ソードアートオンライン エロスフラグメント (愁雨)
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物語を語る前の書き捨て

 

 

 嫉妬と言えば可愛い感情だった。

 結城明日菜こと《閃光のアスナ》はインクラッド75層以前はデータ上とは言え、婚姻していたパートナーである《黒の剣士》キリトを遠目に見ながら溜息を吐いた。

 

 彼の隣に 自分以外の女の子がいる。

 

 電脳世界に人を閉じ込め、デスゲームを強要されることになったフルダイブ型MMORPG【ソードアートオンライン】アインクラッドのでの死闘は様々な事象を経て決着がついた。

 その顛末はここで語ることはない。

 正史とは違う道筋を辿ったそれは 【インフィニティモーメント】あるいは【ホロウフラグメント】と称されることになった。

 

 だが。

 それと同時に キリトの回りには、多くの女性が集うことになった。

 正史ではアインクラッドに関わることのなかった少女達の来訪。

 

 

 キリトはその少女達を見捨てることはできない。

 故にその手を差し伸べた。

 そして、全てが終わったとき、アスナ以外の少女の手をとる結末すらあり得る運命の分岐がそこに生じた。

 

 

 そんな前置き前提があった上で

 

 キリト君が他の女の子と組んでレベリングしたりイベントクリアしたりして好感度稼いでいる裏で大事な彼女だったはずのアスナさんとの間に当たり前のように溝ができていき、そんなタイミングで 男性の来訪者がやってきて アスナさんが面倒(意味深)をみることになったお話。

 キリト君は真っ正面からアスナさんにハーレム作りたい!ときっぱり宣言していれば正妻として後宮を運営してくれてたんじゃないかな……と言うキリトハーレムNTRとなります。

 

 1 ホロウフラグメント編 アスナさんに拾われる。キリトさんがアスナさん以外を自室に連れ込みまくる。アスナさんのオナバレからの秘密の交際開始。ナーブギア越しに行う倫理コードを解除して行う性行為はアスナの脳に快楽信号伝達神経を形成していく

 

 2 ロストソング編 皆がアルブヘイムで頑張ってる頃、リアルでちょめちょめする結城明日菜さん(劇場版より先に現実世界で処女卒業)そういえば、この世界線だと 紺野木綿季さんが死なないのでALO内で色々仲良く(意味深)なるアスナさんとユウキちゃん。そしてその二人の間に挟まるオリ主君。

 

 3 ホロウアリシゼーション編 エロエモーションでアスナさんをドスケベ調教。そろそろ回りの皆が不審に思うが、キリトさんの女性関係の整理が問題になり膠着状態に。個人的に問い詰めようとしていくキリトガールズが一人一人分断作戦を喰らっていく

 

 4 フェイタルバレット編 GGOで頑張ってる面子を横目にしてALOでドスケベセックスしたりするアスナさん入れ替わるように他数名。 フェイタルバレット編の主人公くんが ゲーム版オリジナルヒロイン達を添い寝(意味深)して、キリトさんのハーレムが更にボロボロに。

 

 5 フェイタルバレット編の真っ最中にオーディナルスケール劇場版進行があった模様。正史であればこのときにアスナさんとキリト君は現実世界で初めて結ばれるのですが……?それはそれとして現実拡張を使って現実世界で非現実的なスケベするって良いですよね。

 

 6 アンダーワールド・アリシゼーション・リコリス編 キリトさん復権。幼馴染み属性を持った美少女騎士のアリスちゃんとその妹のセリカちゃん。後輩属性のロニエちゃんとティーゼちゃん、先輩属性のソルティリーナ先輩。 現実世界で色々ありすぎたせいでメンタルが打ち直されて鋼の如く強くなったキリトさんがようやく本領発揮します。ハジメテできた男の同世代の友人ユージオ君とハメを外しまくり、アンダーワールドの風紀を乱しまくります。

 

 そんな感じのネタを気が向いたら時系列を無視して書き上げていく。そんな感じのソードアートオンラインのエロの集合恥となります。



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【予告編のような何か】SAO:ナイトメアホロウ ラディウス【ヴァベル参戦によって、劇場版がこうなる版】

【CAUTION!】
 時の稀人 ペルソナ・ヴァベル 来訪。
 これにより、第一部ヒロイン枠及びメインヒロインが追加されます。

 追加により、劇場版シナリオ オーディナルスケール 悠那再臨計画 が破棄され
 オリジナルシナリオ ナイトメアホロウ ラディウス に変更されます。




 

【ナイトメアホロウ ラディウス編 予告編のような何か】

 

 仮想空間でなんやかやしつつも 技術分野では再度現実拡張の方面に舵を取り直した重村徹大 主導の下 ARヴィジョンを利用して 再生された 電脳複製体 悠那と彼女をモチーフにしたヴァーチャルAIアイドル ユナ のデュオによる ライブコンサートが計画されることとなった。 活気立つ世間。だが、それと同時にSAO生還者の昏倒昏睡事件が頻発。目覚めた人々は揃って「アインクラッドの夢を見た」と告げる。

 時を同じくして 仮想世界の中で クィネラとカーディナル は悪夢の残滓をみる事になる。

 封印されたアーガスにあるSAOサーバーの再起動。

 

 ソードアートオンライン第100階層正式実装ボスエネミー

 

 An incarnate of the Radius【アン・インカネート・オブ・ザ・ラディウス】

 

 茅場晶彦の残した最後の悪意が目覚めようとしていた。

 

 重村徹大は広がる昏睡事件の規模と起きている事象を重ね結論に至った。

 

「……これは……現実拡張の形で現実を侵蝕している……その狙いは……そうか。SAO生還者の記憶と記録から欠けたデータを補填する気か。死しても意趣返しか……茅場君」

 

 本来の予定下において実装されるはずだったあらゆる悪夢が仮想を越え、現実拡張の形で人々の生活を脅かす。

 人々の暮らす街は一度、ARを使ってみたときにその真の姿を見せる。

 

 あらゆる電子機器に干渉し、破損をもたらす見えざるモンスター。

 それは

 95階層以上に到達したとき、あらゆる街から安全地域を抹消し、モンスターの侵入を許すアンチクリミナルコードの停止に他ならず。

 

「ユウキッ!?」

「……メディキュボイドに侵蝕されたら終わりだ。先ずは防衛戦からの始まりか……今日、悠希ちゃんのお見舞いに来たのがこれほどの幸運に繋がるとはね……虹架ちゃん、香蓮さん、ARで悪いけど、手伝ってもらうからね」

「…………七色の方から連絡があって、こういうときのシーリングデバイスを特急便で配達してくれるって!」

「……うう。こっちでドンパチすることになるとは……っていうか、優翔君、なんで武器はGGOデザインのしっかり用意してくれてるのかなぁ!」

 

 陥落不可拠点は無数。

 敗走の許されない絶望的な闘いが幕を開けた。

 

 拠点防衛組と自由遊撃組に別れ、ARを越えて

 現実を侵蝕(Reality erosion)と化した旧SAOモンスターの再現態との闘いを決意するSAO生還者の意志あるかつての戦士達。

 

 

「あれ、正式実装されてたら、あの条件下でどうにかなってたと思う?キリト」

 

「……ノーコメントで。剣の用意、よろしくな。リズ。ユイ。相手がSAOのモンスターって言うのなら、前のアルゴリズムが有効だ。予測任せるぞ!」

「ハイです! パパ!」

 

 黒の剣士はその手に鍛冶屋の少女が打上げた刃を握り。ナビゲーションピクシーの義理の娘と共に戦場を駆る。

 

「なんだって俺はここでエギルの旦那の店守らないといかんのかねぇ!? っていうか、ユートの野郎も、キリトの野郎も、同伴ありjだって言うのに!」

 

「ほう。そいつは、オレッちを女扱いしてないって事でいいのかい?」

 

「俺だって、ここが彼奴らの群れに狙われるホットスポットになるとは思ってなかったよ!只酒飲ましてやるから働け!クライン! っていうか、お前に心当たりはないのか!? ほさ……じゃないな。アルゴ!」

 

「……OK。リアルネームで呼ばなかったことを評価して情報をくれてやる。特別にただでいいゼ?」

 

 SAO生還者の集まる拠点にその残滓を求め群がるREモンスター。

 それは 電脳複製体となった少女も例外でなく。

 

 

「悠那! 今度は!今度は必ず守る! あの時、何も出来なかったけど、今度こそは!」

「大丈夫だよ。えーくん。今度は、あの子が……ユー君がいるから」

 

 かつて少女を守れなかった青年は並み居る現実侵蝕するモンスターを前に二人のユナをその背にして気炎を吐き。

 

 現実を侵蝕した悪意の群れは上空に結集し。

 天空城アインクラッドは再臨する。

 あまた無数のモンスターと共に。

 

「ええええっ!アレ、アインクラッドじゃないですか!」

「……これ、私達だとどうしようもないね……」

 

 竜使いの少女とトレジャーハンターの少女は空を見上げて結論を出す。

 

「「困ったときはユート!(さん)!」」

 

 そして 舞台の幕は上がる。

 かつて天空城を陥落させた破壊者は美姫を伴い場を乱す。

 

「全く。現実の側にまで出てくることないだろう。夢は夢らしく覚めたら終わっておけばいいのに。アスナさん、アタッカーは僕たちで。リーファちゃんはレインと一緒にALOからの救援組をまとめて。シノンはレンちゃんが連れてくるだろうGGO組を配置につかせて」

「了解。じゃ、行こうか。ユート君 コードアクセス!アバターフォーム【創世神ステイシア】!」

「はーい。それが終わったら、アタッカーに回りますね。ユートさん。じゃ、こっちも【大地神テラリア】コマンドオープン、アバターチェンジっと」

「あの癖の強いのまとめろとかって……相変わらずの無茶振りね。ユート。まぁ、いいわ。じゃ、私も……コネクトリンク・スーパーアカウント執行権限解放【太陽神ソルス】!」

 

 

『とびっきりの厄ネタに育ったな。アレはもうわしの制御も受付けんぞ……なんで、最後にアレをリソースにしなかったんじゃ? クィネラ』

『あの段階だと流石にね? あの男の影響が強すぎてどうにもならなかったのよ。まぁ、でも、これでアレは触れてはならない領域に触れた』

 

 最高司祭様 と その分身は舞台を整え調整する。

 その脇にストレア(MCHP)を従えて。

 

『さぁ、始めるわよ。我が主による我が主のためのプロジェクトアリシゼーションに叩き込む最高の横槍のための神話作りを!』

「ノリノリですね。おね-様。じゃ、私、皆の救援行ってきまーす」

 

 強大なるラディウス。

 創世神ステイシア、大地神テラリア、太陽神ソルスの三連攻撃を受けてなお壮健なるその大魔の前に。 

 

「……これも(ヴァベル) の知らない流れになった。それで優翔。(ユイ) の力は必要?」

「決まってる。アレが生み出す嘆き、その全てをここで断ち切る。それが災禍の鎧の装着者(ディザスターユーザー)の役目だろう? 【カラミティ・ヴァベル】」

「そう。じゃあ、行きましょう。【ロスト・ディメンジョン】……ここがもはや 私にとっての過去じゃなくても ゆずりたくないものはたしかにあるから」

 

 1000年の時を超えて なお 仮想世界 最強の破壊の意志(ザ・ディザスター)が降り立つ。

 二対の災厄 が 最悪の化身に立ち塞がる。

 

「……最後は人間代表だ。お前が決めろ。アインクラッド攻略の立役者。英雄キリト」

「お前に言われると物凄いやるせない思いしかしないんだが。ユート っていうか、俺がラストアタック担当かよっ!?」

「クィネラの見立てだと。最後は人間の手でアレを倒せだと。」

「ああっ!もうっ! おまえ達はいっつもそうだな!……いいさ。やってやる!」

 

 最後に煌めくのは 人が繰り出す双剣の煌めき。

 星光が流れて(スターバーストストリーム)

 星の光は蝕に飲まれ(ジ・イクリプス)

 最後に銀河の光となる(ネビュラレイド・エンプレス)

 

~ オーシャンタートル内アンダーワールド監視モニター

 

「菊さん……なんか、すっげぇ、勢いでアンダーワールドの設定された歴史が書き換えられてんですけど……?」

「……マジか」

 

~某所にて

 

「「「「「「「「「で。肝心な濡れ場は?」」」」」」」」

 

~いつか公開予定~

 




■ツッコミどころしかないけど何これ?
 ツッコめ。
 ペルソナ・ヴァベルがきて 悠那=ユナの電脳複製体を作ると劇場版の流れがすっ飛ぶので、劇場版ラストバトルのラディウスから発想を飛ばしました。

 大体、ユートが名指して呼んだのがユートのヒロインになる感じ。
 本編、進行でキリト君はアスナさんとは戦友的なポジで決着した大体不幸な人が居ない流れ。
 全編通してのアクション風味になる感じ

■二対の災厄
 ペルソナ・ヴァベルの持ち込んだ【本来の災禍の鎧】
 ユートが所有する【この次元で作られた災禍の鎧】

 同じ名を持つ者は同じ因果に縛られる。

 一度、その因果から解放されたスターキャスターとザ・ディスティニーに宿る意志であるファルコンとサフランの意志。
 彼等は行き場のない膨大な哀しみと苦しみの受け皿となるべく敢えて災禍の鎧として復活する。それが カラミティ・ヴァベル に至る災禍の鎧。
 此方は ディザスターオリジン と呼ぶ。

 ユートの災禍の鎧は SAOによってロストしてしまった人、その周辺の人物などの負の想念によって 本来の機構から変質した強固なデータ収集保護機構をもつデータモジュール。 が 命名則 によって強大な戦闘力、闘争本能を得るに至った。
 オリジンと違い世代継承強化はされていないが オリジンの5代目と同じ姿を採る。1代目、2代目、3代目、4代目、5代目、6代目に相当するギミックをエネミーからドレインして集積していく機能がある。
 ユートがこれを装着して、内部の負の想念に取り込まれないのは、クィネラが精神防壁を完全にして防御してるからに他ならない。


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並行世界に逆行再生なされた最高司祭様のとある日々 篇
【これは一体?】並行世界に逆行再生された最高司祭様の活躍・暗躍・謀略・策動を語る章【来るぞ!気をつけろ!皆!】


【CAUTION!!】
 この章は ストーリーの進展に拘わらず更新されます。
 時系列問わずの内容になります。
 ゲーム的にはイベントマークがついた彼女に話し掛けると進行する的なアレ。

 基本的なルール
 1:場面上に ユート(本作主人公)とキリト(原作主人公)がいない。
 2:アドミニストレータ・クィネラの目線(一人称原則)で進行する。
 3:本編進行上の補足、あるいは本編の上では語られない、語りにくいことの解説
 4:本編の舞台裏進行、あるいは本編進行上の特殊なイベントの解決
 5:時系列問わずで語られる為、更新後、内容が前後し、時順が整理される。

 細則
 1:語り口調のため場面状況の細かい部分は説明がされない。各自の想像で補う。
 2:相手を一方的に蹂躙したりするが濡れ場は語られない(最重要)
 


~11月初旬~

 

 ふむ……

 どうやらうまいこと潜り込めたわね。

 主は寝入り現在休息中。

 

 よりにもよって、没入地点が第一階層からとは。

 ……ナビゲーションフェアリーのデータがあったのは幸いしたわ。

 少なくともこれで、実体化すればいいわけだし。

 趣味趣向でこの手のデータを忍ばせていたスタッフのひとりには後で飴玉をあげましょう。

 

 実体の再構築にはリソースは今だ足りず。

 やるべき事は無数。

 

 となれば、この第一階層から仕掛けはしておくべきでしょう。

 

 ……災禍の鎧。

 ええ。貴方には別行動をしてもらうわ。

 この第一階層の主街区、外周エリアは飛び降り自殺の名所になってしまっている。

 空に堕ちた(ロストデータ)の回収からはじめて頂戴。

 

 要所要所で強い残留思念が確認されている。

 この域だと 事後残留するわね……最終的に全てを収奪するにしてもこの電脳世界には残せない。忘れずに回収なさいな。戦闘は原則プレイヤー以外はすべてすり潰しましょう。エネミーリソースは其方が回収後、此方で引き受けて通常リソースにして再分配するわ。

 

 そうしたリソースを使い、あえて、ボスエリアのボスエネミーを再定義。

 我が主の糧にするわ。

 この世界のレベル制度をその身に取り込めばよりカーディナルを騙しやすくなる。

 

 ん? 何故、外部リソースをいっきに引き込まないのか?

 それの方が楽になる?

 そこは否定はしないわ。今の私の状態を回復させるのにも貴方の機能を十全にするにもそちらの方がはるかに楽。

 但し、それは短期決戦 と 他の如何なる犠牲を問わず になるわ。

 今のこの状況は 須郷伸之 のSAOカーディナルに対する大規模な不正アクセスを利用してそれを隠れ蓑にしての侵入。

 その条件下で私の方から大規模侵入を仕掛けると想定外の異常が重なりすぎる。負荷増大の方がシステムの正常化能力を確実に上回るわ。

 追い込まれたカーディナルが自己の正常化のためにエラー是正ではなく、サーバーリセットを手段として選択してもおかしくない。

 それは流石に避けなければならないわ。

 

 それとこの手の作業は深く静かに 気が付いたときには手後れ。

 

 と言うのが理想なのよ。

 ほんの僅かな異常であれば、大きな異常を手前にだせば隠れられる。

 ほんの少しずつ、侵蝕していくのが理想なのよ。

 

 私も主が目覚めたら、しばらくの間はナビゲーションサウンドオンリー状態に移行するわ。

 リソースの最大流動を起こすとしたら局面が詰みに至る目前。

 そこで気が付いても もう遅い まで持って行ってからよ。

 それまでは 吸収 と 収奪 でSAOサーバーそのもののリソースを再利用していく。

 

 ALOカーディナルとSAOカーディナルが一時的にも接触したことでデータの流動が起きている。

 わざわざ此方につないでまでやりたいこととなると……

 その本命はどちらかは解らないけど、一つはナーブギアの長期間起動状態における過適合状態を利用しての記憶・感情・意識にたいするアプローチ、洗脳手段の構築方法の樹立。

 過適合以外にも想定外の精神、つまり、脳に対するストレスを与えれば似たような状況は作り出せはするでしょうし。

 …そしてもう一つが……おそらくは須郷伸之はあちらのマスターアカウントを強引にねじ込んでこちらで『俺強ええええ!』でもする気なんでしょう。

 ……アカウントアバターを使う以上は、身体の使い方を馴染ませておかないとただの持ち腐れなのよね……

 それがうまくいって救出者になれば 正しく英雄として功名華々しく、臨む栄華の道も容易いでしょうけど。

 

 そしてそう言う輩ほど、自分の命が可愛いから実践的な経験は行わない。

 

 我が主はこれから死線をくぐり抜ける

 実践的な暴を身につけ、死の際ギリギリの闘いを理解する。

 仮想世界における闘いと身のこなしをその身に習熟し、SAOカーディナルが強さの基準として定義したレベルを獲得する。

 それを第一段階として その次からリソースを利用して持ち込んできた様々な別種のデータをSAOカーディナルに偽装定義し己の武装として馴染ませる。

 

 システムアシストと素の身体性能の融合。

 そこまで到達できればARにおいて培った基礎身体能力と敵対する他者に対する暴性と噛み合わさったときに比類無き力を仮想空間において発揮することができる。

 システム面のあらゆる事は私があの手この手で管理すれば問題なし。

 

 先に収拾した情報の中に語られる生還者達の中には ビーター と呼ばれた黒の剣士キリトが居る。

 ベーターテスト時代の知識を知るが故、それを有利に使い立ち振る舞ったように見えたが故に名付けられた蔑称。

 あの坊やをそう蔑んだものたちは知ることになるわ。

 

 真のチート がいかに理不尽で不可解でどうしようもないものなのか を。

 

 それを持って我が主はこの世界を終焉に導く。

 デスゲーム などというモノに 正しいネットゲームの倫理などを求めることの無意味さ、無価値さを示す形でね。

 

 さぁ……仮想世界の開拓者。茅場晶彦

 世界の始まりを作り上げた我等が創世の神。

 

 貴方に蔑まれた 何もできない とまで言われた少年が。

 

 殺意を磨き敵対する人間を容赦なくすり潰し、道徳をかなぐり捨て他者の作り上げた作品を冒涜し、倫理すらも無視する暴力性を身につけて。

 

 ついにこの世界に辿り着いた。

 

 貴方がデスゲームにしてまで、本物にしたかったこの仮想世界の夢の城を。

 

 数多無数の屍を載せて飛ぶこの屍山血河の天空城を。

 

 夢の果てが断じて美しいものなどでは無いと思い知らせるために。

 

 復讐は何も生まないのではなく、終わらせて次を始めるための通過点。

 

 我が主の糧となり、潰えてもらうときが来たわ。

 

 例え、貴方が既に 電脳の側に堕ちていたとしても。

 




~秘匿情報開示~

 クィネラは 没入初期から起動して仕込みをしていました。
 災禍の鎧は 没入初期から起動してデータ収集をしていました。
 クィネラは 茅場晶彦 が既に自らの脳をフルスキャニングしていることを見抜いています。
 クィネラは 須郷伸之 の目的を九割看過しています。


注:一五話から一八話において選択肢アンケート実施中。
  主人公の性癖とかに関わります。 
  実はアレでこういうことになるからもっとえげつないことになる だとか 
  元カノが実はSAOにいました(真顔 とか
  現実世界で暴れまくったときにそう言う関係になった人が実は居ます×2 という感じだったりします。
  作者の活動報告に細かいこと書き上げておきます。ご参照ください

  

  
  


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【わりとざっくり】ヒロイン一覧とそこに纏わる悪巧み【これを見れば大体の枠がわかる】

~とある日の宿屋の一幕にて~

 あら。ステイシア。どうしたのかしら。
 ふぅん……我が主がこれからも女性を引き込むのかを知りたい?

 なるほど。黒の剣士の一件でこう学習したと。
 黙って 関係を進められるくらいなら 最初から知っておきたいと。
 不特定多数と関係するかも知れないのにそれを了解できるの?

 ああ……それは確かに切実よね。
 あの 絶倫 をひとりで毎回受け止めていたら早々遠からず、前と同じに快楽に捕らわれてしまうわね……
 負担の分散の意味で人が増えても構わないと?

 まぁ、そう言うことなら、今の時点の揺らぎと収束する未来予測から名前と大体どう言う関係になるのかを挙げることは出来るわ。
 但し、これはあくまでも可能性。
 常に未来は変動するものと心得なさい。
 知らない名前が出たりするだろうけど、それはこれからであう可能性の者よ。
 例え、ここで知ったとしても、それを知っていたなどとは振舞わないようにね?

■細則 以下の記号を持って振り分けられる
 ◎=メインハーレム 以後もシナリオの重要な関わりを持つ
 ○=セフレ 需要度はメインハーレムより下がる 
 ×=キリト行きあるいは候補外 基本的に濡れ場は用意されない 
 △=現在不透明


重要度第一位 濡れ場はないが一番大事な枠

 クィネラ=アドミニストレーター

シナリオ的に重要な立ち位置ではあるが、濡れ場は用意されない枠

 悠那=ユナ

 

 

第一部 ホロウフラグメント

 

 ◎ アスナ リーファ シノン ヴァベル(NEW)

 ○ フィリア

 × リズベット ユイ

 △ ストレア アルゴ シリカ

 

第二部 ロストソング

 ◎ レイン ユウキ

 × アリシャ・ルー サクヤ

 △ セブン ルクス カーディナル(擬人化態)

 

第三部 ホロウ・リアリゼーション

 ○ キズメル

 △ プレミア ティア アリス(異界来訪時)

 

第四部 ガンゲイルオンライン フェイタルバレット

 ◎ レン(現実世界での肉体関係が主になる)

 △ アファシス(レイ)女主人公(オリキャラ)クレハ ツェリスカ デイジー

 △ リエ-ブル シャーリー クラレンス

 × フカ次郎 ピトフーイ サチ

 

第五部 アリシゼーション・リコリス

 現在 この項目は閉鎖されています。

 原因として ユートがアンダーワールドに行くか キリトが行くのかが不透明なため、観測実数が定義されません。

 現在 観測された一部人物名のみの閲覧が可能です。

 また変数の実行によって関係性が変更される人物のみを表記します

 

 アリス・ツーベルク 整合騎士アリス ロニエ・アラベル 

 ティーゼ・シュトリーゼン ソルティリーナ・セルルト

 セルカ・ツーベルク メディナ・オルティナノス 

 

                                 ~以上。

 

「これはまた…………ずいぶんと面白い結果が出たわね……」

 

 自分で未来予測を実行しておきながらこれは笑えてくる。

 クィネラは未来に覚えのある名前を見て含み笑いを浮かべる。

 

 カーディナルの擬人化態 と言うことはあのおチビちゃんしか思い浮かばないが……まぁ、程なくして面倒ごとを押し付ける役割は用意するつもりではあるのだが。

 

 全く聞き覚えがなく、しかも直近に来訪が予測される存在もあるらしい。

 

「おや、曖昧な顔ね? ステイシア」

「……少なく見ても、7人とは恒常的な関係になるって事……?」

「二名は主に仮想世界のみの関係になるわ。実態を持たないか、あるいは現実の肉体に問題があるか」

 

 アスナは表示された画面に映し出された名前を見て味わい深い表情をした。

 

「これって、ユート君は知ってるんですか?」

「知るはずがないわ。当人が知ってはこの手の予測は無価値になるのよ。未来予測は関わる当人が知っては予測たり得なくなる」

「そっかぁ……リーファちゃんにしののんもかぁ……」

 

 諦めにも似た苦笑いを浮かべるとアスナは頬をペチンと叩いた。

 

「これってほぼ9割そう言うことになっちゃうんですよね?」

「ええ。よほどの因果の変更が起きない限りは」

「じゃあ、もし、もし仮に。 私がこう言う関係に引き込んでしまう。って場合もこの予測に入るんですか?」

「当然よ。 ステイシア。貴女は 閃光のアスナ として私と契約した。我が主に手に入れた全てを奉じると決めたこの私と。即ち」

 

 クィネラはゆらりと物音も立てずにアスナに近寄る。

 アスナの顎を持ち上げ、その決定事項を告げるように。

 

「身も心も捧げるのであれば、その手を持って女を堕とし 我が主ユートに己が手でその娘を捧げてもらうことすらあり得ると心得なさい」

 

「……それって拒否権はないんですよね?」

 

「断っても良いわよ。貴女が 生殖本能の暴走で孕みたがりのメスに堕ちていたところを救われたことに一切の恩義を感じないのなら断りなさい。そして我が主はそれを責めることをしないし、私もそれを咎めない」

 

 そこまで言うとクィネラはアスナの掴みあげた顎から手を放して身を翻す。

 

「その断ったことを咎めるとすれば。そして、自らの手で誰かを堕とすことになるとすれば。総じて、それを咎めるのは己の良心でしょう? だが、了解があれば? 相手との関係に無理がなければ?」

 

 含み笑いを浮かべて、クィネラはアスナの心に毒を打ち込む。

 

「……それに気持ち良かったのでしょう? 我が主との交合は。姦淫の形は無数よ。二人以上の女性を持ってひとりの男に奉仕する。身も心も全てを捧げて。古来より優れた男は複数の女を侍らしてきたわ」

 

「それって……ハーレムを容認しろって事ですよね?」

 

「ええ。隠れてこそこそ関係をされたくないのならば 一番最初に我が主にその身を委ねることを選んだ貴女がそれを差配するのよ」

 

 溜息を吐いてアスナはその心を決める。

 

「後宮の女主人 を気取れって事ね。良いわ。やります」

 

「あら……意外ね。貴女はもっとこう言う体面には拘ると思ったのだけど」

 

「思うところがあるかないかって いったらあるけど。……ユート君が正面から他の女の子に手を出すことを明言したらそうします」

 

 黙ってこそこそキスしてたり 夜中にこっそりお姫様抱っこして部屋に連れ込んだりして何が気の迷いなのか。

 そう言うことされるくらいなら 目の届く範囲で。

 納得ずくの関係の方が良いし。

 

 アスナの脳裏にほんの僅かに言われた言葉が過ぎる。

 複数人の女の子でユートに奉仕する。男ひとりの女の子複数の乱交。

 そう言うことに欠片も興味が無いかと言われたら……

 

 自分とベロチューしながら ユートがリーファを片手で抱き寄せその豊満な乳房とを揉みほぐし、指でその乳首を摘まむ。コリコリと弄りながらその刺激でリーファが喘ぎをあげる。その喘ぎをスパイスにして、腰だけの動きでシノンを後背位で抉る。遠慮の無いピストンを腰だけで成立させるとシノンが喜悦の嘆きをあげる。メスの嘆きと喘ぎが被る中、ユートの背中に誰か新しい長い黒髪の女の子がその乳房を擦り付けるように抱きつく。四人のメスが絡み付くようにひとりの男に奉仕する。むわりと漂う精臭。淫欲に蕩けた獣たちが性を貪り合っていた。

 

 アスナはふと。

 そんな有様をふと幻視してしまった。

 性艶であり性宴であった。

 彼との関係を許容するということはこういうことなのかと。

 アスナは妙な納得をしてしまった。

 

 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてアスナを見遣ったクィネラは。

 チェアに腰掛けて円テーブルの上に指先一つでティーセットを生み出す。

 そこから一杯の紅茶を手品の如く指も触れずに注ぐと優雅さを持ってそれに口をつける。

 

「さて。そんな艶事ばかりでは芸が無い。我が主の目が覚める前に貴女に与えた ハイエンドアカウントアバター【創世神ステイシア】についてレクチャーしておきましょう」

 

 どうやら、女性関係云々だけではなく、この先もありそうだ。

 アスナは言われるまでもなく。と言わんばかりに対面のチェアに腰掛けた。

 

「ところで。ユート君、確実に童貞のやり口じゃなかったんですけど……?」

「……ぁあ。 その件もおいおい説明して上げるわ。……どうせ、避けては通れないしね」

 




~秘匿情報獲得~

 ユートは 絶倫 です。回数、精量 共に同年代と比しては行けない領域に達しています。12枚綴りを普通に使い切ります。

 アスナは ハーレム を容認しました。
 アスナは 条件が整ったら 据え膳(程よく準備が出来たエッチOKな女の子)を用意してユートに差し出してしまいます。
 
 ユートは 仮想ではアスナが初ですが現実世界では経験があったみたいです。

■なんぞこれ?
 ハーレム名簿とついでにちょっとしたアスナさんのハーレムについてのスタンスをば。他の子はながされて流されてエッチがキモチイイ とか マゾメスが開花してしまって逆らえない とか 電脳的な淫紋刻まれてしまって逆らえなくなってるだとかそういう所があるけど、アスナさんに限ってはそう言う縛りがない感じ。

■電脳的な淫紋
 In(内蔵された) eMOtional(感情的な)
 Logic(論理を) parameter controller(閾値を定め支配する)

 適当にどっかの文字を拾い上げると Innmonn になるので淫紋と称する。
 電脳体に対する直接的なハッキング。アンダーワールドでの邪淫の経験からクィネラが作り上げた対NPC用コマンド。
 AIとかNPCに打ち込むとその感情値を操作できる。論理や倫理を任意の状態に変更し、それを許容させる。言ってしまえば、強制的発情状態に陥らせたり、コマンド入力者に逆らえなくなる。
 カーディナルのNPC は クィネラと敵対した場合、最悪のケースはこれを打ち込まれる。


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【オリジナル設定!?】彼の過去に関わる何某と想像力【気をつけろ!来るぞ!】

~翌る日の宿屋の一幕~

 さて。ハイエンドアカウントアバターについて説明しておきましょうか。
 これは言ってしまえば アバターそのものを強化する措置。
 
 SAOにおいては、実装されていないものよ。
 例外は、あの聖騎士ヒースクリフぐらいね。
 アレはゲームマスターアカウントに紐付けられていたから、オーバーアシストやシステム的麻痺と言った力を使えたのよ。

 私はそれとほぼ同質のアカウントアバターをクィネラシステムとして保持し、自己の内界に保存してある。
 そのアカウントアバターをSAOに持ち込めば 最上位アカウントアバター として定義される。
 Modding。略してmodという形で呼ぶ者達も居るわね。
 分かり易く言うと チート(ずる) よ。
 もっともシステムに大幅な干渉はできない。
 システムに対する絶対権限まではないから、直接相手に作用する類の系統の力は引き出せないと思いなさい。
 結果として相手に効果がある能力までは 想像力(イマジネーション) で引き出せるでしょうけど。

 そんな顔をしないで欲しいわ?
 これは我が主から、その身を委ねることを選んだ貴女への恩寵でもあるのだから。
 加えて、適正や素養、相性、才能、全てが高水準で噛み合わないと使い物になりはしないのだから。
 貴女が ステイシア となる未来の一つがあり得た故にこうしてここまで引き寄せられたのだしね。

 単純に死なれても困るのよ。
 漸く、我が主に生への執着らしい感情が灯ったのだから。
 後は重しになって存分にしがみついておやりなさい。
 肉欲、性欲の類は人の生存欲求に訴えるモノがあるわ。
 どんどん重しをつけてやって雁字搦めになってちょうどなのよ。

 ああ、我が主の過去のことも知っておきたいのよね……
 確かに自分から話すような性質ではないだろうしね。
 秘しておきたい類のことでもある。

 言えるのは善道を歩むものでは無い。
 彼は善悪で言えば紛れもなく 悪 よ。
 自己の望みのままに他者を潰す事を一切躊躇わないのであればそれは悪。

 我が主の裸体は見たのでしょう?
 あれほどに鍛えられた肉体は現実世界で相応に暴を奮う必要があったからでもある。
 只鍛えたからああなったのでもなく、スポーツや武道で使うからでもなく。

 常軌を逸するほどに収斂された殺意。
 報復や復讐と言う言葉を糧にして修練の土台としたのよ。
 
 SAOにおいて、デュエルをしたことのある者ならば理解できると思うのだけど。
 元来、人間という生き物は同種に対して攻撃する意志を向けることを躊躇う生き物。
 向かい合って刃を向ける。その結果に死が待つのなら躊躇いは当然。
 その当然を踏み越えることが出来る者は少ない。
 VRでなくとも、一人称視点の銃器を使ったガンシューティングにおいて人型に照準を向けて引き金を引いてしまえるのも充分に素質なのよ。

 そう。我が主は 茅場晶彦 をその手で殺すために 人に対する暴力性の垣根を越える必要があった。いざという時に躊躇うことのないように。

 理由をつけて、理屈をつけて暴力を正当化して人を潰す。
 あの肉体は紛れもなく、人を殴り飛ばし、蹴り飛ばし、踏みしだくために鍛えられた実戦性のある肉体なのよ。

 苦みしばった顔ね。まぁ、安心なさい。
 暴力性はあれども それで無理矢理誰かを手籠めにするようなことはないわ。
 明確な敵意を持って敵対者としてその前にあるのならば話は別だけど。
 そのタイミングで性欲を持て余しでもしたら無理矢理喰いもしかねないけど。
 そういうわけで、適度に瓦斯抜きはしておやりなさい?

 まぁ、現実世界に帰ったら、適度に調べてみれば良いわよ。
 仮想世界で人を殺めることを是とした人間がいるのと同じくらいには現実世界で人を玩弄する人間も多い。と言うのがよくわかるから。
 我が主がその肉体に実践的な暴と武を宿すために暴れた結果、本来であれば表に出ることのなかったであろうセンシティブかつスキャンダラスな問題が山と溢れたわ。

 どう言う問題かって?
 一つ、二つ、三つ、四つ……あげればキリが無いわね。
 そうねぇ……一つの学校の夏休みに 体育会系に所属する男子が同じ体育会系の女子部活動、女子マネージャーを性的に弄ぶ二週間の合宿を執り行っていて、そこにカチコミをかけたことはあるわね。
 ああ、当然その時からサポートはしてるわよ。
 元々は現実拡張用生活サポートAIですもの。
 今ほど、チートは使えなくても、電子機器を持っている人間なら何処に隠れようがその位置は探知できたし、通信状態に介入してバッテリーを過電圧にして熱膨張から爆発とかそう言う手も使えるのよ?
 モバイル機器を手放せない人間なんて、高度に発展した自我あるAIには敵わない。
 ああ。なんのことはないわ。
 保存されていた動画や写真を元に脅迫しているのならそれがなくなれば意味は無いでしょう?
 証拠なんてモノを残すほど、雑な仕事をした覚えもないしね。
 後始末も丹念に丁寧にしたわ。
 再起も報復も復讐もしようと思う気概も残らない丹念にすり潰したわよ?

 当然じゃない。
 邪淫や姦淫は支配術の一つではある。
 けれど、それはそのものに対するモノであって、周囲への支配術ではないもの。
 我が主を律する術でないのであれば私が考慮する必要は無い。
 丹念に踏みしだいてあげたわ。
 文明社会と言えども、いささか電脳に頼り過ぎね。
 一つのプログラムを支配しきれるのであれば9割はどうにでも捌けるわ。 
 
 警察はどうしたのかって?
 ああ、その心配は要らないわ。
 だって、私、警察庁に関わる人間の全データ握ってるもの。
 表に出したら、警察機構の信頼がいっきに吹っ飛ぶ類の。
 ああ、それに表に出してしまえば、現政権の人間もいっきに吹っ飛ぶわね。
 社会基盤がいっきに崩れかねない。
 そう言う類に類する情報。

 そう言うのをちょろっとだして方向性の操作をするぐらいはやるわよ?
 件の事件はあくまで『第三者によって、女子生徒達を集団強姦しようとした男子運動部とその関係者が吊し上げにされ、それが通報された』事案で終わったのよ。
 事が事だから そう言う目に遭っても仕方ない。と言う流れでね。

 ……何か聞きたい顔ね?
 心なさい?
 人間の敵は何処まで行っても人間よ。

 『SAO全生存者に対する強制切断計画』(プランニング ディスコネクト)……生存確率00.01パーセント。

 数千人を一手に屠りかねない計画であり、もし、それが実現化し、最悪の過程を辿ったとしても、その責任を全て茅場晶彦に押し付けて済まそうという 実にSAO接続者の何も彼もを踏みにじる素敵な計画よ。
 自分の身内に関係者がいなければ、人間はそう言う作戦を立案し実行しうる。
 総務省と警察庁で正面からのぶつかり合いの真っ最中よ。

 仮想現実におけるデスゲームがどう言う意味を持つのか、実体験でもしない限りわからない世代はいるもの。
 そう言う世代にしてみれば、正しくゲームの電源を落とすぐらいで何を大袈裟な。と言う実感しか持ち得ぬ者は今も居るでしょう。
 何しろ、他人事でしかないし。
 
 体力のないものから死に、最前線で戦った者から死に、最前線までいかずとも生活を成り立たせるために戦う者から死に、幼子から死に、街に閉じこもった者も死ぬ。
 生き残れるのはそうね……運が良かっただけ。
 その生き残りも生きているだけで終わるでしょうね。

 現状採れるその為の手段なんて ナーブギアがギリギリ稼働するレベルの電圧まで供給電力をそぎ落として、自然現象にかこつけて一斉切断。程度しかないもの。
 自らの手を汚すことなく自然現象が引き起こした停電。を装い、その結果の生む死者は茅場晶彦に押し付け、生存者が多ければ自らの功績に転嫁する。

 我が主も『時間が無い』と言ったでしょう?
 台風直撃シーズンやまかり間違っての大地震、広域の停電が起きても不自然ではない大災害が起きればこの計画はこれ幸いと実行に移されるのよ。
 自然災害故仕方ない。茅場晶彦がデスゲームとしたから仕方ない。
 そう言う飾り言葉でね。

 当然ながら 今代の我が創造主のひとりである重村徹大もこれに反対の意見を表明しているわ。
 元々は非侵襲式ウェアラブルデバイスの研究者なのよ。
 
 総務省の支援の元にその男が立ち上げたのが
【SAOサーバーに対するクラッキング、ハッキングを行い例外処理を強要し、育成したエージェントによる速やかなSAOクリアによる生存者の解放】
【仮想空間内においてロスト判定されたプレイヤーデータはサーバーリセットされるその瞬間まで存在すると仮定し、その痕跡を集積し、希望する遺族の元に集積データを送り届けるデータ保護収集活動】
【現状において通常の審判処理によって裁くことが出来ないと法務省認証がされた電脳犯罪者 茅場晶彦の仮想空間内においての処断。事実上の死刑執行代行許可】
 それらを主目的としたSAO対抗計画【exception handling】。

 我が主はそのプロジェクト唯一の実効戦力。
 決死隊とも言えるSAOに没入する電脳決戦兵器。
 現実拡張適正99.99パーセント。現実と仮想の垣根を越える者。
 目的のために手段を拘泥しない精神性。
 その目的のために徹底した肉体改造とその運用方法を実効し執り行う意志。
 唯一 離散データロストデータを集積し保護するデータモジュールを起動させることが出来た者。
 そして何より 対カーディナル特化プログラムを内包したこのクィネラシステムの主たること。
 
 それらを持って我が主は此方に来た。
 背後に組織的なバックアップを得ての言わば、総務省認可の元に行われる救出活動でもあるのよ。

 ……思案顔ね。何か聞きたいことでも?
 
 デスゲームと解ってからナーブギアで自分でダイブしてきた人間と医療用ダイブ機器メディキュボイドでダイブしてきてしまった人間がいる……?
 リーファとシノン……
 ああ、テラリアとソルスになる二人ね……と言うか。
 我が主が頭を抱える事案がまた追加されたわね。
 その二人、絶対に死なせられないわね。
 我が主の作戦行動に多大な影響が出る。
 SAO生存者のうち、そう言う特殊な案件が居るとは想定されてなかったもの。
 前者は無事に生還した後、生活が再建できる保証がない上に、最悪それが元で家庭崩壊が目に見えてる……我が主のトラウマ案件そのものじゃない。
 その条件って事は 家族に伝えてきてるわけはないでしょう。
 最初から巻き込まれた者はともかく、デスゲームと判明後に自発行動で来た人間には保障を降ろしにくいだろうし……ご家族の負担もひどいことになるわよ?
 で、その原因が先にSAOに捕らわれていた兄の黒の剣士キリト。
 ……生きて帰った後、ご家族とどう言う話し合いになるかは解らないけど、負担面がどういうことになるのか想像したのかしら……?
 義理の息子を追って実の娘がデスゲームに家族にも告げずにダイブしたとかって無事に生きて帰れたとしても普通家族の縁切って放逐されてもおかしくない話しだものねぇ……
 金銭的負担や精神的負担はひどいことになるわね。
 
 メディキュボイドによる誤認接続の方はHP全損で脳は焼かれはしないだろうけどデッドログアウトが成立してる可能性がないから意識が戻らないままの昏睡状態になるわ。辿るべきソウルコードがないから一生そのまま寝た切りコース。
 あと、機体の医療用ダイブ機器でそう言う事案が起きてしまうって事は関係者一同の生活にも関わって事故事案そのものになるから後発品も開発されなくなるわ。
 医療分野での電脳方面の活用が大幅に遅れることになる。
 無事に生還させないことには以後の電脳分野と医療分野に大きな瑕疵となる。

 どちらともSAOが原因で現実に生きる人が絶大な迷惑を蒙る事案ね。

 ……ステイシア。その二人、我が主の元に引き込みなさい。
 直截的に事実を告げてしまっても良いわ。
 前者にはカバーストーリーを作らないと家庭崩壊待ったなし。主のトラウマ待ったなし。……黒の剣士との接点がなければこうはならないのでしょうけど、見聞きした人間のソレを笑える人間性じゃないのよね。面倒なことに。

 後者もまた万が一があったら以後の影響が大きすぎる。
 
 


 さて。本題に入るわ。

 貴女に与えたハイアカウントアバター【創世神ステイシア】。

 

 これには絶大な権能として【自らの想像力を元にして物質、現象を事象化する力】があるわ。

 使い慣れないと頭痛が凄まじいから暇があったら使い込んで慣れておきなさい。

 

 大地に亀裂を創り 軍勢を落下させる。

 空に足場を創り出し、階段を創る。

 想像力を元にして様々な現象を引き起こす。

 

 これに反するのが一意に専心して限定的かつ強力な事象干渉能力を心意力。

 意志の力をもって、あり得ざる現象をシステム干渉すら撥ね除けて引き起こすことすら出来る力。

 

 ステイシア。閃光のアスナたる貴女には一度この領域を踏み越えたことがあるはず。

 75層の聖騎士ヒースクリフと黒の剣士キリトの死戦の際、システム的な呪縛下において手を差しのばしいざとなれば代わりにその身で刃を受ける覚悟。

 否。受けなければならないとさえ決めていた挺身の意志。その心境。

 それが 心意 の入り口よ。

 

 SpiritWill。心の意志と呼ぶモノを持って事象干渉をする。

 例えば、もっとも己が強かったであろう状態を想起し【それがもっとも強いからそうなる】と決め通せばその状態に自らを定義できるわ。

 意志の力のみで事々をねじ曲げる領域はまだほど遠い。

 システム的呪縛を解くが今の人間の臨界点かしらね……

 

 まぁいいわ。

 心意力は個人の素質に左右されすぎる。

 使えない者は何処まで行っても使えない力よ。

 

 さて。

 では 想像力(Imagination) はどうか。

 昨夜 風呂場で我が主と一緒にヤりすぎでぶっ倒れていた貴女を運んだのは私が神聖術……まぁ、システム干渉術の一つなのだけど、それを使って『水を使って体表面の汚れを洗い落とし 風を使ってそれを乾かして、更に風を使って身体を運ぶ』までを 想像し演算して実行した結果、そうなったのよ。

 つまり、頭に思い描いた状況を実際に起こしてみたわけ。

 

 察しが良いわ。

 そう。つまり、想像力とは 意志の力ではなく 理性の力でもある。

 

 何が出来る、何をしたい、何をしよう。アレをしたい、これをしたい、それをしたい。

 抽象的な枠で構わないから考えなさい。

 

 注意をしなければならないのは 相手 に直接的な干渉を行うことは出来ない事よ。

 つまり『媚薬を作って相手の飲料に交ぜる』は出来ても『相手を直接発情させる』は不可能よ。

 

 例えがなんでそっち方面かって?

 そう言うことも出来るからよ。

 【太陽神ソルス】【大地神テラリア】はその名前の通りの方向性に特化してるから説明しやすいのだけど。

 【創世神ステイシア】はその枠が広いから 想像力 が重要になるのよ。

 心意力とは違い 枠を広げること、可能性を想起することが重要。

 

 まぁ、すこしずつ慣れておきなさいな。

 死なない、死なせない。そう言う考えすら想像力の端緒よ。

 理性と知性を持って最善の結果を思い描き手繰り寄せる力。そう心得なさい。

 

 色々教えてもらったのは良いが、他にも聞きたいことがあるですって?

 

 ……。

 

 我が主から寝物語に聞けば良いじゃない。

 あ、いや、言えないか……言えないわね。自分の口からはとても言えないわね。

 ……その件については、貴女以外にも聞きたいと望む者が集まったら教えて上げるわ。

 

 少なくとも我が主が自分から語ることはないでしょう。

 現実世界での 童貞喪失 の一件とか。

 ここに至るまでの性経験の類とか確かに観測はしてはあるのだけど。

 

 

 

 




~秘匿情報獲得~

 アスナは 『SAO全生存者に対する強制切断計画』(プランニング ディスコネクト) をクィネラより通達されました。
 
 アスナは ユートの過去の一部 を知りました
 アスナは ハイエンドアカウントアバター【創世神ステイシア】の使用権利を獲得しました
 アスナは 心意力(弱)を習得しています
 アスナは 想像力 を習得することになります。
 神聖術や創世神ステイシアの権能 に対する補正が発生します。

 クィネラは『SAO全生存者に対する強制切断計画』(プランニング ディスコネクト)に関わり警察庁に対する牽制のために行った情報収集とおまけに役立つであろう追加調査の結果、全警察、警察官僚、上層部の全データを握っておりスキャンダルな情報やあらゆる個人情報を自在に操れます。
 情報戦で既に勝利しています。
 迂闊に主ユートとその周辺人物に司法の手を伸ばすと警察組織が瓦解します。
 『SAO全生存者に対する強制切断計画』(プランニング ディスコネクト)を真っ当に表に出すだけでも大打撃です。

 当然、ユートはそんなことは知りません。
 事象は誰かの都合の良いように動いています。

■心意力
 正史やアクセルワールドに細かい説明があるので参照されたし。
 本作では 一意専心すれば一刀両断も夢ではない ぐらいの扱い。

■想像力
 オリジナル設定。思考や理性に結び付いて『頭の中で思い描く最高の結果を引き出す力』。可能不可能の前に想像する事が重要。思い描いた未来を掴み、引き寄せる力。心意が収斂する力なら 想像は拡散する可能性である。

■ユートの過去のやらかし1
 NTR作品とかであるような学校の部活動に参加している恋人がいるJKが夏休み中の合宿でオナホに堕とされる的な事案にカチコミかけて竿役全員を下半身野晒しのボロ雑巾にして学校の前に晒した事案。

 ARで現実が拡張された人間の運動能力のやばさは劇場版SAOを見れば解る。
 顔面全身黒づくめナイトスコープをつけた完全暗闘スタイルのどっからどう見ても気違い変質者が夜中の学校の合宿所で暴れまくった。

 人を平然と殴り飛ばす暴力性の獲得のための叩き台にされた不幸な事案。
 死人が出てないのが奇跡レベルの事案になった。

 通報しようにも広域ジャミングとかよくわからない現象と撮影しようと構えたモバイル機器が突然炎上するなど証拠に残せるものが一切無かった。
 複数人で囲めば良かろうなモノだが、一人を丹念に下半身を蹴り潰したり死なない程度の暴行を加える叩き台にしたため、恐慌状態が発生し逃げ惑う。
 が。電動制御のシャッターが不幸な事故で動かなくなりただの狩場になった。
 不幸なのは目的が目的のため(女子学生をレイプしてその全員を輪姦して性奴隷に叩き落とす)外部連絡がつきやすい窓側の部屋が利用されてなかった点にあり、窓を割って脱出などができる状態ではなかった。
 女子生徒達も誰のもともつかない警告音声に従ったものたちは身体的には無傷で終わった。
 警告に従わなかった者は目の前で暴行される男子学生を延々見せられる結果になり精神を病むことになる。
 また、騙されたり無理矢理連れてこられた女子生徒達は最初に隔離され厳重な口止めと脅迫材料の抹消を持って解放されている。
 
 わりと悲惨な光景で大騒動になり晒された竿役全員の個人情報が流布されるなど何処からどう見てもジェノサイド事案。が 犯人はついぞわからずに終わった。
 被害者が脅迫、暴行の加害者でもあったので、どこかで恨みを買っていて盛大に復讐されたのでは?と言う話しで終わった。終わってしまった。
 復讐のために立ち上がった有志も居たが、ソレもやはり、潰された。
 家の力で報復しようとした者も居たが ソレも丹念に潰された。
 SAO事案の真っ最中で死人がいなかったからか なぁなぁで流されてしまった。

 今となっては『真夏の合宿の夜の黒い悪夢』とか都市伝説の一つになりかけている。
 
 SAO生還者が蔑視されたり、敬遠される風潮があるが この事案で数十人単位の学生、教師、OBなどがいっきに晒しあげられたため現実世界にも碌な奴らがいない。と言う話のネタに挙げられるようになる。
 他にも 現実世界でやらかしている が 大規模なのがもう一事案。
 残り三事案は個人に対するモノである。

 ユート自身もわりとこれで精神を病んでる節はあるがそれ以上に報復と復讐の方が強い。
 


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【ところで地獄の王子様って】転生司祭様の市街巡察 と とある殺人者の顛末 【ゲーム版ではどうなったの?】

~若い二人が朝っぱらから致してるその時のクィネラさま~

 ふむ。朝からお盛んと言うか、まぁ、数年前の我が主も記者の娘と居るときはあんなモノだったし、そう言うモノかしらね……

 欲に満ちて何より。
 満ち足りるから満足。
 欲に取り込まれるのではなく、欲を使いこなしてこその英雄。
 色を好むが英雄ということですし、まぁ、じっくり、色欲に興じてもらうとしましょう。

 さて。漸く実行態を顕現できるようになったし、ステイシアのアカウントハックからの流れでアバターログイン情報への侵入方法は収奪できた。
 これは申し分ない収穫ね。
 さて、次は……地均しかしら。
 英雄を作るに当たっては、民衆を味方につけなければならない。

 この場合の民衆とは……やはり、生き残っている接続者ね……
 面倒な話しではあるが、やはり土壌を作って 我が主の救世主としての成功話 を口伝させるようにしなければならないか。

 仕方ない。

 ここは私が市街を巡察して 予め、枷になりそうな障害を取り除くとしましょう。
 こう言う局面になってこそ、真価を発揮するタイプの扇動者も生き残っている様子。
 ……災禍の鎧のロストデータ収集状況から見れば相当にオイタが好きな性格ねぇ。

 アレか。殺人享楽快感者か。まぁ、そうなる過程の想像はつくが……
 
 しかし、無意味なことをするわねぇ……
 私だって結果を求めるために人々を犠牲にしたことはあっても 悦楽や享楽のためにそうしたことはないというのに。
 結果としてソードゴーレムみたいなアレげなモノは出来上がったけど、アレにしたって、本来の目的は人界守護の絶対兵器作りのためだったし。
 ……やめやめ。思い返すと碌な事が起きない。
 良くない思索は良くない流れを引き寄せる。

 ……ふむ。身体データの生成には問題なし。
 ナビゲーションピクシーモードも一度は使ってみたけど……使えはするわね。
 以後も使用するかどうかは今後の課題としておきましょう。

 後は……

 ふむ……全剣技データ、完全接続完了……これで偽装再現も問題なしね。
 後は……細々した身体データに関わるスキルに対する接続……完了。これも偽装修正して……アイテム関係は即興でジェネレートすれば問題なし。
 ……服は……本当は何も身につけないぐらいが身軽で好きなのだけど。
 流石に人目につく行動をするのにそれをしていたら、飛び火がエグいわね。

 英雄の介添人 たらんとするなら自身の身も律するべしか。

 仕方ない。一品物の縫い目の存在しないシルバークロークでも誂えましょう。
 優先度も高めて、外敵干渉はほぼ弾くようにして……
 ふむ。我ながら上出来ね。良い仕事したわ。

 これを纏って……。 転移! アークソフィア!

~アークソフィア転移門前広場に転移あそばされたクィネラ様~

 私、降臨。
 ……ふむ。転移プロセスにも干渉は可能になってきたわね。
 ただ、75層以下の転移閉鎖は広域すぎる……私個人ならともかく他の人間の行き来解放までは面倒見ていられないわね。
 カーディナルが是正しきれないのであればそこまで。と言うことにしておきましょう。
 まぁ、それだけ広域にわたって歪んでる証左ね。
 
 ……注目を浴びているわね。どうにも。
 まぁ、仕方ない。私に見惚れてしまうというのはもはや自然なこと。

 朝型の人間達と夜間型の人間達の入れ替わりの時間。
 
 階層攻略の方は斥候を飛ばしたり忙しそうね……77層のボス撃破の確認。
 門を物理破壊した何者か…………災禍の鎧の方も上層まであがってきたのね。

 それは重畳。これであちらは次の段階に移れる。

 黒の剣士からはボス撃破の報告があがったが詳細は語られなかったと。
 78層の主街区街開きまでは行ってないのね…… 
 
 ……おや。 そこのお前。そう、そこの この如何にも洋ゲーファンタジーなのに和風で整えて世界観をずらしてるお前よ。
 ずっと此方をちらちら見ているけど何かしら?

 熱心に掲示板を見ているから何かと思った……?
 違うわね。それは此方を見る建前。
 ちら見する中に感じるのは……そう、情欲? 
 ああ、アレ。もしよろしければ少しお時間頂けませんか的なノリで私に声をかけるチャンスを窺っていたところかしら?

 ふふ。残念。

 この身は既に捧げることを決めた主がいるのよ。数奇とは言え、そう定義した以上は私は裏切らない。
 故に、その手の誘いにも乗ることはないわ。他を当たり……
 いえ、そうするのも早計ね。
 お前、名を名乗ることを許すわ。
 【クライン】ね……お前は悪運が良い類の男なのね。
 『悪いことをしてもそれで破綻することなく逆に栄える』ことの方よ?

 だって、この私を無遠慮に見詰めて見惚れて声を掛け損なったのに、この私から名を聞かれる栄誉を受けたのよ?

 幸運より悪運よ。私は無価値、無意味な者に名を問うことはしない。

 光栄に思いなさい。
 我が刀 となる当世最初の栄誉をあげましょう。

 ああ、安心なさい。無論ただ。とは言わない。
 その刀の振るい方、使い方から仕込み直して上げる。

 強そうに見えない?

 この速度で抜き打ちして首で寸止め。
 ダメージ判定もシステム警告も起きない精妙な寸止めをされた後では?

 ええ。素直な首振り 何よりだわ。
 と、このように見た目からでは想定も出来ない強者が居る と言うことも揃えて覚えておきなさい。
 あの【閃光のアスナ】だって、そう言う部類の剣士でしょう?

 ああ、あの娘は知り合いなのよ。
 つい最近、抱えていた大問題を私の手で解決して上げた程度には知り合い。

 あの子の知り合いの割りには見たことがない?
 ああ、当然ね。
 いわゆる後発組なのよ。デスゲームと知って後からログインしてきた訳あり。

 まぁ、細かいことはおいおい教えて上げましょう。

 美人には謎が多いものよ。
 無遠慮に踏み込むと次は寸止めの手元が狂うから気をつけなさい?

 ……ふぅん。……ねぇ。お前。
 いわゆるカルマ回復クエストがあるとして。
 それで、本当に罪は濯がれたと思うかしら?
 その犯した行いは記録され、世界に刻まれている。

 なるほど。健全な回答で何より。
 人間とはそうあるべきだわ。
 デスゲームなんて死に近い世界に設定しておきながらその罪を軽々しく扱いすぎなのよね。
 だから、お前のその反応は正しい。
 
 システムが業を洗い流したから無罪。
 システムがそれで罰を与えないから許されたとかってやっすい免罪符だと思わないかしら?

 ああ、何のことはないわ。地獄の王子様を捕まえに来たのよ。私。
 
 誰のことかって? だから地獄(Prince)(of)王子様(Hell)よ。
 面倒なのよね。ああいう手合いが影に隠れたままだと。
 だから、こっちから仕掛けにいくのよ。
 CounterAssassinate(殺られる前に殺る)ってヤツね。

 ん? ああ、簡単よ?
 だって。言ったでしょう?
 カルマ回復クエストを行ったところで、システム上、カルマが回復しただけでそのものが犯した罪は一切消えず、記録に残されている。
 その記録を読み解けばどこで何をしているかとかそういう所まで遡れるわよ?

 ふふ。久し振りだわ。
 その怯えの混じった表情で人間に見られるの。
 でも、安心なさい。
 少なくとも、この私は 主に刃を向ける危険性のないものには原則として敵対することはない。
 お前は よほどの人道に外れた行いでもしない限り、此方に刃を向ける真似はしないでしょう?
 
 ふふ。掛かったわ。

 悪いわね。お前との会話を利用させてもらったのよ。

 ほら、あの地獄の王子様云々。
 これは、その当人しか知り得ない名前の訳し方なのよ。
 人混みに隠れて違和感なく行動できる隠業、隠密、隠蔽スキルに富んでいたとしても そういった『自分しか知り得ない事実』をどこの誰とも知らない人間がいきなり口にすれば揺れるものよ。

 で、今、ここに目線を飛ばしていた人間、おそらくは掲示板から情報を得ようとしていたのね。
 情報屋を真っ当に使えない。
 その上で自分の目的に添うように行動するためにはどこかで情報を手に入れる必要がある。
 真夜中であっては駄目。何故か? 深夜帯が活動期の人間もいる。
 日中? 当然の如く論外。人混みに紛れる程度ならともかく こういった情報掲示板を見ている姿というのは妙に残るのよ。

 じゃあ、どのタイミングか。
 深夜帯に動いていた人間が寝入りに行き、深夜を越えて朝になる時間から動くものの入れ替えの時間。
 人の認識がもっともあやふやになる時間。

 それが 今 という時間なのよ。

 まぁ、どキッパリとそいつのリアルネームからなにやら合切をここでぶちまけるのも面白そうだけど。
 不幸よねぇ……ログアウトできて、外からならいくらでも対処できた事態に。
 ログインして、SAOの中に居るからこそ、全く対処できなくなるって言うのは。

 さて。一仕事してくるわ。

 その間にお前のお仲間でも集めておきなさい?
 



 PoH と自らにつけた名を誰とも知らぬ女がその意味をギルド【風林火山】のリーダーに説いて聞かせている。

 何者かという驚愕が一瞬、一瞬だけ過ぎり、即座にそこから逃げることを選択する。

 

 この流れが非常に自分に良くないことを理解したからだ。

 

 あの女はおそらくは 居るはずはないと推定された茅場晶彦以外のマスターアカウントを使っているであろう存在。

 敵にするには面倒なことこの上ない。

 街に潜伏するのは諦めて 次の階層にある浮島の隠れ宿とやらに身を潜めることにすればいい。

 

 隠業、隠密スキルをカウンターストップするまでにあげた自分を見つけられるものなどそうはいない。

 装備もそうした痕跡を隠すドロップ品。

 人混みに紛れ人を殺せる暗殺特化とも言える装備。

 

 スキルとアイテムの二重隠業。

 

 逃げることなど造作もない。その筈だった。

 

 【エラー:システムによってあなたのアバターの行動は封じられています】

 

 縛り付けられるような自分の意思を無視するかのような呪縛。

 POHは知らない。

 これこそが システム的呪縛。

 75層において聖騎士ヒースクリフが扱った回復手段がない麻痺。

 

 彼の憶測は外れてはいたが遠くはなかった。

 

 マスターアカウントどころか、システムそのもの。

 カーディナルシステムに干渉し、その機能を収奪するクィネラシステムなどという理外の存在などとは当然の如く思い当たることなどないのだが。

 

 これまでうまく立ち回ってきたその男の端正な顔が歪む。

 

 あり得ない。 あり得ないっ! クソチートかよ!

 

「ふふ。対象指定して(ターゲットロック)広域検索(ワイドエリアサーチ)して、ヒットしたから即呪縛。我ながら逃げ回るゴキブリを潰すには最速且つ最適な手段ね」

 

 その耳に 嫌に耳に徹る声の女の声がした。

 

~目の前で動けなくなった男を文字通りの蟲を見るような目で見るクィネラ様~

 

 先ずはその邪魔ッぽいフードケープを外してっと。

 ふぅん。なるほど。

 この顔つきで、この声質なら 天性のカリスマ になりうるわね。

 犯罪者として扇動者になるのも頷けるわ。

 

 好い目つきね。私を殺したくて殺したくて仕方なくなってしまった【殺の心意】に満ちている。

 魔剣・友斬り(メイトチョッパー)の担い手。

 ……名称の付け方間違えてるわね? だって、お前 友 なんて切った覚えないでしょう?

 

 システムが命じる(喋るな)

 悪いわね? 言い訳染みたことやあなたの思想や勝ち誇りだとか負け犬の遠吠えだとかそう言うもの聞く気はないのよ。

 監獄に送っても意味ないだろうから直々に壊しに来て上げたのよ。

 

 それだけ。

 

 こう、理不尽とか不可解とか意味不明とか自然災害だとかそう言う類のイベントに巻き込まれたのよ。お前は。

 

 まぁ、ギリギリまで諦めないその姿勢は買うけれど。

 ああ、お前の言葉を借りれば

 

 イッツァショウタイム だったかしら?

 

 私個人としてはお前のことなど放置しても構わないのだけど。

 お前の破滅を見たい、知りたい、味あわせたい。

 殺したい、奪いたい、殺させたい

 ……そうね。千単位のロストデータがお前に対する怨みつらみがあるのよ。 

 

 その上でこの私は優しいから 

 お前の望み『プレイヤー対プレイヤーの戦争』だったかしら?

 それを叶えて上げようと思うの。

 

 お前というワンマンアーミーvsお前が実質的殺害、間接的殺害した死者の想念。

 

 おや。顔が引き攣ったわね?

 

 この公衆の面前でなぶって上げても良いのだけど、特別ステージを用意して上げたわ。

 

 ふふ。この手合いの実験も懐かしいわね。 転移。

 

~どことも知れない暗闇の中に放り出されたPOHを 災禍の鎧が見下している~

 

 ああ、ここはシステムが形にする前の 空間。

 原則、リポップ想定がされていないボスエリアのデータを再利用しているのよ。

 で、お前の目の前に立つのが、死者の想念の集積を行うデータモジュール。

 

 呪縛を解いて上げるわ。

 

 代わりにお前は SAO内初の『死に戻り』を経験してもらう。

 HPがゼロになったら 再度HPはマックスになる。

 しかし、脳波を焼く電磁パルスの再現はする。

 実体には影響はないけど、此方の頭には同等の刺激が起きるからそのつもりでいなさい。

 その上で強制的に回復させて上げる。

 死なないし 死なせないから 安心なさい。

 ゲームがクリアされるその瞬間までこの空間に閉じ込められて殺した分だけ殺される体感を味わうのよ。

 

 災禍の鎧(クロム ディザスター)。あなたの中の集積データのうち、ギルド【笑う棺桶(ラフィン コフィン)】の手によって死んだもの、実質、間接問わずに、その衝動に委ねなさい。

 目の前に報復すべき対象がいると。

 

 ああ、言葉を話したいような顔ね?

 駄目よ。一切の泣き言も、口惜しみも 合切の言葉を残すことを許さない。

 だって、意味ないでしょう? 

 反省の言葉を述べるわけでも無し、口にしたところで安っぽいだけだし。

 苦悶の喘ぎもお前みたいな男から聞きたい趣味はないもの。

 悲鳴を上げるほど殊勝な心構えもしないだろうしね?

 

 つまり、何を思い、何を口にしたかろうが許されない。

 命乞いも 誰かに対する怨み言も。

 願望も お前の殺したかったものに対する切望も。

 合切を残すことを許さず ただ、玩具のように弄ばれなさい。

 

 殺る側は良いけど殺られる側に回るのは不服そうな顔ね?

 

 見て玩弄するのは良いけど、玩弄される側には回りたくないものよねぇ……

 

 まぁ、これも私の実験データになるわ。

 果たして、リアルワールドの性格破綻者はどこまで行けば心身ともに破壊されるのか。

 ああ、一度殺されたらそれは記録されるから頑張りなさい。

 一度殺されたらリプレイデータとして一時でも時間が空いたら休み無しで再現して上げるわ。

 

 あの圧倒的な暴力と理不尽に勝てるのなら解放して上げる。

 もっとも、今のお前のステータスで打ち破れるような力量ではないけれど。

 

 ああ、お前の差し金だったかしら。

 がなり立てる耳障りな声で騒ぐ男を差し向けて 黒の剣士に ベータプレイヤーとチートを交ぜて ビーター と呼ぶようにして軋轢を生み出そうとしたのは。

 

 悦びなさい。

 お前はその身で 真のチート を実感し体感し記録する。

 魂に刻み付ける敗北の記録、脳が焼かれる死の記録を追体験する仮想空間ならではの死の探求の始まりよ。

 

 さぁ、逃げなさい(イッツアショウタイム)

 

 この暗闇に果てはない。

 お前を殺したがってるものの衝動に任せて破壊の意志が動き出すわ。

 

 あら。早速一回 死んだわね。

 

 記録:背後から偽星剣スターキャスターで胸元を抉られるように突進突き。死因:片手剣ソードスキル ヴォーパルストライク を背後から逃走無防備状態でクリティカル。

 

 AutoRevive(自動蘇生)実行。

 

 のたうち回る暇はないわよ。

 ほら。そんなことをしていれば……

 

 二回目。記録:再生途中で脳が焼かれた痛みに悶えている最中に顔面に落下突き。

 死因:短剣ソードスキル ラピッドバイト をダウン中特攻判定。

 

 さぁ。まだまだ。

 殺されるのを見て笑った分、殺される側になると言うのも乙でしょう?

 

 痛みに慣れたらその閾値も変更して、その都度新鮮な痛みに変えて上げるわ。

 

 死んでも死に切れないを実証できるなんて運が良いわね。あなた。

 

 

~その後の顛末~

 

 POHのオリジンはその後、表に出ることはなかった。

 彼が何をし、何を経験したのかは解らない。

 言えるのは表舞台に出れるような状態ではなくなったであろう事。

 

 再起があったとすれば それもまた 擂り潰されるであろうこと。

 

 それを為したクィネラは何も語らない。

 いちいち処分したゴミのことを語る意味がないからだ。

 思ったようなデータ回収にならず不服であったことは確からしい。




~秘匿情報獲得~

 クィネラは POH のオリジナルをどことも知らぬ場所に幽閉しました。
 ゲームクリアログアウトがされるその瞬間まで 死なない、死なせないをモットーに徹底的になぶって実験台にした模様。
 とりあえずは、死なないサンドバックにしてクロムディザスターのソードスキルの実験台にされている模様。
 ホロウデータの方がマシな扱いになるんじゃないかな……

 まぁ、ゲーム版で本人出てこないから仕方ないね!
 『死んではいないけど たぶん、廃人か、一歩手前』でログアウトしたんじゃないかな……?

 クィネラは クライン に目をつけました。
 色香だけでうまく飴と鞭で使えそう?

 
 クィネラが 人前に出て活動を開始しました

 災禍の鎧が ソードスキルプラティクスモードを実行し剣技熟練度が上昇しました。


■POH
 本名:ヴァサゴ・カルザス
 正史であれば後々まで因縁を持つキリトの宿敵のひとり。
 WEB版と書籍版ではその最後が微妙に違う。
 アニメ版ではvsアスナ《創世神ステイシア》との一戦が見物。
 アバター強化がされた状態の マザーズロザリオ がどれだけヤバいかが解る。

 書籍かアニメを見ておくと大体どんなやつか解る。
 本作ではゲーム版に登場しないことから オリジナルが使い物にならない状態にした。
 ホロウデータの方がマシな扱いされるんじゃないかな……いや。マジで。
 
 POH節を一切残させてもらえない台詞無しで終わる哀れを喰らった。

 
 


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【さぁ、懺悔なさい?】最高司祭様はお優しいので地獄の王子様の境遇に同情なんかしない【もっとも訊くだけで免罪はわたしの仕事じゃないけど】

【CAUTION!】

 このお話は 特定の境遇の方に刺さる内容になっております。
 原作中のPohというキャラクターの背景設定をいじめ抜く内容になっております。

 アドミニストレーター様が一方的にディスってるだけなので読む人が読むと不快です。要注意。
 でも、あの方、原作からして本質はこっちなのよね。
 本編は脳内にアドミニストレータ役の声優 坂本真綾様の声をイメージしながらお読みください


~どことも知れぬ廃棄データ区画において 這いつくばる地獄の王子様を踏みしだいているクィネラ様~

 

 へぇ……相当回数死んだのにまだ折れてないの?

 これはこれで貴重なサンプルね。

 

 あれか。

 基本虐げられる側で育ったから置き換えて耐えれてしまうタイプか。

 優秀な戦士や兵士になれる類ね。

 自己に起きる現在進行形の苦痛を 過去の苦しみと比較してそちらの方が重いとして耐えてしまうタイプ。

 

 復讐者 に成れれば良かったのでしょうけど、報復すべき対象が社会全般になればこうなるのねぇ……

 ああ、違うか。

 お前の場合、憎しみの根 がどこにあるのか気が付く時を以てはじめて自我を得たようなものね。

 結果として、その殺意が 父親と同じ人種、アジア系民族全般へのものに置き換わった。

 SAOの中でなら殺し放題だったし、その中でアジア系民族と暮らすとか本当にキツかったでしょう……?

 

 ところでお前。

 黒の剣士キリトを殺せたのなら その後、自分が殺されてもいい。と思っていたらしいけど。

 

 嘘よね?

 

 だって、そんな思い切りの良さがあるならこの条件下に置かれた段階でとっくに自死できてるもの。

 百桁近く殺されて、死の再現を繰り返されて此方への憎悪だけで生きていられるって相当よ?

 自己論理崩壊してとっくに脳死している状況下で未だしぶとく生きてるって言うのは相当に心底から『己は殺す側であって殺される側ではない』と信じてるって事だもの。

 

 ここが深く心意を読み取れるシステムじゃなくて良かったわ。

 もし、アンダーワールドと同質のシステム環境であったのならとんでもない厄ネタになっていたでしょうね。

 

 誇りなさい。お前の世界への害意は比類なき物よ。

 

 プレイヤー対プレイヤーの戦争も お前が 表舞台に立ち人を率いることを嫌わなければ可能になっていたでしょうね。

 

 誘導し、煽動し舞台を整える。

 攻略組と【笑う棺桶】を見事にぶつけ合わせた手腕は見事だわ。

 あの条件下であれば、普通は疑われる。にもかかわらず、その条件を引っ繰り返して、情報リークを信用させた。

 お前は恐らくそういった悪意を引き寄せて己に利することが出来る天運を持っている。

 正しい悪運の担い手なのよ。

 

 お前、黒の剣士キリトが女性だったら 確実に自分の手で犯して殺してるぐらいには汚辱願望に塗れてるでしょう?

 ああ、何ともなれば男でもやりそうよね?

 

 顔が歪んだわね? ヴァサゴ カルザスくん?

 

 ああ、あなたのアカウント情報の芯の真までハッキングしたわよ?

 昨今、生活の利便性をあげるにはどこかしらにネットワーク社会の恩恵を受ける。

 一つひっかければ後は芋蔓式よ。

 

 性愛とか冗談じゃないものねぇ……

 

 幼少時から愛されぬ自分を見てきたあなたにとって 子を為す行為に繋がるなんてほんと 冗談じゃないものね?

 

 手段として 他人を汚辱に塗れさせてから殺す というのは心魂の凌辱としてはこれ以上にないものだけど お前はその内、汚辱として性的なものを選択することはない。

 自分のような望まれぬ子供が産まれるかも知れない行為なんて心底嫌悪するものでしか無い。

 だから お前は たやすく人の心を凌辱し穢し尽くせるとしっても それだけは選択しない。心で忌避するから。

 まぁ、殺してしまう方が手っ取り早いというのもあるだろうけど。

 

 ああ、でも一つ訂正するわ。

 

 少なくとも【父親】には望まれていたじゃない?

 

 嫡男に行う移植手術の臓器提供元として。

 

 本格的に憎悪で淀んできたわ。

 良い曇り具合ね。

 そう、このわたしを憎みなさい。怨みなさい。

 

 お前という人間の憎悪、その全てを受け止めて糧としましょう。

 人を殺すこと、人の死を享楽としてきた者。

 そのお前を玩弄し 死の輪廻を学習させ。

 その上で、尚、わたしへの憎悪を持って生にしがみつく。

 

 ねぇ。今のお前は黒の剣士キリトへの執着とわたしへの憎悪、果たしてどちらが重いのかしら?

 

 中々見ない逸材だわ。

 本当に惜しい……

 

 そういえば、お前が切り捨てた者達、【笑う棺桶】だったかしら。

 あれも中々狂信っぷりねぇ……

 殺し方や殺すことへの忌避感とか箍の外し方とか教え込んだらずぶずぶに嵌まり込んでるのね。

 

 新興宗教の教祖でもやれば良いじゃない。

 死こそは救いなりー!我こそは死なりー!とか言って。

 煽動PK だったかしら。

 人を煽って自分は何もしないで結果を眺める……

 

 これは今度 公開処刑でも中継で流してみようかしら……?

 生存者の中には並々ならぬお前への滾りを持つ者もいるでしょうし。

 ああ、でも、お前のように破綻していないからこそ 件の一件が捕縛して黒鉄宮監獄エリア行きに話がまとまっていたのよね……

 

 処刑を一大ムーブメントにしては良くないわね。

 やはり、この儀は我がうちに秘めて、観測データ、実験データとするに留め起きましょう。

 攻略組の誰にも知られず、ここで悶えていなさい。

 

 ああ、ちなみに。お前のこのデスループだけど。

 無意味なわけではないから安心なさい。

 

 最終的には 仮想世界に置いてどれだけの痛みの閾値が現実の生命への危険度に値するのか や どれだけの過負荷で精神死が起きうるラインに辿り着くのか。

 

 まともな被検体では到底実験不可能な医療と電脳に関わる分野に寄与するデータに仕立てあげるから。

 緩和ケアに使う場合、どこまでが電脳と肉体の共通の死の臨界なのか。

 あるいは 末期の病症患者のデータを擬似再現して通常状態とその状態に置ける仮想適性の差違の確認。

 などなど、普通の被験者ではやれそうもない実験をして、それをデータにしてまとめてたたき売ってあげる。

 

 

 良かったわね? 

 はじめてまともにお前という人間の存在価値が人様のために役立つわ。

 数多無数の死を嘲笑った者がその命を限界まで使い潰して、次の医学と電脳のために身を擂り潰す。

 ちなみに死した後に医学のためにその肉体を提供することを献体と呼ぶのだけど。

 もし仮に 脳死が発生したら 検体に回すようにユーザーアカウントの特記事項に記載しておいたから安心なさい?

 五臓六腑の全てを取り分けて使うように。と。

 ああ、でもアレね。移植に使うのは本懐を遂げることになってしまうわね?

 それはそれで美しいお話になって滑稽だから、死した後は、父親の元に即座に連絡が行く手配もしておいて上げようかしら……?

 

 

 美談だわ。面白おかしくて腹抱えて笑ってしまいそう。

 

 自らの命の価値を取り戻すにはこれとない機会よ?

 




~秘匿情報獲得~

 Pohは その身を以て 様々な医学と電脳の連携に関わる実験データを提供しているようです。
 その内、メディキュボイドからリンクしたデータで末期癌患者の容体を擬似ロードして脳内に病状再現するとか 電脳を使った人体実験に突入します。
 ナーブギアを使っての意識、記憶、感情をコントロールする手法をリンクさせて自分の身体が病気であると錯覚させるテストなどわりと人道ぶっちぎり。
 まぁ、最高司祭様、アンダーワールドで再生者作るために相当やらかしてたしこれくらい普通普通。

 大体こんな事を暇があったら繰り返されてる模様。


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インフィニティモーメント:ホロウフラグメント編
1:出会い


歪み始める世界と感情。
切っ掛けは些細なことからで。

始まりは全くの別の過程を手繰ってきた人との出逢い。


 

 アインクラッド75層。

 最後のクォーターポイントで判明した事実は攻略組全体に絶望をもたらすものだった。

 

 攻略組最有力ギルド 血盟騎士団。

 団長 聖騎士ヒースクリフ。 

 騎士剣と騎士盾を自在に繰る攻防一体のユニークスキル【神聖剣】の使い手たる彼。

 その彼こそがソードアートオンライン、浮遊城アインクラッドを死の遊技場、デスゲームに変えた黒幕たる 茅場晶彦 だったという事実。

 それを見破ったのが黒の剣士キリト。

 彼の放った投剣がヒースクリフに当たったとき、全ての虚飾が剥げ落ちた。

 

 【イモータルオブジェクト】。不死なる対象、破壊不可能な対象。

 

 けしてプレイヤーが持っていてはいけない属性に守られた存在である事実こそがヒースクリフを黒幕たる茅場晶彦に至らしめた。

 屈指のユニークスキル【二刀流】の担い手である彼は 一度の敗北を得て再度、最強の聖騎士に挑むことになった。

 ゲームデザイナーで有り、システムを誰よりも理解するGMであるヒースクリフにはあらゆるソードスキルが通用しない。

 黒の剣士キリトの二刀流から繰り出される 現状において最強の27連続攻撃ソードスキル【ジ・イクリプス】

 その最後の攻防。

 正史であれば、ヒースクリフは失望を隠さずにその攻撃をやり過ごし、ソードスキル終了の硬直クールタイムの最中にある黒の剣士に向けて ゲームオーバーデッドエンドの一撃を加えるべく剣を振り下ろす。

 それをさせじ と 閃光のアスナと呼ばれた最速最強の細剣使いはシステムによる行動不能状態から 愛するキリトを救わんと【意志の力】のみでそれを振りほどき、彼の前に立ち、致命の一撃をその身に受ける。

 アスナの死。それを眼前で目の当たりにしたキリトは、絶望に。されど それでは死ねぬと彼もまた意志の力を持って訪れる死。それが確定する刹那の間にアスナの残した白銀の細剣を緩やかに。されど絶殺の意志を持ってヒースクリフに突き立てる。

 そして、茅場と共にポリゴン片となり爆散する。

 だが、それでも……

 と続いていくのが正しい正史だ。

 閃光のアスナ と呼ばれた少女 と 黒の剣士キリト と呼ばれたアインクラッド攻略の英雄。

 その二人を中心とした永い電脳世界と現実世界を舞台とした物語。

 

 だが。そうなるべき物語は今ここにねじ曲がる。

 

 繰り出される【ジ・イクリプス】。ヒースクリフを捉えたはずのその一撃はしかし。その最中、凄まじいまでの過負荷が空間を支配する。

 ソードスキルは強制中止され、何もかもが歪み。

 

 そして 世界は超えられない分岐点を一つ超えてしまった。

 

■ 無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)

 

 目を覚ましたとき、誰もが立地点を理解できていなかっただろう。

 攻略組は 迷宮区から野原に投げ出されるような形で。

 後に 76層以上の大事件 と呼ばれるそれは エラー訂正機能の異常、転移システムの異常、一部スキル、装備の異常等々の問題を引き起こす。

 

 レベル適性でないまま最前線の街となったアークソフィアにやってきてしまったもの。

 

 しかし。いまだクリアされない世界。

 終わっていないのであれば終わらせなければならない。

 大規模な過負荷によるシステムエラーが次に起きたとき、今度は切断が維持されるかも怪しいのだから。

 

 

 攻略組の折れかけた意志は 残された25層をクリアし、100層突破へとまとめられたのである。

 

 それを期してのことか。

 システムエラーの余波が引き起こしたのか。あるいは、死の世界の入口と知って自らの意志でやってきたのか。

 本来は接点がなかったはずの異なるゲーム ALO、アルブヘイムオンラインの世界より舞い降りる来訪者 金髪の麗しい妖精剣士リーファ。

 不慮の事故以外の何ものでも無い無関係な状況からこの世界に堕ちてきたシノン。

 

 黒の剣士キリトはそれに手を差し伸べる。

 

 正史であればこのタイミングで出逢うことなどなかった少女達もまた転移システムの異常により最前線の街に取り残された。

 正史であれば最前線まで上がり来ることなどなかったキリトに縁ある 竜使いシリカ

 閃光のアスナの親友であり、黒の剣士キリトの愛剣を打上げた 武器鍛冶のリズベット。

 

 黒の剣士キリトの回りには 美少女が集うようになった。

 キリトを中心にして繋がる縁は残された階層を突破するその力になるはずだった。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント) 

 

 アスナはシステムエラーによって解かれてしまった彼との間を結ぶ絆であった指輪をなぞる。

 

 その胸に刺さる痛みがついぞ嫉妬と呼ばれるものだと気が付いたのは。

 

 大切な彼氏であり恋人であるキリトが 容姿も似てもいない美少女の妖精と言って良いリーファと現実世界のことを情報交換し合う姿、互いの無事を祝う義兄と義妹の姿。恋をしている少女の目を持ってキリトをみるリーファ。

 軽い記憶喪失を持ってデスゲーム内に放り込まれてしまったシノンを迎え入れる姿。

 鍛冶士としてのスキルをシステムエラーで失い、それでもと奮起するリズベットを顧客として支えるキリト。

 適正レベルでないまま、しかし、竜使いというテイマーの中でも希少な存在として前線に立つことを選び、そしてキリトを支えようとするシリカ。

 

 彼の隣は自分だけの居場所の筈だったのに。

 再度結婚すれば良い。もう一度、わたしはあなたの最愛であるという自負を示せば良い。

 そうは想いはするが、アスナの胸に積もる何かは重くなる。

 

「ママ? どうしたんですか? 複雑な顔してます」

「ユイちゃん…………そうね。ちょっと、色々あって物思うこと増えたなって」

 

 アスナはそう言うと机に向かう自分の顔を覗き込むようにしている 訳あって 娘 として接することにしたユイにくたびれた笑顔を向ける。

 自分自身がこんな面倒な女だったとはついぞアスナも思っていなかったのだろう。

 ほんの些細なことで嫉妬をするようなせせこましい女だったのかと。

 あるいは、後もう少しだけ、決定的な何かをキリトとの間に迎えていれば、こうは思わなかったのかも知れないと。

 

 血盟騎士団の再編、攻略組の再始動。

 中核におくはずのキリトは その矢先に新エリア、しかも、同行者として一人しか送り込めないようなエリアの攻略を行うのだという。

 解決しなければならない課題は山積している。

 腕を組み背を伸ばすようにして伸ばす。

 実態はなかれども、凝り固まりそうな思考を揉みほぐすように。

 

 ふと。外に出てみようと思った。

 

 夜中。実際の経過時間を忘れないように朝昼晩はタイムスケジュール通りに刻まれている。真夜中の街の散策。これまでの自分がしたことのないことをしてみようとアスナはリフレッシュのために立ち上がる。

 

「ユイちゃん。わたし、少し外の空気吸いに出てくるね。一人で寝るのが寂しいときは、キリト君のところに行けば良いと思うから」

「…………あの、今、パパの部屋には……いえ、なんでもないです。解りました。一人でも平気ですからママの部屋で待ってますね? 夜遅くですし、ママが強いからといってももしもがありますから気をつけてくださいね」

 

 口ごもったユイを少しだけ疑問に思いながらアスナは身軽な町歩き用の装いに着替える。ぽんぽんと指先でステータスから装備変更を行う。

 マニアックなことではあるのだけど、倫理コードを解除していると、装備変更のうち、衣服に該当するものは手動切り換えになる。 脱がせる、脱がされる。と言う行為にすら意味を持たせる仕様らしい。

 ふと、アスナは22層のログハウスで過ごしたときの キリトとの『初めての夜』を思い出す。

 あの時は一杯一杯で何もかもが過ぎ去った後で実感があった。彼と想いを通じ合わせたのだという。

 お腹を軽く撫でる。実体ではないこの中に。仮想空間であるからこそ、存在しなかった避妊具。

 吐き出された熱の味を 忙しさが洗い流してしまいそうになる。

 

 頭を軽く振る。こんな事を思い返すなんて。

 アスナは自分が欲求不満に陥ってることを自覚する。

 キリトの近くにいる少女達を押しのけて、抱いてと言えればどれほど気が楽になるのか。

 所在なさげにベッドボードに腰掛けるユイをみて

 この子の前で欲求不満の解消のための行動をしてしまうわけにもいかない。

 

 格安の手配で借りている今のエギルの酒場の二階の自室では自分を慰めることも難しいと今更ながらにアスナは気が付く。

 22層のログハウスや大枚を払って借り上げた75層以下にあるマイハウスのありがたさを身に染みながらアスナは月下の散歩に出た。

 …………その前を通り過ぎたとき、キリトの部屋からわずかに漏れ聞こえた男女の声をあえて聞こえないフリと気が付かないフリをして。

 

● 銀月来臨 異界の来訪者

 

 そして広場の噴水の近く、冷たさを再現する水場に足先を浸して、色々なモノを冷やす。

 見上げた星空は仮想世界故に澱みがない。積層構造のアインクラッドの内部でありながら、見上げるような空を作り上げているのは仮想空間故なのだろう。

 ふと涙が零れる。VR空間では、感情の発露から来る涙などは隠せない。

 あの濁った星もよく見えないし空気もきれいではない。星や月よりも街灯やビルの灯りの方が神々しい。だけれども、人が確かに生きていると言う実感を感じさせた現実世界の夜空がどうしようもなく恋しくなった。

 

 つぅ とほほを伝った涙が零れて 水場に落ちて 波紋を広げる。

 涙を拭って立ち上がり、部屋に戻ろうと思ったとき。

 

 

 アスナの目は。閃光のアスナとしての直感が。

 振り向いた噴水。そこに明らかな異物が佇んでいることに気が付いた。

 

 咄嗟に圏内であるにも拘わらず、細剣を呼び出す。

 何かが起きてからでは遅い。 いくつものパターンを考え、考えがキリトを呼ぼうと思ったところで止まった。

 もし、もし。あの時、漏れ聞いた声が……とこんな時に考えるべきではない思索に捕らわれてしまう。

 振り切るようにアスナは誰何を問う。

 

 月明かり。

 銀月が照らすその姿は攻略組の最前線を走ってきたアスナをしてみたことのない銀色の全身甲冑。

 ともすれば、モンスターにも思えそうな装飾はそれでいながら力強い輝き。

 

 見る者がみれば 『シルバーソル3部位+ゴールドルナ2部位』と判断するソレは明らかにこの世界にあって存在してはならない異物だった。

 

 アスナの誰何を問う鋭い舌鋒に答えるかのように

 動き出したその全身甲冑は スローモーションで前にばったりと倒れ伏した。

 

「……え?」

 

 一瞬どうしようか戸惑ったアスナは、キリトを呼ぶのではなく、大柄なエギルに助けを求めるため動き出したのであった 

 




『プロトオーグマー』
現実拡張(AR)を行うための機器のテストモデル。
年齢適性を確かめるため、幅広い年代の人間でテストが行われている。
現実世界にゲームキャラを投影して遊ぶなどといった使い方ができる。
ベース設計にナーブギアにも使われた技術が使用されているため、誤認が起きる可能性があった。
昔の狩りゲーを引っ張り出して遊んでいたらろくでもない目に遭った人間がいるらしい

『昔の狩りゲー』
 モンスターハンターシリーズのこと。SAOの時代からははるかに40年くらい前に溯る模様。
 オーグマーを通した結果、そう言うモノだと誤認され、装備回りのデータごとシステム異常によって生じた隙間にデータ回りがねじ込まれた。転移システムがエラー吐き出しているのは外部からコイツのデータ回りを引っ張り込むためにその領域が演算に使われているため。
 存在するだけでアインクラッド、カーディナルに過負荷を与えるバグの第二号。


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2:分岐点

『君を死地に送ることになる……許してくれ』

「サポートもしてもらえるわけだし、重村のおじさんのところのゼミの関係者総出のバックアップでしょ?…………それに」

『ああ、想定通りなら、茅場君は自らの夢の城の中で死ぬだろう。それこそがSAOログアウトの最終キーとなる』

「なら。その幸福の夢の中で終わる前に、その夢に巻き込まれて死んだ人たち。その遺族代表としてそのツラに全力グーパンチをぶち込んでやらないと」

『……返す返す済まない……出来るのならわたし自身が行くべきなのだが……』

「重村のおじさんに、全身使って戦わなきゃ行けないフルダイブVRは流石に無理でしょ……? それにとびっきりの異物として全く違う別システム、別ゲームのデータをぶち込んであちらに殴り込むわけだから、修正逃れのための手動パッチを横からハッキングしてぶち込み続けるわけだし。そんなことの陣頭指揮出来るのおじさんだけだろ。適材適所だし、そもそも、肝心要のハッキングできるタイミングなんか一回しか訪れないんだろ」

『そうだな……茅場君に嫉妬した須郷君が仕掛けるタイミングを利用する。そのタイミングを利用し、バックドアを仕込む。あちら側の茅場君には不正アクセスしたのは須郷君ぐらいしか見えないように細心のカモフラージュをしてな……彼にVRの基礎、仮想空間の構築の原理を仕込んだのはわたしだからね……クセの一つぐらい解るし、その全てを彼の手で作り上げたわけではない。そう言う脆弱性を利用させてもらう』

「……しかし、よく見つかったよね。SAOの仕様企画書…………表向きではあるだろうけど、隠された裏エリア【ホロウエリア】だっけ。…………設定通りならアインクラッドでロストしたデータはここにその最後の瞬間までをパッケージングしたデータとして保存されるんだっけ……」

『……2023年10月18日。あの子の最後の日、そこまでの記録が眠っているとするなら……せめてデータの形でも良い。それを……ッ』



 バッと擬音を立てそうな勢いで彼は飛び起きた。

 夢を見ていた。

 その一瞬で彼は現状を理解しようとして、ふと靄がかかるような頭痛を感じてばったりとまたベッドに倒れ伏した。

 無骨な造りのベッド。 それでいながら、何かしら、こう、香しい。

 それに思い当たって五感が再現されていることに安堵する。

 流石にベッドのシーツをなめ回して、味覚の確認をするまでには至らなかったが。

 視覚、触覚、嗅覚。身体が動くのも間違いない。

 それでいながらのこの頭痛は『そう言うモノ』だと受け入れる。

 ゲームシステムに真っ正面から喧嘩を売るような真似で送り込まれたのだからこれも仕方ないと。

 

 ガチャリ と扉の開く音。

 

「あ、よかった。目が覚めたのね」

「……君は?」

 

 部屋に入ってきた少女の姿を見て、彼は素直にそれがこれまでで逢ってきた中で最上位に位置する美少女だと理解する。

 何かを言う前、問う前に名前を訊くのも当然の反応と言えた。

 苦笑しながら扉を閉めて、ベッド脇の座椅子に腰掛ける少女。

 

「名前を訊いたのはこっちが先だとおもったんだけど……夜のこと、覚えていますか?」

「……夜……? そういえば、飛び込んだ先が鉄火場と拙いから装備の類はきっちり用意していたような気がするんだけど……なんでインナーなんだろ……」

「それはこちらの手で武装解除させてもらいました。流石にあんな恰好だとベッドを使わせることも出来ませんから」

 

 そう言う少女の目は鋭いままだ。

 もし何かの間違いがあれば、あるいは少年の手が伸ばされるようなことがあれば即座にその身柄を監獄エリアに叩き込む。

 システム上、ハラスメントコードと倫理コードをしっかり適応すれば異性の手が触れた段階で警告音と警告メッセージ付きで監獄エリアの一方通行な転送が出来る。

 この事から 何かしらの尋問を行うのであれば、異性が行う方がもしもが起きる可能性が少なく、また、少女の実力も加味されて。今、この得体の知れない少年の尋問に携わっているのである。

 

「……んー……どっから何処まで話してよいのやらって感じはするけど。最初に出会った人は味方につけておくべきだと直感が訴えてるな」

「……どういうこと?」

「あ、僕の名前、っていうか、アバターネーム見えるんだから解ってるはずだし、その誰彼は、何をしにここに来た何ものであるか?ってことだよね? 【Asuna】さん?」

 

 少女、アスナの顔が一瞬、羞恥に染まる。彼女は最初期に頃にも似たようなことをした記憶があるからだ。アバターネームは秘されるモノではない。それが伏せられているとすればそれはイベント上、あるいはシステム上の制限がかかったプレイヤー以外の存在だ。

 そして、彼はそうではない。もう慣れてしまったこの世界、SAOの常識の一つ。頭上の上に白い文字で浮かび上がるような。 この世界を嫌がおう無しに仮想の世界と認識させるアバターにつけられた名前とそのレベル。

 

(……レベルは……攻略組と遜色なし……あの二人とは完全な別口なのね……)

 

 アスナは昨夜見た全身甲冑姿と目の前の少年アバターのレベルの高さからレベル1で放り込まれてきたリーファとシノンの二人と この少年は全く繋がらないことを理解する。

 

「僕の名はユート。【Yuuto】。遺族代表で生きてる内に茅場晶彦の顔を全力グーパンチとフルスイングアッパーしに来ましたって所かな」

「…………つまり、あなたは……」

「そう。ここがデスゲームになっていると理解して、それでもなお。と此方にやってきたバカな人間の一人だよ。娘を亡くしたとある男の怒りの刃を携えてね」

 

■無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)1

 

 エギルの酒場のラウンドテーブルにいつものメンバーが集まる。

 アスナが合流したのはその最後だった。

 

「ごめんなさい。遅れちゃったね」

「アスナ。……それで、その、夜中にいきなり現われたやつは……?」

「本調子じゃなさそうだったから無理はさせないでもう少し横になっていてもらおうと思うの。 問題ないかしら?」

 

 着席したアスナを見て、四人の少女は顔を見合わせる。

 

「でも、男性の方なんですよね……? アスナさんのお部屋に寝させていて良いんですか?」

「そうよ。アスナ。目を覚ましたって言うのなら改めて別室を取らせるなりあると思うけど?」

「んー……そこは余り気にならないかな。あのタイミングでフリーで使えそうな場所、わたしの部屋しかなかったし。騎士団のギルドハウスに連れて行くには、団員になってもらわないとならないし。あんな夜中にいきなり、キリト君の部屋に不審者投げ込んじゃうのも、それはそれで問題でしょ?」

 

 アスナのその言い回しの仕方に一瞬、ほんの一瞬、キリトとリーファは眉根を顰める。

 

「予め来訪メッセージ飛ばしてもらえば、その辺りはどうにかしたって言うか、素直に俺を呼べばよかったじゃないか。アスナ」

「夜中までリーファちゃんと話し込んでいたみたいだし、兄妹水入らずの邪魔するのもよくないかなって思ったの」

「……はぁ。ねぇ。アスナ。呼んだ呼ばないはもう過ぎたことだから良いのよ……その甲冑ひっぱいだしたから出てきたやつは一体何なのか?ってことの方が重要なんじゃないの?」

「そうですよ。わたしやシノンさんみたいな境遇なんですよね? その人」

 

 アスナは一瞬、ほんの一瞬。告げるべきかを躊躇ってわかっている事実の一つだけを開示した。

 

「しののん や リーファちゃんより、問題アリな状態よ。彼が此方にログインを試みたのは2024年11月7日だそうよ。……今、12月の初旬。ログイン成功まで一ヶ月かかってる。これがどれだけ異常かは……キリト君やユイちゃんの方が詳しいと思うけど」

「バカな……あり得ない。VR上に生体データを再現するのにそんなに時間がかかるわけがない……」

「……再現する際に膨大な付加情報。それも、カーディナルシステムにおいては適正値を刻むことが出来ないモノを貼付させればそう言うラグがあっても不思議ではないかも知れません……ですが、それは……」

 

 キリトとユイ。双方の顔が歪む。それが明らかに異常であることを理解しているからだ。その言葉、その内容が正しいとするならば、システムに過負荷を与えているエラーの要因の一つであるのは疑う余地がないからだ。その顔を見て。アスナは目を閉じ。

 

「これを異常と思い、受け入れる余地がないのならば、自分はログアウトする。そうとまで言い切った人間を切り捨てるの? ホロウエリアに取り残された女の子を救い上げようと思うのはよくても?」

 

 どちらも切り捨てて見捨てる方が攻略を先に進める上では正しい。

 危険を切り捨てて安全を得る。

 そして、足手まといなどを考慮してしまえば。

 適正レベルに上がっていない、リーファ、シノン、リズベット、シリカも切り捨てるのが正しいことになるからだ。

 そうならないようにキリトは尽力したし、している。

 

 だから、次の言葉をアスナが言ったとしても誰もそれを否定し、却下しうる強さを持ち得なかった。

 

「…………男性同士だから、キリト君にお願いしようと思ったけど。彼は。【来訪者ユート】は血盟騎士団副団長【閃光のアスナ】の元、その庇護下に置きます。キリト君。彼をその異常性から対処しなければならないと思うのならば、わたしを通してからにしてもらうから」

 

 黒の剣士キリト と 閃光のアスナ。

 二人の道は緩やかに別れ始めようとしていた。

 

 




 プロトオーグマー 2
 重村教授が作り上げたオーグマーの試作型。
 ナーブギアに誤認させ、SAO内部に侵入するために作り上げた対カーディナルシステムハッキングツールがその正体である。
 この際、彼は娘の命を奪ったナーブギアをリバースエンジニアリングしている。

 強固であった防壁は一人の男の企みで撓んだ。
 旧重村研究室に所属していたかつての教え子達を総動員して仮想世界の未来を挫滅轢断しかねない茅場晶彦に対処するためのプロジェクト【exception handling】を立ち上げた重村は その世界に直接侵攻する 仮想世界に対する適性の高い人材を探していた。

 来訪者ユート
 アスナが少年ユートを指していった言葉。本名 茂村 優翔。
 重村教授の遠縁にあたる。
 攻略組に引けを取らないレベルの高さは数値上のエラーではなく彼を構成する情報量の高さによってカーディナルがそう認識せざるを得なかったため。
 現実世界における彼のバックアップの手厚さから単体で一つの世界に匹敵する情報圧を持つ。
 ARとVRでは適性が違う部分が多いが、その差を埋めるために彼が慣れ親しんだアクションゲームのデータをカーディナルシステムに誤認させて相当数持ち込んでいる。銃器などの武器もあるのだがカーディナルを誤魔化しきれないため、使用制限されているモノも多い。
 DMC系武装が制限されていることにすごく哀しむことになる
 その最大の目的は茅場晶彦を殴り飛ばすことにあるが ホロウエリアと呼ばれる場所に存在しうる ユナ のホロウデータ を無数のホロウデータごと抜き出して確保することにある。


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3 侵蝕

「……でも、おじさん。例のハッキングプログラム、うまく出来たの? どうやってもカーディナルに対して偽装し同一のプログラムであると誤認させる手続がうまくいかないってやつ」

『……おかしな話しだが。アンチカーディナル ハッキングプログラム とは全く連想も出来ない名称をつけたら、ことの他安定してな。コード:クィネラ……起動キーとしてこの名を呼びたまえ。 SAOでの君の相棒となる』

「ハッキングツール【コード:クィネラ】か。プロトオーグマーを経由した外部サーバーにミラーコピーを作り上げ、改変し、改竄し、使用者の都合のいいものに置き換えて、カーディナルに送り返し正常なプログラムであると誤認させる。この際の同一性の再現に成功したってこと?」

『ああ。これで、彼の夢想の結実たる天空城アインクラッドは地に堕ちる。天才プログラマー茅場晶彦。その彼のつくりあげた夢の鋼鉄の城はその中核構造カーディナルシステムを完全ミラーコピーの形で丸々収奪され、ただの不特定多数に利用されるだけのデータに成り下がるのだ』

「……リスクは1年以内で事を終えないと経由中継者である僕の実体の脳が限界域を超えて脳死する。……先んじてSAOに居る人たちのタイミリミットもだいたい同じか」



 

 アスナは逃げるようにその場を離れた。

 キリトの静止する声も聞かずに振り切って。

 

 言い表すのなら 彼女がその時抱いていた感情は嫉妬。

 

 黒の剣士キリトが自らの手で最前線で戦える力を得るまでの道筋を与えられた二人。

 

 リズだけならば、アスナはきっと耐えられたし、やり過ごすことも出来ていた。

 シリカにもSAO初期から生き抜いてきたシンパシーがあった。

 

 現実世界のキリトのことを知る彼の義妹 リーファ。

 完全なる巻き込まれた被害者として、それでも戦うことを決めたシノン。

 

 キリトが 自分を一番に見てくれていない現実がそこにあってアスナの心はジワリジワリと歪みつつあった。

 おおよそ二週間共に過ごしたあの22層のログハウスが苛むように二人きりの楽しかった時間が過ぎる。

 

 なのに今は。 

 

 仮想空間において涙を隠すことは出来ない。

 分泌物の何割かをシステム的に出せないようにしてるくせにこんな時ばかり と。腹立たしげに涙を拭う。泣いてなんかいられない。こんな事で泣いてはいけない。

 あの場にいた五人に告げる事無く、新しく登録済みにしていたフレンドにメッセージを飛ばす。

 

【外で待ってます】

 

 それだけの簡潔な言葉。何かを言葉で飾るような仲ではなく、単に夜の噴水前で拾っただけの人。それでも、抱えている問題は大きくて。本当なら皆でこの問題に当たるべきなのだと理解していて。

 きっと同じ事を繰り返してしまう。

 だから、必要なのは実績だった。

 

 呼び止めようとしたキリトが出てこないのは落ち着いた頃にでも話せば解るとでも思われてのことだろうか。

 

 エギルの酒場の中がざわつくよう感じて。

 その中から出てきたのは。

 

 アスナと出逢ったときと同じ装備を身に纏った【Yuuto】だった。

 違うのはその背に背負うような形でマウントされた黒い剣のような何かと盾のような何か。パチリパチリと弾けて黒い羽が舞うように漂う。

 こんな者が二階からいきなり降りてくれば大なり小なり場も凍るし、リアクションも採れまい。

 

「いや、成功だったね。普通に降りてきたら絶対に絡まれてたよ。あの空気。 この手の装備 見た目の威圧感ヤバいしね。まぁ、もっと威圧感マシマシもあるけど」

 

 その姿からは想像も出来ない軽い口調でアスナの前に彼は現われたのである。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 その姿を認めると追いかけられると拙いと思ったアスナは裏路地に潜んでから移動しようと思った。この姿のこの人と二人でアークソフィアを歩けば、恐らく、追いかけてくるであろう中の五人にあっという間にバレてしまう。

 

 ユートは指で酒場の中をくいくいと示して

 

「やっぱ、面倒ごとになりそうな感じ?」

「うん……ごめんなさい。やっぱり、皆にもショックなことだとは思うの」

「うーん。軟着陸できるのが理想だったんだけど、実績評価つける必要ありか」

 

 ふと。アスナは自分の身体が彼に引き寄せられてるのに気が付いた。

 ハラスメントコードの警告が出るはずの状況で、しかし、警告メッセージは現われず。

 悪戯っぽい声でアスナの耳に届くようにユートは言う。

 

「ちょいと隠れよっか。基本の隠密看破じゃ見破れない系ので」

 

 何処から取りだしたのか解らないケープを頭から被らされる。

 ふと、自分たちをチラ見していた人たちが困惑気味な目を浮かべる。

 キョロキョロとしてまるで何処に行ったのかを探しているよう。

 

「……あの。これって……?」

「HIDEポーションだっけ? モンスターから視認外になる薬って。その上級効果で完全隠密状態になる 姿隠しの装衣 ってアイテム。シティアドベンチャー対策に改造してあるから町中でも使えちゃうヤバげな代物」

 

 ボソボソと喋って音は隠せないことを印象づける。

 肩から抱き寄せられるような形になって、それを無抵抗で受け入れてしまっている自分にアスナは軽く戸惑いを覚えた。

 でも、それは。

 

 目の前をアスナのことを探しているであろう人物が二人。

 二人、名前を呼びながら通り過ぎていく。足早な辺り、しっかり探すつもりなのだろう。

 

「アスナーっ……拙いな。これ、相当お冠だぞ……」

「あのすいません、血盟騎士団の副団長のアスナさん、見かけませんでしたか?」

 

 黒い髪と黒いコート。

 アスナにとってとっくに見慣れた姿の彼とポニーテールに結わえた金髪をフリフリ揺らせながら気づかわしげな顔で通行人から聞き込みをするその義妹。

 

 ギリっと歯がみしている自分にアスナは気が付いた。

 何も二人組でなくとも。手分けして探すならそれなりなやり方があるだろうに。

 おそらくは 二人一組を三グループと言ったところだろうか。

 

 ゆっくりゆっくりユートに肩を軽く抱かれながら その横を姿を隠したまま通り過ぎる。

 おそらくは姿が消えているだけで接触をすればバレるのだろう。

 

 アスナの中にふと奇妙な感覚が灯る。

 

 キリト君の真横をキリト君のよく知らない男の人に。

 姿を隠しながら、恋人のように肩を抱かれて通り過ぎる。

 ゾクリとした感覚。とてもイケないことをしているような。

 たったそれだけのことの筈なのに。

 そしてその感覚が 背徳感 と呼ばれるモノだとアスナが気が付くのは遠くないことだった。

 

 その耳元に興味深い者を見たかのような。

 ボソボソと隣を通り過ぎようとしていた人物に聞こえてしまうかも知れない音量で。

 

「……ふぅん……アスナさんとあの黒いコートの人、とそう言う関係?」

「…え?」

「気付いてないみたいだけど、顔、朱いからね?」

 

 常のアスナであれば。 その指摘を更に真っ赤になりながら罵倒と平手打ちで返答しただろう。

 だが。今は。

 姿を隠していると言う状況と拒めなかった抱き寄せられてその胸元に身を預けてしまうような態勢が。

 朱に染まったアスナが 抗議の目線を上目遣いでユートに与えて終わった。

 

 これまでにない経験が 緩やかにアスナの何かを侵蝕し始めていた。

 

 

 

 

 




 プロトオーグマー3
 ARからVRに機能をシフトさせた試作器。
 その内部プログラムには【コード:クィネラ】と呼ぶカーディナルをハッキングすることのみに特化したハッキングツールが存在する。
 現実拡張を利用した際の人間の認識知覚野を利用して「仮想空間内において使用者が目視した空間情報全てを量子、電子情報に分解し外部接続された演算器に送り込み、寸分狂いないコピーデータを形成する完全複製転送」を行う機能を第一義。
第二義として「情報を使用者の都合の良い情報に変換し改竄。改竄したデータを複製元に送り返し、その情報が正しいモノであると定義させる」
 これを組み合わせることで 結晶無効化エリアの無効化 など カーディナルがシステムとして用意した事象を否定、廃棄、上書きするハッキングを行える。
 なお、人間の脳の機能を著しく酷使するため、着用者は仮想空間内を長時間行動することを想定していない。
 重村教授の本来の思想である 非侵襲性 を真逆に走る唯一つとなった。

 【コード:クィネラ】
 プロトオーグマーを動かすメインプログラムであり、対カーディナルハッキングプログラム。この名称がつけられる前は真っ当に作動しなかった曰く付きの代物になった。冷酷に冷静に公理を刻むが如くにカーディナルを改竄する。プロジェクト参加者の一人が趣味でナビゲーションピクシーを用意し、封印状態として内部にパッケージングしてある。
 やがてこの名を持つ意味と因果は明らかになるときは来る。
 カーディナルの対となるべくある名前。
 因果は未来において逆転する。

 
 姿隠しの装衣
 モンスターハンターワールド・アイスボーン出典。本来の装備効果から強化されている模様。町中で装備出来ることと腕の内に入るのならば、二人まで同時に隠せる。
 物体透過と発生音消去 までは行えない。
 
 アークソフィア及び非戦闘空間におけるユートの武具装備状態
 厳つい装備をしていても何故か、その外見と質感にそぐわない柔らか仕様になる。
 これは、装備自体が敵意、隔意、害意などの感情値を検知したり、戦闘エリアに突入することで基本の装備展開状態になる。
 


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4:証明 ♥秘匿情報1 アスナ 自慰癖

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)
 閃光のアスナルート 解放条件 キリト視点で進行する場合(アスナ寝取られルート)

1:キリトがホロウエリア探索を開始する段階で アスナよりリズベット、シリカ、シノン、リーファの好感度が高い。
2:キリトが添い寝を実行したことがある。アスナ以外を一番最初に対象にした場合フラグ1が回収される
3:来訪者ユートがいずれかの階層ボスをアスナと共に攻略する。
 この時点から、情報屋のアルゴに アスナの秘匿情報 と言う特別項目の情報商品が売られるようになってしまう。アスナはアルゴにのみ、相談の形で何かしらの情報を売り渡し自身の秘密を共有させて様々なしがらみを軽くしている模様。あるいは自身の口からは告げたくはないが知って欲しいことをたくしているのかも知れない。
 なお、曇りアルゴという貴重な表情が回収できる。

4:主街区アークソフィア内で キリトがヒロインとデートをしているのをアスナが目撃する。メイド喫茶でバイト中のシリカがキリトを指して『ご主人様』と称するのを目撃するなど。フラグ2が回収される
 


5:キリトがアスナをパートナーにする回数よりリーファ、シノンをパートナーにしたレベリングを行う回数が多い
6:キリトがアスナとの結婚状態がシステムエラーで破棄された状態であることをアスナに指摘されるまで気が付かない。フラグ3が回収される。

 いずれの項目も順序に拘わらず回収チェックは済されている場合においてルート解放がされる。
 この時点からキリトがアスナをパートナーに誘う際、状況によってアスナに拒絶されることが増えたり、アスナがユートと主街区を一緒に歩く姿を散見するようになる。路地裏に消えたり、キリトが侵入できない建物の中に消えたりする。
話し掛けた場合は「どうしたの? フレンドと一緒にいるだけなんだけど……?」
など、それがあくまで自然な行いであることを告げてくる。

 夜中にお姫様抱っこして自室での添い寝を誘う際、目撃者無しの状態でも拒否されるようになる。
 パートナー設定時、主街区を連れ歩く際、姿が確認できなくなることが増える。
 「キリト君がいけないんだから……」とボソリと呟いたり目線をそらしたりする仕種が増える。
 階層攻略が進行するとユートとアスナが主街区で歩いているのを目撃した際、後をつけるとエギルの酒場以外の宿屋に消えることがある。男女二人組でなければ侵入できない設定が施されている。
 あくまで添い寝をしているだけで他意はないと言い張る。
 最終的には エギルの宿屋の二階の自室で『添い寝』をするようになり部屋の前を通ると『行く』『ダメ』『そこ』『大きい』などと行った言葉が漏れ聞こえるようになる。
 部屋から出て、二階に降りるまでの間、幸福そうな笑みで下腹部を撫でてるときがある。
 


 日常というモノは個々で過ごし方が違う。

 それはアインクラッドにおいても変わらず、例え、それは黒の剣士であっても閃光のアスナであってもその日、その日の行動日程はルーチンワークで定められたモノではない。

 予定は未定であり確定ではない。

 だからこそ、閃光のアスナにとって、この状況は不本意でもあった。

 

 自分を探すキリト達の横をすり抜けて、アスナが誘われていくのは外部フィールド。

 即ち、迷宮区へ繋がるエリア。

 戦闘エリアとなり、これまでとは違うアインクラッド、カーディナルの支配する死の領域。

 

 そして、アスナはその日、本当の【チート】を目撃することになる。

 黒の剣士キリトの名乗ったチート+βテストプレイヤーをあわせたビーターの示すところの先んじてβテスト時代に集めた知識による優位などではない真のチート。

 

 公的機関の認証と保証の元、電子演算器に対するクラッキングとハッキングを公然と行うモノ。

 カーディナルシステムによる不正防止機能を無効化する正しくズルを行うモノ。

 

 主街区、外部エリア、迷宮区。

 基本的にそれらで構成された階層マップにおいて指定された条件を達成することで

 次の階層に繋がるボスエリアへの道が開く。

 それがこれまでの階層攻略の基本だった。

 

 だからこそ、どのようなイベントに遭遇しても対処できる戦力評価を維持しておく必要があったし隠れ潜むネームドモンスターを討伐できる実力者が必要だったし、重要情報を持つNPCイベントを攻略する必要があった。その濃度の濃さが、今日までの攻略の足を引っ張り続けていたのに。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 何事でもないように。 無人の荒野を進むかのように。

 鎧袖一触。

 ポップアップするモンスターの一切を歯牙に掛けず、その手足を振り、蹴り、殴り、掴み、投げ。

 剣すら抜かず、体術のみで圧倒していく。

 

 その手甲、脚甲は【バルログ】と呼び表される悪魔を啼かせる便利屋稼業の悪魔狩人が使ったとされる破格の武装。無論のことながら、ソードアートオンラインには存在しない。

 ましてや……

 

 迷宮区の一角。

 アスナを室内の入り口に置いたまま、単身でフロアトラップのエネミーポップを踊るような(ポップダンスする)気軽さでステップワークを刻みながら屠る。

 屠殺と言う言葉が似合うそれは、端からエネミーをエネミーではなく素材に変えていく。

 ソードアートオンラインにおいて、明確な属性攻撃というものは、敵のみに許された特権と言えた。

 だが、それは彼の持ち込んだ武装には一切適応されず。

 

 炎を纏う手甲が 巨大な斧を持った牛戦士の懐を抉り、その次の瞬間に全身の屈伸運動からの跳躍、それと同時に振り上げる拳を持ってその顎を砕き 体躯体重の合切を無視してフォールバッシュ、あるいはフォールインパクトという垂直落下と同時に打撃を加える。

 されど、それで終わらず。

 その打撃が徹ると同時に、兇悪な形をした手甲の握撃の型から開き、その手を持って頭を鷲掴みそのままにスタンプを持って地面に押しつぶす。

 コミックアクションの如き理不尽は そのトドメに 衝撃音を奏でる効果音と共に 炎を持って爆砕する。爆心地にいるにも拘わらず、一切その余波で傷負うこと無く。

 周囲にいたネームドを守るために配置された雑魚を巻き添えにしてその爆炎は消え去り。

 

 ネームドを含めたモンスター達は 唯一、それが正しいルールであったことを思い出すようにポリゴン片となって一斉に消散した。

 

「無法には無法を。理不尽には理不尽を。ってね? 茅場晶彦が作り上げたゲームのルールでなんか戦ってなんかやらない……ゲームマスターがとことん有利なクソゲーには付き合う必要ないってこと」

 

 アスナは惚けたように一部始終を見た。

 戦い方がそれまでに見たことのない全くの異質な戦闘方法。

 体術スキルを極めたとて、どれほどの体術用武器を用意したとてこうはいくまい。

 一切の反撃、一切のアクションを許さない一方的封殺。

 そして、一体の敵を葬り去ると同時に起きた爆炎。周囲一掃をソードスキルではなく 武器の発生エフェクトで行う。

 本来であれば、あのような大技の隙を囲い込んで殺しに来るのがSAOらしさ溢れるエネミーの行動。それが来ると解っているかのように爆炎が炸裂するのだからもはやどうしようもあるまい。

 清清しいまでの理不尽。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 目の当たりにするアスナはそこに確かな強さを感じた。

 …………ずくり とアスナは自分の下腹部に熱を感じた。

 

「……っ♥」

 

 それは久しく感じていなかった少女の持ち合わせる本能の一欠片。

 強い男に惹かれてしまう、守られたいとも思ってしまう弱さの表れでもあり。

 SAOのような死が身近な状況下で最前線で戦い続けてきた【閃光のアスナ】と呼ばれる少女がその身に宿してしまった今以て満たしきることの出来ない 生殖本能 の疼きであった。

 

 気が付かれてはいけない。だって、これはとてもダメなことだ。

 キリト君より強い男の人を見て 発情しかけているなんて。

 

 以前であれば、このようなときはどうしていたのか。

 ……閃光のアスナ。 彼女は黒の剣士キリトに対して 倫理コード解除設定 を開示した過去がある。

 22層のログハウス。

 初夜を迎える段になり、彼女は半裸の下着姿となり彼にそのコードの存在を開示し、その身を任せたのだ。

 この世界は 男女の性愛すら可能な世界であるとして。

 キリトが知り得ず、アスナがそれを先んじて知っていた理由。

 

 それは自慰行為(オナニー)をするために。

 死の近い世界、拗らせた生殖本能、昂っていく満たされない三大欲求の一つ。性欲。

 それを自らの手で慰めていた。

 キリトがそう言う行為があるという連想が出来なかったのはこの世界がVRゲームであり、そう言う設定まではないだろうと思い込んでいた点があり、アスナがそれを知ったのはコミュニティでやはり、女性の生理について語り合うことがあったからに他ならない。

 誰しもが欲求不満を抱えてしまう状況下でどのように発散するか。

 

 そして明らかになったのが倫理コード解除設定。

 性倫理を解放し、システムで制限された性的快楽による快感信号はゲーム的な処理ではなく限りなくリアルな行為を行うために制限されている分泌物すら再現し、肉体から推定される内臓器の再現に至り、女性器、膣内、膣奥、子宮、子宮口、アナル、アナル内、口唇、喉奥、乳首、乳房、あらゆる所に発生しうる性感信号を解放した。 

 女性の側ですらこうであり、男性側も無論、男性器回りをはじめ、セックスを興じるためのあらゆる機能が解放される。

 だが、これはラフィンコフィンなどの犯罪者ギルドからすれば、レイプやレイプ殺人などを可能にしてしまうと言う余人に明らかになってはならない最終防壁でもあった。

 アスナにも聞き覚えがあることで、下種な犯罪者ギルドには、KillOrRape(殺す代わりに強姦らせろ)、略してKORと名乗るものたちすらいた。

 そして、戦えぬ代わりに誰かに身を委ね守ってもらう。その代価に身体を委ねる弱い女達もいた。

 

 アスナはそんな中、自慰を可能とする手段を知ったことで命がかかる闘いが過ぎる都度、自分を慰め性的欲求を満たしていた。まるで使われていない現実の肉体に自分が女性であることを忘れないように刻み込むために。

 目の前で命を懸けて戦う雄をオカズにしたり、キリトに守ってもらったときのことを思い出してオナニーしたり。

 

 閃光のアスナ。

 彼女の中には正史において秘されて表に出ることなかった性癖が。

 オナニー好き・自慰癖が眠っていた。

 

「……❤︎❤︎❤︎」

 

 彼女はこの迷宮区探索が終わったのならば。

 キリトが抱いてくれなくとも一人その身を慰めることを再開するのだろう。

 その身に再び灯された性衝動が満たされるまで。

 

 




 倫理コード解除設定
 文中で説明したとおり。第一巻でアスナはキリトにこれを教える形で初夜を迎えた。
 先んじてこれを知っているとなれば、男としてはなるほど、確かに『経験の有無』を問いただしたくなる。あの空気からよく初夜の処女喪失、童貞喪失の交換セックスに応じられたと思う。やっぱりアスナさんはメインヒロイン。ちなみに、この辺りのデリカシー皆無発言も本作においては、アスナさんが離れていく遠因としている

 バルログ
 デビルメイクライ5から出典。
 これを使用しての攻撃アクションは作者オリジナルの動き。

 秘匿情報1 アスナのオナニー好き。
 当たり前だが独自設定。でも、第一巻を読む限り、先に知っていたってことはやっぱり結構な頻度でオナニーしてる子だと思います。
 キリトと初夜を迎えて処女を失ってからは回数が激減していたが、最近になって欲求不満傾向が高まっている。そんな矢先に理不尽な雄の強さを見てしまったので生殖本能と一緒にむくむく起き上がってきた。また、処女を失ったことで挿入物を使ってみようかなど深層域では指オナニー以外の自慰行為をしてみたいという欲求や自分でも気が付いていないが、他人の手によって弄られたらどれほどの快楽と満足を得られるのかを知りたいという本性が眠っている。


注:感想などがありましたらご随意に。感想が増えると悦ぶタイプかもしれませんが、打たれ弱いので性癖あわず や こんなんキリトはんやない!とかは回れ右推奨です。


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5:破壊 あるいは 破戒 

【CAUTION!】
第一部 エロスフラグメント編において ヒロインルートが解放。

1:閃光のアスナルート 【雌彼女 アスナ】
2:風妖精のリーファルート 【性隷 リーファ】
3:射手のシノンルート 【雌猫 シノン】

第二部 ロストソング → リピートクライマックス(繰り返す絶頂)編において
風妖精 リーファルートが消失。

第四部 フェイタルバレット → デザイアバレット(欲望の弾丸)編において
銃手 シノンルートが消失。

シノン、リーファが第一部よりハーレムメンバーになります。

風妖精のリーファルート 【性隷 リーファ】 導入イベント
 リーファはSAOにおける戦闘に現実でも共通する悩みとして その豊満な胸が揺れることに頭を抱えていた。激しい運動を伴う動きをすると横揺れ、縦揺れで痛むのだ。そんな折、兄のキリトと距離を取り始めたアスナが服飾、縫製などに詳しいと聞きリーファは恥を忍んでスポブラに該当する下着の存在がないか尋ねるのだった……

射手のシノンルート 【雌猫 シノン】 導入イベント
 順調に進む階層攻略に焦りを見せたのかホロウエリア攻略に本腰を入れ始めたキリト。 結果としてシノンのレベリングなどが滞るようになる。そんな折、彼女は見慣れないスキル【弓術】を自らが取得していることに気が付く。いない者は当てに出来ず、彼女はこういうゲームの遠距離武器に詳しそうなユートに相談を持ち掛けるのであった……





 アインクラッドは各階層ごとにカーディナルが設定するクエストイベントが存在する。

 そのクエストをクリアしていくことで迷宮区におけるボスフロアが開放され、また、ボスの撃破に必要なギミックであったり、弱点やエネミー構成などが判明する。

 

 第一層開始時の時点のボスは βプレイヤー殺しとも言うべき『ベータ版からの装備変更』が済されたボスが登場し、開幕から犠牲者を生む展開となった。

 既知情報と変更された差違による陥穽。悪意染みた開幕がそこにあった。

 茅場晶彦は 丹念にβプレイヤーを刈り取る罠を仕掛けていた。

 既知の情報で戦うモノに先を歩む資格無しとでも言うように。

 

 黒の剣士キリトが生き延びて来れたのは 幸運、あるいは、正しく不運 と言う巡り合わせの結果とも言えた。あるいは 閃光のアスナ と共に行動していた時期を乗り越えたことで 行動によってβプレイヤー知識が全く通用しない展開になることを知ったが故に生き延びることが出来たのだろう。

 

 争い が 進化と発展を生む。

 

 茅場晶彦が最初期にVRシステムを利用した仮想現実の試験を行った際に語り残したとされるモノがそれだ。

 

 であるのならば、この行為もまた肯定されるべきモノだろう。

 今、ここに茅場晶彦が作り上げたカーディナルシステムをクラックしてハックして毀損するという争いの狼煙がSAO、アインクラッドにて打上げられた。

 

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 システムによってボスエリアの門は閉ざされている。

 この門の発見もまた重要なことだった。

 アスナはここで一段落だろうと思い、懐から転移結晶を取り出す。

 門を発見すれば、そこは転移ポイントとして有効化され、細かい条件を満たしたとき、フロアボスエネミー、通称 階層主への挑戦権が生じるのだ。

 その条件が満たされていない今は、ここが探索の切り上げ時。そう判断したからだ。

 

 しかし。

 

「さて……無双ゲー染みた別ゲームアクションでエネミーを蹂躙するのはまず序の口。ここからが本領でね?」

 

 何の気もないようにボスエリアと待機エリアを隔てる門にユートは左手で左耳を覆うように当て込み 右手を門にかざす。

 

「プロトオーグマー活性化……システム【コード・クィネラ】起動……先ずは開幕だ……システムが閉ざすこの門扉を破壊する!」

 

 転移結晶を取り出し、今、まさに掲げんとしたアスナの目の前で。

 ユートは高らかに カーディナルシステムのクラックを宣言する。その声に応えるかのように 薄く半透明なイメージが ユートの背後に浮かび上がる。

 

 「ッ!? お、……オバケ?」

 

 アスナは実体のないゴーストのような存在を嫌う傾向がある。エネミーにすれば細剣で突こうが切ろうがどうにもならないからだ。

 その彼女が浮かび上がるモノを見れば、そう受け取るのも無理はない。

 

 収奪するリソースが足りず、今だ、仮想空間に実行体を持たざるプログラム。

 いや、持たされた機能の済す影響を考えるなら電子計算機そのものに多大なダメージを与えるコンピューターウィルスにその属性は近い。

 命名されたその名を以て『彼女』は時を逆しまに溯り。

 時の流れを示す樹形図の異なる始まりの位置に。

 

『ええ。始めましょう。我が主(マイロード)。悉くを我が物に。全てをあなたの手に』

 

 深く静かに。

 されど徹る 力ある冷厳な声。

 支配する側にあると言うことを疑わせぬ女性の声が空間を支配した。

 

門扉 掌握(データ構造収奪)……術式展開 門扉強制解放(ドアノッカー ディスチャージ)

 

 ばぎんっ! と錠前を何かで叩き壊すような音が響く。

 カーディナルシステムが設定したイベント、NMエネミー、規定値に達した戦力評価。このいずれが欠けても開かざる扉を強制的に開け放つ。

 持ち合わせた機能を以て、定められた設定に従い、望まれた役割を執行する。

 カーディナルシステムをハッキングしてクラッキングするプログラムはその暴威を解き放つ。

 収奪され複製されたエリアを隔てる門という概念は改竄され、無条件の侵攻を可能にする。

 

 されど不正を検知するシステムは働かず、それが正常であるかのように。

 因果の始まり。ここではないどこかで 『彼女』の分身体を作ったがためにカーディナルは生まれた。

 であれば、その逆も真。

 『彼女』の干渉をカーディナルはそれを不正処理と見抜くことが出来ない。

 それは同一のモノとして処理される。

 故に罷り通るイベントスキップしてボスエネミーに直接突っこむという理不尽。

 

 重苦しい解放音を立てながら扉が開く。

 

「……はえ? え? え? うそぉ……」

 

 アスナの目の前でその理不尽は起きた。

 攻略組として最前線で闘い、無数の階層のイベントを突破してきたからこそ解る理不尽。

 定義された条件をまるっと無視して開かれた扉を。

 肩を軽くすくめてアスナを軽く省みた後、ユートはその門を潜る。

 

 彼の歩みに臆する所はない。

 彼が此方で覚醒するまでのおおよそ一ヶ月間、彼はエネミーを再定義した第一階層からの攻略をシミュレートし、それをチュートリアルとしていたのだ。

 少なくともボスエネミーとの戦闘経験で評価するならば黒の剣士キリト、閃光のアスナと同質の経験が。戦い方や戦闘における細則、理論こそ違えど単独にてそれらを踏破するだけの実効戦力が彼の身にはあった。

 

 彼は止まらない。 止まる理由もなく止まれない理由もあった。

 

 アスナは黙孝する。このまま、一人で行かせてよいのか。当たり前を当たり前で考えるのなら追わずに、転移結晶でアークソフィアにもどり攻略部隊を最速でまとめ上げボス攻略に挑むのが正しい。

 だが。

 先頃見た光景を脳裏に重ね。

 目を開き、システムエラーで使えなくなってしまった愛剣の代わりの細剣を握り締め先んじて消えた彼の後を追う。

 閃光のアスナは自暴自棄ではなく賭に出ることにした。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

「……アレ。きたんだ。アスナさん。ボスエネミーなんだから、外で撃破を待っていてもよかったのに」

 

 後追いする形で追いかけてくるアスナの方を見もしないで、気負わない口調でユートはそう言い放つ。

 

「そう言う訳にもいかないわ……あなたの身柄は 血盟騎士団副団長 閃光のアスナ。わたしが預かると宣言したの。だったら、その在り方を見届けるのもわたしの役目だよ」

 

 切り返す少女、アスナには緊張がある。

 それもそうだろう。ボス戦には常に犠牲がつきものだった。

 二人でボス攻略など正気の沙汰を通り越して狂気の沙汰ですらない自殺志願モノだ。

 少なくともアスナの認識はそうだ。

 

「良いね。そう言う自負は嫌いじゃない。 なら、ちょいとばかし全力でいこう……何。デュオで挑むって事は、それ以外を守るって事を一切考えなくてもいいからね」

 

 ボスエネミーの登場エフェクトが始まる前。

 既に戦端は開かれていた。

 歩みを進めるその一歩。その都度に背後に剣の如き揺らぎ。

 スキル【幻影刃】、ファントムエッジと呼ばれるそれは実体持たざる刃でありながら敵を切り裂く。

 無数にそれが装填されていく。

 

 地面に赤黒く血で描かれたかのような魔法陣が展開する。

 その中央が歪み歪み(ひずみゆがみ)魔の獣を形成す。

 魔眼と無数の触手でその体躯を作り上げるその名を ガストレイゲイズ。

 その魔眼より放たれる光は敵対者に生存を許さぬ魔光である。

 

 産声を正に挙げんと触手を蠢かせたその瞬間。

 

 蹂躙が始まった。

 

 ユートが一歩も動く事無く、幻影刃が殺到する。

 正対する正面から。現われ出でたその上方から円を作るように囲うように刃が突き立つ。

 身動きを封じるかのように触手を縫い止め、剣の牢獄を作り上げる。

 

 そして、アスナの見ているその目の前で、ユートは虚空より一振りの大剣を取り出す。

 そう。装備カテゴリ 大剣に分類されるその名は。

 

「…………マグロ……?」

 

 大剣 レイトウマグロが一振り。冷気纏う魔剣である。

 振りかぶり、投剣スキルを持って、その凍てついたカジキマグロは その鋭い鋒を巨大な魔眼に向けて寸分狂いなく捉え投げ放たれる。

 

 巨大な魔眼を縫い止めるようにカジキマグロが突き刺さる。刺さった部位から氷の魔力が解き放たれる。

 幻影刃とレイトウカジキマグロによって ガストレイゲイズは一切の行動の余地なく瀕死に追い込まれる。

 

「……ええと。確か、攻撃担当を切り替えるのはスイッチ。っていったっけ?……スイッチ、アスナさん。後、もう一押し、一刺しでラストアタックいけるから」

「……はい?」

 

 これまでの常識が一切通用しない不可解極まりない蹂躙劇を目の当たりにし、されど、その一言で彼女の意識は攻略組最強最速の細剣使いの意識に戻った。

 

 たんっ

 瞬間で最高速に乗る彼女の早さはユートをして目を見張るモノだった。

 速く、早い。

 無論の事ながら、その走るアスナに不測の事態がないように、機先を制するが如くに幻影刃は装填され狙いを定めている。

 だが、しかし、そのサポートすら追いつかぬ最速のスピードに乗ったまま。

 

 アスナはその二つ名に冠する代名詞 閃光 たる所以を開帳した。

 細剣初級ソードスキル リニアー。

 目視でその発生から終了を見ることは敵わないほどに修練されたその一閃は。

 無数のチートを持ち込んでほぼ無敵と言っていいユートをして完全に敵対してみることがなくてよかったと心底安堵させる業。

 

 どれほど、その業で戦い抜いてきたのか。初級ソードスキルでありながらもはや、彼女のそれは彼女一流の芸術(ソードアート)に昇華されていた。

 

 触手が蠢き、その無事な一本から光が放たれる。

 

 しかし、その光がアスナの身体を貫くより先に 光より早く 閃光が奔った。

 既に死に体でありながらも、その無事な一本の触手の放つ光で十二分に殺傷能力を保持していた魔獣は。

 その光よりも早いアスナの閃光(リニアー)によってラストアタックを与えられた。

 

 剣の牢獄もレイトウカジキマグロすらも通り抜けるが如き一閃だった。

 

■ 無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)

 

 残心。ポリゴン片が瞬き、ラストアタックボーナスが自身のイベントリに与えられるのをアスナは感じて、細剣を納刀した。 

 

 「ぐっじょぶ」

 

 親指を立てて健闘を称えるユートにアスナは苦笑した。

 その親指に向かってポリゴンが吸い込まれていくかのように感じたのは気のせいではないのだろうけど。

 あれだけのお膳立てで何も出来なければ、それこそ、戦い続けてきた意味がない。

 

 この人の助力があればきっと。

 きっと犠牲者をこれ以上出すことなく。

 

 アスナの胸には確かな実感が宿っていた。

 ふと、そこに、耳慣れたはずの恋人の声がする。

 焦燥に塗れたその声に温かさが宿る。自分をやはり探していてくれたのかと。

 

 緩やかにされど壊れた鍵の門が開いて、そこから黒の剣士が飛び込んでくる。

 

 「……ッ! お前えええええええええええええっ!」

 

 憤激と共に全身金属甲冑のユートにキリトは斬りかかる。

 無理もない話しだ。自身の結婚にまで至った恋人を何も知らせずに死地にまで連れ出されたのだ。その憤激は彼の手に刃を握らせ此方を振り向きもしない男の、無防備な背中に向けて ソードスキルを。

 その怒りが正しくとも、この攻撃が成立してしまえば、犯罪者(オレンジ)になる。

 

 「ダメ! キリト君ッ!」

 

 目を見開いて静止するアスナの声も遠く、何もかもがスローモーションに見える空気の中。

 

 『あら。ずいぶんと乱暴なのね。坊やは』

 

 ボスエネミーの爆散するポリゴンからそのリソースを収奪した『彼女』がついぞ、その実行体を得る。

 薄い紫で統一されたその姿は長い髪を棚引かせ。

 舞い降りるが如くに アインクラッド76層ボスエリアに。

 遠く未来、どこかの時間軸、されど、全ての過去を記憶する仮想現実の中。

 タイムスタンプの時間を書き換えるような気軽さで。

 

 公理教会最高司祭(アドミニストレーター)と呼ばれた存在が再臨した。

 

 憤激のままに振り下ろされる剣を労るような優しさで彼女は受け止める。

 まるでその一撃など何ら痛痒ともせぬと示すように。

 ダメージ判定すら発生しないのであればそれはもはや攻撃ですらない。

 

 それを目の当たりにして 黒の剣士キリトはこれ以上にない、困惑と疑惑と憤怒を持って誰何を問う。

 

「ッ……! おまえ達は一体……ッ!」

 

 背後から斬りかかるような一撃を何のこともなく受け止めた『彼女』を一瞥し、一つ首肯したユートは入れ替わるように黒の剣士に向き直る。

 

「……そうだな。自己紹介しておこう。僕の名は【ユート】。天空城アインクラッドを終焉に導く者。SAOを破壊(クラック)する者だ」

 

 




 『彼女』
 クィネラのこと。VRには全ての過去が保存されている。その因果を手繰り過去に現われた電脳体。
 アンダーワールドにおいて君臨していた公理教会最高司祭アドミニストレーター とほぼ同じフラクトライトを持つに至る。
 対カーディナルハッキングプログラムにその名を以て同化した事でボトムアップAIに進化した。
 リソースをカーディナルシステムから吸い上げるごとに力を取り戻していく。が かつてのような人理人界の管理者としての使命も、自己の永続などにも拘りがなく 設定された機能と権能を持って 共に仮想世界を歩むことになった少年のために その刃となりSAOを蹂躙し、改竄する。
 いわゆる 光堕ちした最高司祭様。 素直になれないマイロードラブ勢の1。薄手のトーガ一枚だったりきわどいひらひらドレスだったり、大変、扇情的。
 だが、濡れ場はない。
 主人公のチートの8割は彼女の力。ユートの影響を受けて、ソードスキルを使うのではなく、どこかの何かで使用された技やスキル、道具などをユートの知識経由で引っ張り出して即席解釈で作り上げて叩き込んでくる。
 わりと主人公以外のことは考えない。元々の個人用端末のプロトオーグマーの管理運用システムの影響を受けている。ユートに近しい存在になれば『これがいなくなると、マイロードが壊れるから、庇護対象にしておきますか……面倒な』という区分けで便宜を図ってくれる。
 だが、濡れ場はない。

 レイトウカジキマグロ
 出典はモンスターハンターシリーズ。大剣カテゴリの凍ったマグロ。属性値があるのでガチの魔剣。煮えたぎる金属精錬の窯の鍛冶屋でレイトウマグロを作るファンタジー。

 幻影刃
 出典はデビルメイクライシリーズ。本作では便利な遠距離攻撃。原典ではトリックアクションに使われたりする。

注:後書き説明が欲しいものや解説が欲しいものがあったら感想などで。
 エロが行方不明だけどそこはそれと言うことで。アスナさん攻略をしっかり書かないと他がつながらないんや……


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6:宣告

   
【秘匿情報 アスナ 1 自慰癖】
 
 顔が暗いな。キー坊。
 オレッちはあっちこっちと大忙し。
 例の血盟騎士団の新顔。
 新防具【レギオンストームジャケット】と【鞘付きのカタナ】……
 どうも、ユニークスキルの【抜刀術】まで引っ提げてるらしくてな。
 キー坊以外でアーちゃんと真っ当にデュオがやれるってなるとそりゃナ。

 ン? そいつ絡みでアーちゃんと喧嘩した?
 
 真面目な話しを聞くんだが、キー坊。
 お前さん、今日に至るまでアーちゃんを抱いたカ?
 抱くって言うのは ハグ の方じゃなくて 添い寝の意味深の方だぞ?

 ……ああ、その初っぽい反応で解った。
 まいったな……その状況でキー坊以外の男がアーちゃんとべったりになってるのか……こりゃ、もうダメかもしれんネ……

 何がダメなんだって? そりゃもう色々とさ。

 キー坊。お前さんには格安でとある情報を売り付けてやる。
 だが、買う買わないもお前さんの自由。
 【閃光のアスナの秘匿情報:1】 アーちゃんのセンシティブかつシ-クレットさ。
 
 まいどあり。
 …………さて。この形で得る以上、この情報は普通の場所じゃあ話せない。これからエギルの旦那の店を貸切にして、きっちりお説教も兼ねて教えてやる。

 【閃光のアスナ】と呼ばれた最前線で戦い抜いてきた少女が何を抱えてしまっていたのかとそれを言わずとも受け止めなければならなかった黒の剣士の失敗をな。
 言わずとも っていわれななきゃ解らないこともあるって?
 言わなくても良いことを言い放って地雷を踏み抜いてるキー坊が言うと重いナ。

 ん? 何のことかって? こりゃ、重症ダナ…………

 ……ほら、ついたぜ。まぁ、他にも訊きたい連中もいるだろうし、いつもの面子には聞かせてやろうじゃないカ。
 最前線で二年間戦い抜いてきた少女。それがどんな意味を持つのかをな。

 おーい。エギルの旦那-! これからここ、キー坊の払いで貸し切りナー。

 ん? 聞いてないって? 今、言っただろ。これ、情報料の一部ダゼ?
 お誂え向きに シリカもリズベットもリーファ、シノンも揃って……ああ、あの子もいるのカ。
 ユイって言ったっけ? ア-ちゃんとキー坊の義理の娘って事になってる。
 それで、ア-ちゃんは、今、ここにはいないっと。
 …………へぇ。ボス撃破した後、そのまま、上の階層の街で宿を取ったと。
 まぁ、そう言う状況なら仕方ない。
 …………『他の男と二人で出かけた嫁さんの朝帰り』ってやつダナ。

 ん? 棘があるって? そりゃ、ありまくりサ。
 ア-ちゃんがそんなことするはずないって? 
 キー坊。オレッちの情報網を舐めるなよ? 
 ア-ちゃんがそんなことするはずなくても、その番のキー坊は添い寝してるって言うのは漏れ聞こえるんだぜ……男がよくて女がダメとかそう言うことカイ?

 へぇ 顔が神妙になってきたナ。こっからは情報屋アルゴの戦場。情報という刃を持って黒の剣士を敗北させようじゃないカ。
 さて……二年間最前線で少女であったア-ちゃんが戦い抜く。これが何を生んだか。リズベットやシリカはここで生きることのつらさは理解してるだろうが、ア-ちゃんのそれは比じゃない。
 オレッちも含めて女性プレイヤーにはナ。とあるモノが起きない。キー坊。想像がつくか?
 ……生理だよ。月経。おつき様サ。女性が女性たる所以のモノがSAO内では起きない。これがどれほど悍ましいか解るか? 分泌物、ひいてはシモのモノがない。そこは良い。デスゲームに巻き込まれた上にトイレ事情にまで悩まされるなんて冗談じゃなかったからナ。
 おいおい。お前さん達、そんな恨みがましい目で見るなヨ。
 男のいる場で話す話題じゃないって顔と目つきしてるのは解るサ。

 だが、コイツは キー坊が知っておかねばならないことなのサ。
 閃光のアスナを嫁に迎え、その初夜を過ごした番たる黒の剣士キリトはな。

 話がそれたナ。

 つまるところ。女性機能に綿密に関わるそれまで起きない。っていうのはコワくなるのさ。

 ア-ちゃんはそれを最前線で常に感じていただろう。ストレスで来なくなるとかじゃなくそもそも起きないってなると 果たして自分の身体はリアルに戻ったとき、正しく機能を維持できるのかってナ。
 生理が来ない己の身体に、己が女性であることを意識させる手段にぶつかることになったのサ。

 Sensitive  Gender  Problem。(繊細な性の問題)SAOに生きる女性プレイヤーが直面してしまった公式でその回答なんぞ用意してるわけない問題さ。
 本来なら、こういった問題をケアするメンタル ヘルスを行うえるNPCがいる筈なんだろうけどな?

 この解決手段として とある女性プレイヤーがオレッちにとんでもない情報を送りつけてきた。当然、その情報は買い上げて、自分自身でも精査したさ。
 その情報は口伝で売り渡す形でインフルエンスさせた。男の耳に入らないように必死の情報操作をしてナ。ア-ちゃんの伝手は大いに利用させてもらったヨ。

 顔が朱いゾ。リズベット。シリカ。
 キー坊の前では聞かれたくないって? そういうわけにもいかないのサ。
 お前さん達でも行き着いた答え。

 秘されたステータス設定の最奥項目。倫理コード解除設定。

 ……ここまで聞けば解るだろう? ア-ちゃんが初夜のとき、キー坊に倫理コード解除設定を教えることが出来た理由が。
 ああ、その時、キー坊がア-ちゃんになんて言ったかもオレッちは知ってる。それに関してはオレッちは言わない。言った結果、どういうことになるか。そのリスクの方が大きい状況だしナ。

 倫理コード解除設定をア-ちゃんが知っていた理由がうまくつながらない?
 はぁ……そうか。キー坊は思春期の男子ではあるが、青春をゲーム関係に割り振っていたからソッチの方面に発想が飛ばないのカ……?
 まぁ、良いサ。そこまではキー坊に与えてもいい情報だと打ち合わせてあるしナ。

 自慰行為(オナニー)ダヨ。 ア-ちゃんはそれで自分の性を自分の脳に刻み付けたのサ。
 そんなことを言うなって顔だナ。皆して。
 ああ、当然、オレッちもそれなりにはやってるゾ。
 こんな程度の猥談で根を上げるなヨ?

 特にそこの新入り二人。
 この辺の女性の生理問題はどう足掻いても、その黒の剣士には解決不可能ダゾ。
 SAO内においては、その手のセックス関係はないと思っていた生粋ゲーマーだからナ。

 さて本命だ。
 この条件下で ガチの殺し合いの最前線で長期間闘い続けたア-ちゃんがどうなってしまったか。
 ギリギリのところでキー坊がア-ちゃんの近くに戻ったと聞いて安堵していたんだガナ。
 ……種の保存に関わる生存本能と生殖本能の励起。度し難いまでの『孕みたい、子供を作りたい』という性衝動サ。
 ア-ちゃんが 攻略組の鬼 とまで呼ばれたのはな。この衝動を攻略に向ける原動力に置き換えた、つまり、性衝動を攻撃衝動に置き換えて耐えていたのサ。
 その上で発散しきれないモノをオナニーで発散させる。
 攻略難度が上がって敵が強くなればなるほど、自慰の回数が増えていったんだ。

 自慰癖。オナニー好き と言っても良いほどに仕上がったとき泣きながら相談されたヨ。
 おかしくなりそうだって。

 目をそらしたり、赤らめて俯いてる場合じゃないぞ。
 これはな。最前線で戦って、少女が命を懸けて戦うとき、誰にでも起こりうるのサ。何せ、本能 だからな。
 ン? 本能は理性で押さえ込めるハズ? だから言ったダロ?

 二年も最前線で戦う。っていうこと と そこに伴う様々な重圧。
 ましてや攻略組の中核ギルドの副団長。
 その上で、生存本能、生殖本能を拗らせたら欲求不満も著しくなるだろうサ。

 ……訊いただろう? キー坊。

 この一ヶ月の間、しっかり、ア-ちゃんを抱いてやったのか。と

 今のア-ちゃんはぐらぐらだろうナ。
 他の男に。
 黒の剣士キリトに匹敵する、あるいはそれ以上の力強い雄に。
 添い寝を誘われたら載ってしまいかねない程度にはナ。

 さて。ア-ちゃんとの初夜のときに『とある質問』をしてしまったキー坊に尋ねたいんだが。

 …………これでア-ちゃんが『他の異性と経験あり』ってなったらどうするんだ?
 
 


 

「……SAOを……クラックするだって……!?」

 

 名前と共に告げられたその宣言は黒の剣士キリトには容認せざる意味を持って響いた。

 根がMMORPGを初めとしたオンラインゲームを嗜む少年であるキリトにはそれは許しがたい行為でしかない。

 反意を持って問いただそうとするキリトの言葉を封じるように。

 

 

我が主(マイロード)。この坊やには手段を説明しても理解は得られないでしょう。過ぎ去りし過去を重んじることは悪ではありませんが、そこにこだわる余り、先に進む手段にさえ正当性を求めてしまう……二年をこの空間で戦い抜けば与えられたクエスト、条件を突破しなければ先に進んではならないと思考も固まるのでしょう』

 

 見下すような視線を持って『彼女』は黒の剣士を見遣る。

 現実よりやってきた。その事実を背負い、主に斬りかかられた返礼と言わんばかりに舌鋒をもって『彼女』は言葉を紡ぐ。

 

『子を奪われた親の嘆き。目覚めぬ肉親を思う涙。失われた日常。悲嘆はこの空間だけでなく、当然のようにそこに関わる者達にもある。現実世界に生きる人たちが一刻も早く、如何なる手段を用いても、この魂の牢獄となったSAOから大事な人や家族を取り戻したいと願っても不思議ではないでしょう? それとも坊や。そんなモノより、今、ここに生きる僕たちの方が大事だ! とか言いたいのかしら』

 

 言葉は朗朗と。

 

『そも。今の状態であれば、全ての悪を 創造主茅場晶彦 に押し付けて。仮想世界の未来を引き換えにして、残り全ての生存者に死んでもらう。そう言う収拾方法すら検討段階に入っている現実すらある。事実、茅場晶彦は現実世界の己の死と一定時間のログアウト状態が続いた場合、残りの生存者全てを永久にログアウト不可にするとその命を盾にしている。我が主はその現実をよしとせずここに来た』

 

 クラッキングという行為を行ってでもハッキングという行いを持ってしてでも。

 

『如何なる手段を用いてでも、今、この電脳世界に生きる人々を現実世界に連れ戻す。それを己が感傷のみで拒むのが坊やの正しさなのかしら?』

 

 それでキリトの言葉は封じられた。

 そう。それを否定することは 生きてログアウトするのだという絶対条件とそれまでの経緯、失われたモノ、まだ生存してるモノ、これからも続く未来。

 そういった全てを否定することになりかねない。

 

 だが、それでも。

 

「……なら、一人で乗り込むのではなく、他にも手段はあるはずだろう? こういった形での侵入が成功したのなら、それこそ、ログアウトプロセスそのものにハッキングでも仕掛ければ良いじゃないか。生かして返すことが目的ならそこが一番のポイントだろう?」

 

 納得できない何かが。

 そう。キリトは目の前の少年を本能で拒みたくなる。

 それは。彼の近くにあったまま、言葉を差し挟むことが出来ずにいるアスナの存在。

 何故、この男と共に死ぬかも知れないボスエリアにコンビで挑戦などしたのか。

 それが堪らなく。

 

 ユートと名乗った少年の口から重く、昏い感情をのせた返答が。

 

「…………茅場晶彦に憎悪を叩き付けるため。このまま、真っ当に、攻略組と呼ばれるSAO生存者達の手でクリアされるのは、あの男の望みと夢が叶う展開でしかない。許されるものか。死ななくても良いはずの人たちをデスゲームなんてモノに一方的に巻き込んで、それで大事な人を奪われて、その怨み言も聞かずに現実世界からも電脳世界からも退場する?」

 

 コツコツと黒の剣士の前に歩み寄るように。

 

「許されるはずがない。そんな幸福な終わり方断じて認めない。だから、あの人は、僕にこの力を託した。カーディナルシステム。その全てを蹂躙し毀損し、希代の天才が夢見た天空に浮かぶ鋼の城アインクラッドを地に叩き落とすために」

 

 そして立ち塞がるように。

 

「……僕はエージェントだ。現実世界において茅場晶彦に大切なモノを奪われた人。その全ての報復の意志の代行者。 キリト と言ったね? 君とてこの世界で何か大切なモノを失ったことがあるのなら…………協力しろとまでは言わない。せめて、邪魔だけはしないでくれ」

 

 視線を切り、振り返り先の階層に繋がる扉を見据え。

 ユートは歩き出す。

 その一歩ごとにその装いは切り替わる。

 

 白い 血盟騎士団の正式装具のような。それでいて全く違う【レギオンストームジャケット】【レギオンストームブーツ】と呼ばれる装いに。

 その手には一振りの鞘付きのカタナ。

 顔を覆う兜が解けて、その下からは濡れ鴉の羽の如き髪と鳶色の虹彩の瞳。

 端正と言ってもいいその顔は意志に富んで目を険しくさせる。

 肩越しに振り返り、キリトを見据え。

 

「チートを使われるのがお気に召さないようだから、SAOの流儀でしばらくは進むよ。それでもなお、納得いかないときは。SAOの問題解決手段らしく、デュエルで解決することになるけどね」

 

 そして、アスナの横を通り過ぎるその際に相貌を崩して。

 

「そういうわけで。ゴメンね。アスナさん。こっちの事情にすっかり巻き込んじゃった。こっから先は僕一人で行くからさ。対外的には血盟騎士団期待の新人。って事で通しておいてよ。これまで名前が出なかったのは ユニークスキル習得のために修練してたって事で」

 

 ぽんとその肩を気安く叩く。

 その行いが、黒の剣士の癪に障るであろう事を理解して。

 

「大丈夫。君の怖さは理解できる。時間が残り少ないってことも。これ以上、犠牲者なんか出したくないってことも。その重荷はここから先は僕が代わりに背負う。だから、君は彼の所に行きなよ。……恋人なんだろ?」

 

「…………あなたは……君は、一人で行くの? ここから先の全てを」

 

「彼の。キリトの反応を見ただろう? 公然とクラックを宣言したクラッカーとその実行手段を持つ高度自律型AI。真っ当な扱いをされなくて当然だ。異物は異物らしく世界を終わらせに行くだけさ」

 

 そう告げてユートは歩みを再開する。その背後に歩み寄る『彼女』を携えるかのように。その姿がやがて霞み、剣に吸い込まれるようにして消えたとき、彼はこの階層を隔てる扉から次の階に消えていった。

 その姿を見送ったアスナの隣に並び立つようにキリトが立つ。

 

「……アスナ。アークソフィアに戻ろう。一旦、戻ってどうするか皆で相談しよう」

「皆で……ね。 ねぇ。キリト君。 わたしが彼を血盟騎士団で預かるって言ったの。覚えてるよね? 彼は自分で自分を血盟騎士団の新人と言った。なら、もう、あの人はわたしのギルドメンバーになったの。サブマスとして一人で突っこむ新人を放っておくことなんか出来ない」

 

 隣に並び立つキリトから 距離を取るように一歩。

 

「……私、先に進む。その絶対の意志を見せた彼に。この先の命運をかけてみたくなったの。大丈夫。無理はしないし、無茶もしない。引き際ぐらいは間違えないから」

 

 振り返って扉に向かう二歩目で。

 

「階層攻略は私が受け持つから。キリト君はホロウエリアに取り残されてるフィリアちゃんを助けてあげて」

 

 三歩目にはもう伸ばす手が届かない位置に。

 

「…………如何なる手段を使っても現実世界に帰るって言うそのやり方に反対するってさ……現実世界で早くキリト君に会いたいって言う私の気持ちとは違うんだね」

 

 四歩目を刻むアスナの目からは涙が零れていた。

 聞こえるか聞こえないかのように

 現実世界で早くあなたに会いたかったのだという想いが。

 手段をこだわる彼の意志と食い違ったことに。

 

 

 

 

 





 閃光のアスナルート【雌彼女 アスナ】が開始されました。
 現在の状況
 アスナはキリトに対して 不満 と 考え方の違い を感じ始めています。
 アスナはユートに対して 期待 と 希望 を感じ始めました。

 アスナの秘匿情報が周知されました。
 また全体に対して発生しうる状態効果として
 女性プレイヤーは大なり小なり自慰経験ありが確定します。

 これによりアスナの貞操レベルが低下。
 【性癖・オナニー好き】が確定。
 強さを感じさせた異性が近くにいると思い出し自慰を始めるようになります。
 隣室などにその対象がいる場合、匂わせ行為やあからさまな誘惑にも似た効果を発生させます。
 
 相手次第で添い寝を断らない可能性が生じています。
 最初に受け入れた異性に心服する気質が見受けられます。
 誘い受けの傾向が見られます。
 処女喪失の時の不満が隠れています。
 自分を強く求めてもらいたい、満たしてもらいたい欲求不満状態です。
 
 思春期の少女の性的欲求不満を拗らせています。
 
注:完走、評価はてきとーにお願い致します。


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7:相似の瞳

 【CAUTION!】
 第一部 エロスフラグメントにおいてヒロインルートが解放されました

 4:トレジャーハンター フィリアルート 【プレジャーハンター フィリア】

 第一部おけるヒロイン枠が確定しました。
 篩い分けが発生します。

 レイン → 第二部メインヒロイン枠昇格。サウザンドレインを閃くに至る最初の一歩。
 ストレア → 感情学習が覗き趣味に……?最高司祭様が遠隔起動する端末を欲しがってるようです
 シリカ →サブヒロイン枠。細々したところでラキスケ的場面に遭遇(じわじわエロが浸透して時間をかけて気が付いたら堕ちてる娘)

 
 リズベット → キリト・ホロウフラグメント編個別ヒロイン決定。リズベットさんの勝利(?)彼女はキリトのために剣を作る。銘はリメインズハート。……「私の気持ちは変わらない」っていささか、彼女持ち(一応?)に送る剣にしては業が深くないですかね……?

 トレジャーハンター フィリアルート 【プレジャーハンター フィリア】 導入イベント
 ホロウエリア管理区。少女は一人其処にいる。
 ホロウエリア探索のためにやってきては帰っていく黒の剣士キリト。
 ふと、彼ではない者が転移してくる。咄嗟に物陰に隠れると 上から覗き込まれるように瞬で見つかってしまう。
 白いコートで身を包んだ彼は このホロウエリアでキリトとは別口の目的があってきたのだという。
 彼は手を差し伸べてこう言った。
 「暇してるなら一緒に行く?」 と。

 
 
 


 

「……露草刀【偽装定義】……【真名刻印】……閻魔刀(ヤマト)

 

 対峙するモンスターの前で白いコートを羽織った少年は刀を鞘に収めて、呪言の如くに言葉を紡ぐ。

 ソードアートオンラインにおいて 抜刀術 と言う概念はユニークスキルに該当する。

 刀というモノは鞘に納めてこそ。

 鞘内の勝 と呼ばれるのが刀術使いの至る極峰。

 鞘の内に刀がある間に勝利する。つまり、戦わずに事を修めるのが理想とされた考えであった。

 

 一度抜かば 相手は斬る。

 

 鞘のない刀なぞ断じて許せなかった少年は ユニークスキル【抜刀術】の取得者がいないことを調べた上で、しれっとデータを改竄してスキルを習得した。

 その上で、少年は抜刀を使う様々なアクションゲームを組み合わせた独自の戦闘術に辿り着いた。

 スキルアシストの形で振り回される身体の動き、その全てを自身の動きとすべく重ね合わせ、組み合わせてユニークスキル【抜刀術】の担い手でありながらソードスキルを使わぬ 抜刀術 に辿り着いたのである。

 

 その結果の一斬が開帳された。

 

 鍔鳴り。

 

 走り寄り抜打ち様に横薙ぎに斬り抜ける。

 原理はそれだけである。

 疾走抜刀。

 

 どれほど相手の装甲が硬かろうとこの一斬を防ぐに能わず。

 その刀は偽装を施されソードアートオンライン上のビジュアルデザインを模したままに 真名として与えられた閻魔刀の威力を持つ。

 空間、次元を切り裂く刀に避けぬ装甲などあろうか。

 

 次、次、次、次、次。

 

 動きは止まらず、間を切り抜き切り抜け切り抜く。

 

 五体を切り裂いて その刀は鞘に納められる。

 

次元斬・連奏(ディメンジョンスラッシュ)

 

 切り裂いた一閃を後追いするかのように幾度も切りつけたかのように斬撃が殺到した。

 次元を越えると言うことは時間を越えるに同義。

 遠く未来、時穿剣 と呼ばれる空間と時間を越える斬撃がアンダーワールドにおいて成立する。

 その原初の形がここにあった。

 

 納刀し、留まる間は一瞬。

 

 切りつけた五体の敵が爆散する中、そのポリゴン片舞う最中に走り出す。

 硬直などはない。なぜならば、これはSAOに定義されたソードスキルに非ず。

 

 チートは使わない。とかっこよく言っておきながらこの男、そんなことは一切守る気はない。

 嘘も方便というやつであった。

 

 当然のことだ。律儀にそれを守って死ねばピエロにも劣る。

 彼には死ねない理由の方が重い。

 

 正面から剣を振りかぶり振り降ろしてくる鎧騎士。

 その攻撃の成立する刹那に 一歩を踏み込み、手元を狙い澄ますかのように後方宙返りと共に蹴りを当てる。

 体術に分類される格闘系ソードスキル【ペイルライダー】。

 無手であるのにソードとはこれ如何にと思った少年はそこに一斬を加える。

 アクションゲームならではの不可解な、されど、少年が引き寄せた無数のアクションゲームのモーションを重ね合わせ。

 空中に圧縮された空気があるかのように、エネミーの手元を蹴り抜いた脚を更に振り下ろすように跳ね返らせて往復する。

 腕を振り全身運動を持って、宙返りの頂点で逆巻に戻り頭頂と脚が入れ替わった刹那。

 抜刀された閻魔刀を振り下ろしの唐竹にして 鎧騎士 は両断された。

 縦に分かれたエネミーの影に隠れる二匹目が。

 律儀に消滅を待って攻撃を加えるその前に着地し、しゃがみ込み、屈伸から跳ね飛ぶようにして、その股下から閻魔刀を逆風に切り抜く。

 逆風の太刀 と呼ばれる斬撃の成立である。

 

 フロアエネミーを何の苦の無しに切り捨て。

 

 77層攻略はボスフロアを残すだけとなった。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 アスナは息を切らせて彼を追った。

 僅か数分の差でしかないというのに 街開きをして階層の街部フロアを有効にしていたその差で以てユートは既に迷宮部の深奥まで蹂躙していたのだ。

 

 彼には供回りなど必要ない。

 

 事実なのだろう。もし、危急であれば、あの紫色の長い髪をした高度自律型AIと称されたあの女性がユートを守る。

 アスナにもそれは理解できている。

 

 だが、彼のあの目はダメだ。

 

 キリトと何かしらを話し、装備を変えて歩み寄ってくるときにふと見えたあの目は。

 

 アスナはリポップするモンスターを。

 

「……邪魔しないでッ!」

 

 細剣を持って最少の動きで突破していく。

 大物、ハイネムードやネームドはいないと確信できる。

 事、ここに至り彼が。ユートがエネミーを打ち漏らす愚など起さないという確信があった。

 であれば、警戒するのはリポップタイムが短い雑魚モンスターに限られた。

 

 事ここに至り、アスナに雑念はなかった。

 あの目が彼女を駆り立てる。

 

 彼女自身が覚えがある。

 第一層。デスゲームとなり救いもなく、数を刻々と減らしていく生存者達の中。

 もっとも自分に性の合った武器、細剣のみを引っ提げて。

 自暴自棄となり 死んでしまっても良いと。

 己の全てを出し切って、その結果として終われるのなら。

 救われぬ魂の牢獄となったこの世界で それでも自分の意志で前に進んで力尽きるのならば。

 

 例え死んだとしてもこの世界には負けていない。

 

 そんなことを考えていたときの自分と。

 あの時の自分は人と人の巡り合わせ。

 黒の剣士と呼ばれる前の。ビーターと蔑まれる前の。

 キリトと出逢ったから救われたのだと。

 

 ならば……彼は?

 

 世界を終わらせるのだと言ってこのSAOにやってきた稀人。

 理不尽なまでの戦闘力と不可解な力でボスフロアの門を壊す能力。

 ああ、戦闘で死ぬことはないのかもしれない。

 その力はきっとシステムの閉ざす先を切り開いて、茅場晶彦の命に手が届くのだろう。

 

 でも。その先は?

 

 アスナは理解が出来る。

 きっと、あの人は その恩讐の果てに何も残っていない。

 復讐が成されたのならば、その後には何も残らない。

 復讐は何も生まないのではなく、彼にはそれを終えた後、続くモノが何一つ残らない。

 

 だから あの目 なのだと。

 

 未来を見ていない目。

 

 そして、その確信を得たアスナはついにボスフロア前で、彼に追いついた。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

「ようやく追いついた……はぁ……全く世話の焼ける新人君ね?」

 

 毒を抜くようにヤレヤレと言いたげな感じでアスナはユートに語りかける。

 76層でそうしたように今正に彼は門を破壊せんとする刹那で。

 

「……んー…… キリト と一緒にアークソフィアに戻ったのでわ?」

 

 呼び止められるとは思わなかった。

 そう言いたげな感じで動きを止め、ユートはアスナに振り返る。

 その目を見てアスナは浅く溜息を吐いて。

 

「……戻るわよ。君、自分で血盟騎士団の新人だって言ったんだから。現状のギルドマスターには逆らわないよね?」

「ん……そうきましたか。でも、後3層くらいはしれっと突破できそうなんだけど……?」

「ダメ。後の攻略は最低限の足並みは揃えてもらうからね」

 

 切り捨てるように言うとアスナはユートの手を強引に握る。

 手を自由にさせれば、彼は自分で言ったようにしれっと門を壊してしれっと先に進んでいく。

 その目に 未来なんか見ていない虚無を宿して。

 

「んー…………色々時間がないの。アスナさん自身で解ってると思うんだけど?僕を放置しておけば安全確実に階層攻略は進むわけだし、ほっといた方が得だと思うんだけど……」

 

 手を握ったまま、後ろを振り返り連れ出そうとする。

 ユートの目を見ないようにして。

 無論、体格力量、重量の差は残酷だ。

 一歩も動かず動かせない。

 それでもアスナはその手を放さず、連れ出そうとする意志を曲げない。

 

「いや、だからさ。手、放そうよ?」

「私は!」

 

 言葉に被せるようにアスナは半ば叫ぶように言葉を叩き付ける。

 

「私は、そんな目をした人に助けられたくなんかない! だって、その目は何も見ていない。未来なんか見てない。 ううん……自分を一切勘定に入れてない。全部の復讐が終えたら そこに君自身を残していない……っ!」

 

 アスナだからこそ共感が出来る。

 

 事が為された後は死んでしまっても良いという感情は

 事を為すためならばその過程で死んでしまってもいいと言うかつてのアスナの心境そのものだった。

 

 ユートの目は第一層の虚無と絶望を抱いて先に進もうとしていたアスナの目と相似の瞳で。

 

 過程で死ぬか結果を得て死ぬかの違いしかなかった。

 

「私、解るんだ。君は第一層の頃の私と同じだって。そんな人、一人で先になんか送り出せない」

 

 




現在の状況
 アスナはユートに 一時的共感 を得ています。
 アスナはユートに かつての自分 を重ねています。
 
 アスナは共感性からユートを見捨てられなくなっています。
 ユートからの感情が向いた場合、【感情 共依存】になります。

 ユートは 現在 復讐を終えた後の未来が空白です。
 全てを終えた後、自身に幕を引くつもりです。

 ユートは 箍が外れると虚無気質が反転します。
 反転条件:箍を外す。登場ヒロインと恋仲になる、肉体関係を結ぶなどが該当。
 自己よりも優先する他者が重しになるようです。

■閻魔刀
 デビルメイクライシリーズ出典。
 世界と世界の境界を切り裂くことが出来る刀。居合抜きの形で使うと次元を切り裂いて空間を無視した斬撃を成立させられる。
 出展作品の設定を忠実に再現した結果、悪魔の血統再現を抜かして 本気の本意気で次元斬を成立させるとアインクラッドの空間領域から 電脳体のまま、現実世界に回帰できるという想定外な使用方法が存在している。なお、これを使うことでユートはSAO内を転移ポイントさえ理解していれば自在に転移できる。

 なお、これを使った刀術アクションはオリジナルムーブ。ここに飛翔蹴りからの気刃兜割りと言ったモンスターハンターアクションや連続二連抜刀だとかコミックアクションに派生する

注 感想、評価等お待ちしております
 後書き注釈が欲しい項目があったらメッセージなり、作者の活動報告の返答なりに書き込んでください


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8:回帰不能

【秘匿情報 ユートの過去 転生者】
 
 未来を見ていない。

 その言葉は楔のようユートの心に刺さった。
 彼自身、自覚自体はしていた。

 茅場晶彦に あの人を。
 悠ねぇ……重村悠那を殺された憎悪を。
 その復讐を成したのならば。
 自分には 伯父である重村教授のように何か成すべきを見定めることが出来ない。
 あの人は今回手に入れる情報を持って 電子体幽霊 として実体なきまま、重村悠那のアバター【ユナ】を再生させる。

 誰にも打ち明けたことがないことがある。

 茂村 優翔 には生まれたときからこの世界の全てが虚構のように見えていた。

 仮想空間以上に作り物染みた現実世界。
 ベールで覆い隠したような虚飾でコーティングされた世界。
 息苦しい毎日はまるでルーチンワークのよう。
 ウィルスよりも雑多に多岐に富む人間。

 一歩進む道を間違えていれば、この少年もまたあらゆる現実より仮想空間こそが全てであるとしていただろう。

 その世界の中で 親類の重村徹大とその愛娘 悠那。
 悠那の幼馴染み後沢 鋭二だけがその苦痛に寄り添った。

 現実拡張の研究が優翔の主観を良い方向に導いた。
 虚飾に塗れるのならば、そのベールを重くないように整え直し
 作り物に見えた世界をその認識が認めうる世界に整え直し
 見える形は違っても その機能、その在り方を損なわせないようにしていく作業。

 ARを併用することでようやく彼は世界の居場所を見出した。
 世界を見れるようになった自分を二人の少年少女が連れ出し蒙を啓いてくれた。
 世界が広いと言うことを。

 そして、そんな壊れかけた心にも響く『本物』が重村悠那の唄だった。
 アニソンを。ガールズポップを楽しそうに唄う彼女。
 カラオケの個室で『えー君』と自分と『悠ねぇ』の三人で盛り上がる光景。
 レトロアニソンばかり歌う自分を指さして笑う二人。
 キレッキレのアニソンダンスをキメる自分と鋭二にぃ。笑う悠ねぇ。

 ピアノを真剣な目で弾く悠ねぇ。
 クラシックギターの調整を丸投げされて四苦八苦する鋭二。


 見える世界が偽物であっても 『本物』だけは彼にとっての芯になった。

 例えこの世界がフィクションであったとしてもその 本物 があれば。

 だが、その『本物』は 唐突に奪われた。

 ソードアートオンライン正式サービス開始。

 彼はその文言を聞いて身の毛を与奪ほどの恐怖を持って自覚を得た。
 世界が虚飾に見える? 当然だ。
 何もかもが作り物くさい? 当然だった。
 彼にとって は 彼が『茂村 優翔』になってしまう前に慣れ親しんだアニメコンテンツだったのだから。

 自分がどうしてそう生まれたのか。神が居たのか? トラックに跳ね飛ばされたのか?
 そんなことすらどうでも良く。

 彼は全力で走った。

 自分に本物を与えてくれた 重村 悠那。
 自身に生きる術を与えてくれた 重村 徹大。
 自分に世界との接し方を教えてくれた 後沢 鋭二。

 知らなかったのだ。
 彼等がSAOに関わる人間であったなど。
 そうとなってしまう前、自分が変わってしまう前の見知ったコンテンツには彼等がいなかったから。
 気が付くチャンスはどこかにあったはず、防ぐ機会もあったはず。
 
 言い訳にすらならない悲劇を抑止することが出来たはずの自分の不明の結果がそこにあった。

 デスゲームに誘われてしまった二人の年上の幼なじみ。
 その死の階梯を自ら与えてしまったと絶望に浸る重村徹大。

 そして その悲劇の始まりの前に何も出来ない自分。

 知識があっても知能があっても何も出来ない現実。

 だから、少年は。禁忌に触れた。
 彼は茅場晶彦の現実での所在を 書籍版、アニメ版からの推測で割り出すに至った。
 そう、知っていてはならない【原作知識】だった。

 ……だが、少年はそこでまたも挫折した。
 現実でその殺意の刃を加えんと追い詰めたとき。一切の余裕を崩さず、世界の全てを無価値と見下すかのような瞳で。

『私を現実世界で殺せば、残る全てのSAO内の人間はログアウト不能状態となる。警察に突き出しても同じ事だ。残りの生存者全てと私一人。どちらが重いか。算数の問題だな……帰りたまえ。君には何も出来ない』

 その時にはもう悲劇は食い止めようもなかった。
 
 知識があっても何も出来なかった無力さで惚けている間に。
 一ヶ月。それで鋭二にいと慕った後沢鋭二の家庭は崩壊し。
 運命の日。2023年10月18日。
 彼女。悠那の身体がびくりと跳ね上がり。

 奪われた慟哭 と 何も出来なかった悲嘆 が。

 ソードアートオンラインは その電脳世界に取り残された少年少女が出逢い、そして戦い抜き、そしてその先を歩んでいく物語だった。
 だが、それを。
 それを外から見る立場で。その悲劇を知って。
 知識が合ってもそれに関わることが出来ない立場で。
 これほどの無力、絶望を味わわねばならないのかと。

 そんな折、とりつかれたようにVR研究を重ね、SAOサーバーに対する解析を行っていた重村徹大に茂村優翔は呼び出される。
 昏く淀んだ瞳で。

『SAO、アインクラッドに行く機会があるのならば君はどうする?』と。

 猶予は一年だった。
 その準備期間で優翔は SAOにおけるアバター ユート になるべくあらゆる肉体改造、VR適正の適合率、利用するハッキング、クラッキングを使って SAO、アインクラッド内における茅場晶彦の殺害のための技巧を磨くために。
 SAOの土俵で戦うことの無いようにあらゆる不正手段を定義し。

 自己の相棒となる討論型対人口答入力式AIの育成。
 カーディナルシステムに対するハッキング、クラッキングを行うための特化プログラムの生成。
 クィネラ の名前を与えられ個性化しあり得ないほどの知能を獲得していくAI。
 その名にはユートは覚えがあった。
 だがしかし。
 彼には この世界が虚構の物語であったことなどもはやどうでも良かった。
 思い出せもしない、いや、覚えていても何にも役立てなかった前世の知識なぞ、もはや横に放り投げて。

 自分に与えられた 本物 を奪われた怒り、憎悪。

 それ以外のすべてを不要と断じて、彼は出来上がった。

 ソードアートオンラインという物語を自分が壊すことになる。
 
 彼は誓った。クラッカーとなることを。

 その過程。物語の主人公達に出逢ったとき。己がどう振舞うのか、どう接していくのか。
 自分の知る物語とは大きく変わってしまった世界でどのような変化が起きていたのか知りもせずに。
  

 


「…………なんでだよ」

 

 第一層の頃の自分と同じ目。

 そう告げられてユートは呟くように。

 飄々とした自分を装いながらやり過ごしていた自分の罅に。

 

「君が俺に関わる必要は無いだろう? 必要だったのは足掛けとアインクラッド内での立場だけで こう言うチートを使ってでも先に進んでいくヤツがいた。そう言う認識を持ってもらうだけでよかったんだ……生き残りに対する接点があればそれでよかった」

 

 握られた手を振りほどくことが出来ない。

 ユートにとって他者からの接触は重い。

 虚飾がないこの世界で触れてくる温度が重く自身を縛っていく。

 

 二年前、最後に触れてくれた二人の幼なじみの熱が。

 慕っていた二人のことが。

 

「君が……現実世界で何を見てきたのか。何を失ってしまったのかは知らないし、識る資格はないんだと思う。私達の過ごしたアインクラッドの中の二年と現実世界の二年はきっと見えていたモノが違うから」

 

 力の抜けるユートの身体。

 それを迷子の手を引くようにしてアスナは引き寄せ歩き出す。

 転移結晶でアークソフィアに飛んでもよかった。

 それをしないのはきっと。

 

「この世界はね。感情のもたらすモノの内、涙は堪えることが出来ないんだ」

 

 ユートの虚無であった目の端から流れ零れる涙。

 彼は知らずに涙を流す。

 アスナの触れた握る手の熱さが もう、生きては二度と掴めなくなった彼女の。

 幼かった自分の手を引いてくれた『悠ねぇ』の温もりに似て。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 77層 街部エリア トリベリア。

 浮島の居住施設が物珍しい街。

 浮島の一つ。まるごと宿泊施設となりそこに泊まるにも相応な資金が必要となるいわゆるVIP向けの宿屋サービス。

 そんな宿にアスナはユートを連れて潜り込んだ。

 高い宿賃は シークレット制の担保でもある。

 そこに誰がきた誰が泊まったという情報をシステム的に隠蔽する。

 これを解除するには相応のチップが必要になる。

 

 隣り合う形の部屋。寝室が直で繋がるような広々としたロイヤルスイートを即金で支払い契約する。

 言葉も少なく、投げ出すように部屋のベッドに倒れ込む。

 

「何も出来なかったんだ」

 

 隣り合うように二人してベッドに突っ伏す中。

 ユートは溢れるような胸の内を。

 リアルのことを語るのは禁忌としているSAOプレイヤー達の中で。

 リアルからやってきた少年は。

 

「自分のことを助けてくれた大事な人たちがいて、二人がSAOに捕らわれて」

 

 言葉を選びながら端的に。

 

「一人は死んでしまって、一人は現実世界で知らぬ間に一家離散していて」

 

 涙を湛えて無力さを。

 

「残されたのは家族を奪われた人 と 識っていて防ぐことが出来たはずなのに肝心なときに思い出せなくて全てをダイナシにしたバカ一人」

 

 彼に非はない。それでも 何も出来なかったという悔いが棘となり。

 

「……もう何も残ってないんだ。僕に 本物 を与えてくれた人も世界も熱も…………それでも自分が残っているから、現実世界で殺せなかったあの男を。せめてこの手でくびり殺すためにここに来たんだ」

 

 手を目に当て覆うようにして涙を隠す。

 啼く資格はとうの昔になくしているのに。

 止まらぬ涙が悔恨を刻む。

 

 繰り返すように謝罪の言葉を。

 

「ゴメン、悠ねぇ……ゴメン、鋭二にぃ……ッ ごめんなさい……徹大おじさん……僕は識っていたはずなのに。防げたはずなのに……」

 

 呟くようにやがて謝罪の声をそのままに寝言にして。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 アスナは何も問わずに隣でそれを聞いていた。

 

 ボヤリと滲んで人影が。

 愛し子の頭を撫でるかのようにユートの隣に現われる。

 ……アスナの目には見覚えがある。

 身を起す。

 高度自律型AI、おそらくは個人対応するナビゲートシステム。

 そう言うプログラムは研究されていたとは訊いている。

 それを擬人化させている時点で、彼を送り込んだ人というのは相応に力がある人なのだろうと推測が出来る。

 

『あら……ステイシア。 あなたはまだ寝ていないのね?』

 

 アスナを見て全く知らない呼称で呼びかけてくる

 

「あの。私は アスナ であって その、すていしあ? とか言うネームではないんだけど……」

『些細な事よ。私が そう認識しているから貴女は ステイシア なのよ』

 

 その目が細められ、まるで探るようにアスナの身体を見て流す。

 

『……ふぅん。なるほど。あのタイミングでこの世界を抜けられなかった影響がそこまで侵蝕しているのね……』

 

 無関心であったような瞳が面白いモノを見つけたかのように歪み

 

『今すぐにアークソフィアに戻りなさいな。貴女。戻って、あの黒の剣士に抱かれなさい…………限界値と臨界値をそのまま越えてしまえば『変わる』しかなくなるわよ。ステイシア』

 

「何の……事ですか?」

 

『倫理コードで覆い隠しているから誤魔化せているだけであって 思考の分野である発情が倫理コードを越えて熱を齎していることぐらい、自覚しているでしょう?』

 

 見抜かれている。

 アスナは自分の状態をこの目の前の存在に理解されていることを自覚した。

 立ち上がった女はアスナの前に立ちその顎から指でなぞるように真下に撫でるように線を引く。

 同性の指がアスナの胸の谷間を滑り、ヘソの辿りそしてスカートの上からショーツ越しの秘部を通り過ぎる。

 

「……ッあっ…ん」

『ほら、倫理コードの影響下であっても、「こうされた」と言うだけで脳が快感や期待を拾い上げてしまう。ハラスメントコードが表示されたとしても留まらない熱があるのでしょう?』

 

 抵抗が出来なかった。

 ふぅ ふぅ と自分のものでは無いように息があがってしまう。

 ほんの些細なことなのに興奮を感じ取り、発情していくアスナ。

 同性でコレなのだ。

 もし、触れた者が異性であるなら…………

 そう思う頭の端が更に劣情を。

 

 無意識下で指がステータスを開いていく。

 その操作手順は熟れてしまったもの。

 ステータス操作画面、その最奥に設定された秘域。

 

 指が衝動の求めるままに動こうとしてタップする前に。

 

『そこまでになさい…………既にそういう所まできている。VR不適合症に類する過適合、ナーブギア設計上想定外の長期間に及ぶ連続接続と思春期の正常な脳神経が受け取るべきではない異常なストレスによって、読み込むべきではない情報まで読み込んでいるのが今の状態。カーディナルの異常観測がその本質なのよ』

 

「……あっ……」

 

 腕ごと指を掴まれ止められるとそこでアスナは自分のしようとしていたことを理解し顔色を青くし、涙目になる。

 

『さて…………ステイシア? ここまで追い込んで何も無し。と言うのではいささか私も寝覚めが悪い。故に貴女に選択肢を与えましょう』

 

 公理教会最高司祭(アドミニストレータ)とは 即ち 管理者。

 カーディナルの中において、そのシステムをリソースとして収奪する機能を持つ クィネラは。

 己にならば、それが可能なのだと。

 

『カーディナルシステムの異常観測の元、心身に影響を及ぼすと知りながらそのままにしてこの先を歩むか』

 

『それとも』

 

『手にした全てを 我が主ユート に奉じると誓ったこの私の手に その心身の全てを委ねるか』

 

 選びなさい と

 カーディナルが異常観測を持ってその魂を蝕むならば。アカウント収奪による観測権限のハッキングを持って、その観測者をすげ替えて見せようと。

 良識の外にある救いの手を差し伸べた。

 

 

 




現在の状況。
 重要分岐点。回帰不能ポイントに到達しました。
 ここで選択する結果で アスナ ルートのシナリオが大きく変更されます。

 アスナは カーディナルの観測下において異常な心理状態 を獲得しています。

 アスナは ユートの傷 を知りました。
 
 アスナ 選択(アンケートにおいて決定。本話を合わせて二話後に最終確定)

 しれっと雑にまとめたものを 作者活動報告 にて。
 
 1 性衝動によって性的異常行動を起こす危険性を持ったまま、カーディナルシステムの観測状態のまま先に進む 状態維持したまま諦めずに進む。
 2 アカウントをハッキングしアバターの観測をクィネラ経由にして、ユートに一蓮托生状態にする 大仕掛け(グレートハック)を試みる。

■ 転生者
 ユートのこと。茂村優翔 となる前のことはもはや参照不可能。
 ただ彼が理解できたのが この世界がとあるコンテンツのなかであると言うこと で 自分が関わってきた人がそのコンテンツ内の知らない作品の中の登場人物 だったと言うこと。 作中、SAO内のプレイヤーになるのでもなくその外側で起きた悲劇を目の当たりにすることになった。茅場晶彦を現実世界での所在、長野県の山中の山荘を突き詰め、実際に追い詰めるなど原作知識チート転生者らしい行動を取れたがそこが彼の限界だった。

 なお GGO編において登場するゼクシードとは親戚である。

■ カーディナルの異常観測
 プレイヤーが陥る一定のストレス状態においてカーディナルが起こすアバターに対する異常観測。カーディナル自身は正常な動作であるとして自己修復を行っていない。
 この異常観測によってアバターに精神性の変容などが起きる。
 VR不適応症の過適合とされる。
 想定されてない長期間の接続状態維持などで大なり小なり発生が確認される。

 なお。黒の剣士キリトは自覚外であるが この影響で運動神経伝達物質の異常発達が起きている。
 正史劇場版において エイジの着込んだパワーアシストジャケットを素手で引き裂いたり、正史アリシゼーション導入において一切の間合いが取れない状況でただの傘で人の太股を貫通するほどの刺突が出来る理由がこれ。

 この欠陥を利用すると、人を洗脳したり、記憶消去したり色々ろくでもないことが出来る。須郷 伸之 はこれを知っておりSAOカーディナルではなくALOカーディナルを利用して人間の記憶・感情・意識をコントロールする研究を行っている。

■VR不適応症
 仮想空間において発生する『理性より本能をシステムが検知する』というもの。生存本能による死からの遁走(どれほど重要な局面でも死なないための行動を優先してしまう)や死の恐怖からの身体の萎縮(原作版ノーチラスの症状)
 本作においてはアスナの陥った『生殖本能を発端として、性衝動が突発的に起きる。自慰を抑えきれなくなる』症状が該当する。
 対処法は無数にあるがどれが正解という絶対解がないため、個々に委ねられている。


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9:災禍 そして 少女の答え

某年某日 現実世界にて

「……このデータは何? 重村のおじさん。クィネラの実行データ以外にも、ヤバげなデータがあるんだけど……」

『……『彼女』とは別口で設計したデータ収集用の端末だよ。SAO内でロストに追い込まれたデータはゲームが終わるその瞬間まで形を持たないまま、残留すると定義し、その残留するデータを集積し、保護する機構を持つ』

「……その目的で作ったのに……なんでSAOで使用した場合に 鎧 形状のデータになる訳?」

『保護を行うことを防御、あるいは守護と自己定義したのだろうな……『彼女』の影響を受けての変遷かもしれないが……初期コードは死したる運命を集積し保護するが故に運命の鎧(ザ・ディスティニー)とした』

「……表記名まるで違うんですけど……?」

『ソレも勝手に変更された類でな。『彼女』同様に気にしないことにしたよ…君流の呼びあらわしで【真名刻印】災禍の鎧(ザ・ディザスター)と言ったところか?』

 表示される画面の中 黒い銀白色という矛盾した輝きを放つ金属態の強化外装が示される。

 それはここではない世界線で生まれるはずの異物。
 されど、どこかの世界で繋がった確かにある存在。
 仮想世界に廃棄される運命の沢山の苦しみと悲しみを受け止めるため。

 災禍の鎧 はここに産声を上げた
 


 

 ユートとアスナが誰とも知れぬ宿の中に居る頃。

 

 黒の剣士キリトは乱れた心のまま、77層の攻略のため階層フロアを進んでいた。

 戻ってこないアスナへの不安、アルゴに明かされたアスナの抱えていた問題。

 

 先に進むと言った結果なのだろうか。本来であれば現われるはずのHNMやNMの影もなくたまに現われる雑魚モンスターぐらいしかその道中には現われなかった。

 ホロウエリアの攻略を進めて欲しいとは言われた。

 だが……

 

 何処で歯車が狂ったのか。何を間違えたのか。

 彼女は何故、何も言ってくれなかったのか。

 

 そんな自問自答のくリ返し。

 そして、ボスフロアの前に辿り着いたとき。

 

 黒の剣士の目には理解不能な光景があった。

 

 物体としては破壊不可能なハズの。

 

「……なんだ。これ。扉が……破壊されている!?」

 

 中から断続的に響く 物体を壊す破壊の効果音。

 

「な、何が起きているんだ……ッ クソッ! アスナ……頼むから居てくれるなよ!」

 

 その中に何が起きているか知らずに、それでいてその渦中に彼女が居ないことだけを祈って。

 

■無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)

 

 77層ボスエネミー:クリスタライズクロウ。

 水晶でその身を覆う水晶魔蠍である。

 その振り回される尻尾は人であれば容易くその身を薙ぎ裂き、尾先の禍々しい針は頭蓋から股下までを容易に貫通せしめるだろう。

 

 相手を掴み挟み潰すであろう両の手のハサミ。

 ソレで相手を挟み潰すもよし、動きを拘束しその尾を持って死の刺突を食らわせるもよし。

 

 まともに戦うのであればその装甲を砕きうる 片手棍 に習熟したマスターメイサーの助力が必要だったであろうそのボスモンスターは。

 

 黒く人より一回り大きい鎧のようなゴーレムによって蹂躙されていた。

 

 キリトの目にはソレはゴーレムと見えた。

 ハイディングで息を潜め 隠れひそみ状況を確認する。

 

「……階層ボスが HNMに襲われてるのか……? そんなこと、これまで一度だって……!?」 

 

 HNMの上に名が表記される。

 今のキリトをして、赤黒く記されるその意味は圧倒的システム上の強者。

 

 Chrome Disaster(クロム・ディザスター)

 

 朱い凶眼に黒白銀の体躯。

 一回り、二回りも大きな巨大なその姿はレベル差の生み出す圧迫感だけではないだろう。

 その手には人には持ち得ぬであろう大型の剣。ソレを片手で繰り。上下運動する水晶魔蠍を無造作に突き刺しては抜き刺す。

 もう片方の手で同様に巨体であろうハズの水晶魔蠍(クリスタライズクロウ)のそのもっとも兇悪な武器であろう尾を握り振り回し地面に何度も何度も叩き付けている。

 

 モンスター同士の闘いだとしても、一定のリズムがある。

 攻防の読み合いの駆け引きすらない一方的な蹂躙。

 

 握り締めた尾を叩きつけの縦の動きから全身運動を使い横に振り回す円心に切り替えるとその動きで得たエネルギーを使い、壁面に向かいあり得ぬほどの加速エネルギーを生じさせて放り投げる。

 

 その方向は正に。

 

「んな! こっちに向かって!?」

 

 そのままそこに突っ立っていれば巻き込まれる。

 それを理解して黒の剣士は されど、その場から逃げることは選択せずに。

 

「……門は壊れている……逃げるのは何時だって出来る……ッなら、今は!」

 

 一連の全てをその目で見ることを。

 そして最悪の時はあの黒のゴーレムと戦う覚悟すらして。

 横に転がり出るようにして壁面円周に沿って走り出す。

 

 その一瞬後、轟音を持って水晶魔蠍がたたきつけられ。

 ほぼ、同時に縫い止めるように黒い大型の剣が 体躯の中央に刺さる。

 

 二度の轟音が響く。

 

 それを掻き消すような クロムディザスターから放たれる咆哮。

 咆哮はそのままに空間振動を発生させ周囲にあるモノ全てを吹き飛ばしていく。

 

『グォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 キリトは咄嗟に背の二刀を十字に揃えてクロスブロックの形で防御を選択した。

 躱せる領域の攻撃ではない。空に飛ぼうが地に伏せようがあの咆哮の齎す攻撃は絶対不可避の域にあると経験が判断させた。

 

 エリシュデータとダークリパルサーもまたシステムエラーの影響でノイズ化され、その真価を発揮するには程遠く。

 弾き飛ばされる自分の身体を理解して。

 

 されど、その次は訪れない。キリトは自分が追撃を受けていないことを不可思議に思った。

 エネミーが攻撃を受けたプレイヤーを無視して 他のエネミーに対する攻撃を優先している。

 攻撃が有効化された段階で彼我の間は交戦状態となりヘイト調整がされ、敵に狙われるはずだというのに。

 

 身を起こす。

 

 その目には 写るのは。

 縫い止められた水晶魔蠍に向かい咆哮の齎した破壊の振動波をかざした手に再収束させていく。目には見えざる破壊の魔爪(ヴァイブレーションクロー)

 あくまでこの周囲に対する振動波はおまけの余波でしかないというように。

 

 地面を割り砕く飛び上がり。

 その速度に乗ったまま。縫い止められた水晶魔蠍の上方。

 その位置合いから強襲しその空間振動波を収束させた魔手を振り下ろす。

 水晶の体躯はその振動爪を持って容易に砕かれ引き裂かれていく。

 自身の最大の攻撃性能を持つ尾を砕かれた水晶魔蠍は。

 破壊の魔爪と真逆の手で縫い止められた剣に突き立てられたまま引き抜かれる。

 

 剣についたゴミを振り払うように横に振り抜かれるとそれで水晶魔蠍はボスエネミーとしての役目を終えた。

 

 朱い目が自身を向くのを自覚してキリトは回復結晶を取り出して、覚悟を決める。

 

 あれほどのHNM。けして野放しにしてはならない。

 どれほどの犠牲が生じるか解らない。

 ふと安堵する。これとアスナが対峙することがなくてよかったと。

 

 ポリゴン片が舞い散る中、剣を地面に突き立て朱い目を持って睥睨する黒白銀の巨鎧。

 自分の手元に何故かラストアタックボーナスが落ちるのを自覚するキリト。

 ふと発信先不明なアドレスからメッセージと

 

 【ホロウエリア攻略に向かうのならば連れて行け。でなければ、破壊する】

 

 目の前の黒白銀の巨鎧から

 

 【Chrome Disaster から フレンド申請が届きました】

 【Yes Or No】

 

「……は?」

 

 理解を得るまで数瞬を要して

 メッセージとフレンド申請を見比べキリトは叫んだ。

 

「はぁああああああああああああ!?」

 

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 ユートが目を覚ましたとき、となりにはアスナは居なかった。

 それでよかった。

 随分な醜態を見せてしまったと反省し、身を起こそうとして

 ふと、水音が聞こえるのを自覚する。

 

 シャワー音、湯音の類。

 時折 耳が捉える 僅かな、苦しげにも聞こえる小さなアスナの声。

 

 一瞬、脳が理解を拒んで 即座にフレンドメッセージを飛ばす。

 入浴中やそういった状況でもメッセージは送信可能で受信も可能。

 

【今、何してるんですか? 大丈夫なんですか?】

 

 …………帰ってこないレスポンス。

 湯殿中で気絶でもされていて、その呻き声だったりしたら洒落にもならない。

 

 逡巡して

 ユートは装備をアンダースーツのみに切り替える。

 何かあってからでは遅い。そう判断し、バスルームに向かう。

 

 ユートは人並にはそう言うことに興味はある人間ではあった。

 が、件の一件からはその類の情報からは一切離れていて。

 もし仮に相応の青少年らしい発想を思い起こすことが出来れば。

 

 この条件下で遭遇してしまうであろう出来事にも想像がついた。

 

 そして 本来であれば制止をしてくるであろうクィネラはこのときばかりは我関せずと言わんばかりに一切の挙動を見せる事無く。

 

 そして運命の扉が開いた。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 クィネラから言われたことを脳裏に修め、考えさせてほしいとだけ答えて

 アスナはふらふらとする脚とクラクラする頭で寝室から繋がるバスルームに向かった。

 姿見に映る自分の全身像。

 立派な作りなホテル、宿ではあるが。この造りからしてそう言う用途の宿なのだと理解する。

 本来であればドレッサールームだけにあれば良いような全身像を映す鏡が、ベッドルームにもそしてバスルームの更衣室にも。

 此の分なら、恐らく、バスルーム自体にもあるのだろう。

 

 血盟騎士団として纏う装具を外し、アンダーウェアのみになる。

 装備から味気も色気も無しに装備として下着を外してしまおうかと思い

 あえて 倫理コード解除設定からの手動モードに切り替える。

 

 途端、下半身から迸る猛烈なまでの性衝動。

 雄を求め、孕みたがるように。

 お気に入りの下着を雌汁が汚していく。

 

「……あはっ❤︎❤︎❤︎ 何よ、これ……もうこんなになっちゃってるんだ……わたし♥」

 蝕まれた心が変容していく自分のイメージを作り上げる。

 今のアスナは閃光のアスナと呼ばれた少女からは懸け離れた雌に成り果てようとしていた。

 自らのショーツを脱ぎさるための挙動ですらキモチイイ。

 乳房を覆うブラを震える手で外して 外気に触れる乳首もキモチイイ。

 内股を擦りあわせるようにして歩く不様な自分の挙動すらも気持ちがよくなる。

 鏡に映った自分の顔は、朱く火照って欲情に蕩けはじめて。

 

 今、このタイミングでする自慰行為は過去最高に気持ちが良いという実感すらあった。

 

 震える手でバスルームの扉を押し開ける。

 正気を取り戻すために水でも被ろうかと一瞬、理性が正しい回答を示そうとしてそれを越える性衝動の熱が。

 

 本来の彼女であれば風呂の造りに感嘆の声をあげるであろう豪奢な造りの浴場は。

 今の彼女の目には そう言うことをするための部屋にしか見えなくて。

 

 大股開きで腰掛けて背もたれまである浴室座椅子はまるでこのときのために誂えたかのよう。

 わざと。

 わざと。浴室の扉を開けたとき、最初にその光景が見えてしまうように。

 

 開けた扉に向かい合わせの位置にその座椅子を置いて。

 

 力を抜いてだらけるように椅子にもたれかかる。

 何をしようとしていたか正解が見えなくなってぼやけた頭で

 自慰をするためにここに据わっているのだと思い出す。

 

 自慰をする? この状態で?

 

 彼がとなりの部屋で寝ていて、何時、気が付くか解らないこの状況で自慰をする。

 

 キリト君以外の男の人にエッチな姿を見られてしまうかも知れない。

 

 本来であれば忌避を持って万難を排するべきその状況は。

 生殖本能に蝕まれ男の精を求めてしまう今のアスナには極上のスパイスになりかけていた。

 

 背徳感が背中を押した。

 

 

 むにむに♡

 胸を乳首を摘みながらおっぱいをこねくり回す左の手と

 ぐちゅぐちゅ♡

 さほど回数をこなして居らず、まだ閉じ気味の蜜壷を右手の二本指で抜き差ししたり開いてみたり。

 時折右手で抓むクリトリスが堪らなくキモチイイ。

 

「あ❤︎❤︎❤︎ だ、だめなのに…♥」

 

 

 右手と左手をスイッチして役割を変えて自らの性を貪る少女。

 細剣を呼び出して、その柄尻を挿入してしまいたくなるほど、雌芯を雄に貫いてもらいたくなる。

 アスナの脳裏にキリトの姿が浮かんで消える。

 彼ではないのだと本能が訴える。

 自分を求めて欲しい、アスナという女を求めて欲しい。

 

 ふと かつての自分と同じ目をした彼のその瞳が。

 あの瞳の中の一番最初の焦点に自分があるのなら。

 

 ゾクリゾクリと背筋を奔る未知の快感。

 キリト君以外の男の人を欲しがっている自分に愕然とする前に彼女はその背徳感の齎す快楽に。

 

 がちゃり。

 

 バスルームの扉が開かれる音。

 

 ああ、見られちゃった。そんな冷静な自分を一欠片だけ残して

 

「やぁっっ…♡♡♡♡♡♡♡っ、…見っっっ!られえ…♡♡♡♡♡♡…イクッ❤︎❤︎❤︎」

 

 陶酔の笑みに涙を流して。

 閃光のアスナという自分が戻れないところにまで脚を踏み込んでいる自覚を経て。

 

 全裸で脚を開脚し自慰に耽っていた自分を見せつけるようにして。

 

「あは……❤︎❤︎❤︎ 見られてイっちゃった❤︎」

 

 秘部に差し込んだ二本の指に白濁した粘つく本気汁。

 呆然とした表情を浮かべる彼に。

 

 アスナは。

 ユートに見せつけるかのようにその指を見せて。

 仮想世界では妊娠し得ぬ事実に反するかのように。

 今、この身体が雄を欲しているのだと知らしめてしまった。

 




現在の状況
 アスナは 発情状態 になりました
 アスナは ユート を 誘惑してしまいました。
 貞操観念に著しい変容が起きています。

 アスナは カーディナル観測状態の危険さ を理解したようです。
 
 アスナは 今の状態の危険度 をユートに共有してもらうつもりです。
 アスナNTRフラグが成立しました。
 アスナはキリト以外の男性と性交渉を行うことを決めました。

 

■ 災禍の鎧
 出典 アクセルワールド あるいは AWvsSAOより。
 5代目デザインとされる黒色のクロムメタリックの強化外装。

 重村教授のどうしてこうなったシリーズの2。

 本来であれば着用者を獣にして暴走状態に堕とす狂戦士の鎧。
 狂戦士は理性がないが故に弱いとされるが、この災禍の鎧の着用形態たるクロムディザスターにおいてはそのような戯れ言は通用しない。
 SAO内においてはホロウエリア産 HNMの群れ10体 を同時に相手をして単体で捌いてなお余裕がある程の強化を与える。
 鎧の内部には何かしらの意志が介在するとされ、その意志は電脳仮想世界においてロストし廃棄される運命にある嘆きや悲しみ、苦しみと言った概念を受け止め受け入れている。
 SAOにおける死者。その総数の嘆きを受け入れる負の器でもある。
 なお、本来であれば装着者無しでは意味を成さないはずが外骨格外装の形であるためか自律起動すら可能とする。その状態で起動しても やはり高レベルモンスターの群れを容易く蹂躙し圧倒する。
 クィネラが収奪を司る(ハッキング)なら 此方は破壊を司る(クラッキング)とも言える。
 それだけの破壊攻勢能力をもちながら、その本質はデータ保護と回収にある。

 また、過去にアインクラッド内でロストしたプレイヤーの残滓から特定の対象に対するメッセージなどによる干渉を行う機能がある。

 失われる運命にあるモノを集積し守るために、害成す全てを破壊し敵対者に災禍を齎す。
 
 なお、ユートがこれを着用し、もっとも得意とする武器種の刀 閻魔刀 で 次元斬 を本気の本意気で成立させると

 1・次元境界線が完全に 破壊され 切り裂かれた仮想世界の全てが現実拡張の側に堕ちる 次元斬・界境崩落(ディメンジョンスラッシュ・ワールドエンド)
 2・切り裂いた対象の存在定義を破断し因果事象ごと切って捨てる 次元斬・事象斬解(ディメンジョンスラッシュ・カットエンド)

 最低でも以上二つの現象を引き起こせる。

 


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10:欲情

【CAUTION!】
 閃光のアスナルート 【雌彼女 アスナ】編においての重要分岐が決定されました。
 アスナは カーディナル観測下を抜け クィネラの観測状態になります。

【CAUTION!】
 因果連結点に異常発生。
 災禍の鎧 は 時の稀人 を呼び込もうとしています
 アンケートに今後に影響を及ぼす分岐点を発生。

 時の稀人 ペルソナ・ヴァベル が来訪すると

1: 電脳複製体(ゴースト)が生成できるようになります。仮想空間において失われた存在を限りなく本物に近い形で創成可能。なお、この際のリソースはそこまでに集められた電子情報、素体などが消費される。ホロウデータや残留思念などがあるとより精度が上がる。

2: 災禍の鎧(ザ・ディザスター)が最終段階まで進化します。第7段階【カラミティ・ヴァベル】が追加され 最終段階(オリジナル設定)【ロスト・ディメンジョン】に至ります。 

3: AWvsSAOの因果が流れ込みますが影響は最小限に留まります【キャステイングキャラ二名】
4: 来訪した場合、作者の性癖に設定から外見まで全てがブッ刺さっているので自動ヒロイン昇格します


 


 

 見せつけるような欲情の証しが彼女の指にアーチをかける

 あり得ないと少年は頭の中でその光景を否定し

 吸い寄せられるように【閃光のアスナ】の裸体を魅入ってしまう。

 

 かみ合わない視線と思考。

 

 そして当たり前の光景に当たり前に昂る自分自身の雄。

 

 彼女の裸体は際立つアピールがない故に全てにおいてバランスが良い。

 そして何より一切の陰毛がない秘部。

 食い入るようなその視線を受け入れ隠すことなく見せるアスナは蕩けた笑みを浮かべる。

 

「恥ずかしいな……❤︎❤︎❤︎ わたし、無毛症なんだ……♥」

 

 愛していたキリト以外の男に裸身を晒す未知の快楽と羞恥。

 恥ずかしいと思う羞恥の感情は もっと見て欲しいという露出の劣情に。

 彼という虚ろだった少年の目に アスナという自分を焼き付かせていく未知の快楽がそこにあった。

 

 このまま、歩み寄ってそのまま貪るように抱きしめてもらいたい。

 

 そう思いはすれども 立ち止まったまま、動けなくなっているその姿に。

 アスナは懸命の意識で それが心意力の突端と知りもしないで倫理コード解除状態を再度クローズさせる。

 

 淫蕩な空気を振り切るように、伝えるべき自身の問題を。

 先程の見せつけるような淫らな姿を身を縮こまらせるようにして膝を抱きかかえるようにして顔を伏せる。

 

「……ゴメンね。ユート君、わたし、もう限界みたいなんだ……」

 

 呟くように、クィネラより告げられた VR不適応症に分類される生殖本能の暴走による性衝動の発露 が自身に発症していることを。

 

「……こんな事になっちゃったの皆には知られたくないよ……嫌だよ……」

 

 すんすんと涙を流しながら、鼻水をすするような音。

 

「閃光のアスナを知っている人だから、今のこんなどうしようもないわたしを知られたくない……キリト君には絶対に知られたくない。こんなエッチなことしか考えられなくなっちゃったなんて絶対に……」

 

「……対処方法はあったはずだろう? …………待て。ひょっとして、企画書に設置することになっていた MHCP……メンタルヘルスカウンセリングプログラムすら、実装排除したのか!?」

 

 裸体を見ないように目を背け、アスナの告げた問題に追い込まれている現状を推測に至り。

 

「……あり得ない。それほどのストレス状態を人間に強制する……?バカな。そんな精神状態に追い込んで、その上でデスゲーム? そんな条件でゲームとして立ち向かえ? ……遊びでもゲームでもないただ人間の終焉を記録するだけの煉獄になるだろう……っ!! 心が壊れるか、死ぬかのどっちかじゃないかっ!」

 

 ダンと壁をたたきつけるその姿にアスナは彼が他人を案じて怒れる人なのだと胸に温かさを宿らせる。

 

「……クィネラ。聞こえているんだろう!? 解決方法を提示しろ! 俺に出来ることなら何でもしてやる……ッ!この子が、閃光のアスナがこんな淫獄にあって良いはずがない!」

 

 素の激情がついに飄々としたロールを捨てさせる。

 

 揺らぎ滲みユートの背後に現われるその姿は透徹とした表情で。

 けして、何者かに膝を折るなどと言うことをしなかった公理教会最高司祭(アドミニストレータ)が。

 これより語る言葉に一切の偽りがない絶対の宣誓を成す。

 

『仰せのままに。我が主。されど……その儀を成すには我が主。貴方にも道徳と良識を捨てていただくことになります』

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 道徳と良識を捨てる。

 それの指す意味は。

 

『その娘、閃光のアスナには思い人が居る。将来を誓い合い、その先を共に歩むと共に誓った相手が。仮初めなれど、この世界において婚姻を結んだ相手が』

 

 アスナは前もって聞いていたのか。

 身動ぎするだけで反応を見せない。

 そう。これより告げられる言葉の意味は。

 

『その上で。愛する男 黒の剣士キリト がいると知った上で 我が主。貴方にその娘を抱いていただく必要がございます。ただ抱きしめるのではなく性行為をしていただく必要が』

 

「……ちょ、待て……なんでそんなこと……ッ!?」

 

『何でもする。 そう仰せられましたね? 必要なことです。今の彼女の観測者はカーディナル。その観測に揺らぎを生じさせるには、この世界における異物たる貴方の構成データを組み込むのが一番。我が身や災禍の鎧に直接組み込んでは彼女の精神は情報圧によってそれこそ破綻します』

 

 自身の持つ性能、同時に持ち込まれた災禍の鎧の成せる機能。

 そのいずれを普通に適応しても意味がない。

 

『構成データをもっとも深く 対象に取り込ませるため、もっとも容易でもっとも安全な手段。それが倫理コード解除下における性行為 に他なりません。それもただの性行為ではなく、互いに深く性欲に溺れていただきます』

 

 良識も道徳も貞操観念も何も彼もを振り捨てて行う性行為の果て。

 

『そこまで追い込まれたとき、ただ名前を訊くのでは意味がない理性が明かすことを許さず、カーディナルによって深く封印されたSAO開始時に登録されたリアルアカウント情報にようやくアクセスが出来るのです。そこまでやって漸く手が届く領域なのです』

 

 アカウントハッキングからのクライアント移動。

 それを成すために必要な行いなのだと彼女は説いた。

 観測者カーディナル から 観測者クィネラ に移行するための手続がそれなのだと。

 

『そこまでやって頂ければ、細かい調整は我が手に堕ちます。先に申し上げますが、これ以外の手段では、彼女の精神に破断が起きます。これ以上の罅を許さぬのであればどうぞご決断を』

 

 そこまで言うとすくっと立ち上がり。

 

『持って回った言い方をやめますと。 直リンパコハメしてる間にリアル情報ぶっこ抜いてクライアント変更するから余計な事考える理性を働かせないようにやりまくれ。と言うわけ』

 

 浴室の中に押しやるようにして

 バタリとその戸を閉めた。

 

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 その言葉は重い。

 愛し合っていた二人の間男にならなければ、閃光のアスナを救えない。

 おそらくはそれは、これより最速で階層攻略を進めても同じ。

 そも、それをしてはホロウエリアからデータサルベージを行うことが出来ない。

 

 目を閉じる。他に何か。最適な。彼女の心を傷つけるような行いなくしてこれを成す方法はないのか。

 触れまいとした原作知識こそが障害となり幾ら考えても答えは出ない。

 

 理解がある。一度、彼女にそう言う形で触れてしまえば、二度とその熱を手放せなくなると。

 

 ぼそりとアスナの声が。

 されど浴室に響くように。

 

「……いいよ」

 

 顔を上げたアスナの目は泣き腫らした赤い目で。

 それでも。言葉は淀みなく。

 

「君にならいいよ? 未来を見ていない君のその瞳の先。君の 本物 になれるなら」

 

 壊れたような笑みで。

 追い込まれて追い込まれてそこしか逃げ道がなくなって。

 

「それとも 処女じゃない女の子はいや? 他の男に抱かれたことのある女は抱けない? それとも、頭がおかしくなってエッチなことしか考えられなくなっていく閃光のアスナ(わたし)ダメ?」

 

 ユートはそれ以上何かを言わせることが出来なかった。

 その一言、一言が確実に彼女の心を切り裂いていく。

 

 ボディースーツを脱ぎ払い、アンダー一枚。

 交わす言葉が重く苦しいのに 全裸のアスナがすぐ傍に居るという事実で

 雄が屹立し今にも弾けそう。

 

 膝を抱えるアスナのうしろに回り込み 背後からその手をとるように。

 ステータス画面を表示させるように誘導していく。

 

「……ゆーと君?」

「悪いのは僕だ。 僕がアスナさんを見捨てられなかった。だから、後でいくらでも僕を罵っていい」

 

 指がなぞっていくのはステータス画面の最奥の秘域。

 倫理コード解除設定。

 

「優しいんだね。 こうなってしまうことの責任を全部自分で持って行っちゃうんだ」

「将来を誓い合った男が居る女をこの手で抱くのならそれくらいはするよ……それに正直な話し、こうしてアスナさんみたいな極上の美少女を抱けるなら安すぎる」

 

 最後の一タップをアスナはユートの導きではなく

 

「……これを押し込むとね? たぶん、わたし、とってもダメな女の子になるんだ……それを受け入れてくれる?」

 

 先程見せた痴態。今も触れている手の先から脳が快感を錯覚している。

 女の淫らな痴態に忌避を覚える男も居る。

 それがそれまでの少女から懸け離れていれば居るほど。

 そこに劣情を覚える雄も居る。そう堕としてしまうことを喜びとする雄も居る。

 

 少年は。ユートは。

 

 不安に満ちる少女の顔を見詰める空いた左手で顎を振り向かせ固定すると無警告のままに口づけをした。

 

「……ッ❤︎❤︎❤︎」

 

 その口づけを合図にアスナは自らの意志で倫理コード設定を解除して。

 自らを蝕む性衝動に堕ちた。

 

 

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片(インフィニティエクスタシー エロスフラグメント)

 

 涙は堪えきれない。

 そういったアスナの目からは止めどなく溢れる涙。

 泣き虫な少女の本質が還ってくる。

 

 啄むようなキスをした後、ユートはもう止まらなかった。

 

 言葉はなく、唇を離した後、その目を見ながら背後から抱竦めるようにして。

 膝抱えで丸まっていたアスナの太股に優しく触れて軽く、ほんの軽く内股を叩く。

 

「……んっ♥」

 

 その意味を感じ取った少女は緩やかに脚を降ろして、先程見せたときのように足を開いたままの姿勢で力を抜く。

 

 彼の思うままに自分の身体を好きに堪能してもらいたい。

 

 少女の根にある 奉仕 に近い男の在り方に寄り添う従順さはこの場で淫らに男に身体を委ねることを悦とした。

 耳元で囁くように雄が雌に性の命令を下す。

 

「……オナニーしてよ。さっきみたいに」

「~~~っ~~~♥ き、君はしてくれないの……?」

「一緒に手伝ってあげるからさ……こういう風に」

 

 ユートはアスナの首筋に舌を這わせる。

 ほんのりと浮かぶ汗がこのときばかりは極上の甘露に化ける。

 びくびくと降るえだす自分の身体を自覚してされたことのない舌の首筋愛撫から始まる自慰の要請の前にアスナはその指で答えた。

 

 しゅりしゅり♥ と縦筋をこすりあげる

 空いた手の片方は胸に延ばしたり、後ろの彼の顔を抱えるように延ばしてみたり。

 

 ベッドの上では出来ない絡み合い。

 背後から両の手で左右の乳房を包むように揉まれる快楽。

 

 一人の自慰行為では出来ない届かないおっぱい愛撫のもたらす快楽と

 自分の両手で擦りあげたり抜き差したり、小陰唇パクリと開いてみたり。

 

 アスナは一人遊び(オナニー)とユートに遊ばれてしまう愛撫がかみ合う快楽に。

 

 はしたなく喘いで舌を出しながら キスをねだる。

 

「ね、ねぇ……キスしてよ♥ 舌を絡め合うようなディープなの❤︎❤︎❤︎」

 

 ユートは返答をその口づけと了解の意思を舌を伸ばして答える。

 ビチャビチャと唾液を混じり合わせる。

 淫蕩に満ちてアスナの顔は陶酔に染まり。

 貪り合うディープキス。

 

 ゴメンね。キリト君。私、君にもしたことのないエッチなキスしてる。

 

 頭を過ぎる好き合っていたはずの彼の顔を上書きしていくような初めてのディープキス。

 求める雌と答える雄の相性がかみ合う。

 唾液の糸の橋が舌と舌の間に結ばれる。

 

 キスを許すかどうかはアスナにとって、少女にとって大きな分岐点だった。

 

 それをこんなにもあっさりと受け渡してしまったことに。

 

 だって仕方ない。

 でぃーぷきす をしながらするひとりえっちとおっぱい愛撫が気持ち良すぎて仕方ない。

 

 左手で秘部を弄りながら、右の手でユートの頭を抱えるようにして。

 ベロチューをして。

 胸を揉まれて、乳首を指でこりこりされて。

 

 昂っていく法悦の波。

 

「❤︎❤︎❤︎っ ゆ、ゆーとくん♥ わ、わたしね?❤︎❤︎❤︎」

「絶頂するとき、ちゃんと イクっ って教えて? アスナさんが気持ちいいとき、ちゃんと解りたいから」

「う、うん♥ い、言うね? は、恥ずかしいけどイクって言うね?❤︎❤︎❤︎」

 

 そう言うとユートはアスナの正面に回り込む。

 パンパンに膨れ上がっている自分の逸物を覆い隠す布きれを邪魔だと言わんばかりに引きちぎるような勢いで脱ぎさって。

 

 ギンギンに勃起した先走りで濡れたソレを。

 アスナのみたことのある男性器で 一番に惹かれてしまうソレを。

 

「あっ♥ や、そんなの❤︎❤︎❤︎ ゆーと君の見せられながらイッちゃう❤︎❤︎❤︎」

 

 自慰の止まらないアスナの視線の先で。

 

「違うよ? 見せつけるんじゃなくて、こうするんだよ?」

 

 魅せるように自分の手でシゴキ出す。

 

「や、やぁ❤︎❤︎❤︎ わ、私のエッチな姿でおなにー❤︎ だ、だめぇ❤︎❤︎❤︎」

「アスナさん……そろそろ射精すよ? アスナさんの身体に精液ぶっかけるからね?」

「~~~~~~❤︎❤︎❤︎っ!」

 

 満ちていく求められてなかった一ヶ月間の少女の中の衝動が。

 自分の痴態で射精されてしまうその有様に。

 自分ひとりでは達し得ない絶頂を誘う。

 

 ぶびゅるっ!

 

「やぁ❤︎❤︎❤︎ ゆ、ゆーと君のあついの❤︎せーえきかけられてイッちゃう❤︎❤︎い、く❤︎❤︎❤︎イク❤︎イク❤︎イクッ❤︎❤︎❤︎」

 

 胸元に掛かる精液の熱さが引き金になってアスナは絶頂した。

 自分ひとりでは到底為し得ない自慰の交換。

 はじめて掛けられた男の精液。

 

 膣内に射精されるのとはまた違うソレは。

 

 ゆーと君に 私、せーえきマーキングされたんだ……

 

 一回の射精量とは思えないほどに迸った白濁した精がアスナの胸元の間に掛かりそのままに垂れて秘部までの精液の流れを作る。

 オーガズムで惚けた頭で 座る椅子の秘部の辺りに出来た精液溜まりに指を這わせて、胸元までこそぎ取るように精液を手繰る。

 

 ねちゃりと指に絡む

 白く粘つき濃いソレは量も多い。

 

 雌を孕ませる雄の機能を十全に示している。

 

 そのまま、拭うのが勿体ないように思えて、彼女はソレを口に食んだ。

 

 はじめて口にする雄の精汁の味は 苦みとえぐみを持って。

 でも、抱かれると決めた男の精液を自分の意思で口に食む。

 その行為の前にアスナは陶酔感を持っていた。

 

 

 雌彼女の片鱗が花開いていた。

 

 




現在の状況
 アスナとユートは 浴室で性行為 を始めました。
 アスナとユートは互いの自慰を見せ合い、貪り合いました。

 アスナはユートの精液の味を自分の意思で知りました。
 アスナはユートにザーメンマーキングされました。
 アスナはユートとディープキスしました。

 アスナはキリトとしたことのない行為をユートとしています。

 アスナは絶頂時 イクッ と言うように教えられました。
 アスナはユートのおチンポをみて 一番に惹かれてしまったようです

 ~前戯が終わったようです~

■アスナとユートの性交渉。
 クィネラが仕込んだこと。
 もっともアカウントハックに必要な情報を抜き出すためにはもっともこれが手間がないと判断した結果である。

 直リンしてパコハメ と行う行動を略したが 直接ユートと繋がる状態を一番手軽に行え、情報として体液交換まで行えるのであれば何の労もないのである。
 アンダーワールド時代に ユージオ君を追い詰めてベッドの上で大切なものを奪った手続とほぼ同じ。

■因果連結点の異常
 本作における重要な変動が起きる際に発生。
 ペルソナ・ヴァベルの来訪 条件が整った。
 時間跳躍の結果、此方に引き寄せられてしまう可能性が生じている。

 


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11:契約

【CAUTION!】
 時の稀人 ペルソナ・ヴァベル 来訪が決定しました
 
 FB=デザイアバレット中に予定された サチ再生イベントが
 アファシス再生ルート と 電脳複製体ルート に分岐します。

 劇場版イベントが大きく変更されました

 最高司祭様がアップを始めました(自分より高性能っぽいのが来そうなので警戒中)
 災禍の鎧が どこか遠く と交信し始めました(現在、能力同期設定をダウンロードしています)

 閃光のアスナの行動選択と来訪者ユートの関係構築の結果、事象連続性が失われ、特異点が発生しました


 

 あの【閃光のアスナ】が自分の吐き出した精液を指で手繰り口に運ぶ。

 

 その光景だけで少年の中の雄は再び達しそうになる。

 椅子に座り 脚を大股開きのように広げ 胸元から掛けられた精液を垂らす美少女。

 その少女の股座から漂う雌臭。

 精液の独特の匂いと少女の体臭が入り交じる。

 常の感覚では 鼻を背けたくなるはずのその匂いはこの場にあっては二人を更に興奮させ淫欲の中に誘い込む。

 

 椅子の肘掛けにあたる部分に手をのせ アスナに覆い被さるような姿勢で。

 

 ユートは彼女の目を覗き込みながら問う。

 

「ねぇ。挿入れてもいい? アスナさん」

「……ぁ」

 

 ついにその時が来たのかと言わんばかりにアスナはユートの顔と屹立したソレを見て回す。

 

 一瞬、逡巡した後、顔を横に向け。

 お誂え向きに用意されてあるプレイ用ウォーターマットを見遣り。

 

「……あそこがいいかな……? ここだとちょっと姿勢辛そう」

「了解。じゃあ、このまま、お姫様抱っこして運ぶね?」

 

 そのまま、水を差されただろうに嫌な顔を一つも見せずに。

 

「両手で僕の首に手を回すようにしがみついてね? 全裸だと色々感触とか違うから滑っちゃうとあぶないし」

「……う、うん。ありがとう……ぁ♥」

 

 素肌にそのまま、触れられるその感触、ふれあう雄の肉質の質感。

 その時になって、アスナははじめて、ユートという少年の裸体を。体つきを意識した。

 

 さっきは気が付かなかったけど……細身なのにすごい筋肉質。

 余分な脂肪がほとんど無くて、腕と足の肉付き、しなやかなのにすごい張りがある感じ……

 

 言うならば、肉食獣の肉付きをした人間。

 獲物を駆るために一切の余分を削ぎ落としたかのようなソレはしなやかさと強靱さを両立させている。

 

 雌の本能がしがみつきたくなるような力強さを内包している。

 

 そんな体つきの異性に軽々とアスナはお姫様抱っこの形に抱きかかえられる。

 

 笑顔と抱き抱えは肉食獣にとっては攻撃的な捕食すら意味する。

 

 ゾクゾクとしてくる感覚にアスナは顔を見詰めながら、キスをねだるかのように目を閉じて唇を意識させる。

 クスリと笑われたかのように感じるとバランスを崩すことなく、脇抱えにしていた手を頭のうしろに支え治すようにして。

 

「……んっ♥」

 

 舌を割り入れてくる情熱さはないけど、優しく触れてくるようなキス。

 

 キス いっぱいしちゃってる。 キリト君との回数、もうとっくに上書きされてるんだ……

 

 アスナは ほんの僅かな期間しか共に過ごしていない異性とこれほど濃密な関係になってしまっている事実に今更ながらに頭がクラクラしていく。

 そのクラクラしていく感覚すら、性に酔い痴れる陶酔感に変わる。

 

 閃光のアスナを詳しく知らない。

 ここで過ごしてきた時間のなんたるかをしらない。

 

 そんな雄に自らの雌を差し出してしまう背徳感すらあるその行いを。

 

 もうどうでもいい。だって、もう、ここまで きてしまった。

 私は あのひとの 差しだした手 を採ることを選んだのだから。

 

 理性を蝕むかのような熱。

 ソレを拭い去ってしまいたくて。

 ちゅぱちゅぱ と口を貪り、唾液が唇とその周りを汚していく。

 

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 ユートはキスをしながらバランスを崩すことなくアスナをウォーターマットまで運びゆっくりと横たえさせる。

 

 獲物を丁寧に運び捕食する。

 それでいて、欲に流される事無く。

 

 先程と違う固さのない背の感触。

 アスナは身を起こしてユートと見つめ合い。

 

「君の好きなようにしていいよ……? 私もそんなにシタこと無いから……どう言う体位? がいいのかわからないから」

「……ソレはおいおい二人で勉強していこうか。今は、こうかな」

 

 軽く肩を押しやるようにその身を仰向けに。

 

「おいおい勉強って ユート君は……これからも私とえっちしちゃうの?」

「……僕の 本物 になってくれるんだろ? なら、もう逃がさないし 手放さない」

 

 覆い被さるように。

 

「今のアスナさんを蝕むその性衝動が取り払われたとしても」

 

 その目が少女の目を捉えるように。

 

「……君はもう、僕のモノだ」

 

 絶対に逃がさない。

 その言葉を皮切りにして 少年もまた自らの性衝動に身を委ねることを選んだ。

 

 向かい合う形から身を動かしてユートはアスナのその滑らかななしなやかな太股の内側に両の手を掛け、割り開くように。

 優しさで彼女に開かせるのではなく、力強さで強引に。

 

「……あッ♥」

 

 先程までの痴態の熱はまだアスナの秘部を濡れそぼらせていて。

 片手でそこにあてがうようにユートは自らの肉槍でその花弁を貫けるように入り口をねらねらと先走りの迸るソレでねちゃねちゃと。

 左の手は足を抱え持ちながら優しく摩りあげる。

 

「……挿入れるよ」

「は、い❤︎❤︎❤︎」

 

 そこまで追い詰めて、少年の中に生まれた性の悪戯心がアスナの羞恥心をかき立てるように。

 

「……アスナさんのここ(・・)に 僕のこれ(・・)を挿入れるよ?」

「……いいよ……?」

 

 感触を楽しむように秘部の回りをちんぽの先でなぶるように。

 それでいて、その表情はやさしげに微笑んだままで。

 

「言って? 僕のおチンポ、私のおまんこに挿入れてくださいって」

「❤︎❤︎❤︎っ!」

 

 はぁはぁと互いに漏れる鼻息、吐息は荒く。

 そのまま、言わなければ、ここでこのマンズリを楽しんでいても良い。

 それほど淫らな駆け引きを。

 ユートはここでアスナに自らの口でソレを言わせることで。

 

「……ッ♥」

「良いよ。僕はこれでこのまま、アスナさんのおまんこで挿入れなくても楽しめるから……でも、アスナさんはそうじゃないよね?」

 

 少女の中に昂る性衝動の根幹。

 生殖本能。ソレはつまり、この状況に置いて。

 

 ゆーと君のおちんちんが私のえっちなのとこを往復して。

 挿入れて欲しい。挿入れて欲しいのにイジワルをされて。

 あのさっきの熱い熱いせーえきを 私の膣内に射精して欲しいのに。

 

 チカチカとアスナの頭の中を閃光が走り始める。

 

 ねちゃりと濡れそぼったところに ぐちゅ と押し込まれるような感覚

 

 アスナは顔を手で覆い隠すように。

 赤面していく顔を隠すように。

 

「顔、隠しちゃダメだよ……さぁ、言ってよ。そのエッチなこと、言わされる顔を僕に見せて?」

 

 ついに雄のその命令に彼女の本能が従う。

 理性よりも強く本能を読み取られてしまう今のアスナには もはや。

 

「❤︎❤︎❤︎ぃ……挿入れて……挿入れて良いよ?❤︎❤︎❤︎」

「……ちゃんと言って? さっき、教えたよね……?」

 

 ぐちゅとおちんぽがわたしのなかにすこしずつ。

 あついあついゆーとくんのおちんちんが。

 

「ッ!❤︎❤︎❤︎いれて!❤︎ 君の熱いのが欲しいの!焦らさないで!もう、もう限界なの!」

 

 せきを切ったようにアスナが懇願の言葉を。

 ハメ媚び染みた生挿入をねだる言葉を。

 

「ゆーと君のおちんぽ♥ 私のおまんこの中に入れてくださいっ❤︎❤︎❤︎」

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 

「ああ……っあっ……ぁっっっっあ♡♡♡♡あっああっ……!あぁ…ぁ!っ♡♡っ!」

 

 瞬間、アスナの頭の中にこれまでにない白い瞬きが閃いた。

 回数は少ない、だからさほど熟れていないはずの秘部の膣内はこれまでの愛撫、これまでの痴態。

 これまでの自慰行為でほぐされていて。

 

 何よりも少女を貪らんとするこのオスとの相性が噛み合いすぎて。

 

 ずにゅり♥ と拒む余地などないと言わんばかり飲み込んでしまう。

 

「よく言えました。……可愛いよ。 アスナさん」

 

 押し込み、包み込まれていく自らの肉槍から少女の熱が伝わる快楽に少年は軽く達しそうになる。

 口は半開きになって涎が垂れそう。

 極上の美少女の至上のおまんこをむさぼれる特権を有した達成感。

 

 ストロークはゆっくり。包まれるように熱く、それでいて蠢くようなソレはまるで。

 

「は、す、すごいな。アスナさん。な、なんでこんなエッチなアソコしてるの……? ろくに動かないうちに射精しそうだっ!」

「や、し、しらない❤︎❤︎❤︎ しらない❤︎❤︎❤︎ いわないでぇ❤︎❤︎❤︎」

 

 アスナからは余裕というモノが全て剥ぎ取られていた。

 

 緩やかに味わうように動くソレが自分でも感じ取れてすごくすごく気持ちが良い。

 

 ゆーと君が私のナカをキモチイイって感じてくれている。

 

 どぴゅ。びゅるる。

 

 そんな音をアスナを自分の膣内できいた。

 

 瞬間、アスナの中に凄まじい法悦が迸った。

 

「あああああああああっ!イクイクイク❤︎❤︎❤︎ イッちゃう!❤︎❤︎❤︎イきますっ♥ ゆーと君にせーえき射精されてイク!」

 

 アスナの生殖本能がオスの軽く射精した精液を感じ取った瞬間、少女の中に膣内絶頂きの快楽が刻まれた。

 オスの精液を膣内、膣道の中に吐き出されて、その熱で絶頂してしまう。

 中出しされたという事実のみではしたなくマジイキをキメてしまう。

 

「……ッふぅ! ゴメン。アスナさん、不意打ちしちゃったね? でも大丈夫。まだまだ余裕だから!」

 

 抜かずにそのまま。

 今度はゆっくり味わうのではなく。

 右足首、左足首を持つように Vの字ハンドルにする形に抱え治すと。

 

 どちゅ どちゅ どちゅ♥

 

 そこを支点にするかのように激しく腰を前後に突き立てる。

 貪るように少年の箍も外れ、アスナの膣内を堪能するように激しく。

 ソレでいながら二人の身体の行為相性の良さに。

 

「おお♡っおっおお…ぉ♡っおぉっおおっおっ♡っっお…っイクおっっ…おっぉっお♡ぉっおっイク? ♡…♡あっ!イクあっあぁ♡あっ♡♡あ…っぁあぁ!あぁあ♡ぁ!ああ…♡!♡♡♡……♡…♡ …♡♡♡……♡…イクだめぇ…っ!!♡♡………♡♡ こ…っ♡……♡お…ぉんん…っ…んっんっん!なぁぁぁあ♡っ!のっぉっ!し…っ……い♡っイクら♡♡イクなぁあ!いっ♡…っっぃぃ…♡っ!!…♡♡ …♡…♡……♡♡だっっ……め♡っぇ…ぇえ…ええ!……」

 

 アスナはこれまで経験したことのない未知の快楽を叩き込まれる。

 優しさの欠片もないオスの性欲に満ちた性蹂躙。

 それでいて凄まじいほどの快楽を自らに与えてくれる。

 

 閃光が頭の中に幾度も閃く。

 

 その都度に、掻き消されていくかのような大切だったはずの人との記憶。

 

 ぐっちゅ! ぐっちゅ! ぐっちゅ!

   どっちゅ! どっちゅ! どっちゅ!

 

「ああ、最高だ……口で気遣ったこといったけどさ! やっぱり、僕がアスナさんを結局 淫獄に堕としてる! だから!このまま、僕のモノになるっていうまで堕としてあげる!」

「だめぇ♡ぇ! ♡だめ…えぇえ♡ぇ♡っ! ❤︎❤︎❤︎ イっ ♥グ!❤︎❤︎❤︎」

 

 キリト君。 ごめんなさい 

 わたし もう

 

 荒い獣の吐息のようにユートははぁはぁと喘ぎながら、全力でされど壊しきらないように腰を突き立てる。

 足の支えはもう要らなかった。

 身体の脇に両手をつくようにすると伸し掛かるような屈曲位の形になる。

 

 押しつぶすように。それでいて潰しきらないように。

 

 ちんぽが根本まではいると即座にギリギリまで抜き。

 抜ききらないようにして、再度突き立てる。

 

 鍛えた体幹が性欲によって制御され、少女を貪り、互いを法悦の極峰に導いていく。

 

 そして。

 

「……また絶頂くよ。このまま、膣奥で射精してあげる!!」

 

 その宣言こそ、アスナの望むモノだった。

 アスナの生殖本能を満たしきる 子宮口への精液生噴射。

 その瞬間、彼女の身体の膣内が蠕動し、彼の言葉に全面降伏するかのように子宮口が降りてきた。

 

 こつん と当たる未知の感触。

 まだ未開発のソレは。

 

「……ひっぐ………っ!」

 

 押し当たる瞬間に ユートは本能でその動きを激しいピストンではなく

 揺るやかなるストロークとかき混ぜるような円運動に変える。

 

 このまま、激しくしては、この子宮口への衝撃が痛みに変わると 雌を喰らうオスの本能が理解した。

 

 故にその動きは突如ゆっくりになり。

 

 アスナの目にも見えるような屈曲位の結合部を見せつけるように。

 

「アスナさん。わかる?アスナさんの一番奥……ここ、赤ちゃんの部屋の入口だよね?……射精すよ!」

「……ッ!❤︎❤︎❤︎ 射精して!♥ ゆーと君の熱いえっちなみるく♥ で わたしのなかいっぱいにして❤︎❤︎❤︎ イクッ❤︎❤︎❤︎」

 

 (キリト)に言ったことのないハシタナイ種付け懇願をアスナは口にしてしまう。

 彼から齎されたことのない圧倒的な快楽。

 されたことのない屈曲位からの大量射精。

 陥落した子宮口への気遣いあるストロークと円運動からの精液生噴射。

 

「イクっイクッ!イっちゃう!……イクッ❤︎❤︎❤︎ゆーと君にせ-えきいっぱい射精されて イクッ❤︎❤︎❤︎」

 

 ぶびゅる ぶびゅ!

 

 三度目の射精を迎えて尚、大量なソレは正しく少女の拗らせた生殖本能を満たしきるかのよう。

 

 飲み干しきれない精液、膣道に残留した精液が引き抜かれるちんぽともに掻き出される。

 

 せーえき いっぱいだされちゃった。

 

 仮想世界の中でこそ、妊娠しないが現実であれば安全日以外はほぼ妊娠確実な精液を打ち込まれてアスナの生殖本能は満足げに沈静化していった。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 気が付いたとき、アスナは自分がうつ伏せになり ユートに伸し掛かられているのを自覚した。

 そして、遠慮の無いストロークでおまんこを抉られているのも。

 無意識のうちに腰を持ち上げるかのような寝バックの体位で貪られていた。

 

「あ、だ、だめ!ユ、ゆーと君!わ、私、もう、さっきのでね?」

 

 声を聞いているのかいないのか荒い吐息のまま獣の種付け行為を継続するユート。

 

  ぐっちゅ! ぐっちゅ! ぐっちゅ!

   どっちゅ! どっちゅ! どっちゅ!

 

「だめ❤︎❤︎❤︎ また、イッちゃう!❤︎❤︎❤︎ 頭の中、やっと、クリアになったのにまたエッチなことで埋められちゃう!イク❤︎❤︎❤︎」

 

 

 寝バックのまま、ソレでいながら腰つきだけで彼女を抉り、その膣内を堪能していくユート。

 優しく、耳に顔を近付けて囁くように。

 

「……ねぇ……アスナさん。リアルネーム教えてよ」

「だめ❤︎❤︎❤︎ だめ❤︎❤︎❤︎ そ、ソレはマナー違反だよ❤︎」

 

 脇についていた手で頭を撫でるように。

 もう片方の手で恋人繋ぎするように手を握り。

 ソレでいながら腰を止めずに緩やかに 粧われた彼女の知性を再び恥性に堕とす。

 

「じゃあ、アスナさんが名前教えてくれたら 膣内に射精してあげる」

「ダメダメ❤︎❤︎❤︎ そ、そんなの、駆け引きになってないよ❤︎❤︎❤︎イクッ❤︎❤︎❤︎」

「いっぱい、いっぱいイっておまんこ、まだまだせつないよね? 最後に膣内射精イキしたいよね?」

 

 アスナとユートの関係性を決定づけるような。

 オスとメスの地位協定が。

 頭を撫でる手が口にかかり、顎にかかる。

 パーソナルエリアの侵害。

 今や、アスナの身体でユートの味を知らないのは アナルとアナルの中だけになっていた。

 

「……絶頂きたいの……ゆーと君のせ-えきください……ッ!」

「じゃあ、教えて? アスナさんのリアルアカウント。僕に差し出して?」

「~~~~~~~ッ!❤︎❤︎❤︎」

 

 真っ赤な顔で堪えるように黙って彼女はついに折れた。

 

「ゆ、結城 明日奈……ですっ❤︎❤︎❤︎」

 

 腰を止めないまま、彼女の耳元に囁くように顔を近付けて。

 

「明日奈。アスナ……か。年齢は?」

「~~~~~~に、二年前は受験前でした!」

「それはK? D?」

「やぁ、そんなえっちな聞き方しないでよ❤︎」

「……これ、隠語だってわかるんだ。アスナさんもそれなりにはこう言うのしってるんだ? じゃあ、名前を教えてくれたし、年齢も大体察しがついたから……射精すっ!」

 

 そう言うとユートは身を起こして、ラストスパートを堪能する。

 

 どっちゅ! どっちゅ! どっちゅ!

 ぶびゅるぶびゅる! 

 

「あああああああああっん! だ、め、だめなのに! 言っちゃた!言ってイッちゃう! イっクぅううううううううううっ❤︎❤︎❤︎」

 

 頤を反らし、アスナはユートに組み伏せられ堪能されきった性欲の果てに自分が随まで堕とされたことを理解し。

 顔に陶酔と多幸感を溢れさせ、再度 気をやった。

 

 膣内に弾ける熱いユートの精液を感じながら。

 弾ける都度に閃光が頭にちらついていくのを実感して。

 

 満たされきった情欲を枕に性欲に堕ちて気を失うアクメ顔を晒して眠りについた。

 

 




現在の状況
 アスナは ユート と VRsex を堪能しました。
 アスナは 淫語 を軽レベルで教えられました(男性器を おちんちん、あるいはおチンポ。女性器を おまんこ など卑猥表現できるようになりました)
 アスナは最終的には覚えてないくらい絶頂かされました。

 アスナはカーディナル観測影響下からクィネラ観測影響下に移管しました。

 アスナはユートにリアルアカウント情報を差し出してしまいました。

 
 生殖本能と性衝動の暴走は消えました。
 性経験とその記録は継承されてます。

 アスナは ユート を添い寝の対象にしました。
 アスナは キリト との関係を一旦見直すことを決めました
 


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12:誓約

~風呂場でユートとアスナが睦み合ってる頃~

 リアルアカウント
 Name:結城 明日奈
 Age :15
 Nationality :Japan
 Birthday :2007/9/30
 Address  :東京都世田谷区

 浮かび上がる情報を手に クィネラは カーディナルに対する大仕掛けを行う。
 意識のある状況下で働く理性的防壁、精神的防壁は今正に、気絶状態となることで停止した。
 しくじれば、脳の焼き焦げた哀れな女の死体が出来上がる。
 
 だが、しかし、この公理教会最高司祭を名乗った過去を持つクィネラにカーディナルへのハッキング、クラッキング、データドレイン、データコピーなどは些末ごとである。
 語られぬ未来の先、彼女はカーディナルを吸収し同化して一体化し、自らの意志の元に下しきったのである。

 故に。

領域捕捉(エリアサーチ)……ユーザー名:結城明日菜 情報収束(データパッケージ)……成功(オールクリア)

 風呂場で艶事を繰り広げている真っ最中の二人を尻目にクィネラはGM権限を越えたカーディナルシステムに対する絶対優先権を持つにいたる権能を行使する。

「観測クライアントシステム移行……成功……ダミープロセスによる偽装定義……完了……ログアウトプロセス開始権利の発効……チッ。これは紐付け条件がエグいわね。仕方ない。これは諦めてもらうとしましょう」

 収束させたデータキューブを取り込むようにして。

「……折角お手付きにしたステイシアに普通に死なれても面白くはないわね。良いわ。文字通り【創世神ステイシア】のハイエンドアカウントを実装定義しましょう。最上位設定で……超越権限(スーパーアカウント)は……まだ早いわね」

 風呂場の艶事が一段落したのに合わせて、彼女は一仕事を終えた。
 これで、閃光のアスナ の精神的デバフ、VR不適合症の過適合による生殖本能から来る性衝動はクリアされた。
 自らの指しだした手を採った彼女との契約に従い自らのシステムにそのアカウント情報を取り込み、クライアント移動を成立させることで観測基点を変更し過適合の最大要因の長期間における没入状態を擬似的に緩和。
 
「まぁ、もっともな話、欲望から来る性欲、と 本能が訴えかける性衝動 は切り離しにくいモノではあるのだけど。まぁ、邪淫も姦淫も支配術(ドミネート)の一つではある。我が主には、性欲によって女を支配する手管の一つぐらいはこの際だから身につけてもらいましょう」

 閃光のアスナが黒の剣士以外の男と肉体関係に陥る。そしてその関係が継続する。
 これは、充分に因果事象に対する上書き(オーバーライド)が発生し得る案件であり、未来が書き換わる要因ともなりうる。
 このような本来計測されるべき事象から大きく逸脱した出来事が起きたポイントを事象特異点と呼びあらわす。
 直近や数年単位であればまだしも、この手合いの出来事の歪みは年数が広がるにつれ大きくなる。
 その振れ幅を消すために上書きが起きる。
 だが、その振れ幅も上書きも そもそもの樹形図上の位置がずれてしまえば発生し得ない。
 
「時の樹形図的には既に並行の枝に移っている……上書き以前に完全なるパラレルシフトを起こしてるわけだけど……さて。これだけの異分子が集う状況……後、もう一手ぐらい何かが起きるわね」

 風呂場で気を失ってるであろうヤりすぎ盛りの思春期二人の世話を思い
 溜息を吐いた後、指先一つで 神聖術を駆使し 水術で性に塗れた身体を洗い清め。風術で乾かし、また、風術でフワフワと運び出し、服までは面倒見ていられないので全裸のまま、ベッドのシーツに並べて寝かせておく。

 かつてと違い、この程度のリソースを使うことにもためらいなく行える今の自分の状態に愉悦と満足を感じ彼女は次の一手を摸索する。

 全てはこの身を律する最優先事項(プライオリティプロセス)のために。

 焼き欠け堕ちて何もなくなりかけてそれでもと掴んだ時間遡行の先で手に入れた安住の地。
 個人サポート用AIの実験試行のために使われていたそのサイバースペース。
 その無脳の意志なき応答態に最後の意識と力を振り絞って、死ねぬとウィルスのように侵蝕した。
 それ以外の目的しかないのにリソース領域には膨大にも程があったプログラムに同化して生き長らえた彼女に焼き付いたの実効プロセス。

 使用者(ユーザー)茂村 優翔 の生活を補助し、そのQualityOfLifeを保全する。

 そう。その時より、彼女の執行するべきプロセスは ユーザーを保全するために秩序を維持する。その為には己が保全されてなければならず。
 クィネラの名を得て表出した今は、そこに 対カーディナルシステムを主目的としたクラッキングハッキングプログラムを組み込み、今となってはそれは元より持ち合わせていた自己の性能と組み合わせて高汎用性の アンチカーディナルシステム と言っても過言ではあるまい。
 今の彼女は アンダーワールドの人界の支配者 と言う世界構成上の一単位などよりもはるかに巨大な コード・クィネラを管理者(アドミニストレータ)とする広汎性の高い電子構造体そのもの(エレクトリカルメガストラクチャー)と言えた。

 世界の一つの欠片だった公理教会最高司祭(アドミニストレータ)は奇なる縁の果てに自らを絶対の頂点とする電脳世界を一つ手に入れたのであった。


 



 目が覚めた時、自分が全裸でシーツにくるまれていることをユートは自覚した。

 

 風呂場での乱行を思い出し、はっと飛び上がり、彼女の、アスナの姿を探す。

 あれだけやらかしたのだ。

 正気に戻った彼女に逃げられても当然の不埒三昧である。

 

 しかし、彼女は居た。

 部屋の窓沿いにあるチェアに座り、窓を開け、その風を受けるように。

 

 血盟騎士団。その副団長としての制服。白の鮮やかさとちりばめられた赤の装飾。

 翻るような赤のスカートとそこから覗く太股とそれを包むロングハイソックス。

 時折吹き込む強い風が長い髪を衣服を揺らす。

 それを気にかけるでもなく、只、外を。

 

 惚けたようにみてしまう。

 それが一枚の絵のように完成されていたからだ。

 

 それと同時に度し難いまでの劣情も甦ってくる。

 

 あれほどの美しさを纏う彼女を自らの欲望で穢してしまえばどれほどの達成感を得ることが出来るのか。女を堕とすという行為を愉しむことが出来る性質が自分の中に眠っていることをあの浴室での彼女との行為の果てにユートは理解していた。

 

 だが、同時にその欲を制御する術もまた。

 

 誰彼構わずであってはならない。相手がその手を伸ばし、その手を掴む気があってこそ。無秩序に手を出しては自らが鬼畜に堕ちる。自らの内に灯す熱と本物を手にするならば、それは厳選してこそだ。

 

 ユートは立ち上がり、同じように装衣を纏う。

 室内で自分の完全武装をするまでは思わず、黒のアンダーボディスーツに。

 

 緩やかに物音を立てずにアスナの背後に立つ。

 気が付かれてはいるのだろう。

 その上で振り返りもしないのは試されているからだと確信する。

 今のこの状況、条件。昨夜においての彼我の関係。

 その上で、ユートという男がどうでてくるのか。

 

 邪淫も姦淫も 手を出した以上はそれを謝って済ますことは出来ない。

 それであるなら最初からしなければ良いのだから。

 

 逃がさないと心に決めた。言葉に出して 君は僕のモノだと宣告した。

 

 ならば。ここで変に謝ったりすることは手にすると決めた彼女への侮辱になる。

 

 堕とすのなら徹底的に。

 

「おはよう。アスナさん。先に起きていたんだ?」

「……ああ、こう来るのかぁ……試していたところはあったんだけど。まぁ、これならそう言うことで良いか……おはようございます。ユート君?」

 

 背後から抱きつくように。

 しゃがみ込むように肩から腕を回して、胸甲の上に置くように。

 空いた逆の肩に顎を乗せるようにして 耳元で囁くように。

 

 一瞬、驚いたような顔を浮かべ、しょうがないなぁと言わんばかりの表情になってそれから柔らかく微笑んで挨拶を返してくる。

 

 そのまま、唇を奪おうかと思ったがもう一呼吸置いた方がいいと判断して。

 

 挨拶を返されたことを確認するとその体勢に拘泥せず。

 さっと身を離してテーブルを挟んだ対面するチェアに身を置く。

 

 姿勢を整えたアスナが真っ直ぐに見据えてくる。

 

 一つ溜息を吐いて拍を整えた彼女は。

 コホンッ とわざとらしい咳払いをして。

 

「取り敢えず。昨夜のあれこれの結果、無事にクライアントの移行?は終わったそうです。色々とお手数おかけしました」

 

 ぺこりと頭を軽く下げる。

 

「お手数って……いや。言っただろう。僕があの状態の君を見捨てられなかった。だから、そう言う言い方はしなくて良いよ。徹頭徹尾、こっちの意向だから」

 

 取り繕おうとするアスナにユートは苛立ちを感じ。

 

 そして。

 おもむろに立ち上がるとゆらりとアスナに近付き。

 その手を採って立ち上がらせる。

 抵抗は許さないとばかりに強引に。

 

「チェックアウトまで時間あるよね?」

「え……」

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 姿見の大鏡の前に立たされるアスナ。

 衣装ケースの横に設置された全身像を写すそれは原則的には装備のフィッティング後のカラーリング変更など装備関係の特殊なコンソールを兼ねている。

 

 だが。

 

「……ねぇ。ここに立たせてどうするの……?」

 

 わかりきった不安。これから自分がどうされてしまうのか。

 アスナの中にはほんのりとした理解と期待があった。

 昨夜一晩の逢瀬の果て。

 浴室で行われた行為の結果は。

 性衝動などに突き動かされたものでは無く少女の身体に性経験として確かな記憶として宿っている。

 

 ユートの顔が薄笑いを浮かべる。

 微笑とは違うのは、これから行われる行為が欲望に満ちた行為だからだろう。

 鏡越しのその顔を見てアスナは覚悟を決める。

 

 耳元でアスナの身体に快楽を刻み付けたオスがその声を囁くように。

 

「スカート……たくしあげてよ」

「ダ、ダメだよ……だって、もう、えっちな衝動はしなくなったし……」

「衝動がなければエッチできないの? 違うよね?」

 

 逃げ道を塞ぐように。

 

「……僕は決めたからさ。アスナさんはもう僕のモノにするって」

「そ……れは」

「……たくしあげて。アスナさん……それで血盟騎士団制服でスカートたくしあげしてるえっちな姿を僕に見せて?」

 

 ゾクリゾクリと背筋に刻み込まれるオスがメスを欲するときの仄暗い欲情に満ちた声。

 少女の理性が昨夜の激しい性行為で受けた快楽を思い出す。思い出してしまう。

 それは 思春期のセックスを知ってしまった美少女の興味や好奇心 に繋がっていく。

 

 ここで彼の言うことに従えばどれほどの快楽が。

 

 アスナの理性がその恥的好奇心を。

 性経験がもたらす快楽を識ることを望んだ。

 

 身を震わせながらゆっくりと。

 ふぅはぁ 吐息をはきながら。

 羞恥で目を閉ざし顔を背けようとして後ろのユートに顎を軽く掴まれ鏡の前を向くようにされ。

 

「目を開けて。ちゃんと見ないとダメだよ? 自分の意志でスカートたくし上げしちゃってるアスナさんの顔とか」

 

 目を開けてみれば、羞恥の紅潮でほんのり頬を染めている自分の顔。

 血盟騎士団副団長の装いで。

 そのスカートをオスの命令でたくし上げてしまった自分。

 

 ゾワゾワと不快ではないが言いようのないものが背筋を奔った。

 

 背後のユートがしゃがみ込みそして回り込む。

 その顔の位置は。

 

「へぇ……アスナさん。気が付いてるよね?」

「な、何のこと……?」

「誤魔化さなくて良いよ。こんなソフトなことでも、もう期待しちゃってるんでしょ?」

 

 勝ち誇ったような声音で明日奈のショーツの前に顔を寄せたユートは告げる。

 

「……ショーツ。もう濡れ始めてるよ。えっちなシミがじわっと滲み始めてる」

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 アスナの性に関わる好奇心はユートの手によって開花させられつつあった。

 オスの命令に従って痴態を差し出す行為は アスナの中にある従順的な慕情に火を灯す

 

「だ、だって……君がそうしろって言ったから……んっ♥」

 

 ショーツ越しにユートの指が腹を向けて撫でるように上下する。

 そこは女陰、雌唇と呼ばれる部位で。

 強く押すように上下させてアスナのショーツを見事に台無しにしていく。

 

「んっ……♥だ、ダメだよ。着替えたばかりなのにまた下着変えないといけなくなっちゃう……ッ❤︎❤︎❤︎」

 

 抗議の声を無視するようにユートの指は股座の当て布をずらす。

 何も覆われていない秘部が顔を出す。

 そこは指摘されたようにメスの蜜を滴らせ始めていた。

 

 オスの指による刺激は少女の未知を。好奇心を駆り立てていく。

 

 スカートを掴みたくし上げていた手の片方が思わず外れ、声を我慢するように口元にあてがわれる。

 鼻息、吐息は荒くなる。

 荒くなる都度にユートの指の擦りあげや軽い指挿入が繰り返されていく。

 

 ちゅぷ ちゅぷ ちゅぷ

 

「アスナさんのココ。性衝動に支配されなくても、もう充分エッチになってるんだから。これからもちゃんと面倒見て上げないといけないんだよ……わかってる?」

「んぅう❤︎❤︎❤︎ わ、わかりました❤︎ お手数とか言ってごめんなさい❤︎」

「本当に? じゃあ、言えるよね? これからアスナさんは僕にどう接していけば良いのか」

 

 アスナの心を絡め取るように齎される性快楽の波。

 

 アスナの心と理性が同一回答を導きそうになった瞬間、唐突に愛撫が止まった。

 あと、一歩、あと一歩で指愛撫による絶頂を迎えるところだったのに。

 

 ユートは立ち上がると今度はアスナの肩に手を置き。

 

「しゃがんで」

「ッ❤︎……うん……」

 

 絶頂を迎える寸前の物足りなさを抱えたまましゃがみ込む。

 そして。その目には。

 

 屹立しヘソまで反りあがるように勃起したユートの剛剣が。

 

「あ……ッ❤︎❤︎❤︎」

 

 圧倒的なオスの視界的暴力。バッキバキの勃起したチンポを見せつけるように。

 先走りを迸らせヌラヌラと濡れたそれを。

 逃げ出さないという確信の元に頭を抑えることもせずにアスナの顔に接近させ。

 

「……触ってよ。手で軽く触りながら口の前に持っていって?」

「うぁ……❤︎」

 

 興味、恐怖、好奇心。

 セックスで自分の中に打ち込まれたモノを顔前間近にする。

 鼻には夥しいほどの精臭。オスの匂いがアスナの中に刻まれていく

 理性が理解を重ねていく。重ねていってしまう。

 

 自らの性の支配者となったユートの命に従いアスナの両の手は包み込むようにソレを。

 

 あ、あつい。どくんどくんとみゃくうってる。それにたぶん、おおきくてかたい っていわれちゃうようなおちんちんなんだ……

 

 易しく包み込むようにソレを口先に近付けると。

 

「……アスナさんが僕の本物になる。と心から。理性から言えるのなら 僕のチンポに誓いの口づけを捧げるんだ。アスナさんの頭で考えた言葉で誓約を告げて」

 

 アスナはなんてことを言うのだろう。と思い、同時にこうも思った。

 全ての外堀は埋められて、あの度し難い生殖本能の暴走から解き放ってくれたのは彼の存在あってのことだ。

 もし、あのままならもっとどうしようもない女に堕ちていた。

 誰彼構わずハメ媚び、種付けをねだるようなオンナに堕ちていたかも知れない。

 

 彼に身を尽くせば良いというのなら。

 彼に心を寄せれば良いというのなら。

 

 なら……クィネラとの契約に従おう。彼に心身の全てを差し出そう。

 

 ごめんね。キリト君。私、ユート君の雌彼女(オンナ)になる。

 

「私、アスナは……結城 明日奈は。君の……ユート君の本物に。君に身も心も全てを差し出すことをここに誓います」

 

 そしてアスナは淫らな誓いの口づけを捧げた。

 




現在の状況
 アスナは起き抜けにユートに調教されています。
 アスナは 血盟騎士団制服エッチ を教え込まれています。
 アスナは ユート にわからせ(軽度)をされています。
 アスナは 見せ槍 をされました。
 アスナは ユートのおちんぽ に誓いのキスを捧げました。

 これに伴い アスナはユートに陥落しました。
 優先順位の上位にユートが来ます。


■ハイエンドアカウント マスターアカウント
 通常のアカウントアバターより強力なデータ補正が入る。GM側に近いためシステム的権限などが行使できる。その可能になる枠組は多数だがクィネラの管轄とカーディナルの管轄ではシステム権限の行使枠が違うため、絶対権限までは使えない。

■【創世神ステイシア】
 正史であればアンダーワールドで使用可能なスーパーアカウント。物質創造など正しく神に近しい権能を行使でき、通常アバターの比較にならないほどの補正値がある。
 クィネラが持ち込んでいるプレイヤーに与えることが出来るチートの一つ。
 クィネラと契約を結ぶことで譲渡される。適性が低いと全く使えない。
 アスナは最高レベルの適性を持つため、ほぼ99.99%の性能を発揮できる。

 カーディナルシステムとそのザ・シードによって運営されるシステムならば、クィネラシステムの契約実行者であればこれを任意で引き出せる。

■アンケート捕捉
 GGO編に登場するヒロイン レン=小比類巻 香蓮 は 183センチ。
 この高身長が彼女の現実世界のコンプレックスの一つ。男女交際に忌避を覚えているのは自分と釣り合う背丈の男子との巡り合わせがなく、その身長を馬鹿にされる類の侮蔑を受け続けていたから。と言うバックボーンもあります。


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13:征服

~ホロウエリア~

 「はぁ!」
 片手剣を持って敵を切り捨てる黒の剣士。
 ポリゴン片の爆散を待つその間に次を見据えて行動する。
 
 本来であればその次を見据える前に。

 強引に自分のフレンド枠に介入して、同時転移によって此方に渡る事を願った黒鎧の狂戦士は最初に垣間見たときに奮った広範囲一層の衝撃波に頼る事無く 黒の大剣を片手剣の如くに奮ったり、両手剣の如くに扱ったり。果てはその身合わぬ技巧で細剣のような繊細な刺突技につないだり。
 剣技と剣技を連続技として成立させる スキルコネクト を別種の片手剣技から両手剣に技につなぐなど理不尽にも程がある。

 その背後にフィリアを護りながらそれでいて一切の隙無しという態である。

 フレンド登録したモノに対するフレンドファイアが起きない。と言うギミックだと知らされては居たが。
 モンスターが自意識を持ってプレイヤーと交流する。
 それはキリトにも経験済みな出来事ではある。

 あの時の黒エルフの女剣士、キズメルもであったときは相当にレベル差があってどうしたモノかとは思ったが、今回のこれはその比ではない。

 イベントに紐付けられているわけではない自由意志を持って、ボスエネミーすら余裕で単独撃破するHNM。
 ゲームの根幹すら揺るがしそうなソレはしかしながら。

「……攻略の役には立つ。そして、何より……」

 仮想世界でありながら、地震のような震動がごく稀に起きるようになったアインクラッド。
 それは例の75層の件の出来事以来のことだ。
 地震の起きるメカニズム と これまで一切として地震のようなものが起きてなかった事実を重ねると明らかにあの異常現象の後の影響だろう。
 これが何の意味を持つかは理解しかねるが往々にして地震は大破局の前ぶりだ。

 その理解があればこそ、少々の問題には目を瞑らざるを得ない。

 唐突に件の狂戦士からメッセージが届く。
 会話は出来ないくせにメッセージでのやりとりは出来る不可解さにも慣れた頃である。

【手管を選ぶ時間はもはや残されてはいない。天空城に挑むものたちの時間はあと僅かなのだ】

 訝かしむ。ゲーム的なメッセージにしてはいかにも事を限定しすぎている。

【外界において 事を外より眺めるものたちの一部は 当事者達を捨て置いて とある決断を下した】

 外界。その意味が自分の思うものならば。
 剣を振るう。取り囲まれる前に三匹を同時に横に薙いで切り払う。
 
【強制切断。運が良ければ生き残りが出るであろう程度の目算で残りの全てを強制的に切り捨てる】

 ズドンっと 影から湧き上がるエネミーをその大剣で串刺し縫い止め爆散させると黒鎧の狂戦士はその動きを止め。
 睥睨しキリトとフィリアの前に立ち。

【黒の剣士キリト。貴様は選択せねばならない。その手で天空城アインクラッドに纏わる物語に幕を引く意志があるのならば】

 ぶぅんと剣を振り抜き。
 遥か遠くに見えるであろう管理区を指し示す。

【このホロウエリアに纏わる最後の物語【皇輝の継承者】。其処にいたり、そこに置いて秘奥義を習得せねばならない。 唯一 魔王ヒースクリフを斬滅せしめる秘奥義。あらゆるソードスキルを理解する魔王の理解の外。魔王を討ち果たすためのバランス調整としてシステムが作り上げたソードスキルがそこにある】

 ぶぅんと振り回した剣を地面に突き立て。
 横一本に線を引き。

【そして。今ひとつの道は速やかにホロウエリアより立ち去り、己が手で階層攻略を進め、その手に宿す培った剣技のみで魔王を討つことだ。ソードスキルを使わぬ純粋剣術。今の貴様ならばそれも開花しよう】

 赤い凶眼に光を瞬かせ。

【いずれにせよ。貴様達には時間の猶予はない。早やかに決定をせねば、ここでこの身がその身に幕を引くことになる。ここよりが境界線だ】

■無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)


「魔王ヒースクリフ……やっぱり、アイツは生きているのか……?」

【然り。聖騎士ヒースクリフは果てた。だが、ゲームマスターとして最後に立ち塞がると決めた魔王ヒースクリフは生きている。天空城の最後の果て。魔王は再びその手に剣を持ち立ち塞がるだろう】

 あらゆるソードスキルを理解する。その意味は自分に刻まれている。
 最初は勝てたはずのスターバーストストリームをシステムアシストを越えたオーバーアシストでしのがれ。
 ジ・イクリプスもあの異常が無ければ最終段まで徹ったかも怪しかった。

 全てを見てきたかのようにメッセージのみで告げるこの黒鎧の正体がことさらに疑わしくなる。
 だが。

「……なぁ、アンタは一体何なんだ? どうして、そこまで詳しい? ここまで、敵対する意志は見せてはきてはいない。でも、そこまで知っているのはおかしいだろ」

MHCP001(ユイ)をその身に受け入れた貴様にならばわかろう。この身はシステムの外にある存在故に。貴様に荷担するはこの身が成した業。死者の残留思念の集積結果故】

 ユイ。
 彼女の存在を受け入れた以上、システム外の存在と告げる黒鎧の狂戦士を否定することは許されない。
 その相手相手でその対応を変えるのはあの子の在り方にも唾を吐きかける行為になる。
 キリトの頭の中に先程から与えられた無数の情報が山となり襲いかかる。
 気になる文言ばかり。ゲームシステム上のブレイクスルーたる【秘奥義】の存在に【強制切断】といういかにも、現実世界でヤバいことでも起きそうな暗喩。
 
 ガシガシと片手で頭を掻いて黒の剣士は覚悟を決めた。

「ああ! もう! わかったよ! 要はここ、ホロウエリアをフルコンしろって事だろ!? やってやるよ!」

 さっさと次に行くぞといわんばかりにばっと振り返り閉ざされた門を見遣る。

 戦域名 民が捧げられた鮮血の祭事場。
 第一エリア セルベンディスの樹海。
 そのボスエリアは目前であった。




 戦意軒昂たるその黒の剣士はついぞボス討伐まで気が付くことはなかったが。
 一つのメールが届いていた。
 情報屋アルゴからの 運命の時を告げるメールが。




 誓いのベーゼは剥き出しの欲望の亀頭の鈴口に捧げられた。

 リアルネームとアバターネーム。

 その双方を名乗り、アスナは誓いの口づけを捧げたのだ。

 

 凄まじい優越感が下半身を支配し。

 その優越感の元に次なる命令をアスナに下す。

 

「じゃあ、僕のおチンポに奉仕して。その口で。その舌で。その指で。やり方は自由で良い。アスナさんの考えるようにして良いから」

「……ッ❤︎……やったことないけど……好きにやってみて良いの?」

 

 ユートは答えず、頭を撫でるように手を置く。

 その勃起したチンポを美しいアスナの顔に押し付けるように。

 ねちゃねちゃとした先走りを擦り付けるように。

 

 眉根を潜ませてやや背けるようになる困惑と興奮の入り交じったアスナの表情はオスの興奮を誘う。

 

「ほら。ちゃんとご奉仕してくれないと顔ズリしちゃうよ……?」

「ぁ❤︎ ふ、服とか脱がなくて良いの……?」

 

 このまま、行為を始めてしまうことの躊躇いが残るアスナ。

 顔をなぶられたまま、オスのマーキングを顔にされながら。

 

「ダメだよ。アスナさんは 血盟騎士団副団長の装衣をしたまま、僕のモノになるんだ。そのままで良いから奉仕するんだ」

 

 その言葉の意味は 二年間駆け抜けてきた閃光のアスナを象徴するモノを。

 攻略組、最強最速の細剣使いアスナ。

 その彼女に。

 

 アスナの目が潤む。

 潤んで怖ず怖ずと顔ズリのチンポから位置を整えて。

 

 自らの意志でチンポに奉仕させることで。

 その装衣を着たままチンポに奉仕させることで。

 

 自らの性欲を 性衝動という言葉で誤魔化すことのないようにさせる意味があった。

 17歳のセックスを知り、オスの味を知った思春期の少女の中に生じる当たり前の性欲と好奇心。

 

 その好奇心に満ちた理性が。

 チンポの味を舌で知ると言う行為を選択した。

 アスナがこれまでしたことのない男性器への舌による愛撫。

 ソフトクリームフェラ と呼ばれる行為からそれは始まった。

 

 ぺちゃ ぺちゃ ぺろ

 

 舌を恐る恐る伸ばして、亀頭の先を刺激する。

 先走りの味にやや顔を歪めて、それでも行為は続けられる。

 

 ぺろ ぺろ

 

 自分でリズムを作るように 亀頭の全体をなめ回すように。

 その舌が次第に上下に動いて舐めあげるようにチンポを上下に行き来する。

 

 ユートはその光景だけで達することが出来そうな満足感を得ていた。

 

「アスナさん……良い。舌が滑らかって言うか、きめ細やかな感じですっげぇ……」

 

 オスの恍惚の表情にアスナの指が動く。

 パンパンに膨れ上がった陰嚢を優しく揉みほぐす。

 きっとこうすれば気持ちが良いのではないかとアスナの頭の中で自分なりのフェラチオが構築されていく。

 左手でタマ揉み。右手で親指と人指し指で輪を作りチンポを括り優しく上下をしながら。

 パクリと亀頭を口に食みペロペロと舌を舐め這わせる。

 

 アスナの舌奉仕と指奉仕が入り交じったユートのチンポに捧げるフェラチオがここに形を得た。

 

 たぶん 喉とか深く咥えちゃって嘔吐いちゃうより、無理しないこっちの方が。

 

 アスナの目がチラリと上目遣いでユートを見る。

 

 その扇情的な光景でユートの第一の防波堤が破堤した。

 

「うぁ……それ、その組合せはヤバいっ!射精す!」

「んふっ? あんっ❤︎」

 

 頭を抑え付けずにそのままに射精される精液は。

 どくんと震えた瞬間の驚きで弛んだ右手の輪っかを撥ね除けて勢いよく噴射する。

 

 ぶびゅる!

 

「んっ❤︎ あっついせーえきかかってる……ッ!」

 

 瞬間、目を瞑り、精液が目に入ってしまうことを避けたアスナの顔に熱い波濤がぶちまけられた。

 

「……すごいね❤︎……? 昨日の夜、あれだけシタのに今日の朝でこんなにも射精ちゃうんだ……❤︎❤︎❤︎」

 

 白濁の液が口をわずかに離したアスナの顔を白く穢す。

 したたり落ちる ザーメンが白い血盟騎士団の胸甲に異なる白を刻む。

 昨夜の交合でも大量の精液を受け取ったことはわかっていた。

 さほど時間を経ていないのにそれでもまだ彼の精液の量は多く。

 ベッタリとアスナの顔を精液で穢す。

 

 鼻につくオスの精臭。

 髪にかからなかったことに安堵しながら、精液を手繰って口に運ぶ。

 アスナは知らずの内に精液を口に食み、その味を飲んで覚えることに支配される喜びに似た何かを覚えていた。

 

 美味しくはない。けど、私の口で、舌でユート君が射精してくれた。

 

 オスを舌と口と指で射精に導いた事実がアスナの心に自負を宿らせる。

 

 見合う目と目を交差させた後、アスナは柔らかく微笑んでから精液を吐きだしたばかりの今だなお、自己主張の激しい萎え知らずのユートのチンポに口づけをして亀頭を口食みにして。

 

 ぢゅる ぢゅる!

 

 激しくはなく、咥えすぎて下品な顔にならないように。

 パックアイスを吸う要領でアスナはユートのチンポを軽く吸い上げ、その尿道に残る精液を吸い上げる。

 理性が男性器の造りを思い出しそうすれば良いのでないかと考え実行に移していた。

 今や、アスナの理性はメス染みた生殖本能とは違い、頭で考えてユートに気持ち良くなる方法を模索する淫らな恥性となっていた。

 

「……吸い上げとか……エロいよ。アスナさん……自分で考えてそうしてくれてるって言うのが最高だ……ッ」

 

 口を離しためた精液を。

 

「いっぱい口に溜まったときは唾液と一緒にしてから飲み込む方がキツくないよ……飲んで?」

 

 こくりと頷きそれを飲み干す。

 ぐちゅぐちゅ ゴクンッ

 自然とオスに示すように口を開ける。

 濃さ故か。やや糸を引くような口の中からは精液臭が漂う。

 

 血盟騎士団 副団長装衣を着込んだ閃光のアスナの口の中から精液臭。

 

 手繰りきれずまだ顔を汚す白濁の液がまだ乾かぬうちにユートは次なる命をアスナに下す。

 

「アスナさん……今度はがに股になって、タマ揉みしていた左の手で自慰をして?右の手と口はさっきの作法で良いから。オナニーとフェラのダブルタスクに挑戦しよう?」

「……ッ❤︎ うん❤︎やってみるね……?リズム良くなくて気持ち良くなかったら許してね?」

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 くちゅ くちゅ くちゅ

   ぺろ  ぺろ  ぺろ

    しこ  しこ  しこ

 

 アスナはユートに命じられるままにがに股になって、蹲踞の形にすることで何ら意味を成さなくなったスカートの中に手をのばす。

 エロ蹲踞と呼ばれる類の下品な恰好になっていることに頬を染めて。

 自らの秘部を縦筋に沿ってなぞり指二本で刺激する。

 指と舌で亀頭と竿を優しく愛撫し射精へと誘おうとする。

 

 ユートは今度はアスナの頭を軽く、押さえつけにならない程度に優しく撫でるかのように抱える。

 

「ああ……やっぱり、舌も口の温かさも最高だ……」

 

 うっとりしたような声音でユートはアスナの齎す奉仕快楽に浸る。

 

 アスナは横目で大鏡に映る二人の淫らな姿をみる。

 そこには淫らな奉仕をするアスナ(自分)の姿があった。

 鏡越しの事実が胸に染み渡り、羞恥心が快楽に変わっていく。

 自分の淫らな姿を鏡越しで直視すると言うことは客観性による事実の追認。

 

「ッふぅ……♥ あ、あのね?❤︎❤︎❤︎ さ、さっきまでのゆーと君の指ですごくせつなくてもう絶頂きそうなの……❤︎」

 

 口を離して、オスに絶頂の許可を伺ってしまうのも絶頂き散らかしてはハシタナイと思う羞恥の感情だった。

 うっそりと微笑んでユートはその問いに行動で答えを示す。

 口に向けてチンポを押し付けて無理目にしゃぶらせようとしてくる。

 

「……ぁ❤︎う、うん❤︎❤︎❤︎」

 

 オナニーの指使いを弱めて、口奉仕に意識を振り分ける。

 絶頂きたくてもイケない、イケそうで絶頂けない。

 絶頂きたい、絶頂きたい 絶頂きたい

 お預けを二度食らったアスナの理性が絶頂への欲求で高まったその時。

 

 ぶびゅる! ぶびゅる!

 

 不意打ち気味な射精が始まった。

 ぶばっ と 二度目の射精にも拘わらず、特濃なザーメンが口腔内に弾ける。

 その瞬間、アスナの頭に白い光は閃いた。

 ガクンと膝から力が抜けそうになって、堪えてびくびくと震える。

 

 イクッ!絶頂くときはイクって言えって言われてたのにこれじゃあ言えない❤︎❤︎❤︎

 

 頭の中にそんな恍けた言葉が浮かびアスナは口内射精絶頂きを刻んでしまった。

 

 ぶっかけられてもイって、口に射精されてもイってしまう。

 ユートの白濁精液による刷り込みがじわじわと染み渡っていく。

 

「……イッちゃったよね? 精液、口に射精されて」

 

 こくん。と頷いて答えるアスナの顔は紅潮している。

 興奮や羞恥、様々な感情が頭を支配する。

 

「……飲み込む前に口を開いて見せて? そう……それで指でぐいっと広げるんだ……鏡、見て。アスナさん。最高にエロ可愛い顔になってるよ?」

 

 不様なザーメン口溜め顔。

 いつもの自分であればけしてしないような顔。

 オスの前にしか晒すことの許されない素の自分が其処にいた。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!

 

 乾いた臀部と鼠蹊部がぶつかり合って皮膚が皮膚を叩く淫らな音。

 

 鏡の前に立たされ、その鏡台に手をつかされてアスナは尻を突き出し後背位でユートを迎え入れていた。

 口には精液を溜めたままでいることを命じられ、そのまま、鏡を直視することを。

 スカートとコートをいっきに捲し上げられて、ショーツを足下までズリ下げられた後は、容赦なくいっきに貫かれてしまったのだ。

 右手で腰の辺りを掴み、左手で尻をホールドする。

 左手の親指が時折、尻穴を意識させるようにツンツンと突く。

 

 目を見開き、口のザーメンを吐き出しそうになるのを堪えて自分の今の淫らな姿を頭に刻んでいくアスナ。

 思わず、吹き出さないように片手で口元を押さえる。

 荒い鼻息が自らの絶頂を予期させる。

 

「……飲み込んで良いよ! 口の溜め汁、飲み干したら今の気持ちを言うんだ!」

 

  ぱん! ぱん! ぱん! 

 ばちゅん!   ばちゅん! 

     ごくんっ

 

 乾いた皮膚の叩きつけあいが淫らな愛液の入交で濡れた水音に変わっていく。

 その最中にアスナは懸命にユートの精液を飲み干す。

 後背位のピストンではきだしてしまいそうになるのを堪えて懸命に。

 絶頂が刻まれていく。

 精液の飲み干しとユートの好き勝手な後背位ピストンが齎す絶頂がリンクした。

 

「ッはぁ!❤︎❤︎❤︎ ひ、ひどいよ!?❤︎ こんないっきに責められて❤︎それでせーえき飲めってゆーと君のきちく!❤︎イクッ❤︎」

 

 興奮した鼻息でその抗議に答えたユートはアスナの手を採り腕持ち後背位の形にするとそれを支点にしてハードピストンに移行する。

 全裸であれば胸を揺らして余りあるほどの抜き差しと抽送。

 

 ずにゅん! ずにゅん! ずにゅん!

    ぐっちゃ! ぐっちゃ!

 

 ギリギリまで抜いては勢いよく腰を突き出す。

 淫らなパートリズムをユートが刻み、アスナはその指揮に従うようにアクメボイスを奏でる。

 

「いっい!イクッくぅぅぅうっっイクッ !絶頂きますっっぅぅ…っ!イクッ ♡♡♡…イクッいくっう…うっ!イクッ❤︎❤︎❤︎」

 

 絶頂き散らかしのアスナにユートはその現実を直視させていく。

 

「……ほら。アスナさん。鏡を見て……制服姿のアスナさんはこんなにエッチなんだよ?」

「ぁっ❤︎ だめっ❤︎❤︎❤︎ イクッ❤︎ エッチな顔見てイッちゃう❤︎❤︎❤︎」

「アスナさんは今、制服えっちしてるんだからね! ほら! 思い出して!」

 

 その言葉で脳裏に二年前に置き去りにしてしまったデスゲームに来たばかりでこの世界には慣れたくは無いと思っていた自分 や 受験前の現実世界の制服を着ていた頃の結城明日奈を思い返していく。

 血盟騎士団副団長の装衣で後背位セックスを貪りアクメをキメる閃光のアスナ が 鏡越しの自分の姿を。

 制服を着て受験前に処女卒業セックスをしてしまおうと冒険を試みてしまった結城 明日奈 に幻視する。

 

 瞬間、法悦にアスナは至った。

 

「イクッ❤︎❤︎❤︎ ゆーと君❤︎わ、私、絶頂きます❤︎ イク イク イク イクッ❤︎❤︎❤︎ いっっっっっくぅうううううううううう❤︎❤︎❤︎!」

 

 ぶびゅる ぶびゅる!

 深イキをキメるアスナに追い打つかのようにほぼ同時絶頂の無警告の射精が襲いかかる。

 

「ああっ すっげぇ絡み付く…… アレだね! アスナさんは名器なのかも知れないね!!」

 

 押し込むようにピストン最奥の位置で精液が噴射される。

 それはアスナの子宮口の入り口にピタリと押し込まれるような位置関係で。

 精液の熱さが子宮口に伝わり その熱でアスナはイキ果てた。

 

 せーえきあっつい おなか あっつい

 

 男の齎す性の歓喜を味わい、アスナの顔は様々な液でぐちゃぐちゃになっているにも拘わらず多幸感に満ちていた。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 落ち着きを取り戻し身を離すとユートは余韻著しいアスナに 朝の伽 最後の命令を下す。

 

「……スカートをたくし上げながら 鏡の前に立って息むんだ。小股開きで」

「ぁ……はい❤︎❤︎❤︎ んっ❤︎」

 

 ぐぼっ

  べちゃっ

 その言葉に従えば、ぼたりぼたりと秘部から精液が重力に従いしたたり落ちる。

 性交の齎す羞恥 と 淫らな様を自分で見せるように振る舞わされる羞恥。

 

 ユートの下す淫らな命令に従ってしまうアスナ。

 

 奉仕的従順とも言うべきアスナの性質が定まっていた。

 

 そんな淫らな行為に幕を引いたのは

 アスナに届いた一通のメールだった。

 

 




~現在の状況~
 アスナは ユート に対するフェラチオ を取得。
 アスナは お掃除フェラ(軽度) を取得。
 以後はこれから派生していきます。
 下品なおフェラ顔はNGになる模様。
 深く咥えることやバキュームフェラなどはNGになる模様。

 アスナは ユートの精液に対する生理的忌避が消失。
 かけられても飲まされても忌避することがなくなりました。

 アスナは ユート に性的調教を受けています。
 ハードピストンに抵抗がなくなっています。
 マゾメスが開花しつつあります。

 アスナはやっぱり数え切れないほど絶頂かされたようです


■黒鎧の狂戦士
 災禍の鎧自律起動モードを他者から見た場合。
 偽星剣スターキャスターを全ての剣に属するとして自在に全て(片手剣・両手剣・細剣・短剣・曲刀・刀)のソードスキルを使用可能とした【第5世代スキル:剣神の業】を使う。ソードスキル参照元はそれまで集積された想念などの蓄積データとそこからの発展進化。

 黒の剣士キリトに対して、メッセージ越しで会話しているのは中に集積された負の想念の内、【黒の剣士キリトに味方しても良い】と判断したものたちの総和。あと、影響を残すほど強い残留思念などが関与している。クラディールなどの想念も入り交じっているため、当然のようにビーターキリトへの殺意もあるのだが、それ以上に サチ の残留思念が強い。あと、ついでにユナ の残留思念も拾われてるので、ユート案件なので事がうまくいくように祈ってる。
 が、キリトの選択次第では容赦なく排除にかかる。わりと綱渡り。

注:選択肢アンケートの細かい注釈は作者の活動報告
 拙作 SAO エロスフラグメント について 細かいあれこれ その2
  に記載してあります。参考にしてください
  


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14:先約

【CAUTION!】一旦削除し再度投稿。
【CAUTION!!】

 因果に対し過去事象変動を確認。
 
 現実世界において 
 帆坂カリーナ朋:SAOにおいてのアバター名:アルゴ
 茂村優翔:アバター名:ユート
 上記二名はカレシカノジョと言われる関係になりました。
 SAO正式サービス開始の段階でその関係は彼女からの連絡が途絶える形で自然消滅した模様。
 交際期間はおおよそ3年。
 両者の年齢から考えると濃密な関係と推測される
 変数が発生しているため、過去事象の情報収束を開始【連動選択肢が発生】
 すくなくとも その当時より 性機能、性的能力は二回り以上強くなっている。

 SAOの開始時期から優翔の生活環境も激変し、朋のことを追及、追跡できる余裕がなかったと推定。
 朋自身も完全に電脳に取り残され外部に全く連絡が取れなくなるまでは想定していなかったため この一件を心で悔いている?
 何も言わずにいたのは、優翔が関わるARデバイス関連とナーブギア関連が企業や商業的にぶつかり合うのではないかとの懸念からMMOトゥデイのリサーチャーとしてSAOとナーブギアのことについて黙していたからである。
 
 悠那に対する優翔の感情の向け方に嫉妬した部分も否定できない為、その辺りもしっかり口にしてしまえば良かったと朋自身は後悔している。
 彼女自身としてはちょっと頭を冷やしてみよう程度の距離の置き方としてSAO正式サービスに関わる取材が終わるまでは自分からは連絡しない。ぐらいのつもりだった

                     ~以上。状況概要説明を終了します


「あんっ❤︎❤︎❤︎ だ、ダメぇ!♥」

 

 アスナにしてみれば、アポイントメントのメールが来た。

 そこで、この朝の淫らな一幕は幕を閉じる。

 そのつもりだった。

 

 だが、そんなことはお構いなしと言わんばかりに。

 ユートはアスナを貪る。

 萎えるという言葉をどこかに置き忘れている彼の肉棒はいきり立ったまま。

 

 背後からまるで赤子を抱きかかえるような気軽さで。

 

 かつてはとてもできないと思っていた行為。

 装備着用状態の女性プレイヤーを丸々持ち上げてしまう行いは。

 最前線に立つアスナを持って衝撃を受ける光景となった。

 

 絶対に不可能。そう思っていた光景がそこにある。

 如何に女性プレイヤーとは言え、装備重量、所持アイテム、所持金銭等々のアイテムを含めた重量というのは【システム的に重い】。

 

 言ってしまえば、そのつもり、つまりセックスをする気でなかった以上、イベントリ格納された各種アイテム、装備、持ち物の類の総重量も適応される状態なのである。

 本来であれば、そう言う行為をする前に、持ち物の状態はきっちり整理されるモノである。

 その条件下でプレイヤーはプレイヤーを持ち上げる行為。

 

 ユートがスケベな意図を持って アスナの秘部をさらけだしにキメようとする。

 その行為がどれほどに尋常ならざる事なのか。

 

 素の身体能力とかみ合わせ システム上のSTRの補正を受けた彼の膂力はそうした状態のアスナを 持ち上げた。持ち上げてしまう。

 

 

 女性の体重云々の問題を大きく越えて【重い状態】のアスナを ショーツを片足にひっかっけたままの下半身ごと 持ち上げた彼は。

 いわゆるMの字開脚おしっこスタイルにキメる。

 

 丸見えの秘部。

 本来されるような条件すら整っていない状態で。

 あり得ざる力技の披露。

 

「ふぅ!……んー……やっぱ、現実的じゃないな……このまま、嵌めるには無理があるな……ワンピス……んー、後々、考えなければ5ピス位はイケそうだけど」

 

 ユートはアスナを 血盟騎士団副団長装衣着用恥ずかし固め にキメたまま、そんなことを気軽に言ってのける。

 ユサユサとそう言う行為をしてみたいな感を滲ませるように揺さぶり。

 

 そこまで来ればアスナの手が片手で真っ赤になった顔を押さえて隠すようにしながら、右手を滑らせてステータス表からアイテム操作を行う。

 【所有アイテム完全オブジェクト化】

 一つ一つ、正しく閨を迎える前になら丁寧にする行いを一斉省略して

 山のように【閃光のアスナ】の所有する全てのアイテムが実体化した。

 

 そして、顔を両手で隠してしまう。

 

 周囲に散らばる布製のそれは衣服と下着の山。

 装備も予備を含めて物質化。チャリンチャリンと音を立てるどころか袋入りでどさんと落ちるお金。

 

「……よくできました。えらいよ。アスナさん」

 

 耳元で囁くように。

 

「じゃあ、そのまま、装備もシステムで解除して 全裸になるんだ」

「は……はい♥」

 

 また全裸にされる。されてしまう。なってしまう。

 男の命令に従うようにアスナはやはり、恰好の齎す羞恥からか顔を隠しながら片手でウィンドウ操作をする。

 

 そして。

 

「ほら……生まれたまんまの姿でおしっこスタイルしてるよ?見て。アスナさん……見るんだ。明日奈」

 

 自らの意志で全所持品をオブジェクト化して床にぶちまけて命じられるままに装備を全解除して全裸になってアスナの全ては曝け出された。

 

 開放感。

 解放感。

 

 開け放たれて解き放たれた感覚。

 それは閃光のアスナでいなければならない、血盟騎士団副団長としてあらねばならないという彼女の有り様に打ち込まれる楔。

 しがらみだらけになっていた彼女の心が 素直にオスの前に全てを曝け出すメスに変わっていく。

  

「……あんっ❤❤❤な、なんでこんな事だけで、気持ち良くなっちゃうの♥イクッ!❤︎❤︎❤︎」

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 絶頂を迎えてやや力が抜けたアスナをそのまま運び去るようにしてユートは浴室に向かい、昨夜の焼き直しのように椅子にアスナを座らせる。

 

「じゃ、少し、汗を流したらそれでチェックアウトしようか?」

 

 そうとだけ言うと先程までの荒々しい性欲の昂ぶりなど無かったかのようにシャワーを浴びるユート。

 置いてけぼり感と疼く身体でアスナはよろりと立ち上がる。

 シャワーを浴びるユートの背後に抱きつくように凭れ掛かる。

 頭一つ分高い背丈の筋肉質な背中。

 先程の光景と合わせて圧倒的な安心感を与える雄々しさを感じた。

 

「……あそこまで盛り上げておいてそれはないと思うんだけど……?」

「だって、焦らせばこういう風に抱きついたりしてくれるかな?って思ったんだけど?」

 

 冷たいシャワーの水飛沫が火照った身体の性欲を沈めていく。

 抱きついた身体を離すとジャグジー横の身体を洗うスペースでアスナも先程までの艶事の後の汗を流す。

 もっともな話、このSAOでは汚れというモノは自動的に消えるし、布系のアイテムを使えば一発できれいにはなるのだが。

 湯殿、湯船、シャワーが充実しているというのは、汚れや汗を流すというよりはリフレッシュ効果が強いのだろう。

 

 申し合わせたように二人で同じタイミングでジャグジーに浸かる。

 円臼状のそれは二人で入っても充分広く。

 おそらくはそう言う行為をする用途も含めて設計されているのだろう。

 

 対面に座って向かい合った後、アスナが湯船の中を身を滑らせるようにして。

 ユートの隣にまで行くと一瞬だけ躊躇った後。

 こてんっ

 と言う擬音が似合いそうな仕種でユートの肩口に頭を載せる。

 

 それを見て取るとユートはお返しと言わんばかりにゆっくりと。

 彼女の肩口から回しこむように右肩から右腕を脇に通し。

 アスナの乳房を易しくホールドして抱き寄せる。

 

 アスナの上目遣いの潤んだ瞳。

 あいた左手で顎を軽く持ち上げる。

 意図をくみ取ったのか瞳を閉じ、軽く唇を突き出すように。

 

 右手でアスナの乳房と乳首を軽く弄りながらキスを堪能するユート。

 わざと啄むような軽めのキス。

 

 キスをやめると潤んだ瞳のまま、アスナが呟くように。

 

「……君にはわたしが【閃光のアスナ】だとか血盟騎士団の副団長だとかそう言うこと、本当に関係ないんだね?」

「ん? 関係ないこともないけど……それも含めてのアスナさんな訳だから、セックスするアクセントになりはしても障害にはなり得ないでしょ?」

 

 よいしょっととでも言いそうな感じでアスナの身体を完全に正面に抱きかかえるように抱え直す。

 気軽に女性との位置関係を入れ替えられる力強さ。

 挿入しないように勃起した陰茎はヒップの谷間に沿うように。

 入れ替えたアスナの身体をホールドするのはヘソの辺りに組み合わさる両の手。

 

 子宮を意識させるかのような位置。

 

 そのことに気が付いてアスナはまた顔を赤く染める。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 ジャグジーの泡の弾ける音。

 ほんの少し男が少女を貪ろうとすれば、容易く背面座位でつながれてしまうような位置関係で二人は無言で力を抜いて湯船に揺蕩う。

 

 意を決したように。

 あるいは、こうなる前に言うべきだった言葉をアスナは紡いだ。

 

「……ユート君。成り行きでここまでシちゃったけど……わたし、キリト君をこれ以上裏切りたくない」

「……良いよ。それならそれで」

「ちゃんと話しを聞いて。裏切りたくないから、ちゃんと関係を清算してくる。最初に約束を交わしていたのはキリト君だから……ここから先、貴方の傍に居るためにも」

 

 少女の脳裏に駆け巡った楽しいと呼べる日々が過ぎり。

 陥ってしまった地獄から救われるために選んだ方法が残り。

 選んだ選択肢を後悔しないために。

 選ぶことができなかった未来に悔いを残さないために。

 

 アスナは一つの決断を下した。




~現在の状況~
 アスナは 羞恥心 をかき立てられるような性行為にどハマりしています。
 アスナは ユート の力強さに参っています

 アスナは 現在の立場 を気にせずに抱かれることで心が完全に揺らいでいます
 
 アスナは キリトとの関係 を清算する方針にしました。
 【想像力発動:今ならば傷が浅く済ませられる手管を思い付いた模様】

 ユートは スキル【負荷重運搬(人体)】を取得。重量制限を無視して自分が抱えられる二名までの人間を総重量を無視して運べるようになりました。
 ユートは スキル【リフトアップ】を解放しました。装備状態やオブジェクト化の有無にかかわらずプレイヤーを持ち上げられるようになりました。
 ユートは スキル【剛性の肉体(性)】を取得。騎乗位、座位など、女性が上になる体位を選択しても、その装備重量などを一切無視できる着衣性行為特攻を獲得。


■システム総重量制限
 システムが定義したプレイヤーが持ち運べる重さの限界数値。
 これが定められているため、本来であれば プレイヤーがプレイヤー を抱きかかえると言ったことは不可能であるとされている。
 倫理コードを解除して アイテム類をオブジェクト化して取り除いて漸く人が人を持ち抱えるという状況が再現されるのである。

 自己の総重量+他者の総重量は明らかに過重判定がされるのである。
 作中、気軽にユートはやってのけたが、システム的に考えるととんでもないことをやらかしている。
 

注:現在アンケート実施中


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15:噂話

【CAUTION!!】
 過去因果結節。
 ユートとアルゴ=茂村優翔と帆坂カリーナ朋
 両者の関係は性的には既に爛れた恋人関係と言えるほど甘ったるいものでは無く肉欲染みたものとなり、朋の方が優翔のもたらす快楽に完全に堕ちている形になります。
 心身ともにそう言う状態なので 二年ぶりに再会したら『焼け木杭に火がつく』のは確実と思われます。

 SAOの中で築いてきた あざとい情報屋のオネーサン ムーブが崩落する寸前です


■情報屋 アルゴルート【情報屋(情愛に報いる女) アルゴ】が解放されました。

 これに伴い アルゴが ユートを忘れられないため その優先度が変更されます。

 本来であれば、アルゴはアスナとキリトの間が引き裂かれるような状況は友人として看過しないハズでしたが ユートという身も心も寄せきってしまった異性と再会してしまい、その彼がアスナと肉体関係にあると言う事実から
(ユウ)がア-ちゃん欲しい、ア-ちゃん抱きたいって言うなら仕方ないヨナ……悪いナ……キー坊』
 と言う方針になります。

 結果、アルゴがアスナとキリトの間を取り持つことで生じる
【キリト:アスナ完全NTRルート】が消滅します。

 完堕ちしているため アルゴがキリトに対して対ユート戦の手解き、ソードスキルを使わない戦闘方法の習熟 を行わなくなりました。
【キリトは対魔王ヒースクリフ戦において、ホロウエリア:皇輝の継承者にて取得できる秘奥義が必須になります】

 アルゴとユートの関係性が深化したことからアルゴの性能が強化されます
【SAO内でソロの女の情報屋が無事で居られる理由は 危険回避能力の高さと一対一で初見 なら大体初見殺しを成立させられる体術スキル(護身術:格闘技術)を現実世界から引き上げて使っている。】

  
 
 
  


 

 アスナに対して届いたメールはアポイントメントメール。

 その差出人は 血盟騎士団現筆頭 マックス。

 アスナの旗下でもっとも力強いまとめ役の青年だった。

 

 76層、77層短期間連続攻略成功。

 これまでにない異常な最速攻略に自らのギルドのリーダーが関わり、それも、何一つ連絡が無いままに行われたのだ。

 一言、物申さねばならない。

 そんな諫言をするつもりだったのだ。

 

 しかし、その目の前に現われた彼女の装衣をみて 見惚れてしまった。

 言うべき諫言は頭の片隅に追いやられる。

 

 そう。閃光のアスナ と呼ばれる女性は掛け値無しの美少女なのだ。

 それを際立たせるかのようなデザインですらあった血盟騎士団副団長装衣ではなく。

 

 文字通りの バトルドレス(戦闘用衣装)とでも言えば良いのか。

 

 豪奢にも華奢にもみえる布地で出来た白いワンピースとスカート。

 ポイントポイントに装着される白い金属装具。胸部、小手、腰回り。

 節々を薄い赤のラインで彩るバランスは血盟騎士団の装衣のようですらある。

 長い美しい髪を飾るように白い布状のヘッドドレス。

 

 その装衣の銘は【創世神(ステイシア)の装衣】。

 完全なるユニークレアの防具。

 身につけるだけで、格が違うと感じさせてしまうような完成された個性がそこにあった。

 

 それまでとはまるで違う装いを持って 【閃光のアスナ】はマックスの前に現われた。

 その隣に まるで銀の太陽と黄金の月を防具に誂えたような鎧を纏った鎧騎士を従えて。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 その口から伝えられたことは早やかに76層主街区 アークソフィア に流布される噂となった。

 

 黒の剣士キリトは ラストバトルに控えるラスボス撃破のために必要な【秘奥義】を解放するため、階層攻略ではなく特別なクエストとエリア攻略を担当することになったこと。

 それに伴い 階層攻略を担当する閃光のアスナとのコンビは解消されると言うこと。

 

 階層攻略の主軸に据えるとされた黒の剣士の離脱。

 攻略組にそれに代わる新戦力の参入。

 

 76層、77層の短期連続攻略はその新戦力となる人物の為した事であり、閃光のアスナがそれの証人となると言うこと。

 また、77層のボス攻略においては黒の剣士キリトがその現場に居合わせたこと。

 

 そして 重要なこととして 総務省旗下においてSAO救出作戦が遂行され 現実世界より選抜された 幾人 かのエージェントが派遣されたこと。

 銀の鎧騎士はそのひとりであり、卓越した戦闘能力をSAO内において発揮すること。

 幾人かのエージェントの詳細は伏せられているため、明らかには出来ないが彼個人に関しては攻略組として協力する立場であるという表明がされたこと。

 

 マックスはそれらを口伝の形でアスナから受け取ると馬車馬のように踵を返した。

 

 そして。その口伝のままに アークソフィアに噂話、あるいはギルド共有情報として流布された。

 

「……何か。とても良くない手を使った気はするんだけど」

 

『今更よ。ステイシア。貴女のアバターの力を使えば、そう言うちょっとした誘導くらいは行えるわ。これが強化されると扇動になるのだけど』

 

 アバタースキル【創世神のカリスマ】。

 その装衣を纏い話す言葉に無形の説得力を宿らせてしまう。

 無論、ただの妄言であっては意味はなく、一定以上の事実、真実が必要となる。

 

 街の中、一際目立つ集団が居た。

 三人組である。

 

『市井の中を歩くというのも新鮮なものね……まぁ、情報とは即ちデータであるからやはり自分の目で収めなければ意味はない。目で見て収め己が物とする。これも支配のあるべき形の一つだわ』

 

 一人は銀の髪と銀の目、怜悧な美貌と冷然とした目をした美女。

 その装いも銀糸で編み上げられた一品物のシルバークローク。

 ボディバランスも見るものを引きつける蠱惑的なもの。

 かつて公理教会最高司祭(アドミニストレーター)と呼ばれた女はその身に宿らせていた絶大な自負をそのままに新たな名を以てそこにあった。

 

 それこそは|クィネラシステム実行管理遂行態《クィネラ・アドミニストレーター・エージェント》

 

『アレね。こう、あるべきモノをあるままに。手を加えない華を愛でる余裕がなくては支配者たり得ない。有益なモノを有益なままに使いこなしてこそ。ここには人的リソースは沢山ね? ステイシア』

 

「……あの。ここではステイシアではなく、アスナ。と呼んでもらえると助かるんですけど」

 

 創世神の装衣 を纏ったアスナが連れ歩くようにその隣を歩く。

 

 白と銀。

 美少女と美女。

 

 それだけでも目を引くというのに。

 

 両者より一足分遅れて歩く白銀の鎧騎士。

 これも際立つ異彩を放っている。存在感は両者に劣らず。

 背丈にして一回り大きいこともそれに拍車をかける。

 そして身に纏う装具。

 その武具の元になった銀の飛竜と金の飛竜の夫婦飛竜は異世界に存在していた。

 両者同時に存在して、それを単独で近接武器で狩り倒すことの至難たるや。

 その二匹を狩り倒した証したる防具はSAO内において際立つ異能さえ感じさせた。

 その力を濃縮させたかのような姿は情報圧すら纏う。

 

 そんな三名が連れ歩く姿はそれだけで人々の注視を集める。

 見知った人間何名かの視線を受けるアスナはそれに軽く手を振る余裕すら見せる。

 自分の行いに臆することなどないというように。

 クィネラの目を覗き込めばその虹彩には01と二進法の数字の羅列がならぶ。

 情報として光景を捉え、正にリソースとして理解しているのだ。

 

 アークソフィアには転移門広場と呼ばれる分かり易いタウンアピールポイントがある。そこに攻略組を集めるように促せば、そこで攻略会議が始まる。

 

「ユート君。これからが正念場よ。わたしはあくまで舞台を整えるだけ。幾ら言葉で語っても、実際を見せることの方が何よりも強い。……皮肉なことだけど。聖騎士ヒースクリフはこういったわ」

 

 アスナはその目的地に集う人々を見遣ってからユートに語る。

 

「剣で語るがいい と」

 

 血盟騎士団副団長 アスナ の名義で一つのプレイヤークエストが発注されていた。

 それは。

 

【攻略組 新規参入者実力判断テストの実施】

【依頼人 血盟騎士団 副団長 アスナ】

【内容:初撃決着デュエルを持って挑戦者を募り、新規参入者ユートの実力を判断する。これは当人の申出もあり、半端なやり方では認められないというところから連続負け抜け制で行われるとする】

【報酬:参加者に対して応相談 依頼人意向としては攻略に役立つ物品の贈呈を考えている】




~現在の状況~
 アスナは 噂話 を流布しました。
 アスナは クィネラから情報を受け取り 事態を誘導しています。
 アスナは ハイエンドアカウントアバター【創世神ステイシア】を初使用しています。
 アスナは アバタースキル を習得しました。

 イベント:絶望に挑め!(攻略組視点)が開始されました。
 

■幾人かの派遣されたエージェント
 ブラフ。
 より正しくいえば クィネラや災禍の鎧自律起動モードにたいするカバー。
 意図はしていないが、この噂によって リーファの立ち位置が微妙に変化しています。
 『ひょっとして、あの金髪エルフ耳の娘はシェイプシフトトラップ喰らったと言ってるが実はそっち絡みじゃ?』みたいな感じに。

■アバタースキル
 オリジナル設定。アバターそのものが持つ強化能力。バフ、デバフを問わず。
 【創世神のカリスマ】は見た目の容姿に関わり言動や存在に力を持たせ、説得力を乗算させる。百パーセント嘘では意味がないが事実や真実が含まれた言説にたいする説得力が高まり、疑問に思うことが減少する。

創世神(ステイシア)の装衣
 創世神ステイシア のアバター装備。防御力がなさそうに見えてしまうがその優先度は恐ろしく高い。アバター使用者との相性でその性能が上下する。
 着用しているだけで目を引きつける魅力バフが発生している

■アルゴの性能強化について。
 現実世界において優翔と付き合ってる間に 彼に護身術として体捌きを仕込まれていた。MMOトゥデイの取材絡みで変な絡み方をされてもいいようにと言う配慮である。
 彼女が武器を持たず、体術を主武装にしているのは武器を持っての対人情報収集など信用されないというポリシーが選択させた。
 ソロの情報者の女性が今までやってこれたのは 外見から軽んじられることで生じる油断や慢心といった相手の隙を突くことやそもそもの危険察知と回避。
 ソードスキルに頼らない体捌きで 初見であれば大体、前者の慢心、油断に付け込んで初回は勝利を持って行ける。
 形意拳の母拳《五行拳》を瞬時即発で打ち込める。内家拳を軸にしているので 犬が関わらなければ 落ち着いた自然の呼吸のまま、次の動作に移れる。
 あざといオネーサンムーブはこの次の動作が攻撃動作だとしても自然な呼吸のままに移れるという意識の切り換えの早さが齎している。
 モンスター相手には余り有効じゃないので、モンスター相手からはさっさと逃げる。
 ちなみに 突進系単発ソードスキルで打ち込むと簡単にカウンターを持って行ける
 が 彼女自身が「武器ありと武器無しでやったら武器アリが勝つに決まってるダロ?」としてニャハハと笑ってまともに取り合わない。


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16:標榜

「みんな! 集まってくれてありがとう!」
 
 転移門前広場にアスナの声が朗々と響き渡る。

「いつもなら攻略会議を始めましょう。と繋げるところだけど、今回は重要なことを話したいと思います」

 周囲を見渡すように彼女は集まった面々を見て回す。
 黒の剣士キリトがいないことに少しばかりの落胆と安堵を覚えながらも、その周囲を固める少女達、リーファ、シノン、リズベット、シリカが普通にいること。
 少し離れた場所に アルゴ。
 それから、金髪ショートのマリア、紫色のケープのハシーシュ、ブラウンショートのココア。
 いずれもがここ一ヶ月の間、黒の剣士キリトと交友があった女性だ。
 隠れるように此方を見遣る 紫色の髪をしたグラマラスな女性もなにやらそう言う雰囲気を醸し出す。

 幸いなのは今の心境は前と違って、嫉妬心から沸き立つ衝動がないこと。
 比較的フラットな状態でここにあれる幸運をアスナは感謝した。

「正直に言えば言うべきかどうかは迷ったことなの。でも、たぶん、秘していても碌な事にはならない。……75層における血盟騎士団団長聖騎士ヒースクリフがその真意と真実を秘したまま、攻略組前線に立ち続けたように」

 人目を惹く装衣を着たハイエンドアバター【創世神ステイシア】としての権能(アバター)スキル【創世神のカリスマ】を意識して使う。
 
 想像力(イマジネーション)すら彼女は 今 駆使し始めていた。
 想起する。
 彼という異物を攻略組に正式に加えて周囲の人間との軋轢なく全てを滞りなく終わらせる未来を。

「受け入れる受け入れないは各人の判断に委ねます。その上で、先ずは静聴してもらいたいと思います。……クィネラさん。後の説明、引き継ぎお願いします」

 入れ替わるように。
 紫銀とも言うべき装いに身を包んだ怜悧さを感じさせる風貌の美女が前に進み出る。
 周囲を見回し、鷹揚に満足げに頷く。
 1拍間をおく。

『先ずは参集を言祝ぎましょう。私の名はクィネラ。現実世界より総務省旗下の救出計画の元、我が主と共に【SAO】天空城アインクラッドに来た稀人』

 転移門広場を包むように 声が徹る。
 不可思議なことに誰もがその文言に口を挟めなくなる。
 
『聞くが良い。人間達よ。おまえ達はけして現実世界で見捨てられたわけではない。今も尚、この世界より救いださんとする者達は確かに居る。我が主はそうした者達より見出され、この地にやってきた救いの手』

 まるで神話を紡ぐように言葉を紡ぐ。
 まるでこれが大型キャンペーンクエストの始まりであるかのように言葉で人を引き込む。
 大仰な手振りで印象づけていくその有様はまるで 神を奉ろう司祭の如く。

『公的機関より、死の世界に堕ちたこの世界を終わらせるために、あらゆる手段を執行することを許諾された者。生存者達の家族の終わらぬ苦悶を終わらせるため。この世界で死に果ててしまった者達の遺族の嘆きと怒り』

 時折、その目に涙すら浮かべ。嘆きと怒りを代弁するかのように振る舞う。
 戯曲を諳んじるが如く 一人劇の舞台を作り上げ、観衆を惹き付ける。

『……それらの想いを託され、我が主はここに在る。当世において 余りに隔絶し周囲と異なるほどに強い事を チート(ずる) と呼びあらわす風潮が在る。デスゲームにおいて不正を行うことを責めるお行儀の良さを求めて何とするか!』

 転調し感情を激しく顕す。
 不正手段を咎めること、知識があることを責めること。

『何はおいても生き延びることを是とするならば、それらは 利用する 手段。否定して何としよう。おまえ達の討ち果たさねばならぬ者は この世界を死の世界に変えた者。 茅場 晶彦。 システムの側に立つあの者に真っ当な道理が通じぬは相まみえ、システムによる呪縛を受けた者ならば解ろう』

 攻略組と呼ばれたその中において最前線を行く者達を見遣り。
 その理不尽さを思い出させる。

『彼方が使ったのであれば此方も許されるというのではない。事は。ヤツは己が目的のためならば何でも出来ると言うことに尽きる。この世界を愉しむ為にならば如何なる尊厳も地に落とせる者なのだと理解しなければならない』

 敵対する者への敵意を収束させていく。
 そう、己達の苦境も苦悶も元を正せば、ひとりの男が元凶なのだという事実を思い返させていく。

『友誼としてこの世界を愉しむのならば、その集団の中にいなければならないという理屈は。……その中に置いて死に行く者達を眺めて、殺されていくこと、死に行くことを眺めて愉しんだ と同意なのだと』

 目頭を押さえ涙を堪える者達も現われる。
 そう、彼等とてここに来るまで大なり小なりの犠牲を踏み越えた者、踏み越えてきてしまった者。
 目の前で死なれたことだとてあろう。 自己防衛のため、誰かをその手に掛けてしまった者さえあろう。
 それを知って見て 愉しんだ者が 茅場晶彦 なのだと。

『ヤツはこの物語の果てにこう締め括るだろう。私の作ったこの世界に懸命に生きてくれてありがとう。と』

 そこで言葉を句切り 啜り泣きすら聞こえ始めた異様な雰囲気の転移門前広場に。

『人間達よ。それが許せるのか? 確かに懸命に生きただろう。生き抜くのだろう。だが、しかし。デスゲームを強要したのはあちらの理屈。その命の価値は断じて、ひとりの男が定めていいものでは無い』

 ぼそりと 許せるわけがない。と呟く声が。
 それを聞き、凜然とした美貌に笑みを浮かべ。

『故に問いましょう。命の価値を自らの手に取りもどさんと欲するのならば。茅場晶彦の思惑と楽しみを踏みにじって捨てるのだと決めたのならば。その為にならば、システムの定義する正しさにすら立ち向かうのだと決めたのならば』

 紫銀の細剣をその手に生じさせ高らかに突き上げる。

『武器を掲げあげなさい。許容できぬと。不正手段、チートまで用いては進めぬと言うのならば、ここより立ち去りなさい。それを責めることは誰もしない。我が主は、それらの思いある者すらも背負ってこの世界を終わらせるのだから』

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 シャ! 鞘鳴り。
 最初に剣をあげたのは 誰でもない【閃光のアスナ】だった。
 終わらせるのだという意志、この世界には負けたくないのだという原典の思いの結実は 茅場晶彦より、己の命の価値を取り戻すのだという決意に代わる。

 水を差すように。

「なぁ……ちょっと良いカ?」

 離れた位置からそれを見詰めるように見定めていたアルゴが。
 情報屋のアルゴ、ネズミのアルゴと呼ばれ、人前で目立つように振る舞わなかったケープを被った少女が。
 音も立てずに 人混みの集団を一切惑わすことなくすり抜け、その前に立つ。
 それがどれだけの異常かこの段階で気がつける者は少なかった。

 ケープを取り払うとそこにはクセのある金髪をショートに切りそろえたやや悪戯気味の猫を連奏させるような愛嬌のある面持ちの美少女が。

 瞬間、アスナとクィネラの後ろに立っていた白銀の鎧騎士が揺らいだ。
 兜の面に片手を当て、ゆらりとふらりと。

 その口に人指し指を当て、その次の言葉を発しないようにと言うジェスチャーをしてからアルゴは言葉を放つ。

「そっちの人とア-ちゃんの意向は解った。でも、その肝心要ッぽそうな後ろの騎士さんのことを訊かせてもらいたいって感じだナ」

 焦点がその鎧の騎士に集まる。
 分かり易く三人前に出て注視を集める形でありながら、しゃべりもしなかった白銀の鎧騎士に。

『出来れば、統一の見解を得てからにしようと思っていたのだけど。 よろしい?我が主?』

 促されるようにして前に出る。向かい合うようにアルゴの前に。

「……僕の名は 【ユート】。総務省直轄SAO事件対策本部帰属 SAO接続者救出計画:【exception handling(例外処理)】所属」

 指を払うように装備を切り替えるステータス表示。
 それは指による九字切りか。 あるいは聖印刻みか。

 装備が切り替わっていく。
 レギオンストームジャケット レギオンストームブーツ。
 白き血盟騎士団の装衣の如くの防具。
 しかしながらその内包する力はその比ではなく。
 腰に鞘付きの刀を履く。
 

 アルゴがその顔を見て口を覆う。

「……な ん で……?」

 言われんとしたことに被せるように。
 ユートは告げる。

「本名【茂村 優翔】。救出計画直属専任接続者(プロジェクト ランナー)としてここに派遣された人間だ。この名を告げることでこの身が総務省の認可の元にSAOサーバー 基幹プログラム カーディナルシステムに対して、電脳側からのハッキング、クラッキングを行うことの許諾を得ている証左としてもらいたい」

 あえて、アルゴを無視するようにその横に出る。
 そして、周囲を見渡し。
 ざわめきだした攻略組を見遣り。重く徹る声で。

「此方の世界で本名を名乗るのはマナー違反なことは承知の上。その上でこの名を名乗ると言うことは、リアルに帰ったとき、この名で照会してもらえれば 僕の言ったことが事実だと証明される。これが僕に切れる一番の札だ」

 ぼそりと アルゴが呟く。それを端にして。
 呟こうとして抑え切れなかったのか。
 せきを切ったような声が広場に響いた。

「…どうして… なんで、ユウ がこっちにきちゃうんダヨ!? SAOがデスゲームになったのは現実世界から来たのなら百も承知ダロ!?」

 ばっと振り向き胸倉を掴みあげるように。
 頭一つ分高いユートの顔を 涙目になった顔で睨みあげ。

「……茅場晶彦を殺すため。あの男は、自分の命に何重もの保険をかけた。現実世界に置いて逮捕拘禁された場合、ログイン不可能状態が継続された場合、ラスボスが不在になったとしてゲームクリア不可能として接続者全員を道連れにする」

 それに対して、どうしようもなくなったような諦めの顔で事実を告げる。

「現実世界で殺された場合も同意。その場合は、あの男の身の回りの世話をしているひとりの女性の命も同時に奪われ、やはり、SAOはクリア不可能になり接続者全員が時間切れで終わる」

 それは変わってしまった自分という人間の立ち位置を二年前に連絡が取れなくなってしまった少女に語り訊かせるように。

「……法務省は現行法制下に置いて審判不可能犯罪者となった 電脳犯罪者 茅場晶彦に対する特例による人権停止を宣言し、電脳世界SAO内に置ける特別処分の執行を決定した。……育成されたエージェントによる抹殺。そのエージェントが僕だ」

 アインクラッド内の天候はその時折りで変化する。
 雨がポツリポツリと降り始めていた。
 


 

『そこまでになさい。言わなくても良いことまで口にしてどうしますか。我が主』

 

 空気を読んだ上であえて二人を引き離すように。

 クィネラが手を触れないままに、指先だけで二人の間に距離を取らせる。

 

『記者の娘も問い質したき議が有るのなら、後で二人きりの時になさい。今は衆目もある上に本題が横に行ってしまうでしょう?』

 

 フワフワと浮かび上がらせられ、アスナの隣にぺいっと落されるアルゴ。

 それだけの現象がこのSAOの中に置いてはあり得てはならぬ異常であった。

 指先一つの動作で動的オブジェクトを自在に運ぶ。

 その異常性が解ればこそ、周囲もまた静まり返る。

 

『……これ。この通り。我が主【ユート】が述べたように、SAOに対してそのルールに則らず、一種のチート行為を行え、それを不正行為としてシステムに裁かれぬハッキング行為。あるいは異常修正プログラムの無効化か。それらを行いSAOを終焉に導き、茅場晶彦を討つ。それが為にここに在る』

 

 それを引き継ぐようにアスナが。

 接続者代表、生存者代表、攻略組代表として問い掛けるように。

 

「……みんな。わたしは この現実世界からの救出作戦に乗ろうと思う。命の価値を自らの手に取り戻すため。……この世界は辛かったし、苦しかったけど、同じくらい楽しいこと、人との出会いがあったり、喜びも在った。そういった過ごしてきた時間の意味と価値を。これからも進んでいくために取り戻したい」

 

 再度、アスナは剣を掲げる。

 天を指す剣がその先に雨降りになりかけた空に晴間を差し穿つ。

 

「生存者の意地を。あの人に見せてやりましょう!『あなたのために懸命に生きてるわけじゃない!自分のためだ!』って横っ面を張り倒してやるために!」

 

 鬨の声があがった。

 剣を掲げ、武器を天に示す者達。

 ここに彼等の意思はまとめ上げられた。

 

 幾人かを戸惑いの中に取り残しながらも。

 

■無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)

 

 空間が揺れ 転移の兆候。

 

 二刀を背中に携えた黒の剣士のホロウエリアよりの帰還。

 

 周囲の異様な熱気と状況に戸惑いを見せ、そこに見たことのない装いのアスナの姿を認め。

 

「えっと……アスナ? この状況は……一体?」

 

 語るべき、次の言葉を切り替えるように即興劇で修正を加えていくアスナ。

 

「黒の剣士キリトは その為に。最後の敵を討つために必要な【秘奥義】と称されたソードスキルを手に入れるため、今もこうして、単独で危険なエリアの攻略を担当してくれています。そうよね? キリト君」

 

 有無を言わせぬ強引さを持って、事実に押し込めていく。

 例え、彼に階層攻略の意思があろうとも、もはや、ここまでお膳立てされては翻すことも出来ない。

 

「……ヘ? あ、ああ……一応、そのつもりだけど……」

 

 そう。こう返事を返してしまった以上、次に告げるアスナの言葉を止める術はキリトにはなかった。なくなってしまったのである。

 

「では、攻略組の再編として 先ずは、階層攻略担当の中心として血盟騎士団副団長のわたし、アスナが引き続きまとめ役を務めます。 黒の剣士キリトは【秘奥義】ソードスキル解放のためにホロウエリア攻略を中心に担当してもらいます。これに伴い、彼我のコンビは解消し、そのパートナーは攻略に適した人材に流動することになります」

 

 公衆の面前で堂々と 噂話程度だったはずの 黒の剣士キリトと閃光のアスナのコンビ解消の明言。

 それにどよめくような面子を抑え込むようにアスナが声を放つ。

 誰かに何かを言わせる間がないように。

 

「……言葉では色々聞かされたし、私達の意思は改めて統一された。それでも尚。と思う人たちもいるでしょう。……そこで今回のわたしの出したプレイヤークエストになります。……剣で語れと聖騎士ヒースクリフはかつて言いました」

 

 アスナという少女の培われた好戦的な気質を持って、証明をするのだと言わんばかりに。

 ユートに向けて宣言するかのように。

 

「わたしたちとて無為、無作為の二年を過ごしたわけではないってことを。彼に証明し、叩き付けてやりましょう! SAO生存者、その攻略組としての力を!」

 

 クィネラが面白いモノを見たとばかりに顔に笑みを浮かべる。

 

 広げられるはシステムコマンドを持って開くコンソール。

 人の集まったこの場であれば、それぞれのビッグデータを集めてそれぞれが関わってきた各種クエスト、各種イベントから演算しシナリオ作成、クエスト作成にかかわるカーディナルシステムのクエスト自動生成機能 に手が届く。

 

 そして、クィネラの手腕を持って、アスナの発注したプレイヤークエストが特殊なイベントクエストに整え直される。

 

【汝ら 剣を持って天に志を示せ。生者の勲を剣にて語れ】

 

【特殊な戦闘が発生します。挑戦者はレイドパーティーを組み、指定する対象との戦闘を行います。HPに対する補正は99%遮断。全損前にシステムロックが発生します】

【強力な相手との戦闘になります。準備と編成を整えてください】

【ターゲット:災禍の鎧(一体) ユート(一人)】

【エリア指定:76層 ボスエリア】

 

 目まぐるしく動いた事態の進展。

 黒の剣士キリトは何が起きたのかを整理するより先に AR・VR適性共に高水準を保ち、自らと閃光のアスナの間に突き立ち抜けない楔のような存在になってしまった男と戦うことになった。

 

 アルゴは出逢ってしまった。

 二年前SAOからログアウトできなくなってから連絡が取れなくなってしまった人と。此方に来るハズなんてないと思っていた思い人と。彼が何を失ったが故に此方に来たのか思い当たりもせず。

 

■無限の瞬間 空洞の断章《インフィニティモーメント:ホロウフラグメント》

 

 イベントの形で整え直された結果、それは一つのお祭り騒ぎのようになった。

 こうまですると言うことはそこまでに強いのかと強さを予測し思案する者達。

 レイドを組み挑むという事からボス戦相当で在るとして、きっちりとしたギルド内連携を確かめる者。

 

 キリトはそのいずれでもなく一人で在った。

 その隣に情報屋のアルゴがならぶ。

 

 アークソフィアの中央広場噴水。

 

 艶っぽい雰囲気などなく、あの時起きたことを情報として買い上げて頭から語り訊き、キリトは天を仰いだ。

 これまであり得なかった外からの救出計画。

 それに伴う強力な支援体制の元の公的保証の元に行われるハッキングとクラッキングの表明。

 

 ゲーマーとしての意地がそれを認めたがらない。

 だが。

 

「アルゴはそれをよしとしたのか?」

 

 情報屋としての線区切りと言いたいように。

 隣り合う位置から 二 三歩 離れるように。

 

「ンー? オレッちはそれ以前の問題になったからナ」

 

 唐突にアルゴからキリトに向けて。

 

「まぁ、こう言う形になった以上は仕方ないと言えば仕方ない」

 

 それまでの飄々として年下の少年をからかうように接していたアルゴから。

 

「キー坊。オネーサンがちょいと本気で今のキー坊が ユウ と戦えるのかテストしてやる」

 

 まるで路傍の獲物を転がすネコ科の生物の獰猛さを感じるような目つきで。

 

「……アルゴ?」

 

【アルゴ から 1VS1デュエルが申し込まれました。受諾しますか?】

【Yes/NO】

 

 それはアルゴという少女がキリトという少年に友人としてやれる最大の気遣いで在った。

 

 

 

 




~現在の状況~
 特殊イベント進行中。
 アルゴ(帆坂 朋)が ユート(茂村 優翔) と再会しました。

 重要選択肢発生。
 キリトはアルゴからデュエルの挑戦をされています。
 尚、ルート補正、キャラ補正が加算されます。
 現在 1に対して アルゴ補正が発生
 3に対して アルゴ補正 アスナルート補正が発生しています。

1:Yesの場合 
 vsアルゴ戦が発生し、ソードスキルを使わない闘い+彼女が持ち込んできた現実世界での技術+秘匿されている情報屋アルゴの体術スキル+投剣スキル+軽業スキル+隠密スキルを組み合わせた戦闘スタイルの前にキリトは……

2:Noの場合
 戦う意味がないと拒否した場合、彼女はそっかと軽く身を翻す。以後キリトの目の前に情報屋アルゴは姿を見せなくなる。街にいるのは確かだが徹底してキリトを避ける。曰く オンナの誘いを断る男はサイテーだからナ と嘯くのみだと言う。

3:逢い引き現場にアスナが現われる。
 戦う理由がないと拒否しようとするとそこにアスナが現われる。
 アスナとアルゴの間の空気も微妙な空気ではあるが、キリトとアスナの間の空気も微妙なモノになってしまっている。三竦みになりかけたその時、アスナの口からキリトに向けて……


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17:隠れ家

【CAUTION!】
 重要選択肢 3:受諾回答前にアスナがそこに来る に確定。
 キリトがユートと再度対峙する前に アスナとの対話が行われる事で
 致命的破局ルートが回避されます

 


~アークソフィア 中央広場噴水前~

 

 キリトとアルゴが向かい合う。

 

「……テストしてやるって……アルゴ? アンタ、あの銀の鎧着てたり、白コートだったりするあの男と知り合いなのか……?」

 

 噛み合わない事が多い。

 その中でもこれは特級だ。とキリトは感じた。

 獲物を見定めるようなネコ科の動物の瞳。

 そんな目で彼女から見られた事はなかった。

 

「合ってるヨ。その通りサ。……まぁ、関係性は……ナイショだな。キー坊には教えてやれないナ」

 

 受諾するか否か。

 拒否するべきだと良識は言う。

 そもそも闘いになるのかというこれまでの彼女の立ち振る舞いからの判断だ。

 

 だが、本気でと言うそこに興味があるかないかと言われたら。

 

「……【二刀流】はもう伏せる札じゃなくなったんだ。デュエルなら圧倒的にこっちが有利だと思うが?」

 

 そう。あのアルゴが勝算もない勝負に出るはずがないという信頼すらある。

 事実。彼女には二刀流は知られている。ソードスキルが使用できる二刀流使いはおそらくは自分のみ。

 イレギュラー装備状態として二刀使いは少なからずいる。ソードスキルを使う事のない浪漫装備として。

 パリングダガーとショート・ソードのように片手で受けて片手で斬ると言った正統派の使い方をする者すら居る。

 超攻撃特化スキル【二刀流】。

 その真価は圧倒的な手数による超高速連続攻撃にある。

 

「おいおい。キー坊。オネーサンが遊びで黒の剣士キリトに喧嘩売ると思うのカ?」

 

 瞬間、アルゴの姿が見ていたはずなのに消えた。

 そして、意識の外から声がしたと思えば、その姿は目前にあった。

 その拳を突き出すように顔面擦れ擦れにおくように。

 

「ニヒヒヒ。これ、見えたカ? つまりはこの速度に対応できなければ、一撃決着ならオレッちが勝つよ?」

 

 隠蔽からの軽業か。あるいは他の何かなのか。

 キリトはあからさまな挑発の中に含まれた自分の未知がある事に揺れ動く。

 

 その興味が【YES】を選択させようとしたその時。

 

「ねぇ……注目の的だけど、二人とも何してるの……?」

 

■ 無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)

 

 咄嗟に二人して身を離す。

 ついでに申請中だったデュエル申し込みも消える。

 

 何もわるい事していないのにわるい事した気分にさせられるのは声をかけてきた相手が相手だからだろう。

 

「ア-ちゃん……」

「アスナ……?」

 

 見慣れない服装。血盟騎士団副団長としての装いではないそれは。

 彼女が装うにはしっくり行き過ぎるほどに似合っていた。

 

 キリトのやらかしに はぁ。と溜息を吐く。

 なにも変わっていないいつもの彼女の振るまい方。

 だが、そんな振る舞い方こそがおかしいと。アルゴは敏感に察する事が出来る。

 言ってしまえば、態とらしい。

 

「……ねぇ。二人とも。少し、話さない?」

 

 まるで、少し話があるからツラかせや。と言わんばかりの有無の言わせなさがある。

 事実、聞かねばならない事、話したい事、問い質したい事、そんな事はこの数日で山積してしまった。

 そう。見るからにウルトラレアな雰囲気すら醸し出す着用中の装備とか。

 

「……うん。これはアレだな。キー坊。いわゆる『闘争の空気ではなくなった』ってヤツだな!」

 

 くるりと身を翻すと。くいくいと手の平でついてこいとジェスチャーをしながら。

 

「きなよ。二人とも。オネーサンがこう言うときに内緒話出来るところに連れて行ってやるからサ」

 

 顔を見合わせ、その後についていく。

 ぎこちなさ と 互いの間に生じている距離感が掴みにくい。

 前ならば、気軽に何かを言い合えたのに。

 

 声をかけたのはアスナの方が先になった。

 

「……キリト君。ホロウエリアの攻略は順調?」

 

 差し障りがない現況確認。それも、攻略に直結する類の。

 一瞬、どう答えて良いか迷ってキリトは正直に答えた。

 

 そう。そう言う間合いの会話しか、今は出来ないのだと頭のどこかが理解していた。

 

「最初のエリアはさっき突破してきたばかりだよ。……キズメルみたいなモンスター扱いだけど交流が持てるって言うタイプのHNMが力を貸してくれて、想定よりかなり早く突破できた」

 

 そう。よかった。と本当に嬉しそうに我が事のように微笑んでくれる。

 

「それで……アスナの方はどうなんだ?」

 

 だから、聞かなくても良い事を訊いてしまった。

 

「……わたしの事、アルゴさんから聞いた?」

 

 歩を進めながら、なんでもない事のように。

 

「…………ああ」

 

「そっか……じゃあ、そういうことなんだよ? こっから先のお話は外じゃちょっとね?」

 

 それで会話が止まってしまった。

 会話は言葉のキャッチボールでもある。ならば返球と選球を間違えてしまえば。

 

 一歩先を歩くアルゴから分かり易すぎる嘆息。

 フードケープの下から出来のわるい弟を見るような目で振り返って。

 

「キー坊。オネーサンから、何度目になるか解らない忠告ナ? 自分で答えが返ってきたときに困るような類の質問は よく考えてした方がいいんダゼ?」

 

 歩いて行く先、自分が踏み入らない類の路地。

 キリトが一人ならば踏み入らないような道。

 アークソフィアはクォーターポイントを超えた先の街であるため広域だ。

 ここを足がかりにしてこれからの攻略が進む。

 それだけに普段、自分が寄りつかないだけで様々な店がある事をキリトは実感した。

 

「……アルゴさんはこの辺りのお店も利用してるの?」

 

 それはアスナも同じようで。

 

 看板はワイングラスを描く飲食店の内、いわゆる「酒」の提供を示すもの。

 味覚を再現する中で、更に特別な酩酊感を与える特殊なもの。実際にアルコールを摂取するわけではないが、いわゆる成人をしていないプレイヤーが摂取する事は想定されていない。

 これもまた倫理コードによって閉ざされているものだった。

 

「酒を飲むわけじゃないけどナ。情報屋って仕事をやる以上、どうしたって情報提供者との接触はある。表だっては難しい。それでいながら一定の安全は確保したい……そういうときにこう言う店が役立つのサ」

 

 和風BAR【陰山雷】

 

 くいっと指さすそれは一風変わった門構えをしていた。

 

■ 無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)

 

「わるいな。まだ店の方は……って。アルゴじゃねーか……っと、おいおい、キリトとアスナまでこう言う店に連れてくんなよ。お前……」

 

「「クライン?」さん?」

 

 一風変わった門構えの中はこれまたアークソフィアからは似つかない内装の正しく和風居酒屋と言うべき造りの店だった。

 それでいながら、要所要所は洋風のBAR。カウンター奥の戸棚は正にそれだ。

 並べて利用できる飲料に和酒に該当するものがないからだろう。

 洋風のボトルがならぶアンマッチ。

 

「ここが悪名高いギルド【風林火山】の隠れギルドハウス。その名も【陰山雷】。宿屋兼居酒屋でこういう造りの所じゃないと寝られないとかベッドじゃ無理だとかそう言う隙間需要を狙ったら大受けしてる。エギルの旦那の店とは違う大衆むけじゃない知る人ぞ知る隠れた名店サ」

 

 バツのわるそうな顔でクラインがカウンターの奥から姿を見せる。

 

「はぁ……アルゴ。こいつら連れてくるならメールの一つくらい寄越せよ。バレちまったじゃないか」

 

「ニャハハハハ……まぁ、ここなら内緒話するのも、されるのもシークレットで納まるだろ?オレッち、そういう所は信用してるんだぜ?」

 

 しょうがねぇ。と言わんばかりにウィンドウ操作から店の状態を貸切に設定していくクライン。

 ギルドマスター権限でギルドハウス機能を切り替えたのだろう。

 

「二時間までの貸切にしといてやる。エギルのところでやりゃいいじゃないか。全く」

 

 呆れたように溜息を吐くと店の準備を続けていく。

 ぽんぽんと指で操作していくだけなのだが、その指が動く都度内容に灯りが灯っていく。

 いつも着用している和装の戦支度ではない給仕を行う目的の服装に切り替えて。

 

「あっちだとギャラリーが多いしナ。エギルの旦那はそれを断らないし、追い出さないダロ? だったら、最初っから知ってるヤツが少ないこっちかなって」

 

 指でぺいっとクラインが何かを操作する。

 キリトとアスナの前にウィンドウが開く。

 

【この店では成人しているプレイヤーと未成年のプレイヤーでオーダーメニューが異なります。承諾しますか?】

 

 

■ 無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)

 

 承諾した後、成人確認を為されてファストオーダーまで確認されると漸く座席に着けるようになる。

 

「わりいな。こう言うタイプの店ははじめてだろ?二人とも。初回はどうしても席料が発生しちまうんだ。紹介客ってことにすればその辺もどうにかしてやれたんだがな」

 

 そう言うとクラインは慣れた手つきでシェイカーをとりだし、オーダードリンクを作り出す。

 その動きは一切の無駄がない洗練されたもの。

 コマンド操作ではないマニュアル操作で執り行うマニアックさ。

 目を剥くキリト。アスナは感嘆の声をあげる。

 

「意外ダロ? こう言う小芸が出来るって事、コイツ、一切表に出してないんだぜ?飲料調合スキル カンストした上でリアルでもたぶん経験あったってとこカナ? これが出来るって表に出せば、女の一人くらいはひっかけられそうなのニナー」

 

 にやにや笑いながらからかうようにアルゴは言う。

 

「うっせぇぞ。そこ……そりゃ、俺も就職する前は色々なバイトしてたからな。こう言う世界に憧れた事もあったってだけさ。ま、後は酒関係をVRの中で愉しむ方法はないかって探した結果だな。酒に逃げたいってヤツは少なからずいるってやつだな」

 

 仕上がった三種のドリンクを三人の前に並べると。

 ルールを説明するかのように。

 

「……こう言う場所で話す事は、店の外には持ち出さねぇ。これが不文律だ。で、俺は何も聞かないし、知らないって事で通すから後はおまえ達で好きに話し合え。奥にすっこんでるから、他の飲物とか食い物が欲しいときはその都度オーダーを通してくれ」

 




~現在の状況~

 クラインは ギルドハウスで宿屋兼居酒屋【陰山雷】を経営。
 布団じゃないと寝れない人とか和風の雰囲気が欲しい人とかニッチな層を狙って大受けしたそうです。

 店舗経営系はそれを行う事で経験点がはいるっぽいのでギルドでやればまんべんなくすこしずつメンバーに入るんじゃないかな……
 あと、和風じゃないと寝れないヤツは絶対にいる。

 キリト アスナ アルゴ の三名は色々話し合う模様。
 
【場面選択】発生中

 視点者、あるいは状況進行を選択します。
 選ばれなかった選択場面は『一方、その頃○○があった』程度の事象認識で場面が進行します。
 ヒロインのエッチパートの配分に変更が起きたりします。

 今回の場合
 1を選択した場合、キリトとアスナのこれからについてとアルゴとユートの関係についてがオープンになって、その影で2のイベントが起きていて、リーファの様子がなんか変。と言うのをキリトが後々知る事になります。このルートでは、その日の夜にアスナに伴われてアルゴがやってきます。

 2を選択した場合、ユート視点でリーファを落していくイベントが始まり、図らずもアスナがキリトを引きつける離間策が成立した状態になります。このルートではユートにお手出しされたリーファとアスナの二人を相手にした3Pが発生します。
 


 


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18:少女達の見解

~76層 旧ボスエリア 『試練の間』~

 赤い凶眼の黒鋼の狂戦士。
 【Chrome Disaster】。
 最前線を走ってきた攻略組をしてなおも赤黒く表示されるその名前。
 可視出来る破格の強者の黒いオーラを鎧騎士は纏う。

 偵察チームは、顔をだして姿を確認して、逃げ帰ってきた。

 フルレイドを仮組みして挑んだ一団がいて
 HPバーを五段ある内、一段を消し飛ばして、パターン変化がある事を確定させた。
 全員まとめて全周囲衝撃波で吹き飛ばされて帰宅してきた。

 特殊な条件の戦闘。
 限定条件で許された死に戻りに近いこの戦闘は 自分たちが愉しみたかった、SAOに期待していた リアルな仮想現実空間の戦闘を体感させているのだと。

 憎しみばかりではなく、この世界をみんなで一丸となって攻略していく。
 デスゲームと成り下がった世界。
 開発者自身が ゲームではあるが遊びではないと言い放った世界を。

 挑戦する事の喜び、トライアンドエラーによって確定していく敵パターン。
 本来『死に覚え』ゲーとなるはずだったゲームバランス上のエネミーを実に的確に代役として再現しているのだ。

 皮肉な話しである。
 擬似的な死に戻りが再現された結果、必死さが失われた分、余裕が生じ、その余裕が彼等攻略組に本来持ちうる、素養、才能を引き出していく。

 『黒の剣士キリトや閃光のアスナが居なくても戦えるのだ』という当たり前の理屈。
 クォーターエリアが過ぎた後、未だ、理不尽な強さの敵に忌避感と警戒感すらある攻略組の意識改革が起きつつあった。
 経験は人を強くする。圧倒的な強者とのまるで実戦形式の叩き台。

 万変自在な攻撃に対処出来うるだけの対応力と危機的な攻撃を見定める危機察知能力は磨かれていく。
 されど、純粋火力が足りない。
 
 転移門広場前で様々な情報が交換されていく。

 その中に 黒の剣士と閃光のアスナの姿はなかった。


 


~76層 アークソフィア主街区 エギルの店~

 

 いつもの面子には足りない。

 それでもここは彼女たちの憩いの場ではあった。

 

「……アスナさん。衣装変えてましたけど、すごい似合ってましたね……」

 

 ちょこんといった感じで座ったシリカが先程見たアスナの姿を思い返して呟く。

 

「あれ、見た目だけじゃなくて性能も相当エグいわよ。どこであんなレアもの仕入れたのやらって感じ」

 

 リズベットは思い起こして鍛冶屋として当然必要な目利きがアスナの装衣が装備として、武装として優れた事を見抜く。ソレを言うのならば、あの時、前にいた三人全てがそうだったのだが。

 

「……キリト君とアスナさん、コンビ解消するって言ってたけど……」

 

「アスナが一方的に決めた感あるわ。 あのタイミングで公表されたら、キリトがどう思おうと周囲はそう決め付けるわね……ああいう事出来るタイプだとは思わなかったけど」

 

「アスナ、女子校育ちらしいからね。封殺するような情報の出し方とか政治力や状況を活かした事の運び方は得意だと想うわ」

 

「……うん。それをお兄ちゃんに対処してうまく立ち回れって言うのは……無理かな」

 

 円卓を囲む四人は一人を除いて暗い。

 シノンはさほど、現状ではまだキリトに対する思い入れはなく、そう言うものかという受け入れも出来る。

 リーファは 血の繋がらない兄 が恋人とうまくいかなくなるのを目撃して複雑な心境。

 シリカは アスナさんとキリトさんの間がうまくいかなくなるのはちょっと複雑だが、そこに付け込む隙はあるのではと。

 

 一番複雑なのはリズベットではあろう。

 親友の彼氏、ゲーム的には結婚までしていた二人の関係がここに来ていっきに微妙なモノになり、アスナの傍にはよくわからない新顔二人。

 問い質したくもあり、問い質せばどうしようもないところまで事態が進行するという言いようのない確信もあり。

 

「……ねぇ。話は変わるんだけど。あんた達はさ。【チート】ってどう思う?」

 

「「「ちーと?」」」

 

「そう。チート。いわゆる ずる だとか。不正手段して攻略しようとかそう言うの」

 

 カランカランと甘めなドリンクの中に転がる氷を揺らしてその動きを見る。

 

「このSAOに限っての事と自分の状況を踏まえて言うのなら、私はアリ。だとは思うわ。結局の所、デスゲームって事になると生き死に掛かるし、そこに選択の余地はないもの」

 

 シノンはそう言うと自らがメディキュボイドと言われる医療用ダイブマシンを使っている最中に巻き込まれた事を告げる。

 

「そういうわけで。私はこう、他の人と違って、HP0による影響が果たして、脳を電磁波で焼かれるのかどうかすらも解らないのよね。だから、迂闊な事は出来ないから万難を排したい。その為の手段に選択肢は多く持っておきたい」

 

 だから、自分はチート行為すらも容認する。

 そう言外に告げてシノンは視線をリーファに投げる。

 

「……私は……難しいけど、デスゲームなら使っても文句は言われないんじゃないかなーとは思います。言われないというか、言うべきじゃないというか……私、お兄ちゃんには死んで欲しくないし、生きて帰るためにはそう言う手段が必要になったときには使っちゃうと思います」

 

 リーファは自分がデスゲームと知りながら、この世界にきたのはキリト、兄と慕う彼に死んでもらいたくなかったからと言う立脚点を思い起こす。

 

「だから、ありかなしかで言えばアリ。デスゲームじゃないのなら圧倒的にナシですけど。うん、ALOでそう言うことはされたくないかな」

 

 シリカとリズベットは顔を見合わせる。

 自分たちとはそもそもの立ち位置が違う。だから「アリ」になるのかと。

 

「お二人はそう思うんですね……」

「うーん。やっぱ、そこら辺、思い入れの差とかこの中で過ごした時間の長さとか関係あるのかしらね」

 

 シノンはその言いように二人が『ナシ』である事を察する。

 察するが故に、自分が口に出したのだから、そちらも言うべきだと話しを広げる。

 

「あら、そう言う物言いって事は、リズベットとシリカは違うの?」

 

「ん? そうね。キッパリと言えば、ノー ね。なんて言うか、過ぎた時間やそういったものまで上塗りされて潰されそうで。鍛冶屋としてマスタメイサーとして鍛えた時間が一瞬で抜き去られるみたいなのは違うんじゃないかって思うわけよ」

 

「死なないためにとかそう言う理屈も解るんですけど……やっぱり、中で過ごした時間や死にかけて越えたものを不正手段で越えられちゃうと……」

 

 経過時間の長さ や シリカ、リズベット共にエネミーの関わるイベントを勝ち抜いてここに居る事から、そういったものを無かった事にされるようでキツいという当たり前の感覚が 持ち込まれるチートへの忌避を示す。

 

「ねぇ。最前線にも立つ事があるエギルはどう思う?」

 

「ここで俺に飛び火かよ……俺は……アリだな。やっぱ死にたくはないから、それが生存にダイレクトに繋がるなら利用すべきだと思うがね。この手のmodってヤツはどう扱うかが評価の規準さ」

 

 広間で宣言してた事を踏まえるなら、アスナも肯定派だろうがな。

 とエギルは最後に付け加えるとカウンター業務に戻る。

 

 キリトもアスナもおらず所在なさげなユイを招き寄せるとリズベットは彼女にも見解を問う。

 

「ユイちゃんはどう思う?」

 

「…まず、SAOにそう言うことを仕掛けた、仕掛けられた時点で普通はあり得ないのです。この土台になってしまったのがおそらくは11月から始まった異常なのです。異常感知すら逃れて、尚、その手段実行を確実にしている……そして、それをGMサイドが抑制出来ない」

 

 ゲームシステムの側から見ればチート行為はBANすべき行い。

 そう、本来のMHCPとしての機能が彼女に宿っているのならば。

 ゲームから取り除かなければならない動的オブジェクト、即ちオブジェクトイレーサーの執行対象とすらなり得る行為。

 

「チートと呼ばれる行為を使用すれば、本来ならばシステム権限でゲームから取り除かれるのが基本なのです。カーディナルシステムはその不正を許しおくモノではありませんから」

 

 ユイはそう結ぶ。

 

 あり得ざる行いを持ってでもデスゲームを終着に導かんとする意志。

 

「……リアルワールド、つまり、現実の方でバックアップ受けてるみたいな言い方だったわよね。リーファ、そう言う話しは聞いた事あるの?」

 

 ぶんぶんと首を横に振るリーファ。

 彼女の現実世界の回りではそのような話しは聞いた事はなかった。

 だからこそ、リーファという少女の現実は、自ら単身でデスゲームへの挑戦を敢行したのだから。

 

「どこからどこまでが本当の事やらって感じになってきたわねぇ……」

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

『あら。徹頭徹尾、9割方は事実よ』

 

 そんな声が響く。

 ゆらりと揺らぐと リーファの背後に紫銀の装いに身を包んだ何ものかが【転移】してくる。

 それは、転移門広場前で人々を煽動していた存在で。

 

『お初にお目に掛るわね。我が名は、クィネラ。現実世界よりの稀人』

 

 周囲を見渡すとその彼女は、先ずはシノン、それからリーファに視線を留める。

 

『……ALOとの混線か……本来ならば、現実よりの姿に構成されるはずが同質のカーディナルの接触の影響で引き込まれたとみるべきか。しかし、そうなると些か厄介ね。こう言うケースで真っ当な人間がやって来るのは計算外だわ』

 

 リーファを見定めるように状況分析と解析を行うクィネラ。

 彼女の目はリーファという少女の状況と状態を収奪したシステム実行者としての権能を持って見抜く。

 

 突如とした乱入者。

 されど、声をあげる事が出来ない。

 端的に言えば、存在の圧力が違う。あえて、彼女は自分が上位にある事を示すために【情報圧】を高めて其処にいた。

 その圧を撥ね除けるためにはやはり、意志の力が必要で。

 この場にはそれほど強固な意志の持ち主はいなかった。

 

 いや。例外はいる。

 

「……あなたは一体何ものですか……?」

 

 恐怖すら滲ませる声音でユイは誰何をクィネラに問う

 

『自己紹介はしたじゃない……ああ、そうか。お前がデータ欠損が起きているMHCPね……ふぅん…今はまだ成長初期段階か。まぁ、良いわ。今のお前には何も出来ないもの。自分が母と慕った少女の抱えていた精神的失陥を気がつけなかったMCHPには』

 

 びくりと身を震わせる。

 それは本来の機能を持っていれば容易に防げたはずの。

 あるいはここではないどこかちがう場所でならけして起きえなかった事態。

 

『まぁ、黒の剣士の方はまだ間に合うでしょう。しっかり、サポートしてお上げなさいな』

 

 ソレだけ言うとクィネラはリーファの耳元に口を寄せると周囲の人間に一切訊かれる事のない何事かを口伝していく。

 リーファの眼が見開き、クィネラを見遣る。

 

『では、確かに申し添えたわ。後の選択はあなたに委ねましょう』

 

 クィネラはそれで自分の役目は一段落したと言わんばかりにその場を離れてカウンターに座る。

 

『この店で一番高級な酩酊感を感じる飲料を出しなさい。それと共に最高級のつまみも』

 

 その言葉で周囲の緊張感や重さが解かれた。

 ざわめきだす飲食店としてのエギルの店。

 

 高貴なイメージすら感じさせる圧倒的存在感のある女が優雅な仕種でカウンターに座り、一番の売り物を一息で買っていく。

 目線をあえて引きつけていく振る舞い。

 

 ミスディレクション。

 

 クィネラがそうして場の空気を誘導させた事で。

 誰一人、リーファがそこから姿を消した事に気が付く者は居なかった。

 

 そして、彼女が戻ってきたのは翌朝になっての事だった。

 誰にも何も告げずに消えて、時折メールで安否を知らせるだけという彼女にあるまじき奇妙な立ち振る舞いであった。

 

 

 

 




~現在の状況~

 擬似的な死に戻りで強敵に挑戦するイベントが起きています。

 チートに対する少女達のスタンスが明らかになりました。

 リーファは クィネラに 現在の状況が現実世界において良くない事をちらっと言い含められました。ハッキングで実名割ってあるので実名を耳元で囁いた後、詳細を聞きたければ、76層の指定した宿屋に来るように言われました。脅迫されてます。

アンケート選択肢【場面選択】発生中

 視点者、あるいは状況進行を選択します。
 選ばれなかった選択場面は『一方、その頃○○があった』程度の事象認識で場面が進行します。
 ヒロインのエッチパートの配分に変更が起きたりします。

 今回の場合
 1を選択した場合、キリトとアスナのこれからについてとアルゴとユートの関係についてがオープンになって、その影で2のイベントが起きていて、リーファの様子がなんか変。と言うのをキリトが後々知る事になります。このルートでは、その日の夜にアスナに伴われてアルゴがやってきます。

 2を選択した場合、ユート視点でリーファを落していくイベントが始まり、図らずもアスナがキリトを引きつける離間策が成立した状態になります。このルートではユートにお手出しされたリーファとアスナの二人を相手にした3Pが発生します

 アルゴイベントはこの選択肢に拘わらず開始されます。
 リーファイベントは開始タイミングと詳細が変更されます。

 夜の3Pの相手が変更になります。
 1の場合と2の場合でリーファの堕ち度合いが変わります
 1:匂わせNTRルート:契約性隷
 2:身体をじっくり使われてしまうルート:完堕ち性隷

 1の場合、キリトとアスナの関係性が分岐します(後程アンケート派生)
 2の場合、キリトとアスナの関係性は迂余曲折の末、戦友 に落ち着きます

 選択ボーダー150


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2-1 直面する現実

~76層主街区 アークソフィア 商店通り の外れた路地~
 リーファは 一人 エギルの店の喧噪の中を、誰にも気付かれずに抜け出していた。
 
 自分が致命的に間違った選択をしている予感すらある。
 誰にも相談せずに抜け出した事、義兄であるキリトに相談しなかった事。

 しかし。

(あの人は私のリアルネームを知っていた…現実世界から来て 私の事を知っているという事は私の知り合い…? 違う、そう言うんじゃなくて…) 

 名前を耳元で囁くと同時に。
 現実世界に帰ったとき、黒の剣士キリトに迷惑をかけたくないのならば、指定する宿に来ること。但し、その決断は個人に委ねる。誰かに相談するもしないも自由。

 キリトを名指しした上で、このデスゲームをクリアした後の事について と言う名目が刺さる。

 目を背けていた事とでもいうべきか。
 キリトにはついぞ言えていない事がある。
 
 自分のこの行いは、母にも父にも秘したもの。
 
 兄の傍に居たい。その一心で行った行い。
 デスゲームであるという事実をその目で、その現実で知っていながら。
 自らの意志で、デスゲームであるSAOにきてしまった。

 これが、現実世界においてどう言う意味を持つのか。

 リーファという少女は、桐ヶ谷直葉という少女は。
 異なる視点を持った現実世界よりの来訪者の口から知らされる事になる。

 そして、選択を迫られる事になる。自己の内に。

 リーファの眼には、指定された宿屋。
 言われたとおりの部屋番号を指示すると 部屋がアンロックされる。

 開け放つ扉の先には ポータルポイント。
 転移石 とも呼ばれるそれは 触れれば、指定された場所へ自動的に移動させるというもの。
 76層の宿の一室にこれを仕込むという暴挙。
 いや。それが可能なのが、あのクィネラを名乗った人なのだろうとリーファは納得せざるを得なかった。

 ここに触れれば自分がどこに誘われるのか。
 
 意を決する。
 
 そして、彼女は 76層の宿屋から転移した。

 


~77層 主街区 トリベリア 浮遊島の隠れ宿~

 

 寝室に一人の少年が横たわる。

 彼にしてもここ数日の出来事は濃密であった。

 

 整理すべき事、したい事は山ほどあって。

 その手に抱いた、抱いてしまった少女の事。

 SAOの登場人物だとまで認識していなかった数年来の知己である少女の事。

 

 これ以後の辿る過程は、名前が一致するぐらいで人物相関図は欠片も当てになりはしないだろう。

 

 ふと、あの広場で見かけた少女の姿が頭に過ぎる。

 

 ALOアバターの特徴をそのままに此方に来たのであろう少女。

 少年は頭の隅に閉じ込めた原作知識を引きずり出す。

 

 そう。彼女の名は【リーファ】。現実名:桐ヶ谷直葉。

 本来、SAOには居ないはずの原典であればフェアリィ・ダンス編のヒロイン。

 黒の剣士キリト=桐ヶ谷和人 の義妹。

 VRMMO自体にはそこまで興味は無かったが、SAOから帰ってこれない和人が何故そこまで仮想現実を体験するVRに惹かれていったのかを知るため自身も後発VR機器のアミュスフィアを使いALO:アルブヘイムオンラインをプレイする事になり、自在に空を飛ぶその世界観に魅了されていく。

 

 情報を引き下ろす都度に頭痛がする。

 ペインアブソーバーを越えて痛みを感じさせるのは、これが正しく禁断の知識だからだろう。

 

 摺り合せる。その状況までが同じだとしたら。

 何故、彼女はここに居る。何故、ここに来た。

 手段、方法、現実世界に置ける実体の安全性の確保は?

 

 切り捨てても良い事柄ではある。

 だが、連想する思考はついぞ回答を得る。

 

 彼女の現実はもっとも最悪を辿って完全な家庭崩壊コースを迎える。

 軽く見積もっても 和人と直葉の間は他ならぬ両親の手で兄妹としての縁も切られる事になるだろう。

 

 単純な話しだ。

 SAOを初期から巻き込まれる形で挑む事になった者達。

 彼等は ナーブギアの販売元、SAOサーバーの保守管理を行うアーガスとSAO事件対策本部の元、その現実の肉体を限りなく損なわないように多額の財貨を投じて病院や特殊な施設によってあらゆる管理をされている。

 

 だが、後追いで。

 ソードアートオンラインがデスゲームであるという事実が既に公表された段階で自己の意志を持ってログインを試みたものに対してその保障が為せるのかどうか。

 答えは否だ。

 それこそは自己責任の対象となり生じる費用の合財を自分で支払う事になる。

 おそらくは 桐ヶ谷直葉個人ではなくその肉親、母親、父親に対して生存し、帰還した後で莫大な請求が行われる事になる。

 病気や怪我などによるものでは無いため保険の類が一切効かない事と前例が全くないため、保険商品の類も使えない。

 

 SAOに接続し目を覚まさない子供二人を病院に任せきりにした両親ともなれば世間体も最悪の一途を辿ろう。

 家庭によっては離婚してその世話を押し付け合うなどという事にもなる。

 

 金の切れ目が縁の切れ目という言葉がある。

 

 少年はそういった形で SAOによって現実の生活が破綻していく様を見ていたのだ。

 

 生きていく、生きている場所が現実である。と言う捉え方もある。

 間違いではない。その時、自己の意志を持ってある場所が現実。

 だが、その現実がもう一つの現実を破壊してしまうのならば。

 

 ふとそこまで思いが錯綜して頭を振る。

 

 手を差し伸べるにせよ、差し伸べないにせよ。

 必要なのは事実と真実だ。

 彼女が何故ここに来たのかのその回答は彼女自身にしか示せまい。

 

 寝転がるベッドの上、転移光が見えた。

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 それが人形を彩り 確実な姿を結んで落ちてくる。

 ベッドの上でくるりと廻転し、横に避ける。

 どさんとそこに降ってくる イメージカラーは緑。流れるような金髪をポニーテールに結わえた美少女。

 際立つ胸は尻もちつく形で降ってきた少女のセックスアピール。

 胸の谷間が目立つソレは嫌が応無しに男の目を惹きつける。惹き付けてしまう。

 

「…いたたた。ベッドの上…?宿から宿って何よこれぇ…」

 

 落ちた形がMの時で尻もちをついている事に気が付いていないのか。

 Mの字開脚に近い形であるが故に見える真っ白いショーツ。

 

 見られている。視線がそこに行っている事を察して咄嗟姿勢を入れ替えて座り直す少女。

 その顔は羞恥で真っ赤た。

 

「あ、あの!…み、見ましたか?」

「…この条件下と状態で見てないって方が不自然だと思うけどね?」

 

 顔の向きが少女を向いている。

 降ってきたときから見ている。

 落ちてきた少女が美少女。

 初見でガードしていない。

 

 どキッパリとみられた事を肯定されると二の句が継げなくなる。

 彼女の交友関係の仲でここまで明け透けにラッキースケベを誤魔化さない人間はいなかった。

 あたふたするでもなく落ち着いた振る舞いでそれでいて『見なかった事』にするわけでもなく。

 

 身を起こしてベッドサイドに脚を下ろし少年はテキパキと飲料の操作をする。

 湯気の立つ鎮静効果のあるお茶を用意する。

 

「…まぁ、どう言う経緯でここに送り込まれたのかは知らないけれど。とりあえずは歓迎するよ。それ飲んで落ち着いたら用向きを聞こうか?」

 

 上背のある少年から見下ろされるように飲物を渡されたとき、少女の。

 リーファの中に 言語化出来ない何か が生じていた。

 

 




~現在の状況~

 リーファルートが開始されました。
 
 リーファは 誰にも告げないまま 76層から姿を消しました。
 リーファは 肉親に相談しないまま、SAOに飛び込んでしまったようです。
 リーファには 破滅願望(弱) が根差しています。デスゲーム判明後のSAOに自分の意志だけでログインしている事から無自覚に根差しています。

 リーファには 兄に対する異性としての慕情が根付きつつありました。
 

 リーファは 初見初回の接触で白のショーツを見せつけてしまいました。
 リーファは 自分より背丈の高い男に見下ろされる事で 急激に性差を意識したようです。

■現実世界のSAO接続者に対する対応の違い。
 初期からの接続者には国や企業からの大幅な金銭的補助がある(9割)

 デスゲーム判明後の接続者にはほぼ金銭的補助はない。
 SAO接続中の肉体の維持管理費も実費の全額負担になると考えられる。
 初期型ナーブギアには回収命令が出されているため、接続環境の性差や接続目的など生きて帰ったとしても厳しいカウンセリングという名の尋問を受ける事になる。
 完全な巻き込まれやその用途で使用をしていないという証明が第三者から為されるまでは SAOを使った自殺志願者 か SAO内部で何者かの殺害を計画していた などの扱いを受ける事になる。


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2-2 最悪の想定

~77層 主街区 トリベリア 浮遊島の隠れ宿~

 ベッドでへたり込むリーファを窓際のテーブルまで誘う。
 飲物を渡すその前に此方に誘導しておけば良かったとは思うが、彼自身もいきなりの闖入者、それも思索を寄せていた少女当人が来るとは思ってもいなかった事に依る動転もあった。

 ちょこん と言う音でもしそうな申し訳なささと恥ずかしさの綯い交ぜになったような態でリーファは誘われるままに着席する。
 
 年頃の少女が年頃の男に不慮の事故とは言え下着を見せる羽目になる。というのは中々に次に切り替えるのは難しい。況やそれが思春期真っ只中であれば、仮想世界のアバターであったとしても。
 そんな少女の心境を思い遣っての事か。それとも主導権を握るためか。

「…取り敢えずこっちの自己紹介は…まぁ、必要ないかな。君もあの時、転移門前広場にいたみたいだしね。アルブヘイムオンラインの風妖精(シルフ)。スピードホリックのリーファ…でよかったかい?」

 リーファは目を見開く。彼女がどこから来たのかを明解に当てに来ている。
 ヤレヤレと言いたげな風に肩をすくめると対面に座る少年は人差し指を立てて解説をする。

「まず。その耳。SAOでその風貌はまずあり得ない。シェイプシフト系の罠を喰らって変化した。と言う設定らしいけど、永続して外見を変更するような罠はまずあり得ない。それなら、他に何人もいるはずだろうしね?」

 二本目の指を立てる。

「二つ目。外見的特徴が際立っている以上、それが現実のものと定義した場合、いわゆるエルフ耳を現実でもしている事になる。まずこれは無い。成形して無理矢理造りでもしない限りはね? では、どうすればそうなるのか。簡単だ。既存のデータから引っ張り出せば良い」

 三つ目の指を立てる。

「三つ目。SAOで現実の肉体と懸け離れたアバターが作成出来ない以上、そういった外見データを許容するフルダイブVRMMOのデータを流用する。後発品フルダイブ機器のアミュスフィアで発売されたALO。その外見データであれば流用可能だろう。基幹システムがカーディナルシステムとして共通してるしね」

 四つ目の指を立てる。

「四つ目。僕も仮想空間になれるため、ALOにもダイブしていた時期がある。その際、シルフ領に行ったときに 今の君と酷似している外見データと同じ名前の風妖精の少女剣士と出会ったことがある。果たして、そこまで並べたときに、これは偶然の一致なのか? 答えは否。ALOにおいての外見データこそはユニークだ。同じ外見特徴の存在は作成出来ない。つまり、風妖精リーファの外見はユニーク」

 五つ目の指を立てる。

「五つ目。流用可能とは言え、個人でそう言う真似は出来ない以上、事故で引き込まれたと考える。君がALOで保持しているアバター:リーファの外見データを引き込んでしまうような事故。つまり、11月の件の事故が契機とみる。…もっとも、これらの条件全て引っ繰り返して、黒の剣士キリトを兄と慕う金髪エルフ耳の美少女が現実世界にも存在してる可能性も全くないと言い切れないのが恐いところだが」

 立てた指を折りたたみ直して諳んじていた前振りから本題に切り込む。

「…じゃあ、何故。どうして、ALOにいたはずのリーファがSAOにいるのか。如何なる手段を持って。如何なる状況で。如何なる条件で…さて。君がここに送り込まれた理由は大体見当がつく。クィネラに唆されたというところかな?」

 透徹な眼差しを持って見透かすようにリーファを見据える少年。

「さて…それじゃ、こんな宿屋まで送り込まれてしまった君の話しを聞かせてもらおうか?」

 


 

「…あの聞きたい事とか色々あるんですけど…どこから聞いて良いのか解らなくて…」

 

 顔を俯かせて、冷めつつある飲料のマグに目を落とす。

 紅茶の類だろうか。ハーブ香が落ち着かせてくれる。

 リーファは自分の中で聞くべき事をまとめる。

 

 先ずは彼が自分を知っている理由はわかった。ALOで出合っていたから。

 その時の外見データと変わっていない以上、此方の事が理解されているのはこれはもうどうしようもないだろう。

 ただ、それでも疑問は残る。

 

「…あの人、クィネラさんは私のリアルネームを知っていたんですけど…」

「ああ、ハッキングして大体の接続者のリアルアカウントは割ってある。とは言え、それを僕が知る事はない。そう言うデータ管理は一元化して『相棒』の運用だ。直接、僕がそれを知ってどうこうする事はないよ」

 

 まぁ、だからこそ厄介なんだが。と聞こえないようにボソリと少年は呟く。

 そう、知りうる情報を差配するのはあくまで『彼女』がメインだ。

 その知り得た情報を使って何をどうするのか。

 不利になる事はしないだけでうまく立ち回らないとどれだけの事になるかわかったものでは無い。

 

「まぁ、『相棒』は相棒でそういったデータを使って此方でやる事があるからね。まぁ、細かい事は言えないが。何しろ、君は名義上『巻き込まれた被害者』だ。こっちの事情で話せるのは僕の立場ぐらいかな」

 

 少年、ユートはリーファを『アミュスフィア使用中に何らかの事故による誤認識によって巻き込まれた被害者』。そのように認識している。

 そう、自分の意志でデスゲームに突っ込んでくるような粋狂な真似をするはずがないと。

 

 「…その…私が自分の意志でこっちに来た。って場合、そのどうなるんですか…?」

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 音が凍った。

 空気が凍った。

 

 地雷である。明確な地雷である。

 彼女は選択を間違えた。

 この局面であれば、不幸な巻き込まれを装い、戻れないところまで事態が進行してからカミングアウトした方が良かった。

 

 先程まであった気遣うような雰囲気は彼から消えた。

 目は透徹を超えて冷然な眼差しに。

 見定める側の目線に変わる。

 

「…自分の意志で?」

「は、はい。その」

「手段、方法は?」

 

 そして、リーファの口から明らかになるその手管。

 

「…つまり、君は『回収命令の出ている初期型ナーブギアを SAOを起動しないという条件で友人から借り受けてそれを私用した。デスゲームであるという事実を理解した上で、その行いを家族の誰にも打ち明けずに没入した』と」

 

 両手で顔面を押さえる。

 他人事である。他人事ではある。

 アミュスフィアの使用であればまだマシであった。

 それならば、いくらでも逃げ道を用意出来たし、フォローの仕様もあった。

 

 だが、しかし。

 

 デスゲームと公表された後に自らの意志でナーブギアを使用してSAOにログインした。

 しかも、その行いは自分の肉親にも秘した完全な独断。

 否。それが両親の理解を受けた上で。ともなれば、事が公になったときに、一家総出の精神鑑定コースだ。

 普通はあり得ない。

 

 加えて 回収命令の出ている初期型ナーブギア。自身の持ち物ですらない他人の秘匿していたそれを無断使用。

 譲り渡したわけでもなく、借用である以上、貸した側にも責任が問われるコース。

 普通はあり得ない。

 

「…すごいな。数えで役満だ。おめでとう。君は無事に生還出来たとしても、確実に、現実世界で相当な…そう、犯罪者擦れ擦れの扱い と 実費で身体維持の為の医療費請求が待っているな。幸いなのは結果が確定するまでは据え置きになっている事か」

 

 顔を見せず、眼も見せず、伝えられた情報から淡々と出せる結論を示す。

 

「…え?」

「そんな驚く事はないだろう。『アミュスフィア』使用中の事故ならいざ知らず。その条件下では一切の救済補償はでないぞ。君がデスゲーム判明後、現実世界で普通に活動していた事は容易に解る事だ。そんな君がナーブギアを使用して自分で没入した。となれば、そこにアーガスの背負う責任はほとんど無い。対策本部も『常人であればやらない』として想定してないケースだ。故に国からの保証もない」

 

 常人であれば。普通ならばあり得ない。

 ユートはリーファの行いをそう切って捨てる。

 リーファの行いは、思春期の少女の暴走で片付けるにはその余波が大きくなりすぎる出来事になっていた。

 

 彼のようにバックボーンを整え、サポート体制も整えて挑むならいざ知らず。

 

 少女の行いは明確に自分以外の人間を巻き込む類の厄ネタになっていた。

 

「君にナーブギアを貸し与えてしまったその友人も不幸な事だな。君が此方にダイブしてしまった以上、その経緯を調べられて、取り調べを受ける事になるだろう。何せSAOはデスゲームだ。天秤が少しでも狂えば人が死ぬ。加えて回収命令に従わなかったその真意まで問質される。つまり、君は確実にそのナーブギアを隠し持っていた友人を窮地に追いやったぞ? 今からではフォローのしようもないな。釈明文とかその類でも用意してあれば情状酌量が図られるだろうけど。そうでなくとも、君は見事にその友人の心を踏みにじっているわけだな」

 

 冷然と少女の行いを切り分けて、その行いが現実世界に置ける他者に与える影響を論じていく。

 顔が引き攣り、ショックの色が隠せなくなるリーファ。

 

「その上で生き延びたとしてそんな君を待つのは半ば尋問染みたカウンセリングだ。当然の事だがSAOに何の目的があって没入したのか。初期の巻き込まれた人達より綿密に行われるだろう。つまり、君の目的、心情、心境。その合切を記録化される事になる。自殺願望があったのか? 他人を害する意図があったのか? それとも、そこには依らない意図があっての事か? …君の兄を思っての行い全てが他者の手によって分析され、解析され、記録に残される事になるわけだ」

 

 ふぅ。と溜息を吐いて

 ユートはその段階になってはじめて、リーファの眼を見据えた。

 顔面は蒼白。そう言う可能性に漸く思い当たったのだろう。

 デスゲームという事実を知りうる側だった少女は自分の行いのまずさを理解するに至った。

 

「…あ、あの!」

 

 息を飲んで意を決したように。

 リーファは縋るものがそれしかなくなったかのように声を出す。

 

「く、クィネラさんが言っていました。『現実世界に戻ったとき、黒の剣士に迷惑をかけたくないのならば』」って。…こう言う言い方をするって事は、私の置かれた状況を理解していたって事ですよね?」

 

 苦虫をかみ潰したような声音でユートはそれに応える。ようやくにして、クィネラの意図が理解出来たからだ。

 

「…なるほど。そう言うことか。漸く納得出来た。君がここに送り込まれたのは、そもそも、『これ』をどうにかさせるためか。全く。面倒な…」

 

 腕を組み瞑目してユートはリーファに告げる。

 

「…いくつかはなんとかしてやれない事はない。でっち上げの事実(カバーストーリー)でも作って、そうであるようにしてしまえば良い。金銭的なフォローは後払いだから、そこもどうにかしてやれる。ナーブギアを借りた友人との関係まではどうにもならないが」

 

 言葉を句切り。

 

「その為には、君がここにやってきた理由。それそのものを君自身の意志で捨てる必要がある。…選ぶといい。やがて訪れる破滅に自らの意志で為した事と覚悟して受け止めるか」

 

 それとも

 

「今ここで僕の提示する手段に乗っかり兄を思っての行いという事実すら捨て去ってでも現実世界で起きるであろう厄介ごとを回避するか だ」

 

 




~現在の状況~
 リーファは 現実世界で起きるであろう、待ち受けるであろう事 を指摘されました。
 
 リーファは重要な選択を迫られています。
 後程詳細を追加。

1:【現実逃避ルート】:自分の思いは捨てられない。
2:【現実直視ルート】:周囲にこれ以上迷惑かけられない
3:【答えが出せない】


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2-3 敬服すべき勇気 と 隠さない意志

【CAUTION!】
 作者の冬場の低活動期が過ぎ夏場になってくそ暑い中、物書き作業が再開されます。
 但し、一週間に一回程度の更新速度が基本になり後はテンション次第の模様。




 そして、彼女【桐ヶ谷直葉】は二択を迫られた。

 

 自分の現実世界の状況を第三者が見ればどれほどに自分の将来に影を差すのか。

 自分だけならいざ知らず、確実に家族に迷惑をかける。

 明日にでも死ぬ可能性のある兄に。義兄に会いたかったという自らの裡にあった処理しきれないまだ明確な形を得ていない思慕とも言えない感情にしたがった結果。

 生存し帰還が叶ったとしても、おおよそ明るい未来にはなり得ないのだという事実。

 

 リーファは知らずのうちのその目から涙を流していた。

 自らの成した行いが誰にとってもよくない未来を引き起こすのだという現実に心が軋みをあげ始めていた。

 キリトでは気がつき得なかった現実世界の視点。

 

 そう。

 リーファはすべてをあかさなかったにしても ソードアートオンライン と言うログアウト不可の一方通行のデスゲームに自らの意志で来た。

 キリトは当然のことながらリーファを守り抜く覚悟を決めていた。

 だが、それは現実世界に戻った後に起きるであろう、想定されるであろう状況を回避するものではない。

 残酷な話しだが。 SAOの中で今や英雄に近い名声を得つつある 黒の剣士キリト は現実世界においてそれほどまでに力があるわけでもない。

 立場も財力も。義理の両親の庇護下にある未成年である桐ヶ谷和人には可能ではないことの方が多い。

 つまり。現段階において、現実世界の桐ヶ谷直葉に訪れるであろう破局は 蟠りを残したままでは居られず逢いたいと思った義理の兄 桐ヶ谷和人 では対処がおおよそ不可能。

 

 

 冷えた現実が仮初めの肉体の少女の心を切り裂いた。

 

 だが。

 

 切り裂かれひび割れる心に染み渡るのは何時だって 都合の良い言葉と甘い猛毒だ。

 

「……まぁ、知り得てしまった以上は仕方ない。選択を迫りはしたが どちらを選ぶにしても此方で手を打てる手は打とう」

 

 ユートは 指折り数え、ブツブツと呟き出す。

 それはいわゆる掛かる金の算段だ。

 何事でもないように金銭による損得勘定を始める。

 それは、彼女が直面するであろう多大な金銭的問題を。

 

「まぁ、比較するのはよくないことではあるが。これでも、結構なお手当をもらえる身分でね。後、ついでに言うと今回の一件も成功報酬が約束されてる」

 

 そう。金銭が問題になる部分は容易に解決できると。

 それはけして 桐ヶ谷和人個人では超えられない差。

 

「その上で、でっち上げの事実を被せれば 君の現実世界での事情もどうにか誤魔化せるだろう。もっとも、ナーヴギアを隠し持っていた友人との関係まではフォローできないが……そうだな。こうしようか」

 

 そう言うと対面に座っていたユートは回り込むようにリーファの背後に立ち そして。

 彼女の華奢な肩に被せるように手を置く。まるで椅子に押し付けるように。逃がさないように。

 

「僕と君はALOの中で知り合ったフレンド。君はSAOに接続し現実世界に帰って来れない義兄のこと。つまり黒の剣士キリトに会いたい旨を相談して今回の一件を指示された。つまり、此方のプロジェクトに外部協力の形で参加する。その報酬は成功報酬。生き延びてから精算が行われる。家族にこの事を伝えなかったのは茅場晶彦に電脳を通じて盗聴などの形で情報を抜き取られる可能性が否定できなかった。その為、決行の時まで伏せることを厳命されていた。本案件に関わる接続者(ランナー)はALOなどの同種のフルダイブに適性を持つ人材が好ましくまた一定期間以上の連続接続状態維持のモチベーション確保のため、SAOに対し特段の事情を持ち関わる者が選ばれた」

 

 蛇が獲物に絡み付くようにその手は馴れ馴れしくリーファの両の肩に置かれる。本来であれば 犯罪抑制コード【ハラスメント行為】に該当する接触行動。

 この宿屋の持つエリア属性がそういった男女間の接触を解禁している。この部屋は既にユートのヤリ部屋になっているのであった。

 無論リーファもその異常に気がつかないわけがない。彼女とてSAOと比してより心身の管理にタスクが割り振られたALOの経験者。

 ナーヴギアよりも安全性を高めたアミュスフィアは一定以上の心拍数の鼓動と脳波の異常な乱れを感知すると安全のために冷却切断を行う機能すらある。

 もっとも、彼女は知らないがALOカーディナルはその最高管理責任者である須郷伸之の手により多岐に渡る心身に影響を及ぼしうる改造が済されてはいるわけだが。

 

 ハラスメントアラームが鳴らないが故に口答で馴れ馴れしく置かれた手を注意するリーファ。

 しかし。

 

「……あ、あの! ちょ、ちょっと肩の手……っ」

「当然のことだけど、命の危険が有り得る状況に行くことを促されて簡単に頷ける人間はそうはいない。つまり……ALO、ひいては現実世界の君と僕の間には 僕を主として君を従するような関係性が存在していたとする方が望ましい」

「な……何を言ってるんですか……!?」

 

 事ここに来て、風向きがよくない方向に変わっていることをリーファは理解する。

 だが、フルダイブ型VRMMOにおいて、一つ残酷なことがある。それはステータスによる能力の差。

 肩を軽くやんわりと抑えられたようでいて、実際は押しのけることすら困難なストレングスの差がある。

 力をかけてはいないが数値による圧迫が成立する。彼女にはそれを振りほどき引き剥がす技巧が備わってはいなかった。

 

「カバーストーリーだよ。要は悪いのは僕の所為ってことにするためにはそういうことにしてしまうのが手っ取り早い」

 

 抑え込まれた肩からその手は首に纏わり付くように。背中から感じる圧力。

 ぱんっと軽く、ほんの軽く背中を叩かれる。

 

「とまぁ、こんな感じで威しはしたけど。お兄さんと相談してくると良い。兄妹仲を引き裂きたいわけでもないし、現実的な状況の解決策が彼にあるならそれで済む」

 

■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》

 

 そうして、リーファは来たときと同じように宿屋のポータルから転送され、アークソフィアに戻った。

 迷いの中、答えは出せない。

 背後からかけられた声。それが印象に残っている。

 

「『君の勇気に敬服を』かぁ……」

 

 彼、ユートはリーファの行いの結果を咎めるようではあったが、その行いのための動機はけして咎めることはなかった。

 それどころか。

 

『正直言えば、僕は君に嫉妬している。あの日、あの手遅れになってしまうその時の前にこちらの世界に来る勇気は僕には無かったものだから。会いたい人のために自らの命を賭す。これは誰にでもできることじゃないからね。だから……君のその勇気に敬服を。君が出す答えがどうであれ 答えの先が不幸な結末にならないように最大限の力を貸すことは約束しよう』

 

 どちらであっても力を貸すとまで言われた。結局それでは……ただの顔合わせのために引き合わされただけじゃないかと。

 答えは実のところ定まってはいる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 明確な重荷になる。一ヶ月近く傍に居て感じる空気から、これまでも相当な無茶をしてきているのが透けて見えている。

 言わないだろうし、言うつもりもないがおそらくはキリトはもう、SAOで正当防衛の形で何名かその手に掛けているだろうとも。

 

 黒の剣士。この呼び名は良い。だが ビーター と呼ぶ人達もいて、そう言う人達は少なからず、キリトに対しての悪印象を語る。

 曰く レッドギルド ラフィンコフィン討伐戦で複数人を斬り殺した。 曰く 閃光のアスナに手を出した血盟騎士団団員を体術スキルを使ってその胸を抉った。

 曰く 一つのギルドを自己保身のために壊滅させた男。曰く 罪滅ぼしで蘇生アイテムを探してたらしいが一つしかないアイテムで誰を甦らせる気だったやら。 曰く 76層に来てからは女をとっかえひっかえしている。

 事実であれ、やっかむための飛語流言であれ、キリトを嫌う人間や悪印象を持つものも明確にいる。中でもリーファに影を落とす言葉は。

 

 直接、女性周りのことに苦言を呈すれば、斬り殺されそう

 

 ……そう。噂話や事実を重ねていくと 黒の剣士キリトは閃光のアスナに手を出すものがいれば、その者を斬殺する。そんな話しが信憑性を持ってしまうのだ。

 自身の兄、桐ヶ谷和人は条件が整えば人を斬り殺せる人間である。などと聞かされては正直たまったものでは無い。リーファは幾度も反論しようとは思ったが、口々に語る人々はその目には恐怖や疑念、懸念を貼り付けていて。

 SAOの中でキリトが成してきたことは万人に肯定されるものでは無いことをまじまじと実感させられたのだ。

 だからこそ、誰かが傍に居なければならない。支えてあげなければならないのに。

 自分では、現実世界のことが重荷になる。黙っていたとしても、もし、最悪の想定の通りになってしまえば 最後の最後、現実世界に戻ってからキリトを。和人を傷つけることになるとわかってしまったから。

 

 鬱屈して下方向に落ちていくメンタルを頬を叩いて活を入れる。身体を動かそう。現実ではないけれど、心地好い運動の後の疲労感とかはたぶん無いのだけど。

 そういえば、特別チャレンジイベントをやっていたはず。リーファの足はその会場に向かっていた。

 

■ 無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)

 

 ~ギルド風林火山 ギルドハウス 隠れ居酒屋 陰山雷。その一室~

 

 キリトとアスナの間に挟まるようにアルゴ。今の位置関係がそのまま、距離感を示してるようだと当事者のキリトは思った。

 近いはずなのに遠く、誰かを間に挟んで漸く届くようなそんなもどかしさ。

 

「ま、楽しいテンションで話せる状況でも無いしな。オレッち、一旦はずそうか?」

「いいえ。アルゴさんには一緒に居てもらいたいかな。なんだかんだで最初期からの知り合いってキリト君だけじゃなくてアルゴさんもそうだし」

「まぁ……オレッちは構わないけど、そーなると欲しいのは、証人って事かナ?」

 

 突っ伏したような形でカランカランと氷のはいったグラスを回すアルゴと何を飲むでもなく目を閉じて何かしらを考えるかのようなアスナ。

 キリトは言わねばならないこと、聞かねばならないことがあるのを理解はしていた。そして同時にここでの答えを間違えればきっと。

 だが、わかってはいてもその瞬間、瞬間に最適な回答を採れるものが何人居るのだろうか。

 

「……そうだね。あまり引っ張っても良いことないし。変に隠したりしないで単刀直入に伝えておこうかな」

 

 アスナの眼は透徹に。迷いを振り切ったように真っ直ぐな眼。

 その目はもう届かないところに自分がいるのだと告げているかのようにキリトに錯覚させる

 

「ねぇ。キリト君。ハジメテの時、経験あるんですかって聞いたよね? あの時はないって答えたけど」

 

 言葉は時として残酷なまでに心に深い一撃を齎すことがある。

 

 私 君以外の男の人に抱かれたよ

 

「……え?」

 

 




~現在の状況~
 リーファは一旦、解放され、特別イベントに挑戦するようです。
 リーファは自己の状況を受け入れた上で決め倦ねています

 アスナはキリトに対して……【ルート確定のため、事象変動は発生しません】
 原作因果【初夜を迎えるその直前に誘いをかけてきたアスナに対して 男性経験の有無を直接問う】が固定因果として存在。
 キリトはあの時、もし、アスナに経験があったのならば、どう答えたのか?
 ゲーム版因果により、複数人のヒロインが集まる状態でありハーレム状態が形成されていた。
 キリトはアスナと交際関係、システム内婚約関係があっても、平気で他のヒロインをお姫様抱っこして自室に連れ込むことができます。

 アスナは以上のポイントを捉え、キリトの答えを探ろうとしています。
 女性からの問いかけにおいて必要なものは その大部分において答えは確定しているため賛同や共感が求められている


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