どうも! 異世界人材派遣会社世界救世補助部門です! ~勇者の旅のお手伝いはお任せを~ (ケツアゴ)
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 画面の前の諸君は勇者が世界を救う物語は好きだろうか? 勇敢な少年でも臆病な少女でも怠惰な男性でも勤勉な女性でも構わないが、兎に角運命に導かれた主役が様々な試練を乗り越えて世界を救う話だ。映画でも小説でもゲームでも構わないが、こんな事を思った経験は有るだろうか?

 

 ”もしあの時、僅かでも歯車が狂っていたら物語は終わっていたんじゃないのかな”と。

 

 例えば、絡んで来たチンピラを叩きのめしたから強さをアピール出来た。例えば、ちょうど町や人が襲われているタイミングに遭遇した。例えば、恐ろしい存在の封印が解ける前に悪人の前に到着した……は大抵の場合防いだと思ったら復活、ゲームなら連戦となるのが多いけれど、要するに一つ一つは小さい出来事に見えても物語を構成する歯車の一つという事だ。

 

 じゃあ、毎回その歯車が上手く働くかというとそうでもないらしい。半日でも、一時間でもタイミングがズレれば物語が本来通りに動かず、世界の破滅に繋がる可能性だってある。まあ、バタフライエフェクトって奴だ。

 

 

 まあ、だからこそ私達の仕事が成り立つのだがね。え? 偉そうに語るお前は何者だって? おっと、これは申し遅れました。生憎名刺は画面の先にはお渡し不可能ですのでご容赦の程を。

 

 

 私は、私達は世界の救済を影ながらお助けする、そんな仕事をやっている者です。では、詳しくは物語をどうぞ。世界を救う物語、ではなく、その舞台裏のアレコレですが退屈せずにお付き合い下さいませ。

 

 

 

 

 

 

「おいおい、此処はお子様の遊び場じゃないんだぜ? お前みたいなチビは家でママに甘えてな」

 

「失せろ、雑魚が」

 

 ほら、とある世界でも結構ありがちなイベントが起きていますよ。依頼をこなして報酬を得る冒険者という名の日雇い労働者になりに依頼を斡旋するギルドに現れた少年、やがて数々の苦難を乗り越えて世界を救う事になる存在なのですが、これは彼の伝説の第一歩。

 

 彼に絡んだのは昼間から仕事もせずに飲んだくれている先輩冒険者なのですが、大抵主人公より大柄で筋肉質、どう見ても強いのですが……まあ、読み慣れている皆様ならこの後の展開はお分かりですね?

 

 

「お、覚えてやがれ~!」

 

 はいはい、テンプレテンプレ。大勢の前でそれなりの強さの男数人を新人が圧倒した事で注目を集め、次のイベントに繋がったりします。ヒロインとなる女の子を助けて好意を持たれるってのも有りますよね。

 

 では、此処で画面を移動して逃げ出した彼等にズームアップ! 大勢の前で新人にのされるという大恥で、これじゃあ今後の信用に響きそうな彼等ですが、路地裏に入った後の顔をご覧下さい。ほーら、一仕事終えた後の爽やかな顔でしょう? では、ちょっと話し掛けてみましょうか。

 

 

 お疲れ様でーす!

 

 

「ん? ああ、アンタか。って、カメラ回ってるなら先に言ってくれよ」

 

「企業説明会で流す奴だろ? ちょっと待ってくれ。直ぐに服を直すから」

 

 これは悪い事をしてしまいましたね。先程の戦いで乱れた服を慌てて直す二人の姿に私は反省です。では、早速インタビューですね。

 

 貴方達の主な役は?

 

「俺達は”初期モブ敵課”だから今回みたいに勇者に絡むチンピラだったり、ヒロインを襲う盗賊だったり、そんな物語最初期の名無しの悪役だよ」

 

「今回はチンピラ冒険者だったけれど、昼からは別世界で悪徳商人の護衛役だな。確か女の子の姿をしたモンスターを運んでるんだ。助けられた其奴に勇者がご主人様って呼ばれるんだってよ」

 

 やられ役って嫌になりません?

 

「そりゃ如何にもって感じ出す為に酒や汗の臭いの香水付けたりとか苦労は大きいが、俺達はプロローグが終わって始まる一章の重要なイベントの敵だ。続けてりゃやりがいは出て来るもんさ」

 

「俺は元々別の部署希望だったけれど、続けりゃチームの一人だって思えるようになるもんさ。まあ、幹部役を諦めた訳じゃないし、社内オーディションには毎回出てるけどな」

 

 ありがとうございました。では、お仕事頑張って下さいね。

 

 カメラに手を振って二人は次の世界に去って行く。次の世界でも勇者にとって重要な出会いに繋げるのでしょう。お仕事ご苦労様でーす。

 

 この様に勇者からすれば取るに足らない出来事だとしても、その役を受け持つ方からすれば誇りを持ってやっている仕事であり、世界を救うための物語において重要なイベントなのです。

 

 実際、それなりに腕が立つと評価されていた二人を倒したあの少年ことブレイブ君に目を付けた女性冒険者がとある遺跡での依頼に誘い、其処で自らが勇者に選ばれた存在だと知るのですからね。

 

 ほら、重要でしょう? あのいざこざが無ければ何時か知ったにしても大きく時期がずれ込み、それがどんな影響を及ぼす事やら。皆様もお好きな物語に当てはめてお考え下さい。きっと分かる筈ですから。

 

 

 

  ……え? 私達が何者か知らない内は今までの流れがさっぱり頭に入らない? タイトルで大体説明されているけれど詳細を?

 

 これは失礼を致しました。では、先ずは私の自己紹介から。その後でもう一度冒頭から読み直しを……冗談ですって。画面を閉じたりブラウザバックは止めて下さいよ。

 

 私は異世界人材派遣会社の救世補助部門所属のナ・レーションと申します。短いお付き合いですが宜しくお願いしますね。

 

 続きましては我が社に付いてですが、その前にこの世界についての説明を。簡単に申しますと世界を創造なされた唯一神ニアス様が管理する世界であり、今は大きな影響が無くても魔王ダークデスによる支配が進んでいる状況ですよ。

 

 まあ、ゲームで言うならば序盤のダンジョンにさえ行っていない頃、プレイヤーが到着時に滅びている村が襲われてもいない状況で魔王の存在を知るのは極一部、勇者の事さえ御伽噺レベルです。

 

 ですがブレイブ君の冒険は今日から始まり、それに合わせてダークデスも動き出します。どうなるかは乞うご期待!

 

 では、早速ですがニアス様の所を訪ねましょう。目当ての方の片方もいらっしゃる頃でしょうしね。

 

 

 彼は凄いですよ。異例の大抜擢をされた期待の新人! この世界を救う旅においてブレイブ君に並ぶ重要度の持ち主。いったい何者かって? それは次回をお待ち下さい。お分かりの方もネタバレになりますのでお口チャックでお願いします。

 

 

 では、次回の投稿までお待ち下さいませ。ナ・レーションでした。

 



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