世界の秘密を知りたくて (トサカがある生物)
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一話

幾つかの雲が空を漂い、それでも尚晴天の証たる青空を見せる今日という日。

全身を騎士の甲冑に近い見た目に緑色の革を付けた防具に身を包んだ人間と、この空は俺の物だと言わんばかりに飛行する一体の竜が相対していた。

油断無く両手で持つ細長い刀…太刀を握り締めて空を飛ぶ竜、リオレウスを睨みつける。

リオレウスもまた相対している存在が己に迫る強敵だと認識して空に飛んだまま咆哮する。

先に仕掛けたのはリオレウスだ。

空に飛んだまま口から火球を放ち攻撃する…それを左に回転して避ける。

避けたと同時にリオレウスが足の鉤爪で急接近して切り裂こうとするが、お返しと避けた体勢そのままに太刀のリーチを活かして刺し貫く。

しかし浅く、即座に空に舞い上がり人間から距離をとりつつ陸に着地した。

 

浅くとも己の攻撃にカウンターを決められた事に苛立ちを感じるリオレウス…しかし、頭を振るい感情に左右されず、また油断もしない眼で人間を睨む。

そこらの生物ならば恐れ戦き逃げ出す程の圧を受けてなお…いや寧ろ人間もまた同等の圧を返した。

今度は人間が武器を持って走り出す。

迎撃の為に放たれた火球を右斜めに、左斜めにとギリギリを避けて距離を詰めていく。

目と鼻の先にまでやってきた人間に対して、リオレウスはもう一度火球を放ち、人間が避けたと同時に突進を仕掛けた。

口を大きく開けて焔を燻らせながら噛みつき燃やし殺そうとするリオレウスに、人間は体勢を急ぎ整えると前に飛び上がりながら回る。

予想外の行動に上手く反応出来なかったリオレウスの頭をそのまま踏みつけ、更に飛び上がった後通り過ぎて行ったリオレウスの尻尾に太刀を振り切る。

 

今度は深く切り裂かれたリオレウスが絶叫を上げ、転びながらも人間の方に向き直ると立ち上がり、怒りに満ちた瞳をしながら咆哮する。

その音量に思わず耳を塞ぐ人間の隙を見逃さず、突進を仕掛ける。

耳鳴りが鳴り止まない中で何とか回避するが、リオレウスは真横を通り過ぎる時に急停止して体を一回転させる。

独楽のように綺麗なその一回転に、棘こそ太刀で防いだが圧倒的質量による直撃を受けて人間が坂を転がる丸太のように転がる。

手応えを感じたリオレウスが即座に追撃と接近して勢いそのままのサマーソルトをする…感じたのは確かに攻撃を当てたという感触とともに、離れ行く己の尾の感覚だった。

 

先程のとは比べ物にならない絶叫を上げて血が滴り落ちる己の尾を見る。

あった筈の先端が綺麗さっぱり切り落とされて無くなっており、前を向けば落とされた尻尾がある…これまでで一番の殺意を人間に向けた。

人間もサマーソルトに合わせる形で太刀を振るったが、切り落としたと同時に風圧に吹き飛ばされて岩に激突しており、口元は赤く染っていた…それでも戦意は衰えておらず、ポーチに入っている緑色の瓶を取り出すと一息に飲み干す。

 

互いに殺すという意志を込めて相手を見つめる…駆け出したのは同時だ。

リオレウスが口を開き咆哮しながら突進してくるのに対し、人間は一瞬足りとも視線を離さずにリオレウスだけを見続ける。

すれ違う瞬間、人間がスライディングしつつ太刀を一閃するのと同時にリオレウスは勢いそのままに全身を使って回転…足に当たる直前に地面に向けて火球を吐き出し、その勢いで不安定な体勢にも関わらずジャンプまでして避ける。

その予想外の攻撃に人間は焼けながらも転がって火が回らないうちに鎮火させ、ポーチに入っている回復薬を飲む。

回復を終えた人間は即座に立ち上がって体勢を整えるのと同時にリオレウスが火球を放った。

リオレウスは地上戦ではなく得意な空中戦を選択したようだ…あの体制にも関わらず飛んだあたり、空の王者は伊達では無いということだろう。

 

しかし飛んだ体勢が体勢だけにまだ低空飛行のリオレウスに勝機を見出し、火球を避けていく。

そして近場の段差を瞬時に乗り越えていき、リオレウスが飛行している高度よりも高い場所に登り切る人間と同時に火球を放つことで離そうとするリオレウス。

それを本当にギリギリ膝を折り曲げてスライディングし、火球の下を通過しつつ、通り過ぎた瞬間体勢を整えてジャンプ。

火球が壁に着弾して爆発…それによって発生する爆風すら利用してリオレウスへと肉薄する。

自身に近付く人間から距離をとろうと羽ばたくリオレウスだが既に遅く、太刀を左翼目掛けて縦に振るう。

薄かった翼が切り裂かれてしまい、飛行する能力を失って落ちるリオレウス…人間は左翼だったものを掴んで足場にすると、リオレウスの頭目掛けて接近し左目に太刀を突き刺した。

 

落ちるギリギリまで左目に突き刺した太刀をグリグリと捻り回して傷口を広げていく…リオレウスはどうにかしようと藻掻くものの、徐々に力を失って行き、地面に落ちる頃には右目の瞳孔は開かれていた。

これ以上動かない事を確認すると、ナイフを取り出してリオレウスの死体を捌いて剥ぎとる。

剥ぎ取り終えたらさっさと拠点に戻るように足早にその場を去った。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「こうして俺はリオレウス狩り、ココット村で名の馳せたプロのハンターになったって訳だ。どうだ?中々にいい話だろ」

「空の王者を、空飛んでる時に仕留めに行くあたり頭がおかしいって思うよ」

「だってなぁ…低空飛行だったんだぜ?狩りに行かなきゃ失礼だろ」

「それやられたリオレウスはたまったもんじゃないな」

 

ため息混じりに親父を見る。

昔リオレウスを狩る際付けたレイア装備の頭を外してドヤ顔していた。

現在確認されている飛竜種の中で最も強く、生息域も広いために危険性が高いモンスター…多くの人々がこのモンスターに恐怖すると同時に、ハンターにとっては狩れば一種の到着点…山の頂上に達したとも言われ、憧れの対象と呼んでも差し支えない存在が空の王者リオレウスだ。

まだモノブロスがこの辺に出没していないから挑戦こそ出来ていないが、一人で狩れば英雄と呼ばれる存在であるかの一角竜を父さんは狩ろうとするだろう…兎に角、リオレウスを狩った親父の息子である俺も当然一流のハンターになれると期待を寄せられたりするわけなのだが、正直まだまだひよっこなんだからこれからに期待してくれと言いたい…期待してる結果が今なんだろうけども。

 

「ハンターの自慢話も良いですけど、ちゃんと無事に帰ってきてくださいね?貴方」

「勿論さ。死んだらこうやって笑いあえないし、何より俺はまだ死ぬ気が無い」

「死ぬ気が無くても死ぬ時があるのがハンターなんです。きちんと怪我なく無事に帰ってくる…これが出来る時もあれば、出来ない事の方が圧倒的に多いのですからね」

「…そうだな。俺達が生きてる世界はそういう世界だ…だが、同時に自然に生きる者としての摂理を実感する世界でもある。見たことが無い景色やモンスターと会った時の感動は凄いぞ」

「ふふふっえぇ、よくわかってますよ。私も貴方に色々と連れてもらった事がありますから」

 

真面目な顔で母にそう語った後、惚気話をする父。

今更だが俺は人間と竜人の間に生まれた…所謂ハーフと言うやつだ。

父が人間で、母が竜人だ…親指はあるにはあるが人間に比べたら短くて、逆に成長というか身長が大きくなるのは早く、16になる頃には一般的な竜人の成人男性と同じ大きさまで成長していた。

足も尾骶骨の様に突起物があるだけで基本は4本だし、関節も鳥に近い…耳だって尖ってる。

妹とまだ幼い双子の弟と妹は俺とは違ってココット村に居る人と同じなのにな?あんまりこの事で悩んだ事ないけど。

 

ギルドが見せてくれた書類とかじゃ竜人の若い人は普通の人とは離れた場所で暮らしているらしいし、更に言えば人間と結婚した前例がほぼ無いと言う…中々変わり者な夫婦で家族だと思うけど、なんだかんだ言われてもこれが俺にとっての普通だから、意識しても仕方ないと割り切っている。

 

「そう言えば、ナトゥアはいつハンターの仕事をするんだ?」

「明日からだな。まずはキノコか薬草の採取でもやるよ」

「そうか。ランポスやドスランポス、イャンクックに気を付けろよ」

「イャンクックならまだしも、ランポスには…いや、採取してる時に襲われたらどうしようもないか。分かった。気を付けるよ」

 

大型モンスターと戦闘して、追おうとした時に奇襲を受けて死んだというのは珍しい話じゃない。

一番有名でハンターの教訓にも乗っている話しじゃ、ディアブロスが移動して、一息しようと回復薬や砥石を使って体制を整えてた時にドスゲネポス率いるゲネポスの群れに襲われて二人食い殺された話だ…その時、四人とも痺れさせられて抵抗出来ないことをいい事に生きたままだったそうだ…狩猟する時に麻痺さえ気を付ければ難しい相手じゃないドスゲネポスも、大型モンスターと戦闘して注意を疎かにしてしまった時にはどうしようもない。

ハンターが立つのは…いや、人間が立っているのはモンスターが闊歩する過酷な世界なのだ…油断すれば一瞬にして殺させるのは当然の帰結とも言える。

 

だからこそ、ハンターが居るのだ。

モンスター達を知り、彼らを狩る事で人々の生活を守る。

ココット村の村長がモノブロスを一人で狩り、そこから始まったハンター家業…ミナガルデのギルド長を初めとした偉い人達が中心となって、様々な場所でハンターを支援する為の体制を作り、腕に自信がある者、金や名誉を欲しがって集まって出来上がったのが今あるハンターだ。

勿論、その後様々な理由で…例えばこの世界を知りたいとか、村を守る為とかそういう理由の人達も入ってきたが。

 

俺はまぁ、自然に住む彼らモンスターの生態を知りたいというのと、単純に人生を豊かにしたかった…死ぬ危険があるとか、そういう事を避け続けた人生と言うのは味気無いものだと思えたから、ハンターになった。

他のハンター達からはそんな生半可な覚悟で務まるのかと言われそうだけどな。



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二話

結構短いです


早朝、チェーンメイル装備一式を身に付けて太刀を背負い、村の出入口に向かう。

クエストボートにあった依頼から現状俺でもクリア出来そうなものを選んで持ってきたつもりだが、モンスターが乱入してくることも考えれば油断は禁物だ。

足にはかなり自信があるからと言ってもそこは人基準…結局の所モンスターに勝てるのは知恵を駆使して作った道具と狩猟技術のみだ。

 

「行ってきます」

「気を付けて行ってくるのだぞナトゥア」

「勿論です。採取だけと侮って死にたくはありませんから」

 

村長にそう言うと俺は依頼された地へと出発した。

目的地は比較的ココット村に近い森と丘、そう呼ばれるエリアだ。

比較的近いとはいえ、基本的にネコタクシーと呼ばれるアイルーが目的地まで運んでくれるサービスかアプトノスの馬車に乗って移動するか、もしくは歩きで行く…比較的近いと言えど広大な大地を徒歩で行くから一日かかる。

狩猟時間もあるハンター業、皆アプトノスの馬車を使って移動すれば楽なのだからそちらを使う筈だ…と言うのはハンターになった事の無い人達の考えだ。

モンスターは俺が森と丘へと向かう道中にだって存在しているのだ。

ランボスやドスランポスを初め、肉食モンスターが数多く生息していて、アプトノスなんて近寄れば死骸に早変わり間違いなし…残る選択肢がネコタクシーか徒歩かなのだが、ネコタクシーは彼らアイルーが把握している近道を使うからものすごく早く目的地に辿り着く…が、それを入れても最悪な乗り心地で目的地に着いたらまずキャンプ地で一日寝るレベルだそうだ。

迅速に行かなきゃならなかった時に使ったらしい親父がそう言ってた。

 

必然俺は徒歩になる訳だが、そんなに苦には感じない。

緑溢れる自然を見て、モンスターの生態を知るのもハンターには必要な事だ。

アプトノスの群れが水を飲む風景も、それを草むらから伺う二頭のランポスも、自然界ではよくある光景と言える。

そのまま群れからはぐれてしまった子供のアプトノスをランボスが襲いかかり、距離が離れている上にランポスの距離が子供のアプトノスにあまりにも近すぎた為に見捨てられた哀れな子は二頭のランポスのご飯となった。

 

内臓を鋭い牙で噛みちぎって美味しそうに食べているランボスを遠目から眺めながら、こちらを獲物と認識し、油断していると思って飛びかかって来たランポスを鞘から抜いた太刀で回転しながら一刀両断する。

真っ二つにされたことで撒き散らされる鮮血と臓物を少し眺めながら血を振り払い、ランポス達を見る。

先に仕掛けた一頭の末路を見たからか、こちらが近寄らねば切る事が出来ない距離で様子を見るランポス達。

実際、あの二頭の行動はかなり有効だ…俺は2つの足で武器を持ちながら近寄り、攻撃の動作がわかり易い太刀で切らなければならないのに対し、ランポスはその鋭い爪と牙、高い身体能力でこちらを攻撃出来る。

俺の攻撃を避け、カウンターで飛びかかり、片方が太刀を持っている手を拘束している間にもう片方が眼を爪で刺し貫けば俺は死ぬし、そうでなくてもチェーンメイル程度じゃ彼らの攻撃をそう何度も受けられない。

油断ならない敵を相手にした時、まずは様子を見る…闇雲に攻撃して死ぬよりも賢いやり方だな、勉強になる。

 

「やっぱり村に居るだけじゃ味わえないものがあるなぁ…練習したかいがあった」

 

今日に至るまで、俺も身体の動かし方というものを学んで来ている。

モンスターと戦うのだから当然生態やどう動き、どのように攻撃してくるのかも先達から書類ではあるが拝見させてもらっている。

親父も太刀を扱うハンターだからどのように攻撃するのが効果的なのかを教えてくれた…モンスターと戦うのは命懸けだが、それ相応の練習をしたという自信が、ランポスと戦闘していて、殺気をぶつけられている現状であっても冷静でいさせてくれる…俺自身の性格もあるのか?いや、余計な事は考えないでおこうか。

 

「どうした?来ないのか?」

 

聞こえてもなんと言ってるのかわからないとわかっていてもそう問いかける。

だが、やはり向こうから責めるつもりは無いようで威嚇をしながら油断無く睨みつけている。

ならこちらから行こう。

太刀を何時でも振れるように構えながら接近して、間合いに入った瞬間に太刀を縦に振るう。

当然、ランポスはその身体構造を駆使してバックジャンプする事で間合いから素早く回避し、もう一頭がその隙をついて左から素早く接近し、鋭い牙で噛み殺そうとしてくる。

実際、タイミングとしては悪くない…全力で振り抜いていれば僅かな時間動きが固まってしまう。

そこを狙えばベテランハンターだって深手を負う可能性もある…彼らの誤算はこの状況になるよう誘導したという事だけだ…全力で振り抜かず、軽く振り抜いた太刀を素早く戻してランボスの口の中に入れ、ここまで早く動かれる事を想定していなかっただろうもう一頭のランボスへと斜めに振って投げる。

動揺していたのが見て取れ、動きが固まってしまったランポスに直撃して倒れてしまう。

素早く起き上がろうとする頃には俺も接近し終わっており、気が付いたランポスも振り下ろされる太刀をただ見つめるだけだった…

 

「…ふぅ…はぁ…」

 

思った以上に疲れた…力が入りすぎていたのか、それとも初めての実戦だったからか…もしくはその両方か?考えればきりはないけれど、一番思い付くのは…

 

「…俺、モンスターを狩ったんだな…一人で…」

 

人の機能の一つにアドレナリンと呼ばれる興奮作用を促すものがあるらしい。

興奮と言えば冷静とは真逆の方と思いがちだけれど、個体によってはそうなった方が恐ろしく冷静になる者もいる…興奮状態になると疲労感や小さな痛みを感じずに動けるらしい。

ただ、それが終わると途端に力が抜けてしまうとの事だ…これもその一種って事か。

まだ太陽は登っているし、行ける所まで行って、安全な場所で野営地を立てようかな。

 

その前に剥ぎ取っておこう



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三話

ランポスとの戦いからは特に何も無く、野営地の設営とランポスを剥ぎ取るついでに取った肉をこんがりと焼いている。

こんがり肉や携帯食料はハンターの必需品と言っても過言じゃない…とは俺に期待を寄せてくれたハンターの一人が言っていた言葉だ。

腹が減っては戦ができぬと村長が若く、ハンター事業が始まってまもない頃から伝わった名言もある…もしもの時のために携帯食料と生肉だけじゃなくて回復薬も持ってきているが、温存して他のモンスターの肉でお腹を満たしても良いだろう。

しかしランポスの肉を焼くのは中々に苦戦するなぁ…骨付き肉に出来たのは焼くのに苦労しなかったけど、他のはどうにかして骨を刺さないといけないし、刺し方だって工夫しなければ火が近すぎたり遠すぎたりで焼けている所と焼けていないところが出てきてしまう。

これもハンターとして生きる者の苦労なんだろうなぁ…普通に骨付きの生肉を焼けよって言われたらその通りだし、何も言い返せないけど、違う肉を食べたくなるものだろ?特に村や町じゃ料理人が作ったりするものを自分自身で調理するなんて中々にないし。

 

「やっと出来た…よし、それじゃあいただきます」

 

しっかりと手を合わせて言い、早速ランポスのこんがり肉を頂く。

肉食モンスター特有の鍛えられた肉の硬さがあるものの、血抜きやらをしたお掛けか臭みは無い。

また肉の硬さも硬すぎるものじゃないから歯ごたえもある…まだ焼いてないものがあるから燻製肉にして酒と飲むといいんじゃないかな?酒飲んだ事ないが親父がジャーキーと一緒に飲んだり食べたりしてるの見てるし、ジャーキーは食べた事あるから合うはずだ。

 

「ふぅ…ご馳走様でした」

 

もう一度手を合わせて言う。

この言葉が流行りだしたのは最も古い時でハンター事業が始まる前、ある料理人が腕を振るって作り上げた料理を食べようとしたとある国の王様に大して、こういった方がより美味しく感じられると言ったのが始まりなようだ。

何故なのか聞いた所、「あなたの為にこのモンスターを狩ってくれた人と、あなたの為に調理してくれた人、そして何より自分達の糧になってくれたモンスターへの感謝を込めるおまじないがこの言葉なのですよ」と答え、これに感激した王様が広めに広めまくったらしい…今じゃ俺の知ってる場所はこの言葉を言うのが決まりになっている。

 

流行ったのも村長が生まれるずっと前とのことだから、相当昔になる…この言葉を教えてくれたのは女性の料理人だそうで、母のように優しい人だったそうだから、尚のこと広めなければと当時思ったのかもしれない。

名前はユナさん。

興味があったから調べた時に東側に多い名前だったから、この言葉を広めるキッカケだったのもあって良く覚えてる。

しかも何がすごいかと言うと東側に多い彼女が西の方でこの言葉を広めたことだ。

東側から西まで途方もない距離を歩く事になるし、仮に何かの乗り物に乗ってたとしてもとてもじゃないがそこまで辿り着けるとは到底思えない…アプトノスやアプケロスを使っても、アイルー達に頼んでも結果は同じだ。

それを一人で歩いたのだ…しかも一つの文化を作るという偉業も成し遂げて…人によっては神の使いとすら言われてたりするらしい。

 

まぁ一言でまとめてしまえばこういうのだろう…ユアさんマジで何者なの?

 

「ふぁぁ…眠くなってきた。なんか今日考え過ぎだな…初めてランポスを狩ったからか?」

 

考え過ぎて明日に影響をきたすのは宜しくない。

そう考えて急ぎ眠るための準備をした…

 

 

 

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翌日。

月が沈み日が上がり始めようとする時間…まだ外が青く暗い所も所々ある外をひたすら歩く。

明るい訳でもないし松明もない…だがこれぐらい光があれば問題なく進める。

出来れば朝日が上り、周りが明るい時間帯が望ましいのだが…それはモンスターと遭遇するかしないかで左右されるだろうなぁ。

モンスターと戦闘して勝てるとは言っても、目の前の事に集中しなければ殺される。

足元や周りを気にするのも大事だろうが、まだ余裕が足りないからそこまで手が回らない今を考えれば、控えめに言って迷子になるだろう。

そうなったら今日中に終わらせたいクエストが終わらない可能性が高くなって狩猟時間を過ぎてクエスト失敗になってしまう…それは避けたい。

だからこの時間にしたのだが…早計だったろうかと不安になって来るなぁ。

 

「…この辺りに夜目のモンスターって居たか?ランポスは…いや、殆ど夜でも活動するか。そう考えると焦りすぎたなぁ…いや、夜でも活動しなきゃならない時もあるんだ。今のうち慣れておこう」

 

そう自身を鼓舞して目的地までひたすら歩き続ける。

モンスターと鉢合わせしない事を願いながら歩き続けていると朝日が徐々に上に到達しようとしてる頃なのだろうか、明るさが出てきて道も分かるようになってきた。

こうなれば後は楽なもので、あっという間に森と丘のベースキャンプに到達して、武器や防具の最終点検をした後、狩猟場所として指定されている森と丘へと足を進めた。

 

「…すげぇな…」

 

道中も自然で溢れていたが、あくまでも平原…面でしか見えていなかったし、アプトノスも群れなんだろうけどどれぐらいの群れなのかを推し量ることも出来なかった…だけれど、ここから見る景色は絶景の一言。

アプトノスが遠目ながら狭い道を通る姿が確認出来るし、目の前でアプトノスが子供と共に数匹の群れで水を飲んでいる。

子供の頃は結局村周辺だけで完結していた世界も、大人になれば大きく、更に広くなっていく…それを自覚させられる。

こんなに広いものを俺は知らなかったし、知ろうとしなかったのかもしれない…何とも言えないなぁ。

 

「…綺麗だな。あっと、そろそろ行かなきゃか」

 

狩猟時間もあるのだから、あまりのんびりしていられない…勿論、焦りと油断は禁物だけれど、時間とは有限。

今回はアオキノコを10個採取するという、新米なら誰もが通るであろうクエストを受注している。

採取するという行為自体難しい訳では無いが、ブルファンゴが食べてあちこち探すのは面倒だ…まだ見ていたい気持ちを押し込め、アオキノコを探しに行った。



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