ダンガンロンパ ~Skill killer~ (うるる)
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こんにちは、希望ヶ峰学園 ①
「……んっ」
朦朧とする意識の中、私は顔をゆっくりと上げる。目覚めた先は何やら教室のような場所だった。
周囲は暗く、周りには誰もいない状態だった。ちょっとちょっと、一人で孤独な教室とかホラーの典型例じゃん、止めてほしい。
状況を確認する前に、まずは覚えている事を整理しよう。
私は確か『私立希望ヶ峰学園』と呼ばれる場所の入学権利を得て、その入学式の為にやってきた筈だ。
ちなみに『私立希望ヶ峰学園』とは、あらゆる分野において活躍する事が出来るエキスパートや優等生を育成するための一流学園、いわばそこに入学できれば将来が約束されたも同然な場所である。
当然その学園に入るには条件がある。
一つ「現役の高校生であること」
もう一つは「何かの分野において圧倒的に秀でている事」。
私は今回【超高校級の相談者】浜野ひとみ として、この学園に入学が決まっていたのだ。
【超高校級の相談者】
浜野 ひとみ
それで私は校門に一歩足を踏み入れたのだけど、その瞬間に視界が歪んで……ダメだ、そっから先は思い出せない。
あ、ちなみに相談者っていうのは、いわば心の相談室みたいな役目を持った人のこと。私は両親を亡くして以来悲しみにくれ、そう言った悲しみを他の誰かにも背負ってほしくないと思い、各地を巡回しながら悩みを抱える子の相談役を請け負っているの。
その数は、もう数えきれないね。
「よしっ、視界が歪んで意識を失い、気づいたらこの教室にいた、と! ……どういうこと!?」
本当にどういうこと何ですか? まずなんで視界が歪んだのだろうか? あぁ、ついつい深く考え込んでしまう。才能病かな?
落ち着いて、深呼吸して、この先どうしようか考えよう。周りに何か気になるものとかはないかな……。
というか窓全て板で固定されて、外がどういう状況か確認できないのはどういうことなんですかね!?
見渡すと、教室の壁に取り付けられた黒板に視線が映る。そこには大々的に文字が刻まれていた。
『8:00 体育館集合』
……8時!?
私は腕時計を確認する。そこにはしっかりと『8:12』と針は差していた。完全に遅刻である。
「まずっ……!?」
相談時間に遅刻しちゃいけない身分の私が遅刻なんて、笑えないお話ですよっ!
状況がどういう事か分からないけれど、私は一目散に教室を飛び出し、体育館へと向かう。
というか体育館ってどこなんですかー!?
「……あぅ!?」
「どぁ!?」
辺りを見渡しながら走っていた為か、前からやって来る人影に気づかず、そのまま追突事故を起こしてしまう。
私と人影は同時に尻もちついて転倒する。
「いたた……」
「何だぁ? って、前から人来てたのか、すまねぇすまねぇ! 大丈夫か?」
「いえ、私が前見てなかったので、貴方は?」
「俺は平気だが……うし、傷もないな!」
少年が手を差し伸べてきた為、私はそれを取ってゆっくりと立ち上がる。
「ありがとうございます……」
「悪いのは俺なんだから感謝はいらんぞ? っとと、自己紹介が先か? 俺は才津かける! よろしくな」
「すみません……。私は浜野ひとみ。【超高校級の相談者】です」
私がそう名乗ると、かける君も驚愕した。
「え、超高校級?」
「何か?」
「アンタもその口か! じゃあこっちも言わんとな、俺は【超高校級のハッカー】だ!」
【超高校級のハッカー】
才津 かける
「その口って……しかもハッカー?」
「おう。あ、本名はここ以外じゃ内緒な? アンタもどうせ【希望ヶ峰学園】に呼ばれたけど、気づいたらここにいたーって話だろ?」
「う、うん……アンタもってことは」
「おれもだ!」
良かった……私だけじゃなかったんだ。もし一人だけだったらどうしようかと思っちゃった。
「かけるくんは何してたの?」
「ん、俺は体育館に来てない残り一人を~……」
「あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
安堵したのもつかの間、私が急いでいた理由を途端に思い出す。そうだ遅刻だ!!
というか残り一人って言ったよね、つまり私だけってことじゃん!!
「あぁ! 今8:21!? マズイマズイ! 体育館ってどこかわかる!?」
「何だ何だ、残り一人ってアンタか! なら急がねぇと! こっちだ!」
私はかけるくんに誘導され、体育館へと直行する。だんだんと人の声が無数に聞こえてくる。
きっと迷惑かけてるんだろうな、申し訳ないことをしてしまった……。
「そういえば、窓やらなんやらが封鎖されてる事、皆は気づいてた?」
「当たり前だろ? ったく、なんの冗談かっての!」
やはりこの不可解な状況は何処も同じみたいだった。一体誰がこんなことを仕込んだのか……。
学園側? いやいや新入生にそんな事するかって。
そうこうしている内に指定の体育館へとやって来る。この学園、入り組み過ぎてて分かりづらいのではないだろうか?
食堂に教室、挙句の果てには遊戯室まで、まるでここで生活しろと言わんばかりの充実さだ。
「……」
何かと不安要素はあるが、私はかけるくんと共に、その体育館を開いた。
そこには、私達と同じ超高校級の肩書を持つ人達が、14人集まっていた。
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こんにちは、希望ヶ峰学園 ②
体育館の扉を開く。
眩い電光に照らされ、視界が一瞬だけ白色に染まる。それが晴れた先に待っていたのは――
私達以外の超高校級の肩書を持った、14人の男女だった。
「おー来たかー。遅刻も大概だぞー?」
「ご、ごめんなさい……」
「おう皆ー、残り一人を連れてきてやったぞー!」
「zzZ……また煩くなる……」
真っ先に反応したのは、ポッキーを加えた女の子と奥で寝ているイヤホンをつけた白衣の女の子だった。
それを機に、他の生徒たちも次々と反応を示し出す。
「はっはっはっ。素直に謝れる子はいい子だ、僕みたいに礼儀正しくない人じゃないようで安心だ」
「中々可愛い女の子じゃねーか! 俺のアイドルプロダクションにピッタリの人物ッ!」
「ア、アイドル?」
「あぁあぁ気にしなくていいヨ~。このアホはいつもこんな感じだからネ」
何やら個性的な人達ばかりみたいだ。この先楽しくやっていけるのだろうか?
心に悩みを持つ子と喋る日々が毎日だったため、こういう明るい子たちを相手にするのは少々苦手である。
変な人と思われたらどうしよう。
「……それで。この後どうするのかしら? 体育館に待っていなさい。という内容でしたけれど」
「そういえば、黒板に書いてあったよね。でもそんな雰囲気じゃないってことは……」
「まだその準備が整ってないんじゃないかな~!」
「片手で体育館の上でぶら下がるな怪力バカ」
「馬鹿ってなにさ! 馬鹿って~!」
「フッ、まぁいいじゃないか。折角の機会、進展があるまで、皆と親睦を深めようじゃないか!」
「面倒」
「お、それいいな! 眠木の言う通りだ! それじゃあ、皆で自己紹介しようぜ!」
かける君が、仮面をつけた男性の提案を切っ掛けに、時間稼ぎの場を作ってくれた。
本当にこういう事が出来る人がいるというのは有難いことである。
「いいねぇ~。じゃぁ誰からやろっか!」
「それじゃ、俺と
「え!?」
「ん、嫌か?」
「嫌じゃないけど……」
いきなり陽気に掴みかかって来ると驚くので出来れば止めて頂きたい。
ビックリ系は心臓と心に悪いんだ。
まあそれは一先ず置いといて、私は先ほど話しかけてきたポッキーの少女に声をかける。
「んおー、私から?」
「嫌だった?」
「んや、別に。自己紹介だったかな~? 私は時臣 しおめ、よろしくな~。肩書は【超高校級の大食い】」
【超高校級の大食い】
「大食い!? その身体で!?」
彼女の体型は明らかに大食いと呼べるようなものではなく、非常に綺麗なモデル体型だった。
「おー、やっぱみんなそう言うんだ。人は見かけによらずだよ? これでも回転すしの在庫食いつくした事もあるし」
「そ、それは異常すぎないか?」
「そうかぁ~? ま、皆も沢山食ったほうがいいぞ?」
「わ、私は小食だから……ははは。あ、私は浜野 ひとみ。【超高校級の相談者】だよ」
「俺は才津 かける! ハッカーだ! よろしくな!」
「おーおー、よろしくなぁ~。あ、ポッキーあげるよ」
「ははは、ありがとう」
比較的大人しめで奇策な方で良かった。何となく友達になれそうな気がする。
しおめちゃんと離れ、次は体育館のステージの方にいる女の子と男の子2人に話しかける。
「えっと、初めまして。私は浜野 ひと……ねぇ、君ずっと体育館の上にいるの!?」
「うす! そうだよっ! こうしてると落ち着くんです!」
「ふん、怪力バカのやる愚かな癒し行為だな」
「ちょっと! さっきから馬鹿ってなんですか!」
「ま、まあまあ落ち着いて。あ、私は浜野 ひとみ。【超高校級の相談者】で、こっちが才津 かける君。【超高校級のハッカー】だよ」
「あ、自己紹介ですか? 私は霧島 しほ! 【超高校級の怪力】~なんて呼ばれてるね!」
体育館のステージにシュタッと着地した青と黒の制服を着た少女が、そう宣言する。
【超高校級の怪力】
霧島 しほって名前、聞いたことある。確か小柄に体型にも拘らず、重いダンベルでも大木でも軽々と持ち上げてしまう力の持ち主……だとか。
確かに、長時間ぶら下がっていたとは思えない体型だ。さっきのしおめちゃんぐらいかな。
「怪力かー凄いね!」
私はスッと握手しようと手を出すが、横にいた男とかける君にそれを制止させられる。
「?」
「やめとけ、死ぬぞ」
「骨折でもしたらどうするんだ!?」
「え? え?」
「二人とも酷いですよー!」
彼女がぷぅ~っと顔を膨らませながら、腕をブンッという音と共に体育館のステージに叩きつける。
刹那、その場所に大きな凹みが生まれた。その場にいた全員がその姿を見て唖然とした。
「……たしかに、死ぬかも」
「だろ?」
「全く、喧しいガキは嫌いだ」
「まあまあ。それで、貴方は?」
「ふん。青原 くりゅう。【超高校級の釣り師】覚えてもらわなくて結構だ」
釣り竿を担いだ飄々としたジャケット姿の男性が、そう小声で告げる。
【超高校級の釣り師】
「青原家って、確か大きな漁港を経営している人だよね。ニュースでみたよ」
「ああ。別に継ぐ気はないがな。俺は好きに竿を振ってればそれでいいからな」
「な、成程……」
「にしても、しほとくりゅうってさ、ここに来てからいつも二人だよな。知り合いなのか?」
そういえば、体育館に来てから常に二人で喋ってる気がする。
「うす! うす! 実は同じ高校で同級生なんです!」
「毎日怪力アホに振り回されて、いい迷惑だがな」
「アホに変えるなー!」
「ははは……そうなんだ。今回も一緒になれてよかったね?」
「うす! 知り合いがいないと心細いしね」
「ふん。全く」
口は悪いけど、彼もまんざらではなさそうな感じに返答する。
喧嘩ばかりせずに仲良くしてほしいものだけれど……。
私とかける君は二人と離れ、次なる相手を探し出した。
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