥ずかしくはあるけど、こうしていられる幸せの方が大きい。

 

「頭も撫でてやるよ」

「んっ……」

 

 元樹は頭も撫でてくれた。抱きしめられながら頭を撫でられるの、すごくいい。すごく幸せだ。今なら何でも許せる気がする。

 

「……元樹はなんで私と愛さんを呼び出したの? 顔合わせのため?」

「ちょっといろいろあって、今月中に部員を11人集めないとスクールアイドル同好会は解散しなくちゃならないんだ。だからできれば璃奈に入ってほしくて。璃奈がスクールアイドルとして輝いてるところも見てみたいし」

「私を頼ってくれて嬉しい。スクールアイドルやってみたいけど、私自信ない」

「大丈夫だ。俺が全力でサポートするから。それに、さっき侑先輩が璃奈ちゃんボードを個性的だって褒めてくれただろ? 璃奈のことを認めてくれる人は他にもきっとたくさんいるはずだ。だから大丈夫。自信なんてこれからつけていけばいいって」

「元樹がサポートしてくれるなら、私スクールアイドルやってみる。でも、できれば愛さんと一緒にやりたい」

「わかった。俺に任せとけ」

「うん。お願い」

 

 何の根拠もないけど、元樹ならやってくれると信じられる。

 

「じゃあ中に戻ろうか」

 

 元樹は私を抱きしめるのと頭を撫でるのをやめ、中に戻っていく。名残惜しくはあるけど、元樹に続いて中に入る。

 

「あっ、2人ともおかえりー」

「何話してたの?」

「ちょっとね、璃奈を勧誘してました。璃奈も同好会に入ることになったんですけど、愛さんも入りませんか?」

「りなりーもスクールアイドルやるの!? 実は愛さんもやることにしたんだー」

「ほ?」

「さっきゆうゆ達の話を聞いて、アタシもスクールアイドルやってみたいなーって思ったんだ!」

「そうなのか……」

 

 さっきまで元樹はやる気に満ちた顔をしてたのに、いつの間にかその役割を取られていたことを知って気の抜けた顔になった。慰めてあげるために、背伸びをして頭を撫でてあげる。サラサラしてる。

 

「というわけで、これからよろしくね! 愛さん頑張っちゃうよー!」

「私も頑張る」

「かすみんも2人に負けないように頑張りますよー!」

「私も頑張ります!」

「わ、私も!」

「よし、皆で頑張ろー!」

「「「「「「「おー!!」」」」」」」

 

 スクールアイドルは初体験で不安もたくさんあるけど、それと同じくらい楽しみなこともあるし、何よりも元樹と愛さんがいるからきっとどんなことも乗り越えられる気がする。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part7/n

初投稿依存症を治療する方法が見つかったので初投稿です。


 ガバをしないRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はりなりーと愛さんを仲間にした所で終わりました。今回はその続きからですが、今日はもうやることがないので解散して帰りましょう。練習する用意もしていませんしね。

 

「元樹、一緒に帰ろ」

 

 いいですよ、帰りましょうか。

 

 

 

 何もイベントが起きなかったため、すぐに自宅前に到着しました。りなりーとお別れしましょう。バイバーイ。

 

「うん。また明日」

 

 あっ、そうだ(唐突) ほも君は明日放課後部活に行けないので、ほも君なしで練習しておいてください。練習メニューは後で作って送るので。

 

「元樹がいないの寂しい……。璃奈ちゃんボード『しゅん』」

 

 明後日は行けると思うので、そんなに寂しがらないでください。

 

「うん……。ねぇ、明日練習頑張るから、何かご褒美がほしい」

 

 いいですよ。ご褒美に餃子を買ってきてあげましょう。

 

「やった、嬉しい。明日の練習頑張るね。璃奈ちゃんボード『やったるでー』」

 

 それじゃあ、今度こそまた明日。

 

「ばいばい」

 

 さて、りなりーとお別れしたので、練習メニューを作りましょう。パパパッとヤッて、終わりっ! これからほも君が部活に行けない時は前日までに練習メニューを作って誰かに渡しておきます。

 明日のメニューは身体能力の測定をやっておいてもらいましょう。皆の能力のデータがあると練習メニューが作りやすくなるので。今回は作ったメニューをりなりーに送っておきます。

 

 さて、今日はもう終わりましょう。セーブはもちろんしません。……あっ。

 

『今日のことを日記に書いておこう』

 

 間違ってセーブしちゃいました。あのさぁ……。これで10秒のロスです。今回開幕でガバはしない宣言したのになぁ……。操作ミスをしてはいけない(戒め)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「元樹さん、おはようございます」

 

 3日目の朝です。登校していたら栞子ちゃんに遭遇しました。栞子ちゃんオッスオッス。

 

「一緒にラーメンを食べに行くのが楽しみで、昨日はあまり眠れませんでした……」

 

 おっ。じゃあ一緒にお昼寝しましょうか。授業中に。

 

「元樹さんと一緒にお昼寝は魅力的ですが、居眠りはダメですよ。もし居眠りをしていたら私が起こします」

 

 栞子ちゃんは真面目ですね。でもそこが栞子ちゃんの魅力なんですけどね。でも今回はほも君が『睡眠不足』持ちなので、栞子ちゃんの真面目さが敵になります。居眠りをしたら親密度が下がりますからね。

 

「今日の私が言えたことではありませんが、元樹さんもちゃんと夜に寝ないとダメですよ」

 

 コンディションのせいで睡眠不足になるんすよ。

 

「もしかして不眠症気味なのですか……?」

 

 そうだよ(便乗)

 

「そうですか……。あの、元樹さんの症状が少しでもよくなるようにいろいろ調べてみます」

 

 これはもしかしてバッドコンディション回復イベントですかね。

 この回復イベントは主人公についている一部のバッドコンディションを消すことができます。コンディションと治してくれるキャラごとに専用のイベントが用意されており、今回は栞子ちゃんが睡眠不足を治してくれるみたいですね。何気に栞子ちゃんの睡眠不足改善イベントは見たことがないです。ちなみに『勉強苦手』を改善できるイベントは今のところは発見されていません。馬鹿につける薬はないんだよなぁ。

 これらの回復イベントはランダムで発生し、しかも成功するかどうかもランダムです。成功確率は体感では30%くらいなのですが、公式Wikiには70%と書かれています。私の運悪くないですかねぇ。ということで、睡眠不足の改善はあまり期待しないでおきます。決して栞子ちゃんのことを信用していないわけではありません。むしろ全面的に信頼しています。信用していないのは乱数と私の運だけです。

 

 

 

「お昼食べましょう!」

 

 今日も何事もなく午前を終えることができました。私の運もまだまだ捨てたもんじゃないですね。

 

 さて、彼方さんに会う前に栞子ちゃんと昼ご飯を食べてあげましょう。今日のほも君のお昼はカレーパンと高菜おにぎりですね。美味しそうです。私もリアルでお腹が空いてきました。軽食とか用意しておけばよかったかなぁ。

 

「昨日カップルが学内で抱きしめあっていたという噂を知ってますか」

 

 そう……(無関心)

 

「なんでも廊下で堂々とやっていたのだとか」

 

 ちなみにどこら辺の廊下でしょうか。

 

「1年情報処理学科の教室前らしいです」

 

 あっ、ふーん……(察し) 絶対ほも君とりなりーのことですね。

 

「仲睦まじいのはとてもいいことだとは思いますが、学内の風紀を乱すのはいただけませんね」

 

 これ栞子ちゃんにバレたら確実に親密度が下がりますね。絶対にバレないようにしないと……。

 

「……どうしたのですか? 先程から私のポテトサラダを凝視してますが……」

 

 そのポテトサラダ美味しそうっすね~。栞子ちゃんもうまそうやな~。

 

「もしかして食べたいのですか? いいですよ。好きなだけ食べてください」

 

 え? 栞子ちゃんを食べてもいいんですか? 栞子ちゃんを食べる(意味深)と本動画がR-18扱いになってしまうため、このRTAではやりません。見たい兄貴達は自分で買ってプレイしよう。

 冗談は置いておいて、どうやらほも君はポテトサラダが好きみたいですね。私もポテトサラダ好きです。美味しいですよね。特にじゃがいも抜きポテトサラダが好きです。

 

「あっ、でも元樹さんはお箸を持ってませんよね……」

 

 じゃあ栞子ちゃんに食べさせてもらいましょう。

 

「えっ!? わ、私がですか……?」

 

 ホラホラホラホラ(鬼畜)

 

「そんな目で見ないでください……」

 

 やだよ(即答)

 

「うぅ、わかりました……。あ、あーん」

 

 あーん(棒読み)

 

「お味はいかがですか……?」

 

 うん、おいしい!

 

「それはよかったです。恥ずかしい思いをした甲斐がありました」

 

 ところで、これは風紀を乱したことにはならないんですかね?

 

「私達はただ食事をしているだけですから。なので何も問題はありません」

 

 ほんとぉ?

 

「はい、本当です。それとも、元樹さんは今のを卑しい行為だと思っているのですか?」

 

 (思って)ないです。

 

「そうですよね。私達はただ仲良く食事をしていただけですから」

 

 ちなみになんですけど、ほも君が別の女の子とご飯を食べさせあっていたらどう思いますか?

 

「それは……元樹さんの交友関係に私がどうこう言うことはできないというのはわかっていますが、それでもやはり悲しい気持ちになります。そのような光景は考えたくもありません……」

 

 さて、栞子ちゃんを少し曇らせたところで、彼方さんに会うために保健室に行きましょうか。

 

「どこか行かれるのですか?」

 

 ちょっと調べ物があるので図書館に行ってきます(大嘘)

 

「私もお手伝いしましょうか?」

 

 イベントが発生しなくなるから来ないで(懇願) 気持ちだけ受け取っておきます。

 

「わかりました……。図書館で授業をサボってはいけませんよ。もし授業が始まっても戻ってこなかったら、私が捕まえに行きますからね」

 

 それは栞子ちゃんもサボってることにならないんですかね?

 

 

 

 保健室にやってきました。彼方さんは保健室に入ってすぐ左にあるベッドにいます。カーテンを開けて中に入っちゃいましょう。おっ、開いてんじゃ~ん!

 

「むにゃむにゃ……」

 

 彼方さんがベッドの上で気持ちよさそうにおねんねしてますね。可愛い。このままずっと眺めていたいですが、これはRTAなのでとっとと彼方さんを起こしてしまいましょう。おいゴルァ! 起きろ! 生徒証持ってんのか!

 

「うぅん……あれぇ、もと君だ~」

 

 先輩! 何してんすか! やめてくださいよ本当に!

 寝ぼけた彼方さんに抱き枕の如く抱きしめられてしまいました。レバガチャで抜け出しましょう。うおぉぉぉぉぉ!!

 

「すやぴー……」

 

 ほも君が貧弱すぎて、彼方さんの拘束を振りほどくことができません。困りましたね、このままではイベントが進みません。こんなんじゃRTAになんないよ~(迫真)

 とりあえず、今できることをやるしかありませんね。試しに彼方さんをツンツンしてみましょう。ツンツン。

 

「んぅ……」

 

 効果ありですかね。じゃあもっとやりましょう。ツンツン。

 

「んっ……そんなとこ触らないでぇ……」

 

 ほも君は彼方さんのどこを触ってるんですかねぇ。でも彼方さんは体つきがエッチですからね。それでついついお触りしてしまう。お気持ち、わかりますよぉ。

 

「うぅん……あれぇ、どうしてここにもと君がいるの~?」

 

 ようやく起きてくれました。これでイベントが進みます。彼方さんが寝ぼけてほも君を抱き枕にしたんですよ。

 

「そっか~。もと君は抱き心地がいいから、ついつい抱きしめちゃうんだよね~。もと君のおかげでぐっすり眠れたよ~」

 

 そうですか、それはよかったですね(適当) で、いい加減離してくれませんか? そろそろほも君の愚息がこんにちはしそうなので。

 

「う~ん、まだダメ~。もっと堪能してから~」

 

 ダメみたいですね(理性) こっちの事情も考えてよ(棒読み) そっちがそのつもりなら、こっちにも考えがあります。ほも君も彼方さんの体の感触を堪能しましょう。いいカラダしてんねぇ! ああ^~たまらねぇぜ!

 

「それにしても、もと君に会うのは久し振りだね~。今日はどうしたの?」

 

 実は月末までに部員を11人集めないとスクールアイドル同好会が潰されることになってしまい、彼方さんに戻ってきてほしいんですよ。

 

「潰される!? それは……彼方ちゃん切ないな。阻止しないと。でも彼方ちゃん今戻るのは難しいなぁ~。戻りたい気持ちはあるんだけども」

 

 何か戻れない事情でも?

 

「実は彼方ちゃん今ホント余裕がないんだよ~。スクールアイドルは好きだよ? でも、今は無理。とってもピンチで忙しい~」

 

 何がピンチなんですか?

 

「成績が下がってしまったんだな、コレが……」

 

 おっ、ほも君と一緒ですね。

 

「彼方ちゃん中間やばくってさ~、期末ふんばらないとヤバイ。だからお勉強に打ち込んでいるんだけど、それでも数学はピンチがすぎる。わけわかんない」

 

 なるほど。彼方さんは数学ができないんですね。そういえば、うちの新入部員のりなりーと愛さんが理数系を選択してた気がするなー(棒読み) その2人に数学を教えてもらうっていうのはどうですかね? りなりーの数学力は幼馴染のほも君が保証しますよ。

 

「えっ、そんなにおいしい話が?」

 

 これならスクールアイドル活動と勉強の両立ができますよ。

 

「おお~、ないすあいでぃあ~。それなら戻ろっかな」

 

 ありがとナス!

 これで部員が7人になりました。やったぜ。投稿者、変態糞RTA走者。8月16日水曜日、7時14分22秒。スクールアイドル同好会の先輩(17歳)とわし(15歳)の2人で東京にある学校の保健室のベッドで盛りあったぜ(直球) スクールアイドル同好会に入りたいやつ、至急、メールくれや。

 

「その2人は今日部活に来るのかなぁ?」

 

 りなりーは来ますね。愛さんはわからないけど、多分来ると思います。ほも君は行けないですけど。

 

「もと君は来ないのか~。彼方ちゃん悲しいなぁ、しくしく」

 

 まぁそういうわけで、今日の放課後に部室の方に顔を出してあげてください。りなりーには彼方さんに勉強を教えてほしいって頼んでおきますので。

 

「お願~い」

 

 そろそろ授業が始まりますし、教室に戻りましょうか。授業に遅れると栞子ちゃんがほも君を捕まえに来るので。

 

「そうだね~、途中まで一緒に行こっか」

 

 ようやく解放してもらえました。ほも君のグソクムシは半おっきしてました。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part8/n

初投稿依存症が治ったので初投稿です。


 幼馴染を差し置いて登場回数最多で、席が隣であることをいいことにたくさんお話しして昼食も一緒に食べ、挙句の果てには主人公とラブラブデートに出かける系クラスメイトと、『かーっ! 見んね愛さん! 卑しか女ばい!』とかそろそろ言いそうなくらい主人公と周りの子の仲の良さを見せつけられたけど、幼馴染という立場を利用して廊下で堂々と主人公と抱き合い、恐ろしい速さで生まれた差を埋めていく幼馴染が主人公を奪い合うRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は保健室のベッドで彼方さんに抱きつかれながら同好会に帰ってきてもらったところで終わりました。今回はその続きからで、栞子ちゃんとラーメンを食べに行きます。

 というわけで、早速イキますよ~イクイク……。

 

「はい、行きましょう!」

 

 と思いましたけど、晩ご飯を食べるにはまだまだ時間が早いですね。

 

「確かにそうですね。ご飯の前にどこか遊びに行きますか?」

 

 そうしましょう。ちょっと寄りたい場所があるのでね。

 

「どこに行きたいんですか?」

 

 本屋です。今後の親密度上げを楽にするためのアイテムを本屋で購入します。

 

「本屋ですか。いいですね。元樹さんの勉強の参考になりそうな本を選んであげます」

 

 おっ、いいですね。成績優秀者に参考書を選んでもらうと自分で選ぶよりも学力経験値が多くもらえます。

 ところで、栞子ちゃんはどこか行きたいところはありませんか? どこでもいいですよ。今日は水曜日なのでいつもより授業が少ないですからね。遊ぶ時間はたっぷりあります。

 

「そうですね……あの、私げーむせんたーというところに行ってみたいです」

 

 ゲームセンターですか? いいですよ。今ゲームセンターの発音が少し怪しかった気がするのですが、もしかしてゲームセンター初体験ですかね?

 

「実はそうなんです。クラスの方からお話で聞いたことはありましたが、実際に行ったことはないんです。なのでゲームセンターでの遊び方を教えていただけないでしょうか?」

 

 もちろんいいですよ。ゲームセンターでのマイナーな遊び方をたっぷりと教えてあげます。まずは地面に這いつくばって筐体の下にコインが落ちてないかを探します。そして見つけたコインで競馬ゲームをやってコインを増やします。

 

「あの、できればメジャーな遊び方でお願いします」

 

 しょうがないですね。栞子ちゃんがそう言うならメジャーな遊び方にしてあげましょう。

 では、栞子ちゃんとデートにイクゾー!デッデッデデデデ!

 

「デ、デート……」

 

 

 

 本屋にやってきました。死ぬほど広いので本ならなんでも揃っています。

 

「元樹さんが欲しいのはどんな本なんですか?」

 

 今回ほも君が欲しいのはファッション雑誌です。

 

「ファッションですか。なんだか意外ですね。元樹さんはあまりオシャレとかに興味がなさそうでしたし」

 

 かつてのほも君はそうだったかもしれませんが、これからのほも君は違います。女の子達を最速で堕とすためにオシャレになる必要があります。

 

「オシャレに興味を持つことはいいことだと思いますよ。私もオシャレな元樹さんを見てみたいですし」

 

 栞子ちゃんを喜ばせてあげるため、しっかりとファッションを勉強しましょう。

 

「私も元樹さんの隣に立てるようにファッションの勉強をしないといけませんね」

 

 栞子ちゃんは今のままでも十分オシャレで好きだよ、と伝えてあげましょう。今は制服のままデートしてますが、私服デートの時の栞子ちゃんはぐうかわなので見とけよ見とけよ~。

 

「ほ、本当ですかっ! ありがとうございます!」

 

 親密度稼ぎをしたところで、そろそろ買う雑誌を決めましょうか。まぁ、何を買うかは最初から決めてるんですが。

 

「その方は確か……」

 

 果林さんが表紙のこの雑誌を買います。税込114514円です。

 

「確かライフデザイン学科3年生の朝香果林さんでしたよね。クラスの方達が話しているのを聞いた覚えがあります」

 

 へぇー、初耳です(すっとぼけ) こんな綺麗な人がうちの学校にいたんですね。はえ^~(お胸)すっごい大きい……。

 

「……元樹さんは、朝香さんのような女性がタイプなのですか……?」

 

 僕のタイプは栞子ちゃんです(ガチ) と答えたいところですが、ここでそうやって答えてしまうと栞子ちゃんルートにほぼ確定してしまうため、ここは好きになった人がタイプですと答えておきましょう。

 栞子ちゃんはかなり2股しにくい部類に入るため、このRTAで栞子ちゃんを最初の彼女として選ぶのはかなり厳しいでしょう。土下座して頼んでも栞子ちゃんは2股を許してくれません(1敗)

 ちなみに、一番2股しやすいのはエマさんです。笑って許してくれます。スイスでは重婚が許されてるとかなんですかね? ただ、エマさんが幼馴染だとスイスからスタートすることがしばしばあり、しかも日本に行くことなく物語が終わってしまうこともあるため、エマさん幼馴染チャートは泣く泣く諦めました。ラブライブってなんだっけ?

 

「元樹さんは好きな人とかいるのですか?」

 

 いないよ(即答)

 

「そうですか……。……私はいますよ、好きな人」

 

 大胆な告白は女の子の特権。

 チャートに書かれてないことを言われてしまいました。どうしましょうか……。チャートに書かれてない行動はするなって昨日言っただろ、あぁん?

 どうすればいいかわからないので、とりあえずその好きな人の特徴でも聞きましょうか。多分ほも君のだと思うんですけど(名推理)

 

「えぇっとですね……その方は普段はふざけていることが多いんですけど、いざとなれば誰よりも真面目にやってくれるんです。クラスでの話し合いでも自分から積極的に発言していて、クラスの方からよくまとめ役をお願いされていますね。それからとても優しくて、入学したての頃、ずっと1人でいた私に声をかけてくれたんです。その時からよく話すようになって、昼食も一緒に食べますし、休日は彼の方から遊びに誘ってくれることもあります。それ以外にも困ったことがあればいつも助けてくださって、ボランティア活動なども手伝ってくれるんです。……ただ、その方は勉強がすごく苦手でして、よく勉強を教えてほしいと私を頼ってくださるのですが、上手く教えてあげられない時もあって……。人にわかりやすく教えるにはどうすればいいのか、いつも私が勉強をさせてもらってます。……こ、これくらいで勘弁してください……恥ずかしいです……」

 

 やっぱりほも君じゃないか(歓喜) 想像の5倍くらいの答えが返ってきたのでびっくりしました(小並感) 栞子ちゃんガチ惚れじゃないですか。真っ赤になった顔を手で隠す栞子ちゃんは最高に可愛いですね。視聴者兄貴スクショタイムですよ。私もスクショしました。これのせいでタイムが微妙に遅くなりました。1秒くらいなら誤差かもしれない。

 栞子ちゃんはその好きな人に告白とかしないんですか?

 

「こっ、告白ですか!? ……今までに何度かしようと思いましたけど、恥ずかしさと振られる怖さで言い出すことができなくて……。相手からどう思われているのかわからないのって、こんなにも怖いことだったんですね……。結果はどうであれ、いつかはちゃんと告白したいとは考えてはいるのですが……」

 

 栞子ちゃんの方から告白してくれるのであれば、タイミングが悪くなければ受け入れますよ。りなりーと付き合う前に告白イベが来たら即リセです。一度告白を断ると二度と起きなくなるので。

 

「告白とまではいきませんが、好きということは何度もアピールしているのですが、どうにも気付いてもらえなくて……。やっぱりアピールが遠回しすぎるのでしょうか。それとも単純に私に興味がないのでしょうか……。嫌われてはいないとは思うのですが、恋愛対象としては見てもらえていないのでしょうか……」

 

 栞子ちゃんが言った通り、ほも君は栞子ちゃんからの好意に気が付いていません。先程ほとんど告白に近いことを言われたにもかかわらず気付きません。これはほも君が栞子ちゃんに興味がないからとかではなく、本作の主人公が全員鈍感系主人公だからです。相手が誰であれ、直接好意を伝えられない限り気付きません。鈍感系主人公なんて古いんだよ!

 ただし1つだけ例外があって、それが主人公がコンディション『恋愛強者』を所持している場合です。恋愛強者の説明文は『親密度が非常に上げやすくなる』というものですが、隠し効果として告白されていなくても相手の好意に気付くことができるというものがあります。これがあると告白イベの発生が通常よりも早くなるため、大幅なタイムの短縮に繋がります。

 ただし、このコンディションの獲得方法が開始時にランダムで獲得か、本屋で『これで完璧! 恋愛マスターが教える恋愛のコツ100選!』という本を購入することで獲得できます。ただしその確率が恐ろしいほど低く、前者は0.01%、後者は0.0001%となっています。さすがに恋愛強者をチャートに組み込むには低確率すぎると判断したため、本チャートでは恋愛強者には頼らないことにしました。ただ、デートなどで本屋に行くことがそこそこあるので、本屋に来たらこの本がないかの確認は一応することにします。この超低確率を引くことができればタイムを超短縮できますからね。

 運に自信ニキは恋愛強者チャートで走ってみるといいかもしれませんね。私は走りませんが。

 

 さて、少し涙目になっている栞子ちゃんをこのまま放っておくわけにはいきませんね。栞子ちゃんがこうなった原因は鈍感野郎なほも君にあるのでちゃんと慰めてあげましょう。

 

「……えっ? 私が、魅力的……ですか?」

 

 そうです、栞子ちゃんはちゃんと魅力的です。真面目なところ、優しいところ、実はチョロいところ、その可愛い顔、八重歯、控えめなおしり子ちゃん、全部栞子ちゃんの魅力です。

 

「本当に、そう思っていますか?」

 

 もちのろんです。

 

「そうですか」

 

 栞子ちゃんが涙目から笑顔に変わりました。チョロいですね。やっぱ……栞子ちゃんの……笑顔を……最高やな!

 

「次は参考書を見に行きましょうか。私が元樹さんに合う参考書を選んであげます」

 

 栞子ちゃんが先導してくれるのでついて行きます。栞子ちゃんが参考書を選んでくれますが、今後のことを考えるとあまり数は買えませんね。ほも君の所持金は毎月のお小遣いとバイト代です。バイト先は自分で探します。もちろんバイトをしないという選択肢もあります。本RTAではなるべくバイトをしないチャートを採用していますが、デートなどで所持金が足りなくなりそうなら単発バイトをしてバイト代を稼ぎましょう。

 

「この本はいかがでしょうか。問題数が少な目ではありますが、きちんと基礎から書いてあって、数学全般が全くできない元樹さんにはオススメです。それからこちらの本もいいと思います。こちらは問題数が多く、応用問題の解説も式変形が詳しく書かれているためすごくわかりやすいです。どちらにしますか?」

 

 折角栞子ちゃんが選んでくれたので両方買いましょう。

 

「両方、ですか? 2冊買うとなるとそこそこのお値段になりますが、大丈夫ですか?」

 

 どれどれ値段は……うん、このくらいなら大丈夫です。2冊買いましょう。

 

「はい、どうぞ。ちゃんと勉強してくださいね。わからないところがあれば教えますから」

 

 それじゃあレジに行きましょうか。栞子ちゃんは何か買わなくても大丈夫ですか?

 

「私は大丈夫です。レジの近くで待ってますので」

 

 栞子ちゃんは何も買わないみたいなのでほも君1人でレジに向かいます。運よく空いているレジがあったのでそこに入りましょう。ファッション雑誌1冊と参考書2冊で約7000円でした。うんまい棒約2年分ですね。

 買った本は今日の夜に読もうと思います。忘れないようにしましょう。

 

 お待たせしおってぃー。そろそろゲームセンターに行きましょうか。

 

「はい。楽しみです!」

 

 ウキウキ栞子ちゃん可愛いなぁ。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか、いっぱい欲しいな(強欲)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part9/n

そろそろ初投稿ネタが思いつかなくなってきたので初投稿です。


 開発陣がラーメン界の巨匠にお願いして作ってもらったラーメンがガチすぎて、画面の中からゲームプレイヤー達の味覚を刺激し、最終的に実際に販売するまでに至った究極のラーメンで視聴者兄貴に飯テロを仕掛けるRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は栞子ちゃんと本屋に行ったところで終わりました。今回はその続きからで、栞子ちゃんとゲームセンターに行きます。ゲームセンターに着きました。

 

「ここが、ゲームセンター……!」

 

 初めてのゲームセンターに栞子ちゃんは興奮しているみたいですね。おめめがキラキラです。

 さて、何をして遊びましょうか。ここのゲームセンターは死ぬほど広いのでなんでもありますよ。

 

「コインゲームというもので遊んでみたいです」

 

 コインゲームですか。私も好きですよ。ですが、コインゲームで遊ぶには今日は時間が短すぎるので別のものにしましょう。

 

「そうですか……」

 

 コインゲームはまた今度にしましょう。その時は休日に一緒に行きましょう。それならば時間はたっぷりありますからね。

 

「また今度……一緒に……そうですね。また今度、2()()()来ましょう」

 

 わざわざ2人でを強調しなくてもわかってますよ。当たり前に決まってるじゃないですか。次はほも君の幼馴染も一緒に来ましょうね(鬼畜)

 

「何があるか全くわからないので、とりあえず歩きながら決めてもいいでしょうか?」

 

 いいですよ。ついでに、ほも君がわかる物であれば説明してあげます。

 

「あの車みたいなものは何ですか?」

 

 あれはレースゲームですね。あのハンドルとブレーキ、アクセルで画面内の車を操作して順位を競うゲームです。

 

「レースゲーム……楽しそうです!」

 

 やってみますか?

 

「はい! 元樹さんも一緒にやりましょう」

 

 いいですね、対戦しましょうか。相手は初心者なので優しくしましょう(建前) 本気を出してぶっちぎります(本音)

 

「その、初めてなので優しくしてくださいね……?」

 

 やっぱり接待プレイしましょう(手のひらドリル) あんな言われ方したら激しくする(意味深)ことなんてできませんよね。

 

 ただのレースなんて見ていても暇なだけですよね? あまりにも暇なので……みなさまのためにぃ~こんな動画を用意……

 

 できませんでした!

 最初は栞子ちゃんぐうかわ表情集でも作ろうかなと思いましたが、レースの時間内では収まらないことが判明したため作るのは断念しました。栞子ちゃんのぐうかわ表情が見たい兄貴は自分で買ってプレイ、しよう! 今ならもれなく栞子ちゃん以外のぐうかわ表情も見ることができますよ。

 というわけで、このレースシーンは4倍速で垂れ流すことにします。

 

 (無言タイム)

 

「やりました、1位です!」

 

 負 け ま し た

 途中から接待プレイをやめて本気でやったのですが、接待プレイ中に生まれたリードを守り切られました。君本当に初プレイですかね?

 

「元樹さんが手を抜いていたのが悪いのでは?」

 

 正論パンチはご遠慮ください。

 ま、まぁ、ここは負けても親密度には影響ないので……。気を取り直して次に行きましょう。

 

「そうですね、次は……あれをやってみたいです!」

 

 あれはエアホッケーですね。おっけー!(激うまギャグ)

 

「これはどうやって遊ぶのですか?」

 

 これでこれを打ち返してあれに入れます(適当)

 

「なるほど、わかりました」

 

 あの説明で理解できるのか……(困惑) でも説明にかかる時間が短縮できたのでヨシッ! ゲーム代は100円なのでほも君が払ってあげましょう。

 ゲーム開始です。ほも君は両手にマレットを持っていますが、栞子ちゃんは右手にしか持っていません。しかも相手は初心者です。勝ったな(確信)

 

「えいっ!」

 

 えー、現状栞子ちゃんに圧勝されています。ほも君の筋力がなさすぎて、強打しても簡単に打ち返されてしまいます。あのさぁ……。

 

「もう、限界ですか?」

 

 ここで残念なお知らせです。ほも君の体力が尽きました。あのさぁ……。エアホッケー如きで尽きる体力、恥ずかしくないの?

 

「ふふっ、エアホッケーも私の勝ちですね」

 

 案の定負けました。ほも君の身体能力が低すぎるんだよなぁ……。エアホッケーとはいえ、こんなに動いたのに持久力経験値貰えないんですか?

 

「えっと、大丈夫ですか?」

 

 (大丈夫じゃ)ないです。ほも君がベンチに座って動かなくなってしまいました。体力が一定値まで回復するまで動けません。水分補給で回復を促進しましょう。

 

「それなら……はい、これをどうぞ」

 

 栞子ちゃんがベンチのすぐ隣の自動販売機で何か飲み物を買って渡してくれました。

 

「コーラです。コーラは体力回復に効果的だと聞いたことがあります」

 

 オイオイ炭酸入りコーラオイオイ。

 その情報のソースはどこですかね。私が知っているものは確か炭酸の抜いたコーラをレース前に飲んでいた気がするのですが……。私はRTA専門家なので詳しいことはわかりませんが、本当に体力回復に効果的なんですかね? 教えて偉い人!

 効果があるかないかは置いといて、折角栞子ちゃんが買ってくれたのでいただきましょう。うん、おいしい!

 

「私もスタミナがある方ではないのであまり人のことは言えないのですが、元樹さんはもっとスタミナをつけた方がいいのでは? 今後働く上でもスタミナは必要ですからね」

 

 そうですね。同好会の練習に参加して筋力と持久力を上げたいところです。エマさん加入イベは来週から発生するので、それまでは同好会では練習をすることにしましょうかね。

 

「もう大丈夫なのですか?」

 

 一定値まで体力が回復したので動くことができるようになりました。これがコーラパワーですかね?

 さて、次は何をしましょうか?

 

「プリクラというものを元樹さんとやってみたいです」

 

 いいですよ、撮りましょうか。

 

「ありがとうございます!」

 

 都合よく1台だけ空いてますね。そこを使いましょう。

 

「これがプリクラですか。少し狭いですね……」

 

 プリクラはこれくらいの広さが普通ですね。私も使ったことがないので現実でもこれくらいなのかは知りません。

 どんなポーズで撮りましょうか。栞子ちゃんのやりたいポーズでいいですよ。

 

「いいんですか? それなら……えいっ」

 

 栞子ちゃんが腕に抱きついてきました。ものすごく密着した状態です。ほも君の身長は栞子ちゃんとほぼ同じなので、栞子ちゃんの顔がすぐ真横にあります。すっげえ赤くなってる、はっきりわかんだね。

 随分と積極的ですね。本屋で魅力的と言われて自信がついたからでしょうか。ですがまぁ積極的なのはいいことだと思いますよ。見てて可愛いですしね。タイムが伸びたりリセット案件でなければ何でも許しちゃいますよ。キスでもしますか?(強者の余裕)

 

「こ、これでお願いします……」

 

 栞子ちゃんがこれがいいならこれで撮りましょう。はいチーズ。もういっちょチーズ。モッツアレラチーズ。撮り終わりましたよ。

 

「恥ずかしさで倒れるかと思いました……」

 

 だったらやらなければよかったんじゃないですかね?(正論)

 

「元樹さんは全く恥ずかしくなさそうでしたね。……もしかして、慣れていたりしますか?」

 

 幼馴染を躊躇なく抱きしめるくらいだし、腕に抱きつかれるくらい慣れてるんじゃないんですかね。ですがここは恥ずかしさが顔に出ないだけと言っておきましょう。

 

「元樹さんがそういうタイプだとは思えませんが……ですが、元樹さんがそうだと言うのであれば信じましょう」

 

 栞子ちゃんが若干疑いの眼差しを向けてきましたが、一応信じてくれたみたいです。人を信じる心が大事って、それ一番言われてるから。

 それじゃあデコりましょうか。

 

「デコ……ですか?」

 

 今撮った写真にデコレーションとして文字を書いたりなんかいろいろできます。ですがほも君は何もしません。ロスになるので。栞子ちゃんに任せましょう。

 

「うーん、悩みますね……」

 

 デコが終わるまでまーだ時間かかりそうですかねー?

 

「終わりましたよ。はい、これができた写真です」

 

 どうやらできたみたいです。栞子ちゃんから受け取った写真を確認すると、ほも君と栞子ちゃんが大きなハートマークで囲まれていて、上の方に『LOVE』という文字が書かれていました。これはりなりーには見せられない品ですねぇ。

 

「大切にしてくださいね? 私も大切にしますから」

 

 大切に大切に自室の誰にも見つからない場所に保管しておきます。お家デートをした時に栞子ちゃん以外の子に見られたら湿度が高くなってしまうので。

 

 もういい感じの時間ですし、そろそろラーメン屋に行きましょうか。

 

「そうですね。お腹も空いてきましたし」

 

 では、ラーメン屋にイクゾー!デッデッデデデデ!(カーン)

 

 

 

 ラーメン屋に着きました。うーん、いい香り(無臭)

 

「たくさん人が並んでますね……」

 

 栞子ちゃんの言う通り少し行列ができています。これは30分待ちくらいですかね。

 ちょうどいいくらいの時間ですし、この待ち時間で前回購入したファッション雑誌を読みましょう。

 

「私も隣から見てもいいですか?」

 

 もちろんいいですよ。一緒に読みましょう。

 

「ありがとうございます。……朝香さんは本当にスタイルがいいですね。羨ましいです……」

 

 栞子ちゃんは自分の胸をペタペタと触り、果林さんの胸と見比べて悲しそうな顔をしています。栞子ちゃんはまだ1年生ですし、きっとこれから成長しますって。μ'sの3年生さん? 知らない子ですねぇ~。

 

 今更にはなりますが、数あるファッション雑誌の中からこれを選んだ理由は果林さんの情報が手に入るからです。この情報があると、果林さん加入イベ時に上昇する果林さんの親密度が若干高くなります。大した差ではないですが、元々ファッション雑誌は1冊は購入する予定だったので、ついでに果林さんの親密度が上がるこれを購入しました。

 

 

 

「想像していたよりも勉強になる雑誌でしたね」

 

 雑誌を読み終えました。果林さんのページになるたび、栞子ちゃんがムッとするのが可愛かったです(小並感)

 

『コンディション『ファッションセンス○』を獲得しました』

 

 これがファッション雑誌を購入した理由です。ファッション雑誌を読むことで手に入るこのコンディションが欲しかったのです。

 ファッションセンス○はメインキャラと私服でお出かけした時に親密度の上昇にプラス補正がかかるというものです。私服デートをする機会も結構あるため、ファッションセンス○をチャートに組み込みました。ちなみに、ファッションセンス○をチャートに組み込んだのは今回からです。つまりは試走です。

 ところで、この雑誌は女性向けのファッション雑誌のはずですが、それを男のほも君が読んでファッションセンス○がつくのはなんでなんですかね。ほも君は女の子だった……?

 

「2名様ごあんなーい!」

「ようやく私達ですね。思っていたよりも長かったです」

 

 ちょうど読み終えたタイミングで店に入ることができました。待ち時間はおおよそ30分で、私の予想通りでしたね。このタイミングで雑誌を読んだのは素晴らしい判断でした。夜に自宅で読むよりもタイムが短縮できましたからね。

 店に入って案内されたのはカウンター席でした。お待たせ! カウンター席しかなかったけどいいかな?

 

「いっぱいメニューがあって、どれにするか悩んでしまいますね」

 

 あれなんてどうでしょうか。スペシャルラーメン、当店オススメらしいっすよ?

 

「なるほど。ではそれにします。元樹さんは?」

 

 ほも君もスペシャルラーメンで。

 

「わかりました。すみません、スペシャルラーメンを2つお願いします」

 

 ラーメンが完成するまで店主の湯切りを眺めていましょう。秘技・天空落とし!!

 

「おまちどう!」

「チャーシューがいっぱいですね!」

 

 注文したスペシャルラーメンが出てきました。何かと何かと何かの3種類のチャーシューがこれでもかというくらい盛りつけられています。

 このラーメンはラーメン界の巨匠にデザインしてもらったラーメンらしく、あまりに美味しそうだったためプレイヤーから食べてみたいという意見が多数寄せられ、結果実際に巨匠の店で販売されることになりました。私も実際に食べに行きましたが、チャーシューがすごく美味しかったです。食べたことがない兄貴はぜひ一度食べてみてください。飛ぶぞ。

 

「美味しいです! このチャーシューがすごく柔らかくて、味もしっかりと染みていて……こんなに美味しいチャーシューは初めて食べました!」

 

 女の子がラーメンを食べる時に髪を耳にかける動作、すごくいいと思いませんか? 私は思います。

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

 完食しました。美味しそうでしたね。栞子ちゃんが美味しそうに食べていたのを見て私もお腹が空きました。ですが軽食など何も用意していないため、お腹を満たすことができません。この先お食事タイムはありません。空腹状態でこのRTAを走らなければなりません。辛いです。

 

 お会計を済ませて店から出ます。そろそろ帰りましょうか。

 

「そうですね」

 

 栞子ちゃんを家の近くまで送ってあげましょう。近くまで来たら栞子ちゃんがここで大丈夫と言ってくるので、そこでお別れしましょう。家の前まで送らせてくれないのは家族に見られるのが恥ずかしいとかなんですかね?

 

「元樹さん、今日はありがとうございました。一緒に本屋に行って、ゲームセンターに行って、元樹さんとプリクラを撮って、美味しいラーメンも食べて、すごく楽しい時間でした」

 

 こちらこそありがとうございました。栞子ちゃんのおかげで学力を上げることができるので。あと栞子ちゃんが可愛かったおかげで前回の再生数が稼げたので(メタ発言)

 

「私はここで大丈夫ですので。それでは。また明日会いましょう」

 

 はい、また明日学校で。栞子ちゃんが歩いていくのを手を振って見送ります。明日も宿題をやり忘れてたらまた助けてくださいね。

 

 さて、ほも君も家に帰りましょうか。何か忘れている気もしますが……あっ、りなりーへのご褒美の餃子を買い忘れてました。やってしまいましたねアライさん。困りましたね、どうしましょうか……。ま、えやろ(諦め) 餃子の代わりにジュースを奢ってあげましょう。優しいりなりーなら許してくれるはずです。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




前回後書きで感想を要求したらいっぱい貰えて嬉しかったので、味を占めてこれから毎話要求することにしました。

感想ちょうだい(強欲)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part4/m

何故か初投稿です。


1人分のサイドストーリーなのにとてつもない長さになってしまいました。時間のある時にお読みください。なんで分割する必要なんかあるんですか(正論)


 私の左隣の席に座る堀口元樹さん。私の数少ない友人で、そして初恋の人。恥ずかしくてまだ彼には伝えられないけど。

 彼は普段ふざけた態度でいることが多いけど、それは決して相手を馬鹿にしているわけではなく、むしろ相手の警戒心を取り除くためにやっているのではないかと思う。実際、最初は彼にツンツンしていた私も数分話しただけで棘を全部抜かれてしまった。そんな私も今では彼にしっかり惚れてしまっている。これも全部彼のコミュニケーション能力の高さによるものでしょうか。

 

「んー……」

 

 そんな元樹さんが珍しくHR中にキョロキョロと教室を見回していた。難しい顔をしながら、まるで何かを探しているかのように。

 

「元樹さん、今はHR中ですよ。あまりキョロキョロしないでください」

 

 そうやって注意をすると、私の方を向いて何が嬉しいのかニコリと微笑んだ。

 

「めんごめんご。虫が飛んでる気がしてさ。気のせいだったけど」

 

 いつも先生の話はきちんと聞く元樹さんですから何かしらの理由があるとは思っていましたが、まさかそんな理由だとは……。

 

「話は変わるんだけどさ、最近すげぇ美味いラーメン屋ができたらしいんだよ。その店の場所が割と近いらしくてさ、今日の放課後一緒に行こうぜ」

「ラーメン、ですか? すみません、今日は用事があるので……」

 

 今日は習い事があるため、残念ながら行くことができない。そうやって答えると、元樹さんは少し残念そうな顔をした。多分本人は隠しているつもりなのだろうけど、思いっきり顔に出ている。なんだか子供っぽくて可愛いですね。

 

「ですが、明後日は用事がないので……その、連れていっていただけませんか?」

「そうか、明後日か……」

 

 少し悩む素振りを見せる。もしかして明後日は元樹さんに用事があるのでしょうか。うまく予定が噛み合いませんね。折角元樹さんの方から誘ってくれたのですから、ぜひとも一緒に行きたいのですが……。

 

「いや、明後日は大丈夫だわ。じゃあ明後日にするか」

「ありがとうございます。明後日、楽しみにしておきますね」

 

 どうやら明後日は大丈夫だったみたいで、その日に行くことになった。その日はいつもよりオシャレでもしましょうか。ですが学校に余計なものを持っていくわけにはいきませんし……いつも通りの恰好で行くしかなさそうですね。ちょっとオシャレな恰好をしたところで元樹さんにはあまり効果がありませんし。アクセサリーをつけた程度では気付いてくれませんからね。もう少し私のことをちゃんと見てくれてもいいと思うのですが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝学校に登校すると、教室で彼がタブレットを見ながら唸っていた。

 

「おはようございます。どうかしたのですか?」

 

 声をかけると、彼は嬉しそうな顔をして私の方を向いた。

 

「おはよう栞子。ちょっとね、宿題をね、やり忘れてたんですよ」

「宿題を忘れた?」

 

 確かに彼のタブレットの画面には今日提出の宿題が表示されていた。けれど問題は1つも解かれていなかった。ふと彼の方を見ると、救いを求めるような目で私を見ていた。確かにこの宿題の問題は元樹さん1人で解くには難しすぎるかもしれません。彼は勉強全般苦手で、この前の中間では何個も赤点を取ってしまい、補習のせいで部活に行けないと嘆いていましたから。その中でも特に数学が苦手で、全くと言っていいほどできません。

 

「栞子、お願い」

 

 ここで私が解いたものを見せるのは簡単ですが、それでは彼のためにはなりません。今は同じクラスなのでいいかもしれませんが、来年以降も同じクラスになるとは限りません。本当は今すぐにでも見せてあげたいですが、元樹さんのためにも今は心を鬼にしましょう。

 

「仕方ないですね……。私が教えてあげますから、今から一緒にやりましょう」

「ええー」

 

 口では文句を言いつつも、なんだかんだちゃんとやろうとするのが彼のいいところだ。

 彼が解くのを眺めつつ、彼の手が止まったらヒントを出すというのを繰り返す。勉強を教えるという名目で彼と密着することができるので、この時間は私にとっても至福の時間だ。いつかは理由なしにこういうことができる関係になりたいものですね。

 

「ここはどうすればいい?」

「ここはこうやって式変形をして……違います、そうではありません。ゼロで割ってはいけません」

「ぬぅ……じゃあこうか?」

「そうです、その通りです。いい感じですよ」

「よしよし。最後は……何これ?」

「そこでこの定理を使って……はい、解けました」

「おっ、ほんとだ」

 

 なんとか時間までに全部解けてよかったです。ゼロ除算をし始めた時はどうなることかと思いましたが……これは本格的に彼に数学を勉強させた方がいいかもしれませんね。

 

「ありがとうな、栞子。助かったよ」

「どういたしまして。元樹さんのお役に立てて嬉しいです」

 

 やはり人にお礼を言われるのはすごく気持ちがいいですね。私も自然と笑顔になってしまいます。

 

「ですが、次からは気を付けてくださいね」

 

 今回は時間までに終わらすことができましたが、毎回間に合うとは限りませんし。それに、そもそも宿題は家でやるものですから。

 

「運がよければやるんだけどなぁ」

「運のせいにしてはいけませんよ」

 

 宿題は運がよければやる、悪ければやらないというものではないはずです。こんなことを言うのは元樹さんだけではないでしょうか。

 

「わからない所があれば遠慮なく聞いてください。学校でなくても、連絡をくれれば教えますから」

「じゃあ運がいい時は栞子に連絡することにするよ」

 

 もう、本当に元樹さんは……。

 でもそんな返事が彼らしくて好きだと思ってしまうのは、私が元樹さん色に染め上げられている証拠なのでしょうか。そう考えると急に恥ずかしくなってきますね……。元樹さんも、私色に染まっていると感じたりするのでしょうか? 恥ずかしすぎてさすがに聞くことはできませんが。

 

「話は変わるのですが、昨日した約束は覚えてますか?」

「もちろん。明日一緒にラーメン巡り全国ツアーするって約束だろ」

「少し違いますね。全国ツアーまではできません」

「冗談だって。本当は新しくできたラーメン屋に行くって約束だよな?」

「はい、そうです。なんで最初に冗談を言ったのですか。本当に覚えていないのかと心配したじゃないですか」

 

 というのは冗談ですけど。元樹さんが人との約束を忘れたところを見たことがありませんし。いつもは私がからかわれていますから、たまには彼をからかってみたくなりました。彼はどういう反応をするのでしょうか。

 

「悪かったって。栞子との大切な約束を忘れるわけないじゃん」

「た、大切……」

 

 本当にずるいです……。

 からかったつもりが、逆にからかわれてしまいました。彼のことですから、からかうつもりじゃなくて本心から言っているのかもしれませんが。むしろそちらであってほしい。私と同じ恋心は抱いていなくても、せめて特別な存在とは思われていたいです。

 元樹さんと初めて話した時はこんな風になるとは思っていませんでした。何があるかわからないものですね。

 

「ところで、なんで栞子は今その話をしたんだ?」

「え? えっとですね……その、笑わないですか?」

「場合による」

「その、元樹さんともっとお話しがしたかったので……。けど話す話題が思いつかなくて……」

 

 理由を話すと、元樹さんは笑いはしなかったけど子供を見るような目で私のことを見つめてきました。やっぱり正直に話さなければよかったです。恥ずかしい……。

 

「いいよ。話題は俺が出してあげるから、授業が始まるまでお話ししようか」

「本当ですかっ! ありがとうございます!」

 

 やっぱり正直に話してよかったです。恥ずかしい思いをした甲斐がありました。

 

 

 

「元樹さん、今日も一緒にご飯を食べましょう」

 

 午前の授業が終わりお昼休みになったので、いつも通り元樹さんと一緒に昼食を食べる。彼の前の席の方がいつも学食に行かれるので、その席をお借りして彼と向かい合って食べる。最初の頃は恥ずかしかったけど、今ではすっかり慣れてしまった。

 

「元樹さんは今日もそのセットなんですね。一緒に食べるようになってしばらく経ちますが、別のものを食べている所を見たことがありません」

 

 元樹さんはいつも通りのパンとおにぎりのセットだ。節約のためと言っていたけど、これでちゃんとお腹が膨れるのか疑問だ。

 

「いいじゃん、美味しいんだもん。それに見ろよこれ。いつもは鮭おにぎりだけど、今日の具はわさびまぐろだぞ。美味しそうだろ?」

「具材の話をしているのではありません。いつもパンとおにぎりのセットばかり食べていますねという話です。もっとちゃんとしたものを食べないと体を壊してしまいますよ?」

「そう?」

「元樹さん自身のことなんですから、もっとちゃんと興味を持ってください」

 

 彼自身の体のことなのに本当に興味がなさそうにおにぎりを頬張る。

 

「元樹さんに何かあったら悲しいですから」

「心配してくれてありがとな。家ではちゃんとしたもの食べてるから大丈夫だって」

「それならいいですが……」

 

 それでもやっぱり心配だ。もし元樹さんが倒れたりしたら、私はきっと……

 

「ご馳走様」

 

 私がそんなことを考えているとは知らずに、彼はあっという間に昼食を食べ終え、そして立ち上がった。

 

「どこか行かれるんですか?」

「ちょっと中庭で人に会ってくる」

「……その方は女性の方なのですか?」

「そうだよ」

 

 元樹さんが女性と会う。女性……まさか元樹さんの彼女でしょうか? ですが彼女がいるという話は聞いたことがありませんし、そんな素振りもありませんでした。

 

「どうした?」

「……なるべく早く戻ってきてくださいね」

「ん、わかった」

 

 なんだか胸の奥がムズムズする。その女性の方が羨ましい。元樹さんに行ってほしくない。このまま私のそばに居てほしい。自分の中で黒い何かが溢れてくるのがわかる。抑えようと思っても抑えきれない。これが嫉妬というものでしょうか。

 そんな私の気持ちを知らない彼はとっくに出て行ってしまった。私はその後ろ姿をただ見ていることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校に登校する途中、眠たそうにあくびをしながら道を歩く元樹さんを見つけた。彼の隣に駆け寄る。

 

「元樹さん、おはようございます」

「ああ、栞子か。おはよう。登校中に会うのは珍しいな」

「そうですね」

 

 確かに珍しい。いつも私よりも早く学校に着いていますから。

 

「一緒にラーメンを食べに行くのが楽しみで、昨日はあまり眠れませんでした……」

「栞子も? 実は俺も同じなんだ。おかげでちょっと寝坊しちまったよ」

 

 元樹さんも今日を楽しみにしていてくれたのですね。私だけじゃなくてよかったです。

 

「寝不足同士仲良くお昼寝でもするか? 授業中にだけど」

「元樹さんと一緒にお昼寝は魅力的ですが、居眠りはダメですよ。もし居眠りをしていたら私が起こします」

 

 元樹さんはたまに本当に授業中に居眠りをしますからね。彼の寝顔を見るたびに起こすのを躊躇ってしまいます。実際何度か起こすことができなかったこともあります。放課後私と元樹さん以外誰もいなくなるまで寝ていた時は一瞬よくない考えが頭をよぎってしまいました。場所が学校ということもあって我慢できましたが、場所次第では我慢ができずに元樹さんとそういうことをしてしまったかもしれません。

 そういえば、今日だけでなく元樹さんはいつも眠たそうにしていますね。毎日夜更かしをしているのでしょうか。

 

「今日の私が言えたことではありませんが、元樹さんもちゃんと夜に寝ないとダメですよ」

「わかってるんだけどさ、なんかあんまり寝れないんだよ」

「もしかして不眠症気味なのですか……?」

「そうかもしれないな」

「そうですか……。あの、元樹さんの症状が少しでもよくなるようにいろいろ調べてみます」

「マジ? 助かるよ、ありがとう」

 

 元樹さんの寝不足が改善すれば授業中に居眠りをすることもなくなりますからね。起こそうとするたびに葛藤する私の身にもなってほしいです。今度放課後に彼の前で寝たふりでもしてみましょうか。元樹さんも私の寝顔を見て悶々としたりするのか気になりますね。真面目な彼は学校で襲うことはしないでしょうが、もし襲ってきてもきっと受け入れてしまいますね。

 

 

 

 少し寝そうになりましたが、私も元樹さんもなんとか居眠りせずに午前の授業を乗り切ることができました。眠たそうにする私が珍しかったのか、何人かの先生に心配されましたが。

 

「お昼食べましょう!」

 

 今日はあと1限とHRだけで、それさえ終われば元樹さんとお出かけできます。その期待でだんだん目が覚めてきました。元樹さんはまだ少し眠たそうにしていますが。

 

「昨日カップルが学内で抱きしめあっていたという噂を知ってますか」

 

 今朝元樹さんがお手洗いに行っている間にクラスの方から聞いた話題を話すことにしました。

 

「へぇ」

 

 案の定というか元樹さんはあまり興味がなさそう。ただ単に眠たいだけなのかもしれませんが。

 

「なんでも廊下で堂々とやっていたのだとか」

「廊下……どこの廊下?」

「1年情報処理学科の教室前らしいです」

「あっ、ふーん……」

 

 話に興味を持ったかと思えばよくわからない反応を示す。変な元樹さんですね。

 

「仲睦まじいのはとてもいいことだとは思いますが、学内の風紀を乱すのはいただけませんね」

「そうだな……」

 

 やはり微妙な反応だ。まだ眠たいのでしょうか。もうお昼ですよ?

 

「んー……」

 

 そんな元樹さんがずっと何かを見つめていることに気付いた。その視線を追うと、私のお弁当に入っているポテトサラダに辿り着いた。

 

「……どうしたのですか? 先程から私のポテトサラダを凝視してますが……」

「美味そうだなーって」

「もしかして食べたいのですか?」

「うん」

 

 思い返すと、元樹さんはずっとポテトサラダを見つめていた気がしますね。もしかして眠たかったわけではなくて、単にポテトサラダが気になっていただけなのでしょうか。元樹さんらしいといえばらしいですが……。

 

「いいですよ。好きなだけ食べてください」

「マジ? ありがとう」

「あっ、でも元樹さんはお箸を持ってませんよね……」

「じゃあ栞子が食べさせて」

「えっ!? わ、私がですか……?」

 

 元樹さんがとんでもないことを言うものだから、思わず大きな声を出してしまった。周りから注目が集まるが、いつものことなのでそれは気にならない。

 元樹さんは本当に私の気持ちに気付いていないのでしょうか。本当は気付いていて、その上で私を弄んでいるとしか思えません。食べさせてくれなんて普通言いませんよ。こんなことをするからクラスの中で私と元樹さんが付き合っているなんて噂が立つんです。彼はこの噂のことを知らないと思いますが。

 

「そんな目で見ないでください……」

 

 そんなことを考えているとは知らずに、彼は口を開けて待っている。期待に目を輝かせながら。

 どうせ私の気持ちには気付いていないのでしょうね。あんなにアピールをしているのに……。はぁ、どうしてこの人を好きになってしまったのでしょうか……。

 

「まだ?」

「うぅ、わかりました……」

 

 催促をされたためいい加減覚悟を決める。別に嫌なわけではなく、ただ恥ずかしいだけなんです。そんな私の気持ちを知らないで、ずっとポテトサラダを口に入れられるのを待っている彼に少しだけ苛立ちを覚える。元樹さんは恥ずかしいとは思わないのでしょうか?

 

「あ、あーん」

「んぐっ」

 

 勢い余って口の奥にポテトサラダを置いてしまった。けど元樹さんなら許してくれるでしょう。

 

「お味はいかがですか……?」

「うん、おいしい」

「それはよかったです。恥ずかしい思いをした甲斐がありました」

「今思ったんだけどさ、これは風紀を乱したことにはならないの?」

 

 彼も実はそういうことを意識していたのだとわかり、少しだけ嬉しくなる。

 

「私達はただ食事をしているだけですから。なので何も問題はありません」

「ほんとにぃ?」

「はい、本当です。それとも、元樹さんは今のを卑しい行為だと思っているのですか?」

「いや……」

「そうですよね。私達はただ仲良く食事をしていただけですから」

 

 でも先程風紀を乱してはいけないと言った手前、乱したことにはならないと否定するしかありません。

 

「じゃあさ、もし俺が栞子以外の女の子と飯を食べさせあってたらどう思う?」

「それは……」

 

 突然そんな変な質問をされた。そうですね、例えば元樹さんとクラスの女子の方が……いえ、想像するまでもなく答えは決まってますね。

 

「元樹さんの交友関係に私がどうこう言うことはできないというのはわかっていますが、それでもやはり悲しい気持ちになります。そのような光景は考えたくもありません……」

 

 やはり好きな人が別の方と仲良くするところは見たくも考えたくもありません。無理だとはわかっていても、元樹さんには私だけを見ていてほしいです。

 どこに満足する要素があったのか、満足気な表情で元樹さんは立ち上がる。

 

「どこか行かれるのですか?」

「調べたいことがあるからちょっと図書館に行ってくる」

「私もお手伝いしましょうか?」

「え? いや、大丈夫……。気持ちだけ受け取っとくよ」

「わかりました……」

 

 多分図書館に行くというのは嘘ですね。何故嘘をつくのか問い詰めたいところですが、元樹さんに嫌われたくはないので我慢します。きっと私には知られたくない理由があるのでしょうから。誰しも隠し事の1つや2つありますからね。

 

「図書館で授業をサボってはいけませんよ。もし授業が始まっても戻ってこなかったら、私が捕まえに行きますからね」

「それさ、栞子もサボったことにならないか?」

 

 

 

「ふぅ、やっと終わった……」

 

 伸びをする元樹さんを横目に、同じように私も伸びをする。決めることがあったりして、今日のLHRはいつもよりも長かった。

 

「よし! それじゃあラーメン食いに行くか」

「はい、行きましょう!」

「いや、でも晩飯を食べるには時間が早すぎるか」

「確かにそうですね。ご飯の前にどこか遊びに行きますか?」

「そうだな。ちょっと寄りたいところもあるし」

「どこに行きたいんですか?」

「本屋に行きたい」

「本屋ですか。いいですね。元樹さんの勉強の参考になりそうな本を選んであげます」

「うへぇー」

 

 世の中には私が教えるよりもわかりやすい参考書が山ほどありますからね。期末で赤点を取らないように元樹さんはもっと勉強をすべきだと思います。

 

「まぁいいや。栞子はどっか行きたいとこある?」

「そうですね……あの、私げーむせんたーというところに行ってみたいです」

「いいね。もしかしてゲームセンター初体験?」

「実はそうなんです。クラスの方からお話で聞いたことはありましたが、実際に行ったことはないんです。なのでゲームセンターでの遊び方を教えていただけないでしょうか?」

「もちろんいいぞ。マイナーな遊び方をいっぱい教えてやる」

「あの、できればメジャーな遊び方でお願いします」

「しょうがねぇなぁ」

 

 何故マイナーな遊び方を教えようとするのでしょうか。

 

「じゃあ行くか、デート」

「デ、デート……」

 

 元樹さんはこれをデートだと思ってくれてたんですね。もしかして私のことを意識してくれているのでしょうか……。そう考えたら顔が熱くなってきました。赤くなっているのが元樹さんにバレてないといいのですが……。

 

 

 

 本屋に来ました。相変わらず大きな本屋ですね。ここなら元樹さんに合う参考書もたくさん見つかると思います。

 

「元樹さんが欲しいのはどんな本なんですか?」

「ファッション雑誌」

「ファッションですか。なんだか意外ですね。元樹さんはあまりオシャレとかに興味がなさそうでしたし」

「まあね」

 

 休日に出かけた時はいつも、その、失礼ではありますがオシャレとは言い難い恰好でしたし。ですが私は元樹さんのオシャレじゃない感じが逆に好きなんです。

 

「オシャレに興味を持つことはいいことだと思いますよ。私もオシャレな元樹さんを見てみたいですし」

「そう? じゃあ頑張らないといけないな」

「私も元樹さんの隣に立てるようにファッションの勉強をしないといけませんね」

「栞子の私服は今でも十分にオシャレだと思うよ。俺は好きだし」

「ほ、本当ですかっ! ありがとうございます!」

 

 元樹さんは私の私服が好きだと言っているのであって、私自身のことが好きだと言っているわけではないのはわかっていますが、それでもすごく嬉しいです。今まで元樹さんとお出かけする時は家を出る前にどの服を着たらいいかずっと悩んでいましたが、これからはその必要はなさそうですね。

 

 私が元樹さんの言葉に喜んでいる間に、彼は購入する雑誌を決めていました。元樹さんが手に取った雑誌の表紙には見たことがある方がのっていました。

 

「その方は確か……」

「ん? 知ってるのか?」

「確かライフデザイン学科3年生の朝香果林さんでしたよね。クラスの方達が話しているのを聞いた覚えがあります」

「へぇー。こんな美人な人がうちの学校にいたんだな」

「むっ……」

 

 確かに朝香さんは同性の私から見ても美人だとは思いますが、今隣にいるのは私なんですよ? 私には可愛いとか美人とか言ってくれないのに……。それに元樹さんの視線が朝香さんの胸に行っている気がします。そのボリュームに思わず自分の小さなモノと比べてしまう。

 

「……元樹さんは、朝香さんのような女性がタイプなのですか……?」

 

 好奇心は猫をも殺すと言いますが、聞かずにはいられませんでした。朝香さんの方が好みだと言われたらどうしましょうか……。頑張ったところで大きくなるようなものでもないのに……。

 

「タイプかぁ。そうだな……特にないな。あえて言うなら好きになった人がタイプだな」

 

 好きな人……。

 

「元樹さんは好きな人とかいるのですか?」

「いないよ」

「そうですか……」

 

 本当にいないのか、それとも私に隠しているのか。どちらにしてもあまり嬉しいことではありませんね。いないのであれば私が意識されていないということですし、いるとしてもそれが私である可能性は低いでしょう。前者に関しては元樹さんがフリーでチャンスがあるという考え方もできるかもしれませんが、今まであれだけアピールをして意識されていないとなるともはやノーチャンスなのではないでしょうか。

 

「……私はいますよ、好きな人」

「え、マジ? 誰? どんな人?」

 

 やはり気付いてないのですね……。

 

「えぇっとですね……その方は普段はふざけていることが多いんですけど、いざとなれば誰よりも真面目にやってくれるんです。クラスでの話し合いでも自分から積極的に発言していて、クラスの方からよくまとめ役をお願いされていますね。それからとても優しくて、入学したての頃、ずっと1人でいた私に声をかけてくれたんです。その時からよく話すようになって、昼食も一緒に食べますし、休日は彼の方から遊びに誘ってくれることもあります。それ以外にも困ったことがあればいつも助けてくださって、ボランティア活動なども手伝ってくれるんです。……ただ、その方は勉強がすごく苦手でして、よく勉強を教えてほしいと私を頼ってくださるのですが、上手く教えてあげられない時もあって……。人にわかりやすく教えるにはどうすればいいのか、いつも私が勉強をさせてもらってます。……こ、これくらいで勘弁してください……恥ずかしいです……」

 

 もちろん元樹さんの好きなところはまだまだたくさんあるのですが、途中で告白をしているようなものだと気付いて恥ずかしくなってしまいました……。ここまで元樹さんを指す情報を言って気付いてもらえないのであれば、もはや鈍感すぎる元樹さんに問題があるような気がします……。未だにちゃんと告白できていない私に当然問題があるのはわかっていますが。

 

「おぉ……栞子はそいつのことが大好きなんだな」

「はぁ……」

 

 どうして今ので気付かないのですか……。昼食なんて元樹さん以外と食べてないでしょう。今日だって元樹さんの方から誘ってくれたじゃないですか。先週もボランティア活動を手伝ってくれましたし、全部元樹さんに当てはまることじゃないですか。やはり元樹さんの方に問題があるのでは……?

 

「栞子はそいつに告白しないの?」

「こっ、告白ですか!? ……今までに何度かしようと思いましたけど、恥ずかしさと振られる怖さで言い出すことができなくて……。相手からどう思われているのかわからないのって、こんなにも怖いことだったんですね……。結果はどうであれ、いつかはちゃんと告白したいとは考えてはいるのですが……」

 

 2年生でも同じクラスとは限りませんし、違うクラスになったらきっと会う機会が減ってしまうでしょう。なので2年生になるまでには告白できるように頑張りたいです。

 

「告白とまではいきませんが、好きということは何度もアピールしているのですが、どうにも気付いてもらえなくて……」

「とんだ鈍感野郎だな」

 

 誰のことだと思っているんでしょうか……。

 

「やっぱりアピールが遠回しすぎるのでしょうか。それとも単純に私に興味がないのでしょうか……。嫌われてはいないとは思うのですが、恋愛対象としては見てもらえていないのでしょうか……」

 

 思わず泣きそうになってしまう。……この程度で泣いていてはいけませんね。いざ告白して振られてしまったら、私はどうなってしまうのでしょうか……。

 

「んーそれはないんじゃないか? 栞子は十分すぎるほど魅力的だし」

「……えっ? 私が、魅力的……ですか?」

「ちょっと真面目すぎるところも優しいところも全部栞子の魅力だよ。普段から最高に可愛いし、照れた時なんかもっと可愛い。俺は栞子の全部が好きだぞ。俺だったらそんな栞子を恋愛対象として見ないなんてことはないなぁ」

「本当に、そう思っていますか?」

「もちろん」

「そうですか」

 

 どうしましょう。ニヤニヤが止まりません。頬が緩んでしまいます。まさか元樹さんが私のことをあんな風に思ってくれていたなんて……。元樹さんから可愛いと言われたのは初めてです。

 きっと元樹さんの好きは私の好きとは別物なのでしょう。でも今はそれでも構いません。これから好きになってもらえばいいのですから。だから今はこの関係で我慢します。ですが元樹さんが私を恋愛対象として見てくれていることがわかった以上、これからは今まで以上にアピールをしていくことにします。元樹さんが私を好きになってくれるまで。いっそのこと元樹さんの方から告白してくるくらい惚れさせたいですが、それは難しいかもしれませんね。元樹さんが誰かに告白する図が浮かびませんし、彼は意地でも自分から告白しない気がします。何の根拠もありませんが。

 

「次は参考書を見に行きましょうか。私が元樹さんに合う参考書を選んであげます」

「何か急に上機嫌になったな」

「ふふっ、気のせいですよ」

 

 好きな人からあんなことを言われて上機嫌にならない方がおかしい。こういうのもいっそ隠さないでみましょうか。

 

「さて、元樹さんにはどんな本がいいでしょうか……」

 

 元樹さんは数学全般が出来ていませんから、基礎から書かれている本がいいかもしれません。それから問題の解説で式変形がきちんと書いてあるものもいいかもしれません。よくわからない変形を当たり前かのように書いてある本もたまにありますからね。わかる人にはわかる変形なのかもしれませんが、多分元樹さんには辛いでしょう。

 その元樹さんはといえば、参考書を選んでパラパラと見ては難しい顔をして戻すを繰り返しています。その度に何かカタコトで呟いていますが、よく聞くと数学でよく聞く言葉ですね。……あまり難しい言葉が使われていない本にしたほうがいいかもしれません。

 

「この本はいかがでしょうか。問題数が少な目ではありますが、きちんと基礎から書いてあって、数学全般が全くできない元樹さんにはオススメです。それからこちらの本もいいと思います。こちらは問題数が多く、応用問題の解説も式変形が詳しく書かれているためすごくわかりやすいです。どちらにしますか?」

「じゃあ両方買おうかな。折角栞子が俺のために選んでくれたんだし」

「両方、ですか? 2冊買うとなるとそこそこのお値段になりますが、大丈夫ですか?」

「うーん……これなら大丈夫。これで頭がよくなるなら安いもんだ」

「はい、どうぞ。ちゃんと勉強してくださいね。わからないところがあれば教えますから」

「ん、わかった。栞子は何か買いたい本とかある?」

「私は大丈夫です。レジの近くで待ってますので」

「了解。買った後ちょっとトイレに行きたいから遅くなるかもしれん」

「わかりました。本を見ながら待ってますね」

 

 元樹さんが空いているレジに入るのを見送り、その近くにある本を眺める。ここは本当にいろんな本がありますね。本好きの方にはたまらない空間でしょう。

 ふと、1冊の本が目に入った。『これで完璧! 恋愛マスターが教える恋愛のコツ100選!』という明らかな恋愛本だ。胡散臭さがあってこういう本はあまり読まないのですが、何故かこの本だけは気になって仕方ありません。この本に不思議な力でもあるのでしょうか。

 残り1冊……。お値段は500円ですか。そこそこ厚みのある本なのに安いですね。どうしましょうか……。ここで買わなかったら後悔する気がします。元樹さんはお手洗いに行くと言ってましたよね。本を1冊買うくらいの時間はあるはずです。……騙されたと思って買ってみましょうか。お手頃価格ですし。

 

 

 

「買ってしまいました……」

 

 家に帰ったら早速読みましょう。ただ、家族には見つからない場所に保管しないと。家族からは元樹さんを一度家に連れてこいと言われていますから。見つかったら何を言われるかわかりません。

 

「お待たせ」

 

 元樹さんの声が聞こえる方を見ると、彼が手を振っていたので私も小さく振り返す。元樹さんにもこの本を見られないようにしないと。恥ずかしいとかではなく、何故か元樹さんには見せてはいけない気がするのです。

 

「じゃあゲームセンターに行こうか」

「はい。楽しみです!」

 

 

 

「ここが、ゲームセンター……!」

 

 先程の本屋以上に広い。そしていろいろな音が混ざり合って少し騒々しい。ですがゲームセンターで遊ぶ皆さんはすごく楽しそうです。

 

「何したい? 栞子のやりたいゲームでいいよ。といっても初めて来たんだから何があるかわからないだろうけど」

 

 元樹さんの声が少し聞き取りづらくなることはマイナス評価ですね。

 

「コインゲームというもので遊んでみたいです」

「コインゲームかぁ。コインゲームを楽しむには今日はちょっと時間が短いかな」

「そうですか……」

「また今度、な? 次は休日に来ような。それならたっぷり時間があるから、一緒にコインゲームで遊ぼうな」

「また今度……一緒に……そうですね。また今度、2人で来ましょう」

 

 図らずもまた一緒にお出かけする約束ができてしまいました。それも休日にですから、元樹さんとたくさん遊ぶことができますね。

 

「他に何がしたい?」

「何があるか全くわからないので、とりあえず歩きながら決めてもいいでしょうか?」

「もちろんいいよ」

 

 歩きながら何があるのか確かめる。どれも面白そうなゲームばかりですね。あの洗濯機のようなものはなんでしょうか。そのゲームで遊ぶ方達は大きく激しく腕を動かしています。どんなゲームか気になるのでやってみたいのですが、あんなに動くのは私には無理そうですね。

 

「あの車みたいなものは何ですか?」

 

 1つ気になるゲーム? があった。ゲーム台に車の座席とハンドルがついているものだ。よく見ると足元にもアクセルとブレーキがついている。運転シミュレーターでしょうか。でもそんなものがここにあるはずがありませんし……。

 

「ああ、あれはレースゲームだ。決められたコースをあのハンドルとかで操作しながら走って、ゴールまでのタイムを競うんだ

「レースゲーム……楽しそうです!」

「やってみる?」

「はい! 元樹さんも一緒にやりましょう」

「いいよ。協力プレイとかはないから対戦しようか」

 

 対戦……元樹さんはきっと初めてではありませんよね?

 

「その、初めてなので優しくしてくださいね……?」

「善処はする」

 

 席に座って元樹さんから基本的な操作方法を教えてもらい、ようやくゲームをスタートする。操作できるキャラクターがたくさんあってそれぞれ性能が違うみたいですが、初心者の私には何が何だかわからないので可愛らしい亀のキャラクターにすることにしました。

 

 

 

「やりました、1位です!」

 

 初めてのプレイで1位になることができました。嬉しいです。予想していたよりも難しいゲームでなくて助かりました。

 

「負けた~」

「元樹さんが手を抜いていたのが悪いのでは?」

 

 前半の元樹さんは明らかに手を抜いていた。

 

「それはそうだけどさ……ま、まぁ栞子が俺の予想よりも上手かったってことで。で、次は何する?」

「そうですね、次は……」

 

 辺りをぐるっと見回すと、台の上で何かを打ち合うゲームを見つけた。この位置では何を打っているのか見えませんね。ですが面白そうです。

 

「あれをやってみたいです!」

「あれはエアホッケーだな」

 

 同じ種類の台が1台空いていたのでそこを使う。

 

「これはどうやって遊ぶのですか?」

「四隅になんか置いてあるだろ? それでパックを打ち返すんだ。パックはまだ出てきてないけど。で、打ち返して相手のゴールに居れたらこっちの得点になる。あ、ゴールはここね」

「なるほど、わかりました」

 

 四隅に置いてある突起物のついたものを手に取る。これを使えばいいんですね。元樹さんはそれを両手に持っていますが、私は片手だけにしておきましょう。片手では無理だとわかったら両手持ちにすることにします。

 

「これがパックな。そっちに行ったから最初は栞子が打つんだ」

「なるほど、では……」

 

 ゴールに入れればいいんですよね? ではいきなりゴールに入れてしまいましょう。

 

「えいっ」

 

 ゴールを直接狙うも、簡単に止められてしまう。そして元樹さんが横の壁に向かってパックを打つ。壁で反射したパックはジグザグに動きながら私のゴールに吸い込まれました。

 

「よし、まずは1点」

 

 なるほど、直接ゴールを狙うよりもこうやって狙った方がいいんですね。

 

 

 

「ふふっ、エアホッケーも私の勝ちですね」

 

 元樹さんが手加減をしてくれたのか、それとも単純にパワーがないだけなのか、彼が打ったパックはそれほどスピードがなかったため簡単に打ち返すことができました。

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

 そして何よりも途中でも元樹さんのスタミナが切れたことが大きかった。

 そのスタミナの切れた彼はゲーム終了後からずっとベンチに座っている。

 

「えっと、大丈夫ですか?」

「むりぃ……」

「それなら……はい、これをどうぞ」

 

 ベンチのすぐ横にある自動販売機で飲み物を買い、元樹さんに渡す。

 

「コーラです。コーラは体力回復に効果的だと聞いたことがあります」

 

 クラスの方が体育の後に「ほう、コーラですか……たいしたものですね」と言っているのを聞いたことを思い出しました。きっと体力回復に効果があるはずです。

 

「私もスタミナがある方ではないのであまり人のことは言えないのですが、元樹さんはもっとスタミナをつけた方がいいのでは? 今後働く上でもスタミナは必要ですからね」

 

 さすがにエアホッケーで切れるスタミナなのは問題があると思います。

 

「ふぅ」

 

 そうこうしているうちに元樹さんがやっと立ち上がった。

 

「もう大丈夫なのですか?」

「動けるくらいには。多分コーラのおかげかな」

 

 やはりコーラには体力回復の効果があったのですね。

 

「次は何する? できればあんまり動かないやつがいいかな」

「プリクラというものを元樹さんとやってみたいです」

「いいよ」

「ありがとうございます!」

 

 プリクラに誘うのは少し恥ずかしかったですけど、思い切って誘ってみることにしました。

 ちょうど1台空いていたのでそこに一緒に入る。

 

「これがプリクラですか。少し狭いですね……」

 

 外から台を見た感じよりも中が狭く、横に並んだら肩が触れてしまうほどの大きさだ。

 

「どんなポーズで撮る? 栞子のやりたいポーズでいいよ」

「いいんですか?」

 

 1つずっと元樹さんとやってみたかったものがあるのですか、それをやるのはあまりにも恥ずかしすぎます……。でも誰も私達を見てませんし、これくらいやらないと元樹さんへのアピールにはならない気がしますし……。でもこれをやるにはさすがに元樹さんの許可が……。

 

「遠慮せず、何でもいいぞ」

「それなら……えいっ」

「えっ?」

「こ、これでお願いします……」

 

 思い切って元樹さんの左腕に抱きつく。顔が近いです……。この距離で見つめるのはやめてください、これ以上のものが欲しくなってしまいます……。少し背伸びをすれば……いえ、これはまだダメですね。正式なお付き合いをする、あるいは元樹さんから求められるまでは我慢です。

 

「栞子がこれがいいならこれで撮るか。じゃあはいチーズ」

 

 元樹さんの掛け声に合わせて自分にできる最大限の笑顔をする。撮るからにはいい写真にしたいですから。

 

「恥ずかしさで倒れるかと思いました……」

「やらなければよかったんじゃない?」

「元樹さんは全く恥ずかしくなさそうでしたね。……もしかして、慣れていたりしますか?」

「い、いやいや。まさかそんな。顔に出てないだけだよ」

「元樹さんがそういうタイプだとは思えませんが……」

 

 むしろ思いっきり顔に出るタイプだと思います。

 

「ですが、元樹さんがそうだと言うのであれば信じましょう」

「まぁ本当のことだからね。じゃあデコするか」

「デコ……ですか?」

「さっき撮った写真に文字を書いたりなんかいろいろデコレーションできるんだよ」

 

 元樹さんに操作方法を教えてもらい、自由にデコレーションをする。その彼はといえば、どこか興味なさそうに明後日の方向を向いている。あまりそういうのは好きではないのでしょうか。

 

「うーん、悩みますね……」

 

 目を大きくしたりできるみたいなので試しにやってみましたが、どうもしっくりこないのでやめました。元樹さんがデコレーションがあまり好きではないのでしたらシンプルなものにしてみましょうか。とりあえず私達をハートマークで囲って、それから上にLOVEと書いておきます。

 

「終わりましたよ。はい、これができた写真です」

「ん、サンキュー」

 

 改めて見るとこれは……他の人には見せられませんね。

 

「これは誰かに見られたら勘違いされるな」

 

 私は勘違いされても構いませんけどね。というよりもクラスの方達はすでに勘違いをされていますし。一応私の一方通行ではあるので、その勘違いも半分は正解と言えるかもしれませんが。

 

「大切にしてくださいね? 私も大切にしますから」

「もちろん。誰にも見られない場所で保管するよ」

 

 私はどうしましょうか。袋か何かで包んでカバンにでも入れておきましょうか。そうすれば見たくなった時に見ることができますから。

 

「もういい感じの時間だし、そろそろラーメン屋に行くか」

「そうですね。お腹も空いてきましたし」

 

 ここまでの移動が歩きだったり、エアホッケーで動いたり、恥ずかしい思いをしたりでお腹が空いてきました。これなら美味しいラーメンをお腹いっぱい食べられそうです。

 

 

 

「たくさん人が並んでますね……」

「ああ、これはちょっと想定外……」

 

 ラーメン屋さんの前には私達以外にもたくさんの人が並んでいました。これは入店までにそこそこの時間がかかりますね。15分くらいですかね。

 元樹さんはカバンから先程購入したファッション雑誌を取り出して読み始めた。

 

「私も隣から見てもいいですか?」

「いいよ。一緒に見ようか」

「ありがとうございます」

 

 モデルというだけあって、皆さんスタイルがいいですね。朝香さんのページになるたび元樹さんのページをめくる速さが少しだけ遅くなるのが気になりますが。なんだかモヤモヤします……。

 

「……朝香さんは本当にスタイルがいいですね。羨ましいです……」

 

 自分のモノを制服の上から触る。ぺったんこというわけではないと思いますがが、朝香さんのモノと比べるとやはり貧相ですね……。私も2年後は朝香さんのような大きさになれるのでしょうか……。

 

 朝香さんのページになるたび元樹さんのことを睨んでしまいましたが、最後まで読み終えました。

 

「想像していたよりも勉強になる雑誌でしたね」

「そうだな。買うだけの価値はあったよ」

 

 そういえば、この雑誌は女性向けのファッション雑誌ですよね。元樹さんが読んでも何の参考にもならないのでは? ……もしかして最初から朝香さんが目的で……? 元樹さんには一度小さいモノのよさを説かなければならないようですね……!

 

「2名様ごあんなーい!」

「ようやく私達ですね。思っていたよりも長かったです」

「ちょうどこの雑誌1冊分だったな」

 

 仕方ないですね、この話をするのは今度にしてあげましょう。

 

 店内に入って案内されたのはカウンター席でした。壁のそばの2席でしたが、壁側の席を譲ってくれました。

 

「いっぱいメニューがあって、どれにするか悩んでしまいますね」

「あれなんてどうだ? スペシャルラーメン、当店オススメらしいぞ。ネットでもこれがすごく美味いって聞いたし」

「なるほど。ではそれにします。元樹さんは?」

「俺もそれで」

「わかりました。すみません、スペシャルラーメンを2つお願いします」

 

 ラーメンが完成するまで元樹さんとお話ししていようと思っていましたが、彼は何故か麺の湯切りを真剣に見ていたので、私も湯切りを眺めることにしました。店主の方でしょうか、すごく高い位置から湯切りをしています。あれが前教えてもらった天空落としというものでしょうか。

 

「おまちどう!」

「おぉ、すげぇ……」

「チャーシューがいっぱいですね!」

 

 出されたラーメンには3種類のチャーシューがこれでもかというくらいに盛られていた。これがスペシャルラーメン……すごく美味しそうです。

 

「「いただきます」」

 

 まずはチャーシューを1口……

 

「美味しいです! このチャーシューがすごく柔らかくて、味もしっかりと染みていて……こんなに美味しいチャーシューは初めて食べました!」

「な! 想像以上の美味しさ!」

 

 あまりの美味しさに手が止まりません。

 

 

 

「「ご馳走様でした」」

 

 あんなに山盛りだったチャーシューもペロリと食べられてしまいました。あれだけ食べたとなると少しカロリーが気になりますね。……少し運動をしましょうか。

 

 お会計を済ませて外に出る。あのボリュームで1000円未満なのはお得ですね。お得すぎて赤字になってないか心配してしまいます。

 

「そろそろ帰るか」

「そうですね」

 

 本当はまだまだ一緒に居たいですが、門限を破るわけにはいけないので帰ることにします。

 

 元樹さんと一緒にお出かけをした時はいつも家の前まで送ってくださいますが、いつも家の近くで別れることにしています。本当は家の前まで送ってもらいたいですし、できることなら私の部屋に上がってもらってもう少しお話しをしていたいです。ですが家族に見つかると少々厄介なことになってしまうので。せめて正式にお付き合いをしてからと言っているのに、彼に会わせてほしいと何度も言われるので……。

 

「元樹さん、今日はありがとうございました。一緒に本屋に行って、ゲームセンターに行って、元樹さんとプリクラを撮って、美味しいラーメンも食べて、すごく楽しい時間でした」

「俺も楽しかったよ。ありがとうな」

「私はここで大丈夫ですので。それでは。また明日会いましょう」

「ああ、また明日」

 

 今日は本当にいろいろあって、いつも以上に濃密な日でした。朝香さんに嫉妬したりもしましたが、それ以上に楽しいこともたくさんありました。元樹さんからどう思われているかも知れましたし、抱きついてプリクラを撮ったり……この先私と元樹さんの関係がどうなろうとも、この日のことは一生忘れないでしょう。できることならもう一度、元樹さんとこんな濃密な時間を過ごしたいです。叶うなら友達としてではなく恋人として……。




感想などお待ちしております。


溜まっていたとはいえ、栞子ちゃんだけで17000字越え……。誤字とかいっぱいありそう。
ちなみに、りなりー回(サイドストーリー Part3/m)は6000字にいかないくらいです。
これは栞子ちゃんがメインヒロインだな!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part10/n

初心にかえって初投稿です。


 (ToDo:動画投稿するまでに思いついてちゃんとここを埋める)なRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は栞子ちゃんとラブラブデートをしました。今回はその続きからで、寝る前に栞子ちゃんからオススメしてもらった参考書を読みます。

 2冊あるので、今日は基礎から書いてあると言っていた方を読みましょう。参考書は1日1冊しか読めないので、もう1冊は明日読むことにしましょう。ふむふむ、なるほどなるほど。完全に理解しました。

 

『内容を理解することができなかった』

 

 ハァ~……(クソデカため息)

 残念ながら失敗してしまいました。この本はもうほも君1人では読むことができません。成績優秀者が一緒であれば読むことができますが、その場合は入手できる経験値が減ってしまいます。学力2まではあと10経験値なので足りるとは思いますが、一緒に読む場合は1人で読むよりも時間がかかってしまうので、やはりこの失敗は痛いですね。

 仕方ありません。リカバリー案として今から栞子ちゃんに電話して教えてもらいましょう。明日放課後一緒に読むとかよりも早くなるはずです。もしもし、しおってぃー?

 

『……は、はい!』

 

 声が少しうわずっていますが、どうしたのでしょうか。息も少し荒いですし。

 

『な、何でもありません。気にしないでください。それより用件は何ですか?』

 

 少し話を急いでいるみたいですね。もしかしたら何かやっている途中で、それを中断させてしまったのかもしれません。電話をするタイミングが悪かったみたいですね。

 

『そうですね……もう少しでというところで中断してしまいましたが……ですが気にしなくて大丈夫ですよ。やろうと思えばいつでもできることなので。話を急かしているように聞こえたのであれば申し訳ありません。元樹さんの方が大丈夫なのであれば、ゆっくりとお話ししましょう』

 

 予想通りでしたが、どうやらほも君に付き合ってくれるみたいです。栞子ちゃんは優しいですね。その優しさに甘えて早速本題に入りましょう。

 

『勉強を教えてほしい……ですか? もしかして今日買った参考書でしょうか?』

 

 その通りです。察しがよくて助かります。

 

『構いませんよ。どこがわからないのですか?』

 

 数式を言葉で伝えるのは大変なので、テレビ電話に切り替えますね。

 

『えっ!? ちょ、ちょっと待ってください!!』

 

 えっ、何ですか?

 

『えっとですね……えっと……そ、そう! 実はお風呂上りでして、まだ服を着ていないんです!』

 

 そうだったんですね。もしかしてお風呂を中断させてしまったんですかね?

 

『え? えぇと、そう、ですね……』

 

 女の子にとっては大切なお風呂を中断させてしまったのは非常に申し訳ないですね。栞子ちゃんがちゃんと風呂から上がってからにしましょうか。

 

『いえ、えぇと、今日は少し長湯気味だったのでそろそろ出ようかなと思っていたんです。私は問題ないので今からやりましょう』

 

 栞子ちゃんがいいと言うならやりましょう。

 

『ただ、服だけ着てもいいですか? お見苦しいものをお見せすることになるので……』

 

 見苦しくないのでいいですよ。栞子ちゃんの裸を見せてください(鬼畜)

 

『えっ!? えぇと……元樹さんがそう言うのであれば……やっぱり恥ずかしいからダメです!』

 

 しょうがねぇなぁ。

 

『ありがとうございます。少し待っててくださいね』

 

 服を着る音が生々しくて少し興奮しますね。

 

少し拭いた方がいいでしょうか……ですがこの後また濡れてしまいますし……

 

 後でまたお風呂に入るんでしょうか。でも体はちゃんと拭きましょうね。パジャマも濡れてしまいますし、風邪をひいてしまうかもしれないですしね。

 

『えっ!? そ、そうですね。ちゃんと拭くことにします。うぅ……まさか聞こえているとは……

 

 もちろん今の呟きもバッチェ聞こえてますよ。というよりテキストに表示されてますよ。さっきから何を焦っているんですかねぇ。

 

『すみません、お見苦しいところをお見せしました。もう大丈夫ですよ』

 

 電話越しでも見せたと言うんですかね? それはさておき、テレビ電話に切り替えますよ。

 

『はい、こんにちは。……スマホ越しに元樹さんを見るのはなんだか不思議な感覚ですね』

 

 そうですね。生栞子ちゃんとはまた別のよさがあります。顔が赤いですし、やっぱり風呂上りなんですね。顔が少し濡れているのは汗かと思いましたが、ただ十分に拭ききれていないだけですね。ちゃんと拭かないとダメですよ。

 

『そ、そうですね。後で拭きなおします』

 

 それにしても可愛らしいパジャマですね。普段のイメージからは少し離れたもこもこパジャマですが、よく似合っていて素敵ですよ。

 

『ほ、本当ですか!? ありがとうございます!! 元樹さんのパジャマも素敵で好きですよ』

 

 褒めてくれてありがたいですが、時間も惜しいので早速本題に入りましょう。この参考書のですね、こ↑こ↓とこ↓こ↑とこ←こ→とこ→こ←がわからないんですよ。

 

『そうですね、そこは―――』

 

 栞子ちゃんが事細かに説明してくれますが、ほも君はちゃんと理解できているのでしょうか。

 

『そうです。その項を右辺に移項して……はい、解けました。その次の問題も同じようにして解けるので今からやってみてください』

 

 ほも君が頑張って問題を解いていますが、少し手間取っていますね。さっき説明してもらったでしょ。あくしろよ。

 

『正解です。よくできましたね』

 

 栞子ちゃんが画面越しに撫でる真似をしてくれます。そのための右手。

 

『では次の問題に行きましょうか。その問題は少し難しいですが、4ページ前に出てきた定理を使うことで解くことができますよ。チャレンジしてみてください。どうしてもわからない時はヒントをあげますから』

 

 ほも君がすらすらと解いていきます。答えを出そうと思えば(王者の風格)

 

『いい調子ですよ』

 

 栞子ちゃんのヒントなしに解けていますね。ほら、もう答えが出、出ますよ……。

 

『間違ってますね。定理を使うところまではよかったですが、その後の3行目の式変形が違います。もう一度そこからやり直してください』

 

 あのさぁ……もう自分で解くのはいいから、栞子ちゃんに解説してもらってさ、終わりでいいんじゃない?(棒読み)

 

『はい、今度は正解です。惜しかったですね。式変形をした時は次に進む前によく確認した方がいいですよ。私も3回はするようにしています』

 

 3回だよ、3回。

 

『他にわからないところはどこですか?』

 

 こ↑こ↓

 

『これは……私もパッとはわからないので、少し時間をいただいてもいいですか?』

 

 栞子ちゃんがほも君のために真剣に考えてくれているので、それを邪魔しないようにしつつ一緒に考えましょう。ひらめけやオラァ!

 

『……なるほど、わかりました。この問題はですね―――』

 

 さすが栞子ちゃんですね。ほも君がひらめくよりも早く解法を思いついてしまいました。やはり学力1ごときでは相手になりません。ほも君も早く成績優秀者にしたいですね。

 

『……元樹さん? 聞いてませんよね?』

 

 栞子ちゃんに夢中で聞いてませんでした。

 

『そ、そうですか……私に夢中で……しょうがないですね。もう一度説明しますから、今度はちゃんと聞いてくださいね』

 

 おう、考えてやるよ(ちゃんと聞くとは言ってない)

 

『―――という流れで解けるはずです』

 

 ほんとぉ?

 

『おそらく。私も今から実際に解いてみますから、元樹さんもやってみましょう』

 

 ほも君も手を動かして問題を解きましょう。ホラホラホラホラ(鬼畜)

 

『……ふぅ。私は解けました。元樹さんの調子はどうですか?』

 

 調子ダメです。

 

『そこで止まっているのですね。少し難しいですが、そこでこういう式変形をすると先程の定理が使えるようになるので……』

 

 なるへそなるへそ。

 

『これで解けたはずです。この問題の答えはどうなってますか?』

 

 出した答えと一致してますね。

 

『そうですか、よかったです。この問題は難しかったですね。ですが面白い問題でした』

 

 ほも君もそう思います。

 

『もうわからなかった場所はないですか?』

 

 大丈夫です。完全に理解したので学力経験値を20手に入れました。これで学力が2になりました。やったぜ! 余った経験値10が持ち越されて、あと20で学力が3になります。『勉強苦手』さえついていなければ今ので3になっていました。じわじわと効いてきてますね……。

 

『わかりました。では私はこれで』

 

 しおってぃーありがとナス!

 

『はい。もう1冊の方でもわからないところがあれば遠慮なく聞いてくださいね』

 

 できれば栞子ちゃんのお世話にはなりたくないですね。頑張れよほも君。

 

『おやすみなさい。また明日会いましょう』

 

 おやすみ栞子ちゃん。いい夢見ろよ。

 

 栞子ちゃんとの緊急勉強会も終わったので、ほも君も寝ましょう。今日はちゃんとセーブしないにカーソルを合わせたのを確認します。(セーブミスはもうしたく)ないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おはようございます、4日目です。Part10にしてようやく4日目ですが、栞子ちゃん除く同好会メンバーが全員揃うまでまだまだ時間がかかります。完走するまでまーだ時間かかりそうですかねー?

 そうこうしているうちに栞子ちゃんが登校してきたので挨拶をしましょう。オッハー。

 

「おはようございます」

 

 昨日は助かりました。

 

「い、いえ……」

 

 なんで顔を赤らめる必要があるんですか? 裸のくだりを思い出したんですかね?

 

「それもありますが……この話はやめませんか? 恥ずかしくて仕方ないので……」

 

 ほも君は別に恥ずかしくないので。

 

「えっと、その……」

 

 急にモジモジし始めましたが、トイレですかね?

 

「そうではなく……」

 

 しばらくモジモジしていた栞子ちゃんでしたが、何か決心したような顔つきでほも君の耳元に口元を近づけて、

 

「裸が見たいのでしたら、その、いつでも見せてあげますからね……?」

 

 えぇ……(ドン引き) じゃあ今見せてください(鬼畜)

 

「さすがにこの場では……せめて2人きりになれる空間でお願いします……」

 

 いつでもって言ったのにいつでもじゃねぇっておかしいだろそれよぉ!?

 まぁ私も栞子ちゃんの裸を皆に見せたくはないので、今ここで脱がせるようなことはしませんが。

 ちなみに、こんなことを言われてもほも君は栞子ちゃんからの好意に当然気付いていません。あのさぁ……そんなんじゃ愛想を尽かされちゃうよ?

 

 さて、今日は部活以外に特別なイベントはないはずなので、動画は放課後まで4倍速で進めてしまいましょう。

 

 

 

 な ん で 等 倍 に 戻 す 必 要 が あ る ん で す か ?

 

 

 

 えー現在昼休みです。トイレに行く途中のほも君が廊下を歩いています。トイレに行くだけなのに等倍に戻す必要なくなくない?

 とか思っていたら向こうからロボット菜々ちゃんこと生徒会長が歩いてきました。なるほど、だから等倍に戻したんですね。見つかる前に隠れてしまいましょう。

 このゲームはメインキャラと部活以外の時間に会うとイベントが発生します。これは親密度がそこそこ上がって、しかもサブストーリー扱いなので倍速進行できるうま味なイベントになっています。ただし同好会加入前の生徒会長は例外で、一応イベントは発生するのですが、なんと親密度は一切上がらず、何故かメインストーリー扱いなので倍速も使えないロスイベントとなっています。だから隠れる必要があったんですね。

 

「何をしているんですか、堀口元樹さん?」

 

 なんで? なんで? なんで? ちゃんと見えない場所に隠れたじゃーん!

 

「あんなに怪しい動きをしていたら誰だって気付きますよ……。あんな露骨に避けられるとは、私も嫌われてしまいましたね」

 

 別に生徒会長のことが嫌いなわけではないんですよ。ただロスイベが嫌なだけで。ロスイベでないなら避けたりしませんよ? まぁ同好会に入るまでは生徒会長のイベントのほとんどがロスイベなんですけどね。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想などお待ちしてます。

ウマをやらなければならないので次回の投稿は遅くなるかもしれないです。



これで完璧! 恋愛マスターが教える恋愛のコツ100選!
その1:相手の耳元で囁いて誘惑


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part11/n

This is the first post.

ウマは諦めました。時には諦めも肝心。


 可愛いくてアレが大きい女の子生徒会長が後輩の男の子を密室に連れ込んであんなことやこんなことをするRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は残念なことに生徒会長と遭遇してしまいました。今回はその続きからで、ロスイベを回避するために頑張って逃走を試みたいと思います。果たしてほも君は鬼生徒会長から逃げ切ることができるのか……。

 

「逃がしませんよ」

 

 できませんでした……(小声)

 逃げようとしましたが、それよりも早く腕を掴まれてしまいました。筋力がないため振り払えません。それどころか1歩も動くことができません。いい加減ほも君の筋力芸には慣れてきましたね。RTA的には全く美味しくありませんが、動画的には美味しいです。

 

「隠れたことといい、逃げようとしたことといい、やはり私は嫌われてしまったようですね。残念です……」

 

 違います。ロスイベが嫌なだけですから、そんな顔しないで。心が痛んじゃう。

 

「まあいいでしょう。少し手伝っていただきたいことがあるのでついてきてくれますか?」

 

 え、嫌ですけど。

 

「そう言うと思ってました。なのでこのまま強制的に連れていきます」

 

 やめろォ(建前) やめろォ!!(本音)

 あのですね、こちらにも授業というものがあるんですよ。その手伝い絶対に昼休み中に終わらないですよね?

 

「大丈夫ですよ。生徒会の手伝いということで公欠扱いにできますから」

 

 そうじゃないんですよ。普通に授業に出るより時間が長くなっちゃうよねって話です。それにサボったと勘違いされて栞子ちゃんの親密度が下がりそうですし……。

 

「最後まで手伝ってくれたらいいことをしてあげますから」

 

 やります(即答)

 

「清々しいほどの即答ですね……」

 

 RTAとはいえ、別にタイムなんてどうでもいいんですよ。誤差だよ誤差。それに栞子ちゃんの親密度は現状でも激高ですから、多少下がった所で問題ありません。誤差だよ誤差。

 タイムがどうでもいいは冗談ですが、手伝えば親密度が上がりそうな気がするので手伝うことにしました。このイベントを見たことがないので確証はありませんが。できればちゃんと調べて確認したいですが、調べるのが面倒なので。仮に親密度が上がらなかったとしても再走すればいいんですよ。再走の1回や2回誤差だよ誤差。

 ちなみに、RTA終了後にこのイベントについて調べましたが何の情報も出てきませんでした。もしかしてこのイベントを発見したのは私が世界初ですかね? 派生条件がわからなかったので大した情報にはなりませんが、一応Wikiにこのイベントについてまとめておいたので気になる兄貴は見てみてください。

 

「では行きましょうか」

 

 手伝うって言ったのに何故か手を離してくれないのでこのまま連行されていきます。まぁこっちの方がスタミナも消費しないし、普通に歩くより何故か速いのでありがたいですが。

 

 

 

 印刷室に来ました。印刷の手伝いをすればいいんですかね?

 

「いえ、印刷はすでに終わっているので、今からその印刷したものを生徒会室に運びます」

 

 印刷したものというのはこの段ボールの山のことですかね? ほも君が持てるような重さではないでしょうし、仮に持てたとして何十往復しなければならないんですかねぇ?

 

「そう言うと思って台車も用意しておきました」

 

 台車が2台あるということは、明らかに誰かに手伝ってもらう前提でしたよね?

 

「最初は副会長さんと一緒に運ぶ予定だったのですが、体調不良で欠席とのことで……」

 

 なるほど、だからほも君が捕らえられたんですね。副会長ちゃんさぁ……このRTAが終わったら副会長就任RTA走ってやるからな。覚悟の準備をしておいてください!

 

「それでは運びましょうか。台車があっても一度では全て運べそうにないので、結局何往復かしなければならないでしょうが」

 

 このイベントすごく時間がかかりそうですが、それに見合うだけの価値はあるんですかねぇ? ちょっと心配になってきました。

 

「……どうしました?」

 

 えー問題が発生しました。

 

「……もしかして持ち上げられないのですか?」

 

 その通りです。ほも君が非力すぎて段ボールを台車に乗せることができません。またこれか壊れるなぁ。

 

「さすがにこれは想定外です……。仕方ないですね……台車には私が載せるので、その後一緒に生徒会室まで運びましょう」

 

 非力なほも君は生徒会長が段ボールを台車に載せてくれるのをただ見守るしかありません。酷い絵面ですね。女の子に重たいもの持たせて恥ずかしくないの?

 

「ふぅ……とりあえず積み終えたので行きましょう」

 

 

 

 ぬわああああん疲れたもおおおおん

 

「まだ1往復目ですよ? もっと頑張ってください」

 

 まだまだ往復しなきゃですよ? 片道10分近くかかってますし、全部運び終えるまで何分かかるんですかねぇ。この学校広すぎんよ~。

 

「さて、荷物も降ろしたので印刷室に戻りますよ」

 

 スタミナが減った状態なのでもう少し待ってください。

 

「時間がないのでダメです。ゆっくり戻ってあげますから」

 

 そんなぁ~。

 

 

 

「ふぅ……さすがに疲れましたね……」

 

 結局5往復しました。生徒会長に捕まったのが12時10分ほど。現在の時刻は1時過ぎです。時間は1時間近くかかりました。おかげでほも君のスタミナは活動停止ラインぎりぎりです。

 

「ありがとうございました。堀口さんがいなければ倍の時間がかかってましたので」

 

 じゃあ俺、ギャラ(生徒会長のわがままボディ―でいいことして)もらって帰るから(疲労困憊)

 

「いえ、まだ終わってませんよ。むしろ本当に手伝ってほしいことはここからです」

 

 あのさぁ……これ午後の授業全部休む勢いなんですけど、それは大丈夫なんですかね?

 

「先程も言った通り公欠になるので大丈夫ですよ。もう先生に連絡して許可はもらってますから」

 

 それは別にどうでもいいんですが、今スマホを見たら栞子ちゃんから滅茶苦茶メッセージがきてるんですよ。……変に反応してここに来られても困るし、無視することにしましょうか。でも親密度が死ぬほど下がりそうだしなぁ……やっぱり生徒会の手伝いをしているとだけ返しておきましょう。生徒会室に来んなよ……来んな……。

 で、今からは何をすればいいんですか?

 

「この段ボールの中には明日配布予定の冊子が入っています。厳密にいえば、まだバラバラの状態の冊子ですが」

 

 あっ……(察し)

 

「なので今からホッチキスで綴じていきます」

 

 それは何冊分やればいいんですかね?

 

「高等部の全生徒に配布するので、約3000冊ですね」

 

 冗談はよしてくれ(タメ口)

 

「残念ながら冗談ではありません」

 

 じゃあ俺、ギャラは貰わずに帰るから(棒読み)

 

「待ってください! お願いですから帰らないでください! 私1人では明日までに終わらないんですよぉ!」

 

 じゃあ紙で配布しなければいいんじゃないですかね。折角全生徒にタブレットを配布しているんですから、電子データで配布すれば製本する必要もなかったんじゃないですかね。紙代も浮きますし。紙1枚114514円として、1冊が10ページ、それが3000冊ですから、合計で34億3542万円の節約ですよ。紙なんか必要ねえんだよ!

 

「それは私に言われても困ります。先生方からお願いされたことなので……」

 

 それに明日配布のものをなんで前日にやるんですか? もっと早くにやっといて、やくめでしょ。

 

「お願いされたのが昨日の帰り際なんです……本当は今日の放課後に生徒会全員でする予定だったのですが、私以外体調不良で休んでしまい、仕方なく午後の授業を休んでやることになったのです。それでも私1人では終わるかどうかわからなくて……」

 

 先生君さぁ……もっと早く伝えといてくださいよ。貴様達のせいで変なイベントに巻き込まれたじゃないですか。このイベント絶対時間がかかる割に大したリターンのないロスイベですよ。だからこんなんじゃRTAになんねぇんだよ(棒読み)

 

「なのでどうしても堀口さんに手伝ってほしいんです。お願いします。お礼に何でもしますから」

 

 ん? 今何でもするって言ったよね?

 

「私にできる範囲内でですけど」

 

 じゃあお手伝いが終わったら押し倒しましょうか(ゲス顔)

 

「おっ、おおお、押し倒す!? そんなことダメです! 確かにこの場所は鍵をかけられて、その鍵も私が持っている1本だけですから誰かが入ってくる心配もありませんし、高い階にありますから外から覗かれる心配もありませんし、中の音が外に漏れることもありませんからそういうことをするのに最適かもしれませんけど、風紀を乱すのはダメです!」

 

 生徒会室が最適な場所かどうかなんて言った覚えはないんですが……さてはこの子やる気満々だな?

 

「ち、違います! そんなわけないじゃないですか! だって堀口さんとそういうことをしてしまったら別れが辛くなるじゃないですか……」

 

 今回の生徒会長、もとい優木せつ菜ちゃんは同好会に戻る気はないみたいですね。アニメ版のせつ菜ちゃんに近い感じです。この場合のせつ菜ちゃんは同好会に戻ってもらうために口説き落とす必要があるのですが、それが少々時間がかかります。ですがその分親密度の上昇量も多いため、自分から正体を明かしてくれるスクスタ版よりもうま味です。しかもこの前情報屋から手に入れた情報でイベントが別バージョンに分岐するため、親密度がさらに上昇します。

 折角ですからお手伝いの後のご褒美タイムの時にせつ菜ちゃん加入イベが楽になるようなアプローチをしましょう。どんなアプローチをすればいいのか全くわかりませんが。

 

「……ですが、堀口さんがどうしてもと言うなら……どうぞ」

 

 いや、どうぞじゃねぇんだわ。お手伝いが終わった後のご褒美だろ? おい、リボンほどくのやめろ。おい、上着を脱ぐな。イベントが進まねぇんだわ。RTAになんねぇんだわ。

 

「どうしたんですか……? 早くきてください……」

 

 だからお手伝いが終わった後だっつってんだろ。

 

「……えっ? そ、そうでしたね。早とちりしてしまいました……」

 

 早とちりしないでください。押し倒すにしろしないにしろ、冊子を完成させないとイベントが進まないんですよ。だから早く上着を着てリボンをつけてください。

 

「ホ、ホッチキスです。数が多いですから急いでやりましょう。……早く終わればその分楽しめますので……」

 

 やっぱりやる気満々ですよね? 君保健が苦手じゃなかったっけ? でもせつ菜ちゃんの親密度が激高なのがわかったのでOKです! ほんと初期親密度に関しては今回運がいいですね。これだけ運がいいなら昨日本屋に行った時に恋愛強者本を置いておいてほしかったです。……そういえば、昨日本屋に行った時恋愛強者本の確認ってしましったっけ? ……して、ない……ですねぇ……。

 ハァ~……(クソデカため息) ちゃんと確認しとけって言ったよね? なんで確認しなかったんですか? こういうのはよくないですよ。本当によくない。今回はどうせ置いてなかっただろうしガバではないですが、もっと別の重要な場面で確認忘れなんてしたらリセ案件ですよ。

 今回のことはちゃんと肝に銘じて、次は同じミスをしないようにしましょう。ミスが多すぎるんだよね、それ一番言われてるから。

 

「堀口さん、手が止まってますよ?」

 

 おっと。衝撃の事実に気付いた走者がリアルフリーズをしてしまってました。これはガバです。ガバカウントプラス1しておきますね。

 走者もフリーズから復帰したので冊子作りを再開しましょう。ほも君は技能が2なので、通常よりも早く冊子作りをすることができます。後は私の入力速度次第ですね。このイベント、何故かページ1枚1枚に別のボタンが割り当てられているため、ホッチキスで止める前にページを重ねるのがかなりしんどいです。しかもボタンの割り当てに法則性がありません。だから入力をミスるのなんの。ここは安定重視で操作した方がスピード重視よりもタイムが早かったかもしれません。ホモはせっかち。

 

「す、すごい速さですね」

 

 ほら、せつ菜ちゃんも手を動かして。ホラホラホラホラ(鬼畜)

 

「……堀口さん。スクールアイドル同好会の部員集めはどうなってますか?」

 

 今はほも君含めて7人集まってますね。

 

「もう7人も集めたんですか!?」

 

 もう4日目ですからね。

 

「あれからまだ4日ですよ!? いくら何でも速すぎませんか!?」

 

 RTA走者ですからね、当たり前田のクラッカーですよ。

 

「元々同好会に所属していた方達はどうしてますか?」

 

 かすかすみんはもちろん、しずくちゃんと彼方さんは同好会に戻ってきてますよ。エマさんとせつ菜ちゃんは行方がわかりませんが、多分エマさんは故郷に一時帰国、せつ菜ちゃんは今ほも君の隣にいる気がします(名推理)

 

「そうですか……昨日その優木せつ菜さんとお会いしたのですが、1つあなたに伝言を頼まれました。彼女に同好会に戻る意思はないそうです。ですから私のいない新しい同好会で頑張ってほしい……と彼女はおっしゃってました」

 

 それはせつ菜ちゃんの本心ですかねぇ。

 

「ええ。きっと、そうだったと思います……」

 

 本当はせつ菜ちゃんが戻りたいと思っているのはわかっていますが、ここは引き下がりましょう。今ここで何を言ってもせつ菜ちゃんは同好会に戻ってきてくれませんので。まぁせつ菜ちゃんの本心がどうであれ、同好会には絶対に戻ってきてもらいますが。じゃないと称号が獲得できないからね、しょうがないね。

 

「私から話を振っておいてなんですが、今は口よりも手を動かしましょうか。まだ100冊を超えた辺りですし……」

 

 ほも君が驚異的なスピードで進めていますが、目標の3000冊までまだまだ足りません。これ本当に今日中に終わるんですかね……。生徒会の皆さん、こんな大変な時に揃って体調不良にならないでください。お見舞いRTAするぞ(脅迫)

 

 この製本イベントですが、完了するまでまだまだ時間がかかるので8倍速にして垂れ流します。このイベント中ずっとコントローラーのボタンをガチャガチャやってないとダメなんですよね。コントローラー壊れちゃ~う!

 

 

 

「やぁぁぁっと終わりましたー……。もうしばらくホッチキスは見たくありません……」

 

 製本RTA、ここでタイマーストップです。タイムは10分でした。

 完走した感想ですが、このイベントはコントローラーに優しくないですね。少しコントローラーの反応が悪くなった気がします。3000冊とまではいきませんが、500冊ほどは実際に作らされたと思います。これはRTAじゃなくても苦行ですね……。

 ゲーム内時間は現在5時過ぎなので、約4時間もほも君とせつ菜ちゃんはホッチキスをガチャガチャし続けたわけですね。頭がおかしくなっていそう。ですがおかげで技能経験値30もらいました。あと30で技能3です。まぁ技能が3になってもほとんど意味はありませんが。

 

「さて、最後の仕事をしましょうか。今作った冊子を全部段ボールに戻して教員室まで運びます」

 

 あの、教員室って印刷室のすぐ近くなんですが、またそこまで5往復しなきゃいけないんですか?

 

「はい。これが本当に最後ですから頑張りましょう」

 

 最終的に教員室に持っていくならそのまま印刷室でやればよかったんじゃないですかね?

 文句を言っていてもイベントは進まないので作業を進めましょう。今度は段ボールだけを台車に置いてから冊子を中に入れることができるため、非力なほも君でも台車に載せることができます。効率は実質2倍! まぁ積み降ろしはほも君じゃできないんですがね。

 

 

 

 教員室まで全ての冊子を運び終えて生徒会室に戻ってきました。終わり! 閉廷! ……以上! 皆解散!

 せつ菜ちゃんは台車を返しに行ったので現在はほも君だけです。せつ菜ちゃんが帰ってくるまでここで待ちましょう。

 

「お待たせしました」

 

 おっ、せつ菜ちゃんが帰ってきました。今ガチャって鍵を閉める音が聞こえたんですが気のせいですかね?

 

「鍵は閉めたのでもう誰も入ってきませんよ。それでは……し、しましょうか」

 

 待って待って待って、この子ガチなんですけど。目がガチなんですけど! リボンもとって、上着も脱いじゃってますし、シャツのボタンも外そうとしてます。やめて! R-18タグがついちゃう!

 

「心配しなくても大丈夫ですよ。私も一応……一応ですがそういう知識はありますので。……ですが、その……初めてなので、優しくしてくださいね……?」

 

 なんとかこの状況を打破しましょう。扉から逃げることはできませんし、鍵をせつ菜ちゃんから奪うのは筋力的に無理ですし、窓を突き破って逃げると死にますし……仕方ありません。禁じ手ではありますが、ここでせつ菜ちゃんの正体を明かしてしまいましょう。本当は加入イベまで明かすつもりはありませんでしたが、どうしようもないので仕方ありません。

 

「……いつから私がせつ菜だと気付いていたんですか?」

 

 810年前からです。

 

「そうですか、情報から推察して……その通りです。堀口さん……いえ、元樹さんの推察通り、私が優木せつ菜です」

 

 眼鏡を外して三つ編みをほどき、髪を結んでいつものせつ菜ちゃんにフォームチェンジしました。

 

「本当は正体を明かすつもりはありませんでした。ですが、バレてしまったものは仕方ありません。こちらの姿で元樹さんとすることにします。元樹さんとの最後の思い出として。せつ菜としての最後の思い出として……」

 

 どうしましょう。せつ菜ちゃんが止まってくれません。

 

「ふふっ、元樹さんは力がないですから、こうやって押し倒せばもう何もできませんね」

 

 やだ! 小生やだ! せつ菜ちゃんにわからされちゃう!

 

「……スクールアイドル同好会に戻らないというのは紛れもなく私の本心です。優木せつ菜はもういません。私はスクールアイドルをやめたんです」

 

 せつ菜ちゃん、タイムのために今すぐ同好会に戻ってきてほしいです。

 

「それはできません。私が戻ったら、また同じようなことになってしまいます。部員を集めろと言ったのも、同じ過ちを繰り返さないためです。……優木せつ菜だけが消えて、新しい虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が生まれる。それが私の最後のわがままです」

 

 どうやらこのイベントではせつ菜ちゃんは戻ってきてくれないみたいです。やはり果林さん加入後にしか加入イベは起きないみたいですね。

 

「……ですが、今日元樹さんと会って、もう1つ、どうしても叶えたいわがままが生まれてしまいました。……元樹さん、私の最後のわがままを聞いてください。……これが本当に最後ですから……」

 

 せつ菜ちゃんの顔が近づいてきます。そして……

 

「んっ……」

 

 あ……(昇天)

 

「……無理やりしてしまって申し訳ありません。どうしても初めては元樹さんとしたかったんです。ですが、わがままはこれが最後ですから……さようなら、元樹さん……」

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想などお待ちしてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part12/n

いつも初投稿です。


最近栞子ちゃんとせつ菜ちゃんがここのメインヒロインみたいになってますね。りなりー……


 RTA、はじまるよ(激低テンション)

 

 前回はせつ菜ちゃんにキスされました。今回はその続きから……やりたくありません!

 ああああああせつ菜ちゃぁあああああああん! どうしてあんなことしたのぉおおおおおおおお! あんな悲しいお別れのキスなんてやだよぉおおおおおお! うわぁあああああああああああああ!!

 

 一通り感情を爆発させたところで続きに戻りましょうか。この時はリアルでも1分ほど放心してました。なんで運営はあんなイベントを用意したんですか。ムフフなイベントかと思ったらユーザーの心を抉りにくるイベントでした。あれでお別れなんてないよ……うぅ、せつ菜ちゃん……。

 あれは私の選択が間違ってたんですかね? でも何も抵抗しないならしないでチョメチョメした後に同じ展開になってたような気がしますし……。というよりせつ菜ちゃんはちゃんと同好会に戻ってきてくれるんですか? それが不安で不安で仕方ないです。せつ菜ちゃんさえ戻ってきてくれればタイムなんてもうどうでもいいです。RTAなんて知るか! この周のほも君はせつ菜ちゃんと幸せに暮らせればそれでいいんだ!

 

 さて、元気を取り戻したところで冒頭の挨拶からやり直しましょうか、

 

 

 

 

 

 タイム度外視、せつ菜ちゃん最優先、「せつ菜ちゃんの方が大事なの!?」「そうだよ(便乗)」なRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はせつ菜ちゃんと悲しいお別れのキスをしました。今回はその続きからで、せつ菜ちゃんの大好きを取り戻しに行きます。

 あのイベントの生徒会室から廊下に放り出されてしまったので、もう一度生徒会室に入ってせつ菜ちゃんとお話ししましょう。……ダメです、鍵がかかっていて開きません。このイベントはここで終わりということですか……。

 これは私の希望を込めた推測ではありますが、先程のイベントはせつ菜ちゃん加入イベの別パターン、連続イベントバージョンの加入イベだと考えています。さすがにせつ菜ちゃんがこのまま戻ってこないということはないと思うので。これで戻ってこなかったら私は運営に火薬をドーンと仕掛けます(不発)

 このバージョンに派生した理由は何ですかね? 今回とそれ以外の違いがあるとすれば……栞子ちゃんの親密度? いやでも、仮にそれが原因だったとして、何故それがせつ菜ちゃんに影響を及ぼすのかわかりません。この時点でせつ菜ちゃんと栞子ちゃんに接点はないはずですから。

 

 考えたところで答えは出ませんし、今日はもう帰りましょう。荷物は教室に置いたままなので、ちゃんと回収してから帰ります。

 

「元樹さん、おかえりなさい」

 

 栞子ちゃん? もう6時過ぎてますよ? なんでまだ教室にいるんですか?

 

「元樹さんの荷物が置きっぱなしだったので。そのまま放置することもできませんし、盗まれたりしないように私が監視しておきました。元樹さんの元に持っていこうとも考えましたが、どこにいるか聞いてもメッセージが帰ってきませんでしたし……」

 

 あっ、本当ですね。栞子ちゃんから確認のメッセージがきています。気付いてませんでした、ごめんね。気付いても無視しましたけど。

 ついでにりなりーからもたくさんメッセージがきてますね。無断で部活休んでごめんね。後でちゃんとメッセージ返すから。

 

「それで、何かあったのですか? すごく悲しそうな顔をしています」

 

 スクールアイドルが嫌いな栞子ちゃんに何があったか詳しく話すことはできません。ここは黙秘しましょう。

 

「……何も話してくれないのですね……」

 

 ごめんね、栞子ちゃん……。

 一瞬悲しそうな表情をした栞子ちゃんですが、すぐにいつもの優しい表情に戻ってほも君を抱きしめてくれました。

 

「何があったのか無理やり聞いたりはしません。誰しも言えないこと、言いたくないことがあるのはわかってますから。……ですが忘れないでください。私はいつでもあなたの味方ですから。辛いこと、悲しいこと、嫌なことがあった時はいつでも話を聞いてあげます。慰めてほしい時はいつでも慰めてあげます。私のことも好きにしてもらって構いません。それであなたが元気になるのであれば、私は喜んで協力します。だからそんなに悲しい顔をしないでください。私が好きな元樹さんは元気で、明るくて、いつでも楽しそうな元樹さんですから」

 

 栞子ちゃん……胸柔らかいっすね。

 

「……私の話、ちゃんと聞いてましたか?」

 

 もちろんです。ほも君は今の栞子ちゃんの言葉に照れすぎてさっきみたいな返事しかできなかったのです。

 

「ふふっ、そうですか。……少しは元気が出てきたみたいですね。顔つきも先程よりずーっとよくなってます」

 

 栞子ちゃんの言葉、あるいは栞子ちゃんのハグとお胸の力で、ほも君とほも君のほも君の元気も出てきました。

 

「もういいのですか?」

 

 いやーもう十分堪能したよ……(顔真っ赤)

 

「そうですか。それなら、時間も遅いですしそろそろ帰りましょう。……またしてほしくなったら言ってください。望むのであれば、これ以上のことも……」

 

 これ以上って何のことですかねぇ?(ゲス顔) 金、暴力?

 

「そ、それは……せ、せっ……い、言わせないでください!!」

 

 

 

 帰宅しました。今日はりなりーに連絡を返してからもう寝てしまいましょう。おやすみなさーい。

 

 ……あっ、参考書読むの忘れてた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オッハー! 5日目です。今日もいいペンキ。

 今日こそ放課後まで何もないので、8倍速で放課後までいってしまいましょう。ほらいくどー。

 

 

 

 午後4時半、放課後です。今日こそ同好会に顔を出しましょう。昨日は無断欠席のような形になってしまったので親密度が下がったりしてないといいのですが……。

 

「もと男!」

 

 部室棟に来たらこちらに気付いたかすみんが駆け寄ってきました。昨日のこと怒られるんですかね?

 

「逃げなきゃ! しず子達に捕まったらかすみん達酷い目にあわされちゃう!」

 

 んー、どういう状況かいまいち呑み込めませんね。スクールアイドル同好会に何が起きたんだ……。とりあえず怒られてはいなさそうですね。ここはとりあえずかすみんの指示通り逃げましょう。

 

「かすみさん! 元樹君! 待ちなさい!」

「待て待てー!」

「やばっ! もう追ってきた! もと男もっと速く走って!」

 

 しずくちゃんと愛さんが追いかけてきました。鬼ごっこでもしてるんですかね? せめて外でやってください。

 

「元樹君確保!」

「もと男ー!!」

 

 ほも君は簡単に捕まってしまいました。持久力さん……。

 

「愛さん、かすみさんをお願いします!」

「愛さんにまっかせなさーい!!」

「ふふっ、捕まった元樹君は私と一緒に部室に行きましょうね。かすみさんもすぐに愛さんが捕まえてくれるはずです」

 

 とりあえず状況説明してください。未だになんでほも君が捕まえられる必要があるのかわかりません。ついでにかすみんが逃げていた理由もお願いします。

 

「勉強会だよ、勉強会。彼方さんが璃奈さんと愛さんに数学を教えてもらってるから、ついでに勉強が苦手な元樹君とかすみさんも勉強会をしましょうということです。それを伝えたらかすみさんが逃げちゃって……。それを追いかけてたら逃げそうな元樹君がいたから捕まえたの」

 

 ちょっと待ってください。今日は練習をするつもりだったんです。そろそろ練習しないとほも君の筋力と持久力がヤバいので。ほら、今だってしずくちゃんの拘束から逃げられないじゃないですか。皆も活動再開後のために練習した方がいいですって。

 

「元樹君は補習のせいで練習に来られなくなった前科持ちじゃない。ちゃんと勉強しないとダメ」

 

 ちゃんと勉強してますから。学力だって2になりましたし、前までのほも君とはひと味違うんですよ。

 

「侑先輩、歩夢さん、私の3人でたっぷりと教えてあげるから」

 

 ちょっとだけ、ちょっと練習するだけだから! 一緒に練習しよ! ね! お願いだから!

 

「さ、行きましょうか」

 

 ああああもおおおやだああああ!!

 

 

 

 部室に連行されました。りなりーも彼方さんもまだ来てないじゃないか。

 

「あっ、もと君。こんにちは」

 

 歩夢ちゃんちわーす。助けてください。

 

「それはできない、かな」

「もと君! おはよ!」

 

 侑ちゃん、助けて。この悪魔将軍しずくの魔の手からほも君を解放して。

 

「ダーメ。もと君の学力はどうにかしないとって思ったから」

 

 どうにかしないといけないのは筋力と持久力の方なんですよ。

 

「さ、座って座って。もと君は私と歩夢で見てあげるから」

「……え? 私も元樹君を見るんじゃないんですか?」

「しずくちゃんはかすみちゃんを見てあげてほしいな。さっき愛ちゃんから捕まえたって連絡がきたから」

「わかりました……」

 

 大人しく椅子に座ると、侑ちゃんがどこからかロープを取り出しました。

 

「これでもと君を椅子に縛りつけるからね」

 

 え? もしかして侑ちゃんは拘束プレイが好きなんですか? ごめんなさい。私縛られる方はちょっと……縛る方なら喜んでやりますよ。侑ちゃんはそこそこお胸が大きいですから、ロープで縛ったら映えそうですね。あっ、歩夢ちゃんでもいいですよ。それとも両方縛りましょうか?

 

「違うから! 私にそんな趣味はないから! 逃げないようにするだけだから!」

「元樹君は縛る必要はないと思いますよ。逃げたところですぐスタミナ切れになりますし、そもそも簡単に押さえつけられますから」

「そうなんだ。じゃあロープはいらないね。侑ちゃんが勘違いされそうだし……」

「うん、そうしよっか……」

 

 逃げようとしたらまーたわからされちゃうのか。(ほも君のプライド)壊れるなぁ……。

 

「今日1日頑張ったらご褒美あげるから、ちゃんと頑張ろうね」

 

 ほも君頑張る! 侑ちゃんとしずくちゃんにジト目で見られますが気にしません。ほも君は欲望に忠実なので。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想などお待ちしてます。



これで完璧! 恋愛マスターが教える恋愛のコツ100選!
その2:悲しそうな時は精一杯慰めてあげよう
その3:男は胸が好き


抱きしめるのは栞子が考えました。恋愛強者本の教えではありません。栞子のオリジナルです。しばし遅れをとりましたが、今や巻き返しの時です。

栞子「ほも君は好きだ」

ほも君がお好き? 結構、ではますます好きになりますよ。さあさどうぞ。ほも君のニューモデルです。どうぞ触ってみてください。いい肉体でしょう。余裕のパワーだ、筋力が違いますよ。

栞子「一番気に入ってるのは……」

何です?

栞子「値段だ」

ああ、何を! ああっ待って。ここで脱がしちゃ駄目ですよ! 待て! 止まれ! うぁあああ……


ごめんなさい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part13/n

スクスタ新SRの歩夢ちゃんと栞子ちゃんがめちゃんこ可愛かったので初投稿です。


Part13にもなって1章が終わるどころか、エマさん果林さんすら出てきてないってマジ? 進行速度遅すぎんよ~。


 教育系RTA、はーじまーるよー。

 

 前回は栞子ちゃんのパイパイを堪能し、練習する予定が緊急勉強会によって潰されました。今回はその続きからで、勉強をします。教育的な動画だぁ。

 

 愛さんに連行されてきたかすみんは椅子にロープで縛りつけられて、別のテーブルでしずくちゃんと愛さんに勉強を教えてもらっています。かすみんの拘束プレイいいゾ~コレ。泣いているかすみんに鞭打ちしたい。暴れたらもっときつくシュバルゴ!

 ちなみに愛さんは彼方さんが来るまではかすみんを見るみたいです。彼方さんは遅刻ですか? りなりーもまだ来てないし……2人でお昼寝でもしてるんですかね? あら^~

 

「うぅ……もと男のための勉強会のはずだったのに、なんでかすみんまで……。もと男よりは成績悪くないし、かすみんはやらなくてもいいじゃん」

「補習はなくても赤点はあったんだよね?」

「うっ……」

「だったら勉強しないとダメ。じゃないと元樹君の二の舞になるよ?」

「大丈夫! 愛さんが優しくわかりやすく教えるから! ちゃんと聞いてくれたらかすかすも今より勉強できるようになるよ!」

「かすかすじゃなくてかすみんですっ!」

 

 かすみんはほも君に巻き込まれたみたいですね。可哀そう。もっといじめたい。

 

「ほら、よそ見しないで」

 

 かすみん達の方を見ていたら歩夢ちゃんに注意されました。

 

「じゃあまずもと君はこのプリントの問題を解いて」

 

 この問題、栞子ちゃんに教えてもらった参考書の類題だ!

 

「すらすら解けてるね。想像してたよりはできてるんじゃないかな?」

「そうだね。基礎問題ではあるけど、すごく簡単っていう問題じゃないもんね」

 

 解ける! 解けるぞ! 見ろ、問題がゴミのようだ! 学力2を舐めるんじゃねぇぞオラァ!

 

「……全部解けたみたいだね。よしっ、それじゃあ採点しよっか」

 

 侑ちゃんにプリントを渡して採点してもらいます。いやー、これは全問正解しちゃいましたね。才能、見せつけちゃったかな?

 

「うーん……」

 

 採点終わるまでまーだ時間かかりそうですかね~?

 

「終わったよ。終わったけど……」

「これは……」

 

 どうもどうも。満点取っちゃいました。

 

「全然違うよ。はい、これ、全問不正解」

 

 さすがに全問不正解はないっすよ。とぼけちゃってぇ……。

 

「冗談じゃないよ。ほら、これ。ちゃんと見て」

 

 嫌だ! 私は信じない。信じないぞ! 学力2が、あの栞子ちゃんに指導してもらったほも君が0点だなんて信じない!

 

「顔を背けちゃダメだよ。ちゃんと見て」

 

 歩夢ちゃんに顔を固定させられます。

 

「確かに全問不正解だけど、これ全部途中の式変形を間違えてるだけだよね? 考え方は合ってるみたいだし、そんなに悔しがらなくても大丈夫だよ。……やっぱりこういうケアレスミスの方が逆に悔しいかな?」

 

 あのさぁ……式変形をしたら次に進む前にちゃんと3回確認しようって栞子ちゃんに言われたでしょ? 3回だよ3回。しかも全問同じミスってどういうことだよ。ミスが多すぎるんだよね、それ一番言われてるから。

 

「こういうミスはもったいないから気をつけないと。解き方は合ってるんだし、稼げるところで稼がないと」

「この学校の数学ってどの先生もテストの応用問題がすごく難しいから、基礎問題でちゃんと稼がないと厳しいよ」

「そうそう。なんであんなに難しいんだろうね……」

「解説を聞いたらあ~ってなるんだけどね……」

 

 もっとテスト簡単にしてくれ頼むよ頼むよ~。

 

「それはさておき、もと君は今から簡単な問題をたくさん解こうか。でも、ただ解くだけじゃなくて、ミスをしないように確認をしながら解くこと。ちゃんと確認する癖がついてミスをしなくなったら応用問題にいくね」

 

 反復練習が大事ってそれ一番言われてるから。

 

「それじゃあこれとこれの問題を全部解いてね」

「もしわからないところがあったら気軽に私か侑ちゃんに聞いてね」

 

 頑張るぞー。えい、えい、むんっ!

 

 

 

「皆おはよ~」

「こんに……え……?」

 

 ほも君がただ問題を解き続けるだけの機械に成り下がっていると、りなりーと彼方さんが遅れて部活にやってきました。ですがりなりーが挨拶の途中でほも君の方を見ながらフリーズしてしまいました。……これほも君の方を向いてますよね? ボードのせいで視線が見えません。

 

「璃奈ちゃんどうしたの?」

「も、元樹が……」

「もと君が……?」

「元樹が……勉強、してる……!」

「ほ、ほんとだ……これにはさすがの彼方ちゃんもビックリだよ~」

「2人とももと君のことを何だと思ってるの?」

 

 ほも君はどんだけ勉強嫌いだったんですか。幼馴染のりなりーだけでなく彼方先輩にすらそう思われてるなんて……。

 

「この人本物の元樹? ……本物だ」

 

 変装を疑っているのか、頬を引っ張られました。痛いです。

 

「明日は雨かもね~」

「隕石が降ってくるかもしれない……。璃奈ちゃんボード『アルマゲドン』」

 

 酷い言われようですが、それよりも気になるのが今のボードですよ。璃奈ちゃんボードは感情を表すためのアイテムだったはずですが、アルマゲドンは一体どんな感情を表してるんですかねぇ……。

 

「もと君が頑張ってるんだし、彼方ちゃんも頑張らないとだねぇ」

「うん、私も頑張って教える。璃奈ちゃんボード『むんっ』」

 

 彼方さんも頑張ってるし、俺も頑張らないと!

 

「そうだね。もと君も最後まで気を抜かずに頑張ろっか」

「……あっ、そこ間違ってるよ」

 

 あのさぁ……。

 

 

 

 全部解きました。チカレタ……(小声) やめたくなりますよ~勉強~。

 

「お疲れ様。採点してあげるから、ちょっと待っててね」

 

 ちょっとさ、喉渇か……喉渇かない?

 

「確かに少し喉渇いてきちゃったかも」

 

 小腹も空きましたし、ちょっと購買に行ってきます。

 

「私も購買行こっかなー」

「採点は私がしておくから、侑ちゃん行ってきてもいいよ」

「ありがとう歩夢。それじゃあ一緒に行こっか、もと君」

 

 では、購買にイクゾー!

 

 

 

 侑ちゃんと一緒に購買に来ました。ここにはいろいろなものが売っています。

 

「何食べよっかなー。いろいろありすぎて迷っちゃう」

 

 RTAなのでほも君に迷ってる暇はありません。飲み物はお茶でええやろ。食べ物は買いません。食べる時間がロスになるので。

 

「もと君頑張ってるし、好きなもの1つ買ってあげる。お菓子でもアイスでも肉まんでもなんでもいいよ。でも皆には内緒ね?」

 

 ん? 今なんでもいいって言ったよね? 侑ちゃんが奢ってくれるなら何か食べるものを買っちゃいましょう。わーい。じゃあ……どうしよう。食べたいものが多すぎて迷っちゃうなー。

 

「いっぱい悩んでいいからね。戻るのが遅くなっちゃって歩夢に怒られても一緒に謝ってあげるから」

 

 侑ちゃんが謝ったら歩夢ちゃんすぐに許してくれそうですね。

 

「私はどうしよっかなー。これもいいけどこっちも食べてみたいなー」

 

 やっぱり僕は……王道を往く、アイスですかね。アイス冷えてるか~?

 

「アイスかー。確かにアイスもいいなー」

 

 バッチェ冷えてますよ。

 

「じゃあ私もアイスにしよっ!」

 

 侑ちゃんもアイスにするみたいですね。美味しいもんね、アイス。

 

「おまけでそのお茶も私が買ってあげる。だからこの後の勉強も頑張ってね!」

 

 ありがとナス! ほも君ちゃんと勉強頑張れよ。

 侑ちゃんのお会計が終わるのを待ちましょう。後輩に優しい侑ちゃん好き。お前のことが好きだったんだよ! だから早く付き合って。

 

「お待たせ! はいっ、もと君のお茶とアイス!」

 

 侑ちゃんから品物を受け取ります。冷た~い。

 

「部室で食べると邪魔になっちゃうからどこかで食べてから戻ろっか」

 

 まずうちさぁ……中庭……あんだけど、食べてかない?

 

「そうだね、中庭で食べよっか。すぐそこだしね」

 

 では、中庭にイク着きました。ちょうどいいところにベンチがあるのでそこに座りましょう。

 

「ん~、冷たくて美味し~」

 

 アイス美味しいですね。侑ちゃんが美味しそうに食べるのを見て私も食べたくなってきました。このRTAが終わったら、俺アイス食べるんだ……。

 

「ん、どうしたの? ずっと私のこと見てるけど……」

 

 侑ちゃんのその食べ方はダメですね。よくないです。女の子が棒アイスを舐めて食べるのはエッチなのでダメです。咥えるのはもっとダメです。侑ちゃんが無自覚エッチすぎて興奮してしまいますね。もっと舌使って舌使って。

 

「もしかして、このアイス食べたいの? いいよ、一口あげる」

 

 ファッ!? それは侑ちゃん汁(意味深)がついたモノを舐め舐めしていいってことですか!?

 

「その代わりにもと君のも一口ちょーだい?」

 

 もちろんいいですよ。好きなだけしゃぶれよ。

 

「あむっ……うん、こっちも美味し~」

 

 それはよかったです。それよりも早くほも君にも食べさせてあげてください。もう待ちきれないよ! 早く出してくれ!

 

「もうっ、そんな急かさなくてもちゃんと食べさせてあげるから。はいっ、どうぞ」

 

 うん、おいしい! 侑ちゃん汁(意味深)がいいアクセントになってますね、無味ですが。

 

「……なんか、もと君ってよくわからないよね。今みたいに子供っぽいところもあったり、かと思えば私よりも冷静で落ち着いている時もあったり……まあ私が落ち着きがないだけなのかもしれないけど」

 

 そうだよ(便乗)

 

「……そういえばさ、私ともと君って昔どこかで会ったことあるかな?」

 

 多分ないと思いますけど……急にどうしたんですか?

 

「もと君と初めて同好会の部室に会った時のことなんだけど、初めて会ったはずなのに全くそんな感じがしなくて……むしろ何百回何千回と会ったことがあるような……そんな感じがしたんだ」

 

 はぇ~。一体どういうことなんですかね? 侑ちゃんの言う通り、このほも君は昔本当に侑ちゃんと会ったことがあるんですかね?

 

「それに私ともと君が仲良くしてる光景が浮かんできて……一緒に出かけたり、手を繋いだり、キ、キスしたり……そ、それ以上のことも……」

 

 それ以上のことって?(ゲス顔)

 

「えっとそれはその……カップルがこう、ベッ、ベッドの上で2人ですること……だよ」

 

 侑ちゃんはもと君とそういうことをするところを想像しちゃったんですね。もしかして変態さんですか?

 

「想像したわけじゃなくて! その、勝手に頭の中に流れ込んできたの! もと君私のこと変態って勘違いしてるよね!? 私変態じゃないからね!」

 

 侑ちゃんが変態かどうかはさておき、多分テレビの見過ぎじゃないですかね?

 

「そうなのかな……でもそれで片付けるにはなんだか妙に現実味があって、ほんとに体験したことがあるみたいな……」

 

 一体どういうことでしょうか。どういうことか全くわかりませんが、それらのことをほも君と実際にやってみますか? 本当に体験してしちゃえばセーフだから(適当)

 

「ええっ!? それはちょっと……手を繋ぐくらいはいいけど、それ以上は……ね? そういうことはもっと仲良くなってからじゃないと……その、もと君がどうしてもしたいって言うなら、少しくらいしてあげてもいいけど……

 

 何故か押し倒すコマンドが出てきてますが、もちろん押し倒しません。ここお外よ? 見られ放題よ? 侑ちゃんにそういう趣味があるならしてもいいんですが、そんな趣味はないはずですし。

 とりあえずそろそろ戻りましょうか。アイスも食べ終わりましたし、歩夢ちゃんに怒られそうですし。

 

「……そうだね、戻ろっか。変な話しちゃってごめんね」

 

 さっきの話がどういうことか全くわかりませんが、多分何も問題はないでしょう。バッドエンド行きになるような感じではなさそうでしたし。仮にあれのせいでタイムが遅くなっても誤差だよ誤差。タイム計って動画投稿すれば全部RTAってそれ一番言われてるから。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想などお待ちしてます。評価もしてほしいな♡


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part14/n

歩夢ちゃんも栞子ちゃんも出てくれなかったので初ぴえんです。


私以外にラブライブでRTAを走る人が出てきてほしいな。皆もRTA走って、やくめでしょ。


 勉強大好きRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は侑ちゃん汁(意味深)を舐め舐めしました。今回はその続きからで、部室に戻ってきたので勉強の続きをやります。

 というわけで歩夢ちゃん、採点結果返してほしいな。

 

「はいこれ。今度はちゃんと全問正解だったよ。頑張ったね」

「おー、すごいじゃん」

 

 えっへん。もっと褒めてくれてもいいんですよ? ほも君は褒められて伸びるタイプなのです。どれだけ褒められても得られる経験値が増えることはありませんが。

 

「それじゃあ次は応用問題やってみよっか。すっごく難しいから私がヒントを出しながらやっていくね。でもさっきやった基礎問題の考え方を組み合わせれば解けるものばっかりだから、もと君自身の力で解けるように頑張ろうね!」

「うーん、私は隣で見てるだけになっちゃうかもなぁ」

「じゃあ侑ちゃんも一緒にやる?」

「遠慮します……」

 

 侑ちゃんも勉強教えて、やくめでしょ。

 

「じゃあまずはこの問題ね。もと君は最初どうすればいいと思う?」

 

 うーん……わからないのでとりあえず0で割ります。

 

「そんなことしたら壊れちゃうよ……」

 

 歩夢ちゃん壊れる。歩夢ちゃんは壊れないでいつまでも可愛くて純粋で優しい歩夢ちゃんのままでいてほしいですね。この周ではヤンデレ化してほも君のことを刺したりしないでね。

 

「この問題は上の条件の下、この式の最小値を求めてっていう問題だよね? これだけならさっきの基礎問題の中にもあったけど、今回は式にaとbの2つの変数が含まれてるから同じようには解けないの。どうしようかな?」

 

 頑張って条件を満たすaとbの組み合わせを全部試します。

 

「それは頑張っても無理だよ……」

 

 何だお前根性なしだな(棒読み)

 

「根性で何とかしようとしないの。aとbが整数ならともかく、今回は実数だから全部を試すことなんてできないよ? この問題はね、この式を何とかして1つの変数に変換するんだけど……」

 

 この条件式を変形してb=の形にすればいいんですかね?

 

「うん、その通りだよ。その形にしてこの式に代入すると……ほら、よく見る2次関数の形になったでしょ。後はもうわかるよね?」

 

 パパパッと平方完成して、終わりっ!

 

「うん、正解だよ。こういう問題は結構出てくるから、今の解き方はしっかり覚えておいてね」

 

 大丈夫っすよバッチェ覚えてますよ。これでほも君も視聴者兄貴も1つ賢くなったね。なんて教育的なRTAなんだ。

 

 今気付いたのですが、侑ちゃんがガッツリ寝ちゃってますね。しかもほも君の膝を枕にしています。ほも君は問題を解いていたのでずっとテーブルの上に手があったはずなのですが、どうやって膝の上に頭を置いたんですかねぇ。絶対にうっかり寝ちゃったとかではないですよね。明らかに寝ようとして腕の下に潜り込んでますよね。こんなことされたら普通気付くと思うんですけど。

 

「もうっ、侑ちゃんったら……ごめんね、もと君。あれだったら起こしてもいいからね」

 

 今起こしても親密度は下がりませんが、起こさなければ歩夢ちゃんと侑ちゃん両方の親密度が上がるので当然起こしません。ここでほも君の上着を侑ちゃんにかけてあげることでさらに親密度が上がります。こんなに気持ちよさそうな寝顔なのに、それを邪魔することなんてほも君にはできません。りなりーの方からすごい視線を感じる気がしますが、気にしないことにしましょう。

 

「ふふっ、もと君は優しいね」

 

 おっと、侑ちゃんが寝返りを打ったので顔がほも君の方を向きました。この絵面はまずいですよ! ほも君のほも君が侑ちゃんの顔に若干当たっています。ご起立しちゃう前に勉強に戻りましょう。襲うコマンドが表示されていますが、押すわけがありません。そんなことしたら歩夢ちゃんに怒られちゃうだろ!

 

「うん、いいよ。じゃあ次はこの問題ね」

 

 

 

「ふぅ……ちょうどこの問題も終わったし、今日はここでお開きにしよっか。そろそろ下校時間だもんね」

 

 そうですね、終わりにしましょう。彼方さんのところも帰り支度をしていますし、かすみんもロープから解放されていますしね。

 この緊急勉強会によって学力経験値40を手に入れました。これで学力3です。わーい。次はあと40で学力4です。ここから必要経験値が急増するので、今までよりも上がりにくくなります。ですが学力は3あれば抜き打ちテストによる補習はほぼほぼ回避できるので、ひとまずは安心できるでしょう。ここまでに抜き打ちテストを引かなくて助かりました。2日目に引いたりしたらりなりー達を勧誘できなかったので。

 とりあえずずっと寝ている侑ちゃんを起こしてあげましょう。おいゴルァ! 起きろ!

 

「ほらっ、侑ちゃん起きて」

「んぅ……」

「もう帰る時間だよ」

「もうちょっとぉ……」

 

 なかなか起きてくれませんね。早く起きてくれないと帰宅する時間が遅くなってタイムが伸びてしまいます。このまま侑ちゃんを背負って家まで連れていってあげることもできるのですが、今のほも君には侑ちゃんを背負うだけの筋力がありません。なのでどうにかしてここで起きてもらいましょう。ツンツンツンツン。

 

「すやぁ……」

 

 ダメですね、全然起きる気配がしません。彼方さんには通じたんですがねぇ……。

 

「ごめんね、もと君。まさかこんなにぐっすり寝ちゃうなんて……」

 

 侑ちゃんも疲れてたんだろうし、まぁ多少はね?

 ですがこのまま寝続けられると困るのでいい加減起きてもらいましょう。できればやりたくなかったのですが、こうなったら仕方ありません。頬を軽くつねります。

 

「うぅん……いひゃい……」

「あっ、起きた?」

「……起きたけど……どういう状況……?」

「侑ちゃんを起こすためにもと君が頬をつねってるんだよ」

「そうなんだ……ごめん、ぐっすり寝ちゃった」

 

 多少タイムに影響が出ましたけど、許してあげます。寝心地はいかがでしたか?

 

「すごくよかったよ。また貸してね?」

 

 いいですよ、貸してあげます。別にほも君の膝をなでなでする侑ちゃんが魅惑的だったとかでは決してありません。

 

「あれ? この上着……もしかしてもと君の?」

 

 そうですよ。

 

「そっか、上着かけてくれたんだ……すごく優しいね」

 

 人に優しくしろっておばあちゃんに言われて育ったので。返すの忘れないでくださいね。

 

「むっ……侑ちゃん、早く帰る用意しないと。もうすぐ下校時間だよ?」

「そうだね。ありがと、もと君」

 

 歩夢ちゃんが少し嫉妬しているように見えましたが、ほも君と侑ちゃんのどっちに嫉妬しているんでしょうか。できればほも君といい感じの雰囲気の侑ちゃんに嫉妬していてほしいですね。親密度が高い証拠なので。でも今のところ歩夢ちゃんには効果的なアピールをできているわけではありませんし、ほも君に嫉妬していそうですね。

 一部の人達の親密度が高すぎて感覚が麻痺してるかもしれませんが、幼馴染以外のキャラは現段階だとこれくらいの親密度が普通です。栞子ちゃんとかせつ菜ちゃんがおかしいだけです。

 

 

 

 帰宅しました。24階、自宅です。嘘です。そんな高層階には住んでません。

 寝る前に昨日やり忘れた参考書を読みましょう。学力は高いに越したことはないですからね。

 

『内容を理解することができなかった』

 

 は?(威圧) もう許せるぞオイ! ほも君は早く1人で勉強できるようになってください。しかもこの参考書は応用問題も解説が詳しく書かれてるんでしたよね? ちゃんと理解して、やくめでしょ。

 仕方ないので今回も緊急勉強会です。また栞子ちゃんに電話してもいいのですが、親密度稼ぎも含めて歩夢ちゃんに電話しましょう。栞子ちゃんはお風呂に入ってるかもしれないですしね。もしもし、歩夢ちゃんですか?

 

『……もと君? どうしたの?』

 

 実は勉強のことでご相談したいことがありまして……。

 

『今日やったところで何かわからないところでもあった?』

 

 歩夢ちゃんに教えてもらった内容はちゃんと理解できましたよ。わかりやすかったので。

 

『そっか。ふふっ、ありがとう。わかりやすく教えてあげれてよかった』

 

 実はほも君が個人的に買った参考書でわからないところがありまして、教えるのが上手な歩夢ちゃんに助けてもらおうと思ったわけです。

 

『うん、いいよ。期待に添えるかはわからないけど……』

 

 大丈夫ですよ、自信持ってください。学力3のほも君が言うんですから。言葉だけで数学を伝えるのは無理があるので、テレビ電話にしてもいいですかね? 歩夢ちゃんがお風呂に入ってたりしなければですけど。

 

『お風呂はもう入ったから大丈夫だよ。テレビ電話に切り替えるね』

 

 スマホの画面に歩夢ちゃんが映りました。こんばんわ。そのピンクのパジャマ可愛いですね。似合ってますよ。もちろん歩夢ちゃん自身も可愛いよ。

 

『あ、ありがとう……そ、それでわからないっていうのはどこのことなの?』

 

 まずはこれですね。

 

『場合の数かー。確かに難しいよね。うーん……えっと、これはね―――』

 

 難しいよね、場合の数。私も学生時代すごく苦手でした。RTA中も歩夢ちゃんの解説は適当に聞き流してました。視聴者兄貴は理解できるのかな?

 

『―――って考えればいいよ。大丈夫? ちゃんと伝わったかな?』

 

 はぇ~、すっごく頭よさそう。私は何も理解できませんでした。滅茶苦茶頷いてますが、ほも君はちゃんと理解できたんですかね?

 

『そっか、よかった。他はどこがわからないの?』

 

 次はこれですね。

 

『これは……多分まだもと君が学校でやってない範囲だね。私はやったから一応教えられるけど……どうする?』

 

 タイムが伸びるので遠慮します。こういう習ってない範囲は読まなくても問題ありません。一応教えてもらえば追加で経験値が貰えますが、微々たるものです。教えてもらうのにかかる時間を考えるとロスです。そんなことしなくていいから(良心)

 じゃあ代わりにこれを教えてもらってもいいですか?

 

『これもやってない範囲だね』

 

 じゃあもしかしてこれも?

 

『うん』

 

 もうわからないところありませんが……。ほも君のわからない範囲ほとんどやってない範囲じゃないか(半ギレ) 意外と自力で理解することができてたんですね。さっきボロクソに言ってごめんね。

 

『もう大丈夫かな?』

 

 大丈夫です。おかげで学力経験値20もらえました。歩夢ちゃんありがとう。助かりました。

 

『どういたしまして。……あんまり力になれなかった気もするけど……』

 

 いえいえ、すっごく助かりましたよ。わからなくていいということがわかったので。無知の知だよ無知の知(適当)

 

『それはよかった!』

 

 やっぱ……歩夢ちゃんの……笑顔を……最高やな!

 

『璃奈ちゃんやしずくちゃんに聞いた限りだともと君は勉強嫌いだと思ってたんだけど、ちゃんと家で勉強したりしてたんだね』

 

 昔のほも君がどうかはわかりませんが、今のほも君は勉強嫌いではありませんね。苦手ではありますが。おかげで学力が全然上がりません。

 

『私が使ってたものだけど、もしよかったら参考書あげよっか?』

 

 ほんとですか? これは助かりますね。お金をかけずに学力を上げることができます。デート代で結構お金が必要になりますからね。

 

『明日は部活ないんだよね? もと君は明日の予定空いてる?』

 

 明日は空いてますよ。

 

『じゃあ明日もと君の家に持っていってあげるね。それでもしよかったらなんだけど……明日もと君の家で勉強会する? 今日は数学しか教えてあげられなかったから、他の教科も教えてあげたいなぁって……どうかな?』

 

 これはもしかしなくてもお家デートなのでは? もちろん大歓迎です。ぜひ我が家に来てください。別にエッチなことはしたりしないので。

 

『よかった……じゃあ明日もと君の家に遊びに行くね? 後で場所教えてもらってもいいかな?』

 

 わかりました。忘れないように今送りますね。

 

『もと君マンションに住んでるんだね。璃奈ちゃんも同じマンションに住んでるの?』

 

 住んでますよ。すぐ近くの部屋です。

 

『そうなんだね。璃奈ちゃん抜きで遊んだりして怒られないかな?』

 

 バレなきゃ大丈夫ですよ。

 

『じゃあ見つからないように気を付けなきゃだね』

 

 そうですね。スニーキングミッション頑張ってください。応援してます。

 

『もう遅いし、そろそろ終わりにしよっか。おやすみ、もと君。また明日ね?』

 

 はい、おやすみなさい。また明日、ほも君の家で。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part15/n

栞子ちゃんがガチャから出てきてくれたので初投稿です。


栞子ちゃんの傘に入れてもらいたいけどなー俺もなー。


 最近勉強以外のことをしてないRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は緊急勉強会を2つやって学力経験値をいっぱいもらいました。今回はその続きからで、歩夢ちゃんとお家デートをします。歩夢ちゃんとお家デートをします(AI2回行動) 歩夢ちゃんと! お家デートを! します!!(大声)

 

 どうしましょう。まだゲームスタートして1週間も経っていないのに歩夢ちゃんとお家デートですよ、ヤバくないですか? しかも朝から家に来てくれて、夜まで2人っきりで教えてくれるらしいです。間違いが起きてしまったらどうしましょうか。……いや、むしろ積極的に間違いを起こしていくか……。このRTA中にことに及んじゃう可能性も十分あるし、今やっちゃっても問題ないでしょう。それに保健体育の勉強をするだけですしね。やっちゃうよ? やっちゃうよ!?

 

『ピンポーン』

 

 脳内でやるかやらないか(直球)会議をしていたら、チャイムが鳴りました。歩夢ちゃんですね。画面の向こうで手を振っています。マンションの入り口を開けてほも君の部屋まで来てもらいましょう。道中に歩夢ちゃんとりなりーが邂逅するかどうかは運次第ですね。まだ朝早いのでりなりーが起きている可能性は低いとは思いますが……ま、多分大丈夫やろ。

 

『上原です。もと君……じゃなくて元樹君いますか?』

 

 歩夢ちゃんが部屋の前に来ました。この感じは多分りなりーとは会ってませんね。一応警戒はしますが……。

 

「……あっ、もと君。おはよう」

 

 ドアを開け、目の前にいたのは歩夢ちゃん1人でした。やったぜ。りなりーありがとう。家で大人しくしてくれてありがとう……。

 それにしても可愛い私服ですね。チェック柄のオフショルダーに青色のスカート。スカートにはショルダーストラップとリボンがついています。……いや、マジで可愛すぎかよ。肩の辺りがセクシー、エロいっ!

 

「あ、ありがとう……そんなに褒められると照れちゃうな……」

 

 確かスマホ版のURのイラストで書かれていた私服ですよね? 私も欲しくてガチャを回したのですが、結局出てきてくれませんでした……。

 そういえば、今回のお家デートも私服デートに含まれるんですかね? ほも君も歩夢ちゃんも私服ですし。私服デートに含まれるなら『ファッションセンス○』チャートの見せ所さん!?なんですが……。

 とりあえず中に入ってもらいましょう。入って、どうぞ。

 

「うん、お邪魔します。……ここがもと君のお部屋? すごく広いね」

 

 今日は家族がいないのでゆっくりしていってください。

 

「そうなの?」

 

 父親は出張、母親は北海道旅行……らしいです。

 

「もしかしてしばらくの間もと君1人なの?」

 

 そうですね。

 

「そっか……もしよかったらなんだけど、学校行く日とかお弁当作ってきてあげようか?」

 

 オナシャス(即答)

 

「うん、わかった。料理には少しだけ自信があるから、期待しててね」

 

 いいなー、歩夢ちゃんのお弁当。俺も食べたいなー。

 

「それとね、昨日頑張ったらご褒美をあげるって言ったのに忘れちゃってたから……だからね」

 

 へっ!? あ、朝からですか!? 家にほも君と歩夢ちゃん以外誰もいないからってそれはまずいですよ! もう少しムードとかそういうのを考えてもらって……。

 

「クッキー、焼いてきたんだ。ご褒美としては少し弱いかもしれないけど……」

 

 あっ、クッキーでしたか……。歩夢ちゃんの作ったクッキーは美味しいので嬉しいです(棒読み) 私もクッキー☆は大好きですし。

 

「どう? 美味しいかな……?」

 

 うん、おいしい!

 

「えへへ、よかった……。もしまた食べたくなったら言ってね? また焼いてきてあげるから」

 

 歩夢ちゃんのクッキーを見ていたら私も何か食べたくなってきました。ですが軽食も何も用意していないため、何か口に入れることができるのはまだまだ先です。ここでクリアタイムを見てみてください。……つまりそういうことです。辛いなぁ……。途中で飲み物を取りに行った時にお菓子か何か持ってくれば持ってくればよかったですね。

 

「あとこれ、昨日言ってた参考書。ちゃんと勉強してね? 困ったら私を頼ってくれてもいいからね」

 

 歩夢ちゃんから参考書を5冊もらいました。ありがとうございます。頑張って5日かけて読みます。

 

「じゃあそろそろ勉強始めよっか」

 

 その前に飲み物とかお菓子とか持ってきますね。

 

「手伝う?」

 

 ほも君1人で大丈夫ですよ。ここで待っててください。漫画とか読んでてもいいので。

 

「うん、わかった」

 

 さて、飲み物は何にしましょうかね。いくつか選択肢が出ていますが、ここは一番無難なリンゴジュースにしましょう。醤油とかタバスコとか意味のわからない選択肢もありましたが、選ぶ人なんているんですかね……。これを持っていった時に歩夢ちゃんがどんな反応をするかは確かに気になりますが、さすがに選びません。絶対親密度下がりますし。誰だって飲み物って言われて醤油出されたら嫌でしょ。この人おかしい……(小声)

 お菓子は……まあ適当でいいでしょ。選択肢にも変なものはありませんし。やっぱり飲み物がおかしいだけだったんやなって。

 コップには忘れずに氷を入れてあげましょう。サッー!(迫真)

 

 というわけで自室に戻りましょう。おまたせ! リンゴジュースしかなかったけどいいかな?

 

「おかえり。ありがとね」

 

 好きなだけ飲み食いしてください。これからはどれだけ食べても練習でカロリー消費できるからね、いっぱい食べても問題ないよね。

 

「食べるのもいいけど、勉強も頑張らないとダメだよ?」

 

 頑張るからいっぱい経験値ちょうだい。一気に学力10まで上げてほしいな。

 今思ったのですが、今回は学力はどのくらいまで上げましょうか……。『勉強苦手』のせいで得られる経験値が半減しているため、10まで上げるにはかなり意識して上げにいかないといけないんですよね。ただ、そこまでして上げにいく価値があるのか……。仮に優等生になったとして、かすみんは元々親密度が上がりやすい部類に入るため、実質的に果林さんに対してしかうま味がないんですよね。それなら勉強する時間を削って果林さんとデートした方がいいのではないでしょうか。……このことについては最初に考えておくべきでしたね。ま、適当にやっても大丈夫やろ。臨機応変が大事って誰かが言ってた気がしますし。とりあえずは7くらいを目標としてやっていきましょう。

 

「それじゃあ、まずは国語からからやろっか。教科書出して」

 

 

 

「―――っていうのが筆者の主張なの。わかったかな?」

 

 んにゃぴ……よくわからなかったです。

 

「ん、よかった」

 

 わからなかったって言っただルルォ? ま、ええか。少しくらいわかってなくてもバレへんか。

 そんなことよりも腹減ったなぁ。

 

「あっ、もうこんな時間……。休憩なしにやっちゃった。ごめんね」

 

 問題ありません。過度な休憩はロスになるので。むしろ間に休憩は挟まない方がいいです。

 

「もう12時前で、勉強の方もキリがいいし、そろそろお昼にしよっか。何食べる?」

 

 そうですね。冷蔵庫に食材が入ってるので今から作りましょう(歩夢ちゃんが)

 

「じゃあ私が作ってあげるね。何かリクエストあるかな?」

 

 ないです。

 

「そっかぁ……じゃあ冷蔵庫の中見せてもらってから決めようかな」

 

 じゃあリビングに行きましょう。

 

 

 

「ふんふんふーん♪」

 

 キッチンで歩夢ちゃんが鼻歌を歌いながら料理をしています。やっぱ料理好きなんすねぇ。

 それにしても、エプロン姿の歩夢ちゃんはええなぁ。歩夢ちゃんみたいなお嫁さん欲しいけどなー俺もな―。裸エプロンとかもやってほしいなぁ。

 ずっとこうやって歩夢ちゃんを眺めているのもいいのですが、さすがに料理を手伝いましょう。親密度が上がりますし、料理時間が短くなるので。

 

「手伝ってくれるの? ありがとう」

 

 白菜かけますね~。

 

「白菜は使わないかな……。もと君は冷凍のご飯をチンしてくれる?」

 

 わかりました。冷凍ご飯を電子レンジに入れます。ゆで卵は電子レンジでチンしてはいけない(戒め) そんなことする人はいないと思いますが……。

 チンできるまで時間があるので、歩夢ちゃんの後ろ姿でも眺めていましょう。正面から見るエプロン姿もよかったですが、後ろからだとまた別のよさがありますね。歩夢ちゃんの服装がオフショルダーなのがそそりますね。後ろからガバっと抱きしめて、どことは言いませんがめっちゃくちゃに揉みしだきたいです。それに恥ずかしがる歩夢ちゃんを見てさらに興奮しちゃうんだ。視聴者兄貴もそう思いますよね?

 この気持ちがほも君に通じたのか、抱きしめるコマンドが表示されています。もちろん抱きしめません。料理中だし危ないからね。

 

「わわっ! もっ、もと君!? どどどどうしたのっ!?」

 

 あ、あれぇ~? 何も押してないのに急にほも君が歩夢ちゃんを抱きしめ始めました。

 ほも君が欲情したのかな? いやでもさっきから押してもないボタンが押された判定されてますね。もしかしなくてもこれはコントローラーの故障ですね。絶対せつ菜ちゃんとの冊子作りが原因だろ。考えうる限り最悪のタイミングでぶっ壊れましたね。しかも壊れ方も最悪というおまけつきです。まぁRTAなんでどのタイミングで壊れても最悪のロスなんですが……。

 とりあえず代わりのコントローラーを急いで用意します。代わりのコントローラーというのが昔使ってたやつなのですが、適当なところにしまっていたため見つけ出すのに2分ほどかかりました。こうなった時のために用意しておけばよかったですね。今後のRTAでは用意しておくことにします。

 思わぬ事態によりとんでもないロスが発生しましたが、再走はしません。また初期条件ガチャをするのがしんどいですし、せつ菜ちゃんとあのままお別れするのが耐えられないので。それに今回は初期親密度が高い人達が多いので、多少ロスがあっても最終的には普通よりも早くなるはずです。栞子ちゃんの親密度とかぶっ壊れてますからね。

 

「……もしかして、甘えたくなったの?」

 

 そうだよ(便乗)

 抱きしめたのは私の意志ではなくあの壊れたコントローラーの意思ですが。あのコントローラーは歩夢ちゃん推しですね。よろしい、君には終身名誉歩夢ちゃん推しの称号を勝手に与えましょう。その栄誉を胸に修理頑張ってきてください。スクスタ限定モデルのコントローラーですからね、ちゃんと修理してもらいます。

 

「しずくちゃんや彼方さんを1人で連れ戻してくれたり、璃奈ちゃんや愛ちゃんを同好会に誘ったり、もと君ってすっごく頼りになる存在だよね。璃奈ちゃんなんて誰よりももと君のこと信頼してるし、もちろん私も信頼してる。きっと昔の同好会でも頼りにされてたんだと思う。けど、そんなもと君も誰かに甘えたくなっちゃう時もあるよね? ……いいよ。私がいっぱい甘えさせてあげる。先輩だもんね。それに、今の私にはそれくらいしかしてあげられないし……。でも、今は料理中だから、また後で……ね?」

 

 ゆ、許された……。ふぅ、助かりました。一時はどうなることかと思いましたが、歩夢ちゃんの勘違いもあって、結果的にはいい方向に働きましたね。まぁ歩夢ちゃんがコントローラーの故障で抱きしめたなんて考えるわけもありませんしね。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part16/n

初投稿ですか?


 多少のガバは許容するガバガバRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はお料理中の歩夢ちゃんを後ろから抱きしめました。今回はその続きからで、歩夢ちゃんにたっぷり甘えさせてもらいます。ですがその前に、初めての共同作業で一緒に作った昼ご飯を食べましょう。

 というわけで、いただきます。

 

「いただきます」

 

 まずはこのチャーハンから……うん、おいしい! このパラパラ感がすごくいい(小並感)

 

「それはよかった」

 

 次はこの味噌汁……なんだかインスタントっぽい味ですね。多分インスタントだと思うんですけど(名推理)

 

「インスタントだからね」

 

 最後にこのラーメンをじゅるじゅる……うん、おいしい! インスタントラーメンは最強ですね。ちなみに味噌ラーメンです。やっぱ味噌だよなぁ。味噌が美味すぎることが味噌ラーメンの最大の魅力で最大の弱点なんだよね、それ一番言われてるから。

 ちなみに歩夢ちゃんはどのスープが一番好き?

 

「私は……そうだなぁ……醤油、かな?」

 

 醤油ですか。いいですね。私も好きですよ、醤油。というよりどのスープのラーメンも全部好きです。ラーメンという素晴らしいものを生み出してくれた人に感謝の意を込めて本RTAの改良版チャートを送りたい。そのチャートで走ってもらいたい。

 それはさておき、歩夢ちゃんもラーメン好きなら今度一緒にラーメン食べに行きませんか? 実はチャーシューもりもりの激ウマラーメン店があるんですよ。

 

「へぇ、そんなとこがあったんだぁ。行ってみたいけど……ちょっとカロリーが気になっちゃうなぁ……

 

 大丈夫ですよ。スクールアイドルの練習で死ぬほどカロリーを消費するので。

 

「そうなの? スクールアイドルの練習ってそんなに大変なんだね」

 

 毎日東京を測量して歩きます。かすみん達は毎日このメニューをこなしてましたよ。

 

「え、えぇっ!? そんなの1日じゃ無理だよぉ……も、もう少し優しくならない? 1日じゃなくて1週間とか……」

 

 嘘なのでそんな心配しなくても大丈夫ですよ。

 

「そ、そっかぁ、よかったぁ……」

 

 あんな嘘を信じる人なんているんですね。歩夢ちゃんは純粋だなぁ。

 

「ご馳走様でした」

 

 雑談をしていたらいつの間にか食べ終えてました。ご馳走様でした。

 

「それじゃあ片付けしよっか。手伝ってくれる?」

 

 もちのろんです。皿洗いは任せてください。皿洗いのほもとは私のことですよ。

 

「じゃあ皿を洗うのはもと君にお任せするね」

 

 歩夢ちゃんに任せてもらったので、頑張って皿洗いをしましょう。

 スティック操作で皿を洗うことができます。これはスティックを速く動かしすぎると皿を割って怪我をしてしまうので、皿を割ってしまわないギリギリの速さでスティックを動かしましょう。速度感覚は度重なる試走で身についています。コントローラーに優しいイベントだぁ。

 

 

 

「よしっ、お片付け終わりだね」

 

 皿洗いが終わりました。ほぼ同時に歩夢ちゃんも調理器具を洗い終えたようです。タイム的にも優しいイベントでしたね。やっぱり製本イベントがおかしかったんやなぁって。

 とりあえず自室に戻ります。勉強を再開しましょう。

 

「この後はどうしよっか? 勉強はさっきまで頑張ってたから少し休憩するとして……もと君は私に甘えたいんだよね……? いいよ。ほら、こっち来て」

 

 歩夢ちゃんがベッドに腰かけて、膝をポンポンしています。ヤ、ヤバイ……コントローラーが勝手に動いて……本当は行きたくないのに……。またコントローラーの故障か? あぁ……とうとう歩夢ちゃんの隣に腰かけてしまいました……。

 

「ふふっ、いい子いい子」

 

 ああ^~膝枕~。頭撫でられるの気持ちぃ~。歩夢ちゃんの魅力に溺れる! 溺れる!

 

「すっごく気持ちよさそう。よかった」

 

 下から見る景色もいいですね。はえ^~すっごい大きい……。

 

「他に何かしたいことある? なんでもしてあげるよ?」

 

 ん? じゃあ一緒にゲームしましょう。

 

「いいよ。何するの?」

 

 これなんてどうでしょう。配管工兄弟の最新作。

 

「私やったことないんだけど大丈夫かな?」

 

 問題ないですよ。ほも君が頑張るので。はい、これがコントローラーです。

 

「ありがとう。……また膝枕してほしいの? 甘えん坊さんだなぁ。はい、好きなだけ使ってもいいよ」

 

 歩夢ちゃんのお膝が素晴らしすぎたのでまた帰ってきてしまいました。ゲーム画面が横向きですが、このままやっちゃいましょう。私ならできます。

 

「あぁん、やられちゃったぁ……」

 

 歩夢ちゃんがステージ1-1の中盤でやられてしまいました。残念。ですが復活させてあげることができるので、もちろん復活させます。復活させても歩夢ちゃんは頼りにならなそうなので、ほも君の力だけで頑張りましょう。視点のせいで死ぬほどやりづらいですが、この程度のステージなら何とかやれます。

 

「おぉ……すごい、変な視点のはずなのに簡単にクリアしちゃったね。よしよし」

 

 さっきから歩夢ちゃんが「堕ちろ! 堕ちたな」ばかりやってくるせいで、ほも君が歩夢ちゃんを攻略する前に歩夢ちゃんにほも君を攻略されそうです。あーもう滅茶苦茶だよ。

 

 

 

 サクサククリアして、ステージ1の中ボスまで来ました。最初は下手くそ(直球)だった歩夢ちゃんも成長して、この中ボスステージもボス部屋手前までノーミスで来ました。圧倒的成長、誇らしくないの?

 

「この扉の先にボスがいるんだよね……? うぅ、緊張してきた……」

 

 大丈夫大丈夫。ほも君が頑張るので、歩夢ちゃんがやられちゃっても問題ないです。

 

「そんなに私頼りないかなぁ? ……うん、でもおかげで緊張がほぐれてきたよ。ありがとうね」

 

 ことあるごとに頭を撫でるのはやめろォ(建前) ナイスゥ(本音)

 歩夢ちゃんの緊張もほぐれたところで、扉に入ってボス部屋まで行きましょう。

 

「あれがボスなんだね。怖そうな見た目を想像してたけど可愛いね。この子も亀なのかな?」

 

 (見た目は可愛くても国のお姫様を拉致する手伝いをしているのでやっていることは可愛く)ないです。

 

「わっ、何か飛んできたよ。多分当たっちゃダメだよね」

 

 この中ボスは魔法を飛ばしてきます。歩夢ちゃんの読み通り当たったらダメなやつです。これを上手く避けながら相手を踏みつけましょう。あっ、あと相手に踏みつけ以外でぶつかるのもダメです。頑張ってね。

 

「で、でも、相手もぴょんぴょん跳ねてるよ? どうすればいいの?」

 

 相手は着地した後、魔法を撃つために隙が生まれます。その隙をついて攻撃します。

 

「う、うん、わかった。やってみるよ」

 

 まぁ言われてすぐにはできないと思いますけど。やっぱりほも君が頑張るしかないですね。

 

「あっ、見て! できたよ!」

 

 えぇ……(困惑) 成長速度ヤバくないですかねぇ……。やっぱゲーム得意なんすねぇ。りなりーも褒めてたもんね。

 

「やったぁ、倒したよ! ほら、見て見て!」

 

 ちょっとアドバイスしただけなのに、歩夢ちゃんが速攻で倒しちゃいました。ほも君が倒していいとこ見せたかったのになぁ……。べ、別に視点が悪かっただけだし? 膝枕じゃなかったら余裕だったし?

 

「拗ねないの。ほらっ、ギュってしてあげるからおいで?」

 

 わーい! うーん、柔らかぁい……。これは天国ですねぇ……。もっと堪能しよう(提案)

 

「んっ……も、もうっ! 暴れちゃダメ!」

 

 (ほも君のほも君)暴れんなよ……暴れんなよ……。

 

「ほんとに甘えん坊さんだなぁ……。璃奈ちゃんにもこんな風に甘えたりするの?」

 

 多分してないんじゃないですかね? むしろほも君は甘えられる側だと思います。

 

「ふふっ、そっか……私だけ、かぁ……」

 

 今は……ね。この学校の3年生は強いので。

 

「もし甘えたくなった時はいつでも言ってね。皆の前だとちょっとだけ恥ずかしいけど……でもちゃんと甘えさせてあげるから。もと君だって今みたいに甘えたくなる時もあるもんね」

 

 さすがに皆の前で甘えることはしません。刺されちゃうからね。(コントローラー)暴れんなよ……暴れんなよ……。

 

「続きしよっか。私楽しくなってきちゃった」

 

 楽しんでくれているならよかったです。私も続きやりたいので離してください。画面が見えません。さすがにノールックプレイは無理なので。

 

 

 

「やったよもと君! クリアだよ!」

 

 ラスボスもクリアしたみたいです。よかったですね。

 

「うぅん……さすがに疲れちゃったなぁ……」

 

 もしかしてお昼からぶっ続けでやってたんですかね? そりゃ疲れますわ。

 

「あっ、もう6時だ。そろそろ帰らないと……」

 

 勉強会はこれでお開きみたいです。学力経験値30貰いました。1日マンツーマンの勉強会だったのに少なくない? 私は60くらいもらえることを想定してたんですけど……。やっぱりわからないところをわからないままにしておいたのがダメだったんですかね? 歩夢ちゃんにはバレてなくてもシステムにはバレてたんやなぁ……。

 ま、えやろ。これで学力4になりましたし。次はあと70で学力5です。学力は順調に上がってますね、学力は。筋力と持久力なんて未だに0ですからね。明日の練習で上げましょう。さすがに日常生活に支障をきたすレベルなので……。

 

「結局午前中しか勉強しなかったね」

 

 だから取得経験値が少なかったんですね。ま、ゲームで多分親密度が稼げたからえやろ。歩夢ちゃんも笑顔でしたし。歩夢ちゃんが楽しかったならそれでええんや。

 

「あっ、見送りは玄関までで大丈夫だよ。もと君も晩ご飯の支度とかしないといけないだろうし」

 

 歩夢ちゃんがいいと言うなら玄関までにしておきましょう。どうせこの後は貰った参考書を読んで寝るだけでしょうけど。料理は勝手にやってくれるので。

 

「もし夜とか1人で寂しくなったら電話してくれてもいいからね? 昨日みたいに勉強の話でもいいし、スクールアイドルの話でも、それ以外にも他愛もない話でも私は大歓迎だからね」

 

 私が電話したくなってもほも君が電話する気にならないと電話をかけられないので。勉強とか重要なことではすぐに電話するのに、なんで他愛もない話は電話でしようとしないんですかね……。お前本当に『コミュニケーション○』か?

 

「それじゃあね。次に会うのは……」

 

 明日、同好会の練習でですね。

 

「あれ? 明日は全部活活動禁止の日じゃなかった?」

 

 え? なんで?

 

「確か校内の設備点検で生徒は立ち入り禁止になってたはずだよ」

 

 そんなぁ……チャート壊れちゃ^~う。

 

「大丈夫だよ。明後日は平日だから会えるよ」

 

 違うんですよ。明後日はエマさんが帰ってくるので練習できないですよ。いい加減筋力と持久力を上げさせてくれ~。ほも君もさぁ、練習以外でもトレーニングするくらいやってもいいんじゃないの? 腹筋とか腕立てとかスクワットとか家でできるものはいっぱいあるし、ランニングもちょっと家から出ればできるでしょ。もっとやる気出して頑張って。

 

「じゃあね。バイバイ」

 

 はい、バイバイ歩夢ちゃん。手を振って見送ってあげましょう。帰り道気を付けてね。

 

 

 

 夜です。歩夢ちゃんに貰った参考書を読みましょう。5冊ありますが、今日はちょうど歩夢ちゃんに教えてもらった国語にしましょうか。

 

『内容を理解することができた』

 

 ヨシッ! 初めて参考書を自力で理解しましたね。えらいぞー。経験値30貰いました。学力5まであと40か……先は長いなぁ。

 今更ですが、参考書を1日で読み切るほも君って異常ですね。そこそこの厚さがあるはずなんですけど。栞子ちゃんもほも君が1日で読んだことに驚いてませんでしたし、もしかしたらこの世界では普通のことなのかもしれませんね。

 

 さて、参考書も読みましたし、今日はもう寝ましょう。おやすみなさーい。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。

次回はサイドストーリーです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part5/m

初投稿って初めての投稿だから初投稿って言うんだよホントはね。


 今日はもと君の家に勉強を教えに行く日。男の子の家に行くのは初めてだから、少し緊張しちゃうなぁ……。精一杯のオシャレはしてきたけど、可愛くないって思われちゃったらどうしよう……。もと君は仲のいい後輩であって好きな人とかではないけれど、それでもやっぱり可愛いと思われたい。

 

 最初璃奈ちゃん達から話を聞いて、もと君はただの勉強嫌いなのかなって感じた。けど、昨日のもと君の姿を見て、もと君ってすごい子だなぁって思うようになった。苦手なこと、それもすっごく嫌いなことを頑張って克服しようとするのってすごく難しいことだと思う。克服すると口では言えても、それを実行するのはなかなかできることじゃない……と、私は思う。

 もと君は勉強会から絶対逃げようとするって璃奈ちゃんは言ってたけど、昨日の部室での勉強会ではもと君は逃げようとしなかった。むしろ自分から勉強に取り組んでいて、わからないところも積極的に聞いてくれた。途中購買に行きたいと言い出して、もしかして逃げるつもりなんじゃ……と思ったけど、侑ちゃんがついていくって言いだしたから、逃げ出さないように監視してくれるんだと思ってOKを出した。……後から考えると、多分侑ちゃんは普通に購買に行きたかっただけなんだろうなぁ……。

 話を戻すけど、私の心配とは裏腹にもと君は少し遅かったけどちゃんと戻ってきてくれた。戻ってきたもと君は何故か最初よりもやる気が増していて、何故か侑ちゃんももと君と親しくなっていた。本当に何があったんだろう……。でももと君が一生懸命問題を解いてくれるのは嬉しかったし、教え甲斐もあって楽しかったけどね。

 けれど、途中でとんでもない事件が起きてしまった。あろうことか、侑ちゃんがもと君の膝を枕にして寝てしまったのだ。侑ちゃんはすごく気持ちよさそうに寝ていて、もと君も当たり前のように受け入れていた。それだけでなく自分の上着を寝ている侑ちゃんにかけてあげていて……。

 正直に言うとすごく羨ましかった。侑ちゃんに膝枕をしているもと君も羨ましかったし、もと君にあんなに優しくしてもらえる侑ちゃんも羨ましかった。

 もと君に褒められるとどうしようもないくらい嬉しくなったり、手を握るとすっごく安心できたり、もと君のことが気になって目で追っちゃったり、話してると妙にドキドキしちゃったり……そして昨日侑ちゃんに嫉妬しちゃったこと。私はもと君に恋しちゃったのかな? 確かにもと君は頼りになるし、かっこいいし、誰にでも優しい。好きになる要素としては十分だと思う。それにもと君のことは好きだけど、それはあくまでも友達としての好きであって、異性としてもと君が好きということではない……はず。私自身今まで恋をしたことがないから確証は持てないけれど、会ってまだ1週間も経っていない男の子を好きになるのはさすがにないと思う。

 

 そんなことを考えながら歩いていたら、あっという間に目的の場所に到着した。

 

「ここが、もと君の住んでいるマンション……」

 

 目の前に建つのはとても大きなマンション。ここで合ってるよね……?

 と、とりあえず中に入ろう。もと君に入口を開けてもらわないと……。インターホンでもと君を呼び出して、入口を開けてもらって中に入る。

 そういえば、もと君の部屋に行くまでの間璃奈ちゃんに気を付けないといけないんだよね? 見つかっちゃうともと君が怒られちゃうから。璃奈ちゃんも呼んであげたらいいのにという気持ちと、もと君と2人っきりの方がいいという2つの気持ちが混在していて、自分でもよくわからない。……やっぱり最近の私は少しおかしい。これがもと君の影響なのか、それとも全く別の何かなのか、それはわからないけれど……。

 

「もと君の部屋、ここで合ってるよね?」

 

 そうこうしているうちにもと君の部屋の前まで来てしまった。うぅ、やっぱり緊張する……。か、髪とか崩れてないよね……?

 できればこのままインターホンを押すのを先延ばしにしたいけど、あまりウダウダやっていると璃奈ちゃんに見つかっちゃうかもしれないから、覚悟を決めてインターホンを押す。大丈夫、後輩に勉強を教えてあげるだけだから。こんな緊張する必要はないから……。

 

『はい』

 

 少しして返事が返ってきた。もう逃げることはできない。

 

「上原です。もと君……じゃなくて元樹君いますか?」

『今開けますね』

 

 通話が切れ、少ししてからドアが開いた。

 

「……あっ、もと君。おはよう」

「おはようございます、歩夢先輩」

 

 中から出てきたもと君がじっくりと私を観察する。何か変なところでもあったのかな……?

 

「その服、似合ってますね。すっごく可愛いです」

「あ、ありがとう……そんなに褒められると照れちゃうな……」

 

 そこまでストレートに褒められるとは思ってなかったから、どうしても照れてしまう。

 ……なんだかもと君の視線が胸の辺りに集中してる気がする……。でも嫌な感じはしないから咎めたりしないであげよう。もと君も男の子だもんね、そういうことにも当然興味あるよね。

 

「ま、とりあえず上がってくださいよ」

「うん、お邪魔します」

 

 家に上げてもらい、もと君の部屋まで案内される。

 

「ここが俺の部屋ですね」

「ここがもと君のお部屋? すごく広いね」

 

 大きなテレビが置いてあって、その周辺にゲーム機がいくつか。それから本棚には漫画がたくさん入れてあった。可愛らしいぬいぐるみだとかは一切なくて、男の子の部屋ってこんな感じなんだろうなぁと思った。

 

「今日は家族がいないんで、ある程度は騒いでも大丈夫ですよ」

「そうなの?」

「親父は出張、母さんは友達と北海道旅行中です」

 

 出張に旅行……多分1日で帰ってくるようなものではないよね。

 

「もしかしてしばらくの間もと君1人なの?」

「そういうことになりますね」

「そっか……もしよかったらなんだけど、学校行く日とかお弁当作ってきてあげようか?」

 

 家事とかを1人でやって、その上弁当を作ったりするのはかなり大変だと思う。だからもと君が少しでも楽になるように助けてあげたい。

 

「あー、お願いしてもいいですか?」

「うん、わかった。料理には少しだけ自信があるから、期待しててね」

「それは楽しみだなぁ」

「それとね、昨日頑張ったらご褒美をあげるって言ったのに忘れちゃってたから……だからね」

 

 カバンからあるものを取り出し、もと君に渡す。

 

「クッキー、焼いてきたんだ。ご褒美としては少し弱いかもしれないけど……」

「クッキーですか。ありがとうございます。では、いただきます」

「どう? 美味しいかな……?」

「うん、美味しい!」

「えへへ、よかった……」

 

 笑顔でクッキーを食べてくれるもと君。お世辞じゃなくて本当に美味しいと思っているのが伝わってくる。焼いてきてよかった。

 

「もしまた食べたくなったら言ってね? また焼いてきてあげるから」

「ん、ありがとうございます」

「あとこれ、昨日言ってた参考書。ちゃんと勉強してね?」

「5冊も……本当にありがとうございます。マジで助かります」

「困ったら私を頼ってくれてもいいからね」

「できる限りそうならないように頑張ります……」

「じゃあそろそろ勉強始めよっか」

「その前に飲み物とか取ってきますね」

「手伝う?」

「いえ、俺1人で大丈夫ですよ。ここで待っててください。そこにある漫画とか好きに読んでていいので」

「うん、わかった」

 

 もと君が部屋を出ていったので手持無沙汰になる。もと君もいいって言ってたし、漫画でも読ませてもらうかな。見たことがない漫画がたくさんあって少し気になってたし……。

 どれを読もうか悩んでいると、端の方に1冊の漫画が落ちているのに気付いた。多分戻し忘れたんだろうなぁ。戻してあげようと手に取ると、可愛い女の子の表紙が見えた。トゥ、ラブ、る、ダークネス……? 何て読めばいいのかわからないタイトルだけど、見たことない漫画だなぁ。気になるし少し読んでみよう。

 

「……こ、これは……ごくりっ」

 

 これはエッチな漫画だ! 男の子が女の子の胸に顔をうづめたり、女の子のあそこに顔を突っ込んだり、それ以外にも人前ではできないような行為がたくさん……本番だけはしていないけれど、これはエッチな漫画に違いない!

 本棚の方を改めて見ると、この9巻以外の巻、1巻~18巻までが揃っていた。ちゃんと揃えてる……。

 

「やっぱり、こういうの好きなんだ……」

 

 もと君も男の子だから仕方ないのかもしれないけど……も、もと君もこんなことしてみたいって思ったりするのかな……? 私のことをそういう目で見たり、私とそういうことをするところを想像したり……でもこの本はさすがにプレイが特殊すぎるよね……。でももと君とこういうことを……もと君が私のここを触ったり……舐めたり……そしてそれ以上のことも……。

 

「んぅ」

 

 思わず声が出てしまった。慌てて自分の口を手で覆い、やってしまったと後悔する。さすがにもと君には聞こえてないだろうけど……。人の家ですることではなかった。反省しなきゃ。元はと言えばこんな本を読んだのが悪いんだ。大人しく本棚に戻してあげよう。

 

「……でもやっぱり気になっちゃうなぁ……」

 

 ヒロインの子達が可愛かったり、エッチなことをしちゃう主人公の男の子とヒロイン達の恋模様が繰り広げられたりでどうしても気になってしまう。きっとこの漫画はそういう要素抜きにしても人気が高いのだろう。でもそういう要素があるし読むのはなぁ……。

 

 なんだかんだ言いながらその漫画を読んでいると、もと君の足音が聞こえた。別にやましいことをしていたわけではないけれど、この本を読んでいるところを見られるのはさすがに恥ずかしいので、慌てて本棚にしまい、元居た場所に戻る。少しだけ火照った体を手であおいで冷ます。顔とか赤くなってたりしないよね……?

 

「お待たせしました。ジュースとお菓子です」

「おかえり。ありがとね」

 

 なるべく平静を装う。もと君に何をしていたか知られたくない。もと君以外にも知られたくないけど……。

 

「好きなだけ飲み食いしていいですからね」

「食べるのもいいけど、勉強も頑張らないとダメだよ?」

 

 それにカロリーも気になるし……。

 

「それじゃあ、まずは国語からからやろっか。教科書出して」

「はーい」

 

 本題の勉強で気を紛らわせよう。さっきのこともお菓子のこともなるべく頭から離れるように……。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


次回以降の投稿がしばらくの間不定期になりそうなので、いい感じのところで区切って投稿しました。このことをお知らせしなきゃなので。次回はサイドストーリーでこの続きからですね。
最近はほぼ毎日投稿できてましたが、多分できません。
3日に1回くらい投稿できるといいなぁ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part6/m

月末なので初投稿です。


歩夢ちゃんは実はエッチな子だと私は思います。異論反論は大歓迎です。


「―――っていうのが筆者の主張なの。わかったかな?」

「わかりました!」

「ん、よかった」

 

 あまりにも満面の笑みで即答するもんだから、実はわかってないんじゃないかと勘繰ってしまう。でももと君がわかったふりをするような子とは思えないしなぁ。……私に勉強を教えてほしいと電話してくるくらいだし、やる気満々のもと君がわかったふりをするはずがないよね。きっと私の考えすぎだ。

 

 不意にもと君のお腹が鳴った。

 

「お腹空いたぁ……」

「あっ、もうこんな時間……。休憩なしにやっちゃった。ごめんね」

 

 私ももと君も集中しすぎて時間を忘れてやっちゃった。持ってきてくれたお菓子にも手をつけなかったし。私も少し疲れたけど、もと君はもっと疲れてるよね。

 

「もう12時前で、勉強の方もキリがいいし、そろそろお昼にしよっか。何食べる?」

 

 近くにお店とかあるかな?

 

「冷蔵庫に材料ならいっぱい入ってますよ」

「じゃあ私が作ってあげるね。何かリクエストあるかな?」

「うーん……ない! 俺はなんでもいいですよ。特に好き嫌いはないので」

「そっかぁ……」

 

 なんでもいい、が一番困っちゃうんだよね……。

 

「じゃあ冷蔵庫の中見せてもらってから決めようかな」

「歩夢先輩's セレクション楽しみ」

「ふふっ、期待に応えられるように頑張るね。……そうだ。料理の前に少しお手洗い借りてもいいかな?」

「いいですよ。玄関の手前の左の部屋がトイレです。俺はリビングで待ってますね。トイレの向かい側がリビングなので」

「うん、わかった。戻るのが遅くなっちゃったらごめんね」

 

 

 

「やっぱり湿っちゃってる……」

 

 あの漫画と私の妄想、そして少し触っちゃったせいだ。気になるから拭いておこう。

 

「んっ」

 

 どうしよう……中途半端なところでお預けしちゃったせいか敏感になっちゃってる……。それにさっきまでは別のことに集中してたから気にならなかったけど、すごく続きがしたい気分……そういうつもりではなかったけど、さっき触っちゃったから尚更抑えられない。

 

「もと君に聞こえちゃうから……家に帰るまで我慢……」

 

 そうやって自分に言い聞かせるも、やっぱり抑えられない。どんどん下に手が伸びていく。家に帰るまで耐えられる気がしない。もと君で妄想しちゃってるのに、当の本人がずっと隣にいるんだもん。

 ……もと君に聞こえないように声を抑えながらすれば大丈夫かな……? 短い時間なら怪しまれないはず……。ちょっとだけ、ちょっとだけだから……。

 

「もと君……もと、君……!」

 

 誰にも届かないくらい小さな声でもと君を呼ぶ。どうしてかはわからないけど、それだけで動画を見たりするよりも気分を高められた。

 

「も、とき……くんっ……!」

 

 

 

「お待たせ」

「おかえりです」

 

 平然を装い、もと君のいるリビングに入る。上気していた顔もいつも通りに戻ったのを確認してから来たから、私がヘマをしなければ何も問題ないはず。もと君はたまにすごく鋭い時があるけど、基本は鈍感だから大丈夫。

 

「……なんかさっきより上機嫌ですね。何かありました?」

「えっ!? な、何のことかなぁー? 別に私は何も変わってないよー」

 

 お、終わった……誤魔化そうとしたらとてつもない棒読みになっちゃった……。

 

「ふーん……」

 

 もと君も怪しむような目で私を見ている。この状況をひっくり返すことができる一言、そんな一言が欲しい。何か……何か見つけないと……。

 

「なるほど。トイレに籠っていた時間が少し長かったこと。戻ってきた歩夢先輩が上機嫌なこと。これらを合わせて考えると……でっかい大が出たんですね。おめでとうございます。そりゃ上機嫌になりますよね。俺だってなりますもん」

「えぇと……」

 

 なんだか酷い勘違いをされてる……本当のことがバレてないから私にとっては好都合だけど、でもさすがにこれを素直に認めることもできない。女の子としての大事な何かが壊れちゃう気がするの。

 

「も、もと君はデリカシーっていうものを考えないとダメだよ?」

「???」

「さっきのは本当のことじゃないし、悪意がないのもわかってるから私は怒ってないけど、かすみちゃん辺りに同じことを言っちゃったら絶対すごく怒るよ?」

「かすみが怒っても怖くないし、むしろ多分可愛さが増すと思うんで。仮に殴りかかってきても抑えればいいし」

「もと君力でかすみちゃんに勝てないよね?」

「言葉の暴力。真実は時に人を傷つける。悪意なき悪意。時には優しい嘘も必要。事実陳列罪」

「ちょっと違うけどこういうことだよ。今もと君が傷ついたように、もと君の言葉で誰かを傷つけちゃうかもしれない。だからちゃんと配慮しなきゃダメだよ? 女の子と話す時だけじゃなくて男の子と話す時もね」

「……なるほど、わかりました。以後気を付けます」

「うん、よろしいっ」

 

 これでさっきの勘違いを否定しつつ、あのことについて上手く誤魔化せたはず。……少しお説教みたいになっちゃったけど、今の私にもと君を叱る資格はないよね……ごめんね、もと君。

 

「少し変な空気になっちゃったけど、料理しよっか。私は怒ってないから、もと君も落ち込まなくていいんだよ?」

「全く落ち込んでないですけど?」

 

 それはそれで少し問題があるような気がするけど……。

 

 

 

「ふんふんふーん♪」

 

 お昼ご飯はチャーハンを作ることにした。でもそれだけじゃ少ないから、簡単に作れてチャーハンとも合うインスタントラーメンも作ろうと思う。時間があればインスタントラーメンじゃなくて別のちゃんとしたものを作るんだけど、いろいろあって時間がなくなっちゃったから。あともと君の希望でインスタントの味噌汁も。といってもこれは味噌汁の素にお湯を入れるだけでできちゃうけどね。

 

 私が料理の準備をする中、もと君はリビングのソファーに座りながら私のことをずっと見ていた。エプロン姿が気になるのかな? もし見たいなら後でたっぷり見せてあげよう。

 少しすると私を見ることに飽きたのかキッチンの方まで歩いてきた。

 

「手伝いますよ」

「手伝ってくれるの? ありがとう」

「白菜洗いますね」

「白菜は使わないかな……」

 

 どうして白菜なんだろう。好きなのかな?

 白菜は使わないと告げると、残念そうにするでもなく、むしろ満足気にもと君は白菜を冷蔵庫に戻した。何がしたかったんだろう……。もしかしてこのやり取りがやりたかっただけ……?

 

「もと君は冷凍のご飯をチンしてくれる?」

「了解です」

 

 もと君は手早く冷蔵庫から冷凍ご飯を取り出し、ささっと設定をして電子レンジに放り込む。そんなにお腹が空いてたんだね。早く作ってあげないと。

 少し急ぎつつ材料を洗っていると、背中に軽い衝撃を感じた。何事かと後ろを振り返るよりも早くお腹に手が回された。私の顔のすぐ横にあるもと君の顔を見てようやく状況を察した。私はもと君に抱きしめられている。

 

「わわっ! もっ、もと君!? どどどどうしたのっ!?」

 

 返事は返ってこない。もとくんも興奮しちゃってるのかな……。

 私のお腹に回された手はもぞもぞと小さく動いている。さっきの余韻もあり、それだけで私の体は熱くなってしまう。

 

「これ以上はダメっ……!」

 

 けれどもと君の手は止まらない。それどころか少しずつ下がっているような感じがする。止めたいけど、私の手は動いてくれない、きっと私の体はさっきのだけじゃまだまだ満足していない。もと君を求めてるんだ。だって私も興奮してきちゃったから。抑えようとしても抑えられない。まだかまだかと待ち望んでいる。早く欲しい。もと君に気持ちよくしてもらいたい。右手をもと君の右手に重ね、下に導く。止めるためじゃなければ体は動いてくれた。

 

「もと君……?」

 

 もと君の手が小刻みに震えてるのに気が付いた。先程からもぞもぞ動いていたのはただの震えだった。手だけじゃなくもと君の体も震えている。緊張、してるのかな……? でももと君の寂しそうな表情、緊張しているようにも、ましてや欲情しているようには見えない。

 

「……もしかして、甘えたくなったの?」

「……はい」

 

 そっか……もと君は私としたかったんじゃなくて、ただ甘えたかっただけなんだ。それがわかった途端、何故か先程よりも体が熱くなり、嬉しさが溢れ出してきた。

 

「しずくちゃんや彼方さんを1人で連れ戻してくれたり、璃奈ちゃんや愛ちゃんを同好会に誘ったり、もと君ってすっごく頼りになる存在だよね。璃奈ちゃんなんて誰よりももと君のこと信頼してるし、もちろん私も信頼してる。きっと昔の同好会でも頼りにされてたんだと思う」

 

 もと君は小さく頷く。私だってもと君みたいな子が近くに居たらついつい頼ってしまう。

 

「けど、そんなもと君も誰かに甘えたくなっちゃう時もあるよね?」

 

 今度は小さくゆっくりと、けれど力強くもと君は頷いた。

 もと君は誰からも頼られる存在。きっとそれがもと君を縛る鎖になっちゃってるんだ。自分は人前で誰かに甘えたりなんてしてはいけない。ずっと頼りになる存在でならなければならない。きっとそういう考えがもと君の中に染みついちゃってるんだと思う。

 だけど積もっていた甘えたい気持ちが我慢できなくて、私に甘えたくなってしまったんだ。もと君は今家族がいないから、きっと寂しくて甘えたくなっちゃったんだと思う。もと君はまだ1年生。時々年相応の子供っぽさを見せる、私の可愛い後輩なんだ。

 

「……いいよ。私がいっぱい甘えさせてあげる。先輩だもんね」

 

 空いている左手でもと君の頭を撫でる。少し水で濡れちゃってるけどもと君は嫌がらない。むしろ気持ちよさそうに目を細めている。

 今のスクールアイドル同好会にもと君を甘えさせてあげられる人が何人いるだろう。かすみちゃんも璃奈ちゃんも子供っぽくて多分甘えさせてあげられない。しずくちゃんは大人っぽいけど、もと君といる時は少し子供っぽくて、たまに甘えたりしてるから、多分できない。愛ちゃんは甘えさせてあげそうだけど、もと君と話しているところをあんまり見ない。もしかしたらもと君は愛ちゃんが少し苦手なのかもしれない。だからダメ。彼方さんは……よくわからない。私の膝を枕にして寝たり甘えたがりなところがあるけど、かすみちゃんを甘えさせたりもしてるから、もしかしたらもと君を甘えさせてくれるかもしれない。だけど彼方さんにその役割は譲りたくない。もと君を甘えさせてあげるのは私1人で十分だ。

 

「それに、今の私にはそれくらいしかしてあげられないし……」

 

 部員集めでは何も貢献できてない。スクールアイドルとしてもまだまだ未熟だから何もしてあげられない。勉強は教えてあげられるけど、多分同級生のしずくちゃんでもその役割はできる。だから今の私にできるのは甘えさせてあげることだけ。

 

「でも、今は料理中だから、また後で……ね?」

「わかりました……」

 

 名残惜しそうに私から離れていくもと君。それが可愛くてついつい頭を撫でてしまう。

 

 多分私がもと君に抱いていた気持ちは限りなく母性に近いものなんだと思う。恋愛よりもこっちの方がしっくりくる。もと君を甘えさせてあげたくて仕方がない。ふふっ、何してあげようかな♪




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part17/n

ご注文は初投稿ですか?


 歩夢ちゃんの愛情たっぷり手作りお弁当が食べたいRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は歩夢ちゃんに膝枕してもらったり抱きついたりとにかく甘えまくりました。今回はその続きからで、日曜日なので参考書を読んで寝ます。

 

 本当は練習の予定だったのに、謎の理由で部活ができなくなりました。筋力と持久力が一生上がらなくて困っています。チャートでは今日の練習で両方とも2になるはずでした。どうしてこんなにチャート通りにいかないんですかね……辞めたくなりますよ~RTA~。

 ま、過ぎたことは仕方ありません。さっさと参考書を読んで寝ましょう。今日読むのはこの日本史の参考書にします。理由は特にありません。昨日は読めたんだし、今日もいけるだろ。

 

『内容を理解することができなかった』

 

 おいゴルァ! さすがに失敗しすぎなんだよなぁ……。失敗する確率は学力の値によらず10%ゾ? 調子こいてんじゃねーぞコノヤロー(棒読み) というか歴史なんて暗記するだけのつまらない科目だろ(過激) 理解できないことある?

 仕方ないので今回も緊急勉強会を開きましょう。栞子ちゃんはこれ以上上げると告白イベの発生が怖いですし、歩夢ちゃんも結構上がっているはずなのでやめておきましょう。というわけで、今回は愛さんに電話をしたいと思います。今のところ愛さんとあまり関われてないので、ここで関係を持とうという考えです。まぁ愛さんは親密度が結構上がりやすいため、接触回数が少なくても割と何とかなったりします。

 

『もしもし、元樹?』

 

 ほも君です。こんばんは。

 

『ちーす! 元樹から連絡が来てびっくりしたよ。アタシ達同好会の仲間なのにあんまり話したりしてないもんね』

 

 それは効率を重視したせいですね。センセンシャル。

 

『それで今日はどうしたの? 愛さんに用事?』

 

 勉強を教えてください。オナシャス。

 

『もちろんいいよ! 愛さんに任せなさーい!』

 

 さすが愛さん。頼りがいがありますね。じゃあこのページの問題、江戸時代の出来事について教えてほしいんすけど。この参考書問題の答えがついてなくて……ついてないってマジ?

 

『いいよー。まずは最初の穴埋め問題からね。最初の穴には―――』

 

 しばらく勉強パートが続くので倍速します。愛さんは答えを教えてくれるだけじゃなくて、それに関連したことも教えてくれるので勉強をするのが面白くなってきますね。RTA的には面白くありませんが。別に貰える経験値が増えたりはしないのでね。

 

『―――以上っ! これでこのページの問題は終わりっ! 江戸時代は長いから政策とか出来事とか覚えるの大変だと思うけど、さっき教えてあげた語呂合わせを使えば少し楽になると思うから頑張れ!』

 

 語呂合わせ、いいですね。私も昔お世話になりました。視聴者兄貴の中にも学生さんがいればぜひ愛さんが教えてくれた語呂合わせを使ってみてください。0.5倍速にすれば見れると思うので。

 

『他にわからないとこはない? 今なら全部愛さんが教えてあげるよ』

 

 もうわからないところはないみたいですね。

 

『そっか。ならよかった!』

 

 助かりました。ありがとナス!

 学力経験値20獲得しました。あと20で学力5、想定以上に伸びてますね。チャートでは7日目時点で2を達成していればよかったんですが……。まぁ高ければ高いほど抜き打ちテストを回避しやすくなるので学力が伸びるのは一向に構いません。申し訳ないが筋力と持久力が伸びないのはNG。勉強に全振りしないでください。

 

『折角だしもう少しお話ししよっか。アタシ、元樹のこともっと知りたい!』

 

 おっ、久し振りの通話イベントですね。勉強会と通話イベは全くの別物なので、こんな風に通話している最中に通話イベが発生したりもします。おかしいね。

 それで、ほも君の何について話しますか? 年齢、住所、趣味、性癖、銀行の暗証番号、風呂で最初に洗う部位、話題はなんでもいいですよ。

 

『りなりーから元樹のことはいろいろ聞いてるんだけど、運動ができないってほんと?』

 

 本当です。だって筋力も持久力も0だもんね。運動なんかできっこないよ。

 

『じゃあさ、次の週末愛さんと一緒に運動しない?』

 

 愛さんからのお誘いですね。ほも君にあんまり激しい運動(意味深)はできませんよ?

 

『軽くランニングしたりスポーツしたり、運動が苦手でも楽しくできるように頑張るから大丈夫! 運動嫌いも愛さんが改善してあげる!』

 

 別にほも君が運動嫌いなわけではないんですよ。運動の方がほも君のことを嫌いなのであって。明らかに運動がほも君を避けてますからね。そのせいでチャート通りに進みません。まぁそもそも開幕チャートを大胆に変更してるので、今更チャート通りに進まないと言ったところでですけどね。

 ま、えやろ。このお誘いは当然受けます。実質デートだし、筋力と持久力も上がりそうな気がしますしね。

 

『よしっ、じゃあ次の土曜日ね! 時間とかはまた今度決めよっか』

 

 時間や場所は全部愛さんが決めてくれるのでおまかせします。

 

 

 

『……あれ? 元樹寝ちゃった?』

 

 あれから愛さんとずっとお話ししてましたが、どうやらほも君が寝落ちしてしまったみたいです。腰痛めますよ。

 

『おやすみ、元樹』

 

 今の囁きはズルいですね。お耳が幸せです。こんなことされたら堕ちちゃいますよ普通。まぁほも君は寝落ちしたので聞いてないわけなんですけども。もったいないですね。

 

 

 

 

 

 おはようございます。8日目です。ゲームを開始して2回目の月曜日です。今日も1日居眠りせずに頑張りましょう。

 

「もと君もと君」

 

 教室で始業を待っていたら歩夢ちゃんと侑ちゃんが教室に来てくれました。何の用でしょう?

 

「おはよっ」

「おはよう、もと君。お弁当作ってきたよ。はい、味わって食べてね?」

 

 歩夢ちゃんからお弁当をもらいました。ありがとうございます。

 

「もと君しばらく1人なんだよね? 歩夢から聞いたよ。寂しくなったらいつでも言ってね? 私と歩夢が遊びに行くから」

 

 遊びに来てくれるの? 寂しさで甘えちゃうよ? あゆぴょんとゆうぴょんとうさぴょん(意味深)しちゃうよ?

 

「じゃあ私達も教室に行くね。お弁当箱は部活の時に返してくれればいいから」

「また後でねー」

 

 歩夢ちゃんと侑ちゃんを見送ります。ばいばーい、また部室で会おうね。

 

「おはようございます」

 

 おっ、栞子ちゃん。おはよう。

 

「……どうしたのですか? 先程から腰をずっと抑えていますが……もしかして腰を痛めたのですか? それになんだか眠たそうですし……」

 

 栞子ちゃんが腰をさすってくれてます。イスで寝たせいで案の定腰を痛めました。

 

「寝落ち、ですか……勉強でもしていたのですか?」

 

 そうだよ(便乗)

 

「勉強をするのはすごくいいことだと思いますが、そのせいで睡眠の質を落とすのはよくありませんよ。今日は授業中に居眠りしないよう気を付けてくださいね」

 

 気を付けまーす(棒読み)

 

 

 

 えー、現在午前の授業中ですが、ついに恐れていたことが起きてしまいました。ほも君の居眠りです。しかも移動教室で講堂での授業のため、いつもより栞子ちゃんとの距離が近く、栞子ちゃんの肩を枕にして寝てしまっています。バレてないわけがありません。

 

「あれほど居眠りには気を付けてくださいと言ったのですが……。はぁ、仕方ありませんね……」

 

 当然栞子ちゃんはほも君を睨んでいます。親密度減少不可避。

 

「サラサラな髪ですね。ふふっ、羨ましいです」

 

 ファッ!? 当然のように叩き起こされると思っていましたが、なんと優しい顔で頭を撫でてくれました。これは……どゆこと? 起こすつもりはないということでしょうか? ここから突然頭を鷲掴みして起こすとかではありませんよね?

 

「相変わらず可愛らしい寝顔です。普段はかっこいいのに、どうして寝顔になると可愛いくなってしまうのでしょう……」

 

 そうなるようにキャラクリしたからですね。刺さってくれてよかったです。

 

「起こさなければならないのはわかっていますが……不眠症気味の元樹さんをしっかり休ませてあげたいですし……何より、こんなに気持ちよさそうに眠る元樹さんを邪魔することなんて私にはできません……」

 

 あの真面目を絵に描いたような人間の栞子ちゃんが、居眠り中のほも君を起こさないなんて……これは衝撃映像ですねぇ。でもほんとはほも君と密着できて嬉しいだけじゃないのぉ?(名推理)

 

「好きな人を優先してしまうとは……私は悪い子です……」

 

 時々私情を優先してもいいと思いますよ。何故か親密度も下がってなさそうですし。居眠りイベでも低確率で親密度が下がらないとかあるんですかね? 今までこのパターンを見たことがないのでわかりません。ま、親密度が下がらないのであればなんでもいいです。後に響くイベントではなさそうですしね。

 

 

 

「元樹さん、起きてください。元樹さん」

 

 授業が終わったみたいですね。栞子ちゃんがほも君を起こしています。

 

「起きましたか?」

 

 はい。おめめぱっちりです。それにしても、随分と顔の距離が近いですね。ガチ恋距離ですよこれ。自分、キスしていいっすか?

 

「ぐっすり眠っていましたね。気持ちよかったですか?」

 

 栞子ちゃんの肩枕が気持ちよかった(小並感)

 

「そうですか、それはよかったです。……ですが、授業中に寝るのはダメですよ。次から寝る時は休み時間などにしてくださいね。それならば私の肩でも膝でも枕として貸し出してあげますから」

 

 膝枕は歩夢ちゃんがいるので結構です(鬼畜)

 

「お説教はここまでにして……お昼ご飯、食べましょうか。今日は気分を変えて中庭で食べてみませんか? 実はレジャーシートを持ってきたんです。少し小さいですけど……」

 

 もちろんいいですよ。

 

「では教室にお弁当を取りに行きましょう。時間が惜しいですからね」

 

 いつもより手に力が入っている気がしますね。それほど楽しみにしていたんですね。栞子ちゃんは本当に可愛いなぁ。こんな可愛い栞子ちゃんといずれあんなことやそんなことまでできるようになるなんて……メス顔栞子ちゃんが今から楽しみですね(ゲス顔)

 

 

 

「風が気持ちいいですね」

 

 中庭に来ました。栞子ちゃんの言う通り心地いい風が吹いています。

 

「ほら、あそこに寝ている方がいらっしゃいますよ。やっぱり気持ちいいんですね」

「すやぴー……」

「……少し無防備すぎる気もしますが」

 

 うん、あれは彼方さんですね。まさかこんなところで出会うとは……これはまずいですよ! ぐっすり寝てるからいいじゃんと思う兄貴もいるかもしれませんが、彼方さんは目を閉じていても起きている可能性があるため安心できません。見つかる前に違う場所に行きましょう。

 

「ここは嫌なのですか? ですがもうシートを敷いてしまいましたし……」

 

 どうやらもう準備をしてしまったようです。片付けさせるのも悪いですし、仕方ないのでここで食べましょう。これはもう彼方さんがガチ寝しているのに賭けるしかありませんね。

 

「元樹さん、珍しく今日はお弁当なんですね」

 

 歩夢ちゃんに作ってもらった弁当です。どうですか、美味しそうでしょう?

 

「はい、すごく美味しそうです! 特にこの卵焼き、素晴らしい焼き具合です!」

 

 さすが歩夢ちゃん。卵焼きが得意なだけありますね。焦げ1つない素晴らしい卵焼きです。……いや、こいつだけちょっと焦げてますね。ご丁寧に焦げた面を裏にして盛りつけてありました。隠蔽しようとしましたねこれは……。

 

「お1ついただいてもよろしいですか?」

 

 いいですよ。歩夢ちゃん特製卵焼きをとくと味わってください。

 

「いただきます。……んっ、美味しいです!」

 

 それはよかったです。栞子ちゃんの名前は伏せて歩夢ちゃんに伝えておきますね。きっと喜ぶと思います。

 

「お返しに元樹さんの大好きなポテトサラダをあげますね。はい、あーん」

 

 随分と大胆になりましたね、栞子ちゃん。前はあんなに恥ずかしそうにしていたのに、今では頬を赤く染めるどころか満面の笑みで箸を差し出しています。

 一緒に出かけた次の日から明らかに栞子ちゃんの中の何かが変わりました。前はよわよわな恋愛弱者でしたが、今では恋愛つよつよムーブをかましています。一体栞子ちゃんに何があったんだ……。

 

「食べないのですか? ……もしかして恥ずかしいのですか? ふふっ、可愛いですね」

 

 どうやら今の栞子ちゃんにはほも君をからかう余裕すらあるようです。

 

「いつまでもからかわれてばかりの私ではありませんよ」

 

 ドヤ顔で余裕さを醸し出す栞子ちゃんですが、何故か腹が立ちますね。何とかしてこの余裕そうな表情を崩したいですが、さすがに難しそうですね。大人しく食べましょう。

 

「少し悔しそうなのが気になるところですが、どうぞ。……美味しいですか?」

 

 うん、おいしい!

 

「それはよかったです。……元樹さんはなんでも美味しそうに食べますね」

 

 だって美味しいので。

 

 そういえば、彼方さんはどうなったのでしょうか。チラッと確認しましょう。……今目が合いませんでしたか? 薄らとですが彼方さんの目が空いていた気がします。もしかしなくても見られてましたねこれは……。

 

「……元樹さん? あの方が気になるのですか?」

 

 まぁ気になりますね。今のやり取りを見られていると少々厄介なことになりそうなので。

 

「……元樹さん、今は私との時間ですよ」

 

 ちょっと目のハイライト消えてんよ~。確かスマホ版で歩夢ちゃんも似たようなことを言ってましたね。まだ付き合ってないのに独占欲発揮するのやめちくり~。

 とりあえず何とかして誤魔化しましょう。寝ている間に彼方さんが襲われたりしないか心配だったとか言っておけば真面目な栞子ちゃんは許してくれるでしょう。

 

「……確かにそうですね。そろそろお昼休みも終わりますし、私があの方を起こしてきます」

 

 (今栞子ちゃんが彼方さんと接触すると後々厄介なことになりかねないので)ダメです。ここはほも君が行きます。栞子ちゃんはレジャーシートとかを片付けておいてください。

 

「…………わかりました。ですが、元樹さんもあの方に手を出さないでくださいね」

 

 今はそんなことはしませんよ。今は、ね。

 栞子ちゃんも渋々認めてくれたので、速攻で彼方さんを起こしに行きましょう。まぁ多分起きていると思いますが。

 

「すやすや……」

 

 起きてください彼方さん。どうせ起きてるんでしょ。

 

「……やっぱりバレてるかぁ。目が合っちゃったもんね~」

 

 はい、案の定起きていました。これにより栞子ちゃんとのやり取りも見られていたことが確定しました。やべえよ……やべえよ……。

 

「あの子はもと君のクラスメイト? 仲良しだねぇ」

 

 彼方さんのニヤニヤした表情が怖いです。あれですかね? バラされたくなかったら……ってやつですか?

 

「しずくちゃんにも璃奈ちゃんにも言わないから、そんなに怖がらなくてもだいじょーぶ」

 

 よかった……やっぱり彼方さんは優しかった。さすがお姉ちゃん。

 

「でも貸し1ね。いつかちゃんと返してもらうよ~」

 

 ひえぇ~……あんまり無茶なお願いはやめてくださいね……?

 

「じゃあ彼方ちゃんはもう行くね? また放課後~」

 

 立ち上がってこの場から去る彼方さんを見送ります。

 

「あの方はもう戻ったのですか?」

 

 戻りましたよ。栞子ちゃんの片付けが終わる前に戻ってくれて助かりました。

 

「では私達も戻りましょう。午後の授業は居眠りしないよう気を付けて下さいね」

 

 それは乱数さんに言ってほしいですね。ほも君は悪くない。

 

 

 

 放課後です。今日はエマさんが帰ってくる日なので、このまま部室に直行……しません! 部室以外の適当な場所に2回移動してから部室に行きます。

 エマさんは部室に全員が揃うと部室に入ってくるのですが、それまでにほも君が部室に行くと、全員が揃うまでの間高確率で雑談イベが発生してしまいます。それを避けるために適当な場所に行く必要があったんですね。ちょうど2回別の場所に行くことで全員が揃っているタイミングで部室に入ることができます。

 というわけで、誰かと遭遇する可能性が低いトイレに行ってから教室に戻り、それから部室に行きましょう。

 では、トイレにイクゾー!トイレに着きました。では、次は教室にイク教室に着きました。そして部室にイ部室に着きました。

 

「あっ、元樹君。こんにちは」

 

 部室前でしずくちゃんに遭遇しました。ちーす。ほも君以外のメンバーは全員揃ってますかね?

 

「うん。皆元樹君のことを待ってるよ」

 

 ヨシッ! 早く部室に入りましょう。ほら、しずくちゃん早く早く。遅いですよ。

 

私も元樹君を待ってたんだけどなぁ……

 

 同好会の皆お待たせ! 何もなかったんだけどいいかな?

 

「もと男遅いよー。何やってたの?」

 

 ちょっとトイレに行ってました(本当)

 

「こんにちはー、賑やかだね~」

 

 視聴者兄貴お待たせしました。エマさんの登場です。Part17にしてようやく登場しました。死ぬほど出番が遅くなってしまいました。すみません許してください! なんでもしますから!

 

「あれ? いつの間にか人が増えてるね!」

「エマ先輩!?」

「エマさん、もしかして私達が動いているのを見て、戻ってきてくださったんですか!?」

「え? 戻る? うん、さっきスイスから戻ったんだよ~。はい、これお土産。たくさんあるから人数増えても大丈夫だよ。仲よく食べてね」

「は……はあ……?」

 

 わーい、お土産だー。……スイスのお土産って何が有名なんですか? スイスに行ったことがないのでわかりません。

 

「もと君、この人がエマさん?」

 

 そうだよ(便乗)

 

「はじめまして。わたしはエマ・ヴェルデ。これからよろしくね~」

「あの……エマさんは自発的にここに戻ってきてくれたんですか?」

「え? だってここスクールアイドル同好会の部室でしょ? 普通に来るけど……?」

「あのあのっ! エマ先輩ここしばらく来なかったですよね!? 同好会と距離置いてましたよね!?」

「ん? わたし、スイスに一時帰国してただけなんだけど……」

 

 はい、エマさんの言う通りスイスに一時帰国していただけで、別にスクールアイドルに興味がなくなったとかではないんですよね。

 

「手紙置いていったよ」

 

 一時帰国することについても手紙をちゃんと残してくれていたらしいので、エマさんが報連相を怠ったわけではありません。ただその手紙を読んだ人が悪かったですね。

 

「えっ、あれ……あれもしかしてエマ先輩の置き手紙だったんですか……!?」

「どういうこと? かすみちゃん?」

「……これ、エマ先輩の手紙だったんだ……。ライバルからの怪文書かと……。あーん! ごめんなさーい! かすみんの早とちりでした~!」

「エマさんは戻ってきてくれたし、全然いいよ。結果オーライだよ」

 

 怪文書だと思ったのなら尚更相談してほしかったですね。もし脅迫文だったりしたらどうするんですか? 襲われてからでは遅いですよ? かすみんを守れるのはほも君だけなんですから。

 

「……もと男よりかすみんの方が強いと思うけど……」

 

 それを言われちゃあおしまいですね。だって事実ですから。

 

「……でも、心配してくれてありがと!」

 

 あぁ^~。てれてれかすみんもいいですが、やっぱり笑顔でお礼を言うかすみんが一番ですね。かすみんが最高に可愛いということを改めてわからされます。かすかすしか勝たん。

 

「かすかすって言わないで!」

「元樹君とかすみちゃん、相変わらず仲よしだね~」

「はい! かすみんともと男はと~っても仲よしですよ! ねっ、もと男!」

 

 うんうん、仲よし仲よし。そして可愛い可愛い。頭を撫でてあげましょう。

 

「えへへー」

 

 かすみんの親密度は結構いい感じに稼げていそうですね。付き合えるのはまだまだ先でしょうが、着実に稼いでいきましょう。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


ようやくエマちゃんを出すことができました。
栞子ちゃんや歩夢ちゃんとデートしたせいで全然ストーリーが進みませんでしたが、ようやく1章の終わりが見えてきました。
次回はモデルをやってる人が登場するんじゃないですかね(適当)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part18/n

初投稿なのかな?


うぉおおおおおお! アニガサキぃいいいい! 栞子ちゃん! ミアちゃん! ランジュちゃん! うぉおおおおお!


 浮気大好きRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はエマさんがスクールアイドル同好会に帰ってきてくれました。今回はその続きからで、果林さんを勧誘します。その前にせつ菜ちゃんについての話があるので聞きましょう。

 

「優木せつ菜ちゃんってどんな人だったんですか?」

「んー、どんな人、かぁ。一言で言うのは難しく、語るには……」

「語るには?」

「彼方ちゃんが眠りに誘われる」

 

 いつも眠りに誘われていませんか……?(小声)

 

「彼方ちゃんが眠くならない程度にお話しするね」

「以前少しお話ししたことと被りますが、せつ菜さんは、この同好会を引っ張っていく存在でした」

「可愛い顔してダンプカーみたいな」

「可愛いダンプカー……」

 

 ほも君を押し倒してファーストキスを奪ったりしますもんね。うぅ、せつ菜ちゃん……。

 

「一番やる気があったし、元々個人でスクールアイドル活動もしていたから、結構有名だったの」

「私も聞いたことはありました。そんな有名人が!? って、同好会に入った時は驚きましたよ~」

「かすみちゃん、スクールアイドルのこと、いっぱい勉強してるんだね!」

「将来のライバルになりそうな芽は早めに摘んでおかないと……じゃなくて、いっぱい吸収させてほしいなと思って☆」

 

 本音漏れてますよ。かすみんは元々の素材が100億点満点なんですから、自信を持って正々堂々と勝負すればいいのにね。いや、いたずらを仕掛けて返り討ちに遭ったりするのも可愛いんですけど。つまりかすみんは何をしても可愛いってはっきりわかんだね。

 

「皆の話を聞くと、すごく目立っていそうな子なのに学園内じゃ全然噂を聞かないよね?」

「そうなんですよね」

「虹ヶ咲にいるのは確かなんだけど、同好会以外では一度も見たことがないの」

 

 生徒会長に変装してますからね。……いや逆か。生徒会長がせつ菜ちゃんに変装してるんですね。……どっちだ? わかんね。

 

「昔はスクールアイドルのライブに行けば、必ず会えたんですけど、最近はそれにも出てないみたいなんですよねぇ」

「もしかして……スクールアイドルをやめちゃったのかな……」

 

 そうだよ(震え声) うぅ、せつ菜ちゃん……。

 

「それはない。せつ菜ちゃんは心の底からスクールアイドルが好きだったから、やめるってことは考えられないよ~」

 

 多分逆じゃないですかね。せつ菜ちゃんはスクールアイドルが大好きだからこそ、この同好会の皆、つまり虹ヶ咲学園のスクールアイドルが二度と自分のせいで傷つかないようにスクールアイドルをやめたんだと思います。せつ菜ちゃんが本当のことを話してくれるまでわかりませんが、多分そうだと思います。まぁそのせいで今のほも君は心に傷を負ってますし、あのお別れのキスのせいで私自身も心に傷を負いました。早く戻ってきておくれよ……悲しさなんてない、愛情たっぷりのキスをしてくれよ……。

 

「大好きって気持ちを世界中に広めたいって熱意に燃えてた。だから隠れてるとしか思えないんだよね~」

「せつ菜さんは本当にすごかったですからね。歌もダンスも……スタイルだってよかったし」

 

 せつ菜ちゃんは本当にスタイルがいいですよね。ボンッ! キュッ! ボンッ! みたいな感じで。あれで低身長なのがさらにそそります。あの身長であの胸はいかんよ……。

 

「ぬぬっ!? スタイルといえば! 同好会に入れたい子が1人いたのを思い出した! せつ菜ちゃんを探す前に勧誘しよう!」

「どんな方ですか?」

「なんでも……毒藻? らしい」

「読者モデルのことだね」

「連絡してみる~」

 

 読者モデル……よくわかりませんが、方向音痴っぽそうな人な気がしますね。

 

 

 

「ふーん……スクールアイドル、ね」

 

 皆さんお待ちかね朝香果林さんの登場です。美人で大人っぽくてスタイルも抜群。勉強もすっごくできそうだし片付けも得意そう。胸元のほくろがセクシー……エロいっ! 自分、ガチ恋いいっすか?

 そういえば、この人どこかで見たことがありますね(棒読み) どこだったかなー、栞子ちゃんと一緒に読んだファッション雑誌で見た気がするなー、しかも果林さんが表紙だったきがするなー(棒読み)

 

「あら、私が出ている雑誌を読んでくれたのね」

 

 まぁたまたま買っただけなんですけどね(大嘘)

 

「でも、その雑誌って女性向けだった気がするのだけれど……私に興味を持って買ってくれたのかしら?」

 

 そうだよ(便乗)

 

「ありがとう、嬉しいわ」

「……元樹? どういうこと?」

 

 ちょちょちょ、りなりー痛い痛い。腕を捻じらないでください。あと腕がおかしな方向に曲がってます。ほも君の腕壊れる。

 

「ちゃんと答えて。璃奈ちゃんボード『プンプン』」

 

 ク、クラスメイト(栞子ちゃん)と一緒に買ったんですよ(大嘘)

 

「クラスメイト……そう……」

 

 クラスメイトの話を出したらあっさりと腕を解放してくれました。なんで? りなりーは栞子ちゃんのことは知らないはずですし……なんで? ま、許してくれたのなら理由はなんでもえやろ。

 

「……でも雑誌は後で没収するから」

 

 ぴえん。でも『ファッションセンス○』は回収済みなので無問題ラ!

 

「仲がいいのね。2人は付き合っているのかしら?」

 

 まだ付き合ってません。ただの幼馴染です。

 

「そうなのね。いいわね、幼馴染」

「うん……」

 

 悲しそうにするりなりーですが、告白イベを起こさないりなりーも悪いんじゃない?(正論) ほも君はいつでも受け入れる準備はできてますよ?

 

「話を戻すんですけど……どうですか? スクールアイドル、私達と一緒にやってみませんか!? 絶対楽しいですよ!」

 

 私達と言ってますが、侑ちゃんまだスクールアイドル同好会入ってませんよね?

 

「そうね……。今までいろんなお誘いをもらったけど、スクールアイドルっていうのは初めてよ。でも……私にできるかしら?」

「もちろん! 果林さん、すごくスタイルいいし、衣装がとっても映えそう!」

「……かすみちゃん、璃奈ちゃん、安心して胸を撫で下ろしてるの?」

「……時々考えるだけです。神様って不公平だな、とか」

「……璃奈ちゃんボード『がっくし』」

 

 歩夢ちゃんもなかなかのボリュームですから、かすみんやりなりーみたいなことは考えないんですね。神なんか必要ねぇんだよ! それにそんな悲観的にならなくても、先輩グループの3年生にはかすみんより小さい人もいますから大丈夫ですよ。かすみんもりなりーもまだ1年生ですし、まだまだ成長の余地がありますって。

 

「そうね……スクールアイドルに興味はあるけど……」

「じゃあ!?」

「でも、私でいいの? 私、フリフリの衣装とかは似合わないわよ? 体のラインが出るような衣装とか、露出の高い衣装なら自信あるけどね」

「ろ、ろしゅつ、ですか」

 

 歩夢ちゃんもなかなか露出の高い衣装着てますよね? チャイナ服とか着てますし、それ以外にも胸元が出る衣装とかいっぱい着てますし、やっぱ好きなんすねぇ。

 

「そう。例えば……その子がチラチラ見ている胸元のほくろが目立つような……ね?」

 

 多分勘違いだと思うんですけど(建前) はえ^~すっごいおっきい……(本音)

 

「元樹?」

「もと男?」

「元樹君?」

 

 1年生3人組からいてつく波動が放たれています。別に見ててもいいだルルォ!? それにしずくちゃんは虹ヶ咲の1年生の中で一番ボリューミーじゃないですか。そんな気にしなくてもいいでしょ。見せたけりゃ見てやるよ。いっぱい見てあげるし、なんならお触りまでしてあげるから、ほら、こっちおいでよしずくちゃん。ホラホラホラホラ(鬼畜)

 

「スクールアイドルになってもいいけど、ひとつ条件があるの。私は、私の目指すスクールアイドルになりたい。それでもいい? 同好会には入るけど、グループ活動はあまり得意じゃないっていうか……」

 

 いいんじゃないですか、グループ活動じゃなくても。

 

「「「「「え?」」」」」

 

 かすみんはスクールアイドルはソロでもできるって言ってたし、しずくちゃんも皆のやりたいことが違うのはおもしろいって言ってたし、ソロ活動してみるのもいいんじゃない?

 皆個性的でやりたいことがはっきりしているのに無理やりグループ活動しようとしたことがうまくいかなかった原因でしょうし、それならグループという形にこだわる必要はないと思います。なので、同好会としてひとつにまとまりはするけど、スクールアイドルとしてはそれぞれが自分の理想を目指す……。それぞれが助け合いながら競い合う……みたいなのはどうですかね? そんな形が皆にはぴったりだと思います。

 皆で同じ方向を目指さなくてもいい。皆がそれぞれ、好きなものを追いかけるっていうのもいいと思います。

 

「めっちゃいいこと言う~。彼方ちゃんもそれに賛成~」

「……グループとしてまとまってなくてもいいってこと?」

 

 試しにやってみて、まとまってもまとまらなくてもいいと思います。それぞれ好きな部分を伸ばすってやり方を探してみましょう。

 

「……も、もと君っ! それっ、すっごくいい! 私もそれがいいと思う! きっともと君の言うものを見つけられるはずだよ!」

 

 侑ちゃんはめちゃくちゃ褒めてくれましたね。ありがとうございます。まぁ元々は侑ちゃん……厳密に言えばあなたちゃんが言っていたことなんですけどね。あと侑ちゃん顔が近いです。この子は距離の詰め方がすごいなぁ……。おめめキラキラで可愛いし、お肌は綺麗だし、唇は柔らかそうだし、お胸は当たってるし……あんまりそういうことされると侑ちゃんを攻略するよりも先に、ほも君が侑ちゃんに攻略されちゃうんですけどぉ……。

 

 侑ちゃんはさておき……果林さん、今までにない刺激をあげられるスクールアイドルを目指して、ほも君たちと一緒にやってください。オナシャス。

 

「今までにない刺激……ふふっ、面白そうね。そういうことなら入部させてもらおうかしら」

 

 果林さんが加入してくれました。やったぜ。投稿者:変態糞RTA走者。8月16日(水)、07時14分22秒。

 

「やったっ! 果林さんも入ってくれたし、残すはあと2人だね!」

 

 いえ、残すはあと1人。優木せつ菜ちゃんだけですよ。

 

「え? どういうこと?」

「誰か心当たりでもあるの?」

 

 ええ、大アリです。この場にいる全員が知っている人物ですよ。

 

「アタシ達が知ってる子……?」

「……もしかしてだけどぉ、その人生徒会長だったり~?」

「あの意地悪生徒会長ですかぁ? それはないと思いますけど……」

「じゃあ誰なんだろう……」

 

 生徒会長というのも間違いではありませんが、それは11人目です。まだ早いです。

 ほも君の言う10人目、それは……高咲侑! あなたです!

 

「えっ、えぇぇぇぇぇぇ!?」

「侑ちゃんもスクールアイドルに?」

「無理無理無理! 私にスクールアイドルなんて無理だよ!」

 

 別に私は侑ちゃんにスクールアイドルになれとは言ってませんよ。

 

「え? 今私に同好会に入れって……」

 

 お忘れですか? 生徒会長は部員を11人集めろと言ったのであって、スクールアイドルを11人集めろとは言ってませんよ。つまりマネージャーでもいいわけです。そうじゃないとほも君は数にカウントされませんしね。

 

「で、でも、私にマネージャーなんてできるのかな……」

 

 絶対できますよ。侑ちゃんのスクールアイドルを応援したいという気持ちさえあれば。

 侑ちゃんは会ったばかりのほも君とかすみんを助けてくれて、部員集めを手伝ってくれました。さらには練習を手伝ってくれて……多分手伝ってくれたはずで、ほも君に勉強まで教えてくれました。そんな侑ちゃんにマネージャーが務まらないはずがありません。

 そして何よりも、侑ちゃんの音楽科生徒としての能力。その能力を活用して作曲を手伝ってほしいのです。今のほも君には作曲はできませんからね。

 高咲侑、あなたが欲しい! 等価交換だ。俺のチューペット半分やるから、お前の学生生活半分くれ!

 

「あらあら、情熱的な勧誘ね」

「……そっか、私にもできることがあるんだ……。……うん、わかった。私も同好会に入る。一番近くで皆を応援できるし、もと君は私のことが欲しいみたいだし♪」

「これで侑ちゃんと一緒にスクールアイドルができるね」

「うん! よろしく、歩夢」

「こちらこそよろしくね、侑ちゃん」

 

 侑ちゃんが加入してくれました。ヨシッ! これでせつ菜ちゃん加入後に勧誘するよりもタイム短縮になりました。果林さん加入直後の勧誘の成功率は30%ですが、成功してよかったです。

 

「……元樹君、私にもあんな情熱的な言葉を言ってほしいです」

 

 しずくちゃんは欲しがり屋さんですねぇ。いいですよ、しずくちゃんを満足させてあげましょう。お前のことが好きだったんだよ!

 

「……もっと、もっと欲しいです。次は私の耳元で囁く感じで」

 

 囁く感じで? お前のことが好きだったんだよ(小声) じゃけん結婚しましょうね~。

 

「あぁ……」

 

 よさげですね。しずくちゃんは顔を赤らめながら幸せそうにしています。可愛い。早く付き合いてぇなぁ。しずくちゃんに甘えてほしいなぁ。しずくちゃんに甘えてぇなぁ。

 

「……つ、次は私を抱きしめながら愛の言葉を囁いて、最後にキスを……」

 

 まだ満足していないのですか? 満足させなきゃ(使命感) ほら、おいで。ギュっと抱きしめてあげますよ。

 

「元樹君……んっ」

 

 ほも君の腕の中にしずくちゃんがぽすっと収まりました。抱きしめた感触が柔らかいです。やわらかしずく。あととってもいい匂いがします。ほも君をこんな幸せな気持ちにしてくれたお礼に頭を撫でてあげましょう。

 

「……元樹君、私……元樹君のことが……す」

「ストップ、ストップです。これ以上はぜぇ~ったいダメ!」

 

 ほも君としずくちゃんの間にかすみんが手を突っ込んで、無理やり引き離してきました。おいおい、いい感じの雰囲気だったろ? しかも今のテキストの感じから告白イベが起きかけてましたし……。しずくちゃんはたまに独占欲を発揮しますが、比較的2股を許してくれるので、しずくちゃんの告白イベであれば大歓迎だったのですが……チッ! 人間のかすかすがこの野郎……。

 

「あっ! 今舌打ちしたでしょ! あとかすかすじゃなくてかすみん!」

「……元樹君、さっきのは忘れてください。またいつか、然るべき場所、然るべき時にちゃんと伝えますから」

 

 ハァ~……(クソデカため息) 告白イベっぽいのがかすみんのせいで中断されてしまいました。どうしてくれんのこれ? 失望しました。かすみんのファンやめます。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


前書きであれだけ叫びましたが、このRTAの目標である称号の条件にミアちゃんとランジュちゃんが含まれないんですよね。なんで含めなかったんや……。
RTAなので途中でアップデートが入って2人が追加されたという風にはできません。悲しいね。
でもミアちゃんとランジュちゃんは書きたくなってきたので、称号獲得後にアフターストーリーとして書きたいね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part19/n

やっちゃいなよ、そんな初投稿なんか!


 せつ菜ちゃん好き好き!なRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は果林さんと侑ちゃんが同好会に入ってくれました。今回はその続きからで、せつ菜ちゃんを同好会に連れ戻します。

 

「あとはせつ菜ちゃんを呼び戻すだけだけど……一体どこに行っちゃったんだろう……」

「誰に聞いてもわからないもんねぇ~」

 

 せつ菜ちゃんの件は僕に任せて!

 

「元樹君にですか?」

「もと男1人で探すよりも、皆で探した方がよくない?」

「私もそう思う。元雄は頼りになるけど、この学校の中から1人を探し出すのは大変」

 

 せつ菜ちゃんを探し出す必要はありません。正体はすでにわかっているので。

 

「正体……?」

「せつ菜ちゃんは変装だったってこと?」

 

 変装というにはあまりにも簡単なものですが、その通りです。優木せつ菜という名前も芸名ですね。優木せつ菜という生徒はこの学校には存在しないのです。

 

「だから誰もせつ菜ちゃんを学校で見たことがなかったんだ……」

「……じゃあ、せつ菜ちゃんの正体は誰なの?」

 

 それは……まだ秘密です。

 

「秘密ぅ!? なんで!」

 

 一度せつ菜ちゃんと濃厚接触しましたが、その時にせつ菜ちゃんの思いを聞きました。せつ菜ちゃんは責任を感じていて、もうスクールアイドルを続ける気はないと言っていました。優木せつ菜だけが消えて、新しい虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が生まれることが最後のわがままだとも……。

 

「そんな……」

「せつ菜ちゃん、そんなことを考えてたなんて……」

 

 なのでもし説得に失敗した場合、せつ菜ちゃんの気持ちを尊重するためにその正体は秘密にしておきたいのです。もちろん戻ってきてほしいという思いはありますが、それだけでせつ菜ちゃんを止められるとは限りませんからね。皆さんご存じの通り、可愛いダンプカーですから。

 本当はきっと皆で行くべきなのでしょう。皆でせつ菜ちゃんに戻ってきてくれと言うべきなのでしょう。ですが、ここはほも君1人で行かせてください。ほも君に任せてください。きっと連れ戻してみせますから。せつ菜ちゃんと一緒にこの部室に帰ってきますから。

 

「そっかぁ……うん、わかった。もと君にお任せするね~」

「元樹君がその思いをちゃんと伝えれば、きっと大丈夫だよ!」

「元樹君は気持ちをぶつけるのも、相手の気持ちを受け取るのも得意だもん」

「せつ菜先輩と一番仲がよかったのはもと男だったし、きっとわかってくれるから」

「侑を勧誘した時みたいに情熱的な言葉で伝えれば大丈夫よ」

「愛さん達の思いも一緒に伝えてよね!」

「もと君、頑張ってね。私、応援してるから」

「私の分まで思いをぶつけてきてね!」

「……元樹。私、せつ菜さんに会ってみたい。かすみちゃん達がすごいってあんなに褒めるせつ菜さんに会って、いろんなことを教えてほしい。一緒にスクールアイドルやってみたい。元樹は頼りになるってことは、誰よりも私が知ってる。だから心配しないで待ってる。だから元樹も頑張って。璃奈ちゃんボード『むんっ』」

 

 皆がほも君の背中を押してくれました。皆の期待、思いを背負って生徒会室に行きましょう。私の思い、ほも君の思い、皆の思いを余すことなく、全部せつ菜ちゃんにぶつけましょう。

 では、生徒会室にイクゾー!デッデッデデデデ!(カーン)

 

 

 

 生徒会室前に着きました。そして私の予想通りイベントが始まり、ドアをノックしました。イベント発生場所が生徒会室で合っててよかった……。

 

「どうぞ」

 

 失礼シャス。センセンシャル。

 

「……もと……いえ、堀口元樹さん。何かご用ですか?」

 

 生徒会長、もといせつ菜ちゃんオッスオッス。まずうちさぁ……スクールアイドル同好会……あんだけど、戻らない?(唐突)

 

「……前にも言ったでしょう。私はもうスクールアイドル同好会には戻りません。スクールアイドルはもうやめたんです」

 

 嘘つけ絶対まだスクールアイドル続けたいんだゾ。戻ってきてくれよ頼むよ頼むよ~。

 

「っ! あなたに……あなたに、何がわかるんですか!」

 

 せつ菜ちゃんが机に手を叩きつけ、勢いよくイスから立ち上がりました。……手が痛かったのか少し顔をしかめていたのは内緒。

 

「……私は、自分の理想を……自分の大好きを皆さんに押しつけていました。そのせいで同好会は自然消滅してしまう流れに……。私が……私が同好会を壊したんです! ……あなたが大好きだったスクールアイドル同好会を壊してしまった。あなたが大好きだった皆を傷つけてしまった。同好会に戻っても、きっとまた皆を傷つけてしまいます。……そんな私に同好会に戻る資格も、スクールアイドルを続ける資格も、元樹さんと一緒にいる資格もありません」

 

 せつ菜ちゃんが自分を責めているのはわかっていましたが、ここまでとは……聞いているこちらも辛くなってきました。このイベントを考えた運営許すまじ。

 

「……元樹さんに無理やりキスをしたあの日、あなたから同好会のことを聞いたあの時から、あなたを見ると、あなたのことを考えると心が苦しくなるんです。あんなに楽しそうに嬉しそうに同好会のことを話すあなたを見て、あなたが同好会を本当に大切に思っていることを知って、私はなんてことをしてしまったんだろうと改めて気づかされました。……辛いんです。元樹さんとこうやって会うことが。あなたの顔を見ることが。同好会を壊してしまった私に優しくしてくれることが! だからもう放っておいてくださいっ!」

 

 せつ菜ちゃんが涙を流しながら生徒会室を飛び出してしまいました。勘ではありますが、せつ菜ちゃんの行き先はおそらく屋上です。走って追いかけましょう。走って……あっ(察し)

 

 

 

 屋上で1人で夕日を眺めるせつ菜ちゃんを発見しました。

 

「元樹さん……あなたの体力では私を見失うと思いましたが……。どうして……どうして追いかけてきたんですか? どうして私を放っておいてくれないのですか? どうして……優木せつ菜を、終わらせてくれないのですか……?」

 

 それは……。

 

「新しいスクールアイドル同好会が生まれて、皆さんが自分の理想のスクールアイドルを追求することができれば、私はそれでいいんです。それが私の願いなんです」

 

 ちょっと待って。ほも君がスタミナ切れなので喋ることができません。回復するまでお待ちを。

 

「え、あっはい……」

 

 あのさぁ……今シリアスなところじゃん。それなのにスタミナ切れで喋れないってどうなの? せつ菜ちゃんもきょとんとしちゃってるじゃん。はーつっかえ。

 

「あの……」

 

 ……ふぅ、もう大丈夫です。お待たせして申し訳ない。

 

「では、先程の質問に答えてください」

 

 何故せつ菜ちゃんを終わらせないか、ですね。答えなんて決まっています。せつ菜ちゃんが大好きだからです。

 

「私が、大好き……」

 

 楽しそうなせつ菜ちゃんが好き。嬉しそうなせつ菜ちゃんが好き。無邪気に笑うせつ菜ちゃんが好き。自分の大好きに素直なせつ菜ちゃんが好き。そして何よりもスクールアイドルとして輝いているせつ菜ちゃんが大好きだから。一番近くでせつ菜ちゃんを応援したい。だからせつ菜ちゃんに同好会に戻ってきてほしいんです。だからせつ菜ちゃんにスクールアイドルをやめてほしくないんです。

 

「でも! 私がいたら皆のためにならないんです! 私がいたら! また同好会が壊れてしまうんですよ!!」

 

 そんなことありません。かすみんもしずくちゃんも彼方さんもエマさんも誰もせつ菜ちゃんのことを責めていませんよ。むしろなんで来ないのか心配していました。

 

「えっ……」

 

 旧メンバーだけではありません。新しく入ったメンバーもせつ菜ちゃんのことを心配していました。せつ菜ちゃんに会いにくる前に、皆からその思いを託されました。ほも君の幼馴染のりなりーはせつ菜ちゃんに会いたい、いろんなことを教えてほしい、一緒にスクールアイドルをしたいと言っていました。

 せつ菜ちゃんの本当の気持ちを教えてください。本当はスクールアイドルを続けたいんじゃないですか? 同好会でまた皆と一緒にスクールアイドルをしたいんじゃないですか? スクールアイドルが大好きなんでしょう?

 

「私は……」

 

 同好会を作った時せつ菜ちゃん言ってましたよね、大好きを世界に溢れさせるスクールアイドルになるって。そのせつ菜ちゃんが自分の大好きを隠してどうするんですか。

 

「私は……」

 

 さぁ、大好きを叫びましょう。せつ菜ちゃんの大好きを、この空に向かって。

 

「私は! スクールアイドルを続けたい! 皆さんと一緒に、またスクールアイドルがやりたいです!!」

 

 ようゆうた! それでこそせつ菜ちゃんや!

 

「私の本当のわがままを……大好きを貫いても、いいんですか……?」

 

 もちろん。せつ菜ちゃんの大好きを貫き通しましょう。大好きが溢れる世界にしましょう。ほも君が全力でサポートしますから。またせつ菜ちゃんが暴走するようなことがあってもほも君が全力で止めてあげますから。

 

「……ふっ……わかっているんですか? あなたは今、自分が思っている以上に、すごいことを言ったんですからね!」

 

 眼鏡を外し三つ編みをほどくせつ菜ちゃん。せつ菜ちゃん……っ!!

 

「どうなっても知りませんよ? これは、始まりの歌です!」

 

 せつ菜ちゃんの屋上ライブ、『DIVE!』が始まりました。うおぉおおおお!

 本作ではライブシーンのスキップが可能であるため、当然スキップ……しません! 誰がスキップするか! こんなエモエモライブをスキップすることなんて私にはできない! 急いでVRゴーグルを装着し、サイリウムを振ってせつ菜ちゃんを応援します。うぉおおおお! せつ菜ちゃぁあああん!

 

 

 

「はぁ……はぁ……虹ヶ咲学園スクールアイドル! 優木せつ菜でしたっ!!」

 

 無事せつ菜ちゃんのライブが終わりました。感動しました。最高でした。このイベントを考えてくれた運営に感謝感激雨あられ。

 感動のあまりこの時は思わず適当にボタンを連打してしまいました。VRゴーグルを外している途中だったため、選択肢などは特に見えてません。……後は言わなくてもわかるな?

 

「えっ、うわぁ!」

 

 VRゴーグルを外してびっくり、ほも君がせつ菜ちゃんに抱きついて押し倒していました。汗だくではぁはぁ言っている女の子を押し倒す絵面は完全に事案です。事案っていうか完全に事後です。

 

「ちょ、ちょっと……」

 

 感動のあまりついついやってしまったと言っておきます。嘘ではないからね。

 

「元樹さん……」

 

 せつ菜ちゃんから離れようとしたら、首に手を回され逆に抱き寄せられてしまいました。

 

「んっ……」

 

 なんと、せつ菜ちゃんがキスをしてくれました! ほも君のファーストキスだけでなくセカンドキスまで奪うとは……りなりー泣いちゃうよ?

 

「んぅ……」

 

 ちょっと待って。キスが濃厚すぎませんか? こんな密着した状態でこんな濃厚なキス、そしてここは学校。風紀乱れちゃ^~う。でもいくら風紀が乱れようと生徒会役員でも風紀委員ではないほも君には関係ないので、たっぷりと舌を絡ませてせつ菜ちゃんにお返ししましょう。ホラホラホラホラ(鬼畜)

 

「ぷはぁ……元樹さん、ありがとうございました」

 

 たっぷりと1分以上キスをしました。何に対してのありがとうなんですかねぇ?

 

「先生方に見つかる前に退散しましょう!」

 

 さっきの絵面を見られるのはヤバイですからね。今の絵面も十分ヤバイですが。

 

 

 

 スクールアイドル同好会部室前に帰ってきました。

 

「久し振りの部室……うぅ、緊張してきました……」

 

 さっきも言った通り皆受け入れてくれるので大丈夫ですよ。

 

「……そうですね。では……せつ菜、行きます!」

 

 勢いよくドアを開けて部室に入っていきました。

 

「皆さん、すみませんでした! ……ってちょっと!」

 

 部屋に入った瞬間に飛びつかれて抱きつかれるせつ菜ちゃん。あら^~。完全にせつ菜ちゃんは押し潰されていますが。重そう。ほも君なら死んでた。

 

「せつ菜先輩!」

「戻ってきてくれて嬉しいよ~」

「おかえり、せつ菜ちゃん」

「皆待ってたんですよ?」

「皆さん……はい、ただいま!」

 

 ええ話や。かすみんもしずくちゃんも彼方さんもエマさんも、そしてせつ菜ちゃんも、皆最高の笑顔です。

 

「……そうだ。元樹さんにも謝らないといけませんね」

 

 ん? 何かせつ菜ちゃんに謝られるようなことされましたっけ?

 

「あの日、そして今日も……2度も勝手にキスをしてしまい申し訳ありませんでした」

 

 この子いきなりとんでもない爆弾を投入しましたよ。自分、逃走いいっすか?

 

「「は?」」

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


Part11であんな深刻な感じにしておきながら、あっさりと戻ってきてくれたせつ菜ちゃんですが、とりあえずはこれで1章完結です。
次回からサイドストーリー、それから2章に入りたいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part7/m

1章最後の初投稿です。


このサイドストーリーPart7をもちまして1章は完結です。


「あれは……」

 

 ある日の昼休み、印刷室に向かう途中で知り合いの方を見かけた。……いえ、ただの知り合いと言うには関係が深すぎますね。彼……堀口元樹さんは私を、優木せつ菜を一番近くで応援し続けてくれた人だから。

 

「あっ」

 

 元樹さんと目が合うと、彼は私を避けるように素早く隠れてしまった。私の方が先に見つけていたので、今更隠れたところで無意味なのですが。

 わざと意地悪に接していたので自業自得ではありますが、それでもかつての仲間にここまで露骨に避けられると心に来るものがありますね……。ちょうど人手も欲しかったですし、元樹さんに手伝ってもらうことにしましょう。

 

気づくなよ……あっちいけ……あっちいけ……

「何をしているんですか、堀口元樹さん?」

「へっ?」

 

 声をかけると、元樹さんはギギギという音がしそうなくらいロボットのように絶望に染まる顔をこちらに向けた。

 

「ちゃんと隠れたのにどうして……。菜々先輩のいた場所からここは完全に死角だったはず……もしかして菜々先輩は透視の使い手……?」

「あんなに怪しい動きをしていたら誰だって気付きますよ……」

「そんな……」

 

 私に気づいた途端キョロキョロと辺りを見回して隠れる場所を探していたら目立つに決まってます。周りの方達も元樹さんを変なものを見る目で見ていましたし……。

 

「あんな露骨に避けられるとは、私も嫌われてしまいましたね」

「別に嫌ってはいませんよ。……あっ、そうだ。用事があるのでもう行きますね。それじゃ」

「逃がしませんよ」

 

 この場を立ち去ろうとする元樹さんの腕を掴み逃走を阻止する。棒読み具合からして、用事というのは逃げるための方便でしょう。

 

「動けねぇ……」

 

 それでも逃げようとする元樹さんですが、どれだけ頑張ってもこの場から一歩も動けていません。元樹さんの力の弱さは今も変わらないのですね。

 

「隠れたことといい、逃げようとしたことといい、やはり私は嫌われてしまったようですね。残念です……」

「だから嫌ってるわけでは……」

「まあいいでしょう。少し手伝っていただきたいことがあるのでついてきてくれますか?」

「嫌です」

「そう言うと思ってました。なのでこのまま強制的に連れていきます」

「やめろォ! 放せ!」

 

 必死に抵抗していますが、その抵抗もむなしくあっさりと私に連行される元樹さん。ここまでくると、あまりの力の弱さに心配になります。練習の時に元樹さんにもトレーニングをさせてあげればよかったですね。

 

「あのですね、俺にも授業というものがあるんですよ、残念なことに。いやー、本当は手伝いたかったんだけどなー。授業を勝手に休むわけにはいかないもんなー。残念だなー」

「大丈夫ですよ。生徒会の手伝いということで公欠扱いにできますから」

「待って、待ってください。勝手に休んだらクラスメイトに怒られるんですよ。多分公欠ってことはそいつには伝わらないんで、怒られること間違いなしなんですよ。そいつ可愛い顔して怒るとめっちゃくちゃ怖いんですよ。正論パンチばっかしてくるし……。だからお願いします。俺を解放してください」

 

 可愛い顔のクラスメイト……それを聞いて思わず腕に力が入り、元樹さんの腕を強く握ってしまった。どうしてでしょう、自分でもわかりません……。

 

「最後まで手伝ってくれたらいいことをしてあげますから」

「やります。やらせてください。手伝い頑張るのでいいことしてください」

「清々しいほどの即答ですね……」

 

 何かご褒美をあげるなら手伝ってくれるのですね。……もし元樹さんが私が優木せつ菜だと知っていたのなら、ご褒美なんてなくても手伝ってくれたのでしょうか。……いえ、考えたところで意味ないですね。優木せつ菜はもういないのですから。

 

「では行きましょうか」

「はーい!」

 

 

 

「印刷室……? 俺は印刷の手伝いをすればいいんですか?」

「いえ、印刷はすでに終わっているので、今からその印刷したものを生徒会室に運びます」

「その運ぶやつって……もしかしてこの段ボールの山ですか……?」

「そうです」

 

 部屋の端に置かれた段ボールを指差し、絶望の表情を浮かべる元樹さん。その気持ちはすごくわかりますよ。

 

「いやいやいや、ちょっと待ってください。こんなたくさんの段ボール2人で運べるわけないでしょ。一体何十往復しなきゃいけないんですか。絶対今日中に終わりませんよ。死んじゃいますよ」

「そう言うと思って台車も用意しておきました」

 

 事前に用意しておいた台車を見せる。さすがにこの量を2人で運ぶのは大変ですからね。

 

「2台……もしかして最初から誰かに手伝ってもらうつもりだったんですか?」

「最初は副会長さんと一緒に運ぶ予定だったのですが、体調不良で欠席とのことで……」

「なるへそ。そりゃ大変だ」

「それでは運びましょうか。台車があっても一度では全て運べそうにないので、結局何往復かしなければならないでしょうが」

「まぁ素手で運ぶよりは楽だし、多少往復するくらいなら大丈夫ですよ」

 

 心強いですね。さすが元樹さん、頼りになる方です。声をかけてよかった。

 

「……あれ?」

「……どうしました?」

 

 元樹さんが段ボールを持ち上げようとしゃがんだまま動きません。箱が汚れていたりしたのでしょうか。

 

「いや、何でもないです」

 

 何でもないとは言うものの、やはり動こうとはしない。……いえ、動こうとはしていますね。箱を持ち上げようとはしていますが、そこから動こうとはしません。

 

「……もしかして持ち上げられないのですか?」

「……」

 

 元樹さんは何も答えず顔を伏せましたが、むしろその行動が答えになっています。持ち上げられないのですね?

 

「さすがにこれは想定外です……」

 

 元樹さんに力がないのはわかっていましたが、まさかこれを持ち上げられないとは……。私でも簡単に持ち上げられるというのに……。

 

「仕方ないですね……台車には私が載せるので、その後一緒に生徒会室まで運びましょう」

「かたじけない……」

「気にしないでください。堀口さんの非力さを甘く見ていた私が悪いので」

 

 申し訳なさそうにする元樹さんになるべく笑顔を見せながら、段ボールを持ち上げて元樹さんの台車に積み上げる。

 

「ふぅ……とりあえず積み終えたので行きましょう」

「申し訳ないです。運ぶのだけは頑張りますので」

「はい、頑張ってくださいね」

 

 

 

「疲れたぁ……もう無理ぃ……」

 

 1回目を生徒会室まで運び終えると、力を使い果たしたように元樹さんはその場に座り込んでしまいました。今思い出しましたが、元樹さんはスタミナもありませんでしたね……。

 

「まだ1往復目ですよ? もっと頑張ってください」

「片道10分ですよ? そりゃこんな風になりますって」

 

 逆に10分台車で荷物を運んだだけでこんな風になってしまう元樹さんが心配です。落として怪我をされるのが怖くて元樹さんには段ボールを降ろさせたくありませんので、私が降ろしている間は休んでもらっても構いませんが。

 

「さて、荷物も降ろしたので印刷室に戻りますよ」

「えぇ……もう少しだけ休ませてくださいよ」

「時間がないのでダメです」

 

 運んだ後もやることがまだまだありますし、休んでばかりでは今日中に終わらなくなってしまうので。そうなれば私も元樹さんも生徒会室に泊まり込みで作業をしなければなりません。

 

「そんなぁ」

「ゆっくり戻ってあげますから」

「はぁ……」

 

 嫌そうな表情をしながらも立ち上がって私についてくる姿が何だか子供のように見えます。お手伝いが終わった後はちゃんとご褒美をあげなければなりませんね。

 

 

 

「ふぅ……さすがに疲れましたね……」

 

 5往復し、ようやく全ての段ボールを生徒会室に運び終えました。さすがの私も疲れました。元樹さんは……すでに虫の息ですね。最後まで頑張ってくれたので当たり前といえば当たり前ですが。

 

「ありがとうございました。堀口さんがいなければ倍の時間がかかってましたので」

 

 声は出さず、腕を突き上げてグーサインで応える元樹さん。優しいのか、それとも単にご褒美が欲しかったのか、どちらにせよ最初から最後まで真面目にやってくれて助かりました。まだまだ仕事はありますが、ご褒美ははずまないといけませんね。何がいいでしょうか……動いてお腹も空いているでしょうし、アイスとかがいいですかね?

 

「……ふぅ。じゃあ俺帰るんで。その前にご褒美ください」

「いえ、まだ終わってませんよ。むしろ本当に手伝ってほしいことはここからです」

「……は? 午後の授業全部休めと?」

「先程も言った通り公欠になるので大丈夫ですよ。もう先生に連絡して許可はもらってますから」

「それはいいんですけど……」

 

 元樹さんは自分のスマホを取り出し、画面を見て少しめんどくさそうな顔をしました。言っていた怒ったら怖い可愛い人から連絡が来ていたのでしょうか。ささっとスマホを操作しておそらく連絡を返し、その後スマホをポケットに戻し、そして元樹さんは立ち上がりました。

 

「今からは何すればいいんですか?」

 

 嫌そうにしながらもなんだかんだ手伝ってくれるのが元樹さんのいいところです。

 

「この段ボールの中には明日配布予定の冊子が入っています。厳密にいえば、まだバラバラの状態の冊子ですが。なので今からホッチキスで綴じていきます」

「えぇと……それを何冊分?」

「高等部の全生徒に配布するので、約3000冊ですね」

「冗談はやめてください」

「残念ながら冗談ではありません」

 

 冗談だと信じたいのは私の方です。

 

「俺帰るんで。ご褒美はいいですから」

「待ってください! お願いですから帰らないでください! 私1人では明日までに終わらないんですよぉ!」

 

 生徒会室から立ち去ろうとする元樹さんの体にしがみつき、逃亡を阻止する。絶対に逃がしません。元樹さんには最後まで地獄に付き合ってもらいます。

 

「なんで紙媒体で配布する必要があるんですか? 全生徒にタブレット配布してるんだし、電子データで配布すりゃいいじゃないですか」

「それは私に言われても困ります。先生方からお願いされたことなので……」

 

 本当に元樹さんの言う通りですよ。あまり先生方を悪く言いたくありませんが、私にも電子データで配布しない理由がわかりません。紙代も浮くのに……。

 

「それに明日配布のものをなんで今日やるんですか?」

「お願いされたのが昨日の帰り際なんです……本当は今日の放課後に生徒会全員でする予定だったのですが、私以外体調不良で休んでしまい、仕方なく午後の授業を休んでやることになったのです。それでも私1人では終わるかどうかわからなくて……」

 

 まさか私以外全員休んでしまうとは……。休んだことをもっと早くに聞いていれば朝からできたのですが……。

 

「なのでどうしても堀口さんに手伝ってほしいんです。お願いします。お礼になんでもしますから」

「なんでも……本当になんでもですか?」

「私にできる範囲内でですけど」

「そうですね……じゃあ菜々先輩を押し倒してもいいですか?」

「おっ、おおお、押し倒す!?」

「菜々先輩って可愛いしスタイルもいいですよね。透き通った目、綺麗な肌、抱きしめたくなる体つき、柔らかそうで吸いつきたくなる唇、そして大きくて揉みごたえのありそうな胸、前会った時から全部が気になってたんです。エッチしてもいいですか? お堅そうな菜々先輩が乱れて喘ぐところが見てみたいです。というか俺の手で乱れさせて喘がせたいです。いいですか? いいですよね? なんでもするって言いましたもんね。ほら、こっちに来てください。逃げちゃダメですよ。ほらほらほらほら」

「そんなことダメです!」

 

 手をいやらしく動かしながらじりじりと詰め寄ってくる。後退りながら、守るように自分の体を抱きしめる。元樹さんの目は本気そうで、でもどこか面白いものを見るかのような目にも見えて、それがより私を混乱させる。

 

「……ふっ、冗談ですよ」

「確かにこの場所は鍵をかけられて、その鍵も私が持っている1本だけですから誰かが入ってくる心配もありませんし、高い階にありますから外から覗かれる心配もありませんし、中の音が外に漏れることもありませんからそういうことをするのに最適かもしれませんけど、風紀を乱すのはダメです!」

「あの、俺の話を聞いてください。……もしかしてやる気満々だったりします?」

「ち、違います! そんなわけないじゃないですか! だって堀口さんとそういうことをしてしまったら別れが辛くなるじゃないですか……」

 

 スクールアイドル同好会の部員が集まったら活動の再開を許可して、その後はもう二度と元樹さん達に関わらないつもりなのに……それが私にできる贖罪なのに……。それなのに元樹さんとそういうことをしてしまったら元樹さんから離れたくなくなってしまう。元樹さんのことがさらに大好きになってしまう。

 

「……ですが、堀口さんがどうしてもと言うなら……どうぞ」

 

 元樹さんの発言で自分の本当の気持ちに気がついた。元樹さんとそういうことをするのは嫌ではない、むしろしたい、してほしい。そう思っている自分がいる。私は元樹さんが大好きだったのだ。大好きで大好きで仕方がない。もっと話したい。もっと近づきたい。もっと触れ合いたい。もっと一緒にいたい。……気づくきっかけが元樹さんのセクハラ紛いの発言なのはあれですけど……。

 でも私は気づくのが遅かった。もっと早くに気がついていれば、同好会にいた時に気がついていれば、いっぱいアピールして告白もできたのに……。でもそれはもう叶わない。だって私は元樹さんと関わらないと決めたから。……だけど今日だけは……今、この時だけはいいですよね? 大好きな元樹さんと深く繋がってもいいですよね……?

 

「どうしたんですか……? 早くきてください……」

 

 リボンをほどき、上着を脱ぐ。元樹さんの視線がわかりやすく私の胸元に向いている。恥ずかしいけど……でも元樹さんが見たいのであれば……。

 

「あのあのあの、やる気満々なのはいいですがせめて仕事が終わった後にしてください。手伝いのご褒美なんですから、終わった後じゃないとおかしいでしょ」

「……えっ? そ、そうでしたね。早とちりしてしまいました……」

 

 気分が高まって暴走してしまいました。

 

「早く上着を着てリボンもつけてください」

「わかりました……」

 

 元樹さんは本当に冗談のつもりで言ったのでしょうか……私はこんなに本気だというのに……。

 

「ホ、ホッチキスです。数が多いですから急いでやりましょう。……早く終わればその分楽しめますので……」

「ええ急ぎましょう。マジで今日中に終わらない可能性があるので」

 

 

 

 製本作業を開始してから少し経った後、元樹さんの動きが急に止まった。何か考えごとをしているかのように虚空を見つめている。

 

「堀口さん、手が止まってますよ?」

「……おっと、すみませんでした。ちょっと考えごとを……今からはちゃんと集中してやりますので」

 

 そう言うと元樹さんは私とは比べ物にならない速さで製本をしていく。たまにページを取る順番を間違えたりしているけれど、それを含めても私なんか足元にも及ばない速さです。

 

「す、すごい速さですね」

「慣れれば菜々先輩もできますよ」

 

 残念ですが私にはできそうにありません……。

 

「……堀口さん。スクールアイドル同好会の部員集めはどうなってますか?」

「今は、えっと……7人、7人集まってますね。俺込みで」

「もう7人も集めたんですか!?」

 

 元樹さんなら絶対に私の出した条件を達成してくれると信じてはいましたが、さすがに速すぎます。どんな勧誘の仕方をすればこんなに集められるんですか……。

 

「もうあれから4日ですからね。これぐらい集まって当然ですよ」

「あれからまだ4日ですよ!? いくら何でも速すぎませんか!?」

「知り合いに声をかけてたら簡単に集まりました」

「元々同好会に所属していた方達はどうしてますか?」

 

 しずくさんに彼方さん、エマさんがどうなっているか知りたい。ちゃんと戻ってきてくれたのでしょうか。元樹さんのことですからあの方達を放っておくなんてことはしないでしょうが……。

 

「かすみはもちろん、しずくと彼方先輩は戻ってきてくれましたよ」

「そうですか、よかったですね」

「はい。戻ってきてくれて嬉しいです。新しい人達も加入してましたし……あっ、そうだ。俺の可愛い可愛い幼馴染も入ってくれたんですよ。小動物みたいに可愛いやつなんで、スクールアイドルやったらきっとすごい人気が出ると思います」

 

 楽しそうに同好会の現状を話してくれる。元樹さんは同好会のことを本当に大切に思っているんですね。それがわかると同時に私に重く伸しかかる罪悪感。元樹さんが大切にしていた場所を私は壊してしまった。決して償うことのできない私の罪。私に元樹さんを好きになる資格なんてない。ましてや元樹さんから愛してもらおうなんて……。

 

「ただ……エマ先輩とせつ菜先輩は未だに行方すら掴めていません」

「そうですか……昨日その優木せつ菜さんとお会いしたのですが、1つあなたに伝言を頼まれました。彼女に同好会に戻る意思はないそうです。ですから私のいない新しい同好会で頑張ってほしい……と彼女はおっしゃってました」

「戻る気がない……それは本当にせつ菜先輩の意思だったんですか……?」

「ええ。きっと、そうだったと思います……」

「そう、ですか……」

 

 私はもう同好会には戻らない。それは本当のことです。私が戻ったってまた同好会を壊してしまう。また元樹さんの心を傷つけてしまう。それならば私は戻らない道を選びます。大好きな人を傷つけてしまうくらいなら、私は大好きな人と関わることをやめます。

 

「私から話を振っておいてなんですが、今は口よりも手を動かしましょうか。まだ100冊を超えた辺りですし……」

「……そうですね。頑張りましょうか」

 

 目標まで2900冊。……これ、本当に今日中に終わるのでしょうか……?

 

 

 

「やぁぁぁっと終わりましたー……」

「しんど……」

 

 無事に3000冊製本終わりました。5時過ぎ……始めたのが1時頃だったので、4時間以上も製本をしていたんですね。途中で売店に行って買ったお菓子を食べて休憩しましたが、休憩したのはその時の約30分ほどだけで、それ以外はずっと製本をしていました。最初の頃はお互い話さずに集中していましたが、途中で慣れてきて話しながらでもハイスピードでできるようになっていました。まぁ一生分と言っていいほど製本をしましたからね。上達して当たり前だと思います。

 

「もうしばらくホッチキスは見たくありません……」

「ですね……」

 

 ホッチキスを見るだけでホッチキスで止める音が頭の中に響いてきます。うぅ、頭がおかしくなりそうです……。元樹さんも同じなのか頭を押さえています。

 

「さて、最後の仕事をしましょうか」

 

 こうやってずっと休憩している暇はありません。

 

「最後の……仕事?」

「今作った冊子を全部段ボールに戻して教員室まで運びます」

「ひぇ……また5往復しないといけないの……」

「はい」

「やめてくれよ……」

「これが本当に最後ですから頑張りましょう」

「教員室って印刷室のすぐそばなんだし、最初から印刷室でやればよかったのでは?」

「先生に邪魔になるから生徒会室でやってくださいと言われたので……」

「おのれぇ……!」

 

 私も本当は印刷室でやりたかったですよ……。

 

「はぁ……文句を言っても仕方ない。頑張りますか」

 

 元樹さんは空の段ボールを台車に置いてから、完成した冊子を中に詰めています。これなら非力な元樹さんでも台車に積むことができますね。降ろすのは私の仕事ですが……。

 

 

 

 教員室まで5往復して全ての冊子を運び終えた後、元樹さんには先に生徒会室に戻ってもらい、私は借りていた台車を元の場所に戻しに行きました。

 

「お待たせしました」

 

 そしてそれも終わり、ようやくご褒美の時間です。

 

「鍵は閉めたのでもう誰も入ってきませんよ」

「え」

「それでは……し、しましょうか」

 

 リボンはとった。上着も脱いだ。そして今はシャツのボタンに手をかけている。邪魔されることはない。私の裸を見るのは元樹さんだけだから、恥ずかしさもあるけれど安心して脱ぐことができます。

 下校時刻まではまだまだたっぷりありますので、2人っきりでたっぷりと特別な時間を愛を育むことができます。

 

「ちょちょちょ、ちょっと待って!」

「心配しなくても大丈夫ですよ。私も一応……一応ですがそういう知識はありますので」

 

 保健が苦手ではありますが、そういう知識もあることにはあります。夜に1人ですることもたまに……本当にたまぁにですが、我慢できずにしてしまうこともあります。

 

「……ですが、その……初めてなので、優しくしてくださいね……?」

「ストップ! 菜々先輩ストップ!」

 

 元樹さんは後退って私から逃げていく。どうしてですか……? 私と、したかったのではないのですか……?

 

「…………せつ菜、先輩……」

 

 元樹さんが不意に呟いた言葉。とても小さな声だったのに私の耳にはっきりと届いた。

 

「せつ菜先輩……ですよね?」

 

 適当に言い当てたものではない。元樹さんは私がせつ菜だと確信した目で見ている。

 

「……いつから私がせつ菜だと気付いていたんですか?」

「この学校の情報に詳しい人に聞きました。せつ菜先輩の目撃情報がないこと。それどころか学年や学科でさえも誰も知らないということ。そして優木せつ菜は偽名で、その正体は別の生徒である可能性があるということ。……優木せつ菜という存在しない生徒。そんな人と話ができる菜々先輩は何者なのか……。答えは簡単です。菜々先輩こそがせつ菜だからです。違いますか?」

「そうですか、情報から推察して……」

 

 元樹さんはこういう推察は得意でしたからね。ある程度情報が揃っていれば私=せつ菜だと気付けるということですか……。

 

「その通りです。堀口さん……いえ、元樹さんの推察通り、私が優木せつ菜です」

 

 眼鏡を外し、髪もせつ菜の時の髪型に変える。

 

「やっぱりせつ菜先輩なんですね」

「本当は正体を明かすつもりはありませんでした。ですが、バレてしまったものは仕方ありません。こちらの姿で元樹さんとすることにします。元樹さんとの最後の思い出として。せつ菜としての最後の思い出として……」

「最後の……うおっ!」

 

 何かを言い終える前に元樹さんに近づいて押し倒す。頭をぶつけないようにだけ気をつけて……。

 

「ふふっ、元樹さんは力がないですから、こうやって押し倒せばもう何もできませんね」

「んんーっ!」

 

 抜け出そうと暴れる元樹さんですが、右手を押さえつけて、上に私が覆いかぶさっているため元樹さんの力ではどう頑張っても抜け出すことはできません。空いている左手で殴りかかってこられたらわかりませんが、優しい元樹さんはそんなこと決してしないでしょう。それに殴られそうになったらそちらも抑えればいいだけですし。

 

「……さっき言っていた言葉、あれはせつ菜先輩の本心だったんですか……?」

「……スクールアイドル同好会に戻らないというのは紛れもなく私の本心です。優木せつ菜はもういません。私はスクールアイドルをやめたんです」

「せつ菜先輩……同好会に戻ってきてほしいです」

「それはできません。私が戻ったら、また同じようなことになってしまいます。部員を集めろと言ったのも、同じ過ちを繰り返さないためです。……優木せつ菜だけが消えて、新しい虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が生まれる。それが私の最後のわがままです」

 

 それを告げると、元樹さんはとても悲しそうな顔になりました。ごめんなさい……ですがもう決めたことなんです。

 

「……ですが、今日元樹さんと会って、もう1つ、どうしても叶えたいわがままが生まれてしまいました」

「え……?」

「……元樹さん、私の最後のわがままを聞いてください。……これが本当に最後ですから……」

 

 右手で元樹さんの頬慈しむように撫でながら、少しずつ私の顔を近づけていく……。

 

「んっ……」

 

 そしてとうとう2人の唇が重なった。私は自分を抑えられず、元樹さんにキスをしてしまった……。

 30秒ほど経っただろうか。あるいは1分以上、もしかしたら一瞬の出来事だったかもしれない。時間の流れがおかしくなってしまうほど濃密な時間を過ごし、そして2人の距離は離れた。

 

「……無理やりしてしまって申し訳ありません。どうしても初めては元樹さんとしたかったんです。ですが、わがままはこれが最後ですから……さようなら、元樹さん……」

「せつ菜先輩待って!」

 

 あんなことをしたのに、それでも私のことを思ってくれていることがわかる表情が、優しいその目が私には辛かった。それに耐えきれなくて生徒会室を飛び出してしまう。

 さようなら、元樹さん。さようなら、優木せつ菜……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数日が経った。

 あの時の元樹さんの表情は今でもはっきりと覚えている。それだけではなく、同好会で元樹さんと一緒に過ごした楽しい時間。大好きだった時間。私の頭に深く根付いているそれが私の心を蝕んでいく。忘れたいのに忘れられない。忘れようとすればするほど頭の中で思い起こされてしまう。

 失って初めて気づく。同好会の皆と、元樹さんと過ごす時間はとても満たされていた。何よりも大好きな時間だった。……でもその時間はもう戻ってはこない。私の手で壊してしまった。私の意志で手放してしまった。だから未練はない。ない……はずなのに……。

 

『コンコン』

 

 私の思考を断ち切るように生徒会室の扉を誰かがノックした。

 思考を中断できたのはありがたいかもしれませんね。きっとあのままだったら泣いてしまったでしょうから。

 

「どうぞ」

「失礼します」

 

 けれど、入ってきた人がよくなかった。一番会いたくない人が入ってきてしまった。

 

「……もと……いえ、堀口元樹さん」

「久し振りですね、せつ菜先輩」

「何かご用ですか?」

「改めて勧誘に来ました。せつ菜先輩、スクールアイドル同好会に戻ってきてほしいです」

 

 やめて……。

 

「……前にも言ったでしょう。私はもうスクールアイドル同好会には戻りません。スクールアイドルはもうやめたんです」

「それが本当にせつ菜先輩の本心なんですか?」

 

 もうやめて……お願いだから……。

 

「スクールアイドルはやめたくない、まだまだ続けたいって顔に出てますよ」

「っ! あなたに……あなたに、何がわかるんですか!」

 

 感情が抑えられず、思わず机を叩いてしまう。

 

「せつ菜先輩……」

「……私は、自分の理想を……自分の大好きを皆さんに押しつけていました。そのせいで同好会は自然消滅してしまう流れに……。私が……私が同好会を壊したんです! ……あなたが大好きだったスクールアイドル同好会を壊してしまった。あなたが大好きだった皆を傷つけてしまった。同好会に戻っても、きっとまた皆を傷つけてしまいます。……そんな私に同好会に戻る資格も、スクールアイドルを続ける資格も、元樹さんと一緒にいる資格もありません」

「資格なんて必要ありません」

「……元樹さんに無理やりキスをしたあの日、あなたから同好会のことを聞いたあの時から、あなたを見ると、あなたのことを考えると心が苦しくなるんです。あんなに楽しそうに嬉しそうに同好会のことを話すあなたを見て、あなたが同好会を本当に大切に思っていることを知って、私はなんてことをしてしまったんだろうと改めて気づかされました。……辛いんです。元樹さんとこうやって会うことが。あなたの顔を見ることが。同好会を壊してしまった私に優しくしてくれることが! だからもう放っておいてくださいっ!」

「せつ菜先輩!」

 

 あの日と同じように生徒会室を飛び出す。後ろから元樹さんの足音が聞こえるが、それも少ししたら聞こえなくなった。元樹さんのスタミナなら簡単に撒くことができるでしょう。

 どこに行きましょうか。生徒会室に戻るわけにもいきませんし……そうだ、屋上に行きましょう。今の時間なら綺麗な夕陽が見られるはずです。夕陽がきっと私の心を慰めてくれるはずです。

 

 

 

「綺麗な夕陽……」

 

 屋上から見る夕陽はとても綺麗なものでした。これならば元樹さんとの思い出も綺麗さっぱり忘れられそうです。

 

「はぁ……はぁ……見つ、けた……!」

 

 ですが、また元樹さんが私のところにやってきました。どうしても元樹さんは私を連れ戻したいみたいです。

 

「元樹さん……あなたの体力では私を見失うと思いましたが……。どうして……どうして追いかけてきたんですか? どうして私を放っておいてくれないのですか? どうして……優木せつ菜を、終わらせてくれないのですか……?」

 

 どれだけ問いかけても答えは返ってこない。

 

「新しいスクールアイドル同好会が生まれて、皆さんが自分の理想のスクールアイドルを追求することができれば、私はそれでいいんです。それが私の願いなんです」

「ちょ……待って……疲れた……」

「え、あっはい……」

 

 答えないと思ったらスタミナ切れでしたか……元樹さんらしいというかなんというか……。おかげで空気が緩んでしまいました。

 

「あの……」

「……ふぅ、もう大丈夫です。待ってもらってすみません」

 

 たっぷり1分ほど回復に使い、ようやく元樹さんは復活しました。

 

「では、先程の質問に答えてください」

「答えなんて決まってます。せつ菜先輩のことが大好きだからです」

「私が、大好き……」

「楽しそうなせつ菜先輩が好き。嬉しそうなせつ菜先輩が好き。無邪気に笑うせつ菜先輩が好き。自分の大好きに素直なせつ菜先輩が好き。そして何よりもスクールアイドルとして輝いているせつ菜先輩が大好きだから。一番近くでせつ菜先輩を応援したい。だからせつ菜先輩に同好会に戻ってきてほしい。だからせつ菜先輩にスクールアイドルをやめてほしくない」

 

 元樹さんの言葉が……一言一言が私の心に響き渡る。

 聞きたくない……やめてください……。私はスクールアイドル同好会を壊したんです。大好きな人の大好きな場所を壊したんです。そんな私にそんな優しい言葉をかけないで……!

 

「戻ってきてください。一番近くでせつ菜先輩のことを応援させてください」

「でも! 私がいたら皆のためにならないんです! 私がいたら! また同好会が壊れてしまうんですよ!!」

「そんなことない! かすみもしずくも彼方先輩もエマ先輩も、もちろん俺も、誰もせつ菜先輩のことを責めていません。むしろ心配していました」

「えっ……」

 

 私は決して許されないことをした。それなのに、そんな私を責めていないなんて……心配してくれているなんて……。

 

「それだけじゃありません。新しく入った人達も皆せつ菜先輩を心配していました」

 

 高咲さん達が……?

 

「本当は皆せつ菜先輩に会いに行こうとしてました。でも俺だけで行かせてほしいと頼んだんです。せつ菜先輩との決着は俺自身でつけたかったですから。……生徒会室に行く前、皆からせつ菜先輩への思いを託されました。絶対に連れ戻してほしい……と」

 

 皆さん……。

 

「俺の幼馴染……天王寺璃奈って言うんですけど、璃奈もせつ菜先輩に会いたがってました。せつ菜先輩にいろいろ教えてほしい、一緒にスクールアイドルをやりたい……ですって。璃奈のお願いを叶えてあげてくださいよ」

 

 天王寺璃奈さん……確か情報処理学科の1年生ですね。そうですか……天王寺さんが元樹さんの幼馴染……。

 

「せつ菜先輩の本当の気持ちを教えてください。本当はスクールアイドルを続けたいんじゃないですか? 本当は同好会の皆と一緒にスクールアイドルをやりたいんじゃないですか? だってせつ菜先輩はスクールアイドルが大好きでしたからね」

「私は……」

「同好会を作った時せつ菜先輩言ってましたよね。大好きを世界に溢れさせるスクールアイドルになりたい……って。それを言ったせつ菜先輩自身が大好きを心の奥に封じ込めてどうするんですか」

「私は……」

「さぁ、せつ菜先輩の大好きを聞かせてください」

「私は! スクールアイドルを続けたい! 皆さんと一緒に、またスクールアイドルがやりたいです!!」

 

 心の奥に封じ込めていた気持ちを、本当の自分を解き放つ。元樹さんの言葉が、皆さんの思いが私を鎖から解き放ってくれました。

 

「よく言えましたね。それでこそせつ菜先輩です」

「私の本当のわがままを……大好きを貫いても、いいんですか……?」

「もちろんです。最後まで貫き通しましょう。一緒に大好きで溢れる世界を作りましょう。俺が全力でサポートしますから。そのために俺がいるんですから」

 

 ……やはり元樹さんの言葉はすごいですね。元樹さんなら本当にやってくれると、そう思わせるだけの何かが言葉に込められています。

 

「……ふっ……わかっているんですか? あなたは今、自分が思っている以上に、すごいことを言ったんですからね!」

 

 眼鏡を外し、髪型をせつ菜にする。

 

「せつ菜先輩……!」

「どうなっても知りませんよ? これは、始まりの歌です!」

 

 元樹さんと一緒に歌詞を考えて、踊りも考えて、たくさんたくさん練習して、けれど一度も披露機会のなかった歌、『DIVE!』を今ここで披露します。1秒たりとも目を離さず、ちゃんと私だけを見ていてくださいね、元樹さん。

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 DIVE!を最後まで歌い上げた。しばらく練習をしていなかったせいでうまく踊ることのできなかった場所もあったけれど、最後まで踊りきった。歌いきった。優木せつ菜のリスタートとしては十分すぎる始まりです。

 下を見ると、いつの間にかたくさんの人が私の歌を聞いてくれていました。私のことを見てくれた皆さんにちゃんと応えないといけませんね。

 

「虹ヶ咲学園スクールアイドル! 優木せつ菜でしたっ!!」

『うわぁあああああ!!』

 

 歓声が巻き起こる。これだけ騒ぎになると先生方に怒られてしまうかもしれませんね。

 

「せつ菜先輩!」

「えっ、うわぁ!」

 

 下にいる皆さんに手を振ったりしていると、急に元樹さんが抱きついてきました。突然のことで踏ん張りがきかず尻もちをついてしまう。

 

「ちょ、ちょっと……」

「せつ菜先輩大好き! 最高でした!」

 

 褒めてくれるのも抱きつかれるのも嬉しいけど、汗をかいているので今は離れてほしい。変なにおいがしたら嫌ですから……。

 

「……あっ、すみません……。興奮のあまりついつい抱きついてしまいました……」

 

 元樹さんが離れていく。においが気になるけれど、でもやっぱり離れたくない。もっと元樹さんの近くにいたい。

 

「元樹さん……」

 

 いろいろ悩んだ結果、元樹さんの首に手を回して抱き寄せることにしました。

 

「んっ……」

 

 そしてキスをする。もう私は大好きを隠さないって決めましたから。

 元樹さんの心に私の大好きを刻むようにたっぷりとキスをする。呼吸のために一瞬口を離したりするけど、すぐにキスしなおす。始めは戸惑っていた元樹さんも、再び私の腰に手を回して抱きしめてくれました。お互いの体がさらに密着する。体を動かすたびに元樹さんの体に擦れる胸が心地いい快感を与えてくれる。

 

「んぅ……」

 

 元樹さんも興奮してきたのか、私の中に元樹さんの舌が侵入してくる。侵入した舌が私の口内を舐めまわし、とてつもない快感を与えてくる。経験したことのない快感に侵されてどうかしてしまいそうで、私も舌で元樹さんの舌を押し返そうとするが、それが逆効果だった。私の舌と元樹さんの舌が絡み合い、更なる快感となって私に返ってくる。気持ちいい……こんなの経験したことない……おかしくなっちゃうっ……!

 

「ぷはぁ……」

「はぁ……はぁ……」

 

 もう限界とばかりに元樹さんから離れる。随分と長くキスしていたから、それとも激しくしすぎたからなのか、元樹さんの息もきれています。マイルドなキスであれば私はもっとできたのですが……さっきのはさすがに刺激が強すぎます。あれがディープキスというものなのでしょうか。1人では味わえない快感がとても気持ちよくて、大好きになってしまいそうです。まだあまり長い時間続けられませんが……。

 

「元樹さん、ありがとうございました」

「どういたしまして。せつ菜先輩も戻ってきてくれてありがとうございます」

「ふふっ、どういたしまして!」

 

 元樹さんの笑顔に私のできる最高の笑顔で応える。

 

「それにしても……すごい騒ぎになっちゃいましてね」

「そうですね」

 

 私達が濃厚なキスをしている中、下にいる方達はまだ歓声をあげています。さっきの私達が見えていたらどうなっていたのか……別の意味で歓声があがるかもしれません。

 

「無許可のライブ……先生に見つかったら怒られますね」

 

 怒られるのはまずいですね。スクールアイドル同好会の今後に関わります。

 

「先生方に見つかる前に退散しましょう!」

「おー!」




感想とか評価とかいっぱいほしいな。
最近感想がいっぱい貰えてウレシイ……ウレシイ……。

1章完結ということで、現時点での皆の親密度などを以下にまとめておきます。ぶっちゃけると備忘録です。



高咲侑
親密度:LikeとLoveの中間
コンディション:なし

 ほも君との大きなイベントは現状なし。でも熱烈に口説かれた。
 アイスの食べ方がいやらしい。えっちな子。
 どういうわけか過去の周回の記憶が一部残っている。そのおかげで若干親密度が高くなっている。この影響がのちにどう響くかは現状不明。



上原歩夢
親密度:LikeとLoveの中間、若干Love寄り
コンディション:母性

 膝枕をしてあげたり、お弁当で胃袋を掴んだり、絶賛ほも君の心を掴み中。
 ほも君宅のトイレで自家発電をした経験あり。えっちな子。
 コンディション『母性』を獲得してしまったせいで親密度が告白イベントラインまで上昇しても告白イベントが発生しない。歩夢ちゃんが本当の気持ちに気がつくことでコンディションが解消される。プレイヤーからはこのコンディションを確認できない。



中須かすみ
親密度:少し高めのLike
コンディション:なし

 可愛さの権化。
 可愛さでほも君を魅了する。可愛い。
 ほも君のことは同好会の中で一番信頼している。
 ほも君に頭を撫でてもらうと嬉しくなる。可愛い。
 おバカ。可愛い。



桜坂しずく
親密度:Love
コンディション:なし

 ほも君に告白しようとしてかすみんに邪魔された。可哀そう。
 お尻がでかい。全てがやらしい。やらしい子。
 ゲーム開始時点で親密度が告白イベントラインを超えていた。理由は不明。
 周回の記憶が若干残っているのか、歩夢ちゃんにほも君がとられる気がして警戒している。でも歩夢ちゃん以外にも伏兵がたくさんいるので警戒が甘い。



朝香果林
親密度:???
コンディション:???

 同好会に入ったばかりであまり関わりがない。
 ファッション雑誌チャートがどこまで親密度に響いているのか……。



宮下愛
親密度:???
コンディション:???

 愛ちゃんなので親密度が低いなんてことはない……はず。
 ほも君に勉強を教えるなどした。週末にはほも君と出かける約束をしている。



近江彼方
親密度:???
コンディション:???

 ほも君を抱き枕にするくらいなので親密度は決して低くない……はず。
 ほも君の弱みを握っている。



優木せつ菜
親密度:Love
コンディション:なし

 可愛いダンプカー。ほも君のファーストキスを奪ったし、ファーストディープキスも奪った。
 体つきがえっち。たまに自家発電もする。絶対えっち。
 現状ヒロインレースで圧倒的首位に立っている。あれだけキスをすれば当たり前。
 この世界における『DIVE!』はほも君と一緒に作ったという設定。



エマ・ヴェルデ
親密度:???
コンディション:???

 同好会に戻ってきたばかりなのであまり関わりがない。でも初期メンバーなので親密度は低くない……はず。
 スイスの有名なお土産って何?



天王寺璃奈
親密度:Love
コンディション:なし

 ほも君の幼馴染。本作におけるメインヒロイン……だったはずなのに……。
 ほも君Loveだけどなかなか行動を起こせていない。その結果せつ菜ちゃんにほも君のファーストキスを奪われた。
 ほも君のクラスメイトとして栞子ちゃんのことを認識しており、ほも君に対して好意を持っていることも察している。
 しずくちゃんがほも君に好意を抱いていることも知っているが、ほも君は最終的に自分を選んでくれるだろうと信じているので放置している。



三船栞子
親密度:Love
コンディション:恋愛強者

 ほも君のことが大好き。告白する勇気は出ない。
 ほも君がスクールアイドル同好会所属であることはまだ知らない。
 恋愛強者本を読んだことでコンディション『恋愛強者』を獲得した。プレイヤーからはこのコンディションを確認できない。
 恋愛つよつよになった栞子ちゃんはほも君を惚れさせて、向こうから告白するように仕向けようとたくらんでいる。
 ほも君と撮ったプリクラは大切に保管している。
 自家発電をしている時にほも君から電話がかかってきてびっくりした。スマホで動画を見て発電していたので、びっくりした拍子に通話ボタンを押してしまった。危うく自家発電中の体をほも君に見られるところだった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part20/n

これが本当の1章完結編なので初投稿です。


部長を決めていなかったので、まだ1章完結ではありませんでした。


 L!(Love)L!(Life)L!(Live)みたいなRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はせつ菜ちゃんを同好会に連れ戻して、屋上ライブの後にたっぷりとキスしてもらいました。今回はその続きからで、せつ菜ちゃんが設置した地雷の回収を行います。

 

「ただいまより、せつ菜ちゃんキス事件の裁判を行います」

 

 何故か部室で裁判が始まってしまいました。裁判長は侑ちゃんがやるみたいですね。

 

「被告人前へ」

「うぅ……どうしてこんなことに……」

 

 被告人のせつ菜ちゃんがイスにロープで縛られています。決意して同好会に戻ってきたのに、戻ってきた途端ロープで縛られて被告人扱いされるせつ菜ちゃん可哀そう。でも爆弾に火をつけたのはせつ菜ちゃん自身なので自業自得な気もしますね。

 どちらにしてもロープで強調された胸がすっごくエッチなのでモザイクかけておきますね。ただのRTA動画なのにR-18タグをつけられたら困りますからね。

 

「検察側と弁護側、準備はいいですか?」

「検察側準備OKです」

 

 検察側はしずくちゃんなんですね。ブチギレてたし演技も上手いしで妥当な人選ですね。

 

「弁護側も準備OKよ」

 

 弁護側は果林さん……不安ですね。資料の整理とかできなさそう(偏見)

 

「では……えっと……デュ、デュエル開始!」

 

 裁判(デュエル)が始まってしまいました。ちなみに、ほも君はロープで縛られた状態でりなりーの隣で正座させられています。

 

「私はせつ菜は無罪だと思うわ」

「その証拠は?」

「証拠はないわ」

 

 あのさぁ……そもそも有罪の証拠しかないので当たり前なのですが、そんなドヤ顔で言いますかね……。

 

「でも、元樹君がどこで誰とキスしようが問題ないんじゃない? 恋愛はその人の自由でしょう?」

「うっ、それは……そう、ですが……」

 

 よくわかりませんがしずくちゃんに効いてるみたいです。さすが果林さん、言うことが違いますね。最初は不安でしたが、案外何とかなりそうです。果林さんなら有罪を無罪にできそうです。

 

「で、でも、せつ菜さんが元樹君に勝手にキスしたのはいけないと思います!」

「そうね……」

 

 流れ変わったな。

 

「せつ菜、それは事実なの?」

「それは……その……じ、事実、です……」

「元樹君に勝手にキスするなんて羨ま……じゃなかった、風紀を乱すようなこといけないと思います! それにせつ菜さんは生徒会長じゃないですか。生徒会長が率先して風紀を乱すようなことをしてもいいと思っているんですか?」

「……ごめんなさい」

「……これはもう私に勝ち目はないわね」

 

 果林さん諦めないで。最初から負け戦だったとしても最後まで戦い抜いて。

 

「……判決を言い渡します。せつ菜ちゃんは有ざ……」

「待ってください! 確かに私が勝手にキスはしましたけど、元樹さんはそれを受け入れてくれてました! 今日は元樹さんの方から舌を絡めてきたんですよ!?」

「……」

 

 あっ、ふーん……(察し) これはもうダメかもしれんね。お前もう生きて帰れねぇな。

 

「元樹? 本当なの?」

 

 何のことかなー。ほも君わかんなーい。

 

「嘘。目が泳いでる」

 

 すぐに嘘だってバレてて草も生えませんね。

 

「元樹、本当のことを言ってほしい。本当のことを言ってくれるなら、私もちゃんと受け入れるから」

 

 こんな可愛くて健気な幼馴染がいるのに11股かけようとするほも君は人間の屑。私のことなんですけどね。

 

「そう……やったんだ……」

 

 本当のことを伝えると、ボードの表情は変わっていないものの悲しそうなオーラを放ち始めました。ほも君、お前のせいやぞ。ちゃんと責任とって、やくめでしょ。

 

「ちゃんと話してくれたのは嬉しい。でも、少しだけ怒ってる。だから今日元樹の部屋に泊まらせてくれたら許してあげる」

 

 お泊まりですか? もちろんいいですよ。泊まって、どうぞ。

 

「うん、ゲーム持って遊びに行く。楽しみにしてる。璃奈ちゃんボード『ワクワク』」

 

 りなりーの悲しそうなオーラが完全に消えました。りなりーは絶を修得していた……?

 

「りなりーと元樹ってすっごい仲よしだよね!」

「元樹とは10年以上の付き合いだから」

「そうなんだね。ずっと一緒にいられるのってすごく素敵だね」

「うん。元樹はもう家族みたいなもの。璃奈ちゃんボード『照れ照れ』」

 

 りなりーの頑張り次第でいずれは家族になれますもんね。

 

「璃奈ちゃんは許してあげたみたいだし、もと君は無罪ってことで……」

「待ってください! 私は元樹君に何もしてもらえないんですか!」

 

 しずくちゃんも何かしてほしいんですか? 仕方ないなぁ。じゃあしずくちゃんもまた今度うちに泊まりに来ていいですよ。

 

「し、仕方ないなぁ。それで許してあげる」

 

 しずくちゃんの顔が緩みまくってます。きっとほも君とのお泊まり会を妄想しているんでしょうね。可愛いなぁ。

 

「むぅ……」

 

 幸せそうなしずくちゃんに対し、りなりーは嫉妬オーラを振りまいています。こっちも可愛いなぁ。

 

「ロープほどいてあげようと思ったけど、やっぱりもう少しこのままにしておく。璃奈ちゃんボード『プンプン』」

 

 りなりーも拘束プレイがお好きみたいですね。侑ちゃんと同じだ。

 

「しずくちゃんも納得してくれたし、これでもと君は無罪ってことで……」

「異議なしです」

「私も異議なしよ」

 

 りなりーとしずくちゃんのお泊まり会と引き換えに無罪を勝ち取りました。やったぜ。お泊まり会はデメリットどころかメリットしかないので無問題ラ! だからもっとお泊まりして、どうぞ。

 

「うふふ、よかったわね」

 

 ……そういえば果林さんはほも君の時は何もしてくれませんでしたね。ちゃんと弁護して、やくめでしょ。

 

「よかった……じゃあ私も無罪なんですね」

「……しずくちゃん、どうする?」

「え?」

「そうですね……」

 

 せつ菜ちゃんの無罪はまだ確定してないんですね。まぁしずくちゃんは好きな人のファーストキスを勝手に奪われてるわけですからね。あと裁判長が検察に判決をどうするか聞かないでください。

 

「……せつ菜さんが同好会に戻ってきてくれましたし、今回は無罪にしておきましょう」

「ありがとうございます!」

 

 無罪になってよかったですね。ロープから解放されて嬉しそうなせつ菜ちゃん可愛い。もう1回縛りたい。ところでほも君はいつ解放してもらえるんですか?

 

「解放してほしい?」

 

 もちろん。

 

「……ダメ。璃奈ちゃんボード『ゾクゾク』」

「り、りなりー……?」

 

 りなりー殿が新しい扉を開きかけておられるぞ。そのせいで解放してもらえませんでした。悲しいなぁ……。

 

「裁判も終わったし、これからの同好会について話し合おうよ」

 

 そうしましょう。まずは部長を決めましょうか。

 

「部長かぁ……」

「はい! 私は元樹君が部長がいいと思います」

「私もそれがいいと思います! 元樹さんがいなければ私は同好会に戻っていなかったと思うので……」

「彼方ちゃんが同好会に戻るきっかけになったのももと君だしねぇ」

「元樹君は皆の意見をまとめたりするの得意だったもんね。きっと部長さんに向いてるんだよ~」

「本当はかすみんが部長をやりたいところですけど……しょうがないから部長の座はもと男に譲ってあげる!」

「みんなー、異存はないよね!?」

「「「「もちろん」」」」

 

 本当にほも君が部長でいいんですか? ロープで縛られた上に正座までさせられてるんですよ? 本当にこんな人が部長で大丈夫ですか?

 

「うーん……それを言われると急に心配になっちゃうなぁ……」

「元樹は真面目にやるところは誰よりも真面目にやってくれるから大丈夫。心配いらない」

「私もそう思います。一緒に同好会で活動してましたから、元樹君がどういう人かはわかっているつもりです」

「むっ……私も元樹の幼馴染だから、誰よりも元樹のことをわかってる」

「むぅ~……」

 

 りなりーとしずくちゃんがバチバチマウント合戦をしてますね。りなりーの幼馴染マウントいいぞーこれ。しずくちゃんも負けないで頑張れ。

 

「わ、私なんて元樹君から好みだって言われたもん! 清楚で可愛いって言われたもん!」

「私だって何回も可愛いって言われてる。元樹はすぐ女の子に可愛いって言うから……。璃奈ちゃんボード『プンプン』」

「でも元樹君は私を抱きしめて頭を撫でてくれました!」

「それも私は日常的にしてもらってる」

 

 (日常的にはして)ないです。嘘はいけませんねぇ。りなりーは罰として10ほもポイント没収です。

 

「むぅ~」

「むぅ……」

 

 正妻バトルするのはいいですが、ちゃんと仲良くしましょうね。これから一緒の同好会で頑張る仲間なんですから。あとほも君に堕とされる仲間でもありますね。

 

「大丈夫。しずくちゃんとはとっても仲よし」

「璃奈さんとは元樹君が思ってる以上に仲よしだよ。……でも、女の子には負けられない戦いというものがあるのです。私は璃奈さんに負けるわけにはいかないのです」

「うん。私もしずくちゃんには絶対に負けない。璃奈ちゃんボード『むんっ』」

 

 仲はちゃんとよかったみたいです。それならよかった。正妻バトルはあるレベルまではとっても可愛くて目の保養になるのでもっとやってください。

 

「あらあら。元樹君はモテモテねぇ。これも人望がある証拠……なのかしら?」

 

 そうだよ(便乗)

 

「元樹君誰とでもすぐに仲よくなれるもんね。昔同好会に入った時もかすみちゃんやしずくちゃんとすぐに仲よくなってたのを覚えてるよ~」

 

 『コミュニケーション○』持ちなので。

 

「とりあえず、部長はもと君にしてほしいってことでいいんだよね? もと君、やってくれる?」

 

 もちろんです。部長として皆を全力で応援してあげるから見とけよ見とけよ~。

 

「じゃあ、部長。まずは同好会として一番最初に何を目指す?」

 

 スクールアイドルフェスティバル!(タイトルコール)

 

「「「「「ええー!?」」」」」

「い、いきなり目標がそこなの!?」

 

 だってシナリオでそう決まってるし……。それに、目標は高い方がいい、ってどこかの誰かがどこかで言ってた気がします。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会も目標は高くいきましょう。

 

「わ、わたし達にも行けるかな?」

「目標は、大きく」

「璃奈ちゃんの言う通り、壁は高い方が乗り越えがいがあるってものよ」

「うう……もと君が言うなら、頑張るよ!」

「彼方ちゃん、寝てる場合じゃないな?」

「うわー! なんか燃えてきたぞー!」

「夢の舞台です……!」

「全国のスクールアイドルが集まる一大イベント……!」

「µ'sやAqoursもってことだよね! 同じステージに立てるなんて、すごい目標……!」

 

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、再始動! そして、目指せワールドレコード! 一緒に頑張りましょう!

 

「「「「「おー!!」」」」」

 

 メインストーリー1章『みんなで叶える物語』、これにて完! ここまでのタイムは約20分です。比較対象がないのでよくわかりませんが、多分いい感じでしょう。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


最後のタイムは適当です。

果林さんが1年生ズをちゃん付けで呼ぶので、ほも君のことも『元樹君』と呼ばせてみましたが、なんとなく『元樹』と呼び捨てにする方がしっくりくるんですよね。
同じ感覚の人いない? いないかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

設定資料集 その1

謎アンケートの結果、需要がありそうだったので投稿します。


ゲームの設定メインでまとめてるので、これを読んだら作品への理解度が上がるとかは多分ないよ。
RTA書いてみたいよ~、でもゲームの設定が思い浮かばないよ~って人は参考にしてみて、どうぞ。
あと結構雑に書いたから雑だよ。


章ごとにまとめようと思ってるので、とりあえずは1章の分です。


- 主人公が同好会の一員、ファン、生徒会などの立場として、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の皆と切磋琢磨したりイチャイチャしたりできるゲーム

 スクスタスマホ版における主人公、あなたちゃんは本作では高咲侑となっている

 実はR-18ゲーム なので当然そういうこともできる

 

 

- 直近の大型アップデートにより、新たに音ノ木坂学院ルート、浦の星女学院ルートが解放された

 これにより、主人公が虹ヶ咲学園の生徒ではなく、音ノ木坂学院あるいは浦の星女学院の生徒としてゲームを開始できるようになった

 当然μ'sやAqoursのメンバーと切磋琢磨、イチャイチャすることができる

 

 

- 攻略対象となっているキャラクター

 μ's:全員

 Aqours:全員

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会:ミア・テイラー、鐘嵐珠を除く同好会メンバー(ミア、ランジュは今後のアップデートで追加予定)

 

 

- 主人公の容姿

 自分でこだわってキャラクリすることもできるし、オートで作ってもらうこともできる

 ヒロインそれぞれに好みの容姿が設定されており、その要素を取り入れることで、そのヒロインの親密度が上がりやすくなる

 苦手な容姿は設定されておらず、容姿によって親密度が上がりにくくなるといったことはない

 

 

- 主人公のステータス

 初期ポイントは5ポイント キャラクリ時に自由に割り振ることができる

 筋力:運動や荷物運びをする際に必要となる ステータスが足りていないと、重たい荷物を持てなかったり、ヒロインに物理的に押し負けたりする

 持久力:運動などをする際に必要となる ステータスが足りていないと、長時間運動した時などに体力不足を起こし、一定時間行動できなくなってしまう

 技能:技能が2になると衣装作成が解放される 技能が4になると作曲が解放される 隠し効果として、技能が高いほどエッチが上手になる

 学力:勉強が得意かどうか ステータスが足りていないと、定期試験や小テスト、抜き打ちテストで赤点を取り、補修を受けることになる

 魅力:親密度と友好度が上昇しやすくなる

 

 

- ステータスの上昇

 各ステータスごとに必要経験値があり、経験値が貯まるとステータスが1上昇する(各レベルごとに必要な経験値は適当、技能だけは筋力などに比べて必要な経験値が多い)

 筋力:運動などにより経験値獲得

 持久力:運動などにより経験値獲得

 技能:技能が上がりそうなイベントで経験値獲得

 学力:宿題イベントの成功、参考書を読むなどで経験値獲得

 魅力:経験値を獲得できるイベントが存在せず、現状ステータスを上げる方法がない

 

 

- 親密度と友好度

 親密度:ヒロイン 主人公への信頼度や恋愛に影響する

 友好度:モブ、ヒロイン以外の主要キャラ(副会長など、以下サブキャラとする) 主人公への信頼度に影響する

 

 

- 初期親密度

 確率で高くなったり低くなったりする

 生徒会に所属している場合、生徒会メンバーの初期親密度/友好度が高くなる

 部活に所属している場合、部員の初期親密度/友好度が高くなる

 クラスメイトの初期親密度/友好度が少し高くなる

 幼馴染の初期親密度はとても高くなる

 

 

- ランダムな初期ステータス

 学年

 学科(虹ヶ咲学園のみ)

 部活動

 幼馴染

 

 

- 三船栞子

 ver2.0.0でヒロインとして追加された

 主人公がスクールアイドル同好会所属の場合、初期親密度が大幅に減少する

 主人公のクラスメイトの場合、初期親密度が少し高くなる

 八重歯

 

 

- ミア・テイラー、鐘嵐珠

 現状未実装

 ver.4.0.0でヒロインとして追加される、という噂が流れている

 ほんとは攻略対象として参加してもらいたかったけど、2章以降に来日したはずなので、RTAにしにくいと泣く泣く断念

 

 

- メインストーリーとサブストーリー

 Part2にて書いたけど、勝手に消失させた設定

 過去の遺物

 

 

- 主人公の行動

 放課後や休日は自由に行動できる(部活に行く、遊びに行く、帰宅など)

 寝た場合はその日を終了し、翌日に移行する セーブは就寝時のみ行うことができる

 

 

- 自宅専用コマンド

 自宅でのみ行える主人公の行動コマンドがある

 メッセージや電話で連絡をとる(ヒロイン、サブキャラ) 連絡をとっていた時間に応じて親密度/友好度が増加する 

 

 

- ヒロインと付き合うには

 親密度を一定まで上げる必要がある

 付き合う方法として、主人公側から告白する、ヒロインから告白してくるのを待つ、の2パターンがある

 ヒロインからの告白イベントは、親密度が一定ラインを超えるとランダムで発生するようになる

 

 

- 二股

 二股を許してくれるヒロインと、許してくれないヒロインがいる

 二股ができるかどうかは正妻(一番最初に付き合ったヒロイン)のみで決まる

 

 

- 宿題イベント

 まれに発生する、主人公が宿題をやり忘れるイベント 始業前か昼休みのどちらかに発生する

 朝香果林、中須かすみがクラスメイトの場合は自分たちがやった宿題をそのまま見せてくれる(失敗しないが、親密度が上がらず、学力経験値ももらえない)

 上記の2人以外がクラスメイトの場合は宿題の解き方を教えてくれる(イベントが失敗する可能性があるが、成功時は親密度が上昇し、学力経験値も獲得できる ただし、失敗した場合は学力経験値を失う)

 

 

- 謎の情報屋

 虹ヶ咲学園内のありとあらゆる情報を扱っている

 出現場所、出現するかどうかも完全ランダム

 確定で出現する日も存在する 2日目昼休みに中庭に確定出現する

 

 

- 主人公の所持金

 毎月のお小遣いとバイト代

 バイトについては自分で探す必要がある

 

 

- 参考書

 読むことで学力経験値を獲得できる 1日に1冊までしか読むことができない

 読むのに失敗することがある 失敗すると学力経験値がもらえず、その参考書を読むことができなくなるが、成績優秀者と一緒ならば読むことができる その場合は得られる経験値が半分になる

 

 

- コンディション

 主人公につく状態 良い効果をもたらすコンディションと悪い効果をもたらすバッドコンディションがある

 幼馴染がいる場合、そのヒロイン固有のコンディションが確定でつく

 ゲーム開始時にランダムでコンディションがつくこともある

 

 

- コンディション『コミュニケーション〇』

 親密度と友好度が少し上がりやすくなる

 入手方法は以下の2通り

  * 天王寺璃奈の幼馴染になる

  * クラスメイト10人の友好度を最大まで上げる

 

 

- コンディション『世渡り上手』

 教師、生徒会の友好度が上がりやすくなる

 入手方法は以下の通り

  * なにも かんがえて ないよ

  * 家族を除く、4人の友好度を最大値の70%まで上げる(めちゃくちゃいいアイデアをいただきました、アリガト……アリガト……)

 

 

- コンディション『ダジャレ上手』

 高咲侑、宮下愛の親密度が上がりやすくなる

 入手方法は以下の2通り

  * 宮下愛の幼馴染になる

  * 本『古今東西ダジャレマスター』を読むと低確率で獲得

 

 

- コンディション『ファッションセンス〇』

 私服でお出かけを行った時、親密度/友好度が少し上がりやすくなる

 入手方法は以下の通り

  * ファッション雑誌を読む

 

 

- コンディション『恋愛強者』

 親密度が非常に上がりやすくなる

 隠し効果:告白されていなくても、ヒロインからの好意に気づくことがある

  * 開始時にランダム

  * 本『これで完璧! 恋愛マスターが教える恋愛のコツ100選!』を読む

 獲得できるのは主人公だけとは限らないだルルォ!?

 

 

- バッドコンディション『睡眠不足』

 低確率で授業中に居眠りしてしまう

 以下の2通りの場合で付与される

  * ゲーム開始時にランダム

  * 3日連続で徹夜する

 

 

- バッドコンディション『勉強苦手』

 学力がやや上昇しにくくなる

 以下の場合に付与される

  * ゲーム開始時にランダム

 

 

- バッドコンディション回復イベント

 一部のバッドコンディションについては、ごくまれに回復イベントが発生することがある

 成功確率は同じだが、同じバッドコンディションでもヒロインによってイベント内容が異なる



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2章 チャンスをつかめ!
Part21/n


2章なので初投稿です。


少々遅くなりましたが、2章スタートです。内容はちっとも2章と関係ありませんが。


 第2章開始なRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は1章完結までやりました。今回はその続きからで、2章に突入します。

 Part21にしてようやく2章です。完結する頃にはPart200とかいってそうですね。編集が大変だぁ。

 

「ゲーム、持ってきた。それからアニメのとかも」

 

 今回はりなりーとのお泊まり会です。2章とは一体ウゴゴゴゴ……。

 

「晩ご飯何? 私お腹ペコペコ」

 

 今日の晩ご飯は2日目カレーです。今温めてるので待っててください。

 

「カレー、好き。特に元樹の作ってくれるカレーは美味しいから大好き」

 

 辛ぇカレーはお好き?(激ウマギャグ) 私は好き。

 

「中辛は大丈夫だけど、辛口はダメかもしれない……」

 

 知ってますよ。甘口と中辛の間なので安心してください。

 

「……私も何か手伝う。何すればいい?」

 

 そうですね……ではりなりーには冷凍ご飯を温めておいてもらいましょうか。あとお皿も用意しておいてほしいです。

 

「わかった。ご飯……ご飯……あった。でも1人分しかない……」

 

 1人分……仕方ないですね。そのご飯はりなりーに譲ってあげましょう。ほも君はカレー単体で食べててください。

 

「ううん。半分こしよ? 量は減っちゃうけど……」

 

 半分こしてくれるりなりー優しくて好き。

 あっ、そうだ(唐突) 冷凍うどんがあるのを思い出しました。それでカレーうどんでも作りましょうか。それならご飯を半分こしてもカレーが余ることはありませんよ。

 

「カレーうどん……!」

 

 りなりーも嬉しそうですし決まりですね。今日の晩ご飯はカレーライスとカレーうどんです。カレーばかりですが、たまにはいいでしょう。カレーは美味しいからね、仕方ないね。

 

 

 

「ごちそうさま」

 

 晩ご飯を食べ終わりました。カレー尽くしでもりなりーは美味しそうに食べてくれました。ほも君が作ったご飯を食べてりなりーはにっこりん。にっこりんなりなりーを見てほも君もにっこりん。にっこりんなほも君を見てりなりーもさらににっこりん。永久機関が完成しちゃったな。

 

「元樹が作るご飯はいつ食べても美味しい。これからも私にご飯を作ってほしい」

 

 じゃけん結婚しましょうね~。まぁ当然ほも君は結婚なんてこと考えてないわけですが。うちに来ればいつでも作ってあげるじゃねぇんだよお前。鈍感系主人公なんて今時流行んねぇんだよ!

 

「……片付けしなきゃ」

 

 ほら、りなりーしょんぼりしちゃったじゃん。『俺また何かやっちゃいました?』みたいな顔してんじゃねぇぞお前ほものくせによぉ!

 

「お皿洗いは私がやるから、元樹はお風呂を入れてきてほしい」

 

 いいですよ、任せて下さい。お風呂洗いのほもとはほも君のことです。お風呂洗い世界選手権前年度優勝者の実力を見せてあげましょう。ちなみに昨年の開催場所は我が家、参加者はほも君1人です。

 

 

 

 お風呂入れてきましたよ。あと114514時間後に入ります。

 

「こっちも皿洗い終わった。お風呂が入るまで一緒にゲームしよ?」

 

 いいですよ。何しますか?

 

「これ。久し振りに勝負したい」

 

 格ゲーですか。いいですよ。やりましょう。

 

「うん。準備するから待ってて」

 

 タイム短縮のため適当にやってさっさと負けてしまいましょう……と言いたいところですが、適当にやっているとゲームのAIが判断すると親密度が下がってしまいます。なので適当と判断されない程度に手を抜きます。適当と判断されないギリギリのラインは体が覚えています。

 

「……手、抜こうとしてる」

 

 ヒェッ……なんでバレたんですか……?

 

「コントローラーの持ち方、いつもと違う。本気じゃない」

 

 り、りなりーの勘違いですよ。手を抜こうなんてしてないです。りなりーには手で抜○てほしいですけどね。

 

「……元樹は、私とゲームするのイヤ……?」

 

 そんな言い方をされたら本気を出さざるを得ませんね。

 

「うん、じゃあ本気で勝負。恨みっこなし」

 

 コントローラーの耐久値が少し心配ではありますが、まぁ大丈夫でしょう。格ゲーを多少ガチでやったところで壊れるような代物ではないでしょうしね。

 

 試合が開始しました。りなりーとの真剣勝負です。タイムなんて気にせず楽しみましょう。製本作業で鍛えた高速入力テクニックを見せつけてあげます。うおおおおおお!

 ……あっ、蚊が今私の目の前を飛んでいます。一体どこから入ってきたのやら……視界でうろうろされると邪魔で仕方ありませんね。追い払いたいところですが、コントローラーから手を離すわけにはいかないので、どこかに行ってくれることを祈りましょう。うぎゃあああああ顔にぃいいいいいいい!! やだやだやだやだあっち行って!

 

「……どうしたの?」

 

 顔をブンブン振ることでどこかに飛んでいってもらいました。……りなりーとの勝負を代償にですが。顔をブンブンしたせいで負けてしまいました。親密度が下がってないといいなぁ。

 また来られるのも困るので電子蚊取り器を設置しましょう。当然タイムが犠牲になりますが誤差だよ誤差。今後蚊に邪魔されないと考えるとむしろプラスです。

 

「蚊……? そっか、元樹虫嫌いだもんね」

 

 どうやらほも君も虫が嫌いだったようです。そのおかげでりなりーの親密度も下がってなさそうです。助かりました。蚊のせいでりなりーの親密度が下がっていたらこのゲームのRTAを放り投げてるところでした。

 

「電子蚊取りある?」

 

 ほも君宅にはないみたいです。うせやろ? 電子蚊取りは1個くらい家に置いとけよお前。電子蚊取りのない家なんて持ち手のついてないフライパンみたいなもんだぞ。

 

「わかった。じゃあ私の家から持ってくる」

 

 ありがとうございます。りなりーに感謝しながら、戻ってくるまでしずくちゃんと連絡とってるね(鬼畜) 女の子とお泊まり会してるのに、その子がいない間に別の女の子と連絡を取る人間の屑。まぁ私のことなんですけどね。RTAだからね、仕方ないね。

 おっすしずくちゃん。明後日うちに泊まりに来ない?(唐突)

 

『行きます』

 

 秒でしずくちゃんから返信が返ってきました。当日は寝間着を持ってきてください、っと。

 

『うん。楽しみにしてるね』

 

 これでしずくちゃんとの約束も取り付けました。しずくちゃんは今頃ウッキウキでしょうね。私もしずくちゃんがどんな寝間着を着てくれるのか楽しみで仕方ありません。スマホ版のURイラストであった谷間丸見えのエッッッッッッな寝間着着てほしいなぁ。あの寝間着姿のしずくちゃんが目の前がいたらうっかり指が滑ってしずくちゃんを襲ってしまいそうな気がしますが……まぁしずくちゃんの親密度なら大丈夫でしょう。タイムが多少犠牲になるだけです。あとエッッッッッッなシーンを流すことができないため、そのシーンだけ動画が全画面モザイクになるだけで、何の問題もありません。

 このゲームはRTA抜きでも結構プレイしていますが、未だに据え置き版でしずくちゃんがあの寝間着を着てくれないんですよねぇ。ネットでも目撃例は少ないみたいですし、低確率に設定されてるんですかね? もっと確率上げてくれよ~。あの姿のしずくちゃんとエッッッッッッさせてくれよ~頼むよ頼むよ~。

 

「ただいま」

 

 りなりーが戻ってきました。おかえりなりー。

 

「これ、ここに置いてくからいつ使ってもいい。もう1つうちにあるから」

 

 電子蚊取りをしばらく貸してくれるみたいです。ありがとナス!

 まずうちさぁ……お風呂……沸いてんだけど、入ってかない?(唐突)

 

「うん。でも、私が先に入っていいの?」

 

 いいっすよ。入って、どうぞ。

 

「……覗かない?」

 

 そんなことしません。この動画にR-18要素はありません(断言)

 

「わかった。じゃあ入る。パジャマどこに置いてある?」

 

 りなりーのパジャマはそこら辺にあるんじゃないですかね(適当)

 

「……あった」

 

 りなりーのパジャマがほも君の家に置いてあるってなかなかすごいことですよね。やっぱ普段から泊まったりしてるんすねぇ。逆にほも君のもりなりーの家に置いてあるんですかね?

 

「……覗かないでね?」

 

 ほも君にはこの後やることがあるので絶対しません。安心して入ってください。

 

 さて、りなりーがお風呂に入ったのを確認したところで参考書を取り出します。今日は英語の勉強をしましょう。これで学力5ですね。

 

『今日は勉強する気が起きない。また明日にしよう』

 

 ハァ~~(クソデカため息) ほも君のやる気がないせいで勉強すらできませんでした。今日はもう参考書は読めません。当然学力経験値も貰えません。あのさぁ……。経験値は貰えない、親密度も上がらない、でも時間だけは浪費する、正真正銘激マズイベです。やめてくれよ……(絶望)

 仕方ないのでリビングと自室を往復してりなりーが出てくるまで時間を潰しましょう。

 

 

 

「出た」

 

 5往復して自室に戻ってきたタイミングでりなりーがお風呂から出てきました。交代でほも君が入りましょう。

 りなりーはゆっくりしていてください。漫画を読んだりゲームしたりアニメを見たり自由に過ごしていてください。飲み物とかも自由に飲んでくれて構わないですよ。……あっ、でも机の引き出しの奥を漁ることだけはしないでくださいね? 別にやましいことなんて何もないんですけど、もしかしたら栞子ちゃんとのプリクラが出てくるかもしれないので。いやいや、別に何もやましいことはないんですよ? ただのクラスメイトと遊びで撮っただけですし、別に栞子ちゃんと付き合っているというわけでもないので。

 

「うん。わかった」

 

 ではほも君もお風呂に入りましょう。

 

 

 

 お風呂から上がりました。ほも君の入浴シーンなんてもの存在しません。当たり前だよなぁ?

 

「すぅ……すぅ……」

 

 おや? 自室に戻ったところ、りなりーがほも君の脱いだシャツを抱きしめながらベッド上ですやぴしてました。裁判ごっこ(茶番)とかいろいろあったのでりなりーも疲れてたんですかね? 可愛い寝顔だぁ。

 

「うぅん……元樹……」

 

 ほも君の夢でも見てるんですかね? すっごく幸せそう(小並感)

 

「…………好き」

 

 おっ? おっおっおっ? もしかして告白イベか? きたか? ついにきたか? これは告白イベ確定でしょ。勝ち確定。これで告白イベじゃないということがあるだろうか。いやない(反語)

 いやー、これでようやく順番を気にせず口説いて回ることができます。栞子ちゃんもしずくちゃんもせつ菜ちゃんも自由に告白してくれてOKです。ほも君は全てを受け入れます。りなりーには土下座してお願いしましょう。まぁ告白する勇気があるかどうかは知りませんが。栞子ちゃんは振られるのが怖いって言ってましたしね。頑張って。勇気を出して。先に待ってるのは地獄じゃなくて楽園ですよ。

 

「苺……ショート、ケーキ……好き……元樹……お腹、いっぱい……」

 

 全然違いました。告白イベなんかじゃありませんでした。りなりーが苺のショートケーキを食べる夢を見てるだけでした。多分ほも君と一緒にお腹いっぱいショートケーキを食べる夢なんでしょうね。

 ぺっ! 勘違いさせやがって! 今度食品サンプルの苺を乗せたショートケーキ出してやるから覚悟しとけよ! かすみんのいたずらだって罪を擦り付けてやるからな!

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


(ほも君と結ばれる)チャンスをつかめ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part22/n

初投稿です(原点回帰)


 行き当たりばったりなRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はりなりーとお泊まり会をしてました。今回はその続きからで、お泊まり会の続きをやります。

 りなりー起きて。シャツ洗わせて。

 

「すぅ……」

 

 どうやら起きてくれないみたいですね。ごくり……。若い男女、ベッドの上、何も起こらないはずがなく……。じゃけんりなりーをお触りしま……しません。どれだけお触りしても告白イベが発生しやすくなったりしませんので。プレイヤーがヌキヌキする目的以外ではあまりメリットはありません。

 りなりーは起きてくれないし、ほも君は勉強のやる気はないしで何もすることがないので、いっそのこともう寝てしまいましょう。このまま起きていてもロスにしかならないのでね。

 ベッドはりなりーが使っているため、ほも君は布団を敷いておねんねしましょう。

 では、おやすみなさーい。

 

 

 

 

 

 おはようございまーす! 9日目、火曜日です。今日も1日がんばるぞい!

 

「……元樹、おはよう」

 

 アイエエエエ! リナリー!? リナリーナンデ!?

 起きたらすぐ隣でりなりーが寝ていました。しかもほも君にべったりとくっついています。なんで? 私の記憶違いでなければりなりーはベッドで寝ていましたよね?

 

「うん。でも夜目が覚めて、そしたら元樹が布団で寝てたから……」

 

 なるほど、それでついつい潜り込んでしまったというわけですね。

 

「ごめんなさい……」

 

 いえ、別に問題ありませんよ。それのせいで起きてしまうこともなかったので。りなりーはぐっすり眠れましたか?

 

「うん、元樹のおかげでぐっすり」

 

 それはよかったです。それじゃあ朝ご飯を作りましょうか。

 

「私も手伝う」

 

 りなりーにも朝ご飯の用意を手伝ってもらうことにしましょう。ほも君1人では間に合わない可能性があるので。遅刻したら栞子ちゃんの親密度が下がっちゃいますからね。

 

 

 

 一気に時間が飛んで学校に着きました。りなりーとはここでお別れです。

 

「また部活で」

 

 はい、放課後に会いましょう。

 

 さて、ほも君も教室に向かいましょう。栞子ちゃんの髪飾りを強く結び直しに行きます。特に理由はありません。

 

「元樹さん、おはようございます」

 

 しおってぃーオッスオッス。いきなりですが栞子ちゃんの髪飾りほどいてもいいですか?

 

「え? いきなりなんですか?」

 

 髪飾りが少しずれていたので直してあげようと思いまして。

 

「……本当ですね、気がつきませんでした。教えていただきありがとうございます」

 

 あぁちょっと、自分で直そうとしないでください。私が直してあげますからじっとしていてください。

 

「いえ、自分で直せますから。元樹さんに直してもらうのは恥ずかしいですし……」

 

 恥ずかしがらなくていいですよ。むしろほも君に直してもらえるなんて嬉しいじゃないですか。……嬉しいよね?

 

「ど、どうしてそこまで直したがるのですか!」

 

 私に聞かないでください。何故かこれ以外の選択肢が出ていないのです。だから栞子ちゃんも黙って直されろオラァ!

 

「……よくわかりませんが、そこまで言うのであれば元樹さんに直してもらいます。……変なことはしないでくださいね」

 

 変なことなんてしませんよ。栞子ちゃんはほも君のことを信頼してくれないのですか?

 

「そ、そんなことありません! ……もちろん元樹さんのことは信頼しています。もしかしたらこれまで出会った誰よりも……」

 

 栞子ちゃんの気持ちを聞けたところで髪飾りを直してあげます。恥ずかしいのか、それともほも君を信頼してくれているからなのか、栞子ちゃんは目を閉じています。信頼に応えるため変なことは一切しません。栞子ちゃんを裏切るなんて真似私にはできませんから。

 ……なんだこのコマンド。『三つ編みにする』? ……押しましょう。信頼に応えるなんて知ったことか! 私は三つ編み栞子ちゃんが見たいんだ! えっ、タイム? 知らない子ですねぇ。

 

「何か変なことをされている気がするのですが……」

 

 何もしてないですよ。……はい、終わりましたよ。

 

「……これはどういうことですか? 直していただいたはずの髪飾りが元樹さんの手の中にあって、私の髪が三つ編みにされているのですが……理由を説明していただけますか?」

 

 三つ編みしおってぃーが見たかったからです(即答)

 

「そうですか……。三つ編みにしたのは初めてです」

 

 栞子ちゃんの初めて(意味深)は私が貰いました。

 

「あの……似合っているでしょうか……?」

 

 すっげぇ可愛かったゾ~。

 

「本当ですか!?」

 

 もちろんです。ほもは嘘つかない。

 

「折角元樹さんにしてもらいましたし、今日はこの髪型のまま過ごすことにしますね」

 

 いいと思いますよ。ほら、クラスメイトの人達も「かわい~!」とか「かわい~!」とか「もう見た」とか言ってますし、似合っている証拠ですよ。

 1つ提案なのですが、この髪飾りを三つ編みの先につけてみるのはどうですか? リボンみたいにつけたらきっともっと可愛くなる気がします。

 

「元樹さんがそう言うのであればつけてみます。……どうですか?」

 

 うん、可愛い! 可愛すぎて写真撮っちゃう。

 

「もしよろしければ2人一緒に撮りませんか? その、初めて三つ編みにした記念にしたくて……」

 

 もろちんいいですよ。ほらほら、こっち来てください。

 

「きゃっ!」

 

 オイオイオイ。このほも野郎、栞子ちゃんの腰に手を回して抱き寄せやがりましたよ。こんなこと付き合ってないとやらないでしょ。恋愛強者じゃないくせに恋愛強者みたいなムーブかましやがって……。

 

「……いいでしょう。記念なのですから折角ですし仲良くくっついて撮りましょうか。元樹さんもそうしたかったんですよね?」

 

 おや……? 栞子ちゃんは全く恥ずかしくないみたいですね。むしろ余裕そうに感じます。……いや、やっぱり恥ずかしいんですね。耳だけは赤くなっています。

 

「あ、赤くなってなんていません!」

 

 とぼけちゃってぇ……。

 あんまりからかいすぎると必殺八重歯で愚息虫が食い千切られるかもしれないのでここら辺にしておきましょう。

 

「では撮りますよ」

 

 1+1は? 11451419198102!!

 

「撮れましたよ。そちらにも送りますね」

 

 写真が届きました。栞子ちゃんめちゃくちゃいい笑顔してますね。チャーミングな八重歯が輝いています。ですが撮った時の角度の問題で肝心の三つ編みがチラッとしか写っていません。初三つ編み記念とは一体ウゴゴゴゴ……。

 

「壁紙として使うことにします」

 

 栞子ちゃんは今の写真をスマホの壁紙にするみたいですね。ほも君はしません。うっかり他の人に見られたら困るので。難易度爆上げゾ? ドM兄貴はやってみて、どうぞ。

 

 

 

 放課後です。先生の急病で最終授業がなくなったため、ほも君のクラスは少し早く終わりました。なので部室に行きましょう。もしかしたら同じように早く終わった人がいるかもしれません。

 

 部室に来ました。今日は同好会活動当日ですけども、参加者は誰一人来ませんでした。仕方ないので適当な場所に移動しまくって時間を潰しま……あ? ドミノでもして遊ぼうか、だと? ふざけんじゃねぇよお前。バッグからドミノを取り出すな。そもそも学校にドミノを持ってこないでください。謎イベでタイムを伸ばすのをやめろ! 繰り返す。謎イベでタイムを伸ばすのをやめろ!

 ほも君がドミノを並べ始めてしまいました。もう止めることはできません。ご丁寧にテーブルなど邪魔になりそうなものをどかしています。一体何を作るつもりなんですかねぇ……。

 

 

 

「おは……って、もと男! 何やってるの!?」

 

 かすみんが部室に来ました。見てわかりませんか?

 

「見てわからないから聞いてるの!」

 

 ドミノですよ、ドミノ。もしかしてドミノを知らないのですか?

 

「知ってるに決まってるじゃん! なんで部室でドミノをやってるのか聞いてるの!」

 

 特に理由はありません。むしろ私が知りたいです。強いて言うのであれば、ドミノがほも君を呼んでいたから、ですかねぇ(詩人)

 

「そんなよくわからない理由でこんな大きなもの作って……テーブルとかもどかしてるし……」

 

 かすみんも一緒に作りますか? 意外と楽しいですよ。それに完成したらすごいものが見れますし。かすみんだって見たいでしょ、すごいもの。きっと気に入りますよ。

 

「もと男がそういうなら……」

 

 よしきた! じゃあこの設計図通りに置いていってください。

 

「設計図まで……」

 

 いつの間にか設計図まで作っていました。これを見る限り、今作ろうとしているのは超大作です。マジで何を作ろうとしてるんですかねぇ。ここまで来たらロスとか関係なしに純粋に完成品が気になります。

 

「うぅ、やっぱりやるんじゃなかった……」

 

 音を上げるのはまだまだ早いですよ。完成まであと4割ほどありますからね。

 

「そんなにたくさん……なんでこんなの作ろうと思ったのさ」

 

 私に聞かれても困ります。このイベントを考えた運営に文句を言ってください。

 

「……ねぇ」

 

 何かご用で?

 

「昨日りな子とお泊まりしたんだよね?」

 

 そうだよ(便乗)

 

「楽しかった?」

 

 昨夜はお楽しみ(意味深)でした。

 

「しず子ともお泊まりするんでしょ?」

 

 しますね。

 

「ふーん……」

 

 何ですかこの反応。……ははーん。なるほどなるほど。かすみんもほも君とお泊まりしたいんですね。

 

「べ、別にそんなこと思ってないもん……」

 

 1年生の中でかすみんだけお泊まりできてませんもんね。仲間外れにされてる感じがして嫌なんですね。

 

「……前から思ってたけどさ、もと男って人の考えてること読み取るの得意だよね。しかもちゃんと当たってるし……」

 

 やっぱりそうなんですね。かすみんもぜひうちに泊まりに来てください。かすみんは幼児体形(暴言)なので欲情してしまうこともないですから、安心して家に招くことができます。それに同好会を守ってくれていたご褒美もあげていませんしね。あげる約束なんてしてませんが。

 とりあえず明日はしずくちゃんが来るので、明後日はどうでしょうか。

 

「絶対行く! えへへっ、今から楽しみ~」

 

 可愛い(可愛い) 唐突にかすみんを頬をぶっ叩いて、状況を理解できず困惑するかすみんを抱きしめてあげたい。それか頭を撫でてあげたい。今はどちらもできませんが。ドミノが崩れちゃうからね、しょうがないね。

 

「こんにちはー」

 

 かすみんに続いてエマさんも部室に来てくれました。

 

「あれ? 元樹君とかすみちゃんだけ? 2人で何してるの?」

 

 ドミノを作ってます。いえ、作ってました、ですね。ちょうど今完成したので。

 

「なんで部室でドミノなんてやってるの?」

「かすみんにもわかりません。部室に来たらもと男が1人でドミノを作ってましたから。それも楽しそうに」

「そうなんだ」

 

 今からパタパタ倒していくのでエマさんも見ますか? すごいですよ。多分。

 

「うん。わたしも見てみたいな~」

 

 見たけりゃ見せてやるよ。さあ、お披露目の時間です。

 

「かすみんがやりたーい!」

 

 いいですよ。じゃあ最初にドミノを倒す係はかすみんにお任せしますね。ちゃんとやってくださいよ? 失敗したらしずくちゃんのケツからコッペパン取り出しますからね。

 

「えいっ」

 

 起動は成功しました。これでしずくちゃんのお尻は守られました。

 

「「おぉ~」」

 

 綺麗にドミノが連鎖して倒れていきます。画面がヌルヌル動いていて気持ちいぃ~。リアルでもこんな風に大きな作品を作ってみたいですが、如何せん場所がないんですよね。体育館とか借りてみたいけどなー俺もなー。

 

「もしかしてこれ……」

 

 エマさんはこの作品が何なのか気づいたようですね。まあ、私はもっと早く気づいてましたけどね(震え声)

 

「あっ! もしかしてかすみん!?」

 

 その通りです。作っていたものは巨大かすみんです。長さ縦不明、横不明、面積も不明です。とりあえずでかいです。お胸はでかくないのにね。あとなんでかすみんを作ろうとしたのかも不明ですね。なんで幼馴染のりなりーじゃないんだ……。

 

「えへへっ、もと男、ありがとっ! すっごく嬉しいよ」

 

 可愛い(可愛い) かすみんが喜んでくれてるならそれでヨシッ! 頭を撫でてあげましょう。

 

「ちゃんとかすみんの可愛さを再現できてますね。まぁ、実物の方が何倍も可愛いですけど!」

「元樹君とかすみちゃんってなんだか兄妹みたいだね」

「だってさ。ほらほら、お姉ちゃんですよ~」

 

 は? かすみんが妹に決まってるだろ。どけ! 俺はお兄ちゃんだぞ!

 

「なんでかすみんが妹なのさ」

 

 かすみんがお姉ちゃんっぽくないからに決まってるじゃないですか。

 

「何か納得いかない……」

「このドミノ、よくできてるから残しておきたいけど、片付けないとだね」

 

 そうですね。せつ菜ちゃん辺りに見られたら怒られそうなので、来る前に片付けてしまいましょう。

 

「その前に写真撮ってもいい? 可愛いかすみんを残しておきたいから」

「わたしも撮っていいかな?」

 

 もちろんいいですよ。ほも君もついでに撮りましょう。私も撮ります。かすみんドミノverが気に入ったので。完成度が高くて普通にびっくりしました。

 2人も撮ったみたいなので、惜しくはありますが崩しましょう。どりゃああ!

 

「ああああああ! かすみんがあああああ!」

 

 崩しただけでそんなに叫ぶとは、余程気に入ったんですね。

 

「それもあるけど、なんで蹴って崩すのさ!」

 

 中須を泣かすため(激ウマギャグ)

 

「可愛いかすみんをもっと丁重に扱ってよ!」

 

 ごめんね。涙目かすみんが可愛すぎてそのお願いは聞けないんだ。

 

「また蹴った! 可愛かったかすみんがこんな姿に……うえええええん!」

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


最後のドミノを蹴り飛ばしてかすみんを泣かせるところがやりたかったがためにドミノを作らさせました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part23/n

ご注文は初投稿ですか?


 全くメインストーリーが進まないRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はかすみんとエマさんと一緒にドミノで遊びました。今回はその続きからで、ようやく2章の内容に入っていきます。スクールアイドル同好会の目標を決めたにもかかわらず、部長のほも君は女の子と遊びまくってましたからね。

 

 さて、皆部室に来たところで同好会のこれからについて話しましょうか。

 

「これから?」

 

 スクールアイドルフェスティバルに出場するという目標はできましたが、その道中についてはまだ何も決まっていません。

 ここにいる皆は最高に可愛くて魅力的なのでスクールアイドルとしてすぐ人気が出るでしょうが、それだけではスクールアイドルフェスティバルで注目されることはないでしょう。実力をつけるためにもたくさん練習して、それだけでなくステージに立つという経験を積むことも必要でしょう。

 

「経験って、イベントに出るってこと?」

 

 その通りです。ほもペディア情報によると、ちょうど1ヶ月後にイベントがあるのでそれに出てみませんか? そのイベントはソロ、デュオ、グループの各部門にエントリーが分かれているので皆にぴったしだと思います。

 

「部門に分かれてるイベントって珍しいの?」

「珍しいと思いますよ。今まで、スクールアイドルと言えば1校に1グループっていうのが普通だったから、部門とかは特に分かれてなかったんです」

 

 はぇ~そうなんですね(適当)

 

「デュオでやってる北海道のSaint Snowは有名ですけど、デュオも珍しいですし、ソロって言うのもまだまだ珍しいんですよ」

「だから、いろんな部門があるイベントって最近になって増えてきたって感じだよね~」

「そうだったんですか」

 

 確かにアニメとかでもデュオってSaint Snowくらいしか見ませんもんね。

 ん? サニパ? スーパースターはまだスクスタ時空に参戦してないからセーフってことで……。Liellaちゃん参戦あくしろよ。私は恋ちゃんにちょっとえっちなサイトを見せたいんや。

 

「でも、もうグループやデュオだけってわけじゃないんならますますアタシ達にぴったりじゃん!」

「スクールアイドルには、無限の可能性がありますから!」

「璃奈ちゃんボードみたいなのを、つけた人もいるのかな……。仲間がいたら、嬉しい」

「もしかしたらいるかもしれないよ? せつ菜ちゃんが言う通り、スクールアイドルにはどんな可能性だってあるんだもん!」

 

 (さすがにい)ないです。オートエモーションコンバート璃奈ちゃんボードを自作できる高校生なんてりなりーくらいですからね。技術力高すぎィ!

 

「とはいえ、かすみんほど可愛いスクールアイドルはなかなかいないと思いますけどぉ~!」

 

 そう……(無関心)

 話を戻しますが、全員ソロ部門での参加ということでいいですよね?

 

『もちろん!』

「まずは自分が何をどこまでできるか挑戦してみたいわ」

 

 じゃあ果林さんは道に迷わずに会場に行けるかどうか挑戦しましょうか(鬼畜)

 

「そうですね。私も自分の今の実力を確かめたいです!」

「そ・れ・に! 我が校の謎のスクールアイドル・優木せつ菜の実力も早く見たい♪」

「や、やめてくださいよ~!」

 

 せつ菜ちゃんだけでなく皆も実力をつけて、スクールアイドルフェスティバルのためにもいい成績を残しましょう。

 

「あれ? いい成績残さないとダメなの?」

「スクールアイドルフェスティバルは、エントリーすれば誰でも参加できるんじゃなかったっけ?」

「はい、だからスクールアイドルの文化祭って言われてるんですし」

「成績を残さないといけない理由があるのかしら?」

 

 確かに参加自体は誰でも可能ですが、µ'sとAqoursはメインステージに出るんですよ。

 

「µ'sとAqoursはもう決まってるんだ」

「まあそうだよね~。バンドのフェスだって人気バンドがメインステージ張るし、そういうことでしょ?」

「あの人達は決まっていてもおかしくないですよね」

 

 メインステージだけは出演するのに資格が必要なんです。なので目指すならそこがいいかと思いまして。というかメインステージに出場できなかったらゲームオーバーになっちゃうので。ゲームオーバーにならないようにがんがん実績を積み上げていきましょう。

 

「わかりました! そういうことなら、張り切っていきましょー!」

「なんか、ほんといろいろ調べてくれたんだね……。ありがとう、もと君」

「ほんとは私も一緒に調べないといけなかったんだけどね……」

 

 侑ちゃんには作曲で頑張ってもらう必要があるので、調べものはほも君に丸投げしちゃってください。どうせほも君がイベント外で勝手にやってくれるので。

 

「ううん、そういうわけにはいかないよ。次からはちゃんと私も手伝うから、その時は言ってね?」

 

 わかりました。まぁイベント外で勝手にやってくれるので私には関係ありませんが。

 

「私達も、もっと詳しくなるね」

「そうよね、リサーチとか任せっぱなしにしちゃってごめんなさいね」

 

 イベント外でやったっつってんだろ!

 それはさておき、情報収集はほも君がやるので皆は安心して練習に打ち込んでください。

 

「いい子~。彼方ちゃん、もと君には秘密のお昼寝場所教えてあげちゃう。一緒にお昼寝しよ」

 

 もう何回も聞いてるので場所を教えてもらう必要はありませんが、彼方さんとのお昼寝はぜひともしたいですね。

 

「彼方ちゃん、イベントまではお昼寝はおあずけだよ~」

 

 なんで?(半ギレ) お昼寝くらいさせてくれよ、頼むよ頼むよ~。

 

「そうよ、彼方。部長の言う通り、レッスン頑張らないとね」

 

 レッスンも大事だけど親密度稼ぎも大事なんですよね。

 

「あ、でも、適度なお昼寝は効率を上げるってテレビで言ってましたよ」

「歩夢ちゃんもいい子~。彼方ちゃんとお昼寝しよ。ふわふわの枕で一緒に寝よ? でも果林ちゃんの言う通り、レッスン頑張らないとだから、ちょっとだけ」

「彼方さんがお昼寝をちょっとでいいって言うなんて、これは相当やる気に満ちてますね……!」

「その時はもと君も一緒にお昼寝しようね」

 

 やったー!! 歩夢ちゃんも一緒にお昼寝だー!! これは実質3(ピー)でしょ。彼方さんと歩夢ちゃんと一緒にお昼寝とかえっちすぎてモザイク不可避でしょ。絶対えっちなことに発展しちゃうでしょ。これがRTAでなければヌキヌキしていた可能性大です。

 

「ずるーい! アタシもふわふわの枕で一緒に寝たーい! エマっち! アタシ達も対抗してお昼寝しよ!」

「えっ!? わたし!? う、うん、でも少しだけだよ?」

「やった~! エマっちのふわふわなトコで寝ちゃうんだもんね~!」

 

 あら^~。ふわふわなトコって一体どこなんでしょうかね~。

 

「ふわふわ? おなかかな? いいよ~」

 

 違うだろぉ?

 

「くっ……! かすみんもこういう天然なこと言ってやりたいです……!!」

 

 それはもはや天然ではないのでは?(正論)

 

「ん? かすみさん、何か言った?」

「え!? な、何にも言ってないよぉ~。あ、そうだ! しず子はイベントで何やりたいとかもう考えてる?」

「うーん、今決まったばかりだからなんとも言えないけど……。でも、前ダメだったことに挑戦してみたいな。今なら、やれるかなって」

 

 リベンジですか、いいですね。そういう気持ちはすごく大事だと思いますよ。その調子で前邪魔された告白にも挑戦してみてください。勝ち確定の出来レースですから。

 

「う、う~ん……。璃奈ちゃんボード『ぐるぐる』」

「り、璃奈ちゃん大丈夫? 顔真っ赤……あおごうか?」

「歩夢さん、好き」

 

 あら^~。私も歩夢ちゃん好き。もちろんりなりーも好き。ほも君もあおいであげましょう。りなりー'sCPUを冷ましてあげないとぶっ壊れちゃいますからね。

 

「私も、イベントに向けてやりたいことをまとめないと!」

 

 火薬をドーンッと使ったパフォーマンスをするのはどうでしょうか。せつ菜ちゃんに似合うと思いますよ。許可が下りないとは思いますが。

 

「いいですね! ぜひやってみたいです!」

「あら、ちょっと意外。せつ菜って常にいくつかパフォーマンスプランをストックしてるのかと思った」

「えっ!? そ、そんな、果林さんちょっと私のこと買いかぶりすぎですよ~! 私、いつも直前までまとまらない方なんです……」

 

 あれもやりたい、これもやりたいってどんどんアイデアが浮かんでなかなか1つに決められなさそうですもんね。やりたいことがいっぱいあるのはすごくいいことだとは思いますけどね。

 

「ほんとは、事前にいろいろ準備できたらって思うことは思うんですけどね」

「ふふっ、せつ菜って私達より随分上の存在なのかなって思っていたから、今のを聞いてちょっと安心しちゃった」

「うう……。果林さんこそ準備万端タイプに見えますよ」

「うーん……。どちらかというと、そうかも。その方が安心するのよね」

 

 確かに果林さんはそっちのタイプっぽいですよね。

 

「元樹さんも準備万端タイプですよね」

 

 もちのろんです。事前にしっかりと練りこんだチャートを用意していますからね。RTAだからね、当然です。

 まぁ、その作ったチャートも現時点であんまり役に立っていませんけどね。開幕チャート変更したりせつ菜ちゃん加入イベが見たことないやつだったりしたからね、しょうがないね。やっぱリカバリー力が一番大事なんやなって。

 

「それならテストも準備万端にしてほしかったです……」

「あら、元樹君は勉強苦手なの?」

「そうなんですよ。この前の中間テストで赤点をいっぱい取って部活に来れなくなってましたから」

「ちょっと意外だわ。すごく勉強ができるタイプに見えたから」

 

 い、今は前よりも賢くなってるから……。

 果林さんは勉強できそうですね(棒読み)

 

「そうね……」

 

 じゃあ今度果林さんに勉強を教えてもらいましょう(提案)

 

「それは構わないけど……私は厳しいわよ?」

 

 果林さんはなんだかんだ優しく教えてくれそうですよね。

 

「彼方やせつ菜に優しく教えてもらった方がいいんじゃない? 厳しいよりも優しく方が元樹君も嬉しいでしょう?」

 

 頑張って勉強できないことを隠そうとしてる果林さん可愛い。無理やり勉強させたい。今はほも君の方が果林さんより学力は高いですからね。身体能力は比べるまでもありませんが。

 

「勉強なら私が教えてあげますよ! 放課後、夜、休日いつでも構いません!」

 

 それなら次はせつ菜ちゃんに勉強を教えてもらうことにしましょうかね。もちろん参考書を読むのに失敗した場合の話ですが。本当は失敗しないのが一番ですからね。

 

「えへへっ、待ってますからね」

 

 やっぱ……せつ菜ちゃんの……ペカペカ笑顔を……最高やな! 見ていると癒されます。この笑顔がまた見られるようになって本当によかったです。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


スクスタのイベントを走るので次の投稿は遅くなるかもしれません。キョンシーおりこちゃん好き。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part8/m

イベントダメぽよ……だったので初投稿です。


 部内裁判事件から少しして、私は元樹の家に泊まりに来ていた。

 

「おかえりー」

「ゲーム、持ってきた。それからアニメのとかも」

「おーう」

 

 なんだかんだ言って裁判ごっこは楽しかったけど、元樹とせつ菜さんがキスしたことはやっぱり悔しい。元樹の方からせつ菜さんを求めたということが悲しかった。何年も一緒にいる私のことは全くそんなことしてくれないのに……。それに、元樹が誤魔化そうとしたことにも少し怒ってる。

 でも、せつ菜さんに負けたとはまだ思わない。だって私は元樹の幼馴染だから。せつ菜さんよりも長く一緒にいるから。せつ菜さんが知らないような元樹のことを私はいっぱい知っている。元樹だってせつ菜さんのことよりも私のことを理解してくれているはず。

 それに元樹とはファーストキスをあげあった仲だから。……もっともっと昔、小学生の時の話だし、あの時はまだ恋愛感情なんて自覚していなかったけど……それでもファーストキスであることには変わりない。だからまだ負けてない。100歩譲って現状僅差だとしても、最後に勝つのは私。せつ菜さんにも、もちろんしずくちゃんにも負けるつもりはない。あとは侑さんと歩夢さんも最近怪しいような……? 侑さんはこの前元樹に膝枕してもらってたし、歩夢さんもなんだか元樹との距離が近い気がする……。かすみちゃんは……うーん……元樹とは仲がいいけど、でもそれは友達みたいな感じだから多分大丈夫。少なくともかすみちゃんは恋愛感情を持ってなさそうだし……。

 

「すぐ晩飯できるぞ」

「晩ご飯何? 私お腹ペコペコ」

「今日の晩飯はカレーだ。それも2日目のな」

 

 匂いを嗅ぐとほんのりカレーの美味しそうな匂いがした。

 

「カレー、好き。特に元樹の作ってくれるカレーは美味しいから大好き」

 

 元樹の両親は度々家からいなくなるからよく自分でご飯を作っていたけれど、そのおかげか元樹の作るご飯はなんでも美味しい。その中でも特にカレーが好き。お泊まりをした時にカレーが出てくるとそれだけで嬉しくなってしまう。元樹もそれをわかっているのか、お泊まりの時はカレーが出てくることが多い気がする。

 

「璃奈は辛ぇカレーは好きかい?」

 

 最近元樹はよくダジャレを言うようになった気がする。愛さんの影響かな?

 

「中辛は大丈夫だけど、辛口はダメかもしれない……」

「そう言うと思ってちゃんと甘口と中辛の中間にしてるよ。ま、いつもと同じだけどな」

 

 何が嬉しいのか、鼻歌を歌いながらカレーを温めている。もしかしてあのダジャレを言いたかったの? やっぱり元樹はちょっと変わってる……。

 

「……私も何か手伝う。何すればいい?」

「そうだな……じゃあ冷凍ご飯を温めてもらおうかな。あ、あと皿も用意しといて」

「わかった」

 

 冷凍庫を開け、ご飯を探す。中があまり整理されていないせいで探しにくい……。また今度ちゃんと整理してあげなきゃ。

 

「ご飯……ご飯……あった。でも1人分しかない……」

 

 ようやく見つけたご飯は1人分だけ。2人で分けるには少なすぎる。折角のカレーなのに……。

 

「それは璃奈が食べろよ。俺は米なしで食うからさ」

「ううん。半分こしよ? 量は減っちゃうけど……」

 

 元樹が作ってくれたのに、その元樹がご飯を食べられないのはダメ。元樹とは一緒のものを一緒に食べたい。

 

「……あっ、そうだ。確か冷凍庫にうどんが1袋入ってた気がする」

「うどん? ……あった、1袋だけだけど」

「そのうどんを使ってカレーうどんでも作るか」

「カレーうどん……!」

 

 カレーうどんを作ってもらうのは初めて。あのカレーでカレーうどんを作ったら美味しいに決まってる。

 

「米の方を半分こして、うどんも半分こすればいい感じになるな。璃奈の好きなカレーが美味しく食べられるぞ」

「うん、元樹と一緒のものが食べられて嬉しい」

「そうだな、俺も嬉しいよ」

 

 元樹も私と同じ気持ちで嬉しい。

 

 

 

「ごちそうさま」

「ごちそうさまでした」

 

 カレーライスもカレーうどんもどっちも美味しかった。

 

「元樹が作るご飯はいつ食べても美味しい。これからも私にご飯を作ってほしい」

 

 これが今の私にできる最大限のアピール。私もしずくちゃんやせつ菜さんみたいに大胆なアピールができるようになりたい……。

 

「ん? うちに遊びに来たらいつでも作ってやるぞ」

「うん……」

 

 予想通りではあったけど、やっぱり伝わらなかった。私の伝え方にも問題はあったけど、でも全く気づいてくれない元樹にも多少の問題はあると思う。しずくちゃんが抱きついても気づいてなかったし……もしかして元樹、恋愛に全く興味ないのかな……? いやでもせつ菜さんとはキスしたし……。

 

「……片付けしなきゃ」

 

 これ以上考えるのはやめよう。考えれば考えるほど辛くなってしまう。

 

「片付けるか」

「お皿洗いは私がやるから、元樹はお風呂を入れてきてほしい」

「りょーかい」

 

 

 

「風呂入れてきたぞー」

「こっちも皿洗い終わった。お風呂が入るまで一緒にゲームしよ?」

 

 持ってきたゲームを見せる。一緒にゲームをするのはなんだか久し振りな気がする。

 

「いいぞ。何やる?」

「これ。久し振りに勝負したい」

「これか、確かに久し振りだな」

 

 結構昔のゲームだけど、元樹がこのゲーム好きだったからいっぱい勝負した。他の格ゲーもやったけど最後はいつもこれに帰ってきていた。

 

「懐かしいなぁ。俺もこれやりたくなってきた」

「うん。準備するから待ってて」

「昔滅茶苦茶やりまくったよな。勝率どんなもんだっけ?」

「うーん……元樹の方が勝ってたような……」

「そうだっけ……全然覚えてねぇや」

 

 私も詳しく覚えてないけど、私が負け越してた気がする。

 

「準備できた。これ、コントローラー」

「さんきゅ」

 

 久し振りに勝負できるのが楽しみ。でも元樹の様子が少し気になった。

 

「……手、抜こうとしてる」

「え?」

「コントローラーの持ち方、いつもと違う。本気じゃない」

 

 格ゲーをやる時の元樹の持ち方はちょっと変な持ち方だったけど、何故かいつも強かった。だけど今は普通の持ち方をしている。明らかに手を抜く気満々だ。

 

「……元樹は、私とゲームするのイヤ……?」

「いや、そうじゃないんだけどさ……」

「うん、じゃあ本気で勝負。恨みっこなし」

「本気でやりたいんだけどさ……どんな風にやってたか忘れちゃった」

「忘れた……?」

「このゲームマジで久々だから全然覚えてないんだよ」

 

 確かに最後に一緒にしたのは結構前だし、元樹は1人で格ゲーをするタイプでもないし、元樹は結構忘れっぽいから忘れててもしょうがない……のかも? 私も当時のことは詳しくは覚えてないし。

 

「俺どんな持ち方してたっけ?」

「こんなの」

「……マジで?」

「マジ」

「こんな気持ち悪い持ち方してたっけなぁ……。よくこれで璃奈に勝ててたな俺……」

 

 なんであれで強かったのか今でもわからない。本人も覚えてないなら真実は闇の中。

 

「当時のことはなーんにも覚えてないけど、できる限り頑張るからそれで許して。もしかしたらやってるうちに思い出すかもしれないし」

「うん。元樹が思い出せるように私も手伝う」

「手伝うって……まさかボコボコにするつもりじゃ……」

「……さぁ」

「ひょぇ~」

 

 私が本気でやったら元樹も思い出してくれると思っただけだから。別に昔負けてたからとかではないから。私の気持ちに気づかずに他の人とイチャイチャイチャイチャしてる元樹への八つ当たりとかではないから。

 

 

 

「また私の勝ち」

「もう1回、もう1回勝負。次は負けない」

「それはさっきも聞いた」

「うっ……3度目の正直って言うから……3度目じゃないけど」

「2度あることは3度あるとも言う。3度目じゃないけど」

「……次だ、次」

「もちろん。次も負けない」

 

 何回も勝負したけど全部私の勝ち。でも圧勝というわけでもなくて、どれもいい勝負だった。昔のことは覚えてなくても元樹は強いみたい。

 

「うーん……」

 

 次の勝負中、急に元樹の集中が途切れた。テレビじゃなく周りに意識がいってる。

 

「うぎゃああああ!」

「!」

 

 どうしたのかと考えていると、突然元樹が叫びながら顔をブンブン振り始めた。あまりに突然のことで私もビックリしてしまった。

 

「ふぅ……」

「……どうしたの?」

「顔に蚊の野郎が来やがった」

「蚊……? そっか、元樹虫嫌いだもんね」

 

 元樹は昔から大がつくほどの虫嫌いだ。今でもそれは変わらないみたい。蚊が顔にとまっただけであんなに騒ぐのはちょっとだけかっこ悪いとは思うけど……。

 

「電子蚊取りある?」

「ない」

「わかった。じゃあ私の家から持ってくる」

「なるはやで頼む」

「うん」

 

 虫嫌いなのになんで持ってないんだろう……。

 

 

 

 

「ただいま」

「おかえり」

「これ、ここに置いてくからいつ使ってもいい。もう1つうちにあるから」

「さんきゅ」

 

 電子蚊取りを手渡すとすぐにコンセントに繋ぎだした。

 

「璃奈が取りに行ってくれてる間に風呂沸いたぞ。先に入ってもいいぞ。こっちで入るだろ?」

「うん。でも、私が先に入っていいの?」

「もちのろん。電子蚊取りも持ってきてくれたし、小さいけどそのお礼」

「……覗かない?」

「覗かないに決まってるだろ」

「わかった。じゃあ入る。パジャマどこに置いてある?」

「ん? そこのタンスに入ってない?」

「……あった」

 

 元樹の家に置いていた私のパジャマを見つけた。それと下着もパジャマの下に置いてあった。そういえば前に泊まった時に間違って下着を置いていってしまったんだった。元樹に見られたと考えると恥ずかしい。変なことされてないといいけど……。

 

「……覗かないでね?」

「覗かないってば。興味ないよ」

 

 興味ない……。覗かれるのはさすがに恥ずかしいけど、でも興味ないと断言されるのもそれはそれで悲しい……。

 

 

 

ん~……

 

 ……覗きに来てくれない。さっきから声と足音は聞こえる。脱衣所の前をうろうろしてるみたい。でも決して脱衣所には入ってこない。何してるのかな?

 

「……消えた」

 

 しばらくすると声も足音も聞こえなくなった。何がしたかったのだろう……。

 

 

 

 お風呂からあがって部屋に戻ると、元樹はベッドに腰かけてテレビでアニメを見ていた。机の上には勉強道具が置かれていた。さっきまで勉強してたのかな?

 

「出た」

「じゃあ俺も風呂に入ろっかな。飲み物とか自由に飲んでいいからな」

「うん。わかった」

 

 そう言うと、元樹はパジャマなどを取り出してお風呂に入りに行った。

 机の上に置きっぱの勉強道具を眺める。英語の勉強をしてるみたいだった。あの元樹が自分から勉強をしていることがたまらなく嬉しかった。ノート代わりのコピー用紙を見ると、大きな文字で『勉強ヤダ』とだけ書かれていた。うん……やっぱり勉強はしてなかったみたい。

 

 飲み物を取りにリビングへ行く途中、脱衣所のドアが開けっぱなしなのに気がついた。元樹はお風呂に入ってるはず。ドアを閉め忘れたのかな? 閉めてあげないと。

 ドアを閉めようとした時、元樹の脱いだシャツが目に入ってしまった。ただのシャツのはずなのに、私にはそれがキラキラ光る宝物のように見えていた。

 

「……」

 

 元樹はお風呂の時間がすごく長いから、出てくる前に戻せば大丈夫。戻すのが遅れても元樹なら部屋に脱ぎ捨てたと勘違いしてくれる……はず。

 

 

 

「やってしまった……」

 

 シャツを部屋まで持ってきてしまった。バレたら困るし、やることをやって早く戻そう。

 

「スンスン……」

 

 いい匂い……。直接元樹から嗅ぐ匂いが一番好きだけど、こうやってこっそりシャツから嗅ぐ匂いも背徳感があって好き。……でも、今日の匂いはなんだかいつもと違う。いつもの匂いの他にほんのりと甘い匂いが……。

 

「……しずくちゃん」

 

 そういえば、今日しずくちゃんが元樹に抱きついていた。その時にしずくちゃんの匂いが移ってしまったのだろう。

 それからせつ菜さんの匂いも多分移ってる。キスをしたということは多分抱きついてもいるはずだから。

 

「むぅ……」

 

 しずくちゃんとせつ菜さんに負けたような気がするので、シャツをギュっと抱きしめて私の匂いも移すことにした。結局洗ってしまうから意味はないとは思うけど……。

 

 

 

 

 

「…………はっ」

 

 しまった、完全に寝てしまっていた。部屋の電気は消えている。元樹は……いた。床に布団を敷いて寝ている。寝ている私に毛布をかけてくれたのもきっと元樹だ。……見られた。私がシャツを抱きしめているのを元樹に見られた。

 

「どうしよう……」

 

 とりあえずこのシャツは脱衣所に戻そう。元樹は夜に洗濯機を回さないから多分大丈夫。頑張って誤魔化せば大丈夫。元樹のことだし、もしかしたら朝にはこのことを覚えてないかもしれない。

 

「ごめんなさい」

 

 聞こえるはずないけど、寝ている元樹に対して謝罪の言葉を述べる。

 

「うぅん……りなぁ……」

「あっ……」

 

 元樹が寝言で私の名前を呼んだ。どんな夢を見ているのだろう。それは本人にしかわからないけど、でも元樹の中にちゃんと私が存在しているという事実が嬉しかった。

 

「りなぁ……ヨガはやめろぉ……もえる……」

 

 どうやら今日やったゲームの夢を見てるみたい。ヨガで燃やされてるみたいだけど、夢の中でも私に負けてるのかな? 私はそのキャラは使わないのだけど……。

 

「すぅ……」

「元樹……」

 

 元樹のことが愛おしくなり、布団の中に潜り込んだ。起きなかったからそっと抱きつく。

 

「元樹、大好き」

 

 そう告げると、元樹がギュっと抱きしめてきた。

 

「りな……」

 

 起きてはいないみたい。さっきの言葉は聞こえていないだろう。抱きしめられたのもきっとたまたまだ。でも今はそのたまたまを堪能しよう。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


りなりーお泊まり回のサイドストーリーを書いてなかったので書きました。

諸事情で次の投稿も遅くなりそうです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part24/n

初投稿である場合とない場合があるぞい。


 筋肉しか信じないRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は今後の同好会について具体的なことを大雑把に話し合いました。今回はその続きからで、練習を再開していきます。練習が再開ということは……そう、とうとうほも君の筋力と持久力を上げる時間がやってきました。

 やぁーーーーとだよ。今までほも君はクソ雑魚ナメクジでしたからね。ようやくほも君を押し倒して優越感に浸っている(勘違い)しずくちゃんとせつ菜ちゃんにやり返すことができます。調子こいてんじゃねーぞコノヤロー(棒読み)

 

 さて、早速練習をしましょうか。ほも君のお着替えは済んでいるので皆もちゃちゃっと着替えちゃってください。

 

「あれ? もと君も練習するの?」

 

 もちろんです。いつまでもクソ雑魚ナメクジでいるわけにはいきませんからね。ほも君も練習に参加してパワーアップします。

 

「確かに、もと君は貧弱だから練習した方がいいかも」

「もと君もパワーアップした方が練習が捗るかもしれないもんね」

「侑ちゃんはもと君と一緒に練習しなくていいの?」

「私は大丈夫。もと君よりはパワーもスタミナもあるもんね」

 

 ほんとぉ?

 ほんとです(自問自答) ネット上ではクソ雑魚ナメクジと推測されてきた侑ちゃんですが、本作の侑ちゃんの筋力、持久力のステータスは共に4です。4は高くもなく低くもない数値、つまりは普通です。決してクソ雑魚ナメクジではありません。今後本動画で侑ちゃんにクソ雑魚ナメクジと言った兄貴は死ゾ。

 

 歩夢ちゃんと侑ちゃんの許可も貰いましたし、ほも君も練習に参加しましょう。

 

「待ってください。元樹君の練習参加には反対です」

 

 は?(半ギレ) このケツコッペパン野郎が……!

 

「どうしてしずくちゃんは反対なの?」

「元樹君は以前ランニング中にスタミナ切れで行方不明になったことがあるんです」

「そうなの?」

「はい。あの時は大変でした……」

 

 せつ菜ちゃんの表情から本当に大変だったんだろうなぁということが読み取れます。ほも君さぁ……。

 

「皆元樹君のことが心配で、下校時刻まで必死に探したもんね」

「連絡もつかなかったから彼方ちゃんも心配で心配で……」

「結局保健室で休んでたってオチでしたけどね」

 

 あのさぁ……連絡くらいちゃんとしようよ。保健室まで行く気力があったならさ。

 

「ほんと人騒がせですよね~。かすみんの心配を返してほしいくらいです」

「一番心配してたのかすみちゃんだったもんね」

「んなっ! そ、そんなことないですよぉ~」

「誰よりも早く元樹さんを探しに行こうとしてましたからね。あの時私は動揺して動けませんでしたから……」

「私もです。かすみさんが指示をくれてようやく動けましたから……」

 

 おやおや~? かすみんは一生懸命ほも君のことを探してくれたんですね~。そんな頼りになる行動、誇らしくないの?

 

「友達なんだから心配するに決まってるじゃないですかぁ! もと男もそんな目で見ないで!」

「もと君が見つかった時、一番最初に駆け寄ったのもかすみちゃんだったよねぇ」

「ちゃんと連絡してって怒ってくれたよね。わたしが言うつもりだったんだけど、あのかすみちゃんが言ってくれるなんて思ってなかったよ~」

「あんな風に怒るかすみさんは初めて見ました。……でも、元樹君のことを本気で心配していたのは私達にも伝わってきたよ」

「しばらく元樹さんにべったりでしたからね」

「うぅ……だってだってぇ……あの時はもと男が見つかって嬉しかったんですもん……ぐすんっ」

 

 あらあら、かすみんが涙目になってしまいました。少しいじめすぎてしまいましたかね? 慰めてあげましょう。ほら、こっちおいで。

 

「もとおぉ……」

 

 よーしよしよし。皆してかすみんのことをいじめて(可愛がって)ねぇ~。

 

「もと男もいじめてきたじゃん……」

 

 涙目のかすみんが可愛かったからね、しょうがないね。ほら、皆も可愛いかすみんのことをニコニコしながら見てますよ。

 

「……もう少しこのままでいてくれたら許す」

 

 もちろんいいですよ。ただ練習はしないといけませんからそれまでね。

 

「はぁい」

「あっ、そうだ! 練習のことなんだけど、アタシが元樹と一緒に練習する! それなら元樹も参加しても問題ないよね?」

「確かに、それなら行方不明になる心配もないわね」

 

 じゃあ果林さんにも見守り役つけた方がよくない? 方向音痴なんだからさ(辛辣)

 

「そうだね、それがいいかも。でも……もと君は大丈夫?」

 

 ん? 何がですか?

 

「その……愛ちゃんと一緒で……」

 

 確かに愛さんはほも君と違って体力もりもりスライムですからね、歩夢ちゃんが心配するのも無理はないかもしれません。でも何の問題もありませんよ。愛さんは優しいですから。

 

「だいじょーぶ! ちゃんと元樹が完走できるペースに合わせるから!」

 

 ほらね。だから大丈夫ですよ。心配してくれてありがとナス!

 

「もと君がいいなら……」

 

 歩夢ちゃんも納得してくれましたし、そろそろ練習しましょう。結構時間を使ってしまいましたしね。

 

「待ってください」

 

 おいゴルァ! ケツコッペパンちゃんさぁ……何回待ったをすれば気が済むんですかねぇ……。もう許せるぞオイ!

 

「私が元樹君と一緒に練習をしたいです」

「あれ? しずくも?」

「はい。愛さんはまだ入ったばかりですから、どんな練習をするのかしっかりと確認した方がいいと思います。元樹君は運動が本当にダメダメですから、元樹君と一緒にやっているとそんな時間はあるはずありません」

 

 結構ほも君のことバッサリ斬ってきますね……。でも事実ですから何も言い返せません。プライド壊れちゃ^~う。

 

「ですから私が元樹君のことをしっかりと監視しますよ」

 

 私は愛さんがいいです(鋼の意思) しずくちゃんの親密度は告白ライン入ってそうですからね、あんまり接触ができていない愛さんとした方が親密度的にはいいに決まってます。ごめんねしずくちゃん。これはRTAなんだ。イチャイチャを楽しむゲームではないんだよ。

 

「私も! 私も元樹さんと練習したいです!」

「むっ、せつ菜さんもですか……」

「私も元樹と練習したい。元樹と同じで運動に自信ないから、多分2人でいい感じに練習できる」

「璃奈さんまで……!」

「わたしも参加しよっかな。楽しそうだしねー」

「かすみんも!」

「じゃあ彼方ちゃんも~」

「私も参加しようかしら。元樹君のことを知るいい機会かもしれないしね」

「いいねいいねー。元樹はモテモテだねー」

 

 おっそうだな(適当) 実際この中だけでも3人から好かれている(自意識過剰)のでモテモテであることには違いないでしょう。しずくちゃんは少し複雑そうな表情をしていますが。

 それにしても、皆が次々と立候補するせいでなかなか練習が始められません。こんなんじゃRTAになんないよ(棒読み) じゃんけんしてさ、終わりでいいんじゃない?

 

「そうですね。誰が元樹さんと練習するのか、正々堂々とじゃんけんで決めましょう!」

「ゆうゆと歩夢は参加しないの?」

 

 早くじゃんけんしよう!(提案)

 

「私も参加する!」

「あれ? 侑ちゃんは練習しないんじゃなかったの?」

「そのつもりだったけど、皆を見ててなんか面白そうな気がしたからね。歩夢もやるでしょ?」

「うーん……」

 

 あくしろよ(豹変)

 催促の意を込めて歩夢ちゃんをじっと見つめます。あくしろよ。

 

「……うん、そうだね。私も参加しようかな」

 

 歩夢ちゃんも参加して結局全員参加になりましたね。よし、参加メンバーも決まったし早くじゃんけんしてください。ホラホラホラホラ(焦り)

 

「よーし、じゃあいくよー」

『最初はグー! じゃんけんポンッ!!』

 

 さて、勝敗はどうなりましたかね。まぁ多分あいこだと思いますが。10人で一斉にじゃんけんしたら超高確率であいこになるに決まってるでしょ。

 

「やったぁ、彼方ちゃんの勝ち~」

「あぁん、負けちゃったぁ……」

「チョキを出していれば……」

「せめてあいこに持ち込めていれば……」

「彼方さんの1人勝ち……。璃奈ちゃんボード『がっくし』」

 

 これマジ? 豪運すぎるでしょ。

 

「綺麗に一度で決まったね~」

「こんなこと滅多にないわね」

 

 そうですね。10人で一斉にじゃんけんをして1度で1人勝ちする確率は……うーん、起きるか起きないかで50%ですね(学力0)

 ほも君の練習相手も決まりましたし、早く練習をしましょう。ほら、皆も早く運動着に着替えてください。ホラホラホラホラ(鬼畜)

 

「その……着替えたいので、元樹さんは外で待っててくれますか?」

 

 やだよ、と答えたいところですが素直にお外で待ちましょう。親密度が下がっちゃうからね、しょうがないね。

 

 

 

 彼方さんとの準備運動が終わりました。ランニングをしましょう。

 

「もと君張り切ってるねぇ。そんなに練習がしたかったのかな?」

 

 そりゃそうですよ。練習しようと思ったら勉強会で潰されるし、設備点検で校内立ち入り禁止になるしで全く練習できませんでしたからね。ようやくクソ雑魚ナメクジから脱却するチャンスがきました。

 

「うんうん、じゃあ走ろっか~。もと君のペースに合わせてあげるからね。辛くなったらすぐ言うんだよ?」

 

 すぐ音を上げそう(小並感)

 ほも君と彼方さんがランニングを始めました。ランニング中プレイヤーは特にすることはありません。会話が発生した時に受け答えするくらいです。

 

 初めての練習ですので、ここで練習について解説しておきましょう。

 本作ではスクールアイドル同好会含め運動系の部活に所属していると、部活動中に練習イベントが発生します。スクールアイドル同好会ではランニングやダンストレーニングなどの練習がありますが、どの練習でも筋力か持久力のどちらかの経験値をもらうことができます。今やっているランニングは持久力ですね。

 この練習に参加するかどうかはプレイヤー次第なのですが、本チャートでは基本的に練習に参加します。筋力と持久力を最低限確保したいというのもありますが、それ以外に練習に参加することで親密度が若干上昇するというのも理由の一つです。特に一緒に練習した相手、今回であれば彼方さんですね、その人は通常よりも多く上昇するので非常にうま味です。ガバガバペディア情報によると、一緒に練習した相手の親密度の上昇量は通話イベの上昇と同じらしいです。練習相手は基本的にランダムとはいえ、通話イベと違って練習は確定で発生するうえ、筋力と持久力まで上げることができるのが強みです。

 ただし、この練習にも当然デメリットはあります。まず練習は失敗することがあります。失敗する確率は低いですが、失敗してしまうと経験値が入りませんし、失敗イベントが発生してタイムも伸びます。また、失敗時さらに低確率で怪我をしてしまうことがあります。怪我をすると一定期間一部行動が制限されてしまいます。ほとんどの場合練習は参加できませんし、酷い場合はデートなどの恋愛活動に必要不可欠な行動も制限されます。結構デカいデメリットに見えるかもしれませんが、確率自体は低いので強気にチャートに組み込むことにしました。

 

「おや、もう限界?」

 

 解説をしていたらほも君のスタミナが尽きました。思った以上には持ちましたね。

 

「すぐそこにベンチと自販機もあるし、ちょっと休もっか」

 

 彼方さんの言葉に甘えて休ませてもらいます。どうせスタミナが回復するまで練習再開できませんしね。

 

「はい、スポーツドリンク」

 

 彼方さんにお金を渡してスポーツドリンクを買ってもらいました。スポーツドリンクを飲むとスタミナの回復速度が上がります。栞子ちゃんが渡してくれたコーラにも同じ効果があるかは不明です。(多分効果は)ないです。

 

「えっ、お膝?」

 

 それから彼方さんには膝も貸してもらいましょう。膝枕をしてもらうと何故かスタミナの回復速度が上がります。やっぱ好きなんすねぇ。

 

「いいよ~。いつも抱き枕にさせてもらってるからね」

 

 やったぜ。遠慮なく彼方さんのお膝に寝転がりましょう。ああ^~柔らけぇなぁ!

 

「彼方ちゃんのお膝は気持ちいいかい?」

 

 気持ちいいゾ~これ。じゃけんしっかり休みましょうね~。

 眺めもいいですね。大きくて綺麗な形のお山がすぐ近くに2つも見えます。触りたい(直球) 自分、視姦いいっすか?

 

「……えっち」

 

 おっと、凝視していたのが彼方さんにバレてしまいました。親密度がまず……くはありません。そこそこの親密度がある場合、彼方さんはお胸を凝視するくらいのことなら許してくれます。

 

「でも、もと君も男の子だししょうがないかぁ。この前保健室で一緒に寝た時も少しだけおっきくなってたもんね~」

 

 ファッ!? それって多分彼方さんを勧誘した時のことですよね。バレちゃってましたか……。彼方さんで興奮しちゃいかんのか?(逆ギレ)

 

「もと君だから不快感はないよ~。信用してるし、あの時も襲ってこなかったしね~」

 

 ん~……一見親密度は高そうに見えますが、彼方さんは親密度の指針がガバガバなので判別できませんね。ライクからちょっと上のラインでもラブっぽい行動を普通にしてきますからね。膝枕とか抱き枕とかは当たり前田のクラッカーです。彼方さんは判断が難しいんですよ。

 

「よしっ、十分休んだしそろそろ再開しようね~」

 

 スポーツドリンクと膝枕のおかげでスタミナ全快したのでランニングを再開します。ここからは特にイベントもなかったので倍速で流します。

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子) このペースならあと何回かスタミナ切れになるだルルォ? とお思いの兄貴もいるかもしれませんが、その心配はありません。バグなのか仕様なのかわかりませんが、練習中は一度スタミナ切れになると、その練習中はもう1回スタミナ切れになることはありません。このほも君もこの後は気合で完走します。今まで修正されていないことを考えると仕様なのかもしれませんね。

 では、倍速イクゾー!デッデッデデデデ!(カーン)

 

 

 

 ランニングを終えたので等倍に戻しました。さて、気になる練習結果ですが……。

 

『無事に完走することができた』

『持久力経験値20を手に入れた』

 

 練習成功ヨシッ! これで持久力が1になりました。もうクソ雑魚ナメクジとは呼ばせねぇ。次のレベルアップは経験値60です。

 

「もと君と彼方さんお疲れ様。タオルどうぞ」

「ありがと~」

 

 ほも君は頑張りすぎたのかちょっとふらふらしてますね。おっと、侑ちゃんの方に倒れ込んでしまったー(棒読み)

 

「うぉっと! もと君大丈夫!?」

 

 倒れ込んだほも君を侑ちゃんが抱きとめてくれました。ありがとナス!

 

「もと君頑張ってたからねぇ、ふらふらしちゃっても仕方ないかも~」

「そっか。じゃあしっかりと休んでね。でも汗だけは拭こうね。風邪ひいちゃうよ?」

 

 侑ちゃんに渡してもらったタオルで汗を拭きましょう。汗だくで侑ちゃんに抱きつくわけにはいきませんからね。もう手遅れですけど。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


彼方ちゃんに膝枕されてぇ~。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part25/n

初投稿じゃないかもしれない。


 (ToDo:毎回これ考えるの大変なんだけど、動画内容から自動生成してくれるツールとかないの?)RTA、はーじまーるよー。

 

 前回は侑ちゃんに汗だくで抱きつきました。今回はその続きからで、まぁ……その、いろいろとチャート通りやります(適当)

 

 練習は平日は1日1種類、休日は午前午後それぞれ1種ずつできます。今日はランニングを選択し、無事終わったので今日の練習は終わりです。練習終了後は特別なイベントがない限り帰宅するか遊びに行くかを選択できます。今日は誰かと遊ぶ約束もしていないので、このまま直帰します。青春なんか必要ねぇんだよ!

 

 

 

 自宅に帰宅しました。昨日できなかった英語の参考書を読みたいと思います。でも多分今日も読むことすらできないと思いますけどね。

 

『今日は疲れたからまた明日にしよう』

 

 ほらね?

 持久力が低い間は練習後一部行動が確率で制限されるため、こうなるとは思っていました。確率も結構高いですからね。疲労困憊で疲れてるし、多少はね? チャートにも失敗は想定済みと書いてあります。持久力が高くなるまでそもそも練習後に勉強しない方がタイム短縮になったんじゃないですかね?(他人事)

 

 失敗したものは仕方ないので、潔く寝てしまいましょう。すやぴなさーい。

 

 

 

 

 

 おはようございます。10日目、Wednesdayです。今日も一日頑張るぞい!

 なんだか足が痛いです。どうやらコンディション『筋肉痛』になってしまったみたいですね。筋肉痛になると行動速度低下、練習失敗率上昇の効果があります。かなり重たそうに見えますが、行動速度の低下はほぼ影響はありませんし、そもそも1日経てば筋肉痛も治るのでそこまで辛いコンディションではありません。優しいね、運営。

 では、準備をして登校しましょう。筋肉痛で辛かろうがほも君にはキビキビ行動してもらいます。RTAだからね、仕方ないね。

 

 

 

 教室に着きました。中に入りま……おや? 栞子ちゃんじゃないですか。おはようさん。

 

「おはようございます」

 

 教室から出ようとしていましたが、どこか行くつもりだったんですか?

 

「はい。少し野暮用で……」

 

 もしかしたら重要な用事かもしれないので、通せんぼして栞子ちゃんが出れないようにしてしまいましょう(人間の屑)

 

「あの、通してほしいのですが……」

 

 やだよ(即答) 通してほしければほも君を倒してからにしろー。

 

「元樹さんを倒すことは簡単なのですが、変に時間を使いたくありませんし、何よりも暴力はいけませんので」

 

 変に時間を使いたくないということは、やっぱり重要な用事みたいですね。

 

「そう、ですね。私の今後に関わるといいますか……」

 

 ふむふむ、なるほど。人に会いに行くんですかね?

 

「いえ、そうではありません。あの、話は戻ってきてから聞きますから今は通してください。できれば迅速に。でないと大変なことになってしまいますから」

 

 世界の危機でも救いに行くのかな? 今よりもいい世界にしたい的なこと言ってましたし、可能性としてはありますね。

 

「世界の危機というよりも、私の危機というか……。それよりも早く通してください。時間がありません」

 

 ん~……いまいち話が見えてきませんね。栞子ちゃんはどこに行こうとしてるんだい?

 

「それは、その…………です

 

 何だって?

 

「……お手洗い……です……」

 

 ああ、なるほど。おもらししそうだったんですね(直球)

 

「い、言わないでください! それと早くどいてください!」

 

 尚更どけなくなりましたね。ここで漏らして、どうぞ(鬼畜)

 

「それは絶対に嫌です! うっ……お願いですから、早くどいてください……」

 

 私はおもらし栞子ちゃんを見て興奮したいし、視聴者兄貴も一緒の気持ちだと思うのですが、栞子ちゃんが段々と涙目になってきたのでここは大人しくどいてあげましょう。涙目栞子ちゃんもそれはそれで興奮しますけどね。涙目栞子ちゃんと無理やりヤリたい(鋼の意思) 涙目栞子ちゃんに無理やりキスして、体のありとあらゆるところをいじいじして嫌悪感と気持ちよさの間で揺れ動きながら、気持ちよさに負けまいと必死に抗う栞子ちゃんを観察したい。そして気持ちよさに完全に屈伏した後に栞子ちゃんの○○○に○○○を突っ込みたいね(しずくちゃん並の妄想力)

 

「ありがとうございます! では!」

 

 トイレに向かう栞子ちゃんを見送ります。それにしても、さすが栞子ちゃん、えらいですね。おもらしするかしないかの瀬戸際であろうと、廊下を走らずにきちんと歩いてトイレに向かっています。少しだけ早歩きになってる気もしますが、まぁ誤差の範囲でしょう。漏らしかけてるんだからそれくらい許してあげろよ。早歩きガチギレ兄貴は部屋にセミ100匹放出の刑の後死ゾ。

 

「もと君もと君」

 

 席に座ろうとしたら歩夢ちゃんに声をかけられました。侑ちゃんも一緒ですね。お弁当を持ってきてくれたのでしょう。

 

「おはよ!」

「おはよう。歩き方ちょっと変だけど大丈夫? 昨日の練習で痛めたりしてない?」

「えっ!? 大丈夫なの!?」

 

 ただの筋肉痛なので大丈夫ですよ。それがちょっとしんどいだけです。

 

「そっか、怪我したわけじゃなくてよかったよ。昨日あんなに頑張ってたし、筋肉痛になってもおかしくないよね」

「昨日練習頑張ったんだね。ご褒美あげるからこっちおいで?」

 

 わーい、ごほうびちょうだーい。

 

「よしよし。練習頑張ってえらいねー」

 

 むひょひょ! ぽむぱいは最高でさぁなぁ! 大きいし形もいいし柔らかいし匂いもいいしでもう最高にときめいちゃった!

 なでなでも気持ちいいゾ~これ。でもご褒美は経験値がよかったな(本音) あと侑ちゃんの前でこんなことしてますけどそれはいいんですかね?

 

「歩夢……?」

 

 ほら、侑ちゃんがびっくりした表情で見てますよ。

 

「あっ……ち、ちちち違うの侑ちゃん! これには深いわけが……」

「いつの間にそんなもと君と仲良くなってたの? 全然気づかなかった」

「えっと……その、先週もと君の家に勉強を教えに行って、その時に……」

「そうなんだ。もしかしてもと君の家族のこともその時聞いたの?」

「うん……」

 

 歩夢ちゃんはほも君の家に遊びに行ったことは話してなかったんですね。

 

「もしかして2人って付き合ってる?」

「え? もと君とはそんな関係じゃないよ」

「あれ、そうなの? 抱きついたりしてるからてっきり付き合ってるのかと……」

「もと君は可愛い後輩だよ」

 

 うーん……この感じだと親密度は告白ラインまではまだ遠そうですね。告白ラインに近い歩夢ちゃんはこういう場面ではもっと恥ずかしそうにしてくれますし、そもそもがっつり否定はせず『まだ付き合ってない』みたいな言動をしますので。歩夢ちゃんなりに気づいてもらおうとしてて可愛い。早く付き合って手つないで抱きしめてキスしてそっと押し倒して服脱がして歩夢ちゃんの無自覚えっちな体を存分に堪能したい。もちろん無理やりとかの要素はなしでね。(歩夢ちゃんとはイチャラブ以外のエッチはしたく)ないです。

 それにしても、歩夢ちゃんの親密度は割と稼げてる感触はあったんですがねぇ……。ま、えやろ。まだ2章が始まったばかりですからね、こんなもんですよ。

 逆に栞子ちゃんやしずくちゃん、せつ菜ちゃんがおかしいんですよね。幼馴染のりなりーはともかく、この3人はなんであんなに初期親密度が高かったのか全くわかりません。これも『コミュニケーション○』の効果なんですかね? 一緒じゃなくても大丈夫なほも君スタイルコミュニケーションすごすぎますね。まぁ皆はほも君と一緒になりたいと思ってるので、申し訳ないがほも君スタイルコミュニケーションはNG。

 

「あ、そうだ。忘れるところだった。これ今日の分のお弁当ね」

 

 やったー! 今日のおかずは何でございましょう?

 

「今日はハンバーグだよ」

 

 Foooooo!!(かのんちゃん並の感想) 私はカフェオレと焼きリンゴも大好きですよ(かのんちゃん並の感想)

 

『緊急事態です。助けてくだあさい』

 

 おや? 栞子ちゃんから謎の連絡がきました。緊急事態とは一体何のことでしょうか。あの栞子ちゃんが誤字ってしまうくらいだし、相当な緊急事態には違いないでしょうが。漏らしたのかな?

 このまま歩夢ちゃん達にいられると困るので、このまま回れ右して帰ってもらいましょう。お弁当ありがとナス!

 

「うん、それじゃあね」

「また部活でねー!」

 

 さて、2人が帰ったので栞子ちゃんの件を片付けましょう。なんとなく予想はできますが、とりあえず何があったのか聞きましょう。

 

『訳は聞かずに袋をトイレ前まで持ってきてください。袋は私のカバンの中に入ってるものを使ってください』

 

 あっ、ふーん……(察し) これはおもらししましたね(確信) 可哀そう(ワクワク)

 とりあえず栞子ちゃんの指示通りに袋を持っていきましょう。どこのトイレかな?

 

『教室から一番近い場所です』

 

 場所がわかったのでおもら栞子ちゃんのカバンから袋を取り出して、指定の場所に向かいます。

 

 

 

 トイレに着きました。おもら栞子ちゃんはどこにいるのでしょうか? 早くノーパン姿を見せてくれ、待ちきれないよ!

 

元樹さん、こっちです。早く来てください

 

 おっ、おもらしちゃんがトイレの入り口から顔を出していますね。顔を真っ赤に染めながら小さく手招きをしてほも君のことを呼んでいます。

 

「袋は持ってきてくれましたか?」

 

 もちろんです。スカートの裾を手で押さえていますがどうしたの?(純粋)

 

「聞かないでください……」

 

 それだけ言い残すと栞子ちゃんはトイレの中に戻っていきました。多分洗ったパンツを回収しに行きましたね。

 

「お待たせしました。教室に戻りましょうか」

 

 少しして栞子ちゃんが先程の袋を片手に戻ってきました。もう片方の手でスカートの裾をしっかりと押さえています。うっかりスカートが捲れちゃったりしたら栞子ちゃんの大事なところが他の人に見られちゃいますからね。そこを見る権利も触る権利もほも君と栞子ちゃん本人以外にはありません(断言)

 

「これは気にしないでください。何でもありませんから」

 

 あっ、そうだ(唐突) 今日の昼ご飯も中庭で食べませんか? おかのうえで食べるなんていいと思うんですよ。

 

「お、丘の上ですか!?」

 

 何かおかしなことでも言いましたかね?

 

「いえ、そうではないのですが……。あの、それは別に今日でなくてもいいのではないでしょうか」

 

 今日は天気がいいので今日にしましょう(鋼の意思)

 

「別の日ならいくらでも付き合いますから。ほら、明日なんてどうですか? 天気予報では明日もいい天気らしいですよ」

 

 今日がいいです(鋼の意思)

 

「うぅ……それでしたら人のいなさそうな場所にしてください。それでしたら私も付き合いますから……」

 

 栞子ちゃんはなんでそんなに嫌がるんですか? スカートの中に何か変なものでも入ってるんですかね?(名推理)

 

「変なものが入っているというより、本来あるべきものがないといいますか……」

 

 あるべきものがない……あっ(察し) これは丘で昼食を食べるしかありませんね。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part26/n

初投稿です!!!(鋼の意思)


AIに小説を書いてもらって遊んでいたら、前の投稿から1週間以上経過していた世界線はここですか?
余談ですが、AIに書いてもらって出来上がった虹ヶ咲小説を投稿しています。全年齢対象の作品とは限りませんが。よかったら見てね(宣伝)


 学校生活をノーパンで過ごすラブリーキュートな次期生徒会長とイチャイチャするRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は栞子ちゃんがおもらしをしてノーパンになってしまいました。今回はその続きからで、タイムガン無視で栞子ちゃんのことを観察したいと思います。

 ノーパンで1日学校で過ごす栞子ちゃんなんてなかなかお目にかかれませんからね。ここを見逃したら一生後悔します。RTA終了後別データで栞子ちゃんとえっちすればいいだルルォ! とお思いの兄貴はまだまだですね。確かに栞子ちゃんとのえっちシーンはどれも国宝に指定されていますが、それと今回のシチュエーションでは興奮するポイントが全く違いますからね。あの堅物真面目栞子ちゃんが学校の中をノーパンで歩いているということが興奮をそそるんですよ。この違いがわからない兄貴は薫子さんプレゼンツ『栞子ちゃん演劇』100回観賞の後感想文1枚の刑ゾ。

 

 さて、もうすぐ授業ですね。栞子ちゃんはスカートの裾をがっちり押さえながらもぞもぞしてます。ちゃんと押さえてないと中を見られちゃいますからね。

 

変な感じが……

 

 栞子ちゃんはお尻の感触が気になるようです。まあスカート1枚挟んでいるとはいえ、スカートの生地が薄いのでほぼイスにお尻直で座っているようなもんですからね。多分栞子ちゃんには初めての感触でしょうから、気になるのも仕方ないかもしれません。ほも君が何故か座布団を持っているのでそれを貸してあげましょう。ほも君の使用済みですが我慢してくださいね。

 

「えっと、ありがとうございます……」

 

 座布団のおかげで栞子ちゃんのお尻は守られました。これで怪我をしたりする心配はありません。ノーパン栞子ちゃんはまじまじと観察するつもりですが、怪我をするところが見たいわけではないので。

 

 お、先生が教室に入ってきました。授業が始まりますね。

 

お願いします……

 

 下に意識を取られてるせいか、号令もいつもと比べて声が出ていませんね。こんな栞子ちゃんそうそう見られませんよ。

 

「今日は隣の席の人とグループワークをしてもらいます」

 

 今日の数学の授業はグループワークみたいです。ほも君のペアはもろちん栞子ちゃんです。席を近づけて2人の距離をギュっと詰めましょう。お尻が当たるくらい近づけるといいですね。

 

「っ!」

 

 お尻がぶつかるとビクッと可愛らしい反応を見せてくれました。どうかした?(棒読み)

 

「……なんでもありません」

 

 そんなに頬を真っ赤に染めながらあんなにわかりやすい反応をしているのに何もないわけないじゃないですかー。こんな可愛らしい反応をされたらもっといじめたくなりますね。次は何してやろうか。スカートの裾をチラッとだけ捲ろうかな。……今思ったらこんな短いスカートでノーパンって危なすぎますよね。普通に歩いてるだけで丸見えになりそう(小並感)

 

「何をしようとしているのですか?」

 

 スカートを捲ろうと伸ばしていた手を栞子ちゃんにガシッと掴まれてしまいました。

 

「いたずらはいけませんよ。それに今は授業中です。そちらに集中してください」

 

 栞子ちゃんに怒られてしまいました。見逃してくれそうにありませんし、何よりも言っていることは全て正論なので大人しく栞子ちゃんに従いましょう。

 

「よろしい。では与えられた課題を一緒に解きましょうか」

 

 課題ですか。ほも君の学力はすでに4だし、栞子ちゃんもいるので簡単に終わるでしょう。

 

「一番早く終わったペアには先生がアイスをくださるそうですよ」

 

 ああ^~いっすね~(激ウマギャグ)

 

「い、いきなりやる気になりましたね……」

 

 栞子ちゃんにアイスを食べさせてあげるためにもここは頑張りましょう。月のお小遣いが3000円の栞子ちゃんにとってはアイスは贅沢品だもんね。

 頑張るぞー! えい、え戦、むんっ!

 まぁ私は何も操作する必要はないんですけどね。つまり頑張るのはほも君と栞子ちゃんだけです。当たり前だよなぁ? というわけで手を離してもらってもいいですかね?

 

「……え?」

 

 いや、掴んだその手を離してほしいのですが。さっきからずっとにぎにぎしてニヤニヤしてますからね。楽しそうだし幸せそうなのでほっておいてもよかったのですが、このままだと栞子ちゃんが課題に取り組んでくれそうにありませんでしたからね。

 

「ニ、ニヤニヤなんてしてません! 適当なことを言わないでください!」

 

 あらあら、顔真っ赤にしちゃって可愛いなぁ。でも授業中にそんな大きな声を出したら先生に怒られてしまいますよ。あと密着しているせいで鼓膜に響きますよ!

 

「あっ……えと、その……す、すみませんでした……」

 

 栞子ちゃんは先生に謝罪した後、若干涙目になりながらこちらを睨んできました。大声を出したのは栞子ちゃんなんだからほも君には責任ないんじゃない?(正論)

 

「それはそうですが……ですが私が大声を出す原因を作ったのは元樹さんです。元樹さんの手を握ってニヤニヤしているなどという嘘をつかなければこんなことにはならなかったんです」

 

 おっと、強気に出てきましたね。自分は絶対にニヤニヤしていないと主張する気ですね。ノーパンのくせに(ボソッ)

 

「な、なななななぜそのことを知っているのですか!?」

 

 さっき注意されたばかりなのにまた大声を出してしまいましたね。今は授業中ですよ?

 

「そんなことはどうでもいいのです! 今はどうして元樹さんがそのことを知っているのか聞いているのです!」

 

 授業のことをどうでもいいって言ってあげないで。先生が可哀そう(小並感)

 

「……もしかして、初めから知っていましたか? ……知ってたんですね。知った上で私のことを弄んだんですね! そうなんでしょう!?」

 

(漏れそうなんて言いながらトイレに駆け込んで、しばらくしてからトイレに袋を持ってきてほしいなんて言われたら、漏らしたって察しがつかないわけが)ないです。

 

「うぅ……元樹さんに穢されてしまいました……。もうお嫁にいけません……」

 

 いいじゃん、どうせほも君のことが好きなんだからさ。いずれ付き合ってえっちなこともするんだからさ。栞子ちゃんが実はえっちなことが大好きなことは周知の事実ですからね。付き合うとかなりの頻度で要求してきます。しかも1回では満足してくれませんからね。

 ちゃんとほも君がお嫁に貰ってあげるからオニィサンユルシテ。正妻になることは決してありませんけどね(鬼畜) この周の正妻はりなりーかしずくちゃんの予定です。

 

「……肉まん」

 

 え? 肉まんがどうかしましたか?

 

「購買の肉まん……それの一番高いものを買ってくれるのであれば許します」

 

 肉まんで許してくれるんですか? 優しいですね。栞子ちゃんがおもらしする原因は810%ほも君にあるのにね。

 

「約束ですよ? 元樹さんには絶対分けてあげませんからね?」

 

 とか言っちゃって~。その時になればちゃんと半分こしてくれるのが栞子ちゃんだって私は知ってますよ~。

 

「ふふっ、それはどうでしょうか」

 

 さて、栞子ちゃんの機嫌が最高潮になったのはいいのですが、先生がこちらをジーっと見ていますね。普通に怖いです。あの真面目な栞子ちゃんに授業なんてどうでもいいと言われてしまいましたからね、しょうがないね。

 

「ひぃっ! す、すみませんでした……」

 

 栞子ちゃんが若干怯えながら謝罪すると、先生は一転にっこりと笑って『痴話喧嘩は授業以外でね、見てて楽しいけど』と言いました。さっきの状況を楽しんでいたみたいですね。よく見ると、周りのクラスメイトもにっこりしながらほも君と栞子ちゃんを見守ってました。これ実質クラス公認カップルでしょ。2人はほんとはまだ付き合ってないのに、周りは付き合ってると完全に勘違いしてるパティーンでしょこれ。

 

「はい……」

 

 先生の言葉と周りからの視線で完全にK.O.された栞子ちゃんはよろよろと椅子に座り込み、ほも君の方にもたれかかってきました。軽く抱きしめて、クラス公認のカップルみたいだね、と耳元で囁きます。

 

「カップル……元樹さんと……カップル……」

 

 あー、今のは悪手でしたね。栞子ちゃんがうわごとのように同じ言葉を呟き続ける機械になってしまいました。目の前で手を振っても気がついていません。試しに頭を撫でてみましたが、幸せそうに目を細めるだけで、それ以外のレスポンスを返してくれません。なんだか猫みたいですね。おいにゃんにゃんにゃん! しおにゃんも課題やってくれよ~頼むよ頼むよ~。

 

「手つなぎ……キス……ホテル……」

 

 栞子ちゃんには期待できなさそうなので、ほも君1人で課題をやりましょう。学力4ですから、今のほも君であれば可能でしょう。アイスはさすがに無理でしょうが、元々栞子ちゃんにアイスを食べさせてあげることが目的でしたし、その栞子ちゃんもほも君に抱きついて幸せそうに妄想してるので、アイスくらい食べられなくてもいいでしょう。

 

 

 

「すみませんでした……」

 

 授業終了後、栞子ちゃんが課題をしなかったことを謝ってくれました。あの課題は結局ほも君1人で解ききりました。さすがに授業終了ギリギリの最下位でしたけどね。モブキャラ達の学力は一律で5で、しかもほも君と違って2人でやってたので、当たり前といえば当たり前田のクラッカーですね。

 

「お詫びになるかはわかりませんが、何でも1つ元樹さんのお願いを聞きます」

 

 ん? 今何でもってお願い聞くって言ったよね?

 

「はい。あくまでも私にできる範囲内でですが……」

 

 じゃあキスしてほしいな。

 

「キスですか!? ど、どこにですか……?」

 

 逆に口以外にどこがあるんですか?

 

「でも皆さん見てますし……」

 

 次は選択授業なので、皆その授業の部屋に行ってしまいましたよ。今この教室にはほも君と栞子ちゃんの2人きりです。

 

「皆さんいつの間に……」

 

 RTAなんですから早くしてくださいよ。ホラホラホラホラ。

 

「も、元樹さんはいいのですか? 初めてのキスが私でも……」

 

 もろのちんです。栞子ちゃんのような超絶美少女とキスして嫌な人間なんていません。そもそもファーストキスではないですからね。

 

「……は?」

 

 うっかり口を滑らしたら栞子ちゃんの目からハイライトが消えてしまいました。困りましたね、愛が重い栞子ちゃんに今の発言はまずかったです。

 

「いいでしょう。私で上書きしてあげますね」

 

 おめめぐるぐる状態の栞子ちゃんに頭をがっちり固定されてしまいました。貧弱ほも君では当然引きはがして逃げることはできません。まあ私も栞子ちゃんとキスしたいのでそもそもそんなことしませんが。なんで逃げる必要があるんですか?

 

「ん……」

 

 とうとう栞子ちゃんとキスをしてしまいました。間近で見る栞子ちゃんの顔は美しいですね。あんなに攻めて自分からキスをしてきたのに、少しだけ体が震えているのもポイントが高いです。栞子ちゃんの腰に手を回して抱きしめ、安心感を与えてあげます。

 

「んむぅ……」

 

 緊張がほぐれたのか、積極的に求めてくるようになりました。首に栞子ちゃんの手が回されて、体がもっと密着しています。舌先で栞子ちゃんの唇に触れるとビクッとするのが可愛いですね。

 キスだけではちょっと物足りないので、腰に回した手をスレンダーなお尻に伸ばします。お尻にお触りしますよ。

 

「んんっ……んちゅ……」

 

 軽く揉むたびに腰をくねらせるのが最高に扇情的です。こんなのエロゲーじゃないとしちゃいけない描写でしょ。エロゲーだったわ……。

 

「ぷはぁ……」

 

 長かった栞子ちゃんとのキスが終わりました。素晴らしい映像でしたね。

 後から考えると、ここの行動は反省点でした。キスしたせいで告白イベが発生する可能性が上がりましたからね、リセ案件になる可能性が高かったです。このゲームはS○Xしても告白イベの発生率は上がらないのに、何故かキスだけだと発生率が上がります。どうしてこんな仕様なのか、これがわからない。

 今後RTAを走る際は私情を優先しないように気をつけます。なお、本RTAではこの後もチャートガン無視で私情を優先した場面が数えきれないほどあります。皆が可愛すぎるのがいけないんだよね、それ一番言われてるから。

 

「私の……私のファーストキス、いかがでしたか……? 味わっていただけましたか……?」

 

 全部が気持ちよかった(小並感)

 

「きちんと私で上書きすることができましたか?」

 

 バッチェ上書きされましたよ。ただ栞子ちゃんには絶対に言いませんが、この先いろんな人に上書きされることになりますけどね。

 

「ふふっ、それはよかったです。私も元樹さんで染められてしまいましたよ」

 

 そう……(無関心)

 

「……あの、いつまで私のお尻を触っているつもりですか?」

 

 おっと、ずっと栞子ちゃんのお尻に手を置いたままでしたね。もうちょっと感触をたのしみたいところですが、これ以上はただただタイムが伸びるだけなので大人しく離しましょう。

 

「私達もそろそろ移動しましょうか。授業に遅刻してしまいますからね」

 

 そうですね、そうしましょう。栞子ちゃんとは取った科目が違うみたいですから、ここでお別れですね。

 

「そうですね。本当はもっとこうしていたいのですが……」

 

 じゃあ授業をサボりますか?

 

「それはいけませんよ」

 

 まあ真面目な栞子ちゃんがそんなことするはずがありませんよね。

 

「それでは、また後で会いましょう」

 

 移動の時スカートが捲れないように気をつけてくださいね。特に階段を上り下りする時は。捲れなくても下から覗けてしまいますからね。

 

「そうでした……。ありがとうございます、完全に失念していました。覗かれないようにちゃんと気をつけますね」

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな。


愛さんとお出かけの約束をしたのがPart17のことですが、もうPart26になってしまいました。栞子ちゃんノーパンイベント、しずくちゃんとのお泊まり、かすみんとのお泊まりとまだまだイベントが盛りだくさんです。愛さんとのお出かけはいつになるのやら……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part27/n

初投稿じゃないけど初投稿だよ。


LLL衣装のかすみんを引けました。可愛すぎかよ~。胸ないくせに胸強調しやがってよ~。
引けたのがかなり嬉しかったので、今回の話にかすみんは出てきません。


 練習失敗率は10倍にして考えようRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は絶賛片思い中の栞子ちゃんととうとうキスをしてしまいました。今回はその続きからで、ノーパン栞子ちゃんとの昼食タイムに勤しみたいと思います。

 中庭に行く前に購買に行きましょう。栞子ちゃんに肉まんを買ってあげないといけませんからね。一番高いものが200円、そこまで痛い出費ではありません。栞子ちゃんとのキスの代金と考えればむしろ安い方でしょう。1キスで、200円! お小遣い稼ぎかな?

 

「あれ、元樹君?」

 

 購買に来たらエマさんとエンカウントしました。こんちわーす。

 

「こんなところで会うなんて奇遇だね~。何買いに来たの?」

 

 ほっかほかの美味しい肉まんを買いに来ました。

 

「肉まんか~、いいなぁ~」

 

 エマさんはどのパンを買いに来たんですか?

 

「そうしよっかなって思ってたけど、肉まんも食べたくなっちゃったな~」

 

 じゃあどっちも買えばいいんじゃないですかね(正論) エマさんは大食いですからパンと肉まんくらいペロリといけちゃうでしょ。

 

「うーん……元樹君の言う通りどっちも買っちゃおうかな」

 

 エマさんはそう言うと、パンをいくつか手に取ってレジに向かいました。パンは1つだけじゃなくて何個も買うみたいです。たまげたなあ……。

 ほも君も肉まんを買いにレジに行きましょう。(パンは買わ)ないです。

 

 肉まんを購入しました。冷めないうちに栞子ちゃんが待つ中庭に向かいましょう。

 

「元樹君、こっちこっち」

 

 購買から出たところでエマさんが待っててくれました。肉まんを美味しそうに頬張ってはいます。可愛いですね。エマさんが美味しそうに食べている姿を見ていたら、私も肉まん食べたくなってきてしまいました。……RTA放棄してコンビニ行こうかな。

 

「元樹君はお昼どこで食べるの? もしよかったらわたし達と一緒に食べない? 今から彼方ちゃんと果林ちゃんと一緒に食べるんだ~」

 

 折角の昼食のお誘いですが、お断りします。愛し(推し)の栞子ちゃんが待ってますので。

 

「そっか~……」

 

 しょんぼりするエマさんですがご安心を。明日の昼食はエマさんに会いに食堂まで行くつもりだったので。

 

「ほんとっ!?」

 

 もちろん本当です。ただし正確に言うのならエマさん()に会うため、ですけどね。

 

「じゃあ明日は一緒に食べようね? 約束だよ?」

 

 はい、約束です。

 では、私は栞子ちゃんに会いに行くので。また放課後に会いましょう。

 

「うん、また放課後でね!」

 

 さて、エマさんと別れたので中庭に行きましょう。

 エマさんと約束をした理由ですが、もちろんRTA的な理由があります。詳しいことはまたその時お話ししようと思いますが、3人の親密度を同時に上げることができます。激増するわけではありませんが、上昇量が小さいわけでもないのでうま味なイベントです。ちなみにこれは11日目のお昼休みに確定で起こるイベントなので、今日エマさんと約束しなくても行くつもりでした。

 

「元樹さん、こっちですよ」

 

 丘の下の方で栞子ちゃんがレジャーシート敷いて待っていてくれました。こちらを見つけた栞子ちゃんが小さく手を振ってくれています。可愛いですね。目の前で買ってきた肉まんを貪り食って空になった袋だけを渡してあげたい。

 

「遅かったですね。何かあったのですか?」

 

 いえ、何もありませんでしたよ。ただレジが混んでいただけです(大嘘)

 そんなことよりも、はいこれ。お高い肉まんですよ。ちゃんと味わって食べてくださいね。

 

「ありがとうございます。では、いただきます。はむっ」

 

 栞子ちゃんが大きく口を開けて肉まんを頬張ります。小動物みたいで可愛い。

 

「……おいしい。ほかほかですごくおいしいです!」

 

 それはよかったです。栞子ちゃんが幸せそうでほも君も幸せです。

 それにしてもこのゲームの人達は皆美味しそうに食べますね。食べる姿を見るだけでこちらもお腹が空いてきます。すぐそばに食べ物がなく、しばらく休憩タイムのない現状では非常に辛いです。飯テロやめちくり~。

 

「……何ですかその目は。……もしかして元樹さんも肉まんが食べたいのですか?」

 

 食べたいです!(迫真)

 

「事前に分けてあげませんと言っていたはずですが?」

 

 冗談はよしてくれ(タメ口) 栞子ちゃんは優しいですからどうせ分けてくれるんでしょ?

 

「……ではこうしましょう。今度私と1日デートをしてください」

 

 ほうほう、デートですか。

 

「デートプランは私が考えますから。映画を見たり、美術館に行ったり、レジャー施設に行ったり……いろいろ楽しみましょう。元樹さんに行きたいところがあるのであればそこに行っても構いません。あとデートをする時は私と手をつないでほしいです」

 

 手つなぎデートってマジ? 栞子ちゃん覚醒しちゃってるじゃーん!

 

「……こんなところでしょうか。デートしてくれるのであれば肉まんを半分あげてもいいですよ」

 

 肉まん半分に対して手つなぎデートとは……代償がデカすぎるラ!

 

「そうでしょうか? 今まで何回も一緒にお出かけていますし、それをデートと言っているだけですよ。それに奢ってほしいと言っているわけでもありませんし、そこまで大きいものではありませんよね。それとも、元樹さんは私とデートしたくないのですか……?」

 

 まさかそんな。栞子ちゃんとのデートが楽しみで仕方ありません。

 

「では決まりですね。はい、肉まんをどうぞ」

 

 栞子ちゃんから半分に割った肉まんをもらいました。ありがとナス!

 デートするのはいいんですが、費用は大丈夫なんですか?

 

「費用、ですか?」

 

 栞子ちゃんのお小遣いは月3000円ですよね? 映画見たりいろいろしたら全く足りないと思うのですが。過去にも何度もほも君と出かけているみたいですし、貯金もないんじゃないですか?

 

「そのことなら問題ありません。元樹さんとお出かけする時は両親が費用をくれますから」

 

 ほーん……これは両親も公認のカップルですね。ほも君が跡取りになることも期待されていそうです。これは栞子ちゃんの告白を断った時が怖いですね。もろちん断るつもりなんて微塵もありませんが。

 

「いつデートしましょうか。1日中デートしたいので休日がいいですね。元樹さんはいつが空いてますか?」

 

 今週末が……いや、ちょっと待ってください。このデートの後絶対告白イベが起きますよね。それはマズイです。以前言った通り栞子ちゃんと最初に付き合うとは2股を許してくれません。告白は一度断ると二度としてくれないため断ることもできません。つまりまだ誰とも付き合っていない現状、このまま栞子ちゃんとデートをしてしまうとかなりマズそうです。

 一番安全なのはデートを断ることですが、もう肉まんを食べてしまったので断れそうにありませんし、仮に断れたとしても親密度が爆下がりすること間違いなしです。

 仕方ないのでデートする日を先延ばししましょう。その間にりなりーかしずくちゃんと付き合ってしまえば問題ありません。幸いなことに同好会で1ヶ月後のイベントに参加するため、それに集中したいということを理由に延ばしてもらいましょう。

 

「そうですか、部活で……。そういえば元樹さんがどんな部活をしているのか聞いたことがありませんでしたね。どこに所属しているんですか?」

 

 秘密です。今の栞子ちゃんにはスクールアイドル同好会に所属しているだなんてチーズが裂けても言えません。

 

「教えてくれないのですね……」

 

 しょぼんとする栞子ちゃんを見ると心が痛みますね。ですがこればっかりは仕方ないのです。メインストーリーが進まない限り、ほも君がどれだけ説得しようとも栞子ちゃんがスクールアイドルを好きになってくれることはありませんからね。

 

「……まあいいでしょう。デートの日程はそのイベントが終わってから決めましょうか。変に日程を決めて元樹さんの集中を乱すわけにはいきませんからね」

 

 これでデートを先延ばしすることができました。首の皮一枚繋がったといったところでしょうか。やはり前回栞子ちゃんとキスしたことがかなり響いているみたいです。RTAで私情に流されてはいけない(戒め)

 この間に頑張ってりなりーかしずくちゃんと付き合いましょう。りなりーは大体2股を許してくれますし、しずくちゃんはたまに許してくれない時もありますが、今までのやり取りを見ている限りこの周は許してくれそうです。許してくれない時のしずくちゃんならば、せつ菜ちゃんとのキスがバレた時点でほも君のことを襲ってきたでしょう。ですがお泊まりで許してくれたので今回のしずくちゃんは多分2股を許してくれるしずくちゃんだと思います。

 デートまでに誰とも付き合えなかった場合、栞子ちゃんが告白してこないことを祈りましょう。その確率は限りなく低い気がしますが。

 

「私もデートするのを楽しみにしていますから、元樹さんもイベント頑張ってくださいね」

 

 栞子ちゃんもほんとは早くほも君とデートしたいのでしょうが、その気持ちを押し殺してほも君のことを応援してくれています。ほんまええ子やで……。こんな子から好意を向けられているほも君は幸せ者ですね。まぁそのほも君は他の子を狙っているわけですが。キスまでしたのに、どう頑張っても栞子ちゃんがほも君の正妻になることはないのです。ごめんね。

 

「いえ、気にしないでください。1ヶ月後になろうとデートであることに変わりはありませんから。それに、元樹さんとこうしてお昼休みを過ごしているだけでも私は幸せですよ」

 

 栞子ちゃんがにっこりと微笑んで、肩を寄せてきました。うぅ……栞子ちゃんの思いやりに心が痛みます。じゃあ私がいいと言うまで告白するな(豹変)

 

 

 

 放課後、同好会の部室です。今日はミーティングなどもないので、ほも君が行う練習を決めましょう。

 昨日はランニングで持久力を上げたため、今日は筋トレで筋力を上げる……わけではありません。Part25で言った通り、持久力が低い間は練習後一部行動が確率で制限されてしまうため、筋力よりも持久力を優先して上げにいきます。持久力は5まで上げたいですね。

 ちなみに練習相手ですが、同じ練習を行うメンバーの中からランダムで決定されます。昨日のような決め方をすることはまずありません。同じ練習をするメンバーがいない場合はもちろん1人で練習を行います。今日の練習相手は……おっ、HHEM村の住民(宮下愛)さんみたいですね。

 

「よろしくね!」

 

 はい、よろしくお願いします。愛さんは運動超人ですが、ちゃんとほも君に合わせて練習してくれます。そのおかげで愛さんとランニングをした場合は隠し効果としてスタミナ消費量が減少します。スムーズに練習ができるので嬉しいですね。

 

「ゆうゆから昨日のタイムは聞いたから、今日はそのタイムよりいいタイム目指そっか。愛さんがそのペースで走るから、元樹はそれに合わせてくれれば大丈夫だよ」

 

 かしこまり!

 

「それじゃ準備運動してから走りに行こっか!」

 

 準備運動は大事ってそれ一番言われてるから。ちなみにこのゲームでは準備運動してもしなくても練習失敗率は変わりません。あのさぁ……。

 

 

 

 念入りに準備運動を行いました。早速走っていきましょう。

 

「辛くなったらいつでも言うんだよ? 無理する必要はないからね」

 

 持久力も1になってますし、練習相手も愛さんなのできっと大丈夫です。

 

「おっ、嬉しいこと言ってくれるね~。よーし、愛さん張り切っちゃうぞー!」

 

 張り切らないで(懇願)

 さて、ランニング開始です。張り切っちゃうとか言ってた愛さんですが、ちゃんとほも君のペースに合わせてくれています。

 

「皆元樹が運動ダメダメって言ってたけど、意外と走れてるじゃん」

 

 持久力が1になりましたからね。もう皆が知ってるほも君ではないんですよ。それから愛さんパワーも大きいですね。スタミナの消費量が3/4になっています。あまり効果がないように思えるかもしれませんが、意外とこれが大きいのです。特に持久力が低い間はね。

 

「ちょっとでも走れるようになるとどんどん楽しくなってきたでしょ?」

 

 ほも君が楽しいと感じているかはわかりませんが、私はその気持ちちょっとわかりますね。今までできなかったことがだんだんとできるようになるというのはとても楽しいことですよね。

 

「でしょでしょ!」

 

 同意してもらえて嬉しいのか、ペースが少しだけ上がりました。やめてくれよ……(絶望)

 

「そういえばさ、少し前にした約束覚えてる?」

 

 ん? 約束というのは今週末一緒に運動しようという話のことですかね?

 

「そうそう! そのことなんだけどさ、9時にレインボー公園集合でどう?」

 

 いいですよ、そうしましょうか。

 

「おっけー! じゃあ土曜日ね! 楽しみだね!」

 

 そうですね、私も楽しみで……うおっと!

 

「元樹!?」

 

 ほも君がランニング中に思いっきりこけてしまいました。痛そう(小並感)

 

「大丈夫……?」

 

 愛さんの手を借りつつ立ち上がります。その時にちょっと痛みが走りました。どうやら足を捻ってしまったみたいです。練習失敗ですね、悲しい。

 

「大変! 保健室に行かないと! ほら、肩貸してあげるから掴まって!」

 

 愛さんの肩を借りて保健室まで連れていってもらいます。なんだか柔らかいしいい匂いもしますね。もっと堪能しなきゃ(使命感)

 

 

 

 保健室です。彼方さんを勧誘しに来た時以来ですね。

 症状は捻挫。今日含めた3日間、つまり今週金曜日までは運動禁止みたいです。ギリギリ土曜日には間に合いますね。

 

「ごめんね、元樹……」

 

 いえ、愛さんは何も悪くないですよ。私の運が悪かったのが悪かったんですから。だから気にしないでください。

 

「でも……」

 

 でももへちまもありません。ドジっ子ほも君が悪いんですから。3日間も練習できないのは痛いですが、その間はマネージャーに専念したいと思います。だから愛さんも気にしないで、1ヶ月後のイベントのために頑張ってください。まだまだ先のように思えるかもしれませんが、愛さんはスクールアイドル初心者ですからね。楽しんでライブをするためには歌もダンスもたくさん練習しないとですよ。

 

「……うん、わかった。愛さん頑張るよ。だから元樹もちゃんと見ててね!」

 

 もちろんです。見てほしけりゃ見ててやるよ。

 さて、処置もしてもらいましたし戻りましょうか。ほも君は侑ちゃんのところに行こうと思います。侑ちゃんの手伝いをしましょうね~。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part9/m

初・投・稿!!!


「おはようさん」

「おはようございます」

 

 お手洗いに行こうと教室のドアの前まで来たタイミングで元樹さんが登校してきました。歩き方が少し変なような……まあ、おそらく気のせいでしょう。筋肉痛の人の歩き方に似ていた気もしますが、あの元樹さんが体育以外で運動するはずありませんからね。

 

「どっか行くのか?」

「はい。少し野暮用で……」

 

 本当はただお手洗いに行くだけだけど、元樹さんにそれを言うのは少し恥ずかしかった。

 

「ふぅん……」

 

 元樹さんは突然扉の前で反復横跳びをし始めた。

 

「あの、通してほしいのですが……」

「通してほしけりゃ俺を倒してみろよ」

 

 おそらく私の邪魔をしているつもりなのでしょう。元樹さんが突然こういう奇行に走る時は決まって前日に変なアニメか動画を見ている。私はあまりそういうものに詳しくないですが、何に影響されたのか昼食の時にでも聞いてみましょう。

 今なお反復横跳びをしている元樹さんですが、折角なので少し彼に付き合ってあげましょう。私にもまだ余裕がありますし、どうせすぐスタミナ切れで動けなくなるはずですからね。

 

「元樹さんを倒すことは簡単なのですが、変に時間を使いたくありませんし、何よりも暴力はいけませんので」

「重要な用事なのか?」

「そう、ですね。私の今後に関わるといいますか……」

 

 まだ余裕はありますが、もし元樹さんの前でおもらしなんてしてしまったら……考えるだけでも恐ろしい。

 

「はぁ……はぁ……人に会いに行くのか」

「いえ、そうではありません。あの、話は戻ってきてから聞きますから今は通してください。できれば迅速に。でないと大変なことになってしまいますから」

 

 少し限界が近くなってきた。以前の元樹さんであればもう倒れていてもおかしくないのですが、未だ息切れしかしていません。何があったのかは知りませんが、今の私にとっては嬉しくない出来事です。

 

「世界でも救いに行くのか……?」

「世界の危機というよりも、私の危機というか……」

 

 好きな人の目の前でおもらしなんて絶対にしたくありませんから。

 

「それよりも早く通してください。時間がありません」

 

 そろそろ行かないと危ないかもしれません。お手洗いが混んでいる可能性がありますからね。

 

「どこへ行こうと言うのかね」

「それは、その……」

 

 元樹さんはスタミナ切れになりませんし、本当のことを言わない限りどいてくれそうにありませんね。とても恥ずかしいですが、ここは腹をくくりましょう。

 

お手洗い……です

「もう一回、ちゃんと聞こえるように」

 

 勇気を出して言ったのに、元樹さんは再度口に出すことを要求してきました。それもニヤニヤしながら……。さては私がお手洗いに行こうとしていることに気づいてましたね……!

 

「……お手洗い……です……」

「漏らしそうなのか」

「い、言わないでください! それと早くどいてください!」

 

 なんてデリカシーのない人なのでしょうか……。事実とはいえあまりにも直球すぎます。元樹さんが邪魔なんてするからおもらししそうになっているというのに……。

 

「ここで漏らしてもいいんだぞ?」

「それは絶対に嫌です! うっ……お願いですから、早くどいてください……」

 

 もう本当に限界です……。もしお手洗いが混んでいたら……もう、ダメですね。

 

「わ、悪かったって。通してやるから泣くなよ」

「ありがとうございます! では!」

 

 元樹さんが少し扉からどいたので、少し押しのけるようにして外に出る。こんな非常事態でも廊下を走るわけにはいかない。でも早歩きするくらいは許してもらいましょう。

 

「はぁ……着きました……」

 

 個室は……よかった、ちょうど1つ、多目的トイレが空いていました。扉を開けて中に入り、なんとか間に合ったと一安心する。しかし、ここで安心して気を緩めたのがよくなかった。

 

「ああっ!」

 

 私の中から黄色い液体が溢れ出してきてしまった。

 

「いやぁ……」

 

 一度溢れ出したものは止まることを知らず、私の下着を黄色く染め上げ、下着から染み出したものが床を濡らした。

 もう止めることは無理だと判断し、便座に座りこれ以上床を汚すのを防いだ。

 

「お気に入りの下着だったのに……」

 

 少し前に元樹さんに選んでもらった下着だ。当然下着姿を見せて選んでもらったわけではないけれど、元樹さんがイメージに合うと言って選んでくれた上下セットの純白の下着。自分でも私によく似合っていると思い、一緒に出かけたり、元樹さんのことを考えて致す日には必ず身につける、一番お気に入りの下着だった。そんな大切なものを汚してしまった。こんなに汚いもので。高校生にもなっておもらししてしまったということよりも、そちらの方が私には辛かった。

 

「はぁ……急いで洗いましょう」

 

 下着を脱ぎ、備え付けの洗面台で水洗いする。あんなに綺麗だった純白もこんなに汚れてしまった。でも落ち着いて考えれば今更かもしれない。これを穿いたまま致したりしていたのだから、とっくに汚れていたに違いない。それに私の汚い尿で汚れた下着に元樹さんが触ってくれる妄想をすると……少し興奮してきますね。

 

「……ふぅ、汚れは落ちたみたいです。水洗いでも意外と落ちるものですね」

 

 あんなに汚れていた下着はもとの純白を取り戻していた。……尿って水洗いだけでこんなに落ちるものなのでしょうか。そう簡単に落ちるものではないと思っていたのですが……。まあいいでしょう。綺麗になってくれる分には何の問題もありませんから。

 床にこぼれた分もトイレットペーパーで拭き取って綺麗にし、ひとまず後始末は終わり。下着は……とても乾きそうにありません。今日は下は穿かずに過ごすしかなさそうですね……。元樹さんに見られるのは最悪構いませんが、他の……特に男性の方に見られたらどうしましょう……。考えるだけでも吐き気がしてきます。隠すいい方法も浮かびませんし、頑張ってスカートで隠し通すしかなさそうです。どうしてこの学校の制服のスカートはこんなにも短いのでしょうか。今はこの短いスカートが恨めしくて仕方ありません。

 びしょ濡れの下着ですが、このまま手で持っていくわけにもいきませんし、元樹さんにお願いして袋を持ってきてもらいましょう。

 助けてください……と元樹さんにメッセージを送る。

 

『どうした、何があった』

 

 少ししてメッセージが帰ってきた。

 

『訳は聞かずに袋をトイレ前まで持ってきてください。袋は私のカバンの中に入ってるものを使ってください』

『了解。どこのトイレだ』

『教室から一番近い場所です』

『おけまる』

 

 扉を少し開けて周りを確認する。幸いなことに誰もいなかったため、ここを使われることはないだろうと判断し、濡れた下着をそこに置いたままお手洗いの入り口まで戻る。この時もスカートの裾をしっかり押さえて、絶対に中を見られないようにする。

 入り口から顔だけだして待っていると、すぐに元樹さんが来てくれて、キョロキョロと私を探していた。

 

元樹さん、こっちです。早く来てください

 

 恥ずかしさで小さな声しか出せなかったけど、彼はすぐに私に気づいてくれた。

 

「袋は持ってきてくれましたか?」

「ああ、もちろん」

 

 元樹さんから袋を受け取る。

 

「どうしたんだよ、袋をトイレなんかに持ってこさせて……。顔も真っ赤だし」

「聞かないでください……」

「ふぅん……ま、いいや」

 

 受け取った袋を持って多目的トイレへ戻り、置いていった下着を袋の中に入れる。その後絶対に見られないようにグルグル巻きにして、元樹さんのところに戻る。

 

「お待たせしました。教室に戻りましょうか」

「ん。……ところで、その袋には何が入ってるんだ?」

「これは気にしないでください。何でもありませんから」

 

 元樹さんは変なものを見るような目で私を見てきたけど、気にしないことにした。変に食いついてボロを出したくないですからね。

 

「話は変わるんだけどさ、今日の昼飯も中庭で食べないか? 小高い丘の上で食べるのもいいと思うんだよ」

「お、丘の上ですか!?」

「ん? なんか変なことでも言ったか?」

「いえ、そうではないのですが……」

 

 丘の上でなんて……下からだとスカートの中が覗かれ放題じゃないですか。

 

「あの、それは別に今日でなくてもいいのではないでしょうか」

「今日は天気がいいからさ。風も心地いいし、外で食べたい気分なんだよ」

「別の日ならいくらでも付き合いますから。ほら、明日なんてどうですか? 天気予報では明日もいい天気らしいですよ」

「いやだ。今日、栞子と2人っきりで食べたいんだ。今日しかないんだ」

「うぅ……」

 

 私と2人きりでなんて言われたら……ズルい。本当に元樹さんはズルい。何を言ったら私が折れるかきっとわかっているんだ。

 

「それでしたら人のいなさそうな場所にしてください。それでしたら私も付き合いますから……」

「……なんで栞子はそんなに嫌がるんだよ。さっきからずっとスカート押さえてるし……中に変なものでも入れてるのか?」

「変なものが入っているというより、本来あるべきものがないといいますか……」

「あるべきものがない……あっ、ふーん……」

 

 何かに納得したのか、それ以降元樹さんが突っ込んでくることはありませんでした。一瞬気づかれたのかと思いましたが、超がつくほど鈍感な元樹さんに限ってそれはないでしょう。

 

 

 

 教室に戻り、元樹さんと雑談しながら授業の開始を待っていましたが、イスに座った時の変な感触がどうしても気になってしまい、話にあまり集中できていなかった。

 スカート1枚挟んでいるとはいえ、生地が薄いためほとんどお尻で直でイスに座っているようなものだ。慣れない感触がどうしても気になってしまう。

 

「……ほら、これ使えよ」

 

 もぞもぞとする私を見て何か察したのか、元樹さんは座布団を渡してくれました。

 

「えっと、ありがとうございます……」

 

 元樹さんの気遣いに感謝して、ありがたく使わせてもらう。裸で布団に座った時の感触に似ていたため、先程より何十倍も楽になった。

 1つ気になるのはどこから座布団を出したのかだ。今まで座布団を使っているところを見たことがありませんし、明らかにカバンに入るサイズでもありません。四次元ポケットなどあるはずありませんし、一体どこから……。

 

「どうだ? 楽になったか?」

「はい、すごく楽になりました」

「それはよかったよ。俺が家で使ってるやつだけど我慢してくれ」

「いえ、気にしませんよ。貸してくれただけでとてもありがたいですから」

 

 そうこうしているうちに始業にチャイムが鳴り、先生が入ってきました。

 

「きりーつ。きをつけー。れーい」

『お願いしまーす』

「センセンシャル」

お願いします……

 

 ノーパンで授業を受けること恥ずかしさが急にこみ上げてきて、挨拶もあまり声が出せなかった。そんな私の気も知らない元樹さんは、いつも通り酷い挨拶をしていた。センセンシャルって何ですか……。

 数学嫌いだからなのか、数学の授業だけ適当に挨拶をするのだ。いつもは注意するのだけれど、今日は私も酷かったので元樹さんのことは言えない。今日だけは勘弁してあげましょう。

 

「今日は隣の席の人とグループワークをしてもらいます。一番最初に終わったグループにはご褒美のアイスが待ってますよー」

 

 グループワーク……私は左隣の元樹さんとですね。彼がきちんと理解できるようサポートしてあげないと。

 

「よろしくな」

「はい、よろしくお願いします」

「とりあえず席くっつけるか」

 

 そう言うと席をくっつけて密着してきた。それもお尻がくっつくほどに。

 

「っ!」

 

 全く警戒していなかったので、突然のことにびっくりして持っていたペンを落としてしまった。スカートを気にしてすぐにしゃがめなかった私の代わりに元樹さんが拾ってくれた。

 

「ほら」

「あ、ありがとうございます……」

「どうかしたのか?」

「……なんでもありません。そんなことより課題をやりましょう」

「うへぇ……」

 

 私が問題文を読んでいると、不意に元樹さんの手が私のスカート向かって伸びてきた。2人きりならともかく、大勢がいる授業中にスカートを捲られるのは嫌だったので、手を掴んで止める。

 

「何をしようとしているのですか?」

「えっ、いやぁ……」

「いたずらはいけませんよ。それに今は授業中です。そちらに集中してください」

「はぁ……わかったよ」

「よろしい。では与えられた課題を一緒に解きましょうか。一番早く終わったペアには先生がアイスをくださるそうですよ」

「あーいいっすね。じゃあ頑張るか!」

「い、いきなりやる気になりましたね……」

 

 物で釣られるのはどうかと思いますが、やる気がない状態で勉強するよりも、動機が不純でもやる気がある状態で勉強した方がいいですからね。クラスで一番の数学嫌いな元樹さんがやる気を出したということは、先生のアイス作戦も成功と言えるのかもしれません。

 

「というわけで手を離してくれないか? 問題が解けない」

「……え?」

「えっ、じゃなくて手を離してくれよ。さっきからずっとにぎにぎしたりニヤニヤしたりさ」

「ニ、ニヤニヤなんてしてません! 適当なことを言わないでください!」

「今は授業中だぞ? あんまし大きな声出すなよ」

「あっ……」

 

 元樹さんの言葉で我に返り、先生の方を見ると鋭い目で私を見ていた。

 

「栞子さん?」

「えと、その……す、すみませんでした……」

 

 周りに謝罪をし、元樹さんを睨む。

 

「なんだよ、怒られたのはお前が大声出したからだろ?」

「それはそうですが……ですが私が大声を出す原因を作ったのは元樹さんです。元樹さんの手を握ってニヤニヤしているなどという嘘をつかなければこんなことにはならなかったんです」

「強気でくるねぇ。ノーパンのくせに

 

 今、元樹さんの口から聞き捨てならない言葉が放たれた。

 

「な、なななななぜそのことを知っているのですか!?」

「おいおい、今は授業中だって。さっきも怒られただろ?」

「そんなことはどうでもいいのです! 今はどうして元樹さんがそのことを知っているのか聞いているのです!」

「どうしてって言われても……ねぇ?」

「……もしかして、初めから知っていましたか? ……知ってたんですね。知った上で私のことを弄んだんですね! そうなんでしょう!?」

 

 そう問い詰めると、肯定とばかりに目線を逸らした。やはりそうだったんですね……!

 元樹さんが座布団を貸してくれた時に……いえ、丘の上で食べようと言ってきた時も気づくべきでした。座布団は私を心配してのことかもしれませんが、昼食の話は完全に私をからかっていたんですね。

 

「うぅ……元樹さんに穢されてしまいました……。もうお嫁にいけません……」

「わ、悪かったよ。栞子の反応が可愛かったからからかいたくなっちゃったんだよ。許して」

「……肉まん」

「肉まん?」

「購買の肉まん……それの一番高いものを買ってくれるのであれば許します」

「そんなのでいいのか?」

 

 そんなの……元樹さんにとっては()()()()で片づいてしまうのですね。私にとってはとても大事な、絶対に忘れることのない元樹さんとの思い出の品なのに……。

 

「わかった、昼飯の時に奢るよ」

「約束ですよ? 元樹さんには絶対分けてあげませんからね?」

「とか言って、分けてって言ったら分けてくれるんだろ?」

「ふふっ、それはどうでしょうか」

「あっ……栞子、あっちあっち」

 

 元樹さんが指差す方を見ると、先生が先程よりもさらに鋭い目つきでこちらを睨んでいた。

 

「ひぃっ!」

 

 普段は優しくてにこやかな先生だけに迫力がある。

 

「す、すみませんでした……」

「……痴話げんかは授業以外の時間にやっててくださいね。見てて楽しいけどね」

 

 一転先生はニコリと笑い、私にそう言った。周りを見ると、クラスの皆も優しい目で私達2人のことを見ていた。

 

「ひゅ~ひゅ~」

「やっぱ夫婦は違うね~」

 

 皆さんが口々に呟く。一言一言が私の心にダメージを与えてくる。

 

「夫婦だってさ。困っちゃうなぁ~。な、栞子」

 

 そして元樹さんの何気ない一言がとどめの一撃となった。

 

「はい……」

 

 よろよろと椅子に座り込み、隣の元樹さんにもたれかかる。彼は拒絶することなく、むしろ軽く抱きしめてくれた。

 

「俺達クラス公認のカップルみたいだな」

 

 そんな言葉を耳元で囁いてきた。元樹さんの吐息が耳にかかり、体がぞわぞわする。

 

「カップル……元樹さんと……カップル……」

 

 元樹さんの恋人、元樹さんの一番……そんな人になることができたのならどれだけ幸せなことでしょうか。私に、彼の恋人の適正はあるのでしょうか……。

 

「……栞子? おーい」

 

 誰かが私の髪を撫でている。見なくてもわかる、元樹さんだ。夢にまで見たことが、今この場で起きている。彼の撫で方は壊れ物を触るかのように丁寧で、でも確かな愛情を感じるものだった。

 大好きな人に抱きしめられて、頭まで撫でてもらっている。こんなに嬉しいことはない。幸せが溢れて思わず笑みがこぼれる。

 

「おーい、栞子さんやー。返事してくれー」

「手つなぎ……キス……ホテル……」

 

 いつかは元樹さんと付き合って、手をつなぎながらデートをして、綺麗な夜景が見える場所でどちらからともなくキスをして、そしてそのままホテルへ……元樹さんと深く繋がって、何回も愛し合うのだ。…いつか、いつかきっと実現してみせる。

 

「ダメだこりゃ……」

 

 

 

「すみませんでした……」

 

 私が正気を取り戻したのは授業終了直前、ちょうど元樹さんが課題を全て解き終わったタイミングだ。つまりグループワークで私は何もしていない。

 

「めっちゃくちゃしんどかったぞ。先生にも助けてもらったし……」

「本当にすみません……」

 

 とても申し訳ないことをした。元樹さんが……クラスの皆が頑張っている間、私1人だけ妄想の世界に浸っていた。

 

「お詫びになるかはわかりませんが、何でも1つ元樹さんのお願いを聞きます」

「ん? 何でも聞いてくれるの?」

「はい。あくまでも私にできる範囲内でですが……」

「じゃあキスしてくれ」

 

 ……え?

 

「キスですか!?」

「うん」

 

 聞き間違いではなかった……。また私をからかっているのか、それとも……。

 

「ど、どこにですか……?」

「口以外にある? マウストゥーマウスだよ」

 

 そう、ですよね。口同士に決まってますよね……。

 

「でも皆さん見てますし……」

「皆もう各々の教室に行ったよ」

「皆さんいつの間に……」

 

 元樹さんの言う通り、教室にはもう私達2人しかいなかった。

 

「ほら、早くしてくれよ」

 

 元樹さんはもう目を閉じて私のことを待っている。

 どう考えてもこの状況はチャンスでしかない。だって彼の方からキスを求めてきているのだから。大好きな人とキスすることができるのだから。またとない機会だ。断る理由なんてない。でも彼の意図が読めない。なんで私とキスをしようと思ったのか、それがどうしてもわからない。

 

「も、元樹さんはいいのですか? 初めてのキスが私でも……」

「もちろん。栞子みたいな美少女とのキスが嫌な人間なんていないよ。そもそも俺ファーストキスじゃないしな」

「……は?」

「……あ、やべ」

 

 なるほど、ファーストキスではないと。しかも本当は隠したかったことであると。

 

「……栞子?」

 

 両手で彼の顔を掴み、逃げられないよう固定する。

 

「いいでしょう。私で上書きしてあげますね」

「ちょっ」

「ん……」

 

 そして一気に距離を詰め、そのまま唇を奪う。彼にとっては初めてでなくても、私にとっては正真正銘初めてのキスだ。私の初めてで元樹さんを上書きする。彼を私色に染める。

 体が震える。緊張のせいだ。緊張していることが伝わったのか、元樹さんが私の腰に手を回し、ギュっと抱きしめてくれた。抱きしめられたことで緊張がほぐれ体の震えが止まった。

 

「んむぅ……」

 

 こちらも元樹さんの首に手を回して抱き寄せ、さらに体を密着させる。重ねた唇の角度を何度も変え、お互い激しく求め合う。私の口内に侵入しようとしているのか、時々彼の舌先が唇に触れる。その度に感じたことのない刺激に体がビクンと跳ねる。

 それだけでは飽き足らず、彼の手が私のお尻に回された。彼の右手がお尻に刺激を与えてくる。好きな人にされると、自分で同じことをした時より何倍も気持ちいい。

 

「んんっ……んちゅ……」

 

 彼の指がお尻に食い込む度に自然と腰をくねらせてしまう。それだけ気持ちいいのだ。これ以上のことをしたら私は一体どうなってしまうのだろう……体験したいけれど、同時に怖くもある。

 

「ぷはぁ……」

 

 長かった幸せな時間が終わってしまった。まだ抱きしめ合ったままだけど、顔は離れてしまった。私の顔は真っ赤に染まっているだろう。けれど元樹さんは……胸にモヤモヤとしたものが溢れてくる。

 

「私の……私のファーストキス、いかがでしたか……? 味わっていただけましたか……?」

「ああ、ちゃんと堪能させてもらったよ」

「きちんと私で上書きすることができましたか?」

「もちろん。もう一面栞子で染められちゃったよ」

「ふふっ、それはよかったです。私も元樹さんで染められてしまいましたよ」

 

 2人で笑い合う。

 

「……あの、いつまで私のお尻を触っているつもりですか?」

「ごめんごめん。触り心地がよかったからさ」

「もう……」

 

 こんなところを誰かに見られていたら大変ですね。教室で抱き合ってキスまでしているんですから。風紀委員の方に見つかってしまったら指導されてしまいますね。

 

「私達もそろそろ移動しましょうか。授業に遅刻してしまいますからね」

「そうだな。でも科目が違うからここでお別れだな」

「そうですね。本当はもっとこうしていたいのですが……」

「俺もだよ。一緒に授業サボるか?」

「それはいけませんよ」

「だよなぁ……」

 

 名残惜しいけど元樹さんから離れる。

 

「それでは、また後で会いましょう」

「ああ。移動の時スカートに気をつけろよ。特に階段はな。上り下りしてる時は簡単に下から覗けちゃうから」

「そうでした……。ありがとうございます、完全に失念していました。覗かれないようにちゃんと気をつけますね」

「気をつけろよー」

 

 元樹さんと別れ、それぞれの教室に向かう。……授業中平常心でいられるでしょうか。頬が緩んでしまわないよう、気をしっかりと引き締めなければ……。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part28/n

初遅筆です(大嘘)


 他称清楚系スクールアイドルなのに滲み出るエロさ隠しきれていない同級生とお泊まりして、いやらしい展開になったりならなかったりするRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は愛さんとのランニング中にほも君が転んで足を捻ってしまいました。今回はその続きからで、とりあえず侑ちゃんのところに行きます。

 侑ちゃんはどこかなぁっと……どうやら筋トレの場所にいるみたいです。早速行きましょう。ロード時間がいつもより長いですが、これは足を捻ったせいです。怪我で歩くのが遅くなっていることをロード時間を長くしていることで表現しているんですね。まーだ時間かかりそうですかねー。

 

「あれ、もと君? どうしたの?」

 

 着きました。侑ちゃんがボードを持って紙にいろいろ書いています。

 

「あ、元樹君!」

「もと君だぁ」

「元樹君、ランニングは終わったの?」

 

 今日筋トレしていたのはしずくちゃんと彼方さん、それからエマさんみたいですね。ほも君はランニング中に転んで怪我をしてしまったので、侑ちゃんのお手伝いに来ました。

 

「怪我!? だ、大丈夫なの!?」

 

 しずくちゃんが慌てて駆け寄ってくれましたが、ただ捻っただけなので大丈夫です。保健室にはもう行きましたし、実際こうやって歩けてますしね。

 

「とりあえず保健室に連れていかないと……捻っただけでも大事になるかもしれないし……」

 

 もう行ったって言っただろ(半ギレ)

 

「そ、そうでした……冷静にならないとダメですね」

「そうだよ、しずくちゃん。でも元樹君もちゃんと安静にしてないとダメだよ?」

「そうですね。元樹君、私の隣に座って安静にしようね」

「彼方ちゃんと添い寝でもいいよ~」

 

 しずくちゃんが自分の隣をポンポン叩いて催促していますが、そこには座りません(無慈悲) 親密度は十分すぎるほど稼げていますからね、優先して稼ぐ必要はありません。

 というわけで侑ちゃんか彼方さん、エマさんの誰かになるのですが、ここはエマさんの隣に座りましょう。親密度稼ぎもありますが、そろそろメインストーリーが進む時期のはずですから、ここでエマさんと絡んでおきます。彼方さんとの添い寝も魅力的ですが、これはRTAなのでストーリーの進行が優先です。

 

「あぁ……どうして……」

「ふふっ、元樹君としずくちゃんってすっごく仲良しだよね」

「部室でもよく一緒にいるよね」

 

 そうですね。しずくちゃんとはとても仲良しですよ。ほも君にとってはいい友達です。

 

「学年が同じだから気が合うのかな?」

「クラスも学科も違うのにこんな仲良しな友達がいるのっていいなぁ」

「まあ、しずくちゃんの方はそれだけじゃないみたいだけどね~」

 

 彼方さんがチラッとしずくちゃんの方を見ました。鬼かな?

 

「なっ……! か、彼方さん!」

「ん? どうしたの~?」

「何か変なことでも言った?」

「何でもないよ~。ね、しずくちゃん?」

「そ、そうです。何でもありませんよ」

 

 反応を見る限り、彼方さんはしずくちゃんの気持ちに気づいていて、逆に侑ちゃんとエマさんは全く気づいていないみたいですね。気づいたからといってどのキャラにも特に影響はないので、別に問題はありません。

 雑談するのもいいですが、練習もちゃんとしましょうね。ほら、彼方さんも寝転がってちゃダメですよ。腕立て伏せの続きしてください。

 

「ひぇ~、彼方ちゃん壊れちゃうよ~……」

 

 腕立て伏せもできないの? そんなんじゃ甘いよ(棒読み)

 

「でも確か元樹君もできなかったような……」

 

 えぇ……(困惑)

 

「あはは、確かにもと君もできなさそう」

「まだ彼方さんの方ができてましたからね……」

「ふっふっふっ、もと君も彼方ちゃんと一緒にトレーニングしないとだねぇ」

 

 ほも君の腕立て伏せ見たけりゃ見せてやるよ。

 

「今はダメだよ! 安静にしなきゃ……ほら、大人しく座ってて」

 

 エマさんに止められてしまったので、大人しく座って皆のトレーニング姿を観察しましょう。お餅が2×4で8個……あぁ^~たまらねぇぜ。

 

「ふぅ……」

 

 エマさんは一区切りついたみたいです。ドリンクを渡してあげましょう。

 

「ありがとう」

 

 何やら浮かない顔をしていますが、何かあったのでしょうか?

 

「うん、ちょっと悩み事があって……」

「悩み事、ですか?」

 

 ほも君でよければいくらでも聞きますよ。何に悩んでいるのか教えてほしいですね。

 

「彼方ちゃん達だって聞くよね~、しずくちゃん、侑ちゃん」

「もちろんです! 何でも言ってください、エマさん!」

「あんまり参考になることは言えないかもしれないけど、話ならいくらでも聞きますよ!」

「そ、そんな大げさな……。ちっちゃなことなんだよ~、言うの恥ずかしいな……」

 

 おっそうだな(適当) 恥ずかしがってないであくしろよ。

 

「実は、わたし、どんなスクールアイドルを目指したらいいのかなぁ、っていうのが、わからなくなっちゃって……」

「どんなスクールアイドル……? エマさんらしいスクールアイドルになればいいんだと思うけど……」

「その、わたしらしい、っていうのがよくわからなくて。わたしの個性ってなんだろうな~って悩んじゃってるの」

 

 全部母国語で歌えばいいんじゃないですかね(適当) この同好会に後々加入するアメリカからの留学生(3年生(14歳(B80)))が全部英語で歌ったりするし、もう1人増えたところで問題ないと思います。

 おふざけはここまでにして、部室でうだうだ悩んでいても時間の無駄ですし、一度リフレッシュしてみてはいかがでしょうか。

 

「リフレッシュ?」

 

 エマさんの個性探しも兼ねて、皆でどこか出かけるのがいいと思いますね。

 

「それいいかも。でもどこに出かけるの?」

 

 この辺にぃ、緑の多い大きな公園、あるらしいんすよ。

 

「都内にそんなところがあるの?」

 

 エマさんの故郷であるスイスにも緑が多いですし、いいリフレッシュになると思います。

 

「確かに~」

 

 じゃけん日曜日行きましょうね~。

 

「私も行きたい!」

「私も行ってみたいです」

「彼方ちゃんも~」

「うん、皆で一緒に行こうね」

 

 はい、これでメインストーリ―のフラグが立ちました。スマホ版における2章2話のところですね。別にほも君から提案しなくても侑ちゃんが誘ってくれるので、放っておいても一応メインストーリ―は進行します。ですがこうすることでエマさんの親密度上昇量がちょっと多くなってうま味です。

 

「皆でピクニック、楽しみだな~」

「お昼は彼方ちゃんがお弁当作ってくるね」

 

 彼方さんの手作り弁当楽しみですね。

 

「期待していいよ~。もと君の胃袋ガッチリ掴んじゃうかもねぇ」

 

 心はもう彼方さんにガッチリ掴まれてますよ(棒読み)

 

「なぁっ!?」

「おぉ、嬉しいこと言ってくれるねぇ。でも遥ちゃんがいるから、もと君は2番目になっちゃうんだよ~……」

 

 うーん……今の発言からして、彼方さんの親密度はLikeからちょっと高いくらいって感じですね。Loveになっていれば2番目ではなく、遥ちゃんと同じぐらい好きと言ってくれますからね。まあ、今の時点ではこんなもんでしょう。

 

「……元樹君」

 

 ん? 何でしょうか?

 

「元樹君は、彼方さんのこと……す、好きなの?」

「もと君は彼方ちゃんの演技に付き合ってくれたんだよね~?」

 

 そうだよ(建前)

 

「そうなんだ……よかった

 

 ほも君が彼方さんLoveじゃないことがわかって安心してますよ。やっぱ好きなんすねぇ。

 さて、ここからは特にイベントもなかったので、帰宅するまで4倍速にします。今日はしずくちゃんとのお泊まりの日なので練習終了後に何かイベントがあると思っていましたが、特に何もありませんでした。RTA的にはタイム短縮になるので嬉しいですね。

 

 

 

 しずくちゃんと一緒に帰宅しました。入ってどうぞ。

 

「お、お邪魔します……」

 

 緊張しているみたいですね。異性の家は初めてか? 力抜けよ。自分の家だと思ってくつろいでくれていいですからね。

 4倍速にしていたので気づかなかった兄貴も多いと思いますが、実は帰宅中しずくちゃんはずっとほも君の腕の裾をちょこんと摘まんでいました。正直言って可愛かったです。見たい兄貴は0.25倍速にして再生するといいんじゃないかな?

 

「すぅ……はぁ……うん、もう大丈夫。お邪魔するね」

 

 大きく深呼吸をしてしずくちゃんも落ち着いたみたいです。

 さて、お腹も空きましたし早速晩飯にしましょうか。何かリクエストとかありますか?

 

「……」

 

 しずくちゃん……? しずくちゃんが靴箱の上のものを見てぼぉーっとしています。何か変なものでもあったのでしょうか。

 

「……あっ……ご、ごめんね。何でもないよ……」

 

 じゃあなんでそんな暗い顔してるんですかねぇ。折角のお泊まりなのに楽しそうじゃないしずくちゃんは嫌いだけど好きじゃないよ。何があったのかはわかりませんが、気分をリセットしてあげましょう。むにぃー。

 

「……にゃにしゅるの」

 

 しずくちゃんのやわらかほっぺを引っ張ってあげただけですよ。もう少しこの柔らかい頬っぺたを堪能しましょう。むにむにむにぃー。

 

「いひゃい……」

 

 ちょっと強くしすぎましたかね。もう十分堪能したので離してあげましょう。

 

「なんで急にこんなことしたの?」

 

 しずくちゃんが暗い顔してたので。今ので多少は気分をリセットできたでしょ?

 

「確かに……元樹君に触ってもらえて、少し気分は紛れたかも」

 

 それはよかったです。もう一度聞きますが、しずくちゃんは何か晩飯のリクエストとかありますか? ほも君は万能なので何でも作れますよ。

 

「うーん……特にないかな。元樹君の作ってくれた料理なら何でも嬉しいかも」

 

 ん? 今何でも嬉しいって言ったよね? じゃあピーマンの肉詰めでも出してあげようかな。もちろん完成するまでしずくちゃんには秘密でね。

 今から超特急で作るのでしずくちゃんはテレビでも見ながらゆっくりしててください。先にお風呂に入ってもいいですよ。

 

「私も手伝うよ?」

 

 客人なんですからゆっくりしていてください(建前) ピーマンの肉詰め作ってるのがバレるだルルォ!?(本音)

 

「ううん、元樹君こそ足怪我してるんだから遠慮しなくていいの」

 

 それを言われると困りますね……。しずくちゃんも善意で言ってくれてますしね。

 

「それに……折角のお泊まりなんだから、元樹君と一緒にお料理したいなぁ……なんて」

 

 こマ? 上目遣いでこんなこと言われたら即堕ちしちゃうだろ! いい加減にしろ!

 

「なんで私怒られてるの……?」

 

 いいでしょう。しずくちゃんも一緒に料理しましょう。

 

「やった……! ありがとう元樹君!」

 

 あれをされて堕ちない男はノンケじゃないですね。ほも君はノンケじゃないので堕ちませんでしたが、私が堕とされたので一緒に料理することにしました。ピーマンの肉詰め? ま、何とかなるでしょ(適当)

 りなりーが使ってたエプロンがあるんですけど使いますか?

 

「こんなこともあろうかとエプロン持ってきたから大丈夫だよ」

 

 しずくちゃんはカバンから取り出した犬柄のエプロンを着ました。可愛い。

 

「似合ってるかな?」

 

 バッチェ似合ってますよ。くるっと一周して、どうぞ。

 

「こんな感じかな? ふふっ、ライブの衣装披露してるみたい」

 

 あぁ^~いいっすねぇ^~。

 

「元樹君のエプロンはどんな感じなの?」

 

 ほも君のエプロン姿ですか? 見たけりゃ見せてやるよ。

 

「わぁ……すごく似合ってるよ。主夫みたいでかっこいい……」

 

 しずくちゃんには刺さったみたいですね。これも『ファッションセンス○』の効果なんですかね? 私にはわかりません(検証不足)

 

「その……記念に一緒に写真撮ってほしいんだけど……ダメかな?」

 

 もちろんいいですよ。ほら、並んで並んで。

 

「うん。……よし、はいチー……」

 

 ちょっと待って!

 

「えっ? どうしたの?」

 

 こんなに離れてたら記念になんてなりませんよ。もっと近づいて撮りましょう。体が密着するくらいがいいですね。何なら抱きしめてあげましょうか?

 

「え……それはちょっとハードルが高いというか……」

 

 こっちはRTA中なんですよ。あくしろよ。

 

「……えっと、じゃあ……し、失礼します……」

 

 恥ずかしそうにしながらもしずくちゃんが身を預けてきました。1年生の中で一番大きいお胸の感触が最高です。こちらも優しく抱きしめてあげましょう。

 

「んっ……あの、頭なでなでもしてほしい……」

 

 今日のしずくちゃんは攻めますねぇ! 恋するしずくちゃんほんとすこ。

 

「だめ……かな?」

 

 そんなわけないじゃないですか。焦らしプレイでもしてあげようかと思いましたが、しずくちゃんが潤んだ目で見つめてくるので今すぐいっぱいなでなでしてあげましょう。なでなで。

 

「ふぁぁ……」

 

 キモティカ?(古代都市) キモティ=ダロ?(古代遺跡)

 

「うん……すごく気持ちいい……」

 

 このまま撫でててあげますから、今のうちに写真撮ってください。

 

「……えっ、写真?」

 

 お泊まり記念写真が撮りたかったんですよね? もしかして忘れてたんですか?

 

「……忘れてないよ?」

 

 ほんとぉ?

 

「うん、本当だよ?」

 

 嘘つけ絶対忘れてたゾ。

 

「…………ごめんなさい」

 

 あのさぁ……。

 

「うぅ~、だってだってぇ……」

 

 『だって』、何ですか?

 

「元樹君の手が気持ちよくて、頭真っ白になっちゃったんだもん……」

 

 顔を真っ赤にしてそんな嬉しいこと言われたら……もう許せるぞオイ! しずくちゃんが魅力的すぎるからね、しょうがないね。

 気を取り直して写真撮りましょうか。

 

「うん。じゃあ元樹君も笑って……はい、チーズ!」

 

 パルメザンチーズ! りなりー見てるか~?

 

「わぁ、すっごくいい写真……」

 

 どんな写真になったんですか。私にも見せてほしいです。

 

「もちろんいいよ」

 

 ほも君もしずくちゃんも幸せそうですね。まるで新婚夫婦みたいです。

 

「元樹君にも送ってあげるね」

 

 しずくちゃんから写真が送られてきました。栞子ちゃんとの写真もそうですが、こういったヒロインと親しげにしている写真は他のヒロインに見られないように気をつけましょう。もし見られてしまうと大変なことになります(n敗)

 

「ふふっ、壁紙にしちゃお」

 

 しずくちゃんは今の写真を壁紙にするみたいですね。ほも君はもちろんしません。見られるリスクが高くなるだけですからね。ハイリスクローリターンです。

 ほも君以外のスマホでも他の人に見られる可能性があるため、本当はしずくちゃんにも壁紙にしてほしくないのですが、こればっかりはどうしようもないので祈りましょう。やめてくれなんて言ったら親密度が下がってしまいます(1敗)

 

「この写真、私も大切にするから、元樹君も大切にしてね?」

 

 もちのろんです。

 

「ちょっと遅くなっちゃったけど、そろそろご飯作ろっか」

 

 そうですね。しずくちゃんとの楽しいお料理タイムといきましょう。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)

この小説を書いているせいか、最近推しがコロコロ変わっています。今はしずくちゃん推しです。かすみんお泊まり回になったらかすみん推し、愛さんとのお出かけ回になったら愛さん推しになっていることでしょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part29/n

りなりーの初三つ編みです。


りなりーが出てくれませんでした……(小声)
悲しいなぁ……。


Q. 最近投稿遅くない?
A. それは君の錯覚だよ(震え声)


 自分に好意を持ってくれている、やらしさ全開巨乳美少女同級生がぐいぐいくるイチャイチャお泊まり回だけど、このRTAにエロ要素はありません(本当)ので一切えちえち展開にならないRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はしずくちゃんとイチャイチャしながらツーショット写真撮影を行いました。今回はその続きからで、しずくちゃんとイチャイチャしながらお料理をしたいと思います。

 

「メニューはどうするの?」

 

 そうですねぇ……特にリクエストなしとのことだったので、ほも君の大好きなハンバーグwithピーマンの肉詰めにしましょうか。ちょっと手間はかかりますが、しずくちゃんが手伝ってくれるのであればパパパッと作れるでしょう。

 

「うん、私もハンバーグ食べたい」

 

 じゃあ決まりですね。早速作っちゃいましょう。

 ほも君としずくちゃんのぉ、810分クッキング―! いぇーい!

 

「い、いぇーい」

 

 まずはハンバーグの具材を用意します。必要な具材は全て冷蔵庫に入っているはずなので取り出しましょう。しずくさん、お願いします。

 

「しずく、さん……?」

 

 料理番組風にやっているだけですよ。しずくちゃんも一緒にやりましょうよ。

 

「なるほど、それだったら……わかりました、元樹先生」

 

 ぐっ! しずくちゃんの先生呼びはなかなかの破壊力ですね……。

 

「まずはひき肉、それから玉ねぎでしょ? それから……はい、全部具材は揃いました」

 

 次に玉ねぎをみじん切りにします。しずくさん、お願いします。

 

「わかりました。包丁で玉ねぎをトントントン……っと」

 

 しずくちゃんがリズムよく玉ねぎをみじん切りにしていきます。しずくちゃんがエプロン姿で料理しているのを後ろから見ていると……なんだかこう、いやらしい気持ちになってきますね。本人にそのつもりはないでしょうが、扇情的というかなんというか……こう、後ろからお尻と胸を鷲掴みしたくなる、ならない?

 ほも君も誘惑に抗っているのか、こちらの操作に関係なく手を伸ばしたり引っ込めたりしてますね。やっぱりノンケじゃないか(がっかり) 私がボタン1つ押すだけで、ほも君の背中を押してあげることができます。ボタン1つでしずくちゃんと……ヌッ!

 

「ふんふんふ~ん♪」

 

 危うく襲ってしまうところでしたが、楽しそうなしずくちゃんを見てなんとか踏みとどまりました。この114514ペリカの笑顔を穢すなんて大罪を犯すことなんて私にはできません……。ムフフな展開を期待していた兄貴は自分で買ってプレイしてください。

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子) 相思相愛なんだから襲っても喜んでくれるだルルォ!? などとの賜る兄貴は1週間朝昼晩せつ菜ちゃんの手料理の刑の後死ゾ。初めてなんですからムードっていうものが大事なんですよ。乙女心がわからない兄貴はこの動画で勉強して、どうぞ。

 

「うぅ、目が痛くて涙が……ぐすん」

 

 ほも君が葛藤している間、しずくちゃんは玉ねぎを切って涙を流していたみたいです。玉ねぎあるあるですね。でも目を保護するものがうちにないため我慢してください。

 

「ぐすん……みじん切りにしました……」

 

 では次にみじん切りにした玉ねぎをきつね色になるまで炒めましょう。しずくさん、お願いします。

 

「あのぉ……さっきから私ばかりやってませんか? 元樹先生もちゃんとやってください」

 

 仕方ないですね。では炒めるのはほも君がやりますから、しずくちゃんは先に玉ねぎ以外の具材をひき肉に混ぜておいてください。

 

「了解です♪」

 

 さて、ほも君は玉ねぎをフライパンに投入して炒めましょう。きつね色になるまで炒めるからな?

 ところで、しずくちゃんはなんでずっとこっちを見てるんですか? て、照れますよ……。

 

「えっ……その、楽しそうに料理するなぁって……」

 

 はぇ~、ほも君は料理が趣味なんすねぇ。

 

「料理好きなの?」

 

 そうだよ(便乗)

 さて、玉ねぎを炒め終えたので、少し冷まして粗熱を取ってからタネに投入し、これをしっかりと混ぜ合わせます。しずくさん、お願いします。

 

「わかりました。このタネをぎゅっ、ぎゅっとしっかり混ぜていきます」

 

 しずくちゃんがタネ作りをしている間に、ほも君は冷凍ご飯をレンジで温めましょう。

 

「混ぜ終わりました元樹先生」

 

 ではタネを適当な大きさにしてハンバーグの形にしましょう。形を整えたらそれでキャッチボールをして空気を抜きます。これはほも君としずくちゃんの2人でぱんぱんやりましょう(意味深)

 

「このくらいの大きさでいいかな。それじゃあ、ぱんぱんぱんっと……元樹先生、これはどれくらいの力加減でやればいいんでしょうか?」

 

 鞭打ちする時くらいの力加減でお願いします。

 

「……鞭打ちなんてしたことないんですけど」

 

 鞭打ちもしたことないの? そんなんじゃ甘いよ(棒読み)

 

「したことないに決まってるじゃないですか! 力加減で鞭打ちなんて答える料理番組ありませんよ!」

 

 じゃあ私達が初めてですね。世界初の鞭打ち料理番組、いいゾ~これ。初回はしずくちゃんの逆さ吊り鞭攻めでもしましょうか。視聴率とれると思いますよ。

 

「全くよくないです! そんな番組、誰も安心して見られないじゃないですか……」

 

 SM好きな人は安心して見れるんじゃない?(適当)

 遊んでいる間にいい感じに空気が抜けましたね。そろそろ焼いていきましょう。まずはフライパンに油を……おっと、油を用意し忘れていました。

 

「ふふっ、元樹先生はおっちょこちょいですね。私が用意しておきましたよ」

 

 しずくちゃんが油を用意していてくれました。ありがとナス!

 油を引いたらとうとうハンバーグを焼いていきます。ジュージューになるまで焼くからな?(食中毒回避)

 

「いい音ですね」

 

 ハンバーグの焼ける美味しそうな音がします。聞いているとだんだんお腹が空いてきますね。RTA続きで食事タイムのない私には辛い時間です。

 

「よだれが出てますよ? 私が拭いてあげますね」

 

 ほも君もお腹が空いてよだれが出てきてしまったみたいですね。ですがしずくちゃんが拭きとってくれました。

 さて、ハンバーグもそろそろ焼き上がりそうですね。しずくちゃん、お皿を用意してくれますか?

 

「もう用意できてますよ」

 

 どうやらすでに用意できていたようです。用意してくれたお皿にハンバーグを盛りつけていきましょう。千切りにしたキャベツなんかも一緒に盛りつけましょう。

 

「これで完成ですか?」

 

 いいえ、まだです。ここからソースを作っていきます。

 

「ソースも自作するんですね」

 

 最初はスーパーで買ったできてるソースにしようかなと思っていたのですが、ほも君が作りたいというので作ることにします。本当はできてるソースを使った方がタイム短縮になるんですがねぇ……。ま、えやろ。

 今回はハンバーグから溢れ出た肉汁があるので、これをソースに利用したいと思います。ソースの材料を適当に加えてパパパッと煮詰めて終わり! あとはロウソクを体に垂らす時のように熱々のソースをハンバーグにかけましょう。これで完成です。

 

「皆さん、ハンバーグの出来上がりです!」

 

 これにて鞭打ち料理番組終了ですね。

 

「ふぅ、撮影お疲れ様でした」

 

 撮影はしてないですけどね。……いや、私がゲーム画面を撮影しているので、実質料理番組の撮影をしていたと言えるのでは……?

 そんなどうでもいいことは置いといて、しずくちゃんはこれをテーブルに持っていってくれますか? あとこのインスタント味噌汁も作っておいてほしいです。

 

「わかりました」

 

 さて、その隙にピーマンの肉詰めをこっそりと作ってしまいましょう。まずは材料を用意します。ピーマンを出していることがバレないように静かに冷蔵庫を開けて……おや? ピーマンは見つかりましたが、もうお肉は冷蔵庫にないみたいですね。仕方ないので肉を詰めるのをやめて焼いたピーマン単体で出しましょう。ソースとか肉汁と一緒に焼いとけばいい感じになるでしょ(適当)

 

「あれ? まだ何か作ってるの?」

 

 追加のおかずを作っているだけですよ。しずくちゃんもたっぷり運動した後ですし、ハンバーグだけだとお腹が膨れないでしょうからね。

 ピーマンが焼けました。お皿に載せて持っていきましょう。絵面がものすごい質素ですが気にしないことにします。

 

「え、それは……」

 

 ピーマンの肉詰めwithout肉ですよ。

 

「……元樹君が食べる分、だよね?」

 

 まさか、ちゃんとしずくちゃんの分もありますよ。嫌そうな顔が隠しきれていませんし、もしかしてピーマン嫌いなのかな?(棒読み)

 

「…………うん、ちょっと苦手……かも」

 

 仕方ないですね……頑張って克服しよう!(マジキチスマイル)

 

「そんなぁ……」

 

 ご飯とおかず、味噌汁も揃いましたし食べましょう。いただきます。

 

「いただきます……」

 

 まずはハンバーグを……うん、おいしい! まるで他言無用の完全会員制レストランで出されているハンバーグのような味だぁ(恍惚)

 

「ほんとだ、すごく美味しい……」

 

 しずくちゃんのお口に合ったようで何よりです。

 

「元樹君がこんなに料理上手だなんて知らなかったなぁ」

 

 さすがに歩夢ちゃんや彼方さんには負けますけどね。

 次はしずくちゃんの手料理を食べてみたいですね。

 

「えっと……じゃあ、次は元樹君が私の家に泊まりに来る……? 鎌倉だからちょっと遠いけど……」

 

 しずくちゃんが顔を真っ赤にして誘っています。もちろんイキますよ~イクイク。

 

「そんな即答しちゃっていいの?」

 

 いいっつってんだろ(半ギレ)

 

「元樹君は気にしてないのかもしれないけど、女の子の家に泊まるんだよ? ほんとにいいの?」

 

 うるせぇ! 行くったら行くのよー!(ギャラクシー並感)

 

「そっか、泊まりに来てくれるんだ……ふふっ、楽しみにしてるね?」

 

 日程は1ヶ月後のイベントの後なんかはどうでしょうか。ご褒美みたいな感じでしずくちゃんのモチベーションアップになると思うのですが。

 

「うん、私もそれがいいかなぁって。モチベーションが上がって練習もいつも以上に頑張れるし、本番でもいい結果を残すことができる気がするし……あっ、でもこれだけが目的で頑張るわけじゃないよ? あくまでも頑張ったご褒美ってだけで……」

 

 わかってますよ。しずくちゃんはスクールアイドルがやりたくて虹ヶ咲学園に編入したんですもんね。

 

「覚えててくれたんだ……」

 

 もちろんです、忘れるわけないじゃないですか。私があのイベを何回見たと思ってるんですか。エンジョイプレイを除いても100回は余裕で越えますよ。悲しいなぁ……。

 ま、あんまり気負いすぎずに頑張ってください。張り切りすぎてほも君みたいに練習中に怪我するわけにはいきませんからね。

 

「うん、もちろん気をつけるよ。でも元樹君も気をつけないとダメだからね? ほんとに心配したんだから……」

 

 心配かけて申し訳ナス!

 

「もう痛くないの?」

 

 んにゃぴ……やっぱり、まだちょっと痛みますね……。

 

「ええっ!? ちゃんと安静にしてないとダメ!」

 

 安静にはしてますよ。激しくは動いてませんし、歩いたり料理する時も捻った方の足に負担がかからないようにしてましたからね。

 

「それならいいんだけど……」

 

 ほも君のことはどうでもいいので、しずくちゃんは自分のことを気にしてください。

 

「私も怪我しないように気をつけるけど、でもやっぱり元樹君のことは心配だし……」

 

 違うだろぉ?

 

「え? そのことじゃないの?」

 

 さっきからピーマン避けてますよね。ちょっとずつ皿を遠ざけてることくらいわかりますよ。

 

「だってぇ……」

 

 RTAなんだから早くピーマン食べてよ。ホラホラホラホラ(鬼畜)

 

「お願い、許してください……」

 

 黙りなさい。君がどういう立場だかわかってんのか。焼いたピーマン食べんだよ! このRTAに出てるほも君みたいによぉ!

 

「うぅ……じゃ、じゃあね、元樹君に食べさせてほしいなぁ……なんて。ダメ、かな?」

 

 あ、いっすよ(快諾) ほら、お口開けて。あーん。

 

「あ、あーん……」

 

 勇気を出してほも君が差し出したピーマンにかぶりつくしずくちゃん可愛すぎィ! 自分、口の中に1 個丸々放り込んでいいっすか?

 

「もぐもぐ……」

 

 しかし、なんだかペットにエサやりをしている気分になりますね。私はペットを飼ったことがないのでわかりませんが、多分こんな感じなんでしょう。しずくちゃんがペットとか興奮しちゃいますね。犬だよ、ヨツンヴァインになるんだよ。

 

「にがい……」

 

 (何の味付けもしてないピーマンをただ焼いただけだから苦味以外の味なんてついて)ないです。当たり前だよなぁ?

 でも一口食べるだけでも頑張りましたね。残りはほも君が食べてあげましょう。

 

「え、それって……」

 

 うん、苦い! しずくちゃんはこんなのを頑張って食べたんですね。ちょびっとだけ罪悪感が湧いてきました。

 

「い、今のって……か、かか、関節キス……」

 

 ん? 何か言いましたか?(すっとぼけ)

 

「……ううん、何でもないよ。代わりに食べてくれてありがとう元樹君」

 

 どういたしまして。ほも君は別にピーマンが嫌いなわけじゃないので無問題ラ!

 

「ごちそうさまでした。すごく美味しかったよ」

 

 それはよかったです。でもしずくちゃんは早くピーマン克服しないとダメですよ。結婚してから旦那さんに笑われてしまいますよ。

 

「……元樹君は、このまま私がピーマン苦手だったら、私のこと笑う?」

 

 笑わないよ(イケボ)

 

「元樹君が笑わないなら、別に克服しなくてもいいかな。……ねぇ、もし……もしもだよ? 私と元樹君が結婚したらどんな感じになるのかな?」

 

 そうですね……まあ、しずくちゃんはきっと女優になっているでしょうね。日本……いや、世界でもしずくちゃんのことを知らない人がいないような大女優になってると思います。

 

「うん、そうだといいな」

 

 でも、そうなるときっと大変でしょうからね、家に帰ってきたらほも君にいっぱい甘えてくるんですよ。夕食の時とかに撮影がどんな感じだったとか楽しそうに話してくれると思います。でもしずくちゃんが男の人と仲良さそうにしているのを聞いたり、ドラマや映画でしずくちゃんがキスシーンを演じたりしてるのを見ると、ほも君が嫉妬ファイアーして夜ベッドの上でにゃんにゃんしちゃうんでしょうね。

 ほも君は……何してるんでしょうかね? 夢とかも知りませんし、これもうわかんねぇな。意外と専業主夫とかしてるかもしれませんね。

 

「専業主夫かぁ……ふふっ、帰ったら元樹君が出迎えてくれるのは嬉しいな」

 

 何にせよ、きっと笑顔の絶えないいい家庭になっていると思いますよ。周りもうらやむオシドリ夫婦でしょうね。たまーに些細なことで喧嘩することがあるかもしれませんが、すぐに仲直りして夜ベッドの上でにゃんにゃんしちゃってると思います。

 

「私も、元樹君と結婚して一緒に居られたら、幸せでずっと笑っていられる気がするなぁ。元樹君も同じ気持ちで嬉しいな」

 

 俺もしずくちゃんと結婚したいけどな~俺もな~。

 

「ねぇ、隣に行ってもいい?」

 

 あ、いっすよ(快諾) それならソファーに移動しちゃいましょうか。そっちの方が並んで座りやすいですからね。

 

「わぁ、ふかふかだね」

 

 そこそこいいソファーですからね。お値段は確か810円だった気がします。

 

「元樹君は私との子供何人欲しい?」

 

 私は……子供はあんまり欲しくないですね。

 

「どうして?」

 

 子供が大人になって巣立ちする時に思い出がドバーッと溢れてきて、辛くて泣いてしまいそうですからね。申し訳ないが辛いのはNG。

 

「その時は私もきっと泣いちゃうなぁ……。でも泣きながら送り出したら子供に心配かけちゃうから、その時になったら頑張って一緒に笑顔で送り出そうね」

 

 逆にしずくちゃんは何人ほしいんですか?

 

「私は2人かな。上の子が男の子で、下の子が女の子。上の子は元樹君に似てやんちゃなんだけど、でもほんとは真面目な子なの。誰にでも優しくて、その子の周りでは笑顔が絶えない……そんな子に育ってくれるといいな。でも、勉強嫌いなところも似て育っちゃいそうだなぁ……」

 

 そう……(無関心)

 

「下の子はちょっと恥ずかしがり屋さんで、自分を表現するのが苦手……でも芯はしっかりしてて、自分の考えもちゃんと持ってるの。それから笑顔がすっごく可愛くて、笑うと周りの男の子をドキッとさせちゃうような子かな。あとね、実はいたずら好きで、仲のいい友達にたまにちょっとしたいたずらを仕掛けたりしちゃうかも」

 

 そう……(無関心)

 

「それでね、私達の結婚記念日には2人がいっぱいお祝いしてくれるんだ。2人でデートする時間を作ってくれて、その間にお家でいろいろと準備してくれてるの。何してくれるんだろうね、って元樹君と話しながら帰って、家に着いたら子供達が手料理で迎えてくれて……ふふっ、きっと忘れられない記念日になるね」

 

 ちょっと妄想しすぎじゃないですかね? まだほも君と付き合ってすらいませんよ。そんなたくましい妄想力、誇らしくないの?

 

「そうかな? 元樹君との結婚生活を考えてたらいろいろ浮かんできちゃって……」

 

 『今から一緒に子作りしよう(提案)』とかいう最低な選択肢が出ていますが、もちろん選ぶわけありません。選んだら冗談じゃなくて本当に子作りにゃんにゃんが始まってしまいそうです。これがRTAじゃないなら速攻でこの選択肢を選んでました。まだ付き合ってないのに子作りにゃんにゃんとかシチュエーションがえっっっっ過ぎィ!

 

「……」

 

 ほも君としずくちゃんが見つめ合っていますね。何やらいい雰囲気です。これは告白までいっちゃうかな?

 

あっ……」

 

 おっとぉ? ほも君がしずくちゃんの手に自分の手を重ねました。念のため言っておきますが、これは私が操作したものではありません。ほも君が独断で行った行動です。堕ちたな(確信)

 

「元樹君……」

 

 しずくちゃんが指を絡めてきましたね。こちらも絡め返しましょう。

 

「元樹君の手、あったかい……」

 

 しずくちゃんの手もアツゥイ!

 

「……元樹君は……私と子供、作りたい……?」

 

 こマ? 話の振り方間違ってない? 告白の前振りとして子供作りたいか確認するのはさすがにおかしいと思います。でもしずくちゃんと子作りしたいですねぇ!

 

「私は、したいよ? だって……だって私、元樹君のことが……」

『ピンポーン』

「きゃっ!」

 

 はーつっかえ。なんでこのタイミングで来客が来るんですかねぇ……。インターホンの音に驚いてしずくちゃんの手が離れちゃったじゃんかよ! あーもうめちゃくちゃだよ(憤怒)

 それにしても、しずくちゃんの告白が邪魔されるのは2回目ですね。1回目はかすみんに邪魔されて、2回目はインターホンですか……。完全にロスですね。やはりかすみんの罪は重い……。罰として明日かすみんが泊まりに来た時ににゃんにゃんしちゃうか。タイム? 知らない子ですねぇ。どうせ走者は私しかいないんですし、どれだけ遅くてもワールドレコードなんですよ。だから無問題ラ!

 

「あ、えっと……で、出ないの?」

 

 (インターホンに)で、出ますよ……。

 

「うん、いってらっしゃい……」

 

 しずくちゃんがめちゃくちゃ落ち込んじゃってますね。来客者の罪は重いです。大罪人ですよ。殺されてぇかお前オォン!? とりあえず大罪人の顔を拝みましょう。どんな凶悪な面をしているのでしょうか。

 

「元樹……お風呂の調子が悪いから、こっちで入ってもいい?」

 

 ファッ!?ウーン(心停止)

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


しずくちゃんとにゃんにゃんしたい(直球)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part30/n

最近遅筆気味なので初投稿です。


もうPart30まで来ちゃいました。それなのにまだ2章の序盤も序盤だなんて……進行速度遅すぎィ!


 修羅場回避RTA、はーじまーるよー。

 

 前回はしずくちゃんの告白イベがりなりーの来襲によって中断されてしまいました。今回はその続きからで、来襲したりなりーの対処をしたいと思います。

 

「……どうしたの?」

 

 りなりーはお風呂を貸してほしいって言ってましたよね。じゃあとっとと入ってもらいましょう。その間しずくちゃんをほも君の部屋に放り込んでおけばきっとだいじょ……あれ、お風呂入れてなくね? これはもう……ダメみたいですね(諦観)

 

「元樹君、誰が……あれ? 璃奈さん?」

 

 なかなかほも君が戻ってこなかったので、しずくちゃんが玄関まで見に来てしまいました。挙句の果てに声までかけてきやがりました。そんなことされたら当然りなりーにしずくちゃんの存在がバレてしまいます。やめてくれよ……(絶望)

 

「お風呂の調子が悪くて……。璃奈ちゃんボード『しょぼん』」

「それは大変……元樹君のお風呂を借りに来たの?」

「うん」

 

 ……おや? なんか普通の反応ですね。もっと(ほも君が)阿鼻叫喚の修羅場を想像していたのですが……。もしかしてしずくちゃんがお泊りすることを知ってたんですかね?

 

「うん、しずくちゃんから聞いてた。ほんとは邪魔するつもりはなかったんだけど……しずくちゃん、ごめんね」

「ううん、そんな気にしないでほしいな。璃奈さんは帰り道2人きりにしてくれたもん」

 

 はぇ~、だから帰りはりなりーが一緒じゃなかったんですね。そんな敵に塩を送るようなことして大丈夫なんでしょうか。

 

「同好会の皆とは公平な勝負をしたい。私も2人きりだったから、しずくちゃんも2人きりにしてあげたかった」

「璃奈さん……」

 

 スポーツマンシップいいゾ~これ。まさしく恋する乙女の鑑ですね。そんなんだから他の女の子に手を出された挙句11股されるんですよ?(鬼畜)

 

「でも勝負は勝負。しずくちゃんにも、せつ菜さんにも負けるつもりはないから」

「うん、私も……私も絶対に負けないから」

 

 たった1人の男を取り合ってるのに、こんなニコニコと笑い合えるなんて……やっぱ仲良しなんすねぇ。どちらかと付き合った時でも仲良くいられるんですから、ほんとに素晴らしい絆ですよ。

 まぁほも君は内容を何も理解してないんですけどね。『今なんかやってんの? 勝負』とかぬかしてますよこいつ。お前は部外者兼最重要人物兼審査員やぞ。

 

「……鈍感」

 

 ほら、りなりーに冷ややかな目で見られてますよ。しずくちゃんは苦笑してますね。『また俺何かやっちゃいました?』みたいな顔してんじゃねぇぞ(n回目)

 ま、えやろ。修羅場も何もしてないけど無事回避できましたしね。とりあえず今からお風呂を入れるのでちょっと待っててください。

 

「まだ入れてないの? それなら折角だし3人で銭湯行ってみたい」

 

 ああ^~いいっすね~。

 

「確か露天風呂もあった気がする」

「露天風呂……!」

 

 しずくちゃんが露天風呂に目を輝かせていますね。じゃあ今日は銭湯にしましょうか。

 

「うん。璃奈ちゃんボード『わーい』」

「銭湯に行くなんて久し振りだなぁ」

 

 私も久しく銭湯に行ってませんね。

 

「ふふっ、元樹君も楽しみなの? 私と一緒だね」

 

 私はしずくちゃんと混浴できないなら楽しみじゃありません(半ギレ)

 

「元樹はお風呂好きだから。昔はよく2人で銭湯に行ったりした」

「そうなんだ」

 

 おっ、りなりー流幼馴染マウントが出ましたね。しずくちゃんに中ダメージです。頑張って笑顔を取り繕おうとしていますが、悲しそうな寂しそうな感じが少しだけ出てきてしまっていますね。可哀そう(小並感)

 

「一度家に戻って準備してくる」

「わかりました。私はどうすれば……」

 

 しずくちゃんの分はほも君が貸してあげますよ。

 

「いいの? ありがとう」

 

 タオルにボディーソープ、シャンプー、それから桶を持って……よし、これで準備オッケー(激うまギャグ) しずくちゃんも替えの下着とか準備してくださいね。

 

「うん。……あ、何か小さなカバンとか貸してくれないかな? 持ってくるの忘れちゃったみたいで……」

 

 もちろんいいですよ。下着を直接持っていくのはまずいですもんね。私もしずくちゃんの下着を他の人達に見せたくありませんし。

 

「ありがとう。……あ、あの」

 

 ん? どうかしましたか?

 

「見えちゃうからあっち向いててほしいな」

 

 やだよ(即答) 下着姿じゃなくて下着が映るだけならR-18認定されないはずですからね。それにしずくちゃんがこっちに背中を向けてやればいいだけだと思うんですけど(IQ180)

 

「……あ、そっか」

 

 しずくちゃんってばうっかりさん。ただのイメージですが、デートで完璧なエスコートを約束したのにぽかしまくって『私のばか……』とか言いそう。それでもいいからデートして♡

 

「準備出来ました」

 

 こっちも準備完了です……。

 

「元樹君、ほんとによかったの?」

 

 何がですか?

 

「足、まだ痛むんでしょ?」

 

 痛みますねぇ!

 

「それなのに銭湯まで行って大丈夫なの?」

 

 ま、大丈夫じゃない?(適当)

 

「璃奈さんにもそのこと伝えてないみたいだし……」

 

 りなりーに教えてなかったのか……(困惑)

 

「言いにくいなら私から伝えておいてもいいけど……」

 

(伝えなくても)いいんじゃないかな。伝えたら心配はしてくれるでしょうが、急に治ったりするはずがありませんからね。単なるロスです(断言)

 

「……そっか。璃奈さんに心配かけたくないんだね」

 

 そうだよ(便乗)

 

「わかった、このことは璃奈さんには内緒にしててあげるね。でも、痛みが酷くなってきたらちゃんと言うんだよ? 肩貸してあげるから」

 

 ありがとナス! もしもの時はお願いしますね。

 

「お待たせ」

 

 りなりーも来ましたね。

 では、銭湯にイクゾー!デッデッデデデデ!(カーン)

 

 

 

 銭湯にやってきました。ちゃんと営業日のようですね。おっ、開いてんじゃ~ん!

 

「璃奈さん、ここなの?」

「うん。もっと大きいとこだと思った?」

 

 確かに、この銭湯はちょっと小さめですね。地方の小さな町とかにありそうな老舗って感じです。でもその感じがむしろいい雰囲気を醸し出しています。

 

「都内にまだこんな銭湯が残ってたんだぁって」

「確かにそうかも。こんな雰囲気のところはここ以外はなかなかない」

 

 そう……(無関心) そんなことより早く銭湯に入りましょうよ。湯船に浸かってゆったりしたいです。

 

「ふふっ、元樹君すっごく楽しそう」

「銭湯に来た時はいつもこんな感じ。元樹はかなり長湯するから、しずくちゃんも覚悟した方がいい」

 

 長湯ですか。どうせほも君の入浴シーンはないのでノーダメージですね。

 

「じゃあ私達もガールズトークで楽しんじゃおっか」

「ガールズトーク、初めて……! 璃奈ちゃんボード『ワクワク』」

 

 2人とも楽しそうですね。混浴じゃないのでガールズトークの内容を知れないのが残念で仕方ありません。多分ほも君のことだと思うんですけど(名推理) ほも君の好きなところがどこかとか、どんな仕草にキュンとくるかとか、どんなシチュエーションで告白したいかとか、そんな感じのことを話したりするんですかね? 乙女モードのりなりーとしずくちゃんいいゾ~これ。

 あーあ、りなりーの生足とかしずくちゃんの胸とかお尻とかには全く興味ないから一緒にお風呂入りたいなー。どんなガールズトークしてるのか聞きたいなー。うっかり当たっちゃったり中に入っちゃったりしてもただの事故だよ事故。

 

「また後でね、元樹君」

「私達のことは気にしないでいいから、いっぱい楽しんできて」

 

 2人が談笑しながら女湯の方に入っていきました。ほも君もとっとと入りましょう。もちろん1人で男湯です。悲しいなぁ……。

 

 

 

 ほも君の長湯が終わりました。さっきも言った通りほも君の入浴シーンはありません。当たり前だよなぁ?

 例外としてほも君の入浴シーンがあるのは、ヒロインと一緒に入浴する場合、入浴中にヒロインが乱入してくる場合の2パターンが現在確認されています。どちらのパターンでも超高確率でにゃんにゃんしてしまうため、できれば避けたいシチュエーションです。以前言ったようにキスは告白率が上がるのに対し、S○Xはどれだけしても告白率に一切影響ありませんからね。もちろん行為中のキスも影響しません。

 前者はきちんと選択肢を選んでいれば避けることができますが、後者はできません。脱衣所の鍵をちゃんと閉めていても何故か入ってきます。これって、不法侵入ですよ? 具体的な対策方法はまだ見つかっていませんので、RTA中は発生しないように祈りましょう。もし発生した場合は息抜きタイムと思って楽しみましょう(19勝)

 

「あ、元樹」

「元樹君こっちこっち」

 

 ロビーでりなりーとしずくちゃんが並んでテレビを見てました。オッスオッス。

 

「気持ちよかった?」

 

 水風呂が気持ちよかった(大嘘) 2人はどうでしたか?

 

「うん、気持ちよかったよ。体もぽかぽかになっちゃった」

「しずくちゃんともいろんなこと話せて楽しかった」

 

 それはよかったです。お肌もすべすべになりましたか?

 

「なった……のかな? わからないけど……よかったら、さ、触ってみる?」

 

 触りたいです(即答)

 

「じゃあ、どうぞ。満足するまでいっぱい触っていいよ」

 

 わーい(無邪気) 隣でりなりーが冷ややかな目で見てきますが、それは見なかったことにします。それじゃあ早速、ぷにぷにぷにー!

 

「んっ……ど、どうかな?」

 

 んにゃぴ……過去に触ったことがないのでよくわからないです……。

 

「そっか。じゃあわかるまでいっぱい触ってほしいな」

 

 いいですよ。しずくちゃんが満足するまで触ってあげます。

 

「それ、すごくいい……」

 

 しずくちゃんは頬を優しく撫でられるのが好きみたいですね。私ももっとすべすべもちもちほかほかぷにぷにの頬を堪能しましょう。

 

「頭も、撫でてほしい……かも」

 

 この欲しがり屋さんめ。

 

「ダメ、かな……?」

 

 いいに決まってるじゃないですか。ほら、なでなで。

 

「はぁ……元樹君にこうされるの、気持ちよくて好きだなぁ……」

 

 髪もさらっさらですね。やっぱり風呂上がりの髪はひと味違いますなぁ~。そういえばお風呂上がりはデカリボンしてないんすね。

 

「うん、折角綺麗にした髪が汚れちゃうから」

 

 あっそっかぁ。いかにしずくちゃんの綺麗な髪といえど、1日中つけてたリボンにはさすがに汚れもついてるはずですもんね。申し訳ないがしずくちゃんの髪が汚れちゃうのはNG。

 

「ひゃっ!? ちょ、ちょっと……」

 

 おっと、ほも君が勝手に髪の匂いを嗅ぎ始めましたね。髪に鼻を押し当ててクンカクンカしています。うらやま……じゃなくてけしからんですね。

 

「やぁ……そこダメぇ……」

 

 今度はうなじの匂いを嗅ぎ始めました。もろちん私は操作してません(半ギレ) あのさぁ……。ほも君がうなじフェチっていうのはもう十分わかりましたから、私の操作を無視して勝手に行動しないで(懇願)

 

「せめて家で……ね?」

 

 家でだったらいいのか……(困惑)

 

「んん……だめだってばぁ……」

 

 しずくちゃんが潤んだ瞳と上気した頬で懇願してきますが、どうやってもほも君は止まらないみたいです。むしろその表情と声がいやらしすぎてエスカレートしちゃってますね。興奮させてくれるねぇ! 好きだよ、そういう顔!

 

「もときくん……やんっ」

 

 とうとう舌先でちょんっと触れましたね。しずくちゃんも完全に受け入れちゃっていて、身をよじって感じちゃっています。ダメみたいですね(諦観) 家でS○Xしてさ、終わりでいいんじゃない?

 

「何してるの」

 

 ぴょえっ!? 首に何か冷たいものが……そのせいで背筋が冷たいです。

 

「はぁ……はぁ……りな、さん……」

「ごめんね、しずくちゃん。元樹はたまにこうやって暴走するから……。璃奈ちゃんボード『やれやれ』」

 

 さすがに暴走しすぎじゃない? 明らかにしずくちゃんに欲情してましたよね。浴場で欲情(激うまギャグ)とか、こいつすげぇ変態だぜ?

 

「ううん、元樹君が満足してくれたならそれでいいよ。それに……私もちょっと興奮しちゃったし……」

 

 やっぱり興奮してるじゃないか!(歓喜) 心なしかりなりーの目が冷たい気がしますね。まぁ、気にしなくていいでしょう。しずくちゃんとえっちなことしちゃいかんのか?

 そんなことよりもしずくちゃんは首が弱いという情報の方が重要です。ちょんと触れただけであの感じぶりですから、舐めたりしたらどうなってしまうのでしょうか……ぐふふ、想像しただけでも興奮で糞がドバーッと溢れてきちゃいますね。一切本RTAに役立たないのが残念ですが、完走した後にいっぱい楽しむことにしましょう。タイムよりも性欲の方が大事だからね、しょうがないね。

 

「むっ……元樹の分もアイス買ってきてあげたけど、やっぱりあげない。璃奈ちゃんボード『ぷんぷん』」

 

 さっき首に感じた冷たさの正体はアイスだったんですね。俺にもアイスくれよ~。

 

「……ほしい?」

 

 キンッキンに冷えたアイスが食べたいです。

 

「じゃあ元樹の膝貸して」

 

 膝? 何に使うのかは知りませんがいいですよ。

 

「よいしょっと……」

「なぁっ!?」

 

 りなりーがほも君の膝の上にちょこんと座りました。表情には出ていませんがどこか満足気です。小動物みたいで可愛いですね。逆にしずくちゃんは悔しそう。さっきまでほも君とイチャイチャしてたんだからそれでいいでしょ。

 

「はい、元樹の分。こっちはしずくちゃんの分」

「ありがとうございます……」

 

 あ~うめぇなあ! お風呂上がりに食べるアイスは最高ですね。

 

「美味しいね」

「元樹の味も食べてみたい」

「えっ……」

 

 いいですよ。はい、あーん。

 

「はむっ……こっちも美味しい」

「あぁ……」

「お返しに私のもあげる」

 

 りなりーのもくれるんですか? じゃあお言葉に甘えて、あーん。

 

「あぁぁぁぁ……」

「美味しい?」

 

 こっちも美味しいですね。

 

「むぅ~……」

 

 さっきからしずくちゃんが変な唸り声を出したり、フグのように頬を膨らませたり、ほも君とりなりーを交互に見たり、こっちを睨んできたりしています。きっとしずくちゃんもアイスを食べさせてほしいんでしょうね。食べたけりゃ食べさせてやるよ。

 

「あ、あーん……」

 

 結構持っていかれましたね。美味しいですか?

 

「……うん、おいし……あ! あ、頭がキーンって……」

 

 アイスあるあるですね。あんな一気に食べるからですよ。

 

「しずくちゃん、大丈夫?」

「う、うん……」

 

 欲張っちゃったのが間違いでしたね。りなりーが食べた後だからほも君との間接キスにならないのにね。

 

「私もお返しあげないとだね。はい、いっぱい食べて」

 

 もう十分堪能したよ……。

 

「えぇっ!? わ、私のは食べてくれないの……?」

 

 食べてほしいですか?

 

「うん……」

 

 仕方ないですね。食べてあげますから、はやくあーんして。

 

「はい、あーん……どう? 美味しいかな?」

 

 うん、美味しい! しずくちゃんの唾液がべっとりとついたアイスは最高ですね。

 

「もう1口食べる?」

 

 (しずくちゃんの唾液がついてる部分はもう食べちゃったのでいら)ないです。

 

「じゃあ残りは私が食べちゃうね。あむっ……おいひぃ~」

 

 心なしかさっきよりも美味しそうに食べてますね。ほも君が食べた後……あっ(察し)

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 美少女2人の唾液つきアイス美味しかったですね。俺も今からアイス食べたいけどなー俺もなー。

 

「そろそろ帰る?」

「私はいいよ。元樹君は他に何か用事あったりする?」

 

 ないです。

 

「じゃあ帰ろっか」

「うん。元樹、帰ろ」

 

 では、自宅にイクゾー!デッ(カーン)

 

 

 

 帰宅して、ほも君の部屋まで来ました。りなりーは……いつの間にかいなくなっていますね。ほも君の家に寄らずに帰ったのでしょうか。あと夕食もいつの間にか片付けられていました。そのままにして出かけたはずなんですけどねぇ……。

 

「ふぅ……お風呂気持ちよかったね」

 

 そうですね。りなりーとしずくちゃんと混浴できなかったことが心残りではありますが。ガールズトーク聞きたかったのですが、どんなこと話してたのか教えてくれませんかねぇ?

 

「イベントのことについて話したかな。どんな曲を歌いたいかとか、どんな衣装を着てみたいかとか」

 

 それはいいですね。曲を作るのは侑ちゃんの仕事ですが、衣装作りはほも君も手伝いますからね。ほも君の裁縫力見とけよ見とけよ~。

 

「うん、私も裁縫は得意だからその時は手伝うね」

 

 これはしずくちゃんには秘密ですが、その時はほも君と侑ちゃんで皆の身長とスリーサイズを測るイベントがあります。お体に触りますよ。

 他には何を話したんですか?

 

「あとは私のこととか、璃奈さんのこととか。まだ会ったばかりだから、お互いのまだ知らないこととかいっぱい知れて楽しかったよ」

 

 そう……(無関心) 他には?

 

「他は……えっと……も、元樹君のこと、とか……」

 

 陰でほも君の話をするのはやめろォ(建前) ナイスゥ(本音) 具体的にほも君の何について話してたんですか?

 

「昔の元樹君がどんな感じだったのか璃奈さんに教えてもらったり、璃奈さんが入る前の同好会で元樹君がどんな感じだったのか教えてあげたり……大体そんな感じのこと話してたよ。他にもいろいろ話したけど……元樹君には秘密、かな」

 

 俺にも教えてくれよ~頼むよ頼むよ~。

 

「だーめ。乙女の秘密は簡単には教えてあげませんよーだ」

 

 可愛い(可愛い) 舌を出して挑発してくるしずくちゃんは国宝に指定してもいいと思います。やっぱ……しずくちゃんの……子供っぽいとこを……最高やな! 大人っぽい清楚さがあるのに、デカリボンとか言動とかに年相応の子供っぽさがあって、それらは対極にある要素なので普通なら打ち消し合って効果が弱まるのですが、しずくちゃんに限りそれらが互いに強め合って恐ろしいパワーを発揮しちゃうんですよね。そのおかげでしずくちゃんが最高に可愛く見えます。胸も大きいしね(直球) あぁ^~たまらねぇぜ! こんな子と付き合えたら最高や。至急、告白してくれや。

 

「話は変わるけど、今から宿題しようかなって思ったんだけど、元樹君も一緒にする?」

 

 やりますねぇ! やりますやります(嫌々)

 

「じゃあ一緒にしよっか。わからないところは教えてあげるから」

 

 経験値は少ないし時間はかかるしで本当はやりたくないのですが、ここで誘いを断ると親密度が爆下がりしてしまうので嫌々やることにします。しずくちゃんも宿題をサボるような子は嫌いだからね、しょうがないね。

 

「それで、元樹君の宿題は数学?」

 

 今日は王道を征く英語ですね。

 

「英語……私と同じだね」

 

 そう……(無関心)

 

「一緒に頑張ろうね」

 

 宿題中は大したハプニングも起きなかったため、終わるまで4倍速で流したいと思います。

 

 

 

「ふぅ……やっと終わったね」

 

 宿題が終わりました。学力経験値10獲得です。しょっぱい、しょっぱくない?

 

「なんだか疲れちゃったよ……」

 

 じゃあ映画でも見て頭を休めますか?

 

「映画、いいかも。私映画好きなの。元樹君も?」

 

 好きだけど嫌いじゃない。

 

「そっか。私達気が合うかもね」

 

 そうだよ(便乗)

 

「でも、映画を見る前にパジャマに着替えてもいいかな?」

 

 もちろんいいですよ。

 皆さんお待ちかねのしずくちゃんの寝間着タイムです。私が期待していたえちちネグリジェを引くことができるのか……楽しみですね。どんな寝間着を持ってきてくれたんですか?

 

「ふふっ、期待してくれてるの? 実は一番のお気に入りを持ってきたんだ」

 

 おっ?

 

「最近買ったばかりのネグリジェなんだけどね、すっごく可愛いから期待しててほしいな。もしかしたら元樹君もドキドキしちゃうかも」

 

 うおぉぉぉぉぉぉぉ!! キタコレ!! ようやくえちち寝間着を引くことができました。ようやく据え置き版の高画質であのえちち谷間を拝むことができます。しずくちゃん、ありがとう……。お礼にいっぱい可愛がってあげるね。

 

「ふんふーん♪ あ、見つ、け……た?」

 

 ん? 何ですか、その反応は。

 

「あれ……? あれれ? おかしいなぁ……」

 

 何かあったんですか?

 

「えっとね、一番のお気に入りを持ってきたつもりだったんだけど、間違えて別のを持ってきちゃったみたいで……」

 

 はーつっかえ。ようやく見られると思ったんですがねぇ……。ちなみにどんなのを持ってきてしまったんですか?

 

「これ、なんだけど……」

 

 そ、それは……!

 

「くまさんパジャマ……うぅ、まさかこれと間違えちゃうなんて……私のばかぁ」

 

 まさかのしずくま登場とは……これは想定外ですね。そもそもしずくちゃんの寝間着にしずくまが実装されているなんて聞いたことがありません。隠し寝間着だったのでしょうか。そうなるとおそらく私が第1発見者ですね。やったぜ。

 それにしても、あの薄っぺらえちえちネグリジェと、このモフモフしずくまをどうやったら間違えるのでしょうか。多分持った時の感触で気づくと思うんですけど。ということはつまり……意図的にしずくまを持ってきたのでは?(名推理)

 

「……はぁ、とりあえず着替えるね」

 

 おっとぉ? しずくちゃんがここで脱ぎ始めちゃいましたよ? 間違えてしまったことがよっぽどショックだったんでしょうね。下着が丸見えです。R-18認定されると困っちゃうので、モザイクを入れて隠しておきますね。何がとは言いませんが、どちらも水色でした。しずくちゃんにピッタリの色ですね。あと何がとは言いませんがすごく大きかったです。可変式は伊達じゃありませんね。しずくちゃんの下着姿が見たい人は据え置き版買ってプレイ、しよう!

 

「どうかな……似合ってると思う?」

 

 はぇ~すっごい可愛い……。

 

「可愛い……? ほんと?」

 

 もちろん本当ですよ。ほもは嘘つかない。

 

「そっかぁ、可愛いかぁ……ふふっ、元樹君が気に入ってくれて嬉しいな」

 

 もこもこでお相撲さんみたい定期。

 

「お相撲さんみたいって……私、傷ついちゃったもん! ぷいっ……」

 

 冗談ですよ。しずくまを見たら言わなきゃ(使命感)と思いまして。 だから機嫌直してくれよ~。

 

「……次は冗談でも許さないからね?」

 

 もう言うつもりはないので安心してくださいよ。

 おや? 帽子もついてるんですね。被ってみてくださいよ。

 

「いいよ。……くまさんの耳がついちゃった、どうかな?」

 

 いや~可愛いっす。くまさんの演技とかしてほしいな。

 

「がおー! ひ弱な元樹君を……食べちゃうぞー! ……なんて」

 

 うるせぇ!ベッドの上ではお前がにゃんにゃん喘ぐ側のくせによぉ……。何が『食べちゃう』だぁ? お前が食べられろよ! ……などと言ってしずくちゃんを押し倒してしまいたいところですが、筋力不足で物理的に押し倒せないため、泣く泣く諦めます。しずくまなんてレア物、次いつ引けるのか全くわからないのでタイムを犠牲にしてでもえっちなことしたかったのに、悲しいなぁ……。

 

「ふふっ、ドキドキしちゃった?」

 

 ほも君はどうか知りませんが、私はめちゃくちゃドキドキしちゃいました。ほも君がドキドキしてるか確かめてみますか?

 

「……うん」

 

 しずくちゃんがほも君に抱きついて、胸に耳を当ててきました。胸に手を当てて確認して、というつもりで言ったんですがねぇ……。なんで抱きつく必要があるんですか?(歓喜)

 

「すごい……ドクンドクンってしてるよ? 私でドキドキしてくれたんだ……嬉しいな」

 

 私もしずくまが見れて嬉しいですよ。

 

「私もね……今、すごいドキドキしてるよ? 確かめて……ほしいな」

 

 ファッ!? しずくちゃんボード『ドキドキ♡』(やらしい声)ってマジ? 自分、確かめていいすっか?

 

「きて……」

 

 あぁ^~すっごい柔らかい……。こんな柔らかくて弾力のあるお胸、誇らしくないの?

 

「もう……聞きたいのはおっぱいの感想じゃないんだよ?」

 

 んにゃぴ……ドキドキしてるかよくわかんないです……。何か別のもので例えてくれないとわかりませんね。車で言えばどんぐらいですか?

 

「く、車で……? えぇと……時速80キロくらい、かな」

 

 車種で言えよ(後出し)

 

「えぇ、車種なんて言われてもわかんないよ……。なんでそんな変なこと聞くの……」

 

 わかんないんだから仕方ないじゃないですか(半ギレ)

 

「ご、ごめんな……ねぇ待って。これ私が悪いの?」

 

 ……さて、しずくちゃんも寝間着に着替えましたし、そろそろ映画でも見ましょうか。

 

「誤魔化した……はぁ、元樹君らしいというかなんというか……。でも元樹君のそういうところ、私は大好きだよ」

 

 私もほも君のこういうところ好きですね。

 

「ところで、どんな映画を見るの?」

 

 見てからのお楽しみですよ。先に言っちゃったら面白くないじゃないですか。

 

「それもそうだね」

 

 さてと、タブレットを用意して、お布団にインして……準備完了です。

 

「何してるの? 映画見るんじゃなかったの?」

 

 折角なのでベッドでゴロゴロ寝転がりながら見ようかと思いまして。さぁ、しずくちゃんもおいで。一緒にお布団に包まれてゴロゴロしながら映画見ましょうよ。

 

「一緒のベッド!? そ、そんなの恥ずかしいよ……」

 

 いいだろお前成人の日だぞ(意味不明) 別に減るもんでもないじゃないですか。

 

「私の心が擦り減っちゃうよ……」

 

 自分から抱きついてくるのに一緒のベッドで寝れねぇてのはおかしいだろそれよぉ!? タイム伸びちゃうから早くこっち来てよ。ホラホラホラホラ(鬼畜)

 

「……変なことしない?」

 

 (しずくちゃんが誘ってこない限りは)しないよ。

 

「えっと、じゃあ……お邪魔します……」

 

 お布団の中には入ってきましたが、ほも君の近くには来てくれませんね。そんなに離れてたら画面が見づらいですよ。ほら、もっと近くまで来ないと。

 

「で、でも……」

 

 つべこべ言わずに来いホイ。

 

「え、きゃあっ!?」

 

 遠くにいたしずくちゃんを抱き寄せます。ほも君の腕の中にすっぽりと収まりましたね。ぴったしのサイズです。体の相性バッチリかもしれませんね。

 

「へ、変なことしないって言ったのにぃ……」

 

 しずくちゃんは顔を真っ赤にしながら、モジモジと動いて抜け出そうとしてますね。ステイツじゃこのくらい普通のことなんですよ?

 

「ここアメリカじゃないもん……」

 

 誤差ですよ誤差。日本もアメリカも一緒のようなものでしょ(適当) しずくちゃんも本当は嬉しいんでしょ? 恥ずかしがらなくてもいいんですよ。それに、しずくちゃんがその気になればほも君の貧弱な拘束なんてすぐに抜け出せちゃうじゃないですか。

 

「それは……そう、だけど……顔が近くて……」

 

 顔が近いのが恥ずかしいんですか?

 

「うん……いつもなら大丈夫なんだけど、ベッドの上だとなんだか恥ずかしくて……」

 

 しょうがないですね……。そんなに恥ずかしいなら解放してあげましょうか。

 

「あっ……」

 

 恥ずかしさで映画を楽しめないなら本末転倒ですからね。ほら、腕はどけてあげましたから離れてもいいですよ。

 

「……やだ」

 

 折角解放してあげたのに、しずくちゃんは離れようとしませんね。それどこらかほも君の服を掴んで、胸元に顔を埋めてきました。自分から入っていくのか……(困惑)

 

「離さないで……お願い……」

 

 なーんだ、ほんとは離してほしくないんじゃないですか。いいですよ、ぎゅっと抱きしめてあげましょう。それもさっきより強く……ね。

 

「温かい……。元樹君の体、すごく温かいよ」

 

 しずくちゃんの体も温かいですよ。パジャマがもこもこなのでぬくぬくできますね。

 

そうじゃないんだけどなぁ……

 

 そろそろ映画を見ましょうか。

 

「うん、どれを見るの?」

 

 どうやらほも君はこの映画が見たいようですね。

 

「あ、この映画って……」

 

 おや? しずくちゃんは知ってるんですか?

 

「うん、ネットで少し話題になってたから。見たことはないけど……」

 

 そうですか、ネットで話題になったなら多分良作なのでしょう。見たことないならしずくちゃんも楽しめそうですね。。一緒に見ましょうか。

 

「いいよ」

 

 映画が始まりました。音声は聞こえますが、映画の映像は私達プレイヤーからは確認できません。経費削減かな?

 それにしても、主演女優の演技が棒すぎィ! 素人なのかな?

 

「この映画、それが原因で話題になっちゃって……」

 

 なるほど、悪い意味での話題だったんですね。ネット評価は100点満点中……36、普通だな!

 

「これ恋愛映画だよね? ……も、元樹君も……恋愛とか、興味あるの?」

 

 ありますねぇ! ありますあります。

 

「ちょっと意外かも……」

 

 (ハーレムを築き上げようとしてるのに恋愛に興味ないなんてありえ)ないです。

 ところで、ほも君()ということは、しずくちゃんも恋愛に興味あるんですね(名推理) 彼女とか、いらっしゃらないんですか?

 

「い、今まだはいないかな」

 

 じゃあしずくちゃんは好きな人もいないんすね(すっとぼけ)

 

「……それ、本気で言ってるの?」

 

 本気も本気、大マジですよ。クソ鈍感野郎のほも君にはしずくちゃんのアピールは一切届いてません。それどころかアピールとすら思ってませんからね。

 

「はぁ……まだ、足りてないのかなぁ……?」

 

 しずくちゃんが思いっきり曇ってしまいましたが、足りてるとか足りてないとかの問題じゃないんですよね。ちゃっちゃと告白しちゃえば済む話なのにね。告白さえしてくれればすぐに付き合ってあげるのに。……いや、しずくちゃんは告白しようとしてましたね。それも2回も。しようとしたけどかすみんとりなりーに邪魔されちゃったんでした。人間の屑がこの野郎……。

 それにしても、あの時かすみんが邪魔してきた理由がわからないんですよね。今回りなりーが邪魔しちゃったのはタイミングが悪かっただけで意図していたわけじゃないのはわかるんですが、かすみんに関しては完全に意図的に邪魔してますからね。ほも君に対して好意があるのか否かが不明です。うーん……これは明日お泊まりの時に問い詰める必要がありそうですね。ピーマン食べさせて拷問しましょう(鬼畜)

 

「……ねぇ、元樹君」

 

 ん? 何ですか?

 

「元樹君は、私のこと可愛いと思う?」

 

 心配そうにこちらの顔を覗いてきますね。安心してください、しずくちゃんはとても可愛いですよ。

 

「本当にそう思ってる?」

 

 本当にそう思ってるのですが、どうやら言葉だけでは足りないみたいですね。それとも言葉すら足りないのでしょうか。

 

「もし本当なら……行動で、示して」

 

 しずくちゃんは目を閉じてこちらが動くのを待っています。明らかにキス待ちですね。その行動にお応えして頬を撫でてあげましょう。ほも君さぁ……。

 

「……そうじゃないんだけどなぁ」

 

 ほら、ほも君の鈍感さにさすがのしずくちゃんも苦笑してますよ。あとそのセリフさっきも聞いた気がしますね。

 

「でも、今はこれでいいかな」

 

 しずくちゃんは満足気に微笑んで、思いっきり抱きついてきました。

 

「んん~」

 

 ファッ!? しずくちゃんがいきなり首筋に吸いついてきましたよ。何してんすか!首は皆に見られるからやめてくださいよホントに!

 

「ちゅぅ……」

 

 頑張って引きはがそうとしますが、筋力がないためびくともしません。やめろォ(建前) やめろォ!(本音)

 

「ちゅぱっ」

 

 ようやくしずくちゃんが離れてくれました。ほも君の首にはくっきりとキスマークがついちゃってます。はっきりわかんだね。

 

「ごめんね、痛かった?」

 

 ちょっと痛かったですが、問題はそこではありません。私は怒っています。勝手にキスマークをつけないでいただきたい。元々壊れていたチャートがさらに壊れるじゃないですか。あーもうめちゃくちゃだよ(憤怒)

 

「えへへ、隠したらダメだからね」

 

 隠しちゃいかんのか?

 

「うん、ダメ。ちゃんと周りに見せつけてほしいな」

 

 いや~(修羅場を回避するのが)キツイっす。いっそのこと仮病で休んでしまいましょうか……。

 

「あっ、もちろん仮病で休むのもダメだからね」

 

 えぇ……(困惑) キスマークつけて、それを周りに見せつけろだなんて、急に大胆になりましたね。たまげたなぁ……。

 

「ふぁぁ……なんだか眠たくなってきちゃった……。私はもう寝るね。おやすみなさい……」

 

 しずくちゃんはほも君をギュっと抱きしめて寝てしまいました。可愛い寝息が聞こえます。

 

「すぅ……すぅ……」

 

 ……これ、どうすればいいんでしょうか。隠すなと言われてしまいましたし、少なくとも部活中は周りに見られてしまいますね。どうしたらいいのかこれもうわかんねぇな。

 

「すやぁ……」

 

 全ての元凶であるしずくちゃんは幸せそうな顔でぐっすりと眠っています。こっちの事情も考えてよ(迫真)

 はぁ……このままうだうだしてても意味ないので、ほも君も寝てしまいましょう。どうせしずくちゃんに拘束されていて動くことができませんからね。というわけでおやすみなさーい。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


しずくちゃんにキスマークつけてもらいたい。

いつも実況パートは5000字程度を目安にしていたのですが、今回はそれを無視して書いてみました。どっちの方がよかったですかね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part10/m

もうすぐ新年なので初投稿です。


「ふぅ……今日も練習疲れたね」

「つかれた……。璃奈ちゃんボード『へろへろ~』」

「わっ! りな子大丈夫!?」

 

 今日の練習も終わり、部活で帰り支度をしながら談笑をしていると、疲れてへろへろになった璃奈さんがイスに座り込んだ。

 

「大丈夫? スポーツドリンク飲む?」

「飲みたい……」

 

 余っていたスポーツドリンクを璃奈さんに渡す。

 

「ごくっ……ごくっ……ぷはぁ、ありがとうしずくちゃん」

「どういたしまして。でも、本当に大丈夫なの?」

「うん、これのおかげで元気になれた。しずくちゃんもかすみちゃんも練習の後も元気なのすごいと思う。私も早くこうなりたい……」

「ふっふっふっ……かすみんは毎日トレーニング頑張ってるからね~。やっぱりスクールアイドルたるもの、スタミナは大事だもん!」

 

 元樹君から聞いた話だけど、私達が同好会を離れている間、かすみさんが部室を守ってくれていて、そんな状況でも練習を続けていたみたい。ほんと、かすみさんはすごいなぁ。

 

「しず子は?」

「私? 私は演劇部にいた時にいっぱい走り込みしてたから、そのおかげで前よりはスタミナはついてるかも。それに今日のメニューは筋トレだったし……」

「それでもすごい。私ももっと頑張らないと。璃奈ちゃんボード『やったるでー』」

 

 璃奈さんもイベントに向けてやる気満々みたい。私も、かすみさんや璃奈さんに負けないように頑張らないと。

 

「ところでしずくちゃん」

「何かな?」

「元樹とのお泊まりはいつするの?」

「え、えっとぉ……なんでそんなこと聞くの……?」

「なんとなく気になったから」

 

 どうしよう……。璃奈さんはきっと邪魔するようなことはしないだろうけど、今日この後お泊まりだって知られるのは恥ずかしいし……。

 

「……もしかして、今日?」

「……うん」

「ふーん……かすみんの前に、しず子とお泊まりするんだ……」

 

 かすみさんは複雑そうな顔で、愛さんと談笑する元樹君の方を見ていた。

 

「……もと男のばか

 

 なんて呟いたのかは聞き取れなかったけど、かすみさんの表情にはいろいろな感情が浮かんでいた。元樹君を非難しているようで、それでいて私に嫉妬するような、何かに期待しているような……そんな顔だった。でも、そのどれよりも顕著に表れている感情があった。顔をほんのり赤らめ、元樹君のことをジッと見つめている。他でもない私がよーく知っているその感情が、元樹君への恋慕が、かすみさんの顔に浮かんでしまっていた。

 

「かすみさんも……」

「……え? しず子、何か言った?」

「……ううん、何でもないよ」

 

 かすみさんも、元樹君のことが好きなの? 喉まで出かかった言葉を何とか飲み込む。かすみさんはすぐ顔に出るから、元樹君のことが好きなのも間違いないだろう。元樹君を見かけたらすぐに駆け寄るし、自分から抱きついたり、頭を撫でてもらって嬉しそうにしたり……今までの行動からもなんとなく察しはついていたけど……。でも、多分かすみさんは自分の想いに気がついていない。何か根拠があるわけではないけど……でも間違ってはないと思う。乙女の勘というものだ。そんなかすみさんにこの言葉を投げかけるのは悪手な気がした。気づくきっかけを与えてしまうかもしれないから。

 もしもかすみさんがそれに気づいてしまったら、きっと私なんかでは相手にならない。誰よりも可愛くて、璃奈さんと同じくらい元樹君と仲がよくて、お互いなにかと距離感が近いから、かすみさんがその気になれば元樹君もコロッと落ちちゃうかも……。だからかすみさんには気づいてほしくない。

 でも、かすみさんには気づいてほしいと思う自分がいる。自分の気持ちを知らず、気づいた時には元樹君は誰かと付き合っていて、全てが終わっていたなんて……私だったらきっと耐えられない。親友のかすみさんにはそんな思いなんて絶対にしてほしくない。

 

「……ず子」 

 

 はぁ……私はどっちを選べばいいんだろう。自分の気持ちを優先するべきか、それとも親友を優先するべきか。元樹君なら……うん、きっと何のためらいもなく後者を選ぶだろう。彼は自分の利益より他人の利益を優先できる、とっても優しい人だ。下心なんて一切感じさせないその優しさに触れて、気づいたら私は彼のことが好きになっていた。心の底から愛してしまった。初めて誰かと添い遂げたいと思ったんだ。

 私も元樹君みたいに優しい人になりたい。いつだって人に優しくありたい。ずっとそう思ってた。元樹君は私の好きな人であり、理想の人でもあるから。

 かすみさんには幸せになってほしい。璃奈さんやせつ菜さんも私にとって大切な人達だけど、私以外の人と彼が結ばれるのであれば、願わくばそれはかすみさんであってほしい。かすみさんなら、私も心から祝福できる気がする。だってかすみさんは、私なんか遠く及ばない、誰よりも可愛いスクールアイドルだから。ああ、やっぱり私なんか敵わなかったと素直に思えるだろうから。でも……でも、元樹君を諦めることなんてできないよぉ……。

 

「もうっ、しず子ってば!」

「ひゃっ! か、かふみひゃん!?」

 

 かすみさんが急に私の頬をつまんで引っ張ってきた。

 

「いひゃいよ……」

「あ、ごめん」

 

 ちょっぴり力が強くて痛かったけど、すぐに放してくれた。

 

「……あれ、璃奈さんは?」

 

 気がついたら璃奈さんがいなくなっていた。さっきまで一緒にいたはずなんだけど……。

 

「なんか用事があるって先に帰っちゃったよ」

「いつの間に……」

「しず子がうんうん唸ってる間にだよ。ちゃんとしず子にも挨拶してたのに、聞いてなかったの?」

「うそ、全然気づかなかった……」

「もぉ、人の話はちゃんと聞かないと」

 

 私はかすみさんのことで悩んでたというのに……。ちょっとだけムカッとしちゃったから、かすみさんの頬をつねって八つ当たりする。

 

「……急に何するのさ」

「別にぃ」

「変なしず子ー。……でも、さっきよりはいい顔になった気がする!」

「そうかな?」

「そうだよ。さっきまでずっと悲しそうな顔してたもん」

 

 悲しそうな……確かにそんな顔してしまったかもしれない。

 

「もと男と愛先輩が楽しそ―に話してるからってさ、そんなに重たく考えなくてもいいのに」

「……え?」

「愛先輩に嫉妬してたんでしょ? 私の大事なもと男が取られちゃう~って」

「そ、そんなこと考えてないもん!」

「ほんとかなぁ?」

「ほんとだもん」

 

 さっきはかすみさんのことで頭がいっぱいで、愛さんのことを考えられなかったから嫉妬なんてしてない。でも今は少しだけ余裕ができちゃったから……愛さんのことがちょっぴり羨ましい。

 

「……なんか、もと男と愛先輩……いつもより近くない?」

「言われてみればそうかも……」

 

 2人の距離はいつもと比べて、ほんの少しだけ近いかもしれない。そもそも元樹君と愛さんが2人でいるということ自体が珍しい。今日は一緒に練習してたみたいだし、その時に何か関係が進んでしまうような出来事があったのだろうか。天然たらしの彼のことだから、その可能性も十分ある。

 

「むぅ……かすみんも混ざっちゃお!」

 

 かすみさんは少しむくれて考え込み、2人の会話に混ざることにしたみたいだ。

 

「しず子も混ざるでしょ?」

「私は……私は遠慮しようかな」

 

 考えがまとまらず頭の中がぐちゃぐちゃの状態だから、今は元樹君とちゃんとした受け答えができる気がしない。支離滅裂なことばかり言ってしまうかも。彼を困らせるようなことはしたくない。

 

「じゃあかすみんだけで行ってくるね。……しず子も、あんまり考えすぎちゃダメだよ」

「うん、楽しんできてね」

 

 今の私は笑顔を作れているだろうか。作れていたとしても、きっとぎこちない笑顔だ。だってかすみさんに見抜かれちゃってるもん。

 

愛せんぱーい! かすみんも混ぜてくださいよ~

かすかすも? もちろんいいよー

かすかすじゃなくてかすみんですぅ!

さっきまで愛先輩と一番強いもんじゃは何か議論してたんだけど、かすみはどのもんじゃが最強だと思う?

最強のもんじゃぁ? 一番美味しいもんじゃってこと?

いや、戦闘力の話

もんじゃの戦闘力って何!?

 

 元樹君とかすみさんが楽しそうに……楽しそう、なのかなぁ? 変な話題だし、一番強いもんじゃはどれかなんて急に聞かれたらかすみさんでなくても困惑する。私もついていける気がしない。

 こんな話題でも2人が話しているのを見るだけで胸がモヤモヤしてしまう。璃奈さんやせつ菜さんではこんな風にはならないのに、どうしてかすみさんの時だけ……。

 

「はぁ……」

「しーずくちゃん、ため息なんてついてどうしちゃったのかな~?」

「彼方さん……」

 

 私のことを気にかけてくれたのか、彼方さんが後ろから優しく抱きしめてくれた。

 

「何でもないですよ。ただ練習で疲れちゃってて……」

「ほんとにぃ? 何か悩みがあったんじゃないの? もと君関連のことで」

「やっぱり、彼方さんにはバレてしまいますか……」

 

 彼方さんは本当に鋭い。誰かが悩んでいる時、いつもいち早く気づくのが彼方さんだ。膝枕を求めてきたり普段は甘えん坊のお姉さんなのに、辛い時は逆に甘えさせてくれる頼りになる優しいお姉さんだ。遥さんという妹さんがいるみたいだし、家でもきっと優しいお姉さんなのだろう。私は一人っ子だから、遥さんのことが少しだけ羨ましい。

 

「ふっふっふっ、彼方ちゃんには皆のことなら何でもお見通しなんだぜ~。それで、何があったのかなぁ? 彼方ちゃんに話してごらん」

「……場所を変えてもらってもいいですか?」

 

 元樹君はもちろん、かすみさんにも話の内容を聞かれたくない。

 

「もちろんいいよぉ。屋上とかどう? 今日は風が気持ちいいんだぁ」

「屋上でお願いします」

「じゃあ行こっか」

 

 彼方さんに手を引かれて部室から出ようとすると、ちょうどお手洗いから戻ってきた果林さんと遭遇した。

 

「あら、2人してどこか行くのかしら?」

「うん、ちょっとしずくちゃんと散歩してこようかなぁって」

「そうなのね。なら部室が閉められないように戻ってくるまで私が残っておくわね」

「ありがとね~」

「あの……」

 

 手をひらひら振って中に入っていく果林さんを呼び止める。

 

「果林さんもついてきてくれませんか……?」

「私も散歩に?」

「いえ、散歩ではなく……」

「……わかった、私もついてくことにするわ」

 

 言いよどむ私を見て何か察してくれたのか、果林さんもついてきてくれることになった。

 

「戻るまで残ってくれるよう誰かにお願いしてくるわね」

 

 伝言しに行った果林さんが戻ってくるのを待つ。

 

「果林ちゃんにも悩みを聞いてもらうんだね」

「はい。果林さんは経験豊富そうですから」

「そうだねぇ。果林ちゃんならしずくちゃんの悩みも解決してくれるかも」

「そうだといいんですが……」

「お待たせ。元樹君が残ってくれるみたい。下校時刻までならどれだけ散歩しててもいいって言ってたわ」

「さすがもと君、優しいねぇ。その優しさにいっぱい甘えようかな」

 

 

 

 3人で屋上まで来た。彼方さんの言っていた通り気持ちいい風が吹いている。風を感じながら並んでベンチに座る。

 

「うーん、やっぱり風が気持ちいいな~」

「そうですね。ここでお昼寝したくなる彼方さんの気持ちもわかります」

「それで、ここで何の話をするのかしら。しずくちゃんは悩みがあるんでしょ。スクールアイドルのこと? それとも……元樹君のこと?」

 

 彼の名前が出てきて、思わずビクッとしてしまった。

 

「果林ちゃんも気づいてたんだねぇ」

「そりゃ気づいてるわよ。あんな大胆にアピールしてたら誰だってわかるわ」

 

 果林さん、当の本人はまったく気づいてくれないんです……。

 

「そっちじゃなくて、しずくちゃんが悩んでるってこと」

「ああ、そっちね。しずくちゃんが何か思いつめた顔をしてたから、もしかしたらって思っただけよ。でも当たってたみたいね」

「さすが果林さん、鋭いですね」

 

 元樹君も、人の恋心にこれくらい鋭かったらよかったのに……。

 

「さっきの反応を見るに、悩んでるのは元樹君関連のことよね?」

「……はい」

「いいわね、恋って。青春って感じがするわ」

「青春……果林さんが思ってるほど、恋っていいものじゃないかもしれませんよ」

「あら、そうなの?」

「もちろん好きな人といっしょにいると楽しいですし、名前を呼ばれたり褒められたりすると無性に嬉しくなって、ああ、幸せな時間を過ごしてるなぁと思ったりもします。でも、想いが伝わらないと辛いですし、好きな人が他の女の子と一緒にいるのを見るとモヤモヤしてしまいますし、、ほんとはいやいや付き合ってくれてるだけなんじゃないかと邪推してしまうこともあります。ライバルが多いと、今彼は誰か他の人と出かけてるのかな、もしかしたらもう誰かと付き合ってるかも……とどうしても考えてしまうんです」

「確かにもと君はライバルが多いからねぇ。璃奈ちゃんは幼馴染だし、せつ菜ちゃんは積極的だし」

「そうなんですよ。璃奈さんみたいに元樹君と一緒に帰ったりできないし、せつ菜さんみたいに元樹君とキスしたこともないし……ただでさえ強力な2人なのに、私だけまだ何もなくて……。それに、ライバルが友達だったり仲のいい先輩だったりすると、決着がついた時に関係が壊れてしまうのが怖いんです」

「確かにそういうのはドラマとか小説ではありがちね。でも、璃奈ちゃんとせつ菜は大丈夫じゃないかしら」

「はい。もし私が元樹君と付き合うことができたら、きっと2人は祝福してくれると思います。逆にその2人と元樹君と付き合うことなったとしても、私は祝福できると思います。……でも、心の奥ではきっとその人に嫉妬してしまいます。どうして私じゃないんだろうって。いつも通りを装っても、そういうのって隠しきれるものではないと思うんです。それが重なって、いつかその人との関係が壊れてしまうんじゃないかって……」

「う~ん……何か得るためには何か失う必要がある、って言ったりもするしねぇ」

「やっぱり難しいんでしょうか……」

「いっそのこと、皆で元樹君と付き合ってみるとか?」

「それって……」

 

 もしかしなくても元樹君ハーレムなのでは……?

 

「これなら友情も愛情も両立できると思うの」

 

 だからってハーレムだなんて……。元樹君を独り占めしたくなっても、ハーレムだとなかなか独り占めできない。

 

 

 

『元樹君、今夜は一緒に過ごしたいなぁ……なんて』

『ごめん、今日はかすみとも約束してたんだ。3人でもいい?』

『そんな……』

『ごめんねぇしず子ぉ。かすみんが先約なんだもん!』

『むぅ~!』

『いひゃい!』

 

 

 

 独り占めするどころか、2人きりで遊ぶのも難しいかも……。

 

 

 

『元樹君が欲しがってたあれ……えっと、何だっけ……』

『あれ? ……ああ、プレイエアポート5か』

『そうそれ。私それの抽選に当たってたよ』

『マジで? 俺外れてたんだよなぁ……』

『買ったらうちに遊びに来る?』

『行く行く!』

『次の日が休みの時とかにしようね。それなら夜通し遊べるから……ね?』

『そうだな。……あっ、そうだ。かすみと侑先輩も欲しがってたよな。2人も呼んじゃうか』

『……』

『4人でオール確定だな。……どうした? 何むくれてるんだよ』

『なんでもなーい』

 

 

 

 いつになっても元樹君は鈍感なままな気がする……。100歩譲ってかすみさんは許せるけど、侑先輩まで呼んだらもう戦争だ。ハーレムに新しく人を増やさないでほしい。侑先輩に限って元樹君とそういう関係になることはないだろうけど、元樹君のことだからあり得ない話ではない。

 元樹君と電話ですら話せなくて、寂しい夜を過ごす日もあるんだろうなぁ。

 

 

 

 はぁ……今日は元樹君から何も連絡こなかったなぁ。いつもならこっちから連絡したら、寝るまでには絶対に返ってくるのに……。同僚と飲み会してるのかなぁ。……そういえば昨日、元樹君からいい居酒屋知らないかって聞かれたな。きっとどのお店で飲み会するか決めようとしてたのだろう。

 今日は来てくれると思ってお酒いっぱい買っておいたけど、しばらくは冷蔵庫の中で寝てもらうことになりそう。……どうしよう、私が飲んじゃおうかな? でも、いざ元樹君と宅飲みになった時に足りないと嫌だし……うん、やっぱり我慢しよう。最近少しだけ……本当に少しだけ丸くなってきた気もするし、そういう意味でも我慢した方がいい。

 なくなりかけてたゴムも補充したけど、こっちもしばらく使うことはなさそうかな。ほんとは生がいいんだけど、私の女優業が大切だからって絶対にしてくれないし……。璃奈さんはお願いして一度だけ生で中に出してもらったみたいだけど……いいなぁ。璃奈さんが羨ましい。私も一度でいいからしてもらいたい。

 そもそも元樹君には性欲がなさすぎる。たまには元樹君から誘ってほしい。いつも私から誘わないとその気になってくれないんだもん。そのくせに一度始めたら何度も何度も出すんだから……。しかも毎回激しいし。終わった時には私はいつもくたくただ。昔は私の方が体力があったのに、今では元樹君の方が元気だもんなぁ。でも、いつも終わった後に優しく触ってくれるのは嬉しい。愛してくれてるって実感できる。

 

『……会いたいな』

 

 元樹君のことを考えてたら会いたくなってしまった。ほんとは同棲したい。そうすれば家に帰ればいつだって大好きな人と会えるのに……。でも、平等にって皆と約束してるから我慢するしかない。

 好きな人と結ばれたのに、どうして会いたい時に会えないんだろう。会いたいよ、元樹君……。

 

 

 

 ……すごく悲しい未来だ。やっぱりハーレムなんて……いや待って。こんなシチュエーションも……

 

 

 

『もう帰るの?』

『ああ、璃奈と一緒にゲームする約束があるから』

『……もっと、一緒にいたいよ』

『じゃあしずくも一緒に来る?』

『やだ……今日は2人っきりがいい』

『……仕事で何かあったのか?』

『……』

『……よし、今日は一緒にいよう。璃奈との約束は断ることにするよ。後で怒られるだろうけど

『いいの?』

『もちろん。しずくが悩んでるのにほっとくわけないだろ?』

『嬉しい……ありがとう、元樹君。大好き』

『俺もしずくのこと大好きだぞ。明日は休みだし、どこか一緒に出かけようか』

『行きたい。オシャレなレストランとか、ワンちゃんカフェとか』

『いいよ。しずくの行きたいところに行こう』

『あとは夜も……今日は生でしたい』

『え、それは……』

『いいの。今日は元樹君をいっぱい感じたいの』

『……わかった。責任はとるから』

 

 

 

 ―――みたいな展開は意外といいかもしれない。いつもは先約の人を優先して、なかなか独り占めできない元樹君だけど、この日だけは特別に先約を蹴って私を優先してくれて……私の悩みを真摯に聞いてくれて、その後一晩中愛を囁き合うんだ。きっと悩みなんて吹っ飛んでしまう。えへへ、きっと翌日のデートもすごく幸せなんだろうなぁ。

 

「……冗談で言ったつもりだったんだけど、なんだか幸せそうね……」

「……はっ!」

「おかえり~」

 

 そうだ、彼方さんと果林さんにかすみさんのことを相談してたんだった。

 

「すみません、少しぼぉーっとしてしまいました」

「しずくちゃんが幸せそうだったからいいけどね~」

「それで、しずくちゃんの悩みって何だったのかしら?」

「それは―――」

 

 さっきのかすみさんことを話す。もちろん私が今日お泊りすることは伏せて。

 

「ふぅん、かすみちゃんがねぇ……」

「薄々察してはいたけど、かすみちゃんまでもと君のことが好きなのかぁ。ほんと、罪な子だねぇ」

「私はどうすればいいんでしょう……」

「しずくちゃんはどうしたいの?」

「私はかすみさんに辛い思いをしてほしくないです。恋心を自覚した時には全てが終わっていたなんて誰でも辛いじゃないですか。でもそれは同時に私が元樹君を諦めることになって……」

「どうして諦めることになるの?」

「だってかすみさんは私の何倍も魅力的ですから。私より可愛いし愛嬌もあって、元樹君とも仲がいいし、かすみさんと話してる時の元樹君はすごく楽しそうで……私なんかじゃどう頑張っても勝てないですよ……」

「そんなことないと思うけどなぁ。しずくちゃんもかすみちゃんに負けず劣らず可愛いし、元樹君もしずくちゃんと話してる時は楽しそうだよ」

「本当ですか?」

「そうだよ。そもそも魅力が可愛さだけとは限らないでしょ? かすみちゃんにはかすみちゃんの、しずくちゃんにはしずくちゃんの魅力がちゃんとあるんだよ。それにまだ自分で気づいてないだけだと思うなぁ」

「それに元樹君の好きなタイプがかすみちゃんみたいな子とは限らないでしょ? かすみちゃんみたいに賑やかな子より、しずくちゃんみたいな落ち着いた子が好みかもしれないじゃない。こればっかりは本人に聞かないとわからないけどね」

「落ち着いているのは璃奈さんも……」

「うーん……言おうか迷ったけど、しずくちゃんのために教えてあげよ~。しずくちゃん、耳貸して」

「何ですか?」

 

 彼方さんが耳打ちで何かを伝えようとしているので、言われた通りに耳を貸す。

 

もと君はね、多分大きい胸が好きだよ

「え!?」

 

 それはかなり大きな情報かもしれない。せつ菜さんには多分劣るけど、かすみさんや璃奈さんよりは確実に大きい。これが本当ならば、私にも勝機があるかもしれない。

 

「ソ、ソースは……」

「ソースはぁ……もと君の名誉のためにひ・み・つ」

 

 元樹君の名誉のためって、一体どんなソースなんだろう。それにどうして彼方さんがそんなことを知っているのか。……もしかして

 

「もしかして彼方さん、元樹君と……」

「違う違う、もと君と付き合ってるとかじゃないよ」

「でも、彼方さんよく元樹君を抱き枕にして寝たりしてましたし……」

「彼方、そんなことしてたの?」

「もと君と一緒だと何故だかよく眠れるんだよ~」

「元樹君も男の子なのよ? 彼方に抱き枕にされるのはちょっと刺激が強すぎるんじゃない?」

「でももと君に変なことされたことないし、変なことしないって安心感もあるからだいじょ~ぶ。……しずくちゃんもそんなにむくれないで。別にとったりはしないから」

「彼方さんにその気はなくても、元樹君は本気にしちゃうかもしれないじゃないですか」

「じゃあしずくちゃんも一緒にお昼寝する? 合法的にもと君に抱きつけちゃうよぉ?」

「……遠慮しておきます」

 

 さすがに元樹君を抱き枕にするのもされるのも恥ずかしい。せめて付き合った後に。それか家の中だったり他の人に見られない場所でだったら……。

 

「話を元に戻すけど、絶対に勝てないと決めつけるには早いってこと。しずくちゃんにはかすみちゃんとは違った魅力があるんだから、そこを使ってアピールすればいいの」

「胸、ですか?」

「ま、まあ色仕掛けも1つの手ではあるわね。実際かすみちゃんには難しいわけだし……。と、とにかく! かすみちゃんと元樹君のどっちかじゃなくて、どっちも選べばいいのよ。かすみちゃんに自分の気持ちに気づかせてあげて、その上で元樹君を手に入れる。私は無理じゃないと思うわよ」

「彼方ちゃんもそう思う~」

「2人がそう言うのであれば……私ももっと頑張ってみます。相談に乗ってくれてありがとうございました」

「どういたしまして~」

「私でよければいつでも聞いてあげるわよ」

 

 彼方さんと果林さんに相談してよかった。私1人だったらきっと元樹君を諦める道を選んでた。私はかすみさんのことも、元樹君のことも諦めない。かすみさんに気づいてもらった上で璃奈さん達に勝つ。……ハーレムも少しだけいいかなって思ったけど、ハーレムならハーレムで一番は私がいい。

 まずはかすみさんと話さなくちゃ。まだ部室に残ってくれてるかなぁ?

 

「あーあ、やっぱり恋っていいわねぇ。私もしてみたいわ」

「果林ちゃんは恋したことないの?」

「そうねぇ。周りの男の子からそういう目で見られることは多々あるけど、高嶺の花と思われてるのかなかなか声をかけてくれないのよね。自分から声をかけてくれるなら少しは考えてあげても……いえ、やっぱりダメだわ。下心が見え見えだもの」

 

 確かに果林さんはスタイルがいいから、男の子はどうしてもそういう目で見ちゃうのかも。同性の私でもついつい見ちゃう時があるし……。

 

「その点元樹君はすごいわよね。私と話していてもほとんど下心を感じないんだもの。いっそのこと元樹君と付き合おうかしら。……冗談よ。冗談だからそんな目で見ないで」

 

 はぁ、心臓に悪い冗談だ。果林さんみたいな人が元樹君を堕としにかかったら一瞬で決着がついてしまう。

 

「そろそろ戻ろっか。しずくちゃんもかすみちゃんと話さないとでしょ?」

「はい。本当にありがとうございました」

「どういたしまして。ほら、早くしないとかすみちゃん帰っちゃうわよ」

「そうですね、先に戻ってます」

「いってらっしゃーい」

 

 果林さんに急かされ、2人よりも先に部室に戻る。かすみさん、残ってるといいなぁ。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


このまま続きを書いてたら投稿がもっと遅くなりそうなので、ここで一旦区切って投稿しました。しずくちゃんのサイドストーリーはもうちっとだけ続くんじゃ。
活動報告を使えないのが不便だと思いました(小並感)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part11/m

新年初投稿です。


読者の皆様、新年あけましておめでとうございます。本年もクソザコ投稿頻度と進行速度で頑張っていきますので、本作をよろしくお願いいたします。


 部室に戻ると、楽しそうに談笑するかすみさんの姿があった。間に合ってよかったぁ。

 

「あ、しず子」

「おかえりしずく」

「ただいま戻りました」

「カナちゃんとカリンは一緒じゃないの?」

「はい、もう少し屋上でのんびりしてから戻ってくるそうです」

「3人で何の話をしてたの~?」

「大したことじゃないですよ。ちょっとスクールアイドルのことで……」

 

 話のメンバーは元樹君、かすみさん、愛さんの3人に加え、エマさんも増えていた。

 

「ところで、皆さんは何を話してたんですか? まだ一番強いもんじゃの話を?」

「いや、さすがにその話は終わったよ」

 

 よかった、まだそんな変な話をしてたのならかすみさんと話すどころではない。

 

「そうだ、折角だからしずくに決着をつけてもらおう」

「決着……?」

「最強の食べ物は何か話してたんだけど、なかなか決まらなくってさー」

「……最強って、一番強いってことですか? 美味しさではなく……」

「そうそう」

 

 なんか悪化してる気がする……。どうしてもんじゃから食べ物全部にまで範囲を広げてしまったのか。そもそもどういう経緯で一番強いもんじゃの話になってしまったのか。その経緯だけは気になる。

 

「かすみんはコッペパン、もと男はハンバーグ、愛先輩はぬか漬けで、エマ先輩は決められないって。しず子はどれが最強だと思う?」

 

 心底どうでもいい……。早く場所を変えてかすみさんと話がしたいけど、答えないと行かせてくれなさそうだ。期待の眼差しで私のことを見ている。

 

「えっと……ハンバーグ、かな」

 

 適当に元樹君に合わせて答えておく。

 

「よしっ、俺の勝ち!」

「くっ……コッペパンだって負けてないのにぃ……」

「うーん、ぬか漬けダメかぁ……」

「ハンバーグ食べたくなってきちゃったなぁ……」

 

 そもそも、なんでこの4人はあんな話題でこんなに真剣になれるのだろうか。仲がいい、平和な日常と捉えることもできるけど……はぁ、なんでこんな変わった人を好きになっちゃったんだろう。まぁそれが元樹君の魅力の1つなのだけれど。後々付き合った時のことを考えると、元樹君についていけるよう訓練した方がいいのかな……?

 

「そんなことより、かすみさん」

「なぁにしず子?」

「少しだけ話したいんだけど、いいかな?」

「いいけど、何の話?」

「ここでは言えない話というか……」

 

 『かすみさんも元樹君のことが好きなんでしょ?』なんて元樹君の前では絶対に聞けない。

 

「ふーん……」

 

 かすみさんは怪訝な顔で私のことを見ている。その気持ちはわからなくもないけど、全部かすみさんのためだ。

 

「ま、いいけど。それじゃ行こ!」

 

 かすみさんに手を引っ張られる。

 

「元樹君、戻るのが遅くなったらごめんね」

「気にするな。待ってるから好きなだけ話してきていいぞ」

「愛さんも残ってようかなー。元樹も話し相手がいないと寂しいでしょ?」

「じゃあ私も!」

 

 愛さんとエマさんは部室に残って元樹君とまだお話しするみたい。羨ましさよりもどんな話題なのかが気になる。まだ最強の食べ物の話を続けるのだろうか……。

 

 

 

 かすみさんに連れられるがまま中庭に移動する。

 

「話って何なのさ。わざわざ場所を変えたってことは聞かれたくない話なんでしょ? もしかしてもと男の話?」

「そうといえばそう、かな」

「やっぱり……しず子ってばもと男のこと大好きだもんね」

「それは否定しないけど……」

「それでぇ? しず子はもと男に告白でもするの?」

「そ、それはいつかはしたいと思ってるけど……夜景の綺麗な場所とか、大きな木の下とか、お互いの家で2人きりの時とか、ここしかない!って思った時にできたらいいなぁ」

 

 その時になったら詰まらずにちゃんと『大好きです。私と付き合ってください』って言えるかなぁ? このセリフだけはいっぱい練習しておかないと。たった一度の本番で、この短いセリフに私の想いを余すことなく全て込められるようにしなきゃ。

 

「ほんとは元樹君の方からしてほしいんだけどね? 私の手を取ってお互い見つめ合いながら、『しずくのことが好きだ。愛してる。結婚を前提にお付き合いしてください』なんて言われたら……えへへ、結婚だなんてまだ気が早いよぉ」

「もと男のことがどれくらい好きなのかは十分伝わったからぁ! ていうかしず子は告白が家でもいいの? もっとこう、ロマンチックな場所の方がよくない?」

「え~いいじゃん。告白して付き合った後、最初は恐る恐る手を重ねたりするんだけど、段々とお互い大胆になってきてキスしたり抱きしめ合ったりして、元樹君が私のことをそっと押し倒して私の服に手をかけるの。恥ずかしいけど私もそれを受け入れて、そのまま初めてのセッ」

「わーわーわー! いきなりなんてこと言い始めるのさ!」

「あれ? 何か変なこと言った? 展開がいきなりすぎたかな?」

「そうじゃないから! いや、展開もいきなりだったけど、言葉があまりにも直接的すぎるって言ってるの! かすみん達スクールアイドルなんだから、もっとオブラートに包んで表現してよ!」

「体を重ねるとか、一晩中愛し合うとか?」

「うーん、さっきよりかはマシだけど……。そもそも、そんなにもと男としたいの?」

「したいに決まってるよ。好きな人と繋がって、いっぱい気持ちよくしてもらいたいもん。いっぱい愛したいもん。いっぱい愛してもらいたいもん」

「うぅ、まさかしず子とこんな話することになるとは思わなかったよ……」

「……まぁ、かすみさんにはえっちなことはまだ早いかもね」

「そ、そんなことないもん! しず子と同じ年なんだから差なんてないもん! 好きな人がいないから気持ちがわからないだけだもん! かすみんだって週1でオナむぐぐっ!」

「ちょ、かすみさん!」

 

 かすみさんが大声でとんでもない言葉を口走りそうになったので、慌てて手で口を塞ぐ。あのかすみさんがあんなことを叫んでいるところを誰かに見られでもしたら、明日から学校でかすみさんが変な目で見られてしまう。もしかしたら先生に呼び出されて怒られちゃうかも。それだけは避けなければならない。

 話を思いっきり逸らした自分のせいとはいえ、知りたくないことまで知ってしまった。……かすみさん、週1でするんだ……。さすがに私よりは少ないけど、そもそもかすみさんがしていること自体に驚いた。あんまりそういうイメージが湧かないというか、とにかく意外でしかない。……私と同じように元樹君のこと考えてしてるのかな? ……これ以上考えるのはやめておこう。これからかすみさんを見る目が変わってしまうかもしれない。

 

「むぐぅ……ぷはっ! もうっ! いきなり何するのさ!」

「だってかすみさんがとんでもないこと言いそうになるから……」

「止めてくれたことには感謝するけどぉ……でもずっと口塞ぐ必要ないじゃん! うっかり教えたくなかったことも教えちゃったし……」

「ごめんなさい……」

「もと男には絶対に秘密だからね?」

「もちろん」

 

 元樹君どころか、他の人にも教えられない内容だよ……。

 

「はぁ、結局しず子がしたい話って何だったの? かすみんとえっちな話がしたかったの? まあこんな話もと男の前ではできないもんね。場所を変えたのにも納得だよ」

「そうじゃなくて……こほんっ。単刀直入に聞きます。かすみさんにとって元樹君ってどういう存在?」

「もと男は……かすみんの大切なファン第1号かな。初めて会った時、『可愛い。好き。かすみんのファンになります』って言ってくれたもんね~。いつかかすみんのファンクラブができたら、もと男に会員番号1番をもらってもらうの! えへへ、喜んでくれるかな~? あっ、これはサプライズにするつもりだから、しず子も内緒にしててね!」

 

 ちょっと待って。かすみさん、元樹君に好きって言われたことあるの? 私はお願いしないと言ってくれなかったのに……。いいなぁ、かすみさんが羨ましい。私のファンクラブでも1番になってくれないかなぁ……っと、この話はまた今度にしよう。

 

「少し質問を変えるね。かすみさんは元樹君のことどう思ってるの?」

「どう思ってるって言われても……もと男は仲のいい友達だよ。一緒にいて楽しいし、話も弾むし、気も合うし……。あともと男は人としてすごいと思う。誰にも優しいし、いっつも周りのこと気にかけてて、険悪な雰囲気になりそうな時はもと男がうまくまとめてくれて、そういうところはほんとにすごいと思う。苦手な勉強とか運動も克服しようとしてて、そういうところはかすみんも見習わなくちゃって」

「かすみさんもまた勉強会する?」

「うっ……遠慮しとく」

「じゃあ異性として元樹君のことどう思う?」

「異性として……それって恋愛相手としてってこと?」

「それでもいいよ」

「うーん……恋愛相手……まぁもと男はかっこいいし、かすみんのこと大切にしてくれるし、可愛がってくれるし、優しくしてくれるし、褒めてくれるし、頭撫でてくれるし、ギュってしたら優しく抱きしめ返してくれるし……なんていうか、もと男はすごくあったかい。嬉しい時は一緒に喜んでくれるし、楽しい時は一緒に楽しんでくれるし、悲しい時は慰めてくれて……一緒にいるとかすみんの心までぽかぽかしてくるの。しず子が好きになるのもわかる気がする」

 

 それは痛いほどわかる。私も元樹君のそういうところが大好きだから。やっぱりかすみさんも元樹君のことが好きなんだ。友達としてではなく異性として。

 

「でもちょっと頼りないところは嫌かも。力仕事ももと男には任せられないし、かすみんが怖い人達に襲われちゃって助けに来てくれても返り討ちにされそうな気がする」

「あー……ちょっとわかるかも。私もデートには白馬に乗って迎えに来てほしいんだけど、元樹君だとお馬さんに振り落とされちゃいそう」

「それはもと男じゃなくても……しず子はもと男と一緒に出かけたことあるの?」

「ないけど……何、かすみさん」

 

 何故かニヤニヤした表情でこちらを見てくる。

 

「ふっふ~ん、かすみんはもと男と出かけたことあるもんね~。しかも2人きりで!」

「えっ!? い、いつ? どこに行ったの?」

「確か1ヶ月くらい前かなぁ。ショッピングモールで2人で服を買ったり、カフェでパンケーキ食べたり、クレープ食べたりしたよ。ほらっ、その時の写真! 可愛いでしょ!」

 

 かすみさんに見せてもらった写真には元樹君とかすみさんが写っていた。2人でベンチのようなものに座り、かすみさんが元樹君にクレープを食べさせてあげている。写真の中のかすみさんはいたずらが成功した時のようにニヤニヤしていて、多分写真を撮る時に急にクレープを食べさせたのだろう。その証拠に元樹君が驚いたような顔をしている。

 でも問題はそこじゃない。一番の問題は2人が腕を組んでいることだ。かすみさんに至っては元樹君の肩に頭を乗せていて、まるで恋人のように体を密着させている。

 

「この写真……」

「気づいちゃった? もと男と腕組みながら写真撮っちゃったの! 羨ましいでしょ?」

「……」

「ご、ごめん。写真を撮る時だけだったから、そんな怖い顔で見ないでよ……」

「どっちから腕を組もうって言いだしたの?」

「えっと……確かかすみんから」

 

 元樹君から誘ったのならともかく、かすみさんの方から誘ったとなればもう決定的だ。

 

「ねぇかすみさん。かすみさんって……元樹君のこと好き、だよね? もちろん異性として」

「え……ええぇぇぇぇぇっ!?」

 

 かすみさんの絶叫が響く。あまりの声量に思わず耳を塞ぐ。

 

「か、かすみんがもと男のこと好きだなんて……そんなことあるはずないじゃん!」

「じゃあなんで元樹君と腕を組んだりしたの?」

「なんだかもと男とくっつきたかったから……」

「かすみさんはよく元樹君に抱きついたりしてるよね。それはどうして?」

「もと男に抱きついてると安心できて、でもドキドキもして、それがすごく心地いいから……」

「逆に元樹君に抱きしめられた時は?」

「嬉しいんだけど恥ずかしくて、いつも顔が熱くなっちゃう……。でもやっぱりそれが心地よくてもっとしてほしいんだけど、さすがにお願いするのが恥ずかしいからいっつもかすみんからギュってするの。そしたらもと男も抱きしめ返してくれるから」

「頭を撫でられた時は?」

「もと男は優しく撫でてくれるし、撫で方も気持ちいいからもっといっぱいしてほしい。でもたまに子ども扱いして撫でてくるから、それだけはやめてほしい」

「もう一度聞くよ。元樹君のこと好き?」

「わかんない……。仲のいい男の子なんてもと男くらいだから、この気持ちがそうなのかわかんないよぉ……」

「そっか、そうだよね」

 

 私もそうだった。男の子の友達なんて他にいなかったから、元樹君に抱いている気持ちが何なのか最初は全くわからなかった。食堂で誰かの恋バナがたまたま耳に入って、それが私が彼に持っている気持ちに似ていたから、あぁこれが恋なんだって気がついた。つまりはたまたまだ。運がよかっただけ。あの時恋バナが耳に入っていなければ、今も私は気持ちの正体がわからずモヤモヤしたまま過ごしていただろう。

 

「しず子も……もと男に撫でられたりしたら、かすみんと同じ気持ちになるの?」

「うん。頭を撫でてもらえると恥ずかしいけどやっぱり嬉しい。抱きしめられるとすごく幸せな気持ちになる。かすみさんも同じなんじゃない?」

「幸せ……あの心地よさは幸せってことだったのかなぁ……」

「きっとそうだと思うよ」

「そっか、かすみん幸せだったんだ……」

 

 少しずつ気持ちを自覚し始めたのか、かすみさんの頬がやや赤く染まっている。きっとかすみさんはそのことに気がついていないだろう。私もあの時一緒にいた友達に教えてもらって顔が赤くなっていたことを知ったから。

 

「元樹君とデートしたい?」

「デートなのかはわからないけど、一緒に出かけたいとは思う……」

「元樹君と手繋いでみたい?」

「……繋いでみたい、かも」

「撫でてほしい?」

「うん、いっぱい」

「抱きしめてほしい?」

「ギュっていっぱいしてほしい」

「皆が見てる前でも?」

「うん。かすみんがもと男のものだって、皆に見せつけてほしい」

「キス、してみたい?」

「……してほしい。抱きしめながら優しくチュッて、もと男の味をかすみんにいっぱい刻んでほしい」

「えっちなことは?」

「それは別に……」

「あれぇ……?」

 

 もしかして私がおかしいのかな……?

 

「かすみんだっていつかはしてみたいと思うよ。でも今すぐはいいかな。せめてお互い18歳になってから」

「うん、かすみさんらしくていいと思うよ」

「でももと男がどうしてもって言うなら……ちょっとだけならしてあげてもいいかも」

「かすみさん……」

 

 多分ちょっとだけじゃ終わらなくて、結局最後までしちゃうと思うよ?

 

「はぁ、なんで今まで気づかなかったのかなぁ……」

 

 ようやく自覚したのか、顔を真っ赤にしながらもどこか晴れやかな顔をしている。

 

「私、元樹のことが好き……大好き。友達としてじゃなく異性として、しず子にもりな子にもせつ菜先輩にも負けないくらい、元樹のことがだーいすき!」

 

 空に向かって元樹君への愛を叫んでいる。やっぱりかすみさんはすごい。周りに誰もいないとはいえ、こんなに大胆なことができるだなんて。私には到底無理だ。

 

「部室まで聞こえてるかもしれないよ?」

「いいの! 聞こえてたってもと男のことだからどうせ聞き間違いだって流すんだから。それにもし聞こえてたならそのまま告白しちゃうもんね~」

 

 告白……かすみさんなら本当にしてしまいそうだ。

 

「しず子、ありがと。かすみんに気づかせてくれて」

「どういたしまして」

「でも、しず子はよかったの? ライバルを増やすようなことして」

「もちろん。気づいた時にはもう全部終わってた、って悲しむかすみさんは見たくないもん」

「そっか。しず子のおかげでそんな辛い思いはしなくてすんじゃうよ、ありがと!」

「わっ!」

 

 かすみさんが思いっきり抱きついてくる。倒れないよう踏ん張りながら、こちらも抱きしめ返す。

 

「かすみさん、顔真っ赤だよ」

「し、仕方ないじゃん! 自覚した途端、抱きついたり腕組んだりしてたのが恥ずかしくなってきて……。はぁ、さすがに大胆なことしすぎだよ……」

「心の中ではとっくに気がついてたんじゃない?」

「無意識にアピールしようとしてたってこと?」

「そういうこと」

「そんなことあるわけ……あっそういえば、もと男と同好会で再開した時、どういうわけか侑先輩に嫉妬しちゃったんだよね。なんだか先輩ともと男が仲良くしてるところを何度も見た気がして……」

 

 確かに侑先輩と元樹君が仲がいい。恋愛感情があるって感じではないけど、どこか距離が近い。オカルトだけど、未来視に近いことがかすみさんに起きたってこと? ……あ、そういえば。

 

「私もそれに近いことがあった気がする」

「え、しず子も?」

「うん。元樹君から歩夢さんの話を聞いた時、会ったこともないのに元樹君が取られちゃうって断言できたの」

「確かに、かすみんのと似てるかも……」

 

 今の今まで忘れてたけど、結局あれは何だったのだろうか。

 

「2人とももと男のことが好きすぎて未来に干渉しちゃったとか?」

「ない……こともないかも」

 

 確かにかすみさんのも私のも未来のことだ。

 

「それか別世界線ではかすみん達は負けちゃってて、その世界線のかすみん達が警告してくれたとか!」

「うーん……」

 

 パラレルワールド……あるとは言い切れないし、でも絶対にないとも言い切れない。仮にあったとして、別世界から干渉できたりするものなのだろうか。できたとして、どうして歩夢さんだけだったの? 璃奈さんとかせつ菜さんとか、ライバルはいっぱいいるのに。その2人よりも歩夢さんの方が強大ということなのだろうか。

 確かに歩夢さんは同性の私から見てもとても魅力的だ。優しくて可愛くて落ち着いてて頑張り屋さん、それから胸も大きくて母性もある。十分脅威となりうる。元樹君とも妙に仲がいい気がするし……いや、仲がいいというよりは、お互いがお互いを特別視しているような……。うまく言えないけどそんな感じがする。

 

「……はぁ、かすみん達じゃいくら考えたところでわかんないよね」

「うん……」

「オカルト研究部とか、そんなところに聞いた方がいいのかなぁ」

「そこまでしなくてもいいんじゃないかな……。それに、知らない人に好きな人がいるって言える?」

「……うん、恥ずかしいからやめとく!」

「それがいいと思うよ」

 

 私達は一応スクールアイドルなんだから、好きな人がいるって知られるのはあまりよくない気もするし……。まぁ、今の時代はスクールアイドルの恋愛を批判する人なんてあまりいないから大丈夫だとは思うけど。

 

「しず子、今日お泊まりなんだよね?」

「そうだけど……かすみさんも泊まりたいの?」

「そうじゃなくて、かすみんに遠慮とかしなくてもいいからね」

「え、いいの?」

「もちろん。キスでも告白でもえっちなことでも、なんでもしちゃってもいいよ」

「それだとかすみさんが不利じゃない? 今自覚したばかりでアピールなんてほとんどできないし……」

「無意識だったとはいえ、今までのアピールがしず子に負けてるなんてぜ~んぜん思わないもん! それに、しず子に告白なんて無理だと思うし」

「むっ……そんなことないもん。私だって告白くらいできるもん。一度告白しようとしたのにかすみさんが邪魔してきたんだもん」

「あ、あれは……もと男としず子がくっつくのがなんか嫌だったから……」

 

 あの時にはすでに元樹君に好意を持っていたみたい。

 

「あの時は邪魔してごめんなさい……」

「気にしなくていいよ。今日告白してかすみさんに勝ってみせるから」

「あ、言ったな~。そこまで言うんだったら勝負しようよ!」

「勝負?」

「しず子が告白できたらしず子の勝ち。できなかったらかすみんの勝ち。負けた方が勝った方にアイス奢りね!」

「そんな私に有利な条件でいいの? 私が普通に勝っちゃうよ?」

「いいもーん」

「じゃあその勝負受けるね。ちゃんと明日報告するから」

「振られた時はかすみんが慰めてあげるから」

「い、今からそんな話しないでよ。不安になっちゃうじゃん……」

「ご、ごめん……」

 

 かすみさんとガールズトークを楽しみながら部室に戻った。その間かすみさんはずっと笑顔だった。

 気持ちを自覚してからのかすみさんは前よりも可愛くなった気がする。恋する女の子は可愛いって言ったりするし、これからもかすみさんはどんどん可愛くなっていくだろう。私はとんでもない怪物を目覚めさせてしまったのかもしれない。けどこれでいいのだ。私は負けない。かすみさんがどんなに可愛くても、私は絶対に元樹君を諦めない。大好きな気持ちなら誰にも負けない。

 

「かすみさん」

「ん、どうしたの?」

「私、絶対に負けないから」

「……うん。かすみんも絶対に勝つよ。スタートは遅れちゃったかもしれないけど、これからはどんどん巻き返していくから」

「ふふっ、じゃあ私ももっと頑張らないと」

 

 見ててね元樹君。私ももっと頑張ってみせるから、私のこともっと好きになってね? 他の子に目移りなんてさせてあげないんだから。

 

 

 

 

 

 ……そういえば、璃奈さんになんて報告すればいいんだろう。怒られないかなぁ……。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


まだお泊まり回を書いてないけど、もしかしたら一旦サイドストーリーは区切りになるかもしれない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part12/m

無敵級かすみんっていつ見ても可愛いですよね。だから初投稿です。


上・中・下巻まで続いてるわけではないけど超大作です。


 いつものように練習が終わり、皆で部室で過ごしていた。

 侑先輩と歩夢先輩は用事で、せつ菜先輩は生徒会の仕事でもう帰っちゃったけど、それ以外の皆は練習のことで話し合ったり、普通に雑談をしたりで盛り上がっている。それはもちろんかすみんも。今日はしず子とりな子と一緒に練習について話していた。

 

「ふぅ……今日も練習疲れたね」

「つかれた……。璃奈ちゃんボード『へろへろ~』」

「わっ! りな子大丈夫!?」

 

 疲れてバテバテなりな子が倒れそうになっていたので、慌てて体を支えてイスに座らせる。

 

「大丈夫? スポーツドリンク飲む?」

「飲みたい……」

 

 しず子が余っていたスポーツドリンクをりな子に渡す。それは確かもと男が使う予定のだった気がするけど、明らかに飲んだ形跡がない。もと男自身も汗をかいてなさそうだったし、今日は練習に参加しなかったのだろうか。でも愛先輩について行ってた気もするし……もと男に限って途中で練習をやめるなんてことしないだろうから、多分見間違えたんだろう。きっと昨日の疲れが取れなかったとかで参加できなかったのだろう。

 

「ごくっ……ごくっ……ぷはぁ、ありがとうしずくちゃん」

「どういたしまして。でも、本当に大丈夫なの?」

「うん、これのおかげで元気になれた。しずくちゃんもかすみちゃんも練習の後も元気なのすごいと思う。私も早くこうなりたい……」

「ふっふっふっ……かすみんは毎日トレーニング頑張ってるからね~。やっぱりスクールアイドルたるもの、スタミナは大事だもん!」

 

 ステージに立ってる間もずっとで笑顔でいたいから。疲れでひきつった顔なんて皆に見せたくないもん。かすみんはやっぱりいついかなる時も可愛くないとね~。

 

「しず子は?」

「私? 私は演劇部にいた時にいっぱい走り込みしてたから、そのおかげで前よりはスタミナはついてるかも。それに今日のメニューは筋トレだったし……」

「それでもすごい。私ももっと頑張らないと。璃奈ちゃんボード『やったるでー』」

 

 りな子もライブに向けてモチベーションはバッチリみたい。かすみんも負けないように頑張らなくちゃ。

 あぁ、皆と一緒だと楽しいな。かすみん以外誰もいなくなって1人で練習していた時はこんなに賑やかになるなんて想像もできなかった。女の子らしくファッションやスイーツの話をしたり、スクールアイドルらしく練習やライブの話をしたり……こうして過ごす時間はとにかく楽しい。

 それにただ楽しいだけじゃなく、一緒に練習すること自分自身のモチベーションアップにも繋がっている。りな子みたいに頑張ってる人を見ると、かすみんだって負けないぞとこっちももっと頑張れる。こんなに最高な練習環境はない。かすみんにとっては練習機材のすごさよりも仲間がいることの方が大切だ。

 皆の楽しそうな声が聞こえる、笑顔の絶えないこの部室が私は大好きだ。今こうして皆と一緒に過ごせているのも……いや、そもそもかすみんがスクールアイドルを続けられているのも、全部もと男のおかげ。もと男がいたから同好会を復活させることができた。もと男が帰ってきてくれてなかったらこの部室は今頃ワンダーフォーゲル部のものになっていたかもしれない。もと男には感謝してもしきれない。

 そういえばもと男にはまだ感謝の言葉の1つも言えてない気がする。ちゃんとお礼しないと。言葉だけじゃなくて、他にも何かしてあげた方がいいよね。もと男は優しいから何でも喜んでくれると思うけど、どうせならこれ以上ないくらい喜ばせたい。何がいいかなぁ……とりあえず食べ物はやめた方がいいかも。もと男はあんまり食べることが好きってわけじゃなさそうだし。それよりはアクセサリーとかの方が喜んでくれる気がする。

 また一緒に出かけて、もと男の反応を見ながら決めてもいいかも。ちょっと恥ずかしいけど、手をつなぐくらいは特別にしてあげてもいいかな。むしろかすみんの方から急に恋人つなぎしてどういう反応をするか見てみたい。びっくりして慌てるかな。それとも喜んで受け入れてくれるかな。もしかしたら恥ずかしがってほどこうとするかもしれない。どれでも面白そうだけど、特に何の反応もしてくれないのだけはやだなぁ。もと男のことだから普通にありそうだし……。もしそうなったらほっぺにチューしてみようか。もと男にならしてあげてもいいと思えるし、何よりこれくらいのご褒美はあってもいいはず。可愛いかすみんがキスしてあげるんだから、さすがに何かしらの反応は示してくれるだろう。にひひっ、今から楽しみだなぁ。もと男に聞いて予定を立てないとね!

 

「ところでしずくちゃん」

「何かな?」

「元樹とのお泊まりはいつするの?」

「え、えっとぉ……なんでそんなこと聞くの……?」

「なんとなく気になったから」

 

 お泊まりの予定をりな子に聞かれ、しず子は明らかに動揺している。

 

「……もしかして、今日?」

「……うん」

「ふーん……」

 

 もしやと思い聞いてみたが、かすみんの予想通りだった。通りで荷物が多いはずだ。

 

かすみんの前に、しず子とお泊まりするんだ……」

 

 愛先輩と楽しそうに話すもと男のことを睨む。しず子とお泊まりした直後にかすみんとお泊まりなんて……。

 

「……もと男のばか

 

 なんかすっごいモヤモヤする……。泊めさせてもらう立場だからあまり文句は言えないけど、しず子の翌日にしなくてもいいじゃん。せめて日を開けるとか……自分でもよくわからないけど、とにかく誰かの直後はイヤだ。

 

チーズもんじゃとかいいんじゃないですか?

うーん、それよりはプレーンの方がいい気がするけどなぁ

 

 元凶のもと男はといえば愛先輩ともんじゃの話で盛り上がっている。はぁ、かすみんの気も知らないで……。少しだけしず子やりな子の気持ちもわかる気がする。普段は鋭いくせに乙女心には鈍いんだから……。

 

「かすみさんも……」

「……え?」

 

 悩んでたらしず子が何か話しかけてきた。でも考えごとをしてたせいでよく聞き取れなかった。

 

「しず子、何か言った?」

「……ううん、何でもないよ」

 

 何でもないとは言うもののしず子の表情はどこか暗い。

 

「ねぇ」

「うぅん……」

 

 声をかけてもうんうん唸るだけで返事が返ってこない。かすみんと同じように何か考えごとしてるみたい。またもと男のことで悩んでるのだろうか。

 

「……かすみちゃん、しずくちゃん、用事思い出したから先に帰るね」

「用事? 時間大丈夫なの?」

「ゲームのイベントだから大丈夫」

「りな子はゲーム好きなの?」

「うん、大好き。昔は元樹といっぱい遊んだ」

 

 ゲームかぁ……一度だけもと男に誘われて遊んだけど、それ以来やってないなぁ。

 えふぴーえす? っていうのを一緒にやったけど、かすみんにはちょーっと難しかったんだよね。えいむっていうのがうまく合わせられなかったし……あんな一瞬でマウスを正確に動かすなんて難しいよ。キャラクターごとによくわかんないスキルとかがあって、使いどころとかよくわかんないし。あと急に撃たれたら普通にびっくりしちゃう。実際何回も叫んじゃったもん。もと男は可愛いって言ってくれたけど、『ぎゃんっ!』なんて叫び声可愛くないよ……。

 あの時はしず子も一緒だったけど、2人とも上手だったなぁ。しず子も初めてだったみたいだけど、同じ初めてでもかすみんとは比べ物にならないくらい上手だった。たまに汚い言葉を言いかけてたけど……。

 大体最初にかすみんが不意打ちされて倒されちゃって、もと男としず子の2人で敵討ちしてくれて、その後かすみんを復活させてくれた。気にしないでとは言ってくれたけど、やっぱり足を引っ張ってる気がして申し訳なくなっちゃう。

 

「かすみちゃんはゲーム好き?」

「ほとんど遊んだことないからよくわかんない。嫌いではないけど……」

 

 でもあの時の3人でわちゃわちゃしてる感じは楽しかったな。かすみんが自力で相手を倒した時はいっぱい褒めてくれたし。優勝した時は皆で喜んだ。ドン勝って言うのはよくわからなかったけど……。

 しず子はまだもと男と一緒にやってるのかな? なんだかんだ言って楽しかったし、また一緒に遊びたいな。誘ったら一緒にしてくれるかな?

 

「初心者でも楽しめるゲーム選んでおくから、今度1年生で集まって遊ばない?」

「遊びたいっ! 皆で遊ぶの楽しみ!」

「喜んでくれて嬉しい。璃奈ちゃんボード『わーい!』」

「いつするの? かすみんはいつでも大丈夫だけど」

「私もいつでも大丈夫。元樹としずくちゃんに予定聞かないと。放課後より休みの日の方がいいよね?」

「確かに休みの日の方がいっぱい遊べるもんね。りな子の家に泊ってもいいなら、かすみんは放課後に泊まりでもいいけど……」

「泊まりも大丈夫だと思う。そのことも含めて2人に聞いておくね」

 

 ほんとはしず子もこの場にいるんだけどね。でも考えごとに夢中で今の話も聞いてないみたいだし……。

 

「じゃあそろそろ帰るね。かすみちゃん、しずくちゃん、また明日」

「ばいばーい!」

 

 手を振って見送る。りな子はもと男と少し話をして帰っていった。

 

「うぅん……」

 

 さてと、そろそろしず子をどうにかしないと。このままだと1日中唸っていそうだ。それに表情もどこか悲しそうで、今にも泣きだしてしまいそうな雰囲気すらある。

 

「しず子」

どうすれば……」

「ねぇしず子」

元樹君……」

「……」

 

 何度呼び掛けても反応すらしない。いくらもと男のことが大好きとはいえ、ここまで無視されるとさすがにちょっと頭にきた。

 

「もうっ、しず子ってば!」

「ひゃっ! か、かふみひゃん!?」

 

 しず子のもちもちな頬をつまんで引っ張る。ここまでしてやっと考えごとをやめてくれた。

 

「いひゃいよ……」

「あ、ごめん」

 

 ちょっと強く引っ張りすぎたみたいでしず子が痛がったので指を離す。しず子は少しだけ赤くなった頬を撫でている。

 

「……あれ、璃奈さんは?」

 

 今更りな子がいなくなってることに気づいたらしい。

 

「なんか用事があるって先に帰っちゃったよ」

「いつの間に……」

「しず子がうんうん唸ってる間にだよ。ちゃんとしず子にも挨拶してたのに、聞いてなかったの?」

「うそ、全然気づかなかった……」

「もぉ、人の話はちゃんと聞かないと」

 

 まぁさっきかすみんも考えごとしててしず子の話を聞き取れなかったんだけど……。しず子もそのことを思い出したのか、頬をぷっくらと膨らませながらかすみんの頬をつねってきた。

 

「急に何するのさ」

「別にぃ」

「変なしず子ー。……でも、さっきよりはいい顔になった気がする!」

「そうかな?」

「そうだよ。さっきまでずっと悲しそうな顔してたもん。もと男と愛先輩が楽しそ―に話してるからってさ、そんなに重たく考えなくてもいいのに」

「……え?」

「愛先輩に嫉妬してたんでしょ? 私の大事なもと男が取られちゃう~って」

「そ、そんなこと考えてないもん!」

「ほんとかなぁ?」

「ほんとだもん」

 

 そうは言いつつもしず子の視線はもと男と愛先輩に釘付けだ。かすみんもそれにつられて2人の方を見る。

 

「……なんか、もと男と愛先輩……いつもより近くない?」

 

 もと男と愛先輩が話してるところをあまり見かけないからかもしれないけど、2人の距離がいつもよりも近いように感じる。

 

「言われてみればそうかも……」

 

 しず子もそう感じたってことはきっと勘違いじゃない。あの2人に何があったかはわからないけど、確実に心の距離は近づいている。

 

「むぅ……」

 

 またモヤモヤしてきた。今日は……というより最近こんなことが多い気がする。教室を移動したり部室で話したりしてるだけなのに心をかき乱されてしまう。そしてそんな時には必ずもと男の姿があるのだ。誰か知らない女の子と一緒に歩いているもと男を見たり、もと男がかすみんになかなか構ってくれなかったりするとモヤモヤして……すっごくイヤな気持ちになっちゃう。

 今だってそうだ。楽しそうなもと男を見ているとモヤモヤするし、もと男の笑顔を見るたびに胸がチクチクする。かすみんがこんなになってるのに、それに気づいてくれないもと男に少しイラっとする。それなのにもと男と話したい。抱きつきたい。一緒にいたい。ほんとにわけがわからない。かすみんの心なのに、まるで自分のものじゃないみたい……。

 

「かすみんも混ざっちゃお!」

 

 かすみんも2人の会話に混ざることにした。そうすることでモヤモヤが晴れる気がしたから。

 

「しず子も混ざるでしょ?」

「私は……私は遠慮しようかな」

 

 しず子も当然混ざると思ったけど、どうやら参加しないみたい。表情は暗く、悩みがあるのが簡単に見て取れる。でもしず子は意地っ張りだから、『悩んでるの?』なんて聞いても『悩んでなんかない』って返ってくるだろう。

 

「じゃあかすみんだけで行ってくるね。……しず子も、あんまり考えすぎちゃダメだよ」

「うん、楽しんできてね」

 

 しず子は笑顔でそう答えたけど、やはりその笑顔はどこかぎこちなくて……。声をかけようとしたけどしず子はそっぽを向いてしまった。きっと悩んでいることに触れてほしくないのだろう。しず子の気持ちを汲み取り、かすみんは2人の元に向かうことにした。

 

「愛せんぱーい! かすみんも混ぜてくださいよ~」

 

 もと男にやや飛びつき気味に抱きつく。もと男は少しよろけていたが、ちゃんと受け止めてくれて抱きしめ返してくれた。

 

「かすかすも? もちろんいいよー」

「かすかすじゃなくてかすみんですぅ!」

 

 まったく愛先輩は……。

 

「さっきまで愛先輩と一番強いもんじゃは何か議論してたんだけど、かすみはどのもんじゃが最強だと思う?」

「最強のもんじゃぁ? 一番美味しいもんじゃってこと?」

「いや、戦闘力の話」

「もんじゃの戦闘力って何!?」

 

 2人でなんて会話を……。最初から話を聞かないと理解ができない。もしかしたら最初から聞いても理解できないかも……。

 

「さっき聞こえたチーズとかプレーンとかも戦闘力の話なの?」

「ああ、そうだよ」

「ちなみにぃ、この2つだとプレーンの方が強いって結果になったよ!」

「そんなこと言われてもわかんないですよぉ! なんでプレーンの方が強いんですか! そもそもどういう経緯でそんな話になったんですか!」

「愛先輩の家がもんじゃ屋さんをやってるって聞いたから」

「そこからどうなったら最強のもんじゃの話になるのさ!」

「はぁ~……かすみはわかってないなぁ」

 

 大きくため息をつきながら、やれやれというように首を振っている。なんだろう、今もと男にすごくパンチしたい気分だ。

 

「いいか? 男っていうのは最強を夢見る生き物なんだよ。だから何でも最強を決めたがるんだ」

 

 かすみんの男の子の友達はもと男くらいだから、言ってることがほんとなのかわからない。でも確かにクラスの男の子達もよく1番強いとか最強とか言ってる気がする……。

 

「その証拠に……ほら、ネット上にも強さランキングがいっぱい転がってるぞ」

「確かに……でも、全部アニメとか漫画のキャラクターの話じゃん」

「スクールアイドルの強さランキングもあるぞ」

「スクールアイドルの!?」

「それは愛さんも初耳~」

 

 それも戦闘力で決めているのだろうか。そもそもスクールアイドルの戦闘力って何? 歌の上手さ? ダンスの上手さ? もし可愛さならかすみんが圧倒的1位に違いない。

 

「ちなみに1位はAqoursの松浦果南さんだぞ」

「えぇ~かすみんじゃないの~?」

「そらそうよ。かすみはまだライブしたことないんだから」

 

 言われてみればそうだ。ライブをすればきっと皆にかすみんの可愛さが伝わって、そのランキングの1位が書き換わるだろう。

 

「その果南って人が1位なのはなんでなの? ダンスが上手とか?」

「まぁ果南さんはダンスも歌も上手ですね。なんたってAqoursですから。えっとランキングの基準は……純粋な戦闘力、らしいですね。このサイトによると果南さんはホテルのベランダから落ちてきた人を無傷でキャッチできるらしいですよ」

「う~ん、さすがに無傷は嘘っぽいな~」

 

 いや、そもそもキャッチできること自体が嘘っぽいと思いますけど……。

 

「あと鉄製のレバーを片手で捻じ切ったらしいです」

「それほんと? さすがにそれは人間やめてると思うけど……」

「そうですよね、俺もそう思います。スクールアイドルフェスティバルでAqoursと同じステージに立てたら本人に聞いてみましょう」

「『鉄製のレバーを片手で捻じ切ったって本当ですか』って聞くの?」

「違うよ。『松浦果南さんはおレバーをお片手でお捻じ切りなさったと伺ったのですが、それは本当でございましょうか』って聞くんだよ。目上の人と話す時はちゃんと丁寧にいかないと」

「とりあえず『お』つけただけじゃん……」

 

 そもそも聞いてる内容自体が失礼だと思うし……。

 

「ちょっといいかしら」

「果林先輩?」

 

 果林さんが会話に入ってきた。

 

「どうかしましたか? 果林先輩も一緒に最強のもんじゃについて議論しますか?」

「いえ、遠慮して……ちょっと待って、最強のもんじゃって何?」

「一番強いもんじゃのことですけど」

「それは美味しいってこと?」

「いえ、戦闘力です」

「せ、せんとうりょく……? もんじゃの?」

「はい」

 

 果林先輩も案の定困惑している。これが普通の反応だ。幼馴染のりな子だったらこの話についていけるのかな?

 

「これは私がおかしいのかしら……。愛とかすみちゃんは理解できてるの?」

「なーんにも。かすみんは後から参加しましたから。理解してるのはもと男と愛先輩だけですよぉ」

「アタシも半分くらいしか理解できてないよ?」

「愛も理解できてないのね……」

 

 いや、かすみんは愛先輩が半分も理解できてることに驚きですよ……。

 

「でも楽しいからいいかなーって。元樹も楽しそうだし!」

 

 確かにそうかも。愛先輩と話してる時も、かすみんに説明してくれた時も、もと男はすっごく楽しそうだった。話の内容は理解できなかったけど、楽しそうなもと男につられてかすみんも段々と楽しくなっていた。胸のモヤモヤなんて忘れてしまうくらい。

 

「ちょっと興味がわいてきたけれど遠慮しておくわ。また今度聞かせてちょうだい」

「いいですよ。ところで果林先輩の用件は何だったんですか?」

「ああ、すっかり忘れてたわ。今から彼方達と散歩に行ってくるから、私達が戻ってくるまで誰か部室に残っててくれないかお願いしに来たの」

「それなら俺が残りますよ。部長ですからね」

「そう、ありがとう元樹君」

「どういたしまして。時間なんて気にせず好きなだけ楽しんできてください。まぁ下校時刻までには戻ってきてほしいですけど」

「ええ、気をつけるわ。じゃあ行ってくるわね」

「はい、いってらっしゃい」

 

 果林先輩が手をひらひらと振って立ち去る。

 

「……もと男?」

 

 もと男がじぃーっと立ち去った果林先輩の方を見つめていた。

 

「……なんていうかさ」

「ん?」

「果林先輩って、1つ1つの所作が美しいよね。大人の女性って感じで見惚れそうになる」

「へっ?」

「わかる! さすがモデル!って感じがするよねー」

 

 もと男は果林先輩みたいな人がタイプなのだろうか……。果林先輩が表紙の雑誌を女性向けなのに買っていたり、初めて会った果林先輩の胸元を凝視していたり……いや、単純にもと男がえっちなだけかも。

 

「いやー、改めて考えるとすごい人が入ってくれましたね。メイクレッスンは果林先輩にお願いしようかな」

「それいいかも」

「モデル活動でファンが結構いるらしいよ。いいなー、早く愛さんもファンの皆に応援してもらいたいなー」

「初ライブが終わった頃には会場の皆が愛先輩のファンになってますよ。元気いっぱいのライブで会場は大盛り上がりでしょうね。それに愛先輩は美人ですから男性人気もすごいと思います。まぁ愛先輩のファン1号は俺ですけどね」

「おっ、嬉しいこと言ってくれるじゃん! このこのー!」

「ちょっ、やめてくださいよ~」

 

 愛先輩に抱き寄せられて頭をグリグリされているもと男はちょっと嬉しそうだ。愛先輩の大きくて柔らかそうな胸がもと男の顔に直撃している。きっとそれが嬉しいのだろう。

 

「ぐぬぬ……」

 

 そりゃあかすみんのは果林先輩や愛先輩には遠く及ばないし、同い年のしず子にすら見劣りするけど……でもかすみんだってちゃんと膨らみはあるもん。まだ成長しきってないだけだから、これからもっと大きくなるもん。それに今だって十分揉めるくらいはあるのに……それなのにもと男はかすみんを全くそういう目で見てくれない。別にいやらしい目で見られたいとか、もと男のオカズになりたいとか、そういった願望があるわけでは決してないけれど、でも一切そういう目で見られないというのもかすみんに魅力がないみたいでイヤだ。

 

「皆で何してるの?」

「エマ先輩、おかえりなさい」

「ただいま~」

 

 いつの間にか購買に行っていたエマ先輩がいつの間にか帰ってきた。その手には買ったばかりであろうパンがある。そして少し視線をずらせばヒマラヤ山脈とも思えるような……あれ、スイスにあるのはアルプス山脈だっけ? わかんないけど、とにかく大きな山が2つもそびえている。それは目測でも果林先輩より大きく、かすみんなんか足元にも及ばない。

 

「……」

「かすみちゃん、どうしたの?」

「……いえ、何でもないです」

 

 どうして神様はこんなにも不公平なのだろう。もっとかすみんにくれてもよかったのに……。改めて考えると、この同好会にいる先輩は皆大きい。歩夢先輩も、せつ菜先輩も、愛先輩も、彼方先輩も、果林先輩も、エマ先輩も、皆一目でわかるくらい大きい。かすみんも2年生や3年生になったからあれくらいまで成長するだろうか。もし成長したらもと男をぎゃふんと言わせたい。胸が小さいからと今までかすみんをそういう目で見てくれなかったもと男を後悔させてやるのだ。

 

「あ、そうだ。エマ先輩は最強の食べ物はなんだと思いますか?」

「最強……?」

 

 もと男は帰ってきたばかりのエマ先輩まであの話に巻き込もうとしていた。さすがのエマ先輩も困惑するだろう。しかももんじゃから食べ物全般にまで広がってるし……。

 

「んー、わたしはパンかなぁ」

 

 エマ先輩は普通に答えられるんだ……。もと男との親和性が高いのだろうか。

 

「でも卵かけご飯も美味しいし……1つに決められないかも。元樹君は何が好き?」

 

 あれ? いつの間にか好きな食べ物の話になってる? 最強はどこに……?

 

「俺はハンバーグですかねぇ」

「ハンバーグもすごく美味しいよね」

 

 とうとう美味しいかどうかの話になってしまった。

 

「かすみは何が最強だと思う?」

「かすみんは……」

 

 これは好きな食べ物とか美味しいと思うものをあげる流れでいいんだよね?

 

「やっぱりコッペパンかな」

「まぁかすみはそうだよな。家で作ってるもんな」

「へー、かすみんはパン作れるんだ」

「ふっふーん、そうn」

「そうなんですよ。作ったやつをよくくれるし、それがすごく美味しいんですよね」

「ちょっと! 遮らないでよ!」

「ごめんごめん。どうしてもかすみが作ってくれたパンの美味しさを伝えたかったからさ」

「それならいいけど……」

 

 やっぱり美味しいって言葉で伝えてもらえるとすごく嬉しい。特にもと男はいつも美味しそうに食べてくれる。頑張って作ってよかったって思えるし、創作意欲もどんどん湧いてくる。

 

「元樹が絶賛するってことは相当美味しいんだね」

「はい。もうほんとに絶品ですよ。へたな店のよりもかすみが作ってくれたやつの方が何倍も美味しいです。ねっ、エマ先輩?」

「えへへ~。そんなに褒めても何もでないよぉ~」

「かすみはパン作りだけじゃなくて料理全般上手だよな。きっと将来いいお嫁さんになるよ。かすみの旦那さんになる男が羨ましいなぁ」

「おおおおおお嫁さんんんん!?」

 

 いきなり何を言い出すんだ。それに羨ましいって……どうしよう、顔が熱くなっちゃう……。

 

「え、何その反応……ちょっと引くんだけど……」

「だってもと男がお嫁さんとか旦那さんが羨ましいとか言うから……」

「別におかしなことじゃないだろ。全部ほんとに思ってることだし」

「うぅぅぅぅ……」

 

 ズルい。冗談なんかじゃないというのが伝わってくるのがズルい。こんなことを言われて嬉しくならない女の子なんているのだろうか。しず子やりな子に今のを聞かれたりしたら……というか、もと男は他の人にも同じことを言ってたりしないだろうか。言ってるのだとしたら喜んでるかすみんが馬鹿みたいだ。でももしかすみんにだけなら……えへへ~。嬉しすぎて頬が緩んじゃう。それを皆に悟られたくなくて、もと男に抱きつき首の辺りに顔をうずめて隠す。

 

「なんだよ急に。そんな恥ずかしかったのか?」

「別に、そんなんじゃないもん……」

「……まぁ何でもいいけどな。かすみはいい匂いだし」

 

 かすみんの頭を撫でながら匂いを嗅いでくる。

 

「もう、嗅がないでよ」

「……あれ? 今日はちょっと汗くs」

「ふんっ!」

「いてぇ!?」

 

 もと男が酷いことを言いそうだったので右足を思いっきり踏みつけ、抱きつくのをやめて離れる。女の子に汗臭いなんて絶対に言っちゃダメ。ほんとデリカシーがないんだから……。

 

「ぷんっ!」

「今のは元樹が悪いよー」

「そうだよ元樹君。人に汗臭いなんて言っちゃダメだよ」

「えー……以後気をつけます……」

「よろしい! でも今日は抱きついてあげないから」

「……いや、別にいいですけど?」

 

 それはそれで傷ついちゃうけど……。

 

「話を戻しますけど、愛先輩は何が好きなんですか?」

「アタシはぬか漬け!」

「あー、ぬか漬けも美味しいですよね」

 

 愛先輩はぬか漬けが好きなんだ。すごく意外。

 

「ぬか漬けかぁ……わたしは食べたことないなぁ」

「すごく美味しいですよ。まぁ自分で作るのはめんどくさすぎてできないですけど。食べるならスーパーとかで買うのがオススメですね」

「へぇー、今度買ってみようかなー」

「愛先輩もスーパーとかで買うんですか?」

「うちはおばあちゃんが作ってくれるんだー。すっごく美味しいんだよ!」

「自家製ですか、いいですね。スーパーで買うよりも作った方が美味しいとは思うんですけど、俺1人だと作ろうって気にならないんですよね」

「じゃあ今度持ってきてあげようか?」

「マジですか? ぜひ食べてみたいです」

「わたしもぬか漬け食べてみたい」

「か、かすみんも!」

「もちろんいいよ。かすみんとエマっちの分も持ってくるね」

「ありがとうございます」

 

 ……考えてなかったけど、ぬか漬けって学校に持ってきても大丈夫なのかな? 異臭騒ぎになったりしない?

 

「はぁ……はぁ……よかった、まだいた……」

「あ、しず子」

 

 急に部室のドアが勢いよく開けられ、しず子が息を切らしながら入ってきた。

 

「おかえりしずく」

「ただいま戻りました」

「カナちゃんとカリンは一緒じゃないの?」

「はい、もう少し屋上でのんびりしてから戻ってくるそうです」

 

 彼方先輩と果林先輩? 一緒に散歩に行くって言ってたけど……もしかしてしず子も一緒だったの? かすみんは入り口を背にしてたから気づかなかったけど、もと男と愛先輩からは部室から出ていくしず子が見えていたのだろう。

 

「3人で何の話をしてたの~?」

「大したことじゃないですよ。ちょっとスクールアイドルのことで……」

 

 嘘だ。きっとさっきまで悩んでいたこと2人に相談していたのだろう。確かに彼方先輩は頼りになるし、果林先輩も的確なアドバイスをしてくれそうだ。相談相手として間違ってないとは思う。でもどうしてかすみんには相談してくれなかったの? どうして何も言ってくれなかったの? かすみんってそんなに頼りないのかな……。

 

「ところで、皆さんは何を話してたんですか? まだ一番強いもんじゃの話を?」

「いや、さすがにその話は終わったよ。……そうだ、折角だからしずくに決着をつけてもらおう」

「決着……?」

「最強の食べ物は何か話してたんだけど、なかなか決まらなくってさー」

「……最強って、一番強いってことですか? 美味しさではなく……」

「そうそう」

「かすみんはコッペパン、もと男はハンバーグ、愛先輩はぬか漬けで、エマ先輩は決められないって。しず子はどれが最強だと思う?」

 

 ……しまった! ついうっかり真面目に答えてしまった。こんなの聞いたところで困惑するだけなのに。実際しず子も理解できなさそうな……いや、興味なさそうな顔をしている。ごめんねしず子。真面目に答えなくてもいいからね。

 

「えっと……ハンバーグ、かな」

 

 一瞬チラッともと男の方を見たってことは、きっともと男に合わせて答えたのだろう。こんな状況でもアピールを忘れてない。効果があるかはわからないけどね。

 

「よしっ、俺の勝ち!」

「くっ……コッペパンだって負けてないのにぃ……」

「うーん、ぬか漬けダメかぁ……」

「ハンバーグ食べたくなってきちゃったなぁ……」

 

 エマ先輩は食べ物だったら何でもいいんじゃないだろうか……。

 

「そんなことより、かすみさん」

「なぁにしず子?」

「少しだけ話したいんだけど、いいかな?」

「いいけど、何の話?」

「ここでは言えない話というか……」

「ふーん……」

 

 かすみんにも相談してくれるのだろうか。ここでは言えない話ってことだから多分もと男のことだと思うんだけど、でもなんだか違う気もする。しず子の雰囲気が……何かを決意したような、自信に満ち溢れているような、そんな感じだ。さっきからかすみんの目をジッと見つめてきて、こちらが視線を外すのを許してくれない。

 しず子に一体何があったのか。彼方先輩達と何を話していたのか。もと男関連の話だったとして、短時間でここまで変わる話って? 告白の相談かとも思ったけど、それだったらかすみんを呼び出す必要なんてないもんね。

 

「ま、いいけど」

 

 かすみんがどれだけ考えたってわからないものはわからない。でもしず子と話せばはっきりするだろう。

 

「それじゃ行こ!」

 

 しず子の手をとって歩き出す。しず子も一緒に歩き出そうとしたけど、その前に振り返ってもと男の方を向いた。

 

「元樹君、戻るのが遅くなったらごめんね」

 

 そうだ、今日はしず子ともと男がお泊りする日だった。しず子が戻ってこないともと男も帰れないもんね。もちろん鍵の管理のこともあるだろうけど。

 

「気にするな。待ってるから好きなだけ話してきていいぞ」

「愛さんも残ってようかなー。元樹も話し相手がいないと寂しいでしょ?」

「じゃあ私も!」

 

 愛先輩とエマ先輩が一緒に残ってくれるみたい。これでもと男も寂しくないだろう。きっとかすみん達が戻るまでまた最強の食べ物の話をしてるんだろうなぁ。

 

「しず子行こっ」

「うん」

 

 

 

 しず子を連れて中庭まできた。今の時間帯だと中庭にいる人はほとんどいないと思ったからだ。予想通り見える範囲にはかすみん達以外誰もいない。ここなら心置きなく話すことができる。

 

「話って何なのさ。わざわざ場所を変えたってことは聞かれたくない話なんでしょ? もしかしてもと男の話?」

「そうといえばそう、かな」

「やっぱり……しず子ってばもと男のこと大好きだもんね」

「それは否定しないけど……」

「それでぇ? しず子はもと男に告白でもするの?」

「そ、それはいつかはしたいと思ってるけど……夜景の綺麗な場所とか、大きな木の下とか、お互いの家で2人きりの時とか、ここしかない!って思った時にできたらいいなぁ」

 

 あっ、しず子が自分の世界に入ってしまった。これは長くなりそう。

 

「ほんとは元樹君の方からしてほしいんだけどね? 私の手を取ってお互い見つめ合いながら、『しずくのことが好きだ。愛してる。結婚を前提にお付き合いしてください』なんて言われたら……えへへ、結婚だなんてまだ気が早いよぉ」

「もと男のことがどれくらい好きなのかは十分伝わったからぁ!」

 

 気が早いのはしず子の方だよ。まだ自分からデートに誘うことすらできてないんでしょ? 告白のシチュエーションを考える前に、まずはデートに誘うシチュエーションを考えた方がいいと思う。

 

「ていうかしず子は告白が家でもいいの? もっとこう、ロマンチックな場所の方がよくない?」

 

 少なくともかすみんはイヤ。告白するにしてもされるにしてもロマンチックな場所がいい。ロマンチックな場所で手をギュっと握りながら見つめ合って好きって言ってほしい。

 

「え~いいじゃん。告白して付き合った後、最初は恐る恐る手を重ねたりするんだけど、段々とお互い大胆になってきてキスしたり抱きしめ合ったりして、元樹君が私のことをそっと押し倒して私の服に手をかけるの。恥ずかしいけど私もそれを受け入れて、そのまま初めてのセッ」

「わーわーわー!」

 

 しず子がとんでもないことを口走りそうになったので大声を出して遮る。

 

「いきなりなんてこと言い始めるのさ!」

「あれ? 何か変なこと言った? 展開がいきなりすぎたかな?」

「そうじゃないから! いや、展開もいきなりだったけど、言葉があまりにも直接的すぎるって言ってるの! かすみん達スクールアイドルなんだから、もっとオブラートに包んで表現してよ!」

「体を重ねるとか、一晩中愛し合うとか?」

「うーん、さっきよりかはマシだけど……」

 

 せ、せっ……くす……よりは何倍もマシだけど、まだまだ直接的だと思う。しず子の口からこんな言葉が出るなんて思いもしなかった。

 

「そもそも、そんなにもと男としたいの?」

「したいに決まってるよ。好きな人と繋がって、いっぱい気持ちよくしてもらいたいもん。いっぱい愛したいもん。いっぱい愛してもらいたいもん」

 

 当然のことかのような顔で答える。これが普通なの? 恋をすると皆こんな風になるのかな? さすがにりな子やせつ菜先輩には聞けないし……。

 

「うぅ、まさかしず子とこんな話することになるとは思わなかったよ……」

 

 初めて会った時に『清楚な子だなぁ』って思ったかすみんの気持ちを返してほしい。

 

「……まぁ、かすみさんにはえっちなことはまだ早いかもね」

 

 しず子に小馬鹿にされたような気がして少しムッとした。かすみんよりちょーっと胸が大きいからってぇ……!

 

「そ、そんなことないもん! しず子と同じ年なんだから差なんてないもん! 好きな人がいないから気持ちがわからないだけだもん! かすみんだって週1でオナむぐぐっ!」

「ちょ、かすみさん!」

 

 いきなり口を塞がれる。

 

「むぐぅ……」

 

 口だけじゃなくて鼻まで塞がれているせいで呼吸ができない。息が苦しいよぉ……。しず子の肩をトントン叩いてそれを伝える。

 

「ぷはっ!」

 

 ようやく解放された。空気を肺いっぱいに吸い込む。

 

「もうっ! いきなり何するのさ!」

「だってかすみさんがとんでもないこと言いそうになるから……」

 

 確かにとんでもないことを言いそうになった。しず子のといい勝負だ。

 

「止めてくれたことには感謝するけどぉ……でもずっと口塞ぐ必要ないじゃん! うっかり教えたくなかったことも教えちゃったし……」

 

 週1でしてるなんて絶対に知られたくなかった。でもオカズのことを教えずにすんだのは不幸中の幸いかもしれない。もし知られていたら恥ずかしさで大声で叫びながら校内を走り回っていただろう。

 

「ごめんなさい……」

「もと男には絶対に秘密だからね?」

「もちろん」

 

 もと男に知られるのだけは絶対にイヤだ。あまりにも恥ずかしすぎる。

 

「はぁ、結局しず子がしたい話って何だったの? かすみんとえっちな話がしたかったの? まあこんな話もと男の前ではできないもんね。場所を変えたのにも納得だよ」

「そうじゃなくて……こほんっ。単刀直入に聞きます。かすみさんにとって元樹君ってどういう存在?」

 

 どういう存在かぁ……今まで考えたこともなかった。かすみんにとってもと男は……うーん……あっ、そうだ!

 

「かすみんの大切なファン第1号かな。初めて会った時、『可愛い。好き。かすみんのファンになります』って言ってくれたもんね~」

 

 いきなりかすみんの手を握ってきたのにはびっくりしたけど、でも可愛いって褒めてくれたのは嬉しかった。下心があるようにも見えなかったから。

 

「いつかかすみんのファンクラブができたら、もと男に会員番号1番をもらってもらうの! えへへ、喜んでくれるかな~? あっ、これはサプライズにするつもりだから、しず子も内緒にしててね!」

 

 ファンクラブ会員として一番近くでかすみんをずっと見ていられるもと男は幸せ者だろう。これは会員番号1番の特権だ。スクールアイドルのかすみんに一番最初に可愛いって言ってくれたもと男だけの特権、他の人にはあげられない。

 

「少し質問を変えるね。かすみさんは元樹君のことどう思ってるの?」

「どう思ってるって言われても……もと男は仲のいい友達だよ。一緒にいて楽しいし、話も弾むし、気も合うし……」

 

 たまにどう頑張っても理解できないこともあるけど。もんじゃの戦闘力とか。

 

「あともと男は人としてすごいと思う。誰にも優しいし、いっつも周りのこと気にかけてて、険悪な雰囲気になりそうな時はもと男がうまくまとめてくれて、そういうところはほんとにすごいと思う」

 

 同好会がなんとか続いていたのももと男の力があってこそだ。事実もと男がいなくなってすぐに空中分解してしまった。頼ってばかりじゃダメなのはわかってるけど、でも話し合いで険悪な雰囲気にならないようにするのって結構難しい。衝突した意見をうまくまとめて、お互いが納得できるようにするのはそうそうできるものじゃない。言葉からそれぞれの譲れない一線を見つけて、それが共存できるようにしないといけないから。かすみんにはそれができなかった。きっとこれからもいっぱいもと男の力を借りることになるだろう。

 

「苦手な勉強とか運動も克服しようとしてて、そういうところはかすみんも見習わなくちゃって」

「かすみさんもまた勉強会する?」

「うっ……遠慮しとく」

 

 あの時のしず子はほんとに怖かった。もと男に勉強を教えられないからって八つ当たりでかすみんに厳しくするのはやめてほしい。

 

「じゃあ異性として元樹君のことどう思う?」

「異性として……それって恋愛相手としてってこと?」

「それでもいいよ」

「うーん……恋愛相手……」

 

 今までもと男をそんな風に見たことないからいまいちピンとこない。

 

「まぁもと男はかっこいいし」

 

 超絶イケメン!っていうわけではないけど、普通以上には顔は整ってると思う。背もそんなに高くはないし、体つきもそこまでいいわけじゃなくて、むしろかすみんよりも貧弱だ。でもどこかかっこいい。心惹かれる何かがある。

 名前は忘れたけどクラスにすごくサッカーが上手な人がいて、その人はもと男より背が高くて、筋肉も程よくついている。もちろん勉強も運動もバッチリできる。面倒見もよくて、言葉遣いも丁寧だ何より顔がすごく整っている。その人は1年生の中ではトップレベルでかっこいいと評判らしい。友達がそう言っていた。

 確かにかすみんもその人はかっこいいと思った。でもかすみんにとってはもと男の方がずっとかっこいい。勉強も運動も苦手だけど、でもその苦手をそのままにせずに克服しようとするその姿が、かすみんにはかっこよく見える。他の人達にはわかってもらえないかもしれないけど、もと男のかっこよさはかすみんだけが知っていればいい。

 

「かすみんのこと大切にしてくれるし」

 

 かすみんが怪我をしたり傷ついたりしないようにいつも配慮してくれる。それはかすみんだけにしてることではないとは思うけど……。それでも大切にしてくれてるってことがすごく嬉しい。

 

「可愛がってくれるし」

 

 研究した可愛いポーズとかを見せたらいつも可愛いって言ってくれる。それだけじゃなくてもっとこうしたらいいんじゃないかとかアドバイスもしてくれる。ちゃんとかすみんのことを見てくれてるんだって嬉しくなる。でも子ども扱いされるのだけはすごくイヤ。もと男だって同い年のくせに……。

 

「優しくしてくれるし」

 

 もと男はとにかく優しい。かすみんにだけじゃなくて皆に。困っている人がいたら見捨てられないんだと思う。一緒に出かけた時に道端で困ってる外国の人がいて、もと男はすぐに話を聞いてあげていた。まぁもと男もかすみんも英語ができないから何言ってるか全然理解できなかったんだけど……。その時はたまたま通りかかった女の子に通訳してもらった。かすみんと同じくらいの子だったけど、ステイツ……? 出身らしくて英語が堪能だった。こういう出会いももと男の優しさがあったからかも。

 あともと男はたまにボランティア活動にも参加しているらしい。公園で子供達と遊んであげたり、町のゴミ拾いをしたり、とにかくいろいろやってるって言ってた。それも親に言われたとかじゃなくて自発的にしているらしい。生徒数が多いこの学校だけど、そんな人はどれくらいいるだろうか。きっとそこまで多くはないだろう。

 もと男の優しさエピソードは尽きない。彼氏には自分だけに優しくしてほしいって思う人も多いらしいけど、もしかすみんがもと男と付き合うことになってもそうは思わない。もと男にはいつまでも皆に優しくいてほしい。だってそれがもと男の魅力なんだから。

 

「褒めてくれるし」

 

 かすみんがいいことをした時はいっぱい褒めてくれる。小テストで平均点よりも高い点数を取った時はいっぱいなでなでしてくれた。まぁその小テストでもと男は0点だったらしいけど……。

 

「頭撫でてくれるし」

 

 もと男のなでなでは丁寧ですごく上手。ただただ心地いい。もっと撫でてほしい、この時間がずっと続いてほしいっていつも思っちゃう。

 たまに子ども扱いしてワシャワシャーって撫でてくるけど、それだけはほんっとにやめてほしい。子ども扱いされることがまずイヤだし、髪もぐちゃぐちゃになるから。女の子にとって髪がどれだけ大事なのかもと男に教えないとダメだ。

 

「ギュってしたら優しく抱きしめ返してくれるし」

 

 もと男を抱きしめてると安心するし、逆に抱きしめられるとただただ嬉しい。でもすごくドキドキもして、落ち着いてるのに落ち着けない。なのにそれが心地いい。しず子やエマ先輩に抱きついてる時はそんなことないのに、もと男の時だけ……。

 でもさっき汗臭いって言われたから、罰としてじゃなくしばらく抱きついてあげない。あとは練習後に抱きつくのもやめる。さすがに気にしちゃうし、何よりもと男から嫌われるのはイヤだ。汗の臭いが原因で嫌われるくらいなら、練習後に抱きつくのを我慢する。

 

「……なんていうか、もと男はすごくあったかい。嬉しい時は一緒に喜んでくれるし、楽しい時は一緒に楽しんでくれるし、悲しい時は慰めてくれて……一緒にいるとかすみんの心までぽかぽかしてくるの。しず子が好きになるのもわかる気がする」

 

 もと男みたいな人が彼氏だったらいいのにってたまぁに考える。きっと一緒にいて幸せだろう。

 

「でもちょっと頼りないところは嫌かも。力仕事ももと男には任せられないし、かすみんが怖い人達に襲われちゃって助けに来てくれても返り討ちにされそうな気がする」

「あー……ちょっとわかるかも。私もデートには白馬に乗って迎えに来てほしいんだけど、元樹君だとお馬さんに振り落とされちゃいそう」

「それはもと男じゃなくても……」

 

 ちゃんと特訓していないともと男じゃなくても振り落とされちゃうと思う。それに仮に白馬で迎えに来てくれたとして、その後その馬はどうするのだろうか。一緒に乗ってデートするのかなぁ?

 

「しず子はもと男と一緒に出かけたことあるの?」

「ないけど……」

 

 ふーん、まだ出かけたことなかったんだぁ……。

 

「何、かすみさん」

「ふっふ~ん、かすみんはもと男と出かけたことあるもんね~。しかも2人きりで!」

「えっ!? い、いつ? どこに行ったの?」

「確か1ヶ月くらい前かなぁ。ショッピングモールで2人で服を買ったり、カフェでパンケーキ食べたり、クレープ食べたりしたよ。ほらっ、その時の写真! 可愛いでしょ!」

 

 仲良く腕を組んで撮った写真を見せる。撮る瞬間にもと男の口にクレープを突っ込んだら後で怒られた。でも怒ってるもと男の口元に生クリームがついてて、かすみんもさすがに笑いを抑えきれずに2人で笑いあった。あの時は楽しかったなぁ。また一緒に出かけたいな。

 

「この写真……」

「気づいちゃった? もと男と腕組みながら写真撮っちゃったの! 羨ましいでしょ?」

「……」

 

 しず子が口をキュッと結んで、殺し屋のような目つきで睨んでくる。

 

「ご、ごめん。写真を撮る時だけだったから、そんな怖い顔で見ないでよ……」

「どっちから腕を組もうって言いだしたの?」

「えっと……確かかすみんから」

 

 そう答えるとしず子は何やら考え始めた。少しして、かすみんのことを真っ直ぐ見つめて口を開いた。

 

「ねぇかすみさん。かすみさんって……元樹君のこと好き、だよね? もちろん異性として」

「え……」

 

 今、なんて……? かすみんが、もと男のこと好きって……それも異性として……。

 

「ええぇぇぇぇぇっ!?」

 

 予想外のことに思わず叫んでしまう。それだけ声量が大きかったのか、しず子は手で両耳を塞いでいる。

 

「か、かすみんがもと男のこと好きだなんて……そんなことあるはずないじゃん!」

 

 そう、あるわけない。かすみんにとってもと男は友達で仲間で、そして大切なファンだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 それにもと男はしず子の好きな人だ。しず子がアピールするところ、楽しそうにするところ、鈍感さに翻弄されるところを一番近くで見てきた。それに何度もしず子に惚気られた。そんなかすみんが親友の好きな人を好きになるなんてありえない。ありえない、はずなのに……。

 

「か、かすみんがもと男のこと好きだなんて……そんなことあるはずないじゃん!」

「じゃあなんで元樹君と腕を組んだりしたの?」

「なんだかもと男とくっつきたかったから……」

「かすみさんはよく元樹君に抱きついたりしてるよね。それはどうして?」

「もと男に抱きついてると安心できて、でもドキドキもして、それがすごく心地いいから……」

「逆に元樹君に抱きしめられた時は?」

「嬉しいんだけど恥ずかしくて、いつも顔が熱くなっちゃう……。でもやっぱりそれが心地よくてもっとしてほしいんだけど、さすがにお願いするのが恥ずかしいからいっつもかすみんからギュってするの。そしたらもと男も抱きしめ返してくれるから」

「頭を撫でられた時は?」

「もと男は優しく撫でてくれるし、撫で方も気持ちいいからもっといっぱいしてほしい。でもたまに子ども扱いして撫でてくるから、それだけはやめてほしい」

「もう一度聞くよ。元樹君のこと好き?」

「わかんない……。仲のいい男の子なんてもと男くらいだから、この気持ちがそうなのかわかんないよぉ……」

「そっか、そうだよね」

 

 もと男と一緒にいると楽しい。そばにいるだけでイヤなこともすぐに忘れられる。楽しそうな声を聞くだけでかすみんも元気がもらえる。その声で応援してくれるだけでいろんなことを頑張れる。

 可愛いって褒めてくれると嬉しい。一緒に出かけた時は可愛いって言ってもらいたくて頑張ってオシャレをしたら、顔を赤くして照れながら可愛いって褒めてくれた。その時はかすみんもつられて照れてしまったけどすごく嬉しかった。

 もと男が構ってくれないと寂しい。冷たい対応をされると悲しい。誰かと一緒にいるのを見ているとモヤモヤする。相手が女の子だったら尚更。すぐに駆け寄って後ろから抱きついて、もと男はかすみんのものだって主張したい。

 もと男とずっと一緒にいたい。ずっとかすみんの隣にいてほしい。ずっとかすみんを見ててほしい。誰よりも近くでかすみんのことを応援してほしい。学年が上がっても、この学校を卒業しても、大人になっても。その役目はもと男じゃないとイヤだ。もと男以外考えられない。

 しず子ともと男が結ばれた時のことを考えると……嬉しいのに胸が苦しい。ずっと応援してた親友が結ばれたのだからほんとは喜ばしいことなのに、2人が幸せになれるのならそれでいいはずなのに、どうしようもなく胸が苦しい。きっと抱きしめられるたびに、かすみんの知らないところでしず子にもっとすごいことをしてるんだって、そう考えてしまう。

 この気持ちの正体がわからない。これが恋なのか、それとも全く別の何かなのか。教科書には書いてないだろうしネットにも答えはないだろう。お父さんやお母さんに聞くのは……うん、さすがに恥ずかしい。あとお父さんに好きな人がいるって言ったらもと男が大変なことになりそうだし。やっぱり自分で探っていくしかないんだ。

 

「しず子も……もと男に撫でられたりしたら、かすみんと同じ気持ちになるの?」

「うん。頭を撫でてもらえると恥ずかしいけどやっぱり嬉しい。抱きしめられるとすごく幸せな気持ちになる。かすみさんも同じなんじゃない?」

「幸せ……あの心地よさは幸せってことだったのかなぁ……」

「きっとそうだと思うよ」

「そっか、かすみん幸せだったんだ……」

 

 もと男に頭を撫でてもらって、抱きしめてもらって、かすみんはすごく幸せだったんだ……。あの心地よさの正体が幸せだったってことだよね。

 

「元樹君とデートしたい?」

「デートなのかはわからないけど、一緒に出かけたいとは思う……」

 

 そもそもデートとお出かけの違いは何だろう。仲のいい男女が2人きりで出かけたらデート、って言うのかな。だとしたらかすみんはもと男とデートがしたい。皆で一緒に出かけるのも楽しいとは思うけど、やっぱりもと男とは2人きりで出かけたい。

 

「元樹君と手繋いでみたい?」

「……繋いでみたい、かも」

 

 写真を撮る時だけじゃなくてずっと手をつないでいたい。離れないようにギュっと握って、指も絡めて、そのまま並んで歩きたい。

 

「撫でてほしい?」

「うん、いっぱい」

 

 子ども扱いした撫で方じゃなくて、愛情を込めて恋人を撫でるように撫でてほしい。皆にじゃなくて、かすみんだけにしてほしい。

 

「抱きしめてほしい?」

「ギュっていっぱいしてほしい」

 

 抱きしめてもらってもと男の温かさをもっともっと感じたい。かすみんをもっとドキドキさせてほしい。もっと幸せを教えてほしい。

 

「皆が見てる前でも?」

「うん。かすみんがもと男のものだって、皆に見せつけてほしい」

 

 お互いがお互いにとって特別な存在だって見せつけてほしい。これが牽制したいって気持ちなのかな?

 

「キス、してみたい?」

 

 キスかぁ……。恋愛ドラマとかでそういうシーンを何度も見て、何度もキュンキュンした。自分が誰かとキスするなんて想像したこともなかったけど……相手がもと男なら……。

 

「……してほしい。抱きしめながら優しくチュッて、もと男の味をかすみんにいっぱい刻んでほしい」

 

 頬じゃなくて唇に、欲を言えばもと男の方からしてほしい。かすみんに確認してからでもいいし、強引に奪われてもいい。誰かに見られたって構わない。とにかくもと男とキスがしたい。キスをして愛してるって言われたい。一瞬じゃきっと満足できない。1秒でも長く、息の続く限り繋がっていたい。

 かすみんのファーストキスはもと男にもらってほしい。他の人にはぜぇーったいにあげたくない。ほんとはもと男のファーストキスもほしいけど、それはせつ菜先輩に取られちゃった。だからせつ菜先輩を上書きできるまで何度も何度も唇を重ねたい。

 

「えっちなことは?」

「それは別に……」

「あれぇ……?」

 

 しず子が困惑しているけど、どちらが普通なのかかすみんにはわからない。普通は好きな人とはいっぱいえっちなことしたいものなのだろうか。

 

「かすみんだっていつかはしてみたいと思うよ」

 

 もと男なら優しくしてくれるだろうし。きっと1人でした時の何倍も気持ちいいだろう。いっぱいキスもできるし、もと男のことを肌で感じられる。もしかしたら一度でも体験してしまえば考えが変わってもっといっぱいしたいと思うようになるかもしれない。

 

「でも今すぐはいいかな。せめてお互い18歳になってから」

「うん、かすみさんらしくていいと思うよ」

「でももと男がどうしてもって言うなら……ちょっとだけならしてあげてもいいかも」

「かすみさん……」

 

 ディープキスや胸を揉むくらいならいつでもしてくれていい。さすがに人前では恥ずかしいけど、もと男がどうしてもしたいって言うならかすみんも我慢する。もと男がしてほしいなら手や口でしてあげる。上手にできるかはわからないけど、気持ちよくなってもらえるように頑張る。

 でもそこから先は……ね。かすみんにはまだ早いというか、安易に経験したくないというか……。もっとお互い大人になって、ほんとにしたいと思った時にしたい。だからそれまではもと男には我慢してもらおう。押し倒されても今なら簡単に押し返せるし。

 

「はぁ、なんで今まで気づかなかったのかなぁ……」

 

 ここまで情報が揃えばかすみんにだってわかる。しず子に指摘されるまで何の疑いも持ってなかった自分に驚く。これじゃあどっちが鈍感なのかわからない。

 

「私、元樹のことが好き……大好き」

 

 一切の迷いなく、心の底から元樹のことが大好きだって今なら言える。

 

「友達としてじゃなく異性として、しず子にもりな子にもせつ菜先輩にも負けないくらい、元樹のことがだーいすき!」

 

 空に向かって自分の気持ちを叫ぶ。もしこの場に他の誰かがいたら注目の的になっていただろう。もしかしたら校舎の中、部室棟まで声が届いてるかもしれない。それくらいの声量で気持ちを吐き出す。せつ菜先輩の言葉を借りるなら、元樹への私の大好きを叫ぶ。

 ……気持ちいい。恋をするって、好きを言葉にするってこんなにも気持ちいいことだったんだ。ずっと元樹のことが好きだったはずなのに今まで気づかなかった。

 

「部室まで聞こえてるかもしれないよ?」

「いいの! 聞こえてたってもと男のことだからどうせ聞き間違いだって流すんだから。それにもし聞こえてたならそのまま告白しちゃうもんね~」

 

 もしもこの好きって気持ちを元樹に直接伝えることができたならどれほど気持ちいいのだろうか。気になる。気になるけど……でもやっぱり怖い。想いを伝えて振られてしまうことが怖い。自信がないわけじゃない。でも振られて元樹との関係が壊れてしまうのが怖い。壊れてしまうくらいならいっそ……となってしまう気持ちも今ならわかる。でもその恐怖心を乗り越えた人だけが報われるのだろう。そして報われるのはいつも1人だけ。どれだけ頑張っても一切報われずに終わることだってある。恋ってこんなにも難しくて、こんなにも残酷で、それでいて美しいものなんだって今本当の意味でわかった。

 

「しず子、ありがと。かすみんに気づかせてくれて」

「どういたしまして」

 

 教えてくれなかったら多分ずっと恋心に気づかなかったと思う。しず子には感謝しかない。

 

「でも、しず子はよかったの? ライバルを増やすようなことして」

 

 りな子にせつ菜先輩とただでさえライバルが多いのだ。しかも2人ともそれぞれ違った魅力を持っている強力なライバル。そこに可愛いかすみんが加わったとなれば争いはさらに激しくなってしまう。しず子にはリスクしかない。

 

「もちろん。気づいた時にはもう全部終わってた、って悲しむかすみさんは見たくないもん」

「そっか」

 

 もしもその状況になっていたら、しず子の言う通りかすみんは悲しい思いをしたと思う。誰かに相談することもできず、かといってもと男本人にも言えるはずもなく、どうしようもない気持ちを1人で抱え込んで苦しんでいただろう。

 

「しず子のおかげでそんな辛い思いはしなくてすんじゃうよ、ありがと!」

「わっ!」

 

 しず子に抱きついて感謝の言葉を改めて伝える。しず子も優しく抱きしめてくれた。もと男の時と違ってドキドキはしないけど、でも同じようにすごく安心できる。きっとこれも幸せってことなんだろう。

 

「かすみさん、顔真っ赤だよ」

「し、仕方ないじゃん! 自覚した途端、抱きついたり腕組んだりしてたのが恥ずかしくなってきて……。はぁ、さすがに大胆なことしすぎだよ……」

 

 今のかすみんは平常心を保ったまま同じことをできるだろうか。

 

「心の中ではとっくに気がついてたんじゃない?」

「無意識にアピールしようとしてたってこと?」

「そういうこと」

「そんなことあるわけ……あっそういえば、もと男と同好会で再開した時、どういうわけか侑先輩に嫉妬しちゃったんだよね。なんだか先輩ともと男が仲良くしてるところを何度も見た気がして……」

 

 ふとそんなことを思い出した。あの時はただの気のせいだと思って気にしてなかったけど、今になって気になってきた。

 改めて考えるとおかしなことだらけだ。あの時のかすみんともと男は侑先輩と初対面だった。そもそも()()()()()ということ自体がおかしい。仲良くなりそうな気がするならともかく。妙に現実味があったのも気になる。ほんとに見たことあるような……とにかく気のせいですませられるようなものではない。

 2人が嘘をついていて、ほんとは侑先輩と知り合いだったのであれば一応辻褄は合う。2人が仲良くしてるところをかすみんが実際見たのならあの現実味にも納得がいく。でもその線はさすがにないと思う。侑先輩は人を傷つけるような嘘をつけない人だと思うから。あともと男がかすみんを騙してたっていうのを信じたくないから。もと男のことを信頼してるっていうのはもちろんある。でも一番は悲しいから。侑先輩との仲をかすみんに隠したかったってことがただただ悲しい……。だから2人は嘘をついてないって信じたい。

 

「私もそれに近いことがあった気がする」

「え、しず子も?」

「うん。元樹君から歩夢さんの話を聞いた時、会ったこともないのに元樹君が取られちゃうって断言できたの」

「確かに、かすみんのと似てるかも……」

 

 実際もと男と歩夢先輩は仲がいい。それに2人の関係性もどこか普通と違うような感じもする。何というか、もと男が歩夢先輩に甘えてるような……。付き合ってはないと思う。恋人というよりは……親子の方が近い気がする。子供がお母さんに甘えてるような、そんな感じ。

 

「2人とももと男のことが好きすぎて未来に干渉しちゃったとか?」

「ない……こともないかも」

 

 2人の恋愛パワーで予言ができちゃったのかもしれない。

 

「それか別世界線ではかすみん達は負けちゃってて、その世界線のかすみん達が警告してくれたとか!」

「うーん……」

 

 SFチックだけど恋愛パワーなら何とかなるかもしれない。でも別世界ではかすみんが負けてるってのは悲しいな……。

 予言も別世界も科学で証明されてないけど、逆にないことも証明されてない。つまり可能性としてなくはないのだ。でも本当に別世界が存在するのなら、警告じゃなくて勝った世界線のかすみんから勝つ方法を教えてほしかったなぁ。

 

「……はぁ、かすみん達じゃいくら考えたところでわかんないよね」

「うん……」

「オカルト研究部とか、そんなところに聞いた方がいいのかなぁ」

「そこまでしなくてもいいんじゃないかな……。それに、知らない人に好きな人がいるって言える?」

「……うん、恥ずかしいからやめとく!」

「それがいいと思うよ」

 

 その人達からかすみんに好きな人がいるって噂がたって、もと男から応援してるよなんて言われたら……多分泣いちゃう。もうこのことについて考えるのはやめよう。どうせ考えたところで誰にもわからないんだから。

 

「しず子、今日お泊まりなんだよね?」

「そうだけど……かすみさんも泊まりたいの?」

「そうじゃなくて、かすみんに遠慮とかしなくてもいいからね」

「え、いいの?」

「もちろん。キスでも告白でもえっちなことでも、なんでもしちゃってもいいよ」

「それだとかすみさんが不利じゃない? 今自覚したばかりでアピールなんてほとんどできないし……」

「無意識だったとはいえ、今までのアピールがしず子に負けてるなんてぜ~んぜん思わないもん!」

 

 しず子と違っていっぱい抱きついたりしてるし、何より2人きりで出かけている。お出かけの内容も悪くなかった。むしろ最高だったと思う。少なくともかすみんにとっては忘れられない1日になった。もと男も同じだといいなぁ。

 

「それに、しず子に告白なんて無理だと思うし」

「むっ……そんなことないもん。私だって告白くらいできるもん。一度告白しようとしたのにかすみさんが邪魔してきたんだもん」

「あ、あれは……もと男としず子がくっつくのがなんか嫌だったから……」

 

 あの時にはすでにもと男のことが好きだったのかな?

 

「あの時は邪魔してごめんなさい……」

「気にしなくていいよ。今日告白してかすみさんに勝ってみせるから」

「あ、言ったな~。そこまで言うんだったら勝負しようよ!」

「勝負?」

「しず子が告白できたらしず子の勝ち。できなかったらかすみんの勝ち。負けた方が勝った方にアイス奢りね!」

「そんな私に有利な条件でいいの? 私が普通に勝っちゃうよ?」

「いいもーん」

「じゃあその勝負受けるね。ちゃんと明日報告するから」

「振られた時はかすみんが慰めてあげるから」

「い、今からそんな話しないでよ。不安になっちゃうじゃん……」

「ご、ごめん……」

 

 確かによくなかった。かすみんだって振られるのが怖いんだから、しず子も同じように思ってたっておかしくない。

 

「そろそろ戻ろっか。元樹君達を待たせちゃってる」

「そうだね。お泊まりの時間が減っちゃうからしず子も早く帰りたいもんね」

「まぁそれもある……かな」

 

 あーあ、早く明日にならないかなー、かすみんも早くもと男とお泊まりしたいよ。愛情たっぷりの手料理を振舞ったり、一緒の布団で寝たりしたい。どうしよう、今日は楽しみすぎて寝れないかもしれない。

 

「かすみさん」

「ん、どうしたの?」

「私、絶対に負けないから」

「……うん。かすみんも絶対に勝つよ。スタートは遅れちゃったかもしれないけど、これからはどんどん巻き返していくから」

「ふふっ、じゃあ私ももっと頑張らないと」

 

 えへへっ、待っててねもと男。かすみんの可愛いところを特等席でいっぱい見せてあげるから。かすみん以外の女の子のことなんて考えられないくらい虜にしちゃうから。だからかすみんから一瞬たりとも目を離さないでよね! かすみんの大好き、ちゃんと受け止めてね!




かすみん超絶可愛い(定期)


3rd円盤を見るためにアニガサキ復習したり、無敵級のMV見てたらいつの間にか推しがかすみんに変わってました。
なーんであんなに可愛いんでしょうね。見た目はもちろん、性格も歌も可愛い。そして何よりも声が素晴らしい。これぞかすみんって感じで最高ですね。
かすみんが可愛すぎて今後の予定が壊れそうです。具体的には初恋人の辺りが……。
読者兄貴もかすみんの魅力に堕ちろ!……堕ちたな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part13/m

やがて初投稿になる物語です。


「ただいまー!」

「おう、おかえり」

「うん、ただいま。……あれ、彼方さんは?」

 

 部室には元樹君、愛さん、エマさん、果林さんがいたけど、彼方さんの姿が見えなかった。

 

「彼方先輩なら遥ちゃんが待ってるって言って帰ったよ」

 

 もう帰っちゃったのか、もう1回ちゃんとお礼がしたかったのになぁ……。明日またちゃんとお礼を言うことにしよう。

 果林さんはまだ残ってくれてるから、帰っちゃう前にちゃんとお礼を言っておこう。

 

「果林さん、少しいいですか?」

「もちろんいいわよ。かすみちゃんとの話は終わったみたいね」

「はい。果林さんと彼方さんのおかげですごくいい結果になりました」

「それはよかったわ」

「本当にありがとうございました」

「どういたしまして」

「しずくちゃん、果林ちゃん、さっきから何の話をしてるの?」

「そうねぇ……」

 

 エマさんに教えていいかと果林さんが目で聞いてくる。もちろんいいわけがないので、小さく首を振ってダメだと伝える。

 

「かすみちゃんが悩んでいるみたいだったから、どうにかしてあげたいってしずくちゃんが相談してきたのよ」

 

 近くも遠くもないといったところか。かすみさんは悩んでいたわけではないけれど、かすみさんをどうにかしてあげたいと思ったのは事実だ。人を騙すコツは適度に真実を混ぜることだと元樹君も言ってたし、果林さんの機転の利いた答えだろう。まぁエマさんを騙したいわけではないのだけれど。

 

「むぅ、そういうことならわたしにも相談してほしかったなぁ」

「すみません。でもその時ちょうどエマさんがいなかったので……」

「そっかぁ……それなら仕方ないね。わたしの代わりにしずくちゃんとかすみちゃんの力になってくれてありがとう、果林ちゃん」

「私はただ思ったことを言っただけよ」

「それでも私にとってはすごくいいアドバイスになりました」

「そう、ならよかったわ」

「……あれ? 果林ちゃん照れてる?」

「べっ、別に照れてなんてないわよ」

「ほんとにぃ?」

「ほんとよ。ところでしずくちゃん、あれからかすみちゃんはどうなのかしら?」

「最初は困惑してましたけど、自覚してからは気持ちを溢れさせてましたね。部室に戻る間も好き好きってずっと言ってて……」

「好きっていうのはスクールアイドルのこと?」

「そ、そうです」

 

 しまった、事情を知らないエマさんの前で好きなんて言うのは間違っていた。スクールアイドルのことと勘違いしてくれたから助かったけど……以後気をつけなければ。

 

「かすみちゃんらしくて可愛いわね」

「はい。今は……」

 

 かすみさんの方に視線を送ると、どういう流れかはわからないが元樹君に頭を撫でてもらっていた。今までと違い恥ずかしさからか顔を真っ赤にしているが、溢れ出る嬉しさが隠し切れずに口角が上がっている。その気持ち、すっごくわかるよかすみさん。

 

「……といった感じです」

「なるほど……可愛いわね」

「ねー、かすみちゃん可愛いよね」

「そうですね。本当に、かすみさんは可愛いと思います」

 

 顔が赤くなっていてもかすみさんは可愛い。むしろその赤みが可愛さを何倍にも引き上げている。恋する乙女は可愛さが増すんだなぁって改めて思う。……私も可愛くなれてるかなぁ。元樹君に可愛いって思ってもらえてるかなぁ。

 

「しずく、そろそろ帰るか?」

「うん、私は大丈夫だよ」

「おっけー、じゃあ帰るか」

「えー、もう帰っちゃうのぉ~?」

「ああ。飯の準備とかしないといけないからな」

「そっかぁ……じゃあね、最後にギュってしてもいい?」

「っ!」

 

 間違いない……ここで勝負するつもりだ! いくら何でも速すぎるよぉ……。できることなら阻止したい。でもそれは卑怯なことだと思うし、何よりかすみさんの覚悟を踏みにじることになる。私が焚きつけておいてそんなことは絶対にしたくない。

 ここは事の行く末を黙って見守るしかない。どんな結末になるかはわからないけど、どんな結末でもちゃんと受け入れる。それが私の責任だから。

 

「いいけどさ、さっき今日は抱きついてあげないって言ってなかったっけ?」

「うっ……確かに言ったけどぉ……」

 

 かすみさんがそんなこと言うなんて、2人の間に一体何が……。

 

「でももういいの! 今は抱きつきたい気分なの!」

「ふーん……。まぁ何でもいいや。ほら、いつでもおいで」

「わーい!」

 

 かすみさんが元樹君に抱きつく。というより飛びつく。それを受け止めた元樹君は少しよろけて顔をしかめていた。そっか、かすみさんは元樹君が足を痛めてること知らないんだ。

 

「かす……」

「しずく」

 

 そのことを教えようとしたが元樹君に止められた。

 

「大丈夫だから」

 

 ああ、そうか。元樹君はかすみさんに心配かけたくないんだ。知らなかったとはいえ、足を怪我をしてる元樹君に飛びついてたなんて知ったら……かすみさんはきっと罪悪感に苦しめられるだろう。だから教えられないんだ。私もその気持ちを汲んでかすみさんには内緒にしよう。その方がどちらも幸せになれる。

 

「大丈夫って何がー?」

「別に何でもないよ」

「ふーん」

 

 かすみさんは元樹君を全身で感じるかのように密着して抱きついている。顔を首の辺りにうずめ、腕は限界まで背中に回されている。片足は元樹君の股の下に入り込み、両足で元樹君の片足を抱きしめるような形になっている。これ以上はないとも思えるほどの密着度だ。こんなに密着すれば胸を元樹君に押しつけることになる。かすみさんの胸はただでさえ慎ましいのに、押し潰されてさらにぺったんこに見える。

 

「そういえばさ、さっきかすみの声が聞こえた気がするんだけど……どこかで叫んでた?」

 

 あっ、きっと大好きって叫んだ時のことだ。ここまで届いてたんだ……。

 

「うん。なんて言ったか聞こえた?」

「いいや、そこまでは」

「知りたい?」

「別に」

「そこは知りたいって言ってよ!」

 

 あはは……なんというか、元樹君らしい答えだ。でもその話をするってことは、かすみさんは本気で告白するつもりなのだろうか。恐ろしいほど積極的だ。でも言い方を変えれば我慢できないくらい元樹君のことが好きってことなのだろう。

 

「はいはい。じゃあ教えてくださいかすかすみん様」

「かすかすみんって何!? かすが1個余分!」

「すまんすまん。改めて、教えてくださいかすみ様」

「いいよ、教えてあげる! 一度しか言わないから絶対に聞き逃したりしないでね? かすみんはー、もと男のことー、す……」

「す?」

 

 おや? かすみさんの様子が……。

 

「す……す……すすす、すすすすす」

 

 『す』から先が口から出てこないようだ。あとたった1文字なのに、『き』って言えればいいのに、その最後の1文字が喉から出てこないのだろう。

 

「す……酢の物をパンに挟んで食べる人だと思うんだよねー」

「ぷっ!」

 

 思わず吹き出してしまった。鋭い目で睨まれたけど、さすがにこれは仕方ないと思う。咄嗟に出てきた誤魔化しの言葉があれなんて……やっぱりかすみさんは面白い。

 

「そんなことしないけど?」

「あははー、間違っちゃったー。……はぁ」

 

 明らかに落ち込むかすみさんに近づき、肩にそっと手を置く。そしてニッコリと笑って一言。

 

「今度作ってみたら?」

「むっきーっ!!」

「私は美味しいと思うよ?」

「じゃあ今度ほんとに作って持ってくるからね! 無理やりにでもしず子に食べさせるから!」

 

 でもかすみさんの気持ちもすごいわかる。想いを伝えて、でも結ばれなくて、その結果関係が壊れてしまうのが怖い。壊れてすべてを失ってしまうくらいならいっそこのままでいい、恋人じゃなくても友達でいられるだけで十分って考えてしまう人もいるだろう。怖くて一歩が踏み出せない。好きっていう一言すら言えない。そんな人だっているだろう。でも報われたいのならその恐怖心を乗り越えなければならない。乗り越えて初めて報われるチャンスが手に入るから。でもそれはあくまでチャンスでしかなくて、絶対に報われるとは限らない。自分のすべてを捧げても報われないかもしれない。報われるのはいつも1人だけで、その選択権も相手が握っている。恋愛ってなんて残酷なんだろう。大好きな人からとどめを刺されなければならないなんて残酷としか言いようがない。これ以上に残酷なことなんてこの世にあるのだろうか。

 それに相手だって辛いだろう。誰か1人を選ぶということはそれ以外の皆を切り捨てるということ。優しい人ほど辛く感じるだろう。誰も選ばないという選択肢もあるけど、その答えではきっと皆満足できない。負けはしてないけど勝ててもいない。少なくとも私はそんな中途半端なのは嫌だ。それならばいっそのこと一思いに切り捨ててほしい。私に魅力がなかったって教えてほしい。それならばちゃんと諦めることができるから。次に踏み出すことができるから。

 それを考えるとハーレムというのはやはり素晴らしいのかもしれない。皆が幸せになれる。誰か1人じゃなくて皆を選んでもらえる。私達は大好きな人と結ばれて、彼はいろんな女の子を堪能できる。win-winな関係だと思う。

 もし私が元樹君と結ばれて、その後に彼が同好会の誰かから告白されるようなことがあれば一度だけ提案してみようか。世間一般では許されるような関係ではないのかもしれないけど、本人達がそれで幸せなのであればいいと思うんだ。

 

「しずく? どうした?」

「ううん、何でもないよ。それよりも早く帰ろ?」

 

 元樹君の手を握る……なんて大胆なことはできないので、裾をちょこんと摘まみ、軽く引っ張って急かす。

 

「だってかすみが放してくれないんだもん」

「うぅ~……」

「もう……」

 

 がっしりとしがみついていて離れようとしない。元樹君も頑張って引きはがそうとしてるけど、元樹君のパワーではさすがに無理だろう。手助けしてあげようとかすみさんの耳元で囁く。

 

「嫌われちゃうよ?」

「だってだってぇ……今日は特別な日だからぁ……もっといっぱい一緒にいたいんだもん……」

 

 特別な日……確かにかすみさんにとってはそうかもしれない。元樹君のことが大好きってようやく気づけた日なんだ。もっとこの時間を大切にしたいって思ってしまうのは仕方ないことなのかもしれない。

 でも私にとっても今日は特別な日だもん。このままだと元樹君と2人きりでいられる時間が減ってしまう。私だって元樹君を抱きしめたい。抱きしめてもらいたい。もっと独占したい。それができる貴重な機会なんだ。たとえかすみさんであろうと譲ることはできない。

 

「特別な日……? 今日ってかすみんの誕生日なの?」

「そういうわけじゃないですけどぉ……でも特別な日なんです!」

「へー、よくわかんないけどすっごく大切な日なんだね」

「それならそうと言ってくれればよかったのに」

そんなの言えるわけないじゃん……」

「何か言った?」

「何でもない! ……ねぇもと男、かすみんのこと好き?」

「もちろん。かすみもしずくも、みーんな大好きだぞ」

 

 きっとかすみさんが求めてた答えはそれじゃないだろうなぁ。でもそれで満足したのかニコリと笑いながら、でも名残惜しそうに元樹君から離れた。

 

「えへへっ、かすみんももと男としず子のことだーいすき! ね、しず子?」

「うん。私も元樹君のこと大好き。もちろんかすみさんのことも」

 

 かすみさんに便乗した形になるけど、今はこれで十分。きっと友達として好きって受け取られてるだろうけど、私の好きって気持ちが1ミリでも伝わっていればそれでいい。

 

「なんか三角関係みたいだな」

「そうだね、三角関係……ですむといいのにね

ほんとだよ

「ん? 何か言った?」

「ううん、何も。ね、かすみさん」

「うんうん」

「そう?」

 

 本当は三角どころか五角関係なんだけどね……。幼馴染で誰よりも長く元樹君と一緒にいる璃奈さん。いろいろと大胆で普通のキスどころか大人なキスまですませているらしいせつ菜さん。そして誰よりも可愛くて所かまわず抱きついたりできるかすみさん。ライバルは皆強力で、私1人が遅れてるような気がするけど絶対に負けない。負けられない。元樹君の一番だけは誰にも譲れない。

 

「ねぇねぇ愛さんは?」

「もちろん愛先輩のことも大好きですよ」

「おー……実際に言われると結構ハズいね……」

 

 その気持ち、すごーくわかります。

 

「それにエマ先輩と果林先輩のことも。俺はこの同好会が、皆が大好きです」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」

「わたしも皆のこと大好きだよ」

「2人も聞いてたんですね」

「うん。皆が楽しそうな話をしてたからつい……それに元樹君も気づいてて言ったんじゃないの?」

「さぁ、どうでしょうか」

 

 もう、素直じゃないなぁ。わざわざそんな言い方しなくてもいいのに。普通に気づいてなかったんでしょ? 少しビクッてしてたもんね。聞かれたのが恥ずかしいからって誤魔化そうとして……まったく、元樹君は可愛いなぁ。

 

「そんなことより、俺としずくはもう帰るつもりですけど皆はどうしますか? もう全員帰るなら鍵は俺が返してきますけど」

「元樹が帰るならアタシも帰ろっかなー」

「かすみんも」

「わたし達も帰ろっか」

「そうね。鍵をお願いするわね」

「かしこまり!」

 

 皆それぞれ自分の帰り支度をする。私もパジャマとか替えの下着をうっかり忘れたりしないように気をつけながら荷物をまとめる。今日はお気に入りのパジャマを持ってきたから元樹君にしっかり見てもらうんだ。谷間が少し見えるものだから少し恥ずかしいけど……でもそれで元樹君に見てもらえるのならいい。あわよくばそのまま……なんてね。そんなことあるはずないか。元樹君は女の子を襲うようなことするはずないもんね。優しいから人が悲しむようなことするはずないもん。ほんとは襲ってくれた方が嬉しいんだけど……。

 

「よしっと。しずく、俺は鍵返しに行くけど一緒に行く?」

「うん、行く」

「おっけー」

 

 皆で戸締りを確認してから部室を出る。

 

「それじゃあまた明日」

「皆さんさようなら」

「ばいばーい」

「またねー!」

「うん、また明日ね」

「明日もよろしくね」

 

 部室の前で皆と別れ、2人で鍵を返しに行く。道中何となく手持ち無沙汰だったのでさっきと同じように元樹君の服の裾を摘まむ。

 

「どうかしたか?」

「何でもないよ。ただこうしたくなって……」

「なんだなんだ、可愛い奴だな」

 

 可愛い……か。元樹君の中で一番可愛い女の子って誰なんだろう。かすみさん? せつ菜さん? ずっと一緒にいる璃奈さん? それとも私? もしかしたらテレビの向こうの女優さんだったりアイドルの人かもしれない。むしろそちらの方が確率的には高いだろう。少なくとも私ではないだろうなぁ……はぁ、考えてたら悲しくなってきちゃった。こんなこと考えてちゃダメ! もっと自信を持っていかないと。

 

 

 

 学校から出て、2人並んで同じ道を歩く。元樹君が私を迎えに来てくれた日と同じシチュエーション。でも違う所があるとすれば帰る場所。あの日はお互いの家に帰るために途中で別れたけど、今日は元樹君の家までずっと一緒。それから2人の距離も。あの日は拳1個分も離れていたけど、今は違う。私が裾を摘まんでいるからほとんど密着している。元樹君はそれに何の反応も示さない。私はこんなにもドキドキしてるのに……。

 

「どうした?」

「別にぃ~何もないけどぉ?」

「……もしかして怒ってる?」

「なんで私が怒る必要があるの?」

「ごめん……」

「……ぷっ! ごめんね、元樹君の反応が面白くてからかっちゃった」

「……怒ってない?」

「怒ってないよ」

 

 怒れるはずがない。私が勝手に八つ当たりしただけ。

 

「ふぅ、よかった……。しずくは怒ると怖いからな」

「ほんとに怒ってあげようか?」

「それはご勘弁を……」

 

 まったく元樹君は……。怒ってあげるのも全部元樹君のためなんだよ? ……って、なんだかDV彼氏みたいなこと考えちゃった。そんなことほんとに考えてるわけじゃないからね?

 

「あ、そうだ。璃奈さんとのお泊まりはどんな感じだったの?」

「別に普通だったよ。一緒に飯作って、一緒にゲームして……特に特別なことはなかったな。今まで通りって感じ。あっ、でもこの日は先に璃奈が寝ちゃってたんだよね。だから璃奈をそのままベッドで寝かせて俺は布団で寝たはずなんだけど、朝起きたら何故か璃奈も一緒に布団で寝てたんだよ」

「へ、へぇー……」

 

 それって添い寝したってことだよね……。そのまま一晩明かしたってこと? いいなぁ、璃奈さんが羨ましい。私とも添い寝してくれるかなぁ? こっそり潜り込めばいけるだろうけど、でも少し恥ずかしいかも……。

 

「あっ、今更だけど足は大丈夫なの? こんなに歩いて痛くない?」

「大丈夫。特に異常はないよ」

「ならよかった。辛くなったらいつでも言ってね? 荷物も持ってあげるし、肩も貸してあげるから」

「ああ、その時は頼むな」

「任せて」

 

 少しして大きなマンションの目の前に辿り着いた。

 

「ここが?」

「そう、うちのあるマンション」

 

 ついに……ついに来ちゃった。どうしよう、胸のドキドキが止まらないよぉ……。

 元樹君に先導されながらマンションの中を進む。途中璃奈さんの部屋がどこだとか教えてもらったけど、正直それどころじゃなかった。だって進むにつれてドキドキが激しくなっていくんだもん。エレベーターの中で2人きりになった時なんて大変だった。落ち着こうと何度も深呼吸をしたけど効果はなし。こんなに緊張したのはいつぶりだろう。受験の時以来かもしれない。

 

「着いたぞ。入ってどうぞ」

 

 とうとう元樹君の部屋の前に着いてしまった。すでにドアは開けられているので後は中に入るだけだ。

 

「お、お邪魔します……」

「別にそんな硬くならなくていいぞ。どうせ今日も親はいないから2人きりだしさ」

 

 2人きりだなんて……改めてそんなこと言われたらもっと緊張しちゃうよ。

 

「自分の家だと思ってくつろいでくれよ」

 

 自分の家だと思って……それって同棲ってこと!? それは気が早すぎるよぉ~、えへへ~。同棲は今まで何度も想像してきたシチュエーションでもあるし、なんだか気も楽になってきたかも。

 

「すぅ……はぁ……うん、もう大丈夫。お邪魔するね」

「上がって上がって」

 

 元樹君に急かされながら中に入って靴を脱ぐ。途中靴箱の上の写真が目に入ってついつい眺めてしまった。

 この写真は小さな男の子を挟むようにに男の人と女の人が立っている。多分家族写真だろう。男の子が元樹君で、隣の2人がお父さんとお母さん。お父さんはすごく真面目そうな人で、お母さんもすごく綺麗な人だ。3人とも笑顔で仲のよさがうかがえる。でも元樹君の笑顔だけ少しぎこちない。きっと緊張していたのだろう。

 こっちは幼稚園の入学式の時の写真。元樹君が小さくピースをしながら立っている。でもやはり笑顔はぎこちない。隣の写真は卒業式の時かな。元樹君の隣にいるのは……もしかして璃奈さん? 入学式の時はいなかったってことは幼稚園で初めて会ったのかな?

 これは小学校の時。入学式も卒業式も璃奈さんとのツーショットだけど……なんていうか、入学と卒業の時とで元樹君の雰囲気が少し変わってる気がする。入学の時は大人しそうな感じだけど、卒業の時には今のようなやんちゃな感じがする。きっと小学校の6年間で成長したのだろう。璃奈さんは今と雰囲気はさほど変わらないなぁ。でもすごく嬉しそう。きっと元樹君と一緒に写真を撮れて嬉しいのだろう。この時から好意を持っていたかまではさすがにわからないけど。

 こっちは中学の。相変わらず元樹君と璃奈さんの2人しか写ってない。校門も見慣れた虹ヶ咲のもの。そういえば元樹君は内部進学したって言ってたし、璃奈さんもきっと同じだろう。卒業式の写真では2人とも少し大人っぽくなってる気がする。

 それから高校の入学式。もう見慣れた制服姿の2人だ。でも少し初々しさがあって可愛い。

 

「あれ……?」

 

 なんだか家族との写真が少ない……? 最初の家族3人だけの写真しかない。それ以降はほぼ璃奈さんとの2ショットだ。どうしてこんなに少ないの?

 さっき言ってたことも少し引っかかった。今日()親がいない? 今日()じゃなくて? 元樹君にとって親がいないことが当たり前のように聞こえた。

 そういえば元樹君の口から家族の話を聞いたことないような気もする。璃奈さんとの思い出話は何度か聞いたけど、家族との話は記憶にない。少なくとも直近では。

 

「しずく? 何か変なものでも置いてたか?」

「……あっ……ご、ごめんね。何でもないよ……」

 

 もしかして元樹君と家族って仲悪いのかな……? でもこんなこと直接聞くなんてできるわけないし……。かと言って璃奈さんに聞くのも難しい。もし本当にそうならそれを璃奈さんが気にしてないわけがない。だってあんなにも元樹君のことを大切に思ってるんだから。そんな璃奈さんに聞くなんてできっこない。

 

「こらしずく」

 

 考えごとをしていると元樹君に頬を引っ張られた。配慮してくれてるのか痛くはない。

 

「……にゃにしゅるの」

「……しずくのほっぺって柔らかいな」

 

 そう言いながら私の頬を揉んだり引っ張ったりムニムニしたりして感触を楽しんでいる。こんなことしてくれるのは嬉しいけど、さすがに少し……

 

「いひゃい……」

「あっ、めんご」

 

 しっかりと堪能された後解放してもらえた。少し頬がヒリヒリする……。

 

「なんで急にこんなことしたの?」

「しずくが暗い顔してたから。今ので多少は気分リセットできただろ?」

「確かに……元樹君に触ってもらえて、少し気分は紛れたかも」

「それはよかった」

 

 気分は紛れたけど、でもやっぱり胸の奥に引っかかったままだ。簡単に除けそうにない。

 もちろん確証があるわけじゃない。私の思い過ごしかもしれない。それに写真だって全部出しておくわけじゃないし、アルバムにもっと家族との写真があるかもしれない。……でも、もしも本当なのだとしたら……あまりにも悲しすぎる。あの写真から推察するに小学生か中学生の頃から仲が悪かったのだろう。

 どうして元樹君がこんな辛い目にあわないといけないの? 神様はなんて意地悪なんだろう。あんなに人に優しくて、他の人を第一に考えられる人がこんな……あまりにも酷すぎる。1つ救いがあったとすればそれは璃奈さんの存在だろう。璃奈さんがそばに居てくれたおかげで元樹君は1人にならずにすんだ。

 気づいてあげられなくてごめんね。これからは私も一緒にいてあげるから。何があっても元樹君のそばにいるから。たとえ元樹君から拒絶されようとずっと味方でいてあげるから。絶対に寂しい思いはさせないから。だから……家族に、なろ?




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


皆さんはLoveLiveDaysはお買いになられましたか? 私は買いました(隙自語)
桜坂座長ぇ……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part31/n

久し振りのほんへなので初投稿です。


念のためもう一度言っておきますが、本作にエロ要素は一切ありません。


 修羅場不可避RTA、はーじまーるよ。

 

 前回はしずくちゃんにキスマークをつけてもらって一緒におやすみしました。今回はその続きからで、朝になったので今日も学校に行きましょう。しずくちゃん起きて~。

 

「うぅん……もうちょっとぉ……」

 

 おいゴルァ! 起きろ! 平日だってわかってんのかコラ!

 

「おふぃーりあ……しずかにぃ……」

 

 ワン(迫真)

 

「いいこぉ……」

 

 寝ぼけたしずくちゃんに抱き寄せられてしまいました。ダメみたいですね(諦観) しずくちゃんは普段いざ鎌倉から通ってますからもっと早起きなはずなんですけど、今日はほも君の家から登校ということで気が抜けちゃったんですかね。学校まで近いからね。しょうがないね。

 ……おや? 電話が鳴っていますね。ほも君の携帯からみたいです。しずくちゃんに抱きしめられていてその場から動けないため、頑張って手を伸ばして……よし、取れました。電話の相手は栞子ちゃんみたいですね。どうしたのでしょうか。

 

『元樹さん! 起きましたか!?』

 

 うるせぇ! ほも君の鼓膜が破れちゃうだルルォ?

 

『あ、申し訳ありません……って違います! 時間! 時間を見てください!』

 

 時間ですか? 9時、普通だな!

 

『普通じゃありません! 大遅刻ですよ!?』

 

 あぁ寝坊しましたねぇ、寝坊しました……。

 

『わかっていただけましたか』

 

 ところで栞子ちゃんはなんで電話をかけてきてるんですか? 今は授業中ではないですか?

 

『先生にお願いされたので。10分おきに電話をかけていたのですが起きてもらえず……』

 

 あっ、ほんとですね。履歴に栞子ちゃんの名前があります。しかもきっちり10分おきですね。

 

『とりあえず早く来てください……とは一応言っておきます。でも私としては焦らず安全第一で来てほしいです。どれだけ遅くなっても構いませんから。もし元樹さんが事故に巻き込まれたりしたら悲しいですからね』

 

 おかのした。言われた通りゆっくり学校に向かうことにしまう。

 

『……ところで先程から寝息のようなものが聞こえる気がするのですが……』

 

 ではまた学校で会いましょうね(焦り)

 

『あ、ちょ』

 

 ふぅ、危なかったですね。しずくちゃんとお泊まりしてることが栞子ちゃんにバレてしまうところでした。

 さてと、まずはしずくちゃんと起こさないといけませんね。さっき栞子ちゃんの大声が聞こえたのにまだすやすや眠っています。うせやろ?

 

「すぅ……れろ」

 

 おっとぉ? しずくちゃんがペロリとほも君の首筋を舐めましたね。偶然かはわかりませんがちょうどキスマークのあるところでした。寝ぼけてるとはいえとんでもないことしてくれますね。おかげでほも君のほも君が生理現象以外の原因で大きくなっています。

 

「おふぃーりあ……なめないでぇ……」

 

 (舐めてるのは)お前じゃい!

 

「んぅ……」

 

 しずくちゃんが少し動きましたね。そのせいで先程まで首の位置にあったしずくちゃんの顔がほも君の顔の位置まで上がってきてしまいました。寝ぼけている今の状況を考えるとまずいですよ!

 

「んんっ……あ、れ……?」

 

 しずくちゃんがようやく起きたみたいですね。ほも君の貞操は守られたみたいです。

 

「もときくん……?」

 

 お寝坊さんですね。もう遅刻確定ですよ。

 

「ちこく……なんじぃ?」

 

 9時ですね。

 

「くじ……9時っ!?」

 

 うるせぇ!

 

「なんで!? なんで起こしてくれなかったのぉ!?」

 

 ほも君も寝坊したからです(半ギレ)

 

「アラームセットしたはずなのに……ってオフになってる!」

 

 やっちゃいましたねぇ。優等生のしずくちゃんが大遅刻ですよ。クラスで噂になりますね。

 

「何呑気なこと言ってるの! ああもうっ、早く準備しないと! 朝ご飯は……時間ないよね。まずは着替えないと……」

 

 相当焦っているのかしずくちゃんがほも君の目の前で着替え始めました。もちろんモザイクかけておきますね。正直下着姿はギリギリセーフな気もしますけど、BANされると困るので一応ね。見たい兄貴は自分で買ってプレイして、どうぞ。

 

「元樹君も早く準備しなきゃ!」

 

 そうですね、ほも君も着替えましょうか。一応栞子ちゃんには遅くなってもいいとは言われていますが、早く行くに越したことはないですからね。それに今日はお昼休みに大事なイベントがあるのでそれまでにはいきたいですし。まぁ足を怪我しててほも君は走れないんですけどね。急ぐとか急がないとか関係ないんですよ。

 

「パジャマはどうしよう……」

 

 ああ、持って帰るとなると少し大変ですよね。しずくちゃんがよければここに置いていってもいいですよ。

 

「いいの?」

 

 いいですよ。ほも君が責任をもってクンカクンカしてから洗っておきますから。

 

「じゃあお願いしようかな。ありがとう元樹君。……って、さっきから手が進んでないよ。着替え、私が手伝ってあげようか?」

 

 オナシャス! (シチュエーションが)センセンシャル!

 

「任せて。パジャマを脱がせてあげる。まずは上からね。手をあげて」

 

 ここからはしずくちゃんの指示に従って着替えさせてもらいましょう。

 

「よいしょっと。わぁ……初めて元樹君の裸見ちゃった……触ってみてもいい?」

 

 着替えの最中にそんなことしちゃあダメだろ!

 

「そ、そうだよね。じゃあ気を取り直して次は下を脱がせるからね。……んっ、何かが引っかかって……」

 

 ズボン……引っかかる……あっ、ふーん(察し)

 

「うんしょ……きゃあ!」

 

 強引に引っ張っていたら引っかかりが外れたようですね。……パンツと一緒に。

 

「え、あ……」

 

 長くて大きな何かを見てしずくちゃんが完全に固まっちゃってますね。そしてほも君のもガチガチです。でもこれRTAなのよね。こうやって固まられると困るんだよー。おいしずくちゃん早くしろ~。

 

「これ、って……」

 

 あ、説明が必要ですかね。これはですね……

 

「いい! 言わなくてもわかるから……朝は皆こうなっちゃうんだよね……?」

 

 そうだよ(便乗) まぁ今回はしずくちゃんが首を舐めてきたってこともありますけどね。

 

「痛くないの?」

 

 (今は解放されてるので痛く)ないです。

 

「苦しくないの?」

 

 苦しいですねぇ! えっちなイベントが発生しそうなのが苦しいです。

 

「治まらないの?」

 

 時間が経てば治まるんじゃないでしょうか。

 

「……ねぇ、触ってみてもいい……かな?」

 

 え、それは……(困惑)

 

「ダメ?」

 

 学校に行くのが遅れちゃうだろ!

 

「今から出ても遅刻なんだし、追加で30分くらい遅れても大丈夫だよ」

 

 30分とか、どんだけじっくりと堪能するつもりなんですかねぇ……。

 

「ふふっ、隙あり!」

 

 隙を見せてしまったせいでベッドに押し倒されてしまいました。獲物を見つけた野獣の目をしてほも君に覆いかぶさっています。弱者であるほも君にはもうしずくちゃんに食べられる以外の道はありません。悲しいなぁ……。

 

「……え? もしかして痛かったの……?」

 

 どうやらしずくちゃんに押し倒された時に怪我した足を痛めてしまったみたいです。

 

「ご、ごめんなさい……私、そんなつもりじゃなくて……」

 

 大丈夫、わかってますよ。ほも君を傷つけるつもりは全くなかったんですよね。でもなんでこんなことしたんですか?

 

「その、興奮しちゃって……」

 

 本当にそれだけ?

 

「……嫌な夢を、見ちゃったから」

 

 ほう、嫌な夢ですか。どんな内容だったんですか?

 

「男の人達に襲われる夢……」

 

 それは辛い夢ですね。そのまま最後まで襲われてしまったんですか?

 

「ううん、服を脱がされる前に元樹君が助けに来てくれて……」

 

 ほも君がですか。ちょっと頼りなくない? はたしてほも君はしずくちゃんをちゃんと助けることができたのでしょうか。

 

「私は助かったんだけど、代わりに元樹君が……元樹君が襲われちゃって……」

 

 は?(困惑) なんで? なんでほも君が襲われるんですか? ビデオの撮影だったのかな?

 

「最後は元樹君が殺されちゃって……私……何もできなくて……最後まで助けてもらったのに、何1つ返せなかったから……!」

 

 しずくちゃんの瞳から涙が溢れてきました。途中おかしなところがありましたが、ほも君が殺されてしまったのが辛かったのでしょう。夢の中とはいえ大好きな人が目の前で殺されていますからね。ほも君がちゃんと生きてる、あれはただの夢の中の出来事だって実感しようとして暴走してしまったというところでしょうか。実は1年生の中で一番打たれ弱いしずくちゃんですしこうなってしまってもおかしくないでしょう。

 

「やだ……しんじゃやだぁ……どこにもいかないで……」

 

 安心させてあげるために抱き寄せて心臓の音を聞かせてあげましょう。ほも君がちゃんと生きてるってことを教えてあげます。

 

「え……?」

 

 心臓の音が聞こえますか? ちゃんとバァン!(破裂)バァン!(逆流)って鼓動してるでしょう?

 

「……うん、ちゃんと聞こえる。ドクンドクンって」

 

 生きてる証拠だよ。だから安心してください。ほも君は(RTA続行不可能にならない限り)死にませんから。

 

「うん……うん!」

 

 しずくちゃんが抱きしめてきました。泣き止んでくれたかと思いましたが、安心感からかまた泣き出してしまいました。女の子を2度も泣かせるなんてほも君は罪な男ですね。あとさっきほも君は死なないと言いましたが、寿命でも死んじゃいますね。ほも君も人間ですからね、寿命には勝てないのです。

 

「じゃあいっぱい長生きしてね。少なくとも私よりは長生きしてほしいな。元樹君だけ先に旅立っちゃって私が取り残されるなんてきっと耐えられないだろうから」

 

 わかりました。しずくちゃんより長生きすると約束しましょう。

 

「じゃあ指切りげんまんしよ?」

 

 (前略)嘘ついたら睡眠薬入りアイスティー1000杯飲ーます。(後略)

 

「約束したからね? 破ったら許さないから。天国で元樹君のことを探し出してお説教するからね」

 

 それは怖いですねぇ。怒られないようにちゃんと守らないといけませんね。まぁ卒業後のエンディングはまだ実装されていないので関係ありませんが。もし老死じゃなくて病気や事故で死んじゃった場合はしずくちゃんも後追いするんですかね?

 

「……よし、もう大丈夫だよ。ありがとう」

 

 じゃあそろそろほも君の上からどいてほしいですねぇ。ほも君の筋力では身動き一つとれないんですよ。

 

「だーめ。まだ私からのお礼がすんでないから。……お口でスッキリさせてあげるね」

 

 そんなことしなくていいから(良心)

 

「すごく刺激的な匂い……それにカチカチ……いただきます」

 

 ダメみたいですね(諦観) タイム増大確定です。もう避けられそうにありませんしここは潔く諦めましょう。変に抵抗するよりはタイムが短くなる気がします。あと動画ではもちろんモザイクをかけておきます。これは絶対に映せないですからね。

 でもえっちなシーンが終わるまで少し暇ですよね? シーンの解説をするわけにもいきませんからね。あまりに暇なので皆様のためにぃ~こんな動画を用意しました~。私の写真フォルダに残っている可愛いしずくちゃん写真集です。それを適当につなぎ合わせたものを垂れ流したいと思います。ちなみにこの写真の中にはRTA中に撮影したものも含まれています。何してんだぁ!

 

 

 

 シーンは変わって仲良く手をつないでの登校中です。もう学校の敷地の中に入りました。動画を流している間に何があったかと申しますと、しずくちゃんが勇気を出して繋いできました。(さっきのモザイク処理中に何かがあったとかでは)ないです。(ナニかはしてたけど告白はされて)ないです。

 

「うぅ、まだ口の中にがぁい……」

 

 飲んじゃったしずくちゃんが悪いんでしょ。ティッシュにペッて吐き出せばよかったのに。

 

「だってぇ、折角元樹君が私のために出してくれたものだから無駄にしたくなかったんだもん。……それにしても元樹君があんなに変態さんだなんて知らなかったよ。胸で挟んでなんて言われると思わなかったし……」

 

 はい、しずくちゃんがおっしゃる通りほも君がそんな要求をしていました。ちなみに要求したのは私の意思です。タイムよりも欲望優先だって、それ一番言われてるから。

 

「私の胸どうだった? 気持ちよかった?」

 

 挟まれた時が気持ちよかった(小並感)

 

「よかった。体を張った甲斐があったかも」

 

 自分から咥えにきたじゃないですか。

 

「それは……で、でも気持ちよかったでしょ? 私の口からこぼれちゃうくらいいっぱいビュッビュッてしたもんね」

 

 それを言ったらしずくちゃんだって美味しそうに喉を鳴らしながら飲んでたじゃないですか。飲み干した後口を開けて見せてくれたじゃないですか。

 

「……やっぱりこの話はやめにしない? 恥ずかしいよ……」

 

 そうしましょうか。私もしずくちゃんとえっちな話がしたいわけじゃありませんからね。私はしずくちゃんとえっちがしたいんです。

 

「こんなことしてあげるの元樹君だけだからね。……これがどういうことか、わかってくれる?」

 

 んにゃぴ……よくわかんないです。

 

「そっか、まぁ仕方ないよね。だって元樹君だもん」

 

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子) ちゃんと気持ちを伝えられないしずくちゃんが悪いんだゾ。もうフ○ラはいいから、告白してもらってさ、終わりでいいんじゃない?

 

「……はぁ、もうお別れかぁ」

 

 分かれ道になりました。ほもくんとしずくちゃんは学科が違うのでここでお別れです。それじゃ!

 

「ちょっと待って! ……もうあと5分で授業も終わっちゃうから……それまでは一緒にいたいな。ダメかな?」

 

 つないだ手をギュっと握って懇願してきました。もちろんOKです。どうせ今から行っても授業には参加できませんからね。

 

「……」

 

 2人で壁にもたれて立っていますが、しずくちゃんがずっと黙ったまま何も喋ってくれません。一体どうしちゃったのでしょうか。

 

「ちょっとね……これでお泊まり会が終わりかと思うと寂しくて……」

 

 また次の機会があるじゃないですか。それもしずくちゃんのおうちで。

 

「それはそうだけど、でも寂しいものは寂しいの!」

 

 ほも君は寂しいんじゃなくて、むしろ次にワクワクしてますよ。

 

「元樹君はお泊まり会楽しかった?」

 

 すごく楽しかったですよ。

 

「よかった。私もすっごく楽しかったよ。一緒にお料理したり、あーんしてもらったり、将来の話をしたり、一緒にお勉強したり、一緒に布団にくるまりながら映画を見たり、一緒に寝たり……それから銭湯。璃奈さんといろんなお話ができたし、その後一緒に食べたアイスもすごく美味しかった。お風呂上りにこんなことしていいのかなっていう背徳感もあったけど……」

 

 お風呂上りにアイスは鉄板ですよ。まぁ私は食べませんが。

 

「だからまだ離れたくない。もっとお泊まりしたい。もっと一緒にいたいよぉ……」

 

 じゃあぜひまた泊まりに来てくださいよ。事前に言ってくれればいつ来てくれてもいいですから。

 

「いいの?」

 

 もろちんです。どちらにせよ置いていったパジャマを持って帰るために一度は泊まってもらわないといけませんからね。

 

「じゃあまた今度泊まらせてもらうね? でもその時は私達だけじゃなくて、璃奈さんやかすみさんも呼んで、1年生の皆でお泊まり会したいな」

 

 確かにそっちの方が楽しそうですもんね。スペースの問題は……まぁ何とかなるやろ。ただ布団の数が足りないので2人1組で寝る必要がありますけどね。

 

争奪戦かぁ

 

 そういうことになりますね。ほも君と一緒に寝られるのは1人だけですよ。全員で並んで寝るのはさすがに不可能ですし。

 

「あっ、そうだ。さっき言ったこと覚えてる?」

 

 どれのことでしょうか。いっぱいありすぎて1つに絞れません。

 

「どういうことかわかる? って聞いたこと。どうしてもわかってくれないみたいだから、特大のヒントあげるね」

 

 もう十分ヒントはあるんだよなぁ……。どれだけヒントをくれたところでほも君が気づかないんですよね。いい加減しずくちゃんにはそのことに気づいてほしいですね。

 

「こっちに向いて目をつぶっててくれる?」

 

 あっ……(察し) これはキスするつもりですね。しずくちゃんのことなので誰かに邪魔されそうな気もしますが、ひとまずは従っておきましょう。

 

「まだ開けちゃダメだよ」

 

 首に腕が回されて、どんどんと顔が近づいてくる気配がします。しずくちゃんのあま~い匂いが鼻の奥まで届いて脳を刺激してきます。

 

「まだだからね」

 

 ……いつまでかかっているんでしょうか。なんだか触れる直前で止まっているような気もしますし……気になりますが目を開けるなと言われているのでここは我慢します。

 

「じゃあいくね。んっ……」

 

 ようやく唇が触れ合いました。それと同時に首に回された腕に力が入りました。やっぱ緊張してるんすね~。

 

「んん……んぅ……」

 

 それにしてもしずくちゃんの唇は柔らかいですね。ついばむようにキスしてくるのが非常に心地いいです。せつ菜ちゃんとも栞子ちゃんとも違った感触なのでほも君もじっくりと堪能しています。俺も堪能したいけどなー俺もなー。

 そういえばしずくちゃんは背伸びをしてキスをしているのでしょうか。気になりますね。もう目を開けてもいいでしょう。開眼!(覚醒)

 

「んっ!?」

 

 しずくちゃんとバッチリ目が合いました。不安そうに瞳が揺れています。多分ほも君側から何のアクションもないので嫌がられてないか不安なのでしょう。じゃけん安心させてあげましょうね~。

 

「んん~」

 

 頭を撫でてあげると瞳から不安が消え、半歩分さらに距離を詰めてきました。そのせいでほも君が壁に押しつけられるような形になりました。見方によっては壁ドンをしているようにも見えますね。

 念のため確認しておきますがここは校舎の中です。もっというと教室の近くです。そしてそろそろ授業も終わりです。何が言いたいかはわかりますね? そろそろ終わらないと他生徒達に見られてしまいます。しずくちゃんの頬を叩いてそれを伝えましょう。

 

「んー? んん~……ぷはぁ」

 

 最後に唇を押しつけて濃密なキスを交わし、しずくちゃんが離れました。

 

「もうっ、開けちゃダメって言ったのに」

 

 そんなこと言ったって気になるものは気になるんですよ。それに視聴者兄貴もこれを望んでいたはずですからね。視聴者の期待に応えるのもRTA芸人の仕事です。タイム? そんなのは二の次ですよ。

 

「これが私から出せる最大のヒントだから」

 

『キーンコーン』

 

 おっと、チャイムが鳴りましたね。教室から生徒たちが出てきます。結構ギリギリだったみたいですね。危なかったです。このゲームでは一般モブ生徒から情報が学校中に伝わってしまうため、さっきみたいなキスシーンもヒロイン達の耳に入ってしまいます。ほも君と断定できるほどの情報かは運にもよりますが、どちらにせよ危険なことには変わりないので一般モブ生徒に見られないように気をつけましょうね(n敗)

 

「あっ、もうこんな時間。そろそろ教室に行かないと」

 

 そうですね。じゃないと次の授業にまで遅刻がつけられてしまいます。

 

「ばいばい、元樹君。放課後部室で会おうね。……答えがわかったらちゃんと返事してね? どんな答えでも受け入れるし、いつまでも待ってるから」

 

 しずくちゃんが走り去っていきました。いや~まさかこのタイミングでキスするとは思っていませんでした。でもキスできてよかったです。これで告白確率が上がりましたからね。

 さてと、ほも君もそろそろ教室に向かうとしましょう。数パートぶりの栞子ちゃんに会いに行きます。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part32/n

初めましての方は初めまして。そうでない方は初投稿です。


 先輩の魅力に溺れるRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はしずくちゃんに無理やりフェ○された挙句にキスまでしてしまいました。今回はその続きからで、教室に行ってお昼前最後の授業を受けます。遅刻に関しては栞子ちゃんの親密度は下がっていなさそうなので大丈夫だとは思うのですが、問題なのはこのキスマークですね。隠せそうなものは全部しずくちゃんに持っていかれてしまいましたし、どうしたものか……。

 

「あっ、元樹さん!」

 

 悩んでいる間に教室に着いてしまいました。そして教室の前で待機していた栞子ちゃんに見つかってしまいました。手を振って呼んでいます。もう隠すことは諦めるしかないみたいですね。頑張って言い訳しましょう。

 

「おはようございます。珍しく大遅刻ですね」

 

 うっかり寝坊してしまいました。

 

「寝坊、ですか……。珍しいですね。何かあったのですか?」

 

 私にもよくわからないです。昨日は夜更かししたわけじゃないんですがねぇ……。実は私の知らないところでしずくちゃんとしっぽり楽しんでいたとかでしょうか。……いやでもほも君の裸を見るのは初めてと言っていましたし、さっきしずくちゃんが舐めていた時の反応も初々しかったですから、多分それはないでしょうね。じゃあ尚更寝坊した理由がわからないが?

 

「まぁ寝坊なんて夜更かしくらいしかありませんよね。元樹さんが夜更かしするとは思えませんが」

 

 ほんとぉ? りなりーとゲームする時は絶対夜更かししてると思いますよ。

 

「でも気が緩んで寝坊してしまう日もたまにあると思いますよ。先生は怒っていましたが、私は仕方ないと思います。そんなことよりも無事に学校まで来てくれたことの方が大事ですから」

 

 薄々察してはいましたが、この栞子ちゃんほも君に対して甘すぎませんかねぇ。授業中に寝ていても許してくれましたし、ここまで来たら大抵のことは許してくれそうな気がします。いっそのこと二股も許してくれたら嬉しいんですけどね。

 

「……1つ気になっていたことなのですが、首元にあるその赤い痕は何なのですか?」

 

 これですか? これは虫刺されですね。

 

「虫刺され……私にはそうは見えないのですが、わざわざ嘘をつく理由もありませんよね。ちゃんと処置はしましたか?」

 

 やりましたねぇ!(大嘘)

 

「そうですか。なら大丈夫です。これから虫がもっといっぱい出てくる季節になりますから、お互いちゃんと対策をしなければなりませんね」

 

 我ながら結構苦しい言い訳だとは思いましたが、なんとか誤魔化すことができました。栞子ちゃんがほも君を全面的に信頼してくれてたおかげですね。ちゃんと見れば明らかに虫刺されじゃないってわかると思うんですが……。

 

「そろそろ教室に入りましょうか。次の授業の準備をしなければなりませんからね。遅刻してしまった分残りの授業はしっかりと受けなければなりませんよ。居眠りなんて許しませんよ」

 

 嘘つけ絶対見逃してくれるゾ。

 

「……これからは元樹さんにも厳しくしましょうか?」

 

 お手柔らかにお願いします……。

 

 

 

 午前最後の授業、ほも君にとっては今日最初の授業が終わりました。お待ちかねのお昼の時間です。今日は学食に行ってとある3人と昼食を食べる予定です。

 

「一緒に食べましょう」

 

 はい、いつも通り栞子ちゃんからのお誘いが入りました。今日は栞子ちゃんと食べると後に大きく響いてしまうので、心苦しいですがお断りしましょう。今日は別の人と一緒に食べる予定が入っているんですよ。

 

「え……そ、その人は私の知っている人でしょうか?」

 

 絶対に知らないですね。今の段階で知っていたら困ります。

 

「そうですか……あ、あの! 私も参加してはダメでしょうか……?」

 

 ダメです(無慈悲)

 

「……わかりました。私はここで食べていますから、元樹さんは楽しんできてください。気が変わったらいつでもここに戻ってきてもいいですからね」

 

 よしっ、これで栞子ちゃんと別行動ができました。早速学食に行きましょう……と言いたいところですが、その前にすることが2つあります。1つはスマホの壁紙をパンダの画像に変更しておくことです。これにはちゃんとした理由があるのですが、それは後で話すことにしましょう。察しのいい兄貴はもうわかってるんじゃないですかね。パンダと言えばあの人ですからね。

 もう1つは歩夢ちゃんからお弁当を受け取ることです。本当は朝もらう予定だったのですが、寝坊で遅刻したせいでもらえなかったので今からもらいに行きます。移動回数が増えてしまうので微ロスです。とりあえず歩夢ちゃんのいる場所に行きましょう。

 

 

 

「はい、今日の分のお弁当だよ。いっぱい食べてね」

 

 歩夢ちゃんと侑ちゃんと合流してお弁当を受け取りました。ミッション完了です……。

 

「朝はどうしたの?」

 

 寝坊して遅刻しちゃいました。

 

「遅刻? もと君が? もと君でも遅刻しちゃうことあるんだね」

「侑ちゃんも私が起こさなかったら遅刻しそうだったこと何回もあるでしょ?」

「あはは……でも歩夢がちゃんと起こしてくれるからいいかなーって」

「もう、侑ちゃんったら」

 

 王道を往くゆうぽむですね。眼福です。もっとイチャイチャして♡

 

「あ、そうだ。今日は中庭で歩夢とお昼にするつもりなんだけど、もと君も一緒に食べる?」

 

 ありがたいお誘いですが、ここは遠慮しておきましょう。歩夢ちゃんも侑ちゃんも告白ラインまでまだまだ足りていませんが、それは学食で会う3人も同じです。それなら2人よりも3人の方が効率がいいですからね。

 

「そっかぁ……」

 

 そんなに悲しい顔をされると胸が痛くなりますね。このまま放っておいても親密度は下がりませんが、後々のことを考えてちゃんとフォローしておきましょう。明日であれば一緒に食べられますよ。

 

「ほんとっ!? 約束っ、約束だからね!」

「私も明日はいつもより気合入れて作ってくるね」

 

 明日の昼食は歩夢ちゃんと侑ちゃんと一緒に食べることが決まりました。栞子ちゃんはまたおあずけになりますね。ちなみにですが、万が一にも明日約束をすっぽかしてしまうようなことがあれば2人の親密度が爆下がりしてしまいます。この約束はチャートにはなかったので少し心配ですねぇ……。

 

「あとさっきからずっと気になってたんだけど、首元のその赤いの何?」

 

 虫刺されです……。

 

「うーん? 虫刺されには見えないけどなぁ」

「ちょっと侑ちゃん……」

 

 こうも間近でまじまじと見られるとさすがにバレますよね。

 

「ほんとは何なの?」

 

 しずくちゃんに作ってもらいました。というより勝手に作られました。

 

「しずくちゃんに……あっ」

 

 侑ちゃんはわかってないみたいですが、歩夢ちゃんはピンときたようで頬を少し赤らめています。なんで知ってるんですかねぇ(ニヤニヤ)

 

「歩夢はわかるの?」

「うん、まぁ一応……」

「えーいいなー。もと君、私にも教えて?」

 

 ファッ!? さすがにそれはまずいですよ! 歩夢ちゃんも困ったような顔をしています。そんな顔してないで助けてくれよー頼むよー。

 

「教えるのが難しい……? じゃあ私にも作ってよ。それならわかりやすいでしょ?」

 

 え、それは……。

 

「侑ちゃん、さすがにそれは……」

「ダメなの?」

 

 どうしましょうか……。しなかったら侑ちゃんの親密度が下がってしまいそうですし、したらしたで歩夢ちゃんのが下がってしまいそうなんですよね。詰みでは? ……決めました。恥ずかしがる侑ちゃんが見たいのですることにします。

 

「えっ!?」

「やった、じゃあお願い」

 

 まずは手を広げてもらえるでしょうか。

 

「こう?」

 

 そんな感じです。この状態の侑ちゃんをガバっと抱きしめます。

 

「ふぇ?」

 

 驚きで目がグルグルしてる侑ちゃんも、いてつくような目つきで見てくる歩夢ちゃんも無視して続けます。このままキスマークといきたいところですが、侑ちゃんの身長が低いので口が首元まで届きませんね。少ししゃがみましょう。

 

「ちょ、ちょっと……」

 

 ほも君と同じ首元でもいいのですが、他の人に見られると困るような気がするので簡単に見えない位置にしましょう。制服のボタンを上からいくつか外して、その下に着ているシャツを少し下げます。今ちらりと黒色のブラが見えましたね。縁にフリフリがついていました。意外と可愛い下着つけてるじゃないですか。そそるぜこれは……。

 

「もと君これ以上はもう……」

 

 歩夢ちゃんから制止を要求する声が聞こえますが、もちろん無視します。なんたって侑ちゃん本人が拒絶していないですし、むしろこれからの展開に期待しているような目をしています。これは期待に応えるしかありませんね。たっぷりとキスマークをつけさせてもらおうじゃないか。シャツで隠れる位置にチューっと吸いつきます。

 

「いっ……」

 

 少し痛いみたいですが我慢してもらいましょう。生きてる証拠ですからね。もうこれくらいでついたでしょう。口を離しましょうか。

 

「ついたぁ……?」

 

 バッチェつきましたよ。ほら見てください。ちゃんと赤い痕がついてるでしょ?

 

「ほんとだ。これでもと君とお揃いだね」

 

 指でシャツを広げて見せてくるのが非常にえっちです。この子はさぁ……もっと自分の魅力を自覚して、どうぞ。

 

「しずくちゃんにも同じことしてもらったの?」

 

 されましたねぇ! されましたされました。

 

「へぇ……じゃあ私ももと君にお返ししないとね」

 

 そんなことしなくていいから(良心)

 

「ストップストップ。これ以上は歯止めが利かなくなっちゃうよ」

 

 歩夢ちゃんが2人の体の間に腕を差し込んで引きはがしてきました。やめろォ(建前) ナイスゥ(本音)

 

「もと君、お願いされたからって女の子に気軽にそんなことしちゃダメだよ。き、キスマークをつけるのがどういう意味かわかるでしょ?」

 

 んにゃぴ……よくわかんないです。

 

これがキスマークなんだ……」

「侑ちゃんもだよ。2人とももう年頃なんだからちゃんと距離感を考えて。抱きつかれた時点でダメって言わないと」

 

 でも歩夢ちゃんはほも君を抱きしめたりしてくれますよね? 歩夢ちゃんはよくて侑ちゃんはダメ……独占力が発動してるのかな?(名探偵)

 

「別に私は嫌ではなかったし……」

 

 侑ちゃんの親密度はそこそこ稼げてそうな感じですね。手を繋いだりくらいは気軽にできそうな感じです。いいぞ~これ。でもまぁ侑ちゃんは親密度を上げやすい部類に入るキャラなのでこんなもんでしょう。

 

「……もうっ、2人とも知らないっ!」

「歩夢!」

 

 歩夢ちゃんが怒ってどこかに行ってしまいました。うわぁ……これは親密度が下がってますねぇ……。想定してたことではありますが、歩夢ちゃんに嫌われるのは辛いですね。

 

「ごめんねもと君。私のせいで怒られちゃった」

 

 いえ、侑ちゃんは悪くありませんよ。悪いのは全部ほも君ですから。

 

「もと君ならそう言うと思ってたよ。だからね、ここは2人とも悪かったってことにしない?」

 

 そうしましょうか。このままお互い自分が悪かったって言っててもロスにしかなりませんしね。

 

「怒られたからってそんなに落ち込まなくても大丈夫だよ。歩夢が怒るのって珍しいけど、怒る時はいつも相手のために怒ってるんだよね。きっとさっきも私ともと君のために怒ってくれたんだと思う。今頃言いすぎたかもって後悔してるんじゃないかなぁ」

 

 そんな歩夢ちゃんが容易に想像できますね。慰めックスしたい(直球)

 

「だから歩夢のこと嫌いにならないであげてね」

 

 大丈夫、歩夢ちゃんのことを嫌いになるなんてありえないです。なんたって私がラブライブ沼に引き込まれる原因となった子ですからね。このゲームを買った理由も歩夢ちゃんとイチャイチャしたかったからですし。いやー、歩夢ちゃんと初めてデートした時のことを思い出しますね。あの歩夢ちゃんとこんなにもリアルに感じられるデートができるなんて……と胸が高鳴って止まらなかったことを覚えています。まぁこの動画では重たくて面倒な子みたいな扱いをしてしまってますけどね、私にとってはすごく思入れのある子なんです。

 

「ありがと、いい子だね。よしよし」

 

 褒めてくれているのか、侑ちゃんが頭を撫でてきます。あ^~たまらねぇぜ!

 

「……って、私なんかに撫でられても嬉しくないよね」

 

 侑ちゃんに撫でてもらえるともう気が狂うほど気持ちええんじゃ。

 

「ほんとに? 私に気を使って言ってない?」

 

 そんなことしませんよ。ほもは正直ですから。

 

「ふふっ、いい後輩を持ったなぁ……。あ、ネクタイちょっと歪んでるよ。直してあげるね」

 

 それくらい自分で直せますから。というより移動中に直しますから。そろそろ食堂に行かないと時間が無くなっちゃうんすよ。

 

「ジッとして。……はい、直ったよ」

 

 おや、侑ちゃんもリボンの辺りがいろいろと歪んでますね。

 

「もと君が脱がせてきたからね」

 

 ちょっと脱げかけで汗ばんでる感じが非常にエッッッッ! 侑ちゃんは無自覚でえっちな感じが最高なんですよね。それでいて本番の時は甘えながらえっちなところ見せてくるのがもうほんっとに……最高ですね!

 

「私そろそろ行くね。じゃあね、もと君。また放課後に部活でね。明日一緒にお昼食べるの楽しみにしてるから!」

 

 侑ちゃんも去っていきましたし、そろそろ本来の目的を果たすとしましょうか。

 では、食堂にイクゾー!(カーン)

 

 

 

 食堂に到着しました。目的の人達はどこかな……。

 

「あっ、元樹君! こっちこっちー!」

 

 見つけました。目的の人、エマさんです。数パート前にした一緒に食べる約束を果たしに来ました。

 

「あ~もと君だ~」

「こんにちは、元樹君」

 

 エマさんと一緒に彼方さんと果林さんもいますね。まぁいてくれないと困るのですが。

 

「待ってたよ。さぁさぁ、座って座って」

 

 果林さんの隣が空いているのでそこに座りましょう。誰の隣に座れるのかは完全ランダムなのですが、今回は運がよかったです。果林さんは同じ3年生のエマさんと彼方さんと比べて初期親密度が低めなので、積極的に上げていく必要があります。だから隣に座る必要があったんですね。お隣失礼します。

 

「どうぞ」

 

 ここでひと手間、わざとらしくならないようにスマホの壁紙を果林さんに見せます。

 

「あら、パンダ……可愛いわね」

 

 はい、このように一本釣りすることができます。果林さんはパンダが大好きですから、パンダに関連する何かを見せることで話題を作ることができます。だから壁紙をパンダにしておく必要があったんですね。

 

「元樹君もパンダ好きなのかしら?」

()? 果林ちゃんも好きなの?」

「わ、私は別に……ただの言い間違いよ」

 

 ほんとにぃ?

 

「ほんとよ」

「あれぇ? 昨日果林ちゃんの部屋に行った時パンダのぬいぐるみがあったような……」

「ちょっとエマ!」

 

 先輩、この人パンダのぬいぐるみ持ってるらしいすよ。やっぱ好きなんすねぇ。

 

「……えぇそうよ。パンダは可愛くて大好きよ。私のことはおいといて元樹君はどうなの?」

 

 好きですねぇ!(建前) じゃけんいつか一緒に動物園に見に行きましょうね~。

 

「いいわよ。そうねぇ……イベントが終わったくらいなんてどうかしら」

 

 いいですよ。イベント後のイベントがいっぱいだぁ。

 

「元樹君と果林ちゃん、もうこんなに仲良しなんだね~」

「そうね。どうしてかはわからないけど、元樹君には気を許せちゃうのよ」

 

 それは多分『コミュニケーション○』の効果ですね。璃奈ちゃんの幼馴染が引けるまでリセット厳選した甲斐がありました。あの時間は無駄やなかったんやなぁって。

 

「それ彼方ちゃんもわかるかも。もと君と一緒だとついつい隣で寝たくなるんだよねぇ」

 

 寝たくなるのはいつものことでは?(名探偵)

 

「そうかも~。でももと君のこと信頼してるのは本当だからね」

「わたしも元樹君に初めて会った時から、この子は何かやってくれる! って思ってたんだよ~。実際元樹君とかすみちゃんの頑張りで同好会を復活させてくれたもんね」

 

 このほも君はすでにいろんな人から信頼されてますね。多分私が操作する前の世界線でも真面目な子だったのでしょう。初期親密度が高くなっていいゾ~これ。

 

「そういえばエマから聞いたのだけれど、昨日足を捻ったんでしょう?」

 

 はい、捻ってしまいましたね。その割には銭湯に行ったりといろいろ歩き回ってますがね。

 

「ちゃんと歩けてたってことは大丈夫なのだろうけど、無理はしちゃダメよ。治るのが余計に遅くなっちゃうわ」

 

 非常事態でない限り私もほも君に無理をさせるつもりはないので安心してください。

 

「……あら、電話だわ。ごめんなさい、少し席を外すわね」

「いってらっしゃい」

 

 果林さんが席を外してしまいました。少しとはいえ親密度を稼ぐ時間が減ってしまうのは痛いですね……これは痛い……。

 

「お仕事の電話かな?」

「今日は撮影って言ってたしそうかも~」

 

 そうなんですか。ということは今日は練習にいないんですね。

 

「スクールアイドルとモデルの両立って大変だよねぇ」

「練習もすっごく頑張ってるもんね。わたしも負けないように頑張らないと……」

 

 果林さんはストイックですからね。練習でもたくさんのメニューをこなしていますから大変でしょう。でもそのストイックさこそがスクールアイドルとしての果林さんが伸びる秘訣なんですよね。そのストイックさをちょっとでも勉強に向けていれば……。

 

「おまたせ」

「おかえり。お仕事の電話?」

「そう、今日の撮影で少し問題があったみたいで……」

 

 そう……(無関心)

 

「どうかしたの?」

「来るはずだった男性モデルの人が急病で来れなくなったみたいで……」

「大変! その人は大丈夫なの?」

「ただの風邪らしいからそれは大丈夫。でも急のことだったから代わりに入れる人が見つからないみたいで、代役になりそうな人がいないか私に聞いてきたのよ」

「そっかぁ……代役って言われてもなかなか見つけられないよね」

「そうなのよ。何人か当たってみるとは言ったけど、そもそも男の人の知り合いなんてほとんどいないし……」

 

 そう……(無関心)

 

「そこで元樹君に1つお願いがあるの。今日私と一緒に撮影に参加してくれないかしら」

 

 なんだこのイベント!?(驚愕)

 

「もちろん無理にとは言わないわ。予定が入ってるかもしれないし、足のこともあるしね。それにモデルの代役だから当然雑誌に掲載されて世に出るわ。それが嫌なのであればもちろん断ってもらっても構わないわよ」

 

 多分果林さんの固有イベントの1つだとは思うのですが、私は初めて見るイベントです。動画編集中にネットで調べてみましたが何の情報も得られませんでした。なんかこんなのばかりですね。本走なのに未知のイベントが発生しまくりです。発売されてから結構経ってるゲームなのになぁ……。

 ……あっ、もしかしたら『ファッションセンス○』を取ったことで発生するイベントなのかもしれませんね。ファッション雑誌のモデルの代役ということですし、可能性としては十分あるでしょう。でもだとしたら発生条件はそこまで難しくなさそうですし、Wikiに書かれてないことが不思議なんですよね。ま、えやろ。どうせ最初に見つけた人がめんどくさがって書かなかったとかでしょう。Wikiはチャート作りの参考にするのでそういう情報はちゃんと書いてもらいたいものですね。

 

「受けてくれるの? ありがとう、助かるわ」

 

 とりあえず受けておきます。内容からして親密度が爆上がりしそうですしね。でもほも君なんかがモデルの代役でいいのでしょうか。身長は果林さんよりも低いですし、顔もめちゃくちゃイケメンというわけでもないですよ。

 

「それは心配しなくても大丈夫よ。元樹君の顔は十分整ってると思うし、背が低いならそれを活かしたコーディネートをすればいいのよ」

「わたしも元樹君はすごくかっこいいと思うよ」

「彼方ちゃんも~」

 

 めちゃくちゃ褒められてますね。ほも君のことなのに、何故か自分のことのように嬉しいです。

 

「そういうわけだからよろしくね。授業が終わったら教室まで迎えに行くわ」

 

 ちょっと待って! そんなことしたら果林さんが迷子になって迎えに来れないじゃないですか。エントランス集合にしましょう。それなら果林さんも迷子にならない……ならないよね?

 

「いいわよ、そうしましょうか」

 

 よし、これで果林さん迷子ルートは避けられそうです。果林さんに迷子になられるとかなり時間を持ってかれるんですよね。なのでデートの時なんかは特に注意が必要です。手を繋いでいればはぐれて迷子になることはないのですが、大体恥ずかしがって繋いでくれないんですよね。付き合った後であれば強引に繋いでも許してくれるのですが、付き合う前にそれをしてしまうと親密度が少し下がってしまいます。手を繋ぐくらいいいだろお前安全のためだぞ。

 

「今日は元樹君も果林ちゃんもいないのかぁ……少し寂しいね」

「撮影場所はここの近くだし、そんなに時間もかからないから最後にちょっとだけ顔を出せると思うわ」

 

 時間がどうであれほも君は絶対に学校に戻らないといけませんがね。かすみんを迎えに行かないといけないので。もしかしたらかすみんには少し待ってもらうことになるかもしれませんがそれはユルシテオニィサン。

 

「じゃあ情けないところ見せないように頑張って練習しないとねぇ」

「うん、そうだね」

 

 頑張ってくださいね。ほも君も適当な場所から応援してますから。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


侑ちゃんはまだほも君には惚れておらず、ただ甘々なだけです。だからほも君が何をしても基本的に許してくれます。ん? 今何でもって……。

どうでもいいことですが、私がラブライブ沼に浸かるきっかけとなったのはサンシャインです。確かギルキスの曲にハマったのがきっかけだったと記憶しています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part33/n

心はいつでも初投稿です。


果林さんメイン回です。何気に3年生がメイン回なのは初めてです。最近1年生ズばかり書いてたからね。
クールでかっこよくて頼りになる可愛い果林さんをご堪能ください。


あっ、そうだ(唐突) 『TOKIMEKI RunRuns』リリースおめでとうございます(激遅)
私も1週間ほどかけてやっとこさ全ステージ星3でクリアできました。1個だけかす虐の極みみたいなステージがあって草生えますよ。
難易度も高くてやりごたえがあるし、何より走る虹学メンバーがぐうかわなので、皆もインストールしてプレイ、しよう!


 ほモデルデビューRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は食堂で3年生の3人と話をしながらご飯を食べ、果林さんにモデルの代役をお願いされました。今回はその続きからで、教室に戻って午後の授業を適当に流そうと思います。

 

「おかえりなさい。楽しかったですか?」

 

 はい、とても楽しかったですよ。侑ちゃんとのイチャイチャタイムも楽しめましたしね。栞子ちゃんはどうでしたか?(鬼畜)

 

「私は……ちっとも楽しくありませんでした」

 

 まぁそうでしょうね。

 

「昔は1人での昼食なんて苦でもなかったのに、元樹さんと出会ってからそれがすごく辛いものになってしまいました。私は弱くなってしまったのでしょうか……」

 

 そんなことありません。それは弱さではなく、友達がいつも近くにいてくれているという証拠ですよ。いつも一緒にいる人がたまにいないとひどく寂しくなってしまう……その気持ち、すごくわかりますよ。

 

「なるほど……これが押してダメなら引いてみろということなんですね。その10で読みました

 

 そうなんじゃない?(適当)

 

「でも寂しいのには違いありませんから、明日は一緒に食べましょうね」

 

 実は明日も別の人と一緒に食べる約束があるんですよ。申し訳ナス……。

 

「そうですか……。まぁ元樹さんには元樹さんの交友関係がありますからね。私はその関係を捨ててくださいなんて言うつもりはありませんから。でもあまりに続くようであれば……」

 

 続くようであれば……どうなっちゃうんですか?

 

「……」

 

 何ですかその間は……ただただ怖いです。ほも君殺されちゃうの? やめちくり~(挑発)

 

「涙を流すことになりますよ。……私が」

 

 ほも君が死なないのなら問題ないですね。申し訳ないが泣き落としはNG。

 

「そんなこと言って、いざそうなったら元樹さんはちゃんと私のそばにいてくれますよね」

 

 泣いている子をほったらかしていたら親密度が爆下がりしてしまいますからね。栞子ちゃんは泣き顔も可愛いのでぜひ拝みたいけどRTAだからね、しょうがないね。

 

「ふふっ、元樹さんのそういうところ、私は好きですよ」

 

 私も栞子ちゃんのこと好きなので実質相思相愛ですね。

 

「……そういえば、元樹さんが出て行って少ししてからあなたのことを探しに来た人達がいましたよ」

 

 そう……(無関心)

 

「もっと興味持ってくださいよ……」

 

 じゃあどんな人達だったんでしょうか?

 

「直接話をしたのは1人だけですが、その方は髪の左側に髪飾りをつけていました。美人というよりも可愛い系でしたね。仕草や話し方も……その、少しあざといと言いますか……」

 

 あっ、ふーん……(察し)

 

「それと元樹さんのことを変なあだ名で呼んでいました。確か……もと男、と呼んでいたと思います」

 

 外でもそのあだ名で呼ぶのか……(困惑)

 

「リボンの色は確認し忘れてしまいましたが、全体的に子供っぽさがありましたし、おそらく同じ1年生だと思います」

 

 確かにかすみんは少し子供っぽいね。まぁそれがかすみんの魅力なわけですが。子供っぽく見えて、実は精神面では1年生組の中で一番強いっていうのがいいんですよ。あぁ、早くかすみんと付き合ってイチャイチャしたいです。かすみんは相手が同好会メンバーであれば2股を許してくれるので、このRTAにおいても初彼女として選ぶことができます。最初は幼馴染候補に入っていたのですが、その時に得られるコンディションがね……。『コッペパン作り○』はうま味がなさすぎるので諦めました。誰かの親密度が上がりやすくなるわけでもないですし、一体何のためのコンディションなんですかねぇ……。

 

「直接話したわけではないのですが、その方の他にもあと2人いましたね。1人は暗めの茶髪で、頭にリボンをつけていました。あと言葉遣いや仕草がとても丁寧でした」

 

 しずくちゃんですね。もう1人はりなりーかな?

 

「もう1人は髪がピンク色で、頂上にちょこんと寝癖がついていました。それと何故かスケッチブックを持っていましたね。何故なのでしょうか……」

 

 やっぱりりなりーでしたね。1年生組で集まっていたみたいですが、ほも君に何の用だったのでしょうか。というか意図してないタイミングで同好会メンバーと栞子ちゃんが接触しちゃってるんですけど、それは大丈夫なんですかね?

 

「用件は聞いても教えてくれなかったのですが、ちらりと聞こえた話では昼食がどうとか言ってました。もしかしたら元樹さんにお昼のお誘いをしに来たのかもしれません。元樹さんの言っていた約束相手はその方達ではなかったのですか?」

 

 違いますね。まぁ誘われても多分断っていたと思いますが。1年生組の中で親密度が告白ラインに達していないのはかすみんだけですからね。3年生組と比べてあまりうま味がありません。

 

「……元樹さんの交友関係に口を出すつもりは全くないのですが、その方達とはどういった関係なのでしょうか……?」

 

 かすみんは友達(のちの彼女)で、しずくちゃんも友達(のちの彼女)、りなりーは幼馴染(のちの彼女)です。

 

「幼馴染ぃ!? ど、どなたとですか!?」

 

 ピンクの髪の可愛い子です。

 

「あの方が……元樹さんと幼馴染……羨ましいです。あの、何故スケッチブックなんかを持ち歩いていたのか元樹さんは理由を知っているのですか? 気になるので教えてほしいです。言いにくいような理由なら言わなくてもいいのですが……」

 

 そうですねぇ……言うのはやめておきましょうか。あまり言いふらすような内容ではないですしね。

 

「なるほど、わかりました。先程スケッチブックなんかと言ってしまいましたが、あの方にとってはきっととても大切なものなんですね。……名前を教えてもらってもいいでしょうか?」

 

 ほも君です。フルネームは忘れました。

 

「いえ、元樹さんの名前ではなく……」

 

 天王寺璃奈、とってもキュートな女の子です。

 

「天王寺璃奈さん、ですね。もしまたお会いする機会があればこのことを謝ろうと思います」

 

 多分謝ってもポカンとなると思うんですけど(名推理)

 

「あ、先生がいらっしゃいましたね。私達も授業の準備をしましょうか」

 

 栞子ちゃんとのおしゃべりの時間は一旦おしまいですね。授業に見所さんなんてないので放課後まで甥の木村、加速します。

 

 

 

 放課後です。果林さんとの待ち合わせ場所であるエントランスに来ました。ですが果林さんの姿はまだありません。まーだ時間かかりそうですかね~?

 

「ごめんなさい、遅くなっちゃったわ」

 

 ようやく果林さんが来ましたね。待ち時間は36秒、普通だな!

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

 撮影場所はどこなんですか? ほも君がマップを見てあげますよ。というかほも君にやらせてください。でないと目的地に辿り着くことすらできません。

 

「大丈夫、私が案内するわ。何度か撮影で行ったこともあるし、ここから遠くないからそんなに時間はかからないと思うわ」

 

 果林さんが迷子になるから結局時間がかかっちゃうんだよなぁ……。

 

 

 

「ここで間違いないはずなんだけど……」

 

 はい、迷いました。あのさぁ……とりあえずマップを見せてください。

 

「はい」

 

 目的地は……あれ? ここですね。

 

「やっぱりそうよね」

 

 もしかして果林さんのスマホが壊れたんでしょうか。自分のスマホでも確認しましょう。……ダメですね、こちらでもここが目的地だと表示されてしまいます。ということはここが目的地に間違いないようですね。

 

「そうなるわね。私の知らない間に移転したのかしら……」

 

 さすがにそれはないと思いますけど……。建物の外観はどんな感じだったんですか?

 

「確か白塗りだったと思うんだけど……電話して聞いてみるわ」

 

 果林さんが電話で聞いてくれるみたいなので少し待ちましょう。

 

「……はぁ、わかったわよ、私達が迷子になっていた原因が」

 

 電話が終わったみたいです。それで原因は何だったのでしょうか。

 

「外壁を塗装し直したみたいよ、白から赤に。つまりちょうど私達の目の前にあるこの建物が探してた建物よ」

 

 えぇ……(ドン引き)

 

「こういうのは事前に伝えておいてもらわないと困るわよね」

 

 多分階数とか具体的な外装でわかったと思うんですけど(名推理)

 

「とりあえず中に入りましょうか」

 

 果林さんに先導してもらって中に入り、撮影スタジオまで向かいます。

 

「お疲れ様です。遅くなりました」

 

 この人が雑誌の担当者さんみたいですね。果林さんとほも君の話をしたり、ほも君と直接話したりしていますが適当に流しましょう。モブキャラにはボイスがついていないのでテキストをすぐ次に送れていいですね。

 

「服を選びに行きましょう。私が元樹君に似合うのを選んでもいいのだけれど……どうする? 最初は自分でやってみる?」

 

 やりますねぇ! やりますやります。

 

「わかったわ。私は自分のを選んでるから、何か困ったことがあればいつでも呼んでちょうだい」

 

 果林さんが服を選びに行ったのでほも君も自分のを選びましょう。といってもイベントで自動で選んでくれると思うので特にすることはないですね。……あれ? もしかしてこれは自分で選ばないといけないパターンのイベントなのでしょうか。選んでくれる気配がありません。困りましたねぇ……ほも君は『ファッションセンス○』持ちですが私自身はファッションセンス0ですからね。あっという間にクソダサほも君の完成です。悲しいなぁ……。うだうだ言ってても仕方ありませんしパパパッと選んでしまいましょう。

 

『この組み合わせはやめた方がいいかもしれない』

 

 おっと、とりあえず適当に選んだら怒られてしまいました。やっぱり適当だとダメみたいですね。次はちゃんと選びましょう。

 

『この組み合わせはやめた方がいいかもしれない』

 

 あのさぁ……(半ギレ) 私の自信作ではあったのですが、プロからしたらクソダサほも君のようです。初心者のコーディネート。

 

「どう? 決まった?」

 

 制服姿じゃない果林さんから声をかけられました。どうやら選んでいる間に果林さんは着替え終えてしまったみたいですね。すっげえ似合ってるゾ~。

 

「ありがとう。元樹君は……まだ選べてないみたいね。やっぱり私が選んであげましょうか?」

 

 オッスお願いしま~す(諦観)

 

「任せて。元樹君に似合う最高のコーディネートをしてみせるわ。こっちに来てちょうだい」

 

 頼もしいですね。ここは果林さんに任せておけば大丈夫だと思うので、ほも君は大人しく果林さんの人形になってましょう。

 

「……よし、これなんてどうかしら。流行を取り入れつつ、元樹君の身長を活かせるファッションにしたつもりよ。きっと似合うと思うわ。気に入ってくれるかしら?」

 

 いいゾ~これ。早速着替えてきますね。

 

「それはよかった。着替えはあそこを使ってね。服は脱ぎっぱなしで置いといてもいいから。私は先にスタジオに行って撮影してるから、元樹君も着替えたら来て。場所はわかるわよね?」

 

 ほも君に迷子属性はないので大丈夫ですよ。というかすぐ隣ですからね。(迷子になりようが)ないです。

 

「ならいいわ。じゃあ私は行くわね。部屋の外にスタッフさんが待機してるから何かあったら遠慮なく言うのよ」

 

 おかのした。

 

「多分大丈夫だとは思うけどサイズが合わなかったりしたら自由に合うサイズに変えてもいいから」

 

 やっぱり果林さんは面倒見がいいですね。ほも君が困らないようにいろいろと教えてくれます。でも多分困ることはないので会話の分タイムが伸びるだけなんですよね(人間の屑)

 さてと、果林さんも出て行ったことですしほも君も着替えましょう。更衣室は……1つしか空いてないみたいですね。そこを使わせてもらいましょう。……ってここはすでに果林さんが使っていたみたいですね。脱ぎたてほかほかの虹ヶ咲の制服が置いてあります。ハンガーなどがあるにもかかわらず床に脱ぎ捨てられていますけどね。お前見ろよこれなぁ! この無残な姿よぉなぁ!?

 しっかし困ったことになりましたねぇ。ここの他に更衣室は空いていませんし……というか果林さんのところはなんで鍵がかかってなかったんですかねぇ……。仕方ないのでここを使わせてもらいましょう。見知らぬ人のを使うわけにもいきませんし果林さんも許してくれるでしょう。下着が置いてあるわけでもないですしね。せめてものお詫びとしてこの無残な姿の制服達をきちんとハンガーにかけておいてあげましょうか。制服の匂いを嗅ぐなんてことはしません。したところで私に匂いが届くことはないですからね。いつかはプレイヤーにも匂いが届くようになるといいですね。おい技術革新早くしろ~。

 よし、ほも君も着替え完了です。撮影スタジオにイキますよ~イクイク……。

 

 撮影スタジオに到着しました。今は果林さんの撮影をしているみたいです。撮影中だからかいつもと雰囲気が違いますね。はぇ~すっごい魅力的……。もちろんいつもの果林さんも大好きですけどね。それにしてもやっぱり果林さんは自分の見せ方をよくわかってますね。カメラマンからポーズの修正などがほとんど入っていません。自分の魅力を最大限活かしつつ、衣装の魅力も最大限引き出す。まさしくモデルの鑑。

 

「ふぅ……」

 

 おっ、果林さんの撮影が終わったみたいですね。飲み物の差し入れを持っていきましょう。おつカレーライス!

 

「あら、ありがとう。ごくっ……ごくっ……」

 

 なんだか飲み物を飲む動作にすら美しさを感じますね。ペットボトルの蓋外し忘れてほしかった……(小声)

 

「次はいよいよ元樹君の番ね。緊張してる? 表情が固いわよ」

 

 撮影は初めてか? 力抜けよ。

 

「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。別に取って食われるわけじゃないんだから。ポーズも向こうから指定してくれるし、足に負担がかからないようにしてとも伝えてあるから。ほら、もっと力抜いて」

 

 ほも君の緊張をほぐそうと撫でてくれます。そんなことされたら余計緊張しちゃうだろ!

 

「もう大丈夫ね? じゃあ行ってきなさいな」

 

 果林さんに(物理的に)背中を押されて撮影に向かいます。

 

「……あ、そうだ。1つ言い忘れてたわ。その衣装すごく似合ってるわよ。だから自信持って」

 

 果林さんが褒めてくれました。ありがとナス! これがファッションホモかぁ……。まぁこの衣装も果林さん's セレクションなんですけどね。

 さてと、いざ撮影! ……と言ってもカメラマンの人が指示をくれるのでその通りのポーズをするだけですね。操作もそれだけなのでらくらくちんちんです。多分モデルとして正式に働くことになったら自分でポーズを決めることになるんでしょう。まぁこのRTAでは正式なモデルとして働くつもりは全くないので検証できないんですけどね。完走したら別データで検証してみましょうか。

 果林さんはというと……腕を組んでほも君の撮影を見守ってくれてます。後方彼氏面かな? やけに似合いますね。それとリラックスさせるためなのか、それとも無意識なのかはわかりませんが少し微笑んでいます。美しいですね。あ^~姫乃ちゃんになっちゃうぅ~。でも腕を組んでるのだけは許せません。露出が控えめな衣装とはいえ腕に挟まれて胸が強調されてしまっています。刺激が強すぎるっピ! まぁでもこのほも君はしずくちゃんのフェ○を乗り越えてますからね。ちょっとやそっとの刺激では動じません。

 

「お疲れ様、元樹君」

 

 撮影が終わりました。果林さんが飲み物を渡してくれたのですが、これってさっきほも君が果林さんに渡したやつですよね? 多分間接キスだと思うんですけど(名探偵) さすがのほも君もこの刺激には耐えられ……ます! というよりそもそも同じペットボトルだと気づいてませんね。態度を見る限り果林さんも多分気づいてないと思います。ポンコツだしね(辛辣)

 

「初めての撮影はどうだったかしら。楽しかった?」

 

 楽しかったです(小並感)

 

「そう、それはよかった。いい表情をしてたから楽しんでるっていうのが伝わってきたわ。ポーズも決まってたしいい写真が撮れたんじゃないかしら。発売が楽しみね」

 

 実際カメラマンが撮影中に『いいゾ~これ』って言ってましたからね。

 

「折角だから記念に1枚撮っておく?」

 

 いいですね。2人で並んで撮りましょう。

 

「そうね。じゃあこっちに来て。……ダメよ。もっとこっちに来ないとちゃんと写らないじゃない。ほら、こっちに……ね?」

 

 果林さんの腕がほも君の腰に回され、そのまま引き寄せられてしまいました。先輩!? 何してんすか! やめてくださいよホントに! さすがにこれは刺激が強すぎます。姫乃ちゃんも昇天するレベルですよ。いくらほも君といえどこれは……。

 

「……もっと恥ずかしそうにしてくれるかと思ったのだけれど……普通ね」

 

 おや? 意外と効いていないようです。なんで?

 

「もしかして慣れてる?」

 

 それは確かにありそうですね。かすみんを筆頭に、りなりーやしずくちゃんが結構抱きついたりしてきますからね。今更抱き寄せられたくらいでは動じないのでしょう。(1年生)3人に勝てるわけないだろ!

 

「まぁいいわ。このまま撮っちゃいましょう。はいチーズ」

 

 いえーい! 姫乃ちゃん見てるー?

 

「撮れたわ。後で送っておくわね」

 

 ありがとナス!

 

「さてと、私達の分の撮影は終わったし着替えに行きましょう。この後この建物の中を見学させてもらえるみたいだけど……」

 

 そう……(無関心)

 

「興味なさそうね。じゃあ少し早いけど帰りましょうか」

 

 でも今から帰っても練習は中途半端にしかできなさそうですね。じゃけんどこかで遊んでから帰りましょうね~。

 

「そうしましょうか。お互いのことをよく知るいい機会になるしね」

 

 そうですね。私は果林さんのことをあんなことからこんなことまで全部知っていますが、果林さんはほも君のことをあまり知らないはずですからね。関係を深めるためにもほも君のことをもっと知ってもらいましょう。

 

「……なんで制服がハンガーにかけられてるのかしら……」

 

 僕がさっき、かけちゃいました。

 

「それにこれ……元樹君の制服よね……?」

 

 僕がさっき、使っちゃいました。

 

「使ったぁ!? この更衣室を!?」

 

 他のところが空いてなかったので……。

 

「た、確かに空いてないわね……。私が着替え終えた時には空いてたのに……」

 

 ほも君の衣装を選ぶのにそこそこ時間がかかりましたからね。その間に使われてしまったのでしょう。

 

「……まぁいいわ。見られて困るようなものがあったわけじゃないし……」

 

 あの無残な姿の制服達は見られたら困ると思うんですけど(名推理)

 

「先に私が着替えてもいいかしら?」

 

 あ、いいっすよ(快諾)

 

「ありがとう。……覗いたりしちゃダメよ?」

 

 (タイムが伸びるので覗か)ないです。もしこれがRTAじゃなくて通常プレイだったら覗いてました。当たり前だよなぁ?

 ということで果林さんが着替え終えるまで待ちましょう。でも待っている間暇ですよね? あまりに暇なので皆様のためにぃ~こんな動画を……って侑ちゃんから突然連絡がきましたね。トキラン神社アレンジを流す予定でしたが潰れてしまいました。一体何の用でしょうか。

 

『あっ、もと君?』

 

 はいはいほも君ですよー。

 

『モデルのお仕事中にごめんね。今大丈夫?』

 

 無問題ラ! 何かあったのですか?

 

『スポドリの素がどこにあるかわからなくて……』

 

 棚に入ってないですか?

 

『それが見つからなかったんだよねー』

 

 おかしいですねぇ。昨日の時点ではまだ結構残っていたのですが……物陰に隠れてたりしませんか?

 

『あ、そっか。ちょっと待ってて、探してみるね。……あった! 見つかったよ!』

 

 ハァ~~……(クソデカため息) あ ほ く さ  でも侑ちゃんが嬉しそうなので今回は許してあげましょう。

 

『もと君のおかげで助かったよ。ありがとう』

 

 どういたしまして。じゃあ切りますね。練習頑張ってください。

 

『うん、皆に伝えておくね。もと君もモデルのお仕事頑張ってね。もと君が出てる雑誌絶対に買うから!』

 

 ありがとナス! まぁ多分雑誌の売り上げはほも君には関係ないですけどね。

 

「着替えたわ」

 

 侑ちゃんと話している間に果林さんの着替えが終わったみたいですね。

 

「誰かと電話してたみたいね。相手は誰だったの?」

 

 侑ちゃんです。スポドリの素が見つからなかったみたいでほも君に助けを求めてきました。

 

「ああ、なるほど。いつも元樹君が用意してくれるものね」

 

 飲み物に粉を混ぜるのはほも君の得意分野ですよ。サッー!(迫真) おまたせ、スポーツドリンクしかなかったんだけどいいかな?

 さてと、更衣室も空きましたしほも君も着替えましょう。パパパッと着替えて終わり!

 

「これ、元樹君にってさっき渡しに来たわ」

 

 更衣室から出たら果林さんから謎の封筒を2つも渡されました。

 

「こっちが今日の分のお給料。少し多めに入れてくれたみたいよ。代役とは思えないほどいい写真が撮れたからですって。よかったわね」

 

 気前がいいですね。どれどれ、いくらもらえたのかな……って3万!? うせやろ? ほも君がしたことといえば1回分の撮影だけですよ。これで3万ももらえるのか……(困惑)

 でも正直助かります。デート代にかなり余裕ができますからね。果林さんの親密度を稼ぎつつお金ももらえるなら滅茶苦茶美味しいイベントですね。当時は若く、お金と愛が必要でした。Wikiに書いてあったら最初からチャートにちゃーんと加えてたのになぁ……。

 

「こっちの封筒には写真が入ってるみたいよ。記念に何枚かどうぞって」

 

 写真ですか。ベツニイラナ……ごほんごほん。どんな写真が入ってるんでしょうか。早速見てみましょう。……ふむふむ、オフショットが中心みたいですね。ほも君がガチガチに緊張してるところや果林さんに撫でてもらってるところなんかが撮られています。……おや? この果林さんとの2ショットだけ何故か2枚入ってますね。ミスでしょうか。折角ですから1枚は果林さんにプレゼントしましょう。

 

「あら、私にくれるの?」

 

 はい、どうぞもらってください。同じ写真を2枚も持ってても意味ないですからね。どうせ見返すこともないし(小声)

 

「そう、ならもらっておくわ。ありがとう。私も記念として大切にするわね」

 

 お賃金とおまけももらいましたし、そろそろ行きましょうか。

 

「そうね。誰かと一緒に遊びに行くだなんて久し振りだわ。どこに行こうかしら」

 

 学校までの道中で適当に探せばいいんじゃないですかね(適当)

 

「その方がいいわね。あまり遠くまで行く時間もないし」

 

 では、適当なところにデッデッデデデデ!(イクゾー!)

 

 

 

「……あら、お化け屋敷じゃない」

 

 はぇ~路上にお化け屋敷なんてあるんすねぇ……。どうやって設置したのかな?

 

「しかもタダみたいね。折角だし入ってみる?」

 

 そうですね、入りましょうか。

 

「すみません、2人いいかしら」

 

 お化け屋敷なんて子供の頃に行ったきりですね。親に連れられて入ったお化け屋敷がトラウマになって、しばらく暗闇を見れなかったのはいい思い出です。お化け屋敷を題材にしたゲームがあれば今度RTAを走ってみましょうか。

 

「なかなかの雰囲気ね。何か出そうだわ」

 

 果林さんは余裕そうですね。ほも君は……あれ、あまり余裕がなさそう?

 

「きゃっ!」

 

 目の前に白装束を着た女性が現れました。よくあるやつですね。正直言って全く怖くないです。果林さんはそれも含めて雰囲気をエンジョイしてるみたいですが……

 

「……って元樹君?」

 

 元樹君はダメみたいですね。果林さんに思いっきりしがみついています。

 

「もしかして怖いの苦手?」

 

 そうみたいですね。少し怖がりすぎな気もしますが……。

 

「ふふっ、意外に可愛いところあるじゃない。いいわよ。そばにいてあげるから存分に怖がりなさいな」

 

 ありがとナス! じゃあ果林さんにしがみついたまま進んでもらいましょう。ただ体だと少々歩きづらいのでしがみつくのは腕にしましょうね。

 

「あら、あそこ……」

 

 果林さんが何もないところを指差しました。ほも君をからかうためでしょうか。そうじゃないなら透視か幻視ですね。どちらにしてもほも君には効果抜群です。足が完全に止まっちゃってます。止まるんじゃない、犬のように駆け巡るんだ!

 

「ちょっと脅かすつもりだったのだけれど、こんなに怖がられると罪悪感が……」

 

 こんなに怖がるとは私も思っていませんでした。ですが今更引き返すこともできませんし、ほも君には頑張って進んでもらいましょう。今回お化け屋敷に突入する少年はほも君っ! まだ15歳のこの少年は、このお化け屋敷に耐えることができるでしょうか。それではご覧ください。

 

「よしよし、ほら泣かないの」

 

 ダメみたいですね(諦観) 次のお化けが出た瞬間に涙目になってしまい、果林さんに頭を撫でてもらっています。ほも君がこんなに怖がってるからか、お化け役の人達も嬉しそうですね。毛ほども怖くないのに(辛辣)

 このままほも君がビビッて果林さんに縋るところを見ているのも面白いのですが、それ以上のイベントもなかったため脱出するまで加速します。動画の尺の都合もあるからね、しょうがないね。

 

 

 

 無事……かどうかはさておき、お化け屋敷から脱出することができました。今は出口付近の休憩所でベンチに座って休憩しています。ほも君は精神的にかなり疲労しましたからね。

 

「久し振りだったけど楽しかったわ」

 

 果林さんはエンジョイしてましたね。特にほも君関連で。ほも君を慰めてくれたり、時折ほも君を怖がらせたりとすごく楽しそうでした。まぁそのたびにほも君が泣くので結局果林さんが慰めることになってましたけどね。

 

「元樹君はかなり怖がってたけど楽しめたかしら?」

 

 あんなに泣いていたけど楽しかったみたいですね。やっぱり果林さんの体の柔らかさや匂いを堪能できたからでしょうか。こいつすげぇ変態だぜ?

 

「それはよかったわ。私だけが楽しんでるんじゃないかと少し心配してたの」

 

 その割にはほも君を怖がらせて楽しんでましたよね?

 

「あれは元樹君の反応が可愛かったから……ごめんなさいね、許して」

 

 もう許せるぞオイ!

 

「でも元樹君が怖いものが苦手だとは思わなかったわ。怖いものなしっていう勝手なイメージがあったけど、そんなことなかったのね」

 

 ほも君も人間ですからね。怖いものの1145141919810個くらいありますよ。でもほも君は克服したいと思ってるみたいですね。

 

「あら、そんなに気にしなくてもいいのに。1つくらい弱点があった方が可愛くなるものよ」

 

 鈍感だったり貧弱だったりと、もう十分弱点だらけなんだよなぁ……。

 でも果林さんの言うことは正しいのかもしれません。勉強ができなかったり朝起きられなかったり部屋の片付けができない果林さんはすごく可愛いですからね。果林さんの部屋に精○ぶちまけて一緒に片付けしたい。あっでもそれはさすがに片付けるのがしんどいですね。飛び散らないようにちゃんと1か所に注いであげましょう。

 

「璃奈ちゃんはなんて言ってるの?」

 

 このことはりなりーにも隠してるみたいです。隠し事はしないって約束ろくに守られてませんね。りなりーもりなりーで恋心を隠してますし。ガバガバ約束事くん、好きじゃないけど嫌いじゃないよ。

 

「へぇ、誰にも言ってないのね。じゃあ私がハジメテってことになるわね」

 

 どこかいやらしさを感じる言い方ですねぇ……。テキスト上で『初めて』がカタカタ表記なのもいやらしさを感じます。

 

「さてと、そろそろ移動しましょうか。人も増えてきたしね」

 

 そうしましょう。ずっとここにいてもタイムが伸びるだけですからね。

 

「次はどこに……あ」

 

 果林さんの視線がすぐ近くのゲームセンターに固定されてしまいました。一体何を見つけたのでしょうか。

 

「あれ、パンダ……」

 

 指差した先に1枚の張り紙がありますね。その張り紙には『パンダのぬいぐるみ入荷』と書かれています。あっ……(察し)

 

「……ねぇ、折角だし……」

 

 このぬいぐるみが欲しいんでしょうね。でもクレーンゲームの景品ですよ? はたして果林さんに取れるのでしょうか。

 

「大丈夫よ」

 

 ほんとぉ?

 

「きっと大丈夫。何とかなるわ」

 

 少し心配ではありますが……ま、えやろ。最悪ほも君が代わりに取ってあげればいいですからね。プリティーなダービーのミニゲームで鍛えたクレーンゲーム力を見せてあげましょう。ほらいくどー。

 

「広いわね。ぬいぐるみはどこにあるのかしら……」

 

 案内板があるわけではありませんし、適当に歩き回って探せばいいんじゃないですかね(適当)

 

「そうしましょうか。元樹君も何かやりたいゲームがあったら遠慮しないで言ってくれていいからね」

 

 どうやらほも君はあのダンスゲームをやりたいみたいですね。

 

「でもあれはかなり激しく動くでしょ? 足に悪いからダメよ」

 

 果林さんの言う通りです。足の治りが遅くなるのでやめてください。

 

「……え? 私が代わりにやるの?」

 

 果林さんに代わりにプレイしてもらいたいみたいです。見たーい。見たーい。果林さんが踊るとこ見たーい。

 

「しょうがないわね。1回だけよ?」

 

 やってくれるみたいです。よかったね、ほも君。まだ本格的なダンス練習は始まっていませんが、現時点で果林さんはどれくらいできるのでしょうか。運動神経はかなりいい部類に入りますからね。そこそこの記録を出してくれるのではないでしょうか。

 

「えっと、画面に流れてくる矢印と同じ床の矢印を足で押せばいいのね」

 

 チュートリアルでゲームルールを理解したみたいです。いよいよ本番ですね。後方彼氏面で見守りましょう。

 

「ふっ、ほっ、やっ」

 

 どこがとは言いませんが揺れていますね。あぁ^~たまらねぇぜ! それから腰使いが非常にえっちです。これが『Starlight』に繋がるんですね。あぁ^~たまらねぇぜ! そしてフリフリと揺れるプリップリのお尻。さすがの大きさですね。あぁ^~たまらねぇぜ!

 

「ふぅ……まぁなかなかの結果じゃないかしら」

 

 果林さんのエチチな体を観察してたらいつの間にか終わっていました。スコアは普通といった感じですね。ですが初プレイであったことを考えると十分高いと思います。

 

「意外と楽しめたわ。……あら?」

 

 隣の筐体で同じ曲をやっている人がいますね。そこそこやりこんでいるのか動きがいいですね。これはいいスコアが出そうな予感が……あっ、ふーん……(察し)

 

あの人、私よりも高い……ごめんなさい、もう1回やってもいいかしら?」

 

 これは果林さんの負けず嫌いが発揮されてしまいましたねぇ……。こうなるとさっきの人のスコアを上回らない限りプレイが続くでしょう。やめてくれよ……(絶望)

 

「ほっ、ほっ、ほっ……いい感じ……」

 

 1回目で慣れたのか、先程よりもかなりいい感じになっています。表情も真剣そのものって感じですね。この調子なら1コインで終わるかもしれません。というか終わらせてくれ(切実)

 

「やったわ! 元樹君見て! 記録更新よ!」

 

 おっ、無事記録更新できたみたいです。よかったですね。余程嬉しかったのか滅茶苦茶はしゃいでいます。年相応って感じがして可愛いですね。

 

「……あっ、ごめんなさい。ついはしゃいじゃったわ……このことは皆には内緒ね?」

 

 なんで秘密にする必要なんかあるんですか。

 

「だって私のクールなイメージを崩しちゃうじゃない」

 

 クールな果林さんも、ついついはしゃいじゃう可愛らしい果林さんも、どちらも果林さん自身なんですから隠す必要はないと思いますよ。むしろもっと見せろ(豹変)

 

「……元樹君って、そんな恥ずかしいことも平然と言えちゃうのね……」

 

 恥ずかしがる必要なんかありませんからね。果林さんのいいところなんていくらでも言えちゃいますよ。可愛い(K)! 美人(B)! セクシー(S)

 

「……ふふっ、元樹君って面白いわね。クールなところも、そうじゃないところもどっちも私……いい言葉ね。こんなこと言ってくれたのはキミが初めてよ」

 

 私は幾度となくこのセリフを果林さんに言いましたけどね。

 

「でもやっぱり秘密にしておいてもらえるかしら。皆に知られるのは恥ずかしいし……元樹君が怖いものが苦手なのも秘密にしておいてあげるから、ね?」

 

 しょうがねえなぁ。

 

「約束よ? もし破ったりしたら……元樹君の秘密も皆にバラしちゃうからね」

 

 ほも君はどうしても皆に知られたくないみたいです。果林さんのことは絶対にひみつにしなければなりませんね。まぁいずれほも君関係なしに皆知ることになるんですけどね。悲しいなぁ……。

 

「あら、もうこんな時間……」

 

 もう5時半手前ですね。そろそろ学校に戻らなきゃ(使命感) でもその前にパンダのぬいぐるみをゲッチュしないとですね。ぬいぐるみのある台はさっき見つけておきましたよ。

 

「それは助かるわ。さっ、早く取りに行きましょ」

 

 少し早歩きになってますね。パンダのぬいぐるみが早く欲しくてたまらない果林さん好き、手を繋ぎながら一緒にパンダを観察したい。でも早歩きするのはNG。ほも君の足に負担がかかりますからね。

 

「これね……500円で取れるかしら」

 

 知らなーい。まぁ取れなかったらほも君が代わりに取るので安心してください。

 

「ここかしら……あっ、落ちちゃったわ……」

 

 ダメみたいですね(諦観) アームからぬいぐるみが落ちるたびに悲しそうな表情になっています。そそりますね。落ちろ!

 

「これが最後……あぁ……」

 

 落ちたな(確信)

 

「はぁ、ダメだったわ……。仕方ないからこのぬいぐるみは諦めることにするわ」

 

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子) 未練たらたらって表情でぬいぐるみの方を見つめてますよね。ほんとに諦めてもいいんですか?

 

「だって取れなかったんだから仕方ないじゃない。ここでお金を使いすぎるわけにもいかないし……」

 

 じゃあ代わりにほも君が取ってみせましょう。

 

「元樹君もやるの? 構わないけど、難しいわよ?」

 

 大丈夫です。ぬいぐるみの1個や2個簡単にとってみせましょう。ホラ、見ろよ見ろよ。

 

「わかったわ。後ろから見守ってるわね」

 

 ではやっていきましょう。絶対に失敗しないという意思を込めて100円だけ投入します。レバーでアームをぬいぐるみの位置に合わせて……ボタンを押して降下! よしっ、ぬいぐるみを持ち上げました! このまま運んでイキますよ~イクイク……。

 

「あっ」

 

 ファッ!? 振動でアームからぬいぐるみが落ちてしまいました。ふざけんじゃねぇよお前これどうしてくれんだよ! お前のアームガバガバじゃねえかよ。頭に来ますよ!

 

「残念だったわね。……あら、もう1回やるの?」

 

 もろちんです。ここで引き下がるわけにはいきませんからね。幸い落下口の近くにぬいぐるみが落ちたので、次の1プレイで取ってみせます。

 さっきと同じように位置を合わせて、アームで持ち上げます。暴れんなよ……暴れんなよ……よしっ、無事に取ることができました。やったぜ。投稿者:変態糞マネージャー。8月16日(水)、07時14分22秒。

 

「やったじゃない。おめでとう」

 

 ありがとナス! でも今とったぬいぐるみはこのまま果林さんにプレゼントしましょう。

 

「私に? 受け取れないわ。この子は元樹君が取った子だもの」

 

 受け取ってくれませんねぇ。もしかしたらここでも負けず嫌いが発揮されてるのかもしれません。自分は取れなかったのにほも君が簡単に取っちゃったのが悔しいのでしょう。可愛い。でも受け取ってくれないと困るんですよね。ホラホラホラホラ。

 

「……ほんとにいいの? このまま私に渡したらこの子は一生帰ってこないわよ? それでもいいの?」

 

 いいっつってんだろ(半ギレ)

 

「そう、ならありがたく受け取っておくわ。ありがとう、元樹君」

 

 やっぱ……果林さんの……笑顔を……最高やな!

 

「ふふっ、可愛い」

 

 おまかわ。

 

「何か元樹君にお礼をしないといけないわね」

 

 そんなことしなくていいから(謙虚) このぬいぐるみは同好会に入ってくれたお礼ですよ。

 

「同好会に入ったお礼? それこそいらないわよ。私は彼方への義理でも、ましてや解散させられることへの同情で入ったわけじゃない。スクールアイドルに興味があったから入ったの。あとはそうねぇ……元樹君に興味が湧いたから、かしら」

 

 興味が湧いた? 果林さんに何か興味を持たせるようなことしましたっけ?

 

「私がグループ活動が苦手って言った時、グループじゃなくてもいいって元樹君言ってたでしょ? あれ、私は結構衝撃的だったのよ? スクールアイドルってグループってイメージがあったから、カバーするからグループとして頑張れって言われると思ってた。侑達はグループで活動するつもりだったろうからそう思ってたと思う。でも元樹君だけは違った。グループにこだわる必要なんかない、むしろソロの方が私達にはぴったりだって」

 

 まぁあなたちゃんの言葉丸パクリなんですけどね。

 

「それにあの言葉は私に入ってもらうために言ったわけじゃないわよね。あの言いぶりからして、私が入っても入らなくてもソロ活動メインにするつもりだったんでしょ?」

 

 そうしないと虹ヶ咲のストーリーが崩壊してしまいますからね(メタ発言)

 

「それって結構すごいことだと思うの。皆のことをちゃんと理解して、どうすべきか考えて、そして決断する。それに皆からあんなに信頼されてることも。ソロアイドルなんてそう簡単にできることじゃないでしょ? それなのに元樹君の言葉を聞いて、不安になるどころかむしろワクワクしているように見えた。それってきっと皆が元樹君のことを信頼しているから、元樹君の言葉を信頼しているからだと思うの。同級生も先輩も、皆が元樹君のことを信頼してる……だから興味が湧いたのよ」

 

 はぇ~……(適当)

 

「少し長くなっちゃったわね。結局私は自分の意思で同好会に入ったってことを言いたかったのよ。だから元樹君が気にする必要なんてないの。わかった?」

 

 わかりました!

 

「ふふっ、いい子ね。というわけだから何かぬいぐるみのお礼をしないとね。何がいいかしら?」

 

 お礼なんて後でいいですから、今は学校に戻りましょう。さっきかすみんから『6時までに戻ってくる?』って連絡が来たので。

 

「かすみちゃんから? それなら早く戻らないといけないわね」

 

 じゃけん学校に向かいながら話しましょうね~。

 

「それにしてもかすみちゃんから……ね。元樹君に会いたくて仕方ないのかしら」

 

 多分お泊まり会があるからだと思うんですけど(名推理)

 

「……待って。もしかしてかすみちゃんともお泊まりするの?」

 

 やりますねぇ!

 

「なるほど……しずくちゃんも苦労するわね

 

 かすみんは現時点ではまだ好意を抱いていないはずなので大丈夫だと思いますよ。

 

「元樹君は好きな子とかいないの?」

 

 おっと、唐突にぶっこんできましたね。もちろんここはいないと答えます。ここで特定の誰かを答えてしまうと後にどう響くかわかりませんからね。最悪ハーレムルートが不可能になってしまう可能性すらあります。

 

「そうなのね」

 

 逆に果林さんはいないんですか?

 

「へっ……? わ、私は……いないわよ。悪い?」

 

 別に悪くはないですよ。最初から知ってましたからね。というかいたら困ります。でも告白されたことくらいはありそうですね。

 

「告白なんてされたことないわ。高嶺の花だと思われてるのか、皆遠くから見るばかりで全然言い寄ってきてくれないのよ」

 

 まぁゲームのシステム的にそうなってますからね。このゲームにNTR要素は基本的にはありません。少なくとも知らないところで知らない男に寝取られたなんてことは現時点では確認されていません。なので安心して彼女を作ることができますね。

 

「そういう元樹君こそされたことないの?」

 

 ないです。当たり前だよなぁ?

 

「あら意外。元樹君って優しいからてっきり告白されたことくらいあると思ってたわ。彼女が欲しいとか思わないの?」

 

 そうですね……11人くらい欲しいですね。果林さんは?

 

「うーん……恋はしてみたいって最近思うようになったのだけれど、いいと思える人がなかなかいないのよねぇ……」

 

 今美女の眼光でほも君のことをチラッと見ましたね。

 

「でも今日一緒に出かけてみて、元樹君が彼氏だったらいいのにって少し思ったわ」

 

 これは……どっちだ? からかおうとしているのか、それとも本当にそう思っているのか……判別できませんね。どうにかして判別できれば今の親密度がある程度わかるので今後の役に立つのですが、こういう時の果林さんはポンコツ力を発揮してくれないので難しいかもしれませんね。表情からも全く読み取れません。

 

「少し顔が赤くなってるわよ? もしかして照れちゃった?」

 

 照、照れますよ……。でもこういうことを言うってことはさっきのはからかっていた可能性が高いですね。もちろん照れ隠しという可能性もなくはないですが……。

 

「あら、もう学校ね。元樹君と話しているとなんだか時間が短く感じるわ」

 

 いつの間にか校門前まで来ていました。これで果林さんとのデート、もといほも君のモデルイベントは終了ですね。

 

「今日は楽しかったわ、ありがとう。元樹君からもらった写真とこのぬいぐるみ、大切にするわ。また一緒にどこか遊びに行きましょうね」

 

 私も果林さんとまたお出かけして親密度稼ぎしたいですねぇ! でも果林さんの方からこう言ってくれるということはそこそこ親密度が稼げている証拠ですね。やはりぬいぐるみ効果でしょうか。

 

「さぁ、部室に戻りましょうか。さっきもらった写真、皆にも見せてあげたらどうかしら」

 

 そうしましょうか。せつ菜ちゃんが見たら大興奮しそうですね。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


前回の投稿から今回の投稿までの間に感想がいっぱいもらえてウレシイ……ウレシイ……。
最新話以外の感想も随時募集してますのでいっぱい感想書いて♡ 書け(豹変)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part14/m

初投稿ネタが思いつかなかったので初投稿です。


Part32と33を1話に詰め込んで加筆したらすっげぇボリューミーになったゾ~。
これを書くためにPart33を見返してたら誤字をいっぱい見つけてしまいました。悲しいなぁ……。


「うーん、まだかなぁ……」

「エマ?」

 

 いつも楽しそうなエマだけど、今日はどこかそわそわしている。キョロキョロと辺りを見渡していて、まるで誰かを待っているようだ。

 

「エマちゃん、誰か待ってるの?」

「実は元樹君も一緒に食べるって約束してるの!」

「今日は元樹君もここに来るの?」

「うん、そうだよ」

「それは楽しみだな~。さすがの彼方ちゃんも期待でおめめパッチリ……」

「すでに寝かけてるじゃない」

 

 彼方がウトウトし始める。元樹君が来るまでに寝ちゃうんじゃないかしら。

 

「まだかなぁ……何かあったのかな」

「もしかしたらあれのせいかも」

「あれ……? あぁ、もしかして足のこと?」

「足? もしかして元樹君足が悪いの?」

「昨日練習中に捻っちゃったんだって」

「それは大変ね……大丈夫そうなの?」

「うん、昨日は普通に歩いてたから多分大丈夫だとは思うけど……もしかしたら今日になって痛くなってきたのかも」

「もと君って多分痛いのとか苦しいのとか隠しちゃう子だと思うから、昨日の時点で痛かった可能性も……」

「あるかも……。はぁ、昨日もっとちゃんと言っておけばよかったかなぁ」

 

 たとえ言ったとしてちゃんと教えてくれたかしら……。そういう子は周りに心配をかけさせたくなくて本心を隠しちゃうのよねぇ。

 

「まぁ元樹君が来た時に歩き方を見ればいいんじゃない? 変な歩き方をしてればすぐにわかるわよ」

「そっか」

「それに、ほら。噂をすれば来たみたいよ」

「あっ」

 

 食堂の入り口に元樹君の姿が見える。私達を探しているのかその場で食堂全体を見回している。でも私達が座っている席は入り口からだと他の人達で隠れちゃうから、あそこからだと見つけられないかもね。

 

「元樹君! こっちこっちー!」

 

 それを知ってか知らずかエマがその場で立ち上がって元樹君に手を振った。元樹君もエマに気づいたみたいで手を振り返してからこちらに歩いてくる。

 

「……歩き方を見る限り大丈夫そうね」

 

 元樹君の歩き方を観察してみたけど、片足をかばったり、引きずったりするような歩き方はしていない。

 

「そうだね。よかったぁ……」

「そうね。彼方も……彼方?」

 

 彼方はいつの間にか眠ってしまっていた。ほんといつどこでも寝ちゃうんだから……。

 

「彼方起きて。元樹君が来たわよ」

「……ふぇ、もと君が~……?」

「あんなに楽しみにしてたのに、その時間を寝て過ごすなんて嫌でしょ?」

「うん、彼方ちゃん起きる~」

 

 エマも彼方も元樹君のことをほんと大切に思ってるのね。2人を見ていると伝わってくるわ。

 

「果林ちゃん、どうして笑ってるの?」

「何でもないわ」

「? 変な果林ちゃん」

「エマ先輩、彼方先輩、果林先輩、こんにちは」

 

 そうこうしているうちに元樹君が私達の席までやってきた。

 

「あ~もと君だ~」

「こんにちは、元樹君」

「待ってたよ。さぁさぁ、座って座って」

「隣失礼しますね果林先輩」

「どうぞ」

 

 元樹君が隣に座ったので、食器を少し右に寄せて元樹君のスペースを広げる。その時、元樹君のスマホの画面が目に入った。

 

「あら、パンダ……」

 

 壁紙が美味しそうに笹を食べるパンダだった。

 

「可愛いわね」

「ん? これですか? 可愛いですよね」

「元樹君もパンダ好きなのかしら?」

()? 果林ちゃんも好きなの?」

「わ、私は別に……ただの言い間違いよ」

 

 思わず自分がパンダ好きであることがバレてしまうところだった。意外な同士を見つけてついつい興奮してしまった。

 

「ほんとですかぁ?」

「ほんとよ」

「あれぇ? 昨日果林ちゃんの部屋に行った時パンダのぬいぐるみがあったような……」

「ちょっとエマ!」

 

 そういえば昨日エマに見られたんだった。やっぱり隠しておくべきだったかしら……。でもその時に部屋の片付けも手伝ってもらったから、隠しても結局見つかってたかもしれないわね。

 

「ふぅん……」

 

 元樹君が目で訴えかけてくる。パンダ好きなんですよね、と。もう誤魔化せそうにない。

 

「……えぇそうよ。パンダは可愛くて大好きよ」

 

 やっぱりねといった目で皆見てくる。それが恥ずかしくて話題の中心を元樹君にずらす。

 

「私のことはおいといて元樹君はどうなの?」

「俺もパンダ大好きですよ。仲間ですね。もしよかったら今度一緒に動物園に行きませんか?」

 

 これはデートのお誘いかしら? ……恥ずかしがるような様子はないし、私の考えすぎかもね。そもそも断る理由なんてないのだけれど。

 

「いいわよ。そうねぇ……イベントが終わったくらいなんてどうかしら」

「それくらいがいいかもですね。ライブを頑張ったご褒美みたいな感じで」

「元樹君と果林ちゃん、もうこんなに仲良しなんだね~」

「そうね。どうしてかはわからないけど、元樹君には気を許せちゃうのよ」

 

 元樹君相手なら何でも話せちゃう気がする。それだけ信頼してるってことかしらね。

 

「それ彼方ちゃんもわかるかも。もと君と一緒だとついつい隣で寝たくなるんだよねぇ」

「彼方先輩が眠たくなるのはいつもでは?」

「そうかも~。でももと君のこと信頼してるのは本当だからね」

「わたしも元樹君に初めて会った時から、この子は何かやってくれる! って思ってたんだよ~。実際元樹君とかすみちゃんの頑張りで同好会を復活させてくれたもんね」

「そんな、照れますよ……」

 

 恥ずかしそうに頬をかく元樹君を横目で見る。

 

「そういえばエマから聞いたのだけれど、昨日足を捻ったんでしょう?」

「まぁ……そうですね。やっちゃいました」

「ちゃんと歩けてたってことは大丈夫なのだろうけど、無理はしちゃダメよ。治るのが余計に遅くなっちゃうわ」

「はーい」

 

 ほんとにわかってるのかしら……。

 

「……あら、電話だわ」

 

 ちょうどお茶を飲もうとしたタイミングで私のスマホが震えた。雑誌の担当者さんから……? 今日の撮影についてかしら。

 

「ごめんなさい、少し席を外すわね」

「いってらっしゃい」

「ごゆっくりどうぞ」

 

 食堂の外に出て、邪魔にならない場所で電話に出る。

 

「はい、朝香です」

『もしもし、雑誌担当の木下ですけど。急に電話してしまいましたが、今時間大丈夫でしたか?』

「大丈夫です。今日の撮影のことで何かあったんですか?」

『そうなんです。実は今日来てくれるはずだったモデルの人が急病で来れなくなってしまって……』

「その人の体調は大丈夫なんですか?」

『ただの風邪のようで、ちょっと熱があるだけみたいなので大丈夫ではあるのですが……ただ急なことだったので代わりのモデルが見つからなくて……』

 

 それはかなり大変な事態ね。その人だけ別日に撮影するとしてもコストがかかるし、ましてや撮影自体を延期するなんてありえない。だから別のモデルに代役を依頼するのだけれど、どうやらそれが見つからないらしい。当日急に来れなくなるのはたまにあることだけれど、代役が1人も見つからないというのはかなり珍しい。

 

『朝香さん、誰か引き受けられそうな人に心当たりありませんか? 男性のモデルさんなのですが……』

「そうですね……」

 

 心当たりのある人をとにかく挙げていく。といっても両手で数えられるほどしかいない。それにどの人もすでに確認済みで今日は参加不可能とのことだった。

 

『うーん……こうなったら素人の方にお願いすることにしましょうか。ちょっとしたバイトみたいな感じで。朝香さん誰かよさそうな知り合いの方はいませんか?』

 

 男性の知り合い……生憎そんな人は元樹君しかいない。

 

「1人いますけど、身長が少し低めで……」

『大丈夫ですよ。むしろこの雑誌にもそういったモデルの人も今後取り込んでいきたいと考えていたので。ただやっぱりある程度顔の整った人がいいですね』

「顔……」

 

 そう言われて元樹君の顔を思い浮かべる。……うん、全く問題ないはず。それどころか私から見れば他のどのモデルよりもかっこいいと思う。これがいわゆるタイプということなのでしょうね。

 

「大丈夫です。雑誌で他のモデルと並んでも全く見劣りしないと思います。少なくとも木下さんには満足していただけるかと」

『朝香さんがそこまで言うのなら安心できますね』

「ただ、引き受けてもらえるかは少し微妙で……」

『なるほど、わかりました。ではその方と今からお話しすることはできますでしょうか。私の方からきちんと事情を説明してからオファーしておきたいので』

「えっと、私からではダメでしょうか。知らない人から話をされるより、気の知れた私から話した方が彼も緊張しないですむと思いますし……」

 

 それに木下さんが相手だと元樹君も断りずらいかもしれない。元樹君が衣装を着て撮影するところは見てみたいけれど、やりたくない気持ちを押し殺してほしくない。元樹君がやりたくないのであれば無理してやってほしくない。その時は木下さんに別の人を探してもらう。

 

『……わかりました。ではその方へのオファーは朝香さんにお願いしますね。OKが貰えなかった場合に備えて私も別の人を探しておきますので、返事を貰え次第メールで私に送ってください』

「わかりました」

『では失礼します』

 

 食堂に戻りながら考える。どうすれば元樹君に気を遣わせないような説明ができるだろうか。……まぁシンプルに嫌なら断ってくれていいと言うのが一番ね。変に言葉を選んだりしたら余計に気を遣わせてしまうだろう。

 

「おまたせ」

 

 席に戻ると3人が仲良く話しながら食事を楽しんでいた。さっきまで眠たそうにしていた彼方もしっかり起きている。

 

「おかえり。お仕事の電話?」

「そう、今日の撮影で少し問題があったみたいで……」

「どうかしたの?」

「来るはずだった男性モデルの人が急病で来れなくなったみたいで……」

「大変! その人は大丈夫なの?」

「ただの風邪らしいからそれは大丈夫。でも急のことだったから代わりに入れる人が見つからないみたいで、代役になりそうな人がいないか私に聞いてきたのよ」

「そっかぁ……代役って言われてもなかなか見つけられないよね」

「そうなのよ。何人か当たってみるとは言ったけど、そもそも男の人の知り合いなんてほとんどいないし……そこで元樹君に1つお願いがあるの」

「ん? 俺にですか?」

「今日私と一緒に撮影に参加してくれないかしら」

「……え?」

 

 きょとんとして私の方を見ている。それも無理ないだろう。逆の立場だったら私もそうなる。逆にエマと彼方は目を輝かせている。やっぱり元樹君がモデルの仕事をするというのに興味が湧くのかしら。

 

「もちろん無理にとは言わないわ。予定が入ってるかもしれないし、足のこともあるしね。それにモデルの代役だから当然雑誌に掲載されて世に出るわ。それが嫌なのであればもちろん断ってもらっても構わないわよ」

「……いいですよ。やります、モデル」

「受けてくれるの?」

「はい。滅多にない機会ですからね。こんな機会を逃すなんてもったいないじゃないですか」

 

 気を遣っているようには見えない。きっと本心からそう思ってくれているのだろう。

 

「ありがとう、助かるわ」

「気にしないでください。……でも俺なんかで大丈夫なんですか? 背は果林先輩より低いし、顔にも自信ないですよ?」

「それは心配しなくても大丈夫よ。元樹君の顔は十分整ってると思うし、背が低いならそれを活かしたコーディネートをすればいいのよ」

「わたしも元樹君はすごくかっこいいと思うよ」

「彼方ちゃんも~」

「……そんなに褒められたら照れちゃいますね」

 

 そう言う元樹君の頬はほんのり赤く染まっていた。可愛い反応が見られそうだけど、仕事を手伝ってくれる恩もあるしからかうのはやめてあげようかしら。

 

「そういうわけだからよろしくね。授業が終わったら教室まで迎えに行くわ」

「いや、普通にエントランス集合でいいんじゃないですかね。そっちの方がお互いの教室からも近いですし」

「いいわよ、そうしましょうか」

 

 先輩っぽいことをしてみたくなってつい迎えに行くと行ってしまったけれど、元樹君がエントランス集合にしてくれて助かった。多分私1人では教室に向かう時に迷子になっていただろう。

 そうだ、木下さんにメールを送らないといけないわね。OKもらいました……っと。

 

「今日は元樹君も果林ちゃんもいないのかぁ……少し寂しいね」

「撮影場所はここの近くだし、そんなに時間もかからないから最後にちょっとだけ顔を出せると思うわ」

「らしいです。撮影が終わったら皆の練習姿を見に戻ってきますね」

「じゃあ情けないところ見せないように頑張って練習しないとねぇ」

「うん、そうだね」

「頑張ってください。皆のことなのでないとは思いますが、サボったりしたらダメですからね」

「大丈夫、そんなことしないよ」

「あと彼方さん、練習中にお昼寝するのもダメですからね。侑先輩にお願いしてチェックしてもらいますので」

「まあ最善は尽くしてみるよ~」

「ははっ、頑張ってください」

 

 ……なんだかこの3人が羨ましいわ。初期メンバーの皆には特別な繋がりがあるように思える。何があっても切れない、そんな繋がりが。やっぱり自分達で同好会を設立し、その同好会解散の危機を自分達の力で乗り越えたからかしら。

 

『キーンコーンカーンコーン』

「あら、もうこんな時間なのね」

 

 予鈴が鳴った。楽しかった時間ももう終わり、そろそろ教室に戻らないといけない。

 

「じゃあ俺は先に失礼しますね。次の授業、先生が遅刻にうるさいので……」

「ええ、また放課後にね」

「はい、お願いします。エマ先輩も彼方先輩も練習頑張ってくださいね」

「もちろん、彼方ちゃん頑張っちゃうよ~」

「元樹君もモデルのお仕事頑張ってね」

「頑張ります」

 

 元樹君を見送ってから私も立ち上がる。

 

「私達も戻りましょうか」

「そうだね。ん~! やっぱり楽しい時間が終わるのは寂しいなぁ」

「彼方ちゃんも寂しくて眠たくなっちゃう……」

「授業中に寝ないようにね」

「わかってるよぉ」

 

 この3人での昼食ももちろん楽しいけれど、そこに元樹君が加わるだけでもっと楽しくなるわね。また来てくれるかしら。週1くらいでいいからまた来てほしいわ。

 

 

 

 お手洗いが混んでたから少し遅れてしまった。元樹君はどこ……人が多くてどこにいるか全くわからないわ……。

 

「果林先輩! こっちこっち!」

 

 人混みの中から元樹君の声が聞こえる。耳を澄ませて声の発生源を辿ると右手を上げてピョンピョンと跳ねる元樹君を見つけた。ようやく見つけたと安堵しながら目の前まで近寄る。

 

「ごめんなさい、遅くなっちゃったわ」

「いえ、俺も今来たところですから」

 

 デートではお決まりのセリフね。まさかこんなところで言ってもらえるなんて思わなかったわ。

 

「それじゃあ行きましょうか」

「今更なんですけど、どこで撮影するんですか? 俺まだ場所教えてもらってないんですけど……」

「大丈夫、私が案内するわ。何度か撮影で行ったこともあるし、ここから遠くないからそんなに時間はかからないと思うわ」

 

 何度も行ってるから大丈夫、絶対に迷わない。前に行った時は迷わず行けたじゃない。だから大丈夫。可愛い後輩の前で迷子だなんて情けない姿見せたくない。

 

 

 

 

「ここで間違いないはずなんだけど……」

 

 結局迷ってしまった。おかしいわねぇ、マップの目的地も今いる場所を指しているのだけれど……。

 

「とりあえずマップ見させてもらっていいですか?」

「はい」

 

 元樹君にスマホを渡して確認してもらう。

 

「ほんとだ、ここで間違いなさそうですね」

「やっぱりそうよね」

「もしかしたら果林先輩のスマホがバグってるのかもしれませんし、自分のでも念のため確認してみます」

 

 元樹君が自分のスマホでもマップを開いて確認する。

 

「……ダメですね、俺のでもここが目的地になってます。ということはここが目的地に違いないですね」

「そうなるわね」

 

 じゃあなんで見つからないの……。

 

「私の知らない間に移転したのかしら……」

「さすがにそれはないかと……。建物の外観は覚えてますか?」

「確か白塗りだったと思うんだけど……電話して聞いてみるわ」

 

 木下さんに電話をかける。

 

『……はい、木下ですけど』

「もしもし、朝香です」

『まだ来られていないみたいですが何かありましたか? まだ時間かかりそうですかね?』

「少し迷ってしまって……もしかして移転しましたか?」

『いえ、してないですけど……』

 

 じゃあどうして見つからないのかしら……。このままだと一生辿り着けないわ。

 

『……そういえば少し前に外壁を塗装し直しましたね』

「えっと、何色にですか?」

『赤色です』

 

 赤色……周りに赤い建物は1つしかない。もしかしてこれかしら。色以外の外観は記憶の中のものと似ているし……きっとこれね。

 

「ありがとうございます、見つけました」

『わかりました。ではスタジオでお待ちしてます』

 

 電話が切れる。元樹君の方に向き直るとぼやーっと空を見上げていた。

 

「はぁ、わかったわよ、私達が迷子になっていた原因が」

「何だったんですか?」

「外壁を塗装し直したみたいよ、白から赤に。つまりちょうど私達の目の前にあるこの建物が探してた建物よ」

「へぇ、これが……」

「こういうのは事前に伝えておいてもらわないと困るわよね」

 

 おかげで元樹君の前で情けないところを見せちゃったわ。ほんとはちゃんと辿り着いてたのにね。

 

「とりあえず中に入りましょうか」

「はい」

 

 元樹君を引き連れて建物に入る。よかった、内装は同じね。やっぱりここで間違いないわ。

 

「撮影スタジオと衣装室はここの2階よ。受付をしてくるから少し待っててね」

「わかりました」

 

 軽く受付を済ませる。木下さんが話を通しておいてくれたのか、元樹君のことも簡単に通してくれた。

 

「終わったわよ。行きましょうか」

「はい」

 

 緊張か、それとも単純に興味なのか先程からキョロキョロと周りを見回している。

 

「緊張してるの?」

「いえ、そういうわけではなくて、どんなものがあるか眺めてただけです」

「でもただのロビーや廊下だし、別に変ったものは置いてないでしょ?」

「そうですね」

「でも撮影スタジオには見慣れない機材がいっぱいあるわよ。きっと面白いと思うわ」

「それは楽しみですね」

 

 そんなことを話しているうちにスタジオの前に着いた。

 

「ここがスタジオよ。入るわね」

 

 扉を開けて中に入る。中では別のモデルがすでに撮影を行っていた。元樹君も恐る恐る入ってきた。

 

「少し暗いですね……」

「撮影してるからね。部屋が明るかったら照明の意味がなくなっちゃうでしょ?」

「ああ、なるほど。確かにそうですね」

 

 私はこの環境に慣れてるけど、元樹君は初めてだから不思議に思うのかもしれない。そういえば私も初めての撮影の時同じことを考えてたわね。ふと思い出しちゃったわ。

 

「あの人がカメラマンの鶴野さん。今日元樹君を撮影してくれる人よ。腕は確かだからきっといい写真を撮ってくれるわ」

「へぇ……」

 

 あまり興味なさそうね。まぁ一度しか会わないカメラマンを紹介されてもって感じよね。

 

「朝香さん、こんにちは」

 

 中をいろいろ説明していると、木下さんが私達の下にやってきた。

 

「お疲れ様です。遅くなりました」

「いえ、構いませんよ。それでこちらの方がモデルの代役をやってくれる方ですか?」

「堀口元樹です。よろしくお願いします」

「ご丁寧にありがとうございます。私は雑誌担当の木下です。本日はよろしくお願いします」

 

 2人の名刺交換を見守る。といっても元樹君は名刺なんて持ってないのだけれど。

 

「早速ですが衣装に着替えてもらえますか。まずは朝香さんが撮影して、その後に堀口さんが撮影という形になります。あと撮影が終わったらこの建物内を見学することも可能ですので。もし見学したい場合は私か新田にそのことをお伝えください」

「わかりました」

「では私はこれで……」

 

 忙しそうに木下さんが去っていく。

 

「えっと、俺はこれからどうすれば……」

 

 何をすればいいか困惑する元樹君の手を引いて衣装室に向かう。

 

「服を選びに行きましょう。私が元樹君に似合うのを選んでもいいのだけれど……どうする? 最初は自分でやってみる?」

「そうですね……せっかくの機会ですし最初は自分でやってみます」

「わかったわ。私は自分のを選んでるから、何か困ったことがあればいつでも呼んでちょうだい」

「はい」

 

 元樹君と別れて自分の衣装を選びに行く。どうしようかしら……折角だから元樹君が見て顔を赤らめちゃうような衣装がいいわね。でもどんな服が元樹君の好みなのかわからないわ……。まぁ悩んでてもしょうがないわね。自分が一番いいと思うものを選びましょう。

 

「……よし、これにするわ」

 

 衣装を選び終えたので更衣室に入って着替える。結構自信のあるコーディネートだけれど、元樹君は褒めてくれるかしら。元樹君がどんな服を選んだのかも気になるわね。とにかく元樹君のところに行ってみましょう。

 

「どう? 決まった?」

「あっ、果林先輩」

 

 服を両手に持って見比べる元樹君を見つけた。

 

「衣装似合ってますね。素敵ですよ」

「ありがとう」

 

 顔を赤らめるまではいかなかったけど、褒めてくれたからまあよしとしましょう。

 

「元樹君は……」

 

 見る限りだとまだ何も決まっていないように見える。まぁ雑誌に掲載する衣装を1から自分で選べと言われても難しいわよね。

 

「まだ選べてないみたいね。やっぱり私が選んであげましょうか?」

「お願いします……」

「任せて。元樹君に似合う最高のコーディネートをしてみせるわ。こっちに来てちょうだい」

 

 鏡の前に元樹君を呼ぶ。

 

「普段はどんな服を着るの? 何か好みとかはあるかしら?」

「家にいる時とかはパーカーとか脱ぎ着しやすいものを選んでますね。誰かと出かける時は璃奈に選んでもらったセットの中から選んで着てます。服の好みとかは特にないですね。強いて言えば脱ぎ着しやすいのがいいです」

「なるほど、わかったわ。割と自由に選んでもいい感じなのね?」

「はい」

「脱ぎ着のしにくさには多少目をつむってもらうことになるけど……」

「まぁ……我慢します」

「ふふっ、いい子ね。じゃあ早速選んでいくわね」

「お願いします」

 

 ひとまず元樹君に似合いそうな服を何着か選んでみる。一度合わせてみて一番気に入ったものをベースにコーディネートしていくことにする。

 

「これはどうかしら?」

「いいですね」

「じゃあこれは?」

「あーいいですね」

「これなんてどうかしら」

「あーいいっすね~」

「ちょっと、全部いいとしか言わないじゃない。もっとちゃんと言ってくれないと」

「だって果林先輩のセンスがいいから……すみません」

「もう、そんなこと言われたら怒れないじゃない……」

「すみません……」

「謝る必要なんてないわよ」

 

 元樹君の頭を軽く撫でる。

 

「さっきは怒ってしまってごめんなさいね」

「いえ、気にしないでください」

「そうよね、いいものにはいいって言うしかないわよね。さっき言ったことは気にしなくていいわ。元樹君は思ったことを素直に言ってちょうだい。いいものにはいい、嫌なものには嫌、それだけでも十分」

「はい、わかりました」

 

 選んだものを次々合わせていく。

 

「どれが一番気に入った?」

「えっと……これですかね。この服が一番好きです」

「わかった。じゃあこの服をベースに他を選んでくるからちょっと待っててね」

「はい」

 

 この服に合うのは……これとかどうかしら。サイズも……うん、多分ピッタリなはず。あとは上着と小物も欲しいわね。ある程度流行を抑えつつ、元樹君に似合うものを……

 

「……よし、これなんてどうかしら。流行を取り入れつつ、元樹君の身長を活かせるファッションにしたつもりよ。きっと似合うと思うわ。気に入ってくれるかしら?」

 

 元樹君は渡した服を合わせて、鏡の前でポーズをとったりしながら確認をしている。

 

「いいですね、これ。すごく気に入りました。さすが果林先輩ですね。早速着替えてきます」

「それはよかった。着替えはあそこを使ってね。服は脱ぎっぱなしで置いといてもいいから。私は先にスタジオに行って撮影してるから、元樹君も着替えたら来て。場所はわかるわよね?」

「大丈夫です」

「ならいいわ。じゃあ私は行くわね。部屋の外にスタッフさんが待機してるから何かあったら遠慮なく言うのよ」

「わかりました」

「多分大丈夫だとは思うけどサイズが合わなかったりしたら自由に合うサイズに変えてもいいから」

「了解です」

「じゃあ行ってくるわね」

「はい、頑張ってください」

「ええ」

 

 元樹君の見送りを受けながらスタジオに移動する。ちょうど前のモデルの撮影が終わったタイミングだったようだ。

 

「次は朝香ちゃんの撮影ね」

「はい、お願いします」

 

 鶴野さんに呼ばれてスタンバイする。

 

「好きなようにポーズとってくれていいから」

「わかりました」

「はい、じゃあ撮っていくよー」

 

 私の撮影が始まった。どうすれば衣装の魅力が伝わるのか、それを考えながらポーズをとっていく。鶴野さんの撮影はテンポが速く、次のポーズについて常に考えておく必要がある。なかなかしんどいけれど、でもそれが楽しい。

 

「いいよいいよー」

 

 鶴野さんはそんな私を照明を調節したりしながらいろんな角度で次々と撮っていく。

 

「もうちょっと腕上げて」

 

 時折修正が入る。きっとそれが鶴野さんの考える一番魅力を引き出せるポーズなのだろう。

 

「よしっ、朝香ちゃんお疲れちゃ~ん」

「ありがとうございました」

 

 10分も経たないくらいで撮影が終わった。

 

「あの、次の撮影の堀口元樹君のことなんですけど……」

「ああ、木下さんから聞いてるよ。代役できた素人の子なんだってね。ポーズはこっちから指定するから大丈夫」

「それもなんですけど、実は元樹君足を怪我してて……」

「ああ、つまり足に負担のかからないポーズにしてほしいってことね」

「その通りです」

「わかった、ちゃんと頭に残しておくよ」

「お願いします」

 

 話が終わって鶴野さんは次の撮影の準備を始める。私もスタジオの端へ移動する。

 

「ふぅ……」

 

 元樹君は私の撮影ちゃんと見てくれたかしら。そもそもちゃんと着替えられたのかしら。少し着にくいものを選んでしまったし心配だわ……。

 

「果林先輩、お疲れ様です」

 

 そんなことを考えていると、渡した衣装に着替えた元樹君が近寄ってきてペットボトルのお茶を渡してくれた。思った通りよく似合ってるじゃない。飲み物を受け取るとキンキンに冷えていた。

 

「あら、ありがとう。ごくっ……ごくっ……」

 

 受け取ったお茶を飲む。撮影ってなんだか喉が渇くのよねぇ。

 

「次はいよいよ元樹君の番ね。緊張してる? 表情が固いわよ」

「まぁ少しは……」

 

 心なしか動きも固い。少しとは言うけど、きっとすっごく緊張してるのね。顔にそう書いてあるわ。

 

「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。別に取って食われるわけじゃないんだから」

 

 緊張をほぐすように肩や腕を撫でてあげる。

 

「ポーズも向こうから指定してくれるし、足に負担がかからないようにしてとも伝えてあるから。ほら、もっと力抜いて」

「すぅ……はぁ……」

 

 元樹君は撫でられながら大きく深呼吸をする。すると先程まで入っていた肩の力がすぅーっと抜けた。

 

「ありがとうございます。おかげで緊張がほぐれました」

「もう大丈夫ね? じゃあ行ってきなさいな」

「はい!」

 

 背中を軽く押してあげる。

 

「……あ、そうだ。1つ言い忘れてたわ。その衣装すごく似合ってるわよ。だから自信持って」

 

 それだけ伝え、元樹君に背を向けて壁の方へ歩く。

 

「え、あ……」

 

 背後から気の抜けた声が聞こえる。ちらりと振り返ると、顔を真っ赤に染めた元樹君が見えた。からかうつもりで言ったわけじゃないけど、意外と可愛い反応してくれるわね。でも変に集中を乱しちゃったかもしれない。自信を持ってもらうために言ったけど、やっぱり言わない方がよかったかしら……。

 当の元樹君は何か言いたげに何度か口をパクパクさせた後、もう一度深呼吸をして心を落ち着かせた後鶴野さんのところへ向かった。

 

堀口元樹です、よろしくお願いします!

はい、よろしく。元気がいいねぇ。野球か何かやってるの?

いえ、スポーツはやってません

そう……」

 

 2人の会話を見る限りは大丈夫そうね。緊張はもうなさそうだし、むしろ自信に満ち溢れている……ように見える。私の言葉が効いたのかしら。

 

じゃあ撮影始めますね。まずはこういうポーズをとってください

こうですか?

そうそう、そんな感じ。表情はキリッと

キリッ

いいよいいよー。で、あと視線はカメラじゃなくてあっちに向けようか。……よしっ、じゃあまずは1枚撮るよー

 

 記念すべき最初の1枚、そのシャッターが切られる。その瞬間の元樹君はすごくいい表情をしていた。指示された通りキリッとした表情なのだけれど、ワクワクしてることも伝わってきて、でも初々しさも残ってる……そんな表情だ。悔しいけど少しドキッとしちゃった。

 できることならもっと近くで見たい。けれどそうすると撮影を邪魔してしまう。だから離れた壁際で見守るしかない。

 

いいねー君

ありがとうございます

じゃあ次のポーズいってみようか

はい

 

 そんな私の気持ちなんて関係なしに撮影は着々と進んでいく。10分ほどして撮影は終わった。

 

「はぁ、喉渇いた……」

 

 撮影を終えた元樹君がこちらに向かって歩いてくる。

 

「お疲れ様、元樹君」

 

 手に持っていたお茶を元樹君に渡す。

 

「あっ、ありがとうございます」

 

 私の飲みさしだけど別にいいわよね。元樹君も気にしてなさそうだし。

 

「初めての撮影はどうだったかしら。楽しかった?」

「はい、すごく楽しかったです」

「そう、それはよかった。いい表情をしてたから楽しんでるっていうのが伝わってきたわ。ポーズも決まってたしいい写真が撮れたんじゃないかしら」

「そう……なんですかね」

 

 私的なベストショットは……そうね、1枚目かしら。他のもよかったけど、やっぱりあの初々しさがいいわね。撮影に慣れたモデルでは撮れない、素人の元樹君だからこそ撮れた写真ね。

 

「発売が楽しみね」

「璃奈とかかすみに宣伝しておこうかなぁ」

 

 多分宣伝しなくても買ってくれると思うわよ。その2人だけじゃなくしずくちゃんとせつ菜も。

 でももう終わりっていうのは少し寂しいわね……。もうないかもしれない元樹君と一緒の撮影なんだから、何か記念が欲しいわ。……あ、そうだ。

 

「折角だから記念に1枚撮っておく?」

「いいですね。並んで撮りましょうよ」

「そうね。じゃあこっちに来て」

 

 2人で並ぶ。でも少し距離が遠い。スマホのカメラだと元樹君が少し見切れてしまう。スマホを遠ざければちゃんと写るけど……それじゃあ面白くないわね。

 

「ダメよ。もっとこっちに来ないとちゃんと映らないじゃない。ほら、こっちに……ね?」

 

 元樹君の腰に手を回して引き寄せる。私もさすがにちょっと恥ずかしいけど、それよりも恥ずかしがる元樹君の反応が見たい。さっきあんな風に顔を赤らめる元樹君を見ちゃうと……ね。

 

「そうですね。これくらいくっついてた方が記念にもなりますしね」

「……もっと恥ずかしそうにしてくれるかと思ったのだけれど……普通ね」

「そうですか?」

「もしかして慣れてる?」

「まぁ慣れてるっちゃ慣れてるかもしれません。かすみとかがよく抱きついてくるので」

 

 なるほど、確かにね。かすみちゃんやせつ菜がよく抱きついているのを見るし、初めて会った時もしずくちゃんが抱きついてたしね。元樹君にこの程度の色仕掛けは効果がない、覚えておきましょう。

 

「まぁいいわ。このまま撮っちゃいましょう。はいチーズ」

「いえーい」

 

 1枚パシャリと撮る。私も元樹君もいい笑顔だ。

 

「撮れたわ。後で送っておくわね」

「お願いします」

「さてと、私達の分の撮影は終わったし着替えに行きましょう」

「そうですね」

 

 スタジオから出て衣装室へ移動する。

 

「この後この建物の中を見学させてもらえるみたいだけど……」

「はぁ、そうなんですね」

「興味なさそうね。じゃあ少し早いけど帰りましょうか」

「はい。……あ、でも今から帰っても中途半端な練習しかできなさそうですね。もっと時間がかかると思ってたから、侑先輩には終わり際にしか戻れないって伝えちゃいましたし……そうだ、折角の機会ですしどこか一緒に寄り道してから帰りますか?」

「そうしましょうか。お互いのことをよく知るいい機会になるしね」

 

 私が元樹君と出会ってまだ数日。優しいとか鈍感とかたらしとか、そういう表面的なことはある程度わかってきた。けど何が好きなのか、趣味は何なのか、普段はどんなことをしてるのか、そういったことについてはまだまだ何も知らない。そしてそれは元樹君からしても同じはず。練習することももちろん大事だけど、部員同士がお互いのことをちゃんと知っておくことも大事だと思う。

 

「果林先輩と寄り道かぁ……どこ行こっかなー」

 

 ふふっ、楽しそうね。私も誰かと出かけるなんて久し振りだから楽しみだわ。どこに行こうかしら。お互い楽しめる場所がいいわね。

 そんなことを考えながら自分の使った更衣室の扉を開けると、とてつもない違和感に襲われた。

 

「なんで制服がハンガーにかけられてるのかしら……」

 

 制服は脱いで床に放置しておいたはず。なのに今はハンガーを使って壁にかけられている。

 

「それにこれ……」

 

 そして綺麗に畳まれて床に置かれた制服。虹ヶ咲の制服だけど、男物の制服で明らかに私のものじゃない。そしてネクタイの色は黄色、つまりこの制服は虹ヶ咲学園1年生の男の子のもの。今この場に来ているその条件に当てはまる子なんて1人しか思いつかない。

 

「元樹君の制服よね……?」

「えっと……はい、そうです……。俺がさっき使っちゃいました……」

「使ったぁ!? この更衣室を!?」

「他に空いてるところがなかったので……」

 

 そう言われて他の更衣室を見る。元樹君の言う通り、他の更衣室の扉には使用中、あるいは清掃中の掛札がされている。

 

「た、確かに空いてないわね……。私が着替え終えた時には空いてたのに……」

 

 元樹君の衣装を選んでいる間に使われちゃったのかしら……。

 

「すみません……」

 

 申し訳なさそうな顔で謝る元樹君を見て、この程度のことでいちいち騒いでいた自分が恥ずかしくなった。

 

「まぁいいわ。見られて困るようなものがあったわけじゃないし……」

 

 私の更衣室を使ったのだって元樹君なりに考えた結果なのだろう。まぁ外で待機しているスタッフに相談すれば何とかなったのではとは思うけど……元樹君も焦ってそこまで頭が回らなかったのだろう。仕方ない。それに鍵をかけ忘れた私も悪いからね。さっきは何も気にしてなかったけど鍵を使わずに更衣室の扉を開けたし、最初に鍵をかけた記憶もない。元樹君だったからよかったけど、他の人が入ってきていたらと考えると……怖いわね。

 

「先に私が着替えてもいいかしら?」

「もちろんいいですよ。むしろ先に着替えてください」

「ありがとう。……覗いたりしちゃダメよ?」

 

 更衣室の扉を閉める直前にちらりと顔だけ出してそう挑発する。

 

「そんなことしませんよ……」

 

 けれど元樹君は顔色一つ変えず答えた。この子は性欲というものがないのかしら……。でもまぁそういう子だから皆から好かれるのかもね。もし元樹君が性欲魔人だったら今頃しずくちゃんや璃奈ちゃんは何度も元樹君の毒牙にかかっていただろう。

 壁にかけられえた自分の制服を見る。改めて見るとしわができないよう丁寧にかけられている。元樹君がちゃんと考えてしてくれたのだろう。普通の男の子だったら私の制服の匂いを嗅いだりして()()()()()()をしちゃうのかもしれないけど、元樹君だからそんなことはしていないと断言できる。私にそういう魅力がないのかと少しプライドが傷ついちゃうけどね。

 

「……」

 

 扉の向こうから元樹君の話し声が聞こえる。相手は木下さん? ……いえ、元樹君以外の声は聞こえないから電話かしら?

 元樹君の声をBGMにしながら制服に着替える。扉の1枚向こうに年頃の男の子がいると考えると少し恥ずかしいわね……。私だけ恥ずかしい思いをするのは癪なので、わざとらしく服を脱ぐ音を立てながら着替える。これで少しは意識……しないでしょうねぇ。だって相手はあの元樹君だもの。

 

「着替えたわ」

 

 制服に着替え終えて更衣室から出る。元樹君の電話もちょうど終わったようだ。

 

「誰かと電話してたみたいね。相手は誰だったの?」

「侑先輩です。なんかスポドリの素が見つからなかったみたいで……」

「ああ、なるほど。いつも元樹君が用意してくれるものね」

「ちゃんとそういう情報も侑先輩と共有しないとなぁ。片方しか知らないと休んだ時に困るし……」

 

 元樹君も侑もマネージャーとして一生懸命サポートしてくれるから、私達は練習に集中できて助かるわ。このお礼は単に言葉で伝えるだけじゃなくて、イベントでいい成績を残してから伝えたい。狙うのはもちろん優勝よ。

 

「じゃあ俺着替えてきますね。……覗かないでくださいよ?」

「ふふっ、そんなことしないわよ」

 

 さっきの仕返しのつもりかしら。可愛いわね。

 

「あれ……?」

 

 元樹君の着替えを待っていると、雑誌ライターの新田さんが衣装室に入ってきた。

 

「朝香さん、堀口君はいないのかい?」

「今着替え中です。何か用事ですか?」

「今日のバイト代とかを渡しに来たんだけど、朝香さんに渡してもいいかな?」

「いいですよ」

 

 新田さんから封筒を2つ受け取る。

 

「えっとこっちがバイト代。代役とは思えないほどいい写真が撮れたから、普通より多く入れといたよって伝えてくれるかな」

「わかりました。こっちの封筒は?」

「ああ、こっちは写真だよ」

「写真……?」

「折角撮影に参加したんだから記念にって鶴野さんがオフショットを何枚か撮っててくれたんだ。だからその写真と普通に撮ったものを何枚か入れておいたよ」

 

 オフショット……気になるけど勝手に見るわけにもいかないし、元樹君がこの場で見始めたらこっそり覗き見しようかしら。

 

「じゃあ僕はこれで」

「はい、ありがとうございました」

 

 新田さんが衣装室から出ていく。それとほぼ同時に元樹君が更衣室から出てくる。

 

「お待たせしました。……その封筒は何ですか?」

「これ、元樹君にってさっき渡しに来たわ」

「へぇ」

 

 受け取った封筒を元樹君に渡す。中身が気になるのか照明で透かすように見ていた。

 

「こっちが今日の分のお給料。少し多めに入れてくれたみたいよ。代役とは思えないほどいい写真が撮れたからですって。よかったわね」

「それはありがたいですね」

 

 元樹君は給料の入った封筒を開け、中身を覗くように見ていた。中身を見た元樹君は目を見開いて、そっと封筒を閉じた。そんなに驚くほど入ってたのかしら。

 

「こっちは?」

「こっちの封筒には写真が入ってるみたいよ。記念に何枚かどうぞって」

「写真……?」

 

 封筒から写真を取り出して確認し始める。こっそり元樹君の背後に回って写真を覗き見る。

 

「ふーん……」

 

 元樹君が緊張してるところ、私がそれをほぐそうと撫でてるところ、お茶を受け渡しするところ……そんな場面がオフショットとして渡されている。こんなところ撮られちゃってたのね。全く気づかなかったわ。

 

「あ、これ……これだけ2枚あるので、1枚は果林先輩にあげますね」

「あら、私にくれるの?」

「はい。俺が2枚持ってても意味ないですし、それなら果林先輩に貰ってほしいなぁって」

「そう、ならもらっておくわ。ありがとう。私も記念として大切にするわね」

 

 元樹君からもらった写真を見る。私が元樹君を抱き寄せてるところね。こんなところまで逃さず撮ってるのはさすがというかなんというか……。でもいい写真だわ。額縁に入れて飾っておこうかしら。

 

「さてと、そろそろ行きますか?」

「そうね。誰かと一緒に遊びに行くだなんて久し振りだわ。どこに行こうかしら」

「少し回り道して学校に戻って、その道中で気になるところがあったら入る、みたいな感じでいいんじゃないですかね」

「その方がいいわね。あまり遠くまで行く時間もないし」

「決まりましたね。じゃあ行きましょうか」

 

 よほど楽しみなのか元樹君が先導して進んでいく。回り道するとなると迷子になっちゃうかもしれないし、このまま元樹君について行きましょう。

 

「果林先輩は普段どんなところに行くんですか?」

「そうねぇ……古着屋なんかはよく行くわね」

「古着屋、ですか?」

「意外かしら」

「まぁ、そうですね。もっとオシャレな服屋に行くのかと思ってました」

「そんな余裕ないわよ。それに古着には古着のよさがあるのよ」

「そういうもんなんですかねぇ」

「そういうものよ」

 

 璃奈ちゃんに選んでもらった服をよく着るって言ってたし、あまり服を自分で選んで買ったりしないのかもね。今度オススメの古着屋に連れていってあげようかしら。

 

「元樹君はどんなところに行くの?」

「璃奈と出かける時はゲームセンターとかゲーム屋が多いですね。前にかすみと出かけた時はクレープとか頭のおかしいパンケーキを食べましたよ」

「頭のおかしいパンケーキ……? 何なのそれ」

「虹を模した7色のパンケーキが文字通り山のように積まれてるんですよ。クリームとイチゴもたっぷり添えてね」

 

 カロリーがすごそうね……。興味はあるけどさすがに食べられないわ。

 

「まじであれはヤバかったです。俺とかすみの2人がかりでギリギリでした。食った後しばらく動けませんでしたし……。でも完食したらお代無料っていうのはありがたかったですけど」

「しずくちゃんとは出かけたりしないの?」

「しずくとはないですね」

 

 あらま、恥ずかしくて誘えないのかしら。うかうかしてるとかすみちゃんに取られちゃうわよ?

 

「元樹君1人で出かけることはないの?」

「あんまり……行くとしてもスーパーとかくらいですね」

「へぇ、元樹君がご飯を作ったりするの?」

「まぁ……うちはあんまり親が家にいないので……」

「仕事で忙しいの?」

「そんな感じ、ですね……」

 

 あまりこの話題に触れてほしくないのか、元樹君は俯いてしまった。もしかしたら地雷を踏みぬいてしまったのかもしれない。どうにかして話題を変えないと……何か、何かないかしら……

 

「……あら、お化け屋敷じゃない」

 

 話題を変えられる何かを探していると、路上にお化け屋敷を見つけた。設置された看板を見ると入場無料と書かれている。

 

「しかもタダみたいね。折角だし入ってみる?」

「……はい、入ってみたいです」

「よし、じゃあ行きましょうか。すみません、2人いいかしら」

「お2人さまですね。こちらにどうぞ」

 

 体に包帯を巻きつけた人に入口まで案内してもらう。

 

「楽しんできてくださーい」

 

 見送りを受けながら2人でお化け屋敷に入る。中は前がギリギリ見える程度の暗さで、ヒュゥ~と風が吹く音が聞こえる。

 

「なかなかの雰囲気ね。何か出そうだわ」

「そうですね……」

 

 隣から聞こえる元樹君の声は少し震えている。もしかして……

 

「うーらーめーしーやー」

「きゃっ!」

 

 天井から白装束の女の人が急に現れた。元樹君の方を気にしてたからびっくりしちゃった。

 

「うぅ、果林先輩……」

「って元樹君?」

 

 元樹君が私にしがみついてきた。前を決して見ないように顔を私の体にうずめている。

 

「もしかして怖いの苦手?」

「……はい」

 

 元樹君は私の顔をしばらく見つめた後、恥ずかしそうにしながら答えた。

 

「ふふっ、意外に可愛いところあるじゃない」

 

 普段の強気な元樹君からは想像できない、私にしがみついてお化けに怯える怖がりな元樹君。これがギャップというものかしら。守ってあげたいという気持ちになる。

 

「いいわよ。そばにいてあげるから存分に怖がりなさいな」

「お願いします……」

 

 胴体から離れて今度は腕にしがみついてくる。私は別にそのままでもよかったのだけれど、歩きにくいと判断したのかしら。

 

「怖いよぉ……」

 

 しかしこうも怖がる元樹君を見ていると……からかいたくなっちゃうわね。

 

「あら、あそこ……」

 

 元樹君に見えるように指差す。その指の先にはもちろん何もない。

 

「あ、あ、あ……」

 

 それでも元樹君には効果抜群だったようだ。しがみつく力が強くなった。目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

 

「ちょっと脅かすつもりだったのだけれど、こんなに怖がられると罪悪感が……」

「がりんぜんばぁい~……」

 

 元樹君が泣きながら抱きついてくる。吐息が首筋に当たってくすぐったい。

 

「よしよし、ほら泣かないの」

「だっでぇ……」

 

 頭を撫でて慰める。まぁ完全に私が悪いのだけれど。でも泣いてる元樹君を見てるとなんだかゾクゾクするというか……もっと見たいという衝動に駆られてしまう。

 

「ほら、先に進みましょ。次のお化けが待ってるわよ」

「待って……先に行かないで……」

「ふふっ、大丈夫。先に行ったりなんてしない、ちゃんと隣にいてあげるわよ」

 

 震える元樹君の手を握る。

 

「これで少しは怖くなくなるでしょ?」

「……うん」

「ふふっ、いい子ね」

 

 頭を撫でると安心したのか手の震えが止まる。それを確認してから元樹君の歩幅に合わせて先に進む。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

 ゾンビの格好をした人が壁を突き破って目の前に現れた。これ、毎回直してるのかしら……?

 元樹君はまた私にしがみついてきた。けれど今度は顔を逸らすことなく、涙目になりながらもしっかりとゾンビを見据えている。

 

大丈夫……怖くない……」

 

 頑張って恐怖を乗り越えようとする元樹君が可愛くて、かっこよくてついつい頭を撫でてしまう。

 

「よく頑張ったわね」

「果林先輩がいてくれたから……」

 

 嬉しいこと言ってくれるわね。

 

「さ、まだまだ先は長いわよ。一緒に頑張りましょうね」

「はい」

 

 

 

「疲れたぁ……」

 

 お化け屋敷を無事脱出し、今は出口付近に設置された休憩所のベンチで休憩をとっている。私は大丈夫だけど、元樹君は精神的にかなり疲労しただろう。

 

「久し振りだったけど楽しかったわ」

 

 たまにはこういうところに入るのも悪くないわね。

 

「元樹君はかなり怖がってたけど楽しめたかしら?」

「楽しかったですよ」

「それはよかったわ」

 

 怖いものは苦手だけど、楽しめるくらいには好きなのね。辛いものは苦手だけど好きで食べちゃうのと同じ感じなのかしら。

 

「私だけが楽しんでるんじゃないかと少し心配してたの」

「でもその割には俺をからかって楽しんでましたよね……!」

「あれは元樹君の反応が可愛かったから……ごめんなさいね、許して」

 

 最初の1回以降も何度かからかってしまった。その度に可愛い反応をするからこちらも我慢できないのだ。

 

「……まぁ俺も果林先輩に甘えまくりだったので、それでチャラにしましょうよ」

「ふふっ、いいわよ」

 

 あれくらいいつ来てもいいのに。

 

「でも元樹君が怖いものが苦手だとは思わなかったわ。怖いものなしっていう勝手なイメージがあったけど、そんなことなかったのね」

「そりゃそうですよ。俺だって人間なんですから怖いものの1つや2つあります。なんとかして克服したいとは思うんですけど、なかなかうまくいかなくて……」

「あら、そんなに気にしなくてもいいのに。1つくらい弱点があった方が可愛くなるものよ」

 

 私はそんな元樹君を可愛いと思ったし、しずくちゃんや璃奈ちゃん達もきっと真剣に向き合ってくれるだろう。

 

「でも……」

「璃奈ちゃんはなんて言ってるの?」

「璃奈には言ってないです。というか誰にも。知られるの恥ずかしいし……」

「へぇ、誰にも言ってないのね。じゃあ私がハジメテってことになるわね」

「そうなりますね」

 

 2人で笑い合う。幼馴染の璃奈ちゃんですら知らないことを私が一番最初に知っちゃった。どうしてかわからないけど妙な優越感があるわ。

 

「さてと、そろそろ移動しましょうか。人も増えてきたしね」

「そうですね」

 

 お化け屋敷から出てくる人が増えてきた。無料だから試しに入ってみようという人が多いのかしら。元樹君も十分休憩できただろうし、休憩室から出て次に行く場所を探す。

 

「次はどこに……あ」

 

 当たりを見回していると1枚のポスターが目に入った。

 

「何か見つけましたか?」

「あれ、パンダ……」

「『パンダのぬいぐるみ入荷しました』……?」

 

 ゲームセンターのポスターだろうか、とてもとても可愛いパンダのぬいぐるみのポスターが貼られている。欲しい……あの子が欲しい……ギュっと抱きしめたい……。幸か不幸かパンダ好きであることは元樹君にすでに知られてしまっている。だから元樹君と一緒に取りに行っても問題ない。

 

「ねぇ、折角だし……」

「あのぬいぐるみ、欲しいんですよね?」

 

 首を縦に振る。この察しのよさはさすがとしか言いようがないわ。

 

「でもあれクレーンゲームの景品ですよ。取れるんですか?」

「大丈夫よ」

「得意なんですか?」

「きっと大丈夫。何とかなるわ」

 

 クレーンゲームなんて滅多にしないから自信なんて全くないけど、きっと何とかなる。私のパンダへの愛と、あとは500円くらい積めばきっと取れるわ。

 

「心配だなぁ……」

 

 元樹君に心配されつつゲームセンターに入る。ゲームセンターなんていつぶりだろうか。中は広く、様々なゲームの駆動音とそれを楽しむ人達の声で少し騒々しい。

 

「広いわね。ぬいぐるみはどこにあるのかしら……」

「さぁ? どこにあるんでしょうね」

 

 元樹君の声も少し聞き取りづらい。元樹君もそれをわかってるのかいつもより声量を上げて話してくれている。助かるわ。こういう細かな気遣いができるのも元樹君の魅力ね。

 

「適当に歩き回りましょうよ。その内見つかるでしょ」

「そうしましょうか。元樹君も何かやりたいゲームがあったら遠慮しないで言ってくれていいからね」

「はい」

 

 元樹君の後を歩きながらゲーム機を1つ1つ見ていく。ほんとたくさんあるわねぇ。こんなにたくさんのゲーム機を毎日稼働させてたら電気代いくらかかってるのかしら。気になるわ。ゲームセンター、電気代っと……

 

「果林先輩、果林先輩」

 

 スマホで調べていたら元樹君に制服の裾を引かれた。

 

「どうしたの?」

「あれやってみたいです」

 

 あれは……ダンスゲームというものかしら。元樹君もこういうのに興味あるのね。

 

「でもあれはかなり激しく動くでしょ? 足に悪いからダメよ」

「えー……」

 

 遊んでいる人を見る限り結構激しく動いている。足でパネルを踏んで遊ぶみたいだから特に足に負担がかかるだろう。そんなこと絶対にさせられない。

 

「あっ、じゃあ果林先輩が代わりにやってくださいよ」

「え? 私が代わりにやるの?」

「果林先輩が踊るところ見てみたいです」

 

 期待の眼差しで見つめられて、思わず顔を逸らしてしまう。

 

「もうすぐダンスレッスンも始めるつもりですし、その予行練習だと思って」

 

 なるほど、予行練習ね。私はダンス素人だしいいかもしれない。このダンスゲームがスクールアイドルのダンスに活かせるかどうかはわからないけど……。それに私がやるだけで元樹君が満足してくれるのなら喜んでやりましょう。

 

「しょうがないわね。1回だけよ?」

「やったぜ」

 

 はしゃいじゃって、可愛いわね。

 

「じゃあ俺は後ろから見てますので」

「わかったわ」

 

 空いている台に入る。初めての人は1曲無料で遊べるみたいね。ありがたいわ。

 プレイを始めるとチュートリアルが始まった。説明を聞きながら指示に従って足を動かす。

 

「えっと、画面に流れてくる矢印と同じ床の矢印を足で押せばいいのね」

 

 画面に矢印が流れてくる。タイミングよく押しているつもりだけれどうまく合わない。目で見て合わせようとしてるのがダメなのかしら……。じゃあ次はリズムを聞いてやってみましょう。

 

「あ、うまくいった」

 

 なるほど、リズムを聞いてそれでタイミングを合わせるのがベストなのね、理解したわ。となると聞いたことのない曲だと難しいわね。知ってる曲あるかしら……。

 チュートリアルが終わって曲選択画面に移行した。どうやらジャンル別に分かれてるみたいなので、ひとまずジャンルを全部見てみる。……あら、スクールアイドルのジャンルなんてあるのね。µ'sやAqoursの曲もいっぱい入ってるみたいだわ。それほど人気なのね。ちょうど昨日µ'sの『No brand girls』の動画を見て勉強をしたしこの曲にしましょうか。難易度は……まぁ一番上のにしときましょう。難しいほど燃えるしね。

 

「頑張ってー」

 

 後ろから元樹君の声援が聞こえる。手を軽く振って応える。その直後に曲が流れ始める。昨日だけでもう何度も聞いた。リズムは完全に頭に入っている。あとは画面に流れてくる矢印を見て足を動かすだけだ。

 

「ふっ、ほっ、やっ」

 

 初めてにしてはそこそこやれてる気がするけど、結構な数ミスしてしまっている。曲のテンポが速いからか、それとも高い難易度を選びすぎたのか……きっとその両方ね。でもやっていて楽しい。中途半端な難易度でやるよりもこれくらい難しい方が燃えるし楽しめるわ。

 

「ふぅ……まぁなかなかの結果じゃないかしら」

 

 最後までやり終える。初めてやったならこんなものじゃないかしら。もちろん満足はしてないけどね。機会があったらリベンジしたいわ。

 

「お疲れ様です。どうでしたか?」

「意外と楽しめたわ。……あら?」

 

 隣の台からノーブラが聞こえる。その人も私と同じ曲、同じ難易度でやっているみたい。このゲームに慣れているのか私よりも上手だ。ほとんどミスしていない。曲が終わってその人のスコアが表示される。

 

「あの人、私よりも高い……」

 

 僅差とかじゃなくて圧倒的負け。全く知らない赤の他人で私が勝手に比べてるだけだけど、それでも負けたままっていうのは嫌な感じね。初めてだったからとか、そんな言い訳をするつもりはない。

 

「今何か言いましたか?」

「ごめんなさい、もう1回やってもいいかしら?」

「え……別にいいですけど……」

「ありがとう。もう少し待っててね」

 

 財布から100円取り出して筐体に投入する。

 

「なんか妙にやる気ですね……」

「当たり前よ。負けたままじゃいられないわ」

「まぁその気持ちもわかりますけどね。俺はちょっと他のとこ見てきますけど、いいですか?」

「もちろん」

「じゃ、頑張ってくださいね」

 

 激励を聞きながら曲を選ぶ。もちろん選ぶのはノーブラ、難易度ももちろん一番上。あの人のスコアを超えるまで何度も挑戦……といきたいけど、さすがにこの100円だけで終わりね。元樹君を待たせてしまうし、何よりぬいぐるみにかけられるお金が減ってしまう。それだけは避けなければならない。だからこの100円……3回の挑戦で越えなきゃ。

 

「……はぁ、全然ダメね」

 

 一度やって慣れたからか最初のスコアは超えたけど、まだまだあのスコアには届かない。簡単に超えられるとは思ってないけど、少し厳しいかも……。次はあの人の動きをイメージしてやってみましょうか。

 

「いい感じ……」

 

 さっきよりもいい感じでできている気がする。でも時々頭の中のイメージに体がついてこない。

 

「ダメだわ……」

 

 結果は散々だ。さっきよりもスコアは低くなってしまった。イメージに体がついてこなくなると、そこで崩れてたくさんミスしてしまっていた。何が足りないのかしら……経験? それとももっとイメージを洗練すればいい? 何も道が見えてこない。このままだと……

 

「大丈夫ですか?」

「元樹君……?」

 

 考え込んでいると隣に元樹君がやってきて声をかけてくれた。

 

「他の場所を見てたんじゃないの?」

「ん~、飽きちゃったっていうか……果林先輩が一緒じゃないとあんまり楽しくないというか……」

 

 よく平然とそんな恥ずかしいこと言えるわね……。

 

「いつから見てたの?」

「今のプレイの途中からですかね」

「そう……ねぇ、元樹君から見て、今のは何がダメだったと思う?」

「うーん、そうですねぇ……」

 

 私1人では思いつきそうにないので元樹君を頼る。分析が得意らしい元樹君なら見つけられると思ったからだ。

 

「俺はダンス素人なんであんまりちゃんとしたこと言えないですけど、なんていうか動きが果林先輩に合ってない気がしました」

「どういうこと?」

「うまく表現できないんですけど、こう果林先輩らしくない動きだったというか……一番最初にやった時の方が果林先輩らしい動きだったと思います」

「私らしい……」

 

 心当たりがあるとすればあの人をイメージした動きだったってことかしら。逆に一番最初は何も見本がなくて全部自分で考えながら動いてた。それが私らしい動きだったってこと?

 

「あとは……もっと楽しむといいと思いますよ」

「楽しむ?」

「はい、こうやって……」

 

 元樹君は指で私の口角を上げた。その時に指が唇に当たってドキッとする。

 

「にっこりん、ですよ。勝負事で本当に楽しむためには強さがいる、なんて言葉を漫画で見ましたけど、強くなる過程にも楽しむことが必要不可欠だと俺は思うんです。だから楽しんでいきましょう?」

「楽しんで、ね……」

 

 確かにさっきまでの私はあのスコアを超えようと必死になって、全然ゲームとして楽しめてなかった。今思えばあの人もこのゲームを心から楽しんでいるように見えた。そこが私とあの人の大きな違い。

 

「ふふっ、ありがとう元樹君。なんだかスッキリしたわ」

「お役に立てて嬉しいです」

「最後の1回、全力で楽しんでくるから最後まで見ててくれる?」

「はい、この目に焼き付けさせてもらいます」

「ありがとう、頑張ってくるわね」

 

 あのスコアを超えたいとか負けたくないとかは一旦忘れる。元樹君の言う『勝負事を楽しむための強さ』はきっと今の私にはまだない。だから勝負のことは頭から消して純粋にこのダンスゲームを楽しむ。一番最初のように、ね。

 

「ほっ、ほっ、ほっ……」

 

 勝負のことを忘れたら自然と楽しんでプレイすることができている。楽しんでいたら自然と口角も上がってきた。思い通りに体が動いている気がした。何回ミスしたかなんてもう数えてないけど、今までで一番少ないと確信できる。

 

「はぁ……はぁ……よしっ」

 

 最後まで楽しんでやりきった。楽しみすぎて思わずポーズを決めそうになったけど、周りの目もあるしなんとか踏みとどまる。肝心のスコアは……

 

「やったわ! 元樹君見て! 記録更新よ!」

「おお! すごいじゃないですか!」

 

 勝ち負けのことを忘れた途端にあの人のスコアを超えることができた。フルコンボというのはよくわからないけど、とにかく超えることができた。元樹君とハイタッチをして喜んだところでふと我に返る。

 

「あっ、ごめんなさい。ついはしゃいじゃったわ……」

 

 元樹君の前だというのに嬉しさでついついはしゃいでしまった。

 

「このことは皆には内緒ね?」

「なんで秘密にする必要があるんですか?」

「だって私のクールなイメージを崩しちゃうじゃない」

「うーん……別にいいと思いますけどね」

「え?」

「はしゃいでるところも可愛くていいじゃないですか。クールでかっこいい果林先輩も、そうじゃない可愛らしい果林先輩も、どちらも果林先輩自身なんですから隠す必要なんてないと思いますよ。むしろ隠さずに可愛いところをどんどん見せていきましょうよ」

「……元樹君って、そんな恥ずかしいことも平然と言えちゃうのね……」

 

 可愛いだなんて久し振りに言われた気がするわ。よく言われるのはかっこいいって言葉ばかりだから……。なんだか顔が熱い。これが体を動かしたことによるものなのか、それとも元樹君のせいなのかわからない。わからないけど……なんだかこの熱さが懐かしい感じがする。

 

「恥ずかしがる必要なんてないですからね。それに果林先輩の好きなところならもっといっぱい言えますよ。冷たいように見えて実はすごく優しいし、今日わかったのが面倒見がいいってこと。あとは……」

「……ふふっ、元樹君って面白いわね」

「そうですか?」

「ええ、すごく」

 

 あまりにも平然と言い続けるから、私の恥ずかしさも吹っ飛んで逆に面白くなってきた。

 

「クールなところも、そうじゃないところもどっちも私……いい言葉ね。こんなこと言ってくれたのはキミが初めてよ」

「じゃあ俺が果林先輩の初めてってことになりますね」

「あら、私の真似かしら?」

「さぁ、どうでしょうか」

 

 ふてぶてしくニヤリと笑う。そんな元樹君が微笑ましい。元樹君は大人びてると思ってたけど、こういうのを見てると年相応に子供っぽいところもちゃんとあるのだと少し安心する。だから元樹君とかすみちゃんは気が合うのかもね。

 

「でもやっぱり秘密にしておいてもらえるかしら。皆に知られるのは恥ずかしいし……」

「えー、どうしよっかなー」

「元樹君が怖いものが苦手なのも秘密にしておいてあげるから、ね?」

「はい、内緒にします!」

「約束よ? もし破ったりしたら……元樹君の秘密も皆にバラしちゃうからね」

「絶対誰にも言いませんから、だから俺のことも……」

「大丈夫、誰にも言わないわよ」

「はぁ、よかった……」

 

 安堵で胸を撫で下ろしている。やっぱり皆弱点だけは知られたくないのね。しずくちゃん辺りにホラー映画が見たいって誘われたらどうするのかしら。

 

「あら、もうこんな時間……」

 

 ふとスマホの画面を見たらあと数分で5時といったところだった。そろそろぬいぐるみを確保しに行かないと……。

 

「パンダのぬいぐるみがある台ならさっき見つけておきました。ここをまっすぐ行くとありますよ」

「それは助かるわ。さっ、早く取りに行きましょ」

 

 ああ、早く会いたいわ。早くギュって抱きしめたいわ。

 

「これね……」

 

 愛らしい姿をしたパンダのぬいぐるみを見つけた。ポスターに載っていたものよりも何倍も可愛い。

 

「500円で取れるかしら」

 

 財布から500円玉を取り出し、どうか私の下に来てくれますようにと祈りを込めてから投入する。そしてもう一度祈ってからレバーを操作する。

 

「ここかしら」

 

 パンダの真上に合わせ、ボタンを押してアームを降下させる。アームがぬいぐるみを掴み、そのまま持ち上げる。いい調子、そのまま穴まで……

 

「あっ、落ちちゃったわ……」

 

 まぁこんなものよ。あと4回もチャンスがあるし切り替えましょう。

 けどこの後3回も同じように持ち上げた後落としてしまった。落ちて床に激突するパンダを見るたびに心が痛む。ごめんなさい、次こそはちゃんと取るから。

 

「これが最後……あぁ……」

 

 最後の最後でやらかしてしまった。失敗できないという緊張から狙いがずれて、ぬいぐるみを持ち上げることさえできなかった。

 

「はぁ、ダメだったわ……」

「残念でしたね」

「仕方ないからこのぬいぐるみは諦めることにするわ」

 

 最後にぬいぐるみの顔をじっくりと見て目に焼き付ける。愛らしい。けどその目には悲しさが宿っている気がした。僕をこのまま置いていくの? そう訴えかけてくる。

 

「このまま諦めていいんですか?」

「だって取れなかったんだから仕方ないじゃない。ここでお金を使いすぎるわけにもいかないし……」

「……じゃあ俺もやってみていいですか?」

「元樹君もやるの? 構わないけど、難しいわよ?」

「任せてください。こう見えてもクレーンゲームは結構得意なんですよ」

 

 へぇ、璃奈ちゃんとクレーンゲームで遊んだりしてたのかしら。

 

「わかったわ。後ろから見守ってるわね」

 

 元樹君の集中を乱さないように視界に入らない位置に移動する。

 

「こういうぬいぐるみ系は腕の間とかにアームを差し込むといいんですよ」

 

 解説をしながらも、チャチャッと捜査して言った通り腕の間に差し込んでいる。すごいわ。アームはぬいぐるみを持ち上げてそのまま穴へと向かっていく。元樹君は勝ちを確信した顔をしている。

 

「あっ」

「あああああ!」

 

 だけど無情にもぬいぐるみは下に落ちてしまった。

 

「アームが揺れて落ちちゃったみたいです。ツイてないなぁ」

「残念だったわね」

 

 悔しがりながらもどこか楽しそう。取れた取れない関係なしにクレーンゲームが好きなのね。

 

「この位置なら次こそ取れるな」

「あら、もう1回やるの?」

「もちろんですよ。次でほぼ確実に取れるのに引き下がるなんてもったいないじゃないですか」

 

 元樹君はもう一度腕の間にアームを差し込んでぬいぐるみを持ち上げた。そして今度は途中で落ちることなく穴の中に落ちた。

 

「やったぜ」

「やったじゃない。おめでとう」

「ありがとうございます」

 

 元樹君は取出口から取ったぬいぐるみを取り出し、しばらくその顔を見つめた後私に差し出してきた。

 

「果林先輩へのプレゼントです。受け取ってください」

「私に? 受け取れないわ。この子は元樹君が取った子だもの」

「いいからいいから」

 

 そう言って私の胸にぬいぐるみを押しつけてくる。元樹君の優しい目とパンダの愛くるしい目の両方から見つめられて心が揺らぐ。

 

「……ほんとにいいの? このまま私に渡したらこの子は一生帰ってこないわよ? それでもいいの?」

「もちろんです。果林先輩ならきっと大事にしてくれると思ってますから」

「そう、ならありがたく受け取っておくわ。ありがとう、元樹君」

「どういたしまして」

 

 受け取ったぬいぐるみをギュっと抱きしめる。

 

「ふふっ、可愛い」

 

 もふもふしていて温かい。本物もこんな感触なのかしら。いつか本物に抱きついてみたいわ。

 

「何か元樹君にお礼をしないといけないわね」

「そんなのいらないですよ。むしろこのぬいぐるみは同好会に入ってくれたお礼ですから」

「同好会に入ったお礼? それこそいらないわよ。私は彼方への義理でも、ましてや解散させられることへの同情で入ったわけじゃない。スクールアイドルに興味があったから入ったの」

 

 スクールアイドルの雑誌……名前は何だったかしら。忘れたけど、それを図書館でたまに読んだりしていた。

 

「あとはそうねぇ……元樹君に興味が湧いたから、かしら」

「俺に? なんで?」

「私がグループ活動が苦手って言った時、グループじゃなくてもいいって元樹君言ってたでしょ?」

「言いましたね」

「あれ、私は結構衝撃的だったのよ? スクールアイドルってグループってイメージがあったから、カバーするからグループとして頑張れって言われると思ってた」

 

 実際µ'sやAqoursをはじめとして有名なスクールアイドルはグループばかりだ。

 

「侑達はグループで活動するつもりだったろうからそう思ってたと思う。でも元樹君だけは違った。グループにこだわる必要なんかない、むしろソロの方が私達にはぴったりだって。それにあの言葉は私に入ってもらうために言ったわけじゃないわよね。あの言いぶりからして、私が入っても入らなくてもソロ活動メインにするつもりだったんでしょ?」

「まぁ、そうですね。かすみから事情を聞いた時から考えてはいました」

 

 そんなに早くから……

 

「それって結構すごいことだと思うの。皆のことをちゃんと理解して、どうすべきか考えて、そして決断する。それに皆からあんなに信頼されてることも。ソロアイドルなんてそう簡単にできることじゃないでしょ? それなのに元樹君の言葉を聞いて、不安になるどころかむしろワクワクしているように見えた。それってきっと皆が元樹君のことを信頼しているから、元樹君の言葉を信頼しているからだと思うの。同級生も先輩も、皆が元樹君のことを信頼してる……だから興味が湧いたのよ」

「……そんな風に思ってくれてたんですね」

 

 元樹君は顔を真っ赤にして照れながらも嬉しそうにしている。この子はからかったりするより、自分の気持ちを素直にぶつけた方が照れちゃうのね。

 

「少し長くなっちゃったわね。結局私は自分の意思で同好会に入ったってことを言いたかったのよ。だから元樹君が気にする必要なんてないの。わかった?」

「十分すぎるほど伝わりましたよ……」

「ふふっ、いい子ね」

 

 顔が熱いのか手でパタパタと扇いでいる。こんな元樹君滅多に見られないわね。できれば動画に収めてしずくちゃんに見せてあげたいわ。可愛いって喜んでくれるかしら。それとも私しか直接見られてないのはズルいって怒るかしら。どっちもありそうなのが面白いわね。

 

「というわけだから何かぬいぐるみのお礼をしないとね。何がいいかしら?」

「いやまぁお礼のことはいつでもいいんで、今は学校に戻りましょうよ。さっきかすみから連絡が来てたので」

「かすみちゃんから? それなら早く戻らないといけないわね」

 

 ビニール袋を1枚貰ってその中にぬいぐるみをそっと入れ、ゲームセンターを後にする。ほんとは抱きしめながら歩きたいけど、そうすると皆にパンダ好きであることがバレちゃうからね。仕方ないから袋で隠しておく。寮に戻るまでの我慢よ。

 

「それにしてもかすみちゃんから……ね。元樹君に会いたくて仕方ないのかしら」

「多分この後俺の家に泊まるからだと思います。俺がいないと帰れないですからね」

「……待って。もしかしてかすみちゃんともお泊まりするの?」

「しますよ」

「なるほど……しずくちゃんも苦労するわね

 

 かすみちゃんも意外と手が早いわね。昨日の今日でもうお泊まりまで行っちゃうなんて……すごい行動力だわ。

 

「元樹君は好きな子とかいないの?」

 

 ずっと気になっていたことだ。いろんな子から好かれてる元樹君だけど、逆に元樹君に好きな子はいるのかしら。

 

「いないですよ。生まれてから今に至るまでずっと」

「そうなのね」

 

 璃奈ちゃんのことも意識したことないのかしら……。

 

「果林先輩は好きな人いないんですか?」

「へっ……? わ、私は……いないわよ。悪い?」

「いえ、何も悪くないですよ」

 

 ここでいると嘘ついてからかうのはなんだかしてはいけない気がした。

 

「でも果林先輩って何回も告白されてそうですね」

「告白なんてされたことないわ。高嶺の花だと思われてるのか、皆遠くから見るばかりで全然言い寄ってきてくれないのよ」

「へぇ」

 

 言い寄られても困るけどね。

 

「そういう元樹君こそされたことないの?」

「ないです、1回も」

「あら意外。元樹君って優しいからてっきり告白されたことくらいあると思ってたわ。彼女が欲しいとか思わないの?」

「うーん……別にどっちでも、って感じですね」

「ふぅん」

 

 もう少し恋愛にガツガツ行くタイプだったらしずくちゃん達も楽だったかもしれないわね。いや、逆にドキドキしっぱなしで心臓が持たないかも。

 

「果林先輩は彼女……じゃなくて彼氏欲しくないんですか?」

「うーん……恋はしてみたいって最近思うようになったのだけれど、いいと思える人がなかなかいないのよねぇ……」

 

 横目でちらりと元樹君を見る。

 

「でも今日一緒に出かけてみて、元樹君が彼氏だったらいいのにって少し思ったわ」

「え……」

「少し顔が赤くなってるわよ? もしかして照れちゃった?」

「照れてないです!」

「ふふっ、可愛い」

 

 でもさっきの言葉はからかうために言ったわけじゃない。本当にそう思った。優しいし頼りになる。でもそれだけじゃなく、緊張したり照れたり怖いものが苦手で甘えてきたり、そういう可愛いところを見ていると心が惹かれた。あとはパンダ好きという共通点。一緒に並んで実物のパンダを見たいと思った。もししずくちゃん達の気持ちを知る前に出会っていたら……もしかしたら好きになってたかもしれないわね。

 

「あら、もう学校ね」

 

 気づけば校門の前まで来ていた。

 

「元樹君と話しているとなんだか時間が短く感じるわ」

「実際ゲームセンターからここまでそんな距離ないですからね」

 

 急に現実的な答えをぶっこんでくるわね……。

 

「今日は楽しかったわ、ありがとう」

「俺もすごい楽しかったです。今日はありがとうございました」

「元樹君からもらった写真とこのぬいぐるみ、大切にするわ。また一緒にどこか遊びに行きましょうね」

「はい、動物園一緒に行くの楽しみにしてますよ」

 

 そういえば約束してたわね。忘れちゃってたわ。意外と早く一緒にパンダを見られるかも。

 

「さぁ、部室に戻りましょうか。さっきもらった写真、皆にも見せてあげたらどうかしら」

「そうします」

 

 しずくちゃん達は食い入るように見るんじゃないかしら。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


モデルの撮影がどんな感じかわからないので想像で書きました。絶対間違ってると思います。

作中で出てきた木下、鶴野、新田は多分今後出てきません。急に出てきて「なんだこのオッサン!?」と驚愕した人も安心してください。

あっ、そうだ(唐突) 
皆さん4thライブはいかがでしたか? 私は節約のため参加できませんでした……。円盤が発売されるまでにお金を貯めておきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part34/n

初投稿だったり初投稿じゃなかったりします。


 とってもキュートな幼馴染と世界一可愛い同級生と一緒にお買い物RTA、はーじまーるよー。

 

 前回は雑誌の撮影に代役で参加し、その後果林さんといろんなところへ遊びに行きました。今回はその続きからで、部室に戻ってかすみんを迎えに行きます。ただいまー!

 

「あ、元樹、おかえり」

 

 部室に戻って最初に会ったのはりなりーですね。何故かすごく楽しそうです。

 

「うん。実はさっきまで愛さん達が私を笑わせようとダジャレを披露してくれてた。それが面白くて」

 

 おお、これはスクスタストーリー2章3話の『璃奈ちゃんを笑わせろ!』ですね。どうやらほも君がいない時に勝手に発生してくれたようです。ストーリーを楽しみたい勢はなんてことを……と思うかもしれませんが、RTAだととても助かります。マルっと1個メインストーリーをスキップできるわけですからね。ダジャレで恥ずかしがる歩夢ちゃんと笑い転げる侑ちゃんを見れなかったのは残念ですが。

 

「あ、元樹さん!」

 

 せつ菜ちゃんが嬉しそうな声を上げて近づいてきました。この笑顔が見られただけで私はもう満足です……。

 

「撮影はどうでしたか! 楽しかったですか! どんな衣装を着たんですか! 雑誌はいつ発売なんですか!」

 

 いきなりのマシンガントークですね……。あまりにいっぱい質問されるとほも君も困ってしまいます。質問は1人1919個までですよ。

 

「私も気になる。撮影楽しかった?」

 

 楽しかったですよ。写真を何枚か貰ったんですけど見ますか?

 

「見たいです!」

「私も見たい」

 

 いいですよ。見たけりゃ見せてやるよ。ただ果林さんとの写真だけは取り除いておきます。この2人、特にせつ菜ちゃんに見られると湿度が上がってしまいますからね。

 

「これが元樹さん……かっこいい……」

 

 せつ菜ちゃんは写真に写るほも君を見て顔を赤らめていますね。食い入るように見つめています。やっぱ好きなんすね~。

 

「うん、とっても似合ってる。璃奈ちゃんボード『きゅん♡』」

 

 りなりーも表情こそ変わっていないものの、頬が少し赤くなっていて、目もキラキラ輝いています。2人とも気に入ってくれたようでよかったです。

 

「……あ、少しお手洗いに行ってくる。今日はかすみちゃんが泊まるんでしょ?先に帰っててもいいよ」

 

 あれ? かすみんとお泊りすること言いましたっけ?

 

「ううん、お昼にかすみちゃんから聞いた」

 

 なるほど、かすみんがバラしちゃったわけですか。

 

「私は1人で帰るから、元樹はかすみちゃんと2人で帰って」

 

 あっ、そうだ(唐突) 実は昨日冷蔵庫の中の食材がなくなったので買いに行かないといけないんですよ。今回はかすみんにも強制的についてきてもらうのでいいのですが、基本買い出しはほも君1人なのでロスになります。なので買い出しに行く回数は減らしたいですよね? となると一度にたくさん買っておきたいです。というわけでりなりーも買い出しについてきてくれませんか?

 

「……うん、一緒に行きたい」

 

 じゃありなりーと何故かいないかすみんが戻ってくるまで部室で待ってますね。

 

「わかった。はいこれ、写真見せてくれてありがとう」

 

 りなりーに写真を返してもらいました。丁寧に扱ってくれたので汚れがついたり端が折れ曲がったりしていません。

 

「元樹さん、かすみさんともお泊まりするんですね……」

 

 そうだよ(便乗) せつ菜ちゃんも泊まりに来ればいいじゃないですか。

 

「私もできることならお泊まりしたいのですが、両親が許してくれるかどうか……」

 

 せつ菜ちゃんの両親は厳しいですからね。本当はスクールアイドルも両親から禁じられています。せつ菜ちゃんが偽名と変装を使っているのはこれが理由ですね。

 

「同性の方ならともかく、異性の家となると絶対に許してくれないと思います。はぁ……」

 

 さて、スクスタではせつ菜ちゃんのキズナエピソードで両親にスクールアイドル活動を認めてもらうエピソードが存在します。ではこのゲームではどうかというと、もちろんそういうイベントが存在します。スクスタ同様メインストーリーではありませんが、ストーリーを進めるとこのイベントは確定で発生します。非常にいい内容のイベントではあるのですが、イベントがくっそ長いためRTA的には回避したいイベントです。肝心な発生時期ですが、栞子ちゃんが生徒会長に当選した後から発生するようになります。つまり栞子ちゃんが生徒会長になるまでは発生しないということです。

 皆さん覚えているでしょうか? 本RTAでは開始時に大胆なチャート変更をし、栞子ちゃん当選前に全員と付き合うというチャートに無計画で変更しました。そう、チャート通りに進めばこのイベントを見ることは絶対にないということです。イベントの内容が気になる人は自分で買ってプレイ、しよう!

 

「その、お泊まりの代わりにといいますか……写真を1枚貰ってもいいですか?」

 

 ナニに使うつもりなんですかねぇ?

 

「最近元樹さんのことを考えるといろんなことに集中できて……それに寝る前に考えるといつもよりよく眠れるんです。だからこの写真があればもっと効果を得られると思いまして……ダメ、ですか?」

 

 いいっすよ(快諾) どれがいいですか? 自由に選んでいいですよ。

 

「えっと、それじゃあ……キリッとしていて一番かっこいいこれを」

 

 わかりました。はい、どうぞ。今日からこれはせつ菜ちゃんのものです。大事にしてくださいね。

 

「もちろんです! お母さんにバレないように大切にします!」

 

 ちゃんと見つからない場所に隠しておいてくださいね?

 

「話は変わるのですが、イベントまでの間居残り練習をしてもいいでしょうか?」

 

 先生に許可を取ればできると思いますよ。後で話を通しておきますね。

 

「はい、お願いします!」

 

 居残りしてまで練習したいなんてせつ菜ちゃんは勤勉ですね。

 

「今回のイベント、見てくれるファンの皆さんに……そして元樹さんに、最高のパフォーマンスを届けたいですから」

 

 今回のせつ菜ちゃんはいつもよりやる気に満ちてますね。

 

「……元樹さんもご存じの通り、私は一度スクールアイドルをやめました。もう二度とスクールアイドルに関わらないつもりでした。ですが、皆さんの想いが、元樹さんの言葉が私をもう一度スクールアイドルにしてくれました。その恩返しをしたいのです。でも言葉じゃ足りない。だからといってもので返すのも違う気がして……そこで思い出したんです。元樹さんが『スクールアイドルとして輝いている私が大好き』と言ってくれたことを」

 

 そんなこと言ったっけなぁ……? あれかな、せつ菜ちゃん帰還イベントの時に言ったのかな? (もう覚えて)ないです。

 

「だったらスクールアイドルらしくライブで恩返ししようかと。イベントで私にできる最高のパフォーマンスをして、優木せつ菜再誕! ってところを皆に見せようと。それが一番あなたに喜んでもらえる恩返しだと思ったんです」

 

 はぇ~……そんなこと考えてくれてたんですね。

 

「でも最高のパフォーマンスをするためにはまだまだ力不足なんです。スクールアイドルをやめていた期間は何もしていませんでしたから、体もダンスも歌もなまってしまっています。まずはそれを元に戻さなければなりませんし、もちろんそこからさらに磨き上げないといけません。それからいろいろと試行錯誤する期間も必要です。やるべきことがたくさんあって、部活動の時間だけでは圧倒的に足りません。だから居残り練習がしたくて……」

 

 なるほど、そういう理由だったんですね。じゃあ何としてでも先生から許可をもぎ取ってきます。

 

「ありがとうございます! 本当は私が行くべきなのですが、さすがに優木せつ菜として行くわけにもいかないので……」

 

 正体がバレてしまう可能性があるので中川菜々として行くわけにもいきませんしね。大丈夫ですよ。こういうことはほも君に任せてください。なんたって部長なんですから。

 

「えへへ、じゃあいっぱい頼らせてもらいますね。頼りにしてますよ」

 

 指で唇をツンッとしてきます。あ^~せつ菜ちゃんに唇をツンツンしてもらうともう気が狂うほど気が狂うんじゃ。

 

「でも元樹さん1人の力ではどうしようもなくなったら、その時は私達を頼ってくださいね? 私達はいつどんなことでも元樹さんの力になりますから」

 

 ん? 今どんなことでもって言ったよね? じゃあ楽しんでライブをしてきてください。恩返しとか考えなくてもいいんですよ。私はただせつ菜ちゃんが楽しんでスクールアイドルをしているだけで満足ですから。

 

「もうっ! ……そんなのズルいですよぉ」

 

 顔赤くなってんぜ? 親密度溜まってんなぁオイ。

 

「あの……少しだけでいいので、ギュってしてくれませんか?」

 

 いいですよ。はい、ギュー。

 

「はぁ、あったかい……」

 

 せつ菜ちゃんも練習終わりだから体が温まってますね。

 

「元樹さん、私は今こうして皆と一緒にいられるだけでこれ以上ないくらい楽しいですよ。元からいた方も、新しく入ってくれた方も、皆さんやる気に満ち溢れていて、それぞれやりたいことを持っていて……きっとこれから先手強いライバルになると思います。そんな方達が身近に8人もいるなんて、これ以上素晴らしい練習環境なんてないじゃないですか。……今私がこうして最高の環境で、最高の仲間と一緒に大好きを追求できるのは全部元樹さんのおかげなんです。一度突き放したのに、あんなに酷いことをしたのにあなたは私を救ってくれた。だからどうしてもその恩返しがしたいんです。こういうのは黙って受け取っておくものですよ?」

 

 せつ菜ちゃんの魅力に溺れる! 溺れる!

 

「ふふっ、顔が赤くなってますよ。もしかして照れてるんですか?」

 

 そういうせつ菜ちゃんこそ顔が赤くなってますよ?

 

「うっ、こ、これは違くて……」

 

 それにせつ菜ちゃんの髪から爽やかな汗の香りがします。

 

「なっ! 嗅がないでください!」

 

 せつ菜ちゃんが離れてしまいました。ちゃんと腕で拘束していたのですが、ほも君は貧弱なので簡単に引きはがされてしまいます。もう見慣れた光景ではありますが、やはり何度見ても悲しくなりますね。いい加減筋力を上げたいものです。

 

「女の子の汗の匂いを嗅ぐなんて……」

 

 別にいいじゃないですか。ディープキスし合った仲なんですし。

 

「それとこれとは話が別です!」

「もーとーおー!」

 

 せつ菜ちゃんに睨まれていると、後ろからかすみんが抱きついてきました。

 

「えへへー、撮影お疲れ様ー」

「かすみさん、いきなり抱きついちゃダメでしょ?」

「うん、後ろからだと危ない」

 

 しずくちゃんとりなりーも一緒ですね。トイレに行ったりなりーと一緒に戻ってきたってことは、2人もトイレに行ってたのかもしれませんね。

 

「せつ菜先輩と何話してたの?」

 

 ちょっと大人な話ですね。

 

「平然と嘘つかないでください! ……元樹さんとは居残り練習の話をしていたんです」

「居残り練習ですかぁ?」

「はい。部活終了時刻は通常6時までですが、大会前などは事前に先生方から許可をもらっておけば8時まで練習できるんです」

「そんなことできるんですね」

「かすみんも! かすみんも居残り練習したいです!」

「許可は部活単位でもらえるので、許可さえもらえば誰でもできますよ」

「やったー!」

「私も……私も参加したい」

 

 へええっ!? りっ、りなりーもですかぁ!? りなりーも居残り練習に参加するなんて初めてのパターンですよ。このRTAそんなんばっかですね。ふざけんじゃねーよオォイ! 誰が未確認パターン出していいっつったオラァ!

 

「璃奈さんも参加するんですね」

「うん。私はスクールアイドル初心者だからダンスも歌もいっぱい練習しないといけないし、身体作りもまだまだ足りてないからもっと頑張りたい。初めてのライブで天王寺璃奈というスクールアイドルに少しでも興味を持ってもらいたいから」

「璃奈さん……! 私と一緒に頑張りましょう! 体に負担のかかりにくいトレーニング法など、私に教えられることであれば何でもアドバイスさせてもらいます! 最高のデビューライブにしましょう!!」

「うん、よろしくお願いします。璃奈ちゃんボード『やったるでー』」

「いいなぁ……私も参加したいけど、家が遠いから厳しいかも……」

 

 しずくちゃんは鎌倉から通学ですもんね。

 

「うん……」

「じゃあ私の家に泊まる?」

「璃奈さんのお家に? ありがたいけど……いいの?」

「うん。2人くらいなら泊まれるスペースはあるし、しずくちゃんからアドバイスとかいろいろもらいたい」

「ご両親は許してくれるの?」

「多分大丈夫。元樹以外の人が家に遊びに来たら親も喜んでくれるから。愛さんの時もそうだった。だからお泊まりも大丈夫……だと思う。それに私の家がダメだったら元樹の家に泊まればいい」

「も、元樹君は大丈夫なの?」

 

 大丈夫ですよ。エッチなことさえしてこなければね。

 

「そ、そっか……。じゃあお願いしようかな。毎日だと迷惑だろうし週2、3くらいの頻度で」

「任せて」

 

 しずくちゃんも居残り練習に参加することになりましたね。こんなパターン私、知らない……。

 

「2人でお泊まりいいなぁ……」

「かすみちゃんも泊まる?」

「うん!」

「じゃあかすみちゃんもお泊まり決定ということで。璃奈ちゃんボード『ワクワク』」

 

 結局1年生組でのお泊まり会になりましたね。ほも君はハブられてますが。

 

「そろそろ帰る?」

 

 そうですね、帰りましょうか。かすみさん、りなりーさん、行きますよ。

 

「行くってどこに?」

 

 スーパーです。食材の買い出しに行きます。なるべく多く買い溜めしておきたいのでりなりーにも手伝ってもらうんですよ。

 

「私も手伝ってあげたいけど……」

 

 しずくちゃんにはまた別の機会に助けてもらいますね。

 

「うん!」

 

 というわけでほも君達はお先に失礼しますね。鍵の管理をお願いします。

 

「はい、任せました!」

 

 では、スーパーにイクゾー!デッデッデデドン!

 

 

 

 スーパーに到着しました。ささっと食材を買ってささっと帰りましょう。

 

「今日は何にするつもりなの?」

 

 特に決めてないですね。

 

「じゃ、じゃあさ……今日はかすみんが作ってもいい?」

 

 かすみんが作ってくれるんですか?

 

「うん、もと男にかすみんの手料理食べてほしくて……ダメ?」

 

 いいっすよ(快諾)

 

よしっ

 

 でも1つだけ条件があります。今日はピーマンが食べたい気分なので、絶対に1品ピーマンを使った料理を作ってください。オナシャス! センセンシャル!

 

「ピーマン……どうしても作らなきゃダメ?」

 

 作らなきゃダメです。

 

「ごめんね、かすみちゃん。元樹ピーマン好きだから。焼いただけのピーマンでも満足するくらい好き」

「えぇ……絶対美味しくないよぉ」

「うん、私も食べてみたけど味付けを何もしてないからあんまり美味しくなかった」

 

 ちなみにしずくちゃんも昨日苦いとだけ言ってましたよ。

 

「え……もしかしてしずくちゃんに出したの?」

 

 出しちゃいました。

 

「しずくちゃん、可哀想……」

 

 しずくちゃんが食べたってことは、かすみんも食べないと不公平だよなぁ?

 

「やだやだぁ!」

 

 ほも君があーんしてあげますから。

 

「……あーんしてくれるの?」

 

 はい、してあげますよ。

 

「ほんとに?」

 

 ほんとですよ。

 

「ほんとのほんとに?」

 

 ほんとだっつってんだろ!

 

「じゃあ焼きピーマンも我慢する!」

「……焼きピーマンじゃなくて、ピーマン料理じゃなかった?」

 

 りなりー、それは言わない約束ですよ。

 

「あとは何にしよっかなぁ。もと男は何か好きな料理とかある?」

 

 ハンバーグ!

 

「ハンバーグはちょっと時間的に厳しいかな。他には?」

 

 何でもいいっす(適当)

 

「何でもいいが一番困るんだけど……。あっ、そうだ! 今日はオムライスにしよ!」

 

 オムライスですか、いいですね。となると卵を買わないといけませんね。

 

「卵ならあそこ、特売品があった」

 

 じゃあ特売品の卵を買いましょう。1人1箱までと書いてありますね。今ほも君とりなりー、かすみんの3人いるので3箱まで買えます。もちろん3箱買います。

 

「あとはピーマン買って……他に何がいるかなぁ」

 

 買い溜めも兼ねてますので、冷凍食品とかとにかくいろいろ買っておきましょう。もちろん3人で持ち運べる範囲内でね。

 

「もと男ってよく買い溜めするの?」

「こまめに買い出しに行くのがめんどくさいからってよく買い溜めしてる。で、私はよくそれの手伝いをさせられる。璃奈ちゃんボード『やれやれ』」

 

 りなりーまで巻き込んでたのか……(困惑) でもタイムのためにこれからも買い溜めする予定なので、これからもよろしくね、りなりー。

 

「りな子ばかりに頼ってちゃダメだよ。だからこれからはかすみんも手伝ってあげる!」

「私は別に気にしてない。元樹と一緒にいる時間は大好きだから」

「でも1人だと大変でしょ? 1人より2人、2人より3人だよ」

 

 さてはしずくちゃんも巻き込むつもりだな?

 

「もちろん! 休みの日とかだと来てくれると思うし、むしろ自分から来たいって言いだすと思うよ」

 

 まあ来てくれるでしょうね。しずくちゃんもほも君のこと大好きですからね。

 

「ありがとう、かすみちゃん。じゃあ次はしずくちゃんも含めた4人で買い出しに行こう」

 

 うーん……買い溜めがしやすくなるのは助かるのですが、1年生組とばかり絡みすぎてる気がしますね。上級生達の親密度が少し心配です。もっと積極的に遊びに誘った方がいいのかもしれません。まぁプレイ当時の私は『1年生の絡みは最高だなぁ、もっと見たいなぁ』とか考えてたんですけどね。こいつ本当にRTA走者か?

 

「これくらいかな」

 

 買い溜めできそうなものは一通り買いました。あとはこれを3人で持てるかという問題ですね。商品の重量が3人の許容量を超えてしまうと移動にかかる時間が極端に増えてしまいます。それだけは避けたい……のですが、事前にそれを確認する方法はありません。なので実質運ゲーですね。あとはほも君の筋力を上げることで許容量を増やすことができます。

 

「んっ、重い……」

「ちょっと買いすぎたかも……」

 

 オーバーしました(半ギレ) ちなみにオーバーした量にかかわらず、移動時間の増加量は一定です。なのでオーバーした時はいっぱいオーバーしていた方が効率がいいです。今回は見た感じ許容量をギリギリオーバーしたって感じですね。はーつっかえ。もっと買い溜めてホラホラホラホラ。

 

「もと男、大丈夫……?」

 

 ほも君にとってはかなりの重労働ですね。筋力がない上にスタミナも雀の涙ほどしかありませんから。ちなみにオーバーしたしてないにかかわらず筋力経験値は一切もらえません。これだけ頑張ったのに一切もらえないのは悲しいと思いまーす。

 

「とりあえず、頑張ってこれを元樹の家まで運ばなきゃ」

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


次回丸っとかすみんにするために今回は少し短めです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part35/n

初投降です。


先日家探しのために東京に行ってまいりました。広いし建物は高いしで果林さんになるかと思いました……。
この時は巡礼できなかったので、いつかちゃんと虹ヶ咲の聖地に行ってみたいと思います。


 世界一可愛い同級生と1つ屋根の下、あーんなことやこーんなことをしたりしなかったりするRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はりなりーとかすみんの2人を侍らせてスーパーに買い出しに行きました。今回はその続きからで、自宅に帰ってかすみんを口説き落としていきたいと思います。

 

「ふぅ、重かった……」

「疲れたよぉ……」

 

 ご苦労様でした。お茶でも飲みますか?

 

「飲む飲む!」

 

 いいですよ。ほも君が好きになる薬をサーッ! と入れて、はいどうぞ。

 

「はぁ~、生き返る~」

 

 りなりーは飲まないんですか?

 

「私はいい。この後すぐ帰るから」

「えー、りな子も一緒に晩ご飯食べようよ~。大人数で食べた方が楽しいじゃん!」

「実は、その……」

 

 何か言いずらそうですね。人には言えないような理由なのでしょうか。

 

「……今日はお父さんとお母さんが珍しく早く帰ってくるから、一緒にご飯食べようって言われてて……」

「よかったじゃん!」

 

 かすみんの言う通りいいことじゃないですか。なんであんなに言いずらそうにしていたんでしょうか。

 

「だからごめんね。今日は一緒に食べられない」

「ううん、そういうことだったらしょうがないよ。家族団欒って大事だもんね。でもしず子も一緒にりな子の家にお泊まりする時は一緒に食べようね!」

「もちろん。じゃあ私は帰るね。後は2人で楽しんで。また明日」

「うん、また明日!」

 

 りなりーが自分の家に帰宅しました。今更ですがりなりー宅のお風呂の修理は終わったのでしょうか。終わってないならまたここに来ることになると思うんですけど(名推理)

 

「りな子帰っちゃったし、2人で食べよっか」

 

 そうですね。早速ご飯の用意をしましょう。

 

「今日はぜ~んぶかすみんがしてあげるから、もと男はテレビ見ててもいいよ。でーもー、料理するかすみんのこと見てたいなら、じぃーっと見てくれててもいいよ?」

 

 テレビ見てますね(即答)

 

「ちょっと! そこはかすみんを見るって答えてよ!」

 

 かかかかがテレビ見てていいって言ったんじゃないですか。

 

「かかかかって誰!?」

 

 かすみんの新しいあだ名ですよ。かすかすよりはいいんじゃないですか?

 

「どっちもヤ! どっちも可愛くないもん! もと男にはちゃんと名前で呼んでほしいの!」

 

 しょうがねぇなぁ。可愛い可愛いかすみ姫、あなたが料理するところを私に眺めさせてください。

 

「しょうがないなぁ……そこまで言うなら見せてあげる! もと男だけの特権なんだからね? 今からエプロンに着替えるね」

 

 かすみんがカバンからエプロンを取り出して着ています。まだ見せたくないのか後ろを向いています。早くエプロン姿見せて、役目でしょ。

 

「じゃじゃーん! かすみんお気に入りのエプロンなの! どう? 似合ってる?」

 

 あぁ~いいっすね~。がわ゛い゛い゛な゛ぁ゛がずみ゛ぢゃ゛ん゛。やっぱりかすみんは何を着ても似合うんやなぁって。

 

「ふっふーん、そうでしょそうでしょ。もっとじっくり見てもいいよ?」

 

 じゃあお言葉に甘えてじっくり眺めさせてもらいましょう。タイム? そんなん関係ないでしょ。

 

「……さすがに近くない?」

 

 今は超至近距離で観察しています。こんなに近いと何も見えなくない? エプロンの材質が気になるのかな?

 

「ねぇ、ちょっと……」

 

 さすがに恥ずかしいのかかすみんも顔が赤くなってきました。

 

「何か言ってよ、恥ずかしい……」

 

 かすかす。

 

「かすかすって言わないでってば! もうっ! もと男なんか変だよ。どうしたの?」

 

 かすみんに見とれちゃいました。

 

「そ、そう? じゃあしょうがないね。だってかすみんは可愛いんだもん! エプロンなんてつけちゃったらその可愛さがさらに跳ね上がっちゃうもんね。もと男だって見とれちゃうよ。……でも、恥ずかしいからもうちょっと離れて……」

 

 かすみんが1歩後ろに下がってしまいました。ここでさらに1歩詰めてもいいのですが、あまり強引にしすぎると逆に親密度が下がってしまうため、ここら辺でやめておきましょう。

 

「ふぅ……じゃあそろそろ始めるから、もと男はそこで座って見ててね」

 

 おかのした。言われた通り座ってかすみんのことをジーっと見てましょう。

 

「ふんふんふーん♪」

 

 楽しそうですね。鼻歌まで歌っています。楽しそうなかすみんを見ているとこっちまで楽しくなってきてしまいますね。

 

「もと男はオムライス好き?」

 

 嫌いじゃないけど好きじゃない。

 

「普通かぁ……じゃあ今日から大好きにしてあげるね。週一でかすみんのオムライス食べないと満足できない体にしてあげる!」

 

 おっ、自信満々ですね。

 

「もちろん! もと男のためならなんだって美味しく作れる気がする!」

 

 そう……(無関心)

 

「あ、そうだ。今のうちにお風呂入れてきてくれない?」

 

 いいですよ。このやり取り、なんだか夫婦みたいですね。

 

「夫婦……えへへ、夫婦かぁ……」

 

 嬉しそうに頬に手を当てて体をくねらせています。でもそのせいで手が止まっていますね。料理中は手を止めちゃダメって、それ一番言われてるから。

 

「かすみんともと男が結婚したらぁ……いってきますのチューは絶対ね。あとハグもしてほしいなー」

 

 そう……(無関心) 結婚後のことはRTAには関係ないのでどうでもいいです。ハグなりチューするなりパンパンするなり野球チーム作るなり自由にしてください。あとそろそろお風呂入れに行ってきます。

 

「はーい」

 

 お風呂を入れるついでにトイレにも行っておきましょう。私もリアルの方でトイレに行っておきたいので。あと飲み物も取ってきます。喉がカラカラでそろそろ限界だったので。事前に用意しておかないRTA走者の屑。

 

「もと男ー、ご飯できたよー」

 

 かすみんが呼びに来てくれました。でもこの時点で私はトイレから戻って来ていません。あーもう滅茶苦茶だよ。

 

「もと男? お腹痛いの? 大丈夫?」

 

 (タイムは大丈夫じゃ)ないです。

 

「ねぇ、何か返事してよ。かすみん放置プレイは好きじゃないんだけど……」

 

 おっと、このままだとかすみんの親密度が下がってしまいそうです。まずいですよ! 早く戻ってきてくれ~。

 

「ねぇ、寂しいよ……もとおぉ……」

 

 かすみんの声が涙声になってきた辺りでようやく走者が戻ってきました。かすみんの涙声を聞いてかなり慌てています。RTA開始前にいろいろ準備を怠ったツケですね。ケツを拭いてからツケも拭いに行きましょう。あーさっぱりした(焦り)

 

「もと男ぉ! なんで返事してくれなかったのさ!」

 

 飲み物を取りに行ってたのでほも君の意識はありませんでした。申し訳ナス。

 

「もと男に嫌われたんじゃないかって、怖くて怖くて……こんなイタズラ二度としないで……」

 

 かすみんが泣いてしまいました。目から大粒の涙がポロポロ流れています。ギュっとハグして泣き止んでもらいましょう。

 

「うぅ……ぐすん」

 

 泣き止んでくれませんね、困りました。どうやったら泣き止んでくれるのでしょうか。ライダー助けて!

 

「じゃあ……チュー、して?」

 

 はええっ!? チッ、チューですかぁ!? いいよ! こいよ! 首から上にかけていろんな箇所に!

 

「……なーんて! 冗談だよーだ!」

 

 は?(半ギレ)

 

「あっれれ~? もしかして本気にしちゃった?」

 

 は?(半ギレ)

 

「かすみんの唇はそう簡単にあげませーん」

 

 ふざけんな!(迫真) 実は親密度が告白ラインに達してるんじゃないかと勘違いしちゃったじゃないか!

 

「さっきかすみんにイタズラしてきたじゃん。その仕返しだもん」

 

 イタズラじゃなくて飲み物取りに行ってたんですよ。こっちの事情も考えてよ(棒読み)

 

「でもさっきみたいなイタズラは二度としないでね。かすみん悲しくて泣いちゃうから……」

 

 だからイタズラじゃねぇつってんじゃねえかよ(棒読み)

 

「よしっ、それじゃあご飯食べよ? 早くしないと冷めちゃうから」

 

 そうですね。かすみんにからかわれたことは少々納得がいきませんが、私の準備が足りていなかったのが悪いと無理やり納得することにしましょう。そんなことより今はかすみんの手料理ですよ。かすみんの愛情が籠っていたり籠ってなかったりするオムライスをお腹いっぱい食べましょう。

 

「じゃーん! かすみん特性オムライス! ケチャップをたーっぷりかけて召し上がれ。……あとピーマンも」

 

 焼いただけのピーマンをちゃんと自分の分まで用意しててえらいですね。そしてなんといってもオムライス、ふわふわで美味しそうです。折角ですからかすみんにケチャップで絵を書いてもらいましょう。

 

「いいよ、何書いてほしい?」

 

 ハートマークを書いて、その上に大好きって書いてほしいです。

 

「え、だ、大好き……?」

 

 あくしろよ。

 

「ほ、ほんとに大好きって書くの……?」

 

 大好きじゃなくてもそれと同じような言葉であれば何でもいいですよ。ホラ、書けよ書けよ。

 

「うぅ、じゃあ……あい、らぶ、ゆー……」

 

 ハートマークの上におぼつかない手つきで『I LOVE YOU』と書いてくれています。ちゃんと英語で書けるんやなぁ……。

 

「ってやっぱりなし!」

 

 あーあ、折角書いたのをスプーンでぐちゃぐちゃにしてしまいました。ふざけんじゃねえよお前これどうしてくれんだよ!

 

「だってぇ……恥ずかしかったんだもん……。かすみんのと交換してあげるから許して」

 

 別に交換なんてしなくてもいいですよ。

 

「え、いいの?」

 

 ぐちゃぐちゃになったとはいえ、かすみんが気持ちを込めて書いてくれたんですから食べないともったいないじゃないですか。

 

「うん……いっぱい、いっぱい気持ち込めた」

 

 例えばどんなのを込めてくれたんですか?

 

「えっと、えっとね……いつもありがとうとか、これからも応援してね……とか」

 

 大好きって気持ちは込めてくれなかったんですか?

 

「それは……ああもう! 込めました! 込めましたよ! だってもと男のこと大好きだもん!!」

 

 おっおっおっ? もしかしてもしかすると告白イベですか? でもチャート通りだと現時点でかすみんの親密度が告白ラインに達してるわけがないんですよね。じゃあこれは一体なんぞ?

 

「……も、もちろん友達としてだよ? 勘違いしないでよね!」

 

 なーんだ、そういうことですか。友達以上恋人未満ということですね。確かにそれぐらいの親密度であれば現時点で達していてもおかしくないですね。

 

「いいから食べて!」

 

スプーンで掬ったオムライスを口の中に突っ込まれました。う、羽毛……。

 

「どう? 美味しい?」

 

 うん、おいしい!

 

「よかった……。じゃあどんどん食べて。はい、あーん」

 

 自分で食べるからあーんなんてしなくていいですよ。

 

「いいからいいから」

 

 また無理やりオムライスを口に入れられてしまいました。ほも君が食べる姿を見てかすみんはニヤニヤと笑っています。楽しそうですね。

 

「だってもと男が美味しそうに食べるんだもん」

 

 かすみんは食べないんですか?

 

「うん、もと男を見てたらかすみんもお腹空いてきちゃったし、そろそろ食べよっかな」

 

 今度はほも君がかすみんに食べさせてあげますね。

 

「えっ!?」

 

 じゃあ今までのちかえちをたっぷりとさせてもらおうじゃないか。はい、あーん。

 

「待って……まだ心の準備が……」

 

 つべこべ言わずに食えホイ。

 

「んむっ!」

 

 さっきされたのと同じように、かすみんの口に無理やりオムライスを突っ込みました。どうですか、美味しい?

 

「……おいひい」

 

 それはよかったです。まぁ作ったのはほも君じゃなくてかすみんなんですけど。

 

「もう1回あーんして?」

 

 いいですよ。じゃあ目をつぶってください。

 

「ん……」

 

 かすみんが言った通りにしてくれたので、スプーンでオムライスを……掬いません! フォークでピーマンをぶっ刺します。はい、あーん。

 

「あーん……苦っ!?」

 

 お味はどうですか?

 

「苦いよ! なんでいきなりピーマン食べさせるのさ! せめて先に言ってよ!」

 

 でも食べられたじゃないですか。

 

「そりゃ吐き出せないもんね! 食べるしかないよ!」

 

 かすみんがオエーって吐き出すところもちょっと見たくはありますね。きっと可愛いと思いますよ。

 

「全っ然可愛くない! むしろ汚い!」

 

 まぁまぁ、そんな膨れないで。ほら、お口直しのオムライスですよ。

 

「……あむっ」

 

 むくれながらも食べてくれました。ほも君も自分のピーマンを食べましょう。

 

「……美味しい?」

 

 うん、おいしい! ペロリと一人前を平らげてしまいました。

 

「えぇ……苦味しかなくない? もと男の味覚絶対おかしいよ」

 

 私もそう思います。何か多少なりと味付けをしてるならともかく、ただ焼いただけですからね。不満そうですし、かすみんの分も食べてあげましょう。

 

「ちょ!」

 

 かすみんが静止する間もなく平らげます。お前どんだけピーマン好きなんだよ……。ちなみに私はピーマンは嫌いです(隙自語)

 

「うぅぅぅぅぅぅぅ」

 

 そんなに唸っちゃって、ほも君にピーマン食べられたのが悔しかったんですか?

 

「そうじゃなくて……その……かかか、間接……キスじゃん……」

 

 間接キスくらいでそんなに慌てないでくださいよ。粘膜と粘膜が直接触れたわけじゃないですしいいじゃないですか。

 

「よくない! あと粘膜とか言わないで! キスっていうのはもっとロマンチックなものなの!」

 

 したことないくせに(小声)

 

「うっ、うるさい! 自分がしたことあるからって……かすみんだっていつかも、好きな人といっぱいするもん!」

 

 いつかも、ってなんだよ(素) テキストミスかな?

 

「今はまだかすみんに振り向いてくれないだけだもん……。いつか絶対に振り向かせてみせるもん……」

 

 じゃあその時のためにほも君と予行練習しときますか?

 

「え、よ、予行練習……? それはどういう……」

 

 ほも君とキスするんだよ(直球)

 

「うぇえええええ!?」

 

 うるせぇ!

 

「な、なんでそんなこと……」

 

 予行練習だっつってんだろ! いざという時にキスが下手だと嫌われちゃいますよ? あとは親密度の確認も含んでいます。さっきからかすみんの行動が変ですし、ここらで確認しておきます。断られるなら友達、OKしてくれるなら告白ラインに達しているか、それに近いことがわかりますからね。ベストな判断だぁ……とプレイ当時の私は考えていました。が、後から考えるとこれはかなりの悪手でした。OKしてくれれは問題ないのですが、問題は断られた場合です。断られた場合は親密度がそこそこ下がってしまいます。急にキスを迫られたら何こいつって思っちゃうからね、しょうがないね。

 

「……いいよ。予行練習、手伝って」

 

 かすみんがほも君の隣の席に座って、潤んだ瞳で見上げてきました。これは……つまり親密度はバッチェ高いということでよろしいですかね?

 

「その、初めてだから……優しくしてね」

 

 緊張で力が入ってプルプルと震えています。キスは初めてか? 力抜けよ。

 

「力抜いてって……そんなの無理だよぉ……」

 

 じゃあ手を握ってあげましょうか。あと高さの関係から膝の上にかすみんを座らせます。

 

「……ギュってして?」

 

 抱きしめてほしいんですか? 意外に要求が多いですね。

 

「ダメなの……?」

 

 まさか、そんなわけないですよ。ほら、お望み通りギュー!

 

「あったかい……。もと男の方から抱きしめてくれたの初めてじゃない?」

 

 そうだよ(便乗) そんなどうでもいいことは置いといて、さっさと初めてのキスを済ませてしまいましょう。ホラホラホラホラ。

 

「……なんか慣れすぎじゃない? 淡白というかなんというか……かすみんはもっとイチャイチャする感じでしたいの」

 

 イチャイチャする感じで? 了解しました。じゃあイチャイチャする感じでキスしましょう。まずは頬に手を添えて、こちらを向かせます。

 

「っ……」

 

 視線が合うと顔が急激に赤く染まりました。やっぱ恥ずかしいんすね~。けど視線だけは決して逸らしません。それだけ期待しているのでしょう。念のため確認しておきますが、本当にいいんですね?

 

「うん。もと男じゃなきゃヤダ」

 

 最終確認も終わりましたし、そろそろやっていきましょう。顔を少しずつ近づけていきます。近づくたびにかすみんの顔は赤みを増していますが、震えはピタリと止んでいます。

 

「んっ」

 

 工事完了です……(達成感) せつ菜ちゃんや栞子ちゃん、しずくちゃんの時はたっぷりと繋がっていましたが、かすみんの時は一瞬だけです。別にかすみんだけ冷遇しているわけではなく、かすみんとの初めてのキスではその時間を短くしなければなりません。長時間してしまうと息苦しかったと言って親密度がほんの少し下がってしまいます。だから一瞬だけにしておく必要があったんですね。

 

「はぁ……これが、キス……」

 

 初めての感想はいかがですか?

 

「よくわかんない……うまく言えないけど、ただただ幸せ……」

 

 もう1回しますか?

 

「ううん、いい。一応予行練習だし、それに今いっぱいしちゃうと我慢できなくなっちゃうから……」

 

 ほも君の膝の上から降りて元の席に戻っていきました。もっとガツガツくるかと思いましたが、ちょっと拍子抜けですね。でも唇をちょこちょこ触っているあたり本当はもっとしたいのでしょう。言ってくれればいくらでもしてあげるのにね。実際かすみんは虹ヶ咲で随一のキス魔です。付き合った後はいつどこでもキスをおねだりしてきます。ちなみにこのおねだりを4回断ると親密度が下がってしまいます。お願い4回断ったらペナルティとか、どっかで見たことありますね。続き書いて(懇願)

 

「続き食べよ? 美味しいご飯が冷めちゃう」

 

 顔を赤くしたままのかすみんが食事を再開しました。ここから何かが起こる気配もありませんし、ほも君もとっとと食べ切ってしまいましょう。

 とりあえずかすみんの親密度を確認できただけでも今回は十分な収穫です。間違いなく告白ラインに到達しています。本来2章の時点でかすみんの親密度が告白ラインまで達することはないのですが、原因不明の原因で達していました。栞子ちゃんの時と同じで初期親密度が最高だったのでしょうか? 仮にそうだとして、どの段階で告白ラインに到達していたのかが問題ですね。もしかしたら無駄に親密度稼ぎをしてしまっていた可能性があります。……ま、えやろ。多少のロスは気にしない方針でやっていきます。ロスを笑って許せる世界、そんな世界を私は作りたい―――

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


かすみんとのお泊まりはもう1話か2話続きます。
男女2人が1つ屋根の下、何も起こらないはずがなく……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part36/n

初ダイアモンドです。


本作にエチチな要素は一切ありません。ご容赦ください。


 お風呂場であーんなことからこーんなことまでしちゃうRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はかすみんとイチャイチャキスをして、かすみんからの愛を確かめました。今回はその続きからで、食後の片づけをします。

 

「もと男、そっち洗って」

 

 水で適当に洗って終わり! 閉廷! ……以上! 皆乾燥! してしまうと親密度が下がってしまうため、ちゃんとスポンジと洗剤でキュッキュッと洗いましょう。

 

「もと男は普段から料理してるの?」

 

 やりますねぇ! やりますやります。ただ平日の朝は時間がないので作りませんが。

 

「へー、じゃあお昼は学食?」

 

 よくパンとかおにぎりを買って食べてましたね。

 

「おにぎりかぁ、どの具が好きなの?」

 

 やっぱり僕は……王道を往く、鮭おにぎりですかね。

 

「わかる、美味しいよね。今日も……あっ! もと男今日どこでお昼食べてたの? しず子とりな子と一緒に教室まで行ったんだよ?」

 

 すみません、今日は学食で果林さん達と食べてました。申し訳ナス。

 

「果林先輩とぉ? 他には誰がいたの? やっぱりエマ先輩と彼方先輩?」

 

 そうだよ(便乗)

 

「ふぅん……皆おっきい……」

 

 どこのことを大きいと言っているのかわかりませんが、かすみんのは小さいですね。

 

「楽しかった?」

 

 楽しかった(小並感)

 

「よかった。じゃあ明日はかすみん達と食べようね。約束だよ」

 

 すみませぇーん、明日は歩夢ちゃん達と約束してるんですよ。

 

「歩夢先輩と!? むぅ……なーんか歩夢先輩と仲良すぎない? そんなに気が合うの?」

 

 合いますねぇ! まぁ今日はキスマークの件で怒られちゃいましたが。かすみんはほも君と歩夢ちゃんが仲良くするのが嫌なんですか?

 

「そんなはずないじゃん! もと男がいろんな人と仲良くするのは嬉しい! 嬉しいけど……もと男が盗られちゃった気がして……なんかヤダ」

 

 ほうほう、それはつまり嫉妬してくれてるわけですね。

 

「……うん

 

 顔を真っ赤にして俯いちゃって、かすみんは可愛いですね。チューしますか?

 

「うん、する! ちゅ……」

 

 誘った途端顔をガバっと上げて、抱きついてキスしてきました。さすがキス魔、キスに関しては一切躊躇いがないですね。

 

「えへへー、もと男とのキス好きー」

 

 私もかすみんとのキスは大好きですよ。唇がつやっつやでいい匂いもしますし。あとまだ触れる程度のキスしかしてこないので、1回あたりの時間が短いのもありがたいです。効率よく告白確率を上げることができます。

 

「せつ菜先輩のとかすみんの、どっちの方がよかった?」

 

 いや、僕もう中須かすみですね。

 

「ほんと? 嬉しい……」

 

 余程嬉しいのかまた俯いてしまいました。食器洗いも終わりましたし、風呂も入ってますけど先に入りますか?

 

「ううん、もと男が先に入っていいよ」

 

 わかりました。じゃあ先に入ってきますね。ほも君の自室まで案内するので、そこでくつろいでいてください。

 

「うん! にひひっ、エッチな本がないか探しちゃお」

 

 別にいいですけど多分ないですよ。今時紙の本で持ってるわけないだろ!

 

「ほんとかなぁ? まぁいいや、とりあえずもと男のお部屋に案内して」

 

 了解しました。つべこべ言わずに来いホイ。

 

「へぇ、ここがもと男のお部屋かぁ……」

 

 エロ本探すとか何してもいいのでここで待っててください。漫画とかも自由に読んでいいので。

 

「うん、わかった」

 

 じゃあお風呂に入りに行きましょうか。まぁ何度も言っていますがほも君の入浴シーンはありませんが。なのですぐかすみんと再会できますね。よかったね、かすみん。寂しくなんてないよ。

 

 

 

 な ん で 入 浴 シ ー ン を 見 る 必 要 な ん か あ る ん で す か?

 

 本来再生されないはずのほも君の入浴シーンが再生されてしまいました。昔のPartで言った気もしますが、例外としてヒロインと一緒に入浴、あるいはヒロインが途中で乱入してくる場合のみ入浴シーンが再生されます。つまりはそういうことです。入らないで、どうぞ。

 

「えへへ、もと男ー」

 

 かすみんが体にタオルを巻いて浴室に入ってきました。ふざけんじゃねーよオォイ! 誰がタオル巻いていいっつったオラァ!

 

「来ちゃった。背中流してあげる!」

 

 そんなことしなくていいから(良心)

 

「いいからいいから。ほらあっち向いて」

 

 しょうがねぇなぁ。パパパッとやって終わりにしてくださいね。

 

「ダーメ。じっくり丁寧に洗ってあげる」

 

 そんなことしなくていいから(迫真)

 

「よいしょ、よいしょ」

 

 丁寧丁寧丁寧にゴシゴシと背中を洗ってくれています。一生懸命な姿に涙が出、出ますよ……。

 

「どう? 痛くない? 気持ちいい?」

 

 バッチェ気持ちいいですよ。時折首にかすみんの吐息がかかってFoo↑気持ちぃ~。

 

「よかった。誰かの背中を洗うのって初めてだから、ちょっと自信なかったんだー」

 

 今更ですが、なんで背中を流してあげようと思ったんですか? ほも君とエッチなことでもするつもりだったんですか?

 

「ちっ、ちが……そういうのじゃないの!」

 

 顔を真っ赤にして抗議してきます。きゃわわ。どういうことなのか、私には理解しかねるね。

 

「今から説明するから、あっち向いて……。絶対にこっち見ないでよ!」

 

 もしかしてタオルを取って全裸でご奉仕してくれるんですかね? いいゾ~これ。かすみんの発展途上のおっぱいのことが好きだったんだよ!

 

「もと男……」

 

 脱いでくれるのかと思ったらそのままの姿で後ろから抱きついてきました。折角の柔らかい感触がタオルのせいでナーフされています。はーつっかえ。

 

「ありがと」

 

 何のことったよ。

 

「同好会を復活させてくれたこと。私が一番大好きな場所を、一番輝ける場所を守ってくれてありがとう」

 

 はぇ~それのことだったんですね。そんなことより重要なのはかすみんの一人称が『私』だってことです。アニガサキ1期8話しかり、心からの想いをぶちまけるときにしか使われません。つまり今がそれだけ重要な場面だということです。いい雰囲気なんじゃないのこれ~。もしかしてこのまま告白まで行っちゃうんじゃないでしょうか。K(告白)! B(微乳)! S(セッ○ス)! 振り向いてギュっと抱きしめてあげましょう。

 

「こっち見るな~!」

 

 おっと、顔をがっちり挟まれて視線を固定させられてしまいました。これでかすみんの顔が見れません。なんてことを……(憤怒)

 

「顔、見られたくないの……」

 

 馬鹿野郎お前俺は見るぞお前(天下無双) ぬぅぅぅぅ! はぁ……はぁ……ダメみたいですね(諦観)

 

「私ね、毎日が楽しい。皆と喋って、競い合って、協力して……そんな日常が大好き。そんな日常を守ってくれたのは紛れもなく元樹なんだよ? だからありがとうって気持ちを伝えたくて背中を流してあげようと思ったの!」

 

 えぇ……(困惑) なんで背中を流すことに至ったんですかねぇ……。

 

「ネットに『男の人は背中を流してあげたら喜ぶ』って書いてあったから……」

 

 えぇ……(困惑) 王道を往くソープ系のサイトでも見たのかな?

 

「もと男は喜んでくれた……?」

 

 もちろんです。タオルを巻いたままだったこと以外大満足です。ありがとナス!

 

「えへへ、よかった。じゃあ今からかすみんが洗うからそこどいて」

 

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子) まだ肝心なとこ洗い忘れてるゾ。

 

「え……か、肝心なとこって……?」

 

 何とぼけてんだよ、ここ洗えよ。

 

「も、もしかして……お、おおお、おちん……」

 

 違うだろぉ? 髪に決まってるじゃないですか。TNPなわけないだろ、いい加減にしろ!

 

「そ、そうだよね! あはは、かすみん勘違いしちゃった」

 

 そうですよ。かすみんにTNPなんて洗ってもらったらそのままエッチな展開になっちゃうじゃないですか。そういうわけだから早く髪洗って、役目でしょ。

 

「うん……目に入らないようにちゃんとつぶっててね」

 

 かしこまり!

 

「ふぅ……気持ちいいですかー?」

 

 気持ちいいですよ。かすみんも結構、洗い方うまいじゃん。

 

「もと男のためだったら、かすみん何でもできる気がする!」

 

 ん? 今何でもできるって言ったよね? じゃあお勉強しようか。

 

「うっ、勉強は無理……。でも、もと男が一緒ならしず子のスパルタ指導も耐えられるかも……」

 

 エロい! 間違えた、えらい!

 

「でもでも、もと男がいたらしず子も少し優しくなってくれるかも……」

 

 ほも君には優しくなっても、かすみんにはそのままの厳しさな気もしますけどね。

 

「はい、終わったよ」

 

 優しく洗い流してくれます。あーさっぱりした(満足) じゃあ今度はほも君がかすみんを洗ってあげますね。

 

「え……か、かすみんは別にやらなくてもいいよ」

 

 いいからいいから。お返しはちゃんとしないとダメですからね。やられたらやり返す、1145141919810倍返しだ!

 

「うぅ……わかった、座るからそんな目で見ないでよぉ……」

 

 かすみんが顔を真っ赤にしながら座ってくれました。じゃあ今までのちかえしをたっぷりとさせてもらおうじゃないか。

 

「や、優しくしてね……?」

 

 でもタオルが巻いてあってこのままじゃ洗えませんね。じゃけん取り払いましょうね~。

 

「きゃっ! ちょ、ちょっと!」

 

 かすみんの発展途上ちっぱいとピンク色の突起物、下のおけけが鏡に反射して丸見えです。もちろん動画ではモザイクです。そして取ったタオルはかすみんの手が届かないところに投げ捨てます。ぽーい。

 

「もうっ! 返してよ!」

 

 取らないと洗えないだろぉ!? あと今更手で隠しても無駄ですよ。バッチリこの目に収めましたからね。

 

「うぅ……変態ぃ……」

 

 さてと、そろそろ洗っていきましょうか。かすみんのスベスベモチモチのお肌を傷つけないように丁寧に洗っていきます。キモティカ? キモティ=ダロ?

 

「うん、きもちぃ……もっとしてぇ」

 

 前も洗ってあげましょうか?

 

「うん……ってダメ! 前はダメ!」

 

 ガードが遅い!

 

「ひゃっ!? んっ……ふぅ……あんっ」

 

 かすみんの艶めかしい声を聞きながら洗っていきます。エッッッッッロすぎィ! これ音声でBANされないですかね? 少し心配ですが……ま、えやろ。映像の方にだけモザイクをかけておきます。別にお風呂に入ってるだけですからね。(何の問題も)ないです。

 

「ゃぁ……そこだめ……ひゃん!」

 

 段々息が荒くなってきましたねぇ(ニヤニヤ) 滅茶苦茶色っぽくてマジでエロいです。正直声だけで114514発はいけます。でもさすがにここら辺でやめておきましょうか。このままいくと確実ににゃんにゃんにゃんしてしまうことになります。というか普通にエンジョイしすぎました。反省ですね。

 

「はぁ……はぁ……おっぱい星人……」

 

 髪も洗ってあげましょうか?(ガン無視)

 

「いい……髪は自分で洗う」

 

 んにゃぴ……やっぱり髪の手入れは大事ですからね。そこは自分の手でしっかりと手入れしたいのでしょう。ほも君は湯船に浸かって見ていましょう。

 

「はぁ、気持ちいい……」

 

 シャワーで泡を流すかすみんはとても気持ちよさそうです。女の子だからお風呂好きなのかな。

 

「隣いい?」

 

 あっ、いいっすよ(快諾) 浸かって、どうぞ。

 

「ありがと」

 

 このお風呂は十分に広いので、かすみんが座る分のスペースは余裕であります。なんならかすみんが横になっても2人並んで入れます。それなのにほも君のそばに詰めて座ってきました。肌と肌がピッタリとくっついています。しかも先程あんなに触られたからかもう体を隠すことすらしていません。編集でモザイクつけるの大変だから隠してくれよ頼むよ頼むよ~。

 

「あったまる~」

 

 かすみんはお風呂好きなんですか?

 

「うん、大好き。もと男は?」

 

 もちろん大好きですよ。

 

「……しず子ともあんなことしたの?」

 

 なんのこったよ(すっとぼけ)

 

「だから、その……おっぱい触ったり、あそこ触ったり……2人で洗いっこしたの?」

 

 してないですよ。そもそもしずくちゃんとは一緒にお風呂入ってないですからね。

 

「えっ、そうなの?」

 

 そうですよ。昨日はりなりーを含めた3人で銭湯に行ったので。

 

「銭湯!? いいなー、かすみんも行きたかったぁ……」

 

 じゃあ今度一緒に行きますか?

 

「うん! その時はしず子とりな子も一緒がいい!」

 

 となると居残り練習でりなりーの家に泊まる時がいいですかね。

 

「そうだね。練習終わりの疲れた体もたっぷり癒せるし!」

 

 居残りじゃなくてもみっちり練習しないとしないといけないので、その分体も疲労しますしね。大会近いからね、しょうがないね。

 

「……ねぇ、もしかすみんが今度のライブで優勝したらね、一緒に温泉に行かない?」

 

 温泉? 日帰りでですか?

 

「ううん、泊まりで。もちろんもと男がよければなんだけど……。あっ、あと2人きりで行きたいな。これだけは絶対! ダメ、かな?」

 

 いいよ! 行こうよ!

 

「ほんと!? やったー! 約束だからね! やっぱりなしはなしだからね!」

 

 かすみんが素っ裸で抱きついてきます。マズイですよ! まぁグソクムシはとっくの前にご起立してるんですけどね。かすみんが何も言ってこないのが不思議です。しずくちゃんは実物を見てあんな反応していたのですが……かすみんは気づいてないのでしょうか。まぁ何もない方がこちらにとってはありがたいのですが。

 

「どの温泉にしよっかなー。遠いところだと大変だし、近くて美容効果のあるところがいいなー」

 

 こんなにワクワクしているかすみんですが、実際にこの約束が果たされることはありません(断言) なぜなら今度のイベントでかすみんが優勝することはないからです。このイベントではせつ菜ちゃんとしずくちゃんが入賞という結果は変わりません。少なくとも今のところは1つも例外が確認されていません。なのでかすみんが優勝することはないということです。悲しいなぁ……。

 

「ふぅ、なんだかのぼせちゃったかも……」

 

 KSMさん上がりますかー。

 

「うん、上がるー。キンキンに冷えたお茶飲みたーい」

 

 大丈夫っすよ、バッチェ冷えてますよ。

 

「うーんしょっと、じゃあかすみんは上がるね。もと男も一緒に上がる?」

 

 上がりますよ。ほも君1人で入浴してたって何の意味もありませんからね。どうせかすみんが出ていったら入浴シーンもそこで終わるでしょうし。

 

「はぁ~、さっぱりした~」

 

 脱衣所で体を拭いていきます。拭きあいっこはしないんすね(素)

 

「あ、どうしよう、パジャマ部屋に置いてきちゃった……」

 

 向こうで着替えればいいんじゃないですかね(正論)

 

「でももと男の家族に見られちゃうかも……」

 

 大丈夫ですよ。今日はほも君の両親は家にいないので。

 

「そうなの? なんでいないの?」

 

 父親は出張、母親は沖縄旅行らしいです。母親前もどこかに旅行に行ってませんでしたっけ? その時も沖縄だったっけなぁ……もう覚えてないですね。まぁRTAに全く関係ないことだからね、しょうがないね。

 

「お父さんは何のお仕事してるの?」

 

 えっと、コンサルタントらしいです。だから出張からなかなか帰ってこないんですね。クライアントのところに常駐しているのでしょう。大変ですね。まぁ親が家にいないことが多い分身内との会話イベントが発生しにくいので、RTA的には非常にうま味です。あと家になかなか帰ってこない分生活費を結構な額振り込んでくれているので、食費を自分で出さなくて済むのがありがたいです。この金をデート代とかに使えないのはなんでなんですかねぇ。

 

「いいお父さんじゃん! もしもと男がバイト漬けだったら、今頃かすみん達は出会えてなかったかも。もしそうなってたら同好会は廃部になってたかも……。もと男のお父さんには感謝しなきゃ!」

 

 ほも君がいなくてもきっと侑ちゃんがなんとかしてくれたと思いますよ。まぁほも君みたいに1週間ちょっとで復活、みたいなことはできないと思いますが。RTA走者の侑ちゃん見てみたい、見てみたくない? ここでローダンセを買っておくと歩夢ちゃんに押し倒されるイベントをスキップすることができます。だからローダンセを買っておく必要があったですね。

 

「もと男も将来コンサルタントになりたいの?」

 

 知らなーい。かすみんは将来何になりたいんですか?

 

「かすみんはぁ……やっぱりアイドルかな。でも専業主婦もいいなぁって最近思い始めたんだ。仕事で疲れて帰ってきた旦那さんをあったかい料理と可愛いかすみんが優しく迎えてあげるの!」

 

 はぇ~かすみんの料理と笑顔があれば疲れなんて一瞬で吹き飛びそうですね。つまりかすみんを寮母さんにして、毎日社員のご飯を作って笑顔で迎えてあげれば、無限に働かせられる最強の労働者軍団が完成するのでは……? ただしかすみんの疲労は考慮しないものとする。

 

「さてと、かすみんは先に戻って着替えてるね。……ほんとに他に誰もいないんだよね? 実はお父さんがいて、うっかり裸見られたなんてイヤだからね?」

 

 大丈夫だって、安心しろよー。

 

「……まぁもと男がこんな大事なことで嘘つくわけないよね! それじゃあ行ってくるね。1人だと寂しいからもと男もできるだけ早く来てね」

 

 脱衣所の扉を開けてかすみんが出ていきました。裸で家を徘徊するかすみんとか、想像しただけでそそりますね。映像として収められなかったのが悔やまれます。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


体を洗いっこしてるだけだからエチチな要素じゃない(鋼の意思)
私もかすみんの体を洗ってあげたいゾ……。

あっ、そうだ(唐突)
エマちゃんの一人称が『私』じゃなく『わたし』だということに今更気づいたので、修正しておきました。
これを書くためにスクスタのストーリーを見返してるはずなのになーんで気づかなかったんでしょうかねぇ……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part37/n

初☆ワンダーランド☆です。


 世界一可愛い同級生を視姦するRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はかすみんとイチャコラしながらお風呂に入りました。今回はその続きからで、自室でかすみんといちゃつきます。ほらいくどー。

 

「んっ……ふぅ……あ、おかえりぃ」

 

 おや? 床に座り込んで何か変なポーズをしています。何やってんだこいつ……。

 

「これ? ヨガだよ。お風呂上りの日課なんだ」

 

 はぇ~すっごい熱心……。ヨガを極めるつもりなんですかね?

 

「うーん、別に極めるつもりはないけどぉ……でも続けてたらもぉっと可愛くなれるかなーって」

 

 きゃわわ。ひたむきに可愛さを追求するかすみん好き。でもヨガは極めてしまうと手足が伸びるようになるので気をつけてくださいね。

 

「手足が伸びる……?」

 

 あと口から炎を吐き出せるようになれますね。

 

「ならない!」

 

 あとは浮けるようにもなるらしいですよ。ウケますね。

 

「浮けないしウケない!」

 

 おっ、うまいこと言いますね。

 

「何なのさ! 戻ってきていきなり変なことばっか言わないでよ!」

 

 じゃあまともなことを言えばいいんですか? お前のヨガが見たかったんだよ!

 

「えぇ~しょうがないなぁ~」

 

 まんざらでもないような表情で許可してくれました。ありがとナス! じゃあ下からのアングルで眺めさせてもらいましょう。

 

「そ、そこから見るの……?」

 

 いいだろお前成人の日だぞ(意味不明)

 

「いいけどぉ……」

 

 よしっ、かすみんからの許可をもぎ取ることができました。というわけで寝転んで下から舐めるように眺めましょう。

 

「んしょ……ねぇ、そんなとこから見てて楽しい?」

 

 バッチェ楽しいですよ。

 

「ならいいんだけど……ふぅ……」

 

 さて、何故下からのアングルを選んだかですが、察しのいい……というより注意力の高い視聴者兄貴は気づいていると思います。ヒントはかすみんの股関節付近ですよ。……はい、見つけられましたか? そうです、パジャマの隙間からかすみんのおぱんちゅがチラ見えしてるんですよ。ノンケでなきゃ見逃しちゃうね。お前らさっきかすみんがパンチラしてる時チラチラ見てただろ。俺もそーなの。

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子) さっきの入浴タイムでおっぱいもおけけもいっぱい堪能しただろ! いい加減にしろ! とお考えの兄貴もいらっしゃるかと思います。おけけを直接見るのと、隙間からチラ見えするパンツを見るのでは全く違うだろぉ? ほら見てくださいよあの真っ白なおパンツを。これのよさがわからない兄貴は何かしらの罰の後死ゾ。

 

「よしっ、今日の分終わりーっと。もと男ー喉渇いたー」

 

 キンキンに冷えたお茶ですか?

 

「うん、飲みたーい」

 

 いいですよ。おっちゃんがお茶を取ってきてあげましょう

 

「……なんか、愛先輩みたい」

 

 まさか、愛さんのダジャレ力には遠く及びませんよ。

 

「えー、かすみんはどっちもどっちだと思うけど……」

 

 ハァ~(クソデカため息) 愛さんのダジャレのよさがわからないなんてまだまだですね。というか普通についてくるんですね。てっきりほも君にお茶を持ってきてもらいたいのかと思いましたが、飲んでもいいかの確認だったみたいです。

 

「もと男は……面白い女の人が好きなの?」

 

 いや、別に……。ほも君のタイプはそばにいてくれる人みたいです。

 

「そばにいるっていうのは、寄り添ってくれる人ってこと?」

 

 そうだよ(便乗) あとは努力家な人がいいですね。勉強でも部活でも何でも努力できる女の子のことが好きだったんだよ!

 

「ふ、ふーん……」

 

 さらに言えばありのままな人がいいです。

 

「ありのまま……どういうこと?」

 

 好きな人が好きなファッションだからーとか、好きな人が好きな食べ物だから嫌いだけど我慢して食べるーみたいなことせず、ありのままの自分で勝負してくれる女の子のことが好きだったんだよ!

 

「ふぅん……もと男に合わせる女の子は嫌いなの?」

 

 嫌いじゃないけど好きじゃないよ。

 

「ぷっ、なにそれ」

 

 はい、お茶を1杯どうぞ。キンキンに冷えてますよ。

 

「ありがと。ごくっ……ごくっ……」

 

 余程喉が渇いてたのか、喉を鳴らしながら飲んでいます。

 

「もと男も飲む?」

 

 飲みますねぇ!

 

「はい、どうぞ」

 

 たった今かすみんが使ったコップにお茶を入れて渡してくれました。いや、マジこれ間接キスし、しちゃいそうな勢いなんですけど、それは大丈夫なんですかね……。

 

「いいじゃん別に。今更気にするようなことでもないでしょ。……それとも、ほんとのキスの方がいい?」

 

 なんか随分と大胆になりましたね。まぁすでに2回もキスしてますし、一緒にお風呂にも入ってますし、なんなら体もまさぐられてますしね。今更キスでからかうくらいどうってことないのでしょう。さぁ、じゃあ、キスしてもらおうかね、ちゃんと口移ししてもらおうね!

 

「く、口移しまでするの? 汚いよ……」

 

 かすみんの唾液が汚いわけないだろ! いい加減にしろ!

 

「うぅ……じゃ、じゃあ口移ししてあげるね……」

 

 お茶を口いっぱいに含んで唇を突き出してきます。

 

「ん」

 

 これはほも君の方からしてこいってことですかね。じゃあお望み通りほも君の方からしてあげましょう。

 

「んぅ……」

 

 唇を重ねると、息を漏らしながらお茶を流し込んできました。ん~、かすみんの唾液が混ざってとってもボーノ。口の端から漏れて床に垂れてるのがエロい、エロいっ!

 

「ぷはぁ……美味しい?」

 

 うん、おいしい! お茶の中に粘性のあるかすみんの唾液が僅かに混じっていて、それがものすごく美味しかったです。

 

「そんな具体的に言わなくていいよぉ……」

 

 じゃあコップとお茶を持って部屋に戻りましょうか。ほも君のコップは新しく用意します。毎回間接キスなんてしていたらお互い興奮してしまい、そのままエッチに……なんてこともありえますからね。

 

「あ、そうだ! 実はもと男に見てもらいたいものがあるの!」

 

 かすみんが自分のカバンを漁って何やらファイルを取り出しました。

 

「えっと、これとこれと……」

 

 ファイルに入った紙の束の中から何枚か取り出してテーブルに並べています。紙には文字が書かれているように見えますが、解像度が低くて見えません。一体何が書かれているのでしょうか。復活の呪文か何か?

 

「これは歌詞なの! 今度のライブで使う歌の歌詞を考えてみたんだけど、なんていうか、あんまりしっくりこないというか……だからもと男のアドバイスもほしいなーって」

 

 はぇ~知らないところでそんなことしてたんですね。見てもいいですか?

 

「もちろん。歌詞が書いてあるのはこれで、他のはアイデアを走り書きしたやつね」

 

 これは『ダイアモンド』の歌詞ですね。構想段階だからなのか、私達が親のぶっちっぱより聞いた歌詞とは少し違いますが、大体は同じですね。

 

「どう? 可愛い?」

 

 バッチェ可愛いですよ。Theアイドルって感じの歌詞になってますね。

 

「でしょでしょ! でも少し語感が悪いかなぁって思うところがあって……。それにまだまだかすみんの可愛さも伝えきれてない気もするし……だからお願い! もと男の力を貸して!」

 

 あっ、いいっすよ(快諾) ここからほも君とかすみんの2人の力で親の歌詞より聞いた歌詞になっていくんでしょうね。

 

「ありがともと男! おかげで最高の歌詞になっちゃった!」

 

 まぁその場面は描写されてないんですけどね。悲しいなぁ……。

 

「ふっふーん、これさえあればかすみんの優勝間違いなし!」

 

 (優勝はありえ)ないです。

 

「……ねぇ、1個わがまま言ってもいい?」

 

 内容によりますね。付き合ってなら答えはYesですし、再走してならNoです。

 

「かすみんの歌、もと男に作ってほしいの……」

 

 へっ? もしかして作曲してくれってことですか?

 

「うん……」

 

 侑ちゃんが作曲した曲じゃダメなんですか?

 

「違う、そうじゃないの。侑先輩に作曲してもらうのが嫌ってわけじゃないし、侑先輩が作ってくれた曲でライブしてみたいとも思う。けど初めてのライブはもと男に作ってもらった曲で歌いたい」

 

 それはなんでですか?

 

「人生初のライブだから、かすみんきっと緊張しちゃう……。もしかしたら緊張に負けてヘマしちゃうかもしれない。でももと男が作ってくれた曲があれば、ステージ上では1人でも隣にもと男がいてくれる気がして、きっと緊張なんてどこかに吹き飛んで、最高のパフォーマンスができる気がするの。だから……ダメ?」

 

 ダメというわけではないですが、ほも君の技能レベルはまだ2なので作曲ができないんですよね。

 

「うん、知ってる。叶わないってことが最初からかすみんもわかってる。だからお願い。もと男の口から無理だって言って」

 

 そんな顔されたら無理だなんて言えないゾ……。やってやろうじゃねぇか!

 

「え……?」

 

 侑ちゃんにお願いして作曲を教えてもらいましょう。侑ちゃんの指導があれば少しずつですが技能経験値が稼げます。ただ1回あたり10経験値とかなり少ないですし、技能自体が必要経験値の多いステータスなので、作曲できるようになるまで結構時間がかかるでしょう。そこから作曲するとなると曲の完成がかなり遅くなってしまいます。それでもいいですか?

 

「いい! どんなに短い時間でもいっぱい練習して完璧に仕上げてみせるから!」

 

 ようゆうた! それでこそスクールアイドルや! というわけで早速侑ちゃんに連絡しちゃいましょう。侑ちゃんの協力が必要不可欠ですからね。ただ侑ちゃんはかすみんを除いても8人分の作曲をしなければならないので非常に大変です。そこに作曲素人のほも君への指導が加わると過労で確実に侑ちゃんの身長が縮んでしまいます。無理強いすることはできませんし、断られたり渋られた場合はちゃんと引き下がりましょう。ほも君との約束です。守れますか?

 

「うん、守る!」

 

 言質はとったので侑ちゃんにメッセージを送りましょう。作曲を教えてください、オナシャス! キラキラセンセーション! ……って一瞬で既読がつきましたね。スマホでスクールアイドルの動画でも見てたのでしょうか。

 

『いいよ!』

 

 おっと、あっさりとOKをもらえました。まぁ聖人で有名な侑ちゃんですからね、断られることははじめから想定していませんでした。

 

『でも急にどうしたの?』

 

 かすみんの曲を作曲してあげたいんです。

 

『そっか。じゃあ頑張らないとね』

『1年の時に使ってた教科書とか明日持っていってあげるね』

 

 教科書を貸していただけるみたいです。ありがとナス!

 

『時間も限られてるし、厳しい指導になるけどついてこれる?』

 

 もちろんです。どこまでもついて行きますよ。

 

『一緒に頑張ろうね』

『皆の初ライブ、2人で最高の曲を用意してあげよう』

 

 頑張るぞー! ぶっ! ちっ! ぱっ!

 侑ちゃんからの許可はもらえましたし、これで予定には全くないほも君作曲ルートが確定してしまいました。もし作曲するのがこの1回だけならかなりのロスになっちゃいますけど、それは大丈夫なんですかね? あと作曲素人のほも君が作曲に集中するとなると衣装作りをする余裕はないと思うんですけど、それは大丈夫なんですかね?

 

「あっ! OKもらえたんだ!」

 

 はい、もらえてしまいました。なんだかロスが多いイベントのような気がするんですよねぇ……。まぁ許可をもらえたからにはやりますが。かすみんの親密度は告白ラインに達しているのでともかく、侑ちゃんの親密度はまだまだ足りていませんからね。指導してもらう過程で恋愛関係に発展してしまう……なーんてド典型な恋愛漫画的展開になる可能性もなくはないですからね。

 

「えへへっ、お互い頑張らないとね!」

 

 そうですね。かすみんも練習頑張ってくださいよ。かすみんが頑張る姿を見たら、ほも君ももっと頑張れますから。

 

「うん! でもそれはかすみんも同じだよ。もと男が頑張ってるところを見ると、かすみんももーっと頑張らなくちゃってなるんだ~」

 

 いい関係ですね。相乗効果でお互いがお互いを高め合える。ほも君とかすみんは相性抜群ですね。

 

「ねぇねぇ、一緒にライバルの研究しない?」

 

 いいですよ。ベッドで寝転がりながらしましょうか。

 

「えへへ、おじゃましまーす」

 

 ほも君がベッドに寝転がると、かすみんもその隣に入り込んできました。恥ずかしそうに抵抗していたしずくちゃんとは真逆ですね。その積極性、好きだし嫌いじゃないよ。でもなかなか告白してくれないのは好きじゃないし嫌いだよ。これがRTAでなければ告白前の独特な関係性とかは大好物なんですけどねぇ……。

 

「今度のライブに出てきそうなスクールアイドルで、かすみんのライバルになりそうなのは……」

 

 同好会の皆じゃない?

 

「ま、まぁ皆は多分手強いライバルになるだろうけどぉ……データとか全くないからここじゃ研究できないもん」

 

 せつ菜ちゃんのはどうですか? 以前から活動していることもあってネットでライブ動画が上がってたりするんじゃないですか。

 

「じゃあ今日はせつ菜先輩の研究しよーっと。もと男も気づいたことがあったら何でも言ってね」

 

 動画サイトでせつ菜ちゃんの動画を順番に見ていきます。ほも君もかすみんも動画に夢中です。お前のライブが好きだったんだよ! 足をパタパタさせながら動画を見るかすみんきゃわいい。鞭でケツ叩きたい。

 

むぅ……さすがせつ菜先輩隙がない……」

 

 確かにせつ菜ちゃんは隙が無いですね。ライブの衣装でも胸元とか全く見せてくれませんし。おっ、胸元開いてないじゃ~ん……(落胆)

 

「ねぇもと男、どうしたらせつ菜先輩みたいなライブができるかなぁ?」

 

 そりゃあもうR(練習)! R(練習)! S(セッ〇ス)! あるのみですよ。

 

「うーん、やっぱりそうだよね……でもせつ菜先輩も居残り練習するみたいだし、なかなか差が縮められないよぉ」

 

 でもかすみんはお風呂上りにヨガをしたり、ちゃんとライバルの研究をしたりと練習外でも頑張ってるじゃないですか。ちゃんと頑張った分結果もついてきますよ。

 

「そう、だといいな」

 

 それにせつ菜ちゃんみたいなライブをする必要はありませんよ。せつ菜ちゃんはかっこいいを意識したライブですが、かすみんの強みはかっこよさではなく圧倒的可愛さじゃないですか。

 

「あ、そっか」

 

 各々の個性を活かし、各々のやりたいことをやるためにソロアイドルになったんですから、かすみんも自分の個性を活かしていきましょう。かすみんの可愛さをさらに引き出せるようなMCやダンスとかも考えていきましょうね。

 

「考えることがいっぱいだなぁ……」

 

 大変ですか?

 

「ううん、むしろワクワクする!」

 

 いいですね。楽しめるというのは何事においても大きな強みです。そのワクワクを大事にしてくださいね。

 

「困ったらまたもと男にアドバイスもらうことになるかも!」

 

 もちろんほも君に相談してくれてもいいのですが、一番経験豊富なせつ菜ちゃんに相談するのも1つの手ですよ。せつ菜ちゃんなら悪意ゼロの善意114514%で教えてくれますし。

 

「ダンスとかはせつ菜先輩の方がいいのかな」

 

 そうですね。あと衣装なんかは果林さんに相談するといいと思います。からかいながらもちゃんと考えてくれると思いますよ。

 

「果林先輩モデルさんだもんね。……ってもと男?」

 

 おや、なんだかほも君の意識が朦朧としてきました。

 

「もしかして眠い?」

 

 そうみたいです。かすみんに口移ししてもらったお茶に睡眠薬でも盛られたのでしょうか。同級生に睡眠薬を盛る人間の屑がこの野郎……。

 

「モデルさんのお仕事とかあったんだもん、いつもより疲れてるよね。いいよ、おやすみ、もと男」

 

 かすみんに頭を撫でてもらいながら眠りにつきます。かすみんに頭を撫でてもらうともう気が狂うほど気持ちええんじゃ。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)

かすみんのお泊まり編はこれで終わりです。
次回はかすみんのサイドストーリー、1話にまとめるか分けるかはわかりません。もしかしたら1年生ズのランチタイムとかも書くかも。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part15/m

初みんですぅ!


「また明日」

「うん、また明日!」

 

 待ちに待ったもと男とのお泊まり会! りな子も一緒に買い物にも行って、そのまま3人で晩ご飯を食べられると思ったけど……りな子は帰っちゃうみたい。もちろんもと男と2人きりで過ごしたいという気持ちもあるけど、3人で晩ご飯を食べたいという気持ちも同じくらいある。でもりな子にはりな子の予定があるから仕方ない。

 

「りな子帰っちゃったし、2人で食べよっか」

「そうだな。早速準備するか」

 

 もと男はエプロンを取り出して料理の準備をしようとするが、それを手で制する。

 

「今日はぜ~んぶかすみんがしてあげるから、もと男はテレビ見ててもいいよ。でーもー、料理するかすみんのこと見てたいなら、じぃーっと見てくれててもいいよ?」

 

 可愛くウインクをしてアピールをする。効いたのかもと男は目を逸らした。

 

「じゃあテレビ見てるわ」

 

 リモコンを手に取ってお笑い番組を見始めた。さっき目を逸らしたのは照れていたわけではなく、リモコンを探していたみたいだ。

 

「ちょっと! そこはかすみんを見るって答えてよ!」

「かかかかがテレビ見てていいって言ったんじゃないか」

「かかかかって誰!?」

「かすみの新しいあだ名だよ。かすかすよりはいいんじゃないか? 頭スカスカみたいな感じしないし」

「どっちもヤ! どっちも可愛くないもん!」

 

 それに『かかかか』は中身がスカスカだし……。最初の文字と文字数しか合ってないもん。もはや誰のことだかわからない。怒られそうだけど、一応果林先輩も当てはまるわけだし。

 

「もと男にはちゃんと名前で呼んでほしいの!」

 

 『かすみん』じゃなくてもいい。もと男にはちゃんと可愛い名前で呼んでもらいたい。

 

「しょうがねぇなぁ……。可愛いかすみ姫よ、どうかわたくしめにあなた様が料理するところを見せていただけないだろうか?」

 

 もと男は跪いて、騎士のようにかすみんのことを見上げてくる。その顔は見たことがないくらい凛々しくて、(かすみん)を守ってくれる本物の騎士のように見えた。段々と顔が熱くなってきて、思わず顔を逸らしてしまう。ただ照れているのがバレるのが嫌なので、カバンからエプロンを探すふりをして誤魔化す。

 

「しょうがないなぁ……そこまで言うなら見せてあげる! もと男だけの特権なんだからね? 今からエプロンに着替えるね」

 

 お気に入りのエプロンを身につける。青のエプロンで、首元には水玉模様のフリル、腰には同じく水玉模様のリボンがついた可愛いエプロン。入学祝にお母さんに買ってもらった一番のお気に入り。自信はある、あるけど……ちゃんと可愛いと思ってもらえるか不安で振り向けない。……でも、見てもらいたい。一回大きく深呼吸して、覚悟を決めて振り返る。

 

「じゃじゃーん! かすみんお気に入りのエプロンなの! どう? 似合ってる?」

「……」

 

 振り返るともと男がジッとこちらを見つめてきた。けれど見つめてくるばかりで、何も言ってくれない。

 

「……」

「……」

 

 部屋にはテレビの音だけが鳴り響いている。この時間が辛い。早く何か言ってほしい。

 

「……ああ、ごめん。見惚れちゃった。すっごい可愛いよ」

 

 微笑みながら褒めてくれる。顔がカーッと熱くなっていく。いつも可愛い可愛いと褒めてくれるけど、今回のはいつもより気持ちが籠っているように聞こえた。それがたまらなく嬉しい。

 

「ふっふーん、そうでしょそうでしょ。もっとじっくり見てもいいよ?」

「じゃあお言葉に甘えて……」

 

 もと男が近づいてきて、かすみんのことをじっくりと観察し始めた。かすみんの周囲をぐるりと回り、時折体に触れてくる。

 

「……さすがに近くない?」

 

 匂いでも嗅いでいるのかという距離で見てくる。

 

「ねぇ、ちょっと……」

 

 もはやかすみんじゃなくてエプロンのことを観察しているんじゃないだろうか。しかも時折おっぱいに顔が接近してくる。その度に息がかかってこそばゆい。

 

「何か言ってよ、恥ずかしい……」

「かすかす」

「かすかすって言わないでってば! もうっ! もと男なんか変だよ。どうしたの?」

「ただかすみに見とれちゃっただけだよ」

「そ、そう?」

「ああ」

「じゃあしょうがないね。だってかすみんは可愛いんだもん! エプロンなんてつけちゃったらその可愛さがさらに跳ね上がっちゃうもんね。もと男だって見とれちゃうよ」

 

 恋っていうのは厄介だ。相手にそういう意図がなかったとしても、褒めてもらえるとどうしても嬉しくなっちゃう。逆に少しでも冷たくされると嫌われたんじゃないかと怖くなってしまう。今まで他人事のように考えていた恋だけど、いざ自分が恋するとそれがよくわかる。……少し誤魔化された感じもあるけど、小さいことは気にしないことにする。

 

「……でも、恥ずかしいからもうちょっと離れて……」

 

 もと男から離れるために1歩下がる。もと男は残念そうな顔をした後、しょうがないと納得したように引き下がった。かすみんとしてはここでもう1歩詰めてきてほしかったんだけど……まぁ、もと男だししょうがないかな。

 

「ふぅ……じゃあそろそろ始めるから、もと男はそこで座って見ててね」

「了解」

 

 もと男はテーブルに座り、肘をつきながらかすみんのことを見ている。その視線を感じながら料理の準備を進める。オムライスと焼いたピーマンだけだからすぐに作れちゃうはず。かすみんもお腹ペコペコだから早く食べたい。

 

「ふんふんふーん♪」

「上機嫌だな」

 

 そりゃそうだよ。だって大好きな人に見守られながら料理できて、しかも自慢の料理を大好きな人に食べてもらえるんだもん。これで上機嫌にならない恋する乙女はいない。この後ピーマンを食べなきゃいけないことを差し引いてもおつりがいっぱいくる。鼻歌だって無意識に歌っちゃう。

 

「もと男はオムライス好き?」

「別に、普通くらいだよ」

「普通かぁ……じゃあ今日から大好きにしてあげるね。週一でかすみんのオムライス食べないと満足できない体にしてあげる!」

「言うねぇ。そんなに自信あるのか?」

「もちろん! もと男のためならなんだって美味しく作れる気がする!」

 

 隠し味に愛情って言ったりするけど、これがそういうことなのかな? 冗談抜きでもと男のためならなんだって何でも美味しく作れる自信がある。……いや、やっぱり何でもは無理かな。ピーマンを味付けもせず焼くなんてどう頑張っても美味しくしようがない。もと男はそれが食べたいらしいけど……。

 

「あ、そうだ。今のうちにお風呂入れてきてくれない?」

「ああ、いいよ」

 

 ご飯を食べ終えたらすぐにお風呂に入りたい。まぁある計画のためにもと男に先に入ってもらうんだけどね。昨日の夜思いついて、実行するか迷ったけど結局することにした。もと男が恥ずかしそうにしながらも喜んでくれるのが目に浮かぶ。かすみんもだいぶ恥ずかしいけど、もと男が喜んでくれるなら安いものだ。

 

「……なんかこのやり取り夫婦みたいだな」

 

 もと男がポツリと呟く。

 

「夫婦……えへへ、夫婦かぁ……」

 

 かすみんもいつかもと男と結婚するのかなぁ? かすみんは卒業して2年後くらいには結婚したいなぁ。でももと男が大学に行きたいなら、もと男が大学を卒業してからになるかな。4年も待たないといけないのは辛いけど、その分結婚した時の幸福感も大きくなる気がする。

 

「かすみんともと男が結婚したらぁ……いってきますのチューは絶対ね。あとハグもしてほしいなー」

 

 もと男が仕事に出かける前に玄関でハグとチューをしたい。で、時々お隣さんにそれを見られて、おしどり夫婦だーなんて近所で噂されたい。……あとこれはもと男には絶対に言えないけど、週に2回はエッチしてほしい。まだ経験したことないけど、愛を確かめ合う行為っていうのは見ててわかるし、かすみんもあんな風にもと男に愛してほしい。……学校とか公共の場でするのはイヤだけど。今日部室に行く途中で、誰もいない教室でエッチしてた人達がいたから余計そう思う。普通に廊下まで声が漏れてたし、ドアの窓からも普通に覗けた。……ダメだ、思い出したらムズムズしてきちゃった。あの時ももと男とするところを想像しちゃって思わずその場でしちゃいそうになったし……。なんであんなところでしちゃうんだろう……。見つかった時のリスクが大きすぎると思うんだけど。でも我慢できないくらい気持ちいいってことなのかなぁ……。女の人の声もすごく気持ちよさそうだったし、男の人も何度も何度も腰を打ち付けていた。いつかかすみんももと男と……ってダメダメ! 今は料理中なんだから、この妄想をするのはまた今度にしよう。

 

「……風呂入れてくる」

「はーい」

 

 もと男は立ち上がってリビングから出ていった。かすみんの話に興味がないのかと一瞬心配になったけど、それは杞憂だったとすぐにわかった。もと男の頬がちょっぴり赤くなっていたからだ。多分かすみんとチューするところを想像しちゃったんだと思う。だって一瞬かすみんの唇を見てきたし。ちゃんとかすみんのことを女の子として意識してくれてるんだと思うと嬉しくなった。料理をする手も自然と弾む。

 

「もと男、好き。大大大好き。いっぱいチューしたい」

 

 もと男がいないのをいいことに、自分の気持ちをこそりと呟く。もと男がかすみんとのキスを意識してくれたように、かすみんももと男とのキスを想像していた。今日の目標はキスをすること。

 ベッドに2人並んで腰かけながら、不意にもと男がかすみんの腰に手を回して引き寄せてくる。そして顎に手を添えて、見つめ合いながらお互いの顔が近づいていって、そのままキス……みたいな流れでしたい! というかしてほしい!

 お昼にしず子がキスしたって何度も自慢してきたから、かすみんだって負けてられない。かすみんだってキスしたもん、何度もしたもん、なんならもと男の方から求めてきたもん、って明日自慢し返すんだ。

 

「よしっ、これで完成!」

 

 オムライスと焼きピーマンができた。完成したものをお皿に盛りつける。どうしよっかな、もと男のオムライスにケチャップで『大好き』って書いてあげよっかな。……やっぱりやめとこ。ケチャップの量が多いって怒られちゃうかもしれないし、あと恥ずかしい……。昨日も好きって伝えられなかったし、かすみんってヘタレなのかなぁ……。

 

「……もと男遅いなぁ」

 

 もう晩ご飯は完成したのになかなか戻ってこない。そもそもお風呂を入れに行ったのも10分以上前のことだ。いくら何でも遅すぎる。早く食べてもらいたいし様子を見に行こう。

 リビングを出て廊下に出る。お風呂は……ここかな? 違った、誰かの部屋だった。部屋の感じからすると男の人の部屋っぽい? でもしばらく使われてない感じがする。もと男のお兄さんの部屋とかかな? どんな人なんだろう……いつかその人がかすみんのお義兄さんになるんだもんね、ちゃんとどんな人か知っておきたい。でも義理のお兄さんってどんな感じになるんだろう……ってかすみんはお風呂を探してたの! 時間が惜しいから早く次の部屋を探そう。

 

「あっ、ここだ!」

 

 扉を開けるとそこは脱衣所だった。電気は消えてるけど、お湯を張る音は聞こえる。ちゃんとお風呂の準備はしてあるようだ。……だったら余計どこにいるのさ!

 

ん~……」

 

 近くからもと男の声が聞こえてきた。……この部屋からだ。ここは……トイレ? そっか、トイレに行ってたからなかなか戻ってこなかったんだぁ。

 

「もと男ー、ご飯できたよー」

「……」

 

 呼びかけても返事がない。

 

「もと男? お腹痛いの? 大丈夫?」

「……」

 

 やはり返事はない。もと男の気張る音は僅かに聞こえるからここにいるのは間違いないんだけど……。

 

「ねぇ、何か返事してよ。かすみん放置プレイは好きじゃないんだけど……」

 

 常に構ってほしい、一緒にいてほしいとは言わない。でもこんなに近くにいて、しかも2人きりなのに無視されると悲しくなっちゃう。

 

「ねぇ、寂しいよ……もとおぉ……」

 

 目に涙が溢れて、ぽろぽろと床に落ちる。止めようと思っても止まらない。もと男に嫌われるようなことしちゃったのかなぁ……。かすみんに悪いところがあるなら直すから……お願い、返事してよぉ……。

 

「わーっ! ごめんごめん! 今出るから!」

 

 慌てた様子でようやく返事をしてくれた。水の流れる音と共にもと男がトイレから出てくる。頭をかくもと男に抱きつく。

 

「もと男ぉ! なんで返事してくれなかったのさ!」

「ごめん、ちょっとイタズラしたくなって……」

 

 イタズラ……それがわかって少し安堵する。

 

「かすみ?」

 

 でも涙はわざと止めない。涙を見せることでもと男に反省してもらうのだ。

 

「もと男に嫌われたんじゃないかって、怖くて怖くて……こんなイタズラ二度としないで……」

「……ごめん」

 

 もと男がかすみんをギュってしてくれる。……どうしよう、こんなことされたら涙なんてすぐ引っ込んじゃうよ……。でも泣き止んじゃうとこの幸せな時間が終わっちゃうし……とりあえずもと男の胸に顔をうずめて、あとは泣きまねでなんとかしよう。

 

「うぅ……ぐすん」

「悪かったって……どうしたら泣き止んでくれるんだよ」

 

 ほんとはもう泣き止んでるんだけど……でももう少しこのままでいたい。それに今なら何でもお願い聞いてくれそうだし、思い切ってキスでもお願いしてみようかな。

 

「じゃあ……チュー、して?」

「キス? いいけど……」

 

 そう言ってもと男はかすみんの顎をクイってしてキスの体勢をとった。え、待って。ほんとにするの? かすみんまだ心の準備ができてないんだけど……。心臓がバクバク言ってる。このまま破裂しちゃいそう。

 

「いくぞ?」

 

 もと男の顔が少しずつ近づいてくる。かすみんはこんなにドキドキしてるのに、もと男にはそんな様子は一切ない。お互いの唇の距離はあと5センチ……3センチ……そして1センチ。ここでかすみんの心は限界を迎えた。

 

「……なーんて! 冗談だよーだ!」

 

 やってしまった……。折角の大チャンスを棒に振っちゃったかもしれない。でも仕方ない。大好きなもと男の顔がすぐ目の前にあって、かすみんの心臓が限界だったんだもん。恐る恐るもと男の方を見ると少し残念そうな顔をしていた。

 

「あっれれ~? もしかして本気にしちゃった?」

「まぁ、多少は……」

「かすみんの唇はそう簡単にあげませーん」

 

 嘘。もと男になら今すぐにでももらってほしい。

 

「何だよ、勘違いしちゃったじゃんか」

「さっきかすみんにイタズラしてきたじゃん。その仕返しだもん」

「そうかもしれんが……」

「でもさっきみたいなイタズラは二度としないでね。かすみん悲しくて泣いちゃうから……」

「ああ、わかった。約束するよ」

 

 優しく頭を撫でてくれる。気持ちいい、もっとしてほしい……けどご飯が冷めちゃうから早く戻らないと。

 

「よしっ、それじゃあご飯食べよ? 早くしないと冷めちゃうから」

「そうだな」

 

 もと男の腕を掴んでリビングまで引っ張る。ほんとは手を握りたいんだけど、今はまだそんな勇気は出ない。

 

「じゃーん! かすみん特性オムライス! ケチャップをたーっぷりかけて召し上がれ」

「おー」

「……あとピーマンも」

「おー!」

 

 もと男がかすみんの作ってくれた料理を見て喜んでくれた。オムライスよりピーマンの方が反応が大きかったのは不服だけど……。

 

「なぁなぁかすみ」

 

 席に座ろうとすると、もと男に服を引っ張られる。

 

「折角だからさ、俺のオムライスに何か書いてくれない?」

 

 どうやらケチャップで何か書いてほしいみたい。もちろん断る理由なんてない。

 

「いいよ、何書いてほしい?」

「ん~……あ、そうだ。まずハートマーク書いて」

 

 ハートマークかぁ……なんだかメイド喫茶みたい。もと男もそういうのに興味あるのかな? 少し意外かも。かすみんがメイド服着たらどんな反応をしてくれるんだろう。可愛すぎて目を合わせてくれないかも!

 

「あとは……『大好き』ってハートマークの上に書いといて」

「え、だ、大好き……?」

「そうだよ」

 

 ハートマークで終わりかと思ったら、『大好き』と書くのまで要求されてしまった。そんなの恥ずかしくてできないよぉ……。さっき断念したばかりだし。そもそももと男は何を考えてこんなこと要求してきたんだろう。わかんない……かすみんをからかうため? それとも……

 

「なぁ早くしてくれよ」

 

 かすみんの気持ちなんて知りもせず、もと男はこちらを見ながら催促してくる。その態度からはイタズラ心は読み取れない。じゃあ一体どんな気持ちなのか、ますますわからなくなる。

 

「ほ、ほんとに大好きって書くの……?」

「もちろん。まぁ同じような言葉であれば何でもいいけど」

 

 同じような言葉……もしかしてこれは想いを伝えるチャンスなのでは? 言葉ではヘタレてしまって伝えられなかったけど、文字でならちゃんと伝えられるかもしれない。『I LOVE YOU』と書けばさすがのもと男も気づいてくれるだろう。

 

「うぅ、じゃあ……あい、らぶ、ゆー……」

 

 手早くハートマークを書き、気持ちを込めて文字を書いていく。その間もと男はオムライスをじっくりと見つめていた。

 

「ってやっぱりなし!」

 

 『I LOVE』まで書いたところでまたかすみんの限界が来た。これ以上は心が耐えられないとスプーンで書いたものをぐちゃぐちゃにする。

 

「あーあ、何してんだよ」

「だってぇ……恥ずかしかったんだもん……」

 

 もと男が怒る気持ちもわかる。自分が食べる予定だったものをぐちゃぐちゃにされたんだから。

 

「かすみんのと交換してあげるから許して」

「いや、別にいいよ」

 

 かすみんが自分の綺麗なオムライスを差し出すと、いらないとばかりにケチャップまみれになったオムライスを自分の方に引き寄せた。

 

「え、いいの?」

「もちろん。こんなになっちゃったけどさ、折角かすみが気持ち込めて書いてくれたんだから食べないともったいないだろ?」

「うん……いっぱい、いっぱい気持ち込めた」

 

 まだ伝えられてない想いをいっぱいいっぱい込めた。

 

「例えばどんなの?」

「えっと、えっとね……いつもありがとうとか、これからも応援してね……とか」

 

 誤魔化しだけで嘘ではない。

 

「大好きって気持ちは込めてくれなかったのか?」

「それは……ああもう! 込めました! 込めましたよ! だってもと男のこと大好きだもん!! ……も、もちろん友達としてだよ? 勘違いしないでよね!」

 

 ようやく言えたと思ったのにまたやってしまった……。昨日友達として好きって言った時は何の恥ずかしさもなかったのに、異性としてになるとどうしてこうなっちゃうんだろう……。友情と恋情でこんなにも変わるものなのかなぁ。

 

「ふぅん」

 

 もと男はニヤニヤしながらこちらを見てくる。まるで全部わかってますよ感を出している。どうせ何もわかってないくせに。

 

「いいから食べて!」

「むぐっ!」

 

 少し腹が立ったのでスプーンでオムライスを一口掬って、そのままもと男の口に突っ込む。もと男は驚きながらもそのまま味わって食べてくれている。

 

「どう? 美味しい?」

「……ごくんっ。ああ、すげぇ美味しいよ」

「よかった……」

 

 大好きなもと男に料理を褒めてもらえて嬉しい。自信はあったけど不安もあったからホッとする。調子に乗ってもう一回スプーンをもと男の口元に持っていく。

 

「じゃあどんどん食べて。はい、あーん」

「いや、自分で食うからいいよ」

「いいからいいから」

「んんっ」

 

 遠慮するもと男の口に無理やり突っ込む。オムライスが口に入るともと男は美味しそうに咀嚼し始めた。美味しそうに食べるもと男を見ているとかすみんも幸せな気持ちになる。

 

「……なんか楽しそうだな」

「だってもと男が美味しそうに食べるんだもん」

「ふーん……。かすみも食べたら?」

「うん、もと男を見てたらかすみんもお腹空いてきちゃったし、そろそろ食べよっかな」

 

 自分のスプーンを手に取ろうとすると、もと男が素早くそれを奪った。

 

「じゃあ今度は俺が食べさせてやるよ」

「えっ!?」

「はい、あーん」

 

 口元にスプーンが差し出される。

 

「待って……まだ心の準備が……」

「つべこべ言わず食えって」

「んむっ!」

 

 さっきかすみんがしたように口にオムライスを突っ込まれる。

 

「美味しい?」

「……おいひい」

 

 自分で言うのもなんだけど、今日のオムライスは本当によくできてる。今までで一番美味しくできた。きっともと男のことを考えながら作ったからだ。隠し味は愛情……ってね!

 

「もう1回あーんして?」

「いいよ。じゃあ目つぶって」

「ん……」

 

 言われた通り目をつぶる。口を開けて今か今かとあーんしてくれるのを待つ。

 

「はい、あーん」

「あーん……苦っ!?」

 

 口に入れられたものを咀嚼すると口内に苦味が駆け巡った。なにこれ!? 絶対オムライスじゃない! これは間違いなく焼いただけのピーマンだ! 苦味を誤魔化すためお茶を一気飲みする。

 

「美味しい?」

「苦いよ! なんでいきなりピーマン食べさせるのさ! せめて先に言ってよ!」

 

 食べる覚悟くらいしたかった……。

 

「いいじゃないか。ちゃんと食べられたんだし」

「そりゃ吐き出せないもんね! 食べるしかないよ!」

「……かすみが吐くとこ、ちょっと見てみたいな」

 

 ……今さらっとすごいこと言わなかった?

 

「多分滅茶苦茶可愛いと思うよ」

「全っ然可愛くない! むしろ汚い!」

「そうかなぁ……」

 

 頬を膨らませて怒ってますアピールをする。吐いてるとこも可愛いなんて言われて喜ぶ人はいない。少なくともかすみんはヤダ。

 

「まぁまぁ、そうむくれるなよ。ほら、お口直し」

 

 今度こそオムライスが差し出される。

 

「ほらっ」

「……あむっ」

 

 むくれながら口に含む。美味しい……あのピーマンの後だから余計そう感じる。

 

「俺もピーマン食べよっかな」

 

 そう言うともと男は自分のピーマンを食べ始めた。あんなに苦かったものをぺろりと平らげてしまった。

 

「……美味しい?」

「うん、美味しい。いい焼き加減だ」

「えぇ……苦味しかなくない? もと男の味覚絶対おかしいよ」

「そうかなぁ……」

 

 そういえばしず子も同じのを食べさせられたんだよね。可哀想……でもかすみんはもと男にあーんして食べさせてもらったもんね! だからかすみんの勝ち!

 

「かすみは食べないのか? じゃあ俺にくれ!」

「ちょ!」

 

 制止する間もなく、もと男はかすみんの食べかけのピーマンをぺろりと食べてしまった。

 

「うぅぅぅぅぅぅぅ」

 

 いろんな感情がごっちゃになって声が漏れ出てしまう。

 

「どうした、そんなピーマン盗られたのが悔しいのか?」

「そうじゃなくて……その……かかか、間接……キスじゃん……」

「……そんな騒ぐようなことか? 間接キスくらいいいじゃないか。普通のキスみたいに粘膜同士が振れたわけじゃないんだし」

「よくない! あと粘膜とか言わないで! キスっていうのはもっとロマンチックなものなの!」

「冗談だって、悪かったよ」

 

 もうっ……ほんとのキスした時に粘膜とか言われたらうっかりもと男を殴っちゃうかもしれない。ロマンスの欠片もない。……間接キス、しちゃったなぁ……。えへへっ、まだ直接のキスじゃないけどすごく嬉しい。といってもかすみんがもと男のを食べたわけじゃないから、まだもと男の味を感じられたわけじゃないけど……。

 

「……したことないくせに

「うっ、うるさい! 自分がしたことあるからって……かすみんだっていつかも、好きな人といっぱいするもん!」

「も……?」

 

 あ、危なかった……うっかりもと男って言いそうになっちゃった。

 

「今はまだかすみんに振り向いてくれないだけだもん……。いつか絶対に振り向かせてみせるもん……」

 

 どれだけかかっても絶対にもと男を振り向かせてみせる。1年でも2年でも、たとえ卒業した後であろうともと男にアピールし続ける。

 

「じゃあその人に振り向いてもらえた時のために、今から俺と予行練習するか?」

「え、よ、予行練習……? それはどういう……」

「俺とキスするんだよ」

「うぇえええええ!?」

「うっせ……」

 

 思わず大声を出してしまう。間近で聞いていたもと男は手で耳を塞いでいる。申し訳ないとは思うけど、元はといえばもと男が原因なのだから自業自得だ。

 

「な、なんでそんなこと……」

「予行練習だよ、予行練習。いざという時にキスが下手だと相手に嫌われちゃうぞ?」

 

 もと男はキスが下手な女の子は嫌いなのかなぁ……。もと男と付き合えてもキスが下手なせいで振られちゃったら……きっとトラウマになってしまう。

 

「……いいよ。予行練習、手伝って」

 

 だから今のうちに予行練習して少しでも上達したい。キスしてもらうためにもと男の隣の席に移動する。

 

「その、初めてだから……優しくしてね」

「ああ、もちろんだ」

 

 緊張で体に力が入ってしまう。手がプルプル震える。

 

「緊張してるのか? 力抜けよ」

「力抜いてって……そんなの無理だよぉ……」

 

 簡単に出来たら苦労しない。

 

「しょうがねぇなぁ」

 

 もと男はそう言うとかすみんの手をそっと握ってくれた。たったそれだけなのに不思議と震えが止まった。それがもと男にも伝わったのか優しく微笑んでくれる。心臓がドクンっと跳ねた。

 

「ん、少しやりにくいな」

 

 高さが合わなかったのか、もと男がかすみんの体を持ち上げようとした。もちろんもと男の筋力でかすみんを持ち上げられるわけがないので、自分で立ちあがる。誘導に従うともと男の膝の上に座ることになってしまった。

 

「これでよし」

 

 膝の上に座ったことでもと男と顔の高さが大体同じになった。邪魔だと思ったのか、もと男はかすみんの前髪をサッと払う。

 

「……ギュってして?」

「意外と要求してくるな」

「ダメなの……?」

「まっさか。いくらでもしてやるよ」

 

 もと男の腕がかすみんの体に回され、優しく抱き寄せられる。心地よさに身を任せ、そのままもと男に体を預ける。優しく抱きしめられてキスをする、まさしくかすみんの理想のファーストキスだ。

 

「あったかい……。もと男の方から抱きしめてくれたの初めてじゃない?」

「そうだっけ? ……まぁ何でもいいや。早くキスしようぜ」

 

 そう言ってもと男は少し顔を寄せてくる。その動作は少し事務的に感じるというか……

 

「……なんか慣れすぎじゃない? 淡白というかなんというか……かすみんはもっとイチャイチャする感じでしたいの」

「イチャイチャする感じねぇ……こんな感じか?」

「っ……」

 

 もと男はかすみんの頬に手を添えて、視線を逸らせないよう固定してくる。その雰囲気はさっきまでと大違いで、目も本気そのものだ。視線が合うと自然と胸が高鳴って顔が熱を帯びる。

 

「いいんだな、俺が初めての相手で」

「うん。もと男じゃなきゃヤダ」

 

 もと男以外とキスするなんて考えられない。

 

「よし、じゃあいくぞ」

 

 もと男の顔がゆっくりと近づいてくる。距離が近づくたびに顔の熱さが増し、胸の鼓動も早くなる。でもそれが心地よい。もっと感じていたい。でも早くキスもしたい。そんな気持ちの間で揺れていると、急にもと男に抱き寄せられ、一気に距離が縮む。

 

「んっ」

 

 そしてそのまま唇が重なった。もと男の味を堪能しているとすぐに離れていってしまった。

 

「はぁ……これが、キス……」

 

 繋がっていた時間は一瞬……だったと思う。かすみんにもよくわかんない。1秒にも満たない時間だった気がするし、もしかしたら10秒以上繋がっていたのかもしれない。どちらにしても至福の時間であったことには違いない。

 

「ファーストキスの感想は?」

「よくわかんない……うまく言えないけど、ただただ幸せ……」

 

 今のかすみんはきっと全身から幸せオーラを振りまいていると思う。それこそ人々に幸せを配り回るサンタさんになれそうなくらい。

 

「もう1回練習するか?」

 

 したい! 本当は何回も、唇がとろけちゃうくらいしたい! したいけど……

 

「ううん、いい。一応予行練習だし、それに今いっぱいしちゃうと我慢できなくなっちゃうから……」

 

 もと男の味をもっと深く知りたくて、かすみんの味をもっと深く知ってもらいたくて、きっとキスだけじゃ止まれなくなっちゃう。昨日しず子にあんなこと言ったけど、そういう雰囲気になったらきっとかすみんは我慢できない。自分の方からいっぱいエッチなことを求めちゃう気がする。もちろんかすみんはそれでもいいんだけど、もと男に迷惑だけはかけたくない。だからキスは我慢するの。

 

「そうか……」

 

 もと男から離れて元の席に戻ると、もと男はどこか残念そうな顔をした。もと男もかすみんとのキスを幸せだと感じてくれたのだろうか? だとしたら嬉しいな。

 

「続き食べよ? 美味しいご飯が冷めちゃう」

 

 食べかけだったオムライスを口に含む。……うん、冷めても美味しい。これはもと男への愛も冷めないってことなのかな? ……まぁ絶対関係ないけど。

 

「それもそうだな」

 

 黙々と食べ続けるかすみんを見て、もと男もオムライスを食べ始めた。この後食べ終えるまでかすみん達の間に会話はなかった。けれど不思議と不快感はなく、言葉はなくとも心は通じ合っているような気がして、ちっとも寂しくなかった。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


完全に私事にはなるのですが、先日引っ越しを行って1人暮らしを始めました。……それだけです、はい。
かすみんと2人きりで1人暮らししたい人生でした……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part16/m

初投稿*ビリーバーです。


前の投稿からINF時間経ってると思ったけど全然そんなことなかったゾ。


あらすじの方にも書きましたが、活動報告代わりにTwitterアカウントの方を開設しました。
投稿中の作品の進捗状況を報告したり、投稿報告したり、ラブライブ関連の雑談をしたりします。もしよかったらフォローしてぜひ絡みに来てください。
あと他作品の作者様とお話ししたいという考えもあったりなかったりします(小声)


「はぁ、ごちそうさまでした」

「うまかったぁ……」

 

 もと男は爪楊枝で歯の間に挟まった食べ物をとりながらお腹を撫でまわしている。そんなもと男を見ているだけで幸せな気持ちになれる。もと男に心の底から惚れてしまっているんだなぁと改めて実感する。

 

「何笑ってんだよ」

「別にぃ」

「……変なやつ」

 

 2人で笑い合う。もしももと男と結婚できたなら、子供も交えた3人で同じように笑い合うのかなぁ?

 

「さてと、それじゃあ片付けするか」

「うん」

 

 それぞれの食器を持ち、それぞれで洗う。別にかすみんが全部洗ってあげてもよかったけど、もと男が自分で洗いだしたのでかすみんも自分で洗うことにした。……あ、そうだ。フライパンも洗わなきゃ。

 

「もと男、そっち洗って」

「はいよ」

 

 一足先に食器を洗い終えたもと男に調理器具を洗ってもらう。

 

「もと男は普段から料理してるの?」

「ああ、よくやるよ」

 

 もと男の手料理かぁ……一度食べてみたいな。もと男が作ってくれたものならきっと何でも美味しく食べられる。

 

「でも基本夜だけだな。休日は朝昼晩と作るけど、平日の朝はそんな時間ないからなぁ」

「へー、じゃあお昼は学食?」

「いーや、大体パンとおにぎりを教室で食べてるよ」

「おにぎりかぁ、どの具が好きなの?」

「うーん……やっぱ王道を往く鮭おにぎりかなぁ」

「わかる、美味しいよね。今日も……あっ!」

「ん?」

 

 完全に忘れてたけど、今日は1年4人でお昼を食べるつもりだったのだ。それなのにもと男がいなくて……まぁ3人でもすっごく楽しかったけど! もと男がいたらできないような話もいっぱいできたし。

 

「もと男今日どこでお昼食べてたの? しず子とりな子と一緒に教室まで行ったんだよ?」

「悪いな。今日は果林先輩達と食べてたんだ」

「果林先輩とぉ?」

 

 まさか果林先輩まで……でも果林先輩()って言ってたし、そういうことじゃない可能性も……。でもでもでも果林先輩が自覚してないだけで、ほんとはもと男のこと大好きって可能性もなくはない。かすみんも同じだったし。2人が一緒にいるところはあまり見ないけど、実は夜とかいっぱい通話してるとかなのかな……。今にして考えればモデルの代役をもと男にお願いするのも少しおかしな話だ。確かにもと男はかっこいい。たまにドキってしちゃうくらい最高にかっこいい。背もかすみんよりは高いけど、でも男の子としてはむしろ低い部類に入る。お世辞にもモデルに向いているとは言えない。それに果林先輩ならこの学校にもかっこよくて背の高いお友達がいるはずだ。それなのにあえてもと男を選んだ……それってそういうこと以外他にある? うぅ、わかんないよぉ~……。

 でもこれだけは言える。果林先輩まで争いに加わったらかすみんの勝ち目はグーンと低くなる。同性のかすみんもついつい見てしまうあのスタイル。キュッと引き締まった腰回りに、ボンッと突き出たお胸とお尻。これぞまさしくボンキュッボンって感じだ。しず子ももと男はおっきいおっぱいが好きって言ってたし、絶対果林先輩のに惹かれちゃう。

 

「他には誰がいたの? やっぱりエマ先輩と彼方先輩?」

「そうだよ」

「ふぅん……皆おっきい……」

 

 3人ともかすみんとは比べ物にならないくらいのものを持ってる。しず子やせつ菜先輩でも太刀打ちできない。特にエマ先輩なんて山も同然だ。むぅ……。

 

「楽しかった?」

「ああ、楽しかったよ。いろんなこと話せたし」

「よかった。じゃあ明日はかすみん達と食べようね。約束だよ」

「えーと、明日は歩夢先輩達と食べるんだ」

「歩夢先輩と!? むぅ……」

「どうかしたか?」

「なーんか歩夢先輩と仲良すぎない?」

 

 きっと侑先輩も一緒なんだろうけど……なーんか仲が良すぎる気がする。あの勉強会の時ももと男は歩夢先輩と侑先輩に教えてもらってたし。しかもしかも侑先輩に至ってはもと男に膝枕までしてもらって……正直言って羨ましい! かすみんなんてしず子に思いっきり絞られたのに……かすみんももと男と一緒に勉強したかったなぁ。隣で肩並べて『これどうやって解くの?』とか一緒に相談しながら勉強したいよ。

 

「そうかなぁ……」

「そんなに気が合うの?」

「んー……まぁ合うっちゃ合うかな。歩夢先輩はとにかく優しくしてくれるし」

 

 確かに歩夢先輩はすっごく優しいけど、かすみんだってもと男に優しくしてあげてるつもりなのに……。

 

「かすみは俺と歩夢先輩が仲良くするのは嫌なのか?」

「そんなはずないじゃん! もと男がいろんな人と仲良くするのは嬉しい!」

 

 楽しそなもと男を見るのは好きだし。

 

「嬉しいけど……もと男が盗られちゃった気がして……なんかヤダ」

 

 独占したいわけではないけれど、でも知らない間に盗られちゃうのはヤダ。

 

「ふぅん……つまり歩夢先輩に嫉妬してるってことでいいか?」

「……うん

 

 どうしてこんな時だけ鋭いんだろう……。ニヤニヤしながらこちらを見てくるもと男が少し腹立たしい。

 

「かすみは可愛いなぁ。チューでもするか?」

「うん、する!」

 

 食器が近くにあるので危なくならないよう気をつけて、それでいて勢いよくもと男に飛びつく。

 

「ちゅ……」

 

 そして美味しそうな唇に軽く口づける。今度はさっきより少し長く、体感だと2~3秒くらいかな。唇の味をしっかりと味わえるくらいの時間はあった。忘れてしまわないよう頭にその味をしっかり刻んだ後、ゆっくりと唇を離す。

 

「えへへー、もと男とのキス好きー」

 

 もと男の胸に頬を擦りつける。キスは我慢するって言ったけど、やっぱり我慢できないみたい。目の前に魅力的なエサを吊り下げられたら誰だって我慢できないよね。

 

「俺もかすみとのキス好きだぞ」

「せつ菜先輩のとかすみんの、どっちの方がよかった?」

「そりゃあもうかすみに決まってる。唇つやつやだし、ソフトだし」

「ほんと? 嬉しい……」

 

 顔が熱くなる。俯いて顔を隠す。こんなのもと男には見せられないよ……。

 

「風呂入ってるけど、かすみが先に入るか?」

「ううん、もと男が先に入っていいよ」

 

 というかもと男が先に入ってくれないとかすみんのパーフェクトな計画が崩れちゃう。

 

「わかった。お言葉に甘えて先に入らせてもらうよ。俺の部屋まで案内するから、そこで待っててくれるか?」

「うん!」

 

 もと男の部屋かぁ、少し緊張しちゃうかも。

 

「にひひっ、エッチな本がないか探しちゃお」

「い、いいけどさぁ……別に何もないぞ?」

「ほんとかなぁ?」

「ほんとだって」

 

 ちょっと怪しいんだよなぁ……。明らかに目が泳いでるし。

 

「まぁいいや、とりあえずもと男のお部屋に案内して」

「あいよ」

 

 もと男の後ろをとことこついて行く。

 

「ここだ」

「へぇ、ここがもと男のお部屋かぁ……」

 

 大きなテレビと、CMで見たことあるゲーム機がいくつか。それから本棚には漫画がいっぱい! きっと何日でも楽しく過ごせるだろう。もと男が一緒なら尚更だ。……まぁ何日も一緒の空間にいて理性が持つかと言われたら少し怪しいけど。

 

「何しててもいいから。ゲームするもよし、漫画読むもよし、寝るもよし。まぁ自由にしててくれ」

「うん、わかった」

 

 手早く着替えを用意するもと男をジッと眺める。

 

「じゃあ行ってくるわ」

「うん、ゆったり楽しんでね」

「ああ」

 

 部屋から出ていくもと男を見送った後、もと男のベッドに寝転がる。

 

「えへへー、もと男のお布団に枕~。なんだかいい匂いがする~」

 

 フローラルのいい匂い、洗ったばかりなのかな? もと男の匂いがしないのは少し残念だけど、でもこれはこれでいいかも。

 数分ほどもと男の匂いを堪能した後、ベッドから降りてその下を覗く。エッチな本はあるかな~?

 

「……あれ? なんだろあの箱」

 

 本ではないけど奥深くで何かの箱を見つけた。

 

「んっ、ふっ……」

 

 引き出してみると、縦横はちょうど本が入るくらい、高さは本何冊分か。……怪しい。いかにもエッチな本を隠してますよーって感じがする。……べ、別にもと男の性癖が知りたいとかじゃないもん! ただもと男の好みのタイプがわかるかもーって思っただけで……。

 

「……開けちゃおっと」

 

 勝手に見ちゃうことになるけど、自由にしてていいって言ってたし、バレないように隠せば大丈夫……なはず!

 

「どれどれ、中身は……えっ」

 

 蓋を開けると出てきたのはエッチな本……それが何冊も。一番上にあるのは『小悪魔な同級生とお泊まりで……』というタイトルの本だ。一番読みこまれている感じがする。……それにこの表紙の女の子、なんだかかすみんに似てる気がする……。髪型とか色とか……あとかすみんほどじゃないけど可愛いし。

 

「もしかして……」

 

 もと男の好きなタイプってかすみん? ……いやいやいや! さすがにそれは早計すぎるよね。たまたま似てただけかもしれないし……でももしもかすみんを少しでも意識してくれてたのなら……うん、少し微妙かも。もちろん嬉しい気持ちもあるけど、でもエッチな目で見られてるのは少し複雑。もちろん全く意識されてないよりはいいけど……。

 

「はぁ」

 

 どれだけ考えたところで仕方ないよね。ほんとのことは本人にしかわからないわけだし……。そんなことよりかすみんにはやることがある。そろそろいいタイミングだし、かすみんも準備しないと。エッチな本はしまって、箱はもとの場所に戻す。あとはお風呂に入る準備をして……これでよし! あとはお風呂場に直行するだけ! すっごく緊張するけど、これももと男への恩返しだと考えれば何も怖くない。

 

「……」

 

 脱衣所のドアをそっと開けるともと男の鼻歌が聞こえた。相当上機嫌みたいだ。お風呂が好きなのかな? 気づかれないようにそっと脱衣所に入り、服を脱いでいく。もと男との間には薄い扉1枚しかない。これからもっと大胆なことをするのに、この時点ですっごく緊張する。心臓がバクバクする。

 

「すぅ……はぁ……」

 

 一度だけ深く深呼吸してバクバクを抑える。……うん、だいぶマシになった。バスタオルを大事なところが見えないようきっちり体に巻いて、浴室のドアを一気に開ける。

 

「えへへ、もと男ー」

 

 もと男は体を洗おうとしていたみたいだったけど、かすみんの声を聞いた途端その動きを止めて勢いよくこちらに振り向いた。

 

「か、かすみ!? 何してんだよ!」

「来ちゃった。背中流してあげる!」

「いいって! そんなことしなくていいから! 早く出てって!」

「いいからいいから」

 

 もと男はなんとかしてかすみんを追い出そうとするけど、それよりも早くもと男の後ろに座り込む。

 

「ちょっ……」

「ほらあっち向いて」

「……はぁ、わかったよ」

 

 観念したのか、かすみんとは逆の方を向いて椅子に座り直した。

 

「ちゃっちゃと終わらせてくれよ?」

「ダーメ。じっくり丁寧に洗ってあげる」

 

 もと男からボディタオルを受け取り、ボディソープをつけて泡立たせる。そしてそれをもと男の背中にピタリと当てる。

 

「よいしょ、よいしょ」

 

 丁寧に背中を洗う。

 

「どう? 痛くない? 気持ちいい?」

「ああ、気持ちいいよ」

「よかった。誰かの背中を洗うのって初めてだから、ちょっと自信なかったんだー」

 

 あれ? 子供の時お父さんの背中を洗ってあげたことあったかも? ……まぁいいや。お父さんはノーカンだよね。それに子供の時の話だし。

 

「……今更なんだけどさ、なんで背中流してくれてるの?」

 

 まぁそりゃ聞いてくるよね。……なんて答えようか。本当のことを言うのは恥ずかしいし、でも嘘はつきたくない。

 

「もしかして俺とヤるつもりだった? いいよいいよ、大歓迎だ。かすみ相手なら何発でも出せるよ」

「ちっ、ちが……そういうのじゃないの!」

 

 なんて直接的な言葉を使うんだ。もっとオブラートに包んでほしい……というかかすみん相手なら何発も出せるってどういうこと!? 真意を確かめたいけど、今はそんな余裕はない。

 

「じゃあどういうことなんだよ」

「今から説明するから、あっち向いて……。絶対にこっち見ないでよ!」

「はいはい」

 

 こちらに振り向きかけてたもと男だけど、かすみんの言葉を聞いてまた向こうに向き直った。

 

「もと男……」

 

 手をもと男の首に回し、後ろから抱きつく。

 

「かすみ?」

「ありがと」

 

 耳元で囁くように感謝の言葉を伝える。

 

「何のことだよ」

「同好会を復活させてくれたこと。私が一番大好きな場所を、一番輝ける場所を守ってくれてありがとう」

「ふっ……なんだ、そのことか」

 

 もと男は嬉しそうに、でもどこか呆れたように笑った。

 

「礼を言いたいのはこっ」

「こっち見るな~!」

「ぐぇっ!」

 

 振り返ろうとしたもと男の顔を手でがっちり押さえる。痛そうな声を出していたけど気にしない。約束を破ろうとしたもと男が悪いんだから。

 

「顔、見られたくないの……」

 

 きっと今のかすみんの顔は真っ赤だ。それにいろんな感情がごちゃまぜになって変な顔にもなってると思う。そんな可愛くない顔はもと男にだけは見せられない。

 

「私ね、毎日が楽しい。皆と喋って、競い合って、協力して……そんな日常が大好き。そんな日常を守ってくれたのは紛れもなく元樹なんだよ? だからありがとうって気持ちを伝えたくて背中を流してあげようと思ったの!」

「いや、なんでそれで背中を流すに至るんだよ……」

「ネットに『男の人は背中を流してあげたら喜ぶ』って書いてあったから……」

「えぇ……変なサイト見たんじゃないだろうな?」

 

 そんな変なサイトじゃなかったと思うけど……他にも役に立ちそうなこといっぱい書いてあったし。

 

「もと男は喜んでくれた……?」

「……まぁ、嬉しいは嬉しいけど」

「えへへ、よかった」

 

 やっぱりあの情報は正しかったみたいだ。

 

「じゃあ今からかすみんが洗うからそこどいて」

「おい、ちょっと待てよ。肝心なところ洗い忘れてるだろ?」

 

 もと男を椅子からどかそうとすると、振り返ってそう言った。

 

「え……か、肝心なとこって……?」

 

 まだ洗ってあげてなくて、肝心なところって言われると()()()しか思いつかない。チラッとそちら目をやると大きくそそり立ったそれが目に入った。おっきい……かすみんで興奮してくれてるのかな? もちろんそういう動画では何度も見たことがあるけど、直接見るのは初めてだ。もっとドキドキしたり恥ずかしくなったり慌てたりするかと思ったけど、意外と冷静でいられている。まぁまだ見ただけだからね。それを洗うってなると話が違うよ。

 

「何とぼけてんだよ」

「も、もしかして……お、おおお、おちん……」

「違う。髪だよ髪」

 

 呆れたように髪を指差す。

 

「そ、そうだよね! あはは、かすみん勘違いしちゃった」

「女の子に洗ってもらうとかどんなエロゲだよ」

 

 それを言ったら美少女4人から同時に好かれてるのも十分あれでしょ。どこの恋愛ゲームだって感じだよ……。

 

「じゃあ髪洗ってくれるか?」

「うん……目に入らないようにちゃんとつぶっててね」

「了解」

 

 もと男の髪を丁寧に、普段自分の髪を洗う時のように洗っていく。

 

「ふぅ……気持ちいいですかー?」

「ああ、滅茶苦茶気持ちいい。やっぱ洗い方うまいな」

 

 多分もと男のためだからっていうのもある気がする。

 

「もと男のためだったら、かすみん何でもできる気がする!」

「勉強も?」

「うっ、勉強は無理……。でも、もと男が一緒ならしず子のスパルタ指導も耐えられるかも……」

「ははっ、そんなにきつかったのか?」

 

 きついなんてもんじゃなかったよ……。最初は優しく教えてくれたけど、その教えてくれたところを間違えるとちょっとずつ目が鋭くなっていくし、侑先輩や歩夢先輩がもと男と引っ付くたびにペンから軋む音が聞こえたし……。

 

「でもでも、もと男がいたらしず子も少し優しくなってくれるかも……」

 

 しず子も好きな人の前でイヤなとこ見せたくないだろうし、きっとかすみんにも優しくしてくれる! ペンが軋むこともないだろうし。

 

「はい、終わったよ」

「ん」

 

 雑談している間に髪を洗い終えたので、シャワーで泡を洗い流す。

 

「ふぅ、さっぱりした」

 

 全て洗い流すと満足したようにもと男は立ち上がった。大事な部分を隠そうともせずにこちらに振り返った。ある程度見慣れたとはいえ、一応女の子の前なのだからちゃんと隠してほしい。しかもまだおっきいままだし……これは手でしたりしてあげないと治まらないのかな……?

 

「さてと、次はかすみの番だな。俺が洗ってやるよ」

「え……か、かすみんは別にやらなくてもいいよ」

「いいからいいから」

 

 もと男がボディタオルを手に取り、素早くかすみんの背後に回る。時折見せるこのスピードは一体何なのだろう。

 

「ほらほらほら、早く座れよ」

「うぅ……わかった、座るからそんな目で見ないでよぉ……」

 

 反抗しても無駄だと思い大人しく椅子に座ることにする。大好きな人に背中を洗ってもらうなんて貴重な体験滅多にできないし、恥ずかしいけどチャンスだと思ってやってもらおう。

 

「たっぷりお返ししてあげないとな」

「や、優しくしてね……?」

 

 ドキドキしながら待っていると、突然体に巻いていたタオルが剥ぎ取られる。

 

「きゃっ! ちょ、ちょっと!」

 

 タオルを奪い返そうとするも手の届かない場所に投げられてしまう。

 

「もうっ! 返してよ!」

「取らないと洗えないじゃん。ほら、丸見えだぞ」

 

 そう言われてかすみんの大事なところがもと男に丸見えだということに気づいた。慌てて手で隠す。

 

「うぅ……変態ぃ……」

 

 もと男のにやけた視線が気になる。まさかこんなに変態さんだなんて思わなかった……しず子も同じことされたのかなぁ。

 

「よし、じゃあ洗っていくぞ」

 

 ボディタオルが背中に当たる。さっきタオルを剥ぎ取った時の乱暴さはなく、壊れ物を扱うかのように丁寧に背中を洗ってくれる。

 

「気持ちいい?」

「うん、きもちぃ……もっとしてぇ」

「ああ、いいぞ」

 

 背中だけでなく腕や横腹も洗ってくれる。背中の時とはまた違った気持ちよさがある。

 

「前もやったげる」

「うん……」

 

 ……反射的に反応してしまったけど、今なんて言った? 前も、って聞こえた気がするんだけど……前ももと男が洗うってこと!?

 

「ってダメ! 前はダメ!」

「いいからいいから」

「ひゃっ!?」

 

 もと男の手を押さえる前に、その手がかすみんのお腹に回される。

 

「んっ……ふぅ……」

 

 そのままお腹を撫でられる。さっきまではボディタオルで洗っていたはずなのに、何故か今は素手で洗ってくる。

 

「あんっ」

 

 何度かお腹を撫でまわした後、その手が胸まで上がってくる。そして弄ぶかのように揉んでくる。もはや体を洗っているのかエッチなことをしているのかわからない。

 

「ゃぁ……そこだめ……」

 

 もと男は4、5分ほど胸の感触を堪能した後、太ももの方に手をやった。外側を何度か撫でた後、内側に手を滑り込ませてくる。足を閉じようと思っても体が言うことを聞いてくれない。

 

「ひゃん!」

 

 そして中に指が侵入してきた。たったそれだけでかすみんの体はビクンと跳ねた。1人でする時と全然違う……何これ、気持ちいい……。

 もと男はあの後すぐに引き抜いたけど、満足できなかったのか1分ほどまた胸を触って、そして手を離した。

 

「はい、終わり」

「はぁ……はぁ……おっぱい星人……」

「髪も洗ってあげようか?」

「いい……髪は自分で洗う」

 

 大切な髪の手入れは自分でやりたいし、今のもと男に任せたら何されるかわからない。

 

「そうか」

 

 もと男は少し残念そうにした後、かすみんを洗ってくれた時についた泡を洗い流してから湯船に入った。それを横目で見ながら自分の髪を洗う。

 

「はぁ、気持ちいい……」

 

 やっぱり髪を洗うのは気持ちいいし楽しい。可愛さ磨きと考えると何でも楽しくなっちゃう。シャワーで髪についた泡を洗い流し、湯船に浸かる。

 

「隣いい?」

「いいよ」

「ありがと」

 

 もと男のすぐそば、肌と肌が触れ合うくらい近くに座る。このお風呂は広いからこんなに引っ付く必要はないんだけど、引っ付きたいから引っ付く。

 

「あったまる~」

「かすみはお風呂好きなのか?」

「うん、大好き。もと男は?」

「もちろん大好きだよ」

 

 同じだ。かすみん達意外と趣味合うかも。……あ、そうだ。

 

「しず子ともあんなことしたの?」

「あんなことって?」

「だから、その……おっぱい触ったり、あそこ触ったり……2人で洗いっこしたの?」

「いや、してないよ。そもそもしずくとは一緒に風呂入ってないし」

「えっ、そうなの?」

「そうだよ」

 

 そうだったんだ……。てっきりかすみんみたいにしず子も突入したと思ってた。

 

「そもそも昨日は銭湯行ったしな。璃奈としずくの3人で」

「銭湯!? いいなー、かすみんも行きたかったぁ……」

「じゃあ今度一緒に行こうな」

「うん! その時はしず子とりな子も一緒がいい!」

「もちろん」

 

 まぁ2人が来てももと男が1人なのには変わりないけど。

 

「それなら居残り練習の時がいいな。3人とも璃奈の家に泊まるんだし」

「そうだね。練習終わりの疲れた体もたっぷり癒せるし!」

 

 練習で汗だくになった体を銭湯でじっくり洗い流す、気持ちいいし明日はもっと頑張ろうって気持ちになる気がする。……そうそう、お風呂と言えば一度だけでいいからもと男と一緒に温泉行きたいんだよね。もちろん泊まりでじっくり! 一緒に来てくれるかなぁ? 頑張ったご褒美みたいな感じならOKしてくれるかも。少し怖いけど……勇気を出して聞いてみよっと。

 

「ねぇ、もしかすみんが今度のライブで優勝したらね、一緒に温泉に行かない?」

「温泉? 別にいいけど……日帰り?」

「ううん、泊まりで。もちろんもと男がよければなんだけど……。あっ、あと2人きりで行きたいな。これだけは絶対!」

 

 もちろん皆で行くのも楽しいだろうけど、折角のご褒美なんだから2人きりがいい。

 

「ダメ、かな?」

「いいよ、行こう」

「ほんと!? やったー!」

 

 隣にいるもと男に抱きつく。裸だから胸とか当たっちゃうけど今更気にしない。あんなにじっくり弄られたんだから、ちょっと当たるくらい何も問題はない。……まぁもと男の方はそうじゃないみたいだけど。少し治まってきてたのがまたカチコチになっちゃってる。

 

「おいおい、喜びすぎだって」

「約束だからね! やっぱりなしはなしだからね!」

「そんなことしないって。でもかすみが優勝したらだからな?」

「うん!」

 

 当然優勝するつもりで挑むけど、少し不安かも……。他の学校にもすごい人達はいっぱいいるし、同好会の皆も、そして実績のあるせつ菜先輩もいる。無理だとは思わないけど、正直なかなか厳しいとは思う。かすみんはまだまだ始めたばかりだし、いっぱい練習しようにも時間も体力も限られている。できる限りの練習はしたいけど、それで体を壊してしまっては元も子もない。もちろん本番直前でどこか痛めたりするのもダメ。本番に最高の状態を持ってこなくちゃ! すっごく大変だけど、でもその分燃えてくる。大変な分、優勝した時の喜びや快感が大きくなる。それに温泉旅行がもっと楽しくなっちゃう!

 

「どの温泉にしよっかなー。遠いところだと大変だし、近くて美容効果のあるところがいいなー」

「俺は別に遠いところでもいいぞ。そっちの方が選択肢も増えるし」

 

 もと男がそう言うならいいけど……でもかすみんのお小遣いが少し厳しいかも……。お母さんにお願いしたら少し貸してくれるかな? でも男の子と温泉旅行だなんて言ったら止められちゃうかも……。でも嘘つくわけにはいかないし……どうしようかなぁ。

 

「うーん、温泉かぁ……。久しく行ってねぇなぁ。いつぶりだろう……幼稚園以来かな?」

 

 かすみんは……数か月ぶりかな。虹ヶ咲の合格祝いに連れてってもらった時以来。……うーん、なんだか少しぼやぁっとするなぁ。

 

「ふぅ、なんだかのぼせちゃったかも……」

「上がるか?」

「うん、上がるー。キンキンに冷えたお茶飲みたーい」

「大丈夫、ばっちり冷えてるよ」

「やったぁ」

 

 早く飲みたいなぁ。こう、ぐびっと一気にいきたいな。

 

「うーんしょっと、じゃあかすみんは上がるね。もと男も一緒に上がる?」

「ああ。ちょっと早いけど俺も上がるとするよ」

 

 確かにいつも浸かってる時間よりだいぶ早い。雰囲気にのぼせちゃったのかなぁ。

 

「はぁ~、さっぱりした~」

 

 タオルで濡れた体を拭く。タオルもふかふかで柔らかぁい。さてとパジャマは……あれ?

 

「あ、どうしよう、パジャマ部屋に置いてきちゃった……」

 

 それに下着も……完璧に準備したと思ってたけど、緊張でいっぱい見落としちゃったみたい。やっちゃったなぁ……。

 

「向こうで着替えればいいんじゃないか?」

「でももと男の家族に見られちゃうかも……」

 

 もと男に見られるのは構わない。でも他の人に見られちゃうのは……

 

「大丈夫。今日はずっと親がいないから」

「そうなの? なんでいないの?」

「父さんは出張。母さんは……沖縄旅行中」

 

 ……あれ、お兄さんは? もう大学とか仕事とかで遠くの場所に行ってるとかなのかな? だとしたら数に含めてなくても不思議じゃないかも。

 

「お父さんは何のお仕事してるの?」

「コンサルタント」

 

 コンサルタントかぁ。かすみんにはよくわかんないけど、結構大変な仕事なんだよね?

 

「出張も結構多くてさ、案件が終わるまで仕事先にいるってことの方が多いから、家にいないことの方が多いんだよね。……まぁその分生活費とかお小遣いとかいっぱい振り込んでくれるから助かるけど」

「いいお父さんじゃん!」

「……ああ、そうだな。バイトせずに済むから助かってるよ」

「もしもと男がバイト漬けだったら、今頃かすみん達は出会えてなかったかも。もしそうなってたら同好会は廃部になってたかも……。もと男のお父さんには感謝しなきゃ!」

 

 それにもと男に出会っていなければ、もと男のことを好きになる機会も一生失われていた。

 

「もと男も将来コンサルタントになりたいの?」

「別に」

「そっか」

 

 少しホッとした。結婚したのにもと男の仕事が忙しくてなかなか会えないなんてイヤだもん。もちろんもと男がなりたいのなら応援するけど……。

 

「かすみは将来何になりたいんだ?」

「かすみんはぁ……やっぱりアイドルかな。でも専業主婦もいいなぁって最近思い始めたんだ。仕事で疲れて帰ってきた旦那さんをあったかい料理と可愛いかすみんが優しく迎えてあげるの!」

「専業主婦か、いいな。かすみの料理と笑顔さえあれば仕事の疲れも一瞬で吹っ飛ぶよ」

「えへへっ、でしょでしょ!」

 

 かすみんも仕事で疲れたもと男のこといっぱい癒してあげたいし、かすみんの作ったご飯を美味しそうに食べるもと男を見るだけでかすみんの疲れも吹き飛んじゃう! これって理想の関係じゃないかな?

 

「さてと、かすみんは先に戻って着替えてるね。……ほんとに他に誰もいないんだよね? 実はお父さんがいて、うっかり裸見られたなんてイヤだからね?」

「大丈夫だって、安心しろよ」

「……まぁもと男がこんな大事なことで嘘つくわけないよね! それじゃあ行ってくるね。1人だと寂しいからもと男もできるだけ早く来てね」

「なるはやで行くよ」

「うん、待ってるからね」

 

 脱衣所の扉を開け、裸でもと男の部屋に向かう。さっきの言葉を信じて大事なところを隠したりはしない。なんかちょっと興奮する……かすみんって変態さんなのかなぁ……。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


虹ヶ咲の聖地である某ショッピングモール様が閉館してしまうということで、その閉館日にいろいろと聖地巡礼に行ってきました。
行く前にアニガサキの復習をしていかなかったせいで、彼方ちゃんがライブしたところと、せつ菜ちゃんがライブした場所の2か所、合計3か所しかわからなかったゾ……。

あと感想の方でもいただいたものなのですが、ほも君に兄弟はいません。過去にいたけど今はもう……みたいな重い感じなものでもありません。つまり完全にかすみんの勘違いです。ほも君の家族関係はすこぶる良好です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part17/m

最初で最後の初投稿です。


「パジャマパジャマー」

 

 バッグの中からパジャマを引っ張り出す。それと一緒に下着も出てきた。それらを身に纏う。その前に裸でベッドに転がろうかと思ったけど、嫌われたくないからやめておく。

 

「んー……遅いなぁ」

 

 何かしてるのかなぁ……早くもと男といっぱいお話ししたいし、お願いしたいこともあるし、何より喉が渇いた。勝手に冷蔵庫開けるわけにもいかないし……ヨガして待ってようかな。

 

「んっ……ふぅ……」

 

 いつも見ているヨガのレッスン動画を開き、その動画の通りにヨガを進めていく。

 

「ただいま」

「あ、おかえりぃ」

「……何やってんだ?」

「これ?」

「ああ」

 

 部屋に戻ってきたもと男はかすみんを見て首をかしげる。もしかしてヨガ知らないのかな?

 

「ヨガだよ。お風呂上りの日課なんだ」

「はぁ~、これがヨガなのか。俺の知ってるヨガと違うな」

 

 かすみんがしてるのは結構ポピュラーなはずなんだけど……もと男が知ってるヨガってどんなのだろう?

 

「……熱心だな。ヨガ極めるつもりなのか?」

「うーん、別に極めるつもりはないけどぉ……でも続けてたらもぉっと可愛くなれるかなーって」

「これ以上可愛くなられたら俺が困っちゃうよ」

 

 頭を優しく撫でてくれる。その心地よさを感じながらヨガを続ける。

 

「でも気をつけろよ? ヨガ極めちゃうと手足が伸びるようになるからな」

「手足が伸びる……?」

 

 もと男は何を言ってるんだろう……。アニメとか漫画のネタなのかな?

 

「あと口から炎が出るようになるぞ」

「ならない!」

 

 そんなせつ菜先輩が喜びそうなことにはならない。ヨガを何だと思っているのか……。

 

「あと浮けるようにもなるな。ウケるな」

「浮けないしウケない!」

「おっ、うまいこと言うな」

「何なのさ! 戻ってきていきなり変なことばっか言わないでよ!」

 

 これはこれで楽しいけどさぁ……。

 

「うーん……じゃあかすみのヨガを見ててもいいか?」

「えぇ~しょうがないなぁ~」

「よしきた」

 

 もと男はうつ伏せに寝転んでかすみんのことを見上げるような姿勢になった。

 

「そ、そこから見るの……?」

「ダメか?」

「いいけどぉ……」

 

 それを聞いたもと男は満足そうに微笑んで完全に眺める体勢に入った。ヨガが終わるまで動くつもりはないみたい。もと男がそれいいならいいかと思い、ヨガを再開する。

 

「んしょ……ねぇ、そんなとこから見てて楽しい?」

「もちろん、楽しいよ」

「ならいいんだけど……ふぅ……」

 

 ヨガを続けながらこちらももと男を観察する。視線が上下しているけど、下に固定されていることが多いような……もしかしてかすみんのお股を見てるのかな……。まぁもと男にならいいんだけど、見たいなら見たいって言えばいいのに。

 

「よしっ、今日の分終わりーっと」

 

 今日の分、動画1本をやり終え、立ち上がって伸びをする。

 

「もと男ー喉渇いたー」

「キンキンに冷えたお茶か?」

「うん、飲みたーい」

「いいよ。おっちゃんがお茶を取ってきてあげよう。……なんつって」

 

 えぇ……急にダジャレ言い始めたんだけど……。

 

「なんか、愛先輩みたい」

「まさか、愛先輩のダジャレ力には遠く及ばないよ」

「えー、かすみんはどっちもどっちだと思うけど……」

 

 どっちも急にぶっこんでくるから正直反応に困る。でももと男はそんな愛先輩のダジャレが好きみたい。もと男って面白い人が好きなのかな……。後ろをとことこついてリビングに向かいながらそんなことを考える。

 

「もと男は……面白い女の人が好きなの?」

「う~ん……まぁ好きっちゃ好きだけど、俺のそばにいてくれる人が一番好きかな」

「そばにいるっていうのは、寄り添ってくれる人ってこと?」

「そうだよ」

 

 じゃあ絶対大丈夫。好きになってもらうためじゃなくて、もと男のこと大好きだから自然と寄り添いたくなっちゃう。楽しい時や嬉しい時はもちろん、苦しかったり辛かったりしてもと男が悩んでいる時も一緒にいてあげたい。

 

「それと努力家な子は結構グッとくるね。勉強でも部活でも、何かに一生懸命取り組んで努力できる子には結構惹かれちゃうかな。かすみなんかそうだな。1人でも必死に同好会を守ってくれたり、そんな中でもちゃんと練習してたり」

「ふ、ふーん……」

 

 かすみんのことそんな風に思ってくれてたんだ……。嬉しさで顔がにやけちゃう。えへへー、かすみんも努力家なもと男のことだーい好きだよ。……って言いたいなぁ。

 

「あとありのままな子がいいな」

「ありのまま……どういうこと?」

「俺もあんましうまく言えないんだけど……好きな人が好きなファッションだから我慢して着るとか、好きな人が好きな食べ物だから苦手だけど我慢して食べる、みたいなことしないで、ありのままの自分で勝負してくれる子……かな」

「ふぅん……」

 

 でもかすみんは苦手なピーマンをもと男に食べさせられたんだけど……自分が無理やり食べさせる分にはいいのかなぁ……。

 

「もと男に合わせる女の子は嫌いなの?」

「嫌いではないけど、好きではないな」

「ぷっ、なにそれ」

 

 つまりは普通ってことじゃん。わざわざそんな面白い言い回ししなくてもいいのに……でもまぁもと男のこういうところ好き~。

 

「はい、お茶。キンキンに冷えてるぞ」

「ありがと。ごくっ……ごくっ……」

 

 雑談の間に入れてくれたコップ一杯の水を受け取り、一気に飲み干す。ほんとキンキンに冷えてて美味しい。全身に染み渡る。

 

「ぷはぁ! もと男も飲む?」

「飲みたい」

 

 今かすみんが使っていたコップにお茶を入れてもと男に渡す。

 

「はい、どうぞ」

「えっと……間接キスになるけど、それはいいのか?」

 

 もと男は少し恥ずかしそうにしている。今更そんなこと気にするんだ……。もう2回もキスしてるのに。

 

「いいじゃん別に。今更気にするようなことでもないでしょ。……それとも、ほんとのキスの方がいい?」

「ああ、ほんとのキスの方がいい」

 

 もと男ってキス好きなのかな? かすみんも好きだから同じだ。

 

「というか口移しで飲ませてくれ」

「く、口移しまでするの? 汚いよ……」

「かすみに汚いとこなんてない」

 

 腰にもと男の腕が回され、そのまま抱き寄せられる。

 

「だから口移ししてくれ」

「うぅ……」

 

 なんでこんなに積極的なのさぁ……

 

「じゃ、じゃあ口移ししてあげるね……」

 

 先程入れたお茶を口に含み、飲み込まずにそのまま唇を突き出す。

 

「ん」

「なんか……フグみたいだな」

 

 結構量あったんだから仕方ないじゃん……。そんなことはいいから早くしてほしい。ずっとこのままでいるのは恥ずかしいし、意外と苦しい。声は出せないので、唇をさらに突き出すことで訴えかける。

 

「はいはい」

 

 伝わったのかもと男が唇を重ねてくる。もう3度目のキスになるけど、何度味わっても飽きない不思議な味だ。

 

「んぅ……」

 

 口の中のお茶をもと男の口の中に流し込んでいく。この時意図的にかすみんの唾液を混ぜておく。自分の体液が好きな人の中に入っていくのを想像したら少し興奮してしまった。きっとイケナイ快感なんだろうなぁ……。

 

 

「ぷはぁ……」

 

 全て流し込み終えて唇を離す。その時お互いの口の端から銀色の糸が引いていて、それがとってもえっちに感じた。このまま切れて落ちちゃうのがもったいない気がして、舌で舐めとる。……うん、かすみんの唾液の味。

 

「美味しい?」

「ああ、美味しかったよ。お茶に交じってたちょっとネバッとした液体……かすみの唾液かな? それが美味しかった。こうネチャネチャと舌に絡んできてさ……」

「そんな具体的に言わなくていいよぉ……」

「そう?」

 

 美味しいって思ってくれたのは嬉しいけど、ネチャネチャとかあまり具体的に言われると生々しさが増すというか、恥ずかしくなってくるというか……。

 

「さてと、部屋に戻るか」

 

 もと男はコップとポットに入ったお茶を持って部屋の方へと戻っていく。今度はちゃんとコップを2つ持っている。もう間接キスする必要もない。嬉しいような悲しいような……。

 

「さて、今から何する?」

「ん~っとねぇ……」

 

 普通にお話しするのもいいし、一緒に漫画読むのもいいし、ライバルの研究するのも……うーん、迷っちゃうなぁ……。

 

「あ、そうだ! 実はもと男に見てもらいたいものがあるの!」

「見てもらいたいもの?」

「えっと、これとこれと……」

 

 カバンの中からファイルを取り出して、その中から紙を何枚か出してテーブルに並べる。

 

「……これは? 復活の呪文か何かか?」

「これは歌詞なの! 今度のライブで使う歌の歌詞を考えてみたんだけど、なんていうか、あんまりしっくりこないというか……だからもと男のアドバイスもほしいなーって」

「俺の知らないところでこんな頑張ってたんだな……かすみはすごいな」

「えへへ~」

「見てもいいか?」

「もちろん。歌詞が書いてあるのはこれで、他のはアイデアを走り書きしたやつね」

「はいよ」

 

 歌詞を書いた紙を差し出すと、もと男は食い入るように読んでくれる。かすみんが真剣に考えたものを同じくらい真剣に読んでくれる、そんなもと男が大好きだ。

 

「ふぅん、なるほどね」

 

 読み終えたのか紙をテーブルの上に戻す。

 

「どう? 可愛い?」

「ああ、滅茶苦茶可愛いよ。歌詞見てるだけでも可愛いが溢れてくるのに、実際に歌ってるかすみを見たら多分昇天しちゃうな」

「でしょでしょ!」

 

 かすみんの可愛さに悶えるもと男が見てみたい。ほんとに昇天しちゃったら悲しいけど……。

 

「でも少し語感が悪いかなぁって思うところがあって……。それにまだまだかすみんの可愛さも伝えきれてない気もするし……だからお願い! もと男の力を貸して!」

「ああ、いいよ。まずここ、『秘密』よりも『内緒』にした方が可愛らしさが……」

 

 

 

「ありがともと男! おかげで最高の歌詞になっちゃった!」

「どういたしまして」

 

 1時間くらい歌詞について話し合っていた。ちょっと意見が衝突しちゃうこともあったけど、でもその分だけよりいいものに仕上がった。もと男と一緒に作り上げたものを本番で歌えるなんてこれ以上ない幸せだ。

 

「ふっふーん、これさえあればかすみんの優勝間違いなし!」

「ああ、そうだな」

 

 でもまだ足りない。ほんとはもっともっと欲しい……。これ以上はもと男の負担になっちゃう、それはわかってる。でも我慢できない……。

 

「ねぇ、1個わがまま言ってもいい?」

「なんだ? 何でも言ってくれ」

「かすみんの歌、もと男に作ってほしいの……」

「……へっ? それって作曲してくれってことか?」

「うん……」

「侑先輩の作った曲は嫌なのか?」

「違う、そうじゃないの。侑先輩に作曲してもらうのが嫌ってわけじゃないし、侑先輩が作ってくれた曲でライブしてみたいとも思う」

 

 きっと侑先輩が作ってくれる曲も素敵だ。

 

「けど初めてのライブはもと男に作ってもらった曲で歌いたい」

「それはなんで……」

「人生初のライブだから、かすみんきっと緊張しちゃう……。もしかしたら緊張に負けてヘマしちゃうかもしれない」

 

 歌詞やダンスを間違えるくらいならまだいい。途中で躓いてステージから落ちちゃったりしたら一生スクールアイドルができなくなるかもしれない。そんなの絶対にイヤ。

 

「でももと男が作ってくれた曲があれば、ステージ上では1人でも隣にもと男がいてくれる気がして、きっと緊張なんてどこかに吹き飛んで、最高のパフォーマンスができる気がするの。だから……ダメ?」

 

 もと男にもたれかかって上目遣いでおねだりする。

 

「ダメってわけじゃないけどさ……でも俺作曲したことねぇぞ?」

「うん、知ってる。叶わないってことが最初からかすみんもわかってる。だからお願い。もと男の口から無理だって言って」

 

 ちゃんと無理だって伝えてくれたら、かすみんもきっと諦めがつく。もと男が作ってくれた歌じゃなくても、もと男が応援してくれるだけできっと緊張も吹き飛ぶ。最高のパフォーマンスができる。だから……

 

「……はぁぁぁぁぁぁ、そんな顔されたら無理なんて言えないじゃん……」

「え……?」

 

 かすみんの手が温かいものに包まれる。もと男が手を握ってくれたんだ。それに気づいた途端心までポカポカしてきた。手を握り返して、心も体も完全にもと男に預ける。

 

「侑先輩に作曲を教えてもらうよ。でもいくら侑先輩の指導があっても実際に曲が作れるレベルになるまで結構時間がかかると思う。さらにそこから作曲するとなると完成がかなり遅くなる。それでもいいか?」

「いい! どんなに短い時間でもいっぱい練習して完璧に仕上げてみせるから!」

「よく言った。それでこそかすみだ」

 

 子供を褒める時のように頭をガシガシ撫でてくる。頭を撫でられるのは嬉しいけど、でもこんな子供扱いされた感じのはイヤだ。頭をブンブン振って手を振り払う。

 

「今から侑先輩に連絡してみるな。でも1つだけ約束、侑先輩に断られたらちゃんと引き下がること。侑先輩はかすみを除いても8人分作曲しないといけないからな。それも1ヶ月以内、練習のことを考えると半月くらいか……とにかくかなりの負担に違いない。そこに俺の指導まで加わるとなるともっと大変だ。無理強いなんてできない。だから断られたり渋られたらちゃんと引き下がること。これが俺との約束だ。守れるか?」

「うん、守る!」

「おっけー、じゃあ侑先輩にメッセージ送るな」

 

『突然すみません。俺に作曲を教えてくれませんか?』

 

 もと男は何のためらいもなく送信ボタンを押した。侑先輩は引き受けてくれるだろうか。返事が返ってくるまでドキドキが……ってもう既読がついた!?

 

『いいよ!』

 

 これは引き受けてくれるってことだよね!? やったー! 嬉しくてつい足をパタパタしちゃう。

 

『でも急にどうしたの?』

『かすみの曲を作曲してあげたいんです』

『そっか。じゃあ頑張らないとね』

『1年の時に使ってた教科書とか明日持っていってあげるね』

 

 教科書まで貸してくれるんだ……やっぱりすごく優しい。ワンダーフォーゲル部に部室を奪われそうになって困ってた時も、会ったばかりなのに侑先輩は助けようとしてくれた。そんなこと優しさの塊のような人にしかできっこない。

 

『時間も限られてるし、厳しい指導になるけどついてこれる?』

『もちろん。どこまでだって侑先輩についていきますよ』

『一緒に頑張ろうね』

『皆の初ライブ、2人で最高の曲を用意してあげよう』

『はい、頑張りましょう!』

 

「ふぅ……」

 

 一先ずメッセージのやり取りは終わったみたい。慌ててスマホから目を逸らす。なんとなく盗み見していたのを知られたくなかった。

 

「教えてくれるってさ」

「あっ! OKもらえたんだ!」

「ああ」

「えへへっ、お互い頑張らないとね!」

「もちろんだ。かすみも練習頑張ってくれよ? かすみの頑張る姿を見たら、俺だってもっと頑張れるんだ」

「うん! でもそれはかすみんも同じだよ。もと男が頑張ってるところを見ると、かすみんももーっと頑張らなくちゃってなるんだ~」

 

 お互いがお互いの頑張る姿を見てもっと頑張れる、きっと理想的な関係の1つに違いない。かすみん達予想以上にお似合いなのかも?

 

「ねぇねぇ、一緒にライバルの研究しない?」

「いいよ。折角だしベッドで寝転がりながらするか」

 

 もと男はかすみんの手を離して布団に入り込む。かすみんも後に続いてもと男の隣に寝転がる。

 

「えへへ、おじゃましまーす」

「いらっしゃーい」

 

 グルグル転がってもと男と密着する。でももと男はそんなこと気にせずタブレットを手に取り、動画サイトを開いてからそれを渡してきた。少しくらい意識してくれてもいいじゃん……そんなことを考えながらタブレットを受け取る。

 

「今度のライブに出てきそうなスクールアイドルで、かすみんのライバルになりそうなのは……」

「同好会の皆じゃないか?」

「ま、まぁ皆は多分手強いライバルになるだろうけどぉ……データとか全くないからここじゃ研究できないもん」

「せつ菜先輩はどうだ? 多分いろいろ動画も上がってるだろ」

 

 試しにせつ菜先輩の名前を入れて検索してみると、確かに動画がいっぱい出てきた。

 

「じゃあ今日はせつ菜先輩の研究しよーっと。もと男も気づいたことがあったら何でも言ってね」

「まかせろ」

 

 まずは一番上にあった動画を開く。……あ、これ昔で見たことあるやつだ。虹ヶ咲にこんなスクールアイドルもいるんだーって思いながら見た記憶がある。

 

「むぅ……さすがせつ菜先輩、隙がない……」

 

 あの時はただすごいなぁとしか思わなかったけど、実際にスクールアイドルを始めてから見るといろんな気づきがある。

 まずは歌。伸びのある声で、楽しそうなのが動画越しでも伝わってくる。そしてダンスも結構激しいはずなのにほとんどブレてない。一体どれだけ練習したのだろう……。

 次にダンス。動きは大きく大胆でキレもある。それでいてブレない。きっと体幹がすっごくしっかりしているのだろう。

 

「ねぇもと男、どうしたらせつ菜先輩みたいなライブができるかなぁ?」

「そりゃもう練習あるのみ」

「うーん、やっぱりそうだよね……でもせつ菜先輩も居残り練習するみたいだし、なかなか差が縮められないよぉ」

 

 練習量が一緒だから、余程効率のいい練習をしないと差を縮められない。

 

「でもかすみは風呂上がりにヨガしたり、ライバルを研究したり、いろいろ頑張ってるじゃないか。頑張った分ちゃんと結果もついてくるよ」

「そう、だといいな」

「それにせつ菜先輩と全く同じライブはする必要なんかないぞ。せつ菜先輩はかっこいいを意識したライブだけど、かすみんの強みは圧倒的可愛さじゃないか」

「あ、そっか」

「皆それぞれ自分の個性を活かし、それぞれのやりたいことをやる。それができるのがスクールアイドルだ。だからかすみも自分の可愛さを存分に活かしていこう。可愛さをさらに引き出せるようなMCとかダンスも考えないとな」

 

 そっか、歌詞だけじゃなくてそれも考えないといけないのか。ダンスはもちろんだけど、MCもファンの皆の心を鷲掴みするのに必要不可欠だ。

 

「考えることがいっぱいだなぁ……」

「大変か?」

「ううん、むしろワクワクする!」

「そうか、そりゃよかった。……ふわぁ

 

 ダンスは曲ができてからじゃないと無理だから、まずはMCの方からかなぁ。

 

「困ったらまたもと男にアドバイスもらうことになるかも!」

「ああ……せつ菜先輩でもいいぞ」

「ダンスとかはせつ菜先輩の方がいいのかな」

「ああ……衣装とかは果林先輩が……」

「果林先輩モデルさんだもんね。……ってもと男?」

 

 もと男の頭がコクコクと揺れ始めた。瞼も閉じたり開いたりしている。

 

「もしかして眠い?」

「うん……ごめんな」

「モデルさんのお仕事とかあったんだもん、いつもより疲れてるよね。いいよ、おやすみ、もと男」

 

 頭を優しく撫でてあげる。いつものお返しだ。

 

「うん、おやすみ……」

 

 頭を撫で続けているともと男は瞼を閉じてそのまま寝息をたて始めた。

 

「すぅ……すぅ……」

「ふふっ、可愛いなぁ」

 

 普段はかっこいいくせに寝顔はすっごく可愛い。写真撮っておこーっと。

 

「えへへ~」

 

 ホーム画面を今撮った寝顔に変える。明日しず子に自慢しちゃお!

 それにしてもほんと可愛い……。勝手にキスしたら怒るかなぁ?

 

『パサッ』

 

 本棚から本が1冊落ちる音がした。ここからだと絶妙に表紙が見えない。直すのも兼ねてベッドを降りて本棚まで行く。

 

「あれ……これ日記かな?」

 

 表紙も裏表紙も無地の本だけど、中身をサーッと見た感じでは日記のようだ。どんなこと書いてあるのかなー。気になるし読んじゃお!

 日記を持ったまままたベッドに寝転がる。

 

「最後のページは……あ、これかな」

 

『今日は璃奈と愛先輩が同好会に入ってくれた。これで部員は6人になった』

 

 これは1週間くらい前の、りな子と愛先輩が同好会に入ってくれた日の日記のようだ。これが最後ってことは結構サボってるなぁ。でも書かれてるのは本の3分の1くらいのページだし、これ以前はちゃんと書いてたのかも。同好会に戻って忙しくて書けてないのかな?

 

『会長との約束まであと5人。彼方先輩にエマ先輩、せつ菜先輩を連れ戻して、侑先輩にも入ってもらえれば残り1人。栞子にでもお願いしようかな。可愛いし努力家だし』

 

「むっ……栞子って誰さ」

 

 それに可愛いって……クラスメイトだろうか。かすみんの知らないところでかすみんの知らない可愛い女の子とと考えると……少しむかつく。頬をツンツンして不服を伝える。

 

『愛先輩が同好会に入ってくれたのも嬉しいけど、璃奈が入ってくれたのがとにかく嬉しかった。中学の時は俺も璃奈も同好会に入ってなかったから、高校に入って一緒に部活できるのが嬉しい。ずっと一緒にいた璃奈と、ずっと一緒に何かに打ち込みたかった。だから嬉しくてたまらない。璃奈のためにも、俺自身のためにも、絶対同好会を復活させなければ』

 

「……ふふっ、ほんとりな子と仲良いなぁ」

 

 もと男もりな子もお互いを大切に思っている。それにもと男がこんな風に考えていたなんて全く知らなかった。侑先輩と歩夢先輩もそうだけど、やっぱり幼馴染っていいなぁ……。ちょっとだけりな子に妬いちゃう。

 

「もと男はー、りな子のことが好きなんですかー?」

 

 頬をツンツンしながら聞いてみる。もちろん寝ているから答えなんて返ってこない。日記を全部読めばわかるかもしれないけど、読むのはやめておく。知るのであればちゃんともと男の口から聞きたい。恋の終わりを日記で知るだなんて絶対イヤ。

 

「ん~……かすみんも眠たくなってきた……」

 

 もと男の寝顔を見ているとこちらまで眠たくなってきた。手に持っていた日記をベッドのすぐそばの台に置いて、もと男にギュっと抱きつく。もと男の体を全身で感じる。

 

「おやすみ、また明日……」

 

 瞼を閉じて眠りにつく。明日ももと男といっぱい話せるといいな……。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


かすみんお泊まり編はこれで終わりです。次回は本編……に戻る前にかすみん達のお昼休みをサイドストーリーとして1話投稿します。(誰視点にするかはまだ決めて)ないです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part18/m

Eutopiaァァァァァ!


アニガサキ2期1話見ました。感想等は後書きで。
多分ネタバレも含まれちゃうので、それが嫌な人は後書きを見ないで本編を1145141919回見てください。


「もっと男~! かすみんが来てあげたよ~!」

 

 かすみちゃんが元樹の教室の扉を勢いよく開ける。あまりにも突然の出来事だったので中にいた人達も驚いてこちらを見ている。

 

「こらっ! そんな乱暴に開けちゃダメでしょ!」

「いたっ!」

 

 しずくちゃんがかすみちゃんの頭を軽くチョップする。

 

「うちのかすみさんがごめんなさい……」

「しず子、なんかお母さんみたい」

「ほら、かすみさんも謝って」

「え、ご、ごめんなさい……」

 

 やっぱりかすみちゃんとしずくちゃんは仲がいい。私が入る隙間なんかないくらい……。これがきっと親友というものなのだろう。

 

「ね、りな子。りな子もそう思うでしょ?」

「……え? ごめん、聞いてなかった」

「もー、いきなり暴力をふるうなんてしず子って酷いよねって話。りな子もそう思うでしょ?」

「ドアをあんな乱暴に開けたかすみさんが悪いよ。璃奈さんもそう思うよね?」

 

 これは私を気にかけてくれたのか……ううん、きっと違う。2人が元樹を大切に思っているように、きっと私のことも大切に思ってくれてるんだ。顔を見て、声を聞くだけでそれがわかる。

 

「……うん、今回はしずくちゃんが正しいと思う。璃奈ちゃんボード『裏切り』」

「ちょっとりな子!」

 

 頬を引っ張ってくるかすみちゃんを放っておきながら、ボードの横から教室の中を覗き見る。角度的に死角も多いけど、見える範囲には元樹はいない。見えない範囲にいるのかとも思ったけど、それだったらこの騒ぎを聞いて見に来てくれるよね。お手洗いにでも行ってるのかな。

 

「あの、どうかされましたか?」

 

 教室から出てきた子が話しかけてくる。何度か見たことある、元樹に好意を持ってるかもしれない子だ。やっぱりクラスメイトだったんだ。間近で見ると私の何倍も可愛い。

 

「もと男を探しに来ましたー」

「もと男……? えっと、誰のことでしょうか?」

 

 かすみちゃん、他の人にもその呼び方で通すんだ……。

 

「えっと、元樹のことです」

「元樹……もしかして堀口さんのことですか?」

「そうそう! 元樹はいますかぁ?」

「堀口さんなら今はいませんよ。ご友人とお食事に行っています」

「そっかぁ……」

 

 元樹の友達……誰だろう。教室で食べてないってことはクラス外の友達なのかな。もちろんクラスの友達と学食を食べてるって線もあるけど……いったんそれは考えないことにする。クラス外の友達は同好会の皆しかいないって言ってたし、きっと同好会の誰かと食べてるんだろう。侑さんと歩夢さんと一緒に食べてるのかも。先輩の中だとこの2人と特に仲がいい気がするし。

 

「用件を伝えておきましょうか?」

「ううん、大丈夫。ありがと」

「わかりました」

 

 3人で集まる。

 

「もと男いないって。どうする? 探しに行く? それとももと男抜きでお昼にする?」

「うーん……」

「私はこのまま元樹抜きで食べた方がいいと思う。この学校広いから探しても多分見つけられない」

「それもそっか。運よく見つかってもお昼食べる時間ないかもだもんね」

「うん。……?」

 

 横から視線を感じる。ちらりと横目で見るとさっきの子が私達を……いや、私のことをジーっと見ていた。警戒されてる……? その子も私が見ていることに気づいたのか、視線を逸らして教室の中に戻っていった。

 

「1年生皆で食べられないのは少し残念だけど、今日はこの3人で一緒に食べよっか。璃奈さんともっと仲良くなるいい機会だもんね」

「うん、私もしずくちゃんとかすみちゃんももっと仲良くなりたい」

「とりあえず移動しよっか。中庭でいい?」

「うん、いいよ」

 

 3人で廊下から中庭に移動する。

 

「りな子が同好会に入ってもう1週間くらい経つけど、まだ一緒にお昼食べたことなかったもんね」

「だからかすみちゃんが誘ってくれた時すっごく嬉しかった。璃奈ちゃんボード『わーい♪』」

「急に誘ったのに来てくれてかすみんも嬉しいよ。まぁしず子だけ返信がちょっと遅かったけど」

「今日はちょっと寝坊しちゃって……」

 

 しずくちゃんも遅刻したりすることあるんだ……少し意外かも。

 

「元樹が寝坊でもしたの?」

「元樹君もだけど、私も寝坊しちゃって……」

「しず子も寝坊するんだ。もと男と一緒だからって気が緩んじゃったんじゃないの~?」

「ん~……まぁそれもあるかな。いつもより登校にかかる時間が短いっていう安心感もあったし……」

 

 そういえばしずくちゃんの家は鎌倉なんだっけ? そこと比べたら、私と元樹の家は格段に近いかもしれない。

 こんなことを話している間にも中庭に着いた。かすみちゃんがレジャーシートを敷いてくれたのでそこに3人で座る。

 

「もと男の家ってここから近いの?」

「うん、そこそこ近い」

「いつもの登校が嫌いなわけじゃないけど、今日はいつもより楽だったし景色も新鮮で楽しかったなぁ。まぁでも寝坊した一番の理由は夜ちゃんと寝れなかったからかな」

「2人で夜更かしでもしたの?」

「そういうわけじゃないよ。元樹君は12時過ぎには寝てたし。でも私は元樹君に抱きついてたから、寝たふりはしてたけどドキドキして全く眠れなくて……」

「えっ!? もと男に抱きつきながら寝たの!?」

 

 かすみちゃんは驚きながら、しずくちゃんとの距離を詰めて問い詰めている。問い詰めるまではしないけど私も結構驚いている。きっと何かは起きただろうとは思ってたけど……まぁ私も同じことしたし、あれが初めてというわけでもなかったし、そこまで難易度の高いものではないのかもしれない。しずくちゃんって意外と大胆だから。

 

「変なことされなかった!?」

「大丈夫だよ。何もされなかったというか、何もしてくれなかったというか……」

「なんで残念そうなのさ……」

「だって魅力がないみたいで少し悲しい気持ちになるんだもん……」

 

 しずくちゃんの気持ちもわからない。一緒の布団で寝たり、目の前で寝たふりをしていても元樹は何もしてくれない。

 

「でも元樹はしずくちゃんに魅力を感じてないってわけじゃないと思うよ。きっと元樹は……」

「うん、言わなくてもわかるよ。元樹君はきっと優しすぎるんだよね。私達を傷つけないように……」

 

 この前も寝ている私にそっと毛布をかけてくれたり、ただただ優しいんだと思う。それがわかるから、悲しくなるよりもますます好きになっちゃう。

 

「璃奈さんは元樹君と寝たことあるの?」

「……それはどっちの意味?」

「うーん……じゃあエッ」

「普通の意味で!」

「そっちならいっぱいあるよ。この前お泊まりした時は久し振りだったけど、小学校や中学校の時はいっぱいしてた。元樹のことを好きになる前も」

「ドキドキしたりしないの?」

「最初はずっとドキドキしてたけど、今は平気かな。むしろいつもより落ち着いて寝られる」

 

 好きになる前は平気だったのに、好きになった途端急に恥ずかしくなったのを今でも覚えてる。ドキドキして、でも心地よくて、勇気を出して手を握ってみたら優しく握り返してくれた。昔の元樹は今よりも甘えんぼで、今では考えられないくらい恥ずかしがりだったから、寂しい時とか私の手を握ろうとして手を伸ばしたり引っ込めたりしていた。そんな元樹が可愛くて愛おしくて、いつもギュっと握って起きるまで放さなかった。今はもう二度と経験できないことだけど、私にとってはとっても大切な思い出だ。

 

「……なんか、りな子幸せそ~」

「そう、かな?」

「うん。すっごく幸せですって顔に書いてあった」

 

 そっか、私顔に出てたんだ……

 

「あれ? かすみん何か変なこと言った?」

「ううん、何でもない」

「それで璃奈さんは何考えてたの?」

「元樹との思い出」

「そっか……いいなぁ、かすみんももと男と一緒のベッドで寝たいなぁ」

 

 ……これはどういう意味なんだろう。まさかとは思うけどかすみちゃんまで……

 

「かすみさんもお泊まりしたら?」

「それは今日するんだけどぉ……」

「え、す、するの? それも今日?」

「うん」

 

 全く知らなかった……。いつの間にそんな約束をしたんだろう。元樹の方から? それともかすみちゃんから?

 

「でも一緒に寝よって言うのが恥ずかしくて……」

「多分大丈夫だよ。私は元樹君の方から一緒に寝ようってお誘いされたし」

「私は勝手に潜り込んだ。璃奈ちゃんボード『潜入』」

「怒られなかった?」

「うん、大丈夫。かすみちゃんが潜り込んでもきっと受け入れてくれる」

「そっかぁ……潜り込むのも恥ずかしいけど、もと男と一緒に寝たいし頑張ってみようかな」

 

 普段では見られない、頬を赤く染めて小さく、でも幸せそうにはにかむかすみちゃんに私までドキッとしてしまった。それと同時に私の中の仮説が確信に変わってしまった。

 

「かすみちゃんって元樹のこと好き……だよね?」

「……うん、好き。大好き」

 

 今度は恥ずかしがることなく、真っ直ぐと私の目を見つめてそう答えた。今の言葉からは嘘や偽りは全く感じられず、私への敬意と対抗心、そして元樹への愛が全身から伝わってくる。

 

「そっか。いつから元樹のこと好きだったの?」

「うーん……わかんない。想いを自覚したのは昨日だけど、きっとずぅっと前から好きだったんだと思う」

「昨日……? 何かあったの?」

「うん、ちょっとね。しず子に教えてもらったというか……」

「しずくちゃんに?」

 

 私はかすみちゃんと元樹は普通に仲のいい友達と思ってたけど、しずくちゃんはかすみちゃんが好意を持ってることに気づいてたのだろうか。

 

「その、璃奈さんごめんね」

「えっと、何が?」

「勝手にライバルを増やすようなことして……」

「ううん、気にしなくてもいい。辛い思いをするかすみちゃんを見たくなかったんだよね?」

「うん……」

「だから気にしなくて大丈夫。私がしずくちゃんの立場でも同じことしたかもしれないから。それに……」

「それに?」

「……ううん、何でもない」

 

 同好会の誰かが元樹と付き合うことになっても、今の私は何の異存もない。むしろ皆なら満足だ。もちろん元樹のことを諦めたというわけではないし、元樹も私を選んでくれると信じてる。でももし元樹が私以外と付き合うことになったとして、その結果元樹が幸せになれるならそれでいいって思うようになった。

 同好会に入ってしずくちゃんとせつ菜さんの想いを知って、その強さを知って、自分の想いについて考え直す時間ができた。どうして私は元樹と付き合いたいのか。もちろん元樹のことが好きっていうのもあるけど、一番は元樹を幸せにしたいから。元樹に幸せになってほしいから。私だけが元樹を幸せにできる、ずっとそう考えてた。でもそれは間違っていたのかもしれない。しずくちゃんもせつ菜さんも、そしてきっとかすみちゃんも私と同じくらい元樹のことを想ってる。きっかけはどうであれ、その強さは私にも負けてない。だから元樹を幸せにしてくれるかもしれないかすみちゃんが想いに気づいてくれるのは大歓迎だ。もちろん負けるつもりなんてないけど。

 

「ねぇねぇ、2人はもと男とどんなお泊まりしたの? ちょっと参考にさせてほしいな」

「私は元樹と一緒にご飯を作って、その後お風呂に入るまで一緒にゲームしてたかな。お風呂から上がった後は私がうっかり寝ちゃってたから、それ以外は何もできなかった。でも満足」

「私の時は元樹君が全部ご飯を作っちゃったな。元樹君の美味しい手料理を堪能して、お風呂に入ってからは一緒に宿題をしたよ」

「元樹嫌がらなかった?」

「嫌がってはいなかったかな。大変そうにはしてたけど……」

 

 なんか元樹は最近ちょっと変わった気がする。あんなに嫌だ嫌だ言ってた勉強もちゃんとやってる。もちろん嬉しい変化だ。少し前にあった部内勉強会でも話を聞いた限りでは学力もちゃんとついてきてるようだった。中間試験では赤点いっぱいで補習地獄だって言ってたけど、この調子なら期末試験は大丈夫そう……かも。

 

「あとは映画を見て……あ、そうだ! 私ね、元樹君とキスしちゃった!」

「「え……」」

 

 また私の知らないところで元樹の唇が……まぁ、目の前でされても困るのだけれど。今のところせつ菜さんの2回としずくちゃんの1回かな。

 

「ど、どんな風に!?」

「こうやってね、ギュゥ~って抱き合って、見つめ合いながらちゅ~って」

「はわわ……」

「璃奈ちゃんボード『ドキドキ』……」

 

 その時の状況を再現しているのか、しずくちゃんがかすみちゃんのことを抱きしめている。もちろんキスまではしていないけど、今にでも繋がってしまいそうなくらい顔が近い。かすみちゃんも顔が真っ赤だ。

 

「えへへ……もう1回したいなぁ。知ってる? 元樹君の唇ってね、すっごく柔らかいんだよ。ぷにぷにーってしてて感触もいいし、元樹君の唾液もすっごく美味しいの。それにキスする時は優しく抱きしめてくれたし、頭まで撫でてもらっちゃった」

 

 その場の光景が容易に想像できるくらい丁寧に語ってくれる。羨ましい……私ももっと積極的に行くべきなんだろうか……。

 

「むぅ……」

「どうしたの、かすみさん。もしかして嫉妬しちゃった?」

「……ぷいっ! しず子なんて知らない!」

 

 かすみちゃんが拗ねてそっぽを向いてしまった。でも口をモニョモニョとさせていて、キスを意識してしまっていることが丸わかりだ。これは1回増えちゃうかも……。




感想とか評価とかはいいからいっぱいアニガサキ見て(定期)


皆様はアニガサキ1話はご覧になられましたでしょうか? 私はリアタイしました。単刀直入に言えばサイコーハートです。

まずは何といってもランジュちゃん、もちろん愛嬌があって可愛いのだけれど、圧倒的強者の風格があってカッコよさの方が印象に残っています。
ランジュちゃんの新ソロ曲『Eutopia』すごかったですね。いきなり最高の曲が来たなーと興奮して見ていました。今後の挿入歌、何曲あるかはまだわかりませんが、他の曲もきっとEutopiaにも負けず劣らずの最高な曲が来るのだろうと考えるとワクワクしてきますね。PVのランジュエッッッッ! 早くフルで聞かせろ。
対立、というよりはライバルになるまでの展開の持っていき方もすごくよかったと思います。ほんといい感じに調理したなぁと感心しました。

次に果林ちゃん。あの動画の果林ちゃんが最高でした。多分このRTA内でいずれ使われることになると思います。隙を見せた果林ちゃんが悪い。

そしてED『夢が僕らの太陽さ』、まず絵が最高にきゃわわでした。しんみりと心に響いてくる感じの曲で、最終話が近くなってこの曲を聞くと多分心が爆発すると思います。早くフルで聞かせろ。
EDの最後の方の侑ちゃんと同好会の12人、それからジャケットを見て、なんだか12人が見送っているような構図に私は見えました。勝手な考察ではありますが、侑ちゃんが同好会の皆を応援しつつ、音楽の道も突き進むということで留学する道を選んで、それを皆が見送る、みたいな結末になるんじゃないかなーと勝手に考えていました。絶対間違っていると思いますが。

ついでにカップリング曲の『繚乱!ビクトリーロード』、ただただ強すぎる。最初に聞いた時1話の印象が全て吹き飛びました。歩夢ちゃんの声が可愛すぎてほんま……早くフルで聞かせろ。

最後に栞子ちゃん、サキュバス栞子ちゃんはどこ……ここ……? 栞子ちゃんの感情はどこ……ここ……? でもあの感情なさそうな栞子ちゃんがちっちゃなリボンを髪につけているのが可愛すぎて髪飾り強く結び直しました。
個人的に好きなシーンは、ランジュちゃんに反省文提出して、役目でしょって言った後振り返るシーンです。そのシーンの栞子ちゃんが妙に可愛かったんですよね。

以上、一般オタク紳士君からでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part38/n

皆様はアニガサキ2期2話はご視聴済みでしょうか? 私は毎日見ています。まだ見てない兄貴はこれを読む前にアニメを見て、どうぞ。

今回も後書きに2話の感想を垂れ流すので、ネタバレが嫌な兄貴は本編を読んだ後F5を押してね!


あっ、そうだ(唐突)
最近リアルが急に忙しくなったのでなかなか平日に執筆時間がとれないゾ……。なので今回はクッソ短いです。次回以降も遅くなってしまいそうなら、私の独断で1話当たりの文字数を減らして週1で投稿できるようにしようと思います。


 音楽科の道を極めるRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はかすみんとイチャイチャおねんねをしました。今回はその続きからで、起床して学校に行きます。昨日は絶起してしまいましたが今日はどうでしょうか。

 

『いい朝だ。昨日はよく眠れた気がする』

 

 どうやらちゃんと起きられたみたいです。よかったね。……おや? そういえばかすみんが隣にいませんね。どこに行ったのでしょうか……。ま、えやろ。この家のどこかにはいるはずですからね。

 

「おはよう、もと男」

 

 リビングに行ったらかすみんがいました。おっは~。キッチンで何かしているみたいですね。朝食を作ってくれてるのでしょうか?

 

「よく眠れた?」

 

 バッチェ眠れましたよ。かすみんは?

 

「うん、かすみんもバッチリ! もと男が手を握ってくれたからかも」

 

 はて、そんなことしましたっけ?

 

「寝る時はしてなかったけど、かすみんが起きた時には手繋いでたよ。もと男が繋いでくれたんじゃないの?」

 

 んにゃぴ……寝ている間のことはよくわかんないです。

 

「ふーん……まぁいいや。はい、朝ご飯できたよ」

 

 かすみんが朝食をお皿に盛りつけてテーブルに並べてくれます。ありがとナス!

 

「トーストと目玉焼き、簡単なものだけどね」

 

 簡単なものでいいですよ。むしろそっちの方が嬉しいです。以前食生活はほも君の体調に関わってくる重要な要素とお伝えしましたが、ぶっちゃけると朝食は食べても食べなくてもどちらでもいいです。何故かこのゲームでは朝食は体調にほとんど影響しないので食べなくても無問題ラ! でも現実ではちゃんと食べようね。

 タイムのことを考えれば食べないのが理想ですが、かす虐をするわけにもいかないので大人しく食べましょう。かす虐が見たい兄貴は自分で買ってプレイ、しよう。

 

「いただきます。……ん~おいしぃ~」

 

 さすがかすみん、とても美味しいです。ちゃんと味わいながら爆速でパクパクしましょう。

 

「もと男食べるの早いね。何か急いでる?」

 

 RTAなんだから急ぐに決まってるだろ! いい加減にしろ!

 

「ん、かすみんもごちそうさま」

 

 かすみんも結構食べるの早いじゃないですか。

 

「もと男が急いでるみたいだったから、かすみんも急がなくちゃって」

 

 そういう風にさらっと気を遣えるかすみん、嫌いじゃないし大好きだよ。結婚して♡

 

「じゃあお片付けして、お着替えして一緒に学校行こっか」

 

 わかりました。一緒にお片付けして、一緒にお着替えして、一緒にお着替えして! それから学校に行きましょう。

 

 

 

「じゃあね、もと男! ばいばーい!」

 

 は?(威圧) ……は?(威圧) なんで? なんで? なんでかすみんのお着替えシーンがないん? どうしてくれんのこれ? 全王国民が悲しんじゃうよ? というか登校シーンすらないのはなんでなんですかねぇ……かすみんとのいってきますのチューを期待していたのですが裏切られてしまいました。失望しました、流しそうめん同好会入部します。

 

「元樹さん、おはようございます」

 

 教室では栞子ちゃんがニッコリ笑顔で出迎えてくれました。おはようございます。栞子ちゃんとこうして話すのはなんだか久し振りな気がしますね。

 

「なんだか嬉しそうですね。何かいいことでもあったのですか?」

 

 実はこの辺にぃ、宿題を見せてくれる女の子、来てるらしいんすよ。

 

「はぁ、また宿題を忘れたのですか……」

 

 昨日はかすみんとずっとイチャイチャちゅっちゅしてましたからね。宿題をする暇なんてありませんでした。だから急ぐ必要があったんですね。多分かすみんも宿題が終わっていないと思うので、今頃大慌てでしょう。可哀想、栞子ちゃん貸し出してあげたい。

 

「一応聞いておきますが、その女の子というのは私のことではありませんよね?」

 

 逆に栞子ちゃんの他に誰がいるんですか?

 

「そうですよね……。見せることは絶対にしませんが、前と同じように私が教えながら宿題をやるのであればいいですよ。そちらの方が元樹さんのためになりますし、それに私にとっても……」

 

 私にとっても……何ですか? ちゃんと先を言ってくれないと何も伝わりませんよ?

 

「い、いえ何でもないです……。さぁ、時間もありませんし早速始めましょう。元樹さんも早く準備してください」

 

 ありがとナス! では、宿題をヤルゾー!デッデッデデデデ!(カーン)

 

 

 

「お疲れ様でした」

 

 どうやら宿題が終わったみたいです。あっという間でしたね。量が少なかったのでしょうか。

 

「それにしても依然と比べて遥かに理解度が上がっていますね。ほとんど私の教えなしに解けたじゃないですか」

 

 なるへそ、頑張って学力を上げた効果が出ているみたいですね。

 

「これも全部元樹さんが努力した結果ですよ。やはりあなたには誰よりも努力する適性がありますね」

 

 まぁ私が無理やり努力させていますからね。それにほも君がここまで成長したのは栞子ちゃんのおかげでもありますよ。栞子ちゃんが宿題を優しく教えてくれたり、ほも君にあった参考書を選んでくれたり、そういう栞子ちゃんの優しさがあったからほも君はこんなにも成長できたんです。まぁ栞子ちゃんの力がなくても参考書の山で無理やり成長させますが(小声)

 

「ふふっ、そう言っていただけると嬉しいです。元樹さんのためにといろいろ考えた甲斐がありました」

 

 栞子ちゃんが身を寄せて、肩に頭を乗せてきました。クンカクンカ……いい匂いがするぅ。

 

「あんまり匂いを嗅がないでください。恥ずかしいですから」

 

 そう言っている割には全く恥ずかしそうじゃないですね。むしろ嬉しそうに見えますよ。

 

「ふふっ、やはりわかってしまいますか」

 

 栞子ちゃんはさらに距離を詰めてきました。栞子ちゃんとイチャコラできるのは嬉しいのですが周りの目もありますし……。

 

「それがどうかしましたか? ほら、周りを見てください。誰も私達のことなんて気にしていませんよ」

 

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子) さっき栞子ちゃんが目を閉じた隙にチラチラ見てたゾ。つまりはほも君と栞子ちゃんの関係が気になりつつも、栞子ちゃんにはバレないようにしたいってことですかね? でもまぁ朝から教室でこんなにイチャイチャしているクラスメイトがいたら普通に気になっちゃいますよね。わかります。

 

「元樹さんの体、すごく温かいです」

 

 おっと、今度は腕を絡めてきました。今日の栞子ちゃんはいつにも増して甘えんぼさんですね。

 

「そうでしょうか? いつも通りだと思いますが」

 

 嘘つけ絶対変だゾ。なんだか強い甘酒を飲んだみたいですね。

 

「確かに昨日甘酒を飲みましたが……甘酒に強いも弱いもなくないですか?」

 

 飲んだことないから知らなーい。

 

「そうですか……。あの、もしよければ今度一緒に甘酒を飲みに行きませんか? 私の好きなものをぜひ元樹さんにも体験していただきたいんです」

 

 いいですよ。前に約束したお出かけの日に一緒に行きましょう。

 

「ありがとうございます! ふふっ、また1つ楽しみが増えてしまいましたね。元樹さんも行きたいこと、したいことがあれば遠慮なく言ってくださいね。私も元樹さんの好きなものを体験してみたいですから」

 

 ん? 今体験してみたいって言ったよね? 私が好きなのはRTAなので、栞子ちゃんも体験、しよっか。

 

「……あ、もう授業が始まってしまいますね」

 

 逃げたな(小声)

 

「今日も一日一緒に頑張りましょうね」

 

 はい、頑張りましょうね。私はサクッと終わらせるつもりですが。RTAだからね、しょうがないね。

 

 

 

 はい、サクッと午前中が終わりました。お昼の時間です。私もお腹が空いてきました。

 

「元樹さん! 一緒にお昼……は今日もダメなんでしたね」

 

 そうだよ(肯定) テキストを送る時間がもったいないからわざわざ確認しないで(鬼畜)

 

「楽しんできてくださいね。何か嫌なことがあればすぐにここに戻ってきてくれればいいですから」

 

 (お食事中に歩夢ちゃんや侑ちゃんと喧嘩してしまうようなことがあったとしても、その時は即リセットするのでここに戻ってくることは)ないです。

 

「さあ早く行ってあげてください。お友達の方達も元樹さんのことを待っていますよ」

 

 そうですね、そうさせてもらいます。おそらく相手は男友達だろうと信じている純粋な栞子ちゃんの見送りを受けながら、歩夢ちゃんと侑ちゃんの下へイク

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




以下、アニガサキの感想になるのでスクロールのし過ぎに注意です。





皆様、アニガサキ2期2話はいかがでしたか? サイコーハートでした(定期)

まずはOPについて。なんだこの神曲!? 1話でEutopiaと夢が僕らの太陽さを聞いた時点で私の中での期待度はかなり高まっていましたが、それをいともたやすく超えてきました。なんだこの神アニメ!?
次にOPの映像について。1期よりもさらに水没しているのですがそれは……聖地巡礼しなきゃ(使命感) 何気ないランニングシーンの中に薫子さんっぽい人など、重要そうな人が割とたくさんいてびっくりしました。初見では気づきませんでしたが。あと同じランニングのシーンで姫乃ちゃんの方を見ているのがいいと思いました(小並感) あとバテバテなミアちゃんよき。そして何故ランジュちゃんはあんなエッッッッッな恰好でランニングしているのか(困惑)
その直後の栞子ちゃんのカットで扇子を持っているのがいいなと思いました。アニメでも日本舞踊を披露してくれ。エクシア果林ちゃんもやんちゃな感じがして好きです。本編でもやれ。
個人的にOPの中で好きなシーンはりなりーのカットです。しゃがんでいるであろうりなりーの表情が最かわでした。口が半開きのりなりーの破壊力……
衣装は私の中ではかなり意外性が高かったです。今までのラ!アニメのOPで冬っぽい衣装ってない、なくない?
早くフルで聞きたい曲でした。予約はバッチリ済ませているので、あとは発売当日まで待つだけですね。


以降は本編のビビッときたシーンをいくつか、簡単な感想と一緒に。

・布団グルグル巻き彼方ちゃん人形
発売してくれ。坊主とは一体……

・愛さんの練習着
ニット帽被った愛さん好き、剥ぎ取りたい。

・ランジュちゃんの「SIFまでとっておきたい」というセリフ
自分のスクールアイドルの原点となったライブステージで、原点となった人達と勝負したい、そんなランジュちゃんの想い、わかります。

・栞子ちゃん
ずっとニコニコしててかわヨ。1話では感情なさそうだったのに。あと歩夢ちゃんのお誘いになんて返したのか気になります。

・「14歳!? やばっ!」
愛さんってやっぱり……

・ランジュちゃんのことを気に掛けるエマちゃん
1期5話の時もですが、相手のことを気にかけて何か力になってあげようとするエマちゃん好きです。相手が自分達にとってどういう立ち位置だったとしても、何かしてあげられるのなら力になってあげたいというエマちゃんの優しさが伝わってきてとってもよき。アニガサキはエマちゃんのお世話好きというのをほんとうまく表現できてるなーと感服します。

・伝統芸能
サングラスとマスク、そして無許可無断グッズ販売、ラブライブシリーズの伝統芸能。これを待ってた。

・0カロリー
アイスは溶けてなくなるから0カロリーってマジ? いっぱい食べます。

・「おい、落ち着け」
ふ、藤丸彼方ちゃん……?

・ランジュちゃんのお家
やっっっっっば。私もこんな家住みたいゾ。

・エマちゃんとランジュちゃんのレスバ
めっちゃ重要なところなのに、何度見ても半分も頭に入ってこないゾ……

・「スクールアイドルなら、やり方はわかるわよね」
おい、ライブしろよ。

・滑り台りなりー
かっっっっっわいい!

・ブランコ
ここ天才。マジで天才。ブランコをこぐタイミングも早さも振り幅も違う。そんな4人のブランコが揃うことで、普段はソロの4人の気持ちが揃ったというのをブランコで表現するのは天才的すぎて感動してしまった。初見時にただのSing&Smileのライブのオマージュかなとか思ってた私が愚かでした。


以上、一般オタク紳士君でした。

あっ、そうだ(唐突)
読者の皆様も本作の感想の方でアニガサキの感想を垂れ流していただいても全く問題ありません。むしろ皆様とラブライブ談義ができるのでとても嬉しいです。ただ運営様に怒られた場合はごめんなさいということで。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part39/n

4話放送当日だけど、放送前だからヨシッ!


例によって後書きは3話感想回会場です。


 甘々イチャイチャお昼休みRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は栞子ちゃんと甘々空間を形成した後、その栞子ちゃんを見捨てて旅に出かけました。今回はその続きからで、侑ちゃん歩夢ちゃんと一緒にお昼を食べようと思います。

 ……とは言ったものの、何故か侑ちゃんからも歩夢ちゃんからもどこにいるか連絡が来ていません。ほも君との約束を忘れてしまっているのでしょうか。……まぁいいでしょう。人間誰しも何かを忘れてしまうことはありますからね。今ここで連絡して場所を聞いてもいいのですが、連絡を送って返ってくるまでの時間がもったいないので、適当に回って探しましょう。候補地は基本的には中庭か食堂、屋上の3ヶ所だけですからね。3ヶ所程度なら順番に回っていって見つけた方がタイム的にうま味です。

 では、まずは中庭にイクゾー!デッデッデデデデ(チー)

 

 

 

「もとくーん! こっちだよー!」

 

 やったぜ。特に理由なく中庭を選んだらいきなり当たりを引けました。侑ちゃんが手を振って呼んでくれています。歩夢ちゃんは……何故か隣で気まずそうに視線を逸らしています。何の心当たりもないのですが……ま、えやろ。とりあえず挨拶しましょう。ゆうかすぅ^~(気さくな挨拶)

 

「こんにちは、待ってたよ。さぁ座って座って」

「……」

 

 侑ちゃんに促されるままレジャーシートに座ります。ところで歩夢ちゃんはいつまで目を逸らしているのでしょうか。何があったのか教えてくれないとこちらも何もできませんよ。

 

「歩夢、もと君に言いたいことあったんでしょ?」

「……うん」

 

 ようやく歩夢ちゃんがこちらに顔を向けてくれました。今日も最高に可愛いですね、高2だけに。毎朝インスタント味噌汁作って♡

 

「もと君、昨日は怒っちゃってごめんね」

 

 はえ? 昨日? 何か怒られるようなことありましたっけ?

 

「へ……? お、覚えてないの?」

 

 (覚えて)ないです。これは歩夢ちゃんのためを想ってとか、ほも君だけが忘れてたとかそういうのではなく、プレイ当時の私は普通に何があったか忘れていました。記憶力が悪くて悲しいねカナータ。

 というわけで歩夢ちゃんは何も気にしなくてもいいですよ。説明してもらってもふーんとしか言えなさそうですし、タイムも伸びてしまいますし。

 

「う、うん……すっきりはしないけど、もと君がそう言うなら」

 

 そんなことよりそろそろいい時間ですし腹減んないすか?

 

「そうだね。私もお腹ペコペコー」

 

 そういえばまだ侑ちゃん達の昼食が並んでいませんね。まだ食べ始めてなかったのですか?

 

「うん、もと君が来てから3人で一緒に食べようねって。今日は3人で同じお弁当を食べる予定だったし」

 

 はぇ~3人で食べるお弁当とかそいつすげぇ巨大だぜ?

 

「そうだよ。はい、お弁当。3人で仲良く食べようね」

 

 はぇ~すっごい大きい……。どれもこれも美味しそうですね。特にこの卵焼きなんて見ているだけでよだれがドバーッと溢れてきてしまいます。

 

「そうでしょそうでしょ! 朝から歩夢が頑張って作ったんだよ。もと君が美味しいって喜んでくれますように、って」

「侑ちゃん! なんで言っちゃうの!?」

「いいじゃん、ほんとのことなんだからさ。料理中ニコニコしながら言ってたじゃん」

「そうだけどぉ……でももと君に知られるのは恥ずかしいの!」

 

 歩夢ちゃんは顔を真っ赤にして侑ちゃんに詰め寄っています。そんな恥ずかしくなるほど愛情込めて作ってくれたんですね~。

 

「も、もちろん愛情は込めたよ? でも仲直りしたい気持ちの方が……」

 

 はて、仲直り? ほも君と歩夢ちゃんは喧嘩でもしてたのでしょうか?

 

「えっと……まぁそんな感じ、かな?」

 

 あの歩夢ちゃんと喧嘩するなんてほも君は一体何をしでかしたのでしょう。数分前に起きたイベントのことのはずなのに本当に何も覚えていません。ここまで記憶力が悪いとチャートをちゃーんと覚えているかも怪しくなってきましたね。こんなんじゃRTAになんないよ~(棒読み)

 

「歩夢、昨日あの後ずっとうんうん唸ってたんだよ。もと君に怒っちゃったーって」

 

 歩夢ちゃんらしいですね。

 

「だってあの時もと君すごく悲しそうな顔してたし……それにもと君と侑ちゃんがどういう恋愛をしようと、それは2人の自由だもんね」

「へっ?」

 

 おっと、歩夢ちゃんがいきなり爆弾発言をしてきましたね。歩夢ちゃんはほも君と侑ちゃんは恋愛関係にあると思っているようです、まぁ半分正解といったところですね。いずれ恋愛関係になってほも君と付き合ってもらうことになりますから。まぁあくまでもそれは未来の話であって、今の関係はTDN先輩後輩、部活仲間でしかありませんからね。侑ちゃんがフリーズしてしまうのも無理はありません。

 

「えっと……もしかして違った?」

「……もぉ歩夢ってば、私達がそんな関係なわけないでしょ?」

 

 ここで照れてくれないあたり、まだまだ親密度が足りていませんね。まぁ侑ちゃんに関してはここから稼ぎポイントがいっぱいあるので無問題ラ!

 

「えーそうかなー。昨日のアレを見たらそうにしか見えないけど……」

 

 昨日の……ああ。そういえば侑ちゃんにキスマークをつけてあげたんでしたね。そして侑ちゃんがほも君にキスマークを作ろうとして歩夢ちゃんに怒られたんでした。たった今全てを思い出しました。が、このことは歩夢ちゃんには黙っておきます。変に会話が増えちゃうからね、しょうがないね。

 

「だってなんだかときめいちゃったんだもん」

 

 ときめいちゃったならしょうがないね。だって侑ちゃんですから。

 

「ときめいたって……もと君以外と変なことしてないよね?」

「だいじょーぶ、男の子の友達なんてもと君とクラスの友達しかいないから!」

「そうじゃなくてぇ……そのクラスの子達とは何もないの?」

「そんなに心配しなくても大丈夫だって。私なんかをそういう目で見る人なんていないから」

 

 ここに1人いるだルルォ!? 歩夢ちゃんも微妙な顔をして口をモニョモニョさせています。侑ちゃんの自分の魅力に気づいていないところ、嫌いじゃないけど好きじゃないよ。

 

「それにもと君以外の男の子にときめくことってないんだよねー。なんでなんだろう」

もしかして無自覚……?」

 

 (まだそもそも恋愛感情を持ってくれて)ないです。(だから無自覚でも)ないです。無自覚エチチボディーではありますがね。

 

「そういう歩夢はどうなの? 最近お昼を作ってあげたりいろいろしてるよね」

 

 おっ、どうやら歩夢ちゃんの親密度も確認できそうです。侑ちゃんやめろォ(建前) ナイスゥ(本音)

 

「私は……うーん、もちろんもと君のことは大好きだけど、恋愛というよりは守ってあげたい、かな。もと君のことを知ったらなんだか守ってあげたくて……」

 

 まぁ確かにほも君は柔らかだから誰かが守ってあげなくちゃいけませんからね。でも1、2時間後には今とは比べ物にならないくらいムキムキになってるから見てろよ見てろよ~。

 

まさか歩夢無自覚なんじゃ……」

 

 しずくちゃんの明らかなほも君への好意に気づかない侑ちゃんが、無自覚な好意に気づけるわけないだルルォ!? ですがこれは私からしても判断が難しいですね。まだ親密度が足りていないようにも見えますが、無自覚な好意から守ってあげたいという感情がくることが歩夢ちゃんの場合稀によくあるので。りなりー、親密度スカウター作って♡

 あと非常に今更ですが、2人ともほも君の目の前でそんな話するんですね。美少女2人が自分に好意を持ってくれてるかも……なんて刺激が強すぎると思うんですけど(名推理) ほも君がノンケだったら危なかった……。

 

「そういえば、侑ちゃん何かもと君に渡したいものあったんじゃないの?」

「あぁそうだった!」

 

 渡したいもの……? カバンをガサガサと漁っていますが、もしかして侑ちゃんのイケナイ写真でしょうか? でもそれはすでに私の写真フォルダに数えきれないほどあるんですよねぇ。でもあの侑ちゃんがイケナイ写真を渡してくれるというシチュエーションそのものが素晴らしいのでもちろん受け取ります。勇気を振り絞って渡したのに、それを受け取ってもらえなくて放心する侑ちゃんも見てみたいけどな―俺もな―。

 

「はいこれ。頑張って書いたからちゃんと読んでね」

 

 丁寧に折りたたまれた紙が渡されました。頑張って書いた……もしかしてラブレター!? 歩夢ちゃんの前で告白するのはまずいですよ!

 

「まぁまぁ、見たらわかるよ」

 

 では見せてもらいましょうか、侑ちゃんの想いの全て……ん? 紙には日付とんにゃぴな文字列が並んでいますね。日付は今日から始まって、そこから明日明後日を飛ばしてそれ以降毎日書かれています。これは一体……デートの計画書でしょうか。毎日デートとは束縛が厳しすぎんよ~。

 

「ふふっ、それはね、『目指せ! 作曲家への最短ルート!』の予定表だよ!」

 

 はぇ~そんな予定表あるんすね~。このんにゃぴな文字列達は全部作曲に関連することなんですかね。よくわかんないです。

 

「もしかしてもと君作曲するの?」

 

 そうだよ(便乗)

 

「作曲経験は?」

 

 ないです。当たり前だよなぁ?

 

「もしかして1から勉強するの!? ちょ、ちょっとその予定表見せて!」

 

 あっ、いいっすよ(快諾) 歩夢ちゃんは書いてある内容わかるんですか?

 

「私もわからないけど……これ、3週間後に1曲完成って……相当過密スケジュールだよ!?」

 

 ファッ!? 作曲の勉強を始めてから3週間で曲完成ですか!? こ無ゾ……。

 

「こんな過密スケジュールな本信じても大丈夫なの……?」

「本? ……ああ、この予定は私が考えたやつだよ」

 

 はぇ~わざわざほも君のために予定まで立ててくれたんですね。ありがとナス!

 

「かすみちゃんに曲を作ってあげたいって昨日もと君から連絡が来たから、急いで予定を立てたんだ。ほんとに急ぎだったから大雑把な予定になっちゃったけどね」

 

 作曲の勉強なんてしたことないから大雑把って言われても何もわからないゾ……。

 

「これって侑ちゃんがもと君に作曲に必要なことを教えるってことだよね。その合間にかすみちゃん以外の8人分作曲しないといけないんでしょ? そんなの侑ちゃんの体がもたないよ……」

 

 このゲームのヒロイン達はマジで体が丈夫ですし、一番酷くても風邪くらいにしかならないので無問題ラ!(人間の屑)

 

「だいじょーぶ、頑張ってなんとかするから!」

「なんとかって……」

「それにね、私はもと君の挑戦を応援してあげたいんだ。もちろん作曲はそう簡単じゃないし、正直0から始めて3週間で完成ってスケジュールも相当厳しいと思う。もしかしたら予定通りに勉強が進まずに、無理だと判断して私がかすみちゃんの分も作曲するかもしれない。でもやってみたいっていうその気持ちが大きな原動力になると思うんだ。その原動力があれば不可能も可能にしちゃうかもしれない……だからできる限りのことをやってあげたいんだ。私はもと君の力と気持ちを信じてるからね」

 

 あ^~侑ちゃんにいっぱい信じてもらえてウレシイ……ウレシイ……。私も侑ちゃんが堕ちてくれると信じていますよ。

 

「……そっか。うん、そこまで言われたら2人を応援しないとね。だって私は侑ちゃんのことももと君のことも信じてるもん」

「歩夢……」

「ねぇもと君、覚えてる?」

 

 はえ? 歩夢ちゃんとは幼馴染じゃないうえ、マウントを取る相手すらいないのに急に幼馴染マウントが始まってしまいました。何だこれ、バグでしょうか?

 

「前にやった勉強会の時のこと」

 

 ああ、そのことですか。どうやら幼馴染マウントではなかったみたいですね。でもそれはそれで何の関係が?

 

「最初はもと君応用問題が全然できなかったのに、わかるまで考えて、それでもわからないところは納得するまで私に聞いて、何度も何度も挑戦して、それで勉強会が終わった時には自力で解けるようになったよね。だから大丈夫だよ。苦手な勉強を頑張れたもと君だから、ほんとにやりたいことなんてあっという間にできるようになっちゃうよ!」

 

 えへへ、歩夢ちゃんに頭を撫でられながら褒められてしまいました。これは力が湧いてきますね。よーし、ほも君頑張って1日50曲作っちゃうぞー!

 

「それに、侑ちゃんっていうすっごい先生がついてるもんね」

「そう言われると俄然やる気になっちゃうなー」

「ふふっ、期待してるからね」

 

 あら^~ゆうぽむいいゾ~コレ。今日の2人はかなり濃厚ですねぇ。おかげでほも君が入り込む隙間がほとんどなく、思ったように親密度が稼げません。でもいいゆうぽむが見られてるからヨシッ!

 

「私も2人のこと手伝うね。音楽を教えることはできないけど、休憩用にお菓子作ったり、身の回りのお世話したり、部活の準備とかも私がやるし……とにかく2人がそっちに集中できるよう頑張るから!」

 

 ん? 今身の回りのお世話してくれるって言ったよね? じゃあ下のお世話もしてもらいましょうか。侑ちゃんとワンツーマンの指導(意味深)とか絶対興奮しちゃいますからね。興奮を抑えたまま勉強なんてできるわけないからね、しょうがないね。

 

「うん、ありがとね歩夢。でも部活の準備は私達もやるよ。だって私達はマネージャーだからね。ね、もと君?」

 

 そうだよ(建前) 本音を言えば作曲の勉強に集中したいのですが、侑ちゃんがやると言った以上断れば侑ちゃんの親密度が下がってしまいそうなので、大人しくマネージャーの仕事も兼任しましょう。

 

「そっか。まぁ侑ちゃんならそう言うと思ったけどね」

「さっすが歩夢~、伊達に幼馴染やってないね~」

「もちろん、侑ちゃんのことは誰よりも知ってるつもりだよ」

「私も歩夢のことは世界一知ってるからね」

「もうっ、侑ちゃんたら……」

 

 あら^~ゆうぽ(以下略)

 

「でも2人とも無理しすぎて体壊しちゃダメだよ? 倒れたら悲しむ人がたくさんいるんだから」

「それはもちろん気をつけるよ」

 

 ほも君は倒れるギリギリまで働いてもらいます(即答) 最悪倒れても翌日以降への影響が小さければ続行、入院など影響が大きければリセットすればいいだけですからね。

 

「ごちそうさまでした。はぁ~美味しかったぁ」

 

 歩夢ちゃんが作ってくれたお弁当を食べ終わりました。もぐもぐしてるシーンなんてなかったんですが、いつ食べてたんですかねぇ。

 ところで侑ちゃんは昨日言ってた音楽の教科書持ってきてくれましたか?

 

「うん、ちゃんと持ってきたよ。今は教室に置いてきてるけど。放課後部活の時に渡すね」

 

 この場に持ってくるには少し邪魔だったのでしょうか。何冊あるのかは知りませんが、1冊がよくある教科書くらいの大きさだと仮定して、それが5冊くらいあるとしたら相当邪魔になりますからね。教科書がデカすぎるッピ! ですができればこの場で渡してほしかったですねぇ。そうすれば午後の授業中に読めましたから。栞子ちゃん? 何故かほも君に甘々だし許してくれるでしょ。

 

「そう言うと思ったから置いてきたんだよ。授業はちゃんと聞かないとダメ。じゃないとまたついていけなくなるよ?」

 

 なるほど、侑ちゃんに読まれていたわけですか……これは侑ちゃんが一枚上手でしたね。そんな侑ちゃんにはほも君検定114514級を差し上げましょう。

 

「ふふっ、ありがと。もらったからには2級目指さないとね」

 

 ここでさらに上を目指そうとしてくれる侑ちゃん好き、ほも君の名前と侑ちゃん含めた同好会メンバー全員の名前を書いた婚姻届出して。

 

「他にその検定持ってる子いるの?」

 

 この資格の保有者はりなりーと侑ちゃんだけですね。りなりーはなんと1級資格の保有者です。もうすぐ810段に昇格します。

 

「1級!? すごーい!」

「璃奈ちゃん幼馴染だもんね」

「私達の知らないもと君をいっぱい知ってるんだろうなー」

「ねぇねぇ、子供の頃のもと君ってどんな感じの子だったの?」

 

 んにゃぴ……よく覚えてないです。

 

「ふーん、そっか。じゃあ璃奈ちゃんとはいつ会ったの?」

 

 そうですねぇ……あれは今から114514秒前の話、幼稚園の時に1人でラーメンなハゲを読んでたほも君にりなりーが話しかけてくれたのが始まり……らしいです。

 

「その時からずっと一緒なんだ」

 

 そうだよ(便乗) 小学校中学校とずっと一緒ですね。高校は学科が違うので何とも言い難いですが。

 

「もと君は逆に璃奈ちゃん検定持ってるの?」

 

 バッチェ持ってますよ。当然364364段保持者です。りなりーのあーんなところやそーんなところまで知ってますからね。

 

「じゃあじゃあ……あ、もうこんな時間……」

「楽しい時間はあっという間に過ぎちゃうね」

 

 予鈴が鳴ってしまいました。あ~今日もお昼休み楽しかったな~、早く帰ってしおしおしなきゃ。

 

「よいしょっと。ありがとね、もと君。今日はすっごい楽しかったよ」

「また部活でね。……授業はちゃんと聞かないとダメだよ」

 

 最後の最後で歩夢ちゃんに釘を刺されてしまいました。教科書がない以上もともとする気なんてありませんでしたが。……こうやって釘を刺されるとやりたくなっちゃうんですよねぇ。栞子ちゃんはなんだかショパンが引けそうな気がしますし、栞子ちゃんに教えてもらいましょう。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




以下、アニガサキの感想です(定期)





皆様、アニガサキ2期3話はいかがでしたか? 私はENJOY ITしました。

・かすみんの寝相
悪い、悪くない? ファンの皆の前なのにおへそ丸見えですよ。

・ベンチに体育座りするエマちゃん
ベンチに 靴をのせちゃ ダメだよ

・「諦めるのはまだ早い。あと一週間ある」
1期6話にてライブの準備をして、MCも歌もダンスもいっぱい練習して、いっぱい悩んで、ライブ前日に皆に助けてもらって、オートエモーションコンバート璃奈ちゃんボードの設計から開発までをやった璃奈ちゃんだからこそ言える言葉ですね。
この直前のシーンの顎に手をやる璃奈ちゃん可愛い、可愛くない?
ところでオートエモーションコンバート璃奈ちゃんボードの原理は……?

・「自分のやりたいことを発表し合うのは……どうかな?」
ボードをつけてる時とつけてない時でちゃんと声が変わってるのすごくこだわっててよき。

・果林ちゃん
2期が始まってから毎話弱点を晒されてるのウ、ウケますよ……。ところで愛ちゃんのモーニングコールでちゃんと7時に起きられたんですかね?

・小悪魔衣装のかすみん
かわヨ。

・ロリみん
本作のロリライブ。前髪切りすぎてふてくされてるのかわヨ。ナウみんの前髪も整えてあげたい。

・副会長
がっつりスクールアイドルにハマってますね……。最押しがすぐそばにいますよ(ニッコリ)

・栞子ちゃん
アニメのどのシーン切り取っても栞子ちゃん可愛い、可愛くない?

・適正
栞子ちゃんスクールアイドルに対して何かしらのクソデカ感情を持ってそうで草も生えません……。栞子ちゃんにもスクールアイドルの適性がありますよ。歌って踊って奪い合って♡

・ランしお
あら^~ちゃんと幼馴染してていいゾ~コレ。1話の栞子ちゃんのあの無表情は何だったんだ……。私もランジュちゃんのゲリラライブ参戦したいゾ……。

・彼方ちゃんのライブ案
?「枕がデカすぎます!」

・「晩ご飯ができましたよー」
仕事終わりに遥ちゃんの晩ご飯が食べたい、食べたくない?

・近江ママ
本作のママライブ。

・「やりますねぇ!」
ファッ!? まずいですよ! 何故かすみんにやらせた! 言え!
全ての元凶を改めて聞いたら、イントネーションも大体同じで草生えますよ。ニコニコもコメ占領されてましたね……。

・はんぺんを追いかけるミアちゃん
猫じゃらしまで持っちゃってぇ……完全にときめいてますねクォレハ……。

・果林ちゃんが迷う
果 林 ち ゃ ん が 迷 う
唐突にぶっこまれて草生えますよ。

・9人のカットイン
急すぎて草生えますよ。戦闘アニメかな?

・「え゛っ」
今まで聞いたことない歩夢ちゃんの声で草生えますよ。中の人染み出てませんかね……演技力が高すぎるッピ!

・クッキーもぐもぐかすみん
クッキーが口の中に入っていく過程が作画で全部書かれてるのヤバすぎ。

・彼方ちゃんのパジャマ
遥ちゃんの前だたきちんと着てて、それ以外だと急にだらしなくなるの好き。

・「QU4RTZです!」
まさかアニメでこの名前を聞ける日が来るなんて……!

・ENJOY IT!
まず背景の完成度が高すぎるッピ! エンコ殺しすぎるッピ!
開幕のエマちゃんの歌声が好きすぎ。哀温ノ詩もだけど、中の人の歌唱力がすごすぎる。早く現地で聞きたいぞい。
かすみんの1枚絵、スクスタでは『LOVE KSMN』だったのが、アニガサキだと『LOVE KKER』になってそうなの好き。Twitterで見て初めて気がつきました……。
チェスりなりー可愛いし強者オーラすごいしで最強。早く私の下にも来てくれ……。
着物彼方ちゃん、彼方ちゃんメインの絵なのに、後ろのポッケに手を入れたりなりーばかりに目がいってしまう……。
サビ前のクラップが心地いいですね。現地でやりたい……。
ところで背景の完成度がマジで高すぎると思うんですけど……

・マイネットくん
アニメ放送後にライブで登場したスクスタ衣装一覧を投稿してくれるのマジで有能f有能すぎ。中の人絶対ラブライバーでしょ。新体制になってからすっごいいい方向に向かってますね。

・ランジュちゃん
ここで加入かと視聴前は思ってました……。この子も何かしらのクソデカ感情を持ち合わせてますね……。

・ED
ここほんと天才。ここであえてネオスカを持ってくるのがほんとに天才すぎる。いい最終回でしたね。3期お待ちしてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part40/n

良いキーボードを買ったらモチベーションが高くなって執筆速度爆上げでした。そのおかげで今回は久し振りに長めです。


例によって後書きは4話感想回なので、未視聴の方はネタバレ注意です。


 (後で考えておく)RTA、はーじまーるよー。

 

 前回はゆうぽむコンビとのお昼休みを謳歌しました。今回はその続きからで、教室に戻って午後の授業の準備をしましょう。

 

「元樹さん遅いですよ。早く着替えないと次の授業が始まってしまいます」

 

 着替える? なんで着替える必要なんかあるんですか?

 

「もう、寝ぼけているのですか? 次は体育ですよ。担当の先生の事情により来週の体育が今日に変更になったと昨日のHRでおっしゃっていたじゃないですか」

 

 はぇ~そんなこと言ってたんですね~。全く聞いていませんでした。今更ですが栞子ちゃんも学校指定のジャージを着てますもんね。慎ましやかな胸のふくらみと体のラインがはっきりわかんだね。

 

「はぁ……まぁそうだろうとは昨日から思っていましたが。なんだかずっと上の空でしたからね。念のため直接伝えてあげようかと思っていたのですが、HRが終わった途端そそくさと出ていってしまいましたし……」

 

 果林さんとの約束がありましたからね。ゆっくり行くと果林さんが勝手にほも君のことを探し始めて迷子になってしまいそうでしたしお寿司。それにそういうことであればメッセージなどで連絡をくれればよかったのでは?

 

「もちろんそうしようと思っていました! 思っていたのですが……その、私に見向きもしてくれなかったので……」

 

 それでほも君にちょっと仕返ししたくなったんですか?

 

「仕返しというと少し語弊がありますが……まぁ、そうですね。もちろんそれがいけないことだとはわかってはいたのですが……いえ、ちょっと待ってください。もとはと言えば話を聞いていなかった元樹さんが悪いのでは?」

 

 おっと痛いところ突かれてしまいましたね。でもそれを言うのならこちらにも言い分がありますよ。ほも君のことをしっかりと管理するのが栞子ちゃんの役目ではないんですか?

 

「違います。元樹さんのことはちゃんと元樹さん自身で管理してください」

 

 そんな、酷い……。私は栞子ちゃんの全てを管理したいと思っているのに、栞子ちゃんはほも君のことを管理したいと思ってくれないんですね……。失望しました、聞き分け良い子だった自分やめます。

 

「ですが……その、将来……私と結婚してくれるのであれば……元樹さんのことも管理してあげても……」

 

 ん? 今なんて言いました? 私と結婚してくれるのであればという部分がよく聞こえなかったのでもう一度言ってください。

 

「い、いえ! 何でもないですから……」

 

 そうですか……まぁ今告白イベが発生されても困りますからね。ほも君が誰かと付き合うまで栞子ちゃんには大好きを抑えてもらわなければなりません。

 

「そんなことよりも、元樹さんも早く着替えてください。授業に遅れてしまいますよ?」

 

 そういう栞子ちゃんこそつまでほも君と話しているんでしょうか。普通に遅刻しちゃうと思うんですけど(名推理)

 

「1人だと元樹さんが寂しがるかと思ったので、私でよければ着替える間話し相手になってあげようかと。それに元樹さんがちゃんと着替えてくれれば私も元樹さんも遅刻せずに済みますよ」

 

 それもそうですね。ですが生憎ほも君はジャージを持ってきていないのです。体育があるなんてこと知らなかったからね、しょうがないね。

 

「ご安心ください。そうなることを予想して、私が予備の分を持ってきていますから」

 

 はえ? それはつまり栞子ちゃんの使用済みジャージということですか?

 

「安心してください。使用済みと言ってもちゃんと洗濯してあるものなので」

 

 ナイスゥ(建前) やめろォ(本音) 折角着るのであれば栞子ちゃんの汗がたっぷりと染み込んだジャージが着たかったです(小声)

 

「さぁさぁ早くこれに着替えてください。後ろを向いておきますから、私のことは何も気にしないでいいですよ」

 

 そんなこと言ってこっそりと振り返ってほも君のお着替えシーンを堪能するつもりなんじゃないですかぁ?

 

「……そんなことないですよ」

 

 今の間は何なんですかねぇ……。栞子ちゃん? ほも君の体は見せ物でもないし、そんな無暗に触ることは許されないんDA!

 まぁいいでしょう。遅刻して学内での栞子ちゃんの評価が下がるのは嫌ですし、ほも君もちゃっちゃと着替えてしまいましょう。見たけりゃ見せてやるラ!(自信過剰) まぁ着替えたところで何の意味もないんですけどね。

 

「……まさかとは思いますが、サボるつもりではありませんよね。もし本当にそのつもりであるのなら、元樹さんを引きずってでも授業に参加してもらいますから。元樹さんに力負けするとは思えませんし」

 

 現状の筋力だと誰が相手でも簡単にわからせられちゃうの悲しいなぁ……。心配しなくてもサボるつもりはありませんよ。当然授業には出席します。でも足を怪我しているので運動ができないんですよ。

 

「えっ!? だ、大丈夫なんですか!?」

 

 大丈夫だって安心しろよ~。ただ捻っただけですし、それに今日中に治るはずですしね。

 

「今もちゃんと歩けているようですし、酷い状態ではないというのはわかりますが……それでもやはり心配です」

 

 栞子ちゃんは優しいですね。他人を思いやれるところ嫌いじゃないしむしろちゅっちゅちゅきちゅきらぶらぶりんですよ(ユニット違い)

 

「では元樹さんの足に負担がかからないようゆっくりと向かいましょうか。痛んだり辛くなったりしたらすぐに言ってくださいね。肩を貸してあげますから」

 

 栞子ちゃんはほも君と一緒に行くつもりなのですか? 栞子ちゃんまで遅刻してしまいますよ。

 

「別に構いませんよ。2人一緒の方が先生もすぐに納得してくれるでしょうし、それに今の元樹さんを放って一人で行くなんてこと私にはできません」

 

 ちゃんとほも君のことを考えてくれてるんですね~。栞子ちゃんにはほも君と一生を添い遂げる適性があります。早く付き合ってキャッキャウフフしたいです。りなりー、浮気しても栞子ちゃんが許してくれる薬出して。

 

 

 

「ふぅ、ギリギリ間に合いましたね」

 

 栞子ちゃんの言う通り授業開始1分前です。ほも君が走れないからね、しょうがないね。まぁ足の状態が万全だったとしても、廊下を走るのは栞子ちゃんが許してくれないので、どちらにしてもギリギリになりますけどね。

 それにしてもなんだか人が多くないすか? 明らかにほも君のクラスメイトの人数より多いと思うんですけど(名推理)

 

「それも昨日先生がおっしゃってましたよ。元樹さんには何のことだかわからないでしょうけど」

 

 わ、わかんないっピ……。じゃけん教えてくれよな~。

 

「今日は他クラスとの合同での授業なんですよ。確か……2年の情報処理学科だったと思います。詳しいクラスは……すみません、私も忘れてしまいました……」

 

 2年、情報処理学科……あっ、ふーん(察し)

 

「クラスの男子の方達が喜んでいましたよ。聞いた話によるとそのクラスにはとても美人な方がいるらしく、その方は校内での人気もすごく高いようです」

 

 そう……(無関心) よくわかりませんが、なんだか金髪のギャルっぽい見た目で、でも誰にでも優しくて、運動も勉強もできて、可愛くて、頼りになって、時折見える弱いところが可愛くて、スタイルが抜群によくて、楽しいの天才で、新人スクールアイドルとして頑張って練習していそうな人ですね。念のために聞いておきますが、その方の名前は何と言うんですか?

 

「すみません、それも聞いてなくて……」

 

 はーつっかえ。やめたらRTA。

 

「……あ、もう授業が始まってしまいますね。整列しないといけないので私はこれで。……あの、私の頑張るところ、ちゃんと見ていてくださいね?」

 

 どうしよっかなー。

 

「ふふっ、そんなこと言いながらもちゃん見てくれること、私は知っていますよ」

 

 栞子ちゃんもほも君の理解度が高いですね。よろしい、栞子ちゃんにもほも君検定405級を差し上げましょう。これからも精進してくださいね。

 栞子ちゃんは整列してしまいましたし、ほも君はグラウンドの端の方に座って授業を受ける人達を眺めましょう。栞子ちゃんはよそ見せず真面目に先生の話を聞いています。えらいですね。では今度は2年情報処理学科の人達を観察しましょう。私の予想が正しければあの人がいるはずです。

 

「……

 

 見つけました。DiverDivaのえっちな方こと愛さんです。2年の情報処理学科と聞いた時点で予想はしていましたが、まさか本当に愛さんがいるなんて……。困りました。非常に困りました。ほも君のクラスと愛さんのクラスが合同で体育をするということ、それはつまり愛さんと栞子ちゃんが接触する可能性が高いということです。本来このタイミングで栞子ちゃんが同好会メンバーと接触しないので完全なイレギュラーです。後々にどんな影響を及ぼすか計り知れません。やめてくれよ……。まぁそれはりなりー達もですけど。1年生ズはほも君の知らないところで栞子ちゃんとガッツリ接触していますからね。やめてくれよ……。

 

も、と、き

 

 愛さんはこちらに小さく手を振りながら、口パクでほも君のことを呼んでいます。口を小さく動かしているのが可愛いです。こちらも手を振り返してあげましょう。栞子ちゃんに見られたらかなりまずい行為ですが、真面目な栞子ちゃんは先生の話に集中しているのでこちらに気づくことはありません。今の言い方だと愛さんが真面目じゃないみたいな言い方になってしまいますが、愛さんも真面目な生徒なのでご安心。

 

「あはは、すみませーん」

 

 おっと、先生にバレて怒られてしまったようです。ほも君の方はバレなかったので怒られませんでした。ごめんね愛さん。ペロっと小さく舌を出して、怒られちゃったとでも言いたげにこちらを見てきます。怒られたというのになんだか楽しそうですね。もしかしてM……?

 

「あっはっはー、先生に怒られちゃったよー」

 

 先生の長くて退屈な話が終わったのか愛さんがこちらに来ました。ランニングとか、なさらないんですか?

 

「ランニング? それならもう終わったよ」

 

 さすが愛さんですね。グラウンドの方を見るとまだ多くの人が走っています。すでに終えている人は愛さん含めほんの一握りのようです。栞子ちゃんもぜぇぜぇ言いながら走っていますね。

 

「それにしてもビックリしたよ。今日は合同で体育とは聞いてたけど、まさかそれが元樹のクラスとだなんてさー」

 

 ええ、本当にビックリですよ。こちらとしては愛さんと栞子ちゃんが接触しないことを祈るばかりです。せめて体育に参加できていれば栞子ちゃんにずっと張り付いたりして接触する可能性を減らせたかもしれないのですがねぇ……。

 

「元樹にいっぱいかっこいいところ見せないとね。よーし! 愛さん張り切っちゃうぞー!」

 

 愛さんが本気を出したらほとんどの人が勝てなくなっちゃうと思うんですけど(名推理) ところで今日の体育では何をやるんですか?

 

「今日はテニスだよ」

 

 なるほど。愛さんと栞子ちゃんは〇ニスで遊ぶということですね。

 

「元樹はテニスしたことある?」

 

 (このゲームでは)ないです。リアルではありますねぇ! といっても体育でですけどね。RTAと動画編集以外に使う時間なんてないのです。

 

「テニスはすっごく楽しいよ! アタシが教えてあげるから、今度一緒にやろうね」

 

 いいよ! こいよ! スピンかけてスピン! まぁ今のほも君の持久力だとすぐにダウンしてしまうんですけどね。

 

「あ、そうだ。足の調子はどう? だいぶ良くなった?」

 

 はい、バッチェ回復しましたよ。明日には治りますね。

 

「よかったぁ……。実は明日のことちょっと迷ってるんだよね」

 

 明日といえば待ちに待った愛さんとのお出かけの日ですね。何を迷っているんですか?

 

「んーとね、運動するかどうか」

 

 はえ? もともと運動するという目的でお出かけするんじゃなかったんですか?

 

「そうだけど、元樹が足怪我しちゃったし……」

 

 明日には完治しますよ?

 

「でも治ってすぐに運動ってあんましよくないじゃん? だから……」

 

 やだ! 小生やだ! 愛さんとお出かけしたい! 愛さんの親密度稼ぎしたい! だからお出かけやめるなんて言わないで! お願い、何でもしますから!

 

「そんなに慌てなくて大丈夫だよ。運動するのをやめるだけで、お出かけまでやめるつもりなんてないから!」

 

 やったぜ。これで心置きなく愛さんの親密度稼ぎができます。このお出かけチャンスを逃していた場合もしかしたらリセットしていたかもしれません。いい感じに進んでいたのにいいところでロスが発生すると意外と精神ダメージが大きいですからね。

 

「愛さんも元樹とお出かけして、お互いのこともっと知りたいもん。これから一緒に同好会で頑張っていく仲間だもんね」

 

 愛さんに限った話ではありませんが、ヒロイン達と付き合うためには当然仲良くなる必要があります。そのためにはお互いのことを知るのが一番です。なので趣味などを聞かれたらちゃんと答えましょう。むしろ自分からその話を切り出していくくらいの気持ちでもいいです。もちろんタイミングを考える必要はありますが。

 それから相手から質問されるだけでなく、ほも君の方からも積極的に相手に質問していきましょう。趣味とか家族のことなど簡単な話題で大丈夫です。じゃあまず年齢を教えてくれるかな。

 

「実はアタシの実家がもんじゃ焼き屋さんなんだけど、もしよかったら明日遊びに来ない? 愛さんが美味しいもんじゃをお腹いっぱいご馳走してあげる!」

 

 いきなりお家デートはまずいですよ! ……と思いましたが今更でしたね。会って1週間足らずの歩夢ちゃんを自宅に連れ込んでますからね。りなりーに見つかったらやべぇよ……やべぇよ……。

 

「もんじゃ好き?」

 

 うん、大好きSA!

 

「よかった。うちのもんじゃは他とはひと味違うから期待してもいいよ。……そうだ、一昨日話したぬか漬けも一緒に出してあげるね」

 

 ぬか漬け……? なんのこったよ(素)

 

「え~、もしかして忘れちゃった?」

 

 そうだよ(便乗) そもそも一昨日はランニングの時以外愛さんと話してない気が……。

 

「……もしかして元樹ってちょっと忘れっぽい?」

 

 そ、そうだよ(震え声)

 

「アタシとの約束は忘れてもいいけどさ、りなりーとの約束は絶対忘れたらダメだからね。りなりーに嫌われちゃうよ?」

 

 りなりーに嫌われたらリセットするので無問題ラ! まぁ本当に嫌われちゃった時は仲直りしてからリセットするんですけどね。嫌われたまま終わり! 閉廷! するのは精神的にしんどい、しんどくない?

 

「さてと、愛さんそろそろ行ってくるね。元樹も楽しそうだからってテニスしちゃダメだよ?」

 

 はじめっからする気ないので大丈夫ですよ。笑顔で手を振って愛さんを見送ってあげましょう。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 愛さんと入れ替わりで今度はランニング終わりの栞子ちゃんがやってきました。スタミナ切れのようでぜぇはぁ言っています。コーラ飲みますか?

 

「今の方……宮下愛さん、ですよね?」

 

 どうやら愛さんとお話ししているところを見られていたようです。それどころか愛さんのことも知っているようですね。まずいですね……これはまずい……。なんとかして誤魔化しましょう。知っているのかしお電!?

 

「しお電……? えっと、宮下さんのことは知っていますよ。あくまでも一方的にですが。虹ヶ咲では有名人ですからね」

 

 へーそうなんだー(すっとぼけ)

 

「どの部活動にも所属せず、それなのに多くの運動部に助っ人として参加して、強豪校相手の練習試合でもその部を勝利に導く……そのことから『部室棟のヒーロー』と呼ばれているようです」

 

 そうなんだー(適当) 栞子ちゃんは愛さんの容姿も知ってたんですね。

 

「少し前にたまたま宮下さんが参加していたバスケットボールの試合を見る機会があったので。……ところで、そんな宮下さんと元樹さんは何を話していたのですか?」

 

 おっと詰めてきましたね。視線が鋭いです。しおにゃんやめちくり~。

 

「運動部に所属しておらず、学科も違う元樹さんと宮下さんは何の接点もないと思うのですが?」

 

 ヒェッ……た、ただほも君の心配をしてくれただけですよ。ほら、ほも君だけ見学じゃないですか。怪我でもしてるのかなーと心配して話しかけてくれました。

 

「そうだったんですか。確かに宮下さんはすごく優しそうでしたが、見ず知らずの元樹さんまで心配してくれるとは思いませんでした」

 

 だって見ず知らずじゃないですもん(小声)

 

「それにしては少し親しげだった気もしなくはないですが」

 

 それは君の錯覚だよ(震え声)

 

「……まぁいいでしょう。何度も言いますが元樹さんの交友関係に口出しをするつもりはありませんので。秘密にされてしまうのは悲しいですが……」

 

 ごめんね栞子ちゃん……私も栞子ちゃんに嫌がらせをしたくて秘密にしてるわけではないんですよ? 浮気も認めてくれないし、スクールアイドルに対してクソデカ感情を持ってる栞子ちゃんが悪いんですよ?

 

「さて、私もそろそろ行きますね」

 

 どうやら栞子ちゃんも行ってしまうようです。これでほも君1人です。寂しくなっちゃいますね。1人でお祈りしていましょう。

 

「……宮下さんに勝負を挑んできます」

 

 なんで?(困惑) なんで?(威圧) なんですぐほも君が困ることをしちゃうんですか? ほも君のことが好きなんじゃないんですか? それに栞子ちゃんのクソザコ体力(ブーメラン)じゃ勝ち目はないと思うんですけど(名推理)

 

「確かにそうかもしれません。ですが、女の子には時に負けられない、逃げられない戦いというものがあるんです。私にとってのそれは、まさしく今この瞬間なんです!」

 

 えぇ……(困惑) 妙にかっこいい言い回しですが、君すでにせつ菜ちゃんに染められてない?

 

「それではいってきます!」

 

 あー……栞子ちゃんが愛さんのところへ行ってしまいました。これはもうダメみたいですね(諦観) 大人しくグラウンドの端から2人を見守りましょう。この状況ならむしろほも君が関わらない方がいい気がします。ほも君と愛さんの関係がバレたら絶対面倒なことになりますからね。

 

「あの、宮下さん」

「んん? 君は1年生?」

「はい。1年普通科の三船栞子です」

 

 見てください。栞子ちゃんと愛さんが話をしています。まだ接触すべきタイミングじゃないのにね。ストーリー壊れちゃ^~う。

 

「宮下さん、私とテニスで勝負してもらえないでしょうか?」

「いいけど、三船さんはなんでアタシと勝負したいの?」

「……見ていた中で宮下さんが一番上手でしたし、いろいろな部活の助っ人をしているという噂を聞いていたので、合同体育なんて滅多にありませんし、この機会にぜひ勝負してみたいと思ったんです」

 

 とってつけたような理由で草生えますよ。ほんとはただ愛さんに嫉妬しただけじゃないの~?

 

「そっかぁ、それは嬉しいなー。いいよ、勝負しよっか。でもその前にウォーミングアップもね?」

「はい、お願いします」

 

 トントン拍子で栞子ちゃんと愛さんの対戦が決まってしまいました。なんだこのイベントは、たまげたなぁ……。

 

「三船さん結構上手だね。中学校の時とかにやってたの?」

「いえ、高校の体育だけです。ですが今日は好きな人が見てくれているので、そのおかげでいつも以上の力を発揮できているのかもしれません」

 

 あっ、普通に好きな人とか言っちゃうんですね。今の情報だけでだいぶ絞れると思うんですけど(名探偵)

 

「へー、そうなんだ! いいねぇ、青春してるね! でも愛さんもその気持ちわかるかも。好きな人ではないけど、友達や仲間が応援してくれるといつも以上の力が発揮できる気がするんだよねー」

 

 ふわぁ……なんだか眠たくなってきました。見学するだけの体育ほどつまらないものはないですからね。早く試合して♡

 

「よし! 十分ウォーミングアップもしたし、そろそろ試合しよっか。1セット先取で、デュースはどうする?」

「そうですね……時間の問題もありますし、デュースはなしでいかがでしょうか?」

 

 1セットの時点でかなり時間がかかっちゃうと思うんですけど、それは大丈夫なんですかね?

 

「いいよー。じゃあサーブは三船さんからね」

「ありがとうございます。では……」

 

 おっ、ようやく試合が始まるようです。美少女2人がテニスで勝負する絵は映えますね。この映像があればこの動画の再生数も爆上がり間違いなし!

 

「ふぅ、楽しかったー! ありがと!」

「はぁ……はぁ……ありがとう、ございました……」

 

 ちょっと待って。テニスシーンが入ってないやん! 栞子ちゃんと愛さんのテニスが見たかったから体育見学したの! はぁぁぁぁほんまつっかえ……やめたらテニスゲーム?

 

「ぜぇ……ぜぇ……けほっ」

「だ、大丈夫!?」

「らいじょうふれふ……」

 

 大丈夫じゃないでしょ(素) 呂律回ってませんよ? スタミナを完全に使い切った栞子ちゃんはふらふらよちよちとこちらに向かって歩いてきます。非常に危なっかしいです。こけないでくださいね?

 

「もときさん……」

 

 なんとかこけずにここまで辿り着いたみたいです。……って近くで見たら栞子ちゃん汗だくですね。水筒だけでなくタオルも渡してあげよう……かと思いましたが、どうやら栞子ちゃんはタオルを持ってきていないみたいなのでほも君の袖で拭いてもらいましょう。

 

「ありがとうございます……汗がぐちょぐちょで大変でした……」

 

 何のためらいもなくほも君の袖で汗を拭いています。違和感すら感じないほどの疲労なのか……(困惑)

 

「ごく……ごく……はぁ、お茶って美味しいですね」

 

 いい飲みっぷりですね。運動した後で喉がカラカラの時に何か飲むと何でも美味しく感じますよね。わかります。

 

「……ん? さっき私は何で顔を拭いていたのでしょう……タオルなんて持ってきていませんし……」

 

 まぁ何でもいいじゃないですか。それで試合の方はどうだったんですか?

 

「負けてしまいました……。完敗も完敗です」

 

 スコアの方は……6-4ですか。結構惜しいじゃないですか。完璧超人愛さんが相手であったことを考えると十分すぎると思いますよ。

 

「ええ、スコアだけを見ればそうですね」

 

 なんだか意味深な言い方ですね。

 

「遠目からだと気づかなかったかもしれませんが、あれは間違いなく手加減されていました。疲労で私の動きが鈍ってきた辺りから宮下さんの打ったボールが私の手元に返ってくるようになったのです」

 

 なるほど、動けない栞子ちゃんでも返せるように打ち返してきたということですね。

 

「その通りです。私は舐められていたのでしょうか……」

 

 愛さんはそういう人じゃないですよ。きっと栞子ちゃんが楽しめるよう考えてくれたんだと思います。

 

「私が、楽しめるように……確かに、足が動かなくなった後もボールを打ち返せて楽しかったです。宮下さんはそこまで考えてくれていたんですね……」

 

 きっとそうだよ(便乗)

 

私はただ嫉妬していただけ……本当に私の完敗ですね」

 

 今何か言いましたか?

 

「いえ、お気になさらず。……さて、私の体力もだいぶ回復しましたし、もう一度行ってきますね」

 

 また愛さんに勝負を挑むんですか?

 

「さすがにそれはしませんよ。ただクラスの方達と打ってくるだけです。ではまた後で」

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




以下4話ネタバレ注意です。





皆さんアニガサキ2期4話はご視聴になられましたか? サイコーハートでしたね(定期)

・「映像研究部とかに相談すれば、実現できると思う」
生徒の力で何でも解決できるの割と異常では……? やはりヤバイ(冷静)

・果林ちゃんの私服
くっっっっっそ可愛い。さすが読者モデル、センスが段違いすぎる。何が自分に似合うかをちゃんと理解している。+114514点

・パンダの服
店頭に果林ちゃんホイホイ仕掛けられてて草。そしてまんまと引っかかってて草。

・ボウリング
2人とも上手すぎか? 私は多分まずボールが投げられません。

・ビリヤード
ビリヤードの棒ってあんなに長かったっけ……?

・レースゲーム
果林ちゃんはレースゲームでもコースアウトして迷子になってそう(小並感)

・太鼓の名人
太鼓……達人……ギルキス……うっ、頭が……

・パンダのストラップ
愛さんから受け取る時の果林ちゃんくっそニコニコで笹生えますよ。やっぱ好きなんすね~。

・「どんなもんじゃい!」
本作でも愛さんとのデートの時に言ってもらう予定でした……。

・泣き虫で人見知りの愛さん
今の愛さんからだと全く想像できませんね。見せて♡

・もんじゃ煎餅
素手で掴む愛さんヤバイ、ヤバくない? 良い子はマネしないでね。
ところで、久しくもんじゃを食べていないので、放送当時なんだか食べたい気分になりました。食べに行ってないけど。

・生徒会のメガネ率
しお子、お前メガネかけろ。

・果林ちゃんの私服 その2
やっぱりセンスが段違い。まじで可愛い。というか高校生のオーラじゃないよ……。

・美里さん
くっそ重い、重くない? そしてそのクソ重感情を見抜く果林ちゃんすごい。やっぱり自分が思いを隠していたからこそわかるものなんですかね?

・あと5分 今起きた
マジで毎話果林ちゃんのポンコツ部分が晒されていて草生えますよ。本当に5分で起きたんですかねぇ……?

・愛さんと美里さん
私にはもう何も語れないゾ……。重すぎるッピ!

・侑ちゃんカメラ
初登場のはずなのに何度も見たことある気がする……。

・姫乃ちゃん
完全に溶け込んでて、初見時は普通に気づかなかったゾ……。というかこんなん気づけないだろ。

・正座栞子ちゃん
くっっっっっそ可愛い、可愛くない? ところでそのiPadはシャw

・Eternal Light
まずイントロが好き、果林さんのふっふー好き、2人のLet'sGO好き。そして321ときて0でもGoでもなくDDなのもっと好き。
愛さんの半角カタカナっぽ楽しい気持ち、楽しい景色のとこすこ。歌詞カードも半角カタカナで書いてくれ~。
愛さんのラップパート、こ無ゾ。半角カタカナで歌え。
最後DIverDivaのロゴが出るところ、アニメのOPでタイトルロゴが出る時みたいでかっこいい。
この曲のサビが好きで何回も何回も聞いているんだけど、どこが好きかっていうのがうまく言語化できない。かっこいいっていうのはそれはそうなんだけど、何がどう好きなのかが自分でもよくわからない。でも大好きだから何度も聞いちゃう。毎日5回は聞いてる。それなのにわからない。なぜなんだろうか……私の表現力のなさが原因?

・果林ちゃんの私服 その3
(定期)

・果林ちゃん迷子説
果林ちゃんが本屋に行ったの、迷子が原因なんですか? 果林ちゃんだからあり得るのが困る……。

・薫子さん
なんか赤い、赤くない? とりあえず栞子ちゃんの部屋にセミ放って、役目でしょ。

・しずくちゃん
台本を書いてそうな雰囲気だったし、もしかして来週は劇団桜坂しずくですか? (アニメで果林ちゃん×果林ちゃんを流すのは)まずいですよ!


ところで、今のところアニメ挿入歌が全てEから始まっていますが、何か特別な理由があるんですかね? 私には全く思いつかないゾ……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part19/m

本来はもう1人分のサイドストーリーと合わせて投稿するはずでした。が、まだまだ書きたいことがあって6話に間に合いそうにないこと、来週は忙しくて投稿できるか微妙なので、もう1人分は来週へのストックにすることにしました。
まぁストックも書きたいことの3分の1くらいしか書けてないんですが。



いつも通り後書きは5話感想回です。まだ見てない人は見て♡


「栞子ちゃん、今日なんだか楽しそうだね」

 

 いつも通り元樹さんが登校してくるまでの時間を席で本を読みながら待っていると、隣の席の藤崎さんに突然そんなことを言われた。

 

「そうでしょうか?」

「楽しそうっていうよりは……なんだろ、ワクワクしてる感じというか……」

「わくわく……」

「おっ、もしかして心当たりある感じ?」

 

 心当たりはある。むしろ心当たりしかない。

 

「栞子ちゃんが何にワクワクしてるのか知りたいなー」

「興味をそそるような内容ではありませんよ」

「そんなことないよ。だって元樹君関連でしょ?」

「……」

「図星なんだね……」

 

 やはりクラスの方達にはバレてしまいますよね。皆さん私の想いを知っているので当然といえば当然ですが。いつもいろいろ協力してくださるのですごく助かります。本当に大事な場面では私1人の力でやらせてくれますし、感謝してもしきれません。まぁ時々やりすぎることもありますが。この前もバスの座席を交換して私と元樹さんを隣に座らせようとしてましたから。その気持ちはすごくありがたいですし、魅力的な提案ではありましたがくじで座席を決めた以上不正に当たるのでお断りさせていただきました。とてもとても魅力的な提案でしたが。

 

「それで今日は元樹君に何してあげるの?」

「私が元樹さんに何かしてあげる前提なのですね」

「だって栞子ちゃん尽くすタイプじゃん」

 

 そうなのでしょうか……自分ではよくわかりませんね。

 

「それと、私が元樹さんに与えたものよりも、元樹さんが私に与えてくれたものの方が圧倒的に多いですよ」

 

 まずこの大きすぎる想いが元樹さんからもらったものです。そしてそこから派生した幸せな時間。一緒にご飯を食べたり、一緒に勉強したり、休み時間に他愛もないことで笑いあったり、放課後一緒にお出かけしたり……今では当たり前の、何気ない幸せな時間だって元樹さんに与えてもらったものだ。今こうしてクラスの方とお話しできているのも元樹さんのおかげ。あの日元樹さんが私に話しかけてくれなかったら、今頃私は教室で1人ぼっちだったでしょう。

 それから物理的な話になりますが、今日つけてきた髪飾りも元樹さんからもらったものですね。強風で飛ばされて行方不明になった髪飾りの代わりに買ってもらった私のお気に入りです。その時飛ばされた髪飾りは後日一応見つかったのですが、校内にいた猫が大事そうに持っていたので、そのまま猫にあげてしまいました。ちゃんと大切にしてくれているでしょうか。

 私はこんなにもたくさんのものを元樹さんからもらっている。それに比べて私からは? 私から元樹さんへしてあげられているものは? プレゼントをあげたこともありませんし、精神面で支えてあげられることもないと思います。元樹さんにも幼馴染の方がいるようですから。だから私から元樹さんになんて……いえ、そういえばあれがありましたね、宿題。これは立派に私が元樹さんにしてあげられていることだと思います。宿題を忘れた元樹さんが真っ先に頼ってくれるのは私ですから。

 

「いやぁ……なんかもう、表情だけで……ごちそうさま、って感じだわぁ……」

「ごちそうさま……? おにぎりか何か食べたのですか?」

「何でもないよ。栞子ちゃんは今の純粋なままでいて」

「? ……よくわかりませんが、わかりました」

 

 藤崎さんは時折変なことをおっしゃるんですよね。本人に聞いても教えてくれませんし、元樹さんに聞こうとすると本能が警告してきますし……。

 

「あ」

 

 扉をガラガラと開ける音がした。いつもより少し時間が早いなと思いつつ後ろを振り返ると、いつもと変わらない私の好きな顔が見えた。

 

「ふふっ、じゃあまた別の機会に話そうね」

「……え、あ、すみません」

 

 藤崎さんとのお話の途中だったのにまた元樹さんに気を取られてしまいました……。私のダメなところですね。

 

「いいのいいの、気にしないで。好きなんでしょ? 元樹君のこと」

「……はい

「うんうん、だったらどうすればいいかわかるよね? じゃあ私はお花摘みに行ってくるね~」

「あっちょっと……」

 

 止める間もなく藤崎さんは教室を出ていってしまった。わざわざ席からもお手洗いへも遠い前の扉から出ていったのは元樹さんに会わないよう配慮してくれたのでしょうか。

 

「栞子、おはよう」

 

 藤崎さんが出ていった扉を見つめていると、後ろから元樹さんに声をかけられた。

 

「元樹さん、おはようございます」

 

 折角の厚意を無駄にしないよう、感謝の気持ちも込めながら自分にできる最大限の笑顔で元樹さんを迎える。すると元樹さんも笑顔で返してくれた。たったそれだけのことなのに胸の奥が温かくなる。

 

「はぁ~、今日もいい日だなぁ。な、栞子?」

 

 自分の席に座ってニコニコと支度をしながらそう言う。今にして思えば教室に入ってきた時もニコニコとしていましたね。今日はご機嫌なのでしょうか。

 

「なんだか嬉しそうですね。何かいいことでもあったのですか?」

「いやね、実はね、俺に宿題を見せてくれる女の子を見つけちゃったんだよ」

「はぁ、また宿題を忘れたのですか……」

「当たり前じゃん」

 

 逆にちゃんとやってくるのが当たり前なのですが……まったく、元樹さんは仕方ありませんね。

 

「一応聞いておきますが、その女の子というのは私のことではありませんよね?」

「栞子以外誰がいるんだよ」

「そうですよね……」

 

 私が元樹さんに甘くしてしまうせいか、宿題を忘れた時は真っ先に私の下に来ますもんね……。

 

「見せることは絶対にしませんが、前と同じように私が教えながら宿題をやるのであればいいですよ」

「よしっ!」

 

 子供っぽくガッツポーズして喜ぶ元樹さんが微笑ましい。宿題を忘れても開き直るところも子供っぽいですし。まぁここに関してはいずれちゃんと直さないといけませんね。

 

「そちらの方が元樹さんのためになりますし、それに私にとっても……」

 

 宿題が終わるまでずっと一緒にいられますし、タブレットの画面が横からだと見にくいからという名目でくっつくことができます。それに、何かに集中して取り組んでいる時の元樹さんの横顔が一番好きですから。そんな一番好きな顔を特等席から見られるのは宿題を教える私だけの特権です。

 

「私にとっても、何?」

「い、いえ何でもないです……」

「そう?」

 

 あなたの横顔が好きです、だなんて言えるわけないじゃないですか。

 

「さぁ、時間もありませんし早速始めましょう。元樹さんも早く準備してください」

「はーい。栞子先生、今日もオナシャス」

 

 栞子先生、ですか……悪くない響きですね。財閥は元樹さんに継いでもらって、私は教師を目指すのもいいかもしれません。私に教師としての適性があるかは別ですが。勉強を教えるだけならできるかもしれませんが、生徒から好かれるような愛嬌満載の先生になるなんて私には無理です……。

 

 

 

「終わった~!」

「お疲れ様でした」

 

 今日もなんとか授業開始までに終わらせることができました。これで元樹さんの評価が下がることもありません。力になれてよかったです。

 

「それにしても依然と比べて遥かに理解度が上がっていますね。ほとんど私の教えなしに解けたじゃないですか」

「そうかなぁ?」

 

 20分くらいかかると想定していましたが、なんとその半分の10分で終わらせてしまいました。多少手が止まる場面がありましたが、それもほとんど自力で考えて解いてしまいました。私が教えたところといえば応用問題くらいでした。

 言い方が少し悪いですがほんの少し前まではダメダメでしたが、基礎はもう完全に身についたのかもしれません。

 

「これも全部元樹さんが努力した結果ですよ。やはりあなたには誰よりも努力する適性がありますね」

「いーや、栞子のおかげだよ。いつもいつも宿題とか優しく丁寧に教えてくれるし、俺に合った参考書も選んでくれたじゃん。あの参考書わかりやすくて結構助かってるぞ。それに風呂を中断させちゃったのに最後まで勉強教えてくれたし」

 

 最後のはあの日のことですね。あれはとてつもなく恥ずかしい出来事なのであまり思い出したくないのですが……まぁ元樹さんの力になれたのであれば我慢しましょう。あれをもう一度となると絶対に嫌ですが。お風呂上がりという言い訳もかなり苦しいものでしたからね。何をしていたのかまではわからなくても、嘘をついていたことくらいわかりそうなものですが……時折鋭い元樹さんですが、あの時ばかりは鈍感で助かりました。

 

「そういう栞子の優しさがあったからこそだよ。ありがとな」

「ふふっ、そう言っていただけると嬉しいです。元樹さんのためにといろいろ考えた甲斐がありました」

 

 距離を詰め、元樹さんの肩に自分の頭を乗せる。元樹さんから感謝の気持ちを受け取りましたし、今日くらいはこんな贅沢しても許されます……よね?

 

すんすん……」

 

 元樹さんが何か匂いを嗅ぐ音がする。おそらく私の髪の匂いを嗅いでいるのでしょう。そういえば元樹さんはよく何かの匂いを嗅いでいたりしますね。これが『ふぇち』というものなのでしょうか? ……私にはよくわかりませんね。

 

「あんまり匂いを嗅がないでください。恥ずかしいですから」

「そういう割には全く恥ずかしくなさそうだけど」

「ふふっ、やはりわかってしまいますか」

 

 そう、本当は恥ずかしさなんて全くない。むしろ嬉しい。ただこういうことに恥ずかしさを感じない、誰にでもこういうことをするえっちな女の子と思われたくないだけ。元樹さん相手にしかやらないのに……まぁ鈍感な彼はそんなこと考えもしないでしょうが。大好きなはずなのに時折イラっとしてしまう私は間違っているのでしょうか……。

 

「……なぁ、少し離れてくれないか? 周りの目もあるしさ……」

「それがどうかしましたか? ほら、周りを見てください。誰も私達のことなんて気にしていませんよ」

 

 クラスの方達に聞こえるようわざとらしく少し大きな声で言う。こうすればちゃんと視線を逸らしてくれるはずです。

 

「まぁ……確かにそうだけど……」

 

 どうやらちゃんと伝わったようです。元樹さんがクラスを見回すまでほんの数秒しかなかったはずですが、その数秒でちゃんと理解して実行してくれるのはさすがとしか言いようがありませんね。

 皆さんの協力を無駄にしないよう、腕を絡めて逃げられないようにする。さすがにここまですると多少の恥ずかしさがこみ上げてきますが、これもいずれ必要なことだと耐えましょう。

 

「元樹さんの体、すごく温かいです」

 

 姉さんやランジュに抱きつかれた時とはまた別の温かさがあります。

 

「なんか今日の栞子いつにも増して甘えんぼだな」

「そうでしょうか? いつも通りだと思いますが」

「いーや、絶対違う。昨日強い甘酒でも飲んだのか?」

「確かに昨日甘酒を飲みましたが……甘酒に強いも弱いもなくないですか?」

「飲んだことないから知らん」

「そうですか……」

 

 甘酒、とても美味しいのですが……。

 

「あの、もしよければ今度一緒に甘酒を飲みに行きませんか?」

「甘酒を?」

「私の好きなものをぜひ元樹さんにも体験していただきたいんです」

 

 今後お付き合いする上で相手の好きなことを知らない、やったことがないというのは悲しいですから。

 

「いいよ、一緒に行こう。約束してるお出かけの日にな」

「ありがとうございます! ふふっ、また1つ楽しみが増えてしまいましたね」

「そうだな」

 

 一緒に映画も見たいですし、美術館……は元樹さんに行きたいかどうか確認するとして、レジャー施設に行ってボウリングやカラオケもしてみたいです。それに加えて甘酒……少々時間が心配ですね。

 

「元樹さんも行きたいこと、したいことがあれば遠慮なく言ってくださいね。私も元樹さんの好きなものを体験してみたいですから」

 

 時間は心配だけど、元樹さんの好きなものも体験したい。理由はさっきと同じ、元樹さんの好きなものを知らないというのが悲しいから。時間なんてスケジューリングを頑張ればどうとでもなります。2人で一緒にスケジュールを考えるのもきっと楽しいでしょうから。それに一晩どこかに泊まって1泊2日にしてしまえばもっといろんなところにも行けます。もしかしたらその一晩で間違いが起きてしまうかも……。

 

「そうだな……俺が行きたいのは」

『キーンコーンカーンコーン』

「……あ、もう授業が始まってしまいますね」

「そうだな。また後でな」

 

 元樹さんが何かを話そうとしたタイミングで予鈴が鳴ってしまった。間が悪いですね……学校なので仕方のないことだとは思いますが、今だけはチャイムというものを恨みます。……でも最後に一言くらいはいいですよね?

 

「今日も一日一緒に頑張りましょうね」

「ああ、頑張ろうな」

 

 頑張ろう、元樹さんの口からこの言葉を聞くだけで、今日1日を乗り切るには十分すぎるほどの元気を貰えます。私は予想以上にチョロいのかもしれませんね。

 

 

 

「はぁぁぁぁつかれたぁぁぁぁ」

 

 午前の授業が終わり、隣で元樹さんが大きく息をついている。そういえば今日はあまり眠たそうにしていませんでしたね。昨日はよく眠れたのかもしれません。以前不眠症を解決する方法を探してみますとは言いましたが、何の知識もない私では調べてもありきたりなことしか見つからないんですよね……やはり一度病院で診察してもらうべきなのでしょうか。

 

「腹減ったなぁ……」

 

 その言葉を聞いて急いでカバンからお弁当を取り出す。朝からこの時間をどれだけ待ち望んだことか。

 

「元樹さん! 一緒にお昼……」

 

 このタイミングで昨日の元樹さんの言葉を思い出してしまった。()()()約束がある、確かにそうおっしゃっていました。

 

「……は今日もダメなんでしたね」

「そうだよ」

 

 どうして忘れてしまっていたのでしょう……。きっと昨日の私はいいことを思いついたと浮かれてしまったのでしょうね。元樹さんにバレないようそっとお弁当を撫でる。

 

「楽しんできてくださいね。何か嫌なことがあればすぐにここに戻ってきてくれればいいですから」

 

 笑顔を意識しながら伝える。ここで寂しがる素振りをしてしまえば元樹さんの邪魔になってしまいますから。

 

「ああ、もし喧嘩したら栞子のところに戻って泣きつくよ。まぁ多分そんなことにはならないだろうけど」

 

 そんなに仲のいい方達なのですね。たとえ男性だったとしても、元樹さんがそこまで言うとなると少し嫉妬してしまいます……。

 

「さあ早く行ってあげてください。お友達の方達も元樹さんのことを待っていますよ」

「じゃあ行ってくるよ。じゃあな」

 

 元樹さんは軽く手を振って教室から出ていってしまいました。

 

「はぁ……」

 

 完全に彼が見えなくなったのを確認して、風呂敷に包んだままのお弁当を見て軽くため息をつく。あんなにもウキウキしていた自分が馬鹿らしいです……。

 風呂敷をほどいていつものお弁当箱、それから1つのタッパーを取り出す、

 

「ポテト、サラダ……折角作ったのに……」

 

 元樹さんの大好きなポテトサラダを作ってあげよう! これを思いついたところまではよかった。けどその後よく考えずウキウキで布団にもぐり、翌朝ウキウキで料理を始めてしまったのが間違いだ。ちゃんと予定表を確認しておけばこんな思いをすることなんてなかったのに……。

 

「なんだかしょっぱいです……」

 

 おかしいですね、ポテトサラダに塩なんて入れてないはずなのに……。

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

「遅いですね……」

 

 次の時間は体育、予鈴も鳴ってもう皆さん着替えてグラウンドに行ってしまいました。それなのにまだ元樹さんは戻ってきません。私ももう着替え終えていますが、元樹さん1人だと寂しいだろうと思い教室で待つことにしました。けれどなかなか戻ってきてくれないので、結局私だけが寂しい思いをすることになってしまいましたね。

 

「たーだいまー! あれ、皆は?」

 

 後ろの扉をバンッと勢いよく開けて元樹さんが入ってきた。本来はそんな乱暴な開け方をしたことを注意すべきなのでしょうが、今は彼が戻ってきてくれたことが嬉しくて注意する気なんて起きない。

 

「元樹さん遅いですよ。早く着替えないと次の授業が始まってしまいます」

「へっ? 着替える? なんで?」

「もう、寝ぼけているのですか? 次は体育ですよ。担当の先生の事情により来週の体育が今日に変更になったと昨日のHRでおっしゃっていたじゃないですか」

「そうなの? 聞いてなかったから知らないんだけど」

「はぁ……まぁそうだろうとは昨日から思っていましたが。なんだかずっと上の空でしたからね」

 

 ずっと足をパタパタさせながら時計を見続けていて、明らかに話を聞いていない様子でした。足をパタパタしているのが可愛らしくてこの時も注意できなかったのですが……。

 

「念のため直接伝えてあげようかと思っていたのですが、HRが終わった途端そそくさと出ていってしまいましたし……」

 

 私が声をかける隙なんて全くなく、今まで見たことないようなスピードで帰り支度をして教室から出ていっていました。

 

「夜とかにでもメッセージで教えてくれればよかったんじゃないか?」

「もちろんそうしようと思っていました! 思っていたのですが……その、私に見向きもしてくれなかったので……」

「それでちょっと仕返ししてみたいなーって思っちゃった?」

「仕返しというと少し語弊がありますが……まぁ、そうですね」

 

 好きな人に一切見向きされなかったのですから、少しくらいムッとしてしまうのも仕方ないと思います。

 

「もちろんそれがいけないことだとはわかってはいたのですが……いえ、ちょっと待ってください。もとはと言えば話を聞いていなかった元樹さんが悪いのでは?」

 

 元樹さんがちゃんと話を聞いていれば私がわざわざ連絡する必要もありませんでした。

 

「正論で刺してくるのやめろ。それならこっちにも言い分があるぞ。俺のことをちゃんと管理するのが栞子の役目だろ?」

「違います。元樹さんのことはちゃんと元樹さん自身で管理してください」

 

 自分のことは自分で、当たり前のことだと思います。

 

「ですが……その、将来……私と結婚してくれるのであれば……元樹さんのことも管理してあげても……」

「なんか言った?」

「い、いえ! 何でもないですから……」

 

 結婚なんてまだ気が早いですよね……。まずはお付き合い! その後お互いのご両親にご挨拶して、家族同士の親睦も深めて……それから結婚ですね。できれば大学卒業と同時に結婚したいです。2人っきりの暮らしもしてみたいですが、姉さんが家を出ていった以上元樹さんには三船家を継いでもらわねばならないので、結婚しても私の家で暮らすことになりそうです。

 

「そんなことよりも、元樹さんも早く着替えてください。授業に遅れてしまいますよ?」

「そういう栞子もこのままだと遅刻だぞ」

「1人だと元樹さんが寂しがるかと思ったので、私でよければ着替える間話し相手になってあげようかと。それに元樹さんがちゃんと着替えてくれれば私も元樹さんも遅刻せずに済みますよ」

「でも俺ジャージ持ってきてないんだよなぁ」

「ご安心ください。そうなることを予想して、私が予備の分を持ってきていますから」

 

 カバンからもう1着ジャージを取り出す。身長も大体同じなので着れないということはないはずです。

 

「それって栞子の使用済み?」

「安心してください。使用済みと言ってもちゃんと洗濯してあるものなので」

 

 私の汗などが染み込んだものをものを着せるのはさすがに恥ずかしいです。

 

「さぁさぁ早くこれに着替えてください。後ろを向いておきますから、私のことは何も気にしないでいいですよ」

「そんなこと言って覗くつもりなんじゃないか?」

「……そんなことないですよ」

 

 そういう欲望が一切湧かなかったといえば嘘になりますが、見る程度のことなら抑えられます。触ってもいいと言われたらおそらく爆発してしまいますが……。

 

「ほれ、着替えたぞ。まぁ多分着替える意味なんてなかったけど」

「……まさかとは思いますが、サボるつもりではありませんよね」

「えっ?」

 

 着替える必要がないということからはそれしか思いつきません。あの元樹さんがサボりだなんて考えられませんが、体育の前になるといつもだるいや面倒などと言っているのでない話ではないと思います。

 

「もし本当にそのつもりであるのなら、元樹さんを引きずってでも授業に参加してもらいますから。元樹さんに力負けするとは思えませんし」

 

 腕相撲でも押し相撲でも元樹さんには負けたことありませんから。ジャージは汚れてしまいますが、サボりを黙認するよりは何倍もマシです。

 

「さ、サボらないって! 授業にはちゃんと出るよ。出るけど足怪我してるから参加できないんだよ」

「えっ!? だ、大丈夫なんですか!?」

「大丈夫。ただ捻っただけだし、痛みはもうないから」

 

 一体いつから……ここ数日で変な歩き方をしているといったことはありませんでしたし、今日もおかしなところは見られません。

 

「今もちゃんと歩けているようですし、酷い状態ではないというのはわかりますが……それでもやはり心配です」

「栞子は優しいな」

 

 私の頭にそっと手が乗せられる。ただそれだけなのに妙に心地いい。

 

「さ、遅刻しちゃうしそろそろ行こうぜ」

 

 頭から手をどけて歩き出す。本当はもっとそのままでいたかったけれど、遅刻するわけにもいかないので元樹さんの横に並んで歩く。

 

「では元樹さんの足に負担がかからないようゆっくりと向かいましょうか。痛んだり辛くなったりしたらすぐに言ってくださいね。肩を貸してあげますから」

「栞子も一緒に行くの? 俺と一緒だと遅刻するぞ?」

「別に構いませんよ。2人一緒の方が先生もすぐに納得してくれるでしょうし、それに今の元樹さんを放って一人で行くなんてこと私にはできません」

「やっぱり栞子は優しいよ。そういうとこ好きだぜ」

 

 両想いですね、そう言えたらいいのに……私ってヘタレですね。




以下5話ネタバレ注意です。





皆さんアニガサキ2期5話はご視聴になられましたか? いやーもう十分堪能したよ……。

・笑いのツボが赤ちゃんな侑ちゃん
これを待ってた。もっと赤ちゃんしろ。

・ミアが他の子の曲聞くなんて
その前に盗撮についてツッコんでくれ……。無断でグッズ販売したりライブ映像をアップしたりする世界では今更なことなのかもしれない。

・ベランダ侑ちゃん
1話のうつ伏せで寝た時の侑ちゃんは寝癖が少なくて、ちゃんと仰向けで寝たと思われる5話では寝癖が多いっていうのを見てはぇ~ってなりました(小並感)

・ストーカーぽむ
お ま た せ。親の顔より見たストーカー。実質スクスタ。でもこれが見たかった。

・しずくちゃんの私服
おいおいおい、その肩出しはなんだい? 君は本当に去年まで中学生だったのかい?

・花丸ちゃんっぽい子
カバンの色が制服と同じで花丸ちゃんっぽく見えてるだけらしいけど、アニガサキなら意図的にそう見せてそうなんだよなぁ。むしろ意図的にやっててくれ。

・せつ菜ちゃんの私服
クソダサパーカーせつ菜ちゃんはどこ……ここ……?

・せつ菜ちゃんに見つかった歩夢ちゃん
かっっっっっわヨ! ここだけ無限回リピートしたい。

・う、羽毛……
せつ菜ちゃん別に大声出してたわけじゃないのに、わざわざ口を押さえる必要あったんですかねぇ……。

・せつ菜ちゃんの本当の用事
何?

・桜坂座長の台本
ヤバイ(ヤバイ) 4話のCパートではあの台本を一生懸命考えていたと考えると草生えますよ。

・歩夢ちゃんが野獣役
1期……11話……あっ、ふーん(察し)

・ぺかぺかせつ菜ちゃん
可愛い。ところで用事はなんだったの?

・プリ〇ュアっぽいポスター
あのポスターに書いてある文字列のほぼすべてがユニット名候補とか初見では気づけないッピ!

・「せつ菜ちゃんとヒーローショーを見に来たの!」
せつ菜ちゃんもちゃんと嘘に乗っかれてえらい! ところで用事は?

・SE「プッピガン」
なんかロボットアニメで聞いたことあるようなSEですねぇ……。トキメキレインボーはガン〇ムだった?

・ヒーローショー
せつ菜ちゃんもしずくちゃんも楽しそうですねぇ。
???「シアターもオススメです♪」

・ジェットコースター
歩夢ちゃんはどこ見てるんですかねぇ……。
???「あそこにジェットコースターが見えます!」

・高いとこに吊り下げられるアトラクション
ご満悦ぽむで私達もにっこり。ところでこのアトラクションってなんていう名前ゾ?

・ホラーハウス
@「ホラーハウスもあるんだよ!」

・薫子さん
ツーリング行く代わりに部屋にセミ放って、役目でしょ。

・直接相談
桜坂座長力作の台本を本人達に見せるのはまずいですよ!

・「てっきりデートかと思いましたよ」
この直後の歩夢ちゃんの声すこすこ。その後のベビーカステラみたいなのを頬張ってご満悦な歩夢ちゃんもすこすこ。

・爆買いランジュちゃん
急にぶっこんでくるのやめてクレメンス。私もあれくらい爆買いするお金と家のスペースが欲しいゾ……。

・ランジュ構文
好き。でもしずくちゃんの他にも私にも少し刺さりました……。小説の進捗を生み出していこう。

・「さぁ、開演です!」
ニコニコだとキリンさんわらわらでオーディション生えますよ。

・野獣さん
本来なんてことない言葉なはずなのになぁ……この単語を聞くだけで笑っちゃうんすよね。

・「傷ついた人を癒してあげたい!」
やっぱりめんどくさいヒーラーじゃないか!(大歓喜)

・たくさんの野獣
BB劇場

・逆光しずくちゃん
作画やっっっっっば。気軽に作画開放するの心臓に悪いからやめちくり~。

・「歌おうよ」
歌えよ。

・観覧車
この時の歩夢ちゃんの中の人のツイート好き。

・Cパート
ん?


あっ、そうだ(唐突)
GW中に友達に気軽に虹ヶ咲を見せました。沼にハマりました。お気に入りの曲はEternal Lightだそうです。わかります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part20/m

えー……2週間ぶりの投稿です。

時間や精神やPCが破壊されていたので投稿できていませんでした。いやー、まいっちゃいますね。
PCはオニューになったので無問題ですが、時間は当分破壊されたままになると思うので、当分はクソ投稿頻度になると思います。いやー、まいっちゃいますね。

さて、7話と8話の感想を後書きに書こうと思っていたのですが、この後お出かけする必要があり、書いている時間がとれないため、また時間のある時に活動報告の方に垂れ流しておきます。6話の感想につきましてはすでに活動報告の方に垂れ流されております。



あっ、そうだ(唐突)
Day1落選しました……悲しいね。


「昨日担任から伝えてもらったと思うが、今日は1年普通科のクラスと合同でやるからなー。ちゃんと優しくしてやれよー」

 

 1年生と合同かぁ。同好会の中だと普通科なのはかすみんと元樹だけだよね。どっちかと一緒だといいなー。2人に限った話ではないけど、同好会の皆がクラスだとどんな感じなのか気になるんだよね。同好会だといろんな意味で人気者な元樹がクラスでも人気者なのか、とか!

 

せんせー、今日の体育休みまーす

 

 むむっ? あれはもしかして……

 

むっ、誰だ君は

1年普通科の堀口元樹でーす

 

 遠目だから確信が持てなかったけどやっぱり元樹だ! まさかほんとに一緒になるとかすっごい奇跡じゃん! でも元樹は参加できないのかぁ……ま、わかってたことだけどね。あーあ、元樹とテニスしたかったなー。

 それにしても元樹の隣にいるあの子は誰だろう。遠目で見てもすっごい可愛い子だし、なんだか距離が近いような……もしかして元樹の彼女? ありえなくないのがなぁ……よしっ! りなりーのために確認しよう!

 

「ねぇねぇ、ちょっといいかな?」

「ひゃ、ひゃい!」

 

 近くにいた1年生の子の肩を叩く。

 

「も、もしかして宮下先輩!?」

「ん? アタシのこと知ってるの?」

「もちろんです! 運動部所属で宮下先輩のこと知らない人間なんていないですよ!」

「そっかぁ、嬉しいな」

「あ、握手してもらってもいいですか?」

「もちろん!」

 

 両手でギュっと握手する。

 

「あの、とある人に聞いたんですけど、スクールアイドル始めたって本当ですか?」

「うん、本当だよ。誰に聞いたの?」

 

 デビューライブでビックリさせようと思ってまだ友達の誰にも言ってなかったんだけどなぁ。元樹が教えたのかな?

 

「誰かは言えないですけど、学内の事情にちょぉっと詳しい人から……」

 

 そんな人いるんだぁ……どこまで詳しいんだろう。誰と誰が付き合ってるーみたいなこともわかっちゃうのかな?

 

「俺、宮下先輩がスクールアイドルになっても応援してますから頑張ってください!」

「うん! 愛さん頑張っちゃうよー!! デビューライブも絶対見に来てね」

「はい! たとえ風邪をひこうと熱が出ようと絶対に見に行きます!」

「うんうん、さすがにそれは休もうね」

 

 愛さんにももうファンができちゃったかぁ……うん、予想の何倍も嬉しい! 部活の時に皆に報告しちゃお!

 

「ところで、宮下先輩は何の用だったんですか?」

「あ、そうそう。実は聞きたいことがあってさー」

「聞きたいこと?」

「あの2人って付き合ってるのかな?」

「えっと、2人っていうのはあそこにいる堀口と三船のことですか?」

「うん、そうだよ」

 

 あの子は三船さんって言うのかぁ。

 

「あの2人は付き合ってないっすよ」

「そっか、よかったぁ」

 

 これでりなりーに悲しい報告をしなくて済むよ。誰と付き合うかはもちろん元樹の自由なんだけど、愛さん的にはやっぱりりなりーと結ばれてほしいんだよねー。

 

「でもあの2人そのうち付き合うと思いますよ」

「え」

「堀口も相当な鈍感ですけど、付き合えないのは三船にも問題があると思うんですよね」

「えっと……」

「あいつ変なところで真面目なんですよ。そのせいでチャンスを逃したりするんですよね。この前もくじ引きで決めたバスの席を譲ろうとしたんだけど、不正だからダメだって三船に怒られちゃったんですよ。堀口の隣っていうプレミアチケットなんだから遠慮せず受け取ればよかったのに」

「……」

「そのくせヘタレだからなー。ここしかないだろってタイミングなのに日和って話題逸らすんですよ。で、堀口と別れた後落ち込んでですねぇ……ま、そこがあいつの可愛いとこなんですけどね」

 

 うーん……どんどん情報が出てきて愛さんあんまりついていけてないんだけど、あの三船さんって子は元樹のことが好き、っていう認識でいいのかな? しかもクラス公認? これはりなりーに教えてあげないとなぁ……。

 

「でもこの前元樹の友達みたいな子達来てたじゃん?」

 

 別の子が来てこんなことを言い始めた。元樹の友達……? 誰のことだろう。りなりー?

 

「ああ、あのうるさいショートボブの可愛い子か。すぐ帰ってったけど。名前なんだっけ?」

「えーっと、かすみたいな名前じゃなかった?」

「もしかしてだけど、自分のことかすみんって呼んでなかった?」

「あっ! 確かにそう言ってました!」

「よくわかりましたね」

「愛さんの友達だからね」

 

 そっかぁ、この子達が言ってた友達ってかすみんのことだったのかぁ。愛さんから見るとかすみんも結構怪しいんだよね。しずくやせっつー並に距離が近いし……。

 

「そのかすみんって子と元樹ってどんな関係なんだろうな」

「さぁ……いうてただの友達だろ」

「でもそれにしてはやけに親し気な雰囲気出してなかった? なんかあだ名で呼んでたし。滅茶苦茶変なあだ名だったけど」

 

 確かに元樹とかすみんは仲良しだね。同好会の中だとりなりーの次くらいには仲良しかも。抱きついたり頭を撫でてもらってたり、もしかして付き合ってる? と時々思わされるくらいには仲がいい。

 

「三船はあの子のことどう思ってるんだろ……やっぱり警戒してんのかな?」

「どうなんだろ……まぁ多少は警戒してんじゃないか? 交友関係は気にしないって口では言ってるけど、あいつ絶対気にしてるだろ。なんだかんだ嫉妬深いし」

「あー……最近鳴りを潜めてたから忘れてたわ。懐かしいな、『しおにゃん威嚇事件』」

「しおにゃん……? 威嚇事件……?」

 

 聞きなれない言葉に思わず聞き返す。しおにゃんっていうのは三船さんのことでいいのかな?

 

「あ、そっか。俺ら以外は知らないに決まってますよね。聞きます?」

「聞く聞く! 愛さんにも教えて!」

「まぁ大した内容ではないですけどね。ある日突然三船が堀口と仲良く話してた女子に威嚇し始めたってだけですよ。八重歯をチラ見させて、爪も立てて、こうシャーっと」

「その様子が猫みたいだったからしおにゃん威嚇事件。いやー、今思い出しても面白いな。あんな威嚇してたのに、元樹に頭を撫でてもらった途端表情が和らいだからなぁ」

「そこも猫っぽいよな。猫飼ったことないから知らないけど」

「俺も猫アレルギーだから知らん」

 

 猫っぽい子なのかぁ……そういえば元樹ってどっち派なんだろう? りなりーはアランっていう名前の猫を飼ってるみたいだし、元樹も猫派なのかな?

 

「おーい、もう始めるから並べー!」

 

 もう始まっちゃうのかぁ、まだまだ聞きたいことたっくさんあったのになぁ……。ま、おっきな情報は聞けたしそれでいっか!

 

「いろいろ教えてくれてありがとね」

「はい! 宮下先輩のお役に立てて光栄です! スクールアイドル応援してます!」

「うん! よろしくね!」

「……え、ちょっと待って。今のが宮下先輩?

そうだよ

 

 自分のクラスの列に並んで座る。先生の話を片耳で聞きつつ、1年生の列から元樹を探す。でも見学だからか列には混じっていないみたい。近くにいたらお話しできたのになぁ……。まぁ『ほ』と『み』だからそうそう近くにはならないか。

 

「……あ」

 

 適当にグラウンドの端を見回していると、ほんとに隅っこの方に元樹を見つけた。向こうもアタシの方を見ていて、こんなに離れているのに目が合った。それがわかった途端ニコリと笑って大きく手を振ってきた。先生に見られたら怒られるだろうけど、この先生は見学の子なんて全く気にしないので大丈夫。きっと元樹もそれをわかっているのだろう。あの子頭の回転速いもんね。

 

愛先輩

「ん?」

 

 何か言ってる……? ううん、あれは口パクかなぁ。何度もやってくれてるけど、動きが速くてさすがに何を伝えたいのかわからない。首をかしげてそれを伝えると、察してくれたのか今度はゆっくりと口を開いた。

 

あ、い、せ、ん、ぱ、い

 

 もしかして愛先輩って言ってる? ずっとアタシのこと呼んでくれてたのかー。気づけなくて申し訳ないことしたなー。じゃあお詫びに今度が愛さんが元樹の名前を呼んであげよう!

 

も、と、き

 

 先生にバレるといけないので同じく口パクで。サービスで小さく手も振ってあげる。それに気づいた元樹は少し照れ臭そうに頬を掻いた。

 う~ん……りなりーが好きになる気持ちわかっちゃうな~。なんていうか元樹って子供っぽいんだよね~。今のとかもそうだし、せつ菜とかっこいいセリフを1時間くらい考えてたり。でもアタシを励ましてくれたり、真面目な話し合いをする時なんかはアタシよりも大人っぽくて……そんな元樹を知っていると、普段の子供っぽい姿が余計に可愛く見えちゃう。

 

「愛ちゃんどうしたの?」

「んー? 友達と話してるんだよー」

「へー、友達ってあの見学の子?」

「うん、そうだよ」

「あの子1年生だよね? 愛ちゃんってほんといっぱい友達いるよねー」

「そうかなー? でもあの子と会ったのはつい最近だよ」

「ふぅん、どんな子なの?」

「どんな子……どんな子かぁ……」

 

 面白い子っていうのは少し抽象的だし、可愛い子、かっこいい子っていうのも間違ってはないけど……。

 

「う~ん……」

「愛ちゃんが悩むほど個性のない子なの?」

「ううん、むしろ逆。個性満載だから何を言おうか迷って……あ、そうだ。あの子はね、すっごいモテモテな鈍感さんなんだよ」

 

 うん、これが一番いい気がする!

 

「モテモテ? 鈍感? そんな子ほんとにいるんだ……なんか創作の世界の中の子みたいだね。愛ちゃんもその子のこと好きなの?」

「ふぇっ!?」

 

 あまりにも唐突だったのでついつい大きな声を出してしまった。まだ話を続けている先生にも余裕で聞こえちゃう声量だ。

 

「おい宮下、先生の話はちゃんと聞け」

「あはは、すみませーん」

「まったく……じゃあ話を続けるぞ」

 

 怒られちゃった。元樹に変なとこ見せちゃったなぁ……。少し頬を膨らませて隣の美緒に不服を伝える。

 

「ふふっ、こんな表情の愛ちゃん初めてかも」

「もぉ……」

「それでそれで? あの子のこと好きなの?」

「ま、まだ出会ったばっかりだし、それに……」

 

 元樹はりなりーの好きな人だ。アタシが元樹に会う前からずっとずっと好きなんだろう。親友の好きな人を奪う気になんて到底ならないし、アタシはりなりーの恋を応援してあげたい。だから元樹のことを好きになるなんてありえない。もちろん友達としては大好きだけど!

 

「何言ってるの。恋に時間なんて関係ないんだよ? 相手が素敵な人なら、一緒に過ごした時間なんて関係なく突然好きになっちゃうものなの」

「確かに心惹かれる部分はあるけど……」

「じゃあ思い切って付き合っちゃえばいいじゃん」

「つっ……!」

「愛ちゃんは一緒にいて楽しいし、すっごい美人だし、おっp……スタイルも抜群だから、『試しに付き合ってみない?』みたいなラフな感じでもきっとOKもらえるよ」

「さすがにそれはないんじゃないかな……。それにOKを貰っちゃったら困るというか、あの子とは付き合えないというか……」

「何か理由でもあるの? もしかして彼女持ち?」

「まぁ、そんな感じかな」

「ふぅん……」

 

 美緒は少し悩んだ後、何か言いたげな表情でこちらを見てきた。

 

「よし、じゃあ準備運動してからランニング3周だ。サボらずちゃんとやれよー」

『はーい』

「……ま、後でいっか」

 

 た、助かった……このまま続いてたら何を言われていたかわからない。それに何故かアタシが元樹のこと好きな前提で話が進んでるし……。

 

「ん~っ」

 

 念入りに準備運動をして体をほぐしていく。さっきまで変な話をしていたせいか、妙に体を動かすのが楽しい。

 

「よしっ、走ろう!」

 

 十分準備運動をしたのでランニングを始める。周りも同じタイミングで走り始めていたので、飛ばしすぎないよう周りのペースに合わせて走る。頭を空っぽにして全力で走るのも好きだけど、この後のテニスで元樹にかっこいいところを見せたいから、ここではまだ体力を温存しておく。

 

「ねぇねぇ愛ちゃん」

 

 大体1周目の半分くらいに差し掛かったタイミングで、後ろから追いついてきた美緒が話しかけてくる。

 

「さっきの話の続きなんだけどね」

「そ、その話はやめにしない……?」

「ダメだよ。あの子のこと好きなんでしょ? だったら我慢なんかしちゃダメだよ」

「そういうわけじゃ……」

「彼女持ち、なんだっけ? でもそんなの関係ないよ。好きなんだったらどんな手を使ってでも手に入れなきゃ! 略奪愛だよ!」

「りゃくだつあいぃ!?」

 

 つまり愛さんがりなりーから元樹を奪って付き合うってこと……だよね?

 

「そんなの無理だよぉおおおおお!」

「ちょっ、愛ちゃん!」

 

 全力を出して美緒を振り切る。この話題から逃げたい気持ちもあったし、頭を空っぽにしてこの変な気持ちを頭の中からかき消したかった。

 顔が熱い。胸がドキドキする。きっと運動のせいだけじゃない。どれだけ考えないようにしても元樹のことが頭に浮かんでくる。これも全部……あー全然空っぽにできない! いつもならできるのに~!

 

「はぁはぁ……」

「今日は宮下が一番だな。ってどこまで行くつもりだ」

「……え?」

 

 先生の言葉に振り返るとすでにスタートラインを通り過ぎていて、どうやらもうグラウンド3周走り終えていたようだ。負担がかからないようにゆっくりとペースを落とす。

 

「随分と速いペースだったようだがどうかしたか?」

「あはは、ちょっとペース間違えちゃって……」

「……まぁちゃんと走っているようだからなんでもいいが。だが怪我だけはしないよう気をつけろよ」

「はーい!」

「あと先生の話はちゃんと聞くように」

「は-い……」

「あの後もまだ隣と話してたろ。いつもはちゃんと聞いているから今回は許すが、来週はちゃんと聞けよ?」

「はーい、わかりましたー!」

「じゃあ他のやつらがある程度走り終わるまで休んでていいぞ」

 

 うーん、休んでていいって言われてもなぁ。今はもっと体を動かしたい気分だし……壁打ちでもして待ってようかな。

 

「愛先輩、愛先輩」

 

 アタシの名前を呼ぶ声が聞こえ、そちらを見ると元樹がニコニコしながら手招きをしている。さっきの話題のせいもあり顔を見るだけで少しドキドキしちゃうけど、無視するわけにもいかないので元樹のいる木陰まで歩いていく。

 

「愛先輩こんちはー」

「ち、ちーす……」

「……愛先輩?」

 

 どうしよ……何を話せばいいか全くわからない。

 

「どうかしましたか?」

 

 いつものように言葉がすらすら出てこない。こんなの初めて……と、とにかく何か話題を見つけないと。

 

「あっはっはー、先生に怒られちゃったよー」

「ああ、そういえば怒られてましたね。愛先輩でもあんなことあるんだなーと少し意外でした」

「まぁでもああやって怒られたのは初めてかな」

「そうですよね。愛先輩って普段からちゃんと先生の話とか聞いてそうですし」

 

 元樹は……うん、聞いてたり聞いてなかったりしてそうだね。普段はちゃんと聞いてるけど、たまに考え事とかしてて聞いてない時がありそう。勝手なイメージだけどね。

 

「愛先輩はランニングしないんですか? みんな走ってますよ?」

「ランニング? それならもう終わったよ」

「え、もうですか? さすが愛先輩……俺だったら今頃最後尾でひぃひぃ言ってるだろうなぁ

 

 びっくりするくらい体力ないもんね……。でもみんなと一緒にランニングしたり、体力をつけようと頑張ってるから、きっとすぐに効果が出てくると思う。

 

「それにしてもビックリしたよ。今日は合同で体育とは聞いてたけど、まさかそれが元樹のクラスとだなんてさー」

「俺もビックリしました。まさか愛先輩と一緒になるとは……こんな偶然あるんですね」

「元樹にいっぱいかっこいいところ見せないとね。よーし! 愛さん張り切っちゃうぞー!」

「……そういえば、愛先輩がスポーツするところ何気に見たことありませんでしたね。今日は何するんですか?」

「今日はテニスだよ」

「ふーん、テニスかぁ」

「元樹はテニスしたことある?」

「現実ではないですね。テニスゲームなら昔璃奈と何度もやったことあるんですけどね。いやーあれは楽しかったなぁ」

 

 元樹は昔を懐かしむように空を仰いでいる。口元がわずかに綻んでいて、元樹にとって大切な思い出なんだということが伝わってくる。愛さんには幼馴染がいないからわからないけど、りなりーと元樹、ゆうゆと歩夢を見ていると幼馴染というのはお互いにとってとっても大きな存在なんだなーと思わされる。

 

「テニスって楽しいんですか?」

「テニスはすっごく楽しいよ! アタシが教えてあげるから、今度一緒にやろうね」

「ぜひぜひ! 愛先輩の指導があれば俺でもなんとかなりそうです」

「おぉ、嬉しいこと言ってくれるじゃん。このこの~……あっ、そうだ。足の調子はどう? だいぶ良くなった?」

「んー、だいぶ治ってはきましたね。普通に歩くだけなら痛みはないです。保健室で先生に言われたので念のため今日は見学してますけど」

「よかったぁ……実は明日のことちょっと迷ってるんだよね」

「えっと……明日のことっていうのは一緒に運動しようって話のことですよね? 迷ってるというのは……」

「んーとね、運動するかどうか」

「……んへ? もともと運動するって目的でしたよね……?」

「そうだけど、元樹が足怪我しちゃったし……」

 

 足を怪我してるのに運動なんてもってのほかだ。無理に運動した結果さらにひどい怪我をしてしまう可能性だってある。

 

「いやでももうすぐ治りますよ? 明日にはもう完治ですよ? 保健室の先生にも3日で治るって言われましたし」

「でも治ってすぐに運動ってあんましよくないじゃん? だから……」

 

 最後まで言葉を紡ぐ前に元樹が腕にギュッと抱きついてきた。

 

「嫌です! 愛先輩とお出かけしたいです!」

 

 その表情は今にも泣きだしそうで、今まで見たことのないような表情に心をくすぐられる。

 

「……そんなに慌てなくて大丈夫だよ。運動するのをやめるだけで、お出かけまでやめるつもりなんてないから!」

「ほんとですか?」

「ほんとだよ。愛さんも元樹とお出かけして、お互いのこともっと知りたいもん。これから一緒に同好会で頑張っていく仲間だもんね」

「……そうですね。俺ももっと愛先輩のこと知りたいです」

 

 元樹もアタシと同じ気持ちでよかった。

 

「実はアタシの実家がもんじゃ焼き屋さんなんだけど、もしよかったら明日遊びに来ない? 愛さんが美味しいもんじゃをお腹いっぱいご馳走してあげる!」

「へぇ、実家がもんじゃ屋さんなんてすごいですね」

「もんじゃ好き?」

「はい、大好きです」

「よかった。うちのもんじゃは他とはひと味違うから期待してもいいよ」

「それは楽しみです」

 

 本当に楽しみなのか、口の端から少しよだれを垂らしている。そんなに楽しみにされると少し緊張しちゃうなぁ。

 

「そうだ、一昨日話したぬか漬けも一緒に出してあげるね」

「ぬか、漬け? なんの話です?」

「え~、もしかして忘れちゃった?」

「……何のことやらさっぱり。そんな話しましたっけ?」

「……もしかして元樹ってちょっと忘れっぽい?」

「そうかもしれません……」

 

 ちょっと意外かも……元樹って細かい出来事とかも覚えてるーみたいなイメージがあったけど、こんな風に忘れちゃうこともあるんだね。

 

「アタシとの約束は忘れてもいいけどさ、りなりーとの約束は絶対忘れたらダメだからね。りなりーに嫌われちゃうよ?」

「うーん……まぁ気を付けるようにします」

 

 でもきっとりなりーはそんな元樹も含めて大好きなんだろうなぁ。誰よりも元樹との付き合いの長いりなりーが知らないわけないもんね。

 

「さてと、愛さんそろそろ行ってくるね。元樹も楽しそうだからってテニスしちゃダメだよ?」

「そんなことしませんよ……」

「じゃあまた部活でね。バイバーイ!」

「はい、また部活で」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part41/n

最後に本編を投稿したのは4月らしくてびっくらこいたので初投稿です。


もうすぐお気に入り1000件到達ってマジ?
こんなクソ雑魚投稿頻度で申し訳ない……。


ところで、皆様はもうアニガサキ10話はご覧になられましたか?
私はまだ見れていません(小声)


 先輩に囲まれてあっちもこっちもいやらしか〜なRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は謎体育イベにより栞子ちゃんと愛さんの想定外の邂逅が発生してしまいました。今回はその続きからで、ほも君には放課後恒例の部活動に参加してもらいます。

 なんだか久しぶりの部活な気がしますね。昨日はモデルのお仕事で参加できませんでしたから。動画のPartで言うと、前回部活に参加したのはなんとPart28のようです。そんなに昔の話だったのか……(困惑)

 

「あら、元樹君じゃない」

 

 おっ、部室等までの移動中に果林さんに遭遇しました。こんにちは。迷子ですか?(煽り)

 

「こんにちは。元樹君も今から部活?」

 

 そうだよ(便乗) 果林さんは迷子ですか?(煽り)

 

「よければ一緒に部室まで行かない?」

 

 いいよ! (ついて)来いよ!

 

「ふふっ、今日も元気ね」

 

 それじゃあ急いで部室までイクゾー!デッデッデデデデ!(カーン)

 

「まあまあ、そんなに急がなくてもいいじゃない」

 

 急いで移動しようとしたのですが、果林さんに腕を掴まれて止められてしまいました。なんで止める必要なんかあるんですか? RTAなんだから急ぐに決まってるだルルォ!? それにイクゾーキャンセルはレギュレーションで禁止されてますよね?

 レギュレーション違反の罰として果林さんはこの世のありとあらゆるクソゲーRTAの刑ゾ。負けず嫌いな果林さんなら当然全部ワールドレコードを目指してくれますよね? すでにサ終しているゲームについてはりなりーにお願いして再現してもらいます。頑張れりなりー。完走するまでずっとほも君の部屋で2人っきりでRTAし続ける果林さんに負けるなりなりー。

 

「いつも誰よりも早く来て準備してくれてるのだから、今日くらいはゆっくり行ってもバチは当たらないんじゃない?」

 

 バチは当たらなくても、タイムにじわじわとダメージが蓄積されるんだよなぁ……。

 

「それにそんなに急ぐと足によくないわよ?」

 

 むっ、確かにそうですね……。足によくないのは困ります。非常に困ります。きちんと治らないと練習に参加できませんし、練習に参加できないと効率よく筋力と持久力を上げることができません。つまりほも君は一生クソ雑魚のままになってしまうのです。りなりー達はそれでも問題ないかもしれませんが、チャートが壊れてしまうので私は困ってしまいます。というわけで果林さん、ほも君をおんぶして部室まで連れていってください。

 

「さらっとすごい要求してくるわね……」

 

 ほら早くおんぶしてくださいよ。私は早く部室に行きたいんですよ。ホラホラホラホラ。

 

「何か急がないといけない理由でもあるの?」

 

 実は今日から侑ぴょん先生による熱烈作曲指導が始まるんですよ。私も見たことないのでイベント完走までにどれほどかかるかわからないため、作曲の勉強にかける時間はなるべく多くとりたいのです。だから部室まで急ぐ必要があったんですね。

 

「そうな……ちょっと待って。元樹君が作曲するの?」

 

 そうだよ(肯定)

 

「今の言いぶりだとまるで作曲経験がないように聞こえたのだけれど……」

 

 (私もほも君も作曲経験なんて)ないです。

 

「ライブまでもう1ヵ月なのよ? 練習のことを考えると1週間前には曲を完成させておくべきだし……本当にできるの?」

 

 やろうと思えば(王者の風格) それにほも君が完成させられなければ代わりに侑ちゃんが完成させてくれるはずなので無問題ラ! それに侑ちゃんも完成されられなかった時はかすみんがライブに参加できず、このほも君がゲームオーバーになるだけですしお寿司。

 

「……まあいいわ。元樹君の挑戦を邪魔するつもりなんてないし、それに君ならきっと期限までに最高の曲を作り上げられると思うわ」

 

 随分とほも君のことを信頼してくれてるんですね。

 

「当たり前よ。きっと同好会の皆も同じことを言うと思うわ」

 

 果林さんはいつもさらっと恥ずかしいことを言ってきますね。て、照れますよ……。

 

「あら、今ので照れちゃったの? 相変わらず照れ屋さんね。そういう可愛らしいところも好きよ」

 

 何だお前(素) 気軽に好きなんて言っちゃダメだルルォ!? 『あれ? もしかして果林さん俺のこと好きなのかな?』なんてほも君が勘違いしたらどうするつもりなんですか! 『あれ? もしかして果林さん親密度もう稼ぐ必要ないのかな?』なんて私が勘違いしたらどうするつもりなんですか!

 

こういうところはまだまだ子供ね

 

 朝起きられなかったり、負けず嫌いがゆえにゲームでムキになったり、果林さんも結構子供っぽいと思うんですけど(名推理) 私は3日に1回はちゃんと朝起きられますし、RTAを走っている時以外はゲームでムキになったりしません。私の勝ちですね(適当)

 

「そういえばかすみちゃんとのお泊りはどうだったの?」

 

 楽しかったですよ。一緒にライバルの研究をしたり、かすみんの手料理を食べさせてもらったり。

 

「あら、いいじゃない。かすみちゃんも頑張ってるのねぇ」

 

 あといっぱいキスしましたよ。

 

「キッ……そ、そうなのね。ふーん、そうなのね……」

 

 それからお風呂も一緒に入ってお互いの体を洗いっこしました。

 

「へ、へぇ……大人なのね……」

 

 実はピュアピュアな果林さんは今の話を聞いてほんのり顔を赤らめています。でも大人の階段はまだ上って)ないです。かすみんはまだ15歳だし、胸も小さいし、人のお尻に勝手にコッペパン突っ込むし、体がまだ出来上がってないからほも君の猛烈な攻めと快感に体が耐えられないからね、しょうがないね。でも果林さんなら大歓迎ですよ。果林さんもパンダプレイ、しよう(提案)

 

「あっ、元樹君! 果林ちゃん!」

 

 おっ、エマさんともばったり遭遇しました。移動中にこんなに誰かと出会うのはかなり珍しいですね。らべぱと^~(気さくな挨拶)

 

「こんにちは、エマ。今日も元気ね」

「うん! だってこれから部活だもん! 2人も今から部活?」

「そうよ」

 

 そうだよ(便乗) 果林さんにおんぶしてもらって部室まで運んでもらう予定だったんです。

 

「そんな予定ないわよ」

 

 そんなぁ……。

 

「じゃあ果林ちゃんの代わりにわたしがおぶってあげようか?」

 

 えっ、エマさんにおんぶしてもらえるんですか!? オナシャス! センセンシャル!

 

「うん、いいよ。おいで~」

「やめておきなさい。エマもだけど、元樹君はもう少し周りの目を気にした方がいいわよ」

 

 なんで周りの目なんか気にする必要があるんですか? RTAのためなら全てを犠牲にすべきってそれ一番言われてるから。

 そういえば彼方さんはどこにいるのでしょうか? 果林さんエマさんときたら彼方さんだと思っていたのですが……なかなか遭遇しませんね。

 

「彼方ちゃんはもう部室でお昼寝してるんだって」

 

 なるほど、練習前に休息をとっているということですね。つまり気持ちよくおねんねしている彼方さんに気持ちいいことができるってコト!? ですが果林さんとエマさんがいるのでバレずに襲うのは難しそうです。久し振りに彼方さんの煩悩満載エチエチボディを堪能させてくれ頼むよ頼むよ〜。

 

「そうこうしている間に着いたわね」

 

 ようやく部室に到着しました。ヒロインとの遭遇イベントが発生したためいつもより時間がかかってしまいました。その時間に見合うだけの親密度を稼げていればいいのですが……。

 

「なんだかいつもより部室までの道のりが短く感じたよ〜。やっぱり友達とお話しするのって楽しいね」

「そうね、私も楽しかったわ」

 

 そんな話はしなくていいから(人間の屑) 早く部室に入らせてくれ、もう待ちきれないよ!

 

「はいはい。ワクワクするのはわかるけれど、もう少し落ち着いた方がいいわよ」

「元樹君も部活が楽しみで仕方ないんだね。わたしと一緒だねぇ」

「……まぁエマもすぐにわかると思うわ」

「? よくわからないけど、とにかく中に入ろ! 皆、こんにちは~」

 

 エマさんが元気よく扉を開けて挨拶をしています。エマさんは今日も元気で可愛いですね~大食いして♡

 

「あっ、エマちゃん。それから果林ちゃんにもと君も~」

「あれ、彼方ちゃん?」

 

 なんと部室で出迎えてくれたのは彼方さんでした。エマさんからはすやぴしていると聞いていたのですが……。

 

「うーん、彼方ちゃんもほんとはすやぴするつもりだったんだけどね~。先にかすみちゃんが来てて、何やら忙しそうにしてたからその手伝いをしてたんだよ~」

 

 ほう、かすみんがですか。何を忙しくしてたんですか? 勉強?

 

「ん~……もと君にはまだ秘密かなぁ。かすみちゃんが戻ってきたら直接聞くといいよ」

 

 なんで焦らす必要なんかあるんですか? 今教えてくれたっていいじゃないですか。

 

「ふぅん、なるほどね」

 

 果林さんは勝手に1人で納得しています。エマさんはよくわかっていないようで、頭にはてなマークを浮かべて首をかしげています。彼方さんだけ知っていて、果林さんだけ納得しているのはズルいですよ。私とほも君とエマさんにも教えてください。

 

「私もかすみちゃんに直接聞く方がいいと思うわよ。その方があの子も喜んでくれるわ」

「……よくわからないけど、かすみちゃんが喜ぶなら、わたしもそっちの方がいいと思うなー」

 

 三大欲求組にそう言われたら従うしかありませんね……。ここは変に粘らずにおとなしく彼方さんの言うことに従うべきだったかもしれません。今後への反省点です。

 

「それはそれとしてぇ、彼方ちゃんすっごく頑張ったんだよね~。だーかーらー、もと君からご褒美が欲しいな~」

 

 そんなことを言いながら彼方さんがギュッと抱きついてきました。先輩!? 何してんすか、やめてくださいよ本当に!(建前) じゃあ2人でトイレの個室に入ろうか(本音)

 

「か……」

 

 廊下からバサバサと何かが落ちる音がしましたね。誰なのでしょう。振り返って確認したいのですが、彼方さんのいい匂いに惹かれて振り向けません。

 

「かか、彼方先輩ぃぃぃぃ!?」

 

 おっ、この声はかすみんみたいですね。どうやらこの状況の彼方さんに驚愕しているようです。まぁそりゃそうですよね。だって部室に来たら自分の大好きな人に部活の先輩が抱きついているんですから。

 

あ、しまった……」

 

 ちょっと待って。彼方さん今小声でしまったって言いましたよね? つまりほも君のことを好いてる子達に隠れてイケナイことをしている自覚はあったわけですね? ということは今からほも君が彼方さんにイケナイことをしてもいいってコト!

 

「もと男と彼方先輩ってもしかして……」

「だいじょーぶ。彼方ちゃんともと君は付き合ってないよ〜」

「……だったら一度元樹君から離れたら?」

 

 そうだよ(便乗) 彼方さんがずっとひっついたままだからかすみんが唸ってますよ。離れてくれないと困るんだよ〜。

 

「この後もと君を抱き枕にしてお昼寝するからダメ〜。もと君は彼方ちゃんと一緒にすやぴする運命なんだぜ」

 

 (そんな運命ありえ)ないです。……とも言い切れないんですよね。ほも君と彼方さんは後々結ばれるわけですから、当然すやぴだってします。すやぴ(意味深)だっていっぱいします。これはもう彼方さんの言う通り運命ですね。

 

「むぅ〜! エマ先輩達からも何か言ってあげてください!」

「何かって言われても……あ、そうだ! 2人ともあたしのお膝使う?」

「使う〜」

 

 ほも君にも使わせてほしいです。

 

「そうじゃないですぅ〜!」

「かすみちゃんは何をそんなに焦ってるのかなぁ〜?」

「え゛っ! それはそのぅ……」

 

 何故か彼方さんがかすみんを攻め込んでいます。やめろォ(建前) ナイスゥ(本音)

 

「彼方、その辺にしてあげなさい」

 

 見かねた果林さんが彼方さんを止めようとしています。ナイスゥ(建前) やめろォ(本音) 多少強引なやり方だったとしても、それでかすみんが告白してくれるのであれば私は嬉しいんですよ。私もハッピー、かすみんもハッピー、これでいいじゃないですか。まぁりなりー達はアンハッピーですがね。ですがそれは一時的なものなので我慢していただきましょう。

 

「果林ちゃんが言うならしょうがないなぁ」

 

 おっと、逃がしませんよ。私はまだかす虐……じゃなかった、彼方さんとひっついていたいのです。ほも君の腕を彼方さんの体に回して抱きしめてあげましょう。

 

「なぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「わぁ……」

「あらあら」

 

 かすみんが何やら叫んでいますが無視します(鬼畜) あっ、おい待てぃ(江戸っ子) ほも君の筋力だったら彼方ちゃんに振り解かれちゃうだルルォ!? とお考えの視聴者兄貴もいるかと思います。確かにおっしゃる通りで、彼方さんがその気になれば普通に引き剥がされます。ですが心配することなかれ。

 

「ふぇ……?」

 

 ご覧のように、ウブな彼方さんは自分から抱きしめてくるくせに、ほも君から抱きしめられると動きが硬直してしまいます。だからほも君の筋力でも問題なかったんですね。

 

「もと君……?」

 

 顔を真っ赤にしながら困惑する彼方さんは可愛いですね。いっそのことこのままキスでもしてしまいましょうか。

 

「ちゅ、ちゅーはダメ!」

 

 おっと、キスしようとしたら引き剥がされて、手の届かないところまで逃げられてしまいました。悲しいなぁ……。いずれ彼方さんの方から求めてくるようになるんだからしてもだルルォ!?

 

「も、もぉ、先輩をからかっちゃダメだよ〜」

 

 彼方さんもさっきかすみんのことからかってたじゃないですか(正論)

 

「もと男ぉぉぉぉぉ!」

 

 今度はかすみんが後ろからタックルを仕掛けてきました。そんなことしたら危ないだろ!

 

「かすみちゃん、そんなことしたら危ないよ。元樹君大丈夫?」

 

 大丈夫っすよバッチェ堪えてますよ。痛くなかったといえば嘘になりますが。

 

「かすみんの前で何やってるのさ!」

 

 何って、先輩後輩の単なる戯れですが? それにかすみんの前じゃなかったらOKみたいな言い方でしたが、ほも君と彼方さんがトイレの個室で抱き合っているのはいいということですか?

 

「そういうことじゃないけど……」

「まぁまぁかすみちゃん、たまにはいいんじゃない?」

「たまにじゃないですよぉ。もと男はいっつも誰かとイチャイチャしてるんですもん……」

「……確かにそうね。皆よく我慢してるわ……」

 

 これからもっと酷くなるのですが、果たして少女達は耐えきることができるのでしょうか……。まぁ耐えきれなかったらリセットするだけなんですけどね。

 

「あれ? 皆入り口で何してるの?」

 

 おっ、今度は侑ちゃんと歩夢ちゃんが部室にやってきたようです。おっはー!

 

「うん、こんにちは。それで……これはどういう状況なの? かすみちゃんは涙目だし、彼方さんは寝てるし……」

 

 え、彼方さんが寝てる? ……ほんとですね。エマさんに膝枕をしてもらってソファーで寝ています。いつの間にすやぴしていたんだ……。

 

「うわーん! 侑せんぱぁい!」

「わっ! か、かすみちゃん? どうしたの?」

「もと男が……もと男がぁ!」

「……もと君、かすみちゃんに何したの?」

 

 別に何もしてないですよ(大嘘)

 

「歩夢、少し耳を貸してちょうだい」

「えっと、わかりました」

「実は……」

 

 果林さんに何か耳打ちされている歩夢ちゃんでしたが、だんだんと頬が紅潮してきました。

 

「えっと……そ、そういうことはもっとちゃんとした場所でした方がいいと思う……よ?」

 

 そんなに顔を真っ赤にしちゃって、歩夢ちゃんは一体何を吹き込まれたんですかねぇ……。

 

「もと君、そろそろ練習の準備しないと」

 

 そうですね。早速準備を……あれ? よく見たらもう準備終わってませんか?

 

「あ、ほんとだ……。もと君がやってくれた……んじゃないんだよね?」

 

 そうだよ(困惑)

 

かすみん……」

「ん? かすみちゃん、今何か言った?」

「かすみんと彼方先輩でやったんだもん……」

 

 なんとかすみんと彼方さんの2人で練習の準備をやってくれていたようです。はぇ~、かすみんが忙しそうにしていたというのはこのことだったんですね~。ほらほら、よしよししてあげるからこっちおいで。ホラホラホラホラ。

 

「ぷんっ、もと男なんて知らない! 侑先輩にいっぱいほめてもらうもん!」

「あはは……」

 

 おとなしくほも君の方に来た方がいいですよ。歩夢ちゃんが乾いた笑いをしながらジッとかすみんのことを見ていますから。

 

 

 

「さて、今日からもと君は私と作曲の勉強だね」

 

 練習前の軽いミーティングを終えて、侑ちゃんと2人で部室に残って作曲のお勉強です。頑張るぞー! えい、えい、サー!

 

「と、その前に少し予定を確認したいんだけどいいかな?」

 

 昼休みに見せてくれたやつのことですかね?

 

「そうだよ。でもあれは急ぎで作ったものだったから、もう少し練ったものを昼休みの後考えたんだ」

 

 昼休みの後って、もしや授業中に考えたんじゃないでしょうね?

 

「チガウヨ?」

 

 嘘つけ絶対授業中にしてたゾ。昼休みはほも君に『授業を聞かないとかは……勘弁してくださいね』なんて言ってたのに、侑ちゃんは授業聞かずにやっちゃうんですね~?

 

「うぅ~、やっぱりもと君にはバレちゃうかぁ。歩夢には秘密ね」

 

 あっ、いいっすよ(快諾) ほも君のためにやってくれたことですからね。歩夢ちゃんに告げ口するようなことするはずありません。無駄なイベントも発生してしまいますし(小声)

 

「ありがとっ。それじゃあざっと予定の確認しちゃうね。今日はこのまま部活終わりまで勉強で、明日は準備とかいろいろしたいから休みね。明後日はエマさん達とピクニックに行く日だから休み。ここまではお昼休みに渡したのと変わらないよ」

 

 変わったのは来週からの予定ですか?

 

「うん。いろいろ考えたんだけど、やっぱり残り3週間部活の時間だけで作曲できるレベルまでもっていくのは難しいかなーってなって。私も教えるのにはあんまり自信ないし……」

 

 そんなことありませんよ。侑ちゃんはきっと教え上手です。天然褒め上手ですからね。かすみんあたりはすぐにやる気になるでしょう。

 

「……そういうもと君も天然褒め上手だと思うよ」

 

 (私は皆を堕とすために意図的にやっているので天然じゃ)ないです。

 

「話を戻すね。もと君に家で自習してもらうって案も考えはしたんだけど、教科書があるとはいえ自習はかなり大変だし、間違った理解をしちゃってそのまま進まれると困っちゃうし……」

 

 でもやらないと時間が足りないんですよね?

 

「うん……でも大丈夫! 部活以外の時間でもできて、なおかつ自習にならない最強の方法を思いついたから!」

 

 最強の方法? なんだか頭の悪そうな感じがするのは私だけですかね……。

 

「もと君、来週から私の家でお泊まりしよっか」

 

 へぇっ!? おっ、お泊まりですかぁ!?

 

「うん。私の家なら夜も一緒に勉強できるし、無理しないようしっかり見張ってくれるし、何よりピアノがあるから実践しながら勉強できるからね。最高とまでは言えないけど、悪い環境ではないと思うよ」

 

 侑ちゃんの家で何日もお泊まりとか股間によくないんだよなぁ……。

 

「どうかな?」

 

 もちろん行きます! 行かせてください!

 

「よしっ、来週からお泊まりだね! 頑張ろうね!」

 

 頑張るぞー! えい、えい、

 

「え……」

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




最後の子は一体誰なんだ……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part42/n

初投稿です(原点回帰)


今回はちょっと短いですが、区切りがいいのでこの短さです。

あと、リアル生活の方がそろそろ落ち着くはずなので、また週1投稿を目指します。


 久し振りの1人ぼっちの夜RTA、はーじまーるよー。

 

 前回は彼方ちゃんにイタズラを仕掛けてかす虐した後、侑ちゃんと作曲勉強の予定について話し合いました。今回はその続きからで、とうとう作曲の勉強を始めていきたいと思います。……と、その前に前回の最後に謎の訪問者がいたため、そちらの方を対処しましょう。

 今回もまた何かを落としたような音がしましたし、またかすみんなのでしょうか? 嫉妬ばかりで困るんだよー。おいしずく、なんとかしろ。

 

「あれ、璃奈ちゃん?」

 

 違いました、りなりーでした。落としたものは璃奈ちゃんボードだったんですねー。

 

「もと、き……?」

 

 さて、どうやってこの爆弾(直球)を処理しましょうか……。虹ヶ咲学園には観覧車同好会こそありますが、残念ながら観覧車自体はありませんし……困りますねぇ!

 

「お泊り、するの? 侑さんの家で……」

 

 そ、そうだよ(便乗) りなりーも一緒にお泊りしますか?

 

「………………ううん、やめておく。私がいたら元樹の邪魔になっちゃうから」

 

 そんなことないですよ。むしろりなりーがいてくれた方がほも君のやる気も405倍ですよ。

 

「ありがとう。でも大丈夫。私はかすみちゃんやしずくちゃんとお泊りするから」

 

 あー、そういえばそんな話ありましたね。居残り練習のためにしずくちゃんがりなりーの家に泊まって、除け者みたいで寂しいからってかすみんも泊まるんでしたっけ? 聡明な視聴者兄貴は覚えてらっしゃるかと思います。編集時の私は覚えていませんでした……。

 

「私は練習に戻るから、元樹も作曲の勉強頑張って。あと侑先輩に迷惑かけないように」

 

 おやぁ? 何もしていないのに意外とすんなり解決しましたね。りなりーは幼馴染だけどめんどくさくなくて非常に助かります。ところでりなりーはどうして部室に戻ってきたのでしょうか。

 

「タオルをカバンの中に忘れてた」

 

 なるほど、それは大変です。少し汗が滲んだりなりーはとても魅力的ですが、汗ダクダクりなりーは普通に心配になりますからね。倒れないように気をつけて頑張ってください

 

「うん、頑張る。璃奈ちゃんボード『むんっ』」

 

 りなりーがとてとてと駆けていきました。RTAをしてる時以外は廊下を走っちゃダメだぞ。

 さて、りなりーも練習に戻ったので、私達もそろそろ……って、何笑ってるんですか?

 

「いやー、やっぱりもと君と璃奈ちゃんは仲がいいなーって」

 

 ほんとに仲はよかったですか……? 璃奈ちゃんがムカ着火嫉妬ファイヤーしてたの見てましたよね?

 

「だって璃奈ちゃん楽しそうだったもん。……あっ、もちろんいつもは楽しくなさそうってことじゃないよ? ただ、もと君と一緒の時はいつも以上に楽しそうな感じがして、やっぱり幼馴染なんだなーと思って」

 

 まぁラブライブですからね。ラブライブシリーズには仲の悪い幼馴染なんて存在しないのです。

 

「ごめんね。じゃあ早速始めていこうか。よいしょっと……はい、これ教科書ね」

 

 侑ちゃんから山積みの教科書を渡されました。嫌な予感がするのですが、もしかしてこれを全部やるのでしょうか……。

 

「全部といえば全部だけど、やる必要がないかなーって思ったところは飛ばしていくよ。じゃないと間に合わないからね」

 

 なるほど、侑ちゃん判断ですか。それなら間違いナシですね。

 

「よしっ、今日はこの教科書ね。ほんとに基礎の基礎が書いてある教科書だから、もと君が音楽のことをどれだけ知ってるのか見るからね」

 

 任せてください。ほも君の学力をもってすれば基礎なんてちょちょいのちょいですよ。

 

「ふふっ、その意気だよ。でもわからないところがあったらいつでも聞いてくれていいからね」

 

 

 

「ふぅ……疲れたね」

 

 一気に時間が進みましたね。どうやら勉強中のシーンはカットされるようです。タイム短縮になるのでありがたいのですが、少し残念ではありますね。距離が近いことで有名な侑ちゃんですから、きっとこの時間もほも君と距離が近かったはずです。自然に肩を寄せてきたり、顔を寄せてきたり、下から覗き込んできたり……そんなことをしてきたはずです。それを見られなかったのが残念で仕方ありません。世界の損失ってそれ一番言われてるから。

 

「ん~! 人に何かを教えるってこんなに大変なんだね」

 

 侑ちゃんは自分の肩を揉んでいます。どうやら肩がこったようですね。大丈夫か大丈夫か?

 

「んー、慣れないことしたからなぁ……」

 

 ほも君が揉んであげましょうか? うっかり他のところも揉んじゃうかもしれませんけどねぇ(ニヤニヤ)

 

「いいの? じゃあお願いしよっかな」

 

 よしきた! じゃあじっくり丁寧にモミモミしてあげましょうねぇ!

 

「んっ……もと君肩もみ上手だね。すっごく癒されるよ」

 

 侑ちゃんに喜んでもらえて嬉しいです。もっと味わってくださいね。

 

「ありがと。……もと君、今日はどうだった? 音楽の勉強してて楽しかった?」

 

 楽しかった(小並感) これも侑ちゃんの教え方が上手だったからですね。

 

「そんなことないよ。もと君の吸収力が高かったからだよ」

 

 ほも君はスポンジですからね。何でも吸収してしまいます。

 

「それにもと君ってどんなことでも楽しめるから、こういう勉強とかも楽しめちゃうんだよ」

 

 まぁ私に操作されてますからね。どんなことであろうと楽しませますよ。これも後の天国のためと思えばほも君も我慢してくれるはずです。実際しずくちゃんにフェ〇してもらったり、栞子ちゃんと教室キスしたり、かすみんのボディーを堪能したりしてますからね。その代償です。

 

「それにしても……はぁ~きもちぃ……」

 

 よほど気持ちいいのか、さっきまでは楽しそうだった侑ちゃんが段々とウトウトし始めました。このまま寝ちゃわないでくださいね?

 

「だいじょーぶ……らいじょーぶ……」

 

 ダメみたいですね(諦観) もう呂律が回ってないじゃないですか。

 

「すぅ……すぅ……はっ、ダメダメ」

 

 寝落ちしては起きるというのを繰り返していますね。少しよだれが垂れていて可愛いです。歩夢ちゃん大歓喜の光景です。ですがこのままだと侑ちゃんの顔や制服が汚れてしまうため、指で拭ってあげましょう。その拍子に指が唇に触れちゃったとしても許してくださいね。

 

「んん~……もと君、くすぐったいよぉ……」

 

 侑ちゃんの唇気持ちよすぎだろ! これが男の味を知らない唇かぁ……ってそんなこと言ってないで、早く侑ちゃんに覚醒してもらいましょう。歩夢ちゃんにこの状況を見られたら確実にシバかれます。ほら侑ちゃん起きて~。

 

「わかったぁ、起きるよぉ~……」

 

 伸びをして眠気を覚ましています。ほも君に勉強を教えるのでそんなに疲れたんですか?

 

「う~! 気づいたら4時になってたから……」

 

 4時って……まさか午前4時ですか?

 

「うん」

 

 そんな時間まで何してたんですか? スクールアイドルの動画でも見てたんですか?

 

「もと君の練習メニュー考えてたの」

 

 へっ、もと君のためにそんな時間までやってくれてたんですか?

 

「私もこういうのって初めてだから、もと君に満足してもらえるものにしたかったから……」

 

 うっ(心肺停止) あぁぁぁぁぁ侑ちゃんのこういうとこほんとズルいです。こんなこと言われたら普通に惚れちゃいますよ。しかもさも当然かのような表情なのが歩夢ちゃんポイント激高です。こんなんだから天然タラシだのなんだの言われるんですよ?

 ところで、今のセリフもう1回言ってくれませんか?

 

「ん? 私もこういうの初めてだから、もと君に満足してもらいたかったんだ」

 

 次は恥ずかしそうにしながら言ってほしいです。

 

「えー、なんでー?」

 

 いいからいいから、気にしないでください。

 

「……わ、私もこういうの初めてだから……もと君が満足してくれたら、嬉しいな」

 

 ずっきゅぅぅぅん! つ、次はもじもじしながら!

 

「もじもじしながら……あっ、えっち……」

 

 そ、そんなつもり全くありませんよ?

 

「ほんとぉ?」

 

 本当ですよ。ほも君のことが信じられないんですか?

 

「その言い方はズルいなぁ……」

 

 まぁもちろんそういう意図があったんですけどね。あんなエッチなセリフを吐く侑ちゃんが悪いんですよ。

 

「……もうっ、男の子なんだから……。1回だけだよ?」

 

 やったぜ。

 

「私もこういうの初めてだけど……もと君にき、気持ちよくなってもらえるよう頑張るね」

 

 Foooooooooo! 顔を赤らめて、足をもじもじさせる侑ちゃんは最高や。しかもセリフをそっちに寄せてきたあたりサービス精神旺盛ですね。早く侑ちゃんとそういうことがしたーい!

 

「はぁー、顔が熱いよ……」

 

 まぁそりゃそうですよね。でも侑ちゃんがそういうことを知ってるなんて驚きでした。

 

「私だって一応高校生だし……」

 

 そういえば結構前によくわからないこと言ってましたね。ほも君との夢みたいなのを見たとかなんとか。そういうことをしている夢も見たとか言ってましたし、知識があるのは当たり前でしたね。

 

「ち、知識だけだからね! 経験したことないからそこだけは勘違いしないでね!」

 

 歩夢ちゃんに守られてるし当たり前だよなぁ?

 

「……変な空気になっちゃったけど、片付けしよっか。そろそろ皆戻ってくるだろうし」

 

 そうですね。さっきのやりとりみたいなのをりなりー達に聞かれたらマズいですし、ここら辺で引き下がりましょう。

 

「この教科書はどうする? もと君持って帰る?」

 

 そうですねぇ……勉強する場所は学校か侑ちゃんの家ですよね?

 

「うん。次は来週の部活だから、一旦部室に置いておこうか」

 

 わかりました。そもそもほも君の筋力だと持ち歩けそうにありませんからね。元からほも君が持って帰るという選択肢はありませんでした。

 

「んー! 今日は疲れたなぁ……」

 

 ほも君の肩もみだけじゃ足りませんでしたか?

 

「そんなことないよ。肩こりはとれたし、疲れも癒してもらえたんだけど、やっぱり眠気がね……」

 

 なるほど。眠気はどうしようもありませんよね。

 

「ふわぁ……今日は帰ったらすぐ寝ちゃおうかな……」

 

 ダメですよ。ちゃんとご飯を食べて、お風呂入ってからお布団に入ってください。

 

「はぁい……」

 

 本当に限界なのか立ちながらまたウトウトしています。今の侑ちゃんを1人で帰すのは危ないですね。念のため歩夢ちゃんにお願いしておきましょう。言わなくても2人で一緒に帰るとは思いますけどね、念には念にをです。

 

 

 

 帰宅しました。久しぶりの1人きりの夜ですね。かなり前にやろうとしてできなかった英語の参考書をやり……

 

『prrrrrr』

 

 おっと、ほも君のスマホに電話がかかってきました。一体誰でしょうか。

 

『あっ、元樹? 愛さんだよ。今時間大丈夫?』

 

 電話主は愛さんでした。明日のお出かけ関連の話ですかね? もちろん大丈夫ですよ。

 

『よかった。いやー、集合時間と場所を決め忘れてたからさー』

 

 確かに決めていませんでしたね。いつどこにしましょうか。私としては愛さんの親密度を稼ぐために長い時間一緒にいたいので、できれば午前からお出かけしたいです。

 

『うん、愛さんは大丈夫だよ。そうだなぁ……10時はどう?』

 

 いいよ! こいよ!

 

『じゃあ決まりね! 場所はどうしよっか』

 

 虹ヶ咲学園駅でいいんじゃない?(適当)

 

『りょーかい! じゃあ明日の10時、虹ヶ咲学園駅集合ね!』

 

 集合時間場所も決まりましたし、明日の準備はバッチリですね。愛さんの要件はそれだけですか?

 

『うん、愛さんからはこれだけだけど、元樹からは何かある?』

 

 そうですねぇ……聞きたいこととかは特にないですが、このままもう少しお話ししたいですねぇ!

 

『う~ん……嫌ってことじゃないんだけど、できれば明日いっぱいお話ししたいなぁって。同じ話でも、そっちの方がより楽しくなりそうじゃない?』

 

 どこで話しても一緒じゃない?(素) まぁ愛さんが明日がいいって言うなら明日にしておきましょう。それで喜んでくれたなら親密度も上がるでしょうし。

 ところで愛さんはさっきまで何してたんですか? ほも君は勉強しようとしていたところでした。

 

『アタシはさっきまでお風呂に入ってたよ』

 

 ファッ!? 風呂上がり愛さんとな!? ぜひ! ぜひそのお姿を写真にお納めください!

 

『しゃ、写真? さすがにそれは恥ずかしいかな……』

 

 むーん……まぁ仕方ないですね。だってまだ親密度が足りていないですから。……ほも君の写真と交換じゃダメですか? ダメ? そっかぁ……。

 

『まだ何か決めなきゃいけないことあったかなー?』

 

 ほも君と愛さんの将来について(適当) ほも君が宮下家に入るか、愛さんがほも家に入るか、どっちにするか決めないといけませんよ。

 

『何もなさそうだし、ここら辺でお開きにしよっか』

 

 そうですね。明日も早いですし、ちゃんと寝なきゃダメですからね。

 

『元樹も夜更かししちゃダメだよ』

 

 当たり前じゃないですか。夜更かしなんてしませんよ。スクールアイドルにハマりたての侑ちゃんじゃあるまいし。

 

『じゃあまた明日ね。おやすみ!』

 

 はい、おやすみなさい。いい夢見てね。

 さて、愛さんとの通話が終わりました。最初はこの後すぐに勉強するつもりでしたが、ほも君も就寝してしまいましょう。愛さんとの約束ですからね。約束を守るのが大事って、それ一番言われてるから。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




感想とか評価とかいっぱいほしいな(定期)


12話見ました。一言だけ感想を。
この感じ、3期期待してもいいですか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part43/n

アニガサキ13話最高でしたね。今日の14話も楽しみです。


 美人で運動神経抜群で皆と仲良しな学校中で人気な先輩とのデート前に、先輩の親友で主人公の幼馴染な女の子とイチャイチャしちゃうRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は愛さんと楽しく通話をした後に就寝しました。今回はその続きからで、愛さんと一緒にお出かけしたいと思います。

 

 というわけでおはようございまーす! 13日土曜日、本日も頑張っていきましょう!

 現在の時間は8時ですね。余裕で集合時間に間に合うので、焦らずゆっくりと準備しましょう。ただし30分前には集合場所に着いておく必要があります。やはりノンケたるものデートの30分前には集合場所に到着しておくべきですよね。遅刻なんてもってのほかです。

 愛さんの場合は遅刻しても親密度が下がらず、笑って許してくれます。しかししばらくの間親密度の上昇にマイナス補正がかかってしまいます。いくらぐう聖愛さんでもデートに遅刻してくる人はちょっと……ってことですね。それでも親密度は下がらないあたり十分すぎるほど聖人だとは思いますが。

 

『未読のメッセージが2件あります』

 

 おや? ほも君がすやぴしている間に誰かからメッセージが届いていたようです。朝ご飯を食べがてら確認してみましょう。

 

『元樹もう起きてる? 愛さんはおめめパッチリだよ!』

 

 1通目は愛さんからでした。目覚まし代わりに連絡してくれたようです。果林さんの時みたいに(小声) ちゃんと起きてますよってことを伝えるために、愛さんにメッセージを返しましょう。オッスおはようございま~す。バッチェ起きてますよ~。

 愛さんに連絡しましたし、もう1通の方も確認してみましょう。

 

『やっぱりなんでもない。気にしないで』

 

 うーん……? よくわからない内容ですね。これは……どうやらりなりーからのようです。誤送信かな?

 

『りながメッセージを削除しました』

 

 なるほど、あのメッセージの前にりなりーがメッセージを1つ削除していたようです。ですがこれだけではほんとにただの誤送信だったのか、それともほも君宛てに送ったけど見られたくないような内容だったのか、判断がつきませんね。……無視しても、ええか。よくわからないものには蓋をしておきましょうって果林さんも言ってたような言ってなかったような気がしますし。

 よしっ、朝ご飯も食べ終わりましたし、そろそろ家を出ましょうか。虹ヶ咲学園駅にイキますよ~イクイク……。

 

『元樹さん!』

『今から一緒にお出かけしませんか!』

 

 イかせろよ(半ギレ) 玄関の扉を開けようとした瞬間にせつ菜ちゃんからのメッセージが飛んできました。どうやらデートのお誘いのようですね。文字でも元気が溢れていますが、きっと送る前は葛藤していたでしょう。その光景が容易に想像できて可愛いですね。可愛いせつ菜のためにすぐに返信してあげましょう。お出かけダメです。

 

『そうですよね、元樹さんにも予定がありますよね……』

 

 愛さんという先約がいるので、残念ながらせつ菜ちゃんとデートすることはできません。ごめんね。でも許してくださいね、ファーストキスあげたんだからさ。

 

『急にお誘いしてしまい申し訳ありませんでした』

 

 きっと今頃スマホの画面を見ながらしゅんとしてるでしょうね。せつ菜ちゃん曇らせコラ!

 特に何もしなくても親密度的には問題なさそうですが、それでは恋する乙女せつ菜ちゃんがあまりにもかわいそうですよね。じゃけんちゃんとフォローしてあげましょうね~。夜なら空いているので、2人で通話しましょうか。

 

『いいんですか!?』

『やりたいです!』

『お願いします!』

 

 短文が連続で送られてくるので、スマホがピコンピコンと鳴っています。短文にもわざわざビックリマークを入れているのが可愛いですね。エッチして♡ 間違えた、膝枕して♡

 さて、せつ菜ちゃんの件も片づけましたし、今度こそお出かけしましょう。イクゾー!

 

「あ、元樹……」

 

 家から1歩出た途端にりなりーと遭遇してしまいました。お出かけの邪魔をしないで(建前) 今日も可愛いね(本音) 手繋ぎデートして♡

 

「どこか行くの?」

 

 ちょ、ちょっとあっちの方にあれをしに行ってきます(すっとぼけ) そういうりなりーもどこかへお出かけですか? 練習着を着ているようですが、まさかトレーニングに?

 

「うん。かすみちゃんとしずくちゃんの3人で」

 

 そうなんですか。今回の周の1年生ズは最初っから仲の良さが全開ですね。恋する乙女同士は何とやらとかいうやつでしょうか。

 とりあえずそろそろ移動を開始しませんか? このまま玄関先で話していると集合時間に遅刻してしまうかもなので。りなりー達の集合場所はどこなんですか?

 

「私達はお台場。元樹は?」

 

 ほも君と愛さんは虹ヶ咲学園駅集合です。有明で降りて乗り換えですね。ここからたった1駅なので短い距離にはなりますが、そこまで一緒に行きますか?

 

「行きたい!」

 

 元気のいい返事ですね。では一緒に駅まで行きましょう。

 それにしてもオフの日にも練習だなんて3人とも勤勉ですねぇ。私だったら(オフの日に仕事したり、そもそも仕事のことを考えることすらやりたく)ないです。

 

「ライブをやるには足りないものがいっぱいあるから、まずは体力をつけようと思った」

 

 スクールアイドルなりたてですからね、しょうがないね。それでもりなりーは普段の練習で十分すぎるほど頑張っていますよ。オフの日に練習しなくても、イベントの時にはちゃんと1曲歌って踊れるようになっていますよ。

 

「そうかもしれない……でも、早く皆に追いつきたい。元樹を笑顔にできるようなスクールアイドルになりたい。だから頑張る」

 

 あら^~嬉しいことを言ってくれますね。りなりーはほんと幼馴染想いで、心に来ますよ~。でも無茶だけはしないでくださいね。

 

「大丈夫。無茶なことしないために3人で集まるから」

 

 それなら大丈夫ですね。特にかすみんは頑張りすぎちゃうところがありますから、りなりーがちゃんと見張っててあげてくださいね?

 

「任せて。璃奈ちゃんボード『キリリッ』」

 

 歩き璃奈ちゃんボードは前が見えなくて危ないですよ。ここら辺は車通りもありますし。

 

「周りを確認してからつけてるから大丈夫。それに、いざとなったら元樹が助けてくれる。でしょ?」

 

 随分信頼してくれていますね。歩夢ちゃん並みの幼馴染への信頼度です。いいゾ~コレ。でもほも君に筋力は全くないので、力仕事とかは……勘弁してくださいね。

 

「完璧な人なんてこの世にはいないから。私にも元樹にもダメなところがある」

 

 じゃありなりーの思うほも君のダメなところって何ですか?

 

「……鈍感なところ」

 

 仕方ないじゃないですか。だって恋愛強者持ってないんですもん。こっちの事情も考えてよ(棒読み)

 

「でもダメなところも含めてその人の魅力だと思うし、それに、2人でお互いを補っていけばいい」

 

 その2人っていうのはほも君とりなりーのことですか?

 

「うん。……これからもずっと、元樹と一緒にいたい。ダメ、かな……?」

 

 もちろんいいですよ。だって幼馴染ですもんね(棒読み) こういうとこだぞこの鈍感野郎。こんなんじゃハーレムになんないよ~。

 ところで、なかなか電車が来ませんね。もう随分待っていますが……。

 

「ちょっと待って、調べてみる。……あっ、車両トラブルで止まってたみたい」

 

 ハァ~~(クソデカため息) あのさぁ……デートの日に電車が止まると困るんだよ。ちゃんと点検して♡

 

「大丈夫、今は動いてる」

 

 やったぜ。

 

「10分くらい遅延はしてるけど。元樹時間大丈夫?」

 

 十分時間をもって行動しているので、10分くらいの遅延は屁でもありません。そのための30分前行動。りなりーの方は大丈夫ですか?

 

「私も大丈夫」

 

 じゃあこのまま電車を待ちましょうか。動いてさえいれば列車は必ず次の駅に行きますからね。

 でもさすがに10分も待つとなると暇になってしまいますね。あまりで暇なので、りなりーのためにぃ~こんな動画をご用意しm

 

「元樹」

 

 何ですか? りなりーのために2章を流してあげようとしていたのですが、それを止めてまで何の用ですか?(半ギレ)

 

「休みの日にこうやって元樹と出かけるの久しぶりだなって。今日は一緒のところに行くわけじゃないけど」

 

 以前の2人がどれだけお出かけしていたのかは知りませんが、りなりーの言う通り久しぶりなのかもしれませんね。ゲームが始まってから未だにりなりーとお出かけしていませんし。というかりなりーとお出かけする予定すらありませんし。こんなんで告白イベ発生するんですかね……。

 

「だから少し嬉しくなっちゃった。ごめんなさい」

 

 いえ、別に構いませんよ。幼馴染ですもんね。あっ、そうだ(唐突) 同好会で参加するイベントが終わったら、2人でどこか一緒に出かけませんか?

 

「えっ……いいの?」

 

 もちろんですよ。栞子ちゃんや、かすみんからも条件付きで誘われていますが、幼馴染特典として誰よりも早くお出かけしてあげます。栞子ちゃんはうっかり告白イベが来ると困りますし、かすみんは……まぁシナリオ的に優勝することはないので。やっぱシナリオの強制力には勝てないんやなぁって。

 それでどうしますか? 場所は無難に水族館なんかを考えていますが。水族館は暗い場所も多いので、りなりーも表情を気にしなくて済むと思いますし。

 

「うん、行きたい。元樹と一緒に水族館行きたい」

 

 じゃあ決まりですね。ほも君の予定を開けておくので、りなりーもちゃんと予定を開けておいてくださいよ。まぁ好きな人とのお出かけなので何が何でも来てくれるとは思いますが。

 さてと、ちょうど電車も来ましたし乗り込みましょうか。乗り込め^~。

 

「席、空いてないね」

 

 朝ですからね、しょうがないね。あ、でもなぜか先頭車両の特等席が1席だけ空いていますよ。1人用なのでりなりーが座ってください。

 

「ううん、元樹が座って。私は大丈夫だから」

 

 いやいやりなりーが……おっとっと、車体が揺れましたね。高いところを走っている電車が揺れると怖いです。クソ雑魚体幹のほも君もよろけてしまいました。

 

「あ……」

 

 おっとぉ? よろけてドアに手をついたほも君でしたが、そのドアの前にちょうどりなりーがいて、なんと壁ドンのような体勢になってしまいました。恋愛ゲームかな? というかほも君とりなりーとではだいぶ身長差があるのに、わざわざりなりーの顔の横に手をつくあたり狙ってますよクォレハ……

 

「有明……」

 

 そうこうしている間に目的の駅に到着しました。ほも君はここで降りますね。りなりーばいばーい。

 

「う、うん。ばいばい……」

 

 あ、今朝のメッセージについて聞くの忘れてました……ま、ええか。そんなことより虹ヶ咲学園駅に移動しましょう。イキますよ~イクイク……

 

 

 

 虹ヶ咲学園駅に到着しました。授業に出席しなきゃ(使命感)

 愛さんは……まだ来ていないみたいですね。まだ集合時間の20分前なので当たり前といえば当たり前ですが。愛さんが来るまで待ちましょう。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




アニガサキ13話、1stライブからの輸入とかがめちゃくちゃ多くてびっくりしたゾ……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part44/n

クソ雑魚投稿頻度なので初投稿です。
最新話の投稿が約1ヵ月ぶりってマジ? たまげたなぁ……。


リサーチ、もとい聖地巡礼、あるいはコラボに行くなどしていました。
そのおかげで舞台イメージが自分の中で固まって、今回は特に書きやすかったです。

ところで、1章の最後に『設定資料集 その1』を投稿したので、気になる人はぜひ読んで、どうぞ。


幼馴染がいる町でこっそりデートRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は愛さんとの待ち合わせの前に、移動中の電車の中でりなりーに壁ドンしました。今回はその続きからで、待ちに待った愛さんとのデートです。

 デートプランは愛さんの実家に行くこと以外決めていないので、どこに行こうか考えるとワクワクしますね。ただ、デートプランをその場で考える=効率よく親密度を稼げるデートにしづらい、という問題があります。また、愛さんの実家に行く場合は後ほどお話しするお祈りポイントがあります。前者はアドリブが得意な私の力で、後者は私の豪運で何とかしましょう。

 

「もとき~! おっはよ~!」

 

 おっ、まだ10分前ですが愛さんが到着しました。おしんこ^~(気さくな挨拶)

 

「ごめん、遅くなっちゃった。もしかして結構待たせた?」

 

 いえいえ、ほも君も今来たばかりですよ(建前) それに愛さんは遅れてなんていませんよ。まだ10分前ですからね。

 

「そっかそっか」

 

 ニッコニコ愛さん可愛いゾ~コレ。異性同性問わず友達が多く、多分デート慣れしてる(してない)愛さんには、ほも君がかなりの余裕をもって到着してたことも、デート待ち合わせの定型文にも気づかれてるでしょうね。まぁ気づかれたとしても親密度に影響はないので無問題ラ!

 

「はい、これ元樹の分ね」

 

 愛さんからお茶を1本受け取りました。一見TDNお茶ですが……何か特別なものなんでしょうか? 愛さんの聖水(直球)入りのお茶とか?

 

「今日はかなり暑くなるからね。季節外れだけど真夏の暑さになるらしいよ」

 

 暑いのは困りますねぇ……暑いと何もやりたくなくなるんですよね。例えば動画編集とか仕事とか。

 

「だから水分補給を忘れないようにしないとね。ちゃちゃっと飲めるように先にお茶を買っちゃった! お茶だけに! あははっ!」

 

 そう……(無関心) 下手に突っ込むと、愛さんがダジャレを言う頻度が高くなってしまうため、基本は無視する方針でいきます(人間の屑) ただあまり放置しすぎると愛さんがしゅんとしてしまうので、たまには反応してあげましょう。

 あっ、そうだ(唐突) そんなに暑くなるならりなりー達が心配ですね。連絡しておいておきましょう。水分補給せずに練習してはいけない(戒め)

 

「よしっ、じゃあ行こっか」

 

 ちょっと待って!

 

「ん? どうしたの?」

 

 まだ愛さんの装いを褒めていません。ちゃんと褒めてあげてご機嫌取り親密度稼ぎしましょう。いいお尻ですね。

 

「そ、そう? ありがと。元樹もその服よく似合ってるよ」

 

 初対面の時はお尻を褒めるべきと我らが部長が教えてくれましたからね。よって初デートの時にお尻を褒めるのも間違っていません(暴論)

 

「そういえば元樹の私服姿を直接見るのは初めてだね。こうやって実物を見るとよりかっこよく見えるなぁ」

 

 その言いぶりだとりなりーにほも君の写真を見せてもらっていたんでしょうか。

 

「うん、そうだよ。確かその服もりなりーが選んだんだよね?」

 

 そうだよ(適当) ファッションセンス(笑)なほも君ではこんな服選べないでしょうしね。意中の人が自分がコーディネートした服を着て、自分の親友とデートをしているりなりーの心境はいかに……。

 ところで今はただ愛さんについていってるだけなんですけど、どこに向かうつもりなんですか?

 

「最初はお台場に行こうかなーって。ジョイポリスとかもあるしね」

 

 ちょっと待って! お台場ってことはりなりー達が練習してるやん! どうしてくれんのこれ? 愛さんとデートすることがバレたくなかったからりなりーに秘密にしてたの!

 

「元樹はお台場遊びに行ったりするの?」

 

 行きますねぇ! 行きます行きます。なにせ虹ヶ咲の舞台ですからね。(行かない理由が)ないです。

 

「そっかぁ。じゃあお台場でのプランは元樹に任せちゃおうかなー」

 

 おう、プラン考えてやるよ。りなりー達はレインボーブリッジや公園で練習すると思うので、そこさえ避ければ割と自由にプランを組めるはずです。ま、適当でええやろ。とりあえず電車に乗っちゃいましょう。先ほどゆりかもめから降りたばかりですが、もう1回乗ってくれ。

 

 

 

「んー、結構混んでるね」

 

 りなりーと乗った時も混んでましたからね。それから少し経ってるので多少はマシにはなっていますが、それでも座ることはできません。有明からお台場まではそう遠くないのでずっと立っていても身体的問題はありませんが、2人並んで座れた方がゆったりと会話できますし、密着もできるので親密度的に美味しいです。でもまぁ誤差レベルなのでそこは妥協しましょう。

 

「もし足が疲れたら言ってね。愛さんが肩をかしてあげるから」

 

 高々5駅分立っただけでそんなに疲労することないと思うんですけど(名推理)

 

「でも元樹びっくりするほど体力ないから、割と心配してるんだよ?」

 

 体力がないのは事実ですが、さすがに電車でヘロヘロになるほどのクソ雑魚では(ないです) 愛さんは随分と過保護ですね。付き合った後のあの重さも納得ですね。

 

「そういえば元樹って最初からスクールアイドル同好会に所属してたんだよね? なんで入ろうと思ったの?」

 

 スクールアイドルにトキメキを感じたからじゃいかんのか?

 

「ううん、全然悪くないよ。じゃあそのトキメキを感じたきっかけってなんだったの?」

 

 えっとですね……ライブビューイングでμ'sとAqoursの合同ライブを見たのがきっかけらしいです。

 

「元樹もμ'sとAqoursがきっかけなんだね。ゆうゆと歩夢とおんなじだ」

 

 侑ちゃん歩夢ちゃんと同じですね。ライブを見た翌日はインターネットをしていて気づいたら3時過ぎてそう(あなたちゃん並感)

 違うところがあるとすれば、ほも君はりなりーと一緒ではなく、1人でライブを見たということくらいですかね。もしりなりーも一緒だったなら2人一緒に加入していると思うので。もしりなりーも最初から所属していたらストーリーがいろいろと壊れちゃうからね、幼馴染が引き裂かれちゃってもしょうがないね。

 逆に愛さんが入ってくれた理由はなんですか? スクールアイドルに興味を持ってくれたから? 同好会復活に協力したかったから? それともただ単にシナリオの都合上?

 

「いろいろ理由はあるけど、アタシもスクールアイドルやってみたくなったっていうのが一番大きいかな。特定の部活に入るつもりはなかったんだけど、ゆうゆがぐいぐい来るからさー。部活の助っ人はいっぱいやってきたけど、あんなに情熱的な勧誘は初めてだったなぁ」

 

 スマホ版でも愛さんはあなたちゃんから情熱的な勧誘を受けていましたが、それはPC版でも同じです。距離が近い侑ちゃんに照れる愛さんを見られる、はずだったんですけどね……この周ではりなりーが幼馴染をしたため、残念ながら見ることはできませんでした。相変わらず可愛いシーンなので息抜きに見たかったのですが、タイム短縮にはなったのでまぁよしとしましょう。見たい兄貴は自分で買ってプレイして、どうぞ。照れる愛さんだけでなく、若干ぽむる歩夢ちゃんも見れていいゾ~コレ。

 

「おっと、もうお台場だ」

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますからね。

 

「わかる! 電車も1人で乗ってる時は目的地まで長く感じちゃうけど、友達と一緒だとあっという間だよね。今みたいに!」

 

 そうですね。でも恋人と一緒だともっと短く感じますよ。じゃけん愛さんはほも君と付き合って突き合いましょうね~。

 

「ほらほら、ぼーっとしてないで降りるよ」

 

 窓から風景を眺めていたら、愛さんに手を引かれて電車から降ろされました。こういう軽いボディタッチをさりげなく、しかも頻繁にやってくれるので愛さんはいいですね。まぁ相手からのボディタッチは親密度に何の影響もないので、プレイヤーがドキドキできる以外のメリットがないんですけどね。

 

「あ~……外に出ると暑いねぇ」

 

 まぁ電車内は冷房がガンガンに効いてましてからね。そんな場所から外に出たら余計暑く感じてしまいます。ちゃんと暑さ対策を……あっ、そういえばほもえもんの114514次元ポケットにあれが入っていた気がします。

 

「うん? 何探しているの?」

 

 あれ? おかしいですね、確かにカバンに入れたのですが……困りました、見つかりません。

 

「忘れ物でもしちゃった?」

 

 そうだよ(震え声) 手持ち扇風機を持ってきたつもりだったのですが、どうやら家に忘れてしまったようです。

 

「そっかぁ」

 

 ちゃんと出かける前にチェックしておけばよかったですね。申し訳ナス……。

 

「そんな申し訳なさそうにしなくても大丈夫だよ。忘れ物なんて誰にでもあるしね。暑くてどうしようもなかったらどこかで扇子でも買っちゃおうか」

 

 そうですね、そうしましょう。扇子はセンスがいいですしね。なんちゃって。

 

「あっ、もぉ~。愛さんが先に言おうと思ったのにな~」

 

 お先いただきました。今日の愛さんとのデートでは、愛さんよりも多くダジャレを言うことを目標にしたいと思います(大嘘)

 ところで、最初はどこに行きましょうか。無難にジョイポリス?

 

「うん、いいよ。最近はりなりーとばかり行ってたから、りなりー以外とジョイポリに行くのは久し振りかも」

 

 そうなんですね。そういうほも君もりなりー以外とは来たことないみたいですけどね。栞子ちゃんあたりと一緒に来てそうでしたが、そうでもないんですね。まぁ栞子ちゃんはゲームセンターすら行ったことがないようでしたからね、当然ジョイポリスなんて行ったことがないでしょう。

 あっ、そうだ(唐突) 実はこの辺(ほも君のポケット)にぃ、ジョイポリの割引券があるんすよ。なんと驚異の50%offです。

 

「え、すごっ!? そんなのどこでもらったの?」

 

 知wらwなwいwよw 入手経路不明の謎の所持品です。でも金銭事情は学生にとって大切なことですし使わない手はないよなぁ!

 ただ、この割引券には1つ問題があって、いわゆるカップル割なんですよね。

 

「うぇっ!? か、かっぷる!?」

 

 裏面に『カップルのように見えない場合はご確認させていただく場合がございます』とちゃんと書いてあります。つまり受付で愛さんとカップルがやるあーんなことやこーんなことを実演する必要が発生する可能性があるんですよね。エッッッッッ!

 

「恋人じゃないのに使うのはちょっと……」

 

 まあまあ、安くなるんだからいいじゃないですか。驚異の50%offですよ? 半額になるということは、実質もう1回ジョイポリに行けるようになるんですよ? それに今はまだ愛さんとほも君は恋人ではありませんが、どうせいずれ恋人になるんですからいいじゃないですか。先行投資ですよ先行投資(適当) だから割引券を使わせてください。11人と恋愛をする必要があるほも君にとって節約はとっても重要なんです。オナシャス! センセンシャル!

 

でもりなりーに悪いし……」

 

 そんなこと言ってるけど、後々りなりーという恋人がいるほも君と付き合うことになるんだからいいだルルォ!? つべこべ言ってないでほらほらいくどー!

 

「あ、ちょっと! ……もうっ、しょうがないなぁ」

 

 強引に愛さんを引っ張って行ったら笑顔で了承してくれました。やったぜ。これで今日の出費を少しだけ浮かすことができます。この浮かした分の費用は侑ちゃんとお泊まりする時のゴム代にさせてもらいますね。ゴムなんていくらあっても困りませんからね。お泊りの期間も数日程度じゃ終わらないでしょうし。

 

「パスポート2人分お願いします。えーと、その……か、カップル割で……」

 

 さてさてさて、ほも君にとってはご褒美タイム、愛さんにとっては羞恥の時間がやってきました。愛さんがもじもじと恥ずかしがっているので、受付の人も怪しがってカップルかどうか確認するはずです。となるとカップルであることを証明するための何かが必要なわけで、手をつなぐ、腕を組む、ハグする、キスする、エッチする……などなど、期待が膨らんで、あ^~たまらねぇぜ!

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 は?(半ギレ) なんと何の確認もなく割引券が適応されてしまいました。は~つっかえ。もしかしたら愛さんがもじもじしている感じが初々しく見えて、付き合いたてのカップルという風に判断されたかもしれません。

 

「はい、元樹のパスポート」

 

 ……まぁ、こればっかりはどうしようもないので潔く諦めましょう。いずれは手を繋ぐことくらい簡単にできるようになりますからね。今は自分の欲求を抑えて親密度稼ぎに注力しましょう。

 

「わー、相変わらず人がいっぱい……」

 

 さて、ジョイポリスは大人気レジャー施設であるため、いつも多くの人で賑わっています。施設にはいくつものアトラクションがありますが、どれも面白く、待ち時間なしに乗れることなど非常に稀です。ですが待ってでも乗る価値のあるアトラクションばかりなので、まだ一度も行ったことがない兄貴はぜひ行ってみることをおすすめします。私も頻繁に遊びに行っています。動画編集の時間を投げ捨てて(小声)

 話をゲームに戻しますと、この世界でも当然ジョイポリスは大人気施設となっているため、ご覧のように多くの人がいます。カップル割引券の影響か、今日はカップルの数がかなり多そうです。これではアトラクションの待ち時間がかなり長くなってしまいそうですね。こんなんじゃ親密度稼ぎになんないよ~。

 

「どこから行こっかな~。どれも楽しいからいっつも迷っちゃうんだよね。元樹は好きなアトラクションとかある?」

 

 では何故貴重なデートタイムを待ち時間に割く必要があるジョイポリスをプランに組み込んだかといいますと、それはこのゲームでは不思議な力でアトラクションの待ち時間が0になるからです。つまり定額で、待ち時間ゼロでアトラクション乗り放題のジョイポリスは神デートスポットとなるわけです。でも現実では不思議な力なんて当然働かないので、良い子の皆は順番抜かししたりしないようにしようね!

 さて、好きなアトラクションは? という質問をいただいていますが、ここは一番所要時間の少ないアトラクションを答えましょう。愛さんはとっても優しいのでほも君の考えを優先してくれますし、どのアトラクションに乗っても上がる親密度は同じです。なのでとにかくアトラクションに乗りまくって親密度を稼ぐ方針でいきたいと思います。

 本当は全部のアトラクションを流したかったのですが、そうすると動画時間が114514ミリ秒になってしまいそうだったので、16倍速にして垂れ流します。ただ全部垂れ流しにしてしまうと味気ないし、愛さんの魅力を伝えられないので、見所さん!? たっぷりですよ! なアトラクションだけ流したいと思います。そういうわけで甥の木村、加速します。

 

 

 

「んーっ! 探検隊も面白かったね」

 

 次が見所さんたっぷりの、もとい本日最後のアトラクションです。先程まで乗っていた探検隊や、それ以外のアトラクションがどんなものか知りたい兄貴達はスクスタPC版を買ってプレイ、しよう。あるいは実際にジョイポリスに足を運び、自分自身で体験してみるのもいいと思います。

 

「次は何がいい? そろそろお昼の時間だし、これが最後かなーと思うんだけど……それでいい?」

 

 はい、OKですよ。えーと、次に時間が短いのは……おっとチャートをド忘れしてしまいました。だからこんなんじゃRTAになんねぇんだよ(棒読み) 仕方ないのでチャートを見返しましょう。

 

「実は愛さん乗りたいのがあるんだよねー」

 

 どれどれ……おや? 必要な箇所だけチャートが見つかりません。なーんでちゃんと管理してないんですかねぇ……頭にきますよ!

 

「3階にある占いのアトラクションなんだけど、いい?」

 

 あっ、ありました! 何かの拍子に床の上に落ちていたようです。すぐ確認しましょう。えー……次は占いのアトラクションのようです。偶然でしょうが愛さんが乗りたいものと一致していますね。となれば断る理由はありませんね。

 

「やったっ! じゃあ行こー行こー!」

 

 それにしても愛さんも占いなんてするんですね。少し意外です。私はコンセントレイト信者なので占いなんて信じていませんけどね。自分に不都合な占い結果は笑ってナシにします。

 

「うーん、占いが好きというよりは、友達との相性とかがわかるから、そっちが楽しみーって感じかなぁ」

 

 なるほど、そちら目当てですか。このアトラクションでは2人一緒だと相性占いというものができるんですよね。まぁリアルの私はいつも1人なので相性占いやったことありませんが。あと2人でアトラクションに乗った時、特殊な条件を満たすと入ることができる特別な部屋も存在していたりします。ただ、このゲームにおいてその部屋はまだ未実装なので、私も中がどうなってるかは知りません。

 

「どうする? 愛さんと相性占いしてみる?」

 

 やりますねぇ! やりますやります。

 

「うん、じゃあアタシと元樹の相性占っちゃおっか」

 

 さて、友達としての相性を占うことも当然できるのですが、折角なので面白い項目を占いたいですよね? というわけで名前を入力する画面で隠しコマンドを入力します。『↑↑↓↓←→←→』を入力することで、占うことができる項目にあるものが追加されます。

 

「ううぇぇぇ!? な、何この項目!?」

 

 はい、こちらが追加された項目、『セッ〇スの相性占い』になります。なんだこれは、たまげたなぁ……。頭のおかしい項目ではありますが、愛さんと占ったら絶対おもしr……楽しそうな気配がするので、選ばない手はありません。

 

「ちょっ、もときっ!」

 

 はい、愛さんが他の物を選ぶ前にセッ〇スを選びました。これでもうほも君とセッ〇スするしかありませんねぇ(ニヤニヤ) ……毎回伏字に変えるのはなかなかめんどくさいですね。このアトラクション中はチョメチョメと言い換えることにします。

 

「な、なんでこんなの選んだの……?」

 

 ほも君だって年頃の男の子なんだからいいダルルォ!? それに愛さんとの相性を確かめるのが目的なんですから、それとはズレてはいないはずですよ。

 

「うぅ、そういう意味の相性じゃなかったのに……」

 

 いやー、照れ照れ愛さんはたまりませんなぁ。このままずっと鑑賞していたい気分ですが、これはRTAなのでとっとと先に進んでいきます。質問への回答もタイム重視でちゃちゃっと回答しちゃいます。そんなほも君を見ていても面白くないと思うので、愛さんの反応が素晴らしい部分以外は加速しちゃいますね。

 

『チョメチョメの経験は?』

 

「え、えっと……のー……」

 

 なるほどなるほど、愛さんの初体験はまだと……まぁ知ってましたけどね。

 

『自〇とかなさらないんですか?』

 

たまぁに……」

 

 ファッ!? それマジ? 夜テレビ電話かけなきゃ(使命感)

 

『好きな人とはずっと一緒にいたい?』

 

「い、いたい! ……あ」

 

 おぉ、結構大胆に答えましたね。まぁそっち系の質問ではありませんし、美里さんとのやり取りを見ている限り愛さんの愛が重たいのは周知の事実なので、別に驚くようなことではありませんがね。ですが愛さんの恥ずかしそうな顔が私好みだったのでこれを採用させていただきました。

 

「はぁ、疲れた……なんであんなのがあったんだろ……」

 

 ほも君が隠しコマンドを入力したからですね。質問に全て回答し終えましたし、早速結果を受け取りに行きましょう。結果のことなんて考えず回答したので少し見るのが怖いですが……ま、えやろ。十分楽しめましたしね。

 

「……」

 

 えー、結論から言いますと相性抜群とのことです。内容があまりにも直接的すぎるので画面全面モザイクにしておきますが、一部抜粋すると『相手の愛情が強いので、長時間のチョメチョメになることもしばしば』と書いてあります。その通り過ぎて草生えますわよ。

 ところで愛さんはずっと顔を真っ赤にして黙り込んでいますが、一体どんなことが書かれていたのでしょうか。ほも君にも見せてくださいよー。

 

「だ、ダメ!」

 

 おっと、自分の体で隠されてしまいました。これでは覗き見すらできません。愛さんさっきほも君の結果用紙チラチラ見てただろ。だからほも君がちょーと見るくらい、笑顔でやらせてくれてもええんちゃうん?

 

「見てないもん! とにかく、こんなの元樹には見せられないから!」

 

 あーあ、カバンの中にしまわれてしまいました。カバンからこっそり盗み取るにはまだまだ技能が足りませんので、もう見ることはできません。残念ですね。まぁ体の相性なんて実技で確かめればいいですからね。機会があればの話ですが。

 

「はぁぁぁ、もう二度とあの項目でやんないよ……」

 

 お願いしますね。ほも君以外と勝手にそんなことやられたら困りますので。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




アトラクションが1個しかないのは、占いのアトラクション以外私が乗っていないからです(小声)



-追記-

『サイドストーリー Part20/m』時点でのヒロインの親密度を書いておきます。
サイドストーリーでまだ描かれたことのない子に関してはハテナとしておきます。
※告白ラインはヒロインからの告白イベントが発生するのに必要な親密度


高咲侑
親密度:60
告白ライン:85


上原歩夢
親密度:60
告白ライン:80


中須かすみ
親密度:95
告白ライン:70


桜咲しずく
親密度:95
告白ライン:80


朝香果林
親密度:65
告白ライン:90


宮下愛
親密度:55
告白ライン:85


近江彼方
親密度:?
告白ライン:?


優木せつ菜
親密度:95
告白ライン:75


エマ・ヴェルデ
親密度:?
告白ライン:?


天王寺璃奈
親密度:100
告白ライン:85


三船栞子
親密度:95
告白ライン:80


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part45/n

えー……投稿がめっちゃくちゃ遅くなった理由は以下の通りです。

・お仕事
・ウマ
・お絵描き
・ウマ
・お台場
・ウマウマウマウマ
・お台場でイベントが!


どうでもいい情報ですが、5thカラカラ公演Day1現地参戦してきました。
感想を一言で言えばめっっっっっちゃトキメキました。できれば最前列で見たかったぜ……。


 気軽に他の女の子の話をするデートRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は愛さんと体の相性診断をして、相性抜群とのことだったのでそのままホテルに直行しました(大嘘) 今回はその続きからで、チョメチョメで消費した体力をお昼ご飯補給で回復していきたいと思います。

 この近くだとラーメンとハンバーガーがありますがどちらにしますか? 私的にはラーメンの方が安いので嬉しいです。

 

「……」

 

 愛さん? 聞いていますか?

 

「……へ? な、何?」

 

 お昼ご飯をどうしましょうかって話ですよ。ほも君的にはラーメンの方が嬉しいんですけど。

 

「うん、じゃあラーメンにしよっか」

 

 了解しました。ほらほらいくどー。

 それにしても愛さんが上の空なんて珍しいですね。何を考えていたんですか?

 

「うーんと、まぁちょっと考え事というか……」

 

 ほうほう、それはさっきの占いについてですか?

 

「そう、かな。なんで元樹はあんな占い選んだろーって」

 

 ただの酔狂ですよ(建前) エチエチな質問で愛さんを困らしたり、恥ずかしながらもちゃんと答える愛さんを見たり、あわよくば愛さんの性事情も知りたいなーと考えただけです(本音) 結果として愛さんが時々オ〇ニー知れたのでよかったです。愛さんは壁の方を向いて、声を押し殺しながらオ〇ニーしてそうで妄想が捗りますね。

 

「……ああいうのは恋人とした方がいいよ。アタシだったからよかったけど、他の子だったらセクハラだーって怒られちゃうよ?」

 

 怒られるで済めばいいですけどね。でも今日の愛さんとほも君はカップル割で入場してるので実質恋人のようなものじゃないですか。

 

「それは元樹がどうしてもって言うから……」

 

 それにちゃんと2人の相性は占えたじゃないですか。

 

「愛さんが占いたかったのはあくまで友達としての相性であって、体の相性が知りたかったわけじゃないの!」

 

 まあまあ、いずれ一夜を共にする仲になってもらうんですから、先に知っておくというのも大事だと思いますよ。まぁ相性最悪だったとしても付き合ってもらいますがね。

 

「じゃ、じゃあさ! 他の人とあの占いしたことないの? 例えば……り、りなりーとか」

 

 ないです(断言) そもそもりなりーとは相性占い自体やったことないみたいですね。

 

「え、そうなの? なんでなんで~?」

 

 昔相性占い提案おじさんしたけど、りなりーが恥ずかしがってしてくれなかったようです。でも幼馴染のりなりーとの相性は抜群だとほも君は確信しているようなので、嫌がるりなりーを押し切ってまで占おうとはしなかったみたいですね。なーんでそういうとこではあっさり引き下がるんですかねぇ。そんなんだからりなりーが苦労するんだよなぁ……。

 

「そっかぁ。でももし占ったら絶対相性抜群だよね! だってずーっと一緒にいるんだもん! ……も、もちろん体の相性のことじゃなくて、友達とかそっちの話だからね?」

 

 当たり前だよなぁ? 相手のことをよく知っているのはもちろんとして、趣味は合うし、やりたいことを応援しあえるし、弱点を支えあえる、そんな相手早々見つかりませんよ。なんだかんだ言って、一緒にいて一番ほも君が楽しそうなのはりなりーですし。

 そういう愛さんもりなりーと相性抜群でしょう。表情を出すのが苦手なりなりーのために璃奈ちゃんボードを考えてくれたり、アニメ時空だと出会ったばかりにも関わらずりなりーの気持ちを読み取っていたり。これって……王道カプですよ?

 

「次りなりーと一緒に来る機会があったら、その時はりなりーと相性占いしてあげてね? 愛さんからのお願い」

 

 それはもちろん無問題ラなんですけど、りなりーやってくれますかね? 以前も誘ったけど恥ずかしがってやってくれなかったっぽいですし。

 

「それはきっと大丈夫。元樹のことが嫌いでやりたがらないわけじゃないから、次はもっとグイグイいってあげてほしいな。万が一りなりーが怒ったらアタシのせいにしてもいいから」

 

 ふぅん……ではその時は愛さんには体でツケを払ってもらうことにしましょう。まぁそんな事態になることはまずないでしょうが。

 っと、ラーメン屋さんに到着しましたね。こちらはいろんなラーメン屋さんが一か所に集まって競い合っている場所なんですよね。私もお台場に遊びに行った時は必ずここに食べに来ます。ちなみにですが、Awakening Promiseのエチエチチャイナぽむのカットで映ったところがここになります。信じられない兄貴は1919回1期12話を見返してください。

 

「塩に豚骨、それにつけ麺かぁ……いっぱいあって迷っちゃうね。どれにする?」

 

 やっぱり王道を往く……塩ラーメンですかね。行列も一番短いですし(小声) ちなみに私は醤油ラーメンが一番大好きです。

 

「ぁ、どれもカロリー高そう……」

 

 お肉がてんこ盛りですからね。愛さんは心配になるほど腰回りが細いので、個人的にはもう少しカロリー摂取してほしいんですがねぇ……。まぁいいでしょう。カロリー摂取して、役目でしょなんて言えないですしね。代わりにほも君がいっぱい摂取しましょう。餃子まで頼んじゃいます。節約? 知wらwなwいwよw

 

「元樹って意外と大食いなんだね」

 

 育ち盛りの男の子ですからね。スクールアイドルの練習もハードですから愛さんもしっかり食べないとダメですよ。食う子はよく胸が育つと言いますからね。ただしかすみんは除く。

 

「あ、きた! すごい美味しそう!」

 

 ゲームなので爆速でラーメンが届きました。ほも君はSNSガチ勢ではないため、写真を撮るなんてことはしません。ちゃちゃっと食べちゃいましょう。

 

「折角だし一緒に写真撮ろうよ」

 

 あっ、いいっすよ(快諾)

 

「はい、チーズ!」

 

 時短のために皆さんお馴染みのんにゃぴ……じゃなかった、ふにゃピースです。

 

「このふにゃふにゃ~ってしたピース流行ってるの?」

 

 そうだよ(便乗)

 

「そうなんだ、全然知らなかったなぁ。今度やってみよーっと」

 

 いつも元気全開な愛さんのふにゃピースも見てみたいですねぇ! 虚無顔も再現して、ホラホラホラホラ。

 さて、ここから美味しいラーメンを実食していくわけですが、お互いほとんど無言だったので倍速で流させていただきます。美味しいものを食べるとついつい無言になっちゃうってはっきりわかんだね。髪耳掛けや脂で艶めく愛さんの唇など見所さんはありますが、前者は栞子ちゃんの時にも流しましたし、後者はセンシティブすぎるので倍速です。見たい兄貴は買え(豹変)

 

 

 

「ふぅ、美味しかったね」

 

 ほも君は餃子まで食べたのでお腹パンパンです。今更ですが餃子を愛さんにあーんしてあげればよかったですね。そうすればいい画が撮れるいい感じに親密度を稼げたので。

 視聴者兄貴は『なんだこいつ。プレイガバガバじゃねぇか』とお思いかもしれませんが、プレイ当時の私はこれが最善だと思って走っているんですよね。チャートにないことをするのはムズカシイ……ムズカシイ……。

 

「ちょっとどこかで休む?」

 

 時間の無駄なので休まない。……と言いたいところですが、ほも君がかなり苦しそうなので休みましょう。無理に動かして吐かれても困りますのでね。

 場所は……そうですねぇ、屋上はいかがですか?ベンチがありますし、眺めは最高だし、おみくじできるし、神社まであるのでお参りもできますよ。

 

「ああ、あれね。前引いた時大凶だったんだよね~」

 

 そう……何か実際に悪いことはあったんですか?(有関心)

 

「ううん、そんなことなかったよ。むしろ逆だったかな。スクールアイドル同好会に入れるっていう、サイッコーに楽しいことがあったもん!」

 

 そんなに喜んでくれてよかったです。でもまぁ大好きなほも君を独占したいのにハーレムだからできないという辛い状況に陥るはずなので、ある意味大凶なのかもしれませんがね。

 

「よーし! リベンジに今日も引いちゃお!」

 

 愛さんはまたおみくじを引くようです。女の子は占い好きだからね、しょうがないね(偏見) ほも君はどうするかって? 節約のために引きません(鋼の意思)

 

「うーん末吉かぁ」

 

 そう……(無関心) おみくじはここまでにして、そろそろ屋上にで、出まs

 

「元樹は引かないの?」

 

 おみくじなんて信じてないので(コンセントレイト)

 

「ふーん……でも恋愛運も書いてあるよ。元樹も高校生だし、そういうの興味あるでしょ?」

 

 ありますねぇ! ありますあります。じゃけんおみくじ引いて、恋愛運と本RTA運を占いましょうね~。

 

「あれ、見ないの?」

 

 もちろん見ますよ。外のベンチに座ってからね。お腹パンパンのほも君には立ちっぱなしは辛いのです。

 

「おんぶしてあげようか?」

 

 やってやって、おんぶやって~……とするとほも君のお腹が愛さんのお背中に圧迫されて、愛さんの背中にラーメンをR3BIRTHする羽目になってしまいます。

 さてと、屋上に誰もいなかったおかげでベンチに余裕で座れたので、早速おみくじを開いていきましょう。結果は……おぉ、大吉です。

 

「すごい! 大吉じゃん!」

 

 これがRTA走者の持つ†運命力†なんですよね。長ったらしく内容が書いてありますが、要約すると『ワールドレコードおめでとう』と書いてありますね。つまりはRTA運は最高ということです。本動画も投稿したら1ミリ秒でミリオンとか行っちゃうんだろうな~。

 肝心の恋愛運ですが、なんだかよくわからないことがずらずら書いてあります。要約すると、『ほも君ラブ勢はいっぱいいるけど、本当に大切な人は一番近くにいて、でもそれにはなかなか気づけないよ』……といった感じでしょう。

 

「んー……これどういう意味なんだろ。元樹はわかる?」

 

 冒頭部分は直球でハーレムのことだと思うのですが、後半部分は幼馴染のりなりーのことを指しているのでしょうか。それとも同好会メンバーのこと? あるいは栞子ちゃん?単純に考えればりなりーですが、なかなか気づかないという部分がほも君だと全てに当てはまるため、これはりなりーとのことを言ってるんだと断言できませんね……。

 

「……ねえ、1つ聞いてもいいかな?」

 

 もちろんいいですよ。何でも聞いてください。

 

「元樹って誰かと付き合いたいなーとか考えたりするの?」

 

 そうですねぇ……私的には11人くらいと付き合って毎日イチャイチャちゅっちゅパコパコ生活を送りたいのですが、ほも君的には別にそうでもないようです。ほも君さぁ……あんな魅力的な女の子達に囲まれてるのに、微塵も劣情を抱かないとか……お前レズか? 歩夢ちゃんのムチムチな体を抱きしめながら侑ちゃんとちゅっちゅしたいとかさ、しずくちゃんの考えた台本でかすみんとしたいとかさ、りなりーとツナガルコネクト(直球)とかさ、そういうの普通週810で考えるでしょ。

 そういう愛さんはどうなんです? 好きな人とか、いらっしゃらないんですか?

 

「愛さん? 愛さんはいな……」

 

 いな、なんですか?

 

「なんでもない! なんでもないから!」

 

 お、おぉ……急に顔を真っ赤にしましたね。この反応はもしかしなくても好きな人がいるという証拠なのでは? ここはとことん詰めてみましょう。

 

「もぉ~いい加減にしないと愛さんも怒っちゃうよ?」

 

 お客様、吐いてもらわねば困りますので。ここまで言い渋るとなると、もしかして愛さんの好きな人はほm……

 

「あ、雨……」

 

 おっと、雨が降ってきました。雨で濡れるとほも君が無能になってしまうので、大降りになる前に建物内に入りましょう。

 

「……うん、にわか雨みたいだからすぐに止むと思う。ってなんで指パッチンしてるの?」

 

 指パッチンの摩擦で火を出せないかなーと思いまして。でも指が濡れてしまっていますし、そもそも手袋なしでやるのは無理があったようですね。残念ながらほも君は大佐にも錬金術師にもなれないようです。

 

「そういえばせっつーも同じことやってた気が……」

 

 せつ菜スカーレットストームは指パッチンを高速で繰り返すことで使用している可能性が微レ存……?

 話を戻しますが、愛さん曰くにわか雨とのことだったので、雷には期待できなさそうですね。なぜ雷なのかはわざわざ説明する必要はないと思いますが、念のために説明しておくと愛さんは雷が大の苦手なのです。どれくらい苦手かというと、部屋の隅で膝を抱えてしまうくらい苦手です。そんな愛さんを頼もしいほも君が守ってあげれば……いちころとまではいかなくとも、大量の親密度を稼ぐことができます。じゃけん愛さんと一緒の時は雷お祈りしましょう。

 

「……雨、止まないね」

 

 そうですねぇ……このまま待っていても仕方ないですし、適当に建物内のお店巡りでもしませんか?

 

「ん、いいよ。どこか行きたいところでもあるの?」

 

 (特には)ないです。時間がもったいないと思って提案しただけですから。

 

「じゃあさ、今から洋服見に行かない? 元樹をコーディネートしてあげたいなー」

 

 (服を買うとほも君の所持金が厳しくなってしまうので)ダメです。

 

「そっかぁ……それなら仕方ないよね」

 

 古着とかなら安くていいんですけどね。じゃけん果林さんを呼んで古着屋さんまで案内してもらいましょうね~。

 

「じゃあさアクセとかはどう? 服よりは安いし、ちょっとしたものでも服に合わせれば結構オシャレになるよー」

 

 アクセ……UR……うっ、頭が……。

 

「うんうん、じゃあ行こっか。どんなものがいい?」

 

 ブローチにブレスレット……集めなきゃ……。

 

「あー、あんまりよくわからない感じ? それなら愛さんが選んでもいい?」

 

 いいよ! こいよ! できるだけ安くてオシャレなものをお願いしますね(無茶ぶり)

 

「よっし、愛さんにまっかせなさ~い!」

 

 では、アクセサリー売り場にイクゾー!デッデデデデデデデデデ(カーン)

 

 

 

「あれ? 愛ちゃんに……もと、君?」

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




本当は愛さんとの初デートを今回最後まで書く予定だったんです。でも前書きで書いた通りの理由で執筆が全く進まず、生存報告を兼ねて途中で投稿することにしました。

第2章が! 終わらねぇ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part46/n

前回の投稿から今に至るまでにいろいろなことがありましたが、一言だけ。
私はこれまでのせつ菜ちゃんも、これからのせつ菜ちゃんもずっと大好きです。


 ダブルデートRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はアクセショップで謎の人物と遭遇しました。今回はその続きからで、謎の美少女(確信)のムッチムチな体(確信)を堪能していこうと思います。

 というわけで歩夢ちゃんこんちゃーす!

 

「うん、こんにちは……」

「いやー、まさか歩夢とこんなとこで会うなんて思ってなかったよー。歩夢もアクセサリー買いに来たの?」

「うん、侑ちゃんのヘアゴムが切れちゃったから……」

「なんか元気なさそうだけど大丈夫? もしかして具合悪い……?」

「ち、違うの! そういうのじゃなくて……私は元気だから大丈夫。心配してくれてありがとう」

 

 ではどうしてあんな元気なさっそうだったんでしょう。もしかして侑ちゃんが他の女の子と浮気でもしてたのですか?

 

「2人が一緒にいるのが少し意外で……」

「ああ、なるほどねー」

 

 たしか歩夢ちゃんはほも君と愛さんが2人きりでいるところを一度も見てませんもんね。ですがほも君達は超絶仲良しですよ。さっきもジョイポリでエンジョイしてきたところです。

 

「そっか、そうだったんだぁ……」

 

 歩夢ちゃんは安心したような、でもどこか寂しそうな表情をしています。なんで?

 

「歩夢お待たせ~……ってもと君に愛ちゃん?」

 

 アクセショップから袋を片手に侑ちゃんが出てきました。ヘアゴムが切れたとのことだったので、今日の侑ちゃんは髪降ろし状態です。お風呂上がり以外ではなかなか見られない姿ですね。髪降ろし侑ちゃんも可愛いYO~! 買ったばかりのゴムで結びなおしていますが、もちろんツインテ侑ちゃんも可愛いYO~!

 

「そう? ありがと。それで2人はなんでここに?」

 

 実はカクカクシカジカで愛さんとデートしてたんですよ。

 

「も、もぉ、デートじゃないでしょ?」

 

 男女が2人きりで出かけたらそれはもうデートだって、それ一番言われてるから。

 

「あはは、デート……デートねぇ……」

「ゆうゆ!? 違うからね!?」

 

 どうやら純粋ウブウブな侑ちゃんはまんまと信じてしまったようです。きょとんとしてる歩夢ちゃんの方をチラチラ見てただろ。

 

「あ、そうだ! 折角だし、2人も一緒に来る?」

 

 ナイスゥ(建前) やめろォ(本音) 歩夢ちゃんとは2人きりの勉強会もといおうちデートで親密度を稼げていますし、侑ちゃんとは作曲勉強会もとい泊まり込みで愛を育む会と稼ぐ機会がたんまりあるので、本日のデートは愛さんの親密度稼ぎに集中したいんですよね。だから頼むよ頼むよ~。

 

「行こう侑ちゃん!」

「行こう歩夢!」

 

 えぇ……そんな2人して顔を見合わせながら即答しなくても……(困惑) 歩夢ちゃんと侑ちゃんで仲良くお出かけしてたんですから、そのまま2人でうさぴょんしてろよ(暴言) 悔い改めて。

 

「もと君、私達が一緒だとイヤなの……?」

 

 そんなしおらしい顔でそんな言い方をされたら……いいよこいよ!(やけくそ) いくらRTAとはいえさっきは暴言を言いすぎました、ごめんなさい(賢者タイム)

 

歩夢ってたまぁに小悪魔みたいな時あるよね

そうかな?

 

 愛さんと侑ちゃんがヒソヒソと何かを話していますが、愛さんの言葉には私も激しく同意です。しかもそれを無自覚でやっているのですから困ったものです。でもそれは2人にも言えることですよ? 侑ちゃんはボディタッチが多いですし、愛さんは意外と甘えたがりですし。

 

「ところで、結局2人は何しにここまで来たの? 愛ちゃんのアクセ買いに?」

「ううん、今日は元樹のを選びに来たんだー」

 

 そういえばそんな話でしたね。前パートを投稿したのがだいぶ昔なので、私も編集の時には忘れてました。

 折角ですから3人でコーディネートバトルをしていただきたいですね。それぞれほも君に似合いそうなアクセサリーを選んでもらって、ほも君が一番気に入ったものを持ってきてくれた人の勝利です。なお、お金の関係上一番になったものだけを購入します。

 

「いいね! おもしろそー!」

「やろうやろう! ね、歩夢」

「うん、あんまり自信はないけど……」

「えー、歩夢めっちゃオシャレなのに?」

「そ、そんなことないよぉ」

「愛ちゃんの言う通りだって。このフリフリのスカートとか歩夢にすっごい似合ってるよ」

「うぅ~……」

 

 そうですよ。ほら、その……いつもつけてる髪飾りとか、オシャレで可愛いですよね(小並感) あとは毎朝セットしてるそのぽむ玉とか。

 

「もと君もずるいよぉ……」

 

 おっぱいも大きいし、料理上手だし、たまにお尻でさせてくれるし、白いパンツ履いてるし、トロトロだし、クソゲー大好きだし、いい匂いするし(要確認)、褒められるとモジモジ照れちゃうし、なんというか、とにかくイイですよね。でもお尻は虹ヶ咲四天王にすら入れない程度の大きさなのが残念ポイントです。

 

「もうっ、私のことはいいから早く始めよ?」

「そうだね」

「元樹はどうする? 誰かについてくる?」

 

 もろちん愛さんに! ……と言いたいところですが、ここはあえて1人で待機しましょう。会話を削減して時間短縮を図ります。このRTAで重要なのは、いかに無駄を削減して、いかに効率よく女の子を墜とせるか、ですからね。

 

「そっか。じゃあ各々決めたら元樹に連絡するって方式にするから、連絡が来るまでの間は自由に徘徊してていいよ」

 

 おかのした。じゃけん皆に合わないように気を付けながら暇つぶししましょうね~。

 にしてもアクセサリーっていろいろあってよくわからないですねー。特に私自身がオシャレをしない人間なので、プレイ中はそれがほも君に反映されてしまっています。悲しいなぁ……。

 

『もと君につけてほしいのが決まったから来てもらってもいい?』

 

 おっ、早速歩夢ちゃんからの連絡ですね。すぐに向かいましょう。どんなのを選んでくれたのか楽しみです。たとえどんなものを選ぼうと歩夢ちゃんを選ぶことはないですが。というかどこら辺にいるか教えてくれないと困るのですがそれは……。

 

「あっ、こっちだよ」

 

 やっとこさ見つけました。この前お昼ご飯を一緒に食べた時もそうでしたが、今周の歩夢ちゃんは位置情報を伝え忘れることが多いですね。ちゃんと位置情報加え入れろ~?

 

「あ……うっかりしてた……ごめんね?」

 

 もう許さねぇからな?

 

「……ごめんね、これで許してくれる?」

 

 もう許せるぞオイ!

 

「ふふっ、ありがと」

 

 歩夢ちゃんにギュッと抱きしめられた上でヨシヨシされたらもう許すしかないじゃないですか。おかげでほも君のあなたちゃんも全速ドリーマーです。この人恋愛経験ゼロなのに男が喜ぶツボを心得てますねクォレハ……。ちなみにほも君の方が身長が高いので、歩夢ちゃんのエチエチデカパイで顔を包み込んでもらえないことだけが残念です。代わりといってはなんですが、歩夢ちゃんの温かい手のひらと、ムチムチの体と、嗅ぐだけで勃〇してしまうような匂いを堪能しましょう。

 ところで歩夢ちゃんが選んだものは何ですか?(賢者タイム)

 

「うん、私が選んだのは……これ!」

 

 そう言って歩夢ちゃんが見せてくれたのは手提げカバンです。……カバンかぁ。これってアクセサリーに含めてもいいんですかね?

 

「お店の中にあったからいいかなーと思って……ダメ、かな?」

 

 (上目遣い歩夢ちゃんが可愛いので)いいよ! こいよ! どうせ愛さんしか選ぶつもりがないですしね。

 

「ねぇねぇ、ちょっと持ってみて?」

 

 ん、ちょっとだけですからね。……はい、こんな感じでいかがですか?

 

「うん、すっごく似合ってるよ。……あ、少しお手洗いに行ってくるね」

 

 スマホを一瞥した後、ほも君を放って足早に立ち去ってしまいました。トイレメーターをスマホで管理しているのでしょうか? スマホを見るだけでトイレに行くタイミングがわかるとRTAの時に便利そうですね。

 

『今大丈夫? 愛さんのところに来てほしいな。リストバンドのあたりにいるからね』

 

 今度は愛さんからの呼び出しです。愛さんはちゃんとどこに行けばいいか教えてくれるのでありがたいですね。愛さん、好き(璃奈並感) というわけでほらいくどー。

 

「元樹ー、こっちだよー」

 

 おはよ^~(気さくな挨拶) 早速ですが愛さんは何を選んでくれたのですか? まぁ呼ばれた場所的にリストバンドでしょうけど。

 

「ふっふっふ……そう思ったでしょ? そんなわかりやすくないんだな~これが。何を選んだか先にわかったらおもしろくないじゃん?」

 

 確かに……愛さんがそこに気が回らないはずがありませんでしたね。リストバンドじゃないとしたら何を選んできてくれたのでしょう?

 

「愛さんが選んだのは……じゃーん! このイヤリング!」

 

 愛さんが見せてくれたのはグレーとオレンジが混じったイヤリングです。言わずもがなりなりーと愛さんのイメージカラーですね。つまりりなあいイヤリング……ってコト!?

 

「こうやってちょっと耳に当ててみて」

 

 こうですか?

 

「そうそう。ちゃんと似合ってるよ」

 

 ありがとナス! でもなんでこの配色を選んだんですか? りなあいカラーをほも君なんかが身に着けても意味ないと思うんですけど(名推理)

 

「理由……理由かぁ……。これを一目見たときなんかピンっと来たんだよね。『これは元樹に似合うぞ!』って。だから深い理由なんてないんだよね~」

 

 なるへそぉ? まぁ直観は大事ですからね。私もいつも自分の直観を信じてGoing My Way(チャートガン無視)しています。

 

「で、どうどう? 気に入ってくれた?」

 

 んー……まぁ、ぼちぼち……ですね(優勝確定)

 

「そっか、よかったぁ」

 

 安堵したように胸を撫で下ろしています。まぁ撫で下ろせているかといえば……ですけどね。かすみんが見たら憤死してしまいますね。これが胸囲の格差社会ナリか……。

 あっ、そうだ(唐突) この辺にぃ、愛さんに似合いそうなシュシュ、あるんですよ。

 

「ん? どれどれ?」

 

 あれですあれ。ちょっと上の方にある……ってなんだか距離近くないですか……?

 

「そう? これくらい普通じゃない?」

 

 肩ががっつり触れ合っていますし、なんなら愛さんのご立派ァなものがちょびっと腕に当たってしまっています。なんで揉んじゃいけないんですか?(正論)

 

「んしょっ……と。元樹が言ってたのってこれ?」

 

 そうそう、それです。愛さんに似合いそうなものを私もたまたま見つけました(建前) 愛さんにプレゼントすると親密度が上がりやすいものとして事前にリストアップしていました(本音) この店に来ることになったのは完全にたまたまでしたが。

 

「どうかな? 似合ってる?」

 

 はい、バッチェ似合ってますよ。愛さんの美人さが引き立てられています。じゃけんほも君からプレゼントさせていただきますね~。

 

「えっ、いいっていいって。今日は元樹のを選びに来たんだからさ」

 

 えっ、そんなん関係ないでしょ(正論) 私がプレゼントするべきだと思ったからです。それに愛さん達がほも君のために選んでくれてるんですから、ほも君が愛さん達のを選ぶのも当たり前だよなぁ! なお歩夢ちゃんと侑ちゃんの分は選ぶ予定はありません。ごめんね。

 

「元樹がそこまで言うなら……プレゼントしてもらおっかな。ありがとね、元樹」

 

 愛さんが頭をポンポンしてからなでなでしてくれました。あぁ^~、愛さん、好き(大好き) ギュってしても……おっと、侑ちゃんからの連絡です。いいところだったのに(ボソッ)

 

「ゆうゆから?」

 

 そうだよ(便乗) 侑ちゃんもちゃんと現在地を教えてくれていますね。唯一教えてくれなかった歩夢ちゃんはスイーツ食べ放題はしごの刑ですねクォレハ……。

 

「もとくーん、こっちこっち!」

 

 はい、侑ちゃんです。ぴょんぴょん跳ねていて可愛いですね、頭なでなでして♡ でもあんまりぴょんぴょんすると周りの商品を落としてしまうかもしれないので気を付けてくださいね。

 

「愛ちゃんと一緒ってことは、もう愛ちゃんが選んだのは見たの?」

 

 そうだよ(便乗)

 

「ってことは私が最後なんだね」

 

 そうだ……ん? 歩夢ちゃんも終わったってこと伝えましたっけ?

 

あ、えっと……ちょっと前に歩夢から連絡来たんだよねー」

 

 なるほど。最初の間は気にしないでおきましょう。

 

「それでそれで、愛ちゃんには何を選んでもらったの?」

 

 勝負なんですから教えるわけないだルルォ!?

 

「あっ、それもそっか」

「教えてあげてもいいんじゃない? ゆうゆも『これだ!』ってのを決めてるんでしょ?」

「うん、まぁ……そうだね」

「愛さんのを聞いて考えが変わったりもしないだろうし、折角だし教えてあげようよ」

 

 んー、まぁ愛さんが言うならしょうがないですね。タイム優先でとっとと勝負の決着をつけたかったのですが……ま、えやろ。はい、これが愛さんが選んでくれたものですよー。

 

「これはイヤリング? もと君がイヤリングつけてるイメージあんまり湧かないかも……」

 

 実際つけたことないですしね。侑ちゃんがイヤリングつけてオシャレしてるところも見てみたいな~。

 

えぇっと……こほん。ミンナ、コンナトコロデナニシテルノー?」

 

 お手洗いから歩夢ちゃんが戻ってきました。

 

「……なんでそんな棒読みなの?」

 

 歩夢ちゃんは棒読みがひどいですし、侑ちゃんは冷や汗だらだらです。これはどういう……あっ(察し) さては歩夢ちゃんと協力して選んだなぁ? ……ま、えやろ。どうせ勝負結果は決まっていますし。というわけで侑ちゃん、選んだものを見せてちょーだい!

 

「う、うん。私が選んだのはこれ、なんだけど……」

 

 そう言って侑ちゃんが見せてくれたのは指輪です。小さな宝石(のようなもの)が埋め込まれた指輪です。……指輪? ちょっと想定外の選択ですねぇ……。どうしてこれを選んだんですか?

 

「えと、その……2つで1組だったから、一緒にどうかなーって」

 

 一緒にと言いますと?

 

「もと君と私で1つずつつけるってこと、かな」

 

 結婚かな?(混乱) 侑ちゃんちょっと重たくないですか? 歩夢ちゃん'sセレクションなのかもしれませんが、どちらにしても重たいです。

 想定外すぎる事態にちょっと困っています。具体的にどう困っているかと言いますと、心が侑ちゃんの方に揺れかけています。侑ちゃんとのペア指輪で心が揺らがない奴いる? いねえよなぁ!? ワンダーフォーゲル部潰すゾ!

 

「もと君、手貸して。つけてあげる」

 

 (私の心が揺れに揺れてしまうので)ダメです。

 

「むぅー、ケチぃ……」

「折角だからつけてもらえばいいのに」

「そ、そうだよ!」

 

 うーむ、愛さんと歩夢ちゃんから言われてしまったら仕方ないですね……。侑ちゃん、ほも君の指に指輪をつけてください。オナシャス! センセンシャル!

 

「……はい、つけたよ」

 

 んー、今の光景は完全に結婚式ですねぇ。歩夢ちゃんはすごく満足気な、愛さんは複雑そうな表情です。例えるなら『私の方が先に好きだったのに……』とか『親友の好きな人だったのに……』とかでしょうか(名推理)

 

「さて! もと君、誰のが一番気に入ったか決めてくれる?」

 

 ちょっと待って! まだ侑ちゃんにつけてないやん。

 

「い、いいって! 私はつけなくても大丈夫だから!」

 

 ペア指輪なんですから侑ちゃんもつけないとダメですよね? ほも君と侑ちゃん2人でつけて初めて完成するんですから。

 

「ぐうの音も出ない……」

「折角だから侑ちゃんもつけてみよ? きっと似合うよ!」

「うぅ~……」

 

 歩夢ちゃんからのアシストも入りましたね。というわけですから侑ちゃんの綺麗ですべすべで意外と手〇キが上手な指を出してもらいましょうか。ホラホラホラホラ。

 

「……わかった、わかったから! そんな目で見ないで!」

 

 よし! 侑ちゃんが折れてくれました。じゃけん差し出された指に指輪をはめていきましょうね~。

 

「んっ」

 

 目を瞑って顔を赤くしながら体をプルプルと震わせる侑ちゃんは可愛いですね。結婚式みたいに誓いのキスしようとしても多分バレないでしょうね。してもいいですか? いいですよね? しますよ? 時間がもったいないのでしないけど。……はい、指輪つけましたよ。

 

「あー、恥ずかしかった……」

「よしっ、じゃあ今度こそ元樹に決めてもらおっか」

 

 そうですねぇ……愛さん、ですかねぇ(予定調和) 先程まではかなり迷っていましたが、さっきの侑ちゃんを見て満足したので愛さんを選ぶことができました。やったね、親密度が増えるよ!

 

「やった!」

「んー、ダメだったかぁ。あんなに恥ずかしい思いしたのになぁ……」

「残念だったね、侑ちゃん」

 

 おや、愛さんの反応が思ったより小さいですね。ま、えやろ。とりあえず愛さんが選んでくれたイヤリングとプレゼントのシュシュを買ってきますね。

 

「いってらっしゃーい」

 

 えーと、お会計が2000円……お得だな! お財布に優しくてありがたいです。おっと、そのシュシュはプレゼント用の袋で包んでください、お願いしますね。

 ただいまー、買ってきましたよーっと。はい、これシュシュです。受け取ってください。

 

「うん、ありがと。大事にするね」

 

 さて、この後はどうしますか? 今からどこに行くとかは特に決めていませんが……。

 

「うーん……ゆうゆ達はどうするの?」

「私達も特に予定は決めてないかな」

「あっ、私、もと君を連れていきたいところあるんだけどいいかな?」

 

 あっ、いいっすよ(快諾) というかこのまま4人で行動するつもりなんですね。

 

「うん。私達も特に予定なかったし。歩夢もいいよね?」

「もちろん」

「じゃあゆうゆの行きたいところにレッツゴー!」

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




これからの展開は頭の中にあるのに、それをうまく言語化できない……絶賛スランプ中です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part47/n

最近初投稿してないなーと思ったので初投稿です。


 有名作曲家への第一歩を踏み出すRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は愛さん、侑ちゃん、歩夢ちゃんでほも君に似合うアクセ選び対決をしました。今回はその続きからで、侑ちゃんが何やらほも君を連れていきたい場所があるということで、そちらに向かいましょう。イキますよ~イクイク……。

 

「ねぇねぇ、今からどこ行くつもりなの?」

「んー、秘密!」

「え~……ヒント! ヒントちょうだい!」

「今後もと君に必要になるものを見に行くんだー」

 

 ほも君に必要なもの……? モテオーラでしょうか。それともデリカシー?

 

「そういうのじゃないと思うな……」

 

 では侑ちゃんの言うほも君に必要なものとは一体何なのでしょう。私には皆目見当がつきません。歩夢ちゃんは何か思いつきますか?

 

「うーん、今後のもと君にってことを考えると……作曲に関係するもの、かな?」

「おっ、歩夢正解!」

 

 あー、なるほど。それは普通に思いつきませんでした。さすが歩夢ちゃんですね。

 

「えへへ、そうかなぁ」

 

 でも作曲関係のものとわかったところで、結局私自身に作曲の知識がないので何も思いつきませんね。愛さんは何か思いつきますか?

 

「アタシも特には……ゆうゆ、もう1個ヒントちょうだい?」

「んー、そうだなぁ……作曲に必要不可欠なものだけど、日常生活でも普通に使えるものだよ」

「日常でも使えるもの……」

「あー、でも歩夢は持ってないかな」

「うーん、私は持ってなくて、侑ちゃんは持ってるものかぁ」

「あと持ち運びには不便だから、外で使ってる人はあまりいないかも」

 

 ふむふむ、私はわかりましたよ。PCじゃないですか? ほら、歩夢ちゃんはなんかPC触らなさそうですし。

 

「残念! パソコンは私もあまり詳しくないから、どれがいいかとかはあまり教えられないんだ。もと君が普段使ってるので多分大丈夫だとは思うけどね」

 

 (最悪の場合はりなりーに助けてもらうので問題)ないです。りなりー、作曲ソフトがサクサク動いて、簡単に持ち運べて、電力消費が小さくて、メモリが1145141919TBで、ノートパソコン出して。

 

「……あっ! もしかしてヘッドホン?」

「歩夢正解!」

「やったっ」

 

 あー、確かに侑ちゃんとミアちゃんは作曲している時はヘッドホンをつけてますもんね。

 

「ほんとは私が昔使ってたのを貸してあげるつもりだったんだけど、昨日確認したら壊れちゃっててさー」

 

 借りられたらとても助かったのですが、どうやらほも君自身で買う必要がありそうです。かなり痛い出費にはなりますが……まぁ仕方ないでしょう。

 

「えっとね、今から行くお店のクーポンがたまたまあったから、なんと50%offで買えるんだー」

 

 はぇ~すっごいお得……。でもいいんですか? そんなバリお得なクーポンをほも君が使ってしまって。ほも君よりも侑ちゃんが使うべきでは?(建前)

 

「もっちろん! 少し前に買い換えたばかりだったから私は当分使う予定なかったし、次に買う頃には使用期限過ぎちゃってただろうし」

そろそろ買い換えようかなってこの前言ってなかった?

しっ、もと君にはヒミツっ。もと君には私のおさがりなんかより、良いものを新品で使ってほしいからね

 

 がっつり聞こえてますよ(小声) まぁゲームという性質上テキストに起こされてプレイヤーに見えているだけで、実際はほも君には聞こえていないようですが。侑ちゃんのこういうところとても大好きです。ですが自分のおさがりに価値を見出していないことは減点です。侑ちゃんが愛用して、侑ちゃんの匂いや汗が染みついた努力の跡が、なんならオ〇ニーする時にもつけているかもしれない侑ちゃんの性欲の跡がつまったヘッドホンの方が価値があるに決めってるだルルォ!?

 

「2人で何コソコソしてるの?」

「な、なんでもないよ!」

「ふーん……」

「あっ、ここがもと君を連れてきたかったお店!」

 

 侑ちゃんが指差す先には広いお店がドーンと佇んでいます。

 

「ここは……オーディオ専門店?」

「うん、私の行きつけ! ここ品揃えいいし、試し聞きさせてもらえるし、なにより安い! 学生だと特別価格で買えるんだ~」

 

 あ^~いいっすね~。。ほも君もお財布事情が厳しいので、ほも君が利用する店は全部学割使わせてもらいたいです。それかカップル割。女の子と2人きりでお出かけしたらもうカップルだってそれ一番言われてるから。

 

「えぇっと、私が今使ってるモデルはっと……あれ?」

「どうしたの?」

「とりあえず私が今使ってるのを教えてあげようかなーと思ったんだけど見つからなくて……」

「なんていうやつなの? 愛さんも一緒に探してみるよ」

「ありがと。HighBloomっていうメーカーさんのUPM-0301って型番だったはず」

 

 そのメーカーさんの製品はここに固まってそうですが、その型番のものは見当たらないですね。売り切れてしまったのでしょうか。

 

「あーそうかも。この前SNSで話題になってたし……」

「そんなに性能がいいの?」

「そういうんじゃなくて……いやまぁ性能はもちろんいいんだけど、人気の女優さんが使ってるって話題になったんだよねぇ」

「じゃあオシャレアイテムみたいな感じかー」

「そうだね。その気持ちもわかるけど。ヘッドホン首にかけてるとなんかかっこいいし!」

 

 侑ちゃんそういうの好きそう(小並感)

 

「人気になるのは嬉しいけど買えないのは困っちゃうなぁ……。在庫がないかちょっと聞いてくるね」

「あ、私も!」

 

 侑ちゃんと歩夢ちゃんが店員さんを探しに行きました。さて、2人が戻ってくるまで私達は適当に店内を物色してましょうか。といっても私はあまりオーディオに詳しくないですが。

 

「うん、それは愛さんも一緒だよ。りなりーいっぱい持ってたからいろいろと教えてもらえばよかったなー」

 

 確かにりなりーはいろいろ持ってそうですね。結構こだわりありそうですし。

 

「元樹はりなりーの影響でオーディオに興味持ったりはしなかったの?」

 

 ほも君はあんまりだったみたいです。そもそも昔は自室で1人だと漫画を読んでる方が多かったみたいですし。

 

「へ〜、ちょっと意外かも。アタシが知ってる元樹とは全くの逆だ」

 

 確かにそうですね。今のほも君は私に操られているので、可愛い女の子食べまくり遊びまくりのプレイボーイになっていますから。あんなに大人しかった幼馴染が高校デビューでこんなのになっちゃうなんて……璃奈ちゃんボード『びっくらこいた』

 それにオーディオは青天井なので、費用も場所もドハマりすると大変なことになるんですよねぇ……。特に場所の問題が大きいです。

 

「確かに、この前りなりーの部屋で見た時も結構大きいの多かったしねー」

 

 折角女の子を招いても遊ぶ(意味深)ためのスペースが狭いとなんかイヤじゃないですか。

 

「そう? 愛さんはあんまり気にしないけどなー。友達と一緒にいれるならそれがどこだって楽しいじゃん」

 

 愛さんはそういうタイプですよね。でももしもほも君と愛さんが『セ〇クスしないと出られない部屋』に閉じ込められたとしても同じことを言えるのかは気になりますねぇ。じゃけん虹ヶ咲の敷地を借りて企画を組みましょうね~。

 

「……ねぇねぇ元樹、このヘッドホン試しにつけてくれない?」

 

 性能がよさそうなのを見つけてくれたんですか?

 

「ううん、デザイン的に元樹に似合いそうなの。性能とかはよくわかんないからさ」

 

 なるほど。実質アクセ選びの延長戦ですね。

 

「あはは、そうかもね。折角来たんだからゆうゆ達が戻ってくるまでそれで楽しんでようよ」

 

 タイムロスになりそうなのでやだよ(即答) 侑ちゃんの方はまーだ時間かかりそうですかね~?

 

「まあまあまあ、そんな恥ずかしがらなくてもいいから! きっともっとかっこよくなれるよ」

 

 愛さんが首にかけてきました。誰が勝手につけていいつったオラァ!(照れ隠し) でも愛さんのめちゃくちゃ整った顔がすぐ目の前にあってすっげぇドキドキしたゾ~。あ^~たまらねぇぜ。愛さんのこと大好きなので、至急、キスさせてくれや。

 

「うんうん、思った通りかっこいい! 元樹によく似合ってるよ」

 

 て、照れますよ……。

 

「あっ、そうだ。それでDJっぽいことやってみてよ」

 

 へええっ!? ディッ、DJですかぁ!? 見たけりゃ見せてやるよ(見習い音楽家の風格)

 それ、YO! YO! マルなんだYO! うーん、なんだか物足りませんねぇ……。ヘッドホンの他に帽子とグラサンも欲しいです。この2つさえあれば完璧なDJを演じることができるのですが……ま、えやろ。ないものねだりをしても仕方ないですし。

 あっ、そうだ(唐突) 折角なので2人で記念撮影しましょうよ。

 

「もちろんいいよ。じゃあこっちおいで」

 

 愛さんが手招きしているので隣に立ちましょう。本当はこのまま抱きついてしまいたいのですが、そろそろ侑ちゃん達が戻ってきそうですし、今回は諦めてパパパッと撮って終わりにしましょう。あでも何もしないのはやっぱりもったいない気がするので、ちょこんと愛さんの肩に手をのせておきますよう。それじゃあ撮りますよ。かすみんの期末テストの平均点はー?

 

「にぃー!」

 

 よし、バッチリ撮れましたよ。

 

「どれどれ見せてー。……うん、いい感じじゃん!」

 

 後で愛さんに送っておきますね。

 

「うん、ありがとー」

 

 ついでにりなりーにも送っておきましょうか。自分の幼馴染と親友が仲良くお出かけしていると知ったらきっと喜んでくれますよ。

 

「あー……うん、それはやめておいた方がいい気がするなぁ。折角だから2人だけの秘密にしようよ、ね?」

 

 愛さんが言うならしょうがないですねぇ。ほも君と愛さんだけの秘密にしておきましょう。

 

「あ、いたいた」

「もぉ~、2人とも探したんだよ?」

 

 おっ、侑ちゃんと歩夢ちゃんが帰ってきました。ほも君達が好き勝手移動していたせいか歩夢ちゃんがちょっとおこです。おこなの?

 

「2人が急にいなくなるからびっくりしたんだよ? 連絡も返ってこないし……」

「連絡? ……あっ、ごめん、全然気づいてなかった……」

「むぅ……」

 

 どうやら歩夢ちゃんは相当ご立腹のようです。自分は居場所を教えてくれなかったのに(小声) 

 

もと君、もと君

 

 ん、何ですか?

 

歩夢ってもと君にすっごい甘いからさ、なんかこういい感じにしてくれないかな?

 

 えぇ……(困惑) くっそ雑なお願いで草生えますよ。でもまぁ侑ちゃんからのお願いなら頑張るしかないですね。とりあえずできる限りのことはやりましょう。

 歩夢ちゃん、すみません許してください! 何でもしますから!

 

「……もうっ、今回だけだからね。次からはちゃんと連絡してね?」

 

 チョロい(チョロい) 将来歩夢ちゃんが悪い男に引っかからないか心配です。生涯をかけてほも君がしっかり守ってあげないとダメですねクォレハ……。

 

「歩夢ってさ、元樹に対して甘いよね」

「えっ、そうかなぁ。普通に接してるつもりなんだけど……。むしろもと君が将来困らないようにって厳しく接してるつもりだよ」

 

 嘘つけ絶対甘々だゾ。この話は一旦置いといて、そろそろ本題に戻りましょう。さっき言ってたヘッドホンの在庫はあったんですか?

 

「ううん、今品切れ中だって。いやーまいっちゃうね」

 

 そうですね、まいりました。侑ちゃんが使っているものと同じものなら信頼できるので、商品を選ぶ時間を大幅に短縮できたのですが……。仕方ありません、他にオススメのものはありませんか?

 

「そうだなぁ……あ、もう1つオススメできるの知ってるよ」

 

 おっ、どれですか? もう待ちきれないよ! 早く出してくれ!

 

「ふふっ、それはね……今もと君がつけてるのだよ」

 

 あ、これですか?

 

「うんそれ。かっこいいよね。もと君にすっごく似合ってるよ」

「オススメの理由ってまさか……」

「いやいや、もちろんそれだけじゃないよ。デザインはもちろんいいし、音質も十分。なによりイヤーパッドがいい!」

 

 イヤーパッドってなんだよ(無知)

 

「イヤーパッドって耳が当たるこの部分のことだよね?」

「うん正解。これがすごいよくてね、つけてると気持ちいいんだ~」

 

 耳で気持ちよくなる侑ちゃんとかエッッッッッ! 侑ちゃんの耳が性感帯でいらっしゃるよ、舐めて差し上げろ。

 

「もと君、試しにつけてみてよ」

 

 おかのした。どれどれ……あぁ~いいっすね~(想像)

 

「でしょでしょ! だから昔は愛用してたんだけどね……」

 

 その言いぶりから察するに何かあったんでしょう。

 

「いやぁ……私が買ったのがたまたまダメだっただけなのかもしれないけど、半年くらいしたら片耳聞こえなくなっちゃってさー。寿命に問題ありかもって感じなんだよね。あと今は値下げされたけど、当時はもっと高かったからさ」

 

 あーなるほど……。でも半年もつなら十分でしょう。どうせ今回の作曲イベントが終わったらもう使うことはないでしょうし。それに愛さんと侑ちゃんが似合うと言ってくれましたからね。ほも君の気分もウッキウキです。というわけでこれ買います。

 

「本当にこれでいいの? 試し聞きとか他の見たりしないで大丈夫?」

 

 大丈夫ですよ。なにせ侑ちゃんのお墨付きですからね。というか単に他のを見ている時間がもったいないだけなので。どうせ試し聞きしたところで違いなんてろくにわかりませんし。

 

「んー、わかった。じゃあ一緒に買いに行こっか」

「じゃあ私達はいろいろ見て回ってるね」

 

 また愛さんが連絡せずにいろいろと歩き回って、侑ちゃんが探す羽目になると思うんですけど(名推理)

 

「だいじょーぶ! 今度は連絡見逃さないようにするからさ」

 

 また見逃しそうですが……ま、えやろ。今度は歩夢ちゃんがいますからね。さっきあんなに激おこぷんぷん丸だった歩夢ちゃんが連絡に気づいてくれなかったらブチギレてあげましょう。怒りに身を任せて歩夢ちゃんの家にあるブラジャーを全部持ち帰ってペロペロした後、ワンカップしたのものに全部入れ替えてから返します。ついでに体重計も改造して、歩夢ちゃんの体重から3kgマイナスした値が表示されるようにします。

 

「もと君何してるの? 早く行くよ」

 

 はいはーい。今更ですがこれの値段っていくらなんですか? そこら辺を全く確認していなかったもので……。

 

「これは確か2万円だったかな。半額のクーポンを使えるから1万円になるね」

 

 1万円、普通だな!

 

「……ねぇ、1つ聞いてもいい?」

 

 それは……急ですね……。ほも君に応えられることなら何でも聞いてくれていいですよ。

 

「もと君ってさ、もしかして歩夢と付き合ってる?」

 

 (まだ付き合って)ないです。

 

「えーほんとにー?」

 

 本当ですよ。ほも君、女関係以外嘘つかない。でもなんで急にそんなことを? というか以前も同じことを聞いてきましたよね?

 

「いやー、なんか2人を見てたらやっぱりただならぬ関係な気がしてね。もと君に毎日わざわざお弁当作ってあげたり、抱きしめあったり、もと君にだけ特別甘かったり……」

 

 これだけ聞いたら普通に付き合ってますね。なんでチャートをガン無視して序盤から歩夢ちゃんとイチャイチャがあるんですか?

 でも歩夢ちゃんとは本当に付き合ってないです。考えてみてください。あの歩夢ちゃんが付き合ってることを大事な大事な侑ちゃんに黙ってると思いますか? 思いませんね? これが初等幼馴染学です。

 

「あー確かにぃ……」

 

 もし侑ちゃんがほも君と付き合ったら真っ先に歩夢ちゃんに報告しませんか? しますよね? これが初等幼馴染学です。

 

「するかも……」

 

 ちなみにほも君はりなりーには絶対報告しません。これが初等ハーレム学です。

 

「じゃあ本当に付き合ってないのかぁ……」

 

 なんでそんなに残念そうにしているのかはわかりませんが、納得していただけたようで何よりです。そんなことよりお会計しましょう。

 

「あ、そうだね。クーポンは……あったあった。すみません、お会計お願いします」

 

 ほも君もお財布から1万円を取り出して、お財布が軽くなっていくのを実感しましょう。

 

「……はい、ありがとうございます。歩夢達のところに戻ろっか」

 

 おかのした。歩夢ちゃんに連絡送りますね。

 

「ありがとう。返信が来てから移動しよっか」

 

 そうですね。………………えー、5分ほど経ちましたが、まだ既読すらつきません。

 

「あ、あゆむぅ……」

 

 しょうがないですね、探しに行きましょう。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part48/n

愛さんメインのデートのはずなのに、ゆうぽむで書きたいシチュエーションがどんどん浮かんで困っちゃったので初投稿です。


 ヒロイン達を怒らせるRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はオーディオ専門店でほも君用のヘッドホン選びをしました。今回はその続きからで、お会計をしている間に行方不明になり、連絡もつかない愛さんと歩夢ちゃんを探しに行きます。

 探しに行きますとは言ったもののどこから探せばいいか見当もつきません。店内の構造は把握していませんし、他のお店に行っているとしたら範囲がデカすぎます! 侑ちゃん、何か思いつくような場所ありませんかねぇ?

 

「うーん……あ、電話だったら繋がるんじゃない?」

 

 あっそっかぁ(天然) 迷子(果林さん)対策ペーパーには『迷子になったらすぐ電話!』と書いてありましたが、まさか果林さん以外に使うことになるとは想像もしていなかったので頭から抜け落ちていました。

 

「私も~。誰かと電話するってことがあんまりなかったからなぁ」

 

 あー、歩夢ちゃんと家が隣ですから話したい時には直接会って話せますもんね。他の人とは……まぁ同好会加入以前ではないでしょう。歩夢ちゃんががっつりガードしてたでしょうし。

 話が少し脱線しましたね。合流のために愛さんに電話しましょう。もしもし~。

 

『……もしもし、元樹ー?』

 

 よかった、ちゃんと出てくれました。おいゴルァ!(豹変) 今はどちらにいらっしゃいますか?

 

『あー、今は……えー……』

 

 何ですか、歯切れが悪いですね。もっとハキハキ喋らなきゃ抜くぞゴラァ!

 

うぅん、なんて伝えたものか……えっとね、3階の〇〇ってお店の隣にいるよ』

 

 うーん、聞いたことのない店ですね。少なくとも試走中に行ったことは一度もありません。まぁ同じ階のようですしすぐ着くでしょう。今から向かうのでそこを動かないでくださいね。

 

 

 

『はいはーい』

 

 さて、マップを見てお店を探してもいいのですが、まずは侑ちゃんに聞いてみましょう。もし侑ちゃんが知っていたら探す時間を短縮できますからね。

 というわけで侑ちゃん、〇〇って名前のお店知りませんかー? 愛さん達がそこにいるそうなので、もし知ってたらほも君を案内してくださいな。

 

「……もう1回お店の名前言ってもらっていい?」

 

 〇〇です。

 

なんでそんなところに、もと君がいるのに……」

 

 そんなところ、とは? ほも君がいるのに、とは? そんな言い方をするということはその店のことを詳しく知っているんですね? ほも君の詳しく教えてください、オナシャス!

 

「うーん、あそこはまだもと君には早いかな。別の場所で待ち合わせにしない?」

 

 (待ち合わせ場所は変え)ないです。そんなことしたら連絡に時間がかかっちゃうだろ!

 というか結局どんなお店なんですか? 早く教えてください。そんなにほも君を遠ざけようとするということは……まさか大人なお店……ってコト!? 愛さん、歩夢ちゃんで大人なお店に行ってるとかエッッッッッ! というか大人なお店だったら侑ちゃんも早いだルルォ!?

 

「うぅ……」

 

 侑ちゃんの顔がだんだん真っ赤に染まっていきます。まるでお風呂に1時間浸かってのぼせたりなりーみたいですね。

 

「どういう表現なのさ……」

 

 まぁまぁ、早く教えてくださいよ。教えてくれないと迫真スクールアイドル同好会・性の裏技しちゃいますよ?

 

「……じゃあ耳貸して」

 

 耳ですか? いいですよ。皆さんには黙っていたのですが、実はほも君の耳は着脱可能なのです。なので侑ちゃんには耳だけを貸してあげますね。はい、どうぞ。

 

「きゃっ! も、もと君耳が!?」

 

 おや、どうかしましたか? 言われた通り耳を貸していますよ。ホラホラホラホラ。

 

「ひぃっ……!」

 

 耳を差し出したところ、怯えた侑ちゃんが思いっきり抱きついてきました。というよりはほぼほぼ突進ですね。暴れんなよ……暴れんなよ……。いや別に侑ちゃんのロケットが当たるとかいい匂いがしすぎて困るとかではなくてですね、単に痛いんです。いくら相手が侑ちゃんでも、下半身に対して上半身が貧弱すぎるほも君にはダメージになってしまいます。

 というわけでそろそろ解放していただきましょう。視聴者兄貴はもちろんお気づきだとは思いますが、実はこれ偽物の耳なんです。侑ちゃんをからかいたくなっただけなんですよ。ほら、ほも君の両耳ちゃんとついているでしょう?

 

「……むぅ、いたずらっ子……というかなんでこんなの持ち歩いてるのさ」

 

 さぁ? 私にもわからないです。ドミノだったり耳だったり、ほも君はいつもよくわからないものを持ち歩いていますね。マジシャンか何か?

 

「なんか触感も本物っぽい……」

 

 人を騙すためには見た目、触感、味に至るまで本物そっくりに作る必要があるからね、しょうがないね。というかなんでほも君の耳を触る必要があるんですか? 侑ちゃん自身の耳を触って確認すればいいと思うんですけど(正論)

 

「これ、私の家に持ち込まないでね」

 

 え、なんでですか? 絶対面白いことになるのに。

 

「だってこれが家に転がってたら普通にびっくりするじゃん。嫌だよ、家でホラー体験するの」

 

 よし、じゃあ持ち込んでやるぜ。ほも君もホラーは苦手ですが(小声)

 

「もし見つけたらゴミ箱にポイするからね」

 

 それは困りますね。もう二度とこれを使って誰かをからかうことができなくなってしまいます。仕方ないのでお泊りの時はこれは自宅に置いていきましょう。

 

「今度こそちゃんと耳貸して」

 

 私の嗜虐心のせいで時間がかかってしまいましたが、ようやく愛さん達がいるお店の正体がわかります。さてさて教えてもらいましょうか。

 

「……女の子用の……すぅ、し、下着のお店……」

 

 え? なんですって? よく聞こえなかったのでもう1回言ってください。

 

「下着……」

 

 ふむふむ。下着とは具体的にはなんのことを言っているんですか?

 

「ブ、ブラジャーとか、ショーツ、とか……」

 

 ショーツ? ショーツとは一体何ですか?

 

「えっと……おパンツと一緒、かな」

 

 おパンツ? 侑ちゃんはおパンツなんか履いてるんですか? ほも君の高校では罰ゲームでぇ、ノーパン登校ってのがあったんですけど……。

 

「は、履くに決まってるじゃん! ……お風呂上がりとかたまに履かずに過ごすけど

 

 耳元で大声を出されるといや~鼓膜がキツイっす。

 

「あ、ごめん」

 

 もう許せるぞオイ! もう許さねぇからなぁ?(豹変) お詫びに今侑ちゃんがつけている下着の色を教えてもらいましょうか。

 

「…………ピンク

 

 へぇピンクですか。侑ちゃんにしてはなかなか珍しいですね。ちなみにどんなものをつけているのか実際に見せてもらってもいいですか?

 

「え……ま、周りに人いるし……」

 

 えっ、そんなん関係ないでしょ(正論) 誰も私達2人のことなんて気にしていませんよ。どうしても気になるというのであれば、ほも君の体で侑ちゃんのことを隠してあげますよ。こうやって侑ちゃんを壁際に押しやって、その前にほも君が立てば……ほら、これで周りからは絶対に見えませんよ。『あっ、おい待てぃ(江戸っ子) こんな絵面明らかに怪しいだルルォ!?』とお考えの兄貴もいると思いますが、そんな正論は受け付けておりません。

 

「んっ、近いよぉ……」

 

 トキメいた時は自分から距離詰めていくのに(小声) それにしても照れた侑ちゃんはとても可愛いですね。興奮させてくれるねぇ! 好きだよ、そういう顔! 撮りたくなりますよ~写真~。

 

「そ、そういうことは私なんかより歩夢に言ってあげてほしいな」

 

 なんでそこで歩夢ちゃんの名前が出てくるんですか?

 

「あ、えと、その……」

 

 そりゃぁ歩夢ちゃんが可愛いのは当然理解していますが、侑ちゃんだって負けないくらいとっても可愛いし魅力的ですよ。そのキラキラしたおめめとか、ツヤツヤな唇とか、もちもちのほっぺたとか、ちょっとした仕草とか、そのツインテールとか、逆に髪を降ろしてる時も可愛いです。絶妙にダサい私服も侑ちゃんが着ると何故か可愛く見えますし、海軍大将風の謎のジャージの着こなし方もよき。あとおへそ、いい。何より表には出さないけど実は激重なのが最高。うっかり選択肢を間違えるとあっさりバッドエンドに行きそうなのがいい。あとおっぱいが大きいし柔らかいし揉み心地がいい。

 

「……ズルい、ズルいよぉ。もと君はすぐ平気でそんなこと言うから……」

 

 だから侑ちゃんの下着を見せてください、オナシャス! 見るだけといわず、触ったり揉んだり舐めたりつまんだりさせてほしいです。

 

「最低! 急に言うことが最低だよ! 私のトキメキを返してよ!」

 

 今の流れだといけると思ったんですがねぇ、そこまで流されてはくれなかったみたいです。体を押し返されて包囲から抜け出されてしまいました。悲しいなぁ……。

 

「もと君、なんだか私にだけセクハラ多くない? 私相手じゃなかったら絶対怒られてるよ」

 

 まぁそういうお年頃ですからね、しょうがないね。ほも君のメンツのために一つだけ訂正しておきますが、侑ちゃん以外にもめちゃくちゃセクハラしています。それだけは勘違いしないでください。

 でも侑ちゃんだってそういうお年頃ですよね? 侑ちゃんも()()()()()()を見たりして、夜な夜な1人でシテるんじゃないですかぁ? 少なくとも今までの侑ちゃんはみーんなしていましたよ。

 

「……ノーコメントで」

 

 多分ほぼYesと言っているようなものだと思うんですけど(名推理)

 

「ほ、ほらっ、そろそろ行くよ! 歩夢達が待ってるから!」

 

 侑ちゃんがほも君の手を引いてズンズン進んでいきます。行き先を知っているのは侑ちゃんだけですし、このままされるがままでいきましょう。どうせ筋力不足で抵抗できませんし。

 

 

 

「あっ、愛ちゃん!」

「ゆうゆ!」

 

 お、愛さんと合流しました。ちーす。そして侑ちゃんが言っていた通りすぐ隣に下着のお店があります。店先にシンプルなデザインの下着から、可愛らしいもの、ちょっとエッチなものまでいろいろ並んでいます。愛さんと歩夢ちゃん2人っきりでこんな下着を選んでたとかシチュエーションがえっちすぎますねクォレハ……。

 

「それで、なんでゆうゆは元樹を引っ張ってるの?」

「いやー、もと君が悪さばかりするからさー」

 

 いやいや悪さなんてしてないですよ。ただ侑ちゃんをからかったり、セクハラ発言したり、壁に押し付けたり、下着を見ようとしたり、あわよくばいい感じの雰囲気にしてトイレとかに連れ込もうとしただけじゃないですか。

 

「んー、何したのかは知らないけど、あんまりゆうゆにイタズラしちゃダメだよ? 優しいからってやりすぎちゃうと怒られて見放されちゃうよ」

「さすがに見放しはしないけどね。でも怒りはするかも」

 

 ほんとぉ? 侑ちゃんが本気で怒っているところを見たことがないんですよね。試しに今怒ってみてくれませんか?

 

「試しにって言われてもなぁ。特に怒りたいこともないし……」

 

 じゃあ侑ちゃんが後で食べようと思っていたアイスをほも君がうっかり食べちゃったというシチュエーションで。はい、321どーぞ!

 

「えぇ!? えぇっと……もうっ、勝手に食べちゃったの? しょうがないなぁ……代わりに今度クレープおごってね? それで許してあげるっ!」

「ゆうゆの怒り方めっちゃかわい~!」

 

 歩夢ちゃんの怒り方とそっくりですね。やっぱ幼馴染は似るんやなぁって。ほも君とりなりーは……まぁあんまり似ていませんが。

 

「えー、結構真剣に怒ったつもりなのに……」

 

 ところで、ひじょーうに今更なのですが歩夢ちゃんはどこにいるんですか? 先程から影も形も見当たりませんが……。

 

「あーっと、歩夢はねぇ……」

 

 何故か言いよどんでいます。もしかしてまだお会計の最中ですか?

 

「お会計って何のこと?」

 

 とぼけちゃってぇ……ほら、すぐそこの下着屋さんですよ。

 

「へっ!? な、なんで下着!?」

 

 このお店の隣に集合って言ったのは愛さんじゃないですか。わざわざこんなところにしたということは、さっきまでここで買い物していたということなんですよね?

 

「ちょっともと君……」

「あーいやそうじゃなくてぇ……」

 

 愛さんは一体どんな下着を買ったんですか? 見た目はドスケベですが心はピュアピュアな愛さんですから、きっとド健全な下着なんでしょうねぇ。

 

「あぅ……歩夢、ごめん! 歩夢は今お花を摘みに行って、ます……」

 

 へぇ、お花摘みですか。確かにすぐそこにトイレがありますね。ふぅん、なるほどですねぇ……ですがちょっと長くないですか? もしかして大きい方……(小声)

 でもトイレならこの階の他の場所にもありますよね? 何故わざわざこんな健全な男の子が勘違いしてしまいそうな場所で……。

 

「い、一番近いところがここだったから。遠くに行ったら合流が大変じゃん」

 

 それは……そうなんですが……。でも勘違いさせた愛さんの罪は重くないですか? じゃけん時間潰しとして愛さんも怒ったふりしてみてくださいね~。

 

「そ、そんな急に言われても……」

 

 シチュエーションはさっきと同じような感じで、愛さんちのぬか床をほも君がうっかり全部食べちゃったというシチュエーションでオナシャス!

 

「え、ぬか……え? ぬか床食べちゃったの? ぬか漬けじゃなくて?」

 

 ガチ困惑してる愛さんも可愛いゾ~コレ。でもシチュエーションは変えません。早くしないと歩夢ちゃんが戻ってきちゃうだルルォ!?

 

「もう、自由だなぁ……こーら、勝手にぬか床食べちゃダメだぞー。食べた後大丈夫だった? お腹壊したりとかしてない?」

 

 大丈夫ですねぇ! 勝手にぬか床食べられたのに体調の心配をしてくれる愛さんの聖人さに感動しておち〇ち〇から涙がで、でますよ……。でも今の怒ったのうちに入らなくないですか?

 

「だってぇ、ぬか床食べたって聞いたら怒るより先に心配しちゃうんだもん」

「だよねー。それ食べるしかないくらい困ってるのかなって考えちゃった。もと君の考えたシチュエーションが悪いよー」

 

 えー、おばあちゃんのぬか漬け大好きな愛さんであれば怒るかなーと思ったのですが、どうやら見当違いだったようです。悲しいなぁ……。

 

「皆おまたせー。遅くなっちゃってごめんね」

 

 おっと、ちょうどいいタイミングで歩夢ちゃんが戻ってきました。では歩夢ちゃんにも怒ったふりをしてもらいましょう。

 

「怒ったふり……?」

ごめん、少しだけ元樹に付き合ってあげて?

う、うん。よくわからないけど、とりあえずやってみるね

 

 シチュエーションはずっと食べ物だとつまらないので別パターンにしましょうか。そうですね……歩夢ちゃんとお付き合いしているノンケほも君が女の子と浮気した、というシチュエーションでいきましょう。

 

「もと君が私の恋人で、だけどもと君が他の女の子と浮気しちゃうんだね。辛いシチュエーションだけど頑張ってみる」

 

 ちなみにですが、ここで恋人という設定にしたのには意味があります。それは歩夢ちゃんにほも君を異性として少しでも意識してもらうためです。今までの歩夢ちゃんを見ている感じだと後輩として可愛がられている感じが強そうだったので。だから恋人設定にする必要があったんですね。

 

「すぅ……もと君、なんで浮気なんてしたの? 私という彼女がいるのにどうして? 大好きだったのに……ずっと好きでいてもらえるように、もっと好きになってもらえるように、いっぱいいっぱい努力もしたのに、どうして侑ちゃんと……しかも私がすぐ隣にいる侑ちゃんの部屋で、エッチなことまで。ねぇどうして? いつも言ってくれたよね、大好き、愛してる、ずっと一緒にいたいって。昨日もいっぱいいっぱい愛してくれたよね。いっぱい抱きしめてくれたし、キスもエッチも私が満足するまでしてくれたよね。今までの言葉は、行為は全部嘘だったの? それとも私のこと嫌いになっちゃったの……? 私にダメなところがあるなら全部教えて? ちゃんと直すから、してほしいこと全部してあげるから、あなたの大好きな私になるから……だからお願い、嫌いにならないで? …………あ、そっかぁ。私の大好きな気持ちがもと君に全然伝わってなかったんだぁ。だからこんなつまらないことしちゃったんだよね。ふふっ、大丈夫だよ。もと君が悪いんじゃなくて、私の伝え方が悪かっただけだもん。はぁ、想いを伝えるのって難しいなぁ。……さて、侑ちゃんとのお別れは済んだよね。じゃあ行こっか。え、どこにって? 決まってるでしょ。誰にも邪魔されず、私ともと君が2人きりでずっと一緒にいられるところだよ。うふふ、怖がらなくてもいいのに。いつもみたいに、一緒に起きて、一緒にご飯食べて、一緒にお風呂に入って、いっぱい愛し合って、一緒に寝る、そんな毎日を過ごすだけだよ。毎日一緒に過ごしたらきっと私の気持ちも伝わると思うから。ちょっと気持ちが早いかもしれないけど結婚生活と同じだよ。本物の結婚式は開けないかもしれないけど……ウェディングドレス着て、もと君と一緒に歩きたかったなぁ。学校? そんなの行く必要ある? そんなところに毎日毎日行ってたらもと君に悪い虫がついちゃうでしょ。現にこうなってるんだから。浮気するたびに怒るのは私もヤダもん。私はもと君とずっと仲良く、何事もなく、平和に過ごしていたいの。今まではできてたんだからできないってことはないでしょ。ほら、この写真見て。いつ撮った写真か覚えてる? あっ、覚えててくれたんだ、嬉しいなぁ。私たちが付き合って、初めてデートに行った時の写真だよ。懐かしいなぁ。あの時はお互い恥ずかしくてまだ手すら繋げなかったよね。それでも一緒の時間を過ごすだけで幸せで、大好きで溢れていて、私にとては今でも大切な思い出だよ。2人であの頃みたいな気持ちからやり直さない? そうすればきっと今度こそうまくいくと思うんだ。……もうっ、なんで逃げようとするの? 力で私に勝てないってわかってるのに。ねぇ、どうして私の気持ちわかってくれないの? 私はただもと君と一緒にいたいだけ、もと君の一番でいたいだけなのに……どうしてもわかってくれないのなら、いっそ今ここで……なーんて、どうだったかな?」

 

 怖すぎるんだよね、それ一番言われてるから。わざわざ距離を詰めてきて、目のハイライトまで消しちゃってさぁ……しかも流れるように包丁か何かで刺すふりまでしてきました。ほら愛さんと侑ちゃんを見てください、2人とも怖がってますよ。

 

「そうかな? 自分ではあんまり自信はなかったんだけど……」

「うん、すごく怖かった。うん……ねぇ?」

「傍から見てるだけでも怖かったもん。ちょっと怖さのベクトルが違う気がするけど。元樹大丈夫?」

 

 ふふんっ、余裕ですよ(王者の風格) どれだけ怖い雰囲気を出していても、隠しきれない体の柔らかさといい匂いで、怖さを紛らわせることができますから。密着しているおかげで歩夢ちゃんのぽむぽむとしたプリンもがっつり味わえていますし。それにやけにエッチの話ばかりしているので、歩夢ちゃんは脳内ピンク色のむっつりスケベだなぁとニヤけてしまいましたから。別にほも君の方からそういう話題を振ったりしてないのにね。アーモラシソ。

 でもタイムにはだいぶ影響が出ましたね。クッソ長文セリフだったので……悔い改めて。動画時間がかなり伸びてしまうので悩みましたが、折角なので等速で流すことにしました。シークバーで飛ばした兄貴は死ゾ。

 

「もと君、歩夢と付き合ってる時に浮気したらダメだからね」

「侑ちゃんと付き合ってる時もダメだよ」

「いや、誰と付き合っててもダメじゃない?」

 

 今のプチ体験で、歩夢ちゃんルートでこのRTAを走ることがいかに無理ゲーなのか視聴者兄貴もわかったと思います。じゃけん璃奈ちゃんルートで走って浮気しまくりますね~。

 

「でもなんで浮気相手が私なの? 私そんなことしそうに見える……?」

「ち、違うの! そうじゃなくて、もと君が侑ちゃんと浮気したら一番ショック受けちゃうなーって思って……」

「あー、私も彼氏の浮気相手が歩夢だった時が一番ショックかも……」

 

 まぁずっと一緒にいた大好きで大切な幼馴染に、大好きで大切な人が寝取られたとなったらそりゃショックを受けますよね。

 ちなみにですが、歩夢ちゃん脳破壊ルートは本走の数日前に一度だけやりました。RTA開始条件に合った初期状態がなかなか引けず、ストレスでつい、ね。さっきのシチュエーションと全く同じで、歩夢ちゃんの部屋でエッチしまくった翌日に、浮気相手の侑ちゃんの部屋で侑ちゃんとエッチしてました。歩夢ちゃんと付き合っていることは秘密にしていたので、侑ちゃんはほも君が浮気していることは知らないという状況です。で、結果として侑ちゃんの声でバレてしまいました。

 やった後はもう二度とやらないと心に決めました。今にも泣きそうな表情と、その後の壊れた笑い方と声がね……歩夢ちゃん大好き人間としては辛いんですよ。軽い気持ちでやったことをすごく後悔しました。まぁその後の壊れたようにする濃厚なセッ〇スに興奮しなかったといえば嘘になりますが。

 

もしりなりーと付き合うことになっても、絶対に浮気したらダメだからね

 

 それはできない相談ですね。だってハーレムRTAの最中ですから。それにいずれ浮気相手に愛さんの名前が加わりますよ(小声)

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




今回の歩夢ちゃんのとあるセリフが難産でした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part49/n

新年あけましておめでとうございます。
いよいよにじよん放送日ですね。どれだけ待ち望んだことか……

本当は年内に投稿したかったのに、気づけば年を越し、三が日すら終わっていました……。


 もんじゃ宮下に向かって全速全身ヨーソローRTA、はーじまーるよー。

 

 前回は恋人が幼馴染と浮気ックスをしていた時の歩夢ちゃんの怒り方を見て皆で恐怖しました。今回はその続きからで、そうですねぇ……何をしましょうか。特に予定は決まっていませんが、何もすることがないなら、そろそろ愛さんの家にご訪問したいですねぇ。

 

「よしっ、小腹もすいてきたしそろそろもんじゃ食べに行く?」

 

 どうやらほも君の念波が愛さんに届いたようです。これがモンジャコネクトですか……。

 

「もんじゃ?」

「アタシの実家がもんじゃ屋さんやってるから、特製のもんじゃを元樹にごちそうしてあげるってことで今日一緒におでかけしてるんだよね。もしよかったらゆうゆと歩夢も来る? 美味しいよ」

「ほんとっ!? 行く行く! 歩夢も来るよね!」

「うーん……今日はもういっぱい食べちゃったからなぁ……」

 

 そんなにお昼をいっぱい食べたんですか?

 

「少し前にスイーツバイキングの食べ放題無料券もらったから、今日は歩夢と一緒にそれに行ってたんだ~」

 

 なるほど、そこでついうっかり甘いものを食べすぎてしまったんですね。

 

「美味しかったからつい……」

「歩夢ってこう見えて意外といっぱい食べるんだよ」

 

 まぁ歩夢ちゃんがムチムチなのは周知の事実ですからね。ほらお腹周りとかプニプニになってんぜ? (食べたものが)溜まってんなぁおい。

 

「もと君、女の子にそんなこと言ったらダメ、だよ」

 

 歩夢ちゃんのお腹をツンツンしていたら怒られてしまいました。しかもかなりのガチトーンで。でも私はちょっとムチムチしてるくらいの女の子の方が好きですよ。

 

「練習でいっぱい動くから、ちょっとくらい食べ過ぎちゃっても大丈夫だって!」

「むしろ気にしないといけないのは歩夢より私の方なんだよねぇ。体育以外で運動しないし……」

「じゃあゆうゆも練習の時に一緒に走ったりする?」

「そうしたいのはやまやまなんだけど、もと君のお勉強見ないといけないから……」

「あ、そっか」

 

 侑ちゃんがいないとほも君の作曲家ルートが頓挫してしまいますからね。

 

「あーでももんじゃ食べたいなぁ……うーん……あ、明日ピクニックに行くから、そこで運動すれば大丈夫かも」

「ぇ……」

「そうなの?」

「うん。ねー、もと君」

「へぇ、元樹も一緒に行くんだね」

 

 そうだよ(便乗)

 

「ほ、他には誰がいるの?」

「エマさんと彼方さん、それからしずくちゃん!」

「ふ、ふーん、そうなんだぁ……そっかぁ……」

 

 歩夢ちゃんがめちゃくちゃショック受けてますね。侑ちゃんは不思議そうに首をかしげていますし、愛さんはアハハ……しています。あーもうめちゃくちゃだよ。

 

「……よし、行こう! これからのことはまたこれから考えることにする!」

 

 まぁこのゲームではご都合主義によりヒロインが太ったりすることはないので、侑ちゃんも安心していいですよ。万が一微増してしまったとしても、ほも君と一緒に秘密の運動をしましょうね。

 

「歩夢も行く、でしょ?」

「う、うん。侑ちゃんが行くなら……ありがとう愛ちゃん」

「どういたしまして。美味しいものは友達と一緒に食べたらもっと美味しくなるもん! ね~元樹?」

 

 そうだよ(建前) 愛さんと2人きりで過ごしたかった(本音)

 

「よしっ、じゃあ4人でレッツゴー! あっ、アタシの家まではバスで行くから、まずはバス停まで歩いていくよ」

 

 おかのした。愛さんの家へは過去何度も行っていますからね。もはや目を瞑っていても行くことができます。

 はーい、よーいスタート。愛さんの家へレッツゴーRTA、目隠しレギュレーション、はーじまーるよー(BGM:せつ菜ちゃんが生徒会室でオ〇ニーする時のテーマ) こちらは1周にかかる時間が非常に長く、最も過酷なRTAの1つとして数えられています。現在の世界記録は114514時間ですが、今日の挑戦者たちはこの記録を塗り替えることができるのでしょうか。では早速やっていきましょう。最初の走者は侑ちゃ……

 

「元樹、足、大丈夫? 痛くなったりしてない?」

 

 大丈夫ですよ。システム上ではすでに完治しているので。

 

「そっか、よかったぁ」

 

 愛さんはずっとほも君の足のことを心配してくれていますね。もしかして愛さんとの練習中にケガしてしまったのを未だに引きづっているのでしょうか。気にしないでって言ったのに……。

 

「んー、まぁ気にしてないと言ったら嘘になるけど、でもあの時すっごく痛そうにしてたからどうしても心配になっちゃうんだよね。ほら元樹って結構顔に出るし」

 

 え、そうですか?

 

「うん。今の痛かったんだなーっての顔を見るだけでわかったよ」

「2人とも何の話してるの?」

「元樹って顔に出るよねーって話。2人もそう思うでしょ?」

「あー、言われてみれば確かに。顔を見るだけで何を考えてるのかある程度わかるもんね」

「えーそうかなぁ。もと君は顔よりも仕草に出てるような気がするけど……」

 

 なーんで皆さんこんなにほも君のことを観察してるんですかねぇ?

 

「だってもと君は可愛いこd……後輩だもん」

「今なんて言いかけたの?」

「か、噛んじゃっただけだよー」

「ふーん……」

 

 それで、歩夢ちゃんはほも君のどんな仕草を見て、そんなことを言ったんですか?

 

「うーん、例えば……ちょっと興味のない話をされてる時は左手の親指だけズボンのポケットに入れてるよね。それから拗ねてる時は首の後ろを掻いてるね。あとは……」

 

 あ、もう大丈夫っす(素) そんなに詳細まで観察されてるとかて、照れますよ……。というかちょっとだけ怖いです。これ実はすでに親密度十分に稼げたりしないですかね? そうでないと納得がいかないです。

 

「あっ、照れてる。元樹かわい~」

 

 うるせぇ!(照れ隠し) ベッドの上じゃお前が可愛くなるくせによぉ~。

 

「このバスに乗るよー」

「はーい!」

 

 はい、バス乗り場に到着しました。談笑しながらだったので結局のんびり歩いてしまいました。こんなんじゃRTAになんないよ~(棒読み)

 さて、乗り込んだはいいですが、最後列の5人掛けの席が空いていませんね。これでは4人並んで座ることができません……じゃけん2組に分かれましょうか。ほも君は愛さんと座りますね。

 

「うん、いいよ」

「どこで降りればいいの?」

「降りるのは終点だから、最後まで乗ってて大丈夫だよ」

「そうなんだ。じゃあのんびり寝ちゃおうかな。あゆむぅ肩貸して~」

「うん、いいよ。着いたら起こしてあげるね」

「おねがーい……すぅ、すぅ……」

「わっ、ゆうゆ寝るの早いなぁ。かなちゃんみたい……」

 

 席に座った途端、歩夢ちゃんの肩に頭を預けてすぐにすやぴしてしまいました。侑ちゃんは気持ちよさそうな寝顔なのに対し、歩夢ちゃんは満足そうに満面の笑みを浮かべています。ほも君達は道を挟んですぐ隣に座っているので、2人の様子をちゃんと観察できます。

 

「疲れてたのかな?」

 

 あー、そうかもしれません。侑ちゃんのことですから、ほも君のために作曲カリキュラムを夜遅くまで考えてくれてたんでしょうね。片肘つきながらペンで頭をトントンして悩んでいる姿が目に浮かびます。

 

「よかったね、元樹。やりたいことにいろんな人が力を貸してくれて」

 

 そうですね。本当にありがたいですよ。これでもうすこぉしRTAにも協力してくれたらな~俺もな~。

 

「愛さんにできることならなんでも手伝うから、困ったことがあったら何でも言ってね?」

 

 ん? 今何でもって言いましたよね? では……どうすっかなぁ。特別愛さんの力が必要なパートがないんですよね。美味しい料理は歩夢ちゃんが振る舞ってくれますし、PC関係で困ったことがあればりなりーにお願いする予定ですし……。

 

「んー、じゃあ詰まった時息抜きとして一緒に運動しよっか。いっぱい体動かして一緒にスカッとしよ!」

 

 あぁ^~いいっすねぇ~。楽しく体を動かせば落ち込んだ気分も悩みも気づいたら吹き飛びますもんね。……ち、ちなみにですが、ベッドの上で激しく絡み合う行為は運動に含みますか? だとしたら愛さんにも役割がありますよ。何人でやってもいいですからね。4Pだよ4P。

 

「何かやってみたいことある?」

 

 セッ〇ス!(本音) テニス……ですかねぇ(建前) この前の体育での愛さんとおしり子ちゃんのテニス対決を見て、どうやらほも君もやりたくなったみたいです。

 

「あー、元樹見学だったもんねー。もしかしてやりたくてずっとうずうずしてたの?」

 

 そうだよ(便乗) 皆楽しそうにしてるのに、自分だけできない時ほど退屈なものはありませんからね。そこまで興味のないことでも、いざそういう状況になるとちょっとやりたくなってしまうのが不思議です。

 

「そっかそっかー。愛さんもすっごく楽しかったなー。……あっ、元樹首掻いてるよ。もしかして拗ねてる?」

 

 なんで拗ねる必要なんてあるんですか?(強がり)

 

「もー、元樹ってば可愛いなぁ」

 

 うるせぇ!(棒読み) でも愛さんに頬をツンツンされるのは嬉しいのでもっとやってほしい……。

 

「これ? いいよ、ほれほれ~」

 

 あぁ^~もう気が狂うほど気持ちええんじゃ! うまいぞ頬ツンツン(空気) 気持ちよすぎてなんだか眠たくなってきました……。

 

「疲れちゃった?」

 

 興奮する場面が多かったので、どうやらそこで体力を使ってしまったようです。あとは単純に移動した距離が長いのも疲れてしまった要因ですね。もしかしたら『睡眠不足』のせいでよく眠れなかった可能性もありますね。

 

「さては夜更かししたな~?」

 

 (すぐにお布団にinしたので夜更かしはして)ないです。愛さんとのお出かけが楽しみすぎてなかなか眠りにつけなかっただけですよ(建前)

 

「そっかそっか。それは嬉しいけど、でもちゃんと寝ないとダメだぞ」

 

 私もそうしたいのはやまやまなんですが、ゲームシステムがそれを許してくれないんですよ。システムがちゃんと作られてるゲームというのも困りものですね。

 というわけですから、ほも君も愛さんの肩ですやぴさせてくれよな~頼むよ~。

 

「アタシの? いいよ。ちゃんと寝られるかはわかんないけどね」

 

 愛さんの肩なら大丈夫っすよバッチェ眠れますよ。というわけで失礼しまーす。

 

「どう? 気持ちいいかい?」

 

 めちゃくちゃ気持ちいいゾ~コレ。後ついでに愛さんの爽やかな匂いも感じます。このまますやぴにいざなわれてしまいそうです。

 

「よかった。ゆっくりお休みしてていいよ。着いたら起こしてあげるからね」

 

 ではお言葉に甘えてこのまますやぴさせてもらいましょう。そして終点まで時間を飛ばしてタイム短縮です。休息もできてタイム短縮もできる、RTA走者は機転が利くってそれ一番言われてるから。

 

「もしかしてもと君も寝ちゃった?」

「うん。あっという間にぐっすりだよ。疲れてたみたい」

 

 スキップしろよ(半ギレ) 到着するまで時間が飛ぶかなーと思っていたのですが、残念ながら愛さんと歩夢ちゃんの雑談タイムが始まってしまいました。しかも寝ているせいか視界はとびきり真っ暗で、テキストだけが表示されています。故障かと一瞬心配してしまいました。

 

「ゆうゆも疲れてそうな感じ?」

「うーん、疲れてるってよりは寝不足かも。今朝も何度もあくびしてたし……」

「あー、もしかしてゆうゆも夜更かし?」

「そうかも。侑ちゃんって集中し始めたら時間を忘れてやっちゃうから……そこが侑ちゃんのいいところではあるんだけど、たまに夜更かししちゃうのが……」

「それは心配だなぁ」

 

 じゃけん侑ちゃんが夜更かししないよう監視するために同棲しましょうね~。

 

「……もと君の寝顔、可愛いね」

「わかる! あ……」

 

 すやぴ(うるせぇ!)

 

「だ、大丈夫……?」

「う、うん。元樹は起きてないみたい。少しもぞっとはしたけど」

 

 まぁ耳元であんな声を出されたらね。誰が大声出していいっつったオラァ!(大声)

 さて、もぞっとしたついでに、このまま愛さんの腕に抱きついてしまいましょう。今の状況であれば寝ぼけていると勘違いしてくれるはずです。

 

「へっ……?」

 

 ウブな愛さんのことですから、きっと顔を真っ赤にしているでしょうねぇ。そんな乙女で可愛い愛さんを見れないのは頭にきますよ!

 

「ふふっ、もと君って意外と甘えたがりなんだよね」

「えー、そうかなぁ? 今のも寝ぼけて抱きついてるだけじゃない?」

「普段璃奈ちゃんとか同じ1年生の子といる時はしっかり者さんなんだけど、私といるときは結構甘えてくれるよ。膝枕とかしてあげたことあるし」

 

 先輩!? 何2人だけの秘密を暴露してんすか! 止めてくださいよホントに!

 

「それって歩夢がただただ甘やかし上手なだけじゃ……」

「えぇー、そんなことないと思うけどなぁ……」

「りなりーを差し置いて歩夢とそんなことしてるなんて……まったく、元樹は罪な男の子だねぇ。うりゃうりゃ」

 

 愛さんがほも君の頬をうりうりしています。私もされたい……じゃなかった、そんなことしたら多分起きちゃうと思うんですけど(名推理)

 でも全然告白してくれないりなりーにも問題があると思うんですよね。小さい頃からずっと一緒にいる上に、その気になればすぐほも君に会えるという誰よりも有利なポジションにいるのに……。

 

「甘えたいなら、愛さんにももっと甘えていいんだぞ~」

 

 今度は頭を撫でられています。そしてこの音の感じ、もしかして今耳元で囁かれてます? だとしたら最高ですね。愛さん、好き。ほも君ボード『2人は幸せなキスをして終了』

 

 

 

 場面が急に飛んで、バスが停車した音がします。さっきので愛さんと歩夢ちゃんの会話イベントが終了したんですかね。停車したけどまだ門前仲町じゃないとかだったらかなり困りますが……まぁさすがにそうでしょう。

 

「元樹、着いたよ」

「侑ちゃんも起きて」

「んぅ……」

 

 侑ちゃんも起こされていますし、ほも君も起きましょう。起き、起き……おいゴルァ! 起きろ!

 

「元樹! 起きてってば!」

 

 愛さんがほも君をゆさゆさして起こそうとしてくれていますが、どうにも起きてくれません。ほも君が目覚めるまでまーだ時間かかりそうですかね~?

 ではほも君が起きるまでの間に、愛さんの家に行く時の注意点というか運ゲー要素の話をしようと思います。端的に言うと川本美里さんの存在です。もんじゃ宮下に美里さんが訪れている時に遊びに行ってしまうと、愛さんによる顔合わせイベントが始まってしまいます。これが長いうえに、うま味も全くないため、RTAでは避けたいイベントです。美里さんの友好度なんか必要ねぇんだよ!

 ですが残念なことにこのイベントの発生は完全ランダムです。なのでお祈りするか、そもそも愛さんの家に行かないようにしましょう。あくまでもこのイベントは愛さんの家を訪れた時に発生するイベントですので。それ以外のタイミングで発生した事例は現時点では確認されていません。安心ですね。

 

「あっ、やっと起きた」

 

 ちょうどのタイミングでほも君が目覚めました。……別にタイミングを合わせるために説明の長さを調整したとかではないですよ? 別に頑張ったりなんかしてませんよ?

 

「着いたから降りるよ」

 

 ん~……まだ愛さんから離れたくないのでイヤです(タイムガン無視)

 

「えぇ~、そんなこと言われても……急にどうしたの?」

 

 ちょっと怖い夢を見てしまったので(適当) あと愛さんからもっと甘えていいと言われたような気がしたので。

 

「……もしかして起きてた?」

 

 なんのこったよ(すっとぼけ) ほも君は最初から最後までちゃんとぐっすりでしたよ。

 

「……少し汗かいてるよ。そんなに怖い夢だったの?」

 

 そうだよ(震え声)

 

「そっか。よしよし、じゃあ手繋ごっか。こうやって抱きついたまま歩いてると危ないからね。あと恥ずかしいし

 

 やったぜ。投稿者:変態もんじゃRTA走者。8月16日(水)7時14分22秒。スクールアイドル同好会の先輩(容姿端麗)とわし(幼児退行)の2人でお台場を走るバスの座席でおててを繋ぎあったぜ。愛さんの手が柔らかくて暖かくて、あぁ^~たまらねぇぜ。手をにぎにぎするともう気が狂う程気持ちええんじゃ。

 というわけで愛さんとおててを繋ぎました。ほも君が誰かと手を繋ぐのは初めてですね(と、プレイ中は考えていましたが、実はしずくちゃんとすでに繋いでいました)

 

「大丈夫? 少しは落ち着いた? ……あ、すみません、今降りまーす! ほら、運転手の人が待ってるから降りるよ。……大丈夫、ずっと繋いでてあげるから」

 

 運転手が早く降りるよう急かしてくるので、さっさと降りましょう。もちろん手は繋いだままです。傍から見たら完全にカップルです。……あっ、もちろん料金は自分で払いますよ。

 

「よかった、ちゃんともと君起きたんだ。……あっ

「ぐっすり眠れた? 私は快眠だったよ!」

 

 そう……(無関心)

 

「と、ところで、なんで2人は手を繋いでるの……?」

「あ、ほんとだ……」

 

 歩夢ちゃんは少しムッとした表情で、侑ちゃんは驚きに満ちた表情でこちらを見てきます。いやあのこれには深い情事が……間違えました、事情がありまして……。というか歩夢ちゃんはなんでムッとしているんですか? 眉が少し上がっていますよ?

 

「別に……怒ってなんかないもん」

 

 おやおや? 怒ってはなくても拗ねてはいますよね? もしかしてしっt……むぐむぐ。

 

「いやー、元樹がさっき怖い夢見ちゃったらしくて」

 

 歩夢ちゃんに詰め寄ろうとしたら愛さんに口を塞がれてしまいました。むぐむぐ。ただまぁ愛さんの手の感触を文字通り味わえているのでヨシッとします。できれば口で塞いでほしかったゾ~。

 

「そう、なんだ……」

 

 なんでまだ残念そうにしているのでしょうか。何の問題ですか?

 

「びっくりしたぁ……もしかしてもと君と愛ちゃん付き合ってるんじゃって思っちゃったよ」

「あはは……りなりーがいるのにそんなことできないよ

「ん? 何か言った?」

「ううん、何でもないよ。それより! ここからちょっと歩くから、ちゃんとアタシについてきてね!」

 

 はいはーい、ほも君は愛さんにピッタリついてイキますよ~イクイク……。侑ちゃんも勝手に突っ走ってはぐれないようにしてくださいね。

 

「この年になってそんなことしないって~。私そんなことしそうに見える?」

 

 見えますねぇ! 見えます見えます。実際生徒会室に一緒に行くときに道も知らないのに突っ走ってほも君を困らせてきましたからね(Part2参照)

 

「うっ、そんなことも、あった気が、します……」

「へぇ、私の知らないところでそんなことがあったんだ」

 

 ほも君が歩夢ちゃんと初めて会った日、それも会う直前の出来事ですよ。もっと言えばほも君と侑ちゃんは出会って間もない時でした。

 

「……よくそんなこと覚えてるね」

 

 ゲーム内時間では2週間ほど、リアルタイムではたった数時間前の出来事ですからね。(忘れるわけが)ないです。

 それに私はもともと記憶力がいいのです。他人にかけた迷惑はすぐに忘れてしまいますが、他人にかけられた迷惑は絶対に忘れません。

 

「侑ちゃんは私がちゃんと見ておくから安心して。だからもと君は後ろじゃなくて前を向いて歩こうね。危ないよ」

 

 歩夢ちゃんから怒られてしまったので、ゆうぽむに絡むのは一旦お預けにしましょう。

 

「元樹、さっきはごめんね」

 

 え、なんのことですか?

 

「怖い夢見ちゃったーって2人に言っちゃったこと。まるで元樹が怖がり見たいに思われちゃったかもなぁと……」

 

 ああ、そのことですか。なんで急にあんなこと言いだしたんですか?

 

「いやー、あのままだとなんか変な空気になりそうだったし、止めた方がいいかなーって。いい感じに誤魔化せる嘘がその場で思いつかなかったから、もうホントのことを言うしかなかったんだよね。ほんとにゴメン!」

 

 あっ、いいっすよ。というか事実ですからね。ゆうぽむに怖がりなところを知られてしまったのは、ほも君的には恥ずかしいらしいですが……。果林さんも『弱点が1つくらいあった方が可愛いわよ』みたいなこと言ってたんだから、恥ずかしがってんじゃねぇぞおらぁ!

 

「ねぇねぇ、どんな夢見たのか聞いてもいい?」

 

 うーん……秘密、です。

 

「……そんなに怖い夢だったの?」

 

 え、なんでわかるんですか?

 

「だって手にぎゅ~って力が入ったから。そんなに怖かったのかなぁって」

 

 そうなんですよ。ついうっかりお漏らししてしまいそうなくらい、それこそ夢を見ながら愛さんに抱きついてしまうくらい怖かったんですよ。

 

「そっかそっか。今日は愛さんがずっと一緒にいてあげるからね」

 

 ん? 今ずっと一緒にって言いましたよね? つまり愛さん宅にお泊りしてもいいってことですか?

 

「えっ!? そ、それはどうだろぉ……一応おばあちゃんに聞いてみるけど、急なことだから難しいかも……。き、着替えはどうするの? 男物の服はお父さんのしかないよ?」

 

 冗談のつもりだったのに本気で悩んでくれるのか……(困惑) まぁそういうところが愛さんのいいところなんですけどね。

 

「っ~! か、からかったなぁ?」

 

 なんのこったよ(すっとぼけ) でも今の言いぶりだと、事前に伝えておけばワンチャンお泊りOKってことですか?

 

「ま、まぁいいけど……」

 

 やったぜ。じゃあ気が向いたら愛さんの家に泊まりに行きますね。まぁ多分行かないですけど。理由は美里さんです。お泊りなんてしたら絶対美里さんを紹介されちゃうだルルォ!?

 

「あれ? 愛ちゃんの家ってここじゃないの?」

「え? ……あ、気づいたら通り過ぎてた……」

 

 どうやらほも君との会話に夢中になりすぎて、うっかり通り過ぎてしまいそうになったようです。周りをよく見ていた歩夢ちゃんがもんじゃ宮下の看板に気づいてくれました。ちなみにですが、私も愛さんとの会話に夢中になっていたので、普通に通り過ぎていました……。こんなんじゃRTAになんないよ~(棒読み) 歩夢ちゃんに感謝ですね。

 

「えー、こほんっ。気を取り直して、ここが愛さんの家だよ。いらっしゃい!」

「くんくん……あー、いい匂いがする!」

「そうでしょそうでしょ!」

「うぅ~、お腹が空いてきちゃったぁ~」

「もぉ侑ちゃんたら……」

「歩夢は違うの?」

「……私も空いてきちゃった、かも」

 

 歩夢ちゃんもやっぱ好きなんすねぇ。

 

「そんなに期待されてるなら、それに応えてい()()()よね。期待だけに! あははっ!」

 

 うまいぞダジャレ(感動) 侑ちゃんは匂いに夢中で聞こえていなかったようです。侑ちゃんの爆笑タイム+歩夢ちゃんの幼馴染マウントを丸々カットできていいゾ~コレ。

 

「よしっ、じゃあ入ろっか。元樹も待ちきれないみたいだし!」

 

 おっと、お腹が鳴っていたのがバレていたようです。恥ずかしいですね……これは恥ずかしい……。誤魔化すために先に中に入ってしまいましょう。おっ、開いてんじゃ~ん!

 

「わぁ、大盛況だね」

「うん、今日は特に多いかな。パッと見た感じだと常連さんがいっぱい来てくれてるみたい」

 

 偶然お座敷の席が1つだけ空いていますね。そこを使わせていただきましょう。

 

「アタシは準備とかいろいろしてくるから、先に座って待ってて」

 

 名残惜しいですが、愛さんのスベスベおててとは一旦お別れしましょう。そろそろほも君のメンタルも落ち着いてきましたし、愛さんと離れ離れになっても大丈夫なはずです。最悪歩夢ちゃんのお膝かお胸、あるいは侑ちゃんのピアノに転がり込みましょう。

 

「えっ? うん、そうだよ。みんな愛さんの友達! 最近仲良くなったんだ!」

 

 どうやら常連のおじさん……お兄さんに絡まれてるみたいです。ほも君達を紹介してくれているのでしょうか。

 

「うえぇっ!? ち、違うよ! 元樹は彼氏じゃなくて、その……た、ただの友達! 確かに手は繋いでたけど! でも彼氏じゃないの!」

 

 ほも君を愛さんの彼氏だと勘違いしているようです。ま、手を繋ぎながら店に入ってくる2人を見ていたんでしょうし、多少はね?

 

「え、ええええ、えっちなことなんて一切してないって! キスもまだ! そもそも付き合ってないんだってばっ! おじさん達もう酔ってるでしょ!?」

 

 今度はセクハラされています。いくら酔ってるとはいえ、相手にセクハラするのはまずいですよ! ほも君の場合は求愛行動の1つなので無問題ラ!

 

「あはは……愛ちゃんも大変だね」

 

 愛さんはおじさん包囲網を抜けて、顔を真っ赤にしながら奥へ入っていきました。ほも君の対面に座って、それを見送る歩夢ちゃんと侑ちゃんもほんのり頬が赤くなっています。やっぱ初心なんすね~。

 

「あー、もう大変な目にあったぁ……」

 

 材料などを持った愛さんが戻ってきました。少し移動して、隣に愛さんが座れるスペースを作ります。座って、どうぞ。

 

「いつもあんな感じなの?」

「ううん、全然そんなことないよ。ただ今日はアタシが初めて男の子の友達連れてきたから、それで興奮しちゃってるのかも。アタシが小さい時からの常連さんだから、なんていうか、親心、みたいな? あと単純にお酒が入ってるからってのもあるけど」

「そうなんだぁ。じゃあいつか愛ちゃんが本当に恋人を連れてきたとき大盛り上がりしそうだね」

「多分ね。いざその時になったらみんなに紹介したい気持ちもあるけど、収拾がつかなくなりそうなんだよね」

「あー……」

 

 そうなりそうですね。なのでほも君が愛さんと付き合った暁には、絶対に営業中のもんじゃ宮下には遊びに行きません(鋼の意思) でも愛さんの部屋でえっちさせてくれるなら多少のタイムは犠牲にしてでも行きます(鋼の意思)

 

「ま、それは置いといて! そろそろもんじゃ作っちゃうよ~!」

 

 お腹ペコペコでもう待ちきれないよ! 早く出してくれ!

 

「任せて、すぐに作るからね」

「愛ちゃん、私に手伝えることあるかな?」

「うーん、特にはないかなぁ。今日は愛さんお手製のもんじゃを味わってほしいから、皆はゆっくりしててほしいな」

「そっか。じゃあもんじゃが出来上がるまでゆっくりしてるね」

 

 もんじゃが出来上がるまでまーだ時間かかりそうですかね~?

 

「あともう少しかかるかな。もう待ちきれないの?」

 

 お腹が空いたのと、やることがなくて暇なんですよね。

 

「それならあそこに漫画が置いてあるよ」

「ほんとっ!? ちょっと見てこよっかな」

「侑ちゃん……」

 

 そう……(無関心) 侑ちゃんは本棚に飛びつきに行きましたが、ほも君はあんまり興味がありません。

 

「あれ? もしかして漫画あんまり好きじゃない?」

 

 そういうわけではないんですが、ここからパッと見た感じだと全部読んだことのある漫画だったので……。

 

「そうなの? でも確かに最近本棚の中身変えてないからなぁ」

 

 なるほど。では今度一緒に本屋さんに行って、よさげな漫画を探しませんか?

 

「それ楽しそう! ……折角だから、その時はりなりーも誘ってみよっか。漫画とか詳しいだろうし、きっといいのを選んでくれると思うよ。あと詳しそうなのはせっつーもかな?」

 

 いいよ! 来いよ!(建前) え、それは……(本音) 愛さんと2人きりデートのチャンスかと思ったのですが、どうやらまた乱入者がいそうです。困りました。しかも今度はゆうぽむと違ってこれ以上親密度を稼ぐ必要のない子達なので、かなり無駄になってしまいます。痛いですね……これは痛い……。

 

「あ……ゆ、侑ちゃんも意外と漫画とか詳しいよ!」

 

 へぇ、そうなんですか。どんなジャンルが好きとか知ってますか?

 

「えぇとね、バトル物が好きって言ってたかな。名前は忘れちゃったけどあの海賊の漫画とか」

 

 ああ、あれですね。だから侑ちゃんはよく体操服を肩にかけながら歩いてたんですね。

 

「あとね、実はこっそり恋愛漫画も読んでたりするんだよ」

 

 おっと、これは予想外の情報ですね。というかそれバラしてもいいんでしょうか……。そもそもこっそり読んでいることをなんで歩夢ちゃんが知ってるんですかねぇ?

 

「へぇ、ゆうゆが……」

「うん、最近は部活のこうh……」

「ちょっ、それ以上はダメ!」

 

 漫画を選び終えた侑ちゃんが全力で戻ってきて、歩夢ちゃんの口を塞いでしまいました。暴れんなよ……暴れんな……。侑ちゃんの秘密をうっかり喋っちゃう歩夢ちゃんのことが好きだったんだよ!

 

「ゆふひゃん?」

「もと君がいるのにそんなこと喋っちゃダメだって!」

「えぇ~、愛さんもっと詳しく知りたいな~」

「愛ちゃんのお願いでもダメ!」

「ざんね~ん……」

 

 私も気にはなりますが、あえて追求しません。お泊りの時に侑ちゃんの部屋を物色すればいいだけですので。

 

「元樹は普段どんなのを読んでるの?」

 

 ほも君ですか? ほも君はですね……

 

「愛ちゃん! あとどれくらいでもんじゃ完成しそうかな!?」

「え? あと少しで出来上がるけど……急にどうしたの?」

「えと、その……」

 

 愛さんからの問いに答えようとしたら、歩夢ちゃんがそれを遮ってきました。頭にきますよ! ……さてはもうお腹ぺっこりんで我慢できないんですね? それこそほも君を遮ってしまうくらいに。そうなんですよね?

 

「……実はそうなの。もうお腹がペコペコなんだ~」

「歩夢ってば食いしん坊さんだなぁ。エマっちみたい!」

「歩夢今日はいつもよりよく食べるね」

「あはは……今日はなんだか無性にお腹が空いちゃって」

 

 まったく、しょうがないですね。では最初の一口は歩夢ちゃんに差し上げましょう。存分に味わってくださいね。

 

「えへへ、もと君ありがとう」

「よしっ、ちょうど出来上がったよ!」

「うわぁ~、すっごく美味しそうだよ愛ちゃん!」

「どんなもんじゃい!」

「あはははは! もんじゃだけに、どんなもんじゃいって! いひひっ! お腹痛いよぉ~!」

「侑ちゃん、笑いすぎだよ……」

 

 侑ちゃんが赤ちゃんモードに入ってしまいました。机に突っ伏して笑うのではなく、ちゃんと床を転げまわってくれているので、鉄板でやけどする心配がなくて安心ですね。

 赤ちゃんが笑い転げている間に、どうぞ歩夢ちゃん食べちゃってください。

 

「うん、じゃあいただきまーす。ふぅ……ふぅ……あむっ。……うん、すっごく美味しい!」

「でしょ? うちの自慢の味だからね」

 

 美味しいもんじゃを食べて歩夢ちゃんはニコニコ、それを見ている愛さんもニコニコ、そんな2人を見てほも君と私もニコニコ、侑ちゃんはずっとツボっていてニコニコ。これが幸せ空間ですか……。

 

「ほら、もと君も食べて? すっごく美味しいよ」

「これって間接キスなんじゃ……」

 

 歩夢ちゃんがたった今自分で使ったヘラにもんじゃを乗せて差し出してきました。歩夢ちゃんの唾液がたっぷりついたヘラです。オークションに出したら数億くらいの値がつきそうですね。

 

「はい、あーん」

 

 ちょっと待って! もんじゃが冷めてないやん! 多分口の中やけどしちゃうと思うんですけど(名推理)

 

「あ、そうだよね。ちゃんとふぅふぅしてあげないとね。ふぅ……ふぅ……」

 

 歩夢ちゃんがふぅふぅしてくれるのか……(歓喜)

 

「はい、これで大丈夫だよ。あーん……どう、美味しい?」

 

 うん、美味しい! やっぱ……もんじゃ宮下の……もんじゃを……最高やな!

 

「美味しいかい?」

 

 はい、最高です。ほらほら、愛さんも見てないで食べてくださいよ。

 

「じゃあ愛さんもいただこうかな」

「ほらっ、侑ちゃんもそろそろ食べて」

「うぅ~、お腹が痛くて起き上がれないよぉ~。歩夢、食べさせて~」

「えぇ? も、もぅ、しょうがないなぁ~」

 

 満更でもなさそうな顔ですね。ゆうぽむ! ゆうぽむ!

 

「元樹、こうやってジュッってしてあげると、硬めのもんじゃにできるよ」

 

 どんな感じでやればいいんですか? 試しに愛さんのお好みの硬さで作ってみてください。

 

「いいよ。元樹のヘラ貸して。硬めと柔らかめどっちが好み?」

 

 いや、僕もう柔らかめ派ですね。愛さんのおっ〇いや歩夢ちゃんのお腹くらいの柔らかさやと最高や。

 

「これくらいかな。はい、どうぞ」

 

 わざわざあーんまでしてくれるなんて、やっぱ優しいんすねぇ。でもまだアチチなので、できれば愛さんにふぅふぅしてもらいたいです。

 

「そ、それはちょっと恥ずかしいかなぁー」

 

 どうやら愛さんにふぅふぅしてもらうためにはまだまだ親密度が足りないようです。仕方ないので自分で冷ますとしましょう。というか逆に歩夢ちゃんが躊躇なくしてくれたのは一体なんだったんでしょうかねぇ。

 

「どう? 美味しい?」

 

 うん、美味しい! 焼き加減が最高や。至急もう1個作ってくれや。

 

「ふふっ、いいよ。たーんとお食べ~」

 

 ここからはほも君がずっと愛さんに食べさせてもらう(餌付けされる)映像が続くので、完食するまで甥の木村、加速します。

 

 

 

「ふぅ、満腹満腹……愛ちゃんごちそうさま! すっごく美味しかったよ」

「お粗末様でした。皆が美味しそうに食べてくれて愛さんも嬉しかったよー」

「愛ちゃん途中から全く食べてなかったけどよかったの?」

 

 あの後愛さんはずっとほも君のもんじゃ焼き係をしてくれていたので、その間愛さんは1口も食べていません。愛さんも食べて、どうぞとは言ったのですが、いーからいーからと食べてくれませんでした。

 

「皆が美味しそうに食べてくれるなら、アタシはそれで満足だからさ。お手製のもんじゃを元樹がいっぱい食べてくれただけで愛さん大満足なんだ!」

 

 愛さんがよしよししてくれています。これがりなりー相手だったのなら抱きついていたのでしょうが……まだまだ親密度が足りないということですね。まぁ今回は想定外のことにより愛さんと2人っきりのデートができなかったため仕方ないとしましょう。同行者がいるとはいえ、再度のデートの約束も取り付けましたしね。

 

「あっ、もうこんな時間……そろそろ帰らないと」

 

 おっと、ほも君も帰らないといけませんね。今夜はせつ菜ちゃんと電話してあげないといけないので。じゃないとせつ菜ちゃんが拗ねてしまい、1日中学内で付きまとわれてしまいます。そんなことされたら栞子ちゃんに刺されちゃうだろ!

 

「そっかぁ……もうちょっと一緒に遊びたかったけど仕方ないよね。今日はありがとう、すっごく楽しかったよ! ゆうゆと歩夢も急に誘ったのに来てくれてありがと!」

「ううん、お礼を言うのはこっちだよ。今日は誘ってくれてありがとう」

「もと君と愛ちゃんと一緒にお出かけできてすっごく楽しかった! 普段とは違う2人も見れたしね」

「アタシも知らない皆が知れて面白かったよ! 元樹が意外と甘えたがりだったとかね」

 

 なんのこったよ(すっとぼけ)

 さて、お別れの挨拶も済んだのでそろそろ退散しましょう。それでは愛さん、お〇んこ^~(お別れの挨拶)

 

「うん、またね~!」

「ばいばーい!」

「また部活でね」

 

 さてと、ほも君はこっち方面に行きますが、お2人は?

 

「私達はあっちだね」

 

 じゃあここでお別れですね。ではまた!

 

「あ、ちょっと待って!」

 

 帰路につこうとしたら侑ちゃんに呼び止められてしまいました。一体何の用でしょうか。もし大した用事ではなかったら、今この場で侑ちゃんのお胸をモミモミします。

 

「明日一緒に行こ?」

 

 ああ、どうやら明日のピクニックの話のようです。可愛い可愛い侑ちゃんに上目遣いで『一緒にイこ?』なんて言われて断れる男なんてこの世にはいません。というわけなのでもちろんいいですよ。

 

「やったっ」

 

 集合場所などは……また今日の夜にでも決めましょうか。

 

「うん、また連絡ちょうだい」

 

 おかのした。せつ菜ちゃんとのイチャイチャタイムが終わったら連絡しますね。

 

「呼び止めてごめんね。また明日!」

 

 はい、また明日イチャイチャしましょう。

 侑ちゃんも行ってしまったので、今度こそ帰路につきます。自宅にイキますよ~イクイク……。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




走者視点の愛さんデート回は今回で完結です。
次回はサイドストーリーになります。

今回のデートでゆうぽむを登場させたのは完全なるその場の思い付きだったのですが、なんだかんだうまくまとまったんじゃないかなーと自分では考えています。
ほも君を甘やかしたいのに、その役目を愛さんにとられて嫉妬するぽむが書けて私は満足です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 Part1/LANZHU

番外編なので初投稿です。

にじよんのりなりーや、サッカーコラボのりなりーがめちゃくちゃ可愛かったのでついつい書いてしまいました。
番外編なので、本編とのつながりは一切ないです。今後本編とは全く脈略もないことを書きたくなったら番外編として出そうと思います。


 ランジュちゃんを曇らせる番外編、はーじまーるよー。

 

 はい、RTA動画の編集の息抜きのため、ver4.0.0の大型アップデートを今更ながら遊んでみました。ver4.0.0のアップデートが来たのももう数か月も前ですよかすみさん! もちろんRTAほも君ではなく、別データで同姓同名のnewほも君です。あのほも君はクズ(直球)すぎてちょっと……ね。newほも君はわざわざハーレムにする必要がないので超絶聖人です(小並感)

 折角遊んだので、記録として録画して、編集して動画投稿することにしました。『あっ、おい待てぃ(江戸っ子) 編集の息抜きで編集してたら意味ないだルルォ!?』とお思いの兄貴もいるかもしれませんが、そんな正論は受け付けていません。自分のガバガバプレイを見せられるより、気軽に楽しくわいわいしているプレイを見る方が編集している時も楽しいんですよ。じゃけんここの視聴者兄貴も自分で動画投稿してその気持ちを味わって♡ 動画投稿しろ(豹変)

 

 さて、冒頭でもお伝えした通り、今回の動画ではランジュちゃんを曇らせたいと思います。曇らせコラ!

 

「……」

 

 はい、あそこでソワソワして落ち着きがないのが皆お待ちかねのランジュちゃんです。可愛いですね。

 なんと今日はランジュちゃんとの初デートなんです。(まだ付き合っては)ないです。自覚はしてないみたいですが、ランジュちゃんはほも君への好意を持っているようです。そしてほも君はまだ待ち合わせ場所に着いていません。だからあんなにソワソワする必要があったんですね。可愛いですね。

 ちなみにですが、今は集合時間の10分前です。そしてランジュちゃんは今から5分も前からあそこで待機しています。ウキウキしすぎてついつい早く来すぎてしまう。可愛いですね。

 

 ここで出ていってもいいですが、今日の趣旨はあくまでもランジュちゃんを曇らせることなので、もう少しこのまま双眼鏡片手にランジュちゃんを観察しましょう。あっ、もちろん集合時間には間に合わせますよ。集合時間に遅れてくる兄貴はクビだクビだクビだ!

 

「うぅ~……」

 

 スマホをチラチラ見ていますね。もしかしてほも君に連絡を送ろうか迷っているのでしょうか。

 

「……そ、そうよね。まだ時間になってないものね。時間になったらちゃんと来てくれるわ。だって元樹だもの!」

 

 結局ほも君がちゃんと来てくれることを信じて送らない選択をしたようです。ランジュちゃんがほも君をどれだけ信頼しているかがわかりますね。まぁそもそもまだ集合時間の10分前なんですけど(小声) なんで時間より早く来る必要なんかあるんですか(正論) まぁ隠れているだけで、ほぼ集合場所に着いているようなものではありますが。

 

「元樹が来るまでプランの見直しでもしようかしら。えっとまずはスイーツを食べて、お昼にハンバーガー。その後は元樹が行きたいって言ってたすぽっちゃというところに行って、目一杯体を動かした後はお肉で元樹を喜ばせてあげたいわ。晩御飯の後はイルミネーションと花火ね。一番綺麗に見える場所を愛に教えてもらったから、そこに元樹を案内しましょ。喜んでくれるかしら?」

 

 なんか食事のフェーズが多くないっすか? いや~ほも君の胃袋がキツイっす。スイーツの後のハンバーガーもしんどいですし、食事2連続の後の運動はもっとしんどいです。食べたもの全部R3BIRTHしちゃいます。

 それに晩御飯のお肉も心配です。ランジュちゃんなので高いところに連れ込まれてしまいそうです。今回はアップデート要素を遊ぶことをメインにしていたので、お金をそこまで稼いでおらず、1回の晩御飯でほも君が消失してしまいます。これだから友達がいなかった子は……。明日栞子ちゃんに請求しましょう。お前の幼馴染が始めた物語だろ。

 

「……来ないわ。い、一応連絡を送っておこうかしら。別に忘れてるんじゃないか心配なんじゃなくて、果林みたいに迷子になってないか心配してるだけなんだから……」

 

 ホラ、見ろよ見ろよ。いい感じに曇ってきましたよ。

 

『何時くらいに着きそうかしら?』

 

 ランジュちゃんからのメッセージが届きました、が、プッシュ通知で内容は確認して、既読はつけないようにしましょう。そうすればもっと曇ったランジュちゃんを見ることができますからね(クズ)

 

「……既読、つかないわね。もしかしてまだ寝ているのかしら……よしっ、ランジュが電話で起こしてあげるわ! 寝起きの元樹と話せるなんて素敵ね!」

 

 どうやらほも君が寝ていると勘違いしたようですね。実際はバリバリに起きていて、しかも物陰に隠れてランジュちゃんを観察しているのですが。

 それにしてもデート当日に相手が寝坊しているのに、ポジティブに捉えてくれるランジュちゃんが聖人すぎて涙がで、でますよ……。

 おっと、早速ランジュちゃんから電話がかかってきました。ここで出ないと曇りを超えて泣き出してしまう恐れがあるので、さすがに出てあげましょう。申し訳ないが度を超えた曇らせはNG。

 

『もしもし、ランジュよ! そろそろ時間だから元樹を起こしてあげるわ!』

 

 はて、起こす? 何のことでしょう?(すっとぼけ) ほも君はとっくの前に起きて、今集合場所に向かっていますよ。

 

『あら、そうだったのね。その、メッセージを見てくれなかったから、もしかしてまだ寝てるんじゃないかと思って……』

 

 あっ、メッセージですね。スマホをポケットにしまったまま歩いていたので、全然気づきませんでした(すっとぼけ)

 

『そ、そうなのね! よかったぁ、無視されてるんじゃないか心配だったから……』

 

 そんなランジュちゃんを曇らせるために意図的に無視したりするわけないじゃないですか。もしそんな奴がいるならほも君がぶっ飛ばしてあげますよ。このほも君はRTAほも君と違って強靭な肉体と強靭な精神を持っていますからね。歩夢ちゃんに押し倒されて襲われてしまったあの頃のほも君はもういません。

 

『な、なんでもないわ! ランジュ待ってるから、なるべく早く来てね。それじゃあ、再見!』

 

 ランジュちゃんとの電話が終わりました。少ししてから合流しましょうか。

 

「はぁ、よかったぁ。でもメッセージには気づいてほしかったわ。……い、今のうちに身だしなみを確認しておこうかしら。念のため、念のためね。元樹に笑われたらイヤだもの」

 

 次は手鏡を出して身だしなみのチェックをし始めました。今更チェックしても遅いと思うんですけど(名推理)

 さて、ランジュちゃんが後ろを向いている隙に突撃してしまいましょう。無自覚とはいえ、意中の相手に後ろから突然抱きつかれれば、さすがのランジュちゃんでもあわあわしてくれるでしょう。あわあわランジュちゃん is god.

 

「えっと、髪は乱れてないわね。服も……うん、きっと大丈夫よ。だって果林が協力してくれたんだもの!」

 

 自信満々で可愛いですね。オーラが出ているのか、行く人皆ランジュちゃんをチラ見しています。(別に変な人を見る目では)ないです。ランジュちゃんは変な子じゃないって言ってるだろいい加減にしろ!

 

「あとは……っ、だ、誰!?」

 

 おっとっと、こっそり近づいていたつもりでしたが、困ったことにランジュちゃんに気付かれてしまいました。ちゃんと気配は消していたのですが……うっかり足音を鳴らしてしまいましたかね?

 バレてしまっては仕方ありません。後ろから急にハグ計画は頓挫してしまいましたが、何事もなかったかのように挨拶しましょう。しおりこぉ^~。

 

「きゃあっ! 元樹おはよう! 待ってたわよ!」

 

 開幕ランジュちゃんに抱きつかれてしまいました。大型犬かな? というか振り返ってすぐ助走も何もなしに抱きついてきたのになんだこんなに威力があるんですかねぇ……そこそこ鍛え上げられたほも君ですら少しよろけてしまいました。RTAほも君なら死んでいた。

 ところで、待っていたというのはどういうことなんでしょうか(棒読み) もしかして結構前から待ってたんですか?

 

「えと……無問題ラ! 実はランジュもついさっき来たところなの!」

 

 嘘つけ絶対待ってたゾ。でもほも君は優しいのであえて口にはしません。

 さぁ、そろそろ離れてください。もう満足したでしょ?

 

「なによう……もう少しいいじゃない」

 

 お出かけの時間が短くなってしまいますが、それでもいいならいいですよ。

 

「それは困るわ! 折角のお出かけだもの、いっぱいいっぱい遊びたいわ! でもその前に……その……ランジュに何か言うことはないかしら?」

 

 へっ? ま、まさかランジュちゃんを観察していたのがバレてしまったのでしょうか……怒られるのは嫌なので、何とか誤魔化しましょう。別にランジュちゃんに謝るようなことは何もないですよ? ホントだよ? RTA走者、嘘つかない。

 

「そう……よね。……まぁいいわ。行きましょう」

 

 おや、なんだかしょぼんとしてしまいました。……あっ、もしかして服装とかを褒めてもらいたかったんですかね? 不器用なランジュちゃんのことですから褒めてほしいとは言えなくて、あんな言い方になってしまったのでしょうね。ではランジュちゃんの意を汲んで、ちゃんと褒めてあげましょう。ランジュちゃん、可愛いね。夜明珠して♡

 

「あぅ……いきなりはズルいわ……あ、ありがと……」

 

 あれ、どうして照れてるんですか?

 

「て、照れてなんてないわ! いいから行くわよ!」

 

 照れ隠しと言わんばかりにほも君を引っ張ってグイグイ進んでいています。曇らせランジュちゃんも最高ですが、やっぱり照れ照れランジュちゃんも最高ですなぁ。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




(りなりーを書くとは言っていない)

R3BIRTHのユニットライブに現地参戦させていただきまして、『やっぱ……R3BIRTHの……皆を……最高やな!』という気持ちになり、ランジュちゃんを曇らせたくなったので書きました。
ミアちゃんの分もそのうち書きます。いつ書くかは未定です。
ランジュちゃんとのデートの続きを書くかも未定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 Part1/MIA

一旦初投稿です。

にじよんあにめーしょん3話のミアちゃんが可愛かったので、書きました。
本編の進捗は……ナオキです……。


 どけ! ボクは14歳だぞ! な番外編、はーじまーるよー。

 

 今回はミアちゃんとのデートです。可愛い可愛い先輩をたっぷり可愛がってあげましょう。ちなみにデートに誘ったのはミアちゃんでもあり、ほも君でもあります。最初ミアちゃんから夜の野球観戦(意味深)に誘われたので、折角一緒にお出かけするなら朝から一緒にいようとほも君が誘いました。というか14歳と15歳で夜中の野球観戦って法令とか大丈夫なんですかねぇ?

 『ランジュちゃんとのデート本編を出せオラァ!』とお思いの兄貴もいらっしゃると思いますが……まぁそんな意見は知ったこっちゃありません。

 

 さて、集合場所を虹ヶ咲学園寮前にしていたのですが、時間になってもミアちゃんが現れません。数分前に連絡も送りましたし、電話もしましたが、それにも反応がありません。さてはまだすやぴしているなぁ? 仕方ないので直接起こしに行ってあげましょう。寝坊しているミアちゃんが悪いのですから、ほも君が勝手に部屋に侵入しても問題ないはずです。

 

「すぅ……すぅ……」

 

 はい、ミアちゃんの部屋の中まで来ました。予想通りぐっすりですね。気持ちいいか~MIA~。気持ちよさそうに寝ているミアちゃんを起こすのは忍びないですが、デートできないのは(動画の絵面的に)もっと困るので、優しく起こしてあげましょう。おいゴルァ! 起きろ! アラームセットしてんのかコラ!

 

「うーん……I'm sleepee……」

 

 ちょっと揺すっただけでは起きないですね。仕方ないのでちょっと手荒な手を使いましょう。カーテンを開けて光を取り込み、布団を引っぺがします。これでさすがに起きてくれるでしょう。もしこれで起きなければ……お姫様抱っこでもしてみましょうか。乱暴するのはいけませんからね。

 

「まぶしい……あれ、もとき……元樹っ!?」

 

 はい、ミアちゃんが起きました。朝からほも君に会えて嬉しいのか、目が大きく見開かれ、顔も真っ赤に染まっています。

 

「な……何やってるんだよ! ここはボクの部屋だぞ! 勝手に入ってくるなぁあああああ!!」

 

 おっと、ミアちゃんが怒りだしてしまいました。枕が飛んできたので、キャッチしてあげましょう。物を投げてはいけませんよ。あと朝なので静かにね。

 

「シャラァァァプッ! 勝手にボクの部屋に入ってきた元樹が悪いんだろ!?」

 

 でもデートの時間なのに寝ていたミアちゃんが悪いんじゃないですか?

 

「で、デートじゃない! 寝坊したのは悪いとは思ってるよ……でもわざわざ直接起こしに来なくてもいいじゃないか」

 

 メッセージも電話もしたのに反応がなかったんですよ? そうなったらもう直接起こすしかないじゃないですか。

 

「エマやか、りんはダメか……とにかく、寮の中の誰かに頼めばよかったじゃないか」

 

 ミアちゃんとほも君の問題なのに、他の人の手を煩わせるわけにはいかないじゃないですか。とりあえずハンバーガーあげるので落ち着いてください。

 

「なんで持ってるんだよ……もらうけど」

 

 ベッドに腰かけてハンバーガーを頬張るミアちゃんは可愛いですね。まるで事後みたい。

 食べ終わったらパジャマから着替えてくださいね。そろそろミアちゃんとお出かけしたいので。

 

「そう言いながら勝手にベッドに座るなよ。ベイビーちゃんじゃないんだから……まぁいいや。着替えたいから出ていってくれ」

 

 えっ、なんで出ていく必要なんかあるんですか?(正論)

 

「なっ……あ、あるに決まってるだろ! 異性の着替えを覗くなんて、元樹は変態か!?」

 

 いやいや、そんなわけないじゃないですか。考えてみてください。恋人は着替えどころか普通に裸を見たりするでしょう? つまりはそういうことですよ。

 

「ボクと元樹は()()恋人じゃないだろ!」

 

 まだ、ということはいつかは恋人になる予定があるということでよろしいか? やっぱ好きなんすねぇ。

 

「う、うるさい! いいから出てけー!」

 

 折角返した枕がまた飛んできました。しかもさっきよりも威力が高いです。これはほも君選手避けきれない! デッドボールです! 痛いですね……これは痛い……。

 

「……ミアちゃん、朝からどうしたの?」

「エマ……」

 

 騒いでいたせいかエマさんが部屋を覗きに来ました。うぃっす^~(気さくな挨拶)

 

「あっ、元樹君! おはよー。どうしてここにいるの?」

「聞いてよ。元樹が勝手にボクの部屋に入ってきたんだ」

 

 勝手に、とは心外ですね。一緒にお出かけするのに寝坊しているミアちゃんを起こすため、寮の管理人さんに許可を取って、ミアちゃんの部屋にミアちゃんの許可を取らずに入っただけですよ。

 

「それを勝手に入ったと言うんだろ! はぁ、朝から疲れた……」

「ずっとこんな感じなの?」

「そうだよ。今も着替えたいのに、元樹が出ていってくれないんだ」

「そっかぁ……じゃあ元樹君、一緒にわたしの部屋に行こっか。果林ちゃんも呼んで、ミアちゃんの支度が終わるまで一緒に遊ぼ!」

 

 わーい、エマさんのお部屋だぁ^~。果林ちゃんが起きているのかは疑問ですが、とりあえずエマちゃん達と一緒に時間をつぶしましょう。これがNTRれかぁ……

 

「……wait」

 

 え、何か言いましたか?

 

「あっち向いててくれるなら、ここにいてくれてもいい……」

 

 どうして心変わりする必要なんかあるんですか?(正論)

 

「別に何でもいいだろ! ほら、早くあっち向いてくれ。エマももう大丈夫だから」

「うんうん、2人はとっても仲良しさんだねー」

「な、なんだよ……」

「ううん、何でもないよ。じゃあね元樹君、ミアちゃんと喧嘩しないようにね」

 

 喧嘩なんてしませんよ。痴話喧嘩はするかもしれませんが。

 さて、エマちゃんが退出したので、この部屋にはほも君とミアちゃんの2人きりです。元気な男女2人、鍵のかかってない密室、何も起きないはずがなく……。

 

「あっち向いてってば。覗いたら璃奈に言いつけるから」

 

 ひえっ、ミアちゃんに脅されたので、ここは約束通り着替えが終わるまであっちの方を向いておきましょう。ちなみにですが、何の運命か今回の幼馴染も璃奈ちゃんです。

 

「……さっきは枕ぶつけてごめん。起きたらすぐ目の前に元樹がいて、気が動転したんだ」

 

 起きてすぐに好きな人の顔が目の前にあったらびっくりしちゃいますよね。2回も枕を投げちゃっても仕方ないと思いますよ。

 

「最後のは元樹が変態なのが悪いんだろ! ボクが誤ってるのは最初の1回だけだ!」

 

 デッドボールだったのに謝ってもらえないとは、悲しいなぁ……。

 

「その……お詫びとして、今日1日手を繋いであげてもいいよ」

 

 それってお詫びという建前でミアちゃんが繋ぎたいだけなんじゃないですか? なんて言ったらまた枕が飛んできそうなので、ここは黙っておきましょう。私もしばらく黙っておくので、視聴者兄貴はしばしミアちゃんの着替え音をお楽しみください。

 

「……終わったからこっち見てもいいよ」

 

 どうやら着替え終えたようなので、振り返ってじっくり観察してあげましょう。

 

「……な、何か言ってよ」

 

 ああ~いいっすね~。バッチェ似合ってて、すごく可愛いですよ。年相応なのにどこか大人びていて、まさしくミアちゃんって感じの服装だと思います。

 

「そうだろ! 昨日果林に選ぶのを手伝ってもらったんだ!」

 

 なるほど、果林さんに助けてもらったんですね。さすがのファッションセンスです。

 さて、ミアちゃんの着替えも終わりましたし、持ち物の確認が終わったら出かけましょう。野球観戦のチケットは持ちましたか?

 

「ペーパーレスだから大丈夫」

 

 じゃあ大丈夫ですね。他は……まぁ確認しなくても大丈夫か。ではそろそろ出発しましょう。

 

「待ってよ! 手、繋ぐんでしょ?」

 

 あ、もう繋ぐんですか? 別に今じゃなくてもよくないですか? 寮の皆に見られちゃいますよ?

 

「いいから!」

 

 ミアちゃんに強引に手を握らされてしまいました。今日はなんだかグイグイ来ますね。デートの主導権を握るためにホラー映画でも見に行きましょうか。子供は~って煽ってあげれば簡単に乗ってくれるでしょう。ちょろミアちゃん可愛いですよね。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




エマちゃんにほも君を取られそうになって困るミアちゃんが書きたかったのじゃ。
あと、ボクは先輩だぞ、をするミアちゃんも書きたかったんですが、いいシチュエーションが思いつきませんでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part21/m

Chu! 本編の執筆が全く進んでないのに単発の番外編出したり、忙しいとか言いながらウマ娘やってたり、執筆するかぁって編集ページを開いてから1文字も書かずに寝たり、初投稿じゃないのに初投稿しちゃってごめん。


「もとき~! おっはよ~!」

「あ、おはようございます」

 

 待ち合わせ場所に着くと。退屈そうにスマホをいじりながら柱にもたれかかる元樹がいた。

 

「ごめん、遅くなっちゃった。もしかして結構待たせた?」

「いえいえ、俺も今来たばかりですよ」

「そっかそっか」

 

 かなり退屈そうにしてたのに、アタシが来た途端ニコニコし始めた元樹を見ていると、こちらまでニコニコしてしまう。

 

「はい、これ元樹の分ね」

 

 家から持ってきたペットボトルのお茶を元樹に手渡す。

 

「えっと、なんでお茶?」

「今日はかなり暑くなるからね。季節外れだけど真夏の暑さになるらしいよ」

「へぇ、そうなんですか。全然知らなかった」

「だから水分補給を忘れないようにしないとね。ちゃちゃっと飲めるように先にお茶を買っちゃった! お茶だけに! あははっ!」

「……そうですね。心配だし一応璃奈に連絡しとくか

「ん?」

 

 何か呟いた後、誰かに連絡を送り始めた。誰宛てだろう? ……まぁいっか。連絡が終わったら移動し始めよう。

 

「すみません、お待たせしました」

「よしっ、じゃあ行こっか」

「ちょっと待ってください」

 

 駅の中に向かって歩き始めたけど、元樹に服を引っ張られて呼び止められた。

 

「ん? どうしたの?」

「今日の愛先輩の服装いいですね。すごく似合ってますよ。いつも以上に可愛いです」

「そ、そう? ありがと」

 

 唐突に褒められたから変な反応になってしまった。というか可愛いって……そういうのはりなりーに言ってあげてほしい。元樹の口から可愛いなんて滅多に聞けないのに、なんでアタシに言っちゃうかなぁ……。

 

「元樹もその服よく似合ってるよ」

「そうですか? ありがとうございます」

「そういえば元樹の私服姿を直接見るのは初めてだね。こうやって実物を見るとよりかっこよく見えるなぁ」

「そんなことないと思いますけど……ん? 実物? もしかして璃奈に写真とか見せてもらってました?」

「うん、そうだよ」

 

 同好会に入ったあの日、元樹と会う前にりなりーがいろいろと見せてくれた。私服姿とか寝顔とか。

 

「確かその服もりなりーが選んだんだよね?」

「そうですよ。自分で選んで買おうとしたんですけど、試着したら璃奈に似合ってないって言われて……それ以来外行き用の服を買う時はずっと璃奈に選んでもらってます。というか璃奈の方から誘ってきます」

 

 当たり前のように一緒に出掛けてるの微笑ましいなぁ。元樹の服を選んだあと、リナリーの服も一緒に見たりしてるのかな。すごい楽しそう! 楽しそうだから愛さんも参加したいけど、でも2人きりを邪魔しちゃいけないよね。

 

「ところで、今からどこに行くつもりなんですか?」

「最初はお台場に行こうかなーって。ジョイポリスとかもあるしね」

「あー、まぁ安定ではありますね」

「元樹はお台場遊びに行ったりするの?」

「それなりには」

「そっかぁ。じゃあお台場でのプランは元樹に任せちゃおうかなー」

「任せてください! 2人で楽しめるプランを考えてみせますよ」

 

 ドヤ顔で胸を張っている。こういう子供っぽくて可愛らしいところも元樹の魅力なんだろうなぁ。

 

 

 

「さて、最初はどこに行きましょう。無難にジョイポリですかね?」

「うん、いいよ」

 

 休日のお昼前だから混んでるかもしれないけど、待つ価値は十分あるくらい楽しいもんね。

 

「最近はりなりーとばかり行ってたから、りなりー以外とジョイポリに行くのは久し振りかも」

「俺も璃奈以外と行くのは初めてですね。……あっ、ジョイポリに行くならこれ使いましょうよ。割引券です。なんと驚異の50%offなんですよ!」

「え、すごっ!?」

 

 自慢げに掲げている紙には確かに50%offと書かれている。

 

「そんなのどこでもらったの?」

「さぁ……気づいたら財布に入ってたんですよね。前行った時にもらったのかなぁ」

 

 それってりなりーと一緒に行ってる時だよね? それを使うのはなんか悪いことしているような気分になっちゃう……。

 

「そういえば、この割引券ちょっと問題点があるんですよね。実はこれ、いわゆるカップル割なんですよ」

「うぇっ!? か、かっぷる!?」

 

 びっくりしすぎて大きな声を出してしまった。慌てて口を押えるも、周りの人の注目を集めてしまっている。恥ずかしさで思わず顔が熱くなる。割引券の裏面に書いてあるカップルという文字を見てさらに熱くなる。

 

「恋人じゃないのに使うのはちょっと……」

「まあまあ、いいじゃないですか。俺ら以外にもカップルじゃないのに使ってる人達いますよ。多分」

「でもりなりーに悪いし……」

 

 横目でちらりと元樹を見ると、不思議そうにしながら券をひらひらさせている。平然としているのというかなんというか……むしろ若干乗り気なようにも見える。どうして? 恋人のふりをすることに抵抗感とかないのかな? 何度も言うけど、この積極性をりなりーに対して発揮してあげてほしい。そうすれば一気に関係が進むと思うんだけどなぁ。

 

「……? まぁなんでもいいじゃないですか。さぁさぁ行きますよ!」

「あ、ちょっと!」

 

 元樹がアタシの腕を引っ張って進み始める。

 

「……もうっ、しょうがないなぁ」

 

 その気になれば引っ張り返して止めることもできるけど、元樹はよくわからないけどすっごい楽しそうだし、そんなことしたら治った直後の足をまた悪くしちゃいそうだし。嘘とはいえ元樹とカップルのふりをするのはりなりーへの罪悪感がいっぱいだけど……でも元樹の方から言い出したことだし、一度は止めたんだから仕方ないよね! って自分に言い聞かせよう……。

 

「あらら、今日も中は人多そうですね」

 

 エントランスにも声が聞こえるくらい盛り上がっているみたい。運よくチケット売り場は空いてるけど、アトラクションに乗るのは結構並びそうだなぁ。

 

「パスポート2人分お願いします」

「はい、パスポート2枚ですね」

「えーと、その……か、カップル割で……」

「カップル割ですね。お相手の方ははそちらの方で合っていますでしょうか?」

「はい。俺が愛さんの彼氏でーす」

「……」

 

 もちろんふりをしているだけなんだろうけど、でもその言葉に胸がドキドキする。一切動揺することなく言い切ってくるから……。平静な元樹に対しアタシが動揺しすぎているせいか、カウンターの人からすっごい疑いのまなざしで見られている。うぅ、冷静にならなきゃ……。

 

「……こちらの割引券を適応させていただきますので、半額になりましてお会計は000円です」

「は、はい……」

 

 よかった、ちゃんとカップルだと思ってもらえた……。バレないかとヒヤヒヤしちゃった。元樹が後で渡すと仕草で伝えてきたので、アタシがまとめて払っておく。

 

「はい、こちら2人分のパスポートになります。本日は賑わっておりますので、はぐれてしまわないよう、手を繋ぐのを推奨しています。本日はカップル連れの方が多いですから、ずっと手を繋いでいても目立ちませんよ」

「あ、ありがとうございます……」

 

 パスポートを受け取る時になんだかいろいろとアドバイスをもらってしまった。この感じほんとにカップルだって信じてくれてるんだなぁ……罪悪感がすごいよ……。

 

「愛さん、これ、俺の分のパスポート代です」

「うん、ありがとー。はい、元樹のパスポート」

「あざーす。早速中入りましょうよ。俺もう待ちきれなくて!」

 

 グイグイと引っ張ってくる元樹の手はいつもよりほんの少し、すこぉしだけ力強くて、心なしか声量も大きくて、ワクワクがこちらまで伝わってくる。そんなにジョイポリが好きなのかな。可愛いなぁ。

 

「うん、愛さんも待ちきれないな」

「よしっ」

 

 聞きなれない入場音を聞きながら中に入る。

 

「わー、相変わらず人がいっぱい……」

「ですね。今日からなんかアニメとコラボが始まってるらしいので、その影響もあるかもしれないです。ほら、あの人だかりの中心にキャラパネルがあるんですよ」

「へー、そんなことやってるんだぁ……あっ、だからいつもと入場音が違うんだ!」

「まぁそういうことなんじゃないですかね。見たことないアニメなんで知らないですけど」

 

 興味がないのか、アトラクションの方に目を向けている。早く遊びたいのかな? なんか元樹を見てたらアタシも早くアトラクションに乗りたくなってきちゃった。

 

「どこから行こっかな~。どれも楽しいからいっつも迷っちゃうんだよね」

「その気持ちすっごいわかります。俺も決められないんで、いつも璃奈に選んでもらってるんですよね」

 

 りなりーとの仲良しエピソードをこうさらっと出されるとニヤニヤしちゃうな~。

 

「うーん、どれにしようかなー」

「元樹は好きなアトラクションとかある?」

「好きなの……うーん、どれも好きなんですけど、頑張って一番を選ぶなら……ライブコースター、ですかねぇ」

「うん、じゃあ最初はそれに乗ろっか。ちょうど待機列もなくなってるし」

「それは今からステージショーがあるからじゃないですか? あそこに人集まってるし」

「へー、そうなんだね。なんか詳しいね。もしかして事前に調べてくれてた?」

「………………そんなことないですよ」

「ふぅん、さてははじめっから来る気満々だったなぁ~?」

「別にそういうわけじゃ……もしかしたらジョイポリ行くかもなぁって思って調べただけです」

「ふふっ、そういうことにしとこっか」

「……」

 

 あまりの可愛さに思わず頭を撫でてしまう。不服そうな目で見てくるが仕方ない。だってこんなところを見せられたら誰だってきゅんっとしちゃうよ。

 

「もうっ、早く乗りましょうよ!」

「はいはい」

 

 恥ずかしさに耐え切れなくなったのか、そそくさとライブコースターの受付まで行ってしまった。将来自分の子供と遊びに来た時とかこんな感じなのかなぁ。いやまぁ元樹はもう子供じゃなくて高校生なんだけど。

 

「ほらほら、早くしないと人が来ちゃいますって!」

「そんなに急かさなくてもわかってるって。それにそんな大きな声ではしゃいでたら係の人が困っちゃうよ?」

「あ、確かに……つまみだされたり出禁になったりしたら困りますし」

「そこまではならないと思うけど……でもやりすぎると迷惑になっちゃうから気をつけようね」

「はーい」

「よーしよし、聞き分けが良くて偉いねー」

「えへへー」

 

 なんかジョイポリに来てから元樹の精神年齢が低下してる気がするけど……まぁいっか。本人が楽しそうだし、何より見てて可愛いし! こんなにはしゃいでる元樹は初めて見たよ。こんなに可愛い元樹を何回も見てるりなりーがちょっとうらやましいなぁー。




実はA・ZU・NAとDiverDivaのユニットライブ現地参戦してきました。最and高でした。
QU4RTZも現地参戦が決まってるので今から楽しみです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part22/m

にじよんあにめーしょん、終わってしまいましたね。楽しい時間をありがとうございました。2期やれ(脅迫)
ところで、にじよんあにめーしょんの放送期間3ヵ月の間に投稿できたのがたった4本ってマジ? しかも2月は1本も投稿してないとか、ほんまつっかえ。やめたら? クソザコ投稿頻度。

それから、スクフェスもサ終してしまいましたね。お疲れ様、スクフェス。ありがとう、スクフェス。こんにちは、スクフェス2。

終わるものがあれば、新たに始まるものもある。というわけで初投稿です。


「ん~、楽しかった~」

「うん、すっごく楽しかったね」

 

 コースターを降りて伸びをする元樹につられてアタシも伸びをする。

 

「それにしてもノーミスだなんて元樹すごいね。愛さん負けちゃったよー」

「まぁこれで璃奈に負けたことないんで」

「いつもはりなりーとアトラクションで勝負してるの?」

「はい、そりゃあもうバチバチに。まぁこれ以外だと璃奈に負け越してるんですけど。いっつも無言Vサインで煽られるんですよね」

「あはは、りなりーもそんなことしたりするんだね」

「俺に対してだけですけどね。……あーでもしずくやかすみ相手ならやるかも。ほら、あの3人めっちゃ仲良いじゃないですか」

「そうだねー」

 

 3人ともタイプは全然違うのに、きっと気が合うんだろうね。皆ちょっと子供っぽいところとか、あとは好きな人とか。せっつーもだけど、皆元樹のことが好きなのに一切揉め事が起きないなんてすごいよね。もしあの中の誰かが元樹と付き合ってもずっと仲良しなんだろうなぁって確信できるもん。まぁ同好会以外のメンバーと付き合った時が怖いけど……。元樹と同じクラスの三船さんっていうあの女の子とか。

 

「さてさて、次はどれにします? 今ならどこもガラガラですよ」

「じゃああれやろうよ、VRシューティング!」

「いいですね。普段激混みですもんね」

 

 アトラクションの入り口を見ると誰も並んでおらず、待ち時間も0分となっている。1回あたりの時間が長いこともあり普段は数時間待ちが当たり前だから、こんなふらっとできるチャンスは滅多にない。

 

「愛先輩早く~」

「はやっ! いつの間に……」

 

 ちょっと目を離した隙にもう受付まで行っている……。元樹がこんなにジョイポリが好きだなんて思いもしなかったなぁ。ちょっとはしゃぎすぎな気もしなくもないけど……。

 

 

 

「ぁぁ……」

「だいじょーぶ?」

「しんどいっす……」

 

 15分間もプレイ時間があったのに、開始5分で元樹がバタンキューしてしまった。その後は息を切らしながらなんとかやってたけど、さすがに愛さんがそのまま逆転しちゃった。最初は本気でやっても勝てそうになかったのに、まさかこんな結果になっちゃうなんて……。

 いやでも確かにバックパックも銃も少し重たいし、長い時間動き回るから、よく考えればこうなるのは必然だった、のかな?

 

「ふぅ……次は愛先輩に勝ちますからね。勝ち逃げは許しませんよ」

 

 でも本人は楽しそうにしてくれてるし、気にしなくてもいいのかも。

 

「うん、いつ挑戦してくれてもいいよ。でも次はもっと大勢でやってみたいなー。皆とだったらもっと楽しくなるよね」

「あー、そうかも。璃奈は言うまでもないとして、侑先輩とかせつ菜先輩を誘うと楽しそうですね。こういうの好きそうですし。あとは果林先輩も誘ったら来てくれそうです」

「うんうん、次は皆を誘って来ようね」

 

 せっつーを呼ぶとりなりーがいろいろと苦労しそうだけれど……。あまりグイグイはしてないけど、せっつーも元樹のこと大好きだからなぁ。よくチラチラ見てるし。乙女なせっつーを見てたらあの裁判事件を思い出すよ。いやぁ、あの時のりなりーの威圧感すごかったなぁ……。

 

「次は何にします? 時間的にはあと2~3個かなという感じですが」

「うーん、そうだなぁ……すぐ近くにあるし探検隊にする?」

「探検隊……いいですけど、探検隊かぁ……」

 

 ため息交じりに元樹が答える。

 

「あれ、もしかして探検隊あんまり好きじゃない?」

「いやいやいや、そんなことないですよ。ただ璃奈に全敗してて、あんまりいい思い出がないだけで……」

「りなりーそんなに強いんだね」

「俺が戻った時にはもう写真を持って待ってますね。それでその写真をこれ見よがしに見せつけてくるんですよ」

「あははっ、元樹にかっこいいところ見せたいんじゃないかな?」

「いや、それはないと思いますよ。わざわざそんなことする意味ないですし」

「あー……」

 

 りなりーの気持ちが全く伝わってなくて悲しくなっちゃうなぁ。男の子も女の子も、好きな人にはいいところ見せたいんだってば。

 

「まぁそんな話を愛先輩にしても仕方ないですし、時間もないので中に入りましょうか。さっきは負けちゃいましたけどこれでは勝ちますからね」

「あ、ちょっと待って!」

「ん? どうかしましたか? 何か忘れ物でもしましたか?」

「ううん、それは大丈夫だよ。何か困ったとかじゃなくて、折角だから勝負じゃなくて協力しようよ!」

「協力、ですか?」

「うん、協力! 2人で一緒にクリアして、一緒に写真撮ろうよ」

「そういえば探検隊ってそういう遊び方するアトラクションでしたね。もう長いこと勝負しかしてなかったので忘れてました」

「あ、そこからなんだ……」

 

 勝負ばっかりじゃなくて、もっと協力とかして遊べばいいのに。りなりーも恥ずかしがり屋さんだからなぁ……今更言い出すのも恥ずかしいんだろうね。でも気持ちはわかるよ。

 

「愛先輩の言う通り、今日は協力して遊びましょうか」

「うん! 頑張ろうね、元樹」

 

 

 

「よしっ、これで3問目も正解。クッリア~」

「元樹、いえぇい!」

「いぇい!」

 

 元樹とハイタッチを交わす。中は騒々しいはずなのに、手と手が触れ合うパチンッという音が鮮明に耳に届いた。

 

「2人だったからサクサクっと解けたね」

「そうですね。自己ベスト更新……というか璃奈のベストタイムもほんの少しだけですけど超えました」

「ほんとっ!? やったじゃん!」

「はい、普通にびっくりしました。俺がどれだけ頑張っても越えられなかったのに、まさか1回で……」

「えっへんっ、これが2人の力だよ」

「おぉー」

 

 ちょっと誇らしげにしてみたら拍手なんてされて、少し気恥しくなってしまった。純粋に感心してくれてるのがわかるからこそ余計に気恥ずかしい。

 

「よ、よしっ、受付に戻って写真撮ろっか」

「混んじゃいそうですしね。さっさと戻りましょう」

 

 ステージショーがちょうど終わって、メインステージに集まっていた人の一部がアトラクションに戻っていく。探検隊の方に行く人が多いから混んでしまいそうだ。あそこ入り口が狭いから混むと少し困っちゃうんだよね~。

 

「あー、少し並んじゃってるねー」

 

 1階まで戻ってきたけど、ほんの少しだけ探検隊に列ができている。ちょっと遅かったかぁ。

 

「まぁ次のステージの時間までちょうどいいくらいの長さのアトラクションですからね、探検隊は」

「次のステージは何時からなの?」

「11時半からですね、ちょうど30分後。回転効率がいいんで、探検隊ならどれだけ待ったとしても30分以内で終われますし」

「よくそこまで覚えてるね」

「当然ですよ。待ち時間を短くして効率よくアトラクションをめぐるためには、アトラクションから人がいなくなるメインステージの時間を把握しとかないといけないですからね。昔は璃奈とゆりかもめに乗っている間に乗る順番をあーだこーだ相談したもんです」

「なぁるほど~」

 

 その情熱をほんの少しだけでも勉強に回してくれたらなぁ~って思ったけど、口には出さないことにした。最近はすっごい頑張ってるし、りなりーが言うにはちゃんと成果も出てるみたいだし。この前は電話越しだったけど、今度はすぐ隣で勉強を見てあげたいなぁ。

 

「ほら、そうこうしてるうちにもう列がはけましたよ」

「ほんとだね」

 

 ちゃちゃっと写真撮ってもらって、あと1個、どうしてもやってみたいアトラクションがあるんだよね~。

 

「……あれ? 宝物庫の入り口封鎖されてません?」

「あ、ほんとだ……」

 

 いつもなら端末で宝物庫の扉を開けて写真を撮ってもらうんだけど、テープでその入り口が塞がれてる。

 

「さっき受付したときはこんなんじゃなかったよね?」

「そのはず、です。あんまり自信ないですけど……」

「すみませ~ん。今ちょっとカメラ壊れてて、この中入れないんですよ~」

「あ、そうなんすね。愛先輩、どうします?」

「どうするって言われても……」

 

 壊れてるんだったら仕方ないよね。ほんとは記念としてほしかったけど、今すぐ直るなんてことあるはずないし。

 

「お客様の携帯で代わりに撮るといったことはできますが、いかがしますか?」

「撮ります! ね、元樹も一緒に撮ろ?」

「え。そこまで写真に対して情熱はないんですけど……」

「え~」

 

 スタッフさんに撮ってもらおうとしたけど、恥ずかしいのか元樹は離れていってしまった。

 

「ほら、元樹も撮ってもらおうよ~」

「え~、早く次のアトラクションに行きましょうよ~」

 

 うーん、ほんとにアトラクションにしか興味ないんだなぁ。スタッフさんも苦笑いしている。しょうがない、ここは少しだけ強引にやっちゃおっか。

 

「ほらほらっ、愛さんと一緒に記念写真!」

「え、ちょっ」

 

 元樹の腰に手を回し、強引に隣に引き寄せる。愛さんんもさすがにちょっと恥ずかしいけど、こうでもしないと撮ってくれなさそうだからしょうがない。

 

「撮りますよー。はい、ちーず」

「いぇーい!」

「……」

 

 この状態のままスタッフさんに撮ってもらった。不服そうな顔をしながらも、愛さんに合わせてピースはしてくれた。

 

「ありがとうございまーす。元樹にも送ってあげるね」

「まぁ……送ってくれるなら一応受け取っておきます」

 

 そんな風に言いながらも送った写真をすぐに保存してくれている。写真もよく見てみると、一見不服そうな顔に見えるけど、照れてるのか若干頬が赤くなっていて、口角も少しだけ上がっている。ちゃんと体もこちらに寄せてくれていて、一緒に写真を撮ろうという意思が伝わってくる。まったくもう、素直じゃないんだから。

 

「……なんですか?」

「いやー、元樹は素直じゃないなーって」

「…………邪魔になるんで出ましょう」

 

 端末を受付に返して、足早に外に出ていってしまった。そんな様子に思わずニコニコしてしまう。でもずっといると邪魔になってしまうというのもその通りなので、急いで探検隊から出て、元樹の隣に並ぶ。

 

「んーっ! 探検隊も面白かったね」

「いつもと違う遊び方だったんで、俺もめちゃくちゃ楽しかったです」

「それはよかった。愛さんもすーっごく楽しかったよ! また一緒にしようね」

「ぜひぜひ。愛さんとだけじゃなくて、今度璃奈とも協力してやってみます。まぁ来る機会があればですけど」

「うんうん、きっとりなりーも喜ぶと思うよ。すぐじゃなくてもいいから、りなりーと一緒にジョイポリ行ってあげてね」

「そうですね……璃奈と2人で出かける予定はあるので、可能ならその時に。まぁ行きたいところがあるのでジョイポリに来る余裕があるかはわからないですけど」

 

 えっ、2人でお出かけ!? 今初めて知った……もしかしてりなりー秘密にしてたのかな? いやまぁアタシに報告しないといけない理由なんてないんだけれど……でもすごくよかった! ジョイポリに行けるかわからないくらい行きたいところも決まってるみたいだし!

 どこに行くんだろ……映画とかかな? うぅ~気になる~。気になるけど、聞いたりしたらダメだよね。どっちが誘ったのかはわからないけど、もしかしたらプランを相手に秘密にしてるのかもしれないし。それにあんまり踏み込みすぎると邪魔になっちゃうもんね。うん、愛さんは2人のデートがうまくいくことを祈るだけにしておこう。




愛さんとのお出かけはめちゃくちゃボリューミーなので、本編で描写したところを一部カットしながらサクサクサイドストーリーを進めていく予定だったのに、本編で一切描写してないところをいっぱい書いてしまった……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part23/m

初新年度です。


「次は何がいい? そろそろお昼の時間だし、これが最後かなーと思うんだけど……それでいい?」

「そうですね。それがいいと思います。最後何にしよう……うーん、迷うなぁ。愛先輩はどれがいいと思います」

「実は愛さん乗りたいのがあるんだよねー」

「ほう、どれですか?」

「3階にある占いのアトラクションなんだけど、いい?」

 

 かなり前に友達とやってみてすごい楽しかったから、一度元樹ともやってみたいんだよね。時間もちょうどいい感じだし。

 

「占いの……ああ、あれですね。なんとかかんとか、ってやつ。いいですよ、やりましょう」

「やったっ! じゃあ行こー行こー!」

 

 ウキウキで元樹を先導……してたら、いつのまにか元樹に先導されていた。鼻歌なんか歌っちゃったりして、楽しそうにはしゃいでいる。ほんとジョイポリが好きなんだなぁ。

 

「もぉ、あんまりはしゃぐと危ないよ?」

「大丈夫ですよ。ちゃんと周りは見てるので」

「それならいいけど……」

「それにしても愛先輩占いとか好きなタイプだったんですね。ちょっと意外でした」

「うーん、占いが好きというよりは、友達との相性とかがわかるから、そっちが楽しみーって感じかなぁ」

 

 相性占いの結果を見て、その通りだねーとか、感じたことないけどそうなのかもとか、いろいろ話をするのが楽しみなんだよね。もちろん占いの結果を100%信じるわけではないけど。

 

「相性占い、そういえばそんなのもありましたね。確か2人で入ったら遊べるんでしたっけ?」

「そうだよ。どうする? 愛さんと相性占いしてみる?」

 

 受付でアトラクションで使用する石板を受け取り、機械で最初の設定をする前に元樹に尋ねる。

 

「んー……そうですね、しましょう、相性占い。折角の機会ですもんね」

「うん、じゃあアタシと元樹の相性占っちゃおっか」

 

 機械の2つの窪みに元樹とアタシ、それぞれの石板をはめ込む。ここからニックネームとかを入力していくのだけれど、元樹はどんな名前にするのかが気になってジロジロと画面を見てしまう。

 

「……なんですか?」

「えへへー、元樹がどんな名前にするのか気になっちゃって。『もと』って名前使ってるんだね」

「まぁ……『りな』と『もと』だったら同じ2文字でなんかいい感じじゃないですか」

「確かにー。りなりーと合わせてるんだね。かっわいぃ~」

「可愛い……そうですね、考えたの小学生とかまだ純粋な頃ですからね。璃奈と一緒に考えたんですよ」

 

 可愛いし、2人の関係性にキュンキュンしてしまう。ザ・幼馴染って感じですっごくいいよね! 今日だけでも幼馴染エピソードをいっぱい聞けて、思わずニコニコしてしまう。

 

「お気に入りだし、璃奈も喜んでくれてたので今も使ってるんです」

「ぁ……」

 

 そう言う元樹は今までに見たことがない表情をしていた。どう表現すればいいのかわからないけど、昔を懐かしむような、どこか幸せそうな……。

 

「どうかしました?」

「え、う、ううん、何でもないよ! ……って何してるの?」

「秘密のコマンドです」

 

 占う項目を選ぶ画面で、元樹は何やら変なボタン操作をしている。

 

「これをやると……ほら、隠し項目が出てくるんですよ」

「どれどれ……ううぇぇぇ!? な、何この項目!?」

 

 友達とか恋愛とか一般的な占い項目しかないはずなのに、元樹が謎の操作をした後とんでもない項目が表示された。それは……セ、セッ……か、体の相性を占えてしまうというものだ。何、これ……。

 

「隠し要素です。秘密の操作をすると出てくるんですよ。俺も初めてやりました」

「ちょっ、もときっ!」

 

 あまりの事態にアタシが困惑している間に元樹は問題のその項目を選んでしまった。どうしよう!? キャンセルもできないし!

 

「どんな感じなんだろ。普通に楽しみだな」

 

 慌てるアタシを横目に、元樹は暢気にこれからの想像をしている。

 

「な、なんでこんなの選んだの……?」

「え? 面白そうだったので。噂には聞いてたので、一度試してみたかったんですよねー。あと愛先輩との相性も占ってみたかったですし。あと面白そうだし」

「うぅ、そういう意味の相性じゃなかったのに……」

 

 ほんとにどうしてこんなのがあるんだろう……ここ一応小さな子供だって来る場所だよ? カップルだったら問題ないのかもしれないけどさぁ。あー、これからのことを考えるだけで顔が熱くなってくる。

 愛さんがこんなに困ってるのに、そんなこと気にせず元樹はどんどんと進んでいく。暗くてよく見えないけど、この感じだと頬を赤くしてるなんてこともないだろう。

 

「さて、始めていきましょうか」

「う、うん……」

 

 とうとう来てしまった。変な質問じゃないといいんだけど……。

 

『セッ〇スの経験は?』

 

 あー……いきなりこれかぁ……。書き方があまりにも直球的過ぎない?

 

「え、えっと……のー……」

「……」

 

 そっか、元樹もないんだ。よかった、元樹が性欲に身を任せるタイプの男の子じゃなくて。去年のクラスはガツガツしてる男の子が多かったから、そういうタイプの男の子はあんまり得意じゃないんだよね。

 

『オ〇ニ―はどれくらいの頻度でする?』

 

 わぁ、最初から飛ばしてる質問ばかりだなぁ。というより書き方が直球すぎるんだってば。もう少しぼかして書くとかしないの?

 

たまぁに……

「……」

 

 ほんとは声を出して答える必要なんて全くないけど、いつもの癖でついつい声に出てしまう。答えを見られてるだけじゃなくて、聞かれてるというのがたまらなく恥ずかしい。うぅ~ここから逃げ出したい~。

 そんなアタシに対し、元樹は無言で淡々と答えていく。元樹は全くしないんだぁ……。男の子ってそこまでしないのかな?

 

『好きな人とはずっと一緒にいたい?』

「い、いたい! ……あ」

「……」

 

 思わず大きな声を出してしまい、慌てて口を塞ぐ。周りを見ても特に気にする様子はなく、元樹も変わらず淡々と答えている。見逃しちゃったんだけど、元樹はなんて答えたんだろう。気になる……。

 というかちょっと淡々としすぎじゃない? さっきから一言も話してないんだけど……。

 

『恋人との初めてのキスはどんなシチュエーションでしたい?』

 

 やっとまともな質問が来た、と思ったら選択肢におかしいのが混じってた。『ベッドの上で』って何!? もうそういうことする気満々じゃん!

 

「ロマンチックな場所、と」

「……」

 

 元樹は……へぇー、『帰り道に不意打ち気味に』かぁ。確かにそれもいいかも。自分からするには恥ずかしすぎるけど、好きな人からされたらすっごく嬉しいと思う。もちろん誰も見てないタイミングにはしてほしいけど。

 

『恋愛で重視するのは顔? 性格?』

 

 ふぅ、やっと普通の質問だ。何回かやったことと、元樹が特に反応を示してこないこともあって、少しだけ慣れてきちゃった。多少えっちな質問が来てもそれほど動じないだろうという自信がある。こんな自信いらないよ……。あとずっと淡々と答えるばかりで、ちょっと寂しくなってきちゃったなー。

 

「ねぇ元樹、ここからはお喋りしながら一緒に答えていかない? 話せる範囲のことだけでいいからさ」

「いいですよ。愛先輩ずっと1人で恥ずかしそうに話してて寂しそうだなーって俺も思ってたので」

「もうっ、そう思ってるなら話しかけてくれてもいいじゃん!」

 

 あの無表情の裏でそんなこと考えてたなんて……というか内心絶対楽しんでたよね!? ちょっとした抵抗として、元樹の頬を優しくつねる。

 

「いててっ、ごめんなさい俺が悪かったです」

「よろしいっ! 元樹にも謝ってもらったし、まずは愛さんからね。愛さんはねー、重視するなら性格かなー。誰にでも優しくて、頑張る時はちゃんと頑張るぞっ、って人がいいな」

「へぇ、常に全力、みたいな人じゃないんですね」

「うん。だってずっと全力だったら疲れちゃうし、だんだん心もすり減っちゃうでしょ? 好きな人がそんな風には心を壊しちゃうのは嫌だからさ」

「ふーん……」

「次は元樹の番だよ」

「俺かぁ……俺はどちらかというと顔重視ですかね。もちろん性格も大事ですけど」

 

 へぇー、ちょっと意外かも。

 

「じゃあさ、どんな子が好み?」

「うーん、小顔でタレ目で、目がパッチリしてる子が好きですね。あと口が小さめの子」

「なんで好きなの?」

「別に、ただ可愛いからって理由だけですよ。ご飯の時とか小さな口でモグモグしてるの可愛くないですか?」

「わかる! りなりーとお昼食べる時とか元樹と同じこと考えてるよ」

「はい、璃奈の食べ方って昔から超可愛いんですよ。さすがに本人の前では言えないですけど」

 

 そこは伝えてあげようよ……。こういうのを黙ってるからりなりーがヤキモキしちゃうんだよ?

 

「さて、次ですよ」

 

『セッ〇スしたくなった時は自分から誘う? 誘われるのを待つ?』

 

「うぇぇぇっ!? さっきまで普通の内容だったのに、なんでまた……」

「そういう占いなんで。さぁ愛先輩からですよ」

「……誘われるのを待つ」

「その心は?」

「だって相手がその気じゃなかったら申し訳ないし……あと恥ずかしい。も、元樹はどうするの?」

「俺は……誘いますかね。相手の様子を見つつですけど」

 

 確かに元樹は男らしく誘って、上手にリードしてくれそうだ。でもパワーがないから、どちらというと相手に押し倒されてる方が簡単に浮かんじゃうんだよねぇ。すごい勝手なイメージだけど、しずく相手だと押し倒されてそのままいいようにされてそうなんだよね。

 

「お、次がラストみたいですよ」

「そうだね。えっちなのじゃないといいなぁ

 

『フィニッシュの体位は何がいい?』

 

「たっ!?」

「あー、ラストの質問だからフィニッシュの話なんですね。なるほどなぁ」

 

 余裕があるのか、元樹は妙なところに納得している。いつもの精神状態なら愛さんも同じことを言ってると思うけど、今は恥ずかしさで死んでしまいそうで、とてもそんな余裕なんてない。

 

「さてさてさて、愛先輩は最後どの体位がいいですか? どの体位で出されたいですか?」

「な、なんでそんな聞き方するの!?」

「いやー、顔真っ赤にする愛先輩が可愛かったので」

「もぉぉぉぉぉっ!」

 

 元樹の胸をポカポカと叩く。1人だけ明らかにこの状況を楽しんでいる。元樹は性欲に身を任せるタイプじゃないって思ってたけど、やっぱり違うかもしれない……。

 

「ほら、愛先輩が答えてくれないと先に進めませんよ」

「だって、愛さん経験したことないし……」

「それは俺も一緒ですよ。なので想像で答えましょうか」

「うぅ……せ、正常位」

「へぇ」

「……か」

「か?」

「た、いめん、ざい……」

「ほうほう、それはどうしてですか?」

「その、最後は好きな人にギュってされながら、一緒にイ、イキたいな……って。あと、終わった後すぐにキスしてほしいから……」

「え、何ですって? もう1回言ってもらってもいいですか?」

「やだっ! もう絶対に言わない!」

「えー、ケチー」

 

 ケチじゃないの! これでもかなり頑張ったんだから! はぁ、恥ずかしさで死んじゃいそう……顔が熱い、穴があったら入りたい……。

 

「も、元樹は! 元樹はどうなの!?」

「俺は……うーん……俺も正常位かなぁ。終わった後すぐに抱きしめてあげられるし、隣に並んで横になりやすいし。あとは気持ちよさそうにしてる相手の可愛い顔もよく見れそうなので。……どうしたんですか愛先輩?」

「その、聞いてるだけでも恥ずかしくて……最後のとか」

「もう1回言ってあげましょうか?」

「言わなくていい……」

 

 何で元樹はこんなに平然としていられるのだろう……やっぱり男の子はこういうのに抵抗感少ないのかな。

 

「さて、全部答え終わりましたし、結果を受け取りに行きましょうか」

「う、うん」

「あれ、まだ恥ずかしがってるんですか?」

「だ、だって今から占い結果が返ってくるんだよ? どんなえ、えっちな内容が書かれてるか……」

「愛先輩ってピュアで可愛いですね」

「も、もうっ!」

 

 可愛いって言ってもらえるのは嬉しいけど……でも状況が状況だけに素直に喜べない……。

 

「はい、これ愛さんの結果です。中身は外に出てから見ましょうか」

「そうだね。邪魔になっちゃうし」

 

 出口の少し重たい扉を開け、明るい光を浴びると同時に一気に緊張から解き放たれる。アトラクションの中が薄暗くて、その、まるでえっちする時みたいだなぁって考えちゃって、必要以上に緊張してしまった。

 

「はぁ、疲れた……なんであんなのがあったんだろ……」

「さぁ? ただの遊び心じゃないですか?」

 

 単なる遊び心にしてはちょっとやりすぎな気もするけど……。

 

「最後の質問をフィニッシュの話題にするってのをやりたかっただけ説とかもありますね」

「うーん、微妙にありそうなのが……」

「……ま、なんでもいっか。そんなことより占い結果見ましょうよ」

「うん、そうだね」

 

 本当はあんまり見たくないけど、折角占ったんだからちゃんと見ないと元樹に悪いよね。よしっ、ここはしっかり気合い入れて……

 

『相性抜群! もうこれ以上ないくらい! 100点満点中120点!!!』

 

 ……え、嘘でしょ? こんなに相性がいいって結果になるほどだった? 確かに気が合うなーって部分はいくつかあったけど……。と、とにかく続きを見てみよう!

 

『あなたが寂しい時、あなたのパートナーは声や言葉から気持ちを感じ取り、あなたの下を訪ねてくれるでしょう。きっとその日は寝る間も惜しんで情熱的な一夜を過ごすでしょう。コン〇ームは家に常備しておくとよいでしょう』

 

 最後! 最初の1文は思わずドキッとしちゃうような内容なのに、その後で全部台無し!

 

『あなたはセッ〇スの中で愛されてることを感じたいと考えるタイプです。そんなあなたはセッ〇ス中にパートナーに何度もキスを求めるとよいでしょう。あなたのパートナーも同様の傾向が見られるため、あなたの願いに応えてくれるはずです』

 

 これは、その……もしかしたら当たってる、かも。ちゃんと好きでいてもらえてるのかな、っていうのはアタシはすごい気にしちゃうタイプだし。

 元樹のはどんなことが書いてあったんだろう。気になる……ちょっとだけ、ちょっと横からチラ見するくらいはいいよね? 元樹のせいでさんざん恥ずかしい目にあったんだし。

 

「ふぅん、こんな感じか。愛先輩のにはどんなこと書いてありました? 見てもいいですか?」

「だ、ダメ!」

 

 元樹がアタシの用紙を覗こうとしたので、慌てて自分の体で隠す。

 

「えー、愛先輩は俺の見たのにー」

「見てないもん!」

 

 本当に見てない。見ようとして実際チラッと横目で見てみたけど、角度の関係で何も読み取れなかった。だからノーカン!

 

「とにかく、こんなの元樹には見せられないから!」

「えー……」

 

 これを元樹本人に見られたら恥ずかしさでショック死……とまではいかないけど、何日かは寝込んじゃう。それと、これを見た元樹に『この占いが当たってるのか確かめてみませんか』って誘われちゃったら、今はちょっと断れる自信がない。キスくらいはしてしまうかもしれない。なまじ当たってそうな項目がいくつかあるせいで、実際に確かめてみたいという好奇心が湧いてきてしまっている。異性として好きでもないのに元樹とキスなんてしちゃったらりなりーに合わせる顔がないよ……。

 絶対に見られたり落としたりしないように、カバンの奥深く、チャックで開け閉めできるポケットの中に小さく折りたたんで入れる。この占い結果のことは忘れてしまおう、うん。こんな変な気分になったのも全部これのせいだし、忘れてしまえばきっとスッキリするはず!

 

「はぁぁぁ、もう二度とあの項目でやんないよ……」




今回は愛さんデート回の中で一番書きたかったところです。なので筆がノリノリのりすけさんでした。
愛さんとえっちしたい(直球)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part24/m

スクフェス2がとうとうリリースされましたね。皆さんはもうプレイされましたか?
私は最初のURは当然りなりーを選びました。どのイラストも最高なのですが、やっぱりりなりーの覚醒前イラストが好きすぎてね。
私もあんな表情でりなりーから見つめられながら初投稿したい……。


 ジョイポリスから出て、一緒に美味しいラーメンを食べた後、屋上でまったりと雑談してたら雨に降られちゃったから、元樹をもっとオシャレにしてあげようってことでアクセサリー屋さんまで来ていた。

 

「あれ? 愛ちゃんに……もと、君?」

 

 そしたら店から出てきた歩夢とバッタリ出会った。

 

「歩夢先輩じゃないですか。こんちわ」

「うん、こんにちは……」

「いやー、まさか歩夢とこんなとこで会うなんて思ってなかったよー。歩夢もアクセサリー買いに来たの?」

「うん、侑ちゃんのヘアゴムが切れちゃったから……」

 

 ん? 歩夢の様子がちょっと変? いつもならもっとニコニコして返してくれるのに……。

 

「なんか元気なさそうだけど大丈夫? もしかして具合悪い……?」

「ち、違うの! そういうのじゃなくて……私は元気だから大丈夫。心配してくれてありがとう」

 

 一応確認してみたけど違うみたい。歩夢が嘘ついてたら反応とか話し方とかですぐにわかりそうだから、きっと本当に大丈夫なんだろうね。じゃあなんであんなに変な感じだったんだろ……急にアタシ達に会ったからびっくりしちゃったのかな。

 

「2人が一緒にいるのが少し意外で……」

「ああ、なるほどねー」

 

 言われてみれば歩夢の前で元樹と話したことってあんまりないかも。事務的な話とかはしたりするけど、プライベートな話は2人きりの時とかが多いもんね。

 

「心配しなくても俺と愛先輩はめちゃくちゃ仲良しですよ。こうやって一緒に出かけたり、前々からお出かけ計画を綿密に決めたり。ね、愛先輩?」

「うん、そうだよ」

「そっか、そうだったんだぁ……」

 

 綿密に計画してたかはかなり微妙だけど。集合時間と集合場所しか決めてないし、むしろ無計画に近い。でも口に出すと元樹が拗ねちゃいそうだから、ここは黙っておこう。

 

「歩夢お待たせ~……ってもと君に愛ちゃん?」

「あ、侑先輩」

 

 お店の袋を片手に、ゆうゆが中から出てきた。いつもはツインテールだけど、今は髪をおろしている。

 

「髪おろしも似合ってますね」

「そう? ありがと」

 

 元樹の褒め言葉をさらっと受け流し、買ったばかりであろうヘアゴムで髪を結びなおしている。髪おろしもすごく似合ってたけど、やっぱりツインテールのゆうゆもよく似合ってるなぁ。……あ、よく見たらちょっと頬が赤くなってる。やっぱり元樹の褒め言葉に照れちゃってたみたい。

 

「それで2人はなんでここに?」

「愛先輩とデートです」

「も、もぉ、デートじゃないでしょ?」

 

 とんでもないことを言い始めたからびっくりしちゃったけど、ちゃんと否定しておく。歩夢もゆうゆも冗談を信じちゃいそうだし、万が一2人からりなりーに伝わってしまったら大変なことになっちゃう。

 

「あはは、デート……デートねぇ……

「ゆうゆ!? 違うからね!?」

 

 純粋なゆうゆは本当に信じちゃったみたいで、顔を赤らめながら歩夢の方をチラチラと見ている。歩夢の方は……きょとんとしていて、どっちかわからない。でも歩夢も純粋だからなぁ。後でデートじゃないよってメッセージ送った方がいいかな。ってそんなことしたら余計に本当だと思われそうで難しい。

 

「あ、そうだ! 折角だし、2人も一緒に来る?」

 

 2人も一緒に来てくれればアタシと元樹のデートって印象は薄れるかも!

 

「行こう侑ちゃん!」

「行こう歩夢!」

「わ、すごい食いつき……」

 

 息の合った返事にちょっとびっくりしちゃったけど、2人とも一緒に遊びたいって思ってくれたんだ。嬉しいな~。でも元樹は微妙な反応だ。どうしてだろう。

 

「もと君、私達が一緒だとイヤなの……?」

「……そんなわけないじゃないですか。一緒に行きましょう」

「やったっ、ありがともと君」

「……歩夢ってたまぁに小悪魔みたいな時あるよね」

「そうかな?」

 

 袖をつまんでの上目遣いでのお願いに元樹もたまらず一発ノックアウト。歩夢のことだからきっと天然でやっているのだろう。言動や仕草がどれも可愛いし、性格もスタイルもよくて、親しみやすさもあって、今みたいな小悪魔チックなところも見せてきて、今まで数多くの男の子が堕とされてしまったことが簡単に予想できる。でも本人がゆうゆに夢中だから、皆告白する前に失恋しちゃってるんだろうなぁ。

 

「ところで、結局2人は何しにここまで来たの? 愛ちゃんのアクセ買いに?」

「ううん、今日は元樹のを選びに来たんだー」

「……そうだ、3人でコーディネートバトルやってもらえませんか? それぞれ1つアクセサリーを選んでもらって、その中で俺が一番気に入ったものを選んだ人が勝ち。どうです、面白そうじゃないですか?」

「いいね! おもしろそー!」

 

 テレビ番組とかでたまにやってるような企画で面白そう! こういうの一度でいいからやってみたかったんだよねー。

 

「やろうやろう! ね、歩夢」

「うん、あんまり自信はないけど……」

「えー、歩夢めっちゃオシャレなのに?」

「そ、そんなことないよぉ」

「愛ちゃんの言う通りだって。このフリフリのスカートとか歩夢にすっごい似合ってるよ」

「うぅ~……」

「そうですよ。いつもつけてるその花形の髪飾りとか、その髪型とか、オシャレで歩夢先輩に似合ってますよ」

「もと君もずるいよぉ……」

 

 皆で歩夢のことを褒めたら真っ赤になった顔を手で覆い隠してしまった。こういう反応が可愛いんだよねぇ。同じことを考えてるのかゆうゆもうんうんとうなずいている、

 

「もうっ、私のことはいいから早く始めよ?」

「そうだね」

「元樹はどうする? 誰かについてくる?」

「そうですねぇ……いや、俺は1人で適当に徘徊してます。ついていった人が有利だって思われちゃうのも嫌ですし。あと何を選んでもらったのか予想するのも楽しそうですし、選んでもらったのを見てわーってなりたいので」

「そっか。じゃあ各々決めたら元樹に連絡するって方式にするから、連絡が来るまでの間は自由に徘徊してていいよ」

「了解でーす。じゃあまた後で」

「うん、楽しみにしててねー」

 

 元樹を見送った後、3人で顔を向き合わせる。

 

「始める前に、3人で軽く決まり事でも決めた方がいいかな?」

「うん、そうしよー。まず他の人との協力はなし、でいいよね」

「そうした方がいいと思うよ。もと君をオシャレにするのが目標ではあるけど、勝負は勝負だもん」

「えー……困った時は歩夢に頼ろうと思ってたのに……」

「あはは、ゆうゆそんなこと考えてたんだ」

「うん、私あんまりオシャレとか自信ないからさー」

 

 確かにゆうゆの服装はちょっと小中学生くらいの男の子っぽさがあるというか……もちろん可愛くないとかでは決してないんだけどね。トレンドを取り入れてなかったり、アクセサリーとかも全くつけてないのを見る限りだと、ゆうゆはこの勝負かなり不利そうだ。

 

「もうっ、ズルはダメだよ侑ちゃん」

「だって歩夢と愛ちゃんに勝てる気がしないんだもん」

「でも元樹もりなりーに服装選んでもらってるくらいオシャレに無頓着っぽいし、なんというか……2人の独特の波長みたいなのが噛み合って、もしかしたらゆうゆが優勝するかもしれないよ?」

「うっ! 今、遠回しにダサいって言われた気がする……」

「そ、そんなことないよ!? ただその、元樹と波長が合いそうだなーっていうか、意外性がありそうだなーっていうか……」

「愛ちゃん、何もフォローできてないよ……?」

 

 ごめんね、ゆうゆ。あとでちゃんと謝っておこう。

 

「……そうだ、こんなのはどうかな。私と愛ちゃんから、1つずつ侑ちゃんにアドバイスするの。それを参考にしながら侑ちゃんが選ぶ。これならいい勝負になると思うんだけど、どうかな?」

「それ、すっごい面白そう! ゆうゆはどう思う?」

「うん、それなら私でも2人といい勝負ができそうな気がする!」

 

 歩夢の提案を聞いたゆうゆは目をキラキラと輝かせている。

 

「じゃあじゃあ、最初は歩夢のアドバイス聞きたいな~」

「うーんとね、2人で一緒につけるお揃いのアクセサリーを選ぶのはどうかな」

「あー、ペアルックってやつだよね。聞いたことあるー」

「アクセサリーとかの小物の場合はペアグッズって言うんだよ、ゆうゆ」

「あー……ま、まぁそのぺあぐっずってのを選ぶといいんだね!」

「うん。侑ちゃんが『一緒につけよ?』って誘ったらきっともと君もイチコロだよ!」

「そっかぁ、あのもと君がイチコロかぁ……あれ、これってもと君を堕とす勝負だっけ?」

 

 違うね。歩夢は自信満々にむふぅーとしてるけど、違うね。

 

「愛ちゃんはどんなアドバイスをくれるの?」

「アタシが選ぶ指針の1つにしようとしてたのが、アクセの着脱のしやすさかなぁ。ほら、元樹って意外とめんどくさがり屋さんでしょ? だからつけ外ししやすい方が元樹は喜んでくれるんじゃないかなぁって」

「なるほど~。着脱しやすくて、もと君とのペアグッズね。参考にしてみるよ!」

 

 ……このアドバイス、役に立つのかなぁ? 今時のアクセなんてどれも簡単につけ外しできるし、同じのを2つ選ぶだけでペアグッズになる。これ、実質的には全くアドバイスになってないんじゃ……?

 

「よしっ、じゃあ皆アクセ選びにレッツゴー!」

「おぉー!」

 

 でもゆうゆが楽しそうだし、いっか。よしっ、ゆうゆと歩夢に絶対勝つぞー!

 

 

 

「うーん、どうしよっかなー」

 

 いくつか候補は出してみたんだけど、どれもピンとこないというか……デザインが派手すぎて、元樹にはちょっと似合わないような気がするんだよねー。多分元樹にはシンプルなものが似合うと思うんだ。

 でもシンプルなってのもそれはそれで難しい。単色とかだとシンプルすぎて面白味がなくなっちゃう。あーん、本人がこの場にいないと試しに合わせることができないから難しいよ~。

 

「……あ、これ」

 

 何かないかなーと店内を歩き回っていると、ふと目に入ったイヤリングが気になった。それを手に取ってみる。グレーを基調として、オレンジ色がアクセントとしてうっすらとちりばめられている。大きさ的には少し小さい部類に入り、色も相まってつけてもあまり目立たないデザインとなっている。でも、それが逆に元樹に似合う気がする! よく見たら耳についてる、くらいのものがきっと元樹に似合う気がするんだ~。

 

「よし、これにしよっ!」

 

 着脱はちょっとしづらいけど、でもこれ以上のものは見つかりそうもないし、そこには目を瞑ることにしよう。ゆうゆへのアドバイスはなかったことにしておこう……。

 よし、じゃあ元樹に連絡を送って……ちょっと待って、この場所に呼んだら選んだのがイヤリングだってすぐにわかっちゃうよね。できればギリギリまで秘密にしたいし……うん、リストバンドのコーナーに呼ぼう。

 

『今大丈夫? 愛さんのところに来てほしいな。リストバンドのあたりにいるからね』

『今から向かいまーす』

 

 メッセージを送ったらすぐに連絡が返ってきた。もしかして愛さんが一番だったりする?

 

「元樹ー、こっちだよー」

 

 キョロキョロとアタシを探す元樹の姿が見えたので、手を振ってこちらに呼ぶ。

 

「あ、愛先輩。ここに呼ばれたってことは、愛先輩が選んでくれたのはリストバンドなんですね」

「ふっふっふ……そう思ったでしょ? そんなわかりやすくないんだな~これが。何を選んだか先にわかったらおもしろくないじゃん?」

 

 目論見通り考えてくれててちょっと嬉しいなぁ。ちょっと意表を突かれたような顔が可愛い。

 

「愛さんが選んだのは……じゃーん! このイヤリング!」

「へぇ、イヤリング……実物は初めて見たかも」

「そうなんだー。珍しいね」

「璃奈もイヤリングとかつけないので」

 

 確かにりなりーがイヤリングつけてるイメージはないかも。だから実物を見たことがなくてもおかしくはないのかな。

 

「こうやってちょっと耳に当ててみて」

「こう、ですかね。どうです、似合ってますか?」

「そうそう。ちゃんと似合ってるよ」

 

 愛さんの予想通り、グレーの小さなイヤリングが元樹によく似合っている。

 

「そうですか、よかったです。なんでこれを選んでくれたんですか?」

「理由……理由かぁ……。これを一目見たときなんかピンっと来たんだよね。『これは元樹に似合うぞ!』って。だから深い理由なんてないんだよね~」

 

 一目見てピンっと来たのも事実だけど、ほんとはちゃんと選んだ理由はあるんだけどね。でも元樹に話しても理解してもらえなさそうだから、ここは黙っておこう。追い追い教えないとだけどね。その時はカリンにも協力してもらおっかな~。

 

「で、どうどう? 気に入ってくれた?」

「そうですねぇ……つけるのが若干めんどくさそうなのが少し減点ポイントですけど、色合いとかサイズ感とか、デザイン面はかなり気に入りました。変に凝ってないこのシンプルな感じがいいですね。あと灰色好きなので」

「そっか、よかったぁ」

 

 愛さんの悩んだところを気に入ってもらえたみたい。全然知らなかったけどグレーが好きだったんだね。反応や表情を見る限りかなりの高評価をもらえてそう。最初の直観を信じてよかった!

 

「……あ、そうだ。さっきぐるぐる店を回ってた時、愛先輩に似合いそうなシュシュ見つけたんですよ。あそこに……」

「ん? どれどれ?」

 

 元樹が棚の上の方に置いてある商品を指差しているので、背伸びして覗き込む。うーん、棚の端に置かれてて、もうちょっと元樹に近寄らないと見えないや。

 

「えっと、奥にあるオレンジの……って、なんか近くないですか?」

「そう? これくらい普通じゃない?」

 

 顔をほんのり赤く染めて、こちらから目をそらしている。元樹ってば意外と照れ屋さんだな~。

 

「んしょっ……と。元樹が言ってたのってこれ?」

「は、はい。それです」

 

 真ん中に白いうさぎが大きく書かれたオレンジのシュシュだ。試しにつけてみよーっと。髪を留めるのはちょっと面倒だから、腕につけちゃおう。

 

「どうかな? 似合ってる?」

 

 シュシュをつけた方の手を顔に寄せて、軽くポーズを決めてみる。

 

「めちゃくちゃ似合ってます。正直予想以上です」

「そ、そんなに?」

「これを一瞬で見極めた自分のファッションセンスが恐ろしいです」

「あはは。そうだね」

 

 普段やる気がないだけで、実はちゃんとしたファッションセンスがあるのかもしれない。実際このシュシュもすっごい可愛いし!

 

「これ、愛さんにプレゼントさせてください」

「えっ、いいっていいって。今日は元樹のを選びに来たんだからさ」

「そんなの関係ないですよ。俺がプレゼントしたいと思ったからするんです。こーんなに似合ってるんだから、俺にプレゼントさせてください!」

「元樹がそこまで言うなら……プレゼントしてもらおっかな。ありがとね、元樹」

 

 プレゼントしてくれる理由にはなってない気がしたけど、でも似合ってるなんて言われたら嬉しくて仕方ないし、きっと元樹は折れないだろうから、ありがたくプレゼントとして受け取ることにした。

 それはそれとして、あーんなに真っすぐな瞳で見つめられて、滅多に見ないような真剣な表情で似合ってるなんて言われたら照れちゃうよ……。あとドキッとしてしまった。あんな表情、せっつーを連れ戻しに行った時にしか見たことがない。これはーあれだね、ギャップ萌えってやつだね。あの元樹のこんな表情、ドキドキするなって方が難しい。心の内を感づかれたくなくて、照れ隠しといわんばかりに元樹の頭を撫でる。

 

「……あ、侑先輩からも連絡きました」

「ゆうゆから?」

「はい。指輪とかの辺りにいるらしいので行きましょう」

 

 指輪かぁ。あんまり元樹が指に何かをつけてるイメージは湧かないなぁ。もちろん元樹はそんなこと全然考えてなくて、むしろつけてみたいって思ってるかもしれないし、そもそもゆうゆが選んだのが指輪じゃない可能性も十分にあるし。

 

「もとくーん、こっちこっち!」

 

 こちらの姿を見つけると、ぴょんぴょんと跳ねてこちらを呼んでいる。

 

「愛ちゃんと一緒ってことは、もう愛ちゃんが選んだのは見たの?」

「そうですよ」

「ってことは私が最後なんだね」

「そうですよ」

 

 アタシが最初だって思ってたけど、先に歩夢がやってたんだね。先越されちゃったぁ。

 

「……あれ、歩夢先輩にも見せてもらったって話しましたっけ?」

あ、えっと……ちょっと前に歩夢から連絡来たんだよねー」

「ふーん」

 

 なーんか怪しいなぁ。歩夢ってゆうゆに甘いから。元樹にも甘いけど、それ以上にゆうゆに対して甘い。

 

「それでそれで、愛ちゃんには何を選んでもらったの?」

「勝負なんですから教えませんよ?」

「あっ、それもそっか」

「教えてあげてもいいんじゃない? ゆうゆも『これだ!』ってのを決めてるんでしょ?」

「うん、まぁ……そうだね」

「愛さんのを聞いて考えが変わったりもしないだろうし、折角だし教えてあげようよ」

 

 そっちの方が面白いし、元樹以外からの意見も聞いてみたいし!

 

「んー、愛先輩がそう言うなら。はい、これです」

「これはイヤリング? もと君がイヤリングつけてるイメージあんまり湧かないかも……」

「実際つけたことないですしね」

えぇっと……こほん。ミンナ、コンナトコロデナニシテルノー?」

 

 店の奥から歩夢がやってきた。

 

「……なんでそんな棒読みなの?」

 

 歩夢は表情が硬いし、びっくりするくらい棒読みだ。ゆうゆはゆうゆで冷や汗がすごいし……やっぱり怪しい。まぁ皆が楽しんでくれるならそれでいいけどね。負けるのは悔しいけど、元樹に満足してもらえるのが一番だし。

 

「……まぁいいでしょ。侑先輩、選んでくれたのを見せてくださいな」

「う、うん。私が選んだのはこれ、なんだけど……」

「指輪、ですか」

 

 ゆうゆが見せたのは予想通り指輪、でも予想外だったのがその見た目。いかにもって感じのいかつい見た目のものじゃなくて、銀のリングに小さなルビーが埋め込まれた、まるで結婚指輪のような……というかほぼ結婚指輪じゃない?

 

「なんでこれを選んでくれたんですか?」

「えと、その……2つで1組だったから、一緒にどうかなーって」

「一緒にと言うと?」

「もと君と私で1つずつつけるってこと、かな」

 

 そんなのもう結婚指輪じゃん! それに元樹も気づいたのか、少し、ほんと少し元樹も顔を赤らめている。元樹のこんなところ初めて見るかも……。

 

「もと君、手貸して。つけてあげる」

「え、やです。恥ずかしいですし

「むぅー、ケチぃ……」

「折角だからつけてもらえばいいのに」

「そ、そうだよ!」

「2人がそう言うのであれば……侑先輩、お願いします」

「うん、任せて」

 

 元樹の手を取って、その指にゆうゆがそっと指輪を嵌めていく。その雰囲気はまるで本物の結婚式みたいで、少しモヤモヤっとした気持ちになる。それはきっとりなりーの役目なのに……。

 

「……はい、つけたよ」

「ありがとうございます。ふむ……サイズ感はぴったしですね。デザインも気に入りました。安易にダイヤモンドとかじゃなくてルビーなのがいいですね」

「そっか、気に入ってくれて嬉しいな。……さて! もと君、誰のが一番気に入ったか決めてくれる?」

「ちょっと待ってください。まだ侑先輩がつけてないですよね」

「い、いいって! 私はつけなくても大丈夫だから!」

「これはペア指輪だーって侑先輩が言ったんじゃないですか。ちゃんと本来の使い方を確認してからじゃないと採点できないですよ」

「ぐうの音も出ない……」

「折角だから侑ちゃんもつけてみよ? きっと似合うよ!」

「うぅ~……」

 

 アタシとしてはあんまりしてほしくないけど……だってさっきの結婚式みたいな雰囲気だよ? 最初はそんなつもりは全くなくても、雰囲気にあてられてお互いそんな気持ちに……ということがあるかもしれない。まぁアタシの考えすぎかもしれないけど。でも元樹と侑ゆって仲いいし距離も近いから、どうしても気になっちゃうんだよね。

 

「侑先輩」

「……わかった、わかったから! そんな目で見ないで!」

 

 じぃーっと見つめる元樹と歩夢の目に折れたのか、顔を真っ赤にしたゆうゆが目を閉じて、そっと元樹に手を差し出す。

 

「んっ」

 

 その手を優しく握り、ゆっくりと指輪が嵌められていく。さっきのも相当だったけど、今回はもっとすごい。結婚式の一幕だーって言われても納得してしまうような雰囲気、なんならこのままキスまでしてしまいそうなくらいだ。もうモヤモヤを超えて、むしろこっちまでドキドキしてしまう。

 

「はい、嵌めましたよ」

「ありがと……あー、恥ずかしかった……」

 

 相当恥ずかしかったのか、手でパタパタと仰いでいる。気持ちはわかる。愛さんがゆうゆと同じ立場だったら、きっと同じ状態になっているだろう。

 

「よしっ、じゃあ今度こそ元樹に決めてもらおっか」

「んーそうだなぁ……かなり迷いましたが、愛さんの選んでくれたイヤリングで」

「やった!」

 

 愛さんを選んでくれて嬉しい! 嬉しいんだけど、さっきのを見せられた後だと微妙に喜びづらい……。

 

「んー、ダメだったかぁ。あんなに恥ずかしい思いしたのになぁ……」

「残念だったね、侑ちゃん」

 

 ゆうゆはかなり悔しがってるけど、歩夢は残念そうにするだけで、あまり悔しくはなさそう。そういえば歩夢は何を選んだんだろ。いつも可愛いのつけてるし、髪飾りとかかな。

 

「じゃあイヤリングとこのシュシュ、買ってきますね」

「いってらっしゃーい」

「……シュシュ? 愛ちゃん、シュシュって何?」

「えーっとね、アタシに似合うかもって元樹が選んでくれたんだよね」

「そうなんだね。いいなぁ……」

 

 ゆうゆは羨ましそうに周りのアクセを見回している。歩夢も少し遠慮がちに見回している。2人して同じ動きをしてて、まさに幼馴染って感じだよね。

 

「ただいま戻りましたー。……はい、愛先輩、プレゼントのシュシュです」

「うん、ありがと。大事にするね」

 

 綺麗な箱に入って、丁寧にリボンまでしてくれている。ほんとは今すぐつけたいけど、綺麗に包装してもらっていて、すぐに解いちゃうのはもったいないと感じたので、今は大事にカバンの中にしまっておく。家に帰ってからのお楽しみ!

 

「愛先輩、この後どうします? 特に何も決めてないですよね?」

「うーん……」

 

 アタシも特に行きたいところがあるわけじゃないんだよねぇ。でも折角だからゆうゆ達とも一緒に遊びたいな。

 

「ゆうゆ達はどうするの?」

「私達も特に予定は決めてないかな」

 

 よかった、それなら4人で一緒にどこか行きたいな。4人だとどこがいいんだろ……ここのすぐ近くだとトランポリンとかボルタリングできるところがあるけど、さすがに元樹の足が心配だし……。ゲームセンターでコインゲームとかがいいのかな。

 

「あっ、私、もと君を連れていきたいところあるんだけどいいかな?」

「いいですよ。というか侑先輩達も一緒に来てくれるんですね。ありがとうございます」

「うん。私達も特に予定なかったし。歩夢もいいよね?」

「もちろん」

「じゃあゆうゆの行きたいところにレッツゴー!」

 

 ゆうゆの行きたいところってどこなんだろ。元樹を連れていきたいって……もしかして共通の趣味があったりするのかな。どんなところに連れていってくれるのか楽しみだなぁ。




マジでサイドストーリーが終わりそうになかったので、お昼ご飯のパートとかカットしちゃいました。ごめんね。
次回ももしかしたらPart49の内容まで飛ぶかもしれません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part25/m

スクスタ君サ終悲しいよ……。でもこのRTAはちゃんと完走するよ。でもオフライン版とかがなくてメインストーリーが読めなくなったら完走できないかも。

あとスクフェス2のイベント間隔が短すぎて執筆時間が奪われています。早くバグとかUIを改善してクレメンス。


「ねぇねぇ、今からどこ行くつもりなの?」

「んー、秘密!」

「え~……」

 

 3人でゆうゆに案内されるがままついていく。歩夢もどこに行くのかわからないみたいで、不思議そうにしながらとことこ歩いている。

 

「ヒント! ヒントちょうだい!」

「今後もと君に必要になるものを見に行くんだー」

「俺に? ……モテオーラとか?」

「そういうのじゃないと思うな……」

「うんうん」

 

 それに元樹はもう十分モテオーラを発してるから、これ以上は増やさないでほしい。お願いだから。

 

「俺にはわからないですね。歩夢先輩は何か思いつきます?」

「うーん、今後のもと君にってことを考えると……作曲に関係するもの、かな?」

「おっ、歩夢正解!」

「あー、なるほどなぁ。完全に意識外だったなぁ。さすが歩夢先輩ですね」

「えへへ、そうかなぁ」

「でも作曲関係のことてわかったところで、これ以上のことは思いつかないんですよねぇ。愛先輩は何か思いつきます?」

「アタシも特には……」

 

 作曲の知識があるわけじゃないから、何が必要とか全く知らないんだよね。

 

「ゆうゆ、もう1個ヒントちょうだい?」

「んー、そうだなぁ……作曲に必要不可欠なものだけど、日常生活でも普通に使えるものだよ」

「日常でも使えるもの……」

 

 日常でも使えるものだとかなり絞れる気がする。アタシも使ったことあるものだろうか。

 

「あー、でも歩夢は持ってないかな」

「うーん、私は持ってなくて、侑ちゃんは持ってるものかぁ」

「あと持ち運びには不便だから、外で使ってる人はあまりいないかも」

 

 持ち運びは不便ってことは多分大きいものなんだよね。それで歩夢が持ってなさそうなもの……なんだろう、パソコンとか? さすがに違うかな。あんまり使ってるイメージはないけど、でも今時持ってないなんてことないもんねぇ。

 

「なぁるほど。俺にはわかりましたよ。パソコンじゃないですか。作曲には欠かせないものでしょうし、歩夢先輩はなんか持ってなさそうだし」

 

 どうやら元樹もアタシと同じことを考えてたみたい。歩夢は不服そうに頬をぷくーっと膨らませてるけど。

 

「残念! パソコンは私もあまり詳しくないから、どれがいいかとかはあまり教えられないんだ。もと君が普段使ってるので多分大丈夫だとは思うけどね」

「いざとなったら璃奈に泣きつくので大丈夫です」

 

 りなりーPCとか詳しいもんね。ちょっと前にオススメのPCを教えてもらったんだけど、何に使うかとか予算とかから丁寧に選んでくれたんだー。

 

「……あっ! もしかしてヘッドホン?」

「歩夢正解!」

「やったっ」

 

 あーヘッドホンかぁ。盲点だったなぁ。確かに作曲の時はイヤホンじゃなくてヘッドホンの方がイメージ強いかも。もっと専門的な道具かと思って考えすらしなかった。ゆうゆに一本取られちゃったなー。

 

「ほんとは私が昔使ってたのを貸してあげるつもりだったんだけど、昨日確認したら壊れちゃっててさー」

「いえいえ、侑先輩のを借りるなんて恐れ多い。ちゃんと自分で用意しますよ。ヘッドホンっていくらくらいするんですかね」

「えっとね、今から行くお店のクーポンがたまたまあったから、なんと50%offで買えるんだー」

「すっげぇお得じゃないですか! そんなの俺なんかが使っちゃってもいいんですか?」

「もっちろん! 少し前に買い換えたばかりだったから私は当分使う予定なかったし、次に買う頃には使用期限過ぎちゃってただろうし」

そろ……た?

……もと君……からね

 

 ゆうゆと歩夢が何かこそこそと話している。断片的には聞こえるけど、さすがに何を話してるかはわからないなぁ。

 

「2人で何コソコソしてるの?」

「な、なんでもないよ!」

「ふーん……」

「あっ、ここがもと君を連れてきたかったお店!」

 

 ばーんっとゆうゆが指差したのは大きなお店。イヤホンだったりヘッドホンだったりスピーカーだったりが数多く並べられている。

 

「ここは……オーディオ専門店?」

「うん、私の行きつけ! ここ品揃えいいし、試し聞きさせてもらえるし、なにより安い! 学生だと特別価格で買えるんだ~」

「それはありがたいですね」

 

 ゆうゆについていきながら、並んでいる商品を眺める。うーん、アタシには違いがわかんないなぁ。どれも同じに見えちゃうよ。

 

「元樹はイヤホンとか詳しい?」

「いえ、全く。璃奈の使い古しをもらって使ってるので、これとか」

「へぇ、りなりーの……」

 

 ポケットからイヤホンを取り出して見せてくれるけど、そんなことより急に出された情報の方に気が行ってしまう。そんな恋人みたいなことしてたんだ……。

 

「えぇっと、私が今使ってるモデルはっと……あれ?」

「どうしたの?」

「とりあえず私が今使ってるのを教えてあげようかなーと思ったんだけど見つからなくて……」

「なんていうやつなの? 愛さんも一緒に探してみるよ」

「ありがと。HighBloomっていうメーカーさんのUPM-0301って型番だったはず」

 

 HighBloom……同じメーカーさんのはいくつも置いてあるけど、ゆうゆが言ってた型番のものは見つかんないなぁ。

 

「そのメーカーのはここに固まってそうですし、ここにないってことは売り切れたってことなんじゃないですか?」

「あーそうかも。この前SNSで話題になってたし……」

「そんなに性能がいいの?」

「そういうんじゃなくて……いやまぁ性能はもちろんいいんだけど、人気の女優さんが使ってるって話題になったんだよねぇ」

「じゃあオシャレアイテムみたいな感じかー」

「そうだね。その気持ちもわかるけど。ヘッドホン首にかけてるとなんかかっこいいし!」

 

 あー、ゆうゆは確かにそういうの好きそう。でもその気持ちはちょっとわかる。愛さんもやってみたいけど、似合う自信がないんだよねー。カリンとか似合いそうだし、一度やってみてほしいなー。

 

「人気になるのは嬉しいけど買えないのは困っちゃうなぁ……。在庫がないかちょっと聞いてくるね」

「あ、私も!」

 

 2人で店員さんに在庫を聞きに行ってしまったので、何もわからない元樹と愛さんが取り残されてしまった。

 

「……とりあえず、適当に店内を回ってますか。とはいっても俺はなんにもわからないですけど」

「うん、それは愛さんも一緒だよ。りなりーいっぱい持ってたからいろいろと教えてもらえばよかったなー」

「確かに。璃奈はいっぱい持ってますからねー」

「元樹はりなりーの影響でオーディオに興味持ったりはしなかったの?」

「俺は……あんまりですね。小さい頃は音楽とか聴くより、むしろ1人で漫画を読む方が好きだったので」

「へ〜、ちょっと意外かも。アタシが知ってる元樹とは全くの逆だ」

 

 愛さんの知ってる元樹は1人でいるときは寂しそうで、誰かと一緒にいる時はとにかく嬉しそう。そんな今からは、元樹の言う昔の元樹は想像ができない。

 

「それにオーディオって璃奈曰く青天井なので、ハマると金が飛ぶんですよね。あと場所、場所がとられちゃうのも問題です」

「確かに、この前りなりーの部屋で見た時も結構大きいの多かったしねー」

「誰かを家に招いた時とか、遊ぶスペースが狭いとなんか嫌じゃないですか」

「そう? 愛さんはあんまり気にしないけどなー。友達と一緒にいれるならそれがどこだって楽しいじゃん」

「あー、愛先輩はそういうタイプでした」

 

 元樹と談笑しながら店内の商品を見て回る。とはいってもほぼ見た目を見てるだけだけどね。……あっ、このヘッドホン元樹に似合いそう!

 

「ねぇねぇ元樹、このヘッドホン試しにつけてくれない?」

「いいですけど、性能がよさそうなんですか?」

「ううん、デザイン的に元樹に似合いそうなの。性能とかはよくわかんないからさ」

「なるほど。アクセ選び対決の延長戦みたいな感じですね」

「あはは、そうかもね。折角来たんだからゆうゆ達が戻ってくるまでそれで楽しんでようよ」

「えー……恥ずかしいから嫌なんですけど……」

「まあまあまあ、そんな恥ずかしがらなくてもいいから! きっともっとかっこよくなれるよ」

「ちょ、ちょっと!」

 

 元樹との距離をささっと詰め、逃げられないよう抱きしめ気味に首へ試聴用のヘッドホンをかけてあげる。

 

「うんうん、思った通りかっこいい! 元樹によく似合ってるよ」

「そ、そうですか……」

 

 照れているのか、そっぽを向いて頬を掻いている。可愛いなぁ~もぉ~。

 

「あっ、そうだ。それでDJっぽいことやってみてよ」

「DJ……? まぁいいですけど……Hey! Yo! チェケラッチョ! ……みたいな感じですかね。合ってるのかこれ……」

 

 また恥ずかしそうに顔をそらす。そんな子供っぽい仕草が可愛くて、見ているとついついニコニコしてしまう。

 

「……あの、折角愛先輩に選んでもらったので、2人で記念撮影しません?」

 

 もじもじと少し恥ずかしそうにしながら、元樹が誘ってきた。そういえば元樹から写真を撮りたがったのは初めてかも。

 

「もちろんいいよ。じゃあこっちおいで」

 

 手招きをして元樹を隣に呼ぶ。元樹がスマホを構えてるから撮ってくれるみたい。画面を見たら少し見切れてたから、半歩分元樹に近づく。すると元樹は悩ましげにしながらも、アタシの肩にちょこんと手を乗せにきた。普段の感じ見てるとこういうのを恥ずかしがったり躊躇ったりしなさそうなんだけどなぁ。まぁアタシの知らなかった元樹が知れたし、可愛いところが見られてるからいいっか!

 

「撮りますね。1+1はー」

「にぃー!」

「……はい、撮れました」

「どれどれ見せてー」

 

 今撮った写真を見せてもらう。

 

「うん、いい感じじゃん!」

 

 元樹の笑顔は少し硬いけど、でも楽しそうなのは伝わってくる。

 

「後で愛さんに送っておきますね」

「うん、ありがとー」

「……あ、折角だから璃奈にも送ろうかな。いい写真が撮れたから共有したい」

「あー……うん、それはやめておいた方がいい気がするなぁ。折角だから2人だけの秘密にしようよ、ね?」

「愛先輩がそう言うなら……」

 

 りなりーが拗ねちゃうかもしれないからね。

 

「あ、いたいた」

「もぉ~、2人とも探したんだよ?」

「侑先輩、歩夢先輩」

 

 ゆうゆと歩夢が戻ってきた、けど……なんか歩夢はむすぅーと頬を膨らませている。もしかして怒ってる……?

 

「2人が急にいなくなるからびっくりしたんだよ? 連絡も返ってこないし……」

「連絡?」

 

 スマホを確認すると、歩夢からの連絡の通知が来ていた。

 

「あっ、ごめん、全然気づいてなかった……」

 

 元樹と一緒にいるのが楽しくて、通知の振動すら気づけなかった。

 

「むぅ……」

完全にご立腹だ……怒り方可愛いけど

 

 元樹の言う通り可愛い怒り方だけど、簡単には許してくれなさそう。ゆうゆも苦笑いしている。

 

もと君、もと君

え、なんですか?

 

 ゆうゆが何やら元樹に耳打ちしている。さすがに聞き取ることはできないけど……むぅ、愛さんにも教えてほしい……。

 耳打ちが終わると、元樹は一瞬だけ考え込んで、歩夢にそぉっと近づいた。

 

「歩夢先輩っ、次は気を付けるので、許してほしいなー」

「……もうっ、今回だけだからね。次からはちゃんと連絡してね?」

 

 2人でこんなこと企んでたのかー。ちゃんと謝るって大事だもんね。アタシのところに連絡が来てたから、本来はアタシが謝るべきなんだけど……うん、後で謝っておこっ。それにしても、あんなに怒ってたのに意外とあっさり許してくれたなぁ。

 

「歩夢ってさ、元樹に対して甘いよね」

「えっ、そうかなぁ。普通に接してるつもりなんだけど……。むしろもと君が将来困らないようにって厳しく接してるつもりだよ」

 

 きび、しい……? そんな風には全く見えないんだけどなぁ。同じことを思っているのか、ゆうゆも首をかしげている。元樹も同じようにしてるけど、こっちは状況がよくわからなくてかしげてるっぽい。まったく、元樹らしいなー。

 

「まぁそんなことは置いといて、侑先輩、さっき言ってたヘッドホンはあったんですか?」

「ううん、今品切れ中だって。いやーまいっちゃうね」

「まいっちゃいますねー。侑先輩オススメのものを使いたかったんですけど……ないものは仕方ないです。他にオススメのものとかありません?」

「そうだなぁ……あ、もう1つオススメできるの知ってるよ」

「え、どれですかどれですか」

「ふふっ、それはね……今もと君がつけてるのだよ」

「あ、これ?」

「うんそれ」

 

 どうやらアタシ達が見てたヘッドホンがゆうゆのオススメだったみたい。性能とかは全く見てないからほんとたまたまなんだけど。

 

「かっこいいよね。もと君にすっごく似合ってるよ」

「オススメの理由ってまさか……」

「いやいや、もちろんそれだけじゃないよ。デザインはもちろんいいし、音質も十分。なによりイヤーパッドがいい!」

「いやーぱっど?」

「イヤーパッドって耳が当たるこの部分のことだよね?」

「うん正解。これがすごいよくてね、つけてると気持ちいいんだ~」

 

 元樹が持ったままのヘッドホンをすっと装着し、ゆうゆは気持ちよさそうに体をくねくねさせている。そんなにいいんだ……というか距離近くない……? 元樹がヘッドホンを抱えたままだから、ゆうゆがほぼ元樹にもたれかかるような姿勢になっている。こんなの恋人同士しかやらないでしょ。

 ゆうゆって誰といても距離が近いし、ときめいた時はもっともぉーっと近くなるけど、元樹に対してはデフォルトで近いというか……なーんか普通とは違う感じがするんだよねー。せっつーやしずくみたいに異性として好きってわけではなさそうだけど、ただの友達では済ませられなさそうな……もう少し様子を見る必要があるかな。

 

「もと君、試しにつけてみてよ」

「はーい。どれどれ……あー、確かにこりゃいいわぁ~……」

 

 元樹は同じようにヘッドホンをつけて、気持ちよさそーうにしている。それ、ゆうゆが今つけてたやつなんだけど……。

 

「でしょでしょ! だから昔は愛用してたんだけどね……」

「え、なんですか、その言い方。何かあったんですか?」

「いやぁ……私が買ったのがたまたまダメだっただけなのかもしれないけど、半年くらいしたら片耳聞こえなくなっちゃってさー。寿命に問題ありかもって感じなんだよね。あと今は値下げされたけど、当時はもっと高かったからさ」

「あー……まぁ半年持つなら今回は十分じゃないですか。なのでこれ買います。愛先輩と侑先輩も似合うって言ってくれましたし」

「本当にこれでいいの? 試し聞きとか他の見たりしないで大丈夫?」

「大丈夫です。信頼してる侑先輩のお墨付きですし、試し聞きなんてしたところでどうせ何もわかりませんし」

「んー、わかった。じゃあ一緒に買いに行こっか」

「はーい」

 

 さっきのヘッドホンの注文カードを持った元樹がゆうゆの後ろをトコトコと歩く。歩夢は2人に手を振って見送っていて、どうやら一緒についていったりはしないみたい。

 

「じゃあ私達はいろいろ見て回ってるね」

「……また連絡見逃して、俺達が探す羽目になりません?」

「だいじょーぶ! 今度は連絡見逃さないようにするからさ」

 

 それに今度は歩夢も一緒にいるもんね。アタシがうっかり連絡のことを忘れてても、歩夢が確認を促してくれるだろうし、きっと大丈夫!

 

「それならいいですけど……」

「もと君何してるの? 早く行くよ」

「はいはーい。ところで……

 

 レジに少し人が並んでる……でも見た感じお会計ではなさそう? 在庫の確認とかかな。この感じだと2人のお会計が終わるまでは少し時間がありそうかも。




にじたび愛知公演現地参加楽しみです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part26/m

スクスタフェスのりなりーが出なかったので初投稿です。


 さて、ここからどうしよっかな。さっきもヘッドホンを見たけど、歩夢はオシャレだから一緒に見て回ったらさっきと違った面白さがあるかも! ピンクで可愛いのとかすっごい似合いそうだからつけてみてほしいんだよねー。

 

「……愛ちゃん、少しだけお手洗いに行ってきてもいい?」

「もちろんいいよ。というかアタシもちょっと行きたいかも」

「じゃあ一緒に行こっ」

 

 一番近くのお手洗いは……よかった、あの店の近くにあった。あんまり遠くに行くと元樹達と合流するのが大変になっちゃうもんね。

 

「ん〜……」

 

 さっきからしきりにお腹をさすっている。

 

「大丈夫? もしかしてお腹痛い?」

「う、うん。お昼くらいからちょっと……でも大丈夫だよ」

「そう? でも辛くなったらすぐに言ってね」

「うん! 心配してくれてありがとう」

 

 無理してる感じではなさそうだし、大丈夫そう……かな。

 

「先に出たら入り口の近くで待ってるね」

「うん、愛ちゃんに連絡が来たら先に合流してて」

「わかった」

 

 ちょうど2人分個室が開いてたので、同時に入る。アタシはささっと済ませて、お手洗いから出る。歩夢はまだ出てきてない。さっきはああ言ってたけどやっぱり心配だなぁ。

 

『プルプルプル』

 

 あれ、電話? 元樹からだ。ヘッドホン買い終わったのかな。

 

『……もしもし、元樹ー?』

『あ、愛先輩? 今どこにいます?』

『あー、今は……えー……』

 

 どうしよう、お手洗いとは言わない方がいいよね。でも別の場所に移動すると歩夢が困っちゃうだろうし……。

 

うぅん、なんて伝えたものか……

 

 ここの近くのお店を伝えるといいのかな。2人が来るまでに歩夢が出てくればそれで問題ないし、出てこなかったらお店を一緒に見て、歩夢が後から合流するって形にしたらいいし。

 とりあえずすぐ裏にあるお店でいいかな。一度も入ったことないし、ここからだとどんなお店なのかもわからないけど。

 

『えっとね、3階の〇〇ってお店の隣にいるよ』

『初めて聞く店だ……まぁ侑先輩が知ってるでしょ。今からそっちに向かうのでそこを動かないでくださいね』

『はいはーい』

 

 元樹との電話が切れる。さてさて、2人がこっちに来るまでに歩夢がいない理由を考えておかないとな―。見たいものが違ったから別行動してた、でいいかな。歩夢にも連絡を送って話を合わせてもらわないと。

 

「……あれ、既読がつかない」

 

 歩夢に送ったメッセージに一向に既読がつかない。お手洗い中一切スマホとか見ないタイプなのか、それとも見る余裕がないのか……。うーん、少し心配……。

 

『ごめんね、今メッセージ見たよ!』

『気を使ってくれてありがとう、愛ちゃんの話に合わせるね』

『あと今確認したらもと君から連絡がきてたよ。私で返しておいて大丈夫?』

 

 アタシに電話するより前に歩夢に連絡してたんだ。アタシは前科があるし、歩夢はちゃんと見てくれそうだし、正しい判断だと思うけど……むぅ、なんか複雑。

 

『さっき元樹から電話もらったから、歩夢からは大丈夫だよ』

『うん、わかった!』

 

 よしっ、これで歩夢と口裏合わせはできた! あとは2人が来るのを待つだけ、なんだけど……来ないなぁ……。さっきの電話からそれなりに時間が経ってるし、あのお店からそこまで遠くはないはずなんだけど……もしかして迷子? 歩夢が戻ってくる時間ができるのはありがたくはあるけど、今度は集合が大変になっちゃうなぁ。とりあえず元樹にメッセージ送ろうかな。

 

「あっ、愛ちゃん!」

「ゆうゆ!」

 

 メッセージを打っているとゆうゆがアタシを呼ぶ声が聞こえた。顔を上げると早歩きでこちらに向かってくるゆうゆと、そんなゆうゆに手を引かれた元樹がいた。

 

「それで、なんでゆうゆは元樹を引っ張ってるの?」

 

 ゆうゆの顔はちょっと赤いし、元樹はちょっと不満そう? うーん、何があったのか読めないなぁ。

 

「いやー、もと君が悪さばかりするからさー」

「いやいやいや、悪さなんて何もしてないですよ。ちょっとイタズラしただけじゃないですか」

「うん、それを悪さって言うんだよ?」

「んー、何したのかは知らないけど、あんまりゆうゆにイタズラしちゃダメだよ? 優しいからってやりすぎちゃうと怒られて見放されちゃうよ」

「さすがに見放しはしないけどね。でも怒りはするかも」

「ほんとですかぁ? 侑先輩が怒ってるとこ見たことないですけど」

 

 確かに。ゆうゆっていっつもニコニコしてるから、怒ってるところのイメージがつかないなぁ。

 

「試しに怒ってみてくださいよ」

 

 すっごい無茶ぶりするなぁ。ゆうゆも苦笑いして困ってるよ。でもゆうゆが怒ってるところはアタシもちょっと見てみたい。

 それはそれとして、歩夢大丈夫かなぁ。なかなか出てこないし……心配だなぁ。

 

「試しにって言われてもなぁ。特に怒りたいこともないし……」

「じゃあ……侑先輩が取っておいたアイスを俺がうっかり食べちゃった、ってシチュエーションで怒ってみてください。はい、3、2、1、キュー」

「えぇ!? えぇっと……もうっ、勝手に食べちゃったの? しょうがないなぁ……代わりに今度クレープおごってね? それで許してあげるっ!」

「ゆうゆの怒り方めっちゃかわい~!」

「えー、結構真剣に怒ったつもりなのに……」

 

 頬をぷくーっと膨らませて怒った後、上目遣いでおねだり。そして最後に満面の笑み。もう怒ってるとは言えない気がするけど、まぁ可愛かったしなんでもいいよね!

 

「ところで、歩夢先輩はどこにいるんです?」

 

 きちゃった……でも大丈夫! さっきいっぱい考えたもんねー。

 

「あーっと、歩夢はねぇ……」

「もしかしてまだお会計中ですか?」

「お会計って何のこと?」

「とぼけなくても大丈夫ですって。ほら、あそこの下着屋さんで買い物してたんですよね?」

「へっ!? な、なんで下着!?」

「だって愛先輩があの下着屋さんの近くで集合って言ったんじゃないですか」

 

 そうやって指差したお店は、確かにアタシが指定したお店だ。そっか、あそこ下着屋さんだったんだ……。これはちゃんと確認しなかった愛さんのミスだなぁ……。でもそれはそれとして、元樹にはちゃんとデリカシーは教えないといけないかな。

 

「こんな場所に呼んだってことは、あそこで買い物してたってことですよね?

「ちょっともと君……」

「あーいやそうじゃなくてぇ……」

「ちなみになんですけど、愛さんはどんな下着をむぐむぐ」

「あぅ……」

 

 ゆうゆが元樹の口を押えて止めてくれたけど、もうこれ以上はアタシのメンタルがもちそうにない。特に今日はジョイポリに続いて2回目だし。

 

「歩夢、ごめん! 歩夢は今お花を摘みに行って、ます……」

「お花? ……ああ、なるほど」

 

 さすがの元樹も、その言葉が何を意味するかは知ってるみたい。でも知ってたせいで歩夢のことがバレちゃった。ふぅ、後で歩夢に謝ろう……。

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 侑ちゃん、もと君とうまくいってるかなぁ。2人きりになってからかなり時間が経ってるから、何かしら進展はあったと思うんだけど……。

 

 愛ちゃんにはほんとうに申し訳ないけど、侑ちゃんのために少しだけ嘘をついちゃった。ほんとはもと君からの連絡はすぐに気づいてたし、愛ちゃんからの連絡にも気づいていた。でも侑ちゃんともと君が2人きりになる時間を少しでも増やすために、もと君からの連絡は心を鬼にして気づいてないふりをして、愛ちゃんへの返信はタイミングを少し遅らせた。

 こんな感じに私達と連絡がとれないようにすることで、2人で困ったねーって言い合って、吊り橋効果で仲が進展して……吊り橋効果になるのかなぁ?

 あと今更だけど、計画に穴がいっぱいだよね。私じゃなくて愛ちゃんの方に最初連絡する可能性ももちろんあったわけで……今回こんなにうまくいったのはたまたま。とっさに思いついた計画だから、あまりにも運任せなものになっちゃった。

 

 ちなみにお腹が痛いのは本当のこと。お昼にいっぱい食べちゃったからかなぁ……。ずっと愛ちゃんを1人にさせちゃってるからそろそろ出ていきたいけど、まだ少し痛みが治まらない。もと君に知られちゃうのは恥ずかしいから、2人が愛ちゃんと合流するまでには出たいよぉ。

 

『愛先輩と合流したので、トイレの前で待ってます』

『急いではないので、ゆっくり出すもの出してきてください』

 

 もと君から連絡が来た。3人が合流したらしいことと、ついでに私がお手洗いに行っていることもバレちゃったみたい。愛ちゃんの考えてくれたストーリーは完璧だったけど、もと君って変なところで勘がいいから……。それはそれとして、もと君は後でお説教だね。少し前にデリカシーについてお話ししたばかりなのに……。

 

「よしっ、出よう」

 

 調子が良くなってきたので、スカートを履きなおして個室を出る。ずっと占領してるのも申し訳ないもんね。

 

「皆おまたせー。遅くなっちゃってごめんね」

 

 お手洗いから出ると、侑ちゃん、もと君、愛ちゃんの3人がワイワイと楽しそうに話していた。いいなぁ……。

 私が出てきたことに気づいていなさそうだったので、近寄って声をかける。

 

「あ、歩夢先輩おかえりなさい」

 

 一番最初に反応してくれたのはもと君。声をかけた瞬間バッと振り返って、飛びつくように近づいてくれるのが子供みたいでとっても可愛い。

 

「そうだ、折角なので歩夢先輩も怒ったふりしてみてください」

「怒ったふり……?」

 

 何の話だろう。歩夢先輩『も』ってどういうこと? 私がいない間にどんな会話をしてたの……?

 

「ごめん、少しだけ元樹に付き合ってあげて?」

 

 愛ちゃんが耳元で囁いてくる。言い方から察するに、侑ちゃんや愛ちゃんが怒るところを見てみたいってもと君が言い始めたのかな。

 

「う、うん。よくわからないけど、とりあえずやってみるね」

 

 怒るって言われても、具体的にどんな風にするといいんだろう……。さっきのデリカシーの話をしてもいいけど、あんまり大勢の前ではしない方がいい話だよね。あと私も恥ずかしいし……。

 

「シチュエーションはどうしよう……ずっと食べ物ばかりで飽きたんで、別のにします。そうだなぁ……俺と歩夢先輩が付き合ってるって前提で、俺が誰かと浮気してるのが歩夢先輩にバレた、ってシチュエーションで」

「もと君が私の恋人で、だけどもと君が他の女の子と浮気しちゃうんだね。辛いシチュエーションだけど頑張ってみる」

 

 大好きな人に浮気されるって考えただけでも心が痛い。それにもと君に無自覚に恋してる侑ちゃんの前で、もと君の恋人役を演じるというのもかなり困る……。もし私と侑ちゃんの立場が逆だったら、絶対侑ちゃんに嫉妬しちゃう。でも任されちゃったならやるしかないよね……?

 もと君が浮気してるところを見つけちゃった、ってシチュエーションが一番わかりやすいよね。肝心の浮気現場だけど……女の人と一緒に出かけてるだけ、じゃ証拠として少し弱いかなぁ。この程度ならまだもと君のこと信じてあげたいし……。もっと決定的な証拠……あ、キスしてる現場とか! あとはえ、えっちしてるところとか……ド、ドラマで見たシチュエーションだから! 別に私の思考がえっちなんじゃなくて、ドラマで見たことあるから想像しやすいかなーって思っただけだから!

 浮気相手はどうしよう。具体的なイメージがあった方が怒りやすいよね。もと君の浮気相手だったら一番ショックな人……璃奈ちゃん? でもショックだけど、浮気相手として納得してしまいそうで、逆にショックが薄れちゃう気も……ぁ、侑ちゃんだった時が一番ショックかも……。私と付き合ってるのに、私の幼馴染の侑ちゃんと浮気してるなんて、絶対にもと君のことを許せない。

 うん、私の中で状況は決まった。もと君と侑ちゃんがえっちしてるところを私が見ちゃう。この状況を想定して、もと君に対して……

 

「すぅ……もと君、なんで浮気なんてしたの? 私という彼女がいるのにどうして? 大好きだったのに……ずっと好きでいてもらえるように、もっと好きになってもらえるように、いっぱいいっぱい努力もしたのに、どうして侑ちゃんと……しかも私がすぐ隣にいる侑ちゃんの部屋で、エッチなことまで。ねぇどうして? いつも言ってくれたよね、大好き、愛してる、ずっと一緒にいたいって。昨日もいっぱいいっぱい愛してくれたよね。いっぱい抱きしめてくれたし、キスもエッチも私が満足するまでしてくれたよね。今までの言葉は、行為は全部嘘だったの? それとも私のこと嫌いになっちゃったの……? 私にダメなところがあるなら全部教えて? ちゃんと直すから、してほしいこと全部してあげるから、あなたの大好きな私になるから……だからお願い、嫌いにならないで? …………あ、そっかぁ。私の大好きな気持ちがもと君に全然伝わってなかったんだぁ。だからこんなつまらないことしちゃったんだよね。ふふっ、大丈夫だよ。もと君が悪いんじゃなくて、私の伝え方が悪かっただけだもん。はぁ、想いを伝えるのって難しいなぁ。……さて、侑ちゃんとのお別れは済んだよね。じゃあ行こっか。え、どこにって? 決まってるでしょ。誰にも邪魔されず、私ともと君が2人きりでずっと一緒にいられるところだよ。うふふ、怖がらなくてもいいのに。いつもみたいに、一緒に起きて、一緒にご飯食べて、一緒にお風呂に入って、いっぱい愛し合って、一緒に寝る、そんな毎日を過ごすだけだよ。毎日一緒に過ごしたらきっと私の気持ちも伝わると思うから。ちょっと気持ちが早いかもしれないけど結婚生活と同じだよ。本物の結婚式は開けないかもしれないけど……ウェディングドレス着て、もと君と一緒に歩きたかったなぁ。学校? そんなの行く必要ある? そんなところに毎日毎日行ってたらもと君に悪い虫がついちゃうでしょ。現にこうなってるんだから。浮気するたびに怒るのは私もヤダもん。私はもと君とずっと仲良く、何事もなく、平和に過ごしていたいの。今まではできてたんだからできないってことはないでしょ。ほら、この写真見て。いつ撮った写真か覚えてる? あっ、覚えててくれたんだ、嬉しいなぁ。私たちが付き合って、初めてデートに行った時の写真だよ。懐かしいなぁ。あの時はお互い恥ずかしくてまだ手すら繋げなかったよね。それでも一緒の時間を過ごすだけで幸せで、大好きで溢れていて、私にとっては今でも大切な思い出だよ。2人であの頃みたいな気持ちからやり直さない? そうすればきっと今度こそうまくいくと思うんだ。……もうっ、なんで逃げようとするの? 力で私に勝てないってわかってるのに。ねぇ、どうして私の気持ちわかってくれないの? 私はただもと君と一緒にいたいだけ、もと君の一番でいたいだけなのに……どうしてもわかってくれないのなら、いっそ今ここで……なーんて、どうだったかな?」

 

 臨場感を出すために、もと君に近づいて、下を向いてあえて顔を合わせないように演じてみた。でも逆に怒ってる感が出なかったかも……。それにちょっと気持ちが乗りすぎて刺すふりをしちゃったけど、これはやりすぎだったのかなぁ。チラッともと君の反応を伺うと、冷や汗をかきながら視線をあっちこっち移動させていた。

 

「歩夢先輩、怖かったです……」

「そうかな? 自分ではあんまり自信はなかったんだけど……」

「うん、すごく怖かった。うん……ねぇ?」

「傍から見てるだけでも怖かったもん。ちょっと……けど

 

 侑ちゃんと愛ちゃんも怖がってくれたみたい。えへへ、ちゃんと演技できててよかったぁ。

 

「元樹大丈夫?」

「いや、ちょっとダメかも……」

 

 ブルブルと小刻みに体を震わしたもと君が、体を寄せて泣きついてくる。少しやりすぎちゃったかなぁ? 頭を撫でると、胸に押し当てるように顔をすりすりして甘えてきた。可愛いなぁ。可愛いけど……周りにいっぱい人がいるから、少し恥ずかしいかも……。




ずっと愛さん視点の予定だったけど、後半は歩夢視点も面白そうだったので。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part27/m

新作を書いてたらこっちの投稿が遅れました。新作はまだ書き上がりません。悲しいなぁ。
ちなみに新作はえっちなやつです。いつか完成したら出します。

皆さんは虹ヶ咲のOVAはご覧になられましたか? 私はまだ見てないのでネタバレをした兄貴はせつ菜ちゃんの手料理1年分食の後死ゾ。


「……」

 

 元樹はお腹をさすった後、こちらをチラッと見た。お腹痛いのかな。……あっ、もしかしたらお腹空いたのかも。そんな感じの目してる!

 

「よしっ、小腹もすいてきたしそろそろもんじゃ食べに行く?」

「行きたいです!」

 

 アタシの予想が当たったみたいで、手を挙げて元気に飛び跳ねている。

 

「もんじゃ?」

「アタシの実家がもんじゃ屋さんやってるから、特製のもんじゃを元樹にごちそうしてあげるってことで今日一緒におでかけしてるんだよね。もしよかったらゆうゆと歩夢も来る? 美味しいよ」

「ほんとっ!? 行く行く! 歩夢も来るよね!」

「うーん……今日はもういっぱい食べちゃったからなぁ……」

「そんなに……何食べたんです?」

「少し前にスイーツバイキングの食べ放題無料券もらったから、今日は歩夢と一緒にそれに行ってたんだ~」

「あー、そこでスイーツ食べすぎちゃったわけだ」

「美味しかったからつい……」

 

 わかる! その気持ち、わかるよー。ダメだってわかってても、美味しいと手が止まらなくなっちゃうんだよね。

 

「歩夢ってこう見えて意外といっぱい食べるんだよ」

「へー……あっ、歩夢先輩のお腹柔らかーい」

「もと君、女の子にそんなこと言ったらダメ、だよ」

 

 あーあ、さすがにあれはダメだね。女の子のお腹を触ってあんなこと言うのは絶対に許されない。さすがの歩夢もお怒りだ。離れていても威圧感を感じる。ゴゴゴーという擬音が聞こえてきそうだ。でも当の元樹はキョトンとしている。うーん……。

 

「まぁ多少もんじゃ食べたところで問題ないんじゃないですかね。知らないですけど」

「練習でいっぱい動くから、ちょっとくらい食べ過ぎちゃっても大丈夫だって!」

「むしろ気にしないといけないのは歩夢より私の方なんだよねぇ。体育以外で運動しないし……」

「じゃあゆうゆも練習の時に一緒に走ったりする?」

「そうしたいのはやまやまなんだけど、もと君のお勉強見ないといけないから……」

「あ、そっか」

「侑先輩がいなくなると俺が困っちゃいますので」

 

 作曲できるのゆうゆ以外いないもんね。

 

「あーでももんじゃ食べたいなぁ……うーん……あ、明日ピクニックに行くから、そこで運動すれば大丈夫かも」

「ぇ……」

「そうなの?」

「うん。ねー、もと君」

「へぇ、元樹も一緒に行くんだね」

「はい、侑先輩と一緒にわいわいしてきます」

「ほ、他には誰がいるの?」

「エマさんと彼方さん、それからしずくちゃん!」

「ふ、ふーん、そうなんだぁ……そっかぁ……」

 

 大所帯だなぁ。それにしずくかぁ……りなりーの強力なライバルだからちょっと心配。2人っきりじゃないのだけが安心できるポイントかな。

 

「……よし、行こう! これからのことはまたこれから考えることにする!」

 

 ゆうゆもうちに遊びに来てくれるんだ。嬉しいな。よしっ、気合い入れてもんじゃ作るぞー!

 

「歩夢も行く、でしょ?」

「う、うん。侑ちゃんが行くなら……ありがとう愛ちゃん」

「どういたしまして。美味しいものは友達と一緒に食べたらもっと美味しくなるもん! ね~元樹?」

「そうですよ。4人なら美味しさ4倍です」

「よしっ、じゃあ4人でレッツゴー! あっ、アタシの家まではバスで行くから、まずはバス停まで歩いていくよ」

 

 

 

 

 

 バスに乗ったらすぐにゆうゆが寝ちゃった。穏やかな寝顔で歩夢の肩にもたれかかっている。

 

「疲れてたのかな?」

「そうかもしれません。俺の勉強メニューを夜更かしして考えてくれたって昨日も言ってましたし」

「よかったね、元樹。やりたいことにいろんな人が力を貸してくれて」

「本当にありがたいです。侑先輩には頭が上がりませんよ」

 

 でも夜更かししてるのはちょっと心配だなぁ。美容の大敵だし。ちゃんと歩夢が見てくれるといいんだけど……ってそれだけじゃダメか。何か1つでもアタシもお手伝いして、ゆうゆ達の負担を減らして作曲に集中できる環境を作らないと!

 

「愛さんにできることならなんでも手伝うから、困ったことがあったら何でも言ってね?」

「んー愛先輩に手伝ってほしいことかぁ……。今んところ特に思いつかないですね。PC関係とかも困ったことがあれば璃奈に助けてもらう予定ですし……」

 

 そっかぁ、まぁそうだよね。でも何か力になってあげたいなぁ。

 

「んー、じゃあ詰まった時息抜きとして一緒に運動しよっか。いっぱい体動かして一緒にスカッとしよ!」

「あーいいですね~。悩みとかも吹っ飛びそうですし」

「何かやってみたいことある?」

「んーなんだろ……しいて言えばテニスやってみたいかも」

「あー、元樹見学だったもんねー。もしかしてやりたくてずっとうずうずしてたの?」

「うーん、まぁ。皆楽しそうでしたし。栞子も愛先輩も楽しそうに試合してるし。俺はそれをただ見てるだけでしたし……」

「そっかそっかー。愛さんもすっごく楽しかったなー。……あっ」

 

 三船さんとのテニス楽しかったなー。上手だったのはもちろんのこと、どれだけ疲れてても勝つぞーって意志が伝わってきて、愛さんも最後の最後まで気を抜けなかった。でもあの執念はなんだったんだろう、ほんの少しだけ敵意も向けられてた気もするし……もしかしてアタシと元樹の関係性を勘違いしてたのかな。

 そんなことを考えながらふと元樹の方を見ると、そっぽを向きながら首を軽く掻いていた。これはさっき歩夢が教えてくれた元樹の癖だ!

 

「元樹首掻いてるよ。もしかして拗ねてる?」

「別に……」

「もー、元樹ってば可愛いなぁ」

 

 いつもりなりーにしてるみたいに頬をツンツンしてみた。でも元樹はお気に召さなかったようで、微妙な表情でこちらを見てくる。うーん、これはやめておいた方がいいかも……。

 

「…………もう1回」

 

 愛さんが頬を触るのをやめると、不服そうな顔をしてもう1回同じこと要求してきた。さっきはあんな感じだったけど、実は気に入ってくれてたのだろうか。

 

「これ? いいよ、ほれほれ~」

「ん~……眠いかも……」

 

 さっきと同じように頬をツンツンしてあげていると、元樹が段々とうとうとし始めた。

 

「疲れちゃった?」

「うーん、まぁ……あとそこまで寝てないのもあって……」

「さては夜更かししたな~?」

「愛先輩とのお出かけが楽しみだったので……」

「そっかそっか。それは嬉しいけど、でもちゃんと寝ないとダメだぞ」

「はーい……」

 

 頑張って睡魔に抵抗してるみたいだけど、もう限界に近そう。コクコクと舟を漕ぎ始めている。

 

「あいせんぱーい、肩貸してくださーい……」

「アタシの? いいよ。ちゃんと寝られるかはわかんないけどね」

「失礼します」

 

 アタシの左肩に元樹の頭がちょこんと乗っかる。

 

「どう? 気持ちいいかい?」

「……うん、気持ちいい……」

「よかった」

 

 よほど眠たかったのか、もう目を閉じて眠る体勢に入っている。おねむなせいか話し方もいつもより幼い感じだ。

 

「ゆっくりお休みしてていいよ。着いたら起こしてあげるからね」

「うん……すぅ……すぅ」

 

 頭を軽く撫でてあげてるとすぐに眠りについたようで、穏やかな寝息が聞こえてきた。

 

「もしかしてもと君も寝ちゃった?」

「うん。あっという間にぐっすりだよ。疲れてたみたい」

 

 通路を挟んで隣の座席では、同じようにゆうゆが歩夢の肩を枕にして寝ている。

 

「ゆうゆも疲れてそうな感じ?」

「うーん、疲れてるってよりは寝不足かも。今朝も何度もあくびしてたし……」

「あー、もしかしてゆうゆも夜更かし?」

「そうかも。侑ちゃんって集中し始めたら時間を忘れてやっちゃうから……そこが侑ちゃんのいいところではあるんだけど、たまに夜更かししちゃうのが……」

「それは心配だなぁ」

 

 理由はどうであれ元樹も夜更かししちゃったみたいだし……。ゆうゆのことは歩夢が監視してくれるかもしれないけど、元樹がなぁ。りなりーもよく夜更かしをしちゃう子だから、監視どころか2人一緒に夜更かししちゃいそうなんだよねぇ。

 

「……もと君の寝顔、可愛いね」

「わかる!」

 

 寝顔は幼さが強くて、ただただ可愛い。普段とのギャップというか、異性に囲まれてるいつもの姿は想像できない、とっても純粋な寝顔だ。いやいつもの元樹が純粋じゃないって言ってるわけではないんだけど……。

 

「あ……」

 

 って思わず元樹のそばで大きな声出しちゃった。

 

「ん……すぅ」

 

 アタシの声に反応して少しだけ身じろぎしたけど、またすぐに寝息をたてはじめた。心なしかさっきよりも距離が近くなってる気がする……。

 

「だ、大丈夫……?」

「う、うん。元樹は起きてないみたい。少しもぞっとはしたけど」

「んん……」

「へっ……?」

 

 寝ぼけてぬいぐるみか何かと勘違いしてるのか、アタシの腕に抱きついてきた。わざとかと一瞬思ったが、寝息に不自然さはなく、本当に寝ぼけてるだけだと判断する。さすがに少し恥ずかしいけど、元樹が気持ちよく寝られるのならそれでいい。

 

「ふふっ、もと君って意外と甘えたがりなんだよね」

 

 一連の流れを見ていた歩夢が、優しい表情で、でもどこか羨ましさを含んでいるような表情でこっちうを見てくる。

 

「えー、そうかなぁ? 今のも寝ぼけて抱きついてるだけじゃない?」

「普段璃奈ちゃんとか同じ1年生の子といる時はしっかり者さんなんだけど、私といるときは結構甘えてくれるよ。膝枕とかしてあげたことあるし」

「それって歩夢がただただ甘やかし上手なだけじゃ……」

 

 歩夢自身お世話好きだし。

 

「えぇー、そんなことないと思うけどなぁ……」

 

 でもアタシやせっつー、カリン、それからかなちゃんやエマっちにも甘えてるところなんて見たことないんだよねぇ。

 確かに歩夢にはつい甘えたくなっちゃうようなオーラはあるけど、でもそれはエマっちにもあると思うし、なんで歩夢だけ……それに膝枕なんて、そんなの恋人同士がするようなことじゃん。

 

「りなりーを差し置いて歩夢とそんなことしてるなんて……まったく、元樹は罪な男の子だねぇ。うりゃうりゃ。甘えたいなら、愛さんにももっと甘えていいんだぞ~」

 

 アタシには甘えたくなるようなオーラはないかもしれないけど、でも歩夢だけに負担がかかっちゃうといけないもんね。あと歩夢に甘えてばかりだと、そのまま歩夢に恋しちゃうかもしれないし……。

 

「きっともと君も喜んでくれるよ。私に甘えてくれる回数が減っちゃうのは寂しいけど……」

 

 ……今日一日過ごして感じてたことなんだけど、歩夢ってもしかして元樹のこと好き、なのかな……? 距離感が近すぎるというか、いくら歩夢と元樹が仲良しでも、膝枕なんてさすがに普通じゃないと思う。

 

「どうかしたの?」

「……ううん、何でもないよ。ただゆうゆもぐっすりだなーって」

「ふふっ、そうだね。侑ちゃんは昔から寝顔も可愛いの」

「あはは、そうだねー」

 

 こんなに人がいっぱいいて、しかも寝ているとはいえ元樹がすぐ近くにいる時に「元樹のこと好きなの?」なんて聞けるわけがないよねー。

 

「あゆむぅ……」

「あゆむしぇんぱあぁい……」

「2人とも歩夢の夢を見てるみたい。どんな夢なんだろうね」

「うぅ、ちょっと恥ずかしいよぉ……」

「もとくんとはともだち……」

「うわきしてごめんなさい……」

「……」

 

 これは2人してさっきのことを夢に見てるなぁ? 夢にまで出てくるなんて、2人してトラウマになっちゃったのかな。でもそうなってもおかしくないくらい怖かったもんね……。

 

「私、そんなに怖いかな……」

「あー、うん、さっきのは怖かった、かなぁ?」

「そっかぁ……」

「で、でも普段は怖くないからね! さっきはそういう演技だから怖かっただけで、普段の歩夢が怖いなんて2人とも思ってないよ! じゃないと元樹もあんなに懐いたりしないって!」

「……ほんと?」

「ほんとだって! 歩夢に甘えたりするのが何よりの証拠だよ」

「ふふっ、そっかぁ。よかったぁ」

 

 ふぅ、なんとか機嫌を直してくれた。慌ててたからちょっと大きな声を出しちゃったけど、少し抱きつく力が強くなっただけで元樹は起きてないみたい。

 

「すごいぐっすりだね。きっと愛ちゃんの肩枕が気持ちいいんだよ」

「そうなのかな? 自分だとわからないからなぁ」

「自分の肩を枕にはできないもんね。でももと君がこんなに安心して熟睡してるってことはきっと気持ちいいってことなんだよ」

「そっか。なら歩夢の肩枕も気持ちいいんだね。ゆうゆもぐっすりだし!」

「うん。侑ちゃんはいつもこれでぐっすりなんだー」

「えー、いいなー。愛さんも歩夢の肩で寝てみたーい」

「ふふっ、いいよ。今度貸してあげるね。その代わり、私も愛ちゃんの肩借りてもいい?」

「もちろん!」

 

 元樹が少しずつこっちに近づいてくるのを感じながら、歩夢との談笑を楽しむ。

 

「あっ、もう次が降りる場所だね」

「ほんとだ。んー、楽しいと時間があっという間だ~」

「うん、愛ちゃんと2人で話すのが久しぶりだったから、私もすっごく楽しかったよ! またお話ししようね」

「もっちろん!」




次回愛さんとのデート回完結予定。なお投稿日は未定。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part28/m

りなりー誕生日おめでとう!(n日遅れ) 誕生日限定URが10連で出て超ハッピーでした。
「あなたとコネクト、したい」は直球すぎてまずいですよ!(建前) いいよ! こいよ!(本音)


……えー、前回から期間が開いてしまったことについてですが、決してサボっていたわけではないんです。
創作力UPのために、世界一フットボールの熱い青い監獄に入寮してきたり、リンクでライクしたり、お酒とおつまみを食べてたら執筆する前に眠くなっちゃっただけなんです。

ちょこっとずつ投稿頻度を戻せるように頑張ります。


あとOVAの部屋着栞子ちゃん、えちえちすぎて我死ゾ。


 バスが目的地に到着した。バスが停止するときの慣性を感じながら、ぐっすりな元樹を起こすため肩をゆする。

 

「元樹、着いたよ」

「……」

「侑ちゃんも起きて」

「んぅ……あゆむ、おはよ……」

「うん、おはよう。バス着いたよ」

「あ、もう……?」

 

 ゆうゆは少し寝ぼけてはいるけど、さっと起きたみたい。元樹は……うん、起きてくれそうにない。

 

「元樹! 起きてってば!」

「……」

 

 うーん、起きてくれないぞぉ? これは困ったなぁ……。歩夢とゆうゆ含め他の乗客は皆降りていて、残ってるのはアタシ達だけだ。

 運転手さんの迷惑になってしまうので、早く起こそうと体を必死で揺する。

 

「んん……あい、せんぱい……?」

「あっ、やっと起きた」

 

 眠たそうに目元をこすりながら元樹が目を覚ます。

 

「着いたから降りるよ」

 

 アタシの左腕にだきついたままなので、そのまま引っ張り上げるように立ち上がる。けれど元樹はそれに抵抗するようにギュッと腕に抱きついてくる。

 

「まだ、離れたくないです……」

「えぇ~、そんなこと言われても……急にどうしたの?」

「……少し怖い夢を……それで愛さんに甘えたくて……」

「……もしかして起きてた?」

「いえ……」

 

 甘えたいなんて元樹の口から出ると思ってなかったから、てっきりさっきの話を聞いてたのかと……。

 

「……少し汗かいてるよ」

 

 元樹の顔はほんのり汗ばんでいる。車内はいい感じに空調が効いていて、汗をかくような温度ではない。

 

「そんなに怖い夢だったの?」

「……はい」

「そっか」

 

 今にでも泣いてしまいそうな表情に、自分の中の加護欲のような何かが刺激される。空いた右手をそっと元樹の頭に乗せる。

 

「よしよし、じゃあ手繋ごっか。こうやって抱きついたまま歩いてると危ないからね。あと恥ずかしいし」

「……うん」

 

 手を握ってあげると安心したように表情が和らぐ。寝起きだからか、それとも夢のせいか、普段からは想像できないくらい言動が幼い。なんというか、ギャップがすごい。

 

「大丈夫? 少しは落ち着いた?」

あのー、そろそろ降りてもらえるとー

「あ、すみません、今降りまーす! ほら、運転手の人が待ってるから降りるよ。……大丈夫、ずっと繋いでてあげるから」

 

 運転手に促され、半ば強引に元樹を立ち上がらせる。一瞬不安そうな顔をしていたが、ぎゅっと握ってあげると安心したようにすぐに頬を緩ませる。

 

「歩夢、ゆうゆ、お待たせ」

「よかった、ちゃんともと君起きたんだ。……あっ

「ぐっすり眠れた? 私は快眠だったよ!」

「うーん、まぁ……そこそこ?」

「……と、ところで、なんで2人は手を繋いでるの……?」

「あ、ほんとだ……」

 

 歩夢は少し驚いたように、アタシと元樹が手を繋いでいることを指摘する。さて、どう答えたものか……。

 

「……歩夢先輩、なんか怒ってます?」

「別に……怒ってなんかないもん」

「でも拗ねてはいますよね? もしかしてしっt……むぐむぐ」

 

 変なことを言って話が拗れそうだったので、口を塞いで止める。うーん、元樹には悪いけど、正直に話した方が理解してもらえそうだし、面倒くさそうなことにならなさそうかな。

 

「いやー、元樹がさっき怖い夢見ちゃったらしくて」

「むぐっ」

「そう、なんだ……」

「びっくりしたぁ……もしかしてもと君と愛ちゃん付き合ってるんじゃって思っちゃったよ」

「あはは……りなりーがいるのにそんなことできないよ

「ん? 何か言った?」

「ううん、何でもないよ」

 

 アタシはりなりーと元樹に結ばれてほしい。だからアタシと元樹が付き合うなんてことはありえない。こういう言い方はよくないかもしれないけど、異性として好きってわけじゃないしね。もちろん友達や後輩としては大好きだし、元樹から告白されたら迷っちゃうかもしれないけど……。

 

「それより! ここからちょっと歩くから、ちゃんとアタシについてきてね!」

「はーい、侑先輩も勝手に動いて迷子にならないように気を付けてくださーい」

「この年になってそんなことしないって~。私そんなことしそうに見える?」

「見えます。侑先輩、最初に会った時も生徒会室と真逆の方向に走り出したじゃないですか。違うって言っても止まってくれなかったですし」

「うっ、そんなことも、あった気が、します……」

 

 2人で楽しそうに話している。うん、元樹に元気が戻ってきたみたいでよかった!

 

「へぇ、私の知らないところでそんなことがあったんだ」

「はい。歩夢先輩と会う前……それもほんと10分前とか20分前とか直前の話ですよ」

「……よくそんなこと覚えてるね」

「記憶力にはそこそこ自信があるので」

「侑ちゃんは私がちゃんと見ておくから安心して。だからもと君は後ろじゃなくて前を向いて歩こうね。危ないよ」

「はーい」

 

 こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、なんだか歩夢お母さんみたい………。

 元樹が前を向いたのを確認した歩夢とゆうゆが2人で話し始めて、こちらから意識が逸れたのを確認してから小声で元樹に話しかける。

 

「元樹、さっきはごめんね」

「なんのことです?」

「怖い夢見ちゃったーって2人に言っちゃったこと。まるで元樹が怖がり見たいに思われちゃったかもなぁと……」

「ああ、別にいいんですけど、なんで急にあんなことを?」

「いやー、あのままだとなんか変な空気になりそうだったし、止めた方がいいかなーって。いい感じに誤魔化せる嘘がその場で思いつかなかったから、もうホントのことを言うしかなかったんだよね。ほんとにゴメン!」

「いいですよ、全く気にしてませんし。というか……いえ、やっぱりなんでもないです」

 

 何かいいかけてやめたけど、実は怖がりで合ってました……とか?

 

「ねぇねぇ、どんな夢見たのか聞いてもいい?」

「えー……うーん、秘密です」

 

 夢の内容を思い出したのか、元樹の手に力が入る。

 

「そんなに怖い夢だったの?」

「えと……なんでそう思ったんですか?」

「だって手にぎゅ~って力が入ったから。そんなに怖かったのかなぁって」

「はぁ、よく気づきますよ……そうですね、すごく怖くて嫌な夢でした。誰でもいいから傍にいてほしいくらい……」

「そっかそっか。今日は愛さんがずっと一緒にいてあげるからね」

「……それって、愛先輩の家に泊まってもいいってことですか?」

「えっ!? そ、それはどうだろぉ……一応おばあちゃんに聞いてみるけど、急なことだから難しいかも……」

 

 スペースも寝具もあるけど、おばあちゃんが許してくれるかどうか……まぁダメっていうことはないだろうけど。元樹も礼儀正しい子だし。

 

「き、着替えはどうするの? 男物の服はお父さんのしかないよ?」

「……ぷっ、あはははっ! 冗談のつもりだったんですけど、そこまで真剣に考えてくれたんですね」

「っ~! か、からかったなぁ?」

「さぁ、なんのことやら」

 

 ニヤニヤと笑いながらこちらを見てくる。元気になったのはいいけど、うーん……。

 

「ところで、さっきの言いぶりだと事前に連絡したら愛先輩の家に泊まっていいって風に聞こえたんですけど……いいんですか?」

「ま、まぁいいけど……」

「へー、じゃあ気が向いた時にお泊りさせてもらおー。できればr……」

「あれ? 愛ちゃんの家ってここじゃないの?」

「え?」

 

 歩夢に指摘されて振り返ると、『もんじゃ宮下』の看板が掛けられた建物をとっくに過ぎてしまっていた。

 

「あ、気づいたら通り過ぎてた……」

 

 元樹との会話に夢中になっていて、周りに気を配れてなかった……歩夢がちゃんと見てくれてて助かったよー。

 

「えー、こほんっ。気を取り直して、ここが愛さんの家だよ。いらっしゃい!」

「くんくん……あー、いい匂いがする!」

「そうでしょそうでしょ!」

「うぅ~、お腹が空いてきちゃったぁ~」

「もぉ侑ちゃんたら……」

「歩夢は違うの?」

「……私も空いてきちゃった、かも」

「……」

 

 何も言わないけど、元樹も隣で目を輝かせている。歩夢達どころか本人も気づいてないだろうけど、ちゃかりお腹を鳴らして空腹をアピールしてくる。

 

「そんなに期待されてるなら、それに応えてい()()()よね。期待だけに! あははっ!」

「愛ちゃん……」

「よしっ、じゃあ入ろっか。元樹も待ちきれないみたいだし!」

「別に、そういうわけじゃ……」

 

 誤魔化すようにそっぽを向く元樹を引っ張り、店の中に入る。歩夢とゆうゆも続いて中に入ってきた。

 店の中にはお客さんがいっぱいいて、テーブルもほとんど埋まっている。

 

「わぁ、大盛況だね」

「うん、今日は特に多いかな。パッと見た感じだと常連さんがいっぱい来てくれてるみたい」

「ふーん……空いてるのはあそこだけみたいですね。あそこ使わせてもらいましょう」

「アタシは準備とかいろいろしてくるから、先に座って待ってて」

「……はい」

 

 名残惜しそうにしながらも、素直に手を放してくれた。アタシ自身も名残惜しくないといえば嘘になるけど、さすがに厨房に入れるわけにはいかないしね。

 

「おーい、愛ちゃん」

「えっ?」

 

 うちの常連さんで、アタシが小さい頃からもんじゃを食べに来てくれているおじさん達に声をかけられた。……もうお酒を飲んでるみたいだけど、大丈夫かな……。

 

「さっきの子達は愛ちゃんのお友達かい?」

「うん、そうだよ。みんな愛さんの友達! 最近仲良くなったんだ!」

「へー、あの愛ちゃんがねぇ……灌漑深いねぇ……」

「あのイケてる男の子は愛ちゃんの彼氏?」

「うえぇっ!? ち、違うよ! 元樹は彼氏じゃなくて、その……た、ただの友達!」

「さっきあの男の子と手繋いでなかった?」

「確かに手は繋いでたけど! でも彼氏じゃないの!」

「ABCでいうとどこまでいった? B? それともCまで?」

「え、ええええ、えっちなことなんて一切してないって!」

「じゃあA?」

「キスもまだ! そもそも付き合ってないんだってばっ! おじさん達もう酔ってるでしょ!?」

「酔ってないよー……ひっく」

「まったく……」

 

 酔っ払いおじさん達は放置して、厨房にそそくさと隠れる。生地と具材を準備したりしながら火照った顔を冷ます。さっきの会話3人にも聞こえてたよね……はぁ、ほんとに元樹とはそういう関係じゃないのになぁ……。

 おじさん達が話に夢中になってるタイミングを見計らい、3人がいる席まで移動する。

 

「あー、もう大変な目にあったぁ……」

「お疲れ様です。なんか大変そうでしたね」

 

 元樹が隣にズレて場所を開けてくれたので、そこに座ってもんじゃを作る準備を始める。

 

「いつもあんな感じなの?」

「ううん、全然そんなことないよ。ただ今日はアタシが初めて男の子の友達連れてきたから、それで興奮しちゃってるのかも。アタシが小さい時からの常連さんだから、なんていうか、親心、みたいな? あと単純にお酒が入ってるからってのもあるけど」

「そうなんだぁ。じゃあいつか愛ちゃんが本当に恋人を連れてきたとき大盛り上がりしそうだね」

「多分ね。いざその時になったらみんなに紹介したい気持ちもあるけど、収拾がつかなくなりそうなんだよね」

「あー……」

 

 お酒が入ってる時に紹介しちゃったらもみくちゃにされちゃいそうなんだよねー。だから紹介するなら皆が飲んでないときかなぁ……まぁそもそも彼氏ができるかどうかすらわかんないけど。

 

「ま、それは置いといて! そろそろもんじゃ作っちゃうよ~!」

「愛先輩、お願いします。周りを見てたらもうお腹がペコペコになっちゃって」

「任せて、すぐに作るからね」

「愛ちゃん、私に手伝えることあるかな?」

「うーん、特にはないかなぁ。今日は愛さんお手製のもんじゃを味わってほしいから、皆はゆっくりしててほしいな」

「そっか。じゃあもんじゃが出来上がるまでゆっくりしてるね」

 

 いつものように鉄板でもんじゃを焼いていく。元樹とゆうゆは目を輝かせながらその様子をじっと眺めており、時折お腹を鳴らして完成をまだかまだかと待っている。歩夢は2人とは対照的にうずうずとしている。早くもんじゃが食べたいってのもあるだろうけど、何か手伝えることないかなーって感じかな、歩夢のことだからきっと。

 

「……愛先輩、もう少し時間かかりそうですか?」

「あともう少しかかるかな。もう待ちきれないの?」

「それもあるんですけど、やることがなくて少し、ほんの少しだけ暇だなぁと」

「それならあそこに漫画が置いてあるよ」

「ほんとっ!? ちょっと見てこよっかな」

「侑ちゃん……」

「なるほど、漫画……」

「あれ? もしかして漫画あんまり好きじゃない?」

 

 ゆうゆは本棚に飛びついて漫画を物色してるけど、元樹は退屈そうに本棚を眺めている。

 

「いえ、漫画は好きですよ。でもパッと見た感じだと古めの、読んだことある漫画ばかりだったので」

「そうなの? でも確かに最近本棚の中身変えてないからなぁ」

「なるほど。……愛先輩、もしよかったら今度本屋に行って、一緒に漫画探しません? お店に置く用の」

「それ楽しそう! ……折角だから、その時はりなりーも誘ってみよっか。漫画とか詳しいだろうし、きっといいのを選んでくれると思うよ。あと詳しそうなのはせっつーもかな?」

「確かに。璃奈とせつ菜先輩にも声かけてみましょうか」

「あ……ゆ、侑ちゃんも意外と漫画とか詳しいよ!」

「へぇ、そうなんですか。どんなジャンルが好きなんですか?」

「えぇとね、バトル物が好きって言ってたかな。名前は忘れちゃったけどあの海賊の漫画とか」

「あー」

 

 海賊の漫画……? うーん、愛さんあんまり詳しくないからわかんないや……今度りなりーに聞いてみようかな。

 

「あとね、実はこっそり恋愛漫画も読んでたりするんだよ」

「へぇ、ゆうゆが……」

「うん、最近は部活のこうh……」

「ちょっ、それ以上はダメ!」

 

 本棚からゆうゆが飛び戻ってきて、慌てて歩夢の口を塞ぐ。歩夢はどんなゆうゆの秘密をバラそうとしたのだろうか。『後輩』って言いかけたような気がしたけど、まさかね……。

 

「ゆふひゃん?」

「もと君がいるのにそんなこと喋っちゃダメだって!」

「えぇ~、愛さんもっと詳しく知りたいな~」

「愛ちゃんのお願いでもダメ!」

「ざんね~ん……元樹は普段どんなのを読んでるの?」

「俺ですか? そうですねぇ……」

「愛ちゃん! あとどれくらいでもんじゃ完成しそうかな!?」

「え?」

 

 元樹の言葉を遮るように歩夢が言葉を発した。

 

「あと少しで出来上がるけど……急にどうしたの?」

「えと、その……」

「歩夢先輩、もしかして腹ペコなんですか?」

「……実はそうなの。もうお腹がペコペコなんだ~」

「歩夢ってば食いしん坊さんだなぁ。エマっちみたい!」

「歩夢今日はいつもよりよく食べるね」

「あはは……今日はなんだか無性にお腹が空いちゃって」

「まったく、歩夢先輩は可愛いですね。最初の一口は歩夢先輩に差し上げましょー」

「えへへ、もと君ありがとう」

「よしっ、ちょうど出来上がったよ!」

「……!」

 

 出来上がったもんじゃを見て、皆目を輝かせている。元樹なんて口の端からよだれが垂れてしまっている。下に落ちるといけないから、紙でそっと拭き取ってあげる。

 

「うわぁ~、すっごく美味しそうだよ愛ちゃん!」

「ほんと、うまそう……」

「どんなもんじゃい!」

「あはははは! もんじゃだけに、どんなもんじゃいって! いひひっ! お腹痛いよぉ~!」

 

 ちょっとしたダジャレでゆうゆがめっちゃ笑ってくれた! 笑いすぎて床の上で転げまわってるけど、鉄板にぶつかるようなことはないし、他のお客さんにぶつからないように歩夢が止めてくれてるし、止めなくても大丈夫かな。

 

「侑ちゃん、笑いすぎだよ……」

「……そんなことより歩夢先輩、一口目どうぞ」

「うん、じゃあいただきまーす。ふぅ……ふぅ……あむっ」

 

 ヘラでもんじゃを少し多めに掬い取り、口の中に含む。その様子をアタシと元樹の2人で見守る。

 

「うん、すっごく美味しい!」

「でしょ? うちの自慢の味だからね」

俺も……

 

 元樹がもう待ちきれないといった表情でもんじゃを見つめている。そんなに楽しみにしてくれていることに嬉しさを感じながら、もんじゃを食べるようのヘラを元樹に渡……

 

「ほら、もと君も食べて? すっごく美味しいよ」

 

 そうとしたところで、先に歩夢が差し出した。自身が使った後のヘラにもんじゃを乗せ、元樹にあーんをするように。

 

これって間接キスなんじゃ……

「はい、あーん」

 

 歩夢が使ったヘラを元樹が使うなんて、これはもう紛れもなく間接キスだ。2人とも全く意識してないのか、それとも気づいていないのか、顔を赤らめもせず恥ずかしがるような素振りすらない。

 

「あの、歩夢先輩、熱くてこのままじゃ食べられなさそうです」

「あ、そうだよね。ちゃんとふぅふぅしてあげないとね。ふぅ……ふぅ……」

 

 ヘラで掬った分のもんじゃに息を吹きかけ、熱を冷ましている。うーん、なんか恋人ってより姉弟って感じ……でも間接キスなんて……アタシがそうやってうんうん唸っているうちに、2人はどんどんと先に進んでいく。

 

「はい、これで大丈夫だよ。あーん」

「あーん」

「……どう、美味しい?」

「美味しいかい?」

「んー……ごくんっ、ん、最高です」

 

 元樹は嬉しそうに頬を緩ませる。うん、頑張って作ってよかった!

 

「ほらほら、愛先輩も食べてください。作ってくれた張本人なんですから」

「じゃあ愛さんもいただこうかな」

「ほらっ、侑ちゃんもそろそろ食べて」

「うぅ~、お腹が痛くて起き上がれないよぉ~。歩夢、食べさせて~」

「えぇ? も、もぅ、しょうがないなぁ~」

 

 歩夢に甘えるゆうゆを眺めながら、アツアツのもんじゃを口に含む。うーん、いつも通り美味しい。

 隣の元樹は慣れていないのか、ヘラで掬ったもんじゃをそのまま食べている。固めたりしていないので崩れていて食べづらそうだ。

 

「元樹、こうやってジュッってしてあげると、硬めのもんじゃにできるよ」

「ん? んー……」

 

 さっき目の前で実演してみせたけど、加減がわからないのか少しやりづらそう……。

 

「……愛先輩、その、うまくできないので愛先輩に作ってほしいなー……なんて」

「いいよ。元樹のヘラ貸して」

「やったっ」

「硬めと柔らかめどっちが好み?」

「柔らかめがいいです!」

 

 なるほど、柔らかめかぁ、それは慣れてないと調整が難しいかもなー。アタシがジュージューする様子を、元樹は隣で目を輝かせながら眺めている。この反応、りなりーとそっくりだなぁ……。

 

「これくらいかな。はい、どうぞ」

「できればふぅふぅして冷ましてほしいです」

「そ、それはちょっと恥ずかしいかなぁー」

「歩夢先輩はしてくれたのに……」

 

 それは歩夢が元樹に対して過保護なだけだよ。そんなことを考えながら、ふぅふぅともんじゃを冷ます姿を眺める。ホントは誰もいないところならやってあげてもよかったんだけどね。でも今は目の前に歩夢とゆうゆがいるし、酔っ払い中のおじさん達に見つかったらまた厄介なことになるし……。

 

「あむっ……あ、うまっ……」

 

 目を見開き、思わず漏れてしまったかのように呟く様子を見て、自然と口角が上がってしまう。その様子が可愛かったって言うのはもちろんあるけど、自分が頑張って作ったものを美味しいって思ってくれるのはやっぱり嬉しいね。

 

「あ、愛先輩、もう1個……」

「ふふっ、いいよ。たーんとお食べ~」

「ありがとうございます。ふぅ、ふぅ、あむっ……」

 

 目をキラキラとさせながらもんじゃを食べる姿に、アタシも歩夢も、いつのまにか起き上がっていたゆうゆも、皆笑みを浮かべている。なんだか歩夢が過保護になる気持ちもわかるなぁ……。

 

「あいせんはいはたべないんれふか?」

「こーら、口に入れたまま喋らないの」

「ん、ごく……愛先輩は食べないんですか?」

「うん、愛さんは大丈夫だよ。だから遠慮せずいっぱい食べていいよ。もちろん歩夢とゆうゆもね」

「ありがと、愛ちゃん」

「愛先輩もう1回、いいですか?」

「もっちろん。……はい、どーぞ」

「ふぅ、ふぅ、はむっ」

 

 うーん……なんだろ、段々餌付けしてるような気分になってきちゃったなぁ。出来上がるまで待ってる時も、尻尾を振ってご飯を待つワンちゃんみたいで……うぅ~、ヨシヨシしたくなってきた……。

 

 

 

「ふぅ、満腹満腹……愛ちゃんごちそうさま! すっごく美味しかったよ」

「俺もお腹いっぱいです」

「お粗末様でした。皆が美味しそうに食べてくれて愛さんも嬉しかったよー」

 

 言葉通りお腹いっぱいになるまで食べたであろう元樹とゆうゆはとても満足そうな表情をしている。まぁその2人よりも歩夢の方が食べてたけれど。ゆうゆも言ってたけど、意外と食いしん坊さんなんだなぁ……。

 

「愛ちゃん途中から全く食べてなかったけどよかったの?」

「皆が美味しそうに食べてくれるなら、アタシはそれで満足だからさ。お手製のもんじゃを元樹がいっぱい食べてくれただけで愛さん大満足なんだ!」

 

 すぐ近くの元樹の頭をヨシヨシと撫でる。途中からもうワンちゃんにしか見えなくなっちゃって、ずっとヨシヨシしたくて仕方なかったんだよねー。本人はきょとんとして、いくら甘えたがりでもワンちゃんみたいに擦り寄ったりはしてくれなさそう。まぁされたらされたで困っちゃうけれど。

 

「あっ、もうこんな時間……そろそろ帰らないと」

「あー、俺もそろそろ……」

「そっかぁ……」

 

 時計を見るともう6時近くになっていた。体感よりも時間が過ぎていて、友達といる時間は楽しすぎてあっという間に過ぎちゃうなぁと改めて実感する。

 

「もうちょっと一緒に遊びたかったけど仕方ないよね。今日はありがとう、すっごく楽しかったよ! ゆうゆと歩夢も急に誘ったのに来てくれてありがと!」「ううん、お礼を言うのはこっちだよ。今日は誘ってくれてありがとう」

「もと君と愛ちゃんと一緒にお出かけできてすっごく楽しかった! 普段とは違う2人も見れたしね」

「アタシも知らない皆が知れて面白かったよ! 元樹が意外と甘えたがりだったとかね」

「はて、なんのことやら」

 

 そっぽを向きながらとぼけている。その様子が琴線に触れたのか、歩夢はすっと元樹の隣に移動し、頭を撫で始めた。うん、気持ちはわかるけどね。

 

「……じゃあ愛先輩、俺はこれで失礼します。今日はありがとうございました」

「うん、またね~!」

「ばいばーい!」

「また部活でね」

 

 3人が一緒に歩いていくのを見送った後、背中に突き刺さる視線を感じ、厄介な仕事が残ってるなぁと実感する。さらにお酒を飲んでるみたいだったし……はぁ、頑張って追求から逃れないとなぁ……ほんとに元樹とはただの友達なのに……。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part50/n

初心に帰って初投稿です。

キリがいいところで切ったので少し短いけど、頑張って早く投稿したよ。
次もこの調子で頑張ります。


 ビデオ通話中にびっくりどっきりえっちなハプニング!? なRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はもんじゃ宮下にお邪魔してもんじゃをお腹いっぱい堪能した後、侑ちゃんと将来の約束をしました。今回はその続きからで、帰宅して食事とかもろもろやった後、愛しのせつ菜ちゃんの通話タイムとしましょう。

 というわけでせつ菜ちゃんとの通話タイムまで倍速じゃい!

 

 

 

 はい、というわけで準備が整いましたので、早速せつ菜ちゃんとのオタノシミを始めていきたいと思います。タイム短縮のため事前アポはとりません。オッスお願いしま~す。

 

『……はい! 元樹さん、こんばんは!』

 

 うるせぇ!(建前) がわ゛い゛い゛な゛ぁ゛ぜづな゛ぢゃ゛ん゛(本音) もう声からして可愛いです。でも声だけだと少し寂しいので、折角ですからビデオ通話しませんか?

 

『ぜひ! でも少しだけ待ってもらっても大丈夫ですか?』

 

 もちろん……と言いながら勝手にビデオ通話モードオン! だってこの裏でお着換えとかオ〇ニーとかしてたらもう、見るしかないじゃないですか。

 

『あ……も、もうっ、勝手にしたらダメじゃないですか!』

 

 おっとっと、さすがに怒られてしまいました。しかも単に髪を結っていただけのようです。オ〇ニーとか、なさらないんですか?

 

『まったく……中途半端なところは見られたくなかったのに……』

 

 中途半端、とは? 髪を結っていようといなかろうと、たとえその途中だったとしてもせつ菜ちゃんはとても可愛いですよ。

 

『そういう問題じゃないです! か、可愛いと言ってくれるのは嬉しいですけど……』

 

 堕ちたな(確信) 頬をほんのり赤く染めて照れる表情はとてもキューティーです。もし画面越しではなく対面にせつ菜ちゃんがいたら、ちゅっちゅちゅきちゅきらぶらぶりん確定でした。

 

『……そういえば、元樹さんは今日は何をしていたんですか?』

 

 えー、あー、ちょっ、ちょっとしたお買い物ですよ。ほらこれ、ヘッドホンを買ってきたんです。

 

『ヘッドホン……もしかして、作曲で使う用ですか?』

 

 そうだよ(便乗)

 

『元樹さんはオーディオにも詳しいんですね』

 

 そうだよ(震え声)

 

『私はあまり詳しくなくて……そろそろイヤホンを変えようと思っているので、その時は詳しい人にいろいろ教えてほしいです』

 

 おっと、これは遠回しなデートのお誘いですね。チラチラと横目でこちらを見てきます。

 普通なら「アーイク」となるところですが、ことせつ菜ちゃんに限っては親密度が十分&浮気を許してくれない融通の利かない子なので、デートをするうま味がゼロです。ということでせつ菜ちゃんからのお誘いはスルーしましょう。

 そういえば、今朝せつ菜ちゃんの方からお出かけのお誘いがありましたが、どこかに行く予定でもあったんですか?

 

『その、元樹さんと映画を見に行きたいなぁと思いまして……』

 

 へぇ、映画……アニメ映画ですか?

 

『はい! 少し前にお話しをしたあの映画です!』

 

 なんのこったよ。

 

『もうっ、忘れてしまったんですか? 面白そうですねと一緒に話したじゃないですか。その、同好会がばらばらになる以前の話ですが……』

 

 なるほど、であればそれ以降からの記憶しかないプレイヤーの私が覚えていなくても仕方ないですね。ほも君自身が覚えていないのは問題ですが。

 

『その映画の公開日がちょうど今日だったので元樹さんと一緒に見に行こうと思っていたのですが、用事があるとのことだったので1人で見に行ってきました』

 

 1人で……もしかしてあそこの映画館ですかね?

 

『はい! 内容も面白くて、演出もカッコよくて、音響もすごく良くて、もう最高でした!』

 

 思い出して興奮するせつ菜ちゃんですが、対照的にこちらはドキドキです。あの映画館ということは、時間次第ではありますがほも君と鉢合わせる可能性があったということです。非常に危なかったですね。もし見つかっていたらせつ菜ちゃんの心が壊れてしまっていたかもしれませんし、場合によっては愛さんの命が危なかったかもしれません。

 

『最後のバトルで主人公がバッと動いて、ドカーンと必殺技を放つシーンは演出も相まって胸熱でした!』

 

 お風呂上がりということもあってか、顔を赤くしながらベッドの上ではしゃいでいます(意味深)

 ところで、せつ菜ちゃんは寝るときはノーブラ派なんですね。背中をそった時に、たわわな双丘の頂にぷっくりと咲く小さな首が見えてしまっています。BANされちゃうので寝巻ちゃんと仕事しろ~?

 

『ぜひ! ぜひ元樹さんも見ましょう!』

 

 見るって……せつ菜ちゃんの乳〇をですか?

 

『……どうかしましたか? ……はっ!』

 

 ほも君からのアツゥイ視線を感じ取ったのか、せつ菜ちゃんは手で胸元を覆い隠してしまいました。視聴者兄貴のせいです。あーあ。

 

『えっち……』

 

 ちょっと待ってください。確かに凝視してしまったほも君にも中性子くらいの大きさの罪はあると思いますが、もとはといえばだらしない胸元の服を着てはしゃいでいたせつ菜ちゃんの方に問題があるのではないですか?

 

『で、でも気づいていたなら教えてくれればよかったじゃないですか!』

 

 でも教えたら教えたで「ナズェミテルンディス!!」とか言って怒るんでしょう?

 

『そんなことない……とは言い切れないかもしれないです……指摘していただいたら、見られてしまったことへの恥ずかしさが倍増してしまいますし……』

 

 つまりどちらにしてもアウトということですね。であれば指摘せずに凝視した方がお得じゃないですか。

 

『どうしてその方向に……指摘して真摯なところを見せれば、恋愛ゲームのように私からの好感度とか友好度が上がるかも、とは考えないんですか?』

 

 (RTAなので親密度上昇のことをかんがえていないわけが)ないです。でもせつ菜ちゃんにはもう稼ぐ親密度はないんだよなぁ……ご自身が一番自覚しているはずでは?

 

『はぁ、見られた相手が元樹さんだったのが不幸中の幸いです……とりあえず下着を着けてきます……』

 

 せつ菜ちゃんのお着換えシーンかと思いましたが、突然画面が真っ暗になってしまいました。どうやらカメラを切られたようです。せつ菜ちゃんはうっかり者ではなかったようです。

 ですが詰めが甘いですね。ミュートし忘れ、かつスマホのマイクが高性能なので、せつ菜ちゃんが服を脱ぐ音がバッチェ入ってます。この世には美少女が服を脱ぐ音だけで興奮する紳士が大勢いることを、保健体育が苦手なせつ菜ちゃんが知っているはずもありませんからね。音を聞いていているだけでも光景を想像できて興奮してしまうんです。というわけでゆっくりと堪能させていただきましょう。アーイキソ。

 

はぁ……どうして男の子はあんなにもえっちなんでしょうか……

 

 失礼な、紳士と言ってください。

 

『きゃっ! も、もときさんっ!?』

 

 お着換え中にほも君の声が聞こえてきてびっくりしたようです。あたふたしているところが目に浮かびますね。

 ところでせつ菜ちゃん、今は何をしてるんですか?

 

『い、今ですか? えっと、服を脱いで、着けるブラジャーを探してて……って、何言わせるんですか!』

 

 ふむふむ、つまり今せつ菜ちゃんは上裸、と……1つお願いがあるんですけど……。

 

『嫌です! 絶対に嫌です!』

 

 まだ何も言ってないじゃないですか。

 

『見せてほしいとか言うつもりだったんですよね! 聞かなくてもわかりますし、絶対に嫌です!』

 

 そんな……ほも君のこと嫌いなんですか……?

 

『そ、そういうわけじゃ……その、元樹さんのことは、だい……すき、といいますか……』

 

 え、なんですって? 良く聞こえなかったのでもう1回言ってくれ。

 

『その……だ、だいすき、です……』

 

 へー、ほーん、へー……じゃあ見せてくれますよね?

 

『なんでそうなるんですか! 頑張って伝えたさっきの言葉返してください! それにもう着替えましたから!』

 

 おっとっと、セクハラ中に着替え終えてしまったようで、オンになったカメラに、プリプリと怒りながら顔を真っ赤に染めるせつ菜ちゃんが映りました。ふむ、純白……なるほど、ちゃんとブラジャーを着けてきたようです。せつ菜ちゃんの綺麗な〇首を見れないのは残念ですね……ですが下着を着けていてもとてもエッチです。谷間がセクシー、エロいっ!

 

『まったく……男の子はみんな()()なんですか?』

 

 まぁ健全な男子高生ですからね。そういったことに敏感なお年頃ですし、何よりせつ菜ちゃんみたいな美少女のお胸となればなおさらです。

 それに、せつ菜ちゃんだってエッチな思考してるじゃないですか。生徒会室で〇ックスに一番乗り気だったのはせつ菜ちゃんですし、ほも君を押し倒してきましたし。

 

『それは、その……』

 

 視聴者兄貴もご存じの通り、せつ菜ちゃんはむっつりスケベですからね。きっと毎日夜な夜なオ〇ニーをしているはずです。

 

『毎日はしてません!』

 

 なるほど、毎日()してないんですね。ということは3日おきとか、週1とかの頻度でしょうか。

 既プレイ兄貴ならご存じかと思いますが、せつ菜ちゃんが性に溺れている姿と声は大変股間によろしくないので、ぜひオ〇ニー姿を見せてほしいですね。

 

『ピンポーン』

 

 おや? こんな夜中に誰か来客が来たようです。

 

『どうかしましたか?』

 

 来客のようなので、少し出てきますね。すぐ戻るので待っててもらってもいいですか?

 

『はい、大丈夫ですよ』

 

 ありがとナス! では行ってきます。

 さてと、こんな夜中に一体誰なんでしょう。せつ菜ちゃんとの大事なお話し(セクハラ)タイムだったのに……これで変な営業とかだったらいちぢく浣腸を突っ込んでやります。

 

「あ、元樹。少し相談したいことがあって……おじゃましてもいい?」

 

 ファッ!? ウーン(心停止)

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part51/n

何故私は異次元フェスにいなかったのか……何故1145141919年ぶりに披露した決意の光と哀温ノ詩を現地で聞けなかったのか……命、夢、希望、どこから来て、どこへ行く……そんなものは、りなりーが破壊する!


 この辺にぃ、なんかちいさくてかわいい幼馴染、来てるらしいRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はせつ菜ちゃんのお話し中、玄関先に凸してきたりなりーのあまりの可愛さに心停止してしまいました。今回はその続きからで、まずりなりーにおかえりいただくところから始めましょう。

 

 というわけでりなりー、ラボにおかえり。そもそもですが、どうしてノートPCを持ってきてるんですかねぇ……。相談があるとのことでしたが、一体どんな相談なのか想像がつきません。

 ほも君はこれからせつ菜ちゃんと電話〇ックスを楽しむ予定、というよりは確定事項がありますので。ほも君とせつ菜ちゃんのリモートちゅっちゅちゅきちゅきラブラブリンを見てしまったら、りなりーの脳が破壊されてしまいます。じゃけんりなりーはお家に帰りましょうね~。

 

「その、少しだけでいいから……ダメ?」

 

 もちろん、ウェルカムバッカモーンですよ。なんたって大事な大事な、この世でたった1人の幼馴染からのお願いですから。少しだけとは言わず、1時間でも2時間でも、日が変わるまででも、なんならお泊りしてくれていってもいいんですよ。

 

「そこまでは考えてなかったけど……でも元樹が言うなら、今日はお泊りする」

 

 よし来た! さぁ上がって上がって。ご飯はもう食べました? お風呂は? ほも君はまだお風呂に入ってないので、ぜひ一緒に入りましょう。

 

「ご飯はさっき食べた。お風呂も入ったし、それに元樹と一緒に入るのは少し恥ずかしい……」

 

 そうですか、それは残念です。まぁ入浴済みなのは仕方ないですね。とりあえず入って、どうぞ。

 

「お邪魔します。……今日も1人?」

 

 もちのロンです。だからりなりーが遊びに来てくれてオラすっごく嬉しいゾ~。

 

「私も、元樹と一緒に居られて嬉しい。……最近同好会の皆と一緒にいることが楽しくて、1人でいることが少し寂しいから」

 

 ほも君もです。1人でいると(画面映えもしないし、親密度が稼げずRTA的にも)寂しいです。

 あ、でも今せつ菜ちゃんと通話で談笑してるので、1人でいる、とは言えないかもしれないです。

 

「え、せつ菜さんと?」

 

 はい。ねー、せつ菜ちゃん。

 

『あ、元樹さん! おかえりなさい、どなただったんですか?』

「せ……」

 

 りなりー、しっ。折角ですから、誰が来訪者だったのかせつ菜ちゃんに当ててもらいましょう。

 

「……うん、わかった

 

 というわけでせつ菜ちゃん、突然の来訪者兄貴は誰だったと思いますか?

 

『えっと……多分あの方だとは思うのですが、念のためヒントをもらってもいいですか?』

 

 うーん、そうですねぇ……ほも君にとって大事な存在、ですかね。

 

「……」

『なるほど。では璃奈さんで確定ですね』

 

 その心は?

 

『先程戻ってきたときの元樹さんの声音が少し嬉しそうでしたから。それに元樹さんにとっての大事な存在と言われたら、普段の様子を見ていても璃奈さんしか思い当たりません。少し悔しいですが……』

「……せつ菜さんも、元樹にとって大事な存在だと思う。じゃないとせつ菜さんのことであんなに必死になったりしない」

 

 そうですよ。せつ菜ちゃんもほも君にとっては大事な存在です。もちろんせつ菜ちゃんだけでなく、同好会の皆も同じくらい大事な存在ですよ。

 

『あ、ありがとうございます。少し複雑な気持ちではありますが

 

 さて、しっとりせつ菜ちゃんも解決しましたし、本題のりなりーの件を片付けましょう。なんでほも君宅に来たんでしたっけ、ほも君とおせっせしたいとかでしたか?

 

「少し元樹に相談したいことがあって、電話するよりも直接話した方が早いと思ったから」

『相談……もしかして私はいない方がいいですか?』

「ううん、そんなことない。むしろせつ菜さんの意見も聞きたい」

『私の、ですか?』

「うん。経験豊富なせつ菜さんの意見が聞きたい」

 

 せつ菜ちゃんの豊富な恋愛経験ですか?

 

『れ、恋愛経験のことではないと思いますが……』

「……ううん、恋愛の話」

『えぇっ!? わ、私に恋愛経験なんてないですよ……もし恋愛経験豊富なら今困ったりしてないです。むしろ私の方が璃奈さんに恋愛相談をしたいくらいです……』

 

 えっ、せつ菜ちゃん恋愛してるんですか? 少し意外ですね(すっとぼけ)

 

『えっと、その……』

「私、せつ菜さんからアドバイス聞きたい。好きな人が私の気持ちに全然気づいてくれなくて、すごく困ってる」

『そう言われましても、璃奈さんもご存じの通り、私も全く同じことで困ってますし……私が消極的すぎるのがいけないのでしょうか……』

「……ごめんなさい、元樹のイタズラに乗っただけだったけど、こんなに真剣に考えてくれるとは思わなかった」

『え……も、元樹さんっ!』

 

 おっとっと、せつ菜ちゃんに怒られてしまいました。顔を真っ赤にしながら怒る表情が可愛くていいゾ~コレ。

 

「せつ菜さん、ごめんなさい」

『大丈夫ですよ。悪いのは元樹さんですし、それにさっきのに比べれば……』

「さっきの?」

 

 そ、それにしても今日のりなりーはなんだかノリがいいですね。何かいいことでもありました?

 

「……うん、あった。すごく嬉しいこと」

 

 ふぅ、何とか誤魔化せましたね。せつ菜ちゃんにセクハラしていたことを知られてしまったらほも君が社会的に死んでしまいますからね。まぁ2人からジト目で見られてしまっていますが、そんなことは些細なことです。りなりーに真実さえ伝わらなければ何でもいいのです。

 

「それと、なんだか元樹が楽しそうだったから、私もつい乗っちゃった。あんなに楽しそうだったのはせつ菜さんと話してたから?」

 

 そうだよ(便乗)

 

『えへへ、照れちゃいますよ~』

「……本題に戻るけど、今日相談したかったのはスクールアイドルのこと、ライブのことについてなんだ」

『ライブ、ですか』

「うん。ライブ経験のあるせつ菜さん、それから元樹の意見が聞きたい」

 

 りなりーはゴソゴソと服の中を探って、璃奈ちゃんボードを取り出しました。わざわざそんなところに隠す必要はないと思うんですけど(名推理)

 

「これ」

『璃奈ちゃんボードですね』

「うん。私はうまく気持ちを表情に出せないから、普段はこの璃奈ちゃんボードを使って気持ちを表現してる」

 

 おや? もしかしてこれは噂に聞く『オートエモーションコンバート璃奈ちゃんボード製作イベント』ですかね。視聴者兄貴の中にもこのイベントのことを知らない方もいらっしゃると思いますので、ここは少し解説をしましょうか。

 

 このイベントはイベント名の通りりなりーがオートエモーションコンバート璃奈ちゃんボードを作る、より正確に言えばそのアイディアを発想するイベントです。発生確率がめちゃくちゃ低く、まさしく激レアイベントです。巷ではクソマズ激レアイベントと呼ばれています。

 このイベントがそんな不名誉な名前で呼ばれている原因は大きく2つ。1つ目が発生条件、2つ目がイベント成功によって得られる報酬です。

 まずは1つ目、このイベントの発生条件は2章突入時点でりなりーの親密度がすごく高い、かつりなりーと同じマンションに住んでいることです。このすごく高いというのは具体的な指標を言うと、告白イベント発生ラインと大体同じくらいです。そんなの2章開始時点で満たすのはかなり難しいですし、同じマンションに住んでいるとなるともはや幼馴染以外では達成不可能な条件です。

 そして問題は2つ目、成功報酬についてです。まずこのイベントは成功失敗の判定があり、その成功確率は大体50%くらいです。そして成功報酬として、りなりーがちゅーをしてくれます。もう一度言います。りなりーが、ちゅーをしてくれます。ほっぺにキスが95%、口へのキスが5%、そして0.1%の確率でエッチに派生するらしいです。

 こんなイベントがクソマズなわけないだろ、いい加減にしろ! と思う兄貴もいるかと思いますが、おっしゃる通り視点によっては超うま味なイベントです。ですがタイムアタック的な視点から見た場合、失敗した場合とほっぺにキスの場合の2パターン、合わせて97.5%のケースで何もプラスな効果を得られない時間の浪費、口にキスの2.5%の確率でキス1回分告白イベント発生率上昇、エッチに派生した場合はただただ時間の浪費となります。はい、これがクソマズ激レアイベと呼ばれる所以です。

 

 さて、発生してしまったものは仕方ないので、適度に期待しつつイベントを消化していきましょうか。

 

「ライブでもきっと表情に出せないから璃奈ちゃんボードを使いたい。けどこのままだと片手が塞がってうまくダンスとかできる気がしなくて……」

『なるほど、確かにそうですね。片手が塞がったままダンスをするのは少し危険ですし……』

 

 では紐とかで頭に固定するのはどうですか? これなら両手ともフリーになりますよ、

 

『でもそれだと目の前が全く見えなくなりませんか』

「うん。それに固定するとページを変えられないから、表情が固定されちゃう。ボード自体を頭に固定するのはいいアイディアだとは思ってるんだけど、さっきの課題2つを解決する方法が見つからない……」

『うーん、そうですね……』

 

 ふむ……ではカメラを使うというのはどうでしょう。例えばボードの上の方にカメラを装着しておいて、その映像をなんかすごい技術でボードの裏側に投影するとか。これなら視界の問題は解決しそうな気がしますよ。

 

「その方法なら解決できるかも。ボードと目の距離が近いから、少し目が悪くなりそうな気もするけど……それにそこまでするなら、ボード自体機械化した方が見た目がいいかも」

『機械化……あっ! 機械で璃奈さんの感情を読み取って、ボードの表情に自動で反映するというのはいかがでしょうか! この方法であれば頭に固定しても表情を変えられますし、自動ですから両手もフリーになります!』

「確かに、課題を全部解決できる……!」

『その、技術的に実現可能なことなのかは私にはわからないですが……』

「……うん、実現できる……はず。少し前に論文で……」

 

 アイディアが閃いたのか、ぶつぶつと呟きながらPCで作業を始めました。これはイベント成功、でいいんですかね? 今はイベント成功確定演出中でしょうか。パチンチ〇コで例えるならば、信頼度1919%の激アツ演出です。

 

『璃奈さん……?』

 

 すごい集中ですね。せつ菜ちゃんが声をかけても、ほも君が後ろから抱きしめても反応を示しません。変に邪魔をして集中力を途切れさすのも悪いので、抱きしめたまま大人しくしていましょう。

 

「……できた」

『えっ、もうですか!?』

「うん、すごく大まかなロジックだけだけど」

『それだけでも十分すごいですよ! さすが璃奈さんです!』

 

 相変わらず素晴らしい技術力ですね。現実では未だに謎技術のオートエモーションコンバート機能ですが、いつになったら本当のオートエモーションコンバート璃奈ちゃんボードが開発されるのでしょうか……。

 

「ロジックはできたけど、作るのが大変。開発しながら、練習しながらだとライブまでに完成するかかなり不安……」

『なるほど……ではものづくり同好会に依頼してみるのはいかがでしょうか』

 

 ものづくり同好会? なんですかそれ。

 

『文字通りものづくりが好きな方が集まっている同好会です。機械工作から電子工作までなんでもござれ、生徒会も時々依頼しているのでその技術力は保証しますよ』

「ありがとう、せつ菜さん。生徒会長のお墨付きなら期待できる」

『よければ私の方から璃奈さんのことを紹介しましょうか?』

「ううん、大丈夫。私のことだから、私自身でやりたい。それに私とせつ菜さんが一緒にいたら、せつ菜さんが生徒会長ってバレちゃう気が」

『ふふっ、心配無用です! 変装には慣れていますので……生徒会長の中川奈々です。……と、こんな感じです。璃奈さんと一緒にいたとしても、すぐに切り替えられますよ!』

「すごい……」

 

 さすがの演技力、というか変装力ですね。声音も表情も一瞬でキリッとしたものに変わりました。ほも君もやろうと思えば紳士から獣へのジョブチェンジは一瞬でできます。この場でりなりーを押し倒してエッチなことだってできちゃうんですよ?

 

『ですが璃奈さんが自分でやってみたいというのであれば、その気持ちを尊重します。もし私の力が必要でしたら、遠慮なく言ってくださいね』

「うん。ありがとう、せつ菜さん」

 

 さてと、話もまとまりましたし、りなりーからのキスをいただいてからお風呂に向かうとしますかね。

 

「うん、いってらっしゃい。このまませつ菜さんと話しててもいい?」

 

 もろちんいいですけど……あれ、キスはしてくれないんですか?

 

「……どうしたの?」

 

 どうしたも宮下も何も、イベント成功報酬のキスは? もうほも君お風呂に行っちゃうけどいいんですか? 後ろからぎゅーってしてあげてるのも終わるけどいいんですか? キスするなら今が最大最高のチャンスですよ。

 

「抱きしめられるのは嬉しい。でもせつ菜さんが見てる前だと恥ずかしいから……」

 

 やんわりとりなりーに拒絶されてしまいました。なんてことを……(憤怒) とは言いつつも振り解こうとしないあたり、貧弱ほも君のことを気遣ってくれているのか、それとも本心では離してほしくないのか、少し判断しかねますね……ま、えやろ。どうせ風呂には入らないといけませんし、ここで離しても誤差ですよ誤差。

 というわけで、うだうだやってましたけどそろそろお風呂にイキますよ~イクイク……あっ、そうだ(唐突) りなりーのことは当然信頼していますが、念のため、メッセージアプリや写真フォルダは見ちゃダメですからね? せつ菜ちゃんとのあられもない会話の履歴や、せつ菜ちゃんのあられもない写真が山ほど出てきてしまいますから。

 

「大丈夫、そんなことはしないから。このせつ菜さんとの通話画面からは切り換えない」

『はい、私も璃奈さんとお話ししたいですから。元樹さんはゆっくりお風呂を楽しんできてください』

 

 (RTAなのでゆっくりとはしてられ)ないです。どのみち一瞬でお風呂は終わるので、ほも君が長風呂しようが関係ないですが。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




次回はサイドストーリーの予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイドストーリー Part29/m

2024年なので初投稿です。

本当は年内に投稿したかったですが、年をまたいでしまいました。


 元樹さんが部屋を出てから数十秒、こちらをじっと見つめる璃奈さんの視線に圧を感じる。やっぱりこっそり元樹さんと通話していたことに怒っているのでしょうか……。

 

「……」

『……』

 

 き、気まずい……何か話さなければ。でも何を話せば……今更ですが、璃奈さんと2人きりで話したことはありませんでしたね。いっそのこと、ずっと気になっていたあのことを聞いてみますか。璃奈さんは私のことをどう思っているのか。璃奈さんから見れば私は恋のライバル。パッと思いつく話題もありませんし、思い切って聞いてみましょう。

 

「あの、璃奈さん。その……」

『?』

「……璃奈さんは、私のことどう思ってますか?」

『せつ菜さんは……私にとって憧れで、尊敬できる、すごくかっこいい先輩。スクールアイドルのことも、それ以外のことも、いっぱいせつ菜さんから学びたい。……どうしてこんなこと聞くの?』

「私は璃奈さんにとっては恋のライバルですし、その、勝手に元樹さんとキスまでしてしまっていますし、もしかしたら嫌われているのではないかと……」

『大丈夫、それは絶対にない』

 

 しっかりとこっちを見つめて、嘘も偽りもないといった表情で答える。

 

『確かにせつ菜さんは恋のライバルで、せつ菜さんに嫉妬しちゃうこともある。でも元樹のこと大好きなのも伝わってくるから。元樹が独りぼっちじゃなくて幸せになれるなら、元樹の隣にいるのが私じゃなくてもいい……って最近思うようになった』

「……璃奈さんは、ほんとに元樹さんのことが大好きなんですね」

『うん。今も昔もずっと……』

 

 言葉の途中で璃奈さん体が跳ねる。と同時にドアが開く音が聞こえた。もしかして元樹さんが戻ってきたのでしょうか。

 

『ど、どうしたの?』

パンツ忘れたー。……あった。と思ったら違う、これ璃奈のだ

『恥ずかしいから言わないでいい。あとあまりまじまじ見ないでほしい……』

 

 璃奈さんの下着!? もしかして元樹さんの部屋に常備してるんですか!? まるで同棲してるような……なんだか幼馴染という特別な関係性を見せつけられている気がします……。

 

せつ菜先輩と何話してたん?

『んー、元樹のこと』

へー……大丈夫? 俺悪口とか言われてない?

『それは絶対にないから大丈夫。せつ菜さんは人の悪口を言うような人じゃないから』

……それもそうか。じゃあどんなこと言ってた? 璃奈とせつ菜先輩が俺をどう思ってるのか気になるんだけど

『……せつ菜さん、どう?』

「えぇと……と、とっても大事な可愛い後輩……ですよ?」

ふーん……璃奈は?

 

 なんかさらっと流されてしまいました……もしかして私には興味ないのでしょうか……。

 

『……言わないとダメ?』

もちろん

『……何よりも大事で、 大好きな幼馴染』

そうかそうか、満足満足

 

 ガチャリと再びドアが開く音が聞こえる。今度こそお風呂に向かったのだろう。さっきの元樹さんの対応に少し気を落とした私と、顔を赤くして俯く璃奈さんだけがこの場に残った。

 

『……私は、今も昔も、これからもずっと元樹のことが大好き。世界で一番愛してる』

「私も元樹さんのことが大好きです。でも元樹さんはもしかしたら私のことなんて……」

『どうして?』

「さっき私の言葉に対して特に反応がなかったので……」

『あー……大丈夫。せつ菜さんには見えてなかったけど、さっきの元樹、せつ菜さんの言葉を聞いてすっごいニヤニヤしてた。多分嬉しかったんだと思う。元樹もせつ菜さんのこと大事に思ってるから』

「そう、なんですか?」

『うん。せつ菜さんを同好会に連れ戻す時も自分1人でやりたいって。あの時の元樹は何か抱え込んでるみたいだった。けど、誰かのためにあそこまで必死になる元樹は久しぶりに見た。それくらいせつ菜さんのことが大事だったのかなって』

「そうだったんですね……」

 

 あの時の私は元樹さんのことを拒絶してしまったのに、それでも私のことを想ってくれていたなんて、そんなのもっと大好きになってしまいます。

 今すぐにでも会いに行って抱きしめたい。抱きしめられたい。ありがとう、大好きと伝えたい。けれど物理的な距離がそれを邪魔する。私も璃奈さんみたいに、会いたくなったらすぐにでも会いに行けるような距離だったらよかったのに……。

 

「折角ですから喜んでる時の元樹さんの顔、見てみたかったです」

『さっきの元樹は上半身裸だったから、映ろうとしても私が止めてた』

 

 上半身裸……何故璃奈さんはそれを見て平然としていられるのでしょう。もしかして見慣れてる……?

 

『prpr』

 

 スマートフォン越しに、璃奈さんのスマートフォンの着信音が聞こえる。

 

『あっ、ごめんなさい。元樹のお父さんから電話』

「え……元樹さんのお父さんから、璃奈さん宛てに、ですか?」

『うん。少し出てもいい?』

「はい、もちろん大丈夫ですよ」

『ありがとう』

 

 当たり前ですけど、幼馴染となると当然家族同士のお付き合いもあるんですね……『幼馴染は恋愛においては負けフラグ』なんて言葉もありますけど、今実際に恋をしている私からしてみれば、負けフラグどころか圧倒的な勝ちフラグに見えます……。

 

『……よかったらせつ菜さんも話してみる?』

「えぇ!? わ、私はいいですよ……元樹さんと璃奈さんの家庭同士のお付き合いだと思いますので……」

『気にしなくても大丈夫。それに、元樹に友達がいるって知ったらおじさんも喜ぶ』

「そうなんですね。では私も少しだけ……」

 

 元樹さんのお父さん……別にご挨拶に来ているわけでもないですし、直接お会いしているわけでもないのに、少し緊張してしまいます……一体どんな方なのでしょうか。

 

『……もしもし。おじさん、久しぶり。うん……うん、大丈夫。私も元樹も元気。……元樹は今お風呂。……うん、多分当分出てこない、……テスト? 私は大丈夫だった。でも元樹は半分以上赤点だったって。……うん、わかった。次は一緒に勉強する』

 

 学校の成績の話ですね。元樹さんが留年しないよう、私も勉強を教えてあげたいです。

 

『今私と元樹の先輩と通話してるから、おじさんとの電話スピーカーモードにしてもいい? 先輩もおじさんに挨拶したいって。……うん、ありがとう。せつ菜さん、おじさんもせつ菜さんと話したいって』

「ありがとうございます。……は、初めまして。虹ヶ咲学園2年の中川奈々と言います」

『うん、中川奈々さんだね。いつもうちの元樹がお世話になってます。せつ菜というのはあだ名か何かかな』

「えっと、せつ菜というのは芸名みたいなものといいますか……私はスクールアイドルというものをやっていて、その活動を行う際は優木せつ菜と名乗っているんです」

『へぇ、スクールアイドル……みゅーずとかあくあだったかな、私も聞いたことがあるよ』

『私も元樹もスクールアイドル同好会に入ってて、せつ菜さんと一緒に活動してる』

『璃奈ちゃんもスクールアイドルかー……ん? 元樹もスクールアイドルをやってるのかい?』

「あ、いえ、元樹さんはマネージャーみたいなことをやってくださっていて、いつも私達のことを支えてくれているんです」

『あー、なるほど、マネージャーね』

 

 確かにスクールアイドル同好会所属とだけ聞くと、元樹さんもスクールアイドルをやっているように想像してしまいますね。男性スクールアイドルも最近徐々に増えてきてはいますが。

 

『せつ菜さん、元樹は皆に迷惑をかけたりしてないかな? 大丈夫?』

「迷惑だなんてそんな! むしろ私は元樹さんにお世話になりっぱなしで、大きな恩もありますし……元樹さんは私含め同好会の皆さんから愛されていて、同好会にも私にも必要不可欠な存在です』

『そうかそうか、それはよかったよ』

『今の元樹は友達がいっぱいだから、おじさんも安心してほしい』

『璃奈ちゃんが言うなら安心だ。あの子から璃奈ちゃん以外の話を聞いたことがなかったから、ちゃんと友達がいるのか心配してたんだよ』

「心配には及びません。元樹さんはコミュニケーション能力が高いですから、きっとクラスでも人気者だと思います」

『そうだといいんだけど……』

 

 元樹さんのお父さんは、妙に元樹さんの交友関係が心配なようだ。親心、というものでしょうか。私ももし自分が親だったら、子供にちゃんと友達がいるかは心配してしまうかも……逆に私の両親はそういったところは全く気にしませんし、親心もそれぞれですね。私も人の親になれば、両親の気持ちを今よりも理解できるようになるのでしょうか……。

 

『……おじさん、元樹って普段私についてどんな話してるの?』

『えー、うーん、そうだなぁ……今からする話についてはあの子には内緒ね。あの子いっつも璃奈ちゃんとどこに行っただの、何をしただの、どこが可愛かっただの、もうほとんど惚気話なんだよ。最近だとジョイポリスに2人で遊びに行った、勝負に勝ってドヤ顔するところが可愛い、とかね』

『は、恥ずかしい……けど嬉しい』

 

 元樹さん、普段から璃奈さんをそんな風に……もしかしたら私のことも口に出さないだけで、同じように思ってくれてたりも……。

 

『そうそう璃奈ちゃん、最近元樹とはどうだい?』

『うーん、進展らしい進展はないと思う。付き合ってるわけではないし、気持ちを伝えても伝えられてもいない。でも喧嘩とかはしてないから、良くも悪くも今まで通り』

「璃奈さんにとっては今まで通りだとしても、私から見たらすでに恋人同士のように見えますよ……」

『そうなの?』

「はい。先程のやり取りだったり、学校でのお二人を見ていると、なんというかこう……特別な感じと言いますか、お互いがお互いに、誰よりも気を許しているような感じがして……すごく、羨ましいです」

 

 璃奈さんの前だとほんの少しだけ弱音を吐くことがあったり、逆にかっこつけたいのか見栄を張ったり……

 

『幼馴染ってのはあるかもしれないけど、あの子は昔から璃奈ちゃんにべったりだったからね。きっと今でもあの子の中で一番頼れる存在は璃奈ちゃんなんじゃないかな』

『……璃奈ちゃんボード『てれてれ』』

「そ、そんなにべったりだったんですか?」

『うーんそうだねぇ、璃奈ちゃんからくっついて離れないくらいだったね。小学校4年生くらいまでかな、そのくらいまで元樹はホントに内気だったから、少なくとも私は璃奈ちゃん以外の友達は見たことがなかったね』

「内気な元樹さん……今の元樹さんからは想像できません」

『聞いたら多分皆ビックリすると思う』

「そこまで違うんですか?」

『うん。私が話しかけるまでずっと1人だったし、打ち解けるまですごく時間がかかった。打ち解けるまではなかなか目を合わせてくれなかったし、たまに逃げられた』

「……これは確かにビックリです。2人の関係は璃奈さんから始まったんですね」

『うん』

 

 てっきり元樹さんのあのフレンドリーな感じから始まった関係だと思っていましたが……今の元樹さんだけを知っている人が聞いたら、きっと誰でもビックリするでしょうね。

 

『打ち解けてからは元樹から話しかけてくれるようになった、おままごととかでいっぱい遊ぶようになった。2人で集まってそれぞれ別の本を読んだりもしてた。本当は一緒の本を読みたかったけど、元樹のセンスが独特で……』

「それは時々感じていますが、昔からそうだったんですか?」

『うん。ずっとラーメン漫画読んでたし、おままごとでもラーメン屋さんごっこがしたいってずっと言ってた。ちなみに幼稚園の時の話』

「元樹さんがラーメン好きなのは知っていましたが、幼稚園の頃からだったんですね」

『私がラーメン好きで、昔よく連れ回してたからね。その影響が大きいのかもしれない』

「なるほど、お父さんの影響……」

 

 そういえば、以前オススメのお店を教えてもらった時、親とよく行ったお店だとおっしゃっていましたね。まだ行けていませんし、今度元樹さんをお誘いして連れて行ってもらいましょう。

 

『……おっと、もうそろそろ次の予定が。申し訳ないけど私はこの辺で。璃奈ちゃんと久しぶりに話せてよかったよ。これからも元樹のことをよろしく』

『うん、まかせて』

『せつ菜さんも今日はありがとうね。璃奈ちゃん以外にちゃんと友達がいるって知れて安心したよ。これからも仲良くしてもらえるとありがたいな』

「お任せください!」

『ああ、あとせつ菜さん、璃奈ちゃんに負けないように頑張ってね。あの子は意外と人の感情に疎いからグイグイ行った方がいいよ』

「はい! ……んん? あの、今のは……」

『……切れちゃった』

「そ、そうですか……」

 

 今のはその、そういうこと、ですよね……? まさかこの短い時間で私の気持ちでバレてしまうとは……元樹さんのお父さんは鋭いです。元樹さんが鈍感すぎて基準がおかしくなっているだけかもしれませんが……どうして当の本人はあんなに鈍感なのでしょう……はぁ……。

 

『……おじさん、すごく嬉しそうだった。ありがとうせつ菜さん』

「いえ、私も元樹さんのお父さんに挨拶ができてよかったです。その、認めてもらえたようでしたし……」

『せつ菜さんの元樹への気持ちが、多分電話越しでも伝わったんだと思う』

「そ、そんなに分かりやすかったですか……?」

『うん』

 

 初めて会う方にも分かるくらい大好きが溢れてしまってるのに、元樹さんは鈍感すぎます……。

 

『せつ菜さん以外にも元樹のこと好きな子がいるって知ったら、おじさんなんて言うかな』

「どうでしょう……まず事実かどうか疑うような気がします。10人ちょっとの同好会メンバーの中に、まさか4人も元樹さんのことを好きな人がいるなんてなかなか信じられる話ではないですし」

『……確かに』

 

 「そんなラノベのハーレム作品の主人公じゃあるまいし」と私自身思ってしまう時もありますし。

 

ふぅ、いい湯だった

『おかえり』

「元樹さんおかえりなさい!」

『よっこらせ』

 

 お風呂上がりの元樹さんは再び璃奈さんの後ろに座り、ギュッと後ろから抱きついた。先程も同じことをしていましたが、2人きりの時は普段もこのような感じなのでしょうか……。

 

『……何かあった?』

『うーん……どうしてそう思った?』

『いつもより甘えん坊さんだから』

『……嫌?』

『嫌じゃない。ただ心配なだけ』

『……大丈夫。璃奈が心配してるようなことはないよ』

『ん、ならいい』

 

 甘い、甘いです……こんなのを目の前で見せられたら心が折れてしまいそう……いえ、こんなことで挫けてはいけません! 璃奈さんもかすみさんもしずくさんも、皆さん強力なライバルだなんてわかっていたことなんですから! さっきほどのアドバイス通り、私もグイグイ行きましょう!

 

「元樹さん、明日予定は空いてますか? その、以前教えていただいたラーメン屋さんに連れて行っていただきたくて」

『すみません、明日は空いてないんですよ。でもそうですね……明後日月曜の部活帰りとかはいかがですか? あそこ来週の平日いっぱいで閉店しちゃうので』

「そうなんですか?」

『え、そうなの?』

「璃奈さんも行ったことがあるんですか?」

『うん。昔は元樹と一緒によく行った。すっごく美味しかった。でも閉店するなんて知らなかった……』

『らしい。この前SNSで言ってた。まぁおじちゃんも年だからなぁ……璃奈も一緒に行く?』

『私も行きたい。最後に挨拶したい。私のこと覚えてないかもしれないけど……』

『覚えてると思うよ。俺一人で行くたび、今日は璃奈と一緒じゃないのかって聞いてくるし』

『そうなの? 嬉しい』

『よしっ、じゃあ璃奈も一緒な。侑先輩には……まぁ明日言えばいいか』

 

 うぅ、本当は2人で行きたかったのに……ですが璃奈さんにとってもなじみのお店、しかももうすぐ閉店してしまうのであれば仕方ないですよね。どうして侑さんが出てくるのかはわかりませんが。もしかして侑さんとも一緒に行く約束をしていたのでしょうか。私にはオススメしてくれただけなのに……むぅ。

 

『せつ菜先輩は月曜日で大丈夫ですか?』

「はい。生徒会の仕事はないので、おそらく大丈夫です」

『りょーかいです。じゃあ月曜日一緒に行きましょう。あー今から楽しみだ。楽しみすぎてお腹空いてきたー』

「ふふっ、よだれが出ていますよ」

『おっと、いけないいけない』

「そんなに美味しいんですか?」

『はい! もうめっっっちゃ美味いんですよ! 一番人気は王道醤油ラーメンなんですけど、それがもう絶品なんです。スープが美味いのはもちろんのこと、トロトロチャーシューだし、何より麺が美味い! 今でも行列ができるお店なんです!』

 

 少年のように自分の大好きを熱弁する元樹さんが可愛らしくて、ついつい笑みがこぼれてしまう。初めて会った時のことを思い出しますね。あの時は確かエマさんにラーメンについて教えていました。途中から彼方さんも加わって、最終的には美味しい味噌料理の話になっていましたが。私も料理には少し自信がありますから、次の機会では私も話に混ざりたいです。

 

『……あ、すみません。ついつい話しすぎちゃいました』

「いえ、大丈夫ですよ。楽しそうな元樹さんを見れて私も幸せですし、何より今の話を聞いてもっと楽しみになってしまいました」

『それはよかったです。マジで美味いので楽しみにしててください! ……なんかラーメンの話してたらお腹空いてきたな。インスタントラーメン食べよっかな』

「夜食はあまり健康に良くないですよ」

『大丈夫ですって。普段は夜食なんて全く食べないので』

「それならいいですが……」

『よいしょっと、早速作ってこよっと。璃奈も食べる?』

『んー……食べる』

『醤油と塩どっちがいい?』

『醤油ラーメンがいい』

『りょーかい』

 

 ……先程はああ言いましたが、目の前で夜食の話をされると私も食べたくなってしまいます……勝手に食べると怒られてしまうので食べないですが。

 

『……元樹、ちょっと待って』

『ん?』

『よいしょ……』

『むぅっ』

「え゛っ!?」

 

 画面の向こうの璃奈さんは後ろを振り向き元樹さんの肩に手を置いた後、何かを元樹さんにしました。……いえ、何かではないですね。きっとキスをしているんだと思います。だってわずかに見える元樹さんの右目が驚きで大きく見開かれていますから。

 ……こんな状況でも意外と冷静でいられるものなんですね。画面の向こうで起きている出来事だからでしょうか、それとも唐突すぎて実感がないのか……。

 

『……えっと、璃奈……?』

『さっきのお礼。……ラーメン、作らないの?』

『作る、けど……けどさぁ……けどなぁ……

 

 2人とも顔をこれ以上ないくらい赤く染め、お互い目を逸らしている。やがて元樹さんはブツブツと呟きながら立ち上がり、部屋から出ていってしまった。

 

『…………ドキドキした』

「えっと、璃奈さん?」

『ごめんなさい。本当は後で、せつ菜さんが見てないときにするつもりだった』

「あ、キスする予定はあったんですね……」

『うん。アイディアだしを手伝ってくれたお礼。せつ菜さんの前だと恥ずかしいし、申し訳ないから後でほっぺにするつもりだった。でもおじさんがせつ菜さんにグイグイ行くべきって言ってるのを聞いて、せつ菜さんが元樹をデートに誘ってるのを見て、私もグイグイ行かなきゃって思ったから』

 

 なるほど。あの言葉は私の心に火をつけると同時に、璃奈さんにも届いていたんですね。恥ずかしそうに唇を指でなぞる璃奈さんを見ていると、少しだけ悔しさがこみあげてくる。やはり私も電話越しではなく、直接元樹さんとお話ししたかったです……。

 

『だから口にチューをしたし、少しだけ牽制のつもりでせつ菜さんが見てる前でした。すごく恥ずかしかったから、一瞬しかできなかったけど……』

「も、元樹さんの反応は……?」

『せつ菜さんが見てた通りただただビックリしてた。……せつ菜さんの時はどんな反応だったの?』

「えっと、私の時は……」

 

 初めての時は状況も状況だったので悲しそうな表情をしていました。こちらについては話さなくてもよいですかね。2回目の時は……

 

「はじめは戸惑っていましたが、私の体に手を回して、次第に元樹さんの方から求めてくれるようになりました」

『そう……私の時はそんなことしてくれなかった……』

「わ、私の時はかなり長い時間してましたから」

『……私も、恥ずかしがらずもっとしたらよかった』

 

 その時は私が止めてしまっていたかもしれませんが……。

 

『せつ菜さんはキスした時恥ずかしくなかったの?』

「んー、恥ずかしいって気持ちはほとんどありませんでしたね。歌った後で気分が高揚していたので」

『屋上でライブした時のこと?』

「はい。元樹さんに抱きしめられて、ついそのままの流れで……」

『……私も、次の機会があれば、その時は……』

 

 次の機会……私に次の機会はあるのでしょうか……いえ、違いますね。あるかどうかではなく、私から機会を作りにいかないといけないんです! 璃奈さんに、しずくさんかすみさんにも負けないように!

 

「……あっ、すみません。そろそろ日課の勉強の時間なので……」

『うん。今日はありがとう。すごく助かった』

「いえいえ、璃奈さんの力になれてよかったです」

『月曜日にせつ菜さんにもお礼させてほしい』

「ありがとうございます。楽しみにしていますね」

『うん、バイバイ』

「はい、また月曜日に」

 

 通話が切れ、元樹さんとのトーク画面に戻る。最後に元樹さんにも挨拶したかったですが、会ったら会ったで少し気まずいですし、これでよかったのかもしれません。

 

「よーし、今日も頑張って勉強しますよー!」

 

 いろいろ事件はありましたが、元樹さんと話したことで元気をいただけましたし、2人っきりではないですがお出かけの約束もできました。モチベーションマックスでこの後の勉強も頑張れそうです!

 

『ぐぅ~』

 

 ……勉強が終わったら、ダメもとで夜食のラーメンのお願いをしましょうか。




璃奈ちゃんとのキスという最終着地点ははじめから決めていましたが、それをどのタイミングでどういう流れにするかでかなり迷いました。
結果年内に間に合わなかったうえに、雑な着地になりました。まいったねこりゃ。

次回は本編、今回のサイドストーリーの途中からを走者視点で走ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part52/n

あなたちゃん……もう一度……もう一度君の居る世界を創ろう

― 無限月読 ―


 イベントムービーをスキップできなくてタイム伸び伸びなRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はりなりーに感謝のキスを拒絶されてしまい、意気消沈しながら入浴へと向かいました。今回はその続きからで、ほも君の入浴タイム……の前に、どうやら着替えの下着を持ってくるのを忘れてきてしまったようです。というわけで自室に取りに戻りましょう。

 

「ど、どうしたの?」

 

 ほも君がついうっかり下着を忘れてしまったので、それを取りに戻った次第であります。クローゼット物色させてもらうね。

 よし、見つけました。……と思いましたが、これはりなりーの下着でした。何故同じ籠にほも君とりなりーの下着が一緒に入ってるんですかね。そんなことしちゃあダメだろ!

 

「恥ずかしいから言わないでいい」

 

 ショーツだけじゃなくブラジャーまでも一緒に突っ込まれています。まったく、ほも君はだらしないというかデリカシーがないですね。こんなのりなりーが見たらプンプン丸確定ですよ。

 ふーむ、りなりーの下着は白ですか。何か装飾がついているわけでもないですし、際どいデザインでもありません。ほも君の家に置いておくものだから、あえてシンプルなものを置いてるんですかね?

 

「あとあまりまじまじ見ないでほしい……」

 

 おっとっと、りなりーに怒られてしまいました。恥ずかしそうにしながらも、しっかりと冷ややかな目で見てきます。ご機嫌取りとして、少しりなりーと雑談しましょう。そうですねぇ……ほも君不在の間、せつ菜ちゃんとどんな会話をしてたかでも聞きましょうか。

 

「んー、元樹のこと」

 

 ほうほう、ほも君のことですか。悪口とか言われてないか心配になりますね。鈍感だとか、いつも女の子を侍らせてるとか、あることないこと陰口を言われていたら……。

 

「それは絶対にないから大丈夫。せつ菜さんは人の悪口を言うような人じゃないから」

 

 それもそうですね。りなりーもせつ菜ちゃんも、どころか同好会メンバー全員、他人の悪口は言わないですもんね。

 では一体ほも君のナニについて話していたんでしょうか。2人がほも君のことをどう思ってるのか、気になっちゃうってはっきりわかんだね。

 

「……せつ菜さん、どう?」

『えぇと……と、とっても大事な可愛い後輩……ですよ?』

 

 なるほど、大事で可愛い後輩ですか。そこは「大好き、ほも君に片思い中、らぶらぶりん」とか言うべきダルルォ!? まぁ私はせつ菜ちゃんのこと大好きなので、実質両想いですけどね。あ^~早くせつ菜ちゃんと通ずる突っ込むしたいです。

 ほも君自身は大事な後輩と言われてとっても嬉しいようで、ずっとニヤニヤしてます。愛されて嬉しいねぇ。最終的に11人からの愛を受け止める必要があるのですが、この程度で満足しているほも君に受け止められるのでしょうか。

 ところで、りなりーはほも君のことをどう思ってるんですか? りなりーの告白も聞きたいです。

 

「……言わないとダメ?」

 

 当たり前だよなぁ? 先輩に言わせておいて、自分は言わないはなしですよ。

 

「……何よりも大事で、大好きな幼馴染」

 

 ふむふむ、最後を幼馴染にしたあたりちょっと日和りましたかね? そこは大好きな男の子とか異性とか言ってくれないと、鈍感なほも君は気づけないので困るんですよね。次回は気を付けてください。

 ちなみにほも君は今のりなりーの言葉で大満足なようです。ご機嫌取りもできましたし、顔を赤くしたりなりーを放置してお風呂に戻りましょう。イキますよ~イクイク。

 

 

 

 ふぅ、いいお湯でした。ほも君の入浴シーンは当然ありません。りなりーが乱入してこなかったからね、しょうがないね。さてと、愛しのりなりーが待っている自室に戻りましょうか。

 

「おかえり」

『元樹さんおかえりなさい!』

 

 部屋に戻るとりなりーとせつ菜ちゃんが出迎えてくれました。まだ通話してたんですね。アニメの話で盛り上がったのでしょうか。まぁ話題についてはあまり興味がないので、とっとと腰を下ろしましょう。……おや? 何故かりなりーに抱きつくが選択肢にありますね。隣に座るつもりでしたが、折角なので後ろから抱きつきましょう。どうやら今日のほも君は甘えん坊モードのようです。

 

「……何かあった?」

 

 今日のほも君の様子に、りなりーも何かを感じ取ったようです。幼馴染のりなりーから見ても今日は少し様子がおかしいのでしょう。

 

「いつもより甘えん坊さんだから」

 

 りなりーはほも君に甘えられるのは嫌なのでしょうか? 嫌なら教えてくださいね。セーブデータを消して、すべてをはじめからやり直しますので。

 

「嫌じゃない。ただ心配なだけ」

 

 どうやら抱きしめられて嬉しいとかの前に、ただただほも君のことが心配なようです。嬉しくておちんちんから涙が出、出ますよ……。

 りなりーが心配しているような、何か悲しい出来事があったとかではないので安心してください。11股を最速で達成するために効率的なルートを行き当たりばったりで選んでいるだけですので。

 

「ん、ならいい」

 

 安心したのか、りなりーもほも君に体を預けてくれました。超絶密着状態なわけですが妙に冷静ですね。頬を赤らめるとかもありません。この程度のスキンシップは慣れっこって感じなのでしょうか。

 対照的にせつ菜ちゃんは羨ましそうに口をもにょもにょさせ、りなりーを凝視しています。せつ菜ちゃんも我が家に遊びに来てくれたら、ハグでもキスでも3Pでもいくらでもしてあげますよ。技能2の自称エッチが上手な人間の指先テクで、りなりーとせつ菜ちゃんを気持ちよくしてあげましょう。

 

『元樹さん、明日予定は空いてますか? その、以前教えていただいたラーメン屋さんに連れて行っていただきたくて』

 

 せつ菜ちゃんからのデートのお誘いですね。今の2人を見て負けてられないと思ったのでしょうか。ですが残念、明日はピクニックがあるんですよ。親密度が告白ライン未満の彼方さん、エマさん、侑ちゃんがいますので、絶対に休めないんですよね。

 というよりもせつ菜ちゃんに教えたラーメン屋ってどこのことなんでしょうか。私は記憶にないですが、ほも君のメモリーにはがっちりリメンバーされてるので、私がゲームをスタートする前の出来事なんですかね。……おっと、SNS情報によると、どうやらそのお店は来週いっぱいで閉店してしまうそうです。悲しいなぁ……。

 せつ菜ちゃんとのデートなのでRTA的には別に行かなくてもいいんですが、ほも君はどうしても行きたいようです。こっちの事情も考えてよ(棒読み) ですがほも君自身が行きたいなら仕方ないですね。行くなら月曜日放課後とかでしょうか。週末にはもうお店が閉まってますからね。

 

『そうなんですか?』

「え、そうなの?」

『璃奈さんも行ったことがあるんですか?』

「うん。昔は元樹と一緒によく行った。すっごく美味しかった。でも閉店するなんて知らなかった……」

 

 店主さんがお年なようで……りなりーも行きたそうですね。一緒に行きますか?

 

「私も行きたい。最後に挨拶したい。私のこと覚えてないかもしれないけど……」

 

 覚えてるんじゃないですかね(適当) ピンクの付箋みたいな髪型の子なんて早々忘れないと思いますよ。それに、ほも君が1人で行くと、りなりーは一緒じゃないのかといつも聞かれてたみたいですしね。

 

「そうなの? 嬉しい」

 

 じゃありなりーも一緒にですね。2人っきりを望んでいたであろうせつ菜ちゃんは複雑な表情をしていますが、気にしたら負けです。

 侑ちゃんには明日報告しましょうか。侑ちゃん宅にお泊りする日ですからね。なんなら侑ちゃんもついてきてくれた方が嬉しいです。それどころか、いっそのこと同好会メンバー全員で行って、一気に親密度を稼ぎたいです。

 今更ですが、せつ菜ちゃんも月曜日で大丈夫ですよね?

 

『はい。生徒会の仕事はないので、おそらく大丈夫です』

 

 では月曜日で決定で。今から楽しみすぎて、口からよだれが出てしまいますね。

 

『ふふっ、よだれが出ていますよ。そんなに美味しいんですか?』

 

 そんなに美味しいんです。あのースープの醤油がすごくて、麺もすごくて、具もすごくて、すごいんです。

 ……ほも君の話が長いですね。ずっとそのラーメンのどこがすごいかを熱弁しています。RTAなんだから早くしてくれよな~頼むよ~。

 せつ菜ちゃんも、さすがにほも君の話は長いと思いますよね?

 

『いえ、大丈夫ですよ。楽しそうな元樹さんを見れて私も幸せですし、何より今の話を聞いてもっと楽しみになってしまいました』

 

 うぅ、せつ菜ちゃん、天使やなぁ~。純粋無垢なペカペカ笑顔がRTAで消耗した心と体とチャートに染み渡ります。

 おっとっと、ラーメンの話をしていたら、ほも君が飢えてきてしまいました。お腹がぐーぐーなっています。この辺にぃ、うまいインスタントの袋麺、貯蓄してるらしいんすよ。

 

『夜食はあまり健康に良くないですよ』

 

 大丈夫っすよバッチェ健康管理してますよ。普段夜食なんて全く食べませんからね。それに11股できるまで健康でいてくれさえすれば、それ以降のことはどうでもいいのです。

 

『それならいいですが……』

 

 よし、せつ菜ちゃんからも了承をもらいましたので、早速作りに行きましょう。りなりーも食べますか?

 

「んー……食べる」

 

 一瞬迷いがありましたね。カロリーとかを気にしたのでしょうか。ですが食べるとのことなので、遠慮せず1人前を作ってきてあげましょう。取り入れすぎたカロリーは後で一緒にベッドで運動をして消費しましょうね。

 あっ、そうだ(唐突) 味は味噌でいいですよね? 味噌こそが最強のラーメンですし。

 

「醤油ラーメンがいい」

 

 やっぱり醤油ラーメンが一番ですよね。りなりーが言うなら間違いありません。というわけで醤油ラーメン2人前を作りにイクゾー!デッデッデデデデ!

 

「……元樹、ちょっと待って」

 

 はい? わざわざ体をこっちに向けて、一体何の用でしょうか。

 

「よいしょ……」

『え゛っ!?』

 

 ファッ!? な、ななな、なんと……りなりーからキスされちゃいました! 恥ずかしそうに、ほんの一瞬だけのキスでしたが、間違いなく唇と唇が触れ合っていました。

 恋敵のせっつーの前で、見せつけるようにするのはまずいですよ! 嫉妬しているであろうせつ菜ちゃんの顔を見るのが怖すぎるッピ! スマホの画面から目を逸らしておきましょう。

 

「さっきのお礼」

 

 やっぱり先程のイベントの成功報酬だったんですね。タイミングはかなり謎ですが……。

 

「……ラーメン、作らないの?」

 

 もちろん作りますよ。ただりなりーのキスにほも君が動揺してしまって、動きが止まってしまっているのです。せつ菜ちゃんや栞子ちゃん、しずくちゃん、かすかすの時はフリーズどころか、動揺すら一切しなかったのに、どうしてりなりーの時だけ本気で動揺してるんですかねぇ……。

 よし、ようやくほも君がフリーズから復帰しました。顔を真っ赤にして同じくフリーズしているりなりーは放置しておいて、とっととラーメンを作りに行きましょう。

 

 

 

「……」

 

 お待たせしました。ラーメン完成しましたよーと。塩ラーメンしかなかったけどいいかな?

 

「醤油……」

 

 実は醤油ラーメンの在庫がなかったんですよね。なので仕方なく塩ラーメンにしました。すみません許してください! なんでもしますから!

 

「それなら仕方がない。許してあげる」

 

 ありがとナス! ……おや? せつ菜ちゃんとの通話タイムは終わったんですか?

 

「うん、勉強の時間だからって。はい、元樹のスマホ」

 

 そうなんですね。ちゃんと勉強していて、せつ菜ちゃんはえらいですね。折角りなりーもいることですし、ラーメンを食べ終えたらほも君も勉強をしましょう。りなりー得意科目の数学なんていいのではないでしょうか。

 

「いただきます。ちゅるっ……ん、美味しい」

 

 よかったです。ラーメンを食べるには少し距離が近すぎるのが気になりますが、まぁ誤差でしょう。さっきの出来事があってからの今ですからね、りなりーもマグネットしたくなるのでしょう。

 

「もぐもぐ……あ、さっき元樹のスマホに侑さんとエマさんから連絡があった」

 

 侑ちゃんとエマさんからですか? ……ああ、そういえば侑ちゃんとは明日の集合場所決めようねと約束してたんでした。思ったよりせつ菜ちゃんとの通話が長引いて、侑ちゃんのことをすっかり忘れてしまっていました。

 電話に出なかったほも君を見かねて、どうやら侑ちゃんが集合場所を提示してくれたようです。えぇと、乗り換えが必要な駅での集合ですね。ここなら余計な寄り道せず最短で行けますね。ここでOKですと返しておきましょう。あと誠実なところを見せるため、『Chu! 電話できなくてごめん』と一言添えておきましょう。セクハラなんて言語道断、ほも君は誠実な紳士ですからね。

 

「……明日は侑さんとお出かけするの?」

 

 おっとっと、りなりーにチャット画面を盗み見られていました。頭に来ますよ! まぁ2人の間に堂々とスマホを置いて、りなりーにも見える状態でチャットをしてるほも君が1919%悪いんですが。

 見られてしまってはもう誤魔化せません。正直に話しましょう。明日は侑ちゃんとお出かけするんです。2人きりではなくて、エマさん、彼方さん、ドスケベお尻水着フィギュアちゃんも一緒ですけどね。皆でピクニックです。

 

「ピクニック、楽しそう」

 

 りなりーも一緒に行きますか?

 

「私は……やめとく。新型璃奈ちゃんボードの設計を詰めたいから」

 

 ふむ、ではりなりーは不参加ということで。りなりーが参加するとチャートが崩れてしまいますので、正直助かりました。

 さて、次はエマさんからの連絡ですね。一体何用でしょうか。

 

『明日学生寮に来てもらっても大丈夫? 果林ちゃんも誘いたくて!』

「……果林さんも来るの?」

 

 みたいですね、私も初耳ですが。果林さんは……まぁ来てもらってもチャートに大きな影響はなさそうですね。現状好意を抱いていることもなさそうなのでしずくちゃんと争奪戦を起こすこともないでしょうし。

 学生寮を経由するとなると1度改札を出る必要があるので少し遠回りになってしまいますが、エマさんとの時間が増える、かつ果林さんとも会えることを考慮すると実はそんなにロスではないのかもしれません。

 というわけでエマさんにはいいよこいよ果林さんの胸にかけて胸にと返しておきましょう。

 

『ありがとう! じゃあ明日の10時半に学生寮の入口、よろしくね!』

 

 あいあーい。いやー、エマさんの親密度を稼げるイベントがあるのは嬉しいですね。果林さんとは一度お出かけがありましたが、他の3年生組はイマイチ稼げていないですからね。

 

「ごちそうさま。美味しかった」

 

 お粗末様です。ほも君もちょうど食べ終わったので、りなりーの分の食器を片付けてきますね。

 

「ううん、私がやる。元樹に作ってもらったから、片付けは私が」

 

 ではりなりーにお任せしますね。ありがとナス!

 

「任せて。璃奈ちゃんボード『キリリッ』」

 

 うーむ、りなりーはよく平常運転でいられますね。先程は顔を赤くしていてフリーズしていたというのに……ま、えやろ。会話がスムーズなのはRTA的にはありがたいですからね。

 さてと、りなりーが片付けをしている間にこちらは勉強の準備をしましょう。えぇと、歩夢ちゃんからもらった数学の参考書はどこにあったかなぁと……よし、見つけました。りなりーが戻ってくるまで、進められるところまで進めておきましょう。もし自力で終わらせられれば高い経験値を得られますし。

 

「戻った。……勉強してるの?」

 

 そうだよ(便乗) と答えたいところですが、ほも君が超絶集中状態で、りなりーが戻ってきたことに気づいていません。逆にりなりーはほも君が勉強に集中していることに気づいたのか、邪魔をしないようにそぉっとほも君の隣に腰を下ろしました。

 

「………………あ、ごめんなさい。邪魔しちゃったかも」

 

 おや、ほも君がりなりーに気づきました。でもりなりーは全く邪魔ではなかったですよ。少し離れた位置で、ずっと静かに、ほも君のことを見守ってくれてましたし。

 実はですねちょっと今この問題で悩んでまして、りなりーの可愛らしい小さなおててを舐めまわしたい……間違えました、お借りしたいんですよ。

 

「どの問題?」

 

 この問題です。こ↑こ↓の式変形の後がよくわからなくて……1145141919810度の三角関数なんてどうやって求めていいのかわからないのでおじゃる。教えてください、オナシャス。

 

「ちょっと待って……うん、わかった。この式にこの定理を使えば……そう、その形になる。後は素直に計算してあげればいい」

 

 おっ、解けてんじゃ~ん! 教える時に自然と距離が近くなって、肩とかが触れ合ってもお互い何も特別な反応を示さないのが、なんというかこう……幼馴染、を感じていいですね。りなりーありがとナス!

 

「どういたしまして。他の問題は大丈夫?」

 

 大丈夫ですよ。ほも君が自力で解けなかったのはさっきの問題だけだったので。

 というわけで、勉強をし終えたことにより学力経験値30を手に入れました。そして学力が5に上がりました。やったぜ。投稿者天使天才糞親父。これでもうおバカとは呼ばせませんよ。ガハハ。

 

「最近元樹が頑張って勉強してくれて私も嬉しい。できれば中間試験前からやる気を出してほしかったけど」

 

 ほも君の中間試験の結果が悪かったのは初期ステで一切学力に振らなかったことが原因です。他のステータスの方が重要だからね、しょうがないね。それにどこかの九尾も言っていました、バカは親近感を抱かれやすいって。つまりはそういうことです。

 

「でもどうして急に勉強を頑張るようになったの? 中間試験が赤点だったから?」

 

 補習になってしまうと完走までの時間が伸びてしまいますから。あとはそうですねぇ、りなりーと一緒のタイミングで卒業したいですし(適当)

 

「……私も、元樹と一緒に卒業したい。だから一緒に勉強頑張ろ? まずは期末試験、元樹は赤点を取らないようにしないと」

 

 大丈夫ですよ。学力5で赤点を取ってしまう確率はそんなに高くないことが一般に知られているので、大丈夫です。

 

「ならいい。……あれも参考書?」

 

 そうだよ(便乗) まだ一部のものは終わってないですけどね。

 

「それでもちゃんと勉強を頑張ってて偉いと思う。きっとおじさんが聞いたら泣いて喜ぶ」

 

 おじさん……もしかしてほも君の父親の事ですかね? ちょっと勉強するだけで泣いて喜ぶほど、ほも君は昔から勉強嫌いだったのか……。

 

「でも、参考書とえっちな本を同じところに置くのはあまりよくないと思う……」

 

 な、なんのこったよ(すっとぼけ) ほも君がエロ本を持ってるだなんて、ましてや参考書と同じようにベッドの下に隠しておくなんて、そんなベッタベタなことするわけないじゃないですか~。

 

「んっ、しょ……ほら、こんなにある。それに昔より増えてる気が……」

 

 りなりー!? 何ベッドの下に隠してるエロ本を取り出してるんすか、やめてくださいよ本当に!

 というよりりなりーは何故ほも君がエロ本を所持していることを知ってるのか、何故ベッドの下に隠していることを知っているのか、何故冊数が増えたことがわかるのか、その理由を探るべく、我々は歩夢ちゃんのうっすらと生えた密林の奥へと挿し込んだ――。

 

「持ってるのはいいけど、隠すならもっとわかりづらい場所にした方がいい。あとは電子版の本を購入するとか」

 

 何故か幼馴染の女の子からエロ本の管理方法についてアドバイスをされてしまいました……そういうりなりーはどうなんですか? 年頃の女の子ですし、1冊や2冊持ってるんじゃないですか~?

 

「秘密」

 

 ほも君の秘密を握っておいて、りなりー自身の秘密を教えてくれないのは卑怯ですよ。隠し事はしないっていうのが幼馴染としての約束だったんじゃないですかねぇ。

 

「元樹も同好会に入ったこと隠してたから、これでおあいこ。乙女の秘密は、たとえ元樹でも教えてあげない」

 

 ズルいですね……これはズルい……。というか何故今ほも君秘蔵コレクションを読んでいるのでしょうか。

 

「んー、元樹の趣味を知っておこうと思って。……でもやっぱり恥ずかしい……」

 

 じゃあ読むのをやめればいいんじゃないですかね(正論) わざわざ顔を茹蛸みたいにしながら読まなくても……って、まだ服も脱いでない、ちゅっちゅしてるところじゃないですか。

 

「だって恥ずかしいものは恥ずかしいから……」

 

 まったく、りなりーはかわちですねぇ。後ろからぎゅーしてあげましょう。

 

「……私とこういうことしてみたいって、思う……?」

 

 思いますねぇ!(建前) 思います思います(本音)

 

「ん、ちゅ……んむぅ……ぷぁ、嬉しい。私も元樹とつながりたい」

 

 おぉっと、安易な受け答えをしてしまったせいでりなりーとのおせっせイベントが始まってしまいました。あのさぁ……フ〇ラやってもらってさ、終わりでいいんじゃない?(淡い期待)

 

「ねぇ、ベッド行こ? ……うん、ナマでいいよ。今日は大丈夫な日だから」

 

 ただの幼馴染だったはずなのに、ついにおせっせを始めてしまいました。視聴者兄貴のせいです。あーあ。

 ですがまぁ始まってしまったものは仕方ありません。おとなしく2人のいちゃいちゃちゅっちゅずっこんばっこんシーンを眺めておきましょう。RTAなのでシーンを編集でカットすることもできませんし、かといってそのまま流してしまうとアカBANされてしまいます。妥協案としてイラストだけかすみんボックスで隠し、テキストのみ画像で流しておくことにします。

 

 というわけで私が話すのはここまでしておきます。動画自体はこのまま続きますので、可愛い可愛いりなりーを眺めていたい視聴者紳士兄貴はこのまま動画をご閲覧ください。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

「すぅ……すぅ……」

「……寝れない」

 

 頬で元樹の寝息を感じながら、冷めぬ興奮で眠れずにいた。

 夢だったのかと不安になるけど、ベッドの下に放り出された衣服、お互いの体液でべたつく体、部屋に漂う嗅ぎなれない精液の匂い、なにより隣で私を抱きしめながら眠る元樹が、先程の行為がまぎれもなく現実だったと教えてくれる。

 

「んんー……すぅ……」

 

 今は何時だろう、夜が明けるまであとどのくらい待てばいいのだろう。今日はきっと眠れないから早く夜が明けてほしい。けどずっとこのまま、元樹と一緒に寝ていたいという気持ちもある。

 

「元樹だけ眠れてずるい……」

 

 あんなことをしておきながらそそくさと眠ってしまった元樹に一言文句を呟き、元樹の胸に顔をうずめる。今日はこのまま、幸せな気持ちのままで夜が明けるのを待とう――。




ビジュアルノベルゲーム化ありがとう……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Part53/n

甲子園でノンフィクションのTNKTEMさんに心を奪われました。ちゅき……


 〇ックスの翌日に別の美少女に会いに行くRTA、はーじまーるよー。

 

 前回はりなりーとベッドの上でツナガルコネクトをしました。今回はその続きからで、まずは昨日の後処理から始めましょう。そのまま寝てしまいましたからね。体もベッドも汚れっぱなしです。ちなみにほも君はほもなのでちゃんと胸にかけて胸にしました。

 というわけでオッハー! りなりーもオッハー!

 

「……ん、もう、あさ……?」

 

 おはようございます。今は朝の8:10です。

 

「そっか、寝ちゃったんだ……」

 

 とりあえず起きましょうか。昨日の負債を処理しないといけませんので。

 

「うん。……あ、元樹それ,、朝からすごく元気」

 

 それ? もしかして朝○ちのことですかね。これはただの生理現象なので大丈夫ですよ。あ、こら、生理現象なので触らなくていいんですって。咥えるのも禁止です。

 

「ん、む……パンパンだったから苦しいのかなって。元樹がやめてほしいならやめる」

 

 りなりーはちゃんと言うことを聞いてくれてえらいですねー。よーしよし。どこかのしずくちゃんなんて言うことを聞かず無理やりしてきましたから……。

 

「一緒にシャワー浴びよ? 精液が乾いて体がカピカピ」

 

 だから昨日のうちにシャワーを浴びた方がいいと言いましたのに……。

 

「むっ、元樹はそんなこと一言も言ってない。むしろ言ったのは私。それを疲れて眠いからって先に寝ちゃったのが元樹。1人でシャワーを浴びるのが寂しかったから私も浴びなかった。だから私は悪くない」

 

 そうでしたっけ……ほも君全く覚えてなーい。

 

「そう。だからシャワー浴びたい。それと一緒にベッドシーツも洗わないと」

 

 わかりました。じゃあお望み通り一緒にシャワーに行きましょう。ほも君はシーツを運ぶので、りなりーは先に行っててください。

 

「うん。シャワー温めて待ってる」

 

 

 

 よいしょっと、シーツを洗濯機にぶち込みました。シーツは当然のごとくシミまみれでした。まぁ当然ですよね。2回も男汁を出した上に全部胸にかけて胸に、さらにはりなりー自身がとっても濡れやすいときました。お掃除が大変だぁ。

 

「おつかれ。シャワー温かいよ」

 

 アツゥイ! やっぱりシャワーはあっつあつに限りますね。ほも君の体も洗ってくれよ~頼むよ~。

 

「いいよ、こっち来て。んっしょ……どう、痛くない?」

 

 大丈夫っすよ、バッチェ気持ちいいっすよ。小さな体で一生懸命ほも君の大きな体を洗っているのが健気で可愛いです。『ほも君自身で洗うべきでは?』という意見は受け付けません。

 

「よかった。……ねぇ、昨日ちゃんと気持ちよくなれた? ああいうことするの初めてだったから、元樹が気持ちよくなれてるか心配だった」

 

 そんな心配する必要はないですよ。りなりーのはトロトロで締まりもいい超名器ですから。2回もヤったことを思い出してください。初めてで2回戦は相当気持ちよかった証拠だよ。

 

「そこまで言わなくてもいい。恥ずかしいから……」

 

 そういうりなりーはどうなんですか?

 

「1回目はすごく痛かった。初めてだったし、元樹のが大きかったから……でも2回目は気持ちよかった。クセになっちゃいそう……」

 

 そう……(無関心) りなりーがおせっせにハマっちゃうことは問題ないですが、ハマりすぎてほも君以外の人になびいたりしないでくださいね。申し訳ないがNTRはNG。

 

「元樹以外の人とするつもりも予定もないから大丈夫。先上がるね」

 

 りなりーが先にお風呂場から出ていってしまいました。ほも君もちゃっちゃと済まして上がりましょう。あーさっぱりした。朝食を食べにリビングにイキますよ~イクイク……。

 

「……あ、ちょうど今トーストができたところ。食べる、よね?」

 

 食べます(即答) お風呂から上がったら既にりなりーが朝食を用意してくれていました。料理時間を短縮できるのでありがたいですね。そして服も着てくれたので、わざわざ編集でモザイクをかける手間もなくなりました。

 

「あむ、美味しい。……いつ出かけるの?」

 

 んー、そうですねぇ……ご飯食べて、後片付けをして、もろもろ身支度してから出かけようと思うので、30~40分後ですかね。

 

「そっか。……」

 

 なんだかりなりーが寂しそうですね。ツナガルコネクトした翌日に別の女の子達と遊びに行くことを怒っているのでしょうか。でもそういうRTAなんだし仕方ないですよね。そもそもりなりーとお付き合いはしていませんし。

 

「……」

 

 ほも君は当然のことながら気遣いなんてできませんので、そそくさと食べ終えて、そそくさと後片付けを始めてしまいました。

 

「ごちそうさま……」

 

 でもね、あれだけのことをやっておいてまだ奥手なりなりーも悪いと思うんですよ。確かにコトに及んでいる最中、りなりーはずっと好き好き言いながら腰を振ってましたけど、ゲームの仕様的におせっせ中に何度言ったところで意味がないんですよね。ちゃんと仕様を把握したうえで告白してくれないと困るんだよ~。それでもプログラマーか?

 りなりーも完全に意気消沈してしまってこれ以上進展なさそうですし、ほも君の外出準備が整うまで甥の木村、加速します。

 

 

 

 お着換え、ヨシッ! 戸締り、ヨシッ! 忘れ物、ナシッ! りなりーの様子……

 

「……」

 

 ……りなりーの様子、異常ナシッ! オールヨシッ!

 お出かけの準備が完璧に整いましたので、とっとと出かけてしまいましょう。エマさんと果林さんを迎えにイキますよ~イクイク……。

 

「……待って。少しだけ、時間いい?」

 

 えー……うーん、少しだけならいいですよ。幼馴染特権です。

 

「ぎゅー、したい」

 

 え、それは……ここマンションの廊下ですし……(建前) いいよ! こいよ!(本音) はい、ぎゅー。

 

「……また、シたい。元樹と繋がりたい。だから元樹もシたくなったら、いつでも会いに来てほしい」

 

 おっとぉ、これはセフレルートに入ってしまったかぁ? そのルートに入ってしまうのはまずいですよ!(迫真)

 

「セフレ……それは嫌」

 

 ほも君も嫌ですよ。だってセフレでは称号獲得条件を満たせませんからね。

 念のため確認なんですが、別にセッ〇ス以外の目的で遊びに行っても問題ないですよね? 例えば勉強を教えてほしいとか。

 

「もちろん。ご飯を食べるのでも、ゲームをするのでも、アニメを見るのでも、元樹と一緒にいられるならなんでも嬉しい」

 

 おかのした。どこかのタイミングでりなりーの家に遊びに行きましょう。明日からのお泊りの準備もあるので、さすがに今日は行かないと思いますが。

 

「うん、待ってる。んむっ……い、いきなりチューするのはずるい……」

 

 見ましたか? 今の選択肢見ましたか、皆さん。軽くキスするかガッツリ舌を入れてキスするかの2択しかなかったですよ。行ってきますのチュー……ってコト!?

 告白発生率が上がるので嬉しいことではありますが、こんな気軽にキスできる関係になったのに付き合ってないなんてたまげたなぁ……。

 

「いってらっしゃい」

 

 りなりーに見送ってもらったので、今度こそお出かけをしましょう。イキますよ~イクイク……。

 

 

 

 学生寮前に到着しました。りなりーとのイチャイチャパラダイスのせいで数分予定から遅れてしまいましたが、ま、えやろ。

 そんなことよりエマさんはどこにいるのでしょうか?

 

「元樹君、おはよー」

 

 エマさん、おはようございます。おっぱいが大きいですね。間違えました、私服が似合っていて可愛いですね。

 

「ありがとー。元樹君も似合ってるよ」

 

 ありがとナス! ところで果林さんは一緒ではないんですか? もしかして不参加ですか?

 

「えっとね、実は元樹君に手伝ってもらいたいことがあって……寝起きトックリって知ってる?」

 

 トックリ? もしかしてドッキリですかね。

 

「そう、ドッキリ! 果林ちゃんに寝起きドッキリをやってみたくて……手伝ってくれる?」

 

 いいですよ、一度でいいから果林さんに寝起きドッキリしてみたかったんですよ。親密度? 果林さんは滅多なことでは下がらないから無問題ラ!

 

「ありがとう! それじゃあ早速果林ちゃんのお部屋に遊びに行こ!」

 

 女性寮、たとえゲームの中とは言え、いつになっても入るのは緊張しますね……。他の生徒から怪訝な目で見られてしまいますし。私は怪しいものじゃないですよー。果林さんぶち犯しゾーンの点検に来ただけの一般男子生徒でーす。

 ところで、なんで果林さんにドッキリなんて仕掛けるんです? バラエティ番組でも見ました?

 

「えへへ~バレちゃった。昨日テレビで見てね、やってみたくなっちゃったの!」

 

 なるほどですね。何か道具とかは使うんですか?

 

「ううん、時間がなくて何も用意できなかったの……本当はテレビみたいに、バズーカでこうバーンってしたかったんだけど……」

 

 時間がないのは仕方ないですよね。まぁ用意しなくて正解だったと思いますよ。バズーカなんて近所迷惑でしかないですからね。それにただでさえ汚い(直球)果林さんの部屋がさらに散らかってしまいますから。

 

「果林ちゃん、ちゃんと寝てるかな……」

 

 起きていたら寝起きドッキリにならないですもんね。ですが大丈夫だと思いますよ。ほら、なんか果林さんってほんの少しですが私生活だらしなさそうじゃないですか。朝は弱いし、部屋は汚いし、えっちだし、部屋は汚いし。勝手な想像ですけどね。

 

「それ、果林ちゃんに言ったらダメだよ?」

 

 さすがに言わないですよ。実際に部屋の中を覗いたら思わず言ってしまうかもしれませんが。

 

「ここが果林ちゃんのお部屋だよ。果林ちゃん、おはよー。……うん、まだ寝てるみたい」

 

 寝起きドッキリは仕掛けられそうですね、よかったです。果林さんが目が覚めたタイミングで、ほも君が常備している『ドッキリ大成功』のプラカードをバーンと掲げますね。

 

「うん、よろしくね。それじゃあ果林ちゃんのお部屋に入ろう。果林ちゃんが起きないようそぉっとね」

 

 何故ドアの鍵が開いているかは気にしません。果林さんの寝顔が見られることと比べれば些細な問題です。偉い人も言ってました。『おっ、開いてんじゃ~ん!』の精神を大事にしろと。

 

「わっ、すごい散らかってる……」

 

 待望の果林さんのお部屋ですが、なんと服がそこかしこに散らかっています(定期) 間違いなく汚部屋ですねクォレハ……。

 何やらエマさんがうずうずしています。お世話がしたくて仕方がないのでしょう。いつもならほも君の下のお世話もお願いするところですが、残念ながらタイムの無駄ですし、そもそもエマさんとはまだそういう関係ではないですし。

 

「えっと、とりあえず果林ちゃんを起こさないと……」

 

 2人が汚部屋にドン引きしているなんて露知らず、当の果林さんはベッドの上でスヤスヤです。相変わらず可愛らしい寝顔ですなぁ。夜這いして、隣に潜り込んで、一緒にすやすやしたいです。

 

「ドッキリってどうすればいいのかな? 普通に起こしても大丈夫なの?」

 

 うーん、この状況なら普通に起こしても十分ドッキリになるとは思いますが……折角ですからこのクラッカーを使いましょう。

 

「面白そう! ありがとう、元樹君。それじゃあいくよ……えいっ」

「っ! な、なにっ!?」

「果林ちゃん、おはよう」

 

 クラッカーの音にビックリした果林さんが飛び起きました。状況が呑み込めていないのか、エマさんとほも君を繰り返し見つめています。口をぽかーんと開けていてすごく可愛いです。

 

「えぇと、こういう時は……ドッキリだいせいこ~う! ……で合ってるのかな?」

 

 それで合っていますよ。日本ではその言葉を言えば何でも許される、まさしく魔法の言葉です。

 

「え? ……え?」

「……果林ちゃん?」

「な、なんで元樹君がここにいるのよっ!?」

 

 おっと、動揺した果林さんから枕が飛んできました。当然威力は高いですが、プラカードという名の盾を持っているほも君なら余裕のよっちゃんでガードできます。

 そんなに興奮してどうしたんですか? やっぱりビックリしちゃいました?

 

「ビックリするに決まってるわよ! 目が覚めたら元樹君が目の前に、変なものを持って立っているんだもの……」

「元樹君と仲良しさんだから喜んでくれるかなって思ったんだけど……」

「いくら仲良しでも、部屋の中だったり寝顔を見られるのは恥ずかしいのよ……それが異性なら尚更」

「そう?」

 

 いまいちエマさんもほも君も理解できてないようです。まぁほも君は異性を部屋に連れ込みまくって、一緒に寝たりしまくってますからね。理解できなくてもしょうがないね。

 

「それで、今日は何の用なの?」

「そうそう、今から元樹君達と一緒にピクニックに行くんだけど、果林ちゃんも一緒にどう?」

「そうなのね……お誘いは嬉しいけど、今日は撮影があるの。だから行けないわ」

「そっかぁ……」

 

 えー、果林さんも一緒に行きましょうよー。エマさん、彼方さん、しずくちゃん、侑ちゃんに加えて果林さんまで参加したらバクニューアラモードが完成するんですよ。

 

「泣いたふりをしてもダメなものはダメなのよ」

「そうだよ。あまりわがままばかりだと果林ちゃんが困っちゃうよ」

「それ以前に今この状況に困っているのだけど……」

 

 ほも君も足の踏み場もなくて困っちゃいます。だから果林さんの隣に腰を下ろしますね。んー寝起きでも果林さんはいい匂い! そしてスッピンでも美しい! お布団フカフカ! おっぱいでっか! 思わず〇起してしまいそうです。

 

「2人とも、いつの間にかすっごい仲良しさんだね」

「まぁ仲は悪くはないと思うけど……」

「お似合いだね!」

「え、ちっ、ちが……元樹君とはそういう関係じゃないのよ!」

「え……仲良しさんじゃないの……?」

「仲良しだけど、そういう関係じゃないの」

 

 んー、これは食い違いが起きてそうな予感。多分エマさんは友達としてお似合いだと言っているんでしょうが、果林さんは恋人としてお似合いだと解釈してしまっています。普通は友達の関係に対しお似合いなんて言い方はしませんが、エマさんは留学生ですからね、多少言葉選びが怪しくてもしょうがないね。

 面白そうですし、補足だったりはせずそっと見守りましょう。

 

「ほら、元樹君からも言ってあげて」

 

 んー、でもエマさんの言う通りの関係ですよ。パンダ好きという共通が合ってお似合いですし、誰にも言えないような秘密(をお互いに握り合っているだけ)の関係ですよ。ね、果林さん。

 

「ち、が、う、わ、よ」

 

 調子に乗ったら果林さんに怒られてしまいました。頬が伸びちゃうぜ。でももしかしたらほも君が本当に果林さんと秘密の関係を結びたいと思ってるかもしれませんよ? それなのにこんな仕打ちはひどくないですか?

 

「からかう気満々な顔してたわよ」

「ふふっ、やっぱりお似合いだね」

「あのねエマ、お似合いって言葉は恋人や夫婦の人達に使う言葉で、友達同士にはあまり使わないのよ」

「えっ、そうなの?」

 

 あらら、果林さんがバラしてしまいました。しょうがないのでほも君も肯定ペンギン114514号しましょう。

 

「そうなんだぁ、日本語って難しいなぁ……」

「まったく、元樹君が悪ノリするから」

 

 だってこんな足場の悪い部屋に上がらされたんですよ? ちょっとくらい果林さんにイタズラしても罰は当たらないんじゃないですか?

 

「勝手に上がられたのだけど……まぁいいわ。元樹君だし、なによりエマと一緒だったし」

 

 あら、随分信頼されてますね。嬉しい限りです。

 

「信頼してるに決まってるでしょ。一緒に撮影をした仲じゃないの。それに、誰も知らない元樹君の可愛い秘密、私にだけ教えてくれたからね」

「元樹君の秘密?」

 

 エマさん、それは気にしないでいいんですよ。

 

「えぇ~可愛い秘密って言われたら気になっちゃうよ~」

「うふっ、エマも気になるのね。実は……ってそんな必死な顔しなくても言わないわよ」

「……こんな元樹君初めて見たかも。可愛いね」

「あら、照れちゃったみたいね」

 

 エマさんの言葉で恥ずかしさが限界突破したほも君がノックアウトしてしまいました。果林さんの膝の上に倒れ込んでしまいましたが、これ絶対恥ずかしがってるふりして太ももの匂いを嗅いでるだけだゾ。私だったらそうする。

 りなりーの慎ましやかだけどちゃんと女の子してる体を散々堪能しておきながら、果林さんにまでこんなことしてるのは許せへんし、栞子親方に電話させてもらうね。

 

「元樹君ってこんなに甘えんぼさんだったんだ……」

「この子も1年生だもの。まだまだ甘えたいお年頃なのよ」

 

 そうなんです。お姉さん気質な女の子には甘えたいですし、妹気質な女の子は甘やかしたいお年頃なんです。

 

「ところで果林ちゃん……果林ちゃんのお部屋、いつもこんな感じなの?」

「……」

 

 とうとう果林さんの禁忌に触れてしまいましたね。妙にエマさんから圧を感じるせいか、果林さんも冷や汗ダラダラです。ん~美味!

 

「たまたまよ」

「ほんとに? ……果林ちゃん、わたしの目を見て話して」

 

 ひぇ……怖くてエマさんの顔を見れません。見れませんが、それでも強烈な圧を感じます。

 

「……私、部屋の片づけとか苦手なのよ」

 

 それでこのありさまなんですね。服が散らかってるんだよなぁ。見ろよこれなぁ、この無残な姿をよぉなぁ!?

 

「少し棘を感じる言い方だけど、まぁそうね」

「……果林ちゃんのお部屋、わたしが片づけしてもいい?」

「それは……ってなんでそんなワクワクしてるのよ」

「スイスの妹たちのことを思い出しちゃったの! 果林ちゃん、ダメ……?」

「……たまになら」

「やったっ、じゃあいまから片付けしてもいい? いいよね?」

「今日はやめておいた方がいいんじゃないかしら。これからピクニックに行くんでしょう?」

「あ、そっか……」

 

 エマさんがピクニックに来てくれないのは困りますよ。そもそもエマさんのために企画したものですしね。

 

「じゃあ今度お片付けするね。その時は元樹君も一緒にどうかな?」

 

 ぜひ! と言いたいところですが、果林さん的にはOKなのでしょうか?

 

「いいわよ。ちゃんと事前に教えてくれるならね」

 

 やったぜ。じゃあ毎日果林さんの部屋に入り浸って、毎日盛りあいましょう。

 

「毎日来てくれるのは嬉しいけど、さすがに寮長に怒られるわよ?」

「それなら元樹君も寮に住んだらいいんじゃないかな。それなら毎日一緒にいられるね」

「さすがに難しいんじゃないかしら……」

 

 そうですね。寮に引越しをするのは厳しいです。女の子を気軽に連れ込めなくなりますし、なによりりなりーと離れ離れになってしまうのが辛いです(激重)

 

「そっかぁ……元樹君、璃奈ちゃんのこと大好きだもんね」

 

 そうなんです、大好きなんです。幼馴染として、ですが。

 走者である私自身は、1人の女性としてりなりーのこと大好きなんですけどね。仕草とか、もうすべてが愛くるしいです。エッチなことは一切しなくていいから、ぜひともりなりーと結婚を前提にお付き合いさせていただきたいです。そんなりなりーと幼馴染な挙句、エッチまで済ませているというのに、このほも野郎が……!

 

「……2人とも、そろそろ出なくていいの?」

「あっ、そろそろ時間だね。でもまだ荷物をまとめられてなくて……少し待ってもらってもいい?」

 

 準備が終わってないのに寝起きドッキリしてたんですか? はーつっかえ。1時間だけ待ってあげますから、その間にゆっくりたっぷりと準備してきてください。

 

「それなら、エマの準備が終わるまでここでゆっくりしていきなさい。話し相手くらいにはなってあげるから」

「ありがとう果林ちゃん。急いで準備してくるから待っててね!」

「……エマ、行ったわよ。いつまでこうしてるつもりなのかしら?」

 

 んー、ほも君が満足するまでですかね。それまではこの健康的で魅惑的な太ももを堪能させていただきます。

 

「まったく……元樹君も男の子なのね」

 

 呆れたような声音ですが、優しく頭を撫でてくれます。なんだか今回の果林さんは最初っからほも君に甘々ですね。いつもならこの段階の果林さんは厳しいとはいかなくとも、膝枕なんて絶対にしてくれないであろう距離感なのに……やっぱり早期にお出かけできたのが効いてるんでしょうか。

 

「そうねぇ、初めてできた後輩だから、少し甘やかしすぎちゃうのかも。厳しくしてほしいならそうするわよ」

 

 いえ、今のまま、ほも君に甘々でいてください。

 

「ふふっ、わかったわ。……でも、そろそろ離れてほしいわ。私もさすがに恥ずかしいから……」

 

 えー……と言いたいところですが、ここは素直に離れておきましょう。別にそのままでも親密度は下がったりしないと思いますが、念のためですね。

 にしても足の踏み場が少ないですね。果林さんは普段どうやって生活をしているのでしょうか。さすがに服を踏むのは申し訳ないですし……。

 

「それなら元樹君が片づけをしてくれてもいいのよ」

 

 いいよ! こいよ! 部屋と人間の掃除はほも君の得意分野です。散らかってる服をたたんでクローゼットの中にぶち込んでやるぜ。

 

「……手際がいいわね。みるみるうちに片付いていくわ」

 

 慣れているので。ほも君はほぼ一人暮らししてるようなものですから、炊事洗濯なんでもござれです。さすがに料理スキルは彼方さん歩夢ちゃんには届きませんがね。

 にしても使い終わったクラッカーが邪魔ですね。ゴミ箱にポイっと捨てちゃいましょう。

 

「あなた達が持ってきたクラッカーでしょ」

 

 散らかっている雑誌も整理しちゃいましょう。ほんとは雑誌別、発行日順に並び替えたいんですけどね、時間もかかりますし、何より雑誌を入れる棚がないので、今日のところは適当に積み上げて端に寄せておきましょう。いずれは本棚も設置したいですね。

 

「本棚ねぇ」

 

 これからもこういったファッション雑誌は増えるんですよね? であれば整理のために買ってもいいと思いますよ。まぁそもそもの整理ができないから、皆さんご存じのあのザマだったわけですが(辛辣)

 

「今日はやけに辛辣ね……」

 

 ……おや、これは下着ですね。ブラジャーとショーツのセットが雑誌と雑誌の間に挟まっていました。うっひょ~、果林さんの下着なんて見てしまったら、たとえノンケじゃなくても興奮してしまいます。

 

「ちょっと、見ないでちょうだい」

 

 ほも君が手にした宝物(下着)を奪い返そうと、後ろから手を伸ばしてきます。渡すまいとこちらも抵抗しているので、必然と体が密着してしまいます。デッッッッッかいし柔らかいです。こんなもんフル〇起してしまうに決まってるじゃないですか。

 

「このっ……返しな、さい!」

 

 頑張って抵抗を試みましたが、あえなく奪い取られてしまいました。悲しいなぁ。

 ですがほも君のほも君は以前起立したままです。これは果林さんに責任をもって処理してもらわないといけませんね(ニチャニチャ) だって果林さんが散らかしていた下着が全ての原因なんですから。

 

「まったくもう……こんなことばかりしてたら璃奈ちゃんやしずくちゃんに嫌われるわよ」

 

 無問題ラ。りなりーとはもうやるとこまでやっちゃってますし、しずくちゃんはしずくちゃんで変態ですし。

 

「ここに座ってジッとしてなさい」

 

 果林さんが自身の隣をポンポンと叩くので、おとなしくHするベッドに腰かけましょう。これだけのことをしておいて、まだ隣に座らせてくれる果林さん優しすぎませんか。そんなんだからモテるんですよ。

 

「はぁ、思ってた以上にちゃんと男の子してるのね。そ、そこもこんなにして……まぁちゃんと片付けてない私が悪いんだけど」

 

 男の子は性欲には勝てないんですよ。果林さんという超絶魅力的な女性が相手ならなおさら。

 

「なんだか素直に喜べないわね……」

 

 それで、果林さんはこれをどう処理してくれるんですか? 頬を赤らめながら、拙い舌使いでペロペロする果林さんが見てみたいなー俺もな―。

 

「しないわよ、そんなこと」

 

 えー……果林さんが原因なんですから、ちゃんと後始末までしてくださいよ。ホラホラホラホラ。

 

「……そうね、これから一生、私のことだけを見てくれるって言ってくれるなら、してあげてもいいわよ」

 

 えっ、それは……(困惑)

 

「私にそういうお願いをするなら、元樹君もこれくらいの覚悟を見せてもらわないとね」

 

 指で顎をクイっとされ、顔もグイっと近づけられて、果林さんにメロメロリにされてしまいました。まるで恋愛経験豊富な大人な女性です。つい昨日幼馴染と体を重ねた程度の経験しか持ち得ていないほも君程度では太刀打ちできません。

 

「あらあら、真っ赤にしちゃって、可愛いわね」

 

 完全に手玉にとられてしまいました。ほも君の完敗です……3年生に勝てるわけないだろ!

 

「いいわよ、手でよければしてあげる。……あら、そんな顔してどうしたの?」

 

 どうしたのって言われましても、まさかしてくれるとは思っていなかったので……。

 

「部屋を片付けてくれたお礼と、あとはちょっとしたお詫びかしら。元樹君の言う通り、私が散らかしていた下着が理由だものね。……ほら、早く脱ぎなさい。エマが来ちゃうわよ」

 

 いや、あの……嬉しいんですけど、手コ〇されるとイベントで時間がかかるし、モザイク処理に時間がかかるので、別のにしてくれませんかね……? キス! キスとかでもいいですよ! むしろキスしてください!

 

「あら、遠慮しなくていいのに。でもキスはダメよ。ほら、観念して脱ぎなさい」

 

 流行らせコラ! 腕を掴まれ、マウントポジションを取られそうになっています。どうしてこんなにムキになっているのでしょうか……エッチの経験どころか恋愛経験すら皆無なのに……この人おかしい……(困惑)

 

もときくーん、おまたせー

 

 やったっ、救いの手(エマさん)が来てくれました。危うく押し倒される寸前でした。ほら果林さん、ほも君を解放してください。

 

「……はぁ、しょうがないわね」

 

 この人はどうしてこんなに手〇キをしようとしていたのでしょうか。キスしてくれるほど親密度は高くないみたいですし……んにゃぴ、よくわからないです。

 

元樹君?

 

 エマさんが呼んでるので行きますね。お邪魔しました。

 

「そうね、またね。ピクニック楽しんでらっしゃい。気が向いたらいつでも遊びに来ていいわよ。…………あ、そのプラカード……」

 

 部屋を出る直前に何か果林さんが言っていましたが、気にしません。多分『ドッキリ大成功』のプラカードを持って帰れ的なことだと思いますが、めんどくさいので置いていきます。プラカードを回収しに来たという遊びに行く口実にもなりますからね。

 

「おまたせー。じゃあ行こっか」

 

 イキますよ~イクイク……途中の乗り換え駅で侑ちゃんと待ち合わせしてるので、とりあえずそこまで行きましょう。

 というか果林さんとじゃれあっていたせいで、侑ちゃんとの待ち合わせ時間ギリギリの到着になりそうです……侑ちゃんにマーキング(意味深)をしておけば時空間忍術でぴょーんと移動できたのですが。

 

「そうなんだ、遅れたら侑ちゃん怒っちゃうね。じゃあ少し急いで移動しないとだね」

 

 ありがとうございます。絶望的状況というわけではないので、早歩き気味で移動しましょうか。走るとほも君がすぐバテてしまいますからね。

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。




これはどうでもいい情報なのですが、なんか急に出現した新執筆フォームがめちゃくちゃ使いやすいです。
Ctrl+Sで保存できるし、キーバインドでルビ振りのためのタグを一瞬で出せるのがすごく便利です。
物書きの方は是非一度使ってみてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。