ウルトラマンブレイブ (リクソンLv.6)
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第一話 運命の邂逅

:火山怪獣 ヴォルカルス 登場

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――二十年前のあの日の事を未だに覚えている。

ボロボロになりながらも燃え盛る戦場に繰り出し勝利を信じて戦い続ける。

そんな姿に五歳ながらに惚れそして憧れた。

自分もあんな風になりたいと。

「彼らと一緒に戦い、みんなを護りたい」と。

――だが、二十年の時を経てその願いが叶う事を彼はまだ知らない。――

 

『GUYSガイズ』とは、ニューヨーク沖に総本部を置く怪獣防衛組織である。名前は『Guards of UtilitY Situation(あらゆる状況に対応する防衛隊)』の頭文字を取ったものだ。

各国のGUYS本部には怪獣や宇宙人に対しての実践部隊である『CREW GUYS』が配備されており、日夜、人々の平和を守っている。

そして、関東の都市郊外に設置された基地内中央に位置する。日本の防衛チーム『GUYSジャパン』ベースのシンボル『フェニックスネスト』だ。

 

「よし!パトロール終了!今日も平和だ!」

 

彼は新生CREW GUISのメンバー勇輝 龍也。普段は特捜班の隊員だが研究開発セクション・ラボチームの研究員でもある。

 

「こちら龍也。ディレクションルーム応答願います。」

「(はーい!こちらディレクションルーム。龍也君パトロールどうだった?)」

 

元気な声がメモリガジェットを通じて聞こえて来る。

彼女はGUISのオペレーション班のメンバー、白石 茜。常にムードメーカー的な存在でチームの雰囲気を良くしてくれる。

 

「茜ちゃんこちらは異常なし。今から帰還します。」

「(GIG!)」

と言ってメモリガジェットの通信を切る。

 

(「茜ちゃん、いつも元気だなぁ。」)

 

そんな事を考えつつ歩いて基地に戻る。何気無い日常。そんな日々が続くと思っていた…

――M78星雲-光の国――

「地球にまた新たなる脅威が迫っています。」

「あぁ。そこで君には地球へ向かってもらう。」

 

銀十字軍隊長のウルトラの母と宇宙警備隊大隊長のウルトラの父が再び地球の危機を感じ取り、一人の勇者に命令を下した。

 

「わかりました。ウルトラの父、ウルトラの母。」

「うむ。行くが良い!若きウルトラマンよ!」

 

そう言われ一人の若き勇者は地球へと向かった。

その名は……「ウルトラマンブレイブ」

――エリアA-地底-火山内部――

そこには怪獣が眠っていた。

そして何かに気づいたかのように怪獣の目が開く。

「!…ギシャアアアアアアアア!」

――エリアA-街中――

歩道橋の上を歩いていると平穏な空に轟く咆哮。

 

「!?な、なんだ今の!?」

 

それとほぼ同時に地震が起こり隣の道路で土と噴火のような火柱が連続して上がるのが見えた。

 

(「そ、そうだ!基地に連絡を!」)

 

と思いメモリガジェットを見ると既に通信が来ており轟音と火柱に気をとられ聞こえていなかったようだ。

 

「こちら龍也。隣の道路で咆哮と思われる物と火柱が!」

「(それはこっちでも確認出来たんだけど突然の熱波と電気障害が起きてこっちでそれ以降の情報が無いの!)」

「映像を送ります!僕は周辺住民の避難誘導を行います!」

と言い放ち通信を切る。茜も焦っていたが龍也もそれと同じ位焦っていた。何しろこんな事は20年前にしか起こりえなかったのだから。不安を噛み締め龍也は火柱が上がる方へ走り出した。

――ディレクションルーム――

「映像、送られて来ました!表示します!」

 

ディレクションルームに居る全員がモニターをじっと見つめる。その映像は酷く荒れていたが、辛うじて見る事が出来た。

 

「これは…」

 

彼は桐島 大吾。厳しさと優しさそして熱さを合わせ持つ隊長だ。

 

「こいつは…怪獣の尻尾だな…」

 

彼は風間 煉。大吾隊長に推薦されGUISの隊員になったプロパイロットだ。

 

「隊長!エリアDの地下を熱源体がエリアK方向に向かって進んでいます!さっきまで反応が無かったのに!」

 

彼は橘 日佐人。GUISの研究開発セクション・ラボチームの研究員だがオペレーター班のメンバーである。

 

「反応が無かったのは仕方ない!まずは今どう対処すべきかだ!日佐人は行動パターンの解析や行動理由の考察、茜は住民の避難状況など、なんでもいい!情報を集めてくれ!」

――エリアA-街中――

「逃げて下さい!あちらです!あっちに避難シェルターがあります!」

 

と避難誘導を進める龍也にある女性が大変な面持ちで話しかけてきた。

 

「あの!息子が居なくなったんです!何処かではぐれてしまって!」

「なんですって!?わかりました!息子さんは絶対に僕が見つけ出して奥さんのところに連れて行きます!奥さんはあっちのシェルターで待っていて下さい!息子さんのお名前は?」

「名前はケンタです!息子を頼みます!」

 

(「と言っても…この人混みの中じゃ…」)

「いや!諦めてたまるか!」

 

シェルターに走って行く後ろ姿を見てから龍也はその子の居そうな所へ走り出す。

――ディレクションルーム――

「地下の粒子加速器はまだ修理中だったな…だが新型機が一機だけ今日整備が終わっていたはずだ!煉、頼んだぞ。日佐人と茜はここに残って煉のサポートと怪獣の分析を頼む! GUYS!SALLY GO!」

「GIG!」

「新型機の腕慣らしとさせてもらおうか。」

 

と煉が呟き、他のメンバー達も持ち場に着く。

――エリアA-街中――

「ケンタ君〜ケンタ君〜」

 

と呼びながら街を走り回っていると裏路地の入口でうずくまっている男の子が居た。

 

「君がケンタ君かい?」

 

そう尋ねると男の子は、静かに頷き安堵したのか泣き出してしまった。そんな様子を見てふと龍也は昔の泣き虫だった自分と重ねる。

 

「君のお母さんが君を探していたよ。さぁシェルターへ行こう!」

 

と言った次の瞬間。地震が起こり、咆哮と共に土と火柱が吹き上がる。そして……その中からズドンッズドンッと1歩づつ。大きく太い尻尾、鋭い爪、凸凹とした肌の上に小火山が幾つも付いている。

 

「怪…獣…」

「ギシャアアアアアアアア!」

 

その巨大さに唾を飲み口元を抑える。

咆哮に龍也もケンタも恐怖する。

足が恐怖ですくむ。声も出せない。

ハァッ…ハァッ…と息も荒くなってくる。ただ妙に落ち着き

 

「ケンタ君。この裏路地を逆に抜けるんだ。そうしたら近くにあるシェルターに逃げ込む。いいね?」

「お兄さんはどう…するの?」

「……僕にも分からない。けど今僕に出来ることをやるだけだよ。じゃあ僕が合図したら全力で走れ。いいな?」静かに頷く。

「3…2…1…今だ!行け!」

 

指示通り走りだす。そして龍也も怪獣の前に立ち塞がりトライシューターを取り出し怪獣に発砲する。

 

「こっちだ!来い!」

 

走り出した途端、脳裏に浮かぶ「無駄」「無意味」という単語の数々。そんな事やる前から分かりきっていた。それでも自分に出来る最大限を出し切るという固い意思が己が体を動かした。

ただほんの僅かな奇跡を信じて。

――エリアA-上空――

ちょうど現場に到着した頃には怪獣が地上に出てきていた。その巨大さと声に唾を呑む。

 

「これが…戦場……ガンガルーダ。これより攻撃を開始します!」

 

と攻撃を開始しようとした瞬間。怪獣の前に走り出していく男が見えた。

 

「あのバカ!拳銃でどうにかなるわけないだろ!」

――ディレクションルーム――

「ガルーダより映像が、送られて来ました!」

 

茜が自席のコンピュータでモニターに映し出す。だがその受け止められない程の状況に茜と日佐人はモニターを凝視する。

 

「これが…ガチの怪獣……」

「こんなのに今も昔も戦闘機で立ち向かってたの…?」

 

「二人は怪獣を見た事が無かったんだったな。そう。こんな奴らに我々人類は戦闘機で立ち向かっていった。そして今まで勝ってきたんだ。」

 

大吾は今まで経験してきた事を二人に伝える。

 

「あ、えぇっと!避難状況はエリアD及び進行方向にあるエリア全ての避難が完了しています。」

「行動理由ですが、恐らく巣の移動かと思われます。」

 

日佐人が進路方向などの情報から怪獣の行動原因を見つけ出し大吾に報告した。

 

「巣の移動?」

「はい。何らかの外的要因によってかと。例えばヴォルカルスの巣に異生物が攻撃を仕掛けて来たりとか、もしくは食料の不足によるものと思われます。」

「ヴォルカルス?」

「あっ…名前…つけてみたんですけど…ダメでしたか?」

「いや!問題無い!これよりあの怪獣をヴォルカルスと命名する!」

「話を戻そう。エリアDには活火山の大岩山があったがエリアK辺りには何がある?」

 

大吾は地図を確認しながら茜に尋ねた。

 

「えーっとそこには新しく出来たマグマエネルギーを用いた研究所があります。確か大岩山のマグマを使ってるって…」

「奴がマグマを食料にしているならそこを目指すのも必然という訳か。」

 

納得の表情を浮かべる大吾に茜が報告する。

 

「隊長、風間隊員から通信です!」

「通信?どうした?煉。」

 

インカムの電源をONにし、煉と通信を取り合う。

その内容はかなりマズイものだった。

 

「(大変です!隊長!龍也の奴が怪獣の前に飛び出して誘導し始めたんです!これでは攻撃出来ません!)」

「なんだって!?」

「(とりあえず奴の注意をこちらに引き付けつつ龍也を逃がします!)」

「頼んだぞ!煉!」

「(GIG!)」

――エリアA-街中――

引き付けながら走って逃げていると通信が入る。

 

「こちら龍也!」

「(俺が奴の注意を引く!その間にお前は逃げろ!)」

「…GIG!」

――エリアA-上空――

注意を引き付けつつ飛行していると急にヴォルカルスの動きが止まる。

 

「……急に止まっただと…?」

 

すると肩や背中の小火山が赤くなりだした。次の瞬間火山から溶岩弾が発射される。

 

「!?まずい!」

 

避けようとするも避けきれず左翼に直撃し咄嗟に不時着の姿勢に入る。それと同時にある事がよぎる。流れ弾だ。最悪流れ弾が龍也に直撃していれば命の保証は無い。当たっていないことを祈り不時着する煉。

――ディレクションルーム――

「煉と龍也は無事か!?」

「煉さんのバイタル、各種共にに無事です!が…龍也君の状況が入って来ません…」

 

茜の報告に沈黙する一同。その沈黙を破るかの如く日佐人が叫んだ。

 

「まずい!ヴォルカルスが煉さんに近づいています!」

「!」驚く一同

――???――

「目覚めなさい。目覚めるのです。地球人よ。」

「…っん?ここは…?」

 

声が聞こえ、目覚めるとそこにはあのウルトラマンがいた。そんな状況に唖然としていると

 

「僕はウルトラマンブレイブ。君の名は?そして君に伝えなくてはならない事がある。」

「僕は勇輝 龍也。伝えたい事?」

「あぁ。それは…君を助ける事が出来なかったという事だ。」

 

それを聞いて全てを思い出す。あの怪獣が放った溶岩弾の流れ弾を受けて…僕は…

 

「つまり僕は…もう…生きられないのか……」

「……本当にすまない。だが一つだけ蘇る方法がある。僕と一つになる事で君の傷を回復しながら生きていく事が出来る。」

 

ケンタくんとお母さんの姿が脳裏に映る。

 

「僕は…まだ生きていたい。あの子をお母さんに会わせる為に!……みんなを!護る為に!」

 

静かにブレイブは頷き龍也の右腕と腰に光を送る。

 

「これは?」右腕のモノを見る。

「それはブレイブレス。君の生命維持装置であり私と繋がる為の架け橋だ。」

「じゃあこれは?」

 

腰のホルダーにセットされた宝石について尋ねる。

 

「それはウルトラストーン。様々な力を持っている神秘の宝石だ。」

「へぇ…っていうか!外はどうなってるんですか!煉さんが墜落して!」

「安心してくれ。ここでの一分は外での一秒だ。だが急いだ方が良さそうだ!行くぞ!」

「あぁ!」

「光のウルトラストーンを起動してブレスにセットしてくれ!」

 

言われた通りにストーンを起動すると光のオーラが周りに漂いセットした途端ブレスにエネルギーが収束されていく。

 

「クリスタルサークルを回転させてそして叫べ!

『ブレイブ』と!」

 

自然と拳に力が入り一気に突き上げる。

「ブレイブゥゥゥゥウ!!」

――ディレクションルーム――

「更にヴォルカルスが接近しています!」

「通信は!?」

「ダメです!繋がりません!」

「隊長!」

「今度はなんだ!」

「怪獣の元に巨大な飛行物体が急接近しています!」

「飛行物体だと!?」

――エリアA-街中――

「ウッ…気を失っていたのか……とりあえず脱出しないと…」

ガルーダの登場口を無理やりこじ開け脱出し、周りの状況を確認する。だが…状況は絶望的だ。

「!」ドシンッと奴が近づいてくるのが分かる。

トライシューターを手に取り足音に近づいていく。

 

「(結局俺もあのバカと同じって訳か…)」

 

じっと手に汗が滲む。覚悟を決める。

道に飛び出し怪獣に銃を向け発砲しながら後退する。

 

「ギシャアアアアアアアア!」

 

咆哮を上げ踏み潰しに来る。

 

(「くっ!…ここで俺も終わりか……」)

 

そのとき。

怪獣を光の玉が怪獣を弾き飛ばし光の玉が巨大な人型へと変貌していく。

 

「あれは…!」

「ヘァッ!」

銀の体の上に赤と青の色。そして金のライン。

――ディレクションルーム――

一同がモニターに釘付けになっていた。

「ウル…トラ…マン…」

「あれが…」

「……」

 

始めて見るウルトラマンに驚愕する日佐人と茜。そして黙ったまま見つめる大吾。

――エリアA-街中――

「ギシャアアアアアアアア!」

 

ブレイブに威嚇弾を乱射する。

それを全て弾き飛ばし、走りだす。

 

「ハァッ!」

 

間合いに入り突きを入れる。間髪入れずどんどん攻撃する。

 

「ギシャアアアア!」

 

剛腕を振りかざし反撃する。

それを左腕で受け止め足刀《そくとう》蹴りが入る

 

「強い…」

 

その戦いを間近で見ている煉が呟く。

巨体と巨体がぶつかり合い取っ組み合いになる。その衝撃で吹き飛ばされそうな程だ。ウルトラマンが優勢かと思われた。その時、ほぼゼロ距離でヴォルカルスが熱線を発射しブレイブは吹き飛ばされる。

ピコン…ピコン…ピコン…と一定間隔でウルトラマンの胸から音が鳴る。

 

「資料に書いてあった時間制限か!」

 

と煉が小声嘆く。すると再びヴォルカルスの火山が赤くなり始めた。

 

「まずい!またアレを撃たれでもしたら!……させない!」

(「トライシューターで少しでも気を引くそれが今の俺にできる事だ。」)

 

大きい瞳が此方を睨みつけ身体がこっちを向き目標を自分に変えるのがわかる。

 

「今だ!ウルトラマン!」

「セァッ!」

 

と大きく頷き姿勢に入る。

ブレイブレスを横に引き両腕にエネルギーを貯める。

その後両手を十字に組み光線が放たれる。

 

「セァァァッ!」 ドォォォォオオンッ!

 

メビュームシュートに酷似した金色の光線『ブレイブシュート』がボルカルスに向けて放たれ、見事命中しゆっくりと倒れた後ボルカルスは大爆発を起こした。

 

「……ふぅ…」

 

思いも寄らない事の連続に気が抜けてしまった。

――ディレクションルーム――

「やったぁぁぁぁあ!」

「…よし!」

 

ハイタッチをしながらはしゃぐ茜と日佐人と静かに喜ぶ大吾。

――インナースペース――

「勝った…のか…」

「あぁ!私達の勝利だ!」

 

息はとっくに切れている。最終局面では殆ど気合いで戦っていた。

――エリアA-街中――

「ジュワッ!」

「そうだ!龍也は!」

 

飛び去って行く背中を見て思い出し駆け出す。

先程の場所に行くと溶岩弾が散乱している。

 

「(これじゃ…あいつは……もう……)」

 

と下唇を噛み締める。と、そこへ聞き覚えのある声と共にこちらに走ってくる見覚えのある男が走ってくる。

 

「おーい!煉さーん!」

「あいつ…!」

 

少しホッとしたのか表情が緩むがすぐさま元に戻しお互いに近づいていく。

 

「お前…生きていたとはな!」

「あのウルトラマン…ウルトラマンブレイブが助けてくれたんですよ。」

「ブレイブ?」

「あ…えっと…か、彼が自分で言ってたんですよ(汗」

「ふーん…そうか……ひとまず基地に戻って事後報告だな。」

「そうですね…あ!その前に…ちょっと……」

――ディレクションルーム――

「隊長!煉さんからの通信で龍也君…生きていたそうです!」

 

その報告を聞いたメンバー達は喜びの声を上げる。

 

「本当か!」

「今基地に向かっているそうです。」

「良かったぁ…」

 

日佐人は感動で泣いていた。

――エリアA-街中――

「ケンタ!もう!どこいってたのよ!」

「ごめんなさぁい…!」

 

二人とも泣きながら抱き合っている。

 

「隊員さん!ありがとうございました!」

とお辞儀されたので

「いえ!こちらは仕事を全うしたまでですから!」

と笑みで返した。

 

(「ブレイブ…もしかしたら僕達が出会ったのは運命だったのかもしれない。この光景を護るために。」)

(「そう…かもしれないな。」)

 

と言葉を交わしみんなを護るために戦うと改めて誓うのだった。

つづく。




この度は「ウルトラマンブレイブ」第一話運命の邂逅(かいこう)いかがだったでしょうか。多少なりとも楽しんで頂けたなら幸いです。この物語、実は2〜3年前ぐらいからプロット等を考えていまして。遂に!作品として出来たモノになっています。いや〜初めてこういう作品を作らせて頂きましたが、ほんっとに難しい(笑)改めて小説家の方や脚本家の方々は凄いなと改めて感じられました。特に戦闘シーンなんかは自分の語彙をフルに活用して作りまして(笑)
最後になりますが今後とも「ウルトラマンブレイブ」をよろしくお願いいたしますm(_ _)m

─アーカイブドキュメント─
「火山怪獣 ヴォルカルス」
身長:60m 体重:7万8000t 出身地:大岩山
ウルトラマンメビウスが去ってから20年ぶりに出現した怪獣で、エリアAの地底に20年以上前から生息していたと考えられている。そのゴツゴツとした体表は非常に固く10万度でも溶ける事は無い。また主食をマグマにしていて、食べたエネルギーを体の随所に点在する火山部から放出する火炎弾攻撃や腹部の一番巨大な火山部から放つ『焼灼ボルケーノバーン』を得意技とする。

【次回予告】
突如、次々と消える事件が多発。
それは我々人類に対する侵略か、それとも…
次回 第二話:「侵入者を穿て」


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第二話:侵入者を穿て

:侵入宇宙人 クルシオ星人 登場

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――町外れ-夜――

「はぁ…会社キツいなぁ……上司は面倒だし仕事量多いわで本当に…はぁ……ん?」

 

そこにわらび餅のような水状のモノが目の前にある。そのモノは男を誘うように廃屋に入っていく。

「…なんだ?あれ…」

 

怪しみながらもついて行く。

屋内には何も無い。

 

「(疲れてるのかな…)」

 

そう思い引き返そうとした瞬間足を何かに掴まれているかのような違和感がある事に気づく。

 

「え?……うわぁっ!」

 

下を見ると足を水状のモノが掴んでいる。

驚き転ぶ。逃げようにも足を引っ張られ逃げれない。自然と焦り判断が鈍る。

その隙に水状のモノが一気に男に侵入する。

男も必死に抵抗するが次第に乗っ取られていく。

朝になる頃には完全に乗っ取られたのだった……

――ディレクションルーム――

「最近、エリアF-3地区辺りで人が消えるという事件が多発しているという情報が入った。」

 

と大吾が厳しい表情で言う。

 

「人が…消えるの?」

「消えるというより別の場所で見つかる事が多いんだ。」

 

茜が尋ねた質問に答える様に日佐人が間に挟みモニターに表示し解説を始める。

 

「最初に消えたのがエリアFで見つかったのがエリアO。次にQそしてR。」

「どれもエリアは違えど隣接してるわね。」

 

と咲が言う。彼女はOXYの特捜班のメンバーであり青石家の令嬢。そしてメンバーの中でトライシューターの腕が一番と噂されている。

 

「そう。それも妙な事に全員が水状のモノを見てからの記憶が無いんだ。というわけで僕達はこの水状のモノが今回の主犯だと考えています。」

「そこで我々で二人一組でエリアFを調査して貰う。」

 

――町外れ-夜――

「とはいえどこで出たか分かんないし、エリアFも割と広いから見つかるか分かんないよね。」

「ですけど仕事ですし…」

 

と呆れながら捜索する咲にフォローするように龍也が言う。

 

「まぁ仕方ないか…さ!行くわよ!」

「あ、はい!」

 

徐々にエンジンが掛かる咲にホッとする龍也。

周りを確認しながら歩くが会社終わりのサラリーマンが歩いているだけだ。

(「龍也!あの男 人じゃ無いぞ!」)

 

その時たまたま横を通った男性にブレイブが反応する

 

「え!?」「どうかしたの?」

「いや…なんでもないです。(どういう事?見た目は普通だけど…)」

「(あいつ…人と何かが違う!それに鞄に何かある!)」

「あ、あの!」

 

ブレイブを信じ声をかける。男性は何も言わずに振り返る。

 

「鞄の中を見せて貰っても宜しいですか?」

「あんた突然何言ってるの!?」

「あの…流石にGUISでも無理です。会社の機密情報が入っているので。」

「…じゃあその機密情報を抜いて貰っても構いませんよ。」

「……」

 

表情を変えずに言う男にじりじりと詰め寄る。すると途端に走って逃げ始めた。

「待て!」

「ウソでしょ…」

 

後を追いかけながらトライシューターを打ち路地に追い込む。その姿を見て咲は少し引いていた。

 

(「よし!その先は!」)

「もう逃げられないぞ!」

「そうよ!」

 

男を行き止まりに追いつめる少しずつ近づいていく。

6メートル程の距離まで詰めたその時、突然高笑いを上げ始めた。

 

「……ックックック…ハッハッハ!!」

「!?」

「良いのか?この体はただの借り物だぞ?貴様らが私を打てばこの体の主は死ぬぞ?さぁ銃を下ろせ。」

 

驚く二人にソイツは体の主を人質に取り自分の安全を確保する。龍也と咲は渋々、銃を下げた。

 

「卑怯な真似を!」

「隙あり!さらばだ!」

「逃がさないわよ!」

 

そう言い残し中身が抜けマンションを飛び上がっていく、下から水状のモノを打つ。当たったかのようにも見えたが当たらない。

 

「大丈夫ですか!」

 

抜け殻となった男性を揺する。

反応は無いが息はある。すぐに救急車を呼び運ばれていくのを見届けた後、メモリガジェットが鳴り、大吾から撤収の指示が出る。

 

「一度戻って話をまとめる。基地に帰還してくれ。」

――ディレクションルーム――

「それで何か分かったか?」

 

大吾の質問に龍也は申し訳無さそうに答えた。

 

「恐らく今回の主犯と思われる者と鉢合わせて追いかけましたが乗っ取っている人を人質に取られ逃げられました…」

 

「それはどんな奴だったか覚えてる?」

「報告どうりのわらび餅のみたいな水状のモノでしたね。」日佐人の質問に次は咲が答えた。

「わらび餅かぁ」

想像しながら茜が言う。頭の中でわらび餅を食べてるんだろうな……なんて事を考えていると煉が口を開いた。

 

「だが判別の仕方がわからん以上どうする?」

 

沈黙する一同。

 

「そういえば龍也はどうやって見分けたの?」

 

咲が不思議そうに聞いてくる。馬鹿正直にウルトラマンブレイブに教えて貰いました!なんて言ったら正体がバレるどころか色々とダメだろう。

 

「え?えっと…オーラが……違った…的な…」

 

脳をフル回転させて言ったその一言は子供騙しにもならない様な幼稚な答えだった。それを途端隊長の表情が変わる。

「まさか…勘で疑ったとか言うんじゃないだろうな」

「それは…」 自然と背筋が伸びる。

「今回はたまたま当たったが今度同じ事をしてみろ!どんな事にも理由が必要なんだ!それを考えてから行動しろ!分かったか!!」

「はい…」

 

自室に戻りベッドに入るとブレイブが謝ってきた。

 

(「龍也…さっきは済まなかった…僕が余計な事をしたせいで……」)

「いや、僕は大丈夫だよ。怒って貰えるだけ、まだ見捨てられて無いんだからさ!でも…そうだなぁ……何か他の理由を見つけないと……そうだ!」

 

とある事を思い出し写真のフォルダーを開く。トライシューターにはカメラ機能がついておりその時の位置情報や相手をサーモグラフィーし体温を測ったり、正確な時間などを写真化し保存している事を思い出し、そこで色々チェックしていると体内温度が異常に外側が高く内側が異常に低くなっていた。

「これだ!」

ある事を見つけ出し、日佐人の居る研究室へと走り出した。

――研究室――

「日佐人!これ見てくれ!」

「急にどうしたの?」と眠い目をこすりながら言う。

「トライシューターのカメラ機能を、チェックしていた、奴は外側に熱を持ち内側にはあまり熱を持たないっていう事が分かったんだ!」

 

日佐人は驚きながらもすぐに作業に取り掛かりそれを龍也も手伝う。

……50分後……

メンバーが集められミーティングが行われていた。

 

「龍也が見つけてくれた情報によると奴は体の内部の温度が低く外側が高いんです!そこで!メモリガジェットにサーモグラフィーを導入して奴と人間を見分ける事が出来るようになりました!」

 

と日佐人は自慢げに説明していると大吾が龍也に近づいてくる。

「よく見つけ出してくれたな!これで奴らに一矢報いてやれる!!」

「はい!」

 

大吾の顔は優しく微笑んでいて、やっぱり人に褒められると嬉しいものだな。と再認識した。

全員のメモリガジェットにサーモグラフィー機能を搭載し調査に再び出る。

――町外れ-夕方――

ガジェットで体内温度を測りながら歩くが全くそんな反応は出てこない。

 

「やっぱり夜しか現れないのかしら。」

「どうなんでしょう…」

 

メモリガジェットをかざしながら咲が言ったのでそれを返し歩いていると、女性の表面温度が高く体内温度が異常に低い事に気がついた。咲に視線を送ると咲も気づいていたようで、他メンバーに通信を送り気づかれないように後を付ける。

その女性が廃屋の中に入って行ったのを確認し、外でメンバーが集まるのを待つ。

……10分後……

 

「よし。全員揃ったな。総員突撃準備は出来ているか?」

 

一同が頷く。気づけば夜になっていた。

321の隊長のハンドサインで突撃する。

――屋内-夜――

「動くな!GUYSだ!」

「どうしてここが!?……な〜んて。見つけられても問題は無い。それにこの体ももう必要無い。」

 

全員が銃口を向けるとソイツは服を脱ぎ捨てるかの如く体から飛び出す。その姿は一度見た時とは異なりちゃんとした人型になっていた。

 

「あれが本来の姿か…!貴様は何者で目的は何だ!」

 

驚きながらも大吾は落ち着いて相手に質問する。

 

「我々はクルシオ星人のマガト。我々の目的は1つ…この星への移住だよ。今の我々の星はほぼ死にかけの状態でな、この地球を新たな母星として一億の同胞達と共に住む事にしたのだ!」

「一億だって!?そんな事すれば、すぐに地球に住めなくなるぞ!?」と日佐人が驚いて言う。

「だから人の中に入って住むことにした。」

「あんた達の操り人形なんかになってたまるかっての〜!」

 

茜が本気で嫌がっている様子にマガドは少し不満げだったが、やはりまた突然笑い始める。

 

「ッフッフッフ…もう遅い!惑星からテレポートする準備は出来ている。後はあちらから来るだけだ!まずは貴様らを乗っ取ってくれるわ!」

 

そう言った矢先後ろの装置からゾロゾロと同じ奴らが出て指先からビーム弾を放ち始める。

 

「全員退避!」

「GIG!」

 

の掛け声と共に女性を連れ全員が障害物の背後に身を潜め銃撃戦が開始される。だが…

 

「どうなってる!攻撃が当たらないぞ!チッ!なら、これで!どうだ!!」

 

苛立つ煉は黄色のチェンバーに切り替えバスターブレッドを発射し直撃し腕が飛ぶがまた生えてくる。それを見た日佐人は飛んできた腕を調べ始める。

 

「そうか!分かったぞ!皆さん!奴らの体は96%が水で出来ているんです!」日佐人が叫ぶ。

「え〜!そんな〜!じゃあいつまで経っても攻撃が当たらないって事!?」

「そうか!だからあの時弾丸が当たらなかったんだ!」

 

落胆する茜、そして龍也は町外れの夜での事を思い出す。

 

「ですが奴らはその体を維持する為の装置が必要なんです!それがあのワープ装置です!アレを破壊すれば奴らは体を維持できず、ただの水になります!」

「私が装置を破壊するわ。」

「射撃に置いては咲の右に出る者はいない。咲、任せたぞ!総員!咲を援護しろ!」

「GIG!」

 

トライガーショットのグリップガードを上げて銃身の長いロングショット形態に変形させ、咲が狙いを定める。

 

「今度は外さない!!」

 

発射されたエネルギー弾は見事装置を貫きバチバチと音を立てて爆発した。

 

「グォオオオオオオ!」

 

爆発した衝撃で吹き飛ばされたクルシオ星人がパシャッと音を立て次々と水になっていく。ただ一体を残して。

 

「ハァッ…ハァッ…貴様らぁぁぁあ!」

 

マガトは半分以上が水になりかけている、例えるならばスライム状態…と言えるだろうか。

 

「こうなれば…フンッ!我が同胞達よ我に力を!」

 

自分の胸を手で貫きコアを取り出し上に掲げると周りの水がマガトに集まり巨大化していく。

 

「全員脱出!」

 

と大吾が叫び、龍也が倒れた女性も連れて外に出ていく。

――屋外-夜――

外に出て建物の方を見ると約52m位まで巨大化したマガトの姿があった。理性が残っていないのか咆哮を上げながら指先から光弾を乱射している。

 

「ヴォォォォオ!!」

(「このままじゃ街に被害が!」)

「絶対に奴を街まで行かせるな!」

「GIG!」

 

全員が別々に別れ射撃を開始するがクルシオ星人の進撃は止まらない。

 

「こっちには興味も無いって言うの!?」

「とにかく攻撃を続けろ!そうすればちょっとは動きが止まる!」嘆く咲に煉が言う。

 

皆が射撃をしているその隙に女性を安全な場所に避難させた後物陰に龍也が隠れる。

 

「行くぞ!ブレイブ!」(「あぁ!」)

 

ウルトラストーンを起動しブレイブレスにセット。クリスタルサークルを回転させ右腕にエネルギーを貯め一気に突き上げる。

 

「ブレイブゥゥゥウ!」

進撃するクルシオ星人の前に光と共にその巨体が現れる。生で見るブレイブに興奮する日佐人と茜。

 

「ブレイブだ!」

「生ブレイブキターー!」

「あれが…資料に書いてあった、ウルトラマン…」

 

目の前でら起こった信じられない光景に驚きで口元を抑える咲。

 

「シェアッ!」

「ヴォォォォオ!!」

 

構えを取るとすぐに容赦なく光弾を放ってくる。それを側転で避けてチョップを入れ隙を作りブレイブシュートを放つ。が、その瞬間二体に分裂して放った光弾をモロに受けてしまう。

 

「ジェァァッ!」

「ウォォォオ…!」

 

二体がじりじり詰め寄ってくる。ブレイブも膝をつき攻撃の構えをとる。

左のクルシオ星人の大振りな攻撃を前転で避け二体に蹴りを入れる。構えを整え直したのと同時にカラータイマーが鳴り出した。

 

「シェァ……」

「このままじゃいずれウルトラマンだってやられる!何か方法は無いのか!」と大吾が叫ぶ。

「とは言っても…そうだ!隊長!メテオールを使いましょう!メテオール弾で奴を凍らせれば!」

「メテオールか…分かった!」

 

日佐人の立案に賛同する一同はメテオールショットの準備を始め、日佐人がブレイブに叫んだ。

 

「ブレイブ!奴らを一つにまとめてくれ!」

「セェアッ!」

 

頷き後ろのクルシオ星人を蹴り飛ばし前のもう一体に飛び掛り、後ろに投げ飛ばす。すると分裂していた二体が1つの身体に戻る。

 

「グウォォォオ…」

 

無理やり一つにされた為意識がままならないようだ。

 

「隊長!」「メテオール解禁!」「GIG!」

 

全員が狙いを定め、銃口から冷凍光線が発射される。一瞬にしてクルシオ星人が凍り、咲が叫んだ

 

「今よ!ウルトラマンブレイブ!」

 

ブレイブレスを横に引き両腕にエネルギーを貯める。その後両手を十字に組み光線が放たれ、クルシオ星人に直撃し粉砕される。

 

「シェアッッ!!」

「やったぁ!!」

「よし!」

「皆良くやってくれた!」

 

咲と茜が飛び跳ねながら喜び、日佐人もガッツポーズを組む。「シュワッ!」夜空に飛んで行くブレイブ。

 

「よぉし!今回の件みんな本当に良くやってくれた。という訳で俺の自腹で焼肉を奢ってやる!」と大吾

「マジですか!?」

「やったね!咲ちゃん!」

「良いんですか?そんな事して。」

「あぁ!勿論食ってくれ!」

 

日佐人や茜達が喜び合っているととそこに龍也が走ってくる。

 

「何の話してたんです?」

「隊長が焼肉奢ってくれるんだって!」

 

テンションの上がりきっている茜を見て龍也もそれにつられてテンションが上がってしまった。

 

「え!本当ですか!」

「……っていうかあんたは何処行ってたのよ」

「さっきの女性を安全な場所まで避難させていたんです。」

 

咲に痛い所を突かれるが変身する前にしていた事が吉と出た。

 

「今の時間じゃ空いてないだろうから明日の夜で!」

「おいおい、俺の自腹なんだからちょっとは気を使ってくれよ?」

 

勝手に話を進める茜に大吾が呆れながら言った。

それを聞き笑いながら基地に戻って行くのだった。

 

 

――町外れ-夜――

コツコツと戦場跡地を歩く男。

 

「……」

 

何も言わずにバラバラになった氷を浮かし、ボトルに入れる。男はニヤリと笑い影の中に消えていった…

 

つづく。




第二話:侵入者を穿ていかがだったでしょうか?今回も少しだけでも面白いと思ってくれたなら幸いです。
という訳で今回初登場した青石 咲(アオイシ・サキ)なんですけども。何故1話に登場して無かったんだ!と言われますと…彼女は前回別のエリアの避難誘導をしていたからです!(設定上)……はい、そうです。書いてたら登場出来なかったキャラです。ごめんなさい。そして最後のは一体…?
次回から遂にウルトラマンブレイブの本格的な「敵」が登場致しますので楽しみに待って頂けたらなと思います。という訳でまた次回のあとがきでお会いしましょう!リクソンでした!

──アーカイブドキュメント──
「侵入宇宙人 クルシオ星人」
身長:0.7m〜52m 体重:63㌔〜2万t 出身地:クルシオ星
元々の容姿はわらび餅とスライムの間の様な姿をしているが母性が崩壊し移住の為に地球に来たが地球の環境に耐える事が出来なかった為、人体に侵入しその体の主導権を奪うようになった。また操られている間の記憶は無い。集合巨大化すると見た目と能力に劇的な変化が起こり見た目はチェーン星人の様な姿に、能力に関しては分身能力や光弾攻撃が強化された。

【次回予告】
多発する不可解な地震を調査すべく大阪に向かったGUYSのメンバー達。
龍也は調査の途中で謎の男に出会う。その男の正体とは…そして地震の原因とは!?
次回 第三話:よみがえる怪獣殿下


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第三話:よみがえる怪獣殿下

:古代怪獣 ゴモラ 同化生命体 ネメシス

古代同化怪獣 ゴモラ-ネメシス- 登場

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

――光の国-ウルトラコロセウム――

ウルトラコロセウム。そこは他のウルトラマン達が組み手を取りお互いに高め合う闘技場。

 

「セェアッ!」

 

勢いよく走り拳を振るう。それを軽くいなしメビウスは腹部に突きを入れギリギリの所で止める。

 

「フッ!そんなものでは僕には到底及ばないぞブレイブ!」

「クッ!まだまだ行きますよ!メビウス先生!」

「来い!ブレイブ!」…………………………

――大阪府内-地底深く――

「ギシャァァァア!!」

 

古代怪獣ゴモラが目を覚まし咆哮をあげる。その前にはフードを被った黒い影が。

 

「…フッフッフ…良いですよ…もっと怒るのです!」

 

そう言って黒い影はニヤリと笑った。

――ディレクションルーム――

「最近大阪で地震多いですよね〜」

「なんでかしら?」

 

一週間での大阪での地震は20を越えていたのだった。

茜が背を伸ばしながら咲と話していると大吾が会議から帰ってくる。

 

「その話でさっき国と府から直々に調査の依頼が来た。」

「明らかに地震多いですしね。」

「それで詳しい情報は?」

 

龍也が反応し、煉が尋ねる。すると残念そうに大吾は詳細を話し出した。

 

「分かっているのは震源地が大阪市内付近での地震が多いという事だけだ。」

「まだ情報があるだけマシ…ですか…でもなぁ……」

「これだけの数だ、怪獣が関わってれば国もこっちに調査をまわすだろ。」

 

日佐人の発言に煉はハッとため息をつきながら言い放つ。

 

「ガルーダとバスターの整備も終了している。煉と

龍也はガルーダで、咲と日佐人はバスターで大阪に向かってくれ。」

「GIG!」「お土産待ってますからね!」

 

キラキラした目で言う茜を少し呆れる大吾。

――大阪府-市内-昼――

「とはいえ、ほとんどが住宅地だったりビル群だから上からは特に何も無さそうだな。」

「じゃ、モンスタースキャンを開始します。」

 

龍也はモンスタースキャンを開始し地下までの状況を調べると何も反応は無い。

 

「特に…反応は…無いですね…」

「ホントに偶然だっただけだったのかしら?」

 

日佐人は基地に情報を送る。

 

「とりあえず地上から見て何か無いか調べてくれ。」

 

大吾からの命令を受け着陸し、メモリガジェットで反応を見ながら歩く。すると龍也のモンスタースキャン一瞬反応した気がした。

 

「?…今、一瞬……」

「どうかしたの?」

「いや…見間違ったのかな…」

 

何処か引っかかるが、ひとまず基地に特に何も無かったと報告を送る。

 

「この後どうします?」

「そうだな…ここらの住人に話を聞いてみるとするか。」

「GIG!」

 

日佐人の問いかけに、少し煉が悩み言った四人が別れ住人に話を聞いて回る。

――とある住宅-昼――

「あの〜ここら辺で最近何か無いですか?」

「最近は地震が多いっすね…そういえば六甲山にハイキングに行った時に噂で洞窟から巨大な卵が出た〜!って言って話題になってましたね!」

「情報提供ありがとうございました!」

 

と若い少年が言う。龍也は礼をして別の民家へ場所を移した。

 

――別の民家-昼――

「あの…ここら辺、最近地震多いじゃないですか、それについて調査してるんですけど何か知りませんか?」

 

龍也が老人に尋ねると老人は腰を重々しく持ち上げ、特徴的な金歯をチラつかせて話し出した。

 

「あれは…ゴモラ様の怒りだよ。」

「ゴモラ様ってあの…ゴモラですか?」

「あぁ!我々の前に大地を裂き、現れた地の神。」

「は、はぁ…」

「ゴモラ様についてなら大阪歴史館で色々見れる。寄っていくといい何かある筈だよ。」

――住宅街-昼――

「歴史館か…寄ってみるか…」

 

話を終え歩いていると後ろから声をかけられ龍也は回れ右をし振り向いた。そこに立っていたのはパーカーを被り、その上にコートを着た怪しい男。見覚えの無い男に龍也は疑問を抱き尋ねる。

 

「ねぇ…お兄さん。」

「えーと…どちら様でしょうか?」

「私は魔術師。得意な事は物を隠すことと魔法さ。でもねぇ…さっき一瞬だけ失敗しちゃってさ。魔術師の名が泣くよ。全く。」

 

男はニヤリと笑う。その笑みは悪魔の様だった。

身体が拒絶反応を起こしたのかどうかは分からないが手が少し震え、唾を飲む。

 

「えっと…からかってるようなら僕もう用事があるんで行きますね。」

「行ってっしゃい。…ッフッフッフ…楽しくなりそうだ…」

 

男は自分の唇をペロリと舐めた。

――大阪歴史館――

「ゴモラは元々万博に展示する予定だったのか。」

 

資料を見ながら龍也が言う。ドキュメントSSSPの記録でサラッと見た事はあったがここまでしっかり内容を読むのは初めてだ。

古代怪獣ゴモラ。

身長40m 体重2万㌧ 出身地ジョンスン島

ゴモラザウルスの生き残り。

ジェットビートルに運ばれる途中に目覚め暴れた為

六甲山に落とされる。その後千里丘陵に地中を移動して出現。一度はウルトラマンが逃した…

 

「あのウルトラマンでもか…ん?大阪市内に住み着き…」(「今、一瞬…」)

(「巨大な卵が出た〜!って」)

(「ゴモラ様の怒りだよ」)

(「得意な事は物を隠すことと魔法さ。でもねぇ…

さっき一瞬だけ失敗しちゃってさ。」)

 

点と点が繋がりハッとする。

――住宅街-昼――

さっき男と会った場所に戻り周りを見回すが居ない。

そしてさっき会った筈が顔を全く覚えていなかった事に気づく。

 

「(ブレイブ!奴と会った時お前にはどう見えた!?)」

「(すまない…僕も龍也と同じように奴の事を思い出す事が出来ないんだ。だが奴はの人間の反応をしていた…気がする…)」

「くそ!記憶まで隠せるってのか!」

 

その時再び地震が起こる。地面が引き裂かれ中、咆哮と共に古代怪獣ゴモラが現れた!

 

「まさか!!」

「ギシャァァァァア!!」

――街中-昼――

「ゴモラ!?」

「全員ガンストライカーに集合!」

 

日佐人が驚いていると全員に煉の通信が入る。

 

「ふぉんないひなひゆはれへも!(そんないきなりいわれても!)」たこ焼きを頬張りながら咲が言った。

 

「煉さん!近隣住人の避難誘導をしていてそちらに行けそうにありません!頼みます!」

「仕方ない!三人で食い止めるぞ!」

「GIG!」

「頼むぞ!みんな!」

 

大吾がディレクションルームから鼓舞する。

――街中-昼――

ゴモラが進撃しビルに突進し街を蹂躙していく。

マンションを破壊しようとするゴモラの気を向けさせる為ガルーダの両翼からウイングレットブラスターを発射。作戦通りゴモラが此方に標的を変え咆哮を上げる。

 

「シャァウゥゥウ!!」

「二機に別れて攻撃するぞ!」「GIG!」

 

ゴモラが尻尾で叩き落とそうとするが届かない。

ガンストライカーが前後に別れガンガルーダとガンバスターに分離し攻撃が行われる。

 

「ウイングレットブラスター!」「バリアブルパルサー!」

 

突然動きが止まりゴモラのツノにエネルギーが溜まっていく。

 

「煉さん!咲さん!ゴモラのツノに振動エネルギーがどんどん溜まっていってます!」

 

突然のエネルギー上昇を観測し、日佐人が叫ぶ。

するとそれが解放され鼻の角から振動波が一気に放出される。突然の事にガルーダは避けれたもののバスターは右翼をかすりエンジン出力が低下し落下を始める。そこにゴモラが突進をしてくる。

――住宅街-昼――

「!」物陰に隠れ、ウルトラストーンを起動しブレイブレスにセット。クリスタルサークルを回転させ右腕にエネルギーを貯め一気に突き上げる。

 

「ブレイブゥゥゥ!!」

――街中-昼――

空中に飛びあがり、数回宙返りしてから地上の敵に強烈な蹴りをゴモラに決める。ウルトラマンタロウから受け継いだスワローキックだ。落下中のガンバスターをブレイブが受け止め、離れた場所に移動して地面にそっと置いた。

 

「ありがとう!ウルトラマン!」

「ブレイブ!助かりました!」

日佐人と咲が感謝の意を伝えると小さく頷きゴモラの方を見て走り出した。

 

「シェアッ!」

「シャァウゥゥウ!」

 

お互いに突進し衝突する事で地面の瓦礫が舞う。ゴモラのフィジカルに押し負けブレイブが押し倒される。すぐに起き上がり反撃するも攻撃を受け付けない。

煉がウイングレットブラスターで援護するが強固な皮膚には効いていないようにみえる。

すると、ゴモラの顔に砲撃がされ一瞬怯む。

視線の先にはガンバスターが戦車に変形し砲撃していた。

 

「こっちも忘れないでくれるかしら!」

「キシャァァアァア!!」

「シェアッ!」

 

ゴモラはバスターを追いかけ始め、追いかけさせないように尻尾を掴み引っ張る。…が、ゴモラはそれを待っていたかのようにその巨体を活かし逆にウルトラマンを振り回しビルに叩きつけた。ゴォォンと音を立てビルが崩れる。瓦礫の下敷きになっているブレイブを睨みつけ尻尾で殴打し痛め付ける。カラータイマーも鳴り出し、いよいよピンチだ。

――インナースペース――

「このままじゃマズイ!何かゴモラに負けない位の力があれば…」

 

龍也が肩で息をしながら願う姿にブレイブは厳しい表情をしている様に見えた。

 

「ブレイブ!何かあるのか!?」

「あるにはあるがいまの君には使いこなせない。」

「あるならやろう!やらないで後悔するよりやって後悔した方が良いだろ!」

「…分かった。だが危険だと判断すればすぐに辞めるからな!光のウルトラストーンを火のウルトラストーンにチェンジするんだ!」

 

火のウルトラストーンを起動しブレイブレスにセットした矢先、足元に火のエレメントが現れ身体を火柱で包まれる…

 

「なんだ…これ…?うぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"」

 

熱い。ものすごく熱い。

地獄の炎で燃やされているのではないかと錯覚する程の熱さだ。

だがとてつもないエネルギーが体に流れ込んで来ている事も分かる。

――街中――

ゴモラの尻尾攻撃をふらつきながらも右腕で受け止め立ち上がり胸の前で十字を組む。

ゴモラが超振動波を放つ準備を始める。

 

「今度、超振動波を打たれればウルトラマンだって!」

 

日佐人が叫んだその直後、大吾がブリーディングルームから叫んだ。

 

「メテオール解禁!」

「GIG!」

「パーミッショントゥシフト!マニューバ!」

 

ガンガルーダとガンバスターがマニューバモードへと移行する。

 

「ストライク・フルバースト!!」

「アトリビュートキャノン!!」

 

ガルーダの全兵装から攻撃が発射されバスターの砲台から電粒子砲が放たれる。

それでもゴモラのチャージは止まらない。

――インナースペース――

「これ以上は耐えられない!」

「う"ぅ"ぅ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"!!」

 

とブレイブが強制的に外そうとした腕を掴み、まとわりついた火炎を身体の中にねじ込んでいく。

 

「そんな…無茶はやめろ!!」

「無茶じゃない!僕が戦わないといけないんだ!」

――街中――

遂にゴモラの角から超振動波が放たれ全員がもうダメかと思ったその時!

ブレイブが衝撃波を放ち超振動波を相殺し身体を火柱が包む。そして身体がより筋肉質になりカラータイマーに火が入り青い体表部分が赤に変わり

『ウルトラマンブレイブ-フレイムフィスト-』に転身する。

 

「色が変わった!?」

 

「ジ"ェ"ア"ッッ!!」

 

驚く日佐人を横目に勢い良く突進し今度はゴモラに押し勝ち跳ね除ける。怯むゴモラに間髪入れず連打し持ち上げ、投げる。今度は巨大な尻尾を振り回し胸に打ちつけてくるが尻尾を掴みジャイアントスゥイングで投げ飛ばす。そしてブレイブレスを横に引き両手を対になるように弧を描き右脚を上げる。その後両手押し出す光線(フィストフレイムバスター)を放つ。

ゴモラが対抗して超振動波で受け止めた後よろめきながらも突進してくる。

ブレイブはクリスタルサークルを回転させ右腕にエネルギーを貯め向かって来るのを構えて待つ。

ゴモラが10m位まで近づいてきたその一瞬。

ブレイブが最高火力に達した拳を突き出しゴモラの腹部に直撃する…が突き出した時には転身が解除され元の姿に戻っておりゴモラの突進に押し倒される。

 

「な、なんでだ…!でも!この距離なら!」

 

ゼロ距離で腕を十字に組みスペシウム光線を放ちゴモラを引き剥がし粉砕させるが片膝をつき前を見つめる。

 

「ギリギリの戦いだった……」

「(龍也!何か来るぞ!)」

――ディレクションルーム――

「やった!ブレイブが勝った!!」

 

二人が歓喜していると歓喜の空気で満ち溢れていた場に警報音がなり響く。

 

「どうした!?」

「えっ!?謎の飛行物体がゴモラに急接近しています!!」

「飛行物体だと…?」

――街中――

「あれは…ネメシス…!」

「ネメシス?」龍也が聞く。

「宇宙警備隊の中でも、噂されていた生命体だ…!!

確か……マズイ!奴をゴモラに近寄らせるな!!」

 

そのネメシスが此方に向かって来るのが分かる。

それは生物とは到底言えない見た目でブレイブよりもゴモラ目掛けて飛んできている事も分かる。

 

「なんだ…あいつは……」

 

煉や他の二人も唖然としている。

ネメシスはゴモラに飛びつきまとわりながらグチャグチャと音を立てて形を整形していく。

完全に形になったソレは左側の角だけが長く肘と膝から鋭く突起物が生えていて腕や脚も重厚になっていた。一番の違いは全体的に黒紫掛り目が紅眼になっている事だ。まさにゴモラでありながらゴモラでない見た目をしていた。

 

「ジュワ…」

 

必死に立ち上がり構える。ピコピコピコピコとカラータイマーの間隔もどんどん短く早くなっていきもはや瀕死寸前のように見える。

「グ"ウ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"オ"!!!」

 

咆哮お上げ此方を睨みつける。

最後の力を振り絞り、ブレイブがブレイブシュートを放つ。顔面に直撃し顔の一部が粉砕されるがグニョンとすぐに再生し両角に黒紫色のエネルギーが溜まりお返しかのごとく超振動波が最高火力で放出される。

瀕死寸前のブレイブに避ける事も防御出来る筈も無く直撃し20m位吹き飛び動かなくなる。

 

「ウソ…」

 

口を抑える咲。そして全員がその圧倒的な力に衝撃を受け見ている事しか出来ない。

ブレイブも目の光が消え光の粒子となり消える。

変身が解除された龍也も瓦礫の真ん中で意識が遠のいて行く。

 

「僕が…みんなを……まも……るんだ…………」

掠れる意識の中で龍也はそう呟いた。

つづく




お世話になっておりますリクソンです。第三話「よみがえる怪獣殿下」いかがだったでしょうか?少しでも面白いと思って頂けたら幸いです。
という訳で、ネメシスという敵が新たに登場した訳ですが、ネメシスのイメージ的にはドロっとした感じで吸収した怪獣の特徴が禍々しいものとなり更に破壊されても一瞬で元に戻るとかいうヤバいやつです。ブレイブやOXYのメンバー達はネメシスに打ち勝てるのか?乞うご期待です!

─アーカイブドキュメント─
「古代怪獣 ゴモラ」
身長:40m 体重:2万t 出身地:六甲山-地底-
SSSPにて発見、駆除されたゴモラの子孫とされる個体。恐竜の生き残りとされ学名は『ゴモラザウルス』。
六甲山の地下にて何者かがゴモラを目覚めさせ地上に出現させた。その目覚めの段階が大阪での地震の正体であったと後に解明された。

「同化生命体 ネメシス」
身長:20m〜80m 体重:不明 出身地:不明
黒紫色でブヨブヨとしたスライムのような見た目。
ブヨブヨとしているが液化する事もでき、どんな隙間にも入る事ができる。そんな感じだが実は感情があるとか無いとか…また、 様々な生物に取り付き吸収した後その怪獣の身体を元に自分の身体を作りだす。その身体はネメシスの細胞によって超強化され超自然治癒能力も持っており細胞に遺伝情報などその怪獣の全てが記録される。

【次回予告】
ネメシスの攻撃を受け傷を負った龍也。回復が待たれる中ブレイブは龍也の身を案じ火のウルトラストーンと水のウルトラストーンを回収する。
だがネメシスに勝つには火のウルトラストーンを使うしかないと考える龍也はブレイブに修行を頼み修行を終えれば使って良いと約束し……
次回 第四話:「爆誕!火炎の一撃!」


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第四話:爆誕!火炎の一撃!

:同化生命体 ネメシス

同化古代怪獣 ゴモラ-ネメシス- 登場

―――――――――――――――――――――

周りが燃え盛る平野に龍也が立っている。

 

「ここは……」

 

周りには自分以外に人が居ない。

突如、怪獣の咆哮が聞こえ怪獣が目の前から現れる。変身しようとするも身体を動かす事が出来ない。

 

「ギシャァァア!!」

 

咆哮を上げながら平野を焦がしてまわる。

 

「シェアッ!」

 

聞き覚えのある声がする。

 

「ブレイブ!?ブレイブはさっきまで僕と…」

 

そこでは壮絶な戦いが繰り広げられるが若干ブレイブがいつもの冷静さを欠いているように見えた…………

――医務室――

「……っハッ!」

 

夢だったのかと気づく。時計を見ると午後7時を回っていた。すると医務室の扉が開き茜が入ってくる。

 

「よかった…目覚めたのね!」

 

いつもの元気さに安堵した直後ゴモラの事を思い出す。

「怪獣は!?」

 

茜によると怪獣はすぐに飛んでいったらしい。その後ブレイブからの通信がありあの黒紫の物体はネメシスという事が分かり奴が色んな生命体を吸収する。という事が分かったとの事だった。

 

「ブレイブから……」

「目覚めたのね。」

「リツコさん。お陰様で。」

 

医師の嘉山 律子が入ってくる。感謝して動こうとすると胸の辺りが痛む。

 

「まだ動いちゃダメよ。傷が開くわ、傷は癒えて来ているからもう少しだけそこに居てね。」

「はい…」

「それじゃあ私皆に目が覚めたって言ってくるね!」

「私も用事があるから戻るわ。何かあったら呼んでちょうだい。」

 

と二人とも行ってしまう。する事もなく眠っていると、いきなりブレイブに呼ばれた。

 

「(龍也。ウルトラストーンを起動してくれ。)」

「(ブレイブ!?大丈夫なのか!?)」

「(それも含めて中で二つ話す事がある。)」

 

言われるがままにウルトラストーンを起動しインナースペースに突入する。

――インナースペース――

「それで大丈夫なのか!?」

 

ブレイブが険しい表情で話し始める。

 

「僕の身体は想像以上にダメージを負っている。だが心配する事は無い、既に順調に回復してきている。」

「そうか!なら良かっ…」

 

言いかけた所を遮られた。

 

「二つ目は君に一つ頼みがあるんだ。」

「頼み?」

「君はまだ戦闘経験が浅い。今のままでは火と水の、どちらも使いこなす事は出来ないだろう。だから火のウルトラストーンと水のウルトラストーンを君が成長するまで回収させてくれないか。それに、君の身体も大切だ。」

「でも!成長するまで待ってたら、どれだけの被害が出るか分からない!それに…みんなを護る為なら僕の身体なんて…!」

「馬鹿な事を言うな!君があの力を望む事も分かる。だが力を求め過ぎればいずれ自分自身をも飲み込んでしまうかもしれない。」

「そんな…」下唇を噛む。

「すまないが回収させて貰う。」

 

ホルダーから火と水のウルトラストーンが消え光のウルトラストーンだけが残る。

 

「(そうさ…僕は戦闘経験なんて殆ど無い。けど……僕がもしあの力を使いこなせる事が出来たなら…どれだけの人を護る事が出来るんだろう…)」

「僕が成長したら…使いこなせる事が出来るんでだな?……それなら…ブレイブ!僕を鍛えてくれ!」龍也がブレイブを見て言うとブレイブは少し驚き言う。

「……かなり厳しい物になるが…良いんだな?」

「勿論だ!」

――ディレクションルーム――

「龍也の奴目覚めたんだって?」

「隊長が龍也の回復も込めて休暇をとらせたんだって」

 

日佐人と煉は将棋を挿しながら話している。一方で茜と咲は一緒にファッション雑誌を読んでいた。

 

「何処かに行くって言ってたけど…何処だろ?」

「さぁ?流石に寝てるんじゃない?」

「どうだろ?」

 

日佐人達が話していた…

――とある山岳-早朝-――

休暇を貰った夜に用意をし山へ登り山頂の下辺りで丸太を紐に括り付け振り子にし拳を突き出していた。

右手に全神経を注ぎ丸太を突く。が丸太は傷1つ付いていない。

 

「はぁぁぁぁ…ハッ!」

「(そんなものじゃまだまだ使いこなせないぞ!)」

「まだまだァ!」

 

喝を入れられて立ち上がるが突くが、丸太は更に早く動き胸に打ちつけられ倒される。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…まだ…まだ………」

 

昨日の夜からぶっ通しで特訓を続けている為、既に体力は限界に達しもはや気力で立っている程だった。

 

「(やはりこれではダメだな…休憩に入ろう。)」

「そんな!僕は…まだ!」

「(休憩を摂ることも大事な特訓の一つだぞ。それに次からは別の場所に移動する。)」

「分かった…」

……5分後……

「それで…何をするんだ?」

「(これだ)」

「え?」

 

そういうと地面から岩が浮かび容赦なく岩がこちらに飛んでくる。

 

「あぶなっ!何するんだいきなり!」

「(龍也。今のとさっきので違うのはなんだ?)」

「えっと…」詰まっているとブレイブが答えた。

「(正解はこの丸太に君を憎しみ突き刺す心が有るか無いかだ。今度からはこれを不規則に飛ばす。それを君に破壊してもらう。)」

――とある山岳の道――

走る。とにかく早く。岩は躊躇なく体目掛けて飛んでくる。

 

「(逃げてるだけじゃ何も変わらないぞ。)」

「逃げるなって…こんなの逃げるしか無いだろ!」

 

岩が地面に激突し土が舞う。勇気を振り絞り後ろを向き飛んで来た岩に突きを入れる。ジーンと滲み手を振り痛みを飛ばす。

 

「痛ってぇ!」

「(さっ!まだまだ行くぞ!)」

「クッ…あぁ!やってやる!」

 

木の間から禍々しい剣を持った男が見つめている。

男は何も言わずに立ち去って行った……

段々と日がのぼり太陽も真上まであがり正午を迎える中、瞳を閉じ精神を統一する龍也。

 

「(見るんじゃない…感じるんだ!)」

 

(感じる…)頭上に落ちてきた木を後ろにステップし避け右脚で蹴り飛ばす。

 

「…出来た!」

「(よし!着実に出来てきているな…次行くぞ!)」

 

少しづつではあるが難題をこなしていく龍也。

 

「さぁ…来い!」

 

岩が浮かび此方に飛んで来る。一つ一つ捌きながら的確に破壊していく。

……4時間前……

「弱点?」

 

突然ブレイブからのアドバイスに疑問を抱き尋ねる。

 

「(あぁ。どんなものにでも弱点はある。それは無機物だろうと関係ない。正確に弱点を狙えば壊す事なんて容易なんだ。)」

………………………………………………

「そこだ!ハァッ!」

 

後ろからの岩も難無く砕く。長きに渡り続いた苦しい修行もいよいよ終わりに近づいていた。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…まだ僕は使いこなせないか?」

「(…この短時間でここまで来れたのはかなりの出来だ。正直僕は見くびっていたかもしれない。申し訳無かった。)」

「そんな事ないさ。僕がここまで来れたのはブレイブが僕を信じて訓練を続けてくれたからだよ。」と龍也

「(ストーンに関してはもう使いこなせるだろう。)」

「ホントか!?」

 

ガッツポーズを組み喜んでいると森から禍々しい剣を持った男が現れる。

 

「!?…貴様は誰だ!」

「俺の名はメタメレイア……ウルトラマン…貴様を倒す者だ。」

(「こいつ…僕がブレイブだって事を知ってる!」)

 

近づこうとすると木の枝の幹が鋭くなり猛スピードで飛んでくる。ステップで避けながら枝を掴む。修行を積んでいなければ確実に胸に刺さっていただろう。

メタメレイアは何も言わずに立ち去ろうとする。

 

「待て!」

「俺に構っている暇などあるのか?」

 

まるで未来が見えているかの如く言ったその直後メモリガジェットに通信が入る。

 

「はい。こちら龍也です!」

「獅子瞳山《ししどやま》にネメシスが現れた至急向かってくれ!」と大悟。

「GIG!」

 

通信を切り、居た方向を再び見る頃にはその姿は無かった。

――獅子瞳山――

「グ"ウ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"オ"!!」

 

ズシン…ズシン…とその巨体が森を踏み潰しながら進む。

そこにガンガルーダとガンバスターの2機が到着する。

 

「これ以上好き勝手やられてたまるかっての!」

「ガンガルーダ攻撃を開始します。」

 

煉と咲が同時攻撃を繰り出す。

攻撃を喰らったゴモラ-ネメシス-は2機に目線が動き爪から斬撃を飛ばし牽制する。

それをサラりと避けながらも攻撃する姿は全盛期のGUYSにも劣らないものだった。

更にガルーダはストライクミサイル、バスターはダブルガンミサイルを発射し進行を食い止める。

 

「グ"ウ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"オ"!!」

 

ゴモラは咆哮上げた後、尻尾を伸ばしガンガルーダに巻き付ける。

ガコンと鈍い音がなりコックピットの後ろから火花があがる。

 

「くっ…!」

 

エンジンを最大出力で駆動させるも抜け出す事が出来ない。と、その時眩い光と共に光の剣が尻尾を断ち切りガルーダに巻き付いた尻尾を取り除く。

「ブレイブ…感謝する…。」銀色と赤の戦士の顔がこちらを見て深く頷く。機体をホバリングし中に浮かべ戦闘に復帰する。

 

「グルォォォォオ!!」

「セェァッ!!」

 

ゴモラが叫び突進してくる。後ろ回し蹴りで突進を止め腹を殴る。

 

「ハァァア!!」

「グォォォォォオ!」

 

怯む様子は無く強靭な右腕を振り下ろす。それを受け止めアッパーを入れ更に肘打ちを打ち込む。

 

「グォォォォォオ!!」

 

ゴモラも引けを取らずに尻尾による連続突き刺し攻撃をしダメージを与える。

するとゴモラが尻尾を再び伸ばしブレイブに強く巻き付け角にエネルギーを貯め出す。

 

「セァァァッ…!」

「まずい!このままじゃやられる!」咲が嘆く。

――ディレクションルーム――

「隊長!ゴモラがあの体制に入った時は殆どをチャージする事に集中をしています!奴の集中を削げればチャージを止めることが出来ると考えられます!」

 

日佐人が大吾に言うと大吾は頷く。

 

「メテオール解禁!」

――獅子瞳山――

2機がマニューバーモードに移行する。

 

「ブリンガーファンターンオン!!」

 

荷電粒子ハリケーンを発動させブレイブをゴモラから解き放つ。ゴモラはハリケーンに巻き込まれ中に投げ飛ばされ地に叩きつけられる。

 

「ストライク・フルバースト、ファイア!!」

 

その隙を狙い煉が全弾発射し命中させる。

マニューバーモードからクルーズモードに戻る。

煙の中から出てきたゴモラは顔の形が更に禍々しくなり、背中からも太い突起物が四本生えていた。

 

「これでも…倒せないのかよ……」

 

と煉が唾を飲む。背中の突起物が赤紫色に光った直後、角から超振動波をガルーダ達に放つ。

「(危ない!)」

「セァァァアッ!!」

 

前転し背中で受ける。エネルギーが少なくなり、カラータイマーが鳴り出した!片膝をつき肩で息をする。

ゴモラがトドメを刺しに近づく。

「させるか…!」

煉がウイングレットブラスターを放つがゴモラは止まることなく突き進む。

――インナースペース――

「ハァ…ハァ…ハァ…」

「ブレイブ…アレを使うぞ!」

「(あぁ!今の君になら使いこなせる筈だ!)」

 

覚悟を決めキッとゴモラを睨みつける。

 

火のウルトラストーンをホルダーから外し起動しセットする。足元に火のエレメントが現れ身体を火柱で包まれ身体にエネルギーが流れるのを感じる。

 

「クッ…こんな……ところで!!」

『僕"が"…み"ん"な"を"!…護"る"ん"だ"!!』

 

胸の前で腕をクロスさせ身体にまとわりついた火炎を振り払うように解き放つ。

――獅子瞳山――

ブレイブが振り向き衝撃波を出しゴモラを怯ませる。

 

「あれは!昨日の!?」咲が驚く。

 

身体を火柱が包む。そして身体がより筋肉質になりカラータイマーに炎が入り青い体表部分が赤に変わり

『ウルトラマンブレイブ-フレイムフィスト-』

に転身する。拳を強く握りしめ戦闘態勢に入る。

 

「シ"ュア"ッ!」

 

突進しゴモラを両手で投げ飛ばす。

するとゴモラが分裂し後ろから攻撃を仕掛けてくるが

 

「(そこだ!)」

 

振り向き殴るとよろめいているゴモラに向かってドロップキックをし蹴り倒す。間髪入れずにジャーマンスープレックスを繰り出しその後バク転で距離を取り構える。

 

「ヴ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"オ"!!」

 

ゴモラが咆哮を上げ超振動波を放つ。それをフィストフレイムバスターを放ち相殺した後クリスタルサークルを回転させ右腕にエネルギーを貯めゴモラに向かって走り出す。

 

「(これで!!トドメだ!!)」

「ハァァァ…セアァァァッ!!」

 

ゴモラの腹部に拳を突き立て、体格の2倍以上ある炎の爆風と衝撃波(ブレイズスマッシャー・ゼロ)を放ち全身を吹き飛ばす。煙があがり全員が見つめる…そこにはゴモラ-ネメシス-の姿は跡形も無くなっていた。

 

「ふぅ…ヒヤヒヤさせるな。」「やったぁ!!」

「やったァァァァ!!」「私達…勝ったんだ!」

 

咲らと同じように日佐人は両手を上げて喜び茜は勝利を噛み締めている。その2人を見て微笑む大吾。

 

「(使いこなせた…)」

 

と龍也が実感する。ブレイブも頷く。空に飛んで行くブレイブ。

――???――

「ふむ…やはりこの程度ではダメでしたか……」

 

と杖を持った男はそう言いながら姿を変え魔術師のような見た目に変わる。

 

「あ、それで彼はどうでしたか?」

 

と悪魔のような見た目をしたメタメレイアに尋ねるとメタメレイアは言い切った。

 

「ベレトか…フンッ…俺の敵では無い……」

「そうですか…では彼の始末は任せます。」

「……」

「これまた面白い事になりそうですねぇ…」

 

立ち去るメタメレイア。そしてベレトの手にはネメシスが戻る。

――獅子瞳山――

変身を解除しブレイブが龍也に話しかける。

 

「(龍也。恐らく奴はまだ完全には倒しきれていないだろう。それにメタメレイアという男とあの謎の男についても気になる…)」

「大丈夫だよ。僕達二人が居れば。」

「(そうか…そうだな…)」

「な〜にやってんのよ!もう終わったっての!」

 

咲が龍也を見つけ怒ってくる。

 

「あっ…すいません…」

「なら昼飯だな。」

「そんな〜」

 

そんな風に談笑しながら基地に帰還するのだった。

つづく




いつも読んでいただきありがとうございます<(_ _)>リクソンです!
第四話:爆誕!火炎の一撃!如何でしたか?面白いと思って頂ければ幸いです。さぁ!遂に爆誕した、ウルトラマンブレイブ-フレイムフィスト-!!龍也君も火のウルトラストーンを使いこなせる事が出来たという事で……実は今回の修行回が一番書くのに悩みました(笑)
まぁ「これからドンドン面白くなりそうですねぇ」という事で(笑)
という訳で今回の裏話?的な物はサブタイトルについてです!
皆さんはもうお気づきだと思いますがサブタイトルが色々なウルトラマンのサブタイトルのオマージュになっているのですが出来れば全ウルトラマンのサブタイトルを幾つか回収出来ればなと…思っております!
という訳でまた次回でお会いしましょう!リクソンでした!

──アーカイブドキュメント──
「同化古代怪獣 ゴモラ-ネメシス-」
身長:40m 体重:2万t
『同化生命体 ネメシス』が『古代怪獣 ゴモラ』を吸収し複製した怪獣。
原種よりも格段に全てのステータスが上がっている。また容姿は左側の角だけが長く肘と膝から鋭く突起物が生えていて腕や脚も重厚になっていて、一番の違いは全体的に黒紫掛り目が紅眼になっている所だ。
必殺技は強化された超振動波である。

【次回予告】
宇宙から飛来した謎の箱の中にはマキという女性が入っていた。彼女を調査する日佐人にマキは興味を抱きはじめる。するとマキの身体に異変が現われ彼女は基地内を徘徊しだす。そしてそれに呼応するように、外には宇宙機械兵エウリオンが出現!走れ日佐人!マキを止められるのは君だけだ!次回 第五話:「宇宙からの愛をこめて」


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第五話:宇宙からの愛をこめて①

:宇宙機械兵 エウリオン 登場

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ある日の夜。ズドォォン……と大きな音を立てそれはこの地に降ってきた。

 

「エリアXの公園内に箱が降ってきたとの通報を受けた。」

「箱?」と龍也が大吾に尋ねる。

「箱の形は棺桶の様な形をしているらしい。ネメシスの件もある為だそうだ。煉と龍也で出撃し基地に持ち帰って来てくれ。」

「GIG!」

――エリアX-公園――

「これだな。よし、バスターに積み込んでくれ。」

 

ガンバスターからアームが下ろされ中に入れていく。

 

「にしても見るからに人工物っぽかったですね…」

「あぁ。まだ調べてみないと分からないがな。」

――研究室――

その後、日佐人が調べる事になり調査を進めていた。が、日佐人は頭を抱えている。そこに龍也が入ってきた。

「調べろって言ったってなぁ…」

「どうしたんだ?」

「いやさ…これ何をやっても開かないんだよ。全くどうすればいいんだ…?」

 

溜息をつき蓋の中心を平手でトンと叩く。すると蓋の上部が開き、碧色の瞳をした美しい女性が出てくる。その首には緑色のクリスタルが付いたネックレスが掛けられている。

 

「えぇっ!?」

 

顔を向かい合い驚く二人。

 

「ぼ、僕とりあえず隊長達に報告してきますね…」

「あ、ありがとう…」

 

龍也が立ち去り、見つめ合う日佐人と女性。

 

「えっと…僕は橘 日佐人。君の名前は……?」

 

緊張し言葉が途切れ途切れになる。すると弱々しいが優しい声で彼女は言った。

 

「私は…ハナ……」

「えっと…苗字とかは……?」

首を横に振る。

「私はハナ…それ以外覚えていないの……」

――ディレクションルーム――

「記憶喪失って事か。それで、他には?」

 

龍也が尋ねると日佐人は顎に指を掛けながら不思議そうに話し出した。

 

「彼女自身は名前以外何も覚えていないらしいです。けど身体を検査した結果…人間と一緒だったんです。」

「そうなるとあの箱はなんだ?」

「それが…謎の絵が描かれている以外何も分からないんですよね…」

 

ディレクションルームでは煉と龍也、日佐人が。ハナには茜と咲がつき話をしてくれており隊長はハナについての会議に向かっていた。

――研究室――

何も覚えていない。本当に何も。だが二つ覚えている事がある。一つはハナという名前。そしてもう一つは…私に下された命令。

 

「我々の計画にはあのGUISとウルトラマンが邪魔だ。君はGUIS内に侵入し基地を破壊しろ!………そうだ。この作戦がバレた時は…後は分かるね?」

 

それ以外を思い出そうとするがノイズが掛かり思い出せない。茜と咲が部屋から出ていき日佐人が入ってくる。

 

「気分は…どう?」「分からない…です…」

「そ、そうだ!ハナさんは花好きかい?」

 

橙色の花が生えた花瓶を机に置く。

 

「これは?」「この花はカランコエって言って、花言葉は『幸せを告げる』っていうんだ!」

「幸せを…告げる……」

「君に幸せが来るようにって思って…」

 

慣れない状況に照れながら言うと、突然手を握られる。

 

「ありがとう…」

「あっ…えっと……その……」

 

研究室の窓からコッソリ見ている茜と咲と龍也。

 

「良い感じですね!」小声で言い頷く3人。

……20分後

「日佐人君!日佐人君!これ余ったからあげるね!」

 

茜から水族館のチケットを貰う。

 

「それと…ハナちゃん本部からの外出許可降りたんだって!二人で行ってきたら?」

「ホントですか!?ありがとうございます!」

――次の日――

「おはよう!ハナさん。」「おはようございます。日佐人さん。」

 

元気良く挨拶をしバイタルと脈を測る。異常は無い。いつもの様に笑顔で会釈される。

照れを隠し、花に水をあげながらサプライズでハナに茜から貰った水族館のチケットを見せる。

 

「実は…本部から君に外出許可が降りたんだ!そこで…」

「水族館!茜さんと咲さんから話を聞いたんです!」

「僕なんかで良かったら…その……」

「もちろんですよ!」

「本当に僕なんかで良いの!?僕なんてどうしようもなくて、何しても上手く行かなくて……その……」

「日佐人さんは日佐人さんのままでいているのが1番ですよ!」

「でも私出かける用の服持ってないの…」

 

励ます様に声をかけてくれる。今度は逆に落ち込むハナに咲から借りてきた服を貸してあげる。

 

「咲さんにありがとうって言わなきゃ!」

「帰ってきたら一緒に言おうか」

――水族館――

「綺麗ですね…!」

「そうだね!」

そんな事を言いながら見て回っていると彼女が水槽の中を見ながらボソッと呟いた。

 

「君達も私と同じなんだね……」

「どうかしたの?」日佐人が尋ねる。

「い、いや…なんでも……そうだ!買い物に行きませんか?私行って見たかったんです!」

 

ハナが軽く濁し日佐人の手を握りしめ走り出す。

水族館を出てショッピングモールに寄り、新しい服を一緒に見て回っていた。

 

「どう…ですか?」

 

白い服を来た姿はまさに白鳥の様で見惚れてしまっていた。

 

「日佐人さん…?」

「に、似合ってるよ!すっごく!」

 

ハッとしてしまう。それ程までに美しい姿だった。

 

「また行きましょうね!」

 

目を首のクリスタルの様に輝かせながら彼女は言った。その後試着した服を買いモール内の中庭を歩いていると突然マキが立ち止まり倒れる。

 

「ハナさん!?」

 

身体をさすっても返事が無い。

すると空に歪みが現れ中から謎の塊が現れるとロボットの形に変形し近くの平原のある公園に降り立つ。

 

「ロボット!?」

 

そのロボットは明らかに此方を狙っているように見えた。まさか!

 

「狙いはハナさんか!」

 

ハナをおんぶして走り出す。

逃げ回っていても限界は流石に来る。ロボットがすぐそこまで来ており既に此方に標準を合わせている。

 

「!」

 

身構えたその時ブレイブが現れ遅れてガンストライカーが到着する。

 

「セアッ!」

 

ロボットの腕を掴み離れろと言うかの如く頷く。膝蹴りを入れロボットを場から離れブレイブシュートを放ちガンストライカーも2機に別れロボットに攻撃し食い止める。

だが身体には傷1つ無く止められたのはその一瞬だけだった。ロボットは勢いよく突進を仕掛けブレイブを吹き飛ばす。

あんなに重そうな見た目で良く動くものだ。

ロボットの三本指が開き手の平からビームライフルが連射され咄嗟にブレイブディフェンスシールドを展開しダメージと街への被害を抑えようとするがシールドが破られ身体に直撃する。

 

「ブレイブ!」

 

咲と煉が援護するもまるで効いていないようだった。

――自走式立体駐車場――

「ハァ…ハァ…ハァ……」

 

体力の限界も近い。

幸いウルトラマンと他のみんなが頑張ってくれているおかげで振り切る事が出来た。ここからも戦っている様子を見られる。

 

「僕も行かなきゃ…!」

 

ハナを近くのベンチに寝かせ現場に向かおうをした時丁度目覚める。

 

「日佐人さん…私は…一体……それにここは?」

 

状況を理解出来ていないようだった。

 

「ハナさん!目覚めたんだね、良かった……今、君をロボットが狙っているんだ。理解するのに時間はかかると思うけど出来るだけ遠くに逃げて欲しいんだ。」

「日佐人さんは…どうするの?」

「僕は…戦いに行くよ。」

 

日佐人が現場に向かおうとすると服の袖をハナが引っ張る。

 

「行かないで…お願い…私を1人にしないで…」

 

ハナにお願いに戸惑うが、日佐人は覚悟を決める。

現場に向かおうとしその場から状況を確認するもロボットの姿は無かったのだった。

 

―研究室-深夜――

日佐人は研究室に戻り調査に勤しんでいた。

 

「特に異常は無いんだけどな…」

 

ハナのレントゲンや調査結果をまとめた資料を見ながら日佐人が言った。

……だが日佐人も『あの事』に気づいていない訳では無い。

 

「やっぱり…あのロボットと関係あるのかな…」

 

すると箱の絵を思い出し見てみると形状が一致しているのが分かる。そしてハナが倒れた次の瞬間空に歪みが現れロボットが現れた。

そして彼女が目覚めた時に同じく歪みから姿を消している。そんな偶然がある訳ない。

だが日佐人はハナがもし宇宙からの刺客だとしても信じたくは無かった。

意気消沈し色々と考える。

そうだ。元々宇宙から降ってきた謎の人を信用していた自分が悪い。

だが一つだけ疑問が残る。

何故箱から目覚めた時にはロボットは現れなかったのか。2日目の朝は?ショッピングセンターを回っている時は?もしそれが彼女自身の思いで動いていたなら?強制されて動いているとするなら?そんな事を考えていると彼女との思い出がよみがえる。

日佐人は覚悟し研究室で眠っている彼女の身体を徹底的に調べ上げる。

「見つけた!」

 

遂に日佐人はハナの脳に取り付けられたチップを発見し解析を開始する。

時計を見ると時刻は午前6時を回っていた。

チップを解析し衝撃を受ける。

 

「そんな……」

………………………………………………………………

「貴様は一体何をやっている!」

「私は……」

 

叱る声に言葉が出ない。こんな時日佐人ならどうするのだろうか。

 

「貴様に命じたのは基地の破壊だけだ!この役立たずめが!貴様にもう要は無いわ!起動せよ!エウリオン!!」

 

ソイツが手の平を突き出すと目の前が真っ暗になっていく。

 

「日佐人さん…助け…て…」

 

願った頃には意識は消えていた。

………………………………………………………………




─アーカイブドキュメント─
「宇宙機械兵 エウリオン」
謎の宇宙人が計画を遂行する為にコード0807と共に送り込まれたとされるロボット。未だ不明な部分が多く、解明には至っていない。
手のひらから放たれる光弾はブレイブディフェンスシールドをも破る程の威力があり、手の形を大剣の形に変形させる事で近距離戦に置いても十分な戦績を残す。本編で使用される事は無かったが腕を伸ばし相手を捕獲する事も出来る。またスラスターにより高い機動力を持つ。


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第五話:宇宙からの愛をこめて②

:宇宙機械兵 エウリオン

………………………………………………………………

息抜きをしようと外に出る為に部屋の扉の前に立つ。だが扉が開かない。自動ドアなのにも関わらず。

手でこじ開けようとするも開く気配すら無い。扉の前で悪戦苦闘していると後ろの扉がバンッ!と勢い良く開く。

 

「!?」

 

振り向くとそこにはあの碧色の瞳をしていた筈のハナが目を真っ赤に染めて立っていた。

 

「……」

 

ハナは何も言わずに手の平を突き出し波動を放つ。

波動の衝撃で壁に激突し意識が薄れていく。

――ディレクションルーム――

「なんで扉が開かないんだよ!」

 

煉と龍也が必死に開けようとするが開かない。

トライシューターを扉に向ける龍也を煉が止める。

 

「コイツで撃てば!」

「ダメだ!そもそも基地自体が侵入した用に宇宙人の攻撃に耐えれる様に作られてる、銃だけじゃどうにもならない!こんな所で耐久性が裏目に出るとはな…」

 

「他のシステム状況は?」

「殆どのシステムが機能を停止しています!それと…システムを停止させているのはハナさん!?」

「なんだと!?…茜は全システムをマニュアルに変更!それと次の予測地点を割り出してくれ!咲は日佐人に通信を!煉と龍也はそのまま扉を開ける事に専念してくれ!」

「GIG!」

「やっぱりあの女か…!」舌打ちをする煉。

「ダメです!日佐人君、通信に反応がありません!」

 

咲に続いて茜が報告する。

 

「予測地点は…基地動力炉です!」

――研究室――

意識が戻り目覚める日佐人。周りを見渡すもハナの姿は無い。

 

「通信が出来ない…それに隔壁が作動してない…まさか!」

 

操作盤からメインシステムの状況を確認すると全システムが停止している。幸い扉は開いていた。

 

「行こう…!」

 

メインコントロールルームに走り全システムを再起動する。

「皆さん!全システムを再起動しました!これでなんとかなるかと!」通信を送る。

――ディレクションルーム――

「日佐人君が全システムを再起動しました!」

「よし!」

 

煉がトライシューターを持ち部屋から出ていこうとする。言い止める龍也に煉は振り返る。

 

「煉さん!どこ行くんですか!?」

「決まってるだろ!動力炉だ!あそこが潰されればこの基地は愚か半径10㌔は平地になるぞ!」

 

するとタイミングが良いか悪いか、分からないが怪獣出現のサイレンが鳴り響く。

 

「エリアF-55に先日のロボットが出現しました!」

「やっぱりあの女が目覚めればロボットも出現するって訳か…なら尚更奴を!」

「龍也、咲、煉と私でロボットの対処に向かう!」

 

言いかけた所に大吾が命令を出した。

 

「じゃあ彼女は…?」

「日佐人!ハナさんは今、動力炉に向かっている所だ!あそこがやられれば甚大な被害が出る絶対に止めてくれ!総員、GUYS SALLY GO!」

「GIG!」全員が駆け出す。

――エリアF-55――

ロボットが市街地で暴れている所にガンストライカーとガンブレイカーが到着する。

 

「これ以上街を好き勝手にさせないわ!」

ガンガルーダとガンバスターに別れる。

 

「ウィングレットブラスター!」

「バリアブルパルサー!」

「アルタードブレイザー!」

 

煉、龍也、大吾の3機による攻撃に怯む様子は無くこちらに向かって射撃をしてくる。あまりの攻撃の激しさに流れ弾が市街地に飛んでいき閉まりかけのシェルターに向かっていく。

 

「まずい!」

 

龍也の乗るガンバスターを流れ弾に当て相殺する。がバスターは墜落してしまう。

 

「龍也!」大吾が叫ぶ

「僕は大丈夫です!地上から攻撃します!」

「分かった…!説教は後だ!地上は頼んだぞ!」

「GIG!」

 

2機はギリギリ攻撃を避けているが限界が近い様に見えた。それもその筈、一発がかなりの威力でありそれが連射されている訳だからだ。

それを見た龍也は物陰に隠れウルトラストーンをはめ込み拳を突き上げる。

 

「ブレイブゥゥゥ!!!」

 

ガンガルーダに光弾が当たる直前にウルトラマンが現れる。大吾と咲がその名を叫ぶ。

「「ブレイブ!」」

「シェアッ!」

 

攻撃の姿勢を構える。

シュコォー…ガシャンガシャンと不気味に機械音を立てながら近づいてくる。

 

「セアッ!」

 

胸部の装甲を蹴るがやはり全く効いていない様に見える。

ガコン!と鈍い音がした直後 腕の形が変形し大剣状になり振り下ろされる。

 

「ジョワァッ…!」

 

その場に転がり起き上がろうとするも鋼鉄の脚で踏みつけられカラータイマーも鳴り出す。3度目に踏みつけられる瞬間に胸の前でクロスをくみ、フレイムフィストに転身する。

鋼鉄の脚を持ち上げて投げ飛ばそうとするのだがやはり重くて持ち上る事が出来ない為かその場で倒し一旦距離を取り構える。

――動力炉――

隔壁などに邪魔されながらも着実に動力炉に近づき、遂に最後の隔壁を念力でこじ開ける。

真っ赤に染まった瞳で動力炉をじっと見つめる。手を掛けようとしたその時。

 

「ハナさん!」

 

予想外だったのか目を見開いている。

 

「そんな事しちゃいけない!それを破壊すれば君自身も死ぬんだよ!?」

「……問題ありません。」

 

聞いた事のある優しい声だが確実に『違う』のが分かる。

 

「お前は…誰だ!」トライシューターを構える。

「私はコード0807…私を邪魔するならどんな者だろうと排除します。」手を突き出す。

「あれは!」

 

危機一髪で障害物に隠れ波動を回避すると日佐人は分かっていながらハナに叫んだ。

 

「どうしてこんな事をするんだ!」

「命令だからです。」

「命令…それじゃあ君は言う通りに動かされて嫌だとか思わないの!?」

「えぇ。私は道具ですから。」

「違う!」

 

心の底からの純粋な想い。

 

「君は道具なんかじゃない!!」

 

その言葉に面食らった表情を浮かべるハナ。日佐人が畳み掛ける。

 

「水族館にもう一度来ようって言ったじゃないか!」

「うぅ…」頭を抱えうめくハナ。

「君は僕に1人にしないでって言った!あの言葉も命令で言わされてたって言うの!?」

「あ"ぁ"…私は……」

 

真っ赤に染まった瞳が碧色に変わる。

 

「日佐人さん…1つお願いがあるの……」

 

急に言われ困惑する日佐人。

 

「?」

 

「私を…撃って欲しいの。」

 

彼女が放った言葉は分かっていてもやはり僕の全身を貫いた。

ハナも僕が分かっていると知っていて言ってくれたのだろう。その言葉は今まで聞いた中で1番優しい声だった。

 

「……そんな事、僕には出来ない。」

 

あまりの悔しさに目を背ける。

 

「……日佐人さん…でもこれを見てください。」

 

空に映し出された映像にはロボットに苦戦しているブレイブとOXYのみんなの姿が。

 

「あのロボットの名は宇宙機械兵 エウリオン。私の製作者達が作りだした最高戦力です。アレは私の…」

「脳と繋がっていて私が死ぬと止まる…」

 

言いかけた所に口を挟む。

小さく頷く。チップを発見し解析した時からこうなる事は分かっていた。それでも…どうにか出来ないかと模索もした。けれど結局どうする事も出来なかった。

 

「だから…撃って?」

「……僕は…」目頭が熱くなってくる。

「泣かないで日佐人さん。私はこうなる運命だったんですから…でもこんなにも短い生の中であんなにも楽しい時間を過ごせたんですもの悔いはないわ。

それに…私に残された時間は後少ししか無いの…だからお願い。」

 

ハナさんからの本当に最期のお願い。彼女の願いを叶えてやりたい。でも…僕は……その時あの言葉を思い出す。

『日佐人さんは日佐人さんのままでいているのが1番ですよ!』笑顔で彼女は言った。

僕のままで……答えは決まった。

 

「ハナさん…やっぱり僕は君を撃つ事は出来ないよ…」

「そんな…」

「でも…君をこの呪縛から解放してあげる事なら出来る!」

 

両手でしっかりとトライシューター構える。

ハナが両手を広げた時、赤い弾丸は放たれた。

彼女の胸を貫く。崩れる様に倒れる寸前走って受け止める。

 

「ごめんね…日佐人さん…貴方にこんなにも重いモノを背負わせてしまって……そうだ……コレを………」

段々と声が掠れていく中で首のネックレスを日佐人の首に掛ける。

 

「ありがとう…ハナさん……大事にするよ……」

 

涙で霞んで何も見えない。

 

「日佐人さんは優しいんですね…もう……時間見たい…貴方に会えて良かった……ありがとう…。」

 

事切れたその顔までもが、本当に美しかった。

――エリアF-55――

「ジュワッ!」

 

ロボットの背後に回り込み蹴りを入れすかさず正拳突きを噛ます。すると途端にロボットの動きが停止する。そこにブレイブがフィストフレイムバスターを放ちロボットを粉々に粉砕する。

歓喜するメンバー達。

 

「シュワッ!」

 

太陽が頂点まで上がっている。正午頃だろう。鳴り響くカラータイマーを胸に空へと飛び去った。

――次の日-屋上――

首に緑色のクリスタルの付いたネックレスをぶら下げ黄昏れている日佐人の後ろ姿を見て龍也が声を掛ける。

 

「日佐人…」

「仕方ないよ。どちらか選ばないといけなかったんだ。僕はそれでこの星の未来を取った。唯それだけの事。でも…もう一度だけ一緒に何処か行きたかったなぁ……」

 

涙をこぼす。僕に出来る事は…そうだ!龍也が閃く。

 

「日佐人…!一緒にラーメン食べに行かない?美味しい所知ってるんだ!」

 

と連れていく。龍也が先導し、

道を歩いている途中で日佐人は隣を通った女性に既視感を覚えた。振り向き尋ねる。

 

「あの…!何処かで会いましたっけ?」

「いえ…会ってないと思いますけど…?」

「そうですか…ありがとうございました。」

 

振り向き歩き出す。その顔は何処か嬉しそうだった。

つづく




お久しぶりですリクソンですm(_ _)m
なんだか2回目な気がしますねwそうです!ちょっと小説が長いと感じたので①と②に分けることにしました。何故またあとがきを書いているかと言いますと、私pixivにも上げているんですが、そっちにあとがき書いてると思ってまして…それで消したら無かって…( ;꒳; )という訳ですw
いやーエウリオン強かったですね!(強引)ロボットが持つあの絶望感って言うのが出せていれば良いなぁ。もう少し強くしても良かった気がしますがwという訳でまた次回のあとがきで会いましょう。リクソンでした!

【次回予告】
南極からグレイシェルが復活した!
港も一瞬で凍りつく程の冷気にウルトラマンも凍りついてしまった!?
港は?ウルトラマンは?GUYSの仲間達からの熱い想いで復活しろ!
次回:第六話「港もウルトラマンも氷になった!」


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第六話:港もウルトラマンも氷になった!①

:甲殻海獣 グレイシェル 登場

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

――南太平洋沖-深夜――

「船長、こちらは異常無しありません。」

 

船員が船長に報告を入れる。

 

「了解した。」

 

順調に航路を辿っていた漁船だったが突如何かに乗り上げる音と共に激しく揺れる。

 

「何かに乗り上げた様子です!…っ!なんだこれ!」

「どうした!」

 

船員が水面にライトを照らすと1面の海が凍りついていた。一瞬、氷の下で赤い巨大なモノが動くのが見えた。

 

「船長!氷の下に何かいます!」

 

と言った時にはもう遅かった。バキバキ…メキメキ…と船がまるで挟み潰されるかのような爆音を立てながら沈んでいく。

船員が最期に見た光景は肩から荒々しく削られた氷柱、それに太い脚が生えている。極めつけは巨大なカニのハサミを持ったエビの化け物だった。

 

「ギュィィィィィィイイ!!」

――食堂――

「えーっと…『歴史的大寒波、日本に襲来か』げっ、僕寒いの苦手なんだよなぁ…」

「他には『今度で6件。漁船がまた消息を絶つ、それに伴い漁獲量も大幅低下』か。」

 

日佐人が朝の新聞を読んでいる所に龍也が後ろから割って入る。

 

「なんだ龍也か。それにしても不穏だなぁ…」

 

席に座り朝食を食べ出す。

 

「(漁船か…まさかな)」

 

そんな事を考えているとここ最近の食事に魚が少ない気がした……

――ディレクションルーム――

朝食を終えた二人が通信を受けディレクションルームに戻るとミーティングが始まる。

 

「これを見てくれ。」

 

大吾が言うとモニターに1面が凍りついている海と氷の分厚さが分かる写真とブレているが巨大なカニの腕を持ったエビの写真が映し出された。

 

「これは…」

 

日佐人や他のメンバーが驚くと大吾が頷く。

 

「この凍りついた海は昨日までただの海だったんだが、恐らく昨日の深夜、突然凍りついた。」

 

それに続けるように日佐人が口を挟む。

 

「まず南極海が凍るにはそもそもマイナス20度からじゃ無いと凍り始めないんです。それにこの氷の分厚さ…数十年いや、もっとかからない限りできるはずがないんです!」

「その犯人がコイツって訳か。でも待って下さい、南極ならアンタクティカやオーシャンの管轄下ですよね。どうしてGUYS JAPANが?」

 

場の空気を切り裂くように煉が口を開く。すると隊長は険しい表情を浮かべながら話し出した。

 

「あぁ。実は、アンタクティカもオーシャンも攻撃を仕掛けてはいるんだが…交戦を始めて数分後には反応が途絶えるんだ。」

「!」

 

全員が驚いたその言葉は張り詰めた空気を更に際立たせ、茜ちゃんに関しては動揺が顔に現れている程だった。

 

「それに加えて、最近多発している連続漁船消失 事件の正体もこの生物ではないかと推測している。我々はこの巨大生物をレジストコード『グレイシェル』とし調査を始める。全員で調査を進めてくれ。」

「GIG!」

「それと…すまないが私は無八島《むはちとう》にネメシスについての会議に参加する。私が居ない間は…煉、指揮を任せる。頼んだぞ。」

「GIG!」

 

煉が返事を返すと大吾は会議に向かった。

……1時間後……

「それにしても氷を操る怪獣か…厄介だな…」

 

日佐人が呟いた事が気になり話かける。

 

「どうかしたの?」

「えっ?あぁ。今回の敵はもしかするとウルトラマンですら勝てないかも知れないと思ってさ。」

 

言われた事に衝撃を受けていると日佐人が続ける。

 

「今まで数々の怪獣や宇宙人と戦ったウルトラマンだけど氷を扱う怪獣や宇宙人と戦った際には必ずと言っていい程苦戦を強いられているんだ。恐らく…ウルトラマンは冷気が弱点なんだと思う。」

「(そうなのか?)」

「(あぁ。私達の光の国には季節という概念が存在しない。だから彼の言う通り僕達は寒さには弱いんだ。)」

 

そうなんだと関心していたがもし相手が本当に氷を操る怪獣だとするなら…嫌な予感が額に伝わったのか、気づけば冷や汗をかいていた。

――無八島――

無八島とは国とGUYSが共同開発した無人島であり、今では貿易の仲介地ともなっている。また、リゾート地としても人気を得ており夏になると泳ぎに来る観光客も多い。

 

「ここに来るのも何年ぶりかな。」

 

無八島で家族と撮った写真を横目に呟く。

その時、港に巨大船が港に停泊しているのが上空から見えた。

無八島に到着し会議が始まる。大勢の日本の大臣が円状に座る中、一番奥に居るのはCREWGUYSJAPAN総監アイハラ・リュウだった。元GUYSメンバーから隊長 総監にまで上り詰めた熱いお方だ。

 

「…それでネメシスの対処法は?」とリュウが尋ねる

「今のところは何も…」言葉が詰まる。

「そうか…そのまま調査を続けてくれ。」

「それでは…資料をご覧下さい。」会議は続く。

――ディレクションルーム――

一方メンバーはグレイシェルの後を追う日佐人と龍也、茜。パトロールには煉と咲が向かっていた。

 

「うーん……」

 

グレイシェルの現れた地点は計6ヶ所。

日佐人はその6ヶ所全てに当てはまる共通点を探していた。そこに2つのコーヒーを持って龍也とが近づいてくる。

 

「何か分かった?」

「ありがとう。いや、全然だよ。なんかこう、あと一歩っていうか、なんて言うか……」

 

コーヒーをすすりながら言う。すると、そこに茜が来る。

「溜めすぎも体に毒ですよ?あ、チョコ食べます?」

 

茜がチョコを差し出す。

 

「ありがたく頂くよ。……っふぅ。二人ともありがとう、気が楽になったよ。」と日佐人が言った。

――南極海-上空――

上空にはガンガルーダとガンバスターの2機が。

 

「ここか。」「圧巻ね…」

 

二人は写真の撮られた海域の上空から何か分かる事が無いか確かめていた。その海には一面に氷が広がっている。

 

「見た感じは何もなさそうだな。一応スキャンデータも送るか。」

 

ガンガルーダから放射状に緑色の輪が発射されスキャンが開始される。それが終わりデータを確認する。

 

「これは…」「どうかしたんですか?」

 

「いや…他の場所にも行くぞ、確認したい事が出来た。」

 

そう言った後データをブリーディングルームに転送する。

 

「GIG!」

――ディレクションルーム――

パトロール中の煉と咲から送られて来た6ヶ所全ての

スキャンデータを確認し今までに集めた情報と組み合わせていく。

 

「あぁ…!どうして今まで気づかなかったんだ!」

と絶叫し落胆する日佐人。

 

「どうした!?」「何かあったんですか?」

 

その声に驚き駆け寄る二人。そこに丁度パトロールを終えて帰還した煉と咲も入ってくる。

 

「これの…ここ!見て!」

 

6ヶ所のスキャンデータが表示され、あるポイントが拡大される。その6ヶ所全てに共通して漁船が沈没していた。

「通りで漁獲量も少なくなるわけだ。」と煉。

「じゃあ漁船ばかりを狙う理由は…食事の為とか?」咲が言う。

「恐らくそうだと思います。」

「無八島って貿易の仲介地でしたよね?」

「そんな縁起でもないことを…」

 

龍也のはやし立てに日佐人が口を挟もうとした時。

茜が突拍子もなく言った。

 

「そういえば無八島って遠泳漁業を終えた船が停泊してるんじゃなかったですか?」

「えぇ!?」驚く一同

「すぐに隊長に連絡を!」煉が指示する。

「GIG!」

………………………………………………………………




──アーカイブドキュメント──
「甲殻海獣 グレイシェル」
身長:63m 体重:5万t 出身地:南極
南極の氷で眠っていたが、地球温暖化で氷が溶け始めた所にネメシスが攻撃し目覚めさせた。26本の手足の最前がカニの手をつけた様になっていて最後にしっかりとした足が生えている。また、口から冷凍弾と氷ブレスの2種を自在に変えながら発射する事で周りを凍らせ餌を獲ている。


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第六話:港もウルトラマンも氷になった!②

甲殻海獣 グレイシェル

――無八島――

ちょうどその頃、大吾は会議を終えた所だった。

 

「ふぅ、何とか…なったかな……」

 

ホッと一息着き、背を伸ばす大吾。会議の終わりをメンバー達に伝えようとメモリガジェットを起動したその時、港でかなり大きな水柱が上がったのが見えた。その直後、日佐人から通信が入る。

 

「何があった!今さっき水柱が上がった!グレイシェルか!?」

「はい!!恐らく間違いないかと。奴は魚を狙って船を狙ってるんです!今までの漁船の連続消失の正体も奴だったんです!」

「やはり、そうだったか!!」

「今、煉さんらがガンストライカーでそっちに向かってます!」

「了解した!」

 

通信を切りガンブレイカーに乗り込み急発進する。

――港――

「ギュィィィィィイイ!!」

 

巨大な爪をブォンと振り回しながら港を蹂躙していくグレイシェル。

そこにガンブレイカーとガンストライカーが到着、ガンストライカーが二機に別れ攻撃を開始する。

 

「これ以上は行かせない!」

 

と龍也は言いながらバリアブルパルサーを放ち、それに続けて各機体が攻撃するが硬い装甲に阻まれ効いている様子は無い。

 

「なんて硬い装甲なの!?」

 

咲が苦言する。

突如グレイシェルの背中から生えている氷塊が薄くひかり、口から冷凍弾が放たれる。

それは機体を狙っているよりかは港やコンテナに目掛けて放ったように見えた。

…着弾した途端そこから半径2キロが凍りつく。

――ディレクションルーム――

「南極海の氷の正体はあれだったのか!」驚く日佐人

「あんなのが当たったら…ヤバくないですか!?」

茜が焦る。

「ヤバイどころじゃ済まないよ…!それにあの装甲…一体どうすれば…!(頼む…みんな!頑張ってくれ!)」

 

日佐人が願いながら解析作業を続ける。

――港――

港への攻撃が終わるとグレイシェルの勢いは下がるどころかドンドン強力になり3機を対象に移し、冷凍弾を連射しだす。

 

「メテオール解禁!」大吾が叫んだ。

「パーミッショントゥシフト・マニューバ!!」

 

それに続けて各機がマニューバモードに移行、すぐにファンタム・アビエイションを作動させ回避する。

 

「スパイラル・ウォール!」

 

ガンブレイカーの周辺に光のバリアが出現し冷凍弾を全て跳ね返しグレイシェルの脚部を凍らせ動きを止めすかさず他2機が追撃する。

 

「スペシウム弾頭弾ファイア!」

「ダブルアトリビュートキャノン!」

『3…2…1…0』

 

マニューバーモードが終了しクルーズモードに変形する。大ダメージを受けグレイシェルの動きが止まる…

 

「ギュィィィィィイイ!!」

 

突如咆哮を上げ、腕を伸ばしガンバスターを挟む。

 

「きゃぁっ!」突然の衝撃に気絶する咲。

「(まずい…!……あとは…任せて下さい!いくぞ!ブレイブ!)」「(あぁ!気合い入れていくぞ!)」

 

覚悟を決めウルトラストーンをブレイブレスにはめ込むとクリスタルサークルが回転し龍也の体が光の粒子に変わり、外へ。

ガンバスターミシミシと音を立て歪んでいく……

その時。伸びきった腕を光刃が切り裂き、まばゆい光の中からウルトラマンブレイブがガンバスターを持って出現し安全な場所にバスターを置く。

切り裂かれた腕が即座に生え変わる。

 

「セアッ!」

 

前傾姿勢になり体制を整え、グレイシェルに向かって走り出す。二つの巨体がぶつかり合う衝撃の音が響き渡り、その度に地面が大きく揺れる。

グレイシェルが放った冷凍弾をブレイブスラッシュで潰していく。まさに一進一退の攻防と言えるだろう。

 

「ギュィィィィィイイ!!」

 

その均衡を破ったのはグレイシェルの方だった。冷凍弾を氷ブレスに変化させブレイブの顔に浴びせ爪で横殴りにする。ブレイブは何度か腕で防ぐがあまりの怪力に弾き飛ばされコンテナの上に倒れる。

 

「ブレイブを援護せよ!」大吾が叫ぶ。

「GIG!」

 

煉のガルーダと大吾のブレイカーが攻撃を繰り出すがやはり硬い装甲に阻まれ効いている様子は無い。ブレイブもすぐに体制を立て直そうとするが、さらに大きく振り被った爪で軽々とかち上げブレイブを吹き飛ばし海へ。

 

「デュァァ…」

 

カラータイマーが絶体絶命を告げるかの如く鳴り出す。更にグレイシェルが近づき氷ブレスと冷凍弾が無慈悲にもブレイブに襲い掛かり水ごと氷に。人々は騒然とする。ある者は希望が摘み取られ絶望し、またある者はそんな現実を受け入れたくなかった。……だが。

そんな中でも諦めず怪獣に立ち向かう大吾と煉。そこに丁度目覚めた咲がタンクモードで援護する。

 

「ウルトラマンがやられた位で俺達が挫ける…か、舐められたものですね…隊長。」

 

煉がクールながらもほんの少しだけ微笑み言った。

 

「そうだ!ウルトラマンがやられ我々までもが折れてしまえば誰がこの地球を救うというんだ!」

「熱いですね……でもその通りなのよね!」

 

呆れながらも同調する咲。

 

「煉!フォーメーション・ヤマト、スタンバイ!咲は援護を頼む!」

「GIG!」

 

ガルーダとブレイカーが縦に並び、グレイシェルに突撃する。グレイシェルは冷凍弾を乱射し追撃を測る。

まるで機関銃のようだ。だが単発を乱射しているだけでありテンポは一定に過ぎない。一発ずつしっかりとバスターの援護砲撃で潰していく。ガルーダが直前まで引き付け一気に垂直に天高く舞い上がる。その隙を狙いガトリング・デトネイターを浴びせる。

 

「ギュシィィィィィイイ!!」

 

悲鳴かどうかすら分からない声を叫び爪を振り回しあらゆる方向に冷凍弾を放つ。マニューバーモードでもない状態でこれを全て避けきるのは厳しい。乱射された冷凍弾の一発がガンブレイカーの右翼に直撃、凍りつき墜落を始める。

それでも大吾の目には熱い炎が宿っていた。

 

「こんな…ところで!死んでたまるかァァ!!ウルトラマァァン!お前もいつまでそこで眠っているつもりだ!!いい加減…目を覚ませぇぇ!!!」

――インナースペース――

「……俺は…」

 

みんなが必死になって頑張っている姿が脳裏に映る。

 

「みんな……!」皆の熱い思いが胸に宿る。

「「ウォォォォォォォォォォォォォォォオオオオ!!!!!」」

 

龍也とブレイブの心が完全に重なる。

――港――

ブレイカーがブレイブに向かって墜落直前のその時!

覆い被さっている氷から光が上がりブレイカーを受け止める。

 

「想いが伝わったようだな……」

 

口角を上げながら大吾は言った。

 

「シェアッ」

 

ブレイブは頷き、右翼の氷を溶かしブレイカーをフワッと浮かせるとグレイシェルに向かって駆け出した。

 

「ギュィィィィィイイ!!」

 

巨大な爪を薙ぎ払った瞬間ブレイブは前転で近づき腹部に突き繰り出す。すかさず冷凍弾を放とうとしていた口を下から押さえ込み蹴りを入れた。

――ディレクションルーム――

「今はあれで耐えれていてもずっとあの調子じゃ…」

 

茜が苦言したその時だった。

 

「あったァァァァァ!!!」

 

大声で喜ぶ日佐人に驚きどうしたの?という目線を送る。

 

「見つけたんですよ!奴の冷凍攻撃を無効化する方法が!」

 

さっきから続けていた解析作業とはこの事だったのだ。すぐにメンバーと回線を繋ぐ。

――港――

『皆さん!グレイシェルの氷攻撃を無効化する方法が見つかりました!それは…奴の背中から生えている氷柱を破壊すれば奴の冷凍攻撃を無効化できます!』

「了解した!よくやってくれた日佐人!」

 

大吾から褒めて貰い少し照れている日佐人との回線が切り作戦を開始した。

ブレイブがヘッドロックを掛け動きを止める。その隙に背後に周りこみ、ガトリング・デトネイターとウイングレット・ブラスター、アトリビュートキャノンで氷柱を破壊する。

 

「ウルトラマン!奴にはもう氷攻撃は使用出来ない!全力で叩きのめせ!」

 

大吾が叫ぶ。

ブレイブレスにエネルギーが集まり炎柱が上がりフレイムフィストに転身する。

拳を握りグレイシェルの瞳に向け構えを取る。

自分の身体が上手く扱えなくなり困惑しているグレイシェルの頭部を紅く燃える拳(ブレイブフレイムパンチ)

でひたすらに叩き込みラストはアッパーを決める。

ひよったグレイシェルの尻尾を掴み大きく振り被り投げ飛ばす。

その後空に飛び上がりクリスタルサークルを回転させ右腕にエネルギーを貯まり左脚へ。

グレイシェルが起き上がった瞬間、身体をひるがえし飛び蹴りでグレイシェルの硬い装甲を貫いた。

貫かれた身体はゆっくりと倒れ爆発した。

 

「よぉぉぉし!!」

「やったぁぁ!」

 

あまりの嬉しさに声を上げて喜ぶ大吾。ディレクションルームで喜びあう日佐人と茜。

 

「やりましたね…隊長」

 

少し微笑み煉が言った。

咲は何も言わずに黙っていた。そこに変身を解除し戻ってくる龍也。

 

「あ…目覚めたんですね!」

「えっと…はい…。」

 

反応が無い。やはり反応をしない咲に戸惑う龍也。沈黙が続いた後、咲は口を開いた。

 

「……どうせあんたの事よ、私を巻き込みたく無いだとか理由つけて勝手に一人で行っちゃったんでしょ?はぁ…ほんっとに聞いて呆れるわ…」

「……申し訳ございませんでした…。」

「謝るんだったら晩御飯奢ってよね?そしたら許してあげる♪」

「勿論払わせて頂きます……」

――???――

「全く困った方々だ事…わざわざネメシスを南極にまで転移させて蘇らせたというのに……1度は退けても負けていては意味が無い。それに…あの人間たち、忌々しい……さて次はどうしましょうかねぇ。」

 

つまらなそうな声で言ったがベレトの口元は上に上がっていたのだった。

つづく




お久しぶりです。リクソンでございます。毎度読んでいただきありがとうございます<(_ _)>
今回のお話如何だったでしょうか?毎回言っている気がしますが前回よりも考えるのに苦労しまして……
今回のお話は読んで頂ければ分かります通り、ウルトラマンダイナ第25話 26話より『移動要塞浮上せず!』をイメージ?して書きました。隊長の応援や他のメンバー達の頑張りで立ち上がるウルトラマン…いい構図ですな(´-ω-)ウムそして!「甲殻海獣 グレイシェル」!本編でも紹介している通り海老にカニがひっつきましたw(元はシャチにカニだったんですけどね)
ただちょーっとレイキュバスに寄せすぎたかな〜(汗)とは思いました……
という訳で!また投稿が遅れてしまう事があるかも知れませんが気長に待って頂ければ幸いです。m(_ _)mでは!また次回のあとがきでお会いしましょう!リクソンでした!

【次回予告】
君は鏡の都市伝説を知っているか?
「ここは…どこ?」
鏡の奥には別世界があり、そちらに行けばもう帰っては来れないと…
次回:第七話「閉ざされた鏡」
「ようやく此方に来たね……ウルトラマンブレイブ!!」


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第七話:閉ざされた鏡①

: 鏡魔神 スペクトロ 登場

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

――???――

「ふーむ…どれにしましょうかね…」

 

顎に手を置き考え込むベレトに鏡に映る人影が声を掛けた。

 

「…貴方ですか……。そうですねぇ……確かにそうかも知れません…では、頼みます。」

 

少し話した後人影は鏡の奥に歩いて行った。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

鏡の都市伝説を知っているだろうか?

鏡の奥には別世界があり、そこに引き込まれると……決して生きては帰って来れないと……。

 

「な〜んて!怖いですよね〜」

 

茜が咲と龍也に話している。

 

「そんな事ある訳無いじゃ無いですか。そもそも都市伝説なんて存在しない空想!絵空事ですよ。」

 

聞くだけ聞いていた日佐人が呆れながら割って入る。

 

「そんな事言って〜ホントは怖いんじゃ無いの〜?」

「そ、そんな事無いですよ…!!」

「(図星だな…)」

 

冷やかす咲に日佐人が慌てながら言う。龍也はそんな事を考えていると大吾が切り出した。

 

「今日昼にカレーかラーメンを食べた奴は居るか?」

「それがどうかしたんですか?」

 

茜と龍也が手を挙げ、疑問に思い龍也が尋ねる。

 

「いや?今日は2人にパトロールを頼もうと思ってな?それじゃあパトロール頼んだぞ?」

「GIG…」

―――エリアI -商店街-――

街には雨が降ったがまだ完全に乾いては居なかった。そんな中、そういう訳で2人でパトロールに来てる訳なのだが…

 

「あ!焼き鳥……美味しそう…(チラッ」

「もう寄り道しないって…これで3回目だよ……?」

「え〜 …」

 

露骨にしょげる茜。

こんな風に散々振り回されているのだった。

 

「そもそも!なんで勤務中に食事取るって判断になるのさ!」

「美味しそうだったし…」

 

説教まじりの声で聞くが反省している様にはあまり見えない。その時後ろから何かの気配を感じ振り向くが誰も居ない。

 

「あのねぇ…もう少しくらい反せ…」

「気のせい…かな……」

 

これが今回の発端になるとは知るよしも無かった…

 

「え…あ、あれ?茜さん?」

 

少し見渡し振り向くと茜の姿がそこには無かった。

周りを見渡すが元気に食事をしている姿は無かった。

すぐにディレクションルームにGPSで探して貰おうと通信を入れる。

 

「日佐人、茜さんを見失ったんだけどGPSで探してくれないかな。」

 

「(…ってすぐ後ろに居るよ?)」

「え?居ないけど…」振り向くが姿は無い。

「(あれ?位置情報のズレかな、修正してっと……?)」

「どうかした?」

「(いや…何回修正しても真後ろに反応が……)」

「どうなってるんだ…!?とりあえず、辺りを探してみる。」

「(分かった!僕達もそっちに向かうよ。)」

(「なんだか…嫌な予感がするな……」)

 

そう思いつつ水溜まりの上を走っていった。

――???――

「イテテ……ここは…どこ?」

 

辺りを見渡すがさっきまで居た人々、龍也が消えていた。まるで世界に自分しか居ないのかと錯覚するくらいに。

「確か…龍也君と話をしていたら…」

 

記憶を必死に思い起こす。それは足を人では無い何かに引っ張られ水溜まりの中に引きづり込まれたのだった。だが、おかしい。2ミリも無い様な水溜まりが沼の様にどこまでも沈んでいったのだから。

 

「あ、そうだ!通信!」

 

メモリガジェットを起動しディレクションルームに通信を送ろうとするが反応が無い。引きづり込まれたならと思い下を見るが水溜まりは無い。脳裏に浮かぶ鏡の都市伝説。

 

「も、もしかして…私、もう……」

 

今にも泣き出しそうなくらい目頭が熱くなり、小学生の時の事を思い出した。

…………………………………………………………

「グスッ…ママぁ……ここどこぉ…?」

 

そこには泣きじゃくる茜。自分の知り合いなど居ないテーマパークは本当に酷いくらい広く感じたのだった。もう親に会えないかも知れないとネガティブな感情が心の中でグルグルと渦巻いていた。その事も相まって余計に涙が止まら無かった…その時。

 

「どうしたの…?どうして泣いてるの?」

 

と丁度その時、家族で遊びに来ていた咲が泣いている茜を見つけ声をかけてくれたのだった。その時は大袈裟だが命の恩人とまで思ったくらいだった。その後迷子センターに探しに来ていた茜の両親と会い、咲と別れた。

次の日の朝、転校生として咲が自分のクラスに来た時は驚きそして確信した。『運命の人』と。

…………………………………………………………

「こんな時、咲ちゃんなら……よし!!」

 

こんな所で諦めては行けない。そう直感し立ち上がり歩きだした。

――エリアI――

その頃、茜を探すべくメンバーや警察も総動員で探しているのだった。

 

「どう、見つかった?」

「いえ…こちらは全く…」

「ほんと何処行っちゃったのよ、全く…」

 

咲と龍也が一時的に集まり報告し合っていた。

 

「誰かに連れ去られた可能性の方が高いですね…」

「そうね…でもおかしいとは思わない?」

「おかしいって?」

「誰かに連れ去られたとしても、監視カメラだとか誰かに見られてる筈じゃない?」

 

確かにそうだ。この商店街だけでも監視カメラは至る所についているし、それも一瞬で消えるなんてのは不可能だ。それが出来るのは……

 

「そういえば監視カメラの映像ってもうチェックしたんだっけ?」咲が尋ねる。

「チェックはしたんですけど映像の一部が乱れてて…」

「その一瞬でって訳ね…そんなの出来るのって…」

「宇宙人だけ…って事ですよね。」

(「想像していた通りか…ブレイブはどう思う?」)

(「龍也達が言うように宇宙人の仕業だろう。」)

「…龍也ってば!」

「あ、はい!?」

 

ブレイブと話している間に考え込んでしまっていた様だ。

「それじゃ、私は別の所探すから!」

 

そう言い放って走り去っていった。

とはいえこっちも探さなければ見つからない。そうして先程の商店街に戻りふと、水溜まりに映る自分を見た。水溜まり…反射……鏡……

…………………………………………………………

 

鏡の奥には別世界があり、そこに引き込まれると……決して生きては帰って来れないと……。

 

「な〜んて!怖いですよね〜」

 

…………………………………………………………

「まさか!」

「君の探している人は此方に居るよ…」

 

まじまじと水面を眺めながら思考を働かせていると、

誰も居ない背後から声が聞こえた。すぐに振り向くとそこにはフードを被った男が居た。

 

「お前は誰だ。何故僕に声を掛けた。」

「私は鏡魔人 スペクトロ。以後お見知り置きを……貴方に声を掛けた理由など一つしか無いでしょう?勇輝 龍也 いや、ウルトラマンブレイブ?」

「!!」

 

銃を引き抜き構えた瞬間、周りに鏡が出現し光を反射し目を眩ませる。

その一瞬の間にスペクトロは消え去った。

―鏡の世界――

「やっぱり誰も居ない…」

 

虚しい程に街には人っ子一人居なかった…が、諦めずに人を探し続ける茜。

一旦休憩し、立ち上がったその時何かが後ろを通る。

人かどうかは分からないが確かに何かの気配を感じたのだった。気配を感じた方に向かって走っていると、そこには人影があった。人影を追いかけ遂に追いつき声を掛ける。

 

「あ、あの!ここって何処なんですか!?誰も居ないし、それに貴方は一体…?」

「質問が多いですね…ですが……その答えはこれで十分でしょう。」

 

フードを被った男がそう呟き、フードを下ろす。

フードを下ろした男の頭が変形し服も身体に取り込まれた。正真正銘の異星人だ。

 

「私の名前は鏡魔人 スペクトロ…この世界は私の作り出した鏡の中の世界……」

 

その姿 声 全てに恐怖し身体が動かせず声も出せない。

 

「貴方はどうして差し上げましょうか…」

 

ゆっくりと此方に近づいてくる。

 

(「怖い…でも……私は!」)

「私に…近づいて来ないで!!!」

 

勇気を振り絞りその言葉を放ってやった。

その一言に驚いたのか動きが止まった、その一瞬の隙に全速力で走って逃げる。

 

「逃げられましたか…まぁ問題は無いでしょう。行きなさい!」

 

鏡からスペクトロの分身体が現れ茜を追いかけ始めた。

………………………………………………………………




─アーカイブドキュメント─
鏡魔神 スペクトロ
身長:51m 体重:3万2000t 出身地:不明
突如ブレイブ=龍也の前に現れた魔神。紳士的な言動と裏腹に感情が高ぶると裏の性格があらわになる。カウンターを得意としており鏡で光線を跳ね返したり手で掴める範囲の空気を制御する事が可能でそれを押し潰してエネルギー弾を作りだしている。また、分身体を作る事が可能で分身体は姿は同じものの、紅い十字の仮面を被っているという違いがある。


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第七話:閉ざされた鏡②

:鏡魔神 スペクトロ 

………………………………………………………………

――エリアI――

「あいつ…何処に行きやがった!」

 

スペクトロを追いかける事、早30分。一向に見つかる気配は無かった。

 

(「ブレイブ!あいつに見覚えはあるか?」)

(「すまないが奴に見覚えは…だが奴の能力は検討がついたぞ。」)

(「聞かせてくれ!」)

(「奴は鏡面を使って鏡の世界を作る能力だろう。」)

 

確かに鏡面を使って自分の世界を作るという能力なら水溜まりから引きづり込むのも合点がいくな…

 

「これで探すポイントも絞れそうだな…」

 

そうして鏡のある場所やガラス、水溜まりのある場所を徹底に調べ始めた。すると鏡の前に誰も居ないはずがガラスにはフードを被った男が歩いていた。

 

「あれだ…!」

 

バレない様にこっそり近づいていく。

ガラスが無くなるが裏路地に入っていく位は分かった。その奥には見るからに怪しい古い廃屋がある。

 

「入るしか…無いよな……」

 

廃屋の中は苔むしており、ホコリっぽい。家具は基本壊れているか古ぼけている。そんな中で、フレームの装飾が禍々しくも美しい長鏡が一際目立っていた。

恐る恐る近づくと、何故か鏡面に向かって手が伸びていた。手が鏡の奥に入り、唾を飲む。不安と恐怖を押し殺し覚悟を決め鏡面に勢い良く飛び込んだ。

…………………………………………………………

鏡が割れ破片が散乱している。

 

「ようやく此方に来たね……ウルトラマンブレイブ!!」

 

割れた鏡にスペクトロが映り醜く笑いながら言った。

…………………………………………………………

――鏡の世界――

強すぎた勢いを殺す為に受け身を取る。

 

「ここが…鏡の世界……」

 

辺りは元の世界が左右逆転している事以外は特に変化は無い。外に出てみてもそれは同じだった。

 

「茜ちゃんを探さないと…」

 

行き当たりばったりだが、居そうな方へ駆け出す。

角を曲がったその時ある物を見て僕は驚愕した。

戦闘があったのかブロック塀は破壊され散乱し地面は幾つかの陥没した跡があった。

 

「……無事で居てくれよ…」

――――――――――――――――――――――――

「ハァッ…ハァッ…ここまで来れば大丈夫…よね?」

 

分身したスペクトロに追いかけ回されていた茜はどうにか裏路地に入り込み分身体が居ないか辺りを見渡す。

分身体は本体より知能が低いようだが俊敏さと機動力がずば抜けて高い。ギリギリもう一走り出来る体力が残っているがそれが尽きれば終わり…そんな不安を胸にしまい、また動き出したのだが至る所に分身体が居て動きたい様に動けない。

大通りでは辺りを見渡しながら私を探してさまよっているように見える。

その内一体になっている分身体を背後から狙い頭部を岩石の如く撃ち砕く…が、途端に再生する。そう、これが厄介でどこを攻撃されてもすぐに再生するのだ。

再生した分身体は此方を睨み、周りの仲間と共に襲いかかってきた。

もうダメだと思ったその時!銀色の銃口から赤い閃光が分身体を撃ち抜いた。

 

「ギリギリセーフって所かな…?」

「龍也君!」

 

救援に安堵しホッと…したい所だが、すぐに撃ち抜いた部分が再生し襲いかかってくる。

 

「逃げるぞ!」

 

咄嗟に茜の手を握り走り出す…目指している場所はあの廃屋だ。

 

「龍也君!ここにどうやって!?」

「話は後だ!」

 

分身体の追跡を振り切り廃屋に飛び込み鏡に触れる。

 

「あれ…?」

「どうして鏡をずっと触っているんですか?」

 

何度触れても反応は無い。戸惑う龍也に茜が声をかける。

 

「僕は…この鏡からこっちに来たんだ……なのに…」

(「おかしい…まさか奴はこれさえも想定のうちだったと言うのか!?」)

「何故出られないんだ!?とでも考えているような顔じゃないか?」

 

すると何処からかスペクトロの声が廃屋内に響く。

 

「!?」

 

驚き周りを見渡すがそこにはスペクトロの影も形も無い。

 

「た、龍也君…あれ……」

 

茜が鏡を指さし言った。

そこにはスペクトロがこちらを向いて立っている。ヌルりと鏡から出て来たスペクトロはこう話だした。

 

「残念ながら君たちは私の罠に引っかかったのだよ。この鏡の世界は私そのもの。私の許可無く脱出する事なんて出来ないのですよ。今までも君たちの様なお馬鹿さん達もそうやって死んで行きましたよ…その時の絶望した顔が……クックック…思い出しただけでも笑いが止まりませんよ!アッハッハッハッハ!」

 

大きく笑うその声に怒りを隠す事が出来ずトライシューターを引き抜いた瞬間、雑音を切り裂く銃声がスペクトロの肩を撃ち抜いた。

 

「貴方だけは…絶対に許さないんだから!」

 

龍也は茜が先に撃ち抜いた事よりも茜の怒ったその顔に驚いた。滅多に怒る事など無い茜の怒った顔を見るのは初めてだったからだ。

 

「……イテェ…痛てぇだろうが!!この野郎がぁ!!」

 

怒りを露わにし襲いかかるスペクトロに回し蹴りを繰り出し首周りを掴み床に投げ飛ばす。

 

「あんな口ぶりして大した事無いな…!」

 

外に飛び出すと辺り一面に分身体が跋扈《ばっこ》しており、とりあえず逃げる。

 

「奴らめ…殺す……殺してやる!私の手で!!」

 

胸前で腕をクロスに組み力を溜めると分身体がスペクトロに吸収され巨大化する。

 

「マジかよ…」「そんなのあり…!?」

 

手のひらを此方に向けてエネルギーを溜め始める。

奴との距離は巨大化したスペクトロ換算で約2.5歩程度しかない。そして奴の手からエネルギー弾が放たれる

 

「うぁ"っ!」「きゃあっ!」

 

奇跡的に直撃はしなかったもののかなりの衝撃で大きく吹き飛ばされる。

 

「チッ当たらなかったか。ならばもう一度…!」

「うっ…茜ちゃん……大丈夫?」

 

茜は吹き飛ばされた衝撃で気を失っていた。

だんだんとエネルギー弾が大きくなっていく様子に汗を流す。

 

「その女共々ここで死ぬがいい!」

 

エネルギー弾が放たれる瞬間、龍也はブレイブレスを構え叫んだ。

 

「ブレイブゥゥゥゥゥ!!!」

 

光の壁がエネルギー弾を相殺し茜を護るようにブレイブが出現した。

 

「シェアッ!」

 

ブレイブはスペクトロに接近し右回し蹴りを入れる。

弧を描きながら蹴りがスペクトロの顔に届く筈が両腕で受け止め叩き落とし右ストレートがブレイブの胸部に決まる。カウンターが入りよろめくブレイブにスペクトロがドロップキックで追い討ちを掛ける。

――インナースペース――

「強い…巨大化した途端に強くなりやがった!」

「恐らく分身体と融合した事でパワーが何倍にも膨れ上がったのだろう…!」

「ホントかよ…でもウジウジしてる場合じゃ無いよな!ブレイブ!行くぞ!」

「あぁ!」

――鏡の世界――

「シェアッ!」

 

何度も攻撃を繰り出してみるが全て的確にカウンターで応戦されてしまう。

 

「フゥン!」

 

指先から放たれた光弾をサラりと避けると背中に痛みと衝撃が走る。放たれた光弾は鏡を反射しブレイブの背中に当たったのだった。

すぐに体勢を整えブレイブシュートを放つ…が。

スペクトロの目の前に鏡が現れ光線が跳ね返り直撃し

その衝撃は殺される事無くビルに突っ込み瓦礫の上に転がってしまう。

 

「セアァッ……」

「ふぅん…大した事無いですね!」

 

ブレイブの背中を雑に踏みつけながら痛めつけるその様子は紳士的な口調とは裏腹に余りに陰湿なものだ。

 

「ん…うっ……私は…はっ!あれはブレイブ…!?

一体どうゆう事なの…?あっ!そうだ!龍也君は!?」

 

周りを見ても居るのは自分1人。それでも自分に出来る事をする為に白石 茜は立ち上がった。

自分を含め3人しか居ない世界にカラータイマーの音が響き渡る。エネルギー弾が完全にチャージされたその時。その手首に赤い閃光が突き当たり彼女はこう叫んだ。

 

「スゥーー……ブレイブ〜〜!!!私だって諦めてないから!!だからお願い!もう一度立ち上がって!!!」

 

力がみなぎる。魂が希望の光で満ち溢れる。

 

「僕はまだ闘える…いや…闘うんだ!みんなを護るとあの日から誓ったのだから!そうだろう?相棒!!」

「もちろんだ!行くぞ!龍也!!」

 

重く辛い1歩を踏み出し立ち上がる。

 

「なんだと!?何処にそんな力が!?」

 

戸惑うスペクトロに正拳突きをお見舞いする。

蹴りを入れアッパーを入れる。

よろめいた所にすかさずドロップキックで追撃を入れる。

スペクトロは得意のカウンターを入れる隙を見い出せず防戦一方になってしまっていた。

首周りを掴み投げ飛ばす。ふらつきながら立ち上がるスペクトロにブレイブはブレイブレスを横に引き両腕にエネルギーを貯め両手を十字に組みブレイブシュートが放たれた。

案の定鏡が出現する。

 

「そうはさせないんだから!!」

 

茜の放ったバスターブレッドは見事、鏡に命中し割れた所からブレイブシュートが通る。

 

「ぐおぉぉぉぉおおお!!!」

 

倒れた瞬間スペクトロは爆発四散した。

これで全てが丸く収まる筈だった……

茜と龍也の予想ではスペクトロが倒れればこの鏡の世界は消え、元の世界に戻れる筈だったのだ。爆発した箇所に巨大な亀裂が入りなんと世界が崩壊を初めてしまった。亀裂はどんどん広がり遂には空までヒビ割れてしまった。

 

「まずい…このままじゃ……けど龍也君が!?」

 

探しに行こうとした瞬間ブレイブが茜を光の玉で包み込み手のひらに収める。

 

「まだ龍也君が残っているのよ!?ダメよ!こんな別れなんて……私…嫌だよ…。」

 

ブレイブは少し頷くと光の玉を外に投げ飛ばした。

――???――

「やはりダメでしたか…強さ的には申し分無いのですが、最初からブレイブを引きずりこんでおけば良かったものを……ま、私にとっては些細な事でしたし問題は無いでしょう。それに倒れて貰わないと困りますし。」

 

ベレトはスペクトロを型どったウルトラストーンを持って呟いた。

――元の世界――

「嫌だよ…こんなのって…っあれ…?ここは……」

 

目が覚めると廃屋の部屋の中で眠っていたのだった。

そこには自分だけじゃなく、安心して寝ている龍也の姿があったのだった。

 

「私が見てたのって…ただの夢だったのかな……

どちらにせよ、あんな世界もう二度と体験したく無いけどね。」

 

そう1人で呟き、気持ち良さそうに眠っている龍也を揺さぶり起こすのだった。

つづく




お久しぶりですm(_ _)mリクソンです。気づけばもうすぐ1年が終わるという…早いものです。それはともかく今回は前回や前々回に比べて比較的書きやすかったかな〜と思います。ただ…思い着いたものが多すぎて書く内容もそれに比例して大きくなってしまった。見たいな感じです。近々またテストがございますので投稿が遅れるかも知れませんが気長にお待ちくださりますとありがたいです。そして!鏡魔神 スペクトロ!イメージ的にはウルトラマンガイアに登場した破滅魔人 ブリッツブロッツに近い感じかなと思います。(いつもの如くキャラ画が出来ない…)という訳で次回の後書きで会いましょうリクソンでした!
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【お知らせ】
ウルトラマンブレイブの第1〜7話に登場する1部表現にある
OXY⇒新生CREW GUYS に変更致しました。
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【次回予告】
ウルトラマンが倒した筈の磁力怪獣アントラーが復活!?バラージの石はもう無いのに一体どうやって闘えばいいんだ!え?咲さんの過去がアントラーを倒す鍵になっていて…… !!…あいつは!?
次回 第八話:「地の獅子」


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第八話:地の獅子①

:磁力怪獣 アントラー  登場

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――エリアS-市街地-――

誰も居ない深夜の街にはフードを被ったベレトがチェーンが巻かれ鍵がかけられている、ぶ厚い本を持ちながら歩いている。

 

「さて…ここら辺で良いでしょうか。」

 

南京錠の上に手をかざすと、術式が浮かび上がりガチャりと音を立てて鍵が開く。中にはかつて幾多のウルトラマン達を苦しめて来た怪獣や宇宙人が描かれ、その能力や戦術、更には死因さえもが事細かに書かれている。

 

「ふぅむ…どれにしましょうか。ゴモラに匹敵するような怪獣…グランドキングなんて良さそうですが、余りに生贄が多すぎますし……」

 

ペラペラとページをめくっていると『ある怪獣』に目が移り手が止まった。

 

「『磁力怪獣 アントラー』ですか…太古のバラージを滅ぼしあのウルトラマンのスペシウム光線を受け付け無かったと。イイじゃないですか!弱点のバラージの青い石はもう存在しないみたいですし、苦しませる分には丁度良さそうです。フフフフ…」

 

不敵な笑みを浮かべアントラーの描かれたページを破り地面に貼り付け再び手をかざす。今度は手に紫色のオーラが纏い呪文を唱え始める。

 

「レェガミヨ ヨウュジイカノチ! アントラー!!」

 

貼り付けられた紙は紫の閃光が走り砂となり消えた。

 

………………………………………………………

久しぶりに夢を見た。

ある日お父様が私に青い石をくれた。その時の夢だ。

『バラ――』と呼ばれた古代の国に伝わる、ノアの神から頂いた石。その石はとある戦いで使われ、もうこの世から無くなっていたはずが怪獣の残骸から欠片が発見されお父様はその一部を頂いて来たらしい。私はその石を貰ってから人生が変わった気がした。

 

目を覚まし青い石のネックレスが飾った石の台座を見たその一瞬だけ、石がキラリと光った気がした。

………………………………………………………

 

――エリアS-市街地-――

午前7時、エリアSの市街地にて巨大な蟻地獄が出現。それと同時に大規模な通信障害が発生した。GUYSは市街地に急行。そして砂塵の竜巻と共に市街地に出現したアントラーの対応に追われていた。

 

「コイツ…硬すぎる!それに対策を聞こうにも通信が繋がらない!」

 

ガンガルーダに搭乗し攻撃を続ける龍也達はアントラーの強固な甲殻に殆どの攻撃が通じず苦戦していた。

 

「(…アン…ラーの磁力…線の影響で……ほぼ全ての電…機……使い……なり……ん!)」

 

恐らく日佐人と思われる声が途切れ途切れにフェニックスネストから通信が入る。だが超高性能なGUYSの通信も使い物にならない程だった。

 

「くそっ!こうなったら!」

 

右手にブレイブレスが出現し光のウルトラストーンを填めクリスタルサークルを回転させる。

 

「ブレイブゥゥゥゥウ!!!」

 

光のオーラが龍也を包み込み、光の玉に変わりアントラーの目の前に急降下。中からウルトラマンブレイブが出現しアントラーに立ちはだかった!

――ディレクションルーム――

 

「ブレイブだ!」

「よし!これで…」

 

茜と日佐人が歓声を上げる。日佐人に関してはブレイブの登場で安心しきっていた。

 

「キシャァァアァア!」

「セァァアァ!」

 

アントラーは雄叫び上げながらブレイブに向けて突進していく。それに対してブレイブも駆け出す。互いが衝突する直前ブレイブは大きくジャンプしアントラーの頭上を飛び避けると後ろに回し蹴りを繰り出しアントラーを蹴り飛ばした。

 

「キシャォオォオ!」

 

一瞬怯んだアントラーは雄叫びを上げるとブレイブに向けて砂ぼこりを吐き出しながらブレイブを痛めつけドンドンと後ろに引き下がらせていく。そのすぐ後ろにはアントラーが作り出した蟻地獄が。

 

「セアッ!?」

 

右足が沼の様に緩んだ地盤に足を取られ、左足も埋まり次第に中心へと引きずり込まれ身動きが取れない。その一瞬の隙を突き、地面に潜ったアントラーはブレイブが捕まっている蟻地獄の中心から飛び出し巨大な顎で脇腹を挟んだ。

 

「ブレイブを援護する…」

「ブレイブ!今助けるわ!」

 

ガンブレイカー、ガンバスターの両機が捕らえられたブレイブに近づきアントラーにアルタードブレイザーとバリアブルパルサーで攻撃を繰り出すも、やはり効いている様子は無かった。

――ディレクションルーム――

 

「なんで攻撃が通用しないんだ!?」

 

ブレイブが登場した時は余裕そうだった日佐人の顔も今では、必死に弱点を探す焦り顔に変わり果てていたのだった。大吾も仲間達の無事を信じ定点カメラの様子を見ている。

――エリアS-市街地-――

今なお、脇腹を挟まれ続けているブレイブ。カラータイマーがピコンピコンと赤く点滅を始め力がドンドン抜けていく様に感じる。

 

「シェアァ……」

 

ウルトラマンの姿で闘えるのは約3分間、その短い時間の中で命を削りながら敵に立ちはだかる。3分というが実際に計測すると時間帯や状況、ウルトラマンの容態によって3分きっかりの時もあれば4分、2分30秒などとバラバラ。結局は精神論で、『誰かを守る』『この星を護る』その様な気持ちでウルトラマンは闘うんだ。

 

「…僕達は負ける訳にはいかないんだ…!」

「ハアァァァァアア!!!」

 

強固に挟まれたアントラーの顎を鷲掴みにし気合いと根性で少しの隙間を空け、蟻地獄から脱出する。蟻地獄の向かい側に着地し膝を付いてしまう。その姿勢を保ちながらブレイブレスを横に引き両腕にエネルギーを貯め両手を十字に組みブレイブシュートを最後の力を振り絞り放つ。だが胸部に命中し爆発するが効いている様子は無かった。

――ディレクションルーム――

 

「そんな!?」「ブレイブシュートが効かない!?」

 

驚きの声を上げる茜と日佐人、苦虫を噛み潰したような顔をする大吾。

――エリアS-市街地-――

「キシャァアァア!!」

 

アントラーは勝利の雄叫びを上げ蟻地獄の中に潜ると蟻地獄は無くなり電波障害も徐々に消え始めた。そしてブレイブも光に変わり消えた。

――ディレクションルーム――

アントラーが消えて四時間が経った。GUYSは再びアントラーが現れた時の対策ミーティングを開いていた。

 

「機体の攻撃がアントラーに通用しなかったのはやっぱり磁力光線の影響なのか?」

「はい。これを見て下さい。」

 

煉の質問に答える様に日佐人は自席のコンピュータを操作しモニターに映し出す。そこに映し出されたのは過去のアントラーの情報だった。

 

「アントラーは過去にドキュメントSSSPに記録されている磁力怪獣と呼ばれる怪獣です。この発達した顎から磁力光線を放って攻撃の威力を弱めたり攻撃の向きを変更させているんです。」

「でも、それって発射された物に鉄とかが含まれてた時だけじゃ無いの?」

(「確かにそうだ。バリアブルパルサーもアルタードブレイザーもどちらも粒子砲のはず…なんでだ?」)

 

龍也もそう考えたその時。

 

「その通りです!!」

 

と日佐人は咲に対して指を指し今回の戦闘データを開き、モニターの表示を変更してその疑問に対して答え始めた。変更されたモニターにはアントラーの周りに水色のドーム状の物とアントラーの顎から虹色の放射されている物が。恐らく虹色の方が磁力光線なのだろう。

 

「このアントラーが放射している虹色の物を見て下さい。アントラーの磁力光線は普通の磁石とは違い、人の鉄分まで寄せ付けてしまう程です。奴は機体を引っ張り攻撃の向きを変更していたんです。」

 

「次に水色ドーム。これはアントラーが出現した時からあったもので、電磁パルスの様な役割をになっていて攻撃が当たる直前で分子を分散させていると考えられます。」

「だから電子機器が使えなくなったり攻撃が通らなかったりした訳か…言うなれば見えない壁だな。それで、対策方法は?」

「はい。それが…」

 

日佐人は言いずらそうに考え込み、2分程考えた後踏ん切りを着けたのか申し訳無さそうに話し出した。

 

「無いんです。」

 

その一言は周りのメンバー達を震撼させ、それと同時に落胆させてしまった。そんな様子を見ながら日佐人は話を続ける。

 

「厳密に言うと無くなったんです。アントラーは約5000年前の地球でも1度観測されていて…その時は『バラージ』と呼ばれる町がアントラーに襲撃を受けました。」

 

日佐人はモニターにバラージの情報を表示しながら、バラージの歴史を語り出す。

 

「アントラーに襲われ壊滅の危機に瀕しましたがその時戦ったのが『ノア』と呼ばれる光の巨人。その巨人が残して行った物が『バラージの青い石』と呼ばれた石で、その石は二度目に出現した時に投擲されアントラーを倒しているんですけど……」

「バラージ…青い石…」

 

咲はその二単語に違和感を覚え、その二単語についてを考え込む…そうしていふと見覚えのある場所がパッと思い浮かんだ。自分の部屋だ。それもお父様から頂いた青い石のネックレスが飾ってある石の台座を。

 

「私、持ってます!バラージの……青い石!!」

「えぇっ!?」驚く一同。

 

咲が自室に戻り青い石を持って帰ってくると自慢げに青い石を周りに見せつけ、日佐人は覗き込むと衝撃を受けた様子で咲に尋ねた。

 

「これ…ほんとにバラージの青い石…なんですか?」

「お父様から頂いたんだから、本物に決まってるでしょ!?」

 

疑惑の目を向けられた咲は機嫌が悪くなり、日佐人に怒鳴りつけた。突然怒鳴られた日佐人は理不尽さに悲しみながらもそのまま続けた。

 

「もし、これが本物の青い石だったとしてもこれじゃアントラーを倒す事は不可能です…はい……。」

 

その言葉に皆が黙りこんでいるとその沈黙を破るかの如く甲高いサイレンが鳴り響き日佐人がすぐにチェックし内容を報告する。

 

「エリアJの平原に巨大な蟻地獄が出現!恐らく、アントラーのものと考えて間違い無いでしょう。」

「対策法を考えている時間も無いか……煉と咲はガルーダ!龍也はバスター!日佐人と私はブレイカーで出撃!茜はここから我々のアシストを頼む!」

 

『GUYS!SALLY GO!!』

『GIG!』

 

全員がディレクションルームからドックに向かい、各機に乗り込む。それと同時に煉が通信を通して口を開いた。

 

「それで、作戦はどうします?」

「磁力光線はアントラーの二対の顎の間から発せられています。どちらか片方の顎を折ることが出来れば厄介な磁力光線は使えなくなる事が分かりました。」

 

日佐人が過去のアントラーのデータを再確認していたら、たまたま戦闘データが見つかり調べていたのだ。

 

「そうだな…バスターとブレイカーで奴を翻弄しその隙をガルーダのスペシウム弾頭弾で片方の顎を折る。これでいくぞ!」

「GIG!」

 

そうこうしている間に出撃準備が完了したようで、GOサインが出る。

 

「ガンストライカー バーナーオン!!」

「ガンブレイカー バーナーオン!!」

……………………………………………………




─アーカイブドキュメント─
「磁力怪獣 アントラー」
身長:40m 体重:2万t 出身地:エリアS
ベレトが禁書を使い蘇らせた怪獣。蘇らせただけなので原種と性能面と弱点は何も変わっていない。


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第八話:地の獅子②

: 磁力怪獣 アントラー 

同化磁力怪獣 アントラー -ネメシス-

絶望の覇者 メタメレイア         登場

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――エリアJ-平原-――

エリアJに近づけば近づく程、通信の聞こえが悪くなっているのに気がついた煉は完全に通信が途切れる前に機体を分離させた。

 

「ガンストライカー!スプリット!!」

 

ガンストライカーの際は操縦権はガルーダ側にあるので気づかなかったが、手がほんの少しだけ蟻地獄に向けて倒れていたのに気がついた。すると蟻地獄の中から砂埃をあげてアントラーが這い出てきた。

 

「ガチガチガチガチ!!」

 

歯ぎしりの様な音を上げるアントラーの周りを三機のGUYS戦闘機が旋回し攻撃を開始する。だが光線攻撃は電磁のバリアに、ミサイル攻撃は強固な装甲を前に意味を成さない。そして隊長が叫んだ。

 

「メテオール解禁!!」

「パーミッション トゥ シフト!マニューバ!!」

 

各機クルーズモードからマニューバーモードに変形し

作戦通りバスター、ブレイカーがアントラーを翻弄し背後からガルーダが近づく。

 

「スペシウム弾頭弾、ファイヤ!!」

 

アントラーの右顎に直撃し爆発。煙が上がると傷はついていたが完全に折ることは出来ていなかった。だが、隙を作り出す事が出来た。

 

「ブリンガーファン ターン オン!!」

「アローパニッシャー!!」

 

怯んだ瞬間を狙い、見事な連携でアントラーを巻き上げたたき落とした瞬間を狙いブレイカーのイナーシャルウィングから弓状の光弾が放たれ傷ついた顎に命中。見事、強固な顎を折ることに成功し磁力光線を封じる事が出来た。

 

「凄い…」

 

ディレクションルームで茜が驚嘆の声を上げたのもつかの間、クルーズモードに戻った瞬間ガンバスターが鈍い音を上げ空中に停止する。操作も効かず何が起きたか分からない状況に困惑する龍也。しかしその答えはすぐに出た。顎は折られていた筈だが広範囲に磁力光線が放たれ、更にはアントラーが切り裂く様に頭部を振り下げるとそれに引き寄せられ地面に墜落した。

 

「龍也!大丈夫か!!」

「僕は大丈夫です…!でも…」

「キシャァァア!!」

 

大吾の心配に答える龍也はすぐにバスターを降りるがアントラーがドスン…ドスン…と1歩ずつ近づいてくる。

 

(「このままじゃ…!誰か…龍也君を助けて下さい!」)

 

茜が手を組み祈ったその時、アントラーの頭部を黒い足が蹴り飛ばしズドン!と轟音を立てて大地に土煙が上がる。

 

「あれは…!」

「信じてたわ!必ず来てくれるって。」

 

煉を除く4人の笑顔が向けられたその方向にはウルトラマンブレイブが降り立っていた。ただ、煉も少なからず安堵しているようだった。

 

「全員、着陸態勢に入れ!地上から攻撃する!」

「GIG!」

 

バスターとは離れた場所に着陸し、ブレイブの援護をしながらアントラーとの戦いを見届ける。

 

「セアッ!!」

「キシャァァアァア!!」

 

自分に喝を入れ、構えを取るとブレイブは『フレイムフィスト』へと変化。それに答える様に咆哮を上げるアントラー。『光の巨人 対 地の獅子』

リベンジマッチの火蓋が切って落とされた!

 

「シェアァァッ!!」

 

ブレイブはアントラー目掛けて一直線に駆ける。一気に距離を詰め寄り、的確にキックとパンチを繰り出した後お得意の力強さを遺憾無く発揮しアントラーを圧倒する。

 

「隊長!準備完了しました。」

「よし、分かった!」

 

ブレイブとアントラーが戦う中、日佐人が何やら青い石を使った新兵器を制作し丁度完成したのだった。

 

「新メテオール『ニューロン・イナレイション』です!『ニューロン・ニュートラライザー』に青い石の成分を加えてアントラーの神経を瞬間的に消滅させる対アントラー用のメテオールです。」

 

メンバー達がメモリーディスプレイ・カートリッジにインストール、バレルを伸ばしロングショットモードに切り替えアントラーに銃口を向ける。

 

「昆虫や甲殻類の神経策は前側にあるのでアントラーも同様に前側にある筈…狙うは口です!」

「メテオール解禁!」

 

ブレイブは何かするのを汲み取りアントラーを抑えつけて狙いやすい様に仕向ける。そこを狙い全員が一斉にアントラーの口へメテオールショットを撃ち、見事全員の弾が命中した!

 

「キィイィィィイィィイ……」

「今よ!ウルトラマン!」

 

咲が叫ぶ。ブレイブはブレイブレードを展開し動かなくなったアントラーの強固な装甲を横一文字に薙ぎ払いブレイブシュートを浴びせる。ゆっくりと切断されたアントラーの上半身が崩れ落ち動かなくなった。

 

「やったぁ!」

「よぉぉぉし!」

「最初はどうなるかと思いましたよ…!」

「ふぅ…」

 

みんなが喜んでいる同じ頃ディレクションルームでも茜が喜んでいた。ブレイブが飛びさろうとした、その時。アントラーの亡骸にネメシスが襲来し砂埃を上げる。そのすぐ後に別の何かもこの地に降り立つ。

 

「シェアっ!?」

 

驚いたブレイブが振り向き構え直すと砂埃の中から悪魔の様な鎧と顔、そして見覚えのある禍々しい剣。

 

「久しいなウルトラマンブレイブ…。行くぞ!!」

 

メタメレイアはそう言うと剣を此方に向けたその直後に気づけば間合いを詰められ、胸を斜めに斬られる。ブレイブレードで応戦するが剣の技量は圧倒的な格差があり、太刀打ちすら出来ない程だ。一方でGUYSはネメシスと融合したアントラーの対処に当たっていた。分断された上半身はもちろん折った顎もたちまち治り、三本指の手は大きな鎌に変化を遂げ背中からは虫の羽が生えている。それを広げ大空へ飛び立つ。

 

「くっ!厄介なのが復活した上に面倒な奴も来るとはな…」

「このままでは市街地に被害が及びます。どうにか奴の動きを止めないと…!」

 

ガルーダ、ブレイカーの両機に乗り込みアントラーを追撃するが元々強固な装甲がネメシスで更に強化されまるで歯が立たない。ブレイブもとい龍也は鍔迫り合いになりながらメタメレイアに問いただす。

 

「何故こんな事をするんだ!」

「前にも言った筈だ…俺は貴様を殺すとな。」

「ならアントラーやネメシスはどういう事だ!僕を倒したいなら直接来れば良いだけじゃないか!」

「奴らは関係ないが?…まさか貴様自分の事より周りの心配をしているのか?呆れたな。自分の状況も分からずして他人を守ろうなどとは…笑止!!」

 

ブレードを払い除け、強烈な一撃をもろに受けて倒れ込む。振り向いた時には剣先は顔の真正面に向けられていた。ほんの少しだけでも動けば、首が跳ね飛ぶ…そう感じる程にメタメレイアの太刀筋は完璧だった。

 

「そんなに人間の事が気になるか?…いいだろう。」

 

メタメレイアは身体だけを振り向け剣を振り下げる。すると飛行中のアントラーの首が斬られ爆発した。

 

「これで貴様の気になる事は無くなったぞ?立て。貴様の本気を見せてみよ。」

 

すぐに立ち上がり間合いと様子を見計らっていると、カラータイマーが鳴り出した。5回程鳴った時だ。

今度は逆にブレイブが仕掛け、剣を振り下ろす。それを分かっていたかの様にサラりと避け反撃の一閃。

振り上げ、一文字切り、突き……いずれの攻撃も全て、反撃しブレイブを追い詰める。

 

「なんでだ…どうして…こんなに強いんだ……!!僕は負けられないのに!!」

 

気合いで立ち上がり拳を目一杯握り締め無闇に剣を振るう。当然全て当たらず遂には指で止められてしまう。

 

「ヘェッ!?」

「貴様の『それ』はもはや剣では無い!!」

 

剣が下ろされた瞬間、誰もがブレイブの死を予感した。だが刃は直前で止まっている。指から抜いたブレードで刃を止めたのだ。

 

「ほう…これを止めるとはな。」

「僕は負けられない…みんなを護る為に僕は戦うんだ!」

 

剣を振り払い、一撃。たった一撃だけメタメレイアの剣を斬った。だがそれが最後の攻撃。カラータイマーの光が消えブレイブは姿を消し、その後メタメレイアは飛び去った。

 

――???――

「どうでしたか?ウルトラマンの方は?」

「他愛無い程の弱さだ…もう少し期待していたのだが。」

 

ベレトとメタメレイアが周りに何も無い暗い空間で、話をしていた。

 

「そうでしたか、なら心配ありませんね。……ですが、何故アントラーを殺す必要があったのですか?」

 

少し怒りが込められながら疑問そうに尋ねるベレト。

 

「俺は強き者と戦いたい…それだけの事よ。但しそれを邪魔する者は許さない。」

 

お互いが睨みあう。少しすると目を離しベレトは何処かへ歩いて行く。誰もいない虚無の空間。メタメレイアは呟いた。

 

「…実力としては弱い。だが……最後の一撃だけは認めてやろう。」

 

刃の部分にはヒビが入り、少し欠けた。

つづく




いつも読んでいただきありがとうございますm(_ _)mリクソンでございます。メタメレイア君、略してレイア!いや〜強かったねぇ!ちょっと強くし過ぎたかなとも思ったけどこれくらい強くしないと相手にならないからね!仕方ないね!それとアントラー君ごめんな。2回も真っ二つにして。2回も…… という訳で!最後になりますがこれからもウルトラマンブレイブ、リクソンをよろしくお願いいたします!また次回のあとがきで会いましょう!リクソンでした!
─アーカイブドキュメント─
「同化磁力怪獣 アントラー」
身長:40m 体重2.5万t
『同化生命体 ネメシス』が『磁力怪獣 アントラー』を吸収し複製した怪獣。ゴモラと同様に原種よりも格段に全てのステータスが上がっている。
また三本指の手は大きな鎌に変化を遂げ背中からは虫の羽が生えていて飛行が可能となっている。

【次回予告】
メタメレイアに敗北し、自暴自棄になる龍也。そんな姿を見た大吾は龍也にある宿題を出す。すると、謎の女が現れて…ウルトラストーンが盗まれたぁ!?
次回 第九話:「宝石は義賊の獲物!?」


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第九話:宝石は義賊の獲物!?

:奇機械怪獣 デアボリック 宇宙義賊 パレム

暗黒魔術師ベレト              登場

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

―宇宙―

青い星、地球。その前にはプカプカと宇宙船が浮かんでいる。

 

「ここが地球ね…」

 

女がパネルを操作すると宇宙船は消え、その場には再び静寂が訪れた。

―道場―

熱心に竹刀を振る音が誰もいない道場で斬撃音が響き渡る。だが、恐怖と焦燥感が身体に染み付き思うように動かせない。

 

「こんな物じゃアイツには勝てない…くっそぉお!!!」

 

一心不乱に振り続けていると次第に指と腕が疲れ竹刀が硬い床に打ち付けられる。道場の静寂が余計に心を掻きむしる様な気持ちになり胸中に残る。するとハハハと笑って誰かが道場に入ってきた。

 

「素振りだけは一丁前だな!」

「た、隊長!?どうしてここに?」

「煉が心配していてな。…一本、勝負しないか?但し俺は動かないし攻撃も仕掛けない。これでどうだ!」

「隊長って段位持ちですよね!?勝てるわけ…」

 

勝てるわけ無い…それを言いかけて言葉が詰まる。あの時も心の何処かで同じように考えていた。

 

…数十分後…

「ハッハッハ!龍也もまだまだだな!」

「うへぇ…ほら、言った通りじゃないですか。」

 

試合が終わり、倒れこむ龍也。結果は予想通り、一本も取れずに大敗北を喫したのだった。

 

「外の空気を吸いに行かないか?」

 

大吾に引き連れられてバルコニーに出る。外は快晴で締め切った室内の空気より何倍もおいしく感じられた。

 

「気持ち良いだろ〜?」

「あ、ありがとうございます。…そうですね。ほんっとうに気持ちが良い。」

 

貰った缶コーヒーの熱がじんわりと冷えた手を温める。蓋を空け、喉に流し込み半分くらい飲みきった頃、大吾は口を開いた。

 

「龍也。お前にとって力ってのは何だ?」

「…正直に言うと『分からない』が答えですね。」

「そうか…なら宿題を出そう!自分にとっての『力』とは何か。答えを見つけてみるんだ。」

「GIG!」

 

大吾はニッと笑ってディレクションルームへと戻る。不器用ながらに僕を励まそうとしてくれているのは、よく伝わった。

 

――ディレクションルーム――

ディレクションルームではガイズスペーシーが観測した宇宙船についてとGUYS本部からの伝令を隊長から聞いている所だった。

 

「…以上があの宇宙船について現在分かっている事の全てです。」

「GUYS本部はあの宇宙船の捜索と発見時に攻撃をやむを得ない場合に対応出来るよう体制を整えておけとの事だ。煉、咲は大気圏外から宇宙船の捜索。日佐人、龍也、茜で地上に宇宙船が潜伏して居ないか調査を進めてくれ。GUYS!Sally GO!!」

「GIG!!」

――エリアT-河川敷――

スピーダーを河川敷に着陸させ宇宙船の捜索準備を開始する。いつもは小学生が遊んでいたり、堤防上で散歩やサイクリングを楽しまれているはずが避難命令によって人の姿は何処にも無い。

 

「やっぱり宇宙船は大気圏外にあるのかな…?」

「どうだろ?日佐人、こっちは準備OKだよ。」

 

観測を初めて早5分。いつも通り話しているが、龍也は誰かに心の奥底までを見透かされている感じがしてならなかった。

 

「ここから半径2㌔に反応は無し…か。これの外となると中々に厄介だぞ。」

「じゃあ!3人に別れて調査するっていうのはどう?」

「そうだね…そうしようか。」

 

そう言って二人と別れ、自分でも感じている物が分からないまま何となく歩いていく。歩道を歩いていたその時、肩に鋭い痛みが走った。

 

「うあ"ぁっ!」

「私は宇宙義賊のパレム。いきなりだけど腰に下げてる『ソレ』私にくれない?」

 

ウルトラストーンを指差しパレムという女は言った。紅色をしたドレスを着ているがそれを隠すように黒いマントを羽織り、ブーツを履いている。

 

「ウルトラストーンを使って…何をするつもりだ!」

「貴方に答える理由は無いわ。それで、くれるの?くれないの?」

「渡す訳無いだろ!!」

「そう…残念。じゃあ力ずくで。」

 

すぐに立ち上がりグリップを握りしめる。唾を飲み込んだその瞬間、パレムの姿が視界から消える。

 

(「龍也、上だ!二撃くる!」)

 

ブレイブの声に合わせて回避。かかと落としは右半身を掠め二撃目の回し蹴りを間一髪受け止めるが衝撃でシューターが落ちる。拾う隙も与えぬ足攻撃は受け止めるか避けるかの二択に絞られる位だった。

 

「うーん…中が厄介ね…」

「ブレイブの事を!?」

「ウルトラマンさん、私の護衛にならない?そうすればこの2つは返してあげる。」

 

パレムの手中には光と火のウルトラストーンが。

 

(「お断りだ。」)

「いつの間に!?返せ!!」

「あら残念。そっちは私を捕まえる事に集中し過ぎて他が疎かになってるわよ?自分の力も扱えない人に興味はないわ。」

 

龍也の掴み掛かりをひらりといなし、トライシューターを拾い上げエレキショットで怯ませると走り去っていく。

 

「待…て……」

 

――エリアT-ビル屋上-――

「やっぱりいつ見ても美しいわねぇ……」

 

屋上の壁にもたれながらストーンに日の光を当て眺めている。するとモヤが現れ中から独特な杖を持っているローブを着た男が。

 

「突然失礼します。その宝石を私に頂けませんか?」

「…嫌だけど。というか誰?」

「これは失礼。私、魔術師 ベレトと申します。貴方はその宝石をどうするおつもりで?」

「教える理由は無いわ。」

「ふぅむ…仕方ありませんね……」

 

何処からか取り出したスペクトロのストーンを起動すると5つ空に穴が空き中からゾロゾロと、紅い十字の仮面を付けた亡者が現れる。

…………………………………………………………

「ブレイブ!あのビルで間違い無いんだな!」

(「あぁ!ウルトラストーンの波長はあそこからだ!」)

 

ビルの非常階段を急いで屋上に駆け上がる。

 

「動くな!!…なっ!スペクトロ!?」

「おや?以外と早く来たようだね。」

 

ドアを開けると男がパレムの首を掴んでいる。

男に見覚えは無い筈だが、何処か既視感を覚えた。

即座に分身体を撃ち抜き尋ねる。

 

「お前は何者だ!」

「私の名はベレトです。…おっと、そうでしたね。」

 

そう言った矢先に指を鳴らすと封印されていた記憶が一気に呼び起こされ、息を飲む。

 

「お前は…ゴモラの時の!!パレムを離せ!」

「もう少しこの女には役立って貰わないといけないので、それは不可能ですね。」

「何!?」

「本当は石だけを貰いたい所なんですが、残念ながら触れないのです。仕方なくこの女ごと持っていこうとしたら今度は貴方ですよ。全く…仕方ありません。」

 

ベレトは謎の機械を取り出しパレムに取り付け、フェンスの外に投げ飛ばす。落ちていくパレムをコードや機械が包み込み、巨大な機械生命体へと姿を変貌させた。

 

「パレムに何をした!!」

「さぁ?私はこれで失礼致します。」

「待て!!」

 

追いかける龍也を遮る様にアサルトアームから銃弾の雨が襲いかかる。

 

「くっ!ブレイブ行くぞ!……あ。」

 

ベレトに気を取られて本来の目的を忘れていた。ウルトラストーンはパレムが持っているままだ。全身の兵装を乱射しながら進撃する姿に焦りを感じながら、ある事を思い出した。

 

「……3つ目のウルトラストーンって使えるか?」

(「!……やむを得ないか…よし、行くぞ!!」)

 

ホルダーに水のウルトラストーンが出現。起動しブレイブレスにセットする。

 

「ブレイブゥゥゥゥ!!!」

 

デアボリックの正面に巨大な渦潮が立ち上り中から青い体のブレイブが出現。ブレードを展開し迫り来る巨体を押しのける様に金色の剣を振るう。それでもデアボリックは留まる事を知らず、武装を乱射し続ける。ブレイブは弾幕を躱すが、片膝を着きアクアブレードショットを放ち怯ませた。

 

「セアッ…!」

「◎△×●&%#?!!!!」

 

鳴き声かどうかも分からぬ奇声は何故か悲しい鳴き声の様に聞こえた。

――インナースペース――

「やはり、本来の力は出せて居ないか。それとも…龍也!このままでは我々がやられてしまうぞ!」

「でも!…それじゃダメなんだ!倒すんじゃない、護るんだ!それが…僕の力だ!」

「龍也…!・・・そうだな。」

――エリアT-街中-――

胸を張り立ち上がる。一気に距離を詰め振り下ろされた右手のジェムアームを受け流し、カウンターを流れる水の様に打ち込む。

 

「ハァッ!」

 

ジェムアームから放たれた光線を、ブレードで受け止める。今までで1番威力ある光線は、全力で立ち向かうブレイブをジリジリ後退させる。

 

「セアァァアッッ!!」

 

だが、ブレイブは隙を見て渾身の力で横っ飛びをすると水柱が全身を覆い、光線を打ち消す。 そのままスパイラルしながらデアボリックのド真ん中を貫通!

動かなくなったデアボリックの胴体にはポッカリと穴が。次の瞬間には大爆発を起こした!

…………………………………………………………

「うぅっ…私は一体。げっ!ウルトラマン!」

「げっ!って言う事は無いだろ?」

「私、怪獣にされて…それから……。」

 

どうやらパレム曰く、怪獣になった後は全く記憶に無いらしい。

 

「まぁ、でも今回はあんたに助けられたわ。これは『仕方なく』返してあげる。」

「元々お前のものじゃ無いだろ…」

「それじゃ!私もう行くから。」

 

そう言うと何処に隠していたのか宇宙船が現れ、足早で乗り込むと流れ星の様に宇宙の彼方へと姿を消した。

―次の日―

結局、宇宙船の正体は不明のまま地球から立ち去った事が分かり程なくして作戦は終了。皆、帰還したのだった。

 

「あ、隊長!」

「ん?どうした?」

「昨日の答えなんですけど。僕にとっての力とは、『誰かを護る為に使うもの』です!」

「そうか…!いい答えだ!」

 

その時、僕はどんな気持ちだったかは覚えてないけれど。日差しと空気がとても気持ち良かった事だけは、良く覚えている。

つづく




いつも読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
お久しぶりです、リクソンです。ホントに待たせてしまい申し訳ございません。いや〜文字数を減らすと書く内容を削ら無いと行けなくなるので大変でした…ホント小説書いてる人って凄い。
そして、宇宙義賊パレム! 宇宙を股に掛ける義賊か…凄いな(KONAMI感)
衣装は自分なりに考えて書きましたね。原案にはデアボリックじゃなくてパレムがギャラクトロンを召喚するっていうものもあったのですが、紆余曲折ありまして。現在の物になりました。
という訳でまた次回のあとがきでお会いしましょう!リクソンでした!

─アーカイブドキュメント─
宇宙義賊 パレム
身長:158cm 体重:▇▇▇▇ 出身地:宝石惑星コボル
宇宙を股に掛ける義賊で今回はウルトラストーンを狙っていた。また惑星コボルでも同様に宝石や金目の物を盗んでは貧しい人々に渡していた。

【次回予告】



次回:第十話「護る力≠戦う力」


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第十話:護る力≠闘う力

:絶望の覇者 メタメレイア

古代怪獣ツインテール

地底怪獣 グドン

地底同化怪獣 グドン -ネメシス-    登場

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

――メテオール研究所――

「だ、誰かぁ!助けてくれぇ!」

「う…うわぁぁぁああああああ!!」

 

ネメシスが人々を喰らい断末魔が響き渡る。

その光景はまさに地獄絵図と呼べるくらいだ。

 

「はぁ…もう少し上品に食べれないのですかねぇ?」

……………………………………………………

――ディレクションルーム――

早朝、緊急で龍也らが集められたスクリーンにはミサキ女史が映し出され衝撃の言葉を放つ。その言葉に龍也らはその言葉に驚きを隠せなかった。

 

「昨日の夜、メテオール研究所が何者かによって襲撃されました。」

「そんな…誰にも気づかれる事無くどうやって…」

「『ヤツ』の仕業じゃ。」

 

ディレクションルームの扉が開き安崎博士が入ってくる。本名「安崎 徳二郎」62歳。メテオール研究学の第一人者でありアライソ整備士長と共にメテオール搭載を決定した人物である。

 

「徳ちゃん!生きてたのね!良かったぁ…」

「おぉ、咲。久しぶりじゃが、再会にふけている場合ではないのでな。恐らく『ヤツ』の狙いは、メテオール研究所にある怪獣らの遺物と研究員だったんだろうな。」

「それで、さっきから言ってる『ヤツ』ってのは一体誰なんです?」

「ヤツの名は『ベレト』じゃ。」

 

その言葉に驚きを隠せない龍也。周りにバレないように少し後ずさると、その途端スクリーンの表示がミサキ女史から見覚えのある姿に写り変わる。

 

「初めましてGUYSの皆様。先程ご紹介にあずかりましたベレトです。昨夜のメテオール研究所襲撃は私が首謀者です。いやぁ、彼ら彼女らは非常に良い糧となってくれましたよ。本来はそこの博士まで頂きたかったのですが…まぁ1人欠けても問題はありません。」

 

そう言い放ちスクリーンから姿を消すベレト。見え見えの挑発だが龍也らは立ち尽くす事しか出来なかった。

 

「時間もいい頃だな…メシ行くぞ!」

「「GIG!」」

 

隊長が皆を励ましながら先導し食堂へと向かう。

 

(来い…ウルトラマンブレイブ…)

「!?」

 

周りを見回すがメンバー以外の人影はない。ただ、行かなければない。そんな気がしてならない。こういう時の嫌な予感はよく当たる。

 

「皆さん!先行っといて下さい!すぐ戻ります!」

「急にどうしたんでしょう?」「さぁ?」

 

皆に別れを告げ一心に走る。第六感と言うべきだろうか走り抜けた先のバルコニーにソイツは居た。

 

「久しいなウルトラマン。」

「お前は…!メタメレイア!」

「今日は貴様に言伝を伝えに来ただけだ。明日の正午、そこに書かれている場所に来い。来なければ…分かるな?」

 

そう言ってバルコニーから飛び降りて行った。

 

「(みんなを危険に晒す訳には行かない…僕達がアイツを止めないと…!)」

 

――次の日――

「みんなに悪い事したな…」

 

食堂に戻った龍也は隊長に無理を言って休暇を取らせて貰ったのだった。あの時の皆の反応は中々心苦しいものがあった。時刻は11時50分を指している。

 

(「ヤツの目的は恐らく我々と決着をつける事だろう。」)

「あぁ。行こう!」

 

物陰に身を潜めブレイブレスを出現させ、水のウルトラストーンを起動する。

 

「ブレイブゥゥゥゥ!!」

――無人島――

昔、巨大な爆発でもあったのだろうか。島の中心地は草木1つ無い。

 

「…来たか。」

 

「お前に聞きたい事がある…お前の力とは何だ。」

「そんな物を聞いて何になる?だが…言うとするなら『全てを凌駕し最強になる為の闘う力』それが俺の力だ。」

「僕の力は『皆を護る為のものだ』」

「貴様の力の定義なんぞに興味は無い。俺は自分より強い者と戦いたいだけだ!」

 

戦場に降り立つや否やブレードを展開させ、剣と剣が青空の下で衝撃を放ちながら交錯する。つば迫り合いの末、互いの剣が弾け後ずさる…

 

――ディレクションルーム――

一方その頃、エリアMでは二大怪獣…ムチをふるい猛然と暴れるグドン。 それに抵抗するツインテール。そう、ツインテールとグドンが闘っているのだ。

 

「今、ブレイブは前のヤツと戦ってるってのに!」

「泣き言を言ってる場合じゃないわよ!」

「煉はガルーダ、咲はバスター日佐人はブレイカーで出撃!GUYS!Sally GO!」

「GIG!」

 

日佐人の泣き言を咲が一喝し各機が戦闘を開始する。光線やバルカンが二体の怪獣を攻撃し相手の攻撃を華麗に避けている。遠くから見ているベレトはグドンとツインテールの戦いぶりに満足げに、舌なめずりをすると拳を開きネメシスをグドン目掛けて打ち出した。

 

「(二人とも!8時の方向から飛行物体が急接近!恐らくネメシスよ!)」

 

咲の報告を聞いた時にはガルーダの真横を通過した後だった。そのままネメシスはグドンを呑み込み、

『グドン-ネメシス-』へと姿を変化させる。頭部の角が三本に変わっている事ぐらいしか変化が無い…が。

ムチを勢いよくツインテールに打ち付けた瞬間、その身体は一刀両断されたのだった。

 

「「!?」」

 

――無人島――

十文字に交錯する剣と剣。此方では未だ剣撃が続いていた。

 

「貴様も少しはやるようになったな。」

「まだまだァ!」

 

ブレードを天高く突き上げると全身を水柱が纏い高速回転しながらメタメレイアに突撃した。

 

「ハァァァ…セアァァァッ!!」

「そこ!!」

 

少しの間競り合うが、アクアトルネードの水流を両断しブレイブを跳ね除けた。

 

「これでも…ダメなのかよ!」

「貴様の力はそんなものか!もっと見せt……ベレト

…また貴様は俺の邪魔をするつもりかァ!!」

 

レイアが怒号の声を上げ、目線の先には日本列島が。

まさか。と思いつつも嫌な予感は当たったようだ。

 

「(龍也。今、東京をネメシスが襲っている。それもかなりの強敵のようだ。)」

(「みんな…」)

「この勝負はお預けだ、急用が出来た。」

「どうして貴様は人間の為にそこまでする。貴様が人間の為に闘う理由は無い筈だ。」

 

その回答は既に決まっている。ウルトラマンが何故長きにわたり人間の為に闘い、見守ってきたのか。

 

『人間が、好きだからだ。』

 

(「ブレイブ、行こう!!」)

「(あぁ!)」

 

「…やはり貴様らは甘いな。」

 

――エリアM――

「うぅっ!避けるだけで手一杯だなんて!」

「避けられているだけマシかもしれないわねッ…!」

 

マニューバーモード起動から50秒経過。恐らくこれが切れればガルーダの翼は断たれるだろう。

5…

絶望への秒読みが始まる。

4…3…

グドンのムチがすぐそこまで来ている。

2…1…

もうダメかと思ったその時、眩い光が煉を包み込み水流でムチを弾き飛ばす。見上げた先にはブレイブの姿が。

 

「ウルトラマン…ブレイブ!」

「(グッドタイミングね!)」

「(一時はどうなるかと…)」

(「速攻で方を付ける!」)

 

ガルーダを浮上させ、戦闘体制を取る。ムチの連打を一つ一つ水の如くいなし剣で切り裂いていく。ムチの再生速度かそれともブレイブの剣撃か。常人には目にも止まらぬ速さで迂闊に手を出せば此方がやられる…その場にいる全員が分かっていた。互いに衝撃でじりじりと後ずさる。そして指ひとつ動けばどちらかがやられる静寂が訪れる。

その緊迫した静寂の中、カラータイマーの音が鳴り響く。ブレイブが駆け出す。それと同時にグドンは右ムチを槍の様に伸ばし突き刺そうとしている。その間を縫って刃を強固な肌に押し当て一気に引き抜いた…

 

つづく




皆様お久しぶりですリクソンでございます。毎度読んで頂きありがとうございます。<(_ _)>
前回投稿したのが1月という事で…もう新学期が始まろうとしておりますけれど…すいませんしたぁぁぁぁぁあ!!プロットが消えたり、内容が二転三転したり、別の事してたりと色々大変でして…(- -;)
それはさておき、前回ウルトラマンブレイブ-アクアブレード-について触れていなかったという事で!(忘れてただけ)(´-ω-)ウムやはり剣。剣は全てを解決する。兎に角かっこよく!強く!けどクールで落ち着きがあると言いますか、そんな感じを意識しております。
今回と次回はひじょぅぅぅうに大事な回となっておりまして注目してもらいたい話でございます!という訳でまた次回のあとがきでお会いしましょう!リクソンでした!

──アーカイブドキュメント──
「地底同化怪獣 グドン」
身長:50メートル 体重:2万5千トン
「地底怪獣 グドン」に「同化生命体 ネメシス」が取り付き吸収し複製した怪獣。
原種よりも格段に全てのステータスが上がっている。また容姿は二本の角が三本に変わり振動触腕エクスカベーターの威力が格段に上がっている。その威力はグドンの餌であるツインテールの身体を一刀両断する程。やはり身体は黒紫掛り目も紅眼に変わっている。

【次回予告】
グドン-ネメシス-と決着を付けるブレイブ。その背後から忍び寄る魔の手。グドンと決着は!?魔の手の正体とは一体!?ブレイブに危機が迫る!!
次回 第十一話:「邪悪-ネメシス-」





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