元トレーナーの育て屋さん。 (ノイズシーザー(旧ノイズスピリッツ))
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育て屋クレハ、プロローグ

──シンオウ地方のチャンピオンロード。四天王を突破した挑戦者が繰り出したバンギラスとシンオウ地方の誇るチャンピオン、シロナのガブリアスが激戦を繰り広げていた。しかしやはりというか、ガブリアスの方がやや優勢だ。

 

「くそっ!バンギラス、はかいこうせんだ!」

 

その状況に項を焦ったトレーナーがバンギラスに指示を出す。その指示に従い、バンギラスははかいこうせんをガブリアスに向けて放つ。しかし──

 

「ガブリアス、避けてドラゴンクローよ」

 

マッハで移動出来るガブリアスにはまるで無意味だ。シロナの指示を受けたガブリアスにバンギラスのはかいこうせんはあっさり避けられた上に接近を許してしまい、そのまま顎下にドラゴンクローを受けてしまいそのまま、バンギラスはふらつきながら、その巨大が地に倒れ伏す。

 

「ああ、バンギラス!」

 

「……決まりね」

 

「おおーっと!チャンピオンシロナのガブリアスのドラゴンクローが挑戦者のバンギラスにクリーンヒットォ!地に沈んだバンギラス起き上がらない!」

倒れたバンギラスを見て悲鳴にも似た声をあげる、挑戦者。これで終わりだと確信しながらも警戒を解かず、ガブリアスにもそうアイコンタクトで指示をするシロナ。

そして生中継をしているこの試合の為に呼ばれた実況者の無常とも言える声が響く。

……しばらく経ってもバンギラスは起き上がらない。シロナの勝利が確定した瞬間だった。

 

「決まった〜〜っ!今回の激闘を制したのはシンオウチャンピオン、シロナっ!今回も見事にチャンピオンの座を守りきった〜〜っ!!!」

 

────────

 

「……」

 

ぴっ、と無言でTVのリモコンを操作してTVの電源を落とす。

別に嫌いな訳では無い。丁度よく休憩時間が終わるところだったから、TVの電源を消したのだ。

 

「…行くか」

 

TVの液晶画面に彼女の顔が鏡のように映る。腰まで届く赤い髪に、同じく赤い目。

全体的に攻撃的な印象を持つ彼女はそう呟くと、椅子から立ち上がってハンガーに掛けてあるエプロンを取って身に付け、下の階にある職場に行く為にドアを開けて階段を降りていく。

 

────────

 

階段を降り、1階に向かった瞬間にガーディにニャース等のポケモン達が彼女に擦り寄ってくる。皆トレーナー達から預けられたポケモン達だ。

誰が誰のポケモンか分かるようにトレーナーの名前が入ったネームタグをぶら下げながら、ポケモン達は擦り寄る。

 

「…お疲れ様、ゴウカザル。あとは私に任せて上でゆっくりお休み」

 

擦り寄ってくるポケモン1匹、1匹を撫で付けながら休憩していた自分の代わりに仕事をしてくれていたゴウカザルに労いの言葉を掛けながら交代するように言うと、ゴウカザルはこころよく頷きながらも無理はしない様にと、働き者な主人に釘を刺すように一鳴きしてから、上の部屋へと階段を上って向かっていった。

 

「…さてと、今日もお仕事頑張りますか」

 

この地方、カントーでは珍しい、新人トレーナーだった頃から共にいる相棒から注意されて若干へこみながらも、気を取り直し、今日も彼女…クレハは育て屋の仕事に励むのだった。

 




クレハ
カントー地方で小さな育て屋を開いている少女。 16歳。
ポケモン達の懐きようから、それなりに繁盛しているようだ。
ゴウカザルを相棒と称していることからおそらくシンオウ地方の出身。

ゴウカザル
休憩していた相棒に代わり、ポケモン達の世話をしていた。
主人想いのイケポケ。


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育て屋さんのパーティ

書けるうちに書いていくスタイル

追記
あとがきのカイリューのプロフィールを修正、変更しました。


──ピッピッピッピッピッピッピッピッ……カチッ。…朝を告げる目覚まし時計のボタンを叩くように押してアラームを止めながら、クレハはベッドから起き上がる。

とりあえず眠気覚ましにと洗面所へと向かい、顔を洗う。

それから乱れた髪を手入れしつつ、歯磨きをして、そして寝巻きを脱いで洗濯機に放り込んでからハンガーに掛けてある育て屋としての正装一式…Tシャツにジーンズ、ラフなエプロンに着替えて、階段から下に降りて預けたポケモン達と相棒のゴウカザルを含めた現役時代からいるパーティが待つ、一階の育て屋スペースへ向かう。

 

────────

 

一階のドアを開けると預けたポケモン達とゴウカザルを含めたパーティメンバーの内三匹が出迎えてくる。

 

「あれ?レントラーに、ムクホーク?珍しいな。普段は毛繕いしたり家の上を飛び回ったりしているのに」

 

出迎えて来たポケモン達を撫で付けながら、珍しい物を見るようにゴウカザルの両隣に居る2匹を見つめる。

そんな主人に対して、レントラーは一鳴き、ムクホークは片方の翼を拡げる。まるでたまにくらいはいいだろ?と言ってるようだ。

ゴウカザルに継いでの古株である2匹のようきな気分屋っぷりにクレハは思わず苦笑い。

 

「じゃあ、私はご飯の用意してくるから。3匹共この子達を見てあげて」

 

その言葉に返事を返すようにゴウカザルはサムズアップを、レントラーは先程とは声色を変えての一鳴きを、ムクホークはさっきとは反対側の翼を拡げる。

それを見たクレハは満足そうに頷き、預けたポケモン達と、自身の手持ち用のポケモンフーズを用意しに奥の物置部屋へと向かう。

 

────────

 

しばらくして、クレハが皿に小分けしたポケモンフーズをキャスターに乗せて運んで来て、それぞれに配っていく。

当然手持ちであるゴウカザル達にもだ。室内に居るポケモン達に配り終わった後、庭の方にも向かう。

預けたポケモンは小さい個体ばかりな為全員いるが、自分の残りの手持ちは違う。大型のポケモンなのでこの家では手狭なのだ。

ならモンスターボールに入れればいいのだがゴウカザル達を出している手前、それは不公平だと考えて雨等の天候が悪い日以外は庭でのんびりさせて貰っている。

 

「バンギラス、カイリュー、ガブリアス。ご飯持ってきたよ」

 

クレハが呼び掛けるとそれぞれ食事を貰いに現れる。そうこの3匹こそクレハの残り手持ちだ。なんだこの厨パ。

まぁともかく、クレハはそのままガブリアス達に食事を配っていく。

手持ちの中では一番末っ子でのんびりとした性格のバンギラスはがうんと優しく吠え、レントラーやムクホークと同じようきなカイリューは人懐っこい笑みを浮かべ、まじめで庭組のまとめ役なガブリアスは主人に一礼をして食事を受け取る。

「……」

 

それを無言で、されど笑みを浮かべてクレハはそろそろ自分も朝食にするかと庭から部屋に戻っていく。

 

今日も今日とて、代わり映えの無い、しかしのんびりとした1日が始まる。




クレハパーティ

ゴウカザル、実はおっとりとした性格。

最もクレハと付き合いが長く、実質的なパーティのリーダー。

ムクホーク

ゴウカザルに継いでのパーティの古株その一。ようきな性格でパーティ内のムードメーカー。

レントラー

古株その二。ムクホークと同じくようきな性格。
いつも毛繕いしているらしい。

ガブリアス

パーティの古株その三

まじめな性格で庭組のまとめ役を買ってでている。

バンギラス

のんびりとした性格。

実はパーティの紅一点でタマゴから育てられた末っ子。

カイリュー

ムクホーク、レントラーと同じくようきな性格。

パーティ内では一番最後に入った。しかし生きていた年数的に一番の年長。元々は祖母のポケモンだった。



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育て屋さん、こらしめる。

ウェヒヒヒヒ……(連続投稿)


「……達者にね」

 

今日もそれなりに忙しい日、預けたポケモンのトレーナーが達が店に来てポケモン達を多少の寂しさを感じながら何体か主人の元へ返していく。 育て屋始めて半年経つが、いくらやっても慣れないな。そんな事を考えながら、自分に手を振りながらドアを開けて去っていくトレーナーを見送る。

そんな主人を見かねたゴウカザルは慰めてあげるようにクレハの背中を優しくさする。

 

「ありがとう、ゴウカザル。後でポフィン作ってあげる。あ、勿論他のみんなにも作ってあげるね」

 

新人の頃から共に居る相棒に元気付けられ、クレハは持ち直す。お礼に特製のポフィンを作ってあげると伝えると、ゴウカザル以外の手持ちとまだこちらが預けているポケモン達がじっとクレハを見つめてくる。

そのポケモン達の反応をクレハはわかっていたとばかりに、勿論他の皆の分も作ると付け加えるのだった。

 

────────

 

そうしてしばらくポケモン達の世話をしつつ、時間が過ぎていく。寝かしつけたポケモン達の面倒をゴウカザルとレントラーに任せて、店の外回りを掃き掃除に行こうと藁箒とちりとり、そしてポリ袋二つを持って外に出ようとドアを開けようとした時だった。

 

「いいからよこせっ」

 

「やめて、やめてよっ」

 

「店の前でなにしているのっ!やめてっ!!」

 

怒声が聞こえ、悲鳴が響く。何事かと思い、掃除用具を置いて慌ててドアを開けるとそこには興奮しているの、顔を真っ赤にした男が女の子の手から無理矢理モンスターボールを取り上げようとしている光景だった。

それを見たクレハは掃除用具を放り、慌てて走り出して男と女の子の間に割って入ろうとするがそれよりも早くムクホークが男の横っ腹に体当たり(技ではない)をお見舞いしていた。

 

「ぐぇええ!?」

 

「ふえ…?」

 

「ナイスだよ、ムクホーク!」

 

男は横っ腹に体当たりを食らった事で悲鳴を上げながら横に吹っ飛び、女の子はポカンと間の抜けた顔をして、クレハはよくやったとムクホークにサムズアップする。

それに答えるようにムクホーク高らかに鳴きながらは翼を大きく拡げる。カオスな光景である。

 

「な、なにしやがる!?」

 

「やかましい。女の子からモンスターボール取ろうとしていた強奪犯め」

 

「……」

 

クレハは早速女の子に駆け寄り、怪我がないか確認しつつ、委しい事情を聞こうとしたがムクホークの体当たりから回復した男が額に青筋を立ててクレハに詰め寄る。

対するクレハは女の子を守るように男の前に立ち塞がる。

女の子は男に怯えているのか、震えながらクレハの後ろに隠れついて、ムクホークはいつでも体当たりできるように態勢を整いている。

 

「それはこいつが、ゾロアっつー、珍しいポケモンを持っていたからだ!俺がいくら言っても交換に応じてくれなかったから…」

 

「だから取ろうとしたと?」

 

「そうだ!悪いか!?」

 

話にならない。こんな奴さっさと警察呼んで引き取って貰おう。クレハはそう結論付けて、後はムクホーク…いや、騒ぎを聞きつけたのか、庭組も駆けつけて来たようだ。故にクレハは…一言だけ指示を出す。

 

「警察呼んで来るからそれまでこらしめといて」

 

「…へ、カイリューにバンギラス…?それにこの鳥、よく見たらシンオウのムクホークに…が、ガブリアス…!?」

 

指示された庭組とムクホークは了解とばかりに男を囲いながら迫っていく。男は困惑していたが囲まれた事でどんどん怯えて、真っ赤だった顔が青くなっている。

そんな男を冷たい目で睨みながら、クレハは女の子を連れて家の中に戻り、ドアを閉める。…助けを求める声には、無視を決め込んだ。

 

────────

 

後日、あるポケモンコレクターが逮捕されたとニュースで放映された。何かとてつもない恐怖体験をしたのか、髪が老人のように真っ白になっていたと話題になっていた。

 




クレハさん。

皆さん、やってしまいなさい。をしたはいいが、男を連行した警察にやりすぎは駄目だと説教された。

ムクホーク

お仕置きの体当たりだべぇ〜!

庭組

あんちゃんよぉ…ちょいとケジメつけて貰おうか。

女の子

展開が早すぎてよくわからなかった。けどご馳走になったポフィンは美味しかったらしい。



毎晩牢屋の中で悪夢にうなされている。


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育て屋さんと幼なじみライバル

( ˙³˙)ランラン( ˙³˙)ルー(今日も更新です)


「……やらかした」

 

いつも通りゴウカザル達と共にポケモン達の世話をしていた、クレハはそろそろおやつの時間だと、ポフィンを作ろうとキッチンへ向かっていた時だった。

ポケモンフーズとポフィンの材料であるきのみが残り少ない事に気付き、間の抜けた顔をしながらやらかしたと呟く。

そう言えばここ最近は目が回るほど忙しかったから買い出しする暇がなかった…そんな言い訳を頭の中でしてしまう。

 

「…って言い訳してる場合じゃない、買い出し行かなきゃっ」

 

そう自分に言い聞かせるようにして、急いでクレハは階段を登り、二階の自室に向かい準備をして買い物袋…ではなく大きなリュックを背負う。念の為にゴウカザルをモンスターボールに入れ、留守をムクホーク達に任せて買い出しに向かっていったのだった。

 

────────

 

「…よーしよしよし、きのみいっぱい買ったぞ。ゴウカザルもありがとうね、荷物持つの手伝ってくれて」

 

特になにも無く無事買い出しを済ませたクレハとゴウカザル。きのみとトイレットペーパー等の生活用品を詰め込んだ大きなリュックを背負いながら、食料を詰めた紙袋を左右の手一つずつ持ったゴウカザルが気にするなと言うようにニカッと笑って頷いている。

そんなゴウカザルを見て本当に自分はいい相棒に恵まれたなと思って、ゴウカザルに同じく笑顔で返す。

 

そんなやり取りをにしながら歩いていると、自宅が見えてくる

のだが、何やら、ドアの前に誰かがいるのだ。

金髪のゆるふわカールのドレスを来た、如何にもお嬢様のような出で立ちの女の子に、その斜め後ろには執事のように佇んでいる、カントーでは珍しいポケモンであるエンペルト。

 

「──」

 

クレハは思わず立ち止まって絶句した。隣にいたゴウカザルもポカンとして、女の子とエンペルトを凝視する。しかもどういう訳か、ムクホークや庭組の姿が見え無い。

いや、よく見たらどちらも普通に庭にいる。じっと見てるクレハとゴウカザルにガブリアスが気づき、それに連載するように他のメンバーも気づいて、じっとどうするといいたげにクレハとゴウカザルを見つめる。

 

「…?…あら、ようやく帰って来たのですねクレハ。そしてゴウカザル」

 

庭にいるポケモン達の視線に気づき、後ろを向いた女の子がニヤリと笑いながら丁寧な口調で硬直しているクレハに歩いて近づきながら言う。

後ろに控えていたエンペルトもゴウカザルに気づき、お辞儀をして挨拶する。

 

「……リリカ」

 

「そう。貴女の永遠のライバル、リリカですわ」

 

クレハの呟くような声を聞き取り、女の子…リリカは名乗る。エンペルトはゴウカザルに久々に会えた事に喜ぶようにゴウカザルに近づく。多少冷静になったゴウカザルは戸惑いながらも、兄弟に会えたことを素直に喜んでいる。

 

「…来るなら連絡してよ」

 

「あら、ごめんあそばせ。サプライズのつもりでしたのよ」

 

いきなり来たライバルを恨めしそうに見つめるクレハ。事前に連絡してくれたら、歓迎会くらいしたかったのに。と言いたげな様子だ。

 

しかし対するリリカはおほほと上品に笑いながらあっけらかんとした様子で言う。その様はまるでいたずらが成功した子供のようだった。




クレハ

大変、幼なじみのライバルが来た!

ゴウカザル

相棒の親友とその手持ちの兄弟分が唐突に来てびっくりした。

他の手持ち

どうしよう、急に来ちゃったよ…主人とリーダーの意見聞くまで待とう…

リリカ

16歳

クレハと同じ日にトレーナーになった、裕福な家庭のお嬢様。
クレハとは幼なじみであり、ライバル。

エンペルト

リリカの手持ちポケモン。佇まいはまるで執事。
ちなみにゴウカザルとはナナカマド研究所からの兄弟分


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育て屋さんと幼なじみライバル、語り合う

ポケスペ面白いよね。(異論は認める)


親友であり、ライバルのリリカがやって来た。

幼なじみの突然の来訪に驚くクレハだったが、とりあえず外にいるのもあれだからとクレハはリリカとその相棒てまあるエンペルトを自宅の二階…自室まで招き、今日の仕事が終わるまで待って欲しいと伝えてからいつも通りポケモン達の世話をしつつ、寝かしつけてからトレイに乗せた紅茶とポフィンを持ってリリカの居る二階の自室に向かい、両手でトレイを持っている為変わりにゴウカザルにドアを開けてもらって椅子に座るリリカとその斜め後ろに控えるエンペルトの前にあるテーブルへとトレイを置くとクレハとゴウカザルも椅子に座り、会話が始まる。

 

────────

 

「はい、どうぞ!」

 

「いただきます。──ふふっ、また腕を上げましたわね?とても美味しいポフィンでしてよ」

 

「本職には負けるよ。ね?ポケモンコーディネーターさん」

 

皿に乗ってる色とりどりのポフィンの一つを上品に食べながらリリカは感心したようにクレハに感想を言う。褒められたクレハは照れたように頬を指でかきながら、流石に本職には負けると伝えると…

 

「おほほほほ!当然ですわ!何故ならわたくしのポケモン達はかわいく、かしこく、かっこよく、たくましく、うつくしく…」

 

そんな事当然だとばかりにリリカは立ち上がり高笑いし出す。あ、やらかしたと小さな頃から彼女を知るクレハは自分の軽率な発言に後悔した。こうなったリリカは長いのだ。

リリカはそんな事気にする事無く言葉を続けている。

 

「──そして、強いのですから」

「…変わらないね、リリカ」

 

最後だけ、最後の言葉だけは静かに、それでいて力強く言う。

そう、リリカはコーディネーターだけではなくトレーナーも兼任しているのだ。相変わらずな幼なじみを見てクレハは思わず笑いながらリリカにそう言う。

 

「貴女は変わりましたわね、クレハ」

 

「ダメ?」

 

「いいえ全く。…ふふっ、フウマは来れなくて残念でしたわね」

 

「あー…ついこないだ、仕事忙しゅうてこれへんって泣きながら私に電話かけてきたよ」

 

「あらそうなのね」

 

ポフィンを摘み、紅茶を飲みながら2人は久々の会話に花を咲かせる。ちなみにゴウカザルとエンペルトは既にその場には居ない。下に降りてそれぞれの手持ちと一緒にまったりとしているのだろう。リリカのモンスターボールが入ったバッグが無いし。

 

────────

 

「楽しい会話だったわ」

 

「あれ帰っちゃうの?泊まってきなよ」

 

「クチバでホテルを予約しているのよ。時間が出来たらまた来ますわ」

 

「そっか、またね」

 

会話は日が暮れるまで続き、クレハは帰ろうとするリリカは引き留めようとするがホテルを予約していると言われ、ガッカリしながら引き下がる。そんなクレハに相変わらずかわいらしいと思いながら部屋を出て階段を降り、クレハの手持ち達とのんびりしていた自身の手持ちを連れて家を出たのだった。

 

────────

 

「……もしもし?なんやリリカどないしたん?」

 

仕事終わりのコーヒーを飲んでいた黒髪ボブの少女は鳴り出した携帯を手に取り電話する。掛けてきたのは2人いる幼なじみの片割れだ。

 

「いえ、実は報告したい事があるのですわ」

 

「ほうほう。なんやおもろい話か?」

 

どうやら報告したい事があるらしい。面白い話かなと生粋のジョウト人な少女…フウマは話を聞くことに決めた。

 

「クレハに会ってきましたわ」

 

「ほうほう。……なんや自分、クレハに会ったんか」

 

聞かされた報告はそんなに面白くなかった。それどころかまず間違いなく長電話になるやつだとフウマは察してしまい、遠い目をし出す。

 

この後めちゃくちゃ長電話した。

 

 




クレハ

親友が来て嬉しい

リリカ

また遊びに行きたいですわ

フウマ

信じられるか?ウチこれが初登場なんやで…

ちなみにリリカさんのパーティはこちらです。

エンペルト(執事)

ミロカロス(うつくしさ担当)

カバルドン(たくましさ担当)

ピカチュウ(かわいさ担当)

ポリゴン2(かしこさ担当 )

ボーマンダ(かっこよさ担当)


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過去編 トレーナーさんとタマゴ

(・ω・ = ・ω・)よしっ、今日も投稿だ。

追記
少し修正しました。


「よぉし、皆あともう少しで終わりだから頑張ってー!」

 

ぴっぴっぴっと、首に紐で繋いだホイッスルを規則的に鳴らしながらクレハはポケモン達と共にトキワの森でトレーニングを積んでいた。

ポケモン達を鍛えあげる事も育て屋の仕事の一つだからだ。ちなみに何らかのトラブルが起こった時の為にパーティは、全員連れている。どう考えても過剰防衛である。

 

ポケモン達をなるべく、それでいて無理をされないように鍛えていく。ああ…とてもやり甲斐がある仕事だ。とクレハは思いながら、そろそろ時間なのでポケモン達のトレーニング終わらせる。ポケモン達にも疲労があるだろうからと、帰る前に小休憩をさせる事に決めたクレハだった。

 

────────

 

「…バンギラス、どうしたの?」

 

ポケモン達に小休憩をさせている間にゴウカザル達にも三匹ずつに分かれて実戦形式のトレーニングをさせていたところだった。

カイリューと組み合っていたバンギラスが何かに気付き、そのまま木陰に向かってしまったのだ。急にどうしたんだと、心配になったクレハは一旦トレーニングを中断して、預けているポケモン達と共に待機するように伝えて、バンギラスが向かった木陰へと走って行く。

 

「…きのみ?バンギラス、これを私に?…ふふっ、ありがとうね」

 

そこでクレハが見たのは二個のオボンのみを両手に持ったバンギラスだった。

主人の姿に気付いたバンギラスはまるで褒めてとばかりに人懐っこい笑みを浮かべながら、クレハにオボンのみを手渡す。

オボンのみを渡されたクレハは顔にはだしていないが、その心中はまるで子の成長を喜ぶ母親のように、感涙と尊みに満ち溢れていた。

それもそうだろう、バンギラスはクレハがタマゴからかえさせたヨーギラスから育てたポケモンなのだから。

そりゃ可愛いのも当たり前である。

 

───────

 

「……ポケモンのタマゴ、ですか?」

 

「そうだ。頼めるかな?」

 

シンオウから旅に出て約数年。カントー、ジョウト、ホウエンを回ってぜんこくずかんを埋めたクレハは久しぶりにシンオウに帰郷し、マサゴタウンのナナカマド研究所へと図鑑の事を報告しに来た時だった。

ナナカマド博士からポケモンのタマゴを預かって欲しいと頼まれたのだ。

クレハが事情を聞いてみると、どうやらサンプルとしてジョウトのウツギ研究所から送られてきたのだが人手が足りず、手が空いているのがクレハだけとの事。

しばらく考え込んで、クレハは口を開いてナナカマド博士に言う。

 

「…大丈夫、問題ありません。タマゴは私が預かります」

 

「おお!頼むぞ、クレハ君」

 

クレハの口から出た言葉は了承だった。それを聞いたナナカマド博士は安堵したように胸を撫で下ろすとクレハの方に手を置いて頼むぞとクレハに言う。

 

「おまかせあれ、です。では自分はフタバに戻ります」

 

「うむ。タマゴの事を頼んで置いてなんだが、久しぶりの実家だ。ゆっくりしているといい」

 

ナナカマド博士の言葉に頷き、クレハはタマゴを抱えたままモンスターボールからムクホークを出してそらをとぶを使って、フタバタウンへと飛んで行ったのだった。




クレハ

手持ちまでトレーニングさせてるのはトレーナーだった頃の習慣。運動になるし、このままでいいかと思っている。

バンギラス

ジョウトのポケモンはシンオウでは珍しいから研究サンプルとしてジョウトのウツギ研究所から研究サンプルとしてナナカマド研究所に送られてきたタマゴから孵ったヨーギラスから進化した模様。

ナナカマド博士

最近仕事がものすごく忙しいらしい。ポケモンの数が多いからしゃーない。


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過去編 トレーナーさんの子育て日記

ちょっと間が空いたな…


○月✕日 晴れ

 

タマゴの研究資料にする為に記録として今日から日記を付けることにした。

フタバからコトブキまで歩いてみたけどタマゴに反応はなし。

 

○月△日 晴れ

 

ナナカマド博士からタマゴを預かって2日目にしてタマゴが孵化。生まれたのはジョウト地方で見かけたヨーギラスだった、よちよち歩きしててなんかかわいいし、私にすごく懐いてきてる。

ちなみにしっかりナナカマド博士には報告済みだ。すごく喜んでた。それで研究所に戻りますかと聞いてみたけど、そのまま君の手持ちに加えても構わないと言われた。

それは助かる。この子すごく懐いてきてるせいか、私の腕に抱きついて離れないし。

 

✕月●日 曇り時々晴れ

 

かわいい。ヨーギラスがひたすらかわいい。素直にいっぱい甘えてくるのが本当にかわいい。私以外の他の皆…ゴウカザル達とも仲良くやれてるみたい。あ、もうそろそろサナギラスに進化するかも。

 

✕月△日 雨

 

ヨーギラスがサナギラスに進化してくれた。だけど甘えんぼうなところはあんまり変わってない。進化してもかわいいとはこれ如何に。

ガブリアスなんて積極的にサナギラスを抱っこしてあげてるし。なんだろうね、進化してもかわいいとはこれ如何に。(大事な事なので2回言いました)

 

△月✕日 快晴

 

ついにバンギラスに進化した。バンギラスの生態上、凶暴化するかもしれないという話はジョウト地方を旅していた時から知っていたけど、この子はそんな事なかった。

ヨーギラスからよく知ってる、あの優しくてのんびりとした甘えんぼうのままだ。

嬉しさのあまり泣いてしまった。カントーで育て屋さんをやっているおばあちゃんもこんな気持ちだったのかな。

 

────────

 

ポケモン達を連れて無事にトキワシティにある祖母から引き継いだ育て屋兼自宅に帰ってきたクレハは手持ちを含めた全員にポケモンフーズを食べさせた後、休憩がてら机の引き出しにしまっている古ぼけた日記を開いていた。

 

「……ふふっ」

 

パラパラと開いた日記を読みながらその内容に懐かしさを感じて笑みをこぼす。その理由はこの日記の内容だ。この日記には自分が祖母の育て屋を引き継ぐ事に決めたきっかけになった出来事を綴っているのだ。

 

最初は嫌だった。だからトレーナーになった。ポケモン達と一緒に冒険するのが楽しかった。でもやっぱり同じくらい育てる事も楽しかった。ヨーギラスの件でそれを自覚した。

だから今こうして育て屋をしている。

 

日記を読み終え、引き出しにしまった後にクレハは久しぶりに家族に電話でもしようと思った。両親は勿論の事、腰を痛めて今はその両親の介護を受けているおばあちゃんの声が聴きたい。そう思いながらクレハは携帯を手に取るのだった。

 




クレハ

実はおばあちゃんの育て屋を引き継いでいた。

バンギラス

今も昔も変わらない子

ゴウカザル達

やたら子育てにノリノリだった。
しかし全員結構強面な為、ヨーギラスが恐怖で泣き出したという逸話がある。

ちなみにこの頃カイリューはまだいなかった。

ナナカマド博士

日記が研究資料じゃないて本当にただの日記で困惑したが同時にほっこりもしていた強面おじいちゃん。


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育て屋さんと幼なじみサイエンティスト

|・д・)…はーじまーるよー


「ん〜……あさぁ…。…?……??」

ピピピピピピピと鳴り響く目覚ましのアラームに起こされ、音を消そうと手を伸ばし、ボタンをおしてアラームを……消すことが出来なかった。あれ?と思って目覚まし時計にがある位置に手を伸ばすが、ない。目覚まし時計がそこにないのだ。しかしアラームは鳴っている。この謎の自体に流石に眠気が吹き飛んだクレハは──

 

「そぉぉおい!!!」

 

──大声を出しながら布団をひっくり返すような勢いでベッドから出る。そしてアラームが鳴る方へと顔を向ける。そこに居たのは……

 

「ゴースッ」

 

ゴーストである。しかも何故か頭にプロ野球チーム〝エレブーズ〟のハチマキを巻いている。だがクレハにはそのハチマキは見慣れたものだった

 

「……ご、ごーやん!?」

 

「ゴースッ♪」

 

そう、今はナナカマド研究所で働いているリリカに続く三人目の幼なじみ、フウマの手持ちのゴースト、ごーやんだったのだ。エレブーズの熱狂的ファンであるフウマ手作りのハチマキを巻いているのが何よりの証拠だった。そしてクレハは思い至る。ここにゴーストがいるということはつまり…

 

「ウチもおるということやっ」

 

「そうそう。フウマもいるって事──ってうわぁ!?」

 

推理をするクレハの後ろから声が響く。そのあまりの自然さにクレハは気付かずに同意して、そしてあとから気づいて思い切り、驚く。

 

「なんや自分そないにけったいな声ださんでもええやんけ」

 

「いやいや、驚くからねっ!っていうかどうやって中に入ってきたの!?」

 

クレハの反応に面白いとばかりに笑うフウマにどうやって自宅に入ってきたんだと、クレハは訊く。返答次第によっては、フウマをジュンサーさんに通報しなければならないのだ。

 

「待て待て、落ち着きいっ!?ゴウカザル!ゴウカザルが入れてくれたんやっ」

 

「……ゴウカザルが?」

 

電話を取り、画面をタップするクレハを止めながら慌ててフウマは事情を話す。

どうやら自宅にフウマ達を入れたのはゴウカザルらしい。

──なんでとは思わなかった。だってフウマは普段から仕事が忙しく基本的には研究所で缶詰め状態だ。きっとゴウカザルはごーやんを見て、フウマに気付いて喜んで入れてあげたんだろう。どっつんこと、ドダイトスにも会えるし。とクレハは納得する。

 

「…ならそのゴウカザルは?というかムクホークにレントラーも居ないし……」

 

そして今気づいたがごーやんも居ない。とクレハは付け加えてフウマに言う。

 

「ゴウカザル達は家の手持ちと一緒に庭にたむろってるで。あと多分ごーやんもや」

 

あっけからかんと言うフウマになるほどと納得しながらクレハは思う。──ああ、今頃ゴウカザルはガブリアスに説教されてるんだろうな。とそれはそうだろう、だって友人とはいえ主人の許可もなしで勝手に家に入らせたのだから。もし間違いがあったらどうするんだって怒るガブリアスの姿が目に浮かぶ。

 

「──と、クレハ支度せんでええんか?」

 

「はっ!?やばい、いかなきゃ!」

 

「おう、行ってら〜」

 

その言葉を聞き、慌てて支度をしに浴室に向かうクレハ。それをフウマはカラカラと笑いながらで見送のだった

 

 




クレハ

遅刻、遅刻〜!

フウマ

ウチ、本格的に登場や!

ごーやん

まさかのポケモン側の初セリフがこいつ

ゴウカザル、ガブリアス

クレハの懸念通りただいま庭で説教中


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育て屋さんは幼なじみのサイエンティストに相談する

 

「ふぅ…仕事完了っ」

 

あの後慌てて準備をしたクレハはいつも通り預けたポケモンの世話を手持ちと協力しながらして、ポケモン達を寝かしつけて、一段落をつけたところだった。

 

「……さてと、フウマおしゃべりしよっか」

 

「いきなり来てもうて堪忍な〜?」

 

「ほんとだよっ!朝起きたらごーやんが居てビックリしたンだからねっ!?」

 

クレハは後ろを振り向き、ある程度の手伝いをさせてたフウマをジト目で見つめる。仕事の手伝いをさせていたが、それはそれ、これはこれとばかりに謝るフウマに苦言を告げる。

誰だって怒る。そりゃあ怒る。朝起きたらゴースト居たんだもの。ビックリもする。しかしクレハの場合は事前に連絡くれたら時間を作ってもてなす準備をしていたのにという理由だが。フウマもそれはわかっていて、少しばかり、本当に少しばかり反省している。だから詫びがわりに仕事を手伝ったのだから。

そんな二人を苦笑いしながらゴウカザルやごーやんを含めたそれぞれの手持ち達が見守っていたのだった。

 

────────

 

「……まぁとにかくだよ、本当に何の用で来たの?」

 

しばらくしてようやく落ち着いたのかクレハは改めてフウマに訊いた。まぁ内心リリカみたいにドッキリで来たんだろうけどと当たりをつけてはいるが。

 

「そんなんドッキリに決まっとるやん」

 

「やっぱりね…」

 

あっさりとしたフウマの答えにガックリと肩を下げる。

なんでリリカといい自分にドッキリを仕掛けるのか。

 

「……まぁそれだけやないさかい」

 

「えっ」

 

「ちょい自分、上に上がってウチとサシで話をしようや。勿論ゴウカザル達を置いてな」

 

「えっ、う、うん??」

 

「ほな、二階に行こうや」

 

「え?…えぇぇ……!」

 

いきなりガラリと雰囲気を変えたフウマの言葉に気圧され、思わず頷くクレハ。

ぽかんとする二人を見つめる互いの手持ちが特にゴウカザルやバンギラスが驚く中、そのまま自分より一回り小さいフウマに手を引かれてクレハはそのまま二階に言ってしまうのだった。

 

────────

 

「……話って?」

 

フウマに手を引かれるまま、二階の自室へと連れていかれたクレハは椅子に座りながら話とは何かとフウマに訊く。

 

「単刀直入に言うで。クレハ、自分カツラのじーちゃんからグレンジムのジムリーダーにならんかって誘われたんやって?」

 

「──なんで知ってるの」

 

フウマの口から出たのは自分と自分を誘ったあの元気な老人しか知り得ない事の筈で、クレハは間の抜けた顔をしながらフウマをじっと見てそう訊く。

 

「ミドリばぁちゃんから聞いとるねん」

 

「え。なんでおばあちゃんが……?」

 

「そらそうやろ。一人娘兼孫の人生に関わる事や。身内にあらかじめ連絡するやろ」

 

さも当然のように言うフウマに、なるほどと納得する。確かに一大事だし、そりゃ家族にも事前に連絡くらいするよね…ましてやカツラはクレハの祖母のミドリの若い頃からの友人でもあるし、当然携帯番号も持っているから連絡は容易なのだ。

 

「さて納得したようやから訊くで?」

 

「……うん」

 

「ジムリーダーになるんか?それとも……」

 

「わからない。まだ、悩んでる……」

 

「……そか」

 

フウマはクレハの様子を見ながらそう言い、改めて訊いた。

訊かれたクレハは正直にフウマに迷っていると答える。

それもそうだろう、人生に関わる大事な事だ。悩まない理由がなかった。

 

「……まぁえぇわ。クレハ、悩んどるなら旅行とからどうや?イッシュとかおすすめやで?」

 

「…フウマ」

 

「来ないな時はな、ぱーっと遊んで頭ん中すっきりさせた方がえぇねん」

 

考えるんはその後でえぇ。そう付け加えてクレハの頭を撫でてから改めて……こっからは楽しいガールズトークしようやと伝えクレハも笑って頷き、昔話を交えながら翌日の昼にフウマが帰るまで共に過ごすのだった。




クレハ
実はジムリーダーにならないかと誘われていた。実際なっても育て屋はできるし、ジムの移動もカイリューに乗れば問題ない。しかし人生が関わる事だしトレーナーやめた癖にいいのかなと悩んでいる

フウマ
割と幼児体型。
幼なじみが悩んでいるのをその身内から聞いて強引に休暇とってすっ飛んできた。相談に乗ってあげた。
ちなみに手持ちはこちら

どっすん(ドダイトス)
通称ドツキドス。その巨木でツッコミを入れてくる重量級のツッコミ系。

ごーやん(ゴースト)
いたずら好き。

びりやん(エレキブル)
ボケもツッコミもこなす、フウマの幼なじみポケモン。エレキットからの付き合い。

フウマは研究者なのでパーティはフルで揃えていない。ちなみに全員がエレブーズのハチマキ巻いてるのが特徴。

カツラ
うおおおおぉす!
ある意味クレハの悩みの元凶。

ミドリ
クレハの祖母。ジョウト出身でクレハのカイリューの前トレーナー




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育て屋さんとドラゴン師弟

(((((*´・ω・)トコトコ、チラ|ω•`)

追記
少しばかり修正を致しました


「……ふぅ」

 

かぽーん、そんな効果音が聞こえてきそうな雰囲気を晒しながら、湯に浸からせないようにする為か、長い髪をタオルで纏めた状態でクレハは湯船に浸かりながら、一息つく。

やはりお風呂はいいな、最高だ。と内心思いながら。

 

「……さて、そろそろ上がらなきゃ」

 

ずっと入っていたいが、それは身体に悪い。名残惜しく感じるも、湯船から出て、浴室を出る。頭に巻いていたタオルを外し、先程まで着ていた服が入っている洗濯カゴに入れて、それとは別で用意していたタオルで体を拭いて、寝巻きに着替えていく。その後に洗濯機の蓋を開け、洗濯カゴの中にある服とタオルを洗濯機の中に入れる。洗剤と柔軟剤を入れて、蓋を閉めてスイッチを押して、その場をあとにする。

ちなみに目安は大体20分くらいだ。

 

「……まだやってる」

 

洗濯が終わり、外に干したらそのまま就寝だ。そんな事を考えながらトキワの森の空中で組手をしているカイリューとガブリアスを見る。ガブリアスが腕を振りかぶってカイリューを攻撃しようとするが、カイリューは難なく受け止めると、そのまま投げ飛ばし、その隙に〝ぼうふう〟で動きを封じて〝ハイドロポンプ〟を叩きつけてきた。なんとか耐えたガブリアスだが、もう満身創痍な様子で、それを見たカイリューがガブリアスを抱えて家の庭へと戻ってくる。どうやら今日の特訓は終わりらしい。

 

帰ってきたカイリューとガブリアスの元に、特訓を庭で見守っていたゴウカザル達が駆け寄り、ガブリアスにオボンのみを手渡す。ガブリアスは座り込んでから渡されたもぐもぐとオボンのみを食べ、体力を回復させていく。

 

「お疲れ様。カイリュー、ガブリアス」

 

「リュオン♪」

 

「ガブリァ……」

 

寝間着姿のまま、庭にいる2匹に駆け寄るクレハ。そんなクレハにカイリューは朗らかにわらい、ガブリアスは瞑想するように目を瞑っている。

 

「やっぱり悔しい?ガブリアス」

 

「ガブ」

 

そんなガブリアスを見てクレハはそう訊くとガブリアスは頷き、師であるカイリューを尊敬の眼差しで見つめる。悔しさはあるが、目標は高い方が嬉しい。そんな事を伝えている様だった。

 

「リュオン」

 

見つめられたカイリューはきさくにウインクしてガブリアスを見る。そうこの2匹は師弟関係だ。いや、2匹だけではない、バンギラス以外は全員そうなのだ。まだカイリューがクレハの手持ちでなかった頃、つまり今はフタバタウンでクレハの両親と共に暮らしている祖母の手持ちだった頃にミオシティの船から行ける、こうてつじまという場所で祖母の昔馴染みであるミオシティのジムリーダー、トウガンと共にクレハとその当時の手持ちの稽古を1年程つけくれた事があるのだ。

 

「……つらかったなぁ…」

 

過去を思い出し、遠くを見つめていくクレハ。カイリューとトウガンのトリデプスによって手持ちごと倒れ伏し、何回ポケモンセンターに運ばれた事か。しかもそれが一年も続いたのだ。

そして修行が終わり、先生と呼び慕っているトウガンのジムに挑戦しようとした矢先にギンガ団とかいうテロリスト集団が爆弾使って湖を吹き飛ばしたりしたもんだからで大変な思いをした。

 

「まぁ、間違いなくためになったからいいけどね」

仲良くオボンのみを食べあっている手持ちを見ながらそろそろ時間だからと洗濯物を取りに家の中に戻っていくのであった。




クレハ
こうてつじまで修行していたらしい。その甲斐あってシンオウリーグスズラン大会ベスト6の成績を納めた。ちなみにギンガ団の騒動でよくサターンと激突する事が多かったらしい。

カイリュー
祖母の手持ちだったからおじいちゃん。しかしようきであり、きさくな性格の持ち主。しかし修行はめちゃくちゃ厳しかった

ガブリアス
手持ちの中では1番カイリューを尊敬している。まじめな性格でバンギラスの面倒はヨーギラスの頃から見ていた。

トウガン
クレハの師匠。クレハに最初に立ち塞がったジムリーダーでもある。

ギンガ団
ステキファッションのテロリスト集団。


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過去編 トレーナーさんとこうてつじま

──こうてつじま。シンオウ地方の港町、ミオシティのボートから行く事の出来る島である。

トレーナーやその手持ちが鍛える場としても有名な島であるが、かなり最近にそれなりに有名な製鉄会社(規模はそこそこ)が島の一部を買い取り新たな工場を立ち上げた事でも話題になっている。

 

────────

 

「にゃあぁぁぁぁ!?」

 

トリデプスの〝じしん〟によって大地が揺らされ、トレーナー…クレハもその手持ちである、最近進化したばかりのゴウカザルも身動きが取れずダメージを受けてしまう。

 

「リュォォォンッ!!」

 

更にその隙を逃すまいとばかりに、カイリューが翼を広げて飛翔し、そのまま翼をはためかせると〝ぼうふう〟となって身動きが取れないクレハ達に襲いかかり為す術なく吹き飛ばされて、そのまま既に倒れ伏しているドラピオン、ロズレイド、ムクバードに、ルクシオ…そしてガバイト等の近くに倒れ伏してしまう。

 

「おい、クレハ!大丈夫か?おーい!……ダメだこりゃ、またポケモンセンターに運ばねぇとな…おい、リク坊にカイリュー!こいつら運ぶの手伝ってくれや!」

吹き飛ばされ、地に倒れふすクレハ達を呼びかけるトウガンだったが、返事がなくため息をつきながら修行相手のカイリューと、幼いリオルを連れた少年にそう言う。

 

「カイ」

 

「は、はい!…ブロウ、行くよっ」

 

「りおっ!」

 

「わりぃなぁ、リク坊。お前の親父の土地でドンパチやってよ」

 

「構いませんっ!僕も将来トレーナーになりたいですからっ」

 

トウガンの言われた通りにカイリューとリクト、そしてブロウと呼ばれたリオルはそのままクレハ達を運び、とりあえずの応急手当をした後に未だに気絶しているクレハのベルトからモンスターボールを取り出して手持ちを入れてあげた後にカイリューがクレハを抱き抱えて、その背にトウガンが乗り込みポケモンセンターへと連れていったのだった。

 

────────

 

「全くもう!あんまり無茶はさせないでください!」

 

「いやぁ、申し訳ない!毎回世話になります!」

 

ポケモンセンターの主であるジョーイはクレハ達の治療に来たトウガン達を咎めていた。それはそうだろう、1日に何度も同じトレーナーと手持ちが運ばれて来るのだから。しかもそれが女の子だから尚更だ。

対してトウガンは全く悪びれていない。どうしてだとジョーイが訊くとトウガンはこう答えた。

 

「強くなりたいって言ったのはあいつだ。友達に追いつきたいって言う理由でな。だからこそ徹底的に鍛えるのさ、そいつが一番手っ取り早いからな」

 

真面目な顔でそう語りながら、目が覚めたクレハを連れ、昔馴染みのカイリューの背に乗り込んで再びこうてつじまへと向かうのだった。

 




クレハ
こんな修行が約1年続いた。やりきった理由はリリカに追いつき、追い越す為。

トウガン
名実共にクレハの師匠。ミオシティのはがね使い。

カイリュー
フスベ出身なクレハの祖母の手持ちだっただけにかなり強い。

リクト・ブロウ
冒頭で説明したこうてつじまで運営している工場の責任者の息子とその相棒ポケモン。参考目的で見学していたが、思っていた以上に苛烈だった為に内心はドン引きしていた。


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過去編 VSギンガ団、リッシ湖の激闘(前編)

ヒダイマックスは流石に草。


「……よくやりきった」

 

クレハがこうてつじまで修行を初めてから早一年。

カイリューが見守る中トウガンが厳つい顔を綻ばせてクレハに言う。

そう、この日を持って修行が完遂したのだ。

 

「……はい!」

 

師であるトウガンとカイリューに認められ、素直に喜ぶクレハとその手持ち達はゴウカザル含め、全員が最終進化を果たしていた。その様子にカイリューも満足気に笑っている。

そんなカイリューに気づく事なく、クレハ達は泣き笑いして喜びを分かちあっていたがふとトウガンが口を開き、クレハにこう伝えた。

 

「さぁ、今日はもう休め。あと明日の昼頃にジムに来い」

 

「……!はい!」

 

トウガンが伝えた言葉の意味をすぐさま理解して、クレハは手持ちをボールに戻し、カイリューの背に乗ってこうてつじまを後にした。

ちなみに置いてかれたように見えるがトウガンはあらかじめ用意しておいた小型船があるから問題は無かったりする。

 

────────

 

そうしてミオシティのポケモンセンターで手持ちとゆっくり休養をとり、その翌日にカントーにいる祖母の元へと飛んで行ったカイリューを見送ったクレハ達は昼食を早くに済ませ、トウガンの待つミオジムへと向かおうとしたその時だった。

 

「きゃあ!?──ば、爆音?この近くで爆発が起きたの??」

 

爆音が聞こえ驚き、悲鳴をあげて慌てながら耳を塞いで周りを見ていたら、ミオジムの扉が開き、緊迫した様子のトウガンが出てきて、クレハにこう伝えた。

 

「すまんな、クレハ。ジムバトルどころではなくなってしまった、お前は一旦ポケモンセンターに戻って大人しく……」

 

「私も行きます!爆音が聞こえた方からしてリッシ湖ですよね!?」

 

大人しくしているようにと、クレハに伝えようとしたトウガンだったが、クレハは自分も着いていくといい出した。

 

「……本気か?危険かもしれねぇぞ?」

 

トウガンは緊迫していた顔を歪ませ、睨むようにクレハを見つめて訊く。

 

「わかった上ですっ」

 

圧にひるむことなく、真っ直ぐとトウガンを見つめるクレハ。トウガンは少しの間クレハの目をじっと見つめてこう考えついた。

──ああ、こりゃてこでも動かねぇな。流石は俺の弟子だ、正に鋼の意思だぜ。とクレハを心の中で褒めちぎり、にかっと笑ってクレハの頭をわしゃわしゃと撫で、こう言った。

 

「それでこそ俺の弟子だ!行くぞクレハ、リッシ湖に!」

 

「はい!」

 

そうしてクレハはトウガンの案内の元、リッシ湖に向かって行き、たどり着いたクレハ達は湖を唖然とした。それはそうだろう、湖の水が丸々消えていたのただから。

 

────────

 

「ど…どうなってんだ、こりゃ!?」

 

「湖から水が…酷い…!」

 

わけがわからないというトウガンと、水が無くなったせいで無惨に打ち上げられているコイキングを見ながらこんな酷いこと一体誰が…!と怒りを露わにするクレハ。

そして2人の目に緑の髪と銀と黒の特徴的な服を着た怪しい者達の姿が目に入った。

 

「……なにあいつら…?」

 

「…なるほどな。こいつらか、ギンガ団ってぇのは」

 

彼ら、彼女らのあまりにも特徴的というか、奇抜な格好に困惑するクレハ。そしてトウガンは心当たりがあったようで、クレハは訊く事にした。

 

「知ってるんですか?」

 

「ああ。ここ最近ギンガ団ってぇのが、シンオウのあちこちで活動しているっつー話をチャンピオンから聞いてな……」

 

「……チャンピオンから?なるほど…」

 

返ってきたトウガンの言葉に納得したクレハはここからどうします?とトウガンに再び訊く。

 

「決まってんだろ。──蹴散らすぞ!」

 

「──はい!」

 

返ってきたトウガンの答えはあまりにもシンプルで、好戦的だった。しかしクレハは満面の笑みで了承。似たもの師弟である。2人はボールを構え、そのまま突撃していったのだった……

 

 




クレハ
割と脳筋で熱血。それは育て屋を営んでる今でも変わらない。だからカツラに跡継ぎにならない?と誘われるんやぞ。

トウガン
脳筋師匠。弟子と2人仲良くギンガ団に喧嘩を売りに突撃した。

ギンガ団
ある目的の為に湖吹っ飛ばした。この後ジムリーダーと、やたら強いお子様に突撃かまされた。

ちなみに当時のクレハのパーティーはこちら

ゴウカザル

ガブリアス

ムクホーク

レントラー

ロズレイド

ドラピオン

ロズレイドとドラピオンは現在ナナカマド研究所におり、元気に暮らしている。


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過去編 VSギンガ団、リッシ湖の激闘(中編)

ピィはお星様になったんだよ(ガチ泣き挨拶)

※あとがきにコイキングの事を追加しました


「ムクホーク、〝おいかぜ〟!」

 

「ホォークッ!」

 

「ナイスアシストだ、クレハ!トリデプス、〝じしん〟だっ!」

 

「デェェェプスッ!!」

 

ムクホークが力いっぱい翼を羽ばたかせ、強風を発生させ、その風の勢いに乗ったトリデプスが先制を取る。

そしてその強靭な四股で地面を叩き、揺らす!するとどうなるか?簡単な事だ。

 

『ぐわぁあぁぁ!!?』

 

「ご…ゴドラァァァ!!」

 

こうなる。相手の複数人いるギンガ団員もろともその手持ちのサイドンやボスゴドラ等が身動きも取れず大ダメージを受ける。しかしボスゴドラだけは特性 がんじょうの効果で耐え抜き、いわおとしでクレハとトウガンごとムクホーク達に襲いかかる。

 

「〝とんぼがえり〟!」

 

「ホォークッ!」

 

「ドラァ…、ァ…!?」

 

しかし落ちてくる岩を空中でひらりとかわしながらボスゴドラの背中に攻撃。そのままボスゴドラはダウンし、とんぼがえりの効果によってムクホークはクレハの元へまっすぐ戻りボールの中に入り、他の手持ちに交代する。

 

「トラァァ!!!」

 

吠えながら現れたレントラーはまだ自分達を取り囲むギンガ団員とそのポケモンを睨みつける。まだ結構な数が残っているようだった。

 

「……トウガン先生、数が多すぎますね…」

 

「ああ、そうだな…!」

 

互いに背中を合わせながらそう伝えあい、クレハが相手のポケモン達を見つめながらある手を考えつく。

 

「思いついたことがあります。信じてくれますか?」

 

「勿論だとも!」

 

「ありがとうございますっ」

 

弟子を信じるのは師匠として当然だとばかりに答えてくれたトウガンに感謝の言葉を告げると敵に悟られないように作戦を伝える。

 

 

「なるほどな…了解した!トリデプス、戻れ!…こい、エアームド!」

 

「ドォー!」

 

クレハの作戦に合わせるためにトウガンはトリデプスを引っ込み、エアームドに交代。クレハとトウガンを背中に乗せて飛翔した。

 

「……よし、今だ!レントラー、地面に向かって〝 10まんボルト〟!」

 

「トラァァァ!!」

 

バチバチと体を放電させながら、レントラーはクレハの指示通り地面に10まんボルトを流していく。すると電撃が地面に残る水に通してリッシ湖全体に通っていく!

 

──ほんげぇぇぇ!?あぎゃぁぁあ!?いわぁぁぁく!?

 

当然ながら感電したギンガ団員の悲鳴がその手持ちポケモン達の悲鳴と共に響き渡る……。

どれだけ爆弾で吹き飛ばそうが、元は巨大な湖だった場所だ、当然地面は湿っているし、水も残っているのだ。感電は必須。これで一気にギンガ団員は殲滅した。残るはじめんタイプを持つポケモンと、特性ひらいしん等を持つポケモン、及びひこうタイプのポケモンで退避していた少数のギンガ団員だけだ。

 

「……?トウガン先生、あの洞窟見たいなのはなんですか?」

 

ギンガ団員のほとんどがやられ、エアームドの背に乗っていたクレハはゆっくりと降下していく中、ふと湖の真ん中辺りに見慣れない洞窟が目に入り、トウガンに訊く。

ちなみにひこうタイプはムクホークとガブリアスがあらかた、片付けた。

 

「?さぁな、俺もあんなもんは知らねえ…」

 

トウガンも知らないようでどういう事だろうと考え、あれが敵の目的なんじゃないかとクレハは結論。それをトウガンに説明する。

 

「トウガン先生、もしかして敵の目的と関係しているかも知れません!」

 

「……なるほどな。クレハ、残りの奴らは俺に任せて先に洞窟にいけ!」

 

「え?でも……!」

 

「お前を信頼しての事だ!…なぁに、あんな連中には負けん!」

「……はい!」

 

そんなやり取りを交し、クレハはエアームドから飛び降り、ムクホークを出して直接洞窟の方へと向かっていくのであった。

 




クレハ
師匠に言われ、洞窟内へ

トウガン
ここは任せて先にいけをやった(お約束)

ムクホーク
おいかぜにとんぼがえりとサポート要員だがアタッカーにもなれる優秀な鳥。

レントラー
湖にいる敵の半数以上を見事に殲滅した。

ギンガ団員
大半はしびれびれー…!したが数が多いのでまだ残っている。

洞窟
一体何ノムが眠っているんだ…?

打ち上げられたコイキング達
クレハ達が来た頃には既にお星様となっていた


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過去編 VSギンガ団、リッシ湖の激闘(後編)Part1

ドーモ、ランクマクソザコナメクジな作者です(78戦中26勝52敗)


「ここか…!」

 

パシャんと水溜まりを踏みつけながら、クレハは洞窟内をまっすぐ走る。ポケモントレーナー特有の身体能力をフルに出しているからか相当速く、あっという間に辿り着く。

──青い特徴的な髪型をした中性的な外見をしたおそらく青年の元に。

 

「…ミッションは順調。ボスも満足なさるだろう。…おや?何故子供がこんなところに?どきたまえ」

 

「嫌。どかない…!」

 

クレハに気づいていないのか、青年は1人でぶつぶつと呟きながら片腕と脇に四角い箱を挟むように抱えた状態で後ろを向き、クレハに気付く。本人的には紳士的な対応のつもりなのだろう、クレハにそこをどくようにと言い放つが当然クレハは拒否。その言葉に困ったように笑みを浮かべながらクレハを見下ろす。対するクレハもキッと青年を睨みつける。

 

「……ああ、そうか君か。ミオのジムリーダーと一緒に襲撃をしてきた子供というのは」

 

「だったら何っ!?」

 

「ふん、生意気な子供だな。……お仕置きが必要だ」

 

「……!」

 

しばし睨み合っていた二人だったが、青年がクレハの正体を察し、お仕置きと称してボールを構える。当然クレハも距離を取りボールを構えた。

 

「──ギンガ団の邪魔をする者はどんな可能性だろうと潰す。行け、ドータクン!」

 

「────!」

 

そう伝えると同時にボールを投げ、先発を繰り出す。

現れたのは名前の通り銅鐸を連想させるポケモン、ドータクン。

ドータクンは不気味な赤い目を光らせながらクレハをじっと見つめている……

 

「(ドータクン…!あいつは確かはがねとエスパーの複合タイプ…!だったら…)行って、ムクホーク!」

 

「ホォォークッ!!」

 

対するクレハはムクホークを繰り出す。ゴウカザルでない理由は簡単だ、ドータクンがエスパー持ちだからだと言うのもあるが、ドータクンの特性がたいねつだった場合、かなり不利になってしまうのが大きいからだった。

 

「ふん、ムクホークか。タイプ的にはそちらが不利だぞ?ドータクン、〝サイコキネシス〟」

 

「──!!」

 

「タイプ相性がバトルの全てじゃない!〝おいかぜ〟で加速して避けて!更に〝とんぼがえり〟!」

 

「ムクッ!ホォォークッ!!」

 

出てきたムクホークを鼻で笑う青年に反抗するクレハ。

それに青年は本当に生意気な子供だなと内心思いながら、ムクホークのスピードを封じようとドータクンにサイコキネシスを指示するが、すかさずクレハもおいかぜを指示し、ムクホークのスピードを上げさせてサイコキネシスを振り切らせ、そのままとんぼがえりで攻撃を加えようとする。

 

「〝トリックルーム〟続けて〝リフレクター〟だ」

 

「──!────!!」

 

「っ!トリックルーム…!それにリフレクターまで…!」

 

自慢の耐久力でムクホークのとんぼがえりを受け止めて四角い巨大な箱のようなバリアに自身とムクホークを閉じ込め、更に5枚の壁のようなバリアを展開していく。

それを見たクレハはとんぼがえりの追加効果でムクホークをボールに戻しながら、苦虫を潰した顔をする。理由はどちらの効果も知っているからだ。

 

「その顔からしてどうやら効果は知っているようだね。さぁ、早く次の手持ちも出したまえ」

 

「っ、ガブリアス!」

 

「ガブッ!」

 

青年の言葉に、仕方ないとばかりにガブリアスを繰り出す。特性がふゆうの可能性もあるが、じしん以外の技を出せばいいと判断したからだ。

 

「ほう。ガブリアスか、いいポケモンがいるじゃないか。しかし、その自慢のスピードも今は無意味だ。ドータクン、〝サイコキネシス〟」

 

「────!!」

 

「ガブリアス、〝すなあらし〟!更に〝だいもんじ〟!」

 

「ガブッ!ガブリァァ!!」

 

そう、トリックルームの効果によりすばやさが逆転状態となっている上にリフレクターで物理攻撃は半減してしまっていて、先手を取られる上にまともなダメージが期待出来ない状況なのだ。しかしクレハは諦めずにすなあらしを巻き上げドータクンの目を眩ませる事で1つの対象しか操れないサイコキネシスを躱し、更にすかさずだいもんじを放ち効果抜群のダメージを与えに行く。

 

 

「──!!?」

 

「ちっ、〝ヘビーボンバー〟」

 

物理攻撃でないため、リフレクターでは半減できないだいもんじをドータクンは浴びてしまうも流石の耐久力で受けきり、耐える。

すなあらしによって隠された視界に舌打ちしながら青年はガブリアスの姿が見えた途端にヘビーボンバーを指示。ガブリアスを推し潰そうとする。

 

「受け止めて〝だいもんじ〟!」

「何!?っ、〝サイコキネシス〟でだいもんじをそら…ダメだ!あれでは…!」

 

「ガ、ブゥ…!ガブリァァァ!!」

 

「────!!?──……」

 

しかし青年はミスを犯してしまう。自身のドータクンの特性であるヘヴィメタルで大ダメージを与えようとしたのだろうが、ガブリアスの耐久力を侮っていた。更にすなあらしで特性がすながくれだと思っていたのもミスだ。クレハのガブリアスの特性はさめはだ。今彼が指示したヘビーボンバーのような直接攻撃をしてきた相手にダメージを与える特性を持つ、珍しい個体なのだ。これと効果抜群のだいもんじをゼロ距離から浴びてしまい、ドータクンは目を回して地面に倒れ伏した。

 

「……やってくれるな…!」

 

「…完全にこっちをなめてかかったからでしょ?だからこうなるんだよ」

 

「本当に生意気なガキだ…!」

 

ドータクンをボールに戻し、苛立ちを隠せない様子でクレハを睨みつける。しかしすかさずクレハに言い返され、青年はより顔付きが険しくなり、遂にはガキ呼ばわりする。そしてもう油断はしないと宣言して、次の手持ちが入ったボールを投げた──

 




クレハ
相手の油断もあって先制を取った。ガブリアスにすなあらし搭載していたのは完全なる目くらましの為。
普通に考えてすなあらし巻かれたら視界が定まらないよね。

ガブリアス
レートの守護神は伊達じゃない。ちなみにタスキ持ちだったりする。
何故野生の癖して特性がさめはだなのかは、土煙から出てきたフカマルと言えば大体のファンは察しがつくだろう。

青年
言うまでもなく例のあいつ。ガキだと思って油断したのと特性の読み違いで先制を取られた

ドータクン
本来の役目は青年の手持ちの起点役。あと当然、ねんど持ち。

四角い箱
何か入ってる。バトルに入った時には青年が自分の真後ろに置いてたりする。



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過去編 VSギンガ団、リッシ湖の激闘(後編)Part2

サイトウかわゆい


「やってくれるな……!やれ、ドサイドン!」

 

「ドォォォンッ!!」

 

青年はドータクンを戻したボールを握りしめながら悪態をつくが、すぐに冷静になって次の手持ちを繰り出す。

雄叫びを上げながら現れたのは、ガブリアスを見下ろす程の巨体を誇るポケモン、ドサイドン。

 

ドサイドンはじっとガブリアスを見下ろしたまま、臨戦態勢に入った

 

「(ドサイドン……!トリックルームがまだ有効だから確実に先手をうって来る筈…)ガブリアス、警戒して!」

 

「ガブッ!」

 

ガブリアスに警戒を促させながらそう考える。こちらのおいかぜはもうすぐ切れるが、しかしそれがなくてもガブリアスは元々速いポケモンだ。確実に先手を取られるから相手の出方を見るしかなかったのがクレハ達の実情だ。

 

「ふふふ…ドサイドン、〝つるぎのまい〟!」

 

「ドォォォ……!」

 

妖しく笑いながら青年はドサイドンに指示。

指示を受けたドサイドンはつるぎのまいの効果によって攻撃力を高めていく……

 

「っ、つるぎのまい……!ガブリアス、〝じしん〟!」

 

「ガブッ!ガブリァァァッ!!」

 

相手は火力を高めて確実にドサイドンを倒す気なのに気付き、ならばその隙にとじしんを指示。

ガブリアスは足を思いっきり踏みつけ、地面を揺らしに行く。しかし……

 

「そんな簡単にドサイドンを倒せるものか!〝ゆきなだれ〟!」

 

「サァァァイッ!!」

 

「ガブリァァァッ!?」

 

「ガブリアスっ!?」

 

地面を揺らしてもまるで応えた様子はなく、そのままゆきなだれを発揮、そのままガブリアスはもろに受けてしまってトリックルームの壁に叩きつけられる。

しかもゆきなだれはガブリアスの攻撃によるダメージが入った事で威力が倍増され、その上ドラゴンタイプのガブリアスには効果抜群の氷技。当然もろに受けたガブリアスは目を回してダウンしてしまった。

 

「はっはっはっ!まずは1匹!!」

 

「っ、ごめんね…ガブリアス…!……お願い、ロズレイド!」

 

「ロズレッ!」

 

青年の笑い声を悔しげに聞きながらもガブリアスをボールに戻してゆっくり休んでと労いの言葉を付け加えて次の手持ちを繰り出す。現れたのが両手が色の違う薔薇の花となっているくさタイプのポケモン、ロズレイド。彼女はガブリアスの仇を取らんとドサイドンを睨みつけている。

 

「ほう……ロズレイドか…しかしまだトリックルームは有効だ。ドサイドン、〝つるぎのまい〟!」

 

「サァァァイ……!!」

 

サターンの言葉と共にドサイドンは再び攻撃力を高めていき、ロズレイドを狙い撃ちにせんとする。

 

「ロズレイド、〝やどりぎのたね〟!」

 

「ロズレッ!」

 

しかしクレハもこの隙に相手の体力を奪い、自身の体力を回復させるやどりぎのたねをロズレイドに指示。ロズレイドはそのままドサイドンの足元に種を撃ち込み、陣を作っていく。

 

「小癪な手を……!ドサイドン、〝れいとうパンチ〟!」

 

「ドォォォンッ!!」

 

やどりぎのたねを撃ち込まれ苦虫を噛み潰したような顔をしながられいとうパンチを指示。ドサイドンはそのままつるぎのまいで高めた攻撃力でのれいとうパンチをトリックルームの効力を利用して先手で叩き込もうとする。

 

「それはどうかな!〝まもる〟!」

 

「ロズレッ!!」

 

しかしクレハも先制技であるまもるを指示。ロズレイドはれいとうパンチを叩き込まれる寸前でバリアを貼り、防御。

それと同時にトリックルームが切れ、その上にやどりぎのたねでドサイドンの体力を奪っていく。

 

「くっ、やはり防御技を持っていたのか!ドサイドン!」

 

「サイッ!」

 

しかしまもるの性質上、次が決まる確率は低い。

ドサイドンの特性のハードロックによって一撃では倒れぬと踏み、くさタイプにも効果抜群のゆきなだれでのカウンターを狙いに行く事にする。

 

「ロズレイド、〝ギガドレイン〟!!」

 

「ロズレッ!!」

 

「ドサァァァ…!!?」

 

「な、ドサイドン!?」

 

しかし彼の判断は結果的に失敗となる。要因は二つ。クレハのロズレイドの特殊攻撃力を侮っていたことと、ドサイドンのハードロックを過信していた事である。

なぜならクレハのロズレイドは主と共にこうてつじまで修行していた猛者。そこらのロズレイドとは訳が違う上に持たせている持ち物はおおきなねっこ。ギガドレインなどの体力吸収技の効力を高める効果を持つものを持たせているのだ。しかもやどりぎのたねもあり、ドサイドンはそのまま目を回してダウン。沈黙する

 

「……君、名前は?」

 

「自分から名乗ってよ。それが礼儀でしょ!」

 

ドサイドンをボールに戻しながら青年は恐ろしささえ感じる程冷静な様子でクレハに名を訊く。

しかし痛烈に返され、それもそうだなと納得し名乗り出す。

 

「私はサターン。……名乗ったぞ」

 

「クレハ。……フタバタウンのクレハ」

 

「クレハか。認識を改めようクレハ、君はいずれ間違いなく我々ギンガ団の脅威となる……!」

 

あっさりと名乗った事に拍子抜けと得体の知れなさを感じながらもクレハも名乗る。

対するサターンはただの生意気な子供という認識を改め、自分達の脅威と認定。可能ならばここで潰そうとボールから手持ちを繰り出すのだった───




クレハ
ドサイドンをなんとか突破。

ロズレイド
まもる、やどりぎのたね、ギガドレインからわかる通り耐久型である。しかし当の本ポケは優しく姉御肌だったりする。現在の時間軸ではナナカマド研究所でドラピオンと仲良く暮らしている。

サターン
ようやく名前が明かされたギンガ団の幹部。
次の手持ちがドサイドンなあたり、かなりのガチトレーナー。

ドサイドン
みんな大好き重量級ポケモン。ガブリアスを討ち取るという快挙を成し遂げた。技構成はつるぎのまい、れいとうパンチ、ゆきなだれ、じしんと自分の弱点であるくさタイプ、及び強力なポケモンが多いドラゴンタイプの相手を想定したものとなっている。ちなみに持ち物はオボンのみ

四角い箱
何故か本編中影も形もない。オカシイナー?


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過去編 VSギンガ団、リッシ湖の激闘(後編)Part3

金曜日が待ち遠しい


 

 

「クレハか。認識を改めようクレハ、君はいずれ間違いなく我々ギンガ団の脅威となる……!───だからここで潰す!行け!バンギラス!!」

 

「ギラァァァ!!!」

 

「…ば、バンギラス…!?」

 

その言葉と共にサターンが繰り出した3匹目、それはバンギラス。先のドサイドンと大して変わらない巨躯が凶悪な雄叫びを上げると共に、すなあらしを巻き起こしてロズレイドとクレハを見下ろす。ガブリアスが放っていたすなあらしはとうに消えていたから、特性すなおこしが発動したのだ

一方のクレハはその雄叫びに思わず耳を塞ぎ、視界が悪くなったのもあり目を細めるロズレイドはただただ、睨みつける

 

「確実にすり潰してやる!〝ちょうはつ〟、〝れいとうビーム〟!」

 

「ギラァァァ!!!」

 

サターンは早速指示を下し、バンギラスはちょうはつをしつつ、口から冷気を発した光線をロズレイドに向けて放つ

 

「でもロズレイドの方がスピードは上!〝やどりぎのタネ〟更に、〝ギガドレイン〟!」

 

「ロズレッ!」

 

しかしバンギラスは基本的に足が遅い。故にロズレイドの方が早く技を放ち、バンギラスに再び種を植え付けつつ、ギガドレインで体力を吸収

さらに植え付けたやどりぎのタネによりバンギラスから体力を奪っていく

 

「ギラァ…!?」

 

「……面倒な状況だな。だがしかし、〝ストーンエッジ〟」

 

「ギラァァァ!!」

 

苦悶の声と表情を晒すバンギラスを見つめながら、サターンはそう呟く。しかしすぐに計算通りだとほくそ笑んで。れいとうビームを避けられたバンギラスから弾けるようなオーラが溢れ、先程以上に技を放つスピードが上がっていた

…そう、サターンが持たせたのはからぶりほけんなのだ。先程以上にスピードが上がった事でロズレイドの上を取り、そのままストーンエッジで閉じ込めて動きを封じる

 

「ロズレッ!?」

 

「うそ、まさかからぶりほけん!?」

 

「御明答。〝れいとうビーム〟!」

 

「ギラァァァ!!」

 

そんなやりとりをしつつ、身動きの取れなくなったロズレイドめがけてれいとうビームが放たれる。ちょうはつの効果によってまもるを封じられていたロズレイドは避けることが出来ず、それをもろにあびてしまう

そして当然ながら目を回してダウンしてしまい、クレハの手持ちは残り4匹となってしまった

 

「ロズレ……」

 

「ロズレイド、戻って!行ってきて、ムクホーク!」

 

「ホォォク!!」

 

クレハはダウンしたロズレイドをボールに戻し、先発で出したムクホークを繰り出す。しかしスピードが上がったバンギラスに空を飛べるムクホークで撹乱しようという作戦だ。しかし……

 

「忘れてないかい?君のムクホークのおいかぜはちょうはつによってまだ使えないよ」

「でもロズレイドが残してくれたやどりぎのたねがある!」

 

サターンの言葉に対して、クレハは気丈に返す。そうまだやどりぎが残っていてる上、ムクホークはひこうタイプ。確実に覚えさせてあるであろうじしんも封じた。あとはなんとかバンギラスの攻撃を凌ぎながらおいかぜが使えるようになるまで待てばいい。しかしクレハはこの考えが甘かったとこのすぐあとに思い知る事になるだろう

 

「考えが甘いな。〝りゅうのまい〟、〝ストーンエッジ〟!」

 

「ギラッ、ギラァァァ!!!」

 

クレハの甘い考えを断ち切るようにサターンはりゅうのまいを指示。攻撃力と素早さを高めさせながら、ストーンエッジで放たさせる

 

「四つ目はじしんじゃない!?ムクホーク!?」

 

「ムクホッ!?ホォォォク!!?」

 

完全に不意をつかれてしまい、ムクホークに指示を出すのが遅れてしまった。それによりムクホークはストーンエッジを避けきれず、もろに受けてしまう。しかし持たせた気合いのタスキによってなんとか耐えきるも…

 

「すなあらしによるダメージを受けろ!」

 

「〜〜ッ!」

 

そうすなあらしがある。これによってムクホークは撃沈。あっという間にニタテをされてしまった。やどりぎもある。ちょうはつの効果も切れている頃だ。しかしそれでも今の状況はかなり苦しく、正しく大ピンチと言える状況であった……




クレハ
まさかこの後にバンギラスを手持ちにくわえるとはこの頃は全く思ってなかった

ロズレイド、ムクホーク
完全にしてやられた2匹

サターン
本作のテコ入れによりバンギラスを手持ちに。まさかのからぶりほけんを持たせるという。すばやさは正義だからね、仕方ないね。ちなみに残る手持ちはバンギラスを含めて2匹

バンギラス
まさかの登場。この時点で既にクレハの残り手持ち全てから先手を取れるほどに素早さが高まっている。しかしやどりぎが普通に痛い

四角い箱
全く反応がない。


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過去編 VSギンガ団、リッシ湖の激闘(後編)Part4

別世界のロケット団から溢れる強敵感


「ギィルァァァァァ!!!」

 

「……」

 

「ははははは!さぁ次のポケモンを出すといい!」

 

耳をつんざくようなバンギラスの雄叫びが響く中、サターンは高笑いしながら、ムクホークをボールに戻してから無言になってしまったクレハにそう言う

一方のクレハは参ったなぁ…と胸の内で呟く。今のバンギラスは自分の手持ちよりも速いからだ。しかし対抗手段はある。意を決したクレハはボールを投げ、ポケモンを繰り出す

自身が最も信頼するポケモン───

 

「ウキャァァァァ!!!」

 

ゴウカザルを───!繰り出されたゴウカザルは闘志を高めるように自身の胸を両腕で叩きつけながらサターンのバンギラスを睨みつける

 

「ゴウカザル、任せた!」

 

「ウキャ!」

 

バンギラスを睨みつける相棒にクレハはそんな言葉をかける。ゴウカザルもおう!とばかりにクレハの方に顔を向けて頷き、改めてバンギラスの方へと向き直る

 

「(なるほど、あのゴウカザルが彼女のエースか)…バンギラス、〝ストーンエッジ〟だ!」

 

「ギルァァァァ!!」

 

クレハとゴウカザルのやり取りからそう思い至ったサターンはバンギラスに指示を下す。

バンギラスは地面に両腕を突き刺し、タイプ一致かつ高威力のストーンエッジをゴウカザルの足元から生やす。からぶりほけんにより素早さが上がっている為、技が先制で放てるのだ

 

「ゴウカザル、連続〝グロウパンチ〟!」

 

「ウキャキャキャキャキャァァァ!!!」

 

しかしゴウカザルは足元から生えてきた岩を高く跳び上がる事で避け、攻撃力を高める効果があるグロウパンチを岩に叩きつけて破壊する

 

「なるほど、グロウパンチか。バンギラス、〝ストーンエッジ〟だ」

 

「ギラッ!…ギルァ!?」

 

攻撃力を高める事でバンギラスは勿論、今後の展開を優位に進めようという魂胆だと察したサターンはバンギラスに再びストーンエッジを指示するが技を繰り出そうとしたバンギラスは何故か思いっきり転んでしまう

 

「何!?どういう事だ…!?」

 

突然の事態にサターンも思わず声を荒らげ、バンギラスの方を見る。その足には輪になった草が絡みついていたのだ

 

「くさむすびだと!?そうかグロウパンチの時にやっていたのか…!」

 

派手に岩を破壊したのは注意を逸らすためだった事にサターンは気づき、クレハを睨みつける

 

「余所見してていいの?ゴウカザルはもうバンギラスの懐だよ!」

 

自分を睨みつけるサターンを煽るようにクレハはにんまりと笑いながらそう言う。そう、バンギラスが転んだ隙にゴウカザルはその懐に全速力で飛び込んでいたのだ

 

「なぁ…!?バンギラス、〝ストーンエ…〟」

 

しまったとばかりにバンギラスに指示を出そうとするサターン。しかしもう既に遅い、何故ならその隙を逃すほどクレハ達は甘くないからだ

 

「〝インファイト〟ォォォ!!!」

 

「ウキャキャキャキャッ!…ウキャァァァ!!!」

 

「ギルァァァァ!!?」

 

ゴウカザルはなんとか起き上がったバンギラスの土手っ腹に、全力のラッシュを叩きこむ。グロウパンチで高めた攻撃力で放たれるかくとうタイプの強力な技をバンギラスはまともに浴びてしまい、絶叫してその場で倒れふして目を回す

 

「……なんて奴だ…!…こうなれば…!」

 

倒れたバンギラスを見ながらサターンは戦慄。目の前にいる人物の強さに息を飲んでからバンギラスをボールに戻し、自身の最後の戦闘用の手持ちを繰り出そうとした瞬間だった。自身のボスであるアカギから帰還命令が入ったのだ。それを裏づけるようにバトル中に例のポケモンを入れた箱を持たせたケーシイが戻って来ていた。サターンはそのケーシイの額に手を置いてクレハにこう伝える

 

「……この決着は必ずつけよう、クレハ」

 

「……?何言って…まさか逃げる気!?こんなことしておいて逃がすとでも…!」

 

勿論クレハは逃がすつもりなどなく、ゴウカザルと共にテレポートで逃亡しようとするサターンの方へと走り出す。しかしゴウカザルはともかくクレハの方は距離が離れていて、しかもサターンのケーシイには素早さをあげるこだわりスカーフが巻かれている。そのため間に合わずサターンを逃がしてしまった

 

「やられた…!……くっそぉぉぉ!!?」

 

悔しげに叫ぶクレハの声がほとり内に空しく響くのだった…

 




クレハ
まさかの逃亡に怒り心頭。この後来たトウガンと共にミオに帰還。バッジ集めをしつつ、ギンガ団を倒すことを誓う

ゴウカザル
何故かくさむすびまで覚えられる両刀の器用アタッカー。名実共にクレハのエース

トウガン
ほとり内で叫ぶ弟子を宥め、その翌日にジム戦を行った

サターン
本人としては実質的に敗北寸前まで追い込まれた為かなり悔しい。しかしボスの命令には逆らう訳には行かない。逃走用+確実に任務を遂行する為にこだわりケーシイを常に手持ちに入れている

バンギラス
くさむすびで転ばされた挙句、グロウパンチで火力高めたインファイトで沈めらた。カワイソス

四角い箱
実はバトル中にケーシイによってこっそり本部に送られていた模様。だから描写がなかった


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育て屋さんと伝説を追う後輩

久しぶりの本編ですー


「……よし。…おいでコラッタ、ごはんだよー?」

 

「コラッタッ!ラッタッタ!」

 

「あはは、可愛い…」

 

「コラッタッ!…ラッタァ…こく…こく…」

 

もうそろそろ昼時になるというところ、クレハ達は今日も預けたポケモン達の世話をしていた。他のポケモン達はゴウカザル達に任せ、クレハは最近預けたポケモン達の間に生まれたばかりなコラッタの世話を焼いていた。

クレハの片手には用意したミルクの入った哺乳瓶があり、空いた方の手でコラッタにおいでおいでをしている。その辺はさすが育て屋で、かなり手馴れている。ミルクを見たコラッタは目を輝かせながらクレハの元に飛びつくように走り、早く早くとおねだりするようにミルクを求める。そんなコラッタを可愛らしく感じつつ、クレハはコラッタを抱き抱え、しっかりと苦しくしないように姿勢を正してやってからミルクを飲ませていく…

 

「…預けた卵って孵して大丈夫なんすか?」

 

「大丈夫だよ。ちゃんと家で孵してもいいってトレーナーから事前に許可を貰っているから」

 

「な、なるほど…」

 

「そんなことよりリクト。もうお昼だからご飯食べなよ。せっかく作ったんだからさ」

 

「うっす!ゴチになりますっ」

 

ミルクを飲ませていたクレハに育て屋の制服の役目を担っているエプロンを着けた少年が思い浮かんだ疑問を投げかけるがそれに対し、クレハはきちんと答える。そう事前に許可を得ていればここで卵を孵しても構わないのである。理由としては、こちらに預けたトレーナー側がなんらかの理由で卵を預かれない場合の為に設けたルールだ。疑問が解消された少年…リクトは納得したように頷くとクレハに促され、そのまま昼食を食べに既に他のポケモン達の食事を配り終えただろう、ゴウカザル達が待つテーブルへと向かっていく。クレハはテーブルに向かうリクトを見届けつつ、お土産渡す為に来た上に手伝いまでしてくれる後輩に感謝した。ちなみにコラッタはミルクを飲み終えた後お腹いっぱいになったからかそのまますやすやとクレハに抱かれたまま、眠り始めていたりする。それを確認したクレハはさて自分も昼食にするかと赤ちゃんポケモン用のベッドにコラッタを優しくそっとおいてからテーブルへと向かっていくのだった…

 

「うめぇ!働いた後の飯は格別だ!」

 

「それは良かった。ありがとうね、お土産だけじゃなくて手伝いまでしてくれて」

 

「いやいや、いいんすよ。俺が自分で申し込んだんすから」

 

昼食のクリームシチューを美味しそうに食べるリクトを嬉しそうに見ながらクレハは感謝の言葉を告げる。はるばるシンオウからカントーのここまでお土産のもりのヨウカンを持ってきてくれた上に店の手伝いまでしてくれたから礼を言うのは当然だ。しかしリクトはにかっと笑いながらそう言い、それにこんな美味いシチューもごちそうになったし!と付け加えた。そんなリクトにクレハは微笑み、相変わらずだねと伝えながら自身もシチューを食べていく

 

「そういやクレハ先輩、フウマ先輩から聞いたんすけど旅行先はどこに行くとか決めてるんすか?」

 

「フウマぇ…まぁどうせなら行ったことない地方にしようかなって」

 

「ならイッシュ地方がおすすめっすよ!カントーからだと遠いけど、それに見合うぐらいいいとこっすから!」

 

「…イッシュかぁ…うん。そこにしてみるよ。でもまだしばらく先かなぁ」

 

「あ、育て屋なら大丈夫っすよ。その間俺やブロウ達がここのポケモン達を世話するっす」

 

そんなやり取りをしつつ、その前に育て屋はどうしようと考える。少なくともコラッタを含めた預けたポケモン達が全員トレーナーの元へ帰って来るまで旅行など行けないのだ。しかしリクトは名案とばかりにそうクレハに伝え、それにクレハは驚いたようにリクトを見る。流石にそこまでしともらうのは悪いからだ、しかしリクトは大丈夫だと伝える。ロマンあふれる伝説のポケモンを追うのはいつだって出来る。しかし尊敬する先輩の今後が関わる事ならばできる限りのサポートをしたいという後輩心というのもあるのだ

 

「…いいの、リクト。大変だよ?」

 

「望むところっすよ!それに先輩がジムリーダーになるかもだなんて最高じゃないすか」

 

「まだ迷ってるけどね。旅行から帰って来るまでは答えを出してみせるよ」

 

「あんまり待たせちゃ駄目っすよ?カツラのじいさんがポックリ逝っちまうかもしれないっすから」

 

「あの人は多分まだまだ大丈夫だと思う…」

 

そんなやり取りをしながら、談笑という名の時間が過ぎていくのであった…

 

 




クレハ
旅行行ってきます

リクト
今話から本格登場。過去編のこうてつじまでちらっと登場した少年が成長した結果伝説という名のロマンを求めるトレーナーになった。相棒はブロウことルカリオ
ちなみに手持ちがこちら
ブロウ(ルカリオ)
スナイプ(ジュナイパー)
クロー(フライゴン)
キッカー(ミミロップ)
アクア(ラプラス)
が確定の5匹。6匹目は今の所自由枠で理由はしっくり来るのが居ないとのこと。旅行行ってる間は彼が育て屋を切り盛りする事に。家が裕福な為育ちがよくマナーがしっかりしてる上、割と真面目

赤ちゃんコラッタ
皆のアイドル

もりのヨウカン
ハクタイの隠れた名物。決してあの屋敷ではない




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育て屋さんは船の中

あけましておめでとうございます。
今年もこの作品をよろしくお願いいたします!


「……船に乗るとか半年ぶりだ…」

 

ゆらゆらとゆっくり揺れながら進む船の中で、クレハはそう呟く。実際口に出したように半年ぶりだ

 

「まさかグリーンやカツラさん達まで見送ってくれるなんてね…」

 

リクトに預けたポケモン達を任せ、旅行に行く時、カントーのジムリーダーが全員見送りに来てくれたのだ

 

どんな答えでも儂は受け入れるぞ!

今度また女の子だけでスイーツ食べに行こう!

帰って来たらバトルしようネー!

予知したけれど貴女の未来は明るいわ

ジムリーダーになるなら大歓迎よ!

君の固い意思なら大丈夫だろう

帰って来たら着物の着方を教えて差し上げますわね

───ま、どっかの赤いのみたいに行方不明とかにはならねぇようにせいぜい気をつけな

 

それぞれからそう伝えられ、クレハは嬉しく思う反面、目立ちすぎるなぁ…と思ったがやっぱり嬉しいので黙っといたのは内緒だ。

 

(ん〜…イッシュ地方に着くまで2週間、かぁ…)

「ぎらー、ぎらぎらっ」

「わわっ、よしよし…本当に広い部屋だなぁ…私の手持ちみんな出しても大丈夫だなんて……」

 

自分に甘え始めたバンギラスのお腹を撫で付けながらクレハはしみじみとなって呟く

ポケモントレーナーも利用する関係上からか1部屋が広い上、やたらと頑丈な作りになっているのだ。というかそうでもなきゃ船内でバトルとか出来ないのである

 

「ぎら〜♪……Zzz…」

(あ、寝ちゃった…気持ちよかったのかな?…ってゴウカザル達も寝てる…)

 

撫でられて嬉しそうに鳴きながらバンギラスは首をこくこくと揺らしながら眠った

そんなバンギラスを可愛らしく感じながらほかの手持ちを見渡すとカイリューとガブリアス以外皆昼寝中だ。船の揺れがいい具合に眠気を刺激したのだろうか…と考えている内に釣られたのか、クレハにも睡魔が現れる。それを察知したドラゴン2匹がクレハに一鳴き

 

「りゅおん」

「ガブリャ」

「……ああ、私も寝てなって?…お言葉に甘えさせて貰おうかな」

 

昼寝したら?と言っている事を察し、ならばとバンギラスに寄り添う形ですやすやと眠り始める。……その前にお夕飯には起こしてね、とちゃっかり伝えたりもした

 

「ガブ」

「りゅおん」

 

ちゃっかりした主人に苦笑いしながらもドラゴン2匹は頷き、カイリューはベッドから毛布を持ってきてクレハに被せ、ガブリアスは座り込んでイメージトレーニングを始める。船内だから自重しているのだ

 

「…スゥ…スゥ……」

「───りゅん」

 

毛布を被り、あどけない寝顔を晒すクレハを見て、彼女の祖母の手持ちだった故に小さな頃から彼女を知るカイリューは大きくなったのう…と孫を見る祖父のような心境になるのであった……

 

 

 

 

 

 

 




クレハ
すぴー…
トレーナー時代にちゃっかりカントージムも制覇していたヤベー奴。しかし諸事情でセキエイリーグには出れなかった

バンギラス
ヨーギラスの頃から甘えん坊な女の子

ガブリアス
イメトレ中

カイリュー
あんなに小さかったのに…

カントージムリーダーズが抱くクレハの印象

グリーン おしとやかに見えるが性格ほのおタイプな脳筋女

アンズ 偶に一緒にスイーツ巡りする仲。多分ジムリーダーんなかじゃ1番仲がいい

カスミ 同僚になってくれたら普通に喜ぶ

ナツメ 裏表があまりない子

タケシ 自分にも負けないくらい意思が強い女の子

マチス いつかリベンジしたいネー!

エリカ カスミ同様同僚になってくれたら普通に喜ぶ

カツラ この子ならグレンジムを任せられると確信してる

大体こんな感じ。全体的に評価が高い模様




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育て屋さんVS紳士さん(前編)

ポフィン作り難しすぎワロタ

追記修正しました。ひっさつまえばといかりのまえばを間違えるとか…()


「……」

「さぁ早くボールを構えなさい!」

 

どうしてこうなった。そう言いたいとばかりにクレハは無言で天を仰ぐ。

目の前にいる光景から目を逸らしたいからだ。

しかし目の前にいる男性はそれを許してくれない…それもそうだろう、彼はクレハにバトルを挑んでいるのだから。

対戦相手がこちらを見ずに上の空な様子に注意しただけである

 

「……本当にどうしてこうなった…?」

 

注意されたことで現実逃避を止め、男性──対戦相手に向き直り、再び虚しい呟きが船内に響くのだった…

 

────────────────────────

 

時は1時間程前に遡る。船に乗り、バンギラスと共に眠りについた翌日…職業柄すっかり早朝に起床する事に慣れたクレハは日課の朝シャンで体を清めた後、手持ちポケモン達と共にそこそこ豪華な朝食を食べ、船のデッキで大海の景色を堪能していた時だった。

 

「そこのお嬢さん、君はもしかして数年前のシンオウリーグでベスト6の成績を出したクレハではないかね?」

 

シルクハットにタキシードといった、如何にも金持ちですといった風貌の男性がそう話しかけてきたのだ。

そこからはまるで疾風のようだった。男性の勢いに巻き込まれるまま、バトルの申し込みを受け、船内に設けられたバトルコートに連れ込まれてしまったのだ

 

────────────────────────

 

そうして今に至るというわけである

 

「ああ、君のバトルは素晴らしいの一言に限るものだった。それだけに準々決勝は残念だったね…」

「……えぇまぁ」

 

正直あまり思い出したくない。あんな惨敗は後にも先にもあの時だけなのだから。──ダークライ。対戦相手が繰り出したそのポケモンにムクホークが、ロズレイドが、ドラピオンが、レントラーが、続けざまにダウンしてしまい、唯一ラムのみを持たせたガブリアスが隙をついて倒したが、その次に繰り出されたラティオスのりゅうせいぐんでガブリアスも倒れ、残ったゴウカザルもラティオスと相打ちとなる形で倒れるという負けを演じてしまったのだ。

本当にクレハにとってはあのバトルは悔しいことこの上ないものなのである

 

「……すまない、あまり触れてはいけない話題だったね。さて早くバトルといこう!行け、ラッタ!」

「お気になさらず。行ってっ、バンギラス!」

「ラッタァ!」

「ギラァァァ!!」

「ほう。バンギラスか…強力なポケモンの1匹だな」

 

それぞれ手持ちを繰り出し、相対するとバンギラスの特性により船内のバトルコートはすなあらし状態に、男性は先手必勝とばかりにラッタに指示を飛ばす。

ちなみにバトルの形式は2対2のシングルだ

 

「まずは削らせて頂こう〝いかりのまえば〟!」

「ラッタァァァ!」

 

当たれば体力値の半分を削り取る強力な技、ひっさつまえば

を指示されたラッタはその前歯をバンギラスに突き立てんと襲いかかる

 

「そうくると思ってましたよ!〝 まもる〟!続けて〝ボディプレス〟っ!」

「ギラッ!───ギラァァァ!!」

 

しかしまもるで攻撃を防がれ、更にその巨体と体重を生かしたボディプレスでラッタを押しつぶさんとする。勿論男性は躱すようラッタに指示するが──

 

「…躱し、いやここは…!〝いかりのまえば〟!」

「ラッタァァァ!!」

 

如何せん体格に差がありすぎる。逃げ切る前に押しつぶされるのがオチだと男性は理解し、ならば後続の為にバンギラスを削る事に決めた。ラッタに持たせたきあいのタスキで確実にボディプレスを耐えるのを見越してるからだ

 

「ギラァ!?」

「っ、タスキ持ち…!でもまずは1匹目!」

 

目論見通りきあいのタスキでボディプレスを耐えられ、そのままいかりのまえばを受けてしまったものの、クレハがバンギラスに持たせたのはオヤツのつもりで渡していた、自家製のオボンのみ。それを食べて全快とまではいかなくとも体力を回復させつつ、すなあらしの効果によるダメージでラッタを下すのだった…




クレハ
実は久しぶりのバトルでテンションが上がってる

バンギラス
オヤツ(オボンのみ)美味しい♪

男性
船内、紳士風、手持ちがラッタのトレーナー
元ネタはアニポケを昔から見てる人はわかる仕様です

ラッタ
元祖ひっさつまえばの使い手

ダークライ、ラティオス
シンオウリーグスズラン大会準々決勝でクレハの手持ちをボコボコにした2匹。そのトレーナーは言うまでもなく例のやつである


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育て屋さんVS紳士さん(中編)

エリカ様ァ!(アニポケ感想的挨拶)
あ、今回は試しに一人称にしてみました←



修正しました。オトスパスはつるぎのまいを覚えないのにすみません。
またしても修正しました。アクア「ブレイク」だよ……本当に申し訳ありません


……とりあえずラッタを倒したはいいけど…

 

「…ぎらぁ……」

「…痛いだろうけど、もう少し頑張れる?」

「ぎらっ!」

 

いかりのまえばのダメージのせいで涙ぐむバンギラスの様子にこの子の〝おや〟としてめちゃくちゃ心が痛む…だけど今はぐっとこらえよう。……バトルが終わったらめいっぱい甘やかそう、そうしよう。…だから今は……

 

「……ラッタよくやってくれた。後は私の2番手であのバンギラスを、その次も降してバトルを制してみせる!ゆけっ、オトスパス!」

 

「トスパスッ!」

 

──目の前のバトルに集中…ってなにあれ!?青い…オクタン?…じゃない、別のタコポケモンだ!……慎重に行こう。見た目からして多分みずタイプ単体、もしくはヌオーみたいにみずの複合タイプ。……だとするとバンギラスと相性が悪い。…というかあのぶんぶんと小さく振り回してる触手は明らかに危険だ。私の直感がそう言ってる

 

「バンギラス、なるべく距離をとっていくよ!」

「ぎらっ!」

 

実際ひっさつまえばのせいで体力が半分以下にまで削られているから迂闊な事は出来ない。……相手の出方を待つしかない…!

 

「……オトスパス、〝ビルドアップ〟!…そして〝たこがため〟だ!」

「トォスパァスッ!!!」

 

……へ?たこがため???……っていうか飛んだ!?まさか専用技持ち!?…はっ、まずいあっけにとられてバンギラスへの指示が遅れて…!?

 

「バンギラス避けて!?」

「ぎらっ!……ぎらららぁ!!?」

「…トォス、パスッ!」

「よし捕まえたぞ!」

 

捕まっちゃった…!というかなんて力…!あのバンギラスがあんなに抵抗してるのに全く振り解けないなんて…!

 

「ぎ…ぎ、らぁ…!」

「抵抗しようと無駄だ!オトスパスは全身筋肉と称されている!1度捕まったら簡単には逃げられない!」

 

全身筋肉!?……そうかあのオトスパスってポケモンは……

 

「かくとう・みずタイプ!?」

「残念。かくとう単タイプさ。さて、オトスパス!トドメのアクアブレイクだ!」

「パァスッ!」

「ギラァァァァ!!?」

「……うっそぉ…」

 

その見た目でかくとう単タイプとかわかるかぁぁぁぁ!!?

 

「ぎ…ぎら〜…」

 

……ってバンギラスぅぅぅ!?うわぁ、目を回しちゃってる…ごめん、ごめんね…!というかみずの物理技持ちのかくとう単タイプとかバンギラスと相性最悪じゃん…交代させとけばよかったぁ…後でここの設備で回復させてあげよう…そしてめいっぱい甘やかそう(2回目)

 

※実際はたこがためのせいで交代できません。(By作者)

 

「さぁ次を出したまえ!私のオトスパスに勝てるものならな!」

「…っ」

 

……まずい。あの触手…厄介すぎる…!かくとう単タイプなら普通に考えればムクホークだけど、もしあの触手に捕まったら確実にやられる…だったら!

 

「行って、ガブリアス!」

「───ガブリァッ!!」

 

1度も攻撃を受けずに倒すしかない!

 

「ガブリアス…!なるほど、あえてムクホークを出さないか…!」

 

……勝負は、これからだ!




急に書き方変えて申し訳ない(土下座)

クレハ
ガラルのポケモンなんて知らないので完全にしてやられた

バンギラス
しばらく触手がトラウマになった

オトスパス
アニポケ風バトルにおいては強力技のたこがためを持つタコ。お前その見た目でみずタイプじゃないってマ?

紳士
バンギラスを倒せてご満悦


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育て屋さんVS紳士さん(後編)

久しぶりの登場があんな切ないものになるとは…(アニポケ感想)


追記修正しました。…だからオトスパスは剣舞覚えないのに本当に俺って馬鹿…
追記修正しました。……アクアスクリューってなんだよ…


「……」

 

「……」

 

バンギラスがやられ、2番手であるガブリアスに交代したクレハ。そのままオトスパスと激突…と思いきや、ガブリアスも、オトスパスも、一定の距離を保ったまま、動かない硬直状態が続いていた。その理由は実にシンプルだ……。

 

(まずい…)

 

(どうしよう…)

 

((迂闊に攻め込めない…!))

 

そう。2匹の主はお互い攻めの指示を出せないのだ。何故ならオトスパスには、その体躯と手数で敵の動きを封殺する事の出来る〝たこがため〟が。ガブリアスには触れた相手の身体を傷つけ、ダメージを与える、特性〝さめはだ〟が。

つまりたこがためでガブリアスを拘束したら最後、お互いダメージを受けるチキンレースが始まってしまうのだ。

 

(どうしよう…迂闊にじしんなんて指示したらその隙にジャンプされると同時にたこがためで動けなくされたら、ビルドアップで攻撃力を増したアクアブレイクをまともにうけてしまう…!いくらガブリアスでも効果抜群のみずわざを何回も食らったら…!いやそもそもオトスパスには不明な技が1つだけあるからそれによっては…)

 

(これは参った…たこがためをしたらさめはだとバンギラスの特性により発生したすなあらしによる2重のダメージを負う上、確か彼女のガブリアスにはスケイルショットがあったはず…たこがためにより触手の防御が薄くなったオトスパスがまともに受ければ間違いなくやられる…!)

 

((一体どうしたらいいの(んだ)!?))

 

……故に、ガブリアスとオトスパス、それぞれの主は悩み、思考を張り巡らしていく。…そうして硬直状態か数分経った頃……いよいよ硬直状態が解けた───

 

「ガブリアス!〝つるぎのまい〟っ!……〝じしん〟!」

 

「ガブリァッ!!」

 

先に仕掛けたのはクレハとガブリアス。まずはオトスパスがやったように攻撃力を高め、バトルコートを揺らそうと、その強靭な脚で踏みつけんとする。こうなればオトスパスの手はクレハが今知り得る情報では1つしかない。あとはオトスパスの持つ最後の技次第だ。

 

「〜〜っ、仕方ない、オトスパス!〝フェイント〟、〝たこがため〟!」

 

「トスパスッ!」

 

紳士は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、オトスパスに指示。オトスパスはガブリアスが地面を揺らすよりも先に先制効果を持つフェイントで接近し、触手をガブリアスの回りに伸ばしながら、その内の1つをガブリアスの土手っ腹に突き立てんとする。触手の脅威を知るガブリアスは当然避けようと距離を取ろうとする。しかし回りに伸ばされた触手がそれを阻み、ガブリアスの四股に巻き付き、その全身を絡め取り、拘束した。……ここまではお互い予想通りの展開で、ここからは…

 

「……結局こうなるか。…オトスパス!」

 

「(四つ目はフェイントだったんだ…)…そうですね。ガブリアス!」

 

「「〝スケイルショット〟(アクアブレイク)!」」

 

我慢比べである。つるぎのまいで高めた力で触手の拘束に抵抗しながら、自身の鱗をオトスパスに打ち込んでいくガブリアス。さめはだとすなあらしによる2重のダメージを受けつつも、触手から水柱をガブリアスに向けて放つオトスパス。お互い1歩も引かず譲らずの打ち合いを繰り返していき…数分後。

どちらが先に力尽きるかのチキンレースを制したのは……

 

「ガブリァァァァァ!!!」

 

ガブリアスだった───

 

 

「…ふぅ」

 

バトルを制し、対戦相手と握手を交わし、雑談をし、すっかり日が暮れた頃。

室内に取り付けられたシャワールームで疲れと共に汗を流したクレハは着替えを終えてベッドに沈んでいた。ふかふかで柔らかい感触が心地よく、今にも眠りに落ち…ることは無かった。

 

(───久しぶりのバトル。…楽しかったな)

 

バトルを終えた後特有の、熱に浮かされたような感覚に支配されていたからだ。久しぶりに味わうあの感覚。それが凄まじくクレハの胸にくすぶっていた物をこみ上げさせたのだ。

 

「……」

 

あのバトルの後、すぐに船内の小さなポケモンセンターに足を運び、回復させたバンギラスのボールを見つめる。

祖母が開いた育て屋を引き継ごうと思ったきっかけをくれた大切な子。今は疲れてボールの中ですやすやと眠っている事だろう。 クレハは何かを決心したようにバンギラスの入ったボールを枕の横に置き、その反対側に無造作に置いた携帯を手に取り、ある人物に連絡をする。

 

「……もしもし。夜にすみません、カツラさん…」

 

『気にする事はないぞ、クレハよ。……電話をしてきたという事は、答えを持ってきたのだろう?』

 

電話の相手は、自分にジムリーダーになって欲しいと打診したカツラ。歳を感じさせない豪快な笑い声を上げながら、本題に入る。

 

「はい。───私は、グレンジムのジムリーダーになります!」

 

息を吸い、はっきりと意志を込めて答える。育て屋という職業は好きだし、性に合っている。しかしそれと同じくらいポケモンバトルが好きなのを今日、再確認したのだ。ならば両方をやる。故郷の、シンオウのジムリーダー達がやっていたように。

 

『よく言った!儂は嬉しいぞ!……ならば旅行を終えた後、カロス地方に向かい、修行をしてこい!必要な荷物の方は儂からリクトに送って貰うように手配しよう!…帰ってきた時に成長したお前の姿を楽しみにしておるぞ!』

 

「はい!……私はこれで失礼しますっ」

 

カツラは嬉しいという気持ちを隠すことなく素直に出し、豪快に笑い、クレハにカロス地方での修行を命じる。それはきっとクレハの成長を促すと確信している故にだ。

そんなカツラに釣られるようにクレハも顔をほころばせながら、元気よく返事を返し、電話を切るのであった……

 

 

 




クレハ
ジムリーダーに、私はなるっ!!!

カツラ
いい跡継ぎじゃ!ウォォォースッ!

ガブリアス
主人公

リクト
この後入った連絡で尊敬する先輩がジムリーダーになると同時に女性の荷物を纏めなきゃいけないという思春期の男にとっては苦行も同然な目に合う…と思いきやカツラ経由で知ったカスミが育て屋に来襲。荷物を纏めてくれたのはここだけの話


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番外編 ナナカマド研究所

カレーうどん食べたい(アニポケ的挨拶)


───クレハがカツラにジムリーダーになると宣告した翌日。ナナカマドはその当のクレハから報告を受けていた。

 

「そうか。グレンジムのジムリーダーに…」

 

『はい。カロス地方での修行を終えたら就任するつもりです』

 

「なるほど。……応援しているぞ。御家族にはもう伝えたのか?」

 

『はい。やっぱり1番に報告したかったので…』

 

そんな当たり障りのない、やり取りを続けると、ナナカマドが口を開き、ある話題に移す。

 

「そうそう。ロズレイドにドラピオン…そしてあいつも元気にしておるよ」

 

『……!…そう、ですか…』

 

〝あいつ〟ナナカマドが言ったその言葉にクレハの様子が明らかに変わる。元気そうでよかったとほっとしたのだろう、しかしナナカマドはこうも伝えた。

 

「…しかしやはりまだしばらくはリハビリに専念すべきだが、ロズレイドやドラピオンが積極的にリハビリの協力をしてくれているし、何よりあいつ自身の穏やかさもあって研究所のポケモン達とは上手くやれてるよ」

 

『そうですよね……でも元気そうならよかった…皆とも仲良くやれてるのも…よかった、シルヴァディ……』

 

〝シルヴァディ〟それがナナカマドの言うあいつ。クレハがテンガンざんでのギンガ団との最後の戦いで、アカギから譲り受けたマスターボールで捕まえた、ギンガ団が作り上げた人工ポケモンの名である───

 

───────────────────────────

 

「……」

 

「自分相変わらず無口やなぁ…」

 

「ロズ〜」

 

「ドラ〜!」

 

「ゴースゴスゴス!」

 

一方、フウマは当のシルヴァディと共に居た。理由はシルヴァディの体の調子の確認で、痛むところや、違和感があるところがないか、マッサージをしてあげながらチェックしているのだ。シルヴァディをナナカマドの研究所に招き入れてから、元の研究業に加え、こうしてシルヴァディのリハビリを捗らせてあげるのも彼女の、フウマの仕事の1つだ。

 

……当のシルヴァディは無言でフウマにされるがままなのはフウマなら大丈夫だと信頼してる故であるし、それをわかっているのかロズレイドを筆頭に頑張ろうねとシルヴァディを応援の言葉を投げかけているのもシルヴァディ自身のポケ柄の良さだろう。

 

「……よーし!終わったで!お疲れ様や」

 

「……」

 

どうやら今日のマッサージは終わったらしく、笑顔で労ってくれるフウマに紐で繋いだマスターボールをぶら下げながら、シルヴァディは立ち上がり、一礼すると部屋の窓越しに外をじっと見つめていく。

 

「……堪忍な。今は体良くする事に集中するんや。自分が良くなって1番喜んでくれる奴の為にもな」

 

「……」

 

窓越しに外を見つめる、シルヴァディの意図をフウマは理解していた。なんせ方角的にイッシュ地方がある、今頃は船に乗って船旅を満喫している自分をギンガ団から救い出したクレハに思いを馳せているのだろう。無理してでも駆けつけたがってるのもあるのも。だからこそフウマはそんな言葉をシルヴァディに投げかけ、シルヴァディもわかっていると伝えるようにフウマをじっと見つめ、頷いてから座り込んで、目を瞑り、瞑想を始める。いつか必ず傷が癒えたら、必ず彼女の力になると想いを馳せながら───

 

 




クレハ
ジムリーダーになると博士に伝えに電話していた。
シルヴァディの事をかなり気にかけており、上手くやれてると聞いてほっとしていた。

ナナカマド
クレハがジムリーダーになるまでに成長した事に素直に喜び応援する60代。シロナが渡したシルヴァディに関する事を記載したギンガ団レポートの内容にものすごくキレていたのは余談

シルヴァディ
ギンガ団で作り上げられた人工ポケモン。継ぎ接ぎのキメラのような姿をしていてギンガ団にいた頃はタイプ:ヌルと呼称されていた。
シルヴァディ…タイプ:ヌル自体はは他地方のある企業が作り上げたポケモンらしいがギンガ団の科学部隊がハッキングを仕掛けデータを盗んだ為にギンガ団製タイプ:ヌルが誕生した。
テンガンざんにてクレハがやりのはしらに行けなかった最大の要因で、ギンガ団が拘束具を外して故意に暴走させられていたこいつを食い止めていた為である。現在は暴走の弊害か、肉体に大ダメージを負い、ナナカマド研究所にて療養中。

フウマ
関西弁の合法ロリ。シルヴァディのメンタルケアまでこなせる。有能な16歳。

ロズレイド達
毎日シルヴァディに積極的に接している。優しいポケモン達である。


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part1

はい。今回からしばらくコラボ回です!

ロザミアさんの『お嬢様と先生』

愛月花屋敷さんの『ガラルワイルド散歩』

の2作品とのコラボ、はーじまーるよー!




「──来たぞ、イッシュ地方ッ!」

 

長い、本当に長かった2週間の船旅を乗り越え、ようやく辿り着いたイッシュ地方。

初めての町、初めての匂い、初めてじゃないのは胸のドキドキ。──なんてちょっとポエムみたいな事を思い浮かべながら私ことクレハはこの地、イッシュ地方の港町……ホドモエシティに船から降り立つ。

2週間ぶりに陸に上がったせいか、自分自身でもわかるくらいテンションが高くなっていて思わず大声で叫んでしまい、現地民や私と一緒に船から降りて来た乗客さん達、更には相棒であるゴウカザルにまで苦笑いされちゃって、思わず恥ずかしくなってそそくさと静かに、素早く、そこから離れる。

…うぅ……恥ずかしい……やらかしたぁ……! 

 

早くここから離れてパンフレットの地図に載ってるヒウンシティ行きのバスに乗ろう、そうしよう……! 

 

 ─────────────────────────

 

「いつのまにかー、タイプワイルド♪」

 

「ウキャキャ」

 

……とまぁ、私のやらかしから早数十分後。無事にヒウンシティに着いたクレハです。いやー、すごいねヒウンシティ。

めっちゃ都会。超都会。ビルや人がいっぱいでちょっぴり目眩がします(田舎者感)

まぁ、鼻歌をゴウカザルと歌ってそこそこエンジョイしてますけどね。

 

……あ、すごい大きい豪邸…「流石に今回のはノーセンキューだぁ!!」……ん?なんか上から声が……って、はいぃ?! 

 

「人が落ちてる!?…た、たたた助けなきゃ……!って自分で何とかしちゃった……」

 

なんと人が落ちていたのだ。思わずムクホークを出して助けようとしたけど、なんかドンカラスみたいにずんぐりしたメタリックな鳥ポケモンで綺麗にホバリングしてた。

……意味がわからない。……はっ、もしかしてイッシュは人が空から落ちてくるのが普通なの!?(おめめぐるぐる)

 

「キキッ」

 

「……おうおうおうおう!?…ご、ゴウカザル……ありがと」

 

状況が意味不明過ぎて混乱していた私をゴウカザルが肩を掴んで思いっきり揺さぶった。……お陰で正気に戻ったけどちょっと気持ち悪いぃ……!…ん?また誰か来た……!

 

「───」

 

「あれは…知らないポケモンだ。アローラか、ガラルのポケモンか……」

 

「あれは…もしかしてゴウカザル!シンオウのポケモンですわ!もしや、お客様ですの?」

 

「いや、それはない」

 

どう見てもゴーストタイプな見た目をしたポケモンを連れた男女の2人組が出てきました。

それにしても2人共結構整った顔をしている。

特に女の子の方は美少女。という言葉がピッタリ過ぎる程だ。後会話から察するに落ちてきた男の子の身内とかでは無さそう。

後、多分私と同年代くらいの男の人は男の子の鳥ポケモンを、女の子の方はゴウカザルを見ている。

……そりゃイッシュ地方の人ならシンオウのポケモンは物珍しいよね。

男の子の鳥ポケモンはどこの地方に生息してるかわからないけど、少なくともイッシュに生息してるポケモンじゃないみたい。

 

「──ウキ」

 

……ゴウカザル?…ああ、警戒してるんだ。まるで私を守るみたいに前に出てるし。

……まぁ上から落ちてきた男の子が目の前にいる人達と無関係なら警戒するのもわかる。

これでギンガ団みたいな悪人だったら笑えないしね(ギンガ団絶対許さないウーマン)

 

 

「アーマーガアを見てんのか?確かに珍しいが……と言うかここがどの地方なのか分からねえしなんでかゴウカザルが警戒してるし」

 

……どこの地方かわからない?どゆこと???

後ゴウカザル見て溜息ついてる……あからさまに警戒されてるもんね、それは溜息もつきたくなるか…

 

「まあ! まあまあまあまあ! 

こんなにトレーナーとポケモンが! 

ええ、ええ!これは素晴らしいですわ!まさか、リベール家にご興味が?」

 

リベール?……なんかどっかで聞いたような…? 

 

「──?」

 

「リッター、やめましょう? 

この方々は警戒すべきでもありませんわ」

 

「これは……中々お熱い事で」

 

リッター……あれがあのポケモンの名前なのかな?いやもしかたらニックネームかもだけど。後どうやら警戒していたのはお互い様らしい。……それなら私がやることは…

 

「──ゴウカザル、駄目。この人達は大丈夫だよ」

 

「……ウキ」

 

ゴウカザルを嗜める事。だってあの子や男の人からは全くという程害意を感じないし。特に好奇心全開で初々しい反応してる女の子。

 

「何やら困惑しているご様子ですし、一度落ち着くためにも中に入りませんこと?リーベル家はあなた方を歓迎しますわ」

 

「ちょ、リリィ……いいのか?」

 

「ええ、様々なトレーナーから教わるのもまた修行ですわ」

 

「──」

 

 ……女の子(リリィっていうらしい)が意外な提案をしてきた。いや私もうトレーナーじゃ……いやジムリーダーになる予定だからトレーナーではあるのかな? 

 どうしようかな……。

男の人の方もどうぞって歓迎してるし、ここは……

 

「ならば……遠慮なくお邪魔しますかね。アーマーガア! 大人しくな?」

 

「……お言葉に甘えさせて貰いますね。…ゴウカザル、行こう?」

 

 空から落ちてきた男の子も行くらしいし、お言葉に甘えよう。……それにしても改めて見てもすごい豪邸……フタバにあるリリカの家(正確には別荘らしい)とは比べ物にならない。

 ……なんか今更緊張してきた…

 

 ────────────────────────

 

そうして豪邸に案内された私と男の子とポケモン2匹。

応接室?に入れてもらってめっちゃ柔らかいソファーに座らされてます。…回りを見ると高そうな画に家具がある。…なんか今更緊張してきた……(2回目)

 

「私はリベール家の次期当主、リリィ・リベールです。まだまだ新米のトレーナーで、ガラルへの入国を予定してますの」

 

「俺は先生を任されてるリョウ。こいつは俺のポケモンのギルガルドのリッターだ。リッター、挨拶を」

 

 「──」

 

あー……なるほど新米さんかぁ……。どうりで反応が初々しかった訳だ……あとちょっと気だるそうな男の人…リョウくんはあの子、リリィちゃんの先生らしい。

私にとってのトウガン先生みたいなものなんだろうなぁ… 

後あのポケモン、ギルガルドっていうんだ。……すっごい礼儀正しく挨拶してきてまるでリリカのエンペルト…もとい執事さんみたいだ。

 

「こりゃご丁寧に、俺はグレイブこことは少し違う所のガラル地方でポケモントレーナーをやっているものだ。少しの間よろしく」

 

男の子の方はグレイブくんっていうんだ。……少し違うところのガラル地方? あれかな、めっちゃ田舎って意味かな? …おっと、私も名乗らないと……

 

「私はクレハと申します。カントーのトキワシティで育て屋を営んでいる者でしゅ。……者です」

 

 ……やっちゃった。……うぅ……恥ずかしい、穴があったら入りたい……

 

「いったぁ!?」

 

「先生、犯罪ですわ?」

 

「……」

 

「いや何もしてないじゃんっ!?」

 

なんかなんでかリョウくん責められてる……ちょっと涙目になってて可愛い……

 

「こほん……グレイブさんは少し違うところのガラル……と言ってましたが、どういうことか、ご説明を頂いても? 無論、他言は致しません」

 

ふぇ?それは田舎から来たって意味じゃないの??? 

 

「まぁ簡単に言えばウルトラホールに吸い込まれたと言えば説明出来るか」

 

……いやウルトラホールって何!?しかも吸い込まれた?! 

 

「ウキャ?」

 

ほらゴウカザルもわからなくて首傾げてるし!……私もだけどさぁ!? 

……こほん。とりあえず落ち着こう。そんで傍観を決め込んで話を聞いていこう……

 

 

「ウルトラホール……アローラの?」

 

「聞いたことがある。

エーテル財団が全面的に調査していたって話だったな。詳細は良く分からないけど……」

 

あー、なるほどアローラ地方の……いやどっちにしても分からないや……ホールっていうくらいだからなんらかの穴なんだろうけども。

 

「まぁ概ねそんな所だな。俺はそれに吸い込まれて気づいたらこの屋敷の前に放り出されていたという訳だ」

 

「……なぁにそれぇ」

 

思わず声を出した私は悪くないと主張したい。

だって事情を聞いても全く意味がわからないんだもん……わかったのはそんな危ない穴があるアローラ地方が危険地帯かもってくらいだよ!? 

 

「待て待て、説明になってない。もっと分かるように説明をだな……エーテル財団の人間じゃないだろ、君」

 

そうだそうだ!リョウくんの言う通りだよ!ちゃんと説明して欲しい! 

 

「……いえ、何となく分かりました。

とても考えられませんが……並行世界から来たということですの?」

 

「──!?」

 

「はっ!?」

 

「おお〜その通り!」

 

「……ヘイガニ世界?」

 

……なんかシザリガーがいっぱい居そうだなー(おめめぐるぐる)

 

「ええっと……並行世界……あれか、隣の世界ってことか?」

 

となりのせかい……? 

 

「はい。

世界的には似ているけど、様々な点が違うのです。例えばですが……少し質問です、ガラル地方のチャンピオンは、ダンデさんですか?」

 

様々な点が違う……あ!要するにグレイブくんは異世界から来たって事?! (ようやく理解)

 

「ガラルのチャンピオン? 今は俺だけど」

 

──!!? 

 

「……え、待ってっ。君がガラルのチャンピオン!?」

 

リリィちゃんやリョウくんの会話のお陰でなんとか理解できたけど、グレイブくんの衝撃的な言葉に思わず声が出ちゃった……だってこれが狂言じゃないなら……いやこれは狂言じゃない。

──わかる、わかるんだ……グレイブくんは間違いなくリーグを制覇したチャンピオンだって。あのアーマーガアから感じる圧はシロナさんの手持ちから感じた圧と同じものなんだから……! 

 

「やはり……となると並行世界論が成立しますわ。ですが、困りましたわね……ウルトラホールが帰るための穴だとすれば、今は閉じてますし……アローラに向かうしか……」

 

「いやいや、今から向かうなんて無理だ無理!ガラル入国もあるんだぞ?」

 

「……確かに、そうですわね……」

 

「ふぅ説明が簡単でよかった」

 

「────……」

 

いや全然簡単じゃないと思う。……でも異世界のチャンピオンかぁ……なんだろうね、思わずグレイブくんに挑みたくなった私は育て屋である前にトレーナーだって自覚しちゃったよ。

 

「あ、そうですわ。それなら一つ今、疑問が浮かびましたの」

 

「え"」

 

「……疑問とな」

 

「?」

 

……唐突にどうしたのリリィちゃんや?…なんだろう、リョウくんの反応のせいで嫌な予感しかしない。

 

「ええ、先程の鳥ポケモン…アーマーガア、でしたわね? 

見たところ、全身が鋼の鎧。

……ええ、エアームドもなのですが…

なぜ、『飛べますの』?」

 

「うわぁぁぁぁっ! 確かにそうだ!飛行機のようなジェットでもない、ただの筋力というには無理がある!だからといって風を捉えるにしてもある程度の浮上は必要なはずだ!」

 

「……なーるほどやな予感的中だな。そんな事俺が知るわけないでしょうが」

 

「そうだよ……なんで飛べるの…!?」

 

そうだよ、エアームドはどうやって飛んでるの!?全身鋼じゃ重すぎて浮かぶことすらままならない筈だよ?! 

 

「駄目ですわ!知るわけ無いで終わらせるのは良くありません!アーマーガアを知る上できっと必要ですわ! 

例え絆があるといっても、より知ることで相手への思い遣りが出来るのです! 

他にも道具についてですわ! 

何故こだわり系の道具を持たせると各能力が上がるんですの?こだわるだけなら別に道具は要りませんわ!」

 

「それ前に諦めたやつぅ……!」

 

「──……」

 

「そうだよ、なんでスカーフ巻いただけですばやくなるの!? 

あときあいのタスキとか一体どういう仕組みなの!? 

なんで明らかに浮いてるジバコイルはじしんが当たるの!? 

図鑑の説明にはちゃんと浮いてるって書いてあるのに! 

……わかんない、わかんないよぉ…!」

 

「だああああ!!!そんなに知りたきゃ外でじっくり見りゃ良いだろうが!!!」

 

「え、ポケモンを見せていただけますの!?」

 

「あ、あー……うちのお嬢様は新米でさ。色々と見せてやってくれ」

 

「はぁ…………了解。ひとまず2人と一緒に外に行くぞ」

 

 ……ふぅ。……グレイブくんが大声出してくれたお陰で幾分か落ち着くことが出来た…いやうん、本当に助かった……

 

 ────────────────────────

 

……それから私達はリリィちゃん達に案内され、お庭にやってくる。

やってきたお庭はかなり広く、バトルフィールドにもなりそうなくらい。確かにこの広さなら体の大きいカイリューやバンギラスを出しても大丈夫そう。

 

「先生、お二人のポケモンを見られますわよ!」

 

「あーうん、そうだな……」

 

「まったく……お前ら!出てこい!!」

 

「うわ、トゲキッスとサーナイトしか知らないや……」

 

グレイブくんが繰り出した中で私が知ってるのは最初から出てるアーマーガアにリョウくんの手持ちらしいるリッターと同じギルガルドを除けばトゲキッスとサーナイトぐらい。

他は全く分からない。

ざっと見たところ羊みたいにモコモコしたポケモン(多分ノーマルタイプかな?)に二足歩行の細長くスリムな体をしたみずタイプっぽいポケモンの2匹。

 

一方の私も、既に出ているゴウカザル以外の5匹……バンギラス、カイリュー、ガブリアス、レントラー、ムクホークをボールから出していく。

 

 

「まあ……私の知らないポケモンが何体も。……あら、ガブリアスとカイリュー、サーナイトですわ!チャンピオンのシロナさん、ワタルさん、カルネさんのエースですわね。……ガブリアスといえば……」

 

え゛!? 

 

「ガブリアス、図鑑によると空を飛ぶらしいですわね。

そう、疑問でした。何故……『そらをとぶ』を覚えないのかが。ボーマンダとも空中戦をやれる程なのに、何故?」

 

「へぁっ!?……た、確かに……!」

 

「……ガブリャ」

 

そうだよ!なんでガブリアスは飛べるのそらをとぶが出来ないの!? 

いやぁぁぁ……頭の中が疑問でいっぱいになるぅぅぅ……! 

 

「飛ぶスピードが早すぎるんじゃねえか?まぁやろうと思えば飛行技のひとつくらいは覚えさせることが出来るけどよ」

 

う、うーん…それは確かに有りうるかも。

……ガブリアスってマッハの速度で動けるし…

 

「いえ、そうなるとカイリューがおかしいのです。

カイリューは世界一周が出来るポケモンですわ。それほどの持久力があるということはスピードもまたあるということなのですから」

 

あ、確かに!?……いつも遠くに行く時とか乗せてもらってたけど大して気にもしてなかった…!

 

「ふーんそこん所どうなんだ?クレハさんよ〜」

 

「ごめんなさい、わたしにもわかんないです。何年も一緒なのに、本当にごめんね。カイリュー、ガブリアスゥゥゥ……!」

 

そんなこと言われても答えようがない。どれだけ頭を捻っても全くわからない。そんな自分が情けなくて恥ずかしい。

だってそうでしょ?ガブリアスは勿論だけど、カイリューに至っては私がちっちゃい頃から一緒だったんだよ?

……それなのにわからないとか情けなさすぎて泣きたくなる。いやもう泣いてる。だって目の前が潤んでて見えないもの……

 

「……やはり、皆さん先生のように馴染んでますのね。ポケモンの常識が……」

 

「いやこれが常識っていうか……知るべきじゃないというか……」

 

「なぁ……先生とやら。お嬢様はいつもあんな感じなのか?」

 

「ああ、この前はなんだったかな……ルギアとカイオーガ、どっちが最初ですの?って話だったかな……」

 

「ひっく……ごめんね、ごめんね……!」

 

ごめんね……本当にごめんね……無知で情けない女でごめんね……! 

 

「……そう泣かないでくださいまし。

クレハさん、これから知ればいいではありませんか!私たちは、トレーナーなのですから!」

 

り、リリィちゃん……! 

 

「うん、ありがとう。私、頑張るよ……!」

 

そうだ……!その通りだ。知らないならこれから知っていけばいいんだ…!

 

「……いや現実的な常識を俺らトレーナーに押し付けないでくれ。それ俺ら以外のトレーナーにも弱点としてクリティカルヒットするからな」

 

止めて、グレイブくん。それは私にめっちゃ効いたから…(遠い目)

 

「ええ、そうですわ!」

 

「……えっと、それじゃ─」

 

「それで、次の質問なのですが!」

 

え゛(2回目)……待って?まだあるの!?…すみません、カツラさん。私はもしかしたらジムリーダーになる前に再起不能になるかもしれません……

 

 




長くなった…

クレハ
イッシュに来ておかしな騒動に巻き込まれてしまった育て屋兼ジムリーダー候補。この後どうなったかは次回をお楽しみに。

グレイブ
コラボ相手その1。詳しくは『ガラルワイルド散歩』
をお読み下さい。

リョウ
コラボ相手その2
詳しくは『お嬢様と先生』をお読み下さい。

リリィ
純粋な疑問が他を傷つける弾丸になる美少女。
詳しくは(以下略



……余談だがタイトルにダークライを追加したくなったのは内緒←悪ふざけが過ぎる


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part2

マリィテラカワユス(挨拶)


──前回から早1時間。

2人の熟練者にリリィの疑問という弾丸が襲いかかっていった。その結果……

 

「もうやめよう?なぁ、もうやめよう!?干上がってるみたいだからぁ!普段の俺じゃん!」

 

もう見てられなくなった先生ことリョウがリリィをストップをかける。しかしもう既に遅い。何故なら……

 

「まなーまなーまなーめざめるまなー」

 

クレハは既に壊れかけてるからだ。

うつ伏せで謎過ぎる言葉を人形のように繰り返し、時折陸に打ち上げられたコイキングのようにびくんと跳ねるという年頃の娘がなっていいような状態じゃなくたっていた。

 

「おーい大丈夫か?クレハさんや〜ひとまずサーナイトや精神の安定化を頼む」

 

しかしグレイブの方は見る限りは平気そうで、手持ちのサーナイトにいやしのはどうをクレハに掛けるように指示をしていた。

随分とタフなやつである。

 

「ああ…リリィさんの被害者が…クレハさん、大丈夫ですか?」

 

癒しの波動とはいえ、ぶちかまされた常識までは消せない。それを日常的に受けているから故に心配そうにクレハの肩に手を置いて訊いたりしてくるリョウ。

──本当に良い奴である。

 

「まなーまなー……はっ!?う、うん、なんとか大丈夫……」

 

癒しの波動を打たれ、リョウに声を掛けられた事でなんとかクレハは正気に戻り、グレイブとリョウに「ありがとう」と一言、礼を言うも少しだけ体が震えていた。

 

ぶちかまされた常識によるダメージは相当深かったようだ。正しく(トレーナーにとっては)こうかはばつぐんだ!である。

ちなみにリリィはリョウが必死に答えたりクレハが頑張って考えてくれたのもあって満足した様で、それを確認したクレハは内心ほっとしていた。

 

「はぁ…危なかった。…それにしてもある意味おっそろしいな〝常識〟は……」

 

グレイブは小さく、されど周りに聞こえる程度にそう呟く。

…どうやら一応ダメージはそれなりにあった様である。

 

「いやまあ…どっちかというとそういうのを忘れ去っていた俺達がおかしいのかもしれない…」

 

「?どうかなさいましたの?…あ、そうですわ!グレイブさんは分かりましたが、クレハさんはどれほどの戦績をお持ちなので?」

 

「あー、確かに。メンバー的に上級者の面子だし…気になるな」

 

グレイブの言葉にもしかしたらおかしいのは自分達の方では?と思いつつも、その直後にリリィが発した質問に同調する。

リョウの見立てではクレハはリーグ戦はしたことがあると見ている様だが、実際の所はリョウ自身の経験による勘なので宛てにはならない。

──だからだろう、リリィの質問は渡りに船であったようだ。

 

「えーと、私はですね……シンオウリーグベスト6でした、はい。」

 

当のクレハはちょっと気まずそうに2人の質問に

答える。無理もないだろう、比較対象が異世界のガラルチャンピオンのグレイブで、ベスト6とか正直パッとしないのでは?と思ってしまったのだ。

 

「ほぉシンオウリーグでね・・・なるほど」

 

「まあ!シンオウのリーグも厳しいと聞きますわ…それのベスト6だなんて凄いと思います!」

 

「シンオウリーグ…か…」

 

「先生はシンオウリーグでは予選敗退してましたわね」

 

グレイブの静かな呟きを他所に純粋にクレハの実力を称えるリリィにシンオウリーグに何か思うところがある様子のリョウ。その理由はリリィの暴露によってすぐに判明した。

どうやら意外な事ににリョウは過去、シンオウリーグを予選で敗退していたようなのだ。

 

「いや…だってあれは反則だろ…明らかにほら…ヤバイポケモンだったじゃん、ダークライってやつ…」

 

しかし当の本人はすぐに弁明するように、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら予選を敗退した理由を語る。

それは偶然にもクレハのシンオウリーグでの忘れられない苦い記憶を連想させるものだった──

 


 

「……うっ…ダークライ…」

 

──リョウくんが語った予選敗退の理由に思わず自分の体から怖気が出るのを感じた。

ダークライ。何を隠そう、そのポケモンこそ私がシンオウリーグでベスト6止まりだった最大の要因だ。

〝ダークホール〟という〝さいみんじゅつ〟の上位互換みたいな反則…もとい強力な技でねむり状態にさせられた挙句ナイトメアという眠っている相手の体力を徐々に削るという特性に私はいいようにやられ、私はラムのみを持たせたガブリアスが出るまでの手持ち4体をまんまとやられてしまったのだ。

──今思えばなんで私はあの時ガブリアスを早期に繰り出さなかったのか…その前に対戦していたリリカとのバトルでの疲労で頭が回っていなかったのかなぁ…

というか何より1番恥ずべきなのはあのバトルの後負けた悔しさのあまり大泣きした事。

……タクトさんめっちゃ困ってたし、会う機会があったら謝りたい…

 

「あ〜ダークライね・・・確かに眠り対策とか色々面倒だろうな」

 

そうなんだよね。しかもやたら速いし。

 

「ですが、先生はイッシュリーグにてチャンピオンアデクさんへの挑戦権を獲得し、あと一歩のところまで行ったのですよ!」

 

「いやお前が自慢するんかいっ。

落としてから上げるなぁ!?」

 

「チャンピオンを追い詰めたの!?それは凄いねっ」

 

熱心に話すリリィちゃんに私も思わず声が出る。

いやだってイッシュ地方のリーグがかなりハイレベルだっていうのはネットでちょっと調べて知ったから。

その頂点に立つチャンピオンをあと一歩まで追い詰めたリョウくんは本当に凄い。……私もシロナさんに挑みたかったなぁ…

 

「へぇ、あのおっさんか・・・そりゃ2人ともかなりお強いことで」

 

「いやその…あー、はは…ありがとうございます…」

 

あ、お礼言いながら顔を背けちゃった。……照れちゃってかわいいなぁ…

 

「これは、つまり…三人の強者がこの屋敷に集ったということですわね。

となると、トレーナーであれば、やることは一つですわ!

言うではありませんか、目と目が合ったら?」

 

ポケモンバトル!

 

「……ああ、まだ旅をしていた頃によく挑まれてたなぁ」

 

懐かしい…自転車でシンオウ中を駆け回ってたあの頃…偶にムクホークで飛んでたけど。 なんならホウエンにおばあちゃんの故郷のジョウト、今の住まいがあるカントーにも行ってたけど。……リクトちゃんと店番できてるかなぁ?

 

「ふーんいいんじゃねえか?腕が鳴るぜ!」

 

わぁ…グレイブくんもやる気十分って感じだ。……私もだけど。

 

「では、そうですわね…ここは公平にバトルを致しましょう。三人がそれぞれと戦う、というのはどうでしょう?」

 

「あー、どうかな…ポケモン達の負担もあるしな…連戦、それもリーグレベル…かは整ってる訳じゃないから分からないけど、な?」

 

「──、───」

 

「いやそんなやる気になられましても」

 

…つまりそれは誰が相手でも負ける気は無いってわけだ?……リョウくんもすごい自信だね。

…あ、リッター(だっけ?)もめっちゃやる気だしてる…こう、なんとなく「やるのですか??早くやりましょう!」的な事言ってる気がする。…いや私の予想でしかないけども。

 

「リョウ君。そっちの…リッターだっけ?やる気十分みたいだよ?私の手持ちもだけど」

 

…うん。実の所私の手持ちもやる気十分、早くやろう!って感じなんだよね。…ゴウカザル達5匹はともかく普段は大人しいバンギラスまで…あれかな、船の時のバトルの熱が残ってるのかな?

 

「こっちも準備万端だ。やる気ならそっちのギルガルドやゴウカザルに負けていないぜ」

 

おお…!後ろのグレイブくんの手持ちもやる気十分だ…!

 

「…あー、分かった。でも、流石に全員は駄目だ。ここは、3VS3で行かないか?」

 

「フルバトルではいけませんの?」 

 

「まあ、いいんだけど、長引くとヒートアップしすぎて良くないだろ?

で、一戦が終わったら回復も兼ねて少し休憩、OK?」

 

なるほど…確かに総当たり戦をフルバトルでやるのは厳しい。それにヒートアップし過ぎて良くないっていうのも一理あるし、何より…

 

「私もそれに賛成。フルバトルはポケモンは勿論、トレーナーの方も疲労半端じゃないから……」

 

フルバトルはポケモンは勿論、指示を出すトレーナー自身の疲労も凄いんだよね。戦術の組み立てや技の指示を出スタイミングとか…まぁ色々やるから終わったあとどっと疲れが出てくるんだよね。……それが1人あたり2回。それも連戦。だからリョウくんの提案には全力で賛成しますっ

 

「ハーフでの対戦か・・・俺としてはフルが良かったがまぁいいか。」

 

……わぁ、凄いギラついた目。グレイブ君ってばフルがよかったって言っておいて手持ちの選別してるし、本当にやる気満々だね君。

 

「よし決めた」

 

「早くありませんか!?」

 

ほんとに恐ろしい程早い選出…私じゃなきゃ見逃して…すみません。ふざけすぎました…

 

「──!」

 

「…悪い、リッター。いつも切り込み隊長してくれてるけど、お前は今回見学だ」

 

「──…。──!」

 

あ、リッターは下がるんだ。…おっと私も誰を出すか決めないと。…無難に得意の〝おいかぜ〟でのサポートを使ったスピード戦法にするかな?…いやせっかくだから別の戦法も試してみようかな…よし、決めた!

 

「……私も決めたよ。残りは今回は見学ね」

 

「ガブブ、ガブ!」

 

「ホー、ムクホッ!?」

 

「……リュオン」

 

ごめんね。ガブリアス、ムクホーク、カイリュー。

今回はやった事ない戦術を試してみいんだ。バトルはまた、ね?

 

「……ガブ」

 

「ムクゥ…」

 

「りゅん、りゅおん」

 

ガブリアスは静かに頷いて、ムクホークは片翼だけ拡げてやれやれって感じでカイリューは私の方を優しい手付きでぽむぽむと叩いて了承してくれる。…ありがとう。

 

「俺も決まった。残りはじっくりと見学だ」

 

グレイブ君も決まったみたいだね。

 

「っと…他は出してやらないとな」

 

……あ、リョウ君が2匹の手持ちを出してきた。…なにあのどう見てもほのおタイプな赤いダルマみたいなの。もう1匹は…ブラッキーだ。見た目によらず凄くタフなのが特徴のポケモンだ。

 

「では、僭越ながら私が審判を務めさせて頂きますわ。

まずは、誰と誰がやりますの?」

 

あー…誰からやろうかなぁ…正直順番はどうでもいいし。…だって……

 

「私はどんな順番でも構わないよ。──負けるつもりないからね」

 

そう、誰が相手でも負けるつもりは全くないから。

 

 




祝ポケモン完全新作!
わぁーーい!わぁーーい!(つるぎのまいならぬよろこびのまい)


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part3

シンジィィィ!ゲッコウガァァァ!!(オープニング見た作者の反応)


「俺もだ。負けるつもりなんてこっちもねぇよ!」

 

私の言葉に続くようにグレイブくんもそう言う。

さぁ誰からバトルする!?私は誰からでもいいよ!!

さぁさぁさぁ!!!(ハイテンション)

 

「って誰も決めないんかい。

それじゃ選出できないでしょうが。

あー…分かった、俺とクレハさんが最初な」

 

あ、はい。了解です…

 

「ご、ごめんね…。あ、でも了解したよ」

 

冷静に考えたらその通り過ぎてなんにも言えない。

……反省しなきゃ…

 

「わかったなら俺はゆっくり観戦するとしようか。」

 

うーん、正直な話。私的にはリョウくんの相手は私じゃなく、グレイブくんから先にやって欲しかった。情報アド的な意味で。

まぁ当の本人は少し離れた草地に座ってすっかり観戦モードだし、何より私了承しちゃったし、もう仕方ないと割り切ろう、そうしよう。

 

「分かりました。では二人とも、互いに位置についてくださいまし。

…準備はよろしいですか?」

 

「ああ」

 

バトルフィールドのトレーナーエリアに立ってるから私もOKです!……それにしてもリョウくんの今の顔、さっきまでツッコミ入れていたとは思えない程…

 

「……いい顔してるね」

 

そう。すごくいい顔してる。真面目でキリッとしていて、トレーナーとしての姿勢が全面的に出てる。

……ジムリーダーになったら、これを結構な頻度で受けるんだろうな。だからこそ私もリョウくんをしっかり見据えるんだ。それが最大級の礼儀だと信じているから。

 

「まあ、なんだ…先生、だからな。負けてはやれない。チャンピオンにも」

 

「…では、これよりクレハさんと先生による3VS3のポケモンバトルを開始します!…始め!!」

 

「行ってこい!フェイ!」

 

「える~♪」

 

リリィちゃんの試合開始の宣言と共にリョウくんは私より先に先発を繰り出してきた。それにしてもまた見た事がないポケモンだ。

ちっちゃくて、綿がまるでゆるふわカールみたいになっていて、凄くかわいい姿をしたポケモンだ。

…フェイって名前は多分ニックネームなんだろうな。ギルガルドのリッターもそうだし。

 

「あ、かわいい。って…私も出さないと。──レントラーお願いっ!」

 

「……トラッ!」

 

見とれてる場合じゃないから私も先発を…ムクホークの次ぐらいによく最初に出しているレントラーを繰り出す。

久しぶりのバトルだからか、レントラーはバチバチと放電しながらリョウくんの手持ち…フェイちゃんを睨み付けている。

……無難にムクホークを選ばなかったのはバンギラスを活かした新しい戦い方をする為にある技を覚えることの出来るレントラーにする必要があったんだ。

 

「フェイ。いつも通りに『からかってやれ』」

 

「るふふ~、えるっえるっ♪」

 

「トララァ…ッ!」

 

さて早速その技を…ん?からかってやれ???

──!?…レントラーの様子が変だ!?

フェイちゃんを睨んでいたレントラーがまるで怒り狂ったケンタロスみたいに鼻息を荒くしながら唸っている…!?この効果って…!

 

「からかう?…レントラー!?──そうか、〝ちょうはつ〟!…仕方ない、レントラー〝ボルトチェンジ〟!」

 

やられた。あのフェイって子にレントラーは文字通り〝ちょうはつ〟されたんだ。これじゃあ変化技がしばらく使えない。

仕方ないからボルトチェンジで1度下げてバンギラスかゴウカザルに交代しなきゃ…!

 

「フェイ!絶対に通すな、〝まもる〟だ!」

 

「えるふっ、ぅぅっ!」

 

「トラッ…!?」

 

〝まもる〟!?まずい、攻撃がもこもこの綿に弾かれた…!でもこれでレントラーに持たせたかえんだまが発動してやけど状態になる。これで攻撃力は倍増。当たればかなりのダメージになるはず…!

 

「ボルトチェンジ、よく知ってるよ。だがそれは攻撃が成立しないと帰らない。そして…フェイ!〝ようせいのかぜ〟!」

 

「るふっ!えるっふー!!」

 

「トラララァ!!?」

 

流石にボルトチェンジの弱点を完全に把握してるか…ポピュラーな技だし、それは仕方ないけど、フェイちゃんの技を至近距離でくらったせいか、レントラーが吹き飛ばされてしまった。だけど…

 

「レントラー!」

 

「シャーッ!」

 

私のレントラーの身のこなしは凄いんだ。空中に吹き飛ばされてもそのまま一回転して姿勢整えて着地しちゃうんだから。

それにしてもえげつない戦い方…真っ向から挑んだら痛い目見そう…でも私達がやることは変わらない。

 

「レントラー!〝ボルトチェンジ〟を繰り返して!」

 

昔も今も戦う時は真っ向から!攻撃が当たらないなら当たるまで続ける!それだけだ!

 

「仕込みは上々。…フェイ、綿を固めろ!」

 

……へ?

 

「えるっ!るぅぅっ…るふっ♪」

 

「わざと受けてきた?…なるほど、だっしゅつボタン…!

でもこっちも交代できる!…ゴウカザル、お願いっ!」

 

「ウキャー!」

 

やられた…!まさかダメージを受けることで自動的に交代させる効果を持つだっしゅつボタンを持たせていたなんて…!

意地悪過ぎるよ、フェイちゃんとリョウくん!

うわぁ、これじゃあレントラーはやけど損だよ…!でもこれで相棒のゴウカザルに交代出来る。これでなんとか巻き返して見せないと…!

 

「なるほどゴウカザル…確かにキツい相手だが、やってみせろよ、モーア!」

 

「ヌオッ!」

 

…… ここで相性の悪いヌオ ーってマジですか???

いやこういう時の為にゴウカザルには〝くさむすび〟を覚えさせてる!これで何とか…出来るといいなぁ…

 

「……ゴウカザル出してよかった。(精一杯の強がり)

よし、それなら〝わるだくみ〟!」

 

「ウキャッ」

 

まずはわるだくみでゴウカザルの特殊攻撃力を上げていく!

 

「モーア。〝たくわえる〟」

 

「ヌッ!」

 

で す よ ね 。

そりゃヌオーといえば耐久上げる〝たくわえる〟は鉄板だもんね!?

だからわるだくみでゴウカザルの火力を上げたわけだけど。

 

「っ、やっぱりそうくるよね…!ゴウカザル、〝くさむすび〟!」

 

「ウキャーッ!!」

 

まずはヌオー唯一の弱点を突けるくさタイプの技で足を取る!モーアと呼ばれたヌオーの足元の草が輪になって…

 

「ヌォッ!?ぬぬ…ヌオーッ!」

 

よし、転ばせたぁ!!そのままだいもんじで…「クレハさん、いい事教えてあげようか」…へ?

 

「モーアに〝わるだくみ〟は意味が無い。

なんせそんな事には気付かない『天然』だからな」

 

てん、ねん…?──あのヌオー、まさか特性てんねん持ち!?しまったぁぁっ?!

しかもあのヌオー転ばされた仕返しに〝ねっとう〟をゴウカザルに浴びせてるし!

そしてあのヌオーの持ち物はやっぱりたべのこしだぁ…持久戦に持ち込まれる前に何とかしないと…

 

「ウキャッ!?…ウキャキャキャッ!」

 

〝ねっとう〟をまともに浴びたゴウカザル。でも耐えてくれたけど、キレちゃったのか私が指示する前に狂ったように〝くさむすび〟を連発しまくる。

 

「…そうだったよ。でもそれなら泥臭く戦ってやるんだから…!」

 

他の技の指示はしない。だってヌオーに確実にダメージを与えられるのは〝くさむすび〟しかないから。特性がてんねんな以上、〝だいもんじ〟や〝インファイト〟じゃロクにダメージが入らないのは分かりきっている。

でもあのヌオーもただ転ばされているだけじゃない。

転ばされて起き上がる度に〝ねっとう〟で応戦してきている…〝たくわえる〟で耐久上がっているとはいえ、弱点タイプを何度も突かれて立ち上がってくるのは正直、末恐ろしいものを感じる。

 

 

「そうだな、そうするしかない。モーア、〝じこさいせい〟!」

 

「っ、ヌオヌオ…!」

 

~~っ、くさむすびから飛び退いて回復された!これだよ、ヌオーはこれが厄介なんだ。たべのこしに〝じこさいせい〟

このふたつのせいで大抵のダメージは帳消しにされちゃうんだ……!

 

「たくわえるのお陰だな…モーア、〝どくどく〟!」

 

「ヌッ!ぬぉぉ…っ!」

 

どくどく!?とことんスタンダードでえげつないタイプのヌオーだ!しかもご丁寧にも毒を多方面に撒き散らしてきてる…!

 

「ウキッ!?…ウキャ……!」

 

ゴウカザルは自慢の足で毒を何とか避け、それでも避けきれないものは……

 

「ゴウカザル!そのまま火を吹いて!」

 

私が指示をして火を吹かせて毒を焼かせる。

毒物は熱消毒あるのみだよ!……あ、ゴウカザルがついでとばかりにヌオーに火を向けてる…私が言う前にやってくれる辺り本当に助かる。付き合いの長さは凄く大事だね、うん。

 

「ヌオッ!?」

でも避けられた。あのヌオー…いやもうそろそろちゃんとモーアって呼ぼう。モーアはやたら反射神経がいいなぁ…結構不意打ちだったと思ったんだけど…

 

「モーア、よく避けた!偉いぞ!ならとっておきを切るか…モーア!

毒と熱湯をばら蒔け!!」

 

……はい?

 

「!…ヌォォォオォッ!」

 

な、ぁ…、嘘でしょ?どくどくとねっとう混ぜてフィールドにばら撒くとかあり!?

 

「ウキャ!?」

 

まずい…今は端まで行って避けきれてるけど、このままフィールドが毒沼状態にされたら逃げ場が無くなる…だったら!

 

「ゴウカザルッ!こうなったらこっちも炎をばらまいちゃえ!

──毒なんて殺菌あるのみだよ!」

 

「ウキャァァァッ!!!」

 

眼には眼を歯には歯を…ばら撒きにはばら撒き。

…ついでに〝だいもんじ〟をモーアに仕掛けていこう。

 

「…ああ、そうすると思ったよ。

クレハさん。あなたは熱くなるタイプだから、そうしてくれると思った。

モーア、だいもんじ到達まで、〝たくわえる〟最大!」

 

か、完全に私の性格を見透かされてる…。私を性格ほのおタイプって例えたシロナさんといい、そんなにわかりやすいのか、私。

……なんて言ってる場合じゃない!?〝たくわえる〟を最大まで発動された…!これじゃもう〝だいもんじ〟を受けてもダメージはまともに入らないし、それにモーアはたべのこしや〝じこさいせい〟があるから突破が難しすぎる…

 

「ぬぉ!ぬっ…ぬっ…ぬおー!」

 

……案の定〝だいもんじ〟を受けてもピンピンしてるし!

こうなったら…

 

「っ!…ゴウカザル、そのまま〝だいもんじ〟を継続!そしてそのままモーアに接近!」

「ウキャーッ!!」

 

無茶させてごめん、ゴウカザル…!

モーアにこれ以上〝どくどく〟を撃たせる訳には行かないんだ…どうにか踏ん張って、相棒…!

 

「なるほど、毒を封じる…確かに上等だ。だが…モーア!『跳べ』!!」

 

「ぬおぉ!ぬー…おー!!」

 

…は?え???……ヌオーというかモーアが、跳んだぁぁぁ!?

〝ねっとう〟を地面に吐いて〝だいもんじ〟を飛び越えて、ゴウカザルの斜め上をとってきたぁ?!

 

「モーア!〝ねっとう〟!」

 

「ウキャッ!?」

「ゴウカザル!?」

 

しまっ…、完全にあっけにとられた!?不意打ち気味に〝ねっとう〟を浴びせられた…!ここで毒戦術から切り替えてくるなんて…!でもゴウカザルはギリギリだけど持ち堪えてくれた…!

モーアは今、空中にいる。──…一か八か、賭けるしかない!

 

「ゴウカザル!?──でも空中じゃまともに動けないでしょ!もう一度〝だいもんじ〟!…それからモーアの落下場所に向かってダッシュ!」

 

まともに身動きが取れない今の内に…特性もうかで火力を上げた〝だいもんじ〟を、放つ!

 

「ウキャーッ!──ウッ、キィィィ!!」

 

そしてそのままゴウカザルはヌオーの落下場所に向かってダッシュ。

狙いはタイミングを合わせて〝インファイト〟を叩き込む事。でも…

 

「もうか…!怯むなモーア!〝じこさいせい〟しながら受け身体勢!」

 

「っ、ヌッ!ヌゥゥゥオォォォォ…ッ!」

 

そう。リョウくんも特性もうかによるほのお技の火力の凄まじさは知ってるはずなんだ。……だから、簡単に上手く行く筈は無いと分かっていた。…ここからどうする?どうしたら…!

 

「──ウキ!」

 

…ゴウカザル?

 

「──うん、もう一度〝だいもんじ〟!」

 

ゴウカザルはモーアが何かしようとしてるのに気付いていたんだ。

…だからこそ、私に〝インファイト〟じゃなくもうかで威力が上がってる〝だいもんじ〟にして欲しいと目配せしてきた。

……私はゴウカザルを信じる。信じて、託す…!

 

 




クレハ
出会って間もない相手に性格見抜かれるジムリーダー候補がいるらしい。

先生
先鋒いたずらごころエルフーン、次鋒てんねんたべのこしヌオーのヤベー奴。
これでギリ勝てないとかこいつらの世界の某赤帽子とか最早強さが異次元レベルではないだろうか…

グレイブ
クレハ視点なので途中から影が薄くなった。
申し訳ない、愛月さん…

お嬢様
グレイブと同じ理由で途中から影が薄い。審判だし仕方ない…筈




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コラボ回!先生VS育て屋VS異世界チャンピオンpart4

ゴウは未熟だなぁ(アニポケ感想的挨拶)


「冷静にだ…モーア!撃つべきは毒の地面だ!」

 

───は?

 

「!オォォォッ!!」

 

な、あ…?嘘、でしょ??

ここに来て〝ねっとう〟を毒の地面に当てに来た?!しかもその勢いで〝だいもんじ〟まで躱されてしまった。

しかもあの位置じゃ、ゴウカザルはどくどくを避けられない!?

 

「ウキャ!?」

 

やられた…完全に、不意をつかれた。どくどくを、まともに浴びてしまった…!もうか発動状態の今のゴウカザルに、毒を耐えきる体力はもう…「──ウキャァァァッ!!!」っ!?

 

ゴウカザル…!毒に侵されてるのに〝だいもんじ〟を止めてない…!力を振り絞って、モーアに〝だいもんじ〟の照準を合わせて撃ってる…!

───そうだ。ゴウカザルは、まだ諦めて居ない。なのに私が諦めてどうする…!

 

「ぬっ…ヌォォォオッ!?」

 

「っ、モーアっ!」

 

「モーア、モーア!」

 

「ぬ、ぬぉ…ぬぉぉ…!」

 

モーアは着地の反動で避けることが出来ず、爆炎の中に飲まれた。

ようやく、最大火力のだいもんじをまともに浴びせることが出来た…

ゴウカザルの意地が、モーアに決して大きくないダメージを与えられた。そのダメージはたくわえるによる防御力にたべのこしがあっても賄いきれない筈… 実際今のモーアはかなりボロボロだ。このまま攻めていけば倒し切れる。

 

…もう一度〝だいもんじ〟を、いやこの際〝くさむすび〟でもいい。 とにかく一撃浴びせれば倒せる。勿論ゴウカザルもそれをわかって追撃の〝だいもんじ〟を浴びせようとしてるけど…

 

「──ウ、キ、ャ…」

 

もう、限界だ。無理もないよ、もうか発動圏内になるまで体力が削られてる上、もうどく状態になってるんだもの。

もういいよ。後は私やレントラー達に任せてゆっくり休んでて、相棒。

 

「──よくやった、お疲れ様…!次はレントラー、お願いっ!

速攻で決めるっ!〝こおりのキバ〟!!」

 

「トラッ!フッッ、シャーッ!!!」

 

いつも以上に気合いが入った様子…というより怒った様子のレントラーがやけどした体も関係なく牙に冷気を纏わせてモーアに突っ込んでくる。

ゴウカザルが、やられて怒ってるんだ。そうだよね、私が新米だった頃から、コリンクだった頃から一緒だもんね。

だから…思いっきり、行けっ!

 

「──ぬお!」

 

「…ああ、いってこい、モーア」

 

「ぬっ。ぬおー!!」

 

…っ!腕を突き出して〝こおりのキバ〟を発動しているレントラーに噛ませた!?

たくわえるがあるからって、今の体力で攻撃を受けるなんて無茶をしてくれる…!

しかもレントラーが離れられないよう、頭をしっかり掴まれてしまった…!この後やるのは間違いなく…

 

「──ヌォォォオッ!」

 

やっぱりゼロ距離で〝ねっとう〟を撃ってきた!いまひとつちとはいえ、やけどのダメージが蓄積しているレントラーにはこのダメージは痛い。

なんて根性してるの、あのモーアっていうヌオーは。

 

「〜〜っ!!?…トラァァァ……!」

 

でも根性なら私のレントラーだって負けてない。

〝ねっとう〟とやけどの二重のダメージを継続的に受けても、モーアの腕に噛み付いたまま、〝こおりのキバ〟を止めないから。…ゴウカザルがやられた事、よっぽど許せないんだね。

 

「ぬぉぉお…!──ぬお…」

 

そうしてお互いに技を与え続けていた2匹だけど、先に力尽きたのはモーアで、パタリと倒れて目を回していた。

我慢対決を私のレントラーは見事制して見せたのだ。だけどレントラー自身もダメージが大きくて、もう満身創痍だ。

次のリョウ君の手次第じゃ何も出来ない可能性のが大きい…

 

「…流石だモーア。〝こおりのキバ〟まで見れた…お前のお陰だ」

 

「るふ…!」

 

……モーアを労いながらボールに戻したリョウ君はセオリー通り(多分だけど)くさタイプのフェイちゃんを出してきた。

フェイちゃんは最初の時の意地の悪い笑みじゃなく、しっかりとレントラーを睨みながらふわふわ浮かんでいる。

…モーアの頑張りに見ていたからかな?

それにフェイちゃんはまだ不明の技が2つある。うち1つはタイプ一致だと思うくさ技として、残り一つは一体…?

 

「と、トラ…!」

 

「…っ、レントラー…!」

 

──いやそれよりも根本的に考えるべきは今のレントラーの状態だ。〝ねっとう〟に、かえんだまで負ったやけどのダメージで満身創痍で、限界だ。

無茶はさせられないからここは〝ボルトチェンジ〟を指示して…

 

「──」

 

っ!?…レントラー…それじゃ駄目だって伝えたいの?

 

「…」

 

こくりと、私を諭すように見つめていたレントラーは頷いた。

 

「……わかった。──最大出力の、〝10まんボルト〟ぉぉぉっ!!」

 

「──トラァァァァァァ!!!」

 

私が下した指示に待ってましたとばかりにニヒルに笑いながら渾身の〝10まんボルト〟を放つ。

 

…抜群を取れる、〝こおりのキバ〟じゃないのは今のレントラーに走る体力さえ、もうないから。

それなのに、フェイちゃんに迫る電撃の勢いは凄くて、〝ようせいのかぜ〟ぐらいじゃ止まらないのは誰が見ても明白だ。

 

「いまひとつで来たか…!

フェイ!最後に一仕事だ!"おいかぜ"」

 

「るふっ!えるぅふ…!」

 

…な、〝おいかぜ〟!?しまった、これじゃ次からは余程の事がない限り、足は確実に負ける…!

 

「るっふぅぅうっ!」

 

しかも〝ようせいのかぜ〟を使ってきた!いまひとつだから耐えられるのか、フェイちゃんも〝ようせいのかぜ〟を出し続けている…。

ま、まさかレントラーを削りきるまで続けるつもり…?

 

「トラァァァ!──と、ら…」

 

〝ようせいのかぜ〟を身一つで浴び続けたレントラーは限界を迎え、…最後に後は任せたとばかりに私を見て、そのまま横から倒れ込んだ。

 

……レントラー、ありがとう。フェイちゃんを出来る限り削ってくれて。その期待に、私は応えてみせるよ。

 

 

「レントラー…あとはバンギラスに任せてゆっくりおやすみ。──バンギラス、お願いっ!」

 

「ギルァァァァっ!!!」

 

レントラーをボールに戻して、最後の1匹である、バンギラスを繰り出す。

自身の特性によって砂嵐を起こしながら、闘志に満ちた雄叫びをあげるその姿は世間でよく言われてる、狂暴な姿そのものだけど、この子の場合は違う。

 

バンギラスはただ、ゴウカザルとレントラーの頑張りに答えたいだけ。あの雄叫びは、その意志の表れだ。

 

「る、ふぅ…」

 

「フェイ。あとは、任せろ」

 

「…るふっ!」

 

ふらふらなフェイちゃんにリョウ君がそう言うとフェイちゃんは力強く頷いて、少しでも削るためか、バンギラスに力一杯〝ようせいのかぜ〟を放ちに来た。

 

「知ってるだろうけど、特性すなあらしとバンギラス自身の防御力の高さを侮らないで!──バンギラス、〝アイアンヘッド〟!」

 

「ギルァァァ!」

 

…今更だけど〝ようせいのかぜ〟はシンオウじゃあまり見かけないフェアリータイプの特殊攻撃技。

だけど威力自体は軽い。だからこそこのまま突っ切らせる。

何故ならバンギラスに今回持たせたのは効果抜群の技を受けると物理と特殊の攻撃力が2段階上昇するじゃくてんほけん。

 

元々高めなバンギラスの攻撃力をより高め、更に恐らくフェアリータイプでもあるフェイちゃんに対して効果抜群のはがねわざである〝アイアンヘッド〟。

 

これがフェイちゃん目掛けて突進なんてすれば…

 

「るっふぅ!!?」

 

まぁこうなるよね。

 

「っ、フェイ!…頑張ったな」

 

「え、るぅ…」

 

砂嵐に振り回された上に、バンギラスの〝アイアンヘッド〟をもろに受けたフェイちゃん。

リョウ君が綺麗に受け止めてから頭を撫でると安心したのか、微笑んでから力尽きた。

…凄く厄介だった。でもこれでリョウ君側は残り1匹。

バンギラスはダメージこそ負ってるけどそれは大したものじゃない。……じゃくてんほけんでパワーアップもしてるし、間違いなくこっちが有利になってる筈…!

 

「…来い!サラメ!!」

 

「──ボーマァァァァッ!!!」

 

リョウ君が天高く投げたボールから2人の前に現れたのは…サラメと呼ばれた翠色の、色違いのボーマンダ。

その力強い咆哮はバンギラスを天から見下ろす姿と相まって凄い威圧感がある。

 

「い、色違いのボーマンダ……!?」

 

ボーマンダ。

私もよく知っていて、親友のライバル…リリカもシンオウとホウエンのリーグは勿論、今も手持ちにしている強力なポケモン。

…気を引き締めて深呼吸しろ、クレハ。色違いにはびっくりしたけどだからって気圧されてちゃ駄目だ。

 

「ギルァァァ!!!」

 

バンギラスだって負けるもんかとサラメに吠えてるんだから。

その親の私がビビるなんて以ての外だ。

……でもあのボーマンダ、多分特性はいかくだから結構きつい。でもバンギラスの砂嵐は継続中だし、タイプ的にもこっちが有利だ。

 

「サラメ、"あまごい"!」

 

「ギュァァァッ!!」

 

な…!嘘でしょ…?あのサラメってボーマンダ、よりによって天候操作型!?!?

ま、まずい…!これはまずい。早く勝負をつけないと、次は間違いなく〝ハイドロポンプ〟が飛んでくる!

 

「っ、あまごい…!天候操作するタイプのボーマンダか…!」

 

「バンギラス、〝ストーンエッジ〟!」

 

「ギルァァァ!!!」

バンギラスが両腕を地面に突き刺すと、サラメの真下を中心に岩が柱の様に突き上がり、サラメを突き刺そうと迫っている。

 

…タイプ一致かつ、サラメに対しては効果抜群のいわ技。

いかくで攻撃力が下げられてもこれならカバーが出来る筈だ。

あとは当たるまで打ち込み続けるだけだ!

 

「今のサラメにとってその攻撃は…遅いっ!サラメ、躱して"ハイドロポンプ"!」

 

「ボーマッ、ぐぉぉぉおおぉッ!!」

 

速い!?…はっ、しまった!まだサラメには〝おいかぜ〟による補助が残って…!

 

「バンギラス、よけ…」

 

「ギルァァァ!!?」

 

勢いは凄いけどあの距離からなら到達するまでにギリギリ避けきれる、筈だった。

私が焦って〝ストーンエッジ〟を指示していなければ。

 

今のバンギラスは〝ストーンエッジ〟の予備動作のせいで両腕を地面に刺してしまっている。

それがタイムロスになってしまい、バンギラスはまともに〝ハイドロポンプ〟を受けてしまった。

砂嵐による補助がないバンギラスは当然、その場に倒れ込んでしまう。

 

「バンギラスゥゥゥ!?」

 

私は倒れたバンギラスに思わず悲鳴をあげる。だって私のミスでこうなったようなものだ。しかもロクな抵抗も出来ずに、一撃で勝負を決められた。

 

ただただ悔しいし、何より技の選択ミスをした自分が情けない。ごめん、ごめんね…バンギラス…!




クレハ
もし指示した技が〝ストーンエッジ〟でなく〝れいとうビーム〟だったならば〝おいかぜ〟がきれるまで粘れたかもしれなかった。

リョウ
くそ強先生。
……この世界のチャンピオンどんだけ強いんや(困惑)

リリィ・グレイブ
観戦してるせいで前回から影が薄い2人。今回に至ってはセリフ無し。
わかってはいたが、かなり申し訳ないです…


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part5

セレナァァァァ!!(アニポケ感想的挨拶)

ちなみに今回は三人称視点です。



「…グオォォォオオォォッ!!」

 

リョウの最後の砦たる色違いのボーマンダ…サラメはクレハのバンギラスを降したのを確認した後、雨を晴らすほどの強烈な咆哮を上げてから着地すると地面に付したまま、目を回してダウンしているバンギラスを背負い、そのバンギラスの主人たるクレハの元まで運んでいく。

 

「…ぁ、バンギラス、戦闘不能!勝者、リョウ選手!」

 

「…だぁぁっ…疲れた…!」

 

「いや〜おつかれさん。2人とも、しっかし中々の戦略だったよ」

 

一方、審判をしていたリリィは放心していたようで、正気に戻ると同時に試合終了の宣言を取り、リョウは疲れ果てたのか息を吐きながら屈伸し、グレイブは良いバトルだったと賞賛した。

 

 

「あ、ありがとう…バンギラス、大丈夫っ?」

 

しかし賞賛されていたもう一人であるクレハは浮かない顔。

それもそうだろう、なんせ結果的に出す技の指示を間違えていたのだから。

 

あの場面はれいとうビームで行くべきだったのだ。そうすればハイドロポンプを避けられたかもしれないし、何より4倍弱点を突けられ、プレッシャーを与えられた。

 

……勿論それでも結果は変わらなかったかもしれない。しかしそれでもストーンエッジよりは可能性はあった筈なのだ。

だからクレハは後悔しているし、ここまで頑張ってくれたゴウカザル、レントラー、バンギラスに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

「…いや、違うよクレハさん。

あの時、バンギラスはクレハさんに応えた。レントラーのように違うと言えた筈だ。…だから、間違いじゃない。謝るんじゃなくて、頑張ったポケモンのためにもっと言うべきことがあると思うよ」

 

しかし、それは違うと否定の言葉を放ったのは今さっきまでバトルの相手であったリョウ。バンギラスを優しく降ろすサラメを見据えながら、クレハに近付き、その手に持っていたかいふくのくすりをバンギラスに使っていく。

 

「……そう、だね。──バンギラスお疲れ様、よく頑張った…!」

 

リョウの言葉にクレハは目が覚めたかのように、その言葉を肯定し、バンギラスの方に向き直して、優しく抱きしめながら労いの言葉をかけてやり、ボールの中へと戻す。

 

……ボールへと戻る直前にバンギラスはかいふくのくすりの効果があってかバンギラスはどういたしましててにこやかな顔となり、ヨーギラスの頃からよくしていた頬擦りをクレハにしていた。…やはり謝れるより、頑張ったと褒められた方がバンギラスは嬉しいのだ。

 

(さてと・・・クレハのポケモンは判明した。タイプ相性もおっけー。だけどリョウの3体目は厄介だな)

 

そして成り行きを見守る形となっていたグレイブはこれから自分が対戦する予定である2人の分析をしていた。…どうやらクレハはタイプ相性は問題ないとして、リョウの3体目…サラメは厄介だと認識したようだ。

 

「凄まじい戦いでしたわ…ええ、素晴らしい経験になりましたわ!お二人とも、流石の実力でした!」

 

「ありがとう、嬉しいよ。な、サラメ」

 

「ボーマッ♪」

「あ、ありがとう…」

 

リリィは対戦した2人を賞賛の言葉を送り、クレハは照れ気味に、リョウは同意を求めるようにサラメに言うと、サラメは嬉しそうに頷いた。

 

…そんなサラメを見たクレハは今はボールの中で休ませているバンギラスを連想し、サラメはもしかしたら女の子…?となんとなく感じた。鳴き声の感じとかが女の子みたいに聴こえたのだ。気の所為かもしれないが。

 

「……強いね、リョウ君。チャンピオンを追い詰めたのは伊達じゃないって訳だ…「よーし決まった!」……」

 

気を取り直し、改めてクレハは自分なりの賞賛の言葉をリョウに送るも、その直後、真っ直ぐリョウの方へと歩いていくグレイブの声とタイミング悪く被ってしまい、思わずどこかの赤帽子みたいに無言になる。

 

言いたいことは最後まで言えたが、それでもなんとも言えない微妙な気持ちになったのだろう。

 

 

「まあ…強くならないと、追い付けない人ってのは居ますからね。…うぇっ、俺か?いや、待ってくれ、モーアとフェイを休ませないと。1時間はくれ、モーアは特に頑張ったからな」

 

しかしリョウの方は被った事を特に気にする事なく、クレハの言葉に照れ臭そうにした後にやって来たグレイブに落ち着けと注意し、1時間の休憩を要求。その理由は正論そのものだ。

 

「たしかにな、了解!んじゃあ俺は作戦をゆっくりと練る事にしますかね〜」

 

当然ながらグレイブもそれには納得。一旦リョウ達から離れた場所に行き、ボールから自身の手持ちを出して何やら話し合いを始めた。おそらく作戦会議だろう。

 

「──ところでリョウ君聞きたい事があるんだけどさ…」

 

作戦会議を始めたグレイブを他所に、クレハはリョウに話しかける。最初の会話の時にもちらりと触れていたある話題が気になっていたのを今思い出したのだ。

 

丁度いい事にリョウはこれから1時間程暇だ。

ならば思い出した事を即訊く事にクレハは決めた。…それにゴウカザル達を回復させている間はクレハも暇なのだ。

 

「ん?どうかしました?」

 

(リョウのメンバーは先手で出してくるであろう妨害役のエル

フーンと後続の高耐久ヌオーに切り札の天候型ボーマンダ・・・でも俺の手持ちは負けねえ)

 

ご褒美なのだろう、ヌオーのモーア、エルフーンのフェイの2匹にかいふくのくすりをかけた特製のポケモンフーズを食べさせているリョウに対し、クレハは口を開いて訊く。

 

一方、グレイブは作戦会議をしながらもリョウに対して強い闘志をメラメラと燃やしているが、当然話し込んでいるクレハ達が知る由はない。

 

「シンオウリーグの予選でダークライに負けたって聞いたけど…もしかしてそのダークライのトレーナーって髪の毛が長い人だったりする?」

 

聞きたいことを聞きながらクレハもボールからゴウカザル達を出してやり、リョウの様にかいふくのくすりをかけた手作りのポフィンを食べさせる。当然きちんとそれぞれの性格に合わせた味付けをした物だ

 

「あ、あー…うん、そうだったかな…あの時は今のパーティーじゃなかったし、でもあいつらが悪いんじゃない。ちょっと、あれは酷すぎた」

 

「……ああ、わかる。わかるよ…あれはいくらなんでも酷いよ……」

 

クレハの問いに答えながらリョウの目が死んでいく。それを見たクレハは察した。同じ人に自分達2人は負けたのだと。

自身の目もどよどよと濁らせながら、クレハはリョウにそう返す。

 

2人の気持ちは今一つになり、ある理不尽に対して物申したい気持ちで溢れている。それは2人だけでなくダークライにやられたトレーナーなら誰しもが思うこと。それは……ダークホールってなんだよ。だった…

 

「おーい?おふたりさんや大丈夫か〜?」

 

「ん、大丈夫だ。まあ、なんだ、チャンピオンと戦えるなんて燃えるっちゃ燃えるよ」

 

「私も、多くを学べるのでとてもありがたいですわ」

 

「私はじっくり観戦して対策練らせてもらうからね!」

 

話し合いが終わったグレイブだったが、これから対戦する2人のお通夜みたいな雰囲気を見かねて、声をかけ、いつまでも落ち込んでられないし、リョウに至っては教え子の前なのもあり、2人は気を取り直してそう答える。

 

「おお〜そう言って貰えるとこちらとしても嬉しいねぇ〜まぁ〝常識外〟を体験することになるけど、互いに良いバトルをしようじゃないか」

 

「もう別に何を見ても聞いても驚かない自信がある。なんというか…うん…色々と」

 

「君はもう今の状況の時点で常識外だと思うんだ。色んな意味で」

 

一瞬クレハとリョウの2人は何言ってんだこの異世界人。とグレイブに対してそう感じたがそもそもグレイブの状況そのものが常識の遥か外なので控えめなツッコミを入れる程度に留めた。

 

「まぁそれについてはさっき知ったから置いておく。まぁ何はともあれよろしくな」

 

「ん…よろしく」

 

そんな2人に対して思うところはあるが、今はそれよりもバトル。なのでグレイブはリョウに右手を差し出し、握手を求め、リョウは勿論それに応じてこちらこそと伝える。

 

それをリリィと共に見ていたクレハはきっとこの2人のバトルは物凄い事になると確信しながら、美味しそうにポフィンをゴウカザル達を見て微笑みながらお疲れ様と改めて労いの言葉を掛けていくのだった──

 



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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part6

拙者、アニメのゲッコウガ大好き侍で候…(挨拶)


「さーてと、あらかた休憩も終わったかな?そんじゃ〜先生・・・やろうぜ!」

 

早くやろうぜ。さっさとやろうぜ。ハリー、ハリー!そんな幻聴が聞こえてきそうな程の超押せ押せなハイテンションぶりで休憩を終えた対戦相手こと、リョウくんにバトルを要求する異世界チャンピオン…グレイブくんの姿がそこにはあった。超前のめりである。

 

「先生って呼ぶなリョウって呼べ。まあ、いつでもやれるよ」

「審判はお任せくださいませ!」

 

(異世界のガラルチャンピオンのバトル…しっかり見て対抗策を練らなきゃ…!)

 

対するこのハイテンションチャンピオンの対戦相手であるリョウのテンションは普通である。そしてそのテンションのまま立ち上がり、バトルフィールドに立った。

 

教え子であるお嬢様ことリリィは張り切った様子で前回に引き続き、審判を。クレハは次に活かすためにグレイブとリョウのバトルをしっかり見ると意気込んで観客席に座る。

 

「おっけいならばそう呼ばせてもらうぜ。んじゃあ早速おっぱじめるぜ!〝チャンピオンタイム〟を!!!」

 

「チャンピオンタイム、ね……まあ、胸を借りるつもりで行くよ」

 

「…それでは、グレイブさんと先生によるポケモンバトルを開始します!使用ポケモンは三体…開始!!」

 

クレハは知らないがガラル地方ではお馴染みのポーズとセリフをグレイブは言いながら、リョウを名で呼ぶと伝えると同時にモンスターボールを構え、いつでも投げれるようにする。対するリョウは胸を借りるつもりでいくと伝え、同じくモンスターボールを静かに構える。

 

───そしてリリィの試合開始の宣言から数秒後、ほぼ同時に互いのモンスターボールからポケモンが飛び出した!

 

「GO!!!〝ギルガルド〟」

 

「───」

 

「いってこい、モーア!」

 

「ヌオッ!」

 

グレイブはギルガルドを、リョウはヌオーのモーアとどちらも耐久力が自慢のポケモンだ。

ギルガルドはリョウの所のリッター同様の金属音を、モーアの方は受けて立つぞ言うようにどっしりと身構える。

 

「ほぉ〜ヌオーと来たかだったら〝アイアンヘッド〟!!!」

 

「───」

 

しかしヌオー相手でもグレイブは臆することなく、ギルガルドに指示を出す。ギルガルドは忠実にアイアンヘッドを実行。

モーアにまっすぐ突撃して行く。

 

「(ギルガルドのブレードフォルムは確かに脅威的。だが、攻撃の分、防御を捨ててるのは分かりきってる筈だ…)モーア、〝たくわえる〟をしてわざとふっ飛べ!」

 

「ぬお!ぬぉぉ…ぬっ!!」

 

しかしリョウはヌオーに物理防御と特殊防御を1段階ずつ上げるたくわえるを指示した後にわざと吹っ飛ぶようにモーアに言う。そうすることでアイアンヘッドの衝撃を軽減できる上、ギルガルドから距離を取る事が出来るからだろう。しかもその後に反撃とばかりにねっとうをギルガルドに向けて放った。

 

「(やはりな)ギルガルド、後ろに下がりながら〝キングシールド〟で防げ!!!」

 

「───!」

 

(すごい完全に対応してる…流石チャンピオン…!)

 

しかしグレイブはそれを読んでいた。ギルガルドにモーアと同じく距離を取らせて、ギルガルドの代名詞ともいえるキングシールドでねっとうを防ぐ。……物理攻撃ならばキングシールドの追加効果が発揮されるがねっとうは特殊攻撃なので今回は発動はない。

 

ちなみにクレハ完全に読み、対応して見せたグレイブに心の中で賞賛。声に出さないのは2人がバトルに集中しやすくする為の、クレハなりの気遣いだったりする。

 

 

「技二つは見抜いた…(だが参ったな。モーアの戦術は遅延による毒戦術。鋼相手じゃ毒は……)モーア、構うな、そのまま撃て!」

 

「ぬおぉぉ!」

 

一方リョウは内心で舌打ち。無理もない、モーアの戦術はどくどくによる遅延。しかしグレイブのギルガルドは毒に侵されないはがねタイプだ。しかし秘策でもあるのか、それともギルガルドに対応出来るのがモーアしかいないのか、ねっとうを撃ち続けることを指示し、交代せずに続投させる。

 

 

「(読み通り鋼にゃ毒は効かないからそのまま続けて撃つしかない。だったら)そのまま〝キングシールド〟を維持したまま高速回転!」

 

「───!!」

 

しかしグレイブがそれを読んでいない訳が無く、なんとギルガルドにキングシールドを維持させたまま、回転するように指示。ギルガルドはフォレトスや頭と四股を収納したカメックス顔負けの高速回転をし、ねっとうを跳ね返して見せた。

 

「なっ!?」

 

流石にこれには黙って観戦していたクレハも声に出して唖然。

 

「(ああ、これは…リッターと同じだ)モーア、問題ない、避けて…〝ねっとう〟!」

 

「ヌオッ!ぬおーー!」

 

どうやらリョウの所のギルガルドこと、リッターも同じことをしていたようで、特に驚きもせずに冷静に回避するように支持し、モーアも避けると同時にねっとうを再度放つ。

───ねっとうにはみずタイプの技としては珍しくやけど効果も内包している。つまり如何にギルガルドといえどねっとうを受け続ける事は堪えるし、まもると同様の弱点を持つキングシールドにも限界はあるのだ。

 

「(…なるほど)ギルガルド、守りを解き素早く翻弄させろ。」

 

「───」

 

ならばとグレイブはギルガルドにキングシールドを解かせ、翻弄しろと指示。

ギルガルドはそのままキングシールドを解き、ねっとうを受けながらもすぐに振り切ると高速でモーアの周囲を翻弄するように、動き始めた。

 

「モーア、ねっとうをやめて"たくわえる"をしながら様子見だ」

 

「ヌオッ…!」

 

しかし実はギルガルドはモーアヌオーより少し早いくらいの足しかない。つまりそこまで速くはないのだ。それならばより耐久力をあげに行くべきとリョウは判断ささたのだろう、たくわえるのエネルギーで耐久力を上げながら、更に持ち物であるたべのこしの効果も相まってモーアの体力は完全回復した。…これだからヌオーは怖いんだよ(恐怖)

 

(やっぱりモーアは、ヌオーは硬い…!どう対応するの、チャンピオン…?)

 

そしてクレハは完全に蚊帳の外である。今回は観戦側だから仕方ないが。

 

「ギルガルド・・・周囲を回りながら〝シャドーボール〟を連続発射!」

 

「───!!」

 

ならばこれは耐えられるかなとばかりにグレイブは指示を出し、モーアの周囲をぐるぐる回っていたギルガルドはその布のような両手にシャドーボールを生成し、指示通りばら撒くように連続でモーアに放つ。

 

「…モーア、〝ねっとう〟を放ちながら…回れ!!」

 

「ヌオッ!ヌオオオォオォォッ!!」

 

しかしリョウとモーアもここで仕掛ける。シャドーボールによってギルガルドが防御を捨て、攻撃に特化したブレードフォルムになっている今が仕掛ける時と見たのだ。

 

モーアはその場でまわりながらその水の奔流がシャドーボールをそのまま受け取り、なんとそのままギルガルドにねっとうごと送り返してみせた。ちなみにモーアは目が回らないようにする為か、きちんとターンを利かせる徹底ぶりを見せている。

 

「──あっははは!そう来たか!ならばその水も何もかもを切り裂け!!!」

 

「───!!!」

 

面白い。あまりにも面白いとばかりにグレイブは笑い、笑ったままとんでもなく無茶な指示をした瞬間、ギルガルドは自身のダメージも顧みずにその剣でねっとうをシャドーボールごと切り伏せてみせ、そのままモーアに突撃するように接近していく。

 

「むちゃくちゃやってきたー!?」

 

「これが俺のやり方だからな!!!」

 

これには流石に黙って観戦していたクレハも引いたように叫び、そんなクレハの方にはバトル中だからか、顔を向けないままグレイブはこれこそ自分のやり方だと大声で返したあと、目の前のバトルに集中していく。

 

「いいや、これくらいリッターだって出来る、そうだろモーア!

〝ねっとう〟をやめて…構えろ!」

 

「─ぬお!」

 

しかしリョウはそれくらい自分のリッターだって出来ると言った後、ねっとうを止めさせ、モーアに構えるように指示し、モーアはそれに頷いた後に構え…なんと接近するギルガルドに突撃していった。

 

「ギルガルド!思いっきり全力で〝アイアンヘッド〟をどたまにぶちかましてやれ!!!」

 

そう来るならば受けて立つ。とでも言うようにグレイブの指示が飛び、ギルガルドは少し高度を上げるとそのまま勢いよく下に落ちるように加速をつけたアイアンヘッドをモーアの頭にぶちかそうとし、その数秒後、周囲に鈍い音が響く、が…

 

「─ヌ、ォォ!!」

 

しかしギルガルドが受けたのはモーアの頭ではなく、たくわえるでエネルギーを得たモーアの拳。それでアイアンヘッドを受け止めたモーアはそのままギルガルドの細い首を掴んで、ギルガルドを地面に叩きつけんと背負い投げをしていった───!

 



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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part7

マスターズエイトが理想的すぎる(語彙力死亡)


「ひゅ〜!やるねぇ。ギルガルド〝アイアンヘッド〟だ」

 

「───!」

 

モーアに背負い投げをされたギルガルドだったが、グレイブが指示を飛ばした瞬間、体を捻って投げられるギリギリで抜け出して、一旦距離をとってから、モーア目掛けてアイアンヘッドによる勢いを利用した突進を試みる。

 

「─ブレード出しっぱなのは悪手だなチャンピオン。モーア、受け止めて〝ねっとう〟」

 

「ヌ、ォ!ぬぉぉおっ!」

 

 

しかしそれは悪手だと伝えながらリョウはモーアに指示。

指示通りモーアはギルガルドのその巨体で難なく受け止めてみせ、ねっとうを至近距離で放ってみせる。

たくわえるで耐久をあげたこと、元々モーアこと、ヌオーが受けに優れたポケモンだからこそ出来た芸当である。

 

「Wow…こりゃ〜さすがに悪手だったか」

 

「───…、…!」

 

これはまずい。悪手だったかと反省する。はねっとうをまともに浴びてしまい、ギルガルドは既に満身創痍だが主への忠義か、それともただ主に似ているからだけかは分からないが、フラフラながら、必死で立ってみせた。

 

「畳み掛けろ、モーア!そのまま〝ねっとう〟!!」

 

「ヌ、オーーッ!」

 

フラフラなギルガルドだがリョウとモーアは一切の油断もせず、トドメをさそうとそのままねっとうを放つ。

 

「回避して〝アイアンヘッド〟」

 

「───!」

 

しかしギルガルドの方もフラフラながらねっとうを紙一重で回避。再びモーアに突進をして、攻撃を仕掛けていく。

 

(──すごい。凄すぎて思わず見入ってしまった…勝てるのか私達…いや、勝つんだ…!)

 

凄まじい。そんな言葉が真っ先に出そうになる。互いに譲れぬ一進一退の攻防、飛び交う数々の技。トレーナーであったならば誰もが見入ってしまうそのバトルに、クレハは闘志を滾らせながら、勝つんだと意気込んでいた。

 

「モーア、警戒しながら〝ねっとう〟を続けろ!」

 

「ヌオー!!」

 

ねっとうを放ったまま薙ぎ払うようにこちらに突進してくるギルガルドの方へと方向を修正する。ギルガルドは厄介なポケモンだし、リョウ自身それをよく知っている。だからこそ油断はしないのだろう。軽快に警戒を重ねていた。

 

 

「(流石にこれをくらえば、ギルガルドはやられるな…)

くっ……〝キングシールド〟」

 

「───!」

 

「そうだ、止まるしかない。だから…モーア!〝たくわえる〟をしながらいけっ!」

 

「ヌオーー!」

 

流石にこれはやられる。そう思い、止まるしかないと判断したグレイブは苦い顔でアイアンヘッドを止め、ギルガルドの代名詞であるキングシールドを指示し、ギルガルドも盾をかまえ、シールドフォルムとなってねっとうを防ぐも、それはリョウの意図した通りだった。

 

止まった隙を突くように、モーアはたくわえるでより自身の耐久力を上げながら、ギルガルドの方へとポテポテと走り出す。

リョウとモーアからは、厄介なギルガルドはここで仕留める。そんな意志をありありと感じる。

実際ギルガルドは厄介だから仕方ないが。

 

(カロス地方に詳しくない私でもギルガルドが厄介なのはこのバトルでわかる…ここで倒しに行くのは当然だね…)

 

そしてその厄介さはこのバトルを通してクレハにも理解出来ているのだ。

 

「───…!」

 

「ギルガルド!ギリギリまで引き付けろ…」

 

「モーア、見極めろ、お前のタイミングを信じる…!」

 

「ヌオッ、ぬおーっ!」

 

「ギルガルド・・・もう少し引き付けてから・・・今だ!残っている力を全て収束させて〝シャドーボール〟発射!!!」

「───!!」

 

お互いにタイミングを見極めていき、先に動いたのはグレイブのギルガルド。モーアの鈍足では避けることが難しい距離から全力のシャドーボールが迫り来る。

 

「ヌオ……ッ!?ぬ、ぬぬ…ヌオッ!!」

 

しかしその全力はたくわえるを2回した上、持ち物がたべのこしであるモーアを仕留めるには足りないようで、受け止められてしまう。

 

モーア自身もシャドーボールの威力にジリジリと後退していくも腕で無理やりシャドーボールを弾き飛ばして、絶対に倒すという気迫を見せながら、全力の〝ねっとう〟を放つ。

 

「……ギルガルド〝キングシールド〟からの〝アイアンヘッド〟!!!」

「───!!!」

 

ギルガルドは既の所でシールドフォルムとなって、キングシールドを展開。ねっとうを受け止めてからアイアンヘッドでまたしてもヌオーに突撃を仕掛けにかかる。

 

「モーア、受け止めて〝ねっとう〟!」

 

「ンヌッ…ヌゥゥオッ!」

 

だが如何にブレードフォルム時のギルガルドの火力が高くとも、モーア…ヌオーは止まらない。姿勢を整え、ギルガルドのアイアンヘッドを受け止めると、そのまま捕まえて、至近距離でねっとうを放つ。

 

「〝シャドーボール〟!…踏ん張れギルガルド!!!」

 

「───!!」

 

しかしギルガルドも手強い。どうにかモーアの手から逃げ出し、ブレードフォルムになると同時に構え、シャドーボールをモーアに放つ。

 

「よく耐える。けど…モーア、やれ!」

 

「ヌオーーーっ!!」

 

「たはは、互いにボロボロでもよくやるもんだな」

 

しかし先程も言ったがモーアの持ち物はたべのこし。それによる継続的に体力を回復していたのもあって、いまひとつとはいえあれだけの攻撃を受けても健在の様子。シャドーボールにねっとうを放ち、弾けて消して見せた事からもそれが伺え、グレイブはボロボロなくせしてよくやると思わず苦笑い

 

「ボロボロ?バカ言うんじゃない。モーアはここからガブリアスとだって戦える。距離を離すな、そのまま"ねっとう"を続行しろ!」

 

「ぬお…!」

 

(うわあ…あの状態からガブリアスと戦えるとか流石ヌオーというか…怖いなぁ…)

 

だがリョウはそんな彼の言葉を否定。自分の育て上げたモーアはここからであってもガブリアス相手でも戦えると豪語し、ギルガルドと一定の距離を保ちながら、ねっとうを放ち続ける。

 

そんな彼の言葉に件のガブリアスを手持ちにしていたクレハは思わず苦笑い。実際あのヌオーなら出来そうなのがよりタチが悪いと感じた。

 

「だよな。ギルガルド、盾で防げ」

 

「─────!」

 

なんとなく言ってみたがあのヌオーの様子から前言を撤回しつつ、グレイブはギルガルドに盾で防げと指示。……キングシールドを使わずに防がせようとしたのだ。キングシールドは連続使用が出来ない。だからこそシンプルに盾で防がせたのだろう、これで時間を稼ぎ、突破口を開こうとしたが…

 

「…そんな悠長でいいのか?モーア、仕掛けろ!」

 

「ヌッ!!」

 

しかしそんな悠長はさせないとばかりに敢えてギルガルドに防がせながらジリジリと接近していき、ギルガルドの盾を持っていない方の腕を引っ掴んでから、グルグルと回り出してジャイアントスイング。遠心力を効かせていき、地面へと思いっきり叩きつける。

「─…──……」

 

「……しまったなぁ」

 

(まずはリョウ君が先制したか…でもグレイブ君も黙ってないはず……)

 

当然消耗し切っていたギルガルドは目を回してダウンし、グレイブは先程までの激しい様子から一変してギルガルドをボールに戻していく。

───あまりにも静かすぎてまるで嵐の前の静けさに思えるのは気の所為だと信じたい。そんな事を脳裏に浮かべつつ、クレハは逃避するように2人のバトルの方にと見入っていく。

 

 

「(やっと倒せたか…子供といってもチャンピオン、流石鍛え方がなってる…けど、こっちも負けちゃいない。今ので確信した。…ある意味、互角だ)」

 

「ぬお、ヌオーー!」

 

「こら、モーア。喜ぶのは早いっての!しっかりしなさい!」

 

「ぬ、ヌオッ!」

 

「ぷっ…」

 

考察していたリョウだったがまだ早いと喜ぶモーアに注意を入れる。まだあとグレイブのポケモンは2体も残っているのだ、油断は禁物である。

叱られたモーアはそうだったとばかりにシャキッと背筋を伸ばす。

そんな2人のやり取りに観戦していたクレハは思わず失笑。モーアに対してかわいいと感じた。実際ヌオーはかわいいから仕方ない。仕方ないったら、仕方ない。

 

 




ゴウくんはここからどうがんばるんですかねぇ…


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part8

どうも、ウツロイドで泣くとは思わなかったノイズです(アニポケ感想的挨拶)


「それじゃ次はサーナイトGO!」

「サナッ」

 

 ギルガルドがやられたグレイブの2番手はサーナイト。

 繰り出された瞬間、空中で華麗なムーンサルトを決め、優雅に着地する。

 

「ヌオーッ」

「次はサーナイトか…エスパーだし…それに…(特性によるが、シンクロならジリ貧かな)」

 

 優雅に決めるサーナイトを見て綺麗だなぁと呑気な感想を漏らすモーア。バトルする相手にも関わらず、こうなのは彼本人の性格故だろう。しかしその主人であるリョウは警戒態勢。無理もない、サーナイトは素で特殊耐久が高い上、強力なサイコパワーを持つエスパータイプだ。その上状態異常を共有してしまう特性、シンクロ持ちだった場合、勝負がジリ貧になってしまう可能性があり、そうなるとモーアが不利だ。

 特殊主体のサラメのこともあり、リョウからしたらサーナイトはなんとしても落としたいことだろう。

 

「サーナイト〝エナジーボール〟を頼む」

「サナ! …サーナ~…!」

 

 そんなリョウをお構い無しとばかりにグレイブは指示を出す。サーナイトはそれに頷くと自身のサイコパワーをフル活用し、モーアの周りを囲むように大量のエナジーボールが生成されていく。どうやらグレイブの方も、モーアをここで落としたいようだ。

 

(うわぁ…これはえげつない…なにあのエナジーボールの数…)

「──わお。モーア、全力で退避!」

「ヌオッ!? ぬ、ぬお──っ!?」

 

 これには流石にクレハはドン引きし、リョウも思わず声を漏らしてマジでかとなるが、モーアに全力で逃げるように伝える。モーアはえ、そんな無茶な!? とでも言いたいだろうが、流石にあのエナジーボールを受けきれる訳がないので、地面へと水を吐いて、上空へと逃げていく、が…

 

「〝サイコキネシス〟で叩き落とせ」

「サナッ!」

 

 それを許すほどグレイブは甘くない。全力のサイコキネシスでモーアを捕らえ、地面に落とす。当然ながら鈍足のモーアでは振り切ることなど出来ず、ロクな抵抗も出来ないまま地面へと叩き落とされてしまう。

 

「エスパーってだから嫌い。

 だけど…モーア、もう少し耐えてくれ! 

 〝ねっとう〟でエナジーボールを叩き落とせ!」

「ヌッオ! ヌオーッ! ヌオー!!」

「わかる、私もエスパータイプ苦手。ずるいもん…」

 

 しかしモーアはじめんタイプ。自身の体の弾力性を利用して、ポヨンと跳ねてそのままギルガルドの時と同じようにエナジーボールへと向かってねっとうを放ち、弾いていく。

 ちなみにクレハはリョウの言葉に全力で同意。エスパータイプには散々痛い目にあったからだろう…というかサイコキネシスがずる過ぎる。しかしそんな2人の心境を他所に、グレイブはとんでもない事を指示する…

 

「〝サイコキネシス〟でモーアを捉えながら〝エナジーボール〟を操作してぶつけろ!」

「サナ! サ~ナ~…!」

「なに! サイコキネシスは対象一体だけではないのか!?」

 

 ……本来ならば、サイコキネシスという技が操作出来る対象は1つのみ。それが常識、自然の摂理。しかしグレイブのサーナイトはあろう事かそれをガン無視。サイコキネシスで2つの対象を操作したのである。そしてこれには思わずクレハもツッコミを入れる。むちゃくちゃにも程があると。

 

「ん? どしたよこのぐらいやり方次第じゃ他のエスパータイプでもやれそうだけど」

 

 ど ん な や り 方 だ 。

 

「禁止だ禁止ぃ!! っと、こりゃ不味い…何個か落としてはいるが…モーア、お前なら耐えれる! 切実に頼む、〝じこさいせい〟!」

「ヌオオー!? ヌオ、ヌゥゥゥォォォォっ!!?」

 

 それとこっちもこっちで大概である。リョウの無茶ぶりにマジか、といった顔をした後にじこさいせいを始め、サイコキネシスの拘束に逆らうように体を丸めて、耐え抜く姿勢に。

 そしてエナジーボールの嵐がモーアに降り注ぎ、痛々しい声を上げながらも耐えていき、エナジーボールを全て受けきった後地面に落下。

 

「ヌ、ヌォォ……」

(マジかお前耐えるんか…)

 

 ヌオーって怖い(畏怖)。……まぁおそらくたくわえる3回が効いたのだろう。フラフラしつつも、じこさいせいで傷を癒していく。しかし耐え抜いたモーアの表情には耐えたという達成感がない。彼の気持ちを代弁するならもうマヂ無理死ぬ、である。

 

(えらい…えらいよ…モーア…!)

「Wow…あれを耐えるなんて驚きだ。じゃあサーナイト〝サイコキネシス〟解除」

「サナッ」

 

 クレハはモーアを心の中で称え、グレイブは驚きながらもこれ以上やっても無意味だと判断したのか、サイコキネシスの解除をサーナイトに指示していた。

 

「ぬ、ぬお…? ヌオーッ…ヌオ──!!」

 

 何かがキレたように…というかキレて雄叫びをあげるモーア。そりゃあんなことされればキレる、誰だってキレる。主人であるリョウはこれに思わず苦笑いするが、状況は厳しいままで、どうしようかと考えていき…閃いた。

 

「…試すか。モーア、やるだけやってみよう! 〝どくどく〟をばらまけ!」

「ヌオッ! ヌオ!!」

「わぁ…激おこだぁ…」

 

 リョウの指示の元、ぶちギレモーアは全身から毒を分泌し、これでもかとばかりにフィールドにばら蒔いていき、フィールドは瞬く間に毒の地面へと早変わりする。こうなってしまえばサーナイトがちょっとでも動こう物なら、間違いなく毒に侵されてしまうだろう。

 そして見ていたクレハはぶちギレモーアに苦笑い。あれはキレても仕方ないのは勿論分かっている。

 

「ありゃりゃ…逆に不味ったな迂闊に動けば猛毒の餌食になるっと。サーナイト〝マジカルシャイン〟だ。…無理に動かず冷静に対応するんだ」

「サナッ! サナナー!!」

 

 当然ながら、グレイブはそれを理解している。それ故にフェアリー技のマジカルシャインを指示。サーナイトの体が輝き、モーアに着実にダメージを与えようとする。

 

 

「出たよフェアリーの謎技!」

「先生! どうして光るだけで攻撃になりますの!?」

「ねえ今やってるから後にしてくんない!? 〝じこさいせい〟して耐えろ! それから〝ねっとう〟を地面に撃て!」

 モーア「ヌゥォォ!! ヌオ────!!!」

 

 リョウもツッコミを入れつつ、リリィの疑問に勘弁してと伝えてから指示をし、モーアはじこさいせいで傷を癒すことでマジカルシャインを受け切ると、毒に塗れた地面へとねっとうを放つ。ゴウカザルの時のように地面の毒を飛び散らせて、どくどくをサーナイトに仕掛けに行く。

 

「私も気になります!」

 

 ついでとばかりにクレハもリリィに便乗したが、完全にスルーされた。

 

「ふーむこれは…〝サイコキネシス〟でどくどくをはねかえせ」

「サナッ!」

「ハッ、使ったな! 

 モーア、〝どくどく〟と〝ねっとう〟を合わせて放て!!」

「ヌゥゥ、ォォォッ!!」

「〝まもる〟だ」

「サナ…!」

 

 グレイブはならばと、サーナイトのサイコキネシスでどくどくを操作し、どくどくを跳ね返す。しかしそれさえ読んでいたらしいリョウはどくどくとねっとうの合わせ技を放ち、跳ね返ってきたどくどくごと、サーナイトに放つも咄嗟にまもるで防ぐ。

 

「サイコキネシス、エナジーボール、守る…と。じゃあもっかい〝どくどく〟

 

 〝サイコキネシス〟、〝エナジーボール〟、〝マジカルシャイン〟、そしてたった今使った〝まもる〟。これでサーナイトの技が全て見え、それをリョウは把握しながらまたしてもモーアにどくどくを指示するとモーアは自身が撒いた毒に塗れたフィールドを気にせず進みながら着実にサーナイトの方に接近しつつ、どくどくを放ち続ける。

 ちなみにモーアはこの野郎とばかりの様子で、未だに相当怒っているのがわかる。

 

「〝エナジーボール〟で絡め取りながらお返ししてあげなさい」

「サナナ!」

 

 どくどくは流石に受けたくないのか、グレイブは何故か丁寧語でサーナイトに指示。エナジーボールでどくどくを巻き取り、モーアの方へと返す。

 

「モーア、次! 〝ねっとう〟で押し返せ!」

「ヌオッ!!」

「サナナ…!」

「〝エナジーボール〟連続発射で押し返せ!!!」

「! …サナナ~~っ!!!」

「……何あれ。まるで爆弾押し付けあってるみたい…」

 

 対するモーアも残り少ない力を出してねっとうを放ち、どくどくの紫が混ざって正に毒々しい色合いとなったエナジーボールをサーナイトへと押し返す。しかしサーナイトの方も負けじとエナジーボールを乱発し、手数を増やして押し返そうとする。

 その光景はクレハの呟き通り、まるで起爆寸前の爆弾を押し付けあってるようである。

 

「発射やめて横に!」

「ヌオォ!?」

 

 しかしこれでは埒が明かない上、手数ではあちらが有利だ。そう判断したリョウはモーアにそう指示すると、モーアは慌てながらねっとうを止めて横へと体を逸らし、サーナイトが放った大量のエナジーボールが通過していき、バトル用に作られた頑強な壁へとぶつかる。

 

(ねっとうも残り少ないか。…けど、あれだけエナジーボールを使ってるならサーナイトも同じだ。もう少し粘り…キツいよなぁ…)

(ふーむどうすっかな〜これは、技は知られているし…エナボも残り1回)

(なんという耐久戦…! いや、ヌオーとサーナイトがバトルしたらそうなるのは当たり前だよね…)

 

 モーアとサーナイトはどちらも打たれ強さに定評のあるポケモンであり、それ同士でバトルをすれば泥沼と化すのは当然の事。しかしそれでも限界はある。

 そしてそんな2人のバトルをクレハは息を飲みながらじっくりと見ている。次へと活かす為に。

 

「モーア、もうちょい頑張れるか?」

「ヌオ──ーッ!!」

 

 リョウの言葉に対し、モーアはやってらぁ! とでも言ってるのだろうか、気合いの入った声で返事を返す。正直言うと本当に傷だらけなのか疑わしいが、多分じこさいせいしていたお陰だろう。

 

「サーナイト〝マジカルシャイン〟」

「サナナ!!」

「突っ込め!! そのまま〝どくどく〟を放て!」

「ヌオ──ーッ!!!」

 

 

 モーアは雄叫びをあげながらサーナイトが放つマジカルシャインを耐え抜いいて受けきり、じりじりと接近していき、段々と距離を詰めていく。そうして充分なくらいサーナイトとの距離を詰めるとそのまま技を放ち続けるサーナイトにもとどくどくを放ち、毒に塗れた自身の体で抱き着きにいく。

 どうやら意地でもどく状態にしたいようだ。

 

「〝まもる〟だ、その後に〝サイコキネシス〟で浮遊しながら退避」

「サナッ、サナナ…!」

「絶対に逃がすな! 〝どくどく〟をしながら追え!」

「ヌオ! ヌオ! ヌオォ!!」

 

 だがそう思惑通りにはいかない。サーナイトはまもるによって発生させたバリアでモーアの行く手を阻むと、サイコキネシスを利用して上へと浮遊することでどくどくを避けるも、それをモーアがどくどくとついでにねっとうを放ちながら追う。

 

「〝エナジーボール〟をモーアの足元を狙って撃て」

「サナ!!!」

「モーア! 退避!」

「ぬおっ!」

 

 当然ながら、サーナイトはただ上へと逃げているだけではない。モーアの足元目掛けてエナジーボールを撃ち、モーアはリョウの素早い指示で退避、結果的に空振りとなったエナジーボールが地面へとぶつかり、周囲に強烈な砂煙が舞う。

 モーアと共に巻き上げらた砂煙を見ながら、リョウは今の状況に困った顔だ。なんせ相手は攻撃を受けるつもりがないのだ。このままではジリ貧だ、何と

 

「〝サイコキネシス〟」

「サナナー!」

「……? 何のつもりだ…?」

「…ヌオッ」

「〝サイコキネシス〟」

 

 だがグレイブは何を思ったのか、サーナイトにサイコキネシスで砂煙を操作し、モーアを取り囲んでいく。しかし、モーアはじめんタイプだ、砂煙はあまり意味が無い、それを裏付けるように何の何のそのとばかりにモーアは口の中に水を貯めら次の攻撃の準備しているも、グレイブはまたしてもサーナイトにサイコキネシスを指示し、主の意図を察したサーナイトは砂煙を操作し、モーアの周りに配置し、更なる指示を出す。

 

「サーナイト、やれ」

「サナッ!」

 

 主の指示にサーナイトは頷き、力を込めてサイコパワーを高めていき、モーアを囲む砂煙はまるで砂嵐のように強烈な回転をし、段々と縮小させていく。

 

「…いやこれは違う! 

 モーア、"ねっとう"でぶち抜いて突っ込め!」

「ヌオォー! …ヌッ!!」

「サーナイト! …〝マジカルシャイン〟! 押し返せ!」

 

 当然ながらこんなものを真正面から受けるつまりなどなく、ねっとうで砂煙に穴を開け、そこに飛び込んで脱出し、サーナイトに再びねっとうを放つもすかさずサーナイトがマジカルシャインを放ち、ねっとうを押し返そうとする。

 

「いい! 突っ込め! こうなりゃ捨て身だ! モーア、全力で突っ込みながら最後の〝ねっとう〟!!」

「ヌッォォォォォ!」

「そのまま〝マジカルシャイン〟を続行だ!」

「サッナァァァァ!」

 

 流石にモーアは限界であり、最早マジカルシャインを押し返すことすらままならない状態…故に捨て身でいくとリョウは判断し、モーアもリョウの指示に従ってねっとうを放ちながらマジカルシャインへと突っ込み、力を振り絞った最後のねっとうを勢いよく放ち、サーナイトもマジカルシャインの威力を上乗せして、押し返そうとする。

 

「……今だ! 持てる力を込めて、〝どくどく〟!」

「ぬっ…ぬお…ヌオ────!!!」

 

 キツいバトルだ、リョウはそう思いながらもモーアのタフさを信じ、マジカルシャインの中を突っ込ませる。ねっとうも押し返される直前に放つのを辞めさせ、どくどくをしたまま、押し返そうと技を放つサーナイトの上へと飛び上がり、サーナイトへとのしかかりにいく。

 

「〝サイコキネシス〟で防げ!!!」

「サナッ!」

 

 しかしそれは無情にもサイコキネシスでどくどくごと動きを止められ、そのまま弾き返されてしまう。

 

「ヌオ──ー! ぬおっ…! ぬ、ぬぉ…」

「…モーア、よく頑張った、十分だよ」

「ぬおー……」

 

 モーアはそのままリョウの足元へと跳ねるも、まだやれると体に鞭打って、立ち上がろうとする。その姿にリョウはモーアの限界を感じ、頭を撫でて制止させる。モーアは、撫でられる心地良さを感じながらリョウの言葉に頷き、そのまま力尽きるのだった……

 

 




なんというかアローラ組のノリというか雰囲気が好き【アニポケ感想その2】


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part9

カッコよすぎだろシンジィ……!(感想的挨拶)


 

「ふぃ〜何とか1体目か…気を引き締めないと」

 

 ……ようやく。そう、ようやくモーアを降し、2対2のイーブンに戻したグレイブ。しかし気が緩むことはせず、むしろ引き締めると言った様子で額の汗を腕で拭ってみせる。それだけ目の前の相手は油断ならないからだ。

 

(本当に良く頑張ったよ…モーア。……多分2番手はリョウ君の手持ちからして…)

 

 そしてクレハもモーアを称えながら、リョウの手を読もうとする。…まぁ次は誰が来るかは大体の察しがついてはいるが。

 

「…お疲れ、後は任せろ。あのチャンピオン、倒してやるから」

「るふ! るふー! えるっ…!」

(やっぱりフェイちゃんか……)

「エルフーンか…サーナイトあいつは手強いからな」

「サナナ!」

 

 ボールの中のモーアにリョウはそう伝えると、2つ目のボールを取りだし、投げる。出てきたのは周りの予想通り、エルフーンのフェイだ。

 フェイはモーアの頑張りをボール越しに見ていたのだろう、それに応えようと奮起するように鳴いて、ふわふわと浮く。

 そんな姿も愛らしく見えるが、その能力は厄介極まりないのをクレハとグレイブは知っている。

 ……特に前者は先手でレントラーがちょうはつされたのがきつかったのを思い出したのか、ちょっと顔が引きつっている。後者の方もサーナイトに気を引き締めるように伝え、サーナイトも先の試合をボール越しに見ていたからか、気を引き締めながら頷いた。

 

「いくぞフェイ、〝ちょうはつ〟」

「えるっふ! えるふふ~!」

「サナナー!」

「サーナイト! くっ…〝マジカルシャイン〟!」

(ですよねー!?)

 

 フェイは自身のいたずらごころのままに、くいくいと手を動かしてサーナイトをちょうはつし、生意気な笑みを浮かべる。そんなフェイに苛立ったサーナイトはまんまとちょうはつに乗ってしまい、変化技を…この場合はまもるを封じられてしまう。

 グレイブは必然で起きた状況とはいえ、少し苛立ちを覚えながらもサーナイトに指示を出し、サーナイトもそれに従うようにモーアの時と同じように全身から眩い光を発し、打たれ弱いであろうフェイを削りにかかる。

 ちなみに先発からそれをやられていたクレハは完全に顔をひきつらせてフェイを見ている。

 

「〝まもる〟!」

「るっふ! るふふふ…!」

「フェイ、次。〝おいかぜ〟」

 

 しかしリョウも簡単には通さない。例えすかさずマジカルシャインをフェイの目の前で展開されたバリアで防ぎ、そこから更においかぜを発生させる。

 フェイ自身も意地の悪い笑みを浮かべ、その姿はさながら遊んでいる子供のようだ。

 

「(エナボは使い切った、もう少し経たないと守るも使えないまいったな)サーナイト、警戒だ」

「サナ…」

 

 一方グレイブもエナジーボールを使い切ってしまった為、サーナイトの打点がマジカルシャインしかないという状況の上、ちょうはつにより、まもるをしばらく使うことも出来ない。……かなり厳しい状況で、サーナイトもどうしようと言わんばかりだ。それでもグレイブの指示通り警戒はするが。

 

「フェイ、戻れ」

「るふ!」

 

 しかしリョウは畳み掛けるようにおいかぜ後にフェイを戻し、3つ目のボールを取り出し、全力でボールを投げた。

 

「いけ、サラメ!! 〝あまごい〟!」

「ボーマァァァ!!」

 

 ここでサーナイトを仕留める。そんなリョウの意思に呼応するように現れたサラメは天高く飛び、吼えて辺りに雨を降らせて自身のフィールドに塗り替えるとドラゴンタイプらしい気高さと力強さを併せ持った眼光でサーナイトを睨みつける。

 

(ここでサラメが来た…!)

「……ここでボーマンダか。それに雨乞いとはな」

「さ…サナ…!」

 

 サラメの威容には先の試合でバンギラスを一撃で仕留められたクレハは息を飲み込み、今試合をしているグレイブも冷や汗を垂らしている。対峙しているサーナイトもサラメのいかくにより、萎縮するも警戒を解くことはせず、いつでも攻撃ができるよう準備をしている。…ちょうはつによる変化技封じはあと少しで解ける事だろう。

 

「サラメ、敵討ちの時間だ! 

 〝ハイドロポンプ〟!!」

「ボマッ…ギュォォォォ!!」

「サーナイト! 回避だ」

「サナ!」

 

 しかしあと少し、なのである。フェイが事前にしたおいかぜの効果により、サラメは驚異的な速さを獲得している。

 その為確実にサーナイトを先手を取ることが出き、それを証明するように上空からサーナイト目掛けてハイドロポンプを放つ。しかしサーナイトはまだまもるが使えない。しかしだからといって受けに回る訳にも行かない。雨天候下のボーマンダのハイドロポンプはそれほど強力なのだ。

 故にサーナイトはグレイブの指示通りギリギリの所でハイドロポンプを回避する。

 

「──凪払え!!」

「─ギュアァァァッ!」

 

 しかし、そう簡単に逃がすつもりは無いとばかりにリョウの指示とほぼ同時にサラメはハイドロポンプを放ったまま首を動かし、サーナイトへと振り切らんとする。

 

「サナ!?」

「!? サーナイト〝サイコキネシス〟でハイドロポンプのコースを変えろ!!!」

「サナ! …サ…ナァ…!」

(……このままじゃジリ貧になる。どうする? グレイブ君)

 

 予想外だったのか、グレイブとサーナイトは驚愕するもサイコキネシスでハイドロポンプのコースを無理やり変え、ハイドロポンプを一旦は回避。しかしあれ程のハイドロポンプをサイコパワーで逸らすのはきつかったのか、サーナイトの表情には疲弊していた。このままではクレハの考え通りジリ貧になってしまうのは明白である。

 

「まだまだ…! サラメ、今度こそ、仕留めろ!」

「マンダァァッ!!」

 

 そうどちらにしてもジリ貧だ。しかしそれはサラメがこのままハイドロポンプを維持した場合である。サイコキネシスでハイドロポンプを止め、おいかぜによって獲得した速さでサーナイトに接近。しかもただ接近した訳ではなく、口に水を貯めた状態でだそしてそのままサーナイトの目の前でハイドロポンプを発射した。

 

「サナナー!?!?」

「なっ!? まじかよ!!! サーナイト!!! 〝マジカルシャイン〟だ!」

「さ、サナァァァ!!」

 

 これには流石のグレイブも面食らったようで、驚愕しながらもサラメを少しでも削ろうとドラゴンタイプに抜群をつけるマジカルシャインを指示。サーナイトは眩い光を発し、サラメにダメージを与えるが……

 

「サラメ、中断して〝まもる〟!!」

「ボマッ!」

 

 サラメの体力を考慮してか、流石に抜群は痛いと判断したリョウの指示とほぼ同時に動いたサラメは咄嗟にハイドロポンプを中断し、放った分の補填の為か再び口に水を溜めながらまもるで発生させたバリアでマジカルシャインを防ぐと、今度こそとばかりに補填した分も合わせ、溜めに溜めたハイドロポンプを発射する。その勢いは最早はかいこうせんのようで、当然威力もそれと同等以上のものである。

 

「まだまだ!!! サーナイト! ゼロ距離の〝マジカルシャイン〟だ!」

「サ、ナァァァ!!」

「──ボマァァァッ!!」

 

 しかしグレイブとサーナイトも諦めずに抜群のマジカルシャインで削りにかかる。しかしサラメはマジカルシャインを受けても怯まず、ハイドロポンプを維持し続ける。その鋭い眼光には逃がさない。必ずここで仕留める。そんな意思がはっきりと伝わってくる。

 

「さ、サナ…!」

「サーナイト!!! 持ち堪えてくれ!!!」

「…いいや、絶対に押し切る」

「ギャォォォ!!」

「サナァァァ!?」

 

 もうちょうはつの影響はとうに切れている。しかしこれではまもるを張る暇さえない。そもそもまもるが間に合ったとしてもサラメはサーナイトを確実に倒すまでハイドロポンプを止めないだろう。

 最早グレイブに出来ることはサーナイトに必死に声をかけながら耐えきる事を祈る事である。しかし現実は非常だ。グレイブの祈りは届くことなく、ハイドロポンプの水流に飲まれたサーナイトはその華奢なからだを壁に叩きつけられ、そのまま目を回してうつ伏せで倒れ伏した。

 

「くっ!!! サーナイト……」

 

 倒れたサーナイトに駆け寄り、悔しさと申し訳なさを合わせたような顔をしながらもグレイブはサーナイトをボールに戻す。これでグレイブの残る手持ちは1匹のみ。もう後がない。

 

「サラメ、いけるか?」

「ボーマ」

 

 それに対し、リョウの残る手持ちは2匹。どちらもあまり消耗しておらずかなり有利な状況だ。その証拠にサラメはリョウの問いかけに問題ないと小さく鳴き、再び上空へと飛んでいる。

 

「残すはお前だけだ。相棒、行ってこい!!! インテレオン!!!」

「インテ」

 

 そう言うとグレイブは力強くボールを投げ、そこから出てきたのは水色の身体にスーツを着たような外見のポケモン。

 ガラル地方の御三家である、インテレオン。出てきて早々、グレイブの言葉に任せろと静かに頷いてから鳴くと上空のサラメを指さす。まるで倒す。と宣言するように。

 

(ガラルのポケモン…見るからに水タイプ。雨は相手にとってもありがたいか…)

「ギャオォォォォッ!!」

(あれは多分ガラルのポケモンだ。そして絶対にみずタイプ)

 

 対戦相手であるリョウは勿論、観戦していたクレハもインテレオンはみずタイプだと見抜く。そうなると雨はグレイブにとっても有難いものになる。

 インテレオンに指さしをされたサラメは思いっきり睨みつけ、次はお前だとばかりに吼える。降り注ぐ雨の中の咆哮はかなりの迫力だ。

 

「インテレオン、相手は強敵だ。抜かるなよ?」

「……」

 

 グレイブの言葉にインテレオンは無言のまま頷き、手を下ろしてからサラメを睨み返す。インテレオンは一見するとクールな印象だが、その瞳の奥は仲間の敵討ちに燃えている。

 

「…さぁて、どうするか。

 …サラメ、お前は──」

「ボーマッ!!」

「…OK」

 

 リョウの問いかけに対してサラメは好きにするといいよと鳴き、長い付き合い故に意味を理解したリョウは好戦的な笑みを浮かべると、サラメが入っていたボールを取り出し…

 

「サラメ──戻れ!」

「えるっふ!」

 

 サラメを戻し、代わりにフェイを繰り出した。

 

(っ!? …フェイちゃんに交代した? もしかしてまたちょうはつとかかな…? 相手は見知らないポケモン。何をしてくるかわからないし、無難に変化技封じってとこ、かな…?)

 

「エルフーン…またもや妨害か。

 なら先手必勝! インテレオン!!! 〝れいとうビーム〟!」

「インテ」

 

 クレハだけでなくグレイブも妨害目的だと結論づけ、インテレオンに指示をだす。

 インテレオンは指示通りフェイを指差しすると先手必勝とばかりに指先かられいとうビームを放つ。交代した好きを狙った為、言葉通り先手必勝である。

 

「〝まもる〟」

「るっふ!」

「〝ちょうはつ〟!」

「えるっふ!」

 

 しかしその先手必勝のれいとうビームは先制技であるまもるで防がれた上、特性いたずらごころによる先制のちょうはつを許してしまう結果に終わる。これでインテレオンはサーナイトの時のように、しばらくは変化技が仕様出来なくなってしまった。

 

(やっぱりちょうはつしてきた。あとまもるもあるんだ…これはかなりグレイブくんには辛い展開だ…)

 

「チッ…インテレオンもう1回〝れいとうビーム〟」

「インテ!」

 

 まんまと妨害されたからか、グレイブは舌打ちしながらもインテレオンに指示を出す。指示を受けたインテレオンは再び構えを取り、先程と同じように指先から先程よりも威力と速度を上乗せしたれいとうビームをフェイめがけて放つ。

 

「まだくらうな! 〝まもる〟! 

 そこから〝ようせいのかぜ〟!」

「えるー! るふるっ!!」

 

 しかしいくら威力を上乗せしようがまもるの前では無力だ。指示通りにフェイはれいとうビームはあっさりと防ぐと、フェアリー技であるようせいのかぜを全体的に吹かしていく。

 

「インテレオン〝ねらいうち〟だ!!!」

 

 ようせいのかぜが吹き荒れる中、インテレオンは三度フェイの方へと指差しをする。しかし今度は凍てつくこおりタイプのビームではない。自身の代名詞とも言うべきみずタイプの技…ねらいうちをフェイに撃ち込む。

 

「っ! フェイ! 絶対に〝まもれ〟!」

「えるっ!? るっふぅ!!」

 

 ねらいうちをされたフェイは指示通りまもるを決行するもれいとうビームと違ってねらいうちはインテレオンのタイプに一致したみずタイプの技だ。つまり先のサラメのハイドロポンプと同じで持続力があるのだ。その為まもるの弱点である、連続使用に持ち込まれてしまい、失敗。ならばとフェイは独断で受ける直前でおいかぜを使い、ねらいうちを受け切って持ち物であるだっしゅつボタンを起動させて、サラメに交代させた。

 

「───ああ、流石だ」

「───ボーマッ」

(……まさか、ここまで? なんて人なの…? なんていう勝ちへの執着…あ、そっか)

 

 これがリョウの狙い。フェイなら防ぎきれないと判断したら必ずおいかぜを使ってサラメに繋いでくれる。そう信じたのだ。これでサラメは再びおいかぜの恩恵を受け、インテレオンの先手を取る事が出来るようになる上、反撃も躱しやすくなる。それを理解したクレハは戦慄した。手持ちの力だけでない。性格、気質までもフルに活かしたその戦術に。何が彼をここまで突き動かすんだとも感じ…ふと審判を勤めている、彼の教え子であるリリィの姿が目に入り…察した。

 

(先生、だもんね。そりゃ教え子の前で負けたくないかっ)

 

 つまり、そういうことだと。



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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part10

せめてキョダイリザードンVSメガリザードンが見たかった…(´;ω;`)


 

「インテレオン!!! ボーマンダの翼に〝れいとうビーム〟だ!」

「インテ!」

 

 おいかぜをされたのは正直厳しい。しかしそれでも勝ちを諦めたくないのだろう、だからまずはなるべくサラメの機動力を削ごうとインテレオンはサラメの大きく発達した翼を狙って指先から先程よりも更に威力と速度を上乗せしたれいとうビームを放つ。

 

「躱して〝ぼうふう〟!」

「ボマ、ボーマァァッ!!」

(うっ、ぼうふう…)

 

 しかしどれだけ威力やスピードを上乗せしようがおいかぜに乗ったサラメの方が速く、れいとうビームを交わすとそのまま翼をはためかせてインテレオンを中心にぼうふうを発生させる。本来なら、威力が高いが命中率不安定なこの技には面白い特性がある。それは天候が雨ならば必中になるというものだ。そして回避がほぼ不可能なそれがインテレオンに襲いかかる。

 ちなみにクレハはぼうふうを見た瞬間こうてつじまでの地獄のような修行時代を思い出し…トラウマで顔を引き攣らせている。まぁ彼女の場合はぼうふうに加えてトリデプスのじしんもセットで付いていたが。

 

「インテ!?」

「!? インテレオン!!! 風の外側に退避だ!」

「インテ…!」

(これでインテレオンはもう動けない。ここで次にサラメ、いやリョウくんが取る手は──)

 

 避けられないならばならばなるべく風の影響が少ない場所へ退避するようにグレイブはインテレオンに指示するも、インテレオンの細身の体では動く事さえ難しく、抜け出すことが出来ずにいる。

 一方クレハはリョウの一手を予測する。同じ雨天候型としているカイリューを持つからこそ、予測できる手を。

 

「終わらせろサラメ! 全力で〝ハイドロポンプ〟!!」

「ボマッ! …ギュォォォォ!!」

(──やっぱりハイドロポンプ!)

 

 ぼうふうを維持しつつ、抜け出せずにいるインテレオンを上空から見据え、口の中で水を貯めながら狙いを定め…性格無比なハイドロポンプを放つ。

 

「やられてたまるか!!! インテレオン!!! 全力の〝れいとうビーム〟!!」

「インテ!!」

(嘘でしょ…? れいとうビームで拮抗してる!? 雨天候補正のハイドロポンプに!)

 

 負けたくない。その一心からか、グレイブはインテレオンに指示を出し、インテレオンも同じ気持ちなのか大きく鳴いて、今までで1番の…全力のれいとうビームを放つ。恐ろしい事にそのれいとうビームは雨天候の補正があるハイドロポンプと拮抗している。流石は他世界とはいえ、チャンピオンのポケモンである。これが次の自分の相手なのかと、クレハはすこしばかり戦慄すると同時に…楽しみだと闘志が沸き立つ。

 ……彼女も、なんだかんだトレーナーだ。

 

「いいや、勝たせてもらうぞチャンピオン…モーアとフェイが繋いでくれたんだ! ここまでお膳立てされて負けるわけねぇだろ!」

「ボォォマァァァッ!!」

 

 サラメはぼうふうを止め、ハイドロポンプへと意識を注ぐ。

 雨天候、というのもあってハイドロポンプの威力はバンギラスを一撃で屠るほど。徐々に、徐々に拮抗していたれいとうビームを押し返している事からも伺えることだろう。

 

「……インテレオン、ギリギリで避けろ」

「インテ…!? テェァァァァッ!!?」

(直撃した…いくらみずタイプでもあの威力は…)

 

 これはまずい。完全に威力負けしている。そう判断したグレイブは静かにインテレオンに避けるように指示するし、インテレオンもそれに頷いてれいとうビームを止めて回避しようとしたがハイドロポンプの勢いは予想以上に凄まじく、直撃してしまう。

 叫び声を上げながら吹き飛んだインテレオンを見て、流石にこれは耐えきれないだろう…とクレハは判断する。あれだけの威力だ、たとえ今一つだろうが受けきるのは厳しいし、だろうと考察したからだ。

 

「…どうだ…?」

「……」

 

 おいかぜの勢いはまだ続く。雨だってあと少しだ。もしこれで倒れないなら倒れないでまだ手はある。そんな様子でリョウは考え、サラメも油断を微塵もせずにインテレオンが吹き飛ばされた方をじっと見つめる。

 

「……!」

「これで終わるわけねぇだろ……なぁ? 相棒」

「インテ」

 

 吹き飛び、倒れていたインテレオン。しかしグレイブの言葉と共に静かに立ち上がってみせ、その体からは水色のオーラが滾っている。……説明するならば特性げきりゅうが発動しているのだ。そう、体力が一定数まで減っているならば、みずタイプの技の威力を底上げする、リョウやクレハも見知っているであろうその特性が。

 

(あれは…! もしかして特性げきりゅう!? ……あの子もしかしてガラルの所謂御三家ポケモン!?)

「げきりゅうか…けど、それはつまり…今、ピンチなんだな。

 ようやく届いた…喉元に」

「…」

 

 クレハはインテレオンがガラル地方の、自身の故郷であるシンオウ地方のポッチャマにあたる御三家ポケモンだと察する。何故ならばげきりゅうを含んだもうか、しんりょくの3特性は今現在各地方の御三家ポケモンの専用特性だからである。こうなると一撃でもインテレオンの攻撃が当たればサラメは一撃で屠られる可能性があり、そうなると残りは手の内を全て晒した手負いのフェイのみになってしまう。しかし、リョウの方は違う観点を見ていた。げきりゅうを発動しているということはつまりあと少しで倒れるということ。…もうすぐ勝てる。だからこそサラメは油断するなとリョウに視線を送り、当然だと気を引き締める。

 

「(相棒は恐らくあと1発でもくらったら即アウト、だからこそ一撃にかける)インテレオン!!! 全力全開で〝ねらいうち〟だ!!!」

「インテ! レェェ…!」

(なんてエネルギーの量…! げきりゅうが発動しているだけはある、あんなの食らったら一溜りもない…!)

 

 グレイブの力強く言葉に頷き、ありったけの力を指先に溜め込む。しかしすぐには撃たない。サラメの動きを待つ事にしたのだろう。

 

「なあ、チャンピオン。

 サラメの技、覚えてるか」

(サラメの技…? あまごい、ハイドロポンプ、ぼうふう…

 っ!? まだ1つ見せていない技がある!)

 

 リョウは唐突に、本当に唐突にグレイブにそう訊く。その問いに、見ていたクレハは首を傾げて考える。そうサラメにはまだ見せていない技がひとつあったはずだと。もしかしてそれが切り札なのだろうかと考える。考えた、が…何故か引っ掛かりを感じてもいた。何か大事な事を見落としているかのような、そんな感覚を。

 

「ハイドロポンプ、あまごい、ぼうふうだったな。

 ……あと1つ見せてない技があるが」

 

 グレイブの方は冷静そのもの。唐突なリョウの質問にも答えて見せながら周囲に気を配り、警戒を怠らない。

 しかし、やはり妙な引っ掛かりを感じていた。

 

「そう。だから今からそれを見せよう。見せてない技があるなら見せないと損だろ」

「ボーマ…!」

 

 その言葉と共に、サラメは追い風に乗ってインテレオンへと向かっていく。手を広げ、見せつけるようにドラゴン特有の鋭く、太い爪を突き立てて。

 

(──あ、あの構えはもしかして!)

「(爪? 何かしらの接近技か? 相手はドラゴンタイプだとすれば……)インテレオン!!! 〝ねらいうち〟発射!!!」

「インテ! レェェァァァ!!!」

 

 クレハも、グレイブもドラゴンタイプを持つトレーナー。インテレオンに向かっていくサラメの構えに使おうとした技にアタリをつけた。……そう、ドラゴンクローだと。

 結論づけたグレイブはインテレオンに指示を飛ばし、頷いたインテレオンは吼えながら限界まで溜め込んだねらいうちを発射する。当然ながらそのねらいうちの太さはかなりのもの。それが凄まじい勢いで放たれ、サラメにぶつからんとする。

 

 

「サラメ、〝まもる〟」

「ボーマッダ!」

「へ!? ドラゴンクローじゃな…ああ?!」

 

 ───かに思われた。

 そう、爪はブラフで見せただけである。思わずクレハは叫び、同時に抱いた違和感の正体に気付く。サラメはそもそもまもるを見せていた。あまりにもさり気ないためにに印象に残らなかった上、先に言っていたリョウのあの言葉だ。

 要は…クレハもグレイブも完全に騙されたのである。

 それからサラメの方はあと少し、本当にあと少しで当たるといった時に発生させたバリアを使い、ねらいうちを防ぎながらインテレオンに接近していき…

 

「〝ハイドロポンプ〟」

 

 防ぎ切り、インテレオンの間近に迫ったと同時にリョウから告げられた言葉。サラメはわかっていたように口元に水を貯めていて、サーナイトの時のように確実に仕留める。そう宣言するような、獰猛な表情である

 

「なっ!? 嘘だろ…」

「インテ!?」

「全部見せたんだから、見せてないもあるか! 詐欺師だろうと何とでも言えぃ! 記憶勝負に勝った俺の勝利だオラァ!! 発射!!!」

「うわぁ…うわぁ…」

「ボマァァァッ!!!」

 

 対面していたグレイブはクレハ以上に驚愕し、唖然とした表情となり、それはインテレオンも同様でポカンとしていた。

 完全に見落としていた。

 そして詐欺師…もといリョウは驚く2人と1匹にしてやったぜと言わんばかりでニヒルな笑みでそのまま発射を告げ、サラメの方は撃つ直前にごめんねとインテレオンに目で伝えてから最大威力のハイドロポンプを発射。驚いた表情で固まっていたインテレオンは声を上げる間もなく水流に飲み込まれて吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。…当然ながら目を回してダウン。リョウの勝利である。ちなみにリョウのやり口にクレハはドン引きだ。

 

「あんにゃろう…今度こっちに来れた際には確実にズタボロにしてやる…!」

「す、すごいバトルだった…! …色んな意味で」

 

 目を回してダウンしたインテレオンを介抱しながらグレイブはリョウにリベンジを誓いその為なら切り札を使うことも辞さないと言った様子で、クレハはすごいバトルだったと引き攣った顔で呟くのだった…

 

 




正に外道のやり口(褒め言葉)


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part11

どうも最近ようつべでアニポケopメドレーを聞いているものです。(挨拶)


「…勝者、先生! お疲れ様でしたわ!」

「よっしゃオラァ! 勝ったぞサラメ!」

「ボマボーマッ!」

 

 何もかもを利用して得た勝利を喜び合うリョウとサラメ。だけど笑顔で鳴いた後にグレイブの元に飛んでいき、ごめんねと謝るように鳴いた。

 

「サラメだっけ? いいよお前はちゃんと戦ってくれたし……でも今度は負かす!」

 

 サラメに優しさを感じたグレイブは頭を撫でながら、リョウに対して恨みを込めながら呟く。それとこれとは話が別なのだろう。

 

(なんていうか、こういうところはまだまだ子供なんだなぁ)

 

 そんなグレイブを子供なんだなと微笑ましく笑うと、ゴウカザルがちょっと〜、と言いそうな顔でこちらの手を引っ張っているのに気付く。そう、作戦会議中なのだ。ごめんごめんと謝りながら再び輪に入り作戦会議を再開した。

 

「ボーマ…」

「ふははは、これが俺のやり方だ。まあ…正直すまんかった」

「相手の心理を利用するのもまた、ポケモンバトル…また一つ、学べましたわ!」

 

 一方リョウはグレイブに悪いと言いつつも笑みを浮かべたままだ。勝ったことは嬉しいものなのだ、サラメがリョウに対して仕方ない人だなぁ。と鳴いているが。

 リリィに関しては勉強になったと微笑んでいる。素直な娘である。

 

「ちくしょう…次はクレハさんだっけ? あなたと勝負ですからね!」

「……うん。…でもその前にポケモン達をしっかり休ませようね?」

「ですわね」

「そうだな、皆頑張ったからな」

「わかってるって」

 

 インテレオン達を回復させながらやる気満々かつ闘志を宿した目でバトルを申し込んだが、まずポケモンを休ませるようにと突っ込まれる。いくら回復させようがポケモンは生き物だ、どうしたって疲労は蓄積されるのである。それは当然グレイブもそれをわかっているので、ついでに自身も木陰に向かい、座ると休み始める。

 

「モーア、頑張ったな。フェイもいいこだ」

「ぬおー♪」

「るふ~♪ えぅ~♪」

 

 リョウも傷を回復させた2匹を労うとモーアは素直に喜び、フェイはもっと褒めてとリョウに抱きついて甘え出す。タイプは全くの対極な2匹だが、甘えん坊というところはクレハのバンギラスによく似ている。

 

「……さて、と…私達も気合い入れなきゃね…」

「ウキ!」

「トラッ!」

「ギラッ!」

 

 そんなフェイとリョウのやり取りににバンギラスがまだヨーギラスだった頃を思い出したのかくすりと笑うもゴウカザル等3匹にそう言う。ゴウカザルは拳と拳をぶつけながら、レントラーは元々厳ついと評される顔をより険しくしながら、バンギラスは他の2匹よりも力強い声を出しながら返事を返す。

 

(ああ…バンギラスは特に頑張りたいんだな…)

「えうー!」

「ああ、ごめんごめん。よしよし」

「えるぅ♪」

 

 バンギラスが力強い返事をしている理由を察しているとフェイが撫でてーと鳴いたので謝った後にそのもふもふとした頭を撫でればフェイはきゃっきゃっと笑顔になって再び甘え出した。

 

「さてと……次は負けねぇ絶対に」

「インテ!」

「───!」

「サナナ!」

 

 休憩は充分だとばかりに立ち上がり、悔しさを滲ませた声色でグレイブが言えば、インテレオンは撃ち抜く様な構えで、ギルガルドはリッター同様に金属音にも似た声で、サーナイトはくるくると踊るように回ってから力強く頷く。全員負けたのが余程悔しかったのだろう。

 

「……生憎、私も負けられないよ」

「ゴウキャッ!」

「トラァァ!」

「ギルァァァッ!!」

 

 グレイブの声が聞こえていたのだろう。対抗するようにそう言い、ゴウカザル達…特にバンギラスがクレハに同調するように力強く叫ぶ。

 それはまるで、勝つのは自分達だと叫んでいるようだ。

 

「それじゃこっちも存分にやろうじゃねえか」

 

 歩き、クレハの前まで歩く。まるでを修羅を思わせるような好戦的な笑みを浮かべて。その後に続くように歩くインテレオン達3匹も気合いに満ちた目をクレハ達に向ける。

 

「頑張れー」

「先生、終わったからってだらけすぎですわ。見てください、リッターなんてあんなに真剣に見てますわ!」

「─」

 

 そんな2人とは対称的に…リョウはのんびりとしていてそれをリリィに注意されていた。

 リョウのギルガルド…リッターはこれから始まる2人の試合を己の糧に出来ればとしている。

 

「こほん…では、お二方、ポケモンをボールに戻して、トレーナーの定位置へお願いしますわ」

 

 そろそろ試合を始めないと…そう思ったリリィは咳払いをしてからそう伝える。彼女は今日審判役を担っているのだ。

 

「わかった。──よしっ」

 グレイブ「おっけー。戻れ!」

 

 当然バチバチに闘志をぶつけ合っていた2人もそれに従い、互いのポケモン達をボールに戻し、自らの定位置まで歩いていき、その位置に立つ。

 

「さて…準備はよろしいようですね。では…これより、ポケモントレーナークレハさんとグレイブさんのポケモンバトルを開始しますわ! 使用ポケモンは三体、道具は使用可能。技の変更は無し。──試合、開始!」

 

「行くよ、レントラー!」

「トラァァ!」

「行ってこい、サーナイト!」

「サナナ!」

 

 満を持してリリィが試合の開始を宣言し、2人はほぼ同タイミングでボールを投げる。クレハの先発はリョウの時と変わらずレントラー、グレイブの方は変更してサーナイトを繰り出す。

 出てきたレントラーは全身から電気を迸らせて雄叫びを上げながらサーナイトを見つめる。サーナイトもそれに対抗するように鋭い眼差しでクレハと自身の相手であるレントラーを見る。

 

(レントラー…まだ技が一つ残っていたはずですわ。そこをどう活用するかがサーナイト攻略の鍵になりそうですわね、クレハさんは…)

 

 そう、クレハのレントラーが見せているのは交代技のボルトチェンジ、電気技の定番10まんボルト、レントラーの物理攻撃力を活かしたサブウェポン、こおりのキバの3つだ。

 まだ1つ、見せてない技があるのだ。

 

「サーナイト…! …なら、レントラー! 〝 ひかりのかべ〟! 更に〝 ボルトチェンジ〟!」

「レン! ──トラァァァッ!!!」

 

 サーナイトを見て早速前試合では出来なかった戦術を取る。まずレントラーは特殊攻撃技の威力を半減させることの出来るひかりのかべを展開してから吼え、全身に雷撃を纏ってサーナイトに突撃する。

 そうクレハが取ろうとしたのはバンギラスの強みを最大まで活かしたものだったのだ。前試合はちょうはつされた為に使えずじまいだったが。

 

「〝サイコキネシス〟で攻撃を逸らしてから〝エナジーボール〟を連続発射だ」

「サナ!」

 

 しかしボルトチェンジはサーナイトのサイコキネシスによる念力で捌かれてしまい、追い打ちをかけるかのようにひかりのかべがあっても関係ないと言わんばかりな量のエナジーボールを発射する。

 

「トラ……!」

 

 攻撃を逸らされたレントラーは持ち物であるかえんだまの効果でやけどを負うもそれにより状態異常の際に物理攻撃力が高まる特性こんじょうが発動。

 物理攻撃力が高まった事で上がった攻撃力で迫り来るエナジーボールを爪で切り裂き、避け、電撃を放って撃ち落とす等していく。

 ちなみにこんじょう発動状態だとやけどの副次効果である物理攻撃力の半減は無効化される。

 

「……もう一度〝 ボルトチェンジ〟!」

「トラ!」

 

 エナジーボールを全て捌き終えると再びボルトチェンジを結構。再度雷撃を纏って、サーナイトに突撃する。

 

「もう一度"サイコキネシス"で上空にはね飛ばしてから"エナジーボール"を連続発射」

「サナ!」

 

 サーナイトは頷き、サイコキネシスでレントラーを上空に放り投げて先程のようにエナジーボールを乱射する。

 

「トラァァァ!?」

 「レントラー! 今の貴方なら力ずくでサイコキネシスを振り解けるはずだよ!」

 「ッ! ……トラァァァ!!!」

 「〝10まんボルト〟!」

 

 やばいやばい当たると慌てながらじたばたするレントラーだったが、クレハの言葉にあ! 確かに! となり体から電気を迸らせながら力ずくでサイコキネシスによる拘束を強引に振りほどく。振りほどけばあとは問題なしとばかりに落下しながら、迫り来るエナジーボールを10まんボルトで撃ち落としていき……地面に着地。すかさずサーナイトに向かって全速力で走り出した。

 

 「ふーむ…パワーが上がっているからやっぱり特性はこんじょうか。サーナイト、〝マジカルシャイン〟」

「サナナ!」

 

 先の試合からも疑っていたが、サイコキネシスを振りほどくレントラーのパワーからグレイブは確信し、サーナイトに技を指示。サーナイトが高らかに手をあげればその手から眩い光が放たれた。

 その際審判役のリリィが「フラッシュとどう違うんでしょうか…」という疑問があったのはこの際、スルー…

 

「だから〝フラッシュ〟とどう違うのっ! レントラー、〝10まんボルト〟で相殺! そのまま〝ボルトチェンジ〟!」

「トラァァァ!!!」

 

 …出来なかった。シンオウにはフェアリータイプが余りいないから仕方ないかもしれない。

 放たれた眩い光は10まんボルトがかき消すように相殺し、3度目のボルトチェンジを行う。文字通り根性焼きで身を削って高めた攻撃による電撃の余波がサーナイトを襲いにかかる。

 

「(なんか同じ事言ってる)仕方ねぇ。サーナイト、〝エナジーボール〟でなるべく威力削れ」

「サナナ!」

「トラッ!? ……トラァァァ!!」

 

 どういうわけか、グレイブはあえて攻撃を受けさせる選択を取る。しかし当然そのまま食らうわけなく、エナジーボールをぶつけることでレントラーの勢いを落としていく。しかしひかりのかべにより、レントラーにダメージはあまりない。しかし今回はあくまでも威力を削ぐのが目的なのでグレイブ的には問題ない。

 

 「(……何を企んでるの?)お疲れ様、レントラー。出番だよ、バンギラス!」

 バンギラス「ギルァァァッ!!!」

 

 前回のバトルを見ていたからてっきりまもるを使うと思っていただけに何か企んでいるのか? と判断する。しかしそれでも自分のバトルをするだけだ。戻ってきたレントラーのボールをしまい、次の手持ちを繰り出した。

 出てきたのは、バンギラス。威圧感たっぷりの巨体と強面でサーナイトを睨みつけながら吼えて砂嵐を巻き起こし、バトルコートを自身のフィールドに変えていく…これによりひかりのかべと合わせてバンギラスの特殊防御力は鉄壁というべきものになった───そう易々と落ちないことだろう。

 



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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part12

かなり炎上してるなぁ…無理もないか(アニポケ感想挨拶)


「バンギラスか…もうちょい粘ってくれよな? サーナイト〝エナジーボール〟だ」

「サナ…! サーナー!!」

 

 出てきたバンギラスを見据えてからサーナイトに一声かける。

 フェアリータイプを持つサーナイトだが、同時にあくタイプとは相性最悪と言ってもいエスパータイプでもある。故にメインウェポンであるサイコキネシスは効かないし、それ以外のバンギラスに対する有効打は元々の威力が低いマジカルシャインに、エナジーボールになるのだ。しかしそれも…

 

「バンギラス、〝 アイアンヘッド〟でエナジーボールごとサーナイトに突っ込んで!」

「ギギルァァァッ!!!」

 

 ひかりのかべが未だに残るこの状態では効果は期待出来ず、しかもこうかばつぐんを受けた事でじゃくてんほけんが起動。これにより、バンギラスの物理と特殊の攻撃力はぐんぐんと上昇…サーナイトが放ったエナジーボールをかき消すように、サーナイトめがけてアイアンヘッドによる突撃を行う。

 

「〝まもる〟から〝エナジーボール〟。ぎりぎりまで近付けてから至近距離で連続発射だ。デバフなんて関係ねぇよ」

「サナ!」

 

 関係あるかとばかりにサーナイトはバンギラスのアイアンヘッドをバリアで防ぐとその土手っ腹に大量のエナジーボールを浴びせようと発射する。いくらひかりのかべに砂嵐があろうと、これだけのエナジーボールはいくらバンギラスでも耐えられないだろう。

 

「バンギラス! サーナイトを捕まえて、〝れいとうビーム〟!」

「ギィィラァァァッ!」

「さ、サナァァァ!?」

 

 しかしクレハのバンギラスはそれら全てを受けきって見せた上にサーナイトを捕まえて地面に叩きつけて身動きを取れなくする。

 じゃくてんほけんにより、腕力が増している。非力なサーナイトでは抜けることは不可能に近い。しかもそのままれいとうビームを発射する。

 

「サナ…!」

「バンギラス、〝れいとうビーム〟撃ち続けて!」

「ギィィラァァァッ!!!」

(さてはて、どうしたもんかな。このまままもるを意地するにゃ限界があるしなぁ…)

 

 しかし間一髪まもるが間に合う。しかしバンギラスはれいとうビームを止める気配がなく、このままではバリアが破壊されるのは明白だ。どうするとグレイブは思い、考え始める。この状況を打開する方法を…

 

「サーナイト〝まもる〟を継続しながら片手で〝エナジーボール〟をバンギラスの口に撃ち込め」

「サナ!? …サナナァ!」

 

 そして考えついたのがこれだ。なんとこの男、まもるを維持させたまま、エナジーボールを詰め込むようにバンギラスの口に撃ち込みようにサーナイトに指示をしたのだ。

 サーナイトはえぇ!? と驚きながらもどうにかそれを遂行しようとサイコキネシスでバリアを維持して、片手の平からエナジーボールを精製し、サイコキネシスで操作し、ピンボールの如き勢いでれいとうビームを撃ちっぱなしのバンギラスの口に撃ち込まんと‪する。

 

 ───────────────────────

 

 

「ギラッ!?」

「大丈夫! そのままれいとうビームの勢いを上げて!」

「──ッ、ギィィラァァァッ!」

 

 まだ生まれて数年の子供だからか、バンギラスは自身の口めがけて迫ってくるエナジーボールにびくぅと体が震えるもクレハの大丈夫を聞き、それを信じてれいとうビームの勢いをあげる。そうすればエナジーボールは口に届く前に凍りついて砕けるからである。しかしクレハ自身は少し焦っている。実はひかりのかべはもう切れているし、砂嵐ももうすぐ晴れてしまう。ならまた交代すればいい…というわけにもいかない。サーナイトに隙を見せるわけにも行かない。そういうこともあり理想はサーナイトを倒すことで、そうでないらば素直に引いて欲しい…というのがクレハの心情だ。

 

「サナ…!」

「はぁ……戻れ! サーナイト」

 

 あ、これもう無理です。防げませんとサーナイトがグレイの方に顔を向いて視線でそう訴える。まぁそうだよなぁ…と仕方なそうにため息をつくとグレイブは交代する為にサーナイトをボールに戻してやる。

 

「ギラッ!」

(サーナイトを戻した…次は誰が来る…? 普通に考えればギルガルド、かな…?)

 

 標的が居なくなった事で技を中断し、それでも尚警戒を怠らないバンギラスを見据えながらクレハは思考する。

 無難に行けばあの厄介な防御技、キングシールドがあるあのギルガルドだ。ちなみにインテレオンはおそらくゴウカザルにぶつけてくるはずだとも思っている。タイプ相性というのは重要だからだ。勿論それだけでポケモンバトルの全てが決まる訳ではないが。

 

 ───────────────────────

 

「ギルガルド! 〝アイアンヘッド〟!!!」

「───!!」

 

 クレハの予想通り、グレイブは無難にギルガルドを繰り出し、それとほぼ同時にアイアンヘッドを指示。

 ボールから出てきたギルガルドは了解とばかりに鳴いてから持っていた盾をしまってブレードフォルムへとチェンジ。高い攻撃力に加えタイプ一致かつ、いわタイプでもあるバンギラスに抜群をとれる強烈な頭突きによる突撃がバンギラスに迫る。

 

「(…来た! ここだ!)…バンギラス、〝 ちょうはつ〟! 更に〝ストーンエッジ〟で防壁を作って!」

「ギララ! ……ギィラァァァァ!!!」

 

 …レントラーと同様にバンギラスも技が1つだけ判明していない。それはちょうはつ。変化技を封じる為のもの。しかしここより少し前にはひかりのかべは消えてたった今ちょうはつを使った直後には砂嵐までピタリと止み、快晴となる。

 しかし当然ながらギルガルドのアイアンヘッドによる特攻は止まらないので勢いを落とすためにストーンエッジによる防壁を作り、勢いを落とそうと企む。

 

「…アイアンヘッド中断。後退して〝シャドーボール〟」

「───!」

 

 いくらいまひとつとはいえ、あれだけの壁にぶつかればダメージは避けられない。インテレオンがいるものの、万が一ゴウカザルをギルガルドが相手する事を考えればダメージは避けるべきだ。そこまで考えたグレイブの意図を察したギルガルドは距離を取り、シャドーボールをバンギラスに放つ。

 バンギラスには4倍弱点となるかわらわりがあるが、迂闊に近寄ればじゃくてんほけんにより、攻撃力が上がったストーンエッジかれいとうビームの餌食だ。だから距離を置いてからのシャドーボールでなるべく削りに行こう、という魂胆である。

 

「だよね、そうするよね。バンギラス、戻って!」

「ギラ!」

 

 だがそれが隙となり、クレハに交代のチャンスを渡してしまう。これでじゃくてんほけんによる、攻撃力上昇はリセットされてしまうが、ひかりのかべに砂嵐のない丸裸状態よりはマシだし、サーナイトだって倒しきれていない。というのとキングシールドを封じる。という大きな目的をしっかり果たしたのが1番大きい。だからバンギラスはここで1度引っ込めて交代である。そしてここで来るのは当然……

 

「ゴウカザル、任せた! ──〝わるだくみ〟、〝だいもんじ〟!」

「ウキャッ!」

 

 相棒であるゴウカザルだ。タイプ相性的に無難であり、ギルガルドがキングシールドが使えない間にわるだくみを積んでからのだいもんじを放つ。圧倒的ともいえる火力が焼き払ってやるとばかりにギルガルドに迫る。

 

「ギルガルド、回避からの戻れ!」

「───!」

「もうひと踏ん張りだ。頼むぜ? サーナイト」

「サ…ナァ…!」

 

 当然ながらあんなオーバーキルもいいところの超火力を受けるわけないとばかりにだいもんじがあたる前にギルガルドをボールに戻すことで実質的にだいもんじを回避してみせ、かくとうタイプに強く出れるサーナイトに交代する。

 先程のバンギラスとの戦いで消耗していたのか、息を切らしているがゴウカザルを見つめるその瞳からは闘志が溢れている。流石はチャンピオンのポケモンである…

 

 ───────────────────────

 

「(インテレオンじゃないか……)ゴウカザル、貴方も戻って」

「ウキ」

 

 一方、クレハもゴウカザルを1度下げる。理由は勿論、かくとうタイプでもあるゴウカザルにはサーナイトの相手は厳しいからでゴウカザルをボールにしまった後、レントラーの入ったボールを投げる。

 

「レントラー! 〝ひかりのかべ〟」

「トラッ」

 

 出てきたレントラーはかえんだまの代償によりやけどを負っており、苦悶の表情を浮かべているもののクレハの指示に頷いて再びひかりのかべを貼り直して特殊攻撃技の牽制をする。

 

「サーナイトそのまま少し待機だ」

「サナッ」

 

 ひかりのかべを貼り直したレントラーからおそらくまたバンギラスに交代させる気だと察したグレイブだったが、ここは敢えて待ちを選択する。サーナイトに持たせているのはたべのこし。これを利用し、使うことで少しでもサーナイトを回復させようと考えたのだ。

 

「たべのこし……レントラー、交代! バンギラス、〝アイアンヘッド〟!」

 

「ギィラァァァァ!!!」

 

 まもるも相まってかなり硬い…と思いながらもレントラーを下げ、バンギラスを繰り出す。出てきたバンギラスは再び吼えながら砂嵐を巻き起こして天候を変えていくと頭を突き出してサーナイトの方へ勢いよく突進を仕掛ける。

 

「サーナイト〝まもる〟」

「サナッ!」

「ギラッ!?」

 

 しかしグレイブは冷静にこれを対処。サーナイトのまもるによるバリアがバンギラスの攻撃は阻まれてしまい、びっくり返りそうになるも、咄嗟に体制を整えて尻餅をつかないようにしてからクレハの方を向いてどうする? と目で訴える。

 

「(さっきと同じ…何かを企んでいるの…?)バンギラス、サーナイトを捕まえて! そのまま〝ストーンエッジ〟!」

「ギィィラァァァッ!」

 

 もしかしてバンギラスを消耗させることが目的かと思うも、やることは変わらないのか、先程のようにサーナイトを捕まえてそのまま地面に叩きつけてから攻撃の暇を与えないと雄叫びと共に自身が作り出した全てをサーナイトにぶつけようとする。

 

「サーナイト〝エナジーボール〟でストーンエッジを迎撃」

 

 じゃくてんほけんの効果が消えたにも関わらず、十分な威力のストーンエッジ全てをエナジーボールで迎撃するという離れ業をやって見せたサーナイトはその間にたべのこしによる体力回復を行なう。……しかし砂嵐の継続ダメージがある為に回復が追いつかず、厳しい状況に追いやられているのは変わりがない。

 

「ストーンエッジを撃ち続けて! 更に〝れいとうビーム〟!」

「ギラァァ!!」

 

 そしてそれはクレハ側からしたらサーナイトを仕留める最大のチャンスということでもあり、サーナイトの腕のすぐ隣の地面にに腕を突き刺してストーンエッジでサーナイトの腕を覆い尽くす。こうなればいくらエナジーボールを撃ったとしても岩の壁となったストーンエッジが防ぐ上、当てられたとしてま砂嵐とひかりのかべによってダメージは軽微となる。更にそこからダメ押しのれいとうビームだ。まもるをしたとしても時間稼ぎにしかならないだろう。

 

「サナナナァ!?」

「(何がなんでも倒したいとなーるほど)サーナイト〝まもる〟」

「サナッ!? …サナァ!」

 

 もうこれは無理だと察したグレイブはならばなるべく時間を稼ごうとサーナイトにまもるで無理やり足掻きにかからせる。狙いとしては砂嵐とひかりのかべの解除だろう。

 

「このまま撃ち続けて!」

「ギラッ!」

 

 しかしクレハからしたらさっさと倒したいので無理やりにでも押し切ろうとストーンエッジとれいとうビームを撃ち続ける。

 

「…ここだな。サーナイト〝エナジーボール〟連続発射だ、ストーンエッジに押し負けるな」

「さ、ナァァ!!」

 

 そろそろひかりのかべが切れる頃だ。そう考えたグレイブはサーナイトにまもるを解かせ、威力が戻ったエナジーボールでストーンエッジを破壊し、バンギラスを削りにかかる。

 

「(まもるを解いた!)今だよ、バンギラス!」

「ギラァァ!!」

「サナァァァァ!?」

 

 多少の被弾は問題ない。ひかりのかべは解けたが、砂嵐はまだ少しだけ持つ。バンギラス自身の生来のタフさと合わせればかなりの防御力を誇るのだから。それにストーンエッジは継続的にうち続けてるからエナジーボールの大半を相殺出来ているのだ。よって結果的に無防備となったサーナイトはれいとうビームを真正面から受けてしまい…ようやくダウンした。

 

「かくとうタイプのポケモン手持ちに入れてりゃよかった」

 

 目を回したサーナイトをボールに戻したグレイブのそんな呟きがバトルコートに響く。まぁかわらわりを使えるギルガルドがいるが、それでもタイプ相性的に手持ちに入れたかったのだろう……



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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part13

SVの情報が待ち遠しい…(挨拶)


 

 

「ぎらぁぁぁぁ〜!」

「え、ちょ、バンギラス待っ……ぐぇえええ!?」

 

 勝利したバンギラスは獰猛な雄叫びをあげ…る事はせずに嬉しそうに泣きながらクレハに突撃して抱きしめる。忘れがちだが、彼女はまだ生まれて1年少しの子供で、本来は温厚かつ甘えんぼなのだ。抱きしめられているクレハは潰れたニョロトノみたいな声を出しているが。

 

「インテレオン、行ってこい」

「インテ」

 

 しかしグレイブは2人のそんなやり取りを完全スルー。静かにインテレオンを出し、出てきたインテレオンはクールにキメたがクレハとバンギラスのやり取りに微笑ましくみていたがバトル中なのですぐに気を引き締めた。

 

「イタタタ……バンギラス、戻って……!」

「ぎらぁ……」

 

 ちょっと残念そうにしながらクレハに従い、ボールに戻る。ちょっと痛いぐらいで済んだのはバンギラスがちゃんと手加減していたのとトレーナー特有の頑丈さからである。

 

 ───────────────────────

 

「レントラー!」

「トラッ」

 

 気を取り直してボールを投げてレントラーを繰り出す。タイプ相性的には有利だが、当のレントラーは火傷を負っているからあまり長引かせる訳には行かない。

 

「〝とんぼがえり〟」

「インテ!」

 

 本来なら長期戦に持っていってレントラーを消耗させるのがセオリーだが、インテレオンはお世辞にも長期戦に向いていないのでボルトチェンジと交代攻撃技を仕掛けに行かせる。

 インテレオンは空高く飛び上がり、その柔軟な体を活かしながら空中で一回転してから右脚を突き出したキックをレントラーにお見舞いしようとする。

 

「(とんぼ返り!)……レントラー、〝ボルトチェンジ〟で迎え撃って!」

「トラッ!!!」

 

 ならばこちらもと対抗するようにとんぼがえりの着地点に向かってボルトチェンジで突撃する。

 特性こんじょうにより攻撃力という名の身体能力が上がっている上にインテレオンの弱点タイプである電気技。分はレントラーにある。

 

「インテ」

「〝とんぼがえり〟中断。ジャンプして回避し、一足先に〝れいとうビーム〟」

「インテ!」

 

 レントラーにかかったなとばかりに悪い笑みを浮かべたインテレオンは指先から水を少しだけだしてボルトチェンジが来るより先に着地し、グレイブの指示通りジャンプしてレントラーの背後を取り、指先かられいとうビームを放つ。

 

「っ! レントラー、〝10まんボルト〟!!」

「トルァァァァッ!」

 

 不意を打たれたレントラーだったがすぐにボルトチェンジを止めて背後から撃たれたれいとうビームを10まんボルトの電撃で相殺し、すかさず2発目の10まんボルトをインテレオンに放つ。

 

 ───────────────────────

 

「インテ!」

「了解。インテレオン戻れ! GO! ギルガルド」

「──!」

「トラ」

「わかってる。レントラー戻って! バンギラス、〝ちょうはつ〟!」

「ギラララッ!」

 

 しかしグレイブはすかさずインテレオンをギルガルドに交代することで10まんボルトを躱し、クレハも少し遅れたタイミングでレントラーからバンギラスに交代するとちょうはつを駆使してキングシールドを封じにかかる。

 

 

「ギルガルド〝アイアンヘッド〟を連発」

「───!」

「ギララ!?」

 

 若干の苛立ちが混じった指示が入り、ギルガルドは頭を突き出してバンギラスに鋼鉄の頭突きを連続で放つ。バンギラスは少し掠ったりするも、何とか避けていくもどうしよう…とクレハを見つめる。

 

「(ゴウカザルに交代させる隙がない……!)バンギラス、自分の周りに〝ストーンエッジ〟!」

「ギラッ! ギラァァァ!!」

 

 連続で放たれるアイアンヘッドの波状攻撃は隙がなく、とてもじゃないがゴウカザルに交代する隙がない。ならば作るまでだとばかりにアイアンヘッドが掠っただけでも痛そうにしているバンギラスに指示し、ストーンエッジで大量の岩壁を作り出し、ぶつけさせる事でギルガルドの勢いを殺してアイアンヘッドの威力を削いで無理やり隙を作ろう…という魂胆だ。

 

「──?」

「"シャドーボール"でストーンエッジを粉砕だ」

「───!」

 

 アイアンヘッドを中断し、どうする? とグレイブに訊くと当の本人から指示が飛ぶ。ギルガルドは頷くと布のような両手からシャドーボールを放ち、ストーンエッジで作り出した岩壁を破壊する。

 

「(動きが止まった!)バンギラス、交代! ゴウカザル、〝だいもんじ〟!」

「ギラッ!」

「ウキャァァァァア!!!」

「かわして〝アイアンヘッド〟」

「───!」

 

 しかしずっと隙を伺っていたクレハはここが好機だと判断。すかさずバンギラスからゴウカザルに交代させ、出てきたゴウカザルは早速くらえとばかりにだいもんじをギルガルド目掛けて放つ。だが当然とばかりにギルガルドはだいもんじを回避し、鋼鉄の頭突きによる突撃をゴウカザルに放つ。

 

「下に潜り込んで〝わるだくみ〟! …〝だいもんじ〟!」

「ウキャ! …ウキャァァァ!!」

「───!」

「ちょうはつが切れたんだ! …ならゴウカザル、ギルガルドを捕まえて〝だいもんじ〟!」

「ウキャ!」

「──!?」

「んなっ!?」

 

 身体を仰け反らせることもギルガルドのアイアンヘッドを交わし、さりげなくやったわるだくみで強化されただいもんじを放ちにかかる。しかしここでバンギラスにかけられたちょうはつが解け、ギルガルドは自発的にシールドフォルムになり、キングシールドでだいもんじを防ぐと再びブレードフォルムになってアイアンヘッドをゴウカザルに叩き込もうとするもすかさずクレハの指示が入り、なんとアイアンヘッドを開始する前にゴウカザルは両腕を突き出してギルガルドを捕まえ、だいもんじを放つ。

 

 ───────────────────────

 

「やらせねぇよ! 戻れ、ギルガルド! インテレオン、〝ねらいうち〟だ」

「インテ!」

 

 そうはさせるかとグレイブはギルガルドをボールに戻してだいもんじを空撃ちさせると、離れた位置にインテレオンを繰り出すとインテレオンは早速指先から細い水流をゴウカザルに放つ。

 

「ウキャ!?」

「ゴウカザル戻って! レントラー、〝10まんボルト〟!」

「トラァァァ!」

「〝れいとうビーム〟で迎え撃て!」

「インテ!」

 

 迫る水流にゴウカザルが飲み込まれる前にレントラーに交代。レントラーは横に移動することで水流を躱すと、その水流に電撃を流してインテレオンを感電させようとするが、インテレオンは空いた片腕を突き出してその指先から発射される冷気のビームで電撃とぶつかり、拮抗状態に入る。

 

「レントラー、そのまま10まんボルトを撃ち続けて!」

「トラァァァ!」

「インテレオン〝れいとうビーム〟出力上昇」

「インテッ!」

 

 火傷のダメージにより体力が落ちているレントラーに元々持久戦が得意でないインテレオンは互いに息を切らしながら、互いの技の威力を高め合い、ぶつけて行く。勝つために、負けないために…そして拮抗を破ったのは…グレイブ達だ

 

「インテレオン全力だ! 凍てつかせろっ」

「イン、テェェ!!」

「……今だ、レントラー! 走って!」

「トラッ!」

 

 拮抗を破ろうとれいとうビームの出力を最大にするも、実はタイミングを見計らっていたクレハの合図と共にレントラーは10万ボルトを中断。れいとうビームをスレスレで避けつつ、全速力でインテレオンに接近する。

 

「地面に"れいとうビーム"だ! レントラーの動きを制限しろ!」

「インテッ!」

 

 ──ボルトチェンジが狙いだな。そう読んだグレイブはインテレオンにれいとうビームを指示。しかし標的はレントラーではなく地面…つまりバトルフィールドだ。

 分かったとばかりにインテレオンは指示通りれいとうビームを地面に撃ち込み、バトルフィールドを一瞬で氷漬けにしてみせる。とてつもない火力だ、流石はチャンピオンのポケモンである。

 

「(え、マジ? フィールド全部氷漬けにしちゃったよ…)そうくると思ったよ! レントラー、爪たてて!」

「トラッ!」

 

 ──まず潰すなら機動力だろう。そうすればよりインテレオンは技を命中しやくすなるのだから。クレハはそれを読んでいたのだ。……流石にここまで派手にやるとは思わなかったのか少し引き気味だが。

 ちなみにレントラーは今自身の丈夫な爪をたててブレーキ代わりにする事で緩急をつけ、実質的に変幻自在ともいえる機動力を獲得したのだ。

 爪たてて。この一言でここまで出来るとは、なんともアドリブがきいたレントラーなのだろう。しかしやけどを負ったままなので…それでも若干の不利は否めない状況だ──

 

 

 




世界屈指で豪華な消化試合の勝者がまさかのカルネさんという。タイプ相性の無慈悲さよ…(お読み下さりありがとうございます)


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閑話 トレーナーさんともどりのどうくつ

コラボ回が行き詰まったので息抜きです。
ロザミアさん、愛月花屋敷さん、申し訳ございません…


 これは今育て屋をしているクレハの過去の話…もはやかけがえのない家族の1匹となった、彼との出会いの話…

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

「ここ?」

 

「えぇ、間違いありませんわ」

 

「はー…ハイウェイロードの真下にこないな洞窟あるとはなぁ…」

 

「私達、かんっぜんに見逃してたね…」

 

「せやな、ウチら完全に間抜けやな…」

 

「まぁ良いではありませんか。早く行きましょう? 図鑑収集の為にも」

 

『はーい、リリカお母さん』

 

「誰がお母さんですか、だれがっ!」

 

 

 

 洞窟前でさながら漫才の様なやりとりをする、赤、黒、金の髪の少女達3人…クレハ、フウマ、リリカはそのまま件の洞窟…もどりのどうくつと呼ばれる場所に入ろうとしたが…

 

 

 

「邪魔だ! どけっ!」

 

「きゃっ!?」

 

 

 

 洞窟から男が自転車で飛び出し、驚いて尻餅をついたクレハに気にせず、それどころか暴言を吐いて走り去っていった…

 

 

 

「大丈夫ですか、クレハ!?」

 

「なんやあいつっ! 危ないやんけ…!」

 

「いたた…大丈夫大丈夫。ほら早く行こう? あんなの気にするより、図鑑収集だよ!」

 

「はぁ…仕方ないですわね。尻餅ついた本人がそういうなら私達はとやかく言いませんわ。ねぇ、フウマ?」

 

「はぁ…まぁしゃーないわ。ほないくで〜」

 

 

 

 こうして3人は改めて洞窟の中へと入っていく。まぁ洞窟だから当たり前だが、かなり暗く視界の確保が厳しい。

 

 

 

「暗いなぁ …」

 

「そう思うならコリンクを出しなさいな。私のピカチュウでも構いませんけれど」

 

「なんならウチのえれやんに任しとき。ってかもうやっとくれとるし」

 

「エレッキ!」

 

「…あそこだけ砂煙…? ……!?」

 

「クレハ!? ……!」

 

「なんや…? どないしたんや! …砂煙? ……なっ」

 

 

 

 しかしそれも一瞬の事。自発的にフウマのリュックに入っていたエレキッド…えれやんがフラッシュ…バトルではな目くらましにもなる閃光を走らせ、道を照らし…クレハは真っ先に見えた。謎の砂煙が…その中で大量のフカマルが、1匹のフカマルを囲んで、痛めつけてるのを。突然自転車も使わず走り去ったクレハに困惑していた2人も状況に気づいて、慌てて後をついていく。……3人とも、最悪の想像が頭によぎったが、今はそれよりも…と思いながら。

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

『ふかかぁ!!』

 

「……まる…」

 

 

 

 フカマル達は大きな口をあけて噛みついたり、爪で引っかいたり等をして同族のはずである1匹のフカマルを傷つける。いや、正確には彼は同族ではない…先程来た人間がいらないと言いながら無造作に捨ててきたのだ。

 

 しかし元々在住していたフカマル達にそんなことは関係ない。彼ら彼女らにとって重要なのは今来たフカマルが余所者であるということであり…それは彼ら彼女らにとっては…縄張りを荒らす侵入者、ということだ。

 

 

 

(まる…)

 

 

 

 そんな経過で、そのフカマルは傷ついていたのだ。

 

 だが、どれだけ傷つこうとフカマルは一切の抵抗をせず…ただただ虚ろな目でされるがままで…トレーナーに捨てられたのが余程ショックだったのがわかる。…もういいや。そう何もかもを諦めて、赤い髪が最後に自分に駆け寄ってくるのを見て…彼は意識を閉ざした。

 

 ───────────────────────

 

 

 

「しっかりして! ねぇっ!!」

 

「なによっとんねん!? フカマルとはいえポケモンの群れに飛び出すか普通! アホやろ自分っ」

 

「そんなことよりその子を連れて逃げた方が懸命ですわね…」

 

『ふかかぁ!!!』

 

「…せやな! みんな目ぇつぶっときぃ!」

 

「うん!」

 

「わかりましたわ!」

 

 

 

 フカマルを抱き抱えるクレハに、無茶したことを説教するフウマ、フカマル達に囲まれた状況を見つつ、冷静に逃げることを提案するリリカ。正しく三者三様の反応をしつつ、フウマはえれやんにアイコンタクト。えれやんはフウマの合図と同時にフラッシュ。文字通りの目くらましをする。

 

 

 

「ふか!? ふか、ふかかぁ!?!?」

 

「ふかふか!?」

 

(よし、今のうちや。逃げるで!)

 

(ナイスです、フウマ!)

 

(大丈夫だからね…いたた…すぐにいたた…ポケモンセンターに連れていくからね…)

 

 

 

 不意を打たれた上、住処とする場所が場所な上に、光に弱いフカマル達は案の定混乱し…クレハ達はその隙に全速力で洞窟を走り…外に出た。

 

 

 

「つっかれたわ! マジで災難やわ…」

 

「全くですわね…」

 

「いたた…それよりこの子をポケモンセンターに連れていこう? 大分弱ってるよ…」

 

「そうですわね。そこで手の治療もしてもらいましょう。クレハのね」

 

「……その手どないした? 傷だらけやん」

 

「この子どうやらさめはだみたいで…」

 

「なるほどな…。ま、それならポケモンセンターに……」

 

「ふ、ふかか…?」

 

「あ! 起きた。大丈夫? 今すぐポケモンセンターに…「マルァッ!!」いっ…!」

 

 

 

 早速ポケモンセンターに向かおう。そう決めた矢先にフカマルが目覚め…クレハの顔を見ると錯乱し…悲鳴のような怯えきった鳴き声で自身を抱きかかえた彼女の腕に噛み付いてしまう。さめはだで傷付いた手以上の痛みにクレハは顔を歪ませ、予想だにしない事態にリリカ達2人も硬直してしまう。

 

 

 

「く、クレハ…!」

 

「はっ…何しとんねん…!」

 

「大丈夫。…大丈夫だから…私達はあなたの敵じゃないから…! 大丈夫、大丈夫…!」

 

「──…」

 

 

 

 クレハは痛みを堪えながら、フカマルにそう語りかける。大丈夫、安心してと。手がフカマルの肌で傷つくのも厭わず…抱く力も強めていくと…気持ちがフカマルに届いたのか、それとも疲労困憊だったからか、クレハの腕から口を離して…涙を流して眠りについた。

 

 ───────────────────────

 

「あ、ガブリアス。またバンギラスの面倒見てくれたんだ?」

「ガブ」

「…そっか。いつもありがとうね」

「ガブブ」

「当たり前だ。か…そっかぁ」

 

 そんな割と…というかかなり最悪の出会いから数年後…ガブリアスは今とても幸せだ。なんせ最高の主人と巡り会えたのだから




砂煙が起きる場所でゲットした(野生とは言ってない)


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part14

メガメタグロスってかっこいいよね。


「インテレオン〝とんぼがえり〟」

「〝ボルトチェンジ〟!」

「インテっ!」

「トラッ、トラァァァ!」

 

 またしてもお互い交代技同士がぶつかり合う構図になかけるも…

 

「インテレオン戻れ! ギルガルド〝キングジールド〟!!!」

「レントラー、交代! バンギラス、〝ちょうはつ〟!」

「インテ!」

「──!」

「トラ」

「ギラギラギラッ!」

 

 しかしこの2人は。お互いの技がぶつかり合った直後に交代をし…ギルガルドは己の代名詞たる絶対防御技で発生した余波を防ぎ切り、そのすぐ後にバンギラスがちょうはつでそれを封じにかかる。

 

「ギルガルド〝かわらわり〟」

「──!」

「ぎらら!?」

「バンギラス交代! ゴウカザル、〝だいもんじ〟!」

 

 ブレードフォルムに変わったギルガルドは金属音の様な鳴き声を響かせながらバンギラスに4倍弱点となるかくとうタイプのチョップを叩き込もうとするも、すかさずクレハが当たる直前にゴウカザルに交代させ、ゴウカザルは自身の驚異的な腕力でかわらわりを無理やり受け止めて…口から炎を吐いてギルガルドにダメージを与えようとする。ちなみにキングジールドをされても吐き続けるつもりだ。先の試合で色違いのボーマンダ…サラメがしたように。

 

 ───────────────────────

 

「ギルガルド、回避」

「──!」

「──ここだ! 〝わるだくみ〟、〝だいもんじ〟!」

「ウキャァァァァ!!」

「──!?」

 

 受け止められた事に驚きつつ、ゴウカザルに掴まれた腕を無理やり振りほどいて目の前まで迫っただいもんじを回避。

だがその隙をクレハは利用し、わるだくみを指示。オーバーキルレベルのだいもんじがキングシールドを封じられたギルガルドに襲いかかる。

 

「ギルガルド交代インテレオンGO! 

 〝ねらいうち〟連射」

「インテ!」

 

 しかしグレイブは炎を浴びる前にギルガルドを下げてインテレオンに交代。別の位置に繰り出す事で技を回避させ…最早おなじみとなった指を構えてからの水流を連想で発射する。ちなみにゴウカザルは二、三度すなあらしのダメージを受けているため、持たせたきあいのはちまきは無意味となってしまっているが互いに距離を開けても問題がない程のリーチのある技を覚えているので状況はさながら西部劇のようだ。

……まぁもっとも飛び交うのは弾丸ではなく炎と水(または氷)なのだが。

 

「もう一度〝ねらいうち〟連射だ」

「インテ!」

「避けてゴウカザル!」

「ウキ! ウキャ! ウキキィ!」

 

 確実にあてるとばかりにインテレオは両手から水流を乱射するも…ゴウカザルはフィールドか氷上となっているのを利用し、レントラーがしたように手足の爪をスパイク代わりに乱射される水流を華麗に避けていく。この場がバトルでなくコンテストならば間違いなく得点になっていたことだろう。

 

  ───────────────────────

 

「〝れいとうビーム〟短く連発」

「インテ!」

 

「(インテレオンさえどうにか出来れば…!)ゴウカザル!」

 ゴウカザル「ウキキィ!」

 

 お互いバンギラスの置き土産なすなあらしによって体力が削られつつ、威力とリーチを下げたれいとうビームの乱射がゴウカザルに襲いかかる…がゴウカザルは口からはいた炎を纏い、れいとうビームごと自身の氷を溶かし…必死な形相で腕を振りながらインテレオンに接近する。

 

「ふーん……インテレオン"れいとうビーム"再び地面に照射、今度は起伏を大きめにねー」

「インテー」

「ウキ! ウキキィ!」

「ゴウカザル……」

 

 ゴウカザルの形相と必死な走りにちょっと毒気が抜けたのか…何故か揃って呑気な声色で氷のフィールドを作り替えていく。普通だったら転ぶこと間違いなしな段差に、当たったら刺さるレベルな鋭さの氷も出していく…がゴウカザルは全身から炎を振り撒く事で目の前の氷の障害物を片っ端から溶かすことで進める道を確保してインテレオンに接近する。炎を纏い、両手を振り回し、最早ギャグのレベルで必死な形相。そんな状態で走る相棒にクレハは少し引き気味。さっき負けたのがやっぱり悔しかったんだろうなぁ…と察してはいるが、それでもあれは女の子的にはないのだ。

 

 ───────────────────────

 

「インテレオン! 周囲の氷に〝ねらいうち〟」

「インテ!」

「ウキャァァァァア!」

 

 物は試しとまだ溶かされていない氷を指先から放たれた水流で砕き、破片を当てにかかるが…当然ながらそれは無意味に終わる。なんせゴウカザルは炎を纏った状態なのだ。氷片など溶けてしまうのが道理である。

 

「ウキキキキキィ!」

「……インテレオン"狙い撃ち"」

「…インテ!」

 

 

 炎を撒き散らしながら全速力で走るゴウカザルに再び圧縮された水流を放つも、かくとうタイプの身のこなしにより、すいすいと避けていき…インテレオンの懐まで潜り込んで、拳を構え…

 

「よし! ゴウカザル、〝インファイト〟!!!」

「ウキ! ウキャキャキャキャ!!!」

「インテッ!?」

 

 かくとう技最強と名高い懇親のラッシュをインテレオンの土手っ腹に叩き込んだ。…が、なんとインテレオンは受けきり、その体からは青色のオーラが立ち込めている。…げきりゅうが発動したのだ

 

「インテレオン足元に〝ねらいうち〟」

「イーンテ!」

「跳んで!」

「ウキ!」

 

 よく耐えてくれた相棒。とグレイブはインテレオンを視線で褒めてやり、インテレオンも指示を聞いてラッシュ後の隙があるゴウカザルの足元に特性と持ち物のしんぴのしずくによって威力が底上げされた水流を放つも…ゴウカザルはインテレオンの肩を掴み、それを軸にして跳び上がり、背後に回り込んでから羽交い締めにし、だいもんじを放とうとする。…ちなみにすなあらしは当に止んでおり、2匹にダメージが入ることはない。

 

「〝だいもんじ〟!」

「インテレオン指だけゴウカザルに向けて、〝ねらいうち〟」

「ウキャァァァ!」

「インテェェェ!」

 

 インテレオンは驚異的に柔らかい体で器用にも指だけをゴウカザルに向け、ねらいうちを放ち、ゴウカザルも先にだいもんじを撃つ。…お互いに最大級の技を浴びあってしまい、しかも強烈な炎と水のぶつかり合いによって、凄まじい煙がバトルフィールドを包み込んでしまった。

 

「ゴウカザル…!」

「インテレオン…!」

 

 トレーナー2人は互いのパートナーの名を呼び、安否を確認する。やがて煙が晴れていき…最後に立っていたのは…

 

「ウキャァァァ!!!」

 

 もうか発動のサインである頭の炎が肥大化し、雄叫びをあげているゴウカザルだ。傍らにはインテレオンが目を回して倒れており、ギリギリ耐えられなかったのを暗に示していた。

 

 ───────────────────────

 

 これでクレハはやけどでそろそろ死に体のレントラーに一撃でも貰えば確実に沈むゴウカザル、ダメージが蓄積されてきたバンギラスの3匹。全員かなり疲労しているが1匹も落ちておらず、残るはほぼ無傷だがギルガルドのみのグレイブと比べて…明らかに有利な状況にまで持っていけたのだった。




状況的には有利だけどギルガルド普通に強いから、ここからサンタテされる可能性もある模様。実際ノイズはXYで友達にそれをされた。(唐突な自分語り)


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part15

フル装備なサトシ結構好きです。(感想的挨拶)


「おつかれ……相棒」

「……う、き、ぃ…」

「ゴウカザル、お疲れ様。──まだ、やれる?」

「……うき」

 

 グレイブは倒れた相棒をボールにもどし、クレハは勝ってくれたゴウカザルに…2人はそれぞれ自分なりに労う。もう既にボールにいるインテレオンから返事がないが、ゴウカザルの方はふらふらで…クレハに肩を貸して貰わなければならない程、疲労しているが…それでもやると頷いて見せた。

 

「ギルガルド、GO」

「───!」

「……ゴウカザル、一旦交代。──バンギラス、〝ちょうはつ〟」

「うき…」

「ギラギラギラッ!」

 

 クレハよりいち早く切り替えたグレイブが繰り出すのはラスト1匹であるギルガルド。静かに佇み、クレハ達をまっすぐ見据えながら剣を構える姿からは負けられないという気迫をありありと感じさせているが…クレハはここは冷静に対処。ひんし1歩手間まで疲労しているゴウカザルを動けるレベルにまで回復させる時間を作る為、一旦下げてからバンギラスに交代し、あまり意味はないが砂嵐をまきながらギルガルドの完全防御技をちょうはつで封じさせた。

 

「ギルガルド〝かわらわり〟だ。…何が来てもやり続けろ!」

「───!!」

「(砂嵐が止むまでゴウカザルはまだ出せない…)バンギラス、〝れいとうビーム〟の勢いで躱して!」

「ギラッ!」

 

 本来足の遅い筈のギルガルドとは思えない程の凄まじい速さで、バンギラスに接近するも、流石に4倍弱点は無理と判断したクレハはれいとうビームの勢いを利用して、避けるように指示。どうにか躱す事ができ、距離を置くのに成功する。

 ここはどうにかして砂嵐が止むまで耐えきらねばならないのだ。なぜならレントラーはやけどを負って死に体、ゴウカザルは言わずもがなと…ギルガルドを削りに行けそうなのが砂嵐を撒いてしまうバンギラスのみの状況だからだ。

 

「そのまま〝かわらわり〟続行」

「───!!」

「ぎららー!?」

「〝ストーンエッジ〟してから走って距離をとって!」

「ギラっ!」

「ちっ、鬱陶しいな…斬れ!」

「───!」

 

 しかしそれはグレイブとギルガルドも理解しており…防御をかなぐり捨てたひたすら責める戦法を取り、バンギラスをじわじわと追い詰めようとするも、バンギラス側もストーンエッジで壁を作ってから距離をとりに入るが、ギルガルドは逃がさんとばかりに岩を斬り、バンギラスとの距離を詰めていく。

 

(どうする!? 今のでストーンエッジはもう1回しか撃てない! あの時乱発したのが今になって響いてる…!)

 

 脳裏に浮かぶはサーナイトにしたゴリ押し。あれでかなりストーンエッジを使ってしまったのが仇となったのだ。しかもそれはれいとうビームも同じで…頭を回転させて計算すればあと3発。砂嵐が止むまで持つかわからない。しかしそれでもやるしかないのだと奮起した。

 

 ───────────────────────

 

(砂嵐が止むまで逃げようなんてやらせるか。こいつさえやれば後はやけどによる自傷がでかいレントラーに瀕死寸前のゴウカザル。…俺のギルガルドならやれる、信じてるぞ)

「───!」

「バンギラス! 左、左、右、左! 〝れいとうビーム〟で回避ぃ!」

「ぎらっ! ぎらぁっ!?」

「(こいつらギルガルドの攻撃パターンを見切ってきてやがる…)〝かわらわり〟は続行。フェイントを織り交ぜて攻撃しろ」

 

 しかしフェイントを織り交ぜた攻撃パターンもクレハは予測していたのか…それさえ躱していき、砂嵐ももうすぐ止むところまでいけた。

 

「…よし、バンギラス! 〝ちょうはつ〟!」

「〝キングシールド〟! 〝かわらわり〟!」

「───!」

「ぎらぁっ!? …ギララァ!!」

「頑張ってバンギラス! 〝ちょうはつ〟を続けて!」

「…ちっ、〝かわらわり〟だ。倒れるまで打ち続けろ!」

 

 1度キングシールドでちょうはつを防ぎ、かわらわりも叩き込むも…それでもバンギラスは倒れず、クレハの指示通りにちょうはつを続け…ギルガルドも何度も、何度もかわらわりをしていき…

 

「ぎ…ら…」

「……ようやく倒れやがった。なんつう、タフな奴だ」

「バンギラス、ありがとう。4倍弱点を3回も耐えるなんて、貴女は凄いよ……」

 

 バンギラスも限界を迎え、その巨体をバトルフィールドに沈める。砂嵐は止んで、晴天であり…ギルガルドを削ることは出来なかったが、消耗させることは出来た。一応の目的は果たしたのだ。

 

「警戒しろよ、ギルガルド。次出てくるのはきっとゴウカザルだ。瀕死寸前とはいえな」

「───!」

 

 こくり、とギルガルドも理解しているように頷く。ゴウカザルは速い。瀕死寸前とはいえおそらくもう走り回れるだけの体力は回復しているはずだ。あのバンギラスはそれだけの時間を稼いだわけなのだから。

 確かに技を一撃でも浴びせればゴウカザルは倒れる筈だ。しかしそれはギルガルドも同じなのだ。迂闊に近づけばもうか発動状態のだいもんじを浴びる事になる。そうなれば如何にギルガルドでも一撃であり、例えキングシールドが使ったとしても後手に回った瞬間、文字通り倒れるまで相手が焼きにくるのが容易に想像出来る……だからこそもうグレイブとギルガルドは攻め一辺倒を取るしかないのである。

 

 ───────────────────────

 

「……お疲れ様バンギラス。偉いよ、ゆっくりおやすみ。──ゴウカザル!」

「ぎらぁ…」

「ウキャァァァァア!」

(……気を引き締め無いとこっちがやられるな。…いいね、好きだぜ? そういうの)

 

 

 仰向けで倒れたバンギラスを労ってからボールに戻し、ゴウカザルを繰り出す。動けるまでには回復した、が…それでも

 一撃でも貰えば倒れふす事は間違いないと思わされる程消耗もしている筈だ。しかし雄叫びを上げ、頭の炎を燃え上がらせる姿からはそんな様子は微塵も感じさせず…グレイブは気を引き締め無いとこちらがやられると再確認し…笑みを浮かべ、ギルガルドも武具としての本能か…強敵との戦える事に歓喜する。…どこまでも似たもの同士なトレーナーと手持ちである。

 

 ───────────────────────

 

 こうして、事実上の最後の戦いが火蓋を切った。勝つのはクレハか…それともグレイブか…

 





ゴウカザル
ほぼ瀕死。ゲームでいうとHP10とかくらい。でも根性で頑張っている。これでも普段はおっとり系のイケメン猿

レントラー
ゴウカザル程でないが火傷のダメージが積み重なってかなり不味い。ぶっちゃけシャドボ受けただけで沈むくらいには消耗してる。

バンギラス
今話のMVP。技が撃てなくなるまでになるほど消耗してまで、時間を稼いだ。ママの為なら頑張れる健気な女の子


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part16

どうもSVはガチで楽しみな雑音です。遅れてすみませんでした。


「止まるなギルガルドそのまま〝アイアンヘッド〟!」

「───!」

「ゴウカザル、〝だいもんじ〟!」

「ウキャァァァァア!!!」

 

 ゴウカザルは最早瀕死寸前。ならば接近戦はギルガルドに分があると判断し、アイアンヘッドでゴウカザルに突撃するも、すかさずゴウカザルが炎を吐いてギルガルドを牽制。もうかによって、上昇したその火力は当たればギルガルドを一撃でバトルフィールドに伏すレベルだ。

 

「(ちょうはつのせいでキングシールドが使えねぇ。いや、使えたとしてもサーナイトの時みたくゴリ押しされる隙を見せちまうか。なら…)躱して攻撃続行」

「───!」

 

 そう判断したグレイブの指示に従いギルガルドは爆炎による攻撃を避けつつ、ゴウカザルに接近していく…

 

 ───────────────────────

 

「ウキキ…!」

(どうする? インファイトが効かないギルガルド相手に接近戦は厳しい…このままじゃ…!)

 

 このままでは不味い。クレハはそう考え、打開策を必死で考えていた。考えて考えて…ふと脳裏に今も他地方を旅している、コーディネーターをしているライバルの姿が浮かぶ。

 

「(あ…! そうだ、一か八か…!)ゴウカザル、だいもんじを吐いたまま……思いっきり回って!」

「──ウ、キィィィィィ!」

 

 これしかない、とクレハは判断し、ゴウカザルもその指示の意図を理解すると…弱ってるとは思えないほど凄まじい回転をし、バトルフィールド全土を炎が覆い、接近していたギルガルドも飲み込もうとする。

 荒々しく、強引だが…それが彼女たちの持ち味なのだ。

 

「……ギルガルド、隙は一瞬だ。そこを撃て」

「───」

 

 ここで何もしないのは悪手だ。しかしあの炎の勢いで突っ込んだらギルガルドも危ない。ならばゴウカザルに隙ができるまで上空という安全圏まで逃げ、その一瞬の隙を見極めにかかる。

 

「ウキャァァァァ!!!」

「……ゴウカザル…」

 

 今この状況でクレハができることは苦楽を共にしてきた相棒に全てを託し、見守ることだ。雄叫びを上げながら回転し、炎を吐き続けるゴウカザルも相棒を勝たせたいという己の願いのために体に鞭打っている。

 

「(やっぱりあいつを連れてくれば良かったな。あのゴウカザルの根性と執念を甘く見ていた)……ギルガルド、お前のタイミングで撃て。俺はお前を信じる」

「───!」

 

 最終的な判断をギルガルドに任せることに決めたグレイブ。ギルガルドも何か言うこともせずに頷き、静かにただ時を待つ。

 グレイブもギルガルドも、これはもうトレーナーが介入する余地はないと判断したのだ。

 

「ゴウカザル、信じてるからね…!」

「ウキャァァァア!!!」

 

 祈るしかない。とクレハはそう呟いて、ゴウカザルも必死で炎を吐き続けるが…限界なのだろう。炎の勢いが少しづつ、少しづつ弱まっている。

 

「……!!!」

 

 ここだ。ここが好機だと悟ったギルガルドは盾を構えたまま、炎の海へと突っ込み、その中心に居た接近したゴウカザルに渾身のアイアンヘッドによる頭突きをしようと突撃し、ゴウカザルの腹に深々と突き刺さる。

 

「……ウキャ♪ ──ウキャァァァァア!!!」

 

 しかしゴウカザルはそれを受け止めた。気を抜けば今にも倒れそうな程の激痛が全身を駆け巡るが…そんなものは関係なかった。勝たせてやりたいのだ、相棒を。勝ちたいのだ、かつての自分達が目標としていた〝チャンピオンのポケモン〟に。その想いからゴウカザルは力を振り絞ってギルガルドをがっちりと捕まえ、そのままギルガルド目掛けてゼロ距離で炎を吐いた。

 

「…!!!!!!」

 

 まずい、盾を…否! それでは防戦一方になり、いずれは炎を浴びる事となる。…そこまで考えたギルガルドはならばせめて一太刀を…目の前の敵を倒す! 盾を投げ捨ててから、炎に身を焼かれながらも目を見開いて己の剣を振りかぶり、ゴウカザルに一閃。

 

「ウギィ!? ───ウキャァァァァア!!!」

 

 僕はここで倒れても構わない。ゴウカザルはそう考えていた。ギルガルドさえここで倒せば相棒の、クレハの勝ちになるからだ。だからこそ…だからこそゴウカザルはギルガルドの一閃を浴びても怯み、倒れることなく…だいもんじの爆炎を浴びせられた。

 

「……!!!」

「ウキャァァァァア!!!」

 

 ギルガルドはグレイブの、ゴウカザルはクレハの為に剣を振るい、炎を浴びせさせていく。ゴウカザルは当然ながら、ギルガルドも炎を浴び続けた事で既にひんしになってもおかしくない負荷を受けている筈だが…それでも2匹共倒れないのは意地とプライドだろう。しかしそれもやがて限界を迎え…

 

「……!!!」

「……う、き…!」

 

 同時に倒れ込んだ。見紛うことなき、ダブルノックアウトだが…2匹の心境は対極であり…ギルガルドは勝利をお届け出来ず、申し訳ありません…とグレイブに伝えるような目で、ゴウカザルは相棒たる少女に…やったぞと背を向けてのVサインを掲げたままで…

 

「…ゴウカザル、ギルガルド共に戦闘不能! 

 グレイブさんの手持ち0、よって勝者…クレハさん!」

 

 やがて試合の成り行きを見守っていた、審判を務めているリリィから試合終了の宣言が為される。結果は…クレハの勝利という形で…




ゴウカザル
ひんし寸前だったのにギルガルド相手に引き分けに持ち込んだ根性ありすぎる猿。おっとり系の熱血

ギルガルド
もうか発動下のだいもんじを至近距離から浴び続けても倒れるまで攻撃し続けたやべー剣盾。これだからギルガルドはやばいのだ



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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part17

遅くなってすみませんm(_ _)m


 

「勝っ……ゴウカザルッ!」

 

 勝った。グレイブとのバトルに勝利した。

 その事にクレハは喜びかけるもギルガルドと引き分け、倒れ伏した相棒の姿が目に入った途端に勝利したという喜びの気持ちは消え、ゴウカザルの元へと駆けよる。

 

「これは手当てが必要ですわ。

 すぐにこちらへ」

「──」

「う、うん……!」

 

 審判を務めていたリリィもゴウカザルへと駆け寄り、クレハにそう伝えると、彼女の教師であるリョウのギルガルド…リッターがゴウカザルを医務室へと運ぶ為、その布のような手で抱き抱える。

 クレハもこくこくと頷いてからリッターに抱えられたゴウカザルの手をそっと握り、リリィ達と共に医務室へと向かっていく。

 

 ……何やら話をし始めたリョウとグレイブの2人にクレハは最後まで気づくことはなかった。

 

 ───────────────────────

 

 リベール家の医務室にてクレハはベッドで横に寝かされているゴウカザルを心配そうな眼差しで見ている。

 

「大丈夫ですわ。

 焦らずともリベール家の設備ならばこれくらいすぐに治ります」

 

 そんなクレハに大丈夫だとリリィは伝えつつ、指を鳴らしてラッキーとハピナスを呼びつける。

 やってきた2匹は早速ゴウカザルの容態をチェックし、技や道具を駆使して治療を施していく。

 流石はリベール家のポケモンだけあり、手際の良さはポケモンセンター顔負けだ。

 

「よ、よかった……! ありがとうリリィちゃん」

 

 治療されていくゴウカザルを見ながらほっと胸を撫で下ろし、クレハはリリィに感謝の言葉を伝える。

 

「クレハさん、バンギラスとレントラーもお出しになってください。

 それにレントラーは火傷してますから」

「うんっ」

 

 当たり前だが治療するのはゴウカザルだけではない。ひんし状態のバンギラスや未だにやけどを負ったままのレントラーもいるのだ。

 リリィの言葉に頷いてからクレハは2匹の入ったボールを手渡す。

 

「頑張りましたわ、あなた方も。ラッキー、ハピナス。申し訳ありませんがこの二匹もお願いしますわ、丁重にですよ?」

「らっきー♪」

「ハッピ!」

「……ぎらら???」

「トラ〜」

 

 ゴウカザルの治療を終えた2匹は主の言葉に返事を返すと早速レントラーとバンギラスの治療を始める。

 リリィもやけどなおしを使ってレントラーのやけどを回復させていく。

 バンギラスは瀕死から回復し、意識を取り戻してここどこー? と首を傾げ、レントラーは治療されてるんだよーと呑気な声色で優しくバンギラスに今の状況を説明する。

 

「ゴウカザル、お疲れ様。……本当にありがとう……」

「うきゃきゃ」

 

 一方クレハは治療を終えて目を覚ましたゴウカザルの手を握りながら労いと感謝を伝え、ゴウカザルは笑顔でその言葉を受け取ると手を握り返して当然だとばかりに鳴く。

 ちなみにレントラーやバンギラスにも治療が終わったら同じように労うつもりだ。

 頑張ったのはゴウカザルだけではないのだから。

 

「さて、これでよし…はい、オボンのみです。後はこれを食べて、ゆっくりと休んでくださいませ」

「えぅ~♪」

「ぎらら〜♪」

「トラ」

「ウキキキ〜

 …っ!?」

 

 リリィは3匹にオボンのみを渡してそう言うと、フェイが私も欲しいとリリィに抱きつく。

 バンギラスは受け取ったオボンをありがとうと伝えるように鳴いてから嬉しそうに食べ、レントラーもリリィに礼をしてから食べ、ゴウカザルはフェイの様子にバンギラスもヨーギラスだった頃はよくクレハにあんな風に甘えていたなぁ…と懐かしみながらオボンを食べようとしたその時である。

 何かに見られている。

 とんでもない何かに。

 薄ら寒い感覚に身震いしながらそれを理解したゴウカザルは視線の方へと顔を向ける。

 そこに居たのは……

 

「───」

 

 リッターである。

 どうやらゴウカザルを強者認定したらしい。

 自分が倒すべき強者に。

 

「」

 

 項垂れた。

 やばいのにロックオンされたゴウカザルはその事実に気付いて項垂れた。

 だってあの剣盾ゴーストめちゃくちゃ怖いんだもの。

 思わずクレハに助けを求めようとしたが、当の本人は…

 

「わわっ……やばい、ふわふわ…かわいい…!」

「えう〜♪」

 

 フェイにメロメロ状態である。

 なんと間の悪いことだろうか、近くにポフィンケースがある事から多分ポフィンを渡して懐かれたのだろう。

 なんせクレハは料理上手なのだから。

 

「……う、うきゃ…」

 

 フェイの可愛さに悶えるクレハの様子に、ゴウカザルは項垂れるしかない。

 だってクレハは女の子。かわいいものは普通に好きなのだ。

 こうなるのは無理もない事だろう…

 だからこそゴウカザルはこれ無理だと理解し、項垂れるほかないのだ。

 

「トラ…」

 

 そんなゴウカザルにレントラーはオボンのみを粗食しながら同情の視線を送るのだった…

 




ゴウカザル
頑張りすぎてやべーやつにロックオンされた憐れな猿。
涙拭けよ。

リッター
やべーやつ。

フェイ
(変化)技の甘えん坊1号

バンギラス
(特殊防御)力の甘えん坊2号

レントラー
ロックオンされた猿に憐れみを感じた。


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part18

4週間以上ぶりです。
SVはあと1ヶ月くらいかぁ……



追記
ば、馬鹿な?評価!?評価に色がついているぅぅぅ?!
ありがとうございます!本当にありがとうございます!!


 

「ウキャ……」

「ごめんね、本当にごめんっ」

「うきき」

 

 リッターにロックオンされ、項垂れるゴウカザルを他所にフェイを愛でるクレハは見かねたレントラーが呼ぶまで全く気づかなかった事にたいしてゴウカザルに謝罪をしていた。

 謝られたゴウカザルは仕方ないよ、とクレハの肩に手を置いて気にしないでと伝えるように鳴いてから苦笑い。

 ちなみにこのやり取りの間にグレイブとリョウは戻って来たようで、リリィと会話中だ。

 

「あ、先生。やりましたわね! リーグ戦でも披露した外道戦術、効果覿面でしたわ!」

「もっと言い方あると思うなぁ!」

「すごくえげつないバトルスタイル!」

(なんであんな戦術使っていたのにリーグ負けたんだ?)

 

 ゴウカザルに励まされてすっかり調子を取り戻したクレハが思わずそう言う。

 しかし悪意がある訳では無く、素直な感想である。

 グレイブも口には出さないが疑問を浮かべている。

 まぁ、小手指が通じない程にチャンピオンという壁がそれほど高いという事なのである。

 

「サラメ、俺ってえげつない?」

「ボマッ!」

「あ、うん…そう…」

「それでもアデクさんに敵わないのはやはり流石でしたわね。…ワタルさんやシロナさんもでしょうか?」

「あー…うん。シロナさんは勿論だし、ワタルさんも間違いないよ」

 

 若干歯切れが悪そうではあるが、リリィの疑問に当然の様に答える。

 なんせクレハはこの2人の事をこの中の誰よりもよく知っているのだ、当然と言えば当然である。

 

「ワタルさんは……人にも破壊光線ブッパするようなパワーバトルだからなぁ」

「破壊光線はあれだよ。ロケット団が抵抗したからだよ」

「やめたげてよぉ!?」

 

 2人の言葉を必死に弁明をしようとするが内心はああ、たしかにと納得しちゃってるクレハだが…ギンガ団の本部で暴れ散らかした経験があるから人の事は絶対に言えない。

 

「…なら、ガラルチャンピオンのダンデさんも同じく強いのでしょうね」

「だろうね。チャンピオンだもん」

 

 リリィは続けるようにそう言う。

 これから行く旅の目的で、リリィが超えたいと願う壁だ。

 成し遂げるようとするのは大変だろう、苦難だろう、挫折をしてしまうかもしれないだろう。

 でもそれ以上に彼女の成長に繋がる事を信じたいとクレハは願う。

 

「ダンデ? 確かにあの人の手持ちは……あれだったからなぁ」

「え、何? あれって何??」

 

 そのリリィの目標を超えたグレイブはそう伝える。

 そう、彼は別世界の〝ガラル地方〟のチャンピオンなのだ。

 当然ダンデの事は知っており、彼の手持ちをあれだと称した。

 それにはえ、あれとは? と気になったクレハが訊く。

 まさかリョウみたいにえげつない系だろうか…と思いながら。

 

「リザードンが相棒なんだよ、ダンデさん。ガラル地方のリーグはちょっと他のとは違うのもあるし、迫力はすごいぞ。ネット配信もされてるから見てみると良い」

「ほへぇ……リザードンが…相棒…レッドさんみたい……」

 

 リザードンが相棒。これで真っ先に思い浮かんだ、いまや生ける伝説とも言うべきトレーナーの事を思い出し、感嘆したようにクレハは呟く。

 

「あの人の手持ちなら覚えているから教えよか?」

「いや、いいよ。リリィの為にならないし。それはガラル入国してから知るよ」

「ですわね。その為に今学んでいる最中ですもの!」

「いい心がけだね」

 

 グレイブの提案を断る2人に同意するようにクレハも頷く。

 こういったものは自分で調べた方が知識として身につくものなのだというのを理解しているからだ。

 

「OK。ならここでは言わない。

 ……レッドさんなら一回カントーでバトルしたなぁ」

「は? ねえ、グレイブくん。

 ……その話、詳しく聞かせてくれないかなぁ??」

「な、なんだよ…急に…」

「大勢のトレーナーの憧れだからなぁ、レッドさんは。…戦ったのかぁ、いいなぁ…」

 

 グレイブがまさかのカミングアウトをしてしまい、クレハの様子は一変。

 かわいいが圧のある笑みを浮かべながらグレイブの肩に手をかけ、話の詳細を聞こうとし、それを聞いたリョウはあのレッドとバトルできた事を素直に羨ましいと伝える。

 

「偶然カントーのリーグ戦に出場しててさバトルしたけど最後の最後で負けたんだ」

 

 クレハの圧に負けたのか、グレイブは当時の詳細を話す。

 どうやら偶然の出来事だったらしい。

 しかし、そんな事はクレハには関係なかった。

 

「……羨ましい! 私なんかシロガネ山を必死で往復しまくったのにバトル出来なかったんだよっ!?」

 

 羨ましいと感情をむき出しにし、グレイブをぶんぶんと揺すりながらクレハは叫ぶ。

 噂を聞きつけ、もしかしたらと望みをかけて、獰猛な野生ポケモンが数多く滞在するシロガネ山に乗り込んだというのに、いざ頂上に着いても誰もいなかった事に嘆き、挙句の果てには遭難しかけて家族や友達(主にグリーンから)きつい説教を受けたのだ。

 本人も若気の至りだと自省しているが…それでも羨ましいもんは羨ましいのである。

 

「……ノーコメントでもいい?」

「そもそも旅をしている可能性もあるんだから…あの人ならどこにでも行くだろうし、運ですよこればっかりは」

 

 これにはグレイブも困惑し、リョウも苦笑いしながらクレハにそう言うと俺も戦いたいなぁと溢す。

 トレーナーならば1度でもいいからレッドと戦いたいのだ。

 

「こればっかりはどうしようもないからな」

「……うぅ、私だって戦いたかったよぉ……」

 

 リョウとグレイブの言い分もわかる。

 しかしだからといって仕方ないのだと割り切るのは簡単ではないのだ。

 それを雄弁に語るかのようにクレハはグレイブから手を離し、その場に膝から崩れ落ちた…

 

 

「える? えるる~」

「気に入ったのか、フェイ?」

「えう!」

「まあ、可愛い」

「ありがと、フェイ〜!」

 

 フェイがどうしたのー? 大丈夫? と頭を撫でて抱きついて頬擦りをする。

 どうやらクレハの事がすっかり気に入ったらしい。

 そんなフェイにありがとうと言いつつ、クレハはそのふわふわもふもふとした毛並みをぽむぽむと撫で付けて礼を伝える。

 

「える~♪ るふぅ…」

「はぁ……どうすっかな〜これから」

「さて…皆様にはとても良い戦いを見せていただきましたので、リベール家の最上級のもてなしでお返しさせていただきますわ。

 本日はお泊まりになられますか? 

 グレイブさんも、しばらくこちらに滞在して待つという手もありますわ。焦らずともよいかと」

 

 抱かれて嬉しいのか、すっかり甘えん坊なフェイは笑顔でクレハの肩に顔を乗せる。

 そんなフェイにほっこりしつつもグレイブはこれからどうするかと不安になるも、リリィから鶴の一声がかかる。

 

「そうだな。お言葉に甘えて少しの間ご厄介になりますか」

「かなぁ……元々観光目的で来たし、これから宿を取るつもりだったから今夜はお世話になります」

「それじゃあ、今日1日は賑やか…か?」

「ええ。先生もご存じでしょうがお父様もお母様も海外へ行ってますので。暴れたりしない程度の賑やかさは関係です」

「ありがとうなリリィお嬢様」

「ゴウカザル達の事も含めてありがとうね、リリィちゃん!」

 

 せっかくの厚意には遠慮するのは失礼。

 それを心得ている2人は泊まることに乗り気な様子だ。

 

「いいえ、この程度。リベール家はトレーナーとの交流は歓迎的です。

 寧ろ、このまま雇いたいくらいですわ。…さて、それでは皆様それぞれの部屋に案内いたしますわ」

「お嬢様、私めが…」

「お下がりなさい。私がすると言ったのです、その程度の責任果たし位自分で致します」

「…はっ」

(こうして見るとお嬢様だなぁ…)

 

 リリィの毅然とした態度に普段疑問ラッシュで振り回されているリョウはしみじみとした様子で、そう思うのだった。

 

 



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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part19

SV…発売までゆ一月切ったァ…!(某社長感)


 

「……」

 

 育て屋を営むクレハの朝は早い。

 半年以上にも渡る月日で染み付いたその習慣は人の家でも変わらず、持ち物である大きめの鞄からブラシ等を取り出して髪の手入れをしている。

 しかし一見落ち着いた様子とは裏腹にその内心は落ち着いていない。理由としてはただ一つ……

 

(お、落ち着かない……)

 

 泊まらせてもらったこの部屋が庶民たる彼女には豪勢だからという他ない。

 緊張する自身を鎮めようと一心不乱に髪をブラシで念入りにとかす姿は身だしなみを気にする年頃の女子らしくも見える。

 

 ───それから数分後、身だしなみを整えたクレハは手持ちポケモン達の入ったモンスターボールを持って、部屋を出ていく。

 

「……迷った。どうしよう」

 

 そしてものの数分後に道に迷ってしまった。広く、大きな屋敷にもかかわらず無警戒過ぎである。

 何やってんだ私。と思わず自身に心の中でツッコミを入れつつ、廊下で立ち往生。

 ゴウカザル達を出せばいい? いや家主の許可もなく勝手にポケモンをボールから出すのはマナー違反に当たる故に、出せない。どうしようか…途方に暮れるが……

 

「──」

「あれ、ギルガルド? …えっとどっちのギルガルドかな…」

「おー、リッターどうした…ん、クレハさん? どうかしたんですか?」

 

 見覚えのあるギルガルドがやってきて、リョウのリッターなのか、それともゴウカザルと引き分けに持ち込んだグレイブのギルガルドなのかとわからないクレハ。

 そのすぐ後に、ギルガルドに続くようにリョウが来たことからどうやらリッターの方の様だ。

 やってきたリョウはクレハにどうしたのかと訊き、それに対してクレハは…

 

「……いや、その…迷っちゃって…」

 

 恥ずかしそうにしながら正直に答える。

 ───嗚呼、16になる癖に迷子とか恥ずかしいと。

 しかも昨日自分を負かしたリョウに言ったからかより恥ずかしく感じる。

 

「まあ、仕方ないですよね。俺もまだ把握しきってる訳じゃないですし。洗面所で顔洗おうと思ってた所なんですよ。どこ行きたいってあります?」

「──」

「ありがとう。おふ…浴室はどこかな?」

 

 せっかくだから甘えさせて貰おうと、気恥しいからかわざわざお風呂と言いかけたのを直して、リョウに浴室の場所を訊く。やはり女子たるもの、朝風呂もしくは朝シャンは欠かせないのだ。

 

「ん? おはよぉ〜2人とも、どしたのさ?」

 

 しかしどういうタイミングか、グレイブが眠そうな顔でやってくる。

 そんな彼の眠そうな顔を見たクレハはクスリと笑いそうになる。ああ、そういう所は年相応なんだなと。

 

「おはよう。浴室は…丁度近いかな。リッター、案内頼む」

「─」

「おはよう、グレイブくん。それと案内してくれてありがとうね、リッター」

 

 挨拶を交わしつつ、案内をする為に先導をしているリッターに礼を言いながら、その後を着いていく。

 

「…今度俺のギルガルドにも仕込もうかな? 屋敷案内」

「…それわざわざ仕込む理由あるの?」

「いいじゃねぇか別に。

 所でリョウ。リッターは強いのか? 雰囲気からして只者じゃないが…」

「あ、それ私も気になってた」

 

 案内される道中、唐突にそんな事をを言い出したグレイブにクレハは思わずツッコミを入れる。

 それに対して若干冷めた様に言いながら話を変えにいく。

 クレハも気になる事だったからか、あまり気にしない様子でそう言う。

 

「リッターはバトルで出さなかったけどサラメと同じかそれ以上の実力だからなぁ…」

「まじか……やっぱりバイウールーじゃなくてあいつ加えていた方が良かったかもなー」

「(あー…ゴウカザルの怯えた様子からしてなんとなくそんな気はしていたけど…)強いなぁ…リョウくん達は…」

「──」

「はは…あ、着いたか。ここが浴室ですよ」

 

 若干後悔したように言うグレイブに月並みだが素直とも言える感想を呟くクレハ。

 似たような2人の反応に苦笑いしていたリョウはリッターの様子から浴室に着いたようだとクレハに伝える。

 

「あ、本当だ。じゃ、私はここで。リッターにリョウくん本当にありがとう! また後でー!」

 

 浴室に着いたと伝えられたクレハは嬉しそうな様子を隠しもせず、笑顔を浮かべながらリョウとリッターに礼を言うと浴室はへと入っていく。

 やはり女の子。お風呂は欠かせないのである。(2回目)

 

「ああ、また後で」

「またなー」

 

 男2人はそれを理解しているからか、軽く手を振ってからそれを見送り、揃って顔を洗いに洗面所へと向かって行くのだった。

 

 




クレハ
おっふろ♪おっふろ♪⬅尚昨日の夜中もしっかり入ってる。

先生
うっきうっきやな…まぁ女の子だしな…的な目線で見てると思われる。

グレイブ
ガラル人ってなんとなくその辺のマナーはしっかりしてるイメージあるよね?え?我の偏見??

Exactly(その通りでございます)


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part20

今週ようやくSV発売だぁ…ようやくだぁぁぁ!!!(かげぶんしんからのつるぎのまいならぬかんきのまい)


 

 

「……流石というかなんというか、やっぱり豪華だね…」

 

 わかりきっていた。というか昨日も入っていた為に浴室(今いるのは脱衣所だが)の内装自体は知っている。しかし、それでも…その豪勢な内装には緊張せざるおえなかった。

 だって庶民だもの、仕方ないね。

 しかし女子として朝風呂は欠かせぬ物。尻込みしてられないとクレハは意を決して扉を開け、脱衣所に入っていった。

 

「あら、クレハさん。おはようございます」

「あれ、リリィちゃん。あ、そっちもお風呂?」

 

 脱衣所にはなんの偶然か、リリィが居て、クレハに微笑みと共に挨拶をする。

 これは緊張していたクレハにとっては僥倖そのもの。

 下着姿である事、時間帯からして彼女も風呂に入るのだろうとなんとなく察したクレハは緊張が解けた様子でそう訊く。

 

「ええ、家にいる時はこうして入りたいと思ってますの。

 …緊張してますのね、そう固くならなくて平気ですわ」

「うん、ありがとう。1人じゃしり込みしちゃって…」

 

 リリィの答え共に出た言葉にクレハは礼を言いながら素直に尻込みしていたと告げると、服を脱ぎ始めいった。

 

「そういうものですか。

 …ああいえ、先生も最初は緊張してましたわね」

 

「よかった。緊張していたのが私だけじゃなくて…」

 

 リリィの言葉にやっぱりと思いつつも同類がいた事に安心すると呟きながらタオルで身を包んでいき、リリィと共に風呂場へと入っていく。

 

「楽になさってくださいまし。

 そうでないと宿泊を許可している私も何だか悪いですもの」

 

 風呂場は広く、銭湯とは異なる豪華さがあるもののシャワーの数は二本程であった。

 リリィはタオルを一旦とってから風呂の湯を桶ですくい取り、体にそれを掛けて体を濡らしてからクレハに微笑みかけてそう伝える。

 その後体を洗おうとシャワーへと歩き出した。

 

「う、うん……」

 

 改めて内装を見ると案外普通だと安心するクレハ。よくよく考えたら昨日は疲労していたからか風呂場の内装を気にする余裕もなかったから過剰に緊張していただけなのである。

 ちなみに最初の頃はマーライオンならぬマーエンテイが設置されてるようなのは想像していた。そんな事する意味全くないが。

 考えても仕方ないと自身もタオルを取り、リリィと同様に掛け湯をすると、そのままシャワーへと向かう。

 

「昨日のバトル、とても勉強になりました。ありがとうございますわ。

 バトルにも多種多様な戦法があるのは把握してましたがデータで見るのと実際に見るのとでは違いますね」

 

 美しささえ感じる身体を洗いながらお礼を言い、それから先生は強かったでしょう? と自分のことのように嬉しそうにクレハに訊くリリィ。

 

「あはは…それならよかった。…うん、強かったよ、リョウくん」

 

 たゆん、と一般と比べて大きめのそれ(どことは言わない)を揺らしながらリリィを微笑ましいと思いながらも真面目な顔でそう答える。

 

 リリィ「そうでしょう、流石は先生です。あの戦法はイッシュリーグ第二予選の時にした物でして…」

 

 語り出す。それはもう饒舌に、リョウが聞いたらどうして言うのぉ! とツッコミそうなくらいリリィはリョウの事を話し出す。その姿、正しく全力ファンである。

 

「ほうほう」

 

 クレハはそれに耳を傾ける。どうやら好奇心の方が勝ったらしい。リョウには悪いと多少は思っているが、自分に勝った人物の事は知りたいものなのだ。

 

「そもそも先生の始まりは14歳の頃、ホウエンにて始まりまして…」

「へぇ…14の時に…あれ、ならリョウくんっていまいくつ?」

 

 遂には経歴まで語り出したリリィに自分と同じか、年下かと思っていたらしいクレハはそう訊く。

 もしリョウが居たら体育座りでいじけていたことだろう。この場にいない事が救いである。

 

「今、17か18位ですわね」

「……私より年上だったんだ…」

 

 きっと本人はそんなに経っていたのかとなるようなものだが、リリィからしたらリョウの誕生記念を屋敷でする程である。

 ……ちょっと怖いぞ、この子。

 まさかの年上という事実にクレハは驚き、目上だったというのに態度が君付けでタメ口だったことを振り返り、申し訳ないと感じた。

 

「ですが、先生はクレハさんやグレイブさんに敬意を持っているのでそう気にすることはないかと」

「そうかなぁ…私2人と比べるとリーグの戦績が……」

 

 片やチャンピオンをギリギリまで追い詰めた者と異世界の現役チャンピオン。そんな2人に対して自分はベスト6である。

 正直見劣りするのでは? と感じてしまうのだ。

 

「戦績はその人を際立たせますが、それでクレハさんの全てを表すものですか? 先生は、クレハさんのポケモンへの思いを理解して敬意を持っているのです」

 

 そう言ってから身体を洗い終わり、薄紫の長い髪を纏め、湯船に浸かる。

 

「……なんかそこまで言われたら照れくさいなぁ」

 

 言われたクレハはひたすらに照れくさいと笑いながら言って、体を洗い終えると育て屋を継いでから伸ばしてみせた赤い髪を纏めてから風呂に入る。リリィもそうだが、髪は女の命なのだ。丁重に扱わねばならないのである。

 

「まあ、かくいう私はまだ旅にも出てないのですが。ラルトスちゃんと勉強中なのです」

「リリィちゃんはラルトスが手持ちなんだ?」

 

 体が温まっていく心地の良さを感じながらクレハは共に湯船に浸かるそういえばラルトスと一緒に居たのを見た事があったのを思い出しながらリリィにそう訊く。

 

「ええ、先生がくれたんです。

 一番似合うよって言ってくださって」

「なるほどね。確かに1番似合ってると思う」

「あら、そうですか? 

 クレハさんにもそう言って貰えるならより一層ラルトスちゃんとは仲良くなりませんと」

「うんうん、最初のポケモンは可愛くて仕方なくなるよ?」

 

 確かに勤勉で真面目なリリィのイメージにラルトスはピッタリだと思いながらクレハも似合っていると伝える。

 その言葉が嬉しいのか、リリィは微笑みながらそう宣言し、クレハも同意するようにそう伝える。今や立派なゴウカザルだし出会い方も風変わりだったが、トレーナーになって最初の頃はヒコザルが可愛くて仕方なかった事を思い出しながら。

 

「あら、私はただ可愛く扱う気はありませんわ。リベールたるもの、強くあれ。ラルトスちゃんを…そうですね、カロス地方のチャンピオン、カルネさんのサーナイト以上にしてみせますわ!」

「うわ、大きな目標。……それとカロス地方かぁ…」

 

 カロス地方、自分がこれから己を高める為に行く場所だ。

 そこのチャンピオンであるカルネはサーナイトをエースとしているのは調べ済みだ。

 

「カロス地方がどうかなさいました?」

「うん、まぁね…ちょっと理由があってこの旅行が終わったらそのままカロス地方に行く予定なんだ…」

「まあ、そうなんですの? 

 先生も修行の地に選んだ地方ですから、楽しんで来てくださいな。それがどういう理由であっても、ですよ」

「……ありがとうね」

 

 あ、リョウくんもカロス地方で修行していたんだと思いながらクレハはリリィに例を言って湯船から出る。

 まさかカントーのジムリーダーになる為にわざわざ他地方で修行するのが理由とか思っていないだろうなぁ…と内心思ったのは内緒だ。

 

「ええ、構いませんわ。…さて、長湯する気はありませんし私も出ると致します。朝食もありますし」

 

 そう言ってクレハより少し遅れる形でリリィも湯船から出て、脱衣所へと歩いていく。

 

「……私も行くか」

 

 昨日の晩ご飯はは当たり前のように豪勢で緊張していたが、学習したのかクレハは朝食に対してちょっと楽しみにしつつ、脱衣所へと歩いていくのであった。

 

 

 

 

 




SVたのちい(プレイしながら)


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part21

遅れて申し訳ありません。 パルデアが楽しすぎて…(自業自得)


 

「緊張なさらずとも、そんなに豪華ではありませんわ」

「……うん」

 

 朝食は楽しみだ、しかしやはりクレハの感性は一般庶民。

 それはそれとして緊張はするのだ。それを察してかリリィはそう伝えるも…昨日の夕飯が豪華なものだったので説得力がまるでない。

 クレハは頷きながら、頭の中にリリィと同じお嬢様な親友を思い浮かべながら体をタオルで拭いていき、髪を乾かしていく。

 

「?」

 

 そんなクレハを不思議そうに見て、首を傾げるリリィ。

 彼女からすれば本当にそのつもりで言っているのだ。一般庶民とお嬢様の感覚の違いが出た、なんとも言えないすれ違いである。

 髪を乾かし終えると、リリィは服を着ていく。動かしやすそうだが、確かな気品を感じさせる服に。

 

「動きやすそうな服だね」

 

 髪を乾かし終えたクレハもシンプルなデザインの服を着ており、リリィの服を見てからそう伝える。

 育て屋の身から見れば旅がしやすい服装というのは重宝するのだ。

 

「堅苦しい服装はあまり好きではありませんの。それに今度、旅をするのですから…慣れませんとね」

 

 お嬢様らしからぬ発言だが、エリートトレーナーの家系であればそれが普通なのかもしれない。

 それからクレハさんの服装も動きやすそうで良いですね、と伝える。

 

「まぁ仕事の関係上あんまり動きずらいのは、ね?」

 

 忙しいし、大量のポケモンフーズの袋などを持ち上げて運んだりもする育て屋を営む身としては、動きずらい服装は好ましくない。普段だってシンプルな服の上にエプロン被せてるだけだし。と苦笑いしながら答えつつ、手持ちの入ったモンスターボールをベルトに取り付けたホルスターに収めていく。

 

「なるほど、育て屋ですものね。さ、参りましょう」

「うん、行こう!」

 

 納得したように頷いてから2人は共に脱衣所を出て、そこで待機していたメイドにリリィは指示を出すと、こちらですとクレハの前を歩いていく。

 

 

 

 それから朝食を食べるための広い部屋に全員集まり(何故かリョウの手持ちの一匹のフェイもいる)、それぞれ挨拶をしてから座っていると…朝食がやってくる。

 朝食らしくシンプルにパンではあるが、やはりというべきか。一緒にやってきたものやバター等は高級品である

 

「さて、食べましょうか」

「……いやぁ慣れない…」

「やっぱりかー…」

「いただきまーす」

 

 パンにバター、他にもあるが朝食としては確かに一般家庭でも見られる定番なメニューだ。しかしどれも高級品である。

 リリィは当然としてだが、未だに慣れないらしいリョウ、もう察していたとばかりのクレハ。

 しかしグレイブだけはいつも通りな様子。流石チャンピオンだけある。関係ないかもしれないが。

 

 

「いただきます」

「いただきまーす…」

「いただきます…ってカイリュー?」

「カイリューかぁ…」

「ワタルさんのエースでもありますわね」

 

 先にいただいていたグレイブは意外にも丁寧な食べ方で、一応年長であるクレハとリョウの2人も丁寧な食べ方をする。リリィはそこに気品も加わってとても上品だ。

 ちなみにフェイはリョウの隣の椅子に座っており、朝食を美味しそうだな〜と眺めていたが、クレハのボールからカイリューが出てきてすたすたとフェイの元まで歩いていく。

 

「えう? えう~」

「りゅおん」

 

 フェイはやってきたカイリューを不思議そうに見て、それから抱っこ〜と甘えるように笑顔を見せる。

 カイリューはいいとも優しげな顔で頷いてからフェイ抱き上げるとリョウ達の邪魔にならないように、少し離れた場所まで歩いていき、器用にも正座で座り込んでフェイの頭を撫でていく。

 どうやらフェイの遊び相手になるつもりのようだ。

 

「…流石というかなんというか……」

(美味いなぁ。食い終わったら何やろうとするかな? ひとまず情報収集か?)

 

 幼い頃からカイリューを知るクレハはすぐ意図に気づいて微笑み、グレイブは静かに食べながらカイリューとフェイのやり取りを見ながら、これからのことを考えている。

 

「えう~♪ えるっ、えるっ」

 

 抱き上げられ、撫でられて嬉しそうにフェイは鳴いて、スリスリとカイリューの大きな身体に頬擦りをする。

 

「おお…ありがとな、カイリュー」

「りゅおん」

 

 フェイの面倒を見てくれるのを察したリョウはカイリューに例を伝え、カイリューは笑みを浮かべたまま、どういたしましてと伝えるようにひと鳴き。

 そのままかわいらしいのうとばかりにフェイを撫でていく。

 

「面倒見がいいポケモンですのね」

「…カイリューは元々は私の手持ちじゃなくて育て屋さんだったおばあちゃんの手持ちだったからね、だからかな? 

 ちっちゃい子の面倒が好きなんだ」

 

 リリィの言葉に誇らしげにしながらクレハはそう答える。

 彼女も幼い頃はカイリューに肩ぐるまとかしてもらってよく遊び相手になってくれていたし、1年も自分の修行に付き合ってもくれた。手持ちに加わった今でも彼には頭が上がらないのだ。

 

「へぇ〜、そのおばあさん何処の出身?」

 

 クレハの話を聞き、グレイブは食事を進めながらもそう訊く。あのカイリューが穏やかそうな割にかなりの実力派なのは見てわかるからだ。

 ならそのカイリューを育ていただろうクレハの祖母に興味が湧いたのだろう。

 

「ジョウトのフスベシティだけど……?」

「いいや…単に興味が沸いただけさ。にしてもフスベか」

 

 急に話を振られたクレハは戸惑いながらもグレイブの問いに答える。

 答えを聞いたグレイブはそう言うと、意味ありげな様子でそう呟いた。フスベと言えば、優秀なドラゴンタイプの使い手を数多く排出しているし、何よりチャンピオンの1人、ワタルの故郷としても有名だからだ。

 

「るふぅ……えぅ…」

「りゅん」

 

 フェイはカイリューの雰囲気と手馴れたような撫で方が心地よいのだろう、うとうととしだす。それに気付いたカイリューはおやすみなさいと言わんばかりに軽く、よりフェイの眠気を引き出すように軽く揺らしていく。

 

「フスベか、通りで」

「どういうことですの?」

「フスベはドラゴン使いが多いんだ。だから、そのお婆さんも例に漏れずドラゴン使いだったのかなと」

「……確かにそうかも」

 

 リョウの説明に確かにそうかもしれないとクレハは考える。

 幼い頃の記憶を思い起こせば自分の知る祖母の手持ちは皆(見た事ないのも居たが)ドラゴンタイプだったしと腑に落ちたとばかりに頷く。

 

「ふぅごちそうさまでした」

「えう~……すぅ…すぅ……」

 

 さりげなく、食事を続けていたらしいグレイブは、それもあってか、ほかの3人より早く朝食を食べ終えた。

 ちなみにフェイはそのまま眠りについていた。

 ……カイリューに甘えるように抱き着いたままで。…すっかりカイリューに懐いたようだ。

 

「あ、寝た。ありがとうな、カイリュー。…もう少し、そのままで頼んでいいかな?」

「あら、早いですわねグレイブさん」

「りゅん」

 

 リョウの言葉に構わぬよと伝えるようにカイリューはひと鳴きし、自分に抱き着いたままねむっているフェイを優しげな眼で見つめる。

 ちなみにクレハはまだ完食しておらず、冷めたら悪いとも思うのからか黙々と食事を進めている。

 

「いやちょいとやる事が出来たから」

「やること…ああ、帰る手段か」

「しかし、そうあるものですか? 別世界なんでしょう?」

「ごちそうさまでした! ……そうだよ、宛はあるの?」

 

 グレイブは元々異世界人。やることと言えばそれは元いた世界に帰るための手段の模索だろう。

 それについてリョウ、リリィ、クレハの3人はどうしたものかと考えながら、グレイブに宛があるのか。と訊く。

 

「ん〜2つぐらいあるかな」

 

 なんと帰れる手段が2つもあるらしい。指を2本立てながらグレイブはそう答える。

 

「勿体振らないでくださいまし」

「そうそう、子供なんだから一人で突っ走るなって」

「私も出来るだけ手伝うよ」

「そうか……ありがとうな」

 

 勿体ぶらずなと言うリリィに、1人で突っ走るなと年長者らしい事を言うリョウ、出来る限り協力すると伝えるクレハに対してグレイブは素直に礼の言葉を伝えて、頭を下げる。

 

「いいって、乗りかかった船だ。それで、二つの宛ってなんだ? まさか別地方とかじゃないよな…」

「ひとつめは、ウルトラホール。俺が来た時と同じようにそいつを使えば帰れる可能性がある」

 

 リョウの問いにグレイブは答える。それは確かに理にはかなっているが…

 

「でもウルトラホールってアローラ地方にしかないんじゃなかったけ?」

 

 そこでクレハが疑問を投げかけた。話を聞く限り、ウルトラホールはアローラ地方に確認されているもの。それならそのアローラ地方に行くしかない。が…自分はカロス地方に、リョウとリリィはガラル地方に行く予定なのだ。これは困る。

 

「いや、どうかな。ここに落ちてきたことを考えるとウルトラホール自体はどこにでも空く可能性があるんじゃないかな」

 

 しかしそのクレハにリョウはウルトラホール自体はどこにでも空くものかもしれないと答える。

 確かに時空の穴、というならばその可能性が高い。しかし…

 

「それで、もうひとつは?」

 

 そんなもの簡単に見つかるものでは無い。リリィはそう結論付けてから話を区切らせ、2つ目の方法を訊く。

 

「2つ目は、あいつに頼むという事だな」

 

 それに答えると共に何故か面倒そうな様子でモンスターボールを取り出して、3人に見せる。どうやらこのモンスターボールの中にグレイブの言うあいつがいるようだ。

 

「帰る宛あるんかい…」

「あら、それなら話は早いですわね」

「よかった、それなら安心だねっ」

「まぁそうだけど……」

 

 リョウは宛があるじゃないかとグレイブにツッコミを入れ、リリィはそれなら話は早いと告げ、クレハは素直に良かったと告げる。しかし、グレイブは歯切れが悪そうに言い淀んでいる。

 

「どうした? …あ、見られたらまずい的な感じか? それなら別れの挨拶だけ済ますか…」

「あら、それでしたらバトルを見せてくれたお礼を用意しなくては…」

「ギャラドスや普通のバンギラスみたいにすごく凶暴とか?」

 

 歯切れが悪そうなグレイブにもしかしたら見られたらまずいポケモンか? とリョウは考える。話を聞く限り、そのあいつはウルトラホールを飛び越えられるらしいし、有り得ない話ではない。ならばと別れの挨拶のみで済ますかと、リョウは伝え、リリィはお礼を用意しなくてはと早速手配しようとし、クレハはギャラドスや(一般的では)凶暴と知られるバンギラスを引き合いに出してグレイブに訊く。返答次第ではもう1戦しなければと若干物騒な考えをしつつ。

 

「こいつの力を使っても無事に帰れるか不明なんだ」

 

 歯切れが悪そうな様子はそのままに、グレイブはそう告げる。どうやら結構、綱渡りな手段らしい。

 

「でもそれくらいしか帰る手段がないならやるしかないだろ」

「その子を信じてあげるのが大事だと思いますわ」

「自分のポケモンを信じてあげなきゃ駄目だよ」

 

 しかしリョウはやるしかないだろと言い、他の2人も自分のポケモンを信じてあげるべきだと伝える。

 

「…ひとまずは出すか」

「……ラリオーナ」

 

 3人の言葉に、グレイブもタカをくくったのたろう。

 そう言ってモンスターボールを投げると、そこから出てきたのは一言で言うならば、銀色の巨大な体躯に、立派な鬣を持つポケモンだ。子供のグレイブどころか、1番の年長者なリョウさえ余裕で背中に乗せられる程の巨体を誇るそのポケモンは、無言でグレイブを見てから周りにいた他の3人を見つめると、短く一鳴きする。

「……大きいね」

「おお…! これは何てポケモンだ?」

「神々しさを感じますわね…!」

 

 それを見たクレハは真っ先に思ったのは大きい、という事と口には出さないが今はナナカマド博士の研究所で療養の身でいるシルヴァディと雰囲気が似てると感じる。物静かそうな雰囲気から連想したのだ。

 他の2人はトレーナーとしての好奇心からか、明らかに普通ではない雰囲気を誇るそのポケモンに、関心を寄せている。

 

「それじゃあ運試しのドライブに行きますか」

「え、今からか?」

 

 そう言ってそのポケモンの背に乗りだすグレイブ───

 

「お待ちなさい! せめて庭でやってくださいまし」

「いきなり行くの!? 庭にしようよ!?」

(正論だぁ…)

 

 ───だったがここでリリィとクレハが待ったをかける。それもそうだろう、ここリベールの屋敷内だ。あんな巨体のポケモンが走り出したら大惨事である。

 そんなお嬢様と育て屋さんの常識的な言葉にリョウは心の中でそう呟いた。

 

「ほーい」

 

 まぁそりゃそうかと納得したグレイブはそのまま庭に向かおうと…

 

「お待ちなさい! 

 私達が食べ終えてからにしなさい!」

「正論だぁ…」

 

 したがまたしても待ったがかかる。だってリョウとリリィはまだ食事中なのだから。

 

「そう言えばまだご飯だったね…」

 

 クレハはそんな3人の漫才のようなやり取りには流石に苦笑いするしかないのだった…

 

 




な、なんとか大晦日には間に合った…。
一月以上空けてしまって本当に申し訳ありませんでした!


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コラボ回! 先生VS育て屋VS異世界チャンピオン part22

遅れて申し訳ありません。……最近モチベーションが上がらなくて…


 

「わかった」

 

 食事を済ませてからというリリィの正論に急ぎがちだったグレイブは落ち着いたのか、自らボールから出したそのポケモンに身を預けるように寄りかかって、静かに待つ。

 ちなみに待つのは当然クレハもであり、やはりというか…その視線はずっとグレイブが出した謎のポケモンに釘付けである。無理もないだろう、グレイブの話から察するにあの威厳溢れるポケモンは自力でウルトラホールを作り出せるというのだから。

 

「ええ、では食べますのでお待ちを」

「(それでも急がない辺りに高貴さを感じる)

 ごちそうさま。…グレイブ、そのポケモンなんて名前なんだ?」

 

 一方リリィとリョウの反応は異なるものであまり急がず丁寧に食事を続けており、一足先にリョウが食べ終わり結局聞けなかったからとグレイブにそのポケモンの名前を訊く。

 

「……私はカイリューと一緒にフェイちゃんの事見てるね

(白い体色で四足…シルヴァディ元気かな)」

「すぅ…すぅ…」

 

 あのポケモンの名前は正直自分も気になる。が、しかしグレイブの様子から聞いてはいけないのかもしれないと考え、気を使って、抱きついて自身の胸を離さないフェイを抱えたカイリューの近くまで歩いていく。あの威厳ある姿になんとなくナナカマド博士の元に預け、今は療養の身となっているかのポケモンを想起しながら…

 ちなみにカイリューに抱きかかえられているフェイはまだ眠っており、可愛らしい寝息をたてているもカイリューに抱きついたままだ。

 

「……ソルガレオ」

「はえー、そんな名前なんだなぁ」

 

 グレイブはリョウの問いに対してそのポケモンの名がソルガレオだと伝え、再び口を閉じる。一方リョウの方は結構普通な反応である。無理もないだろう、ここにいるグレイブ以外、アローラ地方の事はウルトラホールとエーテル財団が有名なことしか知らないのだから。 ソルガレオの名を聞いてもいい名前だな。としか思えないのである。

 

「りゅん」

「わかってるよ、静かにしてる。…気持ち良さそうに寝てるし」

 

 カイリューが(無いだろうが)一応の注意をして、言われた本人であるクレハも頷いてから起こしちゃ悪いしね。と続けて言う。フェイに付きっきり故にリョウとグレイブの会話を気にする素振りさえなかった。

 

「御馳走様です」

「…あ、リリィちゃん食べ終わったみたい。カイリュー行こう」

「りゅん」

「そんじゃあ庭に行くか」

 

 そうして数分後…リリィが食事を終えた。ご馳走様が聞こえたクレハは静かに立ち上がるとカイリューに行こうと伝え、カイリューもフェイを抱えたまま起こさないように静かに立ち上がり、グレイブもやっとかとばかり立ち上がり…庭に行くか。と全員を促して、そのまま一同は庭まで歩いていき…別れになるからと全員でグレイブに声をかけていく。

 

「素晴らしいバトルでしたわ。

 ほんの少しの気持ちですが…グレイブさん、これをどうぞ」

「おっこれはどうも。(いやいやほんの気持ち所じゃないだろ)」

 

 素晴らしいバトルを見せてくれた礼にとリリィはグレイブにふしぎなアメ10個とハーブ系の道具を差し出した。グレイブは内心ツッコミを入れるも、感謝を言ってそれらを受け取り、バッグに入れていく。

 

「……うわ、ふしぎなアメだ…。会えるかはわからないけど、またね」

「グレイブ、また会えたら今度は全力のお前を見せてくれよ。フルバトルでな」

「そうだな……また会えたらその時もバトルしてくれ」

 

 バトルをした2人も続けてグレイブに伝える。ちなみにクレハはふしぎなアメに顔をひきつらせ、リョウはそれらから目を逸らしたりと対照的である。

 

「…あとリョウくんには負けないから」

「俺は次はどっちにも勝つ」

「ああ、二人とも楽しみにしてる」

「…では、お元気で。無事に帰れることを祈っていますわ」

「すぅ……えぅ…? える~?」

 

 ちゃっかりリベンジ宣言するクレハに乗る形でグレイブも宣言。リョウはそれらを笑顔で受け取っていき、リリィがそう言っていると、フェイがぱっちりと目を覚ました。周りを見てからグレイブを見て、どうしたの? と首を傾げる。

 

「フェイ…少し離れることになった。でもまた会えるから元気でいるんだぞ〜」

「えぅ…? える~~」

 

 あやす様に撫でながら優しい声色でフェイにそう伝えてから…グレイブはソルガレオの背に乗る。

 フェイは撫でられて、寂しそうにしながらも抱き着いて、またねと伝えるように頬擦りをしてからリョウに飛び移り、抱えられてから、ソルガレオの背に股がっているグレイブに手を振る。

 

「えるる~!」

「じゃあ、またな」

「お気をつけて、今度は私も戦えるようになってますわよ!」

「またね!」

「りゅおん」

 

 手を振るフェイを合図にするかのようにリョウ達も手を振る。事の成り行きを黙って見守っていたカイリューもまたな、と伝えるように鳴く。

 

「それじゃあみんなまたな!」

 

 手を振られる事に照れを感じながら、ソルガレオに頼むぞとだけ伝え…目の前にウルトラホールを発生させ、そこに突入していった。こうなればもう、無事に元の世界に帰還出来る事を祈るのみである。

 

「行ったな。…クレハさんはどうします?」

「まだここにいますか? 観光はここからでも出来ますが」

「えるぅ…」

「……私はもう少しだけいようかな。…ほらカイリューが、ね?」

「りゅ〜、りゅおん」

 

 見送ってから、リョウはクレハにどうするかと訊き、リリィはここに居ても構わないという旨を伝える。クレハはどうするかと考えるも…フェイの寂しそうな様子に耐え兼ねたカイリューが抱きしめ、よしよしとあやすおじいちゃんの姿には思わず苦笑いだ。

 

「えう、えう~!」

「はは…フェイは甘えん坊ですから、許してやってください」

「まだまだ子供ですものね」

「…なんか家のバンギラスに近いものを感じるなぁ……」

 

 慰められて、抱き着いて頬擦りなどして鳴くフェイ。カイリューにまで言って欲しくないのだろう。リョウやリリィの言う甘えん坊の子供という事もあり、クレハはバンギラスを想起した。ちなみに当のバンギラスはボールの中でお昼寝中である。甘えられているカイリュー自身も流石に少しだけ困った様子で、クレハを見てきている。

 

「……いや本当にどうしようかな、これ」

 

 いっそ今日泊まる予定のホテルをキャンセルしてリリィ達がガラル地方に行くまでリベール家のお世話になろうか…とも思った等色々考えるクレハ。しかし当然ながら結論は出なかった。…まぁリリィならば頼めば喜んで止めてくれそうなものだが。

 

「えるる~…」

「フェイ、クレハさんとカイリューが困ってるからおいで」 

「…ぇうっ」 

「聞き分け自体は出来る子ですものね」

「うん、モーアと同じで賢い子だからな」

 

 助け舟のようにかけられたリョウの言葉に、フェイは俯きながらも従い、大人しく抱えられる。

 

「……まぁ、私達はしばらくこの街にいるから、会おうと思えばいつでも会えるから大丈夫だよ〜?」

「りゅん!」

 

 それが見ていられなかったのだろう。クレハは思わずそんな言葉をフェイにかけた。カイリューも同意するように鳴いた。最悪ホテルからここに通えばいいと無理やり結論づけたりもして…クレハの人の良さがよく出ていた。

 

「るふ? …えう~!」

「調子いいんだからなあ…」

「ですわね」

 

 それを聞いたフェイは嬉しそうに顔を綻ばせてから、クレハに抱き着く。そのもふもふした体を存分にクレハに押し付けていく。現金なフェイに流石の2人も呆れ気味だが…

 

「わわっ! ……うーん、すっごいもふもふぅ…」

「りゅん…りゅおん」

 

 クレハの方はあっさり陥落である。抱き返しながらももふもふを存分に堪能しており…それを見ていたカイリューは思わず苦笑い。しかしリョウとリリィの方を向いてからしばらくよろしくと伝えるように鳴いてから、2人にお辞儀した。長生きだけあってとても丁寧なお辞儀だ。

 ……これにて、リョウとリリィがガラル地方に行くまでの少しの期間に、もう1人居たのは語るまでもない




続くように見えますが、グレイブが居ないので一応コラボはこれで終わりです。(番外編という形でこれの後日談をやるかもしれませんが)

というわけで次回からはカロス修行編か番外編のどちらかにに入ります。
ロザミアさん、愛月花屋敷さん、コラボにお付き合い、ありがとうございました!


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カロス地方編 ACT1 プラターヌ

今回からカロス地方編、始まります。


 

「おーい? 聞こえてるー? 聞こえてるなら一旦降りて欲しいなー!?」

 

 クレハは自身を〝吊るしながら〟飛行しているポケモンに降りて欲しいと頼むも…ポケモンは聞き入れずに無視を決め込み、水流を放出しながら何処かへと飛んでいく。

 

「はぁ…なんでこうなっちゃったんだろ…これも外れないし…はぁ〜……」

 

 無視されたクレハはため息をつきながら腹に巻かれた鉄製の輪を指でつつきながら何故こうなったのかと再びため息をつき、同じ輪が巻かれたポケモン…ボルケニオンを見つめるのだった。

 

 何故このような事態となったのか、それは十数分程前に遡る……。

 

 

「カロス地方へようこそ、クレハちゃん! 僕はプラターヌ! ここカロス地方のポケモン博士さ。話はカツラさんから聞いているよ? 修行ついでに僕の仕事を手伝って貰うからね」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 色々あったイッシュ地方を後にして、ジムリーダーになる為に修行先であるカロス地方の大都会ミアレシティまでへとやってきたクレハを出迎えたのは、世界に名だたるポケモン博士の1人…プラターヌだ。

 どうやら彼の仕事を手伝いながら、修行をするらしくクレハはやる気十分に頷いてみせる。

 

「ははっ、中々に元気のいいお嬢さんだ。じゃあ早速フィールドワークに行こうか! ちょうど行こうと思っていた場所があるんだよ」

「はい! ところでフィールドワークといってもどこに?」

「ああ〜…行く場所はね、ネーベル草原という所さ。広く、のどかな場所でね。ポケモンも沢山居るからクレハちゃんの修行にもなると思うよ!」

「あ、ありがとうございます!」

「どういたしまして! では行こうか!」

「はい!」

 

 どうやらクレハの修行が捗る場所を仕事先に選んでくれたらしくそれにすぐ気づいたクレハはプラターヌに礼を言い、プラターヌは笑顔で言葉を返してから改めて行こうかと訊き、クレハも元気よく頷く。少しの準備をしてから2人は早速ネーベル草原へと向かっていった。…ちなみに移動はカイリューでである。

 

 

「わぁ…」

「どうだい? 綺麗な景色だろう!」

「はい! ポケモンもいっぱい…」

「気に入って貰えたようでよかった。…さて、フィールドワークに取り掛かかろうか! …まぁ手伝いと言っても野生のポケモンに襲われた時のボディーガードを任せてもらうんだけどね」

「わかりました!」

「はは…っ(本当に元気のいいお嬢さんだ。カツラさんが気にいる訳だ)」

 

 目に広がる広大な草原にヤヤコマ等の様々なポケモン達。プラターヌは大げさに両腕を広げ、クレハはただただその景色を見入る。それほどまでにネーベル草原は美しかった。

 プラターヌは見入るクレハに、仕事をしようと伝える。クレハもやると決めたからには出来る限りするつもりだと意気込んでいる。プラターヌは元気のいい返事を聞く度にこれは確かにカツラが好きそうなタイプの娘だとしみじみと感じるながらもフィールドワークに勤しんでいく。しばらくしてから昼となり、大きな湖の前で昼食をしようとするのだった。

 

『ネーベル草原のある場所』

 

「ボルケェェェ!」

「くそっ、待て! 金蔓ぅ!!」

「ドクター! 落ち着けって…!」

「うるさい雇われが! 雇い主の言う事を聞かんか…! 

 ああ、金蔓が、儂の金が逃げてしまう…!」

 

 肥え太った老人が大きな腹を揺らしながらかなりのスピードで走るジープから立ち上がり、水を噴射しながら空へと逃げ出す赤く、巨大な体躯のポケモン…ボルケニオンに待てと叫ぶ。かなり興奮してる様で、今にもジープから飛び降りてしまいそうだ。

 隣の金髪、サングラスが特徴の大男が慌てて老人の手を引っ張り、座らせて落ち着かせようとするが、老人の気は収まらず止めた大男を罵倒する始末だ。

 

「どうか落ち着いて冷静になってください、ドクタープルート」

「なんだ!? 貴様も儂に…!」

「そうじゃありません。ボルケニオンはそろそろ水を切らす筈です。ブソン、この辺りに湖がないか調べて下さい」

「おうよ! 任せな、バショウ! …ああ! デカい湖がある、奴が水を補給するならそこしかねぇ。待ってな、今すぐルートをそっちのカーナビに送ってやる!」

 

 しかしジープを運転していた銀髪の優男…バショウが冷静に状況を判断しながら雇い主…プルートを宥め、大男…ブソンに指示を出す。

 ブソンは粗野な言動と外見と違って機械に強いようで、端末をテキパキと操作し、ジープに取り付けられたカーナビに送信する。

 

「……なぜスマホロトムではないのだ。わざわざ古めかしい端末等使って…」

 

 今のやり取りを見てようやく落ち着きを取り戻したプルートは時代遅れとも言うべき端末を使用する、自らが雇ったポケモンハンターのコンビに問いかける。

 

「スマホロトムじゃあな、足がつきやすいのさ。だからこういった場合はこれらの機械の方が向いてるって訳よ! なぁ、バショウ!」

「その通りです。ボルケニオンを追いましょう」

 

 隣のブソンが得意げに答え、バショウはブソンから送られたルート通りに車を走らせる。

 元ギンガ団の科学者と元ロケット団の特殊工作員という地方を超えた悪達との邂逅は近い…

 




遅くなってすみませんでした。これからはなるべく早く更新がしたいです(切実)

クレハ
ジムリーダー修行中。ほのおタイプのジムリーダーになるならファイアローを真っ先にゲットすべきだと作者は思う

プラターヌ博士
皆さんご存知な言わずと知れたカロス地方のポケモン博士

バショウ、ブソン
元ロケット団の特殊工作員。ロケット団解散後は現在ポケモンハンターとしてあちこちの地方を飛び回っている

プルート
数年間の逃亡生活で若干痩せた元ギンガ団の科学者のおじいちゃん。幻のポケモン、ボルケニオンを捕まえる為にバショウとブソンを雇った模様。行動原理は昔と変わらず金


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カロス地方編 ACT2 ボルケニオン

DLC、良いのう…(タロちゃん見ながら)


「〜〜〜♪ はい、プラターヌ博士もどうぞ!」

「いやぁ、悪いね! おお、美味しそうなサンドイッチだ。いただきます!」

 

 一方まさかトラブルが迫って来ている、等とは分からない二人は呑気に食事を取っていた。ちなみにサンドイッチはクレハが作って来たものであり、その回りにはゴウカザル達も出ていて一緒に食事をしている。

 

「ぎら! ぎらぎらー!」

「よしよし、ちゃんと食べれて偉いね、バンギラス」

「ぎらー…♪」

「中々にインパクトがあるねぇ、甘えん坊のバンギラスだなんてさ」

「あー…やっぱりそう思います? でもこの子はこの子ですから」

 

 もきゅもきゅと特性のポケモンフーズを食べてからクレハに頬擦りをして甘えてくるバンギラスの頭をよしよしと撫でるクレハにプラターヌは微笑みながらそう伝えてきて、クレハはバンギラスを撫でるのをやめずに笑みを浮かべてそう言葉を返す。バンギラスは一般的には凶暴で知られるポケモンだから不思議な光景と言われても仕方ないのだ。クレハ自身、その反応はもう見慣れたもの。しかし家の子はこうなのだと答えていく。

 

「なるほど! きっと育て方がよかったんだろうね、流石育て屋さんだ」

「いや、まぁ…えへ…卵から育てたから本当に可愛くて可愛くて…」

「ははは、立派なママじゃないか」

「からかわないでくださいよ! あ、でもママって言われて悪くないかも…」

「ぎらー?」

「こままー」

 

 それを聞いてプラターヌは育て方がよかったのだなと結論し、クレハは照れながら親バカのような発言をする。そこから更にプラターヌはからかうように立派なママと言うも、クレハは育て屋的には悪くないかもしれないと考える。

 一方撫でられて夢見心地なバンギラスは二人の会話の意味がわからないようで、首を傾げていたが…そんな彼女の頭に一匹のヤヤコマがちょこんと座り込んだ。

 

「ぎらら?」

「あれ、このポケモンは…?」

「ヤヤコマだね。ご飯の匂いに釣られてきたんだろう。それにしても珍しい光景だ、ヤヤコマがバンギラスの頭の上に乗るとはね」

「ぎららー」

「こまま? こまっ、こまっ…」

「ぎら♪」

「うきゃきゃ、うきゃ!」

 

 バンギラスは自分の頭の上に乗ってきたヤヤコマにどうしたのー? と声をかけるように一鳴きし、カロス地方のポケモンをあまり知らないクレハはやってきたヤヤコマに首を傾げ、プラターヌは来た理由を予測しながら珍しい光景だと言うも…プラターヌの言葉にお腹を空かせてるのかなと解釈したのか、バンギラスは自分のポケモンフーズをすっとヤヤコマに差し出し、ヤヤコマはすんすんとポケモンフーズの匂いを嗅いでから嘴でつっつくように食べ始める。 美味しい! と笑顔になる。それを見たバンギラスはでしょーとはにかむような笑顔を見せる。それを見ていた他の手持ち達はほっこりしながらもゴウカザルはヤヤコマに歩み寄って、僕のもお食べとばかりに自身のフーズも差し出し、ヤヤコマも嬉しそうに食べ始める。

 

「…仲良くなったみたいだね」

「ですね。ほっこりします…かわいい」

「ならあのヤヤコマをゲットするかい?」

「あの子が一緒に来ることを望むならそうします」

 

 そこはやはりヤヤコマの気持ち次第だと言ってから、サンドイッチを食べ始める。そうかそうかとプラターヌは何度も頷きながらサンドイッチをいち早く食べ終えるとある資料を広げ始める。

 

「よし、そんなクレハちゃんに面白いものをみせてあげよう」

「面白いもの?」

「ああ、ほのおタイプを扱うジムリーダーになるなら絶対興味を示すだろうと思ってね。これを持ってきていたのさ」

 

 説明しながらプラターヌは広げた資料をクレハに見せる。そこに描かれたそれは大きく、立派な四股と体躯に…背には巨大な輪のようなものを生やした赤いポケモンだ。

 

「このポケモンはボルケニオン、と呼ばれるポケモンさ。所謂幻のポケモンと呼ばれていてね、タイプは何とほのおにみず!」

「ほのおとみずの複合タイプ…! 確かに珍しいですね、こんなポケモンが手持ちに居たら凄く戦いやすいんだろうな…」

 

 ボルケニオンが居たら戦いやすい、とクレハは称した。例外はあれど、これからはタイプをほのおで固めなければならないクレハからしたらボルケニオンはゲットしたいポケモンだろう、しかし…

 

「幻、なんですよね…それに会えてもついて行くかはボルケニオン次第だろうし…」

「(無理やりゲットしようと考えさえしない当たりこの子はいい子だな、本当に…)まぁ、仕方ないさ。そうそうボルケニオンはこの背中はいわばホースになっていてね──」

「……りゅん!」

 

 ははっと笑いながらもプラターヌは説明を続けようとするも…のんびりと空を見つめていカイリューが立ち上がり、2人を守るように前まで歩き出す。カイリューだけではない、ゴウカザルやガブリアスを含めた手持ち達…更にはプラターヌのゲッコウガまでも警戒を顕にする。唯一バンギラスだけは仲良くなったばかりのヤヤコマを守るように抱いている。

 

「ゲッコウガ?」

「み、みんなどうしたの? ってええ!?」

「───ボル」

 

 どうしたんだと首を傾げる2人はポケモン達が向けてる方に視線をやり、目を剥いた。そこには水を噴射しながらゆっくりとこちらに降りていくこちらを睨みつけているボルケニオンの姿が居たから──




なるべく週1、とまでは行かなくても投稿は早めに出来るように努力します


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