大乱闘スマッシュブラザーズ Abandon World (アヤ・ノア)
しおりを挟む

プロローグ

本編のスタートとなります。

スマブラメンバーは、まだ出てきてませんが。


 多くの戦士達が乱闘をし、生活をし、暮らしていく「この世界」――争いの世界。

 そこは、マスターハンドとクレイジーハンドにより創造され、

 多種多様な生物や存在が共存し、絶妙なバランスで平和が保たれていた。

 

 だが、「この世界」は1つだけではない事をご存じだろうか。

 乱闘しなくてもいい世界。

 乱闘しなければ生きていけない世界。

 人間しか存在しない世界。

 人間が存在しない世界。

 それらは「パラレルワールド」と呼ばれ、この平行線上にいくつも存在している。

 

 だが、パラレルワールド自体は戦士達の故郷と異なり、互いに干渉し合う事はない。

 「この世界」の住人が、異世界の存在は知っても、

 パラレルワールドの存在を知らないのは当然である。

 

 ――はずだった。

 

「……自然の歌が、聞こえない……」

 どこかのパラレルワールドにて、一人の女性が悲しそうな声でそう言った。

 彼女は、愛していた自然が、失われてしまった事を嘆いているのだ。

「……この世界も、もう終わりかも入れない……。だけど、終わりは来てほしくない……」

 女性はこの荒廃した世界を終わらせたくないという意志を持っていた。

 しかし、彼女の周りに他の人間はいなかった。

「このまま、終わりを先延ばしにするか、早く終わりが来るのか……」

 そう言うと、女性の目から涙がこぼれた。

「……いいえ、どちらの結末にもしたくないわ。何としてでも、この世界を救いたい……!」

 女性が持っていた杖を掲げると、空に白い亀裂が走った。

「この世界自体が弱まってきているから、これ以上空間を開けたくはない。

 だけど、この世界のためだったら……!」

 女性が精神を集中させ、さらに杖に力を込める。

 すると、白い亀裂は徐々に大きくなっていった。

 ある程度亀裂が大きくなったところで、女性はぺたりと座り込んだ。

「……正史世界と繋げておいたわ。ここから、みんなが来ればいい」

 

 ……どうか、この世界を、救って。

 女性は最後にそう言い、希望を託すのであった。

 

 次回予告。

 

「流石はスマブラの顔といったところだな」

「誰が勝つのかしら?」

「それを予想するのも、この大乱闘の楽しみだ」

 

 いつものように大乱闘をしていた、スマブラメンバー。

 だが、スマブラメンバーの日常は、長くは続かなかった。

 

 ――お願いします。どうか、この世界を救って。

 

 突如として、世界を救ってほしいと頼まれた彼らが行った先は。

 

「うわっ……眩しい……!」

「何も見えない……!」

 

 パラレルワールド、だった。

 

 大乱闘スマッシュブラザーズ Abandon World




ハーメルンには最低文字数制限があるので、次回予告はオリジナルです。

次回は、日常と非日常が重なります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1話 日常と非日常

物語の始まりです。
今はまだ、平和な毎日を過ごしているスマブラメンバーですが……。


 ここは、争いの世界の拠点、スマブラ屋敷。

 

「ふわぁぁぁぁ……」

「おはよう、兄さん」

 寝ぼけ眼でリビングに来るスマッシュブラザーズのリーダー・マリオ。

 そんな彼を出迎えてくれたのは双子の弟ルイージ。

「今日の朝食はファルコンが作ってくれるみたい」

「あいつは料理が上手いのか?」

「そうみたいだよ。意外だよね」

 ファルコンは多くの仕事をしており、また、その出自には謎が多い。

 それでもスマブラメンバーとして平等に扱われるのは彼の腕と心根の良さからだろう。

「あいつが作る料理はどんな味だろうな。

 いつもリンクのものばかり食ってたから、新鮮な気分になるぜ」

 

「よし、できたぞ」

 そう言ってファルコンはスマブラメンバーに朝食を出した。

 今日の朝食のメニューはご飯・焼き魚・味噌汁だ。

「いただきます」

 手を合わせた後、マリオ達は朝食を食べた。

「ん、美味いな」

「ちょっと塩が多いけど、まぁまぁな味だな」

 ファルコンは喫茶店の店長もしているため、実は料理もかなりできるのだ。

「ははは、喜んでもらえると嬉しいよ」

 笑いながら朝食を食べるファルコン。

「そういえば、今日の乱闘はどこで行うんだ?」

「空中スタジアムみたいだぞ」

「あそこか」

 それを聞いたマリオは、二度起こった亜空軍異変を思い出した。

 第一次亜空軍異変・第二次亜空軍異変共に、

 空中スタジアムから亜空軍が襲来した事で始まったからだ。

「楽しみだな、リンク」

「ああ」

「じゃあ、朝食を食べ終わって片付けたら早く空中スタジアムに行こうぜ!」

 

 朝食を食べ終わり、食器を片付け終わった後、

 マリオ達は乱闘の舞台となる空中スタジアムに向かった。

「よーし、早速みんなの乱闘を見ようぜ!」

「マリオ、第一試合はあなたが出るのよ?」

「はっ! そうだった!」

 ピーチに言われ、はっと気付いたマリオは、大急ぎで乱闘が行われる会場へ向かった。

 

 今日の乱闘の試合は、以下の通りである。

 第一試合:マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウ

 第二試合:ゼルダ&シーク、ネス&リュカ

 第三試合:ルカリオ、ソニック、ゲッコウガ、ロックマン

 第四試合:マルス&ロイ、ルフレ&カムイ

 ちなみに、全ての試合でストック制であり、第一試合と第三試合は通常の大乱闘、

 第二試合と第四試合はチーム戦である。

 

 第一試合は、スマブラ四天王と呼ばれるスマブラの顔の大乱闘だ。

 観客は試合が始まる前から盛り上がっていた。

「流石はスマブラの顔といったところだな」

「誰が勝つのかしら?」

「それを予想するのも、この大乱闘の楽しみだ」

 

Ready……Go!

 そして、合図と共に、第一試合が始まった。

 

 合図と同時に最初に動いたのは、リンクだった。

 リンクはカービィに近づき、剣で斬りつける。

「うわぁぁ!」

「行くぞ、マリオ!」

 ピカチュウがマリオに電撃を放って攻撃する。

「でやぁ!」

 マリオも負けじとミドルキックでピカチュウを攻撃する。

「いっくよー! ハンマー!」

「ぐわぁ!」

 カービィはリンクに近づき、ハンマーで殴りつける。

 その威力は溜めなくともそれなりに強い。

 

「マリオ! 頑張って!」

「リンク! そこです!」

 キノコ王国の王女ピーチと、ハイラル王国の王女ゼルダがそれぞれの関係者を応援する。

「二人とも楽しそうですね~」

「当たり前でしょ、ヨッシー! だって、マリオが出るんですもの!」

「まぁ、当然ですよね~」

「リンクもなかなかの剣の腕前だね」

 シュルクもリンクの動きを見ながら感想を言う。

「行け行け~! カービィ!」

「ぴかにいちゃんがんばるでちゅ~!」

 トゥーンリンクやピチューなど、子供達も応援に入った。

 

「たぁ! とぉ!」

「食らえ! 両足蹴り!」

 ピカチュウは両足を突き出してリンクを蹴る。

 マリオは隙を突いてピカチュウをキックで攻撃しようとするが回避される。

「ファイナル……カッタァーーー!」

「おっと!」

 カービィの攻撃もピカチュウは軽々とかわす。

 

「ピカチュウ、速いな」

「足の速い奴が有利と誰かが言ってたが……」

 試合を観戦しているフォックスやファルコが言う。

 

「ハンマー!」

「ふっ」

 そんなピカチュウを止めるべく、カービィはピカチュウに突っ込んでハンマーを振るう。

 だがそれも、ピカチュウは軽々とかわす。

「果たしてこれはどうかな?」

「ぐはっ!」

 が、リンクの爆弾には反応できず、爆風を受けてしまう。

「でかいのお見舞いしてやる! ファイア掌底!」

「ぐはっ!」

 マリオが炎を纏った掌底でピカチュウに大ダメージを与える。

 軽く舌打ちしたピカチュウが反撃とばかりにマリオに電撃を放つ。

「えいっ!」

 その隙にカービィが回し蹴りでピカチュウを攻撃して蓄積ダメージを増やす。

「倒れろ!」

「ファイアボール!」

 ピカチュウはカービィに接近して電撃を放ち大ダメージを与える。

 マリオもリンクの盾が届かない場所にファイアボールを放った。

 

 試合は一進一退の攻防が続き、全員の蓄積ダメージも溜まっていった。

 早めにこの試合を終わらせるべく、リンクはある行動に出る。

「とぉっ! はっ! てやぁ!」

 リンクは動きが鈍いながらも他の三人を同じ位置に誘い出す。

 そして、パワーを溜めた後、スマッシュ斬りを繰り出して三人を同時に吹っ飛ばした。

 マリオは復帰できたものの、体重の軽いカービィは撃墜され、

 ピカチュウも何とかギリギリで崖に掴まった。

「これで残るは三人か。よし、どんどん行くぜ!」

「そうはさせないぞ!」

 リンクは弓矢でマリオを攻撃するがスーパーマントで跳ね返される。

「いてっ!」

「よし!」

 その隙にマリオに掴まれてしまい、ジャイアントスイングで投げ飛ばされた。

 リンクはフックショットを使い崖に掴まった後、上がる時の切り上げでマリオを攻撃する。

「しぶといな、リンク」

「へっ、俺も伊達に勇者をやってないさ。さぁ、反撃と行くぜっ! 回転斬り!」

「うわぁ!」

 リンクはマリオを回転斬りに食らわせ、マリオを吹っ飛ばした後、

 ピカチュウに近づいてスマッシュ攻撃を溜める。

 だが直前でキックを受けて潰されてしまい、さらにショート電撃を受けてしまう。

 そこそこ重量のあるリンクでも、

 ダメージがかなり溜まっていたため流石にこれには耐え切れずに撃墜されてしまった。

 

「後はお前だけだな……」

「ああ……」

 残ったのは、マリオとピカチュウだけとなった。

 彼らを見ていた観客は、より一層盛り上がる様子を見せた。

「ファイア……」

「ショート……」

 マリオは、ピカチュウを吹っ飛ばすために、その手に炎の力を溜めた。

 ピカチュウも、マリオを吹っ飛ばすために、内部に電気の力を溜めた。

 

「……電撃!!」

「なっ」

 マリオのファイア掌底がピカチュウに届く前にピカチュウのショート電撃がマリオに命中し、

 結果、マリオは場外に撃墜された。

 第一試合は、ピカチュウの勝利に終わった。

 

よっしゃぁ!

やったぁ! ぴかにいちゃんがかったでちゅ!

 観客席からは大きな歓声が上がっていた。

 他の戦士を応援していた観客も「よくやった」と健闘を称える。

 

「次の試合はゼルダとシーク、ネスとリュカのタッグ戦か」

「どっちも不思議な力を持ってるからね」

 ピットとブラックピットがそんな会話をしていると、もう第二試合が始まろうとしていた。

「この試合、どっちのチームが勝つと思うんだゾイ?」

「そうだな……ゼルダのいるチームだと思う」

「ボクはネスとリュカのチームかな?」

 デデデ、ロゼッタ、パックマンの三人が賭けをしていた、その時だった。

 

 ――お願いします。どうか、この世界を救って。

 

「!?」

 突然、空から女性の声が聞こえてきた。

 それと同時に、空中に巨大な裂け目が現れた。

「なっ、なんだこれは!?」

「まさか、また敵襲か……!?」

 あそこから、敵が現れるのか。

 マリオ達は身構えたが、数分経っても敵が現れる様子はなかった。

 

 だが、数分後。

 その裂け目から、凄まじい強さの光が放たれた。

「うわっ……眩しい……!」

「何も見えない……!」

 カービィとリンクもあまりの眩しさに目を覆う。

 敵襲でなければ、一体何が起こるのだろうか。

 リンクは眩しさに耐えている中でそう思っていた。

 

 そして、眩い光が消えると同時に、マリオ達の姿は空中スタジアムから消えた。

 

 ――スマッシュブラザーズ……最後の希望……。




次回は物語の舞台となる世界に行きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 最後の希望

スマブラメンバーが今回の舞台に飛びます。
割とシリアス気味にしました。


「……んっ」

 マリオが目を覚ますと、そこは廃墟だった。

「ここ、は……? 誰もいない……?」

 建物のほとんどは瓦礫に埋もれ、自分の周りを見渡したが人の気配はなかった。

 それでも、生存者や仲間を確認するためにマリオは歩く。

「リンク! カービィ! ピカチュウ!」

 マリオは特に仲の良い仲間、リンク、カービィ、ピカチュウを呼んだが、声はしなかった。

「一体どこにいるんだよ! どこに……!」

 マリオが仲間が見つからない事に焦っていると、

―こっち、こっちよ。

「……!?」

 自分の頭の中に、女性の声が聞こえてきた。

 テレパシーか、と思ったマリオはその声にとりあえず問いかけてみる。

「誰だ、お前は!?」

―ここから真っ直ぐ東に向かって。そこにあなたが探す仲間はいるわ。

「東……?」

 マリオは女性の言葉を信じられなかったが、考えていても仕方がないと思い、

 彼女の言葉に従って東に向かった。

 

 しばらく走っていると、マリオは小さな都市らしき場所に辿り着いた。

 そこにはリンク、カービィ、ピカチュウ、そして謎の女性がいた。

 マリオは大急ぎでその都市の中に入った。

「みんな、無事だったか!」

「ああ……あいつが保護してくれたからな」

 リンクが指差したのは、女性だった。

「僕はお腹ペコペコだったけど、お姉さんが食べ物を出してくれたから大丈夫だったよ!」

「やっぱりそれかよ」

 カービィの発言に突っ込むピカチュウ。

 とにかく合流できてよかった、とマリオ達は笑い合う。

「そういえば、あの女性は一体誰なんだ?」

「ちょっとこっちに来てくれ」

 マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウはその女性のところに来た。

 

「初めまして。私はこの『ラストホープ』を治めるもの、アスティマといいます」

 金髪に緑の瞳を持つその女性はドレスの裾をたくし上げて四人に自己紹介をした。

「アスティマ! なんで勝手に俺達をこんなところに飛ばしたんだ!

 せっかく次の乱闘を観戦しようと思ったのに!」

 マリオはいきなりこの世界に飛ばされたためにアスティマをまくし立てた。

 だが、アスティマは表情を変えずにこう言った。

「あなた達をここに呼んだのには訳があります」

「訳なんてどうでもいい! 早く元の世界に……」

「最後まで私の話を聞いてください!」

「……」

 アスティマの必死な様子を見たマリオは、何とか落ち着きを取り戻した。

「この世界は今、滅びを迎えようとしています。

 私は、この荒廃した世界を救いたくて、あなた達を呼んだのです」

「お前じゃ何とかできないのか?」

「そうだぜ。リンクの言う通り、自分の事は自分でやるんだ」

 リンクとピカチュウの言葉を聞いたアスティマは首を横に振った。

「この事はあなた達にしかできないと思ったからです。

 何故なら、この世界の脅威は、私一人では対処できませんから……」

「……そうか」

「それに、皆様をここに呼んだ時点で、私は大半の力を失ってしまいました。

 なので、私に戦う力は残されておりません。

 お願いします、スマッシュブラザーズ! どうか、この世界を救ってください!」

 アスティマは必死で、スマブラ四天王にこの世界を救うように頼み込んだ。

 それを見たマリオ達は、彼女の頼みを断り切れない気持ちから、満面の笑顔でこう言った。

「分かったぜ。お前の望み、叶えてやるよ」

「こんなにいい奴の頼みを断るなんて、勇者としては失格だしな!」

「アス姉はとっても困ってるんでしょ? 困ってる人を放っておくなんて、僕にはできないよ!」

「そして、俺達はそんな奴らを助けるために動く。もちろん、お前も入っているぜ!」

 スマブラ四天王の曇りなき表情と態度を見たアスティマは、ほっと安心してこう言った。

「ありがとうございます。この世界を本当に救ってくださるのですね」

「ああ!」

「嘘は絶対につかないぜ」

「ねえねえアス姉、それより最初の仲間はどこにいるの?」

「聞くのが早すぎだっつーの」

 カービィはいい空気を読まず、仲間の居場所をアスティマに聞いた。

 当然ながらピカチュウに突っ込まれる。

「そこの鼠の言う通り、早すぎますわ」

「俺は鼠じゃねぇ、ピカチュウだ!」

「あら、そうでしたね。ピカチュウさま。……それでは、仲間を探します」

 アスティマは目を閉じる。

 じっと意識を集中させ、この世界にいる者の声を聴く。

 

―わぁぁ、パルテナ様! 魔物がたくさん!

―ピット、落ち着いて。私の後ろに……。

―僕だって、ちゃんと戦えますよ!

―そう。じゃあ一緒に行きましょう?

―パルテナ様も、僕と一緒に戦ってくださいね!

 

「……」

「聞こえたのか?」

 マリオが、ぼんやりとした様子のアスティマに尋ねる。

「ええ……聞こえたわ。

 ここの西から、ピットという少年とパルテナという女性が魔物と戦う声が……」

 アスティマによれば、西に行けばピットとパルテナが見つかるらしい。

 この二人は、魔物と戦っている様子だという。

「分かった、西に行けばいいんだな?」

「ええ。でも気を付けてね。あなた達だけでは、勝てないかもしれないから……」

「そんな後ろ向きな事は言うなよ、アスティマ」

「そうだよ! もっと前向きに、前向きに!」

「お前がそんな調子だと俺達の調子も狂うぜ」

「だから、アスティマ、俺達を信じてくれ」

「……そうね。ありがとう、みんな」

 スマブラ四天王の励ましの言葉に、アスティマは微笑むのだった。

 

「それじゃあ、いってらっしゃい!」

「ああ! 行ってくるぜ!」

 アスティマに見送られ、スマブラ四天王はピットとパルテナを探すために西に向かうのだった。




オリキャラ「アスティマ」はパルテナの鏡で言うパルテナポジションなので、
この小説では、パルテナも一緒に戦います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 天使と女神

仲間救出回です。
この物語に出てくる魔物は、あまりスマブラらしくない感じを目指しました。


 その頃、ピットとパルテナは……。

 

「パルテナ様! 何ですか、この魔物は?」

「私でも分かりませんわ。冥府軍にも自然軍にもこんな魔物はいませんでしたもの」

 不気味な動く死体、ゾンビと戦っていた。

 この魔物は皆、生ある者に対する憎悪のみで動いているようで知性は全く感じられない。

「ですがピット、この魔物に知性は無いと見ました。ピット、彼らを上手く誘導しなさい」

「はい!」

 ピットは全てのゾンビを一つの場所に誘導した。

「爆炎!」

 パルテナはその隙に杖を振り、ゾンビがいる場所に爆発を起こす。

 攻撃系の奇跡「爆炎」だ。

 爆炎に巻き込まれたゾンビは四散して消滅する。

「やりました、パルテナ様!」

「ピット、油断は禁物です」

「えっ!?」

 パルテナの言葉と同時に、大量のゾンビがピットとパルテナを取り囲んだ。

「わわわわ、こんなに敵が!」

「貴方も戦うのよ」

「分かってます!」

 ピットは神器、パルテナは奇跡を使ってゾンビを次々と倒しているが、

 いくら倒してもゾンビが減る気配はない。

 むしろ、どんどんと数が増えているようだ。

「あぁぁ、もう、こんな時に都合よく援軍が来るわけが……」

 ピットがそう言って頭を抱えていると、

 

「あるんだよな」

「その声は……マリオ!?」

 ピット達の背後から、マリオの声が聞こえてきた。

「今、助けに来たぜ!」

「僕達がいれば百人馬力だよ!」

「……随分と中途半端な言い間違いだな」

 同時に、スマブラ四天王の残りメンバー、リンク、カービィ、ピカチュウも現れた。

「どうしてすぐ、私達がこんな敵と戦っているのか分かったのですか?」

「話は後だ、来るぞ!」

 パルテナに理由を話すより、まずはこのゾンビを一掃しなければならない。

 マリオ達は戦闘態勢を取った。

 

「ファイアボール!」

 マリオはまず、ゾンビにファイアボールを放って燃やすと、

 リンクがゾンビの群れに飛び込んで回転斬りを行う。

 その隙にパルテナが瀕死のゾンビをオート照準で仕留めた。

 ゾンビはマリオに噛みつこうとしたが、リンクが盾で防いでダメージを最小限に抑える。

 別のゾンビがピカチュウを噛みついて攻撃したがゾンビ側が与えたダメージはこれだけだった。

「伊達に親衛隊長をやってませんよ!」

 ピットはパルテナの神弓を構え、ゾンビの一体を貫く。

 ゾンビは絶叫しながら悶える。

 どうやら、この一撃がかなり効いたようだ。

「僕だって! ストーン!」

 カービィがホバリングをした後、石に変身してゾンビを押し潰し戦闘不能にする。

「いくぜ、かみなり!!」

 さらに、ピカチュウのかみなりがゾンビ達に命中し、ゾンビの人数を半分に減らした。

 だがゾンビ側もやられてばかりではないようで、

 一体のゾンビが変身を解除したカービィを掴んで絞り上げる。

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

「まるでリーデットみたいだぜ」

「そんな事はいいから早く助けてよ!」

「はいはい」

 ゾンビに掴まれているカービィを助けるため、

 リンクは疾風のブーメランでゾンビを気絶させた後に素早くカービィを助ける。

 しかしゾンビは容赦なくマリオに襲い掛かり、噛みつこうとする。

「危ねぇ!」

 ゾンビの噛みつき攻撃がマリオに当たる直前でリンクが彼を庇い代わりにダメージを受ける。

「リンク、大忙しだな……」

「あ、ああ……」

「大忙し? それは僕に言うセリフなのでは?」

 そう言ってピットはパルテナの神弓を双剣にしてゾンビに突っ込んで連続で切り裂く。

 ゾンビに致命傷を与える事はできたものの、戦闘不能にするまでは至っていなかったようだ。

 そこにパルテナの爆炎が炸裂し、ゾンビは戦闘不能になった。

「ハンマー!」

「ショート電撃!」

「スーパージャンプパンチ!」

 カービィのハンマーがゾンビを吹っ飛ばした後、

 ピカチュウがショート電撃を食らわせてゾンビを倒し、

 残り一体のゾンビをマリオがスーパージャンプパンチで倒した事によりゾンビは全滅した。

 

「所詮は数だけのキング・オブ・ザコでしたね」

「キング・オブ・ザコって……。

 それよりも、お前達の居場所が分かった理由をまだ話してなかったな。

 まずは東に向かってテレポートをしろ」

「えっ、東ですか? 分かりましたよ、テレポート!」

 

 パルテナのテレポートにより、六人はラストホープに移動した。

「ここがアスティマって奴が治めるラストホープだ」

「ラストホープ……最後の希望、という意味ですね」

「ああ」

 この荒廃した世界で人々がまともに住む事ができる数少ない場所……。

 だから“最後の希望”と呼ばれているのだろう。

「ところで、アスティマってどういう人なの?」

「ああ、今から呼んでくる。アスティマー!」

「はい!」

 マリオがアスティマの名を呼ぶと、六人の目の前に金髪碧眼の女性が現れた。

「この人が……アスティマっていうんですか?」

「ええ。よろしくね、ピットさま、パルテナさま」

 アスティマはぺこりとピットとパルテナにお辞儀した。

「それで、どうして僕達の居場所が分かったんですか?

 それに、魔物と戦っていたという事も……」

「あなた達の居場所が分かったのは、私があなた達の声を聴いたからです」

「それで俺達がお前らを助けた、って事だ」

「皆様をこんな事に巻き込んでしまって、本当に申し訳ないと思っています」

「気にしないでください。

 僕だって、貴方とマリオ達の助けがなければ、あのゾンビにやられてましたから……」

「こういう時はヤラレチャッタ、って言うのが流儀じゃないかしら?」

「って勝手に僕を殺すなー!!」

 アスティマ、ピット、パルテナの漫才を聞いて笑う一同。

 その光景は、とても荒廃した世界で行われているものとは思えなかった。

「……それで、アスティマ。私達はこれからどうすればいいのです?」

「あなた達はここで待っていてください。希望を集めるために、そこの四人に活動させますから」

 そう言ってアスティマはスマブラ四天王を指差す。

「つまり僕達はここで留守番してろという事ですか? 僕だって、戦えるんですよ!」

 しかし、ピットは留守番をさせられると間接的に知ったため腹を立てた。

 パルテナはピットを宥めようとする。

「まぁまぁ、ちょっと待ってください。

 アスティマ、二人だけで散らばった仲間を探してもよろしいですか?」

「ダメです、二人だけでは危険です。できれば三人以上でなければ……」

「そんなの嫌です!」

「ピット。あのゾンビは私とピットの二人だけで全滅させられましたか?」

「……いえ」

 自分達は確かに大量のゾンビを全滅させたのだが、それはスマブラ四天王がいたからだった。

 もし自分達だけだったら、ゾンビを全滅できなかったかもしれない。

 つまり、二人だけでこのラストホープを出て危険な世界に出たら……。

「今はマリオ達を信じて待ちましょう。そして新たな仲間が来たら、彼らと同行するのです」

「……分かりました」

 ピットはパルテナに諭され、渋々ラストホープで待つ事にしたのだった。

 

「で、次の仲間はどこにいるんだ?」

「……」

 リンクがアスティマにそう問うと、彼女は目を閉じて精神を集中させた。

 アスティマの頭の中に、声が聴こえてくる。

 

―なんで、こんな化け物がいるの……!?

―僕達の世界に、こんなのはいないからだね。

―しっかり相手の動きを見るんだ。

―ゆ、勇気を出さなきゃ、いけないよね?

―そうでなくちゃ、この敵は倒せないよ。

 

「……少年が三人です」

「どこにいるんだ?」

「南東から声が聴こえてきました」

「よし、そこか。じゃあ、行ってくるぞ。待ってろよ、みんな。必ず、生きて帰ってくるからな」

「では、お気をつけて……」

 スマブラ四天王はピットとパルテナに留守を任せ、次の仲間を探すのであった。

 

「パルテナ様……」

「大丈夫です、彼らは絶対に死にませんよ?」




次回は雑多な仲間達を助けに行きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 三人の少年

スマブラ四天王が仲間を助けるお話です。
まあいつも通りですね。


 スマブラ四天王は次の仲間を探すため、南東に向かっていた。

「次は一体、どんな仲間だろう?」

「声からして、僕と同じくらいの子だと思う」

「だけど、低い声の人もいたぞ」

「そんな事よりも、今は襲われてる奴を助けるのが基本だろ!」

「あっ、そうでした!」

 ピカチュウに言われ、マリオ、リンク、カービィは走る速度を上げた。

 途中、ゾンビや悪漢に遭遇するものの、彼らの技により軽くあしらうのであった。

 

 その頃……。

 

「PKファイアー!」

「PKフリーズ!」

 ネスが火を放ってゾンビを燃やした後、リュカは冷気を放ってブロブの一体を一撃で倒した。

「凄いね、リュカ。魔物を一発で倒すなんて」

「ネス君だって、ゾンビを燃やせたから……。……怖いけど、生きるために戦わなきゃ」

「はあっ!

 ……次にゾンビは僕を攻撃し、ブロブはリュカに毒の粘液を放ってくるから気を付けて」

 シュルクはモナドでブロブを斬りつけつつ、

 未来視(ビジョン)を用いてゾンビとブロブが次に来る行動を予測する。

「う、うん! うわぁっ!」

「言った傍から!」

 ブロブがリュカに粘液を放って攻撃する。

 リュカは毒を受けないように上手く動きながら粘液をかわしていく。

 ゾンビはシュルクに向かって引っ掻いてきたが、

 シュルクはモナドで攻撃をガードしたためダメージを受けなかった。

「こんな穏やかじゃない世界から、一刻も早く脱出したいな……」

「うん。やっぱり平和が一番だよ」

「まずは、この敵を倒さなきゃね」

 ネスはバット、リュカは棒、シュルクはモナドを構え直し、残る敵を倒す態勢を取った。

 

「PKフラッシュ!」

 ネスは激しい光を放ってゾンビとブロブを攻撃し、怯ませる。

 その隙にリュカがゾンビを倒すべくPKファイアーを放ち、

 それが致命傷になったのかゾンビは崩れ落ちる。

 リュカはそれを見て気を失いそうだったが、ネスに支えられて自分を持ち直す。

「さぁて、敵は残り1体だよ!」

 シュルクは残りの敵を倒すべく、モナドを頭上で回転させてパフォーマンスをしつつ、

 とどめのモナドスマッシュをブロブに放ち、ブロブを戦闘不能にしたのだった。

 

「よし、これで敵は全滅したね」

「よかったぁ……」

 リュカがほっと一安心していると、どこからか足音が聞こえてくる。

 思わずひっ、と怯えるリュカだったが、

「助けに来たぜー……って、もう終わったのかよ」

「あっ、マリオさん」

 それは、スマブラ四天王の足音だった。

「魔物は全部倒したのか?」

「うん、シュルクさんとネス君のおかげでね」

「何遠慮してるの、リュカだってあの魔物をPKフリーズ一発で倒したじゃないか!」

「……あ、うん、そうだね」

 親友のネスに言われて少し照れるリュカ。

「それで、僕達に何の用があるんだい?」

「アスティマって女に頼まれて、この世界に散らばっている仲間を探しに来たんだ」

「へぇ、彼女はどんな人なんだろう」

「詳しくは僕達についていけば分かるよ」

「じゃあ、行こう!」

 カービィに先導され、マリオ、リンク、ピカチュウ、ネス、リュカ、

 シュルクはラストホープへ向かっていった。

 

「お帰りなさい」

 アスティマはドレスの裾をたくし上げてマリオ達を迎える。

「無事でしたか?」

「ああ、この通り怪我はしなかったぜ」

「本当によかったですね」

 ピットとパルテナもマリオ達が無事だったため満面の笑みを浮かべる。

「これでここに集まった仲間は俺達も入れて合計9人か」

 現在、スマブラ屋敷に住む者は60人前後で、まだまだ足りない。

 できれば、早めに全員救出をしたいと思っていた。

「アスティマ、次の仲間はどこにいるんだ?」

「……」

 マリオがアスティマにそう言うと、アスティマは既に精神を集中させていた。

「ねえアス姉、どうしたの?」

「こら、話しかけるなカービィ!」

 

―なんだ、こ……ザザー……は……ザザー……

―知らない……ザザー……

―化け物……ザザー……こんなの……ザザー……

―気を付け……ザザー……

―マリ……ザザー……早く……ザザー……

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 アスティマは、カービィに声をかけられたせいで集中力が途切れたらしく、

 彼女の中に入ってきた情報は断片的なものに留まった。

「あなたが声をかけたせいで、まともに情報が手に入りませんでした」

「ご、ごめん……」

「で、誰の声が聞こえたんだ?」

「女性の声と、青年の声です。女性はマリ……と呼んでいました」

 マリ、とは、恐らくマリオの事だろう。

 スマブラメンバーの中で、最もマリオを信頼している女性といえば……。

「大丈夫ですかね、ピーチさんは」

「ああ、大丈夫だと思うぜ……色んな意味で」

 キノコ王国の王女、ピーチである。

 ピーチはさらわれ慣れしているため、意外と肝が据わった一面がある。

 こんな危険な世界でも、自分をしっかり保っていられるだろう……とマリオは思っていた。

「それでアス姉、どこから声が聞こえたの?」

「……」

 カービィがアスティマに話しかけると、彼女は不快そうな表情になった。

 あの事をまだ忘れられないからだろう。

「おい、アスティマ。そいつらはどこにいる?」

 その代わりにピカチュウがアスティマに話しかけ、声の聴こえた場所を問う。

「青年の声は北、女性の声は南から聞こえました」

「そうか。なら、二手に分かれる必要があるな。

 マリオ、リンク、カービィ、俺は南、ピット、パルテナ、ネス、リュカ、シュルクは北を頼む」

「わ、分かったよ」

「ネ、ネス君、その……一緒に頑張ろうね」

「うん」

「私達も一緒についていきますね。だって、子供達だけでは心配ですから♪」

 パルテナがピット、ネス、リュカを見てウィンクする。

 

「それじゃあ、行ってくる!」

「いってらっしゃい。あなた達の行く手に、希望の光がありますように」

 アスティマに見送られたスマブラ四天王は南へ、ピット達は北へ向かうのであった。




この子達と絡ませるのは、ポケモントレーナーがよかったなぁ。
でも、ポケモントレーナーが出てくるのは、もっと後です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 炎の紋章を掲げて

FE組のターンです。
ダークだけど救いはある、という描写にしました。


 炎の紋章を掲げし剣士、マルス、ロイ、アイク、ルフレもまた、

 この荒廃した世界に飛ばされてしまっていた。

「なんだ、この化け物は」

「まさか、ゾンビかな? でも、この世界のものは見た事がないし……」

「とにかく、早めに片付けるぞ」

「了解!」

 

 マルスがファルシオンを振るいゾンビ犬を斬りつけた後、ロイが蛆の塊を封印の剣で切り裂く。

 蛆の塊が動くのを見て若干不快な気分になったが、

 アイクは噴火で自分の周囲にいたゾンビ犬と蛆の塊を攻撃する。

「後方支援は任せて! サンダー!」

 ルフレの掛け声と共に蛆の塊に向かって雷を放ち、ダメージと共に麻痺させる。

「よし、相手の動きは止めたぞ!」

「う……」

 蠢く蛆の塊を見てロイは若干不快な気分になるが、

 蛆の塊は先ほどアイクが与えた技が効いたのか燃焼によるダメージを受ける。

「ぐっ」

 一体のゾンビ犬がアイクに噛みついて怪我を負わせる。

「大丈夫かい、アイク!」

「ああ」

「ブレイザー!」

「居合い斬り!」

 ロイとアイクが剣を振ってゾンビ犬と蛆の塊を切り裂く。

 ゾンビ犬は死ぬ直前に内臓が飛び出したが、斬り合いに慣れている四人は平気だったようだ。

「エルウィンド!」

 ルフレの風魔法が蛆の塊とゾンビ犬を切り刻むと、

 蛆の塊は弾け飛んで死に、ゾンビ犬も吹っ飛ばされる。

 その隙にマルスがゾンビ犬に突っ込んでシールドブレイカーを繰り出し、

 アイクがとどめに叩き割りを繰り出すとゾンビ犬は倒れたのだった。

 

「よし、これで終わったな」

「……」

「どうしたんだい、ロイ」

 灰色の空を見るロイに、マルスは声をかける。

「……なんか、暗いね……。太陽が、全然出ていない……」

「……ああ。まるで、あの時のようだ」

「あの時?」

 アイクが言う「あの時」とは、彼の元いた世界で起きた戦争の終盤の事である。

 数百年前に交わされた約束が破られた事で、

 女神の裁きにより多くの人々が石化され、空も灰色に染まってしまったという。

「この世界のように魔物は現れなかったが……それでも、

 さらに状況が過酷になった事は言うまでもない」

「だから、この世界から早く脱出しなくちゃね。……死ぬかも、しれないから」

「了解!」

 

 その頃、ピット達は……。

「アスティマによれば、この辺に仲間がいるらしいのですが……」

「全然気配がしないね……。一体、どこにいるんだろう……」

 この世界に散らばった仲間を探していたのだが、

 その仲間の気配はなく、ただ瓦礫と死体が広がるのみだった。

「酷いよ……どうしてこうなったの? どうして死ななきゃいけなかったの?」

 リュカがこの惨状を見て驚きと悲しみの混じった声で呟く。

 多くの別れを経験したリュカでさえ、この光景には心が耐えられないようだ。

 そして、いつか自分のあの一員になってしまったら……と思うとリュカはさらに心が痛んだ。

「リュカ、まだ絶望というわけじゃないよ」

「ネス君?」

 だが、そんなリュカを励ましたのは、ネスやシュルクなどの「仲間」だった。

「僕達が拠点にしている『ラストホープ』って、どういう意味だか分かるかい?」

「えっと……最後の、希望?」

「そう。希望はまだこの世界に残っている。

 だから僕達は、それを守るためにも、この世界を生き抜かなきゃいけないんだ」

「だからリュカ、一人で抱え込まずにたまには仲間に頼ってくださいね。

 あ、頼りすぎるのはいけませんよ?」

「……みんな、ありがとう……」

 仲間の励ましの言葉を聞いたリュカの心の中に、小さな芽が出てきた気がした。

 ネス達もまた、それが消えないようにリュカを守ってやる事にした。

 

「それで、どっちに行けばいいんだろう?」

「さあ……北も南も西も東も分からないし、その辺をうろうろしているしかないよね」

「仕方のない事だが、そうするしかあるまい」

「アイク……」

 マルス、ロイ、アイク、ルフレが歩いていると、何人かの人影とすれ違った。

「誰だ? 生存者がいるのか?」

 アイクがその人影に向かって走り出すと、

 ネス、リュカ、シュルク、ピット、パルテナと出会った。

「あんたは……」

「あ、あなたはアイク……さん? まさか……」

「俺を疑うのか?」

「えっと……その、好きな食べ物は?」

「肉だ」

「よかった……」

 リュカは、彼が本物のアイクかどうか疑ったが、質問にちゃんと答えられたようで安心する。

「あ、もしかして君達もここに来たのかい?」

 マルス、ロイ、ルフレも何とかアイクに追い付いたようだ。

「うん。変な生き物に襲われたけど、何とか追い払ったんだ」

「あ、それは僕達も同じだよ」

「お互い災難だったねぇ……」

「だねぇ……」

 はぁ、とシュルクとロイは溜息をついた。

 

「とにかく、仲間と合流できてよかったね」

「さぁ、早くラストホープに戻……」

「待って!」

 仲間と再会できて喜ぶ9人だったが、ふと、どこかから不気味な音が聞こえてくる。

 それを聞いたルフレはいきなり大声を出した。

「ルフレ、どうしたの?」

「変な音が聞こえてくる……みんな、気を付けて」

「う、うん」

 皆はルフレの指示通りにそれぞれの武器を構える。

 不気味な音は徐々に大きくなっていき、やがてその音が止むと、

 突然空を突き破って何かが現れた。

 それは、タールのような目と濁った鱗を持ち、巨大な牙が生えた魚の姿をした魔物だった。

「な、なんだこれは!?」

「まずいよ……」

 その魔物を見たルフレの表情に焦りが生じる。

「どこがまずいの、みんなで戦えば……」

「僕達はあの蛆や犬と戦って消耗している。だから、その状態で戦っても負ける。

 まずは拠点に戻って態勢を整え直そう」

「流石だな、ルフレの目に狂いはない。皆、ルフレの指示通りに撤退するぞ。

 ここで無駄死にするわけにはいかない」

「……わ、分かったよ!」

 名軍師と呼ばれるルフレの分析により、ネス達はひとまずその魔物から逃げる事にした。

 だが、その魔物が簡単に彼らを逃がしてくれるわけがなく、

 口から濁った水を吐いて攻撃してきた。

「反射盤!」

「サンダー!」

「「PKファイアー!」」

「パルテナの神弓!」

 その水をルフレが雷魔法で打ち消しつつ、

 パルテナの反射盤で守られたネスやリュカ、ピットも飛び道具で牽制する。

 遠距離攻撃ができないマルス、ロイ、アイク、シュルクは、彼らに守られながら走り出した。

「下手に相手を刺激すると反撃を受ける。

 だから、相手の攻撃を打ち消す以外の攻撃はしないでくれ」

「はい!」

「僕達の目的は、あくまでも生き残る事だからね」

 

「はぁ、はぁ……ここまで来れば大丈夫かな?」

 ある程度走った後、その魔物の姿は跡形もなくなっていた。

「ああ。あいつが追ってくる事は、もうないだろう」

「……そう、だね。安心した……よ」

 ロイはあの戦いと走りすぎたのが影響したか、疲労が限界に達して倒れてしまう。

「ロイ!?」

「死んではいないよ。疲れてるだけ。

 ただ、自力では動けないみたいだから、誰かが運ぶしかないみたいだ」

「俺が運ぼう」

「頼むよ」

 アイクは、倒れたロイを持ち上げると、彼の腕を肩に組ませて運んだ。

「……」

「アイク~、大丈夫だよね~?」

「ああ、これくらい軽い」

 

「やっと着いたぁ~~~~」

 ピット達は、ようやくラストホープに着いた。

 アイクはよっこらせとロイをアスティマの目の前に降ろす。

「お疲れ様です。これで集まった仲間は9人ですね」

「マリオ達やこれから来るピーチ達も入れれば、14人以上になるよ」

 そう、これでこのラストホープに集まった仲間は全体のおよそ1/4になる。

「それにしてもこの子、かなりお疲れのようですね。

 私の術で、何とかするしかありませんね……」

 アスティマが杖を振ると、倒れていたロイに光の粒子が降り注ぎ、

 それがロイを包み込むと彼はゆっくりと起き上がった。

「ん……っ、ここは?」

「お疲れ様です。ここは、ラストホープですよ」

「ラストホープ? という事は……」

「ええ、無事に帰ってきたのですよ」

「や……やったぁ!!」

 無事に拠点に辿り着けた事で喜ぶロイ。

「僕、生きてるんだよね? ね?」

「え、ええ……もちろん生きていますよ?」

「うんうん、それだけで十分だよ。

 ああ、死んでいなくてよかった……忘れられてなくてよかった……」

「えっ、どういう意味ですか?」

 ロイの発言にアスティマは驚いた。

 実は彼、若干天然ボケなところがあるのだ。

「ロイはDXで初登場しましたがXで消え、

 Forで色変え同名キャラも出ましたがDLCで復活したのですよ」

「あら、そうですか」

 パルテナのメタ発言を聞いたアスティマはすぐに納得したようだ。

 

「さて、残るはマリオさまやリンクさま、カービィさまやピカチュウさまだけですね」

「ええ、彼らはピーチ達を助けに向かっているところでしょう」

「でも、あんな化け物を見て大丈夫なのかな?」

「多分大丈夫だと思います……多分」

「……多分っていうのがちょっと不安だけど……じゃあ、とりあえず待つ事にしよう」




ロイの性格がちょっと歪んでいたかもしれませんね。
次回はあの人達を助けに行きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 荒地に咲く華

スマブラ最後のファイターは、誰も想像しなかったキャラだったりして……。
だって、ほら、おすワリだって、最後はアイツだったし。


 そして、南に向かったスマブラ四天王はというと。

 

「ピーチ、どうか無事でいてくれ」

 女性陣を探すために走っていた。

「マリオ、ピーチの事が心配なのか?」

「ああ。いくらピーチが精神的に強いと言っても、ずっとこの状況で持つかどうかは分からない。

 だから、早めに助け出さなきゃな。これでもう、何回目だろうな……」

 ピーチは何度も攫われた事で有名である。

 そして、マリオはそんなピーチを何度も助けた事で有名である。

 それが起こりすぎて、最早何度行われたのか、マリオもピーチも覚えていないようだ。

「他にもピーチと一緒に戦ってる奴と言えば」

「ゼルダ、だな」

 リンクにとってゼルダは最も大事な人物であり、それはマリオに対するピーチのようなものだ。

「ゼルダ、絶対に無事でいろよ。死んだら、承知しないからな……!」

 

「あの~、僕と」

「俺はまだセリフがないんだが……」

 いつの間にか忘れられたカービィとピカチュウが、ぽつりとそう呟いた。

 

 その頃……。

「サムス、頼むわよ」

「ええ」

 スマブラメンバーの女性陣は、ゾンビやゾンビ犬と戦っていた。

 怪物との戦いに慣れているサムスを前に立たせ、

 ピーチ、ゼルダ、ロゼッタは後方からサムスを援護する態勢に入っている。

「それっ!」

 ピーチがどこからか野菜を引っこ抜いてゾンビに投げつける。

 荒れ地でも野菜を引っこ抜けるのは、ピーチが強い魔力を持っているからだ。

 さらに、ゼルダのディンの炎がゾンビを焼き尽くして灰にする。

「不死者には火や光が良く効くとはいえ、まさか一発で倒せるとはな」

「ロゼッタさん、私にこんな強い魔力が宿っているなんて……思っていませんでした」

「これでどう?」

 サムスがミサイルをゾンビ達に放ち、次々と爆発してゾンビを吹き飛ばす。

 さらにロゼッタのチコシュートがゾンビ犬にクリーンヒットして大ダメージを与える。

 ゾンビとゾンビ犬は反撃とばかりにピーチに噛みつき、

 攻撃と同時に彼女のドレスを食いちぎった。

「きゃぁぁぁぁ! 私のドレスがぁぁぁ! よくもやったわねぇぇぇぇぇ!!

 しかし、それでスイッチが入ったピーチは、フライパンを取り出し、ゾンビとゾンビ犬に振り下ろす。

 その一撃を受けたゾンビ犬は倒れ、ゾンビも怯む。

「ゼルダ! サムス! ロゼッタ! とっととこいつらを倒すわよ!」

 凄みのある表情のピーチの怒声を聞いたゼルダ、サムス、ロゼッタは無言で頷いた。

 スマブラメンバーの中で最も怒ると怖い人物、それがピーチなのである。

 

「な、なんだか必死な様子でしたね、ピーチ姫は」

「それだけ大事なものって事なのよ……」

 

 そんなピーチの様子に引きつつも、ゼルダのファントムアタック、サムスの体術、

 ロゼッタのギャラクシースマッシュでゾンビとゾンビ犬は全滅した。

「はぁ、はぁ、はぁ……ようやく全部倒せたわ」

 ピーチはフライパンを構えながら荒い息を立てる。

「思い知ったかしら? ドレスの恨み」

「も、もういいでしょう? それよりも、皆さんと合流するのが先ですよ」

「あらそうでしたわ。じゃあ行きますわよ!」

 ピーチを先頭に、ゼルダ、サムス、ロゼッタは歩いていった……が、数分歩いて立ち止まった。

「……どこに、マリオがいるの?」

「あ~……。ここは東西南北が見当たらないから、すぐに迷ってしまうのよね」

「ロゼッタさん、貴方の超能力で何とかならないのですか?」

「コンパス代わりにするのだな? ……まぁ、構わないのだが……」

 そう言うと、ロゼッタは精神を集中させた。

「北はこっちだ」

 どうやら、ロゼッタが向いている方向が、この世界での「北」らしい。

「では、これを参考にすれば、仲間が見つかるのですね」

「そういう事だ」

 

 ロゼッタの導きに従い、ピーチ達が歩いていると、遠くに四つの人影が見えた。

「あっ、あれは! もしかしてマリオじゃない?」

「リンクの姿も見えますね……行きましょう」

 ピーチ達がその人影に向かって歩くと、無事にスマブラ四天王と出会った。

「マリオ!」

「リンク!」

「「無事でしたか!」」

 ピーチとゼルダ、二人の姫がそれぞれの大切な人のところに行く。

「ああ、俺達は大丈夫だぜ」

「でもピーチ、なんでドレスが破けてるんだ?」

「言わないで……。とにかく、休める場所に行って休みましょう」

「これ以上戦うのはきついからね」

「わ、分かったよ」

 

 スマブラ四天王と合流したピーチ、ゼルダ、サムス、ロゼッタは、

 ゾンビや蛆の塊と出会いながらもそれを軽くあしらった。

 そして、ラストホープに到着した時は、既にマルス達が戻ってきていた頃だった。

「お帰りなさい、皆様」

「ただいま~! それよりも早く、このドレスを直してちょうだい!」

 ピーチは真っ先にアスティマがいるところへと向かった。

 アスティマはピーチの言葉に頷いて杖をピーチのドレスに向け、光を放つ。

 すると、破れたピーチのドレスは、見る見るうちに元に戻った。

「ありがとう! あなたにこんな不思議な力があるなんて信じられないわ!」

「お前だって十分不思議じゃないか」

 ピーチの言葉に突っ込みを入れるピカチュウ。

「それよりも、この方は一体誰なのですか?」

「彼女はアスティマといって、このラストホープを治めているんだ」

「私はピーチ・トードストゥールよ」

「ゼルダです」

「私はサムス・アラン」

「ロゼッタだ」

「よろしくお願いしますね」

 アスティマは自己紹介をしたピーチ達に向けてお辞儀した。

「随分と上品なのね、アスティマって」

「親近感が沸くな、チコ」

「ぴぃぴぃ」

 気品に溢れるアスティマの容姿と仕草に、ロゼッタは親近感を抱いたようだ。

 ピーチとゼルダも彼女なら信頼できそうだと頷く。

 

「ねえねえアス姉ー、次の仲間はどこなの? テレパシーで探してよー」

「……あ、あの、精神集中を何度も使いましたし、もう使う力は残っていませんよ……」

「えー、それじゃあ仲間が探せないじゃない! お願い、探してー!」

 駄々をこねるカービィを、ゼルダはひょいと持ち上げた。

「カービィさん、彼女に無理はさせないでください」

「やだやだ~お願い~離して~!」

「アスティマさん、ゆっくり休んでくださいね。私達も後でゆっくり休みますから」

「ええ。おやすみなさい」

 そう言い、アスティマは杖を振り下ろして夜の帳を作り出した。

 夜の帳が作られた後でゼルダはカービィを下す。

 

「……というわけですので、仲間探しは明日にしましょう」

「でも、僕はみんなが心配で……」

「確かにこの危険な世界では、このラストホープ以外では生き残れないでしょう。

 ですが、無理に外に出て体力を切らし、全滅するよりはマシでしょう?」

「……だけど」

「困っている人を助けるのはいい事です。

 ですが、結果的に自分の命を失えば、もう二度と美味しいものが食べられなくなり、

 自らの手で仲間を助ける事はできなくなります。

 それでも、カービィさんは外に出るのですか?」

「そ、そんなの嫌だ! 嫌だよぉ!!

 生きて美味しいものもっと食べたいし、みんなでわいわい騒ぎたいよぉ!!」

 ゼルダの説得を聞いたカービィは、ようやく納得したようで落ち着く。

「……ですので、今日はゆっくり休みましょうね」

「分かったよ……」

 カービィは、ぐっすり眠っているリンクとピカチュウの間に入り、眠りにつくのだった。

 

「……ふふ、カービィさんは本当に素直で分かりやすい子ですね」

 そして、ゼルダもまた、眠りにつくのであった。




次回は宇宙組を救出します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 宇宙を翔ける者

今回はスマブラ宇宙組のターンです。
こういう組み合わせも、スマブラならでは、ですよね。


「まさかこんな世界に来て、こんな化け物と戦うなんてな……」

「ちぃっ……俺達は二人だけなのに、うじゃうじゃいやがるぜ」

 フォックスとファルコは、巨大な蜘蛛や鴉と戦っていた。

 だが、数は多く、とても二人では捌き切れない量だ。

 ブラスターなどで何とか撃ち抜いてはいるものの、数はまだ減っていないようだ。

「そういえば、ウルフともはぐれてしまったようだ」

「ウルフ? あぁ、あいつなら一人で何とかやってるだろ。俺達は俺達でできる事をやろうぜ」

「そうだな、ファルコ。行くぞ」

 フォックスのブラスターが鴉を撃ち抜き、墜落した後にファルコがウイングエッジで攻撃する。

 すると二体の巨大蜘蛛がフォックスに糸を吐いて彼の動きを制限した。

「うわっ!」

「大丈夫か、フォックス!」

「くそっ、なかなか動けない!」

 蜘蛛の大きさのせいか、吐いた糸も大きく、振りほどこうにもなかなか振りほどけなかった。

 その間に他の巨大蜘蛛や鴉がフォックスを襲うが、フォックスは全ての攻撃を何とか回避した。

 フォックスとファルコはこの状況を打開するべく、

 ファイアフォックスとファイアバードを使い、巨大蜘蛛を一体撃破する。

「ようやく一体減らせたか」

「ったく、手間がかかるぜ。とっととくたばれ!」

 そう言ってファルコは鴉をブラスターで撃つ。

 怯んだ鴉に対しフォックスはファイアフォックスで攻撃して倒し、

 続けてファルコも巨大蜘蛛をファイアバードで焼き尽くした。

 

「はぁっ……この世界でダメージを受けたら、『本当に』傷がついてしまうようだな」

 フォックスの言う通り、この世界では争いの世界にはない「生死」が存在するようで、

 文字通りやらなければやられる世界である。

 二人は争いの世界でいくら乱闘が行われても大怪我を負わない事の

 ありがたみを思い知らされていた。

「それに、腹も減ってきたぜ……」

「なら、そこに焼き鴉と焼き蜘蛛が」

「誰が食うかよ」

 もしもこのまま食事を採れなければ、フォックスとファルコは空腹によって餓死してしまう。

 そうなるのを避けるために、早くこの魔物を倒さなければならない。

 だが、多くの敵を相手にすれば、消耗が激しくなってしまうため、時には逃げる事も必要だ。

 そう判断したフォックスとファルコは、この魔物から逃げ出そうとした。

「追ってきたぞ!」

「しまった、逃げ道を塞がれた!」

 しかし、魔物から逃げようにも逃がしてくれるはずがなかった。

 巨大蜘蛛と鴉は素早い動きで逃げ道を塞ぎ、フォックスとファルコの逃走を阻止する。

「くそっ、どうすればいい……」

「……こうなったら」

 ファルコは、フォックスを庇うかのように彼の目の前に立った。

「どうした?」

「ここは俺が引き受ける! お前は先に逃げろ!」

「ファルコ!?」

 普段は乱暴で口が悪いファルコだが、実は仲間意識と自己犠牲心が非常に強いのだ。

「今は一人でも生き残るのが先だ! だから、お前だけでも生き残れ!」

「だがファルコ、お前がいなくなれば……」

「いいから逃げろ!! このまま二人ともくたばったら元も子もない!!」

 ファルコの必死な様子を見たフォックスは頷き、「分かった」と言ってその場を後にした。

 

「フォックス……お前は絶対に生き残らせてやる。何故なら……俺の『仲間』だからな!!」

 

「……!!」

 突然、アスティマは何かを感じ取ったようで、むくりと起き上がる。

 そして何も言わず、ラストホープを立ち去ろうとした時だった。

「……どうしたの、アスティマ?」

 サムスも起きたようでアスティマのところに行く。

「あ、サムスさま……何か、嫌な予感がしたので、外に出ようと思いましたが……」

「貴方はラストホープを守る立場なんでしょ? ここは、私が行ってくるわ」

 アスティマがラストホープからいなくなるのは非常に危険な状況になると判断したサムスは、

 自分が代わりに行く事にした。

「あら、そうでしたね。早とちりしそうでした。……では、いってらっしゃい」

「大丈夫よ、必ず生きて帰ってくる」

 そう言い、サムスはラストホープを立ち去った。

 

「……しかし、嫌な予感と言っても、東西南北がないし、探すのには骨が折れそうだわ」

 サムスが辺りを見渡していると、どこからか足音が聞こえてきた。

「この足音は……何?」

 彼女がその足音の方に向かって走ると、フォックスに出会った。

「フォックスじゃない! どうしたの?」

「ああ、実はかくかくしかじかでな……」

 フォックスがサムスに事情を話すと、サムスはうーんと頭を捻ってこう言った。

「ファルコ、自己犠牲はいいんだけどこっちの事も考えなさいよね……」

「俺を守るためとはいえ、もしも死んだら二度と俺を守れなくなるんだぞ?」

「だから、私達でファルコを助けなきゃいけない」

「そうと考えたら、すぐに行くぞ!」

「ええ!」

 そう言って、サムスとフォックスはファルコを助けるために走り出した。

 

 その頃、ファルコは……。

「はぁ、はぁ、はぁっ……」

 巨大蜘蛛や鴉と戦い続けていたが、数は一向に減らず、傷ついてばかりいた。

 このまま戦闘を続けていけばいずれファルコは力尽きてしまうだろうがそれでも彼は退かない。

「俺はフォックスさえ守れれば、この命が尽きても……」

 そう言い、ファルコがブラスターの引き金を引こうとした、その時だった。

 

「「ファルコ!!」」

 突然、向こうから男女の声が聞こえてきた。

 誰だ、とファルコが身構えると、フォックスとサムスがやって来た。

「今、助けに来たぞ!」

「フォックス! それにサムスまで! 何故、ここが分かったんだ!」

「アスティマって人に教えてもらったのよ、何か嫌な予感がするって」

「それに、お前が死んだら、俺も死んだも同然の状態になる!

 お前は本当に、死んでもいいのか!?」

 フォックスはいつもよりきつい言葉を吐くが、それはファルコのためを思っての言葉である。

 自分とファルコ、そして多くの仲間がいてこそのスターフォックス、

 そしてスマブラメンバーだとフォックスは思っているのだから。

「フン、俺はそんなに軟じゃねぇんだけどな。だが、それもまた悪くない道だな!

 ……手伝えよ、フォックス!」

「まったく、ファルコは素直じゃないな!」

「……行くわよ!」

 フォックス、ファルコ、サムスはそれぞれの武器を構え、戦闘に臨んだ。




「暗いけど救いはある」を目指した結果がこれだよ!
次回は彼らのターニングポイントとなる話です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 生き残るために

宇宙組のターンはもう少し続きます。
ちょっとアレな描写がありますので、ご注意を。


 サムス、フォックス、ファルコは、残りの敵を倒すために戦っていた。

 サムスはミサイルを放って広範囲の敵を攻撃し、

 フォックスとファルコは炎を纏った突進で巨大蜘蛛を攻撃する。

 巨大蜘蛛も反撃としてサムスとフォックスに糸を吐いて動きを制限する。

「こいつ、巨大だから糸も大きいのね。かなり厄介な敵なのは間違いない。

 フォックス、ファルコ、私が一発放つから時間稼ぎを頼むわよ!」

「「了解!」」

 フォックスとファルコが鴉にブラスターを放ち、

 時間稼ぎをしている中でサムスはエネルギーを溜めていく。

 その間に巨大蜘蛛や鴉が襲ってくるがフォックスやファルコが体術で攻撃する。

 しばらくして最大チャージが完了すると、サムスはアイコンタクトで合図を送り、

 フォックスとファルコは頷いた。

「チャージショット!」

 そしてサムスのエネルギー弾が巨大蜘蛛に命中すると、巨大蜘蛛は跡形もなく分解された。

 その勢いで巨大蜘蛛の糸から解放されたサムスは巨大蜘蛛にジャンプしてボムを置き、

 爆発と同時にジャンプして巨大蜘蛛の反撃を避ける。

「ファイアー!」

 さらに、フォックスが炎を纏った体当たりを繰り出し、巨大蜘蛛を攻撃する。

 巨大蜘蛛は再びサムスに向かって糸を吐いて動きを止め、

 鴉がフォックスに向かって突っ込んでいく。

「ぐぅっ!」

「フォックス!」

「これくらい平気だ、とりゃあっ!」

 フォックスが鴉をブラスターで撃ち抜いた後、

 すぐさま巨大蜘蛛に向かって走り、飛び蹴りを繰り出す。

 さらにサムスとファルコの体術が巨大蜘蛛を捉えて吹き飛ばす。

 そして、残りの巨大蜘蛛をサムスがアイスビームで凍らせた後、

 とどめにチャージショットを放って巨大蜘蛛を四散させた。

 

「……っはぁ」

「だから、一人で無茶をするなと言っただろ?」

「そうだな……仲間ってのは、やっぱり大事だな。こんな事をした俺にも優しいんだからな……」

 フォックスとファルコは、改めて仲間が大事だという事を知ったようだ。

 サムスは「やれやれ」といった感じで二人を見ている。

「それはいいけど、ラストホープに戻るんじゃなかったの?」

「「あ」」

「そうだった……腹も減ったし、傷はついたし、体を休めるしかなさそうだな……」

「万全の状態にしないと、こんな過酷な環境ではまず生き残れないわよ?」

 サムスの言う通り、ここは非常に危険な世界だ。

 町や施設のほとんどは残骸としてしかなく、

 また、争いの世界には普通にある食料や日用品も、この世界ではとても貴重な品だ。

「ったく、とにかく帰ればいいんだろ、帰れば」

「まぁ、そうだけど……」

 体力を節約するため、サムス、フォックス、ファルコはゆっくり歩いていった。

 すると、途中でなんと干し肉を見つけた。

「こ、これは……?」

「食料?」

 この世界では貴重な食料であるため、フォックスとファルコはそれに手を伸ばした。

「待って! 声が聞こえるわ!」

「「!?」」

 だが、その直前でサムスが止めた。

 誰かの声を、サムスはここで聞いたからだ。

 

「……れだ、それを取ろうとするのは……」

 しばらくして、向こうから痩せこけた男がやって来た。

「これは、お前のものだったのか?」

「そ、うだ……お、れが、生きる、ための……」

「俺達も今、腹が減っているんだ」

「だからその食料を少し分けてくれない?」

「だ、めだ……絶対に、渡さ、ん……。これは、全て、俺の、ものだ……」

 サムスとフォックスは男と交渉して、食料を分けてもらおうとする。

 だが、男はそれに応じる事はなく、干し肉を独り占めするかのように手で覆う。

「ならば……」

「やめろ!」

 思わず力ずくで干し肉を取ろうとするファルコだが、フォックスが制止する。

「こいつだって、俺達と同じで、この世界を必死で生きようとしている。

 そんな奴から、生きるための希望を奪おうとするなんて、非道な事だと思わないか?」

「……」

 この男が善人か悪人かどうかは分からないが、今はそんな事は関係ないと主張するフォックス。

「でもよ、ここはやらなきゃやられる世界なんだぜ? 時には甘さを捨てなきゃいけないんだぞ」

「だが……」

「その鳥の言う通りだ。ここは、弱肉強食。弱い者は、死に、絶え、強い者のみが生き残る。

 俺、のような、奴は、すぐ、に、死ぬ……」

 男は今にも死にそうな様子でそう言った。

「貴方、まさか……」

「こんな風に! こんな風に!

 必死に生きたいと思った奴が、こんな風に無残に死ぬ世界なんだよぉ!!」

 そして、最後に必死に「生」にすがりつくように喉から言葉を絞り出した後、男は息絶えた。

 

「「……」」

 目の前で人の死を見てしまったフォックスとファルコは、

 ショックのあまり言葉を出せないでいた。

 そんな二人を、サムスは優しく宥める。

「……そんなに落ち込まないで、二人とも。

 私達にできる事は、彼が残した希望を、決して絶やさない事なのよ」

「サムス……」

「この干し肉は、ありがたく頂戴しましょう。彼が安らかに眠れる事を願って」

「……ああ」

 落ち込みながらも、フォックスは男が遺した干し肉を貰うのだった。

 

 干し肉を食べて腹を満たしながら、フォックスは思う。

(もしも俺がこの男の立場だったら、俺は一体、何をしていたんだろう。

 自分が生き残るために食糧を独占したか。他の人を生かすために食糧を与えたか。

 それは正しくもなく、間違ってもいない。

 ただ、いずれを選んだとしても、二度と戻らない何かが犠牲になる……。

 ……そんな、世界は、もう嫌だ。早く、平和な世界に戻りたい……。

 だが、それではここを見捨てるという事に……)

 

「フォックス、何ぼーっとしてるんだよ」

「はっ! ファルコ、すまない。考え事をしていたんだ」

 しばらくぼんやりしていたフォックスだったが、ファルコに声を掛けられて我に返った。

「……早くラストホープに戻ろうぜ。温かい日常が、欲しいんだろ?」

「……そうだな」

「……行きましょう」

 

 サムス、フォックス、ファルコは、ラストホープに戻るために歩いていった。

 だが、その背後で、何者かが見ていた事を、彼らは知る由はなかった……。




次回はボス戦となります。
スマブラ四天王が活躍しますよ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話 邪悪なる敵

最後の参戦ファイターが以前に出したパロディ&2000年代前半のキャラ&版権問題クリア……!
この年代のキャラはあいつらがいたけど非公認だからなぁ。
というわけで、第9話、はっじまっるよー。


「……ふふふ」

 どこかの暗い空間の中で、女性が微笑んでいた。

「順調だねぇ。みんな散らばっているみたいだよ」

 女性は光のない瞳でじっとどこかを見つめていた。

 しばらくして、女性が無表情になる。

「このまま散らばっていた方が、ボクとしては好都合なんだよね。

 でも、どんどん集まってきている。……これは少しばかり、お仕置きが必要かな?」

 そう言うと、女性は右手に黒いエネルギーを作り出し、空間のどこかに向かって投げつけた。

「さぁ、行っておいで! ボクの可愛いペットよ! 希望に縋る者達を無残にも食らうんだ!」

 

 その頃……。

 

「じゃ、そろそろ仲間を探しに行こうぜ」

「うん!」

 マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウはアスティマの導きに従って仲間を探しに行っていた。

「アスティマによれば、ここから真っ直ぐ進めばフォックス達と合流できるらしい」

「でも、また魔物に襲われたらどうしよう……」

「安心しろカービィ、魔物が襲ってきても俺達が守ってやるよ」

「ありがとう!」

 

 リンクが前方を慎重に調べた事により、

 スマブラ四天王は魔物と出会う事なく先に進む事ができた。

「この道を進めば、魔物は出てこないみたいだ」

「おぉ~、リン兄やるぅ!」

「へっ、伊達に色んなところを冒険してないさ」

 スマブラ四天王が通ったこの道は、

 多少遠回りになるが魔物は出てこないようで余計な消耗はせずに済む。

 多少時間がかかっても、無事な状態で仲間と合流する事を優先しているからだ。

「とにかく、肝心の仲間はどこにいるんだろう? う~ん、本当に見つかるのかなぁ……」

「悩んでる暇があったらまず走れ!」

「……ちょっと強引だけど、そうだよね!」

 どこかで聞いたようなマリオの言葉通り、仲間を探すためにスマブラ四天王は走り出す。

 この先にいると思われる、仲間を探すために。

 

 スマブラ四天王がしばらく走って数分後。

 彼らの目の前に、フォックス、ファルコ、サムスの姿が見えた。

「あれは……」

「フォックスに、ファルコに、サムス!?」

「今、行くぞ!」

 スマブラ四天王が三人のところに行こうとした次の瞬間。

 

「!?」

 突然、地中から、不気味な音と共にスマブラ四天王の目の前に魔物が現れた。

 その魔物は、両手が鎌のようになっており、

 緑と黒の斑模様をしていて、口には大きな牙が生えていた。

「な、なんだこれは!?」

「知らないよ! こんなの、僕の世界にはいなかった!」

「それは俺だって同じだ!」

「くっ、やるしかないのか!?」

 魔物は、まるでここを通さないかのようにスマブラ四天王に対し激しい敵意を向けている。

 先に進むためにはこの魔物を倒すしかないようだ。

 覚悟を決めたスマブラ四天王は、その魔物と戦う事にした。

 

「ファイアボール!」

「てやあっ!」

 まず、マリオがファイアボールで牽制し、リンクが剣で魔物を斬りつける。

 魔物は口から自分の小型版と言える分身を吐き出したが、

 カービィがそれを吸い込んで吐き出してダメージを与える。

 しかし、それが魔物の顔に当たったために魔物は怒り、カービィに体当たりを繰り出す。

「うわぁぁぁぁっ!」

「カービィ!」

 体当たりで吹っ飛ばされたカービィをピカチュウが受け止める。

「お前にも手痛い一撃、食らわせてやるぜ!」

 そう言ってピカチュウは電撃を飛ばして魔物を攻撃し、麻痺させる。

 魔物が動けなくなったところにリンクとカービィの斬撃が命中した。

「やるな、ピカチュウ」

「お前らに後れは取らねぇよ」

 ピカチュウの麻痺がまだ効いているのか魔物はまともに動けず、

 スマブラ四天王はそれを見逃さずさらなる追撃を加える。

 しかし、攻撃を食らい続けた魔物は自己再生を使って体力を回復し、

 さらに体の痺れをある程度取った。

 そしてマリオに鎌を振りかざして切り裂こうとするがマリオがそれを受け止める。

「えいっ!」

 カービィがファイナルカッターで魔物を切り裂いたのはいいものの、

 その後の攻撃は全てかわされてしまった。

「ちっ、しぶとい奴め」

「だったらこれでどうだ!」

 リンクの勇者の弓で魔物の動きを一瞬止めた後、

 カービィがストーンで押し潰しダメージを与える。

 魔物も無数の分身を呼び出して攻撃するが、

 マリオがマント、リンクが盾で全て弾いたため被害はなかった。

 が、その後に飛んできた鎌攻撃は避けられず、リンクはダメージを受けてしまう。

 幸い、鎖帷子で守られていたため大した傷ではなかったが。

「魔物も本気出したって事だな」

「そうみたいだね……」

「これは、俺達も本気を出さなきゃな!」

「ああ!」

 これでスマブラ四天王の士気が一気に上昇、マリオはファイア掌底、リンクはスマッシュ斬り、

 カービィはスマッシュキック、ピカチュウはショートでんげきを叩き込んだ。

 魔物もピカチュウの電撃が効いて動けない。

 このチャンスを、今のスマブラ四天王が逃さないはずがなかった。

「カービィ!」

「うん!」

 カービィは、マリオが放ったファイアボールを吸い込んでファイアをコピーする。

「これで……とどめだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 そして、ファイアカービィが口から吐いた火炎が魔物を包み込んで焼き尽くし、

 その魔物を跡形もなく消し去った。

 

「まったく、しぶとい奴だったぜ」

「でも、これでフォックス達に会えるんだね」

「そうだな」

「なら、早く合流するぞ!」

 

 謎の魔物を倒したスマブラ四天王は、ようやくフォックス、ファルコ、サムスと合流した。

「どうした? 随分疲れているじゃないか」

「ああ、実はな……」

 マリオは、先ほど自分達が謎の魔物と戦っていた事を三人に話した。

 

「変ね……そんな魔物、この世界にはいないはずなんだけど……」

 それを聞いたサムスは首を傾げる。

「サムス、もしかしたら俺達が出会ってないだけで、他の奴らは出会ってるのかもしれない」

「その可能性もなくはないわね」

「ま、仮に出会ったとしても、俺達が蹴散らしてやるから心配はするなよ!」

「……そうね」

「じゃあ、早くラストホープに戻ろうぜ!」

 

 こうして、フォックス達と合流したスマブラ四天王は、ラストホープに戻っていった。

 

 しかし……。

 

「……ペットの反応が感じられない。どうやら、敗れてしまったみたいだね……。

 ……まぁ、所詮は捨て駒、といったところか。

 みんながバラバラになっていれば、ボクとしては満足なんだから、気にしないでおこうっと」

 暗い空間の中で、女性はそう呟いていた。




次回はヨッシー達のターンです。
エグいシーンもありますが、ご了承を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 希望を目指して

今回は特に接点のない三人の出番です。
特に書く事がありません……。


 ヨッシー、メタナイト、りょうは、元いた争いの世界の空中スタジアムから、

 瓦礫が広がる大地へと飛ばされてしまっていた。

「う~、暗いし空気が悪い~……。全然、スローライフが楽しめないよ」

 この世界を見てりょうの気分が悪くなる。

 空には太陽が照っておらず、虫や魚もほとんどおらず、いたとしても死骸や異形が大半だ。

 こんなところでは全くスローライフが楽しめないのも伺える。

「りょうさん、私達だってそれは辛いですよ。

 でも、脱出する手段がまだ見つかっていない以上、ここで過ごしていくしかないようです」

「はぁ、やっぱりそうかぁ……」

「水もなければ食糧もない。故に、ここで無駄に消耗すれば死に繋がる」

「えっ?」

 りょうは、メタナイトのその言葉が信じられなかった。

 この世界で力尽きたら、本当に死ぬ?

 フィギュアに戻るのではなく?

 それは争いの世界でも、ましてや自分の故郷でもあり得ないはずだ。

「どういう事……?」

「メタナイトさんはこういうのに敏感なんですよ」

「りょう、辺りを見渡してみろ」

「えっ?」

 メタナイトに言われたりょうが辺りを見渡しながら歩いていくと、

 

「腹、減った……」

「この水は誰にもあげないんだから……」

「痛いよぉ……」

 空腹の人間、飲み水を独り占めしている人間、全身が傷ついた人間が、

 苦しそうな表情で歩き回っていた。

 ところどころがちぎられた人の死体もあり、恐らくは誰かに「食われた」ものであろう。

「な、何これ……!!」

 この光景を見たりょうが絶句する。

「……ごく僅かな水や食糧を奪い合い、食糧がなければ他人を食べている」

「うわぁぁぁ……嫌だよぉ……」

「りょうさん……」

 耐えられなくなったりょうは頭を抱えて蹲る。

 ふと、彼らの周りにいた人間の一人が、ふらふらと近付いてきた。

「肉を……よこせ……」

「わ、私は肉なんて持ってませんよ!」

「その肉ではない、お前の肉だぁぁぁぁぁぁぁ!

 人間は荒れ狂いながらりょう達に襲い掛かった。

 やるしかないのか、とヨッシー達は戦闘態勢を取った。

 

「しばらく寝ているんだな」

 ヨッシー達はその人間を殺さないよう、手加減しながら攻撃していった。

 結果、2分程度でその人間は気絶した。

「メタナイトさん、容赦がないんですね」

「ここではやらなければやられる、それだけだ」

「……今は、メタナイトの言う通りにしよう」

 

 襲い掛かってくるゾンビや鴉を蹴散らしながら先に進んでいくと、

 水が入っている小さな瓶を見つけた。

「あっ、これは……水ですか?」

 中身を確認してみると、水は少し濁っていたがまだ飲めそうだった。

「う~ん、飲んでも大丈夫なんですかねぇ?」

「まぁ、ヨッシーの胃袋なら、ね……」

 ヨッシーならこれを飲んでも平気かもしれないが、

 メタナイトやりょうが飲むには聊か不安が残る。

 それでも、無いよりはマシと思ったので、りょうはそれを拾って懐にしまった。

「水は手に入ったが、この質と量では心許ない。

 このまま飢え死にする前に、早く休めるところに行かねばならない」

「でも、本当にそこは見つかるの? こんなところに、休める場所はあったっけ?」

「だからこそ『希望』を探すんですよ」

 絶望という闇の中にある、一筋の光、希望。

 彼らは僅かな望みをかけて、その希望を探しているのだ。

 

 ヨッシー、メタナイト、りょうが、この世界にある希望を探している頃。

 ラストホープでは、アスティマが杖を構えて精神集中をしていた。

 

―絶望の中にも、希望はあるんだ。

―そう思っていなければ、生き残れません。

―ここに私達を導いてくれる人はいない。

―自由と言えば聞こえはいいけど、実際は……。

―完全に、私達自身で判断するしかありませんね。

 

「聞こえる……。ここを目指す者の声が……」

「ん? どうしたんだ、アスティマ」

 マリオがアスティマに声をかけるが、彼女の耳には入らなかった。

「……!!」

 しかし、彼女の頭の中である音が聞こえた途端、彼女は精神集中を終えて杖を下した。

「……ああ、申し訳ありません、マリオさま。人の声と魔の声が聞こえてきたもので……」

「人の声? 魔の声?」

「前者はこの世界にやって来た者、後者は……」

「そいつらを襲う化け物、ってとこだな?」

 はい、とアスティマは頷く。

「よぉし、だったら俺達で蹴散らしてやろうぜ!」

「待ってください、リンクさま」

 ラストホープを出ようとするリンクだが、アスティマがそれを制止する。

「今回はあなた達が行く必要はないと思います」

「なんでだよ」

「私は、彼らを信じていますから」

 

 その頃、ヨッシー達はというと。

 

「こっちの方に、何か足跡があるよ」

 りょうが立ち止まって地面の足跡を指差していた。

「あ、本当です」

「誰の足跡だろうか……」

 ヨッシーとメタナイトは、りょうが見つけた足跡をじっと観察していた。

「どうやら、その足跡は3人のもののようで、ブーツを履いているのが2人のようだ」

「おお~!」

 メタナイトが足跡を見て誰のものかをある程度予測した。

「ブーツを履いているのはたくさんいるから、

 誰なのかは分からないけど……とにかく、こっちに希望があるのかな?」

「そうですね~。行ってみましょうか」

「無論、警戒は怠るなよ」

 ヨッシー、メタナイト、りょうは、

 敵や飢えた人に襲われないように辺りを警戒しながら歩いていった。

 その時だった。

 

「なっ、何……!?」

 ブォンという不気味な音と共に、3人の目の前に、長い首が4つある巨大な亀が現れた。

「くっ、敵襲か!?」

「戦いは、避けられないのですか……!?」

 大急ぎでヨッシー、メタナイト、りょうは戦闘態勢を取った。




次回はボス戦です。
彼らはこの試練を乗り越えられるでしょうか。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話 四つ首の亀

ボス戦です。
りょうのスマブラでの「強さ」をここで表現してみました。


「うりゃりゃりゃりゃ!」

 メタナイトが亀に突っ込んでいき、剣を振り連続で斬りつける。

「それっ!」

「やあっ!」

 ヨッシーとりょうは彼を援護するように卵やボウリングの玉を投げて攻撃する。

「うわぁ!」

 亀は首を伸ばしてヨッシーに噛みついてきた。

 その一撃はかなりのようでヨッシーは体力を多く持っていかれる。

「顎の力が強いですねっ、この亀は」

「だが顎の力だけではない、首も長いぞ」

「それは……うわっ!」

 亀の頭の1つが首を伸ばし、ヨッシーを巻きつけて宙に持ち上げ、地面に叩きつける。

「いたた……気を付けなければいけませんね。でも、私もやられてばかりではありませんよ!」

 ヨッシーは高くジャンプした後、亀の頭の1つを蹴ってダメージを与える。

「ここから……えいっ!」

 りょうは自分に風船を付けて飛び上がった後、亀の上空から植木鉢を落とす。

「うりゃっ!」

 メタナイトは剣を構え、きりもみ回転しながら亀に突っ込んでいき亀の傷を抉る。

 さらに着地した際の隙を軽減して飛び上がって斬りつける。

「うわぁ~、メタナイトかっこいい~」

「見惚れる暇があるならば早めに片付けろ」

「そうだね! ……ってメタナイト!?」

「くっ、油断したか!」

 だがメタナイトは先ほどの攻撃の隙は軽減できず亀の体当たり攻撃を許してしまう。

「危ない、メタナイト!」

「すまな……ぐあぁぁぁぁ!!」

 りょうが素早く亀に近づいて花火で攻撃したが、

 亀の勢いを殺す事はできずメタナイトは大ダメージを受けて吹っ飛ばされた。

「く……っ」

 何とか体勢を整えたメタナイトだが、体重の軽い彼にとっては致命傷である。

 ヨッシーとりょうは、彼を守るために前に立った。

「メタナイトさん、ここは私達に任せてください」

「あまり無茶はしないでね」

「……む、無論」

 

 ヨッシー、メタナイト、りょうと亀の戦いは続く。

「はぁっ!」

 メタナイトがヒット&アウェイ戦法で亀を斬りつけつつ、

 ヨッシーとりょうが遠距離から卵やパチンコで援護する。

 少しずつだが、亀に確実なダメージを与えられているようで動きが鈍ってきている。

 ヨッシーとりょうは、亀の攻撃がギリギリ届かない位置から遠距離攻撃を行い、

 飛び道具がないメタナイトは近づいては斬り、近づいては斬りを繰り返す。

「もう少しで亀を倒せますよ~」

「おお!」

「よし、一気に決めるぞ! ヨッシー、まずは卵を投げて敵の注意を逸らせ」

「はい~!」

 ヨッシーはメタナイトの指示で亀に向かって卵をたくさん投げる。

 メタナイトはその隙に亀の懐に潜り込み、マッハトルネイドで連続攻撃した。

 すると、その亀は体勢を崩し倒れ込んだ。

「亀が倒れました、チャンスです!」

「今だ、りょう!」

「いくぞぉ! どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 そして、りょうが斧を持って亀に突っ込んでいき、それを振るって亀を真っ二つにした。

 切り裂かれた亀は、黒い霧となって消滅するのであった。

 

「改めて見ましたが、りょうさん、すっごい力持ちですねぇ~」

「私が聞くのも野暮だが……お前は、本当にただの村人なのか?」

「えっ? すま村で生活してた時は普通に邪魔な木をこうやって切ってただけだよ?」

 さらりと当然の如く言うりょう。

 りょうは一見するとただの村人にしか見えないが、

 斧やスコップを軽々と振り回したり大型の魚を釣り竿1本で釣り上げたりなど、

 そのポテンシャルはかなりのものだ。

 理由を話すと、メタ発言になってしまうので話せないが。

「……まぁ、おかげで危機は脱する事ができた。さぁ、早く希望を見つけ出すんだ」

「私のお腹も空きましたしね~」

「君はいつもお腹が空いてるんじゃない?」

 

 三人はりょうが先ほど見つけた足跡を辿りながら先に進んでいった。

「あれ? 足跡が……」

 だが、途中で足跡が途切れてしまっていて、

 その足跡の主がどこに行ったのか分からなくなった。

「どうしよう、これじゃあ道標が分からないよ」

「直感で探そうにも、ここは広いですし……」

 う~んとヨッシーは頭を捻る。

 メタナイトやりょうも、別の手掛かりを探す気力を無くしかけていた。

「くっ、このまま希望を見つけ出せず、ここで果ててしまうのか……!」

 三人が困り果てた、その時だった。

 

―ああ……近い……人の姿が……近い。

「こ……この声は!?」

 メタナイトの頭の中に、女性の声が聞こえてきた。

「まさか、テレパシーか!?」

「どうしたの、メタナイト!?」

「女の声が聞こえてきた。近い、と言っていた」

 メタナイトがヨッシーとりょうに説明をする中、彼の頭に響く声はさらに続く。

―あなた達が目指すラストホープは、ここから北に……歩、東に……歩です。

「それは(まこと)か!?」

―ええ。とにかく、頼みますよ……!

 それを最後に、女性の声はぷつりと途絶えた。

 

「……希望は、近い」

「えっ?」

「彼女の言う通り、北に……歩、東に……歩進め!」

「なんだかよく分かりませんけど、分かりました!」

 メタナイトの指示に従って、りょうとメタナイトは北東に進んでいった。

 すると、ある程度進んだところで町が見えた。

「恐らくはあそこが希望だ」

「ねぇ、メタナイトさん、また邪魔が入ったりしませんよね?」

「あの亀が最大の障害と私は睨んだ。故に、もう邪魔が入る事はないだろう」

「ですよねぇ~。安心しました」

「ともかく、もうすぐ希望が見えてくる。行くぞ!」

「「はい!(うん!)」」

 

「やっと着いたぁ~~~~」

 そして数分後、ヨッシー、メタナイト、りょうはラストホープに到着した。

「す、すげぇ……」

「ホントに自分の足でここに着きやがった……」

 アスティマのテレパシーがあったとはいえ、スマブラメンバーに助けてもらわずに

 ラストホープまで辿り着いた彼らにマリオとピカチュウは驚いた。

「お、お腹空きましたぁ~~~。早く食べ物をください~~~~」

 ラストホープについて早々、ヨッシーは大急ぎで食べ物を求め動いた。

 アスティマは「落ち着いてください」と宥めた後、

 不思議な力でヨッシーの目の前に大量の食べ物を出した。

「ぱくぱくぱくぱく……あぁ生き返りました~」

「あっはは、よっぽどお腹が空いてたんですね。おかげで精神力をかなり消耗しました……」

「ああ、こいつは俺の相棒のヨッシーだ。大食いだけど頼れる奴だぜ」

 マリオがヨッシーについてアスティマに紹介する。

「私はアスティマ。このラストホープを治める者よ」

「メタナイトだ、剣技には自信がある」

「すま村のりょうで~す、よろしくね」

「よろしくお願いしますね、皆さま」

「「「よろしく!」」」

 アスティマもまた、お辞儀をしてヨッシー達に自己紹介をした。

 

「それにしても、他の奴らはどこに行ったんだ?」

 マリオは辺りをきょろきょろと見渡した。

 あくまで今の目的は、散り散りになっている仲間を探す事だからだ。

「あっ、でも今日は精神集中は使えませんからね」

「分かってる、今日は休んでおけ、アスティマ」

「……はい。お言葉に甘えさせていただきます」

 そう言って、アスティマは休憩に入った。

 

 休憩の途中で、アスティマはマリオを見て思う。

(……ふふ、マリオさまはこんな世界でも希望を捨ててはいないのですね。

 太陽のない世界に現れた、1つの太陽のような、眩しさと明るさを感じます。

 その明るさによって、みんなも元気づけられているようですね。

 私は、そんなマリオさまの事が……)

「ちょっとアスティマ、何マリオを見てるの?」

「はっ! な、なんでもありませんよ?」

 ピーチに声をかけられたアスティマは、はっと我に返った。

 

(絶対に、この世界に光を取り戻してみせる! だからみんな、俺を見捨てるなよ……!)




どんな時でも希望を捨てないのがスマブラメンバーです。
次回は少々エグい描写があります、ご注意ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 仲間割れ

今回はマリオの身内のターン。
散らばった仲間を探そうとするスマブラメンバーですが……。


 一方、その頃……。

 

「兄さん……一体どこにいるんだろう……」

「こんな遠くにいたら、分からないね」

 マリオの双子の弟ルイージと、彼の従兄弟のドクターはどこかの荒野を彷徨っていた。

「まぁ、回復役の僕がいるから魔物が襲い掛かってきてもある程度は大丈夫だと思うんだけどさ」

「二人、しかも兄さんの身内だけだと、ねぇ……」

「はぁ……」

 溜息をつくルイージとドクター。

「せめて、他に仲間がいてくれればいいんだけど、そんなのがいるわけがないよねぇ」

 こんな世界では、仲間も水も食糧も見つかる確率は非常に低い。

 それでも、0ではないと信じて、ルイージとドクターは荒野を歩き回った。

 

「あれは……!」

「ルイージ君!?」

 すると、ルイージは廃墟を見つけたようでそこに向かって走っていった。

 ドクターも何とか、ルイージにギリギリ追いつく速度で走り出した。

 

「ここに何かあるかな……?」

 ルイージが廃墟を一生懸命調べてみると、なんと携行食糧が見つかった。

「こ、これは……食糧じゃないか……!」

「数は3つ……。この世界では貴重だからね、持って行かなくちゃ」

 ドクターはポケットの中にルイージが見つけた携行食糧をいくつか入れた。

 その後、廃墟を調べてみたが、特に何もなかったので、二人はそこを後にするのだった。

 

おーい、マリオくーん、どこにいるんだーい?

兄さーん、兄さーん

 ルイージとドクターは、大声で行方不明のマリオを呼んでいた。

 だが、いくら呼んでも彼が来る気配はなく、ただ時間だけが空しく過ぎていた。

「やっぱりいないか……」

「ああ、今はもう、誰でもいいから仲間がほしいよ……」

 ルイージが何歩か歩いた、次の瞬間。

 

「ひゃぁっ!」

 突然、ルイージの顔ギリギリに針が飛び、頬を掠って軽い出血をした。

「ど、どうしたんだいルイージ君!?」

「だ、誰かが針を飛ばしてきた……」

「そうか、君は僕達に敵意を向けてるんだね。さあ、僕達の前に姿を現すんだ!」

 そう言ってドクターは針を飛ばしてきた方に顔を向けてみた。

 すると、彼の前にはまるで異国の戦士のような容貌の人物がいた。

 その人物の目は鋭く、まるで獲物を見ているかのようだった。

「シーク君! どうしてこんなところに?」

「……敵か……?」

「シーク、僕達は敵じゃないよ! ルイージとドクターだよ!」

「果たしてそれは真か? 敵が姿を変えたものではないな?」

 どうやらシークは、ルイージとドクターが偽者かもしれないと疑っているらしい。

「だからっ、僕は本物のルイージで」

「僕は本物のドクターだよ!」

「騙されはしない……必ず、正体を暴く!」

 そう言ってシークはルイージに襲い掛かってきた。

 

「ああ、もう! どうしてこうなるんだ!」

「どっちにしろ、やるしかないみたいだね!」

 

「フッ」

「速い!」

 シークが素早い蹴りを放ってルイージを攻撃する。

 そのスピードは速く、ルイージは避けられずにダメージを受けてしまう。

「シーク君、目を覚ますんだ! カプセル!」

 ドクターはカプセルをシークに向けて投げ、正気に戻そうとするが、

 シークが正気に戻る気配はなかった。

「はぁ……まったく、暴走ってのは恐ろしいね」

「味方までも敵とみなし襲い掛かる……ぐぅっ!」

 さらにシークの二度蹴りがルイージを正確に捉え打ち据えていく。

「ルイージ君、大丈夫かい?」

「か、かなり痛いよ。でも、僕だってやられっぱなしじゃないよ! ファイアボール!」

 ルイージは手から緑の火炎弾を放つ。

 シークはそれを飛び上がってかわすが、ルイージの狙いはそれであり、

 シークは下にいたドクターのスーパージャンプパンチを受けてしまう。

「やっぱり、シークを元に戻すには、シークと戦わなくちゃいけないのかな?」

「ちょっと辛いけど、仕方のない事だ」

 ルイージもドクターも争いを好まない性格であり、シークと戦うのも辛そうな様子だった。

 しかし、今のシークは「暴走」しており、まずは一度、戦闘不能にしなければならなかった。

 スーパージャンプパンチを受けたシークはジャンプして斜めに針を投げつけた。

「いった!」

「うわぁっ」

「炸裂丸」

 針を受けてよろめいたドクターにシークが見えない爆弾を取りつけ、

 爆発した直後に糸でドクターを引き寄せる。

 そこからドクターは手刀と蹴りの連続攻撃を食らってダメージを受ける。

「はぁはぁ……僕はあまり体力がないから、少しは手加減してくれるかな」

「そう言われて手加減をする私ではない! 覚悟しろ、偽者め!」

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 シークはそう言ってドクターに容赦ない一撃を加える。

 ドクターはそれを受け、大きな叫び声を上げて倒れた。

 

「……どうして、どうしてなんだ……」

 ドクターと共にシークと戦っていたルイージは、この戦いに疑問を抱いていた。

 こんな戦いで、本当に生き残れるのだろうか。

 こんな戦いに、本当に意味はあるのだろうか、と。

 

「……これで、とどめだ」

 シークは倒れたドクターのところにゆっくりと近づいてくる。

 そして、手刀を振りかざした、その時。

 

やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 ルイージが頭から突っ込んでいき、

 それがシークに命中すると大爆発を起こしてシークを吹き飛ばした。

 そう、ルイージロケットが暴発したのだ。

「ル、ルイージ君……?」

「僕はこれ以上、仲間同士の戦いを見たくない!」

 ルイージは優しい性格なので、仲間同士が乱闘以外で戦うところを、誰よりも嫌う。

 普段は大人しいものの、いざという時の行動力は兄・マリオと互角なのだ。

「だから、今ここで僕は、君を止める!」

「ならばやってみろ!」

「ドクターは、危ないから下がってて」

「……うん」

 シークはドクターを下がらせたルイージに立ち向かうが、

 ルイージはファイアボールを飛ばして牽制し、その隙に足を掴んで地面に叩きつける。

「くっ、よくも……」

「アイスボール!」

 何とか立ち上がったシークは蹴りを放とうとするが、

 直後にアイスボールを受けて両足が凍り付く。

「くっ、動けない……」

「まだまだ!」

 ルイージは攻撃は最大の防御と言わんばかりにぽこぽこパンチで連続攻撃し、

 さらにどんけつとねこパンチをシークに食らわせてダメージを与える。

 その戦いぶりは、今までのルイージからは想像できないほどだった。

「これで……終わりだ!」

 そして、ルイージが地獄突きを放つと、シークは戦闘不能になるのだった。

 

「……ん」

 しばらくして、シークはゆっくりと起き上がる。

「……僕は一体、何をしていたんだ」

「さっきまでの出来事、覚えてない?」

 ルイージがすぐに事情聴取を行うと、シークは静かに口を開いた。

「少しだけだが覚えている。僕の周りには誰もいなかったからな。

 何もなく、徐々に不安になっていき……理性を失ってしまったようだ」

 どうやら、シークはこの世界に飛ばされた時には単独行動をしていたらしい。

 そのせいで、シークは精神的に不安定になり、ルイージ達を攻撃したのだろう。

「君達を偽者だと思い込んでしまって、本当にすまなかった」

 シークは二人を攻撃した事を謝った。

「別に、気にしなくても大丈夫だよ」

「もう、済んだ事だし……ね」

 理性を失っていたとはいえ、敵となったシークとすっかり仲良くなったルイージとドクター。

「それにほら、少ないけど食糧は持ってきてるし、せっかくだから僕達と一緒に行かないかい?」

 ドクターは携行食糧を取り出し、シークに同行を勧めてきた。

「いいのか?」

「うん」

「それに、歩いていればきっと仲間も見つかると思うし……」

 こんなところで考えていても何も始まらないと思ったルイージはシークと同行する事を決めた。

 

「じゃあ、早速みんなを探そう!」

「ああ!」

 シークを仲間に入れたルイージとドクターは、はぐれた仲間と合流するために歩いていった。




ルイージの強さと優しさを表現できたと思います。
次回もまたエグい描写があるので、ご注意を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話 魔よりも恐ろしきは人

タイトル通りの回です。
災いが起きたら真っ先に騒ぐのは人、でも災いを治めるのもまた人です。


 ルイージ、ドクター、シークは、仲間を探すために先に進んでいった。

「しかしまぁ……ここはとっても広いね」

「しかも、何もないな……」

 現在、ルイージ達が見つけたものは、廃墟からの携行食糧のみであり、

 それ以外は何も手に入れていない。

 シークの言う通り、この世界はほとんど何もなく、それが探索の困難さをさらに強めていた。

「せめて何かの痕跡があればいいんだけど、こんなところで見つかるわけがないよね」

「もしくは、あっても極めて分かりにくいものだ」

「はぁ……」

 なんて不親切な世界なんだろう、と嘆くルイージ。

 しかし、グダグダと文句を言っていても仕方ない。

 先に進まなければ、道は開かれないのだ。

 

―ガサゴソ、ガサゴソ

「……ん?」

 ふと、シークは遠くで何か音を聞いたようで立ち止まる。

「どうしたの、シーク?」

「向こうで、何かが聞こえる」

「何の音だろう……」

 ルイージ、ドクター、シークは慎重に、音源に近付いていった。

 すると、三人の男女が死体から使えそうなものを漁っていた。

 ルイージは恐る恐る、その中の一人に話しかける。

「あ、あの……何をやってるんですか……?」

 だが男性は一心不乱に死体漁りをしていて、ルイージの話を全く聞いていない。

「どうやら僕達の事は目に入ってないみたいだね。気にしないで、先に進もうか」

「うん、そうだね」

 男女を無視して先に進もうとすると、女性はドクターの膨らんでいるポケットを見た。

「それは……?」

 女性はドクターに話しかけたが下手に答えるとまずいと判断したドクターは何も言わなかった。

「……」

「何なの……?」

「……」

「ねぇ、教えてよ……」

「……」

「お願い……」

「……」

 女性の言葉を只管無視するドクター。

 すると、痺れを切らした女性の形相が変わり、ルイージ達に襲い掛かってきた。

 同時に、男性達も女性に続いて襲い掛かる。

よこせぇぇぇぇぇぇぇ!!

「まずい、みんな逃げるよ!」

 ルイージ達は大急ぎで逃げ出した。

 仲間を探したいという気持ちよりも、

 携行食糧を奪われたくないという気持ちの方が勝っていたようだ。

 

 数分走った後、男女の姿は見えなくなった。

 だが、思ったよりも男女は執念深かったため、かなり離れてしまったようだ。

 といっても、目印がないこの世界ではそんなのは無意味だと思われるが……。

「ここまで逃げれば、もう大丈夫かな?」

「体力は消耗してしまったが、彼らに食糧を取られるよりはマシだ」

「ここって、魔物以外にもこんなのがいたんだね。僕達の世界では、想像もつかない事だよ」

「魔物よりも性質が悪いんじゃない? この人達は」

「ああ……人の欲望は、恐ろしいものだ。このような強欲な者は、恐らく自滅するだろう」

「でも、あの人達は多分……必死だったんだと思う。そうしてあげなきゃ……」

「甘いな」

 ルイージの甘さをシークは指摘した。

「君はこの世界にいる全ての人達を救えるのか?」

「えっ? できる、けど……」

それがいけないのだ!

「えっ!」

 シークの声が大きくなったためルイージは驚いた。

「僕が言った『この世界にいる全ての人』とは『スマブラメンバー全員』の事ではない。

 先ほど出会った人達も含まれるのだ」

「あ、あんな人達も……?」

「そうだ。僕達が生き残るためには、他の人を犠牲にしなければならない。

 利己的かもしれないが……それがこの世界の理だからな」

 それでも、スマブラメンバーだけは絶対に犠牲にしたくない、とルイージはシークに言った。

 シークは当然だ、とでも言うように頷く。

「今は自分の身を守る事を大事にしろ。仲間を助けるのは、その次だ」

「う、うん……」

 

 その頃、ラストホープでは……。

 

「マリオさま、マリオさま」

「なんだ?」

 アスティマがマリオの肩をポンポンと叩く。

「遠くの方から、人の気を感じますよ」

「ん……精神集中してないのに感じるのか?」

「ええ。少しだけ力が戻ってきていますから。まだ、完全には戻っていませんが……」

 アスティマはスマブラメンバー全員をこの世界に召喚してからは力の大半を失っていた。

 しかし、徐々にその力も戻ってきているらしく、

 精神集中せずとも遠くにいる者の気を感じる事ができるようになった。

「一体、どこから聞こえてきたんだ?」

「分かりません……」

「だが、行ってみる価値はあるな。おーい、リンク、カービィ、ピカチュウ!」

 マリオは大声でリンク、カービィ、ピカチュウを呼んだ。

「なんだ?」

「アスティマによれば、遠くの方に誰かいるみたいだぞ」

「もしかして、バラバラになった仲間かな?」

「そうかもしれないな。早めにここに連れて行かなければ大変な事になる」

「よぉし、善は急げだ。行くぞ! アスティマ、しっかりここを守ってくれよな」

「……はい!」

 仲間を探すため、マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウはラストホープを出るのだった。

 

「……なんだか、ここに来てからは僕達」

「影が薄くなっちゃったね~」

 ネスとリュカはぽつりとそう呟いた。




次回はスマブラ四天王のターンです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 家族との再会

スマブラ四天王のターンです。
ドクターマリオの設定は私独自のものですのであしからず。


 マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウは、アスティマが感知した人を探していた。

「アスティマは一体、どんな奴を見つけたんだろう」

「どんな人かは分からないけど、とにかく、また仲間が見つかってよかった!」

「まだ出会ってないけどな」

「あうー」

 ピカチュウの突っ込みにへこむカービィ。

「ま、とにかく先に進んでみなきゃ分からないぜ」

「そうだね」

 スマブラ四天王が先に進んでいくと、三体のゾンビと人の形をした化け物が姿を現した。

「またゾンビかよ、でも俺達が蹴散らしてやる!」

 マリオがファイアボールで牽制した後、リンクがゾンビを斬りつけて攻撃する。

 ピカチュウも敵陣に突っ込んでかみなりを繰り出し、ゾンビ達を一網打尽にする。

「せぇいやぁぁぁっ!」

 カービィもファイナルカッターを繰り出してゾンビを攻撃する。

「危ない!」

 ゾンビがマリオに向かって爪を振り下ろしたが、

 リンクがマリオを庇い代わりにダメージを受ける。

 もう一体のゾンビもピカチュウに噛みつき、人の形をした化け物もリンクを殴る。

「こいつ、タフだな……」

「全然倒れないよ……」

 人の形をした化け物のタフさに苦しむカービィとピカチュウ。

「そんな時こそ」

「俺達に任せろ!」

 そう言うとマリオはファイア掌底を、リンクはスマッシュ斬りを繰り出した。

 すると、人の形をした化け物は大ダメージを受けて叫び声を上げた。

「確かに体力はあるが、意外と防御は脆いようだな。

 だから、強力な一撃を与えれば楽に倒せるぞ」

「だったら、ゾンビは俺達に任せて、マリオはその化け物に専念しろ!」

「おう!」

 リンク、カービィ、ピカチュウはゾンビの群れを担当し、

 マリオは人の形をした化け物を担当した。

「とりゃ!」

「えいっ!」

「食らえ!」

 カービィは短い手足で懸命にゾンビを攻撃し、リンクは遠くからゾンビの群れに爆弾を投げ、

 ピカチュウは電撃をゾンビに食らわせる。

 マリオは人の形をした化け物に殴られながらも、

 パンチやキックで人の形をした化け物にダメージを与えた。

 人の形をした化け物の動きは鈍ってきており、体力が残り僅かになっているという証だった。

「これで、とどめだ!」

 そして、マリオがファイア掌底を人の形をした化け物に当てるとドロドロに溶けて消滅した。

 マリオはややグロテスクなそれを見て若干気分が悪くなったが、

 それを振り切りゾンビの群れに突っ込んでいく。

 そして、リンク、カービィ、ピカチュウと共にそれぞれの持つ必殺技を繰り出し、

 ゾンビ達を全滅させるのだった。

 

「まったく、ここはホントにゾンビだらけだぜ」

「キング・オブ・ザコとはいえ、数が多いからね」

「それでも、これから先に待ち受ける試練を乗り越えれば、目的は達成できるさ」

「そうだな。改めて気合を入れるぞ!」

「「「「おーっ!!」」」」

 

 黒い空間の中で、スマブラ四天王が気合を入れる様子を女性が光のない金色の瞳で見ていた。

「まったく、どうしてこんな世界でも希望を失わないのかな?

 普通、こんなところに来たら、すぐ死んじゃうのに……。

 まぁ、あいつらは『普通』じゃないからかな!」

 

 スマブラ四天王がある程度歩いていると、遠くに緑の帽子を被った男と医者の格好をした男、

 そして忍者のような風貌の人物の姿が見えた。

「あれは……スマブラメンバーか? おーい!

 マリオが彼らに向かって手を振ると、向こうにいた三人の人物もそれに反応して手を振る。

 すると、三人の人物がマリオ達の方に向かって走り出した。

 

「ルイージ、ドクター、シーク! 無事だったか!」

 その人物は、ルイージとドクターとシークだった。

「うん……兄さん達もよく無事だったね」

「ああ、この辺でゾンビ達に出会ったが」

「俺達で蹴散らしたぜ」

「でも、これで仲間が見つかってよかった!」

「生きていてくれて……本当によかったぜ、ルイージ、ドクター」

 新たな仲間と出会えて喜ぶスマブラ四天王。

 特にマリオは、自分の身内と再会できたために大きな喜びを表していた。

「当たり前さ、僕だって兄さんを探してたんだから、これくらいで倒れるわけがないよ」

「それにほら、これだって手に入れたんだ」

「おおっ!」

 そう言ってドクターはマリオ達に廃墟で手に入れた携行食糧を見せた。

「この世界では、食糧は貴重なんだ。だから、少しずつ、大事に食べようね」

「ああ」

 

 ルイージ達を仲間にしたスマブラ四天王は、

 ラストホープに戻るため、元来た道を引き返そうとしていた。

「兄さん達は、これからどこに戻るの?」

「ラストホープ、ってところだ」

「なんだそれは」

「最後の希望って意味で、アスティマが治めているこの世界の本拠地なんだぜ」

「じゃあ、そこに行けばとりあえずは安心って事?」

「まぁ、そうなるな」

 七人がラストホープを目指して歩いていると、突然、地面から何かが噴き出してきた。

「なっ!?」

「これは……試練の予感がする……!」

 そう言ってリンクは剣を抜いてすぐさま戦闘態勢を取った。

「えっ!? な、な、何なんだい!?」

 何が来るのか分からず、慌てるドクター。

 すると、地面から人間と魚が混ざったような容姿の巨大な魔物が現れた。

「こ、これは……」

「間違いない、俺達をラストホープに行かせないために立ち塞がっているんだな!」

「って事は、つまり……?」

「戦えって事なんだよ!」

「だったらやるしか……ないよね?」

「ああ、くたばるわけにはいかないしな!」

 マリオ、カービィ、ピカチュウ、ルイージ、ドクター、シークが戦闘態勢を取ると同時に、

 巨大な魔物が襲い掛かってきた。

 

うわぁぁぁっ!

 魔物の叫び声と同時に、闇の波動がマリオ達を襲った。

 マリオとピカチュウは何とかかわせたがそれ以外のメンバーは軽傷を負う。

「水がないのに、なんで津波が……?」

「あいつの特性だろうな、気にせず行くぞ!」

 そう言ってマリオはファイアボールで牽制し、

 リンクの剣技とピカチュウの電撃が魔物に命中する。

 カービィはルイージが放ったファイアボールを吸い込んでファイアをコピーし、

 口から火を噴いて魔物を攻撃した。

「リンク君、これを」

「サンキュ」

 ドクターはリンクの体力が減っていると判断し、カプセルを投げて彼の体力を回復させる。

「はぁぁっ!」

「せいっ!」

 シークは身軽な動きで飛び上がり、

 その勢いで魔物に飛び蹴りを放った後に反撃を受けないよう離脱する。

 ドクターは魔物が吐いた灰色の霧をかわしつつ心臓マッサージで魔物を攻撃する。

 しかし、魔物の固い部分に当ててしまいダメージは与えられなかった。

「そらよっ!」

 ピカチュウは相手の懐に近づいて電撃を繰り出し魔物に強烈なダメージを与え、

 さらにリンクが疾風のブーメランで怯ませた後にファイアカービィの火吹き攻撃が入る。

 マリオ、ルイージ、シークは飛び道具で魔物を牽制しつつ体術で援護攻撃をする。

 

「ったく、どんだけタフなんだよあいつは」

「俺達が戦ったあの化け物以上と見えるな」

 この魔物は、人の形をした化け物以上にタフな体力を持っていて、なかなか倒れない。

 早めに倒さなければ、疲労が蓄積して、しまいにはダウンしてしまうのだ。

 だが、魔物のダメージも蓄積しており、もう少しで倒す事ができそうだった。

「あと少しだ。僕達のとっておきの一撃を」

「あいつらに」

「与えなきゃね!」

 そう言って、マリオ、ルイージ、ドクターは自分の右手に力を溜める。

 

「「「トリプルジャンプパンチ!!」」」

とりゃぁぁぁっ!

 そして、マリオ、ルイージ、ドクターが大ジャンプをしてパンチを繰り出し、

 魔物を空の彼方に吹っ飛ばすのだった。

 

「試練の嵐は、過ぎ去ったようだな」

 魔物が吹っ飛ばされたと同時に、周辺から魔物の気配が消えた。

「もう魔物も来ないようだし、安心してラストホープに戻れるね」

「ああ。道は覚えているよな?」

「も、もちろん!」

「自信はなさそうだな……とりあえず、俺から決して離れるなよ」

 そう言い、マリオ達はラストホープに戻っていくのだった。

 しかし……。

 

「まさかあの魔物を退けられるとは、ね。だけど、本当に怖いのは、魔物じゃないんだよ?」

 くすくすと、女性がマリオ達の様子を見ていた。




どんな時でも繋がりを大事にするのが私の考えです。
天災や疫病など、人の手に及ばない災いが起きてもね。
次回もまた仲間探しです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 仲間を探すために

今回は休憩回です。
スマブラメンバーだからこそできるのですが、現実では……ですよね。


 無事にラストホープに到着したスマブラ四天王とルイージ、ドクター、シーク。

「お疲れ様です。仲間も増えてきましたね」

 アスティマの言う通り、ラストホープは以前と比べて賑やかになっていた。

「本当にここは快適だよね」

「あの地獄が嘘みたいだよ」

「食べ物もたくさんありますしね~」

 ルイージ、ピット、ヨッシーはワイワイとラストホープで会話をしていた。

「ははっ、楽しそうだな……うん、うん」

 その様子をマリオ達は微笑ましく見ていたが、

 同時に、元の世界に帰りたいという願いも一層強くなった。

「……皆さん、どうしたんです? なんだか、寂しそうな表情ですよ」

「ああ、この光景を見たら元の世界を思い出しちゃってな」

「……」

 マリオ達は元の世界に帰りたかった。

 だが、何も問題を解決せずにこの世界を立ち去るのは、

 マリオ達にとってはあまりにも屈辱だったため、今、帰るつもりはないようだ。

「……元の世界に帰りたいのですか? ですが今、私の力は……」

「そんな事はどうでもいい! 今はお前の言う通り、この世界を救ってからそれは考えるぜ!」

 そう言うリンクの表情に曇りはなかった。

 彼の表情を見たアスティマがほっと一安心する。

「ああ、本当にあなた達を呼んでよかった、と私はこの時思っています。

 他の人を呼んでいたら、無理矢理にでも元の世界に帰っていたでしょうから……」

「俺達はお前を絶対に裏切らないから安心しろって」

「……はい!」

 ピカチュウもまた、アスティマの事を信頼しているようだ。

 その頃、カービィはというと……。

 

「食~べ~さ~せ~て~!」

 ドクターが持っている携行食糧を食べようとしていた。

「だ~め、これを君一人で全部食べたら大変な事になっちゃうんだよ? カービィ君」

「ぶ~ぶ~」

「というわけで、これはアスティマ君に預けるよ」

 ドクターはカービィに携行食糧が食べられないように、

 急いでアスティマのところに行って彼女に携行食糧を預けた。

 

「さて、これからどうしましょうか」

 ラストホープの中央に集まったのは、アスティマ、マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウ、

 ヨッシー、フォックス、ファルコ、サムス、マルス、ロイ、アイク、ルフレ、

 ネス、リュカ、メタナイト、ロゼッタ、シュルクだった。

「まずは、仲間探しを優先させよう」

「んで、この世界を救って元の世界に帰るんだ」

 この世界には、散らばったスマブラメンバーがまだまだ残っている。

 彼らを探さなければ、次のステップには進めないとマリオは判断したからだ。

「そのために、今から4つのチームを編成しようと思っているのですね?」

 アスティマの言葉に、マリオは首を縦に振った。

「では、チーム分けはこちらが行います」

 

 アスティマによるチーム編成の結果、以下のようなチームができた。

 Aチーム:マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウ

 Bチーム:フォックス、ファルコ、ネス、リュカ、サムス

 Cチーム:ヨッシー、メタナイト、ロゼッタ、シュルク

 Dチーム:マルス、ロイ、アイク、ルフレ

 

「まぁ俺達は当然、この編成だよな」

「でも、なんで私がこっちのチームなんですか~?」

「この方が、バランス的にいいと思いまして」

 Bチームのネスとリュカは超能力による攻撃力が高いが、その分、足が少し遅く、

 それを足の速いフォックスとファルコ、飛び道具を使うサムスが補う形となっている。

 Cチームも、足の遅いロゼッタを足の速いメタナイトがサポートし、

 バランスの良いヨッシーとシュルクが入っている。

 Dチームも、バランス、パワー、スピード、ブレインと揃っていて隙のない構成だ。

「この編成に異議のある方は挙手してください」

 誰も手を挙げなかったため、アスティマは立ち上がり指示を出した。

「では、Aチームは北、Bチームは東、Cチームは西、Dチームは南に向かってください」

「おう!」

 マリオがそう言うと、それぞれのチームはバラバラの場所に向かっていった。

 

「私は信じていますよ。あなた達が無事に、仲間を見つけ、ここに帰ってくる事を……!」

 

 アスティマが編成したチームは、散らばった仲間を探すため、

 この世界のあちこちに分かれて行動した。

 

 マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウは北。

「ファイアボール!」

「回転斬り!」

「ハンマー!」

「かみなり!」

 

 フォックス、ファルコ、ネス、リュカ、サムスは東。

「俺とファルコが前に出るからネスとリュカは後方から援護してくれ」

「うん! ネス君、一緒に頑張ろうね」

「もちろんさ!」

「へっ、こんな奴コテンパンにやっつけてやるよ」

「油断は禁物……よ」

 

 ヨッシー、メタナイト、ロゼッタ、シュルクは西。

「行きますよ~」

「モナドからの、バックスラッシュ!」

「行け、チコ!」

「うりゃりゃりゃりゃ!」

 

 マルス、ロイ、アイク、ルフレは南。

「せいっ!」

「やあっ!」

「はあっ!」

「エルファイアー!」

 

 それぞれが持っている技で、ゾンビやゾンビ犬を一掃していくチームメンバー。

 敵は多いが、このくらいで挫ける彼らではない。

 また、もしもゾンビ達にやられてしまえば、

 この世界の一般人とそれほど変わらないという結果になってしまうと思う者もいるからだ。

 それだけは避けたい、と彼らは思っているのだ。

 

 だが、それを見ているのは、光だけではなかった。

「ふふふふふふ……。全て、ボクの思惑通り……」

 

 果たして、この世界は本当に救われるのだろうか。

 それとも、破滅へ向かっていくのだろうか。




pixiv版ではサムスを入れ忘れていたので、出しました。
次回は世界一有名な悪役が登場します。
楽しみに待っていてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話 クッパ親子登場

世界一有名な悪役が登場します。


 この世界に散らばった仲間を探すために北に向かっていた

 マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウは、ゾンビを倒しながら先に進んでいた。

「しっかし、本当にここってゾンビだらけだよな」

「だよな」

 マリオ達は辺りをきょろきょろと見渡したが、

 見えるのはゾンビと今いる仲間ばかりで、それ以外の存在は見えなかった。

 ゾンビを倒しながらカービィは言う。

「もう、どうしてこんなにいっぱいいるの!」

「我慢しろ、仲間を見つければそんな考えは吹っ飛ぶっての」

「ぶぅ……」

 スマブラ四天王が歩いていると、倒れている女性を発見した。

 幸い、女性は生気の無い表情をしているが生きているようでマリオは安心する。

「ど、どうしたんだ!」

「せ……せな、か、を……」

「うわっ!」

 マリオが女性の背中を見てみると、そこには大きな傷が刻まれていた。

 まるで、何かに切り裂かれたかのような。

「なんて酷い傷だ……」

「一体、誰がやったんだろう……」

「魔物だったら、そいつを退治するだけでいいんだが……」

「とにかく、君を攻撃した人はどこにいるの!」

 カービィの問いに、女性は東の方を指差した。

「あっちだね! 分かった! みんな、この人の敵を討つよ! 仲間を探すのはその後!」

「いや、まだ死んでないっつーの」

 カービィのボケにピカチュウが突っ込みつつ、スマブラ四天王は女性が指差した方に向かった。

 だが、向かう途中で、ゾンビが襲い掛かってきた。

「ま、またゾンビか!?」

「でも、これって……」

 しかし、そのゾンビは今まで出会った人型や犬型ではなく、亀型であった。

「骸骨の亀は見た事があるが、ゾンビの亀は初めて見るな……ん?」

「どうしたんだ、マリオ?」

「いや、なんでもない。早くこいつらを倒して、先に進もう」

「だな」

 

 数分後、スマブラ四天王はゾンビ亀を全滅させた。

「よーし、これで雑魚は終わったな」

「後は、ボスを倒せばいいんだね」

 そう言って、マリオとカービィを先頭にスマブラ四天王が歩いていると、

 

たっ、大変だぁーーーーー!!

 クッパクラウンに乗った一匹の亀が、マリオ達の方に向かって突進してきた。

「ジュニア!? どうしたんだ!」

 クッパクラウンに乗っていたのは、クッパの息子ジュニアだった。

 ジュニアは慌てた様子でマリオ達に話す。

「お、おかしくなったお父さんが、ぼくと、近くにいた人を」

「!!」

 ジュニアの証言を聞いたマリオが絶句した。

 女性とジュニアを傷つけたのはクッパだったのか。

 確かにクッパはマリオの永遠のライバルだが、最近はかなり丸くなっているという。

 そのため、彼がそんな事をするはずがない、とマリオは思っていたが、

 それが打ち砕かれショックを受けた。

「ジュニア、クッパはどこにいるんだ!?」

「この先、この先!」

「じゃあ、案内してくれ」

「うん!」

 

 ジュニアに案内されてスマブラ四天王が辿り着いた先にあったのは、

 見境なく辺りのものを攻撃しているクッパの姿だった。

「クッパ……!」

 恐らく、女性はそれに巻き込まれて重傷を負ったのだろう。

 マリオは思わずクッパのところに駆け寄ろうとするが、ジュニアが「待って」と制止する。

「マリオ、突っ込んでいかないで!」

「なんでだよ!?」

「今のお父さんは敵と味方の区別がつかないみたい。だから今、近づくのは危険だよ!」

「ジュニア、お前は自分の親を見殺しにする気か?」

「そうじゃなくて……!」

 マリオとジュニアの喧嘩を止めるべく、リンクが一人と一匹の間に割って入る。

「二人とも喧嘩はよせ! 要は『近付かなければ』いいんだろ? ちょっと離れてろ!」

 そう言うとリンクは二人を下がらせ、懐からデクの実を取り出すとクッパに向けて投げ、

 それが爆発するとクッパと周囲にいたものが気絶した。

 デクの実は衝撃を受けると強烈な閃光を放って相手を気絶させる効果があるのだ。

「よし、後はクッパをこっちに連れていくだけだ」

「で、でもどうやって……」

「カービィ、お前が口に入れて運べばいい。持ってるだろ? 大きな敵も吸い込む力を」

「……そうか、がんばり吸い込みだ!」

 カービィが鏡の大迷宮事件で覚えた技、がんばり吸い込み。

 これは、ある程度大きな敵を吸い込んだり、重いブロックを動かしたりできるようになるが、

 その分、体力を余計に消費してしまうのが欠点だ。

「お前ならできる、やれって!」

「うん! よぉーし!」

 カービィは全力で吸い込む力を強め、

 結果、体力を消費しながらも何とか気絶したクッパだけを口に入れる事に成功した。

「よし、後はそのまま遠くに吐き出せ!」

「ふふ! へひっ!(うん! えいっ!)」

 カービィはぺっと口からクッパを吐き出した。

 

「お父さん……」

 クッパはまだ、気絶したままだった。

 もし目覚めた時、自分が暴れて息子を攻撃した、

 と聞かされたらどうなるだろうか、とジュニアは心配していた。

「心配するなよジュニア、しばらくしたら起き上がるさ。……ほら、な」

 マリオの言う通り、しばらくしてクッパはゆっくりと起き上がる。

「……我輩は、何をしていたのだ……?」

 ぼんやりとした様子のクッパが最初に見たもの、それは自分の息子・ジュニアだった。

「おお、ジュニア! 無事だったか!」

「ちょっと、痛かったけどね」

「痛かった? 何がだ?」

「ああ、うん、なんでもないよ」

 お父さんが傷つけた、という言葉は口が裂けても言えなかったジュニア。

「ジュニアが無事なら我輩はそれでよかった。ところで、お前達は一体何をしているのだ?」

「俺達はこの世界に散らばった仲間を探してるんだ」

「んで、そいつらをラストホープに送り届けてる」

「ラストホープ? ってなんだ?」

「アスティマって奴が治めてる、この危険な世界で唯一の安全地帯だ」

 リンクはラストホープについてクッパ親子に説明した。

「それで、そのラストホープとやらはどこにあるのだ?」

「ここから南に行って、それから西に行けば、いつかはラストホープに辿り着くさ」

「う~ん、説明が大雑把すぎるよ」

「それくらい目印がほとんどない世界だっての」

 はぁ、とクッパ親子は溜息をついたが、

 行動しなければラストホープに行く事はできないため、渋々二匹は歩く事を決めた。

 

「では、我輩とジュニアはこれからラストホープに戻る。

 お前達はお前達でやるべき事をやるがいい」

「頑張ってねー、みんなー!」

「ああ! お前達に最高の希望を届けてやるから、ちゃんと待ってろよ!」

「大丈夫、僕達なら絶対生き残れるよ!」

「俺達は過酷な環境だけでくたばるような奴じゃねぇって事を証明してやる」

「じゃあ、行ってくるぜ、クッパ、ジュニア!」

「……ああ、勘違いするなよマリオ。あくまでも、一時休戦だからな!」

「分かってるっての!」

 スマブラ四天王はクッパ親子に別れを告げ、仲間を探しに行くのだった。

 

 ラストホープに戻る途中で、

 クッパ親子は先ほどスマブラ四天王が出会った傷ついた女性と出会った。

「……貴方は、さっきの……いや、やめて……」

 女性はクッパの姿を見て震えてしまうが、ジュニアは「もう平気だよ」と言う。

「ガッハッハ、我輩はここでも恐れられてるとはな」

「お父さん、冗談はやめて……。ここは本当に、危険な世界なんだよ?」

「ならばその危険な世界で、しぶとく生き残ろうではないか!」

 こんな危険な世界でも、クッパは堂々としていた。

 そんな父の姿に、ジュニアは勇気づけられる。

「……そうだよね、お父さん。今は、生き残ろう!」

「よーし! 我輩から離れるなよジュニア!」

「もっちろーん!」

 

 なんだかんだで、かなり仲の良い親子であった。




うちのクッパは堂々としていてジュニアには甘いという設定です。
次回はForには登場しなかった「あいつ」が登場します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話 ポケモントレーナー・ロート

Forでは脱落したキャラですが、ここではちゃんと登場します。
スマブラ四天王のターンですが。


 クッパ親子と別れたスマブラ四天王は、

 バラバラになった仲間を探すためにこの世界を歩いていた。

「なんとなく、飢え死にしてないか心配だぜ」

「ここはな~んにもないからね」

「ああ、本当に、な……」

 この世界は、瓦礫などを除いて本当に何もない。

 探す仲間が飢え死にしてしまうのは、スマブラ四天王にとって悪い結果になってしまうため、

 早めに探さなければならない。

「お腹ペコペコなのホントにやだからね!」

「頼むから死ぬなよ、絶対にな!」

「死んだらただでさえ少ない希望がどんどん消えていってしまうからな」

「この世界での敵は、魔物でも人間でもない。過酷で、危険な環境だ」

 

 その頃……。

 

「……っはぁ」

 一人の少年が、息を切らしながら歩いていた。

 少年の名はロート、ゼニガメのトルトゥ、フシギソウのフィオーレ、

 リザードンのブレイズを連れているポケモントレーナーだ。

 ロートはそれぞれが消耗しないように順番に戦わせているのだが、

 あまりに敵が多いためポケモンも疲れているようだ。

「無理はさせないって決めたんだが……こんなにも敵が多いと……」

 逃げるという選択肢もあったが、

 いくら逃げても辺りは敵ばかりで安全地帯など見つかるはずがなく。

 彼はただ、襲ってくるゾンビを自分のポケモンに倒させていた。

「本当に、この世界に希望なんて無いのか? 絶望だけしかこの世界にはないのか?

 どうすれば、いいんだ……」

 この過酷な環境にポケモン以外に仲間がいない今の状況が重なり、

 普通の少年であるロートの精神力は耐えられず、挫けかける。

「トルトゥ、フィオーレ、ブレイズ……」

「ゼニィ……」

「フシィ……」

「リザァ……」

 せめて傍にポケモンだけはいてほしいと、

 ロートはボールからトルトゥ、フィオーレ、ブレイズを出した。

「みんな、何があっても俺の味方でいてくれ。俺を、支えてくれないか……」

「ゼニゼニ!」

「フッシー!」

「リザー!」

「みんな、ありがとう。本当に……」

 三匹のポケモンは、ロートに元気出せよ、とでも言うかのように鳴いていた。

 彼らの姿を見たロートの心に、僅かだが明かりが灯った。

 

「じゃあ、俺と一緒に、希望を探そうな!」

「ゼッニー!」

「フシフシー!」

「リザァー!」

 ロートはそう言ってボールにポケモンを全て戻し、希望を探すために歩くのであった。

 

 スマブラ四天王がある程度歩いたところで、突然マリオが立ち止まった。

「どうしたの、マリおじちゃん?」

「これは……アスティマのテレパシーか!」

―はい、そうです。

 マリオがそう言うと、彼の頭の中にアスティマの声が聞こえてきた。

―近いですよ、マリオさま。

 アスティマのテレパシーを聞いたマリオは、もうすぐ仲間が見つかるという事が分かった。

「何人だ?」

―そこまでは分かりません。でも、見つかります。

「ああ、もう分かってるからテレパシーはそこまでにしておけ」

―はい。

 その言葉を最後に、アスティマのテレパシーはぷつりと途切れた。

 

「マリオ、一体誰と話をしてたんだ?」

「アスティマとテレパシーで、な。後ちょっとで仲間が見つかるらしい」

「「おおー!!」」

 散らばっていた仲間が見つかる。

 それだけで、スマブラ四天王の顔が希望の光に照らされてぱっと明るくなる。

「もう少しだ、頑張るぞ!」

「うん!」

 マリオを先頭に、リンク、カービィ、ピカチュウは前へ進み出した。

 まるで、怖いものなど存在しないかのように。

 

 そして四人がしばらく歩いていると、赤い帽子を被り、赤い服を着た少年とすれ違った。

「ん? あれは?」

 マリオは、その少年の方に向かって走り出した。

 すると、ポケモントレーナーのロートと出会った。

「ロート!」

「お、お前はマリオじゃないか!」

「俺も」

「僕も」

「いるぜ」

 ロートと再会したスマブラ四天王が口々にそれを喜ぶ。

「こうやって仲間に会えるだけで、俺達は嬉しいよ」

「それは俺だって同じさ、こうなるまではポケモンしか周りにいなかったからな」

 仲間が増えるという事は、信頼できるものも増えるという事になる。

 何かに縋らなければ生き残れないこの世界、仲間を探すのは重要な事なのだ。

「で、なんでお前らはここに来たんだ?」

「アスティマって奴に頼まれて、この世界に散らばった仲間を探してるんだ」

「こうしなきゃ、次のステップに進めないってマリおじちゃんが言ってたんだよ」

 スマブラ四天王は、自分を探しに来たロートに事情を話した。

 それを聞いたロートは頷いてこう言った。

「じゃあ、俺もそれ、手伝っていいか?」

「もちろん! ……といっても、この辺にもう仲間はいなさそうだけど」

「ま、とりあえずラストホープに戻ろうか」

 そう言って、ロート達はラストホープに戻る道を歩いていった。

 

「しっかし、ここは本当に何もないなぁ」

「ああ……灰色の空と、赤茶けた大地以外は、な」

 前述の通り、ここはラストホープや瓦礫以外に何もかもが無い世界。

 現在、スマブラ四天王はラストホープを治める女性・アスティマに

 「この世界を救え」と頼まれたのだが、

 手掛かりがほとんどない以上まずは仲間を探す事から始めたのだ。

「どうしてこの世界がこうなっているのか、俺達にはまだ分からねぇ」

「だけど、みんながラストホープに集まれば、

 きっと、この世界がどうなったのか分かると思うよ」

「そして、この世界を救うための手掛かりが見つかる、か。……う~ん……」

「ロー兄、あれこれ考えたらまた迷っちゃうよ! まずは、ラストホープに帰ろ!」

「ま、それもそうだな。魔物がいる中でそれを考えるのは自殺行為らしいしな」

 カービィの言う通り、スマブラ四天王とロートは一度、ラストホープに戻る事にしたのだった。

 途中、ゾンビやブロブに襲われたが、それぞれの技を使って次々に撃破していく。

「あれ、ロートは戦わないの?」

「連戦でポケモン達が疲れてるのに無理に出すトレーナーはいないだろ。

 それに俺、一応普通の人間だし」

「争いの世界に住んでる以上、『普通』じゃないと思うんだけどねぇ……」

「ん? 何か言ったか?」

「何も言ってないよ?」

 

 果たして、この世界を救うための手掛かりは、本当に見つかるのだろうか……。




スマブラ世界のポケモントレーナーは、レッドに憧れているという設定です。

次回もForには登場しないキャラが登場します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話 息ぴったりの登山家

Forで脱落してしまったあいつらが、ここで登場します。
特設リングでの通り名も、↑のタイトルと同じだったらなぁ。


「本当に、仲間は見つかるのか?」

 仲間を探すために東に向かっていたBチームの一人、ファルコがそう呟く。

「まぁ、行ってみなきゃ分からないからな。……おっと、危ない! ブラスター!」

「ミサイル!」

 フォックスとサムスは襲い掛かるゾンビを武器や体術で倒しつつ先に進んでいく。

「どこもかしこもゾンビばっかりだぁ」

「まぁ、こんな世界だからな」

「油断は……禁物」

「当たり前さ」

「……おい、フォックス、今更だがアーウィンに乗らないのか?」

「……その、アーウィンはこの世界にないんだ。急に飛ばされたから用意も忘れて……」

「「えーーーー!?」」

 どうやら、急にこの世界に飛ばされてしまったため、

 アーウィンを元の世界に置き去りにしてしまったようだ。

 アーウィンに乗れれば時間短縮ができるのに、とネスとリュカは落胆した。

「仲間に連絡はできないの?」

 サムスの質問に、フォックスは首を振った。

「何度も通信したのだが、応答なしだった」

「何故……」

 ここは争いの世界とは異なる世界だから電波が届かないだろう、とサムスは推測した。

 とにかく、これで分かった事は、この世界では連絡手段が極めて少ないという事だった。

 すなわち、有力な情報を見つけたとしても、自分の足で知らせなければならないのだ。

「早くこんな環境からはとっととおさらばしたいぜ」

「でも、その前にまずは仲間を探してから、だよ?」

「分かってるっての!」

 

「も~う、なんでこうなるの~!」

「ほらポポ、しっかり歩きなさい!」

 この地を歩いているのは、Bチームだけではなかった。

 アイスクライマーのポポとナナである。

 双子のようにそっくりだが、友達以上恋人未満の関係である。

「変な生き物は出るし、道標はないし、こんな世界はもう嫌だよ!」

「でも脱出する手段が見つかってないから、あたし達でそれを探すしかないみたいね。

 これくらいでへこたれるんじゃないわよ、ポポ!」

「ナナは相変わらず押しが強いなぁ~;」

「何か言った? ポポ」

「な、何も言ってないよ!」

 襲い掛かってくる敵を、ハンマーや氷で蹴散らすアイスクライマー。

「これくらい、アイスクライマーの敵じゃないわ。さぁ、かかってきなさい!」

 ふふんとハンマーを振り上げるナナ。

 と、その時だった。

 

「……なっ、何よこれ……?」

 アイスクライマーの目の前に、様々な人が混ざったような魔物が二体現れた。

「ナナ! 倒すんじゃなかったの?」

「そ、そうだったわね、ポポ……」

 ナナはいつもの強気な態度と違って少し弱気になった。

 それでも、ポポに言われたからには立ち向かわなければ、とポポと共にハンマーを構えた。

 アイスクライマーは氷を放ったりハンマーで殴ったりして混ざった人を攻撃したが、

 タフすぎるために攻撃がなかなか通らない。

 それどころか相手の攻撃の方が強烈で、アイスクライマーは大きなダメージを受けてしまった。

「ぐぅぅ……!」

「ナナ、無茶しないで!」

「分かってるわよ、それくらい……。でもね、あたし達はいつまでも一緒なのよ。

 あんたを置いて、逃げるわけにはいかないんだから……!」

 

「……!!」

 リュカは、遠くで二人の登山家が混ざった人と戦っているのを超能力で見た。

「あっちに、仲間がいる……!」

「どこに?」

「とにかく、真っ直ぐ進んで!」

「ああ、分かった!」

 

 フォックス、ファルコ、サムス、ネス、リュカが見た光景、それは――

 混ざった人との戦いで苦戦している、アイスクライマーの姿だった。

「まずい、このままではあいつらが死んじまう!」

 そう言ってファルコはアイスクライマーがいる場所に飛び出した。

「あ、ちょ、待ってくれファルコ!」

「待ちなさい!」

「僕達も」

「置いてかないで~!」

 フォックス、サムス、ネス、リュカも、慌てて彼の後を追うのだった。

 

おい!!

「「あっ!」」

 ファルコの大声を聞いたアイスクライマーが彼の方を振り返る。

「ファルコ、どうしてここに?」

「お前ら、死にたくなかったら俺と一緒に戦え!」

「えっ? ど、どういう事……?」

 ポポが驚いていると、サムス、フォックス、ネス、リュカが、

 アイスクライマーのところにやって来た。

「俺はフォックス、こいつは仲間のファルコだ」

「僕はネス」

「ボクはリュカです!」

「私はサムス・アラン」

「とにかく、お前らがこのまま前に出たら危険だ、下がってろ」

「ええっ!? 僕達、まだいけるよ!」

「そうよ、邪魔しないで!」

 意地を張るアイスクライマーに対し、ファルコは鋭い目で二人を見る。

「……ここで死んだらもう終わりなんだよ」

 ファルコの目は真剣で、アイスクライマーは思わず怖気づいてしまう。

「分かったらお前らはとっとと下がってサポートに回りな」

「わ、分かったよ~;」

 一見きつい態度に見えるファルコだが、これも彼なりの仲間に対する思いである。

 フォックスとサムスは否定せず、頷いた。

「さぁ、フォックス、サムス! こいつらを倒して早くラストホープに戻るぜ!」

「ああ!」

「当然よ」

「あっ、ちょっ、僕達を忘れないで~!」

 いつの間にか置いていかれたネスとリュカも、

 アイスクライマーを守るために混ざった人に立ち向かった。

 

「「はっ!」」

「せいやっ!」

「PKファイアー!」

「PKサンダー!」

 フォックスがブラスター、サムスがミサイルで混ざった人を撃ち抜き、

 ファルコはファルコビジョンで混ざった人を切り裂く。

 ネスやリュカも、PKファイアーやPKサンダーで、

 アイスクライマーと共に後方から援護していた。

「うっわ、本当にタフだね」

 だが、ネスの言う通り、混ざった人が倒れる気配はなかった。

「だからお前らは苦戦してたのか」

「苦戦って何よ、ちょっと手間取ったって言ってよ」

「ほらほら、喧嘩している暇があったら早くこいつらを倒せ!」

「はーい!」

 

 その後も、フォックス達は体術や射撃で混ざった人を攻撃していくが、

 混ざった人はなかなか倒れなかった。

「ああ、もう、どうして倒れないの! どうしたら、こいつらを倒せるの!」

「ほら、ナナももう怒っちゃってるし……」

 苛立つナナと慌てるポポを見たネスとリュカは、アイスクライマーの前に立った。

「だったら、ここはボク達に任せて! 行くよ、ネス君!」

「うん!」

 ネスは混ざった人達にディフェンスダウンをかけ、

 リュカはアイスクライマーにオフェンスアップをかけた。

「なっ、何をしたの?」

「攻撃力を上げるPSIをキミにかけて」

「防御力を下げるPSIをあいつらにかけたんだ」

「そして、俺達があれを一つの位置に集めたら」

「強烈な攻撃で一気に倒せ!」

 ネス、リュカ、フォックス、ファルコが口々にアイスクライマーにそう作戦を話す。

 どうやら、とどめは彼らに刺させるようだ。

「……分かったよ。みんな、お願い!」

「ああ!」

 フォックスとファルコは素早い動きで混ざった人が上手く一つの位置に集まるように誘導する。

 サムスも混ざった人を撹乱するように動いた。

「よし、今だ!」

「うん!」

 そしてフォックスの号令と共に、アイスクライマーがゴムジャンプで飛び上がり、

 混ざった人目掛けてハンマーを振り下ろす。

「「でりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 そして、ポポとナナのハンマーが混ざった人に命中すると、

 混ざった人は叫び声を上げてバラバラになるのだった。

 

「どんなもんだい!」

「どんなもんよ!」

「うわ~、まさに息ぴったりだったねぇ」

 アイスクライマーの活躍に、ネスとリュカは拍手した。

「あっ、でも勝負の後はちゃんと回復させないとね」

 そう言って、ネスはポポ、リュカはナナにライフアップをかけて傷を癒した。

「ありがとう、みんな」

「えへへ、それほどでもないよ」

 アイスクライマーに感謝されて頭を掻くネスとリュカ。

「まったく、子供同士はすぐ仲良くできるんだな」

「それを見守るのもまた、大人だぜ」

 フォックスとファルコは、子供組の様子を微笑ましく見守っていた。

 サムスも、「よくやった」と子供組をたたえた。

 

「う~ん、後は特に何もなさそうだし、そろそろラストホープに帰ろうか?」

「仲間も見つかったし、もうくたくた~」

「まぁ、いい情報は見つからなかったが、とりあえず、アスティマのところに戻ろうな」

「うん!」

 そう言って、フォックス達はラストホープに向かう道を歩くのだった。




pixiv版には出ていなかったサムスを追加しました。
次回はCチームのターンです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話 ポケモンとの出会い

文字通りの回です。
彼、結構頼りになるんですよね、性格的にも能力的にも。
このシーンがスマブラSPに出るとは、思いませんでしたね。


 さて、その頃のCチームである。

 ヨッシー、メタナイト、ロゼッタ、シュルクは、

 各々の技を駆使してゾンビ犬を倒していき、生きる事を望む人間を気絶させた。

「……こんな人達も、ここにいたのか」

「私達が生き残るためには、彼らも犠牲にしなければならないのか……?」

「そんなの、考えただけでも辛いです~」

 争いを好まないヨッシーは、他人を犠牲にするという考えを持たず、苦しんでいる。

「しかも、この世界を救うために必要な情報が何一つ見つかっていないし……」

 そう、シュルクの言う通り、この世界が何故荒廃しているのか、

 という説明がこの世界に一切ない。

 しかも、マリオによれば、

 自分達をここに呼び出したアスティマすらも多くは語っていないという。

「とりあえず、僕達にできる事は、バラバラになった仲間を探す事くらいだね」

「情報を集めるのは、後にしましょうか~」

「……ゾンビも来ているしな」

「わっ!」

 ヨッシーが慌てて飛び退くと、ゾンビが這いずり回っており、

 しばらくしてそのゾンビが立ち上がるとヨッシー達を攻撃しようとした。

「私の邪魔をしないでください!」

「うりゃりゃりゃりゃ!」

 ヨッシーがゾンビを蹴り飛ばした後、メタナイトがゾンビに突っ込んで乱れ斬りで倒す。

 シュルクもモナド【疾】でスピードを上げた後にその勢いを利用してゾンビを斬りつけ、

 そこにロゼッタのチコシュートが命中した。

 が、ゾンビはあと一歩のところで倒れず、のろのろとヨッシーに近づいて引っ掻いた。

「あいたたた、やめてくださいよ」

 ゾンビの攻撃で怪我をしたヨッシーが、そのゾンビに向かって卵を投げる。

 そこにメタナイトのドリルラッシュが入りゾンビが倒されると、

 今度はシュルクがゾンビをエアスラッシュで斬りつける。

「これで、とどめだ! ギャラクシースマッシュ!」

 そしてロゼッタがゾンビに向かって手をかざし、小さな銀河を発生させ、

 ゾンビを吹き飛ばして戦闘不能にした。

 

「今回は未来視(ビジョン)を使わなくても勝てたね」

「相手の行動が単純だったからな」

「……さて」

 シュルクは辺りを見渡し、何かないかを確認する。

「この辺にはもう、何もないみたい」

「というより何もなくない方が珍しいからな」

「とりあえず、先に進みましょうか~」

 

 その頃……。

 

「くっ、どうやら囲まれてしまったようだな」

「戦闘は避けられないようだ」

 はどうポケモンのルカリオと、しのびポケモンのゲッコウガが、

 ゾンビ、ゾンビ犬、毒虫と戦っていた。

 ルカリオには毒が効かないため毒虫の攻撃に脅威する必要はなく、

 またゾンビとゾンビ犬も近距離攻撃しかできないため後衛のゲッコウガには届かない。

 しかしそれは、ルカリオにのみ攻撃が集中するという事なのだ。

「ゲッコウガ、私が前に出るからお前は後方から援護をしてくれ」

「了解」

 ゲッコウガがまず、かげうちでゾンビに不意打ちを行った後、

 ルカリオは波導をその身に纏わせ、掌底を繰り出してゾンビを攻撃する。

 隙を突かれてうろたえていたのか、ゾンビの攻撃はルカリオには当たらなかった。

 ゲッコウガがみずしゅりけんを毒虫に投げつけた後、ルカリオははっけいでゾンビを攻撃した。

「意外としぶといな……」

「だが、俺達はこれで攻撃を止めるようなポケモンではない! ハイドロポンプ!」

 ゲッコウガは毒虫にハイドロポンプを繰り出し、毒虫を吹き飛ばして墜落させた。

「ぐぅ、うぅっ!」

 ゾンビとゾンビ犬の攻撃を連続で食らったルカリオの表情が苦痛に歪む。

「無理はするな、引くのも大事だぞ」

「だがゲッコウガ、彼らが私達を逃がしてくれると思うか……?」

「む……」

 ルカリオとゲッコウガは、これ以上ゾンビ達を相手にしたくなかった。

 しかし、ゾンビ達がそれを許すはずがなかった。

「仕方ない、まずはこいつらを倒すぞ!」

 そう言ってルカリオは毒虫に向かってはどうだんを放ち、

 とどめにゲッコウガのみずしゅりけんが刺さり毒虫は戦闘不能になる。

 続けてルカリオのしんそくとゲッコウガのかげうちが命中してゾンビを戦闘不能にし、

 残るはゾンビ犬のみとなった。

 しかし、ルカリオはここまで連続で攻撃を食らい続けているせいか体力が減少しており、

 その表情にも疲れが見え始めてきていた。

 そこにゾンビ犬が容赦なく体当たりを食らわせ、ルカリオは吹き飛ばされてしまう。

「ルカリオ!」

「くっ……。私はここで、終わるのか……? ゲッコウガ……すま、な、い……」

 最早限界ギリギリとなったルカリオは、意識を手放そうとしていた。

 

 その時だった。

 

「ギャラクシーヒール!」

 女性の声と共に、ルカリオの傷が急速に癒えた。

 そして、しゅたっと女性―ロゼッタと共に、ヨッシー、メタナイト、シュルクが現れた。

「やはり、ここでは力が落ちているようだな……。全快には至らなかったか」

「ロゼッタに、メタナイト……それに、シュルク?」

「倒れる直前に、お前達の波導を感じたが……まさか、援軍か?」

「そうだよ。あまり、無茶はしないでよね。ロゼッタでも治せない傷を負わせないために」

 そう言ってシュルクはモナドを構え、メタナイトもギャラクシアをゾンビ犬に向ける。

「後は私達に任せろ」

「あ……ああ!」

 ルカリオとゲッコウガが後ろに下がった後、メタナイト達はゾンビ犬に立ち向かった。

 

「行きますよ~!」

 ヨッシーが卵の中に入って体当たりを繰り出し、メタナイトが乱れ斬りでゾンビ犬を切り刻む。

 ゾンビ犬はルカリオに噛みつこうとするが、

 それをシュルクが未来視(ビジョン)で見切ったのかその攻撃は当たらず、反撃でゾンビ犬を斬った。

 何度も攻撃を食らったのか、流石のゾンビ犬もよたついていた。

「今ですよ、ルカリオさん!」

「うむ! はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ルカリオはきあいだめで自らの気を溜めた後、波導を最大限まで高めて大技の構えを取る。

 

「波導の力を見よ! はどうのあらし!!」

 そして、ルカリオが一直線に波導を発射し、それがゾンビ犬を貫くと跡形もなく消滅させた。

 

「……終わった、な」

「……終わった、ね」

 ようやく戦闘を終わらせ、空を見るルカリオ達。

 空は灰色に染まったままだったが、彼らから見ると美しく見えたようだ。

「やはり、この世界は何かがおかしいようだ。波導も、良からぬものが感じられる。

 邪悪な……狂気が混ざったような……」

「……?」

「でも、仲間が見つかってよかったですね~」

「そうか、戻るぞ」

「えっ、どうしてですか? ……あ!」

 ルカリオに言われ、ヨッシー達ははっと気付く。

 そうだ、仲間を探すのが目的だったのだ。

「私とゲッコウガを見つけたのだから、もうここに用はないだろう?」

「そ、そうですね~。じゃあ、ラストホープに戻りましょうか~」

 ルカリオに言われ、ヨッシー達はラストホープに戻るのであった。

 だが、ルカリオが感じた良からぬ波導とは、一体誰のものなのだろうか……。

 それについてはまだ、分からない。




ロゼッタの口調が原作と違うのは、私の趣味です。
次回は20話、ケモナー歓喜回です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20話 けものパニック!

ドンキーコングとディディーコングが登場します。
そして、新たな敵も……?


 その頃、ドンキーコングとディディーコングは、巨大蜘蛛や蛆の塊と戦っていた。

「ほいっ!」

 ディディーコングのピーナッツ・ポップガンが巨大蜘蛛を撃ち抜く。

「ドンキー、こういう大きな蜘蛛って、スクイッター以外にもいたんだねぇ」

「相手が誰であってもやっつけるまでだ! うおりゃあああああ!

 ドンキーコングはパンチで巨大蜘蛛を攻撃しようとするがあっさりかわされてしまい、

 蛆の塊に気付けずまとわりつかれてしまった。

 すぐにハンドスラップで吹っ飛ばしたが、ドンキーコングには不快感が残っていた。

 相変わらず、ドンキーコングはパワーはあるがおつむが弱い。

 ディディーコングはそんな彼をサポートしつつ、自らも果敢に敵に立ち向かう。

「そいやっ!」

 ドンキーコングがドンキーヘッドバットで巨大蜘蛛を埋めた後、

 ディディーコングは両手を伸ばして巨大蜘蛛に大ダメージを与え戦闘不能にした。

 巨大蜘蛛はドンキーコングに向かって糸を吐き、

 絡まって動けなくなっている隙に噛みつこうとするが、何故か体が痺れて動けなくなった。

 そう、あらかじめディディーコングが足元に痺れるバナナの皮を仕掛けておいたのだ。

「そ~らよっ!」

「ピーナッツ・ポップガン!」

 ドンキーコングは狙いを定め、蛆の塊をパンチで怯ませる。

 そこにディディーコングの落花生銃が命中し、蛆の塊はバラバラに弾け飛ぶ。

「うえっ……」

「気持ち悪いね、でも敵は残り一体だよ!

 ドンキー、オイラが足止めするから一気に決めちゃって!」

「おう!」

 ディディーコングは巨大蜘蛛に飛びかかり、ドンキーコングに攻撃がいかないようにする。

 ドンキーコングはディディーコングが巨大蜘蛛に組み付いている間に、

 己の腕を振り回して力を溜める。

どりゃああああああああああ!!

 そして、ドンキーコングのジャイアントパンチが巨大蜘蛛に命中すると、

 巨大蜘蛛は空の彼方に吹っ飛ばされ、星になるのだった。

 

「あー、すっきりした! っつーか一体ここはどこなんだよ」

「う~ん、オイラは分からないなぁ」

「オレも分からないぜ」

 相変わらず、こんなところに飛ばされても能天気なドンキーコングとディディーコング。

 悪く言えば馬鹿……だが、暗い世界の中でも明るさを保っていられるのは貴重だ。

「ま、この先に進めば分かるよね!」

「多分な!」

 

 一方で、マルス、ロイ、アイク、ルフレのDチームは、敵を避けながら仲間を探していた。

「僕の予測では、この辺に仲間がいるはずなんだ」

「そうは見えないが……?」

「ちょっと、足元を見てごらん」

「ん?」

 ルフレに言われてマルスが足元を見てみると、大きな足跡と小さな足跡があった。

「これだけで分かるのかい?」

「ああ。そしてこの足跡は、人間のように見えて人間ではない」

「どういう事だ……?」

「まぁ、類人猿だと思えばいいさ」

 類人猿と聞いて、連想されるのはあの二匹しかいないとロイは思った。

 

 マルス達がその足跡を辿っていくと、向こうから二つの何かと、土煙がこちらに近づいてきた。

「誰だ?」

 アイクがその方向をじっと見ていると、

 

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!

 ドンキーコングとディディーコングが、無数のゾンビ犬に追いかけられていた。

 マルス、ロイ、アイクは剣を構え、ルフレは魔道書を開き呪文を唱える。

「「マーベラスコンビネーション!」」

「噴火!」

「トロン!」

 マルスとロイが無数の剣閃でゾンビ犬を切り裂き、

 アイクの剣から放たれる蒼炎がゾンビ犬を焼き、

 とどめにルフレが唱えた雷魔法がゾンビ犬を全滅させた。

「す、すげぇ……」

「しかもあの炎と雷、何だろう」

 彼らがゾンビ犬を瞬殺するのを見たドンキーコングとディディーコングが感心する。

「無事だったかい? 二匹とも」

「……あ、ああ」

「……ドンキーコングにディディーコングか」

「こんなところにいたら危険だから、一緒に帰ろう」

 しばらく唖然としていた二匹だったが、マルス達が自分達を助けに来たと知って我に返る。

 ドンキーコングとディディーコングは頷き、マルス達に同行する事を決めた。

 

「うお~! これが剣っていうのかぁ」

 ドンキーコングは、マルス達が持っている剣をまじまじと見ていた。

「えっ? 剣を知らないの?」

「DKアイランドじゃ、こういうのはほとんど見ないからね。その代わり、自然が豊かだけど」

 ディディーコングは武器としてピーナッツ・ポップガンを使用しているが、金属製ではない。

 ドンキーコングとディディーコングは金属でできた武器を見るのは事実上初めてだ。

「僕達の世界では、剣と剣がぶつかり合うからね。DKアイランドがちょっとうらやましいよ」

「こうやってお互いの世界の良いところを見つけ合うのも、また交流、だね」

 皆はわいわいと楽しく話しながら、ラストホープへ戻る道を歩いていた。

 

「あっ、あとちょっとでラストホープだよ!」

 そして、ルフレのおかげで敵に出会う事もなく、

 もう少しでラストホープに辿り着こうとしていた。

「その、ラストホープって何だ?」

「文字通り、この世界の『最後の希望』だ」

「最後の希望……あー、さっぱり分かんないけど、

 とりあえずここにいれば一安心という意味だな?」

「まぁ、そういう事になるね」

 そして、ラストホープに入ろうとした、次の瞬間。

 

「わぁぁっ!?」

 突然、空間が裂けたかと思うと、濁った目と鱗を持つ魚の魔物が飛び出してきた。

 ルフレ達はこの魔物に見覚えがあったようで目を開く。

「もしかして、この魔物は……!」

 ルフレはサンダーソードを構える。

「知ってるのか?」

「うん。以前に僕達がラストホープに戻ろうとした時に襲ってきた魔物だよ。

 その時は何とか逃げられたけど、今度は逃がしてくれそうにないみたいだ」

「だから、戦うしかないってのか?」

「明らかに相手は敵対的だしな」

 アイクも剣を構え、この魔物に対峙していた。

「なら、オレもやってやるぜ! 相手がこんな化け物だろうと、このパワーで一ひねりだ!」

「オイラだって、やる時はやるんだ!」

 ドンキーコングもやる気満々な様子で戦闘態勢を取る。

 ディディーコングも、そんな彼をサポートする体勢に入った。

 

ウオオオオオオオオオオオオオ!!

 そして、魔物が叫び声を上げると共に、戦闘が始まった。

 

「うおりゃぁ!」

「せいっ!」

「たあっ!」

 ドンキーコングが転がりながら魚の魔物に体当たりを繰り出し、

 そこにマルスとロイのマーベラスコンビネーションが決まる。

 魔物は口を大きく開けてドンキーコングに突っ込んできたが、

 ルフレがサンダーを放ってそれを防いだ。

 アイクは飛び上がって剣を振り下ろすが、魔物はいとも簡単にアイクの攻撃をかわした。

「こいつ、巨体の割に速いな」

「おまけに体力もかなりある……これは、かなり時間がかかりそうだ」

「確実にダメージを与えるために……狙いを定めて、そいや!」

 ディディーコングは魔物に狙いを定めて落花生を発射した。

 すると、上手く魔物の弱い部分に命中したのか、魔物が一瞬だけ怯み、

 その隙にアイクは居合い斬りで魔物を切り裂いた。

「よし!」

「これは結構効いたか?」

 ガッツポーズをするディディーコングだが、

 次の瞬間、魔物の体が黒く光り、負っていた傷が治った。

「げぇ! 回復しやがった!」

「くっ、やっぱり手数で勝負をしていたらダメって事か……!」

「なら、オレがでかいの一発かましてやるぜ!」

「ちょっと待って、ドンキー!」

 そう言ってドンキーコングは皆の前に出てジャイアントパンチを繰り出そうとしていたが、

 ディディーコングが止める。

「なんでだよ」

「ドンキーのジャイアントパンチは隙が大きい。それに、相手はまだまだ元気だよ。

 そんな時にジャイアントパンチを出してもかわされて反撃を受けるだけだよ」

 ディディーコングはドンキーコングに助言する。

 流石はディディーコング、ドンキーコングを上回る知能の持ち主だ。

 といっても、ドンキーコングが馬鹿すぎるだけなのだが。

「オイラ達があいつを攻撃するから、

 ドンキーはその間に相手の隙を突いてジャイアントパンチを叩き込んで」

「よ、よ~し!」

 ドンキーコングは腕を振り回しながら、無い知恵を絞って魔物の様子を見ていた。

 ディディーコングは遠距離から落花生を発射し、

 ルフレは防御が薄いところを狙ってサンダーソードで攻撃する。

 飛び道具がないマルス、ロイ、アイクは、

 相手の噛みつき攻撃をかわしながら剣技を叩き込んでいく。

ガァァァァァァァァァァァ!!

「うわぁ!」

「くっ!」

 魔物は口から濁った水をマルス達目掛けて吐き出した。

 水自体は大した威力ではなかったが、それを浴びたマルス達の武器が錆びた。

「しまった! 僕のファルシオンが……!」

 本来は錆びないはずの武器が錆びたため、マルスは動揺した。

 今、ここで錆びた武器を振れば、壊れてしまう危険性がある。

 一刻も早く、決着をつけなければならない。

「ドンキー、もうパワーは溜まった?」

「おう、最大パワーだぜ!」

「よーし、相手の動きを止めて!」

「うん!」

 唯一、武器以外にも魔法が使えるルフレが、エルサンダーを唱えて魔物の動きを止める。

「行くぜ! ジャイアントパンチ!!」

ギャアアアアアアアアアアアア!!

 そう言ってドンキーコングがジャイアントパンチを繰り出すと、

 魔物は今までよりも大きな叫び声を上げ、泥となって地面に落ち、消滅するのだった。

 

「や、やったぜ!」

 魔物にとどめを刺したドンキーコングがガッツポーズをする。

 ディディーコングやルフレなど、頭が良い仲間のおかげだ。

「まさか、残党はいるんじゃないだろうね?」

「もう、大丈夫だよ。この辺に敵の気配はなくなってるみたい」

「よかった……」

 敵の気配が完全になくなった事がルフレによって確認され、マルス達もほっと一安心する。

「でも、これで仲間を探すために立ち塞がる大きな障害が1つ消えたという事になるね」

「そうなるな」

「これで、安心してラストホープに戻れ……」

 そう言って、ルフレが一歩歩き出した瞬間、彼の頭の中に声が響いてきた。

―ボクのペットと遊んでくれてありがとう。

「!?」

 声は自分の事を「ボク」と言っていたが、その高い声から女性である事が分かった。

―おやおや、驚いているのかい?

「いきなりテレパシーを受けたら驚くに決まっているよ」

―フフフ。おっと、名前を名乗ってなかったね。ボクはハオス、混沌のハオスだ。

「混沌の……ハオス?」

 女性は混沌のハオスと名乗った。

 彼女の不気味さにルフレは警戒心を強める。

―キミは今、何をしているんだい?

「怪しい人にそれを言うつもりはない」

―警戒心むき出しか。だけど、話は続けるよ。この世界はどうしてこの有様か、分かるかい?

「……」

―もしも、この世界をこうした黒幕が、ボクだったとしたら……?

「……?」

―まぁ、それは「もしも」の話だけどね。

「……」

―おっと、おしゃべりはここまでにしよう。せいぜい儚い希望に縋って生きてよね。

 それを最後に、ハオスの声は聞こえなくなった。

 

「どうだった、ルフレ?」

「あのハオスという女性は、何を考えているのか分からなかった。

 不気味で、少しだけ恐怖を感じたよ……」

「「??」」

「とにかく、まずはラストホープに戻ろうね。彼女については、戻ってから話すよ」

「ああ」

 

 この世界に住む謎の女性、ハオス。

 果たして、彼女は一体何者だろうか……と思いながら一行はラストホープに戻るのだった。




一応、舞台となっている世界はホラーゲームをイメージしていますが、
スマブラメンバーは怪物とやり合えるので全然怖くありません。
むしろ怪物より人間の方が怖いのです。

次回は新キャラの秘密に迫る……かもしれません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話 ハオスの秘密?

オリキャラの事を語ります。
世界を救う者、世界を破壊する者、まあ王道という感じにしました。


 マルス達はラストホープに戻り、

 アスティマに挨拶と自己紹介をした後に錆びた武器を直してもらった。

「それにしても、アスティマは本当に凄いね。

 こんな時間のかかる作業をたった1分で終わらせるなんて」

「いえ……今の私にできる事は、これくらいです。あなた達のように、戦ったりできませんから」

「前線で敵と戦うだけでなく、それを後ろから支えるのもまた、戦いなんだよ」

 アスティマはどこか自分を卑下しているように見えたため、マルスは彼女を励ました。

「ところで、君はハオスを知ってるかい?」

 ルフレは、ハオスという女性をアスティマが知っているか聞いた。

 すると、アスティマの眉がぴくっと動いた。

「ハオス……?」

「ん、どうしたんだい?」

「いえ……ここで話したらハオスに感付かれると思うので」

 その時、アスティマはハオスの事を知っているような言動を見せたが、

 彼女に感付かれると思い口に出さなかった。

「うーん、話したくないならいいけど……でも、感付かれない程度になら話してくれないかな」

「ええ、それならいいですよ」

 アスティマは口を開き、ルフレ達にハオスについて簡単な情報を話した。

 

「ハオスはこの世界を滅ぼそうとしている人物です。

 他者を操る能力を持っており、魔物はもちろん、どんなに強い心を持つ人であっても

 心に少しでも穢れがあるならば彼女に意のままに操られてしまいます」

「それで、ハオスはあの凶暴な魔物をペットと呼んでいたのか……」

「はい。恐らくは、この世界の各地に彼女の『ペット』がいるでしょう。

 全ては彼女の悲願、世界滅亡のために、あなた達の仲間に牙を剥くでしょう」

 ハオスの能力を聞いたルフレはごくりと唾を呑む。

 あれを受ければ、かつての仲間に殺され、また自分も仲間を殺してしまう。

 それだけは絶対に避けたいとルフレは思い、どうすればいいかをアスティマに聞いた。

「アスティマ、一体どうやったらその能力に対抗できるんだ?」

「能力がかかってすぐなら救い出せますが、完全に操られればもう救い出せません。

 ですが、絆が強ければ強いほど、ハオスの能力に抵抗できる確率が高まります」

「絆、か……」

「そうです。あなた達の絆さえあれば、この世界を救う事ができます」

「あ、あはははは……;」

 自信満々にアスティマが言う。

 それほどまでに彼女はこの世界を救いたがっているんだ……とルフレは苦笑した。

「というわけで、私から話す事は以上です。後は、皆さんにこれを伝えてください」

「分かった」

 ルフレは頷き、まず、マルス、ロイ、アイクにハオスについて伝え、他の人にもそれを伝えた。

 

「え~っ!? それってダークマターみたいだよ!」

 ハオスの能力を聞いて、最初に驚いたのはカービィだった。

 カービィが言う「ダークマター」とは、

 彼の故郷に存在する闇の精霊で、他人に乗り移る「ゴースト」のARTSを持つ。

 何度かその一族が侵略を仕掛けてきたが、全てカービィにより阻止されたという。

「とりあえず、操られてるのをやっつければ元に戻るんじゃない?」

「あのね、カービィ……忘れてない? 今は治す手段がないってアスティマが言ってたんだよ」

「えー……」

「でも、対抗できないわけじゃない。強い絆さえあれば弾き返せるんだって」

「そうか。みんなを信じれば、操られる心配はないんだな」

 大切なのは、仲間を信じる心と、どんな脅威にも屈しない心。

 それが失われれば、この世界で生き残る事ができないのだ。

「……にしてはよくクッパ耐えられたな」

「我輩があんな術にかかって思うように操られるわけがないのだ!」

「ないのだー!」

 実はクッパはマリオ達に助けられるまではハオスの能力を受けていたのだ。

 しかし、ジュニアの絆が極めて強かった彼は操られず、代わりに辺り構わず暴れ出したという。

「で、お前達はこれからどうするのだ?」

「しばらくは仲間探しだな。これが終わったら、本格的に世界を救う事にする」

「ハオスのペットに気を付けつつ、操られないように気を付けるぜ」

「いいかマリオ、絶対に死ぬなよ! お前が先に死ぬのはゴメンだからな!」

「ああ! くたばるつもりはねぇよ!」

 お互いにガッツポーズをするマリオとクッパ。

 やはり、何度も戦ってきた宿敵同士だけはある。

 

「……」

 その頃、ルカリオはこの世界に散らばった仲間の波導を感じるために精神集中をしていた。

 この世界では力が大分落ちており、長く精神を集中させなければ波導を感じる事ができない。

「……?」

 5分後、ルカリオの体が少し震えた。

「どうした?」

「2時の方向に、3つの波導を感じる」

 という事は見つかる仲間は3人なんだな、とマリオは思った。

 ちなみに、2時の方向というのは北東の事を差す。

「行って来てもいいか?」

「だが、私が感じた波導はかなり弱かった。恐らく、仲間はかなり遠くの方にいるだろう。

 故に、水や食糧は持って行った方がいい」

「でも、ここにあるのか?」

「安心しろ、ゲッコウガとサムスが集めてきた」

 そう言って、ルカリオはゲッコウガとサムスを呼びに行った。

 

「干し肉とまだ飲めそうな水を持ってきた」

「お、サンキュ」

 ゲッコウガとサムスは、散策した時に見つけた水や食糧をマリオ達に渡した。

 この世界では貴重だが、あれば大分探索が楽になるだろう。

「だけど、飢えた人がこれを狙ってくるかもしれないから、その人達には気を付けてね」

「えっ」

 この世界にいるのは、スマブラファイターや魔物だけではない。

 水や食糧を狙う、飢えた人間もいるのだ。

 同じ人間である以上、できれば避けたいとマリオ達は思っていたが、

 絶対に出会わないという保証はない。

 特に、カービィはどう対処したらいいのか分からずに困っている。

「嫌だよ、僕、その人に会いたくない。傷つきたくないし、食べ物を簡単に渡したくないよ」

「カービィにとっては嫌な相手だろうな。安心しろ、俺達が何とかしてやる」

「ありがとう、ピカチュウ!」

 ピカチュウに励まされたカービィは元気を取り戻した。

 

「それじゃあ、行ってくるぜ」

 そして、スマブラ四天王はアスティマ達に見送られてラストホープを出ていこうとしていた。

「マリオ、無事に帰ってこなかったら承知しないからね」

「リンクは、こんな環境にも屈せず生き残れると私は信じていますよ」

 二人の姫君も、大切な人を心配する目で言う。

「ああ……ピーチ、絶対に俺達は生きて帰ってくる」

「そして、必ずこの世界を救って見せるさ」

「お土産待っててねー!」

「俺達を信じて、待つんだぞ!」

「「「いってらっしゃい!」」」

 ピーチ達に見送られながら、スマブラ四天王はラストホープを出ていった。

 

「……ハオス……私は……あなたを……」

「ん? どうしたの、アスティマ?」

「ああ、いえ、何でもありませんよ」




アスティマとハオスの名前の由来はギリシャ語です、とだけ言います。
次回はforに出なかったあのキャラが登場します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22話 二人の小さき勇者

小さい体に大きな勇気。
今回は、そんな二人が登場します。


 スマブラ四天王は水と食糧を持って、散らばった仲間を探しに出かけていた。

 途中でゾンビやブロブに襲われたりもしたが、全て退けていた。

「仲間はかなり遠いが、水と食糧は十分だし、節約しながら進んでいけば大丈夫だろ」

「……な、何僕をじろじろ見てるの?」

 リンクは、カービィをじっと見つめていた。

 理由は、カービィが水と食糧を独り占めすると思っているからである。

「そんな変な目で見ないでよ、リン兄。流石の僕も、独り占めしたりはしないよ」

「本当にしないなら安心だぜ」

「まったく、疑わないでよねー」

 スマブラ四天王は互いに信頼し合う関係だが、この世界では徐々にそれが崩れ始めていた。

 それでも、いつか元の世界に戻れると信じ、彼らは仲間を探している。

「一体どのくらい進めばいいんだろう」

「さぁ、な。とりあえず真っ直ぐ進めばいいんじゃないか?」

「うん、そうしよう!」

 

「あれ」

 スマブラ四天王は真っ直ぐ進んだが、そこには大きな岩がぽつんとあるだけだった。

「やっぱり、ここには仲間はいないか……」

 諦めてその場を立ち去ろうとした瞬間、突然、岩ががたがたと動き出した。

「なっ……!?」

 その岩は口を大きく開いてマリオ達に襲い掛かる。

 どうやら、通常の岩に擬態した魔物のようだ。

「こんな魔物までいるのかよっ……!」

 リンクは剣を構え、他のメンバーも戦闘態勢を取ったところで岩の魔物が吠えた。

 

「はっ! っち、硬いぜこいつは!」

 リンクは剣で動く岩を斬りつけたが、硬さに阻まれダメージを与えられなかった。

「こういうのには大抵、弱点があるからな。それを探せばいい」

 マリオがファイアボールで牽制しつつ、ピカチュウが電撃で攻撃する。

「えーいっ!」

 カービィはハンマーを振り下ろして動く岩をバラバラにした。

 しかし、動く岩はすぐに元に戻り、岩の巨人と化してカービィに腕を振り下ろした。

 あれが命中したら、ひとたまりもない。

 マリオは急いでカービィの前に立ち、代わりに攻撃を受ける。

「うわぁ、どうしよう!」

「このくらいの失敗で挫けるなよ! 次で取り戻せばいいだろ!」

「うん、そうだね! ってうわぁ!」

 今度はカービィに向かって岩が飛んできた。

 カービィは岩を吸い込んでストーンをコピーし、腕を石にしてアッパーカットを繰り出す。

 岩の巨人は吹っ飛ばなかったが転倒させる事に成功し、

 マリオは岩の巨人にファイア掌底を浴びせる。

「よし、これは効いたな!」

 岩の巨人は反撃として腕を振り回しピカチュウを吹っ飛ばす。

「ってぇ!」

「何とかして弱点を見つけないとな……」

 リンクは相手の弱点を探そうとするが、それを相手が許すわけがなかった。

 飛ばしてくる岩を盾で防御しつつ、リンクは相手をじっと見る。

 すると、額に僅かに傷ができているのを発見した。

「みんな! あいつの弱点は額だ!」

「そうか! リンク、ありがとよ!」

 リンクのアドバイスで皆が岩の巨人の額を狙うと、岩の巨人はそうはいかないと額を腕で覆う。

 すると、カービィはホバリングをした後、岩の巨人の腕をストーンで押し潰した。

「今がチャンスだよ!」

「おう!」

 その隙にリンクは勇者の弓、ピカチュウは電撃を岩の巨人の額目掛けて放つ。

 すると、岩の巨人の身体が見る見るうちに崩れ始めていく。

「これで、とどめだ!!」

 そしてマリオが炎を纏った掌底を岩の巨人に繰り出すと、岩の巨人は木っ端微塵に砕け散った。

 

「はぁ……まさか、行き止まりに着くとはな」

「ここに仲間はいないから、引き返そうか」

「そうだな……」

 

 先ほど行った道を引き返した後、マリオ達は改めて仲間を探した。

「こっちがダメだから次はこっちかな」

「目印はやっぱりないけど、何もしないよりはましだよね」

「無駄足で食糧とかを消費しなきゃいいんだがな」

「え~! お腹ペコペコはやだよ~!」

「だったらちゃんと仲間を探すんだな……って、おい!」

 マリオ達が歩いていると、ピカチュウが血痕を発見した。

「どうした、ピカチュウ」

「ここに血痕があるぜ」

 飛び散っている血痕は赤黒く、既にここで戦いが行われていた事が分かった。

「えっと、誰が戦ってたんだろう」

「分からないが、仲間である事は確実だな」

「ええ? って事は、早く助けないと死んじゃうって事?」

「……その可能性はあるな」

「だったら、早く助けなきゃ!」

「あっ、待て!」

 そう言って、カービィは走り出した。

 マリオ、リンク、ピカチュウはカービィの後を追っていった。

 

 その頃……。

 

「うぅ、なんでこんなに敵がいっぱいいるの……」

 緑の服と帽子が特徴的な二人の少年剣士が、ゾンビやブロブと戦っていた。

 こどもリンクとトゥーンリンクである。

 二人の服には血の跡がついており、長く戦闘が続いていた事が伺える。

「この世界はボク達みたいなのにも優しくない世界みたいだ。

 どっちかが全滅するまで終わらないみたいだよ!」

「だったら、早くやっつけなきゃ……!」

 そう言ってこどもリンクは弓を構えて炎の矢を放つが、

 体力が減少していたのか矢は明後日の方向に飛んでいってしまう。

 そして、ゾンビ達は二人に向かって腕を振り下ろした。

 二人は攻撃を受けないように盾を構えたが、蓄積した疲労の影響でばたりと倒れた。

 

(あぁ、ボク達はここで……)

(死んじゃうのかな……)

 

「なんだか嫌な予感がする……」

 走っていくうちに、リンクは冷や汗をかく。

 助けようとした仲間が、最悪の状況になってしまう可能性を考えたからだ。

「リン兄……」

「ああ……もしも神様がいるなら、みんなを助けてくれよ……」

「リンク! そんなに暗くなるなよ! 死亡フラグなんか俺達でへし折ってやろうぜ!」

 後ろ向きになっていくリンクをマリオは激励する。

「そうだな、マリオ。希望の光はまだあるはずだ」

「その光を消しちゃダ……」

 その時、カービィの腹(?)の虫が鳴る音がした。

「……うん、お腹空いちゃった」

「ほら、食糧だ」

「えっ、たったこれだけ?」

「仕方ないだろ、貴重なんだから」

 マリオから渡された食糧の量にカービィは不満そうな表情になるが今は仕方ない事だと諦めた。

 そして食糧を食べた後、マリオ達は再び先へ進んでいった。

 

 やがて、スマブラ四天王は仲間がいると思われる場所に辿り着いた。

 そこで彼らが見た光景、それは――

 

コリン君!!

トゥーン!!

 ボロボロになって倒れている、こどもリンクとトゥーンリンクだった。

 マリオ達は大急ぎで彼らに駆け寄った。

 幸い、息はあるようでまだ生きているが、既に満身創痍と言える程の重傷だった。

「生きててよかった……」

「よかったじゃねぇよ! お前ら、このままじゃ死んじゃうんだぞ!」

「確かに周りは敵だらけだしねぇ……」

 そう、カービィの言う通りゾンビやブロブが一行を囲んでいる。

 彼らに殺される前に、二人を救出、治療しなければならない。

「どうする?」

「俺はこどもリンク、カービィはトゥーンリンクをラストホープまで連れて帰る。いいな?」

「う、うん!」

 リンクはこどもリンクを抱きかかえ、カービィはトゥーンリンクを口の中に入れた。

「ひょにょにゃきゃにゃらあんしんだよ!」

「マリオ、ピカチュウ、お前らはあと一人の仲間を探してくれ」

「「了解!」」

 マリオとピカチュウはリンクとカービィが去っていくのを見送った後、

 それぞれの技でリンクとカービィを追う敵を全滅させた。

 そして、残り一人の仲間を探すために歩き出すのだった。

 

「大丈夫だ、リンク」

「俺達が、仲間を全員見つけてやる……!」




次回はリンクと因縁のある「あの人物」が登場します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話 魔王降臨

スマブラ四天王(のうちの二人)のターン。
一人ぼっち(?)の仲間を助けに行きます。


 リンクとカービィと別れたマリオとピカチュウは、残り一人の仲間を探していた。

「残りは一体誰だろうな」

「そりゃ、見つけてみなけりゃ分からないだろ」

「それもそうだな……おっと!」

 襲ってきたゾンビをマリオはファイアボールで焼き払う。

「あーったく、邪魔するなっつーの!」

「よこせぇぇぇぇぇぇ!」

「しかも、食糧を狙ってくる奴もいるぜ……」

 マリオとピカチュウを襲ったのは、魔物だけではなかった。

 水や食糧を奪おうとする人間も、彼らに牙を剥く。

「可哀想だが、これも俺達が生き残るためだ」

「すまない……眠っていてくれ……!」

 マリオとピカチュウは、申し訳ないと思いながらも彼らを倒しながら仲間を探した。

 

 その頃……。

 

「敵が多いな……」

 宇宙服を着た男性が、小さな生き物をゾンビにぶつけて戦わせていた。

 彼の名はオリマー、ホコタテ運送の社員である。

 そして彼が連れている小さな生き物はピクミンといい、

 か弱いがオリマーにとっては重要な存在なのだ。

 ピクミンが組み付いてゾンビを攻撃した後、

 ゾンビの攻撃を受けて瀕死の状態になった後に笛で回復させ……を繰り返す。

「行け!」

 オリマーが近くにいるゾンビに紫ピクミンをけしかける。

 紫ピクミンは足が遅いが力が強く、近距離の敵を攻撃するのに最適だ。

 結果、紫ピクミン三体でゾンビを一撃で倒せた。

 周囲にゾンビがいなくなったのを確認したオリマーは、先に進んでいった。

 他に何かあるかもう一度確認してみたが、何も見つからなかったようだ。

「目印がないから道を探すのが難しいな。せめて、何らかの痕跡があればいいのだが……」

 だが、オリマーとピクミンがいくら歩き回っても痕跡が見つかる事はなかった。

 オリマーは仕方なく、前へ進んでいくのだった。

 

 マリオとピカチュウは辺りを見渡しながら歩いていた。

「一体どこに仲間がいるんだよ」

「かなり遠い場所にいるってアスティマが言ってたぜ?」

「でもよ、漠然とし過ぎて全然分かんないぜ。

 かれこれ10分も歩いてるのに、見つからないなんて……」

 マリオとピカチュウは根気よく歩き続けたが、やはり仲間の気配は見つからなかった。

 本当に仲間は見つからないのか、それとも、すれ違った可能性があるのか……。

 マリオ達は後者を信じたかった。

「なあ、気付いてくれよ……俺達は必死なんだぜ……?」

「死にたくないなら、早くこっちに来いよ……!」

「「おーーーーーーーーーーーーーーい!!」」

 耐えられなくなったマリオとピカチュウは、力いっぱい叫んで自分達の位置を知らせた。

 

「!」

「!」

「!」

「どうした、何かあったのか?」

 急にピクミン達が騒ぎ出したため、オリマーは何があったのか彼らに聞いてみた。

 すると、向こうで誰かが叫んでいる、といった様子である事が分かった。

「声はどっちから聞こえてきたんだ?」

 オリマーがそう質問をしてみると、ピクミン達は声が聞こえてきた方を向いた。

「あっちに行けばいいんだな」

 ピクミンが頷くと、オリマーは先ほどピクミンが向いた方向に歩いていった。

 

「誰だ、さっき大声を出したのは!」

 オリマーが歩きながら声を出した方に怒鳴ると、マリオとピカチュウと出会った。

「って、あなた達は……」

「やっと見つけたぞ! 残り一人は、お前だったのか!」

「な、なんだ? 何を騒いでいる?」

 何故マリオが喜んでいるのか訳が分からず、オリマーは頭に?マークを浮かべていた。

 そんな彼にピカチュウは事情を話した。

「なるほど。あなた達はこの世界に散らばった仲間を探していたのか」

「ああ……」

「ん? そういえば、あなた達は今日は二人だけなのか?」

 ふと、オリマーはいつも一緒にいるリンクやカービィの事が気になったため、

 マリオにそれを聞いてみた。

「リンクとカービィは、こどもリンクとトゥーンリンクを治療しにラストホープに戻ったぜ」

「そうか、分かった」

 あっさりと返事をするオリマー。

「なんでそんな返事なんだよ」

「仕方ないだろう、作者がキャラ掴みにくいから」

「メタ発言乙」

「それで、あなた達はこれからどうするのだ?」

「もう仲間は見つからなさそうだからリンクとカービィと合流する意味でラストホープに帰るぞ」

「こんなところにいては危険だからな。いいな?」

 オリマーは頷き、マリオとピカチュウについていった。

 その後ろを、ピクミンはぴょこぴょことついていった。

 

「……はぁ、ここは地獄だな」

 オリマーが初めて不時着したピクミンの星は、

 猛毒の酸素に危険な原生生物と、まるで地獄のような惑星だった。

 その時はピクミンに助けられて何とかパーツを全て回収し、脱出する事に成功したが、

 この世界は未だに脱出手段が見つかっておらず、しかも原生生物以上に危険な魔物もいるため、

 それ以上の地獄だとオリマーは言った。

「うおっ、今度はゾンビ犬と狂った鴉か!」

 ゾンビ犬と狂った鴉がマリオ達を襲ったが、ファイアボールや電撃、ピクミン攻撃で撃退する。

 オリマーはピクミンが瀕死の状態だったので、笛を吹いて回復させた。

「やるな、オリマー」

「伊達にピクミンと何度も惑星を探索していないからな」

「この調子でラストホープに戻ろうぜ!」

 マリオが腕を上げたその時、突然辺りが暗くなりマリオ達の目の前に黒い鎧を着た男が現れた。

「ガノンドロフ……!」

「ここから先は、通すわけにはいかん」

「何故通さない、答えろ!」

「ハオス様に命じられたからだ、この世界を滅ぼせとな」

「何っ!?」

 ハオスという名前を聞いたマリオが目を丸くする。

 まさか、ハオスに操られているのか、とマリオが思っていると、

 ガノンドロフは闇のオーラを全身に纏った。

「ハオス様に逆らう者は、全て消し去ってくれる!」

「今はリンクがいないが……」

「戦うしかないみてぇだな!」

「皆、行くぞ!」

 そう言って、マリオ、ピカチュウ、オリマーは戦闘態勢を取った。




オリマーは冷静だけど、ピクミン思いな優しさもある、というのを表現したかったのです。
次回はガノンドロフ戦です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話 戦闘! ガノンドロフ

ガノンドロフ戦です。
クッパと同様の偉大なるヴィランですが、彼と違ってシリアスな感じにしました。


 ガノンドロフとの戦闘が始まった。

 

「烈鬼脚!」

 ガノンドロフが闇の力を足に纏わせて空中から飛び蹴りを繰り出した。

 マリオとピカチュウは回避し、ファイアボールと10まんボルトでガノンドロフを攻撃する。

「相手は飛び道具を持たないから、遠距離戦に持ち込んだ方が有利だ」

「そうか、ならば行け!」

 オリマーはピクミンに命令し、ガノンドロフにまとわりつかせた。

「ええい、邪魔だ! ……ぐっ!?」

 ガノンドロフはすぐに腕を振り払ってピクミンを払い落としたが、急に膝をついた。

「これは、毒か……!?」

 そう、先ほどオリマーが飛びつかせたピクミンは、毒を持っている白ピクミンなのだ。

 ガノンドロフは毒によって徐々に体力が奪われていく。

「くそっ、思うように力が入らない……」

「よし、今だ!」

うぉぉぉっ!

「ぐあっ!」

 攻撃しようとしたマリオを、ガノンドロフは連続蹴りで攻撃した。

 流石は魔王、毒を受けてもその驚異的なパワーは健在だ。

 オリマーは紫ピクミンをぶつけ、ピカチュウは10まんボルトを放ってマリオを援護する。

「ファイアジャンプパンチ!」

 ガノンドロフが怯んだ隙に、マリオは炎を纏ったアッパーでガノンドロフを吹き飛ばした。

 マリオは追撃を狙うべくガノンドロフを追い、

 彼に組み付いて至近距離から炎を纏った掌底を浴びせた。

ぐあああああああああああ!

 マリオの連続攻撃を受けたガノンドロフは叫び声を上げ、

 素早くマリオの組み付きから離れると闇のオーラを溜めた。

 すると、ガノンドロフの傷が見る見るうちに癒えていく。

「回復した!?」

「この程度の傷、俺にとってはかすり傷にもならんわ!」

「くそっ、ならばかみ……」

「甘いわ! 紫炎肘!」

ぐあああああああ!

 電撃を繰り出そうとしたピカチュウに、ガノンドロフが闇の炎を纏った肘打ちをぶちかました。

 強烈な一撃を受けたピカチュウは吹っ飛ばされた。

「ピカチュウ! 大丈夫か!」

「ちぃ、やりやがるな」

 ピカチュウはふらつきながらも何とか立ち上がり、先ほどの攻撃の隙を突いて電撃攻撃をする。

 

 戦っている最中で、マリオはふと思う。

「なぁ……ガノンドロフって、ハオスに簡単に操られる奴だと思うか?」

「俺はリンクじゃないから知らないが……。

 少なくとも、プライドと威厳はあるから、そんな事はないと思う」

 確かにガノンドロフはトライフォースを手に入れてハイラルを征服しようとする野望はある。

 だが、彼にも悪なりのプライドがあり、他者に簡単に屈する事は許さないのだ。

 そんなガノンドロフが敵に操られるなんて、信じられない、とマリオとピカチュウは思った。

「とりあえず、話は後で聞こう!」

「雷打!」

 その間にガノンドロフが雷を纏った掌底を放ったが、

 マリオはアイスボールを放ってガノンドロフを凍らせて防ぐ。

 氷はすぐに砕け散ったが、直後にオリマーがピクミン達を投げてガノンドロフを攻撃する。

 ピカチュウは雷でガノンドロフを痺れさせた後に突っ込んで強烈な電撃を浴びせた。

「ガノン……お前、あんな女に従って何が嬉しいんだ?」

「決まっている、世界の全てを支配するためだ」

「だったら何故、彼女に従っている!

 お前だったら、あんな奴は無視するか、屈服させるかのどちらかだろ!

 手駒になってどうするんだよ!」

「……ぐっ」

「……(私の出番がないな)」

 マリオの説得を聞いたガノンドロフが動揺する。

 チャンスとばかりにマリオがさらに説得しようとするが、

 ガノンドロフの頭の中にハオスの声が響いてきた。

―何、こいつに惑わされているのさ。今のキミは、ボクの言葉しか聞こえないんだよ?

「ぐぅう……!」

「ガノン、そんな奴に惑わされるんじゃない! お前は! 小物じゃ! ないんだろ!?」

「ぐぅぅぅぅぅぅぅ……!」

 マリオとハオス、どちらの言葉を聞くか、ガノンドロフは迷っていた。

 マリオの説得が功をなしたのか、と思った時。

―……あいつの声は聴くな。

「ぐぁぁぁああああああああ……!!」

 ハオスの凄みのある声と同時に、ガノンドロフを強烈な頭痛が襲った。

 彼女の洗脳が強まり、それにガノンドロフが抵抗している証だ。

「ガノン!」

「俺は……俺は……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 ガノンドロフは暴走しながら拳に闇のオーラを纏わせる。

 これは、ガノンドロフ最大の必殺技「魔人拳」の構えだ。

 そして、マリオに向かって魔人拳が放たれた、その時。

 

「うっ!」

 ガノンドロフが突然動きを止めたかと思うと、次の瞬間、ばたりと倒れた。

 一体誰がやったんだ、とマリオ達が攻撃をした方向を見ると……。

 

「待たせたな!」

「スネーク!」

 ダンボールを投げると同時に、麻酔銃を持った男が現れた。

 そう、先ほど麻酔銃を撃ったのは、伝説の傭兵、スネークなのだ。

「散らばった人達を探しに行ったのだが、まさかこんな事になるとはな……。

 ああ、もう、こいつは無力化してあるから」

「戦闘は終わった、ってか?」

 マリオの言葉に頷くスネーク。

「……スネーク、彼をどうすればいいのだ?」

「持ち上げられるか?」

「うむ」

 オリマーは紫ピクミンを何匹か引っこ抜いてガノンドロフを持ち上げる。

「ここにいると危険だから、安全な場所に運べ」

「安全な場所なら知ってるぜ。スネーク、そこまでの護衛を頼めるか?」

「傭兵は決して裏切らない、引き受けよう」

 

 スネークのおかげで、マリオ達は無事にガノンドロフをラストホープまで運び出した。

「それで、後は彼をどこに運べばいい」

「ついてこい」

 マリオはオリマーをアスティマがいる場所まで案内した。

「アスティマ、ちょっとこいつの様子を見てくれ」

「分かりました」

 マリオはアスティマにガノンドロフを預けた後、リンク達のところに歩いていった。

「さっきの金髪の女性は誰なんだ?」

「彼女の名はアスティマ、このラストホープを治めている人だ」

「つまり、ラストホープのリーダーなんだな」

「まぁ、そうなるな。リンク、カービィ、ただいま」

 話をしているうちに、マリオとピカチュウはリンク達と合流した。

 どうやら、こどもリンクとトゥーンリンクは完治したようだ。

「おー、二人とも元気になったか」

「うん、リンクお兄ちゃんとカービィのおかげでボク達はもう元気いっぱい!」

「どんなもんだい!」

 ドクターをコピーしたカービィが、

 こどもリンクとトゥーンリンクの前に立ってえっへんと胸を張る。

「俺も手伝った、って事は忘れるなよ?」

「うん」

「じゃあ、アスティマの報告が来るまで俺達はしばらく待っていよう」

「そうだな」

 

―終わりましたよ。

 しばらくして、マリオの頭の中にアスティマの声が聞こえてきた。

 マリオ、リンク、スネークはすぐにアスティマのところへ行く。

「ガノンはどうなった!?」

「私がなんとか、ハオスの術を解除しましたのでもう大丈夫だと思います。

 しばらくすれば、起き上がるかと……ふぅ」

 ガノンドロフを元に戻すために力を使ったアスティマは、ぺたんと膝をついた。

 その数分後、むくりとガノンドロフが起き上がる。

「ん……ここはどこだ? 俺は一体、何を……」

「覚えていないのか?」

 どうやら、ガノンドロフはマリオ達と戦った事は覚えていないようだ。

 そこでピカチュウが彼に事情を説明する。

 

「まさか、この俺が奴に操られるとはな」

 自分のプライドをハオスに汚され、ガノンドロフは不機嫌そうな様子だった。

「それよりも、お前はあの戦いの事は覚えていなかったようだが、

 それ以前の事は覚えていないか?」

「覚えているぞ」

 相変わらず、ガノンドロフは傲慢な態度だった。

 それに対しリンクは眉間に皺を寄せるが、スネークは「まあ待て」と言い、

 ガノンドロフの話を聞く事にした。

 

 数日前の事だった。

『む……ここは、どこだ? 確か、次の次の次の試合に出る予定だったが……』

 気が付くと、ガノンドロフは何もない場所に飛ばされていた。

 ガノンドロフは空中スタジアムで行われる試合の準備をしていた最中だった。

『……? 誰か、人の声がするぞ……?』

 しばらくして、遠くから声が聞こえてきた。

 もしかしたら、他の人もこの世界に来ているのかもしれないと踏んだ

 ガノンドロフはそちらの方へ走っていった。

 すると、ガノンドロフは青い髪の女性と出会った。

『誰だ、貴様は』

『名前は、人に聞かれる前に自分から名乗るのが普通なんだよ?』

『……俺は、ガノンだ』

 ガノンドロフが女性に名乗ると、女性はくすりと微笑んで自己紹介した。

『へぇ、ガノンっていうのか。いい名前だねぇ。ボクはハオスだよ』

 ハオスと名乗った女性は、怪しい人物なのは間違いないと思い、

 ガノンドロフは彼女を警戒していた。

『ハオス。何故、俺は今、この世界にいるんだ。まさか、貴様が元凶なのか?』

『さあ?』

 単刀直入に言うガノンドロフを、ハオスは軽くあしらった。

 ガノンドロフはますます警戒心を強める。

『ふん、ならばもう貴様に用はない』

『待って』

『まだ何か言う気か』

 ガノンドロフは立ち去ろうとしたが、ハオスは制止をかける。

『ちょっと、キミに協力してほしい事があってね』

『ふざけるな、俺は誰とも協力する気は無い』

『まったく、釣れない奴だね。たとえ、キミにとって有利な事であっても?』

『……』

『ふふ、もうボクからは逃れられないよ』

 

「ここから先は全く覚えていない。まさか、あんな事が起きていたとはな」

 あのガノンドロフを洗脳する事ができたのだから、改めてハオスの力をマリオ達は思い知った。

 まだ、自分達は受けていないので何とも言えないのだが……。

「それで、ガノンはこれからどうするんだ?」

「お前達に協力する気はないが、あの女に従う事もしない。

 しばらくはここにいるが、俺の好きにさせてもらうぞ」

 リンクの言葉に、ガノンドロフはそう答えた。

 つまり、ガノンドロフとは一時休戦という事になるのだ。

「じゃあ、俺達も自分の好きにしていいんだな?」

「ああ……」

「なら、俺は引き続き、各地にいる人を探そう」

「おい、一人だけで大丈夫なのか?」

「伊達に傭兵をしていない身だ、安心しろ。では」

 そう言って、スネークはラストホープを去っていった。

 

「こうして仲間も順調に集まってきているんだし」

「しばらく、僕達は休んでていいかな?」




ハオスの恐ろしさ、分かったでしょうか?
次回は他社キャラのターンです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話 交差する領域で

他社組のターンです。
タイトルは某ゲームを元にしています。


 スネークは、単身でこの世界に散っていった仲間を探しに行った。

 敵に見つからないように進みつつ、

 もし敵に見つかった場合も迫撃砲で反撃を受けずに攻撃する。

 この世界は身を隠せるような場所がほとんどないため、

 隠れるのはほとんどダンボール頼りになる。

 といっても、こんな場所にダンボールがあればほとんどの人が不自然すぎて気付くだろうが、

 何故か魔物には気付かれなかった。

「戦いに慣れているあいつらなら、弱い奴程度なら軽くあしらえるだろう。

 だが、連戦が続いては体力が持たない、その前に見つけなければならない」

 襲い掛かってきたゾンビをスネークは手榴弾で撃退し、ゾンビ犬は麻酔銃で無力化する。

 相手に合わせて武器を使い分ける傭兵らしい器用さが出ていた。

 

 その頃、ロックマンとパックマンは、巨大蜘蛛や蛆の塊と戦っていた。

「それっ!」

「やあっ!」

 ロックマンが蛆の塊にロックバスターを放ち、パックマンがゴーストを召喚して攻撃する。

「うわぁ!」

 蜘蛛の糸がロックマンの足に絡まって動けなくなるが、何とか引きちぎり体勢を整え直す。

 次にロックマンはフレイムマンの特殊武装、フレイムブラストで虫達を焼き払った。

「そぉれ!」

 パックマンが体当たりで巨大蜘蛛を攻撃した後、

 続けてロックマンのロックバスターが直撃し巨大蜘蛛は弾け飛んだ。

「残るは、あの蜘蛛だけだね!」

「ボクがとどめを刺すから、パックマンは足止めを頼むよ!」

「OK!」

 ロックマンがチャージをしている間に、

 パックマンは巨大蜘蛛に向かってフルーツを投げ、巨大蜘蛛を足止めした。

「いくぞ! チャージショット!!」

 そしてパワーが溜まった後、ロックマンのバスターから巨大なエネルギー弾が飛んだ。

 それが巨大蜘蛛に命中すると大爆発を起こし、大爆発が治まると巨大蜘蛛は跡形もなく消滅した。

 

「ふぅ、これで敵は全部倒したかな?」

「早くみんなと合流しなきゃ……」

 

 一方、スネークは仲間がどこにいるのかを探していた。

 目印が少ない以上探すのは難しいが、それでもスネークは根気よく探した。

「ん? あれは……?」

 そして、4分30秒後、スネークは人型の影と丸い形の影を見つけた。

「ロックマンに、パックマンじゃないか」

 スネークが見つけたのは、同じく異世界からやって来た、ロックマンとパックマンだった。

「わーい、スネークだー!」

「よかったー!」

 ロックマンとパックマンはすぐにスネークの胸元に飛び込んだ。

「なっ、いきなり何をする」

「だって、ボク達だけだと不安だったから……」

「スネークみたいな人がいれば、安心するんだよ」

 ロックマンとパックマンは、人間年齢に換算するとまだ子供だ。

 そんな二人がこんな場所にいれば、一晩で精神がやられてしまうだろう。

 だから、スネークのような大人に出会えたのが嬉しかったのだ。

「ちょうどいい、俺は仲間を探していたところだ」

「えっ、本当?」

「ああ。……ここは、怖いか?」

「うん、ちょっとだけ。でも、仲間と一緒なら、大丈夫かな?」

「安心しろ、俺が守ってやる。信じる事が、生き残る事への近道だ」

 スネークの頼もしい姿に、ロックマンとパックマンは安心するのだった。

 

「はっ!」

「ロックバスター!」

「パックアタック!」

 スネークがロケットランチャーで広範囲をまとめて攻撃し、

 ロックマンとパックマンが敵にとどめを刺していく。

 全員、遠距離攻撃ができるため、反撃を受けずに敵を倒していた。

 特に、スネークとロックマンは同じ兵器を使う者としてとても息が合っていた。

「凄いねぇ、スネーク! 爆発物や銃器を巧みに扱えるなんて」

「俺が得意なのは戦闘ではないがな……。ロックマンも色んな武装を上手く使い分けているな」

「えへへ、ありがとう」

「ボクもキミ達に負けないくらい、た~っくさん活躍しちゃうからね!」

 パックマンもまた、ロックマンやスネークを見て頑張る事にした。

 

 こうして、スネーク、ロックマン、

 パックマンがあと少しでラストホープに辿り着こうとした時だった。

―ブゥン

「うわっ!?」

 突然、三人の目の前に、ゴーレムが三体現れた。

 赤い鎧を着た女戦士のゴーレムは盾を、青い鎧を着た女戦士のゴーレムは剣を、

 緑の鎧を着た女戦士のゴーレムは槍を持っていた。

 ゴーレムの目は鋭く、三人に対し極めて敵対的な姿勢を取っていた。

「これって、ワイリーナンバーズのような、そうでもないような……!?

 でも、なんだか生気が感じられないな」

 そう言ってロックマンはロックバスターを構える。

「恐らくはあいつの差し金だと思うが……」

「何にしろ、倒さなきゃこの先には進めないみたい、ってところかな?

 悪いけど、この戦いはボク達が勝つからね!」

 スネークも銃を構え、パックマンも彼の後に続いて戦闘態勢を取る。

 異世界からの三戦士と、女戦士型ゴーレムとの戦いが始まった。




次回はボス戦です。
この三人が揃うと、私は最強だと思っています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26話 待ち受ける試練

ボス戦です。
暗めの話ですが、戦闘は熱くしています。


「……」

「当たらないよ! スパークショック!」

 緑の鎧のゴーレムが槍を持って回転しながら斬りつける。

 ロックマンはそれをかわしながらスパークマンの特殊武装、

 スパークショックで青い鎧のゴーレムを痺れさせる。

 スネークも後方からバズーカでゴーレム達をまとめて攻撃した。

「……」

「うわぁ!」

 赤い鎧のゴーレムが盾をパックマンに叩きつけダメージを与える。

 よろめいたところに、青い鎧のゴーレムが体当たりを繰り出して吹っ飛ばした。

「うぅ……だけど、やられっぱなしのボクじゃないからね! リーフシールド!」

 ロックマンはウッドマンの特殊武装、リーフシールドで周囲に木の葉を出した後、

 それをゴーレムに飛ばした。

 スネークは地雷を設置し、突っ込んでくるゴーレムにそれを踏ませてダメージを与える。

 パックマンは本来の姿に戻った後、赤い鎧のゴーレムに体当たりする。

 赤い鎧のゴーレムは盾から衝撃波を飛ばしてロックマンを切り裂いた。

「あいたたた、ちょっときついね」

「あまり無理はするな」

「うん」

 スネークはロケットランチャーで緑の鎧のゴーレムを攻撃し、

 ロックマンとパックマンは遠距離から飛び道具で狙撃する。

 青い鎧のゴーレムはロックマンに斬りかかろうとしたが、

 先ほどのスパークショックが効いたのか動けなくなった。

 緑の鎧のゴーレムが槍を投げた後、それが分裂してスネーク達に降り注ぐ。

 赤い鎧のゴーレムはパックマンに向かって体当たりを繰り出しダメージを与えた。

「ロックバスター!」

 ロックマンはロックバスターで緑の鎧のゴーレムを撃って防御を崩そうとしたが、

 装甲までは撃ち抜く事はできなかった。

 

「はぁ、はぁ……相手の装甲が硬くてまともなダメージを与えられないよ」

 なかなか相手の防御を崩す事ができず、悔しがるロックマン。

「恐らく、あの鎧は特殊な素材でできているだろう。通常の兵器では破壊する事ができなさそうだ」

「一体、何をすればあれを壊せるんだろう……」

 どうしようかと相手の出方を伺っていた、その時。

 

「ハァッ!」

 どこからか青いものが現れ、三体のゴーレムを攻撃した。

 それがジャンプして元に戻ると、

 そこにいたのは音速で走り抜ける事ができる青いハリネズミ、ソニックだった。

「ソニック!」

「大丈夫か、スネーク、ロックマン、パックマン!」

「ああ、問題ない」

「ボクは大丈夫だよ」

「相手は硬かったけど、ね」

 三人は、スマブラメンバーが助けに来てくれた事に喜んだ。

 ソニックは三体のゴーレムをきっと睨んだ後、丸くなって体当たりを繰り出した。

 ロックマンは青い鎧のゴーレムにクラッシュマンの特殊武装、クラッシュボムをくっつける。

 青い鎧のゴーレムは剣を構えてスネークに突っ込んできたが、

 スネークに剣が命中する直前でクラッシュボムが爆発しゴーレムは怯む。

 スネークはその隙にライフルで青い鎧のゴーレムを撃ち抜いた。

「……」

「おっと!」

 赤い鎧のゴーレムが衝撃波を繰り出すがソニックはそれを軽々とかわし反撃の蹴りを繰り出す。

 緑の鎧のゴーレムは掌に氷を纏わせ、手刀でスネーク達を薙ぎ払った。

「こいつら、息が合いすぎだぜ」

「ボク達も、この魔物に負けないくらいチームワークがばっちりだって事を証明しよう!」

「ああ!」

 ソニックが丸くなって回転した後、ロックマンはビートを呼び出してソニックを掴んだ。

「これなら、相手の攻撃が届かないから」

「反撃を受けずに攻撃できるな!」

 ソニックがそう言うとビートから離れ、勢いよく緑の鎧のゴーレムに体当たりした。

 その隙にスネークはバズーカを構え、ソニックが離れた後に緑の鎧のゴーレムに発射した。

 バズーカが着弾すると爆発が起こって三体のゴーレムを巻き込み、ダメージを与えた。

「よし!」

「……」

 スネークが喜ぶのも束の間、

 青い鎧のゴーレムが回復場所を作って三体のゴーレムの傷を癒した。

「回復されたか!」

「……」

「……」

「うおっ!」

 三体のゴーレムの回復が終わると、

 赤い鎧のゴーレムと緑の鎧のゴーレムがソニックに攻撃をしてきた。

 緑の鎧のゴーレムの攻撃は回避できたが、

 赤い鎧のゴーレムに隙を突かれてダメージを受けてしまう。

「大丈夫、ソニック!?」

「No Problem! これくらいのダメージ、どうって事はないさ。食らいな!」

 ソニックは丸くなって緑の鎧のゴーレムに体当たりを繰り出すが、

 赤い鎧のゴーレムの盾に阻まれる。

「……」

「ちっ!」

「だったらボクに任せて!」

 パックマンは手からビームを飛ばして緑の鎧のゴーレムの動きを止める。

「……」

「今だよ、ロックマン、ソニック!」

「「OK!」」

 パックマンの合図でロックマンとソニックが頷くと、

 ロックマンはバスターにパワーを溜め、ソニックも力を溜める。

「「ブルー・バスター!!」」

 そして最大までパワーが溜まると、二人の青き戦士が必殺の一撃を放った。

 それが緑の鎧のゴーレムに命中すると、ゴーレムは呻き声一つせずに砕け散った。

 

「やったぁ!」

「OK、この調子で行こうぜ!」

「……!」

「……!」

 緑の鎧のゴーレムを倒して喜ぶソニックとロックマン。

 すると、赤い鎧のゴーレムと青い鎧のゴーレムは動揺し、

 四人に突っ込んでいくもスネークのおかげで攻撃は当たらなかった。

 二体のゴーレムは改めて構え直すと、本気の目を見せた。

「いいか、あの二体は仲間の一人が倒された事で本気になっている。

 ソニックとパックマンは前線に出ろ。俺とロックマンは後方から援護する」

「ああ」

「任せて!」

「スネーク、一緒に頑張ろうね!」

 接近戦が得意なソニック、遠距離戦が得意なスネークとロックマン、

 そしてどちらもこなせるパックマン。

 スネークはそれぞれの得意分野を生かすべく三人に号令をかけた。

「ハァッ!」

「それっ!」

 ソニックが青い鎧のゴーレムに接近してパンチとキックを繰り出す。

 ロックマンもソニックを支援するようにロックバスターで攻撃した。

「えいやっ!」

 パックマンは本来の姿に戻って赤い鎧のゴーレムに体当たりし、防御を一瞬だが崩す。

 そこにスネークが投げた手榴弾が命中し、赤い鎧のゴーレムは大ダメージを受けた。

 ロックマンが手榴弾の命中した箇所にチャージショットを放つと、鎧に罅が入った。

「ソニック、今だよ! そこを狙って!」

「おうっ!」

 ソニックが物凄いスピードで罅の入った場所目掛けて体当たりすると、

 ゴーレムが纏っている赤い鎧が砕けた。

「やったぁ、鎧が砕けたよ!」

「……!」

 自分の鉄壁の防御を崩された事に動揺した赤い鎧のゴーレム。

 ならば早めに決着をつけるべき、と大急ぎで青い鎧のゴーレムと共に周囲から力を取り込む。

 すると、力が「震えて」いるのか、周辺で地震が起こった。

「い、一体何が起こるんだ……?」

「I don't know……だが、油断はするなよ」

「もちろんさ!」

 そして地震が治まると赤と青の左右非対称の鎧を纏ったゴーレムが彼らの目の前に立っていた。

 本来は赤・青・緑の三色の鎧となるはずだったが、

 ロックマンとソニックの合体技で緑の鎧のゴーレムが倒されたため、

 鎧は二色で、完全体ではない。

「合体か!」

「Oops……だが、遅すぎたな。俺の敵ではない!」

 そう言ってソニックはゴーレムに体当たりした。

「うわぁぁぁ!」

「ぐぅぅっ!」

 合体ゴーレムはロックマンを剣で斬りつけ、続けて盾から衝撃波をスネークに向けて放った。

「よくもロックマンとスネークを!」

 パックマンはゴーストを呼び出して合体ゴーレムを攻撃する。

 そこにスネークが拳銃を連射して牽制する。

 何度も攻撃を受けたゴーレムの鎧にたくさんの罅が入った。

「今だ、ロックマン!」

「いっけぇーーーー!!」

 そして、ロックマンのチャージショットが合体ゴーレムを貫くと、

 大爆発と共に合体ゴーレムは砕け散った。

 

「やった……!」

「やったね!」

「A piece of cake、楽勝だぜ!」

「任務完了……」

 女戦士のゴーレムとの戦いに勝利した四人は大いに喜んだ。

 すると、スネークの頭の中に女性の声が聞こえてきた。

―聞こえますか?

「ああ、聞こえるぞ、アスティマ」

―次の仲間がいる場所が見つかりました。すぐにラストホープに戻ってきてください。

「分かった」

「? 誰と話をしていたの?」

 独り言を言っているように見えるスネークにキョトンとするロックマン。

 それにスネークは「女と話した」とだけ言った。

 

「んじゃ、そろそろ戻ろうぜ」

「うん!」

「仲間も、順調に戻ってきているな」

 こうして、四人は無事ラストホープに戻る事ができた。




これを書く時、あまりの暗さにモチベーションを保つのが難しかったですが、
それでもpixivで完結できてよかったと思ってます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第27話 謎の建物

スマブラ四天王のターンです。
ドクターとマリオブラザーズの関係は、某小説を参考にしました。
今はもう見られませんけどね……。


 スネーク、ロックマン、パックマン、ソニックは女戦士のゴーレムを倒し、

 無事、ラストホープに帰ってきた。

 もちろん、ソニックが最初に到着したのは言うまでもない。

 

「アスティマ、仲間の居場所が見つかったのか?」

「ええ……ちょっとこっちに来てください」

 四人がアスティマのところに来ると、アスティマは地図を開いていた。

「なんだ、この地図は?」

「私が魔法で作ったものです。力も徐々に戻って来たと感じましたので」

「う~ん、でもただの地図だったら……」

「大丈夫です、ほら」

「おっ、光ったぞ!」

 アスティマが地図のどこかに触れると、その位置が強く光った。

 が、しばらくするとその光は消えてしまった。

「これってどういう事?」

「散らばった仲間がどこにいるかを特定する事ができます」

「結局手探りで探すのかよ」

「まぁ、そういう事になりますね……」

 スネークは、地図のあちこちを触って、どこに仲間がいるのかを探していた。

 すると、地図の右下の方が強く光り、スネークが指を離した後も光は残ったままだった。

「……!」

「もしかして、ここに散った仲間がいるのか?」

「多分、そうかもしれないな」

「よし、とりあえずマリオ達に知らせてくるぞ」

 そう言って、スネークはマリオ達のところに向かい、仲間がどこにいるかを報告した。

「おお、仲間が見つかったか!」

「ああ……場所が分かっただけで、何があるか、誰がいるかは分からないがな」

「それでも情報が得られただけで十分だ」

「じゃあ、早速行こう!」

「まぁ、待て。何が起こるか分からないから、俺達の他にも、もう二人連れていった方がいいな」

「……こんな危険な場所じゃあね。で、誰を連れていくの?」

「それはだな……ちょっと待ってくれ」

 そう言って、マリオは自分達に同行してくれる人を二人呼んだ。

 

「お待たせ」

 マリオが連れてきたのは、ルイージとドクターだった。

「なんだ、マリおじちゃんの身内か~」

「なんだとはなんだ、なんだとは。回復役も入れたかったんだぞ」

「あ~、確かに……」

 マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウは、誰も傷を治す技を持っていない。

 というよりも、スマブラメンバーのほとんどがそれを持っていない。

 なので、回復技を使えるメンバーはそれだけで頼りになるのだ。

「兄さん、一緒に頑張って仲間を探そうね」

「僕は運動苦手だけど……まぁ、とりあえず頑張ってみようかな」

 兄のために張り切るルイージと、自分なりに頑張ろうと思ったドクター。

 対照的だが、マリオへの思いは本物だ。

「水と食糧はちゃんと持ってきているか?」

「うん、十分あるよ」

 必要なものを確認できたところで、マリオはアスティマに挨拶をした。

「じゃあアスティマ、これから仲間を探しに行ってくるぜ」

「ええ、お気をつけて。いってらっしゃい」

 アスティマに見送られながら、マリオ達は仲間を探しにラストホープを出るのだった。

 

「で、その光った場所は一体どこにあるんだろうな」

「とりあえず、目印を探してみようか……あ!」

「何か見つかったか、ピカチュウ?」

「ああ……人の足跡が見つかったぜ」

 ピカチュウは、その足音をじっと見つめていた。

 その足跡は、ピカチュウのそれを一回り小さくしたものと、

 カービィのそれとよく似たものだった。

「これ、誰の足跡だろうな。追ってみようぜ」

「うん」

 マリオ達は、2つの足跡を追っていき、目的の場所を探そうとした。

 周りに敵がいないかを確認しつつ、敵が現れたらそれを避けて進む。

 こうして、六人が足跡を辿りながら歩いていくと、突然、カービィが立ち止まった。

「ど、どうしたんだカービィ?」

「こ、こ、ここに、マキシムトマトが……!」

 そう、カービィの目の前には、大好物のマキシムトマトが置いてあったのだ。

 明らかに怪しいと皆は思ったが、食べ物に目がないカービィが食いつかないわけがなく、

 カービィはそのマキシムトマトに飛んでいった。

「いただきまーす!」

―ドカァァァァァァァァン!

 そしてカービィがマキシムトマトを食べようとすると、突然、マキシムトマトが爆発した。

「……ケホッ」

 幸い、カービィは無事だったが、爆発の衝撃で、周囲の足跡が消えてしまっていた。

「あ~あ、カービィのせいで目印がなくなっちゃったよ」

「ごめ~ん、罠だとは気づかなかったよ」

「……気を取り直して、もう一度探すか」

 

 カービィの失敗をチャラにするべく、マリオ達はより慎重に辺りを探索していった。

 そして4分後、マリオ達はあるものを見つけた。

「なんだこれは」

 それは、荒廃した世界に似つかわしくない、サイケデリックな色合いの建物だった。

「もしかして、ここに仲間がいるのか?」

「多分な、というか絶対いる。違和感ありまくりだからな」

「なんでここにあるのか分からないけど……とりあえず、入って確かめてみようか」

「ああ」

 そう言って、六人はその建物の中に入った。

 

「あれ」

「見た目が変な割に、中身は結構普通じゃないか」

「つまんないの」

 その建物は、外見の割に突飛な色ではなく、カービィは少しだけがっかりした。

「とりあえず、探索を始めようか」

「うん」

 六人が建物の中を探索していると、まず、魚がいる水たまりを発見した。

「これは……?」

「まだ飲めるのか?」

 マリオが水たまりに手を付けると、その水たまりは跡形もなく消えた。

「あれ? もしかして、幻か?」

「そうみたいだね」

「まぁいいか、先に進むぞ」

 マリオを先頭にして、六人は奥へ進んでいった。

 すると、飢えた目をした複数の男女が目の前に立っていた。

「これも幻かな? 先に進まなくていいかも」

ウガアアアアアアアア!

「うわぁっ!」

 カービィが素通りしようとすると、突然、男がカービィに襲い掛かってきた。

「これ、幻じゃないの!?」

「そうみたいだな……みんな、迎え撃つぜ!」

「う、うん!」

 リンクの号令で、六人は荒れ狂う男と荒れ狂う女を迎え撃った。

 

「えいやぁっ!」

 カービィがハンマーを振り回して男女を薙ぎ払う。

「はっ!」

「かみなり!」

 続けてマリオが炎を纏った掌底で荒れ狂う女を攻撃し、

 ピカチュウがかみなりでまとめて男女を攻撃する。

 ルイージがぽこぽこパンチで荒れ狂う女を足止めしている間に、

 ドクターは彼女に心臓マッサージを放ち、戦闘不能にした。

「1つ手順を間違えば、医療技術も死に繋がるのさ」

「怖いなぁ」

「要するに、心のない力はただの暴力なんだぜ!」

 そう言って、リンクは荒れ狂う男を斬りつける。

アアアアアアア!

 荒れ狂う女はマリオを連続で引っ掻いた。

 荒れ狂う男は暴れ回って周りを攻撃するが、

 マリオのファイア掌底が効いたのか熱でダメージを受けた。

 すると、荒れ狂う女が爪から液体を飛ばしてきた。

 カービィがそれを吸い込んで飲み込むと、ポイズンをコピーした。

「いくぞ~! べたべたポイズン!」

 ポイズンカービィは地面に毒をばら撒いた。

 マリオ達はそれを踏ませるように荒れ狂う男と荒れ狂う女を誘導した。

 荒れ狂う男と荒れ狂う女が毒を踏むと、それが体に回って苦しみ出した。

「よしっ! 10まんボルト!」

「いくよ、ファイアボール!」

 ピカチュウが毒で苦しんでいる荒れ狂う男を10まんボルトで痺れさせ、

 さらにルイージがファイアボールを投げつける。

「とどめだ! どりゃああああああっ!!

 そして、マリオは懐からハンマーを取り出し、荒れ狂う男と荒れ狂う女を押し潰した。

 荒れ狂う男と荒れ狂う女の体力はそこそこ残っていたが、

 先ほどの毒の影響もあってハンマーの一撃で戦闘不能になったのだ。

「マリオ君、大丈夫かい?」

「あ、ああ」

 ドクターがカプセルを調合し、体力が減っているマリオに飲ませて体力を回復した。

キィィイイイイイイイ!

「こんな女とは結婚したくないな、っと!」

 荒れ狂う女が金切り声を音波にして飛ばしたが、ドクターはスーパーシーツでそれを跳ね返す。

「女ってのは時に怖くなるんだよね」

「そうだな」

(この場にピーチがいなくてよかったぜ……)

(もしいたら間違いなく殺されるな……)

「後ちょっとだから、僕も頑張るよ! えいっ!」

 カービィはポイズンの能力を捨てた後、能力星を荒れ狂う女にぶつける。

 荒れ狂う女は吹き飛ばされて倒れたが、まだ戦闘不能にはなっておらず床を這いずっていた。

「うぅ……よこせ、よこせ……!」

「悪いな、眠れよ」

 しかし、ピカチュウがでんきショックを放った事で女はあっさりと戦闘不能になった。

 すると、女の体からぽろっと何かが落ちた。

 ピカチュウがそれを持ってみると、それは小さな鍵だった。

「鍵……? どこで使うんだろう」

「とりあえず持っておこう」

 そう言って、ドクターはポケットの中に鍵をしまった。

 

 荒れ狂う男と荒れ狂う女を倒した一行は、先に進むために歩いていった。

「しかしこの建物、どう見ても自然にあるものじゃないよな」

「うん、何しろ建物はほとんどないからね……。あるとしても瓦礫とかの残骸くらいだよ」

「誰かが作っていたとしたら、その誰かを叩けばいいんじゃないか?」

「……;」

 しばらく歩いていくと、目の前に扉が見えてきた。

「おっ」

「開けてみようかな……あれ?」

 ドクターが扉を開けようとすると、鍵がかかっていて開かなかった。

「どうすればいいんだろう……」

「ねぇ、ドクター」

「何だい?」

「さっき手に入れた鍵を使えばいいんじゃないかな」

「ちょっとやってみよう」

 そう言ってドクターが鍵穴に先ほどの鍵を嵌めて回すと、

 ガチャリという音と共に鍵が開く音がした。

 同時に、鍵が砕け散って消えてしまった。

「あれま」

「なんか、俺の世界でもあった気がするな。ま、気を取り直して入ろうぜ」

「そうだね……って、うわぁ!?」

 マリオ達が部屋に入った次の瞬間、三匹の巨大蜘蛛と青色の蜘蛛が襲い掛かってきた。

「今度は蜘蛛かよ!」

「三匹は雑魚だが……あの魔物、見た事ねぇな」

「とりあえず、まずはあの雑魚からやっつけるぜ!」

 マリオは巨大蜘蛛にファイアボールを放ち、そこにリンクの斬撃が入り巨大蜘蛛は倒された。

 カービィはピカチュウが放った電撃を吸い込んで飲み込み、スパークカービィになった後、

 強烈な電撃を放って魔物の群れを攻撃した。

「えい! えい! えい!」

「はっ!」

 ルイージは青色の蜘蛛をぽこぽこパンチで連続攻撃し、

 ドクターが巨大蜘蛛をカプセルで攻撃する。

 青色の蜘蛛と巨大蜘蛛は糸を吐いたが、カービィがカッターで全て切り裂いた。

「相手は速いし、嫌らしい攻撃をしてくるね」

「なら、まずは相手の動きを封じたらどうだ?」

「動きを封じるといったら、これだな」

 マリオとルイージはアイスボールを放ったが、蜘蛛達にかわされる。

「ダメか?」

「でんじは!」

 しかし、かわした方向にはピカチュウがいて、

 ピカチュウは広範囲にでんじはを放ち蜘蛛達を麻痺させた。

「動きは鈍らせたぜ、今ならいけるはずだ」

「サンキュ、ピカチュウ!」

「それ!」

 マリオとルイージは動きが鈍った蜘蛛達をアイスボールで凍らせた。

「今だ、カービィ!」

「うん! いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 鬼殺し、火炎ハンマァァァァァァァァァ!!

 そして、カービィの鬼殺し火炎ハンマーで、凍った蜘蛛達は跡形もなく砕け散った。

 

 六人は魔物と戦いながら、建物の中を歩いていった。

「それにしても、この建物は誰が作ったんだろうね」

「多分、こういうのはハオスが作ってるだろうな」

 一行はこの建物の事について話していた。

 奇妙な外観と質素な内部……そのギャップに、リンクは疑問を抱かずにはいられなかった。

「ねえ兄さん、ハオスってどんな人なの?」

「簡単に言ったら、人を操る力を持ってる悪い女だ」

「なんか怖いなぁ、もし僕が操られて兄さんに危害を加えたら……」

「大丈夫だって、俺達がすぐに元に戻してやるよ」

「うん、そうだよね!」

 ルイージは洗脳に対する恐怖を抱いていたが、

 兄の言葉に元気づけられたようだ……言葉は、震えていたが。

「なんだ、やっぱり怖いじゃないか」

「あ、あははは……; やっぱりバレた?」

「俺達はマリオブラザーズだから、そんな事はすぐにバレるぜ。さぁみんな、先へ進むぞ!」

「「「「「おーっ!」」」」」

 そして、マリオ達は建物の奥へ進むのだった。




次回は「アイツ」が登場します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第28話 遺伝子覚醒

ミュウツー戦です。
コイツはヴィランとは言い切れないんですよねー。


 謎の建物の奥へ進んでいくマリオ、リンク、カービィ、ピカチュウ、ルイージ、ドクター。

 途中で魔物と遭遇しながらも、彼らは軽くあしらっていく。

「おい、食糧の方は大丈夫かよ」

「ちょっと、減ってきちゃっているね」

 この建物はかなり広かったためか、

 持ってきた水や食糧は突入してからの3分の1まで減ってしまっていた。

「食糧が尽きたら事実上のゲームオーバー。その前に、仲間を見つけて脱出しなくちゃね」

「ああ……」

 生命線に気を配りつつ、マリオ達は建物の中を進んでいった。

 

 そして5分後、一際大きなドアの前に辿り着いた。

「ここが、一番奥のようだな」

「ここに仲間がいるのかな……でも、慎重に、慎重に……!」

 ルイージは震えながらドアノブに手をかける。

 しかし、すぐにドアノブから手を離してしまう。

「ルイージ?」

「や、やっぱり怖いや……」

「どうしたんだよ、ここまで来てまた逃げるのか?」

「いや! 僕は逃げないよ! 助けを求めてる仲間が、今もこの世界に散らばってるんだから!」

 マリオの言葉に、ルイージは勇気を振り絞ってドアノブにもう一度手をかけた。

 そして、ルイージがドアを押すと、鈍い音と共に、ドアは開いた。

 

 六人が部屋の中に入って真っ先に見たものは……。

「プリン! ピチュー!」

 スマブラメンバーのプリンとピチューが、石化されて檻の中に閉じ込められていた。

 二匹が捕らえられている檻の前に立っていたのは、

 薄紫色の身体、アメジスト色の瞳、長い尾を持つ、明らかに人間には見えない生物だった。

 いでんしポケモン、ミュウツーである。

「お前は……ミュウツー……! よくも、俺の弟をこんな目に遭わせやがったな……!」

 ピカチュウがミュウツーを見て歯ぎしりする。

 大切な弟のピチューを捕らえたミュウツーに怒りを露わにしたのだ。

 だが、ミュウツーは冷静な態度を崩さない。

「この二匹は私が預かった。返してほしければ私と戦い、倒すがいい」

「一応聞いておくが、この建物はハオスが作ったのか?」

「この建物は幻だ」

 ピカチュウの言葉に対し、ミュウツーは首を横に振った。

 どうやら、この建物はミュウツーが超能力で作った幻影らしい。

 だが、幻影でもまるで本物のようだったため、ミュウツーの超能力の強さが伺えた。

「私を倒せばこの建物は消え、この二匹は助かる。……さぁ、来るがいい!」

「「いくぜ!」」

「負けないからね!」

「さて、いきますか」

「僕だって……みんなに後れは取らないよ!」

「いくぞ、ミュウツー!!」

 ミュウツーとの戦闘が始まった。

 

「とおっ!」

「でやっ!」

 マリオとリンクがミュウツーに接近して拳や剣で攻撃する。

 ドクターも後方からカプセルを投げて攻撃した。

「まさかミュウツーが俺達に敵対するとは思っていなかったぜ」

「私は元からお前達の味方ではない」

 ピカチュウの電撃や尻尾はたきを、ミュウツーは超能力で受け流していた。

「だったらハオスって奴に協力してるんだろうなぁ!? 10まんボルト!」

「ふんっ!」

 ピカチュウの10まんボルトと、ミュウツーのサイコキネシスがぶつかり合い、衝撃波が起きた。

 その衝撃波で五人は吹き飛ばされそうになるが何とか踏みとどまる。

「ミュウツー、ハオスに操られてるなら、僕が正気に戻してあげる!」

 そう言ってカービィはミュウツーにハンマーを振り下ろした。

「プリンとピチューを助けなきゃ……絶対に!」

 ルイージも隙を突いてミュウツーをねこパンチで攻撃した。

「ぬぅん!」

「うわぁぁぁ!」

 しかし、ミュウツーも負けじとサイコキネシスで辺りを吹っ飛ばした。

「私を倒したければ本気で来るがいい」

「当然だ、手加減無しだぜ!」

 リンクはフックショットでミュウツーを引き寄せた後、二段斬りを繰り出した。

 マリオもファイアボールを放ってミュウツーを牽制した。

「はっ!」

「ぐぉっ!」

 ミュウツーはリンクに向かってシャドーボールを放った。

 ゆらゆらとした軌道だったため読めず、リンクは盾で防ぐ事ができなかった。

「でやぁっ!」

 マリオは高くジャンプした後、ハンマーを振り下ろしてミュウツーを叩き潰した。

「その様子だと、操られているようには見えないな」

「それがどうした」

「だが、お前があいつらを石にした時点で、お前がハオスに操られている事は確定したぜ」

「……」

「だったら俺が取る道は1つ! 10まんボルト!」

「ふんっ」

 ピカチュウの言葉にも動じず、ミュウツーはねんりきで電撃を跳ね返す。

「ちっ……」

「説得程度で私を止められると思うな」

「「ダブル・アイスボール!」」

 その時、マリオとルイージのアイスボールが飛んできてミュウツーに命中し、

 ミュウツーの下半身が凍り付いた。

「何!?」

「今だよ、カービィ!」

「鬼殺し……火炎ハンマァァァァァァァァァ!!

 そして、カービィがハンマーに炎を纏わせると、勢いよくミュウツーに向かって振り上げた。

 ミュウツーはその強烈な威力に耐え切れず、壁に吹っ飛ばされ叩きつけられた。

 

「ぐ……っ」

「さあ、大人しくピチューとプリンを元に戻せ!」

 ピカチュウはミュウツーの胸元に飛び込み叫んだ。

 しかし、ミュウツーはまだ余裕な様子だった。

「ピカチュウ……あの技を忘れているぞ……」

「何?」

「じこさいせい!」

「何っ!?」

 ミュウツーが精神を集中させると、負っていた傷がみるみるうちに癒えていく。

 自分の傷を癒す技、じこさいせいだ。

「言っただろう? 本気で来るがいい、と」

「くそ! もう、全力を出すしかないようだな!

 おいみんな、こいつに対する優しさはいらねぇ! とにかく、倒す事に専念するんだ!」

「分かったぜ!」

 マリオはハンマーを取り出し、連続でミュウツーを殴りつけた。

「超能力には超能力で対抗するよ!」

 カービィはミュウツーのねんりきを吸い込み、エスパーをコピーした。

「サイコキネシス!」

「よげんしゃのみきわめ!」

 ミュウツーはサイコキネシスでカービィを浮かそうとしたが、

 カービィはそれをテレポートで回避し強烈な衝撃波をミュウツーに叩きつける。

 さらにマリオとルイージのファイアボール、ドクターのカプセルが命中し、

 ミュウツーが怯んだところにリンクの斬撃が入った。

「悪いのはお前じゃなくてハオスなのは分かってる。

 ……でも、それで躊躇ってたら、仲間は救えないよな」

「ああ……これもこの世界の摂理だ。弱き者は淘汰され、強き者のみが生き残る」

「でも、俺達は諦めないぜ! 絶対に、この世界を救って、元の世界に戻るんだ!!

 せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

 そしてリンクの強烈な一撃がミュウツーを捉えた。

「……無駄だ」

 ……かと思われたが、ミュウツーが超能力でリンクの剣を止め、彼を投げ飛ばした。

「うぁぁぁぁっ!」

「リンク!」

「……っと!」

 リンクは壁に当たる直前で体勢を整え直し、もう一度ミュウツーに突っ込んで斬りかかった。

「ぐぅっ!」

 今度は命中し、ミュウツーは大きくよろめいた。

「まさか、この私を追い詰めるとはな。……ならば、私の切り札を見せてやろう。

 行くぞ! サイコブレイク!!」

 ミュウツーの周囲から、闇の力が放たれた。

 今までとは比べ物にならないほどの威力の激しい波動が、マリオ達を襲う。

 マリオ達は全員、シールドを張ってサイコブレイクを防ごうとしたが、

 あまりの威力にシールドに罅が入る。

「もう、ダメだ……!」

ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 ピカチュウの叫び声と同時に、電気の塊と化したピカチュウがミュウツーに体当たりした。

 そう、ピカチュウがボルテッカーを使ったのだ。

 さらに、彼の「皆を助けたい」という思いが、ボルテッカーの威力を最大まで強めたのだ。

うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 ピカチュウの体当たりがミュウツーに命中すると、眩しい閃光と共に大爆発が起こった。

 

「……私の……負けだ」

 ボロボロになったミュウツーは、ようやく負けを認めた。

 すると、プリンとピチューが光り出し、二匹が入っていた檻は粉々に砕け散った。

 それと同時に、建物も一瞬にして消滅し、マリオ達はいつの間にか何もない場所に立っていた。

 

「ぷりっ!?」

「ぴちゅ!?」

「プリン! ピチュー!」

 ようやく仲間を助け出した六人は、真っ先に二匹の元へ飛び込んでいった。

 ピカチュウは落ちていく弟のピチューをぎゅっと抱きかかえる。

「怖くなかったか? 大丈夫だったか?」

「うぅ……だ、だいじょぶでちゅ……ぴかにいちゃんもだいじょぶだったでちゅ……?」

「ああ、苦戦したが何とかやっつけたぜ……」

「ぴかにいちゃん……ありがとうでちゅ……。ぴちゅ、これからもずっといっしょでちゅ……」

 

「うんうん、二匹が再会できてよかったね~」

「よかったな」

 ピカチュウとピチューの仲睦まじい様子を、マリオとルイージは微笑ましく見ていた。

 

「……ようやく解放されたか」

 しばらくして、ミュウツーがゆっくり起き上がる。

「解放された? どういう事だ? ミュウツー、事情を話してくれないか」

「ああ」

 ミュウツーは、ここに飛ばされてからの事情を話した。

 

「突然、未知の世界に来てしまった私は、この世界から脱出する方法を模索していた。

 だが、何の手がかりもなく、ただ時間だけが過ぎていった。

 そんな時、私は青い髪の女と出会った。

 何か知っているかと彼女に聞いたら、突然、彼女の目が光り、私の意識が一瞬飛んだ」

「まさか、お前まであいつに洗脳されたのか」

 やはり、ミュウツーもハオスに操られてしまったのか、と思うマリオ。

「お前の言った通り、私は彼女の術で操られた。

 だが、意識ははっきりしていて、自分が何をしていたかも分かっていた。

 それでも、自分を止められなかったのだ。

 そして、それを止めてくれたのがお前達だった……というわけだ」

 要するに、意識はあるが体が勝手に動いている状態だったらしい。

 流石はミュウツー、精神力である程度対抗できた。

「それじゃ、仲間も見つかったし、そろそろラストホープに戻ろうぜ」

「む……ラストホープ、だと?」

「あ~、ミュウツーには説明してなかったな」

 マリオはミュウツーにラストホープについて説明すると、彼は納得したかのように頷いた。

「なるほど。そこに行ってほしいのか」

「ああ、でも結構遠いぜ?」

「心配はするな、皆、私を中心に手を掴め」

「? なんでしゅか?」

「……テレポート!」

 ミュウツーがそう叫ぶと、一行の姿は一瞬にして消えた。

 その消えた先を、女性がじっと見つめていた事を知らずに。




正直、コイツは扱いが難しかったです。
次回は意外な人物を救いに行きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第29話 実は戦えるんです

戦えなさそうで戦える、そんな奴らのターンです。
パルテナは「優しさとお茶目さを兼ね備えている」感じを目指しました。


―シュン

「わわっとと!」

 マリオ達が転移した先は、ラストホープだった。

 ミュウツーは、テレポートを使って一瞬でラストホープに戻ったのだ。

「あら! 皆さん、無事だったのですね」

「ああ、この通り仲間は助けたぜ」

「プリンでしゅ~!」

「ピチューでちゅ~!」

 プリンとピチューがとてとてとアスティマに駆け寄る。

「あらあら、こんな小さな生き物まで、飛ばしてしまいましたね」

「? アスティマはポケモンを知らないのか?」

「……あ、はい。申し訳ありませんが……」

「謝る必要はないぜ」

 そう言ってピカチュウは笑みを浮かべる。

「……考えてみれば、私って結構自分勝手ですよね。

 勝手にあなた達を呼んで、世界を救えと頼んで……」

 ふふっと微笑むアスティマ。

 だが、彼女の微笑みはどこか憂いを秘めていた。

「世界を救う役割をあなた達に押し付けてしまった事は申し訳ないと思っています。

 でも、私が生まれた世界を、滅ぼすわけにはいかないので……」

「あら、貴女のやってる事は別に間違ってはいないわよ?」

 そんなアスティマのところにやって来たパルテナは彼女に優しく声をかけた。

「どうしてですか?」

「だって、そんな重いものを一人で抱えるよりも、みんなで持っていった方がいいでしょ?

 荷物は軽い方がいいしね」

 確かにパルテナの言う通り、「世界を救う」というアスティマの役割は非常に重い。

 だから、パルテナはアスティマが抱えているものを少しでも軽くするために助言したのだ。

「まぁ、確かにパルテナさまの言う通り、

 こんなに重い荷物を私だけが抱えれば、私が潰れてしまいますよね。

 ……ありがとうございます、パルテナさま」

「うふふ、どういたしまして」

 アスティマの表情が明るくなったのを見たパルテナは微笑んだ。

 

「それでアスティマ、次の仲間はどこにいるか分かるかしら?」

「ちょっと待ってください。精神を集中させます」

 アスティマが杖を構えて目を閉じると、彼女の頭の中に声が聞こえてきた。

 

―なんだ、この敵は。

―あまり戦いに慣れていない私達では苦戦しますね。

―リュンヌ、私から離れないでくださいね。

―もちろんですよ、ソレイユ。

―でも、魔物はかなり多いですよ……?

―なら、オレとルキナが前に出る。

―あら、お姫様が前に出て大丈夫なのですか?

―心配しないでください、剣術は得意ですから。

 

 ソレイユとリュンヌとは、この世界でエクササイズをしているラサンテ夫婦の事だ。

 この二人は元々一般人だったが、マスターハンドの力により戦えるようになっている。

 そして残りの二人が呼び方からルキナと、声質から青年のものだと判明した。

「ソレイユさま、リュンヌさま、ルキナさまの声が聞こえてきました。

 後一人は分かりませんが……」

「情報ありがとう、アスティマ。マリオ、彼らの捜索は私に任せてよろしいかしら?」

「いいぜ」

「僕達もう疲れちゃったしね~」

 スマブラ四天王とプリン、ピチュー、ミュウツーは仲間の捜索をパルテナに任せ、

 ラストホープで休む事にした。

「さて、ピット。私と一緒に行きましょうか」

「はい!」

 パルテナはピットを連れて、アスティマのところに戻った。

「アスティマ、彼らがどこにいるか分かるかしら?」

「あっ、ええと、魔法地図ですね?」

 そう言ってアスティマは魔法で地図を作り、ピットとパルテナの前に広げてみせた。

「これは?」

「仲間達がどこにいるのかが分かる地図です。

 ただ、まだ力は戻っていないので、どこにいるのかは手探りで」

「へぇ~、つまり宝探しじゃなくて仲間探しですか。面白そうですね、僕にやらせてください」

「いいですよ」

 ピットはアスティマの地図を見ながら、どこに仲間がいるのかを探していた。

「う~ん、この辺りにはいなさそうですね。だとしたら、こっちでしょうか?

 あれ、違いましたか。こっちかな? そっちかな?」

 仲間探しに悪戦苦闘していたピットだったが、5分後、ピットが触った場所が光り出した。

「あっ! 光りました! もしかして、ここに仲間がいるのでは?」

「そのようみたいですね」

「え~と、場所は……8時の方向か。水と食糧はまず、持っていこうか。

 アスティマ、水と食糧をお願いします」

「はい」

 ピットはアスティマから水と食糧を貰った。

「それじゃあパルテナ様、一緒に行きましょうか」

「ちょっと待ちなさい、ピット。私と二人だけでラストホープを出るのは危険よ。

 誰か一人でもいいから他の人を連れていきましょう」

「う~ん……誰にしましょうか……あ!」

 ピットは同行者を探すために走っていった。

 しばらくして、ピットはゼルダとシークを連れて戻ってきた。

「あら、ゼルダにシークじゃないですか」

「だって、ゼルダとシークが分かれてから一緒に戦ったところを僕は見た事がありませんから」

 ゼルダとシークは元は一つの存在である。

 今は二つに分かれていて別々に行動する事が多いが、

 ピットはどうせなら一緒に戦わせたいと二人を呼んだのだ。

「シークさん……こうして一緒に戦うのは初めてですが、一緒に頑張って仲間を探しましょう」

「シークでいい、その代わり僕も君をゼルダと呼ばせてもらうからな。

 さぁ、共に戦おう、ゼルダ」

「はい、シーク!」

 ゼルダとシークはがしいっと握手した。

 

「二人とも意気投合してるわね」

「やっぱり、元々一つだったからでしょうか?」

 

「よし、みんな行きますよ!」

「はい!!」

 そう言って、ピット、パルテナ、ゼルダ、シークはソレイユ達を探しに行くのだった。

 その頃、ソレイユ達は……。

 

「とおっ!」

「マーベラスコンビネーション!」

 大量に襲い掛かってきた魔物に立ち向かっていた。

 リトルマックとルキナが、

 戦闘慣れしていないソレイユとリュンヌを守りながら魔物を攻撃している。

「お二人とも、若いのにやりますね」

「お前達はまだ誰かと戦った事がほぼないだろ、だからオレとルキナが先頭で戦うんだ」

 リトルマックとルキナは17歳、ソレイユとリュンヌは24歳。

 自分達より若いのに前に出て戦えるなんて……とソレイユとリュンヌは感心する。

「そぉれ!」

「ヘディングですよ!」

「助かる」

「私は飛び道具を持ってませんからね」

 だが、リトルマックもルキナも飛び道具を持たないため、

 遠くにいる魔物はソレイユとリュンヌがヘディングで攻撃した。

 こうして魔物が次々と倒れていくと、向こうからドスン、ドスンと足音が聞こえてきた。

「ん? あの音は?」

 リトルマックがその音を警戒していると、それは姿を現した。

 音の正体は、ミュータントだった。

「この魔物は一体……!?」

 戸惑う四人に対し、ミュータントが太い腕を振り下ろそうとした、その時。

 

「せいっ!」

 突如、光の矢がミュータント目掛けて飛んできた。

「大丈夫ですか?」

「ピット! それにパルテナまで!」

「うふふ、私が戦っているところを見た事はないかしら?」

「乱闘以外ではありませんね……」

 パルテナは亜空軍異変ではピットのサポートをした程度で直接活躍はしなかった。

 また、「別の世界」で起きた異変においても自らが異変解決に赴く事はないという。

 しかし、今は「この世界」とは異なる世界に飛ばされているため、

 パルテナも戦う事を決めたようだ。

「私も、伊達に光の女神と呼ばれていない事をこの魔物に思い知らせてあげますよ。

 さぁピット、こいつを倒しましょう!」

「はい! パルテナ様!」

「シーク……二つになっても私達は一つですよね?」

「ああ……行くぞ、ゼルダ!」

 そう言って、ピット、パルテナ、ゼルダ、シークはミュータントに戦いを挑んだ。

 

「オート照準!」

「ファントムアタック!」

 パルテナがオート照準で牽制を仕掛けた後、

 ゼルダがファントムを召喚してミュータントを斬りつける。

 ピットは豪腕ダッシュアッパーで突っ込んでいきミュータントを吹っ飛ばした。

 さらにシークは飛び上がって蹴りを繰り出す。

「よし」

「きゃぁっ!」

 ミュータントは腕を振り上げてゼルダを潰した。

 幸い、ゼルダは直前にシールドで防御していたので、

 受けたダメージは大きくはなかったものの大きくよろめいてしまう。

「爆炎!」

 パルテナはミュータントを爆炎で攻撃し、さらにピットがパルテナの神弓で追撃する。

「跳魚!」

 そしてシークが宙返りしながらかかと落としを放つと、ミュータントは爆散した。

 

「どうでしたか?」

 パルテナが微笑みながらリトルマック達の方へ振り返る。

「パルテナさんが戦えるなんて意外ですね」

「まぁ、この世界では私も戦わなければいけませんからね。

 何しろ、普段使っているテレパシーがここでは使えないようですし」

 ただ、奇跡を行使する力は残っているようだったので、

 彼女はそれを使って戦う事を決めたようだ。

「でも、そういうあなた達だって、人の事は言えないでしょう?」

「あっ」

「確かにそうでしたね」

 ソレイユとリュンヌもまた、

 本来は非戦闘員だがマスターハンドの力で戦えるようになったスマブラメンバーである。

 参戦が決まった時も、一番驚いていたのはソレイユとリュンヌ自身だったという。

「もし、また敵が来たなら、一緒に戦いましょうね」

「ええ!」

 ソレイユ、リュンヌ、パルテナは「元非戦闘メンバー」という事で意気投合していた。

 

「あの~、皆さん、私の事を忘れてませんか?」

「「「「「あ」」」」」

 しばらく忘れられていたルキナが、ぽつりと一言吐いたのは、それから3分後だった。




パルテナ様は原作で戦えなかった分、小説では大暴れします。
次回で30話、アイツが登場します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30話 遭遇! ハオス

敵キャラ登場回。
ですが、ターニングポイント回でもあります。


 何はともあれ、無事マック、ソレイユ、リュンヌ、

 ルキナを見つけ出したピット達は、ラストホープに帰ろうとしていた。

「もっと時間がかかるかと思いましたが、意外にあっさりと見つかりましたね」

 普通、仲間を見つけた時は何らかの大きな壁が立ち塞がると思っていたピットだったが、

 戦った魔物がミュータントしかいなかったのでやや調子が狂っていた。

「水と食糧を無駄に消費するよりはマシでしょう?」

「まぁ、そうなんですけどね……」

 八人は、ラストホープへ行く道を歩いていた。

「ゴホッ、ゴホッ」

「ゴホッ、ゴホッ」

 ソレイユとリュンヌは、歩いていくうちに咳き込んだ。

 何があったの、とパルテナが聞くと、二人は「空気が悪い」と言った。

 パルテナが精神を集中させると、彼女は確かに淀んだ空気を感じた。

 ラストホープにいると実感が沸かないが、ここが既に滅びた世界である事を思い知った。

「やはり、ここはもう……」

「待ちなさい、まだ希望が潰えたわけじゃないのよ?

 私達は『ラストホープ』に帰ろうとしてるの」

「ラストホープ……ああ、最後の希望という意味ですね」

 滅びた世界に唯一残った希望、ラストホープ。

 ここが失われれば、もうこの世界を救う事はできなくなってしまうのだ。

「今の私達が縋れる希望はこれしかないの。だから、みんなで守っていきましょう」

「はい」

 そう言ってパルテナ達は歩いていき、ラストホープに辿り着こうとした時だった。

 

「! 水と食糧がない!?」

 なんと、水と食糧が手元からなくなってしまった。

「い、一体誰がこんな事をしたんです!?」

 ルキナが上空を見ると、そこには藍色の髪と光のない金色の瞳の女性、ハオスが浮いていた。

 彼女の手には、水と食糧が握られていた。

「それを今すぐ返しなさい!」

 ルキナがハオスに向かって叫ぶが、彼女は表情一つ変えずに地上に降りる。

「……誰だ、お前は」

 シークは警戒しながら戦闘態勢を取った。

「ボクの名はハオス。早速だけど、単刀直入に言う。

 キミ達、そんな意味のない事をしていいのかい?」

「どういう事だ」

「もう、この世界は滅びてしまったから、救う意味なんてないんじゃないのかい?」

「なっ? そんなわけ……!」

 ハオスの言葉にシークは動揺し、慌てて否定しようとしたが次の言葉に打ち消される。

「あのアスティマという女も信用しない方がいいよ。

 世界を救うとか言いながら、本当は世界に敵対しているんだよ?

 そんな女に味方するキミ達は、どうかしてるよ」

「……」

「さあ、分かったならボクに味方してくれよ」

 アスティマは確かに、世界を救ってほしいとスマブラメンバーに頼んだ。

 だが、ハオスは嘘を言っているようには見えなかった。

 シークは彼女の言葉を信じればいいか、

 それとも今まで通りアスティマを信じればいいか迷っていた、その時だった。

 

「……私達が黙っているのをいい事に、好き放題言ってくれたわね……!」

 パルテナは微笑みながらブラックオーラ全開でハオスに杖を向けた。

「ちょっ!」

「パルテナ様!?」

「貴女の要求には決して従いませんわ。

 もし世界滅亡をやりたいのならば、一人でやってくださいませ」

 バッサリとハオスの要求を拒否するパルテナ。

 彼女にとって、ハオスは全く信用できない存在のようだ。

 ハオスは不機嫌そうな表情になり、腕を組みながらこう言った。

 

「そんなに従いたくないのならば、力ずくでも従ってもらうよ……!」

 すると、ハオスの周囲から強烈な音波が放たれた。

「ぐっ……!」

「うあぁぁ、ぁぁぁぁ……!」

 八人は両手で頭を抱えながら蹲る。

 この音波を聞いていると、自分の意識が消えてしまいそうな感じがした。

「ふふふ……抵抗するだけ、無駄だと思うよ?」

「誰が、お前に従うものか……!」

「残念、じゃあこうなるんだ!!」

 ハオスがそう叫ぶと、彼女が与える圧力が強まってきた。

 八人は、頭が割れるかもしれないほどの激しい頭痛に苛まれてきた。

 このままではもう、限界に達してしまう。

 

「……仲間、達、は、渡、しま、せん……」

「! ゼルダ、何をするつもりだ!」

 その時、ゼルダは頭を押さえながらゆっくりとハオスの前に歩み寄った。

 ゼルダがこの後、何をするのか理解したシークは、急いで彼女を止めようとした。

「やめ、て、くだ、さい……」

 しかし、ゼルダは止めようとしたシークを制止し、魔法でハオスと自分の周囲に結界を張った。

「シーク、達は、逃げ、て、くだ、さい……」

「ゼルダ……! だが……!」

「早く、行ってください……! このままでは、いずれ、あなた、達、も……」

 ゼルダは必死な様子でシーク達にそう言った。

 七人は彼女の意思を汲み取り、ハオスの洗脳術の影響を受けない方向へ走っていった。

 

(皆様……申し訳ありません……。私の意思はもうじき彼女に支配されるでしょう。

 でも、シーク、ソレイユさん、リュンヌさん、ルキナさん、ピットさん、パルテナさん、

 マックさん……今はあなた達だけでも、生き残ってください!)

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「皆さん、無事だったのです……ね?」

 シークは息を切らしながらよろよろと歩き、アスティマの胸に倒れる。

「……何かありましたか?」

「ゼルダが……ゼルダが……」

「落ち着いてください、何があったのですか?」

 ゼルダは、シーク達を守るために自らハオスの洗脳術を受けた。

 それを言うのはシークにとっては非常に辛いため、シークはあえて何も言わなかった。

「……おかしいですね、ゼルダさまがいませんよ? 一体、彼女はどうしたのです?

 それに、水と食糧がありませんよ?」

「……すまない、シーク、言っていいか?」

「……」

 このまま隠し通してもいけないと思ったのか、マックはシークの代わりに話す事にした。

 シークの沈黙は、肯定の意味だ。

「ゼルダはオレ達を守るためにハオスの術を自ら受け止めた。水と食糧は……ハオスに奪われた」

「マック……」

 皆で一緒にラストホープに帰ってくるはずだった。

 しかし、ハオスが現れたために、それが叶う事はなかった。

 大切な仲間が一人……いない。

「うっ……うっ……うわぁぁぁぁぁぁぁ!

 普段は冷静なシークだが、この時ばかりは泣いた。

 ゼルダが大切な仲間をハオスから守ったために、しかしその代償としてゼルダを失ったために。

 

「……もう大丈夫ですか?」

 ひとしきり泣いた後、シークは涙を拭う。

「あ、ああ……。こんな無様な反応を見せてしまって、すまない……」

「仲間を失って耐えられないのはスマブラメンバーとしては当然の反応だと思いますが」

「……」

 しばらくして、シークは真剣な表情をアスティマに向けた。

「僕達は、奪われた水と食糧のためにも、散ったゼルダのためにも、

 あのハオスという女を倒さなければならない」

「シークさま……」

「だからアスティマ、まずはこの情報をマリオ達に伝えてくるがいいか?」

「……はい、構いませんが……」

 シークがアスティマに今日の出来事を伝えると、

 アスティマはスマブラ四天王にテレパシーを送った。

 スマブラ四天王はすぐにアスティマのところに行った。

「そうか、ゼルダはここにはいないのか……」

「畜生……畜生っ……! 仲間は見つかったのに、こんな事ってありなのかよ……!」

「リンク……」

 ゼルダと最も関係の深いリンクが歯ぎしりする。

 それはマリオ達も分かっているので、彼らはリンクを止めず責めもしない。

「でも、ゼルダは俺達を守ってくれたんだよな。

 ここで立ち止まっていたら、ゼルダの意思を無駄にしちまう。

 だから、俺達はゼルダのためにも戦う!」

 いつまでも引きずっていてはゼルダのためにならないと思ったリンクは、

 この悲劇を振り切って次の事を考えた。

「アスティマ、次の仲間がどこにいるのか、テレパシーで探してくれないか」

「はいっ」

 アスティマは杖を構え、精神を集中させた。

 

―ここは、広いな。

―ああ、広すぎるまでに広い。

―抜け出せるまでには時間がかかりそうだゾイ。

―しかも、その間に魔物が来てしまえば……。

―俺達は非常に不利な状況になるだろう。

―何とか脱出できる方法を探すゾイ!

 

「今、ぞい、って誰か言わなかった?」

 カービィがアスティマのテレパシーの中から聞こえてきた「ゾイ」という言葉に反応する。

 彼が反応したという事は、話しているのは……。

「デデデだな」

「うん、でもあと二人が分からないなぁ」

 声質から男性である事は分かっているのだが、それが誰なのかははっきりしていなかった。

「こりゃ、実際に行ってみないと誰が見つかるかは分からねぇな……」

「水と食糧も盗られちまったし、ちゃっちゃと行ってちゃっちゃと帰ってくるのが一番だ」

「っというわけでアスティマ、仲間を探しに行ってくるぜ」

「お気をつけて……」

 

 ハオスにゼルダと貴重な資源を奪われ、大きな打撃を受けてしまったスマブラメンバー。

 しかし、ここで諦めるわけにはいかない。

 大切なものを奪還し、そして世界を救うまで、スマブラメンバーは生き残り続けるのだ。

 

「待ってろよ、必ず救ってみせるからな……!」




ゼルダの離脱は、某アニメを参考にしました。
ここからスマブラメンバーを反撃させたいと思います。

次回はあのキャラとあのキャラが登場します。
っていうかこういう予告ばかりですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第31話 拳や槌を振るう者

ファルコン、リュウ、デデデのターンです。
こいつらを絡ませた理由は、特にありません(ぇ


 この世界では今、三人の人物が荒野を歩いていた。

 F-ZEROレーサー兼バウンティハンターのキャプテン・ファルコン、

 真の強さを求める格闘家のリュウ、プププランドの(自称)大王のデデデだ。

「一体どこまで続くんだ……この荒野は」

「それはワシも知らんゾイ。いきなり飛ばされたのだから知らないのも当然だゾイ!」

 かっかと腹を立てるデデデ。

 彼は統治者としてはそこそこだが、短気なところもあるのだ。

 まぁ、そこがデデデらしいといえばらしいのだが。

「この世界で最も重要なのは、己の心だ。

 既に闇に堕ちた世界で、生き残るためには心を強く保たなければならない」

 リュウが、この世界の空気を感じ取りながら静かに言う。

 彼は波動という力を持っているためか、ルカリオには及ばないものの感覚が鋭敏だ。

 これにより目的地が分かる……そんな淡い期待を抱きながら、

 ファルコンとデデデはリュウについていった。

 

「むっ、囲まれたか!」

 が、ついていった先はゾンビの大群がいる場所だった。

 三人はすぐに退却しようとするが、ゾンビの群れに阻まれてしまう。

「ここは、こいつらを倒すしかないみたいゾイ。さぁ、やっつけるんだゾイ!」

 デデデがハンマーを構え、ファルコンとリュウが戦闘態勢を取ると、

 ゾンビ達は三人に襲い掛かってきた。

 

「ファルコンキック!」

「竜巻旋風脚!」

 ファルコンとリュウの蹴りがゾンビ達を一網打尽にする。

 デデデも、ハンマーを振り下ろしてゾンビを押し潰した。

「邪魔するなゾイ!」

 ゾンビが襲ってくるがデデデはゴルドーを投げてゾンビを吹っ飛ばし、

 そこにリュウの波動拳が命中しゾンビは弾け飛んだ。

「うっ、気持ち悪いゾイ……。だが、ワシらはそれで屈しないゾイ!」

「そうだ、俺達は必ず生きて、帰るんだ」

「だから、こんなゾンビくらいに負けるわけにはいかない!」

「昇龍拳!」

 リュウの昇龍拳がゾンビを捉えて上に吹っ飛ばすと、

 ファルコンが飛び蹴りでゾンビを地面に叩き落とす。

 ゾンビが地面に落ちる直前にデデデがハンマーを野球のバットのようにスイングし、

 ゾンビは空の彼方に飛んでいった。

 だが、ゾンビは次から次へと現れ、数が減る気配はない。

「ええい、どこから湧き出てくるんだゾイ!」

「倒しても倒しても出てくるぞ」

「これではきりがない!」

 このままでは、ゾンビの群れが全滅する前にこちら側が疲労で倒れてしまう。

 どうすればいいかと困っていたその時、デデデが二人の前に立ち、大きく口を開けた。

「な、何をするつもりだ?」

「こうすればいいゾイ! ずぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 すると、デデデがゾンビの群れを全て吸い込み、星型弾に変えて吐き出した。

 これにより、ゾンビ達は全滅したのだった。

 

「……まさかお前、敵を吸い込めるのか?」

「当たり前だゾイ! ワシを誰だと思っているんだゾイ? ワシはデデデ大王なんだゾイ!」

 えっへんと胸を張るデデデ。

 実は彼はとある風使いと契約しており、吸い込み、吐き出し、ホバリングができる。

 そのため、いざという時はこれらを使って敵と戦う事ができるのだ。

「は、ははは……そうだな。まぁ、こいつらを全滅できてよかったな」

「ちょっと大変だったがな」

「ともかく、これで危機は脱出できた。急いで安全な場所に向かうぞ!」

 そう言って、リュウ、ファルコン、デデデは目的地を探して走り出した。

 そんな彼らを追いかけるのは、ブロブやゾンビ犬などの異形の生物だ。

「こんな化け物まで、この世界にいるのか」

「ワシらの世界にはいなかったゾイ。こいつらも闇のせいでこうなったんだゾイ?」

「ああ……恐らくは、な」

「こんな世界など地獄でしかないゾイ! 脱出手段を探して元の世界に帰りたいゾイ!」

「そうは言っても、それが見つかっていない以上、ここで過ごしていくしかないようだ」

 リュウの言う通り、今はこの世界から脱出する事ができない。

 異世界を自由に行き来できる者もおらず、もしいたとしても力を封じられて使えないだろう。

 だが、こんな世界に安全地帯はあるのか、とファルコンは不満を漏らした。

「あると信じなければ、俺達の心は壊れてしまう。ここは、そんな過酷な世界だ」

「……まったく、ワシらをここに飛ばしたのはどこのどいつだゾイ」

「デデデ?」

「ファルコン! リュウ!

 安全地帯を見つけたら、まずは勝手にここに飛ばした奴にガツンと言ってやるゾイ!」

 デデデはそう言って先に行こうとするが、ファルコンがデデデの服の袖を掴む。

「何するんだゾイ!」

「お前の気持ちは分かるが、先走ったら大変な事になるぞ」

「むぅ、分かったゾイ」

 デデデは落ち着きを取り戻し、リュウ、ファルコンと共にこの世界の安全地帯を探した。

 

 10分後。

「……まだ見つからないぞ。一体、安全地帯はどこにあるんだ」

「目印がないから、見つけるのに時間がかかっているだけだ」

「こんなだだっ広い世界に目印なんてあるわけないゾイ。もうワシ、腹が減ったゾイ」

 何度も歩いているのか、デデデは空腹で苛々してきており、顔色もかなり悪くなってきていた。

 これに流石の二人も危機感を感じたのか、目印を探しているが見つかるはずもなく、

 ただ時間だけが過ぎていった。

 そして5分後、ついにデデデは大きく息を吸い込み……。

 

腹減ったゾーーーーーーーーーーーーイ!!!

 その場にいた人(デデデ以外)が気絶しそうなほどの大声を上げた。

 

「! 今、声が聞こえなかったか!?」

 仲間を探していたスマブラ四天王の一匹、ピカチュウが耳をぴんと立てた。

「ピカチュウ……どこから声が聞こえてきたんだ?」

「八時の方向だ! 皆、走れ!」

「うん!」

 ピカチュウを先頭に、マリオ、リンク、カービィは八時の方向へ走り出した。

 

「ふぅ、すっきりしたゾイ……って、あれ?」

 デデデが辺りを見渡すと、ファルコンとリュウが倒れていた。

「……い、今のは……」

「……とてつもなく、五月蠅かった……」

「あ~、それはすまなかったゾイ。でも、本当に腹が減ったんだゾイ」

「だが、今は食べ物がないんだ」

「だからデデデ、今は我慢してくれ」

 ゆっくりと起き上がった後にファルコンとリュウが言う。

「我慢できないゾイ……誰か食べ物を持ってきてほしいゾイ!」

「それなら、俺達が今から持ってきてやるぜ」

「何?」

 デデデが声のした方を向くと、そこにいたのはマリオ、リンク、カービィ、ピカチュウだった。

「カービィ!」

「デデデ~! 会いたかったよ~!」

 カービィはぎゅっとデデデに抱きついた。

「カ、カービィ……どうしてワシらがここにいたか分かったゾイ?」

「それはね~、アス姉から聞いたからなんだ!」

「アス姉? 誰だゾイ?」

 首を傾げるデデデに、マリオはアスティマについて彼に説明した。

「なるほど、そいつがいれば食べ物だって出せるゾイね」

「それはよかった、ちょうど俺達も安全地帯も探していたところだったんだ」

「この闇の世界にあるのか?」

 ファルコンとリュウが自分達の目的をマリオ達に言うと、マリオは頷いて彼らに背を向けた。

「詳しくは、俺達についていけば分かるぜ」

「本当か?」

「大丈夫だ、問題ない」

 どこか懐かしいセリフを言いながら、

 マリオ達はファルコン、リュウ、デデデをラストホープに案内した。

 

「着いたぜ、ここがラストホープだ」

「おおっ!」

 三人の目の前に広がっていたのは、温かい光に無邪気にはしゃぐスマブラメンバー、

 そして杖を持った女性の姿だった。

 滅びた世界に似合わない、平和そのものの風景だった。

腹減ったゾ~~~~イ!

 デデデはすぐさま、箱がたくさん積まれている場所へ向かった。

「食べ物はどこだゾイ、食べ物はどこだゾイ、食べ物はどこにあるんだゾイ!」

「ちょっとちょっと!」

 デデデが食べ物を探していると、コンコンと誰かが頭を叩いていた。

 彼が音のした方を振り向くと、そこにはアスティマが立っていた。

「なんだゾイ」

「それは、皆さんに集めてもらった水と食糧です。

 食べ物は今から用意しますから、慌てないでください」

 アスティマが杖を振ると、デデデの掌に食べ物が現れた。

「おおお! これはまさしく食べ物だゾイ!!」

 デデデは食べ物を見るや否や、すぐにむしゃむしゃと食べ始めた。

 さっきまで思っていた「ガツンと何か言いたい」という気持ちは吹っ飛んでいったようだ。

「あははは……カービィさまもそこにいるペンギンもとっても食いしん坊なんですね」

「アス姉! ペンギンじゃなくて、デデデっていうちゃんとした名前があるんだよ!」

「あら……そうでしたか。それで? リンクさま、次に何か用でもありますか?」

「う~ん……」

 リンクが辺りをきょろきょろと見渡すと、

 もう散らばっているメンバーは少なくなっている事が分かった。

「仲間も十分集まってきてるし、次は仲間探しを休んで物資調達に行こうぜ」

「仲間を探してばかりではへとへとになるからな」

「そうですね。生命線が尽きてしまえばゲームオーバーになりますからね。

 いいですよ、誰が行きますか?」

「僕が行こう」

 最初に立候補したのは、シークだった。

「はい、シークさまですね。次は誰が行きます?」

「俺だ」

「僕も!」

「ネス君が行くならボクも一緒に行こうかな」

 次に手を挙げたのは、ゲッコウガ、ネス、リュカだった。

「これで全員でしょうかね」

「あらアスティマ、私も忘れてないわよね?」

「わっ、ピーチさま!」

 アスティマが彼らを行かせようとした時、彼女の後ろからピーチが声をかけてきた。

 どうやら、彼女もシーク達に同行するようだ。

「最近、マリオが頑張ってばかりだから、私も頑張ろうかなって思っちゃって♪」

「ピーチ、外は危険だけど大丈夫?」

「あら、私結構腕には自信があるのよ? お姫様は守られるだけじゃないんだから」

 そう言って、ピーチはフライパンを構えた。

 その割には攫われ率が異様に高いだろ……とマリオが心の中で突っ込んだ。

「だから、安心してね♪」

「う、うん……」

 ピーチがウィンクすると、シーク、ゲッコウガ、ネス、リュカはこくっと頷いた。

 

「では、行ってくる」

「気を付けろよ~!」

「は~い! ちゃんとお土産持ってくるから待っててね~!」

 シーク、ゲッコウガ、ネス、リュカ、ピーチは、物資を探しにラストホープを出ていった。

「さて、私は少し休……ぐっ!」

 アスティマが休もうとしたその時、彼女が突然、頭を抱えて膝をついた。

「は……う……うぅ……あ……っ! み……んな、シーク、さま……!

 そっち、じゃ、ありま、せん……!」

「どうした、アスティマ!?」

「うぅ……シークさま達が行った先に、強い闇の力があるんです……!

 救援に向かえますか……?」

「いや、シーク達を信じて俺達は待つ。それよりもお前の方が心配だ、無理しないでくれ」

「う……うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 アスティマの苦しみが、何を表しているのか。

 それはまだ、誰も分かっていない。




次回は打って変わってシリアスです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第32話 悲しき再会

シークチームのターン。
こういう展開は、必ず書いておかなければと思いました。


 シーク、ゲッコウガ、ネス、リュカ、ピーチは、ラストホープに物資を運ぶため冒険に出た。

「できる事なら、ハオスに奪われた物資も取り戻したいところだ」

 以前、シーク達はハオスに物資を奪われてしまった事がある。

 それを取り戻したいとシークが思っているのは、それと共に大切なゼルダを失ったためだ。

「君が身を挺して仲間を守った、その行動と気持ちは分かった。

 それでも……僕は、君を取り戻したい」

「シーク……」

「よく分かんないけど、いなくなった仲間を連れ戻したいんだね?」

「ああ」

 リュカの言葉に、シークは静かに頷いた。

「じゃあ、僕達も手伝ってあげるよ」

「仲間を失う事は誰でも辛い事だからな」

 この目的は、一人で達成する事は魔物や環境のせいもあって極めて難しい。

 ネス達はシークの背負う荷物を軽くするために、シークの力になろうとしている。

「みんな、僕のために?」

「そうよ、シークはゼルダが大切なんでしょ? その気持ちは同じ姫の私も分かるわ」

「ピーチ……」

「大丈夫よ、信じていれば願いは絶対に叶うわ! だから、一人で落ち込んだりしないで。ね?」

 今のピーチの表情と声は、落ち込むシークを元気づけるのに十分だった。

「……ありがとう」

 彼女に元気づけられたシークは、覆面で隠れて見えないが、少し微笑んでいた。

「さ、物資を探すわよ!」

「ああ!」

 スマブラメンバーが飛ばされたこの世界は荒廃していて、まともな物資の数は非常に少ない。

 この状況を打開するためには、未知の領域「アンノウンリージョン」に行かなければならない。

 アンノウンリージョンはまだ調査が進んでおらず、貴重な物資が残っている可能性が高く、

 ここを調査する事が生き残る確率を上げられる。

 だが、当然未調査故に何が起こるか分からず、さらに強力な魔物などと遭遇する可能性も高く、

 慎重に調査する必要があるのだ。

 

「水は、どこにあるのだ……」

 みずタイプを持つゲッコウガが、アンノウンリージョンのどこに水があるかを探し出す。

 時間はかかるが、彼なら他のメンバーよりも早めに見つけられるだろう。

(見つかるのか?)

 シークが見守っていると、

「見つけたぞ!」

「ホント!?」

 ゲッコウガはまだ飲めそうな水を発見した。

 量は微々たるものだったが、それでも水を発見できたのは大きかった。

「この水は、瓶の中に入れておこう」

 そう言って、ゲッコウガはシークが持ってきた瓶の中に水を入れた。

「よし、幸先の良いスタートだね」

 リュカが喜んでいると、ゾンビ犬が四体現れた。

「グルルルル……」

「わ、ゾンビ犬!?」

「双蛇!」

「かげうち!」

 ネスに襲い掛かるゾンビ犬を、シークは二度蹴り、ゲッコウガはかげうちで攻撃する。

「PKフラッシュ!」

 ネスも、光を放ってゾンビ犬を攻撃した。

「ボクだって! PKファイアー!」

 リュカがネスに続くように、手から炎を放ってゾンビ犬を焼き払う。

 獣は火に弱く、その上ゾンビなので火がよく効き、結果的に大ダメージを与えられた。

「みんな、こんな奴に負けるんじゃないわよ!」

「ああ!」

 

「いたっ!」

「きゃぁぁぁ!」

 ゾンビ犬は一斉に群がり、ピーチ達に噛みついてきた。

 ピーチはあの時のようにドレスが食いちぎられるのを防ぐため、

 巧みに噛みつき攻撃をかわしていった。

 それでも攻撃が来る時は、キノピオを盾にして攻撃を防いだ。

「なんか、キノピオが可哀想……」

「何か言ったかしら? ネス」

「な、な~んにも?」

「ふっ!」

 ゲッコウガがみずしゅりけんを放ってゾンビ犬を撃破する。

「それっ! PKフリーズ!」

「双蛇!」

 リュカがゾンビ犬をPKフリーズで凍らせた後、シークが二度蹴りでゾンビ犬を氷ごと粉砕した。

「たたみがえし」

 ゾンビ犬が襲ってくるが、ゲッコウガは畳を返して攻撃を防ぎ、

 ハイドロポンプでゾンビ犬を一掃する。

 だが、ゾンビ犬は倒れずにシーク達を襲い続ける。

「くっ、しぶといな!」

「不死系の敵はしぶといのが取り柄だからな」

「ったく、あなた達は諦めが悪いのね!」

 ピーチの発言に、この場にいた誰もが「お前が言うな」と思ったが、

 口に出すとボコられるため何も言わなかった。

「これでも……食らいなさい!」

 ピーチはゴルフクラブを取り出し、ゾンビ犬をボールのように飛ばした。

「跳魚!」

 シークは宙に浮いたゾンビ犬に飛び蹴りを食らわせ、大ダメージを与える。

「ネス君、今だよ!」

「うん!」

「「ダブルPKフラッシュ!!」」

 そして、ネスとリュカが激しい光を手から出し、ゾンビ犬に向けて放つと大爆発を起こした。

 その大爆発が治まると、ゾンビ犬は全て跡形もなく消え去っていた。

 

「やったね!」

「うん!」

 ネスとリュカは連携PSIが決まってハイタッチする。

 シーク、ゲッコウガ、ピーチも、いい連携技だったと頷いた。

「じゃ、調査再開ね!」

 こうして、ゾンビ犬を撃破した一行は、アンノウンリージョンの調査を再開した。

 

「これは……食糧か?」

 ゲッコウガが廃墟の中を調査していると、いくつか干し肉を発見した。

 品質は悪かったものの、無いよりはマシだ。

「こっちには毛布があったよ」

「なんか、変なのが出てきた……」

 ネスとリュカは、毛布と、袋に包まれたゼリー状の物体を発見した。

「あら、まだ飲めそうな水みたいね」

 ピーチは、少し濁っているがまだ飲めそうな水を発見した。

「これは……缶詰だ!」

 シークは、コンビーフの缶詰を発見した。

 この世界で缶詰は貴重であるため、大きな発見と言える。

 

 廃墟の調査が終わり、五人は手に入れた物資を見せ合う。

「今日、ここで見つかったのはこれだけか」

「この廃墟で見つかった中ではね」

「初めてにしては、結構見つかったね」

 この世界においては貴重な物資を見つける事ができた五人。

 数は少なかったが、見つかっただけでこの世界で生存する確率が上がった。

「後は、これを持ち帰るだけだな。みんな、なくすんじゃな……!?」

 シークが物資をラストホープに持ち帰ろうとした瞬間、光の矢が物資目掛けて飛んできた。

「サイマグネット!」

 光の矢は物資に命中する直前でネスがサイマグネットで吸収した。

 その光の矢を飛ばした先には、女性が立っていた。

「ゼルダ!」

「えっ、ゼルダ!?」

「本物の!?」

 茶髪に薄紫と白を基調としたドレス……そこにいたのは、間違いなくゼルダだった。

 しかし、彼女は様々な種類の魔物を従えるようにして立っていた。

 ゼルダはこんな醜悪な魔物を使役するとは思えない……そう思ったシークが様子を見ると、

 彼女が何者かに操られている事に気付いた。

「ハオス様にたてつく者には死を与えよう」

「……!」

 ゼルダの口から「ハオス」という言葉が出たため、シークの表情が変わった。

「ゼルダ! 僕の事が分からないのか!?」

「貴様もハオス様に逆らうつもりか? ならば、今すぐここで死ぬがよい!」

「やめろ、ゼルダ!」

 シークは、ゼルダがけしかけてきた魔物を体術や暗器で次々と撃破した。

「ねぇ、シーク……どうして、ゼルダがいきなり僕達を攻撃したの?

 ゼルダはそんな事しないはずなのに……」

「ゼルダは今……ハオスに操られているんだ」

「ええーーーーーっ!?」

 ゼルダの現状を知ったネスは驚き、大声を上げた。

「シーク……どうすれば、ゼルダを正気に戻せると思うの?」

「普通に操られているだけなら、戦って勝てばいいと思うが……術者はハオス、

 そう単純な事が通用するわけがないだろう。

 それでも、僅かな可能性に賭けるしかない。……そうするしか、僕達にできる事はないんだ」

 無駄だと思うが、ゼルダをハオスから解放したい。

 シークはそのために、ゼルダと戦う事にした。

「……シーク、俺達は手伝ってはいけないか?」

「これは僕の戦いだからな。他の人が邪魔をしてはいけない」

「それでも、魔物と戦うくらいならいいよね?」

 ネスの言葉に、ああ、と頷くシーク。

 元は自分と同じだったゼルダは、「自分」自身が解放するべきだと思っているからだ。

「ゲッコウガ、ネス、リュカ、ピーチはゼルダが使役する魔物と戦え。

 操られているゼルダの相手は僕がしよう」

「「「「了解!」」」」

「さあ、死を恐れないのならかかってくるがいい!」

 操られたゼルダと、彼女が使役する魔物、グールとの戦いが始まった。




次回はシークが悲しき戦いを挑みます。
某アニメを元にした展開ですけどね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第33話 シークVSゼルダ

かつての自分同士の戦い。
悲しいですが、これもまた物語の一つなのです。


「みずしゅりけん!」

 ゲッコウガが粘膜から手裏剣を作り出し、グールの群れに乱射して攻撃する。

「ゼルダ……目を覚ましてくれ!」

 シークが細い針を何本もゼルダに投げる。

 ゼルダはそれをネールの愛で全て弾いたが、シークが投げた仕込針は囮だった。

「ぐぅっ!」

 シークの飛び蹴りがゼルダに命中し、ゼルダはよろめいた。

「PKサンダー!」

 リュカがPKサンダーを自分にぶつけ、グールに体当たりをする。

 その威力は強烈で、グールを大きく吹っ飛ばした。

 ゼルダはグールに的確な指示を出し、シーク達を襲わせた。

「死ね!」

「やめるんだ、ゼルダ!」

 ゼルダはシークに精神的なダメージを与えるためにシークに近づき、手に魔力を溜めた。

 シークはそれを何とかかわし、ゼルダに組み付く。

「ゼルダ! 僕の話を聞いてくれないか。こんな戦いをして、いいと思っているのか?」

「……貴様っ……」

「僕の声が聞こえないのか、ゼルダ!?」

「離せっ!」

 ゼルダはネールの愛でシークの組み付きを解き、体勢を整え直した後、ディンの炎を唱える。

 攻撃を受けたシークはよろめき、グールの接近を許してしまう。

「危ない! シールド!」

 グールがシークに噛みついてくるが、ネスがシールドを張ったためダメージは受けなかった。

「このグールを先に片付けなければ、ゼルダをまともに相手にできない」

「でも、凄くタフだよ?」

「うふふ、私に任せて。ヒステリックボム!」

 ピーチは魔力で大量の小型爆弾を作り出し、グールの群れ目掛けて投げ、爆発させた。

 その場にはシークやゲッコウガもいたため、ネスとリュカは危ないと目を瞑ったが、

 味方が巻き込まれる事はなかった。

「これは敵だけを攻撃する魔法の爆弾。あなたも食らいたくなかったら私を怒らせないでね?」

 確かに、爆発の後には全てのグールが瀕死状態になっていた。

 ヒステリックボムの威力を一同は思い知った。

「後は起き上がらないうちに倒してちょうだい!」

「PKフラッシュ!」

「PKファイアー!」

「ハイドロポンプ!」

「跳魚!」

 そして、瀕死のグールに一斉に必殺技が炸裂し、グールはその威力に耐え切れずに全滅した。

 

「ゼルダ、君は僕が救ってみせる!」

 ようやくグールを全員倒し、シークはゼルダに再び組み付くため突っ込んでいく。

 ゼルダを傷つけずに捕らえれば、彼女を助ける事ができる。

 シークはゼルダに組みついて動けなくさせ、取っ組み合いになった。

「何をする!」

「ゼルダ、正気に戻ってくれ!」

 シークがゼルダを説得しようとすると、シークの頭の中に女性の声が聞こえてきた。

 ゼルダを洗脳した張本人、ハオスの声だ。

「無駄な事はやめなよ。彼女はボクのものになったんだよ?」

貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

 シークは珍しく感情的な声を上げた。

 もちろん、ゼルダに怒っているのではなく、ハオスに怒っている。

「シーク、頑張って!」

「この人になんか負けちゃダメだよ!」

 ネスとリュカも、シークを応援して士気を高める。

「ゼルダ! スマブラメンバーである事を、あなたは忘れちゃったの?」

「スマブラメンバーは、一人でも欠けたらスマブラメンバーとは言えないんだ。

 そんな奴になんか、負けるんじゃない……ゼルダ!」

「ち、違う……。私は……ハオス様の……しもべだぁぁぁぁぁぁ!!

 ピーチも、シークと共にゼルダを説得し、彼女をハオスの呪縛から解放しようとした。

 しかし、最後に勝利したのはゼルダだった。

 

「……今回はひとまず退散しよう。

 だが、次に出会った時は、必ず貴様らを仕留める……覚えておけ」

 そう言うと、ゼルダはフロルの風で姿を消した。

 

「……ゼルダ……」

「……」

 シークは、ゼルダがいた方をぽつんと見ていた。

 ピーチ達はシークの気を悪くしないよう、何も言わなかった。

「やはり君は、彼女を選んだのか……。君は、とても自己犠牲心が強かった。

 僕は、そんな君とまた一緒にいたかった。でも、そうはならなかった……」

 はぁ、と溜息をついた後、シークはがっくりとうなだれた。

 そんなシークの肩に手を置いたのはピーチだった。

「シーク、今回の探索は悪い事ばかりじゃなかったわよ。

 ラストホープに持ち運ぶ物資が見つかっただけでも、良い結果が得られたじゃない」

「そう……だな」

 元々、シーク達がアンノウンリージョンに向かった目的は、物資の調達だ。

 だが今もシークは「ゼルダを助けたい」という目的に囚われている。

 そして今回、ゼルダを見つけたはいいが逃がしてしまったため、

 シークは再び落ち込んでしまった。

 それを何とかするためにピーチはシークを励ましたのだ。

「きっと、ゼルダは今でもハオスの呪縛と戦ってるんだと思うわ。

 今日はダメでも次があるのよ! だからシーク、これ以上落ち込まないで、ね?」

「ピーチ……」

「何よ、まだしょ気てるわけ? だったら、このフライパンで……」

「わっ、待て待て! 頼むからそのフライパンはしまってくれ!」

 いつもの調子を取り戻したシークに、一同もまた元気づけられた。

 

「じゃ、この物資はラストホープに運びましょう? アスティマが待ってるわよ」

「ああ!」

 

 こうして、シーク一行は何とか物資をラストホープに運び出す事に成功した。

 ……ゼルダ救出は、失敗に終わったが。

 

「お帰りなさい、ませ……シーク、さま」

 アスティマはまだ調子が悪いようで、杖で支えながら何とか立っている状態だ。

「……アスティマ、どうしたの?」

「向こうにあった闇の力が引いてきましたので、私の調子も戻ってきています、

 が、まだ本調子とは言えません」

 アスティマは杖で身体を支えながら歩いていった。

「うーん、アスティマって闇の力に弱いのかしら? とりあえず、マリオに報告はしなくちゃね」

 そう言って、ピーチは今回の出来事をスマブラ四天王に報告しに行った。

 

「結構、物資は集まったんだな」

「わぁ~、食べ物がいっぱいあるね。ラストホープから出なければ安全だよね!」

「……カービィ、俺達の目的はそれじゃなくて、この世界からの脱出だぞ」

「あっ、そうだった!」

 カービィのボケにマリオが突っ込んだ。

 しかし、未だに脱出する手段が見つからず、ただ時間だけが過ぎていくばかりだった。

 もちろん、時間を無駄にしないように、その間に仲間や物資を見つけたが……。

「でも、どうすれば脱出できるんだろう……」

「こんな時に、あいつらがいたらな……」

「いや、あいつらでもここから脱出できないと思う。

 何というか……元いた世界から切り離されたような感じがするからな」

 元の世界から切り離された、とは一体どういう事なのだろうか。

 確かに、この世界とは異なる魔物が現れ、空は灰色に染まり大地も赤茶けているが……。

「一度、アスティマに話を聞いてみるか」

「そうだね」

 

 この世界は何故、滅びたのか。

 何故、この世界は他の世界と切り離されたのか。

 その答えを知るため、スマブラ四天王は、

 自分達をこの世界に呼んだ張本人・アスティマの元へ行くのだった。




ゼルダが復帰するのはもう少し後です。
次回は、この世界が滅んだ理由が明かされます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第34話 悲劇がもたらした滅亡

この世界が滅んだ理由が、明かされます。
北欧神話のラグナロクをモチーフにしていると思います。


 スマブラ四天王は、この世界が滅びた理由を知るため、自分達を呼んだアスティマの元に来た。

「な、何でしょうか?」

「……なぁ、アスティマ。なんでこの世界が滅びたんだ?

 俺達に世界を救えって言われても、さっぱり分からないぞ」

 マリオは、自分達が今いる世界が滅びたのはどうしてなのかをアスティマに聞いた。

 アスティマはハオスに感付かれないためにしばらく黙ったが、

 リンクは彼女の様子を怪しんでいた。

「おい、アスティマ、なんで黙ってるんだよ。知られたくない事でもあるのか?」

「ハオスが聞いている可能性もありますので、話したくはないんです……」

 アスティマはハオスを恐れるあまり、重要な情報を話したがらないでいた。

 しかし、どうしても情報を聞きたいリンクは、アスティマに掴みかかった。

「何こそこそ隠し事してるんだよ!

 どうやって世界を救うか知りたいのに、何も話さないなんて不親切だぞ!

 せめてヒントくらい出せよ!」

「リ、リン兄、落ち着いて……」

「これが落ち着けるかよ!」

 感情的になるリンクを止めようとするカービィだが効果はなかった。

 すると、アスティマは真剣な表情で杖を構えた。

「……そんなに、この世界の真実を知りたいのですか?」

「……」

 彼女の表情を見たスマブラ四天王は一斉に足が竦み、そして固まった。

 普段のおっとりした表情とは似ても似つかない、ホンキ度“空前絶後!!!”の表情だ。

 リンクは慌ててアスティマから手を放す。

「いいでしょう。まずは、ハオスに聞かれないために結界を張ります」

 アスティマは杖から光を放ち、周りに結界を張って自分達の話が外部に聞こえないようにする。

「……単刀直入に言いましょう。この世界が滅びたきっかけは」

 アスティマが見るのはマリオ。

「マリオさま……あなたなのです」

「なっ……俺が……?」

 

 アスティマの話によるとこうだ。

 マリオ達が今いるこの世界は、実は「争いの世界」の未来世界の1つである。

 いつもと変わらない平穏な日々だったが、

 突然、謎の魔物の大群がこの世界に現れ、各地の戦える者達は総力を挙げて魔物と対峙した。

 魔物の尖兵は大きな犠牲を払いつつも辛うじて撃退できたが、

 魔物の一体が倒れる間際にマリオを殺害した。

 そのショックで双子の弟ルイージは発狂し、

 目の前にいるものを敵味方の区別なく殲滅する狂戦士へと変わり果てた。

 そして残りのスマブラメンバー(一部除く)も、

 マリオを失った悲しみと彼の敵を討つため魔物に全力で戦いを挑む。

 マスターハンドとクレイジーハンドも力を解放し、

 世界法則を超越した全面戦争が勃発したという。

 また、この世界が他の世界から切り離されたのは、

 その戦争の結果、全ての世界から見捨てられたからだとか。

 

「そして、その全面戦争でこの世界は滅びた……か」

「はい……」

 自分がこの世界では死んでいると知り、衝撃を受けたマリオ。

 だが、ここでマリオは1つ疑問を抱く。

「それじゃあ、この世界において、俺以外のスマブラメンバーはどうなったんだ?」

「私が覚えている限りでは……」

 リンク、カービィ、ピカチュウは行方不明。

 サムスは魔物との戦いでファルコンを庇って死に、残されたファルコンは一人で奮闘していた。

 他にも、マリオが知っている人物は行方が分からなくなったという。

「今回、私が話せる事は以上になります。後は、自分達で答えを探してください」

 アスティマは結界を解き、ふぅ、と一息ついた。

「答えを見つければ元の世界に帰してくれるよな?」

「保証はします」

「分かった」

 

 スマブラ四天王は、アスティマから得た情報を整理した。

「つまり、この世界のマリオが殺された後、神々も巻き込んだ戦争で世界が終わったのか」

「いや、まだ完全に終わってないぜ。まだ命の気配は残っているしな」

 とはいえ、この世界に取り残された仲間達はまだまだいる。

 彼らを助ける事がスマブラ四天王の第一の目的だ。

「よし、僕達もラストホープに食べ物を運んでこよう!」

 カービィが探索に行こうとした、その時だった。

―きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 向こうから、アスティマの悲鳴が聞こえてきた。

「その声は、アスティマか!?」

「行こう!」

「ああ!」

 スマブラ四天王は、大急ぎでアスティマのところに向かった。

 

 一方、ラストホープでは、ハオスがアスティマを追い詰めていた。

「キミ、本気でこの世界を救おうと思ってるのかい?

 これは、キミ自身も引き金になった事なんだよ?」

「それが私にできる、唯一の事ですから」

「だけどさ、世界を救う役割は他の人に押し付けて、

 自分はサポートしかしないなんて、そんなのずるいと思わない?」

「ずるくはありません、彼らにしか希望は存在しないと思いましたから!」

 アスティマはハオスを何とか杖で押し返そうとするが、

 ハオスはそれをものともせずにアスティマに近付く。

「来ないでください、ハオス……っ!」

「そんなにボクが嫌いなの?

 ボクを嫌ったら、手っ取り早く世界を救う方法を教えてあげなかったのになぁ」

 どういう事、とアスティマがハオスに聞くと、彼女は微笑みながらこう答えた。

「ボクは時空を超える力で過去に戻る事ができる。

 ボクの力を使えば、この悲劇をなかった事にでき、この世界は本当に救われるよ」

「……」

「さあ、ボクと一緒に過去を変えに行こうよ」

 そう言い、ハオスはアスティマに手を差し伸べた。

「……そうだ。こうすれば、世界は……」

 過去を変え、悲劇を取り消せば、この世界なんて滅びなかったかもしれない。

 アスティマがそんな淡い希望を抱き、ハオスの手を握ろうとした、その時。

 

「やめろ!!」

「……マリオ、さま……!?」

 マリオが、アスティマに向かってそう叫んだ。

 アスティマが思わず振り返ると、そこにはスマブラ四天王がいた。

「どうしてですか? ハオスは……この世界を救おうとしているのですよ……?」

「お前は、本当に過去を変えればこの世界を救えると思っているのか!?

 もしそうしたら、この世界は『存在しなかった』事になるんだぞ!

 仮に世界がそのまま残ったとしても、それはお前が救おうとした世界じゃねぇ!

 また1つ、パラレルワールドが生まれるだけだ!」

「……!!」

 数々の時を渡り歩いてきたリンクのその言葉で、アスティマは気付いた。

 過去に戻って悲劇を取り消しても、何の成果も得られない事を。

「俺達が変えていくのは過去じゃねぇ!」

「これから先にある、未来だ!」

「だからアスティマ、そんな奴の誘惑に乗るんじゃない!」

「アス姉が裏切ったら、僕、僕……!」

 スマブラ四天王が必死でアスティマに呼びかける。

 彼女がもしも自分達を裏切れば、

 この世界を救う事も、元の世界に帰る事もできなくなってしまう。

 アスティマもまた、希望を託した彼らを裏切りたくなかった。

 そして、アスティマは迷いを振り切り、ハオスに杖を向けてこう言った。

「私には、私を信じてくれる仲間達がいる。彼らも、私の願いを叶えるために奮闘している。

 もしも裏切ってしまえば、この世界に残された僅かな希望が消え、

 この世界は完全に滅亡してしまう。それは、私の望んだ事ではありません。

 だから! 私はあなたに従いません! ハオス! 私の目の前から、今すぐ消え失せなさい!

 ディヴァイン・パニッシュメント!!!」

 そして、アスティマの杖が光り出すと、

 そこから真っ直ぐに光が伸び、ハオスに直撃すると破裂した。

 ハオスはバリアを張っていたため大したダメージにはならなかったが、

 それでも彼女に傷を与える事はできた。

「まったく、キミは頑固だねぇ。

 だけど、その選択が取り返しのつかない結果を招かない事もないんだよ……?」

 そう言うと、ハオスの姿は消えた。

 

 ハオスを追い返す事に成功したアスティマは、スマブラ四天王の方を向いて礼を言う。

「皆様のおかげで、私はハオスの誘惑を振り切る事ができました。ありがとうございます」

「いやいや、俺はあいつを許せなかっただけさ。ゼルダやガノンを洗脳したくらいだしな」

「だって、君を襲ったその女の人は、とっても悪い人なんだもん! 僕、悪い人は許さないよ!」

「俺達はお前から希望を貰ったんだ。その希望を捨てるのはもったいないぜ」

「アスティマ、よくあんな奴に惑わされなかったな。その調子で自分の信念を貫いていけよ!」

 リンクとカービィは純粋な正義感から、

 マリオとピカチュウはアスティマを守りたいという気持ちから彼女を助けた。

「……少なくとも、あなた達にとって、私の考えは間違っていなかったようですね」

「あったりまえだよ! だって、ハッピーエンドが一番だもん!」

「よかった……本当によかった……」

 スマブラ四天王の好感度が上がった事でほっとするアスティマ。

「それでは、これからも私を信頼してくれますね?」

「「「「ああ!(うん!)」」」」

 スマブラ四天王は、アスティマに対し、

 彼女と初めて出会った時のように、満面の笑みを浮かべてそう答えた。

「あなた達が世界を救ってくれる事を、私はずっと信じ続けます。

 本当に、ありがとうございました」

「どういたしまして!」

「じゃ、失礼させてもらうぜ」

 アスティマが手を振る中、スマブラ四天王は彼女の下を去っていった。

 

「ハオス……私はあなたを、許しません……! たとえ、残酷な真実が待ち受けようとも……!」




この世界を救うにはどうすればいいのでしょうか?
次回はいつも通り仲間を助けます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第35話 古きもの

レトロ組のターンです。
ロボットがボク少女なのは、あるイラストを見たからです。
ダックハントの性格がちょっと歪んでますが、ご了承ください。


「はぁっ!」

「ウォッチさん、ボクが後方から援護しますよ!」

「オレ達も忘れるなよ!」

「いっくよー!」

 黒い髪の青年と白い髪の女性、そして茶髪の少年と紫の髪の子供が魔物と戦っていた。

 実は、これはウォッチ、ロボットことリィン、ダックとハントが擬人化したものだ。

 元々の世界とは法則が異なっても、この擬人化の秘術は使えるようだ。

「ひゃっ! 溶解液が飛んできました。人間の姿になってよかったですね」

「あれは金属を溶かしますからね」

 ハントがどこかを向いて誰かに何か言うと、突然ブロブ達が一斉に弾け飛んだ。

 これは、ハントが見えないガンマンを呼び出して彼に射撃させてもらったからだ。

「おお、やるじゃないですか」

「へっ、それほどでもねぇよ」

「ダックさん、ハントさん、後ろ!」

 リィンがダックとハントの背後にいたゾンビの頭を拳銃で撃つ。

「倒れました……」

「ゾンビは頭を撃つのが有効らしいですよ」

「よ~し、オレに任せとけ! ダック!」

「うん!」

 ダックとハントが犬と鴨の姿に戻った後、ゾンビの上に登って頭を掴む。

「ばうばう!」

「行きますよ、ウォッチさん!」

「はい!」

「スタンブレイカー!」

「ヘッドショット!」

 ウォッチの棒とリィンの銃弾が、ゾンビの頭部を捉え、正確に貫いた。

 ゾンビは頭から血を噴き出した後、バタバタと倒れていった。

 

「これで全部ですね?」

「はい、私が確認した限りでは。っと!」

 敵が全滅したのを確認したウォッチは、元の平面姿に戻った。

 リィンも辺りを見渡して頷くと、ロボットの姿に戻った。

「ヤハリ、コチラノスガタノホウガオチツキマスネ」

「コノスガタデタタカウコトガオオイデスカラネ。

 デモウォッチサン、ニンゲンノトキデモボウジュツガウマカッタデスヨ」

「リィンサンモカレイナジュウサバキデシタネ~」

「ばうばうっ、ばう~ばう~?」

 仲の良いウォッチとリィンをからかうように鳴くハント。

「ハ、ハントサン、ナニボクタチヲカラカッテイルンデスカ。

 ベツニ、ボクタチハツキアッテナンテ……」

 あたふたするリィンだが、彼女の熱はかなり高まっていた。

 実はウォッチとリィンは、亜空軍異変以降、恋人同士になっている。

 どちらも生物学的には無性別だが、ウォッチは男性精神、リィンは女性精神を持つ。

「ワタシモ、リィンサンノコトハスキデスヨ?」

「ばう!」

「ジョセイヲマモルノハ、ダンセイノヤクメデスカラネ」

「くぅ~ん」

 ハントは今はもう古い考えだろ、と呆れる。

 その後、ウォッチの生まれの古さから「まぁ当然だよな」と嘲笑した。

「イッタイ、ココハドコナンデショウカ?」

 ウォッチとリィンは、きょろきょろと辺りを見渡していた。

 しかし、自分達と死体以外には何もなく、

 大地は毒々しく汚れており空は灰色で太陽が全く見えない。

 この世界は、既に死んでいる事は一目瞭然だった。

「イノチノケハイガ、カンジラレマセンネ」

「ばう?」

「ナニモカモガシンデイル、トイウイミデス。イキモノモ、キカイモ、ソシテシゼンモ」

 リィンはどこか憂いを秘めた瞳で、灰色の空をじっと見つめていた。

 

「マズハ、ココカラデルホウホウヲサガシマショウ」

「ばうばうばう!」

「ワカリマシタ」

 

 ウォッチ、リィン、ダックハントが歩いていると、怪我をしている男性と遭遇した。

「う、うぅ……」

「ドウシマシタカ?」

「ゾンビに襲われたんだ……。応急手当してくれないか……」

「チョットマッテクダサイ」

 そう言ってウォッチは男性の前に立ち、グリーンハウス型傷薬を取り出す。

 それを患部に噴出し、包帯を巻いて応急手当は完了した。

「コレデ、ダイジョウブデスネ。オキヲツケテ」

「ああ、ありがとう」

 男性は二人と一匹と一羽にお礼を言った後、どこかに去っていった。

 

「コウヤッテコマッテイルヒトヲタスケルト、キモチガヨクナリマスネ」

「ばうばう」

「サテ、トリアエズミナサンヲサガシマショウカ。ドコニイルノカハ、ワカリマセンガ……」

 それでも、いつかは見つかるかもしれない。

 その淡い希望を抱きながら、二人と一匹と一羽は仲間を探しに行くのだった。

 

 その頃、ウォッチに助けてもらった男性は……。

「今日は、これだけ物資が見つかったな。早くみんなのところに運ばなければ……」

 自分がこの世界で手に入れた物資を、仲間達に運ぼうとしていた。

 彼もまた、この世界で生きるサバイバーの一人だ。

 戦う力は持っていないものの、「生きる」という意思は強い。

「ここなら安全かな。……うん、敵は見えない。よし、ここで飛び出そう!」

 そう言って、男性が飛び出した瞬間。

 

「な……うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 彼に、大量のグールが襲い掛かってきた。

 

「ウ~ン、ナカマハミツカリマセンネェ……」

「コンナヒロイバショデ、ミツカルホウガメズラシイトオモイマスヨ」

「くぅ~ん……」

 いくら歩いても仲間が見つからない事に、ウォッチ、リィン、ダックハントは嘆いていた。

 死体や死骸は見つかれど、生存者は見つからず。

 二人と一匹と一羽がとぼとぼと歩いていると、

「ばう! ばうばう!」

 突然、ハントが何かの匂いを嗅いで立ち止まった。

「ナニカミツケタンデスカ?」

「ばうっ!」

「コッチニキテホシインデスネ?」

「あうーん!」

 犬は嗅覚が人を遥かに上回る。

 ウォッチとリィンはそれを信じて、ダックとハントについていった。

 

「コ、コレハショクリョウジャナイデスカ!」

「ばう?」

 ダックハントについていった先にあったのは、たくさんの食糧と、毛布だった。

 物資を見つけたハントは胸を張るように鳴く。

「チラバッテイマスガ、チャントマトメレバモンダイハナイデショウ」

 ウォッチはどこかから袋を取り出し、物資を集めてその中に入れた。

「ソレニシテモ、イッタイドウシテコンナバショニショクリョウガオチテイタノデショウカ」

「ワタシニハワカリマセンガ……マ、ラッキーデシタネ!」

あうーーーーーん!

「サアミナサン、ボクニツイテイッテクダサイ!」

 いつの間にリーダーになったんだ、と思いつつ、

 ウォッチとダックハントはリィンを先頭に歩き出すのだった。

 

 その頃、ラストホープでは。

「……」

「……」

 アスティマが、生存者の声を聞くために精神集中をしていた。

 今、彼女は真剣な表情をしていて、誰も話しかけていない。

 

―ワ、ゾンビノタイグンデスヨ!

―ボクガヒトニナリマス!

―ばうばう、ばうばう!

―皆さんはボクが守ります、だから安心して……。

―グリーンハウス!

―ばうーーーーっ!

 

「……男性的な声と女性的な声、そして犬の鳴き声がしました」

「犬……」

 それを聞いて連想するのはダックハント。

 何故かアイスクライマーをライバル視している、犬と鴨が組んだスマブラメンバーだ。

「あいつはちょっと苦手だけど、同じスマブラメンバーだし助けないわけにはいかないぜ」

「その人達はどこにいるの?」

「七時の方向から声が聞こえてきましたので、そちらにいると思います」

「それじゃあ、行ってきまー……」

「おっと、まずは準備してからだ」

 先に行こうとするカービィの手を、マリオはしっかりと掴んだ。

 

「気を取り直して、それじゃあ、行ってきま~す!」

 そして準備を終えたスマブラ四天王は、

 アスティマの方を向いて挨拶し、ダックハント達の救出に向かっていった。




スマブラメンバー以外にも生きる人はいる事を表現したかったです。
次回は再び、スマブラ四天王のターンです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第36話 食人鬼襲来!

生きるためには誰かを犠牲にしなければならない。
そんなシーンが、ここで登場します。


 スマブラ四天王は、この世界を彷徨っているダックハント達を探しに向かった。

「いつ魔物が来てもいいように、構えは忘れるなよ」

「頑張る!」

 道中で魔物と遭遇しながらも、四人は軽々と蹴散らしていく。

「ファイアボール乱れ撃ち!」

「回転斬り!」

「鬼殺し火炎ハンマー!」

「10まんボルト!」

 ゾンビの大群が来ても彼らは物怖じしない。

 マリオとリンクが先陣を切って戦い、カービィとピカチュウも二人に続いた。

 スマブラ四天王と呼ばれるだけあって、彼らの実力は相当なものだ。

 

「よし、これでこの辺にいる魔物は全滅したな」

「うん、そうだと思うよ。じゃ、先に行こう!」

「ああ!」

 カービィが歩いた瞬間、突然、何かに躓いて転んだ。

「あいたたたたた……」

「どうした、カービィ?」

「なんかに引っかかったみたい……」

「なんか? う~ん、一体何だ……うお!?」

 マリオがカービィの足元を見てみると、彼の足に蔓が絡みついていた。

 一体誰がやったんだ、とマリオが蔓を外そうとすると、

 いきなり蔓がひとりでに伸びてピカチュウを打ち据えた。

「いてぇ!」

「ピカチュウ!?」

「いきなり何しやがるんだ!」

 ピカチュウが蔓が伸びた方向をしっかり見ると、

 そこには蔓が長く3つの赤い花が咲いた、異形の植物がいた。

「ちっ、植物の魔物か! 俺の電気技は効果が今一つみたいだ、炎や氷の攻撃で畳みかけろ!」

「ああ!」

 マリオが魔物にファイア掌底を放つが、蔓が邪魔をして攻撃が通らない。

「この蔓が邪魔だ、斬ってやる!」

 相手に攻撃を当てるには、まず蔓から片付けなければならない。

 リンクはブーメランで魔物を気絶させ、その隙に剣を構え魔物に斬りかかる。

 蔓がすぱすぱと切り刻まれるとリンクはカービィに合図を送った。

「カービィ!」

「いっくぞー、ファイア!」

 カービィが口から火を吐いて魔物を攻撃する。

 植物に炎属性攻撃は効果が抜群だ。

「結構効いてるぞ!」

「さらに熱いのお見舞いしてやるよ! ファイア掌底!」

 そして、マリオが炎を纏った掌底をぶちかますと、魔物は焼き尽くされて灰になり消滅した。

 

「おっしゃ、勝った!」

「やったね!」

 植物の魔物を倒して喜ぶスマブラ四天王。

「ん、この辺に魔物はもういないな?」

「そうみたいだね」

「んじゃあ、次の場所に行くか」

 そう言って、マリオは先頭に立って先に進んだ。

 

「いないね……」

「この世界じゃ仲間はすぐには見つからないんだ」

 マリオ達が今いる世界は非常に広大で、目的のものを探すには時間がかかる。

 しかも、途中で魔物や飢えた人間に出会ってしまう事もある。

 そうなれば、こちら側が不利になってしまう。

 マリオ達は慎重に、辺りを見渡しながらできるだけ安全なルートを通っていった。

 

 そして10分後、マリオ達は魔物やサバイバーに出会う事なく、

 何とかダックハント達を見つける事ができた。

 ダックハントの傍には、ウォッチとリィンもいた。

「「ウゥ……」」

「くぅーん……」

「どうした? ダックハント、ウォッチ、リィン」

 だが、彼らはどこか辛そうな様子だったようで、心配になったリンクは声をかける。

「ハナシハ、ワタシカライイマス」

 そう言うと、ウォッチは人間の姿に変化した。

「私達は、この世界にいる仲間を探していましたが、見つける事はできませんでした」

「それは俺達と同じだな」

「代わりに、これを見つけたのですが……」

 ウォッチは袋を取り出し、その中を開けると、中にはたくさんの食糧や毛布が入っていた。

「うわぁ~、食べ物がいっぱ~い!」

「カービィは見ない」

 リンクは食べ物に目を向けるカービィの目を逸らした。

「ほとんど何もないはずのこのエリアで、

 どうしてこんなに物資が見つかったのか分かりませんでした。

 それでも、物資が見つかったのはありがたかったので持っていきましたが……」

「う~ん……謎が多いな」

 一体、この物資はどこから来たのだろうか。

 五人と二匹と一羽が悩んでいると、どこかから這いずる音が聞こえてきた。

 

「……!!」

 それは、死斑が浮かんだ男性の動く死体だった。

 口には鋭い歯が生え、くぼんだ眼窩の奥で、赤い目が燃えている。

「グールです! 皆、身構えてください!」

「ああ!」

 マリオ達は急いで戦闘態勢を取り、ウォッチも元の平面姿に戻る。

(オカシイデスネ……ゾンビヤグールハ、ムレデコウドウスルハズ……。

 ナノニ、ドウシテタンドクデ……?)

 ウォッチがそう思っている時、グールがピカチュウに向かって噛みついてきた。

「ぐぁぁぁぁぁっ!」

「ピカチュウ!」

 大ダメージを受けたピカチュウは蹲った。

「これくらいで挫けるかよ! エレキボール!」

 ピカチュウが出した技は、相手より素早いと威力が上がる電気技、エレキボールだ。

 電気の塊は動きが鈍いグールに諸に命中し、グールを大きく吹き飛ばす。

「そらよ!」

 マリオはグールが飛ばしてきた毒液をアイスボールで凍らせ、それをグールに投げつける。

 そこにリンクの斬撃が入り、グールの体力を削る。

「ジャイロ!」

「ばうばうばう!」

「ハンマー!」

 リィンとダックハントが飛び道具でグールを牽制する。

 その隙にカービィはハンマーを振り回してグールを殴りつけた。

 グールはよろよろと動き、反撃でウォッチを引っ掻く。

「グゥゥ」

 ウォッチはグールをグリーンハウスで攻撃し、松明でグールを焼き払う。

 だがグールは怯まず、ウォッチに攻撃を仕掛ける。

(……? オカシイ……ワタシジシンハ、ネラッテイナイヨウデスネ……。

 ネラッテイルノハ……フクロ?)

 ウォッチは攻撃を回避している中で確信した。

 このグールは自分ではなく袋を狙っているのだと。

「ミナサン!

 コノグールハ、ワタシタチデハナク、ワタシガモッテイルフクロヲネラッテイルヨウデス!」

 それに気づいたウォッチは、皆にそれを伝えた。

「なんだって!?」

「ナノデ、コウゲキニマキコマレナイヨウニシテクダサイ!」

「ああ!」

 ウォッチのアドバイスを聞いたマリオは、

 相手の攻撃に当たらないように動き回り、ファイアボールで攻撃する。

 リンクも、マスターソードで連続斬りをし、カービィとピカチュウも彼らを援護した。

「……」

「マリオ?」

「袋を狙っている……って事は、このグールって元々……」

 マリオは気付いていた。

 このグールが、元は人間であった事を。

 やはり、とウォッチはマリオに声をかけた。

「キヅイテイタンデスカ? マリオサン」

「ああ……このグールは、元々この世界で生きていた人間だったんだ」

「嘘……!?」

 カービィは驚いたが、マリオの表情に嘘は感じられなかった。

 通常、グールは群れるはずだが、何故か単独で行動していたため、マリオもおかしいと思った。

 もうこの元人間のグールは二度と元に戻らない。

 そのため、不本意ながらも生き残るには彼を倒さなければならない。

「なら、俺達にできる事は……これしかない」

 マリオは、よろよろと近付くグールを見て、右手に炎を纏わせる。

「ファイア……掌底!」

 そして、炎を纏った掌底がグールに命中し、グールは叫び声を上げて焼失した。

 

「……」

 グールを撃破する事はできたものの、チームの顔に喜びはなかった。

 魔物とはいえ、元は人間だったものを、自分達の手で殺してしまったからだ。

「……ソレモ、コノセカイデイキノコルタメニヒツヨウナコトナノデス」

「リィン……」

「クヤンデハイケマセン。イチド、ラストホープニモドリマショウ」

「……そう、だな」




スマブラらしくない展開ですが、これがこの物語です。
次回もシリアス展開になりますが、ご了承ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第37話 闇に堕ちた狼

フォックスとファルコのライバルが登場します。
しかし、この物語では……。


 ラストホープに戻ったスマブラ四天王、ウォッチ、リィン、ダックハントは、

 アスティマに今回の事を報告した。

「そうですか……元は人間だったものを殺すのは、あなた達には抵抗がありましたね」

「ああ。物資は手に入ったが、俺達の心は晴れていない」

「怖かったよぉ……」

 カービィはぎゅっとマリオの服の袖を握る。

「大丈夫ですよ、カービィさま。必ず、この世界から脱出する事はできますから……」

「ホント!? ありがとう!」

 カービィさまは本当に素直ですね……とアスティマは微笑んだ。

「じゃあ、物資も十分集まったところだし、俺達はちょっと休んでるぜ」

「ええ、お気をつけて」

 アスティマに見送られながら、スマブラ四天王が休憩しようとした時。

 ピカチュウは、フォックスとファルコがいない事に気付いた。

「おい、フォックスとファルコがいないぞ」

「ん? 本当だ……どこに行っちまったんだ?」

 

 その頃、フォックスとファルコは……。

「なんで、俺達がこんなところにいるんだよ」

「知らねぇよ、気が付いたらこんなところにいたんだよ」

 気が付くと、アンノウンリージョンに飛ばされていた。

「あの女の目を見ちまったせいで、また彷徨い生活に逆戻りだぜ」

 ファルコが言った「あの女」とは、人を操る力を持った女性、ハオスの事だ。

 フォックスとファルコは彼女に操られて、ラストホープを出ていったらしい。

「あの女を絶対にぶっ潰してやる!」

「ファルコ、気持ちは分かるが彼女を倒すよりも先にラストホープに戻る方を優先させろ。

 今、彼女に出会う事はほぼないだろうし、仮に出会っても返り討ちに遭うし」

「ちっ……しょうがねぇな」

 ハオスに激しい敵意を抱くファルコを、フォックスはひとまず落ち着かせた。

 

 フォックスとファルコがアンノウンリージョンを探索していると、巨大蜘蛛と蛆の塊が現れた。

「雑魚に用はねぇんだよ!」

 ファルコはブラスターを連射し、羽で巨大蜘蛛を切り裂き撃破する。

 蛆の塊は集団でフォックスとファルコに絡みつき、噛みついた。

「いててててて!」

「数の暴力か。ならば!」

 フォックスは得意の足技で蛆の塊を薙ぎ払い、

 そこにファルコの連続攻撃が入って蛆の塊も弾け飛んだ。

 

「この辺の魔物は片付いたな」

「ファルコ、水が見つかったぞ」

「おお!」

 フォックスが指差した先には、まだ飲めそうな水が20ミリリットルあった。

 二人はすぐに袋の中にそれを入れる。

 その物資を手に入れると同時にゾンビやゾンビ犬が襲い掛かってきたが二人は軽々と蹴散らす。

「で、来た道は覚えてるのか?」

「それは……覚えていないな」

「俺もだ」

 どうやら、フォックスとファルコは、ハオスに操られている間の記憶は消されていたようだ。

「ま、とにかく、手探りで探すしかないようだな」

「あぁ……」

 

 その頃、アンノウンリージョンでは、黒い翼を生やした少年と太った男も彷徨っていた。

「おい、とっとと走らないと置いてくぞ、このブ男」

「ブ男じゃねぇ! オレ様にはワリオっていう立派な名前があるんだよ!」

 少年の方はブラックピット、男の方はワリオだ。

 この二人は全く息が合っておらず、口喧嘩ばかりしていた。

「じゃあ下品変態男」

「もっと酷くなってるじゃねぇか!!」

 ブラックピットに悪口ばかり言われて、ワリオはかなり腹が立っていた。

「こうなったら……おい! そこの黒天使! オレ様のワリオバイクに乗って脱出するぞ!」

 そう言って、ワリオは自慢のワリオバイクを出そうとするが、何故か出なかった。

 ワリオは何度も試してみたが、呼び出す事はできなかった。

「お前、何もやってないのか!?」

「俺は一切関わってねぇよ! それどころか俺達は被害者なんだぜ!?」

被害者面して本当は加害者の癖に!!

てめぇ、いっぺん死んでみろ!!

 ブラックピットがブラピの狙杖を構え、ワリオを撃ち抜こうとしたその時。

 ブラピの狙杖目掛けて光線が飛び、命中するとブラピの狙杖が地面に落下した。

「誰だ!? 俺の狙杖を落としたのは!」

 ブラックピットが攻撃が飛んできた方を向くと、何者かがザッ、ザッと音を立てて歩いてきた。

 それは、ならず者部隊・スターウルフのリーダー、一匹狼の無頼漢、ウルフ・オドネルだった。

「……」

 ブラックピットはすぐにブラピの狙杖を拾うと、ウルフにそれを向けた。

「俺とやる気か?」

「残念だけど、俺はちょっと怒ってるんでね」

「いいだろう」

「お~い、オレ様も忘れるなよ~!」

 無視されたワリオも、ウルフに戦いを挑んだ。

 まぁ、ワリオは無視されて当然かもしれないが。

「作者、オレ様の扱いが酷すぎる~!」

 当たり前です、ワリオですから。

 

 しかし、1分後。

「フン、所詮は口だけだったようだな」

 ウルフがブラスターを構え、倒れているブラックピットとワリオを冷たい目で見降ろしていた。

 そう、彼は一瞬で二人を倒したのだ。

「くそ……強ぇ……」

「このオレ……様が……負け……る、なんて……」

 ブラックピットとワリオは、意識を失う直前に、ウルフの真紅に染まった右目を見ていた。

 

 フォックスとファルコは、アンノウンリージョンを脱出するためにあちこちを歩いていた。

 しかし、まだ帰るための道は見つかっていない。

「ったく、何もない。何もない。何もない」

 理由は……目印が見つかっていないからだ。

「とりあえず、適当な方向に行ってみるか……」

「ああ……そうだな……」

 フォックスとファルコは、何も考えずに適当な方向へある程度歩いてみた。

 すると、運が良かったのか、なんとブラックピットとワリオが倒れていた。

「大丈夫か、ブラックピット!」

「ボロボロじゃねぇか!」

……ぉ~ぃ、ォレ様を忘れるなぁ……

 フォックスとファルコは大急ぎで倒れているブラックピットに駆け寄る。

 ワリオは無視されたため突っ込もうとするが、虫の息のためまともに突っ込めなかった。

「……」

「ダメだ、完全に意識を失ってやがる。とりあえず、こいつを安全な場所に運ぶぞ」

「……ワリオは?」

「あいつは不死身だからそのままでいいか」

「何気に酷い言い方だな……一応運んでおくぞ、ブラピとは別の場所に置くからな」

 

 フォックスとファルコは、ブラックピットとワリオを安全な場所に避難させた。

 そして、ブラックピットが意識を取り戻すまで、二人はずっと待ち続けていた。

「……ん?」

 しばらくして、ブラックピットはゆっくりと目を開けた。

「おお、起きたかブラピ」

「ブラピじゃね……」

「おっと、あまり無理はするなよ。まだ病み上がりだからな」

 突っ込みを入れようとするブラックピットを制止するフォックス。

「それじゃあ、話を聞かせてもらうぞ。お前は、一体誰に攻撃された?」

「左目に眼帯を付けて、ブラスターを持った奴だ」

 加害者の特徴を聞いたフォックスとファルコは、

 ブラックピットを攻撃したのが誰なのか確信した。

「つまり、お前を攻撃したのはウルフか」

「そして俺は、意識がなくなる前にあいつの右目が紅く染まっているのを見た」

「紅く?」

 ウルフの瞳の色は、そんな色ではないはずだ。

 フォックスとファルコが首を傾げていると、彼らの背後から足音が聞こえてきた。

 そして、フォックスの頭部目掛けて光線が飛んできた瞬間に、

 フォックスがリフレクターで跳ね返した。

「ウルフ……!」

 フォックスはウルフをきっと睨みつける。

 一方のウルフは、紅く冷たい目でフォックス、ファルコ、ブラックピットを見ていた。

「まさか、お前もハオスに操られているのか……!」

「操られている……か。それは違うな。俺は、俺自身の意思で行動している」

「どういう事だよ!」

 ファルコもフォックスに続いてウルフと対峙する。

「確かに俺は、ハオスと名乗る女から闇の力を授かった。

 だが、俺はその力を制御する事ができる。ただそれだけだ」

「……」

「だが、ハオスが授けたって時点で怪しまないと思わないのか?

 今は平気だと思うが、いずれお前は身も心も闇に支配されると思うぞ!」

「そうなる前に、闇の力を手放せ!」

「それは無理だな」

 フォックスとファルコがウルフを説得しようとするが、ウルフは首を縦に振らなかった。

 それどころか、ウルフはハオスから授かった闇の力に酔いしれるかのように口角を上げた。

「さぁ、闇よ! 俺に力を授けよ!!」

 そして、ウルフが叫ぶと、彼の周囲を黒いオーラが纏っていった。

「あれが、ハオスから授かった闇の力か……!」

「フォックス! あいつを呪縛から救うぜ!」

「ああ!」

 フォックスとファルコはブラスターを構え、ウルフとの戦闘に臨んだ。




次回はウルフ戦です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第38話 ウルフ・オドネル

闇ウルフ戦です。
切なくも熱い感じを目指して書きました。


「ウルフ、目を覚ませ!」

「俺はとっくに、闇の力に目覚めている」

 フォックスがウルフを蹴って転ばせた後、ファルコがブラスターでウルフを撃つ。

 ウルフはクローブラスターを構えてフォックスを撃った。

「これくらい、かすり傷……!?」

 フォックスは、かすり傷だと思って自分の腕を見てみると、腕の一部が石になっていた。

「なっ……!?」

「フォックス! どうした!?」

「腕が、石に……!」

 心配するファルコをよそにウルフは口角を上げる。

「これがハオスから授かった闇の力だ。このブラスターに当たると、石になる」

「くそっ!」

「さあ、お前達も闇に呑まれるがいい!」

 ウルフがフォックスに飛びかかってきたが、フォックスはそれをかわして蹴りを叩き込む。

 ファルコは吹っ飛んだウルフに突っ込んで羽でウルフを切り裂いた。

「ぐぉ!」

「そこだ!」

 フォックスはブラスターを連射してウルフにダメージを与え、

 直後にファルコが炎を纏った体当たりをする。

「やるな……はぁぁぁぁぁっ!」

「ぐああ!」

 ウルフは闇の力を爪に纏わせてファルコを切り裂き、大きくのけぞらせる。

「ファルコ!」

「俺は大丈夫だ……それよりも、とっとと目を覚ましやがれウルフ!」

 ファルコはブラスターを連射してウルフを怯ませフォックスはウルフ目掛けて飛び蹴りを放つ。

 だが、ウルフは平気そうな顔をしている。

「くそっ、効いてないのか!?」

「いや、効いてはいるが痛みを感じないだろう」

 これも闇の力のせいか……とファルコが舌打ちすると、ウルフの紅い目が光り出した。

「まったく、骨のない奴だな……。本気を見せてやるよ……うおおおおおおおおお!!

 ウルフが叫び出すと、彼を纏う闇の力が大きくなった。

「「ぐ……っ!」」

 ウルフの身体から凄まじい闇の波動が放たれ、地面も大きく揺れ出した。

 背から黒い翼が生え、目の色も赤黒く染まる。

 そして、地震が治まると、ウルフの姿は変わってしまっていた。

「ハハハハハハハハハ……!」

「くそ、早く止めなければ!」

 ファルコは飛び上がったウルフ目掛けてファイアバードで突っ込んでいくが、

 ウルフは旋回して攻撃をかわす。

 ウルフは上空からクローブラスターを連射し、フォックスとファルコを石にしようとする。

 フォックスとファルコはそれをかわしながらウルフに近付き、体術で攻撃する。

 だが、あまりにも攻撃が激しく、攻撃と回避のどちらかに専念しなければいけなくなった。

「ファルコ、ウルフの様子を見てみろ」

「何……?」

 ファルコがフォックスに言われてウルフの顔を見てみると、

 彼の右目はギラギラと紅く輝いており、開いた口からは鋭い牙が見えている。

 さらに、ウルフの両腕が丸太のように太くなっていき、爪も今以上に鋭くなっていった。

 ウルフの中にある闇の力が暴走し、彼を異形の姿へ変えてしまったのだ。

 ハオスの闇の力は、予想以上にウルフを侵食するのが速かったようだ。

「こりゃ、ウルフが完全に闇に支配されるのも時間の問題だな……

 とっととケリをつけねぇと大変な事になるぜ」

「ああ!」

 このままではウルフが完全に闇に染まってしまう。

 フォックスとファルコは遠距離からブラスターを連射してウルフに重傷を与えないようにする。

 一方のウルフは、ブラスターの弾幕を走りながら突っ込んでいく。

 最早ウルフは勢いに身を任せ、目の前の敵を殺そうとする事しか考えられなくなっていった。

ウォォォォォォォォォォォ!!

 ウルフはクローブラスターを連射していき、フォックスとファルコの身体を石に変えていく。

 徐々に石化していく腕を庇いながらフォックスはウルフに蹴りを叩き込む。

「ウルフ……元に、戻れ!」

 ファルコはウルフを何とか気絶させたい、と羽でウルフを切り裂く。

 切り裂かれた部分から出血したが、ウルフは闇の力でそこを治す。

「やめろ……ウルフ、もう、闇の力に頼るんじゃない……!」

「これ以上使ったら、お前は死んじまうんだぞ!」

「うるさい、黙れ! 貴様らを殺すのは、この俺様だ!!」

 フォックスとファルコの言葉に動揺するウルフだったが、

 彼の行動は変わらず、両腕を振り上げた。

 腕が振り下ろされれば、間違いなく二人は殺される。

 それを防ぐために、ウルフを止めるために、フォックスとファルコはブラスターを構え直す。

「すまない……ウルフ……!」

「もう、俺達にできる事は、これしかないんだ」

 ウルフの腕が勢いよく振り下ろされるよりも早く、二人のブラスターがウルフの胸を貫いた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「やった……か……?」

 時間にして、僅か10分。

 だが、フォックスとファルコ、そしてウルフには、5時間戦っていたような感覚が残っていた。

「ウ……アアァァ……」

 目の前で倒れている、元の姿に戻ったウルフの身体から、黒い煙が抜け出していく。

 同時に、煙が出た部分からウルフの身体が徐々に透けていっていた。

「もう……俺様は、長くは、ねぇ……」

「ウルフ! そんな事は言うな! 俺が何とかお前を助けてやる!」

 苦しんでいるウルフに対し、フォックスは必死で声をかける。

「……お前に助けられるのは、正直言って、似合わないな……お互い、敵同士なのに……よ……。

 それに……俺様は、助からない……」

 ウルフがだんだんと光の粒になっていく中で、彼は力を振り絞ってフォックスに話していた。

「何?」

「貴様らが俺様を倒した時には、既に俺様は完全に闇に染まっちまった……。

 闇は、俺様そのものとなった……」

「ウルフ……」

「だから、闇を取り払った時点で、俺様の命も消えるという事になる……」

 ウルフの身体はもう腰から下が消えてしまっていた。

 それでもウルフは喋る事をやめず、フォックスに話し続ける。

「ああ、それとフォックス……俺様が死んだ事は、早く皆に伝えておけよ……」

「どうしてだ?」

「これが、悪が最期に受ける報いだからだ……。悪は闇を手にし、そして闇と共に消える……」

「……ウルフ……」

「でも、せめてこういう風には伝えておけよ……?

 ウルフ・オドネルは……スターフォックスとたった一人で戦い……散っていった……と」

「……ああ……分かった……」

 ウルフの真剣な様子に、フォックスは頷いた。

「ふっ……最期に貴様らと真剣に戦う事ができて、本当に……よかった……ぜ……」

 そして、ウルフが最期に二人を見て口角を上げると、

 ウルフの頭は光の粒となり、この世界から完全に消滅した。

 何もなくなった場所を見て、フォックスの目から涙が零れる。

 

うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 この世界中に、フォックスの悲しい叫び声が響き渡った。




完全な死は、スマブラでは描写しないのが鉄則なので、こうなりました。
次回はウルフが消えた後、フォックスはどうなるのか……? です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第39話 悲しみを乗り越えて

ウルフ消滅後、フォックスがどう立ち直るのか。
それを私なりに描写しました。


 フォックス、ファルコ、ブラックピットは、ラストホープに戻った。

 フォックスは運んでいたワリオを適当な場所に放り出した後、

 ファルコと共にウルフの戦死をアスティマに報告した。

 アスティマはすぐにテレパシーでそれを伝えると、皆はその死を嘆いた。

「狼……おじさん……」

「まさか、こんな事になってしまうとは……」

「まだ救える可能性があるゼルダと違って、もう彼は救い出せないからな……」

 ゼルダはあくまで操られているだけであり、正気に戻す事はできるかもしれない。

 だが、ウルフはもう、闇に飲み込まれて消滅してしまっているのだ。

 死者が生き返るという奇跡も、この世界に十中八九存在しない。

「フォックスは……?」

「相当塞ぎ込んでいるだろう。仕方なかったとはいえ、相手の命を終わらせてしまったからな」

「声をかけちゃダメだよね?」

「ああ……今は、そっとしておいた方がいい」

 

 その頃……。

「ウルフ、すまない……。俺が、もう少しお前に早く会っていたら……」

 フォックスは、今もウルフを失った事を悔やんでいた。

 スターフォックスとスターウルフ、敵対するチーム同士のリーダー。

 争いの世界ではライバルとして競い合っていたが、失ったものはあまりに大きかった。

「……フォックス」

「ファルコ……」

 そんな彼に声をかけてきたのは、仲間のファルコ。

「何をそんなに悔やんでいるんだよ。ウルフは最期に言っただろ?

 本気で戦えて嬉しかった、って。

 お前がズルズル引きずってたら、あの世のウルフも悲しむぜ?」

「……っ」

 フォックスは目から涙を零した。

「ファルコ……俺は、どうすればいいんだ……」

「……お前が落ち着くまで、傍にいてやるよ。少し、休んでいろ、フォックス……」

 仲間として、ファルコは今のフォックスを見捨てられなかった。

 フォックスは「ありがとう」と言い、自分が立ち直るまでファルコに寄り添った。

 

「そして、残っているスマブラメンバーは……」

「クラウド、カムイ、ベヨネッタの三人だね」

 この三人は、スマブラ屋敷に最近入ってきたメンバーである。

 なので、彼らは乱闘経験が他のスマブラメンバーより少ないが、その実力は折り紙付きだ。

「あいつらは生きてるのかな」

「ベヨおねーさんなら平気じゃない?」

「クラウドも、前に一度乱闘したが強かったぜ」

 ベヨネッタとクラウドは、年齢が成年以上かつ戦闘に慣れているので問題はない。

 問題は、この三人の中で一番若いカムイだ。

 彼女一人だけでは、この過酷な世界を生き抜くのは難しいと思うからだ。

「まずはカムイを優先して助けに行こう。クラウドとベヨネッタは、その次だ」

「その前に、アス姉に言ってからにしよう!」

「そうだな……リンク、カービィ、ピカチュウ、アスティマのところに行くぞ」

 マリオは三人と共にアスティマに連絡をしようとしたが、何故か彼女はいなかった。

 四人はアスティマがいそうな場所以外にもラストホープをくまなく探索したが、

 アスティマの姿はなかった。

「アスティマ、どこ行っちまったんだ?」

「お前がいなくなったら、このラストホープが潰れちゃうだろ?」

「そうだよ、それに美味しいものが食べられないじゃない」

「自分が守りたいところを捨てるとは、無責任にもほどがあるぜ」

 当然、四人は不満の声が上がっていた。

 しかし、不満を言ったところでアスティマが帰ってくるわけがなく、

 仕方なく水と食糧を持ってラストホープを出ようとした、その時。

 

「待ってくれ!」

 彼らの背後から、声が聞こえてきた。

 その声の正体は、スターフォックスのリーダー、フォックスだった。

「俺も、一緒にクラウド達を探しに同行させてくれ」

「えっ!?」

「俺はもう、同じ悲劇を繰り返したくない。今もこの世界でハオスに苦しめられてる奴がいる。

 だから、彼らを守るために戦わせてくれ!」

 そう言って、フォックスは頭を下げた。

 彼は大切なライバルのウルフを失い、茫然自失していたが、ファルコのおかげで立ち直った。

 マリオはフォックスの真摯な態度を見て頷き、こう言った。

「分かった。ついてこい」

「……ありがとう!」

 マリオの言葉を聞いたフォックスは、ゆっくりと微笑んだ。

 

「おっと、だったら俺も同行させてくれよ」

「ブラピ!」

「だからブラックピットだ!」

 フォックスの言葉に続き、ブラックピットも会話に入ってきた。

「俺もフォックスに助けられたんだ。だから、その恩返しがしたいし、何よりフォックスを……」

「フォックスを、どうしたんだ?」

「いや、なんでもない! とにかく、一緒に連れてってくれ!」

 顔を少し赤らめながら、

 ブラックピットはスマブラ四天王と共に三人を探す旅に同行しようとする。

 すると、カービィ達は笑顔でブラックピットを出迎えた。

「いいよ、ブラピ! 僕と一緒に行こう!」

「仲間は一人でも多い方がいいしな」

「断る理由は、俺にはない」

「お前が本気で恩返しをしたいってんなら、俺達もお前を手伝ってやるぜ」

 スマブラ四天王の言葉を聞いたブラックピットは、口角を上げてこう言った。

「俺も、お前らに負けない活躍をしてやるぜ!」

「ああ!」

 こうして、フォックスとブラックピットは、クラウド達を探す仲間に加わったのだった。

 

「それじゃあ、決まりだな」

「うん!」

 六人は最後の仲間を探す準備をした後、皆に挨拶をして回った。

 そして、六人は皆の方に振り返ってこう言った。

「「「「「行ってくるぜ!」」」」」

「行ってきます!!」

 こうして、クラウド、カムイ、ベヨネッタを探すため、

 スマブラ四天王はフォックスとブラックピットを連れてラストホープを出た。

 この先に待ち受ける、大きな試練を知らずに。




時間は常に前にしか進まないものです。
次回はFor最後のDLCが登場します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第40話 魔女と竜の剣姫

カムイ、ベヨネッタ救出回です。
この二人はよく分からないので、ちょっとキャラが違うかもしれません。


 その頃……。

 

「向こうの敵は私が倒してあげるから、お嬢ちゃんはそっちを相手にしなさい」

「分かりました、ベヨネッタさん」

 眼鏡をかけたスタイルの良い黒髪の女性が、

 銀髪と赤い目の少女剣士と共に魔物と戦っていた。

 女性はアンブラの魔女ベヨネッタ、少女は白夜王国の王女カムイだ。

「はぁっ!」

 ベヨネッタは四丁一組の銃を巧みに操り、周囲の魔物を次々に倒していった。

 カムイも夜刀神・終夜でゾンビを切り裂いていく。

「ベヨネッタさんは、こんな魔物が相手でも平気ですか?」

「ええ、異形との戦いは慣れているからね」

「なんでこんな魔物ばかりこの世界にいるんでしょうか……」

「さあね、私達は飛ばされた身だから分からないわ。それよりも、倒すのを優先しなさい!」

「ええ!」

 カムイは腕を変形させて雷の弾丸を飛ばし、魔物を薙ぎ払った。

「ウィッチツイスト!」

 ベヨネッタは荒れ狂う女の懐に潜り込んでアッパーを繰り出して吹っ飛ばす。

「もう、この方達は救えないのですね……跳槍突!」

「スカボロウフェア!」

 カムイとベヨネッタの一撃が、荒れ狂う男を貫く。

 ベヨネッタは荒れ狂う男の攻撃をかわし、スライドからスカボロウフェアを叩き込む。

「これで終わりです! 夜刀神・終夜!」

 そして、カムイが混ざった人を夜刀神・終夜で切り裂くと、混ざった人は消滅した。

 

 敵を全滅させ、休憩するカムイとベヨネッタ。

「……いつになったら、皆さんが助けに来るのでしょうか」

「さぁね、分からないわ」

 現在、カムイとベヨネッタは11日もこの地にいる。

 飢えや渇きは落ちていた水や食糧で何とか凌いでいたが、事実、二人は限界ギリギリであった。

「このまま誰も来ないかもしれないし、誰かの助けが来るかもしれない。

 でも、前者の可能性が高いわね」

「そんな……ベヨネッタさん……」

 希望はまだ、完全には失われていない。

 しかし、それ以上に絶望の方が強く、彼女達から生きる力を奪っていた。

「……」

 カムイは、ベヨネッタが男の死体を見ていたのを見逃さなかった。

「まさか、それを食べるのですか?」

「冗談よ」

「ベヨネッタさんが言うと冗談に聞こえませんが」

「とはいえ、物資は残り僅か。このままじゃ飢え死にするわね」

 そう言って、ベヨネッタは立ち上がった。

「私達で何とか飢えを凌ぎましょう。お嬢ちゃん、物資を探しに行くわよ」

「ええっ? こんな余裕がないのに、ですか?」

「余裕がないから、よ。このまま黙って死ぬよりは、動いて死んだ方がマシでしょう?

 それに、少しでも可能性があるならば、それに賭けてみましょう」

「……分かりました。でも、無理はしないでくださいね」

 そう言って、カムイはベヨネッタについていき、物資を探しに行く事にした。

 

 その頃、スマブラ四天王、フォックス、ブラックピットは、

 いなくなった残りのスマブラメンバーを探していた。

「しかし、いつになったら目的地に着くのだろうか」

「結構遠いからな……少なくとも、3日はかかりそうだぜ」

「3日!?」

 リンクから日数を聞かれてカービィは驚いた。

「それまでにお腹、空かないかなぁ……」

「大丈夫だ、物資は十分持ってきてある」

 スマブラ四天王は最後の仲間という事で、十分に準備をしてから来ていた。

 水と食糧も多めに持ち、盗難防止用にパルテナが袋に魔法をかけているため問題ない。

「後は、ゾンビとかの魔物に気を付ければ、無事に助ける事ができるだろう」

「待っててね、クラっち、カムカム、ベヨ姉!」

 

 マリオは前方に敵がいないかを確認した。

 敵がいないのを確認したマリオは真っ直ぐ前に進んでいく。

「マリオ、次はこっちに行ってみようぜ」

「ああ」

 リンクの方についていくと、そこは行き止まりだった。

 しかも多数のブロブと蛆の塊が待ち構えていた。

「いやぁぁぁぁぁぁ!」

「げ! 逃げるぞ!」

 リンクは逃げようとするが、敵の物量に阻まれ逃げ切れなかった。

「ちっ、やるしかねぇか!」

 ピカチュウは舌打ちし、魔物の群れに突っ込んで10まんボルトを放った。

 魔物の群れは半分程度減ったが、蛆の塊は気にせず蠢き、カービィにまとわりついた。

「助けてぇぇぇ!」

 カービィは必死で蛆の塊を振りほどこうとするが、蛆の塊はどんどんまとわりつく。

「カービィ! 俺の電撃を吸い込め!」

「う、うん!」

 ピカチュウが電撃を放つとカービィはそれを吸い込み、スパークをコピーした。

「スパークアタック!」

 カービィは電撃を放ってまとわりついていた蛆の塊を全て落とす。

 マリオはファイアボールを放ち、蛆の塊を全て焼き払った。

「そらよ!」

 ブラックピットは遠距離からブラピの狙杖でブロブをまとめて撃ち抜く。

「はぁぁぁああ!」

「食らえ!」

 その後、リンクの剣とフォックスのブラスターが、ブロブを全て貫き、ブロブは弾け飛んだ。

 

「ったく、ちょっと時間を食ってしまったぜ」

「あいつらは無事だろうか……」

「死んでなきゃいいんだがな……!」

 

 カムイとベヨネッタは、生きるために必要な物資を探していた。

 数は少なかったが、干し肉やまだ飲めそうな水は見つかった。

「はぁ……無事に生き残れるんでしょうかね、ベヨネッタさん」

「一応、この量なら2日は持つわね」

「元の世界が恋しいです……。昼は皆さんと乱闘や食事をして、夜は暖かい布団でぐっすり寝る。

 こんな事が、この世界にはないんですよ」

 闇に沈み、食べ物はほとんどなく、おぞましい魔物がたくさん生息し、生と死が存在する世界。

 こんな世界にずっと住んでいると、体だけでなく、心も傷ついてしまう。

「お嬢ちゃん、こんな時だからこそ、生きる希望を持たなくちゃ。

 何が起こるか分からないこの世界。帰れる可能性はゼロじゃないわよ?

 それに、バラバラになっていたとしても、スマブラメンバーの絆は決して断たれる事はない。

 大切なのは、みんなを信じる事よ」

「ありがとうございます……ベヨネッタさん……」

 ベヨネッタは暗くなっているカムイを励ました。

 彼女は気休め程度としか思っていなかったが、

 カムイには効果があったようで、ゆっくりとベヨネッタに寄り添う。

「まったく、お嬢ちゃんったら……」

 自分に甘えてくるカムイを見てベヨネッタは苦笑したが、

 見捨てる事ができず、そのまま彼女をゆっくりと撫でた。

 

 ……しかし、カムイは気が付いていなかった。

 足元から、ゆっくりと大きな穴が現れている事を。

「お嬢ちゃん! 足元、足元!」

「え!?」

 ベヨネッタが急いでカムイに知らせるが、時既に遅し。

「「きゃああああああああああああああ!!」」

 カムイとベヨネッタは、現れた穴に飲み込まれてしまった。

 

 それから2日後。

 スマブラ四天王達は野宿を終え、仲間の捜索を再開した。

「流石はあの女神のテントだな、魔物に襲われずに済んだぜ」

 そう、彼らが持ってきたテントは、パルテナが奇跡をかけたテントなのだ。

 これにより魔物は近付かなくなり、結果安全に野宿ができた。

「みんな、もうひと踏ん張りだ」

「うん!」

 マリオの一声で、皆は前へ進んでいった。

 魔物を倒し、時に避けつつも、順調に一行は目的地へ近づいていた。

「本当にこっちで合ってるのか? フォックス」

「誰かが争った形跡がこの辺に残っているからな」

 フォックスの周りには赤いものが飛び散っている。

 地面も大きく抉れていて、肉片も落ちていた。

「ここを通っていけば、多分みんなに会えるぞ。だけど、気は抜くんじゃないぞ。

 特に……カービィ!」

「わっ! ちゃ、ちゃんと気を付けるってば~!」

 

 3時間後、ようやく一行は目的地に辿り着いた。

 しかし、いるはずだった仲間の姿は無く、代わりに大きな黒い穴があった。

「あれ? おかしいな……この辺にクラウド、カムイ、ベヨネッタがいるはずなんだが?」

「どこにもいないぜ。ったく、探しに来たのにまた逃げたのかよ」

「まずはもうちょっと辺りを探すぞ」

「で、見つからなかったらあの穴に飛び込むの?」

「いや、飛び込む事を前提にしてないぜ。とにかく、三人を見つけるぞ」

 そう言ってピカチュウは先頭に立ち辺りを探索したが、いくら探しても見つからなかった。

 他の五人も彼と同じように探索したが、どこにも見当たらなかった。

 となると、まだ調べていない場所は……。

「……あの穴……か」

 もしかしたらハオスの罠かもしれない。

 しかし、この辺に誰もいなかった以上、ここに入らなければ誰も見つけられないだろう。

「入るしか……ないのかな?」

「もう、ここには誰もいないからな。罠だと思うが、こうしなければ仲間は見つけられない。

 ……みんな、準備はいいか?」

「ああ。覚悟は決めてあるぜ」

「みんなは絶対に、僕達で助けるよ!」

「仲間を見つけて、無事に帰ってこようぜ!」

「まさかこの俺がお前らの仲間探しに協力する事になるとはな。だが、悪くはないぜ!」

「ファルコ、そしてウルフ。俺はもう迷わない。

 悲劇を繰り返さないためにも、俺はこの穴に飛び込む!」

 リンク、カービィ、ピカチュウ、フォックス、ブラックピットは頷いた。

 特に、フォックスは五人の中で最も真剣な表情をしていた。

「みんな賛成だな。じゃあ、行くぞ!」

 そして、マリオが穴に飛び込むと、他の五人も穴に飛び込んだ。




奇麗事かもしれませんが、ベヨネッタのセリフは、
某ウイルスに苦しむ世の中の希望かもしれません。
次回は久しぶりにあのキャラが登場します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第41話 暗躍する者

今年最後の小説です。
オリキャラメインの回です。


「ベヨネッタさん、ごめんなさい……。私が、気付きませんでしたから……」

「私が気付くのも遅かったんだし、お互い様よ」

 真っ暗で、何も見えない空間の中。

 二本の柱に、カムイとベヨネッタが縛られていた。

「あの、何とかならないんですか? その足にある銃で、縄を切れないんですか?」

「どうやらこの縄は私達の力を封じているみたい。だから、私達では切る事はできないわ」

「そんな……」

 

「……」

 さらに、二人が縛られた柱の隣にある柱に、逆立った金髪の剣士、クラウドも縛られていた。

 息はあるものの意識はなく、目を閉じたまま動かない。

 彼も安全な場所を探している途中、罠にかかり捕まってしまったのだろう。

 

 二人に向かって、足音が近付いてくる。

 足音が大きくなるにつれて、その人物がはっきりと見えてきた。

 白と紫のドレスを着た長い耳の女性……間違いなく、ハイラルの王女ゼルダだ。

「ゼルダ……さん?」

「ゼルダ姫……?」

 しかし彼女の眼には光が灯っておらず、表情も人形のように無機質だ。

 ゼルダはカムイとベヨネッタの声に反応せず、ゆっくりとベヨネッタに近付く。

「ちょっとゼルダ姫、どうし……」

「……ディンの炎」

 ベヨネッタが事情を聴こうとしたその時、

 彼女が縛られている柱に、ゼルダがディンの炎を放った。

ああぁぁぁぁぁああぁぁああぁぁぁあああ!!

 ベヨネッタの身体が、みるみるうちに炎に包まれていく。

「熱い、熱い、熱い、熱いぃああぁぁぁぁああ!!

「貴様は確か、魔女と呼ばれていたな。ならば、その穢れた肉体を聖なる炎で焼こう」

「そん、な……ゼルダ、さん……」

 ゼルダが発した言葉に呆然となるカムイ。

 スマブラメンバーが、乱闘以外で他のスマブラメンバーを攻撃する事は、あり得ないはずだ。

 なのに、ゼルダは今、ベヨネッタを火あぶりにしたのだ。

 この異常な出来事にカムイは固まるしかなかった。

「……はっ! ベ、ベヨネッタさん! 今、私が助けますから!」

 しばらくして、カムイは我を取り戻し、必死で自分を拘束している縄を外そうとした。

 しかし、いくら足掻いても縄は外れなかった。

「無駄だ、その縄は貴様の力では外せない。

 このまま魔女が炎と共に消えるのを黙って見るがいい!」

「嫌です……ベヨネッタさんは……死なせない!!」

「貴様は黙っていろ!」

 そう言うと、ゼルダはカムイに衝撃波を飛ばした。

 衝撃波が命中したカムイは意識を失う。

「……アンブラの魔女よ、死ぬがよい……!」

 

「……っと!」

 マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウ、フォックス、ブラックピットはどし~んと着地した。

「この中に仲間がいるんだな」

「クラっち、カムカム、ベヨ姉……」

「死ぬなよ、絶対に死ぬなよ!」

 体勢を整え直した後、六人は暗い場所を歩く。

 道は見えなかったが、自分の足元はふわふわとしていて、まるで雲のようだった。

「それにしてもここは長いな」

「ああ……本当に長い、な……。一体どこまで続くのだろうか」

「暗い癖にやけにはっきり見えるぜ」

 この空間の異質さに、六人は少しうろたえる。

 しかし、ここを抜ければ、クラウド達に出会う事ができる。

 そう、最後のスマブラメンバーが見つかり、全員で一緒に帰る事ができる。

 彼らはそれを信じて、真っ直ぐに道を歩いた。

 

 六人が長い道を抜けると、広間に辿り着いた。

 そこには、三本の柱が地面に刺さっていて、柱の近くには人らしきものが見えている。

 また、三本の柱のうち、一本は炎で燃えていた。

「あ! まさか、あそこにいるのは……クラっち、カムカム、ベヨ姉!?」

 カービィがそう言うと、柱の方に向かってパタパタと走り出した。

「おい、カービィ!」

「相手の罠にも気を付けろよ!」

 マリオ達は、走っていくカービィを追いかけていった。

 

「クラウド!」

「カムイ!」

「ベヨ姉!」

 ようやく、六人は柱の近くに辿り着いた。

 柱には、クラウド、カムイ、ベヨネッタが縛り付けられていた。

 しかも、ベヨネッタが縛られている柱は燃えており、このままでは彼女が焼死してしまう。

「……っ! ベヨネッタを助けるぞ! まずは、あの炎を消すんだ!」

「うん! ウォーターポール!」

「ポンプ!」

「みんなは他の人を助けに行ってこい!」

 カービィはベヨネッタの柱に空を飛んで近付き、空中から水の柱を放つ。

 マリオも、ポンプを使ってベヨネッタを包む炎を消していった。

 消火できる技を持たない他のメンバーは、捕まっているカムイ達を助けようとした。

 しかし、リンクがカムイのところに近付いた途端、彼はある人物の姿を見てしまった。

「ゼル、ダ……!?」

 それは、スマブラメンバーの一人、ゼルダだった。

「お前が、クラウド達を捕まえたんだろ!?

 なんでだよ! なんでこいつらを捕らえたんだよ!!」

「……」

 リンクは冷静になれずに彼女に叫んだが、彼女は全く反応しない。

「おい、聞いてるのか!? ゼルダ!

「……」

 ゼルダの目には光がなく、虚ろな表情だが、誰かの声に反応するように口を動かした。

 まるで、誰かと通信しているかのように。

 そして、その通信相手は……。

 

「まったく、ボクは今、忙しいからね? 捕まえたら好きにしていいよ?」

―御意。

 ハオスだ。

 彼女に操られているゼルダは、テレパシーでハオスと通信していた。

 ハオスはテレパシーによる通信を切ると、ふふふと微笑みながらアスティマと向き合う。

「まさか、ボクを本気で倒しに来たのかい?」

「ええ。私の使命は、世界を救う事。

 そして、この世界を滅ぼうとするあなたを倒し、世界を救って見せます!」

 アスティマは杖を構え、毅然とした表情でそう言った。

 対照的にハオスは微笑んだままだ。

「黒幕を倒して世界を救ってハッピーエンド。そんな“予定通りの結末”、ボクは大嫌いだ」

「予定通りでもなんでも、私は必ず世界を救う! あなたの戯れ言に、私は惑わされない!」

 そう言って、アスティマは杖から光を集め、強烈な光と化してハオスに投射する。

 ハオスはそれを回避し、

 闇の刃を大量に作り出しアスティマに放ったが彼女はそれを光で打ち消した。

「アスティマ。ボクを倒せば、世界を救えるとでも思っているのかい?」

「ええ。

 私が今まで見た事がある異変の結末は全て『黒幕を倒して世界を救い、大団円を迎えた』!」

「だから、今回の異変もこれと同じ結末。キミは、そう思っているんだね」

「……!」

 ハオスに図星を突かれ黙るアスティマ。

 それでも彼女は怯まず、ハオスに杖を向け、強烈な光の弾を無数に放つ。

「う……っ、痛い……」

「はぁ、はぁ……」

「キミは本当に何も覚えてないようだね。キミがあの時何をしたのか、本当に覚えてないの?

 あの時世界を滅ぼしたのは、キミなんだよ?」

「黙りなさい!」

 アスティマが振り下ろした杖を、ハオスは片手で受け止める。

「やれやれ……キミって臆病なんだね。自分で世界を滅ぼした癖に世界を救うのは人任せ。

 本当に、キミは愚かな人間だよ!」

 ハオスは手から黒い闇を放ち、それがアスティマに命中すると彼女の顔が青くなる。

 闇に心身を蝕まれているアスティマは苦しそうな表情だが、攻撃をやめる事はない。

「ハ、オス……。愚かなのは、あなたの方ですよ……!」

 アスティマは必死でハオスの言葉を否定しつつ、起き上がって杖を構え直した。

「セイントバスター!!」

 アスティマは杖から高速の光の衝撃波を放った。

 ハオスは避けられずに命中し、大きく吹き飛ばされた。

「まだやる気? まだやる気なの? もう戦いはやめなよ。ボクの負けだ、負け。

 さあ、もうここから引くんだ」

「今更、そんな命乞いをするのですか? あなたは多くのヒトを苦しめた。

 ヒトや生き物を操り、大切なヒトを消し去った!

 これ以上、あなたのせいでヒトが、世界が、苦しむのを見たくないのです!

 今度こそ、この世界から消えなさい!! ディヴァイン・パニッシュメント!!!」

 アスティマは杖を光り輝かせ、巨大な聖なる光を打ち出す。

 聖なる光がハオスに命中して大爆発すると、辺り一面が眩い黄金色に染め上がった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「は……もう……ボクに戦う力はない……! でも、このまま終わるわけにはいかないよ!」

「な……!」

 大魔法を放って隙ができているアスティマに、ハオスは掴みかかる。

「さあ、真実を取り戻すんだ! そして、キミが望む救いをもたらすんだ!!」

「い……いやあああああああああああああ!!」

 ハオスからにじみ出る闇の力が、アスティマの中に流れ込んだ。

 そして闇の力がアスティマに全て入ると、アスティマはだらりと項垂れた。

「はは……もう、大丈夫だよ……!」

 そう言い残して、ハオスはこの世から消滅した。

 ハオスが完全に消えたのを確認すると、アスティマは虚ろな目でこう呟いた。

 

「……私は……」




アスティマVSハオスはかなりシリアス気味にしました。
次回はゼルダ戦です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第42話 ゼルダを救え!

ついに仲間を救出に向かいます。
やっぱり彼女を救うのは、彼じゃなくちゃね!


「……終わったようだな」

 ようやく、ゼルダがぽつりと呟いた。

 何が終わったのだろうか……リンクはその事が少し気になっていたが、

 今はゼルダを止める事を優先し彼女に近付く。

「ネールの愛」

「ぐぁぁっ!」

 だが、ゼルダはリンクをネールの愛で弾き飛ばす。

 それでもリンクは諦めず、次に魔法を放とうとしたゼルダの腕を押さえ込んだ。

「くっ……何をする!」

「みんな、今のうちにクラウド達を助けてくれ!」

「うん!」

 リンクとゼルダが取っ組み合いになっている間に、マリオ達は捕まっている三人の縄を外した。

 自由になったクラウドとカムイ、そしてベヨネッタはゆっくりと倒れ込む。

 リンク以外の全員は大急ぎで三人に駆け寄った。

「大丈夫か、クラウド」

「カムカム! しっかりして!」

「ベヨネッタ……」

 気を失っている三人に、マリオ、カービィ、フォックスは声をかけた。

「ああ……マリオ、か」

「クラウド!」

 最初に目を覚ましたのは、クラウドだった。

「こ、こは、どこ、だ」

「穴の中、と言ったら単純だよな。お前はここに捕まっていたんだ」

「うぅ、そうか……。自由にしてくれて、ありが……と、っ」

 立ち上がろうとしたクラウドが再び意識を手放そうとする。

 マリオはクラウドを抱きかかえ、安全な場所に彼を寝かせた。

「カービィさん、あれ……ここは?」

「おっはよ~! カムカム!」

 こんな危険な状況なのにも関わらず、カービィは明るくカムイに挨拶する。

「よかった……私、生きてるんですね……」

 生きているのを確認したカムイはほっとする。

「あっ、そうだ。ベヨネッタさんは?」

「カムカム、無茶しちゃダメ! ベヨ姉は生きてるよ!」

「本当……ですか?」

「本当だよ! 僕を疑う気!?」

 カービィの言葉と表情に裏表はなかった。

 カムイは「よかった」と言って、その場で気絶するように寝た。

 ゼルダが洗脳され、ベヨネッタが火あぶりにされ、自分も捕まって殺されそうになった。

 今、その状況から解放されたため、カムイはすっかり安心したのだろう。

「……ぅ……わ……私、は……?」

 先ほど、ゼルダに火あぶりにされたベヨネッタがゆっくりと起き上がる。

 彼女の服はボロボロになっていて、身体中に火傷の跡がついていた。

「ベヨネッタ……生きていて、よかった」

「……私が、あんなんで、死ぬわけ、な……」

「何を言ってるんだ! マリオ達が助けなければ、お前は死んでたんだぞ!」

 フォックスはウルフの悲劇を見た事から、仲間を助ける事に専念している。

 しかし、自分一人だけでは仲間を助ける事はできなかった。

 この言葉も、マリオ達仲間がいたからこそ言えたのだ。

「クラウド、カムイ、ベヨネッタ。お前達は無理をしないで休め。ゼルダは、俺達が相手する」

「応援してますよ!」

 マリオ、カービィ、ピカチュウ、フォックス、ブラックピットは、

 三人を安全な場所に匿わせてリンクのところに行った。

 

 一方のリンクはというと、今もゼルダと取っ組み合いになっていた。

「ゼルダ……俺達がここに来たのは、お前を元に戻すためでもあるんだ」

 今、ゼルダはハオスに洗脳されている。

 つまり、望んで三人を捕らえたわけではない。

「ただ『正気に戻れ』と言っただけじゃダメだよな。

 俺は……ゼルダが戻ってきてくれればいい。ゼルダ、お前は……何がしたいんだ?」

「……」

 リンクの言葉に反応しないゼルダ。

 ゼルダはリンクの手を振りほどいた後、魔法を詠唱すると、無数のグールが現れた。

「ならば、貴様はここで死ね!」

 ゼルダの指示と共にグールがリンクに襲い掛かってきた、その時。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 マリオが飛び蹴りを放ち、グールの群れを地に伏せた。

「リンク! ゼルダは俺達と一緒に元に戻すぞ!」

「みんなでやれば、ゼル姉は元に戻るよね!」

「俺達スマブラ四天王の力を見せてやろうぜ!」

「ファルコ……ウルフ……力を貸してくれ。あの悲劇を起こさないために!」

「へっ。こんな化け物、一網打尽にしてやるよ」

 ブラックピットがやる気満々でブラピの狙杖を構える。

「待ってくれ……ゼルダ。お前は、俺が絶対に連れ戻す!」

 リンクは、真剣な表情でマスターソードを握り締める。

 そして、ゼルダに向かって叫ぶと戦闘が始まった。

 

「まずはグールを倒そうぜ! アイアンテール!」

 ピカチュウが鋼のように固くした尾をグールの群れに叩きつける。

「ディンの炎」

「うおっ!?」

 ゼルダは一瞬無防備になったピカチュウに火炎弾を放つ。

 火炎弾は爆発し、ピカチュウに大きなダメージを与えた。

「はっ!」

「えーい!」

 マリオとカービィのハンマーが、グール達を一撃で倒した。

「貫け!」

「くっ!」

 ブラックピットはブラピの狙杖を構え、そこから光線を放ってゼルダを撃ち抜く。

「ゼルダ! 俺の声が聞こえるか!?」

 リンクがゼルダをマスターソードで斬りつける。

 いくら彼女が操られているといっても、手加減をしては殺されてしまう。

 なので、まずは大ダメージを与えた後、気絶させる作戦で戦う事にした。

「ウァァァァァァ……!」

「よっと!」

 フォックスはグールの攻撃をかわし、回し蹴りでグールを一掃した。

 その後にブラスターを連射しグールを全滅させた。

「グールなど、所詮は駒に過ぎない。……私が貴様らを皆殺しにする! マジカルカッター!」

 ゼルダは魔法で刃を形成し、リンクに斬りつける。

 普段のマジカルカッターは光り輝いていたが、洗脳の影響で禍々しい黒に染まっていた。

 リンクは盾でこれを防ぎ、ゼルダを連続で斬りつけた。

「俺を大切に思うゼルダは、まだいる。俺はそれを信じて、お前と戦う。

 たとえご都合主義であっても、ハッピーエンドは絶対に掴み取る!」

「黙れぇぇっ! シャイニングパームショット!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ゼルダは手から閃光を放ち、リンクに大ダメージを与えた。

「くっ……ゼルダ……俺が分からないのか……!? もう、俺の存在は見えないのか……!?」

 もうゼルダは元に戻らないのか、とリンクは絶望した。

 だが、この時マリオは見ていた。

 魔法を放つゼルダの手が、僅かに震えていたところを。

「リンク!」

「どうした、マリオ?」

「ゼルダは今、自分を縛っている闇に必死で抵抗しているんだ!

 このまま攻撃を続ければ、きっと思い出せるかもしれない!」

「そっか……ありがとよ!」

 そう言ってリンクはゼルダに近付こうとするが、ゼルダはネールの愛で拒絶する。

「私に近付くな……!」

「でんきショック!」

「そんなもの! ネールの愛!」

 ピカチュウのでんきショックをネールの愛で跳ね返すゼルダ。

 しかし、これは隙を作るための囮であった。

 フォックスはゼルダに突っ込んで蹴り、さらにマリオが零距離でファイア掌底を叩き込む。

「く……何を、する……!」

 急な出来事に対応できず、どんどんダメージを受け続けるゼルダ。

「くそ……やめろ……!」

「お~っと、俺も忘れるなよ!」

「目を逸らせはしない!」

 さらに、ブラックピットが神弓シルバーリップでゼルダを攻撃し、

 目を逸らそうとした彼女をフォックスのブラスターが阻止する。

「ゼルダ……俺の目を……見ろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 そして、リンクの剣がゼルダを捉え――

 

「……リン、ク……」

 ――彼女を、倒した。




次回はついに、ヒロインが……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第43話 アスティマの本性

ついにゼルダの救出に成功します。
ここから一気に伏線を回収していきますよ。


「……」

 一面の暗闇の中、ゼルダはぼんやりと外の様子を見ていた。

「これは……何ですか……?」

 今、ゼルダはリンク達を攻撃している。

 それは当然、彼女が望んでいなかったが、ゼルダは抵抗しようとしても動けない。

「私の身体なのに……誰かに勝手に動かされているようで……気持ち悪いです……。

 でも……ここで負けるわけには……!」

 ゼルダは必死で、闇の呪縛を解こうとしている。

 それは、外での戦いだけでなく、内での戦いでも同じだった。

「お願いです、みんな……。私を、助けてください……!」

 もうこれ以上、皆を、リンクを傷つけたくない。

 ゼルダの思いは、今、ハオスがかけた闇の呪縛を上回ろうとしていた。

 当然、ハオスの力は非常に強かったが、ゼルダの思いも徐々に強まっている。

 

「リンク……待ってください……。今、私が行きますから……!」

 そして、ゼルダがようやく闇の呪縛から解放されかけ、彼女が前に一歩踏み出した時。

 

―ゼルダ……俺の目を……見ろぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

 大切なリンクの声が、聞こえてきた。

 そして、リンクの左手がゼルダの右手に触れると、ゼルダは暗闇の中から脱出した。

 

「ゼルダ!!」

「……ぅ……リン、ク……?」

 気が付くと、ゼルダはリンクに抱きかかえられていた。

 彼女の瞳には光が戻っており、真っ直ぐにリンクの方を向いている。

「ゼルダ……戻ってきて、くれたんだな……」

「ただいま……そして、多くの罪を犯して、ごめんなさい……」

 ゼルダは洗脳されていたとはいえ、リンクを傷つけ、シークを追い詰め、

 魔物を使役してハオスに加担した。

 彼女は洗脳が解けてからもこの事をはっきりと覚えており、その両目からは涙が出ていた。

「ゼルダ……長い間、暗い闇に閉じ込められていて辛かっただろう。

 だが、もうお前は自由なんだ。解放されたんだ。お前に眠る光が、お前を縛る闇に勝ったんだ。

 だから、俺はもう……お前を二度と、闇に奪わせない。

 そして、お前を闇から永久に守ってみせる」

 リンクはそう言って、ゼルダをぎゅっと強く抱きしめた。

 

「しばらく、二人だけにしようか」

「そうね」

 マリオ達は、それを温かい目で見守っていた。

 

「お、元の場所に戻ったぞ」

 そして、ゼルダを支配していた闇の力が消えた事により、

 この空間も消え、マリオ達は元の場所に戻った。

「これで、スマブラメンバーがみんな集まったね!」

 クラウド、カムイ、ベヨネッタを救出し、ハオスに洗脳されたゼルダも元に戻った。

 これにより、スマブラメンバーは全員揃ったという事になる……一人除いて、だが。

「後は、どうやって世界を救えばいいのか、アスティマに聞いてみるか」

「アスティマ? 誰だ、そいつは……」

「私も分かりません」

「私もよ」

「ありゃりゃ」

 どうやらクラウド達はアスティマの事を知らないらしい。

 マリオがアスティマについて話すと、三人は納得したように頷いた。

「だが、アスティマは今いなくなってるんだぞ?」

「きっとラストホープに帰って来てるさ。最後の仲間も助けたんだし、報告しに行こうぜ!」

「ああ!」

 マリオ、リンク、カービィ、フォックス、ブラックピット、クラウド、カムイ、

 ベヨネッタは意気揚々とラストホープに帰っていった。

 しかし、ピカチュウだけは浮かない顔をしていた。

 

「……なんだか、嫌な予感がする……! 的中してなければ、いいんだが……」

 

 こうして、スマブラ四天王一行はラストホープに戻った。

 入り口では、アスティマが杖を持って立っていた。

「ただいま、アスティマ! ほら、この通り最後の仲間もゼルダも助けたぜ!」

「……」

 マリオは喜んでアスティマに報告をしたが、アスティマは黙ったままだった。

 何が起こったんだ、とクラウドが話しかけようとすると、

 突然、アスティマがこちらに杖を向けた。

「……アスティマ、何をするつもりだ!」

「……ライトチェーン!」

 アスティマはマリオに狙いを定め、杖から蛇のように動く光の鎖を放った。

 クラウドはバスターソードでそれを弾き返すと、すぐにそれをアスティマに向けた。

「何が目的だ。そして何故、マリオを狙った」

「まさか、お前……ハオスに操られたのか!?」

「いいえ。マリオさまを攻撃したのは私の意思です」

「何……!?」

 あまりに衝撃的な発言に、リンクは驚愕した。

 クラウドもアスティマの事を良く知らないが、その顔は度肝を抜かれているかのようだった。

「私はハオスとの戦いで、思い出したのです。

 自分が何をするべきか、そしてこの世界を救うためには、どうしたのかを」

「なら、どうやって世界を救うわけ?

 信じていた仲間を攻撃した時点で、お嬢ちゃんは救世主として失格よ」

「あなたが何をしたいのかは分かりませんが……マリオさん達を傷つけるなら、私も戦います」

 ベヨネッタとカムイに武器の先を向けられたアスティマは、ゆっくりと口を開いた。

「この世界の終わりにして始まりは、ピュアカタストロフでした。

 あれは……私が生み出したのです」

 

 マスターハンドとクレイジーハンドは、この世界の果てで綺麗な水晶を見ていた。

「完成したんだな、マスターハンド!」

「ああ、ついに完成した。これが人々の思いを力に変える魔導具、コルプネウマだ」

 マスターハンドが作った魔導具、コルプネウマ。

 それは人々の強い思いに反応して、その思いを具現化するもの。

 もし人々が幸福を願ったならば、コルプネウマは本当に幸福を運んでくれるのだ。

「クレイジーハンド、君がいたから私はここまで来る事ができたんだ。

 これは、私とクレイジーハンドで作った共同作品だ」

「共同作品……か。ああ、なんだか嬉しいな」

 

 コルプネウマは人々の幸せのためにマスターハンドが作ったが、

 その後に起きた事は非情だった。

 長く続く生活と乱闘のせいで人々の心は倦み疲れ、次第に病み始めていった。

 世界を闇が取り巻いていき、そしてその闇に、コルプネウマは反応してしまった。

 そして、その結果、ただこの世界を滅ぼすだけの存在、ピュアカタストロフが生まれた。

「なんだ、これは……!」

「あれは人々の心の闇が具現化したもの……。名を、ピュアカタストロフという……」

「何という事だ……マスターハンドの思いが、こんな結果を生んでしまうなんて……」

「ああ……全て私のせいだ……。人々の心を考えずに、こんなものを作ってしまった……。

 私が、コルプネウマを作りさえしなければ……!」

 

 突如として出現したピュアカタストロフは、

 瞬く間に大量の魔物を呼び出し、世界を蹂躙していった。

 マリオの死と引き換えに魔物はある程度討たれ、そのままピュアカタストロフも討とうとした。

 だが、ピュアカタストロフの力はあまりにも強大だった。

 マスターハンドとクレイジーハンドの二柱の神、彼らに付き従った守護者をもってしても、

 ピュアカタストロフを倒すまでには至らなかった。

 世界は破壊されていき、文明も、世界法則も失われていった。

 そこで、クレイジーハンドは世界が完全に消滅するのを阻止するべく、ある行動に及んだ。

「何をするんだ、クレイジーハンド!」

「もう、ピュアカタストロフを止めるためには、こうするしかないんだ!

 止めないでくれ、マスターハンド!」

「やめろ……やめてくれぇぇぇぇぇ!!」

 クレイジーハンドは、ピュアカタストロフに単身で戦いを挑んだ。

 戦いはクレイジーハンドの勝利で終わったが、クレイジーハンドは神としての力を失った。

 そして、その余波でマスターハンドも力を失い、マスターハンドはアスティマ、

 クレイジーハンドはハオスとして生まれ変わったという。

 

「……これが、全ての真実です」

 アスティマは、全ての真実を語り終えた。

 その場にいた全員は、驚きのあまり固まってしまった。

「……アスティマ、これからどうするつもりだ」

「だから私は、ピュアカタストロフを呼び出し、

 この世界を完全に破壊した後に、新たな世界を創造するのです!

 私の中に残る、マスターハンドの力で……!」

「アスティマ……!」

 世界を救おうとするアスティマの眼は本気だった。

 そして、彼女が呪文を唱えると、灰色の空があの時のように引き裂かれた。

「後は、時間が経てば、この世界の過去からピュアカタストロフは現れます」

「そんな!」

「また、破滅を起こす気か……!? あれほど破滅は防ぎたいと言ったのに……!」

「何とか、復活を止めなきゃ!」

「なら、お前を倒してピュアカタストロフとやらの出現を止めるまでだ」

 覚悟を決めたクラウドはバスターソードを構えた。

「お前の事はよく分かっていないが……こいつらは、俺が守る!」

 

 スマブラメンバーとアスティマの戦いが始まった。




次回はヒロインとの戦いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第44話 戦闘! アスティマ

ヒロイン・アスティマとの戦いです。
スマブラの女性キャラは強いのが多いので、アスティマはちょっと弱めにしました。


「サモン・ホーリーナイト!」

 アスティマが呪文を唱えると、彼女を守るように騎士型精霊が出現した。

「こいつらを盾にする気か……」

「まずはこいつらから倒すぜ! 10まんボルト!」

 フォックスはまず、ブラスターを連射して精霊達に先制攻撃を行う。

 ピカチュウは精霊の一体に向かって電撃を放ち、大ダメージを与えた。

「はぁぁぁっ!」

 精霊はクラウドのバスターソードを盾で受け止め、剣で弾き返した。

「くそ、この剣が通らないとは」

「ファイアボール!」

 マリオは火炎弾を放って精霊を一体撃破した。

「おい、アスティマ! とっとと目を覚ましやがれってんだ!」

「私はとっくに目が覚めていますよ」

 リンクの弓攻撃をかわすアスティマ。

「大人しく消えなさい!」

 アスティマは、今度はカービィに向かって光の鞭を放った。

 カービィがそれを吸い込むと、鞭を武器とするウィップカービィになった。

「いっくぞー! 百裂ウィップ!」

 カービィは鞭を連続で振り回して精霊を攻撃する。

 精霊は剣を振り下ろしてカービィを攻撃しようとしたが、

 カービィはホバリングして回避し、ジャンプ打ちで攻撃する。

「行きなさい」

 二体の精霊はアスティマの命令でリンクとクラウドに剣を振り下ろした。

 クラウドは上手くバスターソードを、リンクは上手く盾を使ってダメージを最小限に抑えた。

「フォトンアロー!」

 アスティマは杖から無数の光の矢をベヨネッタに向かって放つ。

「危ない、ベヨネッタさん!」

 そこにカムイが割って入り、腕を竜に変化させて光の矢を食べた。

「食らえ、破晄撃!」

 クラウドはバスターソードから気を放ち、精霊がよろめいた隙に突っ込んで切り裂いた。

 精霊が消滅したのを確認したクラウドは、

 ターゲットをアスティマに切り替えて彼女を連続で切り裂いた。

「ぐ……流石は新参者ながらマリオさまと一、二を争う実力ですね。

 しかし! 私はここで終わりません! サンヒーリング!」

 アスティマは光を吸収し、自身の傷を癒した。

「ふっ」

「ナイスだブラピ!」

 飛びかかってきた精霊をブラピの狙杖で撃ち抜くブラックピット。

「アスティマのしもべは俺達がやるからよ、お前らはアスティマを止めに行け!」

「分かった!」

 精霊をフォックス達に任せたブラックピットは、アスティマの方へ向かっていった。

 

「滅びこそが救済だというのに……あなた達はまだ分からないのですか……!?」

「そんなのはアスティマじゃねぇ! アスティマの皮を被った悪魔だ!」

 今のアスティマは、マリオ達の目から見れば明らかに正気ではなかった。

 しかし、彼女は戦いをやめる様子はなく、むしろ攻撃は激しくなるばかりだった。

「ホーリーナイト、攻撃しなさい!」

 アスティマは精霊にカムイを斬るように命じた。

 カムイは攻撃を緊急回避し、精霊を斬りつけた。

「フォトンアロー!」

「きゃあああああ!」

 アスティマはカムイの攻撃の隙を突いて光の矢を一点集中させ、カムイを攻撃した。

「まだ、やる気ですか? 大人しく降伏すればいいものを……」

「俺達は絶対に降伏なんかしねぇ!」

「アス姉、元の優しいお姉さんに戻って!」

 カービィは鞭で精霊を攻撃しつつ、アスティマを必死で説得する。

「……まさか、私が光の力だけを使える、とでも思っていませんよね?」

「! その光は!」

 アスティマの杖には、黒い光が宿っていた。

 まるで、ハオスが使う闇の力のように。

「そう……私はハオスを殺し、その力を手に入れたのです! そして今、その力を使います!!」

 アスティマはそう言って、杖から闇の刃を放った。

 カービィは緊急回避とホバリングを使いこなし、全ての闇の刃を避けた。

 しかし、攻撃を避けた場所には精霊が立っていて、

 精霊は剣を振り下ろしてカービィに大ダメージを与えた。

うわあああああああああ!

「カービィ!」

「く……」

 カービィは何とか立ち上がったが、衝撃でウィップのコピーが解けてしまった。

「もうやめてよ、アス姉……。僕、アス姉と戦いたくないよ……。あんなに優しかったのに……」

「そんなぬるい説得では、私の意志は変わらない」

「確かに僕の言ってる事はぬるいかもしれない。でも、信じていれば、アス姉は元に戻る!」

 そう言って、カービィはハンマーを振り回してアスティマを攻撃しようとした。

 アスティマはハンマーが当たる直前に自分の周囲に細かな粒子を浮遊させた。

 その粒子の1つ1つが小さな盾の結晶であり、威力の高いハンマー攻撃をある程度防いだ。

「アスティマだって分かってるんだろ? ホントはこんな事は望んでないって!」

 マリオはファイアボールを連射してアスティマを遠くから攻撃する。

「黙りなさい! 今の私こそが、真実なのです!」

 アスティマは再び杖から闇の刃を三方向に放った。

 闇の刃が飛ぶ速度は速かったが、全員、シールドで何とか攻撃を防いだ。

「……もう、私と戦うのは無駄です。それは皆さんも分かっているでしょう?」

「分かっていても諦めないのが、俺達スマッシュブラザーズなんだ!」

 そう言ってマリオはアスティマに近付いた。

「俺達はお前を助けたいし、世界も救いたい。

 どちらかしか選べないなんて選択肢、俺は絶対に認めない!」

 マリオはアスティマの杖にアイスボールを放った。

 しかしアスティマは杖を回転させてアイスボールを消し去った。

「ダークスポイル!」

「くっ! 行けるか!?」

 アスティマの杖から黒い闇が放たれる。

 マリオはシールドで防いだが、シールドはその威力に耐え切れず砕け散り、

 マリオは無防備になってしまった。

 

「こっちは終わったか?」

「ああ、終わったぜ」

 フォックス、ブラックピット、クラウド、カムイ、

 ベヨネッタはようやく全ての精霊を倒し終えた。

「はぁ……とても強くて、疲れちゃいました……」

 カムイはこの五人の中で一番体力がないのか、ぺたんと座り込んだ。

「ええ。量より質、という言葉が似合ったわね」

 アスティマが召喚した精霊の数は少なかったが、

 一体一体が亜空軍のエリート兵に匹敵する強さの持ち主だった。

 それだけで、五人の苦労が良く分かる。

「マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウ……アスティマを絶対に止めろよ……!」

「世界の完全な滅亡は、阻止しろ!」

「私達の努力を無駄にしないでよね……!」

 

「マリオさま……マリオさまさえ死ねば……」

 ゆっくりと、無防備なマリオに近付くアスティマ。

 彼女の杖からは、白い光が湧き出ていた。

「この世界は……滅びと再生を迎える……」

「く……ぐぅ……うぅぅぅ……!!」

 マリオは必死で身体を動かそうとしたが、シールドブレイクの反動はまだ解けない。

 このままこちら側が何もしなければ、マリオの命はアスティマに奪われる。

(すまない……みんな……俺は……もう……)

 マリオが目を閉じ、涙を零したその時だった。

 

「はぁっ!」

「えいっ!」

「かみなり!」

 マリオとアスティマの間にリンクがブーメラン、カービィが飛び蹴り、ピカチュウが雷を放つ。

「リンク! カービィ! ピカチュウ!」

 マリオが三人を呼ぶ声と同時に、シールドブレイクの反動が解ける。

 アスティマは、もう少しで殺せたのに……と不快な表情になる。

「言っておくが、マリオは死なせないぜ!」

「何故……何故、あなた達は諦めないのです!?

 この世界はピュアカタストロフにより必ず滅亡するのですよ!?」

 諦めずに立ち向かっていくスマブラ四天王に、アスティマは焦りを見せた。

「ああ、それくらい分かってる。でもよ」

「分かってても、諦めないのが!」

「俺達、スマッシュブラザーズなんだ!!」

 リンク、カービィ、ピカチュウは、マリオに自分の力を分け与えた。

「マリオ、アスティマを元に戻すのはお前に任せる」

「ピカチュウ……」

「絶対に元のアス姉を取り戻して!」

「カービィ……」

「大切なのは、信じる心だ。俺達を、みんなを信じるんだ」

「リンク……。みんな、ありがとう……」

 三人の思いを受け取ったマリオは、凛々しい表情になるとアスティマに真っ直ぐ向き合った。

「アスティマ! お前の歪んだ救済は、今ここで止めてやる!」

「く……なんですか、この強い波導は……!」

 マリオの身体からは、目に見えるほどの強い波導が放出されていた。

 その場にいた、マリオ以外の全員が目を覆う。

いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ウルトラファイア!!

「そんなもの! ディヴァイン・パニッシュメント!!」

 マリオの炎とアスティマの光が押し合いになるが一瞬で炎が光を打ち消しアスティマに直撃。

「まさか、こんな甘い奴に私が負けるなんて……」

「甘くなんかないぜ。ちょっとした幸運で、どうしようもない運命も覆せるんだよ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 二つの奥義の爆風により、周囲は眩い光の中に包まれた。




マリオのセリフはTOSのロイドをイメージしました。
スマブラでも、ロイドのコスチュームはありますしね。
次回はラスボス戦に向けて一気に突っ走ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第45話 破滅に挑む

ラスボス戦前の準備です。
やっぱり最後はこうでなくちゃ、と思って投稿しました。


「く……ぅっ!」

 光が完全に止むと、マリオの目の前にはアスティマが倒れていた。

「アスティマ、大丈夫か? アスティマ!」

「わた……し、は……」

 アスティマは、ぼんやりとした様子だった。

 しかし身体はまだ光の粒にはなっておらず、死んでいない事が分かる。

「俺達の声が聞こえるか?」

「目は見えるのか?」

「……マリオ、さま……? それに、リンク、さま、も……。

 ……私は、今まで何をしていたのでしょうか……」

「?」

 アスティマの言葉に、全員はきょとんとした。

「……私は、ハオスを倒して……気が付いたら、ここにいたんです」

「もしかして、お前もハオスに操られていたのか?」

「……いえ、確かにあなた達を攻撃したのは私自身の意思でした。

 ハオスを倒した瞬間に、彼女が掴みかかってきて……私に、自分の意思を流し込んだのです。

 ハオスの考えが絶対の救済と思い込んだ私は、

 世界を救うために、ピュアカタストロフを呼ぼうとしたのです」

「そういう事だったのか……」

 アスティマは、淡々と真実を話した。

 彼女の様子を見たカービィは、はっとなってこう言った。

「あ、そうだ! みんな、急いで復活を止めないと! あそこの空を元に戻せば……」

 カービィがホバリングをして空の裂け目に向かっていった、その時。

 

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

「カービィ!」

 突然、裂け目から物凄い勢いの突風が吹き、カービィは吹っ飛ばされた。

 空を見ながらアスティマは杖を持ち呟く。

「もう、既に門は開かれたのです。世界はこれより終焉を迎え、再生するでしょう。

 ……しかし、今からあなた達に1時間の猶予を与えます」

「猶予?」

「ピュアカタストロフはあと1時間でこの世界に現れます。

 その間に、スマブラメンバーを集め、6つのチームに分けなさい」

「どういう事だ」

「ピュアカタストロフは本体の他に、

 それを支える4つの守護者……怒りの火・妬みの水・諦めの風・貪りの土が存在します。

 したがって、これらを撃破すればピュアカタストロフは弱まります。

 また、ピュアカタストロフ出現と同時にこの世界を魔物が蹂躙します。

 その魔物を討つチームも必要です」

 アスティマの表情に、迷いは微塵も感じられなかった。

 ハオスとの戦いが終わり、吹っ切れたからだろう。

「それが、私からの最後の願いです。どうか、必ずこの世界を純粋な破滅から救ってください!

 私は元創造神ですが、これくらいしかできる事はありませんので……」

「……分かった」

 これが、アスティマが最後にスマブラメンバーにお願いした事らしい。

 マリオは彼女の意志を受け取り、頷いた後、仲間と共にラストホープに戻った。

 

「……というわけだ。これはこの世界を救うためにも重要な事なんだ。

 みんな、真剣に聞いてくれ」

 マリオが神妙な面持ちで皆にそう話す。

 これには、いつもは軽い性格のソニックやジュニアも真面目に聞いている。

「俺達は、アスティマが呼んだピュアカタストロフを倒し、

 世界を救ってほしいと最後の依頼を受けた。今からやるのは、そのチーム分けだ」

「じゃ、まずはぼくがピュアカタストロフを倒す!」

「待て、ピュアカタストロフはとんでもなく強い。無闇に突っ込んでいけば返り討ちに遭う。

 だから、冷静に考えて、それぞれに戦力を割いて戦おう」

「わ、分かった」

 

 相談の結果、チーム分けはこのようになった。

 ピュアカタストロフ本体:

 マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウ、ソニック、クラウド

 

 怒りの火:

 ピーチ、ゼルダ、サムス、フォックス、ドクター、リトルマック、

 ピット、パルテナ、ベヨネッタ

 

 妬みの水:

 ファルコン、マルス、ロイ、アイク、ルフレ、デデデ、トゥーンリンク、

 スネーク、ロゼッタ、ダックハント

 

 諦めの風:

 ドンキーコング、ディディーコング、こどもリンク、ロート、ゲッコウガ、ルキナ、

 ブラックピット、ロックマン、パックマン

 

 貪りの土:

 ネス、リュカ、ウォッチ、リィン、ルカリオ、ファルコ、オリマー、シュルク、リュウ、カムイ

 

 防衛:

 ルイージ、ヨッシー、アイスクライマー、シーク、ピチュー、プリン、メタナイト、りょう、

 ソレイユ、リュンヌ、クッパ、ジュニア、ワリオ、ミュウツー、ガノンドロフ

 

「防衛チームが結構多いな。なんでだ?」

「大勢でピュアカタストロフと渡り合ったら、その余波で世界がどうなるか分からない。

 それに、大ボスを倒してもこの世界がボロボロになったら意味がないだろ?

 だから、ピュアカタストロフには6~9人で立ち向かうんだ」

「そうなのかー」

「そういう事だ。じゃあ、準備しろよ!」

 

 そして、決戦前。

 それぞれのメンバーは、最後の戦いに向けて決意を固めていた。

 

 怒りの火と戦うメンバー達。

「いよいよ、この世界を救うための最後の戦いが始まるわね」

「私達の行動に、この世界と私達の世界の命運がかかっています」

「だから、絶対に気を抜いちゃ駄目よ。必ず、勝って無事に元の世界に帰るのよ」

「どんな不可能も可能にする。それが『奇跡』というものなのよ」

「ふふ、私達が最後に見せる奇跡は、どういうものになるのかしらね?」

 ピーチ、ゼルダ、サムス、パルテナ、ベヨネッタの五人はしっかりと決意をした。

 彼女達はただ月のように隠れているだけでなく、太陽のように前で光り輝きたいと思っていた。

「オレ達が戦うのは、ピュアカタストロフを守っているオプションに過ぎない」

「だが、こいつらを倒せば、本体に挑むマリオ達が戦いやすくなる」

「この戦い、絶対に勝って見せます! 勝たなければ、本当に世界は終わりますから!」

 フォックス、リトルマック、ピットは、

 最高のホンキ度の如き表情で怒りの火に挑む事を決めた。

「本当は、戦いたくなんてなかったよ。だけど、みんなの様子を見て、僕は決めたよ。

 ……僕は、世界とみんなのために戦う!」

 ドクターは、戦うのは専門ではなかったが、皆に尽力するために彼も共に戦う決意をした。

 

 妬みの水と戦うメンバー達。

「皆、怖気づいてはいけないゾイ!

 これは、この世界と元の世界に関わるとっても重要な戦いなんだゾイ!」

 デデデが前に立って皆を鼓舞する。

 今の彼の威厳は、「自称」大王ではない、「本物の」大王のそれだった。

 いつにないデデデの真剣な態度に、他のメンバーも同じように真剣になった。

「……ルフレ、この戦いは……」

「おや、ロイ。僕を信用していないのかい? 僕の指示に、今まで間違いはなかったかい?」

「なかった気がする」

 ルフレは多くの戦いを勝利に導いてきたのか、軍師として絶対の自信を持っている。

 そんな彼は、少し自信が持てないロイを勇気づけようとしてこう言った。

「気がするじゃない、『なかった』。仲間を信じる心、それが勝利への一番の考えさ」

「そうだね。ああ、僕とした事が弱気になってしまったよ。

 なんで一番大事な事を思い浮かばなかったんだろう」

「僕も、君と一緒に戦うよ。ロイ、君は僕達の中で一番若いからね」

「あんたとは故郷の世界が違うが、同じ炎の紋章を掲げる者として、俺も最後まで付き合おう」

「ありがとう、マルス、アイク!」

 マルスとアイクも、ロイと共に戦う事を決意した。

 

「かなりの大役を引き受けてしまったな! 世界を救うという目標、絶対に達成しよう!」

「ああ。俺達がこの世界を背負う形で戦うんだ。その責任はとても重い、気を抜くな」

 ファルコンは明るい口調ながらも、その眼には強い光が宿っていた。

 スネークは腕を組み、静かに話した。

「責任、かぁ。ボク達は世界を救えるのかなぁ?」

「あまり重く考えるのも良くないぞ。責任は、お前一人で背負い込むものではない」

「ロゼッタさん」

「ばうばう! ばばうばう、ばうばう!」

「あ、ハントもボク達と一緒に戦ってくれるんだね。ありがとう。一緒に頑張ろうね」

「ばう!」

 トゥーンリンク、ロゼッタ、ダックハントも彼らの様子を見て、共に破滅と戦う事を決めた。

 

 諦めの風と戦うメンバー達。

「なんだかよく分かんねぇけど分かったぜ!」

 頭が良くないドンキーコングは、この重大な事を深く考えなかった。

「ドンキーのパワーさえあれば、この世界を狙う奴もやっつけられるよね!」

「ボク達も手伝ってあげるから、安心して諦めの風と戦えるよ!」

ウホウホーーー!! 終わったら後でバナナを食うぞーーー!!

 ディディーコングとこどもリンクも彼を応援した。

 ドンキーコングは二人の応援によりさらに明るくなった。

「トルトゥ、フィオーレ、ブレイズ。俺を信じて、大きな敵に立ち向かうんだ」

 ロートは、自分が持っている三匹のポケモンにそう言った。

 彼自身は普通の人間であり、戦う力はないが、ポケモン達を信じる心と判断力はある。

 そのため、彼にできる事は、信じたポケモンを諦めの風にぶつける事だった。

「ボク達だって」

「破滅には負けないよ!」

 異世界から来た存在、ロックマンとパックマンがお互い腕をぶつけ合う。

 かつてない危機でありながらも明るい二人は、その場にいるメンバーに光を与えた。

「ゲッコウガさん、ブラピさん……私と、最後まで一緒に戦ってください。

 私一人だけでは、戦えないんです」

「忍は裏切るべからず。最後まで付き合おう」

「まぁ、ここまで来たからには、逃げるわけにはいかねぇしな! ってブラピじゃねぇよ」

「二人とも、ありがとうございます。私もその期待に応えるべく、この剣を振るいます!」

 そう言って、ルキナは裏剣ファルシオンを掲げた。

 ドンキーコング、ディディーコング、ロート、ロックマン、

 パックマンは彼女を見て歓声を上げた。

 ゲッコウガも、顔には出していないがルキナの決意を見届けていた。

 

 貪りの土と戦うメンバー達。

「ネス君……」

「リュカ! 僕と一緒なら、どんな困難も乗り越えられるよ!」

 ネスは、リュカの肩に手を置いた。

 親友として、これがリュカにかけられる声だとネスは思った。

「ありがとう、ネス君。ボクも、ネス君の期待に応えられるように頑張るよ」

「一緒に頑張ろうね!」

「……うん!」

 そう言って、ネスとリュカは友情の握手をした。

「感じる……感じるぞ……凄まじい波動が!」

「この世界を蹂躙しようとしている、邪なる波導が来る……!」

「リュウ、ルカリオ」

「だが、お前達と私の波導は、決してあの波導に負けはしない!」

「俺はこの戦いから逃げない。無様に逃げて生き延びるよりは、勇敢に戦って散った方がいい!」

「二人とも凄いね。……よし、僕も」

 リュウとルカリオの気迫を見たシュルクは、静かに未来視を発動させる。

 それは、自分達が貪りの土に勇敢に立ち向かっている姿だった。

「スゴイデスネ……シュルクサン、ミライガミエルナンテ」

「コレナラ、アンシンデキマスネ」

 感心するウォッチとリィンに、シュルクは未来視を解いてこう言った。

「僕がさっき見た光景は、絶対じゃない。

 ちょっとした幸運や不運で、未来はいくらでも変わってしまうのさ」

「ソウデスカ……」

「まぁ、占いだと思ってればいいよ。

 もしも悪いものが見えたら、それは事前に防ぐ事ができるって意味なんだよ」

「「ヨクワカリマシタ~」」

 この力で多くの危機を救ったからこそ言えるシュルクの言葉に、ウォッチとリィンは納得した。

「ファルコさん、オリマーさん。こんな大役を任されて、私は大丈夫でしょうか?」

「何言ってんだよ、それは俺だって同じだぜ?」

「君はまだ若い。その命を散らすわけにはいかない。だから、私達のような大人がいる」

「ビビって逃げたらそれこそ恥だ。お前はちゃんと、前だけ見てろよ!」

「はいっ!」

 ファルコの応援に、カムイは元気づけられた。

 当の彼は「なんでこんな奴の応援をしたのか」と、軽く毒づいていたという。

 

 この世界の防衛を担当するメンバー達。

「ぴちゅ、ちょっとこわいでちゅ」

「ぷりんもでしゅ」

「大丈夫だよ、二匹とも。僕がついているから」

 ルイージはプリンとピチューを優しく撫でた。

「僕は、兄さんみたいに勇気はあまりない。

 だけど、ここにいるみんなを守る、という信念は持っている。

 確かにこの世界は一度終わった。だけどまだ完全には終わっていない。

 僕達が目指すのは、空しいハッピーエンドじゃない! 最高の、トゥルーエンドだ!!」

「おお~~~!!」

 あの臆病なルイージが、勇気をもって皆の先頭に立った。

 それだけで、ここにいるメンバーは驚いた……が、これも彼の信念なのだと何も言えなかった。

「この戦いが終わったら、い~っぱいご飯を食べましょうね~」

「ナナ! この世界は絶対に守ろうね!」

「ええ! そのためにはポポも頑張りなさいよ!」

「これ以上、悲劇は起こってほしくない……だから、僕達は戦う!」

「我々が簡単に破滅を受け入れるほど弱くない事をここで証明してみせる」

「僕のスローライフを守るためにも、あいつをやっつけなくちゃね!」

「夫婦揃って完全勝利を目指しましょう、リュンヌ」

「ああ……そして、愛しているよ、ソレイユ」

「こんな侵略者などに、我輩の世界を明け渡すつもりなど微塵もないのだ!」

「ないのだー!」

「……やれるだけ、やるか」

「オレ様のパワーでピュアカタストロフなんかボッコボコにしてやるぜ!」

 ヨッシー、アイスクライマー、メタナイト、りょう、ソレイユ、リュンヌ、クッパ、ジュニア、

 ミュウツー、ワリオも、そんなルイージについていく事を決めた。

 

 そして、ピュアカタストロフに挑むメンバー達。

「これは俺の走る場所を守る戦いなんだよな。

 ……しかし、こればかりは真剣にやらないと、最悪の結末になってしまうよな」

 ソニックは今まで何度も、自分の気の赴くままに走り、結果的に何度も世界を救ってきた。

 なので、今回も、自分の場所を守るためにいつも通りに行こうと思っていたが、

 皆の様子を見て自分もそれに合わせた。

 

 ふと、クラウドはピカチュウが震えているのを感じて彼にこう言った。

「……どうした、ピカチュウ。震えているのか?」

「何言ってんだよ、武者震いだっつーの」

「僕、これからももっともっといっぱいみんなと遊びたいし、ご飯だっていっぱい食べたい。

 だから、絶対に諦めない! この世界も元の世界も終わらせない!!」

「終わりはいつか必ず来るものだが、いつ来るのかは終わりに任せればいいだろ?

 誰かの勝手な都合で世界が終わってたまるかよ!」

「純粋なる破滅は、人の悪意が生み出したもの。

 俺達がここに呼ばれた事が、この世界を救ったと信じたい!」

 この宇宙が永遠に破滅と再生を繰り返す……そんな地獄は、もうたくさんだ。

 マリオ、リンク、カービィ、そしてピカチュウは、

 己の信念とアスティマの言葉を信じ、ピュアカタストロフを倒す決意をした。

「Actions speak louder than words. うじうじ悩んでる暇があったら走って成果を上げようぜ」

「この決戦なんかに、興味な……くないね」

 異世界から来たソニックとクラウドも、彼らの言葉に乗るのだった。

 

「……来ました!」

 そして、全員が決意表明をしたのと同時に、開いた門から“それ”は現れた。

 純粋なる破滅――ピュアカタストロフと、それを生み出した悪しき4つの心、

 怒りの火、妬みの水、諦めの風、貪りの土が現れた。

 彼らを倒せば、この世界は本当に、救われる。

 

「みんな、これがホントにホントの最終決戦だ……行くぞ!!」

 争いの世界の、過去・現在・未来を賭けた、最後の戦いが、始まった。




ソニックの英語のセリフは、彼らしいものを選んで決めました。
次回は最終決戦です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第46話 この世界のために

ラスボス戦です。
まずは前座と参ります。


 この世界を破滅に導こうとする存在との戦いの火蓋が、切って落とされた。

 

「まずは先制攻撃だ! ジャブ! ストレート!」

 リトルマックが怒りの火に突っ込んで連続でパンチをする。

「ミサイル!」

 次に、サムスはミサイルを撃ち込んだが、怒りの火に吸収されてしまった。

「どうやら火の攻撃は通用しないようね……」

 サムスが相手の出方を伺っていると、怒りの火が手から火炎弾を放つ。

 サムスは上手く攻撃をかわし、

 怒りの火の防御が薄い部分を狙ってアイスミサイルを放ち、凍らせた。

 フォックスは凍った部分にブラスターを連射して防御を打ち崩し、

 ピットのパルテナの神弓がそこを貫いて大きなダメージを与えた。

「オォォォォォォォ……!」

「あら、貴方の炎はそんな火力なの?」

 怒りの火はパルテナに突っ込んでいき、拳を打ち込んで火炎弾を放つが、

 パルテナにいとも簡単に打ち消された。

「私の光を受けてみなさい」

「ギャァァァァァァァァァ!」

 パルテナは光の柱を放つと、怒りの火は大ダメージを受けて叫び声を上げた。

「ピーチさん、前は任せます!」

「ありがとう、ゼルダ! そぉ~れっ!」

 ゼルダはピーチのフライパンに魔力を纏わせ、威力を上げると、

 ピーチは勢いよくフライパンを怒りの火に振り下ろした。

 魔法の力を受けたピーチのフライパンは、怒りの火に効果的なダメージを与えられた。

「行くわよ! スティレット、ブレイクダンス!」

 さらに、ベヨネッタは追撃としてバレットアーツを繰り出し、さらに体力を削っていく。

「よし! 結構いいダメージを与えられたわね」

 ピーチがガッツポーズをしていると、突然、怒りの火の身体が赤く光り出した。

「! この攻撃はかわしきれない! みんな、私の後ろに行って!!」

 パルテナの指示で、大急ぎで全員、彼女の後ろに行った。

「反射盤!」

 パルテナは杖を振り、ピーチ達の目の前に光の壁を作り出した。

 次の瞬間、怒りの火から凄まじい量の熱が放出された。

 その熱は人の醜い心が具現化したかのような、

 少し掠っただけでも焼き尽くされそうな勢いだった。

 光の壁は熱を怒りの火にある程度反射した後は砕け散り、

 残った熱がパルテナ達に大ダメージを与えた。

「……っ、はぁ。何とか戦闘不能は免れたようね。みんな、大丈夫? 回復の奇跡!」

 パルテナは回復の奇跡を使って全員の傷を癒した。

 ドクターも、傷ついている者にカプセルを与えてダメージを回復させた。

「凄いねぇ、パルテナは。こんなにたくさんの人を一度に癒せるなんて」

「そう褒めてくれると嬉しいわ」

「それでも、受けたダメージは大きいですね。その分をあいつに一発お見舞いします!」

「一緒に踊りましょう?」

 ピットは反撃でパルテナの神弓から矢を放った。

 ベヨネッタは彼に続いてバレットアーツで怒りの火を攻撃した。

「いくぞ! ストレート!」

 リトルマックは気合を込めてストレートを放ったが、怒りの火の熱に打ち消されてしまう。

 怒りの火は反撃として火炎弾を放った。

 リトルマックは攻撃をかわした後、反撃の拳を一発与えた。

「このままいけば、怒りの火を倒せる! オレがとどめを刺すから、その間に攻撃を頼む!」

「うん!」

「ライジングアッパーカット!」

 リトルマックはアッパーカットを放ち、怒りの火を上空に吹っ飛ばす。

 続けてベヨネッタがジャンプをしてスカボロウフェアで怒りの火を連続攻撃する。

「ヒステリックボム!」

「ファントムアタック!」

「チャージショット!」

 そこに、ピーチ、ゼルダ、サムスの遠距離からの連続攻撃が入る。

「天の光!」

「トルネードシャフト!」

「アンダースラッシュ!」

 パルテナが杖を振りかざすと、聖なる光が怒りの火を包み込む。

 光が怒りの火を束縛している隙に、フォックスは怒りの火に連続蹴りを放った。

 その後、ピットが双剣に変化させたパルテナの神弓で怒りの火を地面に叩きつけた。

「今だ、リトルマック!」

「とどめだ! KOアッパーカット!!」

 そして、リトルマックの強烈なストレートが怒りの火に命中すると、

 怒りの火はその威力に耐え切れず、木っ端微塵に砕け散った。

 

「よし、怒りの火は倒したわ!」

「皆さんはどうなっているのでしょう……?」

 

 一方、こちらは妬みの水がいる場所。

 ファルコン、マルス、ロイ、アイク、ルフレ、デデデ、トゥーンリンク、

 スネーク、ロゼッタ、ダックハントが戦っていた。

「いけっ、チコ!」

「ぴぃー!」

 ロゼッタの声で、チコが妬みの水に体当たりする。

 チコは妬みの水の中央に吸い寄せられるように、妬みの水にクリーンヒットした。

「ばうばう!」

 ハントもダックと協力して妬みの水を攻撃する。

「はぁぁぁぁっ!」

「「ダブル・マーベラスコンビネーション!」」

 マルスとロイの連続攻撃、アイクの強烈な一撃が妬みの水を切り裂く。

 しかし、妬みの水はすぐにちぎれた身体を元に戻し体勢を整え直した。

 妬みの水の身体が青く光ると、水が蛇のようにうねりマルス、ロイ、アイクを打ち据えた。

「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」

「ぐぅっ!」

 当たる直前にシールドを張った事でダメージは抑えられたものの、

 衝撃で三人は吹っ飛ばされてしまった。

「大丈夫かい?」

「あぁ、何とか防げたよ」

「ちょっと身体は痛いけどね」

「問題ない」

「そうか。よし、ここは僕に任せて」

 そう言うと、ルフレは三人の前に出る。

「サンダー!」

 ルフレは、地面に向かって雷を放った。

 妬みの水は飛び上がって攻撃をかわすが、雷は跳ね返って妬みの水に命中した。

「ピカチュウの技を参考にして、自分でもこれが使えるかな、と思って試してみたんだ」

「ほぉ……」

「流石だゾイ」

 ルフレは知識だけでなく、理解力もかなり高かったようでアイクとデデデは感心する。

「って、感心するのはまた後にするゾイ! ワドルディ、足止めを頼むゾイ!」

 デデデはワドルディをけしかけて、妬みの水を足止めさせる。

 ワドルディはワニャワニャと鳴きながら妬みの水にしがみついている。

 その間にデデデはハンマーに力を溜め、勢いよくぶちかました。

 その衝撃でワドルディは吹っ飛んでいったが、妬みの水に大ダメージは与えられた。

「閃光弾だ!」

 スネークは閃光弾を投げつけ、妬みの水の動きを一瞬止める。

「てやぁっ! とぉっ!」

「はっ! ふっ!」

 その間にトゥーンリンクとファルコンの攻撃が妬みの水に命中する。

 妬みの水の身体が青く輝くと、大量の水弾がファルコン達を襲った。

 ファルコン達はシールドを張って何とかダメージを最小限に抑えたが、

 大きくよろめいてしまい隙ができてしまう。

()うわぁぁぁぁぁぁっ!」

 そこに妬みの水の容赦ない追撃が入り、大ダメージを受けた。

 

「随分と執念深いな」

「妬みの水と呼ばれているだけあるからな」

「ならばその執念をここで終わらせてやろう。ギャラクシースマッシュ!」

 ロゼッタは手からエネルギーを放出したが、妬みの水はそれを吸収した。

「私の力まで奪い取るとはな……」

「生半可な攻撃は通用しないという事か」

「それじゃあ、攻撃力が高いアイクとデデデが斬り込んで、僕達はサポートに回ろう」

「それがいいゾイ」

「ばうっ!」

 ルフレの指示で、アイクとデデデは妬みの水に突っ込んでそれぞれの武器で攻撃する。

 ダックとハントは二人に攻撃がいかないように注意を逸らす。

 ロゼッタも後方からチコで妬みの水を足止めした。

「トロン!」

「シールドブレイカー!」

「ドラゴンキラー!」

 ルフレ、マルス、ロイが、上手く防御の薄いところを狙って攻撃する。

 こうして防御が崩れたのを確認すると、アイクとデデデは頷いた。

「「フレイム・ジェットハンマー!!」」

 アイクの蒼炎を纏ったラグネルと、デデデの炎を纏ったハンマーが、

 動けなくなった妬みの水に命中した。

 それにより、妬みの水は小さな水弾となって弾け飛んでいった。

 

「世界は、必ず救ってみせる!」

「だからアスティマ、僕達を信じてくれ!」




次回はあいつらも戦っているという事を見せましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第47話 譲れないもの

スマブラヴィランズのターンです。
こいつらにも少しは見せ場を見せなきゃね。


 ルイージ、ヨッシー、アイスクライマー、シーク、ピチュー、プリン、メタナイト、りょう、

 ソレイユ、リュンヌは、この世界を守るために魔物の軍と戦っていた。

 クッパ、ジュニア、ワリオ、ミュウツー、ガノンドロフも、

 自分が住む世界のために今回は彼らと協力していた。

 

「ぴちゅう! ぴっちゅー!」

 ピチューはでんじはで魔物達の動きを止めた後、電撃で魔物にダメージを与える。

 現在、ピチューは修行を経て「電撃で自分もダメージを受ける」という欠点を克服しており、

 以前よりもかなり強くなっていた。

「ぴちゅ、みんなのためにがんばるでちゅ!」

「ありがとう、でもあまり無理しちゃダメだよ」

 ルイージがピチューにそう言った時、稲妻がピチュー目掛けて飛んできた。

「「危なーい!」」

 その時、一人と一匹の目の前にアイスクライマーが現れ、ブリザードで稲妻を打ち消した。

 次に二人はハンマーを振り回し、目の前の魔物を一掃した。

「僕も、兄さんに負けないように!」

「そぉ~れ!」

「♪~♪♪♪~」

 ルイージはファイアボールを連射し、炎に弱い魔物を倒していく。

 プリンも、うたうによって魔物を眠らせ、ルイージ達をサポートしていった。

 ヨッシーは一人と一匹の後方から卵を投げまくっていた。

「ぴちゅーしゃん!」

「ぴっちゅぅ!」

 ピチューがプリンに襲い掛かる魔物に近付き、でんじはで痺れさせて10まんボルトで一掃した。

 しかし、魔物は次から次へとピチュー達に襲い掛かる。

 アイスクライマーは魔物の攻撃をかわしつつ、ハンマーやアイスショットで攻撃していく。

「君達って本当に息ぴったりだね」

「当たり前じゃない、ずっとポポと一緒に氷山を登って来たんだから。ね!」

「ナ、ナナ……」

 ポンポンとポポの肩を叩くナナにポポは苦笑した。

「よし、みんな、この調子で魔物を倒していくよ!」

「おーーーー!!」

 ルイージの掛け声で、皆は一斉に魔物の群れを攻撃していった。

 プリンは何度もはたいて魔物にダメージを与え、ルイージとピチューも遠距離から攻撃する。

「いきますよぉ~! ごろごろたまご!」

「はっ! せい!」

 ヨッシーは自分を卵の殻で包んだ後、魔物の群れに体当たりをした。

 ルイージは魔物の群れに突っ込んでパンチやキックを繰り出して倒していった。

「これとこれをあわせて……はい、けーきがかんせいしたでしゅ♪」

 プリンは落ちた魔物の残骸を使って、ケーキのようなものを作った。

 ケーキのようなものからは異臭が出ていて、ルイージ達は思わず引いてしまった。

「いっきましゅ~♪」

 そう言ってプリンがケーキのようなものを魔物の群れに投げつけると、

 魔物はあまりの酷さに全員気絶した。

「……りょ、料理が効いてるうちに倒すよ……」

 ルイージが呟くと、プリン以外の全員は鼻をつまみながら魔物をそれぞれの技で倒した。

 

「ふぅ、魔物は結構減りましたね~」

「でも、油断は禁物だからね。それに、まだ向こうで戦ってる人もいるみたいだし」

「彼らのためにも、あたし達が頑張らなくっちゃね!」

「うん!」

 

 一方、こちらはシーク、メタナイト、ソレイユ、リュンヌ、りょう。

 彼らは、グールやミュータントと戦っていた。

「仕込針!」

 シークが手に仕込んだ針をグールの群れに投げつける。

 グールの群れの動きが一瞬止まったのを確認したリュンヌは、

 グールをエクササイズで鍛えた体術で倒す。

「そぉーれ!」

 りょうは空中から植木鉢を落としグールを倒した。

「うりゃりゃりゃりゃりゃ!」

 メタナイトの剣撃が、グールの群れを切り裂いていく。

 さらに、シャトルループで追撃し、敵戦力を着実に減らしていった。

「ぐぁっ!」

 だが、敵も負けてはいない。

 グールの群れは最前線にいたメタナイトを取り囲み、メタナイトをリンチしていった。

「くぅっ……!」

「この魔物は死ぬまで僕達を攻撃してくるようだ。だから、こっちもやるしかない!」

 そう言ってシークが攻撃に入ろうとした時、

 二体のミュータントがりょうとソレイユを吹っ飛ばした。

「……どうやら、別のものにも気を配る必要があるようだ」

 

「よし、グールの群れは片付け終わったぞ。大丈夫か、りょう、ソレイユ」

 シークは、体術と暗器を駆使してグールの群れを全て片付けた。

 グールの群れはりょうとソレイユに襲い掛かったが、全てシークが撃破したのだ。

「ええ、助かりました」

「ありがとう、シーク!」

「そうか」

 シークは目を二人に向けた後、すぐに残っているミュータントの方に向き直る。

「メタナイト、行くぞ」

「ああ! マッハトルネイド!」

「双蛇!」

 メタナイトが剣を振るって竜巻を起こし、シークが二度蹴りを放つ。

 ミュータントはタフで怯みもしなかったが、動きは鈍くかなりのダメージを与えた。

「こいつの動きは鈍い、だから連続で攻撃を当てていけばいい。真弓、鉈、鉈、百舌改!」

 シークは飛び蹴りでミュータントを浮かせた後、

 連続で手刀を放ち最後に飛び蹴りでミュータントを地面に叩きつけた。

「「りょうさん!」」

 衝撃と共にミュータントが地面に埋まったのを確認したソレイユとリュンヌは、

 同時に英雄のポーズを放ちりょうにパスする。

「えい!」

 りょうは打ち上げ花火で両方のミュータントを再び空中に浮かせた。

 とどめは、メタナイトが刺すためだ。

「とどめだ……強烈トルネイド!!」

 そして、メタナイトは高速回転斬りで、ミュータントを細切れにし、肉塊に変えるのであった。

 

「よし、こっちの方は終わったみたいだ」

「頑張りましたね、リュンヌ」

「ああ、よくやったよ、ソレイユ」

「クッパ達も、ちゃんと戦ってるよね?」

「恐らくはな……絶対に、死ぬなよ!」

 

「ジュニア! そっちは任せたぞ!」

「りょーかい!」

 そして、クッパ、ジュニア、ワリオ、ガノンドロフ、ミュウツーの、

 通称「ヴィランチーム」も、襲撃した魔物と戦っていた。

 「ヴィラン(悪役)」と呼ばれるだけあって、

 マリオ達ヒーローとは敵対し合う関係だ(ミュウツーはヴィランと言えるかは微妙だが)。

 しかし、彼らにも彼らなりに譲れないプライドがあり、そのために今回は共闘する事を決めた。

「いくぞー!」

「オレ様の前から失せろー!」

 ジュニアはクッパクラウン、ワリオはワリオバイクを巧みに操り、魔物の群れを一掃した。

 ワリオは「アレ」を封印しているため、愛用のワリオバイクに乗っている。

「ぬぅん!」

 ミュウツーも超能力で魔物を浮かせ、地面に叩きつける。

 飛び道具を使う魔物に対してはねんりきで対抗していた。

「俺達を異変に巻き込んだ落とし前は付けさせてもらうぞ!」

 ガノンドロフは闇の力を剣に纏わせ、大きく振り回して闇の波動を飛ばした。

 闇の波動は魔物達にあまりダメージは与えられなかったものの、動きを鈍くする事はできた。

「メガトンドロップキック!!」

 クッパは全体重をかけたドロップキックを魔物の群れにぶちかます。

 普段は当たりにくいこの技も、ガノンドロフのサポートのおかげで命中した。

 途中で魔物の攻撃を何度か受けたものの、非常にタフなクッパは怯む事はなく、

 無事にダメージを与える事ができた。

「はぁあああぁぁぁぁ!」

 クッパが口から炎を吐き、ゾンビやグールを焼き尽くし灰に変える。

 復活ができないよう、炎は最大火力にしてある。

「クラウンキャノン!」

「サイコキネシス!」

 ジュニアはクッパクラウンから鉄球を放ち、それをミュウツーが超能力で操り魔物に落とす。

 その時、ガノンドロフに荒れ狂う男と荒れ狂う女が襲ってきたが、

 クッパが身体で受け止めて彼らを投げ飛ばした。

「クッパ!?」

「今回だけは共闘すると言っただろう! お前が傷ついたら我輩も困るのだ!」

「それもそうだな、行くぞ! はぁぁぁぁぁ……魔人拳!」

 ガノンドロフは力を溜め、闇を纏った拳を巨大ミュータントにぶちかまして吹っ飛ばした。

「サイコブレ……ぐぉっ!」

 ミュウツーは大技を発動させようとしたが、荒れ狂う男のパンチを受ける。

 打たれ弱いミュウツーはかなりのダメージを受け、超能力を中断される。

「私とした事が……」

「だらしないなぁ、ミュウツー。ここはぼくが食い止めてやるよ!」

 そう言って、ジュニアはクッパクラウンに乗って魔物の群れに突っ込んでいく。

 それにより、魔物の群れは集中力を切らした。

 ジュニアは魔物の群れを1つにまとめた後、合図を送る。

「今だよ!」

「今度こそ……サイコブレイク!」

 ミュウツーは魔物の群れ目掛けて超能力を放った。

 魔物の群れは強烈な超能力に巻き込まれ、跡形もなく弾け飛ぶのだった。

 

「こんな未来など、我輩が認めるわけがないのだ! 絶対に未来は変えてみせるぞ!!」

「お父さんのためなら、ぼく、頑張るよ! こんな奴なんかに、負けてたまるか!」

「せっかく目の前にお宝があるってのに、それを諦めてたまるかよ!」

「俺が奪おうとする世界は、侵略者などに奪わせはしない!

 だから、この世界は俺がいただく!!」

「答えを見つけられないまま終わるのも……私にとっては最悪の未来だからな……!」

 

 魔物の攻撃は、今もより一層激しくなっていった。

 しかし、彼らは諦める事はなく、世界のために魔物に立ち向かっていく。

 大きな敵との戦いは仲間に託した。

 だから彼らは、仲間を信じて、今、この時間も、この世界の未来のために戦っている。

 

 そして、彼らは皆、それぞれ譲れないものを持っている。

 それはプライドや信念などの概念的なものや、世界などの物理的なものも含まれる。

 持つものは違っていても、譲れないという気持ちは同じだ。

 それが折れない限り、どんな苦境があっても立ち続けるのだ。




次回もホントの最終決戦は続きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第48話 戦いの行方

ラスボス戦クライマックスです。
特に語る事はありません。


 ドンキーコング、ディディーコング、こどもリンク、ロート、ゲッコウガ、ルキナ、

 ブラックピット、ロックマン、パックマンは、諦めの風と戦っていた。

(こいつは……ひこうタイプか? しかし、相性の良い技を持ってるポケモンがいない……。

 仕方ない、ここは一番強いこいつに任せるか)

 ロートの手持ちに、ひこうタイプと思われる諦めの風の弱点を突けるタイプの技はない。

 そこで、ロートは純粋に力勝負で諦めの風に挑む事にした。

「行けっ、ブレイズ!」

「リザァァァアアアアア!」

 ロートが手持ちから出したのは、リザードンのブレイズ。

 彼の手持ちの中では最も強く、また唯一メガシンカができるポケモンだ。

「かえんほうしゃ!」

 ロートがブレイズにそう言うと、ブレイズは口から炎を吐いて諦めの風を焼いた。

「うおりゃぁああ!」

 ドンキーコングは勢いよく諦めの風を殴ったが、諦めの風はその攻撃をかわす。

「くそ、速いな!」

「だったらこれでどうだ!」

 こどもリンクは弓に炎の矢を番えて放った。

 諦めの風はこどもリンクの速度に反応できず、ダメージを受ける。

「わ~っ、ちっとも当たらないよ!」

 ロックマンもロックバスターを撃っているが、諦めの風のスピードには対抗できていない。

「スピードに対抗するには、これしかあるまい」

 ゲッコウガは両手の刃に風を纏わせ、右手で諦めの風を切り裂き、

 さらに左手で諦めの風を切り裂いた。

 標的に必ず命中する技、つばめがえしだ。

「マーベラスコンビネーション!」

 ルキナは裏剣ファルシオンによる流れるような連続攻撃を放つ。

 その途中で諦めの風が突風を飛ばしてきたが、ルキナはカウンターで反撃し斬りつける。

「当たれ!」

「そ~れ!」

 ブラックピットはブラピの狙杖を構え、諦めの風の防御が薄いところを狙い撃つ。

 諦めの風が怯んだところにすかさずパックマンの追撃が入った。

「狙いはしっかり定めて……うおりゃあああああああ!!」

 ドンキーコングは相手の隙を見て、狙いを定め、腕を振り回しジャイアントパンチを放った。

 最大まで溜めたジャイアントパンチは、諦めの風の防御を貫き、大きなダメージを与えた。

 

「おっしゃあ!」

「やるねぇ、ドンキー!」

 諦めの風の体力を多く減らしたドンキーコングがガッツポーズをする。

 ディディーコングも喜んで拍手した。

 目の前に、諦めの風が作り出した鎌鼬が飛んできている事も知らず。

「うわああああああ!」

 鎌鼬に切り裂かれたドンキーコングの身体から血が噴き出す。

「ドンキー!」

 浅くはない裂傷にドンキーコングはふらりと体勢を崩した。

 それを見たパックマンは急いでドンキーコングの前に立ち、

 フルーツを食べさせて体力を回復させる。

「ボクのフルーツ、美味しいヨ!」

「あ、ああ……美味いぜ」

 ドンキーコングは、むしゃむしゃとフルーツを食べた。

 彼がフルーツを食べている間、

 パックマンはディディーコングと共にドンキーコングを守りつつ諦めの風を攻撃した。

 諦めの風の攻撃も激しくなっていったが、二人が怯む事はない。

「ブレイズ、フレアドライブ!」

「スカルバリアー!」

「リザァァァアアア!」

 ロートの指示と共にブレイズが炎を纏って諦めの風に突っ込んでいった。

 フレアドライブは威力が非常に高い大技だが、反動で自分もダメージを受けてしまう。

 しかし、事前にロックマンが張ったスカルバリアーにより反動ダメージをある程度減らせた。

「おっしゃー! 元気モリモリ!」

 フルーツを食べて元気になったドンキーコングが、皆の前にのしのしと出ていく。

「いくぜー! オレの一撃を受けろよ明るめの風!」

「それを言うなら諦めの風ですよ、ドンキーさん。シールドブレイカー!」

 ルキナがドンキーコングの言い間違いを修正しつつ、

 シールドブレイカーで諦めの風の防御を崩す。

「みずしゅりけん!」

 ゲッコウガが相手の背後に回り込み、みずしゅりけんを連続で発射する。

 防御の薄い部分を狙ったので、かなりのダメージを与えられた。

 諦めの風は前衛に向かって空を飛びながら突っ込んでいき攻撃を仕掛けた。

 その標的は、ルキナとロートのブレイズだ。

「リザァァァ!」

「ブレイズ!」

「危ねぇ、ルキナ!」

「ドンキーさん!」

 ブレイズは反応が遅れて風に切り裂かれる。

 ルキナに攻撃が届く直前で、ドンキーコングがルキナを庇い代わりにダメージを受けた。

「いっくよー、ブーメラン!」

「ロックバスター!」

「食らえー! パックダッシュバイト!」

 こどもリンクのブーメランが諦めの風に命中すると、

 ロックマンは最大まで溜めたロックバスターを諦めの風に向けて放ち、

 諦めの風を大きく吹き飛ばす。

 パックマンは姿を変えると吹っ飛んだ諦めの風に体当たりを仕掛けた。

「ピーナッツ・ポップガン!」

「ブレイズ、かえんほうしゃ!」

 ディディーコングがピーナッツ・ポップガンで諦めの風を撃った後、

 続けてブレイズがかえんほうしゃを放つ。

「マーベラスコンビネーション!」

 さらに、ルキナは流れるような剣撃で諦めの風を切り刻んだ。

 

「はぁ……『諦めの風』というから、すぐに諦めると思ったけど……」

「ボク達が『諦める』まで、攻撃はやめないみたいだネ」

 ロックマンとパックマンが、諦めの風を見てそう呟く。

 彼らが相手をしている四大属性の守護者は、それぞれ人の心の闇を象徴している。

 そのため、倒さなければ、心の闇を乗り越える事はできないのだ。

 諦めの風は巨大な顎を開けてリザードンに噛みつき攻撃を仕掛けた。

「ブレイズ、かわしてドラゴンダイブ!」

 ロートはブレイズに回避を命じ、ドラゴンダイブで諦めの風に体当たりをさせた。

 諦めの風はブレイズの強烈な突進に巻き込まれ、大ダメージを受け、

 その動きも鈍くなっていった。

「よし、今がチャンスだ! 行くぞ、ブレイズ! メガシンカだ!」

 ロートのメガバンドに付いたキーストーンから光が放たれると、

 ブレイズのメガストーン、リザードナイトXと共鳴した。

 そして、光と共に現れたのは、

 黒い身体に大きな翼、青い炎を纏う牙と尾を持つリザードン、メガリザードンXだった。

「リザァァァァァァァァ!!」

「ブレイズ、ドラゴンクロー!」

 ロートのブレイズが、爪を振りかざして諦めの風を切り裂く。

 ドラゴンタイプになった事で、その威力はさらに高まった。

「続けて、かえんほうしゃ!」

「リザァァァァァァァ!」

「食らいな!」

 さらにブレイズとブラックピットは容赦なく追撃する。

 ブレイズは口から強力な火炎を吐き、

 ブラックピットが双剣に変化させた神弓シルバーリップで諦めの風を切り刻んだ。

 

「とどめはボクに任せて!」

 諦めの風が弱ったのを確認したロックマンは、皆の前に出てロックバスターを構える。

 ロックバスターは最大までパワーを溜めていた。

「いくぞぉぉぉぉ! ロックバスター!!」

 そして、ロックマンのロックバスターが諦めの風に命中すると、塵となって消滅するのだった。

 

「やっ、た……ボク達の、勝利だ……」

 ロックマンは、諦めの風を倒したという達成感から、ふぅ、と息をついていた。

「よく頑張ったネ、ロックマン!」

「皆さんの期待に、応えられましたね」

「ボクもちゃーんとやったからね!」

 同じく異世界の住人であるパックマンがとどめを刺したロックマンを讃える。

 ルキナやこどもリンクも、この勝利に喜んでいた。

「お疲れ様、ブレイズ」

「リザァァァァ……」

 元の姿に戻ったブレイズが、ロートのモンスターボールの中に入る。

「ま、とりあえずこれで、世界も安心だろ」

「そうだよね!」

 ドンキーコングとディディーコングもほっと一安心した。

 

「……」

 しかし、ゲッコウガは、徐々にこの世界に来る「何か」を感じていた。

 

 そして、ネス、リュカ、ウォッチ、リィン、ルカリオ、ファルコ、オリマー、シュルク、

 リュウ、カムイは、貪りの土と戦っていた。

 ウォッチとリィンは、事前に擬人化してそれぞれ武器を構えている。

 貪りの土は、大きく口を開いて叫んだ。

「う……うぅ……!」

「みんな、聞いちゃダメ! ボク達が守るよ、ディフェンスアップΩ!」

「ディフェンスアップΩ!」

 ネスとリュカはディフェンスアップΩを使い、貪りの土の攻撃を防いだ。

「波動拳!」

 リュウが両手から波動を飛ばして貪りの土を攻撃する。

 その攻撃は大したダメージにはならなかったが、牽制をする事はできた。

「くっ……硬いね……!」

 シュルクはモナドを振り回して貪りの土を切り裂いたが、相手の硬い防御に阻まれる。

「一体どうしたら、効果的なダメージを与えられるのでしょう」

「分からない……とりあえず、相手の弱点を探すしかないか」

 シュルクが貪りの土の弱点を探していた時、

 貪りの土が2本の槍をウォッチに向けて飛ばしてきた。

「危ない、ウォッチ!」

「はぁぁぁっ!」

 ウォッチは棒を振り回して2本の槍を弾き飛ばした後、貪りの土目掛けて棒を振り下ろした。

 貪りの土にダメージは与えられなかったが、動きを一瞬止める事には成功する。

「ヘッドショット!」

 そこに、リィンが拳銃から放った弾丸が命中し、貪りの土の身体に大きな穴を開けた。

 貪りの土は悶え苦しみながら周囲に土の弾を放つ。

「「ディフェンスアップΩ!」」

 ネスとリュカはディフェンスアップΩで攻撃を防ぎつつ、PKファイアーで貪りの土を焼き払う。

「行けっ!」

「おら! おら! おらぁ!」

 オリマーが貪りの土に突っ込んで紫ピクミンを投げつける。

 ファルコはピクミンに当たらないようにブラスターを連射して攻撃する。

「堅い防御には……グロウパンチ!」

 ルカリオは貪りの土に接近して拳を叩き込んだ。

「ちょ、ルカリオさん! そんな攻撃では貪りの土に歯が立ちませんよ!」

「まだだ……グロウパンチ!」

 カムイの制止を聞かず、ルカリオは連続でグロウパンチを放つ。

「……そうか」

 この時、ゲッコウガは気付いていた。

 ルカリオの攻撃力が、グロウパンチを放つ度に上昇していた事を。

「グロウパンチ!」

 そして、六発目のグロウパンチが命中したところでルカリオは次の技の体勢に入った。

「はっけい!」

 ルカリオは両手に波導を纏わせ、貪りの土に叩きつけた。

 まともに一撃を食らった貪りの土の身体が大きく変形した。

「こ、これは……!?」

「グロウパンチの追加効果で、私の攻撃力が上がったのだ」

 そう、ルカリオの使った技「グロウパンチ」は、繰り返し打つ事で徐々に拳が固くなる技だ。

 ルカリオは攻撃力を最大まで高めたため、はっけいの威力が上昇したのだ。

「よし、この調子で僕達もいこう!」

「はい!」

 シュルクとカムイは武器を構え、貪りの土に突っ込んで斬りつけた。

 貪りの土は身体を振るわせて弾丸を放つ。

「くぅ!」

「ここは、叩く!」

 シュルクはモナドアーツ「斬」を発動し、自身の攻撃力を高めた。

「モナドスマッシュ!」

「えい!」

 シュルクはモナドの剣先で突き、光の刃を突き出した。

 カムイは腕を竜化させて貪りの土を貫いた。

「トゥルーストライク!」

「ガンバスター!」

「跳槍突!」

 ウォッチとリィンがそれぞれの武器で貪りの土を攻撃した後、カムイが飛び上がって槍で貫く。

「インファイト!」

「おりゃぁぁぁぁ!」

 ルカリオは相手の懐に飛び込み、連続攻撃を放つ。

 ファルコは両翼を振り下ろして貪りの土を切り裂いた。

「「PKダブルフリーズ!」」

 さらに、ネスとリュカが同時に冷気を放って貪りの土を凍らせた。

「とどめは任せたぞ!」

「ああ!」

 リュウは、貪りの土にとどめを刺すために、最大の必殺技の構えを取る。

「真空……」

 リュウの両手に波動が溜まる。

 その波動は、ネス達の目にはっきりと見えるほど強くなっていた。

「波動拳!!」

 そして、リュウが最大まで溜めた波動を解放すると、

 波動が極太のレーザーとなって貪りの土を包み込む。

 すると、その場にいた全員が目を覆うほどの大爆発が起こった。

 

「……これで、終わったかな?」

 大爆発が治まると、その場にいたのはネス達だけだった。

 貪りの土はリュウの真空波動拳に巻き込まれ、この世界から跡形もなく消滅した。

 そう……ネス達は、貪りの土に勝利したのだ。

 

「大丈夫……ボク達は、自分のやるべき事をやったよ」

「だから、純粋なる破滅なんかに、絶対に負けちゃダメだよ……!」

 貪りの土が撃破されたため、残る敵はピュアカタストロフのみとなった。

「俺達の努力を無駄にするんじゃねえぞ……!

 できればウルフにも、戻ってきてほしいからな……!」

 

 そして、ピュアカタストロフと対峙しているのは、

 マリオ、リンク、カービィ、ピカチュウのスマブラ四天王と、

 ソニック、クラウドの異世界から来た戦士だった。

「これが……純粋なる破滅……」

 六人の前に広がっていたのは、様々な色が混ざった沸騰するエネルギーだった。

 知力も知覚力も存在せず、「破滅をもたらすもの」としか表現のしようがない。

「……こいつが、俺達がこの世界で戦う最後の大ボスなんだな」

「ここは、アス姉が守りたかった世界。だから、アス姉のために、戦わなきゃ!」

「こいつは人の罪が生み出したと言っていた。

 だけどな……俺達はこの罪を乗り越えるためにここに呼び出されたんだぜ!」

「破滅なんて絶対に迎えさせない! いつも通りに、走って倒すだけだ!」

「悪いが、俺達にも負けられない理由があるのでな」

 ピュアカタストロフから溢れ出るエネルギーは凄まじかった。

 しかし、六人がそれで屈する事はなく、それぞれ戦闘態勢を取り破滅に挑む準備をした。

 

「みんな……これが最後の戦いだ……行くぞ!!」




次回は最終決戦です。
この物語を最後まで読んでください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第49話 ピュアカタストロフ

いよいよラスボスです。
どんな絶望も、希望があれば必ず打ち砕ける事を証明したくて書きました。
最後まで、見守ってください。


 ピュアカタストロフとの最終決戦が、始まった。

 

「ファイアボール!」

 マリオは手から火炎弾を放ち、ピュアカタストロフを攻撃した。

 しかし、ピュアカタストロフは受けたダメージを瞬時に回復する。

「なっ!?」

―マリオさま、マリオさま!

 驚愕するマリオに、突然アスティマのテレパシーが聞こえてきた。

「戦闘中なのに、どうしていきなりテレパシーを送るんだよ!」

―申し訳ありません。ピュアカタストロフは人の邪心を吸収して再生するのです。

「何!? 俺達にそんな心はないはずだ!」

―いえ、闘争心なども「邪心」に含まれるのです。

 つまり、マリオ達がピュアカタストロフを倒したい、

 という心をピュアカタストロフが吸収して回復したという。

「だったら、どうすればいいんだ!」

―単純ですが、再生が追い付かないほどのダメージを与えてください。

「分かった!」

 マリオはアスティマのテレパシーを切ると、リンク達に威力重視の攻撃をするように言った。

 リンク達は頷くと、戦闘態勢を取り直し、

 リンクはピュアカタストロフに突っ込んで剣で切り裂いた。

 ソニックは丸くなって音速で体当たりをした。

「凶斬り!」

 クラウドはバスターソードで凶の字状にピュアカタストロフを斬る。

「いっくよー! ハンマー!」

「10まんボルト!」

「「サンダープレス!!」」

 ピカチュウがカービィのハンマーに電撃を放ち、雷を纏ったハンマーにする。

 ハンマーがピュアカタストロフに命中すると同時に、ピュアカタストロフを痺れさせた。

 ピュアカタストロフは身体を変形して巨大な槍を生成し、広範囲を薙ぎ払った。

「ぐおっ!」

「うわっ!」

 マリオ、リンク、ソニックは薙ぎ払い攻撃をかわすが、

 ピカチュウとクラウドは反応が遅れダメージを受ける。

 その直後に頭上からの唐竹割がピカチュウとクラウドを襲った。

うわぁぁぁぁぁぁぁ!

「く……っ!」

 クラウドは何とかバスターソードで防御して耐えたものの、

 防御力が低いピカチュウは重傷を負ってしまった。

「ピカチュウ!」

「くそ、凄い威力だったな……だが、立ち上がる!」

 ピカチュウは何とか、四つん這いになって立ち上がった。

「あんまり無茶はするなよっ!」

 ソニックはピカチュウを心配しながら体当たりしつつ回し蹴りを繰り出す。

 マリオはファイアボールで攻撃し、リンクはブーメランで相手の動きを一瞬止める。

 そこに、クラウドの一撃が入ってピュアカタストロフの体力を大きく削った。

「よし、これで結構いっただろう」

 クラウドがそう言うと、ピュアカタストロフは邪心を吸収し、

 巨大な黒い槍に変えてマリオ達に突き出した。

 その巨体と相まって、攻撃のリーチは凄まじい。

「危ない!」

 マリオはピュアカタストロフの黒い槍をスーパーマントで跳ね返し、

 ピュアカタストロフにぶつけた。

 すると、今度は大量の槍をマリオ目掛けて飛ばしてきた。

 マリオはスーパーマントで跳ね返し続けるが、一本だけ跳ね返せずカービィに流れた。

「カービィ!」

「僕に任せて!」

 カービィが槍を吸い込んで飲み込むと、スピアをコピーした。

「スピアカービィだよ!」

「よし来た!」

「月落とし!」

 カービィは槍を構え、落下しながらピュアカタストロフを突き刺した。

「ハァッ!」

 続けてソニックは球体になると音速で突っ込んでいきピュアカタストロフを攻撃する。

 マリオはソニックが攻撃をしている間に手に炎の力を溜めていた。

「食らえっ! ファイア掌底!」

 マリオの炎を纏った掌底がピュアカタストロフにクリーンヒットした。

 ピュアカタストロフは大きく悶え、そして歪んだ。

「やったぜ!」

 マリオが喜んでいると、ピュアカタストロフに邪悪な心が集まった。

「まずい! みんな、心をしっかり保て!」

「うん!」

「かみなり!」

「破晄撃!」

「スピアスロー!」

 クラウドの剣閃とピカチュウの雷、

 そしてカービィの投げた槍がピュアカタストロフに命中しダメージを与える。

 すると、ピュアカタストロフの周囲から邪心が放たれ、マリオ達を襲った。

「く……」

「苦し……ダメ……」

 ピュアカタストロフの邪心は、マリオ達の心に破壊衝動を植え付けていく。

 心が破壊衝動で満たされれば己を壊してしまう。

 マリオ達は心をしっかりと保っていたが、それでも限界は訪れようとしていた。

「負ける……ものかぁ!!」

 マリオは強い心でピュアカタストロフの攻撃を跳ね返した。

「こんなところでやられてたまるかよ!」

「そうだよ! アス姉の願いを叶えなきゃ!」

「勝って、この悲しい宿命を止める!」

 ソニックは超音速で体当たりを繰り出す。

 リンクはソニックの攻撃でピュアカタストロフが怯んだ隙を見計らい、

 スマッシュ斬りを繰り出す。

「クライムハザード!」

 クラウドは飛び上がって大剣を振り上げ、振り下ろしてピュアカタストロフを切り裂く。

「アイアンテール!」

「マリオトルネード!」

 ピカチュウは硬くした尻尾を思いきり叩きつける。

 マリオは身体を回転させてピュアカタストロフに突っ込み、ダメージを与えた。

『うわぁぁぁぁぁっ!』

 ピュアカタストロフから無数の氷の刃が発生し、マリオ達を切り刻む。

 さらにピュアカタストロフが身体を振るわせるとそこから漆黒の波動が迸った。

「うぅ……力が、出ない……」

「きっと、これは俺達の悪い心だと思う……」

「自分に負けちゃダメ、負けちゃダメ……!」

 六人は必死で、ピュアカタストロフの波動を耐えていた。

 タブーのOFF波動と比べ直接的な威力は低いが、六人の心を徐々に削っていた。

 シールドも徐々に小さくなっていき、やがてシールドは砕け散った。

「ぐぅぅ……!」

「つ、強い……!」

 ピュアカタストロフは、人々の心にある醜い部分から生まれた存在。

 だからこそ、ピュアカタストロフは強いのだ。

 しかし、これに立ち向かえるものは、強い心だ。

 折れてしまえば、その時点で敗北は確定すると言っても過言ではない。

「いいか……絶対に折れるなよ、絶対だからな」

「うん……!」

「いくぞっ、ファイア掌底!」

「凶斬り!」

 マリオの炎を纏った掌底とクラウドの斬撃がピュアカタストロフに命中する。

「アイアンテール!」

 ピカチュウも、尻尾を振るってピュアカタストロフを攻撃する。

 そこに、ソニックの体当たりとカービィのハンマーが入り、

 ピュアカタストロフに大ダメージを与えた。

「スマッシュ斬り!」

 そして、リンクの斬撃がクリーンヒットし、ピュアカタストロフの身体を引き裂いた。

 すると、ピュアカタストロフの身体を闇が多い、防御力を絶望的なまでに引き上げた。

 ただ普通に攻撃するだけでは、あの闇の衣を打ち破る事はできない。

 闇の防壁を打ち破るのは、光の力のみ。

―皆さん!

「その声は……アスティマ!?」

 再びアスティマのテレパシーが聞こえてきた。

―私の力です、受け取ってください!

 アスティマがそう言うと、突然、マリオの身体が虹色に光り出した。

「こ、これは!?」

「俺達の身体も光り出してるぜ……!」

 リンク、カービィ、ピカチュウ、ソニック、クラウドの身体も虹色に光り出す。

―あなた達に真実の心を与えました。

 これはスマッシュボールと同じ力……つまり、最後の切り札が使えるのです。

「そうか……ありがとう!」

 マリオが頷くとテレパシーは切れた。

「……みんな、力を合わせてくれ!」

 マリオの心が呼応すると、同時にリンク、カービィ、ピカチュウ、

 ソニック、クラウドの心も呼応する。

「アスティマが力を授けてくれたんだ。こんな嘘は、真実の心が打ち破ってやる!」

「行くぜ! ボルテッカー!」

 ピカチュウは強烈な電撃を身体に纏うと、ピュアカタストロフに凄まじい突進を仕掛けた。

「決めてやる!」

 ソニックの身体は金色に輝き、

 スーパーソニックになると光速の体当たりをピュアカタストロフにかました。

「トライフォースラッシュ!」

「ウルトラソード!」

「超究武神覇斬!」

 さらにリンク、カービィ、クラウドの剣撃がピュアカタストロフを切り裂いた。

 そして、両手に炎を纏ったマリオがピュアカタストロフに突っ込んでいく。

 

「これでとどめだ! マリオファイナル!!!」

 マリオは両手から灼熱の業火を放ち、ピュアカタストロフを飲み込んだ。

 そして、辺りは白い光に包まれた。

 

「やった……か!?」

 白い光が消えると、そこにはボロボロになったピュアカタストロフがいた。

 そう……ピュアカタストロフは、六人の最後の切り札を受けたが、

 重傷を負いながらもまだ消えていないのだ。

 ピュアカタストロフは最後っ屁と言わんばかりに世界の終末を唱え始めた。

「終わらせるものか……! 俺達はこれから、新しい世界を始めるんだ……!」

 マリオが最後の力を振り絞り攻撃しようとすると、リンク達の身体が光に変わり始めた。

「リンク!?」

「俺の思いを、マリオに託す!」

 光となったリンクは、マリオと一体化していった。

「マリおじちゃん、僕の力を使って!」

「これで負けたら、承知しないからな!」

「俺達の思いや絆は、決して断たれる事はない!」

 リンクに続き、カービィ、ピカチュウ、ソニックも光となってマリオと一体化していく。

「これが、本当の一つになる、か」

 クラウドも光になるとマリオの中に入っていく。

 

 この現象は外で戦っていた者達にも発生していた。

「あ、あら!?」

「どうしたんです、パルテナさ……うわぁ!」

 ピットとパルテナの身体が光になると、マリオのところに飛んでいった。

 

「どうか、この世界を救ってください……!」

 他のスマブラメンバーを光に変えていたのは、アスティマだった。

 アスティマは事前に全スマブラメンバーにテレパシーを送り、協力する事を頼んだ。

 一部のメンバーは乗り気ではなかったが、この世界のためならと今回は協力をする事にした。

 

「大丈夫。僕達を信じてね」

「一人一人の力は弱いけど……みんながいれば、大丈夫!」

「勝利の未来は、行動する事で掴んでいくんだ」

「この力を、君に捧げるよ」

「だから、頑張って!」

「俺の力を、受け取ってくれ」

「君なら必ず、あいつを止められるよ」

「マリオ、負けたらぜ~ったい承知しないからね!」

「私達の力を……」

「是非、受け取ってほしい」

「必ず生きて、元の世界に帰りましょう」

「チコ、マリオと一つになるんだ」

「ぴぃぴぃ!」

「俺達の力で、必ずあいつを倒してくれ!」

「とっとと勝って帰れよ!」

「大丈夫ですよ~。私、怖くありませんから~」

「この戦いは、勝てないものではない」

「頑張ってね!」

「兄さん、僕達が力をあげるから」

「破滅を阻止するんだよ」

「仕方ない、今回だけは協力の立場に回るのだ!」

「いいか! 負けるんじゃないぞ!」

「ゼニィ!」

「フシィ!」

「リザァ!」

「トルトゥ、フィオーレ、ブレイズ……よし、俺も力を与えてやるぞ!」

「頑張ってね」

「負けたらダメよ!」

「油断は禁物だぞ」

「必ず勝て……世界はお前にかかっている」

「マリオ! オレの力をやるから絶対勝てよ!」

「オイラも応援してるよー!」

「大丈夫! キミなら必ず世界を救えるよ!」

「だから、不安にならないでね!」

「安心しろ、私達がついている」

「傭兵は、最後の最後まで裏切るべからず。俺も最後までお前に付き合ってやろう」

「大切な仲間達のために、ボクも協力するよ!」

「ボク達の力、ちゃんと受け取ってネ!」

「プリンはかよわいけどがんばるでしゅ!」

「ぴちゅもがんばりまちゅ!」

「……今回はお前の力になってやる」

「だから、絶対に負けるなよ!」

「一人一人の力は小さくても、こうやって集まれば大きくなるんだ!」

「終わったら一緒にエクササイズしましょうね」

「戦いが終わったら、一緒に筋肉を鍛えましょう」

「この悲しい未来を終わらせてください」

「終わったらまたみんなで大乱闘しような!」

「油断大敵だ」

「ワシの力をやるから感謝するんだゾイ!」

「ワタシモアナタニキョウリョクシマス!」

「ボクモアナタノタメニチカラヲカシマス!」

「ばう、ばうばう!」

「今回だけは協力してやるよ」

「これが……一つになる、という感覚でしょうか」

「ふふっ、最後まで活躍できそうね!」

 この世界に呼び出されたスマブラメンバー全員が光となってマリオの中に入っていく。

「久々の俺様の出番だな!」

 そして、マリオの目の前に、ウルフの声を出す光が現れた。

「ウルフ……! お前、死んだはずじゃ……!」

「お前らがハオスを倒したから俺様は復活できるようになったんだ。

 今はまだ魂だけだが、しっかり力、受け取れよ!」

 どうやら、ウルフはフォックス達と戦って消滅したものの、

 ハオスが倒された影響で復活したらしい。

 そして、光となったウルフがマリオの中に入ると、マリオが負っていた傷が全快した。

 

「行くぞ、ピュアカタストロフ!

 これが、俺……いや、『俺達』スマッシュブラザーズの、絆の力だ!!」

 ピュアカタストロフは全世界を終末に導いた。

 それに対し、マリオはスマブラメンバーの絆の力をもってピュアカタストロフに対峙する。

 ピュアカタストロフの攻撃と、スマブラメンバーの攻撃が押し合いになった。

はぁああああああああああ!!

 最初はピュアカタストロフがスマブラメンバーを押していた。

 だが、次第にスマブラメンバーの方がピュアカタストロフの方を押していった。

「これで……とどめだ!!!」

 そして、マリオと彼と一つになったスマブラメンバーの攻撃が、

 ピュアカタストロフを飲み込んだ――




次回でこの物語は完結です。
スマッシュブラザーズは、元の世界に戻れるでしょうか……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エピローグ

最終回です。
この世界がどうなったのかが明かされます。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


 ピュアカタストロフは、轟音と共に消えた。

 すると、マリオの背中から光が溢れ出し、

 彼と一体化したスマブラメンバーは元の場所、元の姿に戻っていった。

 もちろんウルフも、この世界に完全復活した。

 

「……純粋なる破滅が……消えました……」

 アスティマが、自らの使命を果たしたかのような、晴れやかな表情で空を見上げていた。

 彼女は杖で身体を支えながらも立っている。

「よかった……これで……」

「アスティマ?」

 リンク、カービィ、ピカチュウ、ソニック、クラウドがアスティマに駆け寄ると、

 彼女の身体から光の粒が漏れ出していた。

「アス姉!?」

「心配しないでください……カービィさま。言ったでしょう?

 私は元々、マスターハンドだって。だから、これから元に戻るんです……」

「「「アスティマ!!!」」」

 ピカチュウ、ソニック、クラウドがアスティマに手を伸ばした瞬間、

 再びその場を眩い光が覆った。

 

 眩い光が消えると、六人の目の前に、見覚えのある巨大手袋が宙に浮いていた。

「お前は……アスティマ……いや、マスターハンドだな!」

「そう……これが、私の本来の姿だ。

 君達が過去の“破滅”の意思を食い止めた事で、私は本来の力と姿を取り戻したのだ」

 スマブラメンバーが過去を変えた事により、

 この世界で起きた異変も無かった事になるだろう、と説明するマスターハンド。

 無かった事になる、という事は……?

 それが気になったマリオは、マスターハンドにこう質問した。

「なあ、マスターハンド。これからこの世界はどうなるんだ?」

「じきに平和になるだろう」

「それで、この世界が平和になったんだから、俺達を元の世界に返してくれないか」

「もちろん、当初の約束通り、君達を元の世界に返してあげるよ。

 ただ、荷物はちゃんとまとめてくれないかな。みんなもここに呼んできてね」

「……あ、うん!」

 この世界に持ってきた荷物はほとんどなかったが、全くなかったわけではない。

 そのため、マリオは大急ぎでスマブラメンバーに呼びかけに行くのだった。

 

「みんな! そろそろ荷物をまとめた方がいいぞ!」

「え? なんでだ?」

 マリオがスマブラメンバーに今の事情を説明すると、すぐに荷物を片付けて帰る準備に入った。

 荷物を片付けている途中、ふとリュカが考え事をする。

「……そっか、この世界での生活はもう終わりなんだね」

「元の世界に帰りたかったんだろ?」

「ううん、帰れるのはよかったけど……この世界のマスターハンド、

 つまりアスティマとお別れするのは、ちょっと寂しいかな」

「リュカ」

 そんなリュカに声をかけたのは親友のネス。

「あ、ネス君」

「僕達はあくまでも元の時代に帰るだけ。マスターハンドに会えなくなるわけじゃない。

 いつか必ず……未来のマスターハンドに、会えるよ」

「そうだね。……うん」

 そう言ったリュカの目に、僅かだが涙が浮かんだ。

 リュカは慌てて涙を拭う。

「どうしたの、リュカ? まさか、泣いてるの?」

「ううん、何でもないよ! 泣いてなんかいない……泣いてないってば!」

 

「これで、いつものスローライフが戻ってくるね」

 荷物を片付けながらりょうが呟く。

「……でも、失われた命は二度と戻ってこない……」

 この世界で起きた異変は確かに無かった事になる。

 しかし、異変によって亡くなった者は、異変が無かった事になっても戻る事はない。

 それだけが、りょうには心残りだった。

「大丈夫だ、りょう。生き残ってる人達が、この世界を良くしてくれるだろ。

 俺達の活躍もあったし、前向きになると思うぜ!」

「……ピカチュウ……」

「それに、未来はいくらでも変わるって事、お前は知らないのかよ?

 俺は信じてる、未来は平和になるって!」

 ピカチュウの前向きな言葉に、りょうも自然と勇気づけられた。

「そうだね! 僕も、明るい未来を信じているよ」

 

 そして、こちらはスネーク、ソニック、ロックマン、

 パックマン、リュウ、ベヨネッタの異世界組。

「や~っとこんな陰気臭い場所からはおさらばだぜ」

 ようやく帰れると知ったソニックは、荷物を片付けながらそう呟いた。

「ソニック、マリオから話を聞いたんだけど、キミ、結構頑張ってたんだよね」

「ん? ああ、俺は普通に戦っただけだぜ? ……でも、懐かしい戦いだったからな」

 かつて、ソニックは滅びの未来を仲間と共に阻止した事がある。

 なので、ピュアカタストロフとの戦いを「懐かしい」と感じていたのだ。

「まぁ、ハッピーエンドでよかったネ」

「やり方や展開は複雑だったけど、最後は綺麗に終わったからね」

 戦いを振り返りながら、パックマンとベヨネッタは荷物をしまっていた。

「俺達の行動次第で、未来は最善にも最悪にもなる。

 ……このような未来もまたあり得たわけ、か」

「どうしたのー、リュウ?」

「なんでもない、ただの独り言だ」

「おーい、みんな荷物の整理は終わったかー?」

 そんな会話をしているうちにマリオがやって来た。

「あ、もうちょっとで整理が終わるから、待ってて」

「ああ、分かってるって」

 

「そろそろ帰る準備はできたか?」

「ああ!」

 マリオが頷くと、マスターハンドはマリオ達の前に出た。

 そして、マスターハンドが空間を引き裂くと、白い光が現れた。

「これは?」

「元の世界に帰れるゲートだよ」

 このゲートを通れば、当初の望み通り、元の世界に帰る事ができる。

 それは、この世界のマスターハンドとの別れを意味する事でもあった。

 ちょっぴり寂しい思いもするが、これもまた、一つの冒険のゴールでもある。

「さあ、行ってきなさい。君達の世界へ」

「ああ!」

「それじゃあ、いい未来を願うよ! さようなら!」

さようなら!!

 マスターハンドに見送られながら、スマブラメンバーはゲートの中に入っていった。

 全員がゲートの中に入ると、そのゲートは光の粒になって消えた。

 

 スマブラメンバーを見送った後、マスターハンドの様子がおかしくなった。

「……何故だ? 悲しくないはずなのに……涙が出ないはずなのに……涙が出そうになる……」

 

 そして、現代の争いの世界――

 

「ただいまー!」

「お帰り!」

 無事、元の世界に帰ったスマブラメンバー。

 彼らを最初に待っていたのは、両手袋ことマスターハンドとクレイジーハンドだった。

「よく、無事に帰って来たな」

「うん……暗くて怖かったけど、アス姉とか、ハオスとかがいて、楽しかったよ」

「アス姉?」

「ハオス?」

「知らないの? アスティマっていう女の子と、ハオスっていう女の子なんだよ!」

「さあ……」

「私達は知らないな」

 どうやら、この世界のマスターハンドとクレイジーハンドは、

 アスティマとハオスの名前を知らないようだ。

 そんな二人に対しカービィはこう質問した。

「……ねぇ、マスター、クレイジー」

「なんだ?」

「君達が、未来で女の子になってるって言ったら……信じる?」

「さぁね」

「未来はその時にならないと分からないよ」

 カービィの質問に対し、マスターハンドとクレイジーハンドはさらりとそう答えた。

 カービィはぶーぶーと言うような顔をしながら、どこかに去っていった。

 

「なぁシュルク、お前の未来視で、これからの未来を見る事ができるか?

 どんな未来でもいい、見せてくれ」

「……それは断るよ」

 リンクの頼みをシュルクは断った。

「なんでだ」

「だって、先に答えが分かったら、面白くないんだもの。

 それにもし、悪い未来になったとしても、また立ち向かえばいいじゃないか!」

「ま、そりゃそうだな! 俺達はそのためにいるんだもんな!」

 

「ようやく、元の世界に帰れたな」

「ああ……」

 マリオとピカチュウは、スマブラ屋敷の窓から空を見た。

 空は青く澄んでいて、まるでスマブラメンバーを祝福しているかのようだった。

「綺麗な空だな……」

「これを見ていると、やっぱり、ここは平和な世界って感じるな」

「そして、この空を守るのも、俺達スマブラメンバー……というわけか」

「ああ……」

 

「マリオ」

「リン兄」

「カービィ」

「ピカチュウ」

 そして、スマブラ四天王が集まり、手を合わせた。

 彼らはあの崩壊した世界での冒険を経て、改めて未来を守っていこうと誓った。

 もちろん、スマブラ四天王だけではない。

 ここにいる、スマブラメンバーと共に……。

 

「んじゃ、せっかく帰って来た事だし、最初の大乱闘でもしようぜ!」

「OK!」

 

 過去は、たとえ悲劇の事であっても、決して元に戻る事はない。

 しかし、未来は現在の行動次第で、変える事ができる。

 滅びの未来に導いた元創造神は、それを変えるために「現在」の戦士を呼び出した。

 そして、戦士達の活躍により滅びの未来は変わり、元創造神は罪を償う事ができた。

 

 人々が堕落すれば、再び破滅は訪れるだろう。

 だが、この異変を経て、人々の心は強く、前向きになった……のかもしれない。

 

 今日も、スマブラメンバーは大乱闘をし、楽しく生活する。

 その時の未来が訪れるまで――

 

 大乱闘スマッシュブラザーズ Abandon World

 おしまい




今まで本当にありがとうございました。
ハーメルンでの別連載はまだまだ続けていく予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。