Sword Art Masked Rider (通りすがりの幻想)
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part1 アインクラッド編
【1周年記念①】小説オリキャラ設定


皆さん、どーもです。

 

通りすがりの幻想です。

 

2021年8月30日の、22時38分。

 

こんな中途半端な時間に、連載が始まったこの小説。

 

途中失踪しかけたりと、なんやかんやありましたが、無事に1周年を迎える事が出来ました。

 

これも、読んでくださる読者の皆さんのおかげです。

 

いつもありがとうございます。

 

という事で、今回は1周年を記念して、以前お話しした通り、あらかじめ活動報告の方で募集した質問に返答していこうかと思います!

 

 

 

……

 

…………

 

と思ったのですが…

 

8月28日時点で、質問投稿者は0人でしたw

 

…ですがまあ、何もしないという訳にはいかないので、この小説のオリキャラの設定でも書こうと思います。

なお、ここに書かれているのは、今の最新話であるEp.19時点での情報です。

 

 

 

「登場人物」

 

・海道 圭太/カイタ

 

年齢

SAO開始時 19歳

 

誕生日

3月18日(仮面ライダークウガの変身者である、五代雄介の誕生日と同じ)

 

容姿

短めの黒髪、少しとがった鼻、青い光彩の目。

 

この小説の主人公。

平凡な大学生だったが、大学1年の夏休みに、トラックに惹かれそうになっている子どもを代わりに撥ねられて死亡…したかに思ったが、別世界に転生。

そして、その直後に、VRMMOの新作ゲーム、SAO《ソードアート・オンライン》を入手、ログインしたところ、SAO事件に巻き込まれる。

さらには、SAOの開発元の一つである「飛電インテリジェンス」から託された「飛電ゼロワンドライバー」をはじめとする「ゼロワンシステム」を使い、前世で自分がテレビで見ていた「仮面ライダーゼロワン」に変身して戦う事になる。

プレイヤーネームの「カイタ」は、「海道圭太」の苗字と名前をもじったもの。

基本的に、パーティーメンバーである、レンコと共に行動をすることが多い。

 

温厚な性格で、誰とでも分け隔てなく話す。

…が、内心は心臓バックバクとの事。

助けを求めている人を見ると放っておけず、手を差し伸べる。

彼曰く、「助けを求めている人の盾になって守れるなら本望」との事。

 

本気でキレると、雰囲気が別人の様になり、Dirty(ダーティ)な一面が垣間見えるらしい。(黒の剣士談)

 

Ep.19(第69層)時点でのステータス

Lv 80 HP 15400 STR 189 AGI 200

 

SAOでは基本的に片手直剣を愛用する。

そのため、同じく片手直剣を使うキリトとは息を合わせやすく、よくフロアボス戦で連携攻撃をしている。

多少のダメージは気にせず、上位スキルの「ハイバトルヒーリング」により、ほっといてもHPが回復するので、ガンガン攻撃するタイプ。

 

 

・???/レンコ

 

年齢

SAO開始時 19歳

 

誕生日

10月3日

 

容姿

光彩が緑色で、ローズブラウン色のロングヘアを、サイドテールでまとめている。

 

(なお、彼女の容姿は、SAOIFのヒロインであるコハルとSAOFBのヒロインの片方であるクレハを、足して2で割った感じ。)

 

 

本作のヒロイン。

 

リアルでは女子大に通っており、SAOの優先販売券の一般抽選に当選したが、喜びもつかの間、SAO事件に巻き込まれてしまう。

第1層のトールバーナでカイタと出会い、その日の内に突如現れたマギアに殺害されそうになるも、仮面ライダーに変身したカイタによって一命を取り留める。

第1層フロアボス討伐戦後に、キリトと共に悪役を背負う事を決めたカイタを気遣い、一緒に行動するリスクを承知の上で、彼を支えていく事を決め、以降ほとんどの時間を彼と共に過ごしている。

 

性格は明るく素直で、礼儀正しい。年下の友人にも敬語を使う。

たまに弱気になったりもするが、一度決めた信念は曲げないという芯の強さも持ち合わせている。

 

VRゲームに関してはドが付くほどの初心者で、トールバーナでマギアに襲われた時も、ただソードスキルを乱発するだけで、ほとんど抵抗になっていなかった。(もっとも、相手が相手だったので、当然の結果ではあったが。)

だが、最近では戦い方も板についてきており、カイタと共に攻略組の最前線を担う程の腕前に。

 

 

Ep.19(第69層)時点でのステータス

Lv 79 HP 14900 STR 170 AGI 190

 

武器は短剣を使う。

元々すこし小柄なのも相まって、素早い動きで敵を攪乱させたりなどのスピードを生かした戦法で、カイタをサポートする。

 

第1層で自分の命を救ってくれたカイタの事を、かなり早い段階から意識しているが、彼女自身恋をしたことが無かったため、彼に想いを伝える踏ん切りをつけれない事が、最近の悩み。

 

 

 

 

 

今回はここまでです。

 

…もしかしたら仮面ライダーゼロワンの小説オリジナル設定も書くかも。

 

これからも、この小説をよろしくお願いします。

 

それでは、また。

 

 

 

 

 

……なんとか8/30の間に投稿できてよかった…



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【1周年記念②】ライダー設定

もう一周年もクソも無いけど、投稿。

こういう「仮面ライダーのスペック・特徴まとめ」みたいなの、やってみたかった。




とどのつまり、ただの自己満投稿。


 

「仮面ライダー」

 

カイタが所持するスキルの名前にもなっている。

このスキルと、アイテム「飛電ゼロワンドライバー」と各種「プログライズキー」を用いることにより、仮面ライダーゼロワンに変身することが可能。

現在、カイタがゼロワンに変身する事を知っているのは、レンコ、キリト、アスナ、アルゴ、クライン、シリカ、リズベットである。

なお、変身時には、各ステータスにボーナスが付く。

 

 

 

「仮面ライダーゼロワン ライジングホッパー」

 

 

【ジャンプ!】

【オーソライズ!】

 

カイタ「…変身!」

 

【プログライズ!】

【飛び上がライズ!ライジングホッパー! A jump to the sky turns to a rider kick.(空へのジャンプはライダーキックに変わる。)

 

カイタ「《仮面の戦士》…またの名を、《ゼロワン》!それが俺の名だ!」

 

 

ステータスBONUS

HP +10%

STR +10%

AGI +15%

 

ゼロワンの基本形態。

バッタの力を冠したプログライズキー、「ライジングホッパープログライズキー」を用いて変身する。

バッタの名に恥じない高い跳躍力と、キック力が持ち味。反面、パンチ力は心もとないので、徒手空拳では決め手に欠ける。その為、専用武器「アタッシュカリバー」を用いた斬撃攻撃や、脚力を生かした踏み込みで補う。

必殺技は、敵を上空に蹴り上げたあと、自身も飛び上がり、前に一回転してエネルギーをチャージした右足を突き出し、相手に叩きこむ「ライジングインパクト」。

 

 

 

 

 

「仮面ライダーゼロワン シャイニングホッパー」

 

 

カイタ「…お前じゃ勝てない。俺を越えられるのは…ただ一人!」

 

【シャイニングジャンプ!】

 

カイタ「俺だ!」

 

【オーソライズ!】

 

カイタ「…変身!」

 

【プログライズ!】

The rider kick increases the power by adding to brightness!(ライダーキックは輝きを纏って強くなる!)

【シャイニングホッパー!】

When I shine,darkness fades.(俺が輝く時、闇は消える。)

 

 

ステータスBONUS

HP +20%

STR +20%

AGI +30%

 

スキル「仮面ライダーゼロワン」のEX(エクストラ)スキル。

スキル熟練度が500になると解禁される。

 

初登場はEp.9。

 

最大の特徴は、額部分にある演算処理装置「シャイニングアリスマテック」。

この装置は、敵をラーニングすることで相手の行動を予測して、約25000通りの対処パターンを算出し、その中から約0.01秒で最適解を導き出すことが出来る。

これによって、敵が取ろうとする行動を直前で逆予測し、別の手を打つことで相手を翻弄させることが出来る。

カイタが使用した際には、ロザリアが変身した仮面ライダー滅の放ったアタッシュアローの攻撃を、全て躱しきった。

ただし、この機能そのものが、変身者の潜在能力を強制的に引き出すため、戦闘後に強烈な負荷に体が見舞われてしまうという難点がある。実際、カイタが初変身した際も、戦闘後に「筋肉痛」という異常ステータスがしばらく付与され、動けなくなった。

 

必殺技は、高速で敵に詰め寄り上空に蹴り上げた後、吹き飛んでいる敵に再び高速移動で追いつき連続でキックを放つ、「シャイニングインパクト」。

 

 

 

 

 

「仮面ライダーゼロワン シャイニングアサルトホッパー」

 

 

【ハイパージャンプ!】

 

【オーバーライズ!】

 

カイタ「…変身!」

 

【プログライズ!】

Warning,warning.(警告、警告。)This is not a test!(これは試験ではない!)

【ハイブリッドライズ!】

【シャイニング!アサルトホッパー!】

No chance of surviving this shot.(この一撃から生き残る術はない。)

 

 

ステータスBONUS

HP +25%

STR +30%

AGI +35%

 

EX(エクストラ)スキル「シャイニングホッパー」のMOD(派生)スキル。

スキル《仮面ライダーゼロワン》の熟練度が750到達及び、特殊条件『一回の戦闘中に、「シャイニングホッパー」に変身した状態を15分以上維持する』を達成すると解禁される。

 

ベースはシャイニングホッパーと同じだが、上から追加装甲を纏う様な形になる。

特徴は胸部の戦闘補助装置「オービタルユナイト」によるリアルタイムの出力調整により、シャイニングホッパーで難点となっていた戦闘終了時にかかる負荷を最小限に抑えることが可能になり、連続稼働時間を延長させた点にある。

 

必殺技は、キー後部に取り付けられた「アサルトグリップ」の上部にあるスターター「アサルトチャージャー」を押し、キーをドライバーに押し込んで行う「シャイニングストームインパクト」。シャイニングホッパーの様な追撃は無いが、一撃で仮面ライダー亡の防御を破ったうえで撃破するという威力を持つ。

 

 

 




Ep.19時点での情報です。

おそらく追記がされると思います。


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Ep.1 ソノ世界で彼は何をするのか

初投稿です。
最後まで読んでいただけると幸いです。


…気が付くと、公園のベンチに座っていた。

真っ先に感じたのは、違和感だった。なぜなら、自分は確かに「死んだ」はずだ。忘れもしないあの感覚。遠のく意識の中で感じた痛み。自分から何かが流れる感覚。

しかし、記憶に反して目が見え、心臓が動き、何より痛覚がある以上、今自分が生きていることを認めざるを得ない。

「…こりゃ、どういう事だよ…」

俺、海道圭太はそうこぼした。

「ま、コーヒーでも飲みながら考えるか。」

そう言って、俺は好物(中毒ともいうが)のブラックコーヒーを飲むため、近くの自動販売機へ向かった。

 

【30分後】

「…もうこれは、いわゆる『転生』というやつか?」

そう俺は結論づけた。

「異世界」としなかった理由は、今自分がいる場所が日本の東京であることに気づいたからだ。

もっとも、自分が知っている東京ではないが。

というのも、今自分がいる公園(ただし公園と言っても、都会のビルの隙間にあるようなこじんまりとした場所だ)のそばにあるビルの電光掲示板に

【次世代のVRMMOソフト、「ソードアート・オンライン」が、本日11月6日に発売開始!剣を取り、道を切り開くのは君だ!】

といったことがかかれており、その右隅に、「2022年11月6日AM 9:00」とかかれていた。

対して俺は、死ぬ直前は2021年8月30日、夏休みの終盤だったことを覚えていた。

………何、宿題はどうしたかと?あいにくと、俺の大学は宿題があまり出なかったのでな。非常に充実した夏休みを過ごしたよ。

まあ、それは置いといて、今俺がいるのは、俺が死ぬ直前にいた世界より未来の世界ということだ。

「どっちにしろ、右も左もわからないのでは話にならねえ。少し散策するか。」

そう思い立ち、俺は缶コーヒー(6本目、それもすべてブラック)をごみ箱に投げ入れ、公園を出た。

 

 

 

「…………これは…何事だ…?」

少し歩くと、人の行列に出くわした。よく見ると、行列はゲーム屋から伸びていた。それ自体には何らおかしい所はない。問題はその人数だった。

「これ、軽く200人は並んでるぞ…!?」

そして、「ソードアート・オンライン」なるゲームが今日発売という事を思い出した。実際、並んでいる人の会話を聞いていると、みんな「SAO」(ソードアート・オンラインの略称らしい)の話題で持ち切りだった。

かく言う自分も、ゲーマーとは行かないがかなりのゲーム好きだ。当然欲しいとは思う(お金は十分あった。なぜか財布は持ってこれていた。)しかし、ここで問題が発生した。

というのも、購入には、「優先販売券」なるものが必要らしい。どうやら、このSAO、限定1万ロットの生産しかないらしく、1か月ほど前に、「優先販売券」の「抽選販売」が行われていたらしい。

「1万ロットか…そりゃ、こぞって並ぶわけだ」

そうこうするうちに販売が始まり、ものの10分で行列がなくなった。

「おお、もう無くなっ……てない?」

そう、なぜか1つ残っている。

「あんな面白そうなゲームの優先販売券もらっておいて初日に来ないとは、み~っともないったらありゃしねえな……」

そう思いながら、寒いのでポケットに手を突っ込んだ……が、何か紙切れが入っている。

「ん?何だ?」

紙切れには、こう書かれていた。

 

 

【SAO 優先販売券】

 

 

「…………へ?」

……どうやら、みっともないのは俺だったようだ。

 

 

 

あの後、俺はソフトと、このSAOをプレイするのに必要なデバイス「ナーヴギア」をそろえ、付近のネットカフェの一室に陣取っていた。

「えーっと、コードはここで…よし、セット完了っと。」

改めて見ると、「ナーヴギア」はとてもすごい。(既存のゲームをバカにするわけではないが)なにしろ、自分が知っているVRとは格が違う。これまでのVRはカメラやセンサーでこちらの動きを把握して反映させていた。ところがこのナーヴギアは脳の電気信号を読み取り、それをダイレクトで反映させることが出来るスーパーマシンなのだ。

そのマシンが無料で入手できたのだから、優先販売券さまさまだ。(ちなみにお金をだして買おうと思うと、12、13万はかかるらしい。それでも買おうとする人がいるのだから人気がすごいことがわかる。)

本当に、このマシンを開発した「アーガス」という会社と、「飛電インテリジェンス」には、感謝と称賛しかな

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

「飛電インテリジェンス」?

…………いや、そんなはずはない。

俺の記憶が正しければ、飛電インテリジェンスは・・・・・・・・・・に登場する会社だったはず…

「…………まあ、偶然同じ名前の会社だろ。さて、さっそく始めるか。」

俺はナーヴギアにゲームをセットしてかぶり、起動コマンドを宣言した。

「……リンクスタート!」

 




いかがだったでしょうか。
投稿ペースを速めにできるように心がけます。


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Ep.2 コノ剣の世界で友人を

第2話です。
仕事帰りで昏倒寸前でしたが、気力で書き上げました。
少し長いかもです。
それではどうぞ。




「とりゃっ…うひええっ」

「そ~れっと………って、あれ?ギャ~っ!お助け~!」

皆さん、こんにちは。海道圭太です。現在俺は、剣術のご指導を受けている最中に、一緒に指導を受けていた、赤髪を額のバンダナで逆立てた男と共に、標的のはずの青イノシシ(正式名称、フレンジーボア)に反撃されています。

…………どうしてこうなった?

 

 

 

事の発端は1時間ほど前にさかのぼる。

「…………ほえ~」

SAOに入って早々、俺の第一声は、間の抜けた声から始まった。

まあ、無理もない。目を開けると石造りの街並みが広がっており、(また転生したかと思った位に)普通の町と何ら変わりないほどの生活感が出ていたからだ。

「…………小耳には挟んでいたが、これほどとは」

これなら皆が欲しがるのも分かる。まさしく、(VRMMO、万歳!)と言える。

「さて、本題に移ろう。やっぱり、まずは装備だな。え~っと、武器屋は…」

俺は武器を手に入れるため、武器屋を探し始めた。

 

結論から言うと、

 

「…………ココドコダァ?」

 

完璧に迷子になった。

何しろ、広大、いや、そんな言葉では足りないほど、ここは巨大なのだ。

ここで、少し解説させてほしい。

今自分がいるのは、VRMMO「ソードアート・オンライン」の舞台である「アインクラッド」という城だ。これは、全100層からなる、石と鉄でできた城だ。内部には数多の都市、小規模の町や村、森、草原、湖がある、さながら「動く国」だ。上下の階層(ここではフロアと呼ぶ)を繋ぐ階段は各層に一つだけで、なおかつその階段は、階層の最奥にあり、危険な怪物がうろつく「迷宮区」と呼ばれる区画にあるため、発見も踏破も困難だ。しかし、一度誰かが踏破して上のフロアにたどり着ければ、そこと下層の各都市の「転移門」と呼ばれる物が解放されるため、全員が自由に移動できるようになる。それを繰り返して100層までたどり着くのが、このSAOの基本的な遊び方だ。もっとも、戦闘だけでなく、鍛冶や革細工等の製造や、釣り、料理等もできるので、冒険だけでなく文字通り「生活」することも可能なのだから、驚きだ。

そのうえ、一説では、基部フロアの直径はおよそ10キロ、東京の世田谷区が余裕で入るらしい。それが100層も重なっているのだから、驚きを通り越して恐ろしくなってくる。

また、SAOでは、それまでMMORPGで常識だった「魔法」を全面的に廃止し、代わりにいわゆる必殺技に相当する「ソードスキル」が無限に近い数設定されているらしい。(これは、ナーヴギアの「フルダイブ」と呼ばれる技術をフルで活用するためらしい)

 

 

 

話を戻そう。

俺はそんな上京した田舎者が東京で迷子になるがごとく、迷い込んでしまった。

「まいったな…どうしたものか……(ドンっ!)うわっ!」

考えこみながら歩いていると、周りをよく見ていなかったため、誰かにぶつかってしまった。

「す、すみません!よく見ていなかったもので…大丈夫で…す……か」

振り向くと、戦国時代の若武者のような長身の男がいた。

(あ…………これ、オワタ\^o^/)

俺の経験上、こういう人はたいてい突っかかって来

「いや、こちらこそすまねえ!お前も大丈夫だったか?」

前言撤回。めっちゃいい人やん。

「あ、はい、だいじょうぶです。」

「良かったぜ…あ、そうだ、お前、武器屋ってどこにあるか分かるか?」

おっと、同じ境遇の人が。

(運営さん、フロアマップ作ってくれないかな…)

「あ、自分も探していたんです。」

「お、お前もか。そんじゃあ、一緒に探そうか?」

「ッ…!?」

気を付けた方がいい。ここはMMORPG。裏になにかある可能性だってゼロでは無

「ああ!何か企んでるとかはないぜ!ゲームの神に誓う!」

やっぱり、めっちゃいい人やん。(2回目)

「…それじゃあ、お願いします。えーっと、」

「あ、自己紹介が遅れたな。俺はクラインだ。」

「俺はカイタです。」

(俺のプレイヤーネームは、“海”道圭“太“で”カイタ“にした。何、安直すぎる?やかましい。)

「おう!カイタ、宜しくな!」

「はい、クラインさ」

「お~っと、もう敬語は無しにしようぜ。このゲームをやってるという事はかなりのゲーム好きだろ?お互い堅苦しい事は無しにしよう、な?」

「…ああ、わかった。よろしく頼むぜ、クライン!」

こうして、俺の初めてのVRMMOの友人ができた。

前世では人づきあいが苦手であまり友人がいなかったが、このクラインという人物は不思議とこっちの懐に滑り込んでくる節があり、しかしそれでいて全く不快ではない。

(彼とは長い付き合いになるかもな。)

そう思いながら、俺はクラインの頼みでフレンド登録を済ませ、行動を開始した…………と思いきや、

「ん?」

クラインが何かを見つけたようだ。

「どした?」

「いや、今路地に入っていったやつ……ひょっとして…………」

そういいながら路地に走るクライン。

「へっ!?ちょ、ちょっと待てよ、クライン!」

 

 

ようやく追いついた…足速すぎだろ、アイツ…………

「ぜえっ、ぜえっ…ク、クライン、ちょっとタンマ…………」

顔を上げると、クラインが一人のプレイヤーと話しているところだった。

そのプレイヤーは、ただでさえ困惑していたのに突然の乱入者にさらに驚いているようだった。

「ちょいと俺たちをレクチャーしてくれ!」

クラインがそう頼み込んでいた。

「は、はあ。じゃあ、武器屋行く?」

意外にもそのプレイヤーは、困惑しながらもその頼みを承諾してくれた。

そして、俺たちは、彼「キリト」についていき、装備をそろえ、ついでに彼に戦闘をレクチャーしてもらうことになった。

―そして今に至る。

 

 

「とりゃっ…うひええっ」

「そ~れっと………って、あれ?ギャ~っ!お助け~!」

イノシシに吹っ飛ばされ、草原を転がる俺たちをみて、キリトが笑い声をあげる。

「ははは、違う違う。重要なのは初動のモーションだぜ、クライン、カイタ。」

「キリト、そうはいうけど、あいつら動くしよぉ。」

情けない声を上げるクライン。

「動くのは当然だ、訓練用のマネキンじゃないんだから。でも、初動のモーションをちゃんとすれば、あとはシステムが自動でスキルを発動してくれる。」

「…………俺はバカなので、キリトが何を言っているかよくワカリマセン。」

「おいおい、カイタ…う~ん、どう言ったものかなあ……1、2,3で振りかぶって斬るんじゃなくて、初動でタメをいれてスキルが起動するのを感じたら、スパーンと切り込む感じかな」

「んな事言ったって……」

そうボヤキつつも俺は、深呼吸をして腰を落とし、片手剣を右肩に担ぐように持ち上げた。

すると、刀が輝きだした。

(…………これでっ!)

俺は、大きく踏み出し、掛け声と共に剣を右上から切り下ろした。

「せいっはぁー!」

しゅぱーん!という音が響き、片手剣ソードスキルの単発斜め斬り「スラント」が、俺に突進していたフレンジーボアに命中し、奴の残存HPを吹き飛ばした。

断末魔のあとに、巨体がポリゴン状に砕け散り、加算経験値のフォントが浮かびあがった。

「で、出来たっ…!」

「……す、すげぇ」

「いいぞカイタ!その調子だ、今の感覚忘れるなよ?」

クラインが歓声を上げ、キリトが感嘆の声を上げた。

「よし、俺も負けてられねえ!」

クラインも俺の見様見真似で、片手用曲刀基本技の「リーバー」を発動、命中した。

「うおっしゃああ!」

クラインが満面の笑みを浮かべ、こちらを振り向き両手を上げ、ばしんと俺たちはハイタッチを交わした。

キリトが言った。

「2人とも、初勝利おめでとう。でも、今のイノシシ、某RPGだとスライム相当だけどな」

「えっ、まじかよ。」

「……ウソダドンドコドーン(嘘だそんなこと)」

「うそじゃないさ。」

キリトは苦笑しながら剣をしまう。

俺は少々途方に暮れたが、それ以上に自らの剣で敵を倒すことへの爽快感があった。

そして、俺は少しでもレベルを上げようと、休憩中のキリトとクラインを尻目に、先ほどのイノシシ狩りの周回を開始した。

 

 

 

「…………モウ、ウゴケマセン。」

どのくらいたっただろうか、すでに日は傾き、夕暮れになっていた。俺は先ほどまでイノシシ狩り(ごくまれにハチのモンスター、プリックワスプが来た。イノシシより経験値がわずかに高かった。)

を続けていた。その甲斐あって、現在俺のレベルは3になっていた。ソードスキルも、通常のスラントの他に、火属性verの「ファイア・スラント」をマスターした。

「はは、お疲れ様、カイタ。」

キリトが労いの声をかける。

「しかし、やっぱり信じられねえな。ここがゲームの中だなんてよ。」

クラインが感嘆の声を上げて見渡す。

「いや、中って言うけど、魂が吸い込まれたわけじゃなくて、俺たちの脳が、現実の目や耳の代わりに見たり聞いたりしているだけだ。」

キリトが肩をすくめながら言うが、俺はすかさず突っ込む。

「いや、キリトは慣れてるからそう言えるんだっての。俺やクラインはこれが初のフルダイブなんだから。」

クラインも便乗する。

「ほんと、このゲーム買えてラッキーだったぜ…………ま、それを言ったら、1000人限定のベータテストに当選したキリトの方が何十倍のラッキーだがな。」

「右に同じく」

そこは激しく同意する。

ベータテスト。

すなわち、ゲームの正式サービス開始前の稼働試験のことだ。

そのことについては、ゲームを起動するまえにあらかた調べていた。

試験参加者の定員は1000人だったが、応募者は10万人とのこと。

その狭き門をくぐってキリトは当選したのだから、これが本当の「圧倒的僥倖」というものだろう。

さらにベータテスターには、正式版の優先販売券がついていたらしい。

(つまり、俺が持っていたのはテスター1000人以外の券だったみたいだ。)

「さて……2人はこれからどうする?もう少し狩るか?」

キリトが尋ねた。

「もちろんでございます。」

俺は即答した。

「ったりめえよ!…………と言いたいんだがな……」

クラインは歯切れが悪そうに、右上に視線を向けた。どうやら、現在時刻を確認したようだ。

「一回落ちて飯食べねえと。ピザの宅配があるんだ。」

「準備万端だな。」

「なんとまあ、充実だこと。楽しいゲームをやって、うまいピザを食べる……最光(最高)だな!」

キリトは呆れ、俺はうらやましがった。

するとクラインが思いついたように言った。

「あ、そのあとで、他のゲームで知り合いだった奴らと「はじまりの街」で合流するんだが、お前ら、アイツらともフレンド登録しないか?」

「「うーん……」」

俺とキリトは口ごもった。多分俺はキリトと同じことを考えているだろう。クラインとは自然に接することができているが、万が一その友人と上手くやれなかった場合、クラインと気まずくなるかもしれない。

すると、クラインは、俺たちの歯切れが悪い理由を察したのか、

「いや、すまん、無理にとは言わねえ。そのうち紹介する機会もあるだろ。」

「ああ、悪いな。ありがとう。」

「……面目ないな。」

そう言うとクラインは、

「いや、礼をいうのはこっちだ!キリト、おめえのおかげで助かったぜ!カイタも、お前と出会ったからキリトに出会えたようなもんだ!」

「全く、大げさだな……でも確かに、キリトのおかげで助かったのは事実だな。改めて礼を言わせてくれ、ありがとう、キリト。」

「……ああ、俺も2人と出会えてよかったよ。またどこかで。聞きたいことがあったら、いつでも呼んでくれ。」

俺たちは互いのこぶしを突き合せた。

今思うと、俺は、この2人に出会わなければ、この世界で永久に孤立していただろう。

 

こうして俺は、すっかりこのゲームの虜になった。

そして、この「ソードアート・オンライン」というゲームを「楽しい」と思った。

 

 

 

この時までは。

 

 

 

「あれっ」

再びイノシシ狩りを始めようとした俺をクラインの素っ頓狂な声が止めた。

「どうした?」

キリトが声をかける。

「なんだこりゃ。ログアウトボタンが無いぞ。」

「そんな訳ないだろ。もう一回よく見ろ。」

「クライン、腹がへって思考が回らなくなったのか?」

キリトに聞き返され、俺に冗談を言われクラインはもう一度手元を見た。数秒後、

「やっぱりねえって。2人も見てみろ。」

そういわれて俺もキリトも自分のメインメニュー・ウィンドウを見てみる。

「…………え?」

途端に俺の思考が止まった。

ログイン直後に、メニューの一番下に「LOG OUT」のボタンがあることは確認済みだ。

だが、

 

 

今現在、そこにボタンは無かった。

 

 

「…………ねえだろ?」

クラインが聞き返す。

「うん、ない」

キリトも応える。

「確かに無いな。でもなんで…………ん?」

その時、俺のメッセージの着信音が鳴った。

だが、メッセージの件名が不明だった。

(ゲームマスターからの不具合通知か?)

俺はメッセージを開けた。

「…………っ!?」

すぐさま驚いた。というのも、差出人が

 

『Hiden Intelligence(飛電インテリジェンス)』

 

となっていたからだ。

(…ナーヴギアの開発会社の1つがなんで?というか、なぜ飛電インテリジェンスがこの世界に!?)

そして、肝心の内容は、

 

『突然のメッセージ失礼します。ログイン時にあなた様にあるアイテムを送付しました。こちらを使い、ゲームマスターの野望を阻止してください。』

 

だった。

(あるアイテム?ゲームマスターの野望?)

不審に思い、アイテムストレージを立ち上げた。

 

それはすぐに見つかった。ドロップ品(イノシシ狩りで手に入れた)の他に1つ、異彩を放つアイテムがあった。だが、それはプレゼントボックス状になっていた。おそらくその中に例のアイテムがあるのだろう。

(こんなの最初から入ってたのか?)

俺はアイテムを実体化させようとした。

その瞬間、

 

【Scanning start.(認証を開始)】

 

電子音声が鳴り響き、俺の体が輝きだした。

「な、なんだ?」

キリトが俺の異変に気付き声を上げた。

「お、おいカイタ!どうしたんだ!」

クラインがこちらに来ようとするが、障壁に阻まれてすすめないようだ。

 

【Retinal Scan(網膜認証). …………Complete.(完了)】

 

「も、網膜スキャン!?おい、キリト、こんなのベータテストの時にあったのか?」

俺がキリトに聞いた。

 

【Voice Scan(音声認証). …………Complete. (完了)】

 

「い、いや、こんなの知らないぞ!?」

キリトが困惑した様子で答える。

 

【Player Data Scan. (プレイヤーデータ認証)…………Complete. (完了)】

 

「なんだよ、一体なんなんだよ!」

クラインが困り果てて声を上げる。

 

【All Scan Clear.(全認証クリア) Zero-one System Authorize.(ゼロワンシステムの使用を許可します)】

 

直後、それが実体化した。

「…………なんだ、これ?キリト、分かるか?」

「いや、俺も初めて見るアイテムだ。カイタは分かるか?…カイタ?」

キリトとクラインがこちらを見ているが、俺は目の前のアイテムにくぎ付けだった。

 

「な、なんで…………これがここに…!?」

震える声で言う俺の手には、

 

 

 

 

「飛電ゼロワンドライバー」と「ライジングホッパープログライズキー」が握られていた。

 

 




いかがだったでしょうか。
お気に入り登録していただいた If makerさん、ネクソンさん、競馬好きさん、ありがとうございます!
こんなに早く登録していただけるとは…
感想も書いていただいた方もいました!
他にも書いていただけるとうれしいです。(感想にはできる限り返信をするよう心掛けます。)
誤字報告等もございましたらお教えいただけると幸いです。
次かその次で変身予定です…!
それでは、また。


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Ep.3 ようこそ、コノ悪魔のゲームへ

第3話です。
お待たせしました!
仕事が忙しかったうえに、SAOIFの攻略が長引きました…………(47層のラストと50層のフロアボス強かった…………)
すみませんでした!
今回はその分長いですが、論点がめちゃくちゃかもです。

※追記9/10 サブタイトルミスってたので修正しました。(ほんとに些細なものですが…………)


「ぜ、ぜろわんどらいばー?なんだそりゃ?キリト、お前、ベータの時にこれ見たか?」

実体化されたアイテム、「飛電ゼロワンドライバー」を見て、クラインが怪訝な声を上げた。

「いや、まったく見たこと無いな。」

キリトも不思議なものを見るような声をあげた。

その間、俺は無言だった。

それもそのはず、今俺がもっている「飛電ゼロワンドライバー」は、俺が前世で好きだった「仮面ライダー」シリーズに登場する、令和最初のライダー「仮面ライダーゼロワン」の変身ベルトだからだ。ほかにも、ナーヴギアを「アーガス」と共同開発した「飛電インテリジェンス」も、ゼロワンに登場する、主人公「飛電或人」が社長を務めるAI搭載人型ロボット「ヒューマギア」を開発するIT企業だ。

……言い忘れていたが、俺は仮面ライダーに関してある程度の事は分かる。当然このドライバーの使い方もだ。

「おい、カイタ、大丈夫か?」

無言の俺を心配してキリトが声をかける。

「…………ああ、すまん。…俺は、これを知っている。」

「ほんとか!?で、これはなんなんだ!?」

クラインが待ち切れないように詰め寄る。

だが、どうしたものか。キリト達が「仮面ライダー」を知っている確証はない。

…………いや、知らないだろう、というか、俺が転生したこの世界には「仮面ライダー」その物が無いのだろう。でなければ、(この世界線で)約2年前の2020年に放送が終わった仮面ライダーゼロワンを、キリト達が「全く知らない」ということは無いはずだ。大なり小なりネットニュースか何かの形で知っているはずだ。

押し黙る俺を見かねて、キリトがクラインを止める。

「まあ、落ち着け、クライン。話せない事情かもしれないだろ。」

「そ、そうだった……すまねえ、カイタ。」

俺に謝罪するクライン。

「いや、別に構わない…………だが、俺も今は混乱している。いつかは話す。約束だ。」

俺はいつか、この2人に「仮面ライダー」の事を、そして出来るなら、俺がこの世界の住人でなく転生人であることも伝えようと思った。

「でも、これだけは言える。さっきのメッセージの送り主は、アーガスと共にナーヴギアを共同開発した、飛電インテリジェンスだった。」

「な、何だと!?」

俺の報告に驚くキリト。まあ、無理もない。なんの前触れもなく、いきなりナーヴギアを共同開発した大企業からメッセージが来たのだから。

「そ、それで、内容は…?」

クラインが聞き返す。

「それは…ん?」

その瞬間、遠くから鐘の鳴る音が聞こえた。

「この音は…?って、なんだ!?」

キリトが驚く。それもそのはず、俺たちの体が青い光に包まれていたからだ。

 

次の瞬間、俺たちは、人込みの中にいた。よくみると、はじまりの街の中央広場のようだった。

「なんだ?ずいぶん人数が多いな。…いや、これ、ひょっとして全プレイヤーが集まってるんじゃ!?」

キリトが気づく。どうやら、俺たちを含め現在ログインしているプレイヤー全員がこの広場に強制テレポートされたようだ。

プレイヤーのざわめきが大きくなっていく。「どうなっている」「これでログアウトできるのか」「早くGM出てこい」

「そ、そういえば今ログアウト出来ないんだった…」

飛電からの謎のメッセージ、ストレージに追加されたゼロワンドライバーの件で、俺は「ログアウト出来ない」という今一番大事な死活問題をすっかり忘れていた。

と、突然、

「お、おい、上を見ろ!」

誰かが言った。

俺たちは反射的に上を見た。すると、空(正確には第2層の底だが)が真紅の市松模様に染め上げられていく。だが、よくみると、2つの英文が交互に表示されたものだった。その英文は、「Warning」「System Announcement」と書かれていた。

(システムアナウンス?この不具合の対応が説明されるのか?)

俺は少し安堵した。

 

だが、そのあと、俺の予想を大きく裏切る現象が起こった。

 

パターンの中央部分がドロリと垂れ下がった。だが、滴り落ちずにその形をゆっくり変えた。現れたのは、身長20メートルはあるかと思われる、真紅のフード付きローブをまとった巨大な人間…いや、フードの中に顔が無く、暗闇が広がっていた。

「あの衣装…GMの衣装か?」

キリトがこぼし、俺が聞き返す。

「GMの衣装?どういう事だよ、キリト。」

「ベータテストの時に、アーガスの社員が務めるGMが纏っていた衣装だよ。でも、あの時は、男性のGMなら魔術師の老人、女性のGMなら眼鏡の女の子のアバターが収まっていたんだ。」

プレイヤーの間でもささやき声が広まる。

その時、ささやき声を静めるようにローブの袖から純白の手袋がのぞいた。

そして、顔の無い何者かが見えない口を開いた(と感じた)。

 

『プレイヤーの諸君、ようこそ私の世界へ』

 

確かにそう聞こえた。

確かにGMならば、この世界はその人物の世界も同然なのだが、今それを言って何になる?

キリトも同じ事を思っていたのか、俺たちは顔を見合わせた。

その直後、驚くべき言葉が届いた。

 

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』

 

「な……」

隣でキリトが息を詰まらせている。

茅場晶彦。俺もログイン前に調べていたので、あらかたの情報は得ている。

数年前まで数多ある弱小ゲーム開発会社の1つだったアーガスを、最大手と呼ばれるまでに成長した原動力となった、若き天才ゲームデザイナーにして量子物理学者であり、ゲーマーの中でその名を知らない者はいないらしい。

彼はこのSAOの開発ディレクターであると同時に、飛電インテリジェンスと経営協定を結んだ、ナーヴギアの基礎設計者でもある。

彼は言葉をつづけた。

『諸君はすでにログアウトボタンが消失していることに気づいていると思う。しかし、これは不具合ではなく、このゲーム本来の仕様である』

「し、仕様、だと…」

クラインの声が枯れている。

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトできない。また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除もあり得ない。もしそうなった場合は

 

 

ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

 

「…は?」

キリトとクラインが顔を見合わせ、俺は思考が停止した。

脳を破壊する。それはすなわち、殺すということだ。

ナーヴギアの破壊、強制解除が試みられた場合、そのユーザーを殺す。

━彼は今、確かにそういった。

(だが、そんなことが本当に可能なのか?)

俺は逡巡した。そしてすぐに思い至った。

(ナーヴギアは内部の信号素子から微弱な電磁波を発生させ、脳細胞そのものに疑似的な感覚信号を与える。一見最新テクノロジーに見えるけど、事は単純。━いわば「電子レンジ」と同じ原理だ…!もちろん、大量の電力が必要だが、ギアの重さの約3割はバッテリセルだから、その問題は解決されてしまっている。)

以上の事を俺は瞬時に理解した。無論、俺も困惑している。考え事でもしていないと気が狂いそうなのだ。

茅場の話は続く。

『ちなみに現時点で、一部プレイヤーの家族友人等がナーヴギアの強制解除を試みた。その結果━すでに213名のプレイヤーが死亡している。』

…つまり、200人以上もすでに死んでいるという事なのか?

『今この状況を、あらゆるマスメディアは繰り返し報道している。諸君の体は、病院等の施設に搬送され、厳重な介護体制に置かれる。安心してゲームを攻略してほしい。…………だが、1つ留意してほしい。今この世界は諸君にとって、「もう1つの現実」だ。以降、このゲームであらゆる蘇生手段は失われる。コンティニューは認められない。諸君のHPがゼロになった瞬間、アバターが永久に消滅すると同時に、

 

そのプレイヤーの脳は、やはりナーヴギアに破壊されるであろう。』

 

「…………」

俺は言葉も出なかった。

(HPがなくなった瞬間、脳を破壊され、死に至る。)と、彼はいった。

【HP/ライフがなくなるとゲームオーバーで消滅する】

(………あのゲームと同じかよ…!)

あのゲームとは、「仮面ライダークロニクル」。

以前、「仮面ライダー」シリーズで、「仮面ライダーエグゼイド」というライダーがおり、その作中に出てくる

「一般人が仮面ライダーに変身し、現実世界で生き残りをかけてバグスター(作中の怪人は、バグスターと呼ばれていた。)と戦い続ける命がけのサバイバルゲーム」

それが「仮面ライダークロニクル」だ。…………もっとも、あのゲームは、ライフがゼロになった時に、初めて「ライフがなくなるとゲームオーバーで消滅する」という事実を突きつけられるという、鬼畜仕様になっていたが。その点でいえば、今回は事前に教えてくれる分、ありがたいというものだ。

(…………いや、楽観視してるばあいじゃねえ)

その間にも茅場の話は佳境へとさしかかっていた。

『それでは最後に、ここが唯一の現実であるという証拠を見せよう。ストレージにあるアイテムを送付しておいた』

(また追加アイテムか)

そう思いながらおれはストレージを見た。

そのアイテムの名は「手鏡」。

(なんだってこんなものが?)

不思議に思いながらそれを実体化する。

(……何も起こらねえ)

鏡には自分のアバターが映っているだけだった。

 

と思った途端。

 

(っ!?)

突然、俺を含めた周囲のプレイヤーが白い光に包まれた。光が収まると、そこは中央広場のままでなにも変わっていなかった。

━いや、正確には、広場自体はそのままだった。だが、周囲のプレイヤーの姿が様変わりしていた。それは、俺の隣にいた、キリトとクラインも同様だった。キリトが居たところには大人しいスタイルの黒髪に、長めの前髪の下には柔弱そうな両眼の推定14、15歳の少年。クラインが居たところには、金壺眼に、長い鷲鼻。頬と顎には無精ひげの男性。さながら、野武士、あるいは山賊だ。

「あの、あなた方は?」

俺はそう聞いた。

「「いや、お前こそ誰だ(よ)?」」

目の前の2人にそう聞き返され、俺は手元の鏡を見た。瞬間、唖然とした。というのも、そこには、さっきまで見ていた自分のアバター姿は無く、短めの黒髪に、少しとがった鼻。そして特徴的な青い光彩の目。あろうことか「自分自身」が映っていた。

「…………お、俺!?」

キリトとクラインも鏡をみて驚いている。

俺たちは数秒後、顔を見合わせ、同時に言った。

「お、お前ら、キリトとクラインか!?」

「「お、お前、カイタか!?」」

2人とも(俺もだが)ボイスエフェクトが停止してトーンが変わっていたが、もはやそんなことはどうでもよい。

一体、どうしてこうなった。

「……なんだよこの再現度。まるでスキャンにかけたみたいじゃねえか。」

俺がそういうと、キリトは何かを理解したように

「…………そうか!」

と、押し殺した声を絞りだした。

「ナーヴギアは、信号素子で顔を覆っている。だから顔の形も正確に把握できるんだ。」

「で、でも、体格とかはどうなるんだ?」

クラインが聞き返す。

確かに、顔はともかく、体全体をどうやって……?

その解答は、質問したクライン自身がだした。

「そ、そういえば、初回の設定で、あれ、なんていったか?キャブリレーション?とかなんとかで、自分の体を触ったぞ。もしかしてあれか?」

「あ、ああ……そういうことか」

キリトがその意図を理解して呻く。

キャブリレーションとは、体表面感覚を再現するため、「手をどれだけうごかすと体に触れるのか」の基準値を測る作業だ。言い換えれば、自分の身体データをナーヴギアに入力するという事だ。確かに、そのデータを使えば、体全体を再現することは可能だ。

「…現実」

ふいにキリトが呟く。

「あいつはさっきこういった。『これは唯一の現実だ』と。俺たちのアバターやHPは、どちらも本物の体であり、命である。それを否が応でも認めさせるために、あえて現実の肉体を再現したんだ。」

「で、でもよぉ、キリト、なんでこんなことを!?」

クラインが叫ぶがキリトが諌める。

「まあ、落ち着け。どうせ、じきにご本人の口から答えが聞けるさ。」

『諸君は、何故私がこんな事をしたのかと思っているだろう。…………私には、一切の目的も理由もない。なぜなら、この状況こそが、私にとっての最終目的だったからだ。この世界を創り、観賞するためだけに、私はナーヴギアを、SAOを作った。そして、今、悲願は達成された。』

『…………以上で、「ソードアート・オンライン」のチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る。』

そう言い残し、フードも、空一面のメッセージも消えた。

一瞬の静寂が漂った後に、広場は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。

だが、俺は困惑の中に落ち着きもあった。それどころか、ある種の使命感を感じていた。

飛電インテリジェンスから送られてきた「ゼロワンシステムを使い、ゲームマスターの野望を止めろ」というメッセージ。茅場は「一切の目的、理由はない。むしろ達成された」といっていたが、俺はそうは思わない。何しろ、今この状況がその証拠だ。「俺たちプレイヤーがソードアート・オンラインという現実で、どのような生き方をするのかを観賞する」。それを通して、「現実と仮想世界は、何が違うのかを知りたい」、これこそが、茅場の真の欲求ではないかと、俺は考えた。……認めるのは癪だが、気持ちは分からないでもない。「死に直面している」ことは、裏を返せば「生を実感する」ということ。そして、仮想世界を自分の拠り所にしている人もいる。そういう意味なら、この状況は、もってこいの環境だ。

実際、「仮面ライダークロニクル」でも、敵に乗っ取られゲームを改変される前は「満たされない人々に夢と冒険を与える」というコンセプトだったようだ。

…………だが。

 

「……………………ふざけんな」

 

ここにいる人たちは、「楽しくゲームをする」ためにこのSAOに足を踏み入れた。それをたった一人の「観賞」、ただそれだけのために、自らの「命」を人質(果たして人質という言葉が適切かは分からないが。)にとられたも同然なのだ。

 

「…………いいぜ、上等だ、茅場晶彦…!俺はこのゲームをクリアする…!お前の野望を止められるのはただ1人…俺だ!」

俺はゼロワンの常套句と共に、そう誓った。

「意気込んでるところ悪いが、お前ひとりじゃない、俺たちもいるぜ。」

その言葉に振り向くと、クラインが苦笑しながら立っていた。

「わかってる。言葉の綾ってやつだ。…………そういえばキリトは?」

「ああ、そうだった。キリトからお呼び出しだ。」

クラインにそう言われ、俺は彼に着いていった。

 

キリトは、街路の馬車の影にいた。

「来たか。」

「悪い、キリト。少し考え事をしてた。それで、話ってのは?」

「…………いいか、よく聞け。俺はすぐにこの街を出て、次の村に向かう。お前たちも一緒に来い。」

俺とクラインは目を剥いた。キリトは続ける。

「あいつの言葉がほんとなら、これからこの世界で生き残るためには、自分を強化しなければいけない。MMORPGはリソースの奪い合いだ。システムが供給する資源を多く獲得できた人間が生き残る。ここら一帯のフィールドはおそらくすぐに枯渇する。だから、今の内に次の村を拠点にしたほうがいい。俺は道も危険な場所を全て知っているから、簡単にたどりつける。それに、カイタのレベルも少し上がってる。十分対処ができる。」

確かに一理ある。

だが、

「で、でもよぉ…俺、前のゲームのダチ達と待ち合わせてるんだ。あいつらを…………置いてはいけねえ。」

クラインがわずかに顔をしかめながら言う。

「……キリト、すまないが俺も同行できない。…………俺は…今でも信じられないけど、飛電インテリジェンスから、「ゲームマスターの野望を止めてくれ」って仕事みたいなものを依頼されている。それが、さっき言いかけた、メッセージの内容だ。おそらく、ゼロワンシステムがある以上、それを使って戦う機会も増えるかもしれない。無論、目立たないように行動はするが……万が一正体がばれたとき、俺は真っ先に狙われる。何しろ、この世界にただ1つの装備だろうからな。…………俺は、これ以上、お前に迷惑をかけたくない。」

キリトはおそらく、攻略の最先端に立つであろう人間だと俺は考えている。俺がキリトと一緒に行動して、キリトの身に何かあった時。その責任を背負う事など、俺には到底できないだろう。

クラインも続けて言う。

「…………俺もだ。これ以上、おめぇに世話になるわけにゃいかねえ。俺だって、前のゲームじゃ、ギルドの頭だったんだしよ。ここまでで教わったテクで何とかしてみせらぁ。それに、これが悪趣味なイベントで、案外すぐにログアウトできるかもしれねえ。…………だから、おめぇは気にせず、先に行ってくれ。」

「…………そっか、なら、ここで別れよう。何かあったらメッセージを飛ばしてくれ。…………じゃあ、またな、クライン、カイタ。」

…………俺は今でも、自分の選択が正しかったのかわからない。キリトの顔を見ると、葛藤に歪んでいた。

「キリト!」

背を向けたキリトに俺は声をかけた。

「…………俺、約束するぞ!今は何もできないほど弱いけど、お前が安心して俺に背中を預けれるくらい強くなって、いつかお前と一緒に戦うぞ!」

「…………ふふ、そうか。じゃあ、期待して待ってる。」

キリトは手を振り、北西(おそらく、次の村がある方角だろう)へ向けて歩き出した。

 

翌日。

 

「…………よし、行くか。」

昨日、キリトとクラインと別れた直後、日が暮れていたので宿に入り、その日は就寝した。

朝起きて、支度を整えると、俺ははじまりの街を出発し、次の大きな町「トールバーナ」を目的地に定め、出発した。

 

 

 

 

 

 

 

それから1か月後。

俺はトールバーナを拠点に活動を続けていた。

しかし、それは逆に、1か月で第1層もクリアされていないということだ。キリトによれば、ベータでは2か月で6層までをクリアしたというのに。

 

そして何より、この1か月で、ゲームオーバーやパニックによる自殺、外部の人間が警告を無視してナーヴギアを強制解除した等、原因は様々だが、1万人のプレイヤーの内、2000人が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

だが、俺があの悪魔のゲームに足を踏み入れた日。

 

ここから、俺の運命を覆す長い物語は、ゆっくりと、だが確かに進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━どこかの灰色の空間で、誰かが呟く。

「…………始まったか。…さて、そう簡単にくたばるとは思わないが、やすやすと死ぬなよ?ゼロワン。…………いや、『海道圭太』。」

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。
最後の人物は、後の伏線です。(ただし本格登場はだいぶ先です。)
新たにお気に入り登録&☆9評価をしていただいたルコルンさん、ありがとうございます!
今回変身出来なかった…!
次回は必ず変身させます!
それでは、また。


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Ep.4 オレは剣士で「仮面ライダー」

第4話です。
大変遅くなりました…………
500mlのRE〇LGOLDを片手に(本当に今更ですが)アインクラッド編のプロットを書いては直して、書いては直しての繰り返しの日々を送っていました…………
プロットって大事ですね。大まかな構想を把握できるので。
やっぱり、行き当たりばったりの執筆は良くない。
今回と次回オリジナルエピソード挟んでから、第1層フロアボスへ行く予定です。
言い忘れてましたが、SAO本編でのSAOの設定と大きく異なる場合がありますので、ご注意ください。
今回初変身&オリキャラ出ます。



━ゲーム開始から1か月。

俺は目撃していないが、茅場のデスゲーム宣言の後、多くのプレイヤーがパニックに陥り、これからの事を考え始めるために数日を要したと聞く。

そしてプレイヤーは、大きく4つのグループに分かれた。

1つ目。これは約半数を占めたらしいが、外部からの救助を待ったグループ。彼らの気持ちはよく分かったが、結論から言うと結局その救助は来ず、初期の資金(この世界の通貨は「コル」で、「1コル=1円」ほどだと踏んでいる。)も尽きたので、彼らも何らかの行動を起こさざるを得なくなった。

2つ目。これは全体の約3割ほどだが、協力して前向きにサバイバルを目指そうという集団。この巨大集団にはしばらく名前は無かったが、全員に共通の制服が支給されてからは、「軍」という、物騒な名前が付けられた。

3つ目。推定1000人程だが、無計画な暴食でコルを使い果たし、でも、モンスターを倒して稼ぐこともしない、食い詰めた者たちだ。そんな人たちの大半は「軍」に入ることになった。指示に従えば、少なくとも食糧は至急されるからだ。だが、「人の指示に従いたくない」という者は、はじまりの街のスラム街を拠点として、強盗に手を染めるようになった。これが後の「オレンジギルド」と思われる。

4つ目。簡単に言えば、その他の人たちだ。

その他1つ目。攻略は目指すが、「軍」に参加しなかったプレイヤーたちが作った小集団がおよそ50個、人数にして500人。その集団は相称して『ギルド』と呼ばれた。

その他2つ目。ごく少数の職人、商人クラスを選択した者たち。せいぜい2、300人の規模だったが、彼らも独自のギルドを形成し、スキルの修行を開始した。

その他3つ目。残った100人足らず(俺やキリトもそこに属したが)が、「ソロプレイヤー」と呼ばれた者たちだ。

 

 

 

 

 

 

「…昨夜はこの辺りのマップデータを収集してきた。」

はじまりの街を出発して1か月後のある日。俺は「トールバーナ」と呼ばれる街で前の日の「訓練」の成果を、ある人物に渡していた。

「毎度ご苦労サン。…そういえば、この前カイ坊が集めたデータを見て、キー坊が悔しがってたぞ。」

「はは、まあ、そりゃ」

「『夜に出てればあの素材手に入ってたのか!』だってさ。」

「…………ああ、そっちか。全く、相変わらずキリトは生粋のゲーマーだな。」

「カイ坊も大概ダゾ。『やっぱりキリトの攻略早すぎねえか!?』って言ってただろ。」

「…………記憶に、ございません。」

俺とやり取りしている人物は、情報屋の「アルゴ」だ。彼女は通称「鼠のアルゴ」と呼ばれている。その名は伊達ではなく、様々な情報を最速で入手してくる。どうやら、俺とキリトはお得意様らしく、キリトのことを「キー坊」、俺の事を「カイ坊」と呼んでいる。…………少々、依頼料が張るのが難点だが。

「…………それで、例の物は使いこなせるようになったのか?」

「…………まだまだだ。やっぱりライジングホッパー……黄色いバッタのフォームだが、あれのジャンプ力を生かしきれてない。」

そう、俺が行っている「訓練」とは、毎日夜中に人気の無い森に潜り込み、実際にゼロワンドライバーを使用した戦闘を行うということだ。

 

余談だが、現在、レベルが上がった事により、基本形態であり、キック、ジャンプ力に優れた「バッタ」の「ライジングホッパー」以外に、

空中戦を展開できる「タカ」の「フライングファルコン」

水中戦や斬撃に優れた「サメ」の「バイティングシャーク」(もっとも、SAOで以上の2つを使って水中戦や空中戦をする事はまず無いと踏んでいるが。)

耐熱や炎をまとった攻撃に優れた「トラ」の「フレイミングタイガー」

パンチや冷凍術、(微弱だが)回復力に優れた「シロクマ」の「フリージングベア」

他のフォームと違い、超重量の鎧を装備し、機動力を犠牲にして、パンチ、キック、防御に優れた「マンモス」の「ブレイキングマンモス」、これらのフォームが使用できるようになった。

 

話を戻すと、昼と夜では出現するモンスターの種類や割合が変わるらしく、夜のモンスターの情報を調査していたアルゴに俺が変身する様子や戦闘を見られてしまっていた。翌日、さっそく追及され、最初は白を切っていたが、彼女が記録結晶(写真やスクリーンショットのようなもの)で撮った俺の様子を見せてから、俺はあっさりと陥落した。彼女から交換条件として、「夜のモンスターの情報を集めてくれれば、君の事は公表しない」と言われ、不服ながらも彼女にこき使われている次第である。

つまるところ、昼の情報をキリトが集め、夜の情報を俺が集めているといった感じだ。

「しかし、あの飛電インテリジェンスがナーヴギアの他にそんな物を開発してたなんてナ。ひょっとして、戦争でもするつもりだったとか…………」

「おい、アルゴ、それ以上言ったら…………分かってるな?((o^―^o)ニコ)」

そういいながら俺は、腰に差した片手剣に手をかけた。飛電は決して戦争のためにゼロワンを作ったのではなく、「人類と人工知能との共存」を夢見て、このシステムを作った。それを「戦争のためでは」と言う輩は実に不愉快だ。仮面ライダーは戦争の道具じゃない。平和を守るための手段だ。そういう訳で、本音を言うとアルゴに掴みかかりたいが、仮にそんな事をしてしまえば、(アルゴの背が低いため)大の大人が幼女に抱き着いているように見えるという、構図的にやばいことになってしまうので、この程度で済ませている。

「ぴいっ……!?わ、分かってる、冗談だってバ。」

そういいつつも、冷や汗だらけの様子のアルゴであった。

 

「…………じゃ、俺は行くわ。また何かあったらよろしく。」

「はいよー、オネーさんに任せなって。」

そういいながら、俺は昼食を食べに行こうと思い立ち、動いた。

「さって、今日はどうしましょうかね……?ん?」

【はちみつパン限定30個】

(…………ああ、一度は食べたいな…あれ?残ってる?)

そう、一日30個限定のはちみつパンがあと1つ残っていたのだ。そのパンは「パンは固いが、まるでパンケーキのような風味だ」と噂になっており、「キー坊が好んで食べている」という情報をアルゴから買い、(ちなみに500コルだった、こんなくだらない情報に500円も取るのかと悔しくなった。)俺も食べたいと思っているのだが、いつもすんでのところで売り切れになり、硬くて味のしない黒パンを一工夫して食べていた。

だが、今は千載一遇のチャンス!

「「すみません!はちみつパン、1つ!」」

 

…………へ?

 

隣からも声がした。横を向くと…………

 

(サイドテールの女性side)

私は今日もおやつの「はちみつパン」を買おうと思った。明日の命があるかもわからないこの世界で、この時間は私の唯一の楽しみだ。

私はこの春に女子大に入学ばかりだ。そして、10月になり、この「ソードアート・オンライン」の「優先販売券」の一般抽選に当選したのだ。この時は思わず舞い上がり、友達にも自慢した。

あんなことが起きるともしらずに。

「ゲームでの死は、現実の死と同義だ」そう言われた時、最初は何を言われたのか分からなかった、いや、理解したくなかった。その後2日は宿からも出ずに泣いてばかりだった。でも、(どうせ死ぬのなら、この世界で限界まで生き抜いてから死にたい。)そう思い、装備を整え、ここ、トールバーナに着いたのが、その2日後だ。その日の内に、はちみつパンに出会い、それまで不安と恐怖しか無かったこの世界に楽しみを見出し、それからは毎日食べている。

そして、今日も食べようと思い、売店へ向かった。

 

「「すみません!はちみつパン、1つ!」」

 

…………え?

 

何か隣からも聞こえた。横を見ると……

 

「…………えーと、ひょっとして、買おうとしてた?」

短めの黒髪に、少しとがった鼻。そして、不思議なことに光彩が青い(私も生まれつき光彩が緑だから人の事は言えないけど)男性プレイヤーがいた。

 

(カイタside)

「…………えーと、ひょっとして、買おうとしてた?」

俺がそう声をかけた相手は、ローズブラウンのサイドテールに、光彩が緑色の女性プレイヤーだった。

…………確かに、このパンは、特に(人数は少ないが)女性プレイヤーに人気だと聞いた。

…………食べたい。しかし、悩んだ末、結局この女性に譲ることにした。

「買っていいですよ。俺、別の店いくんで。」

と、俺が言うと、

「で、でも、あなたも楽しみにしていたんじゃ……」

「いや、君だってそうじゃない?それこそ、そうだな…………毎日の楽しみ、とか?」

女性にとって、「おやつは別腹」というらしい。だから、適当に推測して言ってみた。

「う…………そ、それは、その……」

あれ、目が泳いでいる…………まさか図星か?まあいいや。

「ほら、遠慮しなくていいから。」

「で、でも…」

ほう、なかなかしぶといな。こうなったら…………

「じゃあ、こうしよう。俺はそれを買う。でも、あくまでも買うだけ。俺の出す料理…あれを料理と言っていいか分からないけど、とにかくそれを食べてみて、まずかったら俺が買ったはちみつパンを食べていい。うまかったらどっちも食べていい。これでイーブン。どうだ?」

「…………わかりました。」

ありゃ、意外とあっさり承諾したぞ。

「よし、決まりだ。」

…………今更だが、この子は、「知らない人に着いていかない」という事を知らないのだろうか。ましてやここは、裏切り、策略なんでもありのMMORPGだ。引き込んだ俺が言った所で、説得力は皆無だが。

 

数分後、俺たちは、トールバーナの中央広場にいた。

「…………さて、俺が薦めるのは…」

そういいながら、俺はストレージから黒パンを出した。

「え、黒パン?私も食べたことあるけど、あまり美味しくなかったよ?」

女の子(なんか同い年に見えた)が少し睨んでいる。

「普通に食べたらな。でも、これを使えば、」

俺は、小瓶を取り出した。この小瓶は、トールバーナの近くにある村で受けられるクエストの報酬だ。

「…………なにこれ?」

「こいつはこうやって食べるんだ。」

そう言って俺は、小瓶の口に指を近づけた。すると、指の周りが白く発行する。それを黒パンに塗るようにすると、まるで、クリームが塗られたようになる。それをそのまま食べる。お世辞にもうまいとは言えないが、まるでクリームパンのような味わいになる。

「ん。うまい。」

「…………」

女の子も見よう見まねでやって、食べた。と、思いきや、すごい速度でほおばり始めた。そんなにうまかったのだろうか。…………それにしても…

(…………なんか、小動物みたいだな)

彼女がほおばる姿がまるでリスみたいに見えた、と思ってしまったのは内緒だ。

あっというまに、黒パンを平らげた。

「うまかったか?」

「(もぐもぐ)」(コクン)

「よかった。」

実はこの食べ方、キリトがおすすめする食べ方らしい。メッセージで先ほどのクエストのコツや食べ方等を教えられて試した結果、見事にはまってしまった。

(キリトは意外と食い意地があるのか?)そう思わざるを得ない一件だったのを覚えている。

「…………さてと、」

メインのはちみつパンを食べようとした。…………したのだが、

「じぃ~…………」

(な、何かめっちゃ見てるんですが!?あ、そういえば、)

“おいしかったら両方食べていい”と言ったのを忘れていた。

「…………えっと、食べていいよ?」

「え、いいの?」

「じっと見てるってことは食べたいってことでしょ?……それにそもそも、おいしかったら両方食べていいって約束したし。ほら。」

「え、う、うん…!ありがとう!」(ぱあっ)

「っ!///」

 

(え、何、この子。めちゃくちゃ可愛い。)

 

っと、いけないいけない。思わず気を取られていた。

「……そ、そうか。じゃ、じゃあ、俺は行くわ。」

そういって、俺は逃げるようにそこから離れた。

 

(サイドテールの女性side)

(…………おいしい!黒パンにこんな食べ方があったなんて!)

今私の隣にいる男の子(なんだか同い年に見えた)から、黒パンにクリームを塗ったものを薦められた。正直、黒パンは固いから、どっちみち美味しくないと思った。だが、実際にこの食べ方で食べてみると、クリームパンのようで、とてもおいしかった。

私は、あっというまに黒パンを平らげた。

「うまかったか?」

と聞かれ、私は

「(もぐもぐ)」(コクン)

と、口にパンが入っていたので、頷いただけだった。だが彼は、

「よかった。」

と、まるで我が事のように喜んでいた。

この時に私は、「彼はこの世界で一人の人間として生きている。」と気づいた。【ゲームオーバーになると死ぬ】という現実をきちんと受け入れ、その上で日々の生活に向き合っている。そう感じた。

そして、無意識のうちに、「彼ともっと話したい。」とおもった。

と、その時、彼がはちみつパンを差し出して、

「…………えっと、食べていいよ?」

と言ってきた。私としては大歓迎だが、これはもともと彼が買ったもの。私は

「え、いいの?」

と聞き返した。すると彼は苦笑しながら

「じっと見てるってことは食べたいってことでしょ?……それに両方食べていいって約束したし。ほら。」

そういいながら、パンを差し出した。どうやら、パンをじっと見つめすぎていたようだ。悪いことをしたと思った。だけど同時に、心があたたかくなるのを感じた。その時に私は久しぶりに、「見せかけではない本当の優しさ」に触れた気がした。

自然と顔がほころび、

「え、う、うん…!ありがとう!」

と言ってパンを受け取った。食べながら、(フレンド登録しておこう。)と思い、彼にフレンド申請をしようとした。が、彼はあたふたしながら去ってしまった。…………なぜか顔が赤いように見えたが、急ぎの用事でも思いだしたのだろうか。

(…………また、会えるかな。)

そう思いながら、私はパンを食べ終えた。

 

 

(カイタside)

「…………」

俺は無言で歩いていた。さっきの彼女のまぶしいほどの笑顔が頭から離れなかった。

そのため、「考え事をしながら歩いていると、高確率でなにかにぶつかる」という人類の共通の悪い癖が発動してしまった。

「いてっ、チョット、どこ見て…………って、カイ坊か。どうした?」

だが、俺は不覚にもアルゴの声に気づかなかった。その所為で、最大の失態を犯すことになった。

 

「…………あの子やっぱ可愛かったな…///」

 

「お?お?お~?カイ坊、じっくり話を聞こうか?」

「…………はっ!ア、アアアアルゴ!?い、いや、な、何でもない!」

「可愛いってだれの事かニャー?」

「だまらっしゃい!!///」

「そう言われると余計知りたくなるナー。ま、それはおいおい聞くとして。」

「いや、聞くのかよ!プライバシーって知ってる?」

「今夜の訓練場所なんだけど、」

「俺の意見は無視ですかそうですか」

「うーん…この辺りとかで頼むヨ。」

「はいはい、分かりました、やればいいんでしょ、やれば。」

俺はやけくそぎみに話を聞いた。

 

その夜。

「さてと、いっちょ始めますか。」

俺はアルゴに指定された訓練場所(表向きは調査地)へやってきた。

「しかしまあ、なんとも静かだ事。人っ子1人居な」

 

 

キン!ギン!

 

「!」

(今のは、剣劇音!?しかもここから近い!…………だれかがモンスター狩りにやってきてるのか…?少し様子を見にいくか。)

 

 

 

 

 

(サイドテールの女性side)

私は無我夢中で短刀を振り回しながら逃げていた。

最初はなんてことない、夜の散歩だった。だが森のなかで、トールバーナの村人に出会った。夜間限定のクエストか何かだと思い、近づいた。でも、その村人は私を見るなり、

 

『滅亡迅雷.netに接続・・・』

 

とつぶやいたかと思うと、ベルトのバックルのような物を取り出し、腰に巻き付けた。そして、手のひらサイズの長方形の何かを取り出し、上部のボタンを押した。

 

【ベローサ…!】

 

そして、ベルトに装填し、左横のボタンを押した。

 

【ゼツメライズ……!】

 

そして、村人がカマキリのモンスターに変身した。私は最初、あっけにとられていたが、そのモンスターが攻撃してきて、これは夢ではないことを知った。夢中で短刀のソードスキルである、下段からの突き上げ技「ケイナイン」を放ったが、あっさりはじかれた。その直後、

もう一度ベルトのボタンが押され、

 

【ゼツメツ!ノヴァ…!】

 

そいつの攻撃が私に直撃し、何とレベル7の私のHPが残り2割までけずられた。

私はパニックになって、逃げまわった。

(怖い…………怖いよ…!このモンスター、すごく強い!)

だが、今、木を背中にして追いつめられた。

しかも、腰が抜けてしゃがみこんでしまった。

(私…ここで死ぬの?)

目の前の怪物は、ベルトに手をかけていた。もう一度、あの必殺技を繰り出す気だ。

至近距離であれを受けたら、絶対に死ぬ。

(アア…ワタシ、ホントウニ、シヌンダ…)

私は完全に絶望して、死を受け入れようとしていた。

が、その時、昼間に出会った彼の顔が浮かんだ。他人を気遣う優しい心の持ち主にして、同時に、現実を受け止め、前を見据える強い心の持ち主である彼が。その瞬間、(彼にもう一度会いたい。)という思いがあふれ出した。

(…………いやだ、死にたくない!まだ死にたくない!死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!)

「…………助けて……誰か、助けて!」

私は震えて泣きながら、か細くそう口にした。

だが、そんなことはありえない。

今は夜中で、プレイヤーは皆寝ている。仮に起きている人がいたとしても、こんな人気のない森までは来ない。

もう、助からない。

…………でも、もしも、この世界に、我が身を顧みず誰かを守る、そんな人がいたら。

…………もしも、この世界に、「助けて」という声に颯爽と駆けつける、そんな英雄(ヒーロー)がいたら。

(…………なんてね。いる訳ないよね、自分の安全が一番のこの世界に、そんなお人よしな人…)

 

【ゼツメツ!ノヴァ…!】

 

(ひっ…………!)

私は来たるべき痛みに備えて目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【アタッシュカリバー! ブレードライズ!】

【(ガシュン)チャージライズ!(ガチャン)フルチャージ!】

【カバンストラッシュ!】

「吹っ飛びなっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

(カイタside)

俺は茂みから顔をのぞかせた。

「…あ」

そこには、昼間に出会った彼女がいた。

その右手には短刀が握られている。どうやら、さっきの剣劇音は彼女のようだ。

だが、彼女は何かに追いつめられている。

「あ、あいつは!?」

そいつを見た俺は驚愕した。

そいつは、見た目はカマキリのモンスターだった。それ自体に何らおかしい所はない。だが問題は、そいつの腰にあるベルトのようなものだ。俺は一目見て、すぐに気づいた。

(あれは、ゼツメライザー!?それに、あのカマキリ野郎は、ベローサマギア!?)

マギアとは、「仮面ライダーゼロワン」に登場する怪人だ。

以前、「飛電インテリジェンスは、AI搭載人型ロボット『ヒューマギア』を製造・派遣する会社だ」と説明した。だが、ヒューマギアも当然ロボットなので、暴走するし、ハッキングだってされる。それを利用したのが、ゼロワンに出てくる敵組織の、人類滅亡を目論むテロリスト集団「滅亡迅雷.net」だ。自我を獲得したヒューマギアの元へ赴き、「ゼツメライザー」を装着させ、そのヒューマギアの内部データを改窮、つまり書き換え、暴走プログラムをダウンロード、インストールさせる。そして、俺が持つ「プログライズキー」と対になる「ゼツメライズキー」を使用し、絶滅種のデータイメージ「ロストモデル」を自らに付与する「ゼツメライズ」を行い、ヒューマギアの表層コーティング、外装を破壊することでマギアに変貌、暴走プログラムに従い人類を滅亡へと導くために暴れまわる。

それがマギアだ。

(ちぃっ…!ゼロワンシステムがこの世界にあるから、まさかとは思ったが、マギアもいるなんて…!)

俺は舌打ちしながらそう思った。

その時、

 

「…………助けて……誰か、助けて!」

 

か細い声だが、たしかに聞こえた。

目の前の彼女が、震えて泣きながらそう言ったのだ。

その時、俺は改めて、「仮面ライダー」の責務を思い出した。

強きものを挫き、弱きものを救う。

助けを求める声に、応える。

手が届く限りの全てを守る。

誰かの涙を止め、自由と愛と平和を守る。

この力は壊すためではない、守るための力だ。

…………彼女を救う。救って見せる!

 

俺はストレージを呼び出した。

 

【アタッシュカリバー! ブレードライズ!】

俺はゼロワンの基本武器、「アタッシュウェポン」の1つ、「アタッシュカリバー」を出現させ、ブレードモードを展開した。

【(ガシュン)チャージライズ!(ガチャン)フルチャージ!】

さらに、一度アタッシュモードに戻し、再度ブレードモードにする。

これで必殺待機状態になった。

 

【ゼツメツ!ノヴァ…!】

 

ちょうど向こうも必殺技を発動した。

(間に合えっ!!)

俺は飛び込みながらトリガーを引いた。

 

【カバンストラッシュ!】

「吹っ飛びなっ!」

 

彼女を庇うようにマギアの前に立ちふさがると同時に、俺の刀身から放たれた黄色いエネルギーをまとった斬撃が奴が命中した。

「…………え?」

彼女は目を開けたが、何が起こったか分からず、茫然としている。

「ふい~、間に合った。…………おい、大丈夫か?これでも飲んどけ。」

そういって俺は、回復ポーションを彼女に渡した。

「あ、ありがとうございます…………って、あなたは昼間の!どうしてここに!?それにその武器は!?」

「話は後で!少し離れてて!」

「ダ、ダメです!あのモンスター、すごく強いですよ!あなたまでやられてしまいます!」

泣きながら俺を止めようとしがみつく彼女。

…………って、すごい密着してるんですが!?

(や、やばい、む、胸が…………///)

…って、そんな事考えてる場合じゃない!

「大丈夫、俺は負けない。いや、負けるわけにはいかない。……このくそったれなゲームをクリアして、ゲームマスターの茅場晶彦の野望を止めるまで………俺は、戦い続ける。何があっても。そして、守るべきものを守り抜く。…………戦えない全ての人のために、俺が戦う!」

俺はマギアの方を向きながら、俺を止めようとする彼女に向かって決然と言い放った。

「な、なんで…」

彼女は目に涙を浮かべて、言った。

「なんで、そこまでして、戦うの?」

なんで、だと?…………決まってるじゃないか。

 

 

 

 

「だって俺は…………“仮面ライダー”だからな。」

 

 

 

 

【ゼロワンドライバー!】

 

俺はドライバーを装着した。

そして、右手に持ったライジングホッパープログライズキーの上部のボタン「ライズスターター」を押した。

 

【Jump!】

 

キーのアビリティが読み上げられ、認証待機状態になった。それをベルト右側にある認証装置「オーソライザー」にかざした。

 

【Authorize!】

 

すると、上空から黄色いバッタの巨大なデータイメージ「ライダモデル」が降ってきた。

(ゼロワン本編でも、飛電インテリジェンスの通信衛星「ゼア」からライダモデルが地上に転送されていたが、マニュアルによると、今回は、同じく飛電インテリジェンスの通信衛星「ウィア」(本編では最終決戦後に打ち上げられた衛星)からSAOのサーバーにデータが圧縮、暗号化されて転送されているらしい。)

 

俺はプログライズキーを「カードディスクモード」から「キーモード」に変形。腕をクロスしてポーズをとり、自分に異形の力を与える言葉を放ち、ベルトにキーを装填した。

 

 

 

「変身!」

 

 

 

【Progrize!】

【飛び上がライズ!ライジングホッパー!】

【A jump to the sky turns to a rider kick.(空へのジャンプはライダーキックへと変わる。)】

 

 

 

光が収まった時、俺は仮面ライダーゼロワンに変身が完了していた。

 

 

 

 

 

(サイドテールの女性side)

 

「だって俺は…………“仮面ライダー”だからな。」

 

【ゼロワンドライバー!】

必死に止める私に、彼はこう言い、ベルトのようなものを付けた。

(本当に大丈夫かな…………?)

そう思いながら、彼の背に隠れ、彼の服の裾を握った。その瞬間、

 

━彼が不適に笑った気がした。

 

彼は右手にもった長方形の物体(モンスターが持ってたのに似てる気がした。)を起動させ、ベルトにかざした。すると、空から巨大なバッタが降ってきた。

(え!?バッタ!?なんで空から!?)

そう思っているうちに、彼は物体を変形させ、鍵のような形状に変えた。

そして、この先忘れることはないであろうあの言葉を放った。

「変身!」

そして、アイテムをベルトに装填した。途端に、彼が光に包まれた。

不思議な音声が聞こえ(最後英文も聞こえたが、よく聞き取れなかった。)、光が収まった。

目を開けると、そこに彼はおらず、代わりに黄色と黒の姿で、赤い複眼の異形の何かが立っていた。

彼はポーズをとると高らかに宣言した。

 

「ゼロワン、それがおれの名だ!…………お前を止められるのはただ1人、俺だ!」

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。
新たにお気に入り登録していただいた、かわりょうさん、torin Silverさん、ヒリュウさん、ma_mo225さん、ハレンチさん、ありがとうございます!
まさかここまで長くなるとは思わなかったので、次回に続きます。(今回約10000字弱)
申し訳ございません…………。
また、誠に勝手ながら、大学の関係で今後の投稿頻度が低下する事が予想されます。
最低でも月1回投稿を目標にしますが、何卒ご了承ください。
次回のオリジナルエピソードが終わったら、第1層フロアボスへ行く予定です。
それでは、また。


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Ep.5 カレは剣士で「ゼロワン」

第5話です。
お待たせしましたぁ!
大学の履修登録や授業、課題に追われて、全く執筆出来なかった為、前回の投稿からかなり空いてしまいました……
大変申し訳ございません!
先日、UAが1000件突破しました!これもひとえに、読んでくださるユーザーの皆様のおかげです!ありがとうございます!

さて、余談ですが、先日SAOIF第61層を無事攻略しましたが、ただでさえフロアボスで手一杯だったのに、ラストの「アイツ」が強すぎて絶望しかけました\^0^/
でもストーリーは良かった…………

再三お伝えしますが、この小説には、作者のご都合主義、勝手な解釈、原作設定無視がふんだんにありますので、ご注意ください。
なお、今回からセリフの前に、発言者の名前を入れてみます。
反応をお寄せいただけると幸いです。



(カイタside)

カイタ「ゼロワン、それが俺の名だ!…………お前を止められるのはただ1人、俺だ!」

 

俺は、そう宣言し、目の前のベローサマギアに切りかかった。

カイタ(奴の能力は、両腕に装備された鎌と、両目から放つ光線。鎌はアタッシュカリバーで応戦して、光線はライジングホッパーの跳躍力で回避してキックで反撃すれば…!)

 

何しろ、ライジングホッパーのジャンプ力は、ひと飛び60.1mなのだ。追いつける者はまず居ないだろう。そしてキック力に関しても、それまでの歴代仮面ライダーの基本フォームと比較すると破格の威力を誇る49.0tと、「バッタ」の名にふさわしい脚力を持っている。その分、パンチ力は8.4t、つまりキック力の約6分の1とさほど強くないので、接近戦で決め手に欠けることが多い。それをアタッシュカリバーや踏み込みの力で補う形だ。

 

カイタ(とにもかくにも、奴を広い場所に引きずり出さなきゃな……)

そう思った俺は、ベローサにつかみかかり、超ジャンプをして森を脱出、草原に奴をたたきつけた。起き上がったと思ったら、今度は鎌で滅多切りをしてきた。

カイタ(おいおい!むちゃくちゃだろ!)

なんとかアタッシュカリバーで捌こうとしたがさすがに全部を防ぐことは出来ずに、数発くらってしまう。幸いにも、ゼロワンのパワードスーツ「ライズアーキテクター」により、変身前に比べて全てのステータスが飛躍的に向上していることもあって、レベル8の自分のHPでも1割ほどしか減らなかった。

だが、どちらにせよ、さっさと勝負を決めないといけない事に変わりない。

そう思った俺は、アタッシュカリバーで奴の鎌を折ろうと思った。奴が突進してきたと同時に、カリバーで鎌をたたき切った。

カイタ「これで決める…………!」

マギアが身もだえしている隙に、俺はバックステップで後方に下がり、ドライバーに装填しているキーを押し込んだ。

 

【ライジング!インパクト!】

 

ベルトから電子音声が発せられ、足に力がみなぎる。

その勢いにまかせ、マギアに突進し、上空に蹴り上げた。

そのまま自分も飛び上がり、前に一回転して、右足を突き出した。

カイタ「でやあぁぁぁ!」

ゼロワン・ライジングホッパーのライダーキック「ライジングインパクト」がそのままマギアの体を貫通した。

…ここでふと思った。

カイタ(…あれ?これ、このまま爆発するの?)

仮面ライダーに限った話では無いが、特撮怪人のお約束である「撃破後の爆発」。

そんなことになれば街にいるプレイヤーが出てきてしまう。

だが、それは杞憂に終わり、マギアの体はポリゴン状になって消えていった。

カイタ「ふぃ~、これでもう大丈夫…………」

俺はそのまま地面をすべってライダーキックの勢いを殺そうと思った。

 

 

ところが。

 

 

(ズザザザ…………グキっ!)

 

カイタ「ぐえっ!?」

 

勢いを殺しきれずに、足をひねってしまった。

カイタ「どわああああ!」(ゴロゴロゴロ…………ぐしゃっ)

カイタ「い、いてて…………顔から転んだ…もう少し訓練しないとな……」

まあ、マギアを倒せたので、結果オーライとしよう。

俺は起き上がると、キーをドライバーから抜いて変身を解除し、(おそらく腰が抜けたのであろう)木の陰に座り込んでいる彼女に近づき、手を差し伸べた。

サイドテールの女性「あ…………」

カイタ「危なかったな。もう大丈夫だぞ。」

 

(サイドテールの女性side)

サイドテールの女性(私、助かったの?)

「ゼロワン」という物に変身した彼が、ダメージを受けながらも最後は必殺キックでカマキリのモンスターを撃破するのを、私は木に隠れながら見ていた。

彼はキックの後、その勢いのまま地面を滑りながらこちらに来た。…………途中ですっころんでたけど。

立ち上がった彼がベルトからアイテムを抜くと、変身が解けた。

そして、座り込む私に手を差し出した。

サイドテールの女性「あ…………」

カイタ「危なかったな。もう大丈夫だぞ。」

彼は、優しい笑みと共にそう言った。

その声を聴いた瞬間、私はようやく、

サイドテールの女性(ああ、私、本当に助かったんだ。)

と、心底安堵して、彼の手をとった。

 

(カイタside)

カイタ「立てるか?」

サイドテールの女性「う、うん、大丈夫。」

俺は彼女の手を取り、ゆっくり立たせる。

サイドテールの女性「…………あの、危ない所を、ありがとう、ございます。」

カイタ「ん?いや、これくらいどうってことないよ。俺は目の前で助けを求めている人を見たら、なりふり構わず助ける主義なんでね。」

それから、俺がこの森に居た理由を話した。

カイタ「ほんと、いきなり剣劇音が聞こえたときは何事かとおもったよ。とにかく、無事でよかった。」

サイドテールの女性「うん。…………でも、本当に死んじゃうかと思った…本当に……」

思い出して恐怖が込み上げてきたのか、彼女は震えている。ここは慰めるべきだ。

…………だが、

カイタ(…………どうすればいいんだ?)

いかんせん、あまり女性と関わったことの無かった俺は、どうすればよいか分からず困惑していた。

カイタ(…………よし、ならこれで…)

出会って数時間の異性にこれをするのは勇気がいるが、やむを得ない。

 

カイタ「…………」(ギュッ)

サイドテールの女性「あ…………」

カイタ「もう大丈夫。安心して。」

 

俺は彼女をそっと抱きしめ、背中を撫でてあげる。

やがて恐怖が収まった反動か、彼女が、声を上げて泣き出した。

サイドテールの女性「うう…………うわあああん!」

カイタ「…………」

俺は彼女が泣き止むまでそのまま抱きしめることにした。

…………まあ、無理もない。ゲームオーバーは現実の死を意味するこの世界で、さっきまで命の危機に瀕していたんだから。…いや、俺が駆けつけなければ間違いなく死んでいただろう。そう思うとぞっとすると同時に、救えて良かったと心から思った。

 

 

サイドテールの女性「…本当に、ありがとう。」

カイタ「いいっていいって。」

泣き止むと、彼女はお礼を言ってきた。

正直に言うと、異性を抱きしめるのは初めてだったので緊張したが、それで安心してくれたから良かった。

 

カイタ「それじゃ、街に戻ろう。…………え~っと、」

サイドテールの女性「はい。あ、自己紹介がまだでしたね。私は『レンコ』です。」

カイタ「俺は『カイタ』だ。よろしく。」

レンコ「…………あの、1ついいですか。」

カイタ「ん?何だ?……あ、あと、敬語は無しでいいよ。」

レンコ「う、うん…………あなたが変身?してたあの姿はなに?」

…………まあ、そりゃ聞いてくるわな。

俺は一瞬、答えるのをためらった。だが、なぜか(彼女になら話せる。)と思った。

カイタ「………教えるのは構わないけど、突拍子もないぞ…?」

レンコ「それでもいい。教えて。」

カイタ「…………分かった。ただし他言無用でな。」

そう言われ、俺は、ナーヴギアをアーガスと共同開発した飛電インテリジェンスから来たメッセージとその内容、そしてメッセージと共に飛電ゼロワンドライバーという装備が送付されたことを伝えた。なお、俺がこの世界の住人ではなく「転生人」であることは黙っておいた。

一通り話し終えると、

レンコ「…あの飛電インテリジェンスがそんな物作ってたなんて………それに、そのメッセージも…にわかには信じられない…」

カイタ「まあ、それが当然の反応だ。…………あ、そうだ。さっき、俺がこの森に来た理由、話しただろ?」

レンコ「うん、モンスターの種類やポップ率を調査するってやつ?」

カイタ「正確には、昼と夜でその種類やポップ率が違うから、夜の分の調査をしてる。…………その調査の依頼主に、今夜、ここで「マギア」…あの類のモンスターの事だけど、そいつが出現したって、明日伝えなきゃいけないんだ。最悪の場合、注意喚起もしてもらわないと。普通のモンスターならともかく、奴に対抗できるのは、現状で俺1人だけかもしれないからな。」

 

…まあ、ゼロワン本編では、滅亡迅雷.netによって暴走したヒューマギア等に対して、人工知能特別法違反を取り締まる権限を持つ、内閣官房直属の対人工知能特務機関「Artificial Intelligence Military Service」、通称「A.I.M.S.」も、俺が使ってる「ゼロワンシステム」と同じくマギアに対抗する手段を持ってたけどな。このSAOにそんな勢力がある訳ない。

 

カイタ「そんな訳で、君にマギアに襲われた時の証言をしてもらいたいんだけど…頼めるか?」

レンコ「…………」

まあ、そら黙るわな。

何しろ、そいつに襲われて命の危機に瀕していたんだ。もしかしたら思い出すのも怖いほどトラウマになってる可能性だってある。

カイタ「いや、無理にとは言わない。思い出したくない事だってある。元々こちらの問題だしな。」

レンコ「……あの怪物にたいする注意喚起が出るってこと?」

カイタ「へっ?あ、ああ、どういう条件で出現するかとか、詳細はまだわかってないが、出しておく事に越したことはないだろ。」

レンコ「…だったら話す。確かにあれを思い出すのは今でも怖い。でも、私の証言で情報が増えて、他の人たちを守る手助けになるなら、ありのままを伝えたい。」

カイタ「…分かった。」

そう言葉を交わし、俺たちはトールバーナへ戻った。

ちなみに、宿が同じだったのには驚いた。

 

翌日。12/1。

(どうでもいいが)12月に突入した。

カイタ「…………という事があったんだ。」

アルゴ「そうカ。それは大変だったナ。」

俺は、アルゴに昨日の訓練の際に起きた事を報告していた。レンコも襲撃された時の事を事こまやかに説明していた。

カイタ「それで、お前にはこの怪物の情報をガイドに追加してほしい。一応俺のゼロワンシステムで撃破できたとはいえ、この層のモンスターの強さをはるかに超えている。生半可な実力じゃ、死に行くようなものだ。」

アルゴ「そうだな。分かった。すぐに新しいガイドブックを出すよ。もちろん匿名でナ。」

カイタ「そうしてくれると助かる。」

気休め程度にしかならないかも知れないが、これである程度の対策はされるはずだ。

アルゴ「あ、そうだ、カイ坊。」

カイタ「ん?何だ?」

 

アルゴ「(ボソッ)あの子の話では、まるであの怪物を見たことあるかのような動きをしていたというが……なんでだ?」

 

カイタ(っ!?)

アルゴ「それに、思い返してみると、オマエが持っているこのゲームで一品物と思われるその装備のことも、詳細を知っていた…………どうしてダ?」

カイタ「そ、それは…」

アルゴ「まあ、今はほっといておくよ。…………今のところはナ。」

カイタ「…分かった。」

全くアルゴの野郎…………心臓に悪い話吹っ掛けやがって…

レンコ「…あの、何かあった?」

カイタ「…………いや、なんでも無い。」

…あ、あっぶねぇ、聞こえてたかと思った。

アルゴ「それと、こっちが呼び止めた本題なんだが…」

カイタ「相変わらず重要な情報を後回しにするなぁ、お前は!!」

アルゴ「はは、悪かったって。」

カイタ(こいつ、本当に反省してるのか?)

「……はぁ。それで?本題の情報ってのは?」

アルゴ「攻略情報。」

カイタ・レンコ「「!!!!!」」

カイタ「……おい。ってことはまさか…?」

アルゴ「お察しの通りダ。アインクラッド第1層のボス部屋が見つかった。よって攻略会議が行われる。」

カイタ「いつ?どこでだ?」

アルゴ「明日、ここ『トールバーナ』で行われる。」

カイタ「ここでか…」

アルゴ「それで?どうするんだ?」

カイタ「…愚問だな。行くに決まってるだろ。」

アルゴ「言うと思ったヨ。会議はこの中央広場の近くの遺跡で行われるみたいだ。」

カイタ「ああ、分かった。ありがとう。」

アルゴ「じゃあ、はい。」

カイタ「…………何だ?手を差し出して?」

 

アルゴ「10コル。」

 

カイタ「」

 

こいつ、まさかとは思うが……

 

カイタ「おいテメェ、金取るのか…………?」

アルゴ「はは。冗談冗談。それじゃナ~」

 

いやアルゴさん、あんたの場合、冗談が冗談じゃ済まない時があるからな……

 

カイタ「あ、待て…逃げやがったか…」

レンコ「あ、あのぉ………」

あ、やべぇ。彼女の事完全に忘れてた。

カイタ「あ、ああ、スマン。置いてけぼりにしてたな。」

レンコ「あ、ううん。大丈夫。……あの、ボス攻略会議、行くの?」

カイタ「ん、ああ。」

レンコ「…あの、昨日の事で、お礼がしたいのだけれど……」

カイタ「え、いや、いいよいいよ。当然の事をしたまでだし。」

レンコ「それでもなの!……何か、出来る事ないかな?」

カイタ「いや、そう言われてもな……無いものは無……………あ。それじゃあさ、

 

    俺のソードスキルの訓練に付き合ってくれない?」

 

レンコ「…え?それはいいけど、なんで?」

首を傾げる彼女に説明する。

カイタ「いやなに、これまでは、このベルトになれる訓練をしてたから、NPCの武具屋とかの武器を使っての実践はそんなにやってなかったんだよ……」

 

そう。つまるところ、俺はSAO本来の戦闘方法であるはずの「ソードスキル」をゲーム初日に使って以来、ほとんど使っていない。当然、武器スキル熟練度も上がってないので、新しいソードスキルなど習得していない。

現在俺が使えるのは初日に習得した単発斜め斬りの「スラント」、「ファイアスラント」といった、基本技のみだ。

無論、今のソードスキルでもフィールドの雑魚戦は余裕だろう。

だが、キリトによれば、この第1層で「スラント」の他に最低限、単発水平斬り「ホリゾンタル」、単発垂直斬り「バーチカル」を習得した方がいいとのこと。さらに欲を言えば、先ほどの技の2連撃「ホリゾンタル・アーク」、「バーチカル・アーク」も習得した方がなおいいとのことだった。

 

カイタ「という訳でさ、レベリングも兼ねて、訓練に付き合ってくれないか?」

レンコ「ああ、そういう事……」

カイタ「もちろん、お礼はするよ。」

レンコ「え、で、でも…」

まあ、渋るのは分かってた。そこで…

カイタ「…はちみつパン奢るぞ」

レンコ「わ、分かった。」

……少しずるいかもだが、これでいいのだ。(ドヤッ)

 

 

その日の夜。

カイタ「ふい~っ。疲れた…」

レンコ「おつかれさま。」

俺はレンコと共に、周辺のフィールドで経験値、スキル熟練度稼ぎをした。分かっちゃいたが、やはりソロよりも複数人でやると効率がいい。その甲斐あってか、俺は無事にキリトの忠告にあった「ホリゾンタル」、「バーチカル」、「ホリゾンタル・アーク」、「バーチカル・アーク」を習得し、レベルも少し上がった。

そしてそれは、レンコも同じだった。

カイタ「よし、今日はこれで引き上げよう。」

レンコ「うん。分かった。」

俺たちはトールバーナへ向かい歩き出した。

 

ズン…ズン…

 

カイタ「……今なんか聞こえなかったか?」

レンコ「え?」

 

ズズン…ズズン…

 

カイタ「いや、やっぱなんか聞こえる。」

モンスターか…?音からして、かなり図体が大きいやつみたいだが…

 

???「やああぁ!」

ザシュッ!

???「きゃああぁっ!」

 

カイタ・レンコ「「!!!」」

カイタ「ま、まさか……」

レンコ「あっちから聞こえた…!」

俺たちは音がした方へ駆け出した。

レンコ「あ、あそこだ。」

レンコが指さす方を見ると、倒れ伏す女性プレイヤーを庇うように立つ男性プレイヤーがいた。

女性の方はフードをかぶっていて、顔をうかがう事は出来ない。フードが赤色なので、自然と童話の赤ずきんが思い浮かんだ。

だが、

カイタ「…あ、ありゃ?」

もう一人、男性の方は、見覚えのある人物だった。

カイタ「あ、あいつ……キリトか!?」

 

そして、もう一つ。俺を、というか俺たちを驚かせた事があった。

レンコ「う、嘘…………あれって!」

カイタ「げっ!マ、マギア!?あの形態……マンモスマギアか!」

 

 

 

(赤ずきんのプレイヤーside)

私はさっきまで、花の姿をしたモンスター、リトル・ネペンテスの群れと戦っていた。この世界から一刻も早く脱出するために、寝る間も惜しんでレベリングを続けた。それ以外の事は全て無駄な事だと考えている。なぜなら、この世界で一日が過ぎる度に、現実での一日が消えるのだから。

だから、私は無理を承知で、三日三晩、休まずにずっとソロでレベリングをしていた。

でも、今回は違った。

 

「そんな無茶なプレイをしてたら、死ぬぞ。」

 

私の前に、現れた男性プレイヤーはそう言って、私が捌き切れなかったリトル・ネペンテスを相手取っていた。

別に助けてもらうつもりは無かったけど、効率が上がったのは確かだ。

とりあえず、後でお礼だけは言っておこう。

 

ひとまず群れが居なくなり、ひと段落した。

私は、そばにいる彼にお礼を言ってさっさと次の狩場に行こうとした。

 

すると。

 

「…あれは、村人か?」

彼がそう言った。

その方向を見ると、確かに村人のNPCが木の陰からこっちを見ていた。

…………こっちに来る。

 

『滅亡迅雷.netに接続……』

 

…今なんて言ったの?それに、取り出してるアレは何?

 

【マンモス…!】

 

「…待て、そのアイテム、まさか!お、おい、お前、早くそいつから離れろっ!」

 

彼の方を見ると、必死の形相でこちらに来いと手招きしていた。

 

赤ずきんのプレイヤー(ただの村人でしょ?なんでそんなに……)

 

そして再び村人に向き合うと、

 

【ゼツメライズ…!】

 

そこに村人はいなかった。代わりに、マンモスのようなモンスターがいた。

 

赤ずきんのプレイヤー「…………ぇ?」

 

私はあまりの出来事に言葉を失った。

 

【ゼツメツ!ノヴァ…!】

 

目の前のマンモスが突進してくるなかで、私はようやく、最近新たに出現したモンスターの事をガイドブックで読んだ事を思い出した。

だが、気が付くと、私は宙に打ち上げられていた。

 

ドスン!

 

そのまま地面に落下した。

体が動かない。ふと自分のHPゲージを見てみると、残り1ドットで踏みとどまっていた。

しかし、それは裏を返せば、さっきの一撃で死んでいたこともあり得たのだ。

さっきのモンスターが再びこっちに狙いを定めた。

一緒にいた彼が猛スピードで私の前に立ちふさがる。

だが、彼が加わったところで、焼石に水ということは(おそらく彼も)よく分かっている。

それでも、私は諦めたくなかった。

はじまりの街で腐っていくくらいなら、最後まで自分のままでいたい。例えモンスターにやられても、この世界には負けたくない…!

 

【ゼツメツ!ノヴァ…!】

 

再びモンスターが突進してきた。

だが、私は倒れたまま体が動かなかった。

「クソッ、今あれを喰らったら………!」

???(…動いて。私の体、動いてぇぇぇ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ジャンプ!】

【(ガシュン)Progrise key confirmed. Ready to utilize.】

【グラスホッパーズ、アビリティ!】

【ライジング!カバンストラッシュ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「え?」」

 

 

 

 

 

「全く、動けない女性を狙うたぁ、礼儀がなっちゃいねぇな。」

 

 

 

 

 

だ、誰?こ、この人は?

だが、突然意識が薄れてきた。長時間ダンジョンに潜っていたツケが回って来たのだろう。

私は、困惑と共に、不思議な安心感を感じながらゆっくり意識を手放した。

意識を手放す直前、黄色い姿と赤い複眼がうっすらと見えた。

 

 

 

(カイタside)

カイタ「絶対ここから動くなよ!」

レンコ「う、うん!」

 

【ゼロワンドライバー!】

【ジャンプ!】

【オーソライズ!】

 

カイタ「変身!」

 

【プログライズ!】

【ライジングホッパー!】

 

モンスターがキリト達の方へ突進するのを見た俺は、すぐさまゼロワンに変身し、2人の方へ向かった。その際に、アタッシュカリバーを展開、キーを装填し、強化必殺技の「ライジングカバンストラッシュ」を発動した。

もっとも、本来のカバンストラッシュよりも一工夫加えている。攻撃を与える際に、ソードスキルの「バーチカル・アーク」のモーションを作動させたのだ。余談だが、俺はこれを勝手に、「バーチカル・ツインストラッシュ」と呼ぶことにしている。

話を戻そう。

ともかく、俺は技をマギアに命中させ、ノックバックさせることに成功した。

カイタ「全く、動けない女性を狙うたぁ、礼儀がなっちゃいねぇな。」

後ろを見ると、キリトは突然の乱入者に驚き、もう一人は…………なぜか気絶していた。

……俺、なにかやったんでせうか?(←お前のせいだ)

カイタ「…………え、え~っと、とりあえず大丈夫か?キリト。」

キリト「な、何で俺の名前を!?…………いや、その声…まさかお前、カイタか!?」

カイタ「ああ。久しぶりだな。キリト。」

キリト「…で、でも、お前のその姿は?」

カイタ「話は後でする。とりあえず選手交代だ。後ろの木の陰に俺の仲間がいる、その人を連れてそこまで下がってろ!」

キリト「わ、分かった!気をつけろよ!」

キリトがもう一人のプレイヤーを連れて、レンコがいる木の陰に隠れた。

さて、ここからは俺の仕事だ。

 

カイタ「さて、マンモスは原始時代みてぇに焼き肉にしてやるよ……」

 

【ファイヤー!】

【オーソライズ!】

【プログライズ!】

【Gigant flare!フレイミングタイガー!】

【Explosive power of 100 bombs.(威力は爆弾100発分)】

 

俺は奴を丸焼きにしてやろうと思い、ゼロワンの亜種形態、ハイブリッドライズの「フレイミングタイガー」にフォームチェンジした。

カイタ(よし、こいつも速攻で片付けよう。)

そう思い、俺は右拳を握りしめ、反対の手でアタッシュカリバーを握った。瞬間、奴に飛び掛かり、炎をまとったパンチや斬撃、回し蹴りのラッシュをお見舞いした。

そして、奴のHPが半分になった。

 

カイタ「焼き加減はどれが好みだ?レア?ミディアム?それともウェルダンか?」

 

俺はドライバーのキーを押し込んだ。

 

【フレイミング!インパクト!】

 

俺は腰を落として両手を右腰のそばで構え、あるポーズを繰り出した。

 

カイタ「ご~く~ね~つ~!……波ぁぁぁ!!!!」

 

掛け声を上げた瞬間、両手を前に突き出し、極太の火炎放射を放った。

そのビームにも似た一撃は、マギアに直撃した。

 

と思ったら。

 

カイタ「…………………へぇっ?」

 

あろうことか、奴がビームを鼻で吸い込んで吸収した。

そして、そのままこちらに向かって噴射してきた。

 

カイタ「」

 

カイタ(………あるぇぇ?何かこの展開、ど~っかで見たような……………あ、)

ふと思い出した。

カイタ(これ、ゼロワン本編と同じ展開だぁ。)

…………どうやら、丸焼きになるのはこっちの様だ。

 

カイタ「…ってこらっ~!火炎放射なんて馬鹿な真似はよしなさい!そうだ!やめたら勲章をアッチィィィィィィィィッッッッ!!!!」 

 

 

 

 

 

 

(キリトside)

 

俺は、一緒に居たプレイヤーを背負い、そばの木に隠れようとした。

レンコ「あ、こっちです!……あの、大丈夫ですか?」

キリト「ああ、俺は大丈夫だ。えっと、君は…」

レンコ「あ、ごめんなさい。私は「レンコ」です。今は訳あって彼と一緒に行動しています。」

キリト「レンコか。よろしく。俺はキリトだ。……それで、カイタのあの姿は…?」

レンコ「私もよく分からないんです。でも、彼は自分の事を「ゼロワン」って言ってました。」

キリト「ゼロワン、か…あのモンスター、倒せるのか?」

レンコ「一応、倒せるみたいです。現に、私が襲われたときは、あっさり倒してましたから。」

キリト「襲われた?…それじゃあ、今日の午後に更新されたガイドブックにあった証言って、君のか?」

レンコ「はい…………」

実は今日の午後、新しい攻略ガイドブックが道具屋で配布された。それによると、街の外れの森に、とてつもなく強いモンスターが出現するという事だった。いつもの俺ならば、すぐさま討伐に行こうと思うが、そのモンスターは現状のプレイヤーが戦える強さを遥かに上回っており、しかも対策がはっきりしていない為、むやみな交戦は避けるようにと書かれていた。

そこまで強いのかと訝しんだが、今の光景を見て納得した。敵が使っているアイテムと、カイタが使っているアイテムはどことなく似ている。確かに、ここは彼に任せた方が早く片付きそうだ。

 

カイタ「さて、マンモスは原始時代みてぇに焼き肉にしてやるよ……」

【ファイヤー!】

【オーソライズ!】

【プログライズ!】

【Gigant flare!フレイミングタイガー!】

【Explosive power of 100 bombs.(威力は爆弾100発分)】

 

いきなり上空からトラが降ってきて、カイタと融合した。次の瞬間、カイタのバッタのような見た目が一変、真紅のトラの様になった。炎をまとったカイタが、猛烈なラッシュを繰り出した。

パンチ、斬撃、またパンチ。そして回し蹴り。恐ろしいスピードで攻撃を叩き込んでいく。

そうこうする内に、奴の残存HPが半分を切った。

 

カイタ「焼き加減はどれが好みだ?レア?ミディアム?それともウェルダンか?」

 

おそらく奴を丸焼きにしようとしているんだろう。マンモスの丸焼きか…食べてみたいな。

………いやいや、何考えてるんだ。

そんなくだらない事を考えてると、カイタが後ろに飛び、ベルトに装填したアイテムを押し込んだ。

 

【フレイミング!インパクト!】

 

電子音声が鳴り響き、カイタが構えをとった。……何かどこかで見たことあるな。

 

カイタ「ご~く~ね~つ~!……波ぁぁぁ!!!!」

 

…うん、やっぱりどこかで見たことあるぞ。

ともかく、カイタの必殺はモンスターに命中した。

 

かに見えた。

キリト・レンコ「「えっ?」」

何と、あいつがビームを吸収して、そのまま打ち返してきたのだ。

キリト「…これ、まずいんじゃ。」

カイタが何かわめいている。だが、抵抗むなしく、

カイタ「アッチィィィィィィィィッッッッ!!!!」

炎に飲まれていった。

キリト「カイタ!!」

俺は彼のもとに行こうと思ったが、不運にもモンスターがこちらに狙いを定めた。

レンコ「ひっ!」

キリト「…くっ!」

やるしかないのか。

カイタの安否が分からない以上、こちらはあのモンスターに対抗出来うるのが俺しかいない。

後ろでは一人が今だに気絶中、もう一人はおびえていた。

キリト(せめて後ろの二人だけでも守りぬく!)

俺はそのまま、ホリゾンタルの構えをとった。

だが、いつまで経っても突進してこない。

 

パキパキパキ…

 

キリト「…ん?」

よく見ると、あのマンモスが足元から凍り付いていた。

こんな芸当ができるのは彼しかいない。

 

カイタ「こぉぉぉぉんの野郎ぉぉぉぉ!!!」

 

燃え上っていた場所から、先ほどの姿と打って変わり、シアンのカラーリングの、シロクマの様な姿をしたカイタ…いや、ゼロワンが飛び込んできた。

 

 

 

(カイタside)

 

カイタ「アッチィィィィィィィィッッッッ!!!!」

 

は!?なにこれ!!冗談抜きで熱いんですが!?

フレイミングタイガーって耐熱があるんじゃないの!?

…あ、そういえばゼロワン本編で初変身した時も、なんか暑がってたな。

……………いやいや!呑気な事言ってる場合じゃねぇ!このままだとマジでお陀仏だぞ!

どうする?どうする!?

カイタ(…とりあえず緊急冷却だ!)

そう思い、俺は「フリージングベアープログライズキー」を実体化させた。

 

【ブリザード!】

【オーソライズ!】

【プログライズ!】

【Attention freeze!フリージングベアー!】

【Fierce breath as cold as arctic winds.(荒ぶる息吹は極地の寒波。)】

 

カイタ「あっぶねぇ~、もう少しで火傷するところだったぞ!」

フリージングベアーの手の平にあるフリーズユニット「ポーラーフリーザー」で、炎上しかけた自分の体に凍結材を噴射し、炎を鎮火した。さらに脛部装甲「ベアーグリーブ」に内蔵された、戦闘により上昇した体温の冷却、筋肉痛・疲労軽減、止血などのケアを行うアイシング装置により、わずかながら体力も回復した。

 

かいた「お~のれぇ~!マンモスの分際で俺をコケにしやがって!もう許さん、マジで許さん!」

 

よく見ると、マギアがキリト達の方にターゲットを切り替え、今にも突撃しようとしている。

俺は焦りと共に、必殺をいとも簡単に攻略された悔しさに身を任せ、装填しているキーを半ば叩き込むように押し込んだ。

 

【フリージング!インパクト!】

 

俺は冷気をまとった拳を地面に叩きつけた。

そこから冷気が地面を伝わり、マギアが足元から凍り付いていく。

 

カイタ「こぉぉぉぉんの野郎ぉぉぉぉ!!!」

 

完全に凍り付いたのを見計らって、俺は奴に向かって突進、指先についている「ベアークロー」で切り裂いて木っ端みじんにした。

 

カイタ「ぜぇ…ぜぇ…な、何とか倒せた…」

俺は変身を解除し、ふらふらになりながらキリト達のもとへ行った。

 

(キリトside)

凍結させたモンスターを木っ端微塵にしたカイタがよろめきながらこちらに来る。

カイタ「キ、キリト…だ、大丈夫か…?」

息も絶え絶えにカイタが問いかける。

キリト「あ、ああ、俺は平気だ。ほかの2人も同様だ。お前は大丈夫…な訳ないか。」

カイタ「ああ、さすがに死ぬかと思った…ところで、そのもう一人の女性はなんで気絶したんだ?」

キリト「いや、あのモンスターの突進で高々と上空に打ち上げられたんだよ。下手をすれば死んでいてもおかしくなかった。元々、無茶なレベリングで消耗しているように見えたからな。なんか、闇雲に戦っていたというか…」

カイタ「そうだったのか。死ななかったのは、不幸中の幸いといった所だな…」

彼の言葉を聞きながら、俺は異形の戦士に変身してモンスターと戦った目の前の彼をまじまじと見つめた。その中でも、ひと際目を引くのが、彼の腰に巻かれているベルトだ。俺はそれを、デスゲームが始まった初日に見ている。

キリト「そのベルト…カイタ、それが飛電インテリジェンスから託されたものなのか?」

カイタ「…ああ。ゼロワンシステム。あの怪物、マギアに対抗するために飛電が開発したシステムだ。」

キリト「そうか。」

カイタ「あ、キリト、この事は…」

キリト「ああ、分かってる。他言無用だろ。」

カイタ「そうしてくれると助かる。」

キリト「何はともあれ、助けてくれてありがとう。本当に助かったぜ。」

カイタ「いや、いいって事よ。…しっかし、攻略会議前日だってのに、ものすごい疲れたぜ…」

キリト「お前も参加するのか?」

カイタ「当たり前だ。無茶はしないように善処するが、一刻も早くこのゲームをクリアしないといけないからな。そういうキリトだって参加するだろ?」

キリト「そうだな。…ベータの時よりペースが落ちてるとは言え、基本的には同じ仕様なんだ。30分もあれば余裕で倒せるはずだ。」

カイタ「へえ、随分と大きくでたな。じゃあ、ベータテスター様のお手並みをじっくり拝見しましょうかね。」

キリト「あんまり期待はするなよ?お前こそ、その装備はどうするんだ?」

カイタ「ゲームバランスをぶっ壊していいってんなら遠慮なく使うぜ?」

カイタが不適に笑いながらそう言う。確かに、そんな装備出されたらいやでもバランスが狂う。

キリト「はは、そりゃ勘弁だ。」

俺は苦笑しながら答えた。

カイタ「…じゃ、キリト、また明日、会議で。」

キリト「…ああ、またな。」

そう言って俺たちは別れた。

…さて、この気絶したプレイヤーを送り届けないと。

そう思った瞬間。

???「…………ん、んんぅ…」

キリト「お、気が付いたか。」

???「…っ!あのモンスターは!?」

キリト「安心しろ。誰かが倒してくれたよ。……顔は分からなかったけどな。」

俺は、「秘密にしてほしい」というカイタの意図をくみ取り、誤魔化すことにした。

???「……そう。」

キリト「お、おい、まだあまり動いたら…」

???「問題ない。少し休んでただけ。」

そう言いつつも、少しふらつきながら彼女は去っていく。

でも、その言葉から発せられる威圧的な何かに俺は、ただ立ちすくむ事しかできなかった。

 

 

(カイタside)

翌日、12月2日。

第1層攻略会議当日。

俺は起きて装備を整えると、すぐに会場となっている古代遺跡へ向かった。

 

 

向かったのだが………

 

 

カイタ「………なぜついてくるんでせうか?」

レンコ「………」

 

なんとレンコが同行すると言い張って聞かないのだ。

レンコ「…私も強くなりたいから。あなたのように。そして、いつかあなたの背中を守れるように。」

カイタ「…心意気は立派だが………本気なんだな?」

レンコ「(こくん)」

カイタ「……俺のあの装備を見ても、同じことが言えるのか?今後、誰かに狙われるかも知れないんだぞ?」

レンコ「………(こくん)」

カイタ「………分かった。なら、何も言わない。…じゃあ、パーティー結成しておこうか。」

レンコ「うん。分かった。」

道中、そんなやり取りがあり、レンコと正式にパーティーを組んだ。

 

━そして。

カイタ「ここか。」

会場には、すでに推定40、50人のプレイヤーが集まっていた。当然、その中にはキリトの姿も見られた。…その近くには昨日の赤ずきんのプレイヤーがいた。

俺とレンコは、彼らの近くに陣取った。

 

しばらくして。

???「は~い!それじゃあ、そろそろ始めさせてもらいます!」

 

 

壇上に立ったこの男の発言で、第1層攻略会議が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 




いかかだったでしょうか。
戦闘シーン難しい…………
お気に入り登録していただいた、シェルドさん、colreonisさん、178さん、Almazさん、ありがとうございます!
第5話にして、お気に入り登録者が2桁を越えました!
これからも頑張って書いていきます!(←長期間更新空けた奴の戯言です)
なお、感想設定を「非ログインユーザーからも受け付ける」に変更しました。
なので、評価、および感想を書いていただけると、主が昇天するほど喜びます。
予告通り、次回から第1層フロアボス編に入ります。
更新がミジンコより低速ですが、何卒宜しくお願い致します。
それでは、また。



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Ep.6 コノ迷宮に集いし戦士達

第6話です。
先日、映画のプログレッシブを公開初日に見てきました。とにかく凄かった。それしか言えない。
あと、今回また原作改変が入ります。

どうでもいいですが……暇になって執筆時間が出来た時に限ってやる気が出ないのは、どうしてなんでしょうね?





(カイタside)

 

12月2日、第1層攻略会議が始まった。

俺たちは今、その会議に出席し、周りから距離をとって座っている。

 

???「それじゃあ、そろそろ始めさせてもらいまーす!」

 

1番前で手を叩き、大きな声を出しているのは、高い背に青いロングヘアー、盾と剣を背負っている剣士だった。

 

???「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!まずは簡単な自己紹介から!俺の名はディアベル!職業は気持ち的に、ナイトやってます!」

 

「ジョブシステムなんてねーだろー!」等のツッコミが飛び交う。

でも、俺はディアベルという男の、巧みな話術に感心していた。

清聴者の心を掴み、発言できる雰囲気を作らなければ、進む会議も進まなくなってしまう。

そういう点で言えば、この男は、元の世界では人前で何かをしゃべることが得意だったのかも知れないと、俺は思った。

そんな中、ディアベルの顔が真剣な面持ちになり、こう告げた。

 

ディアベル「…昨日、俺たちのパーティーが、あの塔の最上階でボスの部屋を発見した!」

 

その一言に周囲のプレイヤーもその顔色を変える。

 

ディアベル「俺たちはボスを倒し、この第2層に到達して、このデスゲームもいつかはクリアできるってことを、はじまりの街で待っている他のプレイヤーに伝えなくてはならない!それこそが!今ここにいる俺たちの義務なんだ!そうだろ!みんな!」

 

(パチパチパチ…)

 

周りから拍手が起こる。

 

ディアベル「よし!それじゃあ、早速攻略会議を始めさせてもらおうと思う!まずは6人の『パーティー』を組んでみてくれ!」

 

周りを見ると、もうすでにパーティーを組んでいるところが殆どだった。

だが、俺は動かずじっとしていた。

 

レンコ「えーっと…どうしようか?」

レンコが俺に問いかけた。

 

カイタ「いや、大丈夫だ。この人数じゃ、どのみち余りは出る事になる。」

 

レンコ「どういう事?」

 

カイタ「今この会議に出席しているのが、46人。そこから6人パーティーを組もうと思ったら、パーティーが7つで42人。余りは4人。それに、見たところ、そもそもパーティーで会議に参加しているところが多かった。だから、どのみち俺たちみたいな少数があぶれていたよ。」

 

レンコ「あ、あぶれるって…他の言い方無かったの…?」

 

カイタ「そ、そう言われても、事実だからしょうがないだろ。」

 

レンコ「あれ?4人って言ってたけど、2人は私たちだとして、残りの2人は?」

 

カイタ「おそらく、彼らだ。」

俺が目を向けた先には、キリトと、昨日の赤ずきんのプレイヤーがいた。

どうやら、あの2人でパーティーを組むようだ。

 

レンコ「それじゃあ、私たちも二人でパーティー組もっか。」

 

カイタ「…へっ?」

 

レンコ「え?」

…まさか、この娘。

 

カイタ「…会議に行く前に組んだだろ?」

 

レンコ「…………えぇっ!?いつの間に!?」

やっぱ分かってなかったか。

 

カイタ「おいおい…ウィンドウ見てなかったのかよ…」

 

レンコ「…あ、あまり見てなかった…」

 

カイタ「全く…ちゃんとウィンドウ見てから操作しろよ…その内下手すると、変な条件飲まされて大損するぞ?ましてや君はオンラインゲームのニュービーなんだから、変に脅されたりしたら取り返しのつかない事になるぞ…?まあ、俺もオンラインゲームは初めてだから、人の事は言えねえけどな。」

 

レンコ「うう…き、気を付けますぅ…」

…この娘、意外とおっちょこちょいなのか?なんか心配になってきたぞ。

 

カイタ(そうだ。キリトにも少し話をしておこう。)

そう思った俺はレンコを連れ、キリト達のそばに移動した。

カイタ「よう。キリト。」

 

キリト「ああ、カイタか。…ひょっとして、お前たちもあぶれたのか?」

 

カイタ「おうよ。まあ、人数的に、あぶれそうにはなってたけどな。だから俺たち2人でパーティーを組んだ。」

 

キリト「そうか。」

キリト達のそばに2人で座り、会話を交わす中、赤ずきんのプレイヤーがこちらをちらちら見ている事に俺は気づいていた。

 

 

ディアベル「よーし!そろそろ組みおわったかなー?」

しばらくして、ディアベルが全体の雰囲気を見計らい、声をかけた。

 

ディアベル「じゃあ、これかr」

 

「ちょっと待ってんか~!?」

 

カイタ「んあ?」

キリト「ん?」

 

背後から突然、関西弁の叫び声が聞こえた。俺たちを含めた全員がそちらへ視線を向けた。

逆光になっていてよく分からないが、イガイガ頭の誰かが会議場の階段の上に立っていた。

その人物は、階段を一段ずつ飛び降り、ディアベルの斜め前に降りたった。

 

「ワイはキバオウってんや。ボスと戦う前に、1つ言わせてもらいたいことがある。」

 

キバオウと名乗る男に皆の視線が集まる。

 

キバオウ「こん中に!今まで死んでいった2000人に詫び入れなアカン奴がおるはずや!」

 

カイタ(な、んだと…!?一体誰が?なんでだ?)

 

ディアベルが続ける。

ディアベル「キバオウさん、君の言う『ヤツら』とはつまり、元βテスターの人たちの事…かな?」

 

キバオウ「そや!決まってるやないか!奴らはゲームが始まった日にビギナーを見捨てたばかりか、情報を隠して自分たちだけ強くなった!だからそいつらに、謝罪をしてもらうんと同時に、ため込んだアイテムを全部吐き出してもらうんや!」

 

キバオウのその発言に、周りの人たちは、空気が重くなり、何も言い返せずにいた。

横を見ると、件の元βテスターの一人であるキリトが辛そうな顔をしていた。

 

それを見た途端、

 

「ふざけんじゃねえぞ…」

 

気づけば俺は、重苦しい声でそう呟いていた。

 

キバオウ「あぁん!?誰や!今『ふざけるな』とか言った奴は!出てこいや!」

 

レンコ「ちょ、ちょっと…!」

 

カイタ「レンコ、大丈夫。ちょっと待ってろ。キリト、レンコを頼む。」

 

キリト「お、おい、カイタ…!」

 

俺はゆっくり階段を降り、キバオウの前に立った。

 

キバオウ「なんやお前!ワイに文句がある上に、女連れで来るとはいい度胸やな!?」

 

…さすがにカチンと来た。前に出た俺を責めるのはまだいい。だが、今この話題に無関係なレンコを巻き込むのは許さない。

俺は一瞬でキバオウに詰め寄った。

 

カイタ「…おい、俺を責めるのはいいが、俺のパーティーメンバーを責めるのは頂けねえな。」

 

余りに速く詰め寄ったので、キバオウが驚いている。

 

キバオウ「い、今はそんなことどうでもいいんや!とにかく、お前はワイのどこに文句があるんや!まあ、文句があるってことは、どうせお前も元βテスターなんやろ!」

 

カイタ「…はぁ。あのな、あいにくだが俺はβテスターはおろか、このゲームが初めてのオンラインゲームなんだよ!それを自分の意見だけで判断してんじゃねえぞ!」

 

キバオウ「な、なんやと!?」

 

カイタ「本題に入る。…さっきから聞いてりゃ、元βテスターがどうの、謝罪や弁償がどうのって、よくもまあ、そんな下らん理由でしゃしゃり出てきたもんやな!」

 

…おっと、つい関西弁が出てしまった。まあ、いいか。

 

キバオウ「く、くだらんやと!?」

 

カイタ「ああ、全くもって笑止千万や!このゲームに、先に始めたとか後に始めたとか、そんなの関係無いやろ!先に死んでいった2000人のプレイヤー達だって、死にたくて死んだわけじゃない!この世界から生きて帰ろう、なんとかしよう、そう思ったからはじまりの街から出てモンスターと戦ったんじゃねぇのか!?…そりゃ、死ぬのは誰だって怖いさ。でもよ、だからって、生きる事に必死になっちゃいけないって事はねぇだろ!その意思はβテスターだろうが、ビギナーだろうが同じはずだ!」

 

キバオウ「そ、そやかて、βテスターの奴らを野放しにするっちゅうんか!?奴らに弁償させな、死んでいった皆が浮かばれへんやろ…!」

 

カイタ「お前は、βテスターに謝罪と弁償をさせる事で、これまでに死んだ人達の事を慮り、βテスターは悪者、自分たちの様な他のプレイヤーは正しいと認めさせようとしたのかも知れない…!だがな、こんな事言ってるやつがいるんだ。『見返りを期待したら、それは正義とは言わない。』ってな。」

 

キバオウ「…ッ!」

 

カイタ「それに、そもそもの話、βテスターは俺たちみたいなビギナーを見捨ててはいない!…この本、お前ももらったろ?」

 

そう言って俺が取り出したのは、道具屋で配布しているガイドブックだ。このフロアの基本的な情報の他に、昨日配布された最新版のそれは、匿名の目撃者(レンコの事だが)の証言に基づいた新しいモンスター、マギアの情報等が載っている。

 

カイタ「この本、作ったんは誰か分かるか?」

 

キバオウ「…誰や」

 

カイタ「聞いて驚け、元βテスター達だ。」

 

キバオウ「なっ!?」

 

周囲もどよめきを挙げている。

 

カイタ「情報は独占されてなんかいない。全員が平等に手に入れる事が出来たんや!きっとβテスターの人たちだって、ゲームをクリアしたいと思ってる!だからこそ、情報を公開した!この世界から生きて帰りたい、先にこのゲームを経験している自分たちの知識を役立てたい、そういう思いの結晶が、このガイドブック、そして、この攻略会議なんや!」

 

キバオウ「………」

 

カイタ「でもお前は今まさに、その思いを踏みにじろうとしている!今この場で一番自分勝手なんは、βテスターなんかじゃない、キバオウ、お前やろ!お前がやってんのは、皆の努力を無に帰すって事やぞ!そこまでして自分の安全を確保したいってか!?それじゃあ、お前はβテスター、いや、βテスターに限らない!他のプレイヤーが目の前で死にかけてるときに、そのまま見殺しにするのか!?少なくとも俺には、そんな真似は絶対に出来ない!目の前で助けを求めているのに、助けられなかったら、俺だったら一生…」

 

???「おい、その辺にしてやれ。」

 

カイタ「後悔する…へっ?」

 

ハッと我に返った。後ろを見ると、背中に斧を背負った、屈強な体格をした外人顔の黒人が俺の肩に手を置いて俺を制していた。

 

???「落ち着いて目の前の奴を見てみろ。もう言い返せなくなってるぞ。」

 

キバオウ「………」

 

確かにキバオウは、返す言葉が無いのか黙り込んでいた。

 

カイタ「あ、ああ…済まない、つい…止めどころが分からなくて…」

 

???「まあ、大丈夫だ。周りを見てみろ。少なくとも、お前の言葉を聞いていた連中は全員お前の意見に賛成の様だぜ?」

 

キバオウ「…ふんっ!」

 

おそらく、その場の雰囲気にいたたまれなくなったのだろう。キバオウは鼻息を荒く吹き、俺から顔をそらし最前列の列に座り込んだ。

 

???「さっ、お前も戻れ。この会議の本題が始まるぞ。」

 

カイタ「そうだな。すまない、ありがとう。えっと…」

 

???「エギルでいい。お前には興味が沸いた。あとでまた話そう。」

 

カイタ「そっか。分かったぜ、エギル。また後で。」

 

そう言って俺は、レンコ達が待つ席に戻った。

 

カイタ「…悪い、急に動いて。」

 

レンコ「う、ううん…大丈夫…」

 

ディアベル「それじゃあ、会議を再開する!…先ほど、彼が言っていた例のガイドブックの最新版が配布された!それによると…」

 

その後も会議は進み、ボスの詳細情報等が語られた。

ボスの名は「イルファング・ザ・コボルト・ロード」。そして、ボスの取り巻き「ルイン・コボルト・センチネル」がいる。武器は斧とバックラー、そして4段あるHPゲージの最期の一段がレッドゾーンになると、曲刀カテゴリーの「タルワール」という武器に変わり、攻撃パターンが変わるとの事だった。

 

ディアベル「攻略会議は以上だ!最後に、アイテム分配についてだが、コルは全員で自動的に均等に割る。経験値はモンスターを倒したパーティーの物。アイテムはゲットした人の物とする。異存はないかな?」

 

異を唱える人は居なかった。

 

ディアベル「よし!では、それぞれの準備もあると思うので、出発は明日の午前10時30分とする!では、各自解散!」

 

その言葉を最後に会議は終了した。

 

キリト「…カイタ」

 

カイタ「おろ?どうした、キリト?」

 

キリト「…さっきのβテスターの話だが…ありがとな。俺、怖くて…何も言えなかった。」

 

カイタ「よせやい。俺はただ、思った事を言っただけだ。」

 

キリト「というか、お前、関西弁話すことあるんだな。」

 

カイタ「ま、まあ…一時、関西地方に住んでたからな。その名残が、つい…」

 

そう、俺は中学、高校の青春時代を、関西で過ごしていた。

 

大学に進学するにあたって、関東地方に出てきたのだが、そこで事故にあい、この世界へ転生したという次第だ。

 

キリト「じゃあ、俺はこれで。」

 

カイタ「おう…って、あれ?お前と一緒に居たあのプレイヤーは?」

 

キリト「ああ、彼女なら会議が終わった途端、さっさと街に戻っていったよ。明日の段取りとか説明しようと思ったのに…」

 

カイタ「あれま。まあ、出発までに伝えれりゃいいだろ。」

 

レンコ「…ん?『彼女』?あの人、女性プレイヤーなんですか?」

 

キリト「いや、まだ確実じゃないんだ。あの声と、プレイヤーネームから推測しただけさ。」

 

カイタ「そっか。まあ、分かった。じゃあ、また後でな。」

 

キリト「おう。」

 

そう言って、キリトは街に戻っていった。

 

レンコ「じゃあ、私たちも一度街に戻ろうか。」

 

カイタ「あ、ちょっと、待ってくれ。実はこの後…」

 

エギル「よお、さっきぶりだな。」

 

カイタ「お、え~っと、エギル、だっけか。悪い、わざわざここまで来させて。」

 

エギル「いや、気にしなくていい。」

 

先ほど、周りが見えなくなっていた俺を止めてくれたプレイヤー、エギルが話しかけてきた。

 

カイタ「あ、まだ自己紹介してなかったな。俺はカイタだ。」

 

レンコ「わ、私は、カイタのパーティーメンバーのレンコです。」

 

エギル「はっはっ、そんなにかしこまるな。これから一緒に戦うんだ。今回に限らず、これからも仲良くしてくれ。」

 

カイタ「おう!改めて、よろしくな!エギル!」

 

俺はエギルと、固い握手を交わした。

 

エギル「そうだ。さっきは助かったぜ。実は俺も発言しようとしたんだが…お前のおかげで、俺が出るまでもなかったな。お前の演説には感動した。改めて礼を言わせてくれ。」

 

カイタ「い、いや…そんなつもりで言ったわけじゃないんだ…ただ思った事を言っただけで…」

 

エギル「そう謙遜するな。さっきも言ったが俺を含め、あの会場に居た他のプレイヤーはお前の意見に賛成している。自信を持て。…おっと、すまない。俺のパーティーメンバーが呼んでる。じゃあ、明日は頼むぜ。」

 

カイタ「分かった。またな。」

 

そういって、エギルは仲間の元へ向かった。

 

レンコ「…さて、これからどうする?」

 

カイタ「ポーションが足りないから、それを補充しようと思ってる。

 

レンコ「うん、分かっt

 

(ぐぅ~)

 

レンコ「…ふふっ。」

 

カイタ「……と、とりあえず飯にしようぜ?」

 

レンコ「そうだね。何にする?」

 

カイタ「まあ、朝の内に買ったコイツがあるけど…」

 

レンコ「は、はちみつパン!?じゃあ、それにしよう!!」

 

カイタ「お、おう…というか、てっきりあのはちみつパンしか食べないかと思ったけど…」

 

レンコ「そ、そこまでじゃないよ!?」

 

カイタ「…必死に否定するところが怪しいな。」

 

レンコ「むうぅ…!」

 

なぜか真っ赤な顔で頬を膨らませながら睨まれた。

カイタ(あ、あれ?怒らせた?)

 

レンコ「そんな事言うならあなたの分も食べようかな…」

 

カイタ「すみませんでしたごめんなさいです勘弁してくださいませ」

 

俺は彼女に向かって、それはそれは美しい土下座を慣行した。

 

レンコ「ふふっ、冗談だよ。」

 

カイタ「いや、君の場合冗談じゃない気が…」

 

レンコ「な に か い っ た ?」

 

カイタ「何でも無いですすみませんでしたお慈悲をくださいませ」

 

温厚な人ほど怒ると怖いとは、よく言ったものだ。

…何か男としての尊厳が消えていってる気がするが、気にしないでおこう。

 

???「ふふっ…」

 

カイタ・レンコ「「?」」

 

???「あ、笑ったりしてごめんなさい。あなた達がにぎやかで、なんだか楽しくなっちゃって…」

 

カイタ「今の会話のどこに楽しさを感じたんでせうか…」

 

???「ごめんなさい。なんていうのかな、私が言いたいのは、モンスターやクエストの事じゃなくて、なんてことの無い普通のお話ができるっていいなぁって事で…」

 

レンコ「…あれ?あなた、いつもここにいるよね?ずっと一人なの?」

 

???「ううん、リアルの仲間と一緒にギルドを組んで行動しているんです。…今は別行動ですけど。…あの、少しお話してもいいですか。私たちの間で、話題になっているんですよ?特にあなたが。」

 

そういって彼女は、レンコの方を向いた。

 

レンコ「…えっ?わ、私!?」

 

???「はい。この第1層でとても頑張っている女性プレイヤーがいるって噂で聞いたんです。私、すごいなぁって思って。…私、戦うのが怖いんです。モンスターが来ると、いつも足がすくんで皆に迷惑をかけるんです。だから、戦いになれるまでは、相手と距離をとれる両手槍を使った方がいいねってなって、他の皆は私の武器を買うお金を稼ぎに行ってるんです。…でも、そもそもの話、私が怖がりじゃなかったら、皆の足を引っ張ることも無かったんですけどね。」

 

…おそらく彼女は、今だ仲間の力になれていない自分に焦りと罪悪感を感じているのだろう。

 

カイタ「…確かにそうかもしれない。」

 

レンコ「ちょ、ちょっと…!」

 

カイタ「でも、それでいいんじゃないかな?」

 

???「えっ?」

 

でも、だからこそ、俺は彼女に、この言葉を送りたい。

 

カイタ「『Nobody’s Perfect.』こんな事を言った人がいる。」

 

???「…えっと、どういう意味ですか?」

 

カイタ「完璧な人間なんて一人もいないって事だよ。人間はだれしも、何かしらの弱点を抱えている。でも、それは一人だからそうであって、誰かと一緒なら色んな事が出来る。君はモンスターが怖い、それなら、少しずつでもいい。君の仲間と一緒に戦う。そうやって慣れていく。…簡単な事じゃないのは百も承知だ。でも、だからってここで止まっていたら永遠に変われない。変わるためには、仲間の力が必要不可欠だ。人は誰とも関わらずに生きていく事は出来ない。互いに支えあって生きていく。それは人生っていう一つのゲームと同じなんじゃないかと、俺は思うぜ。」

 

???「…………」

 

カイタ「…っと、スマン。長々と語りすぎた。まあ、つまりだ。今は力になれなくても、これから頑張って皆を支えていけばいいって事だ。」

 

レンコ「…うん。私も、落ち込むよりは、今自分にできる事は何かを考える方がいいと思う。」

 

???「…そうですよね。せっかく皆が私のために頑張ってくれているのに、ここで私が頑張らなきゃダメですよね!」

 

カイタ「へへっ、そーゆー事。伝わって良かった。」

 

???「あっ、自己紹介がまだでしたね。私は『サチ』って言います。」

 

レンコ「私はレンコ。よろしくね。サチ。」

 

カイタ「俺はカイタだ。今は彼女とパーティーを組んでる。」

 

レンコ「…ねえ、サチ。今サチの仲間は、武器を買うためのお金を稼いでいるんだよね?私たちにも手伝えることはないかな?」

 

サチ「うーん…今は無いですk…あっ、ちょっと待ってください。」

 

そう言ってサチは後ろを向いてウィンドウを操作し始めた。おそらくメッセージが来たのだろう。

 

と思ったら、顔色を変えてこっちを振り向いた。どうしたのだろう。

 

サチ「ど、どうしよう…!」

 

カイタ「な、何だ、どうした!?」

 

レンコ「サ、サチ、落ち着いて!何があったの!?」

 

サチ「い、今メッセージが来て、初見のモンスターに遭遇して、戻るのが遅くなるって…!」

 

カイタ「ぐう、初見か…そりゃ苦戦するわな。」

 

サチ「わ、私、様子を見てきます!」

 

カイタ「おお、そうか…って、はい?」

 

レンコ「み、見に行くって、だ、大丈夫なの?」

 

サチ「正直まだ怖いです。でも、皆が居なくなる方がもっと怖い。だから、私行きます!」

 

カイタ「…」

 

レンコ「…(コクッ)」

 

レンコを見ると、彼女も俺を見て頷いてきた。…どうやら考えてる事は同じの様だ。

 

カイタ「サチ、ちょっと待て。」

 

サチ「と、止めないでください…!」

 

カイタ「おいおい、誰がお前を引き留めると言った?…俺たちも行く。」

 

サチ「で、でも、2人は…」

 

レンコ「大丈夫。この周辺のモンスターはあらかた相手にしてるから、大体の情報は分かってる。…多分。」

 

カイタ「おい、今不安要素が聞こえたんだが。」

 

レンコ「うう、わ、私だってまだほんの少し怖いんだから…」

 

カイタ「まあ、それもそうか。じゃあ、レンコはサチの援護をしてくれ。俺が前線に出る。サチ、レンコが援護に回るが、出来るだけ戦う様に努力できるか?」

 

サチ「は、はい、やってみます。片手直剣なら少しは使えるから…」

 

カイタ「よし、それで行こう。サチ、お前さんの仲間は今どこに?」

 

サチ「あ、えっと…この街の外れの森です!」

 

カイタ(…ん?)

 

レンコ「分かった!それじゃあ、行こう!」

 

カイタ(街外れの森?いや、まさかな…)

 

レンコ「?どうしたの?」

 

カイタ「い、いや、何でも無い。行こうか。」

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

サチ「み、皆…!」

 

メッセージで示された場所に着くと、4人のプレイヤーがモンスターの集団に囲まれていた。

 

幸いだったのは、マギアではなく、普通のモンスターだったことだ。というのも、この森で2度もマギアに遭遇しているので、まさかまた襲われてる人がいるのか、と不安に思っていたのだ。

 

???「さ、サチ!どうしてここに!?」

 

サチ「皆が危険な目に遭っているのに、一人で待つことなんて出来ないよ!」

 

???「で、でも危ないぞ!離れろ!」

 

サチ「大丈夫、助けを呼んできたよ!」

 

カイタ「…と言う訳だ!大丈夫か!?」

 

???「な、何とか…」

 

カイタ「レンコ、俺が切り込む。合図したら、スイッチ頼んでいいか?」

 

レンコ「わ、分かった!」

 

カイタ「サチは念のため、隠れてろ!」

 

サチ「うん!気を付けて!」

 

2人にサムズアップで答えた。

 

カイタ「…さてと、いっちょやりますか!」

 

ともかく、囲まれてる4人の元へ行かないといけない。

…また速攻作戦で片付けるか。

 

カイタ「15秒耐えてくれ!そしたら俺がそっちへ行く!」

 

???「え、さ、15秒!?」

 

驚愕の声をよそに、俺は剣を肩に乗せて走り出した。

 

モンスターが2体向かってきたが、ホリゾンタル・アークで切り捨てた。

 

硬直時間中の俺にもう3体が襲い掛かる。

 

カイタ「レンコ、スイッチ!」

 

レンコ「オーケー!」

 

俺の合図で、レンコがスイッチを発動し、「ケイナイン」で3体を吹き飛ばした。

 

 

「スイッチ」。

それは、このSAOにおける重要な動きの一つだ。

ソードスキルを発動した直後は一定時間硬直とクールタイムが発生する。

動けない状態では、敵のいい的になってしまう。それを回避するために作られたのが、「スイッチ」と呼ばれるシステムだ。一人がスキルを発動し、硬直している最中に、もう一人が即座にスキルを発動させる。そうすることで、理論上は、敵に攻撃をさせる事なく連続攻撃を行う事が出来る。

 

 

話を戻そう。

 

レンコが上空に吹き飛ばした3体は、ポリゴン状になって消滅した。

 

また2体が突進してきたが、ホリゾンタル・アークで一気に2体を撃破した。

 

その隙に、囲まれていた4人の方へ一気に詰め寄った。

 

カイタ「待たせたな、伏せろ!」

 

???「え、ええ!?」

 

他の4人に合図を送り、俺は3連撃ソードスキル「シャープネイル」を発動、4人それぞれに襲い掛かっていた4体のモンスターを切り捨てた。

 

カイタ「ふい~、何とかなった…」

 

サチ「皆、大丈夫!?」

 

???「あ、ああ!俺たちは平気だ!」

 

サチ「良かった…良かったよ…!」

 

サチとレンコがこちらに来る。どうやら、向こうも片付いたようだ。

 

???「あ、あの…危ない所をありがとうございました!」

 

カイタ「いやいや、こっちも正直ギリギリだったよ…でも、無事でよかった。」

 

サチ「カイタさん、私からもお礼を言わせて下さい。ありがとうございました。」

 

???「カイタさん、ですか。俺は『ケイタ』、片手棍を使っています。あなたと同じく片手剣を使っているのは『ダッカー』、メイスを持っているのは『テツオ』、槍を持っているのが『ササマル』です。そして、そちらに居るサチを加えた5人で「月夜の黒猫団」っていうギルドを組んでいます。」

 

カイタ「そっか。じゃあ、こちらも。先ほど紹介があった『カイタ』だ。こっちは俺とパーティーを組んでいる『レンコ』だ。」

 

レンコ「初めまして。」

 

ケイタ「レンコさんも、ありがとうございました。…噂どおり、すごい腕前でした。」

 

レンコ「そ、そんな事無いよ。ただカイタについていってるだけで…」

 

カイタ「いや、ナイスアシストだったよ。この分なら、明日のフロアボス戦も大丈夫そうだな。」

 

レンコ「あ、ありがとう…」

 

サチ「…え?2人とも、明日のフロアボスに参加するの?」

 

カイタ「ああ、そのつもりだけど…」

 

サチ「…やっぱり2人は強いですね。私たちは…まだそんなに強くないから…」

 

ケイタ「何言ってるんだよ、サチ。確かに俺たちはまだまだ弱い。フィールドのモンスターとも渡り合えないほどにな。でも、手をこまねいていても何も変わらない。俺たちも強くなって、いつか攻略組の一員になろうぜ。…それまでは、後方で俺たちにできる事をしよう。」

 

テツオ「できる事って言ったって、どうするんだよ?」

 

ケイタ「それはだな…え~っと…」

 

ダッカー「ノープランか…」

 

黒猫団他メンバー「あははっ!」

 

ケイタ「わ、笑う事無いだろ!?え~と、あれだ、あれ…そうだ、情報収集、とかさ!」

 

ササマル「情報?」

 

ケイタ「そうさ、俺たちがモンスターの情報を集めて、それを情報屋に渡して、はじまりの街に居るプレイヤーの役に立ててもらうんだ!」

 

サチ「…そうだね。」

 

レンコ「…サチも皆も、前向きに話している。」

 

カイタ「ああ、そうだな…さて、俺たちはそろそろ戻るよ。」

 

サチ「あ、あの、2人とも!」

 

カイタ・レンコ「「?」」

 

サチ「…よかったら、私たちとフレンド登録してくれませんか?」

 

カイタ「ああ、いいぜ。レンコも、いいよな?」

 

レンコ「うん、もちろん。」

 

俺たちは彼らとフレンド登録をした。

 

サチ「それと約束してほしい事があって…」

 

レンコ「何かな?」

 

サチ「絶対に、生き延びてください。」

 

レンコ「サチ…うん、わかった!」

 

ケイタ「…俺からも言わせてください。俺たち、必ず強くなって、カイタさんたちに追いつきます!」

 

カイタ「ははっ、そうか。楽しみにしてるぜ。…でも、無茶はすんなよ?」

 

ケイタ「はい、分かっています!」

 

そして、俺たちは別れた。

 

レンコ「…ねえ、カイタ。」

 

カイタ「ん?」

 

レンコ「…明日は頑張ろう。絶対に生き延びて、この先に進もう!」

 

カイタ「…ああ、明日は頼んだぜ。」

 

レンコ「うん!」

 

俺たちはそう話しながら、トールバーナの宿へ戻っていった。

 

 

 

 

カイタ「…あ、ポーションの補充忘れてた。」

 

レンコ「もう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

「Sword Art Masked Rider」

 

「俺から言う事は一つ…勝とうぜ!」

 

ついに始まるフロアボス戦

 

(今動かなかったら…あいつが死ぬ!)

 

襲い掛かる危機

 

「なんでや!」

 

広まる疑心暗鬼

 

「俺をあんな素人連中と一緒にしないでくれ。」

 

(このままだと…!)

 

剣士が下した決断とは━

 

次回、『ヤツラの名は「ビーター」』

 

 

 

「これは仮面ライダーの宿命みたいなもんだ…これ以上、お前を巻き込むわけにはいかない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。
お気に入り登録して頂いた、CLOSEEVOLさん、岡闇煉獄さん、神條 暁さん、ニントという人さん、ありがとうございます!

今回出てきた「スイッチ」の解釈って、これで合ってますかね?
もし違ったら、ご指摘いただけると幸いです…
途中の内容が薄っぺらくなった気がする…(汗)
また、今回から次回予告風な演出(?)入れてみました。

なお、今回の投稿日11月6日は、原作で今から1年後の今日、「ソードアート・オンライン」が発売された日付です。原作の様なデスゲームになるのは御免こうむりますが、もしも将来本当に、現在のVRを越えた、「フルダイブ」の様に五感で遊べるゲームが作られたとしたら、遊んでみたいなと思う、今日この頃です。

毎回の事ですが、この作品の更新速度はナメクジよりも低速です。
最低でも月に1回は投稿するように心がけてはいますが、何卒ご容赦ください。
それでは、また。



※12月19日追記 お気に入り登録していただいた「神條 暁」さん、今の今まで名前の表記を間違えていました!!何たる不覚…恥をさらしてしまいました…申し訳ございません!!修正を行いましたので、今後はこのような事が無いよう、文章作成後のさらなる厳重な見直しを行っていきたいと思います。誠に申し訳ございませんでした!!


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Ep.7 ヤツラの名は「ビーター」

第7話です。
お待たせしました!
小説執筆より、レポート執筆の時間が長かった…
これも全部、大学ってやつの仕業なんだ()

先日、SAOIF75層をようやくクリアしました!
総力戦のスカルリーパーさんマジ強し…
完全ソロの自分は瞬殺されて、とても太刀打ちできましぇん…
でもストーリーは相変わらずよかった…

ようやくフロアボス戦までこぎつけた…
ここまで長かった…といっても、俺の文才が無いせいですが。
いつも通りの超長文の上に、毎度おなじみ原作改変が入ります。


なんか、前回のUAがこれまでの半分以下になってる…
まあ、毎回無駄に長くて読みにくいのが原因だろうけど…






(カイタSide)

 

━12月2日。

俺たちはフロアボス戦に向けて、迷宮区への道を歩いている最中だ。

先頭はディアベル、俺とレンコは、キリトとこの前の赤ずきんの女性(と思われる)プレイヤーと共に、列から少し離れ最後尾を歩いていた。

 

キリト「…よし、手順を復習するぞ。あぶれ組の俺たちの役目は、ボスの取り巻き、ルイン・コボルト・センチネルを叩く事だ。奴らの攻撃が来たら、ある程度反撃して、頃合いをみて『パリィ』で弾いて隙を作る。その後は『スイッチ』で入れ替わりながら攻撃する。奴らの攻撃は単純だから、よく見極めればうまくいくはずだ。」

 

レンコ「分かりました。」

 

カイタ「りょーかい。…しかし、噂には聞くけど、そんなに強いのか?フロアボスってのは。」

 

キリト「まあ、曲がりなりにもその階層のボスだからな。俺もβ期間中の最初は苦労したよ…」

 

素人の俺でも、キリトの作戦は理にかなっていると思った。

…ただ一人を除いて。

 

赤ずきんのプレイヤー「…すいっち?」

 

カイタ・レンコ「「…え?」」

 

キリト「ま、まさか、パーティー組むの、これが初めてか!?」

 

赤ずきん「うん。」

 

カイタ・レンコ・キリト「「「」」」

 

躊躇いなく答える彼女。

キリトが肩を落としている。

…どうやら、ボスまでの道のりは、ある意味遠そうだ。

 

 

━━━━紆余曲折あったが、なんとかボス部屋の前にたどり着いた。

部屋の前で、ディアベルの最後の伝達事項が伝えられる。

 

ディアベル「みんな、聞いてくれ。ついにボス部屋だ。」

 

彼が俺たちを含むレイドの全員を見まわして、こう言い放った。

 

ディアベル「俺から言う事は一つ…勝とうぜ!」

 

『おおぉ!!!』

 

全員が気合を入れる。

 

カイタ「レンコ…行こうぜ。」

 

レンコ「…うん、頑張ろう!」

 

ディアベルが前を向き、部屋の扉を押し開けた。

 

 

 

中は薄暗かった。

 

だが、ディアベルは警戒を怠らず、慎重に進んでいく。

 

その後ろを皆がついていくが、中ほどまで進んだところで、

 

ディアベル「!!!」

 

突如部屋が明るくなった。

 

そして、部屋の中央に、体長が2メートルはあろう赤い牛のようなモンスター『Illfang the Kobold Lord』が、その周りに、3体の取り巻き、『Luin Kobold Sentinel』が出現した。

 

カイタ「デ、デケエ…」

 

レンコ「あれが、フロアボス…」

 

俺たちは、そのあまりの大きさに茫然としていると、

 

ディアベル「…攻撃、開始ーっ!!」

 

ディアベルの号令で、全員が突撃していく。

 

キリト「…行くぞ!」

 

カイタ「お、おお!」

 

キリトに声を掛けられ、我に返った俺は、事前の作戦通り取り巻きの一体へ向かった。

 

━そこからは文字通り、命がけの戦いだった。

 

ディアベルが各小隊に指示を出し、ボスに向かう者も、取り巻きを捌く者も、皆必死になって戦っていた。

もちろん、それは俺たち4人も例外ではなく、

 

カイタ「そらよっと!レンコ頼む、スイッチ!」

 

レンコ「分かった!」

 

俺とレンコはパリィとスイッチを繰り返し、センチネルと互角に渡り合っていた。

 

だが、キリト達の方は、

 

キリト「ぜえああぁっ!!スイッチッ!」

 

赤ずきん「ハアアァァァッ!!」

 

カイタ「……」

 

まさしく圧巻の一言だった。

 

キリトは分かる。元βテスターとしての確かな腕前を遺憾なく発揮し、センチネルに攻撃を叩き込んでいる。正直、あいつ一人でセンチネル一体を捌けるのではないかと思うほどだ。

しかし、赤ずきんの方は、あのキリトの動きに付いて行っている。というより、動きがあまりにも早すぎる。見たところ、彼女はレイピアを使っているようだったが、そのレイピアの剣筋が見えないのだ。

 

カイタ(…この2人、この先とんでもない強さを身に付けるんじゃ。)

 

そう思わずには居られなかった。

 

しばらくして。

 

レンコ「よし、倒した!」

 

カイタ「じゃ、他のパーティーの援護に…」

 

「ボスの武器が変わるぞー!」

 

カイタ・レンコ「「!!」」

 

ボスの方を見ると、4段あったボスのHPゲージが3本は無くなり、残りの1本もレッドゾーンになっていた。そしてボスは、持っていた斧とバックラーを放り捨てた。

 

キバオウ「どうやら情報通りのようやな!」

 

ディアベル「全員、退却!あとは俺が決める!」

 

キリト「え?」

 

カイタ「どうした?」

 

キリト「いや、こういったボスモンスターとの戦いは、基本的にパーティーで囲んでとどめを指すのが定石だと思うんだが…」

 

カイタ「…なるほど。まあ、なにか考えがあるんだろ。」

 

キリト「……」

 

ディアベルは、ソードスキルの構えをすでにとり、剣が輝いていた。

 

そしてボスは、情報通り、背中に差してあった(全く気付かなかったが)武器を取り出していた。

 

…取り出していたが、

 

カイタ(…ん?)

 

何か違和感を感じた。

 

カイタ(確か、情報では曲刀に変わるんだったよな。)

 

曲刀は、ゲーム初日にクラインが使っていたが、その見た目は分かりやすく言うと、海賊が持つような「カトラス」だ。

 

だが、今目の前のボスが持っている武器は、

 

カイタ(…真っすぐだ)

 

あんな真っすぐな剣も曲刀に入るのか?

…あれじゃまるで、「曲刀」というか、江戸時代の武士が持っていそうな「刀」だ。

 

カイタ「…なあ、キリト。」

 

キリト「なんだ?」

 

カイタ「あのボス、曲刀を使うんだよな。」

 

キリト「ああ。「タルワール」っていう曲刀だ。全長は大きいが、攻撃パターンは単純だから、トチらなければ簡単に避けれるはずだ。」

 

カイタ「なるほど…いや、それはいいんだが、何かあの武器、曲刀にしちゃ真っすぐ過ぎねえか?あれじゃまるで武士が持つような「刀」だ。」

 

キリト「…え?」

 

俺の指摘にキリトが首を傾げ、ボスの方を見た。途端に、彼の顔が青ざめる。

 

キリト「…う、嘘、だろ」

 

カイタ「どうした!?」

 

キリト「タルワールじゃない…あの武器は、カタナカテゴリーの「ノダチ」だっ!」

 

カイタ「なっ…!?」

 

それはつまり、βの時と武器の仕様が異なっているということに他ならない。

 

カイタ「ディアベルっ、その攻撃止めて退がれーっ!!」

 

キリト「急げ!後ろに向かって飛べーっ!」

 

キバオウ「っ!?」

 

ディアベルも異変に気付いたのか、ソードスキルをキャンセルしようとする。だが、キャンセルしたとて、硬直時間が発生してしまう。動けないディアベル目掛け、ボスが攻撃を繰り出す。

 

カイタ(このままじゃ、ディアベルが…)

 

ディアベルは、この先もプレイヤーを導ける、リーダーの器を持った男だ。

 

ここで死なせるわけにはいかない。

 

カイタ(今動かなかったら…あいつが死ぬ!)

 

救う。絶対に救う!

 

カイタ「うおおおおぉぉぉぉっ!!!」

 

キリト「カ、カイタっ!」

 

レンコ「な、何を!?」

 

俺は片手剣を持ち、バーチカルのモーションを発動させながらボスとディアベルの間に飛びこんだ。

 

(ガアァンンッ!ギリギリギリ…)

 

ディアベル「…?」

 

カイタ「ぐ、ぐおおおぉぉ…!」

 

間に合った。

間一髪で、俺の片手剣がボスのカタナを受け止めた。

だが、長くは持ちそうにない。

 

カイタ「デ、ディアベルっ…早く、退がれっ!!」

 

ディアベル「っ!す、すまないっ、助かった!」

 

硬直時間が解けたディアベルが、後ろに下がった。

 

そして、俺もボスの力に押し負けて、後方に吹き飛ばされた。

…同時に、俺が持っていた片手剣も、耐久地が0になったのか、消滅してしまった。

 

カイタ「ぐううううぅぅぅぅっ!!」

 

キリト「カイタっ、大丈夫か?」

 

カイタ「あ、ああ…」

 

レンコ「よ、良かった…」

 

ディアベル「す、すまない…俺が勝手な行動をしたせいで…」

 

キリト「ディアベル、あんたどうして…」

 

ディアベル「…元βテスターの君なら、分かるだろ。」

 

キリト「元βテスター?…ま、まさか、お前もβテスターだったのか!?」

 

ディアベル「…ああ。ボスのラストアタックボーナスによる、レアドロップを狙っていた。」

 

カイタ「キ、キリト、その『ラストアタック』ってのは、そんなに大事なのか?」

 

キリト「ああ、当然だが、ボスモンスターは一度倒されたら二度と出現しない。だから、ボスがドロップするアイテムは、非常に価値があるんだ。」

 

カイタ「…そういう事か。」

 

ディアベル「カイタ君、といったね。本当にすまない。結局俺は、仲間の安全より自分の欲を優先してしまった。下手をしたら君までも…」

 

カイタ「ディアベル、懺悔なら後でいくらでも聞いてやる。今は、皆をまとめるのが先決じゃねえのか?…リーダーさんよ。」

 

俺の言う通り、ディアベルが死にかけたことで全員が動揺していた。

 

ディアベル「!!…皆、俺は無事だ!全員、一度ボスと距離を取れ!!」

 

ディアベルの指示で、全員が一度退く。

しかし、ボスは依然として猛威を振るっている。

俺はストレージから予備の片手剣を取り出しながらキリトに尋ねた。

 

カイタ「…なあ、キリトさんよ。武器が違うという事は、対策の仕様がないって事でせうか…?」

 

キリト「いや、上の階層で何度かカタナを使うモンスターと戦ったから、何とかなると思う。ただ、やつの動きに付いていける奴がいるかどうかが…」

 

カイタ「それはあとでいい。とにかく対策は出来るんだな?」

 

キリト「…ああ。」

 

カイタ「分かった。なら、指揮はお前に任せる。何とか付いて行って見せるよ。」

 

キリト「…本気なんだな?」

 

カイタ「これ以上、βテスター様にいいカッコさせるわけにゃいかんからな。」

 

キリト「全く、お前というやつは…なら、頼んだぜ。」

 

俺はキリトと拳を突き合せた。と、同時に、

 

赤ずきん「私も行く。」

 

レンコ「わ、私も、手伝います!」

 

キリト「…お前ら」

 

カイタ「それで、どうすればいいでしょうか?剣士様。」

 

俺がおどけたようにキリトに問いかけると、キリトは不適に笑いながら言った。

 

キリト「…ボスの倒し方は、取り巻きのセンチネルと同じだ!合図で行くぞ!」

 

俺たち3人は頷き返した。

 

キリト「…今だ、行くぞ!」

 

その言葉と共に俺たちは駆け出した。

 

キリト「せあああぁぁぁ!!」

 

カイタ「おぉらああぁぁぁぁ!」

 

まず手始めに、俺とキリトがそれぞれバーチカルで切り込む。

 

カイタ「レンコ、スイッチ!」

 

レンコ「はああぁぁ!!」

 

すぐさまレンコが、短剣使い特有の素早さで、ボスを攪乱させつつ攻撃する。

 

レンコ「キリトさん!スイッチ!」

 

キリト「ああ!…はあああぁぁぁぁ!!」

 

その後、レンコに気を取られたボスの背後を、キリトが連撃を叩き込む。

 

キリト「アスナ、スイッチ!」

 

キリトが赤ずきんのプレイヤー…アスナにスイッチを要請。

 

アスナと呼ばれたプレイヤーが、レイピアを構え、ボスに向かう。

 

と、思ったら、目にもとまらぬ速さで、連続突きが放たれた。

 

だが、ボスも負けじと武器を振り上げ、アスナに向かって振り下ろしてきた。

 

レンコ「危ないっ!」

 

キリト「アスナっ、避けろ!」

 

遅れてアスナが気づくが、無常にも武器が振り下ろされた。

 

…いや、間一髪で避けていた。

 

その時に、彼女が纏っていたローブがボスの武器に巻き込まれ、消滅した。

 

キリト・カイタ・レンコ「「「っ!」」」

 

俺たちは露わになった彼女の姿を見て、息をのんだ。

 

栗色の長いストレートヘアに、ボスを見据える強い視線を放つ、はしばみ色の瞳。

 

文字通りの美人だった。

 

だが、気を取られている場合じゃない。

 

キリト「…カイタ、行くぞっ!」

 

カイタ「…ああ!」

 

キリトに声を掛けられ、俺たちは奴に向かって突進した。

 

だが、注意を疎かにしたのが仇となった。

 

ボスが技を発動しているのに気づかずに突撃してしまったのだ。

 

カイタ「んなっ!?」

 

キリト「しまっ…!!」

 

時すでに遅く、俺たちはボスの攻撃をモロに受けてしまった。

 

カイタ「うああぁぁぁっ!」

 

キリト「ぐううぅぅぅっ!」

 

レンコ・アスナ「「きゃああっ!」」

 

レンコやアスナを巻き込みながら、そのまま後ろに吹き飛ばされた。

 

カイタ(く、くそ…油断した…)

 

ふとHPゲージを見ると、レッドゾーンに突入していた。

 

キリトも起き上がれないでいた。それほど、衝撃が強かったのだ。

 

レンコ「カ、カイタ、大丈夫!?」

 

レンコとアスナが俺たちに声をかける。

 

不可抗力とは言え、巻き添えにしてしまった。あとで謝っておこう。

 

そんな事を考えていると、いきなり周囲が暗くなった。

 

レンコ「…ぇ?」

 

レンコが上を見て掠れた声を出した。

 

気力を振り絞り、顔を上げると、ボスが飛び上がり、今にもこちらに向かって攻撃を繰り出そうとしていた。

 

カイタ(これは…ヤバいかも…。)

 

身体を動かそうにも、先ほど直撃した攻撃の反動で、体が動かない。

 

カイタ(万事休す、か…。)

 

━そう思ったその時、

 

「うおりゃああぁぁぁ!!」

 

なにかとてつもなく重い一撃が、ボスの攻撃をはじいた。

 

その衝撃の際にできた土煙から出てきたのは、

 

エギル「一旦下がれ!回復するまで俺たちが支える!」

 

両手斧を構えた、エギルだった。

 

カイタ「!すまねぇ、エギル!助かった!」

 

エギルに礼を言って一度後退し、回復ポーションを飲んだ。

 

カイタ「あ、あぶねぇ所だった…」

 

キリト「カイタ、このままじゃ持久戦になる。次の突撃で勝負に出ようと思うんだが、行けるか?」

 

カイタ「了解…ちなみにだが、失敗したら?」

 

キリト「…強硬突撃。」

 

カイタ「へっ、上等だ。」

 

キリトの答えに、俺は不適に笑った。

 

カイタ「エギル、もう大丈夫だ!スイッチ頼む!」

 

エギル「おお!分かった!あとは頼むぞ!」

 

ここまで攻撃をパリングで防いでくれていたエギルや彼のパーティーメンバーに向けて声をかけ、俺たちは攻撃態勢に入った。

 

エギル「今だ頼む!スイッチ!」

 

カイタ「行くぞ、キリト!」

 

キリト「ああ!」

 

エギルが退がると同時に、俺とキリトは前へ出た。

 

キリト「ぜああああぁぁ!」

 

まずキリトが、ボスの武器をかいくぐって切り込んだ。

 

キリト「カイタ、スイッチ!」

 

そしてボスがキリトに気を取られているすきに、ボスの背中に回り込んだ俺が、そのまま背中にバーチカル・アークをお見舞いする。

 

イルファング「グオオオオォォォォ!!」

 

ボスが少しよろめいた。

 

カイタ(たたみかけるなら今だ。)

 

そう思った俺は、すかさず、

 

カイタ「キリト、スイッチ!」

 

キリト「ハアアァァァァ!」

 

硬直時間が解けたキリトがそのままホリゾンタル・アークを発動。

1撃目はボスの横腹を駆け抜けながら切り付け、ボスを通り過ぎた後、振り向きざまに2撃目を放った。

 

キリト「スイッチ!」

 

俺の横に来たキリトが、俺と入れ替わる形で下がる。

と、同時に、ボスが反撃と言わんばかりに、動けないキリトに向かってカタナを振り下ろしてきた。

入れ替わりで出てきた俺は、それをファイア・スラントで迎え撃つ。

 

カイタ「う、うおおお!」

 

つば競り合いの様になったが、何とかはじき返すことに成功した。

 

だが、ここで誤算が発生した。

 

俺にはじき返され、後方に下げられたボスが、すぐさま2撃目の構えを取ったのだ。

 

カイタ「っ!?」

 

キリト「はああぁぁぁ!」

 

その瞬間、キリトが俺の前に切り込み、俺がまだ使えない、4連撃技のホリゾンタル・スクエアを放った。

 

一撃目でボスの武器をはじき返し、残り3撃は全てボスに命中した。

 

キリト「そろそろ決めるぞ!」

 

カイタ「ああ!」

 

俺たちは顔を見合わせ、ボスへ最後の攻撃を開始した。

 

キリト「はあああぁぁぁ!」

 

キリトが斬る。

 

カイタ「おりゃぁぁぁぁぁ!」

 

すぐさま俺が斬る。

 

キリト「ぜあああぁぁぁぁっ!」

 

斬る。

 

カイタ「はああぁぁぁぁぁ!」

 

斬る。

 

キリト・カイタ「おおおぉぉぉらあああぁぁぁぁ!」

 

斬って、斬って、斬りまくる。

 

━━━━そして、ついに。

 

カイタ・キリト「でぇぇあぁぁぁぁぁ!」

 

何度放たれたか分からないキリトと俺のホリゾンタルが、ボスに命中した、その瞬間。

 

「グオオオオォォォォォォォ!」

 

ボスの動きが一瞬硬直したかと思いきや、

 

『…ガシャーン!!』

 

ポリゴンの粒になって消滅した。

 

「「「「……………」」」」

 

皆が静まり変える。

 

「…や、」

 

「「「「「「「「やったぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」」

 

途端に、歓声に包まれる。

 

嗚咽、感涙、そして互いの健闘を称える声が響き渡る。

 

キリト「はぁ…はぁ…」

 

カイタ「キ、キリト…生きてっか…?」

 

キリト「な、何とか…」

 

カイタ「はは…お疲れさん…。」

 

キリト「ああ…」

 

俺とキリトは、息も絶え絶えにお互いの安否を確かめた。

 

カイタ「…それで、なんかドロップしたのか?」

 

キリト「ん?ちょっと待ってくれ…」

 

そう言ってウィンドウを見たキリトの顔が少しこわばる。

 

キリト「…あった。『コート・オブ・ミッドナイト』か。」

 

カイタ「『闇夜のコート』ってか?かっこいいじゃねぇか。俺も欲しかったな…」

 

キリト「悪いな。一着限定だ。」

 

キリトがどや顔をしてきた。

 

カイタ「…ちくしょうめ。」

 

レンコ「カイタ、大丈夫!?」

 

レンコが俺に抱き着いてくる。

 

カイタ「ああ、…って、おい…く、苦しいぞ…」

 

レンコ「…ごめんね。」

 

カイタ「…ん?どうした?」

 

レンコ「私、ほとんど役に立てなかったから…。取り巻きの対処で精一杯だったし、ディアベルさんが殺されかけたのを見たら、怖くて足がすくんじゃって…それに、そのままあなたまで死んじゃったらと思うと…」

 

カイタ「…しょぼくれてるからどうしたかと思いきや、なーにバカな事言ってんだか。」

 

レンコ「え?」

 

俺はレンコの頭に手を置いてこう告げた。

 

カイタ「俺はそんなあっさり仏様になったりしねぇよ。パーティーメンバーを置いていく訳にゃいかねえだろ。」

 

レンコ「…!うん!///」

 

アスナ「二人とも、お疲れ様。」

 

エギル「お前ら、すごい連携だったな!congratulation!この勝利は、アンタ達の物だ!」

 

アスナとエギルも、俺たちに労いと賞賛の言葉をかける。

 

キリト「…そんなんじゃないさ。この勝利は、今日ここで戦った皆の物だ。」

 

ディアベル「いいや、キリト君、カイタ君、この攻略は君たちの連携があってこそ、成し遂げられたんだ。俺が出る幕も無かったよ…。本当に素晴らしかった。」

 

ディアベルが、拍手で俺たちを称える。

 

「そーだそーだ!」

 

「いよっ、MVP!」

 

それにつられて、周りに居たレンコたちだけでなく、全員が拍手や指笛で俺たちを賞賛した。

 

俺は照れ臭くなり、そっぽを向いてしまった。

 

キリトも同じらしい。

 

キリト「…なんか恥ずかしいな。」

 

カイタ「お前が変な事言うからだろ…。」

 

キリト「だ、だって事実だし…」

 

カイタ「まあ、そうだけどな…」

 

キリト「…カイタ。」

 

カイタ「ん?」

 

キリト「……お疲れ様。『相棒』。」

 

キリトが拳を突き出してきた。

 

カイタ「!…へへっ、おめぇも、ごくろーさん。今後とも頼りにしてるぜ。『相棒』。」

 

それに俺も、拳を突き合せて答えた。

 

周囲の歓声がMAXになる。

 

こうして、紆余曲折あったが、俺たちは、無事にアインクラッドの第1層ボスを無事に攻略できた。

 

 

 

 

 

「なんでや!」

 

 

 

 

 

一つの叫び声が聞こえるまでは。

 

 

全員が声の出どころを見る。

 

━━そこには、涙を流すキバオウと、彼のパーティーメンバーであろう4、5人が同じく涙を流していた。

 

キバオウ「なんでや…なんでディアベルはんを、ワシらを騙したんや!なんでホンマの情報を教えんかったや!」

 

本当の情報?

 

ボスが武器を変えるという情報はすでに提示があったはずだ。

 

これ以外にどんなイレギュラーが起きt

 

カイタ(あ。)

 

あった。

 

精神的に疲れていた為、頭から抜け落ちていたが、一つだけあった。

 

ここまでの突撃を慣行するはめになった、大本の原因。

 

 

キリト「本当の…情報?」

 

キリトが聞き返すと、キバオウは、

 

キバオウ「そや!おどれら二人はボスの武器が情報と違うっちゅう事を知っとったやないか!最初からその事を伝えとったら、ディアベルはんが死にかける事も、ワシらが危険に晒される事も無かったんや!」

 

そう俺とキリトに言い放った。

 

キバオウ「特にお前や!何が初心者や、何が『情報は平等に手に入る』や!そんな事抜かしながら、結局お前は情報を隠した!その証拠に、お前は最初にディアベルはんを止めた!大方、ディアベルはんに手柄を横取りされたくないからやろうけどな!」

 

ついでに、俺を指さしながら付け加えていた。

 

確かに、最初にディアベルを引き止めたのは俺だ。

 

悔しいが、そんな誤解を与えられても仕方ないかもしれない。

 

レンコ「そんな…!カイタはディアベルさんを助けて、キリトさんと一緒に、ボスを倒したんですよ!どうしてそんな言い方をするんですか!?」

 

レンコがキバオウに反論する。

 

キバオウ「それは結果論や。結局この2人は、ディアベルはんを囮にして、手柄の横取りでボスを倒したんや!」

 

不穏な空気が広がるのを感じる。

 

「きっとあの2人、元βテスターだ!ボスのパターンも全部知ってて、手柄を奪う気だったんだ!」

 

まずい。

 

「じゃあ、ガイドブックを書いた奴らも、最初から2人のグルで…!」

 

この空気はまずい。

 

「ほかにも居るんだろ!β上がりの奴が!出てこい!」

 

一度生まれた疑念は簡単には消えない。そればかりか、疑念は確信を生み、確信はさらなる疑念を引き起こす。

 

現に、今この大広間では、お互いがお互いをβテスターかと疑う空気が広がっている。

 

アスナ「ちょっと、あなたたちねぇ…!」

 

ディアベル「皆、待ってくれ!違うんだ、彼らは…!」

 

事情を知るアスナとディアベルが、懸命に止めようとする。

 

なんとかしなければ。

 

そう思った俺は、口を開く

 

 

キリト「ッハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

事はなく、キリトの笑い声が遮った。

 

俺は驚いてキリトを見つめる。

 

キリト「元βテスターだと…?俺をあんな素人連中と一緒にしないでくれ。言っておくが、こいつはβテスターじゃない。俺の策略にまんまと乗ってくれた間抜けだよ。」

 

キバオウ「な…なんやと!?」

 

キリト「βテスターに当選した1000人の内、ほとんどはレベリングのやり方も知らない初心者同然だったよ。でも、俺はあんな奴らとは違う。」

 

カイタ(キリト…いきなり何を…)

 

演説を始めたキリトに、俺は困惑する。

…何か意図があるのか、それとも、本気でそう思っているのか。

 

キリト「俺はβテスト中に、他の誰も届かなかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知っていたのは、上の層で、カタナを使うモンスターと散々戦ったからだ。」

 

…まてよ?

 

キリト「まあ、まさか第1層でお目にかかるとは思わなかったがな…」

 

まさか、キリトの奴。

 

キリト「でも、隣にいるコイツが、己が身をかけて馬鹿みたいに突撃してくれたおかげで、喰らわずに済んだばかりか、うろ覚えだったパターンも完全に把握できたから、一石二鳥だったよ。」

 

レンコ「キ、キリトさん…!」

 

俺の予想が正しければ…

 

あいつは、自ら悪役になるつもりだ。

 

おそらく、他のβテスターに被害が及ばないようにする為だろう。

 

…だが、

 

お前はどうなる?

 

一人で悪役を引き受けた、その先に何がある?

 

『ビギナー』を見捨てたという、その重責を一人で背負うつもりか?

 

カイタ(…いくらなんでも無理がある。)

 

現に、キリトの体が、わずかながら震えている。

 

見たところ、キリトはまだ中学生かそこらだろう。

 

そんな子供にその重責を背負わせるわけにはいかない。

 

カイタ(このままだと…!)

 

せめて半分。半分でも、俺が背負わなければいけない。

 

…はたから見れば、この選択は狂ってるように見えるだろう。

 

「自分のことだけ考えればいい。」そういう人が多いだろう。

 

だが、俺は「仮面ライダー」だ。

 

助けが欲しいのに、それを叫ぶ事も出来ない。

 

そんな人がいるなら、なおさら手を差し伸べるべきだ。

 

…それがたとえ、悪者に見えても。

 

キリトを見ると、ウィンドウを操作し、先ほど入手したコートを装備していた。

 

漆黒のコートが翻る。

 

キリト「正攻法の突撃バカが知らないことを、他にも知ってるぜ?それこそ情報屋なんか、必要ないくらいに…」

 

俺は決意を固め、キリトに話しかける。

 

カイタ「あのぉ、キリトさんよ、いくら何でも、そこまで言うこたぁねえだろ。本気で傷つくぞ。」

 

そして、キリトとすれ違いざまに、こうつぶやいた。

 

 

 

カイタ「おめぇの嘘に俺も乗る。一人で背負わせやしねぇぞ?」

 

キリト「!!!」

 

 

 

カイタ「まあ、それは置いといて…キリトもあんま事態をややこしくしないでくれ。俺の事を初心者だって抜かしやがって。報酬を一人占めする気か?」

 

レンコ「…え?」

 

キバオウ「な、何を言うてるんや…?」

 

カイタ「何って…簡単な事だ。」

 

 

 

 

カイタ「あんたは、俺の嘘に乗せられたんだよ。キバオウさん。キリトはあくまでも、俺の協力者だ。」

 

 

 

 

キバオウ「う、嘘やと?やっぱりワシらを騙したんか?βテスターは最低な連中って事か!?」

 

カイタ「いいや、まるっきり騙したわけじゃない。8割がたは真実さ。それが人をうまく騙すためのコツだ。」

 

キバオウ「8割?」

 

カイタ「ああ。俺が初心者って話と、『情報は平等に手に入る』ってのが嘘だ。情報なんざ、金とアイテムでどうとでもなる。まあ、ディアベルを騙すのが、一番厄介だったがな。なにせ、あの会議の後で、しつこく俺に追及してきたからな。『一体何を企んでいる!』ってな。のらりくらり誤魔化すのも骨が折れたぜ。」

 

ディアベル「…っ!?」

 

ディアベルが面食らっている。当然だ。今言った事はただのハッタリ。ブラフ。大嘘だ。そんなことは一度も無かったからな。

 

カイタ「ただ、これだけは言わせてもらう。俺やキリトの様なせこい真似をせずに、キチンとビギナーたちに向き合ってプレイしてるβテスターだっている。ディアベルがその一人だ。」

 

キバオウ「な!?デ、ディアベルはんが、元βテスター…!?」

 

カイタ「ああ、そうさ。でも、ディアベルはお前らを見捨てたか?違うだろ。このレイドを率いて、皆を守り抜いた。」

 

キバオウ「そ、それはそうやが…」

 

カイタ「もしディアベルがアンタらを見捨てるつもりなら、あの会議でバカ正直にガイドブックの話を持ち込んだりしないはずだ。」

 

キバオウ「……………」

 

カイタ「まあ、その元βテスターのディアベルでもつかみきれなかった情報がいろいろあったみたいだけどな。…いい機会だ。その一つを教えてやる。後学のために、耳穴かっぽじってよく聞けよ?」

 

キバオウ「!?」

 

カイタ「フロアボスに最後の一撃を与えた奴には、『ラストアタック』というボーナスが付く。そのボーナスによって、特殊なアイテムをドロップすることがある。さっきキリトが手に入れたそのコート『コート・オブ・ミッドナイト』がその一つだ。」

 

キバオウ「…そうか、だからおどれらだけでとどめを刺したんやな!?」

 

カイタ「ご名答。まあ、結果は見ての通り、レアアイテムはキリトに渡っちまったがな。でも、ここからが肝心。この情報は、ディアベルはおろか、ひょっとしたらキリトも知らないかもな。」

 

キリト「!?」

 

キリトが驚いている。当然だ、そんなもん無いからな。

だが、嘘をつく際に大事なのは、どれだけ相手を欺くかではなく、どれだけ自分の情報の信憑性を高めるかにかかっていると、俺は考えている。

 

カイタ「どうやらあの時、ボスにとどめをさしたのはキリトだけじゃなくて、俺たち二人という風に認識されたらしい。」

 

キバオウ「ど、どういう事や!」

 

俺はストレージからあるアイテムを実体化しながらキバオウに答えた。

 

カイタ「それはつまり、」

 

 

「アタッシュカリバー!」

 

 

カイタ「こういう事だ。おそらくこの武器は、ボスのレアドロップと同じく、このゲームで1品物だぜ。」

 

信憑性が高ければ、どんな嘘も真実になる。

「俺しかもっていない武器」という時点で、信憑性は高くなったと思う。

実際、キバオウたちはまんまと信じてくれた。

 

キバオウ「な…なんやそれ…そのコートといい、その武器といい、そんなもん、もうレアアイテムどころやない!チートや、チーターやろそんなもん!」

 

「あいつら、ベータのチーターだから、ビーターだ!」

 

誰かがそう言った。

 

…キリトが頭数に含まれているのは気に食わないが、仕方ない。

 

カイタ「おお、お前さん、いいあだ名じゃねぇか。…そうだ、俺たちは『ビーター』だ。という事で、第2層の転移門は俺たちがアクティベートしとくぜ。ついてくんのは勝手だが、初見の敵に殺される覚悟しとけよ?」

 

そう言い放った俺は、キリトの肩を掴み、

 

「ちょっと来い。」

 

と呟いた。

 

カイタ「ほんじゃな~。」

 

そして俺たちは、第2層へと続く階段を上り始めた。

 

 

 

━━━━しばらく登って。

 

カイタ「やれやれ、どうなる事かと思ったが…」

 

キリト「…なんでだ」

 

カイタ「ん?」

 

キリト「なんでβテスターじゃないお前が俺を庇うんだ…?」

 

カイタ「…逆に聞くが、お前、あの重責を一人で背負いきれるのか?」

 

キリト「…余裕だ。」

 

カイタ「なら…なんでお前、震えてたんだ?」

 

キリト「っ!!」

 

カイタ「…怖かったんだろ?」

 

キリト「………」

 

カイタ「まあ、お前が決めたことだ。これ以上とやかくは言わないよ。…ただ、これだけは言わせてくれ。」

 

キリト「……」

 

カイタ「逃げ場のないこの世界で敵視されるのは、死につながる可能性がある。…俺は、お前に死んでほしくない。お前がいたから、俺は今日ここで剣を振るう事が出来る。だから、おせっかいでもいい。お前が背負おうとしていた重荷を、俺も背負う。」

 

キリト「………」

 

カイタ「何でも一人で抱え込むな。お前は一人じゃない。仲間がいる。クラインやエギル、アスナにレンコ、そして俺が。」

 

キリト「………」

 

カイタ「つらい時は連絡してくれ。…俺に出来るのは、ここまでだ。」

 

その言葉がキリトに届いたのかは分からない。

 

だが俺は、キリトにつらい思いをさせたくないという本心を伝えたつもりだ。

 

カイタ「ほんじゃ、俺は行くわ。」

 

そう言って、俺はキリトに背中を向けた。

 

道中、ずっとキリトの視線が刺さってる気がした。

 

 

そして、第2層の入り口にたどり着いた俺は、メニューを呼び出し、あるウィンドウを呼び出した。

 

カイタ「………」

 

それは、パーティー解除の確認画面だった。

 

俺はレンコの事を考えていた。

 

カイタ(…これから俺は、全プレイヤーの目の敵にされる。無関係の彼女を巻き込むわけにはいかない。)

 

そう思いながら俺は、『OK』のボタンを押した。

 

その瞬間、視界の左上にあった彼女の名前とHPゲージが消えた。

 

カイタ(…これでいい。これでいいんだ。)

 

彼女には、嫉妬、妬みなどの醜い感情が渦巻くゲームじゃなく、ちゃんとしたゲームをしてほしい。

…それに、一人なら、心置きなくゼロワンシステムを使える。

……昔から、一人で居る事には慣れてる。別に寂しくは無い。

………寂しくない、はずだ。

…………でも、なんだ。この感覚は。

 

何かが心にひっかかる感覚があったが、それを無理やり振り切り、そのまま

 

 

 

 

 

「待って!!」

 

カイタ「っ!!」

 

一歩を踏み出そうとした俺を止めたのは、聞き覚えのある声。

 

なぜか振り向くのが怖かった。

 

振り向いたら、自分の決心が揺らぎそうで。

 

カイタ「…なんだ?」

 

それでも、俺は意思を振り絞って声の主を見た。

 

カイタ「…俺は薄汚いビーターだぞ?その俺に、何の用だ?」

 

そこには、息を少し切らした、レンコがいた。

 

 

 

 

(レンコside)

 

キリトさんとカイタが、突然キバオウさんに向かって反論を始めた。

 

でも、彼らの言っていることが耳に入らなかった。

 

ただ一つ分かったのは、二人が嘘をついている事。

 

それも、自分たちが悪役になるだけの、悲しい嘘。

 

でも、キバオウさんや他の皆はそれを信じていた。

 

そして、彼らが、『ビーター』と呼ばれた。

 

分からなかった。

 

なぜ彼らが嘘をついたのか。

 

そして、彼らが去り、他の人たちは消耗の具合を確認しはじめた。

 

今、私の近くには、一緒に戦ったエギルさんと、アスナさんがいた。

 

レンコ「…どうして?」

 

私は誰に聞かせるでもなく、呟いた。

 

レンコ「どうしてあの二人はあんな嘘をついたの…?これじゃあ、2人が悪者に…」

 

私の小さな声の問いに答えたのはエギルさんだった。

 

エギル「…あの場には、悪者が必要だった。」

 

レンコ「え?」

 

エギル「もしもあの状況で、誰かが『汚いビーター』にならなければ、全ての元βテスターが目の敵にされかねない。」

 

レンコ「!!」

 

アスナ「…だから、彼らは命を狙われる危険を背負う事を決めたのね…でも、一つ分からない事がある。」

 

エギル「なんだ?」

 

アスナ「最後に彼が取り出したあの武器、あれをどう説明するの?ほかの人達は、彼の話に流されて、あれをボスのレアドロップだと思ってるみたいだけど…私はそうは思わない。」

 

レンコ「あれはレアドロップじゃなくて、正真正銘、彼の持ち物です。何度か見たから知っています。」

 

アスナ「そう。分かったわ。」

 

エギル「…おっと、俺の仲間が呼んでる。お二人さん、今日はありがとうな。今後ともよろしく頼む。」

 

レンコ「はい、エギルさんも、あの時援護してくれてありがとうございました!」

 

アスナ「私も、ありがとうございます。…それじゃあ、私は彼の…二人とも黒の装備だからややこしいわね…黒いコートの彼のもとに行くわ。」

 

レンコ「あ、私も一緒にいいですか?私もカイタの所に行きたいので。」

 

アスナ「ええ、いいわよ。一緒に行きましょう。」

 

エギル「なら、お前さんたち、あいつらに伝言を頼みたい。第2層のボス攻略も、一緒にやろうってな。」

 

アスナ「…分かったわ。ちゃんと伝える。」

 

レンコ「エギルさん、また会いましょう。」

 

そう言って、私はアスナさんと、第2層へ続く階段を上った。

 

 

階段を上りながら。

 

アスナ「…あの、レンコさん。」

 

レンコ「レンコでいいですよ?」

 

アスナ「…じゃあ、そう呼ばせてもらうわ。あなたも、私にはタメ口でいいわよ。…それで、あなたのパーティーメンバーの彼が出していたあの武器なんだけど…本当に、彼の所有物なの?」

 

レンコ「どういう事?」

 

アスナ「なんだか見た事がある気がして…私、ダンジョンで敵に囲まれていた所を、今日パーティーを組んだあの人に助けられたの。それで、なんとかその囲みから抜け出す事は出来たけど、その後で変なモンスターに出会ったの。そのまま戦おうとしたけど、三日三晩でダンジョンに籠ってたツケが回ってきて、返り討ちにされた挙句、気絶しちゃったの…」

 

レンコ「…!」

 

アスナ「でも、気絶する寸前に、誰かが助けにきたのが見えた。…でも、不思議な見た目だった。黄色と黒の出で立ちに、赤い複眼。そしてその手に、あの武器が握られている気がした。…あれは、彼だったの?」

 

レンコ「……うん。その異形の戦士は、間違いなくカイタだよ。」

 

アスナ「…あの装備、どこで手に入れたのかしら?」

 

レンコ「…ごめん。それは私の口からは言えない。彼から、他言無用って言われてるから。」

 

アスナ「…なら、これ以上は聞かないわ。」

 

レンコ「………」

 

アスナ「そういえば、あなたは彼とどういう風に出会ったの?」

 

レンコ「私も、彼に助けられたの。夜中に森を散歩していたら、あなたが出会ったモンスターと同じタイプのモンスターに襲われたの。…こんな森の奥深く、しかも深夜になんて、誰も来ないって思って、すごく怖かった。ここで死ぬんだって思った。…でも、その時に彼が来てくれた。彼がいたから、私は今ここにいる。」

 

アスナ「…ごめんなさい。嫌な事思い出させたかしら…」

 

レンコ「ううん、大丈夫…ところで、アスナはなんでそんなにダンジョンに籠ってたの?」

 

アスナは、一息置いて、こう告げた。

 

アスナ「…私が、私でいるために。」

 

レンコ「?」

 

アスナ「…我ながら無茶をしたと思ってるわ。でも、私には必要な事だった。最初の街の宿屋に閉じこもって、ゆっくり腐っていく位なら、最後の瞬間まで自分のままで居たい。例え怪物に負けて死んでも…この世界にだけは、どうしても負けられない。そう思っていた。…でも、あの人は2年、3年かかってもこのゲームをクリアするつもりだった。強い人間だと思った。だから私は彼に付いていく事にした。…彼と一緒に居れば、つかめそうな気がするの。この世界で生き抜くための、『強さ』を…。」

 

レンコ「…そっか。」

 

アスナ「ごめんなさい。ちょっとしゃべりすぎたわね。」

 

レンコ「ううん。大丈夫。私も、同じ様な理由だから。…私も、カイタの様に強くなりたい。あの日、彼が私を守ってくれたように、私も彼を守りたい。彼の隣に立てるだけの強さを身に付けたい。そう思ったから。…………あれ、あそこにいるのって、」

 

私たちが歩く先に、ゆっくりとした足取りで歩くプレイヤーがいた。背景で分かりにくいが、黒のコートを羽織っていたので、すぐにキリトさんだと分かった。

 

アスナ「…やっと見つけた。」

 

キリト「………なんだ?」

 

レンコ「じゃあアスナ、私はもう行くね。」

 

アスナ「ええ…って、ちょっと待って。今更ながら気づいたけど、何で私の名前知ってるのよ?」

 

レンコ「え?え~っと、キリトさんがそう呼んでいたから…」

 

私はそう告げて去った。

 

アスナがキリトさんに問い詰める声が聞こえる。

 

アスナ「…どうして分かったの?」

 

キリト「左上に自分以外の表示が…」

 

 

 

少し歩くと、何か通知が入った。

 

レンコ「………え!?」

 

ウィンドウには『Kaitaがパーティーを解除しました。』と書かれていた。

 

急がないと、彼に追いつけなくなる。

 

そう思った私は、走り出した。

 

…幸いにも、1、2分走ると、目の前に光が見えた。きっとあそこが第2層の入り口だろう。

 

そして、そこに彼は立っていて、今にも一歩を踏み出そうとしていた。

 

 

レンコ「待って!!」

 

 

カイタ「っ!!」

 

少し息が切れたけど、追いついて良かった。

 

カイタ「…なんだ?」

 

カイタがこちらを振り返って睨みつける。

 

カイタ「…俺は薄汚いビーターだぞ?その俺に何の用だ?」

 

レンコ「…私も一緒に行く。それに、あれはあなたがキリトさんを守るためについた嘘でしょ…?」

 

カイタ「本気で言ってんのか?確かに俺はわざと奴らを焚きつけたよ。でもな、これから俺が多くのプレイヤーから目の敵にされる事に変わりはない。…そんな俺と行動を共にする事の意味、分かるだろ?」

 

……そんな事、分かってる。

 

カイタ「…それに、「仮面ライダー」っていうのは、単独で行動する方が性に合うんだよ。なにしろ、はたから見れば、異形の怪物同然だからな。」

 

…違う、そんな事無い。

 

そう言いたいのに、口が動かない。

 

だから、と一息置いて、彼はこう続けた。

 

カイタ「これは仮面ライダーの宿命みたいなもんだ…これ以上、お前を巻き込むわけにはいかない。」

 

そう言って、彼は背を向けて、歩き出そうとした。

 

レンコ(…言わないと、言わないと!)

 

これまでの私は、ただ臆病なだけだった。

 

自分が嫌な事から目をそらして、安全な方ばかり選んできた。

 

…でも、それも今日まで。

 

レンコ(誓ったんだ…!強い人間になるって!彼を支えるって!)

 

レンコ「…あのね、」

 

 

 

レンコ「…昨日からずっと考えてた。私は、何のためにここにいるのか、これからどうするべきか、どうしていきたいのかを。…さっきのフロアボスとの戦いで、ようやく分かった。私は、あなたと一緒に戦う。あの夜にあなたが私を守ってくれたように、私もあなたを守る…ううん、大した事が出来ないのは分かってる。それでも、せめてあなたのそばにいる事は出来る。どれだけあなたが卑怯だと言われても、たとえ世界の全てがあなたの敵になったとしても、私はあなたのそばに居続ける。…だってあなたは、私の「英雄(ヒーロー)」だから。」

 

 

 

カイタ「………」

 

 

(カイタside)

 

カイタ「………」

 

俺はレンコの決意を聞いていた。

 

カイタ「…バカだな、お前は」

 

本当にバカだ。

 

俺なんかと一緒にいたら、どうなるのかは火を見るよりも明らかだというのに。

 

カイタ「…でも、」

 

…でも、

 

カイタ「…ありがとう。」

 

その覚悟に答えなくてはと思っている自分もいる。

 

気づけば俺は、再びウィンドウを操作していた。

 

レンコ「…あっ!」

 

カイタ「…こんな俺でよければ、よろしく…頼む。」

 

レンコ「!…う、うん!!」

 

レンコが嬉しそうにウィンドウの承諾ボタンを押す。

 

俺の視界の左上に、再び彼女の名前とゲージが加わる。

 

カイタ「…じゃあ、行こうか。……レンコ。」

 

レンコ「うん。」

 

 

俺たちは、歩き始める。

 

まだ空の彼方(実際は天井だが)にある、第100層へ向けて。

 

この先に、どんな危険や困難が待ち受けているのかわからない。

 

ひょっとすると、途中で俺たちの内どちらかが、あるいはどちらも力尽きてしまうかもしれない。

 

…でも、

 

それ以上に、ここから始まる彼女との旅を、楽しみにしているのも確かだ。

 

彼女と一緒なら、どんな障害も打ち破って、どこまでも行ける━━

 

そんな気がした。

 

 

 

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

「Sword Art Masked Rider」

 

「私を一人にしないで…!」

 

竜使いに訪れた悲劇

 

「…もしかしたらまだ間に合うかもしれないぜ。」

 

奇跡を起こすため

 

「カ、カイタさ~ん!見てないで助けてくださ~い!!///」

「い、いやそんな無茶な…///」

 

花を求めて珍道中!?

 

次回、『竜とカノジョの絆』

 

 

 

「…ちょっと気になる事があってな。多分、お前にも関係することだぜ。キリト。」

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。
ホント、戦闘シーンの描写ムズイ…
文字数が多くなるの、ほんとに何とかしないと…(今回16000字越え)
次回から極力2話構成で行きたいと考えていますので、何卒…

お気に入り登録していただいた、ガンマ102さん、ばたぴーさん、たけしいたけさん、ナハト02さん、ありがとうございます!
……まさか自分と同じ、仮面ライダー、転生、クロスオーバー物の小説を一年前から書いていらっしゃる「ナハト02」さんに登録していただけるとは…
駄作しか書けない能無しの自分にはもったいなき光栄です!
ありがとうございます!!

なお、先日この小説のUAが2000件を突破しました!
こんな更新が遅く読みにくい、思いつきの駄作を読んでくださる方がいる事が、なにより嬉しいです!
ありがとうございます!

次回から時系列が一気に飛びます。
それでは、また。


最近プロット読み返して、ストーリーのゴリ押し感に気づいた今日この頃…


12月26日追記
最近、ルビ振りのやり方を教えていただきました!
ありがとうございます!
早速変更させていただきました!





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Ep.8 竜とカノジョの絆

第8話です。

おらぁ!クリぼっちからの一日遅れのクリスマスプレゼントだ!
俺と同じボッチ仲間は構わないが、リア充ども!
わざわざプレゼントを贈ってやったんだ!
少しは俺に感謝するZOYwww



……すんません。ぼっちでやけくそだったとは言え、ふざけすぎました。
思いのほか早く書きあがったので、投稿しました。


…しばらくメインヒロインであるレンコの陰が薄くなります。
許してくれたまえ()

2話構成にすると言ったものの、分割した所で文字数がさして変わらなかった…(涙)






(カイタside)

 

━━2024年2月22日。

 

現在の最前線は第52層。

 

…あのデスゲーム宣言と、ビーター騒動から、早くも1年と2か月が経過した。

 

聞いた話によれば、あのあと、ディアベルは自主的にリーダーを降板。

彼の意思を、キバオウと、ディアベルの仲間の2人が引き受けたらしい。

 

 

 

俺がゼロワンに変身する力を持っている事は、現時点でまだアルゴ、レンコ、キリト、アスナ、クラインしか知らない。

もっとも、第1層以降は、あまり使わなくなった事が原因だが。

というもの、本来の戦闘方法ではない(アタッシュカリバー等の武器を含む)ゼロワンシステムを使って、通常のフィールドモンスターはともかく、クエストやダンジョンのボスを倒したりすると、正常にクエストがクリアされない事が判明したからだ。いわゆる、ゲームの「改造行為」と同じようなものだ。

そんなわけで、マギアが現れた等、有事の時以外はゼロワンシステムを使わない事に決めた。

まあ、そのマギアも、25層を過ぎたあたりから、さっぱり現れなくなった。

現れないに越したことはないので、構わないが。

 

 

 

アルゴとの、「調査」と「依頼主」の関係はまだ続いている。

新しい層に来たら、大抵レンコと共にこの調査を始める。

昼情報はキリト、夜情報は俺というのも変わっていない。

 

 

 

クラインは、第1層で別れた後、しばらく顔を見なかったが、第10層の辺りで、ギルドを率いてレベリングしている所を再会した。

 

かつて他のゲームでギルドの頭を張っていたという彼は、初日にキリトから教わった事をしっかり活用していたようだった。

 

…レンコの紹介をした時に、なぜか「裏切者」とかなんとかいいながら、血の涙を流していたが。

 

今日もあの武士は、仲間を率いて(そしてモテない悔しさを乗せて)剣を振り回している事だろう。

 

 

 

キリトは現在、アスナとのパーティーを解消し、絶賛ソロで活動中だ。

 

というのも、アスナがアインクラッドで最大のギルドである「血盟騎士団」にスカウトされたからだ。

 

基本的にキリトも元気でやっており、狩場やフロアボス戦でよく見かける。

 

…まあ、去年の6月~12月あたりは一番荒れてはいたが。

 

クラインから伝え聞いたほどにしか知らないが、原因は彼が一時的に入った名も無き小さなギルドが、キリトを残して全員死亡した事に関係するらしい。

 

そのギルドは、サチ達「月夜の黒猫団」とも面識があったらしい。

 

ちなみに、サチ達は、最初こそ低層間で活動していたものの、サチが戦闘に慣れた等、諸々の理由で徐々に頭角を現し始め、第30層の迷宮区攻略の際に、念願の攻略組の仲間入りを果たした。

 

現在、月夜の黒猫団は、クライン率いる「風林火山」、第1層で共に戦いその後も顔を合わせる事が多い、エギル率いる「アニキ軍団」と並ぶ、中小ギルドでは指折りの実力を持つギルドになった。

 

 

話を戻すと、当時のキリトの状態は本当にひどい物だった。

 

特に去年の12月は、目も当てられないほどに憔悴しきっていた。

 

朝から晩まで、無茶なレベリングをするほどに。

 

というのも、彼はクリスマスの夜に行われる、「ボスが蘇生アイテムをドロップする」という眉唾物もいい所のクエストに挑むためだったらしい。

 

それもたった一人で。

 

クラインからこの事をメッセージで伝えられた俺は泡食って、レンコと共に風林火山と合流。

 

そして単身、クエストのボスに挑もうとするキリトを尾行し、彼に共闘を持ち掛けた。

 

だが、そんな俺たちの共闘要請を、キリトは「一人でやらなきゃ意味が無い」と言って拒絶。

 

あくまでも単身でのクリアにこだわっていた。

 

あの時のキリトの目は忘れられない。

 

まるで、失った何かを探し求めているかのようだった。

 

結局、そうこうする内に、こちらも尾行される(それも聖竜連合という大手ギルド。レアアイテムの為なら手段は選ばないという、物騒な連中だ。)というポカをやらかし、レンコ、風林火山と共に彼らを足止めする事で、キリトをボスの元へ送り込んだ。

 

数十分後、ジリ貧になりながらも、なんとか奴らを退け、一息ついていた俺たちのもとに、キリトが帰還した。

 

だが、彼は浮かない顔だった。

 

キリトはクラインにアイテムを放り投げ、「次にお前の目の前で死んだ奴に使ってやってくれ。」と、無感情に言った。

 

クラインと共に、アイテムの効果を見た俺は驚愕すると共に、なぜキリトが浮かない顔をしているのか、分かった。

 

そのアイテムの効果は、死亡したプレイヤーを一人蘇生させるという、まさかの噂通りの代物だった。ただし、「死亡後、10秒間に限る」という条件付きで。

 

真実は結局闇の中なので分からないが、おそらくキリトは、あのギルドの中の誰かを蘇生しようとしたのだろう。その一心でボスに立ち向かい、倒した。

 

だが、彼の希望は砕け散った。

 

キリト「…なんのために、ここまで来たんだろな。」

 

そう、キリトが薄ら笑いを浮かべながら言った。

 

少しイラっとした俺は、キリトに詰め寄ってこう言った。

 

カイタ「おいキリト、お前、冗談でもそんな事は言うな。」

 

だが、キリトの口は止まらない。

 

キリト「何でだよ。結局、俺がやってきた事は全部無意味だったんだ!…こんな事なら、俺も死んだ方が…」

 

(ぶちっ)

 

俺の中で、何かが切れた気がした。

 

クライン「キリの字、おめぇ、いいかげんに…」

 

カイタ「ふざけんじゃねえぞクソ野郎っっ!!!」

 

俺はキリトの胸倉をつかみ上げていた。

 

クラインやレンコが信じられない物を見るかの様に、俺を見つめる。

 

カイタ「自分も死んだ方がいい?次にそれを言ってみろや、たとえオレンジになろうともテメェをぶん殴るぞ!!」

 

キリト「……」

 

カイタ「…俺たちが生きているのは、「今」だ。過去や死んだ人間に縋った所で、何も変わらねえだろ。」

 

キリト「…」

 

カイタ「俺が第1層でお前に言った事、忘れた訳じゃねえだろうな…」

 

…俺は泣いていたが、そんなことは構わずに言い放つ。

 

カイタ「…俺は…俺はよぉ…お前に生きててほしいんだよ…!たしかにお前と行動を共にしたギルドの面子は死んじまってるよ…もう戻る事はねぇよ…」

 

キリト「………」

 

カイタ「でもよぉ…だからこそ、俺たちは生きなきゃいけねえんだよ!死んじまった奴らの想いや期待、無念を背負って、生き抜く責任があるんだよ…!自分から命を投げ出すのは、そいつらの想いを侮辱する事と同じだ…」

 

キリト「……」

 

俺は自虐気味にこう告げる。

 

カイタ「…ほんと、損な役回りだよな。俺たち攻略組ってのは。」

 

キリト「!?」

 

カイタ「どんなに辛くても…どんなに苦しくても…俺たちは戦い続けるしか無いんだからな…。」

 

そう言って俺はキリトから手を離す。そのままキリトは立ち去ろうとする。

 

その瞬間、黙っていたクラインが声を上げた。

 

クライン「キリト…キリトよぉ…おめぇは生きろよ!最後まで生きろよ!生きてくれ!」

 

クラインの顔も涙に濡れていた。

 

彼だけでなく、レンコや、他の風林火山のメンバーも同様だった。

 

当のキリトは、

 

キリト「…………すまない。」

 

それだけ言い、俺たちの元を去った。

 

結局あの後、何があったのか分からないが、キリトは死ぬ事を思いとどまったようだった。

 

そして、ここまで変わらず俺たちと戦ってくれている。

 

 

 

 

俺はどうしているかというと、今もレンコとパーティーを組んで冒険を続けている。

 

…だが、いつからか、初期の様に一緒に行動する時間が少なくなった。

 

無論、喧嘩をしたとか、そういう事ではない。

 

互いに必要な装備の素材や、受けるクエストが違っているため、別行動をすることが多くなったのだ。

 

そして今日も、俺はレンコと別行動をとり、35層へ向かっていた。

 

彼女はどうやら、アスナと共にあるクエストを行うらしい。

 

その為、一時的にパーティーも解除している。

 

カイタ「そ~れっと。」

 

俺は手早く雑魚モンスターを倒し、レンコと合流するため、帰ろうとした。

 

…と思ったら、

 

「ピナァァ!!」

 

カイタ「!?」

 

森の奥から、叫び声が聞こえた。

 

俺は嫌な予感が的中しないように祈りながら、その出どころへ向かった。

 

(???side)

 

???「ピナァ…ピナァァ!!」

 

今、私の目の前で、相棒のピナが死んだ。

 

…私を庇って。

 

「いやだ…いやだよ…私を一人にしないで…!」

 

遺されたのは、ピナの尾羽一枚のみ。

 

私の周りには、35層最強と言われる「ドランクエイプ」が、まだ3体もいた。

 

私は戦う気力も、生きる気力も失い、そのまま攻撃を受けようとした。

 

…その瞬間。

 

 

「無抵抗の女の子を襲うたぁ、紳士のするこっちゃねぇな…!」

 

【ブリザード!】

【(ガシュン) Progrise-key confirmed. Ready to utilize.】

【ポーラーベアーズ、アビリティ!】

【フリージング!カバンストラッシュ!】

 

3体のドランクエイプが氷に閉じ込められた。

 

その瞬間、横一直線に線が入り、氷が砕け散った。

 

そして、3体とも、ポリゴン状になってあっけなく消滅した。

 

オブジェクト片が蒸発する先に、一人のプレイヤーが立っていた。

 

黒いシャツに、ブラウンのズボンという地味な色合いの衣装。

 

そして、ひと際目を引くのは、鋭く輝く青い光彩の目と、彼の手に握られている、黄色と黒の見たことのない武器。

 

彼がその剣をストレージにしまうと同時に、目があった。

 

そのあまりの威圧感に、腰が抜けた私は怖くなって、後ずさりした。

 

その人の目は鋭い視線を放っていたが、同時にとても頼りがいのある眼差しだった。

 

「すまなかった…俺がもうちょい早けりゃ…君の友達、助けられたかもしれなかったのに…」

 

その人は、私に頭を下げてきた。

 

私は首を振って、返答した。

 

???「いいえ…私のせいなんです…ありがとうございます…助けてくれて…」

 

今にも泣きそうだったが、それをどうにか堪える。

 

その男性は、私にゆっくり近づくと、跪き、私と目線を合わせて、こう尋ねた。

 

「…その羽根なんだが、アイテム名、設定されてるか?」

 

私は戸惑いながら、羽根をクリックする。

 

そして出てきたアイテム名は

 

『ピナの心』。

 

???「っ…!!」

 

堪えていた涙が、あふれてきた。

 

「わ~っ!!タンマタンマ!!落ち着け!」

 

途端に、クールなイメージを放っていた彼が、思い切り慌てだした。

 

「…もしかしたら、まだ間に合うかもしれないぜ。」

 

???「え!?」

 

「まあ、最近判明したから、知ってるやつは少ないがな。47層の南に、『思い出の丘』っていうフィールドダンジョンがある。穏やかな名前のくせに、難易度は高いのが厄介な点だけど…ともかく、そこのてっぺんに咲く花が、使い魔の蘇生アイt」

 

???「ほんとですか!?」

 

「お、おう…」

 

私は少々食い込み気味に確認した。

 

だが、喜びもつかの間、すぐに絶望がおそいかかる。

 

???「47層…」

 

今いる35層から12層も上のフロアだ。安全とは言い難い。

 

「…うーん。ほんのちょっとの時給をもらうか、なんならタダ働きでもいいから、俺が行ってきてもいいんだがな…あいにく、使い魔を失ったテイマー本人が行かねぇと、肝心の花が咲かないみたいでなぁ…」

 

???(意外といい人なのかな…?)

 

そう思いながら、私は答える。

 

???「いえ、情報だけでも十分です。レベルを上げれば、いつか…」

 

途端に、彼の表情が言いにくそうに歪んだ。

 

「あー、それなんだが…使い魔を蘇生できるのは、死んでから3日。そのリミットを過ぎると、アイテム名の『心』が『形見』に変化するらしい…」

 

???「そんな…!」

 

私は今度こそ、絶望した。

 

今のレベルは44。47層に挑むには到底足りない。

 

そんな中、目の前の彼が立ち上がる気配がした。

 

もう一度お礼を言おうと顔を上げようとした瞬間。

 

私の目の前に、トレードウィンドウが表示された。

 

「これと…これと…あとは、これかな…」

 

慌てて顔を上げると、男性も何かつぶやきながら同じウィンドウを操作していた。

 

トレード欄に次々とアイテムが表示されるが、見たこともないアイテムばかりだ。

 

???「あ、あのぉ…これは…?」

 

「ん?ああ、こいつらでおそらくレベルを5、6ほど上乗せできる。俺も一緒に行くから、なんとかなるだろ。まあ、俺が持ってても宝の持ち腐れっていう理由もあるけどな…俺は片手剣が好きだし、それ一筋だから…」

 

???「えっ…?」

 

『甘い話には裏がある』。このアインクラッドでは、それが常識だ。

 

だから私は、この素性のしれない男性を警戒しつつ、尋ねた。

 

???「…なんで、そこまでしてくれるんですか?」

 

彼は困ったように頭を掻いていた。

 

「…笑わないって約束するなら、言うけど…」

 

???「笑いません。」

 

「…俺は昔から、困ってる人を見ると助けずにいられなくなるんだよ。『自分の手が届く範囲は絶対に救う』ってのが俺の矜持なんだ。」

 

???「ぷっ…あははは…!」

 

あまりに珍妙な答えに、思わず吹き出してしまった。慌てて口を押えても、堪え切れない。

 

「そ、そこまで笑うこたぁねえだろ…」

 

彼がガックリと肩を落として俯いた。

 

???「ご、ごめんなさい…あはは…!」

 

口をとがらせる彼を見ながら、私はこの人が悪い人ではない事を知った。

 

 

ひとしきり笑った後、私は彼に頭を下げた。

 

???「それじゃあ、よろしくお願いします。助けてもらった上に、こんな事まで…あの、お返しといってはなんですけど…これをどうぞ。まあ、こんなんじゃ、全然足りないと思うんですけど…」

 

私は、今所持しているコルの全額を入力した。何しろ、彼が提示してきたアイテムは、全てレアアイテムに等しい。

 

「ああ、お金はいらないよ。お礼は、君の使い魔の蘇生ってことで。」

 

しかし、彼はお金を受け取らずにOKボタンを押してしまった。

 

???「す、すみません、何から何まで…あ、自己紹介まだでしたね。あたしは、シリカっていいます。」

 

「シリカ、か。俺はカイタだ。しばらくの間、よろしく。」

 

彼が手を差し出してきたので、私も手を出して彼と握手した。

 

カイタ「ほんじゃ、歩くのもかったるいから、転移結晶で行くぞ。…え~っと、拠点はどこだ?」

 

シリカ「えっと、今は35層に居ます。」

 

カイタ「よしきた。掴まれ。」

 

シリカ「は、はい!」

 

彼が転移結晶を取り出し、手を出してきたので、その手を掴んだ。

 

 

 

35層に着いて、レストランへ向かう途中、いろいろな人に話しかけられた。

 

おそらく、私がフリーのプレイヤーになったという噂をかぎつけたのだろう。

 

次々と私をパーティーに誘ってくる。

 

私は、嫌みに聞こえないように、

 

シリカ「すいません…お話はありがたいんですが…しばらくこの人とパーティーを組む事になったので…」

 

そう言うしかなかった。

 

カイタ「…すげぇな。シリカって人気者なんだな。」

 

シリカ「…いえ、所詮マスコットかアイドルとして見られてるだけですよ。なのに、『竜使いシリカ』なんて言われて、いい気になってたから…」

 

カイタ「………」

 

「あ、シリカちゃん!」

 

…またか。

 

35層に着いてから、何度この掛け声を聞いたのだろう。

 

「良かった~帰ってこられたんだ!…って、あのフェザーリドラは?」

 

シリカ「…ピナは、死にました。でも…!」

 

「そ、そっか。死んじゃったんだね…だ、大丈夫!新しい使い魔探してあげるよ!」

 

「そ、そうだよ!大丈夫、きっとすぐに見つかるよ!」

 

シリカ「…え?そ、そんなの…!」

 

カイタ「おい、てめぇら…さっきからぴーちくぱーちく…雁首そろえて「新しい使い魔」だぁ?寝言は寝て言えや。今のシリカの心中分かって言ってんのか…?」

 

その時、黙って話を聞いていたカイタさんが、その人達に詰め寄った。

 

「な、なんだよ!部外者は黙ってろ!俺は今シリカちゃんと話して…」

 

(ブオンッ!)

 

片手剣が音を立てて振るわれた。

 

「ひいっ!」

 

カイタ「……質問してんのは俺だ…!」

 

シリカ「カ、カイタさん…」

 

カイタ「能天気なテメェらは知らないだろうがな、シリカにとって、ピナは心の支えだったんだ!…そして、死なせてしまった事に責任を感じて、前を向こうとしている!…そりゃ、二人がどれだけ一緒だったかなんて、俺ごときにはわかりゃしないさ。だがな…シリカはピナを大切に思っているからこそ、ピナが死んだ事に対してきちんと責任を取ろうとしてるんだよ!」

 

「!!!」

 

カイタ「彼女にとってピナは、死んだら終わりのこの世界で生きる希望そのものだったんだよ!そいつにまた会える方法があるんなら、それを叶えてやるべきだろ!」

 

「…ごめんね、シリカちゃん。無神経な事言って。…ピナちゃん、戻ってくるといいね。」

 

シリカ「は、はい!」

 

「じゃあ、俺たちは行くね。頑張ってね!」

 

 

カイタ「…すまんな、シリカ。急に怒鳴ったりして。…怖かっただろ?」

 

シリカ「い、いえ!確かにちょっと怖かったけど…それ以上にとてもうれしかったです!」

 

カイタ「…そうか。そう言ってくれるとありがたいよ。」

 

 

 

ようやくプレイヤーの山を抜け、宿屋に着いた所で、

 

「あらぁ?シリカちゃんじゃない。」

 

一番見たくない顔を見つけてしまった。

 

シリカ「……なんですか?ロザリアさん。」

 

つい数時間前までは一緒に行動をしていたパーティーの一人、ロザリアさんだ。

 

ロザリア「あら?あのトカゲ、どうしちゃったの?………もしかしてぇ?」

 

ロザリアさんが嫌な笑みを浮かべる。

 

シリカ「…死にました。でも、必ず生き返らせます!」

 

ロザリア「へぇ。…って事は、『思い出の丘』に行くつもり?あんた程度のレベルで攻略できるの?」

 

…悔しいが、私の素のレベルではその通りだ。

 

カイタ「出来るさ。彼女ならな。」

 

その時、黙っていたカイタさんが声を上げた。

 

カイタ「あのダンジョン、コツを掴めばそこまで難しくはないからな。」

 

ロザリア「…アンタもそいつに誑し込まれた口?そんなに強そうに見えないけど。」

 

カイタ「行こうぜシリカ。あんなのは、小鳥のさえずりと同じだ。無視するに限る。」

 

カイタさんが私の肩に手を置いて宿屋に導いた。

 

 

カイタ「すみません。迷惑かけて…」

 

宿のレストランに入って、真っ先に、カイタさんに謝った。

 

カイタ「ん?ああ、気にするな。それよか、まずは腹ごしらえだ。俺もう腹ペコだよ…」

 

そう言ってテーブルに突っ伏すのが面白くて笑ってしまった。

 

その後は運ばれてきた料理を、一緒に食べた。

 

…しばらくして。

 

シリカ「…なんであんな意地悪言うのかな。」

 

そう、ポツリとこぼした。

 

カイタさんは、真顔になり、私にこう聞いた。

 

カイタ「…シリカは、MMOはSAOが初めてってことか?」

 

シリカ「はい。」

 

カイタ「そっか…まあ、俺もそうなんだけどな。でも、MMOに限らず、どんなゲームでも、人格が変わる奴はいる。アナログのボードゲームだって同じだ。嬉々として相手を陥れたりする奴はぎょうさん居る。……だがSAOは別だ。」

 

そう言ってカイタさんは険しい顔をする。

 

カイタ「…皆が皆協力して、このゲームをクリアする、なんて事は土台無茶な話だってのは百も承知だ。でもそれにしたって、アイテムを強奪する奴や、挙句の果ては殺人までする奴らも居る。…多すぎるほどだ。」

 

シリカ「………」

 

カイタ「ここでそういう事をする奴らは、現実でもクズ同然の人間なんだと思う。……まあ、俺も人の事は言えんけどな。…人助けも「相手が困っていそう」っていう勝手な判断でやってる。…なにより、多数の人の事を考えた結果、ある一人のプレイヤーを、それもゲーム初日に孤独に追い込んだりしたかもしれないんだ…」

 

シリカ「カイタさんは、悪い人じゃありません。」

 

私は、俯くカイタさんの手を握った。

 

シリカ「だって、あたしを助けてくれたもん。」

 

カイタ「…参ったな。慰めるはずが、逆に俺が慰められるなんて。間抜けもいいとこだな…でも、ありがとうな。」

 

そう言って、カイタさんは微笑んだ。

 

その途端、

 

シリカ「~~~っ!!///」

 

あたしの心臓の鼓動がひと際大きく聞こえた気がした。

 

顔も熱くなる。

 

シリカ「あ~っ、熱いなぁ!で、デザートまだかなぁ!?///」

 

手を放して、慌てて誤魔化す。

 

デザートを待つ間、カイタさんは、ずっとぽかんとしていた。

 

 

 

その夜、眠れなかったあたしは、ベッドでゴロゴロしていた。

 

その時、

 

カイタ「シリカ、入っていいか?明日の段取りを一緒に話したいんだが…」

 

シリカ「あ、は~い!すぐに開けます。」

 

あたしはベッドから飛び降り、ドアを開けた。

 

…自分の装備を確認せずに。

 

カイタ「悪いな。こんな夜遅く…にぃぃぃぃい!?///」

 

シリカ「えっ!?ど、どうしたんですか?」

 

カイタ「…装備、見てみ。///」

 

言われて自分を見てみると、下着だけだった。

 

シリカ「………………え?」

 

一瞬何が起きているかわからなかったが、すぐに頭が理解に追いつき、

 

シリカ「……………いやぁぁぁぁぁ!!////」

 

カイタ「ほげぇぇぇぇぇ!!!!」

 

気が付くと、カイタさんをはたき倒していた。

 

 

シリカ「す、すみません。取り乱して…///」

 

カイタ「い、いや、こっちもすまん…///」

 

お互いに謝るも、気まずさが勝って、会話が続かなかった。

 

何より、生まれてこの方下着姿を他人に、それも男性にさらしたことはなかったので、ゲームの中とは言え余計に恥ずかしかった。

 

カイタ「そ、それより、説明始めてもいいかな…?」

 

シリカ「は、はい、お願いします…。」

 

すると、カイタさんは、見たことのないアイテムを取り出した。

 

それは小さな小箱で、中に小さな水晶球が入っていた。

 

シリカ「きれい…それ、なんですか?」

 

カイタ「ミラージュ・スフィアっていうんだ。訳あって俺の相棒からちょっと拝借してたんだ。…え~っと、確かここを…ぽちっとな。」

 

そう言って、カイタさんが水晶をクリックする。

 

すると、47層の全体図がホログラムで部屋に投影された。

 

普段見る簡素なマップとは大違いだ。

 

カイタ「転移門がここだ。件の丘へは、この道を通っていくんだ。それで…」

 

それからしばらくは、カイタさんによる47層の解説が続いた。

 

あたしにも分かりやすく伝わるように、時々嚙み砕いて丁寧に説明してくれた。

 

その声を聴くだけで、なんだか安心した。守られているという感じがした。

 

そして、説明が終盤に差し掛かったころ。

 

カイタ「それで、この道を進めば、丘に…っ!?」

 

カイタさんが突然、ドアへ顔を向けた。

 

シリカ「ど、どうしたんですk」

 

聞こうとしたら、手で制された。

 

カイタさんが自らの武器を実体化させ、忍び足でドアに近づく。

 

…そして。

 

(バンッッッ!!)

 

カイタ「誰だっっっ!!!!」

 

刑事ドラマみたいに、足でドアを蹴破って、武器を前に振りかざした。

 

遠ざかる足音が聞こえたので、あたしも慌てて彼の体の下から顔を出した。

 

見ると、階段を駆け下りる人影が見えた。

 

シリカ「な、何ですか!?」

 

カイタ「ちっ、くそが…話を聞かれてやがった…それも下手するとかなり最初のほうから…」

 

シリカ「え!?で、でも、ドア越しじゃあ、声は聞こえないんじゃ…?」

 

カイタ「それがそうでもないんだ。盗聴スキルを上げてる奴はドア越しでも聞こえる。…もっとも、そんなスキル上げてる奴はそうそういないし、居たとしてもろくでもない奴だろうけどな。」

 

あたし達はドアを閉め、部屋に戻った。

 

カイタ「まさか、な…」

 

カイタさんは何かつぶやきながら考え込んでいる。

 

シリカ「な、なんで盗み聞きなんか…」

 

不安で震えるあたしにカイタさんは笑って言った。

 

カイタ「まあ、明日には分かるだろ。ほら、子どもはさっさと寝た寝た!明日は朝から出発するぞー!」

 

…子供扱いされるのは気に食わないが、彼の言う通りだ。

 

シリカ「分かりました。…カイタさん、明日はよろしくお願いします。」

 

カイタ「おう。」

 

でも、さっきの事もあり、あたしはなんだか不安だった。

 

シリカ「…あのぉ、カイタさん?」

 

カイタ「ん?どうした?」

 

シリカ「…一人で寝るの不安だから…あたしが寝るまで…そばに居て…くれますか…?」

 

…我ながらすごい事を頼んでしまった。

 

カイタ「…へっ?…ま、まあ、分かった…」

 

そう言って、カイタさんはベッドのそばに椅子を持ってきて座り、ストレージの整理を始めた。

 

シリカ「…ありがとう…ございます…」

 

あたしは安心感に包まれながら、意識を闇に飛ばした…。

 

 

 

(カイタside)

 

カイタ(…寝たか。)

 

シリカが寝たのを確認した俺は、メッセージを立ち上げた。

 

まずは、レンコへの連絡。

 

今日戻れなかった挙句、明日も遅くなりそうなので、メッセージを入れておく。

 

 

━ ━ ━ ━

 

カイタ「悪い。あしたまで用事が長引きそうだ。今は出先の宿に居る。明日中にはそっちに戻る。」

 

レンコ「分かった。私も、アスナと受けてるクエストに思いのほか手こずってるから。終わるのは明日になりそう。」

 

カイタ「了解。明日、用事が終わり次第、52層に戻る。」

 

━ ━ ━ ━ 

 

 

次に、キリトだ。

 

確認したい事があったからだ。

 

 

━ ━ ━ ━

 

カイタ「夜分にすまない。今大丈夫か?」

 

キリト「ああ、大丈夫だ。…それで、どうした?」

 

カイタ「…ちょっと気になる事があってな。多分、お前にも関係することだぜ。キリト。」

 

キリト「…どういう事だ?」

 

カイタ「……………」

 

キリト「……?」

 

カイタ「……………」

 

キリト「……………………!」

 

カイタ「…………………?」

 

キリト「……………………………」

 

カイタ「…じゃあ、そういう事で。頼むぜ?」

 

キリト「お前もな。」

 

━ ━ ━ ━

 

 

カイタ「…さて、用意は済んだな…。」

 

途端に眠気が襲ってきた。

 

カイタ「…眠みぃ。」

 

そして、そのまま椅子で寝落ちしてしまった。

 

 

(シリカside)

 

シリカ「…ふああぁぁあ…」

 

朝7時。あたしはアラームで目を覚ました。

 

…そして、すぐ横を見て、ぎょっとした。

 

ベッドの横には椅子が置いてあり、その椅子に寄り掛かるようにして、カイタさんが寝ていた。

 

カイタ「すぅ…すぅ…んうう…」

 

シリカ(寝顔…可愛い///)

 

彼の寝顔は、昨日までの頼りがいのある雰囲気と違い、別人のように感じられた。

 

カイタ「……んんう?」

 

シリカ(ひえぇぇっ、お、起きたっ!!///)

 

あやうく、寝顔をじっと見てたのがバレたかと思った。

 

カイタ「…おお、おはよう、ひぃ、ひぃ…シリカ…悪い、あくびが…」

 

シリカ「ふふっ…。大丈夫ですよ。」

 

カイタ「すまんな…それじゃ、準備が出来次第、出発するぞ。」

 

シリカ「はい。分かりました。」

 

 

カイタ「準備できたか?」

 

シリカ「はい。いつでも大丈夫です。」

 

カイタ「よーし。それじゃ、行くぞ、掴まれよ…転移!フローリア!」

 

そして、あたしたちの姿は、35層から消えた。

 

 

シリカ「わああぁぁぁぁ!!!すごいきれい!!」

 

47層についたあたしの目に飛び込んできたのは、辺り一面に咲き乱れる花だった。

 

カイタ「この層は通称、『フラワーガーデン』って呼ばれててな。街はおろか、フロア全体が花まみれなんだ。」

 

シリカ「へぇ~。そうなんですね。」

 

あたしは、さまざまな花を見て楽しんだ。

 

ふと周りを見ると、ある事に気づいた。

 

それは、周りの小道を歩いている人々は、ほとんどが男女の二人連れだ。

 

…つまり、それが意味するところは。

 

シリカ(ま、まさかここって…デートスポット!?///)

 

あたしは隣にたつカイタさんを見上げる。

 

シリカ(…あたし達も、そう見えてるのかな?)

 

そう思った途端、顔が熱くなる。それを誤魔化すために、

 

シリカ「さ、さあ!早くフィールドに行きましょう!///」

 

カイタ「お、おう…?」

 

 

 

しばらく歩き、安全圏から出る寸前で、

 

カイタ「…シリカ、転移結晶の用意しとけ。」

 

シリカ「えっ?」

 

カイタ「万が一予想外の事が起きて、俺が離脱しろと言ったら、その結晶で、どこでもいいから転移しろ。2人とも帰れないなんて、そんな事はバカげている。…これだけは約束してくれ。出来ないなら、俺はここで降りる。」

 

そこまでの彼からは考えられない剣幕に圧倒され、あたしは

 

シリカ「…はいっ」

 

そう答えるしかなかった。

 

カイタ「…まあ、そう怖がるな。万が一の話だ。俺がいる限り、お前に危害は加えさせない。」

 

そう言ってニヤッと笑いながら、あたしの頭をなでるカイタさん。

 

シリカ(わああああぁぁぁぁぁ!!!///)

 

カイタ「さ、行こうぜ!ピナが俺たちを待ってる!」

 

シリカ「は、はいぃぃ…///」

 

 

 

あたし達は意気揚々と出発した。

 

…ところが。

 

シリカ「きゃああああ!!!」

 

カイタ「シリカ、オチツケェ!!」

 

最初のモンスターと出遭ったが、あたしはパニックになっていた。

 

というのも、この層のモンスターは基本的に植物系のモンスターが多いが、それがさながら「歩く花」であり、気持ち悪いのだ。

 

カイタ「落ち着け、シリカ!そいつ自体は大して強くない!落ち着いて弱点を狙えば倒せるはずだ!」

 

シリカ「そ、そんな事言ったって…!」

 

(ひゅるるる…ガシッ!)

 

シリカ「へっ…!?きゃああああ!!!」

 

カイタ「な!?シリカっ!」

 

そうこうする内に、あたしはモンスターのつたに、足を絡まれてしまった。

 

シリカ「いやあああ!降ろしてぇぇぇ!!」

 

カイタ「ま、待ってろシリカ!今助け…」

 

(ぺらんっ)

 

シリカ「きゃあああ!!///」

 

カイタ「なあああぁぁぁぁ!?///」

 

あたしは今、モンスターに宙ぶらりんにされている。

 

という事は当然、重力は逆向きに働くという事で、あたしのスカートもそれに従ってめくれた。

 

シリカ「カ、カイタさ~ん!見てないで助けてくださ~い!!///」

 

カイタ「い、いやそんな無茶な…///」

 

カイタさんは目を隠してこちらを見ていないため、動く事が出来ない。

 

シリカ「このぉ…!いい加減に、しろぉ!!!」

 

あたしは、押えていたスカートから手を離し、足を絡めているつたを切断。落ち際にそいつの弱点にソードスキルを一発喰らわせた。

 

なんとか命中し、モンスターは消滅した。

 

着地した後、あたしは真っ先に確認した。

 

シリカ「……見ました?///」

 

カイタ「…そのようなことがあろうはずがございません///」

 

カイタさんが目元を手で覆ったまま答える。

 

良かった、見られてなk

 

カイタ「白いものを見たなどと、その気になっていたシリカの姿は…」

 

シリカ「」

 

カイタ「…あ」

 

シリカ「見てるじゃないですかああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!/////」

 

(ビターン!)

 

カイタ「アゲ━━━━ッ!!!」

 

 

 

その後、戦闘が5回程あったけど、あたしが慣れた事もあり、割とすぐに終わった。

 

そして、小川にかかった小さな橋を渡った所で、

 

カイタ「ほら。あれが『思い出の丘』だ。もう後は、登るだけだと思う。…ただ、こういうのは大抵、Mobモンスターが多くなってくるのがお約束だ。だから、気を引き締めて行こう。」

 

シリカ「はい、わかりました。」

 

カイタさんの言葉通り、そこからは、モンスターのポップが激しくなった。

 

しかし、あたしの短剣は(カイタさんがくれたというのもあるけど)その大群を難なく撃退した。

 

でも、カイタさんの強さも、別格だった。35層でドランクエイプをあっさり倒した時と同じように、余裕を感じさせる。あっという間に倒し、あたしの援護をしてくれる。

 

と、ここで一つの疑問が浮かんだ。

 

35層であたしをたすけてくれた時に、とてつもない攻撃をしていたが、あれはどういった類のソードスキルなのだろう。

 

もちろん、自分とあの人では使っている武器が違うので、もしかしたら、あたしが知らないだけでそういうスキルがあるのかも知れない。

 

だが、相手を斬るだけでなく、氷漬けにしてから斬るというのはかなり特殊だ。

 

シリカ(…無事にピナを蘇生出来たら、聞いてみよう。)

 

そう思った。

 

 

そして、

 

カイタ「ふい~。到着っと。…あのあたりに花が咲いてるはずだ。行ってきな。」

 

シリカ「はい。……わぁ。きれいな花。」

 

岩の間に咲いていた花『プネウマの花』。

 

シリカ「これがあれば、ピナを…」

 

カイタ「ああ。…とはいえ、ここでやって何かあったら大変だから、いったん町まで戻ろう。」

 

シリカ「はい。」

 

あたしは、花をストレージにしまって、カイタさんの後について丘を降り始めた。

 

 

 

そして、さっきの橋まで戻ってきた所で、前を歩いていたカイタさんが手を挙げた。

 

彼は橋の向こうを見つめていた。

 

カイタ「あんま下手に待ち伏せされてると、こっちも声かけにくいんだよなぁ…」

 

彼は苦笑いしてそう言った。

 

と思ったら、

 

カイタ「だからさっさと出てこいや。それともなんだ?こっちから名前呼んでやろうか?」

 

見たこともない険しい顔になった。

 

私はあわてて向こうに目を凝らす。でも、何も見えない。あるのは葉っぱが動いている木と草むr

 

 

 

シリカ(え?)

 

葉っぱが動いている?でも、今は風は吹いていない。変だ。

 

…少し経つと、グリーンのカーソルが現れた。

 

橋の向こうに現れたのは、私の知っている顔だった。

 

シリカ「ろ…ロザリアさん!?どうしてここに…!?」

 

ロザリア「アタシのハイディングを見破るなんて、そこの剣士さん、なかなか高い索敵スキルじゃない。」

 

カイタ「お褒めの言葉痛み入るぜ、ロザリアさん。」

 

カイタさんが、おどけたように返事をする。

 

…でも、なにかがおかしい。

 

ロザリアさんの視線が私に移る。

 

ロザリア「…その様子だと、『プネウマの花』をゲットしたみたいね。」

 

…そして、嫌な予感は的中した。

 

ロザリア「…じゃあ、それ渡してちょうだい。」

 

シリカ「…え?」

 

カイタ「ほざけ。苦労して手に入れたもんを、はいそうですかって簡単に渡すと思ってんのかよ。ロザリアさん。……いや、」

 

 

 

 

 

「オレンジギルド、『タイタンズハンド』のリーダーさん、と言った方がいいかな?」

 

 

 

 

 

シリカ「…え!?」

 

さまざまな情報が多すぎて、理解が追いつかなくなった。

 

 

 

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

Sword Art Masked Rider

 

「それがレベル制MMOの理不尽さというものなんだ…!」

 

襲い掛かかる闇の住人

 

(なんであれをあいつらが…!?)

 

闇を打ち消すべく

 

【シャイニングホッパー!】

 

輝きのバッタが跳躍する!

 

次回、『ソノ男、仮面の戦士につき』

 

 

(まさかとは思うが…茅場のバックに絡んでるのか…?ZAIAが…)

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

…おかしい、シリカがメインの話のはずなのに、今回キリトの話が大半を占めてるぞ?

次回、ようやくアレが登場します。

お気に入り登録していただいた、流星皇さん、ライトニングブラストさん、kazuakiさん、ありがとうございます!

また、(名前を明かしていいのか分からないので明かしませんが)ルビ振りのやり方を親切に教えてくださった方もいました!
早速前回の一部に取り入れ、修正しました!
ありがとうございます!
今後の参考にさせていただきます!

年内の投稿はこれが最後です。

皆さん、よいお年を。

来年も、この小説をよろしくお願いいたします。

それでは、また。

…前書きでふざけたので、課題という名の処刑をされに行ってきます。



追伸
この第8話を書き始めた12月18日に、劇場版ソードアート・オンラインで、ARアイドル「ユナ」の声を演じられた、神田沙也加さんが急逝されました。この話を投稿するころには、あの出来事からもう一週間ほど経過していると思われ、「お前今頃になって何言ってんだ?」と言われかねない事も重々承知しておりますが、一人のSAOファンとして、彼女のご冥福をお祈りいたします。




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Ep.9 ソノ男、仮面の戦士につき

第9話です。

あけおめです。

新年一発目の投稿、お待たせしました。

クリスマスに続いて、年越しもボッチでした。
元カノと過ごしていた中学時代が懐かしい…(遠い目)

大晦日から気温差にやられて風邪引いてました。
でも寝てるのも暇なので執筆しました。
結果。
また思ったより早く書きあがりました。

以上。






(カイタside)

 

俺はシリカに付き添って、「思い出の丘」へ向かった。

 

そこに生えると言われる、ビーストテイマーの使い魔を蘇生する事の出来る花、「プネウマの花」を入手する事が目的だ。

 

…だが、そうは問屋が卸さないとは、この事だろう。

 

花を手に入れた俺たちの前に、シリカを狙うプレイヤー、ロザリアが立ちはだかった。

 

カイタ「ロザリアさん…いや、オレンジギルド、「タイタンズハンド」のリーダーさん、と言った方がいいかな?」

 

俺はロザリアを煽りつつも、念のため確認を取った。

 

ロザリア「…へぇ、そこまで知ってたんだ。」

 

カイタ(…やっぱりか。)

 

思った通りだった。

 

この層に来る一週間前位に、キリトからある情報を得ていた。

 

その時は大して意味のない情報だったが、あの宿屋でロザリアを一目見た瞬間に、キリトの情報を思い出した。

 

そして、キリトから情報を補填してもらい、あいつがオレンジギルドのリーダーではないかという結論に至った。

 

シリカ「オ、オレンジ!?…で、でも、ロザリアさんのカーソルは、グリーンですよ!?」

 

確かに、ロザリアのカーソルは犯罪者を表すオレンジではなく、グリーンのままだ。

 

だが、それもオレンジギルド特有の単純なからくりによるものだ。

 

カイタ「オレンジギルドと言っても、全員が犯罪者カラーじゃない場合もあるんだ。グリーンのメンバーが獲物を見繕い、そいつのパーティーに紛れ込み、待ち伏せのポイントへ誘導する。典型的な手口だ。」

 

ちなみにこれは、キリトから得た知識だ。

 

カイタ「ついでに言うと、昨夜俺たちの会話を盗み聞きしてたのも、あいつの仲間って所だ。」

 

さらに補足説明をする。

 

シリカ「じゃ、じゃあ、ここ最近一緒のパーティーにいたのは…」

 

途端に俺たちを見ていたロザリアが声を上げる。

 

ロザリア「ええ、そうよ。たんまりお金が貯まる、狩り時を待ってたのよ。まあ、今日にでも殺るつもりだったけどね。」

 

ロザリアの口の端が上がり、イヤな笑いに変わる。

 

ロザリア「だから一番狙ってたアンタがパーティー抜けちゃったって聞いたときは、どうしようかと思ったわよ。でも、アンタが『プネウマの花』を探しに行くって情報が入ったから、こりゃ天からの恵みだと思ってアンタのところに一人派遣したのよ。」

 

カイタ「ついに本性表しやがったな。クズ野郎。」

 

俺はロザリアを睨みつける。

 

ロザリア「あーら、怖い怖い。…そういえば、剣士サン。あんた、アタシがオレンジのリーダーだって分かってて、その子に付き合ったのってどうして?本物のバカかしら?それともまさか、ほんとに体で誑し込まれちゃったのかしらぁん??」

 

…クズもここまで来ると哀れになってくる。

 

俺は、今にも短剣を抜いて飛び掛かりそうなシリカを抑えながらこう言った。

 

カイタ「はぁ…あいにくだがどっちも違う。俺はアンタを探してたんだよ。…正確には、アンタを探してたやつから頼まれて、アンタを探してたんだがな。」

 

ロザリア「はぁ?」

 

そして俺は怒りを抑えながら、キリトから聞いた情報を確認の意味合いも込めて暴露する。

 

カイタ「…アンタ、10日前に、38層で『シルバーフラグス』っつうギルドを襲ったみたいじゃねえか。ギルドのメンバー4人が殺害され、リーダーだけは命からがら脱出した。そのリーダーは毎日最前線のゲート前で、泣きながら敵討ちをしてくれるやつを探してた。実際俺もそいつは見たことある。」

 

ロザリア「…ああ、あの貧乏な、大した収穫も無かった連中ね。」

 

ロザリアがあくびをしながらそう返す。

 

……もうだめだ。抑えきれない。

 

俺は自分から殺気が立ち上るのを自覚しながらこう付け加えた。

 

カイタ「だが、リーダーは依頼を引き受けた俺の知り合いに、ある条件を出した。それは、そいつらを殺さずに、黒鉄宮の監獄に入れてくれ、というもんだった。…あんたに、あの人の気持ちが分かるか?」

 

ロザリア「知らないわよ。そんな事。ここで人を殺したって、ほんとにその人が死ぬ証拠なんてないし、第一、その状態で現実に戻ったところで、罪に問われるわけでもないし。」

 

途端に、ロザリアの目に、狂暴な光が宿る。

 

ロザリア「アタシはねぇ、正義とか、法律とか、そういった妙な理屈をこの世界に持ち込む奴が大嫌い。…あんたの巻いた餌に嵌ったのは認めるよ。けど、これを一人でどうにか出来ると思ってんの?」

 

その瞬間、木の陰から、たくさんのプレイヤーが出てきた。

 

大方、全員タイタンズハンドの構成員だろう。

 

その証拠に、一人を除いて全員のカーソルがオレンジになっている。

 

グリーンの一人は、俺とシリカの会話を盗み聞きしてた奴だろう。

 

シリカ「か、カイタさん、人数が多すぎます。早く逃げましょうよ…!」

 

シリカが震えながら俺に訴える。

 

それに俺は、シリカの頭をなでながら小声で答える。

 

カイタ「大丈夫だ。言っただろ。俺が逃げろというまでは、結晶を持ってれば平気だ。」

 

 

俺は盛大にため息をついてロザリアにこう言った。

 

カイタ「…お前バカか?脳みそに筍でも生えてんのか?俺がいつ、一人で挑むつったよ?」

 

ロザリア「あ?何言ってんのよ?」

 

…もう聞く事は聞けた。

 

カイタ「…先生、出番だぜ!!」

 

シリカ「え?」

 

ロザリア「なっ…!?」

 

キリト「…やっと見つけたぞ、ロザリア!」

 

俺の合図で近くで隠れていたキリトが、潜伏を解除して俺の隣に並び立つ。

 

カイタ「はーはっはっはっ!こんな事もあろうかと用意しといたんだ!

備えあれば嬉しいな☆ wwwww」

 

キリト「おい、その笑い方だとこっちが悪者みたいだぞ…」

 

すっかりツーカーの仲になった(と俺は思う)キリトが俺の態度に呆れてツッコミを入れる。

 

ロザリア「て、テメェ…待ち伏せとは卑怯だぞ!」

 

カイタ「へっ、おたくも物量作戦仕掛けただろぉが。」

 

シリカ「あ、あのぉ、カイタさん?この人は…」

 

カイタ「ああ、シリカ。紹介するぜ。コイツはキリト。俺なんかよりも断然強い、そして頼りになる…俺の相棒だ。キリト、この子はシリカだ。ビーストテイマーで、ここには彼女の使い魔を復活させるために来たんだ。」

 

キリト「よろしく。」

 

シリカ「は、はい。…あのぉ、キリト、さんはなんでここに…?」

 

キリト「ああ、実はな…」

 

実は昨夜、キリトとこんな会話をしていたのだ。

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

キリト「…どういう事だ?」

 

カイタ「お前この前、ギルド一つ壊滅させたっていう、オレンジギルドのリーダーを探してるって言ってたよな?」

 

キリト「ああ、そうだが…それがどうかしたのか?」

 

カイタ「…そいつってさ、もしかして、真っ赤な髪をカールさせた、イヤーな女か?」

 

キリト「そ、そいつだ、どこに居る!」

 

カイタ「まあ、落ち着け。そいつかもしれないってだけだ。…実は明日、47層の「思い出の丘」に行く事になってるんだ。俺の狙いが正しければ、奴もそこに現れる。そこでお前には、指定のポイントで待ち伏せをしていてほしいんだ。それで、俺が合図したら、飛び出してほしい。頼めるか?」

 

キリト「…分かった。じゃあ、丘の手前で隠れとくぜ。」

 

カイタ「…じゃあ、そういう事で。頼むぜ?」

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

シリカ「私が寝てる間にそんな事が…」

 

カイタ「ああ。という訳で、シリカ、ここはキリト大先生に任せていったん下がるぞ。」

 

シリカ「わ、分かりました。」

 

カイタ「…じゃあ、キリト、手はず通りに頼むぜ?」

 

キリト「ああ、カイタも、ちゃんとその子を守ってくれよ?」

 

「……キリト?カイタ?今あいつら、お互いをそういったか?」

 

その時、ロザリアのそばに控えていた一人のオレンジプレイヤーがそうつぶやいた。

 

「その恰好…盾無しの片手剣…。ま、まさか、<黒の剣士>…!?」

 

「そ、それにそっちは、青い目に、黄色と黒の剣…<仮面の戦士>か!?」

 

…ん?

 

<仮面の戦士>?

 

なんだってそんな名前が…

 

「ロ、ロザリアさん、こ、こいつら、ビーター上がりの、こ、攻略組だ!」

 

「黒の剣士は、単純な総合力はSAOトップクラス…仮面の戦士は総合力では黒の剣士には及ばないですけど、問題なのは彼のスキルっす!なんでも、異形の戦士に変身するとかいう噂があるんすよ!」

 

…おい誰だそんな噂流した奴は。

 

いや事実だけど。

 

カイタ(誰かに見られたのか…?)

 

まあ、そんな事はどうでもいい。

 

俺はびっくりした顔でこっちを見るシリカを連れて、キリトの後ろに下がった。

 

一方、ロザリアはここまでずっとポカンと口を開けていた。

 

と思ったら、我に返ったのか、甲高い声で叫んだ。

 

ロザリア「ば、バカ言ってんじゃないわよ!攻略組がこんな中層をうろついている訳ないでしょ!?どうせ名前を騙った偽物だよ!」

 

「そ、そうだ!それに、攻略組って言えば、金やアイテムをたんまり持っているぜ!」

 

賊たちが一斉に抜刀する。

 

それを見ても、キリトは動じなかった。

 

ロザリア「…お前ら、かかれぇ!」

 

ロザリアの掛け声と共に奴らが一斉に飛び掛かり、キリトに攻撃を加える。

 

だが、やはりキリトは動かない。防御の姿勢すら取らない。

 

シリカ「か、カイタさん!なんで動かないんですか!?このままじゃ、キリトさんが…死んじゃいますよ!!」

 

今にも飛び出しそうなシリカを抑えて俺は言った。

 

カイタ「安心しろ。シリカ。キリトのHPゲージ見てみな。」

 

シリカ「…え?」

 

キリトは防御の姿勢すらとっていないので、攻撃を受け続けている。

 

━━だが、キリトのHPゲージは減っていなかった。

 

いや、正確には、減っている。

 

しかし、10秒ほど経過すると、たちまちゲージが右端まで回復する。

 

シリカ「え…えっ?ど、どういう事ですか!?」

 

ロザリアたちも異変に気付いたようだ。

 

「こ、こいつ、不死身か!?」

 

キリト「…カイタ、見ててどうだった?」

 

キリトが俺に質問してきた。

 

カイタ「まあ、10秒で400って所かね。」

 

キリト「ああ、大体それくらいだ。」

 

「な、なんだよ、何の話をしてやがる!」

 

キリト「何って、あんたら9人が10秒で俺に与えられるダメージの総数だ。俺のレベルは78、HPは14500、さらにバトルヒーリングスキルによる自動回復が10秒で600ある。何年かかっても俺は倒せないぜ。」

 

「く、くそ、だったら、もう一人の方を…!」

 

カイタ「ああ!念の為言っとくけど、俺はそれの上位スキルの、ハイバトルヒーリング持ってるから!…まあ、最近身に付けたから、熟練度はまだまだだし、回復量もキリトに及ばないけど、5秒で250は回復するぜー!」

 

「…な、なんだよ、それ、無茶苦茶じゃねえか…」

 

キリト「ああ、そうさ。たかが数字、されど数字。それが増えるだけで、ここまでの差がつく。それがレベル制MMOの理不尽さというものなんだ…!」

 

そうキリトが吐き捨てる。

 

その声に気圧されたように、男たちがあとずさる。

 

その時、戦況を黙ってみていたロザリアが、声を上げた。

 

ロザリア「ちっ、仕方ないね!おまえら、あれを使うよ!」

 

「で、でもボス、あれはいざという時以外使うなってお達しが…」

 

ロザリア「今がその「いざという時」でなくて何だっていうんだい!つべこべ言わずお前らも出しな!」

 

そう言って、ロザリアと他の奴らも、何かをストレージから取りだした。

 

この時、俺は、(どうせ大したもんは出てこないだろう。)と高をくくっていた。

 

 

 

 

 

【フォースライザー…!】

 

 

【レイドライザー!】

 

 

 

 

 

だから、この起動音が聞こえた時、自分の耳を疑った。

 

カイタ「…………………はぁ?」

 

キリト「…え?」

 

見ると、ロザリアや、奴の仲間が腰に何かを巻いていた。

 

カイタ(嘘だろ…なんであれをあいつらが…!?)

 

それは、この世界に無いはずの「滅亡迅雷フォースライザー」と「レイドライザー」だった。

 

「滅亡迅雷フォースライザー」は、ゼロワンの敵組織である「滅亡迅雷.net」の幹部4人が使用するベルトだ。あのドライバーは、ゼロワンシステムと違い、わざわざキーを認証(オーソライズ)する必要が無く、強制的にプロテクトを解除してデータを引き出す事で変身に使う。

 

「レイドライザー」は、同じくゼロワンに登場する、世界を股にかける大企業「ZAIAエンタープライズ」の日本支社「ZAIAエンタープライズジャパン」が秘密裏に作成した、いわば人間版フォースライザーといった所だ。(もっとも、人間でも、フォースライザーを使う事は出来る。装着時に、尋常じゃない痛みが襲うが。)ただ、フォースライザーと違う所は、プロテクトを強制的に解除するのではなく、疑似的な認証(オーソライズ)を実行するという事だ。

 

カイタ(というか、そもそもなんでここに!?)

 

そう、結局のところ、俺のゼロワンシステムと同じで、本来この世界にはあるはずのない物である事に変わりはない。

 

 

【ポイズン…!】

 

【ハード!】

 

 

俺たちが混乱してる隙に、奴らはプログライズキーを起動し、それぞれのベルトに装填した。

 

 

ロザリア「…変身。」

 

「「「「「「「「「実装!」」」」」」」」」

 

 

【フォースライズ…!】

 

【レイドライズ!】

 

 

【スティングスコーピオン! Break down…!】

 

【インベイディング!ホースシュークラブ! Heavily protected battle armor equipped with extra battle specifications.《大量生産されたバトルアーマーには追加のバトル仕様が装備されています。》】

 

 

そして、ロザリアは「仮面ライダー滅」に、グリーンの一人を除く他の9人は、「バトルレイダー」に変身した。

 

シリカ「な、何ですか!?あれ!」

 

キリト「…おい、カイタ、これって。」

 

カイタ「…こいつは、想定外だったな。」

 

キリト「…どうするよ。」

 

カイタ「…どうもこうもねえよ。選手交代だ。ここは俺が出る。シリカを頼むぜ。…あと、例の回廊結晶も、準備よろしく。」

 

キリト「分かった。気を付けろよ。」

 

そういってキリトと入れ替わる。

 

キリト「コリドー・オープン!」

 

キリトが回廊結晶を手に叫ぶ。

 

すると、結晶が砕け、代わりにゲートが出現した。

 

キリト「…コイツは依頼主のリーダーが全財産をはたいて買った回廊結晶だ。行き先が黒鉄宮に設定されてる。…最終通告だ。全員、ここに入ってもらおうか。」

 

ロザリア「…いやだと言ったら?」

 

キリト「その時は…」

 

カイタ「俺が全員まとめてぶっ倒す。」

 

シリカ「か、カイタさん、何を…!?」

 

滅(ロザリア)「あらぁ。今度はアンタが遊んでくれるの?…でも悪いね。アンタの遊び相手はこいつらだ!いくら自動回復でも、この攻撃力の前では焼石に水だろ!お前ら、やっちまいな!」

 

カイタ「…あいにくとそうでもねぇんだよ。」

 

【ゼロワンドライバー!】

 

滅(ロザリア)「なっ!?それは…!?」

 

カイタ「そんな物ちらつかされちゃあ、手加減は出来ねぇな…悪いが速攻でケリを付けさせてもらう。」

 

【ジャンプ!】

【オーソライズ!】

 

上空から、データで転送されたホッパーライダモデルが降ってきた。

 

シリカ「え、ええ!?ば、バッタァァ!?」

 

カイタ「…変身!」

 

【プログライズ!】

【ライジングホッパー! A jump to the sky turns to a rider kick.(空へのジャンプはライダーキックに変わる。)

 

「な、何だ、こいつ!」

 

カイタ「俺は《仮面の戦士》…またの名を、仮面ライダー……ゼロワン!それが俺の名だ!」

 

すぐさま俺も、仮面ライダーゼロワンに変身した。

 

シリカ「ええええぇぇぇぇ!!か、カイタさんも、変身したぁぁぁ!!」

 

キリト「…おぉ、カッコいいな…」

 

後ろで、シリカが驚き、キリトが感嘆の声を上げている。

 

…そういえば、キリトは俺の正体を知ってるとはいえ、間近で変身を見たことは無かったか。

 

やはり男の子の琴線に触れるものがあるのだろうか。

 

滅(ロザリア)「…ふ、ふん!所詮姿が変わったところで同じ事!やっちまいな!」

 

ロザリアの合図で、バトルレイダーが飛び掛かってくる。

 

【アタッシュカリバー!】

 

カイタ「そらよっと!」

 

「ぐあっ!」

 

だが、俺はその突進を、アタッシュカリバーで難なく捌いた。

 

カイタ(…とは言っても、相手は人間なんだよなぁ。)

 

そう。通常のマギアであれば、ライダーキックをぶち込めば簡単に倒せる。

 

だが、今回の場合、普通にライダーキックを放ってしまうと、装着者にまでダメージが入り、最悪死に至る可能性があるかもしれない。

 

なので、攻撃を与える箇所を、レイドライザー本体に限定する必要がある。

 

ベルトが破損すれば、無傷で変身を解除させる事が出来ると思ったからだ。

 

…無論、それは俺も同じ事だが。

 

カイタ「はあぁぁぁっ!」

 

まずは、ホリゾンタル・スクエアで4体のベルトを破壊。

 

カイタ「か~ら~の~!」

 

【ブリザード!】

【(ガシュン) Progrise-key confirmed. Ready to utilize.】

【ポーラーベアーズ、アビリティ!】

【フリージング!カバンストラッシュ!】

 

硬直が解けたあと、立て続けにフリージングカバンストラッシュを発動し、こちらに向かってくる4体を氷漬けにした後、すれ違いざまに腰の辺りを切り裂いてベルトを破壊。

 

カイタ「これで…ラストォ!」

 

そして、驚きで動けない最後の一体の眼前に迫り、これまた最近身に付けた、片手剣の単発重攻撃「ヴォーパル・ストライク」をゼロ距離でベルトにぶち込んだ。

 

その間、1分にも満たない出来事だった。

 

俺に襲い掛かろうとしたバトルレイダーたちは、一人残らずベルトを破壊され、地面に転がった。

 

滅(ロザリア)「う、嘘だろ…」

 

シリカ「い、一瞬で…」

 

カイタ「あとはテメェだけだ…ロザリア!」

 

ロザリア「くっ…」

 

カイタ「おらああ!!」

 

俺は大きく飛びあがり、太陽を背にして、カリバーを振り下ろした。

 

そして、ロザリアまであと数メートルといったところで、

 

 

ロザリア「…な~んてね。」

 

【アタッシュアロー!】

【アローライズ!】

 

 

奴がウェポンを展開し、俺にターゲットを定め、弓を発射した。

 

カイタ「っ!?」

 

すんでの所で俺はカリバーで弓を弾いた。

 

だが、その時に発生した埃で、ロザリアを見失ってしまった。

 

カイタ「くっ…どこだ!」

 

ロザリア「あらぁ~?どこ見てるのぉ?」

 

(バンッ!)

 

カイタ「ぐあっ!」

 

俺がロザリアを見失っている隙に、奴は俺に向けて弓を連続発射。

 

数発が俺に命中し、ゲージが1割ほど減った。

 

カイタ「くそっ、ならこれで…!」

 

【ファング!】

 

俺は「バイティングシャークプログライズキー」を起動した。

 

【オーソライズ!】

【プログライズ!】

【キリキリバイ!キリキリバイ!バイティングシャーク! Fangs that can chomp through concrete.(その牙はコンクリートをも嚙み砕く。)

 

カイタ「はあっ!」

 

俺はゼロワンのハイブリッドライズの一つ「バイティングシャーク」にフォームチェンジした。

 

その後すかさず、こちらに向かって放たれた弓を、腕部に形成された「アンリミテッドチョッパー」で全て切り捨てる。

 

ロザリア「へぇ、なかなかやるじゃない。…だけどぉ、」

 

 

「後ろがお留守だったようねぇ!」

 

 

カイタ「!?」

 

完全に油断していた。

 

俺が弓に気を取られている隙に、ロザリアが背後に移動していた。

 

カイタ「しまっ…!」

 

【(ガシャン)】

 

ロザリア「今頃気づいても遅いんだよぉ!くたばりなぁぁぁ!!!」

 

【(ガシャン)スティング!ディストピア!】

 

(ガアアン!)

 

カイタ「がはっ…!?」

 

ロザリア「おおおおおらあああ!!!」

 

カイタ「ぐあぁぁぁぁっ!!!!」

 

仮面ライダー滅のライダーキック「スティングディストピア」が、俺の背中にもろに命中、あっけなくキリト達の方へ吹っ飛ばされた。さらに、その際のダメージで、強制変身解除され、生身に戻ったばかりか、俺のHPが残り5割を切っていた。

幸いだったのは、ベルトへの直撃は避けられたところだ。

 

キリト「カイタっ!!」

 

シリカ「カイタさん!!」

 

キリト達が駆け寄ってくる。

 

ロザリア「あはは!仮面の戦士っていうから、どんな力か期待してたけど、所詮はこの程度だったって事ねぇ!…このままアンタを倒して、アタシがアンタを越えてやるわ!」

 

カイタ「ぐっ…」

 

今回ばかりは厳しいか。そう思った。

 

が、

 

カイタ(ん?)

 

直後、強制変身解除したと同時に出たウィンドウを見て気が変わった。

 

そこには、

 

 

『スキル《仮面ライダーゼロワン》の熟練度が500になりました。EX(エクストラ)スキル「シャイニングホッパー」が使用可能になりました。』

 

 

と書かれていた。

 

カイタ(……まじで?)

 

もしかすると、勝てるのではないだろうか。

 

…だが、相手はゼロワンでも屈指の実力を誇るライダー。

 

もし失敗すれば…。

 

いや、そんなことは無い。

 

回復ポーションを飲んだ俺は、ロザリアに言い放つ。

 

カイタ「…お前じゃ勝てない。」

 

ロザリア「…あ?」

 

恐れるな。

 

俺は仮面ライダー。

 

いつでもその限界を超えてみせる…!

 

カイタ「俺を越えられるのは…ただ一人!」

 

【シャイニングジャンプ!】

 

カイタ「俺だ!」

 

【オーソライズ!】

 

俺はキーを展開し、頭上に掲げた。

 

そこに、一筋の光が差し込み、円形のゲートが出現。

 

そのまま、鍵を回して開ける要領で、キーを回すと、さながらオンブバッタの様に、ライジングホッパーのライダモデルを背中に乗せたシャイニングホッパーのライダモデルが出現した。

 

俺はそのまま腕をクロスし、叫び、キーをドライバーに装填した。

 

カイタ「…変身!」

 

 

 

【プログライズ!】

 

The rider kick increases the power by adding to brightness!(ライダーキックは輝きを纏って強くなる!)

 

【シャイニングホッパー!】

 

When I shine,darkness fades.(俺が輝く時、闇は消える。)

 

 

 

かくして俺は、ゼロワンの強化形態である「シャイニングホッパー」に変身した。

 

シリカ「あ、あれ?なんか、さっきまでと違う…?」

 

ロザリア「なによ。少し変わっただけじゃない。…もう飽きたわ。」

 

【(ガシュン)ポイズン…!】

 

ロザリア「だからさぁ…」

 

【(ガシュン) Progrise-key confirmed. Ready to utilize.】

【スコーピオンズ、アビリティ!】

 

ロザリア「さっさと死ねぇぇぇ!!!!」

 

【スティング!カバンシュート!】

 

いくつもの矢が分裂して襲い掛かってきた。

 

シリカ「か、カイタさん!逃げてください!こんなの避けられませんよ!」

 

確かに、避けられないだろう。

 

…さっきまでの俺なら。

 

カイタ「…行くぞ」

 

俺は意識を集中させた。

 

すると、ゼロワンのスーツ頭部にある、「ホッパーマスク」の視覚装置「ホッパーアイ」に、様々な俺の(・・)行動パターンが表示される。

 

カイタ「…逆算、終わったぜ?」

 

(シュンシュンシュンッ!)

 

シリカ「え!?」

 

キリト「は、速いっ…!」

 

ロザリア「…は、はぁ!?ぜ、全部躱した、だと…テメェ、何しやがった!」

 

カイタ「…言っただろ。『逆算』って。」

 

実は、これらは全て、シャイニングホッパーの能力によるものだ。

 

シャイニングホッパーの最大の特徴。

 

それは、額部分に搭載された演算処理装置「シャイニングアリスマテック」だ。

 

この装置は、敵をラーニングする事で行動を予測して、約25000通りの対処パターンを算出、その中から最適解をわずか約0.01秒で導き出す事が出来る。

 

早い話、敵が取ろうとする行動をその直前で逆予測し、別の手を打つ事が出来るという事だ。

 

これを利用し、ロザリアが放つ弓の弾道を予測し、それを避けるルートを導きださせた。

 

ロザリア「な…何だと…」

 

カイタ「おら、よそ見してる場合か?」

 

(シュンシュンシュンッ!)

 

ロザリア「なっ、ぐあああ!!」

 

俺の攻撃速度についてこれず、ロザリアが盛大に吹っ飛ぶ。

 

が、やはり変身解除とまではいかないようだ。

 

カイタ「これで…終わりだ!」

 

俺は、ドライバーのキーを押し込んだ。

 

【シャイニング!インパクト!】

 

カイタ「はああぁぁ…おらああぁぁ!」

 

一瞬でロザリアに詰め寄り、空に打ち上げる。

 

そこから、シャイニングホッパーの機動力を生かして、空に舞い上がるロザリアに連続でライダーキックをお見舞いする。

 

そして最後に、ロザリアの移動地点に先回りして、

 

 

カイタ「こ れ で も く ら え ぇ ぇ ぇ ぇ !」

 

 

ロザリア「ぐはああああぁぁぁ!!!」

 

スタンプを押すが如く、奴の体にとどめの一撃を叩き込んだ。

 

そのまま、地面に落下し、地面にはクレーターのような物が出来上がっていた。

 

その瞬間、ロザリアの体に電流が走り、スーツが砕け散るように、変身が強制解除された。

 

見ると、俺の足は奴のベルトに食い込んでおり、完全に破壊されていた。

 

ロザリア「う…ぐ…」

 

カイタ「…ったく、手間かけさせやがって。」

 

俺は、シャイニングホッパープログライズキーをドライバーから抜いて、変身を解除しながらつぶやいた。

 

シリカ「…か、カイタさん…すごかったです…」

 

キリト「……ロザリア、神妙にしてもらおうか。すでにあんたの仲間は黒鉄宮へいったぜ。」

 

離れていたキリトとシリカが近くにやってくる。

 

ロザリア「く、くそ…アタシは行かねぇぞ…!」

 

カイタ「へっ、往生際が悪いな…!」

 

俺は片手剣を取り出し、ロザリアの顔面にかざす。

 

ロザリア「…やりたきゃやれ。言っとくが、グリーンのアタシを傷つけたら…!」

 

その挑発に、俺は冷たく切り返す。

 

カイタ「…あいにく、俺はソロだ。一日二日オレンジになるくらい、どうって事ない。」

 

俺は、ロザリアの首元へ向け、剣を振り下ろした。

 

 

(シリカside)

 

ロザリアさんが斬られる所を想像して、あたしは目を瞑る。

 

…だが、斬撃音が聞こえない。

 

そっと目を開けると、地面にへたり込むロザリアさんの首元の、わずか数ミリ手前で、剣は止まっていた。

 

カイタ「…なーんてな。」

 

カイタさんが笑いながら剣を引く。

 

カイタ「お前みたいなクズを斬った所で、俺の剣が汚れちまうからなぁ…。」

 

ロザリアさんがほっと息をつく。

 

カイタ「……失せろ。」

 

ロザリア「…へっ?」

 

その瞬間、背筋が凍った気がした。

 

カイタさんから、言い知れない殺気が立ち上ったからだ。

 

あたしは思わずキリトさんの背中に隠れた。

 

カイタ「俺の気が変わらねぇ内に……」

 

「とっとと消えな……!!!」

 

ロザリア「……ぃ」

 

カイタ「…あ?」

 

ロザリア「……甘いなぁぁぁぁ!!!」

 

その瞬間、ロザリアさんが隠していた短剣でカイタさんに飛びかかった。

 

シリカ「カイタさんっっ!!」

 

カイタ「…………」

 

(すっ…)

 

カイタさんの頬に赤い傷のエフェクトが入り、ロザリアさんのカーソルがグリーンからオレンジになった。

 

カイタ「シリカ、耳と目ぇ閉じてろ。」

 

 

「ここから先は、お前が見聞きしていいもんじゃない。」

 

 

シリカ「…えっ?」

 

 

(キリトside)

 

カイタがシリカに耳と目を閉じろと指示して、彼女は困惑しながらそれに従った。

 

キリト(…何する気だ?)

 

と、その瞬間、

 

(ブオンッ!!)

 

F1カーみたいな音が響き、カイタがロザリアの背後に回った。

 

ロザリア「なっ!?」

 

(ズパンっ!!)

 

ロザリア「がはっ…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

キリト「っ…!」

 

一瞬でロザリアの右肩が切り落とされた。

 

このままではカイタがオレンジに…

 

と思いかけて、彼のカーソルが変わらない事に気づいた。

 

原因はすぐに分かった。

 

キリト(そうか…!ロザリアはグリーンのカイタを傷つけた、だからカーソルが変わった。だが、カイタが攻撃しても、すでに犯罪フラグが立っているロザリア相手では、カーソルが変わる事は無い!)

 

ロザリアは肩を切断された痛みで悶絶している。

 

この世界では、肩の切断などは、部位欠損として扱われ、数分経てば生えてくるし、痛みも現実ほどではないと聞く。だが、それでもやっぱり斬られれば痛いものは痛いのだろう。

 

カイタ「……バカが。言っただろ。“気が変わる前に消えろ”って。……まあいい。要件を一つ思い出したからな。」

 

カイタに表情は無い。

 

カイタ「……テメェらが犯した罪は今更言うまでもねぇ。さっさと黒鉄宮に行って反省してきな。」

 

代わりに、ロザリアに剣を突きつけて、こう言った。

 

カイタ「…だが、あれ(・・)はどこで手に入れた?」

 

…凍えるような殺気と共に。

 

カイタ「…あれは、テメェらみたいな、何の目標もなく、だらだらと殺人で暇を潰すようなクズが使っていいもんじゃない。」

 

あれとは、ロザリアが使っていたベルトだろう。

 

おそらく、カイタの言う「仮面ライダー」とやらに関係する品なんだろうが…

 

ロザリア「そ、そんなのアンタには関係な…」

 

(ザンッ!)

 

ロザリア「がああ゛あ゛あ゛っ!!」

 

さらにカイタが左腕を切り落とした。

 

カイタ「あいにくと、関係大ありなんだよ…!」

 

ロザリア「や、やめろ…来るな!」

 

カイタ「…どうする?洗いざらいしゃべれば、ゲームクリアまでは五体満足で生きていられるぜぇ?…ブタ箱の中でな。」

 

ロザリア「……ひ、ひぃ…!!」

 

カイタ「さあ、選べよ。自由か…命か。」

 

カイタがロザリアの首元に剣を突きつける。

 

キリト「か、カイタ…もうそれくらいで…」

 

と、動こうとしたが、体が言う事を聞かなかった。

 

カイタ「5…4…」

 

カイタが指を出してカウントダウンを始めた。

 

まずい。このままじゃ、あいつは本当に…

 

カイタ「3…2…」

 

やめろ…やめろ。お前はそんな事をしたらいけない。

 

カイタ「1…ぜr」

 

 

ロザリア「助けてくれ!!!」

 

 

カウントが0になる寸前、ロザリアが悲鳴を上げた。

 

ロザリア「わ、分かったよ。あんたの質問に答える。牢屋にも行くよ…!」

 

カイタ「…話すんだな?」

 

ロザリア「なんでも話すよ!だから…!」

 

あのロザリアが見る影もなく、カイタに泣きついている。

 

カイタ「よーし!それじゃ、話してくれ!」

 

途端に、さっきまでのカイタの殺気が消え、いつもの雰囲気に戻った。

 

ロザリア「…あのベルトは、私らの雇い主が渡した物だ。」

 

カイタ「…雇い主?誰だ?カーソルは?」

 

ロザリア「詳しくは分からない。…ただ、カーソルはオレンジだった。」

 

キリト「…まあ、そうだろうな。」

 

ロザリア「…それから、こうも言っていた。」

 

 

「革命を始めよう。…俺たちがゼロから立ち上げ、イチから始めた。」

 

 

カイタ「…っ!?」

 

キリト「…革命だと?どうせろくな事じゃねぇな…なあ、カイタ?」

 

カイタ「………」

 

キリト「…カイタ?」

 

カイタ「…っ、あ、ああ、スマン。ちょっと考え事を…」

 

ロザリア「あたしが知ってるのはこれだけだ…ちゃ、ちゃんと話したぞ?だ、だから命は…」

 

カイタ「…はっ、さんざん人を殺したテメェが命乞いたぁ、面白い冗談だ。」

 

ロザリア「ひっ…!」

 

カイタ「安心しろ。俺は約束は守る主義だ。…という訳で、ほら、きりきり歩いた!」

 

カイタはそう言って、俺が展開した回廊結晶のゲートに指をさした。

 

ロザリア「わ、分かったよ…」

 

そう言ってロザリアがゲートに入り、彼女の体が消えると同時にゲートも消えた。

 

カイタ「…キリト、もうシリカの目を開けさせてもいいぜ。」

 

キリト「あ、ああ…」

 

そして、シリカの肩を叩いた。

 

 

(シリカside)

 

キリトさんに肩を叩かれ、目を開けた。

 

そこに、ロザリアさんは居なかった。

 

シリカ「あ、あのう、ロザリアさんは…?」

 

カイタ「ああ、あいつなら、黒鉄宮に送ってやったぜ。」

 

シリカ「そ、そうですか…」

 

すると、カイタさんが頭を下げて言った。

 

カイタ「…シリカ、すまんかった。お前を囮にするような真似をしてしまった。」

 

シリカ「い、いいえ…」

 

あたしは、そう答えるしかなかった。

 

キリト「…じゃあ、俺はこれで。依頼の報告に行かねぇとな。シリカ、気を付けて帰れよ。」

 

カイタ「ああ。キリト、お前のおかげで助かったぜ。」

 

シリカ「はい。キリトさん、ありがとうございました。」

 

 

その後、宿屋につくまで、あたし達は無言だった。

 

宿の部屋に入ってからも、カイタさんは夕日の差し込む窓辺に寄り掛かっていた。

 

あたしは、心を決めて口を開いた。

 

シリカ「…行ってしまうんですか?」

 

カイタ「…ああ。キリトの奴もそうだが、俺も2日ほど前線から離れちまったからな…早いとこ戻んねぇと。」

 

シリカ「…そう、ですよね…。」

 

本音を言えば、連れて行ってほしかった。

 

だが、今日の戦闘を見て、自分と彼には、努力だけではどうにもならない壁がある事を思い知ってしまった。

 

それに、彼のあの力を必要とする人は大勢いるだろう。

 

シリカ「……っ。」

 

思わず泣きそうになる。

 

すると、まるであたしの心を読んだかのように、カイタさんが頭を優しくなでてきた。

 

カイタ「そうしょげるな。キリトはああ言ってたし、俺も奴の考えには賛成だ。でもな、レベルやステータスなんざ、ただの数字、幻想だ。それよりも大事な強さってのがあるんじゃないかって、俺は思う。」

 

そして、初めて会った時の、あの微笑みを向けてくれる。

 

カイタ「…いつか、現実でも会おう。約束だ。」

 

シリカ「…は、はい!」

 

なぜか、心が温かくなる。

 

彼のその言葉で、また頑張れる気がする。

 

カイタ「…それじゃ、ピナを呼び戻してあげよう。花の雫を掛ければ、復活するはずだ。」

 

シリカ「…はい。」

 

あたしは、ストレージから花を取り出した。

 

シリカ(ピナ…。いっぱい、い~っぱい、お話してあげるね。…今日の冒険の話を、ピナを救ってくれた、あたしを守ってくれた、あたしのたった一日だけの英雄(ヒーロー)さん…「仮面ライダー」のお話を…。)

 

そう思いながら、あたしはピナの心に、花の雫を掛けた。

 

 

 

 

(カイタside)

 

ピナの心に雫が垂れるのを見ながら、俺はロザリアの証言について考えていた。

 

俺が手に入れたゼロワンシステム以外に、この世界にあるはずのない「滅亡迅雷フォースライザー」や「レイドライザー」のシステム。

 

そして、ロザリアにフォースライザーを渡した依頼主が言った「ゼロから立ち上げて、イチから始めた」という言葉。

 

俺にはそれの言葉が「ゼロワン」を指しているように感じられた。

 

それが意味するのは━━━。

 

 

カイタ(まさかとは思うが…茅場のバックに絡んでるのか…?ZAIAが…)

 

 

 

世界を股にかける「ZAIAエンタープライズ」の日本支部は、飛電インテリジェンスの買収を企んでいた。

 

さらに、ゼロワンでの全てのはじまりの事件「デイブレイク」を引き起こした元凶でもある。

 

 

カイタ(何か…やばいのが動きだしている気がする…)

 

 

俺は、不安と共に、そう思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(レンコside)

 

???「やっと…やっと…!」

 

レンコ「ふう…終わったぁ…!お疲れ様、アスナ!」

 

アスナ「ええ!レンコもね!」

 

私はたった今、アスナと、アスナの親友と一緒に、あるクエストをクリアした所だ。

 

そのクエストの報酬は、大きな水車が付いたプレイヤーホーム、それも職人用だった。

 

というのも、そのアスナの親友は、職人クラスで鍛冶スキルをマスターしているのだ。いわば、私たち攻略組とは違った方面からアインクラッドを攻略していると言える。

 

???「二人とも、本当にありがとう!」

 

アスナ「ううん、リズが頑張って作った剣の想いが届いたのよ!」

 

レンコ「そうですよ!この家は、リズベットさんがここまで毎日頑張った結晶です!」

 

???「もう、二人とも…大げさなんだから…」

 

レンコ「ねえ、早速、装備をメンテナンスしてくれるかな…?お客第一号として!」

 

アスナ「あっ!レンコずるい!私が一番になろうと思ったのにー!」

 

???「あはは!焦らずとも、ちゃんと二人まとめて見てやるわよー!!」

 

そして私たちは店に向かって歩きだした。

 

???「…と、その前に…これ言わないと、始まらないわね…!」

 

そして、振り向いた彼女は高らかに言い放った。

 

 

 

リズベット「リズベット武具店、ただいまより開店です!」

 

 

 

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

Sword Art Masked Rider

 

「なにすんのよこのーっ!」

 

新たなる剣への道

 

「はいはい、さいですか…(ぼそっ)メンドクセェ…」

 

鉱石を探し求め、

 

「ブレスよ、避けて!」

 

いざ、ドラゴンどドンパチ!?

 

次回、『鍛冶屋のカノジョと鉱石と』

 

 

「…俺はこの手が届くなら、必ず救う主義なんだ。たとえ、それで自分が死んでも。」

 

 

 

 

 




新年一発目の投稿、いかがだったでしょうか。

…書きながら、クズクズ言われるロザリアを少しかわいそうに思った。

まあ、原作よりイヤな奴になるようにしちまったからな。シカタナイネ。

あと、言い忘れてましたが、熱に浮かされながら書いたので、いつもよりおふざけ要素マシマシです。

お気に入り登録していただいた、ゴリラバルカンさん、Stringsさん、ありがとうございます!
ゴリラバルカンさんには、☆9評価もしていただきました!

それでは、また。

今年もよろしくお願いします。


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Ep.10 鍛冶屋のカノジョと鉱石と

第10話です。(やっとだ…)

うう…1月中に出せなかった無能な自分をお許し下さい…。

暇つぶしにこれまでの話見返してたら、一番グダグダだと思った初変身の回(第4話)が飛びぬけてUA多くて不思議に思った…
変身シーンが人気かと思ったけど、違うだろうな…変身一番最後だけだし…。


フェイタル・バレットめっちゃおもろいです。←1月中に出せなかったのは全てこいつのせい()
自分はメインアームをソードにしており、そのソードがサブアームのアサルトライフルの約5倍の攻撃力になってる上に、STR-AGI型という、超近接特化仕様にしておりますw





 

(カイタside)

 

 

カイタ「……あー、剣が欲しい。」

 

レンコ「藪から棒だねぇ…。」

 

 

━━2024年6月24日。

 

現在の最前線は第63層。

 

この日は、レンコと共に広場で朝食を食べながら、彼女に問いかけた突拍子もない願望から始まった。

 

カイタ「…いや、ね?言葉通り、剣がほしいなぁって。」

 

レンコ「持ってないの?」

 

カイタ「あるにはあるんだけど、そろそろガタが来そうなんだよ…新しいのを買おうにも、現状NPCの武具屋で売ってる片手剣は、こいつが一番いいスペックなんだよ…それに、もし新しい剣を手に入れるなら、出来ればこいつと同等のスペックか、或いはそれ以上がいいんだよな…」

 

俺は、少し下の層のNPCの武具屋で買った「センチュリオン・ブレード」と、アタッシュカリバーを掲げながらそう言った。

 

レンコ「うーん…」

 

カイタ「…まあ、いいや。ちょっくらレアドロップの剣狙いに…」

 

レンコ「あ!そうだ!」

 

カイタ「おわっ!…どしたよ、大声だして。びっくりした。」

 

レンコ「ご、ごめん…」

 

しょんぼりしながら謝る彼女。…可愛い。

 

っと、いかんいかん。

 

俺は一体何を考えてんだか。

 

レンコ「え~っとね。実は、知り合いに鍛冶を営んでいる人がいるの。」

 

カイタ「へぇ~そうなんだいや待て待て。知り合いって、いつ知り合ったんだ?」

 

レンコ「数か月前に、カイタが38層での用事が長引いた事があったでしょ?」

 

カイタ「ああ、あったな。(まあ、実際は47層なんだけどな。)」

 

レンコ「その時に、私はアスナのクエストを手伝っていて、そこで知り合ったの。その人は、アスナの親友でもあって、ゲーム開始当初から鍛冶スキルを磨き続けているベテランなんだよ。」

 

カイタ「へぇ~、そりゃ期待できそうだな。」

 

レンコ「…あ!そういえば…!」

 

カイタ「ん?今度は何だ?」

 

レンコ「あの時、カイタは何やってたの?」

 

カイタ「え、いや、だから野暮用があって…」

 

レンコ「ふ~ん。あんな意味不明な(・・・・・)異常ステータスが付くほどの野暮用って何なの?」

 

レンコがジト目になりながら、俺に詰め寄る。

 

…まさか。

 

いや、そんなはずはない。

 

あの事を彼女が知っているはずは…

 

カイタ「…え?い、異常ステータス?な、何の事だ?」

 

レンコ「とぼけないで。クラインさんから聞いたんだから。」

 

カイタ「」

 

……あンの野郎。

 

レンコには心配かけたくないから黙っておいてくれと、あれほど言ったのに…!

 

 

実は、ロザリア事件の解決後、ちょっとした、いやかなりの大騒動があったのだ。

 

事の発端は、4か月前の事件解決直後にさかのぼる。

 

 

 

(2024年2月23日)

 

カイタ「…さて、すっかり遅くなっちまった。帰るか。」

 

無事にピナの蘇生を見届けた俺は、シリカの部屋がある宿を後にして、52層の宿屋に帰ろうとしていた。

 

 

 

その時、(悪い意味で)不思議なことが起こった…。

 

 

 

カイタ「っ!?」

 

俺の体が突如として硬直したのだ。

 

そしてその直後、人形のように倒れた。

 

口は動くが手足が全く動かず、俺は歩くポーズのまま地面に倒れているという珍妙な状態になっていた。

 

カイタ(……はぇ?)

 

俺は全く訳が分からなかった。

 

しかも最悪な事に、大通りのど真ん中で倒れてしまった。

 

当然ながら、そのあたりにいた人々全員が、俺に注目する。

 

カイタ(な、何だこれ…!?一体何が…)

 

「すまない!ちょっとどいてくれ!」

 

その時、人込みの中から、聞き覚えのある声がした。

 

「……おいおい。見覚えのある奴が見えたから、まさかとは思ったが…何やってんだお前は…」

 

カイタ「キ、キリトォ~…う、動かねぇんだよ…」

 

敵討ちの報告を終えたのであろうキリトが、倒れ伏す俺の前にしゃがみこんだ。

 

キリト「…とりあえず、お前をどっかに運ぶぞ?52層でいいか?」

 

カイタ「……面目ねぇ。」

 

そう言ったキリトは、恐ろしいほどの筋力パラメータ値で俺を担ぎ上げ、鍛え上げたAGI値に物を言わせたスピードで、その場から離脱した。

 

 

 

キリト「…それで、何があった?」

 

52層の人目のつかない場所に来てから、キリトが俺に聞いた。

 

俺は今だ動けないままだ。

 

カイタ「わ、分からねぇ…いきなり体が動かなくなって…」

 

キリト「…ステータスは?」

 

カイタ「へっ?」

 

キリト「ステータスだよ。麻痺毒とか、なんか変なの付いてないか?」

 

カイタ「…それがあったか。」

 

言われて俺は、左上のHPバーを見た。なにか異常ステータスが発生した場合は、バーの付近にアイコンが表示される。

 

カイタ「……んん?」

 

キリト「あったか?」

 

カイタ「…あった。あったが…なんだこりゃ?」

 

キリト「何がついてた?」

 

 

カイタ「筋肉痛。」

 

 

キリト「…」

 

カイタ「……」

 

キリト「………Pardon?」

 

カイタ「筋肉痛。」

 

キリト「…筋肉痛って、あの筋肉痛か?」

 

カイタ「うん。あの筋肉痛。」

 

キリト「…そんな異常ステータス初耳だぞ。いや、そもそもβの時も無かったような…」

 

カイタ「え、マジかよ。」

 

キリト「そもそもなんでそんなのが…」

 

カイタ「…それなんだが、たぶん原因分かったかも。」

 

キリト「なんだよ。」

 

カイタ「……さっき俺が使った、ゼロワンのあれ(・・)。」

 

キリト「………え。」

 

そう。

シャイニングホッパーの特徴である、演算処理装置「シャイニングアリスマテック」を用いた高速演算を用いた、先読み戦法。

問題は、どうやらシャイニングホッパーには、変身者の潜在能力を強制的に引き出す能力も備わっているらしい。いわゆる、「力の前借り」というやつだ。それによって、敵を上回る戦力を発揮できるが、当然それは、システムによって強制的に体の限界を超えて動かしている。そんなのがある程度の時間続けば、筋肉痛にもなろうという物だ。実際、ゼロワン本編でも、シャイニングホッパーのフィードバックに苦しむ様子が多々見られた。

…もっとも、仮想世界で同じ様な現象が起こるとは思わなかったが。

幸いだったのは、これが起きたのが、戦闘後だったという事だ。さらに長時間戦い続けた場合、敵の目の前で動けなくなる可能性だってあった。

 

 

カイタ「…あんな人間を越えたスピードで動けば、そうなるのも納得だけど…ここ仮想世界だぞ?」

 

キリト「それだけ茅場がリアルにこだわったって事じゃないか…?」

 

カイタ「それにしたってここまでこだわる必要あったのかね…おのれ茅場めぇ…」

 

キリト「…それで、どうするんだ?」

 

カイタ「…分からん。けど、レンコには目を付けられないようにしないと。目を付けられたら最後、追及されるに決まってる。あまりあいつに心配かけたくないからな…」

 

「お?誰かと思ったらお前らか。何してんだ?」

 

ふと、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

キリト「…クラインじゃないか。久しぶりだな。」

 

ギルド「風林火山」を引き連れたクラインが、そこにいた。

 

クライン「おう!相変わらず元気でやってるみたいだな…と言いたいが、カイタは何やってんだ?」

 

キリト「それがだな…カクカクシカジカ。」

 

クライン「ナルホドサンカク。…そりゃまあ、災難だったな…。」

 

カイタ「てめぇ、他人事みたいに…」

 

クライン「い、いや、何でそうなる!?」

 

俺がクラインを睨むと、クラインが慌てる。

 

クライン「それはそれとして…ほんとにそれ、どうするよ?」

 

キリト「…解毒結晶で戻らないのか?」

 

カイタ「手が動かない状況でどうやって取り出せと?」

 

キリト「…あ、そうか…じゃあ、俺が持ってる結晶使おう。あとでお前が持ってるやつを一つくれ。」

 

カイタ「…もう治るならなんでもいいです…」

 

そう言ってキリトは、解毒結晶を取り出し、俺にかざした。

 

キリト「………」

 

カイタ「………」

 

クライン「………どうだ?」

 

クラインに聞かれ、俺は身体が動くか確かめた。

 

…だが。

 

カイタ「…だみだこりゃ。」

 

以前として、身体は動かないままだった。

 

キリト「…まじかよ。」

 

クライン「結晶で治らないって、まずくないか?」

 

確かに、クラインの言う通りだ。このSAOでの状態異常は、大抵の事はこの「解毒結晶」で何とかなるものだ。だが、それが結晶で治らないとなると、かなりまずい。

 

キリト「…となると、あとは時間経過か…。」

 

カイタ「…だな。」

 

さすがに時間経過でも治らないなんてことは無いはずだ。

 

…無いよな?

 

 

~3分後~

 

カイタ「…動いたぁ!」

 

クライン「うぉっ!びっくりした…!」

 

キリト「…どうやら時間経過で治りそうだな。でも…」

 

カイタ「問題はその所要時間だな…。今回の場合だと、大体1、2時間か…こりゃ、うかつにシャイニングホッパーは使えんな…」

 

キリト「…まあ、そこはお前次第だ。それで、帰れそうか?」

 

カイタ「ああ。…二人とも、すまねぇな。忙しいだろうに、手間かけさせちまった。」

 

キリト「いや、別に大丈夫だ。」

 

クライン「おうともさ!これからも何かあったら言えよ?」

 

カイタ「…そうさせてもらう。あ、そうだ、クライン。今回の事…レンコには黙っておいてくれねぇか?…あまり余計な心配はさせたくないからさ…。」

 

クライン「…ん。分かったぜ。」

 

 

 

 

そして、今に至る。

 

カイタ(クラインの野郎、いつか締め上げてやる…。)

 

俺はレンコに追及されながら、そう心に決めた。

 

 

 

 

 

カイタ「え~っと、『リズベット武具店』…っと、ここみたいだな…」

 

数時間後、苦し紛れの言い訳をして、なんとかレンコに解放してもらった俺は、彼女に教えられた、48層のリンダースという街にある「リズベット武具店」の前に立っていた。

 

そもそも48層自体が、言うなれば職人街であり、数多くの職人用プレイヤーホームが構えられている。その内の一つ、小川のそばに立地し、大きな水車が付いた一軒家が、件のリズベット武具店だ。

その景観に驚嘆しながら、俺は店の中に入った。

 

カイタ「…ごめんくださーい。」

 

(…シーン)

 

カイタ「…ありゃ、留守か?」

 

「は~い、今行きまーす!」

 

カイタ「あっ…工房にいたのか。ずいぶん仕事熱心だな。こりゃ期待できそうだ。」

 

しばらくして、奥の扉から出てきたのは、おおよそ鍛冶屋とは程遠い服装にピンク色の髪とそばかすが特徴の女の子だった。

 

「リズベット武具店へようこそ!今日はどんなご用件で?」

 

カイタ(接客もちゃんとできてる。…この人が店主のリズベットさん、かな?)

「え~っと、片手剣を見繕ってくれるかな…?」

 

リズベット「あ、片手剣はこちらの棚です。」

 

カイタ「あ、いや、そうじゃなくて…オーダーメイドを頼みたいんだけど…」

 

そう言った途端、彼女の顔が怪訝そうな表情になる。

…なにか気に障る事を言ったのだろうか。

…ひょっとして、俺の予算を気にしてるのか?

 

カイタ「ああ、予算なら気にしなくていいから。今君が作れる最高の剣を作って欲しいんだけど…」

 

リズベット「…と、言われましても、具体的な方針といいますか、プロパティの目標値とかを出してもらわないと…」

 

…言われてみればそうだ。

 

一口に片手剣と言っても、パワー型やスピード型など、多種多様だ。

 

カイタ「ああ、そうだったな。それじゃあ…」

 

そういって俺は、

 

カイタ「こいつと同等、もしくはそれ以上のスペックの剣を頼みたい。」

 

迷わずアタッシュカリバーを、店のカウンターの上に置いた。

 

 

(リズベットside)

 

カイタ「こいつと同等、もしくはそれ以上のスペックの剣を頼みたい。」

 

あたしにプロパティの目標値を聞かれた目の前の客は、店のカウンターに剣を置いた。

 

黒のベースカラーに黄色のラインが入った本体に、輝く銀色の刀身の片手剣。パッと見た所、そこまで強そうな剣に見えなかった。しかも、安っぽい簡素な作りになっている。これなら何とかなりそうだ。そう思った。

 

だが、実際に持ってみると、意外とずっしりきた。そこそこ高い要求筋力値だ。

 

そして何より、剣のプロパティメニューを出したあたしは、この剣の異常さに気づいた。

 

通常、メニューには、その武器のカテゴリが明記されている。また、武器の固有名や、武器の制作者の銘がある場合はそれも明記される。

 

例えば、あたしの商売知り合いのエギルは、両手斧を使う。つまり、カテゴリー《アックス/ツーハンド》と言った具合だ。

 

だが、今回の剣には、こう書かれていた。

 

 

Category《ミドルソード/ワンハンド/アタッシュウェポンシリーズ》

Name《アタッシュカリバー》

 

 

リズベット(アタッシュウェポン…?聞いたこと無いわね…しかも「シリーズ」って事は、他にも同じような武器があるという事?)

 

おまけに、メニューの下の方に、今まで見たことがない表記もあった。

 

 

Ability《Sword Skill》

※この武器には、以下の固有ソードスキルが付与されています。

「カバンストラッシュ」

「カバンダイナミック」

「バーチカル・ツインストラッシュ」

「ホリゾンタル・ツインストラッシュ」

「バーチカル・フォースストラッシュ」

「ホリゾンタル・フォースストラッシュ」

 

 

リズベット(武器固有のソードスキルですって!?…この人、どんな剣を持ってんのよ!)

 

おそらく、というか確実にこの武器は、ドロップ等で手に入れた一品物だろう。もっとも、モンスターのドロップ品で、固有のソードスキルが付与されている武器など聞いた事ないけど。

 

分からない事が多かったが、何よりやる気が出てきた。

 

鍛冶屋の意地にかけて、ドロップ品の剣に負けるわけにはいかない。

 

…さすがにこの、「固有ソードスキル」には敵わないかもしれないけど。

 

あたしは、片手剣が置いてある棚に向かい、そこから一振りの剣を取り出した。

 

鞘から抜いた刀身は金色に輝き、まるで雷を纏っているかの様に見える。この剣は、少し前にあたしが作った、おそらく現状での最高傑作だ。

 

リズベット「こちらはどうでしょう?…予算を気にしないなら、今のところうちの最高の品ですが…」

 

彼は剣を取り出し、二振りほど振って……首を傾げた。

 

「…悪くない。悪くないけど…ちょっと軽いかな?」

 

やはりダメか。

 

まあ、使ったインゴットが、スピード系だし…そこは仕方ない。

 

この剣が敵わないとなると、あたしでは応えきれない。

 

悔しいが、他の店に行ってもらおう。

 

あたしはこれまで、大抵の顧客の要望には応えてきた。だからこそ、余計に悔しかった。

 

リズベット「……すみません。要望に応えられなくて…」

 

「いや、こっちも無理難題を言ってスマンかった…」

 

あたしは、知り合いの鍛冶屋に紹介状を書こうと思い、カウンターに足を向けた。

 

…その時だった。

 

「…いや~、しかし、ベテランだって聞いたから期待したが…骨折り損だったかな…」

 

リズベット(……は?)

 

さすがにカチンときた。

 

リズベット「何ですって!?そこまで言うんなら試し切りしてみなさいよ!」

 

「え…じゃ、じゃあ、試してみていいかな?」

 

リズベット「…何をよ。」

 

「何って、耐久値だよ。」

 

リズベット「ええ!どうぞご自由に!その剣、耐久値もうちの剣では一番だからね!」

 

「いや、それはいいんだが…本当にいいんだな?」

 

リズベット「あらぁ?怖いのね?散々大口叩いた後で、あたしの剣の性能を知るのが!」

 

「いや、お前がいいならいいんだけどさ…どうなっても知らねぇぞ?」

 

そう言って彼は、件のアタッシュカリバーをカウンターに置き、あたしの剣を振りかぶった。

 

「セイッ!」

 

 

(バキーン!!)

 

リズベット「」

 

そしてあっさり折れた。

 

カイタ「…ウワッ!折れたァ!」

 

…あたしの最高傑作の剣が。

 

「…ほら。言わんこっちゃ…」

 

リズベット「ぎゃああああ!!!」

 

あたしは絶叫しながら彼の右手に飛びつき、剣の残骸をもぎ取り、眺めまわした。

 

…だが、すぐに修復不可能と分かった。それと同時に、持ってた残骸が音を当てて消えた。

 

リズベット「…な…な…何すんのよ~っ!!!折れちゃったじゃない!!」

 

「…い、いや…まさかあそこまで簡単に折れるとは思わなくて…」

 

リズベット「…それはあれなの?あたしの剣が思ったよりヤワっちかったって意味!?」

 

「え~、まあ、その……そうとも言います、はい…」

 

リズベット「開き直るなぁ!!言っときますけどね、あたしが本気出せば、あんたのその剣がポックリ逝っちゃう剣をいっくらでも作れるんですからね!」

 

「…ほぉ?こいつがぽっくり逝く剣、ねぇ…?」

 

 

(カイタside)

 

カイタ「…ほぉ?こいつがぽっくり逝く剣、ねぇ…?」

 

SAOに規定されている武器ならともかく、このアタッシュカリバーが折れる所など、想像がつかない。

そう思いながら、俺は彼女に言い返す。

 

リズベット「ムッキ~!!そこまで言うなら、最初から付き合ってもらうわよ!」

 

カイタ「…え~っと、それはつまり、あれか?採掘系のクエストに付き合えと?」

 

リズベット「そんなもんじゃ済まさないわよ?インゴット取りに行く所から付き合ってもらうんだから!」

 

カイタ「…一応聞く。それって、どこのだ?」

 

リズベット「55層のドラゴンからインゴットが手に入るって噂があるの。」

 

カイタ「…ああ、なんか聞いたことはある。」

 

リズベット「そのクエストに付き合ってもらうわよ!」

 

カイタ「…それだったら、俺だけが行った方がいい気がするんだけど?」

 

リズベット「あら、『インゴットのドロップには、マスタースミスがパーティーに居る必要がある』って条件が付いてるクエストは、少なくないわよ~?」

 

カイタ「はいはい、さいですか…(ぼそっ)メンドクセェ…」

 

リズベット「ふふん!あんたには、きりきり働いてもらうわよ!覚悟してなさいよね!」

 

そう言ってリズベットは、支度をする為、工房へ入っていった。

 

…彼女が入ったのを確認して、俺は小声で呟いた。

 

カイタ「…オホーツクババァ。」

 

(がちゃっ)

 

 

リズベット「何 か 言 っ た ?((⌒∇⌒))」

 

 

カイタ「ヴェッ!マリモ!Σ(・□・;)」

 

……ドアあるよね?

 

何で聞こえてんの?

 

 

 

 

数時間後。

 

俺たちは、件の鉱石が採れるドラゴンがいるという、55層へやってきていた。

 

そこにある村で、長老から話を聞く事で、ドラゴンのクエストの受注をした。

 

ちなみに、その際に、長老からバカみたいに長い話を聞かされた。

誰だって一度は経験したであろう小、中、高校の校長先生の長い話の方が、よっぽどマシというレベルだった。

 

何とか話を聞き終え、クエストフラグを立て終えた頃には、もう日は傾いていた。

 

リズベット「つ、疲れた…」

 

カイタ「フラグ立てで半日かかるなんて…はぁ…バカバカしいったらありゃしねぇ…」

 

リズベット「…どうする?ドラゴンは明日にする?」

 

カイタ「いや、ここまで来たんだ。さっと行ってさっと終わらせよう。」

 

 

(リズベットside)

数時間後、あたしたちは山の頂上にいた。

 

先に進もうとするとカイタに止められ、こう言われた。

 

カイタ「…一応、転移結晶の準備しとけ。」

 

彼の目があまりにも本気だった為、あたしはおとなしく従った。

 

カイタ「…あと、ここからは俺一人でやる。リズベットはそこらへんの水晶の陰に隠れてろ。絶対に顔を出すなよ?」

 

リズベット「リズでいいわよ。知り合いからもそう呼ばれるし。…それより、あたしも手伝うわよ。そこそこレベル高いんだから…」

 

カイタ「ダメだっっ!!!」

 

いきなりカイタが振り返り、鋭い視線でこちらの目を射抜いた。その威圧感に圧倒され、あたしは立ちすくみ、何も言い返せずに頷く。

その瞬間だけ、空気が変わったように感じた。それほどまでに、彼が醸し出す雰囲気が一変したのだ。

 

<グオオオォォォォ…!>

 

カイタ「おいでなすったか…リズ、隠れてろ!」

 

そうこうする内に、どこからか咆哮が聞こえた。

 

アタッシュカリバーを取り出したカイタの指示に従い、あたしは水晶の陰に隠れた。

 

同時に、ドラゴンが攻撃モーションに入った。

 

リズベット「ブレスよ、避けて!」

 

と、あたしが言うと同時に、カイタが剣を構えた。…まるで、狙いを定めるように。

 

リズ(…何をするつもり?)

 

構えられているカイタの剣から、飛行機が飛び立つ直前の様な甲高い音が聞こえだした。

 

カイタ「…そこだっ!」

 

その瞬間、ジェットエンジンの如く猛烈なスピードで、空中のドラゴンへ向けて飛び出した。…いや、あのスピードは、もはや弾丸だ。

 

あのソードスキルは、確か「ヴォーパル・ストライク」とか言ったか。

 

だが問題は、その攻撃の向きだ。自らブレスの中に飛び込んでいくように見える。

 

案の定、彼の体は、猛スピードでブレスの中に飲み込まれた。

 

リズベット(何やってんのよ…!?このままじゃ死んじゃうって…)

 

そう思いかけたあたしは、カイタのHPバーを見て考えを改めた。

 

確かに彼のHPは確実に減っていく。だが、5秒に一回ほど回復が発生しているようで、減ってもすぐに満タン近くになっている。

 

…あれは確か、超高レベルのバトルスキル《バトルヒーリング》だったはずだ。だがその回復量が異常すぎるほど多い。なにしろ、あのスキルの成長には、継続して大ダメージを受け続ける必要があり、現実的に安全に修行する事は不可能と言われているからだ。

 

ともかく、彼の攻撃は見事にドラゴンの腹に命中し、ドラゴンがノックバックした。

 

カイタ「…からのぉ…これで、どうだっ!」

 

そしてあろうことか、カイタが空中で次のソードスキルを発動した。

 

(ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュンヒュン!ヒュン、ヒュン、ヒュン!)

 

カイタ「おら、おら、おら、おら、おらおらおらおらおらぁぁ!!!」

 

…速すぎる。速すぎて剣筋が見えない。その上、ものすごい連撃だ。

 

カイタ「もひとつオマケだ!持ってきな!」

 

(ザンッ!)

 

結局カイタは、10連撃のソードスキルを一発も外さずに命中させ、地面に降り立った。

その時点ですでに、相手の体力の2割弱を削っていた。

 

その後も、ヴォーパル・ストライクによる突進と、10連撃のソードスキルの繰り返しであっという間に、ドラゴンのHPは残り3割を切った。

 

リズベット「その調子よ!」

 

あたしは思わず身を乗り出した。

 

カイタ「このバカたれ!まだ出てくんな!」

 

リズベット「何よ。もう終わりじゃ…」

 

その瞬間、ドラゴンのターゲットがあたしに向いた。そして、翼をはばたかせた。

 

リズベット(しまった…!突風攻撃…!)

 

気が付くと、あたしは吹き飛ばされていた。

かなり吹き飛ばされて、雪吹雪が晴れた時、

 

 

あたしは大穴の真上にいた。

 

 

リズベット「……うそ…」

 

 

あたしは無意識に手を宙に伸ばした。

 

…その手を、黒い手袋に包まれた手が掴んだ。

 

 

カイタ「リズ!俺に掴まれ!離すんじゃねえぞ!」

 

カイタの声がすぐ近くで聞こえ、あたしは無我夢中で彼に抱き着いた。

 

そのまま二人で穴を落ちていく。

 

 

(~数分前~カイタside)

 

俺は、左手を前にかざし右手の剣を肩の上で大きく引いて、片手直剣単発重攻撃「ヴォーパル・ストライク」の構えを取った。

 

今やこの技は、俺のお気に入りのソードスキルになっていた。何しろこの技は、刀身の倍以上の射程を持ちながら、両手槍に匹敵する威力を持っている、とても有能な技なのだ。そして俺は、あの超スピードの突進で、敵を一撃で倒す、或いは吹き飛ばす瞬間が最高に気持ちいいと思っている。…レンコには呆れられたが。

当然、突進方向がわずかでもずれると、敵のすぐ横をすり抜けた状態で硬直してしまい、かなりの隙を作ることになってしまうため、慎重かつ迅速に狙いを定める必要があるが。

 

それはともかく、俺はドラゴンの腹を定めて構えを取った。そして、ドラゴンがブレスを吐こうと体をのけぞらせた瞬間、

 

カイタ「…そこだっ!」

 

溜めに溜めた推進力を一気に解放し、俺は奴の腹目がけて、拳銃が発砲されるが如く飛び出した。

 

その直後、俺の体はブレスの中に飲み込まれた。

 

普通なら、こんな状態になればすぐにお陀仏になってしまうだろう。

 

だが、俺にはそうならない確信があった。

 

というのも、俺にはバトルスキルの《バトルヒーリング》の、上位版である《ハイバトルヒーリング》を習得しているからだ。効果は、数か月前のロザリア襲撃事件の時よりも上昇し、当時は5秒で250回復だったのが700回復。ブレス攻撃のダメージを完全に相殺する事はさすがに出来ないが、それでもかなり軽減する事が可能となっている。

 

そんな訳で、俺はダメージを軽減させつつ、なおも奴に向かって突進を続けた。

 

そして、狙いは外れなかったようで、奴の腹に俺の剣が命中し、ノックバックさせることに成功した。

 

カイタ「…からのぉ…これで、どうだっ!」

 

そのまま俺は空中で、最近身に付けたもう一つの切り札を発動させた。

 

…剣を構え、システムの作動を感じたら、あとはそれに身を任せる。

 

かつて、ゲーム初日に、キリトから教わった事だ。今ならあいつの言ってた意味が分かる。確かにこれは、力技でどうにかなる技ではない。

 

(ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュンヒュン!ヒュン、ヒュン、ヒュン!)

 

カイタ「おら、おら、おら、おら、おらおらおらおらおらぁぁ!!!」

 

そう思いながら俺は、流れに身を任せ剣を振った。

 

カイタ「もひとつオマケだ!持ってきな!」

 

(ザンッ!)

 

そのまま最後の一撃を放ち、地面に降り立った。…ここまでの攻撃でHPを2割ほど削れた。やはり、「奥義技」の名は伊達では無かったという事だ。

 

俺のもう一つの切り札。それは、片手直剣の最上位ソードスキルである「ノヴァ・アンセンション」だ。その連撃数は、驚愕の10連撃だ。さらに1撃目の上段斬りは発動が速いため、素早い流れに持ち込むことが出来る。この技は、キリトから、あるスキル(・・・・・)の練習に付き合う代わりにコツを教わった。通称「奥義技」と呼ばれるだけあって、その威力も格別だ。

 

この「ヴォーパル・ストライク」の突進によるノックバックと、「ノヴァ・アンセンション」による怒涛の連撃。この繰り返しで、俺は奴のHPを残り3割ほどまで削ることに成功した。

 

 

 

その時、誤算が起こった。

 

リズベット「その調子よ!」

 

なんと、リズベットが顔を出してきたのだ。

 

カイタ「このバカたれ!まだ出てくんな!」

 

急いで彼女に顔を引っ込めるように言うが、時すでに遅く、ドラゴンがターゲットを彼女に向けた。

 

と、その瞬間、ドラゴンが翼をはばたかせ、突風を巻き起こした。

 

リズベット「何よ。もう終わりじゃ…」

 

その言葉が終わらないうちに、リズベットが突風の中に飲まれて吹き飛ばされる。

 

その行く手を見て、俺は心臓が凍るかと思った。

 

というのも、その先は大きな穴だったからだ。

 

なんでこんなところにあるのか分からない。が、おそらく、トラップ用かもしれない。

 

気が付くと、俺はドラゴンを足場にして、彼女に向かって跳んでいた。

 

そのまま彼女の手を掴み、自分の方へ引き寄せる。

 

カイタ「リズ!俺に掴まれ!離すんじゃねえぞ!」

 

すぐにリズベットが俺に抱き着く。

 

そのまま二人で落下していく。

 

だが、このままではどちらも落下で死んでしまう。

 

そこで俺は、

 

カイタ「リズ!少しだけ我慢してくれ!絶対に離すなよ!」

 

リズベットに確認を取り、彼女が俺にしっかり抱き着いているかを確認した後に、さっきまで持ってたアタッシュカリバーをしまい、センチュリオン・ブレードを取り出して、前方に打ち出した。その一撃は壁に当たり、その瞬間俺たちは反対側の壁に向かって落下の角度を変えた。ぶつかる直前、俺はもう一度剣を壁に突き立てた。ガリガリと音を立てて壁が削れながら失速していくのが分かる。だが、同時に突き立ててる剣の耐久値も長くは持たない事も分かった。

 

地面に着くまで剣が持ってくれるか、否か。

 

カイタ(頼む!間に合えっ…!)

 

そして━。

 

 

背中に衝撃が走った。

 

カイタ「ぐうっ…!」

 

どうやら底に着いたようだ。恐る恐る目を開けると、俺のHPゲージはレッドゾーンで何とかとどまっており、さらに、さっきと変わらずリズベットが俺にしがみついていた。そして、視界の隅で、センチュリオン・ブレードが音を立てて消滅するのが見えた。…どうやら間に合ったようだ。

 

少ししてからリズベットが顔を上げて、俺と目が合った。

 

俺は、引きつった笑みを浮かべながら、彼女に言った。

 

カイタ「…なんとか生きてるな。」

 

(リズベットside)

 

…あたしを守るように抱きしめていたカイタが、引きつりながら、しかし安堵の笑みを浮かべて言った。

 

カイタ「…なんとか生きてるな。」

 

リズベット「う、うん…あの、ありがとう…。助けてくれて。」

 

カイタ「当然の事をしたまでだよ…俺はこの手が届くなら、必ず救う主義なんだ。たとえ、それで自分が死んでも。…それより、」

 

カイタが上を向いて言った。

 

カイタ「…ドラゴンを撒いたのはいいが、どうやって脱出しましょうかねぇ…?」

 

ほんの少し前まで見ていた空は、頭上の遥か上だった。

 

 

 

 

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

Sword Art Masked Rider

 

「…あたしもカイタも、仮想世界のデータなのに…」

 

希望を見出した彼女を救う為、

 

「…彼女の道に…手ぇ出してんじゃねえぞ!!」

 

今、輝きの戦士が━

 

【ハイパージャンプ!】

 

限界を超えて跳躍する!

 

次回、『心の温度はソコにある』

 

 

「…助けを求めている人の盾になって守れるなら本望だ。それがリズみたいな女の子なら、なおさら、な。」

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

お気に入り登録していただいた、ハルト0さん、如月 遥さん、ガンダムファフニールさん、ありがとうございます!

本作の武器は、基本的に原作遵守ですが、オリ武器だったり「SAOIF」からの登場だったりします。
なお、今回の作中にあったヴォーパル・ストライクで敵を吹き飛ばす云々は、本当に作者がフェイタル・バレットでフィールドのエネミー相手にやっていることですwマジでヴォーパル・ストライク最高っすわ。


感想、評価お待ちしてます。

それでは、また。


どうでもいいですが、twitter始めました。(詳細は活動報告で…)



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Ep.11 心の温度はソコにある①

第11話です。
…読者諸君、私は帰ってきt


カイタ「…さあ、クソ作者君?この小説、前回いつ投稿したのかな…?」

作者「……2週間前」

カイタ「約2か月前だよ大ボケが!お前意気揚々とTwitterで予告してたじゃねぇか!2月23日に投稿しますって!それがなんだこの体たらくは!テメェ今の今まで一体何やってた!?」

作者「…バイト」

カイタ「そ れ だ け か ? (⌒∇⌒)」

作者「ゴメンナサイ。週に5日のバイトの他に、空き時間は一人きりで桃鉄とFB遊んでたのと、アプリ版のパチスロ麻雀物語4がクソ面白かったのと、パチンコのガルパン劇場版で戦車道を楽しんでました。」

カイタ「このボッチのパチンカスが…そして挙句の果てに、今回から「投稿方針を変える」だと?詳しく説明してもらおうか…?」

作者「そ、それに関しては、あとがきで説明させていただきます…」

カイタ「…まあいい。とりあえず、お前には今から「賞味期限から2週間過ぎた豚肉で作った生姜焼きもどき」を食べてもらう。(実話)」

作者「え、いや、ちょっと待って」

カイタ「おい、読者の皆様に何か言う事あるだろ?」

作者「え、え~っと、」


作者「お待たせして本当にすみませんでした…。」


カイタ「 で は 、執 行 だ 」


作者「ウワアアァァァァァァァ」



カイタ「…皆様、すみません。うちの作者(粗大ごみ)が本当にすみません。では、本編へどうぞ。」




(カイタside)

 

 

 

カイタ「…ドラゴンを撒いたのはいいが、どうやって脱出しましょうかねぇ…?」

 

リズベット「え…?テレポートすればいいじゃない。」

 

そういって、リズベットは転移結晶を取り出す。

 

…だが、俺の予想が正しければ、

 

リズベット「転移!リンダース!」

 

(シーン)

 

…そんな単純な方法で脱出できるわけがないのだ。

 

リズベット「……あれ!?」

 

カイタ「…まあ、そらそうだわな。」

 

落ち込むリズベットの頭に、俺は手をのせる。

 

カイタ「まあ、そうしょげるな。結晶が使えなくても、ここがトラップである以上、何かしらの脱出方法があるはずだ。」

 

リズベット「…そんなの分からないじゃない。落ちた人が100%死ぬって想定されたトラップかもしれないのよ…?」

 

カイタ「……なるほど。言われて見ればそれもそうだ。」

 

リズベット「…あんた、少しは慰めようって気はないの!?」

 

カイタ「いや、そう言われましても…さ、さあ!アイデア絶賛募集中だー!」

 

リズベット「…そもそも、誰かに助けを求めてみたら?」

 

カイタ「…その手があったか。」

 

リズベット「いや、なんであんたが気づかないのよ?」

 

小言を吐くリズを置いておいて、早速俺はメッセージウィンドウを開いた。

 

…だが。

 

カイタ「…通信不可。」

 

リズベット「えっ?ど、どうして!?」

 

カイタ「…おそらくだが、ここがダンジョン扱いになってる可能性はある。」

 

リズベット「そ、そっか…。じゃ、じゃあ、あたし達と同じ様にドラゴン狩りに来たプレイヤーに大声で呼びかけるとか?」

 

カイタ「うん。まず聞こえないだろうな。上までざっと80m位はあるし。」

 

リズベット「…そういうあんたは何か考えがある訳?」

 

ややムキになって言い返す彼女に、俺は数分前から考えてたアイデアを言い放つ。

 

カイタ「助走付けて飛びついて、あとはよじ登る。」

 

リズベット「…」

 

カイタ「……自分で言っといてなんだけど、絶対無理だな。」

 

リズベット「………あんた、バカなの?」

 

カイタ「…バカで結構。…まあ、仮に上に登れたところでもう暗いし、遭難したらシャレにならない。こうなりゃあ、今日は野宿だな…幸い、モンスターは一匹もポップしねぇみたいだし。」

 

リズベット「…そうね。そうしましょうか。」

 

カイタ「よし。そうと決まりゃあ…。」

 

そう言って俺は、大きなランタンと、片手鍋、小さなマグカップ二つと、現実世界で言うところのインスタントスープの素みたいな小袋を二つ、ストレージから出した。

これらの品々は、全てキリトに進められて購入した物だ。

かなりの値が張ったが、それに見合った良い使い心地で、たびたび重宝している。

 

カイタ「…ここをキャンプ地とする!」

 

リズベット「…いきなり何?」

 

カイタ「……いや、言ってみたかっただけ。」

 

そんな会話を交わしながら、俺はランタンの上に鍋をセットし、そこに雪を一塊(水が無いからね。仕方ない。)放り込む。その後、スープの小袋を開けて、中身を鍋にぶち込んだ後、蓋をしてダブルクリック。すると、待ち時間のウィンドウが出てくる。

 

数分後、

 

カイタ「…え~、本日のスープ、『イノシシの干し肉とハーブのスープ』でございます。」

 

あっという間に、スープが出来上がった。

 

カイタ「…ほい、お待ちどう。温かいうちに飲めよ。」

 

リズベット「なんかシェフみたいね…」

 

カイタ「あ、言っとくけど、料理スキルは皆無だから、味は期待すんなよ?」

 

リズベット「……前言撤回するわ。」

 

(ごくっ…)

 

リズベット「…おいしい。」

 

カイタ「…そりゃ良かった。」

 

うん。やっぱりスキルが無くても、食材のランクが高いおかげで、美味しく出来た。

 

 

 




いかがだったでしょうか。

麻雀物語シリーズ、スロ版もパチ版もマジ面白いっすわ。システムもさることながら、楽曲も神曲揃いだし。そして声優陣の豪華さ。主人公の3姉妹の中の人も、ほとんどの方は一度は聞いた事ある方たちですし。

さて、ここからは真面目な話をします。

前書きでも言いましたが、すみません。結局遅れてしまいました。
……本当にごめんなさい。
結局2か月余りも音沙汰なしでした。
心配をおかけして、申し訳ありません。(そんな人は絶対に居ないと思いますが)

冒頭でお話しした、「投稿方針を変える」事について説明させていただくと、早い話が「文字数が多い話を数話に分割して投稿する」という事です。
今回の話だと、だいたい3、4話ほどになると思われます。
…ただでさえいつも多い文字数が、今回のエピソードは16000字を軽く超えているので。

その分、一回の投稿での文字数は少なくなりますが、投稿頻度は上がると思います。(絶対上がるとは言ってない)
出来るだけ1話、あるいは分割しても2話で一つのエピソードを完結出来る様に努力はしますが、今後も1話分の文字数がバカみたいに多くなった場合、誠に勝手ながらこのような方式を取らせていただきます。

次の投稿はほぼ確実に1~2週間後です。

それでは、また。


(②へ続く)



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Ep.12 心の温度はソコにある②

はい。
前回の続きです。

…多くは言いません。
では、どうぞ。


そして、スープを食べ終わった俺たちは、俺が持参してた寝袋を敷いて寝る準備をした。

 

こちらもキリト大先生一押しの品だ。断熱効果はもちろんのこと、対アクティブモンスター用の隠密(ハイディング)効果付きなのだ。

 

リズベット「…ねえ、カイタ。聞いてもいい?」

 

寝袋に入ってしばらくすると、リズが口を開いた。

 

カイタ「…どうした?」

 

リズベット「…なんであの時、あたしを助けたの?」

 

カイタ「………」

 

リズベット「あの時、あんたが助かる保証なんて、どこにも無かった。いや、そもそも、死んじゃう確率の方が高かった。…なのに、なんで…?」

 

俺は少し考え、答えた。

 

カイタ「…助けを求めている人の盾になって守れるなら本望だ。それがリズみたいな女の子なら、なおさら、な。」

 

リズベット「…ほんとバカよね、あんたって。そんな考えしてる奴、見た事無いわよ。」

 

カイタ「…そうか。」

 

(リズベットside)

 

なぜ自分を助けたのか。

 

あたしのその問いに、彼は少し間をおいて答えた。

 

リズベット「…ほんとバカよね、あんたって。そんな考えしてる奴、見た事無いわよ。」

 

だが、口ではそう言ったが、あたしは泣きそうになっていた。

 

同時に、胸の奥が切なく疼いていた。

 

いつものあたしなら、彼の言葉を、「あんたもそんな気障な事言えるのね」なんて風に片づけていただろう。でも、今はなぜか、そんな馬鹿正直で、温かい言葉が心にしみた。

 

━そして、ふと寂しくなった。いや、人恋しくなった、というべきか。

 

この世界に閉じ込められてから、無理やり押しとどめていた物が、急にあふれ出して。

 

リズベット「……ねぇ。手、握って…?」

 

気が付くと、口から小さな言葉がこぼれていた。

 

寝袋から自分の右手を出したあたしを見て、カイタは少し驚いて目を見張っていた。

 

カイタ「…全く、寂しがりなお嬢様だな。」

 

そうこぼすものの、彼も手を出して、あたしの手を握ってくれた。

 

その手は、さっき飲んだスープよりも暖かった。地面の氷の冷たさを感じない程に。

 

そして気づいた。

 

彼は今、ここで生きている。この暖かさは、彼自身の温かさ、人間の温かさだと思った。

 

リズベット「不思議ね……あたしもカイタも、仮想世界のデータなのに…」

 

カイタ「ん…?」

 

リズベット「…あたしね、心のどこかで、ずっと思ってた。この世界は偽物。単なるデータなんだ、って。…でも、気づいた。仮想も現実も関係ない。皆心を持って生きている。それこそが真実なんだ、って。」

 

カイタ「…そうか。」

 

リズベット「…ごめんね。変な事言って。」

 

カイタ「いや、気にすんな。」

 

あたしは、心臓がいつもより少し早く鼓動していることに気づきながら、意識を飛ばした。

 

 

 




いかがだったでしょうか。

遅くなりましたが、お気に入り登録していただいた、仮面大佐さん、yshibaさん、弘稔さん、ありがとうございます!

それでは、また。

(③へ続く)


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Ep.13 心の温度はソコにある③

皆さん、どーもです。

GW、いかがお過ごしでしょうか。

俺は、GWに入った途端、自堕落で怠惰な生活を送っております()
???「アナタ…怠惰でs」


SAOアリブレで、無事に魔法少女キリトをお迎え出来ました。
…まあ、その為だけに、アリブレを再インストしましたけどねw
でも、俺のアリブレ、頻繁に落ちるんですよね…。つい最近スマホを替えたばかりなのに。


(リズベットside)

 

━翌朝。

 

なんだか良い匂いがして、あたしは目が覚めた。

 

リズベット「ふわぁぁぁ…」

 

「おはようさん。よく眠れたか?」

 

振り向くと、マグカップを持ったカイタがあたしに微笑んでいた。

 

カイタ「ほら。飲めよ。スッキリするぞ?」

 

雪の上に這い出たあたしに、カイタはマグカップを差し出した。

 

中には、ハーブティーの様な飲み物が入っていた。

 

リズベット「ふぅ…おいしい。」

 

カイタ「そうか。…まあ、こいつがコーヒー、それもブラックだったら尚よかったけどな。あいにく、アインクラッド(ここ)にはそれが無いからなぁ…。」

 

リズベット「贅沢は言うもんじゃないわよ…。」

 

カイタ「さいでっか。」

 

そして、二人でお茶を飲んだ。

 

カイタ「…ところで、面白いもんを見つけたんだ。」

 

しばらくして、カイタがニヤニヤしながら話を切り出した。

 

リズベット「面白いもの?」

 

カイタ「ふっふっふっ…じゃーん!これ、なーんだ!」

 

リズベット「…あっ!?そ、それって…!?」

 

そう言って彼がストレージから取りだしたのは、白銀に透き通る、長方形の物体だった。彼の両手から、わずかにはみ出すサイズの。

 

それは鍛冶屋のあたしにとっては、見慣れた代物である、金属素材(インゴット)だった。もっとも、こんな色をしたものは見た事ないし、聞いた事も無かったが。

 

あたしは右手の指でインゴットをクリックして、ポップアップメニューを出した。そこには、

 

『クリスタライトインゴット』

 

と、書かれていた。

 

リズベット「まさか、これって…」

 

カイタ「大方、俺たちが探してたブツだろうな。…さらになんと…」

 

リズベット「ん?」

 

カイタ「インゴットのシャワーだ、それ~!!」

 

リズベット「う、うわあああぁぁぁぁ!?」

 

瞬きする間もなく、彼が次々とインゴットを実体化させた。

その数、ざっと20個ほど。

あっという間に、インゴットの小さな山が出来た。

 

リズベット「こんなにたくさん…!?ど、どうやって!?」

 

まさか、あたしが寝てる間に、あのドラゴンを討伐…

 

カイタ「そこらへん掘り返したら湯水のように出てきた。」

 

リズベット「………はい?」

 

聞き間違いだろうか。今彼は、「掘り返した」と言った。そんな犬の真似事で出てきたら苦労しないわよ…。

 

カイタ「…なんか失礼な事考えられた気がする。」

 

リズベット「え、えーっと…掘り返すって?」

 

カイタ「ん。」

 

彼が後ろを指さした。

 

そこはちょうど穴の底の中心付近で、確かにあちこちに掘り返したような形跡がある。

 

あたしは、その跡とインゴットの山を交互に見て、ため息交じりに呟いた。

 

リズベット「…こうしてみると、ドロップする、なんて思ってたのが馬鹿みたいに思えてくるわね…」

 

カイタ「同感だ。『灯台下暗し』たぁ、まさにこの事だ。」

 

リズベット「…でも、なんでここに?」

 

カイタ「…寝袋の中で、昨日の爺さんの話について考えてたんだ。ひょっとして、あの長ったらしい話のどこかに、しれっとインゴットの場所の話が混じってたんじゃないかって。」

 

リズベット「ふむふむ。」

 

カイタ「それで、爺さんが「ドラゴンは水晶をかじり、腹の中で精製する」って言ってたのを思い出したんだ。」

 

リズベット「…何が言いたいのよ。あたしにも分かるように簡潔に言いなさい!」

 

カイタ「はいはい…じゃあ、簡潔に言うと、おそらくこの縦穴はトラップじゃない。例のドラゴンの巣だ。」

 

リズベット「…えぇ!?」

 

カイタ「…ついでに、もひとつ。そのインゴットは、ドラゴンの排泄物、ウ〇コだと思われる。」

 

リズベット「えぇ…え?」

 

カイタ「………」

 

リズベット「…あんた、それ持ってんのy」

 

カイタ「よーし!!!目的のブツは回収したしー!!帰る方法を探そうー!!!なんか涙が出るけど気にしないぞー!!!」

 

…いろいろ言いたい事はあるが、とりあえず彼に向かって、心の中で合掌した。

 

…ん?

 

リズベット「…ねぇ、ここ、ドラゴンの巣だって言ってたわよね?」

 

カイタ「…ああ。ウ〇コがあるからにはそうだと…」

 

リズベット「それはいいから!…で、話を戻すけど、ドラゴンが夜行性で、朝になったって事は、巣に帰ってくるんじゃ…」

 

カイタ「…………………」

 

二人そろって上を見上げた瞬間…

 

 

(バサッ…バサッ…!)

 

 

カイタ「」

 

リズベット「」

 

『…ギャオオォォォォーッ!』

 

リズベット「…き…き…来たぁぁぁぁ!!!」

 

二人そろって後ずさるが逃げ場があるはずもなく、二人同時に武器を構えた。

 




いかがだったでしょうか。

…なんか、すげぇ中途半端になった気がしますが、お許しください。

こうでもしないと、キリのいいところで切った場合3000字ほどになってしまうので…

それでは、また。

(④へ続く)


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Ep.14 心の温度はソコにある④

皆さん、どーもです。

先日、ようやくSAOFBを全クリしました。

…そして極端にレベルを上げすぎると、ラスボス戦もヌルゲーになってしまう事を思い知りました…。

何しろ、ボスのレベルが80代に対して、こちらのレベルは140代w
DLC2の「忘却の神殿」、3の「魔窟」を周回してたら、こうなりやした()



(リズベットside)

 

カイタ「…ここの家主はずいぶんと早く帰ってくるんだなぁ。(震え声)」

 

リズベット「呑気な事言ってる場合~!?」

 

あたしたちを視認したドラゴンはゆっくりとこちらに向かってくる。

 

カイタ「いいか、ちょっとでもHP減ったらポーション飲んどけ。」

 

リズベット「う、うん。」

 

アタッシュカリバーを構えたカイタが、あたしの前に出て早口で言った。

 

カイタ「…それにしても、デケエしっぽだこと。この狭い縦穴であんなもん振り回された暁には……ん?待てよ?……そうか…その手があった!」

 

リズベット「一人で何言ってんのよ?」

 

カイタ「リズ、合図したら、俺につかまれ。」

 

リズベット「へっ?な、何で…」

 

カイタ「あのドラゴンが唯一の脱出方法なんだよ…!訳は後で話す!」

 

リズベット「わ、分かったわよ…」

 

ドラゴンが口を開けてブレス攻撃のモーションに入る。

 

カイタ「…そ~だよな。やっぱそれ来るよな。」

 

リズベット「ど、どうするのよ!?この狭い穴で避けれる場所なんてないわよ!?」

 

カイタ「な~に、簡単な事だ。避けれねぇなら…」

 

 

【ファイヤー!】

 

 

リズベット「…えっ?」

 

カイタ「…迎撃するだけだ。」

 

 

【(ガシュン)Progrise key confirmed. Ready to utilize.】

【タイガーズ、アビリティ!】

 

 

リズベット「あ、あんた、こんな時に何遊んでんのよ…!?」

 

カイタ「いや俺は至って真剣なんだけど…まあ見てなさいって。」

 

 

【(ガシュン)チャージライズ!(ガチャン)フルチャージ!】

 

 

ドラゴンがブレスを発射した…!

 

カイタ「来るなら来いや、クソ野郎っ!」

 

 

【フレイミング!カバンダイナミック!】

 

 

次の瞬間、カイタのアタッシュカリバーから、大きな炎の斬撃波が飛び出し、ドラゴンのブレスとぶつかった。

 

カバンダイナミック…確か、アタッシュカリバーの固有ソードスキルだったはず。

 

変な声が聞こえたりするのは気になるが…あのドラゴンのブレス攻撃と拮抗しているのを見ると、かなり強力な技の様だ。

 

リズベット「リズ!こっち来い!」

 

カイタに手を引かれ、ブレス攻撃の下をかいくぐるようにして、ドラゴンの背後へ移動。

 

ドラゴンは、ブレス攻撃で視界が塞がった影響で、あたしたちを見失ったようだ。

 

カイタ「…今だ、俺にしがみつけ。」

 

リズベット「へっ…!?う、うん…」

 

訳が分からないまま、彼の言う通りにした。

 

すると、あろうことか、カイタがドラゴンのしっぽの先端を思い切り掴んだのだ。

 

当然ながら、ドラゴンは驚愕の悲鳴を上げた。

 

リズベット「ちょっとあんた!いったい何のつも…」

 

そこまで言った所で、ドラゴンがすさまじいスピードで急上昇を始めた。

 

カイタ「…リズ…!俺に、しっかり、掴まってろよ…!」

 

カイタの声に、さらに強く彼の首にしがみつく。

 

空気が顔を叩く時間が続き…突如白い輝きが爆発したと思った瞬間、あたしたちは穴の外に飛び出していた。

 

眼下に広がる、55層の全景に、あたしは恐怖も忘れ、歓声を上げた。

 

リズベット「わぁっ……きれい…!」

 

カイタ「いやっほーい!!」

 

カイタが大声で叫んだかと思うと竜のしっぽを離し、あたしを横抱きにして、まるでスカイダイビングの様に宙をくるくると舞った。

 

その時のあたしはきっと、この世界に来てから一番の笑い声をあげていたと思う。

 

リズベット「カイター!あたしねぇ…!」

 

カイタ「…何だー!?」

 

…あたしは、思いっきり叫んだ。

 

リズベット「あたしねぇ…!あんたの事、好きー!」

 

カイタ「…ああ!?何だって!?聞こえねぇよ!」

 

リズベット「…なんでもなーい!」

 

 

 

やがて、地表が近づいてきた。

 

カイタ「…えー、当機は間もなく着陸いたしまーす。揺れますのでお掴まりくださーい。」

 

永遠にも思える時間が終わり、カイタが両足で、ズザザザッと着地した。

 

カイタ「…ふぃー。到着っと。」

 

リズベット「もう、こんな時にまで何言ってんのよ…。」

 

そして、二人で笑った。

 

ふと上を見ると、ドラゴンが上空をゆったりと旋回していた。

 

カイタはアタッシュカリバーを構えたが、すぐにガチャンと音を立てて、刀身を折りたたんだ。…なるほど。刀身を折りたたんだ際に、アタッシュケースの形状みたいになるから、「アタッシュ」カリバーなのか。

そう気づいて感心していると、カイタが呟いた。

 

カイタ「…インゴットの回収方法が広まれば、もうお前さんを殺しに来る奴はいないはずだ。達者で暮らせよ。」

 

あたしはその言葉に笑みを浮かべ、彼の左手を自分の右手で握った。

 

 

カイタ「…ほんじゃ、帰りますか。」

 

しばらくして、カイタが声をかけた。

 

リズベット「…うん。……あっ。」

 

カイタ「?どったの?」

 

ふと気づいた。

 

リズベット「…そういえば、ランタンとか、諸々置いてきちゃったわね。」

 

カイタ「…あ。…まあ、いいや。また買えばいいし。」

 

そう言って、彼はあたしから離れ、あの大穴に近づいて覗き込んだ。

 

カイタ「…しっかしまあ、深い穴だ事。よくここから帰ってこれたよ。」

 

リズベット「ええ、ほんと。よく無傷で出れたわね…」

 

 

 

 

「そうだな。お前らが帰ってこねぇと、俺がヘッドからの命令が達成できねぇからなぁ。どうしようかと思ったぜ。」

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

やっぱ文字数多い…ほんと、分割して正解だったな…。

あと2、3話ほどで「心の温度」編は終わる予定です。

なお、諸事情により、次の投稿は少し間隔を開けて、約2週間後です。
その分、今回の投稿を少し早くした…つもりです。

それでは、また。

(⑤に続く)


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Ep.15 心の温度はソコにある⑤

皆さん、どーもです。

大変お待たせしました。

この前、5月21日と22日に、富士急で行われた、バンドリの「Episode of Roselia」のライブに行ってきやした。(詳しくはあとがき、およびTwitterで)

前回から2週間も空いたのは、会場への移動方法の検索やチケットの確認等、バタバタしてて、執筆どころじゃなかった為です。

では、どうぞ。


S A O 全 く 関 係 な い 話 題


(リズベットside)

 

リズベット「っ!?」

 

突如耳元で声がした。

 

振り向くと、黒いフードをかぶった誰かが居た。

 

そして、そいつが、手に持ってた何かをあたしのお腹に当てた。

 

 

【フォースライザー…!】

 

 

その音と共に、あたしの腰にベルトの様なものが巻き付かれ、次の瞬間━

 

リズベット「!?…あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」

 

まるで、熱した金属が押し当てられたかのような痛みが、体中を走った。

 

カイタ「…テメェ、何してやがるっ!」

 

痛みに悶えるあたしを抱えて、その黒フードの男は飛びのいた。

 

痛みをこらえながら目を開けると、カイタがアタッシュカリバーを構えてあたしの前に立っていた。

 

カイタ「…フォースライザー!?どこでそれを……っ!?おい嘘だろ、お前、オレンジプレイヤーか!」

 

「ご名答だ。「タイタンズハンド」を黒鉄宮にぶち込んだ「仮面の戦士」様。」

 

カイタ「…その名前が出てくるって事は、お前がロザリアたちに指示を出していたって解釈でいいのかな?」

 

「ああ。ただし、正確には、ヘッドが出した指示を、俺があいつらに伝えてたんだけどな。」

 

そして、そいつはあたしの耳元で囁いた。

 

「…今からお前には、あの『仮面の戦士』を殺してもらう。」

 

 

【ジャパニーズウルフ…!】

 

 

…え?

 

殺すって…カイタを?

 

…嫌だ。そんなの嫌だ。

 

でも、あたしの抵抗むなしく、そいつの手に握られていた何かが、あたしの腰に巻かれているベルトにセットされた。

 

リズベット「…カ、カイタ…早く…逃げ…」

 

 

【フォースライズ…!】

 

【ジャパニーズウルフ!】

 

 

リズベット「あ゛っ…がっ、いやあああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

 

 

【Break Down…!】

 

 

 

(カイタside)

 

カイタ「…………」

 

【Break Down…!】

 

……俺は悪い夢でも見てるのか。

 

今、俺の目の前で、リズベットがオレンジプレイヤーに、仮面ライダー亡に変身させられた。

 

 

 

カイタ「…お前、やってくれたな。」

 

俺はオレンジプレイヤーの方を睨んだ。

 

「なんとでも言え。さて、用は済んだし、俺は帰らせてもらうぜ。」

 

カイタ「っ!待てっ、逃がすかっ!」

 

俺はオレンジプレイヤーに詰め寄ろうとしたが、そこに仮面ライダー亡が飛び込み、逃げられてしまった。

 

 

カイタ「くそ…!リズ!俺が分かるか!?」

 

俺はリズにつかみかかり、ゼツメライズキーを抜いて変身を解除させようとした。

 

亡「AAaaaa!!!」

 

カイタ「うわっ!」

 

だが、彼女が両腕に装備されたツメを振り回しているせいで、近づくことすら困難だ。

 

…あれを使うしかないのか。

 

カイタ「…ったく、一難去ってまた一難たぁ、この事か!あンのオレンジ、面倒な仕事増やしてくれたな!!」

 

俺は地面にアタッシュカリバーを突き刺し、ドライバーとプログライズキーをストレージから取りだした。

 

【ゼロワンドライバー!】

 

【ジャンプ!】

 

【オーソライズ!】

 

カイタ「……変身っ…!」

 

【プログライズ!】

 

【ライジングホッパー!】

 

そして、俺も仮面ライダーに変身した。

 

カイタ「セイヤァァァ!!!」

 

すぐさまアタッシュカリバーを構えて、亡に切りかかった。

 

…が。

 

カイタ「…チィッ!」

 

あっさりと爪で弾かれる。

 

俺はバックステップで後ろに下がりながら、アタッシュカリバーの刀身を折りたたんだ。

 

【(ガシュン)チャージライズ!(ガチャン)フルチャージ!】

 

接近がダメなら、遠距離だ。

 

カイタ「これなら…どうだっ!」

 

【カバンストラッシュ!】

 

亡「……」

 

【(ガシャン、ガシャン)ゼツメツ!ディストピア!】

 

カイタ「んなっ!?」

 

亡が必殺技を発動し、片方のツメで俺の斬撃波を受け止めながら、もう片方のツメで雪が積もった地面をえぐった。

ぶわっと雪が舞い、まるで吹雪のように俺に襲い掛かる。

 

カイタ「…クソっ、どうすれば…!」

 

…ひょっとすると今回は、以前ロザリアが変身した仮面ライダー滅との戦闘よりも厳しいかもしれない。

 

というもの、変身者のリズベットにダメージを与えずに、ベルトのみを攻撃して、ベルトを破壊、変身を解除させる。ここまでは前回と同様だ。

 

しかし、問題なのは、極力こちらがダメージを受ける訳にはいかないという事だ。でなければ、彼女のカーソルがオレンジになりかねない。

 

となると、高速移動、短期決戦が必須になってくる。

 

そしてそれは、シャイニングホッパーの使用を前提とした話だ。

 

しかし、彼女を止められる前に、例の異常ステータス、「筋肉痛」が発動してしまったら、そこでゲームセット。俺に打つ手は無くなる。

 

…だが、やるしかない。

 

 

【シャイニングジャンプ!】

 

【オーソライズ!】

 

【プログライズ!】

 

【シャイニングホッパー!】

 

 

亡「Ghaaaaa!!」

 

亡がツメを振り回しながら俺に突進してくる。

 

それを回避するための軌道が、マスクのディスプレイに表示される。

 

それに従い、難なく避ける。

 

カイタ(…高速で回避しつつ、隙を見てベルトを破壊出来ないか狙ってみよう。)

 

カイタ「…ん?」

 

ふと、周囲から気配を感じた。見渡してみると、

 

「ギャオオォッ!」

 

カイタ「」

 

…なんと、周囲をモンスターたちが囲んでいたのだ。

 

カイタ(…これ、まさかとは思うけど、一斉に襲い掛かられるなんてことはないよな?)

 

「ガアァァァッ!」

 

カイタ「そうだよね!分かってたよ分かってましたよ畜生めーっ!」

 

周りのモンスターが俺をめがけて一斉に襲い掛かる。一体一体の強さは大したことないが、いかんせん数が多すぎる。このフロアの全てのフィールドモンスターが集まっていてもおかしくないレベルだ。

 

その集団攻撃を、俺は長時間にわたり、シャイニングアリスマテックの演算を頼りに躱し続け、折を見て反撃を続けた。

 

…今思えば、それがあいつの狙いだったのかもしれない。

 

そう、「シャイニングホッパーの能力の過剰使用」を。

 

カイタ「っ…!?」

 

反撃を続けていると、何か体に違和感を感じた。

 

カイタ「ちっ…時間切れか…!」

 

【プログライズ!】

【ライジングホッパー!】

 

これ以上シャイニングホッパーに変身していると、限界が来てしまう気がしたため、俺はライジングホッパーに戻った。

 

一応、周囲に居た雑魚モンスターたちはあらかた撃退できた。だが、残党がいるばかりか、肝心の仮面ライダー亡が残っている。

 

シャイニングホッパー無しで彼女の相手をするのは、まず不可能だと考えた。

 

カイタ(…いや、シャイニングでここまで持ちこたえただけでも上等か…。)

 

…そう考えると同時に、こんなウィンドウが出た。

 

 

 

『スキル《仮面ライダーゼロワン》の熟練度が750到達及び、特殊条件『一回の戦闘中に、「シャイニングホッパー」に変身した状態を15分以上維持する』を達成しました。EX(エクストラ)MOD(派生)スキル「シャイニングアサルトホッパー」が使用可能になりました。』

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

「ライブ」というものを始めて経験したけど、いい意味でヤバかった…

…まあ、ライブ翌日の月曜日の大学の授業が1限目から入ってたから、日曜日に帰れなかった場合、月曜の始発の電車で家の最寄り駅に帰ってそこから大学行く、ってなりかけてたけどw


「心の温度」編はそろそろクライマックスかな?
それでは、また。

(⑥へ続く)


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Ep.16 心の温度はソコにある⑥

皆さん。どーもです。

大学でExcelを使う授業を受講していて、「VLOOKUP」という関数の語源を知った瞬間、ソードスキル「バーチカル」系列が浮かんだ。

(VLOOKUP=Vertical(垂直)+Lookup(探す))





(カイタside)

 

カイタ(…へっ。シャイニングが使える以上、これ(・・)もあるとは思ってたが…もうちょい早く出てきても良かったんじゃねぇか?)

 

俺はストレージから実体化させた「アサルトグリップ」を、シャイニングホッパープログライズキーの後部に取り付け、上部の起動スイッチである、アサルトチャージャーを押し込んだ。

 

『ハイパージャンプ!』

 

認証(オーソライズ)待機状態になったそのキーを、オーソライザーにかざす。

 

『オーバーライズ!』

 

カイタ「…リズ、もう少しだけ待っててくれ…変身!」

 

『プログライズ!』

 

 

Warning,warning.(警告、警告。)This is not a test!(これは試験ではない!)

 

『ハイブリッドライズ!』

 

『シャイニング!アサルトホッパー!』

 

No chance of surviving this shot.(この一撃から生き残る術はない。)

 

 

俺は、シャイニングホッパーの上位形態、シャイニングアサルトホッパーに変身した。

 

S(シャイニング)A(アサルト)ホッパーは、従来のシャイニングホッパーより全体的なスペックが向上しているのはもちろんの事、最大の利点は、胸部にある戦闘補助装置「オービタルユナイト」によるリアルタイムでの出力調整のおかげで、シャイニングで難点となっていた「力の前借り」によるリスクを最小限に抑え、連続稼働時間を延長している事だ。演算装置の「シャイニングアリスマテック」も引き続き搭載されているため、シャイニングホッパーで行った高速戦闘をより効果的に行えるようになったばかりか、シャイニングホッパーでは特殊推進器「シャイニンググラディエーター」が背部にしか搭載されていなかったが、今回肩と腕部に推進器の放出口を兼ね備える「SAホッパーショルダー」「SAホッパーガントレット」が追加された事で、より速く動き、より速いパンチを繰り出せるようになった。

 

カイタ「…ここらで一気にケリ付けてやるよ。」

 

俺はアタッシュカリバーをストレージにしまい、SAホッパーと共に解禁された新たな武器を取り出した。

 

『オーソライズバスター!』

 

出現したのは、大型の斧のような形態を持つ「オーソライズバスター」だ。

 

「グアアァァ!」

 

残ったモンスターの残党が雪に紛れて、ものすごい勢いで突進してくる。

 

『ジャンプ!』

 

俺は迎撃するため、ライジングホッパープログライズキーを起動させ、バスターの中央部にある「バスターオーソライザー」にかざした。

 

『バスターオーソライズ!』

 

武器の専用必殺待機音が鳴り響き、両端の刃「アックスキル」が、中央部にあるエネルギー増幅機構「プログレストロン」からのエネルギー供給を受け、ライジングホッパーと同じ黄色に輝く。

 

『プログライズボンバー!』

 

カイタ「せいっはああぁぁ!!」

 

足を軸にして一回転し、周囲を囲んだモンスターたちをまとめて切り伏せる。

 

(シュンッ!)

 

カイタ「!?」

 

突如、亡が今までを越えるスピードで接近してきた。

ここまで接近されると、プログライズキーを用いての必殺技は発動できない。

 

だが、このオーソライズバスターの利点は、「必殺技の数が多い」という点にある。

その数、10。

…もっとも、その数は、オーソライズバスターのもう一つの形態での必殺技も含めた数だが。

 

俺はバスターオーソライザーを、ドライバー側のオーソライザーにかざした。

 

『ゼロワンオーソライズ!』

 

先ほどとは別の待機音が流れ、再びエネルギーが刃に宿る。

 

『ゼロワンボンバー!』

 

亡のツメをバックステップで躱し、エネルギーを纏ったバスターを地面に叩きつけた。

 

衝撃波で、亡が一瞬ひるんだ。

 

カイタ「これでもくらいな!」

 

それを逃さず、片手直剣ソードスキル下段突進技「レイジスパイク」を奴に当てて後ろに下がらせた後、奴のベルトを垂直4連撃技「バーチカル・スクエア」で切りつけた。

 

ここまでの攻撃で、奴のベルトに幾分かのダメージは入ったはずだ。

 

カイタ「…これで、終わらせる!」

 

俺は、バスターをストレージにしまい、キーの上部にあるアサルトチャージャーを再度押した。

 

『アサルトチャージ!』

 

待機音が鳴り、すぐさまドライバーに差し込まれてるキーを押し込む。

 

『シャイニングストーム!インパクト!』

 

足にエネルギーが漲る。

 

カイタ「はっ!……でえありゃああぁぁ!!!」

 

そのまま俺は高速移動で上空に移動し、亡めがけてライダーキックを繰り出した。

 

亡「……!!」

 

『(ガシャン×4)ゼツメツ!ユートピア!』

 

亡もおそらく、最後の抵抗に出るのだろう。ベルトを操作して、必殺技を出してきた。

奴のツメと、俺の足がぶつかりあって衝撃波が発生し、周囲の雪が巻き上がった。

 

…だが、

 

負けられない。

 

負けるわけにはいかない。

 

ここで負けたら、リズを救う事が出来ない。

 

カイタ(…それに、あきらめるのは、俺の性にあわないんでな…!)

 

俺はそう思いながら、今だにリズを支配しているであろう、フォースライザーのシステムに向かって、叫んだ。

 

カイタ「…これ以上…彼女の道に…手ぇ出してんじゃねえぞ!…さっさと…リズから出ていきやがれえぇぇ!!」

 

…しばらく拮抗が続いていたが、俺の方がわずかに勝ったのだろう。亡のツメにひびが入った。

 

そのままツメを粉砕しながら、フォースライザーにベルトが直撃した。

 

そして━。地面に着地して振り返った俺が見たのは、変身が解除され、気を失って倒れているリズベット。

そして、ライダーキックの直撃という追い打ちを受け、耐久値が無くなったジャパニーズウルフプログライズキーとフォースライザーがポリゴン状になって消滅する所だった。

 

 

 

(少し戻り リズベットside)

 

【フォースライズ…!】

 

【ジャパニーズウルフ!】

 

この音が聞こえた瞬間、今までよりもさらに大きな痛みが体を襲い、あたしは何もかもが分からなくなった。

 

痛い。

 

怖い。

 

苦しい。

 

その感情が、心の中を埋め尽くし、何も見えなくなった。

 

 

どのくらい時間がたったのか分からない。

 

リズベット(…あたし…このまま死んじゃうのかな…)

 

もうあたしには、この衝動に抗う気力すら残っておらず、ただ何もない真っ暗な空間でうずくまっていた。

 

(ぴしっ)

「…ズ…!」

 

…?

何の音だろう。何かがひび割れるような…

 

(ぴしぴしっ)

「…リズ…!」

 

…まただ。

今度ははっきりと、カイタの声が聞こえた。

 

リズベット「…!」

 

うずくまっていたあたしは、前を見て驚いた。

あたしを覆っていた暗闇に裂け目がが入り、その外に、黄色と青色のボディに真っ赤な複眼の異形のなにかが見えた。

 

一瞬、それが誰なのか、人間なのか、モンスターの一種なのか分からなかったけど、そいつから発せられる声がカイタの声だったことから、彼であると分かった。

同時に、このアインクラッドに、「仮面の戦士」の通り名を持つ、異形の戦士に変身するスキルを持つプレイヤーがいるという噂を思い出した。

 

カイタ「…これ以上…彼女の道に…手ぇ出してんじゃねえぞ!…さっさと…リズから出ていきやがれえぇぇ!!」

 

彼の声が聞こえ、あたしは心が温度を取り戻したかのように、熱くなるのを感じた。

 

リズベット(あたしは…こんなところで…死なない!死んでたまるもんかぁぁ!)

 

さっきまでの暗い気持ちは、もうどこかへ飛んでいた。

あたしはカイタの呼びかけに答える形で、自分の想いを叫んだ。

 

すると、暗闇の裂け目が一気に広がり、体を蝕んでいたなにかが消えた気がした。

 

…まるで、カイタが、あたしを縛る鎖を断ち切ってくれたかのように。

 

解放された瞬間、それまでの疲れがどっと押し寄せてきて、あたしは意識を失った。

気絶する直前、あたしは、光に包まれ、元のプレイヤーの姿に戻るカイタを見た。

 

 

 

リズベット「…ん、ううん…」

 

どのくらいたったのだろう。

頭がぼんやりする中、あたしは目を覚ました。

 

「…目、覚めたか。」

 

そのまま頭上のカイタと目が合った。

 

リズベット「…カイ、タ?」

 

同時に、彼に膝枕されてることにも気づいた。

 

リズベット「…ふえっ!?///ちょ、ちょっと、これって…」

 

カイタ「…すまなかった。」

 

あたふたとするあたしを置いて、カイタが謝罪を切り出した。

 

リズベット「…え?な、何よいきなり。」

 

カイタ「…お前を危険に晒した。いや、下手をすればリズを死なせていた。…俺がもっとしっかりしていれば…」

 

リズベット「…いいわよ、そんな事。こうしてお互いに無事なんだから。」

 

カイタ「でも…!」

 

やっぱり彼は相当責任感が強いようだ。

 

リズベット「でももへったくれもないの。…あんたはあたしを助けてくれた。だから、そのことを誇りに思ってもいいんじゃないかしら。」

 

カイタ「…そっか。ありがとな。…ちょっと気が楽になった。」

 

リズベット「ううん。お礼を言うのはこっちよ。…ありがとう。あたしを助けてくれて。…それにしても、まさかアンタが今巷で噂の『仮面の戦士』さんだったとはねぇ…。」

 

カイタ「…ああ、そのまさかですよっと。あ、そうだ。その事に関してなんだけど…」

 

リズベット「分かってるわよ。他言無用、でしょ?…そりゃそうよね。あの装備、絶対この世界で一つだけだろうし。」

 

そんな会話をしながら彼は、あたしを背負って山を下りだした。

 

その背中は広く、大きく、とても頼もしく思えた。

 

 

 




いかがだったでしょうか。

前回の話を投稿した後、小説全体のPVが5000件を越えました!

いつも読んでくださり、ありがとうございます!

今後も頑張りますので、応援よろしくお願いします!

早くて次回で「心の温度」編、完結です。(必ず完結するとは言ってない)

それでは、また。

(⑦に続く)


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Ep.17 心の温度はソコにある⑦

皆さん、どーもです。



前 書 き あ と が き の 圧 倒 的 ネ タ 不 足 に つ い て 。





 

(リズベットside)

 

数時間後、あたしたちは一日ぶりに店に戻ってきた。

幸いにも、山を下りた時点で、あたしはなんとか体を動かせるようになり、そこからは一緒に歩いて帰ってきた。

 

リズベット「たっだいま~!…いやぁ、一日留守にしてただけなのに、なんだか懐かしく感じるわね。」

 

カイタ「その気持ち、分からんでもない。…ほんじゃ、ベテラン鍛冶屋のお手並み拝見と行きましょうか。」

 

リズベット「分かったわ。じゃあ、工房に来て。」

 

あたしは、カウンターの奥の扉を開けて、工房に入った。

 

インゴットを取り出して、真っ赤になった炉に投下する。

 

リズベット「…え~っと、片手直剣でいいのよね?」

 

カイタ「ああ。よろしく頼むよ。」

 

カイタが、奥にある来客用の椅子に腰かけた。

 

リズベット「りょーかい。…あ、言っとくけど、仕上がりはランダム要素に左右されるから、あまり過度な期待はしないでよ?」

 

カイタ「なーに。インゴットは山ほどあるんだ。こんだけありゃ、1本か2本はいいのが出来るさ。…それに、最悪の場合、もう一回取りに行けばいいしな。」

 

リズベット「…長いロープ忘れないでよ?」

 

カイタ「…覚えときます。」

 

そんな会話をするうちに、インゴットが十分焼けたようだ。金床の上に置いて、いつも使っている鍛冶ハンマーを振り上げ、勢いよく降ろした。

 

カーン、カーンと心地よい音を聞きながら、あたしはある決意をしていた。

 

リズベット(…あたしは、カイタの事が好き。ずっとそばにいて欲しい。…納得のいく剣が出来たら、彼に気持ちを伝えよう。毎日、この家に帰って来て欲しいって言おう。)

 

その決意は、インゴットの輝きが増していくと同時に、より強固になっていった。

 

━そして、数百回叩いたところで、インゴットが一層輝きながら形を変えていった。

 

カイタ「…おお、これは…」

 

現れた剣を見て、カイタが感嘆の声を漏らす。

 

出来上がったのは、全長は長いが、少し細い片手剣だった。とはいえ、ロングソードと呼べるほど長くもない。さしずめ、カテゴリー「ワンハンド/ハイミドルソード」といった所だろうか。

眩しいほど銀色に輝く刀身に、鍔の部分はアタッシュカリバーを彷彿とさせる黄色と黒のカラーリング、グリップの部分は、あたしを助けた時に使っていた斧の様な武器のグリップと同じ、深い青色だった。重さも、アタッシュカリバーに負けず劣らずの重量だ。

 

あたしは、剣をワンクリックして、ポップアップウィンドウを見た。

 

リズベット「え~と、剣の名前は《ライジング・エクステリオン》ね。…あたしが聞いた事無いって事は、現状、情報屋の名鑑には無い剣ね。…はい、試してみて。」

 

カイタ「おう。…ちょっと離れててくれるか?」

 

カイタが右手で剣を受け取り、肩の上に構える。

 

そして、右から斬り、左から斬り、一回転してもう一度左から斬り、最後に右から左上へ切り上げた。この動きは、ホリゾンタル・スクエアだったはずだ。

 

カイタ「…ん?…ふふっ。」

 

直後、カイタが剣を見つめたかと思うと、笑みをこぼした。

 

カイタ「…いい剣だ。ますます気に入った。」

 

リズベット「ちょ、ちょっと、何笑ってんのよ?」

 

カイタ「ああ、スマン。ここ見てみな。」

 

カイタが指さしたのは、剣の鍔、ちょうど刃先の根本の辺りだ。

よく見てみると、まるで剣のエンブレムであるかの様に、剣を背負ったかのようなバッタが小さく彫られていた。そしてそのバッタは、ライジングホッパー、だったかしら。カイタが変身していたあの戦士のクレスト(紋章)のバッタによく似ていた。

 

カイタ「…今日から、こいつが俺の相棒だ。あ、こいつの鞘見繕ってもらえるか?」

 

リズベット「あ、うん。」

 

あたしはそう言って、彼の衣装とよく似た黒色の鞘を選び、彼の剣を収めた。

 

リズベット「…そういえばあんた、剣を頼んだ際に、アタッシュカリバーと同等、もしくはそれ以上のスペックって言ってたじゃない。見たところ、今作った剣もいいけど、アタッシュカリバーとそんなに違うとも思えないわよ。なんで同じような剣を用意しようと思ったの?」

 

カイタ「…いや~、実をいうと、確かにカリバーはこのアインクラッドで1、2を争うスペックだと思うけど、致命的な欠点があってね…というのも、こいつで敵を倒したところで、正常に撃破判定がされない可能性があるんだよ…。早い話が、討伐系のクエストを受注して、そのターゲットを倒しても、こいつを使っていたら、討伐したことにならない可能性があるって事だ。この武器がシステムに規定されていないからだろうけど…。」

 

リズベット「え?規定されていない?どういう事よ?」

 

カイタ「…まあ、それはおいおい話すよ。」

 

リズベット「ふ~ん。なら、いいけど。」

 

カイタ「…おし。これにてミッションコンプリート。この剣の代金を払うよ。…あと、昨日壊した剣の弁償金も。幾らだ?」

 

リズベット「あ、えっと…」

 

あたしは深呼吸して、心の中で考えていたことを口に出した。

 

リズベット「……お金は、要らない。」

 

カイタ「そうかそうか。金は要らな……はああぁぁぁ!?」

 

リズベット「その代わり、あたしをカイタの専属スミスにしてほしい。」

 

カイタ「…はぇ?そりゃあ一体、どういう…」

 

リズベット「一日の攻略が終わったら、この店に…この『家』に帰ってきて。それで、あたしに装備のメンテナンスをさせて欲しい。…毎日、これからずっと。///」

 

カイタ「…っ!そ、それって…///」

 

たぶん今、あたしの顔は、人生で経験した事がないくらい真っ赤になっていると思う。

 

きょとんとしていたカイタも、あたしの言葉の意味を悟ったのだろう。不適な笑みを浮かべる事の多かった彼の顔は、同じく赤く染まり、あたしから視線を逸らしている。

 

リズベット(…あと一言。ほんの一言でいいんだ。頑張れリズベット。)

 

あたしは自分にそう言い聞かせ、残ったなけなしの勇気を振り絞って、彼の腕に手を添えた。

 

リズベット「…あ、あのね。あたし…あたし、カイタの、事…。」

 

すでに心臓は爆発しそうで、恥ずかしさで限界だったけど、あたしは最後の一節を

 

 

 

告げようとした瞬間。

 

(バターン!!)

 

勢いよく工房の扉が開けられた。あたしは驚いて、反射的にカイタから手を離した。

 

「リズ!心配したよ~!」

 

その言葉と共に、あたしは誰かに固く抱きしめられた。顔は見えなかったが、栗色の長い髪で、誰なのかすぐに分かった。

 

リズベット「…ア、アスナ!?」

 

聞き返すあたしの顔をアスナはすごい剣幕で睨みながら、早口でまくし立てる。

 

アスナ「メッセは届かないし、フレンドの追跡機能も使えなかったし、常連の人に聞いても何も知らないって言うし、一体夕べはどこに行ってたの!?私、最悪の事も考えて、黒鉄宮の生命の碑まで見に行ったんだからね!?」

 

リズベット「え、え~っと、そのぉ~…」

 

「おいおい、アスナ落ち着けよ。その人困ってるじゃないか。」

 

どう返答したものかと思案するあたしに助け舟が入った。

 

見ると、工房の扉の所に、黒いコートに身を包み、黒い剣を背負った真っ黒コーデの男性プレイヤーが立っていた。

 

アスナ「キ、キリト君…だって、心配だったんだもん!」

 

リズベット「ア、アスナ?その人は…」

 

アスナ「えっとね、リズの店でこの人、キリト君の剣を作ってもらおうと思って。」

 

キリト「…どうも。キリトです。」

 

リズベット「…はっは~ん。」

 

その瞬間、あたしは理解した。

 

リズベット「(ゴニョゴニョ)あの人って事ね?アスナの好きな人。」

 

アスナ「ええ!?…う、うん///」

 

アスナが頬を赤く染めながら、小さく頷く。

 

リズベット「…なるほどなるほど。なぁるほどぉ。…つまり、約束守ってくれたって事ね?」

 

数か月前、この店を開く手伝いをしてくれたのが、今目の前に居るアスナと、あたしやアスナより年上だけど親しくしてくれる、ローズブラウンの髪をサイドテールでまとめた、短刀(ダガー)使いであるもう1人のあたしの親友だ。その時に、2人にそれぞれ意中の相手がいる事に気づいたあたしは宣伝も兼ねて、「それぞれの想い人に、この店を紹介する」という約束を取り付けたのだ。

 

アスナ「…うん。キリト君が店売りの剣を持つなら、ここしか無いって思って。」

 

リズベット「…ありがとう。アスナ。…それで、どんな武器をご所望かしら?」

 

アスナ「う~ん…キリト君、片手直剣でいいよね?」

 

キリト「ああ、構わないぜ。」

 

リズベット「了解。」

 

あたしはそう言って、ストレージから残ってたインゴットを取り出す。

 

キリト「…ん?ちょ、ちょっと待ってくれ。ま、まさかそのインゴット…」

 

突然、キリトが階段を駆け下り、目を見開きながらあたしからインゴットを取り上げる。

 

アスナ「キリト君、何か知ってるの?」

 

キリト「…おい、まさかこれって、55層でドラゴンから採れるって噂になってる、幻の素材じゃないか!?」

 

アスナ「…えっ!?討伐隊がいくつも出てるのに、素材が一つもドロップしないって言う、あの!?」

 

リズベット「…あ~、そういう事になるわね。」

 

アスナ「あれ?それじゃあリズ、昨日一人でこれ取りに行ってたの?もしそうなら、私も誘ってほしかったな…」

 

リズベット「ううん。さすがにあんな所、一人で行きやしないわよ。…彼に手伝ってもらったの。」

 

あたしはそう言って、工房の隅の方に居るカイタを視線で指し示す。

 

カイタ「…え~っと、俺、お邪魔?帰った方がいいかな?」

 

…そういえば、今の今まで、彼が空気の様になっていた。申し訳ないことをしてしまった。

 

「…カ、カイタ(さん)!?」

 

そう叫ぶ2人の声で、あたしは我に返った。

 

リズベット「え?知り合い?」

 

アスナ「う、うん。同じ攻略組で、しょっちゅう顔を合わせるから…」

 

その情報に、あたしはまたまた驚いた。と同時に、腑に落ちた。あのドラゴンと単独でまともに戦える実力。攻略組だからと考えれば納得だ。

 

キリト「…ていうか、お前ほどの腕前なら、あのドラゴン、屁でもないだろ。なんだって丸一日かかったんだよ…?」

 

カイタ「…いや~、いろいろありましてね…隠れてろって言ったのに、リズが顔出したっけ、穴落ちちゃって、もう野宿さ☆…高さ80mから落ちた時は、生きた心地がしなかったな。」

 

リズベット「そ、それはごめんって言ってるじゃない…」

 

カイタ「いや、別に怒っちゃいねぇよ。むしろ、あの穴に落ちなきゃ、そのインゴット手に入らなかったし。…そうだキリト。あとでアルゴに、インゴットの入手方法拡散させるように言っとくつもりだから。…言っとくが欲しけりゃ自分で採りに行けよ。」

 

キリト「…ひ、一つくらい譲ってくれても…」

 

カイタ「バーロー。第一、お前は単に楽したいだけだろ。それこそお前の腕前なら楽勝だ。なんたって総合力は俺より上なんだから。」

 

キリト「そ、そんなぁ…」

 

アスナ「ま、まあまあキリト君。その素材を使って、今ここで剣作ってくれるだけでも感謝しないと。」

 

キリト「…まあ、そうだな。何はともあれ、無事で何よりだ。」

 

アスナ「…そうだキリト君!店の外に…!」

 

キリト「…ああ!そうだった!ちょっと待ってろ!」

 

急にキリトがあわただしく工房を出ていった。

 

リズベット「…ほんとにごめんね、アスナ。心配かけて…」

 

アスナ「…ううん。リズが無事なら、それでいいよ。…カイタさん、ありがとうございます。リズを守ってくれて。」

 

カイタ「ん?いいや、俺は大したことはしてないよ。当然の事をしたまで。」

 

リズベット「…あんた、それしか言えないの?」

 

カイタ「…うるさい。」

 

…拗ねたようで、そっぽを向いてしまった。

 

キリト「…お待たせ。連れてきたぞ。」

 

「……カイタ…?」

 

キリトが戻ってきたが、彼が連れてきたのは、あたしがよく知る人物だった。

 

リズベット「…あら、レンコじゃない。どうしてここに…」

 

カイタ「お。レンコ。…一日ぶり、かな?」

 

レンコ「…かな?じゃないよ!バカァ!」

 

レンコがすごいスピードで階段を駆け下りたかと思うと、

 

 

次の瞬間、カイタに抱き着いていた。

 

カイタ「おわっ!?ちょ、ちょっとレンコ、く、苦しい…」

 

レンコ「心配したんだからね!…どうせまた無茶したんでしょ!」

 

彼をポカポカと叩きながら、小言を言う母親の様にレンコが問い詰めている。

 

カイタ「い、いや、今回は大丈夫だったぜ?」

 

キリト「あれ?お前、さっき「高さ80mから落ちた」って…」

 

アスナ「ちょ、ちょっとキリト君…!」

 

キリト「…あっ。」

 

カイタ「キリトお前ぇぇ!!!ナニイッテンダ!プジャケルナ!」

 

レンコ「…やっぱり無茶したんだ。」

 

カイタ「わ、分かった、俺が悪かったから、一回離れてくれ…」

 

レンコ「嫌。」

 

カイタ「…ハイ?」

 

レンコ「…心配させた上に、無茶した罰。もう少しこのままでいたい。」

 

カイタ「…ええ?いや、どういう理屈でそうなるんd…ったく、仕方ねぇな…。おいキリト、後でオハナシな。」

 

キリト「ひえっ…。」

 

リズベット「あ、あの…カイタとレンコって…知り合いなの?」

 

カイタ「え?ああ、俺たち、パーティー組んでるんだよ。」

 

……ああ、そうか。

 

カイタがこの店に来たのは偶然じゃない。

アスナが約束を守ったのと同じ様に、レンコもあたしとの約束を守ってくれたのだ。

━彼女の「想い人」にこの店を推薦したのだ。

あたしは、体中の熱が一気に放出されていく感覚がした。

 

レンコ「リズさん、ごめんなさい。カイタが何か変な事言いませんでしたか?」

 

レンコがそう言っているのが聞こえる。

 

だが、あたしはその質問に返答する気力も残っていなかった。

 

レンコ「…リズさん?」

 

アスナ「リズ?どうしたの?」

 

立ち尽くすあたしに、アスナ達が声をかける。

 

リズベット「…もぉー!それならそうと言いなさいよー!ちょっと聞いてよレンコ!こいつったら、出会って早々に、うちの最高傑作の剣をあたしの目の前で叩き折ったのよ?」

 

溢れそうになる涙をこらえながら、あたしは努めて明るく振舞った。

 

アスナ「ええっ!?」

 

キリト「…おい、嘘だろお前…。」

 

カイタ「う…め、面目次第もございません…。」

 

レンコ「ほんとに何やってるの…?お金一杯ふんだくらないとダメですよ?リズさん。」

 

リズベット「…も、もちろんよ。」

 

今はただ、ここから逃げ出したかった。

そうしないと、レンコやアスナ達に当たってしまいそうだった。

この気持ちの持って行き場が分からなかった。

 

その証拠に、すでに涙がこぼれそうになっている。

 

リズベット「…ご、ごめん!あたし、仕入れの約束があったんだった!ちょっと出るから、誰か留守番よろしく!」

 

アスナ「えっ!?ちょ、ちょっとリズ!」

 

アスナが呼び止める声も無視して、あたしは店を飛び出した。

そのまま街を走り出て、どこかも分からぬまま走り続けた。

 

ふと我に返ると、そこは街の端っこだった。

人がいない事を確認した瞬間、堪えてきた涙が堪えてきた。

 

リズベット「…ううっ…ひぐっ…」

 

店でレンコと話している間、何度も「あたしも、あの人が好きなの」と言いそうになった。

 

いや、言いたかった。

でも、言う訳にはいかなかった。

抱き着いてくるレンコを見るカイタの表情を見た瞬間、あたしは分かってしまったからだ。

 

(カイタ)の隣に立てるのは、彼女(レンコ)しかいないのだと。

 

今はまだだが、(カイタ)を本気に出来るのは、彼女(レンコ)だけであるという事を。

 

そして何より、レンコは第1層でカイタと出会ってからずっと、彼を支え続けてきた。

 

そんな二人に、出会って一日の、余所者のあたしが割り込むことは出来ない。出来るはずもない。

 

…忘れよう。

昨日の事は、全て夢だ。そんな物は、涙で流してしまおう。

 

そう思いながら、あたしは泣きに泣いた。

 

━どのくらい泣いたのだろう。

 

「…リズベット。」

 

後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、あたしはちらりと後ろを見た。

…そして、今一番顔を見たくて、でも今一番会いたくない人の顔が見えた。

 

リズベット「…なんで…来たの…?もう少しで、いつものリズベットに戻れたのに…」

 

そこには、走ってきたのであろう、息を切らせたカイタがいた。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

……やっぱ今回じゃ終わんなかった。

…わっかんねぇなぁ…もう…。

何でこのエピソードだけこんな長くなったのかなぁ???(心の温度編全体で2万字越え)

次回で本当に、誓って本当に、「心の温度」編、完結です。

それでは、また。


…いや、も、ほんとだ…何でこんなに長くなったのかな????(2回目)


(⑧へ続く)


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Ep.18 心の温度はソコにある⑧

皆さん、どーもです。

今回で、心の温度編、完結です。

…いやー、長かった。


 

(リズベットside)

 

リズベット「…なんで、ここが分かったの?」

 

あたしは、カイタに聞いた。

あたしが店を飛び出してから、あまり時間は経っていないはずだ。

 

カイタ「…キリトにも手伝ってもらってな。キリトが地上を、俺は…コイツを使って、屋根を走りまわって探した。」

 

腰に巻かれたベルトを指さしながら、彼はそう言った。

 

リズベット「…ほんと、無茶苦茶よね…。あんたって。…あんまり無茶してると、またレンコに叱られるわよ…?」

 

カイタ「……」

 

リズベット「…ごめん、あたしは大丈夫だから。初めての冒険で、心がびっくりしただけだと思う…だから、あたしが言った事は、全部忘れて。」

 

あたしは、泣きそうになりながら…いや、すでに涙は流れていたが、彼に見せまいと顔を手で隠した。

 

カイタ「…俺さ、リズにお礼が言いたいんだよ。」

 

リズベット「…へ?」

 

いきなり彼がそう切り出した。

 

カイタ「…山降りる前に、お前言ってたよな。「自分を助けてくれた」って。…確かにそうかもしれない。でも、それは俺だけの力じゃない。…お前が俺を信じて、希望を諦めなかったからだ。だから、とどめを刺したのは俺だけど、結果的には、リズが自分の力であの呪縛を振り切ったんだよ。あれは並大抵のことじゃない。俺は素直にすごいと思ったし、感謝もしている。だから、その…うまく言えないけど……俺を信じてくれて、ありがとう。」

 

一息置いて彼は、あの夜に見せた優しい笑みを浮かべてそう言った。

 

カイタ「…だから、このお礼は、この先の攻略を進めることで返していきたい。リズが作ってくれたこの剣で、あらゆる敵を切り伏せて…100層を攻略して、リズや、この世界にとらわれてる人を助ける。……もちろん、時々こいつのメンテをしてもらいに顔は出しに行くよ。」

 

リズベット「………」

 

その言葉を聞いたあたしは、心がジワリとするのを感じた。

 

リズベット「…分かったわ。でも2つ約束しなさい!1つ、絶対に顔を出しに来ること!2つ、この世界を終わらせること!……ただし、無茶はしない事。あんたに何かあったら、あたしやアスナ、キリト、何よりレンコが心配するから。」

 

カイタ「分かってる。……そうだ、今思いついたけど、この剣の代金、現実世界(向こう)で払うよ。現ナマでも、飯のおごりでも、俺が出来る範囲で。」

 

リズベット「おっ?言ったわね?…そうねぇ?フルコースでも奢ってもらおうかしら?」

 

カイタ「うっ、お、お手柔らかにお願いします…」

 

リズベット「なーんて。冗談よ、冗談。…さ。帰りましょ。いつまでも、レンコ達を待たせるわけにもいかないからね。」

 

カイタ「…ああ。」

 

涙を拭いて、彼の背中を追おうとしたら、メッセージが入った。

 

差出人は、レンコだった。

メッセージを一瞥したあたしは、ふっと笑みをこぼした。

 

リズベット「…全く、あたしの方が年下なのに…こんな時まで丁寧語なんだから…。」

 

カイタ「ん?どったの?」

 

リズベット「何でも無いわよ。」

 

あたしは笑いながらカイタに返事をして、レンコのメッセージに返信した。

 

 

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

レンコ「リズさん、今回はごめんなさい。後日、日を改めて話したいです。リズさんは大切な友人だから、有耶無耶にしたくないんです。でも、もしもリズさんが私と話したくないなら、それでもいいです。」

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

リズベット「分かったわ。明後日に、うちの店の近くにあるカフェで落ちあいましょうか。あたしにとってもレンコは、大事な友達にして、お得意様だからね!」

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

 

 

(少し戻り、レンコside)

 

その日は、アスナからのメッセージから始まった。

 

なんでも、昨日からリズさんと連絡がつかないらしい。

 

リズさんこと、リズベットは、数か月前にアスナを通して友人になった、鍛冶屋にしてマスターメイサーの女性プレイヤーだ。

 

話を戻すと、アスナが言うには、リズさんが店におらず、メッセージも届かないというのだ。ちょうど私も、カイタとの連絡が昨日からつかなくなっていたので、アスナと、彼女に(強制)招集されたであろうキリトさんと一緒にリズさんを探すと同時に、カイタの事も探すことにした。

 

あちこち探しまわって、結局見つからなかったが、最後にダメ元でよったリズさんの店で、看板が「open」になっていた。私は万が一のすれ違い防止のために店の外で待ち、アスナ達が確認した所、工房にリズさんがいた。だが、報告に戻ってきたキリトさんによれば、彼女と一緒に、なんとカイタもいるというのだ。

 

私は居ても立っても居られず、カイタとも合流した。キリトさんによると、どうやら片手剣の素材集めに行った際に、厄介なトラップに引っかかったらしい。それで二人して帰りが遅くなったようだ。

 

私は、リズさんに謝ろうとした。「この店を推薦する」という、彼女との約束を守ろうとしたとはいえ、迷惑をかけてしまったからだ。

でも、リズさんの顔を見て、私は驚いた。

 

リズさんが、泣きそうになっていたからだ。泣くのをこらえて、明るく私たちに話しかけていた。

 

そして、リズさんが店を飛び出して、しばらく静寂が訪れた。

 

キリト「…えっと…どうするんだ?」

 

カイタ「いやどうするったって…」

 

カイタとキリトさんが話している。

 

アスナ「…もしかして。」

 

レンコ「…アスナ?」

 

アスナ「…あの、カイタさん。リズの事を探してくれませんか?」

 

カイタ「はえ?そりゃあ、頼まれなくたって探すつもりだったけど…」

 

アスナ「多分、街からは出ていないけど、ここから遠くにいると思います。私とレンコは、ここに残ります。入れ違いになったら困りますし。キリト君も、手伝ってあげて。」

 

キリト「…なぁ、アスナ?なんで場所の見当がつくんだ?」

 

するとアスナは、ちらりと私を見てからこう言った。

 

アスナ「…うーん…女性の勘、ってやつかしら。」

 

キリト「…え?いや、だから、それがどういうこt」

 

カイタ「…行くぞキリト。こういうのはな、男がむやみに突っ込むのは野暮ってもんだぜ。」

 

キリト「え、ちょ、ちょっと待て、引っ張るなって!ちゃんと行くから!」

 

キリトさんとカイタが、バタバタしながら工房を出ていく。

 

残されたのは、私とアスナの二人。

 

アスナ「レンコ。確認なんだけど…」

 

レンコ「何?」

 

 

アスナ「…あなた、カイタさんの事、好きなのよね?」

 

 

レンコ「……」

 

アスナ「……」

 

レンコ「…うん。」

 

アスナ「…そう。…今だにキリト君に想いを伝えられてない私が言えた義理ではないけど、急いだほうがいいかも。…あれきっと、リズもやられてるかもしれないわ。」

 

レンコ「…やっぱり。」

 

アスナ「気づいてたの?」

 

レンコ「確信はなかったけどね。」

 

何となく、リズさんから出ていた雰囲気が前にあった時と異なっている様に感じたのだ。

…それに、キリトさんの話を聞く限り、リズさんは昨日カイタと野宿をしたようだ。

それなら、彼女の心情に何かしら変化があってもおかしくない。

 

レンコ「…私、リズさんと話してみる。…話してくれるかは分からないけど。」

 

アスナ「ええ。私も、それがいいと思うわ。」

 

私は、フレンドのメッセージを立ち上げて、リズさんにメッセージを送った。

 

少したってから、リズさんから返信が来た。

返事に安堵していると、カイタがリズさんを連れて戻ってきた。

少し遅れて、キリトさんも戻ってきた。

 

その時のリズさんの顔は、吹っ切れた様に明るかった。

 

 

 

3日後。

私は、リズさんに指定された店に向かった。

 

ちなみに、カイタはキリトさんと何か用事があるようで、別行動をとっている。

「にしても16連撃はなぁ…あんなん反則級の威力だろ…」と呟いていた気がするが、何のことか分からない。

 

リズベット「あ、レンコ!こっちこっち!」

 

店のテラス席で、リズさんがこちらに向かって手を振っている。

 

レンコ「リズさん、こんにちは。…それで、今日は、」

 

リズベット「まあまあ、まずはお茶にしましょうよ。レンコの近況も聞きたいし。」

 

レンコ「…分かりました。」

 

それから少しの間、お茶を飲みながら、リズさんと話をした。

 

レンコ「……それで、その時にカイタが…」

 

リズベット「あー。やっと出た、その名前。」

 

レンコ「…あ、ご、ごめんなさい。本題と関係ない話をべらべらと…」

 

リズベット「いーわよ。それくらいは。……で、本題なんだけどね。」

 

レンコ「……はい。」

 

リズベット「…はっきり言うわ。あんたがカイタの事を好きな様に、あたしも彼の事が好き。」

 

レンコ「……うん。」

 

リズベット「…怒らないの?」

 

レンコ「何となくそんな気がしたから。」

 

リズベット「…あっちゃー、もしかして顔に出てた?」

 

レンコ「顔にというか、雰囲気が違いましたから。……ちなみに、どういう経緯で?」

 

リズベット「…助けられたから。彼に。……いや、『仮面の戦士』に。」

 

レンコ「…!も、もしかしてリズさん…見たんですか?カイタの、アレ(・・)…」

 

リズベット「…まあ、見ざるを得なかったというか…」

 

レンコ「どういう事ですか?」

 

リズベット「実はね…」

 

そこからの話は、驚きしか無かった。

 

要約すると、トラップの洞窟を抜けた後、オレンジプレイヤーの手により、リズさんが無理やり変身させられたらしい。そして彼女を止めるために、カイタもゼロワンに変身して戦ったようだ。

 

リズベット「…とまあ、そういう訳よ。いやー、あの時は生きた心地がしなかったわ……で、あの姿を、レンコは知っているって事?」

 

レンコ「…うん。第1層で、同じ様に助けられたから…。最も、その時に私は変身させられたわけじゃなくて、怪物が襲ってきたんだけどね。」

 

リズベット「なるほど…じゃあ、当時ガイドブックに載ってた「恐ろしく強い怪物に襲われたプレイヤー」っていうのは…」

 

レンコ「…うん。私。」

 

リズベット「…はぁーっ。あの時はさして気にしていなかったけど、いざ自分が目にしてみると、その恐ろしさがよく分かるわ。…それに、あいつの無茶ぶりも。」

 

レンコ「ほんとですよ。いっつも無茶しては何事もなかったように振舞って…見てるこっちが心配になります。」

 

リズベット「……でも、そういうところが好きなんでしょ?」

 

レンコ「…うん。他人を助けるために懸命になっている彼を見てたら…すごいな、カッコいいなって…。///」

 

リズベット「……あぁーあ。こりゃ、重症ね。まあ、あたしも人の事は言えないけどさ…。」

 

レンコ「…はっ!?ご、ごめんなさい…!」

 

リズベット「ううん。大丈夫よ。…さて、あたしはもう行くわ。」

 

レンコ「え?もう行ってしまうんですか?」

 

リズベット「こちとら、あんたと違って店があるのよ。納品予定の武器、まだ少し残ってるから。」

 

レンコ「わかりました。…また、店に寄った時は、武器のメンテナンス、お願いします!」

 

リズベット「了解。あたしにまっかせなさい!……あ、そうだ、レンコ。最後に言っておくけど。」

 

レンコ「はい?」

 

リズベット「……あんたがカイタの事をどれだけ好きかは、よぅく分かったわ。…でも、あたしはもう迷わない、もうこの勝負を降りる気はないからね!」

 

聞き返す私に、リズさんは不適な笑みを浮かべてそう言った。

 

レンコ「…もちろんです!その勝負、受けて立ちます!」

 

リズベット「ふふん。それでこそあたしの親友よ!」

 

(ぎゅっ)

 

私たちは、お互いの健闘を祈り、固い握手を交わした。

 

リズさんと別れて、宿に戻る私の足どりは、いつもより軽かった気がした。

 

 

 

レンコ(……私は、彼が……カイタの事が好き。あの日、彼が私を守ってくれた様に、今度は、私が彼の支えになる…!)

 

 

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

Sword Art Masked Rider

 

「…これより、殺人者(レッド)ギルド、ラフィン・コフィンの討伐戦を開始します!」

 

殺人者(レッド)ギルドとの決戦

 

「…イッツ・ショウ・タイム!」

 

互いの信念が

 

「…ここで、終わらせる!」

 

ぶつかり合う━。

 

次回、『コレが棺桶の逆襲だ』

 

 

「…さあ来いよ、ブラッキー…Masked Fighter!」

 

 




いかがだったでしょうか。

…このエピソードに突入してから早4か月ほど…途中2か月ほどサボったりしましたが、ようやく次の話に進めます…

このエピソードだけで、2万5千字越えという始末…w
どうしてこうなった。

次回は、まあ、次回予告見ていただければ分かると思います。

それでは、また。

P.S:前回の話を投稿した後、初変身の回(Ep.4)のPV数が1000件を越えました!
ありがとうございます!
…まあ、もっとも、変身しただけで、戦闘自体は次の話なんですけどねw
初変身だけでなく、今回の話でも言及された、カイタとレンコの出会いのエピソードでもあるので、まだ見ていない方はぜひ読んでみてください!


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Ep.EX① Rの来訪/カレは「緑の戦士」で「仮面ライダー」(コラボ回前編)


皆さん、どーもです。

前回の次回予告で、討伐戦を書くと言ったな…
あれは嘘だ。



(処刑中です。しばらくお待ちください。)



…えー、サブタイトルの通り、今回はコラボ回です。
…ヤベェぞ。(震え声)

今回コラボさせていただいたのは、ルコルン様の小説、「『黒の剣士』と『緑の戦士』と『幼馴染』の協奏曲」です!
…ヤベェぞ!(震え声)

いやもうね、先方からTwitterのDMでコラボの打診が来たときは、家で発狂しましたよ()

…うまく書けてるか不安ですが、どうぞ。(マジで粗相がなきゃいいけど…)




 

 

━━これは、リズベットに剣を作ってもらってから数日後の話。

 

世界こそ違えど、俺と同じ様にSAOの攻略組として戦った「緑の戦士」と呼ばれる少年と、彼の恋人である「大いなる普通」と呼ばれる少女。

そんな彼らに出会った物語。

 

 

 

(カイタside)

 

カイタ「……平和だねぇ。」

 

キリト「……あぁ。」

 

カイタ「……こんな日は、昼寝するに限る。」

 

キリト「……全くだ。」

 

 

ある日、俺はキリトと共に、絶賛日向ぼっこの最中だった。

お日様に照らされながら、草原に寝転ぶ…

キリトから聞いたときは、そんなマンガみたいな話があるかと思ったが、いざ経験してみると、何もかもを忘れて無心になるというのは、なかなかクセになる感覚だ。

 

キリト「そう言えば、レンコはどうしたんだ?」

 

カイタ「…素材集めるって言って出てきた。」

 

キリト「え、それ、大丈夫か?もし見つかったら…」

 

カイタ「心配しなさんなって。ま、見つかったらその時はその時さ。」

 

レンコ「へぇー。じゃあ、その時はどうするのかな?」

 

カイタ「どうするって、そりゃもちろん……………へ?」

 

寝転がったまま頭上を見ると、

 

 

レンコ「……やあ☆」

 

カイタ「 」

 

 

満面の笑みを浮かべているレンコと目が合った。

だが、目が笑っていない。

 

レンコ「…素材集めるって言ってたのに、これはどういう事かな?かな?」

 

レンコは、某雛見沢の少女のような口調でそう言いながら、武器の短刀を持っていた。

 

……結論を言おう。

オワタ\(^o^)/

 

 

数時間後、レンコにこってり絞られた俺は彼女に連れられ、第60層の洞窟ダンジョンに来ていた。ちなみに、俺が説教されてる間も、キリトは我関せずといった感じで眠っていた。あンの野郎。

 

レンコ「もう!日向ぼっこするのはいいけど、それならそうとちゃんと言ってよね!」

 

カイタ「…うう…何もあそこまで言わなくても…」

 

レンコ「 何 か 言 っ た ? 」

 

カイタ「すみませんでした何でもないです」

 

これ以上の反論は命の危機を感じた為、おとなしく従った。

 

………と、

 

カイタ「……っ!?」

 

レンコ「えっ!?何!?」

 

俺の索敵スキルに反応があったため、手を上げてレンコを止める。

反応があるのは2体。

しかも、人間のようだ。

敵性NPCの可能性もあるが、オレンジプレイヤーの可能性もあるため油断は出来ない。

 

カイタ「…レンコ、ちょっと下がってろ。」

 

レンコ「う、うん。」

 

彼女を柱の陰に隠れさせ、俺は先日リズベットに作ってもらった片手直剣「ライジング・エクステリオン」を実体化させ、レンコとは別の柱の陰に身を潜めた。その状態で、潜伏(ハイディング)スキルを発動。

反応がどんどん近づいている。

 

???①「あのぉ…どうしてまたこの装備を…?」

 

???②「ふふっ、君には不本意かもしれないが、我慢してくれ。その服装の方がここでは自然に見える。」

 

???①「いや、でもこの装備…それにここって…あそこ(・・・)ですよね…?」

 

やはり二人組のようだ。

 

そうこうする内に、潜伏で隠れている俺のそばを2人が通りすぎる。

 

???①「……でも、出口分かるんですか?」

 

???②「…てっきり君が知っているとばかり。」

 

???①「…いや、このダンジョンは来た事ないですね。…どうするんですか?誰かに助けを求めようにも、怪しまれたら…」

 

???②「…その時はその時さ。」

 

カイタ「ほぉ~。じゃあ、その時はどうするのかな?」

 

俺はレンコに、いつでも拘束できるように、とメッセージで指示を出してから彼らの背後から声をかけた。

…デジャブを感じたのは気のせいだろう。

 

???①「そうですよ。俺たちはここの……え?」

 

2人が俺の方を振り返ったので、顔がよく見えた。

 

一人は、茶色いショートヘアーに、男性とは思えない白い肌。そしてひと際目を引くのが暗めの赤色と藍色のオッドアイ。

そして、腰に刀をさしている。

見たところ、中学生か高校生くらいだ。

しかし、オッドアイとはかなり珍しい。

…もっとも、俺も両目の虹彩が青色だから、人の事は言えんが。

 

もう一人は、外ハネの黒髪を持ち、こちらから見て左側の髪をどういう訳か文房具のクリップで留めている。指穴付きカットソーの上に俺の装備と同じ様なロングパーカー(ただし向こうが緑色に対して、俺は青色だが)を着用し、クロップドパンツを合わせ、地球の様な飾りのついたネックレスを首から下げ、右手には外装が黒く、それなりに分厚い本を持っている。

 

カイタ(…なんだ?この感覚は…)

 

だがそれ以上に、俺はこの2人に違和感を感じていた。

緑のパーカーの男性の方は、まるでどこかで見たような、高校生の方は……何となく、「何かが」違う。そう直感した。

 

そんな疑念を振り払い、俺は固まっている二人に声をかける。

 

カイタ「…さーて、お二人さん、あんたらがただの迷子だったらよかったんだが…あいにくとここは最前線にかなり近い層で、しかもここはダンジョンのかなり奥の方だ。…つまり、ここに来れるのはよほど高レベルかつ、ダンジョンに慣れてる奴って事になる。だが、さっきのお前さんらの話を聞く限り、どうやら下調べもせずにぶっつけ本番で来たと見える。…一体何者だ?」

 

俺は鋭く睨みながら質問する。

彼らがオレンジプレイヤーではないかという可能性を考慮したが、幸いにも彼らのカーソルはどちらもグリーンだった。

だが、グリーンでもオレンジの仲間というケースは珍しくない。

 

カイタ「…おっと、下手に動くなよ?ちょいとでも怪しい動きをしたら、俺のパーティーメンバーがあっという間に拘束するぜ。」

 

…さて、どう出るのか。

高校生の少年は見るからに冷や汗を流しており、パーカーの男性の方は何かを思案する様に考え込んでいる。

 

レンコ「……カイタ、後ろ!」

 

カイタ「…なっ!?」

 

突如、物陰に隠れていたレンコが俺に声をかける。

後ろを向くと、モンスターが俺に飛び掛かってきていた。

 

即座にヴォーパル・ストライクを発動しようするが、ここまで距離を詰められていると、発動が間に合わないと瞬時に悟った。

 

カイタ(こうなったら…!)

 

俺は予定を変更して、バーチカル・スクエアを発動した。

 

カイタ「はっ!であっ!せいっ!であ~っ!」

 

襲い掛かっていた一体は、ポリゴン状になって消滅した。

 

???①「…その技、やっぱり…」

 

カイタ「ん?どうした?」

 

???①「…いや、なんでもないです。」

 

高校生の彼は、俺の方を見て、何か懐かしむような表情をしていた。

 

カイタ「……ここじゃなんだし、いったん外に出ようか。」

 

俺たちは2人を連れてダンジョンを脱出した。

 

 

カイタ「……さて、なんであそこにいたのか、聞かせてもらいやしょうかね。」

 

1時間後、俺とレンコは、第60層の圏内にあるカフェのテラス席で、彼らに話を聞いていた。

 

???①「…ごめんなさい。実はここには探し物をしに来たんです。」

 

レンコ「…探し物、ですか?」

 

???②「ああ。…おっと、自己紹介がまだだったね。」

 

???①「あっ、そうだった…初めまして。俺は『ルッコ』って言います。」

 

???②「僕は『フィリップ』だ。よろしく頼むよ。」

 

……やはりそうだ。

俺は「フィリップ」という人を知っている…気がする。

どこで知ったのかは、「前に居た世界で見た」という以外、記憶が朧げになってしまっているが。

 

カイタ「…俺は『カイタ』だ。こっちはパーティーメンバーの『レンコ』。」

 

レンコ「よろしくお願いします。……それで、探し物ってどういう物を?素材とかですか?」

 

ルッコ「いや、違うんです。……あるアイテムで、この付近に出現したって情報を聞いたんです。」

 

フィリップ「こういうのだ。見た事あるかい?」

ルッコ君が説明し、フィリップさんが画像を取り出す。

 

カイタ(……あれ?これって。)

 

その画像には、歪な形をしたUSBメモリと、円形のバックルが付いたベルトのような物が映っていた。

USBには、英単語と、その単語のイニシャルを模したレリーフが書かれている。

同時に、これまたUSBメモリの方も、「見た事がある」という感覚に陥っていた。

…この世界ではなく、俺が元々いた世界で。

 

 

レンコ「Utopia…『ユートピア』、ですか…?」

 

そんな俺の思案をよそに、レンコはフィリップさんに質問していた。

 

フィリップ「その通り。…もしこれがここにあるとしたら、早急に回収しなきゃならないのでね。」

 

レンコ「…ごめんなさい。見た事無いです。」

 

ルッコ「…そうですか。分かりました。お騒がせしまし…」

 

カイタ「…それ、よかったら俺たちも探すの手伝おうか?」

 

「「「え??」」」

 

俺の提案に、3人が素っ頓狂な声を上げる。

 

ルッコ「…ちょっと待ってください。」

 

そういって、ルッコ君とフィリップさんは、背を向けて話し始めた。

 

レンコ「…ねぇ、カイタ。さすがにお人よしが過ぎるんじゃ…」

 

カイタ「お前なら分かるだろ。俺は困ってる人を見るとほっておけないんだよ。」

 

レンコ「…はあ、本当に相変わらずなんだから…分かった。カイタ一人だと心配だから私も行く。」

 

カイタ「…ありがとな。レンコ。」

 

しばらくすると、話していた2人がこっちを向き、

 

ルッコ「…それじゃあ、手伝ってくれますか?」

 

カイタ「よし、じゃあ、まずは圏外に出て…」

 

「カイタさん!」

 

俺を呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、アスナが泡食った顔でこちらに走って来ていた。

 

カイタ「ありゃ、アスナ、どったの?そんなに泡食って。」

 

アスナ「た、大変なの!さっき、黒鉄宮から、脱走者が出たって…!」

 

カイタ「………はい?」

 

レンコ「………え?」

 

…聞き間違いだろうか。

 

カイタ「…ハッハッハッ!な~に言ってんだよ。あの黒鉄宮から脱走するなんて、そんな事あるわけ……」

 

アスナ「………」

 

カイタ「……マジで?」

 

アスナ「ええ。でも、どこに逃げたのかわからなくて…今血盟騎士団の数人が全力で捜索中だわ。カイタさんなら大丈夫だと思うけど、念のため注意してください。」

 

カイタ「…分かった。…ちなみにだが、外見とかは分かるのか?」

 

アスナ「はい、ええっと、赤い髪をカールさせた女性のプレイヤーだそうで…」

 

カイタ「へあっ!?」

 

アスナ「ええっ!?」

 

カイタ「…ち、ちなみにだが、プレイヤー名は?」

 

アスナ「……えっと、『ロザリア』というネームです。」

 

カイタ「」

 

アスナ「…あの、カイタさん?」

 

カイタ「…ああ、分かった…捜索頑張れ…。」

 

そしてアスナは去っていった。

同時に人がレンコとルッコ達しかいない事を確認して、俺は大声で叫んだ。

 

 

カイタ「What the Fuc―」

 

 

(殴)

 

 

レンコ「いい?カイタ。」

 

カイタ「ハイ」

 

レンコ「世の中にはね?」

 

カイタ「ハイ」

 

レンコ「言っていい冗談と悪い冗談があるんだよ?」

 

カイタ「ハイ」

 

レンコ「そして今カイタが言おうとしたのは、悪い冗談に入るんだよ?」

 

カイタ「ハイ」

 

レンコ「今後は迂闊に言わないようにね?」

 

カイタ「ハイ、ワカリマシタ。」

 

 

即座にレンコに、短刀の柄で叩かれ、正座で説教された。

…皆さん、今日はウチのレンコさんがバイオレンスな気がするんですが。

なにか原因知りませんか?(←自業自得)

 

ルッコ「……何やってんですか…?」

 

フィリップ「女性の尻に敷かれる男性……本で読んだ事あるが、実際に見るのは初めてだ…実に興味深い。」

 

隣でルッコ君が呆れて、フィリップさんは訳の分からない事をのたまっている。

…頼むからそんな目で見ないでくれ。泣くぞ?

 

レンコ「全くもう。…それじゃあ、ルッコさんたちの探し物のつづきするよ?」

 

カイタ「ふぁい(はい)…」

 

 

 

カイタ「……だー、畜生!…ほんとにあんのか?」

 

数時間後、なかなか見つからずに痺れを切らした俺はルッコ君に問い詰めていた。

 

ルッコ「…そのはずなんですけど。」

 

フィリップ「…もしかすると、別の層にあるのかもしれない。」

 

カイタ「ええ…ったく、手間ぁかけさせやがって。」

 

 

 

「…じゃあ、こっちから出て行ってやるよ。」

 

 

 

その時、後ろから声をかけられた。

振り向くと。

 

ルッコ「…なっ、お、お前は!」

 

ロザリア「見つけたよ…『仮面の戦士』。」

 

カイタ「…あーあ、まさかとは思ったが、やっぱテメェだったか。…のこのこ黒鉄宮抜け出して、一体何の用だ?」

 

ロザリア「…あの日、アンタと黒の剣士に、味わわされた屈辱…ここで返させてもらうよ!」

 

そして、ロザリアが何かを取り出した。

 

 

『ユートピア!』

 

 

カイタ「え、おい、ちょっと待て、あれって…」

 

ルッコ「フィ、フィリップさん…!」

 

フィリップ「どうやら、ビンゴのようだね。」

 

ルッコ達の反応を見るに、ロザリアが持っているものが2人が探していた物で間違いないようだ。

 

ロザリアがUSBメモリを腰に付けた円形のドライバーに挿入した。

 

すると、彼女の姿が、異形の怪物に変身した。

 

レンコ「…な、何あれ。」

 

カイタ「…マギア、じゃない…」

 

フィリップ「…ゴールドメモリだからそう簡単に使えないと思っていたが…間違いない、あれはユートピア・ドーパントだ!」

 

「ドーパント」…?

 

またも俺の頭の中を記憶の断片がかけめぐる。

 

どこだ?

どこで見た?

思い出せ。

もうすぐそこまで記憶が出かかっているのに…!

 

ロザリア「おらぁ!」

 

レンコ「カイタっ!!」

 

カイタ「…っ!おわっ!」

 

今は迷っている暇はない。

ともかく、こいつ相手じゃあ、生半可な攻撃は通じないだろう。

コイツにゼロワンシステムが通用するかは分からないが、ともかく対処しよう。

 

カイタ「レンコ!ルッコ君たちと離れてろ!」

 

レンコ「わ、分かった!…気を付けてね!」

 

レンコが2人を連れて後ろに下がった。

俺はゼロワンドライバーとライジングホッパープログライズキーを取り出した。

 

【ゼロワンドライバー!】

 

【ジャンプ!】

 

【オーソライズ!】

 

上空から、バッタのライダモデルが降ってくる。

 

ルッコ「…ええ!バ、バッタ!?」

 

背後でルッコ君が驚く声を聴きながら、俺はポーズをとり、キーを装填した。

 

カイタ「変身!」

 

【プログライズ!】

 

【飛び上がライズ!ライジングホッパー! A jump to the sky turns to a rider kick.(空へのジャンプはライダーキックに変わる。)

 

俺は仮面ライダーゼロワンに変身した。

 

ロザリア「…その姿を見ると、余計に腹が立つわ。」

 

カイタ「そうかい、奇遇だな。俺もな、テメェの面は二度とお目にかかりたくないと思ってたんだよ。さっさと黒鉄宮に戻りな。」

 

俺はロザリアに向き合って、アタッシュカリバーを構えた。

 

レンコ「…な、何やってるんですか、ルッコさん!危ないから戻ってください!」

 

カイタ「…へ?」

 

後ろでレンコの慌てた声が聞こえる。

 

見ると、ルッコ君が俺に近づいていた。

 

カイタ「…あのぉ、アンタ、何やってんでせうか?危ないから離れてろと、言っただろうに…」

 

ルッコ「……カイタさん…あなたも(・・・・)、そうだったんですね…。」

 

カイタ「…は?「あなたも」って…そりゃあ一体どういう…」

 

ルッコ「……フィリップさん、いいですよね?」

 

ルッコ君がフィリップさんに何かの確認を取っている。

 

フィリップ「ああ。本当なら、メモリの状態で回収したかったが、こうなってしまった以上仕方ない。メモリブレイクも辞さない。」

 

ルッコ「分かりました。……という訳でカイタさん。ここは俺も一緒に戦います。」

 

そう言ってルッコ君は、ベルトのバックルを取り出した。

それは、メタリックレッドをベースカラーにして、上部には、何かを挿入するスロットが2つついた物だった。

 

ルッコ「……ツグ、行くよ。」

 

【JOKER!】

 

ルッコ「…変身!」

 

カイタ「…え?」

 

ルッコ君が、ベルトを装着したかと思うと、ロザリアが使っていたのと同じような形をした、クリアブラックのUSBメモリを右手に持ち起動した。

 

同時に、俺の中で記憶が覚醒しようとしていた。

 

カイタ(USBメモリ…JOKER…まさか!)

 

そうこうする内に、彼のベルトの右側(こちらから見て左側)に、クリアグリーンのUSBが転送されてきた。

それを左手で押し込み、右手に持ってたUSBをもう片方のスロットに挿入、手をクロスしてスロットを左右に倒した。

 

【CYCLONE!JOKER!】

 

彼を中心に、竜巻が巻き起こる。

 

俺は思わず顔を腕で覆った。

 

風が収まり、腕を下ろすと、そこには、左半身がマットブラック、右半身が白いマフラー付きのエメラルドグリーンの、2色半分この異形の戦士が立っていた。

 

レンコ「…え?ルッコさんも…変身した?」

 

そして俺は、完全に思い出した。

 

カイタ「2色の戦士…二人で一人の仮面ライダー…まさか、仮面ライダーW、なのか!?」

 

ルッコ「はい。その通りです。」

 

そう。仮面ライダーW(ダブル)は、ゼロワンと同じく俺が前世で見ていたライダーの一人だ。

 

カイタ「…えっ、てことは、フィリップさんってまさか、『地球(ほし)の本棚』のフィリップさん!?」

 

フィリップ「その通りだ。」

 

カイタ「…俺以外に変身出来るプレイヤーがいたなんて…」

 

ルッコ「あー、その事なんですけど…」

 

???「ルッコ君、まずはあれをどうにかしよう。」

 

ルッコ「…あっ、忘れてた。」

 

カイタ「ん?その声…Wのソウルサイドの担当者か?」

 

ルッコ「あっ、はい。俺の恋人の「ツグ」です。…流石にリアルの名前を言うのはあれなので、プレイヤーネームですが。」

 

ツグ「よろしくおねがいします。…って、ルッコ君。この人って、もしかして…」

 

ルッコ「ああ。俺たちと同じ、仮面ライダーだよ。」

 

カイタ「どうも。俺はカイタって言います。」

 

ロザリア「…あたしを置いてぺちゃくちゃおしゃべりとは、いい度胸だねぇぇ!!!」

 

カイタ「…っと、そろそろ奴さんが癇癪を起しそうだ。」

 

ルッコ「そうですね。…ツグ、行くよ!」

 

ツグ「うん!」

 

そして俺たちはロザリア改め、ユートピア・ドーパントに向き合った。

 

 

カイタ「ロザリア!…お前を止められるのはただ一人!俺だ!」

 

ルッコ&ツグ「「さあ、お前の罪を数えろ!」」

 

 

 





いかがだったでしょうか。

ラストのカイタ君の決め台詞について、「1人じゃなくて2人じゃね?」とか言わない事。
…忘れている人も多いかもしれませんが、カイタ君は、事故で死んで転生してこの世界に居ます。


…という訳で、コラボ回前編、終了です。
ルッコ君やフィリップの口調がこんな感じで良かったのか、といささか不安に思っております…。

…え?「後編もやるのか」って?「バトルやんねぇのか」って?
1話にしたら文字数多くなりすぎるんだよ察してくれ。

今回コラボしていただいた、ルコルンさんの「『黒の剣士』と『緑の戦士』と『幼馴染』の協奏曲」のページのURLを下に貼っておきます。(きちんと機能しなかったらすみません)
マジで面白いんで、ぜひ読んでみてください。
話がまとまって読みやすいし、設定も細かくて面白いし、ルッコ君のユニークスキルめっちゃ強いし、戦闘描写がリアルだし、(以下略)

えー、後編まで続きますが、次回もお楽しみに!(なるべく早く出したい…)

↓ルコルンさんの「『黒の剣士』と『緑の戦士』と『幼馴染』の協奏曲」のページ
https://syosetu.org/novel/266424

それでは、また。

P.S:ほんとはこの前編、火曜日の0時に投稿したかったのですが、推敲を重ねてたのと、諸々の用事が重なり、投稿が遅れました…!


(後編へ続く)


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Ep.EX② Rの来訪/コレが絶望の理想郷(ユートピア)だ(コラボ回中編①)


皆さん、どーもです。

はい、コラボ回、中編①です。
再び文字数多めですが、読んでいただければ幸いです。

…ダブルみたいにするなら、ここで人物相関図出るんだろうな…。


なに?「中編」、しかも①とか聞いてないって?
仕方ねぇだろ!?ロザリアの大暴れとか入れたら、予定よりさらに文字数増えたんだから!(逆ギレ)




(カイタside)

 

 

カイタ「ロザリア!…お前を止められるのはただ一人!俺だ!」

 

ルッコ&ツグ「「さあ、お前の罪を数えろ!」」

 

俺が変身したゼロワンと、ルッコ君と彼の恋人であるというツグさんが変身した仮面ライダーダブルが並び立ち、ロザリアに向かい合った。

 

ロザリア「たかが1人増えたくらいでどうにかなると思わないことね!」

 

カイタ「そう言ってられるのも今の内だぜ!」

 

俺はアタッシュカリバーを持ち、奴に切りかかった。

 

…だが、全く攻撃が通らない。

 

カイタ「…ちぃっ!」

 

ルッコ「はあっ!」

 

ロザリア「無駄だよ!」

 

ルッコ「くっ…!」

 

ツグミ「か、固い…」

 

ルッコ君も、サイクロンの風を纏った攻撃を放つが、これもことごとく防がれる。

 

ロザリア「…よそ見してる場合か?おらぁ!」

 

ルッコ君が後ろにノックバックされた瞬間、奴が俺に殴り掛かってきたので、アタッシュカリバーをアタッシュモードにして、盾の様にした。

 

…だが、

 

(ガアンッ!)

 

カイタ「…っ!?ぐうっ…!?」

 

その一撃が異常なまでに重かった。

 

アタッシュカリバーで防いでも、衝撃が伝わってきた。

その証拠に、倒れこそしなかったものの、そのままレンコとフィリップさんがいる所まで後退させられた。

 

カイタ「…おい、んだよこりゃ…!こいつ、ここまでバカみてぇな威力してたか…!?」

 

フィリップ「…おそらく、引力と斥力で威力を上乗せしているんだ!ユートピア・ドーパントは、重力・引力・斥力を自在に操る能力がある!気を付けてくれ…!」

 

カイタ「……(ぼそっ)げっ、そういや、そんな能力あったな…」

 

レンコ「な、何それ…無茶苦茶だよ…」

 

レンコの言う通りだ。

…勝てる気がしなくなったんだが。

 

ルッコ「…だったら、防御を上げよう!あと重量も!ツグ、メタルで行くよ!」

 

ツグ「分かった!」

 

そういうと、ルッコ君がドライバーのスロットをもとに戻し、ジョーカーメモリを抜き取った。

 

【METAL!】

 

そして銀色のメモリを取り出して、起動し、ドライバーに装填、展開した。

 

【CYCLONE!METAL!】

 

音声が鳴り響き、ボディサイドのジョーカーが、銀色のメタルに変わった。同時に、背中に専用武器である「メタルシャフト」が現れた。

 

ルッコ「はあっ!せいっ!やあっ!」

 

ルッコ君が、サイクロンの力を纏ったメタルシャフトを振り回す。

 

カイタ「…よし、防御と重量なら、俺もこいつで!」

 

【プレス!】

 

【オーソライズ!】

 

【プログライズ!】

 

【Giant Waking!ブレイキングマンモス!】

Larger than life to crush like a machine.(重機の如く破砕する超巨体。)

 

上空に、巨大なジェット機のような物が転送され、俺はライジングホッパーの状態で、それを鎧の様に身にまとった。

 

俺は「仮面ライダーゼロワン ブレイキングマンモス」に変身した。

ブレイキングマンモスは、見た目通り、馬力と防御力を生かした重量級の戦いを得意とする。

…もっとも、ゼロワン本編では、文字通りの巨大ロボだったのに対し、今回は俺の身長に合わせてダウンサイジングされてるようだが。

 

ルッコ「…やばっ!防ぎきれない!」

 

カイタ「任せろ!…おらぁ!」

 

ルッコ君が防ぎきれなかった攻撃を、俺がブレイキングマンモスの装甲で防ぐ。

 

ルッコ「す、すみません!ありがとうございます!」

 

カイタ「ああ…ただ、こいつは…ちょっとまずいかもな…」

 

ルッコ「ええ…このままだとジリ貧…ですね。」

 

俺たちが攻めあぐねていると…

 

ロザリア「…それで終わりかい?」

 

彼女がそう言った途端、俺たちの視界から消えた。

 

カイタ「…なっ!?」

 

ルッコ「き、消えた…!?」

 

レンコ「……カイタ、上!」

 

フィリップ「ルッコ君、上だ!」

 

2人の声が聞こえ、俺たちは上を見上げた。

 

上を見ると、ユートピアが炎、雷を纏った竜巻を生成していた。

 

カイタ「…げっ!」

 

ルッコ「や、やばいっ…!」

ロザリア「これでもくらいなぁぁぁぁ!」

 

(ドガアアアァァンン…!)

 

カイタ「ぐああああああっ!」

 

ルッコ&ツグ「ううううっ!(きゃああああっ!)」

 

奴のチャージ攻撃が、俺たちにモロに直撃した。

 

変身解除こそされなかったが、二人とも通常形態に戻されてしまった。

 

バカみたいな威力の攻撃をぶっ放す上に、こちらが攻撃しようにも全く効いていないので、防戦一方の状態だ。

 

ルッコ「…こうなったら!ツグ、ちょっと使ってみたいメモリがあるんだけど、いい?うまくいけば、これで倒せるかも…!」

 

ツグ「えっ!?…分かった、やってみようよ!」

 

ツグさんの同意を得られたルッコ君が、ドライバーのスロットを元に戻し、ジョーカーメモリを装填して再び展開する。

そのままストレージを操作し、

 

ルッコ「…来い!エクストリームメモリ!」

 

カイタ「…はぁ!?」

 

メニューの…おそらくアイテム欄だろう。そこから、鳥の形状の大型のアイテムが出てきた。

あれは確か…『究極のダブル』に至るための、自立型のメモリだったはず。

 

そのままルッコ君のドライバーに覆いかぶさり、展開した。

 

フィリップ「…待て、HPが…ダ、ダメだ!そんなボロボロの体では…!」

 

 

【EX EXT EXTRE EX,T,REM,E…!】

 

 

ルッコ「……え?」

 

…何か様子がおかしい。

ノイズがかかった音と共に、彼のドライバーにスパークが走り、次の瞬間、

 

(バチバチバチバチッ!)

 

ルッコ「うわあああぁぁっ!?」

 

カイタ「なっ!?…ル、ルッコ君っ!」

 

ルッコ「……う、ぐ…」

 

ダブルのスーツに電流が走り、ダブルの変身が解除された。

そして、その場に、ダメージの余波で気絶したルッコ君が崩れ落ちる。

 

カイタ「…お、おい、大丈夫か………あっ!?」

 

彼を抱きとめた俺は、彼のHPが残り数ドットであることに気づいて、慌てた。

 

カイタ「…レンコっ、回復結晶あるか!?ルッコ君が…!」

 

レンコ「わ、分かった!……ヒール!」

 

駆け寄ってきたレンコに彼を託し、回復結晶で回復させるのを見届けた俺は、ユートピアに向きなおる。

 

ロザリア「…この攻撃、結構疲れるのね。今回はここまでにしとくわ。…でも次にあった時は…『殺す』わよ。そこの女ともども。」

 

ロザリアがそういうと、竜巻に包まれる。

 

カイタ「ま、待てっ!」

 

俺は追いかけようとしたが、竜巻が消えたあと、奴の姿はどこにもなかった。

 

カイタ「…くそっ…逃げられた、か…!」

 

フィリップ「カイタ君、大丈夫か!」

 

フィリップさんが俺に駆け寄る。

 

カイタ「…フィリップさん、すみません。…奴を取り逃がしてしまって。」

 

フィリップ「…いや、もとはと言えばこちらの問題なのに、無関係の君たちを巻き込んでしまっている僕たちこそ謝るべきだ。」

 

ルッコ「…ん、んん…」

 

レンコ「…カ、カイタ!ルッコさんが気が付いたよ!」

 

「「…!」」

 

俺とフィリップさんは顔を見合わせて、彼のもとへ駆け寄る。

 

フィリップ「…ルッコ君、大丈夫かい?」

 

ルッコ君「…ええ、何とか。…でも、どうしてエクストリームが使えなかったんでしょう…?」

 

フィリップ「過度のダメージを受けてる状態で強化フォームに変身するのは、体に負担がかかりすぎる。」

 

ルッコ「ああ、そういうことですか…あっ、ユートピアは!?」

 

カイタ「…奴さんなら逃げたよ。どこにいったかもわからん。」

 

ルッコ「……お二人とも。あの怪物のことで、少し話をしたいんです。」

 

カイタ「…ん?」

 

俺は彼の顔を見たが、何かを決意したような顔だった。

 

カイタ「…分かった。いったん街に戻ってそこで聞くよ。体制を立て直す必要もあるしな。レンコ、アスナにロザリアを見つけた事と、狙いは俺とキリト、それと、俺のアレ(・・)を使ってもぼこぼこにされた、ってメッセ送ってくれるか?」

 

レンコ「分かった。」

 

カイタ「…で、ルッコ君、ソウルサイドの担当のツグさんはどこに…?」

 

ルッコ「ツグ、でもいいですよ。彼女のあだ名でもあるので。…えっと、ちょっとまってください。……60層の宿みたいです。」

 

カイタ「…よし。じゃあ、そこに行こう。」

 

 

数時間後、俺たちは第60層の宿の一室にいた。

 

カイタ「……」

 

ルッコ「…えっと、カイタさん。彼女が、ツグです。」

 

ツグ「よろしくお願いします。」

 

俺とレンコ、フィリップさんは、椅子に座り、向かいのベッドには、ルッコ君と、茶色のショートヘアーの、小動物を思わせるような少女が座っていた。

この少女が、ルッコ君と共にダブルに変身する、ツグだろう。

 

レンコ「よろしくお願いします。」

 

カイタ「…それで、話って言うのは?」

 

俺はルッコ君に向けて、話を切り出した。

 

ルッコ「…先ほどの怪物と、俺たちについてです。」

 

カイタ「「俺たち」…?それはまたどうして…」

 

ルッコ「…単刀直入に言います。俺たちは、別の世界、所謂平行世界から来ました。それは、この世界にどういう訳か紛れ込んだ「ユートピアメモリ」を回収するためです。」

 

カイタ「………はっ?平行世界って、あの平行世界?」

 

ルッコ「そうです。」

 

カイタ「…そしてSAOの操作に慣れてる…って事は、あれか?お宅らも、SAO事件の被害者ってクチか?」

 

ルッコ「…そうなり、ますね。」

 

カイタ「…へぇー。そうか。」

 

ルッコ「…あれっ?驚かないんですか?」

 

カイタ「こうして「仮面ライダー」に変身出来てんだ。何があったっておかしくねえよ。」

 

ルッコ「そ、そうですか…。」

 

カイタ「……しっかし、小説とかで平行世界ものとかはよく読んだけど、ほんとにそういうのあるんだな。世の中分からんもんだ。」

 

レンコ「いや、なんでそこまで冷静なの!?」

 

カイタ「…いや、まあ、ね?さっき言った通りだ。」

 

カイタ(言えねぇ~!俺が交通事故で死んでこの世界へ来た転生者だって、口が裂けても言えねぇよ!)

 

カイタ「…それに、この非常時だ。信じざるを得ないだろ。」

 

レンコ「…それは、そうだけど…」

 

カイタ「…とにかく、ルッコ君たちの話は分かった。…それで、あいつ、ユートピアにどう対抗するかだけど…」

 

(ピロン)

 

カイタ「…ん?スマン、ちょっと待ってくれ。」

 

話をしていると、メッセージが届いた。

 

カイタ「…誰だ、このクソ忙しい時に…ああ?アルゴ?あいつが俺に直にメッセ送るなんて、珍しい事もあるもんだな……………え?」

 

レンコ「カイタ、どうしたの?」

 

カイタ「…これ。」

 

レンコ「…え………嘘、だよね…?」

 

アルゴから届いたメッセを見た俺は、茫然としてしまい、横から見たレンコも声が掠れていた。

 

メッセージには、こう書かれていた。

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

アルゴ「キー坊とアーちゃんが例の怪物にやられタ。死んだという訳じゃないガ、すぐに来て欲しイ。」

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

 

メッセージには、指定の座標が書かれていた。

 

カイタ「…こりゃあ、やばい事になってきたぞ。」

 

ルッコ「え、ど、どうしたんですか?」

 

カイタ「…キリト、いや、えーっと、こっちの世界のキリトとアスナがユートピアにやられたらしい。」

 

ルッコ「なっ…!」

 

ツグ「そんな!」

 

フィリップ「…それで、その二人は?」

 

カイタ「…この座標に居ます。…ここは、35層みたいです。」

 

ルッコ「…あれ?ツグ、ここって…」

 

ツグ「…うん、私たちがホームにしてた建物だ。」

 

カイタ「ありゃ、そうなのか。じゃあ、案内頼めるか?」

 

ルッコ「お安い御用です。」

 

カイタ「よし、レンコ、俺たちも行くぞ。」

 

レンコ「ちょっと待って。アイテムの補充、忘れないでよ?…話はまだ全部理解できてないけど、厳しい戦いになるんでしょ?」

 

カイタ「…そうだな。分かった。」

 

 

そして、街でアイテムを補充したあと、ルッコ君の案内で、俺たちはアルゴからのメッセージの座標に向かった。

 

カイタ「…ずいぶんでっかいホームに住んでたんだな。」

 

ルッコ「まあ、元々がシェアハウスだったみたいで…」

 

アルゴ「…おお、カイ坊、来たのカ。」

 

カイタ「アルゴ、キリト達は…」

 

アルゴ「こっちだ。……ただし、心の準備はしとけヨ?」

 

カイタ「…へ?」

 

アルゴに連れられ、建物のリビングのような場所へと案内された。

 

そこには、

 

カイタ「……は?」

 

レンコ「……え?」

 

ルッコ「……あっ!?」

 

ツグ「……どういう、事…?」

 

 

 

のっぺらぼうの状態のキリトとアスナが横たわっていた。

 

 

 

カイタ「……おい、キリト…?アスナ…?」

 

俺は彼らの肩を揺さぶったが、全く反応が無い。

HPのゲージは0になっていないので、幸いにも死んではいないようだ。

 

(ピコン)

アルゴ「………ナンだとっ!?」

 

レンコ「アルゴさん、どうしたんですか!?」

 

アルゴ「…今他の情報屋の連中から入った情報ダ。……例の怪物が、低層域で暴れたらしい。…主に、低レベルや職人などの戦えない人達を狙ったみたいダ。……そして、報告から考えるに、襲われた全員が、今のキー坊とアーちゃんと同じ様態になっている。」

 

カイタ「………なん、だと…?」

 

聞き返すレンコに対して、アルゴは告げたのは、まさしく絶望の様な報告だった。

 

レンコ「……夢だよ、こんなの、夢に決まってる…」

 

後ろで、レンコが震える声で床にへたり込むのが見える。

 

ルッコ「……フィリップさん、これは…」

 

ルッコ君が、キリトとアスナを調べていたフィリップさんに声をかける。

 

フィリップ「……間違いない。ユートピアの能力だ。」

 

ツグ「…今度は、どういう能力なんですか…?」

 

フィリップ「…人間の生きる希望、即ち精神力を奪って自らの体に蓄えることで、エネルギーに転換する。……それこそが、ユートピア・ドーパントの真骨頂だ。」

 

レンコ「……そん、な…」

 

カイタ「……くそったれが!」

 

抵抗できない人々を襲うという、ロザリアの卑劣極まりない行動と、奴が変身するユートピア・ドーパントのバカげた能力に、俺は思わず悪態を漏らし、座っていた椅子を蹴り飛ばす。

 

ツグ「…ルッコ君、私、レンコさんと一緒に居るね?」

 

ルッコ「…分かった…カイタさん。少し話ませんか。」

 

カイタ「……ああ。」

 

ルッコ君にそう声をかけられ、俺は力なく返す。

 

ルッコ「…じゃあ、少し外へ行きましょうか。」

 

 

 

 

 

 





いかがだったでしょうか。

展開を面白くするためとはいえ、よりにもよってコラボ相手のオリ主にひどい事した気がする…。


という訳で、コラボ回、中編①でした。

……すみません。前回から出すのが遅くなった上に、さらに長くなる始末…。
しかも、今回大半会話で、バトルシーンは最初だけという…

もう、ほんとに…後から補足の投稿をするルコルンさんの苦労が増えてしまっている…。
申し訳ございません…。

多分、今日中に次の話投稿すると思います…

それでは、また。

↓ルコルンさんの「『黒の剣士』と『緑の戦士』と『幼馴染』の協奏曲」のページ
https://syosetu.org/novel/266424

(中編②に続く)




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Ep.EX③ Kの覚悟/コレが戦士と戦士の協奏曲(コラボ回中編②)


皆さん、どーもです。
はい、コラボ回中編②です。

…今回は半分程バトルです。
描写がめっちゃ難しかった。


このコラボの執筆に専念したい時に、大学が課題をたんまり出しやがった。
おのれ大学ぅぅぅ!!!


 

(カイタside)

 

ルッコ「…ごめんなさい。カイタさん。」

 

カイタ「…なんだよ。藪から棒に。」

 

建物を出て、二人で少し散策していると、突如ルッコ君から謝られた。

 

ルッコ「……ほんとうは俺たちの世界で片付けるべき問題なのに、こちらの世界の人まで巻き込んで、余計な犠牲者を出してしまって…。」

 

カイタ「……大丈夫…とは言えねぇな…。正直、今でも怒りを抑えるのに必死だよ…。もちろん、ロザリアに向けての怒りだ。」

 

ルッコ「…そうですよね。」

 

俺は一つの決意を固める。

 

カイタ「…ルッコ君…頼みがあるんだ。俺と決闘(デュエル)してくれないか…?」

 

ルッコ「えっ!?ど、どうしてですか…?あ、まさか俺、何か失礼を…!」

 

カイタ「い、いや違う!そういう事じゃなくて…単純に、俺の気持ちを確かめるためだ。」

 

ルッコ「…と、言いますと?」

 

カイタ「俺はどこかで、今回の事件を嘗めていたのかもしれない。…だが、戦って分かった。奴は、ロザリアはもう、単なる犯罪者じゃない。俺への復習に燃える狂人だ。…だったら、俺が止めて然るべきだ。…本来ならな。」

 

ルッコ「………」

 

カイタ「…でも、奴を倒すには、奴と同じくガイアメモリの力を使って戦う、ルッコ君たちの力が必要なんだ。だからこそ、俺は君と戦って、確認したいんだ…。俺があの日、力を手に入れた時に感じた、自分の覚悟を。でないと、俺は君の隣で戦う資格がない…。」

 

俺は真っすぐルッコ君を見た。

 

ルッコ「…分かりました。ただし、死んだら元も子もないので、半撃決着モードでいいなら。」

 

カイタ「…分かった。」

 

少し歩いて、人目が無い事を確認した後に、俺が彼に申請を送り、カウントダウンが始まった。

 

━━3

 

カイタ「………」

 

俺は片手剣を構え、

 

━━2

 

ルッコ「………」

 

ルッコ君は刀を構え、

 

━━1

 

「「………」」

 

━START!

 

「「はああぁぁぁぁっ!!!」」

 

お互いに駆け出した。

 

 

カイタ(…分かっちゃいたが、一筋縄ではいかねぇなっ…!)

 

しばらく剣を打ち合って分かったが、やはりルッコ君は、強い。

片手剣よりもリーチが少し短いはずの刀を使いこなし、一つ一つの動作に無駄がない。

そもそも彼が使う「刀」カテゴリーの武器自体、「曲刀」のスキル熟練度を上げないと使えない。言い換えれば、曲刀を使いこなせて、初めて刀を使いこなせるという事だ。

 

幸いなことに、こちらはクラインが刀使いであるため、彼から様々な情報は得ている。

それで対応するしかない。

 

ルッコ「…そこだっ!」

 

カイタ「おわっ!アブねっ!」

 

…と、俺が思案していると、ルッコ君が単発技の「絶空(ゼックウ)」を発動させた。

 

だが、避けるためにいきなり体をひねったので、体制を崩してしまった。

バランスを崩した俺を見て、ルッコ君がニヤリとした。

 

ルッコ「はあっ!」

 

カイタ「…ぐっ!」

 

即座にルッコ君が発動した「浮舟(ウキフネ)」によって俺は空中に打ち上げられた。

 

カイタ(やばい!あいつ、スキルコンボするつもりだ!)

 

ルッコ「たあっ!」

 

ルッコ君が、居合い技の「辻風(ツジカゼ)」を発動し、一気に空中の俺に接近して一閃。

さらに、

 

ルッコ「それっ!」

 

そこから空中に居る状態で、上下ランダムに発動するため軌道を読むのが難しい「幻月(ゲンゲツ)」を発動。

しかもこの技、技後硬直が短いため、

 

ルッコ「…これで、どうだっ!」

 

即座に3連撃技の「緋扇(ヒオウギ)」を発動してきた。

 

カイタ「ぐああっ!」

 

俺は空中に居て無防備な状態だったため、全ての攻撃を喰らってしまった。

ここまでのラッシュで、HPは約3割弱削られた。

 

カイタ「…ちいっ!」

 

カイタ(ともかく、隙を見つけないと…!またあのラッシュに持ち込まれたら、今度こそ目が無くなるっ…)

 

俺は一つの賭けに出ることにした。

 

(バッ!)

カイタ「…はあああ!」

 

一度大きく距離を取り、そこから猛スピードで接近する。

 

ルッコ「…うおおお!」

 

ルッコ君も迎撃しようと、走り出す。そして、再び「絶空(ゼックウ)」の構えを取った。

 

 

だが、それこそ俺が待っていたものだ。

 

カイタ(…かかった!)

 

ルッコ「…えっ!?」

 

ルッコ君が驚く。

無理もない。

俺が急ブレーキをかけて止まったからだ。

 

だが、ルッコ君はすでにモーションに入っている為、ソードスキルを止めることは出来ない。

ターゲットを逃したスキルは空振りに終わった。

 

俺が待っていたのは、その後の硬直時間。

 

カイタ「…悪いが、同じことさせてもらうぜ。」

 

ルッコ「しまっ…!」

 

俺は即座に「レイジスパイク」を発動、ルッコ君を打ち上げる。

後は先ほどのルッコ君と同じ様に、スキルコンボに持ち込むだけだ。

 

カイタ「…はあああぁぁぁ…!」

 

俺は、右手で持った片手剣を大きく引き、切っ先に左手を添える。

甲高いジェットエンジンの様な音が響き渡る。

 

カイタ「…そこだっ!」

 

狙いを定め、フルパワーの重単発技「ヴォーパル・ストライク」をルッコ君に向けて放ち、命中する。

 

カイタ「からの…これで、どうだっ!」

 

俺は空中で、片手直剣奥義技の10連撃技「ノヴァ・アンセンション」を放ち、地面に降り立った。

 

これで、ルッコ君のHPを2割削れた。

 

カイタ(…あれだけ喰らって2割か。コイツ、どんだけ固いんだ…?)

 

ルッコ「…いてて…はぁ、まさか奥義技を使ってくるとは。(´Д`)」

 

カイタ「そうでもしねえと、勝ち目無ぇからな。」

 

ルッコ「…そうですか…なら、こっちも本気で行かせてもらいます。」

 

カイタ「……はい?」

 

今、何て言った?

まるでさっきまでは本気じゃなかったという様な…

 

ルッコ「はあああっ!」

 

ルッコ君が再び俺に攻撃を仕掛けるが、難なく躱す。

 

 

…躱した、と思っていた。

 

(ザシュッ)

 

カイタ「……え?」

 

なぜか攻撃を喰らった。

 

カイタ「う、嘘だろ、どうやって…」

 

(すっ)

カイタ「なっ!?もう一本!?」

 

なんと、彼が刀をもう一本持っていたのだ。

 

カイタ「な、何だよ、それ…」

 

ルッコ「…俺のEX(エクストラ)スキル、『暗殺者(アサシン)』です。」

 

カイタ「…そんなスキル、聞いた事ねぇぞ。…でも、武器が増えたところで…」

 

ルッコ「増えるのは武器だけじゃないですよ?」

 

カイタ「……え?」

 

つば競り合いの最中、彼がそう言った途端、背後からも気配を感じて、俺は横っ飛びに躱した。

 

カイタ「……な、なななな、なぁにぃ~!?」

 

それ(・・)を見た俺は、素っ頓狂な声を上げた。

…無理もない。あろうことか、ルッコ君本人(・・)も増えていたのだから。

 

ルッコ「はあああっ!」

 

カイタ「…ぐうっ!」

 

これは分が悪い。

分身になっているという事は、単純に攻撃回数が増えるという事だ。

しかも、先ほどよりも攻撃の威力が重くなっている気がする。

 

ルッコ「…これで、決めさせてもらいます。」

 

 

「《鏡花水月 明鏡止水》」

 

 

ルッコ君が、おそらく上位スキルであろうソードスキルを放った。

 

(カン!カンカンカン!)

 

カイタ(っ!は、早いっ!)

 

その動きがあまりにも早いため、少しでも気を抜けば、攻撃を喰らってしまいそうだ。

 

カイタ(こうなったら…こっちもソードスキルで…!)

 

俺も負けじと「ノヴァ・アンセンション」を発動させ、相打ちに持っていこうとした。

 

ルッコ「はあああああ!」

 

カイタ「うおおおおお!」

 

(キィンッ!)

 

最後の一撃は、同時に喰らった。

 

先に敗北判定が上がったのは、

 

 

 

カイタ「……やられた。あんな分身相手に勝てる訳ねぇっての。」

 

 

 

━俺だった。

 

ルッコ「…いえ、カイタさんも、俺の分身に初見で対応できるなんて、さすがです。」

 

カイタ「そっか、ありがとな。…じゃあ、改めて、よろしく頼むよ!ルッコ君!」

 

ルッコ「はい!」

 

(ピコン)

 

ルッコ「…ツグからだ。…えっ!?」

 

カイタ「どうした?」

 

ルッコ「今、ツグとレンコさんたちが、ユートピアと対峙しているそうです!」

 

カイタ「なっ!?…しまった、ここからじゃ間に合わない!」

 

ルッコ「……カイタさん、俺を担いで走れますか?」

 

カイタ「…へっ?そりゃあ、行けるけど…」

 

ルッコ「じゃあ、お願いします。」

 

【JOKER!】

 

ルッコ「変身!」

 

理由を聞こうとしたが、ルッコ君はそれを待たずに、ダブルドライバーを装着し、ジョーカーメモリを装填。すると、ドライバーのジョーカーメモリが消え、急に倒れそうになったので、慌てて支える。

 

カイタ(ボディサイドのルッコ君がなんで………あ、まさか、あのフォームか?)

 

そんな事を考えながら、担いで戻ると、そこにはレンコとフィリップさんを守る様にして立つ、「仮面ライダーダブル ファングジョーカー」がいた。

 

カイタ「…ああ、やっぱそれだったか。」

 

ルッコ「お察しいただいて何よりです。」

 

カイタ「…で、肝心のユートピアは?」

 

レンコ「あいつなら、逃げていったよ。」

 

ツグ「というか、伝言に来たみたいです。」

 

カイタ「…伝言?奴が?」

 

ダブルの変身が解除され、意識が戻ったルッコ君を下ろしながら、同じく変身解除で生身に戻ったツグに聞き返す。

 

ツグ「…はい。「47層のあの道で待っている。」との事です。」

 

カイタ「47層…。」

 

すぐに思い立った。

そこは、俺がビーストテイマーの少女を助けるために訪れ、キリトと共に奴と戦った場所。

 

ルッコ「…カイタさん。」

 

カイタ「時は来た、って奴だな。」

 

レンコ「…行くの?」

 

カイタ「ああ。決着(ケリ)、付けないとな。」

 

レンコ「…分かった。じゃあ、準備できたら、行こう。」

 

カイタ(…待ってろ、ロザリア…!)

 

 





いかがだったでしょうか。

今回は、今回コラボするにあたってルコルン様が要望しておられた、「オリ主同士のデュエル」です!
……初めてライダーアイテムを使わない、SAOらしいバトル書いた。

書いてて思ったけど、ホントルッコ君のユニークスキル強いっすねぇ。
攻撃回数増えるだけでなく、諸々のバフも付くとは…今回バフの描写無いけどね。
ヤマモリバフデバフ(?)の詳細は、下に置いてあるルコルン様の小説の、16話のあとがきを読んでください。
…設定細かくて、実際に実装されててもいいクオリティのスキルです。

あと、分身と言えば…ディケイドのアタックライド「イリュージョン」を思い出した。

次回で(9割の確率で)コラボ回完結です。

↓ルコルンさんの「『黒の剣士』と『緑の戦士』と『幼馴染』の協奏曲」のページ
https://syosetu.org/novel/266424

それでは、また。

P.S:この話の投稿寸前に、第1話のUAが1000件を越えました!

(後編に続く)



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Ep.EX④ Kの覚悟/ヤツラの名は「仮面ライダー」(コラボ回後編)


皆さん、どーもです。
大変長らくお待たせいたしました。
コラボ回、最終回です。


先日、7月2日に、上野で開かれたSAO展に行ってきました。

キャラの設定資料もラフ画も、アニメ制作時の生のコマ絵もすごかったし、一番興奮したのは、「エリュシデータ」や「ダークリパルサー」等の主要武器のプロップ展示です。
シノンが使っているヘカートⅡが予想よりもごつくてでかくて、シノンはいつもこんなデカブツを担いでいるのかとびっくりしました。
あと、道中食ったそばもうまかった。
…ただ、外はクソ暑かった。
(詳しくはTwitterで)






 

(カイタside)

 

アルゴ「……ほんとに行くのカ?」

 

俺たちは、アルゴに見送られて、35層の転移門に居た。

 

ルッコ「…これ以上、あいつを野放しにしておくわけにはいきません。」

 

カイタ「ああ…俺たちが終わらせる。」

 

隣で、レンコやツグ、フィリップさんも頷く。

 

それでも、アルゴは、不安そうな顔を俺に向ける。

 

アルゴ「…キー坊とアーちゃんがやられた以上、奴に対抗できるのは、カイ坊と、そこのオニーサンだけだ。…もしお前たちまでやられたら…」

 

そういうアルゴに、俺は不適に笑い返して告げる。

 

カイタ「バカな事言ってんじゃねぇよ、アルゴ。俺たちがそう簡単に負けるように見えるのか?」

 

アルゴ「………いや、オニーサンは分からないガ、カイ坊はどこまで行っても、くたばり損ないそうな面してるナ。」

 

アルゴが、いつものニヤリとした笑みを浮かべて言い放つ。

 

カイタ「……言い方に語弊があるように聞こえるが、まあ、その通りだ。……それにな。」

 

俺は、怒りを押し殺すように目を閉じて言った。

 

カイタ「…キリトや、アスナ…あいつらだけじゃなく、ロザリアに襲われた皆は……言うなれば、「夢」を奪われたんだ。…だから、取り返しに行かねぇと。」

 

アルゴ「……お前もそんなキザな事言えたんだナ。」

 

レンコ「…ほんと、いきなり何言ってるの?」

 

カイタ「悪かったな……。いや、ほんとに反省してるので、その白けた目を向けないでください。」

 

ルッコ「ま、まあまあ。……緊張は取れましたし。」

 

カイタ「…はぁ…そんじゃ、行くか。」

 

ルッコ「はい。」

 

「「「「「転移!フローラル!」」」」」

 

その声と共に、俺たちは35層から姿を消した。

 

 

47層、フローリア。またの名を、フラワーガーデン。そのフロアの一画にあるダンジョン「思い出の丘」の一本道に奴はいた。

 

ロザリア「……来たね。」

 

カイタ「…よお、ロザリア。返してもらいに来たぜ。…色々とな。」

 

ルッコ「ロザリア、これ以上、お前の好きにはさせない!メモリを渡してもらおう!」

 

俺とルッコ君とツグは、ロザリアと向かい合う。

 

ロザリア「それは無理な相談ね…ゼロワン。ここで、アンタだけでも殺す。…あたしの理想郷に、アンタは邪魔。」

 

そしてロザリアが、ドライバーを装着し、ユートピアメモリを取りだす。

 

 

 

「…あたしこそが、理想郷(ユートピア)だ。」

 

 

 

【Utopia!】

 

 

 

そして、ロザリアがユートピア・ドーパントに変貌する。

 

ロザリア「…お前たち、行ってきな。」

 

カイタ「…なっ。」

 

ルッコ「…ここまでの力を…!」

 

なんと、ロザリアが、何もない虚空から、ダブルにおける雑魚キャラ「マスカレイド・ドーパント」を出現させた。

 

俺はルッコ君と顔を見合わせ、俺はゼロワンドライバーを、ルッコ君はダブルドライバーを装着する。

 

ツグ「…この勝負、勝てると思いますか?」

 

カイタ「…こんな言葉があるんだ。『勝てると決まってる勝負程、つまらないものは無い。』ってね。」

 

ルッコ「……確かに、その通りですね…!」

 

俺たちは、各々のアイテムを起動させる。

 

カイタ「……行くぞ。ルッコ、ツグ。」

 

ルッコ&ツグ「「…はい。」」

 

【ジャンプ!】

 

【CYCLONE!】【JOKER!】

 

【オーソライズ!】

 

そしてポーズを取り、異形の戦士(仮面ライダー)として戦う覚悟を表した言葉を告げた。

 

 

 

カイタ&ルッコ&ツグ「「「……変身!」」」

 

 

 

【プログライズ!】

 

【飛び上がライズ!ライジングホッパー!】

 

【CYCLONE!JOKER!】

 

A jump to the sky turns to a rider kick.(空へのジャンプはライダーキックに変わる。)

 

光と風が収まり、俺たちは、仮面ライダーに変身した。

 

レンコが、ダブルに変身した影響で倒れたツグを受け止め、フィリップさんと一緒に下がった。

 

カイタ「…ロザリア、今度こそ逃がさない!お前を止められるのは……俺たちだ!」

 

ルッコ&ツグ「「さあ……お前の罪を、数えろ!」」

 

(すっ)

ロザリアが手を上げ、マスカレイドたちが俺たちに襲い掛かる。

 

「「「うおおおおおぉぉぉっ!」」」

 

俺たちも負けじとマスカレイドの方へ駆け、攻撃を開始する。

 

ルッコ「一体一体相手にしてたらキリが無い!まとめて撃破するよ!」

 

ツグ「分かった!」

 

【HEAT!METAL!】

 

ダブルの体が、緑と黒から、赤と銀色に変わった。

 

ルッコ「おぉぉりゃあああ!!!」

 

専用武器のメタルシャフトに炎を灯し、マスカレイドを数体まとめてねじ伏せている。

 

カイタ「…へぇ、やるじゃねえか。…だったらこっちもっ…!」

 

【アタッシュカリバー!】

 

ダブルの隙の無い動きに感心しながら俺は、アタッシュカリバーを取り出し、

 

カイタ「おりゃ!」

 

最近キリトに教えてもらい習得した、体術スキルの基本技「閃打(センダ)」を、すでにこちらに向かっていたマスカレイド一体に叩きこみ、後ろに下がらせる。

奴らが数体固まったところで、

 

【ブリザード!】

【(ガシュン) Progrise-key confirmed. Ready to utilize.】

【ポーラーベアーズ、アビリティ!】

【フリージング!カバンストラッシュ!】

 

カイタ「凍らせて……斬る!」

 

フリージングカバンストラッシュでマスカレイドを氷漬けにしてから、氷ごと切り裂いた。

 

氷と共にマスカレイドが消滅する。

 

(ドカーン!)

 

カイタ「なっ、何だぁ!?」

 

後ろで物凄い轟音が聞こえたので、何事かと思って振り返ると、ダブルがメタルシャフトを振り上げた状態で止まっていた。

上空には、消滅しかけている数体のマスカレイドがいた。

どうやら、ヒートメタルのマキシマムドライブを発動させ、一気に撃破したみたいだ。

 

俺たちは周囲のマスカレイドを一掃して、並び立つ。

 

カイタ「仕上げに入りましょうかね…!」

 

ルッコ「……今度こそ…使いこなす!」

 

ルッコ君がストレージを操作し、エクストリームメモリが出現する。

それが後方のレンコ達がいる方へ飛んでいき、ツグがデータとして吸収された。

 

レンコ「…えっ、な、何、この鳥さん…うえええぇぇ!?ツ、ツグさんが、と、鳥さんに吸い込まれたぁ!!」

 

レンコの素っ頓狂な声が聞こえる。

鳥さんって…いや、間違っちゃいないけど。

 

なんてことを考えている間に、ルッコ君のもとに戻ったエクストリームメモリが、スロットが元に戻ったドライバーに覆いかぶさり、展開した。

 

 

【EXTREME!】

 

 

ルッコ&ツグ「「はあああぁぁ………はぁっ!」」

 

 

電子音が鳴り響き、ダブルが胸の前に手を持っていき、まるで体の裂け目をこじ開けるかのように動かした。

 

すると、ダブルの体中央に、クリスタルの様に透き通るものが現れた。

 

レンコ「えええええ!?ま、真っ二つに開いたぁ!しかも、中見えてるよ!?」

 

まさしくレンコの言う様に、ダブルが一皮むけたかのような状態だ。

 

フィリップ「…やはりだ…君たちならなれると思っていた!僕と翔太郎と同じ、『究極のダブル』に…!」

 

ツグ「な、何…?この沸き起こってくる力は…!」

 

ルッコ「…フィリップさんの言っていたことが分かる…まるで、地球そのものと一体化したみたいだ…!」

 

ロザリア「…へぇ、新しい力ね。すこしは楽しめそうじゃない。まあ、どうあがこうと結局同じ事だけどね!」

 

ロザリアがそう吠え、さらにドーパント達を呼び出す。

だが、今回は様子が違った。

 

フィリップ「あ、ありえない…ユートピアが正規のドーパントを呼び出すなんて…!」

 

フィリップさんが青ざめて言った様に、ロザリア扮するユートピア・ドーパントが、簡易戦闘メモリのマスカレイドではなく、正規のドーパントを虚空から呼び出したのだ。

その数、6体。

 

フィリップ「エレファントにドルフィン、フィッシュにエイプにバード、コックローチも居る!?」

 

ルッコ「う、嘘だろ……どうして…!?」

 

カイタ「大方、そっちの世界のブツがこっちに来て、時空が歪んでユートピアの能力も変わったとかじゃね?」

 

俺はあまりに厄介な能力を前にして、やけくそ気味に言った。

 

フィリップ「…これほどの正規ドーパントを見るのは、ズー・ドーパントの時以来だな…」

 

今、俺たちの前には、ユートピアと、奴が呼び出した正規ドーパント6体、最初に呼び出したマスカレイドの残党4体の、計11体がいる。

 

その内の一体である、エイプ・ドーパントが唖然とするルッコ君たちに襲い掛かる。

 

カイタ「ったく、ロザリアの野郎、面倒な能力使ってきやがって!こうなったら俺も…!」

 

ルッコ君を援護する為、俺も最近身に付けた新たな力を取り出し、起動した。

 

【ハイパージャンプ!】

 

【オーバーライズ!】

 

【プログライズ!】

 

Warning,warning.(警告、警告。)This is not a test!(これは試験ではない!)

 

『ハイブリッドライズ!』

 

『シャイニング!アサルトホッパー!』

 

No chance of surviving this shot.(この一撃から生き残る術はない。)

 

カイタ「でありゃあああ!!」

 

俺は「ゼロワン シャイニングアサルトホッパー」に変身し、オーソライズバスターをバットの様に振り回す。

…なぜかその一撃で、エイプ・ドーパントが消滅した。

おそらく、弱点に当たったか、模造品だから弱いのか。

 

カイタ「…俺が時間を稼ぐ!ルッコ君たちは…検索(・・)、出来るか!?」

 

ともかく、エイプ・ドーパントを撃破した俺は、ダブルの能力を知っているという事もあって、ルッコ君たちに確認する。

 

フィリップ「…カイタ君の言う通りだ!ルッコ君、エクストリームの能力は分かってるよね?」

 

ルッコ「は、はい!やってみます!」

 

次の瞬間、ダブルの中央部のクリスタルの部分がキラキラと輝いた。

 

【ゼロワンオーソライズ!】

 

俺は、こちらに向かってくる4体のマスカレイドからルッコ君を守るように立ち、

 

【ゼロワンボンバー!】

 

カイタ「せいっはああ!」

 

ゼロワンドライバー側のオーソライザーにかざして認証(オーソライズ)を行い、エネルギーを纏わせたオーソライズバスターを大きく振り回す。

 

マスカレイドたちはその攻撃であっけなく消滅した。

 

ルッコ「……検索、完了しました!」

 

ツグ「…行こう、ルッコ君…!」

 

その間に、向こうの作業も完了したようだ。

その間、わずか数秒。

 

カイタ「…大掃除は任せた!スイッチ!」

 

ルッコ「承りました!」

 

ルッコ君たちが、俺とスイッチで入れ替わって前に出ると同時に、体術スキルの一つである、手刀を相手に突き刺す零距離技「エンブレイサー」をバード・ドーパントに突き刺していた。

そして奴の翼をもぎ取り、上空に放り投げたあと、

 

「「プリズムビッカー!」」

 

中央のクリスタルから、盾の様な物体である、プリズムビッカーを呼び出していた。

 

【PRISM!】

 

プリズムのガイアメモリを剣の柄に差し、盾の中央から必殺剣を抜いた。

そして剣を抜刀する動作と同時に、落ちてきたバードを叩き斬って消滅させた。

 

そして流れるようにドルフィン、エレファントに攻撃をする。

しかも、一撃で苦しんでいるところを見ると、二体とも弱点を攻撃されたようだ。

防御する暇もなく、だ。

さぞかし相手はおったまげただろう。

W(ダブル)C(サイクロン)J(ジョーカー)X(エクストリーム)の真の能力を知っている俺は、分が悪い相手に挑むドーパント達にむしろ同情していた。

 

だが、感心している暇はない。

猛攻を続けるダブルを尻目に、大ダメージを受けたドルフィンとエレファントにとどめを刺すべく、俺は奴らの方へ駆けだす。

 

【ジャンプ!】

【(ガシュン) Progrise-key confirmed. Ready for buster.】

 

俺はライジングホッパープログライズキーを、バスターライズスロットに装填し、

 

【バスターボンバー!】

 

カイタ「おらああ!!」

 

ドルフィンを一刀両断。それを見て逃げようとするエレファント。

 

カイタ「逃がすか!」

 

【ファング!】

 

【バスターオーソライズ!】

 

【(ガシュン) Progrise-key confirmed. Ready for buster.】

 

ライジングホッパープログライズキーを抜き、取り出したバイティングシャークプログライズキーをバスターオーソライザーにかざし、さらにスロットにも装填。

 

【プログライズバスターボンバー!】

 

カイタ「喰らえぇぇ!!」

 

サメの牙を模した刃が出現し、少し離れていたエレファントを切り刻む。

 

カイタ「ふぃ~…そうだ、あいつらは…」

 

ルッコ&ツグ「「ビッカーファイナリュージョン!」」

 

カイタ「…心配する必要もなかったな。」

 

俺がルッコ達の方を見ると、彼らも必殺技を発動させ、残ったフィッシュ、コックローチのドーパントを撃破していた。

俺が3体で、ルッコ君たちも3体。

これで、ロザリアが呼び出した、正規ドーパントは居なくなった。

 

ロザリア「ク、クソ…!あたしは…ここで終わるわけには…!」

 

カイタ「…ロザリア、そろそろ寝んねの時間だぜ?」

 

ルッコ「ツグ、これで決めるよ!」

 

ツグ「うん!」

 

【アサルトチャージ!】

 

【シャイニングストーム!インパクト!】

 

俺はゼロワンドライバーに装填しているプログライズキーを、

 

【PRISM!MaximumDrive!】

 

【EXTREME!MaximumDrive!】

 

ルッコ君たちは、プリズムビッカーに装填していたプリズムメモリを右腰のマキシマムスロットに装填、エクストリームメモリを操作して二人同時に空に飛びあがり、一撃必殺(ライダーキック)の構えに入った。

 

カイタ「はあああああ!!!」

 

ルッコ&ツグ「ダブルプリズムエクストリーム!」

 

俺は前に一回転して右足を、ルッコ君たちは両足をそろえて、ロザリアにキックを叩き込んだ。

 

ロザリア「こんな…こんな…ちくしょぉぉぉおおお!!!」

 

「「「はああああああああ!!!!」」」

 

俺たちのキックが直撃して、ロザリアが怨嗟の声を上げる。

それを気にせず、俺たちのキックはあいつを貫通し、ロザリアがまばゆいほどの光に包まれる。

 

 

着地して振り返った俺たちが見たのは、ユートピア・ドーパントがポリゴン状に弾けて消え、そこからロザリアが転がり出てきた所だった。

 

気を失うロザリアのそばで、ユートピアメモリが音を立てて消滅した。

 

 

カイタ「……終わった、か。」

 

ルッコ「…はい。」

 

俺たちは、顔を見合わせ、変身を解除する。

俺は粒子に包まれて、ルッコたちは竜巻に包まれてそれぞれのスーツが分解される。

 

レンコ「カイタ!ルッコさん!ツグさん!」

 

ロザリアの拘束を終えたレンコとフィリップさんが駆け寄ってくる。

 

フィリップ「…どうやら上手くいったようだね。」

 

ルッコ「はい!」

 

レンコ「…あっ、カイタ!アルゴさんからメッセージ来たよ!キリトさん達、元に戻ったって!」

 

カイタ「本当か!…やれやれ、どうなるかと思ったが、一件落着だな。」

 

レンコの報告を聞き、俺たちは安堵した。

 

(パアァ…)

ツグ「えっ!?」

 

ルッコ「な、何だ!?」

 

次の瞬間、ルッコ君たちが光に包まれる。

 

フィリップ「…どうやら時間のようだね。」

 

レンコ「時間って…どういう事ですか?」

 

フィリップ「言ってしまえば、強制送還だ。おそらく、ユートピアメモリが消滅した事で、僕たちがこの世界に居る必要もなくなった。本来なら、この世界にとって僕たちは異物だからね。」

 

ルッコ「…そうですよね…カイタさん、レンコさん、色々とお世話になりました。」

 

フィリップ「僕からもお礼を言わせて欲しい。元々こちらの世界の問題であった、ユートピアメモリの回収……まあ、実際には回収できなかったが、それでも、メモリブレイクは出来た。協力に、心から感謝するよ。」

 

カイタ「いや、大したことはしてないですよ。……それに、『ライダーは助け合い』って言いますし。」

 

レンコ「……カイタの言ってることはよく分からないけど…私も、あなた達の力に慣れたのなら、良かったです。」

 

こうして話している間にも、どんどん彼らの体が薄くなっていく。

 

フィリップ「…では、帰ろうか。」

 

 

ルッコ「はい!カイタさん、レンコさん、ありがとうございました!攻略、頑張ってください!」

 

 

光が収まった時、彼らの姿は無かった。

 

レンコ「……なんだか、夢を見てた気分だよ。」

 

カイタ「…ああ、全くだ。でも、あいつらだって生きてる。こことは違う、世界のどこかで。」

 

レンコ「…うん…。そうだよね。」

 

カイタ「…んじゃ、俺らも帰るか。キリト達の様子も確認したいしな。」

 

レンコ「うん。」

 

 

……この数日間に起こった出来事は、人に話せばバカにされるような、荒唐無稽な話だ。

 

この事件の事を忘れる人も増えるだろう。

もしかしたら、そんな事件があった事を知らない人もいるかも知れない。

 

…だが、俺は決して忘れはしない。

 

世界こそ違えど、俺と同じ様にSAOの攻略組として戦ったという「緑の戦士」の少年と、彼の恋人にして相棒でもある「大いなる普通」の少女。

 

そして、彼ら2人が1人になって戦う、俺と同じ「仮面ライダー」が居る事を。

 

 

 

 

 

 

カイタ「………」

 

レンコ「…あれ、どうしたの?」

 

カイタ「…ああ、いや、何でも無い。」

 

カイタ(…そういや、あいつらには聞いてなかったけど…いや、聞いたって分かんないかもしれないけど…どうしてルッコ君たちの世界の物、言い換えれば別世界の物が、こっちの世界に紛れ込んだんだ…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…イレギュラーはどうなった。」

 

「何とか除去できたようです。」

 

「そうか…まあ、この程度の弊害ですんで良かったと、思う事にしよう。」

 

「いや、本来ならあれ(ユートピア)は『この程度』では済みませんからね?…というか、元々こちらの不始末のせいで、別世界のメモリがあの世界に紛れ込んじゃったんですよ?……それで、このまま続けますか?」

 

「…もちろん。横やりは入ったが、計画を続ける。…よい余興ではあったが。」

 

「…では、さっそく「これ」を転そ…」

 

「待て。まだ早い。…もう少し待ってからでも、遅くはないはずだ。」

 

「……分かりました。」

 

「…悪く思うなよ、海道圭太(かいどうけいた)。お前の心がどこまで耐えられるか…楽しみだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 





いかがだったでしょうか。

…ファングジョーカーの戦闘シーン?
ハッハッハッ。そんなの書く余裕があるとでも?
……ルコルンさんが何とか補足してくれる。きっと。(最後の最後で丸投げするクソ人間)

…お忘れかもしれませんが、「海道圭太」とは、カイタ君のリアルの名前です。(Ep.1、2を参照)

なお、今回、オリジナル設定加えてます。
ユートピアがマスカレイドを呼び出す、とか。


という訳で、全4回に渡って投稿したコラボ回、これにて完結です。

前編を投稿してから約1か月…いやー、長かった()

改めまして、この度コラボさせていただいたルコルンさん、本当にありがとうございます!

2話構成と言っておきながら結局その倍になったり、回と回の間で大きく待たせるなど、数々の迷惑、誠に申し訳ございませんでした…。

ルコルンさんは、自分がこの小説を書き始めたばかりの頃から、感想、お気に入り登録をしてくださり、それ以降も、ほぼ全ての投稿で感想を書いてくださっています。

それらすべてがモチベになり、今も小説を書き続けられています。

↓ルコルンさんの「『黒の剣士』と『緑の戦士』と『幼馴染』の協奏曲」のページ
https://syosetu.org/novel/266424


次回からは本編に戻ります。

と言いたい所ですが、誠に勝手ながら、約1か月ほどお休みをいただきたく思います。
というのも、実は大学の前期末課題がいろいろマズい事になってきてまして…
すでに前年度で単位をいくつか落としてしまっているのもあり、何としても全て単位を取るために課題に専念したいと思います。

また、そのほかにも、ハーメルン関係で2つ程考えていることがあり、それの最終確認もしようと思っています。

8月ごろになったら戻ってくると思います。

それでは、また。

P.S:先日の7月8日に、SAOのアニメ第1話が放送されてから10年が経ちました。
おめでとうございます。
できれば今回の話、その日に合わせて投稿したかった…。





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Ep.19 コレが棺桶の逆襲だ①

皆さん、どーもです。

お久しぶりです。

期末課題のクオリティがクソ of クソなので、おそらく単位を8つ程落としたであろう(オイ)、通りすがりの幻想です。

予告通り、討伐戦…ですが、オリジナル展開も混ぜていきます。


最近、アキバで念願のワルサーP.38のエアガンを購入しました。

案の定、家に帰って開封したら、ニヤニヤが止まりませんでした。


 

(カイタside)

 

━━2024年8月。

 

現在の最前線は第69層。

 

ここ数か月間、ある時は別世界からの訪問者と一緒に事件を解決したり、またある時はキリトとアスナが「圏内事件」(後にそう呼ばれた)を解決したりと色々あった。

 

話を戻そう。

 

8月という事で、今頃、現実世界(リアル)では暑い日が続く、夏真っただ中だろう。

 

無論、それはアインクラッド(こちら)も同じだ。

 

…だが、現在俺たち、正確には「攻略組」の面子は、

 

アスナ「…こんな…どうして…!」

 

キリト「……くそっ!」

 

レンコ「カイタ…!」

 

カイタ「…こいつは…本気でマズいかも…」

 

暑さなど吹き飛びそうな冷や汗、それもただの冷や汗ではない。「本当に殺されるかもしれない」と思う事によって生じる冷や汗に包まれていた。

 

 

 

事の発端は、数日前にさかのぼる。

 

その日はいつも通り、レンコと共にクエストを行い、経験値を稼ごうとしていた。

 

(ピコン)

 

レンコ「あれ、アスナからだ。」

 

カイタ「…俺にも来た。」

 

アスナからのメッセージは、攻略組の緊急招集という件だった。

俺たちはすぐさま、招集場所へ向かった。

 

 

 

現場に着くと、すでに大勢のプレイヤーがいた。

 

レンコ「アスナ、お待たせ!…珍しいね。急に招集をかけるなんて。」

 

アスナ「レンコ、カイタさん、待っていたわ。それは会議で説明する。もうすぐ始まるから、どこか適当に座っていて?」

 

カイタ「りょーかい。」

 

俺たちは人込みの中からキリトを見つけ出し、近くに座った。

 

カイタ「よぅ、キリト。相変わらずくたばってないようだなぁ。えぇ?」

 

レンコ「もう、何言ってるの…?キリトさん、お久しぶりです。」

 

キリト「おお、カイタとレンコか。久しぶり。」

 

カイタ「…しっかしまあ、人数の多い事。気づいてないだけで、攻略組ってこんなにいたんだな。」

 

キリト「そうだな。まあ、血盟騎士団や、聖竜連合の面子もいるから、多いように見えるのかもな。」

 

そこからしばらくキリトと談笑していると、

 

アスナ「皆さん、お待たせしました!」

 

アスナの号令がかかり、説明が始まった。

 

 

 

そして今日、俺やキリト、血盟騎士団や聖竜連合をはじめとする、攻略組の中から選ばれた精鋭部隊は、ある地点へ向かっていた。

あの日のアスナの説明を要約すると、匿名の人物から殺人ギルド「笑う棺桶(ラフィン・コフィン)」のアジトの情報がもたらされたらしい。これを好機ととらえたアスナを含む血盟騎士団の幹部たちは、攻略組の中から選りすぐりのメンバーを選び、奇襲をかけて黒鉄宮に投獄しようという話になった。

 

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)」、通称「ラフコフ」は、「プレイヤー間で殺人はしない」というSAOの不文律をいとも容易く破った、正真正銘の殺人者ギルドだ。

デスゲームが始まってから1年が経った2023年12月31日。奴らは、フィールドで忘年会をしていた小規模集団を急襲し、全滅させた。そして翌日、情報屋や新聞屋のプレイヤーに対して犯行声明を送付した。これによって、ラフコフに限らず、犯罪者(オレンジ)プレイヤーが殺害に走ることが当たり前になってしまった。以前、ビーストテイマーのシリカを助けた際に遭遇した、タイタンズハンドの連中がその例だ。

 

俺たちは今、その情報に基づいて、奴らのアジトへ向かっている最中だ。

…だが、もう一つ記すことがあるとするならば、

 

カイタ(…まさか、アイツが戦線復帰するとはな…)

 

俺は列の戦闘集団に居る彼、ディアベルを見つめながらそう思った。

 

そう、第1層のフロアボス以降、レイドリーダーを降板していたディアベルが、この討伐戦で完全復帰を果たしたのだ。

無論、今回の討伐戦の指揮を執るのは、血盟騎士団なので、ディアベルが司令塔として出る幕は無いが、とにもかくにも彼の復帰は、攻略組全員に小さくない影響を与えた。

 

今彼の近くには、キバオウやその仲間がディアベルと作戦の振り返りをしながら歩いており、なんだか第1層のフロアボス戦の再来のような気がした。

 

 

そんなこんながありながら、出発しておよそ1時間後、そこそこ大きな建物が見えてきた。

 

アスナや血盟騎士団の幹部たちが止まって話始めた事から、おそらく、あの建物が件のアジトだろう。

 

…だが、

 

カイタ「………」

 

キリト「……どうした?」

 

カイタ「……なんか、思ってたのと違うな、と思って…小綺麗というか、普通の大きい家をなんら変わりないというか…」

 

ぼーっとしていた俺に聞くキリトに、俺はそう答えた。

殺人者のアジトというのは大抵ボロボロの廃屋、というイメージが俺の中であったからだ。

現に、アスナや幹部達も少し困惑しているようだ。

 

キリト「…それが狙いじゃないか?」

 

カイタ「はっ?」

 

キリト「…大抵の人は、こんな所に殺人者が住んでる、なんて思わないだろ。もっとボロい建物とか、アパートの一室とかを予想するはずだ。それを逆手に取ったのかもしれない。」

 

カイタ「なるほど……まあ、確かに、俺もそう思ったけどさ…」

 

何はともあれ、アジトに到着したことに変わりはない。

 

あとは事前の作戦会議で決めたA、B、Cの3つのグループに分かれ、3方向から奇襲をかける、という段取りだ。

 

俺とレンコは、キリトやアスナがいるBグループと一緒になった。

 

アスナ「…全隊準備できたみたい。そろそろ突撃よ。」

 

メッセージで幹部たちと連絡を取り合っていたアスナが俺たちに声をかける。

 

キリト「よし。…カイタ、レンコ、準備はいいか?」

 

カイタ「ばっちりだ。」

 

レンコ「…い、いつでもいいよ。」

 

アスナ「分かったわ。……A隊、突撃!」

 

アスナがメッセージを送ると、潜伏中のA隊が動き出す。

 

…レンコは少し怖いのか、若干体が震えている。

 

カイタ「…大丈夫だって、レンコ。」

 

レンコ「…え?」

 

カイタ「今回は対人戦じゃない。……いや、まあ、確かに奴らが若干暴れたら、少しは戦闘になるだろうけど…でも今回は奇襲なんだ。見ろ、もうA隊が入っていったけど、まだ暴れてる音は…」

 

聞こえない、と言おうとした途端、違和感を感じた。

 

確かに騒ぎの音は聞こえない。

…問題は、聞こえなさすぎる(・・・・・・・)という事だ。

 

いくら何でも、何も聞こえないのはおかしい。

 

レンコ「……カイタ?どうしたの?」

 

突然黙り込んだ俺に向かって、レンコが不安そうに声をかける。

 

カイタ「……アスナ、俺たちも突撃だ。」

 

アスナ「えっ!?で、でも…」

 

カイタ「…何か…嫌な予感がする。」

 

キリト「…よし、一旦俺とアスナとカイタ達の4人で行こう。」

 

カイタ「おう…って、4人って、レンコもか?」

 

レンコ「カイタ、私は大丈夫。一緒に行くよ。」

 

カイタ「まあいいけど…無理はするなよ?」

 

レンコに念を押してから、俺たち4人は建物に侵入した。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

…えー、今回のエピソードも、お約束通りちゃんと3つ4つに分かれます。(?)

…さて、ここでお知らせ…というか、お願いです。

実は、約2週間前に、復帰予告として活動報告を更新し、そこにちょっとしたアンケートも載せたのですが…現状PV数はたったの5件、返信0件ですw

なので…下においておきますので、何卒、何卒解答をお願いします…

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=284188&uid=358536

それでは、また。


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Ep.20 コレが棺桶の逆襲だ②

皆さん、どーもです。

最近、SAOの横スクロールアクションみたいなのがスマホやswitchで出ないものかと思う、今日この頃。


大学の履修登録やら、記念話という名の設定回の執筆で、最新話の投稿が遅くなってしまいました…本当に申し訳ございません…。

カイタ「そうだな、それだけならまだ許せたんだがな。」

作者「な、何のことでせう、か…?」

カイタ「俺が知らないとでも思ったのか?たわけが。…お前、ここ最近深夜にゲームの配信とかやってるらしいじゃないか。それもほとんど毎日。」

作者「………」

カイタ「ほとんど毎日やってたら、そりゃあ執筆の時間無くなるよなぁぁぁぁぁ?」

作者「…ぐうの音も出ません…。」




 

 

 

キリト「…アスナ、あそこ…」

 

建物に入って少しすると、キリトが何かを見つけた。

 

キリトの視線をたどると、扉があった。

 

扉は少し開いており、中から光が漏れている。

 

カイタ「…どうするよ?」

 

キリト「……合図で部屋に踏み込むぞ。」

 

カイタ「りょーかい。」

 

俺たちは扉の両側に陣取った。

 

キリト「……行くぞ。…1…2…3!」

 

キリトの合図で、俺とキリトが扉を蹴破り部屋に突入した。

 

その後ろを、レンコとアスナが付いてくる。

 

カイタ「…なっ!?」

 

キリト「ど、どうしたんだ?カイ…タッ!?」

 

部屋をよく見た俺は驚いた声を出し、それにつられてキリトも素っ頓狂な声を出している。

 

そこには、突入したはずのA隊全員が拘束されていた。

 

カイタ「ク、クラインっ!大丈夫か!?何があったんだよ!」

 

俺は、A隊に編入されていた、ギルド「風林火山」のリーダー、クラインの拘束を解きながら訪ねた。

 

クライン「…カ、カイタ!キリの字!ダ、ダメだ!早く部屋から出ろ…!」

 

カイタ「あ?ダメって…何が…」

 

そう聞き返そうとした時、

 

アスナ「カイタさんっ!キリト君っ!」

 

アスナの叫びが聞こえ、俺たちは同時に武器を取り出して振り向いた。

 

 

だが時すでに遅く、俺たちは黒フードの連中に囲まれていた。

 

カイタ「おいおい、マジかよ…!」

 

キリト「…クソっ!」

 

???「…ようこそ、俺たちのアジトへ。」

 

カイタ「盛大なお出迎え痛み入るぜ。…PoHさんよ。」

 

PoH。

このふざけた様な名前の彼こそが、このラフィン・コフィンのリーダーである男だ。

俺がその名を呼ぶと、俺たちの前方にいた黒ポンチョの男が笑い声をあげた。

おそらく、そいつがPoHだろう。

 

PoH「…まさか本当にかかってくれるとはなぁ。まあ、当然か。お前らは誰かを見捨てるなんてことは出来ない性格だもんな。」

 

PoHが何かをのたまっていたが、俺は聞き流しており、キリトに耳打ちしていた。

 

カイタ「…キリト、アスナに全隊突撃の指示を出すように伝えてくれないか。…こうなった以上、奇襲もクソも無い。」

 

キリト「…分かった。」

 

キリトから話を聞いたであろうアスナが、メッセージを素早く操作するのを横目に確認しながら、俺はPoHに問いかける。

 

カイタ「…そのセリフだと、まるで目的は俺たちのように聞こえるけど?」

 

PoH「ああ、その通りさ。」

 

カイタ「へぇー、そうなのか…はい?」

 

思わず素で聞き返してしまった。

 

PoH「俺の狙いは、はなっからお前らだ。正確には、お前たち(・・・・)二人だ。」

 

PoHはそう言って、俺とキリトに目を向ける。

 

キリト「…お前の目的なんかどうでもいい。…ここでお前を止める!」

 

ちょうどその時、外の廊下が騒がしくなった。

と思ったら、ドアが蹴破られ、討伐隊の他のメンバーが部屋に雪崩れ込んできた。

それと同時に、俺たちを囲んでいた黒フードの集団が、一斉にPoHの方へ戻った。

 

こうして、見事なまでの討伐隊VSラフィン・コフィンの戦況図が出来上がった。

 

全員を見渡し、アスナが声を上げた。

 

アスナ「これより、殺人者(レッド)ギルド、ラフィン・コフィンの討伐戦を開始します!」

 

「「「「「うおおおおおおおおー!」」」」」

 

全員が声をあげ、奴らに突撃を開始する。

 

一方で、PoHも、

 

PoH「…さあ、来いよ、ブラッキー(キリト)Masked Fighter(カイタ)!」

 

そう吠えると同時に、ラフィン・コフィンの面子もこちらに向かって突撃を開始した。

 

 

━こうして、後に俺たちの記憶にトラウマとして根付くことになる、「討伐戦」が幕を上げた。

 

 





いかがだったでしょうか。

短いと思いますが、今回はここまで。


…えー、ここでお知らせです。

大変心苦しいのですが、大学の学芸祭が近く、それの準備で忙しくなりそうなので、10月末まで投稿頻度の低下が予想されます。

もちろん、執筆出来る時には出来る限り執筆しますし、投稿できるときは投稿するつもりです。


それでは、また。


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Ep.21 コレが棺桶の逆襲だ③

皆さん、どーもです。

お久しぶりです。

大変長らくお待たせしました。

ようやく、大学の文化祭のごたごたが片付いたので、今回から再開します。

一か月前に「しばらく休む」と宣言してから、ものすごい時間がたったような感覚がします…。

それでは、討伐戦が始まった辺りから、どうぞ。


 

突撃したA隊が拘束されていたり、襲撃の情報がどこからか洩れて待ち伏せされていたりと、最初は不意を突かれてしまったが、いざ戦闘が始まると攻略組が持ち直しつつあった。こちらの装備やレベルは奴らよりも上なので、当然といえば当然であったが。

 

しかし、討伐隊の中には、殺しの快楽に溺れた敵の狂気に圧倒され、逆に恐怖してしまうメンバーも現れ始めていた。

 

だが、そんなことになっているとは気づかぬまま、俺とキリトはラフコフの最高幹部のPoHを、アスナ率いる血盟騎士団の精鋭部隊は赤い目を持つエストックの使い手を、聖竜連合は毒ナイフの使い手を、風林火山や月夜の黒猫団、そしてレンコはヒラの構成員と交戦をしていた。

 

PoH「くっ…」

 

キリト「もうここまでだ、観念しろ、PoH!」

 

キリトの猛攻に、思わずPoHが体勢を崩し、そこにキリトがすかさず切っ先を向ける。

 

…だが、その時、俺は見逃さなかった。

 

PoH「(ボソッ)頃合いか。」

 

カイタ(……?)

 

PoHの口が、ボソボソと動いたのを。

 

「うわああああああっ!」

 

キリト・カイタ「「っ!?」」

 

突然、後ろから悲鳴が聞こえた。

 

振り返った俺とキリトが見たのは、構成員を拘束しようとしていた討伐隊の一人が反撃され、短刀で一突きされていた所だった。

 

カイタ「…あっ!?」

 

そして、攻撃されたプレイヤーが、断末魔を挙げる間もなく消滅した。

 

カイタ「…………」

 

キリト「…………」

 

余りに突然の事で俺たちは、茫然としてそれをみていた。

 

「……お」

 

カイタ「…っ!」

 

「おぉぉのれれぇぇぇ!!!!」

 

カイタ「ま、待てっ、むやみに突っ込むな!」

 

その瞬間嫌な予感がした俺は、仲間を殺した構成員に突撃しようとする討伐隊のメンバーにすぐさま警告した。

 

だが、時すでに遅く。

 

(ドスッ)

 

「……ぁ」

 

(ガシャン…)

 

レンコ「……ひっ!」

 

そのメンバーも消滅した。

同時に、そいつの攻撃を喰らった構成員も、相討ちで消滅した。

 

…いや、構成員の方は、あえて(・・・)攻撃を受けたように見えた。

 

 

その瞬間、俺たちと対峙するPoHの表情に笑みが浮かんだのを見て、俺は悟った。

 

 

奴らは、いや、目の前のPoH(狂人)は、この展開を待っていたのだと。

 

 

そして、「奇襲を仕掛けるはずの俺たちが、奴らの手の上で踊らされたのだ」と。

 

 

そこからは、文字通り阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられた。

 

奴らの狂気に当てられたことで、討伐隊は統率が乱れ、半狂乱の状態で戦いを繰り広げるプレイヤーがそこかしこに現れた。

 

そして、一人、また一人とポリゴンに変わっていく。

敵味方関係なく、だ。

 

フロントランナーのアスナやクラインでさえ、拘束を通り越して文字通り「迎撃」を行い、殺しはしていないものの、何人かのラフコフの構成員にダメージを与えていた。

 

無論、それは俺とキリトも例外ではなく、PoHの攻撃を二人がかりで捌くのがやっとなくらいに集中力をすり減らしていた。

 

キリト「ぐっ…!」

 

カイタ「はぁっ…はぁっ…!」

 

PoH「おらおら、どうしたよお二人さぁんっ!」

 

そんな俺たちにPoHは、むしろ嬉々とした表情で切りかかってくる。

 

PoH「おらぁっ!」

 

キリト「…くっ!」

 

カイタ「ううっ!」

 

ついに、PoHの攻撃でノックバックされた俺たちは、膝をついてしまった。

 

キリト「……カイタっ…まだ、やれるか…?」

 

カイタ「はぁっ…はぁっ…当たり前だ…誰に、聞いてんだよ…」

 

なんとか立ち上がるも、すでに俺たちは恐怖と焦りと疲れで限界を迎えようとしていた。

 

 




いかがだったでしょうか。

…この一か月、文化祭の準備、それも創作系のサークルに入っていたこともあり、展示品として短編小説を一本執筆しなければならないため、一か月ほど休載していました…。

久しぶりにこの小説のデータを開いたときに、どういう展開にしようとしていたのかをすっかり忘れてしまっていたため、プロットを見ながらもう一度構成を考えていたら、こんなに時間が経ってしまっていました。

ほんとはこれ、SAOのはじまりの日である昨日に投稿したかった…。

相変わらず遅い頻度ではありますが、感覚を取り戻しながら少しずつ投稿していくので、よろしくお願いします。

それでは、また。


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Ep.22 コレが棺桶の逆襲だ④

皆さん、どーもです。
お久しぶりです。
通りすがりの幻想です。

この1か月、SAOのスロット化が発表されて発狂したり、夜9時頃にラーメン屋でぶっ倒れ、救急車で搬送されたりしました()

ラーメン屋で倒れた件については、幸いにも、軽い貧血か失神だけで、特に異常はありませんでしたが。

…皆さんも、自分の体は大事にしましょう。マジで。


では、討伐戦の途中から、どうぞ。


 

追いつめられ、疲労困憊の俺たちに、PoHが告げる。

 

PoH「…はっ、天下のブラッキーとMasked Fighterも、この程度か。」

 

キリト「なん…だとっ…!」

 

カイタ「…キリト、落ち着け、焦ったら奴の思うつぼだ。」

 

PoH「…ほう?」

 

シラを切るPoHを睨みつけながら俺は言葉を吐く。

 

カイタ「シラ切ってんじゃねぇよ。…最初から俺たち討伐隊の正気を失わせて、どうにかして人殺しにするつもりだったんだろ、お前。そうすれば、どっちにしろ都合がいいからな。俺たちが討伐に失敗すれば、SAOの全プレイヤーに恐怖を植え付けることが出来る。仮にここで自分たちが敗れても、「人殺しをした」というショックが攻略組のメンバーについて回る。…そんな魂胆だろ、どうせ。」

 

図星だったのか、PoHの表情から笑みが消える。

 

PoH「……あーあ、何で気づくかなぁ。このまま気づかずに殺しまくってくれれば、上出来だったのに。」

 

カイタ「…いや、悪いがそうはいかない。確かに、今はお前の望み通りに事が進んでるが、あいにく、俺たちはそうはいかない。」

 

俺の言葉にキリトが頷く。

 

キリト「ああ…俺たちは、絶対にお前の思惑にに屈したりしない!」

 

そんな俺たちにPoHは興が覚めたのか、座り込んだ。

 

PoH「…やれやれ、相変わらずの正義感だこと。はぁ、なんか、飽きちまった。…まあ、でも、これはこれでいいか。」

 

カイタ「…なに?」

 

PoH「お前ら!…フェーズ2に移行するぞ。」

 

PoHの掛け声で、戦っていた幹部たちが奴の元に戻ってきた。

 

カイタ(…何をするつもりだ?)

 

PoH「…悪いが、これでお前らも、ジ・エンドだ。」

 

そして奴らは、俺の見覚えのある奴を取り出した。

 

 

 

【フォースライザー…!】

 

 

 

カイタ「げっ…ちょっと待て、マジかよ…!」

 

PoH「さあ、始めようぜ…命を懸けた「ゲーム」を。」

 

 

 

【ポイズン!】

 

【ドードー…!】

 

【ウィング!】

 

 

 

PoH&幹部2人「「「…変身!」」」

 

 

 

【【【フォースライズ…!】】】

 

【スティングスコーピオン!Break down…!】

 

【Break down…!】

 

【フライングファルコン!Break down…!】

 

 

 

俺たち攻略組の目の前で、幹部たちが仮面ライダーに変身した。

 

PoHが仮面ライダー滅。

 

他の2人はそれぞれ、仮面ライダー雷と、仮面ライダー迅のようだ。

 

アスナ「…こんな…どうして…!」

 

キリト「……くそっ!」

 

レンコ「カイタ…!」

 

カイタ「…こいつは…本気でマズいかも…」

 

……ほんとに冗談抜きでヤバい。

 

目の前にいるの、滅亡迅雷.netの幹部ライダー。それも3体。

普通に考えて勝てるわけない。

 

カイタ(……というか、フライングファルコン!?なんで…!?)

 

俺は、フライングファルコンプログライズキーでしか変身出来ない仮面ライダー迅が目の前にいるのを見て焦り、急いでストレージを確認した。

 

だが、フライングファルコンは俺の手元にあった。

どうやら、この世界にフライングファルコンプログライズキーが2つあるようだ。

 

カイタ(……ほんと、どうなってんだよ…)

 

そこのところは疑問に思うが、今はそんなことを考えている場合ではない。

現に俺たち討伐隊の前に、仮面ライダーに変身した幹部たちが立ちはだかっている。

仮面ライダー滅に変身したPoHが俺たち(特に俺)にアタッシュアローを向けて言い放った。

 

 

PoH「さぁ、第2ラウンドだ……イッツ・ショウ・タイム!!」

 

 

奴の顔は仮面で隠れて見えないが、狂気の笑みを浮かべている。

そう確信できるくらい、奴の声は嬉々としていた。

 

 




いかがだったでしょうか。

今回で、ゼロワンの滅亡迅雷サイドのライダー4体を全部出せました。
……まあ、フライングファルコンに関しては、ちょっと無理やりな気もしますが……まあ、お察しください。
「ご都合主義」タグ、便利だなぁ()

それでは、また。

P.S.ギーツのヴィジョンドライバー、CVがまさかのキリトさんと知って、予約開始と同時にポチリました。
……約1時間で在庫切れになったと聞いて、ほっとしました。


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Ep.23 コレが棺桶の逆襲だ⑤

皆さん、どーもです。

お久しぶりでございます。

最近、自動車教習所に入所した、通りすがりの幻想です。

…えー、前回投稿してから、約2か月弱が経過しました。

大変お待たせしました…。

では、前書きはこの辺にして、ラフコフ討伐戦で、PoH達が仮面ライダーに変身した直後からどうぞ。


 

(カイタside)

 

「な、なんだよあれ…」

 

「あんなの、聞いてないぞ…」

 

仮面ライダーに変身したPoHたちを見て、討伐隊の面々が困惑の声を上げ、おびえ始める。

 

まあ、無理もない。

突然目の前に、異形の戦士が現れたのだから。

 

ディアベル「…皆、うろたえるな!」

 

それでも、ディアベルは、武器を持ち全員を鼓舞した。

 

ディアベル「うおおおおおお!」

 

ディアベルがPoHの懐に飛び込み、片手剣2連撃技「スネークバイト」を繰り出した。

 

だが、

 

PoH「……遅っせぇなぁ。」

 

ディアベル「…なっ!?」

 

PoHの方が対応が早く、アタッシュアローの両端についた刃で、迎撃した。

 

(バキン!)

 

ディアベル「くっ…!」

 

両者の刃がぶつかった瞬間、ディアベルの持っていた武器が壊れ、彼が後ろにノックバックされてしまった。

 

PoH「いい加減白けるぜ…終わりにする。」

 

PoHがそう呟くと、おもむろにプログライズキーを取り出した。

 

カイタ(…あの野郎…まさかっ!)

 

【ストロング…!】

【(ガシュン)Progrise key confirmed. Ready to utilize.】

【ヘラクレスビートルズ、アビリティ!】

 

PoH「…チェックメイトだ。」

 

カイタ「やべっ…!!」

 

【アメイジング!カバンシュート!】

 

 

ディアベル「っ!!」

 

 

(キリトside)

 

(ドカーン…!)

 

キバオウ「…デ、ディアベルはん!」

 

エネルギーらしきものがチャージされた弓をPoHが引いて離したた次の瞬間、ディアベルが立っていた場所に、爆発が起こる。

 

…俺でも見切れないレベルの速さだった。

 

だれしも、彼がやられたと想い、どことなく絶望感が漂い始める。

 

 

「……まだだ…!」

 

 

だが、俺は気づいていた。

 

PoH「……What?(何?)

 

俺の隣にいたカイタが、ものすごいスピードで彼の元に向かったのを。

 

 

「…ディアベル()の命は…まだ、ここにあるっ…!」

 

 

土煙が晴れると、そこには、ディアベルを背に庇い、アタッシュカリバーを構えるカイタが居た。

 

ディアベル「カ、カイタさん……す、すまない、また助けられたな…」

 

カイタ「……ディアベル、他の皆と一緒に、周囲の敵の相手を頼む。…奴らは…俺が片付ける。」

 

カイタがそういうと共に、ちらりと俺を見て、頷いた。

 

その目に、決意の色が宿っているのを見て、俺は直感した。

 

…彼は、カイタは、「あれ」を使うつもりだ、と。

 

ディアベル「なっ…!カ、カイタさん…!口では言うのは簡単だが、どうするつもりなんだ!何か策があるのか?」

 

カイタ「……無法には無法で対抗だ。」

 

 

【ゼロワンドライバー!】

 

 

ディアベル「なっ…!?それは…!?」

 

 

カイタ「……いい加減、うじうじ考えるのはやめた…!」

 

 

(カイタside)

 

 

【ゼロワンドライバー!】

 

 

俺はドライバーを装着した。

 

…分かっている。

今これを使えば、仮面の戦士の正体をさらすことになる。

 

カイタ(それでも…)

 

最悪の場合、第1層のビーター騒動を蒸し返されてしまうかもしれない。

 

カイタ(それでも……)

 

…だが、逃げるわけにはいかない。

 

カイタ「…それでもっ……!」

 

今ここで戦わなければ、奴らを永遠に野放しにすることになる。

そんな事は絶対にさせない…!

 

カイタ「PoH…これ以上、お前らの好きにはさせない…!」

 

【ジャンプ!】

【オーソライズ!】

 

キーが認証され、屋敷の屋根をぶち壊しながらライダモデルが上空から降ってくる。

 

俺は横目で、ディアベルがレンコとアスナに連れられて皆の元に戻ったのを確認し、一息吐いてから叫んだ。

 

カイタ「…変身っ!」

 

【プログライズ!】

【飛び上がライズ!ライジングホッパー! A jump to the sky turns to a rider kick.(空へのジャンプはライダーキックに変わる。)

 

「な、なんだあれは!?」

 

「アイツも変わったぞ!」

 

エギル「カ、カイタ…お前、一体…」

 

周囲で驚く声が囁かれる中、俺は、高らかに告げる。

 

 

カイタ「《仮面の戦士》…またの名を、《ゼロワン》!それが俺の名だ!」

 

 

ディアベル「カイタさん…あなたが《仮面の戦士》だったのか…!」

 

PoH「…やっとか……待ちくたびれたぜ。…カイタ…いや、仮面の戦士(Masked Fighter)!」

 

PoHが心底嬉しそうな表情と声を上げ、アタッシュアローを構える。

こちらもアタッシュカリバーを構えた。

 

その時、ザッと足音が隣で聞こえた。

 

顔を向けると、俺のすぐ横に、片手剣を構えたキリトが立っていた。

 

カイタ「……キリト。」

 

こちらを一瞥したキリトは、軽く頷き、告げる。

 

キリト「…行くぞっ、カイタ!」

 

カイタ「…ああ!」

 

PoH「始めようぜ…!俺とお前らの、本当の、Show Timeを…!」

 

一瞬の静寂の後、

 

PoH「うおおおおおおぉぉぉっ!!」

 

カイタ「はあああああああぁぁぁっっ!!」

 

キリト「ぜああああああぁぁぁぁっっ!!」

 

俺たちはお互いの相手に飛び掛かった。

 

 




いかがだったでしょうか。

はい。ついにエギルさんも、カイタの正体を知りました。

これでカイタ君は、アニメのアインクラッド編のキリト陣営の全員に正体を知られたことになります。


冒頭でもお話しした通り、最近自動車教習所に入所しました。
この2月と3月は、教習所とバイトでほとんどの時間がつぶれるため、次回の投稿までまた2か月ほど空いてしまうかもしれません。

もちろん、続きを早く投稿出来るように善処はしますが、来月になっても音沙汰が無かった場合、「ああ、あのクズは時間管理が出来なかったんだな。」と思ってください。

それでは、また。


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Ep.24 コレが棺桶の逆襲だ⑥

皆さん、どーもです。

お久しぶりです。(ここ最近毎回これ言ってる)

通りすがりの幻想です。

…えーと、前回の投稿から…約2か月…
…またやってしまった。


では、討伐戦の途中で、ラフコフとカイタ君がそれぞれ変身した所からどうぞ。


 

 

(レンコside)

 

 

カイタがゼロワンへの変身を準備している間に、私はアスナと協力して、ディアベルさんを後方へ下がらせることに成功した。

 

アスナ「ディアベルさん、大丈夫ですか?」

 

ディアベル「あ、ああ、なんとか…彼のおかげで命拾いした。」

 

レンコ「よ、良かった…」

 

ディアベル「…アスナさん……あなたは、あれ(・・)を知っていたのかい?」

 

アスナ「…ええ。…でも、彼は…」

 

ディアベル「大丈夫だ、彼をとがめるつもりは全くないよ。……それよりも、カイタさんが言ったように、周りの構成員を食い止めよう。」

 

アスナ「…分かりました。…KoB各員、散開し、構成員の相手をしてくださいっ!」

 

ディアベル「全大隊!何としても食い止めろ!絶対にカイタさん達に構成員を近づけるなっ!」

 

「「「「「…了解っ!」」」」」

 

すぐさま、大勢の人がラフコフの構成員の方へ向かっていく。

 

クライン「…レンコ、俺たちも行くぜ!」

 

レンコ「あ、はい!」

 

少しぼーっとしていたが、クラインさんの声で我に返る。

 

クライン「エギルの旦那、お前さんもだ!」

 

エギル「え?あ、ああ、分かったが…レンコ、あとで詳しく聞かせろよ!

 

レンコ「分かってます!」

 

エギル「おっしゃあ!アニキ軍団、行くぜぇぇぇ!」

 

クライン「風林火山、推して参る!」

 

レンコ(カイタ、キリトさん、気を付けてね…!)

 

幹部の相手をしている二人の無事を祈りながら、私も彼らと共に、自分の持ち場に戻った。

 

 

(カイタside)

 

カイタ「はあっ!…せいっ!」

 

キリト「ぜああああっ!」

 

仮面ライダーに変身してアタッシュアローを構えるPoHを相手に、同じく仮面ライダーに変身した俺はアタッシュカリバーを、キリトは以前リズベットに作ってもらった「ダークリパルサー」を構え、二人がかりで応戦していた。

 

カイタ「おらぁっ!」

 

PoH「……くっ…」

 

こちらが優勢という訳ではなかったが、武器の相性により、ほぼ互角に戦えていた。

というのも、PoHが使っているアタッシュアローは、遠距離攻撃だけでなく、両端の刃を使った近接戦闘も可能だが、やはり元が弓なため、剣程の威力はない。

さらに言えば、PoHは元々短剣を使っていたこともあり、慣れていない飛び道具の武器は相性が悪いと思われる。

 

だが、どのみち優勢でない事に変わりはない。

そのため、俺は早期決着を付けようと考えた。

 

カイタ「…キリト、このままじゃいずれジリ貧になる。」

 

キリト「…だな。…でも、どうするんだ?」

 

カイタ「…俺が前に出る。援護してくれ。」

 

キリト「分かった。」

 

キリトと小声で作戦会議をした後、

 

カイタ「…スイッチ!」

 

キリト「はああっ!」

 

俺がフォームチェンジする時間を稼ぐため、スイッチでキリトが前に出た。

その間に俺は、ストレージからシャイニングホッパープログライズキーとアサルトグリップを取り出す。

 

【ハイパージャンプ!】

 

【オーバーライズ!】

 

カイタ「…一気に仕留める!」

 

【プログライズ!】

 

Warning,warning.This is not a test!(警告、警告。これは試験ではない!)

 

【ハイブリッドライズ!】

 

【シャイニング!アサルトホッパー!】

 

No chance of surviving this shot.(この一撃から生き残る術はない。)

 

キリト「カイタ、援護は任せろ!スイッチ!」

 

【オーソライズバスター!】

 

カイタ「ああ!…これで、どうだっ!」

 

(ガアンッ!)

 

PoH「うおっ!?」

 

キリトとスイッチで入れ替わった俺は、超加速でPoHに詰め寄り、オーソライズバスターでソードスキル『スラント』を発動し、振り下ろした。

その瞬間、轟音が響き、あまりの衝撃でPoHが後ろによろけた。

 

【ジャンプ!】

【(ガシュン) Progrise-key confirmed. Ready for buster.】

 

PoHが体勢を崩した瞬間、俺は即座にライジングホッパープログライズキーをオーソライズバスターのバスターライズスロットに装填する。

 

カイタ「からの…!」

 

【ゼロワンオーソライズ!】

 

さらに、ゼロワンドライバーとの連携認証も行い、攻撃の準備を整える。

 

PoH「ちぃっ…させるかぁっ!」

 

PoHが俺に向かっていくつもの弓を発射してくる。

 

…だが、

 

(ヒュンッ!)

 

PoH「…はぁ!?」

 

カイタ「…遅せぇよ。」

 

【ゼロワンバスターボンバー!】

 

カイタ「でええぇぇぇぇりゃあああぁぁ!!!!」

 

PoH「ぐおおおおおぉぉっ!?」

 

瞬間移動でPoHの背後に移動した俺は、そのまま無防備なあいつに必殺技をお見舞いした。

攻撃をモロに食らった事で、PoHが吹っ飛び、地面に叩きつけられる。

 

その時点で奴のHPは、ようやく4分の1が削れた所だった。

 

 

 

 





いかがだったでしょうか。

ほんと、春休みは教習所やら大学のサークルの会計業務やらで執筆どころじゃなかったんですよ…

やりましたよ…やったんですよ!必死に!その結果がこれ(2か月のブランク)なんです…

…次の投稿は、今回ほど伸びない予定です。

それでは、また。

P.S ギーツのヴィジョンドライバー、無事に届きました。
見てびっくり、開けてびっくり。
特に、レジェンドライダーバックルを装填したら、松岡さんのボイスで各ライダーの名前を言ってくれる所とか…
The・神玩具でした(語彙力低下)


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Ep.25 コレが棺桶の逆襲だ⑦

皆さん、どーもです。

通りすがりの幻想です。

GWも今日で終了か…
今日バイトに行った以外、ずっと家に引きこもってたな()

…まあ、そのおかげで今回はあまり期間を空けずに投稿できたけど




 

 

(カイタside)

 

カイタ「さて、どうするPoHさん?まだやるか?」

(…出来ればここで手を引いて欲しいがな……)

 

そう思いながら俺は、オーソライズバスターを構え、膝をついているPoHにゆっくりと近づく。

 

PoH「………」

 

カイタ(…なんで黙ってるんだ?)

 

奴が一言も発しない事に疑問を覚えた、次の瞬間。

 

キリト「カイタっ!離れろっ!そいつ、何かする気だっ!」

 

カイタ「…えっ?」

 

(バンッ!)

 

カイタ「ぐっ!」

 

キリトが俺に向かって叫び、俺は警戒を強めようとしたが、それよりもPoHが放つアタッシュアローの弓が俺を直撃。

体勢を崩してしまう。

 

PoH「隙ありだぜぇ!!!」

 

(ガアンッ!)

 

カイタ「しまっ…!」

 

さらに、アタッシュアローの近接攻撃により、オーソライズバスターを叩き落されてしまった。

 

PoH「オラ、オラオラオラァ!」

 

カイタ「くっ…うおっ!」

 

俺が落としたバスターを拾いに行く隙も、ストレージからアタッシュカリバーを取り出す隙も与えずPoHが近接攻撃を連続で仕掛けてくる。俺はゼロワンの「シャイニングアリスマテック」を使い、それを躱すことに専念した。

…ここでキリトも攻撃出来れば、俺にも多少なりとも分はあったかも知れない。

だが、SAOでトップクラスのAGIを誇るキリトも、仮面ライダーに変身して強化された俺とPoHのステータスには追いつけず、結果的に攻めあぐねる事となった。

 

…10分くらいたっただろうか。

その間俺はずっと能力を発動していたが、胸部のオービタルユナイトによって負荷が軽くなったとはいえ、やはり限界が近づいてきてしまい、

 

カイタ「…!っく…!」

 

一瞬頭痛を感じ、俺は一瞬立ち止まってしまう。

そこをPoHが逃すはずもなく。

 

【ポイズン…!】

 

PoH「これで…ジ・エンドだ!」

 

【(ガシュン)Progrise key confirmed. Ready to utilize.】

【スコーピオンズ、アビリティ!】

 

PoHがとどめをさそうとプログライズキーを装填した。

キリトがこちらに向かって走ってくるが、おそらくPoHの弓が放たれるのが先だろう。

そして俺の方も、これ以上能力を発動してしまうと、異常ステータスにより、緊急変身解除されかねない。

 

カイタ(…これは……詰みか…?)

 

そんな中、俺は「スキル更新」と書かれたメッセージが届いている事に気づいた。

受け取り時間は5分前となっている。

どうやら、回避運動に集中しすぎて気づかなかったようだ。

一類の望みを賭け、そのメッセージを開く。

 

そこには、こう書かれていた。

 

 

 

『スキル《仮面ライダーゼロワン》の熟練度が800に到達しました。S(シャイニング)A(アサルト)ホッパーの特殊武装『シャインシステム』が使用可能になりました。』

 

 

 

カイタ(…体張って躱し続けた甲斐はあったって事か)

 

PoH「死ねぇぇぇぇ!!!」

 

【スティング!カバンシュート!】

 

カイタ(っ!これ以上の回避は出来ないっ…なら!)

 

今まさに、PoHの攻撃が届くか、というところで、俺は先ほど解禁された新たな武装を展開した。

 

 

カイタ「……シャインシステム…起動!」

 

 

 




いかがだったでしょうか。

…そういや、あと1週間程でSAOスロットの導入日だ。
5か月前にティザーPV、ほんの数週間前にPVが公開された時は、あまりの衝撃で狂喜乱舞したなぁ()

それでは、また。


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Ep.26 コレが棺桶の逆襲だ⑧

皆さん、どーもです。

通りすがりの幻想です。

今回少し多め(いつもの2倍程)です。


 

 

(キリトside)

 

キリト「カイタっ!」

 

PoHの攻撃がカイタに直撃し、爆発が起こる。

 

さすがに死ぬことは無いだろうが、あいつにとってはかなりの痛手になってしまう。

 

キリト(…カイタが戻るまで、俺が…!)

 

そう思い、PoHに向きなおった

 

 

次の瞬間、

 

(ビュン!ビュンビュン!)

 

PoH「おわっ!?」

 

キリト「…っ!?」

 

俺の真横をいくつかの光線が駆け抜け、PoHに直撃した。

さすがのPoHもいきなり攻撃が来るとは思わなかったのか、驚いて後ろに退がる。

 

後ろを見ると、無傷のカイタが立っていた。

そして、彼の周りに、水色の水晶体の様なものが8つ程浮いている。

 

PoH「ちぃっ…殺し損ねたか…なら!」

 

(ガチャン)

【チャージライズ!】

(ガチャン)

【フルチャージ!】

 

PoH「ブラッキー、まずはテメェからだっ!」

 

【スティング!カバンストライク!】

 

先ほどよりも、早く、強力なエネルギーの弓矢が4つ、俺に向かって放たれる。

 

キリト「…っ!」

 

何とか剣を構えて、攻撃を防ごうとするが、

 

(ガァンッ!ガァンッ!)

 

キリト「ぐあっ!」

 

2発目を受け止めたところで、あまりの衝撃に体勢が崩れてしまった。

 

キリト(まずいっ…!)

 

カイタ「させるかっ!」

 

そこにカイタが超高速で飛び込んでくる。

同時に、彼の周りに浮遊していた結晶体が一か所に集まって組み合わさり、一枚のシールドの様になった。

そのシールドを構えたカイタが、残り全ての攻撃を防いでくれた。

 

キリト「悪い、助かった!」

 

カイタ「キリト、一気に行くぞ!ついてきてくれ!」

 

そういったカイタから、結晶体が8つの内4つ、俺の周りを浮遊し始めた。

 

キリト(……これは!)

 

同時に、俺に何らかのバフがかかる。

 

キリト「よし…行くぞっ!」

 

(ダンッ!)

 

PoH「うおっ!?」

 

キリト「っ!?」

 

俺は再び剣を構え、PoHに向かって踏み出した。

…と、次の瞬間、俺はPoHの目の前にいた。

 

PoH「…チイッ!」

 

キリト「…ぜああっ!」

 

(ガアンッ!)

 

そのあまりの速さに驚きつつも、PoHと剣を打ち合う。

 

そこに、

 

カイタ「はああっ!」

 

カイタが、後ろ回しの跳び蹴りをPoHにお見舞いする。

 

PoH「ぐおっ!?」

 

防御出来なかったPoHは、そのまま後ろに吹っ飛ぶ。

 

キリト「カ、カイタ…これ、すごいスピードだな…お前、いつもこんな速度で動いてるのか…」

 

今まで経験したことのないスピードに驚き、バフの詳細を見た。

 

キリト「えっと…『仮面ライダーゼロワンがシャインシステムを起動及びシャインクリスタ譲渡時、シャインクリスタ1つにつきAGI+5%』か…シャインクリスタっていうのが、この水晶体か…今4つあるから…+20%か。そりゃあ早い訳だな…」

 

カイタ「そうなるな。…あ、あと、4つだけでも、さっき俺がやったみたいに、シールドを作ったりできるから。」

 

キリト「ああ、分かった。」

 

カイタ「さぁて、まだまだ、ここからだ…!遅れるなよ、キリト!」

 

キリト「ああ!」

 

PoH「ク、クソが…」

 

憎たらしそうに歯噛みするPoHを尻目に俺たちは攻撃を開始した。

カイタによるシャインクリスタのバフもあって、俺のスピードは飛躍的に向上している。

それこそ、仮面ライダーに変身しているカイタの動きに付いて行けるくらいには速くなっている。

一方でPoHは、先ほどまでの攻勢が嘘の様に、俺たちのスピードに翻弄されている。

予断を許さない状況ではあったが、よほどのことが無い限り、このまま押し切れる。

 

そう思った。

 

 

 

(カイタside)

 

キリトにシャインクリスタのバフを与えてから、俺たちの勢いは明らかに向上した。

ここまでろくに攻撃できなかったキリトが攻撃に加わったのだから、当然ではあるが。

 

PoH「…うおっ!」

 

カイタ(…今だ!)

 

【ゼロワンオーソライズ!】

 

カイタ「キリト!」

 

PoHが体勢を崩した隙を見のがさず、俺はオーソライズバスターにパワーをチャージし、キリトに声をかける。

 

キリト「…!…ああ!」

 

キリトも、俺が何をしようとしているのか、すぐに理解したのか、ソードスキル「バーチカル・アーク」の構えを取る。

 

キリト「…ぜあああっ!」

 

(ガアンッ!)

 

PoH「shit(しまった)…!」

 

キリトが、「バーチカル・アーク」の2撃目でアタッシュアローを弾き飛ばし、奴が空手になったところに、

 

【ゼロワンボンバー!】

 

カイタ「…でああありゃああ!!」

 

(ズガンッ!)

 

PoH「ぐおおおおおっ!?」

 

オーソライズバスターの一撃をもろに喰らわせる。

 

カイタ「…そろそろ、幕にしようぜ……!」

 

【アサルトチャージ!】

 

俺はオーソライズバスターをしまい、プログライズキーのアサルトチャージャーを押し、キーをドライバーに押し込んだ。

 

【シャイニングストーム!インパクト!】

 

PoH「クソが…Come on(来いよ)…!」

 

(ガチャン!ガチャン!)

 

【スティング!ディストピア!】

 

俺は上空に飛び上がって右足を突き出し、PoHはその場で左足を軸にして後ろ回し蹴りを放ち、

 

両者の蹴りがぶつかり合った。

 

カイタ「はあああああああっ!!!」

 

PoH「うらあああああぁぁっ!!!」

 

エネルギーが干渉しあって周囲に衝撃波が生まれ、キリトが吹き飛ばされないように体を低くしている。

 

俺と奴のパワーは拮抗していたが、俺はこんな奴に負けるつもりなど毛頭ない。

 

むしろ、ここで奴を止めなければ、またいつ、どこで奴が殺しをするか分からない。

 

これ以上犠牲を増やさないためにも、絶対に止める。

 

その一心で俺は、足を突き出し続けた。

 

 

PoH「…っ!?What()!?」

 

カイタ(…奴を…ここで仕留める…!)

「これで…終わりだぁっ…!」

 

(ドガンッ!)

 

PoH「うおおおおおっ!?」

 

奇跡的に、奴のパワーを上回ったことで、俺のキックが奴に直撃する。

 

…だが、まだ変身解除には至っていない。

敵ながらしぶといと思う。

だが、とどめを与えようにも、こちらはここまでの疲労と、先ほどの必殺技による直後硬直で動けない。

 

…だからこそ、俺はキックの反動を使って後ろ宙返りをしながら、後ろにいるあいつ(・・・)に声をかける。

 

━この世界のNo.1の実力者にして、俺の『相棒』に。

 

カイタ「……キリトォ!行けぇぇぇ!!!!」

 

俺の後ろでは、キリトが「ヴォーパル・ストライク」の構えを取って待機していた。

 

キリト「ああ!」

 

(キイイィィン……ギュンッ!)

 

キリト「…ぜえああああぁぁぁっ!!!」

 

甲高いジェット音が聞こえたのち、土煙を纏ってキリトが突進する。

 

(バキンッ!)

 

キリトのヴォーパル・ストライクがPoHに直撃した直後、破砕音が響く。

 

土煙が晴れ、俺が見たのは、PoHは装備していた「フォースライザー」に、キリトの剣が突き刺さっているところだった。

剣先は、プログライズキーの先端部にある出力端子「キーコネクタ」も貫通しているため、ドライバーとプログライズキーは、二度と使用は出来ないだろう。

 

(…バチッ!バチバチッ!)

 

PoHのスーツに電流が走り、スーツがポリゴン状に消滅した。

同時に、フォースライザーと、スティングスコーピオンプログライズキーも破砕音を立てて消滅した。

 

PoH「ぐうっ…!F**k(クソッタレ)…!」

 

猛攻の末、俺たちはついにPoHを追いつめた。

 

カイタ「…全く、手間かけさせやがって。」

 

キリト「…いい加減に観念しろ!PoH!」

 

PoH「あーあ…もう少しだったんだけどなぁ…」

 

PoHは心底がっかりしたようにつぶやく。

 

…が、次の瞬間

 

PoH「……なんてな。」

 

ニヤリとしたのだ。

 

キリト「…何?」

 

カイタ「…お前、この期に及んで何企んでんだ?」

 

俺とキリトは警戒を解かずに、武器をPoHに突きつける。

 

PoHは笑みを浮かべたまま、俺の方を見て言い放つ。

 

 

PoH「…お前は終わりだ。……カイタ。」

 

 

カイタ「…はぁ?」

 

PoHの言っていることが分からず、俺とキリトは顔を見合わせる。

 

 




いかがだったでしょうか。

シャインクリスタのバフは、完全オリジナル設定です。


……常々、シャインクリスタが、ガンダムのファンネルに見えて仕方ない。

前回言ってたSAOスロットは、来月打とうと思います。
軍資金が無いし。

それでは、また。


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Ep.27 コレが棺桶の逆襲だ⑨

皆さん、どーもです。

お久しぶりでございます。(n回目)

通りすがりの幻想です。

…はい。性懲りもなく、またやりました。

大学の課題(心理学の実験レポート難しかった、面白かったけど)に追われたり、サークルに提出するノルマ分の小説書いてたら、あっという間に2か月経ってました。

それでは、キリトとカイタがPoHを追いつめたところから、どうぞ。



 

 

(カイタside)

 

PoH「…お前は終わりだ。……カイタ。」

 

…奴は俺にそう言った。

 

…なぜ俺なのか。

俺とキリトの2人に言うのなら、まだ分かる。

だが、アイツは俺だけを指名した。

 

…まるで、俺とキリトというより、俺だけが狙いであるかのように。

 

キリト「……何するつもりか知らないけど、どのみちお前はここまでだ。おとなしく黒鉄宮に行くんだ。」

 

PoH「…そうかい。まあ、好きにすればいいさ。……でも、俺だけに構っていて大丈夫か?」

 

カイタ「…悪いが俺は要領の得ない話は嫌いなんだ。…なにが言いたい?」

 

PoHの発言の意図が理解できず、俺は奴に聞き返した。

 

PoH「…変身したのは、俺だけじゃねぇんぜ?」

 

カイタ「…ああ、そうだった…でも、それはアスナ達が」

 

対応している。

 

そう言おうとして、気づいた。

 

俺やキリトは、PoHと渡り合える実力があるが、それは奴が生身の状態での話だ。

PoHが変身した後は、途中劣勢になったりもした。

だが、俺も奴と同じく、仮面ライダーに変身していたから、こうして追いつめることが出来た。

 

…じゃあ、変身する力を持たないアスナたちは?

 

トッププレイヤーなので、そう簡単にやられはしないだろうけど、俺が今なれる最強の形態である、S(シャイニング)A(アサルト)ホッパーになって、キリトにバフも与えて、やっと追いつめたラフコフのメンバーを、果たして生身のアスナ達が太刀打ちできるだろうか?

 

 

キリト「…っ!アスナっ…!」

 

キリトも気づいたのか、焦りの表情を浮かべている。

 

カイタ「…っ!キリトっ、俺が行く!こいつを頼むっ…!」

 

キリト「分かった!アスナ達を頼む…!」

 

キリトにPoHを任せ、俺はゼロワンの加速能力を最大限に生かし、アスナ達のもとへ向かった。

だが、思ったより距離がある事に驚く。

おそらく、俺たちがPoHと戦っている時に、ここまで移動してきてしまったのだろう。

 

…思えば、これも計算のうちで、奴は動いていたのかもしれない。

本当に奴らは、とことん俺たちの出鼻をくじこうとしてくる。

 

 

カイタ「アスナ!大丈夫か!」

 

俺はアスナに声をかけながら、彼女が交戦していた、仮面ライダー迅に切りかかる。

 

アスナ「カ、カイタさん!?PoHは…!」

 

カイタ「奴なら追いつめた!今キリトが見てる!変身能力も失ってるから、もう二度と変身出来ないはずだ!あとはまだ変身してるこの二人をやれば…!」

 

アスナ「分かりました!…じゃあ、あのピンクの方を頼めますか?」

 

そう言ってアスナが指したのは、仮面ライダー迅の方だった。

アスナが抜けて、今相手しているのは、エギルのギルド「アニキ軍団」のようだ。

 

アスナ「あいつ、妙に素早くて、なかなか有効な一撃が入らないんです。…私のスピードでも、付いて行くのが精一杯でした。」

 

アスナも、このSAOではトップレベルのAGIを誇る。

そのアスナが、付いて行くだけで精一杯という事は、変身しているとはいえ、奴のスピードはかなりなものになってくる。

 

カイタ「分かった。もう一体の方は…」

 

アスナ「今、風林火山と月夜の黒猫団で対応中です。私も今から加勢しに行きます。」

 

カイタ「気を付けろ。見たところ、あれに変身してるのは、向こうの毒ナイフ使いだ。下手をすると、攻撃がかすりでもしたら、こちらに毒が入るかもしれない。」

 

アスナ「毒ナイフって…ああ、作戦会議で出てきた、ラフィン・コフィンの最重要人物の一人ですか?」

 

カイタ「ああ。名前は…忘れたけど…とにかく気を付けろ!」

 

アスナ「はい。」

 

そういってアスナは、仮面ライダー雷の方へ向かって行った。

 

カイタ「さて…こっちも片付けるか…!」

 

 

 

カイタ「スマン、エギル、遅くなった!」

 

エギル「うおっ、カイタ!?そっちは大丈夫なのか?」

 

エギルと鍔競り合いをしていた仮面ライダー迅を飛び膝蹴りで退かせ、エギルに声をかける。

 

仮面ライダー迅は、ゼロワンのフライングファルコンプログライズキーと同一のキーを使用しているため、能力も酷似している。(ゲームの性質上、飛行能力が使えないところも同じだが。)

 

「ちぃっ!仮面の戦士!もう来たのか…!これでもくらえ!」

 

敵の背中から羽根が現れ、そこから尾羽の形をしたエネルギー弾が放たれる。

 

カイタ「全員、下がってくれ!」

 

アニキ軍団の全員を俺の後ろに下がらせ、シャインクリスタを重ねたシールドではじき返す。

 

カイタ「悪いがテメェの相手をしてる暇はないんでな…!エギル!一気に決めるぞ!」

 

エギル「おう!」

 

【ジャンプ!】

【(ガシュン) Progrise-key confirmed. Ready for buster.】

 

俺はプログライズキーを装填し、エギルは両手斧ソードスキル「ワールウィンド」の構えを取る。

 

「「おおおおおりゃああああ!!!」」

 

俺とエギルの同時攻撃が、奴のベルトに直撃し、PoHの時と同じくベルトとキーが消滅した。

 

アスナ「カイタさん!こっちも終わりました!」

 

アスナの声がして、見ると、仮面ライダー雷に変身してた幹部が、同じく変身を解除されて拘束されていた。

 

カイタ「…さて、お前らの幹部はこの通り倒されたが…お前ら、まだやるか?」

 

俺はまだ残っている構成員たちに向きなおり、そういった。

 

「ク、クソ…」「あの方たちが、倒されるなんて…」

 

構成員たちが次々とうろたえ始める。

 

その内、怖気着いた様に大多数が離れ、10人程がその場に残った。

 

アスナ「…妙だわ。退くにしたって、残っている人数が中途半端…。」

 

カイタ「え?」

 

アスナの発言に疑問を覚え、俺は残った連中を見る。

 

残っているのは10人程。

…確かに、この場に残って抗戦するには、いささか人数が中途半端だ。

 

カイタ「…あの姑息な奴らのことだ。何企んでるか分からんから、警戒を」

 

続けよう。

 

そう言おうとして、ふと視界の左上に目線を向けた瞬間、俺の息は、あやうく止まりそうになった。

 

そこには、俺のHPバーの他に、もう一本、パーティーメンバーのレンコのHPバーがあった。

 

 

今、そのHPバーが急速に減少を始め、あっという間に半分を割った。

 

 

アスナ「…カイタさん?どうしたんですか?」

 

アスナが何か言っているが、よく分からない。

 

カイタ(…どこだ……)

 

足元が崩れそうな感覚を抑え込みながら、マップを呼び出し、プレイヤーを表す無数のポインターの中から、たった一つの点を探す。

 

カイタ(…どこにいるんだ…レンコ…!)

 

必死で目を凝らす。

 

…見つけた。

 

多数の赤点に囲まれて、ポツンと一つだけ緑の点がある。

その緑の点に『Renko』と書かれている。

 

このゲームではマップ上で、プレイヤーは緑の点で、モンスター及び敵性プレイヤーは赤の点で表示される仕様になっている。

 

つまり、この状況が示すことは。

 

カイタ「…っ!あのクソったれ共め!」

 

アスナ「ちょ、ちょっと、カイタさん!?どこにいくんですか!?」

 

アスナの止める声も効かず、俺はゼロワンの推進器である「SAグラディエーター」の出力を全開にして駆け出した。

 

カイタ「邪魔だ…退け!」

 

予想通り、残っていたラフコフの連中が足止めしようと攻撃してきたが、そいつらをまるでボーリングのピンの様に突き飛ばして、無視した。

 

 

 




いかがだったでしょうか。

サークルに提出した小説を、このサイトでも乗せようか検討中。(部長には許可取った)

それでは、また。




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Ep.28 コレが棺桶の逆襲だ⑩

皆さん、どーもです。

最近、「crossing field」の英語版がある事を知って、早速聞いた所、全く違和感なくて感動した、通りすがりの幻想です。

…えー、スマパチSAO打ちました。

スタバさんは見れなかったけど、74層のグリームアイズをボコしました。

…てか、演出の中で、「デプス・インパクト」と「クリムゾン・スプラッシュ」という、俺が知らない二刀流ソードスキルが少なくとも二つ出てきてびっくりしたw
(調べたところ、ゲームのホロウ・フラグメントで登場したソードスキルみたい)

それでは、どうぞ。


 

 

(数分前、レンコside)

 

カイタがキリトさんとPoHの相手を始めてから数分経った。

 

私は、風林火山の人たちや、月夜の黒猫団の人たちと一緒に、構成員の相手をしていた。

 

クライン「チキショウ…!今カイタとキリの字が幹部を相手にしている!絶対にこいつらを二人に近づけるな!ここが正念場だ…!」

 

レンコ「はい!」

 

サチ「うん…!」

 

幹部と戦っているカイタ達を案じながら、私たちは戦いつつ、相手の武器を破壊したりして、戦闘不能にした構成員の拘束を続けた。

 

 

 

そこからさらに数分…いや、10分ほどが経った。

私たちは、疲労を感じながらも、戦闘を続けていた。

 

クライン「あ、あらかた片付いたか…?」

 

サチ「……」

 

レンコ「サチ、どうしたの…?」

 

サチ「…なんか、数が増えてるような……」

 

レンコ「え?」

 

クライン「なんだと…?」

 

サチに言われてクラインさんと共にあたりを見渡す。

 

…戦闘が始まってから、そこそこの人数の武器を破壊したりして戦闘不能にはしたが、確かに、あまり人数が変わっていないように見える。

 

…いや、むしろ多くなっている気がする。

 

クライン「これは…どういうこった…?」

 

レンコ「分かりません…」

 

人数が増えた敵の思惑が分からず、私たちは困惑する。

 

 

「よそ見してる場合か?」

 

 

レンコ「っ!?」

 

その時、

 

レンコ「きゃっ…!?」

 

背後から急に殺気を感じ、私はその場から飛びのく。

 

しかし、体勢を立て直して、周りを見ると、私はすでに複数名の構成員に囲まれていた。

 

サチ「レンコさんっ…!」

 

クライン「クソッ…退けっ!」

 

二人が私を助けようとしているが、構成員に阻まれてこっちに来れないようだ。

 

レンコ(…この人数……勝てるのかな?…ううん、弱気になっちゃダメ!カイタやキリトさんが頑張ってるんだ!私だって…!)

 

私一人に対してあまりに構成員の数が多く、少し不安になるが、幹部を止めるために戦っている自分のパーティーメンバーの事を思い出し、気を引き締める。

 

 

…「気を引き締める」と言えば聞こえはいいが、今にして思えば、私は自分の実力を過信していたのだろう。

 

もしそれに気づいていれば、あんなことにはならなかったのかもしれないー。

 

 

レンコ「やっ…はあっ!」

 

周囲に群がる構成員たちを相手に、私は大立ち回りを繰り広げていた。

 

少し離れたところでは、風林火山の人たちや月夜の黒猫団の人たちも同じように、構成員を相手取っていた。

 

レンコ(…早くクラインさん達に合流しないと…!)

 

…しかし、その考えが、焦りとなって裏目に出てしまった。

 

「…調子乗るなよぉ、この(アマ)ァ!」

 

(ガキンッ!)

 

レンコ「あっ…!?」

 

相手していた一人の攻撃によって、私は武器を弾き飛ばされてしまった。

 

レンコ(急いで拾って、体勢を立て直さないと…!)

 

「させると思ってんのかぁ!?」

 

(ガスッ)

 

レンコ「かはっ…!」

 

だが、武器を拾おうと屈んだところに、お腹に一発蹴りを入れられて、私は体勢を崩されたままになってしまった。

 

「…今だお前ら、やっちまえ!」

 

「「「ヘイ…!」」」

 

(ザシュッ、ガスッ!)

 

その隙を見逃さず、敵が一斉に猛攻を仕掛けてくる。

 

レンコ「ぐっ…ううっ…!」

 

武器を拾う事も、回避する事もかなわず、私は一方的に攻撃される。

 

HPバーがどんどん減り、あっという間に半分を切って黄色になる。

 

…それでも、敵の攻撃は止まらない。

 

レンコ「いや…いや…!」

 

残り、4分の1。

 

…死ぬ。

 

…このままだと、死ぬ。

 

動悸が激しくなった気がした。

 

私は怖くなって、本能的にうずくまった。

 

…それでも、攻撃は続く。

 

レンコ「いや…やめて…やめてぇぇ!!!!」

 

……あまりの恐怖に耐え切れず叫んでも、向こうの攻撃は止まらなかった。

 

「ハハッ、いい悲鳴じゃねぇか!」「やっぱ女はこうじゃねぇとなぁ!」

 

…ついに、私のHPバーは、赤色になり、残り1cm程になった。

 

レンコ「ハアッ…ハアッ…」

 

余りに唐突な出来事に、私の呼吸が荒くなる。

 

「とどめだぁ!」「死ねぇ!」

 

私にとどめを刺そうと、敵が一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 

 

レンコ(…私……ここで、死ぬの…?)

 

 

怖いのに、死にたくないのに。

 

身体から力が抜けて動かない。

 

 

周りから色が消え、音が消え、しまいには敵の動きもゆっくりになっていった。

 

 

レンコ(……ごめん…カイタ……)

 

私は、彼に謝りながら、来るべき痛みに備え、目を閉じた。

 

 

 

 

 

「レンコーッ!」

 

 

 

 

 

 

レンコ(…あれ。)

 

いつまで経っても、痛みも、衝撃も来ない。

 

…とうとう感覚も消えたのだろうか。

 

 

「…レンコッ!」「レンコ!」

 

 

ぼやけた声が聞こえた。次の瞬間、誰かに抱き起される。

 

レンコ「…ぇ…?」

 

少しずつ消えていた音が聞こえ始める。

 

ゆっくり目を開けると、そこには、私の顔を覗き込むカイタとアスナがいた。

 

レンコ「…カイ…タ…?」

 

カイタ「レンコ、大丈夫か…!?おい…!」

 

アスナ「レンコ、今回復するわ…!『ヒール』!」

 

アスナが取り出した回復結晶が砕けて、底をつきかけていた私のHPバーが全快する。

 

ゆっくり顔を動かすと、風林火山と月夜の黒猫団が、私を囲んでいたラフコフのメンバーと戦っていた。

 

レンコ「……私…助かった…の…?」

 

カイタ「…レンコ?おい、しっかり…」

 

安心した反動から、彼の声を聴きながら、私はゆっくりと意識を手放した。

 

 

(カイタside)

 

アスナ「…迂闊でした。まさか、ある程度の人数をこちらに残して足止めし、残りをこちらに回して猛攻を仕掛けていたなんて……でも、どうしてレンコだけを……?」

 

カイタ「…分かんねぇ…分かんねぇよ……」

 

なぜ彼女なのか。

 

どうして彼女だけなのか。

 

俺は、レンコを助けられたことに安堵しつつも、頭の中は困惑でいっぱいだった。

 

 

 

「おいおい、まさか間に合うなんて。…ヒーローは伊達じゃないってかぁ?」

 

 

 

その時、背後から憎たらしいほど聞き覚えのある声がして振りむく。

 

カイタ「なっ…!?」

 

PoH「よう。」

 

そこには、キリトが捕縛したはずのPoHが居た。

 

カイタ「PoH!?なんで…!キリトは…まさか…」

 

あいつがやられたという、この世の終わりの様な状況だけは到底考えたくもないが、今ここに奴がいることも事実で…

 

PoH「ああ、心配するな。ブラッキーなら麻痺毒喰らってお休みしてるだけだぜ。…さすがに不意打ちで殺すのは、俺の本意じゃねぇからな。」

 

…一見、律儀な人のセリフに聞こえるが、奴のこれは、完全に遊んでいる時のセリフだ。

 

PoH「それにしても、だ。」

 

そう言ってPoHは、ニヤリと笑う。

 

そして、気を失って横たわるレンコを見て、こう言った。

 

 

PoH「…その女はいい餌になってくれたよ。」

 

 

カイタ「……は?餌…?」

 

 

PoH「そうさ。俺とお前、タイマン張るために、お前ら二人を引き離したかったんだよ。

…その女がお前のパーティーメンバーだって事は前もって知ってたからな。そいつを攻撃すれば、絶対にお前はやってくる。」

 

 

なん、だと?

 

 

PoH「ブラッキーを麻痺させた後に、何人かにメッセージを送っといたんだよ。…で、結果、お前はノコノコやってきた。あの女の悲鳴が聞けたのも、いい余興だったしな。」

 

 

今、コイツは何て言った?

 

…理不尽にリンチされて、死にかけた彼女を、餌、と。

 

挙句の果てには、彼女が恐怖におびえる姿が、余興だったと。

 

アイツはそう言ったのか?

 

 

PoH「…という訳で、これで心置きなく、お前と殺りあえr」

 

 

カイタ「黙れ。」

 

 

PoH「…あ?」

 

 

今回の任務は、ラフィン・コフィンのメンバーを捕縛するという事だったが…

 

もう、

 

そんなのは、

 

クソ喰らえだ

 

 

アスナ「…カ、カイタさん…?」

 

俺は気を失っているレンコをアスナに預け、ゆっくり立ち上がる。

 

 

…許さない…

 

 

カイタ「………」

 

…俺を攻撃するのならまだいい。

 

俺をどうしようが、こいつらの勝手だ。

 

だが、俺を誘うために、わざとレンコを、それも集団リンチのように痛めつけて、死なせかけたこいつらは…

 

カイタ「…テメエら…」

 

…こいつらだけは…!

 

カイタ「…テメエらだけは……絶っっっ対に……!」

 

 

カイタ「叩 き 潰 す ッ……!」

 

 

次の瞬間、俺は怒りのままに、ラフコフの面子に襲い掛かった。

 

…同時に、胸の奥に何かが宿ったような、ドクンっと脈打つ感覚が走った…気がした。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

さあ、「SAO」及び「仮面ライダーゼロワン」の共通点とも言える「アレ」の登場だ…


余談ですが、最近気分転換かつ多くの人に読んで欲しいと思って、大学のサークルに提出した作品を、こちらでも不定期で掲載する事にしました。

ジャンルは「艦隊これくしょん」です。

https://syosetu.org/?mode=ss_detail&nid=324589

こちらにリンクを貼っておきます。

よければこちらも見ていただけると、幸いです。

それでは、また。


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Ep.29 コレが棺桶の逆襲だ⑪

皆さん、どーもです。
お久しぶりです。

通りすがりの幻想でございます。

…もはやお約束になりつつあるので、これ以上は言いません。
(言い訳を見たい方は、活動報告をご覧ください。)

…前回から期間が空きすぎたので、ざっと簡単な前回のあらすじを。

ラフィンコフィンの討伐戦

カイタがキリトとPoHを追いつめる

カイタはアスナ達の援護に戻る

レンコが集中攻撃を浴びて瀕死になり、PoHはそれを余興と言う

カイタ、ブチ切れる

今回でこのエピソードは終わりです。
それでは、前書きが長くなりましたが、どうぞ。



 

 

(キリトside)

 

キリト「…クソっ、油断した…」

 

まさか、PoHが他にも武器を隠し持っていたとは。

 

俺は奴が隠し持っていた、麻痺毒付きのナイフによる不意打ちを喰らい、数分間動けなかった。

 

そして、先ほどようやく毒が消え、奴が逃げたであろう、最初の場所に戻ってきたところだ。

 

キリト「PoHは…どこだ…」

 

 

(ズドーンッ!)

「う゛お゛お゛お゛お゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!」

 

 

キリト「っ!?」

 

その瞬間、大きな雄たけびが聞こえ、土煙が見えた。

 

キリト「…一体、何が…」

 

嫌な予感を感じた俺は、急いで土煙が見えた場所へ向かった。

 

 

キリト「こ、これは…!?」

 

現場についた俺は驚愕した。

 

そこでは、ゼロワンがラフコフの構成員たちに猛威を振るっていた。

 

…ただし、その一撃はあまりにも強力すぎる。

 

下手をすれば、相手のHPを一撃で根こそぎ削り切ってしまいそうなほどに。

 

アスナ「キ、キリト君…」

 

その時、近くから震えた声がした。

そこには、アスナと、その傍らには横たわっているレンコさんがいた。

 

キリト「アスナ、一体何が…」

 

アスナ「…レンコが、構成員たちから一方的に攻撃されて…私とカイタさんが来なかったら、間違いなく死んでた。…今は安心したのか、気を失っているけど、PoHの言葉を聞いたカイタさんの様子が、急におかしくなって…」

 

…やはりPoHはこちらに来ていたか。

 

…いや、それよりも、気になることがある。

 

キリト「様子がおかしくなったって…PoHは何を言ったんだ…?」

 

アスナ「それが…レンコを一方的にいたぶったのは、キリト君とカイタさんを引き離して、カイタさんをおびき出すための『餌』にする為だって言ってたの…」

 

キリト「なん…だと…」

 

そのあまりに卑劣な作戦に、俺はしばしの間絶句した。

 

…つまり、あいつらはレンコさんを人質に取ったという事だ。

 

…そう考えれば、普段温厚なカイタがあそこまで怒るのも納得だ。

 

仲間を一方的に傷つけられて、怒りを感じない奴はいない。

 

怒りと悔しさを感じながら、俺はカイタの方を見る。

 

向こうでは、相変わらず、ゼロワンが猛威を振るい、次々と構成員を無力化していく。

 

…だが、

 

…何かが違う。

 

かすかな違和感を感じた俺は、すぐにその原因に気づく。

 

ゼロワンの胸部装甲の一部に、いつもと違う部分がある。

 

PoHを追いつめた時に見た、ゼロワンのシャイニングホッパーの胸部には、青々と輝く光が灯っていた。

それこそ、カイタ(あいつ)の瞳の色と同じく、雲一つない青空のような青色が。

 

だが、今のカイタには…ゼロワンのそこ(・・)には、暴力的なまでに真っ赤な光が灯っていた。

 

そういえば、今のあいつの攻撃には、いつものような「力強さ」と「正確さ」が消えている。

 

まるで、ただ目の前の敵を葬り去ろうとするかのような狂暴な一撃ばかりだ。

 

…俺には、今のカイタの雄たけびは、気合いというより、怒りの咆哮の様に聞こえた。

 

今も、そこかしこで戦闘が続いているが、とりわけ彼の周囲は、熾烈な戦闘だった。

 

…そして、ふと思いだして周囲を見渡すと、肝心のPoHは、もうどこにも居なかった。

 

 

それから数分が経ち、ようやく彼の猛攻が止まった。

 

カイタ「…ぐっ…!」

 

その瞬間、カイタがひざをつき、それと同時に彼の変身が解除された。

 

おそらく、活動時間の限界を迎えたのだろう。

 

幸いにも、その場に残っていた全ての構成員は拘束済みだ。

 

…とはいえ、拘束した人物全体のうち、約3分の2以上は、カイタが無力化していた。

 

その間、他の攻略組のメンバーは誰一人カイタに近づけなかった。

下手をすれば、自分が巻き込まれかねないからだ。

 

レンコ「…ううん…」

 

その時、気を失っていたレンコさんが目を覚ました。

 

キリト「レンコさん、気が付いたか…!」

 

アスナ「レンコ、大丈夫?」

 

レンコ「わ、私は平気。…それよりも……何が、あったの?」

 

キリト「…それが…」

 

俺は一部始終を説明した。

聞き終えたレンコさんは、驚きと悲しみの表情で固まっている。

 

アスナ「…キリト君、今KoBの小隊から連絡があって、拘束したラフコフのメンバーは全員黒鉄宮に送還したみたい。」

 

キリト「…分かった。」

 

ディアベル「…キリトさん、アスナさん。」

 

半ば茫然と立ち尽くす俺たちに、ディアベルが話しかける。

 

ディアベル「…今回もカイタさんに助けられたが…彼は、一体どうしたんだい?」

 

アスナ「それが…」

 

今度はアスナが説明する。

 

ディアベル「…そうだったのか。…また、彼に助けられたが、こうなると後味が悪いな…。」

 

「助けられた…?ふざけるな…!」

 

その瞬間大きな声が響き、俺たちはその方向を見る。

 

叫んだのは、キバオウのギルドのメンバーだった。

 

…そして、同時に思い出した。

 

そいつは、第1層で俺をビーターと呼んだ一人である事を。

 

「やっぱりそうだ!そいつはイカれたビーターだ!俺たちが知らない上に、ラフコフの連中と同じ力を持っているんだ!絶対に俺たちを裏切る!」

 

ディアベル「待て!彼はそんなことはしない!そればかりか、彼のあの力が無ければ、ラフコフに対抗できなかったかもしれないんだぞ!…彼は、俺たちを救ってくれt」

 

「あれが俺たちを救う力だって言うのか!?」

 

ディアベル「っ!?」

 

「巻き込まれたら俺たちも死んでたんだ!それを「救う力」だと!?冗談じゃない!」

 

キリト「違う、あいつは…!」

 

「そんな奴が攻略組に居るなんて俺はごめんだ!その訳の分からないアイテムを奪って、さっさと追放してくれ!」

 

アスナ「ちょっと、あなたねぇ…!!」

 

ディアベル「君、まだそんな事を…!」

 

アスナとディアベルさんが声を荒げるが、

 

 

「このっ、ドアホッ!!」

 

 

次の瞬間聞こえた怒声に、ディアベルに突っかかった人はもちろん、アスナ達もびっくりしてその方向を見た。

 

「キ、キバオウさん…!?」

 

声の主はキバオウだった。

キバオウはずかずかと、アスナ達の前に出る。

 

キバオウ「…ワイの面子が、迷惑かけたな。」

 

そして、俺たちに頭を下げた。

 

何が何やら分からず、俺たちは顔を見合わせる。

 

「キ、キバさん、何言ってるんすか!こいつは、ビーターの一人なんすよ!?いつ俺たちを裏切るか分からないんすよ!?…そいつが妙なことをしでかさないうちに、早くそのアイテムを奪った方が良い!…幸いこっちには頭数はそろってるんだ、奪う方法はいくらでもあるっす!」

 

キバオウ「…そらぁ、『力づく』っちゅう意味か?……『ジョー』。」

 

ジョー「そうっす!これは攻略組のためなんだ、誰も文句は言わない!…それに、そのアイテムが無ければ、あいつなんてどうとでも」

 

キバオウ「…だから何や。」

 

ジョー「…はい?」

 

次の瞬間、キバオウはジョーと呼ばれたプレイヤーの胸倉を掴み、

 

 

キバオウ「…ビーターだから、特別な装備を持っているから、そんな理由で同じプレイヤーに剣を向けるなら、ワシらはそんじょそこらの犯罪者集団(オレンジギルド)と一緒や!…ワシらはそんなことをするために、『ALS』を立ち上げたんと違う!」

 

 

大声で怒鳴って放り投げた。

 

怒鳴られたジョーは茫然としている。

 

キバオウは、俺たちの方を向き、頭を下げて言った。

 

キバオウ「…キリトはん、それと、カイタはん。…虫のいい事を言うかもしれんが、実をいうとワイは、第1層のフロアボス直後で、何でアンタらがビーターを名のったか、察しが付いとった。」

 

カイタ・キリト「「…は?」」

 

アスナ・レンコ「「えぇっ!?」」

 

頭を下げたキバオウの衝撃的な発言に、俺たちは開いた口が塞がらない。

もちろん、周囲の攻略組のメンバーもだ。

 

キバオウ「確かに、ワイもあんたらを非難した。…せやけど、あとで冷静になって考えてみたんや。…ま、後で気が付く時点で、後の祭りって奴やったけどな。」

 

キバオウは、悔やむように顔をゆがめている。

 

キバオウ「あの時はすでに、『β上がりの奴は絶対に許さない』という空気やった。あの状態が続いていれば、この先、無関係のβテスターまでもが悪者にされてしまう。…だからアンタら二人は、その矛先が自分たちだけに向くようにしたんやろ?…違うか?」

 

問いかけるようなキバオウの視線に、俺とカイタは、何も言えずに押し黙る。

 

キバオウ「…まあ、半ばカイタはんの言っていた事をまんまと信じてしまったのもあるがな。」

 

キバオウは、自嘲気味に呟いて、カイタの方を向く。

 

キバオウ「改めて、カイタはん。…ウチの面子が迷惑をかけた。…アンタのその力は、絶対に誰かを傷つけるようなモンやない。誰かを守るための物や。ワシが保証する……いや、スマン。これは無責任やな。…せやけど、少なくともワシはそう思っとる。それは忘れんといてくれや。」

 

続いて、俺の方を向き、

 

キバオウ「…キリトはんも、ホンマにすまんかった。…あの頃のワイは、まだ青二才やった。『殺されかけたディアベルはんのため』と言えば聞こえはいいかもしれんが、結局頭にあったのは自分たちの事だけ。…もっとよく考えれば、あの時の士気そのものが危ない状態やったのにも、気づけたはずやのに。それに、お前さんを最初に『チーター』呼ばわりしたんはワシや。…これで許してもらおうとか、そんな事は思っとらん。」

 

…その言葉で締めくくったキバオウは、メンバーを連れて帰っていった。

 

 

(カイタside)

 

キバオウの謝罪を、俺は心ここにあらずといった心境で見ていた。

 

…正直言うと、ゼロワンに変身してからの記憶が所々あやふやになっている。

 

気がついたら、ゼロワンの活動限界時間を迎え、膝をついていたという感じだ。

 

レンコ「…カイタ、大丈夫?」

 

今俺は、彼女と共に帰路についていた。

 

カイタ「…ああ…大丈夫。」

 

…無論、内心は穏やかではない。

当然だ。

あとほんの数秒でも遅れていたら、彼女がラフコフの餌食になっていたかと思うと、ゾッとする。

 

カイタ「…お前こそ、大丈夫だったか?」

 

レンコ「うん。」

 

カイタ「…スマン。怖い思いさせたな。…もうちょい早く気づいていれば…」

 

レンコ「平気。…むしろ、私の方が油断してた。あの人数の一人で相手にするのはどうしたって無理があるのに、調子に乗っちゃったから…」

 

カイタ「いや、俺もキリトも、まんまとPoHの策略に嵌められた。…今後は、こういう事が無いようにする…」

 

「そんな事、出来るのか?…お前ごときに。」

 

突然、別の人物の声が聞こえ、俺たちはとっさに振り向く。

そこには、一人の男が立っていた。

…グリーンのカーソルが付いているので、おそらく一般のプレイヤーだろう。

…開口一番、喧嘩腰なのはどうかと思うが。

 

「…お前がカイタだな?」

 

カイタ「…ああ、そうだけど…アンタは?」

 

「そうだな…お前を…『仮面ライダーゼロワン』を潰す者…と言っておこうか。」

 

カイタ「っ!?」

 

嫌な予感がした俺は、レンコに「下がってろ」と手で合図した。

…何しろ、俺の事をわざわざ「仮面ライダーゼロワン」と呼んだのだ。

今までとは何かが違う。

 

「…さぁ、始めようか。」

 

カイタ「っ!?…それはっ!」

 

目の前の男が取り出したそれ(・・)を見て、俺は絶句した。

 

 

 

 

《現実世界 とある会社の社長室》

 

「…社長。」

 

「ああ。・・か。…どうした?」

 

秘書に呼ばれたその社長は、彼女の方を向くが、彼女は険しいまなざしをしていた。

 

「先ほど、・・・様から連絡がありまして、日本支部跡地に残されたデータベースから、一部のデータがコピーされた形跡が見つかったとの事です。」

 

「…何かのデータが外部に持ち出されたって事か?」

 

「・・様が言うには、そうではないかと。…そして、コピーされたデータというのが…」

 

「……っ!?これって…!」

 

そのデータを見た社長の目が見開かれる。

 

「はい。…そして社長。ここからが本題です。」

 

「…本題?」

 

「はい。・・様から指摘を受け、アーガス社にあるSAOメインサーバーの検査をしたところ…何者かによるメインプログラム改ざんの痕跡が見つかりました。」

 

「な、何だって!?」

 

「痕跡が分からないように隠蔽されていたので、発見が遅くなりました。申し訳ございません。」

 

「いや、・・は悪くない。…でも、それとこれ(・・)が何か関係が…………まさか。」

 

考えたくない可能性に思い当たり、社長は顔をゆがめる。

 

「そのまさかかと思われます。現在、・・様にも対応を打診しています。」

 

「分かった。…それと、これ(・・)がある以上、変身者もいるかも知れない。…そっちもの方も、捜索をお願いできるか?」

 

「承知しました。」

 

社長の頼みを聞いた秘書は、足早に社長室を出ていく。

一人残った社長は、窓の外を見ながら考えに耽る。

 

(『痕跡が分からなかった』…それって、あの人…茅場さんも気が付いていないって事だよな…?なんでそこまでして痕跡を隠す…?…あるいは、茅場さんにも気づかせたくなかった…?)

 

 

(マズいな…うちのゼロワンシステムと同じように、SAOに『サウザンドライバー』一式がプログラムとして組み込まれているとしたら…その犯人は一体何をしようって言うんだ…)

 

 

 

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

Sword Art Masked Rider

 

「…自分が何かを守れると、本気でそう思っているのか?」

 

仮面の戦士に、

 

「『仮面の戦士』が、聞いてあきれるな。」

 

黄金の戦士が、

 

『ゼツメツ・エボリューション!』

 

牙を剥く。

 

次回、『オレこそが課長で「仮面ライダー」』

 

 

「…お前は俺に、敵わない。俺の強さは、ケタ外れだ。」

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

はい、という事で、キバオウとの和解でした。

ここでキバオウさんと和解させるかどうかを悩み続けたのも、投稿が遅れた一因です…

このシーン書くために、何度映画のプログレッシブのスケルツォを見返したか。

キバオウさんって、アニメでは描かれていないけど「異なる立場にいながら、実はキリトの理解者」なんですよねぇ…
なんだかんだ、根はいい人なんや…


次のエピソードは、比較的短く済む……と、願いたいです()


なお、活動報告に書いた通り、本格的に就活が始まった影響で、ただでさえ少ない執筆の時間がさらに取れなくなっています。

次の投稿がいつになるか…2か月後か、4か月後か、1年もあとになるか。
はたまた、究極に短い時間の中でも、筆が進んで早く投稿出来るかもしれません。
もちろん、なるべく努力はします。

それでは、また。


…取り合えず、3月中に投稿できて良かった。


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