この素晴らしい天使に祝福を! (meigetu)
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0話 転生

ノーゲームノーライフのジブリールが好きなので書いてみました。


私は、ふと気が付き、目を覚ました。

周りは、暗闇に包まれた部屋におり、私は気が付くと、白い木製のような椅子に座っていた。

 

「ここは...」

 

と、言葉を漏らす。視線を前に向けるとそこには、一人の女性がいた。

その女性は、一般的な人とは異なるほどの美しい美貌を持っており、白い長髪で濃い藍色の修道服を身にまとっていた。

 

「突然ですが、〇〇 〇〇さん。あなたは死んでしまいました。」

 

彼女は、いきなり変なことを言い出した。

 

「はぁ。宗教の勧誘なら勘弁してください。それよりここはどうやったら出れるんですか?わたし、家に帰って今日買ってきた本が読みたいんですけど。」

 

と、聞き返した。

彼女は、そのように私に言い返されるのを想定していなかったのか、驚いた顔をした。

 

「亡くなった記憶を出させるのも酷だと思いますが、このままでは話が進まないので仕方がありません。あなたは、一人暮らしをしていましたよね。それも多くの本に囲まれて。」

「はいそうですけど。何で知っているんですか?」

「それはあとで答えます。しかし、部屋は本で埋め尽くされており本棚は満杯で、床もろくに歩く場所がないほどだったはずです。その中であなたは本を読んでいた。でも、その時に地震が起きました。あなたはちょうど読んでいた物語のクライマックスの時点だったのでしょう。地震なんか気にせず本を読み続けてしまった……。」

 

ここまで言われて、私は思い出した。あの本は確か、『ノーゲーム・ノーライフ』だったか。普段はライトノベルなんて読まなかったが、本屋で奇抜な絵柄が気になり手に取っていたのだったか。

 

「それで、もともと不安定だった本棚が倒れ私はその下敷きになって死んでしまったと。」

「そうです。宗教の勧誘ではないことはわかりましたか?」

「わかりました。それで死んだはずの私に何のようなんですか?神様?」

 

と、私は聞く。

 

「神様ではなくエリスでいいです。」

「エリス様?」

「はい、話を続けます。普段ならば、輪廻転生の輪に戻ってもらうのですが今回は特例で三つの選択肢があります。一つ目は、このまま前回同様に、輪廻転生の輪に戻り記憶がない状態から赤ちゃんからやり直すこと。二つ目は、天国へ行くことです。」

 

私は、考える。もし、本をひたすら読み続ける生活をするのであれば、下手に輪廻転生の輪に戻り赤ん坊にまで戻るよりは天国へ行き自堕落に本を読んでいるほうがよいのではないのか。

 

「では、私は天国でお願いします。」

「本当に良いのですか?天国は、ただ日向ぼっこができる草原がただただ広がっているだけで、あなたが好きな本なんてものはありませんが...」

「すみません。今のはなかったことにしてください。」

 

と、即答した。じゃあ、輪廻転生の輪に戻るしかないのかと考えていると、

 

「そこで、今回特別に、三つ目の選択肢があります。それは、今の記憶を持った状態で、別の世界へと転生するというものです。」

「別世界?」

「はい、正確に言うと私たちが管理している世界ということになりますが...私たちの世界は、魔王がおりそれによって多くの魔物が生息しているのですが、それによって天寿を全うできずになくなってしまう人が多々いるんですよね。その方々は私たちが管理している世界での輪廻を望んでおらずにそのまま天国へ行かれる方が多々存在しているんですよ。そのせいで人間の人口は減る一方で、できればこちら側の世界に来てほしいのですが...」

「それは、人口調節のため?それとも魔王を滅ぼしてほしいため?」

 

と、問いかける。エリス様は驚いた顔をして、

 

「さすが頭の回転が速いですね。その通りです。一つ目は転生させた時点で人口が増えますし、二つ目はできれば達成してほしいことですかね。一応ほかにもあなたと同じ世界から転生された方がかなりいますのでできればでいいです。」

「なるほど。じゃあ三番でお願いします。」

「わかりました。では、こちらから、一つ特典を選んでください。」

 

と、本を受け取った。

中を流し読みしてみると、『魔剣グラム』や、『最果ての槍 ロンゴミアンド』などなど強そうな武器の名前や、魔力値上昇、知力上昇などをまとめたアークウィザードセットなどなどが書かれていた。

 

「特典って...魔王を処断するためのものですか。」

「その通りです。あなたたちの世界ではチートとか言うようですが」

 

と、エリス様は頬をぽりぽりとかく。

なるほど、この状況はいわゆる『なろう系小説』に状況が似ていると感じる。

さらに読み進めていくと最後のページに『そのほか要望があれば直接女神に伺ってください。』と書かれていた。

 

「決まりました。」

「早いですね。何を望みますか?」

「じゃあ、私を『ノーゲーム・ノーライフ』の天翼種であるジブリールの能力と持ち物をください。」

「少し待ってくださいね。少し調べます。」

 

と、エリス様は近くにある本を軽く開いた。

 

「ジブリールは...この世界の天使とほぼ同格のものになりますね。すみません。この世界では天界の者は人類に干渉にしてはいけないというルールがあるんですよ。ですからダメですね。」

「そうですか。残念です。」

 

と、言いがっかりする。天翼種になれば、寝る必要や食事をとる必要がなくなり、寿命という枷もなくなる。そのうえで多く時間を本を読むことにさけるから、よいと思ったのだが。

 

「では、寝る必要や食事をとる必要がなくなり、寿命というものがない種族って何かいますか?」

「そうですね。天界に住む我々神や、天使たち、ほかには...上級悪魔やリッチーでしょうか。」

「では、上級悪魔かリッチーで転生させてください。」

 

と、いうと、エリス様ののほほんとした雰囲気から剣呑な雰囲気へガラッと変わった。

 

「魔王を倒すために転生者を送るのになぜ自ら、魔王軍の一員となろうとしているのですか。」

 

と、言われた。私は地雷を踏んだと感じ慌てて取り繕うとするが時はすでに遅かった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

二時間後

 

エリス様から散々叱られて、正座をしていると唐突に、

 

「なかなか仕事が進んでおらぬと思ったらなるほどそういうことであったのか。」

 

と、言う声が天から聞こえてきた。

エリス様はハッっと気が付き元の雰囲気へと戻り軽く服を直してからその声にこたえた。

 

「申し訳ありません。トート様。」

「よいよい、それでどうした。」

「もともとこの方は、ジブリールというキャラつまり、この世界でいう天使としての、転生を望まれましたが、天界規定によって魔王に干渉できなくなるので却下したところ、リッチーや上位悪魔としての転生を望まれたのでそのことを説教をしていたところでした。」

「ああ、なるほど。それで人間よ。なぜそのような望みにした?」

 

と、私に問いかけられた。

 

「私は多くの本が読みたいからです。睡眠や食事、などに邪魔されずにできる限り多くの本を読み多くのことを知りたいからです。」

「なるほど。だからか...」

 

と、天上から軽くページのめくる音が聞こえた。

 

「トート様どういたしましょうか?」

「あい分かった。今回、特例で認めよう。」

「本当ですか?」

「大丈夫でしょうか?」

「まあ、天界規定をごまかせばいけるであろう。しかしだな。特例に当てはまることだからな。今回はエリスの部下として地上へと送る。それでも良いか?」

「部下ですか...どれほど働くことになりますか?」

「エリスの差配によるが週に二日ぐらいであろう。」

 

エリスの部下ということは、神様の下で天使として働くということだろうか。週二日程度神のもとで働けばそれによって多くの物のが手に入るのであればよいと思った。

 

 

「では、お願いします。」

「あい分かった。しかし、天使を地上に送ることとなるのでいくつか縛りをもうけさせてもらう。一つ、神である、エリスの言うことを守ること。二つ、魔王軍や、魔王を自身が危害を加えられない限り、決して処断しないこと。これは天界規定によるものだ。三つ、今回転生させるキャラクターの最強魔法、『天撃』を封じさせてもらう。安易に地形などなど変えられては困るからな。しかし()()以上の神の同意があれば打てるようになる。これは同意した神が多いほど強くなる。これくらいかな。質問はあるか?」

 

と、トート様は聞いてきた

一つ目は、見るからに親切そうで、思慮深そうな神様の部下になるのだ。そこまで無茶ぶりはされないでしょう。二つ目、三つ目は、私のそもそもの目的は本を読むことであるから正直どうでもよい。そのうえで、特に質問はない。という旨を伝えると、私の近くに魔法陣のようなものが現れた。

 

「これに乗れば、別世界へと転移できるであろう。それではな。」

 

私が魔法陣に乗ると体が天へと昇っていき途中で意識が途絶えた。

 

 

 

 

「本当に良かったのでしょうか...」

 

と、エリスは独り言ちた。

 

「先ほどの件であろう。無論だ。もともと天使の数は足りておらん。それにおぬしの地上での活動の手助けになるであろう。」

「トート様まだいらしたんですね。」

「そうだ。天界規定に関することはこちらで処理しておく。おぬしはあの天使をうまいこと使ってやれ。ではな。」

 

と、言うとトート様は消えた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

目を覚ますと、周りは、数多の本棚があった。

 

「ここは...『エルキア大図書館』でしたね。」

 

窓を見ると、外には空しかみえず、近寄ってみるとこの図書館自体が宙に浮いているようだった。

図書館内部の周りを見渡すと、小説通りの光景が広がっていた。

本棚が宙に浮いており、読み切れないほどの量の本が詰まっている。さらには天球儀なども宙に浮いていた。

中央には具象化しりとりで使われたテーブルがあり、多くの本がその近くを舞っていた。

そこには現代の世界でも見たことがない本が多く詰まっており、私は一目散にその本へと食いついた。

 

 

 

「あの...聞こえますか。もしも~し。」

 

私は、近くで寝っ転がって一心不乱に本を読んでいる先ほど転生させた天使に声をかけていた。

しかし、近くにいることにすら気が付いていないのか声をかけても全く反応がない。

仕方がないので軽く頭をたたいてやると、ようやく気が付いたのか耳を釣り上げてこちらを振り返った。

 

「あっ、エリス様でしたか。失礼しました。」

「いえ、大丈夫です。」

「それで何の御用でしょうか?」

「はい、大まかな命令を持ってきました。大きく言うと地上にいるクリスという盗賊の子の手伝いをしてください。」

「手伝いといいますと?」

「その子は、地上での転生者たちが残した神器の回収を担当してくれてるんです。そのお手伝いです。これに連絡が入ると思うので持っておいてください。」

 

と、小さな携帯のようなものを手渡された。

 

「了解しました。ほかには何か命令はございますか。」

「それ以外は特にありませんね。あとは、この図書館を神器の一時的な保管所として使いたいといったぐらいですかね。」

 

その後いくらか打ち合わせをした後、エリス様は帰られた。

 




評価や感想をくれると中の人が喜びます。よろしくお願いします。

トート様

今回しか出ない神様。古代エジプト神話の知識の神様。
エリス様よりも神さまとしての位が高く知識欲旺盛な主人公を知識の神様としてそこそこ気に入っている。


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一話 図書館の天使

お気に入り登録が10件で驚いています。
今回の話は、時間が飛びますが転生してから3〜400年ほどたっています。


私は、いつも通り図書館で本を読んでいると、携帯が鳴っていることに気が付いた。

 

「はい、もしもし」

「もしもし。アズリールかしら?」

 

という男の子っぽい声が聞こえてきた。

 

「エリス様でしたか。どうされましたか?」

「クリスの時はその呼び方はやめてくださいって何度言ったらわかるんですか!!」

「わかりましたよ。クリスちゃん。ところで、何の御用でしょうか?」

「明日アクセルから王都のほうに向かいたいのでその際のテレポートと神器の回収のお手伝いをお願いします。」

「了解です。では朝八時にアクセルの入り口でお待ちしていますね。それともこの時間ですから図書館のほうで夕食と朝食を食べていきますか?」

 

と、図書館の17時を回っている時計を見つつ言う。

 

「街の宿に比べて快適ですし、図書館のほうに行きます。」

「了解しました。では18時ごろに向かいに上がりますね。」

 

といい、携帯を切った。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

人々でにぎわうアクセルの街に近づくといつも通り、街から少し離れた森の場所にエリス様はいた。

 

「はいは~い。お向かいに上がりましたよ。クリスちゃん。」

 

と、近寄る。エリス様は、地上で回収したであろう多くの神器を抱えており、とても重そうだ。

 

「ジブリールですか。助かりました。できれば神器を少し持ってください。」

「おっけーですよ。」

 

といい、エリス様が持ってきた多くの神器を片手で抱えた。

 

「それにしてもこんなにあるんですね...」

「それだけ転生者を送り込んで、それ以上に犠牲になっているんですから仕方ありませんよ。」

「じゃあ飛びますからね。腰の紐につかまってください。」

 

と、言うとエリス様は慣れた手つきで腰の紐をつかんだ。

そのことを確認し、私は翼を広げ、空へと飛び立った。

 

「テレポートとそのまま飛んでいくことができますがどうされますか?」

「うーん、少し夕焼けを見たいから飛んで行って。でも、図書館までどれくらいかかるの?」

「今、王都上空にあるはずですから...大体20分ほどですかね。」

「じゃあお願いできる?」

「了解しました。」

 

といい、翼を大きく広げ私は空中に浮かぶ図書館へ向かい飛ぶ。

空は茜色に染まっており、鳥の群れの影が夕焼けの中を飛んでいる絵がとても様になっていた。

 

「それで今日の夕ご飯は何ですか?」

「今日はカエル肉を使ったステーキですね。2,3年前ぐらいに、別世界のお酒を熟成している酒樽を見られたと思いますが、それが完成しましてそれの試飲ついでにという感じですかね。」

「そうですか。それは楽しみです。」

 

と、いいエリス様はにこりと笑われた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「はーい。つきましたよ。」

「相変わらずですね、ここは。」

 

と、宙に舞った読み終えて片付けていない本や本棚を見てそうおっしゃった。

 

「そうですねついつい片付け忘れてしまうんですよね。」

「ところで、最近は来訪者の方はいらっしゃらないのですか?」

「来訪者...ああ、最近はいらっしゃいませんね。5,60年前はねじが飛んだ紅魔族のイマ..人間がいらっしゃいましたけどね。」

 

と、大変だったと苦笑いをする。

 

「あ。そういえば最近では一人いました。確かバニルと名乗っていましたね。先ほどの紅魔族とは違って静かに本を読んでいましたから気にしませんでしたが、ここに来られる時点で相当な魔法の技量を持っていられると思いますよ。」

「バニルですか...」

「確か、アクセルの街のほうで魔道具店...ウィズ魔道具店でしたっけのアルバイトをしていらっしゃるようで、気が向いたら来てくれ、だそうです。このほかにはいませんね。」

「そうですか。確かあそこは...結構色物系の魔道具を取り扱っていたはずですが...」

 

エリス様にしては珍しい悪口を言ったことに驚きつつ聞いてみる。

 

「色物ですか...どのような商品ですか?」

「例えば、売れてる商品の中では願いが叶うチョーカーとかですかね。」

「どこが色物なんですか。立派な商品じゃないですか。たぶん、予想ですが幸運の値が上がったりするんですよね?」

 

と、エリス様にいう。

 

「私も初めはそう思ったのですが、実際は異なるようで、願いが叶うまで絶対に外れないチョーカーで、徐々にしまっていくというおまけつきだそうです。」

「なるほど、人間、死ぬ気になれば何でもかなうということですか。確かに色物ですけど面白いですね。」

 

と、二人で雑談をしていると、時計は18時半を回っていた。

 

「私はこの後、夕食の準備などなどするので、エリス様は本でも読んでゆっくりしていてください。」

「おすすめの面白い本とかありますか?」

「エリス様は、本の中では物語系がお好きでしたよね。では、私が読んだ記憶から書き移したものとなりますが、()()()()()()()()()というのはどうでしょうか?」

「どのような物語なの?」

「それは内緒です。その方が物語を楽しめますから。確か、中央9番目の列の左から3番目の本棚の、上から2番目の棚の左から4,5,6,7番目の本です。ぜひ読んでくださいね。」

 

と、言い私はキッチンへと向かった。

 

 

 

料理を手に持ち、図書館中央へと戻ると熱心に本を読まれているエリス様がいらした。

 

「エリス様、料理が出来上がりましたよ。」

「早いですね。」

「結構時間がかかったはずなんですけどね。」

 

と、19時半を回った時計を指さす。

 

「うわ、こんなに時間がたっていたんですか。」

「本を読んでいるとよくございますよね。」

 

と机に料理を並べる。

 

「こちらが、ジャイアントトードのステーキになりますね。そして、この樽が、外の世界のお酒のウィスキーというものです。」

 

私は魔法で氷を作り出し、コップへ注いでいく。

 

「ウィスキーですか?」

「そうですね。外の世界で読んだ書籍に大まかな製法が書かれていたので試してみました。取り敢えず飲んでみましょうか。」

 

といいコップを持ち上げる。

 

「「乾杯」」

 

とふたりでいい、二人でコップを傾けた。

私は初めて作ったにしてはおいしくできたなと感じつつ、エリス様のほうに視線を向けるとせき込んでいた。

 

「大丈夫ですか?」

 

と駆け寄り、背中をたたく。

ある程度落ちついた後、エリス様は、

 

「結構きつくないですかこのお酒...」

 

コップを見ると、シュワシュワと同程度のものだと思ったのかほとんど残っていなかった。

 

「あー。言い忘れていましたね。このお酒、シュワシュワに比べて十数倍程度のアルコールが入ってますよ。」

「いうのがおそい。」

 

と、恨みがましそうな目線を送られた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

早朝、私は、おなかが軽くたたかれてる感覚で目を覚ました。

そちらの方に目線を向けると、胸の間にエリス様の顔が挟まっていた。

 

「おはようございます...エリス様...」

モガモガモガ(早く出してください)

 

ああ、そういえば、昨日調子に乗ってのんで酔いつぶれたエリス様を抱き枕みたいにして寝たんだっけ。

 

「エリス様どうされましたか?」

モガモガモガ(だから早く出してください)

 

なるほど。わからん。まあいいや。

 

「そうですか。もっと抱き着いてほしいんですね。」

(へ?)

「大丈夫ですからね。」

 

と、寝ぼけからか額にキスをし、ぎゅっと抱きしめ私は再び夢の世界に旅立った。

しばらくおなかをたたかれる感覚があったがそのうちその感覚もなくなっていった。

 

 

 

「おはようございます。エリス様遅かったですね。」

 

私は、朝食を一通り用意し待っていると、珍しく9時を回ったころにエリス様が寝巻のままで出てきた。

かなり不機嫌そうだ。

 

「どうされましたか?」

「軽く窒息したんですよ。」

「なるほど...」

 

なるほど、早朝モゴモゴ言ってたのは出してくださいという意味だったのか...

 

「すみません。」

「もう一緒に寝ませんからね」

「そんな殺生な。」

 

エリス様を抱き枕にすればちょうどホッカイロのように暖かくてよく寝れるから寝ているのであって一緒に寝ないならば、寝る意味がなくなるではないか。

 

「そもそもあなた寝る必要がないじゃないですか。」

「だって、一緒に寝れるとってもいい抱きま...女神様がいるなら一緒に寝たいじゃないですか。」

「今一瞬抱き枕って言いましたよね。」

 

と服の首あたりをつかまれゆすぶられる。

 

「正直に言いますと、本当に寝やすくなるからですよ。エリス様。あったかくて、それでもっていいにおいがする。そしてかわいい。最高じゃないですか。普段ならば本を読むのに時間を割きますが、エリス様と一緒に寝ると本を読む以上に幸福を感じられるんですよね。だからからですね。」

「そうですか。」

 

エリス様は軽く頬を染め、困ったように頬を掻かれた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「到着は遅くなってしまいましたが、つきましたよ。」

 

と、10時を回ったころ私は、王都の入口の近くへ降り立った。

 

「じゃあこれからはクリスでお願いね。あなたはアズリールで。」

「了解しました。」

 

と、言われ私は獣人の姿へ変わる。特徴的な羽や虹色に輝く長髪がなくなり、人間と緑髪で短髪の少女へと姿を変えた。

 

「わかったにゃ。クリス。これで大丈夫かにゃ?」

「その語尾を変えるのもどうかと思うけど...まあいいか。今回は貴族邸の襲撃ね。その貴族は今まで天界から送った勇者たちを権力で無理やりに処刑したりして多くの神器を集めコレクションとして飾っている貴族だよ。」

「それで今回どこまでやればいいのかにゃ?」

 

と私はクリスにきいた。

 

「普段は絶対にダメだけど今回は天界からの通達で特例で処断してもよいことになっているわ。」

「なるほど残られても面倒だからからかにゃ?」

「その通り。持っている権力がかなり強いから、王国から処刑されることはなく、そのうえこのまま野放しにしていては送った矢先から処刑されてで我々の業務が増えるからでもあるよね。」

「なるほど。はた迷惑な、人類種(イマニティ)だにゃ。」

人類種(イマニティ)じゃなくて、人間でしょ。でも今回処断していいのは、あくまでその当主だけ。それ以外の護衛なんかをあなたが殺すと面倒なことになるからそれだけは気を付けてね。」

「わかったにゃ。クリス。それよりも貴族邸で盗んだ本は持ち帰っていのかにゃ?」

 

と、私はクリスに顔を近づけいう。

クリスは勢いに押されたのか、少し引きつつ

 

「もちろんです。神器系はダメですけどね...」

「わかったにゃ。それでは行くにゃ。」

 

といい、人間に擬態した緑色の短髪をなびかせその屋敷へ向かう。

 

「ちょっと待ってよ。場所もわからないのにどこに向かうつもりなんですか。ちょっと待ってくださーい。」

 

と、クリスちゃんは私の後を追ってきた。

 

 

 

夜になり、私たち二人は目的の貴族邸に忍び込んだ。貴族邸は広大な敷地を有しており庭の大きさからも強大な権力を持っていると察せられた。

 

 

 

私は、真っ先に蔵書室へ向かった。

蔵書室は、権力がある貴族ゆえか、かなり大きなものを有していた。

これは私の図書館の蔵書を増やせるかもしれないと思いそこで、エリス様から誕生日プレゼントとしてもらった魔法がかけられた眼鏡をかける。

この魔法は単純で、私が今までに読んだことがある本とない本を見分けるものである。

 

「ほとんどが、読んだ本ばかりだにゃ...」

 

新しい本との出会いがあると期待していたがほとんどなく、あったとしても、この貴族の歴史などというくだらない一種の伝記のようなものであった。

 

「所詮は、天界に迷惑をかける人類種(イマニティ)と、いうことだにゃ。」

 

本のバリエーションの少なさにがっかりしていると、ふと違和感を感じる本棚があった。

近寄ってみると、その本棚の一部の本が一つだけなぜかずれているところがあった。

 

「これは...仕掛けか何かかにゃ?」

 

と、本を本棚に無理やり押し込む。

すると、ガチャリと奥の扉の鍵が開く音がした。

 

「とてつもなく単純な仕組みだったにゃ。」

 

そこに駆けより部屋をのぞくと、2冊の本が大切そうに保管されていた。

 

「これは...ルルイエと、ネクロノミコンかにゃ...読んだことがにゃいから、どうしても読みたいですが読むとやばそうな予感するにゃ。ひとまず持ち帰えるにゃ。」

 

といい、いくつかの本を抱えて当主の部屋へと向かった。

 

 

 

当主の部屋の部屋の前に立つと何やらくぐもった喘ぎ声が聞こえた。

スキル『隠密』を使いつつ、音を立てずに中に入ると、天蓋つきベッドの上で太っている当主がちょうど娼婦と伽を共にしているようであった。

 

当主は娼婦との行為に夢中で私が部屋に入ったことに気が付いておらず、相変わらず人類種(イマニティ)の娼婦を犯していた。

念のために、クリスからもらった写真と、行為中の男性の顔を見比べ間違いないことを確認する。

間違いないことを確認したうえで、スキル『隠密』を使い隠れながら魔力で編み出した私の身長ほどの長さがある黒い靄のようなものを纏うデスサイズを当主の首めがけて構える。

しばらく待ち、人類種(イマニティ)同士で腰を振るのをやめ男のほうが汚いものを出し始めた瞬間に首をはねた。

 

私は、久しぶりに知的な生命体を殺せた快感に、私は軽く身もだえていると、娼婦であろう女性のほうが大きな悲鳴を上げた。とてつもなく興ざめだ。私はその怒りからか、

 

「五月蠅いにゃ。殺されたくないなら、黙ってくれないかにゃ。」

 

と、デスサイズを構え、にらみつける。

女性は生物的な格の違いからか殺されると思ったのか一瞬で黙り、ベッドの片隅でぶるぶる震えていた。

 

「聞き分けのいい人類種(イマニティ)は好きだにゃ。まあいいにゃ。ところで...」

 

と、飛ばした首をつま先でリフティングをするようにひろう。

顔をのぞいてみると、絶頂からか目は白目をむいており、口からは泡を吹いていた。

胴体のほうをみると、死んだカエルのようにぴくぴくと痙攣しており30秒たった今でも種の存続という生物的な本能からなのか、快感からか、汚いものを出し続けていた。

 

「汚いものを見せないでほしい物にゃ。最悪の気分だにゃ。」

 

と、胴体だけとなった体を蹴る。

 

「おっと、いけないにゃ。死体の扱い方をエリス様に知られたら、また怒られてしまうにゃ。おい、人類種(イマニティ)の女。」

 

と、人類種(イマニティ)の女は自分のことを指名されているのだと察し恐る恐るこちらに視線を向ける。

 

「ここでおこった記憶を消しておいてやるから、あとは任せたにゃ。容疑がかけられた際はおとなしく死んでくれると嬉しいにゃ。」

 

と、言い、魔法で女性の記憶を飛ばした。女は白目をむいて、死体の上にぱたりと倒れた。

 

「はぁぁ。これでよかったかにゃ。前回、今回同様に処断した際も死体を足蹴にしたことでエリス様からこっぴどく叱られたにゃ。たぶんこれで叱られることがなくなったにゃ。」

 

と、首を袋の中に入れ、意気揚々と合流地点へと向かった。

 

 

 

「クリス。遅いにゃ。」

 

と、約束の合流場所、貴族邸から遠く離れたホテルの一室にようやくクリスがやってきた。

 

「すみません。思っていた以上に神器が多くて手間取ってしまいました。」

「そうだったんだにゃ。何個ぐらい見つかったのにゃ?」

「二十個ですね。正直見つけられてよかったです。アズは何か見つけましたか?」

「この本かにゃ?」

 

と、回収してきた襲撃した貴族家の伝記なるものと魔導書らしき二冊を渡す。

 

「これは、お土産に持って帰っていいですよアズ。」

 

と、伝記は渡された。

 

「問題の二冊ですが、ルルイエと、ネクロノミコン...」

「何かわかったかにゃ?」

「一つは、神器で間違いありません。確か...すべての魔術が使いたいと言っていた転生者に渡したはずで間違いありません。」

 

と、クリスはルルイエを指さす。

 

「しかし、これに関しては見たことがありません。この本は、悪魔か何かが持ってきたやも知れません。」

「どうするにゃ?」

「一応、帰った際に図書館の最重要禁書庫のほうに保管しておいてください。後で取りに来ます」

「わかったにゃ。」

「ところで、腰のあたりからぶら下げている、袋は何ですか。」

 

と、指をさされる。

 

「これかにゃ。これだにゃ。」

 

と、袋を開ける。

中には、氷漬けにされた当主の首が入っていた。

 

「ヒェッ」

「そこまで怖がらなくてもいいと思うにゃ。一応証明のために持ってきたのだけど必要なかったかにゃ?」

「まあ、天界に行けば一応確認できるので問題ないですが、一応確認のために、ステータスプレートを見せてもらえますか?」

「はいにゃ。」

 

と、手渡す。

 

「討伐数は、っと...ありました。よかったです。」

 

と、私のステータスプレートを見ると物の見事に『討伐数 人間:1』と書かれていた。

 

「これは、消せるのかにゃ?このままでは犯罪者としてろくに街に入れなくなるにゃ...」

「普段なら無理ですが、今回は神々から処断しろとの命令だったので天界から元に戻しますよ。その代わり、ステータスプレートの修正まで一週間かかるのでその間は街の出入りができなくなりますが...」

「わかったにゃ。じゃあこの後どうするにゃ?」

「せっかく部屋をとったんですから、泊っていきましょうか。」

「分かったにゃ。私もクリスが寝るならねるにゃ。」

 

と、クリスに後ろから抱き着いた。

 

 




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二話 親友紹介

お気に入り登録40以上ありがとうございます。
ここに書くことではないですが、次回には原作スタートです。


「なるほど...ここが新しくなっていますね...」

 

中央の机に山積となった本の傍らに、今年から新しく発行された紅魔族の教科書をめくっている天使が一人いた。

 

「さすがは、紅魔族ということでしょうか...どの王国に比べても最新鋭の術式を扱っていますね。」

 

頭の可笑しささえ直せば完ぺきなのにと、思いつつ教科書を読んでいると、携帯が鳴った。

 

「はいもしもし」

「ジブリール?」

「そうですよ。エリス様」

「クリスと呼んでくださいと、何度言えばわかるんですか。」

「わかりましたよ。クリスちゃん。」

「何百回このくだりを、やるんですか...」

 

と、エリス様はあきれたように言う。

 

「まあいいじゃないですか。それで、今回はどんな御用でしょうか?」

「資金のためにクエストやりたいから手伝って。」

 

資金のためのクエストね。エリス様の個人的な頼みは、たまにねだると、天界の本をくれるので頼んでみる。

 

「わかりました。できれば、天界にある本を数冊お願いします。」

「本ね。あとで天界の天使に伝えておくわ。」

「ありがとうございます。それで今回のクエストはどのような内容ですか?」

「一撃熊2体討伐。というやつですね。」

「わかりました。何時頃向かえばいいですか?」

 

と、深夜一時を回った時計を見て言う。

 

「今日の八時でお願い。ちなみにアズリールのほうで来てね。」

「?わかりました。では。」

 

と、携帯を切り、私は本を読む作業へ戻った。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「おーい。クリス。どこにいるんだにゃ。」

 

と、現在私は冒険者ギルドに来ていた。

 

「こっちですよ、アズリール。」

「やっとあえたにゃ。」

 

と、クリスのほうに向かった。

 

「ところでこの金髪の女の子は誰かにゃ?」

 

と、クリスの近くにいる、長髪の金髪をした、とても強そうな鎧をした女の子を指さす。

 

「っわわわわ、私はダクネスといいます。」

「そうだよ。この子はダクネス。私の友達なんだ。」

「ダクネスですかにゃ。よろしくお願いしますにゃ。私はアズリール。主にクリスとパーティーを組んでいるアサシンだにゃ。」

「私は主にクルセイダーを生業としている。よろしく頼む。」

 

と、握手をする。

クリスは、私とダクネスの間にするっと入ってきて、

 

「二人とも自己紹介は済んだかな。じゃあ、行こう。」

 

といい、クエストを受注した。

 

 

 

「ダクネスはどこかの御貴族様の家出身なのかにゃ?」

「どうしてそう思ったのだ?」

「だって、冒険者らしくないんだにゃ。」

 

と、指摘する。

ダクネスは驚いた顔をして言う

 

「そうか?」

「そうだにゃ。しゃべり方もところどころ教養があるようにしゃべるし、この鎧だって、鉄だけじゃないでしょ。たぶん少量のアダマンタイトが入っていると見たにゃ。こんな高級品、普通の冒険者は買えないにゃ。プラスして、首から提げているエリス教信者のペンダントだにゃ。たぶん色の具合からマナタイトだと思うけど、それの金属がつけられるのは伯爵以上の貴族のみだったはずだにゃ。」

「本当か?」

「公表はされていないから、周りの皆は知らないと思うけど形式的に階級ごとに銅、鉄、銀、金、マナタイトだったはずだにゃ。」

 

と、軽くダクネスの鎧を指ではじきながら言う。

 

「クリスからアズリールは賢いと聞いていたがここまでとはな...アズリールの言ったとおりだ。私の本名はダスティネス・フォード・ララティーナという。しかし、今まで通りダクネスと呼んでくれると嬉しい。」

「わかったよ。ダクネス。それにしてもダクティネス家ね、確か公爵家だったかにゃ...思っていた以上に大きな家出身で正直驚いているにゃー。」

 

そういわれ。ダクネスは苦笑いをした。

 

「二人とも仲良くなれてよかったよ。」

 

と、軽く笑いながら先頭を歩いていたクリスが言う。

 

「ところで、今回どうやって一撃熊を討伐するんだ?」

「特には考えていなかったけど...アズリールなんかよい方法ある?」

「そうだにゃ...ダクネスのクルセイダーとしての能力をひとまず見ないと作戦の立てようがないにゃ...」

「じゃあ、どうするのだ。」

 

と、すこし興奮気味にダクネスが言う。

そのことに違和感を感じつつ、周りを見渡す。

 

近くには、一匹のコボルトが獲物を探してうろついてる姿が見えた。

 

「あそこにコボルトがいるの見えるかにゃ?あのコボルトの攻撃をうk...」

「行ってくるゅ。」

 

と、言い興奮した様子で一目散にコボルトに向かってかけていった。

 

「クリス...あの子大丈夫かにゃ?いろんな意味で」

 

クリスは頬を掻きつつ苦笑いを返していた。

 

 

 

ダクネスのほうに寄っていくと、コボルトの攻撃を剣で受け流すこともせずに鎧で受けていた。

それどころか、攻撃を受けるたびに何やら嬌声のようなものが聞こえる。挙句の果てには、剣を構えることなく

 

「うぅぅん………ん!コボルトもっともっとかかってこい。」

 

などと、息を荒らげながら、意味不明なことをわめいている。

 

「クリス...熱心なエリス教徒の友達が加わったという話からまともで従順な人物だと思っていたけど思っているのと全く違ったにゃ。」

「あっはは...」

 

と、困ったようにクリスは頬を掻く。

 

「こんな感じでどうだ。もともと私は防御力や体力には自信があるぞ。」

 

そのことを抜きにしても、鎧や、体に傷を負うなどということはなく本当に防御力が高いのだと感じさせた。

検証のためにも、ひとまずコボルトを捕らえ、口の中にポーションを流し込む。

 

「アズ、このポーションは何ですか?」

「これは、ウィズ魔道具店で買ったポーションの一つだにゃ。間違っても飲んじゃダメな奴だにゃ。」

「どんな効果なのだ?」

「飲ませた量によって攻撃力が倍々で上がっていくとても強いポーションだにゃ。」

 

2人は驚いた顔をして

 

「「そんなポーションがあったんですか。」」

「まあその代わり副作用なものもあって飲ませた量によって寿命が縮まるというものだにゃ。店主の説明だと、2倍で10分。4倍で5分。8倍で2.5分。みたいに寿命が反比例で減っていくみたいだにゃ。」

「本当に使えませんね...ちなみにいくらしたんですか?」

「もともと一本一万エリスで売る予定だったみたいですけど、あまりにも売れないので一本二千エリスになっていたにゃ。安いうえに面白そうだったので箱買いしちゃったにゃ。」

 

と、買ったとき、アルバイトのバニルさんが本当にうれしそうな顔をしていたのを思い出す。

 

「なぜ捕まえたコボルトに飲ませているの?」

「一応、ダクネスの耐久力を調べるためだにゃ。ダクネス今から攻撃力が2倍になったコボルトを送るからやばいと思ったら回避してにゃ。」

「了解した!さあ早くかかってこい。」

 

と、回避するそぶりすらなく、剣を捨てて、頬を染めて、両手を広げて、コボルトの攻撃を受けていた。

 

「クリス...友達に悪口を言うのもあれだけど...この子はいわゆる、マゾということでいいのかにゃ?」

「間違っては...いないと思うよ。」

 

と、目の前で2倍になったはずの攻撃を受けてもよろめくことなく、逆に発情しながら受けるというシュールな絵を目の前にして私はため息をついた。

クリスもダクネスのことであろうか、大きなため息を一つついた。

 

 

 

コボルトにポーションでドーピングしつつダクネスに攻撃を受けさせるという行為を繰り返していると16倍に差し掛かった瞬間コボルトは泡を吹いて倒れてしまった。

 

「あーあ、死んじゃったにゃ。」

「そんな。せっかく攻撃の痛みが体に響いてきたのに。」

 

と、絶望をした顔をするダクネスと、せっかくのおもちゃ(コボルト)が壊れてがっかりするアズリールの顔を見て、どこで道を間違えてしまったんだろうとクリスは心底後悔していた。

 

「確か、文献では一撃熊の一撃の重さは、コボルトの約7倍であるから多分ダクネスなら一撃熊の一撃を耐えられると思うにゃ。」

「うん、頑張るゅ。」

 

と、いともたやすくえげつないことを言う仲間と、それを当たり前のように承諾する友人を見てクリスは頭痛が痛くなっていた。

 

 

 

「いたにゃ。さっきも話したと思うけど、大まかに説明をし直すにゃ。」

「オッケー」

「作戦としては、ダクネスが、クルセイダーとして敵を引き付けている間に、クリスと私が急所の首をはねるというものにゃ。そこまで難しいことではないと思うにゃ。最悪切り切れなかった場合は、一体ならば全員で戦って、二体残ったなら、一度皆で隠密で隠れるにゃ。わかったかにゃ。」

「はぁぁはぁ。わかった早く行こう。」

 

森の入口あたりに視線を向けると、大きな図体をした一撃熊が二体、入り口をふさぐように立っていた。

 

「クリス、この二体の討伐でよかったかにゃ。」

「そうだよ。」

「じゃあ、ダクネス頼n...」

「行ってくりゅ。」

 

といい、一目散に、一撃熊の前に走っていった。

 

「クリス。やばいにゃ。ダクネスがタコ殴りにされる前に早く作戦に向かうにゃ。」

 

と、二人でスキル『隠密』を発動させ、一撃熊の後ろへ回り込んだ。

熊の間をのぞき込むと、ダクネスは一撃熊の間に挟まれていて何やら「はあ…゛っ」という興奮した声を出しながら二匹に殴られそうになっている。

 

私とクリスは、殴ろうとしている一撃熊の背後から急いで首の急所めがけて切り込む。

 

私のデスサイズは一撃熊の首と胴体を一刀両断することができたが、急に切ることになったからか、クリスのほうは食い込むだけで切断することができなかったらしい。

ダクネスはもう一匹のほうの一撃熊に殴られ体を近くの木にぶつけさせた。

 

「ダクネス、大丈夫かにゃ?」

 

と、声をかける。

 

「ふぅうぅ…う。大丈夫だ。」

 

と、何やら色っぽい声で、返してきた。

どうやら体のほうは大丈夫らしいが、おつむのほうはいかれているらしい。

 

「クリス。私が攻撃を受けるから、攻撃のほうは任せたにゃ。」

「わかった。」

 

と、言い、私とクリス、二人で襲い掛かる。

 

一撃熊は一匹の首を落とした私を警戒してか私のことを狙ってきた。私めがけて腕を振り下ろす。

それをデスサイズの柄で受け止め、カウンターとしてデスサイズを回転させ切り上げる。

 

キィーン

 

という音が火花とともに鳴った。

どうやら警戒して一撃熊が腕を下げた結果デスサイズの刃と爪がぶつかったらしい。

 

「ちっ。」

 

と、同時にクリスが切りかかったが、体に浅く傷がつくだけで致命傷には至らなかった。

 

ダクネスが立ち上がり戦線復帰をし、一撃熊と、三人でもう一度襲い掛かる。

 

ダクネスが右足、私が右腕、クリスは左足だ。

一撃熊は一撃を損耗なく耐えたダクネスと私を警戒して変な方向へ右半身を捩るようによける。

 

するとそれを読んでいたのか、それとももともとあてる気がなかったのか、ダクネスの埒外な方向を切っていた剣がちょうど熊のすねの部分に当たる。

さらにはクリスのナイフが腰あたりにきれいな一閃を入れた。

 

うううううぅっぅ

 

と、一撃熊は、痛みからか立ち上がれず大きなうなり声をあげる。

私たちはこれをチャンスだととらえ、三人で急所にとどめを刺す。私は首を。ダクネスとクリスは心臓めがけ攻撃を加えた。

 

首は、もともとクリスが切っていたおかげかきれいに落とすことができ、クリスは心臓を、ダクネスは全く埒外な木に向かって剣を刺していた。

 

「やったにゃ。」

「やりましたね。」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「はい、こちらクエスト報酬と熊の肝の売却金額の合計の支払いの90万エリスになります。」

「ありがとうにゃ」

「はいこれが、今回の報酬だにゃ。」

 

と、札束を見せる。

 

「今回三等分だから一人30万エリスね」

「先ほどから気になっていたのだが、腰からぶら下げている袋にはなにが入っているのだ?」

「まあそんなことよりシュワシュワを飲みましょう。」

「この袋かにゃ?この中には一撃熊のくb」

 

話している途中でクリスに開けようとしていた一撃熊の首が入った袋と、口を手で封じられてしまった。

するとクリスが

 

「前も袋を開けて周りの冒険者に警戒されたでしょ。」

 

と、小声で言われた。

せっかくの戦果で見せびらかすことは悪くないことだと思うのだけど、クリスがあのように言うのであればダメなのであろう。

 

「どうしたクリス?」

「うんうん。なんでもない。ただこの中に一撃熊の肉が入っているだけ。」

「なるほど熊肉か。熊鍋でも作るのか?」

「そうだよ。こう見えてもアズリール結構料理がうまいからね。」

「そうだにゃ。ぜひ食べにきてにゃ。」

 

と、にっこりと笑った。




評価や感想をくれると中の人が喜びます。よろしくお願いします。


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三話 新たな課題

お気に入り登録65ありがとうございます。
次回、投稿遅れます。


「本を読んでいるところ、すまないが、ジブリール殿、この本の上級編というものはどこにあるのか知ってるか?」

 

と、いつの間にかに空中図書館に来ていたバニルさんが聞いてきた。

 

「この本ですか。少しいいですか。」

 

と、本を手に取る。

 

「この本は...ここの図書館の本ではありませんね。外で買ってきたものですか?」

「そうであるのだが続編が売ってなくてな。しかしなぜわかったのだ?」

「この本のシミの位置が違うからですよ。この本は表のほうにシミがありますが私の蔵書のほうは裏と表表紙にあるはずです。」

 

と、トントンと本のシミを指さす。

 

「なるほど...」

「で、この本の上級編ですね。確か、外周一層目の35番本棚の上から16番目の棚の左から9番目の本ですね。確かその隣の10番目の本が最上級編だったはずです。ここに来られた時点で空を飛行する方法は何かしらお持ちだと思うので大丈夫だと思いますが、ない場合は少し離れた物置小屋のほうにある脚立を使ってください。」

「わかった。感謝する。」

 

と、図書館に来たバニルさんに本の場所を教え私は読書に戻った。

 

今回私が読んでいるのは『爆裂の境地』という本だ。

確か著者はウォルバクだったか。かなり古い本で羊皮紙につらつらと書かれている。

この本はエリス様の手伝いの際にもらった本で、写本などではなく本物のようだ。

この本は爆裂魔法の可能性、爆裂魔法の歴史、爆裂魔法の活用方法などが書かれていた。

 

「爆裂魔法は、通常時ネタ魔法や馬鹿が使う魔法など多々言われていますが、時代の節目節目の転換期で使われていたことから、いわゆる世界を変えてきた魔法ともいえるかもしれませんね。」

 

などと、こぼす。

すると、唐突に携帯が震え始めた。

 

「はいもしもし。」

「ジブリールかしら。少しいいかしら。」

 

という、クリスとは違う女の人っぽい声が聞こえてきた。

 

「エリス様ですかそんなに慌ててどうされました。」

「クリスと呼んでください、ではなくてですね。」

 

と、慌てているのに乗ってくれた。

そういうところ本当にすきだ。

 

「いま、天界のほうにいるのですけど、アクア先輩が転生者特典に選ばれまして...」

「アクア先輩ですか...」

 

と、いままでエリス様がお酒を飲んで酔われた際にいろいろと手を焼かされている話をされたことを思い出す。

仕事を押し付けられただとか。天界での借金の付けを逃げられて払わなければいけなくなったとか、散々苦労しているようだった。

 

「その転生者の方も、いばらの道を進まれるようで。かわいそうです。」

「アクア先輩の心配はされないのですね。」

「当たり前じゃないですか。なぜ、エリス様の手を煩わせる方の心配をしないといけないのですか。」

 

アハハと、エリス様は軽く苦笑いをされる。

 

「そう、嫌わずにね。」

「そもそもですよ、なぜそこまでアクア様のことを気にされるのですか?もちろん女神として先輩の女神を慕うのは正しいと思います。しかし慕う相手が間違っていると思いますよ。そこまでダメなら見切りをt」

「ジブリールこれ以上は言ってはいけません。」

 

と、まじめな声音で返された。

 

「大変失礼しました。分をわきまえない発言どうかお許しください。」

「いいのですよ。ジブリール。あなたの私を思う心はしかと伝わりました。」

「エリス様...」

 

と、話す。

 

「そこで、新しい任務となるのですが、時たまその転生者と、アクア先輩の様子を見に行ってあげてください。アズリールとしてね。」

「わかりました。指示に従います。」

「そこまで不機嫌にならないでください。あなたが言いたいことは十二分にわかりますから。」

 

私はこれ以上、私のわがままでエリス様の手を煩わせるわけにはいけないと感じ気分を切り替える。

 

「わかりました。では、いつ頃接触いたしますか?」

「一週間ほどアクア先輩がいなくなったせいで引継ぎの仕事を代わりに片付けないといけないからちょうど一週間後にダクネスとともに向かいましょう。」

「わかりました。それまで図書館でお待ちしていますね。」

 

と、電話を切った。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「ヤッホーだにゃ。ダクネス。」

「アズリールとクリスか。ここ一ヶ月、冒険者ギルドで会うことがなかったが二人とも何かあったのか?」

「いろいろと忙しくてね。」

「そうだにゃ。二人でいろんな街を行ったり来たりする必要があったからだにゃ。」

 

と、ダクネスへ伝える。

すると、ダクネスが興奮した様子でとても近くまで寄ってきて私の右手をつかんできた。

 

「どうしたにゃ。ダクネス?」

「はあ…!この本はとてもよかった。ぜひ次の本が欲しいのだが。」

 

と、先月貸したであろう、『女騎士は白濁の湖に沈む』という本を差し出してきた。

と同時にクリスからぶしつけな視線を送られる。

 

「なんで、こんな本を貸したの。アズ?」

「だって仕方がないにゃ。クリスのほかにもダクネスと本のお話がしたかったんだにゃ。」

「フーン。そうなんだ。アズ。せっかくだから膝枕してあげよっか。」

「何やら嫌な予感がするからいやだにゃ。」

「頭下げて。」

 

どうやら、拒否権はないらしい。クリスから何やら黒いオーラが出ている。

普段なら喜ぶべき状況であるが、今回は嫌な状況であるしぶしぶクリスの膝に頭を落とす。

と同時に、両手で私のこめかみあたりをぐりぐりされた。

 

「痛い、痛いにゃ。ダクネスに変な本を貸したことは、謝るから勘弁してくれにゃ。」

「せっかく、ダクネスのマゾ具合も初めて会った時から少しずつ矯正してきたのに台無しにして。」

 

と、痛さから、ベンチで逃げようと足をバタバタさせていると、私のズボンのポッケあたりから本が一冊落ちた。

近くに二人を止めに、いや自分が代わりに受けようとしに来たダクネスが、この本を拾ってしまう。

 

「こ、これは続きの『女騎士は白濁の湖に沈む~絶叫三角木馬』ではないか。これが読みたかったのだ。」

「あ、やべ。」

 

と、今まで以上に力を籠められる。

 

「痛い、痛い頭つぶれちゃうにゃ。ダクネス助けて。」

「やべ、じゃないでしょ。結局反省してないんじゃない。」

「はぁああ…っはぁああ…っ。自分の仲間がいじめられるのはクルセイダーとして見過ごせない。ここは、代わりに私が。」

 

と、カオスな状況が広がっていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

と、一通り、茶番をおえた後三人でギルドのテーブルに座りながら談笑を始める。

 

「どう? この耳飾り。」

 

と、私が読書の休憩がてら作った耳飾りをつけている。

青い宝石が耳で輝いてとても似合っている。

 

「おお、とっても似合ってるな。」

「でしょ。アズが作ってくれたんだよ。」

「たまたま、近くの鉱山で見つけたから少し加工しただけだにゃ。ほらこんな感じで、」

 

と、軽くうそをつき、自分の髪をまくり上げる。

そこには、髪色そっくりな緑色の宝石が輝いていた。

 

「アズリールもよく似合っているな。」

「えへへ~にゃ。ダクネスの分も作ったにゃ。たぶん、戦闘時に鎧とかつけるとき耳飾りだとぶらぶらして邪魔になると思ったから腕輪にしたけど、いるかにゃ?」

 

と、黄色の宝石が二つ輝いている腕輪を見せる。

 

「わざわざ、ありがとう。アズリール。」

「どうもにゃ」

 

と、話していると、さえない顔をしたこの街では見ないような服を着た男性が入ってきた。

たしかあの服は、私が元居た世界で、ジャージと呼ばれていたものか。

と考えていると、その男は、カウンターの席のほうにパーティーメンバーであろうと思われる女性の隣に座った。

と、同時にダクネスがソワソワし始めた。

 

「どうしたのダクネス?」

「そうだにゃ。どうしたんだにゃ。」

「いや、なに新しいパーティーに入ろうと思ってな。いまは友達として時たま二人のクエストなどを手伝っているが、自分ももうそろそろパーティに入ったほうが良いと思ってな、それで昨日募集に乗ったのが、あの男のパーティというわけよ。では、行ってくる。」

 

といいあの男のほうに向かっていった。

 

 

 

「ねえ、クリス。ここで話すことではないとは思いますが、あの人がアクア様を転生者特典にされた方ですか?」

 

と小声で、聞く。クリスは軽くうなずき、何事もなかったかのように、

 

「それよりも、ダクネスのほうについていきましょう。」

「わかったにゃ。」

 

アクア様が特典で、ダクネスにパーティーの参加を望まれるなんて幸がない人だと思いつつダクネスのほうについていった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「探したぞ。」

 

と、ダクネスがその男に向かい声をかけカウンター席の隣へ腰かけた。

 

「昨日は飲みすぎたといってすぐに帰ってしまったが、」

「お、おきづかいなく」

 

と、男性が言う。

ダクネスは、そのようなことは知らず話を続ける。

 

「ならば、昨日の話の続きをさせてもらおう。私をあなたのパーティーに入れて...」

「お断りします。」

「うぅ…゛っ。即断だと。」

 

と、ダクネスが喘ぎ声を漏らし身もだえる。

男性のほうはその姿を見て何やら警戒を強めたようだった。

 

「どうするにゃ。クリス。このままではまた断られてしまいそうだにゃ。」

「仕方ありません。」

 

と、ダクネスのほうに二人で向かっていった。

 

「あはは。ダメだよダクネス。そんな強引に迫っちゃさ。」

「そうそう、しっかりと手順をふんでいかないといけないにゃ。」

 

その男は、常識人が訪れたことで一応安堵の顔をする。

 

「えっと、あなたたちは?」

「私は、クリス。見てのとおり盗賊だよ。そして、後ろの子が」

「アズリールだにゃ。職業はアサシンだにゃ。」

「そしてこの子とは友達かな。」

「そうだにゃ。君の名前はなんていうんだにゃ?」

 

と、男性に問いかける。

 

「ああ、カズマです。よろしくお願いいたします。」

「よろしくだにゃ」

 

と、手を引っ張り両手で胸の前で強引に握手をする。

するとカズマは、顔を真っ赤にさせて

 

「あ、あの...」

「どうかしたのかにゃ。」

「むむ胸が...」

 

と、問いかけていると唐突に頭をはたかれた。

 

「痛いにゃ。クリスひどいにゃ。」

「さっきのダクネス同様のことをしているじゃない。」

「殴るほどのことでもないと思うのだにゃ。」

 

と、不貞腐れ、クリスの無防備なへそのあたりをつつく。

 

「ひゃあぁ。こんなところでやめてよ。」

「やめないにゃ。せいぜい反省するんだにゃ。」

「もともと、あなたがいけないんじゃないんですか。ひゃあ。」

「うりうりだにゃ」

 

と、やっていると、上からげんこつが落ちてきた。

 

「そこで反省していなさい。」

「ひどいにゃ。」

 

そこで、クリスが咳ばらいをしてから、顔を真っ赤に染めている男に

 

「君。カズマ君だったっけ。役に立つスキルが欲しいみたいだね。盗賊系のスキルなんてどうかな?便利だし、習得にかかるポイントも少なくて済むからいいと思うよ。ついでにアサシン系のスキルを持っている仲間もいるしね。」

「へぇ~。」

「今なら、そこで、体育座りをしているアズと、私の分のしゅわしゅわ二杯でいいよ。」

「やっすいな。よっしお願いします。この二人にキンキンに冷えたの二つ。」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「とまあ、盗賊には敵感知や、潜伏や、窃盗があるわけだね。それで、アズリールが持っているアサシン系のスキルの中では、潜伏の上位スキルである隠密があるわけだね。」

「潜伏と隠密って何が違うんですか。」

 

名前はなんていうんだっけ、男がクリスに聞いていた。

 

「簡単に言うと、敵感知された際に、潜伏だと運が良ければ見つからないし運が悪いと見つかってしまう。だけど隠密の場合は敵感知をされても絶対に見つかることがないということかな。その代わりスキルポイントは潜伏に比べて高くなっちゃうけどね。確か、2だっけアズ?」

「そうだにゃ。あとは、毒物作成だにゃ。これには、材料さえあれば、好きな毒を創れるというものだにゃ。これにはレベルが1~4まであって、1,2,4,8とスキルポイントが必要となるにゃ。今回教えるのはレベル1の毒物作成だにゃ。」

「レベル1だとどれくらいのことができるんですか。」

「大体体内に毒物が入ればという話が前提となるけど、ジャイアントトードが即死するレベルまでの毒はとっても頑張ればできると思うにゃ。」

「それはすごいな。」

 

と、感心したように男は言った。

すると、クリスが、

 

「じゃあ、始めは窃盗から教えていくね」

 

「『スティール』」

 

と、クリスがスキルを発動させると、右手がひかった。

クリスが手を開けるとそこには男の財布であろう小さな小袋が握られていた。

 

「あ、俺の財布」

「これが窃盗スキルのスティール。成功すれば相手の持ち物を奪うことができる。」

 

「へぇ。」

 

と、男が感心したように声を上げる。

 

「ねえ、私と勝負しない?君も盗賊スキルを覚えてこの財布を取り返してみなよ。」

「おい、それはあんまりではないか。」

「何それ、おもしろそうだにゃ。私もやりたいにゃ。」

「え、アサシンって窃盗スキル使えるの?」

「もちろん使えるにゃ。あくまでアサシンは盗賊の上級職だから絶対に習得しているものなんだにゃ。」

「なるほど...」

 

男の顔を見ると顎に手を乗せ頷いている。

 

「よっしゃ行くぜ。『スティール』」

 

すると男の右手が光りどうやらスキルの習得は成功したようだ。

と同時に、クリスがもじもじし始めた。

 

「クリス大丈夫かにゃ?」

「これは...あたりも当たり、大当たりだ。」

 

と、クリスのパンツを窃盗した男はパンツを振り回す。

 

「いやあぁぁぁ。パンツ返してぇぇ。」

「クリス。今日は落ち着いた白色なんだにゃ。いつも一緒に寝るときは黒色じゃなかったかにゃ?」

 

と、先日一緒に寝た際にネグリジェ越しに見た色を言う。

 

「そんなこと今言わないで。それよりもアズ絶対に次のスティールで私のパンツを取り返して。」

 

と、慌てた顔を真っ赤に染めて、私の瞳を覗いていった。

これは、本気で取り返せということか。

 

「わかったにゃ。アズちゃんに任せるにゃ。『スティール』」

 

と、スキルを発動させる。

すると私の伸ばした右手が光った。

うん、この感触は...

 

「やったにゃ。クリスのパンツにゃ。」

 

と、純白なパンツに頬ずりをする。

 

「やめてください。アズ。恥ずかしいです。早く返してください。」

「わかったにゃ。はいにゃ。」

 

とパンツを返す。

 

「クソ。やりやがったな。『スティール』」

 

と、先ほどまで振り回していたパンツがなくなっていることに気が付いた男は、私に対し、スキルを発動させた。

すると彼の右手が光り、何かが盗まれていた。

 

「これは、え、またパンツ。」

 

手を開くと、私の薄ピンク色のパンツが握られていた。

と同時に、股のほうがスースーすることに気が付いた。

先ほど、同様のものを手に入れた男は、驚きつつも、またもや振りまわす。

 

「おー。少年にとってみれば大当たりだにゃ。よかったにゃ。」

「え。」

 

と、その言葉になぜか男は驚いていた。

 

「ねえ、クリス。せっかく少年の財布手に入れたわけだし、冒険者ギルドで高級シュワシュワのみに行かないかにゃ。」

 

と、クリスがなぜか呆然としていたので手に持っていた財布をひったくる。

数えてみると約5万エリス入っていた。

 

「え、本当に大丈夫なの?」

 

と、なぜかクリスちゃんは信じられないような顔をしている。

 

「何のことだにゃ。」

「あなたのパンツのことだけど...」

「そこまで、人間にパンツをとられたことが、気にすることかにゃ?それよりも行くにゃ。」

 

と、私は、クリスの手をつかみ、発情しているダクネスの隣を通りギルドへ向かった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「高級シュワシュワ二つお願いするにゃ。」

 

と、店員に注文していると男は、発情し目が座っているダクネスを連れて帰ってきた。

 

「あ、カズマどこに行っていたの?ところでなんでダクネスは頬を染めているの?」

「うむ、あそこに座っている二人が盗賊とアサシンのスキルを推してる際にカズマが二人のパンツをはぎ取ってその鬼畜ぶりに興奮しているだけだ。」

「え、情報過多すぎてよくわからない。要するにカズマが、向こうにいる二人のパンツをはぎ取ったっていうこと?」

 

と、水色の髪をした堕天したクソ女神がこちらに顔を向けてきた。

私は、エリスに仕事を押し付けた怒りからか変わった表情を一通り整えた後、

 

「そうだにゃ。たぶん右のズボンのポケットが膨らんでいるからそこに入っていると思うにゃ。」

「ちょっと、カズマ失礼します。」

 

と、紅魔族のちびっこが、男...カズマのポケットを探る。

 

「なんですか?これ。」

 

と、ピンクの女性用のパンツが出てきた。

 

「そうそれだにゃ。たぶん性処理用に使われるんじゃないかにゃ?」

「アズ、少し外に出ましょう。」

「ああ、高級シュワシュワが...」

 

と、なぜかクリスに手を引かれ、外へと連れ出された。

 

 

 

 

 

「どうしたんだにゃ?わざわざ、外に出て?」

「アズリール。いや、ジブリール本当にわかりませんか?」

 

と、言われ、少し考える。

問題があったとすれば、エリス様の様子がおかしくなったパンツを盗んだ盗まれたという場所だろうか。

しかし、まったくわからない。

 

「大体、クリス様の様子がおかしくなった、パンツが盗んだ盗まれたあたりだと思いますが、詳しくはよくわかりません。」

「本当ですか...」

「逆に一つ聞きたいのですが。なぜクリス様は、パンツをとられた際あんなに恥ずかしそうにされていたのですか?私に、パンツを見られたからですか?」

「え。それもありますが...違いますよ...」

「もちろん、男神や、好きな神や、天使に見られたら恥ずかしいのはわかります。その点で恥ずかしがられたのはわかります。しかし、なぜ神々が作った人間に対してそのような感情を向けるんですか?」

 

と、言う。

 

「え、え、うーんと、そうじゃなくて。あなたは元人間なのだからわかるでしょ。」

 

と、エリス様は、おどおどした様子で言う。

多分、エリス様が言いたいことは、先ほどのクリスのように慌てたほうがいいということが言いたいのであろう。

なぜか...たしか、人間社会では、同調しない奴がいじめの原因となっていたという事例を、人間だったころに読んだことがある。

つまり、エリス様が言いたいことは、人間社会に溶け込むためにも、少しは恥ずかしがったりしろ。ということか。

 

「なるほど。人間社会に溶け込むためにも同様の反応を見せたほうが良いということでしょうか。」

「うーんと、そういうことじゃなくて、どう説明した方がいいんだろう...」

 

何がいけないのであろうか。

と、話していると、

 

「緊急クエスト緊急クエスト、冒険者、各員は正門のほうに集合してください」

 

という放送が聞こえてきた。

 

「ごめんにゃ。本当にわからないにゃ。できれば今日の夜、一緒に寝るときに教えてほしいにゃ。」

「......わかりました。」

 

とクリスが深刻そうな顔をして言い、二人で正門のほうへいった。

 

 

 

 

 

正門のほうに集まると、すでに多くの冒険者が集まっていた。

 

「これは、キャベツかにゃ?」

「そうですね。もうそろそろだと思っていましたが...」

 

と、話していると、

 

『収穫だ!!』

 

という、いつもの収穫の際に行われる号令があった。

 

「がんばろうにゃ。クリス。今年もいっぱい稼ぐにゃ。」

「はい。」

 

と、二人で拳を打ち合わせた。

すると、目の前には、キャベツの群れが緑色の風のように降ってきた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「疲れたにゃ~」

「お疲れ様です。アズ。今年は何玉ぐらい取れましたか?」

 

と、ギルドの食堂で二人で、ロールキャベツ鍋を楽しんでいた。

 

「大体80玉位だにゃ。クリスはどうだったのかにゃ?」

「私は50玉位ですね。」

「まあまあだにゃ。でも、クリス毎回大物ばかり当てて余裕で私の総額を超えていくにゃ。」

「あはは。まあ、幸運はこれでも高いですから。」

 

と、クリスは困ったように軽く頬を掻いた。

 

「それよりも、ダクネスはどこに行ったのかにゃ?」

「ダクネスですか。」

 

と二人でギルドの食堂内を見渡す。

 

「あ、いました。」

 

と、クリスが指をさす方を見ると、男とクズ女神と紅魔族のパーティーの中にダクネスはうまいこと入り込めたようで、楽しそうに団欒をしていた。

 

「これなら心配なさそうですね。」

「あの男の下ならうまいこと、やっていけそうな気がするにゃ。入るパーティーが決まってよかったにゃ。」

 

と、クリスが満足できる場所にダクネスが入れたことをうれしく思い、クリスと顔を合わせてほほ笑んだ。

 

 

 

 

 




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四話 天界にて

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「バニルさん、このお方は?」

 

と、最近よくいらしているバニルさんの隣に、紫の服を着た茶毛の長髪を持つ女性がいた。

 

「こ奴は、ウィズ魔道具店店主のウィズだ。」

「どうもこんにちは。初めまして、ウィズと申します。」

「ウィズさんでしたか。私は、この図書館の司書のジブリールと申します。よろしくお願いいたします。それで、今回はこの図書館に何用ですか?」

 

と、聞く。

 

「こ奴は、普通の冒険者なら使わぬような、特殊な魔道具ばかり購入するのでな、一向に魔道具での売り上げが上がらず店が赤字ばかりなのだ。」

「そうです。それで、バニルさんから魔道具のことを詳しく知れば、商品を見る目が鍛えられるといわれたので、お邪魔してみました。」

 

ああ、どこかで見たことがあると思ったらあそこの店主さんでしたか。

 

「そうなのですか。魔道具店の話は、バニルさんからうかがっていましたがかなり特殊なものを扱っているようで...」

 

あははは...と、ウィズさんは苦笑いをする。

 

「わかりました。では、魔道具関係の本が欲しいのですよね。」

「はい、お願いできますか。」

「大丈夫です。たしか、一層目の内周の1051番本棚~1231番本棚まででしたね。」

「はい?そんなに、魔道具関係の本が...」

「そうですよ。バニルさんからの紹介の上、ウィズさんは初回なんで軽く案内いたしますね。」

 

と、私は読んでいる本にしおりを挟み、立ち上がった。

 

「地面を見てください。ここに大まかな方角と、本棚番号が書かれているのでひとまずそれを参考にしてください。今回は1051番本棚~1231番本棚なのであそこらへんですね。」

 

と、軽く地面を足でたたく。地面には大きな羅針盤の絵が描かれたいた。

 

「今回は羅針盤を見ると大体、南南西あたりだとわかりますね。ウィズさん大丈夫ですか?」

 

と、呆然としているウィズさんに声をかける。

 

「いや...すみません。あまりにも多くて少し思考が止まっていました。こんなにたくさん本棚があるんですね。」

 

と、天井が見えなくなるほどに積み上げられた本棚を見て言う。

 

「改めてみるとそうですね。ちなみに二階の天文台のほうにも多くの本がありますよ。気が向いたら行ってみてください。では、向かいましょうか。」

 

と、飛んで南南西の本棚へ向かった。

 

「ここですね。あれ、ウィズさん?」

 

と、後ろを振り返ると誰もおらず、飛ばずに、歩いてきていた。

 

「ウィズさん。もしかして飛行したりすることってできません?」

「すみません。できませんね。」

「わかりました。ではこの魔道具を持ってください。」

 

と、最近開発した、緑色の球状のものを渡す。

 

「これは...」

「飛行ができる魔道具ですね。たまに紹介で来られる方で、飛行できないお方がいらした際にいちいち脚立を持ってこられるのに不便と感じたので作ってみました。魔力の消費は普通の魔道具に比べ多いですが、ウィズさんは見たところ魔力の量が多そうですから問題なく使用できると思います。」

「すごいですね。これは持ち帰っt」

「だめですよ。」

「ですよね...」

 

と、ウィズは落ち込んでいた。

 

「1051番本棚は、これから、1231番本棚はここまでですね。がすべて、魔道具についての本ですね。言語順に並んでいるので好きなように読んでみてください。」

 

と、いい私は中央の席へと戻った。

 

 

 

「それで...バニルさんは、今日は何をお探しですか?」

 

と、聞くと一冊の本を出してきた。その本は、『罠の技巧、匠の技 中級』であった。

 

「こ奴の続きが欲しいのであるが...」

「最近、トラップについてよく読まれていますね。ダンジョンでもお作りになられるのですか?」

「まあ、そこは、聞かないでくれ。」

「それは失礼しました。では、今回はこの続きの巻ですね。」

「そうだ。もう少し罠の種類が知りたくてな。」

 

と、仮面を軽く右手で押さえつつ言う。

 

「そうですね...それであるならば別の本をお勧めしますが...」

「なぜだ?」

「上級編を読んだところで、この先は魔力を抑える方法や、罠の術式を改変させ、威力を上げるかぐらいしか書かれてないからですよ。」

「そうか...貴様が言うのであれば間違いないのであろう。では、何かおすすめはあるか?」

 

と、聞いてきた。であるならば、

 

「『新田 三郎の日記』のようなものはどうでしょうか?」

「日記であるか?」

「そうですね。一見、何も関係ないかのように思われるかもしれませんが、罠というものに、興味的な意味ではまってしまった男の日記ですね。途中から日記ではなく、罠開発の開発の手がかりのようなものばかり書かれていますから、罠の種類を増やしたいのであればおすすめかと...」

「なるほど...」

 

と、バニルさんは、顎を指で触りながらいう。

 

「ではその日記はどこにあるのか?」

「北出入廊下の上弦方向、1階左から24番目6、7、8、9、10番目の本ですね。」

「あい分かった。感謝する。」

 

というと、バニルさんは北出入口方向へ向かっていった。

 

 

 

 

 

一通りの案内を済ませた後、私は読書へと戻った。

今回読んでいるのは、『ノイズ王国の顛末』というものだ。

 

「これは、また...相変わらずですね。」

 

と、感想を漏らす。

 

「それにしても、低予算故での事故ですか...内乱や戦争によって滅ぶ国は多々ありますが、まさか機動要塞自らが暴走しそれを取り押さえることができずに滅ぶなんて...笑えそうで笑えない話ですね。」

 

と、苦笑いをする。

 

すると、いつものように携帯が鳴った。

 

「はい、どうされました。」

「もしもし、ジブリールですか。」

「はい、何の御用で?」

「明日、一日中女神としての仕事をするので、できれば神器の運び込みのほうをお願いできますか?」

「今は確か冬ではなかったですか。そこまで忙しかったでしたっけ?」

 

今までのエリス様の話を聞いている限り、冬の間は死亡率の高い冒険者はかなり強い敵と戦うことになるので、秋までの貯蓄を切り崩して生活をするのではなかったか。

 

「たしか、冒険者は、冬の間あまり働きませんよね。戦争でも起こっているんですか?」

「そうじゃなくてですね。なんて言ったらいいのかな。ジブと...」

 

と、言う声が聞こえてきた。

 

「?どうされました。」

「ジブと...早く仕事を終わらせて一緒に遊びに行きたいからですよ。言わせないでください。」

「本当にかわいいですね。エリス。お手伝いするので、明日、即向かいますね。」

「よろしくお願いしますね!」

 

と、最後は恥ずかしいのか、勢いよく電話を切られた。

頬を真っ赤に染めたエリス様を想像しつつ私は再び読書へと戻った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「これでいいですか。エリス様?」

 

と、天界にて図書館の最重要保管所から持ってきた100以上はある神器たちを並べる。

 

「はい、ほかには残っていませんか?」

「特には残っていないと思いますが...最重要禁書庫のほうに保管したルルイエという本はどういたしましょうか?」

「そうですね...一応まだ禁書庫のほうで保管しておいてください。ほかの天使も呼んでくるので神器の選別をお願いします。」

「わかりました。」

 

 

と言い、近くにある神器たちが貯めてきた記録を読み取る、魔道具を使い武器の記憶を読み取る。

 

「これは...聖剣アロンダイトですか。」

 

と、手始めに近くにあった剣を手に取る。軽く魔力を流してやると剣身が青く発光した。

 

「なるほど、この状態で切ると、切った後がたとえかすり傷だとしてもそこから傷が広がり致命傷になると...あいも変わらずに面白いですね。」

 

と、読み進めていく。

 

「これを使っていたのは、『宮下 次郎』さん。転生当時19歳。死亡時75歳。珍しく長生きですね。」

 

大体の転生者の平均寿命が27だと考えると恐ろしく長生きだ。

 

「うーんと、毎回クエストごとに回復ポーションを用意したり、身の丈に合ったクエストを受けていますね...転生者のほうでは珍しく堅実な方です。最後は当時、魔王軍幹部だったものを一対一で討伐し、冒険者家業から足を洗ったと、この時30代...その後は、当時元々仲間だった女性と結婚し、王都に家を建ててギルドで初心者を教えつつ堅実に暮らし、75まで生きたと。記録によると、改めて日本で生まれなおしていますね。」

 

と、エリス様より手渡された書類に目を通しつつ新たな書類を作成する。

なるほど、退屈なほど堅実な生き方をされている。

それゆえか長生きだ。

 

「その後、この聖剣は、亡くなった際に王都の美術館に寄贈。それを、クリスが回収したようですね。これは、再び新たな転生者に渡しても問題ないでしょう。良と。」

 

と、作成した資料をバインダーに挟みつつ、再び次の神器を手に取る。

 

 

 

「次、わっと。」

 

と、丸い形をした目のような...義眼ですねこれ。

軽く魔力を通すと目のあたりからピンク色のような光が見えた。

 

「これは...魅了の義眼ですか...毎回精査するとき魅了系のアイテムは嫌な予感しかしません。」

 

と、魔道具を近づける。

 

「なるほど、これを用いていたのは『山下 菅』さん。転生当時18歳。死亡時20歳。あーあー本当に見たくない。」

 

魅了系のチートアイテムを持ったうえで2年しか生きられないという時点でろくでもない人間であると大体は察せられる。

資料作成のためにも魔道具に目を近づけ覗く。

 

「仕方がありません。これも仕事です。何々、アクセルに飛ばされた後、ギルドの女性職員を魅了させ、抱いたと。その後、街中で美しいと有名な女性冒険者も魅了させ、抱いた。その後は、その女性たちを使いヒモ生活...ものの見事なクズですね。最後は、女性関係の怨恨で背中を刺され死亡と。記録だと、魂が消滅していますね。エリス様の神域で生き返らせろと散々暴れたと。は?」

 

人類種(イマニティ)の癖して思い上がりが激しいですね。

エリス様の領域で暴れられたのはどうしても腹に据えかねます。

 

「その後、この義眼は、この前処断した貴族邸へ行き悪用されていたようですね。この神器は、二度と出さないほうがいいですね。不可と。」

 

と、作成した資料を挟む。

 

「これだから、嫌なんですよ。」

 

と、イラついた頭を激しく掻きつつ次の仕事へ取り掛かる。

 

 

 

 

 

「つぎは、叡智の書ですか。」

 

と、魔道具を近づける

 

「使用者は、『新田 三郎』さん...ん、確かあの方の日記私の図書館にありませんでしたっけ。」

 

と、思い出す。内容としては賢者としていきたいと願った転生者だったか。

 

「転生当時17歳。死亡時37歳。病死のようですね。初めのほうは地頭の良さと、叡智の書を用いて人々に様々な知識を与えていましたね。その結果賢者といわれるようになり目的を達成。その後、やることがなくなり、罠の技巧というものに興味を抱き、病死する直前まで研究をしていたようですね。このお方は、日本ではなくこちら側の世界での転生を望まれていますね。」

 

好きなように生きられてよかったのではないですかね。

 

「その後、この書は王国図書館の最奥の禁書庫にしまわれていたようですね。それを私が回収したと。これは問題なさそうですね。良と。」

 

と、作成した資料をバインダーに挟む。

このように仕事を進めていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「エリス様、今回の神器のまとめがこちらになりますね。」

「ジブリールですか。早いですね。」

 

と、バインダーに挟まった資料に一通り目を通す。

 

「良53、可94、不可32ですか...何々、『不可のほとんどは転生者自らが、最後のページ(『そのほか要望があれば直接女神に伺ってください。』)を見て選ばれたものがほとんどです。廃止されてはいかがでしょうか?』ですね。ジブリールこれ書きました?」

「はい、わざわざ神に口出しさせてもらうのはいかがとは思いますが、今回の件で転生の際、最後のページをご覧になりそのうえで答えられたものの結果としては可1、不可31でした。」

「圧倒的に地上で問題を起こしてるものばかりだと。」

「その通りです。一応私も、そのような条件で選ばせていただきましたが、毎回毎回圧倒的に問題ばかり起きすぎている。」

「そうですか...」

 

と、エリス様は顎を軽く押さえ考えられている。

 

「一応上層部に伺いは立ててはみますが、ほぼ不可能なことだとは思っておいて下さい。」

「なぜですか?」

「一応、この世界の国教として、私はあがめられてはいますが、上層部には、創世神クラスの方々がいらっしゃるんですよ。そのお方々は人間の可能性というものを信じられているようで...」

「人間の可能性ですか...」

「そうです。もともと、あなた方の世界では神々が地上にいた時代を力の弱い人間のみで生き延びさらには、自らの力で新たな文明を多々作ったという神話が残っていますが、そのことを上層部はかなり信じられているようなので覆すのは難しいかと。特にあなたのような成功例がいるので難しいでしょう。」

「なるほど...差し出がましいような要求、すみませんでした。」

 

と、頭を下げる。

 

「いえいえ、こちらも参考にはなっているので」

 

とエリス様は両手をバタバタとさせる。

もう、本当にかわいいな。と、感情が高ぶりエリス様に抱き着いた。

 

「えっと、えっ。」

 

戸惑っている姿に興奮し、私の頬をエリスの額にこすりつける。

 

「ちょっちょっと、や、やめてくださいよ。ひゃ……。どこ触ってるんですか。」

 

と、頬を真っ赤にしてされるがままにされているエリス様を見てさらに強く抱きしめる。

このようにじゃれついていると、

 

「えっと...なんかすみません。」

 

と、言う声が聞こえてきた。

私はそのことに驚き振り返ってみると、そこにはクソ女神を転生特典とした少年がいた。

見られた少年は少し申し訳なさそうな顔をして

 

「向こう向いてますから、やるんならとっととやってください。」

 

首だけ後ろに向けた。

私はその少年の首が時たまちらりと見ようと動こうとしているのを感じつつ、

 

「所詮、人類種(イマニティ)の一匹二匹に見られたところで変わらないですよ。とっととやっちゃいましょう。」

 

と、天界に来る際に身に着けている野暮ったい外装を脱ぎ、図書館で身に着けているいつもの服装になりエリス様に抱き着く。

エリス様は人類種(イマニティ)の魂が来たせいで仕事モードに入ったのか、それには乗らず思いっきり大きな本で殴られた。

 

「私が嫌です。それに人類種(イマニティ)といってはいけませんと、何度言えばわかるのですか。端で反省していなさい。」

 

と、言われてしまった。

私はしぶしぶ脱ぎ捨てた外装を身に着け、エリス様が転生者の対応をしている様子を後目に、エリス様との休暇の過ごし方を考える。

 

紅魔の里...は、ないな。せっかくのゆっくりすごせるはずの休みが、頭のおかしい紅魔族のせいで休む暇もなくなってしまうだろう。

王都...は、いいかもしれない。せっかくだから王都内で食べ歩きというのも悪くないかもしれない。

アルカンレティア...も、いいかもしれない。クソ女神を信仰する頭のおかしいイマ...人間の集団がいる点は悪いが温泉にゆっくりつかるというのもいいかもしれない。

 

などと考えていると、エリス様の右手に金色の粒子が纏い始めた。

 

「ああ、ようやく終わりましたか。」

 

と、つぶやくと唐突に天井から声が聞こえてきた。

 

『さあ、帰ってきなさい。カズマ。』

 

まごうことなき、クソ女神の声だ。

 

『なぁにあっさり殺されているの。死ぬのはまだ早いわよ。』

 

「な、なんだ。」

「この声、アクア先輩?まさか本物。」

 

『ちょっとカズマ聞こえる?あなたの体に復活魔法をかけたからもうこっちに戻れるわよ。』

 

「おお、マジか?」

「もうあなたは一度生き返っていますから、天界規定でもう蘇生は、できません。」

「そうなの?おい、アクア俺はもう一度生き返っているから天界規定とやらで生き返れないんだってよ。」

 

『はあ、だれよそんなバカのことを言っている女神は。ちょっとあんた名乗りなさいよ。日本担当のエリートな私に、こんな辺境担当の女神がどんな口きいているの?』

 

という声が聞こえた。エリス様の顔を覗くととてつもなく微妙な顔をされている。

 

「おい、クソ女神、エリス様に向かってどんな口の利き方をしてるんだ。」

『え、ちょ、もしかしてジブリールいるの?』

 

と、少し動揺が混じったこえがかえってくる。

微妙な顔をされているエリス様の前に立ち言い放つ。

 

 

「先輩女神が後輩に仕事を任せっきりにするから天界での立場が後輩に先を越され、挙句の果てには堕天する羽目になるんだろクソ女神。」

『うるさいわね。そんなことよりもとっととカズマをこちらに返しなさい。』

「返せるわけがないでしょう。私よりも長生きをされているのであればそろそろ、世界は自分中心に回っていないことを自覚されてはいかがでしょうか、自称エリート女神様。」

 

と、鼻で笑ってやる。

 

『はー。なんですって。たかだか、天使の癖に生意気よ。』

「あの、ちょっと。えーっと。」

「おかわいそうに。神の部下である天使の忠言を生意気という一言で返されるとは...いやいや失礼しました。自称エリートの女神様ならぜひ聞き入れてくださると思ったのに...残念です。」

 

と、笑ってやる。

すると、

 

『うわぁぁあん。そんなことよりもカズマを早く返してよ。』

 

という、想像どうりの声が返ってきた。

 

「どういたしましょうか?エリス様。向こうのダメ女神さまはお泣きになられてしまったようですが。」

「あなたが泣かせたんでしょうが...」

 

と、責めるように見られる。

 

「まあ、いいじゃないですか。お灸をすえるという意味でも。それよりどうされますか?この人間の対応は?」

 

と、クソ女神を転生特典とした人間を指さす。

 

「そうですね。カズマ君の気持ちもそうですしアクア先輩の頼みですからね...仕方がありません」

 

と、指を鳴らす。

すると、人間の周りに青い魔法陣が浮き上がる。これは確か...魂を現世に送るものであったか。

 

「サトウカズマさんでしたっけ。」

「はっはい。」

「この魔法陣で現世に帰れます。こんな事、ふつうはあり得ないんですからね。」

 

というと、魔法を発動させる。

すると少年の体は上がっていき現世へと帰っていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「行きましたね。」

「そうですね。」

 

と、少年を見送り二人で立っていた。

 

「どうします。書類仕事でデート、できなくなりそうですが...」

 

と、私が言うと、エリス様はいまさらになって気が付いたように言う。

 

「ど、どうしましょう。」

「人間やほかの女神たちにも情けをかけてくださるのがエリス様の美点だとは思いますが...」

「できれば、ジブリール。書類仕事手伝ってくれませんか?」

 

と、身長差から上目使いで、頼み込んでくる。

とてつもなく手伝いたいがエリス様のためにもぐっとこらえ、

 

「い、嫌です。」

「お願いですから。」

 

と、エリス様が座っていた白い椅子に押し倒される。

 

「わ、わかりましたよ。手伝いますよ。でも、一つだけ約束してください。」

「なんでしょうか、」

 

と、私が座らされた状態の膝の上に乗りながら、首をコテンと傾かせて言う。

私は真剣にエリス様の目を合わせつつ言う

 

「エリス。私はあなたのことを幸運の女神であり、ほかの神々にとっても慈悲深い女神だと尊敬しています。ですけど、エリス、自分のことも大切にしてください。今回のアクアがわがままを言いそれに従ってしまいデートの予定がおじゃんになりそうなことや、クリスの時であっても頼み込まれて自分ではあまりやりたくなかったとしても人のためだからといって、自分を無下にして、請け負うことが多々あるじゃないですか。無論、他人の仕事を請け負うことは場合によっては大切です。しかしエリスは、自分のことをかえりみずに、多くのことを請け合いすぎです。ですから他人のことばかりでなく自身のこともちゃんと考えてくだい。」

 

と、言う。

エリス様は驚いた顔をされてから柔らかく笑顔を返される。

 

「わかりました。ジブリール。前も叱られたように自分をまた無下にしてしまいましたね。私のことを心配してくれる、あなたがいてくれて本当に良かった。」

 

と、エリスは私の膝の上に座りついばむようなキスを落としてきた。




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五話 機動要塞デストロイヤー

お気に入り登録 265↑ ありがとうございます。
4話から登録者がほぼ二倍になっていますね。本当に驚いています。
meigetuです。次回投稿遅れます。




私とエリス様は天界の天へと昇っていく階段がある場所の一番下の段でひざまずいていた。

天には威光のような光で輝いており目視でその御身を確認することはできない。

 

「女神エリスと」

「大天使ジブリールただいま参上いたしました。ご命令を。」

 

と、伺いを立てる。

 

「よくぞ参った。面を挙げよ。」

 

と、天から重々しい声が聞こえる。

私たち二人は臣下の礼を解き話をうかがう。

 

「今回呼んだのはほかでもない、二人への命だ。それは、おぬしらの世界にいる機動要塞デストロイヤーを再起不能になるまで消し去れ。」

「機動要塞デストロイヤーですか...」

「そうだ。」

「失礼ながら、理由をお伺い願ってもよろしいでしょうか。」

 

と、エリス様は伺いを立てる。

 

「無論だ。今回おぬしが管理する世界にアクアが向かったであろう。その際にちょうどよかったのでな、軽く天使どもに転生者を送った結果を調べさせたのだ。その際に見つけたものであってな、機動要塞が数多の街を蹂躙している姿を確認することができたのだ。さらにそれは我々が送った転生者が作ったというものではないか。このことの事実を悪魔どもに利用され、我ら神々の信仰を堕とされ悪魔どもに奪われるわけにはいかぬ。それゆえの討伐命令だ。」

「かしこまりました。」

「では、頼んだぞ。それと、大天使ジブリールよ。」

 

と、私に話を振られる。

 

「は。いかがなさいましたか?」

「おぬしのみで討伐せよ。」

「かしこまりました。天撃の使用許可は出されておりますか?」

「無論だ。6柱が承認してる。」

「かしこまりました。失礼いたします。」

 

と、上位神がいる場所から離れた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「ジブリール、大丈夫ですか?」

 

と、満月がちょうどてっぺんに来た頃、私とエリスは図書館にて戦闘準備をしていた。

 

「無論です。しかし、ここでいうのもあれですが上位の神々は悪魔崇拝をかなり警戒されていますね。」

「そうですね。私が言うのもあれですけど、あまり現場を知らないのかもしれませんね。実際のところ悪魔崇拝という言葉はこの世界では一切聞いたこともありませんし...」

「確かに...しかし命令ですのでやっていきますよ。」

 

と、準備運動として羽をはばたかせデスサイズを軽く振り回しながら言う。

エリス様は、私の図書館で着ているいつも通りのラフな格好に、指輪やチョーカーの装備だけの装備を見ながら、

 

「そんな装備でダイジョブか?」

 

と、聞いてきた。

 

「一番いいのを頼む。」

 

と、笑いながら返すと、指をパチンと鳴らす。

すると、エリス様の右手の薬指には一つの指輪が現れた。

指輪の中石にはオレンジ色の宝石があしらわれており、とてもきれいだ。

 

「これは?」

「私特製の幸運の指輪ですね。」

「そこまで心配されなくても...前もこのようなことがありましたし。」

「私からの気持ちですよ。左手を出してください。」

 

と、言われる。

左手を出すと、薬指にはめられた。

その意味を察し、苦笑いしながら。

 

「ありがとうございます。エリス様」

「もちろんです。頑張ってきてくださいね。」

「無論です。」

 

と、いい、私は機動要塞デストロイヤーがいるといわれたアクセル近辺にある森へと赴いた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「本で読んだことはあるのでサイズはわかったいましたが実際に見ると、でかいですね。」

 

と、宙を舞いながらデストロイヤーを観察する。

デストロイヤーは、まるで巨大な蜘蛛のような形をしており、背の部分には要塞ゆえに中に入れそうな通路のようなものが見えた。

観察を続けていると、敵感知にでも引っかかったのか迎撃をするために魔法を撃ってくる、

 

「と、あぶないですね。」

 

と、体を軽くひねることでよける。

 

「このまま悩んでいても埒があきません。」

 

と、右手に黒い野球ボールサイズの魔力の塊を作り、投げる。

しかし、機動要塞を覆うように展開されている青い魔導障壁によってはじき返され埒外な森に着弾し大穴を開けていた。

と同時に要塞は攻撃をされたことに気が付いたのか、砲塔をこちらに向け、魔力の球を放ってくる。

 

「ちっ。めんどくさいですね。」

 

と、手に黒い靄を纏うデスサイズを生まれさせ、弾道から逃れるように宙を舞う。

エリス様からもらった幸運の指輪もあったおかげなのか、自分に一度の着弾もなくデストロイヤーの裏へと回り込む。

そして、八本ある足の右の前足の付け根部分を狙いデスサイズで切り裂く。

 

ガン

 

という、硬い音ともにデスサイズは手から落ちてしまった。

何があったと思い、安全地帯まで上昇してから見てみると、デストロイヤーの右前足はほぼダメージが入っておらず、切れなかった反動でデスサイズを落としたようだ。

 

「ここまで硬いとは。想定以上です。はて、どのように処理いたしましょうか。」

 

と、右手を広げデスサイズを呼び戻しつつ考える。

デスサイズではたとえ刃の部分を魔力で強化したところで足部に刃が通ることはなさそうだ。

 

「デスサイズで切り刻んで対処しようと思いましたが、できそうにありませんね。仕方ありません、デメリットが大きいのであまり打ちたくはないのですが...天撃で処理するしかなさそうですね。」

 

しかし、魔導障壁をどうにかしなければ天撃を撃ったところではじき返され意味がありません。

魔導障壁を攻撃しまくって、要塞内の機構をオーバーヒートを起こすことで障壁を強制的に解除させる...これは、私の魔力が持たないかもしれません。

機動要塞内に入り魔導障壁の出所つぶす...というのはありかもしれません。

 

「ひとまず、うっとうしい迎撃システムと砲塔を落としますか。」

 

と、離れた私めがけて再度降ってきた弾をよけつつ飛び回る。

そして、障壁内に潜り迎撃システムの中枢を担っている魔導結晶を、デスサイズで切りつけ、砕く。

 

バリン

 

と、無事にガラスを割るような音がして破壊することができた。

 

「よし、これで攻略のめdd」

 

と、同時にその結晶が想定以上の大きさの威力で爆発しそれに巻き込まれ軽く吹き飛ばされる。

 

「ごほ、ごほ。本当に作られた方の性格の悪さがうかがえます。」

 

と、デストロイヤーの背の上で受け身をとりつつ軽く体の調子を確認する。

 

「問題は...ありませんね。次を壊しましょう。」

 

と、飛びながら魔導結晶を砕くという行為をつづけた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

と、これを50~60ほど行い、近くを飛行していても攻撃されないという状態になった。

 

「はあ、どれだけ兵装を積んでいるのですか。ひとまず中へ行き魔導障壁を解除しますか。」

 

と、ため息をつき、機動要塞からただの移動要塞となった中へ乗り込んだ。

 

中は、煉瓦で作られた大きな一つの街のようであった。

しかし、街中には人の骨がほとんどないことから、暴走した際に誰も乗っていなかったと察せられる。

すると金属の反射の光が見えそれを手に取ってみる。

 

「これは...レーション入り缶詰めですか。」

 

と、中を開けてみると乾燥しきったビスケットのようなものが詰まっていた。

 

「こんなものが残っているのですね。」

 

と、苦笑いをする。

 

 

 

魔導障壁のケーブルをたどっていくと、要塞の指令室のような場所につくと兵法書のようなものを見つけた。

 

「こんなところにこんなお宝が眠っているとは。うへへへぇ。ノイズ王国は末路も散々だったものだったのでほとんど本が残っていなかったんですよね。ラッキーです。」

 

と、よだれを垂らしながら本棚に向かい一冊の本を取り出した。

その本は、虫食いはひどいがそこまでカビが生えていない。保存状態はまだましといったところか...

軽くページをパラパラとしながら、瞬読をする。

 

「なるほど...今まで読んだことがない本でしたがとても面白いですね。ロボットを用いた戦術というのは、元の世界でもアニメか何かでは多々ありましたが、実際やってみないとわからない戦術というものもあるのですね。」

 

と、読んだ本をいつもの癖でぶら下げている首をしまうために持ってきた袋にしまいながら感想を述べる。

 

「と、いけませんねついつい、本を読んでしまいました。あとはこれとこれと、」

 

と、垂れたよだれをぬぐいながら、読んだことがない本を袋に詰めその部屋を後にした。

 

 

 

 

 

さらに、ケーブルを頼りに歩いていくと中央の制御室のような場所にたどり着いた。

無理やり力でドアをこじ開けると中には赤く輝く石を中心として多くの配線がめぐらされていた。

 

「この石はまさか...コロナタイトですか。このようなここまで大きさの石は初めて見ました。」

 

しかし、先日読んだ『ノイズ王国の顛末』という本では、低予算で機動要塞を作ったせいで暴走して滅んだのではなかったのか。

 

「この程度の大きさのコロナタイトなら国家予算並み...いや、以上の値段が張るはずなのですが...作った方が無能な方だったのでしょうか...」

 

と漏らす。

 

「まあいいです。魔導障壁のケーブルさえ切断してしまえば魔導障壁が消え、天撃を撃ち、今回の仕事が終わるのですが...せっかくです。仕事ついでにこちらの貴重な巨大なコロナタイトを頂いて、図書館にも大きな魔導障壁を張るのもありかもしれませんね。」

 

と、コロナタイトが入っている強化ガラスを手に持ったデスサイズで一閃。

 

ガラガラと、ガラスは崩れ、巨大なコロナタイトを手に入れた。

と、同時にデストロイヤーの動きが止まった。

 

 

 

外に出ると、今まで邪魔と思っていた魔導障壁は残っておらず、ただ機動要塞デストロイヤーがまるで死んだばかりの蜘蛛のように固まっている姿があった。

 

「仕方がありません、私のデスサイズでの破壊が不可能なうえで、再起不能なまでの破壊とならば天撃で破壊するしかありません。」

 

と、勢いよく飛び立ちある程度の高度をとったところで右手を天に向かいあげる。

私の頭の上の天使の輪のような魔法陣が移動し、停止した機動要塞デストロイヤーの上に展開される。

と同時に、もともと白かった羽と魔法陣は黒く染まり、羽に神経が走っているかのように精霊回廊が励起し発光を始める。

上部に展開された魔法陣は、地面から強制的に魔力を吸い出すように周りから黒い靄が地面から舞い上がる。

周りは、地面から強制的に魔力を吸い上げているせいで強風が吹き、私の長髪を持ち上げる。

そのようなことにも歯牙にもかけず、私は、

 

【天撃】

 

と、言い放った。

すると、吸い上げていた魔力は収束し、一つの小さな恒星のような輝きを放ちながら落ちていく。

落ちていき、デストロイヤーに直撃すると、

 

ドン、

 

という衝撃波とともに風が吹き荒れる。と、同時に巨大な爆発を起こした。

 

 

 

 

 

「はあ、はぁ。毎回この姿になるのは勘弁願いたいですわ。」

 

と、爆心地から少し離れた地面に両手でコロナタイトを抱える幼女がいた。

爆心地は、ところどころ高熱ゆえに溶岩が発生しており、デストロイヤーはほぼほぼ跡形も残っていなかった。

ひとまず力を使いすぎたことで荷物を持ってろくに飛んで帰ることもできないので、エリス様に電話をかける。

 

「もしもし、エリス様。すみません回収をお願いします。」

「もしもし、ジブリールですか。」

「そうです。飛べそうにないのでお願いします。」

 

と、言う。

 

「わかりました。ちょっと待っててくださいね。」

 

と、ノリノリで返してきた。

私はコロナタイトを小脇に抱えエリスが到着するのを待っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「はあ、ようやく帰ってこられました。」

 

と、エリス様の膝に乗せられながら図書館の椅子へ座っていた。

 

「エリス様、もうそろそろ体のサイズを元に戻したいので修復術式の中に入れてください。」

 

ジト目を送る。

 

「いやです。」

 

と、にっこり笑いながら、返される。

 

「このままでは上の神様と会えないのですが...」

「大丈夫です。上位神とは一週間以内に完遂させると約束したので、後2,3日はそのままで大丈夫ですよ。」

 

と、ギュッと抱き留められる。

普段の力ならば簡単に抜け出せるそれも体が小さくなってしまったせいで足や手をバタバタしても抜け出せない。

その様子を見てか、

 

「本当にかわいいですね。ジブリール。」

 

と、頬ですりすりされる。

私は、されるがままにされていた。

 

 

 

 

 

「ジブリール。こんな服はどうですか。」

 

と、ゴスロリのきゃぴきゃぴした服を渡される。

私は疲れながら

 

「わかりましたよ。スクール水着の次はこれですか。」

 

と、胸にでかでかとジブリールと書かれたスクール水着を見ながら言う。

 

「いいじゃないですか。せっかくジブリールが小さくなったんですし、着せたいものがいっぱいあったんですよ。」

 

と、近くに大量の異世界の服であろうものが詰まっている段ボールを見ながら私は一つため息をつき。

 

「ロリコン」

 

といいはなった。

 

 

 

 

 

私は、エリス様のせいで修復術式の中に入れないので軽く休養兼、魔力の回復のためにベッドで寝ていると、ドアが開く音がした。

私が、そちらに視線を向けると、ネグリジェ姿のエリス様がいた。

エリス様は私が眠っているベッドの隣に入り、私の垂れている耳を持ち上げて息を吹きかける。

 

「ひ…ゃ。やめてくださいよ。何で、そんなに乗り気なんですか。」

 

と、肩をびくっとさせ、言う。

 

「いいじゃないですか。こんな機会めったにないのですし。」

 

と、普段のエリス様ならば決して言わないことを言っていることに苦笑いをしながら、

 

「いやですよ。ただでさえ戦闘で疲れているのに、これからヤルなんて。それに、いつもは攻めなのにどうして、私が縮んだ際は受けなんですか。変態なんですか?」

「いや、なんていうかまあ、幼女のジブリールに責められるなんて興奮しない?」

 

と、軽く頬を掻きながら言う。

 

「これを全エリス教徒に聞かせてやりたいですよ。エリス様はロリレズ女神だって。」

 

エリス様はそんなことを言われても気にせずに、

 

「で、どうするのですか。ちなみに今日抱かなかったら明日一日は修復術式の部屋は開けませんからね。」

「仕方がありませんね。」

 

と、私はつたない力でエリス様を抱き寄せた。

 

 

 

 

 

一通りの行為を終えた後、二人でピロートークを繰り広げていた。

 

「しかし、なんで、このような誘いをしたのですか?服の着せ替えの際もそうでしたし...」

 

と、私はエリス様に聞いた。

今までの任務で体が縮んだことは多々あり、その際に誘われる場合は、『ジブリール今日は、いいですか?』と聞いてきて、ダメと言ったら即引き返すという感じだったはずだったが。今までは罪悪感からから疲れていても抱くことはあった。しかし今日は本当に珍しいことにエリスから誘われたことについて問い詰める。すると、

 

「恥ずかしいのであまりいたくないのですが...」

 

と、恥ずかしさゆえかエリス様はベットでそっぽを向かれる。

 

「前、天界でジブリールに説教されましたよね。もっと自分を大切にしろって。その際に考えたんです。安請け合いしないということもありますが、それは私の性格故に、今の段階では無理だなと感じていました。ならばどうしようかな、考えた際、誰かに甘えるというのもふくまれるのかなと思ったんですよ。仕事では、ジブリールに甘えることは多々ありましたが、プライベートではほぼほぼ甘えたことがありませんでした。だから、ジブリールになら甘えても問題ないかなと思い今回行動したんですよ。ジブリール。迷惑ではありませんでしたか?」

 

と、不安そうにおっしゃった。

 

「大丈夫ですよ。」

 

と、エリスが向いている方向へ体を転がす。

エリスは不安そうに手を合わせ下をうつむいていた。

 

「迷惑なんかじゃありません。むしろ、積極的でとっても素敵でした。」

 

と、胸の前で不安そうに重ねている手に軽く触れる。

そのことに気が付いたエリスは驚いたように顔を上げる。

その際に、目が合う。

私はにこりと笑い、エリスを見る。

 

「これからも、どんどん甘えてください。私はエリスの頼みならばいつでも聞き入れますから。」

 

と、軽く不安からか涙目になっているエリスの額にキスを落とした。

 

 

 

 

 

 




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六話 キールダンジョン

こんにちはmeigetuです。投稿遅れてすみません。
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「アズリールさん。少しよろしいでしょうか。」

 

と、気分変えにと、地上におり冒険者ギルドに酒をあおっていると急にルナさんに、声をかけられる。

 

「どうしたかにゃ?」

 

と、聞き、ルナさんのほうに振りむくと、手にはクエストの紙が握られていた。

 

「これ、新しく発見された場所なのですが、新しい本があるかもしれないとのことでしたのでまだ公開はしていません。もう一組冒険者と組むことになりますが、よろしいでしょうか。」

 

と、紙を見せてくる。

 

「毎回すまないにゃ。うーんと、何々、キールダンジョンの未探索エリアの探索かにゃ?難易度は不明と、向こう側の冒険者は私が本を持っていくことは、承諾してくれてるのかにゃ?」

「はい、その代わり、発見した財宝は3対1のところを9対1で分割してくれと言っていますが...」

 

と、ルナさんから伝えられる。

 

「全然問題ないにゃ。」

 

と二つ返事で承諾した。

 

 

 

次の日、ルナさんに連れられ一緒に攻略する冒険者のもとに向かうと、そこにはダクネスを除くクズ女神三人組がいた。

私は、クズ女神とともにダンジョンを攻略することにうんざりしながら、

 

「こんにちは。今回一緒に探索する、アズリールです。よろしくお願いしますにゃ。」

 

と、三人に挨拶をする。

 

「あ、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

「よろしく」

 

と、返される。

 

「よさそうですね。今回はダンジョンの、未調査エリアなので難易度は不明ですが、財宝が眠っているのかもしれませんね。」

「確かに...財宝が眠っているかもしれませんね。」

「お、お宝。」

 

と、クズ女神が言うと、

 

「な、なんだ、おいおいもうけ話か。」

 

と、早朝から酒を飲んでいる人間種(イマニティ)がたかってきた。

すると、クズ女神を転生特典とした少年が寄っていき何やら紙を渡した。

うーんと、何々、「娼館【夢の館】特別割引券」ねえ。

すると赤い服を着た金髪の人間種(イマニティ)は股間を抑えどこかへ行った。

ルナさんは何とも言えない顔をしつつ

 

「それでは、行ってらっしゃい」

 

と、言った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「ところで、アズリールさんってどんな戦い方をするんですか。武器も何も持っていないみたいですけど。」

 

と、キールダンジョンへ向かうさなか、少年が私の装備を見ながら聞いてきた。

多分、ダンジョン攻略するにあたって何も武器を装備していないことを不思議に思っているのであろう。

 

「私かにゃ? 私はこれで戦うにゃ。」

 

と、いつも用いている、デスサイズを取り出す。

 

「どこから出したんですかそれ。」

 

と、猫を肩にのっけている紅魔族の少女が聞いてくる。

 

「私は、職業が暗殺者(アサシン)だからね。暗器を隠すのはお手のもんてわけだにゃ。」

 

と、デスサイズを隠す。

紅魔族の少女はそれを見て、おーっという。

 

「と、すまなかったにゃ、それで戦い方だったかにゃ。基本的にはこれを振り回して戦うことになるんだにゃ。」

 

と再度、デスサイズを取り出し振り回す。

 

「基本的には、攻撃特化型だにゃ。モンスターは...近くにいないっぽいから近くの木を切ってみるにゃ。」

 

と、それなりの大きさの木に向かってかけていき、刃を回転させ一撃、再度刃が戻ってきた際にもう一撃を叩き込む。

すると木は、想定通り三等分にされて倒れた。

 

「おー。」

「すごいです。かっこいいです。」

 

と、賞賛を受ける。

私は戻っていき話す。

 

「まあ、こんな感じかな。スピードと攻撃性が強い代わりに、防御力と体力が貧弱なんだけどね。」

「すごいですね。」

「そ、それはどれくらいなのか...」

 

と、少年は、心配そうに聞いてくる。

ああ、ダクネスの件か。たぶんこの少年は、ダクネス同様に、私は攻撃値とスピードに極振りしている奴だと警戒しているなのだろう。

パーティーメンバーも、爆裂狂いと、ダメ女神と、ドMクルセイダーという色物ぞろいなら、うなづける。

私がダメ女神と、同類に思われるのもしゃくなので、

 

「人並みぐらいだにゃ。ダクネスみたいに極振りしているわけではないから安心してほしいんだにゃ。」

「ああ、すまないな変なことを聞いて。」

 

と、図星だったのか少し驚いた顔をした後、安心したように言った。

 

「ねえねえ、カズマさん。見えてきたわよ。」

 

と、ダメ女神が声をかけた。

 

 

 

 

 

「それで、これと、これとこれね。」

 

私と、少年は荷物を整えつつ話す。

 

「了解したにゃ。それで、ここでする話ではないと思うのにゃけど、財宝の取り分は九対一で、本があればそれは全部こちらが戴くということでよいかにゃ。」

「逆にありがたいぐらいなんだが、軽く吹っ掛けたつもりだったんだけど、本当に良かったのか?」

「問題ないにゃ。私はお金には困ってないし、それに街を壊した際の借金が相当残っているようだしにゃ。」

 

と、言う。

 

「少し聞きたいのだが、どうして本を?」

「そんなことかにゃ。私は図書館のようなものをやっているんだにゃ。その蔵書数を増やすためにやっているんだにゃ。まあ、そんなことはまた機会があれば話すにゃ。で、どうするにゃ行けそうかにゃ?」

 

と、少年に問う。

 

「ああ、おい、めぐみん、アクア、先に夜目がきくアズリールと一緒に探索してくるからちょっと待っててくれ。」

 

と言い、私と少年でダンジョンへ潜っていった。

 

 

 

 

 

「何かわかったかにゃ?」

「いや、特には普通にダンジョンが広がっているな。」

 

私たち二人はダンジョンの階段を下りながら話す。

 

「それは、そうだにゃ。初級のダンジョンにゃしね。」

 

と、にゃははと笑う。

すると後ろから

 

「ねえねえ、本当にちゃんと見えてるの」

 

と、言う声が聞こえた。

私は不快感からか後ろを振り向くとそこにはクソ女神がいた。

 

「見えてますよ。アクアさん。それよりも上の方で待っていてくれといったはずでしたが...」

「なんでここにいるんだ。俺の話聞いてたか?お前一緒についてきても真っ暗で何もできないだろ。」

 

と、ゲッソリした顔をカズマはする。

 

「ふふん、この私が誰だかわかってない?アークプリーストとは仮の姿、本来は水の女神アクアの御神体そのものなんだから。」

 

と、妙に胸を張っていう。

さて、このクソ女神をどうするか。駄女神と一緒にダンジョン攻略は嫌なので、せっかく少年を説得して連れていかないようにしたのだが、これでは計画が台無しだ。

ひとまずどうするにもこの駄女神を操りやすくするためにご機嫌を取っておく。

 

「そ、そうなんだにゃ? 本当に、水の女神アクア様なのかにゃ。」

 

と、大げさに驚く。

 

「ふっ、ふーん。その通りよ。ダクネスやめぐみんは信じてくれなかったけど、水の女神アクア様の御神体そのものよ。」

「借金の女神の間違いじゃないか。」

 

と、少年がうるさいが無視をする

 

「そ、そうなんだにゃ。まさかこんなところでお会いできるなんて、サインとかもらっていいですかにゃ?」

 

と、さらにおだてる。

 

「も、もちろんよ。私に任せなさい。」

 

と、さらに調子に乗る。

本当にわかりやすい女神だ。

と、ダメ女神はどこからか取り出したかわからないが色紙とペンを取り出してサインを書いていく。

 

「はいどうぞ。あなた、アクシズ教徒なの?」

 

と、色紙を手渡されながら話される。

 

「いや、私はどの宗教にも属していないにゃ。アクシズ教から見習うべきこと、またエリス教から見習うべきことが、多々あると思うんだにゃ。だから、どっちがいいか決められないのにゃ。」

「そうなの。じゃあ、アクシズ教に来なさいおすすめよ。アクシズ教は...」

 

と、少年を蚊帳の外にしつつ、駄女神の勧誘を受けながらダンジョンの奥へと進んでいった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ダンジョンの未探索エリアを進みつつ、三人で雑談をしていた。

 

「ところで、アズリールって、何か好きな物とか嫌いなものってあるのか?」

「基本的には本が好きだにゃ。嫌いなものは、うーん...読書とかを邪魔されることかにゃ。」

「本当に本が好きなんだな。」

「にゃはは、そうだにゃ。たまに自分の図書館で大声でしゃべられたりして読書の邪魔をすると無意識に武器を投げちゃうことがあってにゃ。図書館では私が司書なはずなのに危険人物扱いされるんだにゃ。」

 

と、にゃははと笑う。

 

「そ、そうか。」

 

「ところで...アクア様はなぜ、地上に降りてこられたのかにゃ?」

「ああ、そのことね、もちろん地上の人々を救ってアクシズ教の教えを広めるためよ。」

 

と、駄女神が答える。

 

「すごいにゃ。さすがは、神様だにゃ。」

「そうでしょそうでしょ。」

「ただ単純に、俺に連れてこられただけだけどな。」

 

と、ご機嫌を取っていたところ、少年が邪魔してくる。

その言葉を無視し続ける。

 

「この少年は、ギルドのいるときもいつも近くにいるみたいにゃ。信者か何かかにゃ?」

「そうよ。私の敬虔なる信徒の一人なの。」

 

と、見栄を張るためにダメな女神は胸を張る。

よくこんないけしゃあしゃあと、見栄を張りたいがためだけに嘘がはけるものだ。

 

「はー。そんなわけないだろ。転生特典でお前を地上にひっぱってきただけだろ。」

 

と、少年は反論する。

ここで、いい加減機嫌を取ることに飽きといら立ちが来ていた私は、態度を切り替える。

 

「あなた、『転生者?』っというやつかにゃ?」

 

と、少年に問う。

少年は私から反応されるとは思わなかったのか驚いた顔をする。

 

「どうしてそれを...」

「その様子だと当たりのようだにゃ。いや何、私はダンジョンで本を集めているといったにゃ。その際によく『転生者?』の日記というやつを見つけてにゃ。文字は難解で読み解くのに時間がかかったけど、なんとなくならわかるにゃ。」

「え、まじ。」

「おおマジだにゃ。たしかここの文字のappleが向こうの言葉では『りんご』というのではなかったのかにゃ。」

 

と、宙に書く。

 

「ちなみに、ステータスの知力はどれくらいあるの?」

「すでにカンストしてるにゃ。それよりも少年は転生者でいいのかにゃ?」

 

と、聞く。

 

「ああ。」

「そうなんだにゃ。転生者という存在は知っていたけど実際に会うのは初めてだにゃ。それで...少年は、アクア様を連れてきたと...アクア様は、信者を連れてきたと。ここから、異世界にいるアクシズ教徒を連れてアクシズ教を布教するためにも現在地上に遠征していると。異世界に信者を持っているとは...さすがですアクア様だにゃ。それにしても転生特典でしたっけ。」

 

と、少年に聞く。

 

「そうだ、日記に書いてあったかは知らないが、転生者には必ず何か特典がもらえるんだ。その際に俺がこの女神を指定したってわけ。」

 

と、うまいこと少年から、このダメな女神のことをぶっちゃけさせた。

ここまでくればあと一歩だ。

 

「じゃあだにゃ、アクア様が言った地上の人々を救うために地上に降りたというのは...」

「嘘だな。ただ単に怠惰に過ごしているだけだな。それどころか人のすねをかじって借金を抱えたりもしている。」

「そうですか...」

 

と、がっかりした顔をする。

 

「えっ、ちょっと待って。」

 

と同時に何か風向きが変わったことにようやく駄女神が気が付いた。

 

「すみませんだにゃ。アクア様。必要以上に期待してしまって、私は一応神話のほうもかなり読んでいるのですが...アクア様はやることはやり、その反面、天使たちにプレッシャーを与えないように表ではさぼっているという、聡いお方だと思っていました。本当にすみませんだにゃ。」

 

と、伝える。

 

「え、ちょっと待ってよ。」

 

と、アクアは焦りながら手をおろおろさせる。

私は駄女神がおろおろするさまを笑いをこらえながら見つつこう続ける。

 

「教義からも、アクシズ教の人々はほとんどが優秀な変わり者なのだから気を張らずに少しは、気を抜いたほうがいいという意味でとらえていたのですが...ごめんなさいにゃ。」

 

と、言う。

ダンジョン内に駄女神の泣き声が響いた。

 

 

 

 

 

「アクア...。大丈夫か。」

 

と、少年は気まずそうに言う。駄女神は、先ほどの言葉がかなり効いたのか、泣きじゃくっていた。

私は、内心いい気味だと思いつつ、

 

「少年。なんか済まないにゃ。」

 

と、申し訳なさそうに謝る。

 

「いえいえ、こいつにもいいお灸になったでしょう。」

 

と、少年は肩をすくめていう。

 

「それよりも...敵が来るにゃ。」

 

と、デスサイズを構える。

待っていると、アンデットが数体現れ襲い掛かってきた。

 

「あー、めんどくさいにゃ。」

 

と、言いつつ近寄りデスサイズを振るう。

すると、数体いたアンデットの上半身と下半身で真っ二つに分かれ地面に転がる。

 

「アクア。」

「グスッ、グス。わかったわよ。」

 

と、泣きつつも、珍しく女神の仕事する。

 

「『ターンアンデット』」

 

と、スキルを発動させると、アンデットは、空へと帰っていった。

 

 

 

 

 

「これは...新しい魔導書...」

 

と、アズリールは、よだれを垂らしながら、本棚へと向かう。

 

「これも、物語ですか。すごいです。」

 

と、言う言葉をこぼしている。

 

「なんか、すごいわね...」

「ああ、まさかこんな人なんて思わなかった。」

 

と、機嫌を取り戻したアクアとカズマは今までの様子との変わりように驚きつつ、部屋をあさっていた。

 

「あ、あんなところにお宝がある。」

 

と、アクアがその宝箱に近づき、その宝箱を持ち上げたとたん、地面から口のようなものが開いた。

 

「へ?」

 

という声という間抜けた声の後、アクアは、捕食されかかっていた。

 

「ぎゃあああああぁぁ。助けてカジュマさーん。」

 

と、アクアが悲鳴を上げ助けを求める。

 

「ちょっと待ってろ。今引っ張り上げるからな。」

「ぎゃあああああぁぁ。」

 

と、やっていると、唐突に黒い靄を纏った投げられたデスサイズが助けに来たカズマとアクアの髪をかすり宝箱に化けていた何かに突き刺さる。

 

「ヒェッ。」

 

と、急に飛んできたデスサイズにアクアが悲鳴を上げるが、宝箱に化けていたダンジョンもどきは、デスサイズによって消えた。

と、同時に二人にとてつもなく冷たい声をかけられる。

 

「うるさいにゃ。今、本を読んでいるから、少し黙っててほしいにゃ。次は当てるにゃ。」

 

と、言い、彼女はアクアをひとにらみした後、読書に戻っていった。

 

「っと...大丈夫かアクア...」

 

と、カズマはアクアを、起こそうと手を差し伸べるが、アクアはなぜかその手をつかまない。

アクアは、恐怖からか静かに少し泣きじゃくって、

 

「だいじょうぶか、アクア。」

「ぐすっ...ぐす、大丈夫...できればおぶってくれない。」

「うん、何かあったのか?」

「腰が抜けちゃって...」

 

カズマは、この調子で探索し続ければ、本当に味方に殺されかねないと感じアクアを背負い先に進もうとする。

 

「先行っているからな。この部屋の探索は任せた。」

 

と、アズリールに声をかけた。

しかし、本に集中していて声が聞こえていないのか、それとも反応を返すのが面倒なのか、返事がない。

カズマたちは、先へと道を進んだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

カズマたちが、部屋を出た後も、地面に読んだ本を散らかして、アズリールは一人で本を読んでいた。

 

「この言い回しは、数百年前に滅んだ国の言語ですね...」

 

確か、これは王国の言い回しですね。

この国は、たしか一人のアークヴィザードによって滅ぼされたのでしたっけ...

その名前は...

 

「キールでしたか。ろくな記録が残っていないので困ってしまいます。」

 

と、口調を変えることを忘れて、本を読みふける。

 

「あいも変わらず面白いですね。『魔導結晶の人工生成について』ですか。著者はキールと...さすがはキールダンジョンといわれただけありますね。」

 

と、本をぺらぺらとめくり、顔をニヤつかせながら、言う。

 

「本当にいいですね。結界を張るために多く必要となる魔導結晶がこんなに簡単にできるなんて。図書館に結界を張る際の材料調達がだるいと思っていましたけど、この方法ならば簡単にできそうですね。」

 

と、先日、デストロイヤーを破壊した際に手に入れたコロナタイトを思い出しつつページをめくる。

 

「これだから知識の探求は飽きませんね。それにまだ、こんなに読んだことがない本がある。」

 

と、本棚から引っ張り出した未知の書籍を並べつつほかの書籍を手に取る。

ついに手に取った本は、『キールの日記』であった。

私は本をぺらぺらと、めくり内容を読む。

 

「なるほど...甘い恋の逃避行というやつでしたか...滅ぼされた王国というのは、記録上、悪い魔法使いが国と戦争を起こしその際に多大な被害を出し、それをかぎつけた関係が悪かった隣国に攻められ滅ぼされたのではありませんでしたっけ...多くの文献にはそう残られていたはずです。しかし実態は、この日記を信じるのであれば、その悪い魔法使い、つまりキールは一人の貴族の娘に惚れ、妻に迎え入れようとしたが王や貴族に疎まれ、逃避行する羽目になったと...」

 

結局のところ国や王の自業自得に過ぎないな。と思いつつ

私はいま、アズリールの姿でダンジョンの攻略をしていたことを思い出す。

 

「あ、やばいですね。新しい本を見るといつもこうだにゃ。」

 

と、口調を直しつつよだれを拭き、周りを見渡す。そこには、少年や駄女神がおらず、無意識に投げたのであろうデスサイズがダンジョンの壁に刺さっていた。

 

「あ、やっちゃったにゃ。まあ、うるさかったから仕方がないにゃ。」

 

と、すました顔で、アズリールはこぼし、投げたデスサイズを回収する。

 

「うーんと、どうするかにゃ...少年とアクア様は今いないようだしだにゃ...ひとまず『生命検知』」

 

と、スキルを発動させる。このスキルは生きているものを感知することができるアサシン専用のスキルだ。すると地下に二つほど反応があった。一つは人間のようなものでもう一つは神性を纏っている。

人間のほうは何やら物陰に隠れていて、もう一人の神性を纏っているほうが戦闘を行っているように必死に、何やら廊下でわちゃわちゃしている。

 

「おー、アクア様。天界の時とは比べて働き者になっていますにゃ~。」

 

と、本を片手に笑いながら観察をする。

 

「それにしても、この少年も、私同様にいい性格をしていますにゃ。クズとは言え神様をほっぽり出して自身は隠密とは...意外に話せば性格があって面白いのかもしれないかもしれませんにゃ。」

 

と、こぼしつつ今回発見した本を運び出すのを手伝わせるために『生命探知』を付けた状態で、こちらに戻るのを待っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「本当に済まないにゃ。」

 

と、三人で財宝と多くの本を抱えて出てきた。

 

「本当よ。肝心な時に来てくれなかったじゃない。」

「アクア、そこまで責めるな。ダンジョンもどきから救ってくれたんだし。」

 

と、話していると紅魔の少女が声をかけてきた。

 

「何があったのですか?」

「この子、本を読むのを邪魔したからってデスサイズを味方に投げてきたのよ。」

「にゃははは、ごめんなさいだにゃ~。」

 

と、頭を掻きながら答えた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「あ、クリス。」

 

と、アクセルの街へと帰った後、エリス様と私は鉢合わせていた。

 

「アズリール。珍しいですね、あなたが一人で地上に降りるなんて、それにこの大荷物。何かあったのですか?」

 

と、驚いた顔をされて聞かれる。

 

「そんなに珍しいことかなにゃ?今日はクエストに行ってきたんだにゃ。」

「クエストですか?何か収穫はあったのですか?」

「いろんな本があったにゃ。」

 

と、持っていた本を見せる。

 

「この言語は...数百年前のものですね。こんなものがあったのですか。」

「そうだにゃ。まだまだ取り残しがあるから再度取りに行くにゃ。」

「そうですか。それよりも...アズこの後どうしますか?」

 

と、エリス様は聞かれる。

 

「この後は、図書館に帰るつもりにゃ。クリスも来るかにゃ?」

「いいんですか?」

「もちろんだにゃ。でも、ここ一ヶ月は、本の解析があるから一緒には寝れないけどいいかにゃ。」

「そうですか...でもお願いします。」

 

と、エリス様は少し残念そうな顔をされた後、頼まれた。




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七話 お休み

リアルが忙しくて、投稿が空きました
マジですみません。
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「ここを、こう配線して...こうすると...」

「ジブリール。何しているんですか。」

 

と、図書館の制御室をいじっている際に唐突に後ろから声をかけられた。

 

「わっ。」

 

と、驚き後ろを振り返るとそこには、エリス様が興味深そうにこちらを見られていた。

 

「エリス様でしたか...驚かせないでください。」

「驚かせてしまいましたか。すみません。」

 

と、エリス様は申し訳なさそうに謝る。

 

「大丈夫です。単にびっくりしただけですから。」

「そうでしたか、それならいいのですが...」

 

と申し訳なさそうにする。

 

「そこまで、責めていませんから、大丈夫ですよ。それでどうしてこちらに?」

 

と、エリス様に聞く。

 

「ああ、仕事がひと段落ついたので今後の予定を決めようと思いまして、それよりも今、何をしているのですか?ジブリール。」

 

と、先ほどつなげていた配線を指さす。

 

「これは、魔導障壁を組み立てていましたね。」

「魔導障壁?」

 

と、エリス様は聞かれる。

 

「はい、先日機動要塞デストロイヤーを討伐した際に伝説級のコロナタイトを手に入れられたので、作ろうかと思いまして。」

「コロナタイト?討伐した際に持っていた大きな赤い水晶ですか?」

「はい、あれがないと作ることすらできないのでいい機会だと思い作りました。」

 

と、エリス様に説明する。

 

「どういう効果があるんですか?」

「攻撃魔法はたとえ爆裂魔法であったとしても、指定さえしていれば跳ね返すことができ、そのうえで内部にいる生物の魔法を私の意思一つで制限することなどなどができるように作りました。」

「な、なるほど...」

「まあ、そこまで使う機会はないとは思いますが...図書館を魔法で水びだしに前例がありますからね。」

 

と、言う。

 

「まあ、あれは...わざとやったわけではありませんし...」

「わざとでしょうが、ないだろうが関係ないですよ。そもそもここに来られる時点で不快です。」

「まあ、そういわずに...」

「まあいいです。それよりも、後一、二時間ほど待ってください。もうすぐ仕上がるので。」

 

「そうですか...わかりました。できれば暇つぶしの本とかがあれば教えてほしいのですけど...」

 

 

 

と、エリス様は聞かれた。

 

 

 

「そうですね...一時間ほどの暇つぶしであれば星新一なんていうものはいかがでしょうか。ショートショートで読みやすいとも思いますし。」

 

「ほし、しんいち?ショートショート?」

 

「ああ、ショートショートとは、小説の中でもとても短い小説が集まったものですね。そして星新一は、向こうでは有名なSF作家ですよ。」

「SFですか...サイエンスフィクションというのでしたっけ?私、科学というものに詳しくないのですが大丈夫でしょうか?」

「はい、なんとなく科学というものを知っていれば読めますよ。」

 

と、手では作業を進めつつ言う。

 

「そうですか...なんという題名がおすすめですか?」

「そうですね...『ぼっこちゃん』というものはいかがでしょうか?」

「『ぼっこちゃん』ですか。不思議な題名ですね。どこにありますか?」

「確か...中央14番目の列の左から5番目の本棚の、上から6番目の棚の左から7番目の本ですね。」

「わかりました。待っていますので、ぜひ早く終わらせてくださいね。」

 

と、階段を上がっていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「...すさまエリスさま、エリス様。聞こえますか?」

 

という声が聞こえてきた。

この声はジブリールの声だ。

 

「ああ、すみません。ついつい、本に集中していました。それで、魔導障壁は張り終えましたか?」

「はい、窓を見てもらえばわかると思いますが青い靄のようなものが見えますよね。」

 

と、ジブリールは窓を指をさす。

そこには、時折日差しに照らされて、青い靄のようなものがかかっているように見れた。

 

「すごいですね、試してみてもいいですか?」

「いいですよ。では...」

 

と、ジブリールは鼻のあたりに人差し指と、中指を立てて念じた後。

 

「そうですね。では何かスティールで盗んでください。」

「わかりました。では、『スティール』。」

 

と、私は腕を前に出しスキルを発動させる。

すると、手には何も握られていなかった。

念のためにもうニ、三度、スキルを発動させるが何事も手に入れることができなかった。

 

「手に入りませんね...」

「うまくできているようですね。では、一度外すので使ってみてください。ちなみにあたりは、この財布ですね。先日のダンジョンの報酬が入って、50万エリスは入っていますよ。」

 

と、ジブリールは再度念じた後、大きくなった財布を見せてきた。

 

「では、『スティール』」

 

と、スキルを発動させる。

すると手には何やら布ような感触があった。と同時にゴトッという音が鳴る。

少なからず、財布ではない感触に驚きつつ、確認するために手を広げる。

と同時にジブリールは恥ずかしそうに股に手をやった。

 

「これは...パンツですか...」

 

と、手を見てみると中にはジブリールの特徴的な黒いパンツがあった。

目の前に、視線を向けると、パンツで支えていたスカート代わりの布や腰回りの装備が落ち、あらわとなった秘部を、手と、羽で隠していた。

 

「あの...恥ずかしいので返してくれませんか。エリス様...」

 

と、ジブリールはもじもじとする。

私は、ジブリールの珍しく恥じらうことに、胸の奥がざわつき自然とジブリールに抱き着く。

 

「え、ちょっと待ってください。え、まだお昼ですよ。エリスんn」

 

と、ジブリールにしては、珍しく本当に戸惑った声が聞こえる。

意外な一面が見れてか、私の胸のざわつきが抑えられないほどに大きくなり、唇を私は押し付けた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「それで、何の用で来られたのですか、エリス様。」

 

と、一通りの長い情事を終わらせ湯浴みを終えた後、私はエリス様に声をかける。

 

「そんなに怒らないでくださいよ...」

 

申し訳なさそうな顔をして頬を掻きながらエリス様はそういった。

私は、抗議するようにそっぽを向く。

 

「ごめんなさい。いきなりヤッてしまって。」

 

私は、エリス様の方を見て言う。

 

「ヤったことに関しては、怒っていませんよ。現に前に甘えてくださいといいましたしね。」

「ではなんで、怒っているのですか?」

 

と、エリス様は聞かれる。

 

「今、何時だと思っています?」

 

と、エリス様は図書館の窓と時計を見て驚いた顔をされる。

そこには、夜がおりており、きれいな三日月が輝いている。時計はすでに夜の8時を過ぎていた。

 

「え、もうこんな時間なの。」

「そうです。エリス様は確か昼の2時頃来られましたよね。」

「もしかして四時間連続で...」

「そうですよ...愛してくれるのは嬉しいですけど...ちょっと...」

 

と、エリス様は驚いた顔をされる。

 

「まあいいです。それよりも、今日はどのようなようがあったのですか?」

 

と、私はひとまず話を切り替えた。

エリス様は、仕事モードになったのか、先ほどの浮ついた空気をなくし真面目な表情で語り始める。

 

「大きくは二つあって一つ目は、魔王軍幹部の二体目が討伐されました。」

「そうなのですか...前に討伐されてから一年もたっていないのに、かなり早いですね。ちなみに誰が討伐したのですか。」

「カズマ...といってもあなたは覚えていないでしょうね。あのアクア先輩を特典にした子です。」

「ああ、あの少年がですか...」

 

と、思い出す。

 

「意外ですね、ここ数十年誰一人として魔王軍幹部が討伐できていなかったのにここにきて二体撃破とは...」

「そうですね...」

「カズマ...始めの魔王軍のベルディアでしたっけそれを倒したのもあそこのパーティーでしたよね。確か、あいつが、堕天してから1年は立っていなかったはず...」

「そうですね...正確には9か月ぐらいでしたっけ。」

「すごいですね。今までも、伝説の勇者レベルの人が生涯をかけて、幹部を二人倒した方はいらっしゃりましたが、ここまでとは。」

 

と、感心し私は手を顎に当てて考える。

 

「では...英雄譚の編纂を?」

 

と、エリス様に問う。

 

「はい、お願いできませんか?」

「構いませんが...本当にやる意味はあるのでしょうか...魔王軍幹部を二人も倒したとなると人間たちが勝手に英雄譚を書き上げそうですけど...」

 

と、私はため息をつく。

 

「仕方がありませんよ。上層部は相も変わらず、悪魔に信仰をとられるのを必要以上に恐れているみたいで、実状は人間の悪感情をすするしか能がない連中なのですから。」

「まあ、そこまで嫌わずに...」

「なぜ、あなたがそこまで悪魔を擁護するのですか。まあいいです。前にも言った通り、上層部は、英雄譚を書く人間を操り悪魔に信仰が集まるように書く可能性が高いです」

 

 

 

「そしてもう一つのほうは?」

 

と、私はエリス様に聞く。

 

「もう一つは私お休みが今日から一週間ほど、とることができました。」

「エリス様がですか...」

「はい、ですからジブリールこれから、一緒にどこかに行きましょう。」

 

と、にっこりとエリス様は笑われる。

 

「なるほど。だから、午前中からあんなに、上機嫌だったのですね。」

「はい、で、どうしましょうか?ジブリールどこか行きたいところはありますか?」

 

と、エリス様は久しぶりの休みからか興奮したように聞いてくる。

 

「特にはありませんが...正直エリス様が行きたいところに行かれればいいと思います。私は最悪いつでもいけますから。」

 

と、言う。

 

「と、言われましても...何も思い浮かばないんですよね...ジブリールどこかおすすめの場所はありますか?」

「どういうような街に行きたいのですか?エリス様?」

「できれば普段いかないような場所に行きたいのだけど...」

「普段いかないような場所ですか...そうですね。エウリエアは、どうでしょうか?」

 

と、言うと、エリス様は激しく首を横に振る。

 

「いやですよ。何で、自分が信仰されている街に行くのですか。わざわざ休まりに行くのに気が休まりませんよ。」

 

と、反論された。

普段いかないような街で、エリス様の気が休まるところ...

 

「では、水の都アルカンレティアはいかがでしょうか。あそこには温泉もありますし、エリス教信者は一人としていないので気は休まると思いますよ。」

「アクア先輩の総本山ですか。珍しいですね、アクア先輩が嫌いな、ジブリールがその街を選ぶなんて」

 

と、エリス様は意外そうな顔をされてこちらを見てくる。

 

「そうですね。エリス様を第一に考えた結果ですね。少なくとも、アクアを信仰する気狂いの人間種(イマニティ)どもには罪がありませんから。」

「ジブリール、人間種(イマニティ)といわない約束をしたはずでしたが。」

 

と、エリス様から厳しい視線が送られる。

 

「すみません。人間でしたね。イラつくといつもこうなってしまいます。すみません。」

「わかればいいのですが。」

「で、どうでしょうか?」

「いいですね。温泉にも入れますしね。だけど...アクシズ教の人々はいろいろといいうわさが聞きませんが...」

 

と、不安そうな顔をされる。

 

「大丈夫ですよ。変なイマ...人間がほとんどですが、対処方法は考えているので、問題ありません。では、水の都アルカンレティアでよろしいでしょうか?ほかにも王都で、食べ歩きという案もありますが...」

「そうですね...でもアルカンレティアでお願いします。」

「わかりました。」

 

エリス様は少し悩まれた後そう答える。

 

「ジブリールは本当にいいの?」

「いいと思いますよ。それで...どうしましょうか...」

「どうしましょうかとは?」

 

と、エリス様は聞かれる。

 

「何泊されますか?」

「ああ、そういうことでしたか...とりあえずは二泊三日でどうでしょうか?」

「わかりました。では、明日の朝に向かいましょうか。こちらで荷物などを用意しておきますので、エリス様はお休みになってっください。」

 

と、言う。

 

「すみません。お願いしますね。」

 

と、言い、エリス様は寝室のほうに向かわれた。

私は、一通り荷物をパッキングした後、昼の間読む予定だった本を読んでいった。

 




一週間以内に次回は投稿します。

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八話 水の都アルカンレティア

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朝七時ごろ私は寝ているエリス様を起こしに来ていた。

 

「エリス様、エリス様、起きてください。」

「うにゃ...ジブリールえすか...」

 

と、エリス様は、眠り目をこすりながらおっしゃる。

 

「そうですよ。寝ぼけていなくて早く起きてください。」

 

と、諭す。

すると、エリス様は起こしに来た私の首に抱きついてきた。

 

「ちょっちょっと待ってください。」

「いいじゃないですか。ジブ、もいっしょに寝ましょう。」

 

と、普段ではあり得ないほど強い力で引っ張られる。

 

「え、ちょっと。本当にやめてください。今日、旅行に行くんでしたよね。」

「うーん...だいじょうぶだよ。ジブ、ほらいっしょに...」

 

と、私が抵抗できないほどの力でベッドに引きずり込まれる。

 

「エリス様、エリス様、ちょちょっと待ってください。」

 

と、声をかけるが、エリス様は私の体を抱き枕替わりにして眠ってしまい一向に起きる気配がなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

朝11時予定を回ったころ私たち二人は、水の都アルカンレティアの街の前まで来ていた。

 

「で、アズ。どうやったらアクシズ教の勧誘を断れるんだ?」

 

と、聞いてきた。

 

「ああ、そうだにゃ。これでだにゃ。これ」

 

と、腰あたりに着けているポーチから二つのペンダントを出す。

 

「これは...木彫りのペンダントですか。ああ、なるほど。」

 

と、ペンダントを手渡すとクリスは、納得されたようにそうおっしゃった。

そのペンダントにはエリス教とは逆方向に四角い紋章が彫られておりその中に一本の線がある、アクシズ教のペンダントだった。

 

「多分、分かったと思いますが、このペンダントを首につけてアクシズ教徒たちに、同族だと思わせ勧誘されないようにするだけのものだにゃ。ちなみに装備すると、クリエイトウォーターの魔法が誰でも使えるようになるそうなんだにゃ。」

「そうなのですか。では行きましょうか。」

 

と、エリス様と私は街に出向いた。

 

 

 

 

 

街に入ると、アルカン饅頭屋さんや駄女神の像が目に入った。

 

「とてもきれいな街ですね。」

「そうだにゃ。正直意外だにゃ。」

 

と、驚きを口にする。

正直、アクシズ教の総本山というので、荒れているというイメージがあったが、イメージとは全く異なっておりとても美しい街並みが続いていた。

そのことに軽く感心していると周りから人間が集まってきた。すると、

 

「ようこそいらっしゃりましたアルカンレティアに。」

「観光ですか?入信ですか?それとも、洗礼ですか?」

「おお、仕事を探しに来られたのであればぜひアクシズ教団に...」

 

と、言うようにアクシズ教の頭のおかしい連中が寄ってたかってきた。

横を見ると、覚悟はしていたが急に起こったことにエリス様は困ったように視線を右往左往させている。

 

クソ人間種(イマニティ)どもが...すみません。私たちアクシズ教の信者で、巡礼兼観光に来たのですが...」

 

と、小さく悪態をついた後、首からぶら下げているペンダントを出す。

 

「ああ、同志のお方でしたか。巡礼ならばあちらに教会があります。」

「そうです。それにこちらに、観光で来られたアクシズ教徒専用のホテルもあります。」

 

「いえいえ、大丈夫です。私たちこれでもお金は持っていますのでできるだけこちらの街にアクア様の信仰のためにも落としたいなと、思っているので大丈夫です。では、失礼しますね。」

 

と、適当言って、急に絡まれてあたふたしているクリスの手を強引につかみ逃げるように離れていった。

すると背後から、

 

『さようなら同士。あなた方が良き一日であらんことを。』

 

という声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「クソ人間種(イマニティ)どもが、感心させておいてすぐこれですか。」

 

と、路地裏で悪態を吐く。

 

「まさか、アクシズ教への勧誘が激しいとは聞いていましたが...これまでとは...」

 

と、軽くげっそりした顔で、エリス様はおっしゃる。

 

「ほとんど、カルト教団みたいな感じでしたしね、こんなものを信仰している人間種(イマニティ)どもの気が知れません。」

「アズ、言葉。」

 

と、エリス様は、軽く怒った顔でこちらを見てくる。

 

「わかりましたよ。人間ですよね。」

「そうです。怒るとすぐこれなんですから。それで今回はどちらに泊るんですか?」

「アルカンレティアでは珍しく、温泉が付いている高級ホテルです。」

 

と、私はエリス様を連れて、昨晩のうちに予約を取っていたホテルへと向かった。

 

「こちらですね。」

 

と、指をさす。

そこには、この世界には珍しく日本の料亭のようなホテルが見えた。

 

「すごいですね...もしかして、転生者の方が?」

「さすがは、エリス様ですね。そうですよ。天界の書類で一度見たことがありますが、転生をさせた女神さまへの恩を返すために作ったそうですよ。」

「そうですか、地上でその呼び方はやめてください。」

「すみません。では、参りましょうかクリス。」

 

と、手を取ってホテルへと向かった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「アズアズ、これは何ですか。」

「クリス。この床についてかにゃ?これは畳というものなんだにゃ。向こうの日本ではよく床材として使われていたにゃ。」

「そうなのですか。」

 

と、私たちは一通りチェックインを済ませた後、部屋を訪れて二人でくつろいでいた。

 

「アズアズ、これは何ですか?」

 

と、エリス様は、私が座っている座布団を指さしながら聞く。

 

「これは座布団ですね。こちらの世界風に言うと、座るクッションというものでしょうか。」

 

と、説明する。エリス様は、感心したようにそれを見ていた。

 

「で、この後どうしましょうか?」

「そうですね、このホテルを探索しても面白そうですが、せっかくなので街に行きませんか?」

「わかりました。せっかくなので、お昼も外で食べていきませんか?」

「いいですね。行きましょうか。」

 

と、二人は手をつなぎ街へと出かけていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「あいも変わらず、景色はきれいな街ですね。」

 

と、太陽が傾き始めたころ私たちはおやつ代わりに名産であるアルカンまんじゅうを食べながら二人は海岸沿いにある防波堤に腰掛けていた。

 

「そうだにゃ。一時はどうなるかと思いましたんだにゃ...」

 

と、エリス様は、ため息をついている。

 

「街に入ったとたん、すごかったですよね。」

 

と、思い出す。

私たちが街に入った途端、多くの勧誘の人々に声をかけられ、アクシズ教のペンダントを見て去っていったのを思い出す。

 

「それにしてもどうするかにゃ。これ...」

 

と、横を見ると山と積まれた石鹸やシャンプーがあった。

 

「そうですよね。外から来た敬虔なアクシズ教徒は珍しいとのことでもらいましたが...そういえばアズ、このペンダントってどうすればもらえるのですか?」

「確か...アクシズ教の教会に三年間毎日欠かさずに通うともらえたはずだにゃ。」

「だからですか...」

 

と、エリス様は、ため息をつく。

 

「仕方がじゃないかにゃ。でないと、勧誘の三文芝居を見せられる羽目になるんですから。ほら、あんな感じに...」

 

と、防波堤沿いで三文芝居の練習をしているのか、体が大きい雄(エリス教徒のつもり)が、雌に対して襲うように見せつけるような芝居の練習をしていた。

 

「そうでしたか......」

 

エリス様は死んだ目でそれの様子を見ていた。

 

「このせっけんと洗剤の処分方法についてはあとで考えることとするにゃ。では、この後、どうするかにゃ? クリス。」

「そうですね...一通り町は見て回りましたしね...あ、そうです。ダクネスのお土産を買っていかないと。」

「あと二日もありますし、今の段階では買う必要はないと思うにゃ。」

「確かにそうですね。では、旅館に戻りましょうか。」

 

と、二人は旅館へと帰っていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「おお、すごいですよ、ジブ。野菜だらけです。」

「確かに、すごいですね。こちら側の世界で食べれるとは思いもしませんでした。」

 

私たちの目の前には豪勢な精進料理が並べられていた。

 

「ジブジブ、この白い膜みたいなものは何ですか?」

「ああ、それは湯葉ですね向こうの世界にある料理の一つですね。製法としては、大豆を絞った際に豆乳というものができるのですけどそれを沸騰させて、できた膜ですね。」

「大豆ですか?もしかして高級食材の空を飛んでくる大豆ですか?」

「それで間違いないですね。向こうの世界ではこちらの世界のサンマと同様に地面から生えてくるものですから...」

「そうなのですね。」

 

と、感心したようにエリス様は頷く。

 

「では、精進料理というのは、すべて野菜の高級料理と、いうことであってますか?」

「そうですね。向こうではこちらの世界でいう教会のプリーストのような人が食べていましたね。」

「そうなのですか。向こうの世界の人々は毎日こんなにおいしいものが食べれてうらやましいです。」

 

と、感心したようにエリス様はおっしゃられた。

 

 

 

 

 

「ふう。おなかいっぱいです。」

「そうですね。思ってる以上に量がありました...」

 

と、食事を終え二人、畳の上で座りつつ団欒を楽しんでいた。

 

「ジブ、明日は、どうするのですか?」

「一応、休憩所付きの温泉を明日一日貸し切りでおさえてはいますが...」

「休憩所付きの温泉ですか?」

 

と、エリス様はこてんと首をかしげる。

 

「そうですね。明日はせっかくアルカンレティアまで来たので温泉に一日中入ろうかと思いまして。エリス様はどこか行きたいところはございましたか?」

「特にはありませんが...そうですね...できれば、アクシズ教会の総本部に一度顔を出しておきたいかなー...」

「わかりました。では、朝一で教会に行きますか?」

「それで、お願いします。」

「了解です。」

「そ、それでですね、ジブリール」

 

軽く、明日の予定に変更を入れていると、顔を赤くしてもじもじしたエリス様から声をかけられた。

 

「どうされましたか? エリス様?」

「い、一緒にお風呂に入りませんか?」

 

と、返された。

 

「いいですよ。恥ずかしがられているエリス様も、かわいいですけど...そこまで恥ずかしがらなくても、私まで恥ずかしくなってしまいます。」

「......///」

「そこまで、恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか。はぁ。現に私たち何度、枕を共にしたと思っているんですか...」

「ため息をつかないでくださいよ。」

 

と、顔を真っ赤にして、私の肩をポコポコ殴ってくる。

 

「早く入りましょう。」

 

と、立ち上がり部屋に備え付けの風呂に入るために準備を始めた。

 

 

 

 

 

「とても、眺めがいいですね。」

「......//」

 

外の風景はアルカンレティアの有名な活火山を一望でき近くの源泉が湧き出ている場所など。

とても美しい街だ。

 

「エリス様?」

「......//」

「あの、反応してくれないと困るのですが...」

「......//」

 

このままでは、話にならないと思った私は、少しエリス様をあおる。

 

「エリス様、最近、胸が成長してきましたね。」

 

と、言い軽く胸に触れる。

 

「ひゃっ。」

 

本当に、かわいい反応をする。

 

「私と付き合い始めたときは、パッドをつけていませんでしたっけ。本当に付き合うと胸って成長するんですね。」

「恥ずかし.ぃ..」

 

と、面白い反応をする。

興が載ってさらに強く触れる。

 

「今は、B、いやCぐらいありそうですね。」

「や、やめてくださいよ。」

 

と、私から逃れるようにそっぽを向いてしまった。

さらに私は調子に乗りエリス様を後ろから抱き着いた。

 

「エリス様、本当にかわいいです。」

「え、えぇぇ。」

 

と、付き合い始めたときに比べて少し成長した胸を軽く触れながら後ろから強く抱きしめる。

 

「ああ、もうわかりました。それよりもなんですかこの胸は。」

 

と、エリス様は、強く抱き着いたせいで肩に乗っていた私の胸をつかむ。

 

「ちょ、痛いです。」

「聞き分けの悪い天使にはお仕置きです。」

 

まだまだ、夜は、長そうだ。

 




一週間以内に次話投稿します。
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九話  水の都アルカンレティア二日目

投稿遅れてすみません。
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「むにゅ...っもう朝ですか...」

 

エリスは、軽く寝ぼけながら、周りを見渡す。

窓からはまぶしい朝の陽ざしが入ってきており、とてもまぶしい。

隣を見てみるとそこには、ジブリールが一糸まとわぬ姿で寝ている。

普段であるならば、ジブリールが先に起きて、いるはずなのだが...かなり新鮮だ。

自身の体を見ても一糸まとってすらいなかった。

 

「ジブリール、朝ですよ。」

 

と、肩をゆする。

 

「エリス様えすか...はっ...失礼いたしました。」

「大丈夫ですよ、ジブリール。それよりも今日はどうしますか?」

「確か...アクシズ教会に向かった後、温泉の予定でしたが...」

「わかりました。行きましょうか。」

 

一体と一柱は軽く身支度を終え朝食を食べ終わった後、外へと向かっていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「ここが、アクシズ教団の本部の教会なんだね。初めてきたよ。」

 

教会は、白く屋根は青く作られており、かなり周りになじんでいる。

近くには源泉が流れており、かなり美しい風景が広がっている。

目の前には大きな木製の扉がそびえたっているのが目に入る。

 

「意外だにゃ。クリスなら、何回か来たことがあると思うだにゃ。」

「仕事でこの街に依頼が来たことはなかったからね。」

「そうかにゃ。どうするにゃ?中に入るかにゃ?」

「そうですね。入ってみましょうか。」

 

私たちは教会へと入っていった。

中には、大きなアクア像があり、向こうにはステンドグラスが陽光によって輝いている。

 

「すごく広い場所ですね。」

 

さらには、広い礼拝堂が広がっており、祭壇に向かって多くの椅子が並んでいた。

すると、アクシズ教徒のプリーストが寄ってきて、

 

「どうなさいました?洗礼ですか?入信ですか?」

「クリス、どうするかにゃ?」

「礼拝でお願いします。」

「アクシズ教徒の方で巡礼の方でしたか。ここでは、見ない顔だと思いまして、失礼いたしました。では、こちらに。」

 

と、アクシズ教徒のプリーストに案内された。

 

 

 

 

 

「こちらになりますね。」

 

と、案内されると、個室に分かれた部屋に案内された。

 

「お帰りの際は、外にいる神官に一言かけてくださいね。では、失礼します。」

 

と、去っていった。

部屋はとても小さく、その中は、アクア像が置かれていた。

そして、床には礼拝用に座るための小さなじゅうたんが置かれていた。

 

「結構しっかりしているんですね。教会のほうは。」

「まあ、総本山でもありますからね。」

「そうですね。」

 

と、絨毯に座り祈りをささげているエリス様の姿を見つつ、私はエリス様より託された命である、英雄カズマの英雄譚について考えていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

私は、クリスの手を引っ張って、予約していた温泉へと向かった。

 

「クリス。こっちだにゃ。」

「待ってください。アズ。」

「ここだにゃ。」

 

と、指をさす。そこには宿と同様に木製で日本風の建築をしているものがあった。

 

「宿と同じで木で作られていますね...」

「そうなんだにゃ。早く行くにゃ。」

 

私は、手を引っ張った。

 

 

 

「エリス様。最近はどのようなことをされているんですか?」

 

私たちは、温泉につかった後、温泉の休憩室にてジブリールに膝枕をされながら一休みしていた。

アクシズ教徒が多いこの街では、温泉を上がった後、衣類の上に宗教の勧誘の書類と、大量の石鹸が乗せられているという話をジブリールから聞いたことがありましたが、信者と思われているのか、そのようなことは一切なかった。

 

「そうですね...最近では、アクア先輩の手伝いがなくなったので、そこまではないですね...」

「そうですか...」

 

と、返される。

上を見上げると、私よりも大きい胸で顔は見えないが、かなり心配そうにしているのは雰囲気から分かる。

 

「大丈夫ですか? 忙しいのであればいつでも呼んでくださいね。」

「はい。頼りにさせてもらいますね。」

 

と、にこりと笑う。

その顔を見て安心したのか、頭をなでられた。

 

「一回、お休みになられますか。」

「そうですね...」

 

休憩所の開けた縁側より外を見る。

外は、ちょうど、正午を超えたころなのか、陽がサンサンと、輝いている。

縁側から涼しい風が流れ込んでおり、眠るにはちょうどいいかもしれない。

 

「では、お願いします。」

 

と、目を閉じる。

 

「わかりました。では、寝物語を一つ。」

 

ジブリールは優しい口調で語り始める。

これは、私と一緒にジブリールが寝る際によく語ってくれる。聞き終える前に毎度毎度寝てしまうのですが...

 

「今日は、どんなお話をしてくれるんですか?」

「はい、今日は、かなり有名なお話です。では、始めますね...」

 

軽く頭を撫でられる。

くすぐったくて私は目を閉じる。

 

「では...バクダッドの町に、ヒンドバッドという、貧乏な荷かつぎがいました。荷かつぎというのは、鉄道の赤帽のように、お金をもらって人の荷物を運ぶ人です。

 ある暑い日のお昼から、ずいぶん重い荷物をかついで歩いていましたが、しずかな通りへさしかかった時、大そうりっぱな家が立っているのが、目に入りました。ヒンドバッドは、その門のそばで、少し休むことにしました。...」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「どうだったかにゃ。アルカンレティアは?」

「そうだね。休暇を取るにはかなり良かったよ。」

「それはよかったにゃ。ん?」

「どうかしましたか?アズ?」

 

そこには、何やら疲れ果てた二人と、一人楽しそうにエリス教のペンダントを首から下げている一人がいた。

 

「大丈夫かにゃ?」

「あ、ああ。アズリースか。」

 

確か...カズマであったか。

と、紅魔族の少女と、ダクネスが、噴水に腰を掛けていた。

紅魔族の少女は何やらブツブツつぶやいているが全く何を言っているか聞こえない。

 

「ヤッホー。ダクネス。」

「おお、クリスか。この街はいいぞ。定住してもいいくらいだ。」

「や、やめてください。も、もう勧誘おなかいっぱいです。」

 

と、何やら隣ではクリスと、ごちゃごちゃやっている。

 

「どうしたのかにゃ?」

「あ、ああ。この街に来たらわかると思うが...勧誘が激しくてな...」

 

と、指をさす。

その指の先では、アクシズ教の人間が、飽きずにこの街に初めて来た観光客に、勧誘を続けている。

 

「まあ、仕方がないんだにゃ。そういう街なんだしにゃ。」

「はぁ。」

 

相当勧誘でやられたのであろう。少年は大きなため息をついている。

 

「そういえば、自称女神さまはどこに行かれたのかにゃ?いつも一緒にいるイメージがいるんにゃけど。」

「あ、ああ。アクアのことか。あいつなら教会の方で悩みを聞いているよ。」

「そうなんだにゃ...」

 

あの駄女神。

たとえ地上に堕ちたとしても相も変わらずらしい。

 

「そうなんだにゃ。」

「それよりも、アズリールと、クリスはなんで、こんな場所にいるんだ?最近、アクセルで見かけないと思ったんだが...」

「そんなことかにゃ。休暇で旅行中だにゃ。せっかくのお休みなんだしにゃ。」

「そうなんだよ。いろいろと疲れちゃってね。」

 

クリスは肩をすくめる。

 

「休まるか? 俺は、勧誘でおなかいっぱいだ。」

「いや、この街はレベルが高いぞ。先ほどだって、これを見せたら、子供たちに石を投げられたしな。」

 

と、ダクネスは、エリス教のペンダントを見せる。

なるほど...確かにあのエリス教のペンダントさえ持っていれば、アクシズ教総本山があるこの街では迫害される。

まさに、この街はダクネスの性癖にぴったり当てはまるのだろう。

 

「ほら、ダクネス。それ、外して。」

「いやだ。これで、もっともっと...く…!っ゛っ。」

 

と、クリスに指摘されるも、一人悶えている。

 

「少年もお疲れだにゃ。」

「本当にな...」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ひとまず、私とクリスは、カズマたちが泊まっている宿へと来ていた。

そこには、ウィズがいた。

 

「ウィズさんまでいるんだにゃ。」

「アズリールさんですか。いつもご贔屓にしていただきありがとうございます。」

 

と、頭を下げられる。

 

「ウィズの魔道具店にも、固定客っているんだな...」

「そうですね...意外です。」

「そりゃあ、いますよ。特に、アズリールさんが来ると、バニルさんがとても喜ぶんですよ。」

「なぜ?」

「そりゃあ、いろんなものを買ってくれるからですよ。在庫処分に持ってこいって...」

 

と、言われる。

さらに少年カズマよりぶしつけな視線が送られる。

 

「アズ、今までどんなものを買ってきたんですか...」

「いや...単純に頭を使って使っているだけだにゃ。例えば、そうですね...防御力が一時間とてつもなく高くなる代わりに、一日動けなくなるポーションを仕入れたことがあったよにゃ。」

「はい。バニルさんにこっぴどく叱られてしまいましたが...」

「そのポーションの有効利用法として、近くにいるモンスターにこのポーションと飲ませてやって、そのうえで、モンスターたちが注目するヘイトの魔法をかけてやれば、一発で便利な盾の完成っていうわけだにゃ。」

 

ポーションのおかげで、モンスターは動くことがなくなり手で持ち運んでも反撃することはなくなるし、

やばい時には、遠くに投げればヘイトタンクとして一定時間、持ってくれるからとても便利だ。

 

「バニルさんがアズリールさんがまとめて買っていったといっていましたが...そんな風に使っていたんですか...」

「使い方がえぐいな...」

「そうですね...」

「な、なんだその使い方は...アズリール。親友の頼みだ。私をそのモンスターのように扱ってくれ。はぁ……゛いったい、どのような扱いを受けるのか...」

 

状況はカオスを極めていた。

 

 

 

 

 

「そういえば、帰り道、アズリールと、クリスは一切勧誘を受けてていなかったけどなんかあるのか?」

「そうですね...そういえば不思議でした。」

 

紅魔族の少女が聞いてくる。

 

「ああ、そのことね。これだよこれ。」

 

クリスは首からぶら下げているペンダントを指さした。

それは、先日私が渡した、木製のアクシズ教のペンダントだ。

 

「なるほどですね...」

「どういうことだ?」

 

紅魔族の少女は理解したようだが、少年カズマは理解できていないのか頭をかしげる。

 

「まあ、これは、アズリールの策なんだけどね、アクシズ教のペンダントをつけていれば、アクシズ教徒だと思われて勧誘されないってわけ。」

「そういうわけなんだにゃ。」

「なるほど...確かに賢いな。」

 

少年カズマは納得したようにうなずく。

 

「そういえば、君たちはいつごろまで滞在するのかな?」

「ああ、後二日ほどいるつもりだ。」

「そうなんだね。私たちは明日帰っちゃうからこのペンダント貸そっか?」

 

と、クリスは首につけているペンダントを外す。

 

「いいのか?」

「問題ないよ。どうせ、私たちは街の中ではアクシズ教徒とみられているみたいだしね。それに明日帰っちゃうし。」

「クリスがいいならいいにゃ。」

 

私もペンダントを外した。

 




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十話 休日最終日

何とか間に合いました...
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しれっと、バーが染まっていてうれしいです。


「ジブリール。この本、面白かったです。」

「エリス様。それは、何よりです。」

 

エリス様の休日最終日。

私とエリス様は、エリス様の強い要望から私の図書館で時間を過ごしていた。

 

「では、次は何を読まれますか?エリス様?」

「そうですね...何かおすすめはありますか?」

「うーん...星の王子さまというのはいかがでしょうか。」

「星の王子さまですか?聞いたことはありますが...」

 

と、エリス様はこくりと首をかしげる。

 

「そうですね。一度は読んでみるといいですよ。私もこの本を読んで、いろいろと当たり前なものに対して考え直されたりしました。物語、というよりは考えさせられるお話といった本でしょうか。」

 

と、肩をすくめる。

 

「読んでみたいです。」

「わかりました。その本は確か、いつもの棚の上から10番目右から4番目の本ですね。」

「ありがとうございます。ジブリール。」

 

と、私たちは非常に穏やかな時間を送っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「そういえば、夕飯はいかがいたしましょうか?」

「ちょっと、待ってくださいね...」

 

と、満月が輝く夜、私たちは相も変わらず図書館にいた。

明日から、エリス様は、忙殺される日々を送らなければならない。なので早くお休みさせるためにも声をかけた。

 

と、唐突に、

 

ドーン

 

という音と、衝撃が、図書館全体に広がる。

 

「何事ですか?」

「どうやら攻撃を受けたようです。」

 

と、衝撃で後ろに吹き飛ばされかけたエリス様を抱え、後ろの羽で空中にホバリングをする。

図書館のメインの部分には当たっていないようで、魔法の照明などは問題なく点灯をしている。

しかし、下から何やら焦げたようなにおいが漂っている。

 

「確か...この図書館にはコロナタイトを使った魔導障壁がありませんでしたっけ?」

「ですね。すみませんが、魔力を少しもらえますか?」

「なぜですか?」

「私では賄えないほどの魔導障壁を一時的にはりたいからですね。失礼します。」

 

と、エリス様に口付けをする。

と同時に私以上に神聖な魔力が流れ込んできた。

 

「なっ...」

「では...『九遠第四加護(クーリアンセ)』」

 

と、私とエリス様を中心にして図書館を覆いつくすほどの障壁を作り出す。

外には、何やら虹色の靄がかかり、障壁に覆われたことが確認できた。

 

「はぁ。一応これで一安心ですね。」

「な、何をするんですか。」

 

下を見ると、顔を真っ赤にしてお姫様抱っこされたエリス様がいる。

 

「そこまで恥ずかしがらなくても...緊急事態ですし。」

「知りません。」

 

と、胸のあたりをポコポコと殴られる。

 

「わかりましたよ。このあれは、後ほど。」

「はぁ。それで何かわかりましたか?」

 

と、緊急事態には変わりがないことから、

エリス様は、切り替えて聞かれる。

 

「もしかしたら強制的にこじ開けられた可能性があります。ひとまず、『九遠第四加護(クーリアンセ)』という魔法で一日は守られているのでその間に、被害状況、兼、敵を確認しましょう。エリス様は、二階に行って天文台より敵の確認をお願いします。私は下に向かい神器の確認と消化をしてきます。」

「『クーリアンセ』ですか。」

「そうです。私の天撃でもってしても破ることができない強力な魔法ですね。」

 

と、エリス様を、天文台がある二階へと続くエレベーターへと乗せる。

 

「ジブリール。敵の位置はわかりますか?」

「問題ないです。聞こえてきた音の位置から大体82度~87度の大体150㎞~170㎞範囲圏内を見てください。大体そこらへんにあるはずです。」

「わかりました。ジブリール。気をつけてくださいね。」

「もちろんです。」

 

私は、エリス様をエレベーターに下すと急いで私は地下へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「何ということですか...」

 

私が、被害を受けた地下へと向かうと、そこには重要書庫に大穴が空いていた。

ここには、この世界の歴史的に残すべき重要な本などなどが収められていたはずだ。

このような惨状に怒りがわいてくるのを抑えつつ、被害の状態を見る。

 

最重要書庫、禁書庫は被害なし。制御室は...衝撃で軽くダメージを受けていますね...

神器保管所は壁にダメージはありますが、たぶんここで受け止められたようですね。

と、軽く炎上している、重要書庫の炎を魔法で抑える。

 

「奇妙ですね...魔導障壁に一切傷がありません...」

 

と、延焼が収まった書庫内で、調査を続ける。

炎上した箇所はひどく焼け焦げており、数百冊以上の本が吹き飛ばされたか、燃えてしまったが、残りの数百冊は問題なく保管されている。

また、不思議なことに私が配置したものやもともとあった魔導障壁に一切の傷が入っていなかった。

 

「もしかして...新種の魔法でしょうか...この魔導障壁は、魔法をすべて受け止める制約として、私が知っているという条件下でしたから」

 

と、障壁を触って調べる。

 

 

 

「それにしても追撃が入りませんね。」

 

薄く、虹色に輝く九遠第四加護(クーリアンセ)と、青い魔導障壁を眺めつつ攻撃してきた相手を考える。

 

 第一候補の悪魔が天界に攻勢をかけることは...この条件下では決して考えられない。万が一この図書館を落としたとなると、神々の道具である神器を地上に堕とすことになるうえに、神エリスの怒りを買うことが天界にどのような影響を与えるのかは考えなくても明らかだろう。さらには、悪魔が攻めてくるのであれば即、追撃が来て、私とエリス様だけでは、対処ができなくなっているはずだ。ここから悪魔ではないとわかる。

 

 第二候補、魔王軍。可能性はかなり高い。魔法が撃ち込まれた位置により、神器が入った部屋を確実に狙っており、そして追撃が一切来ない。地上のものが天上の世界の物に攻撃を加えることは大量に魔力を消費する必要がある爆裂魔法に近しい物でなければ決して不可能だ。それより連発して打つことが不可能だとも考えられる...

 

と、思考を巡らせていると、

 

「ジブリール。来てください。」

 

と、言う声が脳内に響いた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「誰でしたか。こんなものを撃ち込んできた輩は。」

 

私は、天文台の上でエリス様に伺った。

 

「魔王軍です。魔王軍幹部のシルビアです。」

 

と、エリス様がいつもとは雰囲気が異なり険がある様子で望遠鏡を指さす。

それを覗くと、そこには水色のスライムのようなもので体を構成している魔王軍幹部シルビアが人々を襲っていた。

 

「どういたしますか? エリス様?」

「それよりも、下の様子はどうだったのジブリール。」

「はい、重要書庫が破られて神器保管所を狙って撃たれたものだと思います。」

「どうして破られた?」

 

あいも変わらず、普段エリス様が口にしないような口調で聞かれる。

 

「はい、考えるに、爆裂魔法が進化したものだと考えられます。」

「爆裂魔法は、最上級の魔法ではありませんでしたっけ。」

「私も、様々な文献を見てそのように考えておりましたが、魔導障壁に一切傷がついておりませんでした。」

「本当ですか?ジブリール。」

 

と、エリス様は顎をおさえて考える姿勢からこちらに顔を向けられる。

目は、普段見ないほど曇っており明らかな殺意が見て取れる。

 

「そうです。普通の爆裂魔法では障壁の外で爆発を起こすはずですが、私の認識外の魔法を使われた場合は、前回私からエリス様がスティールしたようにそのまま内部でおこってしまいます。これよりそのように考えられます。」

「わかりました。ジブリール。私が出ます。」

 

と、おっしゃられ、エレベーターの方へと向かう。

 

「ダメです。私が出ます。」

 

私がその道を遮ると、

 

「なぜですか? 魔王軍幹部が直接天界に干渉してきたのですよ。」

「あなた様が出られると、地上に困惑がおります。プラスして、悪魔が裏で手を引いてる場合は天界と地獄で全面戦争になる可能性がございます。」

「そんなの、戦争をすればよいではないですか。」

「ダメです。そのようなことが起きれば、地上で収集が付かなくなり神話の時代が再来してしまいます。それだけは避けなければなりません。それに私のことが信用できませんか?」

 

と、あやすようにエリス様に抱き着き目線を合わせる。

するとエリス様は、少し落ち着きを取り戻したのか、恥ずかしそうに目線を外す。

 

「すみません。ジブリール。怒るといつもこうなってしまって...」

「大丈夫ですよ。」

 

と、エリス様が自責の念を駆られる前に強く抱き着く。

 

「ごめんなさい。ジブリール。」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「では、行ってまいりますね。エリス様。」

「はい、装備は大丈夫ですか?」

「問題ないですよ。」

 

と、デストロイヤー討伐の際にもらった、指輪を見せる。

エリス様は軽く泣きはらした顔を笑顔に変えて

 

「問題なさそうですね。ブレッシング。」

 

と、再度運を上昇させる、魔法を重ね掛けされる。

 

「そこまでなさらなくても...」

「大丈夫です。必ず帰ってきてくださいね。」

「もちろんです。」

 

と、私は、図書館を後にした。

 

 

 

 

 

攻撃をしてきた魔王軍幹部めがけて私は、一直線に向かっている途中、再度装備を確認する。

 

「デスサイズは、問題ありませんね。装備の指輪もそろっていますし。問題はありません。」

 

両指のエリス様から頂いた指輪を確認しながら、デスサイズを持つ。

いつも以上に黒い靄が出ており禍々しい雰囲気が漂っている。

多分、翼の方も真っ黒に染まっているのだろう。

 

「本当に迷惑なことをしてくれますね。せっかく今日は、エリス様の休みの最終日だというのに...それに私が数百年かけて貯めた本を台無しにしてくれて、一体どんな要件なんでしょうか魔王軍は。」

 

と、一人で怒りを吐露する。

私は、魔王軍幹部シルビアがいる場所へ、と向かっていった。

 

 

 




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十一話 紅魔の里

何とか間に合いました...
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「スキがないやつなんだぞ。」

 

と、カズマは一心不乱にシルビアから逃げる。

後ろを見ると、大悪魔のバニルとウィズがシルビアに常人では決してできないような攻撃を仕掛けているが一向にダメージを食らうようなそぶりはなかった。

 

と、同時に暗雲立ち込める、空からまがまがしい二つのボーリングのような大きさの黒い玉のようなものシルビアの近くに落ちてきた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

バニルさんは、天より落ちてきた黒い塊を見て、私に駆け寄った。

 

「これは...まさかな...貧乏店主引き上げるぞ。このままでは巻き込まれかねん。」

「バニルさん? まだ、里の人が...」

 

紅魔族の人々は逃げ纏っており、撤退するのにはあまりにも早すぎる。

そんなことは、どうでもいいようにバニルさんは続ける、

 

「緊急だ。済まぬが私は先に退散させてもらう。」

「バニルさん!!紅魔の村の人たちが...」

「最悪ここにいると、天界と地獄の全面戦争になりかねん。テレポート。」

 

と、バニルはいつもの余裕綽々の態度から一変、見たことのないように慌てた様子で、私を連れて、すごい勢いでテレポートしていった。

 

「ぬけぬけと逃げていったわねあの悪魔は。フフフ...」

 

と、シルビアはいまだに気が付いていないのか俺たちの方を見た。

すると、落ちてきていた黒い塊が地面につくと同時に爆発を起こした。

それぞれが爆裂魔法に近しい爆発を起こしており大きな爆炎を起こす。

 

「な、なんですかあれは...あんな爆裂魔法、私も打ってみたいです。」

「あの、爆裂魔法に当てられて...あ…ぁあ、私はどうなってしまうのだろうか。」

 

という、いういつも通りのパーティーメンバーにあきれを感じつつシルビアの方を見る。

そちらには、爆裂魔法に負けず劣らずのクレーターができており、同様にシルビアも想像以上の爆風にスライムのような装甲が一部剥げているように見える。

 

「何だったの? 今のは?」

 

と、爆弾が飛んできた方向に目を向けるとそこには、きれいに輝く満月を背景に見覚えのある一体の天使がいた。

それは、一度冬将軍に殺された際にエリス様の近くにいた天使そのものだった。

 

 

 

 

 

「バニルさん。何で、急にテレポートなんか。」

「貧乏店主、あっちを見ろ。」

 

と、少し離れた丘の上にバニルとウィズはテレポートした。

ウィズがバニルが指をさした方向を見るとそこには...

 

「ジブリールさん?」

「そうだ。それも、相当気がたっているように見える。」

 

と、背後に遠くからでもわかるほど禍々しい雰囲気を纏った等身大サイズのデスサイズを持ったジブリールがいた。

図書館にいた時のバニルさんのような軽い雰囲気はなく、笑顔で見下されているような...

 

「バニルさん、なぜあんなに怒っているかわかりますか?」

「いや、わからん。高位の天使ともなると本体の吾輩でないと見通すことはできぬ。」

 

 

 

 

 

「こんにちは。魔王軍幹部のシルビアさん。」

「お前は...」

「自己紹介がまだでしたね。私はジブリールと申します。以後お見知りおきを。」

 

と、丁寧に頭を下げる。

眼からは何か光のようなものが横から洩れている。

 

「なぜここに...」

「あら、そのようなこともわからないのですか?それともとぼけているのでしょうか?」

「何のことよ。」

「あいも変わらずとぼけていらっしゃるようで。そこまで理解のできないつぎはぎだらけの脳みそをお持ちなのであればぜひお教えしましょう。あなた、新種の爆裂魔法で私の天空図書館の一部を吹き飛ばしましたよね。」

「は?」

 

と、シルビアは、訳が分からなそうに答える。

ジブリールにはそのことが非常に癪に障ったのか、

 

「いい加減、そのごみのような猿芝居もやめてくれませんか、本当に腹が立ちます。魔王軍という存在自体を天界規定で見逃してやっていれば、この仕打ち。地を這うキメラ風情が、私の本を数十冊単位で燃やした挙句、エリス様の休暇の邪魔をする。」

「な、何よそれ。」

 

と、本当にわからないという顔をシルビアはするがそのことがさらにジブリールの怒りを買う。

 

「いい加減に...いや、気が変わりました。せっかく、いい機会ですのであなたの首もいただいてしまいましょうか。」

「はぁ。こっちのセリフよ。」

『そうだそうだ』

 

何やら半身となったベルディアと、ハンスもそちらに顔を向ける。

 

「魔王軍幹部のベルディアさんと、ハンスさんでしたか。討伐されたようでしたが、天界のほうに魂が届いてないという話はお伺いしておりましたが、そんなところでウジ虫のように寄生されて生きながらえているなんて思いもよりませんでした。せっかくなのでまとめて天界に送って差し上げましょう。」

 

と、蔑んだ目線を向け、背後に構えていたデスサイズを大きく振りかぶった。

 

 

 

 

 

向こうでは、激しい戦闘が始まっていた。

シルビアさんは、ジブリールさんの攻撃を受けるので必死なようですが、ジブリールさんは周りの紅魔族の人のことなど全く気にせずにシルビアさんに攻撃している。

 

「相当、お冠のようだなジブリール殿は。」

「バニルさん。ジブリールさんを止めないと。このままでは紅魔族の皆さんを巻き込んでしまいます。」

「貧乏店主よ。こと今回に関しては吾輩は一切手出しができぬ。たとえお前が絶大な対価を払って私と契約してもだ。」

 

仮面をおさえいつものおちゃらけた雰囲気なしにこたえられた。

 

「なぜですか?紅魔族の皆さんが巻き添えを食らいそうになっているんですよ。」

「少しが考えればわかると思うが、まあ良い。おぬしも長く生きているであろう、少なからず一度はエリス教の経典を読んだことがあるだろう。」

 

と、唐突に言われる。

 

「経典ですか...あ、」

「そうだ。あの歴史を再び繰り返すわけにはいかぬ。故に、貧乏店主。助けに行くのであれば一人で行きたまえ。」

「......わかりました。」

「......一つ、忠告を入れておく。ジブリール殿の攻撃は、特にリッチーと、非常に相性が悪い。貧乏店主、最悪、紅魔族を救うことはしても決して攻撃は加えるな、さもなくば目的を達する前に逝くことになるぞ。」

 

私はそのバニルさんには珍しい警告の言葉を聞き終える前に走り出した。

 

 

 

「はぁ。ジブリール殿があの様子であれば、シルビアは、即討伐されるだろう。はぁ。私は帰るとしよう。テレポート」

 

 

 

 

 

「おいアクア。」

「何よ。」

 

俺たちは、多くの紅魔族が逃げ惑う中を逃げていた。

これだけ、爆裂魔法が飛び交う危険な状態だというのに珍しくアクアが怖がっていないことに違和感を感じつつも、

 

「あれって、ジブリールだろ。」

「そうよ。相当というよりは、本気で怒っているみたいだけど。」

「あそこまで、バーサーカーになるのか。」

 

と、近くに黒い玉の爆裂魔法のようなものが落ち、爆風で軽く吹き飛ばされる。

 

「いってててて。」

「大丈夫? カズマ。」

 

と、アクアに何事もなかったかのように手を差し出される。

 

「ダメージがはいらないのか?」

「当たり前じゃない。神は天使の魔法攻撃に関しては基本的に全く効かないわよ。」

 

と、手をつかみ起き上がる。

あいも変わらず、戦闘を繰り広げておりジブリールの姿は先ほどのヴィズやバニル以上に早すぎて目で追えない。

 

「天界にいる天使って全員あんな感じなのか?」

「そうでもないわよ。あの子が特別なだけよ。ほら、早く逃げるわよ。」

 

と、アクアは、俺を連れて逃げていった。

 

 

 

 

 

「結構しぶといですね。どうです、今なら抵抗しなければ軽く首を落としてあげますよ。」

「は、そんなの認められるわけないじゃない。」

『そうだそうだ。』

 

あいも変わらず、下から生えてきているベルディアとハンスが頷く。

シルビアは、かなり消費しており、先ほど紅魔族相手に猛威を振るっていた魔術師殺しは見る影もなくボロボロになっている。

 

「あらあら、それは残念ですわ。それでは、」

 

と、デスサイズを振りかぶりシルビアの首へ切りかかる。しかし

 

ガン

 

と、言う音とともに、シルビアの直前で構えた大剣で受け止められる。

 

「うっとうしいですね。」

 

大剣によってはじかれ、ジブリールは宙へと吹き飛ばされる。

宙で体勢を立て直した後、ジブリールは、シルビアの頭上を飛ぶ。

その後、先ほどの黒い塊を槍のように変え上から打ち放つ。

槍は、デスサイズ以上に黒い靄を纏っており、見るからに凶悪そうだ。

 

「死ね。」

 

と、言う言葉と共に、その槍が投げられる。

 

「こんなところで死ねるもんですか。」

 

シルビアは、持っていたボロボロになった大剣を掲げ、受け止める。

しかし、

 

ギャン

 

という、音と主に、その摩耗していた大剣は砕け散る。

さらに、槍の勢いは止まらず魔術師殺しへと突き刺さり同時にベルディアの半身に突き刺さり、ベルディアの首が落ちる。

 

「まずは一匹目。」

 

と、言うなりジブリールは、楽しそうな笑顔を浮かべて攻勢を仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、こんなところでジブリール様に会えるなんて光栄だ。」

 

と、紅魔族が多くいる避難場所へ行くとそこには祈りをささげているダクネスがいた。

 

「おい、アクア。」

「アクア様でしょ。で、何?」

「ジブリールって、エリス教では有名なのか?」

 

と、言うとアクアは驚いた顔をする。

 

「え、そうだけど知らなかった?」

「そりゃそうだろ。まだこの世界に来てから一年しかたっていないんだから。」

「いや、一年もたっているのによ。」

 

と、言われる。正直この反応はむかつくが知らないのも相当なのかもしれない。

 

「カズマカズマ。ジブリールは、エリス教の経典では戦いと知識の天使のようです。」

「戦いと知識?」

「そうです。普段はエルキア大図書館というこの大陸の上を飛んでいる図書館に住んでいるみたいです。」

「そうなのか。どうしてそれを?」

 

と、カズマはめぐみんに問う。

あいも変わらず戦闘は繰り広げられている。

 

「紅魔族には一つの伝説があるんです。それは、我ら紅魔族、三大の力を束ね最強とならん。一つ、力を求むなら海を渡れ。そこに求むものはあらん。二つ、魔力を求むなら山へ向かえ。神殿の奥に求むものはあらん。三つ知識を求むのならば空へ行け。そこに、全知の天使は降臨せん。三大の力により我ら紅魔族は最強とならん。というものです。」

「なんだそれは?」

「言葉のとおりです。数百年以上前からある伝説で、力が欲しければ海に出て、魔力が欲しければ山の神殿を探し、知識が欲しければ空に行けというものですね。」

 

と、めぐみんは解説をする。

向こうではあいも変わらず、激しい戦闘が繰り広げられている。

 

「そうなのか?」

「そうです。それで50年ほど前でしたっけ、一人の紅魔族、知識の賢者でんきゅーが、空にて空中図書館を見つけたようで、大きく紅魔族の魔法を数十年分、推し進めてくれたんですよ!!」

「なるほど...」

 

と、話していると、唐突に、

 

「あそこに子供が...」

 

と、言う声が聞こえる。そちらを振り向くとそこには岩陰に隠れ震えている紅魔族の幼い少女がいた。

あいも変わらずシルビアと、ジブリールの戦いは続いており時折黒い爆裂魔法が飛び交っている。

少女は逃げ出そうにも逃げ出せない状況でちらちらこちらをうかがっている。

 

「どうしましょうか、カズマ。」

 

と、めぐみんは心配そうにこちらに聞いてくる。

紅魔族は、魔術師殺しのせいで魔法が使えなくなっている。

そのせいかこちらに皆一様に期待の目を向けられる。

 

「しょ...」

 

と、言う前に一人の女性が走り出した。

ウィズだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ジブリールさんの魔法のせいでぼこぼこになった道を走り私は少女のもとへ急ぐ。

紅魔族の戦闘の余波による犠牲者は、いないことをホッとしつつ私は取り残された少女のもとへ急いだ。

 

「お姉ちゃん。」

「よかった。」

 

と、少女を私は抱き上げる。

後ろからは、紅魔族の皆さんが安心して声を上げている。

このまま、テレポートして...

 

しかし、私の運も続かないようで

 

「お姉ちゃん危ない。」

 

と、少女に言われる。

そちらを見るとそこには黒い魔法が近くに迫っていた。

テレポートは間に合わないと思い私は

 

「『カースド・プロテクション』」

 

と、唱え、守りの魔法を張る。

無事に爆風から身を守ることはできたが、

 

「え? どうして?」

 

と、自分の体を見ると爆風は避けられそのうえ守りの魔法を張ったというのに体が消えかかっていた。

と、今までリッチーになってから感じたことがない同時に強い脱力感に襲われ倒れてしまう。全身から魔力が抜けたようにも感じる。

もしかして、バニルさんが言っていたのって...こういう...

 

「お姉ちゃん...」

「ごめんね。大丈夫だからね。」

 

と、力を振り絞り立ち上がる。魔力不足からかテレポートはもうできない。

目の前は、魔力不足からかもうろうとするが前へと進む。

しかし、運がないことに再度、目の前に黒い塊が落ちてくる。

私は、せめてこの小さな紅魔族の少女が助かるように

 

「『カースド・プ』」

「『セイクリッド・ブレイク・スペル』」

 

と、アクア様の声が聞こえる。

と、同時に目の前の黒い塊は一瞬にして消えた。

 

「大丈夫か? ウィズ。」

「カズマさん...」

 

と、言うのがいっぱいで私は気を失った。

 

 

 

「大丈夫か? ウィズ?」

 

アクアは少女を背負いつつ

 

「多分、魔力不足よ。」

「魔力不足? ウィズは魔法をよけていなかったか?」

「天界にいる天使や神の本体は基本的に今の私と比べ物にならないほどの浄化の力を持つの。だからよけたり守っても無駄よ。特に魔力で体を構成しているリッチーはね。そのせいで魔力をほぼ持っていかれたんじゃないかしら。ほら行くわよ。」

 

と、いつも以上に頼りになるアクアを片目に、二人を抱え俺たちは避難場所へと向かった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「久しぶりですねこんなに暴れられるなんて。」

 

ジブリールは、手についた返り血をなめつつ言う。

 

「化け物...」

「あら、それは意外ですね、バケモノように他人の部位をくっつけるキメラ風情が。」

 

と、下を見る。

そこには、無残にもベルディアと、ハンスの生首が転がっており満身創痍となった隻腕のシルビアがいた。

 

「最近は、天界規定が厳しくてですね。なかなかレア物の首を手に入れることができませんでしたがこれで終わりですね。これでコレクションが三つ増えます。」

「こんなやつが、エリス神の天使をしているのか...天界も落ちたものね...」

 

と、恨めしそうにこちらをにらみつける。

 

「あら、気が付きませんでしたか?」

 

と、にこやかに抵抗することをあきらめたシルビアに近づく。

そしてあおるように、返り血が付いた手でシルビアの頬を撫でる。

 

「私たち、いや私はあくまで、私とエリス様そして本が無事であればほかのことなんて、正直どうでもいいんですよね。正直、人間種(イマニティ)神霊種(オールドデウス)も。」

 

そして、ジブリールからにこやかな雰囲気ががらりと変わり、険のある雰囲気に変わる。

 

「だから、数百冊の本とエリス様の邪魔をしたあなたを私は許さない。ではさようなら。」

 

と、にこやかな笑顔を浮かべた後、デスサイズを軽く一回転させシルビアの首を飛ばした。

 

 




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一二話 エルキア大図書館

あけましておめでとうございます。
投稿遅れてすみません。

言い訳としては、正月が死ぬほど忙しかったです。
お気に入り登録715↑ありがとうございます。


「何があったのだ?」

 

と、天上より問われる。

 

「は、空中図書館が攻撃を受けました。」

「空中図書館がか?」

「そうです。」

「なるほど...魔法は、はじかれなかったのか? 元々、あそこにはそれなりの防御を固めていたのだが、」

「はい」

 

と、私とエリス様は頭を下げた状態で話す。

 

「被害はどの程度だったのでしょうか?」

 

と、声が変わり聖母のような声が聞こえる。

 

「はい、魔導障壁を抜けきり一発の爆裂魔法が神器保管所に直撃しました。」

「爆裂魔法ですか?我々も殺しうるという。」

「はい。普段であるならば障壁の外で爆発が起こり、被害があったとしても外壁だけというはずでしたが、なぜか、術式が内部まで侵入し神器保管所の壁で爆発が起こりました。その結果、神器保管所に穴が開きました。」

「そうですか...」

 

と、天上の神々が憂う声が聞こえる。

 

「はい、そこで私たちは発射した位置を割り出したところそこに、魔王軍幹部がおり図書館にある神器もしくは、重要な本を持ち出すために攻撃を受けたのだと思いカウンターをかけた次第でございます。」

 

と、頭を深く下げる。

同時にぺらぺらと何かをめくる音がする。

 

「なるほど...確かに天界に魔王軍のシルビアと、ハンスと、ベルディアが来ておる。しかし魔王軍三体はやりすぎではないか?」

「失礼ながら発言をよろしいでしょうか?」

 

と、発言の許可を求め、エリス様は手を挙げる。

 

「どうした神エリスよ。」

「はい、もともと魔王軍ハンスと、ベルディアは、人間の冒険者により討伐されておりました。しかし、その魂は天界や地獄に堕ちずにシルビアの中に寄生していたようです。」

「それは誠か?」

「はい」

「嘘ではないようね。」

 

と、言うような声が聞こえる。

 

「そうであるか...あい分かった。今回、天界規定に反したことは不問としよう。それと、悪魔の関与はあったか?」

「戦っている間は一切見かけませんでした。気配すら。」

「そうですね。図書館の方にも一切来ていませんでした。」

 

「ならば問題ない。下がれ。」

 

と、言う言葉が投げかけられた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「最近はいかがでしょうか? エリス様?」

「問題ないです。結構調子がいいんですよ。温泉のおかげで肩こりも取れましたし。」

「それはよかったです。」

 

と、天界の道を二人で歩く。

天界は大理石のようなもので舗装されており、天上には燦々と輝く太陽と、月が見て取れる。

 

「できれば、今日、仕事を手伝ってくれませんか?」

 

と、聞かれる。

ぜひ、手伝いところだが今日はどうしても用事がある。

 

「申し訳ありません。今日は、別件で用事がありまして...」

「そうですか...」

「サトウカズマでしたっけ。そのお方を今日招く予定でしたので。明日であるのであればお手伝いいたしますよ。」

「英雄譚の製本ですか。」

「はい。気が向けばいらしてください。お待ちしていますね。では失礼します。」

 

と、軽く一礼をした後、私は立ち去った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

時は巻き戻り。カズマ邸

 

「つまり、お呼ばれしたってことか。」

 

と、サトウカズマは手紙を広げて読んでいた。

俺は紅魔族であったごたごた騒ぎは収まり家でのんびりしていると、白い修道服を纏った女性が届けに来たものだ。

そこには、

 

『サトウカズマ様へ

 

初めまして。突然のお手紙失礼いたします。私はジブリールと、申す者でございます。魔王軍幹部討伐のお話が伺いたいです。ぜひいらしてください。

 

 

P.S 必ず一人でいらしてください。

神エリスEllis 大天使ジブリールJibril

 

 

と、短く()()()で書かれていた。

と、同時に魔道具が入っており掌の上に収まるサイズの物だった。

 

「ひとまず、魔道具を見てもらうためにもウィズ魔道店に行くか。」

 

と、俺は腰を上げた。

 

 

 

 

 

「よく来たな小僧。」

 

ウィズ魔道具店に入るとそこには、いつものように棚を整理しているバニルがいた。

 

「しかし、珍しいな、小僧一人で来るなんて。」

「いや、紅魔族の時にいろいろとあってな。今日は一人でのんびりしていたってわけ。」

「そうか...」

「それよりもウィズはどこにいるんだ?」

「ああ、確かお得意さんにポーションを届けるといっていたな。」

「この店にお得意さんなんていたんだな。」

「そうだな。我も初めて聞いたときは驚いたものだ。もう少しで帰ってくると思うぞ。」

 

と、肩をすくめる。

 

「わかった。店の中で待っていてもいいか。」

「問題ない。」

 

と、話していると外から

 

「バニルさん。帰りましたよ。あ、カズマさんいらしていたのですね。」

 

と、言う声が聞こえた。

 

 

 

「ウィズ。この魔道具の効果は分かるか。」

 

と、手紙についてきた魔道具を二人に見せる。

 

「これですね。失礼します。」

「少し待て、多分これは天界の物であろう。」

 

と、棚を整理していたバニルが横から魔道具を取り上げる。

 

「おい小僧、これをどこで手に入れた。」

「いや、手紙についてきただけで。」

 

と、ポケットから手紙を取り出す。

バニルはそれを軽く読むと、

 

「なるほど...とうとう小僧もジブリール殿に呼ばれるようになったか。」

「どういうことだ?」

「いや何、恒例行事というものだ。誇り給え、ジブリール殿に呼び出されるということは英雄譚が作られるということと同義なのであるからな。」

「はぁぁ?英雄譚?」

 

と、声を上げた。

 

「そうだ。英雄譚だとも。この世界で、貴殿も一度は読んだことはあるであろう。」

「いや、一度も。」

「そうであるか...貧乏店主、何かそのような本は持っていなかったか?」

「英雄譚ですか...そうですね...」

 

と、ウィズは軽く頭をかしげる。

 

「エリス教会から出されたものが二、三冊持っていたはずですがそれでいいですか?」

「無論だ。」

「少し待ってくださいね。」

 

と、ウィズは近くの棚の中から本を取り出す。

そこにはきれいに製本された本が出てきた。

 

「これですね。こっちが勇者キンジのものでこちらは勇者ミヤシタの物ですね。」

 

と、机の上に並べられる。

その本は、こちらの世界では見たことがないほど紙が白く見るからに高級感が漂っている。

 

「す、すごいな。」

「無論であろう。エリス教の総本山から出ているからな」

「ウィズ的にはどちらのほうが面白かった?」

「そうですね...私は正直なところ勇者キンジのほうが面白かったですね。どちらとも、読み始めてたら止まらないほど面白いのですが。」

「確かにな。吾輩もかなり楽しませてもらった。」

 

と普段、人を小馬鹿にするバニルは珍しくほめる。

そのことに驚きつつ、

 

「そこまでなのか?」

「はい、とても面白かったですよ、参考のためにも軽く読んでみては?」

 

と、一冊本を差し出される。

正直、バニルが絶賛するというだけでも読んでみる価値はあるかもしれない。

 

「じゃあ、失礼して...」

 

と、本を読み始めた。

 

 

 

 

 

カズマさん。カズマさんカズマさん

 

と、言う声が聞こえる。

そちらの方に目をやるとそこにはウィズがいた。

かなり集中していたのか、かなりの時間が過ぎていた。

 

「ああ、すまない。この本何か魔法がかかっているのか?」

 

と、想像以上に読み込んでしまった

 

「特に、かかってはいないぞ。」

「そうですね。エリス教会より直接仕入れたものですので特には。」

「すごいな...」

 

と、瞬時に30分近く過ぎてしまった現状に驚きつつ、本を見る。

 

「これに、俺が書かれるのか...」

 

正直、このように書かれると考えるとかなりこっぱづかしいように感じる。

しかし、どのように書かれるのか読んでみたいとも思う。

 

「ウィズ。何をしたらこんな英雄譚を書かれるんだ?」

「は、はい。確か...魔王軍幹部を一体でも倒すと書かれます。」

「なるほど...」

「要は、エリス教の一種の広報活動のようなものだな。」

 

と、バニルは悪魔らしい答えをする。

 

「そういえば、バニル。」

「どうした、小僧。」

 

くるりと一回転をし、こちらを見る。

 

「バニルって、悪魔公爵なんだろ。」

「正確には地獄の公爵であるがな。どちらでも大して変わらん。」

「一つ疑問に思ったのだが、どうして悪魔と真反対の存在の天使のジブリールを、そこまで旧知の仲のように語るのかと思ってな。」

「ああ、そのことであるか...」

 

と、バニルは困ったように頭に手をやる。

 

「そうです。私も気になっていました。どうしてバニルさんは、悪魔なのに天使のジブリールさんが管理している空中図書館に入れるのか疑問でして。」

 

と、ウィズは追い打ちをかける。

バニルは、軽く考えた後、

 

「まあ、貴様らが生まれる数百年前にジブリール殿とはいろいろあってな。いわゆる腐れ縁というやつだ。」

「なんだそれ。」

「そういうことにしてくれ。話すとなると数日かかる。」

 

と、肩をすくめる。

 

「まあ、いいか。それで、この魔道具は結局どのようなものだったんだ?」

 

と、いつの間にか机の上に置かれていた魔道具を指さす。

 

「これは、エルキア大図書館に、サトウカズマさんだけが一度だけエルキア大図書館テレポートできるものですね。」

「エルキア大図書館? 確か、ジブリールが住処にしている場所だったか。」

「そうですね。それでですね、この魔道具がすごい点としては、魔力を使用者が使わなくても内蔵された魔力で飛ぶことができる点ですね。特に、テレポートは、消費魔力が大きいですから。それでですね。それに、一度使えば術式が破棄されるという点もいいですね。」

 

と、魔道具のすごい点語りをウィズは語り始める。

 

「まあ、それはいいとして感謝する。」

 

と、多分ウィズの話が終わらなさそうなので途中で切る。

 

「ちょっと、ちょっと待ってください。まだお話は...」

「まあいい。それよりも小僧。せっかくだエルキア大図書館に行くのであればこの本を返してくれないか。」

 

と、2,3冊本を渡される。

 

「と、いうか、一つ気になるんだが、ジブリールって紅魔の里であった奴だろ。悪魔に聞くのもあれだけど大丈夫なのか?」

 

魔王軍のシルビアと激しい戦闘をしていたはずだ。

 

「ジブリール殿は、普段はかなり温厚だぞ。あの戦闘を見た後ではそうとは言えないかもしれないがな。ハハハ。」

「逆に心配なんだが...」

 

と、シルビアを攻撃している際の一瞬見えた獰猛な笑みを思い出す。

 

「そうですね。普段はとてもやさしい人ですよ。まさか一発、攻撃が掠るで瀕死状態になるとは思いもしませんでしたけど...」

「だから、やめておけといったのだ。せめて吾輩の目的が達するまでは。」

「そうか...」

 

天界からアクアをいじっている姿と、本気の戦闘の時しか見ていないから何とも言えない。

 

「まあ、人間でもあるだろう。温厚なものほど怒ると怖いっていうやつだな。じゃあ、任せたぞ」

 

と、バニルは店の裏へ行ってしまった。

 

「カズマさんの英雄譚、楽しみにしていますからね。」

「じゃあ、行ってくる」

 

と、魔道具を発動させた。

 

 




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一三話 エルキア大図書館2

投稿遅れてすみません。
最近死ぬほど忙しいです。

お気に入り登録935↑ありがとうございます。


周りが光に包まれ、まぶしさから俺は目を閉じる。

気が付くと、先ほどのウィズ魔道具店の店内は跡形もなくなくなり、バニルに渡された本数冊とともに草原に寝っ転がっていた。

 

「ここは...」

 

と、周りを見渡す。すると、

 

「え、あれって...」

 

と、まるで飛行機から街を見たように小さな町が広がっている。

下を見ると薄く青い膜のようなもので、覆われており、地面からすごく離れていることが分かる。

 

「おいおい、マジかよ...」

 

と、空島の中心に視線を向ける。

そこには、大きな建物がそびえたっていた。

屋根はドーム状になっておりとても、きれいだ。

と、見ていると、唐突に誰かに声をかけられた。

 

「いらっしゃいませエルキア大図書館へ。サトウカズマ様。」

 

そちらの方向に振り向くと、そこには一体の天使がいた。

そこには、紅魔族の里に行ったときに戦っていた、ジブリールその人が、現れた。

片手には本を抱えており、紅魔族の伝説で聞いた通り知識の天使であることを雰囲気よりひしひしと感じる。

服装は、歓楽街のサキュバスに近い服装をしており、スカート代わりといわんばかりに二本の紐が腰から伸びている。

頭には、あいも変わらず魔法陣のような天使の輪がまわっており、白く輝いている。

そのように観察をしていると、

 

「いかがされました?」

 

と、聞かれる。

 

「いや、天界にいた時と比べて服装が全く違うなっと、思ってな。」

 

天界では、もう少し落ち着いた服を着ていたはずだ。

少なくとも今のような恰好ではなかったはずだ。

 

「ああ、そのことでしたか。天界では、露出が多い服は控えるようにというものがありまして、普段はとても動きやすい今のような恰好をしていますよ。」

 

と、にこやかに返される。

返事からも、駄女神などとは違う、エリス様に似たヒロイン感をすごく感じる。

 

「ああ、そうだったのか。」

「そうですね。では、こちらにいらしてください。」

 

と、俺はジブリールに連れられて、図書館内へと入った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「本当にすごいな。」

 

図書館に入った廊下の時点で、隙間なく左右に本棚があり、その本棚にも空いているスキマがないほどぎっちりと本が詰められている。

さらには現在いる中央の部屋は特に本の数が多く、中には本棚が宙に浮いていたり、上が見えないほど積み上げられた本棚が目に入る。

 

「そうですね。かれこれ数百年、数千年かけて集めた蔵書ですから。こちらに座ってください。」

 

と、席を指さされる。

図書館の中央には丸い開けた空間があり中央には大きな丸い円卓があった。

 

「では、よくいらしてくださいました。勇者サトウカズマ。お茶を用意しますので、少しお待ちくださいね。」

 

と、自分が円卓に座ったことを確認すると、ジブリールは軽く一礼した後、本棚の奥へと消えていった。

俺は、周りを見渡す。

相も変わらず俺は円卓を中心に本棚に囲われており向こうには、書斎用の机があり山のように本が積まれていた。

 

「あんな量の本を読んでいるのか...」

 

と、軽く驚きつつも、周りを見渡す。そこで、見覚えのあるタイトルを見つけた。

 

「これは...ハリーポッター...なんでこんな本がここにあるんだ。」

 

と、近くの本棚にあった本を取り出す。

本は、シリーズ7巻全てありそのうえこの世界の言葉で書かれている。それも、一文字一文字、手書きで書かれている。

近くを見ると、()()()で書かれたものもあり、こちらも一つ一つ手書きされていた。

 

 

 

「お待たせいたしました。」

 

円卓で、先ほど見つけたハリーポッターを読んでいると、ジブリールが戻ってきた。

手には、お盆を持っており、そのうえに二つの紅茶と、饅頭がのっかっていた。

たしかあの饅頭は...アルカンレティアで見たことがある...

 

「あ、本を読まれていたんですね。どうですか?」

「まさか、元の世界にあった本を読めるとは思わなくてな。」

「そうですか...どうされますか? 少しお読みになられますか?」

 

ジブリールはにっこりと笑う。

その様子に軽く癒されながら、

 

「いや、大丈夫です。」

「そうですか...では、失礼して、」

 

と、紅茶と、アルカン饅頭を出される。

 

「では、お話を伺いますね。」

 

と、俺はジブリールから今までの冒険譚を聞かれた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「なるほど...」

 

ニ、三時間ほど話を聞かれた後、俺は紅茶をすすっていた。

窓から入る光はオレンジ色に輝いており夜が近くなっている。

 

「とても面白いパーティーメンバーですね。一人は女神と自称するアクシズ教のアークプリースト。二人目は、爆裂狂の紅魔族。三人目は、ドMのクルセーダーですか。」

「そうなんですよ。できれば、もう少しまともな人が欲しくてですね...」

 

と、いつも思っている、ことを口に出す。

天使ジブリールは、軽く苦笑いをこぼした後、

 

「しかし、転生してからこんなスピードで魔王軍を倒されたのはあなたが初めてですよ。それも、大悪魔バニルまで倒したのですから。」

「そうなんですか?」

 

俺がかなり苦心はしているが、できているのだからほかの人もうまくやりそうなものだが...

 

「はい、いままで転生された方でも最高二体ですから。ここ数百年は誰も攻略はできていませんでしたね。」

「そうなんですか...」

「はい、今回の措置もかなり特例なのですよ。普段であれば、亡くなった後、天界へと送られた魂からお話を伺うのですが、まさか一年立たずに攻略されてしまうなんて...」

 

かなり、俺の功績がすごいらしい。

正直な話、単純に、俺は周りの仲間に振り回されていただけなのだが...

 

「さて...どうしましょうか? どのようにまとめてほしいですか?」

「どのようにとは?」

「いや、まとめ方としては、いつも通り、しっかりとした英雄譚としてまとめるのもよさそうではありますが、せっかくなのであれば、異世界珍道中のようにまとめてもよいかなと思いまして...」

 

珍道中?なんだそれは?

と、頭を傾げていると。

 

「ああ、すみません。いわゆる、面白おかしくまとめて、笑い話風にしてみるというものですね。ここまで、話を聞いて面白いのは何分初めてでしたので。」

 

ジブリールは、クスクスと笑う。

正直、俺の苦労話がほとんどなのだが、しかしウィズ魔道具店で読んだような天使ジブリールが書いた本は一度は読んでみたい。

 

「できれば、どちらも書いてもらえますか。」

「英雄譚と、珍道中、両方ですね。わかりました。では、書きあがり次第、お手紙同様に、エリス教の総本山のエウリエアのエリス教会より郵送いたしますのでお楽しみにしてくださいね。本日はありがとうございました。」

 

天使ジブリールに頭を下げられた。

同時に

 

「ジブリールいますか~。」

 

と、言う声が聞こえた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「ジブリール。仕事終わりましたよ~。」

「エリス様。今...ちょっちょっと。」

 

と、廊下の向こう側で、エリス様は天使ジブリールに首に手を回して抱き着いている。

俺はなんか見てはいけないものを見ている気がし、目をそらす。

 

「せっかくなんで癒してくださいよ~。」

「ですから今は...んっ」

 

と、言う声とともに軽い水音が聞こえる。

俺は気まずさと、見たいという欲求で軽く本棚から覗く。

そこには、神エリスがおり、ジブリールに向かって背伸びをしてキスをしていた。

な、なるほど...天界に送られた際に、神エリスと、天使ジブリールが妙に仲が良かったのはそういうことだったのか...

と妙に納得していると、

 

「あ...え?」

 

どうやら、エリス様と目が合ったらしい。

エリス様は、素っ頓狂な声を出した後、とてつもなく慌てている。

 

「ジブリール。人がいるじゃないですか。」

「だから、朝申しましたよね。今日お客様がいらっしゃると。」

「...。」

 

エリス様は、見たこともないほど真っ赤に頬が染まっている。

はぁ。と、天使ジブリールは軽くため息をついた後、

 

「すみません。勇者サトウカズマ。見苦しいところを見せてしまいました。」

「何か、素晴らしいものを見せてもらいました。」

「うん?」

「い、いえなんでもないです。」

「そうですか...エリス様。ひとまず、円卓の方へ向かいますね。」

 

と、エリス様を連れ、ジブリールは向かってきた。

 

 

 

 

 

 




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次こそは一週間以内に投稿したいです。


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