出オチ丸奇烈伝 (チャクラコントロールに全振りでござる)
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暗部に顔見せでござる~対うちはイタチ
演習場を吹き抜ける草原の風が気持ちいいでござるなぁ……。
今日は暗部の仲間達に顔見せをする日でござる。
上忍就任と同時に暗部入りを指名される……素晴らしいでござるな、拙者の実力を高く評価して貰っているみたいで嬉しいでござるよ。
「拙者の名は出オチ丸でござる、特技はチャクラコントロール、好きな食べ物はおむすびでござる」
自己紹介を済ませたのに、何故か隊長が黙ったままでござる。隊長も名を名乗って欲しいでござるよ。
「あ、あぁ……そ、その名前は親から付けられたのか?」
「拙者は孤児であるが故、自分で付けた名でござる。名は体を表す通り、敵を出オチさせるのが得意でござるよ」
何故か隊長は仮面越しでもわかる程、沈痛な表情をして拙者を見ているでござる。
体調が悪いのでござるかな? 拙者、医療忍術も多少齧っている故、頼って欲しいでござるよ。
「いや、いい……俺の名ははたけカカシだ。医療忍術が使えると聞いているがどの程度だ?」
「綺麗に切断された手足をぴったんこさせるのが得意でござる、後は簡単な止血と薬剤調合ぐらいでござるな」
カカシ隊長はしばらく考え込んでしまったでござる、拙者の運用方法でも考えているのでござるかな?
カカシ隊長は見るからに頭が良さそうで羨ましいでござる、拙者は頭よわよわでござるからなぁ……。
「よし、次はお前の戦闘能力を見せて貰う」
「カカシ隊長と模擬戦でござるか?」
拙者がそう尋ねると、カカシ隊長は視線で後ろの方を見た。
そこには暗部の仮面を身に付けた幼い少年が立っている。
「見るからに強そうでござるな、拙者震えてきたでござるよ……名を名乗って欲しいでござる」
「……うちはイタチ」
うちは一族でござるか、幻術や火遁が得意な名門忍者でござるな。
うちはの幻術は指を見ただけでアウトと聞くでござる、感知は鼻さえあれば十分故、目は閉じておくでござる。
「俺が投げたクナイが木に刺されば開始だ」
クナイが木を穿つ音が響き、続いて生ものが草原に落ちた時に聞こえる、ボトリという音が響く。
「……っ!?」
「勝負アリでござるな、さすがのうちは一族も両手首が落ちれば終わりでござる」
まぁ、拙者が既に幻術の術中に落ちてなければの話でござるが……。
カカシ隊長が決着の宣言を出すまでは目は絶対に開けないでござる。
なんて思っていると、すぐにカカシ隊長が審判を出したでござる。
流石に目を開けるでござるが、これが幻聴だったら拙者敗北でござるな?
「直ぐに止血をっ! おい出オチ丸! お前の出番だ!」
焦ってるカカシ隊長が、手首の断面から血を噴水のように噴き出して茫然と立ち尽くすイタチ殿の手首の血管を押さえながら拙者に叫んでいるでござる。
「う~ん、これは現実でござるよね?」
「当たり前だ! さっさとしろ!」
カカシ隊長にどやされた拙者は、イタチ殿の手首を縛り、地面に落ちているイタチ殿の手首を拾って断面を口寄せした滅菌水で軽く洗う。
「すぐにぴったんこするでござるよ、もう暫く辛抱するでござる」
断面をくっつけ、慎重にチャクラを流せば直ぐに元通りでござる。
何万回もやった作業故、楽勝でござるな。
続けてもう片方の手首も同じように処置をして、イタチ殿に造血薬を飲ませる。
「だいぶ失血したでござるし、帰って輸血を受けると良いでござるよ」
「あ、あぁ、すまない……」
カカシ隊長から許可を貰ったイタチ殿が病院の方向へ帰って行くでござる。
これは幻術ではないでござるよな? 完全勝利でござるよな?
「……お前の戦闘スタイルは良く分かった、出オチ、出オチね……」
その通りでござる、最速の瞬身で敵に接敵して、チャクラメスで首を落として敵を出オチにする。
拙者が出来るのは、ただこれだけでござる。あとは細々としたアフターフォローだけでござるな。
ちなみに殴られれば拙者が出オチするでござる。
「お前の能力は分かった、必要時に呼び出すから備えをしておけ」
「了解でござる」
顔見せが無事に終わってよかったでござる。
如何な任務も粉骨砕身頑張る所存でござるよ。
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暗部のお仕事
里の住民を見ていると仕事のモチベーションがもりもり湧いてくるでござるな。
拙者に割り振られたお仕事は里内の警備と諜報でござる。
チャクラで目、耳、鼻を強化すれば一歩も動かずに里の中の情報を集める事が出来るのでござる。
チャクラコントロールが得意な拙者にはもってこいのお仕事でござるな。
まぁ警備の専門はうちは一族でござるから、拙者は通報するだけでござるが……。
後はスパイとか抜け忍の発見もお仕事の内でござるな、所謂諜報でござる、対象は里内でござるが。
こちらの方は大事そうな情報をそのままカカシ隊長に渡すだけでござるな、所謂通報でござる。
拙者、通報しかしとらんでござるな。
◇ ◆ ◇
夜風は少し寒いでござるな。
森の中はマイナスイオンたっぷりの素敵空間でござる故、プライベートであれば虫の声を肴にお酒でもちびちびとやっているところでござるが、今日の拙者はオフィシャル暗部でござる。
風流で枠のあるお楽しみタイムはおあずけでごさるな。
さて、今日のお仕事は木の葉の抜け忍を抹殺する事でござる。
本人達の話によると下手人は二人組で、木の葉に保管されている適当な禁術の巻物を二三本盗んで、雲隠れに亡命するつもりのようでござる。
拙者は頭よわよわ故、その計画が上策なのか下策なのかは分からんでござる、分からんでござるが……。
雲隠れを亡命先にするのはちょっと微妙だと思うのでござる、あの里はブラックだと噂になっているでござるが故。
他所の里を見ても、やっぱり木の葉が一番良いと思うのでござるが……まぁ、木の葉もブラックなところはあるでござるからなぁ……。
どこも世知辛いでござるなぁ……。
なんて事を考えていると、噂の彼奴がやってきたでござる。
一応貰った人相書きと比較してみるでござるが、間違いないでござるな。
それにしても、流石カカシ隊長でござるなー、逃走経路を予測して予め部下を配備するとは……恐ろしい神算鬼謀でござるよ。
生死は問わないと言われている故、さっくりと首を落としておしまいでござる。
「……ェ?」
必死に走る男達の首に赤い筋が走り、零れ落ちるように首がポトリと転がる。
抜け忍の証である、傷が一本入った額当てが地面に転がり、ドクドクと脈打つ血潮に沈んで行く。
「よしよし、しっかりと死んだでござるな」
清浄な森が一気に生臭くなったでござるが、これはもうしょうがないでござるな。
連絡用の花火を空に一発上げて、拙者の任務は終了でござる。
後は死体回収班に引き継いで、簡単な書類を書いておしまいでござるよ。
死体の傍でチャクラを弄りながら待っていると、すぐに死体回収班と、カカシ隊長がやってきたでござる。
わざわざ遠くまでご苦労様でござるな。
「お疲れ様、このぐらいは楽勝か」
「カカシ隊長、お疲れ様でござる。奇襲は拙者の最も得意とするところでござる故、やりやすかったでござるよ」
適正な仕事を振って貰えてありがたいでござる、今後ともよろしくおねがいするでござる。
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暗部のお仕事~うちはシスイ救出
何時食べてもおむすびは最高でござるな。
熱いお茶と塩おむすびのセットが出てくるこのお店は拙者のお気に入りでござる。
さて、お食事中の拙者でござるが、チャクラで耳を強化している故、この状態でも諜報活動は可能でござる。
最近はうちは一族の動きが怪しいでござるな。
今もうちは一族の頭首であるフガク殿が、イタチ殿にアレコレ指示を飛ばしているみたいでござる。
もう怪しいを通り越えて、完全に謀反でござるな。
まぁそれだけならフガク殿を暗殺するだけで良いのでござるが、事態はそんなに単純ではないみたいでござる。
どうもこの謀反は個人間での温度差はあれども、うちは一族全体の総意みたいなのでござる。
つまり決してフガク殿の個人的な考えではなく、むしろフガク殿は暴走寸前のうちは一族の押さえ役……みたいな感じでござった。
まぁ士気が滅茶苦茶高いって事でござるな、指揮官の手に負えない程に。
この状況でフガク殿がいなくなれば、うちは一族は確実に暴走するでござろう、頭首暗殺は悪手でござるな。
でもそれだけなら一族を丸ごと消せば良いだけでござる……まぁちょっと勿体ないでござるが。
しかし、火影様が平和的な解決を望んでいるのでこちらからも手が出せないのでござる。
火影様はお優しいでござるからなぁ……粛清を主張する他の上層部も火影様が抑え込んでいるみたいでござる。
まぁ拙者に政治は分からんでござる故、今まで通り諜報と報告をするだけでござるな。
◇ ◆ ◇
水面に映る空の色が綺麗でござるなぁ、まるでもう一つの世界が向こう側にあるみたいでござる。
そんな水面に釣り糸を垂らして、今日の晩御飯に思いを馳せる時間は最高に充実した時間でござる。
沢山釣れれば明日の朝ご飯にも回せるでござるな、朝のおかずが一品増えて、拙者の笑顔も一つ増えること間違いなしでござる。
さて、今はシスイ殿が刺客に襲われているみたいでござるな。
いつも通り、うちは警務部隊に通報したいところでござるが、これはちょっと政治的な理由でマズいでござるな、流石に拙者でも分かるでござる。
とりあえずカカシ隊長と……火影様に連絡でござるな。
そうそう、通報用に鳥を何匹か捕まえて口寄せ契約を結んだのでござるよ、口寄せ動物は便利でござるな。
取り急ぎ、拙者は現地に向かうでござる、釣り竿とバケツは置いて行くしかないでござるなぁ……。
とほほ……でござる。
◇ ◆ ◇
超音速瞬身には四つ重大な問題点がござって、一つは衝撃波で全身がむちうちになることでござる。
故に、音速以上の移動はチャクラか風遁で膜を作る必要があるのでござる、まぁ潤滑剤兼緩衝材みたいな感じでござるな。
そして二つ目でござるが、衝撃波は大変に煩いのでござる、超音速でござるから奇襲には問題ないのでござるが、近隣住民に大変な迷惑が掛かるのでござる。
騒音問題はどうしようもない故、住宅街では音速ギリギリで抑え、森に入れば加速でござるな。
さて、そんな感じで大急ぎでシスイ殿の元まで駆けつけ、そのままの勢いで刺客達の手足を一本ずつ丁寧に切り飛ばすでござる。
衝撃波に巻き込まれて断面がぐちゃぐちゃに潰されるでござる故、もうぴったんこは出来ないでござるが、これは仕方のないことなのでござる。
なーに、直ぐに止血すれば死にはしないでござるよ、首さえ残っていれば尋問は出来るでござるし何の問題もないでござるな。
「ッ!? ……この手口は出オチ丸か、すまない助かった」
突然の加勢にシスイ殿は戸惑っていたでござるが、すぐに冷静さを取り戻したでござる、流石でござるな。
殺し殺されは忍の常でござる故、助け合いは何よりも大切なのでござる。
お互い様故、礼はいらぬでござるよ、生き延びたその命で今度は拙者を助けて欲しいでござる。
「シスイ殿も大変でござるな、怪我はないでござるか?」
「ああ、にしてもこいつらは……根の者か」
「すぐ傍にダンゾウ殿がいるでござるよ、撤退中みたいでござるが……捕まえるでござるか?」
気軽に聞いただけなのでござるが、シスイ殿はしばらく考え込んでしまったでござる。
シスイ殿は聡明故、拙者では思いも付かない深謀遠慮を張り巡らせているのでござろうな。
さて、シスイ殿が長考している間に拙者は気絶している刺客達の止血と自殺防止の猿轡を噛ませるでござるよ。
四肢切断からの猿轡でも死ねる方法を用意しておかないとは、ダンゾウ殿も詰めが甘いでござるなぁ。
「いや……ダンゾウは腐っても木の葉上層部だ、無策で手を出すのはあらゆる意味で危険だろう」
確かに政治的に危険でござるな、了解でござる。
「では、拙者は刺客達をカカシ隊長と火影様の元に運ぶでござる……手伝ってくれるでござるか?」
「あぁ、行こう……」
火影様も水晶で見ている筈でござるし、刺客達も全員生き証人になってくれるでござる故、何も心配はいらぬでござるな。
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ダンゾウ粛清~三里同盟
常在戦場は忍者の理想でござるが、忍者も息抜きぐらいはするでござる、具体的にいうと飲み会でござるな。
今日はカカシ隊長とシスイ殿とイタチ殿とで一緒に飲み会でござる。
未成年も参加しているでござる故、節度を持って楽しむでござるよ……未成年の飲酒やアルハラは厳禁でござる。
「いやぁ、一時はどうなる事かと思ったけど、なんとか丸く収まってよかったよ」
「襲われた俺が言うのも何だが、ダンゾウが暴走した御陰だな」
「あの日以来、一気に事が動いたでござるな、正直目が回りそうな勢いでござるよ」
ダンゾウ殿が企画したシスイ殿暗殺計画は火影様の怒りを買ったでござる。
本気で怒った火影様は穏便に済ませようとする他の上層部達を一睨みで黙らせ、根の調査と解体を決行したのでござる。
根の調査によって色々と民衆には見せられない実験や所業が見つかって、火影様の怒りの炎に油が注ぎ込まれたのは言うまでもないことでござるな。
まぁ非道な実験や所業より、うちはをこっそり扇動して、粛清されたうちは一族から出る大量の写輪眼をおいしく戴く、漁夫の利計画が露見した事が大きいようでござるが。
当然、ダンゾウ殿は指名手配されたのでござるが、お優しい火影様はそれでも命までは取らなかったでござる。
しかし、失脚したダンゾウ殿を危険視した他の上層部……うたたねコハル殿と水戸門ホムラ殿の命により、ダンゾウ殿は抹殺されたのでござる。
ちなみに暗殺を担当したのは拙者でござるよ。
当初はシスイ殿にやらせるつもりだったようでござるが、シスイ殿本人からうちはの者が手を掛けるのはあまりよろしくないと進言したみたいでござるな。
そして、シスイ殿の指名で拙者にお鉢が回ってきたのでござる。
ダンゾウ殿の暗殺は……まあ、いつも通り感知探索からの不意打ち首落としでござったな、特に問題は無かったでござる。
そしてフガク殿に根の新編成と統率を命じたのでござる、つまり亡きダンゾウ殿のポジションにうちはフガク殿が就任した形でござるな、フガク殿は大出世でござる。
これには流石に他の上層部も難色を示したのでござるが、マジギレモードの火影様に無理矢理押し切られていたでござるな。
離れたところで聞いていただけの拙者もおしっこちびりそうな怖さだったでござるよ、流石は最強の忍者と噂される火影様でござるな。
「激動の数日だったな、上層部クラスの粛清は流石に事後処理も莫大だった……だが、一族と里との間でギリギリの綱渡りやるのに比べればどうって事ないけどな! ホント良く死ななかったな俺達!」
「これからは里とうちは一族が手を取り合えると素敵でござるな」
「ああ……だが父さん……フガクは大きな発言権と武力を持った穏健的急進派だ、上層部にフガクが就任した事は他里を大きく刺激するだろう」
「そっちも頭が痛いな……出オチ丸、他里の侵入者は増えているか?」
「そうでござるなぁ……侵入者はいないでござるが、里の結界ギリギリをうろうろしている忍者なら何人かいるでござるな」
今は岩と雲と雨が来ているみたいでごさるな、遠路遥々御苦労でござる。
結界に一歩でも入った瞬間に手足を切り落としてやるでござる故、早く入ってくるが良いでござるよ。
「ま、間者は暗部やうちは一族がどうにかするとして、問題は他里の上層部だな……特に雲隠れ」
雲と岩は国土が近い上に、総武力も似通っているでござるから、しばしば木の葉と敵対していて小競り合いや戦争が絶えぬのでござる。
フガク殿を含む木の葉上層部は、今のところ他里と争うつもりはなさそうでござるが、他里の考えはわからんでござるからなぁ……。
「雲隠れと木の葉はかなり仲が悪いでござるからなぁ……」
「日向事件もまだ大衆の記憶に新しいしな……」
「うちはと火影の結束が強まった今の木の葉は正直強すぎると言っても良い、恐らくは岩と雲が結託して……」
うちは騒動が収まってほっとしたのも束の間、話がドンドン悪い方向に転がって行くでござる。
内乱が終われば、次は他里。何時の世も戦争でござるなぁ……。
◇ ◆ ◇
今日も平和でござるなぁ……他里の間者は全然侵入してこなくなったでござるし、うちは一族が張り切っているでござるから治安も抜群に良いでござる。
さて、あれから更に何週間が経ってようやく里は落ち着きを取り戻したのでござる。
イタチ殿とシスイ殿は、てっきりフガク殿の直轄暗部になるのかと思っていたのでござるが、なんと火影様の直轄になったでござる。
つまり、二人は相変わらず二重スパイ生活でござるな。
まあうちは一族と里との間を取り持てる忍者は少ないでござるからなぁ……。
ちなみに拙者の所属は相変わらずカカシ班でござる。
ところで、問題視していた他里との外交でござるが、木の葉隠れの里はまさかの雲隠れの里に強固な同盟を持ち掛ける方針みたいでござる。
まあ雲隠れは五大国の中でもトップクラスの武力と財力を持っているでござる故、同盟を組めればとても心強いでござるな。
ところで、雲隠れを抱える雷の国は文明が進んでいる、とても強大な国なのでござるが、山々が連なる土地という事もあり、食料に乏しい国でもあるのでござる。
一方、木の葉隠れを有する火の国は平坦で広大な国土を持ち、毎年莫大な量の穀物や農作物を産出している国なのでござる。
これは雲が木の葉を侵略する理由の一つでござろうな。
そこで、火の国で取れた大量の農作物を雷の国に輸出するのでござる。
雷の国はとてもお金持ちでござる故、火の国は儲かるでござるし、雷の国も頭を痛めていた食糧難を一発解決出来るのでござる。
まあそれだけだと雷の国が貿易赤字でござるし、火の国は雷の国の優れた機械や道具、良質な鉱石等を輸入するみたいでござるな。
御陰で、手裏剣や刀などの忍具や薬剤等も良いモノが入って来ているでござる。
里と国は建前上は同等でござるが、やっぱり財布を握っている国の方が実質的な立場は上でござるからなぁ……。
国同士の利害が合致すれば、里同士も自然と仲良くなるというわけでござるな。
ちなみにこの方策は全部フガク殿が考えた策でござる、クーデターを成功させた後に始動させる予定だったのでござろうな。
外交問題は一先ずこれで落ち着きそうでござるな、木の葉・雲・砂の三里同盟には流石の岩隠れも簡単には手を出せないでござろうからなぁ……。
霧隠れは内乱でそれどころではなさそうでござるし、しばらく忍界は平和でござろうな。
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暗部のお仕事~火影の護衛
砂漠の日差しは厳しいでござるな、地面からの照り返しも合わせて、里に帰る頃には拙者真っ黒になってしまいそうでござる。
さて、フガク殿が立案した木の葉と雲との交易同盟は小国等の妨害もあったでござるが、概ね上手く行っているでござる。
木の葉・雲・砂の三里同盟を正面から相手取れる里は恐らく存在しないのでござる、この状況に岩はかなり焦っているでござろうな。
岩と木の葉は名目上は和平条約を結んでいるのでござるが、隙があれば遠慮なく条約を破棄して侵略してくるでござろう。
忍者の歴史と文化とは、そういうものでござる故。
でござるのだが、今の木の葉に隙は無いのでござる、無いでござるので、岩やその他小国は隙を作るような裏工作を仕掛けてくるでござろうな。
差し当って、思い付くのは砂隠れの里でござる。
砂は砂漠という厳しい国土に加え、大名が軍縮を掲げている国という事もあって、経済的にも軍事力的にも、かなりの弱小国でござる。
故に木の葉と同盟を組んでくれている訳でござるが、同盟なら別に木の葉じゃなくて岩と組んでも良い筈でござる。
つまり、三里同盟を崩すなら砂に離間計を仕掛けるのが一番でござる。
幾ら砂が弱小とは言え、これがマズいことなのは子供でも分かる事でござるな。
砂の離反は木の葉に後顧の憂いを生むだけでなく、木の葉・雲同盟 対 岩・砂同盟という第四次忍界大戦すら誘発するでござろう。
少なくとも木の葉上層部はそのように考え、砂との同盟を強化していく方針を固めたのでござるな。
まあ、簡単に纏めると、これからやる事は砂への浮気防止対策って事でござるな。
雷の国と同様に食料の輸出が出来れば楽なのでござるが、砂隠れを有する風の国は貧乏な国でござるからなぁ……。
更に風の国は産業も乏しいでござる故、輸入出来るモノが乏しいのでござる、まあ砂金ぐらいでござろうか?
本当に厳しい国でござるなぁ……よく今まで滅ばなかったでござるな……。
領土を占領しても旨みが少ない事も関係しているのでござろうな……悲しいでござるなぁ……。
そんな訳で、砂とは軍事同盟で行くみたいでござる。
具体的には、今まで通りの戦力の相互貸し出しと……砂が頭を抱えている尾獣問題の解決協力でござるな。
砂は尾獣である一尾とその人柱力を有しているのでござるが、この封印式がガバガバで、事ある毎に一尾が暴走しているのでござる。
風影殿が出動すればすぐさま鎮圧出来るそうなのでござるが、それでも毎回死傷者や負傷者が出ているのだとか。
貧乏な里でござるから物損の被害も馬鹿に出来ないでござろうし、中々頭の痛い問題でござろうな。
そこで木の葉が封印式を再構築して、意図せぬ暴走を防いであげるのでござる。
ちなみに完全に封印しないのは、暴走も尾獣の大切なお仕事の一つだからでござるな。
という訳で、木の葉から封印術に長けた忍者を派遣する運びになったのでござるが……。
「ほほほ、砂漠の暑さは年寄りには堪えるのぅ!」
なんと三代目火影様が直々に足を運ぶ事になったのでござる。
確かに文句無しの最強封印術師でござるが……このタイミングで里を留守にするとは、中々出来る事ではないでござるよ。
ちなみに、護衛役としてはうちはイタチ殿とうちはシスイ殿、そしてカカシ隊長と拙者が来ているでござる。
うちはフガク殿に里を預けて、護衛にうちは二名を連れて他里に赴く。
完全にうちは一族を、そしてフガク殿を信頼していないと出来ない事でござるな。
……同時に、これはうちはと里との結束は固いという対外的なアピールなのでござろうな。
火影が直接行くと言うのは、砂に対しても木の葉の誠意を見せる良い方法でござる。
ただ同時に、砂からしても木の葉の最高戦力を懐に入れ、尾獣の封印式を弄らせるというのは大きな賭けでござろう。
この博打、失敗すれば両里は滅ぶでござるが、成功すれば向こう二十年の安寧が約束されるでござろうな。
◇ ◆ ◇
砂の里は木の葉とは気色が随分と違うでござるな。
木の葉は木造の建物が殆どでござるが、砂隠れは粘土や岩で出来た建物が多いでござるな。
この辺は国土と、それに付随した文化の違いでござろう、異文化は見ていて飽きぬでござるなぁ……。
さて、火影様がいるから国賓待遇でござるが、拙者のお仕事は護衛でござる故、気は抜けぬでござるな。
ちなみに今の拙者達は面を外しているでござる、これも誠意アピールの一環でござるな。
しばらく一緒に食事を楽しんだのち、風影殿自ら人柱力が控えている部屋に案内してくれたでござる。
狭くはないでござるが、広くもない、住みやすそうな部屋にいたのは、まだ幼い少年でござった。
「私の息子です、そして……一尾・守鶴の人柱力だ」
「初めまして、儂の名は猿飛ヒルゼンじゃ、お主の名を教えて貰っても良いかの?」
「……我愛羅」
少年の目線に火影様が顔を合わせ、微笑みかけているでござる。
火影様はアカデミーに顔をよく出しているでござるし、子供の扱いは得意なのでござろうな。
「儂等は我愛羅君の御父上から頼まれてここにいるんじゃ、少しお邪魔させて貰っても構わんかの?」
「何をするの……?」
我愛羅殿には若干の怯えが混じっているでござる。
無理もないでござるな、いきなり自室に大の大人が何人も押しかけて来たのでござるから。
「我愛羅君のお腹の中に住んでいる生き物が、気持ちよく眠れるようにサポートするのじゃよ」
「……殺すの?」
「殺しはせんよ、傷付けもせん、簡単には表に出て来れなくするだけじゃ、約束する」
「……分かった」
「では、始めようかの」
火影様が巻物を取り出し、儀式用の台座を口寄せする。
金の装飾に蝋燭が八本並びたてられたそれは、木の葉の人柱力であるナルト殿にも使われた四象封印の台座でござるな、ただこちらは我愛羅殿に合わせて少し大き目のサイズでござるが。
我愛羅殿に台座の上で横になってもらい、火影様が拙者達に目配せで合図を送る。
「水遁・睡眠霧の術!!」
「「「幻術・写輪眼!!」」」
我愛羅殿を火影様が術で強制的に眠らせ、出てきた尾獣人格をカカシ隊長とシスイ殿、イタチ殿の幻術で縛り上げる。
三対一で不意打ちとはいえ、尾獣にすら通用する写輪眼の幻術は恐ろしいでござるなぁ……。
「よしっ、ぱぱっと行くぞ! 二重四象封印!! 更に封印式・解!!」
火影様が我愛羅殿に元から刻まれていた封印式の上から二重の四象封印を重ね掛けし、最後に従来の封印式を解体。
超高等忍術のオンパレードをさらっとやるあたり、プロフェッサーの異名は伊達ではないでござるなぁ……。
やっている事の凄まじさを理解したのか、後ろで見守っていた風影殿やその護衛達の生唾を呑む音が聞こえるでござる。
四人が集中している間の護衛を務める拙者ですら、思わず見入ってしまいそうになる程でござるからなぁ……。
「ふぅっ、一先ずはこれで安心じゃの……あとは封印鍵を作るかの」
火影様が懐から巻物を取り出して開き、その表面に右手を押し付ける。
出来上がった封印鍵の巻物を紐で縛り、風影殿に手渡す火影様。
巻物を受け取る風影殿の手が、微かに震えているでござるな……。
「封印式は四象封印を二重に組み合わせた八卦の封印式。四代目火影が木の葉の人柱力に使用したものと同じ式です。封印鍵を利用すれば……意図的な暴走も可能です」
丁寧に説明している火影様の目が全く笑っていないでござるな……幼い子供を尾獣兵器にする事が気に食わないのでござろう。
暴走を念押しするのは、木の葉も同じ事が出来るって言いたいのでござろうな、裏切れば、お前の国で九尾を暴走させるぞ……と。
そうならないようにお祈りするでござるよ、平和が一番でござるからなぁ……。
……まあ、砂相手なら尾獣無しでも平押しで勝てそうでござるが。
弱小国は辛いでござるなぁ……。
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帰里~本編開始
入里が国賓待遇なら、出国も国賓待遇でござる、まあ国じゃなくて里でござるが。
余った時間で砂の名産品を貰ったり、逆に木の葉の名産品を渡したりしたでござる。
砂金を溶かして作った純金製の守鶴人形を貰った時は、火影様の顔が若干引き攣っていたでござるな。
木の葉が持ってきたのはうちは煎餅とかでござる故、価値の落差がとんでもないでござる。
木の葉も対抗して九尾殿の純金像を持ってくるべきでござったな……やられたでござる。
ちなみに、守鶴人形は依頼受付室に飾る予定でござる、木の葉と砂の友好の証でござるな。
そして、行きと同じく帰りも色々な輩に襲われたでござるが、特に問題は無かったでござる。
里の方も特に問題は無かったみたいでござるな、若干の侵入者がいたぐらいでござる。
さて、内外共に多少の安定期に入ったでござる故、これからは木の葉も緩やかな軍縮でござる。
その流れでカカシ隊長も暗部の任を解かれて、担当上忍をやるのだとか。
新しい隊長はイタチ殿、もといイタチ隊長でござるな。
ちなみにシスイ殿は今まで通り火影様の直轄でござる、所謂懐刀というやつでござるよ。
拙者は今まで通り、諜報と警備でござるが、最近は暗殺も兼業しているのでござる。
今日もイタチ隊長から誰それを抹殺せよという命令が下されたでござる。
里の外に出る必要があるでござるから、諜報と警備が疎かになるでござるが、拙者が抜けた穴はうちは一族が頑張って埋めてくれるのだとか。
かつては諜報対象だったうちは一族が諜報を任されるようになるとは、世の中何が起きるか分からんでござるなぁ。
◇ ◆ ◇
さて、あれから何年か経ったでござるが、未だに忍界は平和でござるな。
岩隠れの里とも表面上は仲良くやっているでござるよ。
勿論、同盟国の雲や砂とも仲良くやっているでござる。
霧は閉鎖的でござる故、よく分からんでござるな。
そして、最近になってついにカカシ元隊長に部下が出来たでござる。
何人もの下忍をアカデミー送りにしてきた鬼のカカシのお眼鏡に適う下忍がついに現れたのでござるな。
その者達の名は、うずまきナルト殿、うちはサスケ殿、春野サクラ殿でござる。
九尾の人柱力にして四代目火影の息子であるナルト殿、そして、木の葉上層部のうちはフガク殿の息子にして、アカデミー主席のサスケ殿、そして最後のサクラ殿は座学主席だとか。
とんでもなく豪華なメンバーに、最強クラスの上忍であるカカシ元隊長をつけたドリームチームでござるな。
わいわい賑やかなカカシ班を見ていると、拙者も部下が欲しくなってくるでござるなぁ。
寂しい気持ちを抑えて、拙者はさっき捕まえたばかりの犯罪者をイビキ殿に提出するでござる。
イビキ殿は拷問のスペシャリストである特別上忍でござるな、まだ生きてる犯罪者や捕虜は大抵がイビキ殿の元へ行くでござるよ。
残りは頭の中を直接覗けるイノイチ殿であったり、土の下でござるな。
「霧隠れの怪人、干柿鬼鮫だな、確かに受け取った」
「お疲れ様でござるよ、後はお願いするでござる」
さて、拙者は一部始終をイタチ隊長に報告しないとでござる。
そう思ってイタチ隊長がいるうちはの屋敷へ向かおうとしたのでござるが、その前にカカシ元隊長をちょっと向こうに見つけたのでござる。
下忍達も一緒でござるな、ちょっと挨拶していくでござる。
「おはようでござるよ、カカシ元隊長」
「お前は……」
言い淀むカカシ元隊長に、拙者は自分の事を忘れられたのかと戦慄したでござるが、よく考えたら拙者、面を着けっぱなしだったでござるな。
後は報告だけでござるし、面は外すでござるよ。
「お前なぁ、暗部が簡単に面を外すんじゃないよ……」
「なぁなぁ暗部のおっちゃん、その背中のでっかい包帯はなんだってばよ?」
好奇心に満ち溢れた瞳で拙者に尋ねてくるナルト殿、イタチ隊長と違って子供っぽくて可愛いでござるなぁ。
まぁイタチ隊長はもうすぐ成人でござるが……。
時の流れは早いでござるなぁ……。
「これは大刀・鮫肌でござるな、持ってるだけでチャクラをガンガン吸ってくる妖刀でござる」
拙者はチャクラを完全に制御しているでござる故、チャクラを奪われる事はないでござるが、制御が未熟な者が装備すればカラカラになって即死するでござろうな。
さっきから拙者がチャクラを寄越さない所為か、背中の鮫肌がイライラしてるのが分かるでござるよ。
「へー……触っても良い?」
「どうぞでござる」
九尾の人柱力なら多少吸われても大丈夫でござろう。
それにしても、火影岩に落書きするぐらいヤンチャなナルト殿でござるが、こういう時は律儀に断りを入れるのでござるな。
落書きはアカデミー生時代のエピソードでござるし、下忍になってからカカシ元隊長に教育されたのでござろうか。
「おお……確かにすげー勢いでチャクラが吸われて行くってばよ……」
「この馬鹿ナルト! 今から任務なのにチャクラ吸われてどうするのよ!!」
「サクラ殿は触ったらダメでござるよ、たぶん即死するでござる故」
「えっ!?」
「あの刀はああ見えて国宝級の力を持った刀だからな、迂闊に触ればチャクラを吸い尽くされて死ぬぞ」
「ちょっと!? ナルトになんてモン触らせてんのよ!?」
これ、拙者が悪いのでござろうか……。
「出オ……暗部のお兄さん、ナルトにチャクラを返してあげて」
面は外しているでござるが、サスケ殿が気を使って暗部のお兄さん呼びでござる。
別に名前呼びで良いのでござるが……サスケ殿の気遣いを無駄にするのも悪いでござるな。
サスケ殿に言われた通り、鮫肌の中に拙者のチャクラを少し流して、中をスプーンでほじくり返すように掻き出して行くでござる。
「ちょっと!? 刀が尋常じゃない苦しみ方してるんだけど!?」
中のチャクラをごっそり掻き出してナルト殿に還元するでござる、元の持ち主のチャクラも混ざっているでござるが、ナルト殿なら問題ないでござろう。
「あ、暗部のお兄さん、鮫肌が滅茶苦茶ぐったりしてるけど大丈夫!?」
「たぶん大丈夫でござるよ……たぶん」
「ナルト! ちょっとチャクラ分けてあげて!!」
「お、おぅ……」
瀕死の鮫肌の柄にナルト殿が改めてちょんっと触れるでござる。
鮫肌はちょびっとだけチャクラを吸ったでござるが、何故かそれ以上はチャクラを奪わず、ナルト殿の腕に柄を絡ませているでござる。
これは……。
「よかったなナルト、懐かれたみたいだぞ」
ナルト殿は刀に懐かれたみたいでござる、逆に拙者は滅茶苦茶嫌われたでござるな、もう完全に怯えられてるでござる。
「どうせナルト殿にしか扱えぬ代物でござるし、よかったら差し上げるでござるよ、エサはチャクラでござろうな」
「うーん……俺のアパートってば、確かペット禁止だったような……」
「ペットじゃなくて刀でござるからセーフでござるな」
「んじゃ貰っとく! ありがとう暗部のおっちゃん!」
「悪いな、火影様には俺から報告しておくよ」
そう言って笑顔で手を振りながら離れていくナルト殿達、拙者も合わせて手を振るでござるよ。
良い事をした後は気持ちが良いでござるな。
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暗部のお仕事~Sランク任務
釣り糸を垂らしてお魚を待つ時間は最高でござるな。
以前は釣り竿や釣り糸といった、釣り道具一式を用意していたのでござるが、今はバケツ以外は全部チャクラでござる。
釣り糸と釣り針と疑似餌をチャクラ糸で代用している訳でござるな。
砂隠れの里の忍者達をみていたらピーンっときたのでござるよ。
荷物が減るでござるし修行にもなるのでござる、釣りは最高でござるな。
さて、どうやら今朝に提出した干柿鬼鮫殿から情報が取れたみたいでござる。
流石に早いでござる、イビキ殿はプロでござるなぁ……と思ったのでござるが、途中からはイノイチ殿が担当したみたいでござるな。
イノイチ殿は頭の中を直接覗くという、尋問どころではない反則級の能力を持っている山中一族の忍者でござる。
干柿鬼鮫殿は霧隠れの抜け忍でござるから、霧の内情がある程度は分かるでござろう。
まあ鬼鮫殿が抜け忍になってから結構時間が経っていた筈でござるから情報としてはかなり古いでござろうが。
それでも貴重な情報でござるな。
霧は自里の上忍ですら里の内情を良く知らないでござるからなぁ……秘密主義って奴でござる。
トップは水影でござるが、本当に水影が実権を握っているのかさえ誰も知らない有様でござる故、外交がとんでもなくやりにくい里でもあるのでござる。
もうどんだけだよって感じでござるな。
さて、鬼鮫殿から得られた大事そうな情報を要約するとこんな感じでござる。
・四代目水影は傀儡だった。
・霧隠れの里はうちはマダラが支配している。
・干柿鬼鮫はマダラに誘われて傭兵組織『暁』に所属している。
・マダラの目的は『月の目計画』、それは全人類の幻術支配。
・その為に全ての尾獣を手中に収める予定である。
・『暁』の資金源の一つに岩隠れの里がある。
ま、大体こんな感じでござるな。
うちはマダラは大昔のうちは一族の頭領でござる、故人でござる故、たぶん偽物でござろう。
さて、拙者は取り急ぎイタチ隊長に報告でござる。
◇ ◆ ◇
イタチ隊長を通じて木の葉上層部に情報が行き渡り、情報の真偽も含めて議論が進められたのでござる。
その結果、木の葉は暁を危険組織と非公式に認定、構成員全員をビンゴブックのSランクに載せる事が決定したでござる。
非公式なのは霧と岩が関わっているからでござるな、公に認定してしまえばたぶん雲隠れの里が嬉々として岩に戦争を仕掛けるでござるからなぁ……。
そうなれば木の葉も砂も三里同盟として一蓮托生でござる故、直ぐに第四次忍界大戦でござる。
岩と霧が上手い具合に言い逃れしてくれたら良いのでござるが、あまり期待は出来ないでござろうなぁ……。
いざとなれば雷影をどうにかしてシスイ殿の別天津神で洗脳する事も視野に入れるそうでござるが、そちらも色々と危ういでござるなぁ……。
ま、暁の存在が雲に露呈する前にさっさと始末するのが無難でござろうな。
そんな訳で、拙者はイタチ隊長から構成員全員の速やかな抹殺を命じられたでござる、捕縛ではなく抹殺でござるな。
ただ例外として、暁のリーダーとうちはマダラは捕縛して欲しいとの事でござる。
ちょっと長旅になりそうでござるが、拙者頑張るでござるよ。
◇ ◆ ◇
さて、暁は小国の攻略や賞金首狩り等で小銭を稼いでいるとの事でござるし、まずは近隣諸国から当ってみるでござる。
異文化にもたくさん浸れそうで拙者ワクワクしてきたでござる。
ただあまり時間が無いでござる故、道中は超音速でかっ飛ばしているでござる。
拙者、頑張れば一時間で五千キロ程進めるでござる故、移動はすぐでござるな。
ただ超音速移動は空気の流れが特殊過ぎて耳も鼻も殆ど機能しなくなるのでござる。
世の中そうそう上手く行かぬでござるなぁ……。
さて、いくらか国を巡ったのでござるが、そこである小国が数日前に爆破されたという話を聞いたのでござる。
恐らく爆遁使いのデイダラ殿でござるな、その相方のサソリ殿にも期待出来るでござるな。
早速行ってみるでござるよ、現場に臭いが残っていれば一発でござるからな。
さて、そんな訳で現場に到着したのでござるが、これは見事な手口でござるなぁ……。
デイダラ殿が街の壁を全て爆破して、その間に城の殿や重鎮をサソリ殿の傀儡で暗殺したみたいでござる。
カラクリの油の臭いがまだ城内に残っているでござる故、これを辿れば追いつけそうでござるな。
追跡速度は亜音速が限界でござる故、少し時間が掛かるでござるが……ま、晩御飯には間に合うでござろう。
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暗部のお仕事~慈善活動
見つけたでござる。
もうすぐ美しい夕焼けが顔を出しそうな空の下にデイダラ殿の白い鳥が見えるでござる。
結構距離があるでござるが、向こうから拙者が見えにくい分、むしろ好都合でござるな。
チャクラメスを伸ばして上空の鳥を落としても良いのでござるが、着地の瞬間を狙った方が確実でござる。
デイダラ殿の進行方向には小国があるでござる故、恐らくはここが目的地なのでござろう。
たぶん彼らも任務でござろうな、御苦労様でござる。
そして、任務という事は無事に終われば完遂報告と次の依頼の説明がある筈でござる。
つまり、依頼斡旋役の構成員も纏めて始末する大チャンスでござるな。
まあ、口寄せ動物での連絡や遠隔通信の可能性もあるでござるが……。
それでも待つだけの価値はあるでござるよ。
◇ ◆ ◇
任務を無事に終えたデイダラ殿達はしばらく飛行したのち、地に降りて更にしばらく歩き、森の中で野営の準備を始めたでござる。
テキパキとテントを張って、火を起こし、鍋や寝袋を広げるデイダラ殿達。
隠密性の欠片もないでござるが、まあ強者故の余裕なのでござろうな。
辺りも暗くなってきたでござるし、今日のところはおやすみでござるかな?
しばらく待っていると、彼らの体が一瞬ピクリっと硬直し、虚空に向かって会話を始めたでござる。
傍から見ていて彼らの頭が心配になる光景でござるが、これは鬼鮫殿の記憶にもあったリーダーとの遠隔会話でござろうな。
彼らの口振りから察するに、次の依頼をリーダーが指示しているみたいでござる。
という事は依頼斡旋人はここには来ないのでござるかな?
せっかく待ったのに徒労でござるな……がっかりでござるよ。
さて、もう彼らに用はないでござる故、通信を終えて夕食を頬張るデイダラ殿の首と、デイダラ殿がお食事をしている間の警戒を務めるサソリ殿の首をさっくりと落とすでござる。
ただ、サソリ殿は傀儡の着ぐるみを装備しているでござる故、首を落としただけでは死なぬでござる。
中の本体ごと纏めて切断出来るようにチャクラメスの刃渡りを伸ばし、確実に死ぬように細切れにして行く。
粉塵が舞う傀儡に交じって夥しい量の鮮血が流れ、その血溜まりにデイダラ殿の首がポチャリと落ちる。
デイダラ殿は確実に死んだでござるが、サソリ殿はちょっと良く分からんでござるなぁ……。
外側ごと解体するのではなく、少々時間が掛かっても良いから少しずつ剥がして行くべきでござったな。
うっかりうっかりでござる。
まあサソリ殿の匂いは覚えたでござる故、もし生きていたらリベンジでござるな。
後はイタチ殿から貰った封入の巻物に死体を収納しておしまいでござる。
さて、デイダラ殿を見ていたら拙者もお腹が空いたでござるよ、お夕飯の時間でござるな。
せっかくでござるからデイダラ殿が食べていた夕食をいただくでござる。
……う~ん、良い匂いのおでんでござる、野営なのに暁は良いモノを食べているでござるなぁ。
うん! 美味しいでござる!
当初の目的は外れたでござるが、これはこれで結果オーライでござるよ。
◇ ◆ ◇
さて、一日に三人は少々ペースが悪いでござる故、今日はもうちょっと頑張るでござるよ。
夜の時間は色々と教育によろしくない輩が蠢く時間でござる、具体的には賞金首の換金所でござるな。
暁は賞金首を討伐して小銭を稼いでいるでござる故、換金所を当たれば見つかる可能性が高いのでござる。
ちなみに換金所は非合法的なお店でござる故、拙者が何をしても無問題でござるよ。
まあ他里が後ろ盾になっている換金所は後々面倒でござるから手は出せぬでござるが……。
そして肝心の場所でござるが、死体を収納する換金所はどうしても臭うでござる故、隠していてもばればれなのでござる。
向こうも色々と工夫はしているでござるが拙者の鼻は誤魔化せないのでござるよ。
イタチ隊長に貰った危険な換金所リストに注意しながら、安全な換金所を潰して行くでござる。
ま、受け子に背後から自白剤でも注射すれば一発でござろう。
◇ ◆ ◇
さて、これで三軒目でござるが、ようやく当りでござるな。
どうやらこのお店は暁の構成員の一人である角都殿がご贔屓にしているお店らしいのでござる。
大体、月一ペースぐらいで訪れるのだとか。
うーん……月一でござるか……。
待っても良いのでござるが、イタチ隊長からはなるはやで頼むと言われているでござるしなぁ……。
一旦木の葉に情報を送って、ここを見張って貰うしかないでござるな。
ちなみに一軒目と二軒目は木の葉に摘発して貰うでござる、拙者が得意な通報でござるな。
中のお金も全部木の葉の物になるでござるよ、これでアカデミーの備品を新調出来るでござる。
子供達や先生の笑顔も増える事間違いなしでござろう。
良い事をした後は心がスーっとするでござるな。
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暗部のお仕事~雨隠れの戦い
もうそろそろ日付が変わりそうな夜更けでござるが、夜は忍者の独壇場でござる故、張り切って行くでござるよ。
さて、角都殿を除けば残る暁の構成員はリーダー殿と小南殿、ゼツ殿、そしてマダラ殿でござるな。
ゼツ殿は所在不明で、リーダー殿と小南殿は雨隠れ、マダラ殿は霧隠れにいるそうでござるが……ここは雨隠れから行くべきでござろうな。
霧隠れは五大里でござる故、不法侵入で難癖を付けられたら面倒でござる。
一方で雨隠れは小国でござるから手が出しやすいのでござる。
まあ雨隠れは木の葉、砂、岩に挟まれた緩衝地でござる故、あまり大っぴらな事は出来ぬでござるが……。
というか暁討伐任務自体が極秘任務でござるから大っぴらも何もなかったでござるな。
◇ ◆ ◇
雨隠れは常に雨が降り注ぐジメジメした土地でござる。
雨の所為で目も鼻も耳も利き難いでござる故、面倒でござるな。
さて、まずは――――――ッ!
「地爆天星!!!」
「式紙の舞、紙手裏剣!!」
「火遁・爆風乱舞!!」
豪華なお出迎えでござるな!
どうやら雨隠れの里には木の葉の結界のような感知システムがあったみたいでござる。
拙者がギリギリまで接近を感知出来なかったでござる故、たぶん時空間忍術で現れたのでござろうな。
隠密行動は失敗でござるが……ま、探す手間が省けたのでこれはこれで良しでござるな。
さて、暁のリーダーは伝説の輪廻眼を持つとの話でござる。
輪廻眼の能力は分からないでござるが、まあ写輪眼と同じ事は出来ると考えておいた方が良いでござろう、つまり目は絶対に開けられないでござるな。
嗅覚感知によると総勢八名でござるか、たぶんリーダー殿と小南殿、後は護衛でござろうか?
「完璧な不意打ちだった筈だが、それすら通じないか……」
「化け物め……!」
「気を強く持て! ペインは餓鬼道を前へ! 小南は式紙を絶対に切らすな! 地爆天星が成長するまで全員で天道を守れ!! うちは火炎陣!!」
おや? うちはの術でござるか……という事はうちはマダラ殿も来ているのでござるな。
マダラ殿まで来てくれるなんて、霧に行く手間が省けて益々嬉しいでござるよ。
視覚があれば誰が捕縛対象か分かるのでござるが、嗅覚と聴覚だけではちょっと良く分からんでござるな。
まあ全員半殺しにすれば良いだけでござる。
イタチ隊長曰く、瞳術使いはダルマ状態でも眼さえ無事なら瞳力を使用できるそうでござる、驚きでござるな。
まあ瞳を切れば良いだけの話でござる故、一手間増えるだけでござるが。
「ペインがやられたわ! 天道と餓鬼道以外全滅よ!?」
「落ち着け! まだ地爆天星は無事だ!! 勝機はある!! 冷静になれ!!」
む、何人か拙者の攻撃が効いていない奴がいるでござるな。
チャクラの吸収による無効化と、体の分解による回避、結界による防御、そしてすり抜けによる回避でござるか。
吸収殿は超圧縮したチャクラメスを超速で振るえば突破出来そうでござるな……出来たでござる。
「ひっ……あ、あぁ……すけ、助けて弥彦……」
さて、分解殿はチャクラを根こそぎ奪えば無力化出来るでござろう。
チャクラ糸を伸ばし、鮫肌にやったように術者のチャクラをギリギリ死なない程度に残して残り全てを奪い尽くすでござる。
空を裂くような絶叫が響き渡り、すぐに術が解けてピクリとも動かない半死体がほら出来上がりでござる。
念の為に、瞳と四肢を切り裂けば終わりでござるよ。
同時進行でマダラ殿が構築した炎の結界のチャクラも奪い尽くすでござる。
結界の向こうにいる本体にもチャクラ糸を伸ばして同様にチャクラを奪い尽く……うん?
この者からはチャクラを奪い尽くせない……というよりは外部からチャクラを常時送信されているみたいでござるな。
まあ拙者のチャクラを逆流させて大本とパスを繋げば良いだけの話でござる……よし、これで半死体がまた二つ出来た筈でござる。
大本はあの塔の中でござるな、後で行ってみるでござるよ。
術者が倒れた為か、引力によって大地を巻き上げていた空の星が消滅し、上空から岩が雨の様に降ってくるでござる。
落石注意でござるな。
「化け物め……」
うーん、すり抜け殿はどうしたものでござるかなぁ……。
弱点はある筈でござるが、拙者にはそれを分析するような頭はないでござる故、困った困ったでござる。
カカシ元隊長やイタチ隊長がいれば何かアドバイスを貰えるのでござろうが、無いモノねだりしてもしょうがないでござるな。
とりあえず、すり抜け殿は一旦放置して半死体達の止血と麻酔と封入を進めるでござるよ。
「……覚えていろ、お前は必ず俺が殺す」
すり抜け殿は撤退したみたいでござる、現状ではどうしようもない故、助かるでござるよ。
探す手間が省ける故、殺しに来るのは何時でも大歓迎でござるな、来るならなるはやでお願いするでござる。
さて、続いて塔にいる大本を回収するでござるよ。
近場故、すぐに着くでござろう……着いたでござる。
壁を切り裂き、塔の内部に侵入するでござる、お邪魔しますでござるよ。
まだ目は開けていないでござるが、嗅覚感知から誰かがいる事が分かるでござるな。
早速、四肢と瞳を切り飛ばして止血と麻酔を施して封入するでござる。
「……! 貴様!! なぜココにいる!?」
おや、すり抜け殿も来たでござるか、遅かったでござるな。
さて、後はイビキ殿にゲットした捕虜を提出するだけでござるな。
色々と貴重な情報が得られれば幸いでござる。
もしかしたらすり抜け殿の攻略法も手に入るかもしれぬでござる故、期待が高まるでござるな。
楽しみでござる。
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帰里~田の国へ
半日振りの木の葉の里でござる。
日付が変わり、そろそろお月様に抱かれて草木も眠る時間に突入でござる。
静寂に包まれた夜の木の葉も、これはこれで良いモノでござるな。
捕虜の提出先はイビキ殿でござるが、彼は日勤でござる故に今はおやすみでござろう。
代わりに夜勤の班員に提出でござるよ……あれ? 何故かイビキ殿とイノイチ殿がまだいるでござる。
「お疲れ様、どうせ日帰りだろうから待っていたんだ」
「おぉ……ではお願いするでござるよ」
彼らからの信頼と真面目な仕事っぷりがありがたいでござるなぁ……。
「確かに受け取った。朝までには終わる、今日は帰って体を休めろ」
「お心遣い痛み入るでござる、イビキ殿やイノイチ殿も無理せずに頑張って欲しいでござるよ」
凄く癒されるやり取りでござるなぁ……尋問部隊は最高でござる!
さて、捕虜はイビキ殿達に任せて拙者はイタチ隊長に事の顛末を報告しないとでござる。
◇ ◆ ◇
朝日を浴びると一日を生き抜く活力が湧いてくるでござるな。
昨日の夜にチャクラ網でさっくりと捕まえておいたお魚を焼いて朝ご飯にするでござる。
のんびりとした釣りは楽しいでござるが、最近は色々と多忙でござる故、ついつい便利なやり方を選んでしまうのでござるよ。
さて、今日の予定はイビキ殿達から情報を受け取ってイタチ隊長に再度報告でござるな。
イタチ隊長の頭脳なら色々と名案が浮かぶ事でござろう。
で、そのイタチ隊長なのでござるが、何故か拙者の家にいるでござる。
「おはようでござるイタチ隊長……ところでどうして拙者のお家にイタチ隊長が?」
「おはよう、昨夜お前から受け取った情報を考えるに、お前は敵の恨みを買った可能性が極めて高い。
相手の能力が仮に無制限移動の時空間忍術ならば木の葉の探知結界や見張りは何の意味も成さない。
であれば、敵がお前の寝首を取らない理由がないからな、暗部で警護していた。」
「成程でござる、御迷惑お掛けしたでござるよ……でも部屋が荒れていないという事は来ていないのでござるな?」
「あぁ、お前個人の名前や素性はバレていないか、敵にも余裕が無かったかのどちらかだろうな」
「昨夜襲われていたら面倒だったでござるな、今夜ならむしろ大歓迎でござるが」
イビキ殿達が情報を掴んでくれているでござろうし、次こそ捕縛出来るでござろう。
さて、気を取り直して腹ごしらえの時間でござる。
「イタチ隊長も食べていくでござるか? こんぶのおむすびも出すでござるよ」
「そうだな……いただこう」
◇ ◆ ◇
甘味処巡りは楽しいでござるが、甘味を昼食にするのはちょっとどうかと思うのでござる。
まあ三軒もはしごをしたら何も胃に入らなくなるのは分かるでござるが、ミコト殿やイズミ殿に怒られても拙者は庇わぬでござるよ。
さて、イビキ殿達が徹夜で抜き取った情報でござるが大体こんな感じでござる。
・捕縛した者達は暁のリーダーとその傀儡六名と側近の小南。
・暁のリーダーは雨隠れの里を支配していた。
・すり抜け殿の正体はうちはマダラ。
・彼は時空間忍術の達人で自他の長距離転移が出来る。
・彼は連続五分程度無敵になれる。
・彼の無敵と攻撃と転移は両立出来ない。
マダラ殿はどうにでもなるでござるが、頭が痛いのは雨隠れの里でござるな、ここが空白地帯になったのは面倒極まりないでござるよ。
雨隠れの里は木の葉、砂、岩に囲まれた緩衝地でござる故、戦争をする時は大体この里が主戦線になるのでござる。
雨隠れを木の葉や砂、雲が取るのは岩を大きく刺激するでござろう、まぁ戦争の引き金になるでござろうな。
かと言って岩に取られたら雨隠れに強固な砦や拠点を築かれるのは明らかでござる。
木の葉は戦争の引き金を引くか、目の上のたんこぶを作るかの二択を迫られている訳でござるな。
おかげで上層部はお通夜モードでござる。
まあマダラ殿が霧を支配している事は分かっていたでござるし、雨も暁の手中に落ちている可能性の予想はしていたみたいでござるが。
苦渋の決断でござるが恐らくたんこぶ路線になるでござろうな、元々雨……もとい暁は岩と繋がりがあったそうでござるし、岩の裏工作が大っぴらになるだけでござる。
ただまあ……木の葉や砂はともかく、雲がそれを許す訳がないでござるが。
あれ? そうなったら結局戦争不回避なのでは? どの道第四次忍界大戦でござるか?
リーダー殿を別天神で洗脳してから帰国させても良いのでござるが、彼の輪廻眼はもう無いでござるしなぁ……。
輪廻眼の破片はあるでござるから、伝説の医療忍者と名高い綱手殿なら何とか直せないでござろうか……。
マダラ殿が雨隠れを支配してくれるのが一番良いのでござるが、彼は木の葉を恨んでいるでござるから正直期待は出来ないのでござる。
岩と組んで木の葉に戦争を吹っ掛けるぐらいはしそうでござる。
まあ岩はマダラ殿に恨みがあるでござるから、彼が里長な状態で岩雨同盟を組めるかは怪しいところでござるが。
……ん? 待てよ、まだ健在なマダラ殿を別天神すれば全て解決なのでは?
輪廻眼にも匹敵する強固な能力の持ち主でござるし、キレイになったマダラ殿は三大国家に囲まれた強固な中立国としての役目を果たしてくれるのでは?
彼が代表では角が立つから適当な忍者をマダラ殿が支配して、そのマダラ殿を木の葉が支配すれば完璧なのでは?
……といった話が上層部の間で固まったでござる、ちなみに会議にはイタチ隊長や拙者、シスイ殿も参加していたでござるよ。
つまり、拙者の任務はマダラ殿を半殺しにしてシスイ殿の前に差し出すだけでござるな、勿論他里には内緒で。
一時はどうなる事かと思ったでござるが、別天神のおかげで何とかなりそうでござるな、本当にシスイ殿の別天神は反則でござるよ。
◇ ◆ ◇
さて、そんな訳でマダラ殿捕縛作戦でござるな。
マダラ殿は所在不明でござる故、とりあえず雨隠れに行ったのでござるが当然のようにいないでござるな。
とりあえずリーダー殿が暮らしていた塔の内部を改めて調べてみたのでござるが、特に何もないでござる。
貴重品は全てマダラ殿が持って行ったのでござろう、彼が自主的に雨隠れの運営をしてくれるなら楽出来たのでござるが、これでは期待出来そうにないでござるな。
まあ別天神があるでござる故、彼の意思はどうでも良いのでござるが。
さて、小腹が空いたでござるし、挑発と休憩も兼ねて小南殿のベッドに寝転んで彼女が残したお菓子をボリボリと食べているのでござるが……。
……来ないでござるなぁ……。
きっとマダラ殿は激情と冷静さを両立出来る類稀な人物なのでござろうな、挑発は彼の神経を逆撫でするだけで無意味なのでござろう。
彼は拙者を確実に殺せる手段が揃うまで顔を出すつもりはないみたいでござるなぁ……。
時間の無駄でござる故、復讐はなるはやでお願いしたいのでござるよ。
◇ ◆ ◇
「事情は把握した、代わりに大蛇丸を連れてこい」
見つかりそうにもないマダラ殿探しに時間を費やすよりも、代わりの者を擁立する方が早いと上層部は判断したみたいでござる。
条件は色々あるでござるが、知力武力共に強者である事、五大国の所属でない事、ぐらいでござろうか。
ちなみに、思想はどうせ洗脳するからどうでも良いでござる。
角都殿でも良いのでござるが、居場所がはっきりしている大蛇丸殿の方が早いでござるな。
大蛇丸殿とは木の葉の抜け忍で、田の国を裏から支配している音隠れの長を更に支配している者の事でござる。
田の国は火の国北部に隣接している小国でござるな。
火の国と雷の国は大規模な交易を行っているでござるが、その交易路として田の国を経由した水路コースは行商人達にも大好評なのでござる。
ちょっと昔は何の取り柄もない火の国のおまけみたいな小国でござったが、今や交易の中継地点として大人気のスーパー観光国家にまで成長を遂げたのでござる。
ちなみに、音隠れの忍者の大半は交易路の護衛で生計を立てているでござる。
残りは忍者を半分辞めて港で店を出しているでござるな、何でもそっちの方が儲かるのだとか。
田が交易を後押ししてくれるのは火や雷にとっても有難く、火と雷と田は仲良しなのでござる。
大蛇丸殿は抜け忍な上に数多の犯罪にも手を染めている極悪人でござるが、そういった事情もあって見逃されているのでござるよ。
まあ流石に公に許す事は出来ないでござるが、彼は表舞台に立たずに裏から支配していくスタイルでござる故、木の葉もやり易いのでござる。
音隠れの里長も名目上は彼の部下でござるし。
いくら天下の木の葉でも他里に潜伏している犯罪者を発見する事は出来ないでござるなー、いやぁ見つかれば即処断でござるが、見つからないからしょうがないでござるなーって感じでござる。
まあ大蛇丸殿が火影様の元教え子という事も無関係ではないでござろうが……おっと、これ以上は拙者の首が危ないでござるな。
「伝説の三忍でござるな、承知したでござる」
「待て」
ん? イタチ隊長はまだ話があるみたいでござるな。
手招きするイタチ隊長の元に体を寄せ、巻物を受け取る。
「それを大蛇丸本人に届けろ、奴の話を聞いてこい」
「承知したでござる」
うちはミコト:イタチの母親
うちはイズミ:イタチの彼女
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大蛇丸
「歓迎するわ、出オチ丸君、さあ奥へ行きましょう?」
秒で歓迎されてしまったでござる。
音隠れに潜入ではなく使者として来た拙者でござるが、相手は国の実質的な支配者でござるからもっと待たされるものだと思っていたのでござるが……。
門番に誰何すらされずに扉を開けて即大蛇丸殿でござったよ、どうなっているのでござろうかこの国は……。
「拙者が来ることを知っていたのでござるか?」
「ええ、三代目火影の遠眼鏡の術は知っているでしょう? 音隠れも同じシステムを採用しているのよ」
うーん、流石は木の葉の抜け忍でござるな……。
大蛇丸殿に案内された先は食堂でござった、内装はVIP仕様でござるが。
長方形の机や背もたれがある椅子は火の国産の物でござるな、逆に並べられたお皿は雷の国の物でござろう。
こうしてみるとこの国は本当に文明の交流地点でござるなぁ……。
「この赤身の魚は何でござるか?」
「海の果てに生息するマグロという魚よ」
「海の果てでござるか……田の国の船はそんなところまで航路を広げているのでござるか?」
「港の拡張を私が推し進めているから長距離航海にも耐えられるような大型船も沢山出せるのよ」
「でも海の果てからどうやって新鮮な魚を運んでくるのでござるか?」
「雷の国の機械の力と、氷遁冷却による腐敗遅延と水遁風遁系忍術による高速推進の合わせ技よ、ただ……魚介類の鮮度を保ったまま冷凍を行う技術の確立には予想以上に苦戦したけどね……」
「確かに単純に凍らせただけではこの味は出せないでござろうなぁ……」
「でしょう? でも船の上では電力に限りがあるし、氷遁忍術の使い手はとても貴重だからまだまだ大量生産という訳には行かないのだけどね」
そう言いながら箸を走らせる大蛇丸殿と拙者。
机の上にはマグロ以外にも様々な珍しい食べ物が並べられていて、見るだけでも楽しいでござるな。
というか拙者まだ名乗っていないのでござるが、出オチ丸君呼びでござるし、おむすびまで用意してる辺り、相当拙者に……いや木の葉の暗部に詳しいでござるな?
「おむすびまで用意して貰えてもう何と言っていいか分からないでござるな……これは拙者の好物でござるよ」
「喜んでもらえて何よりよ、わざわざ用意した甲斐があったわ」
うーん、どうやって木の葉の内情を把握しているのでござろうか、間者は皆殺しな筈でござるが……時空間での侵入でござろうか……?
流石に教えて貰えそうにないでござるし、拙者の頭でこの話題を引っ張るのは無理でござろうな。
空気を冷やす前に話題を変えるでござる。
「豪華なお食事をありがとうございましたでござる、さてお腹も膨れたところで本題に移りたいのでござるが……」
「ええ、場所を移しましょうか」
◇ ◆ ◇
案内された先は大蛇丸殿の実験室でござった、よく分からない機械が色々と並んでいるでござるな、雷の国産でござろうか?
「おもてなしにはあまり相応しくない部屋だけど、この部屋が一番機密性が高いのよ」
「なるほどでござる、さてこれが木の葉から託された巻物でござる、目を通して欲しいでござるよ」
手渡した巻物を机の上に広げ、中身に目を通す大蛇丸殿。
うーん、中身が気になるでござるがここは我慢でござるな。
「大体の事情は把握したわ、まず雨隠れの件だけど、こちらは木の葉が考えるほど深刻な問題ではないわ」
「というと?」
「今の情勢で大戦を最も望んでいない国は岩よ、木の葉と雲、砂の三里同盟が固い以上、忍界大戦になれば岩が敗戦国になるのは誰の目に見ても明らかだわ」
「確かにそうでござるな」
「であれば三里同盟を崩すのが岩にとっての目下の課題、そして木の葉と雲は交易によって強固に繋がっているわ」
「岩は交易の妨害を狙っているという事でござるか、となると守るべきは水路と田の国でござるな」
「重要なのは雲は大規模な戦争を望んでいるという事よ、引き金を引くような口実も一緒にね、それ故に雲に近い水路への妨害は岩も慎重だわ」
「問題はここ田の国でござるか……でも田の国は火の国と雷の国との緩衝地でもあるでござるから木の葉が直接守る訳には行かないのでござるよ」
「現状は私がいるから何とか防衛出来ているけど、これから先はどうなるか分からないわ……だからアナタのような忍者を抜け忍として寄越して欲しいのだけど」
「滅茶苦茶ダイレクトな勧誘でござるな……魅力的な提案でござるがそれは流石に無理でござる」
「そう……そうでしょうね、まあ田の国は私が居る限り大丈夫よ、軍事的にも政治的にもね……攻める口実すら与えないわ」
「さっきと言ってる事が真逆で大変に頼もしいでござるが、結局雨隠れはどうするのでござるか?」
「あの国はまだ見栄えの良い貧困層や孤児が沢山いるから、隠密電撃支配して雨隠れの代表として全世界に支援を求めなさい、人道的支援として物資の輸送に限定すればどの国も文句は言えないわ」
「物資だけでどうやって守るのでござるか?」
「大国は攻める口実が無ければ動けないの、もしも人道支援を求めて三里同盟とその他小国から支援を受けている可哀想な国に軍事侵略する非人道的な国があったとしたら……雲が嬉々として襲い掛かるでしょうね」
「あー……なるほどでござる……」
実質的な五大国の保護国みたいな感じにしてしまうのでござるか……その発想はなかったでござる。
とにかくこれで何とかなりそうでござるかな?
「雨隠れの土地を売ってくれるなら国や里ではなく一企業として高く買うわよ、多分将来は交易の中心地になるでしょうからね……それに孤児も多いから私好みの実験も捗りそうだわ」
「承知したでござる、木の葉に伝えておくでござるよ」
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三度目の雨隠れ~霧の謎
雨隠れは一年中雨が降るジメジメした土地でござる故、発達した産業も独特な色をしているでござる。
例えば、この雨量と湿度ではまともな作物は育たないでござる故、本来は他国から食料を輸入しなければならないのでござるが……。
この国は鎖国しているでござる故、食料自給率は驚異の百%でござる、まあ普通に足りないから餓死させてるだけでござるが。
鎖国により自己完結した独自の産業体系は見ていてとても楽しいでござるな。
産業といえば、雨量を活かしたキノコ栽培や水生植物栽培、淡水漁業が特異的に発達しているでござる。
他の見所は波力発電や雨力発電でござろうか、波力はともかく、雨力発電は聞いた事すらなかったでござる故、異文化圏に来たという実感がもりもり湧いてくるでござるよ。
異文化見学は何時やっても楽しいでござるな。
さて、雨隠れの件は大体一ヵ月ぐらいで方が付いたでござる。
簡単に纏めると、まずシスイ殿とイタチ隊長、そして拙者のスリーマンセルで小隊を組み、小南殿に変装して雨隠れをこっそりと乗っ取ったでござる。
次に雨隠れの忍者を使って五大国に使者を走らせ人道的な支援を要求、それに最速で木の葉が呼応し人員と物資、寄付金での支援を約束。
それに対し雨は、貧困の大本は大戦にあり、原因である五大国の忍者の立ち入りは信用出来ないと断り、寄付金ではなく国債を発行するから買って欲しいと提案。
木の葉はその要求を丸呑みし、更に他の五大国や小国に対し、己の良心と忍道に従った責任のある行動を呼びかけたでござる。
これにまず砂が木の葉に忖度し、そして何故か霧隠れの里が支援に賛成して木の葉に支援物資と金銭の代理納入を依頼。
少し遅れて岩が続き、最後に雲が霧と同様に木の葉へ代理納入を依頼したでござる。
雲は嫌々渋々って感じでござったな、流石でござる。
ま、ともあれ五大国が雨隠れに支援を行ったという事実が完成したのでござる。
最後の仕上げに雨隠れの貧困は指導者である私、長門にも原因があるとして引退を宣言し、長門殿の篤い信仰者の中から後継者を選んで教育と引継ぎを適当に済ませて終わりでござる。
彼であれば長門殿(木の葉)の置き命令を忠実に守った政治を貫いてくれるでござろう。
その間に長門殿(木の葉)の神パワーを使って公文書をちょめちょめして架空の会社や団体を幾つか作成し、適当な国有地の売買記録や納税記録等をコッショリした後、木の葉が保持したり大蛇丸殿に売却したりもしたでござるな。
ここまでバレずに上手く行ったのは長門殿や小南殿の露出が極端に少なかったのが原因でござろうな、後は雨忍自体のレベルが低い事でござろうか。
これが木の葉であれば白眼や写輪眼、チャクラ感知や嗅覚感知等ですぐに偽物であるとバレる筈でござるからな。
まあ雨にもそこそこ優秀な忍者はいたでござるが、一人や二人であれば消せば良いだけでござる故、無意味でござるよ。
拙者のお仕事がちょっと増えるぐらいでござるな。
さて、木の葉上層部はやった!やった!と喜んでいたのでござるが、それはそれとして霧隠れの里の動きがめっちゃ不自然じゃない? との話が出たのでござる。
霧といえば戦争と侵略以外の外交を知らない、こんにちは死ねが伝統の里でござる故、率先して人道支援に勤しむなんて本来はあり得ない筈なのでござる。
上層部は、砂雲岩霧の順番で支援に同意すると考えていたのでござる、霧に対しては四里から圧力を掛けてようやく動くかなー? やっぱ動かないかなー? 動いたら嬉しいなー? 程度の期待度だったのでござるな。
それが率先して動いたのだから驚きは一入でござる。
ちなみに岩と雲の順番が逆になったのは土影殿の影響でござろう、両天秤のオオノキ殿は政治家としても極めて優秀だと木の葉にまで届いているぐらいでござる故。
木の葉、砂、霧が支援に賛同した時点で時勢と自里の利益を素早く読み取り、支援に賛同したのでござろう。
何度も繰り返すでござるが、だからこそ霧の動きが途轍もなく不気味なのでござる、水影が誰なのかさえ知らないでござるが、老獪のオオノキ殿よりも時勢を見極める目が優れているとはどうしても思えないのでござる。
もしかしてマダラ殿の洗脳の影響でござろうか?
まあ原因は一旦置いておくとして、とにかく霧が外交に応じてくれるならば乗っからない手はないでござる。
水の国の産業は全く分からないでござるが、水は島国でござる故、造船は確実にやっている筈でござる……たぶん。
そして造船といえば木材でござるな。
火の国は森の国でもあるでござる故、良質な木材が取り放題でござるし、木材なら確実に買って貰える筈でござろう……たぶん。
造船して貰うのも良いでござるな、水の国なら世界最高水準の造船技術を持っている筈でござる……たぶん。
たぶんだらけでござるが、霧隠れと水の国の事は何も知らないでござる故、これは致し方のない事なのでござる。
首尾よく友好が深まれば雷や風、田辺りに霧を紹介したり、交易の仲介もしたいでござる。
更に水の国は火の国の背後に位置する国でござる故、同盟を組めるならば軍事的にもありがたいでござる。
まあそうなると世界から孤立した土の国がどう出るかが怪しいところでござるが……。
と思っていたら土の国の岩隠れの里から使者が来たみたいでござる。
話を聞く限り、三里同盟の影達と土影が対話を望んでいるから検討して欲しいとの事でござった、つまり四影会談でござるな。
この辺りは流石オオノキ殿と言うしかないござるな……岩隠れが孤立する流れであると読み取って三里同盟分解政策から融和政策へと素早く切り替えたのでござろう。
戦争を望む雷影辺りは臍を噛みそうな流れでござるが、嫌戦派である木の葉としては大歓迎でござるな、ちなみに弱小の砂に発言権はないでござる。
砂は毎年恒例の軍縮により、大国に通用する戦術が一尾ぶっぱぐらいしか残っていないでござるからな。
風影殿は軍拡を心から望んでいるのでござろうが、三里同盟に参加している時点で逆立ちしても無理でござろう。
ちなみに、もしも砂が裏切れば半日も経たずに拙者の手によって風影殿の首を落とし、火影殿が呼びかけて再び三里同盟に参加させる予定でござる。
まあ時勢は五大同盟に向かっているっぽいでござるし、そんな事は起きないでござろう。
さて、話がだいぶ逸れたでござるが、土影から始まり、火影様が呼びかけるならば他の影殿達も問題なく集まるでござろう。
問題は場所でござるな、地理的には雨が一番いいのでござるが、雨は五大国の忍者立ち入り禁止でござる。
まあ影クラスの会談であれば許可が下りるかもしれないでござるが、雨はまだまだ未開発地域でござる故、影クラスを招くには文化レベルが低過ぎるでござる。
それに大国への憎しみがまだまだ残っている国でござるし、テロられる可能性も高いでござろう。
雨に近い火の国でやっても良いのでござるが、出来るなら中立国で開催するのが無難でござろう。
そんな訳で湯の国に声を掛けたら簡単にOKを貰えたでござる、ありがたいでござるなあ。
湯の国とは、火の国と雷の国の間に位置する小国の事でござる。
地理的には火-湯-水の飛地-雷、って感じでござる。
豊富な観光資源を生かした観光大国でござる故、文化レベルもかなり高い国なのでござる、そして何より治安が良い。
まあ木の葉寄りな国でござるし、肝心の中立性は怪しいところでござるが……。
完全な中立国というのは難しいでござるなぁ。
さて、護衛は二名まで許されているでござる故、火影様はシスイ殿とイタチ隊長を連れて行くみたいでござる。
うちはと仲が良いアピールでござろうか?
火影様はうちはとの融和政策に全力を傾けているでござるからなぁ……。
まだほんのりとでござるが、次期火影もうちは一族から選びたいと考えているみたいでござる。
シスイ殿を雨隠れに向かわせたのは統治の練習台にピッタリだったというのもあるのでござろう。
仮にシスイ殿が火影に就任すれば現時点で上層部であるフガク殿と合わせて、木の葉の上層部の半分がうちは一族で染まるでござる。
そうなればうちは一族が謀反を起こす可能性はゼロになるでござろう、むしろ謀反を起こされる側でござるな。
長門:雨隠れの支配者、神として崇拝されている。里民と交流はない。
小南:長門の側近、天使として崇拝されている。里民と殆ど交流がない。
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覇道への道
そよ風が心地良いでござるなあ……。
四影会談に出張中の火影様やイタチ隊長達はいないでござるが、今日も里は平和でござる。
最近は色々と忙しかったでござるし、久しぶりにのんびりと出来そうでござるな。
お天気も良いでござるし、今日はどこか適当な屋上ベンチにでも寝っ転がって、のんびりと日光浴でもしながら里内を警備するでござるよ。
うーん、青空と白い雲のコントラストを見ていると筆を執りたくなるでござるなぁ……。
「うわっ……暗部がサボりっすか」
「失礼でござるなぁ……拙者は感知タイプでござる故、こうやってベンチに寝転びながらでも警備任務が出来るのでござるよ」
「いや何度も聞いてるから知ってるっすけど……暗部が堂々とベンチで昼寝している姿を見て驚くなと言う方が無理があるっすよ……」
シカマル殿は拙者の頭元に腰を下ろし、ぼうっと空を眺めだしたでござる。
「雲……」
「ん?」
「いいっすよね……なんというか……自由で……」
「魚もいいでござるよ、自由な上に、おいしいでござる」
「んふっ、喰われる事前提じゃないっすか」
「……あそこの雲、火影様に似てるでござるな」
「話題逸らしが露骨過ぎるっすよ」
「いやいや、本当にそっくりでござるよ」
「あー……確かに……なんか……確かに……」
「でもあごひげが無いでござるな……」
あごひげがあれば完璧なのに、これでは手落ち感が凄いでござるなあ……。
眺めていたら生えてきたりしないでござるかなあ……ん?
「あご辺りに何かいるでござるな」
ゴマ粒程の大きさでござるが、確かに何かいるでござる、鳥でござろうか?
既に五感を強化しているでござるが、もっと繊細なチャクラコントロールで視力を跳ね上げるでござるよ。
これは……人……でござるか……?
もっと……もっと視力を強化するでござる。
「あれは……すり抜け殿でござるなぁ……」
「すり抜け殿?」
「ちょっとした犯罪者でござる、手薄になっている木の葉に攻撃を仕掛けに来たのでござろうな」
「え?」
ちょうど話している間にすり抜け殿が身に付けている仮面からでっかい動物がもりもり出てきたでござる。
「恐らくアレは尾獣達……三尾と四尾と六尾と七尾がセットで出てきたでござる」
「はあ!?」
平和とは儚いモノでござるなあ……あっという間に木の葉危急存亡の秋でござる。
とりあえず口寄せ動物を使って上層部と火影様に報告でござるな。
たぶん上空十万メートル以上は離れているでござる故、まだまだ時間に余裕がありそうでござる。
追加で病院とアカデミー、それからうちは警務部隊と暗部組織、里の正門部に連絡でござる、避難誘導を依頼するでござるよ。
「危ないでござる故、下忍は早く避難するでござるよ」
「アンタはどうするんだ?」
「拙者のお仕事は警備でござる故」
「そうか……死ぬなよ」
サムズアップで答えるとシカマル殿はフッと笑っていなくなったでござる。
……さて、落ちてくるまで暇でござるし、拙者も子供や病人の避難を手伝いに行くでござるよ。
◇ ◆ ◇
尾獣は未だに落ちて来ず、代わりに超圧縮されたチャクラ玉が豪雨の様に落ちてきたでござる。
おかげであれ程賑やかだった木の葉の景観が一面の荒野に早変わりでござる。
建物が消え失せた木の葉隠れの里は寂しいでござるなあ。
まあ、自来也殿が蝦蟇の中に民衆や貴重な書物、忍具を入れて妙木山まで飛ばしたでござる故、見た目の割に死人はあまり出ていないでござるが。
民衆や建物が消え、視界に映るのは選りすぐりの上忍や暗部ばかりでござる、フガク殿やヒアシ殿までいるでござるな。
ちなみに中忍は一人もいないでござる、上忍でも一部いなくなっている忍者がいるでござるな。
この辺りの人選は数多くの死者を出した九尾事件を教訓にしているのでござろう。
対尾獣戦では中忍どころか上忍の一部ですら為す術なく蒸発するだけでござる故、人数を集めても仕方ないのでござるよ。
数より質、という訳でござるな。
まあ下忍でもナルト殿のような例外はいるでござるが、彼も今回は避難しているでござる。
防衛戦に参加させるかどうかで一悶着あったでござるが、フガク殿や自来也殿、カカシ元隊長の猛反対で避難に決まったでござる。
さて、そんな感じで落ちてくるチャクラ玉に気を付けながらのんびりしていると自来也殿が隣に来たでござる。
「あーあー、こりゃ復旧に時間が掛かりそうだのう……想像するだけで戦う前からドッと疲れるわい」
「建て直しついでに街の機械化も進めたいでござるな、火の国から予算を大量に貰えそうでござるし、いい機会かも知れぬでござるよ?」
「暗部はポジティブだのう……まあその辺は三代目の手腕に期待だな」
里が根こそぎ更地にされたでござるし、これを使って大名の危機感を煽れば更なる軍拡が出来るでござろう。
すり抜け殿が持ってきた尾獣を鹵獲すれば軍拡と合わせて一気に木の葉一強時代に突入でござるな。
まあ、今のままでも五大国でぶっちぎり最強でござるが、今後は片手間に世界征服が出来るぐらいには隔絶した戦力を保持出来そうでござる。
まあそこまで行くと再び軍縮でござるかな? うーん、上手く行かないモノでござるなあ。
そんな事を話していたらカカシ隊長とガイ殿のペアが拙者達の傍に来たでござる。
「お疲れ様です自来也様、民衆避難のご協力ありがとうございました」
「火影がいないタイミングを狙ったのだろうが、入れ替わりでワシが待機していて本当によかったわい」
「上空への備えはもっとちゃんとしておかないと駄目でござるなあ、どうすれば良いかはさっぱり分からんでござるが」
「……というか、そもそもこの数の尾獣はどこから来たんです?」
「うちはマダラ殿を名乗るテロリストが搔き集めたらしいでござるよ」
「何者なのだ?」
「マダラ殿をリスペクトしているという事以外は分からぬでござる、能力に関しては手渡した巻物通りでござるよ」
「リスペクトのう……確かマダラは九尾を引き連れて木の葉に戦いを挑んだらしいが……」
「九尾の代わりに他の尾獣で代用という事でござるか?」
「代用出来るモノなのか……? っと来るぞ! 土遁・黄泉沼っ!!」
自来也殿の黄泉沼が尾獣の落下地点にピンポイント展開され、尾獣がドンドン沈んで行くでござる。
圧縮チャクラ玉を切る際に使用した超圧縮チャクラメスを尾獣サイズまで伸ばし、沼でもがく三尾と六尾の手足と尻尾を切り飛ばすでござる。
大量の鮮血が流れ出し沼が赤くなって行くでござるが、人間と違って尾獣はこの程度では死なぬでござろう、たぶん。
まあ死んでも木の葉は困らないでござる。
「おおっ! これだけで勝てそうですね!」
「アホか! この程度で済んだら苦労せんわ!!」
「空を飛んでいる七尾と、沼を蒸発させた四尾は無事みたいでござる」
「四尾はうちはが引き受ける! 幻術・写輪眼!! うちは一族は俺に続け! このまま里外まで誘導するぞ!!」
「日向一族もサポートに同行しよう!」
フガク殿率いるうちは一族が大猿の四尾を幻術に嵌め、ヒアシ殿率いる日向一族と一緒に里外に誘導して行くでござる。
何とも頼もしい光景でござるが、すり抜け殿が遥か上空で落ちながら印を結んでいるでござる、妨害する気でござるな?
「させんっ! 火遁・爆風乱舞!!」
「隙ありでござるよ」
拙者に翼は生えていないでござる故、空を飛ぶ事は出来ぬでござるが、火遁が届く程度の高度なら射程圏内でござるよ。
うちはと日向一族達を丸焼きにしようとしているすり抜け殿の手足と眼球を切り裂いてみるでござる……良し! 効いているでござるよ!
無敵と攻撃を両立出来ないと言うのは確かな情報だったみたいでござるな!
チャクラメスを糸に切り替え、切られた事すら認識していない彼を簀巻きにしてから思いっきり引っ張って大地に叩き付け、まだ火を噴いている口を地面にめり込ませるでござる。
仕上げに麻酔薬で昏倒させてから自来也殿の蝦蟇の口に放り込んでおくでござる。
「これで安全でござるな」
「よくやった! 後は三尾と六尾と七尾だな!」
「三尾と六尾は沼に沈んでいるから後回しだ! まずは空中の七尾を地上に引き摺り落とすぞ!」
「鳥では近付けないでござろうな、ダメ元でチャクラメスを伸ばしてみるでござるか?」
「屋台崩しの術を応用すれば届くが通用せん、誰か蝦蟇の体中に入らんか? 七尾の背中に送るぞ」
「では拙者が行くでござるよ、羽根を落とすのは任せて欲しいでござる」
「俺も行こう! 出オチ丸が尾羽を切り落としてから俺が地面に叩き落とす!」
八門遁甲を七門まで開けたガイ殿と拙者が大蝦蟇の中に入り、しばらくして自来也殿が屋台崩しの術で空中の七尾の背に口寄せしてくれたでござる。
「良い位置でござるな、では根本からばっさりと」
七尾の造形はカブトムシを直立させて、お尻の辺りから七枚の羽根を生やしたようなデザインでござる故、下腹を切断すれば羽根は全て脱落するお手軽仕様でござる。
手は空いているでござるし、ついでに六本ある手足と立派な一本角も切断するでござるよ。
拙者を舌で回収した蝦蟇を自来也殿が口寄せで地上まで飛ばし、拙者達の離脱を確認したガイ殿が七尾の真上から。
「昼虎ッ!!!」
超威力の空気砲を放ち、浮力を失った七尾を地面に押し付けるでござる。
「土遁・黄泉沼!」
急落下する七尾が地面に激突する寸前に自来也殿が黄泉沼を展開して七尾を沈めたでござる。
「沼の底に沈んでおれ! 屋台崩しの術! 屋台崩しの術!! 屋台崩しの術!!」
ダメ押しで自来也殿が三尾と六尾、七尾の頭上に大蝦蟇を落とし、尾獣達を沼の奥底に沈める。
「自来也様! 沼の底から強烈なチャクラ反応が!」
「例の圧縮チャクラ砲か! 時空間で避難するぞ! 早く蝦蟇の中へ入れ!!」
いそいそと蝦蟇の中に入る自来也殿とカカシ隊長、ガイ殿とその他大勢の忍者達。
「うーん、拙者は走った方が良さそうでござるな」
「ではワシらの口寄せ用にフカサク様を連れて行っとくれ!」
「肩に失礼するけんの、出オチ丸ちゃん」
「よろしくお願いするでござるよ」
自来也殿の肩に生えていた髭付き老蝦蟇が自来也殿から分離し、今度は拙者の肩に融合したでござる。
さて、沼に沈んだ尾獣が大暴れする前にさっさと里の外に避難するでござるよ。
もう何もかも消し飛んでいるでござる故、超音速を出しても誰にも怒られないから快適でござるな。
「おおおおお!!! これが超音速の世界か!!!」
後方の沼が激しく発光し、間髪置いて大地一帯が大爆発を起こして土砂が大量に巻き上がり、巨大な土砂竜巻が出来たでござる。
地面が溶けていたり、竜巻が光って追加爆発していたり、拙者達の方向に追加のチャクラ玉がガンガン飛んでくるのは怒り狂った尾獣達の仕業でござろうな。
「幻想的でどことなく綺麗でござるなあ」
「おお……この世の地獄じゃけんの……」
近づく事すら出来そうにないでござるが、まあ問題はないでござろう。
なにせ彼らの手足や羽根は落ちているでござる故、放っておけばそのうち精根尽きて大人しくなる筈でござる。
今の拙者達に出来るのは四尾を担当しているうちはと日向に流れ弾が飛ばないよう、しっかりと陽動を取る事でござるな。
「ヘイトを稼ぐでござるよ、遠距離からちょっかいを掛ける術は持っているでござるか?」
「水遁系と風遁系なら色々持っておるけんの」
「では適度にチクチク刺して挑発して欲しいでござる、四尾方向に流れ弾が飛ばなければ何でも良いでござる」
「それなら自来也ちゃん達を呼び戻して四尾を手伝って貰う方が良さそうじゃな」
「グッドアイデアでござるな、では一旦距離を取るでござる」
こうして話している間にも色々と攻撃が飛んできているでござる故、このまま口寄せすれば自来也殿たちが出オチしてしまうでござろう。
里を囲っていた森が消し飛んでいる分、速度が出せそうでござるし、ささっと距離をとって適当なところで口寄せをお願いするでござるよ。
「……よし、ここまでくれば十分じゃろう! 口寄せの術!」
出てきた大蝦蟇の口から粘液塗れの自来也殿やカカシ隊長達がゲロゲロと出てくるでござる。
「うぅっ……これからは大蛇丸の事を揶揄出来んのう……」
「そんな事は良いから自来也ちゃん達は四尾の応援に向かっとくれ!!」
「里の中心で怒り狂った尾獣達が暴れているでござる故、不幸な流れ弾による犠牲が出る前に四尾を片付けたいのでござるよ」
「里で暴れている尾獣はどうするんじゃ?」
「彼らは移動手段を失っているでござる故、疲れ果てさせてから殺すなり、封印すれば良いでござろう」
「まずは四尾からか、分かった」
『出オチ丸式チャクラメスⅠ』難度 C~S以上
体外から放出したチャクラを鋭く研ぎ澄ませて刃物とする術。
本人の技量に完全に依存している為、発生部位、形状、展開速度、切れ味、強度等に術的な上限が無い。
『出オチ丸式チャクラメスⅡ』難度S以上
チャクラメスを尾獣玉以上に圧縮し、原子核三つ分程度の細さまで縮めた超圧縮チャクラメス。
本来は尾獣玉のようにドス黒い色をしているが、光の波長よりも遥かに薄く細い為、視認不可能。
原子核以外なら何でも切れるが、何でも切れてしまう為、存在しているだけで大気中の酸素分子や窒素分子を切断してしまい、酸素ラジカルやオゾンを発生させてしまう。
オゾン臭が邪魔な為、必要に迫られない限り出オチ丸は使用を控えている。
製造コストは通常のチャクラメスと同等。
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平和への扉
尾獣騒動から半日、避難していた民衆が里に戻り、復興が始まったでござる。
衣食住全て足りないでござるが、喫緊の問題は食でござるな。
幸い、ダメになったのは木の葉だけで火の国は無事でござる故、馬車や忍者、口寄せ動物等を大量に走らせて物資を確保するでござる。
ただ、木の葉周辺は馬車が通れない程に地面がデコボコになったでござる故、近くまで運んでもらって、そこからは人力でござるが。
ちなみに医療品等、馬車を待っていられない程緊急の物資は拙者が走り回って確保したでござるよ。
住については馬車に折り畳み式のテントを積んだり、木遁を扱える暗部の副隊長が建築したりしたでござる、まあ流石に初日は間に合わずに野外で雑魚寝している民衆も多かったでござるが。
それと民衆全員が荒廃した木の葉に居る必要もないでござるし、周辺の街に受け入れて貰ったりもして必要物資の節約も図るでござるよ。
衣についてはまあ追々と……って感じでござるな、どちらかというと服より寝袋や毛布の方が優先でござる。
さて、次は尾獣の処理でござるが、こちらはナルト殿に封印する形で処理したでござる。
尾獣は各里の大切な財産でござるが、四尾と三尾以外は元人柱力が抜け忍であったり、小国の持ち物でござる故、返却要求される前に封印してしまえって感じでござるな。
三尾は管理放棄されていたみたいでござるから問題は無いでござろう(長門殿と小南殿由来の情報)、四尾は岩隠れが大切に管理していたでござるが……岩が何か言ってきたら札束で叩けば良いという結論に達したでござる。
元々四尾を金で岩に売ったのは木の葉でござるし、お前らが紛失した尾獣のせいで里が消し飛んだんだぞ、どうしてくれんだああん? っとでも言えば大丈夫でござろう。
岩は木の葉融和政策に切り替えたばかりでござるし、暴走する尾獣を鎮める為に仕方なく封印したと言えば正当防衛の範疇でござるしな。
まあそもそも、尾獣を大量所持する木の葉相手に文句を言える国や里があるかどうかは微妙でござるが。
そんな訳で真っ青な顔で里に戻って来た火影様と、封印術にも詳しい自来也殿がうんうんと唸りながら、ナルト殿に元からある九尾の封印を回路に組み込んだ芸術のような封印式を考案してナルト殿を多重人柱力に仕上げたでござる。
つまり、ナルト殿は三尾、四尾、六尾、七尾、九尾の五重人柱力になった訳でござるな。
九尾の封印式と同様に尾獣のチャクラをナルト殿に還元出来る仕様でござるが、体内で多種多様なチャクラが混ざり合っているナルト殿は上手に術を組み込む事が出来なくなったでござる。
ナルト殿はチャクラコントロール修行のやり直しでござるな、里が落ち着き次第、自来也殿が修行を付けるみたいでござる。
ちなみに今はかために封印式を締めているでござるが、ナルト殿にはチャクラを吸い取る鮫肌もあるでござるし、修行に合わせて徐々に緩めていく予定なのだとか。
恐らく史上初の多重人柱力であるナルト殿がどこまで化けるか今から楽しみでござるな。
さて、次は里の復興計画でござるが、まずは仮説住宅の建設と輸送経路の整地でござるな。
さっきも言ったでござるが、こちらは木遁使いの暗部の副隊長や木の葉の大工達が頑張っているでござる、まあ近い内に形になるでござろうな。
それが終わり次第里の再開発でござる、今は上層部が必死に計画を練り上げて大工達が図面を引いているところでござるよ。
火影様はそれに加えて大名殿と相談しながら、火の国から予算や人員を引っ張っているでござる。
外壁や森もがっつり無くなったでござるし、木の葉の規模は以前の数倍に膨れ上がるかも知れぬでござるな。
こちらも楽しみでござるな。
あと、四影会談のついでに他里の影達が木の葉の様子を見に来たでござる。
会談は火の国の隣国である湯の国で行われていたでござる故、影達の足ならすぐでござるな。
跡形もなく消し飛んだ木の葉を見て皆絶句していたでござる、思わず解・幻術を唱えた者すらいたでござるな、気持ちは分かるでござるよ。
木の葉の惨状を見た他里の影達は支援を約束してくれたでござる、今は輸送能力も貴重でござる故、木の葉に直接物資を持ってきてくれるみたいでござる、ありがたいでござるなあ。
まあ輸送係と言う名のスパイかも知れぬでござるが、その辺りは拙者達暗部が何とかするでござる故、問題は無いでござるな。
あと、どこから聞いたのか水の国の霧隠れ、田の国の音隠れも支援してくれるのだとか、こちらもありがたいでござるなあ。
上層部はこの機に乗じて侵略されるかな? とも予想していたみたいでござるが、世界は思ったより平和でござった。
まあ水面下で色々と動いているかも知れぬでござるが、仮にこの状態で木の葉対全世界という図面になったとしても余裕で勝てるから問題はないでござるな。
それを他の影達は理解しているから融和政策を崩していないのでござろうが、他里も一枚岩ではないでござろうし、しばらくの間、影達は自里内のタカ派を押さえるのに苦労しそうでござるな。
ま、その辺は流石に木の葉は知ったこっちゃないでござる。
まあ一応、ナルト殿が誘拐されないように自来也殿が護衛に付くみたいでござる、一応拙者にもナルト殿を感知範囲に入れておけと命令されたでござるな。
そんな感じで、当面の拙者のお仕事は警備防諜と荷物の受け取りでござるな、後は病院のお手伝いぐらいでござろうか? 拙者も一応は医療忍者でござるからな。
それと、予定していた水の国との交易は流石にしばらく延期でござる、手を回そうと思えば回らない事もないでござるが、復興最優先って事でござるな。
◇ ◆ ◇
木造新築の匂いはわくわくするでござるなあ。
日頃の行いが良いからか、拙者は上層部から新築の家を下賜されたでござる。
戴いたお家は中々に快適な造りで、大変に暮らしやすい豪邸でござった。
大きな庭も付いてきたでござる故、ここを畑にして野菜を育てたいでござるな。
近所の川は吹き飛んだでござる故、新鮮な魚を食べる事は難しくなったでござるが、代わりに新鮮な野菜を食べられそうで何よりでござるな。
ただ拙者一人で整地するのは中々に骨が折れるでござる故、Dランク任務として下忍を何人か派遣して貰って一緒に整地したいでござる。
依頼を出してすぐにやって来たのはカカシ班と自来也殿でござった、そういえばカカシ班も下忍でござったな。
自来也殿はナルト殿の護衛でござろうな、お疲れ様でござる。
ナルト殿がいるならすぐに終わりそうでござるが、彼はまだまだ修行中らしく影分身は数体がやっとみたいでござる。
より正確にいえば、やろうと思えば幾らでも術を出せるそうでござるが、規模や威力の制御が極めて難しいのだとか。
十数人の影分身が欲しいのに、数万体の影分身が出てくる……みたいな感じでござるかな?
五重人柱力ともなればそうなるのでござるか……色々と凄まじいでござるなあ。
まあそんな感じで畑が完成し、今はトウモロコシを育てているところでござる。
それもこれも全部木の葉のおかげでござる。
素敵なプレゼント、ありがとうでござるよ。
さて、尾獣事件から結構な月日が経過したでござるが、未だに木の葉は復興中でござる。
まあ、復興というよりは開発と開拓といった方が正確でござるかな?
火影様が大名を口説き落とす事に成功した為、木の葉の規模は以前の十数倍に膨れ上がったでござる。
高度な機械化の計画立案も無事に通り、木の葉大開発時代が幕を開けた訳でござるな。
そして機械といえば雷の国でござる、当然のように木の葉は機材の大量発注を雷の国に掛けたでござるよ。
そして当然のように雷の国は機材の材料不足に陥った為、土の国や風の国に大量の鉱石や砂金を発注したでござる。
それに伴い、大量の物資を輸送する為の大型船が求められ、田の国や水の国が造船を請け負い。
そして造船する為の木材を火の国が請け負い……という感じで世界経済が急速に巡り始めたでござる。
まるで桶屋の話みたいでござるな。
どの国も空前絶後の好景気の恩恵を受けているでござるが、とりわけ成長率が著しいのは風の国でござろう。
需要に応じて市場価格は上昇するでござる故、工業必需品である黄金の価格が跳ね上がったのでござる。
それまでの黄金は装飾品としての需要しかなかったでござる故、需要が急速に生まれたのでござる。
風影殿の手で砂金を大量生産出来る風と砂は強いでござるな。
それと、雨隠れの里が開通したでござる。
いずれ開通させる予定でござったが、図らずしも大輸送時代が訪れたでござる故、長門殿の名義で雨隠れに開通を依頼したのでござる。
雨は掌くるくるになるでござるが、雨への支援をいち早く行い、他国にも呼び掛けた木の葉への恩返しという事なら一応筋は通るでござる。
まあどの国にとっても利益が大きいでござるし、誰も文句は言わないでござるが。
雨の道路整備はまだ途中でござったが、例え雨全域が沼地であっても、ただ通れるようになるだけで輸送効率は大幅アップでござるからなあ……。
雨は本当に特異な立地でござるなあ。
あと、陸路の大量輸送手段として全世界鉄道の開通計画も進んでいるのだとか。
今はまだ雷の国や火の国、田の国の一部にしか存在しない鉄道でござるが、鉄道の輸送能力は馬や人力の比ではないでござるからなあ……。
実現は流石にまだまだ先でござるが、完成すればいよいよ本格的に新時代が始まるでござろうな。
今まで輸送の護衛と言えば忍者でござったが、全世界鉄道が完成すれば忍者自体の需要が著しく減少するでござろうな。
当面の間は小国等の路線破壊工作があるでござろうが、五大国の武力があれば遠くない内に鎮まるでござろう。
大規模な戦争はもうないでござろうし、そうなれば忍者の在り方は大きく変わるでござろうな、変わるどころか滅ぶかも?
とはいえ進めた時計の針を戻す事は出来ないでござる故、木の葉が出来るのは鉄道の利権をしっかりと確保する事だけでござるな。
まあその辺は火影様や上層部の手腕に期待でござるよ。
さて、話を忍者の話題に戻すでござるが、尾獣事件の首謀者であるすり抜け殿の正体はうちはオビト殿でござった。
彼から吸い出した情報によると、本当にマダラ殿は最近まで生きていて、彼を蘇生させる事がオビト殿の目的の一つだったのだとか。
勿論、マダラ殿関連の品々は木の葉が回収したでござる。
そしてマダラ殿復活の芽を完全に潰す為、残った暁残党狩りが再開したでござる。
残りはゼツ殿と角都殿でござるが……まああっさりと簡単に終わったでござる。
オビト殿が最終的な居場所を把握していたでござるし、ゼツ殿に至っては本人の匂いが付いた品を確保出来たでござる故。
情報の為に基本捕縛でござるが、白い方のゼツ殿は何万体も居たでござる故、数体を残して処分したでござる。
残った数体は尋問が終わり次第、実験室行きでござるな。
暁に関してはこれで決着でござるな。
それと、予定していた中忍試験は中止になったでござる。
元々は木の葉を会場にする予定だったのでござるが、流石にそれどころではなかったでござるし妥当でござるな。
その代わり、五大国で共同の新しい中忍試験を計画中らしいでござる。
そう、四大国ではなく五大国でござる。
四影会談にて木の葉・雲・岩・砂の四里同盟が結ばれ、そしてすぐに水の国の霧隠れも同盟に参加希望を出したでござる。
影達や上層部の反応は、今まで鎖国していたのに何でいきなり? って感じでござったが、それについては霧隠れの里が説明してくれたでござる。
霧隠れ曰く、最近水影が代替わりしたと。
そして新しい水影の方針により、黒い過去を払拭するオープンでクリーンな霧隠れの里を目指した改革が始まったのだとか……。
うーん、怪しさ満点でござるな、ホントは四里同盟にビビっているだけでござろう、尾獣も全部木の葉に取られてしまったでござるしな。
ちなみに、それを聞いた火影様は愉快そうに呵呵大笑し、フガク殿は微妙な顔をし、コハル殿とホムラ殿は達観したような目をしていたのだとか。
上層部は血霧時代をよく知っているでござるし、鎖国していた霧隠れですら時代の波に呑まれて方向転換させられている姿に万感の想いがあるのでござろうな。
まあともあれ、水と霧が木の葉に忖度してくれるなら乗っからない手はないでござる。
木の葉の復興が一段落してから、今度は水影も入れた五影会談を開き、そこで正式に五里同盟が結ばれたのでござる。
そして、その場のノリで友好の証として中忍試験を開こうぜ! という流れになったのでござるよ。
会場は里を丸ごと新しくした木の葉で行うみたいでござる。
新生木の葉隠れの里のお披露目兼偵察という事でござるな、とはいえ、まだまだ図面に描かれた完全体木の葉隠れの里には程遠いでござるが……。
ちなみに音隠れや滝隠れ、雨隠れ等の小国も参加するでござる。
観戦客として、世界中から大名や要人が木の葉を訪れるでござろうし、新生木の葉隠れの里の宣伝にもぴったりでござるな。
更に彼らは莫大なお金を木の葉に落として行ってくれるでござろうし、それ狙いで大量の出店や飲食店、旅館がアップを始めているでござる。
ここまで来ればもう完全にお祭りでござるな。
史上初の試みでござるし、まだ無事に始まるかどうかすら分からないでござるが、上手く事が運べば大きな意味を持つ恒例行事になりそうでござる。
楽しみでござるなあ。
◇ ◆ ◇
「はい、焼きトウモロコシと焼きおむすびのセット三つでござるよ、アツアツなので気を付けて欲しいでござるよ」
「さんきゅーだコレ、出オチ丸の兄ちゃん」
「仮面姿の暗部の名前を呼ばないで欲しいでござるよ……」
木の葉丸殿はヤンチャでござるなあ……。
さて、あれからだいぶ月日が過ぎ、いよいよ中忍試験が始まったでござる。
木の葉隠れの開発はまだまだ途中でござるが、だいぶ完成形に近づいたでござる故、そろそろ人呼んでも良いんじゃない? との事で開催でござるな。
拙者は下忍でも無ければ担当上忍でも無いでござる故、試験そのものにはあまり関係がないでござるが、暗部としての警備任務があるでござる故、気は抜けないでござる。
とはいえ、警備は何をしていても出来るでござる故、拙者も出店に挑戦でござるよ。
自宅の庭で採れたトウモロコシや、拙者が握ったおむすびを焼いてたれを付けた簡単なメニューでござるが、売り上げは中々上々でござる。
予想以上に儲かっているでござるし、任務が終われば孤児院にでも寄付したいでござるな。
「暗部姿で出店をやられるとシュールだのう……」
「おや、これは自来也殿、お久しぶりでござる」
焼きトウモロコシを四本注文する自来也殿。毎度ありがとうございますでござるよ。
そして、一緒に居るのは綱手殿とシズネ殿と……誰でござるかな?
「久しぶりね、出オチ丸君」
「その感じは大蛇丸殿でござるか……何から何まで完全に変わっているでござるから気が付かなかったでござるよ」
顔や体格はともかく、体臭や声色まで変わっているとは、随分と念入りな変装でござるな……。
「中身はともかく外側は完全に別人だからな、おじい様の細胞を使ったクローンに憑依し、整形手術や改造手術を施した良く分からない何かだ」
「残念ながら木遁は使えないのだけどね……木遁の使用条件は遺伝子ではないみたいね」
成程、確かに憑依であれば五感感知は無意味でござるな……。
「三人共観戦でござるか?」
「ええ、可愛い里の忍者達を応援しに来たのよ」
「ワシは本の取材に」
「あたしは賭けと酒呑みに、自来也と大蛇丸の財布でな」
「綱手様……」
「……あなた達、もうちょっと外面を装いなさいよ」
「木の葉を満喫してくれているようで何よりでござる、後で火影様に顔を見せに行って欲しいでござるよ」
「絶対に行かない。行ったら最後、仕事を押し付けられてワシの取材がパーになる」
「右に同じく、賭けと酒が台無しになる」
「綱手様の賭けは元から台無しじゃないですかー」
「あぁん?」
「あひぃ!」
「……後で私は顔を出す予定よ、田の国の使者としてだけどね」
「火影様より先に拙者の屋台に遊びに来てくれて感謝の言葉もないでござるよ、はい焼きトウモロコシ四本、お待たせでござる」
「ありがとう……あら、花火ね」
「開催の合図でござるな、初戦は確かうずまきナルト殿と日向ネジ殿だったと思うでござるよ」
「おっと、こうしちゃおれん、ナルトの晴れ舞台に遅刻する訳にはいかんからな!」
「くくくっ、忍界初の多重人柱力、実に興味深いっ!」
「ナルトに賭けているんだ、試合は見ないとな!」
「待ってください綱手様!」
焼きトウモロコシを持ったまま会場へ駆け出す四人。
中々にシュールな光景でござるが、四人共卓越した忍者でござる故、瞬身中の姿を見切れる忍者は極僅かでござろう。
いやあ、平和でござるなあ。
お祭りの喧騒に包まれた木の葉に無数の花火の音が混じり、空に咲く色鮮やかな花々が行き交う人々の目を楽しませる。
この光景こそ、数多の先人が夢見ては斃れてきた、壊される事のない平和な世界への扉でござろう。
今度こそ、忍の世界に壊れる事のない平和を、飢える子供がいない世界を。
「そこの君も焼おむすび、おひとついかがでござるか?」
完結です。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
今後の予定として、設定集と、感想欄で約束していた第三者目線の出オチ丸についてを投稿する予定です。
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