勇者の花、桔梗の花 大満開の章 (水甲)
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01 勇者の花、桔梗の花

今回は自分の書いた第一作目の振り替えりです。
見たことがない人のために話しますと、ゆゆゆ一期終わったあとに書いたため、オリジナル設定強めです


今からここに書き示すものは、ある勇者たちの物語。

 

讃州中学には勇者部と呼ばれる部活がある。その部活は「人々のためになることを勇んで実施する」を目的にしているらしい。

主な活動としてはボランティアメインらしい。

彼女たちと彼はそこに所属してこの神西紀を平和に生きている…………はずだった。

 

彼女たちはある目的のために集められていた。それは世界の敵であるバーテックスから世界を守るために神樹より選ばれ、勇者となり人類のために戦う運命にあった。

 

そして本来なら少女のみだが、一人だけ例外がいた。それは神宮桔梗。彼はある事故により、片腕を失う。だが彼からしてみればあまり気にしていない。だが神樹を祀る大赦は彼のある話を聞いて勇者になる素質があることに気がつく。

 

バーテックスとの戦いにおいて街に被害がでないようの防護結界 『樹海』を彼は見たと証言した。それを元に調査し、彼は勇者になった。

 

 

彼女たちと共に彼は戦う中、一人苦しんでいた。

勇者システムに隠されている残酷な真実を…………その結果どうなるかを…………

 

勇者部のメンバー、結城友奈、東郷美森、犬吠埼風、犬吠埼樹、三好夏凛。彼は彼女たちと共に迫り来るバーテックスと戦う中、敵による大規模侵攻が始まった。

勇者たちは戦いの中、三好夏凛を除く勇者たちは切り札である満開を発動させ、敵を撃退。戦いは終結するが…………

 

満開には後遺症があった。使用後は身体の何処かに何かしらの不調が起きる。

結城友奈は味覚、東郷美森は片方の耳が聞こえなくなる。犬吠埼風は片目が見えなくなり、犬吠埼樹は声を失った。

では神宮桔梗は?

 

彼にはある宿命めいたものがあった。

変異種と呼ばれるバーテックスとの戦い。変異種は過去に神宮桔梗の腕を食べ、人形に変わり、彼と戦う。

彼は変異種との戦いの中、、満開を使用し、変異した原因である彼の腕を後遺症で失うことで撃退した。

 

 

 

 

 

そしてしばらくの休息の中、生き残ったバーテックスとの戦い。無事勝利をするが…………結城友奈、東郷美森、神宮桔梗は先代の勇者と出会った。

 

乃木園子…………彼女の身体は様々な所が機能してなかった。

それはある戦いにおいて、満開を使用したことだ。そして彼女から語られる真実…………花が咲くことを満開。そして散ることを散華……散華で失ったものは戻らないと言うことだ。そして戦いは終わらず、勇者たちは死ぬことすら許されない。

大赦はそのことを隠していた。悪意ではなく、あくまで善意からだが…………善意は時に残酷なものを与えることになる

 

東郷美森は乃木園子と話、四国を囲む壁の外を見た。本来なら人々には壁の外には壊された街があると語られていたが、そこは炎が包み込む世界だった。そしてバーテックスは再生していることを知った。

東郷美森は真実を知り、戦い続ける運命をどうにかするために、神樹を破壊することを決意、決行する。

結城友奈たちは東郷美森を救うために、進行を止めようとしていた。

 

そこで神宮桔梗は…………東郷美森に

 

「いや待て……」

 

「なんですか?」

 

折角書いていたのに桔梗さんに止められるなんて……

 

「これは後世に残すためのものだろ?」

 

「はい」

 

「このあとなんて書くつもりだ?」

 

「えっと……東郷美森に愛を叫ぶと」

 

「やめてくれ……頼むから……」

 

「えぇ~そこは重要じゃないですか」

 

「と言うかバーテックスの種類とか風先輩の暴走とか……書くべき事があるだろ」

 

「そこは後々追加しますので、告白は書かないと」

 

「書いたら破り捨てるからな」

 

折角書いたのに……仕方ない。

 

壁が破壊されたことによって起きた戦いは結城友奈の活躍により収束するが、彼女は無茶な事をした結果、ずっと目を覚まさない状態になった。

そして神宮桔梗はバーテックスとの戦いを無くすために、満開の後遺症をみんなの記憶から自分の記憶を無くすように神樹に頼み、一人壁の外で天の神と対話をした。

 

そして明かされたの天の神がすむ世界、そこは死んだ人間がたどり着く世界。バーテックスもまた死んだ人間の魂が変化したもの

天の神は人々との戦いを終わらせたいと願い続けていた。だが神自身が戦いを終わらせることが出来ない。だからこそ彼が願ったことにより戦いはおわった。

そして彼が勇者になれたのは先代勇者の一人が彼に勇者なってほしいと願ったから…………バーテックス名、アスクレピオス。人としての名は三ノ輪銀…………

 

こうして彼は元の世界へ戻る。そして彼にある称号が与えられた。『境界の勇者』と

だが、元の世界に戻った彼だが、彼の事を勇者部の面々は忘れている。彼はもう勇者部の面々と会えないと思っていたが、記憶を取り戻し、東郷美森と熱いキスを……

 

「だから…………」

 

「やはり必要ですよ。後で出会いとか書きますから」

 

「話さないぞ。と言うか色々と話を聞かせてほしいって、この為なのか?」

 

「はい!さぁて次は……魔王との戦いです!」




神宮桔梗

勇者の花、桔梗の花の主人公。
事故により片腕を失う。後々義手をつけるようになる
ある少女の願いで勇者の力を得たあと、リハビリに始めた絵を描くことが趣味になった。
最終決戦にて、東郷美森に告白し、現在は恋人どうしに

上里海

大赦の巫女。
今は勇者部に所属している。
桔梗のお陰で平和が訪れた結果、天の神が遊びに来ることになったが、本人は楽しんでいる


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02 魔王と花結い

「あの何で部室で書くことに?」

 

一昨日、私が書き記そうとした事が大体却下された。別にお二人の事を書くのはいいのでは……

 

「余計なことを書かないように見張るのと、折角だからみんなに協力してもらった方がいいだろう」

 

「と言うかそれで私たちを巻き込んだのね」

 

「まぁお二人の事は……後世に残されると恥ずかしいですね」

 

「と言うか風は普通にいることは気にしない方がいいのね……まぁいいけど」

 

「かいちゃん、そう言うのは私に相談しないと~」

 

「それで次はどんな話を?」

 

「もしかして灯華ちゃんたちの事?」

 

「はい、この本にはお二人の事も…………」

 

「あの海様……」

 

書き始めようとしたら、一緒に来ていた灯華さんが止めに入った

 

「なんでしょうか?」

 

「非常に申し訳ありませんが、あまり詳しく書かれない方が……大赦であの事件はあまり表に出さないように言われてるので」

 

そう言えばそうだった。あの事件はあまりいい話ではない。まぁあくまで大赦からしてみればだが…………

 

魔王事件…………大赦のある研究者が独断に作り上げたシステム『魔王システム』だがそれはお役目に決して合わないシステム。研究者は勇者になれなかった子を利用して、事件を起こしたが……勇者によって解決に導かれた。

黒幕には変異種のバーテックスが糸を引いていたが…………天の神に与えられた神器『天神刀』のお陰で何とか出来たらしい

 

結果的には良かったが下手をすれば再び戦いが起きそうだった。

 

「こんな感じで…………後は桔梗さんが経験したあの戦いですね」

 

「あーある世界に呼ばれたときか」

 

 

 

 

 

桔梗side

 

あの戦いは言うなればいくつもの花が結び、集まった世界

 

西暦時代からの勇者たち、美森が須美と呼ばれていた時間軸からの勇者たち、そして別世界の勇者部……そして異例として呼ばれたのは僕と別世界の勇者たち…………

その一人は…………ここで話すことではないけど……あいつも勇者部のために自分を犠牲にして、勇者の力を得た

 

そして戦いの元凶である造反神。奴の目的は…………いずれ起きる戦いのために勇者たちを鍛えることだった。

そういずれ起きる戦いは……僕らにとって苦しく辛いものだった…………

 

 

「桔梗くんはそれがあったから……」

 

「戦えた訳じゃないよ…………」

 

一番辛かったのは友奈だ。友奈は…………

 

「あの戦いを書く前に……あの方について書きましょうか」

 

海がいう勇者……それは別世界に住む……勇者部のみんなが散華に苦しんでいたとき、あいつはみんなを救うために自分を犠牲にした…………その勇者は………………上里海。ここにいる海の平行世界の人間だ。

 

「お前、あいつが何をして来たのか分かるのか?」

 

「はい、お会いしたときに話してくれましたから」




短めでしたが、今回はここまで!次回は彼の話になります


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03 女神の勇者

今回は海について触れます


上里海

 

彼は平行世界の私だが、世界の違いのせいか、性別も考え方も違う。

これは彼から聞いた話…………

 

彼の役割は勇者部の監視。何か問題が起きていないかなど見張っていたらしい。

だけどそんなことをしている中でも、彼はどうして自分は勇者になれないんだと思い詰めていた。

何で彼女たちが辛い思いをしているのに自分は見ているだけなのか…………

 

その考えの結果……少し無茶をしがちだったが、友奈さんに諭されて少しずつ変わっていくが…………

 

散華により、そして真実を聞いてある考えを実行した。

それは自分の命と引き換えに勇者たちの散華を……失ったものを返してほしいと…………

彼は神樹にそう願い……自害した

 

 

 

 

そして気がついたときには真っ暗な空間で彼と銀髪の女性がいた。

彼女は女神と名乗り、死んだ彼に願いを聞いた。このまま天国に行くか、記憶をなくして赤ん坊からやり直すか異世界に行くかを……

 

彼は異世界に行くと決めると女神は異世界に行くならチート能力などを与えるといい、彼は勇者の力を得た。

そして何故か彼の聖霊はその女神になったらしい

 

 

それから彼は仲間たちと出会い、色んな出来事に巻き込まれるが、それでも充実した…………

 

「いや、何かあいつ、変なトラウマできてたぞ」

 

「そうなんですか?」

 

「そう言えば前に来たときに相談されたわね」

 

風さんも聞いた覚えがあるのか…………

 

「何か襲われそうになったとか」

 

どうしてなのだろうか?深く聞いたらダメなものみたい

 

「あいつは勇者になって……みんなの武器を使えるようになったみたいだ」

 

「武器に振り回されてないって聞いたこともあるわ」

 

「でも何処か頼もしさを感じたわ」

 

「海さんと過ごした時間は短いですが……」

 

「それにゆーゆの初恋の相手だもんね」

 

「/////」

 

まぁ初恋云々は置いておかないと、東郷さんが殺気漏れしてますよ

 

「あいつは勇者になっても一人で背負い込んでる感じだったが……仲間の大切さをしっかり理解してる」

 

そう彼は一人で背負い込んでるように思えた。

ある事件で、彼は愛しい人を助けるために無茶なことをしようとしていたが……仲間たちに止められ、諭され…………そして助けに行けた。

それが彼…………女神の勇者だ

 

「あの人は私たちよりも実りある戦いとふれあいをしていましたね」

 

彼の世界は死んだ者の魂が集まる場所でもある。だから初代勇者たちとも交流があった

 

だからこそ上里海という人間が作られたのかもしれない

 

「そう言えば聞いた話ですが、更に別世界では園子さんとお付き合いをしてるらしいですね」

 

「えっ!?」

 

意外なことを言われて顔を真っ赤にさせる園子さん。自分のことに関しては弱いんですね

 

「さて……次は…………あの話ですね」

 

あの話…………私が一番深く関わった事件。

そして女神の勇者が私たちと共に戦った物語…………




今回も短めですみません


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04勇者の章 ①

今回も短めです


海side

 

事の発端は、私が日誌を書いていたときの事だった。

神官たちに我が儘を言っていると、光の玉が突然私の前に現れた。

その光は自分は女神と名乗った。普通なら驚いたり怪しんだりするが、私にはその女神を信用できた。

その女神が言うには自分達は神樹や天の神とは違う存在だと…………そして突然現れたのはこの世界で何かか起きていることを……それが何か分からないが……調べるために一人の勇者を送ると…………それが平行世界の私…………上里海だ。

まだこの時は…………大したことではないと思っていた…………

 

 

 

桔梗side

 

僕らは平穏を過ごしていた。ただただ平和な日常を…………数ヵ月前に起きた戦いの事なんて忘れて…………

 

だけど僕……いや友奈は何かしら違和感を覚えた。

 

本当にこの日常が正しいのか…………

 

過ごしていくうちに僕の中に覚えのない記憶が流れてきた

それは…………どこか見覚えのある少女…………

僕は彼女に対して何かしらの思いを抱いていた。

だけど記憶は途切れ途切れで彼女が誰なのか分からないでいた。

 

友奈もまた違和感を覚えていた。自分の家の隣は本当に空き家だったのか…………勇者部にもう一人かけがえのない友達がいたんじゃないか…………

 

何度考えても答えは…………………………出なかった

 

 

 

 

 

海side

 

彼と出会い、暫くは互いの事を話していた。本当に同じ人間なのか戸惑ったけど……私なりに兄がいたらこんな感じなのかと思った。

そんな中、彼は勇者部のみんなは元気か聞き…………私は名前をあげていきながら元気だと話した瞬間、彼は…………

 

「勇者部にはもう一人いたはず」

 

そう告げた。私や灯華さんは何の事か分からなかったが…………彼だけは世界の違いか何が起きているか直ぐに気づけていた

 

そしてたどり着いたのは、奉火の儀。それが関係しているのではないか分かった。ただみんなの記憶から彼女の名前が消えるのは分からなかった。だから勇者部の所へと向かおうとした

 

 

 

 

 

 

桔梗side

 

全てを思い出した僕は……ただ後悔していた。何があっても忘れないって決めていたのに…………

それは友奈もだ。友奈が思い出すと園子も異変に気がつき、風先輩、夏凜、樹にも知らせた。そしてそこに巫女の海とあの世界の海が現れ…………この異変を解決するために動き出した。

 

戦うことがなかったが、園子のはからいでみんなは勇者システムが組み込まれている端末を受けとり、捜索を始めた。そして分かったのは壁の外にいることだった。

僕らは海を交えて壁の外へ行き、美森を救い出した。

美森は自分は壁を破壊したことの責任を取ろうとしていたが、きっとみんなはそれを止めに来るはずだと思い、神樹に願った。みんなの記憶から自分がいなかったことにしてほしいと…………

 

美森を助けこれで終わりかと思っていたが…………これは始まりにすぎなかった




勇者の章は結構思い入れがあります


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05 勇者の章 ②

ついに大満開スタート!


「このあとの話ですが…………あの人がいないとダメですね」

 

ある程度書き終えたが、僕と友奈が呪われた後の事は……海自身がいないと深く書くことはできない

 

「思ったんだけど、あいつはいつからあんたらが呪われていたことを知っていたの?」

 

「確かにあの子だけ早い段階で動いていた気がするわね」

 

海がいつから気がついていたか……もしかしたらだけど…………

 

「多分最初から違和感を感じていたかもしれない…………」

 

「最初から…………」

 

思い返せば……あいつは最初から違和感を覚えていた。多分大赦に何かしら話をしていたのかもしれない

 

そんな中で海は悩んでいた。

自分はこのまま関わっていていいのか…………別世界の人間が…………解決していいのかと…………

 

そして僕と友奈も呪いがどんなものなのか理解していた

 

自身に特別何かあるかと言うわけではないが、この事を誰かに話そうとすると、僕らの体に刻まれた呪いの刻印がその誰かに刻まれていく所を…………

そして刻まれた人間は何かしら不幸なことが起きる

その現状を目の当たりにして、どうすることも出来ないでいた。友奈は気のせいだと思うようにして、風先輩に話そうとしたが……また刻印が濃く出たため話せないでいた。僕は嫌な予感がして樹に気を付けるように伝えた。そしてその日の夜に電話が来て、先輩が車に退かれたこと。そして樹も軽い怪我をしたこと……それが余計に友奈を苦しめることになった。

 

「天の神のシステムの呪い…………後々聞いた感じだとカイくんには通じなかったみたいなんだね~」

 

「あいつは自分を守る聖霊の影響が深く出てるからな」

 

幸福の女神を聖霊にしているからこそ、呪いにたいして無効化していた。

そして海は悩みに悩み抜いた結果、自分がするべきことを決めた。それは…………

 

「あの時……辛くて苦しくて……道端で転んだまま……私泣いていたんだよね」

 

「友奈ちゃん……」

 

「だけど海くんが手を差し伸べてくれたの…………そして言ってくれたんだ。どんな世界の私でも助けるって……」

 

嬉しそうに言う友奈だけど…………美森がちょっと怖いんだけど……気のせいかな?

 

「それがきっかけで海は僕らの呪いの事を知り、助けようとしてくれた」

 

呪いを解呪のために古い文献を調べたりしたけど、何も成果はなかった。あったとしても僕が天の神からもらった天神刀を使って、天の炎を全て使いきるくらいしか…………それをすれば僕は犠牲になるが…………

 

「みんな、友奈さんの様子について、おかしいと気づき始めましたよね」

 

「あの時は……夏凜ちゃんにひどいことをしてごめんね」

 

「気にしなくていいよ。私の方が友奈にひどいことしたんだし」

 

呪いの事を伝えられないことが、友奈を苦しめていたからな…………本当にどうすることも…………

園子はずっと気になって独自で調べて、みんなを集めて呪いの事を話した。みんなが悲しみ、どうしたらいいのか悩む中、二人の少女が僕らの前に現れた。

それは海の世界の海と友奈の子供、友海。僕と美森の子供、牡丹。二人が来たことで新たな一手を打てることになったが…………

 

「さて、後は私の方で書けます。みなさん、ご協力ありがとうございます」

 

「いいのか?」

 

「はい、みなさんはこの平和な日常を……私も書き終えたら合流します」

 

海は笑顔でそう言い、部室から出ていくのであった。そうだよな。ちょっと日常を楽しまないとな

 




次回からは本編になります!


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06 日常を楽しむ

一話、日常回だったし、最後の最後でまさかのあのキャラたちが


海side

 

これは友奈との結婚式が終わった頃の話…………

僕は若葉さんと鍛練をしていると……

 

「バトン?」

 

「あぁ、私が未来の勇者へと送った言葉……聞く限りでは結城も聞いてないみたいだな」

 

「確か……うん、聞いてないって……ただこっちに一時的に来るときに……誰かの言葉は聞いたとか」

 

ただ何を伝えようとしていたのか分からなかったみたいだ。

 

「そうか……」

 

「一体どんな言葉を送ったんですか?」

 

「もしも挫けそうなときに……少しでも勇気付けられる言葉だ」

 

気になるけど……これ以上は教えてくれそうにないな

 

「だが本当に平和だな」

 

空を見上げながら言う若葉さん。確かにあんな大きな戦いがあったからか、今は本当に平和だ

 

「友海や牡丹は元気だろうか?」

 

「多分元気ですよ」

 

「それに……あの男……」

 

「あの人……あの人がいる世界のみんなもきっと元気ですよ」

 

そう……またいつか会おうと約束した。きっともう戦うこともなく……平和に過ごしているはずだ

 

 

 

 

 

 

桔梗side

 

ここ数週間、色々と忙しかった。神樹が作った世界で別世界にみんなとそして女神の祝福を受けた勇者と共に戦ったり、その勇者の世界でも戦ったり…………本当に忙しかった

 

「と言うか天の神の仕業じゃないよな?」

 

都合よく使われている感じがするけど……気のせいだよな。

まぁいいか。ようやく調べ事のための本を見つけたのだから

 

「本当に歴史から…………」

 

自分の家系に関して調べたくなった。神樹が作った世界で知ったことが本当なのか…………

 

「ゆっくり調べるか」

 

そう呟きながら、部室のドアを開けると…………

 

 

「うどんウドンUDON饂飩♪うどんウドンUDON饂飩♪」

 

部室を間違えたか?確認するが勇者部で合ってる。

 

「うあ”あ”ぁぁ~~~」

 

演奏も終わったのか……

 

「うわー!かっこいい歌だね」

 

「うどんがしみるわ」

 

「私のロックはこんなものかぁぁーー!…ギターは友達。よしよし」

 

いや、ギターを壊さないのかよ……

 

「何やってるんだ……」

 

「ふふ、きょうくん、紹介しよう!ドラム!犬吠埼風ー!キーボード、犬吠埼樹!ベース、にぼっしー!琵琶、東郷美森ー!」

 

いや、美森だけ世界観違うし…………というか

 

「友奈は?」

 

「私、パフォーマー」

 

「そして、きょうくんはプロデューサー!」

 

知らないうちに巻き込まれたんだが…………

 

「テッペン取ってやんよーー!」

 

これ……つっこんだら負けなのか?

 

「桔梗くん、そう言えば大赦に行ってたんだよね?」

 

「あぁお役目じゃなく、ただの調べ事」

 

「良かったわ。何かあったかと」

 

「まぁあの二人の様子を見に行くついでにだけどな」

 

今は巫女の付き人をしている二人。あの二人も色々とあった。僕らが何とか罪にとらわれないようにしたけど、まさか上里の巫女の鶴の一声で……

 

「さぁて次!行くぞ!」

 

次ってどこに…………

 

 

 

 

 

 

 

訪れた場所は、カラオケ店だった。みんな楽しそうに歌うけど……これは?

 

「なんで急にカラオケなの」

 

「解散ライブなんよ…」

 

早くないか?

 

「「私たちは普通の女の子に…戻ります!」」

 

「普通の女の子に戻るんよ…」

 

「勇者部バンドの解散は音楽性の違いが生んだ悲劇ね」

 

「それなんよー!」

 

美森も園子がいるとノリノリだな……まぁようやく記憶を取り戻して、親友と会えたんだから…………

 

「そもそも始まってもいないから」

 

「解散も何もないでしょ。あ、そうだ。ここの請求書大赦に送ってやろうかしら」

 

「先輩、その時は言ってください。届けますから」

 

「あんたも変わりすぎじゃない?」

 

「色々と経験したからな」

 

遠い目をしながら言う僕。うん、本当に大変だった。別世界とは言え、未来の僕の娘がやって来て、色々と対応に困ったり、女神の勇者は友奈キラーだったり、本当に……色々とあったな

 

「桔梗……本当に大変だったのね」

 

「風先輩!その分!私と桔梗くんは二人の時間を大切にします!」

 

「はい、そこ、のろけない!」

 

「さぁ次の曲!行くよー」

 

園子も園子で色々と耐えてきたから、一気に解放してるんだな。付き合ってやるか

 




くめゆ編ですが、考えた結果、オリキャラ出します!
とりあえず本編一話分書ききらないと


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07 風情と互いの思い出

海side

 

「若葉ちゃんの残した言葉ですか?」

 

「はい、聞いたんですけど、教えてくれなく……」

 

「仕方ないですよ。おいそれと教えることは出来ないので」

 

鍛練帰りに若葉さんたちの屋敷でお茶を飲みながら、若葉さんが残した言葉について聞いていた僕。そんなに重要な言葉なのかな?

 

「ですが以前やって来た彼の世界では若葉ちゃんの言葉を聞いた人がいるのかもしれませんね」

 

「あの人の世界か……あっちとこっちでは友奈が違う感じらしいからな」

 

「こちらではこの世界に来て、あちらでは本当に覚えてないらしいですね」

 

ひなたお姉ちゃんはお茶を一口飲みながらそう告げる。

 

「そう言えばこっちの天の神って、やっぱりあんな風なのかな?」

 

向こう側はなんと言うか自由だったからな。それに人と戦うことに関してはどうにかしたいと願ってたし……

 

「どうでしょう?世界はたくさんありますから……もしかすると本当に人間を憎んでいるかもしれませんね」

 

「そうなのか……な?」

 

「まぁそうそうお会いすると言うことはないでしょうね。あるとしても…………神が人の可能性に負けたと言うことですね」

 

人に負けるか……あり得るのか?そんなこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗side

 

今日は竹林でサバゲーをしていた。

 

「はぁ…はぁ…こちら勇者部。今、自分たちは戦場にいる」

 

何かノリが違うんだけど……と言うか樹を助けに行かないとな~

 

「樹!お姉ちゃんが助けるからね!」

 

さて、風先輩、友奈、夏凛が進んでいくし、美森はスナイパーとして待機してる

 

「友奈ちゃんを狙う者は、たとえ神でも消し去る」

 

スナイピングで敵を倒していく美森。夏凛もアサシンみたいなのりで行動してる分、このままいけるかな?

 

「得意な武器で戦うべきだったのよね…!くっ…これが大剣だったら」

 

いや、サバゲーでそれは…………

 

今のうちと言うことで、進んでいくみんなだけど、友奈が撃たれた瞬間、美森…………

 

「絶対に許さない…。天魔外道ども!てめぇらの血は何色だぁぁぁぁ!?」

 

もう何か一人だけノリが違うぞ……美森

 

「と言うか!桔梗は何してんのよ!」

 

「え?索敵ですけど?」

 

僕は木上に登って、敵の動きを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

サバゲーも終わり、風先輩がサバゲーのリーダーと話していると

 

「桔梗くん、結構凄いね」

 

「東郷もだけど、あんたもノリが違うわね」

 

「まぁあっちでやったからな」

 

美森と須美の二人の誕生日祝いでサバゲーをしたことがあったけど…………

 

「もっとすごい奴がいたけどな」

 

「そうなの?」

 

「木上をぴょんぴょん飛びながら、殲滅してくるわ。いつの間にか罠を設置してるわ…………」

 

「何者なのよ……そいつ」

 

「へぇ~会ってみたいな~」

 

まぁ会えるかどうかは本当に分からないけどな

 

 

 

 

 

 

 

 

また別の日、今日はみんなとキャンプに来ていた

 

先輩がテントを設置し終え、

 

 

「ふぅ。やっと出来た」

 

「苦労した分だけ愛着が湧きますね」

 

「えい」

 

園子はワンタッチテントで設置してるけど、風情も何もないな…………

 

「おやすみ」

 

「もう寝るの!?」

 

「テント使うの楽しみにしてたんよー」

 

一方、美森と友奈は焚き火を起こそうとしている

 

「なに?それ」

 

「ファイヤースターター。今日のために練習してきたの」

 

「着火!!」

 

「すごい!一発!かっこいい!」

 

「友奈ちゃん、吹いて!ゆっくりと。でも絶え間なく空気を送り込んで」

 

「ふぅーふぅー」

 

「小から大へ、ゆっくりと火を大きくするの」

 

「焦ってはダメ。ゆっくりと育てる…」

 

良いところで、園子がバーナーで付ける……本当に風情が…………

 




本当にゆゆゆは誰も傷つかない話で終わってほしい


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08 始まり、終わる。始まるワスレナグサ

今回で大満開の章一話は終わりです!


夏凛お手製の肉を食べたり、樹が作った紫色のカレーを食べたりと、キャンプを楽しんだその日の夜、みんながテントで過ごしているなか……

 

「園子さんが来て更ににぎやかになったね」

 

「急に転入してくるからまぁビックリしたわよね」

 

「ねぇ、もうすぐ冬休みよ。早いわね」

 

「お正月だね」

 

「あっ、その前にクリスマスか。楽しみだなぁ」

 

「その前に受験頑張らないと……」

 

「受験生、大変よね」

 

「そう言えば桔梗くんは寂しくない?」

 

因みに僕は園子が持ってきたテントで寝ていた。流石にそういうのは気にしないとな

 

「寂しくはないな」

 

「きょうくん~わっしー送ろうか?」

 

「もうそのっちは」

 

「あんたら二人になって変なことするんじゃないでしょうね」

 

「独り身の風先輩には酷だよ!?」

 

「あんたらね!」

 

「いや、一応いろいろと気を遣ってるんだけど」

 

「ハグくらいね」

 

「「「「ハグ!?」」」」

 

ん?この流れ……何か嫌な予感が……

 

「わっしーそこら辺詳しく」

 

「ハグしてね。ベッドに……」

 

「頼むからその話はやめろ!?」

 

慌てて止める僕であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

明け方、早く目覚めすぎたから、散歩をしに行くと美森と園子の二人が話しているのを見つけた。声をかけようとするが、二人の話が耳に入り……

 

「みんながいてよかった。こうやってまた会うことができた。ミノさんとは会ってる?」

 

「どんな顔して会いに行ったらいいのか…前に天の使いになった銀には会ったけど……あの時は状況が状況だし……おいそれ会うこともできない……あそこにいっても……」

 

「それは私もだ」

 

「そのっちは違うよ!ごめん…。私は二人のことを忘れていたから……大切だ、約束だ、友達だってあんなに言っていたのにそれでも私は忘れてしまっていた。私は…自分で自分が許せないのだと思う…私たちは、3人で勇者だった」

 

「わっしー」

 

「たくっ、思い詰めすぎだよ」

 

ちょっと耐えきれずに、会話に交ざった僕。

美森からしてみれば本当に自分は大切な友達を忘れたひどい奴だと思ってるけど……

 

「銀がそんなことを思うか?」

 

「……思わないわね。きっと笑いながら……しょうがないやつだよって言いそうね」

 

「ミノさんなら言いそうだよね」

 

「それに……忘れたのだって散華したことでの影響だから……それならこれからは忘れないようにすればいい」

 

「でも……私じゃなく……桔梗くんが……」

 

「言ったろ、忘れたりしないって……友奈と一緒に誓ったんだから」

 

「そうだったわね」

 

「いや~明け方だから寒かったけど、暖がとれて良かったよ~」

 

園子はなんと言うか……ぶれないな~

だけど僕は未だにあの言葉が頭に響いていた。大切な事を忘れてしまうと……

 

 

 

 

 

 

 

また別の日、海岸の掃除と写真を撮ったりして夕日を眺めていた。

 

「うんうん。これは女子力の高い写真が撮れそうね」

 

と言うか美森は友奈の事を撮りすぎじゃないか?残像が見えるくらいの速度でやってるけど……

 

「はいみんな!記念写真撮るよー」

 

園子がみんなで撮ろうとするが、僕は少し離れた

 

「きょうくん、写らないの?」

 

「僕が交ざるよりみんなでの方がいいだろ」

 

「それもそうだね~」

 

意外と切り捨てるの早いな

 

みんなが集合写真を撮っているのを眺めていると、美森が僕と腕を組んだ

 

「美森?」

 

「二人なら一緒に撮っても問題ないでしょ」

 

「そうだな」

 

園子に頼んで、ツーショットを撮ってもらう僕らであった

 

「少し歩こうか」

 

「えぇ」

 

みんなに離れると伝えて、二人で浜辺を歩きながら……

 

「ねぇ、桔梗くん」

 

「何だ?」

 

「前に絵を描いてくれたよね」

 

前って言うと、夏凛が来る前に描いたような……

 

「また描いてほしいなって……」

 

美森は恥ずかしそうにしながらそんなことを告げた。そんな風に言われると僕も恥ずかしくなるんだけど……

 

「いいよ。描いてあげるよ」

 

「それじゃ前と同じ場所で描いてほしいな……」

 

「あぁ、分かった」

 

「忘れないでね」

 

「忘れないよ」

 

僕らはまた一つ約束をするのであった。

 

「キスするよ!キス!」

 

「あの二人に……本当に追い越されるなんて……うぅ」

 

「なんと言うか……風には毒ね」

 

「あはは」

 

「東郷さん、幸せそうだな~」

 

「さっきの写真を合成して、結婚式にする?」

 

「あんたもろくなことを……」

 

 

 

 

 

 

 

こんな平和な日々がずっと続いていくと……僕は思っていた。だけど…………

 

 

 

 

 

 

『平和なんてすぐに壊れてしまう儚いもの。苦しく辛いものは長く続くのに…………』

 

 

 

 

 

 

これは始まる前……物語…………そしてこれから始まるのはもう一つの勇者の物語

 

「……お兄ちゃん」

 

「どうした?雪」

 

「いえ、ただ思い出していただけです……」

 

「前に話していた……兄の事か?」

 

「お兄ちゃんは……私の事を知らないけど……多分この先は知ることはないと思います」

 

「そうなのか」

 

「何も知らない方がいいですよ……兄からしてみれば…………行きましょう。芽吹さん」

 

勇者になれなかったもう一人の神宮……『神宮名草』の物語…………




新キャラ登場により、次回からはくめゆ編スタート。そして新キャラの名前の由来はワスレナグサからです


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09 名草

くめゆ編のオリジナル主人公、名草が本格参戦します


誰も私の事を知らない。

私はひとりぼっち……ただただ孤独だった

 

私が生まれた頃、両親は事故に遭い、頼れる親戚もおらず……施設に預けられた。

 

性格の問題なのか……私は誰かと接することはなく、一人でずっといた

そんなある日……一人の老人が訪ねてきた。職員の人が話していると、私の方に来て……

 

「初めまして。名前を教えてくれないかな?」

 

「…………名草」

 

「名草……名字は?」

 

私は名字を忘れた……と言うより捨てた。その方が大赦からしてみれば都合がいいから……

そんな大昔の人とは全く関係ない。ただ同じなだけ…………

 

「そうか……それなら君はこれからこう名乗りなさい『神宮名草』と……」

 

「神宮?」

 

「そう、私と同じ名字だよ。今日は君を……養子に迎えたいと思ってね」

 

「養子?おじいさんの子供になるの?」

 

「そうだな。私の息子夫婦の子供になる。君は私の孫になるんだよ」

 

ずっと一人でいたから……正直今更誰かの子供になるのは……

 

「一人、息子がいるのだけどね。きっと君と仲良くなると思う」

 

「そうなの?」

 

「どうかな?」

 

「…………」

 

答えに悩んだ。私は……どうしたら……でも今答えを出すべきだと思った。

 

「家族が……欲しいです」

 

そう答えるとおじいさんは頬笑み……今度孫に会わせると行って去っていった。

 

 

 

 

 

この日、私はようやく『家族』が出来る。ずっとうれしい気持ちでいた。

だけど……おじいちゃんが来ることはこの日を限りなかった。

 

大橋の崩壊。その事故に巻き込まれたらしい。

私はそれを聞き、また家族を無くした…………

 

 

 

 

 

それから月日が経ち、私はゴールドタワーに来ていた。

元々勇者の素質があると言われていたけど、私は訓練とかに参加しなかった。

きっと私が勇者になっても誰も誉めてくれない。家族も……いないから…………

 

ある時、勇者に確実になれると言われた一人の男の子がいた。それは……私の兄になるはずの…………兄はあの事故で素質に目覚めたらしい

誇り高いお役目に選ばれた兄。

私はそんな兄と肩を並べて……伝えたい。

私はあなたの妹だと…………

 

そしてゴールドタワーに呼ばれたのも勇者関係だと思った。

だからこそ来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海side

 

「彼女が……桔梗さまの妹」

 

「はい、本来はそうなるはずでしたが……」

 

「あの事故ですね……そこから……桔梗さまの運命は変わりました」

 

天ちゃんが力に目覚めさせ、勇者になれるようにした

そこから……彼は天の世界との架け橋になり、境界の勇者と呼ばれるようになった

 

「今回の件……天ちゃ……天の神に話した方が……」

 

「いえ、それはなりません。大赦の中には未だに恐れているものがいます。その証拠に……未だ外の世界は炎に包まれています」

 

「…………」

 

何故、まだ世界は炎に包まれているのか……個人的に聞いた際は……

 

『あれは言うなれば罰だ。そうなるように組み込まれている』

 

『組み込まれているとは……貴方がしているのでは?』

 

『いいや、違う。天の炎を管理しているのは……私が作ったシステムだ』

 

『システムですか?』

 

『破壊することも出来ない。出来るとしたら……神に認められたものくらいだ。まぁそんな奴は私が知る限り……三人しかおらんがな』

 

『三人……誰ですか?』

 

『一人は境界の勇者。一人はこことは違う別の世界の勇者、そしてもう一人は……まぁ良いか』

 

気になるところで……

 

『もうひとつ……他の世界にもそのシステムは……』

 

『いいや、システムはこの世界のみ。他の世界は天の神が罰を与える』

 

この世界事態が本当に稀と言うことなのでしょうね

 

 

 

 

 

私は防人と巫女を上から見て……もしも叶うなら……誰も死なないで欲しいと



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10 二人の関係性

芽吹side

 

あの神宮名草……初めてあったけど、気になることがあった。それは名字だ。

彼女は……大橋の事故で亡くなった神宮家の一人なのか?

だけど聞く限り……と言うより会った限りでは彼しか生き残っていないらしいけど……

 

「芽吹さん?どうしかなさいまして?」

 

「弥勒さん、あの神宮さんは……」

 

「あぁ彼と同じ名字ですわね」

 

「なになに?メブ、あの子知ってるの?」

 

「ううん、彼女は知らないけど、彼女と同じ名字の人には会ったことがある」

 

あの候補生時代の時に何度かその姿は見た。

神官の話では彼は男子でありながら勇者になれるらしい。

その時は腕の件があってか、少し鍛練をしているだけだったが……

一度だけ彼と戦い……私や弥勒さんは負け、そして三好夏凜ですら勝てなかった

 

「芽吹、気になるの?」

 

「あぁ……」

 

「あの……」

 

遠目で彼女のことを話していたら気がついたのかあっちから話しかけてきた

 

「すまない。陰口をしていたわけでは……」

 

「いえ、何となく想像はできます。神宮桔梗と私が血縁であるんじゃないかと」

 

「あぁ、私と弥勒さんは何度か会ったことがある」

 

「そうなんですね」

 

「兄妹なのか?」

 

だとしたら彼女もまた勇者になる確率が高かったと言う事に…………

 

「兄妹……なのかな?」

 

「え?何?どう言うこと?」

 

「もしかして……複雑な家庭とか?」

 

「だとしたら……申し訳ありませんわ」

 

「すまない……」

 

「気にしないで……正直ちゃんと話すときには話すけど……今はね……」

 

名草さんは少し悲しそうにしていた。本当に彼女は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

海side

 

「防人?」

 

『そうなんよ~かいくんは会ったことあったっけ?』

 

園子から電話が来て、いきなり防人について聞かれていた。

 

「まぁ会ったことがあると言うべきか……」

 

『別世界ではってことだよね』

 

「まぁそうなる」

 

あっちで防人の人たちと話したりしたけど……でもなんでいきなりそんなことを?

 

「もしかしてこっちでも防人の役割が?」

 

『うん、大赦の人から聞いたらね~』

 

聞いたと言うか脅しと言う事じゃないよな?

 

「確か……壁の外の地質調査とかやってるんだよな?」

 

『それに苗を植えたりね』

 

「こっちでもやってるんだな」

 

『まぁこっちは天の神と和解してないからね~と言うより対話することが出来るか……』

 

対話か……まぁそんなことが出来たらどれだけ楽だろうなと思うけど……

 

「とりあえず防人に関して報告のみか?」

 

『そうやね~もしかしたらそっちで少し鍛練するかもね』

 

いや、来てもいいのかよ?まぁつっこんだら負けなんだろうけど…………



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11 名草と四葉

今回で名草編は終わります!
割とがっつり出来なかったけど、大満開の章の今後次第で…………


名草side

 

防人として、お役目を言われるがままにやってきた。

大変なことが多かった。

量産型の勇者だからか本来の勇者と違い死ぬ危険性があり、何人もの子達が止めていく。それをリーダーである芽吹さんは見送った。

芽吹さんの活躍が大きく誰も死亡者は出なかった。

だけどある時、私達が今までやって来た事がなかったことにされてきた。

理由としては……神樹様の力が弱まってきたこと、天の炎が強くなり、このままでは危険があると言うこと……

苗木を回収する任務で今まで確認されて来なかった黒いバーテックスとの襲撃戦。私たちは決死の戦いを挑み、何とか勝つことができた

 

 

そして天の怒りを鎮めるため、一人の勇者が犠牲になったらしいが……

 

 

 

 

 

そんな激動なお役目の中、私は墓参りに来ていた。

『神宮家の墓』

私の両親になるはずの……

 

「勇者たちは……知っているのかしら……」

 

何かが起ころうとしていることを……でも私にはそれをどうにかする力はない

 

「帰ろう……」

 

悩んでいても仕方ない。帰ろうとすると一人の女性が私のことを見ていた

 

「えっと……」

 

「名草ちゃんね」

 

私の事を知っている?

 

「私は姫野四葉。神宮桔梗の保護者よ」

 

お兄ちゃんの……

 

「あなたのことは大赦で聞いてるわ……少し話してもいいかしら」

 

「はい……」

 

 

 

 

 

 

 

姫野さんから語られたの勇者たちの戦いと結果的に何が起きたかだった。

友奈という勇者が無理矢理バーテックスを倒して、意識が戻らない状態になったこと

お兄ちゃんが自分の記憶を犠牲にして散華を治そうとしたこと……

そして天の神と和解したことを

 

「天の神と和解……でも!?」

 

「大赦には恐れている人がいる。天の世界でも同じ考えの人がいる」

 

「…………」

 

神と人の戦いでも一番問題なのは…………人同士の問題

 

「これから何か大きなことが起きる。なんとなくそう思うわ」

 

姫野さんは立ちあがり帰ろうとするが、立ち止まり

 

「名草ちゃん、貴方は会わないの?」

 

「え?」

 

「桔梗に……全てを話したうえで……妹だと……あなたにはその権利が」

 

「……まだ私にはお役目がありますから……でもそのいつかは私的には」

 

すぐ近いはずだ

 

「そう、それじゃ……またね」

 

姫野さん、何だか不思議な人だった……何者なんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

東郷side

 

防人たちの話を聞かされ、私は奉火の儀の生け贄となり…………みんなが私を探さないようにと願った。きっとみんなは私の事を探したりしないはず……

 

儀式の中、私は夕暮れの教室にいた。そして目の前には……

 

「銀?どうしてここに……」

 

「どうしてって……何とか助けようと思って……」

 

「助けって……」

 

「友達がヤバイことになってるんだから……まぁここに来るのはかなり難しかったけど……ある勇者がきっかけをくれたからな」

 

「ある勇者?」

 

「あぁまぁその内会えるさ」

 

「……私、私……」

 

「あー謝るのなし。聞こえてたからさ」

 

「銀……」

 

「あはは、今更照れるよな」

 

「ずっと一緒にいてくれるの?」

 

「あぁでも須美はまだこっちに来ちゃダメだ」

 

「どうして!こうすることでみんなが助かるのよ!一時的なものかもしれないけど……その間に対策も……」

 

「相変わらず真面目だよな~須美は……対策とか大赦とかさ、そんなのは須美が一人で考えなくっていいんだよ」

 

「でもこれは……私にしか出来ないことで」

 

「そうだとしてもさ。それはみんなが許してくれないんじゃないのかな?」

 

「みんな?」

 

「そ!大事な大好きな大切な皆」

 

その時、皆の声が聞こえた。風先輩、夏凜ちゃん、樹ちゃん、そのっち、友奈ちゃん、桔梗くん…………

 

「世界の理なんてさ、どんなにお利口に繕ってもそんなもの簡単にぶっ飛ばせるんだよ。言ったろ。須美……園子……」

 

銀は優しく私を抱き締めた。こうして貰えるのは……本当に……本当に……

 

「私たちはずっと一緒だ。神樹館の三人勇者の絆は……世界の理なんかよりも強いのさ」

 

「うん……」

 

「讃州中学の勇者部すっげー格好いいじゃん!数えるほどしかあってないけど……格好いいよ……だから行け!」

 

「私は……行っていいの?」

 

「あぁ鷲尾須美は勇者なんだからさ」

 

銀に背中を押されて……私は…………

 

 

 

 

 

 

 

そして私は助けられた。本当にこれで良かったのか分からないけど……友奈ちゃんたちの言葉は……神の理も関係なかった…………

 

そして私を助けるために別の世界から来た勇者……上里海。彼は桔梗くんがある世界であった勇者…………何処か優しく、暖かな感じがした

 

こうして私は救われたけど…………でも……知らなかった。過酷な運命が待ち受けていることを…………

 




最新話……ぐんちゃん(泣き)


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12 ほんの少しの安らぎ

本当にゆゆゆの最新話は、友奈ちゃんからしたらちょっとした安らぎだけど…………うぅ


友奈side

 

私は消滅しようとしていた。最後の瞬間魂だけが残ったけど、それも消えようとしていた。

魂の入れ物。新しい身体、御姿を与えられ、私はまだ私として生きていくことを許された。

嬉しかった。だけど……私、結城友奈はあれほど約束したのに大事な友達のことを忘れてしまった。だから天罰が下ったのだ。

東郷さんは私達から記憶を消すようにお願いしていた。私と桔梗くんは思いだし、みんなも思い出した。そして別世界で桔梗くんが一緒に戦った勇者、上里海くんが手を貸してくれて……東郷さんを取り返した。だけどその時、私と桔梗くんは天の呪いを受けた…………

 

呪いは私の身体を蝕み続けた。同じ呪いを受けた桔梗くんは一部の呪いだけ…………

その呪いは誰かに話そうとするとその人に災いが起きる。私は耐えきれずに風先輩に話そうとしたけど……やはり話せなかった。でもそのせいで風先輩は大怪我をし、私は風先輩と樹ちゃんから平穏を奪った

 

それに耐えきれずに私は一人で泣いていたけど…………その時海くんが手を差し伸べてくれた。海くんは一度死に、異世界で勇者へとなった。精霊も女神様だから呪いに対して無効化できているらしい……

海くんは私達のために自らを生け贄に散華を解こうとしていたことを話してくれた。

そして私の事を助けたいと…………

 

 

 

 

 

 

海side

 

年が明け、一月五日。僕と桔梗さんの調べ事は一旦休むことになり、園子の家で風先輩の為にクリスマスとお正月を同時に開いていた

 

「八マス戻る……スタート地点!?」

 

「うぅ、乃木……本当にありがとうね」

 

「大成功ー」

 

そのっち、何で獅子舞の被り物なんだ……まぁそのっちらしいけど……

 

「友奈も入院中に貯まってた依頼を片付けてくれたんでしょ」

 

「私は……何かしてないと落ち着かなくって」

 

「ん?」

 

「じゃなくって元気がありあまってるから」

 

「よよよ~ありがとうね~」

 

友奈……本当は辛いのに…………

 

「えっとふと人生を見つめて、やり直したくなってスタートに戻る!?」

 

と言うかこのそのっち特製のスゴロク……難しすぎないか?

 

「えっと……歌コンテスト優勝を逃すも一部ディープなファンに支えられ、百万円もらえる……園子さん、これ良いことなんですか悪いことなんですか!?」

 

「えっと僕は……彼女といちゃつきすぎて、怒られてしまい10回休み…………」

 

「僕は……凶暴なオークに囲まれて、逃げてスタートに…………」

 

そのっち……僕は話してないのに何で一番のトラウマを……うぅ未だに思い出すだけで震えてくる

 

「車に跳ねられてお楽しみを全部失う。心のショックで……10回休み」

 

何か過酷すぎないか……まさに風先輩だし…………

 

するとそのっちのお手伝いさんの声が聞こえてきた

 

「園子様、他にお申し付けはありませんでしょうか?」

 

「うん、ありがとう。今日は大丈夫だから」

 

そのっちも家柄的に大変だな……

するとそのっちはお手伝いさんがいなくなったのを確認し、部屋の外に置いてあった風呂敷を持って広げた

 

「これは……」

 

「私の家に保管してあった古い書物。色々と調べたかったからね」

 

そのっちは僕と桔梗さんの事を一瞬見た。まさかと思うけど……気がついてるのか?

すると積まれた書物から一冊の本を取り出して、東郷に渡した

 

「勇者御記……」

 

「随分古いものみたいですけど……」

 

「乃木家に伝わる三百年前のものみたいだよ。かいくんの家にもあったよね?」

 

「あぁ……でも僕は見れなかったな……」

 

それほどにまで厳重に保管されているから……ただ三百年前の事はこの書物よりも……誰よりも知っている

 

「これ……」

 

桔梗さんも何か覚えがあるみたいだ。もしかして……

 

「僕の家にも……ある」

 

「きょうくんの家は特殊だからね~多分残されてるはずだよね」

 

「ただ……僕が読んだ話はそれを読んでからの方がいい」

 

きっと消された勇者……あの人が大きく関わっているからか…………

 

「僕は少し……外に出てる」

 

「海くん?」

 

「僕はこの世界の人間じゃないからとかじゃなく、三百年前の勇者たちがどんな風に戦ったのかは知ってるから……」

 

「……やっぱりか」

 

そのっちは小さく呟いていた。気がついてるよな…………

 

「かいくんは昔から伝え聞いてる可能性があるけど、それでも読むべき……」

 

「……分かった」

 

そのっちはどうしても僕にも聞いてほしい感じだな

 

そしてみんなで勇者御記を読み始めた。所々塗りつぶされているけど……そしてやはりあの人の名前は…………

そして思い出していた……あの日、あの時、あの人が……千景さんが話してくれたことを

 

 

 

 

 

 

 

 

それは珍しく千景さんが鍛練に参加していた。その休憩中に

 

「話しておきたいことがあるの」

 

「話したいこと?」

 

「前に勇者が敗北したことで非難を浴びたことは聞いたわよね」

 

「あぁ……」

 

あの時は戦い続けて、非難の声をかき消してやるって言ったんだっけ?

 

「あの時の事を貴方は知っておくべきよ……私が犯した罪、それを許してもらったことを」

 

「それって……」

 

「バーテックスがより強大になって私達に襲いかかってきた。今までは切り札を使って倒せていたけど……そんなもの関係なしに……その時に土居さんと伊予島さんはバーテックスに殺され……怒りに身を任せて、高嶋さんは不安定だった切り札のひとつを使用して何とかバーテックスを倒したけど…………」

 

敗北したことにより、皆の心は傷つき……そして千景さんはふとネットで人々の言葉を見てしまった。それは勇者たちに対する誹謗中傷……死んだ杏さんと珠子さんに対してもだ

 

「あの時は……切り札で精神的に蝕みがあったからか私の心が弱かったからか……おかしくなりそうだった…………そして……私は」

 

そこからは千景さんが町の人たちを切ろうとしたこと、若葉さんを殺そうとしたこと…………勇者システムを剥奪されたこと、そして自分を信じてくれた若葉さんに少しでも助けになろうと……若葉さんを庇って死んだことを……淡々と話した

 

「そして気がついたら……あの空間にいたの」




海の世界では、のわゆは原作通りに
桔梗の世界では、のわゆはぐんちゃん救済になってます


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13 変わらない答え

千景side

 

気がついたときは真っ暗な空間に…………そしてその中心には水色の髪の女性がいた。

 

「迷える魂よ……貴方は死んだわ。そして貴方に与えられた選択肢があるわ。一つは記憶を消して元の世界に戻る事、二つは何も無い天国に行きなにもせずに暮らす。もう一つは知識、記憶、身体能力はそのままで異世界、貴方がいた世界とはまた別の世界に行く事……」

 

「天国……」

 

私には行く資格はない……記憶を失ってまで元の世界に戻って赤ん坊からやり直したくもない……異世界には……

 

「因みに異世界には貴女の仲間の二人も送っておいたわ」

 

仲間……土居さんと伊与島さんね……

 

「私に彼女たちの仲間を名乗る資格はないわ……それに天国に行くなら……地獄の方がいいわ」

 

「あら?どうしてかしら?」

 

「私は罪を犯した……決して許されないことをした……だから……」

 

私は地獄に行くべき……そう言おうとしたら……

 

「はぁーウジウジ面倒ね」

 

「は、はい?」

 

「生きてるときにやらかしたことは仕方ないことよ!と言うかあっちはあっちでいろいろと面倒なのよね!全く神樹も天の神も面倒なことしてるわね~」

 

何かさっきと違って……どうにも感じが変わりすぎでは?

 

「もう面倒だからあんたは異世界行き!さっさと行きなさい」

 

こ、こっちの話をガン無視!?

 

 

 

 

 

 

 

 

海side

 

「と言う感じよ」

 

「アクアさん……」

 

なんと言うかたまにあの人は本当に女神なのか疑わしいよ

 

「でも本当にどうして千景さんはこの話を?」

 

「知っておくべきだと言ったわ……貴方にはその資格はある」

 

「あるって……」

 

「貴方は……勇者になり、何人もの勇者たちと関わってきた。だからこそ……よ」

 

そう……なのか……確かに一緒にいる中で僕はみんなのことを詳しくは知らない……

 

「改めて聞くわ。貴方は勇者として……この先…………」

 

「非難されてもそんなの関係ない……ただその非難を非難じゃなくさせる……僕の気持ちは変わらないですよ」

 

「……そう」

 

千景さんは嬉しそうに微笑むのであった。僕が出した答えに満足したからか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと海、聞いてる?」

 

「え?」

 

「ちゃんと初代勇者たちの残した話よ」

 

「うん……聞いてる……」

 

こうして改めて聞かされると辛いものだ……みんながしてきたことは……それに大赦の…………

 

「かいくんは……ううんなんでもない」

 

何となく知ろうとしてるのかもしれない……僕がどんな風に勇者になったのかを……

 

「海くん?」

 

「これまでの話を聞いて思ったのは……みんなは……僕らと変わらない事だと思う」

 

『みんな?』

 

桔梗さん以外のみんなが不思議そうにしていた。うっかりみんなって言い方をしたけど……これは本当に思っていることだし、関わってきた僕だけが分かる事なのかもしれない…………

 

「続き読もうか」



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14 蛍と千景

次の話でのわゆも終わりか…………ぐんちゃん……


桔梗side

 

園子が持ってきた勇者御記をある程度読み終えたあと、僕は続きを読む前にと話を遮った

 

「みんなに……知ってもらいたいことがある」

 

『え?』

 

「桔梗さん……もしかして」

 

海は僕が何を話すか察しがついていた……

 

「あぁ……僕の御先祖……神宮蛍は……初代勇者と…………この名前が消された勇者と大きく関わってるんだ……」

 

「桔梗くんが……」

 

「どういうことよ?」

 

「この書物に書かれてる」

 

僕はみんなに話した……神宮家と…………消された勇者…………郡千景の事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景side

 

その人は私たちのサポートとして呼ばれた男……正直私は彼の事をよく思っていなかった……だから乃木さんたちに注意をされても私は彼に対しての態度は冷たくしていた

 

「私は貴方と話すことはないわ」

 

「……そうですか、今は忙しいんですね。また後で話します」

 

また後でって…………明らかな拒否をしているのに……

 

「ぐんちゃん、どうかしたの?」

 

「あの人…………」

 

「あの人?あぁ蛍くん?優しい人だよね」

 

 

 

 

 

それからと言うもの、彼は私の姿を見つけては、挨拶をしてきたり、他愛のない話をしてきた。

その度に私は彼に冷たくしていくが……彼は特に嫌そうな顔をしたりせずにいた。

 

いい加減にして欲しいと思い、私は彼に思わず聞いた

 

「どうしてそんなに私に声をかけ続けるの?」

 

「え?それは……」

 

「貴方は大社から派遣されてきた……だから私の家の事情を知っている……憐れみのつもり?」

 

つい、彼を突き放す感じで問い質してしまったが……彼は優しい笑顔に……少し恥ずかしそうにしながら…………

 

「その……最初……あなたの写真を見たときに……目を奪われました」

 

「?」

 

「そしてこうして会うようになって……確信したんです…………僕は貴方の事が好きです」

 

「………………はぁ?」

 

この人は何を言ってるの?私が好き?

と言うか好きでもあんな風に冷たくされたら……普通は諦めるはずなのに……なのにどうして?

 

「千景さん……僕は貴方の事が好きだからこそ……こうしているんですよ」

 

「……言葉だけなら…………」

 

「では……証明をした方が……」

 

証明って……まさかと思うけど……

 

「キスをして……証明をしたら殴る」

 

「しないですよ。ただ貴方の事を僕が守ります」

 

守るね……守られている癖に…………

 

 

 

 

 

 

 

それから私と彼の関係は前に比べるとそれなりに良好となったが、それ以上は進まなかった。

私自身が彼に心を開かない事が理由だと思っているが、彼とはそれくらいの距離が一番いいと思っていた。

だけど…………

 

 

 

 

 

 

私の心が不安定になり、私は故郷で町の人を切ろうとしたとき…………

 

「……どうして?」

 

彼の身体に大葉刈の刃が食い込んでいた

 

「言ったじゃないですか…………貴方を守ると…………」

 

「何で……そんな……無茶を…………」

 

「好きだからに決まってるからじゃないですか」

 

血に染まる彼の身体…………私は大葉刈から手を離し、ただ泣き叫んだ……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後……私は勇者としての資格は失った……仕方ない事だと思っている

守るべき人たちを傷つけたんだから…………

 

「大丈夫ですか?」

 

「……あなたこそ……」

 

彼は……蛍は私に優しく微笑んでいた。

 

「僕は大丈夫ですよ。防刃装備をつけていたとは言え、流石は神器…………」

 

「…………貴方は……私の事を」

 

「えぇ、好きですよ」

 

彼は私にキスをする。私は優しく微笑んだ。

 

「私も…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これを切っ掛けに郡千景という名前は消されたが、神宮千景として名前を変えたらしい」

 

「要するに結婚したのね」

 

「後はこの名前ね」

 

書物に書かれた名前。それは…………聞いたことのない名前だった

 

「海は……知っていたか?」

 

「いや、知らないですね。多分この世界だけです」

 

そこに書かれていた名前は……蛍と千景の二人の関係を崩さないようにしてくれた人物…………上里空と言う名前があった




最後に出てきた名前は……もうひとつの作品の主人公です


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15 二人の友奈

後半の友奈同士の会話が本当に泣ける


海side

 

若葉さんが残した勇者御記を読み終えた。

聞いていたとは言え、やはり辛いものが多いな…………

 

「それで……それでどうなったのよ?」

 

「これでこの代の戦いは終わり……」

 

「この若葉って子が生き残ったの?」

 

「えぇ、そして天の神の怒りを鎮めるために奉火祭を検討……決行……巫女たちは捧げられ、当代の勇者が出撃することはなかった……」

 

「奉火祭って……つまりは時間稼ぎのことよね?」

 

「三百年ものね」

 

「三百年……園子さんのご先祖が守ってくだされなかったら……私たち……生まれてこなかったんだ。世界を守るってこう言うこと?」

 

「託されちゃってるんだね~次の代へと託すのも終わらせるのも勇者次第」

 

「不吉な言わない」

 

「だけど僕らは戦いを終わらせた」

 

「そうだね~きょうくんの活躍と天の神が許したいと思ってくれたからだけどね~」

 

まぁ僕の世界では終わってないけどな……そんなこと言ったら色々とあれだし言わないでおこう

 

「あの……海くん」

 

「ん?」

 

東郷が心配そうに見ていたけど、なんだ?

 

「海くんは満開だけじゃなく、この初代勇者たちが使っていた切り札も」

 

『!?』

 

「あぁ使えるよ」

 

「そ、それって……」

 

「僕の場合はみんなとは違うから、散華も一日で治るし、切り札の後遺症も負担が少なくなっている」

 

まぁ切り札のことを知れば、みんなが心配するのも無理もないか

 

「海は大丈夫だと思う……こいつは無茶なことは……多分しない」

 

「多分って……」

 

「あんた、満開と切り札の同時使用とかやってないわよね?」

 

「……してないよ」

 

顔を背けながら言う僕。うん、一回だけしてる。かなり負担が大きかった……

 

「あれ?これ……」

 

そのっちが見つけたのは白い布に包まれた……鍬だった。

 

「鍬?」

 

「大切なものみたいですけど」

 

そのっちは白い布を取ると、うんやっぱり鍬だ。この鍬……もしかして……いやもしかしてじゃないよな

 

「鍬だ」

 

「鍬ね」

 

「鍬よね」

 

「鍬ですね」

 

「秘密兵器かな?」

 

そのっちは友奈の方を見ながら言うけど、いや友奈が分かるのか?

 

「それは若葉さ……初代勇者の大切な親友の物だよ」

 

「いや、何であんたがわかるのよ」

 

「僕もまた上里の人間だからね。そう言う文献は残されてるから」

 

まぁ実際は本人に聞いたからだけどな

 

「…………」

 

それにしても友奈……大丈夫か?

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、友奈が心配で部屋を訪れたけど、ベッドに入っているところだった

 

「悪い、寝るところか」

 

「あ……海くん……」

 

起き上がる友奈……涙の跡があるけど……

 

「泣いてたのか?」

 

「あ……これは……うん、そのちゃんの御記……塗りつぶされてたから……私のもきっと……」

 

「そうはさせないよ」

 

「え?」

 

「お前を絶対に助ける……そう誓ったんだから……」

 

そうだよ……僕はどんな世界でも友奈を助けると誓ったんだ

だから早く呪いを解く方法を探さないと

 

「寝るのが怖いなら……お前が寝るまでいようか?」

 

「……それは…………出来たら手を握ってくれたら……」

 

「分かった」

 

僕は友奈の手を握ると友奈は安心したのか……すぐに眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈side

 

気がつくとそこは教室だった。

私は直ぐに刻まれた刻印を見ると、ここは夢だと気がついた

 

『おーい』

 

すると扉越しに声が聞こえた

扉が開くとそこには私そっくりの子がいた

 

「友奈ちゃーん」

 

「え?」

 

「私だよ!ほら、もう知ってる」

 

「え……あ!?高嶋……さん?」

 

「そうだよ!わーそっくりだね~」

 

「ご先祖なんですか?私の?」

 

「うーん、そう言うのじゃないみたいだけどそうだよ」

 

どう言うことだろう?それよりも……

 

「あの夢ですよね?」

 

夢なのに……どうしてこの人が?

 

「えっと私も説明が難しいからそれでいいよ」

 

思わずポカンとしてしまった。それでいいんだ……

 

「私は高嶋友奈、貴方は結城友奈……」

 

「う、うん」

 

「固いよ~まぁしょうがないよ。祟りのせいだ」

 

ダメ……その事を知ったら祟りが……

 

「私になら話しても大丈夫」

 

 

 

 

 

 

 

気がついたら、私と高嶋さんは木ノ上で神樹様を見ながら色々と話していた

祟られてしまったこと、高嶋さんが神樹様の一部になったこと……

自分は魂みたいな存在…………

何だか高嶋さんと話していると落ち着く……

 

「こうして私と話せるのは今日が特別な日だからなのと、手を繋いでくれている子のお陰なんだよね」

 

「海くんの?」

 

「あの子も良く分からないけど……神様の力を持ってるからかな?お陰で繋がりやすくなってる」

 

海くんは精霊の影響で祟りが全く通じないみたいだけど…………こんなことも出来るんだ

 

「それで今日来た理由だけど……祟り……私が引き受けようか?」

 

「えっ?」

 

それって……

 

「神様は怖くて気紛れ。でも同時にぼんやりしてるんだ」

 

「ぼんやり……」

 

「私と友奈ちゃんは大体同一人物なの。神様ぐらいの視点から見ればね」

 

「そうなの!?」

 

「友奈ちゃんは充分苦しんだ。私なら変われるよ」

 

「そうしたら友奈ちゃんはどうなるの?」

 

友奈ちゃんはただ微笑んでいた……

 

「未来を生きる友奈ちゃんが苦しむ必要はない」

 

友奈ちゃんの言葉は勇気を……力をくれる…………

 

「ありがとう……めちゃめちゃ嬉しいよ」

 

でもこれは…………

 

「でもね……誰かに押し付けた方がめちゃめちゃ苦しいよ」

 

「やっぱり私なんだね。他の誰かが苦しむことが」

 

「辛いよ……」

 

「うん、分かる。これから頑張れる?」

 

「頑張れないと思う」

 

「分かる……」

 

「でもこうするしかできないよ。私……」

 

「出来ないよね」

 

「祟りのこと……桔梗くんや海くん以外と話せて良かった……」

 

「来て良かった……泣く?」

 

「泣く……」

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚まし、夢のことはうっすらとしか覚えてなかった。ベッドの横には海くんがいてくれた

 

「海くん……ありがとう……ごめんね」

 

これ以上は海くんに……迷惑はかけられないよね

 




のわゆがカットしていたのって、勇者部組が御記を読んでいた話だからなのか?


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16 交わる二人の道

今週のゆゆゆ、夏凜と芽吹の二人の話も良かった


名草side

 

年が明け、私たちはいつも通りだった。

防人としてのお役目をしながら…………

そんな雪が降ったある日の事、私はタワーの中を歩いていると神官とすれ違った。

 

「どうも……」

 

「…………つい先日ここに貴方の兄が来ました」

 

「兄が?」

 

「現在起きている問題の解決のために上里様が国土様と一緒にお話をされたみたいです」

 

問題?私たちに何も知らされていないけど…………

 

「最終作戦、期待していますよ」

 

期待か…………そう考えるしかないか…………

 

 

 

 

 

 

 

桔梗side

 

友奈を救うすべを見つけ出したその日の夜、僕と夏凜は一緒に帰っていた

 

「良いの?東郷と一緒じゃなくって」

 

「海がいるから大丈夫だよ。今はお前が一番危ない気がしてな」

 

「私が?どうして……」

 

「どんな話をしたかは分からないけど、お前は友奈を傷つけたと思っている。だから思い詰めて壁の外に行こうとか?」

 

「あんた……そうよ……私は友奈を傷付けた……苦しんでるのに気づかなくって…………」

 

泣きそうになる夏凜。僕は思いっきり背中をはたいた

 

「いたっ!?」

 

「完成型勇者がうじうじするな……救う手段も見つかった。明日にでも友奈に謝っておけ」

 

「そうね……にしても海がまさか一度死んでるとはね…………」

 

「僕も聞いたときは驚いた……だけどあいつはそんなことを気にしてないと言うか……直ぐに前を向いて歩いている」

 

「……そうね」

 

夏凜も少しだけど調子が戻ってきたみたいだけど……気になるのは…………

 

「夏凜……今から壁の外へと行こうと思う」

 

「何で?」

 

「ずっと嫌な予感がしているんだ……このままだと取り返しのつかないことが起きようとしている」

 

「……分かったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

壁の外へと出た僕ら。相変わらず炎に包まれている

 

「天の神もどうにか対処してくれないかしらね」

 

「あいつは今は別世界に隔離されてるからな。干渉しようにも難しいらしい」

 

「ねぇ……天の神が隔離されてるなら何で…………」

 

「待て!何かある」

 

夏凜の言葉を遮り、僕はその何かを指差した。あれは……船?

 

「なんであんなのが?」

 

「もしかして防人か?」

 

「防人?」

 

「簡単に言えば壁の外の調査をしている部隊だ。海と出会った世界であったことがある……」

 

「と言うか……あの船に乗ってるのって……」

 

夏凜は気づいたみたいだな。一度会っておくべきだな

 

 

 

 

一度壁の中に戻り、帰還した防人たちのところに向かった僕ら。

 

「久しぶりね。三好さん、それに神宮さん」

 

「楠芽吹さん……久しぶり……」

 

「久しぶり……か」

 

この二人はライバルみたいな感じだけど……殴り合いにならないよな?

フッと心配していると視線に気がつき、視線の先を見ると一人の防人が僕を見て驚いていた。誰だ?

 

「……積もる話は後にした方がいいわね。名草」

 

「……はい」

 

「その子……は?」

 

「この子は……防人部隊の一人。神宮さん、貴方に頼みたいことがある」

 

「なんだ?」

 

「彼女と戦って」

 

いきなりの申し出だな……だけど僕も気になっていた。彼女は一体何者なんだ?何か気になる

 

「芽吹ちゃん……分かった……よろしくお願いします」

 

「あぁ」

 

僕は大鎌を出し、彼女は銃剣を構えた。防人の戦い方や武器は知っているが……油断できない。こう言うときは一気に終わらせる!

 

一気に距離を詰めて、大鎌を振ろうとしたが読んでいたのか名草は銃剣で防いだ

それと同時に僕の腹を思いっきり蹴ってきた

 

「つぅ!?」

 

「速いですね」

 

「一応は速さに自信は合ったんだけどな……」

 

大鎌の先を外し、刃を名草に向けて放つが、名草は刃を弾き、鎖の輪の部分に刃を突き立て戻らないようにすると同時に殴りかかってきた

 

「拳でやりあう気か……なら!」

 

互いに殴り合いを始める僕ら。何で……こいつは一歩も引かないんだ?

 

 

 

 

 

 

 

夏凜side

 

「いや、何で……殴り合い?」

 

「多分……名草はそうしたいと思ったからよ」

 

「と言うかあの子……何者なの?」

 

「…………忘れられた存在。彼女はそう言っていた」

 

「忘れられた?」

 

「今に分かる」

 

今にって……と言うかあの二人はいつのまにかクロスカウンター決めてるし…………

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗side

 

まさかクロスカウンターで決まるとは……互いに仰向けになった。

 

「強いな……」

 

「貴方も……聞いていた通りです」

 

「聞いていた?」

 

「姫野さんから聞いてました」

 

あの人から?何で……また

 

「…………こうして会えたのは何かの運命だと思ってます…………だからはっきりと名乗れるようにと決めていたのですが…………」

 

決めていた?どう言うことだ?

 

「私の名前は名草。神宮名草。貴方の妹です」

 

「はっ?」

 

「はぁ?」

 

僕も戦いを見ていた夏凜も同じような声を出していた。いやいやいや、妹って……

 

「あんた、妹いたの?」

 

「いや、知らないんだけど……」

 

「本来は私は養子として神宮家に引き取られる予定でしたが、あの事故でうやむやに」

 

「マジか……」

 

もしかしてあの時……僕に母さんたちは会わせようとしていたのか

 

「いつでも名乗るつもりでしたが、貴方は勇者として戦う道を歩んでいました。だから私も防人としてのお役目を立派に果たしたらと決めていました」

 

そんなことが…………そっか…………

 

「今は貴方とは一緒にいられません。だけど…………私は貴方の……」

 

「…………あぁ妹だよ。血の繋がりがなくてもな……」

 

「……ありがとう。兄さん」

 

兄さんか……少し嬉しいな

 

「それでどうして貴方たちはここに?」

 

「あぁそうだったわね。私たちは友達を救うためにね」

 

「芽吹たちは壁の外の探索をしていたみたいだけど……何か気になることないか?」

 

「気になること?」

 

「そう言えば遭遇する星屑やバーテックスたちが真っ黒ですね」

 

名草は何気なく言うけど……真っ黒か…………

 

「夏凜。何か言おうとしていたけど……なんだ?」

 

「ん?あぁ……天の神が隔離されてるなら何で呪いが起きてるのかってことよ」

 

呪いが……起きている?どう言うことだ?天の神は味方なのに…………呪いは天の神が起こしたものじゃなく……違う存在が?

 

「…………これが嫌な予感か……芽吹、悪いけどこの話は」

 

「分かってる。私たちもお役目に関して少し疑問を覚えてる」

 

「奉火祭の事も一時期忘れていたし……兄さんたちは……」

 

「色々とやるつもりだ。名草、今度一緒に」

 

「うん、墓参りだね」

 

さて海に話をしておくか……って誰かと電話中?




と言うかいい加減友奈ちゃんたちの笑顔が見たい


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17 海の計画

海side

 

友奈が神婚する話を聞き、どうすれば良いのか思い悩んでいたとき、カズマさん達の言葉を聞き、神婚も神樹様をどうにかする方法も思い付いてから数時間後……

 

「みんな、来てくれたんだね」

 

僕の前にはカズマさん、アクアさん、ダクネスさん、めぐみん、友奈(僕の世界の)、ひなたお姉ちゃん、エリスさんがいた。

 

「ここが海の住んでいた世界か」

 

「ダクネスさん、僕が住んでいたと言うか……別の世界ですけどね」

 

「それで早速私とエリスはあっちにいけばいいの!」

 

「おいおい、落ち着け……それは天の神が自力でこっちに戻ってきてからだ。とりあえず俺たちはどうすればいい?」

 

「こっちの世界の友奈は多分もう誰にも止められない……」

 

時間的に学校も始まってるから……多分みんなに知り渡ってるはず

 

「ごめんね……私が迷惑かけて」

 

「友奈が謝ることじゃないよ……と言うか色々と追い詰められて……出した答えが正しいと思ってるな」

 

「うん、私ならそうするかも…………」

 

「確認として……僕が考えた計画とみんなにしてもらうことを話す」

 

一つは友奈を助ける方法。

それに関しては友海と牡丹がもたらした祝水神刀と桔梗さんの持つ天神刀を使えばなんとかなる。

だが友奈の心は今は神婚をして、みんなを救うことしか頭にない

 

「そこだよな~こっちの友奈はもう犠牲になることが正しいって思ってるんだろう?」

 

「海やこちらの世界の勇者たちでは説得は難しいらしいが……」

 

「あの、それなら私……」

 

友奈がおどおどと手を上げる。友奈なら自分自身を説得できるのか?

 

「多分一番望んでる言葉をあげられるのは私だけかと思う……説得と救出は私が……」

 

「友奈……ありがとうな」

 

「大丈夫だよ」

 

「それなら私も友奈さんの救援に参加しますわ」

 

「ひなたお姉ちゃん……」

 

「大赦のやり方は変わってない……少し変わっていても本質的なものはですがね。だとすれはやるべき事は私が今の大赦を叱る事です」

 

「ひなたお姉ちゃんらしいな……それなら大赦での方は友奈、ひなたお姉ちゃん、カズマさん、ダクネスさん、めぐみんにお願いするよ」

 

「分かった!大赦がどうとか私には分からないが、エリス様は絶対に誰かを犠牲にすることはしない!」

 

「ふふ、うれしい言葉です。私とアクア様は例の……」

 

「うん、神樹様が消えようとしている……それならこっちの二人の力でどうにか出きるはず」

 

「まぁこっちのアクアは変わらないならいけるだろうな」

 

「カズマ、それどういう意味?」

 

「そのまんまだよ。単純だから煽ればいけるはずだ」

 

「あのねー」

 

カズマさんとアクアさんの口喧嘩が始まるけど、僕はそれを見て思わず笑ってしまった

 

「ウミ、楽しそうですね」

 

「少ししか離れてないのに……何だか懐かしくって…………」

 

それほどにまで今回の件は凄く大変だと言うべきか……

 

「めぐみん、もしもの為にお前は爆裂魔法は撃たないでほしい」

 

「おや、それは残念ですね……諸悪の根源たる大赦を爆裂魔法で……」

 

「もっと相応しいものがあるから……」

 

色々と考えていたけど、気になっているのは天の神が友奈を呪う意味が分からなかった。

こちらの天の神はもう人に対して何かをすることはない。

だけど友奈の呪い……あれは何か別の要因があるんじゃないかって思っていた

 

「所で銀は?」

 

「銀さんはあちらで待機です。連絡要員かつ扉を開ける役目があります」

 

「だとしたら若葉さんたちも手を貸してくれると」

 

「えぇ……」

 

「それじゃ……後は友奈、もしもみんなと喧嘩して大赦に一人で向かうとしたら……端末はどうする?」

 

「え?うーん、置いていくかな?家に……」

 

「なら、カズマさん、端末の回収お願いします」

 

「オッケーだ!」

 

作戦会議も終わったし、後は……

すると僕の端末に大赦から連絡が入った。

 

「それじゃみんな!頼む!」

 

『あぁ!!』

 

さてここから全てを終わらせよう。みんなを救うための作戦を!



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18 届かない言葉

最終決戦に関して、前作の話を更に色々と追加したリメイクみたいな感じになります。



桔梗side

 

学校に行くが、海の姿はなかった。何かあったのか?色々と話したいことがあったのに…………

 

「と言うか美森はなんで放心してるんだ?」

 

「えっと……」

 

「桔梗、友奈が神樹様と結婚するんだって……」

 

イラつきながら答える夏凛。と言うか結婚って…………

 

「話を聞く必要があるな……」

 

この事は海は……多分知ってるだろうな。だからこそ学校に来ていない可能性がある。

 

 

 

 

部室で友奈から神婚の話を聞かされた僕ら。なんだよ……それ……

 

「いや怪しいでしょ!何引き受けようとしてんの!」

 

「違うと思います!」

 

「今の皆の反応で分かるでしょ?友奈ちゃんの考え方が間違ってる事が」

 

「東郷さん……」

 

「友奈、僕もそれは間違っている。そんなことで僕らが……皆が喜ぶと思っているのか……」

 

「それにしても大赦め…!!友奈!私達もついていってあげるから、ばしっと断りなさい!」

 

「場所は私が教えるよ」

 

「もう我慢ならない…」

 

「行くわよ!一度潰した方が良い組織になるかもね…」

 

今回ばかりは止める気にはなれなかった。こんな事で世界を救ってほしくない。海が言っていた誰も犠牲を出したくないって思いが今になって分かってきた。

 

「待って!!私は…神婚を引き受けるって……」

 

「その必要はないんだって!」

 

「だって、死ぬんでしょ…?」

 

「訳分からない!生贄と変わらないじゃない!」

 

こういう時……何で海がいないんだ?何だかあいつはやることが出来たって言ってたな……

 

「神樹様と共に生きるって何なのかな…」

 

「とても幸せな事だとは思えないわ」

 

「でも!私が神婚しないと、神樹様の寿命が来て世界が終わっちゃうんだよ!?」

 

「神樹様の寿命は分かるけど、でも、だからって友奈が行く必要はないでしょ!」

 

友奈は必死に胸を抑えていた。今の友奈は少しおかしい。焦っている……それだったら呪いの方を急がないとな。

 

「勇者部は人の為になる事を勇んで行う部活、でしたよね?これも勇者部だと思うんです…誰も悪くない。世界を守る為に他に選択肢がないなら…それしかないなら…私は勇者だから…」

 

「ゆーゆ、それしかないって考えはやめよう?神樹様の寿命がなくなるまでの間に、もっと考えれば良いんだよ…」

 

「だめなんだよ…考えるって言っても…私にも、もう時間がなくて…はっ!?」

 

友奈は何かに驚いていた。もしかして呪いの影響が僕らの胸に出てきているのか?

 

「私達知ってるわ。友奈ちゃんが天の神からの祟りで、体が弱っている事を」

 

「天の神の祟りか……」

 

「桔梗くん?」

 

「まだ確証は得てないけど……今は呪いのことだ」

 

「その件はもう大丈夫だよ。カイくんの知り合いのおかげで……」

 

「……それは聞いてます。だけど呪いが解けても世界が……それだったら私は……」

 

「大体おかしいです!なんで友奈さん一人がこんな目に遭わなきゃいけないんですか!」

 

「でもね樹ちゃん。私は嫌なんだ…誰かが傷付く事、辛い思いをする事が…それが今回は、私一人が頑張れば…」

 

「だめよ!友奈ちゃんが死んだら、ここにいる皆がどれだけ傷付いて辛い思いをすると思っているの!!私…想像してみたけど…後を追って、腹を切っているかもしれない!!」

 

「で、でも…東郷さんだって…皆を守る為に火の海に行ったでしょ…」

 

「そうよ!でも壁を壊した私の自業自得でもあるのよ!友奈ちゃんは悪くないじゃない!反対よ!腹を切るわよ!」

 

「桔梗くんだって……」

 

「僕は皆を救いたいって思ったから、あの時皆の記憶から僕を消してもらった。後々皆に怒られたけど……お前はそれが出来なくなるんだぞ……」

 

「う…みくんだって……」

 

「カイくんはそうすることしか思い付かなかったって言ってたよ。ただ結果的にカイくんの世界の私たちに沢山怒られたって」

 

こんな誰かが犠牲になることを望むなんて……だけど今の友奈には言葉が届いていない。

 

「友奈さんが言うように、勇者は皆を幸せにする為に頑張らないといけないと思うんです」

 

「そうだよ。だから私頑張ってるよ…」

 

「皆って言うのは、自分自身もそこに含まれているのよ!友奈!」

 

「ゆ、勇者部五カ条なるべく諦めない!私は皆が助かる可能性に懸けているんだよ!」

 

「あんたが生きる事を諦めているじゃない!」

 

「勇者部五カ条なせば大抵何とかなる!!成さないと何にもならない!」

 

「友奈!五カ条をそういう風に使わない!」

 

「私は、私の時間がある内に…私の出来る事をしたいんです!だからこうして皆にきちんと相談しました!」

 

「これじゃ報告だよゆーゆ…相談しなきゃ…」

 

「相談してるよ!!」

 

「友奈…その…とにかく、無理すんな…」

 

「無理してないよ!!勇者らしく、私らしくしてるよ!」

 

「友奈!皆がここまで言ってまだ分からないの!!」

 

「だから!他の方法がないからこうなっているんです!!」

 

友奈の言葉を聞いた瞬間、僕の中で何かが切れた。いい加減にしろ……他に方法がない?探してすらないだろ

 

「友奈!!いい加減に……」

 

「やめてください!!」

 

僕は友奈の胸ぐらをつかみ、殴ろうとした瞬間、樹が止めた。

 

「なんで…なんでこんな…喧嘩なんて…」

 

「樹……すまない」

 

「ゆーゆ、呪いを解こう。そしたら今度は世界を救う方法を考えよう」

 

「それに一度頭を冷やしなさい。ここに海がいないって言うことは、海と揉めたんだから……ちゃんと謝りなさい」

 

「友奈ちゃん……」

 

「私は………ただ……」

 

突然友奈は何かに気が付き、部室を出ていった。まさか痣が今までよりも濃くなっているのか?

僕と園子、美森の三人で友奈を追いかけていくのであった。

 

「その前に海に連絡を……」

 

友奈を追いながら海に連絡すると…

 

『もしもし?』

 

「友奈が……」

 

『神婚の話を聞いたんですね』

 

やっぱり知っていたのか…………

 

『僕は僕のやるべき事を……見つけたから……そっちはお願いします』

 

「…………友奈を救えるのか?」

 

『友奈だけじゃない……世界も全てを…………』

 

海が何をしようとしているのか分からないけど……今は友奈だな。後は……

 

『名草、もしかしたらかなりヤバイことが起きようとしている。どうするかは芽吹に判断をしてもらえ』

 

そうメッセージを送るのであった



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19 念には念を!

最終回はリアタイして見ます!どうなるか!


海side

 

大赦から連絡を受け、みんなには先に大赦へと行って欲しいと言おうとしたが…………

 

「…………」

 

「どうしたんだよ?海」

 

「ちょっと色々と対策をしておきたいと思って…………」

 

エリスさんがいるからこっちからでもあっちに連絡出来るはずだから…………

僕はある人物に連絡をした。

 

『やっほ~海くん~色々と大変みたいだね』

 

「あの人から聞いたのか」

 

『まぁね。機嫌がいいからさ。それで?なにか用?』

 

「手伝ってほしいんだ…………お前の力が必要なんだ」

 

『……ふーん、私の力が必要なんだね』

 

「打てる手は打っておきたいからな」

 

『分かった。手伝うけど……結城友奈ちゃんに代わってもらっていい?』

 

言われるまま友奈に代わり、友奈は物凄く思い詰めた顔をしたが……

 

「分かったよ」

 

そう言って僕に端末を返した

 

『それじゃ私はどうしたらいい?』

 

「カズマさんたちと合流して、大赦に行ってもらえばいい。多分やることはわかると思う」

 

『りょーかい』

 

電話を切るとカズマさんは相手が誰なのか気になっていた

 

「誰に電話してたんだ?」

 

「……赤嶺に」

 

「はぁ!?マジかよ!」

 

「いいのか?何か変な要求とかは……」

 

「……してきたね」

 

友奈も珍しく呆れていた。と言うか何を要求されたんだ?

 

「海くんとデート……」

 

「…………すまん」

 

「ウミはユウナキラーですから仕方ないですね」

 

「頼むから言わないでくれ……と言うか誰がそんな言葉を教えた!あーもう!とりあえず先に呼び出されたところに行ってくる!」

 

 

 

 

 

 

 

英霊碑に行き、みんなを待つなか、僕は赤嶺と出会った頃を思い出していた。

 

 

あれは友奈と結婚してから数日後の夜中、何かの重みに気がつき、目を覚ますとそこには妖艶の表情の友奈がいた

 

「海くん……」

 

「友奈……」

 

なんだ?友奈がこんなことをするはずないし、屋敷にいるときに例の店で頼んだりしてないのに…………これは…………

 

「ふふ、聞いていた通りに子だね」

 

そっと僕の頬に触れる友奈?何とか逃げ出そうとするが動けないでいた

 

「あぁ動こうとしても無駄だよ。私の場合は勇者の力の他に……魔法も使えるから」

 

早く何とかしないと…………身体がうまく動かせないけど…………

僕は樹の武器を使って、部屋の物を落とした

 

「あぁ勇者の武器を全部使えるんだっけ?」

 

「海くん、凄い音が…………えっ?」

 

物音に気がつき、様子を見に来た友奈……いや、個人的には友奈じゃない方が…………

 

「あれ?結城友奈ちゃんが来ちゃったか。まぁここは逃げようかな?」

 

友奈?はそう言って窓を破って逃げ出した。それと同時に僕は動けるようになったけど…………

 

「えっと浮気?」

 

悲しそうな顔をする友奈。いや、頼むから誤解しないでほしい

 

「違うから!襲撃を受けてたの!」

 

「え?襲撃?」

 

とりあえずみんなで追うことになるのであった

 

それから何度も襲撃と言う名の遊びに来る赤嶺。色々と大変な目に合いつつも今回の戦いに関しては力になってくれるはず…………

 

「そろそろ来るな」

 

英霊碑、僕もここには一度来たことがある。何せ銀の魂が眠っているからだ。とはいえ、銀は天の世界の住人になっているから眠っていると言うべきか……

そして石碑の前には一人の大赦神官が待っていた。そしてそこには海、友海、牡丹も来ていた。

 

「勇者様に最大限の敬意を」

 

「やめて下さい」

 

「ここは歴代の勇者と巫女が祀られている場所」

 

「私達は友奈ちゃんに会いに来たんです!」

 

「友奈さんはどこにいるんですか!?」

 

「今は大赦におられます」

 

この神官、何だか聞き覚えのある声だった。どこかで会ったことがあるはずだ……いつだ?

 

「じゃあ大赦に乗り込むわよ!!」

 

「友奈様から話を聞かれたかと世界を救う方法は神婚しか残されていません。寿命も残り僅か」

 

「いや、呪いは解呪できる。ここにいる未来の勇者たちのお陰で見つけたんだ」

 

「そうだよ。これでママが死ぬことはないんだよ」

 

海と友海がそう言うと牡丹が辛そうな表情で神官を見つめていた。

 

「私達の世界の大赦はこんな風に誰かを犠牲にしたりしません。どうして世界が違うだけで……こんなに違うんですか」

 

牡丹は世界の違いに戸惑っていた。そうだよな。牡丹からしてみれば優しい組織だったのに……

 

「世界が違うからこそ、同じようには行きません。上里様、貴方もどう思いますか?」

 

神官はそう言った瞬間、石碑の裏から巫女の海が出てきた。こんな所に大赦のトップの巫女がいていいのかよ

 

「世界が違う……それだったら別の方法を考えればいい。こちらでは見つからなくても、あちら側の海様の世界で……」

 

「……貴方は最後まで神婚の儀を反対していましたね」

 

「こんなの間違っています」

 

「もう時間がないのです。友奈様はこれより神婚の儀に入られます」

 

「ふざけるな!!止めてやる!!」

 

「歴代の勇者様の多くは、お役目の中で命を落とされました。2年前には人類を守る為に、三ノ輪銀様が落命。銀様は人類を守ろうと懸命に戦い、見事にお役目を果たされ英霊になられました」

 

「私は別に英霊になんかなってないよ」

 

なにもない所から声が聞こえた瞬間、眩い光とともにコートを羽織った銀が現れた。

 

「私はただの勇者だよ。それに人類のためとか言って戦っていたけどさ。あの時は須美と園子を守るために戦っただけだよ」

 

「銀……」

 

「ミノさん……」

 

「………300年前の勇者達もこんな事になるとは思ってないだろうな」

 

海はゆっくりと神官を見つめ、石碑の周りにあったモニュメントを見つめた。

 

「乃木若葉……高嶋友奈……郡千景、伊予島杏、土居珠子……白鳥歌野……あの人達は未来で誰かが犠牲になることを望んで戦っていない。お役目とかそんなの関係なしに戦ってきた」

 

「……貴方に彼女たちの何がわかるんですか?」

 

「分かるさ……僕らとそう変わらない歳だった……」

 

海だからこそ言えることだな。あいつはあの世界で若葉たちと一緒に戦ってきたんだから

 

「ちょっと待ちなさい。それってここにある墓全部……私達と変わらない子たちが……いつだって子供達を犠牲にして生き延びてきたって事じゃない…そんな歪な世界ってあるの!?」

 

「全てを生かす為にはやむを得ないのです。それが、この時代における人の在り方」

 

「………変わったね。安芸先生」

 

銀の言葉を聞いた瞬間、僕と美森は驚きを隠せないでいた。安芸先生って確か美森達が小学校の頃、勇者のサポートをしていた……僕も一度だけ会ったことがある。

 

「ピーマンが嫌い…だったよね。すっごく厳しいけど、ふとした時に見せるチャーミングな所が私は好きだったよ…でも今は、昔の安芸先生じゃないんだね…」

 

「銀の時、一緒に悲しんでくれたのに…その辛さを知っているなら…もう一人も犠牲なんて!!」

 

「そうだよ。というより何でこんな事になっているのに天の世界に頼まないんだよ。こっちだって手助けはできるように……」

 

「三ノ輪銀……大赦の中には未だに天の神を信じられていない人間がいます」

 

今まで敵対してきて、協力するようになっても信じられないような人がいるのはわかっている。だから大赦は天の世界に神樹様のことを頼まなかったのか。

 

「あなた達のクラスメイトは、その友達は、家族は、もうすぐ来る春を待ち遠しく思いながら、家でうどんを食べて、温かい布団で寝て、今日も平和な日常生活を送っている。少々の犠牲…このやり方で大部分の人達が幸せに暮らしているのです」

 

「それなら…それなら、あなた達が人柱になれば良いのに!!」

 

「出来るものなら、そうしています…だが、私達では神樹様が受け入れない」

 

「………先生。あんたはどうしたいんだ?」

 

僕は先生の前に出て、胸ぐらをつかんだ。海と巫女海は咄嗟に止めようとしたがすぐにやめた。

 

「あんたの言葉はただ大赦から言わされている言葉……アンタ自身の心の声をきかせろ!!」

 

「…………私は……」

 

先生が何かを言おうとした瞬間、突然僕らの端末からアラームが鳴り響いた。そしてアラームは歪な音ともに地震が起きた。

 

「どうやら間に合わなかったみたいだね」

 

更には空から穴が開き、一人の少女が姿を現した。彼女は天の神……戻ってきたのか?

 

「天ちゃん……これって……」

 

「大赦は大きな過ちを……いや過ちだと気づいて神婚をやろうとしているのか」

 

「天の神……どういう事だ?一体何が起きているんだ?」

 

「結城友奈の呪いは私が古に作ったシステム。そしてこれもまた人が神の眷属になろうとした時に目覚めるように設定したシステム……世界は滅びる」

 

天の神がそう告げた瞬間、空が暗くなり、無数の穴が開いた。そして穴から巨大な何かが姿を現した。

 

「人の身でありながら、神に近づこうとしたからこそ世界は滅びる。もう私には止められない」

 

「いいえ、神婚が成立すれば人はもう神の一族。人でなければ襲われない。これで皆は神樹様と共に平穏を得ます。これが最後のお役目。敵の攻撃を神婚成立まで防ぎきりなさい」

 

最後の最後にこんなことになるなんて……やるしかないのか……

 

「……悪いけど神婚成立は叶わないよ」

 

突然海がそう言い、勇者に変身した。そして天の神にあることを聞いた。

 

「あのシステム。アレに友奈に呪いをかけたシステムが組み込まれたりとかは?」

 

「えぇ、しているわ。まさかと思うけど、アレを倒す気?あなた達だけで……」

 

「あぁ、僕はそうするつもりだ」

 

「海……」

 

「待って、海くん。神婚成立は叶わないってどういう事?友奈ちゃんを助けて、古のシステムを破壊しても……神樹様を助ける方法は……」

 

「そうだよ。カイくん。まだ見つかって……」

 

「いいや、見つけている。こんなこと僕しか思いつかなかった。天の神、今すぐある二人を連れて、この世界の女神の所に向かってくれ」

 

「女神の所に?それにある二人って……なるほど」

 

天の神は何かを理解し、姿を消した。海にしか思いつかない方法って……

 

「人のためなら生贄を求めたりしない。世界を滅ぼしたりしない。僕が知っている神様はそういう人たちだった」

 

「海……お前まさか……」

 

「みんな、神樹様のことは何とか出来る。今はアレを何とかしよう」

 

それにきっとあっちではカズマさんたちが動いてくれているはず!

後は事前に聞いていた防人たちは……どう動くか……




次回は防人組中心です


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20 防人としての役目、友奈の想い

徐々に改編していきます!


名草side

 

私たちは千景殿に集められ、次のお役目について聞いていた。それは神婚が成就するまでの間、敵の進行をくい止めるもの…………

 

神婚………もしかして兄さんたちが直面している問題に関係してるのか…………

 

「この神婚が成功すれば全てが終わります」

 

終わる…………もう手を取り合えるのに……どうして戦いが起きようとしているのか…………

そこまでして大人たちは……自分達の平穏を手に入れたいのか…………

 

「…………」

 

芽吹ちゃんも今回の作戦について納得がいっていない…………

今の私たちはただ従うだけなのか…………

 

そんなとき一人の神官が何かの連絡を受けていた

 

「はい、はい、何ですって!?」

 

「どうかしましたか?」

 

「…………神婚の場に乱入者が…………」

 

「そんな!?神婚は!?」

 

「狙いは勇者様の模様で……はぁ?下着を奪われた?何を言って…………」

 

兄さんたち?でも下着って……いったい何が起きてるの?

 

「……防人に命じます。今すぐ…………」

 

「我々がやるべき事は敵の進行を食い止めるものです。乱入者が人である以上傷つけることはできません」

 

「それは我々に対して反抗すると言うことですか?」

 

反抗か……そうなるかもしれないけど……だけど!

 

「私たちは………人です。ただ命じられるだけの人形ではありません!」

 

「名草……彼女の言う通りです!あなた方が何をするつもりか分かりませんが…………私たちは防人……量産型勇者!勇者は守るべきもののために戦います!」

 

芽吹ちゃんがそう告げた瞬間、千景殿が大きく揺れ、壁の方に巨大な何かが現れていた

 

「あれが敵と言うなら……我々も迎え撃ちます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈SIDE

 

空が暗くなり、無数の穴が空いた。あれって大赦の人が言っていた古のシステム……

 

「友奈様、急いで神婚の儀に取り掛かります。システムは勇者たちが……」

 

「分かりました……」

 

急がないと皆が……世界が……

 

「ちょっと待ったァァァァァ---!!」

 

誰かの声が聞こえた。周りにいる大赦の人たちもその声の方を見るとそこには変わった格好をした男の子、黒い格好をした女の子、鎧を着た金髪の女の人、そして巫女装束の人と大赦の人と同じ格好をした人がいた。

 

「誰ですか!?ここは神聖な……」

 

「悪いけど仲間に頼まれて、そいつを誘拐しに来た」

 

「なんと無礼な……」

 

大赦の人がその人達を捕まえようとしたが、金髪の女の人が大赦の人たちの前に出て、大赦の人たちを押さえ込んでいた。

 

「神との結婚……生贄と変わらないじゃないか。こんな物エリス様はしないぞ」

 

「神樹様が教えたことですから……でも私達は他の方法を考えます。どうして今の時代の人は思いつかないんでしょうか……」

 

「な、あぁ、貴方は……まさか……」

 

大赦の人が巫女装束の人を見て、驚きを隠せないでいた。この人、何だか海くんに似ている気がする……

 

「神樹様が認めたことでも、この私、初代巫女である上里ひなたが許しません!!カズマさん!!」

 

「おう、ここにいる仮面つけている奴らは女性だな。だったらスティール!!」

 

カズマって言う人が手をかざした瞬間、何故か下着を握っていた。もしかしてあれって……

 

「下着の次は身ぐるみを剥ぐ」

 

「カズマ……ゲスですね。所でひなた、このような場所……破壊してもいいですか?」

 

「めぐみんちゃん。貴方は大事な役割があるんだから……」

 

この人達はもしかして海くんの……どうして……

ただ呆然としている私に大赦の格好をした人が私に近づきあることを告げた。

 

「ねぇ、これで本当にいいの?」

 

「えっ?」

 

「自分を犠牲にして……皆を救うことが本当に勇者なの?」

 

「そ、それは……」

 

「それにね。どんなに辛くても、犠牲になったら駄目だよ。貴方が行くべき場所は分かるよね」

 

この人、一体何を……それにその声、どこかで……

 

「今、あそこでは皆があの巨大なものと戦ってる。世界の……人類のために、でも貴方はここにいていいの?」

 

「わ、私は……私が神婚すれば世界は……」

 

「それは本当に貴方が思っていることなの?」

 

「えっ?」

 

「死んじゃうのは怖いよね。みんなとお別れするのは嫌だよね。貴方はその気持を必死に抑えて世界のために死のうとしている……本当のことを言って……」

 

この人、どうして私の気持ちがわかるの?本当は死ぬのは怖い、皆とお別れするのは嫌だ。でも、私は世界のためだからと自分に言い聞かせてきたのに……

 

「私は……怖い……呪いで死ぬのも、神婚で死ぬのも……皆とお別れするのも……もっと生きたい。生きたいよ……」

 

この人に私の本当の思いを告げると、大赦の人は私の端末を取り出し、渡してきた。

 

「それじゃ生きるために今、あそこにいる皆と一緒に戦おう」

 

「あ。貴方は……それにその声……どこかで……」

 

大赦の人は仮面と着ていた服を脱ぎ捨てるとそこには私がいた。この人……もしかして……

 

「行こう。友奈ちゃん」

 

「……はい」

 

私は私の手を握り、同時に変身した。今からならまだ間に合うよね。

 

「流石は海くん、言ったとおりですね」

 

「うん、自分たちの言葉が通じないからって……私に頼んできたもんね」

 

「全く夫婦して手のかかる人ですね」

 

「えっ、夫婦って?」

 

「あっ、友奈ちゃんに言わなかったけど、私と海くん、結婚してるんだよ」

 

そ、それはそれで結構驚きなんだけど……というより年は大丈夫なのかな?

 

「ユウナ、お前たち二人はめぐみんを連れて、先にいけ。ここは私とカズマとひなたでどうにかする」

 

「まぁ、どうにかしちゃって終わってるんですけどね」

 

「お~い、この奪った下着どうするんだ?」

 

カズマって言う人は、女の人の下着を握りしめながらそんなこと言っているけど、本当に海くんのお友達なのかな?

 

「とりあえず燃やしましょうか」

 

「「「「まっ、待ってください。ひなた様!?」」」」

 

「ここは二人に任せていこう」

 

「う、うん」

 

「ふっ、今回は神様みたいなものですか。いい的になりますね」

 

三人で向かおうとするが、多くの神官の人たちが立ち塞がった

 

「なりません!」

 

「あなたがここからいなくなれば世界は滅びます」

 

「神婚を!」

 

「神婚を!」

 

「神婚を!」「神婚を!」「神婚を!」「神婚を!」「神婚を!」「神婚を!」

 

多くの神官が口を揃えて同じことを…………

 

「むぅぶっ飛ばしたいですが……」

 

「何とか傷つけないように…………」

 

黒い衣装の子ともう一人の私は躊躇していると、上から誰かが降ってきた。それは褐色の私?

 

「やっほ~手伝いに来たよ~」

 

「赤嶺ちゃん……」

 

「なるほどこちらに援軍として来たのですか」

 

「そうだよ。それに結城ちゃんは……と言うより勇者は対人戦には慣れてないからね。こういうのは慣れた人の方がいいから!」

 

立ち塞がる神官たちを一気に凪ぎ払っていく。この子……強い…………

 

「借りは言った通りにね」

 

「う、うん」

 

何だか嫌そうにしてる私だけど……どうしたんだろう?




最終回は本当に良かった……本当にこれから先の事を考えているのは誰なのかと言うね


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21 防人たちの戦い

久しぶりの更新だー


桔梗SIDE

 

古のシステムが現れ、僕らは勇者に変身した。あんな巨大なものとどう戦えばいいのかわからないけど……今は考える必要はないな。

 

「皆、私も一緒に戦うよ。この世界のために……」

 

「ミノさん……うん」

 

「一緒に……戦おう」

 

「おう」

 

「それじゃ皆、アレを倒して、すべてを終わらせましょう。勇者部出撃!!」

 

全員で動き出すが、何百体もの星屑が僕らがいる場所とは違う場所へと向かう。あの先には…………まさか

 

「桔梗くん?」

 

「……別の方に向かってるバーテックス……もしかしたら…………」

 

防人たちも出撃してるなら……もしかしたら…………

 

「桔梗、あの子達なら……」

 

「そうだけど……」

 

こんなときに迷うなんてな…………くそ

 

「…………友海、牡丹、悪いけど二人は誘導を頼む」

 

「え?誘導……あ、もしかして」

 

「来ているのですか?」

 

「うん、来るって話してたから……それと」

 

海は僕の大鎌を取り出し、牡丹に渡した。もしかして……

 

「これを桔梗さんが心配してる人に渡してあげてほしい」

 

「分かりました。お父様、その人は……」

 

「名草……名前を呼べばきっと答えてくれる。海、この武器は……」

 

「僕が解除しない限り消えないですから大丈夫です」

 

「そうか……ありがとう」

 

頼む……二人が来るまでの間、持ちこたえてくれ…………

 

 

 

 

 

 

 

名草side

 

神官たちの制止を振り切り、私たちは敵の数を減らすために動いていた。一部でもこちらに注意が向けば……勇者たちの……兄さんたちの戦いが楽になるはず

 

「ふええええ!?物凄い数がこっちに来てるよ~」

 

「雀!防御に専念しろ!シズク!弥勒さんは私と共に数を減らすぞ!」

 

「芽吹ちゃん、神官たちが話していた千景砲は…………」

 

「…………戦いが始まる前、神婚をする勇者が連れ拐われた話を聞き、もう何人かの神官たちは…………」

 

絶望してるってこと……だよね?亜耶ちゃんは一人でなんとかしようとしてるみたいだけど………………

 

「名草……諦めるな」

 

え?私……諦めかけてた?

 

「お前は誰よりも生き残ろうとする思いが強かった。だから…………」

 

「……うん!」

 

私たちは迫りくる星屑を凪ぎ払っていく。だけど数が減らない……

 

「ハアアア!」

 

でもここで挫けるわけにはいかない!私は迫りくる敵を次々と蹴散らしていくが

 

「名草!横!」

 

芽吹ちゃんの声が聞こえ、横を振り向くが既に星屑が口を開いて私を…………あぁここで私は……終わるのか……ごめんね……みんな、後は任せたよ……兄さん…………会えただけでも…………

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

突然叫び声が聞こえたと同時に、私に迫ってきていた星屑が真っ二つに切り裂かれていた。

 

「え?」

 

すると船の上に五人の少女たちが立っていた。

 

「若葉さん!」

 

「パパたちは向こうですが……」

 

「分かってる……ある程度ここに敵を倒してからみんなのところへ行くぞ!」

 

若葉と呼ばれる少女がそう告げて、迫りくる星屑を一気に倒していく。この人たちは……

 

「あの……名草さんはどちらですか?」

 

「名草はあそこに……君たちは?」

 

「私は上里友海」

 

「私は東郷牡丹と言います。そしてあそこにいるのは……えっと色々と事情があって、別世界の初代勇者です」

 

「初代勇者!?どう言うことだ?いや、後で話は三好さんから聞くとして……」

 

「あの、私に何か?」

 

「これを海おじ様が渡してほしいと」

 

「牡丹のパパ……桔梗おじちゃんが使ってる武器だよ。私のパパは勇者全員の武器を使えるからね」

 

この子……どや顔してるけど……もう何がなんだが…………

 

「私たちもある程度敵を減らしたら、みんなのところに行きますので」

 

「生き残りましょうね!」

 

二人はそう言って、星屑の群の中に突っ込んでいく

 

「立てるか?名草」

 

「うん……」

 

私は銃剣と大鎌を構え…………

 

「私たちも勇者だからね……頑張るよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

初代勇者たちの手を借りてら敵を蹴散らしたあと、勇者たちは元凶の所へと向かうのを見送ると、暫くしてから双子みたいな子と黒い衣装の子がやって来た

 

「あれ?この船なに?」

 

「目についたから来たけど……」

 

「君たちは……彼処で戦ってる勇者たちの仲間か?」

 

「はい!」

 

「その……」

 

「早くいってやれ……こちらは大丈夫だ」

 

「わかった!友奈ちゃん、行こう!」

 

「うん!えっと……」

 

「この船はまだ動かせますね。ギリギリの所まで乗せてもらいます。きっとウミはそれを望んでますから」

 

黒い衣装の子が笑みを浮かべてるけど……この子は本当に何者なんだろうか?




次回!古のシステム決着!


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22 神々に愛された三人

今回で最終決戦終了です


桔梗side

 

美森が迫りくる影を撃ち落としていく中、上空から炎を纏った星屑が襲いかかろうとしていた。僕が咄嗟に守ろうとするが間に合わない……くそ、

 

「ハアアアアアアアアアアアア!!」

 

突然、炎を纏った星屑を誰かが切り裂いた。あの衣装と刀は……まさか……

 

「………遅いですよ。若葉さん」

 

「すまない。遅くなった」

 

助けに入ってくれたのは乃木若葉……300年前の勇者であり、園子の先祖……この人ってまさか……

 

「ちょっと海、この助っ人、誰よ?」

 

「乃木若葉さん、そのっちのご先祖様で、勇者だよ」

 

「こちらでは初めましてだな。海に言われて私達も助けに来た」

 

「私達って……」

 

無数にいた影達が気がつくと数が減っていった。そして影の大群の中から何人もの勇者が現れた。

 

「若葉、先行しすぎだって」

 

「タマっち先輩、仕方ないよ。未来の勇者たちのためだもん」

 

「まぁ、若葉はパワー全開だからね」

 

「それでも少しは抑えないと駄目ね」

 

「グンちゃん、しょうがないよ」

 

土居珠子、伊予島杏、白鳥歌野、郡千景、高嶋友奈……みんな、海が呼んだのか……あいついつの間に……

 

「ちょ、ちょっと、友奈よね」

 

「えっ?あ、私は……」

 

「夏凛ちゃん、彼女は違うわ。似ているけどそうじゃない」

 

「流石は東郷ね…どの世界でも見抜けるなんて……」

 

「説明は後だ。今はこいつらをどうにかしないと……」

 

「パパ、お待たせ」

 

「勇者の皆さんを誘導してきました」

 

こういうことは最初に言っておいてほしいのだけど……

 

「おう、これであとは……」

 

海は遠くの方を見ていた。誰かが来るのを待っているのか?

 

若葉たちのお陰で古のシステムが生み出した影達を殲滅したけど、古のシステムの攻撃はまだ猛威を奮っていた。

僕らは攻撃を避けていくが、海はじっと何処か別の方向を見ていた。

 

「海、さっきから何を待っている!?」

 

「桔梗さん……神樹が……」

 

海の言葉を聞き、全員が神樹様を見ると枯れ始めてきている。もう限界が近いっていうのか?

 

「神樹様が……海が言っていた作戦は本当に大丈夫なの?」

 

「まだわからないけど……上手くいくはずだ」

 

海は白月を取り出し、炎に包まれた星屑を切り裂いた。このまま敵の攻撃を耐えるだけじゃ駄目だ。何とか打開策を……

 

「パパ、私のパンチで攻撃を与えれば……」

 

「いや、あそこまで届かないけど……」

 

「それなら私が運ぼう!!切り札発動!大天狗!!」

 

若葉が黒い翼を広げ、友海を抱えた。あれが若葉の切り札か……

 

「ご先祖様のそれって、満開?」

 

「いや、これは切り札だ。満開とは違って身体を犠牲にすることはないが、精神汚染や肉体疲労は大きい。だが……」

 

「私達も!!」

 

高奈の号令とともに西暦時代の勇者たちが切り札を発動させた。そして若葉と友海の道を作るために迫りくる攻撃を防いでいった。

 

「一気に行くぞ!!」

 

「はい!!」

 

猛スピードで友海を古のシステムの目の前まで運んだ若葉。友海は拳を大きく構え……

 

「師匠とママ直伝!!爆裂!勇者パンチ!!」

 

眩い光が込められた拳が古のシステムに当たろうとした瞬間、古のシステムの中心部から赤い光が放たれ、辺りが赤い光と眩い閃光に包まれ、光が止むと若葉と友海の二人が空から落ちてこようとしていた。

 

「友海!!」

 

「若葉ちゃん!!」

 

落ちてくる二人を牡丹と高奈の二人が受け止めたけど、古のシステムにはダメージが無かった。

 

「うぅ……」

 

「くっ……」

 

「あんなものまで……それだったら私も満開を……ってゲージが……」

 

「フーミン先輩、事故に遭った時にゲージが消費されたんじゃないのかな?それで……」

 

「そんな……だったら……」

 

先輩は大きく跳び上がり、大剣を限界まで大きくさせた。

 

「満開が使えなくっても!!これでぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灯華SIDE

 

英霊碑に来ていた私は巫女様と神官の姿を見つけた。

 

「状況は………」

 

「勇者様たちの劣勢です。このまま行けば世界もろとも全滅……」

 

「だからって神婚は……」

 

「あ、あの、今、連絡があって上里ひなたって言う人の友達に結城ちゃんが攫われたって……」

 

「ひなたって……まさか彼が呼んだっていうの?」

 

「神婚ではなく全く別の方法で世界を救うなど……」

 

二人が俯く中、私はポケットから壊れた端末を取り出した。

魔王システム……私が宝生に利用されて、大赦や勇者たちを傷つけようとしたシステム。捨てられずにいて、他の世界でもいつの間にか持っていた。きっと必要な時が来るのだろうと思っていたけど……

 

「今がその時だよね。勇者と魔王が手を取り合う時だよね」

 

私は静かに祈った。お願いだから………私に力を貸して……神樹様でも、天の神様でも、天使でも、悪魔でも……

 

その時だった。英霊碑が光り輝き、私の端末に光が集まった。そして壊れたはずの端末が動き出した。

 

「これって……」

 

「歴代の勇者様達が……」

 

「力を貸してくれているということですね」

 

「うん……ここにいる皆も一緒に世界を救いたいんだ」

 

私は端末に浮かび上がった紋章に触れると巫女服に薙刀を持った姿に変わった。

 

「ありがとうございます。そして行こう」

 

私は皆のところへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

風先輩の斬撃は古のシステムに当たろうとしていた。だけどその直前で十一体のバーテックスの影に防がれてしまっていた。

 

「そんな……」

 

「ここまで来て……」

 

「くっ、満開!!」

 

東郷が満開し、砲撃を行って古のシステムを攻撃し続けるが、ダメージが通っていなかった。そして古のシステムから獅子型のバーテックスが現れ、真っ黒な炎の塊を生み出し、僕ら目掛けて放った。

 

「ゆ……友奈ちゃ……ん、ごめんね」

 

「くそ!?」

 

桔梗さんは炎の塊の前に飛び出し、精霊の障壁で防いだ。だけど精霊の障壁を通り抜け、桔梗さんを炎に包み込んだ。

 

炎が消えると桔梗さんはそのまま地面に落ち、あちこち焼け焦げていた。

 

「大丈夫か……美森……」

 

「桔梗く……ん」

 

「このまま……終わるっていうの……」

 

「神樹様も私達を……」

 

先輩と樹の二人が諦めかけていた。このまま神樹は枯れ、世界は古のシステムに滅ぼされる。こんな絶望なんて受け入れることは……

 

獅子型バーテックスはもう一度黒い炎の塊を放とうとしていた。今度は僕が皆を……

 

「ハアアアアアアアアアアア!!」

 

突然、誰かが黒い炎を切り裂いた。今のは……

 

「部長、みんな、お待たせしました」

 

「あんた!?灯華!?どうして……それにその姿……」

 

「魔王システムですよね。どうして……」

 

「皆が力を貸してくれました。私も勇者部特別部員ですし……一緒に戦います」

 

「皆って誰よ……でも、助かるわ」

 

「勇者と魔王が協力しあって戦うっていいね~」

 

「みんな!!また攻撃が来るぞ!!」

 

若葉さんがそう言った瞬間、獅子型は黒い太陽へと姿を変え、僕らに襲い掛かってきた。それだったら……

 

「「ダブル!!勇者パァァァァァァァァンチ!!」」

 

僕が切り札で対抗しようとしたけど、黒い太陽を突き破ってやってきた二人が僕らのところへ降り立った。全く……遅いよ

 

「………みんな、遅くなってすみません。結城友奈、帰ってきました」

 

「友奈……あんたね……」

 

「友奈ちゃん」

 

「東郷さん、ごめん……ごめんね。酷いこと言って……夏凛ちゃんも……」

 

「別にいいわよ。というか……」

 

「あの友奈さんが二人いるみたいですけど……」

 

「ゆーゆ、分身できたの?」

 

皆がもう一人の友奈を見て、驚いていた。それもしょうがないよな。正真正銘もう一人の友奈だし……

 

「えっと、私は……」

 

「僕のいる世界の友奈で、僕の奥さんです」

 

「「「「「はぁ!!?」」」」」

 

「海くん、今説明するところなの?」

 

「あの、まだ戦いが終わってないですし……」

 

灯華さんがそう言う中、古のシステムが友海の爆裂勇者パンチを相殺した攻撃をしようとしてきた。まずはアレを防がないと……

 

『ウミさん、祝水神刀を構えてください』

 

突然声が響き、僕は言う通りにすると巨大な閃光を水の障壁で防いだ。今の声って……

 

「エリスさん?」

 

『お待たせしました。説得の方は完了です』

 

『今、カズマたちの所に行くところだけど、何処にいるのかしら?』

 

『それともう変化は出ているはずだ。神樹の方を見ろ』

 

「みんな、神樹が……」

 

「あれって」

 

「まさか海がやろうとしていたことって……」

 

みんなが神樹の変化に驚きを隠せないでいた。さっきまで枯れ始めていた神樹から水色と白い光に包まれていた。あれって……

 

「ねぇ、なんか……声聞こえない?」

 

「この声、タマっち先輩……」

 

「うん、あの人の声だよな」

 

夏凛がそう言う中、杏さんたち……というより僕と初代組はこの声に聞き覚えがあった。やっぱりこの声って……

 

『さぁ、四国にいる人間たちよ。集合体の言うとおり神婚すれば幸せになるわけ無いわ。これからは私とエリスが世界を守ってあげる。だから崇めなさい!!』

 

『先輩、もっと言い方が……でも仕方ないですよね。自分自身に煽られたみたいですし……人の子たちよ。今、あなた達がするべきことはただ祈るのはやめ、今、世界を……人類を救おうとしている勇者たちを応援することです!!』

 

こっちの世界のアクアさんとエリスさん……ありがとうございます。

 

「なにこれ……みんなの声が……」

 

「これってあの声の人達が言ったとおりに……」

 

「温かい……」

 

「神様たちは人を信じてくれたから……助けてくれたんだよね。わっしー、ミノさん」

 

「えぇ」

 

「これなら……」

 

皆が暖かい光に包まれる中、僕は白月と祝水神刀を地面に突き刺した。

 

「そろそろ終わらせようか………満開と切り札を合わせ、更に女神たちの力を借りる」

 

「それだったら………僕は……」

 

気がつくと桔梗さんが起き上がり、天神刀を構えていた。

 

「天神刀よ。あの古のシステムを倒す力を貸してくれ」

 

『ユウナさん』

 

「えっ、はい。えっと……」

 

『私は女神エリス。神婚はもうしなくて大丈夫です。そしていまは彼らと共に行ってください。神樹が最後の力をこの子を通して送ってくれています……』

 

友奈の前に牛鬼が現れ、光の蕾に友奈が包まれた。そして僕は水の柱に、桔梗さんは炎の柱に包まれ、眩い光が消えると同時に、僕は白と水色の神秘的な衣装に姿を変え、桔梗さんは真っ赤な神秘的な衣装に包まれ、友奈はこれまで見たことのない神秘的な衣装に、目がオッドアイに変わっていた。

 

「これって……神樹様が」

 

「天神刀が僕の身体に……」

 

「神の奇跡ってやつですね。それじゃ終わらせようか」

 

桔梗SIDE

 

神様たちの力を借り、僕らは古のシステムを見つめていた。この姿……集中してないと体中の力が爆発しそうだ。だけどこれなら……

 

「行くぞ。海、友奈」

 

「うん……そういえば海くん。こっちに来る前に海くんのお友達を降ろしてきたけど……」

 

「それってもしかして黒い衣装の?」

 

「うん」

 

「あいつなら大丈夫だ。合わせてくれるはずだ」

 

黒い衣装ってもしかしてあの子のことか?あっちで色々と言ってたけど、海は何をしようとしているんだ?

 

「とりあえず今は!!」

 

「あぁ、三人で決めるぞ!!」

 

「人を……世界を守るために……」

 

「「「勇者!!パァァァァァァァァァンチ!!!」」」

 

僕ら三人は古のシステムに向かって行った。古のシステムも僕らに対して赤い光を放とうとしていた。この拳はこの世界の、人類の未来がかかっているんだ。そうそう止められるわけには行かないんだよ

 

赤い光と僕ら三人がぶつかりあった。敵の攻撃が強すぎるせいか少し押されているけど、まだ諦めるわけには……

 

「めぐみん!!頼む!!」

 

海がそう叫んだ瞬間、どこからともなく声が響いてきた。

 

「天の使い、太陽、絶望、私の前では全部破壊できます。我が名はめぐみん!!最強のアークウィザードにして、どんな時も勇者たちを勝利に導いてきた最強の魔法の使い手!!神が作ったシステムなど、爆裂魔法で破壊します!!エクスプロージョン!!!」

 

眩い光が古のシステムを包み込み、古のシステムにヒビが入っていった。あの大きさであの威力……本当に最強の魔法だな

 

「「「今だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

古のシステムの攻撃が止まり、僕らは一気に上空に上がっていった。そして僕らは力の限り叫んだ。

 

「勇者部五箇条!!」

 

「ひとつ!!なせば!!」

 

「大抵なんとか!!」

 

「「「なる!!!!」」」

 

僕らは一つの光になり、古のシステムを貫いていた。古のシステムはさっきの魔法でひび割れていたのが、更にひび割れ、壊れていった。

これが僕らの……勝利……だ

 

すると僕らの姿が元の勇者の姿に戻ると、僕の前に天神刀が、海の前に祝水神刀が、友奈の前に牛鬼が現れ、光にの粒になって消えていった。

 

「もう必要ないってことか?」

 

「そうかもしれない……」

 

「桔梗さん、友奈、見てください……世界が……」

 

世界が光りに包まれ、見る見るうちに天の炎が消えていった。そして新しい大地が現れた。これって……

 

『勇者たちのお陰で、世界は元の姿に戻りました。これからは我々二人の女神と天の神、そして人類で手を取り合い、元の形に変えていきましょう………』

 

『犠牲とかそんなの必要ないわ。必要なのは私達をずっと崇め続けることよ』

 

『これから先は争いもない。幸せな日々を……願い続けなさい』

 

三人の神の声が聞こえた。世界は救われたんだよな。ほんとうの意味で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は気がついたらおかしな空間に来ていた。僕の部屋なのだろうけど、何だか色がおかしい。

 

「ここは……」

 

「お疲れ様」

 

突然声をかけられ、振り向くとそこには一人の少女がいた。彼女は僕の保護者であり、別の世界では……

 

「何だか大変なことになったみたいだね」

 

「えぇ、貴方の方は?」

 

「私の方は……というより未来を託した子孫は頑張っているよ。彼女の場合は今回みたいに他の世界の勇者たちと一緒にっていうことは出来ないけど……」

 

少女は優しく微笑んでいた。

 

「でも信じているから……きっと彼女なら大丈夫って」

 

「………」

 

「これから先は大変だけど、私は見守っているから……」

 

「えぇ、がんばりますよ。姫野」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢から醒めると僕らは学校の屋上にいた。その場には若葉たちの姿もなく、海やあちら側の友奈の姿はなかった。帰ったのか?

 

「海くん……終わったの?」

 

美森も目が覚め、僕に声をかけていた。僕は起き上がりあたりを見渡した。壁は消えている。世界は変わったんだな

 

「あぁ、終わったんだ。世界は救われたんだ」

 

「良かった……友奈ちゃん……」

 

「痣が消えてる……ありがとうね。みんな……ごめんね」

 

「友奈……忘れんじゃないわよ。皆のためとかいうよりまずは自分の幸せを忘れないように……」

 

「先輩……はい」

 

友奈は救われ、これで全部終わったんだな。だけど少し気がかりなのは神樹様が消え、世界は二人の女神に守られるけど……

これから先どうなるのだろう?

 

「神樹は最後に友奈に力を託したんだ。そして二人の女神ならば大丈夫だ。僕が保証するよ」

 

どこからともなく海の声が聞こえた。あいつが言うなら大丈夫だよな。

 

すると全員のお腹から音が鳴り響いてきた。みんな、恥ずかしそうにしているけど、先輩は立ち上がり……

 

「それじゃこれから祝勝会でも始めましょうか。もちろん、うどんでね」

 

「「「「「「はい」」」」」」

 

 

こうして僕らの戦いは終わるが…………残った問題として…………これからの世界の問題についてだった。

 

 

 

 

 

 

 

そして3月…………海たち風先輩の卒業式と同時に元の世界へと帰り、僕らはこれからの勇者部について話すのであった。




次回からエピローグ


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23 これからのこと 名草編

ここからエピローグに向かっていきます!


名草side

 

あの戦いからしばらくした後のこと……私は半壊したゴールドタワーを見つめていた

 

「…………」

 

神官たちの間ではゴールドタワーが半壊した理由は、古のシステムとの戦いの影響だと話している人たちがいたが……それは違う…………

 

「まさかあの黒装束の子が放った一撃の余波で半壊したなんて思わないよね」

 

私だって驚いている。二人の勇者たちが彼女を船に乗せたあと、彼女の言う通りに近くまで何とか向かい、三人の勇者……一人は兄さんらしいけど、三人の勇者が古のシステムに向かっていく中、黒装束の子がとんでもない威力の魔法を放ち、その余波で私たちも吹き飛ばされ………………

 

「本当にすごい戦いだったな…………」

 

私たちは私たちなりにできることをして来た……でも今は…………

 

「名草、来てきたのか」

 

すると芽吹ちゃんと亜弥ちゃんの二人が声をかけてきた。

 

「二人もゴールドタワー見に?」

 

「あぁそんなところだ」

 

「それと……名草さんに挨拶を」

 

「挨拶?」

 

「神官たちから聞いた。兄の家に行くのだろう」

 

「寂しくなります…………」

 

「…………え?私、何か防人やめることになってる?」

 

「「え?」」

 

何かそんな雰囲気だったけど……私は防人をやめる気はないし…………

 

「いやいや、だってここから離れて」

 

「離れて暮らすけど……やめるつもりはないよ?」

 

何か勘違いさせてしまってたみたい…………私は防人を続けるし……

 

「そうだったのか……すまない……変に勘違いして」

 

「あの桔梗さまなんと?」

 

「兄さんは…………」

 

 

 

 

 

 

 

一度兄さんと話すために、家を訪ねたけど……

 

「あの……色々と話を聞いてたけど……兄さんの子供って……」

 

「別世界のだけど……僕の子供には間違いないからな」

 

「よろしくお願いします」

 

丁寧にお辞儀をする兄さんの娘……牡丹ちゃん。いやいや、かなり理解が追い付かないけど…………

 

「それで名草は……」

 

「あ、うん、防人を続けるけど……その……戦いメインじゃなくなったから…………」

 

「兄妹で住むか……まぁ空いてる部屋もあるし……大丈夫だぞ」

 

「うん、それで…………暮らすのは四月からでいいかな?」

 

「今すぐじゃないのか?」

 

「色々と手続きとかあるし、兄さんも勇者部のみんなに話したりしないと」

 

「まぁそうだな……」

 

「私たちの止まっていた時間はようやく動くけど……ちゃんとこれまでのこともこれから先のことも全部話したいから…………その時はよろしくね」

 

「あぁ……そうだな。お前には美森のことも紹介しないとな」

 

「兄さんの恋人……会うの楽しみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからこっちに預けてある荷物を少しずつ向こうに運んだりしてるし……」

 

「そうだったのか……にしても大赦はよくそんなことを許してくれたな」

 

「あぁ……兄さんの友達の子が何かしたらしいよ……それに大赦はこれからの世界のこと……と言うよりあの下着事件が」

 

「そうだったな……」

 

「神官のみなさん……全部奪われたみたいですからね……」

 

謎の下着強奪事件……勇者を連れ去る際にそんなことがあったらしい……おまけに下着が燃やされたり……謎の怪文書で色々と言われたらしいけど…………それで大赦の信用が落ちたりしてないか心配だ




短めですみません

次回は勇者部編!


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24 これからのこと 勇者部編①

桔梗side

 

先輩の卒業式からしばらく経った。

あの戦いのあと、世界は元に戻されて平穏な毎日が続くと思っていたけど、世の人々にはそれを受け入れるのに時間が掛かったみたいだ。

神樹が消えたこと、新たな二人の女神が世界を守護するようになったこと、戦いの爪痕…………事情を知らない人たちからしたら、本当にどうしたらいいのか分からないみたいだ

 

「…………」

 

僕は屋上で絵を描いていると……

 

「考え事?」

 

美森が顔を覗かせてきた。と言うか気配が感じなかったけど…………

 

「まぁな……色々と変わったから」

 

「世界は救われたのにね……」

 

「そう言えば安芸先生とは話せたのか?」

 

「えぇ、銀のお墓参りしたときにね……先生も色々と苦しんだみたいだけど…………」

 

「と言うか銀は天の世界にいるけど…………会わないのか?」

 

「それ、そのっちが天の神に聞いたらしいけど、色々と謝ってきたりするだろうからって、会わないって……まぁその内ひょっこり会うかもしれないわね」

 

「そっか……」

 

これも仕方ないことかもしれないな…………

 

「東郷さん、桔梗くん、そろそろ……」

 

すると友奈がやって来たけど、僕らを呼びに来たのかな?

 

「何の話をしてたの?」

 

「これからどうなるのかなって」

 

「あ……」

 

「一応言っておくけど……友奈が責任を感じる必要はないよ。今回の件は僕らが望んでやったことだしな」

 

「うん……そうだけど……こうして世界が変わって…………海くんの世界はまだ……」

 

そっか……海の世界はまだ…………色々とあったらしいけど……今回みたいなことは起きようがないって天の神が話していた。いや、天の神が言うには……平行世界の中では別の未来を歩んでいる可能性があるらしい。だから海の世界は今後どうなるかは分からないみたいだけど

 

「海には色々とまだ話していたかったけどな」

 

あいつも元の世界に戻った。また会うことは出来るかは難しいらしい…………

 

「今はこれからのことを考えよう。これからは色々と活動も変えていく必要があるしな」

 

「そうね」

 

「うん」

 

部室に向かいつつ、やっぱりちょっと心に引っ掛かるものがあった。僕らの世界だけでいいのかと…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そそそ、それでは勇者部部会を始めたいとおもいます。今日は、き…来る新年度4月からの活動について…」

 

「緊張してる?」

 

「は、はじめてのことなので」

 

「ファイト」

 

「肩の力抜いた方がいいぞ」

 

「は、はい」

 

新部長の樹。まぁ海の推薦もあったけど、一番成長している感じがするな

美森が書記を受持ち、黒板に書き始めた

 

「社会の仕組みも変わってきたから、私たちのボランティアのあり方も変わっていくわね」

 

「確かに、これからの勇者部は何をするのが一番かって話よね……て言うか何であんたがいるのよ」

 

何故か混ざってる風先輩……いや、卒業したのに普通に混ざってるし……

 

「何よ!OGよ!OG!」

 

「めんどくさい寂しがり屋」

 

「何!文句あるの!文句!」

 

まぁ風先輩が混ざってるのは気にしない方がいいかもしれないな

すると園子があるものを取り出して僕らに見せた

 

「あのね。いっつん、これからのことなんだけどね。これ、覚えてる?」

 

園子が僕らに見せたのは……お正月に見せた鍬だった。夏凜はまたバンドみたいに今度は畑でもやるのかと聞くと……

 

「本土にはもう人は残ってないと思うの」

 

『あっ』

 

人がいないことは……正直予想はしていた。天の神はその事をあえて触れなかったけど…………

 

「乃木……続けて」

 

「これは乃木若葉が残した最後の想い…………その事に話そうと思うけど…………」

 

何故か園子は笑顔だけど……この笑顔は…………何か企んでいるような…………

 

「この話をするためにちょっとしたゲストを呼んだんよ」

 

園子が部室のドアを開けるとそこには海と…………海の娘の友海ともう一人はどことなく園子に似てる?

 

「海くん!?」

 

「いきなり天の神に呼び出されて……こっちに来たけど……そのっち、話ってなんだよ?」

 

「いや、そっちの子は誰よ?」

 

「まさか海と友奈の二人目の……」

 

「この子はゆみ、なんと言うか……別世界の僕の娘らしい」

 

『はぁ?』

 

「たまたま来たみたいなんやけど…………実はかいくんに話を聞きたくって……かいくんの今の世界はどうなってるか?」



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25 これまでのこと 海編

今回は海の事情についてやります


桔梗side

 

園子の話を聞く前に海の世界について話を聞くことになった。確かに海の世界……今回みたいな事件は起こり得ないはずだからどうなってしまうのか気になっていたけど……

 

「率直に言うと……僕のいる世界は元に戻ったよ」

 

「元に!?」

 

「それって……まさかと思うけど今回みたいな事が……」

 

「いや、起きていない。前に言ったかもしれないけど、僕の世界では起こり得ない……何せ奉火祭は問題なく行われたから……」

 

海の世界では海の遺体を使って奉火祭を行った。

今ここにいる海は言うなれば肉体を新しく作られたものらしい……

 

「だけど……海くんのいる世界は元に戻ったなら……」

 

「………………」

 

海は本当に言いにくそうだった。普通ならこれ以上は聞かない方がいいと判断するべきだけど…………

 

「海、ちゃんと話しなさい。あんたの世界の私たちもここにいる私たちも同じようにどんな話でも受け止めるつもりだから」

 

「それがどんなに辛いことでもね」

 

「………………言いにくいと言うか……僕の世界の天の神が自分から世界を元に戻したんだ」

 

「それって……天の神の気紛れ?」

 

「もしかしたら元の世界に戻すことで人間がどうするのかを見て、また新たに判断するつもりでしょうか?」

 

「それならあり得そうやね~神はそこら辺は自由だから」

 

「それならまだましだよ……元の世界に戻した理由は…………恐がったからだよ」

 

『は?』

 

海の言葉を聞いて全員が声を揃えた。どう言うことだ?神が何に恐れたって言うんだよ?

 

「師匠凄いんだよね~」

 

「めぐみんお姉ちゃん凄い!」

 

友海とみゆの二人がそんなことを言うけど、めぐみんってあの子だよな?

 

「僕の世界のバーテックスの殆どはめぐみんが止めを刺してる。それも天の神が自信満々に送り込んできたバーテックスをだよ。天の神はこれ以上送り込んでも無駄だと判断して、更にはいつか自分自身を消滅させられるかもしれないと思ったらしく…………」

 

「いや、まずその子……どんだけよ」

 

「僕の仲間の中で一番頼りになる奴だよ」

 

と言うか……海の世界はそんな理由で戻ったのかよ…………

 

「とまぁこんな感じだけど……園子、これでいいか?」

 

「うん、かいくんの世界が戻ったことで、色々とね……それで気になってたんやけど~そのみゆちゃんはかいくんの娘らしいけど……」

 

「この子は別世界の僕の娘で……更にはその世界では僕と園子が結ばれている世界なんだ」

 

『はぁ?』

 

また全員で声を揃えた。まず別世界の海って……いやまぁいろんな世界があるからそういう可能性も…………

 

「なるほど~よくよく考えたらそうなる可能性があるね~乃木家と上里家なら余計にね~」

 

あぁそう言うことか……後はお互いどう考えてそうなるか次第か…………

 

「みゆはちょっとこっちに来たけど、まぁ時間が経てば戻れるらしいから……」

 

とりあえず海の事情に関しては全部聞き終え、園子が持つ鍬について話が始まった。

 

「乃木の若葉ちゃんが御記で言ってたんだけど、神樹の勇者は戦うことが本懐じゃないんだ。戦いが終わったあとに元の暮らしに戻れるように頑張ること、それこそが勇者の本懐」

 

「初代白鳥は戦い以外の事を忘れないようにってこれを……」

 

「うん……かいくんは色々と詳しそうだけどね」

 

「あの人は……そうだな。先の事を考えてた。それは今も続けてる」

 

「……大赦はね。元々はそう言うつもりで表舞台に出てきたはずなんだよ……」

 

「長い歴史の中で対質が変わっていったのね」

 

「でも脅威とは誰かが戦わなければならない……甘いことを言っていたら全滅していたわ」

 

「それはそうだね。でも神様と一緒に人間も消えちゃおうなんて選択……白鳥ちゃんたちも怒ると思うんよ」

 

大赦の考えが変わったことを考えれば……これからのことをどうするべきかだよな……

 

「海、お前の世界は元に戻ったけど……大赦は今この世界みたいに……」

 

「そこは色々とな……ただ友海が言うには……」

 

「少しずつだけど戻った大地を開拓してるよ……それをなし得たのはパパとパパの仲間のカズマおじちゃんが一番頑張ったから」

 

「そっか……」

 

多分友海は一番平和な世界の勇者なのかもしれないな

 

「それでね!私、良いことを思い付いたんよ!」

 

「良いこと?」

 

「大赦をぶっ潰す!」

 

園子、とんでもないことを言い出したよ




海の世界は天の神がめぐみんに対して本気で怖がっているため、結果的には一番平和的に元の世界に戻ったのかな?


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26 これからのこと 勇者部編 ②

桔梗side

 

大赦をぶっ潰すという園子の発言に、みんなが……と言うより海と友奈以外は衝撃というかまたとんでもないことを言い出したよって顔をしていた。

 

「ぶっ潰せるの?」

 

「今の混乱に乗じて、乃木園子の特権と私が放った草を最大限に利用すればどうにか……」

 

「ちょまてまて待て!?」

 

夏凛が慌てて止める。まぁ止めるよな普通に……

 

「待ってそのっち、ちょっと興奮するクーデターだけど落ち着いて、もう争いはダメよ」

 

「そうだな……変に争いが起これば余計に色々と拗れてくる」

 

僕も園子のやり方にはあまり共感はできない。

 

「うーん、今、超グダグダな大赦に任せておくと、またじゅくじゅくして間違ったことしちゃうと思うんだよな~だったら私が……」

 

自分が犠牲になればって……友奈は慌てて止めようとするが……

 

「園子さん」

 

樹が止めに入った。ここは任せた方がいいかな?

 

「そうすることが……初代勇者の思いに繋がるんですか?人間の暮らしが戻るように頑張るのが勇者でしたら、若葉さんや白鳥さんの事を想うのでしたら……分かりました!」

 

樹は決心したみたいだった。本当に……樹は成長したな……

 

「讃州中学勇者部はこれからもっと勇者部になります!変身が出来なくても!人のためになら出来ることがたくさんあります!今不安になってる人……困ってる人……大勢います……そんな人たちのために、率先して世のため、人のため、私たちは今まで以上に勇者部を続けます!それが私たちの方法です!それじゃダメですか?」

 

「ダメじゃ…ないです」

 

「だから園子さん……もう危ないことはやめてください……私たちは中学生なんです。勉強も部活も夢も青春も大切なものがあるんです」

 

「うん、わかったよ。いっつん。ありがとね」

 

「本当に……樹は……」

 

「桔梗さん、まさか……」

 

「海、冗談でも笑えないし、お前が言うなだぞ」

 

こいつの場合は色々と称号つけられてるはずだな。友奈キラーもしくは園子キラーとか

 

園子は今後、平和的に大赦を見守るということに落ち着くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海side

 

元の世界に戻る前に、僕はそのっちと一緒に夜の歩道橋に来ていた。友海とみゆの二人は歩道橋の下で楽しそうに遊んでいる

 

「僕に話を聞きたいって言ってたけど、本当は自分達の世界の今後を見届けてほしいって事だったんだろ」

 

「よく分かったね。流石は平行世界では私と付き合ってるね」

 

「はいはい……でもまぁ……園子とはそうなる予定だったけどな」

 

「お互い家の事が関係してるからね」

 

とは言え今回は色々と見れたし、いや見届けられたな

 

「かいくんは元の世界に戻ったらどうするの?」

 

「とりあえずカズマさんたちと一緒に異世界でのんびり暮らしつつ、向こうの四国でのいろいろをやっていくよ」

 

「きっとこれから先は色々と違ってくるのかもね」

 

「でも同じ道を目指してるだろ」

 

「?」

 

「平和な世の中を作っていく……それが今の時代の勇者のお役目だからな」

 

「ふふ、そうかもね……かいくん、色々とありがとね」

 

「お礼なんて」

 

「ううん、言わせて、かいくんがいたから色々と変われたんだよ。もしかしたらゆうゆは思った以上に苦しんでいたかもしれない」

 

「……僕はどんな世界でも友奈を救う……そう決めてるからな」

 

「そっか」

 

とは言えそれだけじゃダメそうだな

 

「もしかしたらこれから先、色々と天の神に頼まれて、他の世界を回りそうだな」

 

本気であり得そうだけど仕方ないか

 

「大変だね~女神の勇者は」

 

「お前も頑張れよ。どうせ色々と自分の役目だとか考えて勇者部を退部しようとしてたろ」

 

「……流石だね。でも自分で決めたから、やめたりしないよ。今の大赦を纏めるには新しい御神輿が必要なんよ……でも私は人形じゃないから……」

 

「だな。お前なら出来るように祈っておく」

 

「うん、よろしくね……かいくん」

 

僕は二人に声をかけて、元の世界に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桔梗side

 

これからの事を決めてから……四年後

 




次回最終回!


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27 未来のために

今回で最終回です!


あの戦いから四年が経った。世界は少しずつではあるが変わっていっている。これも神樹様の代わりにこの世界を守っていてくれる女神様のお陰なのかな?

この四年間はいろんな出来事があった。その中で桔梗くんが天の神から聞いたある話……それは平行世界の数だけ天の神が存在すること…………

海君の世界の天の神は小さな女の子らしいけど、他には魔法が入り交じった世界での天の神。その神様は比較的に話が分かる人らしい…………

 

とは言えやはり世界は一度滅ぼしているのは天の神は人に罰を与えなければいけない理由があったかららしい。それが何なのか分からないけど……今、この世界罰を与えたりはないみたいだ

 

そして今私たちはこれから先の未来のために頑張っていた。

 

「友奈ちゃん、どうしたの?ボーとして」

 

「ううん、ただ色々と考えてて……」

 

「色々……そうね。あれから4年だものね……」

 

今は壁の外で私たちは旅をしていた。色々と調査をする必要があるからだ。そのためにこうしているけど…………

 

「桔梗くん……元気かしら」

 

東郷さんはそう呟いていた。桔梗くん…………

 

「大丈夫だよ……きっと……」

 

「そうね……大丈夫よね……私を置いていくなんて……」

 

桔梗くんもあの日から色々とあったから…………仕方ないと言うしかないけど…………

 

「あのさ、僕が行方不明みたいな扱いはやめて欲しいのだけど」

 

茂みからスケッチブックを持って戻ってきた。

調査には私、東郷さん、桔梗くんの三人で来ていた。とは言え桔梗くんは大赦の服を着てだけど……

 

「ふふ、一度やってみたかったのよ」

 

「全く……」

 

「桔梗くん、その服、動きづらくないの?」

 

「ん?まぁ動きづらくはないけど……バイクに乗る分には特には」

 

私と東郷さんのバイクと桔梗くんの黒いバイク。大赦が用意してくれたものだ

 

「景色が良いところを見つけると直ぐに描きに行っちゃうんだから」

 

「仕方ないだろ。趣味なんだから……」

 

あの日から桔梗くんはずっと絵を描いてるもんね。それにしても……

 

「二人は結婚しないの?」

 

「何でその話になる?」

 

「私たちにはまだ早いわよ。まだ十代なんだし」

 

「そうだけど~ほら、そのちゃんが『早く結婚式あげてくれたら~沢山お祝いすんよ~』って言ってたし」

 

きっとそのちゃんの事だから凄いお祝いをしてくれるんだろうな~

 

「とりあえずは今の調査が落ち着いたらね」

 

「お互いちゃんと話し合って決めたからな」

 

とは言え更に話し合って、お互いに二十歳になってからと言うのは二人だけの秘密だったりするけど…………

 

「まぁ結婚式の時は樹に歌でも歌ってもらうか」

 

「あ、良いわね。未来のために樹ちゃんには予約しておかないとね」

 

樹も今は歌を歌い続けてる。風先輩は研究者として頑張ってる。

夏凛も大赦の関係者として、今は僕らのサポートをしている。園子は園子で大赦のトップとして頑張ってるけど……

 

「絶対に凄いことになりそうだな」

 

「大赦の関係者が多く参加しているのが目に浮かぶわ……」

 

その時が来たら覚悟しておかないとな

 

「東郷さんと桔梗くんの未来のために、調査頑張ろう」

 

「そうね……これから先の事を考えていくためにね」

 

「だな」

 

僕らはこれから先の未来のために……僕らの世代で終わるとは思えないけど、それでも未来のために……頑張っていくか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこともいえない世界。そこには一人の少女が現れた。それは桔梗たちの世界の天の神。

 

「より良く……ね。まぁ今の勇者たちになら何も心配はないわね」

 

一人そう呟くと……まばゆい光が現れ、みるみる内に姿を変えた。ポニーテールの少女……彼女もまた天の神

 

「久しぶりね」

 

「久しぶり。あなたの世界はどう?」

 

「始まりつつあるわ。一人の少年が勇者の力とは違う力を手にしてね」

 

「へぇ、何の力を?」

 

「人は魔法と呼ぶわ。そして彼は一人の魔法少女と出会い、数奇な運命を……ね」

 

「それは楽しみだわ。その子も神に認められた存在になることを……そうね……彼は……『魔導の勇者』そう呼ばれるべきね」




無事完結!
大満開の章は勇者の章の裏話をやりつつ、未来のための話をやっていったため、少々書くのが難しかったですが、何とか完結できました!

個人的に樹ちゃんの成長が一番良かった……

因みに最後に神同士の会話に出てきたのは、ゆゆゆとなのはのクロス小説です。そちらも興味があれば!


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