護廷十三隊の二番隊隊長である『砕蜂』は多くの隊士から畏怖の眼差しを向けられることも屡々あったりする。それは彼女の性格も影響しているかもしれないが…力も勿論影響している。
二番隊隊長という座を務めるには幼すぎると思う人間も居たりする。見た目もか弱い乙女のように見える人もいるのだろう。だからこそ、彼女は舐められないように実力を磨き、実力で二番隊隊長という座に就いている。
そんな彼女はどんな死神であったとしても本当の自分を出すことをしない。だがそんな彼女に二人だけ心を開かせることの出来る死神がいる。
一人目は元二番隊隊長の四楓院夜一。砕蜂は夜一の事を慕っている。彼女のためなら命を落とすことも厭わない存在だろう。だが今の彼女は敵ではないものの尸魂界の完全に味方というわけでもない。それに尸魂界に留まっていないためにいつでも会えるわけではない。
そして二人目は長宝院小春。この名前は尸魂界の死神全員に聞いたとしても多くの者はその存在を知らないだろう。何故なら、彼が表の舞台で活躍していたのは経った五か月。だからその存在を知る者は少ない。だが少なくとも同じ世代を生きた者たちにとって彼は忘れられない存在。
彼は元二番隊隊長。夜一や砕蜂よりも前に隊長になった死神。実力は確かなもので歴代の二番隊隊長の中でも一番と言われているほどに強かった。
砕蜂にとって『長宝院小春』は特別な存在なのだ。元上司という事もあるがそれ以上のもので繋がっている。砕蜂と小春は婚約者なのだ。小春の両親が砕蜂の事を気に入ったという事で強制的に婚約関係になった。
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ここは『長宝院家』の屋敷。五大貴族の家と比べても決して劣ることのない家。これは『長宝院家』の影響力を表していると言っても良いかもしれない。
「小春さん」
「何だい?」
「背中に寄りかかっても良いですか?」
「別に良いよ」
そして砕蜂は小春の背中と自分の背中が触れ合うぐらいの距離に腰を下ろした。今の彼女は普段では絶対に見られないほどの幸せそうな顔を浮かべている。
「小春さんの背中はやっぱり大きいですね」
「そうかな…普通の男性ぐらいじゃないかな」
「それでも私から見れば大きいですよ。そしてとても安心します。私が安らげるのは小春さんが近くにいる時と夜一様と一緒にいる時ですから」
二番隊隊長と言うこともあって彼女は気を許すという事は出来ないのだろう。だからこそ今の彼女はあり得ないほどにくつろいでいる。
「こんなボクの背中に寄りかかるだけでくつろげるなら嬉しいよ。
「…その名前で呼ばれるのは久し振りですね」
この名前を呼ぶことが許されているのは少ない。彼女は気を許した人間にしか呼ばせない。その名前を普通に呼ぶことが出来る男はやはり彼女からの信頼がとても高いのだろう。
これはそんな二人が刻む物語
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