ニュータイプが行く仮想世界 (メカ好き)
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第一回BoB
第一回BoB・予選


諸君、私はガンダムとソードアート・オンラインが大好きだ!
と言うわけで投稿します。


 VRMMORPG『ガンゲイル・オンライン』

 その最強を決めるイベント『バレット・オブ・バレッツ』

 俺はそれにエントリーした。しかし、エントリー締切三十分前になってその事を後悔した。

 

 俺には他人とは違った()がある。他人の感情や気配を感じる事が出来たり、電子機器に対する理解力が高かったりなど目に見えない()が俺にはあったのだ。

 幼い頃はそれが異常だと気が付かず、他人から敬遠されて来た。今はこの()を外では隠しながら生活している為、普通に友人も居るし省かれても居ない。

 

 閑話休題

 

 今、俺の全身を今まで感じたことの無い悪寒が駆け巡っている。その原因は今、BoBのエントリーを終えていた。短く切りそろえた飾り気のない色素の薄い金髪に碧眼、そしてこれまた飾り気のないロービジで機能性重視な現代風戦闘服に身を包んだプレイヤー。以前、たまたま連行される連続殺人犯を見た事があるが、ソイツが可愛く見えるくらいこの金髪ヤローはヤバい。

 

 エントリーを取り消すか?

 

 一瞬その考えが頭を過ぎったが、首を振って振り払う。

 ここで逃げたら()()()と同じだ。()()()()()()()()()()()()()()()

 俺は覚悟を決めた。

 

 

 

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 予選は難なく勝ち進み今から決勝戦。本戦へはそれぞれの予選リーグの1位と2位が出場出来る為、この決勝は勝たなくてもいい。しかし対戦相手が問題だった。

 

 

 Mafty Naveyu Erin vs Strizer

 

 

「マジで落ちたい」

 

 思わず口から零れてしまった本音。ヤツの予選を見たが、アレは間違いなくプロだ。しかしあのヤバい気配で正規軍人は無いだろう。となるとPMC所属の傭兵とかか?マジで勘弁してほしい。

 

「まあ、いつか殺り合う訳だし早いか遅いかの違いだけか···」

 

 恐らく弱気な選択をすれば本戦で呑まれる。あの化け物相手に勝ちに行かなければならない。カウントが10を切った所で通常よりもバレルの長い愛用のS&WM500カスタムをいつどの方角にも撃てるように自然体で右手に持つ。

 

「さあ、行くぞ。なんとでもなるはずだ!」

 

 

 

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 フィールドは『今は亡き繁栄の残響』。近未来の滅びた都市のメインストリートを中心としたモール跡地と言う設定のフィールド。メインストリートは出れば運が悪いと蜂の巣確定なので、ここを挟んで撃ち合うのがセオリーだ。

 

 しかし俺、そしてヤツもそんなセオリー通りの戦いなどしない。ヤツは今までの予選を見れば一目瞭然。

 俺は力の影響か仮想世界での動きに違和感がない。いや、むしろ仮想世界の方が思い通りに動く。それこそ軽業スキル無しで三次元起動が出来る位だ。それ以外にも俺は自分を中心とした半径約100m内の空間の構造、プレイヤーやmobの位置などを正確に把握できるし、アシスト無しで武器を使いこなす事が出来る。

 

 閑話休題

 

 

「まあ、こんな強烈な気配だと距離なんて関係ないな」

 

 フィールドに転送された瞬間から感じるサトライザーの気配。どうやらヤツはメインストリートを挟んで反対側に居る。

 それにしても、サトライザーの事を抜きにしても今日の俺は変だ。いつも以上にアバターが馴染むし空間把握の範囲も広がっている。更には銃もいつも以上に容易く扱えている。ヤツとの接触が俺の力に何か影響を及ぼしているのか?

 しかし、今考える事では無い。

 

 ヤツのプレッシャーに呑まれたら負けだ。とにかく攻める。いつもやっている事だ。

 

 俺のステータスはSTR−AGI型だ。プレイスタイルは簡単に言えば隠密行動か弾を避けるか光剣で弾きながら接近。S&WM500カスタムで頭を撃ち抜くかそのまま詰めて光剣で滅多切りにするかどちらかだ。

 

 サトライザーはプロだ。故にクロスレンジは無策だと自殺行為。必然的に撃ち合いで殺すかクロスレンジでの対応ができない程のスキを作って斬るかになる。

 

 とりあえずメインストリートを渡り切ること、それが出来なければ始まらない。

 

 

 

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 俺はサトライザーから離れた場所を選択し横断した。まあ、500メートル以上離れていたから気付かれてはいない。そのまま()をフルに使ったスニーキングでサトライザーに接近、頭上を取る事に成功する。奴がいたのはモール一階中央の広い区画の中央。吹き抜けになっており俺は3階からヤツの頭に銃口を向けシステムアシスト無しで引き金を引いた。

 

 バレットラインの無い弾丸。これで終われば良かったが世の中はそうそう甘くない。事実サトライザーは紙一重で銃弾を避けてみせた。

 

Oh, I didn't notice.(おお、気付かなかったよ。)It's a great sneaking skill.(素晴らしいスニーキングスキルだ。)

 

 ヤツが何か言っている間に俺は柱や天井を使い三次元機動を行いながらヤツに銃弾をぶち込みまくる。頭、心臓、肝臓、頸動脈などの急所に向けて飛んでゆくがその殆どを避け、避けきれない物はナイフで弾かれた。しかし、その間に俺は一階に着地する事が出来た。行動が制限される空中に留まるのは危険だ。特にヤツ相手だと尚の事。

 

 俺は撃ちきった右手のS&Wを片手だけで素早くリロードしながら左手のS&Wの銃口をサトライザーから離さない。

 

 対峙してみて改めて思い知らされる。凄まじいプレッシャー。正直言って怖い。だがそれ以上に負けたくない。負けられない。こんなヤツに土足でこの世界を踏み荒らされてたまるものか!!

 

「来い!リアルでの経験と技術の差が仮想空間での戦闘能力の決定的差ではないということを・・・教えてやる!!」

 

 俺はサトライザーに向けて引き金を引いた。

 

 

 

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 サトライザーとの会敵からどれ位時間が経っただろう? ヤツとの殺し合いは序盤は俺の圧倒的不利から始まった。当たり前だ。歴戦の傭兵とただのゲーマー。結果は分かりきっている。しかし、今では互角以上に戦えている。それはなぜか?

 

 早い話が俺の()が拡張していっているからだ。サトライザーとの戦いが長くなるほどアバターが馴染み、空間把握能力が強化され、より正確に深くヤツの思考を読む事が出来るようになってゆく。火事場の馬鹿力なのか、それとも···

 

 サトライザーもさるもので自分の思考を読まれている事に気が付いたのか、ギリギリまで次の行動の思考が読め無くなった。

 

 ヤツが行っているのは反射と思考の融合とでも言おうか。文字通り反射と思考を同時に行う事で思考を読まれた時のリスクを減らしているのだ。残ったリスクは経験と技量のゴリ押しで解決している。この化け物め。

 

 正直自分のこの状態がいつまで続くのか分からない。早急にケリを付ける必要がある。

 

 俺は後退しながらヤツの銃撃をワザと避け損ねた。サトライザーは一瞬眉を動かしたがそれだけ。冷静に俺に追い縋ってくる。かかった。

 

 

 カラン

 

 バッ

 

 

 文字にできない様な爆音と強烈な閃光が俺とサトライザーの丁度中間地点で発生する。俺のスタングレネードだ。

 

 ヤツの銃撃を利用して安全ピンとフックを外したのだ。モール内は薄暗く足元は瓦礫などで見えづらい。更に俺はグレネードの類は装備のロングコートの内側に隠している。サトライザーが反射と思考の融合の状態で動いていたから出来た芸当だ。

 

 俺は閃光の中、()をフル活用してサトライザーの頭に向けてS&Wの引き金を引く。それをヤツは目と耳が潰されている状態で首をかしげる事で避けやがった。そのまま突っ込んで来ようとするサトライザー。

 

 

 チュイチュイーーーーーーン

 

 バスッ

 

 

「ッ!?」

 

 サトライザーが体制を崩した。俺が撃った銃弾が跳弾し、ヤツの右足首に喰らいついたのだ。俺はS&Wの引き金を引いた。両腕でガードされたが500S&Wマグナムの威力は強力だ。一瞬で両腕が使い物にならなくなる。しかしこちらも弾切れ。だが俺はそれを織り込み済みでサトライザーがガードに入った瞬間に間合いを詰めていた。

 

「ここから···」

 

 右手に握るのは光剣アメノムラクモG。

 

「ここから出ていけーーーーーーーーー!!」

 

 俺は、その光の刃で視界の塞がったサトライザーの胸を貫いた。




本編に書けなかった解説
ニュータイプ能力を利用したスニーキング
仮想世界における空間把握能力を使い自分のいる空間を詳細に理解しそこに自身を溶け込ませる。仮想世界だから出来た事。


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暴走・運命の出会い

第二話で主人公の名前をようやくちゃんと出せる自分の文才のなさよ···
と言うわけで第二話です。
アンケートを実施します。詳しくは後書きを。


ある少年がいた。

 

 

その少年の趣味は昆虫標本の収集。

 

 

それは純粋な昆虫への興味から来るものではなかった。

 

 

死んだ生物の魂はどこへ行くのか

 

 

その答えを得るために数えきれない程の虫を殺し、そして···

 

 

 

幼馴染で真面目に結婚を考える程親しかった『アリシア』という少女を一瞬の躊躇無く殺した

 

 

 

そして見てしまった。

 

 

 

彼女の額から逃げ去る金色の光を

 

 

 

それからと言うものの、その光を捕らえる事だけを目的に生きる事になる

 

 

多くの命をその手で奪いながら···

 

 

 

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─────

 

 

 

「ああ、クソ!!」

 

俺は苛立ちを隠しもせず電柱を蹴る。ゴンッと言う鈍い音が出るが気にする余裕がない。

 

昨日のBoB予選の決勝。サトライザーにトドメを刺した時に流れてきた、ヤツの過去らしきビジョンと本質とも呼べる想念。それのおかげで俺は頭がおかしくなりそうな目にあいブラックアウト。気が付けばアミュスフィアを付けたまま朝を迎えていた。

 

更に悪い事があった。どうも戦闘中の()の拡張は火事場の馬鹿力では無かったようで、仮想世界でも無いのに広範囲の人々の思考が流れ込んで来た。しかも制御不能と言うおまけ付き。俺は一人っ子で両親も結婚記念日を外泊で楽しんでいる。両親が薄情だって? 俺が家事やるから外泊でもして楽しんで来たらって言ったんだよ。今だに新婚ラブラブっぷりを継続する両親の結婚記念日なんて年頃の息子にとっては地獄でしかない。

 

閑話休題

 

流れ込んでくる思考の中には多少の近所付き合いのある人間の知りたくも無かった本音もあったので一旦外出する事にし、今に至る。

 

俺は既にバイクを持ってはいるものの、今の精神状態じゃ確実に事故るのが目に見えている。熱くてダルいが己の足で移動しているわけだ。

 

取り敢えず山上にある神社を目指す事にする。あそこの神主さんの思念は穏やかで心地良いのだ。それにこの時期なら訪れる人は少なく今の俺にとってはオアシスのような物。故に足早に人通りの多いアーケード街を通り過ぎるつもりだった。

 

たすけて···

 

 

「ん?」

 

弱々しい思念を感じた。何か、助けを求めているような···

それに、何故かその思念の持ち主をひと目見たいと感じてしまっている。こんな事は初めてだ。

 

取り敢えず、思念を感じた裏路地に入ってみる。

 

少し進むと表通りから見えない所で3人の高校生くらいの女子が同じ位の女子一人を囲っていた。囲われている女子は地面に座り込み、尋常じゃない様子で嘔吐を繰り返している。

 

その様子を見て、俺の中で何かが弾けた。

 

「どけ」

「え? きゃあ!?」

 

俺はリーダー格らしき女の首根っこを掴んで引っ張って退かす。その勢いで派手に地面に転がった様だが気にする事じゃない。

 

今だに辛そうな少女の状態に見覚えがあった。確か心的外傷後ストレス障害だったか。俺は少女の傍らにしゃがみ込むとその背中を優しく撫でる。

 

「大丈夫だ。落ち着いてゆっくり深呼吸をして」

 

そう言いながら背中を撫で続けると、少しづつ呼吸が落ち着いてきた。

 

「イッタイわね!何すんのよ!!」

 

突然の大声に少女がビクリと震える。その様子に思わず俺は彼女をイジメてたであろう女共をプレッシャー付きで睨みつけた。

 

「「「ひっ」」」

「次コイツに何かしてみろ、潰すぞ」

 

女共はほうほうの体で逃げていった。異臭のする汗ではない水で足を濡らしながら。

 

自分でも信じられない程ドスの利いた声が出た。あ〜、やっぱ昨日の事でイライラしてんな、らしく無い。

 

「おい」

「っ、はい···」

 

俺の呼びかけで初めて少女が顔を上げた。彼女のその鳶色の瞳と目があった瞬間、

 

 

ビジョンが流れる

 

 

ある女性がいかにも正気で無い男に銃を向けられる姿を

 

 

ビジョンが流れる

 

 

その男を少女が撃ち殺す光景を

 

 

ビジョンが流れる

 

 

学校で孤立してしまった少女の涙を

 

 

ビジョンが流れる

 

 

かなりの大きさのスナイパーライフルを持った水色の少女の姿を

 

 

泣きながら助けを求める幼い少女の姿を

 

 

「あの···」

「···あ」

 

ビジョンが消え、仮想世界から現実に帰って来た時のような感覚と共に、整った少女の顔がドアップで視界に映り込んだ。

 

···やらかした。アレはこの少女の過去と想念か!ああ、本当やらかした!!

 

「···すまん、ぼーっとしてた。取り敢えずあのクソどもが漏らして臭えから、さっさと移動するぞ」

「は、はい」

 

 

 

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─────

 

 

 

取り敢えず、彼女を連れて家に帰った。これだけ聞くと何やってんだと言われそうだが、俺の()の話をするのに耳が多いと面倒だし彼女の過去の事もある。それにこの時間ならお手伝いのハナさんが家にいるので、彼女も俺が変な気を起こさないと思ってくれる筈だ、たぶん。

 

今、俺達はリビングで向き合うような形でソファーに腰掛けている。テーブルにはハナさんが入れてくれたハーブティーが心の落ち着く香りを漂わせていた。

 

「···あ、あの、助けていただいて、ありがとうございます」

「良いって、ああ言う輩は気に入らないからな」

 

まあ、やりすぎた感が否めないが。

 

「···そいや、自己紹介をしてなかったな、楠田優輝(まさき)だ」

「朝田詩乃といいます」

「朝田な。よろしく。あと朝田は高一だろ?俺もそうだから敬語は無しな」

「うん、わかった」

 

取り敢えず、()の事説明して謝らないとな。朝田の過去も重すぎるし、何よりこのまま黙っているのはフェアじゃない。

 

「朝田、実はお前に謝らなければならない事があるんだ。その為に家に上げた」

「? 何?」

「俺には、一般的にテレパシーとかサイコメトリーとか言われている()があるんだ」

「···え? ちょっと待って意味わからない「それで」」

「故意では無かったがお前の過去や想念を見てしまった」

「···」

 

顔を青くする朝田。そりゃそうだ。俺が見たビジョンから想像する限り、朝田は人を殺した事で周りから拒絶されている。

 

「本当にすまない」

 

俺は頭を下げた。今日知り合ったばかりの人間に過去と心の内を覗かれたのだ。彼女からしたら溜まったもんじゃ無いだろう。

 

「···私の過去を見たのよね」

「ああ」

「···私が人を殺したところも」

「ああ」

「っ、···なんで自分の秘密を打ち明けてまで謝ったの? 黙ってれば良かったじゃない」

「フェアじゃないからな。それに、朝田は良いやつだからな。話して良いと思ったんだ」

「···馬鹿じゃない、私は人を殺したのよ!」

「朝田は銃を向けられた母親を助けようとしたんだろ? 俺が見た断片的な過去から推測するに、母親を守る為に銃を奪ったは良いが、犯人がお前に襲いかり思わず銃を撃ったってところか。朝田が高校に進学できているところを見るに、正当防衛が認められたんだろう?」

「···」

「それでも、お前は正当防衛を免罪符にせずに、人を殺した事を受け止めている。お前は強いよ。強くて優しい女の子だ」

「···私が強い?」

「ああ。だが今まで、休まる事なく心の糸を張り詰めてきたろ? そんなんじゃ糸が切れちまう」

 

そう言って俺は朝田の座るソファーの丁度空いてる所に腰掛ける。そして、彼女の頭を優しく撫でた。幼い頃、力故に周りに拒絶され泣いていた俺に、母がそうしてくれたように···

 

「朝田は頑張った。だから全部吐き出して休め。休んで良いんだ」

「っ、···う···っ·······」

 

朝田は俺の胸に顔を押し付けるようにして泣き始めた。色んな理由で周りに頼れなかったんだろう。今は泣け。また歩いていける様に···

 

 

 

─────────

───────

─────

 

 

 

「どうですか、詩乃さん? お口にあいましたか?」

「はい、美味しいです」

「久しぶりにハナさんのお料理を食べたけど、やっぱり美味しいわね」

「いえいえ、奥様の料理には負けてしまいます」

 

女三人寄れば姦しいと言うが、ここまで男にとって居づらい環境になるのだと初めて知った。状況を説明すると、あの後しばらく経ってから両親が帰ってきたのだ。お昼に二人が帰ってくる事を忘れていた俺は大いに慌てた。俺が家に同年代の少女を上げた事を母に知られれば厄介な事になる。しかし、逃げ場がある訳も無く、朝田と両親はエンカウントした。

 

俺の懸念通り母は驚きながらも大喜び。そのまま自己紹介をすると朝田を昼食に誘った。朝田は家族の団らんに混ざる事に気が引けて断ろうとしたが、テンションマックスの母から逃げられるはずも無く、昼食を食べていく事になった。

 

父は朝田を見た瞬間からこうなる事を予想してたのか驚く素振りも見せず母の提案を許可していた。

 

 

「優輝とはどこで出会ったの?」

「となると···今日出会ったばっかりなの!?」

「良いわね〜、青春してるわね〜」

「え!?一人暮らし!?実家は東北!?」

「よし、詩乃さん、今日からこの家に住みなさい」

「詩乃さん、貴女が人を殺した事があるからと言って私も旦那もハナさんも貴女を拒絶しません。だって息子が手を差し伸べた人なのだから」

「うん、よしよし。辛かったわね」

「よし、今日は客間で私と寝ましょう!ガールズトークよ!」

 

 

···ありのまま今起こった事を話そう。いつの間にか朝田······詩乃が家に住む事になっていた。な···何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何がどうなってそうなったのか分からない···催眠術だとか誘導尋問とかそんなチャチなもんじゃあ断じてない。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。

 

と言うわけで詩乃が家に住むのにたちまち必要な物を家に運ぶことになった。もちろん力仕事に俺と親父も駆り出された。とは言え詩乃住んでいたマンションは家から徒歩5分と近かったし、運び込むのは当面の着替えと必需品、そして···

 

「アミュスフィア? 詩乃ってゲームするんだ」

「そうだけど、悪い?」

「いや、俺もアミュスフィア持ってるし公式大会に出るくらいにはやり込んでるよ」

「へ〜、どんなゲームをしてるの?」

「ガンゲイル・オンライン」

「え!?優輝もガンゲイル・オンラインをしているの!?」

「も、ってことは詩乃もか。あれ?でもPTSDは大丈夫なのか?」

「どうも仮想世界では大丈夫みたい」

「そうか。そうだ、今日のBoB本戦前に向こうで会わないか?」

「いいわね。本戦の観戦でもするの?」

「いや、その本戦に出るから会うとしたらその前じゃないと駄目なんだよ」

「本戦に出るの!?凄いじゃない!」

 

まさかの話題で盛り上がりながらも作業の手を止めず、予定より早く荷物の運び入れを終わらせた。

 

 

 

─────────

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─────

 

 

 

俺は自室に戻ってアミュスフィアを被った。詩乃との約束の時間までまだまだあるが、仮想世界でどこまで感覚が変わったのか確認しなければならない。力の制御はいつの間にか出来るようになっていたのは不幸中の幸いだった。

 

俺はベッドに仰向けで横になり仮想世界への扉を開ける言葉を紡いだ。

 

「リンクスタート!」




ニュータイプは親に恵まれればメンタルが強い説。

アンケートを実施します。本編だけじゃ分かりにくいかな?と思いシノン視点の話を入れるか迷ってます。皆さんの意見をお聞かせください。


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覚醒した力・力の芽生え・BoB本戦、狙撃

お待たせしました。BoB本戦序盤が始まります。

修正しました。


 仮想世界に降り立った瞬間、昨日までと同じ世界なのか、同じアバターなのか疑った。それ程までに世界が視える、人々の思考が分かる、アバターが馴染む。まるで何でも出来そうな全能感に、俺は支配された。これは()の拡張なんて生易しい物じゃない。進化と言うべき現象だろう。

 

 しかし、その元凶というべき存在を思い出すと、高揚感はすぐさま冷めた。ヤツがいる。あんな危険な存在が、この世界にいる。俺の大好きなこの世界に、詩乃がいるこの世界にヤツがいる!!頭に血が上る。しかし、それではヤツには勝てない。大きく生きを吸い、熱を全て出すように吐く。

 

 今のままではヤツに勝てない。だが、新たな武器が有れば勝てる。丁度お誂え向きのレアドロップがホームのボックスの肥やしになっていた筈。今の俺ならば十二分に扱えるはずだ。俺は直ぐ様自分のホームへと向かった。

 

 

 

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 ─────

 

 

 

 俺は新しい銃の調整と試射を終えるとストレージにそれを突っ込み、街に出た。すると今日初めて会い、家に住む事になった少女の気配を感じ取った。まだ待ち合わせ時刻まで時間はあるが待たせるのも忍びない。直ぐに彼女に会いに行くことにした。

 

 丁度ロボットホースの停留所?があったので一頭拝借して向かう。乗って見た感じ、速度はバギーに負けてない。それに恐らくこっちの方が踏破性能は上だろう。本戦でも数カ所に乗り物が用意されているらしいので、ここで確認できたのは行幸だ。

 

 詩乃の気配まで後2キロを切った。そこで、彼女の気配の直ぐ側で余り良くない気配がする事に気が付いた。はっきり言ってネチャネチャと粘着性を感じさせる嫌な気配だ。この手の気配の持ち主はストーカーである事が多い。

 

 俺はロボットホースの速度を上げた。ショートカットの為に車道でなく歩道を選び、人垣を跳び越え、それが無理ならビルの壁を走った。

 

 そして目に入ったのは銀髪の青年に腕を掴まれそうになっている詩乃らしきアバター。俺は直ぐ様ロボットホースの上からジャンプし銀髪ヤローに飛び蹴りを放つ。

 

「ラ○ダーキィック!!」

「ボガッ!?」

 

 顔面に蹴りを受けた銀髪ヤローは吹き飛んでビルの壁に突っ込んだ。それを目尻に俺は詩乃の気配のする青緑色の髪のアバターに耳打ちする。

 

「行くぞ、詩乃」

「え? もしかして···きゃっ」

 

 俺は答えを聞かずに詩乃を所謂お姫様抱っこしてジャンプ。そのまま追いついたロボットホースにまたがってその場を後にした。

 

 

 

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 俺たちは一先ずホームに戻った。あの銀髪ヤローの事があるので決まった人間しか入れないホーム位しか安全が確保できないからだ。

 

「取り敢えず改めて、楠田優輝ことマフティー・ナビーユ・エリンだ」

「うそ、マフティー!?」

 

 俺の自己紹介に驚く詩乃。それにしても髪型と顔立ちがリアルに似すぎだろ。

 

「そんなに驚く事でもないだろう?」

「驚くわよ!未だサービス開始から半年経ってないGGOで数々の伝説を打ち立てて来たマフティー・ナビーユ・エリン!今回の優勝候補じゃない!」

「あれ? 俺ってそんなにやらかして来たっけ?」

「光剣でバレットラインのないスナイパーライフルの初弾を切ったり、大量のレアドロップを市場やオークションに流したり、未だに死亡記録がなかったり、やらかしまくってるじゃない!」

「おふ、ようよう考えてみると結構やらかしてるな、俺」

 

 ()があるとは言え、これはひどい。次からはちょっと自重しよっかな。なおサトライザー、テメーはダメだ。

 

「そいや詩乃のプレイヤーネームは?」

「シノンよ」

「···もうちっと捩ろうぜ。顔も目と髪の色以外はリアルとよく似てるんだしさ」

「うっ」

 

 息が詰まる詩乃改めシノン。そう言えば···

 

「あの銀髪ヤローは何なんだ? シノンのストーカーか?」

「違う······と思うんだけど···」

「? どした?」

 

 何やら悩み始めるシノン。しかし直ぐに顔を上げて話しだした。

 

「彼、シュピーゲルって言うんだけど、私をGGOに誘ってくれた人なの」

「となるとリアルの知り合いか?」

「ええ、同じ学校の友達······だったんだけど···」

「だった?」

「···今日、たまたまあそこで会ったとき、彼が気持ち悪くて仕方がなかったの。彼から何か粘着質な物を感じてしまって···」

「それ、多分合ってるぞ。俺も感じたしな。あの手の気配の持ち主はストーカーか片足つっこんでる予備軍だ。実際母さんのストーカーがあんな気配をしてたし」

 

 ってあれ?

 

「シノン、俺の()と似たようなのを持ってたのか?」

「···いいえ、昨日まではこんなシックスセンスの様な物は持ってなかったわ。最初にこれに気が付いたのは···その···」

「?」

 

 顔を赤くして俯くシノン。あ、なんかもじもじし始めた。どしたの?

 

「っっ!!貴方に慰められて胸に顔を押し付けてた時よ!!」

 

 なるほど、あの時か。今思えば大胆な事したよな。それ以前に家に上げた時点で普段じゃあり得ないか。というかさっき仮想世界とは言えお姫様抱っこしちゃったよ! なんか急に恥ずかしくなってきた。

 

「「···」」

 

 き、気まずい。ああ、でもあの銀髪ヤローの対策立てないと。

 

「あ〜、シノン? そのシュピーゲルってヤツと遭遇しない為にもここで観戦するのはどうだ?」

「···え? ここで観戦出来るの?」

「ああ、そこに空中投影タイプのモニター端末が有るだろう?」

「···貴方、稼いでるのね。さすが月収100万に届く男」

「いやいや、100万は流石に無い。大体50万ちょい位だって」

「それでも十分異常よ」

「うっ、まあ、そういう事だからシュピーゲルに会いたく無いならここで観戦するといい」

「ありがとう」

「どういたしまして。じゃ、俺はもう行くな」

「うん、がんばって」

「ああ、

 

 

 勝ってくる」

 

 

 

 ─────────

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 ─────

 

 

 

 とうとう始まったBoB本戦。俺は運良く山岳の頂上に転送された。サトライザーの気配は森林フィールドから感じる。周囲2キロ範囲内にこちらに向かってくる敵は無し。これなら行けるだろう。取り敢えず気配を溶け込ませ、アイテムストレージから対サトライザー用の秘密兵器を取り出す。

 

 それは芸術品と呼んで差し支えの無い程洗礼されたデザインの狙撃銃だった。名をSVLK-14S。『スムラク』とも呼ばれるコイツはマガジンが無い為単発だが、射程が4000mを超える化け物狙撃銃だ。俺のスムラクはスコープは疎かバイポット以外何も付けていない。しかし、これが俺の最適解。

 

 俺は伏せた状態でスムラクを構え、目を閉じる。今の俺の空間把握は俺を中心に半径2キロ程の円を描いた範囲に及んでいる。それを形を変えてサトライザーの気配へと伸ばしていく。慎重に伸ばしたかいあって、気取られる事なくヤツを捉えられた。しかし、ここで撃っては恐らく避けられる。だから待つ。ヤツが獲物を定める時を···

 

 それは直ぐにやってきた。狙われたのはドラグノフ狙撃銃を構えたスナイパー。スニーキングで後ろから忍びよりナイフで仕留めるつもりの様だ。俺は集中力を更に高め強引に意識レベルをゾーンに突入させる。流れる時間が極端に遅くなり、必要な情報以外は遮断される。予選でのヤツの動きと現在感じるヤツの思考からヤツがこの先どの様に動き目標を仕留めるのかを直ぐ様予測。最高のタイミングで着弾させる為に、その時のヤツの頭の位置と着弾までにかかる時間を直ぐ様計算。ヤツの頭に銃弾が飛んでいくようにスムラクを構え直す。

 

 ビジョンが視える。

 

 ゆっくりとした時間の流れの中、ヤツの動きの先と俺の弾丸の先がまるで出来の悪い連続写真の様に視える。そして、その二つが完全に交差した。

 

 タァン!!

 

 短くも鋭い銃声を置き去りにして.408chey-tac弾が飛んでゆく。そして、まるで吸い込まれるようにスナイパーに襲いかかったサトライザーの頭部を貫いた。撃たれた反動で横に倒れるサトライザー。動かないヤツの上にDEADの表示が上がった。

 

 集中力を通常戦闘時のレベルまで落とす。すると時間が通常の早さに戻り空間把握も元の状態に戻る。周囲やここを狙撃できるポイントに敵影無し。どうやら乗り越えれた様だ。

 

 倒した。ヤツを、サトライザーを。それは達成感と言うよりかは安堵に近かった。正直あんなサイコパスがいる中で大会を楽しむ事なんて出来ない。ようやく、ようやくこれから俺のBoBが始まるのだ。

 

 俺はスムラクをアイテムストレージにしまうと、両腰のS&WM500カスタムを引き抜く。

 

「さぁて、本気で遊ぼうか!!」

 

 俺は開放感に身を任せ山岳の頂上から飛び降りた。




サトライザーが呆気なく殺られたように見えますが元ネタが分かる人は仕方が無いと分かると思います。


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まだ、未熟な女神の決意・BoB決着

アンケートの結果投稿しました。本章エピローグです。
楽しんでいただけたら幸いです。
ではどうぞ!


『止まらない!止まらないマフティー・ナビーユ・エリン!!何という事でしょう!最初に同じリーグ予選突破者であるサトライザー選手を4キロ以上離れた場所からの狙撃で仕留めてから、まるで水を得た魚のように次々とライバルたちを倒していく!既に今大会の最多PKは彼で決まってしまった!』

 

 画面の中で彼、マフティーが走り回る。見たところ、彼は一度も被弾していない。最小限の動きで避け、マグナム弾を相手の頭に撃ち込んで通り過ぎてゆく。

 

 一瞬見えた表情からは、ここを出る時に感じた何かを討ち果たさんとする決意の色は見られない。ただ全力で、このゲームを楽しんでいる。

 

 私はどうだろうか? このゲームを始める切っ掛けは弱いと思っていた幼い自分との決別だった。でも優輝は、マフティーはその弱さもまた強さだと教えてくれた。私が今この世界で求めるものは何なのか···

 

 

 

 

 

 実はもう分かっている。

 

 

 

 ─────────

 ───────

 ─────

 

 

 

 優輝との出会いは唐突だった。私が遠藤さん達からお金の要求を突っぱねて、発作を引き起こされた時、彼は現れた。途中までは意識が少し朦朧としていたから分からなかったけれど、背中を優しく撫でる彼の手の暖かさだけはハッキリと覚えている。

 

 遠藤さん達を追い払う時の優輝はちょっと怖かったけれど、あの事件以来ここまで直接的に助けられた事は無かった私にとっては些細なことだった。発作でモドしていた私を気遣って、ペットボトルの水を買って口を濯ぐよう言ってくれたのも有るけれど。

 

 でも、だからと言って初対面の男の家にホイホイ付いて行ったのは流石にどうなのかと今になって思う。まあ、結果オーライと考えましょう。

 

 閑話休題

 

 優輝の家は、周りを塀に囲われた、所謂高級住宅と言うものだった。最初は尻込みしたけれど、人の良さそうなお手伝いさんのハナさんに出迎えられた事で緊張は取れた。

 

 リビングに案内され、深く腰掛けるのが躊躇われる高そうなソファーに浅く腰掛ける。そして聞かされたのは優輝の持つ力の事、そしてその力で私の過去を見て、心に触れてしまった事。彼は私にその事を謝罪した。

 

 意味が分からなかった。黙っていれば良かったのに、自分の秘密を打ち明けてまで謝ってきて、あまつさえ人殺しの私を良いやつと言う優輝が理解出来なかった。

 

 でも、優輝の心からの言葉で、私の中で溜め込んできた色々なものが決壊した。彼の胸に顔を埋めて泣いた時に感じたのは、彼の暖かい心だった。

 

 その後、結婚記念日のお泊りから帰ってきた彼の両親、と言うか母親の椿さんの提案で昼食を頂く事になった。その最中、椿さんと話に花を咲かせているといつの間にか楠田家に居候させてもらう事になっていた。あの事件の事も話して断ろうとしたけれど逆に慰められてしまった。

 

 それから色々と準備している時に、彼もGGOプレイヤーである事を知った。それも今回のBoB優勝候補の一人であるマフティー・ナビーユ・エリンだったのだから驚きだ。

 

 更に驚いた、と言うより困惑したのは新川君···シュピーゲルの事だった。今日グロッケンであった時に彼から感じた、あの粘着性のある気配。それに怯えてしまって一歩下がった時に見せた狂気を宿した目。

 

 正直、何で今まで気が付かなかったのか不思議で仕方が無い。マフティーは私にも彼の言う()があると言っていたけど······もしかしたらマフティー、優輝と出会って目覚めたのかも知れない。

 

 もし、彼と出会って居なかったら、私の未来は明るいものでは無かっただろう。この出会いは、運命ってヤツなのかしら? でも、優輝なら私が勝ち取ったものだって言いそう。

 

 

 

 

 ホント、こんなに濃い一日は生まれて初めて···

 

 

 

 ─────────

 ───────

 ─────

 

 

 

 画面の中で暴れ回っているマフティー。最後になって強敵と当たり苦戦しているけど、とっても楽しそう。正直相手のプレイヤーが羨ましい。こんな楽しそうな時間を彼と共有出来ているから···

 

 自分でも少しチョロ過ぎな気がするけど、私は彼に惹かれ始めている。でもちょっと悔しい。彼は私の過去も心も見て感じたと言うのに、私は彼の事をほとんど知らない。彼を知りたい、感じたい、出来れば、ずっと一緒にいたい。でも寄り掛かるのはダメ。

 

 

 

 

 

 私は強くなる。GGO(ここ)でも、現実世界(リアル)でも、彼の隣に立って一緒に歩んでいく為に···

 

 

 

 

 

 

 

 

『決まったーーーーーーーーーーー!!!!激戦を制し、見事ガンゲイル・オンライン最強の座に君臨したのはーーーーーーーーーーーー···マフティー・ナビーユ・エリンだあぁぁぁああ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも先ずは、最強となった彼を笑顔で迎えよう。今なら、今まで生きてきた中で一番の心からの笑顔を浮かべられそう。そして言うんだ。

 

 

 

 

 

 私と出会ってくれてありがとうって




書いてみて思ったんですけど、ウチのシノン、ちゃんとシノンしてますかね? 大丈夫ですかね!?

閑話休題

次章は時間が飛んで第二回BoB後となります。お楽しみに!


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第三回BoB
近況・魔改造銃


本日2話目です。どうぞ!


 詩乃と出会ってから、つまり俺が第一回BoBで優勝してから3ヶ月が経った。あの日の翌日は彼女の実家への事情説明から本格的な引っ越しなど色々と忙しかった。部屋は俺に弟か妹が生まれた時の為に両親が二部屋ほど開けていたのでそのうち一部屋が詩乃の部屋となった。

 

 それと、詩乃は学校を転校する事になった。あの女共の事もあったがそれ以上に新川某の暴走が懸念された為だ。休み明けからは俺と同じ学校に通っている。

 

 ウチは母が名家の出である他に、父が自分で立ち上げ大成功した大きな会社の社長と言うのもあって、俺もそこそこレベルの高い進学校に通っている。

 

 詩乃はそこで学費の免除を受ける程の優秀な成績を収めた。元々東京に出て来て一人暮らしをしてきただけあって要領がいい。ウチに住みだして、精神的にも体力的にも余裕が出てきたのもあって、前の学校に居た時も学費の免除を貰っていたそうだが、その時よりも成績が良いくらいだ。

 

 寧ろ俺が勉強を教わっているくらいだ。俺の成績も悪くは無いのだが、得意分野と不得意分野で差が激し過ぎる。現国とか古文とか歴史とかどこで使うんだよ要らないだろ。

 

 リアルはこんな感じで順風満帆であったがGGOはそうでも無かった。話は第一回BoB本戦に遡る。俺はあるプレイヤーと本戦最後の戦いを演じた。そのプレイヤーの名は闇風。現在ではランガンの鬼と呼ばれ第二回BoBで戦術眼に長けレア武器を適切に使い分けるゼクシードと、空間把握を十全に使いこなし5キロオーバーの狙撃を成功させるシノンを下して優勝した実力者だ。

 

 当時、予選前までの空間把握の範囲の問題で中距離の武器を持っていなかった。しかしそれが原因で俺は苦境に立たされた。長距離狙撃はサテライトスキャンで大体の位置を把握されていた上、AGI一極のステータスと高いプレイヤースキルで躱されてしまった。

 

 そして、彼我の距離が100mを切った瞬間からが地獄だった。闇風は自分が有利な距離─約90m─を自慢の足とプレイヤースキルで維持しながらメインウェポンであるキャリコM900Aを撃って来たのだ。俺の武器はS&WM500カスタムと光剣アメノムラクモG、そしてSVLK-14Sスムラク。いくら改造してあるとは言え拳銃であるS&WM500カスタムとデカくて取り回しが悪いスムラクは使えない。プラズマグレネードがいくつかあったがあの速さでは当てられない。

 

 場所が砂漠だったのも悪かった。遮蔽物が殆ど無いため撃たれっぱなしなのだ。出来るだけ避け、どうしても当たる弾丸を光剣で弾く位しか出来ない。無理矢理距離を詰めようとすれば逃げながらプラズマグレネードを置いていくのでもう八方塞がりだった。

 

 そんな中、天が、と言うかシステムが俺の味方をした。風向きが変わったのだ、都市廃墟から砂漠に向かう方向に。俺は都市廃墟の方角に向かい走り出した。闇風の追撃を躱しながらバレないようにプラズマグレネードを進行方向に向かって落し、踏んで砂に埋めていく。

 

 数秒後に起きた爆発は闇風を巻き込むことは出来なかったが、大量の砂埃を舞い上げた。その砂埃は風にのって後方の闇風を呑み込む。俺は爆発を確認して直ぐに反転、砂埃に紛れて気配を溶け込ませ空間把握を使い闇風の背後に回り込んだ。そしてそのまま光剣の柄を突き付けスイッチ・オン。いわゆる忍殺で闇風を倒したわけだ。

 

 本当にギリギリの戦いだった。何か1つの要素が抜けていれば俺は勝てなかっただろう。シノンに勝ってくると言っときながら負けて帰るなど出来なかった。

 

 この戦いで、俺は今の自分の弱点を見つけた。自分より速い相手に距離を置かれると何も出来ないと。俺も速い方だがAGI一極のプレイヤーには負ける。故に新しい銃を手に入れる事にした。

 

 俺のプレイスタイルは一撃必殺。力をフルに使って相手の攻撃をくぐり抜け一発で頭を撃ち抜く戦い方をする。というのもフルオートやバーストだとシステムアシストを切れないので命中率がガクリと下がるのだ。

 

 俺はBoBの次の日からプレイヤーが経営するガンショップをハシゴして色々と見て回った。しかし俺はBoB優勝者なのでほとぼりが冷めるまで顔を隠さなければグロッケンを歩き回れない。しかもどのショップにもピンと来るものが無く無駄足に終わった。

 

 プレイヤーが経営する店で売っているのはプレイヤーメイドかドロップ品ばかりで店売りの物は存在しない。と言うわけで、初心に戻り公式のガンショップに行ってみた。そこである銃と出会った。

 

 M1ガーランド。アメリカで開発された半自動小銃だ。このライフル、1936年に正式採用になった第2次世界大戦を象徴する銃で人気がある。この銃の特徴はアンブロック・クリップを採用した装填方法だろう。

 

 クリップとは薬莢の底部にはめ込むことで、5~8発ほどの弾薬を一つに纏める器具の事だ。そしてアンブロック・クリップはクリップごと装填するタイプで、マガジン内の全弾を撃ち切ると、排莢する際に同時に排出される。

 

 このM1ガーランドは上部から薬室にアンブロック・クリップで固定された八発もの弾薬を素早く装填する事ができる。有効射程も500ヤード(457.2m)と申し分ない。しかしパラメータを見るにトッププレイヤーと戦うには心許ない。

 

 ならどうすれば良い? 簡単だ、改造すればいい。今回はレアドロップであったS&WM500の時とは違い店で何丁でも変える代物だ。つまり壊れる事を前提として試行錯誤しながら改造する事が可能なのだ。と言う訳でたちまち20丁購入、その日から試行錯誤の日々が始まった。

 

 最初のうちは一日一丁は銃を壊していた。なんせ今回は隅から隅まで魔改造すると決めていた為、壊れるのを気にせずにチャレンジ精神全開で作業を行っていた。

 

 大分データが出揃いだした頃、今度は必要な素材が足りなくなった。素材は銃制作スキルや改造スキル、弾薬制作スキルを取っていたため大量に溜め込んでいたんだがな···。因みにこれまで壊したM1ガーランドの数はゆうに30丁を超えていた。

 

 素材収集は購入と周回が基本だ。鉱物系はプレイヤーから購入出来るがそれ以外はmobからドロップするしか無い。周回は荷物持ちを雇い行った。襲撃はされる前に俺が2キロ離れた場所から一方的に狙撃するので問題なかった。寧ろ襲撃者からのドロップ品を売り捌いて今までの赤字を取り戻せたのだから彼等には感謝している。

 

 別に銃の魔改造ばかりしていたわけでは無い。シノンに力の使い方とそれを利用した狙撃のレクチャーもしていた。シノンは空間把握が俺以上に上手い。通常時の空間把握の領域は半径1kmの円状だが、俺がサトライザーにやった様に、空間把握の領域を変形させて伸ばしても精度が全く落ちないのだ。しかもその時の最長把握距離が8kmにも及ぶ。これはヘカートⅡ最大射程と言われている7kmを完全にカバーしている事になる。

 

 因みに、なぜ俺がサトライザーにだけ空間把握の領域の変形による狙撃が出来るのかと言うと、空間把握の力だけでなく思考の読んだりプレッシャーや気配を感知する力と組み合わせているからだ。ヤツの気配はいい目印になった為、空間把握を集中させる事が出来たのだ。

 

 閑話休題

 

 そして先日、とうとう新しい相棒が完成した。その名もM1ガーランドフルカスタム。各種部品をレア素材を使った目的に沿った高性能な物に変え、ストックはグリップを除き全て削り、バレルも19インチまで短くした魔改造銃。そのデザインはガンマニア達を発狂させるに十分な程冒涜的な物となっている。有効射程は500m、使用弾薬は薬量を増やした.30-06スプリングフィールド弾で一発当たりの威力はS&WM500カスタムを上回っているという結構イカれた銃となってしまった。しかも全長30インチ(本来のM1ガーランドは約44インチ)と取り回しやすい長さとなっている。

 

 昨日ダンジョンに潜りmob相手に使ってみた所、想定していた以上に俺のスタイルとマッチしており、そのままボスも倒してレアドロップもかなりの量手に入れる事が出来た。

 

 さて、もう直ぐ第三回BoBが始まる。前回はガーランドが出来上がっていなかった事に加え、サトライザーが姿を表さなかった為に見送ったが今回は出場する。闇風やシノンだけで無くゼクシードを始めとしたココ最近トッププレイヤー入りした連中もいるようだし、これでサトライザーが居なければ最初から最後まで楽しい大会に成りそうだ。




フラグが立ちました。


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幕間・マフティー・ナビーユ・エリン

死銃編に入る前にこちらをどうぞ。


「···かの茅場先生が最強と認めた君なら」

「無理だよ!GGOのトップ勢は人外魔境なんだぞ!知らないのか!?」

「人外魔境?」

「そうだよ。てか菊岡さん、あんた肝心のGGOの最強決定戦バレット・オブ・バレッツの本戦動画を見てないのか?」

「見て···ないけど···」

 

 俺、桐ヶ谷和人は呆れるしかなかった。ちょっと調べれば直ぐに出てくるくらいなのに···

 

「丁度いいから見てみろよ。見ればアンタも自分がどれだけの無茶振りを言っていたか分かる」

「···じゃあ、ちょっと失礼して」

 

 そう言って菊岡は、プライベート用らしき端末を出して操作し始めた。待っている間に俺も追加の注文を行う。

 

 そして数十分後、引き攣った顔を上げた菊岡に俺はお替りのケーキを食べながら言ってやった。

 

「どうだった?」

「···これ、チートツールとか使ってない?」

「それは無いってアンタも分かっているだろ?」

 

 ザ・シードには簡易版とはいえカーディナルが実装されている。故に仮想世界に干渉するチートツールは直ぐに探知されるのだ。ドラッグも、繊細な動きや超長距離狙撃は薬をやっていては逆に出来ない芸当な為有り得ない。つまり···

 

「プレイヤースキルとVR適正で、彼らは人外レベルの戦いを可能としているんだよ」

 

 正直、彼らがあの頃のアインクラッドに、もっと言うなら攻略組に居てくれればと思ってしまった事もあったくらいだ。

 

 その後、なんだかんだあって結局依頼を受ける事になった。決して高額な報酬に吊られた訳じゃない。

 

「そうだ。キリトくんにもう一つ聞きたいことがあったんだ」

「なんだよ」

「マフティー・ナビーユ・エリンって聞いたことないかい?」

「マフティー・ナビーユ・エリン?」

 

 聞いたことが無いな······有名なプレイヤーかなんかか?

 

「SAO事件発生一時間前、SAOの話題で盛り上がっていた多くの掲示板である書き込みがあったんだ。『SAOは危険だ!ログインしてはいけない!』ってね」

「っ!?」

 

 ···なんだよ、それ······

 

「それからSAO事件の緊急ニュースが流れるまで、同一人物のものらしき似たような書き込みが上げられててね。殆どの人は取り合わなかったみたいだよ。でもほんの一握りだったけど、その必死さからかログインを控えた人もいたんだ」

「···本当にそんな書き込みが······」

「ああ。そしてその警告の書き込みに救われた人々は彼、または彼女の事をこう言った」

 

 

 

 マフティー・ナビーユ・エリン

 

 

 正当なる預言者の王

 

 

 

「それと、さっき見た動画の書き込みの中にマフティー・ナビーユ・エリンをキャラネームにしたプレイヤーの事に関して書いてあった」

「なっ!?」

「どうやら第一回大会の優勝者らしいね。はてさて、これは偶然かそれとも···」

 

 俺は頭が真っ白になった。もし本当なら、どうやって茅場晶彦の計画を知ったのか? どうしてもっと違う方法を取らなかったのか? なぜ、GGOをプレイ──仮想世界に潜り続けているのか?

 

「せっかくGGOをプレイするんだ。出来たら彼と会って見てはどうだい?」

 

 菊岡には菊岡の目的があるのだろう。だが、俺は促されるまま頷いてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 夢を見た

 

 少年が見た事があるヘッドギアから手を離し、恐怖の表情を浮かべている光景を

 

 夢を見た

 

 少年が電話口で何かを叫びながら訴えかけ、最後は涙を流しながら受話器を叩き付けている光景を

 

 夢を見た

 

 少年がパソコンで何かを打ち込んでいる光景を

 

 夢を見た

 

 少年がテレビの前で崩れ落ちている光景を

 

 夢を見た

 

「···無様だな、凶兆を感じ取れるだけで何も出来やしない」

「正当なる預言者の王か······大仰で滑稽な名だな。俺にピッタリだ」

「ガンゲイル・オンライン、か」

「もう逃げない!俺はこの名をこの世界で叫び続ける!」

「俺自身の弱さを、このマフティー・ナビーユ・エリンが粛清する!」

 

 

 

 ─────────

 ───────

 ─────

 

 

 

「これが、彼の過去···」

 

 眠りから覚めると同時に、こんな言葉が口からこぼれた。これが、マフティー・ナビーユ・エリンの原点。優輝が彼自身の弱さを粛清する為に作った、もう一人の自分。

 

 でも、今はそれを乗り越えている。うんうん、自分の弱さを受け入れて前に進んでいる。多分、椿さんのお陰。

 

 少し前に、私は優輝と一緒にある人達と会った。あの事件に巻き込まれた郵便局で働いていた女性とその娘さんだった。私は感謝された。「助けてくれてありがとう」と言われた。

 

 優輝は言った。「詩乃は確かに人を殺した。でも同時に命を救ったんだ」って。だから向き合う事にした。罪も弱さも私の一部だから。

 

 多分、私にしてくれた様な事を、優輝は椿さんにして貰ったんじゃないかしら? あの日家に帰った時に椿さんニヤニヤしながら優輝を見てたし。

 

 それから私は現実世界もGGOも充実している。優輝と同じ学校に転入して成績優秀者になったし、前回のBoBも準優勝だった。

 

 後、優輝との距離も近くなった。私の()が強くなった事と、お互いが自然と心に触れられるのを許しあった事で、お互いの想いを理解し合った。私は優輝を愛している。優輝も私を愛している。分かった時の感情は歓喜ではなく、安心と幸福感だった。

 

 今の私達の関係を言葉で表すなら、恋人以上夫婦未満だろうか? 毎晩同じベッドで寝ているけど、そういう事はしていない。それ以前に心と心を触れ合う事で、お互い満たされているからだろう。今すぐ子供が欲しい訳でもないし、そもそも私達はまだ学生だ。それにまだこうやって二人っきりで過ごしたい。子供が出来たらこういう時間は中々取れないだろうし。

 

 さあ、そろそろ起きましょう。今日も明るい一日が始まるのだから。




もう一話挟んで死銃編です。お楽しみに。


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幕間・【悲報】魔弾の射手復活

今回は掲示版。現在のGGOの内情が一部明かされます。ではどうぞ。


1:名も無きGGOプレイヤー ID:fzyfJcsxx

スレタイ通り。

動画はこちら

https:···

 

2:名も無きGGOプレイヤー ID:9IjmW+4Tt

不敬な( ゚д゚)クワッ

悲報ではなく祝報でしょう! 書き直しなさい!!

特定して粘着しますよ!

 

3:名も無きGGOプレイヤー ID:NMB10tROR

>>2 出たなマフティー信者!

 

4:名も無きGGOプレイヤー ID:pe4bQ83bD

そいやこの間、信者に粘着されて散々搾り取られた末に姿を消したプレイヤーの話を聞いたわ。

 

5:名も無きGGOプレイヤー ID:dFhUwKcsP

>>4 ひぇ

 

6:名も無きGGOプレイヤー ID:9IjmW+4Tt

>>4 ああ、あのクズ虫ですか。シノン様にストーカーを働いていた為駆除しました。

 

7:名も無きGGOプレイヤー ID:8O79Qdt/8

>>6 マジだったんかい···

 

8:名も無きGGOプレイヤー ID:ZmkUgdGTS

シノンって冥府の女神か。

 

9:名も無きGGOプレイヤー ID:igD2PbqTd

対物ライフルで遮蔽物ごとぶち抜いてくる人外魔境の一員。

 

10:名も無きGGOプレイヤー ID:kE32XsV+S

確かマフティーと仲良かったよな。

 

11:名も無きGGOプレイヤー ID:++FWT0UWO

>>2>>3>>4>>5>>6>>7>>8>>9>>10 お前ら脱線してるぞ。って言うか動画見てみろ、ヤバいぞ。

 

12:名も無きGGOプレイヤー ID:9IjmW+4Tt

あ~ん、マフティーさま〜♡

 

13:名も無きGGOプレイヤー ID:aA0/H9Toj

おいおい、このスコードローン何人いんだよ

 

14:名も無きGGOプレイヤー ID:ADYYX9ImQ

大体3、40人くらいか? それを蹂躙したマフティーマジ人外

 

15:名も無きGGOプレイヤー ID:c+qhb0ZMf

て言うかあの銃なんだ? 見た事ないんだが

 

16:名も無きGGOプレイヤー ID:4gAUWEf24

おのれマフティーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!

 

17:名も無きGGOプレイヤー ID:VOyoZrgyb

>>16 うお!? どうした!?

 

18:名も無きGGOプレイヤー ID:4gAUWEf24

あれは第2次世界大戦で活躍したアメリカの半自動小銃M1ガーランド! それをあの様な無惨な姿に······許さんぞマフティー!!!!

 

19:名も無きGGOプレイヤー ID:Slal1nQQt

いや、まだマフティーが改造したって決まったわけじゃないだろ。

 

20:名も無きGGOプレイヤー ID:FmPYuu2Xy

あー、俺マフティーが公式ショップでM1ガーランドをかなりの数まとめ買いしたところを目撃したんだが。

 

21:名も無きGGOプレイヤー ID:2hDPHdana

俺も一時期レア素材の周回をするマフティーをよく見かけた。

 

22:名も無きGGOプレイヤー ID:DcIbYGCH3

そいやマフティーのS&WM500はカスタム品なんだよな。

 

23:名も無きGGOプレイヤー ID:/4gAUWEf24

Guilty. 野郎ブッ殺してやらーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!

 

24:名も無きGGOプレイヤー ID:9IjmW+4Tt

ほう、その様な愚にもつかない理由であのお方に銃口を向けると? マフティー・ナビーユ・エリン様のお手を煩わせる価値もないあなた方が? よろしい、塵芥に変えてあげましょう。

 

25:名も無きGGOプレイヤー ID:4gAUWEf24

上等じゃーーーーーーーー!!!!!我らが同士104名で潰してくれる!!!!!!

 

26:名も無きGGOプレイヤー ID:9IjmW+4Tt

数頼みとは愚かな。私率いる精鋭部隊で蹂躙して上げましょう。

 

27:名も無きGGOプレイヤー ID:3x8NbVmSV

あ、ガンマニアさんオワタ\(^o^)/

 

28:名も無きGGOプレイヤー ID:KRssSypCP

マフティー信者の精鋭部隊って確か、最難関ダンジョンを魔境の住人以外だと唯一クリアしてるって言うあの?

 

29:名も無きGGOプレイヤー ID:alQQvNndr

あのダンジョン、絶対クリアさせる気無いよな。難易度バグってる。

 

30:名も無きGGOプレイヤー ID:kRWA9G58/

そしてそれをクリアした魔境の住人とマフティー信者の精鋭部隊はバグってる。

 

31:名も無きGGOプレイヤー ID:3hKz4baCa

そしてそこで手に入れたドロップで更にバグったと。

 

32:名も無きGGOプレイヤー ID:nzaQUhyt7

話を戻すけど今回のBoBはマフティーの独壇場かな。

 

33:名も無きGGOプレイヤー ID:c25l7gJsW

どうだろうな〜。闇風もマフティーがいない間場数踏んで更に強くなってるし。

 

34:名も無きGGOプレイヤー ID:4otowCfZS

闇風と言えば弟子を取ってたよな?

 

35:名も無きGGOプレイヤー ID:SQZ33H2aH

ピンクの悪魔だな。

 

36:名も無きGGOプレイヤー ID:ODy9Hj7NG

アバターが幼女だから一時期闇風がロリ風って言われてたよな。

 

37:名も無きGGOプレイヤー ID:NaTh9eelS

まあ、一ヶ月で魔境の住民と化したけどな。

 

38:名も無きGGOプレイヤー ID:Vyt0dRQzE

>>37 悪質スコードローンを二人で蹂躙したあれか···

 

39:名も無きGGOプレイヤー ID:5pP/Vf9ru

40人規模のスコードローンを二人で蹂躙って···

 

40:名も無きGGOプレイヤー ID:iOvY4AQnc

恐怖の股間切りが記憶に新しい。

 

41:名も無きGGOプレイヤー ID:arXAWQEJs

ヒッ

 

42:名も無きGGOプレイヤー ID:suZqPnbGA

>>40 ヤメロ

 

43:名も無きGGOプレイヤー ID:wEDERC6hA

ホント、レンちゃんカワイイ成りしてやる事がエグい。

 

44:名も無きGGOプレイヤー ID:ZylPgoKgT

思いっきりが良いというか容赦無いよね。

 

45:名も無きGGOプレイヤー ID:nhYz0nYKo

基本魔境の住人は容赦無い。

 

46:名も無きGGOプレイヤー ID:SrlgzpeCE

魔境とBoBと言えば我らが一般プレイヤー代表のゼクシード氏をココ最近見ないな。

 

47:名も無きGGOプレイヤー ID:AiZ59Mt/j

やっぱり? 俺もココ最近見てない。

 

48:名も無きGGOプレイヤー ID:4rIMT6BCp

ゼクシードと言えば今週の勝ち組さんに出演中落ちてたよな?

 

49:名も無きGGOプレイヤー ID:0ThhmYKFf

落ちる間際尋常じゃない様子だったよな。

 

50:名も無きGGOプレイヤー ID:JVzbUeeS/

大丈夫か? 生きてるよな?

 

51:名も無きGGOプレイヤー ID:QwLUcv8gj

薄塩たらこもここ最近インしてない。

 

52:名も無きGGOプレイヤー ID:NzUS0zGqX

マジ?

 

53:名も無きGGOプレイヤー ID:Dah0JOcFn

俺、たらこさんのスコーンドローンに所属しているもんだけどマジでインしてない。しかもその直前、変なボロマントのヤツに銃撃されてるんだよ。銃撃の直後、尋常じゃない苦しみ方して落ちてた。

 

54:名も無きGGOプレイヤー ID:sUQURVLWN

そう言えばゼクシードも画面越しとはいえ銃撃されてたらしい。銃撃したソイツもボロマント。

 

55:名も無きGGOプレイヤー ID:LHW93mEM0

噂の死銃ってヤツか。

 

56:名も無きGGOプレイヤー ID:O0Qm3DmpT

死銃?

 

57:名も無きGGOプレイヤー ID:0Hs3/LYY5

デスガンって言うらしいぞ。ソイツに撃たれたら死ぬって噂になってるんだよ。

 

58:名も無きGGOプレイヤー ID:QmkiKBVwZ

それってただの噂だろ?

 

59:名も無きGGOプレイヤー ID:YW37zzY3G

でもゼクシードとたらこがあれからインしてないのは事実。

 

60:名も無きGGOプレイヤー ID:/Vu2SyyiE

偶然で済ますには気味が悪いな。

 

61:名も無きGGOプレイヤー ID:O3Ni2zC/a

二人とも前回のBoBの本戦に出てたよな? もしかして逆恨み?

 

62:名も無きGGOプレイヤー ID:JXZIqFQVf

いや、死銃の演説音声を聞いたが力を見せびらかしている印象がある。自分は殺せる、だから強い、見たいな。

 

63:名も無きGGOプレイヤー ID:PN/9u6z1e

>>62 なんつうか軽くサイコパスだけど幼稚いな死銃。

 

64:名も無きGGOプレイヤー ID:7o/yXintR

て言うかゲームでリアルのプレイヤーを殺せるか。SAOじゃあるまいし。

 

65:名も無きGGOプレイヤー ID:w1/wIUGD6

アミュスフィアじゃ絶対に人を殺せないもんな。良くて一時的な神経麻痺くらい。

 

66:名も無きGGOプレイヤー ID:qHNW3r1Ej

思ったんだけどさ、タイミング合わせてリアルで殺せばそれっぽく出来ない?

 

67:名も無きGGOプレイヤー ID:pqFFEL4sK

>>66 は?

 

68:名も無きGGOプレイヤー ID:uSXTMxYBE

>>66 どゆ事?

 

69:名も無きGGOプレイヤー ID:qHNW3r1Ej

まず死銃の銃撃の時間を決めておく。で、共犯者がそれまでにターゲット宅に侵入。時間になったらターゲットを殺害。

 

70:名も無きGGOプレイヤー ID:kk7j8bah2

>>69 住所はどうすんだ? それに侵入方法と殺害方法は?

 

71:名も無きGGOプレイヤー ID:qHNW3r1Ej

住所なら分かると思う。BoBのエントリー時に住所の記入欄があった。それをどうにかして盗み見たんじゃないかと思っている。なんか前回のBoBのエントリーで冥府の女神と魔弾の射手が誰かを追って取り逃がしたとか聞いた。

 

72:名も無きGGOプレイヤー ID:VSYnol+jr

そう言えば前回冥府の女神が総督府に入った時に「そこで何をしているの!」って叫んで魔弾の射手と一緒に目に見えない何かを追ってた。俺、その目に見えない何かに突き飛ばされたから間違いない。

 

73:名も無きGGOプレイヤー ID:HctO6VmIG

マジかおい···

 

74:名も無きGGOプレイヤー ID:g5crMfhkd

となるとソイツが死銃···この場合は死銃の一人っぽいな···

 

75:名も無きGGOプレイヤー ID:8X3m6/F5U

侵入方法と殺害方法が分からないが住所が既に特定されている可能性は高いな。

 

76:名も無きGGOプレイヤー ID:nLUgn2LR5

多分ゲームのし過ぎによる事故死として処理されてるんじゃない? 死んでたらだけど。

 

77:名も無きGGOプレイヤー ID:krNU+CpMJ

ゼクシードはともかく、たらこさんがあれから音信不通なのはおかしい。スコーンドローンのLI○Eに一言も呟いてないし。

 

78:名も無きGGOプレイヤー ID:+78WDTOgR

取り敢えずインする時は鍵だけでなく最低チェーンもする事だな。

 

79:名も無きGGOプレイヤー ID:FMPm/Zj+4

出来れば電子錠も新しい物にした方がいいな。ハッキングツール使っているかもしれんし。

 

80:名も無きGGOプレイヤー ID:ujrb58jpp

シリンダー錠との二重錠なら尚良し。

 

81:名も無きGGOプレイヤー ID:C0yNlv+pp

て言うか運営は何してるんだよ!住所を盗み見た奴がいるんだぞ!

 

82:名も無きGGOプレイヤー ID:5JvMLGHV2

何も発表も無いもんね。

 

83:名も無きGGOプレイヤー ID:6yiW3JRIW

聞いた話によるとGMコールの返答は証拠が無い云々とか言ってたらしい。

 

84:名も無きGGOプレイヤー ID:DVObz0kq+

いや、証拠って···

 

85:名も無きGGOプレイヤー ID:BH8H66jIA

これマジで死人出てて表沙汰になったらザスカーやばく無い?

 

86:名も無きGGOプレイヤー ID:Z/vzMQism

彼奴等会社の所在を明かして無いから分からん。でも日本サーバーは終わるかも。

 

87:名も無きGGOプレイヤー ID:2ny/bh7Bh

GGOは大丈夫なんだろうか、色んな意味で···

 

 

その後もスレは続いていった···




マフティー信者
マフティー・ナビーユ・エリンを信奉する者たちの総称。その構成員は40人から60人程と言われている。精鋭部隊の6人は個々では精々プレイヤースキルの高い一般プレイヤーと言ったところだが部隊として動けば魔境の住人でも一人では勝てないのではと言われる程精強。

ゼクシード
今作では第一回BoBを見て下を見ていては勝てないとプレイヤースキルと戦術を鍛えた。魔境の住人程のプレイヤースキルは持っていないものの、その戦術眼を駆使した立ち回りで魔境の住人達と渡り合った。物言いは厭味ったらしいがプレイ内容はストイックで人気がある。

魔境の住人
常人では不可能なプレイヤースキルを身に着け一騎当千をガチでやるプレイヤー達の総称。特に名の上がるプレイヤーにマフティー、シノン、闇風がいる。全員で10人ほどおり、その中でスペックとしては一般人レベルなのにBoBで3位を取ったゼクシードは本当にすごい。

死銃手口が一部バレる
第二回BoBエントリーでシノンの空間把握に引っかかってしまう。その場はログアウトで逃げ切ったが以後、シノンとマフティーから隠れながら行動するしか無くなった。


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コンバートの男の娘・BoBエントリー

キリコちゃん登場です。ではどうぞ。


 ここ最近噂に聞いていた死銃について進展があった。どうも前回のBoBエントリーでコソコソしていたヤツが死銃である可能性が高まったらしい。ソイツは前回のBoB出場者の住所を知っている可能性が高いらしくGGOプレイヤーのネットワークで注意を呼びかける連絡が行き交っているそうだ。

 

 この件に対して運営会社のザスカーは無言を決め込んでいる。何やってるんだよって話だが、連中の運営を見るに金になればそれでいいって感じがする。GGOはコンテンツとしてはかなりのものだから続いてほしいんだが···

 

 因みに俺は母方の祖父にこの事を相談したところ、調べておいてやると色の良い返事を貰えた。祖父の立場上、新技術であるVR技術の早々の衰退は歓迎できるものでは無い。場合によってはザスカーを買収してでも今回の真相を暴き出す積りらしい。

 

 今分かっている事は、ゼクシードと薄塩たらこがリアルで変死した状態で見つかっている事。腐敗が進んだ影響で詳しい事が分からなかった事に加え、2日間飲まず食わずであった事が分かりそれが死因である心不全に繋がったと警察は見ているようだ。その事から死銃の協力者は高性能の無針注射器で何らかの薬品を被害者に打って殺害した可能性が高い。それなら司法解剖だけでは分からない。もっと高度な検査が必要になってくる。それをする必要のない根拠もあるとなっては検査はされないだろう。よく練られた計画だ。おそらく犯人かその身内に医療従事者がいる可能性が高い。これは事件が解決しても荒れそうだ。

 

 俺とシノンのイン中の安全はバッチリだ。ウチの家は防犯や守りと言う面では物理的にも表や裏的にもかなり硬い。と言うかウチの家族を狙うと犯人が色々とヤバい。正直生きてても死んでても表社会には二度と出て来られないだろう。

 

 閑話休題

 

 今日は第三回BoBの予選。なのに俺はグロッケンの初期リスポーン地点にいる。ここは拠点を持たないプレイヤーがリスポーンする場所であると同時に、初めてプレイするプレイヤーが最初に降り立つ地点でもある。

 

 なぜ俺達がこの場所に居るかというとある人物を待っているからだ。どうやら死銃の一件は総務省の仮想課の目に止まっているらしく、一週間前にそこに所属する菊岡という人間がある人物に接触したらしい。また、彼はある病院の一室の貸出許可を取り付けたようでその日付が今日と明日だった。多分、菊岡なる人物はその協力者に死銃との接触を依頼したんだろう。インする場所が病院だったのはオカルト的な要素を警戒しての事か···。どの道、この一件が殺人事件である可能性は低いと考えている筈だ。

 

 そこで俺が接触し事情を説明して協力を得る事にした。まあ、菊岡が接触した人物がアイツなら大丈夫······だよな? 俺が初めて会った時はコミュ障を患ってたけど、こう言った情報収集を必要とする依頼を持ち込まれるくらいには治っているよな?

 

 そんな事を考えているとエフェクト発生光に気が付き顔を上げた。ちょうどエフェクトが終了するタイミングだったようで光の塊が弾ける。しかし、中から出てきたのは黒の長髪の少女だった。

 

 ···俺の記憶が正しければ男だった筈だが······ネナベだったのか?

 

『な、なんじゃこりゃ~〜〜~~~~!?』

 

 どうも彼女? にとっても想定外の事態だった様だ。そう言えば噂で男の娘仕様のアバターがあるって聞いた事があった。もしかしてそれか? まあ、下らない事を考えてないで早く接触しよう。俺は件の男の娘に近寄った。

 

「おい、ビギナーのお前」

「え、えっとおっ、私ですか?」

「無理に女っぽくしなくても、さっきの奇声からお前が男だって分かってっから」

「そ、そうか? なら良かった」

 

 安堵する男の娘。どうやらコミュ障は完全では無いが治っているようだ。良かった良かった。

 

「俺はマフティー・ナビーユ・エリン。よろしく、キリト」

「ま、マフティー!?っていうか何で俺のキャラネーム」

「俺はアンタの依頼人の上の方の協力者だよ。なんか勝手に動いているから手綱を握っとけって言われてんだ」

「はぁ!?」

 

 俺の虚実を混ぜた説明を聞いて声を荒げるキリト。因みに依頼人である菊岡の上の方って言うのは事実だ。後は嘘だけど。正直キリトにはこの菊岡って奴と縁を切ってほしい。色々と怪しい奴らしいのだ。祖父は財政界では猛威を振るえるが国防関係となると別だ。菊岡の古巣である防衛省ではVR関係の計画が進められており、菊岡はそこから派遣されている事ぐらいしか祖父も分からなかったそうだ。

 

「こっちの方じゃ、色々と進展があったんだ。アンタの装備を揃えながら情報交換と行こう」

「あ、ああ」

 

 そう言ってやって来たのは俺のホーム。また派手に暴れたため在庫が凄い事になっている。

 

「取り敢えずメインウエポンを選ぶか。銃だけじゃ無く剣もあるが」

「剣があるのか!」

 

 そう言って目をキラキラさせるキリトに俺は性能の良い光剣を二本投げ渡す。

 

「光剣って言って分かりやすく言えばス○ー・○ォーズのラ○ト○ーバーだ。重さは残念ながら無いが宇宙船の装甲板以外なら何でも切れる」

「おおー」

()()()()()()()()()S()T()R()-()A()G()I()()()()()()()。なら銃は無理に狙わず弾をばら撒けた方が牽制になる」

 

 そう言って集弾性に特化したカスタマイズをされたUZIと予備の弾倉を渡す。

 

「死銃の件だが、殺人事件である可能性が高まった」

「さ、殺人事件!?」

「ああ、どうもGGOでの銃撃と合わせて殺害しているようでな。住所の特定方法は分かったんだが侵入方法と容疑者のリアルが定かじゃない。消去法で何かしらの薬を高性能な無針注射器で打って殺害している事は分かった。その事から容疑者に医療従事者、またはその関係者がいる可能性が高い。今回はヤツと接触して容疑者の絞り込みに必要な情報を得るのが目的となる」

「···分かった。出来るだけ頑張るよ」

「おいおい、そんな弱気で大丈夫か?」

「あんたらみたいな人外が跋扈する魔境に飛び込むこっちの身にもなれ!」

「それだけ元気なら大丈夫そうだ」

 

 それと、誰が人外だ失礼な。

 

 

 

 ─────────

 ───────

 ─────

 

 

 

 あの後、防具を見繕い俺達は総督府へと急いだ。時間が無かったので俺は自前のロボットホースを、キリトはレンタルのバギーを使い向かった。時間はギリギリだが何とか間に合い、エントリーを済ませシノンの元に向かった。

 

「上手く行った?」

「ああ、取り敢えずこちらと歩調を合わせるくらいはしてくれそうだ」

 

 今回は大捕物だ。死銃と呼ばれるプレイヤーのリアルを捉える為の大捕物。参加者は一般プレイヤーから魔境の住人と呼ばれるトッププレイヤー達、そしてそこにキリトが加わる。

 

「気配からして5人か、予想より多いな」

「やっぱり? 私も最初は自分の目を疑ったわ」

 

 前回のBoBエントリーの騒動から、容疑者がオプチカル・カモの機能を搭載したアイテムを所有している可能性は示唆されていた。だが今回その条件に適する存在が5人に増えている。俺の空間把握と気配感知でもその5人を把握している。しかも···

 

「どうも方向性は違うがサトライザーに迫るやばい奴が一人混じってるな。しかも他の4人も相当殺してるぞ。10人は殺してんじゃないか?」

「···何でそんなヤツらが日本に居るのよ? まさか日本でそれだけの殺人を犯したとでも言うの?」

「海外からログインしている可能性はあるが、それは一番ヤバいヤツだけだろ。他はおそらく日本からログインしている。彼奴等の仮想世界への馴染み具合···多分SAO生還者だ。それも殺しを是とするレッドプレイヤーと呼ばれていた連中だろう」

「ッ!?」

 

 驚愕するシノン。俺は大丈夫だと頭を撫でる。このネット社会で人の口に戸は立てられない。SAO内での出来事の一部は様々な所で暴露されている。特にレッドプレイヤーの情報は恨みのある者達によって積極的に拡散されている。事実、それに関する襲撃事件もあったくらいだ。その被害者が本当にレッドプレイヤーであったかは別にしてだが。

 

「幸いキリトも居る。こりゃあ、早くに片が付きそうだ」

 

 連中に取っての不幸は、GGOトッププレイヤーである俺が祖父の孫であった事だろう。故に早い段階で種も仕掛けもある殺人事件である事実が露呈した訳だ。何にせよ、早く確実に片付けよう。ここは全GGOプレイヤー(俺達)の遊び場だ。それを汚し、剰え死者を出したのだ。ただで済むとは思うなよ。




さて、死銃の手口の一部がバレた影響で原作改変です。どうなる事やら。


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幕間・黒の剣士と悪魔の邂逅

本作では早くもヤツが登場します。


何とか予選の初戦を終えた俺は、中継モニターから協力者であるマフティーの試合を探す。

 

マフティー・ナビーユ・エリン

 

第一回BoBの優勝者であり、SAOのデスゲームを予見した存在かもしれないプレイヤー。このGGOで人外魔境と呼ばれるトッププレイヤー陣の中の一人であり、人望があるのか魔境のプレイヤー達から死銃の調査協力を取り付けて見せた。

 

何より気になるのが彼が俺の事を知っていた事だ。マフティーは俺のステータス傾向だけで無く、俺の剣の好みまでも把握していた。なのに何故か本来なら警戒しなければならないのに警戒心が薄れる。

 

 

俺はマフティーを知っている?

 

 

 

「おいおい何か考え事か?」

 

 

 

その声に背中が泡立つ。すぐさま距離を取れば、俺の立っていた場所の丁度背後にフード付きのポンチョを着たプレイヤーがいた。目深にフードを被っているため顔は伺えないが分かる、コイツの正体が···!

 

「お前、Poh(プー)!!」

「haha、覚えていてくれて嬉しいね、黒の剣士」

 

なぜコイツがこんなところに!? まさか死銃と関係があるのか!?

 

「それにしても、随分と鈍ってるじゃないか。せっかくの異名が泣くぞ?」

「お前こそ、公共機関からうまい具合に逃げてたそうじゃないか。今までどこに居た?」

 

そう、コイツはSAO生還者の中で唯一所在が分かっていなかったプレイヤーだ。そしてアインクラッド最悪の殺人ギルド『ラフィン・コフィン』のリーダーでもある。菊岡も俺から聞いたその危険性から捜査に全力を期していたそうだが、全くと言っていいほど手掛かりがなかった。

 

「そんな事なんざどうでも良いだろう? それよりこれからゲームと行こうじゃないか」

「ゲームだと?」

「ああ、そうさ」

 

Poh(プー)はそう言うと懐から一丁の拳銃を取り出した。

 

「俺たちの持つこの拳銃で撃たれたプレイヤーは現実世界(リアル)で死ぬ。本戦で標的が全員死ねば俺たちの勝ち。それを阻止出来ればお前の勝ち。至ってシンプルだろ?」

「テメェ···」

 

こいつは俺たちと言った。つまりはGGO内に複数のラフィン・コフィンメンバーが居る事になる。そして俺一人を指名して来たところを見るにマフティーを始めとする協力者の存在をコイツはまだ知らない。そこに付け入るスキがある。

 

「イッツ・ショー・タァーイム」

 

そう言ってPoh(プー)は去っていった。しかし用心深いヤツの事だ。恐らく監視が居るはず。俺はすぐさまメニューからトーナメント表でヤツの名前を探すフリをしながらメッセージをマフティーに送った。恐らくヤツは俺がコンバートして来たばかりであると気付いている。その裏をかき、ギリギリまでマフティー達協力者の存在を隠し通す。俺は戦う。現実世界(リアル)でもヤツの好き勝手にさせてたまるか!




キリトくん、相手の正体が丸わかりな為、恐怖より戦意が勝った模様。まあ、Pohの予想外でありながら手堅い手口の数々を知っているので、現状からして自分が死ぬ確率が低いと分かっているため恐怖心が薄らいだ事も原因っちゃ原因です。


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