特殊な料理人 (主義)
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現第一席

彼という人間にとって『料理』は自分の得意なこと。それ以上でもそれ以下でもない。彼が遠月学園に入学したのも将来の仕事として自分が一番安定な暮らしを送れるのは料理人だと思ったから。遠月学園に入学を許された多くの生徒は少なくとも料理が好きであり、研鑽をしている。

 

 

だが、三年生の中に一人だけ『料理』に興味はなく、仕事感覚で全てを行う人間がいる。その人物は学内でもかなりの有名人である。まあ、そういうタイプの料理人は居ないので有名になっても不思議はない。

 

だが一方で彼を尊敬している者も多くいたりする。それは彼が高等部一年の二学期には十傑の中でも最高峰の『第一席』に位置していたからだろう。食材に対する感謝とも縁遠い料理人でありながら彼は今の遠月学園において最強なのだ。

 

 

--------

 

 

 

「今回の集まりはこれで終わりだ」

 

 

この中で一番発言力のある者がそう言うと全員の中にあった緊張感が一瞬で解かれた。それぞれが席を立ち、出口へと向かっている。この重々しい雰囲気の場所を抜け出したかったのだろう。

 

 

オレもここに長居する必要はないから帰るか。重い腰を上げて資料を纏めて出口へと向かおうとすると…目の前に白髪の男子生徒と赤髪の女子生徒が立ちはだかった。

 

 

 

「何か用か?」

 

 

 

「はい、せ、せんぱい……やっぱり無理だよ。こんな事言っても」

 

 

 

「覚悟決めろよ。司」

 

 

 

何かためらうような事をオレに言おうとしているのか。白髪の少年は心配性なのか右往左往している。正直、言う事がないのならオレは帰路に付きたい。

 

 

 

「用がないのならオレは帰らせてもらう」

 

 

オレは二人の隣を通り出口へと向かった。

 

 

 

 

--------

 

 

 

「あちゃ~司、言う時に言わねぇと…確かにあの人の威圧感は半端なかったけどさ」

 

 

 

「ああ、改めて目の前で見ると……言えないよ」

 

 

あたし達も十席に在籍しているからよく天沢先輩とは顔を合わせる。まあ先輩はあたしらのことなんて記憶に無さそうな感じだったけどな。

 

 

 

あたしと司にとって一つ上の先輩である『天沢久遠』は憧れの存在だ。一つしか学年は違わなくても彼との実力差は明らかだった。多分、あたしらがどんだけ頑張ったとしても天沢先輩の領域には入れない。先輩はそれほどまでにすごいのだ。学内には天沢先輩を批判するような人間もいるがそう言う奴は先輩の料理を食べて見たらいい。もうそんな事を言えなくなる。

 

 

 

それにこの学校は実力だけが全て。実力がない者は生き残れず、最後に残るのは一流の料理人と言っても差し支えのない人物のみ。性格や態度は少し問題があるかもしれないが…料理の腕は少なくともこの遠月学園に隣に立てるような人物は存在しない。

 

 

 

「次の機会には絶対に言わないとだな」

 

 

 

「あ、でも……大丈夫かな………こんなこと言っても…断られるんじゃないかな……弟子にしてくださいなんて」

 

 

 

そんな風な話を繰り広げる、第三席の司瑛士と第四席の小林竜胆であった。



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天沢久遠という料理人

「第一席って面倒くさいな~」

 

 

そんな言葉をベッドに寝転がりながら呟いているのはさっきまで十傑のTOPとして会議を取り締まっていた一人の男。周りからは恐れられていたり嫌われていたりする彼だが彼も一人の人間であることに変わりはない。表情はあんまり動かないが疲れだってあるし、嬉しさだってある。感情がない訳ではないのだから。

 

 

「こんな事なら第一席なんてならなくも良かった。オレは只安全にこの学校を卒業出来ればいいだけなんだから。態態、目立つような行動をしたりする必要はなかったはずだよな。これはオレのミスだな。だがここまで第一席の仕事が多いとは予想をしていなかったな。はぁ~」

 

 

 

もう今日だけで何度付いたか分からないため息を吐いた。誰かオレに食戟を申し込んでくれるような生徒は居ないだろうか。今だったら喜んで第一席の座を譲ってあげても良いんだけどな。まあ、そんな期待をしたところでどうせ現れる訳ないんだけど。

 

 

十傑に食戟を挑むというのはかなりのリスクが伴う。挑戦者の望みは十傑に入る事だろう。だが十傑の座と釣り合うぐらいの対価はそれほど多くない。そんな対価を支払ってまで挑んでくるような生徒はそう多くないのが現実なんだよね。

 

 

 

 

「そう言えば…白髪の男子生徒と赤髪の女子生徒が何か言おうとしていたな。早く家に帰りたかったから帰っちゃったけどちゃんと話を聞いてあげた方が良かったかもしれないな。うろ覚えだけど……白髪の子は第三席の子で赤髪の子は第四席の子かな。顔とかをまじまじ見たことが全くないから分からないけど」

 

 

オレなんかに話し掛けるなんて一体どんな用があったのだろうか。まあ今更気にしたところで何も変わらないのは別にいいか。

 

 

 

 

--------

 

ここは薙切えりなの自室。普段の彼女の印象からすれば想像出来る人は少ないかもしれないが彼女の部屋はそれなりに女子らしい。ピンク一色という感じではないがそれなりに女子の部屋だ。ベッドにはぬいぐるみが置かれていたりする。そして当の本人はベッドの上で送られてきた写真を眺めていた。

 

 

 

「天沢久遠…」

 

 

その写真に写っているのは現第一席であり三年生の天沢久遠。普段からあんまり人を寄せ付けない感じで友人と呼べる人もいない。

 

そんな彼の写真を何故、薙切えりなが集めているのかと言うとその理由は実に簡単で薙切えりなは天沢久遠にご執心なのだ。薙切えりなという少女は天沢久遠に一目惚れをしてしまったのだ。一度見てしまってから頭からずっと離れない。それだけなら可愛らしい恋物語なのだが彼女はそれを破り、どんどん先に行ってしまっている。高等部三年生の生徒を買収し久遠の写真を取らせているのだから狂っている。そしてその写真の厳選した一枚を毎日懐に忍ばせている。

 

 

 

「なんて、カッコいいの!!カッコいいのはいつもだけど…今日のこの写真の横顔もカッコいいわ!!!!」

 

 

 

この薙切えりなを見た人間が居れば確実に頭が狂ってしまったのであろうと思う事はほぼ間違いないだろう。



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後釜

新入生が入学してから一週間の時間が流れた。時間の流れは早いもので新入生も少しずつこの新しい環境に慣れてきているのが見ていると分かる。今年の一年生は実力者が揃っているという情報も入って来ている。

 

特に和のスペシャリストと呼ばれて『そば』に関する事であればこの遠月学園に右に並ぶものはいないと言われている、紀ノ国寧々。

 

料理の技術や才能に関しては一級品で料理の腕は一年生の中でも一番と言っても遜色のないほどの実力を保持している、一色慧。

 

中華を得意分野としていて得に四川料理を専門としている、久我照紀。

 

料理ではなくコンサルティングに力を入れているものの料理の才能も群を抜くものがある、叡山枝津也。

 

 

 

この四人以外にも注目の料理人はいるが得にこの四人が目立っている。いずれは十傑入りは確定と言っても問題ないはずだ。

 

今の十傑は三年生が二人、二年生が五人の計七人で構成されている。本来は十傑と呼ばれている通りで十名で構成されなくてはならない。オレの一つ上の世代が卒業してからその穴が未だに埋められていない。このまま放置しておくわけにもいかないから数日前に十傑評議会が開かれた。だが結局そこでは話がまとまることはなかった。

だがその穴を早急に受けなければならないのは事実。

 

 

十傑評議員のメンバーを決めるには…現評議員三人以上からの推薦、もしくは意欲があり自信がある者を集めてトーナメント形式で食戟を戦わせ勝ち上がった上位三名を十傑のメンバーとして迎え入れるという方法がある。前回の世代…90期生の世代は二人は推薦、残りの三人に関してはトーナメントで勝ち上がって来たんだったかな。

数日前の評議会を見る限り、推薦に関しては期待出来なさそうだな。となるとトーナメントで決めるのが妥当な選択肢かな。

 

 

 

 

そんなことを頭で考えていると誰かの声で現実へと戻された。

 

「ねぇ!!」

 

 

「何だ?木久知」

 

オレの言葉に対して不満そうな顔を浮かべているのは現十席第二席の木久知園果。彼女とは彼女が十傑に入ってから話すようになった。話すと言ってもオレの方から話しかけることは極めて少なく、ほとんどが彼女の方から話し掛けてくれている。自分で言うのも何だがよくオレに話し掛ける勇気があるなとは思ってしまう。

 

 

「何だじゃありませんよ!さっきから話してるのに全く聞いてくれないじゃないですか!」

 

 

「ああ、悪い。少し考え事をしていてな」

 

 

「はぁ…それで天沢くんはどんなことを考えていたんですか?」

 

 

「十傑の穴をどうするかをな」

 

オレがそう言うと木久知は驚いた表情を浮かべた。

 

 

「え」

 

 

「なんだよ。その驚きは」

 

 

「あ、あまさわくんがちゃんと十傑のことを考えてる!」

 

 

「お前はオレのことを一体どんな風に思っているんだよ。これでもお前よりも長い間、十傑に在籍しているんだからそこら辺はしっかりしているんだよ」

 

 

「それで良い案は思いつきましたか?」

 

 

「いや、今年も例年通り行こうかなと思ってな。どうせ推薦もなさそうだし、このまま放置しておくわけにもいかないからな」

 

遠月学園の中でも絶対的な権力を持っている『遠月十傑評議会』が不完全の状態のまま運営していくのは良い事とは言えない。十傑には多くのことが許されている。学園の権力や財力の一部分を手中に収めていると言っても過言じゃない。それ以外にも十傑は学校の運営などにも手を出せたりする。十傑の過半数が賛成すれば学園長の交代でさえも出来てしまう。

 

そんな重大なことでさえも決められてしまう『遠月十傑評議会』はなるべく良い状態で運営していかなければいけない。

 

 

「それはそうですね。過去を振り返って見てもここまで空席が長く続いたのは今回が初めてだと聞いてますしね」

 

 

「もう学園長からの催促も来てるしな」

 

 

「え、そうなんですか!?」

 

 

「ああ、早く決めろという感じの手紙がオレのところに届いていたよ」

 

 

「じゃあ、明日にでも全校生徒に向けて連絡が出来るように今日のうちに『十傑』を集めましょうか。私達の独断で全てを決めるわけにもいきませんからね」

 

 

「そうだな」

 

 

 

その日の放課後に『遠月十傑評議会』のメンバーが集まり、二十五分の話し合いの末に例年通りでトーナメント戦で勝ち抜いた者を十傑のメンバーとして受け入れることで決定した。



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トーナメント

本当にお久しぶりの投稿になります。


『遠月十傑評議会』でトーナメント戦をやることを決定した翌日に放送を行い、来週の月曜日から予選をすることになった。少し早いスケジュールだけど、ハイペースでいかないと。これ以上、十傑の席を空席にするなんてことは避けなければならない。だから早急に決めなくてはならない。

 

 

理事長から手紙を貰っている以上は何もしないわけにもいかないしね。

 

 

 

放送に驚いた者もいるだろうし、やる気を漲らせているような人間もいるだろう。そしてこれで確実に空席が埋まる事になる。これで仕事は果たした。後はその経過を見ているだけで全て上手くいくはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は進んで、トーナメントはいよいよ大詰めというところまで来ていた。オレは少し遠くから二人の料理人の対戦を見ている。

 

その二人は紀ノ国寧々と久我照紀。どちらもここまでほぼ圧勝と言った感じで突き進んできた。そしてこれはオレの感想だけど、この二人の実力は拮抗していると言っても良い。少し紀ノ国の方が技術が上な感じもするが、それもほんの少しだ。

 

 

 

このトーナメントは十傑を決めるために行われている。

遠月十傑評議会に入るには『上位3名』になるしかない。今回、十傑入りするには『上位3名』に入るしかないのは事実。

 

だが、オレたちが抜ける時も来る。遠月十傑評議会に属したまま卒業する者には次の『メンバーを指名する権利』が与えられる。でも、それは卒業式のその日まで席次を守り抜いた者だけ。オレだっていつこの椅子を奪われるかは誰にもわからない。まあ、正直渡せるものならこんな椅子は誰かに渡して呑気に生活したい。

 

でも、そんなことをしたら木久知に怒られるのは確定だな。

 

 

 

だから、それも兼ねてオレは一年のことを見に来た。だが……見に来る必要はなかったかもしれないな。

だって一年にはいい素材がたくさんいる。今、ここでそれを決めるのは聊か早すぎるな。これからどんな風に成長していくのかは誰にもわからないが、素晴らしい料理人になってくれることを期待している。そしてオレは観戦を止めて、家に戻る事にした。後ろですごい歓声が聞こえてきたが、そんなことは気にしなかった。

 

 

家への帰り途中はびっくりするほど誰もいない。遠月学園の生徒は全員、トーナメント戦を見るためにあっちにいるんだろう。まあ、注目の一年がたくさんいるからな。それに帰る、こっちとしてはスムーズに帰れるのは何よりも嬉しいことだ。

 

 

そんなことを考えていると後ろからオレの名前を呼ぶ声が聞こえて来る。誰だよと思って振り返るとそこには赤い髪の男子生徒が立っていた。

 

 

「天沢先輩ですよね」

 

 

「オレは天沢だけど、キミは?」

 

オレが忘れているだけかもしれないが、オレはこの赤い髪の生徒に見覚えは全くない。

 

 

「俺は遠月学園中等部3年の幸平創真っス!」

 

 

「それでオレに何か用?」

 

 

「あんたに食戟を申し込むために果たし状を渡しに来た」

 

幸平はポケットから果たし状と書かれた紙を取り出すとそれをこっちに差し出してきた。

 

 

「本気?」

 

 

「はい、本気っス」

 

 

「そう…わかったよ。その勝負受ける」

 

オレは紙を受けとって帰路に付くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ引き摺り下ろそうって後輩が居てくれてよかった。あの子の目を見るに本気でオレに勝てる気持ちで挑んできている。まあ、自分が負けると思って挑んでくるような料理人はいないけどね」




感想などがありましたら書いて下さると嬉しいです。コメントできないことが多いですが、見てはいますので。


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薙切えりな

もう2023か


あの子から貰った…果たし状。食戟の実施に関しては一週間後ということになった。周りの人間はすごい騒いでいたがオレとしてはそこまで驚くようなことじゃない。逆に今までこういう風にオレの席次を奪おうというような奴が居な過ぎたのだ。

 

 

あの生徒ぐらい野心をむき出しで挑んでくれる方がいい。だけどあんな風な目をされたらわざと負けるような真似が出来ない。あの目をされて八百長のような真似をしたらさすがに…料理人としてダメだと感じた。オレにも料理人としてのプライドが残っていた事に驚いたものだ。

 

最近はあんまりそういう緊張感のある場所に自分を置くようなことはなかったから少し腕が落ちているかもしれない。という感じで今は第一調理室で料理を作っている。どんなお題になるかは知る由もないが、なるべく出来るだけの準備はしておきたい。オレに食戟を挑んでくれた人のためにな。

 

 

「そ、それにしても本当によろしいのですか!??」

 

オレが料理をしているところを食い入るように見ながら問いかけてきたのは…薙切えりな。遠月学園の理事長こと薙切仙左衛門の孫。神の舌(ゴットタン)を持つと言われている生徒。いずれは遠月十傑評議会のメンバーになることが約束されていると言ってもいいような人物。それは権力ではなく、料理の腕を見れば一目瞭然だ。

 

 

「別にいい。誰かに食べてもらった方がオレとしても有難い。食べて感想を教えてくれれば問題ない」

 

自分で料理を作って食べるのは簡単だが、やっぱり主観的になってしまうからな。誰かからの客観的な視点での感想が欲しい所だからな。

 

別に薙切えりなじゃなくてもよかったが、オレが第一調理室に付くと彼女も料理をしようとしていたのだ。そこでオレはお願いすることにした。ただそれだけ。

 

 

「あ、あの、天沢先輩に質問をしてもいいですか!??」

 

 

「別にいいよ。オレに答えられる範囲であればな」

 

 

「では…食戟をするという話は本当なのですか?」

 

 

「うん。本当だよ。中等部の子に食戟を挑まれてね。最近はオレに食戟を挑むような生徒はいなかったから個人的にはそういう生徒が出てくれているのは嬉しいな」

 

 

「…そ、そうなんですか……」

 

 

「うん。だから、キミも暇だったら見に来てくれると有難いな」

 

目立つことはあんまりしたくないが、食戟という一つのイベントはやっぱり盛り上がってくれた方がいい。観客は多ければ多い方が良い。

 

 

 

「ぜ、絶対に行きます!!!どんなことを差し置いても絶対にいくので!!!!」

 

 

「そ、そうか…」

 

急に食い気味に迫られたので少し後ずさってしまった。薙切えりなと言えば寡黙で自信過剰な人というイメージがあったが、そんな風なイメージを今のところは抱いていない。やはり人の噂という奴は信用ならないか。やっぱり面と向かって会ってみてその事を初めて知れるのかもしれないな。

 

 

 

その後も他愛もないような話をしている内にオレの料理は完成した。久しぶりに誰かに振舞うような料理を作ったな。その人が食べて感想を言ってくれるまでの緊張感というのはやっぱり慣れない。オレが作ったのは簡単なもので…オムライス。別に特段大きな工夫をした訳ではない。オレはいつも作っているオムライスを作った。

 

「それではお召し上がりください」

 

 

「は、はい。では食べさせていただきます」

 

そして薙切えりなはスプーンですくって口に運んだ。そしてオレは彼女が何だかの反応を示してくれるのを待つ。神の舌を持っている、彼女の感想であれば信憑性は高い。

 

「どうだ?」

 

 

「お…おいしいです!!私が作っている料理とは比べ物にならないほどに美味しい!」

 

 

「そうか…。それは良かった」

 

どうやら薙切えりなの舌にはあっていたようだ。それならオレの料理の腕もそこまで落ちていないということかもしれないな。

 

 

 

「あ、あの…おこがましいんですが一つだけお願いをしてもよろしいでしょうか?」

 

 

「なに?」

 

 

「い、いっかいだけでいいので私の料理を食べてくれませんか!??」

 

薙切えりなは立ち上がり、頭を下げている。まさかそんなことをお願いするために頭を下げて来るとは思いもしなかった。少なくともオレに食べてもらうために頭を下げてきた人は初めてだ。オレにはそこまでの価値はないと思うがな。

 

 

「頭を上げて」

 

 

「は、はい…」

 

 

「いいよ。今日はちょっと無理だけど、次の機会ならいいよ。それにオレに頭なんて下げない方がいい。オレにはそんな価値はないからな」

 

 

「いえ、天沢先輩にはそれだけの価値があります!!」

 

そんなことを断言されると思いもしなかったのでさすがに驚いた。

 

 

「そ、そうか…」

 

薙切えりなに対する認識を少し改めなくてはいけないな。




ご感想などがありましたら書いてくれると作者の励みになります。


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加入

 

3-0

 

この結果が表示されて観客は盛り上がっている。そして目の前の幸平くんはかなり悔しがっているが、オレは茫然と立ち尽くしている。それはこの子の料理人としてのセンス。やっぱり料理人にはセンスというものがある。やっぱり努力だけじゃ到達できないところもある。そういう場合に料理人のセンスがあるかないかは重要になってくる。

 

 

この幸平創真という男は…センスの塊だと感じた。オレに敗れたものの中等部三学年でここまで皿を作る料理人がいるとは思っていなかった。オレは別に油断していた訳ではない。久しぶりの食戟だから逆に気合が入っていたぐらいだ。

 

それに何よりこの悔しがる姿を見るだけでも…この幸平創真という料理人はもっと高みに行けると感じた。

 

 

――――――――――

 

そして幸平くんとの食戟が終わって次の日からまたいつもの日常に戻った。

 

 

そしてあの食戟から数日が経って、今日は次期十傑の人たちを呼び出した。今回のトーナメントを勝ち上がった三人。呼び出した場所は…遠月十傑評議会のメンバーがいつも集まる場所。そしてオレを抜いた現十傑の六人は席に付いている。

三人は直立に立っている。そしてそこに近づいていき、オレは正式な一員として認めたことを証明する書類を渡して…オレから一人一人に対して一言。

 

「紀ノ國くん」

 

 

「は、はい」

 

 

「そんなに緊張しなくて大丈夫だ」

 

 

「はい!!」

 

 

「キミには十傑第8席の座を任せるよ」

 

 

 

 

 

「一色くん」

 

 

「はい」

 

 

「キミには十傑第9席の座を任せるよ」

 

 

 

 

「久我くん」

 

 

「は~い」

 

 

「キミには十傑第10席の座を任せるよ」

 

 

 

そして僕はそれぞれに…十字型のバッチを渡す。このバッチは僕が個人的に十傑に入った人に渡している。十傑はこの学園の中でも特に秀でた料理人だけが入れる。

 

だがもちろん、学生の中には虎視眈々とこの十傑の席次を狙っている生徒も少なくないだろう。そしてその結果として十傑は脱退と加入が慌ただしい時もある。オレだっていつここから退くことなるか分からない。まあ、譲ってもいいんだけど…。

 

でも、幸平くんの姿とかを見ているとやっぱりこの席次はそれだけの価値があるんだと感じさせられる。だから簡単に譲るんじゃなくて…誰かが本当に実力で奪って欲しい。そしたら…快く譲れる。

 

まあ、話を戻すとバッチを渡している理由は……一期一会という言葉あるように人の出会いは運命的なものもある。だからこそ、その出会いを大切にするためにも…今、この時…同じ席次に居られる運命を。だからそれを証明するものとしてオレはバッチを上げることにしている。

 

 

 

 

それからは簡単に十傑においての決まり事などを話してその場は解散になった。でも、新入りの三人は立ち去る感じじゃない。特に紀ノ國くんに関してはさっきもそうだけど、かなり緊張しているのが伝わって来る。もちろん、遠月十傑に選ばれるのはとても光栄なことなんだろう。

 

 

オレなんか選ばれた時は…あんまり嬉しくなかったけど。

 

 

「三人とも」

 

オレが呼びかけると他の三人は姿勢を正す。別にオレってそんなすごい人間じゃないんだけど。でも、今は緊張していてあんまり言葉が響かないだろうな。

 

 

「これから同じ十傑の一員としてよろしく」

 

それだけ言ってオレも帰ることにした。あんまりオレが居ても…やることないし、入ったばかりの一年生からしたらオレなんかでも恐れる対象になりそうだしな。

 




感想などがありましたら…コメントをお願いします!作者の励みになります!

あまり返事をすることはありませんが、しっかりと見ています。


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昼食

久し振りの投稿



オレには友達がいない。こんなことを自分でも言うのはかなり恥ずかしいことだが、昼食を一緒に取るような奴もいない。だから、オレはいつも十傑評議会の時に使われる部屋で一人、食事をする。

 

 

 

木久知からは「友達ぐらい作ればいいのに」と言われたが、それは難しい。ここは遠月学園でこの学園には料理を極めようとしている奴らが入学している。そんな奴らの目にはオレという人間はあまりよく映っていないだろう。それはオレの料理人としては態度や振る舞いなども影響して最悪と言ってもいいかもしれないな。

 

 

 

 

 

別に誰かに好かれたいとは思わないが、一人ぐらい話せるような奴が出来るともっとこの学園生活も楽しめるかもしれない……ってオレは別に楽しむためにこの学園に来たわけじゃないだろう。

 

 

 

 

オレがこの学校を選んだのは将来のため。自分の才能を活かすためには…この学校を卒業した方が一番早いというだけ。

 

 

「オレはただ卒業の先だけ考えればいいんだったな」

 

 

そんな独り言が部屋に響くが、そんなことは気にしない。だってここには誰もいない。人の目を気にする必要もないからな。こんなところに来るような奴はいない。

 

まず、ここの鍵を持っているのは十傑に所属している者だけでその中でもこんなところに来ることがあるとしたら……忘れ物か……オレと同じで一人で食事をしたい奴か。

 

 

 

 

 

適当に食事を進めていると…誰かが扉を開けようとしているのに気付いた。誰だか知らんが、鍵が開けられないからなのか何度も鍵を入れたり、外したりを繰り返しているからうるさい。

そしてどうやらやっと開けられたようで扉が開けれた。

 

 

 

姿を現したのは…

 

 

 

「茜ヶ久保」

 

 

「あ、あまさわ…せんぱい」

 

確か…第四席の茜ヶ久保ももだったか。最近はなるべく名前を覚えるようにしているんだよな。さすがに十傑の人間ぐらいは名前を憶えておかないと失礼になるだろうしな。

 

 

「何か用か?」

 

 

「…は、はい。もも、忘れ物しちゃいました…」

 

 

「そうか」

 

ここで話をするつもりはない。只でさえ、こんな風に一人で食事をしているところはあんまり見られていい気がするものではないからな。

 

 

 

茜ヶ久保は自分の忘れ物を発見するとすぐに出ていくと思っていたが、なぜかオレの方に視線を向けたまんまじっとしている。

 

「なんだ?」

 

 

「オレの顔に何か付いているか?」

 

 

「…い、いや…そうじゃなくて…」

 

 

「じゃあ、なんだ?オレに何か言いたいことがあるのなら聞くが」

 

 

「…せ、せんぱい…」

 

 

「なに?」

 

 

「『もも』も一緒に…食べてもいいですか!??」

 

 

「……?」

 

 

「…だ、だめですか…?」

 

茜ヶ久保はなぜ…オレなんかと食事をしたいんだ。どう考えてもオレと一緒に食べるメリットが何も思いつかない。色々と気まずくなるのが目に見えているだろうに。

 

 

「…別にいいが、オレと食べても何も楽しくないぞ」

 

 

「い、いいの!?」

 

 

「…まあ、別に一緒に食べることを拒否はしない」

 

そしてオレは茜ヶ久保と食事をすることになった。茜ヶ久保のお弁当は…スイーツ。なぜなのかと聞くと、どうやら茜ヶ久保の得意料理はスイーツらしい。

 

 

 

一口だけ食べさせてもらったが…美味い。さすが得意料理だけあって見た目から味まで完璧と言ってもいい。ここまで完璧な料理はそこまで…お目に掛かれるものではない。

 

 

「茜ヶ久保には才能があるな」

 

 

「…そ、そうですか?」

 

 

「ああ、この美味さは素直にすごい。ここまでそれぞれの食材の味を最大限に活かしている料理人はそう多くない。茜ヶ久保のスイーツはお世辞抜きで…『美味しい』」

 

 

「ほ、ほんと…?」

 

 

「オレが太鼓判を押してやってもいい。このままいけば…オレを簡単に追い抜けるだろう」

 

これほどの才能と…研鑽があれば確実に追い抜かれる日も来る。料理人というのは如何に…食べる側を喜ばせたいと考えるかが重要だとオレは考えている。それが料理を一つ上に持ち上げてくれる。

 

 

 

 

だが…オレには食べる側を喜ばせたいという精神が著しく欠けている。そんな奴の料理はやはり中途半端。完璧にはならなくて…未完成。

 

 

 

それからもオレは茜ヶ久保と少しだけ話した。ほとんどは茜ヶ久保の方から話題を振ってくれて、オレがそれに答えるという感じだった。

 

 




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憧れの存在

あたしは小林竜胆。あたしにとって…天沢久遠は憧れの存在。絶対に超えない人で近づくことすらも躊躇うような料理人。天沢先輩を初めて見たのはあたしが中等部三年の時。それまで天沢先輩のことを噂で耳にすることはあっても料理をしているところも見たことがなかった。

 

 

その日は…高等部三年生とその当時はまだ高等部一年生だった、天沢先輩が食戟をやるということで学内は一気にその話題一色になった。誰もが三年が勝つことを疑わなかった。だって三年ということは少なくとも過酷なサバイバルを生き残った生徒なのだから。

 

 

あたしは他の奴らも誘って皆で見に行った。

 

 

それがあたしの転機となった。結果を言ってしまうと天沢先輩の圧勝だった。天沢先輩、本人は決して喜んでいる感じではなく、表情を動かすこともなかった。まるで当たり前かのように。

 

 

あたしは…天沢先輩に憧れた。あたしだけじゃなくて…司も冬輔、もも、綜明の全員が天沢先輩に憧れた。あの圧倒的で誰も近づかせなくて、勝利を搔っ攫う姿に。あたしだってそれなりに自分の料理に自信はあったけど、その自信が全て吹っ飛んだ。あたしなんてまだ全然なんだ。

 

 

その時のあたしの感情は一言で『最高』だった。自分が頑張ってもたどり着けないようなところに天沢先輩は立っている。絶望する奴もいるかもしれないが、少なくともあたしたちはそんなことなかった。確かに今は全然、雲の上のような人だけど、いつかその雲にちょっとだけでも手が届くように頑張ろうと。

 

 

そこで天沢先輩にあたしのことを認めてもらうという目標が出来た。

 

 

―――――――――――

 

授業から終わって司と昇降口から出ると…もう日が沈みかけていた。時間はあっという間で初めて天沢先輩を見た日から二年ぐらい経った。天沢先輩と居られるのもあと数ヶ月……と考えていると昨日のことがふと頭をよぎった。

 

「それにしても、司」

 

 

「なに?」

 

 

「よくあんなこと提案したな」

 

 

「まあね。成長するには一番早い手段だしね」

 

そう口にする、司の横顔は少し笑っている気がした。たぶん、司もあたしと同じことを考えていたのだろう。

 

 

「それは…新入生、それとも…」

 

 

「それともの方かな。確かに新入生に馴染んで欲しいというのは本当だよ。やっぱり自分たちもそうだったけど、中等部と高等部とじゃ全然違うからね。だけど……ね」

 

 

「…面白い事するなぁ~あとは天沢先輩がどういう決断を下すか」

 

 

「却下されたら仕方ないけど、もし、承認してくれたらこの機会を逃す気はないよ」

 

確かにあの案が採用されればあたしの目標にも近づけるかもしれない。

 

 

「それはそうだな。あたしも…精一杯やるつもりだし」

 

残された時間を有効に使わないといけないしな。あたしが天沢先輩の口から「美味しい」と言ってもらうためにはやっぱり自分の料理の腕をもっと上達させないと。

 

 

「そう言えばさ」

 

 

「今度はなに?」

 

 

「…ももが天沢先輩と一緒にお昼を食べたんだってさ」

 

 

「え、え……ど、どう…」

 

司は動揺し過ぎて言葉が紡げていない。司が動揺しているところなんて滅多に見れないから面白い。

 

 

「なんか…いつも十傑で集まっている部屋があるだろう?」

 

 

「…う、うん」

 

 

「そこに、ももが忘れ物をして取りに言ったら一人で先輩が昼食を食べていたんだって。そこでなんか成行き的に一緒にご飯を食べられたんだってさ。ももの奴、珍しくとっても嬉しそうだったな」

 

『もも』も天沢先輩に憧れている一人。それに天沢先輩はあまり人に興味がないのか、木久知先輩以外とは話しているところをあんまり見たことがない。

 

 

これはあたしたちが話し掛けないのも悪いんだけど、あたしたちであっても数えられるぐらいしか話したことはない。もちろん、十傑の集まりでの議論とかならあるけど、普通に会話をしたことは本当に少ない。だから、『もも』もあんなに嬉しかったんだろうな。あたしだって司だって…そんなことがあったら嬉しい。

 

 

「じゃあ…あの部屋にいけば俺も」

 

 

「かもな」

 

そしてその後は…司と来週にでも行ってみるかという話をしてその日は別れた。



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提案

最近は色々と忙しい。学内でのこともそうだが、この時期は学外でやることも増えてきたというのが一番の理由かもしれない。遠月学園の第一席ともなると学外から料理を振舞って欲しいという話も増える。これは第一席になった日から変わらないことだし、別にそれは問題ないが、この春頃は特に学外での仕事が多いように感じるのは気の所為ではないはずだ。

 

 

まあ、その理由は分からないが、学外の仕事をあまり断る訳にもいかないので仕方ないが。

 

 

――――――――――――

 

オレが教室から外の景色を眺めていると木久知が話し掛けてきた。

 

「忙しそうですね」

 

 

「まあな、それはお前だって同じじゃないのか」

 

 

「私はあなたほどではありませんよ」

 

木久知はこう言っているが、かなり忙しいのだろう。目にクマも出来ているし、本人は必至にいつもと変わらないように振舞っているようにしているが、それでも隠せないものはある。

 

 

「お互いにそろそろ休みたいな」

 

 

「呼んでもらえるのは光栄なことですよ!」

 

 

「それはそうだが、これからもう少し忙しくなりそうだしな」

 

 

「なにかあるんですか?」

 

 

「昨日のことだ。あの案を採用しようと思っているんだ」

 

そう言うと、木久知も分かったようで少し驚いたような表情をしている。

 

 

「…あなただったら却下すると思ってました」

 

 

「まあ、オレが個人的に選ぶとしたら確かに却下していたかもな。だが、オレは一応、遠月学園の第一席でもあるからな。この学園のことを考えた時に採用するべき案は採用しないといけないからな」

 

 

 

 

 

 

昨日の『遠月十傑評議会』で後輩の子がある提案をされた。元々、『遠月十傑評議会』で話される議題はほぼ決まっている。決まっていないのに集まるなんてことはない。それぞれが学園の最高峰に位置している料理人なだけあって忙しい。忙しい合間をぬって参加する。

 

そしてそんな奴らは自分の発言はするが、提案をするようなことはなかった。

 

 

それを提案したのは……第三席の…つ、つかさ……くんだったと思う。名前が完全に覚えられていないけど、たぶん司くんであっているはず。まちがえてたら悪いが。

それで司くんが出した提案の内容は…連帯食戟。それだけであれば変わったことはなく普通の連帯食戟。だけど、司は連帯食戟と言った後に細かい説明を始めた。それは簡単に要約するとこうだ。

 

今回は普通の連帯食戟とは違い、三年生が一人、二年生が一人、一年生が二人…………それに中等部三年生の中から各グループ二人を選出して、合計六人。グループはくじ引きで行い、均等になるようにする。一年生にはなるべく参加してもらう感じ。合計二十組近くのグループを作ってトーナメント戦で勝ち上がっていき、一位の座を争う。

 

司くんの提案はかなり面白いものだと個人的には思ったりもした。

 

 

 

 

提案を受けようと今のところは考えている。新入生は高等部に進級したばかりでまだ慣れていない。上級生との接点も無ければ、先生たちに話し掛けるのも少し難しいかもしれない。だとしたら新入生が高校生活を楽しみ、研鑽を積める環境を提供するのが『遠月十傑評議会』の仕事。このイベントを機に新入生も少しは慣れてくれるかもしれないし、普段は接点を持てない上級生たちと接する機会は必ず彼らに良い作用してくれるはずだ。三年生はこのサバイバルの学校生活で生き残ってきた生徒だけがいる。そんな彼らの料理を間近で見られるのはそう多くないチャンス。それを見て、少しでもなにか感じとれればそれだけでも良い体験になるはずだ。

 

 

これが…第一席の判断としては正しいのではないか。オレとしては少し面倒だと感じもするが、司くんの提案を断る理由を探す方が難しい。今の時期はある程度、空いている時期。これがもう少し遅い提案だったら少し難しいかもしれないが、二学期や三学期よりもこの時期はイベントはない。それに十傑評議会としては研鑽できる場を与えるのも仕事のうちだしな。

 

 

「明日にでも理事長に報告しておく」

 

 

「そういうことなら私の方から全校に通達を出しておきましょうか?」

 

 

「いや、大丈夫だ。そこら辺もオレがやっておく」

 

木久知もかなり疲れている上にこれ以上、仕事を増やすのはあまり良いことじゃない。これはオレがやることを決めたわけだし、他の奴を疲れさせるようなことはしたくないしな。

 

 

「…あなたは本当に少し背負い過ぎじゃないですか?」

 

 

「そんなことはないと思うが…」

 

 

「もう少し、私を頼ってください。これでも私は遠月十傑第二席ですし、少しぐらいの疲れだったら大丈夫ですよ」

 

 

「…だが…」

 

 

「私としてはあなたの方が心配ですよ。あなたと話すようになってまだ1年ぐらいしか経っていませんが、私はそれなりにあなたのことを分かっている方だと思います。あなたは色々と抱え込んでしまうような性格なのでいつか倒れてしまうんじゃないかと」

 

 

「オレは大丈夫だ。そんな柔な体じゃないからな」

 

 

「それでも私は心配です。だから今回は私とあなたで仕事はちゃんと分担しましょう」

 

オレとしては別に一人でやってもいいが、今回は木久知も引く感じが全然しない。ここは木久知に手伝ってもらうという選択肢を取った方が良いかもしれないな。

 

 

「……わ、わかったよ。そうしよう」

 

 



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