【リレー小説】ボクカノ (リレー小説実行委員会)
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設定&ルール!

 

 当企画のテーマは、【みんなで決めた設定を使ってリレー小説を!】という物です。

 

・1 主人公の設定 (名前、性別、年齢、性格など)

・2 ジャンル   (コメディ、シリアス、カオスなど)

・3 作品テーマ  (恋愛、冒険など。最終的な目的も)

・4 世界観の設定 (舞台となる国、時代、所属など)

・5 主要人物   (ヒロイン、友人など、3名ほど)

 

 以上の項目を、事前にみんなで考案。

 メンバー全員が、この6つの内から“一人ひとつ”担当し、それを自分の好きなように決められます。

 

 そして、みんなで持ち寄ったこの設定を使用してリレー小説をやってみる! 書いてみる! という趣旨の企画となっております。

 


 

 

・1 主人公の設定  【砂原石像さま】担当 

 

 

◆主人公の名前◆  “瀬川ハルキ”

 

◯性別  ♂(外見は♀)

◯年齢  20代~30代前半辺りのいい年こいた大人

◯性格  八方美人、ひねくれ者、外面を取り繕うのが上手いタイプのクズ

◯容姿  超絶美人(※ただし、時折ゲス顔になる)

◯身長  145~155辺り

◯体重  軽い。パワーも無い。

 

◯好きな食べ物  他人に奢らせた飯・男を弄んだ後のビール・二郎系ラーメン 

◯嫌いな食べ物  一人で食う飯

 

◯趣味  女装した姿で男を恋に墜とし、散々貢がせたあとこっぴどく振って捨てる。

     その時の絶望の表情がいい酒の肴になるとのこと。(※なお、ホモではない)

◯特技  女装・男を騙すための演技・ソプラノからアルトまで自在な声質・護身術

 

◯好きなもの

・騙されているのにも気付かないで自分に惚れる男達の滑稽な姿。

・男を振ったとき見られる色とりどりの表情

・純朴な青少年を振ったときに見られる絶望の表情

・モテないおっさんを振ったときに見られる焦燥感のある顔

・厄介な男との関係性を絶ちきったとき感じるカタルシス

 

◯嫌いなもの

 ホモ、ストーカー、年々部屋に溜まっていく服、しつこい奴、加齢、周囲からの嫉妬 持ち上がらない買い物袋、女装してない素の自分、二郎食った翌日の体臭

 

〇一人称  “俺”(※女装しているときは演技によって変わる)

〇二人称  お前、てめぇ、おっさん、ガキ、ボウズ、その他数々の蔑称

      (※女装しているときは演技によって変わる)

〇口調   素の時はかなり粗っぽいしゃべり方。演技している時は猫被っている

 

 

◆サンプルボイス◆

 

「愉しかったぜぇ、お前との恋愛ごっこ!!」

 

「いい顔してるねぇ♪ これだから恋愛ごっこは愉しいんだよ♪」

 

「面白れぇリアクションありがとう♪ 今までてめぇの臭ぇ面を拝んできた甲斐があったぜ!」

 

「今までご苦労様♪ アッシー君♪」

 

「あ・り・が・と・さん☆ミツグ君♪ 今まで助かったぜぇ♪ ま、金ねぇてめぇはもう用済みだけどなぁ!!」

 

「ボウズ。人生の先輩としていいこと教えてやるよ。お前にとって都合のいい女なんてもんは存在しねぇ。もしいるなら十中八九お前をからかって遊ぶか、利用するだけして捨てるような奴だぜ。俺のようになぁ!!」

 

「い~い人生経験になったと思って諦めな。お前にはこんなチャンスはもう無いだろうからなぁ☆」

 

「いや~恋愛経験無えウブな中坊をからかうのは愉しいぜ☆」

 

「こっぴどく振ってやったときのあの小僧の表情! それ思い出しただけで3杯くらいはいけるぜぇ!!」

 

「ギャハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

「16才で、ラノベのヒロインみたいなリボンをしている、無条件で貴方の事が大好きな、おっぱいの大きい女の子。って設定は中々面白かったな!」

 

「次は...ランドセルを背負ってる年頃で、フランス人の父とドイツ人の母を持つ、最近になって日本にやってきたばかりのツインテール幼女。で行ってみっか!」

 

「あー...かったりぃ...」

 

「暇だなぁ...こういうとき遊べる奴は...そういやアイツは3日前に振ったっけな...」

 

「馬鹿め! 長年地雷女やってるこの俺が護身術の一つも身につけて無いとでも思ったか!!」

 

「雑ぁ魚♪ ざぁこ♪ 簡単に騙される恋愛弱者♪」

 

「ヤベェ...うっかり厄介な奴引っかけちまった...」

 

(よっしゃあ!! 石油王の連絡先ゲットぉ!! これからじっくりと貢がせてやるぜ!!)

 

「おい、ヤメロ! 俺はホモじゃない!! だからこっちにすり寄ってくるんじゃあない!! 」

 

「はぁ~? お前それマジで言ってんの? エアプか? お前人生エアプか?」

 

「世の中なぁ! 自分を綺麗に取り繕って、商品にしていけなきゃやっていけねぇんだよ!! 甘ったれんじゃねぇよガキが!!」

 

「あー...二郎臭が抜けねぇ...死にたい...」

 

 


 

 

・2 ジャンル    【ヒアデスさま】担当

 

 

 私が提案するのはコメディです。

 細かい設定とか捻ったストーリーがない方が気軽に書けると思いますから。

(以上、頂いたメッセージ原文ママ)

 

 

※管理人注※

 

 【コメディ】とは、人を笑わせることを主体とした、楽しい物語の事。

 主に登場人物たちの会話や、掛け合いによって笑いを獲っていく、という手法のジャンルです。

 

 ギャク小説とコメディ小説の区別は、とても曖昧な物ですが……。

 分かりやすく言うと、突飛な出来事や、ネタで笑いを獲っていくが、ギャグ小説。

 また漫才のような掛け合いで、会話やセリフによって楽しませるのを主眼とするのが、コメディ小説となります。

 

 


 

 

・3 作品テーマ   【お通しラー油さま】担当

 

 

 ダンジョン物。しかしバトルと言うよりは探索がメイン。

 

 ダンジョン内には、プレイヤーの他にダンジョン内を探索している冒険者や、それらを追いかけてくるモンスターなどがあり、基本的にプレイヤーや冒険者達は、モンスター相手ではほぼ無力なので、逃げるしかない。

 

 しかし、ダンジョン内なのでトラップはあるしアイテムもある。時にはそのトラップに苦しめられる事もあるけど、使い方によれば、それでモンスターの足止めをすることが可能。

 

 ダンジョン内のモンスターは不死身の怪物なので、撃退などはほぼ不可能。

 対策としては、ダンジョン内のトラップやアイテムを使って足止めをしてる間に逃走するか、冒険者を囮にして逃げる等しかない。

 

 プレイヤーには、それぞれ一つだけ優れた能力が付与される。(例、トラップを扱える。異世界の言語が話せる他)

 しかし、基本的に戦闘系の能力はなく、基本は逃げの一手しかない。

 

 個々の能力を駆使して、モンスターから逃げ延びてダンジョンから脱出するのが、最終的な目的。

 

 


 

 

・4 世界観の設定  【Mr.エメトさま】担当

 

 

 西暦21XX年

 

 地球は緩やかな発展を遂げていたが―――。

 魔法を信仰するミストラル、科学を信仰するサイエンサーの勢力争いが行われていた。

 しかし、人々の発展に大きな代償が起きようとしていた。

 

 日本――東京の都市に現れた、天高く立つ塔"バベル"の出現。

 

 この塔が出現して以来、それまで神話や伝承にしか登場しなかった悪魔たちが出現。

 人類の秩序と社会が崩壊、生きるためのサバイバーが始まる。

 

 選択せよ―――光と秩序の世界か、闇と混沌の世界か。

 

 

 主人公は、塔が出現する一週間前は高校生。

 iPhoneから悪魔を使役できるアプリを入手して、巻き込まれることに。

 現在は、科学派のサイエンサーが作った障壁が張っている都市にいる模様。

 外の世界は、緑は残っているが砂漠化が進んでいる模様。

 

 一応、文明が崩壊してても、作物とかを育てられる環境はある。

 サイエンサー側の都市にはそういった科学的な技術もあり、ある程度は食糧事情も大丈夫。

 

 女神転生シリーズやマジカミなどから、荒廃世界観を生み出しました。

 

 

 

※管理人注※

 これにより主人公は、『20代~30代前半辺りの大人で、しかも高校生』という事になりました。

 

 


 

 

・5 主要人物3名  【hasegawa】担当

 

 

 

 ◆ヒロインの名前◆  “山本山 愛叶”(やまもとやま あいか)

 

 

・いわゆる、『16才で、ラノベのヒロインみたいなリボンをしている、無条件で貴方の事が大好きな、おっぱいの大きい女の子』

 

・カワイイ系の容姿、身長は小柄、Gカップのバスト。

 そして髪は、もちろんピンク色(迫真)

 

・人懐っこい性格で、パーソナルスペースは皆無。遠慮なくボディタッチしてくる。

 常識的な人柄だが、とても甘えん坊で、特に主人公には全幅の信頼を置いている。

 何があろうと、どんな態度を取られようとも、好感度は常にMAX。でもやきもち焼き。

 

・主人公とは年が離れているが、隣に住んでおり、幼いころから面倒を見て貰っていたという関係性。いわば妹的な存在。

 毎日24時間、常に一緒にいる。(ひっついて回っている)

 

・「~だよ」「~だもん」というような、小さい子供みたいな喋り方をする。

 彼女は舌足らずなので、「がっこう」「ともだち」「ごはん」というような感じで、ひらがなを多用したセリフ回しをお願いします。

 

・一人称は、ひらがな表記で【わたし】

 口癖は、「ハルキくんと、けっこんするんだもん!」(鋼の意思)

 決めゼリフは、「ハルキくんのホモ! へんたいっ!」

 

・裏設定として、彼女は人間ではなく【サキュバス】です。

 その素性を隠しており、まだ性的なことは自重しているが、いつも主人公の洗濯物をクンクンしております。

 

 ↓天爛 大輪愛さまより、ファンアートを頂きましたっ♪

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 ◆主要人物その1◆  “剛力 巌”(ごうりき いわお)

 

 

・いわゆる『自殺志願者で、リストカッターの青年』

 

・主人公の友人で、メンバーの一人。だが結構なトラブルメイカー。

 

・極端な虚弱体質。骨と皮だけで構成された身体。体重は30㎏台である。

 フツメンと言えなくも無いが、頬は痩せこけ、目元は窪んでいる。

 戦時中に南方戦線に派遣された、末期の日本兵のような容姿。いわば飢餓状態に近い。

 

・基本は温厚な性格で、とても友達想いだが、少し精神に異常をきたしている。

 そこに木があれば、首を吊るのに丁度いい。そこに尖った物があれば、喉を突いて死ねるかもしれない、という風な思考をする。情緒が不安定。

 

・所かまわず自殺を試みて、それを仲間達に止められる、までが様式美。

 百円ショップで「どれが一番手首を切りやすい剃刀か」を吟味したり、どの死に方が一番格調高く、また尊厳が守れるのかを追求するのが趣味。

 

・いつも力の無い、弱々しい声で話す。

 三点リーダーを多用した「ああ……そうだね……」みたいな喋り方をする。

 

・一人称は、【僕】

 口癖は「死なせてくれ……」、および「死んだらどうするんだっ!」

 決めゼリフは、「――――うおぉぉ! 命よ輝けッ!!」

 

・裏設定として、【彼の自殺は絶対に成功しない】

 そもそも本当に死ぬ気など、さらさら無い。“ファッション自殺志願者”。

 もし生命の危機に陥ったなら、その貧弱な身体からは想像も出来ないようなエネルギッシュさで、死の運命を回避します。

 

 

 

 ◆主要人物その2◆  “ブリトニー・クロサワ”

 

 

・いわゆる、『エセ日本文化を愛し、変な日本語を喋る、金髪碧眼の女性』

 

・主人公の友人で、メンバーの一人。バカだけど憎めないタイプの人。

 

・アメリカ人と日本人の両親を持つ、ハーフの女性。

 ピッチピチのTシャツと、ハーフパンツ姿。長いブロンドの髪が特徴的。

 女性らしい身体つきをしており、モデルみたいに高身長。だが“残念な美人”である。

 

・典型的なアメリカ人女性! といった性格で、自己主張も激しい。

 言いたい事はハッキリ言うし、時にキツイ物言いもする。

 だが本当は優しく、人間愛に溢れた人物。仲間内では“ツッコミ”を担当する場面も。

 

・彼女が知っているのは、いわゆる“間違った日本文化”

 ニンジャ! サムライ! ハラキリ! そして昔の時代劇映画をこよなく愛する人。

 今の日本にそんなの無いよ? と忠告しても、まったく信じようとしない。

 ちなみに隠れキリシタンでもある。(キリシタンは隠れてナンボ、と豪語する)

 

・日本語の発音が苦手で、「関ケ原にゴザル!」「お茶でごじゃりマース!」といった感じで、セリフの語尾がカタカナ表記になる。

 また「愛に届く」「アタシを照らして」など、よく詩的な表現を用いる。

 

・一人称は、カタカナ表記で【アタシ】

 口癖は、「貴方、それでも日本人?」

 決めゼリフは、「ソコニナオレ!」(抜刀しながら)

 

・裏設定として、【被害担当の苦労人】

 自信満々で、竹を割ったような性格の人だが、酷い目に合うのは、いつもこの人。

 この子が「わーん!」とスヌーピーみたいに泣くのって、とても可愛いと思います。

 外国人特有の、強靭な肉体を持っているので、きっと大丈夫さ(確信)

 

 

 


 

 

 

◆リレー小説のルール◆

 

 

 

・文章量の目安は、【1000~3000文字】

 それを順番に書いていき、みんなでひとつの物語を作っていきます。

 文字数に上限は設けませんが、ご自分にとって無理のない範囲でやって頂けると嬉しいです♪

 

 

・締め切りは、【バトンが届いた日より一週間】

 書き上がりましたらば、【本文】【タイトル】【メンバーへのメッセージ】などを添えて、管理人の方へ送って下さい♪

 

 もし書くのが無理だと感じた時は、“パス”を宣言しちゃっても全然OKです。これには一切ペナルティはありませんよ!

 でも締め切りに遅れそうな時や、今回はパスしたい~という場合は、早めに管理人の方へご連絡下さい。

 

 

・イメージとしては、『四コマ漫画を、ひとり1コマづつ担当して描く感じ』

 物語の“起承転結”にあたる4つのパートを、それぞれが分担して書いていく事で、ひとつのエピソードが出来上がる~という感じです。

 

 

書く時は、出来るだけ前の人の文章を、踏襲しましょう☆ これは鉄の掟です!

 自分の番になった途端、いきなり新しいシーンで書き始めるのではなく、あくまで「この続きを書くんだ」という意識が大事です♪

 特に、前の手番の人から『こういうシーンを書いて下さい』という指示が出ている場合は……何に代えても全力でそれを書きましょうッ! 最優先事項です☆

 

 

・うんうん悩んで執筆するよりも、『パッと書いて、パッと次の人に回してあげる』事こそが一番大切。これはリレー小説なのです!

 

 ――――ひとりで名作を書き上げる必要など、全くありません(・・・・・・・)

 

 これなるは【みんなで作り上げる物語】

 仲間を信頼し、おもいきって次の人に委ねよう! 好きなように書いちゃえ☆

 

 

 そして! 自分の手番以外の時でも、コメントなどでみんなを応援してあげて下さいね♪

 メンバー同士、ガンガン作品の感想を言い合っていこう☆ みんなの交流の場にしようZE!

 

 


 

 

 おまけ ◆作中で追加された設定◆ (随時更新予定)

 

 

 

・iPhoneが壊され、“悪魔使役アプリ”は使用不可となった。直る見込みも無い。

 人類側はモンスターへの対抗手段を、全く持たない。

 (第一話、はじまり)

 

・ハルキ達がバベルへ向かう事となったのは、サイエンサー組織の指示による物。

 ダンジョン内を探索し、悪魔攻略の為の手がかりを見つけて来るのが、ハルキらの使命である。

 (第二話、きっかけ)

 

・ダンジョン内には、悪魔やモンスターの他に“もどき”と呼ばれる雑魚敵もいる。

 全力を出した巌や、何かしらの武器を持った人間であれば、対処する事が可能。

 (第三話、教授釣り)

 

・教授は、いわゆる【アイテム屋】のような役割を担ってくれる。装備制作が可能な人。

 そしてダンジョン内には、至る所に“転送ワープ装置”がある。

 (第五話、モドレナイノ)

 

・山本山愛叶はサキュバスであるが、そう人間と変わらない身体能力である。(不死性の有無については謎)

 ただし、彼女が淫魔(魔物)であることは変わらないので、同族たる悪魔たちに敵視されることは稀。滅多に襲われることは無い。

 (第14話、これはコメディだ…!!)

 

 

 

 

◆能力、技能(スキル)

 

 

・巌 【暴食】―Gluttony―

 

 有機物、無機物に関わらず、どのような物であっても“喰う”ことが出来る能力。

 たとえ鋼鉄であっても咀嚼が可能。毒物や劇物も問題なく消化出来る。

 

 飲食した物が栄養として吸収される事はなく、全て“無”に帰するのみ。

 有り体に言えば、それがどのような物であっても「喰うことにより消滅させる」という力。

 

 ただし、一度に“喰う”事が出来るのは、自身の胃の容量(水6リットル分)の範囲に限られる。胃の中の物をすべて消化しきるには、約3時間ほどかかる。

 モンスターや悪魔の身体を“喰う”ことも出来るが、そもそもヤツ等は不死の存在であり、欠損部位を瞬く間に修復してしまうので、決して倒すことは出来ない。

 

 

 

・プリトニー 【献身】―dedication―

 

 自身が持つ物を、他者に与える能力。

 知識、技能、身体能力に加え、生命力(命)すらも分け与える事が出来る。

 

 一例として、他者に脚力を与えた場合は、対象自身の脚力+彼女の恩恵となる為、まさに人外めいた速度で疾走することが可能。

 生命力を分け与える場合には、彼女の“寿命”と引き換えにする事により、対象の治癒を行う。

 

 ただし、能力を使用中のブリトニーは、神に祈る巫女のように瞑想状態となる為、完全に無防備となってしまう。

 そして献身の名が示す通り、怪我や病気などの“負の要素”は、他者に肩代わりさせる事は出来ず、敵への攻撃手段としては活用できない。

 

 

 

・ハルキ 【証明】―Proof―

 

 自身の意見、意思、正当性などを、他者に理解させる能力。

 何かを成したい、何かになりたいと強く願う時、その実行の為に必要となる要素が劇的に向上。成功率が上昇する。

 

 言わば“火事場の馬鹿力”のように、危機的状況において身体能力のリミッターが外れる現象や、アスリートが強い意思力によって己の限界を超える現象を、概念として昇華した物に近い。

 単純な身体能力のみならず、知能や発想力、己の身長(見た目)なども変化させる事が出来る。

 

 ただし、悪魔を打倒するというような、“ハルキ自身が不可能だと思っている事”は実行できず、能力の恩恵も得られない。

 そして、効果範囲は自身に対してのみであり、他者にまで影響を与えることは出来ない。

 

 あくまで彼が「こうなんだ」と感じた事を、他者に対して証明する(見せつける)為の能力であり、その為にこそ知恵を絞ったり身体を張ったり出来る、いわば“意地っ張り”が具現化した、己の意思を押し通す力。

 

 

 



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一巡目
はじまり。~起承転結の”起”~ (hasegawa 作)


 

 

 

「えいっ!」

 

 荒廃したアスファルトに、いくつもの破片が散らばる。

 耳をつんざくような固い音と共に、瀬川ハルキの愛用していたiPhoneが、地面に叩きつけられた。

 

 そう、粉々に砕け散ったのだ。

 他ならぬ、自身の“妹分”の手によって。

 

「ふぅ、あぶなかったぁ~。これであんしんだよね」

 

 まるで「一仕事終えました」とばかりにパンパンと手を叩き、彼女がニッコリ笑顔で振り返る。

 頭にあるラノベのヒロインみたいに大きなリボンが、ファッと元気よく揺れた。

 

「あ、ごめんねハルキくん。iPhoneこわれちゃった♪」

 

「――――お前ぇぇぇッ!! 愛叶(あいか)ぁぁぁあああーーッッ!!!!」

 

 人類の秩序が崩壊して以来、荒れ果てて見る影も無い街。太陽の光を遮る、白く濁った空。

 そこに瀬川ハルキの怒鳴り声が、大きく轟いた。

 

「えっ、お前なにしてんの? マジ何してんの?

 こんな物の無い時代に、一体なにしてくれてんの? マジでマジでマジで」

 

「あ、あはは……。ごめんねハルキくん、手がすべっちゃったの」

 

「いやいやッ! お前『えいっ』って言ってたじゃん! 振りかぶってたじゃんかッ!

 ギュッと目ぇ瞑って、力の限りに叩きつけたろうがッ! 地面によぉーッ!!」

 

 つい先ほど、愛叶の「ちょっとかしてー?」というお願い事を聞き、「ほいっ」と何気なく手渡してやったiPhoneは、いま彼らの足元で、無惨な姿を晒している。

 文明が崩壊したこのご時世、貴重な電子機器であり、もう直すアテすらも無いソレは、二度とハルキの為に役目を果たす事は無いだろう。永遠に失われてしまったのだ。

 この部品や鉄屑くらいは、どこぞの物品交換所に持っていけば、小銭にはなるかもしれないけれど。

 

「ゆるしてハルキくん! おこらないで! ねっ?

 ほら、かわりにわたしの宝物あげる。はいどーぞ☆」

 

「ヒュー♪ こいつは上物だぜぇ~♪

 こんなデッカイどんぐりは、今まで見た事がねぇ……って要らんわぁーーッ!!!!」

 

 見事なノリツッコミの後、どんぐりを放り投げる。地平線の彼方まで。

 かのヒ〇オ・ノモ選手をも彷彿とさせる、素晴らしいフォームだ。メジャーリーガーだって夢じゃない。

 

「どうすんだよお前ッ!? アレにはなぁ、大事なアプリ(・・・・・・)が入ってたんだッ!

 iPhoneがなきゃ、悪魔を使役出来ねぇし、身を守ることも出来ねぇだろうがッ!!」

 

「そ、それがこまるんだもん……」

 

 ハルキは知る由も無い。

 その“悪魔を使役する”という機能こそ、愛叶がiPhoneを壊した原因であるという事を。

 

 未だ16才と年若く、人の世で暮らしていく為に、これまで隠し通して来た事だが……、実は彼女は普通の人間ではなく、淫魔(サキュバス)という種族なのである。

 あのiPhoneで悪魔使役アプリを操作され、もし淫魔である自分の身に、何か起こったら困るし。

 

 いやむしろ、ハルキが自分以外の悪魔を使役する(・・・・・・・・・・・・)なんて事は、やきもち焼きな彼女にとって、とても容認できる事ではないのだ。

 

 想い人であるハルキは、いつも綺麗に女装しては、世の哀れな男性たちを弄んだり、金品を貢がせたりするのが趣味という、大変に度し難い人物である。

 ただでさえ【男を(はべ)らかす】という、同性とはいえ“恋敵”が沢山いる状況なのに、この上悪魔まで侍らかす? こんな可愛いお嫁さん(私)がいるのに?

 

 そんな事は、絶対許せない。

 騙して捨てる用の男達はともかく、自分以外の悪魔がすり寄る所なんて、もう想像もしたくない。

 彼の隣にいるのは、自分だけで良い。ハルキくんと結婚するのは、この愛叶なんだから。

 

 今も眼前では、ハルキがもう錯乱しながら頭を抱えている。こんなん絶対死んじゃうと。

 その光景を見守りつつも……、愛叶は自身の大きなおっぱい(Gカップ)の前でギュッと両手を握りしめて、「ふんす!」と荒い息を吐くのであった。

 

「おいやべぇぞコレ。身を守る手段がゼロじゃねぇか。

 今のご時世、もうそこら中にモンスターがウヨウヨしてるってのに。

 あっ……そうだブリトニー! お前はiPhoneを持っt」

 

「何にごじゃるカ? アタシはいま、TEA()を点てるのに忙しいんだケド?」

 

「――――ちきしょう駄目だ! こいつは江戸時代かぶれだッ!!」

 

 地べたにブルーシートを敷き、その上で機嫌良さげにサッサと茶を点てていた女性が、「?」とばかりに振り向いた。

 彼女の名はブリトニー・クロサワ。

 ハルキ達の仲間であり、いわゆる“エセ日本文化”をこよなく愛する、アメリカ国籍の人物である。

 

「iPhone? エレキテル・カラクリ?

 あー壊しちゃったのネ。残念だわアイカ=チャン……。

 貴方は器物破損で、ウチクビゴクモンに処されモウス」

 

「処されねぇよッ! いつの時代だ馬鹿ッ!!」

 

 ちなみにこの人は、通りすがった人が思わず振り返ってしまう程、煌びやかな美人である。

 長いブロンドの髪、セクシーでグラマラスな身体、落ち着いた雰囲気。そのどれもが世の男性たちを魅了して止まない。

 

 だが彼女は今、以前【ウズマサ・シネマ・ヴィレッジ】にてイソイソと買って来た、お侍さん的な“安っぽいちょんまげカツラ”を被っていたりする。

 その頭部こそ、ちょんまげカツラで覆われているのだが、うなじや耳元からは、長いブロンドの髪がナイアガラの滝のように流れ出しているので、とてもワケの分からない見た目となっている。

 

 人の好みというのは千差万別だが、今の彼女を見てプロポーズを申し込もうとする猛者は、きっと限りなく少ないんじゃないかと思われる。

 いくら美人であっても、こんなヤツと関わりたくない。というのが一般的な印象だ。

 

 ちなみにであるが、彼女は一切のエレキテル・カラクリ(電子機器)を使わないし、所持していない。その崇高なる主義によって。

 

「iPhoneがなければ、矢文(やぶみ)を送れば良いじゃナイ。

 墨と筆を貸してあげましょうカ?」

 

「いらんッ! 今は死ぬか生きるかの瀬戸際なんだよッ!

 通信手段の問題じゃねぇんだッ!」

 

「Oh……、サムラーイの子孫たるモンが、そんな狼狽えオッテ。

 貴方、それでも日本人? 腰の刀は何の為にあるのヨ?」

 

「――――携えてねぇよッ!! お前だけだそんなのッ!!」

 

 彼女は岐阜県に旅行した折りに、「カタナ ツクッテ クダサーイ」とばかりに関の刀匠のもとを訪れ、本当に刀を作って貰ったという過去がある。

 法律とか所持資格とか、色々どうなってんだって話だが……、実際に彼女は今、その腰に刀を携えているのだから、考えたって仕方ない。

 

「クソがッ! こいつらどうしようもねぇッ! ファッキンワンダフルだ!

 おい(いわお)! お前ならiPhoneくらい持っt」

 

「入水自殺って……、けっこう難しいんだね……。

 持ってた荷物、ぜんぶ流されちゃったよ……」

 

「 何してんだお前ぁ!?!? 勝手に死ぬなって言ってんだろうがッ!! 」

 

 後ろを振り向いてみれば、そこには服をずぶ濡れにした、ガリガリの日本兵みたいな男の姿が。

 彼の名は“剛力 巌”。その強そうな名前の割には、今にも死んでしまいそうなほど貧弱な男である。体重なんか30㎏台だ。

 

 ハルキの友人であり、とても優しいヤツではあるのだが、困ったことに自殺志願者であり、事あるごとにすーぐ死のうとするのだ。

 普段は猫を被って、男をだまくらかすのが日常のハルキにとって、彼は唯一と言ってもいい親友であるので、死んでしまうのは非常に困る。

 

「ぜ、全部? お前っ……荷物を全部なくしたのか!?

 こんな物の無い時代にッ?! 世界が荒廃しちまった、このご時世でッ?!」

 

「いやぁ……次はもっと上手くやらなきゃね……。

 イメージトレーニングは完璧だったんだけど、足が滑って川に落ちちゃったんだ……」

 

「どーすんだよ?! たとえ水ん中から拾ったって、水没したiPhoneなんか使えねぇよ!

 俺達もう何も出来ねぇじゃんかッ!! 死んじまうぞオイッ!!」

 

「ハルキくん……死は恐れる物じゃなく、受け入れる物なんだよ……?

 死ぬと書いて、現世からの解放と読むんだ……。

 きっと今の僕らに必要なのは、iPhoneじゃなく100円ショップの剃刀で……」

 

「やかましいよッ!! お前もう金輪際100均に近づくんじゃねぇぞ!

 行ったらブン殴るぞッ!!」

 

「Heyイワオ=クン! 自殺したら冥途(ヘブン)に行けないヨ?

 我らの神は、自刃を禁じてごじゃりマス。南無さんたまりあ」

 

「おぉブリトニー! 言ってやってくれ!

 こいつ目を放したら、すーぐ死のうとしやがんだよ!」

 

「まぁハラキリ~は別だけどネ? サムラーイには特殊な許可が出ているワ。

 あ、アタシ隠れ切支丹(キリシタン)にゴザッタ。神って言うてシモタwww」

 

「――――やっぱり黙っていろッ!! お前じゃ無理のようだ!!」

 

「しんじゃダメだよ、いわおくん。

 ほら、わたしの宝物あげるから☆」

 

「――――どんぐり好きだなぁお前ぇぇーーッ!!!!

 お前のポケットどんぐり天国か! どんぐりの妖精か!」

 

 ブルシットとばかりに天を仰ぐ。お前どんぐり貰って自殺を思い留まったヤツ、一回でも見た事あんのかと。

 もうこの場に、頼れる者なんて居ないのだ。信じられるのは己の力のみ。

 

 今まで本の中でしか見た事が無かったような、未知のモンスターが当たり前のように跋扈する、文明社会が完全に崩壊してしまったこの東京の街で、自分は生き抜かなければならない。

 こんなお荷物みたいなヤツらを……命に代えても守るべき大切な仲間を、3人も抱えたままで。

 

 

「もう良いよ! 分かったよこの馬鹿共がぁーッ!

 仕方ねぇから出発すんぞお前ら! あのダンジョン(・・・・・・・)によぉ!」

 

 

 そうハルキが怒鳴り声を上げると、3人はキョトンとした表情のまま、彼に問い返す。

 

 

 




↑このカギカッコの部分から、会話シーンの続きをお願いします。


 エメトさまゴメン! iPhoneは無しでいこう!www
 俺達に抵抗の術があってはいけないんだッ! 人類は無力なんだッ!(作品テーマ的に)

 それでは皆様、これからよろしくお願いします♪
 おもいっきり楽しんでいこう☆ 好きにやってしまえッ!!w


 ◆hasegawaのページ◆ https://syosetu.org/user/141406/



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回想シーン きっかけ  (砂原石像 作)

 

 

 

「ダンジョンにスマホはないよ?」

 

「あれだけ危険だと言ったノニ、危険地帯に飛び込むんデスカ?」

 

「そうか、ハルキくんも自殺に興味を…」

 

 きょとんとした顔で口々に語る三人。

 どうやら、ここにいる理由もわかってないようだ。

 

「俺たちがなんで結界の外に居るのか忘れたか!?

 バベル(あれ)を攻略しなきゃならねぇから、わざわざこんなとこ(崩壊した東京)まで来たんじゃねぇか!!」

 

 さっきまで狼狽えていたのはどこへやら。ハルキはまるで正統派主人公みたいなことを吐き捨てた後、叫び疲れたのかそこらへんにブルーシートを敷いて座る。

 そして、持っていた荷物から水を取り出し、グイッと飲み干した。

 

「いいか? 俺たちがこんなところにいるのは、全てサイエンサーってやつらのせいなんだよ」

 

「え!? それはほんとなの!?」

 

「ああ。本当だ」

 

 そう返事をして、ハルキは突然回想に入る。

 

「そう。それはある夏の日のことだ」

 

「どうしたんだい……急に回想を初めて……」

 

 無視しながら、続ける。

 

「それは、丁度お盆の時期だった。俺は麦わら帽子をかぶった白ワンピースの無垢な少女を演じて、夏休みを無為に過ごしてるオスガキ共に消えない傷(ひと夏の思い出)をプレゼントして遊ぼうと、ひまわり畑に行っててなぁ」

 

「のっけからクレイジーデスね……」

 

 ここから、壮年のロリコンと500文字くらいは使いそうな恋愛ドラマがあった訳であるが、無駄に長くなるのである程度省略。

 

「こうして、俺はオッサンから貢がれたプレゼントを売った金で、(いわお)と一緒に本物のビールを飲んだワケなんだが……」

 

 

 

 

 

 本題はここから始まる。 

 

 巌と一緒に飲んだ次の日。ハルキは目が覚めると両手を縛られており、黒服の男に連れられている最中だった。

 スマホがあったのなら悪魔を呼び出していただろう。だが残念ながら、スマホは没収されてしまっていた。

 そして、サイエンサーの幹部だと名乗った偉そうな人の下に、連行されてしまったのだった。

 

『オイお前、これに見覚えはないか?』

 

 幹部の男がリモコンを操作した途端、部屋の壁に展開されたスクリーンに、ある映像が流れた。

 

 

 ――――裏切ったな!! 私の気持ちを裏切ったなああああああああ!!

 

 ――――てめえのようなオッサンに惚れるメスガキがいるかよバァァァカッ!!

 

 ――――ねぇ、どんな気持ち? 自分のことが大好きだと疑ってもなかったオンナノコに、散々罵倒されて振られる気持ちはぁ!! ギャハハハハハハハハハハハ!!

 

 

 そこには、昨日ハルキがこっぴどく振ったオッサンが、周囲の状況を一切気にせずに、情けなくハルキに縋りついているという光景が上映されていた。

 

『これは、昨日ロリコンのオッサンを振った時の……?』

 

『……そいつは……我らが組織のトップなのだ』

 

『は?』

 

『誠に遺憾ではあるが……その御方が……我らのトップなんだ……っ!!』

 

『嘘だろ!?』

 

 サイエンサー。

 西暦2100年代の世界において、最大の科学力を持つ組織である。

 その技術は、悪魔が跋扈するようになってからも障壁を張ってその侵入を防ぎ続けているほどだ。

 ハルキもまた、その障壁の中で暮らしているから、その組織の名は必然的に知っている。

 

『たまたま引っ掛けた相手が、あのサイエンサーの親玉とか冗談じゃねぇ……!!』

 

 結界という現代の生命線を握っているということは、その時点でサイエンサーは強い権力を持っているのと同義だ。今この世界に生きる人間は、この組織の力を借りなくては生きてはいけない。

 

『クソッ!! じゃあ何だ!?

 あのオッサンは、俺がこっぴどく振っただけなのに組織使って仕返ししてんのかよ!?

 冗談じゃねぇ!! やっていい事と悪いことがあるだろ!!』

 

『無論、そいつがただ振られただけであったなら、我らもこうして女装癖の変態野郎を尋問することはなかったのだがな……』

 

 だが、事態は深刻なのだ。幹部は続ける。

 

『貴様があの御方を振ったとき、間の悪いことにあのミストラルの密偵が近くに紛れていたのだ。

 ……この壁の映像は、その密偵が撮影したものだ』

 

 ミストラル。西暦2100年代の地球において、サイエンサーと勢力を二分する組織。

 サイエンサーとは真逆に、魔法を信仰しており、悪魔が蔓延った世の中でも魔術結界で人々を守っている。

 

『その後、この映像はミストラル全体にバラ撒かれ、全体に共有された。

 ……つまり、我らサイエンサーのトップがロリコン野郎だということは、もう敵方の誰もが知っているのだ……!!』

 

 サイエンサーのトップはロリコンである!! このスキャンダルは瞬く間にミストラル全体に広まった。

 恥も外聞もなく幼女*1に縋りつくオッサンの面白映像は、ヤツらミストラル構成員の間で大流行。彼には“ロリコン大統領”という愛称がつけられ、今もこの映像を素材に魔導(MAD)やコラ魔法が次々に作成されているという。

 

『貴様のせいで!! 我らは"大ロリコン帝国"と呼ばれるようになってしまったのだ!』

 

 ミストラル、驚異の魔法力であった。

 

『しかもあのゴミ……!! 新たな扉を開き、ロリコンM豚野郎になって、毒舌幼女アンドロイドを開発してしまう始末…!!』

 

 サイエンサー、驚異の科学力であった。

 

『分かるか? 貴様のせいで我が組織は壊滅の危機だ!!

 ミストラルとの戦争や悪魔との戦いがあるのに、我らが組織の士気はズダボロじゃないか!

 一体どうしてくれる!?』

 

『結局お前らの八つ当たりじゃないか!!』

 

『だから貴様には、この混乱を引き起こした責任を取ってもらうぞ!!』

 

『はぁ!? それ俺に責任無くない? あのオッサンの性癖がミストラル全体に拡散されただけだろ!?』

 

『その発端はお前だ! ……わかるか? 貴様がロリコンM豚野郎を誘惑しなければ、我らがロリコン科学カルトグループと呼ばれることはなかったのだ!』

 

『オイオイ。仮にもアイツは、お前らのリーダーなんだろ? 下半身のコントロールくらいしとけよ』

 

『ええい黙れ!! これ以上無駄口を叩けば、貴様をミストラルの工作員扱いで即刻処刑してやるぞ!!』

 

『冗談じゃねえ! オッサンを散々おだてまくって貢がせたり、甘い声で誘惑してその反応を内心であざ笑ったり、その気にさせてプロポーズさせた後、こっぴどく振っただけだろ? なんでそれだけで殺されなきゃならねんだよ!!』

 

 こうなったら……媚びを売るしかねえ!! 突然ハルキの纏う雰囲気や、口調が一変した。

 

『……ごめんなさい。サイエンサーのみなさまがひどいことになったのは……、ワタシがいけないことをしちゃったからなんですよね……? ほんとうに……ごめんなさい……』

 

 内心を隠しながら、演技を行う。

 彼が生来持つ、ソプラノからアルトまで自在な声質と、140㎝台の低身長、演技の経験から身に着けたあどけない幼女の動き、そして素の状態でも女性だと思われる圧倒的美形。

 これらの組み合せによって一時的に幼女になり、相手の庇護欲を誘発させる______

 

『処刑されそうになった途端に猫かぶるんじゃない!!』

 

 ______が、とりつく島もなかった。

 

 チッ…。

 

『オイ! いま舌打ちしただろお前!!』

 

『あ、やべっ』

 

『ええい、わかった!! 貴様には罰として、ダンジョン(バベル)に逝ってもらう!! 拒否権は無い!!』

 

『はあ!? バベルって……あの悪魔の本拠地って言われてるトコか!?』

 

 バベルとは、悪魔出現の際に東京に出現した巨大な塔である。

 そこには人間の力では到底撃破不可能な悪魔が、これでもかと集まっているという。

 そのうえ、東京には結界はなく、ダンジョンの外でもそこら辺に悪魔がうろついている。

 

『そうだ。貴様には、そこに逝って悪魔攻略の手がかりを探してもらおう』

 

 つまり、ハルキに告げられたのは、事実上の死刑宣告であった。

 ……まあ普通の人間ならば、ここで自分の死を覚悟していただろう。だがしかし。ハルキには”悪魔使役アプリ”がある。

 悪魔の力を使って戦えるのならば、攻略自体イージーモードだ。ちょっとした旅行と変わらないだろう。

 

 アッぶねえ~☆ もし死刑とかだったら俺は死んでZE☆ やっぱ神様ってのは、俺みたいな美しいやつの味方なのかねえ♪

 

 ハルキは内心で安堵する。だがこのまま一人でサイエンサーのパシリをやるのは癪だ。

 そう考え、ある一計を案じることにした。

 

『わかりました。……でもその代わりに』

 

 息を吸って、続けた。

 

『一人で行くのは嫌なので、友達も連れて行っていいですか?』

 

 

 どうせ不幸になるなら、みんな巻き添えにしてやる――――

 割と最低な思考で、愛叶(あいか)達3人を一緒にダンジョン攻略に連れていくことにした。

 

 

 

 

 

 

「……という訳で。俺たちはダンジョンを攻略するまで帰れねえんだ。

 ほらお前ら、ダンジョンに向かうぞ。ぼさっとすんな」

 

 話を終えたハルキが、ふと3人の方を見ると……何やらみんなの反応が無い。

 一体どうしたというのだろう? さっきまで、修学旅行中のオスガキみたいにフリーダムに過ごしていたというのに。

 

 そして、少しの間を置いてから、ブリトニーが静かに刀を引き抜くのが見えた。

 

 

「カイシャク致す! ソコニナオレ!!」

 

 

 

 

 

*1
実際は女装





 砂原さま、執筆お疲れ様でした♪
 もう超おもしろかったZE! ぐっじょぶ☆

 私は前回、あえて彼を“回し役”にあてていましたが……、これで主人公ハルキくんのキャラクターがバッチリ定まりましたね!

 ――――清々しいほどのクズっぷりッ!!!!
 友情に厚いのか薄情なのか、もうよく分かんないネ!(笑)

 ちなみに、私は当作品の管理人(投稿者)という立場から、ハメの仕様により【感想コメント】を投稿する事が不可となってますw チキショウめぇ!w
 なので今後は、こちらの場をお借りしまして、皆様がご投稿くださった作品に感想を書かせて頂きますのでね~。

 ではではっ! 改めまして2番手お見事でした♪ 砂原さまありがとぉ~う☆
 (管理人より)



 ◆砂原石像さまのページ◆  https://syosetu.org/user/146269/



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教授釣り  (ヒアデス 作)

 

 

 

 サイエンサーからの依頼(刑罰)で悪魔攻略の手掛かりを探すために、22世紀に突如現れたダンジョン「バベル」に潜ったハルキたち。彼らは各々の技能や、力、知恵、そして自殺志願者のわりに追いつめられれば、怒涛の勢いで悪魔を圧倒する巌を盾にすることでダンジョンを踏破していった。

 そして10階まで到着した彼らは……。

 

 

 

 

 

「瀬ノ宮ハルカ 17歳です!」

 

 超が付くほど眩い美貌を放つ容姿、140cmほどの庇護欲を掻き立てる低身長、地声とはかけ離れた可愛らしい声色、開いた首回り、ノースリーブの上服から出ている細い腕、ミニスカから大胆に露出したすね毛一本ない生脚。

 こんな美少女を見たら雄々しい男が好みのホモでもない限り、ほとんどの男と一部の女はその場に立ち尽くしてその姿を眺め続けるに違いない。胸がほとんどないように見えるがそんなことはハルカの美貌に比べれば些末な問題でしかない。むしろ一部ではない方がいいと言われている。

 

 そんなハルカを前にして、三人は唖然としていた。

 

「噂には聞いてたけど、すごい変貌ぶりだ……。容姿以外、普段のハルキくんからは想像も出来ない……」

「Oh.コレがジャパニーズ萌え」

(はぁ、はぁ……ハルキくんかわいいよ、ハルキくんかわいいよ、ふだんのハルキくんもいいけど、女装したハルキくんもかわいすぎるよ。そのままお風呂につれていって、全身くまなくあらってあげたい。もちろん女の子にはついてないはずのアソコもね)

 

 そうよだれを垂らしながら、恍惚の表情でハルカを見つめる愛叶の心の声が言っているように、瀬ノ宮ハルカと名乗る美少女()()()()者は二、三十代の男である。

 なぜダンジョン内で、ハルキが露出過多な服に身を包んで女装しているのかというと……。

 

「よし、こっちの準備はばっちりだ。愛叶、お前もそんなところでよだれ垂らしてないで、顔でも洗って気を引き締めて来い。そんなんじゃ敵は釣れねえぞ」

「ええー、ハルキくんいがいの男なんて、つりたくないんだけどなあ……。まさかハルキくんといっしょに逆ナンなんてする日がくるなんて」

 

 ハルキに言われた瞬間にどんよりした顔になる愛叶も、今は脚や腕をさらし、胸元にかけては胸の一部が見えるほどに露出させた大胆な服を着ている。

 ロリ巨乳。小柄な女の子が好きだけど、大きな胸を見たり触ったりもしたいという男の欲望を叶える存在であり、ハルキ唯一の弱点をカバーする属性でもある。

 

 心底嫌そうに顔を洗いに水場まで歩いていく愛叶の背中を見送ってから、ハルキは他の二人を見回す。そして……。

 

「さて、次はブリトニーだが……何だその格好は?」

「ハルキ=クンに言われたとおリ、男の人を射殺す服を着てきたネ。ドウヨ? これならどんな男も、ひたいに風穴開けてイチコロネ!」

 

 そう言ってブリトニーは、右腕を背中にやり見せびらかすようにハルキの前でポーズを決めた。

 彼女は多くの日本人男性が思い浮かべる金髪美女の例に漏れず、金髪碧眼の整った容姿とグラマラスな体型と高い身長を持つ完璧型の美女だ。しかし彼女が今着ている格好が、それらのほとんどを台無しにしている。

 ブリトニーが着ているのは全身を固める甲冑に鎧兜、荒い道でも何なく進めそうな軍用靴、時代劇でよく見る戦国兵士の格好だった。

 射殺すという単語からこのような服を選んだらしい。戦国時代の日本では、刀より弓矢の方が活躍していたらしいと聞くからな。おそらく悩殺と射殺すを取り違えてこうなったのだろうが、どこからそんな服を持ってきた?

 戦国兵士の格好をしているブリトニーの姿に色気はない。せっかくの巨乳も無機質な胸当てに覆われて台無しだ。いざという時の戦力にはなるし、一応連れては行くが。

 

 ハルキが頭を抱えているところで顔(主に口元)を洗った愛叶が戻って来て、ハルキは改めて一同に向けて今回のミッションを振り返ることにする。

 

 

 

 

 

 今回接触するターゲットは、プロフェッサー(教授)と呼ばれる男。その呼び名に関わらず大学などで教鞭をとったことはなく、本名さえ不明だが日本人なのは間違いない。

 過去にサイエンサーに所属していたことがあり、かの組織から研究データを盗み出して逃走、以後はどこにも属さず独自に悪魔研究を進めていきながら、自ら生み出した悪魔もどきをダンジョンに放って更なるデータを集めようとしている危険なマッドサイエンティスト。

 研究の末に新たな悪魔を作り出そうとしていると言われているが、ある理由からそれは疑わしいとハルキは考えている。

 

「外見は病的なほど色白な肌と細い体つきで、眼鏡をかけているらしいが、それ以上の情報はない。この男を抱えていたサイエンサーなら、顔写真を持っているはずだが……。どこかの誰かがiphoneを破壊したせいで、それをもらうことも見ることもできねえ」

「そ、それは大変だねえ」

 

 ハルキに睨まれた愛叶は、目を泳がせて口笛を鳴らす。

 

「……そ、その男を釣るために、そんな恰好をしているワケなのかい……?」

「ああ」

 

 巌の確認にハルキは首を縦に振る。

 

 先述の通り、プロフェッサーと呼ばれる男は自ら作り出した悪魔もどきを作り、それをダンジョンに放り、探検者たちを襲わせて彼らの死体を研究材料にしている。

 しかしその犠牲者は、なぜか女性が多い。

 とあるパーティーがプロフェッサーが作った悪魔もどきに襲われた際、悪魔たちはパーティーの女たちを優先的に襲い、男たちは歯向かう者や確実に殺せる者にしか攻撃しなかったという話だ。結果的にパーティーの女は全員死亡、男たちの大部分が生き残ってダンジョンから逃げ出すという結末に終わった。

 そこから考えられるのは……。

 

「プロフェッサーって奴は、大の女好き、奴の研究の目的も新たなる悪魔なんかじゃなく、自分好みの美女悪魔を作ろうとしているかもしれねえ、ってことだ」

「Oh no! 理想の女の子を作るために悪魔研究に手を出すなんテ、ジャパニーズオタクの風下にも置けないやつダ」

 

 ハルキの推測に、ブリトニーが両手を広げて呆れた仕草をする。

 そこへ巌が。

 

「しかし、いつもならハルキくん一人で行くのに、今回はこの子達まで連れて行くんだね……。何か理由でもあるのかい……?」

「プロフェッサーの好みがわからねえから、こいつらの手も借りる、ただそれだけだ。奴の犠牲になった女は、グラマラスな美女からダンジョンに迷い込んだ小学生くらいの女の子まで様々だ。さすがに婆さんは犠牲者の中にいないらしいがな。そもそも爺さん婆さんがダンジョンになんか来るわけねえし」

「でもなんで、そんなキケンな人のところにいくの? そのひとを止めるためとか、これ以上ぎせいしゃを増やさないためとか考えるほど、ハルキくんゼンリョウじゃないでしょ?」

 

 愛叶の問いに、ハルキはニヤリと笑う。

 

「当たり前よ。サイエンサーに脅されて渋々潜った俺たちと違って、興味本位でダンジョンなんかに入った奴が、悪魔や悪魔もどきに殺されようと知ったことか。俺の目的はただ一つ、奴が持っている悪魔研究のデータだ。それがあれば、これ以上ここを昇らずにすむかもしれねえ。サイエンサーだってプロフェッサーの能力の高さは認めているしな」

 

 そう言ってクククと笑うハルキに、巌と愛叶は呆れた視線を向け、ブリトニーは弓矢を放つ真似をしていた。もちろん本物の弓矢は持っていないが。

 

「じゃあ話が終わったところで行くぞ。俺がメインでプロフェッサーを釣る。愛叶は念のための巨乳担当、ブリトニーは変人担当、巌は悪魔もどきとの戦いになった時の戦闘要員だ。もどきの方は本物と違って死ぬし、能力も低いから、お前の火事場の馬鹿力があれば倒せないこともないだろう」

「相手はもどきとはいえ悪魔だ。油断しない方がいいと思うけどね……。いや、僕の死に場所にはうってつけかもしれない……」

「色白のへんたい男。ふつうだったら、ちかづきたくもない相手なんだけど」

「そいつを射殺すのネ! 成功報酬はスイス銀行に振り込んでクレ!」

 

 古いな、現在ではパナマやケイマンでさえ規制が強化されて、タックスヘイブンやマネーロンダリングには不向きと言われているのに。

 

 ともあれ、この三人の美女(?)と一人の用心棒による、教授釣りが始まった。

 

 

 

 






 ヒアデスさま、執筆お疲れ様でした♪
 ――――というか、スゲェよヒアデスさま!!(驚愕)

 文章も上手だし、地の文の状況説明も完璧! しっかり情景が頭に浮かんで来ます!
 しかもみんなで考えた設定を、とても深く理解して下さっている! 前の人が書いた内容の引継ぎ&膨らませ方もバッチリ!
 そしてみなさん……これをヒアデスさまは、半日かそこらでお書きになったんですヨ? 信じられます?

 ――――おみそれ致しましたぁ!! めっちゃ面白かったですッ☆ 

 ではでは! 改めまして三番手お見事でした♪ ヒアデスさまありがとぉ~う!
(管理人)



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 第3話が出来上がったのでhasegawa様にお届けいたします。
 主人公の女装シーンは頂きました。その代わり次の方には【逆ナンのシーン】をお任せします。
 どうぞご自由にお書きください。
(ヒアデス)


◆ヒアデスさまのページ◆  https://syosetu.org/user/269735/



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ほんのり腐りかけのミルクティー (お通しラー油 作)

 

 

 

「ようこそ、私のラボへ。歓迎するよ」

 

 そう言って、如何にも研究者っぽい風貌の不健康そうな男は、両手を広げて迎え入れてくれた。

 あれから一同は、いざプロフェッサーを確保しようと扉を蹴破ろうとしたのだが、【そんな無粋な事をしなくても開くから待っていたまえ】と、アナウンスが流れたと同時に分厚い扉が音を立てて開き、その後はあれよあれよと言う間に、こうしてプロフェッサーの面前まで連れてこられた次第であった。

 

(なぁんか、拍子抜けだなぁ)

 

 内心ハルキはそう思っていた。ハルキとしてはこの後、激闘なりトラブルなりが起こると思っていたのだが、こうもあっさりと事が進むと逆に気持ち悪く感じる。

 まぁ、早くことが済むのならばそれに越したことは無いし、黙っておくとしようか。

 

「初めまして〜。私ぃ、瀬ノ宮ハルカって言います〜。実は道に迷っちゃいまして〜」

 

「・・・・・・」

 

 腰を振をクネクネ動かし、得意の猫撫で声+魅惑的なプロポーションから放たれる、いかにも『私って天然なんですよ』風なアピールをして気を引こうとするハルキ。

 過去に幾多の男がこの仕草に騙されて貢がされ、そして搾り取られた事か。この優男もきっとそうなるだろう。

 そう確信を持っていた。持っていたのだがーーー

 

「それで、要件は何かな? このような所にわざわざ訪れるのだから、表立って言える事ではないのだろう?」

 

「あ、あれ?」

 

「ハ、ハルキくんの悩殺コンボが、つーよぉしない!?」

 

「こ、コレは強敵デェス! マジヤバでぇす!」

 

 まさか必勝コンボが不発に終わった事に、流石のハルキも動揺を隠せなかった。

 勿論それは両隣に居た愛叶やブリトニーも同様だ。

 

(どどど、どうしよう! ハルキくんのじょそーが気に入らなかったせいで、ヘソまげちゃったみたいだよ?!)

 

(馬鹿野郎! 俺の悩殺ポーズは完璧だった筈だ! お前らがちゃんとセクシーポーズをとらねぇからだろうが!)

 

(Oh! ワタァシちゃんとセクスィーポーズしてマァシタ! 脳汁ブッシャーマジでぇす!)

 

(てめぇはポーズ以前に、その無骨な鎧を脱げ!)

 

 初手から躓きこの始末。こうなれば最終手段として、バトル漫画よろしく熱いバトルで決着をつけるべきか?

 そう思っていた三人だったが、ふと巌が黙り込んでる事に気づく。

 

「どうしたんだよ巌。さっきから黙り込んで」

 

「き、気のせいかな……? さっきからあのプロフェッサーさんの熱い視線が、僕に向けられてくるんだけど……」

 

「は?」

 

 見ると、確かにプロフェッサーの視線が巌に向かって伸びてるのが見える。

 もしかして巌を連れてきたのは失敗だったのか?

 【私のラボに男を連れてくるなんてけしけらん!】とか言って怒り出すのでは?

 そうなれば、ここまでやってきた苦労が全て水の泡になってしまう。

 

「と、とりあえず巌。お前部屋から出てろ。話は俺らがつけるから」

 

「嫌だよ! そんな事して、僕を一人ぼっちにして孤独死させるつもりなんだっ……! 架空のカードで請求書を送りまくって破産させて、首が回らなくたって一人寂しく部屋の隅で首を吊らせるつもりなんだっ……!」

 

「どんだけ被害妄想展開してんだよ! いいから出てろって! お前がいなくなったら話が進むだろうしさぁ!」

 

「そうデェス。ここはハルキ=クンの言うトーリにすべきデェス。ね、そう思うでしょ? プロフェッサ〜」

 

「下品な声で話しかけてくんなメス豚!」

 

 

 

 

 ・・・・・ん?!

 

 

 

 

 急な事に、全員の思考が思わずフリーズした。

 

「・・・え? えと、ぷ、プロフェッサー??」

 

「その下品な口を閉じろと言ったのが分からないのか! このメス豚が! 今私は、貴様らメス豚どもを視界に入れてしまい、汚れてしまった網膜を洗い流す為に、こうして巌くんを眺めていたと言うのに。これだから無駄に肥え太ったメス豚は嫌なんだ。同じ空気を吸ってると思うだけで吐き気がする」

 

 会話する余地すらないほどに怒り狂ってしまったプロフェッサー。先程までの冷徹ぶりが嘘のように豹変してしまっていた。

 

「え・・・も、もしかして・・・プロフェッサーって・・・ホモ?」

 

「フフフ、見破られてしまったみたいだね。流石はハルキくんだ。この私が見惚れただけの事はある」

 

【ゾゾゾ・・・】

 

 プロフェッサーの生温かい視線に、背筋の凍る思いがしだすハルキ。

 その表情はみるみる青ざめだし、肩が震え始めていた。

 

「む、どうしたんだいハルキくん? もしかして寒いのかい? これは失礼した。今すぐ空調を入れるから待っててくれたまえよ」

 

「へ? 別に寒くないと思うけど? 寧ろ暑いくらいーーー」

 

「メス豚は黙ってろ! 屠殺処分されたいのか?!」

 

 ハルキや巌には甘々で尽くしまくりなのに、女性に対しては険悪どころではなく、最早殺意すら湧いてるようにも見てとれた。

 明らかにこの男はやばい。そんな匂いがしだしたせいか、ハルキのみならず巌までもが青ざめ出していた。

 

(や、やべぇ・・・まさかとは思ったがこいつ、ガチのホモ野郎。それもかなりのレベルだ。勘弁してくれよ! 俺はホモが大嫌いなんだよ!)

 

 衝撃の事実が今ここで発覚した!

 そう、ハルキはホモが苦手なのだ!!

 

 ハルキは過去に、幾度となく数多の男達を女装して、女と偽って騙して貢がせてきた。

 その時も散々男達に触られたり、時にはキ○をされる事もあった。

 幸いそれ以上の事はなかったが、それでもハルキは女装している間は自身が女だと錯覚させていた為に、難なく男達の要求を受け入れることができていた。

 だが目の前のこの男は、今までの男とはまるで違っている。

 奴は女装したハルキなど見ておらず、素のハルキしか見ていないのだ。

 女として男に触られるのはまだ許容出来る。だが男として男に触られるのは我慢が出来ない。

 そう、出来ないのだ!

 それこそが、ハルキの唯一にして最大の弱点なのであった!!

 

「え、えぇっと〜。私はこう見えても普通の女子なんですけど〜。どうして男だって思ったんですか〜?」

 

 最早なりふり構ってられない。ここは今すぐこの男から逃げるべく女を演じる事にした。

 

「フフフ、この私をみくびってもらっては困るな。私は今まで数多の男達を見てきた。ならば君の女装姿を見破る事など、コンビニでBL系の雑誌を買うよりも容易い事なのだよ!」

 

(やっぱダメだったぁぁぁーーー! ってか何だよその例え方。普通はエ○本だろJK! 何でそこでBLなんだよ! 誰も共感できんわ!」

 

「えっとぉ・・・じつハ〜。ワタァシも本当はオトォコなんでぇす。日本男児なのデェス!」

 

「喋るなっつっただろうがメス豚がぁぁぁぁーーー!!」

 

 どうやらブリトニーの男のフリは効かなかったらしく、逆にブチ切れたプロフェッサーがコンソールを思い切り叩く。

 すると部屋全体にけたたましい警報が鳴り響き、壁一面から銃口が飛び出し、夥しい数の弾丸が放たれて来た。

 

「ぎにゃーーーーー!」

 

「ブリトニーさんのバカァァァーーー!」

 

 射線上にいた愛叶とブリトニーが、叫びながら飛び交う弾丸の雨から逃げ惑う。

 しかしここは逃げ場のない密閉空間。

 したがってーーー

 

「俺たちにまで弾が飛んで来たーーーー!」

 

「ヒエええええ! 死ぬぅぅぅ! 死んじゃうぅぅぅ!」

 

「はっ! いかん、私としたことが!」

 

 すぐに我に返ったプロフェッサーが、コンソールを操作して銃口を引っ込めた。あたり一面に銃痕が隙間なく刻まれており、それから間一髪逃げ延びた四人は肩で息をするほどであった。

 

「すまない! 私とした事がついカッとなってしまって。怪我はないかい? ハルキくんに巌くん」

 

「は、はぁ・・・」

 

「だ、大丈夫・・・です」

 

 とりあえず、この後は愛叶とブリトニーの二人には黙って隅っこにいてもらう事にして、かわりにハルキと巌の二人がプロフェッサーと会話をする事になった。

 二人は相当嫌そうな顔をしていたのだが、さっさと帰りたいのと、またいつ蜂の巣にされても嫌なので、仕方なく、本当に仕方なく応じる事にした。

 

 本当に仕方なくーーー

 

 質問その1、なぜ女性だけを殺して男性を逃していたのか?

 

「この私の聖域に土足で入るメス豚など、許せる筈がないじゃないか。男はたまたま入り込んだかも知れないから、逃してあげたのさ」

 

 質問その2、悪魔もどきを作ってる理由は?

 

「悪魔の中には、単体で個体数を増やす事ができる悪魔がいると聞いてねぇ。しかし貴重な男達を使う訳にもいかないので、利用価値のない女を使って実験してたのさ。今のところは、私の望んだ悪魔はできてないのが悲しいのだがね」

 

 質問その3、何で組織を裏切ったの?

 

「最初は男しかいなくて正にパラダイスだったんだが、突然女を組織に入れ始めたので、怒って組織を抜けたのさ。全く、折角の男だらけのパラダイスだったのに。あの男にはガッカリだよ」

 

 質問その4、悪魔に関する研究成果とかぶっちゃけデータ諸々ちょうだい。

 

「私のデータが欲しいのかい? ならばこの私を満足させれば、好きなだけあげよう。……と言っても、まだ私も完全に研究し尽くした訳ではないので、現状のデータだけなのだがね」

 

 質問その5、どうして女が嫌いなの? 男なのに。

 

「何故かって? フフフ。世の男こそ正に至高の美。老若からイケメンやブサメン。他にも数多の数多くの魅力的な男がいて素晴らしいではないか! 私はそんな素晴らしい男の園を築き上げたいのだよ! なに、女だと? 女などこの世に存在してはならない。女などこの世から滅ぼすべきなのだ! 寧ろ男が子供を産めれば何の問題もないではないか! そうだ、この際だからハルキくん、私と子供をーーー」

 

 とりあえず一通り質問したのだが、その結果分かった事と言えば、確実に一つだけ言える事が分かった。

 

 

 

 

 ・・・世の中ホモほど扱い辛いものはない・・・と。

 

 

 






 ラー油さま、執筆お疲れ様でした♪

 ――――ってホモだ! ホモが出たぞ! 出合え出合えーい!www

 というか私……、最近ホモネタ小説に、すんごい縁がありますねw
 まさか此処でも“ホモ”という言葉を聴くハメになるとは……何の業なんですかコレ。

 でもメッチャ面白かったから良いや♪ オッケー☆(笑)

 さて! ハルキくん達の逆ナンも、無事に成功(?)しましたネ!
 作品の面白さのみならず、指示にあった通りの内容を、しっかりと書き切られました☆
 これぞリレー小説なり! 感服いたしましたゾ☆

 ではでは! 四番手お見事でした☆ ラー油さまありがとぉ~う!

【管理人】



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 今回プロフェッサーをいじくりまくってしまいました。その代わりとして主役メンバーが何と言うか置いてけぼりになってしまった次第で。
 何故か私が書くと変態キャラが必ず一人は出来上がってしまうんですよね。
 因みに私はホ○じゃありませんので。
 前回【逆ナン】をお願いされたのですが、今回プロフェッサーが男連中をナンパしたのでこれで逆ナンは達成・・・になりましたかね?
 他にも書きたい事はあったのですが文字数がヤバめだったのでここらで切る事にします。後の方がこれをどのように利用するのかwktkしながら待つ事にします。

 追伸:やっぱり変態キャラは書いてて超楽(これ以降の文章は破れて残っていない)

【お通しラー油】



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モドレナイノ。 (Mr.エメト&hasegawa)

 

 

 

「とりあえず、早くケツを差し出しなさいヨ。

 なにグズグズしてるのヨ」

 

 ブリトニーの容赦ない発言に、一同は凍り付いた。

 

「聞いてたデショ? “私を満足させれば”って。

 衆道にごじゃるマース」

 

 絵にかいたような、“あっけらかん”。

 アメリカ人には人の心が無いのか? 鬼畜米英という言葉が、ハルキの脳裏によぎった。

 

「い……いやブリトニーさ?

 俺は確かに女装とかすっけど、別にそういう趣味は……。

 おかしいだろ? そんなの変態じゃんか」

 

「アンタそれ、江戸時代でも(・・・・・・)同じこと言えんノ?

 ノブナガ・オダも、シンゲン・タケダも、みんなホモホモ(つかまつ)ってたのヨ?

 武士の嗜みデショガ」

 

「た……確かにやってたかもしんねぇけどッ! でも俺武士じゃねぇし! 美の化身だし!

 こんなニチアサの魔法少女みてぇな武士、お前見たことあんのかッ!?」

 

「でもアンタがやろうって言ったんじゃナイ。

 データ欲しいんでショ? 責任とりなさいヨ。ほらほら。

 ウダウダ申しとらんで、早くケツ出しなさいヨ! ツカマツレーイ!!!!」

 

「そうだよハルキくんっ! つかまつれぇーい☆

 あとでわたし、お薬ぬってあげるねっ!(荒い呼吸)」

 

「ごめんよハルキくん……。流石に僕もホモはさ? つかまつれぇーい……」

 

「――――おまえら鬼かよッッ!! やだよ掘られんのはぁーッ!!!!」

 

 4人で円陣を組みつつ、ワーワー騒ぐ。

 最近の若者は元気が良いなと、教授さんもうんうん頷いている。

 

「――――あれ痛ぇんだぞ!?!? やられた事あんのかオイ! 死ぬぞッ!!」

 

「おっと。ここでハルキくん、もんだい発言です。

 くわしくきいてもいいかなぁ? いもうと分として」

 

「あれって事前準備とかいるノン? ワセリンとか使う? クラスメイトとシテ」

 

「あれ気持ちいいのかい……? だんだん慣れていく物なの……? 親友として」

 

 もう当初の目的そっちのけで、「どうだった?」と問い詰めていく。

 ハルキ以外はティーンの子達だし、きっとそういうのに興味深々なのだろう。

 

 ちなみにであるが、過去に調子に乗り過ぎてマッチョに押し倒された経験こそが、ハルキが護身術を習得するキッカケとなっている。

 どんな経験も、たとえそれがトラウマであっても、無駄にはならないのだ。ちゃんと教訓を活かしていけば。

 まぁぶっちゃけ、「女装して男をたぶらかすの止めたら?」と言ってしまえば、それまでなのであるが。自業自得である。

 

「ではケツ穴野郎、タテマツレ。

 早く帰って暴れん坊将軍みたいワ」

 

「うるせぇ馬鹿! 録画失敗しろ! 間違えてキューピー3分間クッキング録れろ!」

 

「おほんっ! ではハルキくん、そろそろ良いかね?」

 

 ――――ホモ来たぁー! にじり寄って来たぁーッ!

 ハルキは愛叶の背中にかくれ、必死に尻を手で押える。醜態である。

 

「この度は、ハルキくんと子作りをさせて頂けるそうで。大変有難く存じるよ」

 

「いえいえ、こちらこそデータをカタジケノゥ。大事に使いますワ」

 

「ありがとうおじさん! これで帰れます♪ たすかりますっ♪」

 

「どうぞ心行くまで、お楽しみ下さい。

 あ……じゃあ僕ら、先に出てますんで……」

 

「テメェらいい加減にしとけよ? 俺の健康サンダルが火を噴くぞ」

 

 ハルキの華麗なドロップキックが、教授の顔面に突き刺さる。

 というか四人いるんだし、こいつ悪魔じゃなくてただのオッサンだよ。最初から隙を見てこうすれば良かった、と思わないでもなかった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「それで? データは渡してくれるんですよね、プロフェッサー?」

 

「も、もちろんだとも……まだ研究途中だけどね」

 

 教授にGE★N★KO★TUを叩き込み、無事にデータを手に入れたハルキ達。

 いま教授の頭頂部には、どこぞの重要文化財みたく、たんこぶが三段重ねになっている。

 ……まぁ心なしか、嬉しそうな表情をしてはいるが、そっとしておこうと思う。

 ホモで、しかもドMとか、もう考えたくも無いし。

 悪魔研究なんてしなくても、アンタが“モンスター”だよ。

 

「悪ぃけど、これからもちょくちょく、迷惑かける事になるかもしんねぇ。

 もしこのデータが有用なら、組織のヤツラも放っとかねぇと思うし。

 ま……もう会う事がない事を祈るよ、オッサン」

 

「そんな遠慮せずに、また来てくれて良いんだよ?

 そこの雌豚共はともかく、ハルキくんと巌くんなら大歓迎さ。

 ムードのあるベッドと、ワセリンを作っておくとしよう。子作りしようじゃないか」

 

 ――――死んだらいいのに。バベル倒壊して死んだらいいのにっ!

 身の毛がよだちつつも、ハルキはそう思うのだが、きっとこういった“変人”って妙に生命力が強かったりするから、長生きするんだろうなぁと思う。

 

 

「そして、私であれば、何か悪魔共に対処できる【アイテム】を作れるかもしれない。

 知っての通り、ヤツらは不死身。生命活動を停止させるのは無理だがね?

 だが逃げ出す隙を作ったり、身を守るための装備であれば、充分に制作可能だ」

 

「ゆえに、もしダンジョン内で“素材”となる物を見つけたら、また寄ってくれたまえ。

 このバベルには至る所に、転送ワープのための隠し扉(・・・)が存在する。

 上手く使いたまえよ――――」

 

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「とりあえずは、目標達成ってか?

 そうなりゃ、もうこんな所に用はねぇ。とっととずらかろうぜ」

 

「まだ低い階層だし、“もどき”にしか会って無い……。

 そう考えれば僕ら、とても運が良かったかもしれないね……」

 

 教授の研究室を後にした四人は、周りを警戒して注意深く歩きながら、来た道をひき返す。

 

「ぐぬぬ……くちおしゅうゴザル。

 この愛刀“パトリオット”の錆となる者は、どっかにおらんでごじゃるカ」

 

「ピクニックみたいでたのしかったなぁ~。

 またみんなで来ようね! ハルキくんっ☆」

 

 クソくらえだ。行きたいならお前らで行ってくれ。

 そうごちりながら、ハルキは頼りにならない者達に代り、引き続き辺りを警戒する。

 なんだかんだあっても、コイツらが怪我したり死んだりするのは、流石に目覚めが悪い。

 見る者が見れば、きっと「見事なツンデレですね!」と言っちゃう感じの所作なのだが、彼はそれをどう思うのだろうか?

 

「……ん? おいお前ら止まれッ! 物陰に隠れろッ!!」

 

 突然ダンジョン内に響く、ハルキの激高――――

 今こちらに向かってくる人影のような物を見つけ、仲間達に注意喚起する。

 

(いくさ)でごじゃりマス! 戦でごじゃりマス!」

 

「お前ひっ込んでろッ! 前に出るんじゃねぇよッ!」

 

「ハルキくんっ! わたしこわいっ! あぁどうしよ♪」

 

「乳を押しつけんなッ! 歩きにくいよ離れろッ!」

 

「あ、この角に頭ぶつけたら死ねそうだね。来世でまた会おうね……」

 

「お前は死のうとすんなよッ!! 頑張れよまだ若いんだからぁぁーーッッ!!!!」

 

 ドタバタしてしまうが、敵は決して待ってくれない。

 もうすぐ目の前まで、敵の集団が迫っているのが見える。

 ――――レッドキャップだ。

 

「まずいッ! あいつらモノホンの悪魔じゃねぇか! 太刀打ち出来ねぇぞ!?」

 

「しかも、いっぱいいるよ! 道がふさがれてるっ!」

 

 相手が人間でないとなれば、ハルキの色仕掛けも、巌の馬鹿力も通用しないだろう。ブリトニーのパトリオットなんてもっての外だ。

 ハルキ達は身を硬くし、ただただ前を睨みながら、その場で佇むことしか出来ずにいる。

 ここからダッシュでひき返し、教授に助けを求めるか? でもそんな事したらケツを要求されちまうっ! ぜひ熟考すべき重要な問題であった。

 

「あ……、なんかこの壁、変だよ?

 まるでスイッチみたいに、凹んでいくんだよ……」

 

「お前、頭ぶつけたの? なんか血がダーダー出てるけど。なんで死のうとすんの?」

 

 そう詰め寄ろうとした途端、この場の床が〈パカッ!〉と開き、足場を失った4人の姿が消える。

 これは……トラップ(・・・・)だ!

 

「――――うおぉぉぉおおおッッ!! なんじゃコリャアアアーーッッ!!」

 

「きゃあぁぁぁ! ハールーキーくぅぅ~~ん♡」

 

「あ……これ死ぬヤツだね。僕こういうのやった事あるよ。来世で会おうねぇ……」

 

「シィィィィット!! みんなアタシに掴まりなサイッ! ナムアミダブツ!!!!」

 

 

 おかしい、落ちるだけじゃない(・・・・・・・・・)

 まるでプール施設のウォータースライダー。だが落ちたり滑ったりしている内に、上にポーンと跳ね上げられたり、ゴンドラみたいな物に乗せられたり、ハムスターの滑車みたいなので走らされたり。なんというか……とてもエンターテインメント性にとんでいるのだ!

 

 上がったり、下がったり、天高く跳ね上げたりしながら……やがてハルキ達はレンガの床にベシャ! っと落とされる。

 ダストボックスのゴミみたいに、積み重なって着地。もちろん(?)ハルキが一番下となった。苦労人である。

 

「…………おい、何だよここ? 知らねぇぞこんなフロア」

 

「見た感じ、下りの階段は見当たらないね……」

 

 気が付けば、そこは未知の階層。

 ハルキたちが登って来たのとは違う、知らない場所だった。

 

 

「わぁ~、ひろいねハルキくん! なんかいっぱい敵がでてきそう♪」

 

「あ、プレートが張ってあるワ。

 “15階”と書いてごじゃりマス」

 

「――――登ってんじゃねぇかよ!! 下りてぇんだよ俺ぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 







 お疲れ様です! hasegawaです♪
 今回の作品は、私とMr.エメトさまが書いた物。いわゆる“合作”となっております。

 もしお忙しい! アイディアは浮かんだけど書く時間が無い! ……という場合には、ご連絡を頂ければこういう方法も取れますので、またパスや締め切り延長などの“選択肢のひとつ”として、ご一考下さいませ♪

 それでは、5番手お疲れ様でした! エメトさまありがとぉぉ~う☆(管理人)


◆Mr.エメトさまのページ◆ https://syosetu.org/user/5376/



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二巡目
生きるコト。 (hasegawa 作)


 

 

「いやいやハルキくん?

 こーんなだんじょんで、オアシスなんかあるわけ…………ってほんとだっ!?!?」

 

「ちょっと二人とも……。

 いくら何でも、そんな非常識な事が…………ってホントだッ……!?!?」

 

「待たれよミナノシュウ。

 そろそろ幻覚でも見え始めたんじゃ…………ってホンマジャ!?!?」

 

「ヒュー♪ 嫌いじゃないぜ俺、そういうの!

 全員ぶん殴るぞ……?」

 

 イエーイ☆ みたいに拳をコツンと合わせる三人を、ハルキは殺意の籠った目で見つめる。お気楽なものである。

 

「おい、真面目にどういう事だよ? めちゃめちゃ木ぃ生えてんじゃねぇか。

 ハワイみてぇなヤツが」

 

「砂もあるし、草も……。ついでに言えば、太陽が照ってるね……」

 

「日差しがきついワ。お肌が焼けてしまうワ。解せヌ」

 

「あ……でも、お水があるのはすごくいいことだよ。もう水筒も、すっからかんだし」

 

 まだぼんやりとではあるが、いま目の前には泉らしき物が見える。

 常夏の国にありそうな木々と、青々とした草に囲まれた泉。まさに砂漠を旅する者達が蜃気楼で見るような光景が、リアルにそこにあるのだ。

 

 一瞬「こういうトラップ? フェイクの映像?」かと思った。

 例えば散々ダンジョンを彷徨い、疲弊して思考能力が鈍った者達にオアシスの映像を見せ、まんまと近寄って来た所を「いただきます」とばかりにKILLような。

 でもいくら4人が目を凝らしても、目の前にあるそれが偽物だとは思えない。太陽の日差しのみならず、何だったら涼し気な風まで吹いているのを肌に感じるのだ。

 これはもう、疑り深いハルキをしても「あるんだからしょうがねぇ」って感じだ。バベルの仕組みなんざ知るか。

 

「あ、なんか人がいるヨ(・・・・・)? 水辺のトコにごじゃるマス」

 

「あんだとぉ?!」

 

 即座にザザッと身を隠し、気配を消す。

 むりやり三人の頭を押し込んだので、「ぐえっ!?」という声がいっぱい聞こえた。ついでにブーブーと批難の声も。

 

「悪魔……ではないね。そんな感じはしないよ……」

 

「あぁ。そもそもビーチパラソル(・・・・・・・)の下で、トロピカルドリンク(・・・・・・・・・)を飲む、グラサンかけた悪魔(・・・・・・・・・)なんざいるワケがねぇ」

 

「めっちゃ寛いでるワネ。憎らしいほどバカンスしとるワ」

 

 いま遠くに見えるのは、まさにグアムで身体を焼く芸能人みたいな人影。

 キラリとグラサンが光を反射しており、庶民としては凄く「イラッ☆」とくる感じの姿。

 

「わたし、こーゆー人みたことあるっ。

 ちびまる子ちゃんにでてくる、花輪くんだよっ」

 

「つーかアレ花輪くんじゃね? 髪型までそっくりなんだが。コスプレか?」

 

「ここバベルの20階なんだけど……。えらく気合の入ったレイヤーさんだね……」

 

「花輪=クンのレイヤーっているノン? 初めて見たわアタシ。アッパレィ!」

 

 妙に関心してしまう。この状況も忘れて――――

 世の中いろんな人が居るもんだ~と、変人共は自分を棚に上げた。

 

「あっ、ちょっと待ってろお前ら。ここで隠れてろよ?」

 

 ハルキが瞬く間に〈シュバババッ!〉と早着替え。熟練の技を持って身支度を整える。化粧も一瞬で完了。

 

 

「――――こんにちは~☆ 瀬ノ宮ハルカ、17歳でぇーす♡♡♡」

 

「オーゥ。やりやがったあのヤロウ。死んだらイイノニ(ボソッ)」

 

 

 ハルキは満面の笑みで、ダダダーっと向こうへ駆けて行く。

 物陰に潜みながら見守る三人は、「どよーん」と額に影を落としている。先ほど花輪くんの話が出たが、まさに“さくら〇もこ”の絵柄だった。

 

「えっとぉ~♡ わたしここに迷い込んじゃってぇ~♡ すんごく困ってるんですぅ~♡」

 

「それは大変だったねぇベイビー♪ ボクが助けになるよぉ~う?」

 

「あれ花輪くんじゃない? ほんとにこすぷれ?(ボソッ)」

 

 クネクネ腰を揺らすハルキと、もうまんま花輪くんにしか見えない人。

 重ねてになるが、ここはバベルである。しかも20階だ。

 

「とりあえず~う、トロピカルドリンクでもどうだぁ~い?

 冷たくてぇ美味しいよぉ~う?」

 

「ありがとうございまっすぅ~♡ ハルカ感激でっすぅ~♡」

 

「なんか喋り方似てない……? どっちも気持ち悪いんだけど……(ボソッ)」

 

 三人が「どよーん」と見守る中、花輪くん(仮)がジュースを手渡そうとする。

 その瞬間――――ハルキが閃光のように動いた。

 

「どっせぇぇぇえええーーーいッ!!!!」

 

「 ふぬごっ?!?!?! 」バッシャーン!

 

 水に叩き落した(・・・・・・・)

 ハルキが放ったヤクザキックにより、花輪くん(仮)がドボンと泉に落ちる!

 

「――――オイ出て来いお前らッ!! 盗るもん盗ってズラかるぞッ!!!!」

 

「サイテーだわアンタッ!!?? でも背に腹は代えられナッシン!」 

 

 とりあえず3人が「わー!」っと物陰から飛び出し、ビーチパラソルのある場所へ駆け出していく。

 

「こんにゃろ! こんにゃろ! くたばりやがれ成金野郎ッ! 水底に沈めッ!」ゲシゲシ!

 

「ゴボゴボゴッ!? ゴボボボボッッ?! 死ぬ死ぬ死ぬッッ!!!!」バシャシャシャ!

 

「5日ぶりのメシにごじゃるマス! メシにごじゃるマス!」ガガガガ!

 

「あっ、これおいしいよハルキくんっ! たべたことないフルーツ☆」パクパクパク!

 

「栄養っ……! 栄養っ……! 栄養はえいようッ……!!」モゴゴゴゴ…!

 

 ――――地獄だ。

 いまバベルの20階に、まごう事無き地獄が展開している。

 

「おい愛叶! 棒持ってこいッ! (つつ)けこんなモン! 突き倒してやれッ!」

 

「たっ、助けベッ!? ……助けベイベッ!? お願ッ……!!」

 

「あっ! ハルキ=クン! そいつのグラサンだけ取ッテ! アタシ使うカラ!」

 

「棒もってきたよー♪ えいえい! えいえい! しねー☆」

 

「生きてて良かったッ……! 本当に生きてて良かったッ……!

 美味しいですお母さんッ……!!」

 

 果物を食べ、飲み物を飲み、置いてあった生ハムだのクラッカーだのを貪る。

 ダンジョンの弱肉強食の(ことわり)というのが、よく分かる光景だ。

 

「クソがぁーッ! こいつ中々しぶてぇよッ!?

 おいブリトニー! 刀を貸せッ! あのパトリオットとかいうの!!」

 

「嫌ヨ! 錆びるじゃナイ!

 お手入れ大変ナノ! ウンコでも投げときなさいヨ!」

 

「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!

 うちには2ひきの犬と、ちいさいハムスターがいるんです! しんでくださいっ!」

 

「力が漲ってくるよっ……! 食べるってことは、生きるって事なんだねっ……!

 今なら僕、元気に死ねそうな気がするっ……!!」

 

 やがてドタバタしている内、散々ボカスカ殴られた花輪くん(仮)が、ゴボゴボいいながらターミネーターⅡみたいに沈んでいく。アイルビーバックの「b」の手をして。

 

 

「――――よっしゃあ! 逃げんぞお前らぁーッ!

 持つもん持ってズラかれぇーッ! 人が来る前にぃぃぃいいいーーッッ!!」

 

「ざまぁみろセレブ!!

 こんなトコでバカンスしてるから、そんな目に合うのヨ! オボエタカッ!!」

 

「ばーかばーか! まるちゃんのファンにあやまれーっ!

 よくみたら、けっこうオッサンだったもん!! あやまればかーっ!」

 

「また会いましょうっ……! このご恩は一生忘れませんっ……!

 でもお腹が空いたらまた来ますっ……!」

 

 

 

 

 ハルキたちは「わー!」と叫びつつ、急いで21階への階段を登った。

 

(つづく)

 

 

 

 

 




 すいません。出来たらでいいので、また花輪くん(仮)を出したげて下さい……。
 あまりにもかわいそうで……w

(hasegawa)




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ダンジョンで出会いを求める俺の青春ラブコメは間違いなんかじゃないんだから…!! (砂原石像 作)

 

 

 

現在、ダンジョン23階。

 

21階からバベルを順調に(当人たちからしたら不幸なことに)登りつめたハルキ達は現在、魔法組織ミストラルの冒険者と対峙していた。

 

「はなわの奴から『Oh Baby… サキュバスの一味に騙されて荷物全部盗られちゃったよ…』と連絡があった…」

 

重厚な輝きを持つ鎧。

宝石らしき物が埋め込まれた美しい剣。

岩のような身体には無数の傷跡。

 

目の前の男はまさに百戦錬磨の武人と呼べるだろう。

 

男は鷹のような眼光でハルキ達を見据える。

そこには一切の警戒はない。

 

「それを聞いたとき、俺はたまげたよ…あいつは成金だが、ダンジョン20階まで上がって来れる実力者だからな…。それを容易く騙せるとは思いもしなかった…。だが、それも納得だ」

 

男はハルキの方を向く

 

「溢れ出る魔力…そしてその美貌…。貴様が()()()()()であることは一目瞭然だよ…そして、その鮮やかな犯行手口は、あのロリコン大統領を騙したそれと酷似している…」

 

男は静かに、だが確信をもって問う。

 

「 貴様らの正体はあのロリコン大統領さえ欺いた淫魔の集団。"INM(淫魔)ファミリー"だな?」

 

そう問いかけられた彼らは何も言葉を返さない…

 

「…その沈黙、肯定と取るぞ。いいか。これから、俺が言うことは一つ。このことを祖国に報告されたく無かったら…この俺を触手から開放し…ンホオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

ハルキは触手のスイッチを押した!!

 

「長えよ!! ぽっと出のてめえのセリフだけで何文字かかるんだ!!」

 

「ふざけるな!!ふざけるな…アッー!!」

 

現在ダンジョン23階。

ハルキ達の眼前には、触手に絡め取られながらも御大層な口上を述べる、よく分からん冒険者の姿があった。

 

ここまでの経緯を軽く説明すると、ダンジョンの21階についたハルキはトラップを踏んでしまい、仲間たちとはぐれてしまった。

 

荷物も仲間も失い、危険地帯に放りこまれたハルキは、偶然拾ったゴスロリを身に纏いそこらへんにほっつき歩いていた冒険者を誘惑。

数日間もの間、行動をともにした後、「飽きたから」という理由で、彼を触手トラップのあるところに突き飛ばす。

 

そこで偶然、仲間たちと合流し、今に至るのだった。

 

「おのれ…人の純情をもて遊びやがって…」

 

「"ダンジョンに誘拐された名家の令嬢"というあり得ない設定を愚直に信じて御守りいただいたこと、本当に助かりました♪ これも貴方が簡単にコロッと騙される愚かな男であるおかけです☆ 数日間ありがとう御座いました……という訳でテメェは♪用済み♪お疲れさん☆death♪」m9(^Д^)プギャー

 

「グアああああああああああああああ」

 

いままで目の前の男が信じた"ダンジョンに誘拐された名家の令嬢"の演技を交えつつ追い打ちをかけるハルキ。生まれてからずっと"女の子みたい"、"美人"、"男の子のはずがない"だと言われ続けた顔は、隠された表情筋をフル活用して彼の邪悪なる悦びを表現する。

 

瀬川ハルキが最も生の実感を得る瞬間は、振った男の心を徹底的に蹂躪するこの瞬間なのである。

 

自分よりも優れた男が屈辱に歪んだ反応を隅々まで愉しむことこそが彼の生きがいなのだ。

 

そのあり方はまさしく下衆の極み男女(おとめ)。最終鬼畜兵器彼女(男)である。

 

「クッ…殺せええええええええ!!」

 

「殺せ……? そうか! 君は誰かに殺してもらうタイプの自殺が好みのなんだね? 高瀬舟とかに代表されるように……誰かに頼んで殺して貰うと言うのは格調高い自殺方法でいいよね……。誰かに殺してもらうタイプの自殺は自分で自殺できない状況に陥った人への救済という側面もあってね……普通の自殺にはない美が感じられていいと思うよ……*1そうだ……僕も自殺願望あるから……"ツープラトン自殺"(心中)*2なんて方法も……」

 

「潔く死を目指すは武士のカガミ! さあ、短刀を用意シマシタから、切腹ドウゾ♪ カイシャクはマカセテクダサーイ!!」

 

「この悪魔どもめ……!!」

 

まさにその通りである。

 

「……ハッ! 綺麗な花には棘がある…恨むなら簡単に騙されるテメェの愚かさを恨みな…って。どうした愛叶? 風邪でも引いてるのか? 」

 

ひときしり、冒険者のプライドをズタズタに引き裂いて満足したハルキはふと、自分の左腕にしがみついた妹分の様子がおかしいことに気づいた。

 

「…!? ううん? 何でもないよ」

 

「…そうか。…しっかし、巌のやつすっげぇイキイキしながら自殺語りしてやがる…」

 

急に元気を失った愛叶とは対象的に元気過ぎる巌を見る。

 

「……薬物とか使ってしっとりと(中略)……建物に火を放って派手な彩りを(中略)……凍死するのも美しく(中略)ああそうだ……"虹の谷"って知ってるかい……?」

 

「さぁ、大和男子なら潔く!! そぉれハラキリ、ハラキリ!」

 

「クソがあああああああ!!」

 

同好の士を見つけた巌の反応は、同好の士を見つけたオタクのそれであった。

更に、ハラキリハラスメントにいそしむブリトニーと相まって、そこらへんの悪魔よりも悪魔的な光景が繰り広げられていた。

 

「…………」

 

「…ハハン?さては数日俺に会えなくて寂しかったのか…」イテテ…

 

「…………」

 

しがみつく手の力が強まる。

買い物袋すら持ち上げられないハルキの腕は女の子の感情を受け止めるにはあまりに貧弱であった。

 

サキュバス(男を騙す悪魔)ねぇ……俺もとうとうそう呼ぼれるようになったか。」

 

「……ハルキ君って、サキュバスよりサキュバスしてるよね」

 

「ハハッ確かに! 実際にサキュバスとかいたとしても、俺よりまともな奴らかもしんねぇな!」

 

サキュバス。それは男を騙してその精を奪う淫魔である。

確かに、サキュバスは伝承で語られる通り()()()()()()である。

だが、そのイメージをサキュバス当人はどう感じるものだろうか? "俺よりはまとも"だと言われることにどう反応するのだろうか?

 

「……フフッ。そーかもね。」

 

少し表情がよくなった妹分の頭を軽く撫でてながら、ハルキは仲間たちに声をかける。

 

「…おーい! もうそいつ煽るの飽きたし、荷物かっぱらって行くぞ」

 

しがみつく妹分を"邪魔だなぁ…"とおもいながら、ハルキは仲間達のところへと向かった。

 

 

少しした後、現場には半裸で触手に絡みつかれた男が一人。怨嗟のこもった喘ぎ声を上げるのみとなった。

 

ンホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 

…汚い。

 

 

 

 

 

*1
あとね……誰かに頼んで殺して貰うタイプの自殺は、手伝った側が"相手を殺すというハードル"を超えなければならないし、法によっては殺した相手が殺人に問われるから、相手との友情とか愛とか信頼とか勇気とか色々試される方法だと思うんだ……だからこそ、そこには一定の美しさというものがあるんじゃないかなってね……

*2
ツープラトン自殺というのはね…歴史が深く、美しい方法なんだ。一人で自殺する勇気が無い人でも誰かと一緒なら自殺する勇気が湧いてくるし……愛する人と一緒に死ぬタイプのツープラトン自殺は歴史的にも……(中略)あと、これの発展系でチーム自殺(集団)とか出会い系自殺(掲示板で呼びかけて自殺)とか……







 砂原さま、執筆お疲れさまでした♪

 はいバッチリ―☆ わーいハルキくん躍動してるぅ~♪ おもしれぇぇーーッッ!!!!
 やっぱハルキくんは、男を騙している時が一番輝いているゼ☆ 流石は俺達のハルキくんだぁ~!(笑)

 そして個人的に「これ良いな!」と思って大好きだったのが、巌くんの自殺マメ知識の入れ方。いわゆる“注訳”の使い方の上手さですっ!
 あー私これ踏襲していこw この手法を巌くんの個性として、どんどん使っていこう!w

 ではではっ! 二番手お見事でした♪ 砂原さまグッジョブ☆

(管理人)




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教授再び  (ヒアデス 作)

 

 

 触手に絡みつかれたミストラルの冒険者を置き去りにして24階へ昇ったハルキたち。

 10階ごとに置かれた『休憩階』には程遠いが、この階は悪魔が少ないらしく彼らは束の間の休息をとっていた。なお着替える余裕もなかったのでハルキはまだ冒険者をだましていた時に着ていたゴスロリ服のままだ。

 しかしその休息もハルキがふいにあげた大声で終わりを告げる。

 

「うわあああああっ!!」

 

「ハルキくん!?」

「どうしたんだい? ……まさか悪魔が?」

 

 愛叶と巌は口々にそう声を上げブリトニーも顔をのぞかせてくる。そんな彼らが目にしたのは……。

 

「おいおいオーバーだな。そんなに驚かなくてもいいじゃないか、久しぶりに会えたから挨拶をしようとしただけなのに」

「耳元でいきなり息を吹きかけられて大声出さずにいられるか! それに何であんたがここにいるんだ!? 教授!」

 

 耳を押さえながらもだえるハルキの隣には、病的と言えるほど色白で細身の男がいた。男は眼鏡をかけ白衣を身に着けており、いかにも不健康そうな研究者といった(てい)をしている。

 

「Oh! 教授(プロフェッサー)! こんな所までハルキを追いかけてきたノ? これがボーイズラブの力……」

「わたし以外のにんげんが、ハルキくんのお耳に息をふきかけるなんて……うぐぐ」

「教授……よくこんな所まで来れたね……ラボがあった10階からここまで悪魔が多い階もあったのに」

「おや、巌君じゃないか! 君も無事なようで安心したよ……雌豚どもの片方ぐらいは死んでくれるかと思っていたのだが、意外にしぶといな」

 

 満面の笑みで巌に語り掛ける一方で女性陣に毒を吐く教授。彼は眼鏡を上げながらハルキに体を向けて言った。

 

「……さて、なぜ私がここにいるのかだったね。ここまで来たのなら君たちも一度は目にしていると思うけど、このダンジョンには至るところにワープ装置があってね。その中には一度足を踏み入れた階なら自由に転移できる装置があるんだ。下の階に戻ろうがダンジョンから出ようがね。研究データの持ち運びのために私が作った自信作だ」

「あのワープ装置の中にそんなもんがあるのか! それがあれば今からダンジョンを出ても――」

「悪魔の手掛かりもろくにつかめず外に出れば、サイエンサーにハチの巣にされるだろうけどネ」

 

 記録(セーブ)機能付きワープ装置の話を聞いて顔を弾ませかけるハルキだったが、ブリトニーの指摘にうぐっとうなり、また暗い表情になる。

 そんなハルキを見て教授は気の毒そうに。

 

「ハルキ君もつくづく大変だね。君と雌豚の区別もつけられないロリコン大統領のためにこんな辛苦を味わう羽目になろうとは。私としてはこれを機に美人局なんてやめることをお勧めするよ。まあ君の綺麗な生足が見られるから女装はやめなくてもいいが」

 

 その言葉にハルキは悪寒を感じ、思わずスカートを押さえた。その仕草は下手な女の子より女の子らしく今のハルキを見たら多くの男と一部の女が心を奪われるだろう。現に愛叶はハルキ君かわいいよー、と思いながら身をくねらせていた。

 一方でハルキは、このホモさっさと生活習慣病で死んでくれねえかなあと思っていた。

 しかしそんな彼を裏切るように教授は。

 

「おや、足が冷たいのかい? 冷え性かな? よければ体が暖かくなるストレッチを手取り足取り教えてあげようか。私自身健康には自信があってね。健康診断はすべて問題なしなくらいさ」

「えっ!? そんな見た目で健康診断引っ掛かってないのお前?」

 

 意外過ぎる事実に教授の病死を願っていたハルキを始め、他の一同も驚きで目を見張る。病的と言っていいほどの色白と細身でとても健康には見えないのに。

 そんな一同の前で教授ははははと笑いながら髪をかきあげる。彼なりに照れているらしい。

 

「まあストレッチはハルキ君の気が向いたらということで、そろそろ本題に入ろうか。……ここまで登って来たからそろそろ素材が集まってきた頃だと思うけど、今までに何か気になる物を拾っていないかい?」

「ああ……それなら20階に着くころに結構色々な物が手に入ったなぁ……どれも自殺にも使えないようなガラクタばかりだけどね……」

「どれもイー○や軌○シリーズみたいに宝箱に入っていたネ。それがどうしたノ?」

 

 ブリトニーからの問いに教授は嫌そうな顔を見せるものの、彼女の問いに答えないと話が進められないと判断して渋々口を開く。

 

「……うん、以前にも言ったと思うがこのダンジョンにあるものはどれも悪魔の瘴気を受けて変質していてね。それを素材にして作った防護服は高い防御能力を誇るんだ。サイエンサーでもミストラルでもすでに運用が進んでいる技術だよ。君たちが集めてきた素材からでもそのような防護服が作れると思うんだが」

「防護服ね……そりゃ心強いけどほんとにガラクタばかりだぞ」

 

 そう言ってハルキたちはダンジョン内で拾ったガラクタ、もとい素材をシートの上に出して教授に見せる。教授はそれをしげしげと眺めて。

 

「ふむ……いやいや、なかなかいいものが集まってるじゃないか! 特に大量に集まっている尻尾と羽なんてすばらしいよ! これだけでもいい装備が作れるだろう。このパイロットスーツも服の基礎部分には使えそうだな。この人形は何かのアイテムにするとして……こっちの半券はアイテムにも服にも使えなさそうだが、いや待て、瘴気を込めて変質させればあるいは……」

 

 シートの上に並べられたアイテムを見て教授はぶつぶつと言いながら思案する。その姿はおもちゃに夢中な子供のようでそんな教授を見て巌とブリトニーは不意に零した。

 

「……こうしてみると悪魔もどきを使って多くの女性を殺してきた人とは思えないね……」

「Yes.ハルキよりよほど善人に見えるヨ」

 

 そんな声を聞いて教授はアイテムから巌の方に顔を上げる。ブリトニーの方は眼中にない。

 

「いやいや、それは誤解だよ。大方、ハルキ君がその女装でどこぞの探索者からその話を聞き出したんだと思うが、このダンジョンに入ってくるような探索者が悪魔もどきなんかにやられると思うのかい?」

 

 その言葉にハルキはうっとうなる。教授の言う通り、彼の噂はハルキが女装でダンジョンに潜っている他の探索者から聞き出したものだ。信憑性は実のところ全くなかった。

 

「まあ雌豚どもがこの世から駆逐されるべきだとは思っているから以前はああ言ったが、手塩をかけて作った子供(悪魔もどき)を雌どもの血で汚したくもない。悪魔もどきが探索者を殺めたというのは全くの誤解だよ。私を追っているサイエンサーが流したでたらめか、もしくは誰かが犯した悪行をなすりつけられたかな?」

 

 その話を聞いて一同は一理あると思った。

 教授の女嫌いは度が過ぎているほどだ。出来れば関わりたくないと思っているほどに。そんな教授がわざわざ女を殺めたり実験材料に使ったりするだろうか?

 そう思って首をひねらせる一同の前で教授は続けた。

 

「ただ、私はともかく彼女ならやりかねないかもしれないな」

「彼女?」

 

 教授の口から出た言葉を巌が思わず復唱する。それに教授はうんとうなずいて。

 

「ミストラルの副首領でね。首領の一人娘だ。巨大企業のCEOとして資金調達を行っている父親に代わってミストラルの実権を握っている最高位の魔導師でもある。彼女なら大嫌いな()を皆殺しにして女だけの世界を作ろうとしていてもおかしくはないな。彼女は女を愛する同性愛者であると同時に筋金入りのサディストでもあるからね」

 

「ミストラルの副首領で首領の一人娘……そいつはこのダンジョンにいるのか?」

 

 嫌な予感に駆られて思わず尋ねたハルキに教授は首を横に振った。

 

「いや、今はダンジョンどころか日本にもいないはずだ。だが彼女は以前このダンジョンに入った時に50階以上は踏破して転移装置にも記録(セーブ)してある。だから彼女がその気になればこのダンジョンのどこにでも姿を現すことができるはずだ。ハルキ君も気を付けたまえ、君の見た目は彼女の好みだが、そんな君が男だと知ったら彼女はどんな仕打ちをしてくるか」

 

 それを聞いて背筋がぞくりと震えるのをハルキは覚えた。

 女好きの同性愛者で男嫌いのサディスト、彼女こそハルキにとって最悪の天敵かもしれないからだ。

 

 

 

 







 ヒアデスさま、執筆お疲れさまでした♪

 ――――そしてグッジョブ! ミッションコンプリート☆
 佐伯さまからの宿題だった“アイテムの活用”を、見事達成して下さいましたぁー! ありがとぉー☆

 また今後、次以降のメンバーで、いったいどんなアイテムが出来上がったのかを書いていきましょう♪ これも楽しみです♪

 今回も面白かったですぞヒアデスさま~っ!
 しかも、しっかり設定を膨らませてくれましたし、更にお話に深みが出てきました♪

 私的には、女好きの同性愛者で男嫌いのサディストな【ミストラルの副首領】さんが凄く気になっております。
 次回以降、いったい誰がこのキャラを書くのか!? それも楽しみにしてますよ~♪

 ではでは! 3番手お見事でした☆ ヒアデスさまありがとぉぉーーう!
(管理人)


 ◆ ◆ ◆



 今回の話はここまでです。教授が作る装備については次のお通しラー油様にお任せします。
 それではお通しラー油様、次回も頑張ってください。私も楽しみにしてます。

(ヒアデス)



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ピッチリ、モッコリ、こんにちは  (お通しラー油 作)

 

 

 25階層へと昇ったハルキたち一向は途中で(強引に)同行してきた教授の用意した簡易型セイフティエリアにて久方ぶりの休息を行なっていた。

 

「はぁ、このすべすべの生足の感触。実にたまらん! それでもって男特有の筋肉質な触り心地もまたエクセレント! もうこれだけで私は天にも登る気持ちだよ」

 

「そうかよ。俺は逆に地獄に落ちそうな勢いだよ」

 

 現在ハルキは例の女装姿のまま教授に膝枕をしている真っ最中であった。

 と言うのもせっかく素材が手に入ったんだし何かアイテムでも作って貰おうと交渉したのだが

 

「だめだ、全くインスピレーションが湧かない。せめて柔らかい男の膝枕を堪能できれば開花するのだろうけど」

 

 なんて事を言い出してきて、その結果魅力的な生足を披露しまくってるハルキが膝枕をすることになった。

 因みに、物は試しにと愛叶やブリトニーの膝枕を強引に行ってみたところーーー

 

「ぐぇぶふぉがはぁ!!」

 

 盛大に吐血して死に掛けたそうだ。

 そこまで嫌うか。

 

・・・時間からしておよそ一時間後ーーー

 

「ぷはっ! 危うく死んだ私の一族の下へ旅立つ所だった!」

 

 どうやら相当危うかったらしい。今後何かしてきたらこの手もありかもしれないなと、ハルキは内心ほくそ笑んでいたようで。

 

「ほれ、さっさとアイテム作ってくれや。でねぇと愛叶とブリトニーの二人に膝枕させた上に耳掃除までさせるぞ」

 

「や、止めろ! わかった! 作る! すぐ作る! マッハで作る! だからそれどけはやめてくれ! 私の寿命がもたない!」

 

 そう言ってガラクタと思わしき素材一式を抱えてすぐ近くの研究台で制作を始めだした。

 これにて一安心と思っていたハルキに異議を申し立ててくるは先程話題に出された愛叶とブリトニーの二人だった。

 

「ちょっとハルキくん!? わたしやだよぅ! あんなヘンタイにひざまくらで耳そうじなんてぇ!」

 

「せめて切腹で勘弁してクダサァイ! そんなの日本男児として恥以外のなにものでもありまセェン!」

 

「やる訳ねぇだろ。ただの脅しだよ。それとなブリトニー。お前は女だし日本人でもねぇからな。間違えんなよ」

 

「出来たぞ!」

 

 そうこうしてると完成したようで、早速見せびらかして来たのだが、それがなんと言うか妙に生地が薄いと言うか着たら絶対ピッチリになりそうなラバー状のスーツが持たれていた。

 

「おい教授、これはなんだ?」

 

「これか? これは私が新たに開発した最新式の防護スーツだ。ダンジョンの素材を使うことにより素材の軽量化しつつ強度を保つ事に成功したのでね。安心したまえ。このスーツを着てれば例えバズーカを直撃したって無傷で済む代物だぞ」

 

「いや、それは確かに凄ぇんだけどさぁ」

 

 ハルキの問題は別にあった。

 このスーツ、明らかに薄いのだ。こんなの来たら間違いなくあそこのモッコリが目立つ事になる。

 全裸で往来を歩き回るよりも恥ずかしい醜態を晒しかねないこの出来映えにハルキはーーー

 

「着たくねぇなぁ」

 

 と、愚痴をこぼすのだった。

 

「さぁ、早速試着してみてくれ! 勿論ハルキ君か巌くんの二人で」

 

「じゃぁ早速試着するか。愛叶、ブリトニーヨロ」

 

「な、なん・・・だとぉ!?」

 

 ハルキに言われてスーツを受け取った愛叶とブリトニーの二人。

 愛叶ははにかみながらも着る気満々な様子だったし、ブリトニーに至っては「まっかせなさぁい!」とさして気にしてない様子だった。

 

「止めろ! 私の傑作に触るな雌豚! それはハルキくんと巌くん用に、わざわざ薄くして作った特注品なんだぞ!」

 

「んなもんわざわざ作んな!」

 

 駄々をこねる教授を押さえつけること数分、スーツを着た二人が姿を表した。

 ハッキリ言って眼福この上なかった。

 ただでさえ抜群のプロポーションを誇る二人が超薄手のピッチリスーツなんて着たもんだから体の凹凸が丸見えだった。

 正に世の女達が血の涙を流して羨む様な理想のボディライン。引き締まったウェストと太腿。小振りでありながらも肉質豊かなヒップライン。

 そして、見る者を釘付けにするほどの盛りに盛られた二つの双丘がまた色っぽさを底上げしていく。

 正に眼福と呼ぶに相応しい光景と言えた。

 それを見た教授はと言うとーーー

 

「ぐふっ!!」

 

 吐血して果てるのであったそうな。

 

 

 






 お通しラー油さま、執筆お疲れ様でした♪

 防護スーツ完成ッ! 防護スーツ完成ッ!
 これで愛叶&ブリトニーさんの生存率が、飛躍的にUPしましたナ!(もともと死にそうに無い二人だけど)

 ではでは! 4番手ありがとう御座いました♪ ラー油さまお疲れ~

(管理人)



 ◆ ◆ ◆


 はてさて、今回のお話はどうでしたか?
 今回は皆様の大好きな【ピッチリ】と【モッコリ】と【膝枕】を導入してみました。
 皆様も好きでしょ?

 そして、今回教授が制作したアイテム第一号として出された超薄いスーツ。見た目以上に防御性能は高いのでおすすめだとのこと。
 そんでまぁ、教授のその後につきましては・・・後の方にお任せするとしましょう。
 今回作ったアイテムは一個だけですがまぁまだ素材はあるそうですので皆様も是非楽しいアイテムを考えてみるのも面白いかも?

追伸:ヒアデスさんの書いた教授。変態ぶりが最高でしたよ。私もこれに負けないくらいの変態ぶりを披露できるよう頭の中を変態一色に染めてきますね。

(お通しラー油)


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代用を用意するのは実は面倒だったり (Mr.エメト 作)

 

 

吐血してて倒れた教授はどうにか立ち上がるが……。

 

"ハルキくんと巌くんに着てほしかった……"っと、文句を言ってたが、まだ言うかとハルキは後頭部に拳骨を食らわせた。

 

「しかし、悪魔が使ってくる魔法や技は防ぐことはできないから、そこは十分に気を付けたまえよ。

 ……………調子に乗って死亡したら、それはそれでいいかな」

 

「ドサクサに紛れて酷いことを言うね……、この人……」

 

なにはともあれ、二人分の生存率が上がったので、探索を再開。

とまぁ……ここまで運よく、悪魔に見つからずに30階層に辿り着いたハルキ一行。

 

「大きな部屋に出たな」

 

警戒しつつ、奥へと進むと…………青銅で出た牡牛の頭を持つ像があった。

 

「これは……牡牛の像………?」

 

「なんだろ? アクマたちがぎしきにつかってたものかな?」

 

「そうか、ここでお祭りごとをしていたのデスね!!」

 

「こんな塔で、そんなことするわけないだろ」

 

「わかりませんヨ!?浅草の神輿、竿灯祭り、ねぶた祭りと色々なことをしていたかもしれまセン!!」

 

「いい加減、そういうのから離れろや!!お祭り娘!!」

 

ハルキとブリトニーがぎゃいのぎゃいのと騒いでいると………。

 

【人間か……?】

 

「おお、喋りましタ!?邪神像かと思いましたガ!!」

 

【サムライかぶれ女子よ、あながち間違いではないが、我が名はモロク。

 この階層の主にして、炉の魔王である】

 

「ま、魔王………」

 

遂にというか、魔王に遭遇。

こうして言葉が喋れるし、問答無用で襲い掛かってくるようなタイプではないようだ。

モロクと呼ばれる悪魔は今度はハルキの方を見て、

 

【それにしても………そこのゴスロリ服を着た人間よ。

 悪魔の我でも驚くほど、いや………退くほどの詐欺を重ねてきたようだな。

 お主、人間なんかやめて悪魔になった方が似合うと思うぞ】

 

「誉め言葉なのか、貶しているのかどちらなんだよ………」

 

しかし、これ以上の罵倒な反論したら猛牛の如く怒りそうなので、グっと耐える。

相手がウシっぽい悪魔なだけに。

 

「あ、あの………僕たち次の階層に上りたいんだけど、ダメ……?」

 

「おまっ!?厳!!なにバカなことを言っているんだよ!!」

 

首元をつかんで揺さぶるが、モロクがふむっ、と発言した。

 

【ここを通りたくば、我に贄を捧げよ。

 人間が一番だが、別のものでも構わぬぞ。

 だからと言って、無機物はダメだ。動物でなければいかん】

 

役に立ちそうにない物でも焼こうかと思ったが、モロクの注文に舌打ちしそうになる。

下手に機嫌を損ねたら自分たちが薪になりかねない。

 

「わ、わかった。何か燃やせるものを用意して来るよ」

 

とりあえず距離を置いて、作戦会議をする。

 

「さて……あの悪魔をどうやって、満足させるかだが」

 

「ハルキくんハルキくん? あのアクマさん、もしかすると大物クラスかも。すごいぱわーをかんじるの」

 

「ああそうかい。どっかの誰かにiPhone壊さなければ、召喚してなんとかできたのにな」

 

ジロッと愛叶を見るが壊した本人は下手な口笛を吹いて、とぼけている。

こいつをモロクに捧げようかと考えたが、それは絶対にやめよう。

 

「それじゃあ、いっかいきょーじゅのところに戻って、きいてこよっか? あのアクマさんについてのこと」

 

「え゛っ!?

 まーた、変な事させられそうだが……背に腹は代えられないか、嫌だけど。

 ………最悪、教授を贄にすればいいかな」

 

仕方ないので、道中見つけておいたワープ装置を使って………教授のところへ。

 

【しかし………あの者たち、サキュバスがいるのに気が付いてないのか?

 まあ、どちらにせよ。言わぬほうが、良いか。その方が面白い】

 

真実は告げないようだ。

やはり、こういうところが悪魔、なんだろう。

 

 

 







 エメトさま、執筆お疲れさまでした♪

 イベント発生! この【炉の魔王モロク】のエピソード、なにやら色々出来そうな感じです!
 ハルキたちはこのお題を、いったいどう切り抜けるのか? 腕の見せ所ですな♪

 ではでは! 5番手ありがとう御座いました♪ エメトさまお疲れ~い!



 ◆ ◆ ◆


今回はボリュームは少ない感はあるかも知ませんが、ハルキの黒いところをかけたかなーっと思います。
また、次回も頑張ります

(Mr.エメト)


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三巡目
失踪。 (hasegawa 作)


 

 

 

「あのさ……? ぼく今日、眠れないかもしれないよ……。

 きっと夢に出てくるもの……」

 

「俺もだよ、相棒……」

 

 バベルの30階。

 彼ら(と牡牛の像)以外は何もない広大なフロアに、ハルキと巌のゲンナリとした呟きが、小さく響いた。

 

「“お休みハルキくん”が、バリバリムシャムシャと頭から食べられていく光景……。

 リアルだったねぇ……」

 

「魂が入ってない事以外、人間と変わらねぇからなアレ……。

 獣に喰われる人間ってのは、あんな感じなんだな~って、無駄に勉強しちまったよ俺ぁ」

 

「しかもアレ、君とまったく一緒の顔だったろ……?

 本人としては、どういう心境だったんだい……?」

 

「自分の死に様を、仮想体験した気持ちだよ。

 もしバベルで死んだらこうなるんだぞってのを、まざまざと見せつけられたな……。

 もう帰って寝てぇ心境だ」

 

 今も目の前には、口から胸元にかけてを真っ赤な血で汚し、それでいて「余は満足じゃ」とばかりに満足気な表情を浮かべる、炉の魔王さんの姿がある。

 膨らんだお腹をポンポンと叩き、憎らしいほど上機嫌。

 人も牛も、お腹が一杯になれば幸せなのは、変わらないようだ。

 というか……てっきり炉にくべて燃やすんだと思ってたけど、普通に食べるんですね。

 

「あの人形、教授がチ〇コ突っ込んだヤツだってのは、内緒にしとこうな?」

 

「言えないよ……。あんな幸せそうな顔してる人に向かって……。

 知らぬが花という言葉もあるよ……」

 

 ふー食った食った! そう満足気に振り返る魔王モロクに対し、「それはよぅございましたねぇ」とばかりに揉み手で愛想笑い。

 皆どことなく「~♪」と目線を逸らしているのは、決して気のせいじゃ無かった。

 

「ねぇモロクさん、それおいしかった? へんなあじとか、しなかった?」

 

『心配は無用。我は満足しておるぞ。

 ラノベみたいなリボンをした、有り得ない程ピンク髪の少女よ』

 

「変な臭いはせなんだカ?

 具体的にはオッサンの唾液とか、チ〇カスみたいな物にごじゃるのだガ」

 

『何のことかは知らぬが、美味だったと言っておこう。

 間違った日本文化が好き過ぎて、『嫁の貰い手が無い』と両親を泣かせている女よ』

 

 魔王を名乗るだけあって、モロクには“見通す力”のような物が備わっているのかもしれない。

 人には見えない物が視えたり、もしかすると未来を見通すような能力さえあるのかも。

 まぁブリトニーの件に関しては、誰が見ても「こいつ行き遅れるな」って感じなのだが。

 彼女は極端に友達が少ない人だったりする。彼女と分かり合えるのは、同じ変態であるこの3人くらいのモンだ。類友。

 

「んじゃあ、これにてミッション達成ってか?

 ここ通して貰っても、構わねぇんだよな?」

 

『うむ、貴公らはその資格を手にした。

 ここから先に進むことを、我が許可しよう』

 

 ニンマリと笑い、巌とハイタッチ。

 愛叶とブリトニーの方も、「むふー!」と得意げな顔だ。

 正直、ここに来た時は一体どうなる事かと思ったが、あの教授の変態性こそが功を奏し、彼らの道を開いたのだ。きっと神様とか、自分達の守護霊だって、まさかこんな方法で難関を突破するとは、夢にも思わなかった事だろう。世の中なにが起こるか分からないものだ。

 

 しかし……何故だろう? 微塵も教授への感謝の気持ちが、湧いてこないのは(・・・・・・・・)

 装備も作って貰って、難関まで突破させて貰ったのに、不思議な事もあるものだと思う。

 ママ! ホモって不思議ね!

 

『だが――――暫し待つが良い。

 このまま進めば、貴公らは必ずや、死ぬ事となろう』

 

 歓談ムードに浸っていた彼らに、冷や水をぶっかけるが如き、魔王モロクの一言。

 

『見た所、あまりにも貴公らは、このバベルの事を知らぬと見える。

 このダンジョンの特性も、本来用意すべき準備も、何一つ』

 

 それで良く、ここまで来れたものだ。

 魔王モロクは、そうどこか関心するように呟く。

 自らの意思でなく、いきなりここへと赴く事となったハルキ達は、あまりにもバベルの事を知らなさすぎるのだと。

 

『貴公らは、このバベル内に充満する力が、人の子に力を与える(・・・・・・・・・)事を知っておるか?

 この場所においては、本来人の身では扱うことの出来ぬ“特別な能力”を、それぞれが一つづ行使する事が出来る。授かることが出来るのだ。

 これはまさに、悪魔的な能力と言えよう』

 

「悪魔的な力……だと?」

 

 ハルキがオウム返しのように、その言葉を繰り返す。何を言っているのかが、いまいち理解出来ずにいる。

 

『しかり。この場に足を踏み入れた時点で、貴公らはもう“人”とは呼べぬ。

 このバベルが発する力により、人ならざる者へと変貌しているのだよ――――

 まぁ、この塔におる間だけの話、ではあるのだが』

 

「ちょ……ちょっと待って!? それって僕らも、悪魔と戦えるって事かい……?

 アイツらみたいに、人外めいた凄いパワーを手に入れたって事……?」

 

 思わず巌が前に出て、モロクに問い返す。

 運が良かったのか、はたまた別の要素があったのかは知らないが、彼らはここまで到達するのに、ロクな戦闘も経験しないままだった。

 しかし、それでも今まで必死に悪魔達から逃げ惑い、ここまで辿り着いたのだ。巌に至っては身体を張るような真似も多くこなして来たし、ぶっちゃけ死ぬような目にも数多く合ってきた。

 しかし……力を手に入れたとなれば、アイツらと自分達とのパワーバランスが、根本的にひっくり返る事になる。

 もう逃げ惑わなくて済むかもしれない、そう巌は微かな希望を、胸に抱いたのだが……。

 

『否。それは叶わぬだろう。

 いくら力を得たとはいえ、所詮貴公らは人の子。

 純粋な魔である者達とは競えぬ。越えられぬ差という物がある』

 

「あ、そうですよね……ハイ」

 

 即座に打ち砕かれる。抱いたばかりの希望は、まるでお菓子のように「はいあーげた!」と取り上げられた。

 

『なれど、人は力と知恵を振り絞り、ひたすら天を目指すが如く、上の階層に登る他ない。

 それかこのバベルにおいて、生きるという事なのだ。

 この力は、貴公らにとって一助と……、いや“切り札”となりえるだろう――――』

 

 魔王モロクが、その場で立ち上がる。

 見上げんばかりの巨体が、ハルキ達を影で覆い尽くしてしまう。

 その威圧感と、恐ろし気な異形の姿に、彼らの身体が自然と震えるのは、弱者としての性なのか。

 

 

『――――我はモロク、炉の魔王也。

 さぁ人の子よ、今こそ見つめるが良い。

 我が照らし、我が暴き、我が導く。

 これがお前たちの本質――――己が何者であるかを知れ』

 

 

 モロクが手をかざした途端、彼らの身体が淡い緑色の光に包まる。

 痛みは無い。身体に違和感も無い。だがハルキ達の意識は己の内側……魂に記録された“過去の記憶”へと飛び、指一本も動かすことが出来なくなった。

 

 (なか)へ、(なか)へ、(なか)へ――――

 過去へ(ふかく)過去へ(ふかく)過去へ(ふかく)――――

 

 意識の深層へと潜り、やがて己の魂へと。

 一瞬が永遠とも感じられる時の中、まるで乱雑に置かれた映画のフィルムのような膨大な記憶が、知識が、人生が、濁流となってハルキ達の脳に流れ込んでくる。

 

 それにより、彼らは今ようやく、己が何者であるのか(・・・・・・・・・)を、知った。

 

 

 

 

「――――ぶはぁッ!! はぁっ……! はぁっ……!」

 

「なっ……なんだこれは!? 僕は今、いったい……?」

 

「んぎゃーーすッ!!!! ……な、何事にござるカ?! 何が起こり腐っタ!?!?」 

 

 まるで、深い水底に潜っていたかのように。潜水をしていた者が、勢いよく水面に顔を出した時のように、ハルキ達は大きく肩で息をする。

 いま自分達が、深層意識の中で見た世界――――いくつもの数えきれない程の人生が連なった、膨大な量の記憶。

 それを上手く処理する事が出来ず、犬みたいに舌を出してハァハァと喘ぎ、チアノーゼのような状態に陥っている。

 

「ねぇ! 大事ないかミナノシュウ!? ちゃんと生きとるんカ!?」

 

「あぁ、問題ねぇよブリトニー。

 ……しかしながら、えれぇ目に合わされたモンだ。頭がガンガンしやがる」

 

「こ……これって僕の“前世の記憶”なのかい……?

 何人もの僕が、生まれては死んで……。生まれては死んで……。

 何千年も、いくつも人生が……僕の頭の中に……」

 

 暫くして、ようやく辺りを見回すことが出来るまでに回復。

 ブリトニーの声を皮切りに、仲間達の無事を確認するに至る。

 未だ地に足が着いていない感じ、割れるような頭痛をおして、現状の把握に務める。

 

 俺はハルキ。瀬川ハルキという人間――――それは間違い無い。

 このように、今は“自分が自分である”という事すらも、まったく確信が持てないという、曖昧な状態なのだ。

 

 

『――――視たな、己が何者であるかを。

 これで貴公らは、内なる力に目覚め、真の姿を自覚する事に至った。

 多少はバベルでの生存率も上がろう』

 

 

 未だキョロキョロと辺りを見渡すばかりのハルキ達に対し、モロクが静かな声で告げる。

 魔王としての威厳を感じさせる、地の底から響くような低い声。断定した口調で。

 コイツがさっきまで、教授がチ〇コ突っ込んだダッ〇ワイフを、旨そうにボリボリ食ってたとはな。

 世の中は不思議な事でいっぱいだ。

 

「あぁ、視せて貰ったよクソッタレ――――

 たいして知りてぇ事でも無かったがよ」

 

「あ~、これが本当の僕……かぁ~。

 自殺に美意識や尊厳を追求する者としては……、何とも言えない気分だ――――」

 

「別にアタシ信じてないケド? こんな与太話ィ! アタシはアタシ(なり)

 まっ! 話半分くらいには、聞いといてあげるワ――――」

 

 苦笑いしながらも、モロクに返事をした。「ふふん!」と挑発的な視線を投げて。

 仲間達は皆一様に、どこか自信に満ちた表情。

 己を自覚し、真の姿に目覚め、このバベルというふざけた塔(・・・・・)に、改めて挑むが如く。

 

「あーくだらねぇ時間だった! 無駄に時を食っちまったよ!

 さっさと進もうぜお前ら。もう俺は、暴れたくて仕方ねぇ。

 持て余してるフラストレーショ……」

 

 うーんと身体を伸ばし、31階への階段を見つめる。

 だがハルキは、ふとこの場の異常に気が付き、ハッと表情を凍らせる。

 

「ってオイ、愛叶は?

 アイツどこ行った!? どこにも見当たらねぇぞ(・・・・・・・・・・・)!!」

 

 これまでの異常な状況と、自分達の状態を確認する事で精一杯だったハルキ達は、今ようやく彼女の声がしなかった事に気が付く。

 この場にいるのは、モロクを覗いて三人。

 いつもあれだけハルキに纏わり付き、鬱陶しいほど一緒だった愛叶の姿が見えない。どこにも居ない! 

 

『あぁ。ヤツならば、貴公らが深層に潜っている間に、ひとり先へと進んだぞ?

 恐らくは、自分には能力が発現しないという事を、貴公らに知られるのが怖かったのだろう』

 

「あ゛ぁん!? テメェなに言ってやがる!

 なんでアイツを先に!? もし何かあったら、どうしてくれんだッッ!!」

 

 罵声が響く。矮小な人間の。

 だが炉の魔王たる存在は、それがあたかも風の音の如く、素知らぬ顔で言ってのける。

 

 

『ヤツは人の子では無い。【サキュバス】という、純然たる魔の者よ。

 それが暴かれることを恐れ、ここが潮時と、貴公の前から去ったのだろう――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハルキの身体が氷のように固まる。

 混乱から立ち直り、ようやく晴れてきた思考が乱れ、目の前が真っ白になる。

 

「あっ! ハルキ=クン!!」

 

「ちょ……! 待ってよハルキくん!」

 

 

 二人が静止する声も振り切り、ハルキは階段へと駆け出す。 

 人が走っているだなんて、とても信じられないような速度。己の全てを懸け、命を燃やすようにして。

 

 歳の離れた幼馴染であり、いままで鬱陶しいばかりだと思っていた、自身の妹分――――

 

 それを取り戻すべく、走った。

 

 

 




◆覚醒した能力


・巌 【暴食】―Gluttony―

 有機物、無機物に関わらず、どのような物であっても“喰う”ことが出来る能力。
 たとえ鋼鉄であっても咀嚼が可能。毒物や劇物も問題なく消化出来る。

 飲食した物が栄養として吸収される事はなく、全て“無”に帰するのみ。
 有り体に言えば、それがどのような物であっても「喰うことにより消滅させる」という力。

 ただし、一度に“喰う”事が出来るのは、自身の胃の容量(水6リットル分)の範囲に限られる。胃の中の物をすべて消化しきるには、約3時間ほどかかる。
 モンスターや悪魔の身体を“喰う”ことも出来るが、そもそもヤツ等は不死の存在であり、欠損部位を瞬く間に修復してしまうので、決して倒すことは出来ない。


 前世の彼は、太平洋戦争末期に南方戦線へと送られた、【名も無き日本軍兵士】
 略奪や殺戮、カリバニズムまでもが横行した戦地で、まさにこの世の地獄とも言うべき壮絶な飢餓を経験した。

 巌が持つ生への執着や虚無感、「どれだけ食べても満たされない」常に飢餓状態という体質は、この前世から来ている。



・プリトニー 【献身】―dedication―

 自身が持つ物を、他者に与える能力。
 知識、技能、身体能力に加え、生命力(命)すらも分け与える事が出来る。

 一例として、他者に脚力を与えた場合は、対象自身の脚力+彼女の恩恵となる為、まさに人外めいた速度で疾走することが可能。
 生命力を分け与える場合には、彼女の“寿命”と引き換えにする事により、対象の治癒を行う。

 ただし、能力を使用中のブリトニーは、神に祈る巫女のように瞑想状態となる為、完全に無防備となってしまう。
 そして献身の名が示す通り、怪我や病気などの“負の要素”は、他者に肩代わりさせる事は出来ず、敵への攻撃手段としては活用できない。


 彼女の前世は、江戸時代に生きた、【とある武家の妻】
 夫が怨敵との果し合いに赴く際、自身の存在が心の迷いや足枷とならぬよう、自ら喉を短刀で突き刺して自害。
 夫が武士の本懐を遂げてくれることを祈りながら、ひとり死んでいった。

 ブリトニーが持つ「日本人ならこうあるべき」という他者への厳しさや、時に我が身を顧みないほどの深い愛情は、この前世による物。



・ハルキ 【証明】―Proof―

 自身の意見、意思、正当性などを、他者に理解させる能力。
 何かを成したい、何かになりたいと強く願う時、その実行の為に必要となる要素が劇的に向上。成功率が上昇する。

 言わば“火事場の馬鹿力”のように、危機的状況において身体能力のリミッターが外れる現象や、アスリートが強い意思力によって己の限界を超える現象を、概念として昇華した物に近い。
 単純な身体能力のみならず、知能や発想力、己の身長(見た目)なども変化させる事が出来る。

 ただし、悪魔を打倒するというような、“ハルキ自身が不可能だと思っている事”は実行できず、能力の恩恵も得られない。
 そして、効果範囲は自身に対してのみであり、他者にまで影響を与えることは出来ない。

 あくまで彼が「こうなんだ」と感じた事を、他者に対して証明する(見せつける)為の能力であり、その為にこそ知恵を絞ったり身体を張ったり出来る、いわば“意地っ張り”が具現化した物。
 己の意思を押し通す力。


 彼の前世は、1900年代前期のヨーロッパで“奇形”として生まれ落ちた人物。
 いわゆる、【人とは思えないほど醜い容姿をした男】

 優しかった両親と死に別れ、その庇護を無くしてしまった後は、化け物として村人から石を投げられる日々。あげくサーカス団の見世物小屋に捕らえられ、人々の奇異の視線に晒される人生を送った。
 人々は皆ニタニタと笑い、いつも「気持ち悪い、気持ち悪い」と口元を覆いながら、エレファントマンと名付けられた彼を見物した。

「――――私は人間だ! 人間なんだ!!」

 そう力の限りに泣き叫んだ様を、人々にアハハと楽しそうに笑われた夜、彼は凍えるような寒さの檻の中、自らの手首を噛み千切って死んだ。

 ハルキが持つ“変身願望”や、くだらない者達を陥れてでも成り上がるという“野心”、そして自らの身内だけを大切にするという思考は、この前世が影響している。



 ◆ ◆ ◆



 当作品のテーマの項目にある一文。
【プレイヤーには、それぞれ一つだけ優れた能力が付与される。】

 恐らく、これを作品内で示すのは、私の役目になると思っていました。
 そもそも主要人物自体が、私の考えたキャラでありますしねw

 ここに記述したのが、今回【彼らが覚醒した能力】、その設定になります。
 この能力を活かし、ダンジョン探索&脱出の物語を紡いで頂けると幸いです。

(管理人)



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これはコメディだ…!! 誰が何と言おうとコメディなんだ…!! (砂原石像 作)

 

 

 御伽噺に出てくるお姫様。液晶に映るムービースター。アニメに出てくるミラクルヒロイン。

 

 

 瀬川ハルキは物心ついたときから、美しいものに憧れていた。

 特に女の子が好むものを好む傾向にあった。

 そして、幸運にも憧れたものになるための絶対条件である美貌に恵まれていた。

 女の子みたいな。いや、そこらの女の子の何段階も優れた美貌をもっていた彼は親によく女の子の服を着せられていたし、本人もそういう服を好んで着ていた。

 

 

 しかし、男の子なのに女の子のような趣味を好む彼の個性は周りの子供から見たら異常に見えた。

 彼が周囲から疎外されるのに時間はかからなかった。

 その時になって初めてハルキは自分が”異常”であることに気がついた。

 であるなら、彼が”普通になりたい”という願望を持つのは当然のことであった。

 

 

 自分の中から女らしい要素を取り除き、男らしい要素を付け加える。

 これが彼の”演じる”という才覚の始まりであった。

 

 

 女の子のような服は着なくなった。男の子が好むような趣味にハマった。女子を馬鹿にするようになった。

 彼が男らしくなっていくうちに、男友達が増えた。

 

 

 中学の頃であった。

 思春期を迎えた子供たちは二次性徴を迎えて大きく変化する時期である。

 瀬川ハルキは期待した。

 二次性徴が来たのなら、自分はもっと大きく、もっと筋肉がついて、もっと男らしくなる。

 そうすれば、女らしいという自分のコンプレックスはなくなってくれる。と。

 

 

 彼の現在を知る人間なら、その願いが叶わないことがわかるだろう。

 

 

 

 

 そして、彼は再び周囲から”浮いた”。

 

 

 男らしくない女性的な”美しさ”を持つ容姿、筋肉のつかない細い体。テノールやバスが出ない、アルトみたいな地声。

 

 

 二次性徴を迎えるクラスメイトの男子の中で、彼は異常に浮くことになった。

 

 

 別にそれ自体は耐えられた。小学校のうちに慣れていたから。

 しかし、思春期を迎えた環境での”それ”は徐々に彼にとって耐え難いものとなっていった。

 

 ”性的ないたずら”が彼に行われるようになった頃。

 彼の心は折れた。

 

 

 彼は何年もの間、自宅に引き籠り、自分が女みたいに生まれたことを呪い続けた。

 その過程で、元からひねくれていた彼の心はねじれ歪み。

 

 

 _____何を血迷ったのか。もういっそ、女装して生きたほうがいい。と開き直った。

 

 

 たちの悪いことに、”女装している自分”に価値があることを自覚し、それを活かして男を騙すことを趣味にし始めた。

 

 

 自分よりも優れた男、自分よりも男らしい男、あのとき自分を苦しめたクラスメイトと同じ世代の少年。それらを騙して捨てるのが何よりも愉しかった。

 

 

 それが瀬川ハルキと言う人間のこれまでの人生。

 

 

 前世も当世も。彼は普通の人間とは違う”異形”を持ち、周囲から迫害されて生きてきた化け物だと言えるだろう。

 

 

 

 さて、そんな彼の人生において“山本山愛叶”はどんな立ち位置にあるのだろうか?

 

 

 ダンジョン・バベル第31階層。

 

 炉の悪魔モロクの手によって、自分が人間じゃないとバレてしまうことを恐れた山本山愛叶は、一人でダンジョンの上層へと向かっていた。

 無我夢中で走ったのか、息が上がる。思わず、石につまずき、涙目になってしまった。

 

 悪魔が至近距離にまで違づいてきたのを見て、思わず頭を抱えて伏せる。

 

 

 ____だが、彼女が恐れることが起こることは無かった。

 悪魔は蹲る彼女を一瞥すると、つまらなそうに顔を背けその場をあとにする。

 

 

 その悪魔の反応を見て、彼女は自分の正体を突きつけられた気持ちになった。

 

(やっぱり…あくまにはわたしがサキュバスだってこと…わかっちゃうんだ・・・)

 

 

 ハルキたちとバベルを登っているときに彼女が気づいたことがある。

 悪魔が同族を襲うことはあまりない。ということ。

 無論、それは絶対ということはない。悪魔同士での戦いを好む種族や個体もいて、必要に迫られて悪魔を襲撃しようとする場合、人間と悪魔の区別がついていない知能指数の低い個体は、”人間と行動した裏切り者”を始末しようとするケースもある。

 

 

 だが愛叶は、人間であるハルキやブリトニーや巌と比べると悪魔に狙われることは少ないのだ。

 

 

 それが意味することは”悪魔には人間と悪魔の判別がつく”ということであり、そして_____

 

 

『この場に足を踏み入れた時点で、貴公らはもう”人”とは呼べぬ。このバベルが発する力により人ならざるものへと変貌しているのだよ_______』

 

 

 _________仲間たちが、いずれ愛叶の正体に気づくだろうということだ。

 

 

 だから離れた。

 彼女が人間と違うということがバレてしまえば。いや。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(それだけはイヤ!!)

 

 

 サキュバス。男の精を喰らう悪魔。

 つまり、サキュバスであることは自分の正体がエロモンスターだということを知られるということ。

 自分がサキュバスだと明かすことは「私は一族単位のクソビッチです」とカミングアウトすることに等しい。

 

 

 これはサキュバスに生まれながら、人間並みの羞恥心を持つ彼女にとってどう考えても耐え難い。

 

 

「どうしよう…きっと私がサキュバスなの、ばらされちゃったよね…。私が……だって知ったらきっとみんなは……ハルキくんは……」

 

 

 物陰にうずくまる。

 

 

 これからどうしようかと考えても答えは出ない。

 

 

 けれど、彼女が一人このダンジョンにとどまって生きることはそう難しいことではなかった。

 何せ、最大の強敵である悪魔は、自分に襲いかかることはそうそうないことなのだから。

 時々来る、悪魔の襲撃を躱して、トラップに気をつければ、彼女一人で生きていくには充分だろう。

 

 

 ただし_____

 

 

「へえ…珍しいね…人間並みの力しかない悪魔なんて…しかもサキュバス…これは()()()()()()♡」

 

 

 _____ダンジョンに潜んでいる危険が悪魔だけとは限らない。

 

 

 

 

 

「ほう…人間ではありえない耐久力ね…腐っても悪魔なのかしら?」

 

 

「う…いたい…」

 

 この現場の状況を簡潔な言葉である表すとするなら、狩り場というのが正確といえよう。

 

 

 獲物はサキュバス。

 狩人は魔女。

 

 

 サキュバスはまるで人間の女の子のような姿をしている。

 

 

 その魔女はまるでファンタジーに出てくる妖精や悪魔をそのまま人間に落とし込んだような。妖艶な雰囲気のある美女であった。

 ルビィのような宝石はまるで血のような光を放っていた。

 緑色の長い髪と目の下にある泣きボクロは妖艶さを増幅させているかのようだ。

 長身でグラマラスな体を包む濡羽色の長いローブと頭に乗った黒いとんがり帽子。そして、宝石のついた禍々しい杖は彼女が魔女であることを表している。

 

 彼女を追い立てる魔女の名前はエスメラルダ。

 魔法組織・ミストラルのトップの娘にして組織の№2。

 

 そして、レズにして極度のサディスト。

 

 

 彼女は好みの女を一方的に虐めて快楽に耽る邪悪である。

 

 

 ダンジョン内で女性が大量に死ぬ事件。

 その大半が、この魔女に()()されたからに他ならない。

 

 

 そんな彼女が、うら若い自分好みの女。しかも、自分たちを苦しめてきた悪魔の同類を見逃すはずが無かった。

 

 

「いや、これは着ている服のおかげね…体のラインがすっごくそそる。サキュバスにはお似合いのえっちい服…()()の産物なのは少し気に食わないな…脱がすのも楽しそうだけど…そうだ!!」

 

 

 そういうと、彼女は手を愛叶の方に向け、手のひらに魔力を集める。

 集まった魔力は、おおよそバランスボール一つ分の大きさの球体となる。

 

 

 その魔力の球体を愛叶に向けて射出した。

 

「!? ああああああああああああああっ!」

 

 

 愛叶は必死にかわそうとするも、左肩にぶつかり、きりもみ回転で後ろに吹き飛ぶ。

 

 

 幸い、教授が作ったスーツに身を包んでいるおかげか、大事には至ってはいない。

 

 

 エスメラルダはすかさず、手のひらから電撃のようなエネルギーを放出し、愛叶にぶつける。

 

 

 防護スーツが無ければ致命傷になりうる威力であったが、これもまた大事には至っていない。

 

 

 ただ、()()()()()()()()()

 

 

「いいねえ…思いっきり虐めても壊れないって…じゃあ、もうちょっとだけ強くしてみようか…」

 

 

(え…今よりも強い攻撃が来るの…やだ…やめ…ああああああああああああああッ!!)

 

 

 圧縮された魔力砲が、サュバスに向けて放たれる。

 それは狙い通り、獲物に命中しサキュバスに痛みを与えた。

 

 エスメラルダは愛叶が壊れるくらいに魔法で責め続けるも、防護スーツのおかげで幸いにも、愛叶の身体に激痛が走っただけで済んでいる。

 

 

 そう。愛叶は運がいい。

 防護スーツが無ければ、一般人と変わらない身体能力しかない愛叶はすぐに壊れただろうから。

 

 魔力の弾丸がサキュバスの頬を掠る。

 

 

 防護スーツに保護されていない顔は簡単に裂け、そこから人間と何一つ変わらない赤い血が流れる。

 

 

「へえ、意外。悪魔の血も赤色なんだ。てっきり、緑色とか青色かしてるのかと思った。つまんないなあ」

 

 

「!!」

 

 

 いつの間にか愛叶の背後に移動した魔女が愛叶を羽交い締めにし、頬から流れる血を舌で舐め取った。

 

 

 愛叶は不快感と痛みに顔をしかめる。

 

 

「血が人と変わらないのなら…中身とかも人間と変わらない感じ? 今すぐに開いて確認してもいいけど…もう少し楽しんでからにしようかな?」

 

 

 羽交い締めにする力が一瞬緩んだのを感じ、エスメラルダを振りほどいて脱出する。

 

 

 だが、逃げるタイミングに合わせて打たれた魔力の塊が彼女を吹き飛ばし、ダンジョンの壁に叩き付けた。

 愛叶の肺から空気が抜ける。

 

 

「お〜っと。誰の許可を受けて逃げたのかな〜。そんな悪い子には.」

 

 

 お・し・お・き

 

 

 展開された魔法陣の中から飛び出したのは巨大な鋸のような刃を束ねた禍々しい剣であった。

 それが、魔力によってまるで嵐のように高速で回転している。

 

 それで魔女が気まぐれに床を薙ぐと、直接刃が触れていないにも関わらず、それは抉れ、破片が倒れた少女に襲いかかる。

 

 

 これを喰らえば、もしかしたら防護スーツ越しでも体が抉り取られることは確実だろう。

 もし、防護スーツで防げたとしても相当の痛みが奔るかもしれない。

 

 

 だが、愛叶は動けないでいた。

 

 

 振るわれる暴力によるダメージもそうだが、精神的な要素も大きかった。

 

 

 人間であることを散々否定され、食らったら痛いだろう攻撃を回避しながら逃げ続けた彼女の心は、これ以上の逃避を困難にしていた。

 

 

 愛叶はこれまでの“人生”を思い出していた。

 

 彼女はサキュバスとしては異常であった。

 人間並みの力。人間とは大して変わらない性欲。人間のような倫理観。

 

 

 それはサキュバスとして異常であり、彼女が人里に捨てられる要因であった。

 

 

 人間という他種族の群れの中に放り込まれた幼子が感じたのは恐怖であった。

 

 

 泣きながら同朋を探す彼女が初めて瀬川ハルキという”異形”を見たとき感じたのは、同類を見つけたことへの安堵だった。

 

 

 男なのに女の形をしたもの。

 悪魔なのに人間の形をしたもの。

 

 

 種族は違えど、両者は”異形”のものであったのだ。

 

 

 彼女の無条件の愛の始まりはそこから。

 人間社会の中で初めて見た同類を無条件で愛するそのありようは、まるでひな鳥の刷り込みのようであった。

 

 

 それからの十数年。

 愛叶はほぼ常にハルキの側に居続けた。

 

 

 そのたびに、人間と悪魔との隔たりを感じた。

 サキュバスだとバレてしまうことへの恐怖は日を過ごすごとに、月を経るごとに、年を重ねるごとに増えていった。

 悪魔という存在が表ざたになってから、それは顕著になった。もしも彼女が悪魔だとバレることがあれば、それは人間社会からの排除も伴うことになるだろう。

 

 だが、その恐怖以上に愛叶が恐れているのは、ハルキに知られることである。

 その理由は言うまでもない。

 

 

 サキュバスからも人間からも疎外される彼女にとって、瀬川ハルキは_________。

 

 

 

 

 迫りくる恐怖に彼女は目を閉ざした。

 

 しかし、その時になっても痛みは来ない。

 代わりに背中を持ち上げる腕の感触があった。 

 

 

 しかし、その手の持ち主は誰だかわからない。

 いや、この人だという確信はあった。しかし、その手の持ち主は自分の身体を持ち上げられるほど筋肉が無い。

 スーパーのレジ袋すら持ち上げられない非力な腕では、人ひとり持ち上げることはできないはずだ。

 

 

 ゆっくりと瞼を開ける。

 

 

 そこにいたのは。

 山本山愛叶がずっと見てきた顔で、山本山愛叶が見たことのない顔であった。

 

 

「愛叶…大丈夫か…?」

 

 

「あ…う…うん…」

 

 

 その人物は横抱きにした愛叶をゆっくりと自分の後ろに降ろし、魔女へと向き直る。

 いつもと違う彼の反応に、愛叶は思わず、戸惑う。

 

「アンタ… 下等生物(オトコ)の分際で、アタシが楽しんでいるときに邪魔をしたね…? 覚悟はできている?」

 

 

「なあ…あいつのほっぺについた切り傷はなんだ?」

 

 

 自分の遊びを邪魔された魔女に対して、割り込んだ男は問いかける。

 

 

「あいつ…体が震えていたな…なぜだ?」

 

 

 彼の意志に呼応して、彼自身の身体が強いものに変わっていく。

 

「あいつ…泣いていたな…? どういうことだ?」

 

 

 男は俯いた。

 魔女は手にした杖を男に向けた。

 

「そして、あのへんな趣味のスーツは一体どうした?」

 

 

 彼に向けられた杖の先から、魔力の砲が放たれる。

 まるで暴風のような力は、周囲の空気を薙ぎ払いながら男へと向かう。あとから遅れて風が灼ける音がした。

 

 

「お前」

 

 だが、男はそれを容易くかわし、勢いのまま魔女へ向かって走り、その勢いのままエスメラルダの顔面にドロップキックをねじ込んだ!!

 

「愛叶に一体、何をした!!」

 

「ぐぎゃああああああああああああああああああ」

 

 

 顔面にヒット!!

 能力によって強化された脚力から生み出す速度をそのまま蹴りの威力に転換した一撃は、魔女をダンジョンの壁に叩きつけた。

 もともと、運動能力に優れない彼であったが、護身術を習っているためか、身体を動かすノウハウは身についていた。

 身に着けた技術と”妹分を苦しめる奴をぶちのめしたい”という意志が反映された事によって、フィジカルによって、そのドロップキックは戦闘能力のある人間でさえ壁にめり込ませるほどの威力を発揮していた。

 

 

「てめえ!! 人の妹分を虐めたんだ!! 化粧してもごまかせないくらいに顔面凹ましたらぁ!! このブスが*1!!」

 

 

 愛叶は、自分を庇うようにして立つハルキの背中を見る。

 

 

 ハルキが苦しいときに助けに来てくれたこと。

 ハルキを疑ってしまったこと。

 サキュバスだったとしても、ハルキが自分を大切に思っていてくれていたこと。

 妹分だと言われて、すこし不満に思ったこと。

 

 

 色々な感情がまぜこぜになって、目が滲んだ。

 

 滲んでよく見えないその背中は、いつも見ていたものよりも、何倍も頼もしく見えた。

 

 

 

 

 

*1
一応述べておくが、ハルキは大半の人間が自分よりもブスだと思っている。






 砂原さま、執筆お疲れ様でした♪

 さっそく来ましたねっ! “山場”が!
 今までず~っとほんわか&おバカ続きだった当作品に、ピリリとスパイスを効かせるが如くの、【熱い展開】がカミング!

 愛する仲間の危機、そしてボス戦! これこそが冒険小説の華よッ!!w
 さぁ行こうぜみんな! ここをどう乗り切る!? 貴方ならどう書いてみせますか!?

 砂原さまグッジョブでしたっ♪ めっちゃ面白かったぜグレイトッ☆
 改めまして、2番手お見事でした~っ! 魅せてもらったぜ砂原さまッ♡
(管理人)


 ◆ ◆ ◆


 毎回のことながら、投稿が遅れてすみません。砂原石像です。
 次回こそは締め切り内で書きたいと思ってております。

 短い時間で安定したクオリティの作品を書ける皆様は凄いと感じております。

 さて、今回はお題がコメディなのに前回の雰囲気から継続してシリアスになっております。

 前回で、キャラクターの内面に触れたようなので、自分も少しハルキの過去を掘り下げてみました。
 少し、コメディに向かない過去にしてしまったような気がしますが…。
 まあ、気にせずハルキをギャグ要員にしてやって下さい。

 あと、今回は文字数が膨らみ過ぎてやばい(1万文字とか超えそうになってた)という判断から巌くんやブリトニー、教授などが登場しないという暴挙。
 彼らの活躍は書きたいとは思ってはいるのですが…。

 シリアスでバトンを渡してしまいましたが、これをどう調理するか?
 次の手番のヒアデスさんや、その後に続く皆様の腕を信じて放り投げます。よろしくおねがいします!!
(砂原石像)



【ドS】エスメラルダ様の大まかな容姿設定【ミストラル副首領】


・容姿 :妖艶な雰囲気のある美女。右目の下に泣き黒(ハルキ曰く自分よりもブス)

・雰囲気 :まさしく魔性の物。ファンタジーに出てくる残酷な妖精や美しい悪魔を、そのまま人間に落とし込んだような雰囲気。

・瞳の色 :濡れた血のような赤色。

・髪:昏いグリーンで長い髪。

・彼女の身体つき:長身でグラマラス。

・服装: 濡羽色の長いローブ。帽子も同じ色のとんがり帽子。

・武器:宝石のついた禍々しい杖。



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ミストラル  (ヒアデス 作)

 

 

「はあっ! せいっ! でりゃああ!」

「ぐっ……こ、この下等生物が……うっ」

 

 ハルキから打撃や蹴りをくりだされ、魔女エスメラルダは腕で顔をかばいながらも一方的に攻撃を受け続けている。ハルキの攻撃は一撃一撃が重く、レジ袋を持つのがやっとの華奢な軟弱者とは思えない。

 それを可能にする力を引き出すのがハルキの能力であり、前世から引き継いだ業を具現化した異能だった。

 

 

 

 ハルキの能力は自分の意思を他者に理解させること。

 それによって身体能力や知力を上げたり、自分の見た目までも変えることができる。

 それが人と思われないほど醜い容姿を持って生まれ、見世物のように檻の中の自分を眺める観衆に向かって、私は人間だ! と叫んだその日の夜に自ら命を絶った前世からの業がなせる能力(異能)だった。

 

 

 

 エスメラルダを圧倒するハルキの力の源泉はただ一つ。

 

愛叶(妹分)を泣かせるようなブスになんか負けるか!)

 

 その想いがハルキの屈強な腕力と脚力の源だった。

 だが

 

「私に触るな! 下等種が!」

 

 エスメラルダがそう叫んだ瞬間、彼女の前に赤い光の壁が現れ、その衝撃でハルキは弾き飛ばされて尻餅をつき、攻勢は止まる。

 ハルキは立ち上がりながら「クソっ!」と悪態を吐き、そんなハルキを見て魔女は笑う。

 その笑みは前世で自分を見下していた者たちが浮かべていたものとまったく同じ、下等生物を見下す者のそれだった。

 

 

 

 エスメラルダにとって、男のみならず自分以外の存在はすべて下等な生き物だった。

 ただ身体能力が女よりやや高いというだけで女を見下し、そのくせ女を抱いて性欲を満たす事のためにその無為な人生を費やす男はもちろん、そんな男と共存して生きている多くの女もエスメラルダにとって侮蔑の対象だった。一族が代々研究してきた悪魔召喚術を金儲けと世界統一に利用しようとしている自身の父も例外ではない。

 エスメラルダにとって自身と対等、あるいはそれ以上に位置するのはこの塔の最上階にいるある人物と、その者がこれから行おうとしている実験によって生まれるものだけだった。

 

 

 

「結界か、そんなものの後ろに隠れやがって――出て来い、このブスがっ!」

 

 ハルキは叫びながら結界を殴りつける。しかし結界はヒビ一つはいらない。さすがのハルキも本来()()()()()使()()結界を破れるなどとは心の底から思ってはいないからだ。

 自分が不可能だと思ったことと心の底から思っていないことはできない。自分の正当性を理解させることこそが魂に刻まれたハルキの願望なのだから。

 

 

 

 手のいたるところから血が流れてもハルキは光の壁を殴り続ける。そんな想い人を見かねて愛叶は叫んだ。

 

「やめてハルキ君! このままじゃハルキ君のてが――」

「うっせえ! あのブスはもっと顔が膨れ上がるくらいこの手でボコボコにしないと気が済まねえ! お前はそこでじっと見てろ!」

 

 そんな二人を見てエスメラルダはフフッと声を上げて笑う。

 

「心配してくれる彼女に対して冷たい彼氏ね。ねえ、悪いことは言わないからそんな下等種は捨てて私のところに来なさい。私のもとに来てくれるならあなたが想像できる限りのどんな贅沢もかなえてあげるわ。

 たまにちょっと私の相手もしてもらうけど、痛みも慣れれば極上の快感に変わるわよ♡……あなたになら世界が生まれ変わる瞬間を見せてあげてもいいわ」

 

 世界が生まれ変わる、その言葉を聞いてハルキは拳を止めて眉をひそめる。それにも気付かず――。

 

「わけわかんないこと言わないで! だれがあんたなんかの所に――」

「ハルキ君!」

「アイカ=チャン!」

 

 愛叶の口から最後の一言を出ようとしたところで、巌とブリトニーが駆け上がってくる。それにむっとしながらも愛叶、そしてハルキは彼らがいる後ろの方を振り向いた。

 

「あら、また下等種が一匹とかわいい女の子が出てきたわね。下等種の方はすぐに殺すとしてあの子も虐めてあげようかしら♡」

 

 結界の向こうにいる魔女は駆けつけてきた新手に臆した様子も見せず、笑みを深め舌なめずりまでする。まるで獲物を見つけた蛇のように。それを見てブリトニーは思わず足を止めた。

 

「何コイツ? 教授よりはるかに危険な感じがスル……」

「結界を使う女……まさかこいつミストラルの人間なのかい? それもかなりの力の持ち主……」

 

 ハルキたちのそばまで来たところで巌も足を止めて言った。その言葉にエスメラルダはあらっ? と眉を持ち上げる。

 

「やっと気づいてくれる人間が出てきてくれたわね。それが下等種(おとこ)というのが気に食わないけどこれで自己紹介もできるし、まあいいわ。

 私はエスメラルダ。ミストラルの副首領にして、二千年にもわたって神々と呼ばれた悪魔を崇拝し、それに近づかんと魔術を極めてきた一族の末裔よ。この姿を見ることができただけでも光栄に思いなさい劣等種ども、私の御眼鏡に適ったかわいい子たちもね」

 

 ミストラルの副首領を名乗る魔女を前に、ハルキたちは顔をこわばらせる。

 

「教授が言ってたミストラルの副首領……あいつが」

「女の子がすきなレズでサディスト……言われて見るとたしかに」

 

 ハルキと愛叶はエスメラルダを見ながら口々にそう口にする。

 ブルトニーも魔女の話を聞いて思い出したように言った。

 

「そう言えば、グランマから聞いたことがあるヨ。グランマの故郷、スイスにはずっと昔から神を崇める宗教とは別に神を含めたあらゆる霊的存在を悪魔として崇め、彼らに近づこうとする宗教団体がいたって……その宗教団体がミストラルの源流だって噂もあったケド……」

 

 ブリトニーが言っていた話は紛れもない真実だった。

 

 ミストラルは元々ある一族が興した『神々を含めたあらゆる悪魔』を信仰する宗教団体で、キリスト教やイスラム教から敵視され滅ぼされたとされながら、形を変えて存続し魔術組織として発展したものだ。ちなみにその資金集めのために興したのが数代前の首領が起業し、エスメラルダの父が経営している巨大企業である。

 

 ブリトニーの話を聞いてエスメラルダは呆れたように肩を揺らした。

 

「あらあら、そんな噂がまだ残ってたなんて。悪魔を信仰していた私たちの先祖の事なんてみんな忘れたものだと思ったけれど、人の記憶というのも馬鹿にできないわね

 ……気が変ったわ、あなたたちはもう少し生かしておいてあげましょう。そろそろ向こうの進捗も気になってきたし私はここで失礼するわ。あなたたちは頑張ってもっと上まで登ってきなさい……ただし」

 

 そこまで言ってエスメラルダはぼそぼそと何かを唱える。それは日本人であるハルキたちはおろかアメリカ人とのハーフでもあるブリトニーにも聞き取れない言語、ラテン語だった。

 その瞬間、エスメラルダの周囲に三つの魔法陣が浮かびそこから赤い光に包まれた何かが現れる。

 

「この子たちを前に、生き延びることができたらの話だけど」

 

 そこまで言うとエスメラルダは背後にある色違いの床を踏んだ。その瞬間、エスメラルドの体は白い光に包まれる。その輝きが0と1の羅列で構成された魔法とは全く異なる科学的な光だった。

 

「ワープ装置――くそ、待てこのブス!」

 

 消えゆくエスメラルダに追いすがろうとハルキは向かって行く。

 しかし魔法陣から現れた三体のうちの一体に阻まれてハルキはその動きを止める。

 

 エスメラルダが召喚したもの、それは美女型の悪魔たちだった。

 

 

 

 






 ヒアデスさま、執筆お疲れ様でした♪

 下等種と書いて“おとこ”と読む!(笑) エスメラルダさま素敵ぃぃ~~☆☆☆
 いつか……いつか私もエスメラルダ様を書きたい! 書いてみたぁーいッ!
 とても魅力的なキャラに仕上がっていると思う! ヒアデスさまGJです♪

 今回のお話で、魔術組織“ミストラル”の設定が深まりました。
 そして恐らく、次回は「実質的に初となる対悪魔戦」となる事でしょう!
 盛り上がって来たぜ僕カノ! 今はコメディなんて知るかとばかりに!(笑)

 ではではっ! 三番手お見事でした♪ ヒアデスさまウルトラGJ☆
(管理人)


 ◆ ◆ ◆


以上が今回の話になります。戦闘シーン終わらせられなくてごめんなさい。お通しラー油様以降の作者様の筆力ならこの続きを書くことができると信じて任せます。あっさり倒しちゃってくれても構いません。まあ、不死身の悪魔を相手に逃げ切る以外にどんな手でしのぐのか私もまだわからないんですけどね。
(ヒアデス)



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人生とは常に予想外のバーゲンセール   (お通しラー油 作)

 

 

 ハルキ達の目の前に現れたのは三体の女性型悪魔達だった。

 何故悪魔と断言できたのか?

 それは、彼女達の外見がそう物語っていたからだ。

 三体とも上半身は人間の女性のそれだったのだが、他が異質すぎていた。

 蛇の下半身を持つ悪魔【ラミア】

 蜘蛛の下半身を持つ悪魔【アラクネ】

 鳥の手足を持つ悪魔【ハーピー】

 

 それら三体の悪魔がハルキ達の前に立ちはだかっていたのだった。

 

「あら、随分と元気そうな人間がいるじゃない」

 

「ご主人様ったらこんな美味しそうな獲物をくださるなんて」

 

「今日はついてるわね」

 

 三体の悪魔達は皆獲物を前にして不気味な笑みを浮かべていた。

 彼女達にとって人間の肉はとても美味なもの。ましてや生きた人間の肉などそうそう手に入るものではない。

 

「くそ! 厄介な奴を置いていきやがったなあのブス」

 

「しかもあいつら上位悪魔だよ……。今まで出会ってきた悪魔とは強さの桁が違いすぎるよ……」

 

「だから何だ! 俺はなんとしてもあのブスの顔に一発入れてやらなきゃ気がすまねぇんだよ!」

 

 三体の上位悪魔を前にしても、ハルキの激昂は治らなかった。

 普通であれば彼女らを前にすれば泣いて命乞いをするかその場で失禁して気絶するかくらいしかない。

 にも関わらずハルキは激昂していた。

 そこが彼女達には余計に興味をそそられる結果となってしまっていた。

 

「あらあら、元気ねぇ」

 

「まずは貴方から食べちゃおうかしら」

 

「ウフフ、さぞかし美味しいんでしょうねぇ」

 

「いい加減その口を閉じろ雌豚どもがぁ!」

 

 怒号をあげ、ハルキが飛び掛かった。

 だが、そんなハルキの体にラミアの蛇の体が巻きついてきた。

 

「んぐあぁ!」

 

「フフフ、おいたはいけないわよぉ坊や。そんな悪い子は全部の骨を折ってあげちゃう」

 

 バキッ!バキィッ!

 

 蛇の体がキツく締め付けられた。それにより、ハルキの両腕の骨が砕かれた。

 痛みにハルキの顔が苦悶に歪んでいく。

 引き剥がそうにも人間の力ではどうにも出来ない。それが上位悪魔と人間との差であった。

 

「ハルキ君ッ……!」

 

「今オタスケしますヨォ!」

 

 急ぎハルキを救おうと駆け寄っていく巌とブリトニーの二人。

 しかし、そんな二人の元にも上位悪魔が迫っていた。

 

「あらあら、元気な男の子。それじゃ貴方は私の物よ」

 

 上空からハーピーが巌目掛けて襲いかかって来た。

 咄嗟に避けようとしたがハーピーの方が明らかに早く、巌の両肩にハーピーの鋭い鉤爪が深く突き刺さった。

 

「あぐっ……! ぐあぁっ!!」

 

「んふふ、いいわいいわぁ。若い男の肉の裂ける感触。溜まらないわぁ。早く引き裂いて食べちゃいたい」

 

「ハルキ=クン! イワオ=クン!」

 

「心配しなくても貴方の相手はあたしがしてあげるわよぉん」

 

「!!!」

 

 気づいた時には既に手遅れだった。

 アラクネの腹から出てきた蜘蛛の糸にブリトニーは絡め取られ、一切の身動きが取れない状態にされてしまった。

 

「んぐっ! んぐぐぅっ!」

 

「うふふ、そんなに暴れても駄目よぉ。私の糸は人間が千切れるほど柔じゃないのぉん」

 

 アラクネの言う通り、見た目こそ細い糸の束に過ぎないのにその強度は信じられないほど強固な硬さを持っていた。

 そんな硬さを持つ糸に絡め取られてしまえば後はアラクネの好きなように嬲られるだけの未来しか残されていない。

 

「安心しなさい。私はあそこの二人とは違って肉を引き裂いたりはしないわ。貴方の美しい体を残したままその血肉を溶かして食べるだけだから」

 

「んん! んぐっ! ぐぅぅぅ!」

 

 これから自身に起こりうる最悪の結末にブリトニーは抗おうとするが、アラクネの張った糸を引き裂くには力不足だった。

 寧ろ逆にアラクネの食欲を刺激するだけに過ぎなかった。

 

「あらあら、元気なこと。さぞかし美味なのでしょうねぇ。それじゃーーー」

 

 アラクネの口が大きく開かれると、そこから鋭く尖った牙の羅列が顔を出してきた。

 その牙の生えた口をブリトニーの首筋に押し当てる。

 鋭く尖った牙が彼女の柔肌に突き刺さり肉を抉り血が噴き出してくる。

 激しい痛みにのたうち回るもそれすらアラクネには児戯にすらならず、女性の形をした両腕と蜘蛛の形をした前脚でしっかりと固定され、後は彼女の中に毒液を流し込み肉を全て中から溶かして吸い尽くすだけだった。

 

「は、ハルキ・・・くん・・・みんな・・・」

 

 愛叶は一人立ち上がれずにいた。

 そして、目の前で行われている惨状をまじまじと見せつけられていた。

 アラクネに首筋を噛みつかれ、麻痺毒を流されてビクビクと痙攣することしか出来なくなったブリトニー。

 ハーピーの鋭い鉤爪により肩の肉を抉られその肉を食われている巌。

 そして、ラミアの蛇の体によって締め付けられ骨を砕かれてるハルキ。

 三人とも愛叶の大事な人達だった。

 その大事な人たちが上位悪魔の手により引き裂かれ、嬲られ、殺され、そして食い尽くされる。

 彼女達はサキュバスとは違い力付くで人間を捕食出来る力を持った上位悪魔たちだ。

 どう足掻いたところで下級悪魔に過ぎない愛叶が勝てる相手ではなかった。

 争う気すら起きなかった。

 悪魔である愛叶には分かってしまうのだ。彼女達との圧倒的な力の差が。

 楯突いてはいけない絶対的強者のオーラが、愛叶には肌で、体で、そして魂で感じ取れてしまったのだ。

 

「いやだ・・・イヤだイヤだイヤだ!」

 

 例え本能がそう告げていたとしても、愛叶は争う事を選択した。

 大切な仲間を救う為。それもあるだろう。

 だが、それだけじゃなかった。

 

「ハルキ! ハルキィィィ!」

 

 咄嗟に愛叶は叫んでいた。

 男を魅了するサキュバス。そのサキュバスにとって男とは糧を得るための餌でしかない。

 だが、異端児でもある愛叶は感じてしまった。

 本来糧であるはずの男でもあるハルキに抱いてはいけない感情を抱いてしまった。

 本来、悪魔が絶対に抱かない感情を、愛叶は抱いてしまった。

 その感情とはーーー

 

「わたしの・・・わたしのだいじなハルキをっ、ころさせるもんかぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 それは・・・【愛】だった・・・

 

 

 

 






 お通しラー油さま、執筆お疲れ様でした♪

 ――――つか予想を外したよ! ぜったい途中で「ハルキくぅ~ん!」とか言って教授が乱入して来ると思ってたのに!(笑)
 てっきり私、ホモネタ全開で、シリアスブレイクをしてくれるものだとばかりっ!!www

 でも……今回も良かったですラー油さま♪ 私こういう熱い展開が大好きDAッ!!
 また次の方々が、これをどういう風に盛り上げていってくれるのか? 一緒に楽しみにして待ちましょう☆

 それでは! 4番手お見事でしたっ! ラー油さまありがとぉぉーーう♪
(管理人)



 ◆ ◆ ◆


 遅れてしまい申し訳ないです。仕事と私情が重なり中々執筆する時間が取れずここまでもつれこんでしまいました。
 今回悪魔を超える悪魔として【上位悪魔】のフレーズを出してみました。
 また、サキュバスでもある愛叶をその下の【下級悪魔】ってな感じの単語も出してみました。
 この単語が後にどう利用されるのか今から楽しみだったりします。
 この後を書いてくれる方には結構山場的な場面でしょうが頑張ってください。
 今後の展開を楽しみにしつつここで失礼します。

(お通しラー油)


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四巡目
ともだち。  (hasegawa 作)


 

 

「やれやれ……、久方ぶりに肝を冷やした。

 人の世で戯れるのも程々にせよ、という事か」

 

 心地よく照り付ける太陽の日差し。そして柔らかな風を感じる。

 ここは先ほどまで身を置いていた、薄暗くカビ臭い迷宮とは、正に雲泥の差だ。

 まぁ最も、このバベルという魔窟には全くと言って良いほど似つかわしくない、のほほんとした雰囲気の馬鹿げた空間は、彼自身が遊び心をもって拵えた物であるのだが。

 

「確か、エスメ何某(なにがし)と言ったか?

 よもや一目で、(おれ)の擬態を看破しようとは」

 

 バベルの20階――――ここはつい先日、ハルキ達も訪れていた場所。

 豊富で清涼な水のもと、沢山の美しい木々が青々と生い茂る、この塔においては異質と言える、オアシスのエリアだ。

 

 しかし、以前とはだいぶ状況が違う。あの時は半ば飢餓状態にはあったものの、彼らはしっかり自分の足で、ここの土を踏みしめていた。

 だが今は、ミストラルに所属する冒険者達の間で【花輪】という名で呼ばれている男により、ビーチパラソルの下で仲良く並んで寝かされているのだ。

 ついでに言えば、彼の施しを受けて、みんな額に濡れタオルが乗せられていたりもする。気持ちよさそうにグースカ眠っていた。

 

「木端の者共は騙せても、流石にあのクラスには通じんか。

 正体を隠し、ミストラルと戯れるのも、ここいらが潮時だな。

 人の子と戯れることが出来る、貴重な遊び場だったが……」

 

 だが良い、もう構わない。

 彼は今、そんな晴れ晴れとした気持ちでいる。

 

 己の正体を隠し、人間を装い、冒険者たちに紛れて交流を行うのも、確かに有意義ではあった。

 そもそもこの20階という位置にある、場違いで摩訶不思議なオアシスすらも、「バベルに挑んだ者達が、ちょうど腹を空かせてへばる頃合いだろう」と考えた彼が、自らの魔力や私財を投じて作り上げたものだ。

 

 腹いっぱい飯を食わせ、怪我の治療や水分補給をさせてやるお代がわりに、自分と話でもしていってくれないだろうか?

 そんな期待を持って、暇さえあればここに赴き、疑似的に作り上げた太陽とビーチパラソルの下、のんびりと寛ぐのが彼のライフワークである。

 

 ハルキ達はまだ知らない事だが、実はこの場にはとても分かりやすい所に、転送用のワープ装置が設置してあったりする。

 わざわざ「転送ボックスです」というカラフルな看板を立て、しっかり屋根と壁を備えた、まるで電話ボックスみたいな作りの物が、泉のすぐ傍に置いてあるのだ。

 あの時、ハルキたちは食べ物に夢中で(もっと言えば花輪をボコボコにするのに必死で)それに気が付かなかったのだが……。これがあればいつでも元いた階層に戻れるし、またお腹が減ったらご飯を食べに来ることも出来るだろう。

 

 ここはバベルに挑む冒険者たちにとって、生命線とも言える補給地帯。

 また唯一の安らぎの場所。戦いに疲れたり、何かあった時に帰って来られる家。

 彼という悪魔が真心を込めて作り上げた、正にオアシスなのである。

 

 彼は人間が大好きだから――――

 力も弱く、とてもか弱い生物なのに、時折その短い命を真っ赤に燃やすようにして、見た事も無いような素敵な輝きをみせる。

 長い時を生きてきた自分ですら、もう想像も付かないような熱い生き様や、あたたかで優しい物語を紡ぐ。

 この人の子にとっては、正しく“地獄”に他ならないバベルという場所で、仲間達と支え合いながら懸命に上を目指していくその姿が、彼は大好きだった。

 

 確かに、ミストラルの冒険者たちに交じって、彼らと談笑しながらわざわざ足を使ってバベルを登るのも、とても楽しいひと時だったように思う。

 けれど、それを失ってしまった事に、後悔などしていない。

 彼は今日、それに負けないくらいに素敵な物を、たしかに見つけたのだから。

 

「素晴らしい――――素晴らしかったよ君達。

 あんなにも胸が高鳴ったのは、一体いつ以来の事だろう?」

 

 先ほど見た、愛情。

 人の子と悪魔が織り成す、奇跡の物語。

 本来は決して交じり合うハズの無い、光と闇。それがひとつになった時、これほどの輝きを見せるものなのかと、彼は人知れず拳を握りしめていた。

 今もあの素晴らしい光景は、ハッキリ瞼に焼き付いている。鮮明に思い出せる。

 きっと、ずっと忘れないだろう。この先、悪魔という種族である自分が、どれほど長い永久の時を生きたとしても。

 

「助けて、あげたいな……。

 彼らが無事に、バベルを踏破出来たらいいのに――――」

 

 この感情は何だろう? なぜ今(おれ)の胸は、こんなにもあたたかなのだろう? 優しい気持ちになるんだろう?

 この気持ちは一体、()()()()()()()()()()

 彼らが目を覚ましたら、訊いてみたいと思った。

 

「仲良く、したいな……。彼らと話がしたい。

 でも無理かなぁ? だって我は、こんなにも醜い……」

 

 クスリと、苦笑する。人の子と悪魔の違いなど、今まで嫌というほど思い知ってきたというのに。

 それでも、期待している。希望を捨てられない自分がいる。

 自分は悪魔なのだし、希望なんて言葉は似つかわしくないのだけれど……、それでも信じてみたいと思う。

 この“好きだ”っていう気持ちは、彼にとって掛け替えのない宝物なんだから。

 

「おや……? もう少しかかるかと思ったが、そろそろ目を覚ます頃合いか」

 

 やがて、トロピカルドリンクを片手に、ひとり想いに耽っている内に、この場に小さく可愛らしい声が響いた。

 愛叶だ。今あの子が「うーん……」と呻きながら、何やら寝苦しそうにワチャワチャ動いているのが見える。

 

 いかんいかん、気を引き締めねば。

 そう自分に活を入れ、彼はまた、心に仮面を被る。

 悠久の時を生きた、威厳ある悪魔としてではなく、いつも人の子と接するときに使う、彼らの友人としての姿。そして優しい言葉遣いを意識した。

 

「あ、あれ……? おひさま?

 ここどこ? あのこわいおばさんは……」

 

「ヘェ~イ、起きたかいベイビー♪

 眠り姫のお目覚めだねぇ~え♪」 

 

 飛び起き、ビックリした顔でキョロキョロあたりを見回す。

 そんな愛叶のプレリードッグみたいな仕草を、似非(えせ)花輪の仮面を被った彼が、優しく見つめる。

 

 

「気分はどうだいベイビ~? 喉とか渇いてな

 

「――――あぁーーっ!! 花輪くんのニセモノだぁーーっ!!

 まだいきてたのぉーーっ!?」

 

 

 大声。

 五大陸に響き渡るほどの、子供の元気な声が、辺り一帯に木霊した。

 

「お゛っ!? なんだなんだぁ!? 敵襲かこの野郎ぉーーッ!!」

 

「はへ……? 三途の川は?

 まだ僕、六文銭(ろくもんせん)渡してない。無賃乗船に……」

 

「んぎゃーーすッ!! ビッグバンにごじゃるカ?!?!

 シンのゾウがマウスからポーン! これはグッドモーニングですカ?」

 

 それを起床の号令がわりとし、仲間達が〈ガバッ!〉と飛び起きる。

 自衛隊みたいに即座に起床した。

 

「おまっ……! てめぇ追って来やがったのかぁ! 似非花輪ぁぁーーッ!!

 ストーキングとは良い度胸じゃねぇかゴラァァーーッ!!!」

 

「――――ほんげッ?!?!」

 

 渾身のグーパンチが叩き込まれる。

 彼が座っていた椅子ごと、ゴロゴロ地面を転がる。けっこうな飛距離。

 

「勝てると思ってんのかこの野郎ぉッ!!

 三流の腐れレイヤーなんかに負けるかぁボケェ!!

 こちとら命張ってコスッってんだ! 生活かかってんだよぉーーッ!!」

 

「ぐべっ!? おごっ!? や゛べっ!?」

 

 馬乗りになり、マウントパンチ。

 ハルキが流れるような動作を持って上に乗り、そのままドゴゴと拳を振り下ろす。手慣れた動きである。

 

「おい巌! お前もなんか覚えたんだろ!

 やっちまえこんなモン! ぶちのめしてやれ!」

 

「あ……いちおう僕、食べるのが得意みたいなんだけど……やっちゃって良いのかな?」

 

 巌が言われるままに近づいて行き、おもむろに似非花輪くんの腕に「カプッ!」と噛み付いた。

 

「――――痛い痛い痛いッ! いたぁーーいッ!」

 

「あれ? なんか固いねこの人……。ちょっと頑張って齧るね……?」

 

「やったれ巌! 遠慮するこたぁねぇぞ! 食ったれ食ったれ!」

 

 巌らしからぬ「うおおお!」みたいな声を上げ、まるでミシン針のような勢いで噛み付いていく。この場に似非花輪くんの悲痛な声が響く。

 

「えっと。なんかアタシ、みんなの身体能力とか、底上げできるっぽいヨ?

 いっちょトライいかがどすカ?」

 

「おぉ良いじゃねーかブリトニー! バッチリじゃねーか!

 かけたれかけたれ!」

 

 ブリトニーが静かに跪き、まるで教会のシスターのような所作で祈る。

 あたかも後光が差しているような、神聖で美しい姿。とても真摯な想いを込めた祈りによって、巌の身体能力が爆上がりする。

 

「――――わぁぁぁーー!! わあああああ!!!!

 痛い痛い痛い痛い!! いたたたたたたたたたたたたぁぁーーーい!!」

 

「食ったれ食ったれ! 噛みちぎってやれ!

 腹いっぱい食やー良いぞ巌! どんどんおかわりしろよ! 若いんだから!」

 

 もう巌の顎の動きが、残像を纏うほどの速度になっている。

 ポカポカと気持ちの良い陽気、美しい緑の光景の中、彼の歯が立てる【ドガガガガガ!】みたいな音が鳴る。工事現場の重機みたい。

 

「おい愛叶(・・)! お前なにボサッとしてんだ!! 呆けてんじゃねぇぞ!!」

 

「えっ……」

 

 唐突に、愛叶の名が呼ばれる。

 これまでずっと「ぽけ~♪」と呆けていた彼女が、突然ハッとした表情でハルキに向き直る。

 

「殴れ殴れ! こんなモン殴れ!!

 変態コスプレ野郎なんざ、生きてても仕方ねぇんだよッ!」

 

「え、それハルキくんがゆーの?

 ……じゃなくてぇ! でもわたしは、もう……」

 

「――――うるせぇんだよバカ愛叶ぁッ!! 兄貴分のいう事が聞けねぇってのか!

 ゴタゴタ言ってねぇで来いッ!! 愛叶ッッ!!!!」

 

 空気を切り裂くような叫び。まるで全てを振り切るような声。

 愛叶の事情も、悩みも、罪悪感も。

 その全てを「関係ねぇ!!」と一蹴する、強い言葉――――

 

「う……うん! うんっ!!!!

 いっくよぉ~ニセモノぉー! しねー☆」

 

「そうだ! いいぞ! やっちまえ愛叶!

 こちとらストーキングされたんだかんなぁ! 天も法も許すッ!!」

 

 元気よく馬乗りになり、ハルキと一緒にドゴドゴ殴りつける。

 楽しそうに、花のような笑顔で。

 太陽の光が反射し、愛叶がポロリと零した涙が、キラリと光る。

 

「……おっし交代ッ! 最後は俺だっ!!

 いいかお前ら? 声援を送れ。

 どうやら俺は、気分が乗ってる時とかに、力がUPするみてぇだ」

 

「おうえんしたらいいの? ハルキくんがんばれーって?」

 

「合いの手みたいなのヤル? サンサンナナビョーシ! 気合入るかもヨ」

 

「とりあえず、盛り上げていけば良いんだね……?

 ハルキくんが気分よく殴れるように」

 

 という事で、三人が応援団みたいに一列に整列。わくわく&ニコニコしてる仲間達に見守られながら、ハルキは「あらよっと!」とマウントポジションを取る。

 

「よっしゃー! お前らいくぞぉーッ!!

 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」

 

「――――いいよハルキくん! キレてる! キレてるよ☆」

 

「丸太のような太い腕……! 山のような僧帽筋ッ……!

 筋肉(マッスル)ッ! 筋肉こそお前の友だッ……! 審査員に筋肉を見せつけろッ……!」

 

「ナイスバルク! ナイスキンニク!

 その肉体を作りあげる為には、眠れない夜もあったでしょウニ!

 これぞ努力のケッショウ! ニクタイビ!

 男の象徴(シンボル)、ジョウワンニトウキーン!!!!」

 

 別にここはボディビル会場じゃないし、ハルキはちんまいので筋肉なんて無い。

 でもこういうのは気分だ! みんなで楽しむことが大切なのだ!

 見てくれ、この輝かんばかりの笑みを! みんなの心からの笑顔を! 一体感を!

 

 仲間達の声援を受けながら、ハルキが躍動する。

 パワフルに、楽しそうにドゴドゴ拳を振り下ろす。

 ウジウジしてた気持ち、悩みなんか吹き飛ばすようにして。

 

「おや? ハルキくんに巌くんじゃないか。ここで何をしてるんだね?」

 

「おぉ教授! コイツ()()()()()()()()()

 あんたの大好物があるぞ! 掘ったれ掘ったれ!」

 

 見るも悍ましい光景が、冒険者たちの心の拠り所たる場所で、繰り広げられる。

 詳しい説明は省く。

 

 

「――――よっしゃあ死んだぁーー!!

 持つもん持ってずらかれぇぇーー! 人が来る前にぃぃぃいいいーーーッッ!!!!」

 

「懲りずにバカンスなんぞ、しおってカラニ!

 其方は命がいらんと申すカ! この痴れ者ガ!!」

 

「ばーか! ばーか!

 よくみたら、おヒゲのあとがあるもん! ほんとの花輪くんにあやまれー!」

 

「うちの子達がホント申し訳ない……! 心から謝罪しますっ……!

 でもご飯時になったら、またお願いしますっ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 元気よく「わーっ!」と走り去っていくハルキ達。そしてこの場に一人残された、ボロ雑巾のような似非花輪くん。

 

 死にはしない。この身は魔の頂点なのである。

 だが人と魔の間には、まだまだ深い隔たりがあるのだと、彼は学ぶのだった。

 

 頑張らなきゃなって……。

 

 

 

 






 人間って残酷ですよね。

(hasegawa)



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切腹は自殺としては伝統的で格式高い方法だけど……そこに至るまでの背景が大事だと思うんだ……僕としては本能寺の変とか戊辰戦争の白虎隊とか西南戦争の西郷隆盛とかが美しい切腹の例だと思うね(砂原石像 作)

 

 

 

 「いい加減にシテ!! 何回アタシを罠の身代わりにしたら、気が済むノヨ!?」

 

 

 「近くにいたお前が悪い」

 

 

 「近くにいたからって、勝手に身代わりにして良い訳ないでショ!?」

 

 

 ここは……ダンジョンの……ええっと……何回だったかな……?

 そうそう32階だった……。

 

 先日のあの事件があったけど、僕たちはいつも通り、ダンジョンを攻略していく日々を過ごしているんだ……。

 

 …………ああ、言い忘れていた。

 今、地の文を担当しているのは巌です……。

 

 

 こうでもしないと……なんか出番とか存在感とか……なくなりそうだし……。

 

 

 誰の目にも止まらないでひっそりと消えていくのは……自殺方法としては……結構原始的な方法ではあると思うんだ……。

 例えば……年老いた野生のゾウとか……猫とかは……自分の死期を察したら……誰の目にも止まらないところで死を迎えるっていうでしょ……?

 それって、つまりは、誰にも助けてもらえない状況に身を置くわけで……つまり、自分から死を選んでいるとも考えられるんじゃないかな……?

 

 ……つまり、太古から続く、失踪という形での自殺は……結構美しい死に方と言えるんじゃないかな……?

 死を運命に委ねるタイプの自殺っていう見方をすると、さらに美しく見えそうだ……。

 

 

 けど、僕としては……失踪という形での自殺は……積極性に欠けているような感じがして……あまり選びたくないかなって思うんだ……。

 運命に委ねるって言い方も、要は自分から自殺を選んでいないということで……生きられるなら……生き残りたい……ってことなんだろうし……。

 

 ……あと、実際に失踪された身としては……心配になる方法だね……。

 生きているか……死んでいるか……わからないというのも心臓に悪いし……。

 友達が死にそうになっているのも嫌だしね……。

 実際に先日は危なかったし……。

 

 

 やっぱり、僕は死ぬなら誰かの目に付く方法で……美しく死にたいかな……?

 では……どうやって死のうかな……?

 ブリトニーちゃんが教えてくれた松永久秀の茶釜ボンバー自殺とかは結構派手さがあってよさそうだ……あとは……成層圏からパラシュートなしのスカイダイビングとかロケーションが良さそうだ……

 

 

 話がそれちゃったね?……今、ハルキ君とブリトニーちゃんは喧嘩をしているね……。

 原因は、さっき、ハルキ君がダンジョンのトラップに引っかかった時、ブリトニーちゃんを身代わりにしたことが原因だね。

 

 

 ……先日……失踪というタイプの自殺をし損なった愛叶ちゃんだけど……悩みとかは解消されてね……。

 いつの通りハルキ君にピッタリと張り付いていて……ないね。

 今回は、ブリトニーちゃんの側についているみたいだね……。

 

 「あとなんかちょっと恥ずかしいタイプの罠とかあったんだケド!? お嫁に行けなくなったらどうすんノヨ!!」

 

 

 「オイオイ…冗談は趣味だけにしてくれよ。お前のようなファッション大和撫子系面白外国人を嫁にしたいと思う奴なんてそうそういないだろ……」

 

 

 「ふぁあああああああああああああっく!!」

 

 

 そういえば、ここまで読んだ読者の皆はいきなりの喧嘩描写に戸惑ったかな……?

 

 実は……。この二人……ちょくちょく喧嘩するんだ……。

 描写の外で、喧嘩を良くしててね……。

 ……後付け設定じゃないよ?

 

 ほら……ブリトニーちゃんは、結構言いたいことははっきり言うし、きつい物言いもするからね……しかも武士道を重んじる性格だから……ハルキ君と良く揉めるしね……。 

 

 

 そういえば、ここまで性格の合わない僕達は何故友達になったんだっけ……?

 そうだ……ハルキ君が愛叶ちゃんと一緒に、僕たちの通っている定時制高校に通いだした時だったな……。

 

 

 最初……ハルキ君は女装をして……猫をかぶって振舞っていたんだけど……。

 それをブリトニーちゃんが見抜いて……彼女がハルキ君に突っかかっているうちにいつの間に一緒に過ごすことが……多くなったんだよな……。

 そして、いつの間にか僕も……猫をかぶらなくなったハルキ君と話すことが多くなって……いつの間にか僕たちは友達になったんだったな……。

 

 きっと……僕たちは……学校でも浮いた【変な奴等】で……だからこそ……仲良くなれたんだと思う……。

 

 まさか……ダンジョン探索の……巻き添えにされるとは……思ってもみなかったんだけど……

 

 「うわあ~ん! 愛叶=チャン! コイツ何とかシテ!! アナタの旦那でショ!? 」

 

 

 「……だんなさま!? …いまそれは、おいとこ。

  ……今日のあのおこないは、いくらハルキ君でも怒るよ? おんなのこはたいせつにしなきゃ」

 

 

 「…そいつが女の子? 俺よりブスな顔して冗談きついぜ! 」

 

 「ひどい!!」

  

 ……ハルキ君を基準にしたら……ブスじゃない人の方が珍しくならないかな……?

 ……逆にハルキ君より性格がブスな人も珍しいと思うけど……。

 

 

「さっきからなんだその態度!! 最近、ちょっとコンジョウ見せたと思ったらコレ。アンタ、大和男児としての誇りはナイノ!?」

 

 

「俺は大和男児と名乗った覚えはねえし…アメリカ産まれのエセ大和撫子には言われたくねぇな…」

 

 

「Bullshit! アタシの魂は前世から大和撫子よ!!」

 

 

 ああ……今日の喧嘩は長くなりそうだ……。

 ……おや? なんだか上空に、魔法陣みたいな物が浮かんで……!?

 

 

「話は聞かせてもらったぞ!!」

 

 

魔法陣から、突然悪魔らしき人が出てきた!?

 

「我はソロモン72柱が一柱。序列28番の地獄の公爵。Berith(ベリト)!! 瀬川ハルキ!! これから貴様にファッション勝負を申し込む!!」

 

 

……え? ……ちょっとまって!?

話に割り込んできて急にファッション勝負挑まれても困る……というか、この人悪魔!?

けど……僕たちに攻撃しようとするそぶりはないし……というか悪魔がファッション勝負ってどういうこと!? 訳が分からないよ……。

 

 

 この場にいた皆も同じ気持ちだったようで困惑を顔に浮かべている。

 そんな僕たちの困惑を無視して悪魔はつづけた。

 

 「テーマは【大和撫子】! この金髪少女と貴様! どっちが大和撫子になれるか勝負だ!! 」

 

 「What!?」

 

 

 こうして……悪魔プロデュース、ハルキくんvsブリトニーちゃんのファッション対決が始まった……。

 なんで、こんなことになったのかわからないけど……とにかく、そういうことになったみたい……。

 

 

 






 砂原さま、執筆お疲れ様でした♪

 作風がいつものコメディに戻った!?w
 なんか読んでて落ち着くというか、やっぱ僕カノはこうあるべきというか☆
 すごく楽しい感じの作品でしたぞ~! GJでありマース!

 これ地味になんですが……もしかして【主要人物同士の掛け合い】をちゃんと描いてくれたのって、私以外ではすんごく珍しいんじゃないかな?(笑)
 メインの3人(特にブリトニー)が書きづら過ぎて、皆さんご自分で新キャラを出すことで、お話を回してた印象ありますから……。
 これガチンコでやってくれたの、きっと砂原さまと佐伯さま位ですよ!?www

 貴方たちはエライ!! よくぞ頑張って下さいました! ……変なキャラ作ってゴメン! ←犯人

 そして! 私って前回「うっかり☆」してたのですが……、御作ではしっかりと“次への展開”を示してくれていますナ! ナイスです!
 さぁやろうぜ! 【悪魔のファッションショー】ってヤツを!! オシャレに繰り出そうZE!

 ではでは! 2番手おつかれーしょん☆ 砂原さまお見事♪
(管理人)



 ◆ ◆ ◆


【悪魔Berith(ベリト)

 ソロモン72柱の悪魔がうちの一柱で、過去・現在・未来のことについての質問に答えることが出来る権能、金属を黄金に変える権能、そして人を飾りたてる能力を持った悪魔である。

 彼は人を飾る能力を持った悪魔。
 その能力に興味を持ったハルキの手で悪魔使役アプリで呼び出される。悪魔の考えるファッションを見せてほしいという指示によって意気揚々とその腕を見せるも、そのセンスの無さをハルキに酷評される。

 それ以降、彼はファッションの修行を行いハルキに対してリベンジを誓う。
 ……というバックボーンがあるが、それを小説に反映できなかったのでここに載せる。
 正直無視しても構いません。

 尚外見については説明する手間がかかるので各自Wikipediaとかで調べてください。

(砂原石像)


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着飾るならば、魂(こころ)まで着飾るべし (お通しラー油 作)

 ファッションショー

 

 その歴史は古く紀元前にまで遡る。

 古代の戦士達は互いに死地に赴く衣装を拵え、それらを用いて戦場に赴き戦ったとされる。

 その余りにも壮絶かつ華やかな戦いは現代までも語り継がれており時折こうして若者達が己の維新と命を賭けて死力を尽くし合う戦いの事を指す。

 尚、彼らの凄絶な戦いぶりを世に残す強者を世間では【ファッションデザイナー】と呼んでいたようで、彼らの助力、及び協力の下、年々ファッションの出来栄えは向上していく流れとなっていたのだそうだ。

 

 

 

 

【民○書房

  

 『ぼくらのたのしいおきがえ大全集』

     

             より抜粋】

 

 

 

 

「さぁっ、そんな訳で始まってしまったファッションショー! 司会はお馴染み甘いマスクで魔界の視線を独り占め! ソロモン72柱が28番目の地獄の公爵ベリト! 解説にはその辺にいた人間・・・失礼、なんか如何にも負のオーラ全開放出中の幸薄そうな青年でお送りしておりまっす!」

 

「名前呼ばれないんだ。そうだよね、僕なんてどうせ居てもいなくても変わらないもんね。だったらいっそもう何処か遠い国にでも行こうかな? そしてそこで静かに余生を過ごして一人でひっそりと人生に幕をーーー」

 

「さぁ、場の空気も盛り上がってきたところで今回のルールを説明しましょう! 今回のお題は【大和撫子】これを挑戦者二名がどれほど再現できるかを競ってもらいます! それでは、挑戦者の御二方、用意はよろしいでしょうか?」

 

「ーーーそれで僕の眠った後の地には菊の花が咲いてそれが一面に広がって【あぁ、此処で誰かが死んだんだな】って思われるようなそんな幸薄い生涯を送る事になるんだ! そうだ、それがいい、それが一番だ! それこそ僕の人生の幕引きに相応しいーーー」

 

「それでは挑戦者達の様子を見に行って見ましょう!」

 

 終始無視される可哀想な巌でした。

 

 ところ変わって此処は会場、その壇上にて、今回挑戦するであろうハルキとブリトニーの両者が互いに睨み合っていた。

 

「フフフ、この勝負・・・私のWINは揺るぎないdestinyですねぇ」

 

「はぁ? 何やる前から勝った気でいんだよ?」

 

「ハン、当然の事でゴザルよ。何故なら私は身も心もJapan boy(日本男児)なのですから。身も心も中途半端なハルキくぅん⤴︎には到底できない領域なのですよぉ」

 

「人の名前を右肩上がりに言うな! 大体てめぇこそ生まれはアメリカンな上に女だろうが! 日本男児要素擦りもしてねぇじゃねぇか!」

 

 既に一触即発な空気を醸し出してる有様だった。

 それに呼応するかのように場の空気はすっかり盛り上がりだしてきていた。

 何故かいつのまにか周囲にはベリトが召喚したらしい悪魔達が観客感覚で盛り上がってる様子だった。

 会場の空気が最高潮にまでテンションアップした中、両者のお色直しタイムが開始された。

 因みにお着替えの時はそれぞれ個室を用意されて其処で各々ご用意した衣装を見に纏い勝負に赴く算段になっている模様。

 尚、個室内には隠しカメラなどの如何わしい代物は一切置いてないのでご安心をーーー

 

「さぁて、会場のボルテージも最高潮に達してる中両者のお着替えが終了した模様のようです」

 

「あれ、もうなの? 何か早くない?!」

 

「いつの時代もスピードアップが求められるものなのさ。無駄な要素は出来る限り省くに限るんだよ。特にここみたいなリレー小説ではね」

 

「急にメタい事言い始めた! このまま僕の個人情報まで暴露されて日の目を浴びることも出来ずに薄暗い小部屋の中でひっそりとその生涯を終えるしかないんだ。それで僕の亡骸が発見される頃には肉とかも削げ落ちてて骨だけになってて遺体の判別とかに結構時間とかかかってそれでーーー」

 

「おぉっとぉ! まず最初に現れたのはハルキ選手の方だーーー!」

 

 ここでも巌の話は無視されるのであった。

 

 満を辞して現れたハルキの姿は、俗に言う和服美人と言える姿だった。

 桜色の茜色の袴。髪はわざわざ長髪のカツラを被り、真っ赤な髪結びのアクセントもバッチリ。

 ここまで来ると完全に和服美人だと思われがちだがそこに爆弾が待っていた。

 なんと、ハルキが履いている履き物は草履などではなく洋物のロングブーツであった。

 これには会場中の悪魔達も思わず驚愕の声をあげるのだった。

 

「なななんと! 全身和服でコーディネートしたかと思わせといてその実、靴だけは洋物と言う何という憎いコラボレーション! まるでその姿は例えるならば90年代に若者達を虜にした某ゲームのヒロインの如しーーーー!」

 

「それ、ほぼネタバレしてるよね?」

 

 ハルキの後になってブリトニーが現れた。

 彼女の姿はといえば・・・何と、【魔法少女】であった。

 フリフリのミニスカート、ピンクを基調としたポップなデザイン、手に持ったステッキ、間違いなくそれは魔法少女のそれであった。

 その余りにも場違いな格好に会場の悪魔達は勿論さっきまで白熱の実況をしていたベリトでさえ思わず【え?なにあれ?!】と言いたげな顔をするのであった。

 このまま行けば間違いなくハルキの勝利で幕を閉じる事になるだろう。

 しかし、突如として巻き起こった突風がブリトニーの無防備なミニスカートを捲り上げてしまったのだった。

 

「オー! とてもHなwindさんデェス」

 

 咄嗟に彼女は捲り上がったスカートを手で押さえて事なきを得たつもりのようだが、その一瞬を悪魔達は、そしてベリトは見逃さなかった。

 

「ふ、褌だとぉぉぉぉーーーーー!」

 

 そう、彼女が履いてきたのは普段のパンツでもなければパンティーでもなく、なんと褌だったのだ。

 これに気付いた悪魔達は再び大盛況となった。

 見た目は魔法少女と大和撫子とは偉くミスマッチなのに履いているのが褌と言うだけで一気に大和撫子感が五段階くらいアップしてしまったのであった。

 

「な、何というハイレベルな駆け引き! 普通ならば大和撫子を競う場で魔法少女だなんて普通ならば勝負を投げ捨てたと錯覚するも必定。しかし、そこに褌を取り入れたことにより一気に大和撫子=魔法少女と言う図式を取り入れた! この勝負、間違いなく荒れることになる。今日この場で死人が出るやもしれない」

 

「出るの!? ただのファッションショーで!?」

 

 緊張の面持ちを持つベリトとは対照的に今回全く場の空気に乗れてない巌くんであった。

 

「ま、まさか褌で攻めてくるとは・・・」

 

「フフフ、勝負ありですね。日本男児の魂と言えばこの褌! これを履けば例えネグリジェだろうと真紅のドレスであろうと大和撫子たり得るのですよ! それに対して、ハルキboy。ユーはただ服を着ただけ。見てくれだけを変えただけに過ぎない。そんなのは大和撫子とは呼ばない! ただのコスプレイヤーなのでゴザルよ!!」

 

 

 

 

 ズガガーーーーーーン!!!

 

 

 

 

 この時、ハルキの脳裏に稲妻が直下した。彼は今まで持てる魅力と服のセンスで多くの男を魅了してきた。

 しかし、それに慢心してしまったが故に真の着飾ると言う事が分からなくなってしまい、このような結果となってしまった。

 

「お・・・俺の・・・俺の、負けだ・・・くっ!」

 

「フフフ、ようやく認めたようですね。ではこの勝負、私のWINという事でーーー」

 

 

 

 

"ちょぉぉぉっとまったぁぁぁぁぁ!!"

 

 

 

 

 正に、勝利を確信しようとしていたブリトニーを遮るかのように怒号が響き渡った。

 何事かと皆の視線が其処に向かう。

 其処にいたのは、一言で言い表すならば【白】であった。

 それもただの白なのではなく、純粋な白。いわば【純白】と言えた。

 その、純白の花嫁衣装に身を包んだ一人の女性が二人の前へと歩み寄っていく。

 

「ハルキくん・・・」

 

「あ・・・愛・・・叶・・・」

 

 そう、純白の花嫁衣装に身を包んだのは愛叶だった。

 その愛叶が、敗北を喫し膝を折るハルキの前へと歩み寄った。

 そして、その両の手をそっと掴み取り、その温かな温もりが冷え切ったハルキの心を優しく温めていき。

 

「ハルキくん・・・私を、貰って下さい」

 

「・・・は・・・はい・・・」

 

 それしか答えられなかった。

 しかし、その瞬間会場中の悪魔達が一斉にスタンディングオベーション+号泣しながら拍手にて祝福していた。

 そして、それは熱い実況をしていたベリトもまた同類であったと言う。

 

 

 

 

「えっと・・・・・・なにこれ?」

 

 そんな中、やっぱり一人場の空気に乗り切れない巌くんなのであったとさ。

 

 

 

 




 ラー油さま、執筆お疲れ様でした♪

 今回は諸事情により、本来は三番手であったヒアデスさまと、四番手であるラー油さまの手番が、一時的に入れ替わっております。
 ゆえに次回のバトンはヒアデスさまとなりますので、ご注意くださいませ♪

 そして今回は、いつも私の方でやらせて頂いていた、作品に対する【誤字脱字などの修正】を、全くおこなっておりません。
 ラー油様より送って頂いた【原文そのままの状態】での投稿です。ごめん今日時間が無いの!
 もし何か修正箇所がありましたら、またご一報いただけると幸いです。

(管理人)



 どうも、今回の話ですが、ぶっちゃけ色々とやらかしまくった気がします。
 正におふざけのオンパレード。こりゃもう怒られても仕方ないなと腹を括る所存です。
 はてさて、正規のファッション対決の最中に飛び入り➕告白なんていうとんでもイベントを起こした愛叶ちゃんの恋は果たして実るのか?
 その答えは・・・後の人にお任せって事でw

(お通しラー油)


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山本山は花嫁である (ヒアデス 作)

 

 

「ハルキくん……わたしを……もらって下さい」

「……は、はい……」

 

 多くの悪魔たちや連れが見守る中、花嫁姿でそう言い放った愛叶の言葉に、ハルキは呆然としたままそれだけを言った。

 その瞬間、愛叶の目がギラっと光った!

 

「本当!? いま、はいって言ったよね? まちがいなく言ったよね?」

「えっ――あ、いやちょっと待て今のは――」

「待たない! ハルキくんまちがいなくはいって言った! えいごで言ったらオーケー! つまり婚約せいりつ! わたしたちは今から婚約者!」

 

 怒涛の勢いでまくしたてる愛叶に、ハルキはたじたじになる。たじたじになるしかない。

 目の前で起こっていることと、自分が言ったことにハルキは困惑していた。

 なんで俺は、「良い」なんて答えてしまったのだろうと。

 

 

 

 ハルキは今まで騙した男たちから求婚されたことや、愛人になるように言われたことなど、数え切れないほどある。

 しかし女の子から、自分と親しい少女から告白されたことは、これが初めてだった。

 だからだろう、口から自然とそれに対する答えが自然と漏れた。相手が愛叶であればなおのこと。

 それに戸惑いを覚える一方で、嬉しく思う自分がいた。

 そしてハルキはようやく気付く。

 

(……もしかして俺って、愛叶のことが好きだったのか?)

 

 愛叶に両手を掴まれ、その手をぶんぶん振り回されながら、ハルキはついに自分の思いに気付く。

 

 そんな二人を祝福するように、悪魔たちは万雷の拍手を送り続けていた。

 大和撫子を競っていたんだから、せめて白無垢にするべきじゃないのかなあ? と巌は思っていたが、この雰囲気とようやく想いを確かめ合った二人を前にして、そんなこと言えるわけもなかった。

 

 

 

 

 

 ……それから。

 ファッション勝負は愛叶とハルキ二人の勝利となり、ベリトは二人に賞品と激励を贈って、連れの悪魔たちを連れて帰っていった。

 

 ツッコミどころは色々ある、この結果に異を唱えることもできる。

 しかし敗者となったブリトニーは、悔しそうにハンカチを噛むだけで、そんなことはしなかった。

 なんだかんだ言ってブリトニーも、二人を祝福していたからかもしれないし、大和撫子なんてもう関係なくなったからかもしれない。

 それにもう勝敗どころではない。

 

 

 

 

 

「……それで……どうするんだい、これ……?」

「どうするって言われてもな……」

 

 目の前にあるそれに視線を向けて尋ねる巌に、ハルキは困ったように頭をかいた。

 悪魔たちが去り、残された四人の前には小さな部屋があった。この階にこのような部屋は元々なく、ベリトの魔法で作られた物であり、これが愛叶とハルキにベリトが贈った賞品だ。

 愛叶とブリトニーが見て回ったところ、中にはベッドと浴室があり、()()くらいならこの部屋の中で休むことができそうだ。

 その部屋を前にして愛叶は。

 

「そんなの決まってるよ!」

「――うおっ!?」

 

 突然愛叶が眼前に現れ、ハルキは思わず数歩後ずさる。

 そんな夫(予定)に構わず、愛叶は続けた。

 

「私とハルキくんは晴れて婚約したんだよ! だったらこれからやるべきことは、ふたりの愛をたしかめあうことだと思うの!」

 

 鼻息荒くそんなことを言う愛叶に、ハルキはたまらず。

 

「待て待て! 気が早すぎだ! それにここダンジョンだぞ! そんなことしてる間に、悪魔に襲われたらどうする気だ!?」

「その心配はいらないよ。ベリトのめいれいで、この階の悪魔たちはわたしたちをおそえないはずだし、むしろ今やらないでいつやるの?」

「巌とブリトニーはどうする気だ? あいつらの前でやると言わねえだろうな?」

 

 ハルキは二人を指さしながらそう言うが、巌とブリトニーは。

 

「あー……僕たちはこの階のどこかで休ませてもらうから、お構いなく……いっそ僕一人で上に上がって、悪魔の餌食になるのも悪くないかも……」

「私も事が終わった後でシャワー貸してもらえれば、それでいいネ……だからせめて、お風呂ではやらないデネ」

 

 上を見ながら呟く巌と、カタコトも外し真剣な声で付け足すブリトニー、彼らに対してハルキは恨みがましそうに。

 

「……てめえら、特にブリトニーは通常投稿作品にあるまじき発言を吐きやがって。この作品をR-18にするつもりか」

「さあハルキくん! 巌くんとブリトニーちゃんもこう言ってるんだし、ハルキくんもカクゴきめて! ハルキくんは天井の染みかぞえてるだけでいいから、その間にぜんぶおわるから!」

「はなせ淫乱サキュバス! 仮にも女が言う台詞じゃねえだろう! これ以上続けたら、この話書いてるヒアデスと管理人のhasegawaが泣くハメになるぞ!」

 

 自身の腕を引っ張ってくる愛叶に、ハルキは怒声を上げる。まったく彼の言う通りだ。過去にもオナホだの色々出てきたとはいえ、さすがにそろそろ危ないのではないだろうか。まあデートもできないダンジョンのようなところで、告白直後にやることがあれくらいしか思い浮かばない作者も作者だが。

 

 

 

 巌とブリトニーは、二人を生暖かい目で見守りながらもその場を去り、素の身体能力が低いハルキは、愛叶に引っ張られそうになる。そこに割り込んできたのは、例によってまたあの教授(ホモ)だった。

 彼は部屋に踏み込んで、二人の営みを妨害しようと布団に飛び込んで……それ以上は書けない。

 さすがの愛叶も冷めて、ハルキと一緒に部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 下層でそんな馬鹿げたことが行われている頃、塔の最上階ではエスメラルダが、一つのポッドに歩み寄っていた。

 そのポッドの中はオレンジの水に満たされており、一人の少女が一糸まとわぬ姿で水の中に浸かっている。

 エスメラルダは恍惚とした表情を浮かべながら、ポッドを撫でた。ポッド越しに少女を撫でるように。

 

「もうすぐです……もうすぐお目覚めになることができます。我々一族が二千年も待ち望んでいた、新しい神様……」

 

 魔女の戯言に、少女の姿をした(悪魔)は答えない。ただ静かに目覚めの時を待っていた。

 

 

 

 ハヤクココマデキテ……ハヤク

 

 

 






 ヒアデスさま、執筆お疲れ様でした♪

 ――――結ばれた! カップル成立した!?(笑)
 おめでとう愛叶=チャン! おめでとう! がんばってきて良かったネ!(白目)

 いや~、バベルで愛が芽生える事ってあるんですねぇ!
 どんな場所にだって花は咲く、って事かな? 今までで一番ハッピーなお話でした☆
 私なにげなく付けたけど、「愛が叶う」と書いて“愛叶”ですからね♪ やったZE!

 でもなんだろう……いま私かる~く、自分の娘を嫁にやるような心境なんですが……w
 ハルキくんの親の砂原さん? こんど菓子折りを持って、私んトコに挨拶しに来てください(笑)

 ではでは! 今回もGJでしたヒアデスさま♪ お見事☆ 
(管理人)


 ◆ ◆ ◆


 今回の話はここまでになります。
 もうクライマックスということでハルキと愛叶は両想いにすることにしました。でもこれ以上進展するかはまだわからない状態です。
 最後に教授が二人の邪魔をしますが、暴走状態の教授を書ける自信がない事と通常投稿であれを細かく書いたらさすがにまずいということで地の分でさらっと説明するだけに留めました。

 お通しラー油様、前回は私の一存で順番代えてもらってごめんなさい。本当にファッション苦手なんですよ。デニムとかインナーとか全然わからないぐらい。でもおかげで前回のお話が読めたので私としてはよかったです。面白かったですよ。
(ヒアデス)


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その人物が重要だと知らずに、気まずいことになった件 (Mr.エメト 作)

 

 

 

ハルキと愛叶がめでたく恋仲関係になって、塔をのぼって―――50階層。

 

大広間。

燭台が灯されており、道が一本まで伸びている。

 

【ほう……魔境なる塔をここまで上る者たちは、あの魔女以外にもいたか。謁見を許そうぞ】

 

威厳ある声が響き、四人はゆっくりとあるくと、その姿が見えた。

頭部に虎の模様、手には髑髏の杖を持った巨大な悪魔蠅だ!!

モロクと比べると、この悪魔の方が、格段と強いのが解る。

 

【我こそは、大いなる闇の魔王の右腕、死と魂を運び魔王ベルゼブブである】

 

「大物中の大物か……!」

 

昔ながらのゲームや図書館で、そういう名前はよく目にする大悪魔。

しかし、襲ってくる気配はないし、寧ろ賞賛の言葉をだしている。

 

【ふむ………汝らはモロクの助力で力を引き出せて、ここまで来たというわけか、感心感心。】

 

「ベルゼブブ殿は、モロクのことを知っているのでゴザルか?」

 

【同じ魔王仲間だからな、色々と世間話的にな。悪魔も色々と大変だからの。

 おっと、こうして談話している場合ではないか。

 主たちは魔塔バベルがなぜ、現出したのか知りたくはないかの?】

 

バベルの秘密。

サイエンサーもミストラルも、永遠の究明とも言われるバベルの秘密が明らかになる。

 

【この塔は"天上の祈り塔"―――。

 内部に巣くう悪魔たちを退けて、最上階で天に祈りを捧げれば、願いが叶う塔である。

 命の法則を捻じ曲げる行い、死者蘇生や永遠の不老不死だろうともな。】

 

まさに、人類が欲する願いが叶う、ということだ。

 

【ミストラルの魔女、あの者は天の女王――イナンナを降臨させようとしている】

 

「イナンナ?なんだそれ?」

 

【シュメール神話……四大文明メソポタミアにて登場する古き地母神。

 イシュタル、アシェラト、アナト、アフロディーテ、ヴィーナスと同一視される神。

 豊穣を司り、神々の母とも言える存在だ】

 

「豊穣を司る神様という事は……、良い神様なのかな……?」

 

巌の言葉に、ベルゼブブの答えは甘い物じゃない。

 

【あの女神はそんな良い神とはいえんぞ。

 大昔はすべてを支配しようと企んでいたし、気性も激しい女神であったからな。

 おまけに母性も歪んでいる、人間に至っては、崇めよ!!

 ………というぐらいな認識しかない】

 

「やっぱ神様は……、人間の事情なんてどうでもいいのか……」

 

そもそも神というのは、超常現象の化身であるからして、到底人間が管理、制御なんてできるわけがない。

 

【塔の最上階にて、魔女は降臨儀式を行うが………其方達ではまず勝てないだろうな】

 

「う、やっぱりそうなるよね………」

 

「iPhoneさえあればな………」

 

今さら無いものねだりしてても、仕方ない。

かと言っても、このまま進んでも返り討ちに会うのは必須。

 

【そうだな、あの御方ならば色々と助言はしてくれそうだな。このバベルの塔内のオアシスで見かけると、話は聞いたが………】

 

"オアシス"、という単語に四人はギクリッとする。

他人であって欲しい、決して、決して!!

あの花輪くんモドキではないとも思いたい!!

 

【確か、写真があったな……ホレ、この人物だ】

 

ベルゼブブが写真を取り出して見せると………例の"花輪くんモドキ"の人物だった。

 

 

 

((((やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!))))

 

 

 

四人とも、後頭部に滝の汗を流し、最大のピンチである。

 

 

 

 






 Mr.エメトさま、執筆お疲れ様でした♪

 ――――いやそうなるよ! ボコボコにしてたもん!www
 花輪くん(仮)を泉に叩き落したり、せっかく得た能力を駆使して袋叩きにした事が、巡り巡って自分達に返って来ましたねぇ……。
 あっはっは! 因果応報だよコレ! ウケケケケ☆ 

 と、主にそれをした“執筆者”が申しております(懲役300年)

 そっかぁ~。バベル攻略には、花輪くん(仮)の助言が必須だったかぁ~……。
 あの人って“塔の主”の息子さんで、なんか偉いさんだもんね。やっちまったなぁコレ!!w

 とにかく! あとは次以降の方々にお任せ致しましょう☆
 バベルも50階まで来たし、だんだん終わりが見えて来たじゃないっスか♪

 ではでは、Mr.エメトさま執筆お疲れ様でした♪ 見事也ッッ☆

(管理人)



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最終巡
バベル編、最終話。  (hasegawa 作)


 リレー小説参加者の皆様へ、ご連絡を申し上げます。

 当リレー小説企画“僕カノ”は、この五巡目をもって“終了”。完結いたします。
 皆様におかれましては、次にまわって来るバトンが、“最後の手番”という事になります。
 そしてここに、管理人として宣言します。


 ――――現時点をもって、当企画における全てのルールを、【解除いたします】

 世界観の設定、作品テーマ、ジャンル、やり方、文字数の制限、締め切りなど……。
 今後はその全てを、『放棄して頂いても結構です』


 設定をあえて壊そうが……。
 バベルを飛び出し、舞台をアメリカに移そうが……。
 既存のキャラクター達を死亡させてしまおうが……。
 私は今後、皆様への口出しを、「一切おこなわない事を誓います」

(※もちろん、バトンをお渡しする役目、何かありました時のアドバイス&フォロー、またなにげない雑談などは、これまで通り行います。
 管理人として、皆様の友人としての役目はバッチリこなしますので、ご安心ください♪)

 もうこのリレー小説に、一切の縛りは御座いません。
 もし無理だと思ったら、バトンを拒否して頂く事もOK。貴方は“自由”です。

 その上で……申し上げます。
 私がこのラスト一巡において、皆様にご提案したい事は、ただひとつ。


「最後、走ってみません?」






 

 

「……なんかよぉ、とんでもねぇ事になってねぇか?」

 

 床に大の字。「もうどうにでもしてくれ」という声が聞こえてきそうな姿で、ハルキがボソリと呟く。

 

「薄々、気が付いちゃいたんだがよ?

 なんか俺ら、()()()()()()()()()()()?」

 

「「「……」」」

 

 同じく、床に胡坐をかいたり、チョコンと女の子座りをしている仲間達が、ゴクリと固唾を呑む。

 そう、彼らも薄々気が付いていた事。……だがなんとな~く、口に出さなかった事であった。

 

「俺らは本来、パッと行ってパッと帰れりゃあ、それで良かったんだよ。

 教授のデータを持ち帰り、あとは適当にバベル内であった出来事なんかを、サイエンサーの奴らに教えてやりゃー、それでお役御免なんだ」

 

「ヤツ等だって、たかが高校生の俺たちに、()()()()()()()()()

 多少の文句は言われるかもしんねぇが……、一応言われた通りバベルに行きはしたし、失踪した教授の居所だって掴んだんだ。

 ただの罰として送り込んだ奴らにしちゃー、これ普通に考えりゃ、望外の成果だろ」

 

「なのに、なんで俺たち“イナンナ”とかいうのと、戦う事になってんだ?

 塔の最上階へと登りつめ、エスメラルダの野望を止めろ! ……みたいな方向に?

 なんで俺ら、()()()()()()()()()()()()()?」

 

「「「…………」」」

 

 言いやがった――――誰もが怖くて、口に出来なかった事を。

 ウィーアー・ザ・ただの高校生。

 ノーパワー、ノーバトル。ノーモアバベルの塔なんです。

 でも知らん間に……なんか大事になってるくさい!! すんごい面倒くさい事になってる気がする! 何か重いものを背負わされてるのだ!

 

()()()()()()()()()()()()

 エスメラルダは出たり入ったりしてる~って、前に教授も言ってたじゃんか。

 なら帰れるんだよ普通に。たぶん最上階とか行かんでも」

 

「あの似非花輪とか、エスメラルダとか、別に教授でも構わねぇよ。

 ただ一言、『お家に帰して下さい』って――――そう頼みゃー良いじゃねぇか」

 

 絶句する。ハルキの正論パンチに。

 今まで「あっれ~?」とか思いはしても、誰も言わずに済ませてきた事を、彼はここで言ってのけたのだ。

 

「で……でも、せっかく来たんだし……(冷や汗)」

 

「いや俺、必要ねぇんなら富士の八合目からだって、ソクサリするぞ?*1

 お前はそうじゃねぇのか? ペナントでも買いてぇのか巌?」

 

「い、いろんな人たちに、おせわになったし(白目)」

 

「あぁ、なったなぁ。

 ホモとか、ホモとか、あとホモにも手助けして貰ったっけなぁ~。

 で、そいつに報いる義理はあるか? どうなんだ愛叶?」

 

「こ、これ冒険だシ? 世界を救わなきゃナラヌシ(震え声)」

 

「お前なりゆきで来ただけだろ。

 風呂入りてぇだの、髪が痛むだの、散々文句たれてたろ。違うかブリトニー?」

 

 次々に論破されていく、バベルの戦士達。

 彼らは気が付いたのだ。()()()()()()()()という事に。

 このバベルに挑む意義が、自分達には存在しない事に。

 

「で、でもでもハルキくん! ねがいがかなうって!

 ここのてっぺんまで行けば、なんでもすきなおねがいを!」

 

「――――足るを知れよ馬鹿野郎。

 分不相応な願いなど抱かず、みんなで慎ましく生きていこうじゃねーか。なぁオイ♪」

 

「さっきから正論パンチやめてヨ! ムカつくのよアンタ!!」

 

「まさかハルキくんに諭されるだなんて……!

 こんな前科6犯もある人に……!」*2 

 

 たとえ、それっぽいこと(正しい事)を言っていたとしても、それが懲役30年みたいな人物であるのなら、説得力という物が無くなる。

 同じ「夢を信じろ」という言葉であっても、イチローに言われるのと、そこらのホームレスに言われるのでは、もう大違いであるのだ。

 

 ハルキの正論パンチにもめげず、三人はワーワーと抗議していく。

 ここで引き下がるワケにはいかない。……なんかそれをしてはいけないような気がするのだ!

 ただなんとなくではあるが! 流れとか雰囲気的に! 許されない気がする! 帰るのは駄目だ!!

 

「分かりモウシタ。じゃあもう、多数決しモウス。

 ここは法治国家! ミンシュシュギの国デース!

 バベル最後まで登りたいヒト~! 手ぇ上げテェ~」

 

「はいっ(挙手)」

 

「はい……(挙手)」

 

「ハーイ!(挙手)

 という事で3対1ナリ。可決いたしソウロウ」

 

「――――お前らぁぁぁあああーーッッ!!!!」

 

 民主主義(数の暴力)により、無事バベルを登ることが決まった。めでたしめでたし。

 無理を通せば、道理も引っ込む。彼らは冒険が大好きなのだ。

 

「登ろうYO! 登ろうYO! ファーーイ!!(Fight)」

 

「せっかく来たんだからー! さいごまでいこうよーう! おねがーい!」

 

「僕も頑張るからね……。お願いだよハルキくん……。登ろうよう……」

 

「――――わーったよクソ共がぁー!! 登りゃー良いんだろ、登りゃー!!」

 

 やけっぱちに怒鳴る。

 ハルキは「もう好きにしろ」とばかりに、プイッと後ろを向く。

 だが……彼はいつもこうだ。こんな風に仲間達に“おねだり”をされた時、実は彼が断った試しなど、一度もなかった。

 愛叶も、巌も、ブリも、もうニッコニコしながら、その背中を見つめている。

 なんだかんだあっても、優しい――――そしてぶっきらぼうだけど、いつも守ってくれる。

 

 言ってしまえば、“弾かれ者”。

 世間や、クラスや、世界から弾かれた者達の集まり。

 でもいま自分達を纏めているのはハルキだ。彼がいつも前に立ってくれるから、自分達はありのまま、自分らしくいられる。

 たまに取っ組み合いの喧嘩もするし、時には口論になる事だってあるが、なんだかんだ言っても、皆ハルキの事が好きだった。

 

 リーダーは彼。やはり自分達を引っ張って行くのは、ハルキしかいない。

 まぁ先ほどは、民主主義を駆使して、やりこめたものの……ここからは彼の力なくしては、とても自分達に未来など無い。

 彼と、そして仲間達と、このバベルを踏破してみたい――――

 

「よっし分かった! やるからには全力で行くぞ!

 こっから先は本腰入れて、いっちょバベルのてっぺん拝みに、行こうじゃねーか!」

 

 三人の前に立ち、グッと拳を握りしめて見せる。

 背も低いし、顔立ちだって可愛らしいのに、その身体には得も知れぬ闘志が宿っているように見える。

 

「俺の能力は、【証明】―Proof―

 自分を馬鹿にした奴らや、くだらねぇクソッタレ共に、俺の存在を()()()()()って力さ」

 

 ニヤリと、彼が笑う。

 楽し気に、そしてちょっとだけ嫌らしい感じの笑みで、挑戦的に、

 

 

「今な? 俺の胸の中でリンリンリン……って、鐘が鳴ってんのを感じる。

 ()()()()()()? ()()()()()()()()()

 簡単だ。他ならぬ俺自身が、そう感じてる――――」

 

 

 ハルキの美しい瞳が、青白い光を放っている。

 彼が“出来る”と感じた時、また“成し遂げる”と強く願った時、この輝きを放つのだろう。

 

「僕の能力は、【暴食】―Gluttony―

 なんか食いしん坊みたいだけど、全てを“無”にしてしまえる力だ……。

 どんな障害物だろうが、たとえバベルだろうが――――喰ってみせるよ」

 

「アタシの力は、【献身】―dedication―

 お主らを支え、前に進む力を与エル。

 だから、アタシがケツを持ってあげるワ――――精一杯やんなサイ」

 

 四人が円陣を組み、〈コツン☆〉と拳を合わせる。

 弾かれ者4人が、なりゆきでバベルを踏破、世界を救う――――

 そういうのも悪くないって、今はそんな気がしている。

 これは実に、痛快な話じゃないか! 愉快な愉快な馬鹿話だ!

 

「んじゃまあ、こっからは飛ばしていくぞ?

 チンタラやってられっか。さっさとエスメラルダぶっ飛ばして、帰って風呂入って寝る」

 

「同意見ネ。暴れん坊将軍の録画も、きっと貯まってるワ」

 

「僕は先に、ご飯食べたいかも……。

 帰ったら、ココイチの新記録にチャレンジしてみよっかな……?」

 

「わたしは~、とりあえずハルキくんと()()()かな?

 ときはなたれた、サキュバスのほんき、みせてあげるね」

 

「台無しかよオイ。

 まぁ……家に帰ってからな? お手柔らかに頼むぞ」

 

 

 

 そして、横にいる魔王ベルゼブブをガン無視しつつ、四人が上り階段へと向かう。

 目指すはバベル頂上。まずは51階をクリアすべく、歩き出して行った。

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 ―51階―

 

「あ、100階には、最上階への“直通エレベーター”があるよぉ~う?

 だから実質バベルは、1()0()0()()()()()()()()()()()()()()()

 

「マジかよ似非花輪!? 何故そんな近代的な物が!?」

 

「いやぁ~♪ ビックリしたかい? もう半分来たって事だから、みんな頑張ってねぇ~い♪」

 

「ちょ……! 待てよ花輪! 行くな!

 こっから出してくれっ! 俺を家に帰してくれぇーーッ!!」

 

 

 

 

 ―52階―

 

「お前、扉とか天井とか“喰えば”いいんじゃね? 真っすぐ階段(ゴール)まで行けんじゃね?」

 

「うわ、ぜんぜん美味しくないや……。

 土とか木とかって、こんな不味いんだねぇ……」

 

「イワオ=クンが食べれる内は、こうして進んで行きモウス」

 

「たんさくスピードあっぷ☆」

 

 

 

 

 ―53階―

 

「出来たぞハルキきゅん!

 悪魔の網膜をも焼き尽くす、スタングレネードだ!」

 

「すげぇ! まさかこんなモンが作れるとはな!」

 

 

 

 ―54階―

 

「出来たぞハルキきゅん!

 周囲の風景に溶け込む事が出来る、ステルス風呂敷だ!」

 

「すげぇ! まさかこんなモンが作れるとはな!」

 

 

 

 ―55階―

 

「出来たぞハルキきゅん!

 半径5メートル以内にある物なら、どんな物でも木っ端みじんにする、高性能手榴弾だ!」

 

「すげぇ! まさかこんなモンが作れるとはな!」

 

 

 

 ―56階―

 

「出来たぞハルキきゅん!

 瞬時にお湯を沸かす機能を搭載した、原付ヘルメットだ!」

 

「すげぇ! まさかこんなモンが作れるとはな!」

 

 

 

 ―57階―

 

「出来たぞハルキきゅん!

 外国のポルノみたいな『オーイエス! オーイエス!』という音声が出る、簡易式トイレだ!」

 

「すげぇ! まさかこんなモンが作れるとはな!」

 

 

 

 ―58階―

 

「通路に水が流れ込んでくるトラップに引っかかったが、意外と大丈夫だったぜ!」

 

「おふろみたいでサッパリ☆ きもちよかったよ!」

 

 

 

 ―59階―

 

強制転送(バシルーラ)のトラップに引っかかったが、すぐ元の場所に戻って来たぜ!」

 

「すぐ下の階でごぢゃっタ。5分とかからなかったネ~」

 

 

 

 ―Boss階―

 

「――――ボス戦かと思って身構えたが、意外となんとかなったぜ!」

 

「久しぶりに本気出した……。死ぬかと思った……」

 

 

 

 ―61階―

 

「“仲間の命を差し出さないと開かない扉”があったが、巌にドアノブを喰わせて何とかしたぜ!」

 

「やったねハルキくん! だいて!」

 

 

 

 ―62階―

 

「壁からトゲが出てくるトラップに引っかかったが、怪我はぜんぶブリトニーが治したぜ!(寿命と引き換えに)」

 

 

 

 ―63階―

 

「落とし穴のトラップに引っかかったが、骨折はぜんぶブリトニーが治したぜ!(寿命と引き換えに)」

 

 

 

 ―64階―

 

「なんかデカイ岩が転がって来たが、撥ねられた巌の怪我は、ブリトニーが治したぜ!(寿命と引き換えに)」

 

 

 

 ―65階―

 

「不用意に壁に触り、毒ガスが噴き出して来たが、ブリトニーが治したぜ!(寿命と引き換えに)」

 

 

 

 ―66階―

 

「やたらと悪魔に襲われまくったが、【愛叶が倒す → ブリトニーが治す】のコンボで何とかしたぜ!(寿命と引き換えに)」

 

 

 

 ―67階―

 

「素手でも倒せそうなミストラルの雑魚共が来たが、【愛叶が倒す → ブリトニーが治す】のコンボで何とかしたぜ!(寿命と引き換えに)」

 

 

 

 ―68階―

 

「もうブリトニーの顔色が、死人みたくなっているが、みんな気付かないフリをしてるぜ!」

 

 

 

 ―69階―

 

「アタシ思ったんだケド……。

 悪魔だって()()()()()()()()()()、気絶するのでは御座らんカ?」

 

「お前、頭いいな!」

 

 

 

 

 

 

 

 ―Boss階―

 

 

「――――悪魔は倒せんと思っていたが、()()()()()()()()()()!」

 

 

 

 

 

 

 ―71階―

 

「やぁ、おいらジャックフロスト! ここに住んでる悪魔なんだ♪」

 

「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」

 

「ぎゃあああぁぁーー!」

 

 

 

 ―72階―

 

「俺さまはケットシー! ネコの悪魔だニャン☆」

 

「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」

 

「ぎゃあああぁぁーー!」

 

 

 

 ―73階―

 

「我が名はナーガという。

 ほら、下半身が蛇のような形をs

 

「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」

 

「ぬわーーーーッッ!」

 

 

 

 ―74階―

 

「ボクはケルピー。馬じゃなくて、水の精霊だよ♪

 ゲームとかで見たことあるd

 

「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」

 

「ヒヒーーーンッ!?!?」

 

 

 

 ―75階―

 

「あら? サキュバスがいるじゃないっ!

 こんにちは、あたしリリムっていうの♪ お友達になりまs

 

「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」

 

「いやぁーーーッ!!」

 

 

 

 ―76階―

 

「待て、この先は危険だ。

 俺はミストラルのベテラン冒険者だが、たとえ俺でもこのトラップはむz

 

「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」

 

「ぬわーーーーッッ!」

 

 

 

 ―77階―

 

「――――おいアンタ! 助けてくれっ!

 仲間が毒にやられたんだ! 解毒剤を持ってたら譲っ

 

「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」

 

「ぐわぁぁぁーーッッ!!」

 

 

 

 ―78階―

 

「よぉ、ここはアイテム屋だ。どうぞ見てっt

 

「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」

 

「いぎゃーーーッ!!」

 

 

 

 ―79階―

 

「この先に、上りの階段があるz

 

「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」

 

「ほげぇぇぇーーーッ!!」

 

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―Boss階―

 

 

「私は女神(アクマ)パールヴァティ。この階層の主です――――」

 

「待っていましたハルキ……導かれし運命の子よ。

 貴方こそ、この荒廃した世界を救うk

 

「――――うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」

 

「きゃーーーん!!」

 

 

 

 

 ―81階―

 

「何をしておる貴公! 我は30階にいた魔王モロクだ!

 さっき主友(ぬしとも)のパールからLINEがk

 

「うる証ぉぉーーッ!!」

 

「ぐわぁぁぁーーッッ!!!!」

 

 

 

 ―82階―

 

「止まれ馬鹿者! 50階の主ベルゼブブである!

 慌てて飛んで来てみれば、いったい何をしt

 

「うる証ぉぉーーッ!!」

 

「ぎょえええええッ!!!!」

 

 

 

 ―83階―

 

「待てハルキ! 我は悪魔Berith(ベリト)だ!

 ほら、あのファッション対決d

 

「うる証ぉぉーーッ!!」

 

「ぎゃーーーす!!!!」

 

 

 

 ―84階―

 

「ゲッ!? あの時の淫魔(いんま)野郎?!?!

 憶えてるか? 俺は21階でお前に騙されてた、ミストラルの冒険者n

 

「う証ぉーッ!!」

 

「んほぉぉぉーーッ!!!!」

 

 

 

 ―85階―

 

「瀬川、調査の進捗はどうだ?

 私は君達をバベルへ送り込んだ、サイエンサーの幹部d

 

「う証ぉーッ!!」

 

「ぶるあああああ?!?!」

 

 

 

 ―86階―

 

「見つけたぞ瀬ノ宮ハルカ17才!

 儂こそは偉大なるサイエンサーのトップ! 人呼んでロリコン大統領t

 

「うっっっ証ぉぉぉおおおーーッッ!!」

 

「き゛ん゛も゛ち゛い゛ーーッ!!!!」

 

 

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

 ―87階―

 

「なんか勢いで、果たすべき目的とか、回収すべきフラグとか、全部やっちまったなぁ」

 

「あっ、iPhoneおちてるよハルキくん? ひーろおっと♪」

 

「おおマジか! やったぜ愛叶! ()()()()()()()()()()()! ひゃっほう☆」

 

 

 

 ―88階―

 

「いけっ! モロク! てめぇに決めたッ!」

 

「い、イエスマイロード……」

 

 

 

 ―89階―

 

「いけっ! ベルゼブブ! このクソ野郎!」

 

「イエスマイロード……」

 

 

 

 ―Boss階―

 

「いけっ! 悪魔Berith! バブル期みてぇなファッションセンスしやがって!」

 

「イエスマイロード……」

 

 

 

 ―91階―

 

「よーしいけパールヴァティ! 死んでも勝てよテメェ! ウケケケ!」

 

「イエスマイロード……。よよよ……」

 

 

 

 ―92階―

 

「腹減ったから、メシ探してこい。ちゃんとデザートも持ってこいよ?」

 

「「「「イエスマイロード……」」」」

 

 

 

 ―93階―

 

「酒飲みてぇから、どっかで買って来い。

 あと酒のアテも買ってこい。()()()()()()()()

 しょーもないモンだったら、やり直しな?」

 

「「「「い……イエスマイロード……」」」」

 

 

 

 ―94階―

 

「もう嫌ですっ! こんな生活……!! 耐えられないッ……!」

 

「辛抱ぞパールヴァティ……、いつか報われる日も来よう……」

 

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

 ―95階―

 

 

「ブリトニーちゃん……! 僕と結婚してくれないかっ……!」

 

「い、イワオ=クン……☆」

 

「よし! カップル成立だな!

 冒険の中で愛が芽生えたぞ!!」

 

 

 

 

 ―96階―

 

「ねぇいわおくん? ブリトニーさんのどこを、すきになったの?」

 

「やっぱ……献身的なところかな……?

 ちょっと気は強いけど、僕を引っ張って行ってくれると思うし……。

 気が付けば、好きになっていたんだ……」

 

「そらぁ、あんだけ怪我治してもらってたらなぁ~。

 お前、ブリトニーと心中すんじゃねぇぞ? ちゃんと二人で生きてけ?」

 

「……☆」

 

 

 

 ―97階―

 

「えれぇタイムリーだったなぁ~、“SEXしねぇと出られない部屋”のトラップ」

 

「ちょうどよかったよね。

 わたし、ほんものの『オーイエス!』っていうの、はじめてきいたよ。

 ほんとにゆーんだねアレ」

 

 

 

 ―98階―

 

「ヘイダーリン!

 アタシの力を受け取ってソウロウ! End of sorrow(悲しみを終わらせて)!」

 

「おー、あれがリア充の力ってヤツかー。

 張り切ってんなぁブリトニーは~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―99階―

 

 

「――――ブリトニーが()()()()!!!!」

 

「 このひとでなし! 」

 

 

 

 

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「くそっ! まさかあのブリトニーが死ぬなんてッ!! なんて事なんだッ!!」

 

「ハルキくんっ!」

 

 バベルの塔99階層に、ハルキの悔しそうな声が響く。

 

「まさか、()()()()()()()()()()

 骨の欠片も残らねぇような死に方するなんてッ! 信じられねぇよ俺ぁッ……!」

 

「……ハルキくぅ~ん」

 

 血が滲むほどに拳を握り、床に叩きつける。

 チキショウ……チキショウと呟きながら、何度も何度も。

 それを見ている愛叶も、もう居たたまれない気持ち。どれだけ彼が仲間を大切に思っていたのかを、ひしひしと感じる。

 

「塵すら残らなかった!!!!

 というか塵はあったんだが、()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「なんで、あんなタイミングで、かぜが吹いたんだろうね?

 ここバベルのとうなのに。()()()なのに」

 

 そっと、彼の肩を抱く。

 愛叶は傷ついた彼を慈しむように、そっと抱きしめてやる。

 まるで聖母のように、とても優しい表情(かお)で。女神の如く神々しい姿だ。

 

「押さなければ良かったッ! ()()()()()()()なんて!!

 罠だって分かり切ってる、モロバレのスイッチを、俺が押したばっかりにッ!」

 

「ハルキくんっ! じぶんをせめないでっ! おねがいだよハルキくんっ!」

 

「大丈夫かと思った! というか()()()()()()()()()()()

 ブリトニーの野郎リア充しててウゼェから、驚かせてやろうと思っただけなんだッ!」

 

「だれもわるくないよハルキくんっ! これはふこうなジコだったんだよっ!」

 

「しかも、()()()()()()()!! その上、全部押しちまった!

 俺がありったけのトラップを、面白がって全部発動させたから! こんな事にッ!」

 

「たしかにわたしも、えーそんな押すんだぁ~、マジでぇ~、っておもったけどぉ!

 ただよこで、ボ~っとみてたけどぉ! ……でも誰もわるくなんかないよっ!」

 

「そのせいでッ! ブリトニーが死んだッ! 死んじまったんだッ!!

 ――――刺され! 飛ばされ! 落とされ! 折られ! 潰され!

 最後はでっかい地雷みたいなヤツで、跡形も残らねぇくらい粉微塵にされちまったんだッ!! 信じらんねぇよ俺はッ!」

 

「げんきだしてハルキくん! どんぐりあげるから!」

 

「……あぁ神よ! クソッタレた神よッ!!

 アンタどんだけ残酷なヤツなんだ! WTF!」*3

 

 ハルキは叫ぶ――――この世の不条理に対して。

 何故こんなにも、世界は理不尽なんだ。こんなにも残酷なんだろうと。

 彼の慟哭が、天空の塔バベルに木霊する。

 仲間を失った男による、見ていて心が引き裂かれるような姿と、悲痛な声――――

 

「くそったれ~っ! これも全部バベルが(わり)ぃんだッ!

 こんな塔なんかがあるからッ! 俺の友達(ダチ)は死んだんだッッ!!」

 

「そうだよハルキくんっ! ぜんぶバベルがわるいんだよっ!

 つれて来たのハルキくんだけど!」

 

「ブリトニーが死んだのも、()()()()()()()()()()()、全部バベルのせいだぁーッ!!

 くそったれぇぇぇえええ~~ッッ!!」

 

「うんっ! まさかホントに死ぬなんて、おもってなかったよね!

 あのひとファッション自殺志願者だ~って、おもってたのにね! びっくり☆」

 

 ハルキは“人の死”という物に、耐性が無い。

 過去に親戚の葬式くらいは出たことがあったが、これほど身近で親しい者を亡くした経験は無かった。

 彼にとって、これが人生で初めて直面する“死”という重さであった。

 

 思えば、これまでの人生は、ずっと部屋で一人っきり過ごして来た。

 中学を不登校となり、そこから十年以上も家にひきこもり、近年ようやく定時制高校に入ったばかりだというのに、その矢先の出来事なのだ。

 

 ようやく友が出来、人のぬくもりに触れ、大切だと思える人が出来たのに。まさかこんな事で、それを失うことになろうとは。

 今のハルキの心情は、察するにあまりある物と言えよう。余人には想像し難いほどに、深い悲しみの中にいる事だろう。

 

 ――――罪を憎んで、人を憎まず。

 

 こんな言葉もある。……だがそれが何の慰めになろうか?

 たとえ直接手を下していなくとも。バベルの悪意に塗れた卑劣な罠こそが、根本的かつ絶対的な死因だったとしても、ただ面白がってスイッチを押してみただけ、であったとしても……、確かにそれをやったのは、他ならぬハルキだ。

 よしんば、そんなつもりは毛頭無く、コレは“ただなんとなく”やった事であり、まごう事なき不可抗力で、別段批難されるような事もでなく、殺意や計画性や動機が無い以上は、刑罰も刑事責任も微塵も存在しない、極めて些細で頑是無(がんぜな)*4行為で、そもそも勝手に死に腐った本人が悪いのだとしても……、きっと彼は自分を責めてしまう事だろう。

 さもありなん。この瀬川ハルキとは、そういう漢であるのだ――――

 

 優しく、責任感が強く、男気があり、太陽のようにあたたかい心を持ち、困っている人がいれば放ってはおけない人情家。“侠”の精神と博愛を合わせ持ち、全ての人間が模範とすべき絵に描いたような好青年で、しかもとてもピュアなハートを持つナイスガイで、みんなの憧れの的で、正に“仏心(ほとけごころ)”が服着て歩いているが如き存在。

 さりとて、なればこそ()()()()()()()()()()()()という……悲しい男でもある。

 このハルキのように、かの劉備玄徳も裸足で逃げ出す程の人間的魅力集合体で、超絶的かつ類まれな性格イケメンであるからこそ起る悲劇。

 ああなんと惨く、重い十字架なのだろう。然りとて、むべなるかな。是非も無きこと故。

 

 いまの彼の苦しみたるや、いったい如何ばかりか。どれほどの絶望の淵にいる事か。余人には決して推し量れまい。数多の匹夫下郎共には解せぬが必定。

 人は神の如く非ず。だがもっとも人間らしい時、神に似る――――

 これはとある偉人の言葉だが、こうして正面から悲しみと向かい合い、たとえ心が潰れそうなほどの絶望の中でも、しっかり友の死を受け止めようとしている君は、誰よりも美しい。なんと立派で、やむごとなき姿か。*5

 きっと、かのマリー・アントワネット(1755~1793)が愛したブルーダイヤモンドの輝きすらも、いまの彼と比べる時、色あせて見えるに相違ない。

 あぁなんと美しき(かな)。げに尊し(なり)。眩しさゆえ直視すること(あた)わず。

 

 出来るなら、今すぐそこへ飛んで行って、「君は悪くないんだ」と言ってあげたい。何度でも繰り返し言ってあげたい。その痛みを肩代わりしてやりたい。

 その涙を拭ってあげたい。赦してあげたい、君の心を救ってあげたい――――

 願わくば、彼の穢れなき魂に、一刻も早く平穏と安らぎが訪れんことを。そしてあたたかなる神の慈悲が惜しみなく降り注がんことを、我々は心より願ってやまない。それが“人の情”という物であるからして。――――God Save the Haruki(瀬川ハルキ万歳)!!

 

『人を愛しなさい――――愛せる人になりなさい』

 

 いまハルキの脳裏に、むかし母親に言われた言葉が、浮かんで来た。

 幼少の頃、両親のあふれんばかりの愛情を受けて、健やかに生きていた頃……、優しかった母が言ってくれた言葉。

 彼には数少ない、大切な人……そして心から信じられる人から貰った、人生の指針たる一言である。

 

 だが、「人を愛する」という事は、これほどまでに辛いものなのか――――

 これほどの悲しみを背負わなければ、人を愛し切ることは出来ないというのか。

 ハルキはこのバベルで、初めて知る。生まれて初めて、そのことを学んだのだ。

 

 捨ててしまいたい。もう全てを投げだし、跪いてしまいたい。

 またあの暗い部屋に、一人っきりで居たい。誰とも会わず、愛など持たず、ただ目を瞑っていたかった。

 けれど……それは出来ない。決してしてはならないのだ。

 だって、もうハルキは知っている。“友情”の素晴らしさを。

 愛すべき友を持ち、そして力を合わせて困難を乗り越え、共にバベルを登って来たのだから。

 

 愛を捨てること――――それは彼らを「忘れる」という事だ。

 今まで積み上げて来た物、楽しかった思い出、喧嘩した記憶、彼らから受け取った言葉……。

 その全てを、捨て去る事なんて出来ない。忘れるなんて出来はしないないのだ。

 だってこれは、このあたたかな気持ちは、ハルキにとって生涯の宝とも言うべき、かけがえのない物だから。

 

 ――――生きよう。たとえ一人でも。

 ハルキはそう心に誓う。

 

 辛くても、寂しくても……張り裂けそうなほど胸が痛んでも。

 ハルキは決して逃げる事なく、この孤独を抱きしめながら、人生を歩んでいこうと決める。

 そう、友から貰った思い出を胸に。

 決してそれを忘れてしまわない為に、生きねばならぬ。

 

 ――――たかが知り合いの1人や2人死んだくらい、何だってんだクソが!

 ――――別に俺ぁ悪くねーし? まぁ気にする事もねーやな! しょーもな!

 とても悲しいけど……、今はその位の強い気持ちを持って、我々は新しい明日を生きていこうではないか。

 

 人生……、辛いことなんて、山ほどある。

 生きていれば、誰だって辛い想いをする。悲しい出来事だってある。

 ロッキーも言ってたじゃないか。「人生はいつもバラ色じゃない。それなりに辛く厳しい事が待っている」と。

 ならこれを越えてみせなければ、ロッキーに申し訳が立たないという物だ。

 自分はシリーズを通して、そして続編のクリードまでも、全て観ているんだから。ロッキーの大ファンなのだから。

 

 そういえば、昔はよく意味もなく、深夜の公園を走ったものだ。

 ロッキーを観た後は、妙に身体が滾る。やたらとテンションが上がってしまい、もう動かずにはいられなくなるのだ。

 ハルキは部屋の照明の紐を相手に、「シュッ! シュッ!」とか言いながら、ボクシングの練習をした。

 公園の階段を登り切った所で「エイドリアーーン!」と叫んだ。それを通行人に見られて、ちょっと恥ずかしい思いをしたりもした。

 ロッキーが好きだ。ロッキーのためなら死んでも良い。ハルキは心からそう思う。彼は誰よりもロッキーを愛する男なのだ。

 

 しかし……では何故彼は、自分でボクシングをやろうとしなかったのだろう?

 ロッキーに憧れるのなら、なぜボクサーを志すことをしなかったのだろう?

 家の近所に、ちょうどボクシングジムがあった。買い物に行った時、いつも活気にあふれるジムが目に入っていた。

 だが、ハルキは決してボクシングをしようなどとは、思わなかった――――

 実はちょっとだけ、うっすら「入ろうかな~」とか考えないでも無かったが……、でもボクシングって減量とか走り込みとか大変そうだし、この美しい顔を殴られ、鼻でも折れたら人類種の大きな損失だと思い、ついに彼がジムの門を叩くことは無かった。

 

 その代わりに、まるで「ホントはラーメン食いたいけど、時間無いしうどんでもいっか♪」と妥協する昼時のサラリーマンの如く、なんかお手軽で楽そうな護身術を習うことで、その溜飲を下げたのである――――別になんでも良かったのかもしれない。

 

 だが侮るなかれ。それでハルキのロッキー愛が偽物だなどと、一体どうして言えよう?

 全ての作品を鑑賞し、家にブルーレイまで揃えているハルキは、間違いなくロッキーの大ファンだ。ちゃんと映画会社にお金を落としているのだから、きっとあちらから見ても間違いない事だろう。誰に文句を言われる筋合いも無いのだ。

 

 そもそもハルキは、ロッキーのみならず、かなりの映画好きである。

 長年のあいだ家にひきこもり、そして時間を持て余していた彼は、もうその溢れんばかりの自由時間を、映画鑑賞のために費やしていた。

 おかげで今では、ちょっとした映画博士を名乗れる程。しかも洋画に限らず、邦画や韓流や中国映画、意味もなく唐突に始まるダンスが特徴的なインド映画まで、なんでも御座れである。

 

 ハルキに映画の事を語らせたら、少しばかりうるさい。なので彼の妹分である愛叶は、決して自分から映画の話をふる事をせず、また彼と一緒に映画を観ることをしない。

 だってドヤ顔の上から目線でうんちくを語ってくるし、しかもそれが長ったらしくてウザッたいものだから、もう救いようが無い。

 自分で映画を撮るどころか、もう何一つ創作活動をした事がないのに、なんでハルキくんは水野〇郎みたく偉そうなんだろうと、いつも彼女は不思議に思っていた。

 

 いくらカッコ良くったって、こんな人と映画を観るなんてまっぴらだ。

 愛叶はドラマも漫画も小説も嗜むが、妙に映画という物だけは敬遠しちゃうのは、やはりこの経験が大きいのかもしれない。嫌な思い出ばかりが頭に浮かび、どうしてもTSUTAYAに足が伸びないのだった。

 

 ちなみにだが、ハルキのオススメの映画を観て、面白かった事なんて()()()()()

 なんか弁髪の中国拳法家が主役の、よく分からないラブストーリーとか。ジャケットにでかでかとサメの絵があり、もうまごう事なきサメ映画であるというのに、なぜか作中にはサメが20秒しか出てこない、そんなビバリーヒルズ青春なんたらみたいなラブコメとか。ポップなホラー映画を目指しているのか、ジャケットには可愛いチアガールの女の子達がチェーンソーを握っている絵があり、そしてタイトルも“女子高生チェーンソー”という名前であるのに、なぜか女の子たちが一回もチェーンソーを使って無かったりする、そんなお色気だけが取柄の、怖くもなんともない似非ホラー映画とか。

 そんなのばかりである。

 

 ――――もしかしてハルキくんは、映画をえらぶセンスがないのかな?

 ――――――それとも、()()()()()()()()、ってだけなのかな?

 愛叶はこの議題を、長年のあいだ脳内で議論しているが(心の中にいるたくさんの“ミニ愛叶たち”と、いつも話し合いをおこなっているのだ)、しかしいつまで経っても答えは出ないのだった。

 もしかしたら、センスが無いのと頭がおかしいの、その両方なのかもしれない。

 

 もう映画なんて観ないで、外に出たらいいのに。

 学校だけじゃなく、いろんな所に遊びに連れて行って欲しいな~。

 そう愛叶は密かに願っているのだが、それはなかなか叶いそうも無い。

 

 きっかけとして、原付とかの免許を取ってみるのはどうだろう?

 別にバイクじゃなくても良い、ハルキの年ならば車だって乗れるし、いろいろ選択肢はある。

 それが彼を外で遊ばせるきっかけとなるかもしれないし、今度さりげなく勧めてみよう。愛叶は心に決める。

 

 けど……なんかハルキくんって、運転したら性格変わりそうだなぁ~。

 ただでさえ性格悪いのに、もうこれ以上悪くなったら、いったいどうなっちゃうんだろう?

 愛叶はちょっとだけ想像してみたが、すぐ思考を中断してしまった。

 もうトロトロ前を走ってる車に怒鳴り散らしてる所とか、クラクションを連打しながら中指立ててる所しか、想像出来なかった。とりあえずこの案は却下だ。

 

 まぁ電車に乗ってお出かけするのも良いけれど、ハルキも愛叶も、非常に痴漢に合いやすいタイプ。だから出来るだけ電車の利用は控えたい。

 これは別に愛叶の為じゃなく、おしりを触ろうとした途端にハルキにボコボコにされる痴漢さんの為だ。避けられるトラブルは避けるべきだし、これ以上ハルキに前科が付くことは望まない。

 愛叶はそう「うんうん」しながら結論付け、この思考もいったん打ち切る事とする。

 

 でも、お出かけしたいなぁ。

 喫茶店でもどこでも良いから、ハルキくんとデートしたいなぁ……。

 いつも家か学校で会うばかりだし、やはりどうしても彼女は、気持ちを抑えられない様子。

 

 ハルキくんの好きなものってなんだろう? たしか二郎ラーメンが好きだったハズだけど……ここって店内はおしゃべり厳禁だしね。デートには無しだと思う。

 あとお酒が好きだから、アタリメとか、燻たま*6とか、ビーフジャーキーとか、そんなオッサンみたいな物ばっかり食べてるよね……。

 居酒屋デートなんて、まだわたし出来ないし、どうにかハルキくんが好きそうなお店を考えないと。

 

 そう愛叶は、再び脳内の“ミニ愛叶たち”と会議を始め、一人うんうんと思い悩んでいく。

 それはとても愛らしい仕草であり、コテンと首を傾げながら自身の豊かな胸の前で腕を組んでいる姿は、まさにアニメやラノベで出てくるヒロインのようである。

 この女の子が、彼氏に付き合って二郎ラーメンを汗だくで「はふはふ」している所など、誰も観たいとは思わない事だろう。

 きっと彼女に似合うのは、スタバとかサブウェイとかの、おしゃれなお店に違いない。

 

 ――――なんか腹へってきたなぁ。また似非花輪の野郎にタカりに行こっかな?

 そして奇しくも今、ハルキの方も食べ物のことに、思考を巡らせていた。

 ここが家だったら、愛叶に言って何か作らせるんだが……、でもバベルだしなぁ~。食えるモンって何があっかなぁ~。

 そうハルキも、胸元で腕を組んで「うーん」と唸る。隣にいる愛叶に負けず劣らず、その姿はとても可憐である。まさかコイツがいつも二郎ラーメンで、ニンニクアブラカラメヤサイマシマシの豚ダブルを注文しているとは、誰も夢にも思わない事だろう。

 世の中は不思議な事でいっぱいだ。

 

 ――――焼き鳥の缶詰くらい、持ってくりゃー良かったか? あのタレと塩のヤツ。

 これはよく百円ショップなどでも見かける、桃〇のロングセラー商品である、やきとりの缶詰のこと。

 湯煎などで加熱して食べることを推奨されているが、別に温めなくても充分に食えるという、料理が苦手でものぐさなお父さん達の、強い味方だ。

 これはごはんのお供のみならず、お酒のおつまみにもなったりする。大変便利な商品なのだ。

 ハルキも店で見かける度に買ってしまうという、長年お世話になっている、大好きな缶詰であった。値段も100円とかだし、大変リーズナボゥ。

 

 ただ、どうすっかな~。とりま何でも良いから食わねぇと、もたねぇぞ。

 リュックの中に、なんか入ってたかな? そこら中で色々かっぱらって来たし、食い物的なモンは~っと。

 そうハルキは荷物をゴソゴソし始め、隣で愛叶も何気なくその姿を見守る。

 何かないかな~、お腹空いたな~、という二人の声が、静かにバベルの99階に響く。

 

 いまハルキのリュックから出て来たのは、皮が付いたまんまのニンジン、まだ泥が付いているジャガイモ、青いビニールテープで縛られたホウレン草が一束。

 あとタマネギとか、春キャベツとか、赤いパプリカなんかもあるが……どれも生の食材ばかりだ。

 

 ――――おいしくないねぇハルキくん(ボリボリ)

 ――――あぁ、生のまんまだからなコレ(ガリゴリ)

 二人の切ない会話が、だらだら延々と続く。

 焼きもせず、茹でもせず、皮すら剥いていないお野菜を、黙々と食べていく。

 あぁなんという事だろう。いま自分達がこんなにも惨めな想いをしているのも、全てここバベルのせいに他ならない。

 全ての悪、全ての不条理、全ての思い通りにいかない事の理由たる物が、このバベルであった。バベル許すまじ。

 

 ――――むかしのKー1ファイターで、だれがいちばんすき?

 ――――マイク・ベ〇ナルドかなぁ~。あとセフ〇ーとか。

 そして彼らは、こことは全然関係ない話をし出す。

 これは決して現実逃避などではなく、どのような状況下であろうとも普段通りに振舞う事により、精神を安定させ、緊張状態を緩和し、それによるフィジカル&パフォーマンスUPが望めるという、非常に有効な行為なのである。少しでも生存率を上げる為には、出来ることは何でもしておくべきであろう。

 たとえ、ただの“毒にも薬にもならん”雑談に見えるとしても、これは大変高度で理に適った物だという事を、理解しておかなければならない。

 

 ぬるい会話をしながら、生の野菜を齧る。ウサギのように食べる。

 無心でいかないと喉を通らない。ここにマヨネーズなんか無いし、ドレッシングなんて大そうな物もっての他だ。こんな物のない時代に生まれた悲劇、クソッタレなみじめさを、生のセロリと一緒に噛みしめる。涙が出てきそうだホント。

 

 とにかくハルキ&愛叶は、ひたすら食事を進めていく。栄養補給なくしては、バベルで生き残ることは出来ないのだ。

 食事は元気の源なのだから。農家の皆さんありがとうとばかりに。まぁこれって盗んだ野菜だったりするんだけども、別段いま気にする事でも無いだろう。物事の“本質”に関わるような重要な問題ではない。全ての生命と恵みに「センキュメ~ン!」とか言ってれば、それで良いんだと思う。

 

 そうして二人はお野菜をモリモリ食べながら、KOF94のアメリカチームの話とか、大門って実はチート級に強かったーとか、女性チームはキングだけいりゃーなんとかなる~とか、嘘つけハイデルンはボスキャラだ~とか、ストォームブリンガァァーーとか、KOFにはロック出ないんだよね~とか、マークオブウルブスの主役なのに弱すぎ~とか、初期のテリーのゲイザーって絶対自分の顔面焼けてるよね~とか、どんな汚れキャラにされようとも俺はジョー東を愛してる~とか、リアルバウト餓狼伝説で死んだハズなのに後の作品にもずっと出続ける所にギースの悪を感じる~とか、意外とファイターズヒストリーって面白かったよね~とか、昔セーラームーンの格ゲーあったよね~とか、ミュータントタートルズの格ゲー持ってたわ~とか、幽白の格ゲーは出来が良かった~とか、ザンギエフ使うヤツに悪い人はいない~とか、強いんだからもっとエドモンド本田使ってあげて~とか、バルログ金網ない方が強いよね~とか、ベガの空中Pってなんかエビっぽいよね~とか、パッドで昇竜拳出せるようになるまで1ヶ月かかった~とか、ヴァンパイアはシリーズ通してサスカッチ使ってりゃ間違いない~とか、龍虎の拳は不朽の名作だ~とか、歴代サムスピでどれが一番出来が良かったか~とか、風雲拳という実戦空手道とブーメランを組み合わせた全く新しい格闘技について、熱く語り合ってみたりしたのだった。

 

 

 

「よっし。じゃあ曲りなりにも腹は膨れたし……、そろそろ行くか?」

 

「そだね~」

 

 おしりをパンパンと手で払い、スカートについた埃を落とす。

 そして二人は立ち上がり、いま眼前にあるバベルの実質的な最上階に続く階段を、暫し見つめる。

 

 

「――――ブリトニー! 巌! お前らの死は無駄にしねぇぞッ!!

 必ず俺が、仇を取ってやるッッ!!!!」

 

「うん! わたしもがんばるっ!

 ぜったいバベルから生きてかえるもん!」

 

 

 無念にも死んでいった者達――――その想いを背負い、ハルキ達は戦う。

 気は強いが、本当は誰よりも優しかったブリトニー。

 友達思いで、いつも身体を張ってみんなを守ってくれた巌。

 

 彼らとの思い出が、次々と頭に浮かぶ。

 楽しかった日々が、止めどなく瞼に浮かんでくる。

 心から愛した友のことを思い、またハルキの目頭が熱くなる。

 

 しかし――――もう振り返っては駄目だ。

 泣くのはもう終わり。涙は全て流し尽くしたハズだ。

 そんな事をしても、ブリトニーは帰って来ない。巌は決して喜んでくれない。

 

 友の死を悲しむのは、いつだって出来る。

 だが今は、散っていった者達の想いを背負い、前に進む事。なによりハルキという大切な友が、ここから生きて帰ってくれる事……。

 それこそが、これまで力を合わせて戦い、そして最上階を目前にして死んでしまった彼らにとって、唯一無二の願いであるハズだから。

 

 叶えなければならない。受け止めなければならない。……友の想いを!

 敵を討ち、世界を救い、涙を笑顔に変えるのだ!

 全ての悪に、断固たる膺懲の拳を!*7 愛の御名において!

 

 

「――――やるぞ愛叶! あいつらの分までッ!!

 必ずイナンナを倒すッ! エスメラルダの野望を止めてみせるッ!!」

 

「いこうハルキくんっ! バベルのてっぺんに!」

 

 

 これまでバベルで出会って来た者達との思い出が、鮮やかに脳裏に蘇る。

 教授、似非花輪、21階で騙した冒険者、あと出会って2秒くらいでぶっ飛ばしたヤツら……。

 彼らの笑顔が力をくれる。心なしか声援が聞こえてくる。ハルキの心に勇気の火が灯る。

 そして彼は、最後にもう一度だけ振り向き、小さな声で、愛した人達へと告げる。

 

 

「じゃあなBFF*8――――楽しかったぜ」

 

 

 

 

 

 

 いま瀬川ハルキが、前人未踏のバベル100階へ向けて、歩き出した。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「何をしとったでごじゃるカ? はよぅ参らぬかタワケ」

 

「先にフロアを確認しといたよハルキくん……。エレベーターはすぐそこだ……」

 

「よぉ二人とも。

 ちょっと下でダベッててよ? 待たせちまったな」

 

 バベル100階――――そこに辿り着いた途端、ブリと巌が姿を現した。

 

「こんな御大層な場所なのに、一人も死者が出ないとか、()()()()()()

 じゃあバベルって、別に大した事なくね? ……って愛叶が言っててよぉ」

 

「ちょ! それハルキくんだもんっ!

 わたし、おしばいに付きあっただけだよ!?」

 

「だからな? お前ら二人が()()()()()()()()()、バイブス上げていこっかなと」*9

 

「人の命を、なんとココロエル? ブッダに殴られろキサマ」

 

「いやでも、結構いい感じの物語が紡げたぜ? 絶対お前らも泣くって!

 友の死を乗り越えて~とか、鉄板シチュじゃんか」

 

「ふーん。ホントに死んでやろっかな僕……。

 まぁ自殺は“一日一回”って決めてるし、もうやめとくけど……」

 

 ちなみにあの時、巌は確かに塔から飛び降りたが、なんか壁のでっぱりに引っかかり、バッチリ助かっていたのだ。「い゛き゛た゛ぁ゛い゛!」みたいな形相で、必死にしがみついてたし。

 そして爆散したかと思われていたブリトニーも、怪我一つなく元気な姿を見せている。まぁちょっとだけ、例のラバースーツが破けてはいるが。

 

「それにしても、さっきは南無三かとオモタワ。走馬灯(つかまつ)ったワイ。

 でもこれが……、アタシを守護(しゅご)ってくれたのヨ」

 

 そう彼女が差し出したのは、かの“お休みイワオくん”(ダッ〇ワイフ)の残骸。

 魔王モロクにぼりぼり食べられたアレと一緒で、リアルな作りのアダルトグッズである。

 これがブリトニーという乙女の尊い命を救い、身代わりとなって爆散したのだという。

 

「何かに使えるかも~、と思って持ってきたが、役に立つもんだなぁオイ」

 

「備えあればウレイナッシン!

 ドーモ、皆サン……。ニンジャ・ブリトニー=デス。

 特技は、身代わりの術デス」

 

「ブリトニーさんすごーい! スタントマンみたい☆」

 

「そう褒めるでナイ。よきにハカラエ?

 でも……ありがとネ、お休みイワオ=クン。

 ヤスラカニ・ネムレ(1678~1734)」

 

 それにしても、よくダッ〇ワイフが活躍するなぁ。まさかダッ〇ワイフが“伏線”だったとはなぁ。ハルキもビックリである。

 まぁちょっとだけ、「この女、ダッ〇ワイフに守護(しゅご)られたんだな」とか思わなくもないが、結果オーライという言葉もある。

 

「なんなら、あと5、6体くらい、持ってくりゃーよかったな?

 ダッ〇ワイフ引きつれて、バベル陥落させようぜ」

 

「アンタ、ダッ〇ワイフに倒されるラスボスの気持ち、考えた事あんノ?」

 

「いや俺的には、バベルにダッ〇ワイフあるのが悪い! と思ってるがな。

 そら使うだろオイ。こんな面白アイテムよぉ?」

 

「まじめにバベルのぼってる人達にあやまろ? みんながんばってるんだよ」

 

「つかもう、ここまで来るとさ?

 あのイナンナとかいうのも、()()()()()()()()()()という可能性が出てきたな」

 

「やめとけハルキくんっ……! 怒られるぞっ……!」

 

 きっと人生で、こんな「ダッチ、ダッチ」言うこと、二度と無いだろうなぁ。

 俺たちの青春(バベル)は、ダッ〇ワイフと共にあったよな――――そう仲間達は頷き合う。

 ついに最終決戦も目前となり、これまでの冒険の日々を思い出して、感慨深くならないことも無いけれど……。でもちょいちょい脳裏に“ダッ〇ワイフ”という単語が浮かんで来るので、もう邪魔でしょうがない。

 もし自分の孫に、思い出語りをする事になったら、いったいどうしたら良いんだろう。

 じいちゃんは昔、仲の良い友達や、ダッ〇ワイフと共に、大冒険をしたんじゃよ――――とでも言えばいいのか。

 はたしてそれで、孫は『おじいちゃんすげー!』とか言ってくれるんだろうか? 大きな不安が残る。

 

「――――そんじゃあ行くぞお前ら! 四人の力を合わせ、バベルを踏破するんだ!」

 

「いやハルキくん、さっき助けに来なかったよね……?

 助ける素振りすら無かったよね……?」

 

「これはショギョー・ムジョーですカ? うぬを絶対に許サヌ」

 

 帰ったら、ハルキを埋めよう! コイツの墓に唾を吐こう!

 そう親愛なる仲間達は、固く心に誓う。

 

「やるぞッ! これまで支えてくれた人達のために、俺たちは勝つ!!」

 

「――――黙れよゴミ野郎(・・・・・・・)。アンタ詐欺と強盗と恫喝しか、やってないデショガ」

 

「ハルキくんが、いいコトしてるトコなんか、いっかいも見たことないなぁー」

 

「ある意味、バベル最強の人間って、ハルキくんみたいな人かもしれない……。

 メンタルがオリハルコンだもの……」

 

 とりあえず4人は、スタスタとエレベーターの所に行き、グイッと【△】のボタンを押す。

 ゴインゴインという僅かな振動を感じた後、すぐに〈チーン♪〉という間の抜けた音が鳴り、扉が両開きに開いた。

 

「え、えらく近代的というか、普通のエレベーターだね……」

 

「あぁ。これ花輪の話じゃ、HIT〇CHIに作らせたらしいからな。

 そこらのビルにあるヤツと、なんも変わらねぇよ」

 

「インスパイア・ザ・ネクスト☆ 流石はHIT〇CHIにごじゃるナ!

 このブリトニー・クロサワ、感服(つかまつ)ッタ!!」

 

「ねぇみんな! あれうたいながら、のろうよ!

 この~木、なんの木、気になる木ぃ~♪」

 

「「「気になる木ぃ~♪(合唱)」」」

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「――――さて、お遊びはここまでだ。

 お前ら、気合入れていくぞ」

 

「うん!」

 

(オウ)!」

 

「わかった!」

 

 ゴインゴインとエレベーターの中で揺られながら、ハルキ達は気合を入れ直す。

 もうすぐ、待ちに待った最終決戦。バベル358階だ――――

 

「正直、キツイ戦いになんだろう。

 下手すりゃ、誰かが死ぬことすら、有り得るかもしんねぇ」

 

「……」

 

「だが、やると決めたからにゃー、最後までやり切る。

 もし誰かが倒れても……いいな? 一瞬たりとも止まるな。

 エスメラルダを倒す」

 

「……うん、わかったよハルキくん」

 

「Roger that.(心得申した)」

 

 コクリと頷き合う。強い光の宿った瞳で。

 そして、覚悟を決めた表情で。

 

「最後に言っとく。

 あん時は冗談めかして言ったが……マジで楽しかった。

 お前らと遊べて、一緒にいられて、俺は幸運だった……のかもしれん」

 

「いや、そこは言い切ろうよ……?

 こんな時でも、ハルキくんらしいなぁ……」

 

「ここに来ても、意地っ張りは治らぬカ。

 まったく度し難き哉。……でもアンタらしいワ」

 

 巌、ブリトニーがクスリと笑う。そして愛おし気に、親友の方を見つめる。

 これまで散々ふざけはしても、ちゃんと締める所は締める、勝負所を決して見誤らない、頼れるリーダーの顔を。

 

「愛叶? お前は()()()()

 たとえ何があっても、俺が倒れたとしても……“あの力”は使うな」

 

「……っ」

 

「お前が駄目になる、イコール俺達の全滅だと思え。

 何があっても遂げろ。ギリギリまで耐えて、最後の瞬間に全てをぶち込め。

 それの使いどころを、決して間違えるな。

 俺の妹分なんだ……出来るな?」

 

「……うん、ハルキくんがそー言うんなら、そうする。

 できるよ? わたしハルキくんのいもうと分だもん。

 ……いままで、たくさん見てきたから」

 

 348……349……350……。

 エレベーター上部の表示が、だんだんバベルの最上階へと近づいていく。

 

「この扉が開いた瞬間、いく――――

 お前らは暫く見てろ。俺がやれるトコまではやっから。

 力を、温存しとくんだ」

 

 354……355……356……。

 次第にエレベーターの速度が弱まり、もう停止の準備に入っている事を、振動でも感じる。

 この扉が開いた時、全てが始まる。そして全てが終わる。

 その覚悟を以って、ハルキはギリリと歯を食いしばり、眼前を睨んだ。

 

()()()()()()。前世も今もひっくるめて、俺という存在を。

 そんで、俺の友達(ダチ)である、お前らの価値も。

 だから……そこで見てろ?」

 

 ホントは、証明するまでもない。

 だって愛叶も、巌も、ブリトニーも、ちゃんと知ってるんだから。

 ハルキは凄い――――こいつは頼りになるって。

 決めるべき時に、しっかり決めるヤツだって。

 

 

「んじゃ! ――――瀬ノ宮ハルカ17才☆ いってくらぁ!」

 

 

 

 チーンと、到着のベルが鳴る。

 それはバベル踏破を知らせる音。……そして、最後の戦いの開始を告げる音だった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

(出来るよ、ハルキ=クン。アンタなら出来るワ)

 

 扉が開いた瞬間、ハルキが一人エレベーターから駆け出す。

 

喧嘩(ファイト)もいっぱいしたケド……、アタシ信じテル。)

 

 そして、かの教授に作って貰ったアイテム【ステルス風呂敷】を、バサッと頭から被った。

 

(捻くれ者だけど……真っすぐ。

 馬鹿だけど……間違ったりしなかッタ)

 

 ハルキはまるで、赤塚不二夫漫画に出てくるドロボウの如く、抜き足差し足で、フロアの中心へ向かって行く。

 

(ゼンブ託すワ。アタシ達のゼンブ……。

 アンタがフォワードよハルキ。決めてしまいなサイ!)

 

 そして、キョロキョロと周囲を見渡し……、そこに【オレンジ色の水で満たされポット】を見つけた。

 

(ハルキくん……負けるなハルキくん……!)

 

 完全にステルス状態となっているハルキは、いま誰にも気付かれる事無く、何か得も知れぬ威圧感を感じさせる者が入っているポット、そのすぐ傍まで近づく。

 

(落ち着いて……大丈夫だよハルキくん……!

 君は失敗しない、必ず成功する……!

 僕はいつも一緒だった。それを知ってるんだ……!)

 

 そして――――

 ハルキが小さく「えいっ!」と声を出し、ポットの()()()()()()()()()

 

(僕の友達……! 僕の一番の親友……!

 頑張れハルキくん! 負けるな……! 負けないでくれっ……!)

 

 すると、次第にポット内にいる“少女っぽい存在”が「うっ……! 苦しい!」とばかりに小さくジタバタし始め……。

 やがてそのまま「ガクッ!」と力尽きたように、動かなくなった。

 

 あの魔女が作り出そうとし、彼女の一族が二千年も誕生を待ち望んだいう“新しい神様”。

 かの存在は、こうして誰にも姿を見せる事無く、ポットの中で()()()()()()()

 

(ハルキくん! いけるよハルキくん! そのちょうし!)

 

 ポットの中にいた“なんかよく分からん子”、その生命活動の停止を確認したハルキは……、例のステルス風呂敷をしっかり被ったまま、続いてその隣に目をやる。

 そこには十字架やら、魔法陣やら、動物の死骸やら、何かしらの聖遺物やらが散乱しているようだった。

 ハルキは「あ、たぶんこれが“イナンナ”の召喚儀式に使うための道具なんだな~」と目ざとく気付き、教授に作って貰った【半径5メートル以内にある物なら、どんな物でも木っ端みじんにする、高性能手榴弾】を、スッと懐から取り出した。

 

(ハルキくんはすごいもん!

 ほかのどんな人より、どんなすごい人よりも、ハルキくんはすごいんだよ!

 いちばんカッコいいよ!)

 

 そしてハルキは、手早く安全ピンを口で外した手榴弾を、床にある魔法陣の中心へと投げ放つ。

 すると3秒もしない内に、凄まじい轟音を立てて()()()()()()()()()()()()()()()()、おそらく二度と準備出来ないであろう大切な聖遺物や、イナンナ召喚の為に使うのであろう全ての道具が、文字通り木っ端みじんとなる。

 

 こうして魔女と塔の主が目論んだという、女神イナンナの復活は、()()()()()()()()()()

 瀬川ハルキという、一人の男の手によって――――コソコソと泥棒みたいに忍び込むという、姑息な手段によって。

 

(やっちゃえハルキくん! かてるよ! ハルキくんはまけないもんっ!)

 

 手榴弾爆発の轟音により、「えっ、なにごと!?」とビックリしたのが“塔の主”。

 その御名は存ぜぬも、きっと伝承に語られるような、太古からの偉大なる悪魔である事は、想像に難くない。

 彼は「まさに魔王!」と言わんばかりの、それっぽい椅子に腰かけ、今の今までグースカ眠っていたのだが、あの爆発音を聴いた途端「ビクゥ!」と飛び起きたのだ。

 かのエスタークという名の魔王も、大変なお寝坊さんだったというが、この“塔の主”とやらも、それに負けない位の寝坊助であるようだった。

 

(今ダッ!)

 

(行けっ……!)

 

(わたしたちの想いをひとつに!)

 

 すぐさまハルキが動く。

 教授が作ったという最終兵器、どんな強大な存在であろうとも永遠に封印することの出来るという、いわば現代版パンドラの箱ともいえる発明品……。

 その名も【生かさず殺さず君1号】を構え、いま雄々しく“塔の主”の方へと向けた!

 

(――――アタシ達ガ!)

 

(――――やってきた事の全てを……!)

 

(――――いまここに!)

 

 

(((いっけぇぇぇえええーーッッ!!!!)))

 

 

 まるで掃除機のように……というかまんま掃除機の形をしたマシンにより、“塔の主”が「ほげぇ~!」っと吸い込まれて行く。

 ゴゴゴゴゴ! ジュポン! みたいな音が鳴り終わった時……、教授の新発明【生かさず殺さず君1号】は、かの最高位の悪魔を、みごと永久に封印して見せたのだった。

 

 さすがは教授! こんな凄い物を作れるなんて、まごう事なき天才であった! スゴイ! 

 まぁこの道具を受け取った時、「ためしに」という事で、一番最初に教授を吸い込んでやったので、いまこの中で封印されてたりもするんだけれど。

 ぜひ塔の主と一緒に、仲良くやって欲しいものだ。

 

 案ずるなかれ、時間はうなるほどある。なんたってこの道具は【生かさず殺さず君1号】である。

 たとえ一週間しか生きられないハズの蝉であろうとも、ずっとこの中で生き長らえさせたまま、永久に閉じ込める機能を搭載しているのだ。

 ついでに言うと、この道具は()()()()()()()()()()()()()()()()()という、大変な親切設計となっているので、遠い未来に塔の主が復活する心配もナッシング! 家電にうといママさんにも安心してお使い頂ける、優れモノなのだ。

 

 重ねてになるが、――――()()()()()()()()

 まごう事なき天才! すごい漢だ。

 

(やった……! なんか神も悪魔もよく分からん存在も、全て倒したぞ……!

 似非花輪くんが言ってた通り、僕ほんと何の役にも立たなかったな……!)

 

(ニセ花輪くんがいうには……、「愛叶ちゃんは思うようにしなさい」ってコトだったけど。きっとこれでよかったんだよね! わたし、おもうようにしたもん!)

 

(えっと……アタシの『選択を迫られる』って、()()()()()()()()()()()()()()?!

 アイツいったい何を指して、そう言うてたんでごじゃるカ!?

 ……なんかもう、全部倒してしもうたっぽいフンイキ!

 いったいアタシ、何を選択したら良かったんデスカ!?!?)

 

 三人がエレベータの中で「ぼけ~」っとしている内に、とりあえず倒すべき者は、すべて倒し終わった。

 God Save the Haruki(瀬川ハルキ万歳)!! God Save the Haruki(主よ、瀬川ハルキを守り給え)!!

 そう祈っていた甲斐があったという物だが。

 

「こっ……こらーアンタたち! いったい何してるのよぉ~!」

 

「あ、やべ! エスメラルダだ!」

 

 するとそこに、恐らく買い物から帰って来たんであろうエスメラルダが、ネギだの白菜だのがはみ出したエコバッグをブンブン振り回しながら、こちらに猛然と走って来る。

 もうスチーム・ポットみたいにカンカンに怒っており、まるで赤い布に突進する猛牛みたく迫って来た。

 

「おう! ただいま皆! 閉めろ閉めろ! はやくドア閉めろ!」

 

「Roger that.(心得申した)」

 

 ハルキがエレベーターに帰還した途端、言われるままにブリトニーがドア横の【▽】ボタンを押す。

 ドアがウイーンと閉まり、エスメラルダがダッシュで駆けつけた時には、もうすでに閉まってしまっていた。

 

「ちょ……! 待ちなさいよアンタたち! 待ちなさいってばぁ!

 何してくれてんのよホント!」

 

 慌ててエスメラルダも、エレベーターの【▽】ボタンをカチカチ連打するも、なかなか次のエレベーターはやって来ない。

 そもそもここには、一つしかエレベーターが無いのだ。あまり人通りがある場所じゃないので、大きい建物みたく、いくつもエレベーターを作る必要が無かったのだ。

 

「待ってよっ……! どこ行くのよアンタたち!?

 私の一族の2000年、返してよぉぉぉ~~っ!!」

 

 泣き喚きながら、ひたすら【▽】ボタンをカチカチするエスメラルダ。

 しかし前述の通り、エレベーターはひとつっきゃないので、ハルキ達をダンジョンの100階……いやこのバベルの入口がある()()()()()()()()()、決してここに来ることは無いだろう。

 

 

「ボロボロじゃないこの部屋! 瓦礫だらけじゃないの!

 ――――せめて掃除くらいして行きなさいよ!

 人ん()に何してくれてんのよぉぉぉ~~ッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天空の塔、バベルの最上階――――

 そこにエスメラルダという哀れな少女の泣き声だけが、いつまでも木霊していった。

 

 

 

 

 

 

*1
即座に去る、の意

*2
全て詐欺罪である

*3
What the fuck(なんてこった!)の意

*4
無邪気な、無垢な

*5
最高最上の高貴さを表す言葉

*6
燻製にしたゆで卵

*7
【ようちょう】 征伐し、懲らしめること。

*8
ベスト・フレンド・フォーエバー

*9
雰囲気を盛り上げる、気分を高揚させる、という意味




 【バベル編】はこれにて終了しました。かなり無理やりですが……。
 以降はもう、なんの設定の縛りもありません。
 主人公を交代するなり、舞台を南アフリカ共和国に移すなり、なんでもご自由です!

 ――――ラスト一巡! ここからは好きなように書きましょう♪


(hasegawa)



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