GATE - アークス 彼の地にて、斯く戦えり (睦月透火)
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第1話 異世界より来たりし者

息抜き投稿&設定が好きなので始めました。
またやらかすかも知れません……(*ノω・*)テヘ



「う~ん……キャンプシップの反応も無い、か……いよいよコレは、進退窮まったかな……」

 

 あの光、確かに転移回廊の反応だった……仮にアレで次元転移に巻き込まれたのならば、元の世界に戻るなど個人技術では不可能だ。

 救援、もしくは捜索部隊が到着するまで、早急に現地人と協力関係を構築し……当面の急場を凌ぐ必要性がある。

 

「まずは現在位置……っと、レーダーも地図データが無きゃ役立たずだったね……」

 

 おっと……済まない、経緯説明と自己紹介がまだだったね。

 

 さすがにいきなり馴れ馴れしいのは精神衛生上よろしくない人も居るだろうから、一人称は「僕」という事にしよう。

 

 ではまず、自己紹介だ……僕の名は「トリニティ」。

 ……何処ぞの魔王の強化形態でも、モビルスーツでも、何処かの戦闘狂の3兄妹でもないよ?

 

 僕は歴とした「アークス」だ。

 

 アークスとは、広大な宇宙を旅する巨大船団「オラクル」を活動拠点とし、様々な惑星の調査や、現住民との交流……または古代文明の秘密など、宇宙の謎を解き明かす調査団としての側面と……

 この世界に生きる全ての生命の敵『ダーカー』を唯一、殲滅し得る存在として……果て無き戦いを繰り広げた戦士としての側面を持つ。

 

 まぁ、少し前に……そのダーカーとの最終決戦にも決着が付き、我々アークスは晴れて……数百年も続いた『戦い』という枷からようやく解き放たれたんだけどね……

 

 そんなこんなで、この広い宇宙を旅しながら異星文明との交流を繰り返しているのが今の僕ら(アークス)なんだけど……僕は惑星リリーパで単独任務中、謎の光に包まれて、気が付いたら見知らぬ土地……つまりこの場に居る、という訳さ。

 

「悩んでも焦ってもしょうがない、地形データは継続スキャンしながら文明の痕跡でも探そう……」

 

 遭難した時……まず一番大事なのは自分の体力を温存する事、そして現状を正確に把握する事……復帰のチャンスを確実にモノにする為、そして肝心な時に動けなくなるのを回避するためだ。

 生身の人間だと数日でダウンするだろうけど……まぁ、僕は()()()()だから最悪でも数年くらいは余裕だ。

 

 アークスには4つの種族がいる。

 

 環境適応能力が高く、他種族ほど特化して強くはないが致命的な欠点もない『ヒューマン』。

 身体能力は低めだが、フォトンの扱いは他の追従を許さない『ニューマン』。

 屈強な鋼鉄の身体と、機械故の器用さを併せ持つ『キャスト』。

 他種族よりも打たれ弱いものの、戦闘への適正が特に高い『デューマン』だ。

 

 元々は『フォトナー』と呼ばれた種族が造った奉仕種族的な存在だったらしいけど、上位種族であるフォトナーがほぼ絶滅している現在……僕たちアークスは今までに知り合った様々な他の種族と互いに協力しながら生き抜いているのだ。

 

「……うーん、生物反応はあれど……どれも原生生物みたいだなぁ……

 知的生命体は居ないのか、それともまだ遠くに居るだけか……」

 

 マルチレーダーアレイと広域スキャニングを使って、地形データの取得と同時に現地人を探索する……しかしながら、一切反応はない……よほど山奥なのか、それともこの星は完全に無人惑星なのか?

 

 

「……ん?」

 

 探索中に見つけたのは、まだそれほど時間が経っていない夜営の痕跡……どうやら無人惑星ではなかった様だ。

 

「経過時間は……およそ2~3時間程前、かな……移動速度が徒歩程度なら、まだ十分追い付ける……!」

 

 いくら頑強なキャストでも、定期的なメンテナンスを受けずに長期活動するのは推奨されない……幸い、この痕跡を残した人達はそうまだ遠くへは行っていない様だし、今の僕の足ならすぐに追い付ける。

 

 ヒュィイィィィィ……!

 

 脚部のスラスターを展開し、巡航モードに切り替える。

 コレもキャストの基本機能の1つ……高速移動用のマイクロイオンスラスター。

 

 燃料は外部から取り込む大気中のフォトンで賄われているので、実質無限……制御はマニュアルだけど、キャストならば息をするくらい簡単な自己操作だし、慣れればその最高速度は時速100km/hにも達する。

 

「……できれば、友好的な人達だと良いな」

 

 スラスターの出力を上げながら、そんな淡い思いを1人呟く……この先何があっても、必ず生きて帰る……それがアークスとしての、僕の矜持みたいなものだ。

 

──────────

 

「くっそ……! マジでヤバイぞ……避難民の列に近付けるな!!」

 

 自動小銃の乾いた射撃音や、戦闘車両に備え付けられた機関砲が唸りを上げる……が、敵対する()()()には、まるで歯が立たない……それもその筈、相手はこの「特地」で最もイレギュラーな原生生物……お伽噺の中の存在、ドラゴンだった。

 

 後で判明した事だが、戦車並の防御力と戦闘機以上の飛行能力を兼ね備え……更には化け物らしい戦闘力と生物ならではの本能を併せ持つ存在だ。

 

 通常火力や携帯武装しか持たない今の我々……第3偵察隊の戦力ではマトモに戦える筈もなかった。

 

「隊長ぉ~、これじゃ豆鉄砲ですよぉ~!!」

 

「分かってる! だが今はとにかく撃ちまくれッ!!」

 

 隊長と呼ばれた男……伊丹は、部下の倉田が発した泣き言に辟易しながら自身もドラゴンを撃ち続けていた。

 

 直後、彼の後ろから長い耳の少女が自分の眼を指差して伊丹に弱点を教える……

 

「眼だ! 目を狙えッ!!」

 

 伊丹の指示を理解した部下たちが一斉に同じ箇所に狙いを定め、弾丸がドラゴンの瞳に向けて殺到……ドラゴンは既に隻眼、ここに現れる前の戦闘で反対の眼に矢を受けて片目だった……さすがに両目とも潰されるのはゴメンだとばかりに、ドラゴンは両腕で防御する。

 

 そこへ榴弾がドラゴンの前方に飛び込んできたが、発射の際に手元が狂っていたのか、弾道が不安定だった……そこへ車の後方から飛び出た少女が放り投げた物体が足元を吹き飛ばしてドラゴンの姿勢を崩し、榴弾はドラゴンの左腕へと吸い込まれていく……

 

 着弾する直前、吹き飛んだドラゴンの足下の土煙の中からも何かが飛び出し……ソレはドラゴンの尻尾へと巨大な光刃を走らせていた。

 

 榴弾が直撃し、片腕を吹き飛ばされるドラゴン……突然現れて今まで猛威を奮っていた存在が、ココに来て初めて悲鳴を上げた。

 

「……ッ?!」

 

「た、隊長……アレ……」

 

 さっきまで泣き言を喚いていた倉田が、晴れてきた土煙の中に立つ1人の人影を指差した……

 

 ドラゴンは先ほどまでの狂暴っぷりが見る影もなく狼狽え、這々の体で飛び去る……その尻から伸びた先端……尻尾はバッサリと中程から切り落とされていた。

 

「ま、マジかよ……あのドラゴンの鱗、機関砲ですらダメージ入らなかったんだぞ?!」

 

 周囲の土煙が完全に晴れ……白い金属の全身鎧に身を包んだ人物が、手に持った巨大な大剣を肩に担いでいた。

 

『成る程、このトカゲから逃げていた訳か……これは人助けって事でノーカンだよね』

 

side out……

 

 

 赤くて翼の生えたトカゲが、現地人の行列を襲っているのが見えた瞬間……僕は持ち前の正義感と身体スペックをフル活用して崖の壁から飛び降り、その勢いのまま土煙に突っ込む。

 量子化して荷物を持ち運ぶ「アイテムパック」からいつもの近接用装備……大剣「リバレイトソード」を展開して大上段から振り上げ、落下の勢いと共にトカゲの無防備な尻尾へと振り下ろした。

 

 アークスの装備は基本的に損傷とは無縁な程強度や物理攻撃に強い……それは持ち主のフォトンが武器をコーティングして破壊を防いでいるからだ。

 当然、破壊されにくい事はそのまま武器自体の攻撃力にも寄与し……巨大で鋭いフォトン刃を持つリバレイトソードは易々と赤いトカゲの尻尾を斬り飛ばした。

 

 本来、アークスが武器を振るうのは身の危険を避ける時と、ダーカーを排除する時……そして他者に危険が及んだ時と大まかに分けられている。

 つまりみだりに振り回すものではない……今回は「人助け」という結果になったのだから、後で文句を言われる筋合いは無い筈だ。

 

『とんだ痛い目を見て逃げたか……臆病な方が長生きするよ、次は気をつけるんだね』

 

 そう独り言を呟いて、先程から感じる視線の正体へと目を向けた。

 

 近代的……と言うには少々古い車両と、統一された制服の人間たち……手には原始的な造りをした武装を持っている。

 周囲の人達は難民だろうけど、明らかに彼らとは文明水準が違うね……これは一体どういう事なんだろうか。

 

 とりあえず、この姿で居ると変な誤解をされそうだから生身のほうが良いかも知れないと判断し、僕はマイファッションから生身タイプのセットを手早く選んで変更する。

 アークスは皆して流行り物に敏感らしく、外見のみだが見た目を変える装備を多数所持している者も多い……僕もその中の1人だ。

 

 そしてその外見変更のプリセットを登録しているのが「マイファッション」だ。

 アークスたるもの、その場に合う外見で事に当たるのは常識だよね(偏見)

 

「……鎧を脱いだのか?」

 

「それにしちゃその鎧が見当たりませんよ?」

 

「アレ……なんか見覚えがあるような無いような……」

 

「隊長、彼……こっち見てますよ」

 

 この言語は……太陽系第3惑星「地球」で活用されている特定地域言語の一つ「日本語」だ。

 初接触の時点で言語情報収集済みだったという珍しい例だったので良く覚えていた。

 

 という事は彼らは日本人……地球では、最も現地協力者が多い人種と聞いている。

 

(日本語ならアークスの自動翻訳システムに登録されているし……彼らとなら、円滑なコミュニケーションも期待できるね)

 

 そう考え早速、隊長と呼ばれていた人物に接近し、僕は声を掛けた。

 

『君が彼らの隊長さん……で良いのかな?』

 

「に、日本語……話せるのかい?」

 

「ん? あぁ、話せるよ……種族的に初接触じゃなければね」

 

 少々の驚きようはあったものの、彼らは僕が日本語を話せると知ると安堵したようだった。

 察するにまだ言語情報の収集が不完全な種族と遭遇し、その上であのトカゲ……もといドラゴンと遭遇戦に発展していたと見る……援護したのはどうやら正解だったようだ。

 

「あぁ、すみません……自分達は自衛隊特地第3偵察隊、自分は隊長の伊丹耀司三等陸尉であります」

 

 自己紹介してくれたのか……伊丹耀司……うん、覚えておこう。

 ……何となくだけど、彼とは長い付き合いになると思う。

 

『僕はトリニティ……

 所属はArtificial Relict to Keep Speciesアークスだよ、以後よろしく』

 

 その瞬間、彼らの頭には疑問符が浮かび、たった1人……戦闘中に泣き言を発していた彼だけが、驚愕と興奮を抑えきれない声で叫んでいた。

 

「……え、えぇぇぇぇぇぇぇッ!?」

 

 そんな驚く事なのだろうか……解せぬ。




名前:トリニティ
種族:キャスト  性別:男性  年齢:不詳
メインクラス:ヒーロー
武器:リバレイトシリーズ(大剣・双機銃・導具)

本作の主人公にして、第四世代アークスの1人。
アッシュ(PSO2原作・アニメ版の主人公)と面識は有るが直接絡んではいない。
副業としてエンジニアをやっており、相応の道具さえあればほぼ何でも行える。
人当たりは良いが作業に没頭しやすく、寝食すらも忘れるので周囲に心配される事が多い……
アークスとしての実力は中の上であり、新人時代は六芒の四であるゼノに師事していた。

※ 第四世代アークスとは?
終の女神シバとの決戦後から、第三世代や新人の中からチラホラと現れ始めたアークス。
「他種族の外見や性別を真似る」「違う人格または記憶を持つ」という2つの特徴があり、混乱を避ける為や既存世代との区別として「第四世代」とされた。
ぶっちゃけ、NGS対応の衣装持ちや惑星ハルファ(NGS世界)と行来しているプレイヤー(無自覚転生者、または地球編で存在が判明したゲームからのアバターキャラ)の事である。

──────────


最初から派手にヤラカシマシタw
トリニティはウチの子で一番衣装持ちの美形キャス男、CVは緒方恵美さんです。

感想、お待ちしてます。(。>д<)


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第2話 アークス=チート集団?

ゲーム内やアニメでも、如何にアークスという存在がチートなのか分かると思いますが……
こう実際に目の前でやられると、衝撃的だと思いますね。

さっそく第2話、行ってみよー♪



「倉田……お前、なにか知ってんのか?」

 

 伊丹は部下である倉田だけが違う反応をしたのに気付き、説明を要求……倉田もコレは語るべきと興奮を抑えきれぬままに口を開いた。

 

「隊長も知ってるでしょ?! あのゲーム!」

 

「はぁ?」

 

「『PSO2』ですよ! 色んな意味で伝説と化してる、あのオンラインゲーム!!」

 

(やはり……彼らの世界でも、僕らの世界はゲームの中の世界だという認識なのか)

 

 予想していたとはいえ、彼らの反応が地球との交流開始時と同じ反応だった事に残念がる……だが、その反面ある意味期待も膨らんだ。

 

(だけど、ゲームであるなら……この世界からの帰還は、意外と早く叶う可能性が高いね)

 

 そう、オラクルと地球が交流を持つに至るまで……地球側の人類は一部を除き、オラクルの世界をゲームだと信じて疑わなかった……

 だが、地球側で発達した「エーテル」技術が、オラクル側の「フォトン」技術とよく似ている事や……ダーカー勢力の干渉によって地球側にも影響が出たり、地球人がエーテルをフォトンの様に扱い、中にはフォトン能力に目覚める者も現れるなど、様々な混乱が生じた事や……地球側の組織「マザー・クラスタ」と「アースガイド」との対立……幻創造神(デウス・エスカ)との戦闘と対話を経て……ある程度限定されたルートのみながら、現在も相互交流は続けられている。

 

「で、それがどうしたんだよ?」

 

「アークスはプレイヤー勢力の組織! 熟練者が4人も居れば神でも瞬殺するチート集団ですよ!!」

 

 ちょっと待って、その情報は初耳なんだけど?

 いくら僕らアークスの身体能力がフォトンによる強化で地球人よりも優れているとしても、たった4人で神を瞬殺はさすがに無理がありすぎる……せいぜい、ダークファルスを足止めするのが関の山だ。

 

 そんな誇大妄想を現実のように吹聴している彼……何かが怪しい。

 

『……さすがに神殺しは無理だよ……そもそも僕らはダーカーとは戦うけど、神さまとは敵対してないし』

 

「「「……えっ?」」」

 

 え? なにその反応……まさか僕の言葉の方が信じ難いって事?

 

『誤解しないで欲しいんだけど……僕はアークスだけど神さまは殺せないよ、あと、殺す気もないから』

 

 隊長である伊丹さんは信じてくれた様だけど、誤情報を発した彼……倉田さんはまだ疑っている様だ。

 誤解を解くには、少し時間と切っ掛けが必要な様だ。

 

──────────

 

 取り敢えず敵意はなく、ココが何処なのかも分からない事を伝えると、彼らは再び反応に困る様子に見えた。

 

「……どういう事だ倉田? アークスは個人で空間転移できる程の技術を持ってるんだろ?」

 

 確かに、技術的には個人単位での転移も可能ではある……だが、それはあくまで外部のサポート……管制官やシップ側が演算処理やゲート生成を行うからであり、1人で空間転移が可能というのは語弊がある。

 

『口を挟む様で悪いけど……転移可能なのはサポート体制が万全、かつ妨害されてないからだよ……個人で完結する技術ではないからね』

 

 

 一先ず、自衛隊の人とは会話が成立するのでこちらの事情を話し、帰還の際に同行させて貰う事になった……のは良いが、先程のオオトカゲとの戦闘で負傷者や死者も多く出たらしい。

 

『……まだ間に合うなら、手伝わせてくれ』

 

 例え違反行為だとしても、黙って見過ごすほど冷徹じゃない……彼らしか帰還する宛はないのだ、確約できないとはいえ、彼らには無理を言っている事くらい理解している……誠実さを以て返さなければ僕の気も済まないしね。

 

 幸い、戦闘で即死した人以外は全員が集められている……これなら問題ない。

 

『こんな事もあろうかと……って、誰かが言ってたっけ?』

 

 アイテムパックから、不測の事態に備え()()()()常備していたアイテム……コスモアトマイザーを取り出し、封を切る。

 このアイテムはアークスにおける最高ランクの消耗アイテム……戦闘不能者の蘇生・体力の回復・あらゆる状態異常の治癒を一定範囲内に発動させる、最高の回復アイテムだ。

 

 ただし、希少過ぎて通常手段では入手できず……旧友に譲って貰った1個を、お守り代わりとして常に持ち歩いていただけであった。

 

(コレで効かなきゃ、蘇生はお手上げだな……!)

 

 ボトル内のフォトンが大気に触れ、黄金の光を発しながら花火のように打ち上がり拡散……範囲内に集められた瀕死の重傷者へと降り注ぐ。

 

「……っ……ぅ……」

「はぁ……っ、はぁっ……ぁ…」

「……? な、何が……?」

 

 虫の息で手の施しようがなかった数名を含む、効果範囲内の全員へと降り注いだフォトンの光が収まる……するとどうだ、荒かった呼吸をしていた人の表情が緩み、息すらしていなかったのでは? と疑うような人が急に普通の呼吸をし始める……腕を蝕んだ火傷の疼きに呻いていた男の腕からは生々しい火傷が綺麗サッパリ無くなり、全身擦過傷だらけの上に足を骨折していた女性は、痛みが急に消えた事に驚いていた。

 

「……す、スゲェ……!」

 

「大量の重傷者が、あの一瞬で……」

 

「……奇跡じゃ!」

 

 翻訳システムの解読率が、いつの間にか75%に達している……どうやら、絶望を前にした彼らの声や言葉も拾い上げて演算していた様だ。

 

「……お前さん、森のエルフじゃないのか?」

 

「いや、違うよ……僕は、ただのアークスさ」

 

 そう言いながら、エネルギーアキュメーターとして機能している……視界に垂れてきた前髪を長い耳に掛け戻し、疑問を投げかけた男と向き合い、ただのお節介だと付け足した。

 

 

 先程、疑問を投げかけた男は避難民グループのリーダーだった様で、状況を再確認した後メッチャ感謝された。

 ……だが、実際に救えたのはほんの一部だけ……直接的・間接的に関わらず、あのトカゲのせいで命を落とした者は多かった。

 

「……随分と凄い事をやってくれたわねぇ?」

 

 言語翻訳率82%……もう普通に会話しても十分な数値だ、僕は声を掛けてきたゴスロリ衣装の少女を見ると、彼女の放つ奇妙な雰囲気に既視感を覚えた。

 

「凄い? アークスの中じゃ、蘇生行為は基本中の基本……消耗品の扱いレベルだからね、ある意味『禁忌』と言われそうではあるけど……」

 

「……分かってるなら、何故行ったのぉ?」

 

 少女から伝わる雰囲気が剣呑なものへと変化する……そうか、この既視感……以前にも感じたものだ。

 

(強さや規模は違うけど……この感じ、終の女神シバに似ている)

 

 油断はしない、斬り付けられても問題ないよう……彼女から見て影になっている左手に「リバレイトタリス」を現出させ、右手はフリーにしておく。

 

「救える命を放置するのは寝覚めが悪いからね、それに……」

 

 ゴスロリ少女の姿が消え、気配が背後へと回る……タイミングを見計らい、僕は特別な機能を持つタリスを真上に投げ上げ、彼女が背後に現れて大鎌を振り下ろす直前にタリス本体のスイッチを押す……

 

 ゴパァァンッ!!

 

 振り下ろされた大鎌の威力で大地が抉れ、土煙が発生する……何事かと伊丹達が飛んできた。

 

「……っ!? 居ない?!」

 

「ここだよ」

 

 ゴスロリ少女の攻撃は当たっていない……僕はヒーロークラスの扱うタリスだけが持つ特殊能力「マーキングショット」によって上空へと回避したのだ。

 勿論、タイミングは刃が触れる直前……設置したマーカーへとジャンプする時、使用者の身体はフォトンによって空間の位相がずらされており、相手からみれば「確実に当たった」と錯覚させる事が出来る。

 

「……命を救うのに理由なんて要らない、それがアークスの理念だ」

 

「……そう、アナタもそうなのね……良いわ、認めてあげる」

 

 何事もなくヒラリと着地すると、ゴスロリ少女は1人で納得して歩き去って行った……

 

 ……少し驚いたが、彼女はこの世界で何かしら神格的な役割を持っているのだとか……だから、禁忌とか軽々しく言った僕にちょっかいを掛けてきたのか?

 

(この世界での蘇生行為は、あまり褒められた事じゃない……のかな?)

 

 此方から敵対する行為をする事はない……今後からはもう少し考えて行動しないと。

 

「……先程からずっと此方を見ているけど……僕になにか用かな?」

 

 いい加減にこの視線から開放されたい、僕は視線の送り主を見ないまま声を掛けた。

 勿論、視線の送り主は自衛隊の車内に居るニューマンの少女だ……まだ布一枚しか羽織ってないので、振り向く訳には行かない。

 

(……さすがにあのままじゃ可哀想だしね)

 

 再びアイテムパックを漁る……ふと、女性物の服がアイテム化されたまま入っている事に気付いた。

 

(……あ、コレって……)

 

 未開封のパッケージングが施されたアイテム……それは昔、付き合いの長い同期から強引に手渡されたボックス品だった……量子データ化されているので年季などは入らないが、随分と懐かしいデザインの服と装飾品が一式揃って入っている。

 

「……あんな格好じゃ、ろくに話も出来ないな……お姉さん、彼女にコレを着せてくれ」

 

 そう言って僕はアイテムパックからさっきのボックスを取り出し、ちょうど此方へと戻って来ていた自衛隊の女性、黒川さんへとボックスを渡す。

 

「え、良いんですか?」

 

「問題ない……というか、彼女の格好を先にどうにかしたいからね」

 

 発言の意図を察し、さっそく黒川さんは車内で彼女に服を着せ始めた……途中「これ、どうやるのかしら?」とか「あ、コレ綺麗ね」とか聞こえたが、僕に聞いてくる程の事はなかったので問題なく着せれたのだろう。

 

「……すみません、お待たせしました」

 

 黒川さんの声と共に車両の扉が開かれ、黒川さんと彼女が出てくる……

 

「……ふぅむ、よく似合ってるね」

 

 着慣れてないせいか、まだモジモジしているけど……ニューマンらしい外見の彼女に、この「メルレットカリーナ」一式はピッタリだ。

 

「……あ、ありがと……」

 

 これでようやく彼女と話せる……この姿になってからずっと僕を見ていた理由、いい加減に吐いて貰わないとね。




……なんというか、アークスの戦い方って酷いぐらいチート過ぎませんかねぇ?
アトマイザー系アイテムなんて息の根止まってない限り蘇生可能だし、失敗しない……それが初歩的なアイテム、しかも簡単にお店で買える消耗品ですよ?

あと、アークスの常識しか無いのでこの男……エルフのテュカをまだニューマンだと思ってますねぇ。
……ま、外見的な違いがほとんど無いですからねぇエルフとニューマンって。

それはそうと、テュカに着せた「メルレットカリーナ」はPSO2の衣装で
2016年10月5日のアップデートにて実装されたものです。
もちろんフルセットですよ当たり前じゃないですか!?

テュカにも当然似合うでしょ?! 似合うよね?! 似合ってるって言ってよぉ!!

なお、時間的にはまだ昼間……死者の見送りと避難民達との別れはこの後です。
次回もお楽しみに! 感想・評価もよろしく~♪


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第3話 聖地アルヌスの丘へ

アークス謹製の最強アイテム「コスモアトマイザー」によって、炎竜の被害は幾分か抑えられたものの……完全にゼロ、という訳には行かなかった……

戦没者達を弔った後、伊丹は部下と遺された子供達を連れ……自衛隊の拠点となった「アルヌスの丘」へと帰還する。
そして、アークスである彼もまた……伊丹達に同行するのであった。


 日のある内に先の戦いで命を落とした戦没者達を、街道の外れにある螢火草の群生地の傍へと埋葬する……作業を終えた時にはもう薄暗くなり始めており、手伝ってくれた避難民達と並び手を合わせる。

 

 伊丹さんは泣くまいと必死に涙を堪えている少女に手を差し伸べ、優しく慰めていた……

 

(どうか、安らかに……彼らの魂が、悠久の輪廻へと戻り……再び生まれ変われるまで)

 

──────────

 

 銀髪長髪のエルフが、私を助けてくれた緑の人達と共に手を合わせている……エルフにしては奇妙過ぎる彼。

 

「…………」

 

 金髪エルフの少女……テュカの目に、銀髪の男の姿は実に奇妙に見えていた。

 

 エルフらしからぬ異質な服装を纏い、滲み出るのは自分の知るどんな魔法使いよりも遥かに強大な魔力……その癖、怪力が必須であろう巨大な剣を片手で軽々と振り回し……緑の人と同じ言葉を流暢に話す。

 しかも、出会った当初は私の言葉すら分からなかった筈なのに……ほんの1~2時間ほどで完全に言語をマスターしたらしく、村の人間達とも滞りなく会話していた。

 

(……このエルフ、一体何者なの……?)

 

──────────

 

 

『……そうですか……置いていくしかない、と』

 

「…………」

 

「……私達も、自分の事で手一杯なんだ……」

 

 炎竜騒ぎの影響で肉親を失った子供達や、命だけ助かった老人など……避難民には彼らを受け入れる余裕など無く、置いていく判断をするしかなかった……

 

「あんた達には、心から感謝してるよ……」

 

 

「大丈夫、まーかせて♪」

 

 あの後、伊丹さんが子供達に掛けたあの言葉……彼には何かしら宛があるのか……?

 

──────────

 

 揺れ動く車内で、僕は1人の少女と向き合っている。

 彼女は「テュカ・ルナ・マルソー」……たった一人生き残った、コダ村に近い森で生活していたエルフであった。

 

『……それで、キミは何故ずっと僕を見ていたのかな?』

 

「……っ……」

 

 奇異の目で見られるのには慣れている……だが、彼女から感じる視線は、それとはまた違う……形容し難い複雑な感情だ。

 

「……っ……から……」

 

 やや間を置き、彼女はもう一度言葉を紡いでくれた。

 

「……貴方は、本当にエルフじゃないの……?」

 

 エルフ……というのは良く分からないが、僕は現状、適当に選んだ生身用のコスチュームを身に纏っている。

 登録されているフェイスデータは、謀らずもニューマンの物だ……彼女と同じ長い耳に、透き通った綺麗な銀髪……瞳は宝石と見紛う程の、暗闇で光る紫の夜光瞳という、普通では有り得ない組み合わせだが。

 

『そう、僕はニューマンじゃないよ……この外見も、単に真似しているだけさ』

 

 釈然としない表情のテュカ……何故か黒川さんも同じ顔をしている。

 ……なるほど、彼女の言うエルフという種族とニューマンの外見的特徴はそれ程までに似ているというのか。

 

『僕ら……第4世代のアークスにとって、種族や性別の概念は無いんだ。

 ……この外見はデータをニューマンベースで登録していたからそう変わってるだけで、中身は同じなのさ』

 

 此方の情報に異様なほど詳しかった倉田さんならすぐに理解したであろうが、彼女達にはどうやらチンプンカンプンだった様だ……これはもう、実演するしかないね。

 

『ほら、よく見てて……』

 

 2人の目の前で、僕は再びマイファッションから更に別種族の外見へと変わる登録情報を引っ張りだして適用……その姿をオッドアイと角が特徴的な種族、デューマンの姿へと変える。

 

「「……え……?!」」

 

『……ほら、これで納得しただろ?』

 

 目の前の男性の、身体的特徴がほんの僅かな間に変わるのを目の当たりにしたテュカと黒川……トリニティは外見変更をしただけだが、2人の顔は異様なほど驚愕に満ちていた。

 

『……どうしたの?』

 

「「……お」」

 

『お……?』

 

「「女の子になったぁぁぁぁぁ!?」」

 

 2人の叫びに、自分の格好と登録情報を見比べる……服装はシンプルでタイトな革製の様な特徴のスーツっぽい奴で、短く切り揃えられた髪は銀髪のままだが、タイトな服の胸部分が申し訳程度ながら確かに膨らんでいた……

 

『あ、コレ……遊びで真似してた後輩(おれ)っ娘の登録(ヤツ)だ……』

 

──────────

 

 種族の話から拡大したこの騒動はひと悶着あったものの……トリニティには基本、外見の変更を極力しない事を確約して貰い、この件は幕引きとなった。

 見た目だけなら性別すらも自由自在……というトリニティの能力に驚愕する伊丹と倉田(コミケ常連)だったが……倉田が邪悪な企みを伊丹との通信中にうっかり吐いてしまい、伊丹にどやされ、道中の休憩時に、格闘の強い栗林から鉄拳制裁を加えられたという。

 

 ちなみに倉田は、トリニティを()()()()()()()コミケに参加させようとしていた……

 

(コミケ、というのはよく分からないけど……誰かの真似で誰かが喜ぶのは、別に悪い事じゃないし……出ても良かったんだけどね)

 

──────────

 

 一度休息のために野営した後、翌日の早朝に移動を再開……その日の昼前に、第3偵察隊と難民の子供たちを乗せた車は、自衛隊の駐屯地……「アルヌスの丘」へと到着した。

 

 

 建物そのものは半ば簡易的ながら、頑強さはなかなかみたいだね……防音性はイマイチみたいだけど。

 

「……だ……誰が連れてきて良いと言ったァァァァァ?!」

 

 わーお、凄い声だね……壁越しにでもしっかりと聞こえてるや。

 

「……あれ、連れて来ちゃマズかったですか?」

 

「……マズくない訳がなかろうが……ッ」

 

「あ……えっと、どうしましょう?」

 

「それはコッチの台詞だァ!」

 

 世界が違えども、中間管理職は辛いねぇ……盛大な溜息までこっちのセンサーが捉えてる……余程あってほしくない事態になってしまった……といった感じかな。

 うーん、初めてとはいえ……このやり取りを聞く限り、伊丹さんはこの状況から発生する予測を踏まえつつ、敢えてこのやり取りを誘発させている気がする……もしかして、彼は昼行灯に見えてかなり狡猾だったりするのか?

 

 上官さんの盛大な溜め息は、どこか哀愁を漂わせている様だった……

 

 

 しばらくして、更に上方への報告も済み……戻ってきた上官さんは何やら恨めし顔で伊丹さんへ、半ば八つ当たりの如く指示を出したみたい。

 

「……と、言う訳で……君の面倒も俺達が見る事になったから」

 

『了解……それで、帰還の件は?』

 

「来訪の経緯も併せて報告はしたんだけど……上から特に個別なお達しは無かった。

 どうやら上は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んじゃないかなぁ?」

 

 それはおかしい……マザー・クラスタやアースガイドとの抗争の後、双方の共同で新設された情報統括部が間違いなく機能している筈なのに……

 

「ちなみに俺個人の見解からしても、その『マザー・クラスタ』とか『アースガイド』っていう組織なんて知らないし……『エーテル技術』って言うのも初耳だよ……

 

 やっぱり、キミ達と交流していた地球と、ココと繋がってる地球は違う世界なんじゃないかな?」

 

 確かに、伊丹さんが提示してくれた地球の情報と、僕が現在保持している地球の情報は()()()()()()()()()()()……最たる例は、僕らがゲームのキャラだとされる「PSO2」は、据え置き型ゲーム機やPCをメイン筐体として展開されており、交流のあった地球での「誰もが持ち得る携帯端末」の標準アプリとして……ではなかった。

 それに通信技術も、ごく一般的な広域電波による通信技術が主流であり、エーテルによる超高速通信……なんて影も形も無かった。

 

 その他一般的な常識レベルの情報はそれなりに共通点も多かったが、必要不可欠な情報はその尽くがありえない程の「技術差」を痛感するものばかり……なお、凄まじく絶妙だったのは「PSO2」というゲームが「NGS」というサブタイトルを添えられて大幅進化し、僕らアークスが使用している技術はそっくりそのまま、ゲーム内のシステムとして再現されている事だった。

 

(……じゃあ、本当に僕は……この世界では単なるゲームから飛び出した、いちキャラクターに過ぎないのか?)

 

 実感は湧かないものの、現実にこうして与えられた情報は嘘一つなく……原隊復帰への道は閉ざされたのであった……




服装変更後のステータス

種族:デューマン(女性)

髪型:エターナルFレイヤー

服:エーデルゼリン[Ba]
  エーデルゼリン[in]

備考:瞳の色は左が暗めの赤……赫色と呼べる色へと変化している。
   なお、CVや身長などは変化無し。

元々が潜入捜査などに長けていたので、声色や性別の変更に一切の戸惑いがなく、また自然体で変化させる為……テュカ達には普通に女性だと思い込んだ。

その他、彼の「変身」レパートリーは非常に多く……鳥人、アンデッド、竜人……果てはA.I.S.や異世界の剣士、敵性種族(フォトナー)まで含まれており、もはや多彩というレベルでは収まらない。


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第4話 ふしぎなふしぎのフォトンパワー

行く宛が外れたアークスくんですが……
現地のトップである「あの方」は何やら考えがある様ですよ?

では行きましょう……第4話!



 狭間浩一郎……特地派遣部隊の総指揮を任された陸将であり、東大出身なのに現場叩き上げで地位を得た異色の存在である。

 

(いきなりの呼び出しには驚いたけど、なるほどこの人……報告だけじゃ真偽に欠けると思って直接、僕の事を確かめに来たのか)

 

「キミが、例の異世界人……アークスかね?」

 

『ええ、登録名はトリニティ……情報部の所属です』

 

 情報部と聞いて一瞬、動揺が走ったか……そりゃそうだ、情報というのは組織間において重要な要素を司る……それを扱う部署と言うだけで、組織内の警戒心を爆上げするには十分過ぎる言葉(ワード)だ。

 

「ふむ……報告にあった外見と一致しないね、理由をお聞かせ願えるかな?」

 

『……その前に、貴方のその警戒心は無用ですよ?

 

 僕は現状、所属組織から空間的に隔絶されているので、連絡はおろか帰還手段も儘ならない身……さらに言えば逆に貴方がたへ助力を求める側なので、むしろ僕が恩返しとして協力を惜しまない所存です』

 

「……そうか……了解した、では……オホン!

 

 まず、キミの能力を簡潔に知りたい……協力を惜しまないとの事だが、現実問題としてまずはキミの得手不得手を知るのが最善だと思うのでな?」

 

 基本的にアークスは単独で戦闘から調査、現地人とも交流可能……個人の分野における能力も、実力者は専門職に勝るとも劣らないエキスパートばかりだという前提を話し、その上で僕の得意分野である「情報戦」と「装備の設計・開発」、そして「変装」という個人特技を披露する……

 

 そういう意味もあって、わざと報告と違う外見をして狭間陸将の呼び出しに応じたのだ。

 

「……ッ?! ……なるほど、これは想像以上だな……!」

 

 最初は「男性キャスト」の姿で狭間陸将の前に現れた僕、そこから通常モードとして固定する事にした「男性ニューマン」に、テュカ&黒川さんの前で見せた「女性デューマン」の2形態……そしてアイテムパックに入っていた()()()()()()()へと順番に「変わって」みせた。

 

 ……何故か最後のきぐるみに、複雑な表情で反応したのは気のせいだろうか?

 アークスでは割と人気のあるモンスター系きぐるみなんだけどなぁ……

 

 

 その後、僕は狭間陸将と正式に相互協力の約束を行い、本土や外部へは現地協力者の1人として説明する事になった。

 現状、アークスという第3勢力の存在は非公開とし……「現地で腕の立つ人物」という傘を被る……緊急時以外はキャスト形態を封印すれば良いだけなので、僕としては呆気ないくらい楽な条件だ。

 

──────────

 

 その翌日、避難民として受け入れた人達の把握と、保護の為に行う諸々の作業を手伝う事になった……具体的には、人物リストの作成と詳細の把握……そして彼等の宿泊施設の建造だ。

 施設建造はさすがにお門違いなので……僕は翻訳機をフル活用し、住民リストの作成を手伝う。

 

 大半の人は特に問題なく終わったのだが、テュカだけは妙な行動をしていたな……

 

 ……妙な事態に発展しなきゃ良いんだけど。

 

──────────

 

 魔導師カトーの弟子、レレイは随分と好奇心旺盛らしく……炊き出しの様子もじっと観察していたし、今も僕が食後の運動として自主訓練(トレーニング)しているのをしばらく見ている。

 

「……その剣は重い?」

 

 ヒーローの基本武装として僕が主に使う「リバレイトソード」を指し、その重さを問うてきたレレイ。

 

「持ってみるかい?」

 

 僕は玩具でも差し出す様に、リバレイトソードを持ち易い様にレレイへと差し出した。

 

 普通なら「そんな大剣を華奢な少女に持たせるのかよ?!」と突っ込まれそうだが、簡単にそうしたのにはちゃんと理由がある……少し躊躇ったが、リバレイトソードの柄へと手を伸ばすレレイ。

 

「……?! か、軽い……!」

 

 恐る恐る柄を握り、持ち上げ始めたレレイの表情が一瞬で驚愕と好奇心に染まる。

 

「持ち主の技量に応じて、自律的に調整する機能があるからね……単純な筋力ではなく、扱う技量がモノを言う武器なのさ」

 

 そう、武器としてのリバレイトシリーズには装備者の技量などのパラメータに応じて、出力や重量、制御システムを自動調整するという拡張補助機能(サポートシステム)がある。

 それ故、握れば誰でも一定の威力を出せるし、技量が高くなればなる程その破壊力を増せるという、次世代主力武装(リバレイトシリーズ)だけが持つ「解放機能」の真髄……

 

 僕が今でもリバレイトシリーズを持つのは、コレが1番の理由だ。

 

 レレイからソードを返して貰うと、僕は刃を地面に向けたまま手を離す……すると。

 

ドスッ!!

 

 持ってみた時の意外な軽さとは正反対の……見た目相応の重量感溢れる音を発しながら、地面へと突き刺さるリバレイトソード……その光景に更に驚くレレイ。

 

「そんな……軽かったのに!?」

 

『それが調整されてる証拠なんだよ……フォトンによる自重と慣性質量の自律変動……持つ間は自然な軽さ、振る際の慣性質量を扱いやすくコントロールし、インパクトの瞬間に自重を増して打撃力を増大させる事が出来る』

 

 この世界と繋がった、地球のレベルすら軽く凌駕しているアークスの技術力……その一端とはいえ、それを前にした彼女の目は……物凄く輝いていた。

 

──────────

 

 そんなこんなで、数日が経過……目下の課題は、テュカの奇行だ。

 精神科医ではないので何とも言えないが……あれは恐らく、パーソナル障害の可能性が高い。

 

 レレイから聞いた情報では、あの時避難民を襲っていた赤トカゲに……故郷や仲間、全て焼かれ……たった1人、生き残ったと聞いている。

 

(だとすると……肉親か誰かを目の前で失った事で、精神障害を発症しているのか……)

 

 深刻な状態になる前に治療を行えれば良いのだが……精神障害の治療は専門家でなければ不可能だし、仮に行えたとしても成果が出るには長い時間を要する。

 こればかりは本人の気持ちの問題でもあるため、下手に手を出して悪化させてしまう恐れもある……

 

『こういう時に、オラクルと連絡が取れればなぁ……』

 

 溜め息混じりに希望的観測を口にしながら、居留施設に宛がわれた自室へ初めて入る……殺風景な部屋には地球製の電源設備や窓もあり、仮住まいとしては十分過ぎる広さもあった。

 

『さて、奇跡的に持っていたコレが役に立つ時か……』

 

 そう呟き、アイテムパックから()()()を実体化させて設置する。

 

『手持ちの中にあったのは偶然だけど……今となっては物凄くありがたいね』

 

 それはアークスのマイルームに必ずある設備へ、外部からアクセスを可能とするルームグッズ……「部屋主用端末シリーズ」だ。

 この端末シリーズは、マイルームの壁に固定されている同種の本来の端末にわざわざ移動する事無く、作業場所に集中配置する事で手間を省く為のグッズだ。

 マイルームの扱いに慣れた人には無用の長物だが、今の様な状況下なら稼働するだけでもありがたい……マイルーム端末を入口横に固定した後、倉庫端末を設置……使えるかは不明だが、ビジフォン端末も並べ、簡易的にマイルームと同じ配置へと整える。

 

『……さて、手持ちを移動させとかないと……』

 

 そう思い、倉庫端末のホロウィンドウを展開した僕の視界に映ったのは……空の筈の倉庫内に、見覚えのあるアイテムがコレでもかと積まれている光景だった。

 

 

(……いったい何がどうなってるんだ……?)

 

 倉庫内には転移直前に確認した、任務へ出発する前の状態になっており……今までに収集した装備やルームグッズ、大量の素材が山の様に入っていた。

 

 どういう事なのだろうか……ココは彼方の地球でもオラクルでもない、アークスにとって未開惑星の1つの筈だ。

 それなのにこの大量のアイテムや素材の山、しかも今回転移した直前に確認した中身そのままの状態が再現されている。

 

『摩訶不思議な現象……しかもちゃんと取り出せるし』

 

 倉庫からかつて使っていた武器の1つ……ノヴェルナックルを取り出す。

 一応、後継職を含む全クラスを極めた上でヒーローとなった僕にとって……修行時代の後半に使っていた「ノヴェルシリーズ」は思い入れが深く、それなりに愛着もある。

 

 感慨深くナックルを眺めていた僕の視界の隅に、ルームグッズの一覧が見え……

 

『……! もしかしたら……』

 

 不思議な事にルームグッズが正常稼働しているのだ、もしかしたらアレも使えるかもしれない……期待を胸に、使えそうなルームグッズを次々と設置。

 

 そして最後に出したのは「パートナーコンソール」……

 

 アークスの各種サポートや戦闘までこなせる万能マシナリー「サポートパートナー」を呼び出せる端末だ。

 

 設置を終え、すぐさまコンソールを起動……数秒の起動音の後、量子格納されたボディフレームが展開されていき、展開完了のアナウンスと共に()()()()()が姿を表す……

 

「……おはようございます、ご主人様……本日はどの様なご用件でしょうか?」

 

 稼働しているコンソールの中央に、僕自身の手で生み出した小さな相棒……サポートパートナーが立っていた。




アークスの戦闘装備は化け物か?!
そんな裏設定を捏造してしまった……
もちろん原作の武器にはそんな機能なんてありませんのでご注意!

そして、借り物のお部屋がアイテム1つで『マイルーム』と繋がっちゃった!?
コンソールは問題なく起動、倉庫は向こうのアイテム取り出せるし、サポパまで呼び出し出来ちゃったよ……ふっしぎだねー?w

そして冒頭では、現地指令さんへ「変身」を披露しました。
自衛隊の方がリアクションに困るモンスターと言えば、もうお分かりですよね?


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第5話 日銭と服とサポートパートナー

前回、狭間陸将に披露した最後の姿……
分かった人は何人くら居るのかな~?

ネタが分かった人は感想でツッ込んでくれて良いんですよ?w

さて、前話の最後に現れたサポートパートナー。
性別アンケートが圧倒的に女性なんだけど……
投稿時点で3位になってる「実際にゲームで作ったキャラ」も女性です。
なので「自キャラ」を採用しても1位と同じデスヨネ?(強引)


 アルヌス駐屯地に借り受けた部屋に設置した、ルームグッズが稼働し……オラクル側の状態が反映されていく中、パートナーコンソールから現れたサポートパートナー。

 

『……あの、ご主人様? 何か問題でも……?』

 

 金色の瞳が心配そうに僕を見上げてくる……サポートパートナーは最大身長でも人間の半分程しかない為、主を見上げるのは必然……

 だが、この娘の容姿と真面目な性格故に、見上げ視線+心配な表情は破壊力が凄まじい。

 

『あ……いや、何でもないよ……また宜しくね、リィス』

 

 サポートパートナー登録名称:リィス

 サポートパートナーとは、ベテランアークスに支給される人型のマシナリー……だが、彼女は特別製で、稼働に必要な全てを僕自ら手掛けたサポートパートナーだ。

 

『……私を呼び出したと言う事は……また厄介事に首を突っ込みましたね……?』

 

 ヨロシク直後からこの切り返し……優秀さは伊達じゃない、と言える程のお約束レベルで現状を察するリィス。

 

『今回ばかりは不可抗力だ……ココは星系特定すら出来ない未開惑星、ついでにこの地には異世界へと繋がる「門」(ゲート)がある……ちなみにその先は、かつて繋がった世界とは違う「地球」だよ』

 

 僕の言葉に疑いを持ち、自ら座標特定しようとするも……オラクル管制には繋がらず、マップデータも真っ白……更に窓の外を見て、リィスは絶句した。

 

『……まさか、本当の事だとは……ご主人様、スミマセン』

 

 すぐに自ら謝罪するリィス、僕は『そんな事は良いよ、それより……』と話題を切り替え、現状の説明と今後の方針をリィスに語り始めた。

 

 

『分かりました……では、私もご主人様に同行して問題解決に当たる……という事で良いのですね?』

 

『うん、当面は自衛隊へ協力する現地人という事になるから、リィス用の装備もチェックしよう……それと、予備の服とかもね』

 

 それから小一時間もの間、僕とリィスは今後の旅に必要そうな装備やアイテム、素材等を厳選し……準備を終えてから伊丹さん達へ紹介する為に部屋を後にした。

 

 

「「「「「「………………」」」」」」

 

『本日より皆様のサポート業務を務めさせて頂きます、リィス・ステイヤーです。

 ご存じの通り……ご主人様(トリニティ)と同じく私もアークスなので、戦闘でもお役に立てます……どうぞ宜しくお願い致します』

 

 昨日の今日でまた増えたアークス……伊丹さんや上司さんには悪いけど、僕らはコレが当たり前だからね……今更オラクルへ帰せない(確認済み)よ? でも、僕以上に彼女は何でも器用なんだし、後々居て良かったと思える筈だから……そう落ち込まないで。

 

「うぉおぉぉぉぉぉぉ! サポパまで来てるぅぅぅぅ!?」

「ウチ等の常識、もうアテになんなくなってるわね……」

「えぅと、その……よろしくお願いしますね?」

 

「……トリニティ……そういうのはさ、もう少し先に教えといてくれ……」

 

 突然のアークス枠増員……やったね、コレで戦闘が起きても楽チンだよ♪

 

──────────

 

 それから、生活費を稼ぎたいというレレイとテュカに賛同し……駐屯地の外にある大量の飛竜の死骸から剥ぎ取った鱗を売る為、伊丹さん達に連れられて僕らはアルヌスから程近い街「イタリカ」へと移動する事になった。

 

 その移動前……僕は倉庫内を整理し、リィスの外出用コスチュームを選ぶ事に。

 

 ただ、アークスの服装に興味が湧いたのか……テュカとレレイ、そして栗林さんと黒川さんも僕の部屋へと来ているのだった。

 

『……さて、女性用はこれで全部だ……我ながら良くここまで集めてたよなぁ……』

 

『ご主人様は整理整頓が苦手ですからね……アークスでなければ絶対に足の踏み場も無い部屋になるのは火を見るより明らかです』

 

 この小娘……やけに痛い所を突いてくる、誰が感情プログラムを作ったんだ?

 

「凄い量……」

 

「王族や商人でも、こんな量の服は持ってないわよ……」

 

「へぇ、きらびやかなのもあれば……う"え"っ?!」

 

 栗林さんが持ち上げたのは、露出度の異様に高い「ブルージーレクイエムの服」……最早服とは呼べないレベルの紐パンとブラしかない、早い話が痴女服……こんなの持ってたっけ?

 

「どうみても、メイド服よね……これ……」

 

 黒川さんが手にしたのは「クラシックメイドドレス」……あれは確か地球の服装にインスピレーションを刺激されたコスチューム開発者が作り上げた奴だ……何かの記念で貰ったんだっけか?

 

「……あっ、この服……凄い……」

 

「……これ、昔着てたのに似てるわ」

 

 レレイとテュカがそれぞれ、見つけた服を手に取って見ている……あれは「オーヴァルロード」と「イロイスアルキュリア」か……

 確か「オーヴァルロード」には、強力な魔石を採用した……とかいう触れ込み(フレーバーテキスト)があったな……「イロイスアルキュリア」の方は、テュカに着せた「メルレットカリーナ」に少し近いイメージの服だ。

 

 偏見かもしれないが、あの手の服はテュカに似合うと思う……

 

『ご主人様、私……これが良いです』

 

 突然リィスが声を上げ、僕はそちらを向く……リィスが手にしていたのは、軍服風のデザインに肩マントが特徴的な「メイヴィスエブリル」のセットだった。

 

『意外だね、リィスは和装が好きだと思ってたけど……?』

 

『こちらの世界観に則したデザインの方が、違和感を持たれないかと……現にご主人様だって、「クエントロクロス」じゃないですか』

 

 そうなのだ、この「クエントロクロス」と「メイヴィスエブリル」は元となった世界観こそ違うものの、どちらも軍服としてデザインされたものだ。

 自衛隊の服を借りるか……とも考えたが、結局は自前……かつ、王公貴族っぽさを強調出来そうな服を着る事で、身分の追求を誤魔化す案を採用していた。

 

 それに……一目で分かる服装の方が、急場を凌ぐ時も都合が良かったりするからね。

 

 その後リィスは「カンナギツバキ」を普段着として取得し……更に「ヨルハ2B・レプカ」と付随アクセ一色……更には「アステリアガーター」のセットを、自分のアイテムパックに収めていた。

 

──────────

 

 自衛隊の高機動車2台に分乗し、一路僕らはイタリカへと向かっていた……

 途中……戦闘時には連携を取る事や、交渉・通訳は僕かリィスが前に出る事を確認したり……リィスがいつの間にか「ヨルハ2B・レプカ」を着込み……その完成度に倉田さんが大興奮したり、と……なかなか楽しい道中だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、イタリカへと続く道程も、もうそろそろ到着という頃……それを見つけてしまった。

 

 遠目に見える城壁を擁する街と、そこから上がる黒煙……

 そしてアークスのフォトンを扱う感覚が肌で教えてくれる、戦闘の気配。

 

『伊丹さん、前方の街……多分戦闘中だと思う……到着する頃には落ち着いてそうだけど……』

 

『……事前に頂いた地図からの推測ですが、あの街がイタリカで間違いないかと』

 

 僕とリィスの進言に、真剣な表情へと切り替わる自衛隊の皆……戦闘と聞き、テュカとレレイは少し不安そうだが、ロウリィだけは「フフフ……血の匂い……!」と、明らかに嬉しそうだった……




次回、戦闘シーンがあります。
アニメ通りの展開にはなりません……それは何故かって?

あの2人が居るからですよw
あー、あと次話に採用するアンケ取りますので投票よろしく♪


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第6話 襲撃に揺れる街

明けましておめでとうございます。

新年一発目の投稿がアークス関連とは……
やはり私は根っからのアークスなのだなぁと実感しまして……
今年もよろしくお願い致しますm(_ _)m

ところで……
リィスのメインクラス、個人的にはテクターになるかもって想定だったんですが……
圧倒的じゃないか、ファントムが!!

なのでメインクラスはファントムに確定しますw
……「ソウジは銃器で行います」とでも言わせる?


 イタリカが襲撃されているのはすぐに分かったものの、距離的に到着した頃には戦闘も終わっており……固く城門は閉ざされ、見張りの兵すら外から見えない。

 

『センサーに感あり……扉の向こうに3人、居ますね』

 

 アークス謹製の複合レーダーシステムと……キャスト特有の各種センサーのデータを照合し、僕はその結果を伊丹さんに伝える。

 彼は「うっそ、そこまで分かるの?!」と驚いていたが……アークスなら障害物越しの存在確認など基本的な技能だし、熟練者にもなれば視界の外を狙い撃ちする事も出来る。

 

『フォトンセンサーなら、空間的な隔離でもしないと普通にバレますよ……物理密閉、空気の出入りすらも閉じなきゃね』

 

 フォトンセンサーは大気中のフォトンを利用し、対象から放出される様々な現象を情報として捉え、それを肌感覚として感知するシステムだ。

 大気中のフォトンを利用するため、当然この様な場所なら丸分かりだし……例え扉を閉めた部屋でも、空気の出入りする隙間があるなら多少のタイムラグ程度で感知できるのである。

 

「何者だ!? 敵対する意思が無いなら姿を見せろ!!」

 

 見張り台の兵士が叫んだ。

 

「……多分、言う通りにした方が良い……私から行く」

 

「わ、私も……」

 

「じゃあ、私も行くわね……肩書きは煩わしいけど、私が一緒なら相手も悪く扱わない筈よぉ」

 

『万が一に備えて、僕も行くよ……伊丹さんは最後尾で付いて来て』

 

 レレイ、テュカ、ロウリィの3人が、まずは現地人として様子見に行くと申し出た。

 僕も今はニューマンの姿だし、国属騎士的な格好(クエントロクロス)だから怪しまれない筈……備えあれば憂いなしという風に、僕は伊丹さんの護衛として車を降りた。

 

「……、……」

 

「…………。……、……?」

 

 車を降りた事で、扉の前でヒソヒソと話している声がするのが聞こえてきた。

 さすがに内容までは聞こえないが、トーンと口調……そして声色から、男性1名、女性2名……おっと、その後ろに大勢の人間の反応……恐らく駐屯の兵士か、民間人だろう。

 

 先程まで戦闘していたのだから、警戒されるのは当たり前だ……事は慎重に運ばなければ。

 

(こういう時は、第一印象が肝心でしょ? 俺がノックするから、もし攻撃されたらフォロー頼む)

 

(……了解)

 

 小声で僕にそう伝え、伊丹さんは扉へと近付きノックを始める。

 こういう時でも普通にノックするのは、地球人だけだと思うのは気のせいだろうか……?

 

 なんて事を考えてると、短い間を空けてノックに反応し扉が開き始めた……が、その勢いは何故か……あ、速っ……

 

 ガゴォンッ!!

 

「よ、よく来てくれた……!!」

 

 重苦しい(?)音を発して開け放たれた扉……それを行った本人、というか加害者は軽装の鎧姿をした十代後半くらいの赤髪少女……身に付けた装飾品から、恐らくこの世界の貴族辺りだろう。

 

 最初はおっかなびっくりな表情だったが、困惑の表情を浮かべるレレイ達と、手を伸ばして届かなかった的な状態で硬直している僕……そして、彼女が開け放った扉に直撃し、不意の事で受け身すら取れずドミノの如く後方へ転倒……軽い脳震盪を起こして気絶している伊丹さんを確認した後……

 

「え……あ……も、もしかして……妾が……?」

 

「「「『…………』」」」

 

 4人からの無言の肯定に、彼女は引き攣った笑みを浮かべ始める。

 

《……隊長、伊丹隊長? 隊長!? 送れ!!》

 

「あ……は、ひぃぃ……いひぃ……ぃぃ……」

 

 身に付けている無線機から、車に残っていた隊員からの呼び声が響く中……加害者となった事を認識して涙目になっていく彼女には申し訳ないけど……以前、()()()()()()()()()()()()()()()を発見してしまい、その口止め料として見せられた「地球産ギャグ漫画」の様なこの惨状に、僕は顔は崩さなかったものの……内心、笑いを堪えるので精一杯だった。

 

──────────

 

 伊丹さんが復活するまでの間、テュカが彼を介抱しながら加害者である少女に対し「扉の前にいる人を確認しないなんてゴブリン以下よ!!」と激しく非難、ロウリィは何故か膝枕で伊丹さんの顔を覗き込んでおり……非難を浴びる問題の少女は、不可抗力とはいえ自分が引き起こしてしまった結果に複雑な表情を浮かべていた。

 僕は一応、護衛として全員を守れる位置に立ち……背中の大剣(リバレイトソード)こそ抜かないものの、厳しい目付きで周囲を警戒……する様なポーズを取る。

 

 ちなみにレレイも僕の隣で同じ様に警戒していた。

 

 伊丹さんが目覚めた後、無線の相手に自身の安否と指示を伝えた後……

 

「……んで、誰がこの状況を説明してくれるのかな?」

 

 伊丹さんのこの言葉に、この場に居た全員が加害者となった赤髪の甲冑少女を見た。

 

「……へ? わ、(わらわ)が?!」

 

「お、お前達! 帝国第3皇女……ピニャ・コ・ラーダ殿下に対して、非礼であろう!!」

 

 あーら、やっぱりそういう身分だったのね……しかも第3皇女という事は、出立前に説明して貰ったこの地域を収める帝国の、王の一族という事か……ここに居る状況までは掴めてないけど、色々と政治的な影響で苦労してそうな顔をしているなぁ……

 

 

 加害s……もといピニャ殿下によって、この街を治める伯爵の邸宅に案内される僕ら……道中で現状の説明も受けた。

 

 何でもココ「イタリカ」は交易の最重要点に位置する城塞都市であり、代々「フォルマル伯爵家」が治めていたが、先代当主が急逝……実子の末妹が後継者となったものの、その「後見人」の座を巡って他家に嫁いでいた「長女」と「次女」が対立……そこへ、アルヌスに「門」(ゲート)が開き、その先に繋がった()()()()()()()()への侵攻作戦が帝国で立案され、諸貴族へも当主の参戦が求められた……が、出撃した諸貴族の当主が誰も帰って来ないので「イタリカ」だけでなく各地の治安は急速に悪化しているらしい……

 派兵に失敗した帝国は国力の低下を悟られない事と、周辺諸国との戦力差を埋める為、周辺諸王国に嘘をばら蒔いて派兵をさせ、誤魔化そうと画策した。

 無論、諸王国は当初こそ渋ったものの……相互協力を約束した帝国に同行してアルヌス攻略に派兵したが、予想外の苦境に援護する筈の帝国軍すら誰も現れず、嵌められた事に気付いた時には壊滅状態だったそうな……

 更に、先程までココを襲撃していたのは、その異世界出兵に失敗した帝国の策略によって嵌められた周辺諸王国の敗残兵……つまり、「アルヌス」へと進出した自衛隊の反撃に遭い、行き場を失った元・国属兵達の成れの果てだというのである。

 

 ピニャ殿下がココに来ている理由の方は、ぶっちゃけ言って当て馬だ……突如として「門」のあるアルヌスに現れ、周辺諸王国の連合軍すらも軽々と打ち破り、周辺地域の村で噂になっているという緑の人……その正体を確かめろ! と言われて来て、いざ近隣まで来たら交易都市が襲撃を受けてる真っ最中……現・当主は若すぎて兵を率いさせるには忍びなく、代わりに指揮を執っている……ときた。

 

 フォルマル伯爵家の現・当主「ミュイ」と対面した時は、さすがに驚いたよ……まだ親の庇護下に居て当然という年代の少女だったのだから……

 

「……確か、公女は今年で11歳だったはず……」

 

 ……こりゃ殿下は、思ってたより苦境に揉まれてますなぁ……

 

──────────

 

 協議の結果、僕らはピニャ殿下の助勢をする事になった。

 当然ながら争乱が終わらなければ、当初の目的である「飛竜の鱗」を売る事など出来ない……

 そうでなくとも……無意味に争いを引き起こす野盗は処罰しておかないと、こっちの気が済まないしね。

 

 その後の対応と協議は伊丹さん達に任せ、僕はその部屋から続くベランダへと出た。

 

『様子はどうだった?』

 

 僕の声に反応し、黒いオーラが弾ける様なエフェクトと共にリィスが現れる……

 実は、車を降りた時点で彼女には別行動を取って貰い……襲撃者の追跡と、街の防衛状況の偵察に行って貰ったのである。

 

『城壁の損耗は一部が大きいですが、深刻な被害は城門付近に集中しているので、そこ以外はまず補強は必要無いかと……』

 

 城攻めの基本は城壁または1つの城門に囮を近付け、その対応をしている隙に別ルートから攻勢を掛ける……あるいはそれも囮にして、本命を後々に持ってくるのがセオリーだ。

 野盗とはいえ、元は国属騎士や戦士の大規模集団だ……戦術はあると考えて良いだろう……

 

『それと、魔法使い(フォース)らしき人物が1名……外見は緑色の鳥人系種族です』

 

 成る程、魔法による攻撃や補助がある可能性の考慮も必須か……

 

『敵の現在位置と規模、そして動向から……次は恐らく、夜襲を掛けてくると思われます』

 

『夜襲、か……僕らや伊丹さん達はともかく、彼女の軍勢は不利になるね……』

 

 現在の状況を近しい年代の地球の歴史書や各陣営の戦績データ等と照らし合わせ、結果を演算する……間違いなく、城門は開け放たれ……筆舌し難い惨劇の果てに、この街は落ちる。

 

『やはり、僕らが動こう……この街は重要な交易拠点だし、恩を売るなら……』

 

『今を置いて他にありませんね?』

 

『……あのさぁ、そこは「今でしょ?」って言ってくれても良いんじゃないかい?』

 

『ご主人様のギャグセンスは凡人以下なのですから、乗るまでも無いかと……』

 

──────────

 

 その夜、僕は伊丹さん達と作戦会議を開き……自衛隊は殿下の指示に従い東門へ、僕は遊撃として城壁を周回し、リィスにはもう一度先行偵察へ行って貰った。

 夜襲で一番危険なのは、本隊の襲撃タイミングが予測できない事にある……なので、リィスには本隊に張り付いて隠密行動を取らせ、敵の本隊が襲撃に移るタイミングで更にその背後を突く「隠密挟撃」の役とした。

 

「……大丈夫なのか? たった1人で……」

 

『私の主戦職(メインクラス)は隠密行動や電撃作戦に適正の高い「ファントム」です。

 兵士崩れの野盗程度ならば、たとえ万を越えようとも鎧袖一触ですよ……』

 

「「「……」」」

 

 誰も信じられない様だけど、ファントムの殲滅力は掃討戦において他に類を見ない程(ヒーローと同レベル)に高い……それに、打撃・射撃・法撃の全てにも満遍なく対応しており、多人数を相手取る戦いに向いているのだ。

 その上、戦術スキルにおいても不可視の刃や無音走行、光学迷彩など隠密に特化している……つまりは複数の相手を手玉に取り、自身の強みを一方的に押し付ける戦いが可能なのである。

 

『ま、既に実戦は経験済みだし……僕らの力を知るには、良い機会でしょ?』

 

『本当はご主人様が殿下に対して、これ以上ない程の恩を売るための演し……ムグッ』

『作戦は襲撃開始と同時。

 伊丹さん達は動きにくいと思うから、任せて良いよ!?』

 

──────────

 

 ……そして、その日の深夜に襲撃は始まったのである。




さりげなく殿下が悪者扱いに……でも事実なんだからしょうがない。

説明部分はアークス目線で見た彼の目線です。
画策やら何やらの部分は情報部所属故の邪推ですが概ね事実だからやけに鋭い……

さて次回は当然の流れで、アークスと自衛隊の蹂躙劇。
久しぶりに催促しちゃおう、感想よろしく~♪


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第7話 夜襲、そして反撃

前回のアンケート結果ですが……
ダントツでアークス成分120%……こんな早期にもう原作崩壊させる気ですか?w

まぁ、ある程度は活躍させないとね……なのでやる事はやる。
やり方はアークスとしての彼ら流で。


(夜襲はほぼ確実……タイミングは不明だけど、まず自衛隊の居る南門以外で間違いない……問題は……)

 

 僕は暗闇の中、城壁の上を最速でかっ飛ばす……アークスの地上走行速度は個人の資質や体格に大きく左右されず、基本的には誰でも素で時速30km/hは出せる。

 そしてキャストボディならば、マイクロイオンスラスターによるブースト……他の種族達ならフォトンダッシュで50~60km/hは出せるのだから、下手に車両に乗って動くよりも速いのだ。

 

『……? あっちは……東門か……!』

 

(開戦間もないだろうが、距離が少し遠い……間に合いはするだろうが、死傷者は多くなりそうだな!)

 

《トリニティ、襲撃は東門だ! そっちの現在位置は?!》

 

『現場到着まであと500、既に先行中!』

 

《了解! こちらも状況が整い次第援護に向かう、やられるなよ?!》

 

 通信の最後に「やられるなよ」と激が飛ぶ……心配されていると分かった瞬間、僕の顔には不敵な笑みが浮かんでいた。

 

『そんな心配されるのも久しぶりだね……!』

 

 その時浮かんだのは……腐れ縁とまで言える長い付き合いのある少女の顔……

 

 かつて僕は、その少女の顔を深く曇らせた事がある……最終的には笑顔に戻せたけど、もう二度と……彼女にあんな顔をさせない。

 

 その思いで努力と経験を重ね、今の僕がある……

 

『それじゃ心配させないくらい……圧倒的な戦果を見せますか!』

 

──────────

 

 途中で朝日が見え、ロゥリィも現場に来る様子が見えた……敵はもう壁内に侵入済みだ。

 

(それなら……!)

 

 走りながら武器を変更し、射撃武器「リバレイトマシンガン」を展開させる……通常、ツインマシンガンは圧倒的な弾幕と制圧力を誇るが、短射程という欠点がある……しかし、ヒーローが操るツインマシンガンは射程の短さ(その欠点)を克服している。

 

 ロゥリィが屋根から躍り出るのとほぼ同時に僕もマシンガンを展開し終えて跳躍、ロゥリィはハルバードを片手に優雅な着地を……対する僕はサーカスの軽業師の様に、捻りと錐揉みを折り混ぜた回転ジャンプを披露し、ロゥリィの背中合わせになる様に着地する……

 

 突然頭上から乱入してきた……黒ゴスロリ服の少女と、青い騎士服の男エルフ。

 その場にいた全員が、僕らの登場に我を忘れ……ただ呆然と見ていた。

 

 やがて僕らを敵と認識し、鎖付き鉄球を手に大柄で仮面を被った兵士が前に出てくる……そのまま鉄球を見舞おうと襲い掛かって来た兵士をロゥリィが一蹴したのと同時に……僕はマシンガンを構え、城門から侵入していた敵兵の集団に向かって掃射を開始した。

 

 

バララララララ……!!  ドゥラララララ……!!

 

 リバレイトマシンガンはわりと小型の武器なのだが、今回は自分の存在を抗えない脅威と認識して貰う為……あえて巨大に見えるような武器迷彩を被せている。

 しかし、既存の(ツインマシンガン用の)武器迷彩だとサイズ的に小型が多いので、以前……悪乗りもあって自作した巨大な2連装の回転機関砲を……

 とある地球産アニメで、雪の降るクリスマスイブの夜……市街地の真っ只中で、ピエロの半仮面(ハーフマスク)を付けた巨大な人型ロボットが、同じ武器を持つ敵のロボットを雑魚狩りの如く無慈悲に蜂の巣にしていく……そんな光景が目に焼き付いてしまい、3ヶ月ほど掛けてその光景を目指し再現した……

 

 この『ダブルガトリングガン』を採用したのである。

 

「ぐぁ……ッ?!」「ぎゃぁぁぁ!!」「ぶべらっ!?」

 

 阿鼻叫喚の悲鳴を口々に出しながら、敵兵が次々に倒れていく……しかし今回は非殺傷設定なので、攻撃を受けても肉体は全く損傷しない……

 しかし、肉体が痛み(ダメージ)を受ける……傷を付けられる生々しい感覚と、実際に弾丸に撃たれ、身体中を穴だらけにされる感覚……そして物理的な傷がないので(認識の違いからか)、この世界の魔法による治癒効果は望めず……延々と伴う痛みからは逃げられないのであった。

 

──────────

 

 その少し前……実は盗賊達の本体後方からも、悲鳴が上がり始めていた。

 

「て、敵襲~ッ!!」

 

「敵?! って何処の誰だよ!?」

 

「俺が知るかよ!? もう何人も襲われたって……」

 

「あ"ぁ?! 馬鹿かテメェら! 敵ならゴフッ……」

 

 文句を言わせて貰えず、肺に何かが貫通したような反応を最後に動かなくなる兵士……

 その胸からは奇妙な光沢のある長い()()()()()が生えていた。

 

「……な……ッ?!」

 

 音を立てて倒れた仲間の背後に、何者かが動く気配……しかしその気配ほ非常に掴み辛く、この至近距離だから辛うじて分かった程度だ。

 

『…………ッ!』

 

 その気配の主……隠密モードのリィスは、武器をカタナからロッドに持ち替え……ゆっくりと姿を表しながら独特な構えを取る。

 

 青白いフォトンの刀身を持つ漆黒の鎌……そんなイメージの武器迷彩「グリムアサシン」を被せた武器(エモノ)を振るい、味方を倒された事で激昂し迫る数人の兵士を纏めて撫で斬りにする。

 振るわれたロッドの先端から伸びる不可視の刃は、血飛沫一つすら出さず範囲内の敵兵全員の肉体を貫通……傷一つ無いのに、胴体を上下に両断される感覚が神経を伝わり脳へと達する……その想像を絶する痛みと光景に、正気を保てる人間など居やしない……

 

「……ッ?! 誰、アンタ……何処から?!」

 

 城門から降り注ぐ矢の雨を風で吹き飛ばし、味方の防御をしていた緑髪のセイレーン「ミューティ」は背後の異変に気付き……暗闇に消えようとする()()……いや、()()を見つけた。

 

『……見つかってしまいましたか、ですが……全員倒せば然したる意味も無い。

 貴女にはすみませんが……倒させて頂きます!』

 

 闇から声が響く……リィスは落ち着き払ったまま、相対したミューティも倒すと宣言した。

 

「ッ?! んなろッ!!」

 

 ミューティは己の得意な精霊魔術で風の刃を生み出し、闇に消える気配へと放つ……が、そこには既に誰も居らず……ミューティがそれに気付いた直後、四肢を激しい痛みが襲った。

 

「……あぐッ?! なん……で……」

 

 そして夜明けが始まり、ミューティは自分を攻撃した相手の姿を確認できた……

 

「こん、な……子供……に……ッ……」

 

 気丈に踏ん張ろうとするも、四肢に走る激痛で身体がろくに動かない……リィスは気絶を促す為、追撃としてカタナをしまい、ミューティの晒された首後ろへ手刀を落とす……

 

「……ぁ……ッ……」

 

 重力に負けて彼女の身体が大地に倒れ伏す……

 

『私からすれば、貴女の方が子供ですよ……お眠りなさい』

 

 ミューティの首に軽く手刀を喰らわせ、フォトンで強制的に気絶させたリィス……後れ馳せながら走ってきた敵兵を認識すると、右手にアサルトライフルを展開し、左手には数個の黒いフォトンキューブを発生させる……

 敵兵を軽く一瞥し、射程距離に入ったのを確認したリィスはフォトンキューブを投げた……が、()()は空中を飛ばずに消え失せ……数瞬の後に敵兵の上へと出現してフォトン光線を発射し、射程内の敵全員を瞬く間に気絶させた。

 

『……なんとも、呆気ないものですね……』

 

 今ので後方の敵部隊の大半を撃破してしまった為、未だ城門付近で競り合う全線側の部隊の殲滅に向かおうか、と思ったが……

 

『……確か、自衛隊の方からも救援が来る、とご主人様が予測してましたね……』

 

 その後、ヘリのローター音と共に大音量で流される『ワルキューレの騎行』が聞こえてくるのだった。

 

──────────

 

 やがて何処かで聞いたクラシックな音楽が遠目から聴こえて来て……城壁内の戦闘は更に激化した。

 

 ロゥリィは笑い声を響かせ、踊るように敵の攻撃を避け……その細腕からは想像も付かない程の剛力でハルバードを振り回し、次々と敵兵を仕留めていく。

 その隣で、僕はソード・ツインマシンガン・タリスと次々に持ち替え、次なる手を読ませない様にしながら敵兵を薙ぎ払い、撃ち抜き、吹き飛ばす……

 

 意図したのかは分からないが、ロゥリィの挙動と僕の挙動はまるでダンスのデュエットを踊るペアの様に噛み合っており……時には狙われた相手を庇う様に立ち位置を入れ替え、敵の空振りにカウンターを返し、悉く返り討ちにしていった……

 

「……うっそ……あたしの出番はぁ~?」

 

 あぁ、栗林さんも来てたのね……もうほとんど終わっちゃったけど。

 

 その後、自衛隊の戦闘ヘリ(と呼んでた)で門内の残敵を掃討する際にロゥリィをお姫様抱っこして伊丹さんは殴られ、呆然とヘリを見送るピニャ殿下の表情は……何故だか絶望的な顔をしていたらしい。

 

 まぁ、当然と言えば当然か……帝国は自衛隊との戦闘で大敗を喫しているから、殿下も話には聞いていただろう……でも、それは人伝いによる脚色で正確ではないし、この世界の人間なら絵空事に思えて簡単には想像出来ない……

 

 だが今度は、その隔絶たる力の差を、()の当たりにしたのだから。

 

 

 戦後のゴタゴタを解決する為の条文は、だいたい慣例通りだったり、帝国側……殿下と領主ミュイの連名で提示された条文ほぼそのままで処理された。

 

「……っと、あの子と……あっちの子……そんで、あそこの子かな」

 

 指差しで対象を指示する伊丹さん、背後には黒川さんと栗林さんが立っており、伊丹さんの指示する人物を確認し終えるとこう切り出した。

 

「女の子ばかりですね……?」

 

「偶然だよ、偶然~」

 

 伊丹さんの隣では、ピニャ殿下の部下の1人……ハミルトンさんが、条文が書かれた書状に眉根を寄せながら1人でずっとにらめっこを続けている。

 

「まぁ、女の子をココに残す訳には行かない……というのは分かりますけど……」

 

「そう考えたら、()()こうなっちゃった訳……OK?」

 

『確かに、最後のあの緑の……セイレーンは魔法を使って来ましたし、この世界の魔法技術を知る為にも、私達が捕虜にするのは分かります……が、そうでなくとも、この人選はほぼ伊丹さん(アナタ)()()ですよね?』

 

 いつの間にか来ていたリィスにクリティカルを喰らい(図星を突かれ)、必死に誤魔化そうとしている伊丹さんを見ながら、僕は今後の予定を考えていた。

 

(レレイ達が鱗を売った後……自衛隊はすぐにアルヌスに戻るって言ってたっけ……確か、国会の参考人招致に呼ばれてる……とか)

 

 内部事情や今後の予定については、簡易的な説明を事前に受けている……ただ、何か見落としている様な……そんな気がしていた。




走行速度はゲーム内描写や地理的な概算からですので正確ではありません。
小説内だけのオリジナル設定と思ってください。

なお、非殺傷設定フォトンによるダメージを通常の治癒魔法では回復出来ません。
概念的な話ですが、治癒魔法は肉体が持つ回復力の増強、もしくは物理損傷の治癒促進という物理現象であり、対するフォトンによるダメージは物理効果を一切伴わなず、直撃した部分に残る残留フォトンが設定された痛みを与え続ける為、残留フォトンを取り除かない限り痛みは引きません……
要は毒や精神支配と同じ概念になるなので、解毒や精神支配解除系の魔法やアイテムならば、完全では無いものの一定の効果は望めます。

そういうものだと認識し、ちゃんと理解出来てれば……ですけど。

一応、この逆説も成り立ちますが……フォトンによる回復術は性質的にかなり万能な上、行使者の精神に大きく左右されるという設定がある為、フォトンには半分くらい不可逆的な優位性があります。

次回、伊丹さんがまたやられます。
ほぼアニメと同じ展開でw


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第8話 薔薇騎士団

はい、今回はアニメで金髪縦ロールだの男装の麗人だのという発言があった辺りです。

アンケートでは伊丹さん単体居残りでアニメ同様の展開……が一位でしたが、「違うキャラが居残る」というパターンにも一定票があったので、ちょっと面白くするために混ぜましたw(ぇ?

それでは第8話、どうぞ~♪


 伊丹さん達第3偵察隊と僕ら保護組は、竜の鱗を売って生活費を稼ぐという当初の目的をようやく達成し……一路、アルヌスへと帰還するべく車両で走っていた。

 

 イタリカからはまだ数キロも走っていない道端……また前方に何やら土煙が立っている。

 

「前方に煙が見えます!」

 

「また煙かよ……」

 

「……ッ?! て、ティアラに……金髪……縦ロールですッ!」

 

(……は?)

 

 いきなり何を言い出すかと思ったら、金髪縦ロール……? 

 

「な……何ィッ?!」

 

「金髪縦ロール1、その隣に男装の麗人1……更に後方にも美人多数ッ!!」

 

 ……なるほど、生体反応多数……この速度は……馬か?

 

「薔薇の旗……ありゃ姫サマが呼んでたっていう騎士団か」

 

 成る程、この世界じゃ連絡手段が限られてるから、遅れに遅れて今頃のご到着か……ッ?!

 

(マズイな……自衛隊がイタリカを救った事を彼女達は知らない、遭遇は不可抗力だが……この状況じゃ接触自体が危険じゃないか……!?)

 

『伊丹さん……!』

 

「分かってる、とは言ってもな……下手に動けば、後から協定違反と見なされる可能性もあるぞ……?」

 

《ご主人様、私達だけで対応しては……?》

 

『いや、既に自衛隊の車両を見られてるから必ず問い詰められるし、事を荒立てたらそれこそ協定違反だ……ココは伊丹さんの判断に従おう』

 

《……了解しました》

 

 渋々引き下がるリィス……彼女は単独戦闘を得意とするぶん、状況判断能力も高い……が、下手に高い実力があるせいか、脳筋っぽい思考に走る事も少なくない。

 

 ココは敢えて、流れに乗って様子をみるか……

 

「お前達、何処から来た?!」

 

 銀髪の女性騎士が、運転手の隊員に剣を突き付けて尋問をし始める……今にも襲い掛かられそうな雰囲気だ……恐らく、ある程度アタリを付けて敢えて尋問している様な感じだ。

 

「我々……イタリカから、帰る所……」

 

「ほぅ、何処へだ……?」

 

「……アルヌス……の」

 

 その名を聞いた途端、周囲の女性騎士達も次々に剣を抜き始め……銀髪の女性も声を荒げた。

 

「アルヌス……だと?! さては貴様等、門の向こうから来た敵かッ!?」

 

「ちょ、ヤバいだろ……?!」

 

『……な……ッ?! 伊丹さん!』

 

 仲裁のためだろう、銀髪の女性騎士に声を掛けようと伊丹さんが高機動車から飛び降りる。

 

(向こうはイタリカで結ばれた協定を知り得ないから、強硬な態度を崩す筈がない……あのままじゃ確実に孤立する!)

 

『待て! 我々は敵ではない!』

 

 ココはこの見た目と演技に掛けるしか無い……ニューマンの姿がエルフとよく間違われる位に似てるなら、多少演技が雑でも突破口にはなる筈と思い、僕も高機動車から飛び降りた。

 

「……ッ?! 騎士服のエルフ……だと?! まさか貴様等……異世界人共と結託して、我ら帝国に敵対する腹積もりか?!」

 

(はぁ?! 何処をどう解釈したらそうなる?! クソッ、裏目に出たか……!)

 

 人族至上主義、とでも言えば良いか……この世界の主要国にはそんな下らない考えが深く根付いている様だ……そんなカビ臭い考え方してるんじゃ、国は長持ちしないというのに。

 

「そこのエルフ! 異世界人と共謀し、帝国騎士団に楯突くとは良い度胸だな……だが降伏した方が身のためだぞ!」

 

「……ま、まぁまぁ落ち着いて……」

「お黙りなさいッ!」 パァンッ!!

 

《待て! 撃つな! 撃つなッ!》

 

 伊丹さんが平手打ちを喰らい、勢いに負けてたたらを踏む……その瞬間、自衛隊員達は一斉に銃を構えるが、車内の隊員が通信で声を上げて抑える。

 周囲を取り囲む女性騎士達は既に全員抜刀してるし、伊丹さんの装備は車内だから丸腰だ……ココは僕が矢面に立たなきゃ……と、リバレイトタリスを抜刀し、密集した騎士達を牽制しようと飛刃を構える……

 

「逃げろ! 俺に構うな! 兎に角行けッ!!」

 

 伊丹さんの声に一拍遅れて全員が反応した。

 騎士団は馬を走らせようとするが、高機動車のエンジン音に馬が驚き混乱……加えて僕がタリス転移(ワープ)で高機動車と騎士団の間に割って入り、数本の飛刃を馬の足元に飛ばして騎士団の進行を妨げた……お陰で高機動車2台は、混乱したこの場からの離脱に成功したのである。

 

 走り去る高機動車を見送り、背後に迫る騎士団の女性達を気にしながらも、伊丹さんは僕に声を掛けた。

 

「……ゴメンな、巻き込んじまった……」

 

『いや、これは僕の判断ミスです……伊丹さんのせいじゃないですよ』

 

 薔薇騎士団……ピニャ殿下の率いる女性の騎士団か……実力はあると聞いてるが、事情を知らないとはいえ、こうも喧嘩っ早い感じだと思考能力は赤点ギリギリと採点せざるを得ない……殿下には悪いけど、是非とも再教育して欲しいね。

 

 おやまぁ、綺麗な顔が歪んで台無しだよ……女性はあまりそういう顔をしない方が良いと思うんだけどねぇ……

 

──────────

 

「なんて事をしてくれたのだッ!!!」

 

「……は……え、姫様……?」

 

 その後、僕と伊丹さんは彼女達に連行され……再びイタリカへと舞い戻った。

 勿論、扱いは捕虜……地球とは違って、自衛隊が提唱している()()()()()なんてものは完全に期待できない事は解りきっている……

 剣こそ使われなかったものの、首には荒縄、全身隅々何度も執拗に殴るわ蹴るわの強引な尋問が道中で続き……イタリカに到着した時点で既に伊丹さんはグロッキー状態……

 

 当然の如く、報告を受けた殿下は瞬く間に激高し、持っていたワイングラスを縦ロールの彼女に投げ付け憤怒の形相……

 

「伊丹殿?! 伊丹殿~?!」

 

「あは……あへ……えへ……ハハッ……」

 

 ハミルトンさんが必死に伊丹さんを正気に戻そうと呼び掛けているが、当の本人は既に意識が飛びかけているので半笑い状態から復帰できないでいる。

 

 ……え、僕も同じ様にやられたのかって?

 

 まぁ確かに同じ目にあった……けど、殴られる直前に瞬間お着替え(マイファッション変更)でキャストボディになってやったから逆に殴った銀髪の女性の方が手を痛めたみたい。

 

─ 回想シーン ─

 

「貴様、エルフの分際で帝国に楯突くとは……!」

 

 シュン……ガツンッ!

 

「痛ッ?! こ、コイツ……魔法で鎧を……!」

 

『やれやれ、その様な短気では事を仕損じるだけです……それと、見てくれだけでの判断で動くのは、相手を甘く見過ぎですよ?』

 

「黙れ! このエルフ風情(?)が……ッ!!」

 

 おお怖っ……ぼーりょくはんたーい。

 

─ 回想終了 ─

 

 

 それから、殿下が彼女達を叱り飛ばすのを尻目に、僕ら2人は、先日にも来たフォルマル伯爵家の屋敷に迎えられ治療を受ける事となった……がその際、治療薬などを差し出されたがそれは全て辞退し……伊丹さんの傷は、アークス御用達の回復テクニック『レスタ』で治療した。

 

「コレが、エルフの精霊魔法(?)ですか……さすがですね! あれだけの傷をこの僅かな時間で……!」

 

(いや、魔法じゃなくてテクニックなんだけどね……まぁ、訂正するのめんどいから良いや)

 

 

「……ぅ……こ、ココは……?」

 

「お目覚めですか、ご主人様?」

 

「……は? ……ぇ……?」

 

 治療から30分程で伊丹さんは目を覚ました……彼の側には伯爵家のメイドさん達が4人、四方を護衛するように立っている。

 最初に伊丹さんに声を掛けたのは黒髪の女性……彼女は見たまま人族だが、他の3人は違っていた。

 

「……え、猫耳……?!」

 

「? どうされましたかニャ?」

 

 語尾に「ニャ」と付くのを聞いたのは、()()()()()()「コレ、私のオススメ作品!」と称して(強制的に)見せられたアニメ以来の衝撃だった……まさか、現実に生で聞くとはマジで思わなかったよ……やっくでかるちゃー。

 

「あぁ、いえ……何でもないです」

 

 伊丹さんも初体験らしく、反応に困っている様だ。

 

『……意外と早く目が覚めたみたいですね』

 

「……なぁ、トリニティ……ココは……」

 

『フォルマル伯爵家の一室ですよ、昼間の傷は回復テクニック(レスタ)で完治させました……ですが体力までは回復してないので、休息に使わせて貰ってるんです……』

 

「いえいえ、イタリカをお救い頂いた恩人に対し、この程度は当然の配慮にございます……むしろこの度の仕打ち、報復をなさるのでしたら我々も最大限お力添えを致す所存……しかしながら街を攻め落とすとなれば、我が当主ミュイ様だけは……どうか寛大なる御慈悲を」

 

 僕の説明を引き継ぐ様に謝罪を交えた言葉を繋ぎながら現れたのは、この家のメイドさん達を率いるメイド長のカイネさん。

 イタリカを救った自衛隊という存在は、イタリカの住人である彼女達にとって正に救世主も同然だったろう……

 

 短期の休養で一室を借りる程度などなんて事はなく、むしろ酷い仕打ちをした帝国に牙を向くなら助力もするとまで言い出す始末。

 

 いや今そんな事言われてもねぇ、それに自衛隊は普通に戦う気無いだろうし……その直後だった。

 

『……おや、外に何人か……多分、お迎えかな?』

「……ッ?! 何者かが外の扉を抉じ開けようとしています……!」

 

 ウサギ耳のメイドさんが外の気配に気付くのとほぼ同タイミングで、僕が外の異変を口にした事で、メイドさん達が一様に驚く……部屋の窓が半開きだから、大気中のフォトンを通して自衛隊の皆が潜入してきているのがすぐに判った。

 

「そうですか……御二方のお仲間ならば、此方までご案内を……他の者ならば、いつも通りに」

 

「「畏まりました」」

 

 カイネさんの指示に、マミーナさんと紫の獣耳と尻尾が綺麗なペルシアさんが連れ立って部屋を出ていく……彼女達の挙動には一切の無駄がない、あれは恐らく戦闘経験も豊富な人物の動きだ。

 

 要人護衛から対人制圧までこなすメイド……か、確か『戦闘メイド』とか言うんだっけ?

 

「マミーナは戦人兎(ヴォーリアバニー)、ペルシアは猫人族(キャットピープル)でございます」

 

『……対人戦闘の経験がある様ですね、あの2人……』

 

「……?! よくお分かりで……」

 

『淀みの無い足運びと、片時もブレない重心移動、そしてこの気配操作……全てが一流の所作だ、あれなら並の相手じゃ束になっても敵わないだろうね』

 

「お褒め頂き、ありがとうございます。……あの2人もさぞ光栄に思う事でしょう」

 

 

 メイドさん2人が出ていって数分後、案内された栗林さんや倉田さんが扉を開けて入ってきた。

 

「隊長、無事ですかッ?! ……え……?」

 

「……よっ♪」

 

『こちらは五体満足で無事ですよ、ご迷惑をお掛けしました……』

 

 

 それから、倉田さんのシドロモドロな自己紹介に始まり、全員がすぐに打ち解けて和気藹々と団欒している……ただ一人ロゥリィだけは、カイネさんにすり寄られて若干引き気味だったけど。

 

「さっきの精霊魔法、凄かったデス!」

 

「トリニティ、魔法を使ったの? 私も見たかった……」

 

『え? ……あぁ、また機会があったらやろうか』

 

「ん、その時は絶対に声を掛けて……約束!」

 

『っと……あぁ……勿論、約束するよ』

 

 レレイの剣幕に押され、縦ロールの美人さんが部屋に入ってきた事に気付かず……伊丹さんの近くに居たのに、僕は完全に警戒を緩めてしまっていた。

 僕が彼女の気配に気付いた時には、煽情的な格好で物凄い形相をした縦ロール美人さんが既に伊丹さんへと迫っており……

 

スパァンッ!!

 

 ……本日2度目となる、小気味良い平手打ちの音が響いたのであった。




はい、伊丹さんの扱いは原作通りに……

アークスも連行されたけど、キャストのボディは殴ると逆に怪我するよ?
銀髪さん……骨折してないよね?

描かれてない部分はほぼ原作通りの展開なので省いた形です。
次回はようやくアルヌスへと帰還……そして参考人招致へ。
なるべく出発まで、まとめて描いてやりたい……
なお、アークス君は是が非でも地球へ行きたい模様……オラクル帰還への手掛かり、あると良いね。

モチベアップの為にも、感想お待ちしてま~す♪


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第9話 境界を超えし者たち

えー、まんまタイトル通り地球へ行く所です。
そしてPSO2っぽいタイトルなのは「偶然」ですw

前回のアンケ結果で、リィス同行が最有力なので同行するシナリオとなりました!
そして前回からの続き……

伊丹さんを襲った悲劇(2回め)のその後からw
いやぁ、あの殿下の嘆きはさすがに同情するね……(遠い目)



「それで……彼のその頬は、誰の仕業なのだ……?」

 

「……、……。 ……(わたくし)がやりました……」

 

「……ッ!? あ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁ"……!」

 

 たっぷりと間の空いた後、絞り出すように自らの非を認め自分がやったと答えた縦ロールさん。

 直後、殿下はオーバーリアクションみたいに頭を抱えながら慟哭した……もはや怨嗟の叫びにも聞こえてきそうなピニャ殿下の嘆き、勢揃いした第3偵察隊の面々もこの光景に苦い顔をするしかなく、僕もその全てを遠目に見ていた。

 

 ここで殿下のさらなる罪滅ぼしを受ける時間など、もう伊丹さん達には無い……彼らは日本へと戻り、国会にて弁論を求められている……いわゆる参考人招致だ。

 日本人は期限や時間にうるさいと聞く……その刻限が迫る中、もうこれ以上この場で時間を潰す訳には行かないのだ。

 

 殿下はアレコレと罪滅ぼしをするべく言ってくるが、彼らにはそれを受ける時間も既に無い事を説明する。

 ……この時、僕にはこの世界側の政治形態に疎いので、レレイに関連する情報を貰い翻訳したが、この翻訳がこれからの未来を決める重大な引き金となった事は、随分と後になって分かった。

 

『彼らは国会への参考人招致……自国の元老院へ「報告をせよ」と出席を求められているのです。

 多少形式は違いますが、最前線で得られた情報や問題……見解なんかの報告を、組織の上層部経由で命じられてるんですよ』

 

「げ、元老院……ッ?!」

 

 その瞬間、姫さまの表情が明らかに凍った……それもその筈、僕の勝手な推測だけど……国会への招致で述べられた情報によっては「帝国は我々と敵対の道を選んだ」と疑われる可能性は高い。

 ……まぁ、この現状を簡潔に説明された第三者からすれば、誤解もクソもあったもんじゃないだろうが。

 

 とにかく、殿下の表情が凍ったのは明らかに()()()()()が実行された場合……それが頭の中をよぎって、いや、想像してしまったのだろう。

 数瞬の躊躇いの後……殿下が発した次の言葉からも、何を考えて言い放ったのかはある程度理解できた。

 

「待ってくれ! 妾も……アルヌスへと同動させて貰おう。此度の件、協定違反も含め……上位の指揮官へ正式に謝罪したいのだ! よろしいな、伊丹殿!?」

 

「えぇぇぇ……?!」

 

 明らかに困惑する伊丹さん、そりゃいきなり言われて「ハイソウデスカ」って言える案件じゃないもんね……だって(現在の立場上成り行きで)敵(となっている)国の姫さまが来るんだよ?

 

 

 結局、殿下は縦ロール……ボーゼスさんと一緒に同行する事になった。

 ……僕は引き続き、レレイに情報を貰ってすり合わせながら2人の通訳をする事になった。

 

 夜明けを待ち、2台の高機動車に分乗した僕らと自衛隊は一路……アルヌスへとようやくの帰還を果たす事となったのであった。

 

──────────

 

 イタリカからアルヌスまでは、現地の人からすればどんなに速くても数日は掛かる……それはこの世界で最速の乗り物が馬だから。

 でも、自衛隊の高機動車でなら……ほぼ数時間で到着する。

 

「……殿下、アルヌスです?!」

 

「なんと、もう着いたのか……!?」

 

 現地人にとって、この事実は驚愕の一言……まぁ、オラクルでは座標さえ間違ってなければ、どんなに離れた距離だろうと数十秒くらいで移動できちゃうのは内緒である。

 

(彼女たちの前じゃ、安易に簡易空間転移(リューカ―システム)は使えないな……絶対に卒倒されかねない)

 

 アークスには個人レベルでの空間転移を可能にする「リューカ―システム」がある……オラクルでは主にキャンプシップやアークスシップにおける超長距離の移動や船団への帰還、出先で持ちきれなくなった荷物の倉庫転送……戦闘不能などの緊急時に、予め設定されたポイントへと任意に空間転移するシステムだ。

 量子力学を応用した一種の()()()()()()を算出して転移する為、移動によって絶えず変動する転移ルートの演算特定が複雑極まる反面……転送中の事故は滅多に起こらず、偏在するフォトンエネルギーを利用するので転送物の種類も選ばない……予め設置されている「目標」へと転送する方法ならば、ほんの数秒というごく僅かな時間で発動できるのもウリだ。

 

(一応、アルヌスとイタリカに簡易ポイントは置いてあるけど……こうも技術レベルに差があると、些細な事でも驚かれるし……使う機会は無い方が良いや)

 

 

 自衛隊駐屯地に到着後、すぐさま殿下は伊丹さんを呼び止めようとしたが……

 

「あ~、国会招致の件で呼ばれてまして……後はそこの女性が案内してくれますからぁっ!

 

「……クッ、説得の機会を逃すとは……っ」

 

 言い訳を捨て台詞の様に走り去りながら置いていく伊丹さん……よっぽど昨日の件が堪えたのかな?

 どうにか穏便に済ませようと殿下自ら動いた様だけど、さすがにもうそんな時間も無いのだろう……大人しく案内役の女性自衛官に引き連れられ……僕も殿下達の後を追って、狭間陸将の待つ応接室に向かった。

 

──────────

 

 それから、殿下と狭間陸将の会談を仲介……それは恙無く終了したが、去り際に眼鏡の士官……柳田さんに呼び止められ、僕らも通訳兼護衛として地球行きが許可されたのである。

 

「アークスという組織については、既知の者に情報を集めて貰っている……まさか空想の存在(オンラインゲーム)とは思わなかったがね……」

 

 狭間陸将や柳田さんも、アークスがゲーム内(違う次元)の存在という事に驚いたらしい……事前に開示した情報から、高度な科学力と高貴な精神性を兼ね備えた非公開の多国籍軍だという認識をしていたから。

 

 ……しかし、蓋を開けてみれば……腐りに腐った上司(ルーサー)から長い年月と多大な犠牲、そして手痛いしっぺ返しを受けながらも脱却に成功……不倶戴天の敵であった「深遠なる闇」や、僕らの創造主(フォトナー)の過ちの犠牲にされた「終の女神シバ」がもたらす存亡の危機すらも乗り越えた後……一部の実力者たち(ゲームのプレイヤー)は奇っ怪な格好や別世界のそっくりさん、果ては敵だった筈の者の姿を完璧に真似(パーフェクトコピー)し、自らの人生を掛けて狂喜乱舞、一喜一憂を謳歌している……というトンデモ集団だったんだけど。

 

『……それについては、僕自身も不可解でしたが……概ね歴史上の推移や重要人物の特徴など、殆どは一致しているので、組織の末端部分の共通認識が薄かった……と考えています』

 

「そうか……まぁ、直接のコンタクトはまだ叶わないが、いずれチャンスは来ると私は思っている……楽観視は出来んが、気を落とす事も無いだろう」

 

『……ありがとうございます、それまでは此方も出来得る限りの協力を惜しみません』

 

「頼もしい限りだ……では、今後ともよろしく頼む」

 

『えぇ、此方こそ』

 

 ちゃんと人型……以前にも見せた「ニューマン男性」で、僕は狭間陸将や柳田さんと硬い握手を交わす。

 僕はこれから地球に赴くピニャ殿下達の通訳をしながらテュカやレレイ達の護衛に混ざり……自衛隊と協力体制の下でオラクルへの帰還手段を模索するのだ。

 

 幻創造神(デウス・エスカ)の時と同じく、地球ではゲームとして認識されているのだから、何かしらの方法でコンタクトは取れる筈だ……確証はないけど、何となく上手く行く気がする……

 

──────────

 

 翌日、厳重な警戒体制を敷かれた「門」(ゲート)の前に集まった僕ら……

 

「……何でこんな厚着なの?」

 

「向こうは、此方と気候が違うらしい……今は寒い時期だとか」

 

『その通りです……彼方(あちら)では「四季」と称され、「春」「夏」「秋」「冬」という4つの季節として区切られているのですよ』

 

「ふぅん……あっ、リィスも来るの?」

 

 先日とはまた違う格好……女性用士官礼装『フルドレスコマンダー』に身を包んだリィスがレレイの言葉を補足しながら歩いてきた。

 テュカはリィスの格好よりも、同行する方に意識が行っている様子……

 

『はい、私は主に貴女達(テュカとレレイ)の護衛になります……彼方での疑問解決も含まれていますので、ご用件は何なりと』

 

「……分かったわ、その時はお願いするわね」

 

 その後、黒塗りの高級車が近くに止まり……ピニャ殿下とボーゼスさんが降りてくる。

 伊丹さん達には事前に話が行ってなかったらしく、何やら文句を言っているが……眼鏡をくいっと上げて不敵な笑みをする柳田さんに、正論で丸め込まれてしまった様だった。

 

「……この先に、日本が……!」

 

『緊張は当然です……ですが、大丈夫ですよ……僕も護衛に立ちますので』

 

「……? 貴様、エルフでは無かったのか?」

 

 護衛に適した姿に変えていた僕を見て、殿下は少し驚いていた……まぁ、初対面じゃエルフだったけど……今はアークスの士官礼装である「フルドレスデュピティ」を着込み、地球の人達に紛れやすいヒューマンの姿……困惑を長引かせない為にも『魔法で変えてるんですよ』と強引に納得させた。

 

 そしていよいよ、僕らは「門」(ゲート)を潜る……




しれっとアークスの空間跳躍技術を解説してますが、独自設定とでも思ってください……

奇しくもアニメと同じ区切りになりましたね……
地球に行ってもモチロン原作以上に混乱するでしょう……なんせゲーム上の存在が実体化してるんですから。

さて、アークスは帰還手段……
せめて連絡くらいは付けられる手段を得られると良いのですが、果たして……?

感想よろしくお願い致します。m(。-ω-。)m


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第10話 理想と現実

前回のアンケート結果……え、コレってアレですか?
野党議員をお嬢ちゃん呼ばわりするシーンをやれと?
もしくはアークス流で黙らせろと?

……やってやろうじゃん!(ニヤリ)


 殿下の手記には、こう記されていた……「門を潜ったその先にあったもの……それは、正しく『摩天楼』とも呼べる光景だった」……と。

 

「……ッ!? こ、コレは……!」

 

「……ぁ……っ……」

 

『……なるほど、良く似ている……』

 

 異なる世界を繋ぐ「門」(ゲート)は、主要道路のど真ん中にあった……その為か、両側はオフィスビルやテナントビルで埋め尽くされており、殿下達はその異様な光景に目を奪われていた。

 

「殿下?! 壁の中に人が……!」

 

 窓越しに見えるビルの中で、人々が忙しなく日常を送っている……この地点は自衛隊の管轄になっているので、ほとんどが自衛官みたいだけど。

 

『壁ではありませんよ? アレは建物の一種で、立地を有効活用しているのです』

 

「……なんと言う……!」

 

 殿下は自身の持つ知識や技術と照らし合わせ、レベル差が違い過ぎる事を痛感しているようだ……まぁ、科学というジャンルが未発達な世界から来たのだから、些細な事でも驚愕に感じるだろう。

 

(……あまりに衝撃が大き過ぎると、却って悪影響な気がする……)

 

 恐らく……僕がオラクルに帰る事が出来るようになったら、似たような交流も無いとは言えない……その場合、今度は伊丹さん達がオラクルの技術力に圧倒される事になるだろう。

 その場合の責任者がカスラ室長だけなら穏当な配慮があるだろうけど、もしシャオまで関わるなら、それこそ面白半分で度肝を抜く事を見せびらかす可能性が高い……

 

 シャオはオラクルの管理者なのに信用無いって? 彼の本質……教育者(サラ)には悪いけど、彼の精神性はまだまだ子供っぽさが抜けてない大人だ。

 人間への理解を深める為とはいえ、守護輝士2人(アッシュとマトイ)のプライベート……二人揃っての外出(デート)を管理者権限でこっそり覗くとか……完全に子供だろ? しかもあろう事かシエラも共犯で。

 

 ……無論、その事は漏れなくカスラに報告を上げさせて貰ったが。

 

「アンタが、伊丹二尉……かな?」

 

 殿下達を待っている伊丹さんに声を掛けてきたのは、如何にも……という風な演技をしている駒門という男、日本の公安組織に所属する人間だった。

 情報部の査察官である僕の感覚で見た彼の言動は……半分テスト、といった感じかな……この飄々とした態度で伊丹さんの真意を探るつもりだろう。

 

 ……ただ、伊丹さんのあの言動は本当に策略なのか? もしかしたら天然? 僕を尻目に会話を重ねていく伊丹さんと駒門さん。

 

「月給泥棒、オタク……隊内じゃ散々弄られた様じゃないか……だが、何でそんなアンタが『()』なんだ……?」

 

 駒門さんは伊丹さんの経歴を淡々と語り、最後の一言を呟いた途端……栗原さんの顔が露骨に歪み初め、終いには何故か絶叫し始めた……

 

 雰囲気的に、伊丹さんの経歴からやっぱり只者じゃない感はする……そしてそういう評価だからこそ、敢えて能力を求められる現場に行かされてしまう……と、邪推したのは間違いだろうか?

 

 しかし、それどころじゃない栗林さん……驚愕の理由を問うと

 

「だって! キャラじゃないじゃん?!」

 

 いやキャラって……確かにアークスにも、馬鹿をやってる面子は少なくない。

 

 しかし彼らは相応の場面に当たれば、古参の強者すら舌を巻く程の恐るべき実力を発揮する……彼らの大半は、ダーカーとの長き戦いに終止符を打てた為、不意にできてしまった暇を持て余した末にああなったのだ。

 

「そんな……隊長(こんな人)選りすぐりの精鋭(レンジャー)な上に『S(Special Forces Group:特殊作戦群)』なんて、何かの間違いよ……嘘だと言ってぇ~!!」

 

 伊丹さんも彼らと同じく、そういう手合だと思いたい……だが、彼女の慌てっぷりを見ていると妙に不安になってくる……本当に大丈夫なのだろうか、と。

 

──────────

 

 殿下達はお忍びの同行である為、外部に悟られない様に皆揃って大型車両で移動……途中、普段着のまま来ているテュカの為にスーツを買う事に……

 その際僕らも、スーツを買うように求められたが……サポートパートナーであるリィスにはサイズが合わず、キャストである僕は『オラクルで行っている専用のカスタマイズやチューニング、そしてフィッティングが施されてないと着れない』という現状を語り、丁重にお断りさせて貰った。

 

 それから、昼食を『○野家』という牛丼の格安チェーン店で済ませる。

 

 何故格安チェーン店? と思う人も多いだろうが……情報漏洩を防ぐ目的もあり、この招致の件が終わるまでの間、僕らは全員伊丹さんの部下として「出張扱い」という事になっているらしい……

 その為テュカに(あつら)えたスーツ等は経費で購入でき(落とせ)る反面……食費は1人一食につき最大500円まで、という事なのだそうだ。

 

 無論、殿下とボーゼスさんも牛丼を食べ……火の通った茶色い肉がたっぷりという見た目に反し、出汁と紅生姜の効いた奥深い美味しさに終始ご満悦な様子だったのだが……帝国には所謂(いわゆる)()()()()が無かったため、生の鶏卵を入れるというスタイルに揃って驚愕……「腹が減っては戦ができぬ」という精神で己を奮い起たせ、最初の一口目を口にする直前までの間、物凄く尻込みしていた事を併記しておく。

 

 

 その後再び大型車で移動を再開し、国会議事堂に到着……僕は殿下に付いて行くつもりだったが、伊丹さんにこう言われた。

 

「あ~、トリニティ。殿下の方は別会場だが、お前さんも対外的な名目上は現地民だ……答弁を求められる可能性があるから、お前さんもココで降りてくれ。

 殿下には特地語の履修者が応対するから、富田と栗林だけでも十分だし」

 

『そうですか、了解です……ただ、帰還後の報告書に関して……両国間の交渉の内容くらいは把握しておきたいので、リィスだけでも連れて行って下さい』

 

 実際、長期任務後オラクルへ帰還すると……だいたいは詳細を明記した報告書の提出や出頭命令が下る……現状、直接の連絡手段が無いので、帰還後までの行動や判断、言動などを上層部……或いはトップであるウルク司令から直接評価されるのだ。

 

 昔は事務的な報告書の提出だけだった上、評価も適当だし補填や報奨も有って無いようなもので済まされていた為、相対的な義務感だけで誤魔化している者が多かった……

 しかし今では、詳細を明記した報告書じゃないと済まされない代わりに、正当な評価とそれに見合った報酬……大抵の場合は通常時に取得できるはずだった休暇の補填だったり、報酬メセタだったり……ごく一部はスタージェムと呼ばれる物が支給される場合がある。

 

 なおスタージェムとは、主に第3世代以降のアークスが愛用しており、特殊な資材やコスチューム等が当たるスクラッチだったり、資材専用の倉庫利用費にも使える電子マネーだ。

 

「……なるほどな、帰還してもお前さんはお前さんで苦労する訳か……分かった、その辺の事情も併せて同席させて貰えるよう進言しておくよ」

 

『よろしくお願いします』

 

『……それではご主人様、接収した情報は議会終了後に』

 

『あぁ、頼むよリィス』

 

 リィスに情報収集を任せ、移動に使ったバスから降りた僕は、青空に聳える国会議事堂を見上げた……

 

(……さてこの先、事態はどう動くかな……?)

 

──────────

 

 日本標準時14:20……国内中の報道カメラを通して、大勢の日本国民が事態の推移に注目する中……特地現住民に対する質疑応答の生中継が始まった。

 

《あっ、参考人が入ってきました……!》

 

 伊丹さんを先頭に、レレイ、テュカ、ロゥリィ……そしてフルドレスデュピティを着込んだ僕が扉を潜って入る……報道カメラが一斉に此方を向き、弾幕を形成するマシンガンの如くフラッシュが焚かれ、特地原住民として招かれた彼女たちと僕を撮り続ける。

 この光景は幾つもの報道カメラを通して、世界中が見ているらしい……下手な芝居は打てないが、こちらの目的を果たす為なら、それなりの事をやる準備は出来ている。

 

(さて、穏便に済めば良いんだけど……)

 

 一抹の不安が過ぎる中、質疑応答が開始された……

 

 

 最初の議題は、自衛隊の行動の如何を問うものだった……

 口火を切った議員からの質問……最初のドラゴン戦での民間人死傷者数が100人を越えた件を、如何にも自衛隊員の怠慢……という風に捲し立て始める。

 

「え~、それは……ドラゴンが強かったからですかね」

 

 対する伊丹さんの回答は至極単純……自分たちの想定以上に相手の方が強かった、と答えた。

 

 当然、議員は「何を他人事みたいにッ!!」と噛み付く……が、当時を第三者として見た僕からすればそうとしか言えないし、他に理由も無い。

 結果的にはドラゴンの撃退は出来たものの、その際に取られた戦術……事態の推移からすれば、あの結果は逆にあれだけの損害で済ませた……というのが、アークスとしての僕の評価だ。

 

 この場の言動にこそ出していないが……レレイやロゥリィもその評価は当然としており、現地民からしても……襲われるという恐怖を物ともせず、満足に動けない自分たちを守る為に敢えてドラゴンの前に出て戦いを挑んだ彼ら自衛隊員を揃って称賛、逆に誰一人として侮蔑などしなかった。

 

 伊丹さんが続けて語ったのは、それでも死者を出してしまったという遺憾の意と、自らの部隊の戦力不足……ただ、その最後に「荷電粒子砲とか、電磁投射砲(レールガン)とか……」と聞いた僕は必死に笑いを堪える羽目になった。

 

 

 ドラゴンの能力に関しては、研究関係の部署からの報告もあって一応の答弁は済み……今度はレレイへと質問が投げられる。

 今回、この場に参加する殆どが日本語を話すので、レレイ達にはアークスのリアルタイム通訳システムを内蔵した自動随行(マグ)型翻訳機……通称「全知くん」を渡しており、質疑応答には一切支障ない。

 

 議員はレレイを完全に子供とみなし、さも自分の方が聡明であるかのような態度で質疑をするが、レレイは全く意に介さず……淡々と、そして簡潔に応答を繰り返した。

 これには最初、子供だとタカを括った議員も徐々に旗色が悪くなり……ドラゴン戦での自衛隊員の対応に問題があったかとの問に「無い」と即答したのを最後にレレイへの質疑を止めた。

 

 次に行われたのはテュカへの質疑……

 

 その冒頭、議員はテュカがニューm……もとい、エルフだという事に疑問が湧いたのか「耳は本物か?」と訪ねた。

 当然テュカは髪を手で動かして隠れた耳の付け根を晒し「そうですよ? 何なら、触ってみますか?」と返答……

 直後にカメラのフラッシュが凄まじい勢いで連発され、全員の視線がテュカの耳へ向けられたのは言うまでもない。

 

 それからテュカに対しても、ドラゴン戦における自衛隊の行動の是非が問われたが……当の本人は気絶していたので言えるはずもなく……正直に「気絶していた」と答弁したので、議員も追及を諦めた。

 

 その後、ロゥリィへと質疑が移る事になったんだけど……それがまさか、あんな事態にまで発展する事になるなんてね。




読みやすさ重視というか、なんと言うか……
個人的に楽しみは取っておきたい派なのでロゥリィは後半という事にw

殿下の方の奴ですけど……
ほぼアニメそのまんまだし、特に代わり映えしないのでバッサリです。

次回こそお待ちかね。
野党議員のお嬢ちゃん呼ばわりとそれから巻き起こる一騒動……

感想お待ちしてま~す♪


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第11話 空想が現実になる時

周囲の影響を考慮するかどうか、最後まで悩みました。

前回からの続き……
国会の参考人招致に応じ、日本に来た魔導師レレイ、エルフのテュカ、死神ロゥリィ……そして、アークスのトリニティ。

国会での質疑応答は続き、ロゥリィの番が回ってきた……


 レレイとテュカへの質疑応答も無事に終了し、残るはロゥリィと僕だ……

 

 その最中、議員は何を思ったのか……ロゥリィの衣装を喪服と勘違いした上、彼女の年齢を自分よりも下と決め付け、あろう事かその勘違いを利用して自衛隊の責を問い始めたのである。

 

 ……僕は一体、何を見せられているのだろうか?

 

 今まで出会った地球人は、多少は何かしら思う所はあれども……これ程まで馬鹿な思考はしてなかった……だが、この議員は明らかに自己勝手な先入観に囚われたまま勘違いな言動を繰り返し、過去の事象を捏造しようとしている。

 渡してある「全知くん」によってテュカやレレイにも先程からの勘違い言動は全て筒抜けなので、『このオバサン何言ってんの?』といった顔だ。

 

 ロゥリィの傍らにも「全知くん」が浮いているが、彼女の雰囲気を感知したのか……忙しなく宥める様なジェスチャーを繰り返していた。

 

 そして、議員が自衛隊の行動に責を問う様に問い掛ける。

 ……それに返されたロゥリィの言葉は……

 

「……貴女、お馬鹿さぁん?!」(マイクキーン)

 

 全知くんを介さない、彼女の日本語による盛大な罵倒であった。

 

 

 罵倒を皮切りにロゥリィが語ったのは、地球の常識など通用しない……「門」(ゲート)の向こう側での戦闘の真実……伊丹さんたちの戦闘を直視し、長い時を生きてきた彼女の言葉は、あちら側の世界が持つ独特な価値観もあり……全てを聞き終えた地球人は全員、言葉を失なわざるを得なかった。

 

 ……後半で議員の事を矢鱈と「お嬢ちゃん」呼ばわりしたのは、途中から議員の事を「無知」だと切り捨てた考えから来る言動……だと思う……

 実際ロゥリィと議員の女性との年齢差を考えたら間違いなく「お嬢ちゃん」発言は妥当だろう……だが、相手は彼女の実年齢を知らない筈……そう考えると、単に苛ついたから……と思えなくもない。

 

 議員が苛立ち混じりに「年長者は敬うもの」と諭そうとすると、ロゥリィも僅かに殺気立つ……これは少々マズイね。

 

「委員長! 彼女は重大な勘違いをしています!!」

『ロゥリィ、さすがにそれは彼の立場を悪くする……ココは任せて』

 

「何よ伊丹……って貴方(トリニティ)まで、何で邪魔するのよぉ~!」

 

 僕と伊丹さんが揃って声を上げ、伊丹さんは議会の仕切り役に「勘違い」を説明……同時に僕がロゥリィの手を止めさせ、席へと連れ戻す……

 

「え~、信じられないかとも思いますが彼女……ロゥリィ・マーキュリーさんは、この場の誰よりも年長者になります!」

 

 伊丹さんの説明に、女性議員は鼻で笑いながら「一体何歳(いくつ)になるって言うんです?」と完全に信じてない模様……しかし、ロゥリィ自身が言い放った答えは……

 

「……ふふっ、961歳よ」

 

 初めて聞いた彼女の実年齢に、特地住人以外の全員が驚愕に言葉を失う……無論、それは僕もだ。

 

 アークスの現役最高齢記録保持者はレギアスだが、それでも実働期間は200年を超えてない……キャストと言う種族はかなり長命であり、身体のメンテナンスさえ十全ならば、4~500年は現役で動けるのだが……ロゥリィの実年齢は僕の予想よりも遥かに上だった。

 

 ロゥリィの実年齢を皮切りに、答弁済みの特地住人……テュカとレレイも実年齢を聞かれ、それぞれ「165歳」「15歳」と判明……その後レレイから特地における種族的な特徴が説明され、誰もが納得せざるを得なくなった。

 

──────────

 

 特地に関して、十分すぎる程の衝撃を受けた参考人招致だが……答弁を求めた参考人はまだ存在している。

 

《え~、最後に……ん、これは……?》

 

 ん? 司会が書類見て困惑してる……まさか、提出した書類に僕が気付かなかった不備が……?

 

『……スミマセン、どうやら提出書類に不備があった様ですね……この場で謝罪します』

 

 仕方なく伊丹さんを倣って挙手し、マイクで此方の不備を謝罪する……対応は早い方が良い、僕は自身のマグデバイス「ネメシュ」に指示を出し、書類を持って困惑する司会者の元へと行かせる。

 

 ネメシュは見た目こそ刺々しく奇妙な模様入りの超大型閃機種「ネメス・アンジュール」を2.5頭身にデフォルメした人型デバイスだが、マグ故の高性能や多機能ぶりは健在……簡単な指示なら問題なく実行できる上、キャストである僕と視界の共有も可能。

 

 ……他にも様々な有用性があり、兎に角重宝する。

 

 ネメシュはすぐに不可視モードとなり、司会を務める議員の後方から回り込んで書類をカメラに収めてくれた。

 

(……書類の不備じゃない、内容の信憑性の問題か……)

 

 視界共有で確認させた書類に不備は見当たらなかった……単なる信憑性の問題か、それともこの地球独自の問題なのか……少なくとも信憑性なら答弁で回復できるハズだ。

 

《え~、すみません……個人的な勘違いです、失礼しました。では最後に、トリニティ・フェザーバレットさん》

 

 改めて司会者が書類に目を通し、僕の名前が呼ばれた……さて、何をどう聞かれるかな……

 

 

 質疑する議員は先程の衝撃から何とか立ち直り、一見すると優男に見える僕に対してまたもや優位に立とうとする言動を展開する……

 

「まず……貴方は特地住人ですが、ドラゴンと自衛隊の戦いに途中参加し、撃退に寄与したとありますが……それは本当ですか?」

 

『はい、私が参戦するまでの間……自衛隊員はドラゴンの周囲を車両で走って撹乱しつつ、手持ちの装備で牽制を繰り返し続け、民間人に注意が向かない様にするので手一杯でした。

 

 目撃以前の行動は分かり兼ねますが、少なくとも飛翔している相手に対して、陸戦歩兵がやれる事はほとんどありません……幸い、私は切り立った崖の上から様子を伺えたので、牽制射撃が途切れたタイミングに合わせ、剣でドラゴンの尾を斬り付けました……それで想定外のダメージを負い、ドラゴン自身が己の命の危機を感じて撤退した……という顛末です』

 

 先程、ドラゴンの鱗はタングステン(の合金)並の強度を持つと明かされたばかりなのに、僕がその鱗に覆われたドラゴンを剣で斬り付け、尾を切り落とした……会場のほとんどが「信じられない」といった顔だが、特地組と伊丹さん達は目の前で見てるので特に反応もない。

 

「……それはさすがに、誇張が過ぎていませんか? 確かに、自衛隊の報告書にもドラゴンの尾は切り落とされていたとありますが、別の方法かもしれませんし、或いは既に傷を負った後だったのでは?」

 

『確かに……報告書や聴取内容は簡単に偽れるモノですからね……』

 

(……ひとまず、これで彼の言葉から正当性を欠かせる事は出来そうね……)

 

 とでも考えたのだろう……僕を相手に弁論大会をやるなんて随分と短絡的な思考だな。

 生憎だが、そんな言葉遊びなんかには付き合ってられない……況してや、伊丹さん達の特地での奮闘や努力を世界中に誤解される訳には行かない……

 

(だからといって、彼女やアッシュ達を落胆させたくは無い……)

 

 長い付き合いのある、幼なじみの彼女……レギアスに師事し、姉弟子のアザナミと共に剣を学んでいる事から、守護輝士(ガーディアン)であるアッシュやマトイとの縁もできた。

 彼女は守護輝士の2人と同じで困った人を見捨てず、不正は許さない難儀な性格……当初こそ割り切っていたが、アッシュが反逆者とされた事件の前後から……僕自身の思考にも影響を及ぼしていた。

 

『……ですが、この場で在らぬ誤解や行き違いは徹底的に排除したいというのが私の主義ですので、敢えて言わせて貰います……

 ……現実を知らない者にとやかく言われる筋合いはありませんし、彼等自衛隊が現地民の方々にどれだけ感謝をされたか……貴女はそこまでの全てを知ってから物を言うべきだ』

 

 さすがに彼女の言動には腹が立っている……疑うのならば見せてやるさ、現実を。

 

 ネメシュに不可視モードを解除させ、最大サイズの巨大ホロモニターを展開……それにある映像を映し出す……

 

 それは僕の視点でネメシュが記録した出来事……件の赤トカゲ(ドラゴン)戦における自衛隊の活躍と、現地民とのやり取りの全てだ。

 

 

『……この映像はフィクションではありません。

 私が実際に自衛隊と共に目にし、感じ、体感したものを映像に納めたものです……無論、音声翻訳以外の加工も一切行っていません』

 

 そう良いながら、僕は量子格納していたアウターを取り出し手早く着込む……もちろん録画した時の、ニューマン男性の姿へと変わって。

 

『この映像も証拠資料として後程提出しましょう。少なくとも、この映像は全て現実であり、特地ではこの様な驚異が他にも潜んでいるかもしれない……

 自衛隊はその様な土地に派遣され、この映像の出来事を経験した……その事実を忘れる事無く、今後に活かして欲しい……

 

 ……それが、貴方達に望む事です』

 

 作り物にしては迫力がありすぎる、大迫力のデジタル(この世界で広く普及している)動画データに変換したネメシュの記録映像……もちろん音声は日本語に変換済みだが、データ上では翻訳前の音声とシームレスに(いつでも)切り替えられる様になっている。

 

 繰り返し流される映像記録に、誰もが言葉を失い……質疑していた女性議員は、ドラゴンの咆哮が響く度にビクッと身体を震わせている。

 各メディアのカメラマンもカメラを向けてこそいるものの……これまでの質疑応答を全肯定せざるを得ない記録映像を食い入る様に見ていた。多分、放送局側は必死に事態を収拾しようと苦心している事だろう……

 

 証拠がないから信じない? それなら見せてやる……簡単な理屈だ。

 専門機関やらに持ち込んで映像を解析するだろうが……本当に加工は施してないから意味はないし、これだけ簡単に出すの物を疑う方がおかしいと周囲から疑われる……人間の心理的にも証拠能力は十分だろう。

 

《……静粛に!》

 

 いち早く事態を収拾すべく、司会のマイクを借りて重鎮らしき議員が周囲を一喝……ざわめきが収まったのを確認した後、僕に対して質問をしてきた。

 

《……君は一体、何者なのかね……?》

 

 キリの良い処で映像を止め、ネメシュが僕の傍らに戻って来る。

 

 特地から来た筈なのに、明らかに技術レベルの違い過ぎる芸当を行ったエルフらしき男……素性を疑われるのも当然だ。

 

『…………』

 

 冷静さを取り戻しつつある会場の全てが、僕の次の言葉を待っている……

 この世界でPSO2を造った会社(のSEGAというゲームメーカー)には悪いが、少しばかり付き合って貰おう。

 

『私……いえ、僕はトリニティ・フェザーバレット。

 種の保存と惑星調査を行う組織(Artificial Relict to Keep Species)……通称、アークスに所属する者です』




Q:そんな簡単に身分明かして良いの?
A:アークスの存在を元々秘匿する必要性はありませんでした。
  ただ、今の世界はPSO2本編で繋がった地球とは違う次元と言う事もあり、無用な混乱を抑える為にも即時公開はせず、初期は時期の決定にも慎重になっています……ですが今回は発言の信憑性を得る必要がある為、やむを得ず……と言う事で。

Q:アークス君はSEGAを知ってるの?
A:序盤で倉田さんはPSO2の事を知っていました。
  こちらの地球での関係は彼から情報提供されています。

公開後の混乱が目に浮かぶわ……収拾する側の苦労は考えたくないw

感想お待ちしてまぁす!(。>д<)


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第12話 国会中継の「参考人招致」について語るスレ

前話の投稿が原作既知の読者さま方にウケたのか、
なんと赤評価になりまして……
ありがとうございますぅぅぅ!!(。>д<)

さてさて、お待たせ致しました……
感想の返答でも予告致しました初の掲示板形式です!

ネット界隈の事なのでネタやら何やらも思い付く限り入れ込んだw
お陰で書くのにメッチャ時間掛かったし、文字数も凄まじい事に……
多少お見苦しいかと思いますが、どうぞお付き合い下さいませ。


1:名無しの仮想世界の住人

 全国生中継の参考人招致に特地住人が招かれた件について

 無関係な話題はNG、荒らしは即退場して?

 中継同時視聴を推奨、節度を守って語ろう

 

 ……っと、これで良いかな?

 

2:名無しの仮想世界の住人

 お、何か面白そうじゃん?

 

3:名無しの仮想世界の住人

 ハロー、リアルタイムで視聴しつつ参加させて貰うわ

 

4:名無しの仮想世界の住人

 いらっしゃい、中継もう見てるの?

 

5:名無しの仮想世界の住人

 N◯Kだ……時間まで待つの暇すぎるけどw

 

6:名無しの仮想世界の住人

 国営なのに金取るの訳ワカメ()

 

7:名無しの仮想世界の住人

 批判は他所でやってw

 

8:名無しの仮想世界の住人

 オレ、参上!!

 

9:名無しの仮想世界の住人

 何でモモタロスw

 

10:名無しの仮想世界の住人

 ノリが良いでしょ? ダメならやり直す

 

11:名無しの仮想世界の住人

 イヤ駄目とは言ってないw

 

12:名無しの仮想世界の住人

 >>10

 何故にwhy?

 

13:名無しの仮想世界の住人

 >>12

 パタパタ犬まで来たw

 

 国会中継とかダルいと思ってたけど

 参考人招致で特地住人が来ると聞いてさ……

 

14:名無しの仮想世界の住人

 イッチに感謝、今朝から速報で話題だしな

 

15:名無しの仮想世界の住人

 もう始まってる?

 

16:名無しの仮想世界の住人

 招致まで5分切った所、みんなは何処で見てる?

 

17:名無しの仮想世界の住人

 地元のケーブルやで

 

18:名無しの仮想世界の住人

 いつも見てる民放の情報番組も特集組んでたから

 それで見てる

 

19:名無しの仮想世界の住人

 ……この中に一人、暇と金を持て余す奴が居るぞ?

 

20:名無しの仮想世界の住人

 >>16

 イッチは?

 

21:名無しの仮想世界の住人

 俺はA◯emaTVや

 

22:名無しの仮想世界の住人

 >>19

 ……俺か?!

 

23:名無しの仮想世界の住人

 >>5

 N◯Kとは……さては回し者か!?

 

24:名無しの仮想世界の住人

 要らんわそんな話題w

 

25:名無しの仮想世界の住人

 ほらもう始まるで?

 

26:名無しの仮想世界の住人

 ……お、入ってきた……え、女子3人も?!

 

27:名無しの仮想世界の住人

 男もイケメンやな

 

28:名無しの仮想世界の住人

 ……待たせたな!

 

29:名無しの仮想世界の住人

 待ってないよw

 オイデオイデ、もう始まってる

 

30:名無しの仮想世界の住人

 感謝

 ……しかしまぁ、自衛隊の招致なのに良く特地住人呼べたなぁ

 

31:名無しの仮想世界の住人

 現場で戦闘があったって話題だし

 いつもの与党叩きにするつもりなんでしょ?

 

32:名無しの仮想世界の住人

 アイツ等マジで仕事してるん?

 

33:名無しの仮想世界の住人

 ┐( ̄ヘ ̄)┌ シラネ

 

34:名無しの仮想世界の住人

 何でもネタにして叩きたいのよ野党は

 自分達が頭に成りたいが為に……そして腐っていくという定期

 

35:名無しの仮想世界の住人

 まぁ、それでオレ等は特ダネで飯食っていけてるんだけどな

 

36:名無しの仮想世界の住人

 え……兄貴の仕事、情報系なん?

 

37:名無しの仮想世界の住人

 おう、今日は非番だからな

 いつもは議員の尻を追っかけてる

 

38:名無しの仮想世界の住人

 まさかのストーカー告白w

 

39:名無しの仮想世界の住人

 通報した

 

40:名無しの仮想世界の住人

 やめてくれ! まだ小さい娘がいるんや

 

41:名無しの仮想世界の住人

 ……漫才は他所でやれ(# ゜Д゜)

 

42:名無しの仮想世界の住人

 ……すまん

 

43:名無しの仮想世界の住人

 oh……申し訳ない

 

44:名無しの仮想世界の住人

 悪ノリし過ぎは通報案件やで

 

45:名無しの仮想世界の住人

 いつにも増してカメラの数すげぇww

 

46:名無しの仮想世界の住人

 フラッシュ眩し……

 

47:名無しの仮想世界の住人

 先頭の小さい娘、魔法使いの杖っぽいの持ってる件

 

48:名無しの仮想世界の住人

 特地ってマジでファンタジー世界なん?

 

49:名無しの仮想世界の住人

 見た感じ、成り立ての魔法使いっぽいな

 

50:名無しの仮想世界の住人

 ちょ……2番目の娘エルフか?!

 

51:名無しの仮想世界の住人

 ホントだ、耳尖ってる……マジもんか?

 

52:名無しの仮想世界の住人

 マジ……マジエルフなんやろか……

 

53:名無しの仮想世界の住人

 wktk

 

54:名無しの仮想世界の住人

 声、綺麗やろうなぁ……

 

55:名無しの仮想世界の住人

 3番目の娘は何故にゴスロリ?w

 

56:名無しの仮想世界の住人

 黒一色……ベールのせいで顔が見えねぇ

 

57:名無しの仮想世界の住人

 雰囲気は大人っぽいけど、見た目が子供じゃあ……

 

58:名無しの仮想世界の住人

 4番目、マジのイケメンじゃん……

 

59:名無しの仮想世界の住人

 クッ、負けた……

 

60:名無しの仮想世界の住人

 >>59

 いや、アレに勝とうと思うキミが凄いわ

 

61:名無しの仮想世界の住人

 >>57

 ……何だろう、何か既視感が……

 

62:名無しの仮想世界の住人

 こう見ると、特地住人ってみんな若いのね

 

63:名無しの仮想世界の住人

 年寄りにはキツかったのかな、異世界旅行

 

64:名無しの仮想世界の住人

 それはそうかも

 

65:名無しの仮想世界の住人

 でもファンタジー世界って年寄りが年寄りに見えない件

 

66:名無しの仮想世界の住人

 ヤバい年寄りもゴロゴロ居そう

 

67:名無しの仮想世界の住人

 お、質疑応答が始まるで

 

68:名無しの仮想世界の住人

 この議員、なんか頭悪そう

 

69:名無しの仮想世界の住人

 まずは自衛隊員からやね

 

70:名無しの仮想世界の住人

 やっぱり戦闘あってたんやな……犠牲者数がエグい

 

71:名無しの仮想世界の住人

 まずは本人達から対応如何を問う訳か……

 

72:名無しの仮想世界の住人

 そりゃ手ぇ抜いてましたとは絶対言わないw

 

73:名無しの仮想世界の住人

 ドラゴン?! 自衛隊ドラゴンとやり合ったんか?!

 

74:名無しの仮想世界の住人

 やっぱ特地はファンタジー世界()

 

75:名無しの仮想世界の住人

 ドラゴン相手じゃ豆鉄砲……w

 

76:名無しの仮想世界の住人

 この議員やっぱりバカだわw

 

77:名無しの仮想世界の住人

 そりゃ、特撮じゃないですしおすし

 

78:名無しの仮想世界の住人

 避難民抱えての戦闘……犠牲者出ない方がおかしいわ

 

79:名無しの仮想世界の住人

 相手は自由に空を飛ぶ、しかしこっちは豆鉄砲しか無い

 ……普通に止められる訳が無い件()

 

80:名無しの仮想世界の住人

 この隊員、絶対オタクや!

 荷電粒子砲とかレールガンてww

 

81:名無しの仮想世界の住人

 そりゃ火力あれば別だろうよ……

 でもだからって重力子爆弾www

 

82:名無しの仮想世界の住人

 いや、ゴ◯ラ相手してる世界線の自衛隊なら持っててもおかしくない件

 

83:名無しの仮想世界の住人

 アッチは日本の自衛隊が世界最強だからな……

 

84:名無しの仮想世界の住人

 もしかしたら特地にはゴ◯ラも……?

 

85:名無しの仮想世界の住人

 (ヾノ・∀・`)ナイナイ

 ゴ◯ラは核実験の産物、そして人類科学の闇よ

 

86:名無しの仮想世界の住人

 特地ファンタジー説、更に濃厚にw

 

87:名無しの仮想世界の住人

 見てあの議員の顔w

 

88:名無しの仮想世界の住人

 早々に諦めたな……

 

89:名無しの仮想世界の住人

 まぁ、ドラゴン相手に無双できる人類なんて……

 

90:名無しの仮想世界の住人

 >>89

 同じファンタジーの土俵に立ってないとなぁ?

 

91:名無しの仮想世界の住人

 >>89

 >>90

 っ「モンハンのハンター」

 

92:名無しの仮想世界の住人

 >>91

 アレを人類と呼んで良いものか……

 

93:名無しの仮想世界の住人

 モンハン基準で、炎竜はどれくらいだと思う?

 

94:名無しの仮想世界の住人

 >>93

 クック先生には勝つだろうな……リオレウス辺りが良い勝負じゃね?

 

95:名無しの仮想世界の住人

 皆さんお待ちかねぇ!

 特地住人のトップバッターは魔法少女!

 

96:名無しの仮想世界の住人

 >>95

 唐突なストーカー(Gガン)に草生えたわ

 

 しっかし、可愛い娘やなぁ

 

97:名無しの仮想世界の住人

 >>95

 魔法少女と聞いて、魔法使い系キャラに初めて触れた作品挙げて?

 

98:名無しの仮想世界の住人

 >>97

 ワイはドラクエ、今も根強い人気

 

99:名無しの仮想世界の住人

 >>97

 せやな……俺はFF世代や、召喚獣はカッコ良いでぇ

 

100:名無しの仮想世界の住人

 >>97

 ワイはアニメからやな……まどマギ

 

101:名無しの仮想世界の住人

 >>100

 何故にそんなヤベー作品から入った?!

 

102:名無しの仮想世界の住人

 >>101

 しょうがねーだろ?! 当時人気だったんだよ!?

 

103:名無しの仮想世界の住人

 >>101

 ……御愁傷様。

 ウチはリリカルなのはやねん

 

104:名無しの仮想世界の住人

 >>103

 こっちもこっちでエグい設定てんこ盛りやんw

 

105:名無しの仮想世界の住人

 そこまでにしとき、答弁始まるで

 

106:名無しの仮想世界の住人

 >>101

 >>102

 当時の人気に引っ張られるのはしゃーない

 

107:名無しの仮想世界の住人

 何だぁ? コイツ……態度急変してね?

 

108:名無しの仮想世界の住人

 さも自分が歳上だからと言わんばかり……

 対する魔法少女、レレイちゃん……終始冷静

 

109:名無しの仮想世界の住人

 ワイこういう大人嫌いだわ……

 年長者だからって無駄に威張る奴

 

110:名無しの仮想世界の住人

 >>109

 激しく同意、そして高齢議員は老害

 

111:名無しの仮想世界の住人

 >>108

 レレイちゃんの言動は終始マイペースね

 むしろこのやり取りで大人なのレレイちゃんの方でしょ?

 

112:名無しの仮想世界の住人

 厚化粧オバサン、旗色悪く見えるなぁ

 

113:名無しの仮想世界の住人

 「不自由の定義が理解できない……」

 まー、こんな返しされちゃーね

 

114:名無しの仮想世界の住人

 哲学的な切り返し

 

115:名無しの仮想世界の住人

 >>113

 そう返されると誰が予測できたか……ワイは無理や

 

116:名無しの仮想世界の住人

 議員のオバサン、年下に圧倒されるw

 

117:名無しの仮想世界の住人

 プークスクス、ザマァw

 

118:名無しの仮想世界の住人

 >>113

 魔法使いになる時点で様々な予備知識は必須だろうし

 常識的な観点からも、普通に無知ではないハズ

 

119:名無しの仮想世界の住人

 相手が悪すぎたんやw

 

120:名無しの仮想世界の住人

 お……2人目始まるで、暫定エルフっ娘やな

 

121:名無しの仮想世界の住人

 やっぱ耳の事聞くんか?

 

122:名無しの仮想世界の住人

 聞かない方がおかしいノデハ?

 

123:名無しの仮想世界の住人

 後から聞くのもありそう

 

124:名無しの仮想世界の住人

 この娘も日本語上手いなぁ……

 

125:名無しの仮想世界の住人

 ……なぁ、何か側に浮いてないか?

 

126:名無しの仮想世界の住人

 何が? 何も見えへんで?

 

127:名無しの仮想世界の住人

 ワイも何も見えへんが……どーした>>125兄貴

 

128:名無しの仮想世界の住人

 何があるんや? 見間違いかもしれんし

 

129:名無しの仮想世界の住人

 何かこう……見覚えあるちっちゃい人形の様な奴

 思い出せんけど、マジでどっか見覚えが……

 

130:名無しの仮想世界の住人

 他の兄貴には見えない……>>125兄貴、何で見てるん?

 

131:名無しの仮想世界の住人

 >>130

 言うたやろ、N◯Kや……

 

132:名無しの仮想世界の住人

 何かの電波に影響されてる? もしくは電波ジャック?

 

133:名無しの仮想世界の住人

 >>132

 それだったら他の局やらも何か影響出てるハズやろ?

 

134:名無しの仮想世界の住人

 あー、TV最近変えたんだわ……8K対応の最新モデル

 

135:名無しの仮想世界の住人

 >>134

 ブルジョワめ!(# ゜Д゜)

 

136:名無しの仮想世界の住人

 >>134

 金持ち兄貴、焼き肉奢って~

 

137:名無しの仮想世界の住人

 (たか)るな(たか)るなw

 

138:名無しの仮想世界の住人

 >>134

 マジで金と時間をもて余してる……?

 

139:名無しの仮想世界の住人

 >>135

 >>136

 またズレテルゾ?(# ゜Д゜)

 

140:名無しの仮想世界の住人

 ……ゴメンナサイ

 

141:名無しの仮想世界の住人

 許してクレメンス

 

142:名無しの仮想世界の住人

 全く、この兄貴たちは……

 

143:名無しの仮想世界の住人

 エルフっ娘、マジでエルフやったゾ

 

144:名無しの仮想世界の住人

 >>143

 mjd?!

 

145:名無しの仮想世界の住人

 >>143

 kwsk

 

146:名無しの仮想世界の住人

 >>143

 議員にソッコー聞かれたわ、んで返しが「ええ、そうですよ」

 直後に「触ってみます?」と髪をかき上げて付け根見せるサービス

 

 これでニセモン疑う方がおかしい

 

147:名無しの仮想世界の住人

 マジか~、マジのエルフかぁ……

 

148:名無しの仮想世界の住人

 ファンタジー世界で最も有名な長命種族の代表やし

 多分、居ない方がありえへん

 

149:名無しの仮想世界の住人

 魔法少女にエルフと来たら……ゴスロリ少女は……

 まさか魔族とかだったり?

 だったら最高じゃね?

 

150:名無しの仮想世界の住人

 裏をかいて、ただの一般人?

 

 

 

163:名無しの仮想世界の住人

 エルフっ娘、テュカちゃんは戦闘中気絶してたんか……

 そりゃ答弁出来んわな

 

164:名無しの仮想世界の住人

 オバサンも大人しく引き下がった

 

165:名無しの仮想世界の住人

 と、いうことは……?

 

166:名無しの仮想世界の住人

 次は~ゴスロリ少女~、ゴスロリ少女です~

 

167:名無しの仮想世界の住人

 待 っ て ま し た

 

168:名無しの仮想世界の住人

 見た目やっぱ可愛い方よね……

 

169:名無しの仮想世界の住人

 ゴスロリも似合ってる

 

170:名無しの仮想世界の住人

 おー、声は比較的大人っぽいのな

 名前は「ロゥリィ」ちゃんね

 

171:名無しの仮想世界の住人

 何やら怪しさが漂うけど……

 

172:名無しの仮想世界の住人

 朝起きて、飯食って、夜には寝る……至って普通w

 

173:名無しの仮想世界の住人

 まぁ、如何にもその通り

 

174:名無しの仮想世界の住人

 生活の基本やね

 

175:名無しの仮想世界の住人

 オバサンまた悔しそう?w

 

176:名無しの仮想世界の住人

 今度は何か宗教的やな……エムロイって何やろ

 

177:名無しの仮想世界の住人

 ……? この衣装、喪服か?

 そうは見えないんだが……

 

178:名無しの仮想世界の住人

 >>177

 ワイも違うと思うで、ゴスロリ衣装にしか見えへんw

 

179:名無しの仮想世界の住人

 オバサン議員がまた変な事言い始めたゾ?

 「大切な人を失った」って、彼女誰か亡くしてん?

 

180:名無しの仮想世界の住人

 ロゥリィちゃんも ポカ─(o'д'o)─ン してる

 

181:名無しの仮想世界の住人

 また自衛隊弄り始めたぞこのオバサンw

 

182:名無しの仮想世界の住人

 犠牲者云々ってまだ言うか、このオバサン自衛隊嫌いなん?

 

183:名無しの仮想世界の住人

 さっき説明されたやろ、ドラゴン相手に生き残らせた方が凄いわ

 

184:名無しの仮想世界の住人

 >>109兄貴に同意するわ……

 ワイもこのオバサン嫌い

 

185:名無しの仮想世界の住人

 >>184

 同じく、というかいつまでもグチグチうるせぇなぁこのオバサン

 

186:名無しの仮想世界の住人

 民間人を危険に晒したぁ?

 豆鉄砲しかないのに飛んでる相手をどう止めろと?

 

 やっぱ馬鹿だわこのオバサンw

 

187:名無しの仮想世界の住人

 想 像 力 が 乏 し す ぎ る

 

188:名無しの仮想世界の住人

 大人って怖いね……

 

189:名無しの仮想世界の住人

 うっわ、演説モード入ったぞw

 ギ○ンとかシ○アを思い出すわww

 

190:名無しの仮想世界の住人

 大ww草ww原ww不ww可ww避ww

 

191:名無しの仮想世界の住人

 お~、マイクキーン入ったw

 

192:名無しの仮想世界の住人

 あなた、おバカサァン?wwwww

 

193:名無しの仮想世界の住人

 ついに他人に認識されたおバカ議員wwww

 

194:名無しの仮想世界の住人

 まってwwお嬢ちゃんてwww

 

195:名無しの仮想世界の住人

 年下にお嬢ちゃん呼ばわりされるオバサン議員wwwww

 ナ○コレ珍百景に登録決定wwwww

 

196:名無しの仮想世界の住人

 オバサン議員をお嬢ちゃんというゴスロリ少女……

 草生えすぎて芝まで生えたわ

 

197:名無しの仮想世界の住人

 >>192

 いやぁ、この発言誰が予測したよ?

 

 ワイは無理やw

 

198:名無しの仮想世界の住人

 お、ベール脱いだぞ

 綺麗な顔してるでロゥリィちゃん

 

199:名無しの仮想世界の住人

 ほほぅ……彼女しっかりと自衛隊の行動見てたんやね

 

200:名無しの仮想世界の住人

 ふむ……「絶対に」と強調している辺り

 自衛隊を信頼してる感じが見て取れるな

 

201:名無しの仮想世界の住人

 うーむ……兵士とは言え一端の人間、か

 命が惜しいのは誰だって一緒だし、普通に納得できる

 

202:名無しの仮想世界の住人

 い の ち を だ い じ に

 

203:名無しの仮想世界の住人

 「雨露凌げる場所で駄弁るあなた達」

 あまりにも的確すぎて草バエル

 

204:名無しの仮想世界の住人

 >>203

 バエリストはお帰り下さいw

 

205:名無しの仮想世界の住人

 犠牲者数ばかりに目が行ってるけど

 実際、自衛隊はそれ以上の命を救ったんよね……

 

206:名無しの仮想世界の住人

 犠牲者には申し訳ないけど、生きてる人間が優先……

 悲しいけどコレ、現実なのよね

 

207:名無しの仮想世界の住人

 お~、オバサン議員がmk5(マジキレる5秒前)って感じ?

 

208:名無しの仮想世界の住人

 古っ?! 古いよ>>207兄貴ぃ?!

 

209:名無しの仮想世界の住人

 自衛隊の功績をまずは褒めるべき、話はそれからや

 

210:名無しの仮想世界の住人

 あーあ、オバサン議員キレてるなコレw

 

211:名無しの仮想世界の住人

 お? 自衛隊員とイケメンが慌ててロゥリィちゃんを止めたゾ

 

212:名無しの仮想世界の住人

 >>211

 持ってるヤツの紐解こうとしたのに気付いたっぽいな

 

213:名無しの仮想世界の住人

 >>211

 もしかして何か物騒な予感がしたとか?

 

214:名無しの仮想世界の住人

 ん? 勘違い……?

 

215:名無しの仮想世界の住人

 何をどう勘違いしてるのやら……

 

216:名無しの仮想世界の住人

 ……ゑ、ロゥリィちゃんが会場の全員より年上ぇ?

 

217:名無しの仮想世界の住人

 うせやろ……普通にオバサン議員よりも若いのに?

 

218:名無しの仮想世界の住人

 もしかしてアレか? ファンタジー特有の見た目詐欺?

 

219:名無しの仮想世界の住人

 へ……961……うそぉん!?

 

220:名無しの仮想世界の住人

 961(くろい)って語呂なんかオイィ?!

 

221:名無しの仮想世界の住人

 ここでまたファンタジー要素キタ━━━(゚∀゚)━━━!!

 

222:名無しの仮想世界の住人

 エルフは長命種族の代表やし、テュカちゃん165でも納得

 

223:名無しの仮想世界の住人

 魔法少女は見た目詐欺など致しません、おk?

 

224:名無しの仮想世界の住人

 >>223

 プリ○ュアも同じく

 

225:名無しの仮想世界の住人

 お、レレイちゃんに代わった……説明を補足してくれるんか

 

226:名無しの仮想世界の住人

 そのようやね、特地も大体はヒト種が多いんかぁ

 

227:名無しの仮想世界の住人

 テュカちゃん妖精種……永遠に近い寿命とかスゴ……

 

228:名無しの仮想世界の住人

 165歳でも子供……コレ、エルフでは常識()

 

229:名無しの仮想世界の住人

 ロゥリィちゃんもスゲェ……っていうか亜神って何?

 

230:名無しの仮想世界の住人

 亜神は神の使いとか、下僕として伝承に描かれる存在やね

 神格的な扱いの都合で下位なだけで、存在的には同等と言っても良いゾ

 

231:名無しの仮想世界の住人

 >>230兄貴サンクス

 

232:名無しの仮想世界の住人

 やがては神に至る……マジモンの神になるとかヤベーイ

 

233:名無しの仮想世界の住人

 そりゃ961歳になって当然……

 だって肉体年齢が永遠固定やもん

 

234:名無しの仮想世界の住人

 他のスレやらSNSでも「神降臨」とか言われてるでww

 

235:名無しの仮想世界の住人

 ロゥリィ様、もうこう呼ぶしか

 

236:名無しの仮想世界の住人

 様付け確定やね、間違いなく

 

237:名無しの仮想世界の住人

 マジ神さまだもんなぁ……

 

238:名無しの仮想世界の住人

 なー、みんな誰か忘れてないか?

 

239:名無しの仮想世界の住人

 >>238

 うむ、忘れてないよ? まだイケメンが残ってる

 

240:名無しの仮想世界の住人

 見てよあのオバサン、最後までやるつもりかw

 

241:名無しの仮想世界の住人

 既に満身創痍に見える……でもまだ1人残ってるんよなぁ

 ご愁傷さまw

 

242:名無しの仮想世界の住人

 この調子で行くとなると……どうなるやろ?w

 

243:名無しの仮想世界の住人

 さぁねぇ……w

 

244:名無しの仮想世界の住人

 お、始まる……ん? 何か焦ってる?

 

245:名無しの仮想世界の住人

 何やろ、司会が名前を呼ばない……

 

246:名無しの仮想世界の住人

 本人も何か困惑してる……え、書類不備なん?

 

247:名無しの仮想世界の住人

 違うっぽい、でも困惑してるのは明らかやね

 

248:名無しの仮想世界の住人

 あ、始まった

 

249:名無しの仮想世界の住人

 トリニティ・フェザーバレット……

 くっそカッコいい名前してんなぁ

 

250:名無しの仮想世界の住人

 厨二病っぽいネーミング……でもカッコイイから許す

 

251:名無しの仮想世界の住人

 へぇ……彼が途中から参戦してドラゴン撃退できたんか

 

252:名無しの仮想世界の住人

 イケメンで強いとか最早勇者じゃね?w

 

253:名無しの仮想世界の住人

 >>252

 ファンタジーの王道展開、ココに極まれり

 

254:名無しの仮想世界の住人

 またオバサンが疑ってる……性懲りもなくww

 

255:名無しの仮想世界の住人

 イケメンも同意してるのは……まぁ、そうやね

 でなきゃ書類偽造とか聞かない訳だし

 

256:名無しの仮想世界の住人

 考えてみりゃタングステン単体なら兎も角

 合金やったら普通は切り飛ばすとか不可能や

 

 参考資料→https://material practice……

 

257:名無しの仮想世界の住人

 >>256

 資料サンクス

 

258:名無しの仮想世界の住人

 うわなにこれ……並の金属よりも硬いとかコレ斬れるん?

 

259:名無しの仮想世界の住人

 実際斬ったんやろなぁ……資料にもそう書かれてるらしい

 

260:名無しの仮想世界の住人

 そりゃ疑いもするわ、でも特地メンバー驚きすら無い件

 

261:名無しの仮想世界の住人

 >>260

 実際に現場を見たなら驚かないわな

 

262:名無しの仮想世界の住人

 お、イケメンが誤解されたくないって

 

263:名無しの仮想世界の住人

 敢えて言おう、駄目であると!!

 

264:名無しの仮想世界の住人

 敢えて言わせて貰う、誤解てほしくないのだと!!

 

265:名無しの仮想世界の住人

 >>263

 >>264

 しっかりガン○ムネタに走る兄貴たちw

 

266:名無しの仮想世界の住人

 うおっ!? 何か急に出てきた!!

 

267:名無しの仮想世界の住人

 コレ、さっき>>125兄貴の言ってた奴じゃね?

 >>129

 

268:名無しの仮想世界の住人

 え……マジでコイツが居たって事?!

 

269:名無しの仮想世界の住人

 不可視状態だったんか……それが偶然なにかの拍子で見えた?

 

270:名無しの仮想世界の住人

 詳細は分からんが、>>125兄貴には見えたって事やね……

 

271:名無しの仮想世界の住人

 巨大スクリーン?!

 ちょい待ちコレ完全にホロモニターやん!?

 

272:名無しの仮想世界の住人

 ファンタジーに唐突な超技術!?

 ちょっと待ってもうお腹いっぱいwww

 

273:名無しの仮想世界の住人

 何か映してるぞ……うおっ、ドラゴンやん!!

 

274:名無しの仮想世界の住人

 赤い鱗のドラゴン……王道の赤竜って感じやね

 

275:名無しの仮想世界の住人

 あ、自衛隊も映ってる……って事はコレ件のドラゴン戦の映像か?!

 

276:名無しの仮想世界の住人

 唐突に流される現地の実録映像とか

 こりゃ考察板荒れるぞwww

 

277:名無しの仮想世界の住人

 さっきからチラ見してた考察板が速攻で落ちた件www

 

278:名無しの仮想世界の住人

 結構荒れてるな……チラ見してた場所どこも重くなってる()

 

279:名無しの仮想世界の住人

 無事なのココくらいじゃね?

 特番流してる各局も問い合わせ殺到してるっぽいし

 

280:名無しの仮想世界の住人

 さすがに生々し過ぎたからか、中継を切った所多い

 

281:名無しの仮想世界の住人

 A○emaなワイ、ずっと見れてる件()

 

282:名無しの仮想世界の住人

 >>280

 放送倫理的にもなぁ……

 

283:名無しの仮想世界の住人

 よっしゃ、ワイもA○emaで見よ

 

284:名無しの仮想世界の住人

 板系は落ちるか、クソ重いのどっちか……

 番組サイト系は問い合わせ殺到で同じくクソ重

 

285:名無しの仮想世界の住人

 いちおう一部、中継再開した番組出てきたな……

 ヤベーイ部分が終わったからか?

 

286:名無しの仮想世界の住人

 ……会場も騒然としてるな

 

287:名無しの仮想世界の住人

 そりゃあんな映像いきなり見せられちゃねぇ

 

288:名無しの仮想世界の住人

 スレ主はA○emaだったんやろ?

 どうだった? 映像の中身

 

289:名無しの仮想世界の住人

 >>288

 ワイも最後まで見たかった……

 

290:名無しの仮想世界の住人

 >>288

 ワイもや、ってかあの映像作り物か?

 

291:名無しの仮想世界の住人

 >>289

 作り物にしては迫力ありすぎだルォ?

 

292:名無しの仮想世界の住人

 ワイの所、中継映像再開した……まだ続き流してるっぽい?

 現地人との会話シーンなんやけど

 

293:名無しの仮想世界の住人

 >>292

 続きで間違いないで、戦闘シーンもそんなに長くなかった

 っていうか、マジでドラゴンの尾っぽぶった斬るシーンあった件()

 

294:名無しの仮想世界の住人

 >>293

 そんなシーン作り物で用意するとして、金と時間どんだけ掛かるやら……

 

295:名無しの仮想世界の住人

 あのシーン、作り物にしてはリアルすぎる……

 というか普通に作れなくね?

 

296:名無しの仮想世界の住人

 そもそもドラゴンと実戦した自衛隊、何人も居たよな? 

 

297:名無しの仮想世界の住人

 ある程度大人数な時点で創作できるわきゃない

 現地人も含め、ドラゴン目撃者は大勢いる訳だし

 

298:名無しの仮想世界の住人

 目撃者多数、実際戦闘は確認された

 その上でこの証拠映像……もはや全肯定するしかない件

 

299:名無しの仮想世界の住人

 イケメンも翻訳以外、手は加えてないと名言してるな

 

300:名無しの仮想世界の住人

 特番の考察人員が頭抱えてる件ww

 

301:名無しの仮想世界の住人

 普通にゲームでしかお目にかかれないレベルのド迫力戦闘シーンが誇張なしで実写なんだもんw

 そりゃ誰も否定できんわwww

 

302:名無しの仮想世界の住人

 会場が一喝されたwww

 

303:名無しの仮想世界の住人

 だ ま ら っ し ゃ い(意訳)

 

304:名無しの仮想世界の住人

 >>302

 www

 

305:名無しの仮想世界の住人

 この人、防衛大臣じゃね?

 

306:名無しの仮想世界の住人

 自衛隊の実質上役さんか……

 この事態はさすがに想定外だったっぽいな

 

307:名無しの仮想世界の住人

 イケメンを問い質してんぞ

 「君は一体、何者なのかね?」って

 

308:名無しの仮想世界の住人

 どう応えるイケメン?

 

309:名無しの仮想世界の住人

 周囲も黙って見てるな……

 

310:名無しの仮想世界の住人

 種の保存……と惑星調査? いきなり未来的な…… 

 

311:名無しの仮想世界の住人

 どっかで聞いたフレーズ……

 

312:名無しの仮想世界の住人

 アークスってなに?

 

313:名無しの仮想世界の住人

 ……うせやろ……いやでもそうやったら全部納得や。

 

314:名無しの仮想世界の住人

 >>313

 どーしたよ? なんか知ってるんか?

 

315:名無しの仮想世界の住人

 >>310

 このフレーズ、聞いたことあるなと思ったら「PSO2」じゃねーか。

 

316:名無しの仮想世界の住人

 あぁ、サービス開始当初から色々話題に事欠かないあのオンゲか

 

317:名無しの仮想世界の住人

 今、PSO2の公式見てる

 なるほ、略した呼び名みたいなモンか……

 

 略せずに和訳したらだいたい一致した()

 

318:名無しの仮想世界の住人

 ……ってーことはあのイケメン、アークスって事か?

 

319:名無しの仮想世界の住人

 うせやろ?w

 

320:名無しの仮想世界の住人

 っていうか、さっき映像出した2.5等身ってコイツじゃね?

 

 https://pso2.jp/players/event……/prize_06.png

 

321:名無しの仮想世界の住人

 うっわ、マジでそのまんまやん……

 

322:名無しの仮想世界の住人

 どう見てもコイツですwww

 

323:名無しの仮想世界の住人

 どうなってるん??

 

324:名無しの仮想世界の住人

 現役プレイヤーが多数参加してたらしい考察系板が超盛り上がってる件www

 

 https://tyoumoriagari……

 

325:名無しの仮想世界の住人

 いくつかのSNSでも大騒ぎになってるな……

 現役PSO2プレイヤーがアークス実在に沸いてる件www

 

326:名無しの仮想世界の住人

 >>324

 見たわ……なにこの祭り具合www

 

327:名無しの仮想世界の住人

 というかコレ、SEGAもヤベーイ事に巻き込まれる?ww

 

328:名無しの仮想世界の住人

 さっきの考察系からの情報だけど、否定できる要素が皆無すぎてwww

 

329:名無しの仮想世界の住人

 >>328

 どゆこと?

 

330:名無しの仮想世界の住人

 あっ、中継終わった……

 

331:名無しの仮想世界の住人

 どこの特番も ポカ─(o'д'o)─ン 顔が多いwww

 

332:名無しの仮想世界の住人

 そりゃ急にゲームの話されちゃ宇宙猫顔待ったなしwww

 

333:名無しの仮想世界の住人

 真面目に考察してた板の情報なんだけどさ……

 ゲーム内に地球人類と接触するストーリーがあるという話()

 

334:名無しの仮想世界の住人

 mjk……

 

335:名無しの仮想世界の住人

 公式でも確認、現実とは違うけど異世界交流みたいな感じで

 地球とアークスが交流している旨が書かれてる

 

336:名無しの仮想世界の住人

 SEGAのサーバー、もしかしたら落ちるの秒読みじゃね?

 

337:名無しの仮想世界の住人

 ゲーム会社のサーバーがそう簡単に落ちる訳が……

 

338:名無しの仮想世界の住人

 >>336

 【悲報】SEGAのサーバー落ちる

 なお、件のゲームサーバーだけは死守した模様()

 

339:名無しの仮想世界の住人

 ゲームサーバーは死守したんかww

 

340:名無しの仮想世界の住人

 >>338

 会社持ちではあるが、物理的に独立したサーバーやった模様

 おかげで被害だけは免れた件()

 

341:名無しの仮想世界の住人

 問い合わせ殺到www

 

342:名無しの仮想世界の住人

 自然と行き着くしか無いもんなぁ……

 

343:名無しの仮想世界の住人

 情報系番組でも鯖落ちの速報出たでw

 

344:名無しの仮想世界の住人

 >>343

 普通は出ないwww

 

345:名無しの仮想世界の住人

 >>344

 普通はね、でも端を発したのが件の国会中継だからww

 

346:名無しの仮想世界の住人

 今見てるSNSの方でも賛否両論……でも否定派の挙げた要素さ

 どれもちょっと考えたら的外れな事言ってる件ww

 

347:名無しの仮想世界の住人

 考察系板で否定要素が皆無って結論もう出てるからな……

 

348:名無しの仮想世界の住人

 むしろどうやったらイケメンの発言を否定できるん?

 彼は実在してる上、調べた要素も全て実存……更にほんの一端とはいえ、保有してる超技術まで見せられてんよ?

 

349:名無しの仮想世界の住人

 全世界生中継で公表=どうあがいても否定無理ww

 

350:名無しの仮想世界の住人

 A○emaはさっきの映像、一部繰り返してる

 

351:名無しの仮想世界の住人

 ドラゴンの尻尾切り落とした剣を特定した

 

 https://image.swiki.jp/img1……

 

352:名無しの仮想世界の住人

 どこを探しても否定要素が出てこない件www

 

353:名無しの仮想世界の住人

 ワイ、リアルにプレイヤーの知人おるねんけど

 聞いたら普通に大興奮してた件ww

 

 そしてプレイまで勧められたww

 

354:名無しの仮想世界の住人

 >>353

 餌食になってるやんwww

 

355:名無しの仮想世界の住人

 >>353

 草ァ

 

 まぁワイも気にはなってたんよね、PSO2。

 

356:名無しの仮想世界の住人

 >>353

 数年前のDDoS事件で一時期は低迷したらしいが……

 

 もしかしてそれでデータ盗まれたとか?

 

357:名無しの仮想世界の住人

 >>356

 その事件さ……現実の世界とあっちが混線した結果発生したとか?

 

358:名無しの仮想世界の住人

 >>357

 その辺、考察系もそう考えてるっぽいね……

 

359:名無しの仮想世界の住人

 何にせよ、ゲーム世界の住人だった人物が何故か

 特地経由で現実に来ちゃった事は間違いないわな

 

360:名無しの仮想世界の住人

 俄には信じられない……でも全世界生中継された事で否定もできないww

 

361:名無しの仮想世界の住人

 ……なんかねぇ、もっとこう……驚くかと思ってたけど

 案外、ワイら冷静に受け入れてるね()

 

362:名無しの仮想世界の住人

 >>361

 先にゲームでそういう話題に触れてるからじゃね?

 

363:名無しの仮想世界の住人

 >>362

 言えてるww

 

364:名無しの仮想世界の住人

 特番のコメンテーターも大荒れし始めたゾww

 

365:名無しの仮想世界の住人

 ワイは見れなかったシーン、A○emaで見よ

 

366:名無しの仮想世界の住人

 ココ、最後まで少人数やったから落ちなかったwww

 

367:名無しの仮想世界の住人

 イッチに再度感謝!

 

368:名無しの仮想世界の住人

 ワイは独自に考察系板回って情報集めてくるわ

 ココまだ残すよね?

 

369:名無しの仮想世界の住人

 >>367

 ありがとナス!

 >>368

 そのつもり、ワイも情報漁ってみよ……

 

 ……始めるかな、PSO2も……

 

370:名無しの仮想世界の住人

 >>369

 じゃあウチと同じ鯖で始める?

 フレンド登録とか、新規さんには特典あるらしいで

 

371:名無しの仮想世界の住人

 >>369

 お、じゃあワイも始めようかな?

 

372:名無しの仮想世界の住人

 >>369

 >>370

 なんや兄貴たち始めるんか……ワイもやw

 

373:名無しの仮想世界の住人

 じゃ、ワイはキャラ作ったらココに戻るわ

 

374:名無しの仮想世界の住人

 >>373

 ワイもそうする、みんな一緒に始めよーぜ

 

375:名無しの仮想世界の住人

 ほんなら一旦落ちる、またな~

 

376:名無しの仮想世界の住人

 またあとでな~

 

377:名無しの仮想世界の住人

 らじゃ、ワイもキャラ作るで~

 




本文のみで13000字超えた……
ちかれた……

世界線の話はややこしいのでバッサリ行きます。
そしてこの公開が想定外の事態に……

まぁ、既知の皆様にはお分かりかと思いますがw

感想は……お手柔らかにオネガイイタシマス。


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第13話 妨害、そして望外の……

はい、前話の掲示板形式はいかがだったでしょうか?
初挑戦ながら書いてて楽しかったのは良かったのですが、スマホでやるとどうも反応が鈍くなっていくんでちょっちイラッと来たのは秘密w

さて、件の国会中継は予定を若干遅らせたものの終了。
世界中が衝撃に包まれる中、渦中の当人達は密かに議事堂を脱出しなくてはいけなくなったのです……まぁ、当然だよね?


 姫さま達に同行したリィスからの通信で、会談は無事に終了……合流すると報告が来た……のだが。

 

「こりゃあちょいとばかし厄介な事態になったぞ……報道関係に混じって、大勢の一般人までもが議事堂周辺に(たむろ)してる」

 

「え"っ?! 何でそんな事態に?」

 

「大方、あの男の存在のせいだろうよ」

 

 駒門さんの指摘は正鵠を射ているだろう……この世界では空想の産物とされている、アークスの実在……

 

 ……僕がこの場に居るからだ。

 

「トリニティ、あの場で公開したのは……ホントはマズかったんじゃないか?」

 

『あはは……でも、元々アークスの存在を秘匿する義務はありませんし、此方としては何時でも良かったんです……とはいえ、あの場で公表した事による衝撃が、当初の想定よりも大き過ぎた……というのは一つ、反省点ではありますがね』

 

 地球へ渡ってからの通信手段として、コチラで普及している幾つかの通信ネットワークの仕組み等を教えて貰っていたので、そのネットワークを利用出来るよう端末は改良してある。

 端末の画面には、絶えず更新される不特定多数者を巻き込んだリアルタイムチャット形式の画面を映している……その中では「議事堂なう」「アークス居た?」「人多すぎww」と口々に書き込まれていた。

 

「とにかく、当初の予定通り……議事堂を離脱する。皆は俺に付いて来てくれ」

 

「我々も予定通り行動する、合流は例の場所でな」

 

 駒門さんは止めてある車両に乗り込み移動を開始……僕らも人混みを避けながら、徒歩で議事堂を後にするのだった。

 

──────────

 

 議事堂から徒歩でしばらく歩き、辿り着いたのは地下鉄……地球でもこういう交通網が発達している事は把握済みだったが、記録を見るのと実際見るのとでは、やはり情報量の差が違うね。

 

《 次は、霞ヶ関……霞ヶ関です。 》

 

 国会議事堂前という駅から、丸ノ内線という路線の地下鉄に乗り込んだ僕ら……一つ先の霞ヶ関駅で駒門さんとも合流し、囮作戦の顛末を聞きながら車輌に揺られていた。

 

「移動手段の急遽変更を知らなかった時点で、情報漏洩の容疑者は2人に絞られたよ……」

 

 この移動手段の変更は、内部の情報を漏らしているスパイの炙り出しに使われた様だ……もちろん、僕らにもメリットはある。

 あの大観衆から姫さん達帝国の要人を守り通す自信は無いし、万が一にでも連れ去られたら国家の沽券にも関わる……だが幸いな事に、特地住人であるテュカ、レレイ、ロゥリィには思ったよりマークが甘く、逆にその分だけ僕とリィス……つまりアークスが注目されているらしい。

 

『……僕らとしては、無事にオラクルへ帰還出来るなら、どの国が協力者でも構わないんだけど……さすがに、他国の民間人まで危険に晒す様な国はお断りだね』

 

 利益優先を是とし、他国へ迷惑を掛ける様な国に対して、僕は協力するつもりなどない……そんな指示をした時点で、その人物の性根は腐っている……僕らアークスの多くが最も嫌悪する人種だからだ。

 

「……世の中にはそういう手合いの方が多い、お前さん等の志は立派だが、この星では綺麗事だけじゃ生きていけない場合もあるのさ……」

 

 駒門さんは苦言を呈してくるが、生憎と僕はこの生き方を変えるつもりは無い……そうでなきゃ、また彼女を泣かせてしまうからね。

 

 

 殿下達とは乗車時に合流しているので、後は滞在先に入るだけ……だったのだが、ロゥリィの様子がさっきからおかしい。

 

「伊丹ぃ……まだ着かないのぉ?」

 

「もう少しの辛抱だ、2つ先の駅で降りるから……」

 

「は~や~くぅ~!」

 

 何をそんなに警戒しているのか、随分と焦りの混じった声色だ……特地では体感できないこの特殊な閉鎖空間を忌諱しているのか? と思ったが、実際は……

 

「地面の下はハーディの領域なの……アイツ、200年前から私に『嫁に来い』ってしつこくてしつこくてしつこくてぇ……!」

 

 ……向こう側の経験からくる理由だった。

 大地の下……地下を縄張りとする神、か……恐らく地球で言う死神『ハーディアス』の事だろう。

 

(この世界に神は居ない……住んでる世界が違うから、全くの杞憂なんだけどなぁ)

 

《 次は、銀座……銀座です。 》

 

 だがロゥリィにそう言っても信じては貰えないだろうし、混乱を助長する可能性もある……言うべきか逡巡していると。

 

「駒門さん……スンマセン、俺達ココで降りるわ」

 

「ちょっと待て、俺達達にも段取りってモンがある! そう簡単に動かれちゃ……」

 

          いつもご利用ありがとうございます。     お客様にお知らせ致します……現在、銀座 - 東京間で発生した車両事故により、丸ノ内線は運休となっています……運転再開の目処は立っておりません。          繰り返します……現在、銀座 - 東京間で発生した車両事故により、丸ノ内線は運休となっています……運転再開の目処は立っておりません。           

 

 構内の電光掲示板やスピーカーから流れて来たのは、車輌事故による運転休止のアナウンス……このタイミングで……という事は、何処かの国の陰謀の可能性があるな。

 駒門さんと伊丹さんも何処か渋い表情だ……自国の利益の為なら、他国の事などどうでも良いのか?

 

「……隊長……」

 

「ヤレヤレだな、お前さんの読みの方が正しかった訳か……」

 

 栗林さん達の顔も何だか複雑な表情だ……渋々、といった感じで駒門さんも同意するしかなくなり、僕らは銀座駅で地下鉄を降りる事となった。

 

 

 地下鉄の駅から地上へ上り、銀座の街中へと出てきた僕らを襲ったのは、無防備な手荷物やバッグ類をすれ違い様に盗む……所謂、ひったくり行為だったのだが……

 

「うぐぉあっ?!」

 

 ロゥリィのハルバードを盗んだ直後……想定外の重量に負けて崩折れてしまったひったくり犯は、その場でハルバードの下敷きになってしまった。

 

「ヤレヤレ、何やってるんだかコイツは……」

 

 溜め息混じりに駒門さんがひったくり犯を立たせようとハルバードに手を出し、伊丹さんが「ちょ、ソレは……」と制止しようとした直後……

 

 グキリッ!! 「ひぎぃぃっ?!」

 

 鈍い音が響いた後、駒門さんの体勢が崩れ始め……ひったくり犯に重なる様に倒れてしまったのであった。

 

 ロゥリィの持つハルバードは僕ですら片手で長時間の保持は難しく、その重量は数百キロに達するらしい……地球人の人体構造がオラクル人とほぼ同一とはいえ、身体性能は一般人である駒門さんも負荷に耐えられなかったのだろう……南無三。

 

──────────

 

 本当ならこの先、市ヶ谷にある施設で一泊する予定だったのだが……伊丹さんは何を思ったのか、コンビニで1人ぶんの食事を買い込み、近くの住宅街へと僕らを案内し始めた。

 

 その後、辿り着いたのは……駅からさほど離れてないエリアにある「集合住宅」の一つだった。

 

「ま~たギリギリ状態か……全く、アイツは……」

 

 どうやら、この建物が目的地らしい……そしてそこには、こういう事情でも信頼できる知り合いが居るという事になる……

 伊丹さんの人脈はいったいどうやって築かれたのだろうか……情報部として、非常に気になる処である。

 

「……おいおい、エアコンも付けてないのか? 寒いぞこの部屋……」

 

 勝手知ったる……という事なのか、手持ちの鍵で扉を開け、無遠慮に中へと入っていく伊丹さん……部屋の中は暗く、ライトや照明が一切点けられていない。

 それを承知の上で入り込み、この場の主が居るであろう部屋の入り口を開いたら……

 

「……ぁ……っ、ご~は~ん~だ~」

 

 か細いが芯はハッキリと感じる女性の声がして、伊丹さんの足元に誰かがすがり付く……

 

「あぁ……あったかぁいぃ~……」

 

 その女性はよほど空腹と戦っていたのだろう……隠す事なく口端から唾液が見えている。

 

「……隊長、誰なんですか? その女性(ひと)は……」

 

「……はぇ? トリー君が見える……何で画面越しでもないのにトリー君が……?」

 

『……その呼び方……もしかして「サリー」……?』

 

「え、梨沙……お前、PSO2やってたのか?!」

 

『サリーは、アークスシップ第10番艦・ナウシズで総務部に所属する攻撃系テクニック使い(フォース)……まさか、君も異世界文明の人間(アバタープレイヤー)だったとは……!』

 

「コイツは俺の元・嫁さんだ……っていうか梨沙お前、PSO2やってた事黙ってたな……?」

 

「……ネタのためよ? まぁ、ついつい楽しくて止めらんなくなっ……あ痛ぁ?!」

 

「 「 「 えぇぇぇぇぇぇっ?! 」 」 」

 

 伊丹さんの元・配偶者であり、僕の元・仕事仲間……その彼女が、当時のこの地球からゲームのアバターを使ってオラクルに来ていた事……それぞれから与えられた何重もの衝撃に、この場に居る全員が驚愕の声を上げたのである。




アークスこぼれ話。
サリーこと梨沙のゲームアバターと、オリ主のトリニティは同じ10番艦ナウシズに所属しており、事ある毎(ストーリーイベントとやらで業務的)に会話させられ、ほぼ強制的にお互いを認識させられていた過去がある。
なお、原作ゲームではトリニティではなく、情報部トップのカスラが毎度の如くプレイヤー(主人公)と顔を合わせていますw

ちなみにラストで殴られた理由は、結婚当時に謎だった使途不明金の消えた先が判明したため。

サリー(デューマン:女性)  クラス:フォース/サモナー
ナウシズを拠点に活動するフォースの1人で、ペット「マロン」「メロン」を常に連れている。
戦術的にはペットの攻撃に紛れてPPの続く限り攻撃テクニックを連発するタイプだが、弱点や死角の把握、戦略眼は本物で、同行しているペットの被弾率は異様に低い。
しかし、不測の事態で追い詰められると「マロン(メロン)リボルバー」と呼ばれるペット虐待行為スレスレの戦法に切り替えてくる……
なお、彼女のスキル構成、防具の能力付与、ペットのキャンディBOXの全てが火力最優先のガチ盛りなので、通常時はおろか、マロン(メロン)リボルバー時の与ダメージはなかなかにエゲツナイものに……w


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第14話 次元渡航プログラム「PSO2」

原作には無かった、梨沙のアークス生活。
そこから発展したオラクルの話題……

そこで彼等が目撃したものとは……?


 伊丹さんの元・妻「梨沙」であった、アークス総務部・第48調査隊の副隊長サリー。

 彼女がこの地球で初めて出会った直接的な関係者というのはまさに奇跡の邂逅であった……

 

「そう言えば梨沙……お前のPSO2のアカウントはまだ残してるのか?」

 

「そりゃモチロン、むしろネタの宝庫なんだから消すなんてトンでもない!」

 

「それなら、時間が空いたらすぐあっちの誰かとコンタクトをコイツに取らせてくれ……もしかしたら、アッチは今も必死にコイツの事を探してる筈だから」

 

「そりゃやるけど……やるけどさ……アタシ今締切ギリギリなの忘れてない?!」

 

 そう言ってサリー……梨沙さんは伊丹さんにPCの画面を見せる。

 

 写っていたのは……少々表現に困る()()な光景が描かれた漫画の原稿だった……これって、所謂『18禁』表記がなされる漫画か……ん? この2人って……

 

 梨沙さんの漫画……PSO2……アークスのカップル……あっ(察し)。

 

「……だよなぁ……」

 

『……お仕事なら、私がお手伝い致しましょうか?』

 

 そこへ場の空気を知ってか知らずか……手を上げたのはなんとリィス……って、ちょい待ち……キミ、コレ18禁の漫画だよ? それを手伝うって……

 

『問題ありません……オラクルでも、この手の漫画は「あの時」(EP4 -地球編-)以来……娯楽の少ないアークス達を初め、オラクルの一般層にも大変ウケています……そこで少々ご縁がありまして、漫画製作のサポートをした事もありますので、具体的な指示さえ頂ければ……』

 

「え、マジ?! 貴女アシしてくれるの!?」

 

 リィスの申し出にすぐさま飛び付く梨沙さん……リィス、僕はキミが(18禁)漫画製作経験者だったなんて初めて聞いたよ……

 

 

 それからの梨沙さんの作業は恐るべき速さ、といっても過言ではなかった……

 

 リィスも種族としてはキャストなので、原画を見ながら指示を受けると、すぐさま爆速の手書きで製画を書き起こし、梨沙さんに手渡して精査を求める……といっても、指示通りかつシチュエーションに則して微細な変化を取り入れたリィスの手書き製画は、梨沙さんの原画の良さを絶妙に引き立てており、むしろ好感を持たれていた。

 

「フフフ……ココまで思い通りに描いてくれるなんて思わなかったわ! ……ねぇ、もし良かったらウチの専属アシにならない? 給料はまだそこまで出せないけど、売れたらその分良くなるし……」

 

『残念ながら、此方へはほぼ事故で来ていますので……帰還の可否や手立ても不明な状況ですし……現状では、その提案は受けられません』

 

「あっ……そう……そうだよね、まだ帰れないって決まった訳じゃ無いもんね?」

 

 もう帰れないと決まった訳でも無いので、この地に根付くその提案は時期尚早だ……でも、もし帰れないと分かったら……リィスにとっては、彼女の提案も(やぶさ)かではないだろう。

 

──────────

 

 それからというもの……リィスの爆速サポートにより、到着から約3時間弱後に作業は完了。

 時刻は夜の22時を過ぎた頃だった。

 

「んん~っ、リィスちゃんのお陰で徹夜予定が爆速だったわ……ありがとねぇ~♪」

 

『いえ、経験がお役立てたなら幸いです』

 

 僕としては、リィスがいつの間にそんな仕事を経験したのかを是非とも問い質したいね? と思うがそれ以前に、梨沙さんの部屋に厄介になる事にした伊丹さんの判断は疑わざるを得ないが……

 

『……何故、彼女の所に僕らを連れてきたんですか? もし、彼女までこの件に巻き込まれたら貴方の信用問題……加えて組織的にも多大なダメージを被る事は明白です。

 何か意図があっての事とは思いますが、それでもこの判断は危険すぎる……!』

 

 梨沙さんは伊丹さんの元・妻とはいえ、現状は一般人……秘密裏にとはいえ、世界から狙われる僕らを招き入れさせた事は正気とは思えなかった。

 

「……だからだよ」

 

『……え?』

 

「だからこの手を使ったんだ……俺達は腐っても自衛隊、本来ならこんな真似なんか取らないし、考えもしない……そういう所で人ってのは線を引くのさ……()()()()()()()()()使()()()()()()()ってな」

 

『……そうは言っても』

 

「俺だって最初はやりたくは無かったさ……でもな、梨沙(アイツ)のメールを見ちまった時に閃いちまったんだ……この方法なら、俺がヘマしない限りお前らの安全は守りきれる」

 

『……見くびらないで下さいよ? 僕は確かに貴方達と比べたら融通は効かないでしょう……ですが、自分の身は自分で守れます……そもそも、戦力的にも彼方(あちら)には万に一つの勝ち目も有りはしません……僕らを誰だと思ってるんですか?』

 

 最後は少し語気が荒くなってしまう……でも、彼の顔を見た限り、この怒気が功を奏した様だ。

 

「悪ぃ……お前さんは俺達なんかより何倍も強いんだったな……」

 

『なんか、というのは訂正してください……貴方のこれまでの行動を、僕は高く評価しているんですから』

 

 再び暴れそうな怒りをしっかりと理性で鎮めながら、僕は伊丹さんの言葉を訂正させる……もう少し周りを頼っても言いと思うのは僕だけだろうか……もしかしたら、この思考の礎となった彼の過去は、想像以上に壮絶なのかもしれない。

 

『必要ならば幾らでもサポート致しますし、アークスの技術はまだまだこんなものではありません……出来るか出来ないかを聞いてからでも、判断は遅くない筈です』

 

 梨沙さんも爆睡し始めたので、布団を準備し彼女を寝かせたリィスも会話に割り入って来た。

 マウントを取るようで悪いが、僕らは今までちっとも本気なんか出してない……それを忘れてもらっちゃ困るね。

 

「……そうだな、これからはお前さん達の力も宛てにさせて貰うよ」

 

『分かれば良いのです……フフッ』

 

『……リィス、それは何かのネタかい?』

 

『梨沙さんが、伊丹さんを言い負かす時にはそう言え、と……』

 

「……起きたら覚えとけよ」

 

──────────

 

 あれからしばらくとりとめの無い会話で時間を潰し、夜も更けた深夜……

 

「そう言えば……オラクル、だっけ? こっちじゃ単なるゲームなんだが、本来はどう見えるんだ? 少しばかり興味が有るんだが」

 

 伊丹さんはプレイヤーではないので、純粋な興味本位でオラクルの事を聞いてきた。

 

(……趣味的な嗜好が見え隠れしているのは……気のせいだよね?)

 

 そんな邪推を浮かべながらも、問い掛けに応じ……異世界交流のきっかけともなった、地球との顛末を語っていた時だった。

 

「そう言えば……梨沙と時々、連絡が付かない時があったんだよ……後から聞いたら、全然気付かなかったって言ってたんだが……」

 

 それは少し妙だ……例えゲームをしていたとしても、この世界のプレイスタイルなら手元に携帯端末くらいは置くだろうし、連絡に気付くくらいはする筈だ……その場で反応出来なくても。

 しかし、伊丹さんから聞いた梨沙さんのリアクションは「全く気付かなかった」との事……これはさすがにおかしい。

 

「まぁ、遅くともその日の内にリアクションは返ってきた……早ければ1~2時間くらいでな」

 

 如何にも中途半端な時間差だなぁ……と思った直後、アッシュの報告書に記載されていた()()()()を思い出し、すぐさま伊丹さんに梨沙さんを起こして貰う。

 

「梨沙、今すぐPSO2を動かしてくれ!」

 

「……んえ……ナニナニ? どゆこと……?」

 

「コイツの仮説が正しいかの検証だ、もし仮説が正しければ……!」

 

 伊丹さんの剣幕に急かされ、渋々といった感じで梨沙さんはPCからPSO2を起動する……

 

「……この時間だと他の人とか、あんまり居ないんだけど……とりあえず、ログインするわよ?」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

ファンタシースターオンライン2ニュージェネシス

N E W G E N E S I S

PHANTASY STAR ONLINE2

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 起動の際にログイン作業も組み込まれたシステムからゲームが立ち上げられ、美麗なムービーを経て画面いっぱいにタイトル画面が表示される……躊躇い無くゲームスタート操作を押した梨沙さんの身体から、淡いフォトンの煌めきが確認された直後……

 

「お、おい梨沙……?!」

「……この現状は……やっぱり……!」

 

 画面に写るのは、デジタルグラフィックで表現された次元トンネル。

 梨沙さんの身体は一筋の閃光となって画面に突入し潜り抜けていく……

 

 その数秒後……切り替わった画面は僕の見覚えの無い街の風景だったが、梨沙さんの身体は画面の向こう側……()()()()()()()()()()()()()()へと転送されていたのであった。




オラクル直行を期待していた人には申し訳ありませんが、リアルのゲーム事情(ストーリーの進行具合のみ)に対応している為、まずはハルファへと行って貰いました。

なお、いきなりハルファへと飛んだ理由ですが、
NGSへのシステム移行後からしばらくの間、仕事で詰まっていたので梨沙さんはゲームしてませんでしたし……決定ボタン連打するだけでログイン出来ますからねぇ?
また一部では「ムービー詐欺」と揶揄される程綺麗なオープニングムービー……伊丹さんを始め梨沙さんやアークス君も初見なためか、マジマジと見入っておりました。

理由はともかく、深夜ログイン……
身に覚えのある方は感想をよろしくw


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第15話 ハルファ、そしてオラクルへ……

深夜帯、リニューアル後マトモにプレイしていなかった理沙にPSO2を起動させた伊丹とトリニティ。だがその直後、プレイヤーである理沙の身体はフォトンの光に包まれ……
ゲーム内の世界である、惑星ハルファのセントラルシティへと転送されていたのであった。

……ところでコレ、ちゃんと戻れるんスかねぇ?
気になるなら読み続けよう、第15話!



 心地よい風と清潔感ある白を基調とした建物……さほど高くないとはいえ、4~5m程の強固な壁に囲まれた箱庭のような風景。

 そして眼前に聳え立つ、超巨大なタワー型人工構造物……

 初見であれば雄大な自然と、繁栄を極めつつも植物を上手く取り入れた文明的なコントラストが絶妙な風景を生み出す独特な都市に見えるだろう……

 

 それが、この惑星ハルファ最大の都市「セントラルシティ」である。

 

「……お、おい……理沙? 大丈夫……なのか?」

 

 伊丹さんが画面に向かって呼び掛けている、理沙さん……いや、あの姿はオラクルで見慣れたアークスとしての彼女……サリーの格好だ。

 なお、ゲームとしての今のPSO2の詳細は既に倉田さんから知らされている。

 

 今、彼女が居るのは惑星ハルファ……オラクルでの顛末から、約1000年もの時が流れた未来の世界にある惑星らしい。

 最初は1000年後とか何を馬鹿な、と疑ったが……倉田さんからはネットの資料や画像データを見せて貰ったし、実際にこうして理沙……サリーが降り立っている。

 紛う事なく、これは現実だ……そして僕は《1000年後にも人類やアークスが存続している》事に安堵を覚えた。

 

《うわぁ……こんなに変わってるんスねぇ~》

 

 画面の中のサリーからはハルファの風景にオラクルとの違いを重ね、その変わり様に少し驚いていた……

 

《……サリー?! やっと見つけた》

 

 疎らに通う人の流れから声が掛けられ、サリーの肩を叩いた人物……画面に写ったのは、ブロンドの長髪に黒いバトルスーツを着込んだ女性だ。

 

《あ、マノン……だったっけ……ナニナニ? どしたの?》

 

《どうしたは無いでしょ? アイナが倒れて運ばれた後から、貴女の姿も見えなくて……気になって探してたのよ》

 

 どうやらゲームのストーリー中、仲間が倒れて街に戻された所で離脱した様な状況らしい……勿論、僕はゲームのストーリーまでは知らないが、彼女の心中は理解できた。

 

《……あっ、あぁ~そうだったっけ……ゴメン》

 

《はぁ……もう良いわよ。クロフォードが貴女を呼んでるから、行きましょう》

 

 どうやら中断していたゲーム内のストーリーに捕まった様だし、このまま成り行きを見守ろう……

 

 

 それから、シティのリーダー「クロフォード」との面会、リューカーデバイスの使用法、クラスとスキルの習熟……と、ゲームのチュートリアルじみたストーリーが展開され、リューカーデバイスでオラクルへも飛べる事が分かり、進行のキリが良い所で跳んで貰う。

 

《……さて、いよいよオラクルに行くっスよ~?》

 

 リューカーデバイスへとアクセスし、PSO2側……つまり、オラクルへと時空跳躍する。

 此方では単なるゲームなのに、何故この地球までオラクルと繋がってしまったのか……今考えても仕方の無い話だが、シャオやウルク司令とコンタクトが取れれば分かるだろう。

 

──────────

 

 ヴォゥン……ヴォゥン……

 

 ゲームの設定上の話だが、ハルファとオラクルは実に1000年もの時の流れを挟んだ世界だ……なのにリューカーデバイス1つでその時間軸すらも自在に往来できるというのは、実に不可思議でならない。

 

 まぁ、フォトンはヒトの思いに反応するエネルギーだし、それが何らかの影響によってこのタイムワープ染みた効力を発揮しているのであろう。

 

 恐らくは、シオン……またはそれに準ずる存在(だれか)の影響か……?

 

《……さて、ようやく到着っスね》

 

 サリーの声に思考を呼び戻され、PCの画面を確認する……そこには実に見慣れた場所の映像が映っていた……

 オラクル船団の大多数を占めるアークスシップに設けられた特別区……任務や探索の為にキャンプシップに乗り込んだり、VR等の訓練の手続きを行う専用区画……通称「ゲートエリア」の光景だ。

 行き交う人の一部が常に出入りする目の前の巨大な通用口……その先はキャンプシップの搭乗エリアへと繋がっている。

 

《う~ん……さすがにアタシから『直接シャオとコンタクト取りたい』とか言っても聞き入れてはくれないだろうから、まずはシエラの所行こっか?》

 

『……そうだね、シエラなら理解も早いハズだ……よろしく頼みます』

 

《りょ~かい》

 

──────────

 

 サリーによってオート操作されるゲーム画面越しに、僕はオラクルの世界を見る……変わらぬシップ内の光景、そこには大勢のアークス達が思い思いに時を過ごしていた。

 この時間では特に緊急警報も無いようで、ロビーに屯してバカ騒ぎを繰り広げたり、数人でカフェに向かう者、カウンターで手続きをしてスキルを習得し、物は試しと惑星に降り立つ者、訓練の為に武器を磨く者……様々な光景を尻目にしながらサリーは艦橋への道を進む。

 

(……少なくとも、特に変わった様子は無い様だね)

 

 

 目の前の隔壁が開かれ、巨大な艦内に不釣り合いな程の簡素だがしっかりと空間が確保された艦橋へとたどり着いたサリー……艦橋の中央に設けられたシンプルなコントロールユニットの前に座り、何枚ものホロモニターを展開して、流れるデータを見ながら操作している金髪ツインテールの少女が見えた……彼女がシエラだ。

 

『ん? あぁ、サリーさん……確か今は、長期休暇中って聞きましたけど?』

 

「あー、うん……チョッチ用事が出来ちゃってね~。主に私以外の人がさ……」

 

 そう言ってサリーは自分の端末を操作する……地球での顛末から、個人単位の端末でも広域通信やネットワークへのアクセスが自由に可能となっている。

 今回はサリーの端末を使って、僕の端末とシップのネットワークを中継して貰えば、世界間の接続も可能では? と考え、それを実行して貰った……さすがに世界の壁を超える為か、やや雑音の混じる様だが映像も繋がった。

 

『……ッ?! あ、貴方は……!!』

 

《驚かせて済まない。認識番号、AKS-6271450……情報部主席査察官のトリニティだ。

 シエラ、驚かせて済まないが……諜報特権、コードD3を要請……大至急、緊急招集を請う》

 

『え"ッ?! コードD3ですか?!』

 

 アークスの情報部には内部査察、特地派遣、定期警備等の任務中……何らかの事態に遭遇または発見し独自判断が困難な場合、上層部からの指示や指令を求める事態に対し要請を願う為の緊急コードが与えられている……今回は()()()()()()()()()()()()()()()()()()に該当、トリニティは主席査察官なので、諜報特権に当たるコードD3を要請したのだ。

 

『わ、分かりました! コードD3……上層部首脳陣の最上位緊急招集ですね!?』

 

 

 コードD3の発令により、総務・教導・戦闘・情報、そして首脳陣である指令と副指令を含む上層部全員が招集された。

 

 まず姿を見せたのは勿論、人材誰一人として欠かすなと常に厳命する、人一倍優しいウルク指令……無論、副指令であるテオドールも一緒だ。

 

「トリニティ君が見つかったって本当なの?!」

「……ウルク、皆が来て説明するだろうから少し落ち着いて」

 

 次いで顔を出したのは、教導部次席のゼノ……彼もまた、後輩たる(トリニティ)を心配するあまり突撃に近い感じで部屋へと入ってきた。

 

「シエラ! トリニティが見つかったって本当か?!」

「ち、ちょっとゼノ! 少しは落ち着きなさいよ?!」

 

 ウルク指令とゼノ……2人はだいぶ似た者同士である。

 

 少し間を置いて現れたのは、直属の上司である情報部主席、カスラ……

 

「彼は無事だった様ですね……いやはや、これで妹さん達にも良い報告が出来る」

 

 それから総務部、戦闘部の主席と次席も揃って顔を出し……最後に教導部主席のレギアスとシャオが入り、首脳陣全員が揃った。

 

「さてシエラ、トリニティからコードD3の要請があったとの事だけど?」

 

『はい、詳細については本人から説明があるとの事なので、モニターをご覧下さい』

 

 シャオの問いにシエラは頷き、端末を操作して大型モニターに通信を繋ぐ……そこには先日から行方不明となっていた彼……トリニティが(皆知ってるニューマン顔で)映っていた。

 

《……皆さん、お久し振りです。原因不明の突発的な事故で次元転移され、転移先の技術レベルの問題もあり、今まで連絡が遅れた事に、まずは謝罪を……》

 

「そんな事は良いよ! 君が無事で、こうやって連絡をくれただけで嬉しいんだから……!」

 

「突発的な事故で次元転移か……お前さんは今、何処に居るんだ?」

 

 ウルク司令は此方の謝罪をぶった切ってまで安堵した事を口にする……ゼノさんは、僕の姿を見た事で既に落ち着いたのか、居場所を問い質してきた。

 

《……それについて、少し厄介な事態になっています。

 まず、此方の現在位置は地球です……ヒツギ達の居る所とは、次元的に違う世界ですけど……》

 

「……は? また嬢ちゃん達とは違う地球……?!」

 

「……地球って言う惑星(ほし)は、相当にハチャメチャな場所の様だねぇ……」

 

 ゼノさんはすっとんきょうな驚愕……マリアは違う地球(次元)という言葉に、もう勘弁してくれ……とばかりに呆れていた。

 

「……僕も驚いたというか、呆れたよ。状況の説明のために、まずはこれを見てくれ」

 

 各自の前に別画面を開き、シャオがこの状況を説明を始める……それは、オラクルからすれば()()()()()()()……という感じの出来事であった。




オラクルからすれば、コラボ先のキャラが来る様な事態はわりと起こってる事……
まさか、自分達が向こう側に行くとは思ってなかっただけで。

プレイヤーの皆さんは良くご存知の事かと……

感想、評価ありがとうございます!


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第16話 境界を超えるということ

前回のアンケート結果を踏まえまして、若干ながらシナリオを変更していこうと思います。
アンケートのご参加ありがとうございました。
これからもご愛読の方をよろしくお願い致します。

また、これまでの誤字報告や感想も併せてお礼申し上げます。
感謝ッ! 圧倒的感謝ッ!!



 シャオ曰く、次元の境界を超えて繋がる理由は数あれど……これ程までに不可解な現象は無い、と前置きが成された後から『異世界転移』現象についての説明があった。

 

 要約すると「お互いの世界に何らかの次元的な圧力または部分的な崩壊、ないしは人為的な操作による改変現象が起きた」事により、異なる次元同士の物理的・時間的な距離が不安定になる……

 その際にできた次元の隙間に入り込んだモノが、異世界へと転送されてしまうのだ。

 

「つまり彼は、不可抗力でこの次元の隙間に捕らわれて、向こう側に飛ばされたと言う事さ」

 

 補足として、オラクル側では「終の女神シバ」の一件での次元改変現象……地球側では件の異世界へと繋がる【門】(ゲート)が開かれた事が主な要因となった、とシャオは語る。

 

「いずれ誰かが巻き込まれる可能性はあった……僕の演算予測でも読み切れなかったのは、かなり痛いけどね……」

 

 バツが悪そうにシャオは頭を掻きながら言うが、レギアスやウルク達は気にしない……想定外などいつもの事だし、シャオは彼なりに頑張っている。

 全知存在(アカシックレコード)「シオン」を人の手で造る……自分はその過程で生まれた劣化コピーという紛い物だとシャオは自覚している……しかし(シャオ)を責める者など、この場には誰一人として居なかった。

 

『結果論ではあるが、トリニティは無事に此方へ連絡を寄越せた……現地人との協力関係もあり、事態としては終息の傾向にある……

 シャオですら予測できなかった事態であるならば、今回の件を教訓とし反省を活かす……その方針で良いだろう』

 

「再発防止としては、それで概ね問題ないでしょう。

 目下の課題は、彼の今後と帰還手段です……シエラ、向こうへの空間転送ルートは確立できましたか?」

 

『それなんですが……今のオラクル船団の位置からすると、かなり難易度が高いです。勿論、次元的・空間的両方の意味で……』

 

 オラクルと既に交流のある地球とは、次元的には違うものの空間距離ではそう遠くない……あの件からワープ技術も日進月歩を重ねており、地球への転送ルートはほぼ開拓されていた。

 だが今回、トリニティが迷い込んでいる地球は更に違う地球……しかも空間的な距離も遠いのである。

 

「……良く分からんが、要はメチャクチャ遠いって事か?」

 

「ねぇシエラ、どれくらい離れてるの? その、今回の地球って……」

 

 ゼノは自身の把握できる範囲で理解……エコーは素朴な疑問をシエラへと投げ掛けた。

 

『……え~と、今の通信を確保している回線を辿って概算を出して、ヒツギさん達の地球とのデータを比べると……ヒツギさん達の地球は、此方の世界で言う惑星ウォパル位の気軽さで往来が可能です。

 反対に今回のトリニティさんが迷い込んでいる方の地球は、過去に調査船「デルタ・ヴァリアント」が不時着した資源惑星「マキア」よりも、更に100光年ほど離れています……どんだけ離れてんですかコレ……?』

 

 惑星ウォパルは近年発見された惑星で、過去にフォトナー……「ルーサー」の実験場だった惑星だ。

 距離的にはそれほど離れておらず、現行のワープ技術なら()()()()()()()()()でバカンスを求める様に気軽に行ける……ヒツギ達の地球も、次元の壁さえ超えればほぼ同程度の距離なので、現行のワープ技術ならば同列……比較とされた「惑星マキア」は直接ワープできない特殊な環境にある資源惑星で、現在こそ人工的に造り出した中継衛星を経由して利便性こそ上げたものの、距離や難易度からすれば半端ない差である。

 

《こっちの感覚的に言えば、近所のコンビニ通いか、航空機の国際線か……といった所かな?》

 

 唐突に聞こえたトリニティとは別の声……画面にはトリニティの後ろで思案している男が映っていた。

 

《紹介が遅れました。彼が僕の協力者……現地の国家防衛組織である「自衛隊」隊員、伊丹耀司(いたみようじ)さんです》

 

「なるほど、自衛隊……という事は日本人ですか。コミュニケーションがスムーズに行えたのも納得ですよ」

 

《……お宅ら、前にも日本人に会った事あるんですか?》

 

「ええ、当時は紆余曲折ありましたが……現在進行形でお付き合いを継続しています」

 

 トリニティの上司であるカスラと直接対話する伊丹……飄々とした態度の伊丹に、朗らかな笑顔で対応するカスラ。

 

「……なぁヒューイ、私にはあの2人が笑顔で武器を向け合っている様に見えるのだが……気のせいか?」

 

「……奇遇だなクラリスクレイス……実は俺もだ」

 

 場の雰囲気を正しく理解したかしてないのか……戦闘部のリーダー(バカ2人)が揃って妙な勘繰りをしていたが、通信越しの会話はどんどんと進んでいくのであった……

 

──────────

 

 その後、連絡を寄越した手段でヒツギ達と同じ「PSO2」というゲームを利用した事に驚かれ、()()()()()()()()()()()()()()()()という事態に何やら策謀めいた印象を受けたものの……ゲームを介したやり取りが可能という事で今後の連絡や方針が話し合われ、僕自身へは借り物の環境ではなく、可能な限り「直接やり取りが可能な環境を整える」様にと指示が出され、現地時間への配慮もあって会談は終了した。

 

「……しっかし、本当にゲームの中の相手と会話が通じるとか……事実は小説よりも奇なり、ってか?」

 

『むしろ、本当にこのゲームはこの世界の人間が開発したモノですか? ……という疑いが湧いてくるんですけど』

 

「それに関しちゃ、開発元のお偉いさんとか現場の人に聞くしかないんじゃない?」

 

 会談の感想を驚き混じりで話す伊丹さん、僕は僕でゲームの開発元にあらぬ疑いを掛けそうになった……が、この場にはもう1人……

 

「……っ……ハハッ……なぁにこれぇ……本当に私、別の世界に行ってたって事……?」

 

 会談が終了し、任務完了と相まってゲームから手動でログアウトし帰還したサリーこと梨沙だったが、戻ってから突き付けられた現実に、茫然自失寸前となっていた。

 

『ヒツギ達の地球では、VR……バーチャルリアリティに近い、という事で特に何事もなく受け入れられていたらしいけど……こっちの世界では、どういう感じなんです?』

 

「発売当初は、たまに起こるアップデート前後のサーバーエラーやら、不具合で賛否両論だったけど……数年前に起きた『DDoS事件』とやらの直後から、データ管理のシステムでも変えたのか、随分と安定してるみたいでな……以降は優秀作として、幾つかの有名タイトルを連続受賞してるよ」

 

 腑に落ちない点は幾つもあるけど……帰還にはこのゲーム(PSO2)が鍵を握っている、そう考えるのは間違ってない筈だ。

 

「……んじゃ、明日は目眩ましも兼ねて買い出しもしなきゃな」

 

──────────

 

 さて、トリニティの件もあり別室で時間を潰している人達はというと……

 

「……殿下、その本の閲覧には()()()()()()()()があります……良ければ此方をどうぞ」

 

 梨沙作と思われる『禁断の果実』と書かれたタイトルの本を開こうとしたピニャとボーゼスを、咄嗟の機転で阻止し別の本を提示するリィス。

 

「……何だと? この本は閲覧制限があるのか?」

 

『閲覧……というよりは年齢制限ですね、ここに在る本の大半は1()8()()()()()()()()()()されています。

 この国では健全な人材を育成するべく、心を病みかねない商品や情報、禁書にはそういった制限が儲けられており、それ自体が暗黙の了解……しかし此方にある本でしたら、特にそういった制限は無いので』

 

「……なんと、この世にはその様な戒律があるのか?!」

 

「殿下、ここは異世界です……!」

 

「……! そうであった……」

 

 リィスから本を受け取りながら、ボーゼスとやり取りを交わすピニャ……だが、リィスから受け取った本の山の中には『週刊少年◯ャンプ』や『Ho◯by ◯APAN』、そして何故か『○nights & Magic(ナ イ ツ マ)』の漫画(全巻セット)が混ざっているのであった。

 




……はい、という事で普通にPSO2(ゲーム)で連絡が付きましたw

PSO2の原作でもアニメでも、たかがゲームがこんな騒動を起こす原因になるとは思ってもみなかったでしょうね~
開発元のSE○Aさん、もしかしたら「混乱の元凶」って言われて叩かれるかも……

ところでリィスさんや……腐る原因となった事象を阻止したのはお手柄ですが、逆にそのチョイスはどうかと思いますよ?
まぁ……理沙の部屋にある本は、彼女の作品(18禁)か資料として買い込んだ物のどっちかしか無いからしょうがないんですが(マテ

さて次回は、昼間の銀座……ぶっちゃけ例のお買い物回ですね。

感想よろしくなのです♪(某・艦娘風)


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第17話 束の間のひととき

色々とヤバい事が起こる前触れって、何故か妙に平和なんですよね……
皆さんもそんな経験ありませんか?

今回は陰謀渦巻く件の温泉宿の直前……
例のお買い物回です。



 翌日、梨沙さんが「脱稿祝いがしたい!」と言い出し、伊丹さんも「何でもとは言えないが、地球に来た記念のお土産でも買う?」と提案、反対意見も無かった為……僕らは最低限の変装をして銀座で買い出しをする事になった。

 

 僕は伊丹さんの所用が何故か気になったので、一緒に行く事にしたのだが……

 

──────────

 

「ほぉ……キミが噂のアークス君か……」

 

(嘉納太郎……確か、現職の防衛大臣……彼とパイプがあるっていうのか、伊丹さんは?!)

 

 現職の……しかも職場組織を率いる政治中枢に居る彼との関わりを持っているという事で、僕は伊丹さんの人脈の広さを思い知ることになってしまった。

 

『……はじめまして、嘉納防衛大臣。アークス情報部所属のトリニティです』

 

「情報部ってーと、俺らんトコでいう外務省か?」

 

『そうですね……と言っても、情報部は内外問わず情報を一手に預かる部署……此方で言う諜報組織や外交、公報の立場も兼務しているようなものです』

 

「そりゃまた、随分と仕事が多いな?」

 

『つい最近、大きな出来事を打破した直後でしてね……アークスの総数は事前の1/4にまで減っているんです。……役職兼務が多いのは、その所為ですよ』

 

「そりゃまた大変だな、そんなに数が減ってるのか……」

 

『元々、アークスという組織は万年人材不足なんですよ……組織の活動規模が、銀河系1つでは収まらないんですから……』

 

「……そりゃまた壮大過ぎるな……」

 

「実際のところ、お前さん等の活動範囲はどれくらいなんだ?」

 

『我々の組織が把握しているだけでも、銀河系にしておよそ数千。現状、主な活動対象としている惑星数は二桁も行きませんが……活動範囲を実距離に換算すれば、約52億光年ほどになるでしょうか……』

 

「「ごじゅ……?!」」

 

 至近距離で叫ばないで頂きたい、という間もなく伊丹さんと嘉納さんは揃って驚愕……あ、そうか……地球じゃまだ宇宙へ上がるだけでも相応の苦労と費用が嵩むと聞いていた。

 

(地球には、テレプールもキャンプシップも無いんだから当然か……)

 

 オラクルの艦船……特にアークスシップは、高度なリサイクルシステムや環境調整機構があるので、無補給でも外宇宙を数十年ぐらいは航行できるし、リューカーシステムを利用した特定座標へのワープなら何億光年離れていようと、ものの数分……

 更にアークスシップ自体が亜高速で航行可能、非戦闘員含めて十数万人単位で収容できるという超巨大な移動拠点でもあるのだから。

 

──────────

 

 その後も軽くアークスの事情を伝えた後、伊丹さんとのやり取りで嘉納大臣は趣味の好みが近い間柄……と理解した。

 

「最近はコンビニや本屋すらも簡単に行けなくてな……」

 

 そうぼやく嘉納大臣だったが、立場と使命を蔑ろにする様な雰囲気は微塵も感じない……これは信用に値するタイプだと直感した。

 

(となると、あの妨害は現状を快く思わない諸外国の仕業という訳か……全く……)

 

 そして先日の件はほとんどが諸外国の妨害工作だと分かり、僕は落胆する……この世界で、マトモな人種は日本人だけなのか? ……と、問い質すのも必要な気がしてきたぞコレは。

 

『……嘉納大臣、今後の護衛計画について()()()()()()()んですが……宜しいですか?』

 

 真相は分からないが、これだけ他国を蔑ろにする行為を()()()()()()()()()……むしろ憤りすら感じている。

 最近は少し運動不足だし……誠意の欠片も見えない行動に終始している連中に、少しばかりお灸を据える必要がありそうだ。

 

(他人を尊重出来ない者は、信用に値しないという事を……否応無く理解して貰おう)

 

「……お前さんが直接、手を貸してくれるってのか?」

 

『日本人……いえ、日本という国は不幸な事故で迷い込んだ僕や、生命の危機に瀕した異世界の人々に対し、最大限の誠意を見せてくれました……が、一部の国はそこを分かっていない。

 それ処か彼等は自国の利益を最優先に追求し、我々や彼女らとの関係がもたらす「利」を得たいが為に、他国を蔑ろにする行為を平然と行う……個人としても、アークスとしても、さすがにこの理不尽な行為は看過できません』

 

 少なくとも、昨日の列車の件は何も知らない多くの一般客に迷惑を掛けた訳だし……彼等の意趣返しや鬱憤晴らしという意味でも、ここは1つ……身体で覚えて貰う事にしよう。

 

──────────

 

 その後僕は、嘉納大臣と計画の修正と擦り合わせを端末で送り合う為に連絡先を交換……駅で買い物組と待ち合わせた後……一路、護衛計画で防御陣の敷かれた温泉宿へと移動する事になった。

 

 なお、買い物組に同行したリィスに「オラクルとの連絡手段の確保」という名目で、ゲームとしてのPSO2をプレイ可能なPCの購入を頼んでいたのだが……

 

『……この星の端末機器を構成する数々の部品は、オラクルでは旧世代の骨董品レベルで歴史的な付加価値があります……それなのに、こんな破格の安値で一般に販売されているなんて……驚愕を超えてドン引きです!』

 

 という“珍妙な誤解”をしてしまっているリィスが居ましたとさ……

 

 また、レレイは持ち運びの利便性と据え置きの扱いやすさの間を取ったノート型PCを購入……これには最新モデル&店舗特典をいう名目で『PSO2』が既にインストールされていた。

 

「……このゲーム(?)でトリニティの故郷が見られるの?」

 

 と、此方も奇妙な認識をしていた……まぁ、あながち間違いではないけど……ね。

 

 ちなみにテュカは職人技が光る「コンパウンドボウ」やスポーツに合いそうな服を幾つか……ロゥリィは白ベースにリボンとレース素材が目を引くゴスロリ衣装や小物アクセ……殿下達は何故か、最新刊のアニメ雑誌やら美少年が主人公の漫画本を大人買いしており、とても満足そうな笑顔をしていたのだった。




最後のヤツは突っ込みドコロ満載ではないかと……

次回、例の温泉宿回……
策を弄したトリニティ、果たしてその結末は?

感想お待ちしています。


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第18話 思惑と暗躍と

前話の夜、つまり例の襲撃回です。
原作では良さげな温泉宿が、見るも無惨な光景に変わり果ててしまいましたが……果たして本作では……?


 夜、時刻は午後8時過ぎ頃……風光明媚な温泉宿『山海楼閣』に到着。

 敷地内には自衛隊の精鋭のみが所属する「特殊作戦群」が防衛陣地を敷いており、喩えどの国家だろうと容赦なく排除する……そういう気概で僕ら異世界組を護衛しているらしい。

 

 今回、僕は思う処があり……この防衛に一枚噛ませて貰った。まぁ、これまでの紆余曲折を知る者からすれば……誰しもが憤る事だろう……

 

(恐らく、諸外国は何がなんでも僕らを確保しに来る……防衛大臣からの情報通りなら、確実に。

 ……なら、徹底的に抗わせて貰おうか……無論、僕の流儀(やり方)でね)

 

──────────

 

「……ッ!?」

 

『……どうかされましたか? ロゥリィさん』

 

「……視線を感じたわ」

 

「「「「な……っ!?」」」」

 

 露天風呂に併設された更衣室で「視線を感じた」とロゥリィさんが言った。確かにこの周辺には()()()()()()()がいっぱい居るので、監視という名目で見ているのだろう……でも、さすがに公序良俗は遵守して欲しいですね……

 

 

《……ッ!?》

 

《どうしました? 心拍数が跳ね上がりましたが? なにか問題でも?》

 

《……護衛対象「ブラック」と視線が合った……対象「フェアリー」にもだ》

 

《あり得ません……直線距離で450mも離れてるんですよ?!》

 

 特殊作戦群の隊員、コードネーム「アーチャー」は、確認の為にもう一度更衣室の窓付近を双眼鏡で確認する。そこに見えたのは……隊内で対象「ブラック」と呼んでいるロゥリィの怪しい笑みと、同じく対象「フェアリー」と識別されるリィスが窓の外を見回し……此方を認識した後、窓を閉める光景であった。

 

 尚、トリニティは加納防衛大臣に対し、今回の防衛作戦に対する協力を持ち掛け、地球側の端末と交信できる様にしたと言う……なお下記の発言は、リィスが窓を閉めた直後、協力の為に準備していた特殊回線から聴こえてきた台詞である。

 

『あぁ……先程感じられた視線は、外で護衛をして頂いてる方のものでしょう……後でマスターから抗議を入れて貰いますね』

 

 この騒動後、本当に抗議文が特戦群司令部宛に送られてきた事に「アーチャー」は呆然としたのは言うまでもない。

 

──────────

 

 さて、誘蛾灯に集まる数多の虫達が如く……この温泉宿には、異世界人と交流している日本を快く思わない諸外国の思惑で動いている人間たちが集まってくるだろう。

 

(普通なら特戦群に任せる処……だけど万が一、国同士のパワーバランス的な圧力で、彼らが対処できない事態に陥る可能性は極めて高い)

 

 この世界で普及しているインターネットから、各国のお国柄、まことしやかに囁かれている内部事情、そこから考えうる国のトップの思惑……その他を含む大体の情報は掴めているし、それでどう動いてくるかも大体の事は把握済み。

 

 大臣からの情報も随分と参考になったし、襲撃は間違いないだろう。

 

『だからといって、人死が起きるのは僕個人としては可能な限り避けたいんだ』

 

《分かってますよ、此方からフォトンフィールドを展開してその温泉宿を隔離すれば、人死も逃走も防げます……が、座標特定まではもう少し時間が掛かりますね》

 

『この端末(PC)経由で、発信ビーコンの信号をトレースできるかい?』

 

《その手がありました! 回線さえ確保できれば、すぐにでも!》

 

 既にPSO2がインストールしてあったレレイのPCを借り、オラクル側……シエラと連絡を取る。

 PSO2を始める為に「IDとパスワード」が必要……とは聞いていたが、まさかアークス登録時の()()がそのまま通用した事にはかなり驚いた。

 とはいえ、これで日本を経由してゲート世界にもインターネットが通れば、オラクル側と常に交信する事も可能になるだろう。

 

 ただ、毎週水曜は運営側の都合(定期メンテナンスの日)で交信不能になるのだが……

 

(まぁ、でもこれで相手の思惑を完全に潰す事が可能になる……後は、襲撃のタイミングだけど)

 

 

 内心かなり不安ではあったのだが……実際の襲撃が起きたのは、夜も更けた翌日未明だった。

 

──────────

 

 深夜……日々増大していくメモリーの整理を兼ねたスリープモードから、危機管理のアラートで強制解除され、僕は内心で舌打ちしながら横たえていた身体を動かす。

 

(こんな深夜帯にか……いや、他に被害を喰わせない現場の判断か? どうやら現場の人間は多少マトモらしい)

 

 銃声と着弾音が疎らに聞こえてくる……レーダーには複数のグループが映っている様だけど、何故か此方へ来る気配が無い。

 

「トリニティ、皆を起こしてくれ! 安全な所へ移動させる」

 

『それは既にリィスがやってます……伊丹さん、連中は……』

 

「恐らく複数だ……何処の国かまでは分からんがなッ?!」

 

 流れ弾の着弾音が至近距離から聴こえ、思わず頭を下げる伊丹さん……女性陣を起こしたリィスが建物の奥へと皆を誘導している中、ロゥリィだけが此方へ接近していた。

 

『不味いな……シエラ、フォトンフィールドは?!』

 

《こんな事だろうと思いまして! 騒ぎが起きる前に展開を済ませまてますよ!》

 

『了解した、ありがとうシエラ……物理的に帰れたら、此方の地球産スイーツでもご馳走するよ』

 

《本当ですかッ?!》

 

『……帰れたら、になるけどね?』

 

《むしろそちらの地球にも往来出来る方法を確立させましょう! ええ、どんな手を使ってでも……ふぇっ?! こ、言葉の()()ですよぅ~》

 

 通信用の小窓でシエラが不謹慎な発言をしたため、見えない誰かに注意されたようだ……多分、一緒にモニターしているシャオだろう。

 

 さて、コレで暴れても問題無い様にはなったけど……

 

「うふふふっ……あははははははっ♪」

 

 外では既にロゥリィが派手にやっている……フォトンフィールドによってあのハルバードのダメージも物理保護され、痛みと感覚だけがシミュレートされて物理的泣き別れは阻止されている……が、本人が受ける痛みは手加減無しのそのままだから、気絶や半狂乱は確実だろう。

 

(ああいうのに慣れた僕らは兎も角、彼等には地獄だろうね……ご愁傷さま)

 

 そう思いつつ、僕もタリスを展開して2種類のブレードを投擲。1つからは雷撃……「ギ・ゾンデ」を繰り出す。連鎖的に敵目掛けて這い回る雷蛇の如く、コンマ5秒ほどで4人を戦闘不能にした雷撃を目撃した敵の1人は明らかに狼狽……もう1つのブレードで位置を入れ替え、突如現れた僕の姿に、直近で生き残っていた男は息を飲んだ。

 

No way(まさか)... an angel, huh(天使、なのか)...?!」

 

 青と白のボディに純白の翼。見る者を圧倒する……人工物とは思えない挙動をするその翼と、機械とは思えない、複雑な流線形が織り成す人型の合成体……

 

 彼の意識には、僕の姿が『天使』と映ったのだろう……

 

I’m sorry,悪いね I won’t know unless I see it with painful eyes once.一度痛い目をみて貰わないと分からない ……Because I was allowed to judge.と判断させて貰った

 

 彼の耳には、日本語と英語が同時に聞こえた筈だ。

 キャストだけが可能な同時多言語発音の言葉を残し、僕はツインマシンガンを展開……新しくこの姿に合わせて『*シュヴァリエプレッジ』を改造した武器迷彩『*零の天使の導き』、双機銃モードは元のイメージを壊さない為に携帯性すらも犠牲にした2丁の大火力ライフル銃の如き外観をしており、弾丸も実弾ではなくビーム系……

 

 ……実用性よりも外観やイメージを追求した所謂「見た目だけ」の武器迷彩だ。

 

 ちなみにソードとタリスにも対応しており、ソードは「*コンサートマスター」のガンスラッシュ形態を参考に携帯性最優先の高出力ビーム刃を持つ斬撃武器、タリスは『鳥の羽根』が変化した飛刃を飛ばし、各形態共通でこの巨大な翼を背に(本体を)背負う……そのお陰で敵兵は天使と見紛ったのだった。




本作オリジナル武器迷彩第2弾!
……かなり無理やり感ありますがw

『……任務了解、全ての敵性存在を無力化する。』
と言ってツイマシの回転乱射をやりたいなぁ。

なお、英文はGoogle先生にお任せしましたので間違ってるかもしれません……


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第19話 悪意を穿つ光

長らくお待たせしました!
いやぁ、GGGの方が筆が止まんなくなりまして……w

前回の戦闘開始直後、トリニティは姿を変えています。
ヒントは「冬空」「天使」「任務了解……」
NGSではキャラクリの表現度が劇的に向上したのでこういう姿も可能に……

さて、誰なんでしょうねぇ?(すっとぼけ)



 宿の中庭に、普通なら聞き馴染みの無い音が断続的に響く……

 

 パパパパッ バンッ タタタタァンッ

 

 月明かりの中、周囲の喧騒に動じる事無く……2つの影が飛び回る。

 

「あははははははっ♪」

 

 その一つはその身体に不釣り合いな程巨大なハルバードを手に、風の如き速度で暗がりや物陰に潜む人間を相手に恐怖を撒き散らす少女……

 

(敵対勢力の人種がバラバラだな、やはり複数の国の工作員が同時に踏み込んだのか……)

 

 もう一つは純白の翼を翻し、相手から放たれる弾丸を舞うが如く避け続けながら虚を突いて接近……

 

「……ッ……?!」

 

『……悪く思わないでくれ』

 

 翼の主は身の丈に迫る巨大な銃を突き付け、相手の頭を光に飲み込む……

 

 バンバンバンッ

 

 相手の仲間だろう男がその光景に半狂乱になりながらも拳銃を乱射するが、それは全て白き翼に弾かれ……

 

『恨むなら、無能な君らの国主を恨むんだね……』

 

 その身を翻した翼の主の手に持たれていた光の剣に胴体を薙ぎ払われ、仲間もまた苦悶の声すら出せずに倒れた。

 

「トリニティ……貴方、やる事自体は過激なのに……どうして殺さないのぉ?」

 

『……僕は命を救う側の存在だ。彼等の命を断つ理由は持たないし、持つべきじゃない……降り掛かる火の粉は、当然払うけどね』

 

 僕はあくまで冷静にそう答える……アークスはダーカーを不倶戴天の敵とする以外は、個々の思いに対して非常に緩い組織だ。

 喩えどんな大罪人であろうと「償えない罪は無い」として更正を促す者も居れば、逆に軽い冗談みたいに嘘を吐く相手を徹底的に糾弾する者も居る……多様性を肯定するのは分かるが、このあまりの落差に頭を抱える仲間も居るには居る。

 

 当初は僕も困惑する1人ではあったが、最近はやや過激派になりつつあるらしい……これはアッシュの知人であり、地球で知り合った少女ヒツギから見た僕の評価なのだが、何故だか釈然としなかった。

 確かにレギアスやマリアと比べれば僕はまだ稼働年数は20年ちょいであり、一人前の域にようやく手を掛けたばかりの若輩だ……

 

 しかし……信賞必罰。恩には恩を、罪には罰を。幼馴染の彼女の影響もあり、単純にそう思っているだけなのだが……解せぬ。

 

──────────

 

Damn it, shootクソッ、撃て撃て !」

 

Не позволяйте другим странам опередить вас他の国に先を越されるな!」

 

狗屎仍然优先考虑自己的国家糞どもが、自国最優先は相変わらずか?!」

 

 母国語の罵声と共に撃ち合う侵入者達……漁夫の利になるのはありがたいが、見ていて良い気にはならない。僕は翼を前で合わせて閉じ、弾丸の如く銃弾が飛び交う中央へと踊り出し、翼を開くと同時に射程内に居る全員の位置を把握……

 

『……埒が明かないな。一気に掃討する……最大出力!』

 

 2つのライフルをそれぞれ左右に向け、フォトン出力を照射(バースト)モードへ変更……最大チャージ完了と同時に左右両方のトリガーを引く……モード変更により、トリガー引きっぱなし連射の補正付きでヒーローツインマシンガンのPA(フォトンアーツ)【ファイナルストーム】を移動せずに放つ。

 本来の【ファイナルストーム】は高速移動と高密度の弾幕で複数の敵を移動しながら撃ち抜くPAだが、その移動に使うフォトンを全て弾丸の方へ回す事で、まるでビーム照射の如き光の柱となったフォトンをその場で旋回する事で横薙ぎに振るう……込められたフォトン量により、極太となった光柱は建物や障害物を一切傷付けず、対象とした侵入者のみにフォトンによるダメージエミュレートの結果を強制的に付与……傷を付けず相応の痛みだけを与えていくのだ。

 

 至る所から苦悶や恐怖の声が断続的に響き、照射を終えた後には……この場に侵入してきたであろう諸外国の工作員が全員倒れ伏していた。

 

「途中からいきなり飛び出したと思ったら……ローリング◯スターライフルかよ」

 

 ……伊丹さんがボソッと何か言ったけど、僕は聞いてない振りをした。

 

 

 増援が来るのを警戒し、僕らは伊丹さんの独断に乗る形で宿を脱出する……途中、襲撃者の一味だったであろう外国人が乗っていたミニバンタイプの車輌を拝借。一度、遠巻きに迂回して銀座を目指すルートを選択し、高速道路を利用して移動する事になった。

 

 途中、サービスエリアでテュカ達がドリンクを買って来たのだが……

 

「……何でお汁粉……?」

 

「美味しそうなものを選んできたわ♪」

 

 本人に悪気は皆無なのだが……そこはかとなく意地悪なチョイスだった。

 




帰還にはまだ至っていません……またしてもお預けw

アークスの実在は「アニメやゲームの世界が現実になった」と言わしめる決定的な証拠であり、長年空想科学の産物だとされてきた「多次元世界論」の実証でもあります。
その上、かの有名なスター○ォーズ並に高度な科学を保有し、かつ多くの異文明と交流している実績まで持っているという事もあって、世界各国が国交を結びたがっています。
しかし、例の襲撃と次話の件によって日本以外の心象は恐らく劣悪になると思われ……

……ご愁傷さま。(´-∀-`;)


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第20話 再び異世界(アルヌス)へ……

長らくお待たせ致しました、久しぶりの最新話。

ほぼ原作沿いの傾向ですが、若干変わる要素もあるため「原作(微)改変」かな……



 旅館襲撃を脱した僕らは、伊丹さんの提案でそのまま旅館を脱出……

 

 とある国の工作員が撤退用に用意していた箱形車輌を拝借し、主要都市を結ぶ車両用高速連絡路を利用して大きく迂回しながら……アルヌスへと帰還すべく銀座を目指した。

 

 道中、ピニャ殿下がこの異常事態に説明を求め、伊丹さんは返答に困った……が、殿下は状況証拠と推測でほぼ当たりを引き当て、全員を驚かせる……

 

 その後、休憩中に伊丹さんから“情報工作”が指示され、僕と梨沙さんでネット上に大量の欺瞞情報を含めた予定を書き込む……欺瞞情報の大半は、敵性該当国の工作員が目を皿の様にして見張っているであろう主要サイト等へ。逆に一般市民の多いSNSやアングラ系のスレ投稿サイトには「秋葉原事件の慰問」と「異世界への帰還」という真実を書き込み……“お友達”(?)の協力を得てアルヌスへ帰る算段だ。

 

(諸外国の連中は僕らの身柄を何としても抑えたい筈だ……確かに、伊丹さんの策があれば、奴らは人目を気にして動き辛くなるだろう。……だが、何か忘れているような)

 

──────────

 

 その翌日。計画通りに高速道路から早めに降り、一般道から銀座方面を目指す……筈だったのだが……

 

「……全然動きませんね」

 

「あはは……予想以上に釣れちゃったみたいね……」

 

「どうしますか、隊長?」

 

「人目を警戒している奴等の動きを抑えるのは、確かに大成功ですけど……これじゃ僕達の方も迂闊に動けないですよ?」

 

「かといって、迂闊には降りれないぞ? テュカやレレイ、トリニティ達ならまだしも、殿下達は敵国の人間だ……」

 

 工作員よりも一般人……銀座事変の関係者からの襲撃を警戒し、伊丹さんは徒歩移動を渋る……資料の情報でしか知らないが、それでも、ゲート出現当時に発生した「銀座事変」は“凄惨”という言葉では片付けられないものだとあった。感覚的には僕ら“オラクル船団”の人間とは少し違うのだろうが、書面化されていたモノだけでも惨たらしい事が方々で引き起こされ、鎮圧までに要した時間で命を奪われた者や、消えることの無い精神的外傷(トラウマ)を植え付けられた者……文化レベルから推察して、もしかしたら当時に連れ去られた者も居るかもしれない。

 

 被害者の家族や、残された遺族……彼らが復讐しに来る可能性は捨てきれない。

 伊丹さんの懸念は尤もだった……が、それを知ってか知らずか。

 

「……大丈夫よぉ?」

 

 一言そう言ってロゥリィは車のドアを開き、おもむろに車道の側に立っていた男に声を掛ける……

 

「そこの貴方、銀座はどっち?」

 

 

 結論から言おう……徒歩移動は功を奏した。

 

「ロゥリィ様ぁぁぁ!!」

 

「レレイちゃ~ん!!」

 

「エルフ最高~♪」

 

「噂のアークス、マジモンだ……!」

 

 ロゥリィの機転によって銀座までの道程は、民間人で埋め尽くされつつも我々の妨害を寄せ付けない完璧な防御壁の役割を果たしてくれたのである。

 

「……アレ、菜々美? 何やってんの、こんな所で……」

 

「お仕事! TVの取材ッ!!」

 

 さすがにこの結果はシャオでも予測できなかっただろう……しかも報道関係者の中に栗林さんの妹が居た為、彼女をダシに栗林さんが機転を効かせて諸外国に対する牽制を言葉として世界にばら蒔いた。

 

(……他国のトップは恐らくこの国(日本)に対して、何らかの圧力を掛けていた可能性は高い。彼女の“あの言葉”は、連中にとっての“疑心暗鬼”の材料と捉えられるだろう……何と言うか、この部隊の人員は隠れたヤバい才能の持ち主が多くないか?)

 

(……願わくば、二度とこの様な事が起きぬように……)

 

 一般人によるほぼ完璧な護衛の下、僕らは急遽予定に組み込んだ“被害者慰霊碑への献花”を済ませ……無事にアルヌスへの帰路に付く事ができたのである。

 

 ……その後、オラクル側との定期情報交換で、日本には複数の国からの政治的圧力や、内部汚職の証拠を利用した外交取引を引き出されていたものの、現首相の退陣と、栗林さん姉妹が行った先のぶっ込み報道の件により“事実上無駄な手を打った”という事にさせられていた事が判明した。

 

 マジかよ……

 

 

 地球訪問から数日後……アルヌスへと帰還した僕らは、あれから日常と化した毎日へと戻っていた。

 

 たった一人を除いて……

 

「………………もぅ、何処に行っちゃったのかしら。お父さんは……」

 

──────────

 

《……こちら側の報告は以上ですね》

 

「了解、何か進展があったらいつもの方法で連絡よろしく。」

 

《承りました。……ところで、貴方の定期メンテナンスはどうしますか? まだ完全な帰還方法は確立していませんが、そのゲーム(PSO2)を介すれば一時期に戻れますし、本来予定されていた期日も近いですから、近い内に戻って受けられては?》

 

 シエラから、キャスト特有の定期メンテナンスの件を問い質された……元来、キャストとは一種の人造人間。人間でも健康診断による病気の早期発見や治療を目的に定期検査を受ける。もちろん機械も期間は違うが同じ事が言えるため、当然その中間と言えるキャストにも定期検査はあるのだ。

 

「………………そうか、そうだね」

 

《……その顔、完全に忘れてましたね?》

 

 努めて冷静な表情で返したつもりが、バレバレだった……シエラも少しは成長したらしい。表情の僅かな差異で嘘を見抜くとは、なかなかの観察眼を得たようだ。

 

《分かりました……検査日の日程はある程度此方で調整しておきますから、後でそちらの行動予定を連絡して下さい。》

 

「了解だ」

 

《それでは、通信終わります……》

 

 艦橋からの通信が切れ、此方も起動していたゲーム(PSO2-NGS)を終了させる……通信システムのためとはいえ、このゲームを起動しておけば問題なく通信できるのは何故なのか。

 ログインによってオラクルへと帰還する方法は、シャオを経由してアッシュからの情報提供により確実であるとされている……しかし、どれだけの時間戻ったままで居られるのかは未知数だし、ゲームだから運営の事情もある。ゲームシステム側の定期メンテナンスもあるし、不具合による緊急措置で強制転送……なんて事も考えておく必要があるだろう。

 

 事実、キャストの定期メンテナンスは短くても半日を要するため、突発的に起きるゲーム側の不測の事態には対応できない可能性が高い。予めその可能性を考慮した調整が必要だろうね。

 

 

 その後、皇女殿下は日本との講和を結ぶ為に帝都へと戻る事になり、僕は帝都側の情報収集と皇女殿下の護衛を兼ねて、もう一人のサポートパートナーを呼び寄せる事にした。

 

「ご無沙汰しております、主さま……」

 

『久しぶりだねイリス、早速だけど、長期の重要案件を任せたい……頼めるかな?』

 

「何なりとお申し付け下さいませ」

 

 僕の擁するサポートパートナーは、何もリィス・ステイヤーだけではない……むしろ彼女「イリスティーラ・クラウド」の方が技量も経験も遥かに上なのだ。リィスは彼女からサポートの極意や、暗躍の術を教え込まれているし、サポートパートナー歴も最長……もう一人、即戦力となるパートナーは居るのだが、まだまだ経験が浅いからね。

 

「イリスティーラ・クラウド……誠心誠意、貴方様のご期待にお応え致します」




少し短いですが、今回はここで区切ります。

次回から炎龍の一件……
ダークエルフの彼女がそろそろ来るかな?


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第21話 褐色肌(ダークエルフ)異邦人(アークス)

長らくお待たせ致しました。
久しぶりの進捗状況……ゲームの方が春キャンペーンで時間が喰われるw


 地球での一件から数日後、テュカの不穏な行動が表面化しているとの報が黒川さんから齎されたのだが、伊丹さんは「最後まで責任持てないなら、これ以上関わるな」と黒川さんに釘を刺していた。

 

 確かに、彼女は捲き込まれた形で此処へ連れて来られた。その為同族はおろか身寄りもなく、精神的に不安定な今の彼女は心に危うい爆弾を抱えている……表面上は何とも無い様に見えるが、黒川さんの情報を元にリィスが調査したところ、夕方に市街を歩き回り、亡くなった筈の父親を探している姿が何度も目撃されているのだという。

 

『……あれはもう、重症化していると見て間違いないかと』

 

 リィスの意見に、僕も同意した。身内を含む一族全員を一度に失った事によるショックが精神を蝕み、徐々に悪化の一途を辿っている……下手をすれば、トラウマによる精神崩壊ないしは何らかの悪影響を及ぼす可能性が非常に高い。

 精神科医による早急な診察と治療行為を受けるのが望ましいが、まだアルヌスには精神科まで対応する余裕が無いと狭間司令からも説明を受けた。

 

(イリスなら、この件にも対応出来るけど……重要性としては殿下の方が遥かに怪しいからな。今更呼び戻しは出来ない……さて、どうする?)

 

 さすがに医療分野は門外漢だし、此方の定石が通用するかも怪しい……何気にオラクル側の治療法は地球と比べると(伊丹さん曰く)やや強引な精神論みたいだし、下手に手を出せば悪化を助長しかねない。これはさすがにお手上げかな……

 

――――――――――

 

 それからさらに数日後、レレイにテクニックの手ほどきをしていると、自衛隊員が現れ、レレイに通訳を依頼してきた。

 

 なんでも、最近市街で起きていたカツアゲ犯(?)を逮捕したのだが、現地語で取り留めのない事しか話さず、事情聴取に難儀しているのだという。

 何か引っ掛かるものを感じた僕はレレイに同行し、噂のカツアゲ犯(?)と対面することにした。

 勿論、混乱を防ぐために生身モード……市街や現地を回る際に基本となった男エルフ(男性ニューマン)の姿をして。

 

 

「男のエルフ……だと……?!」

 

「ヤオ・ハー・デュッシ。僕はトリニティ・フェザーバレット……悪いがエルフじゃない」

 

 そう言って本来がキャスト姿を見せたが、今度は“魔法の鎧……いや、まさか新種の魔物か?!”とますます誤解してくるのでとりあえず黙らせた。

 

「まずは君の話を聞かせてくれ……何故、この様な事を?」

 

 それから語られた事を要約すると、彼女は遠方にある「シュワルツの森」に住まうダークエルフの一族で、負傷した炎龍に度重なる襲撃を受けて全滅の危機に貧していた……が、近隣で「炎龍を撃退した」と噂になっているという「緑の人」に一縷の望みを賭け、彼らの救援を得る為にこのアルヌスを訪れたらしい。

 

(緑の人……自衛隊の隊服を特徴として捉えた訳か。納得の呼び名だね)

 

 ……しかし、駐屯地の自衛隊員は現地語に疎い者が多数。彼女とマトモに話せる相手が居なかったらしく、周囲の男達が助け舟を出して来たが、全員彼女の身体目的で近付いた小悪党だったので返り討ちに。

 

 それが結果的にカツアゲとして通報された事で、自衛隊も捜索を開始……

 

 発見時の彼女は、商店内で自衛隊員とやり取りしていたバイトの獣人に対し、何やら無茶なお願いをしていたらしい……やはり、言語問題は深刻だな。後で解決法を考えないと……

 

「……炎龍……」

 

『成る程ね。君の望みは、狭間司令への取り次ぎ……かい?』

 

「貴殿等は彼等に顔が効くと見た。出来れば口添えも頼みたい……我が部族の命運が掛かっているのだ!」

 

 

 僕とレレイは彼女の願いを叶えるべく仲介を快諾した……がその結果は、さすがに無茶過ぎるとの事で不可能だった。

 理由は単純に領土問題……シュワルツの森は帝国領ではなく、隣国の領土内であり、無断で戦力を越境させる事は最悪の外交問題、ひいては宣戦布告と見做される。

 

 日本は現在進行系で、帝国と事を構えている最中……更なる問題を抱える事は、自衛隊としても絶対に避けたいだろう。

 

『ヤオにとって、自衛隊は最後の希望……だが、彼等にも守るべきルールがある。これを覆すのは不可能だよ』

 

「……まだ、夢を見ているのだろうか」

 

 レレイはヤオにハーブティーを飲ませる、呆然とする彼女……最後の希望が絶たれた彼女、まだ現実を受け止めきれない様だ。

 

「残念だけど、これは全て現実……」

 

「嘘だと言ってくれ!! このままでは……私の一族が……」

 

 激高しながらも涙を流し、救いを懇願するヤオ……向こうの席では隊員達が何やら計画を練っている様だが、如何せん彼らは無茶を通せる立場に無い。

 

 ……とはいえ、この件の発端……元を正せば僕があの時、炎龍(アルヌスオオトカゲ)を確実に仕留めなかった事に起因するだろう。さすがにこのままでは寝覚めも悪い。

 

『……自衛隊には縛りがある。だから無理だと断るしかなかった……だけど僕ならそんな縛りもないし、逆に炎龍を討つ理由もある。

 ……その要請、僕が受けるというのはどうかな?』

 

 彼女はその言葉に、しばらく理解が及ばなかったのかポカンとしていた……その意味をようやく理解し

 

「……お前は、一体何者なのだ?」

 

 そう問うてきた……勿論、僕は飾らない一言でこう答える。

 

「僕は“アークス”……ただのおせっかい焼きだよ」

 

 この後、僕は即行動に移す予定であったが、狭間司令から「帝国側の情報入手と、皇女殿下等の護衛に協力して貰いたい」と要請が入る……

 

 ヤオの心情から炎龍問題の解決は急ぎたかったが、殿下の護衛に付けたイリスからも“私とリィスだけでは手が足りない。3人目も呼んで、直接指揮を執って欲しい”と請われ、自衛隊の要請も併せて承諾……その間トリニティはヤオに、対炎龍戦を想定して“ある事”をさせる事にした。




次回は、キナ臭い帝国でのお話。
この流れで行くと、捕虜のお話もありますよね……

ちなみに殿下の護衛としてイリスを付ける前までは、リィスが帝国で諜報活動をしてました。
なお、リィス(キャスト)とイリス(デューマン)は師弟関係というのもあって得意分野はほぼ一緒ですが、イリスは表立っての要人警護、リィスは暗部での諜報活動を最も得意としています。

そのイリスから要請を受け、3人目も召喚する事にしたアークス君。
果たして、3人目のサポートパートナーはどんな子なのか……?
そして、ヤオに対して行われる“ある事”とは……?

――――――――――


※ サポパは紹介的なヤツしてなかったし、この際だからまとめてどうぞ。

TIPS:リィス・ステイヤー
種族:キャスト 性別:女性

トリニティのサポートパートナー、メインクラスはファントム。
主にアサルトライフルを重用するが、カタナやロッドも不得手ではなく、場合によって使い分ける器用な娘で、普段はモダン調の和風メイド服を着ているが、パンツタイプやタイトスカートのスーツも着こなすお洒落さん。
冷静沈着で冗談はあまり好まず、私情を仕事に持ち込まない堅物系キャラだが、思考は柔軟で温情知らずではないデキる娘……しかし、オフには友人宅で“R-18(性的)”な薄い本の製作をガチで手伝うなど、一部の思考が何処かオカシイ。
主に隠密行動を得意とし、情報部所属のトリニティを裏方の諜報活動にてサポートしている。


TIPS:イリスティーラ・クラウン
種族:デューマン 性別:女性

トリニティのサポートパートナーでは最古参。メインクラスは「エトワール」で、ウォンドを愛用。ロングスカートが特徴のクラシックメイド服と天使の光輪(全て自作)を常に着用している。
リィスと同じく、冷静沈着で言葉遣いも非常に整っているが、「ご主人様の伴侶となる方は最初から決まっているのです」と称して憚らず、悪い虫が付く事を一切良しとしない。
その為、結婚適齢期の女性がトリニティに近付いただけで、途端に過激な言動で実力行使も厭わない()()()()へと変貌するという悪癖がある。

感想・評価よろしくお願いします。
|д゚)チラッ


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第22話 ヤオの修行と帝国の内情

先に言っておきます。
ウチは獣っ娘大好きです!!

……あとはもう分かるよね?



 自衛隊はピニャ殿下の内部工作に乗じて帝国の内情を利用し、講和への道を探る予定だと聞いた。

 僕個人としても、アークスとしても……争う事無く済むならそれが一番だ。

 

 ……だが事前に内情を探っていたリィスからの情報を考慮すると、一筋縄には行かないだろう。

 

 それはさておき、ヤオから炎龍討伐の依頼を受けたは良いが、事に当たるには先に帝国の一件を片付ける必要がある。

 それまでヤオには、自身の実力を引き出す為に「修行」して貰う事にした。

 

 ……だが、その中身は誰もが思う様な順当なものではない。

 

 これから彼女に行って貰うのは“アークス流”の特別訓練……僕、またはサポートパートナーの誰かに相手をして貰い、格上の相手でも怯まず、逆転勝利を狙い、そして生還する……そうなれる為に、真の強さを身に付けて貰おう。

 

 

「はじめまして、ヤオ・ハー・デュッシ……ボクはランガ。マスター・トリニティから聞いてるよね?」

 

「……どんな強者かと思えば、まさか子供とは……!」

 

 ヤオの修行相手、その初日を務めるのは急遽呼び寄せた3人目のサポートパートナー「ランガ・ルゥ」。種族的にはデューマンなのだが、オラクルの後ろめたい過去……「虚空機関(ヴォイド)」が生み出した人造生命なので、本来の耳と角の代わりにケモミミがある獣っ娘……個人的に“ビースト種”と呼びたい子だ。

 性格は表裏のない、やや単純で食い意地の張った野生児……しかし、相手の思惑や善悪を直感で見抜き、諜報では計り知れない側面に気付かせてくれる娘で、難しい最終判断にも一役買ってくれる。

 

 この娘は直接戦闘……主に接近戦に強く、短時間とはいえ六芒均衡にも追随できる程の高い戦闘センスを持ち、こと実戦に於いては僕やアッシュでも手球に取られる場合がある。

 この娘との模擬戦に耐え切れるなら、炎龍が相手でも怯む事なく戦い抜けるだろう。

 

『今日は顔合わせも兼ねて、ランガとの模擬戦をやってもらう。勿論初日だから、ランガにはヤオに初撃を譲るのと、強打・遠距離攻撃・テクニックの禁止。カウンターは手加減または寸止めする事。いいね?』

 

「オネーサンはハジメテだしね、りょーかい」

 

「随分と上から目線……この身の実力を侮るか?!」

 

 当然の如く、ヤオの顔が険しくなる……この辺りは想定内だ。

 

 彼女は確かに“この世界の存在”という枠の中では強い方だろう……だが、依頼の相手は人外の極致。多くの創作物で最強種と名高いドラゴンなのだ。

 常識的にみて、現地人レベルでは太刀打ちすら出来ず地形も纏めて消し炭にされる……だからヤオには完全、とは行かずとも“アークス”として戦えるレベルを目指して貰う。

 

 僕の基準ではあるが、あの炎龍(アルヌスオオトカゲ)の強さは、惑星アムドゥスキアに生息する大型の竜族よりは多少強く、シミュレーションVRで再現された異世界オメガの飛竜「エリュトロンドラゴン(クエントオオトカゲ)」よりは弱い……

 そしてランガは単独でもダークファルス【敗者】*1といい勝負が出来るので、彼女の戦いについて来れるようになれば、ドラゴン如きに遅れは取らなくなる筈だ。

 

「舐められたものだな……容赦はせんぞ! ……ッラァ!!」

 

「ほいっ……んじゃ、かる~く?」

 

「ッ……?! ガふっ……!!」

 

 ランガは、ナイフを持って低い体勢から突撃してきたヤオの一撃を、何でもない様に片手で受け流し、更に虚空から自分よりも大きな得物「D-A.I.S.セイバー」を取り出し、空いているもう片方の腕で振るう。その一連の光景にヤオは驚愕……防御すらも忘れて棒立ちになり、無防備なままランガの一撃を受けて近くの木の幹まで飛んで行ってしまった。

 

「って……あり? よっわ……」

 

 そう言ってやらないでくれ……アークスの力はこの世界の人間相手だと、かなり手加減しないとオーバースペックが過ぎる。

 ランガは元々、非常識レベルの馬鹿力持ちなので、先ほど行った弱攻撃は十分に手加減したとはいえ、その威力は恐らく件の炎龍の尾の一撃に等しいだろう。

 戦闘において、見た目で相手を判断しない事は重要ではある……が、ランガの行動はヤオにとって“あまりにも想定外”であった様だ。

 

 まぁ……この世界の常識的に“子供くらいの人間が長大なバスターソード自身の身長よりも長い刀身の、両手持ちの重量級大剣を片手で振ってくる”など、誰が予測できるだろうか。

 

――――――――――

 

 小一時間ほどで気絶から復帰したヤオ……目を覚ました途端にランガを見る目が恐怖に彩られた。

 

『……手加減をしろと言った手前、だいぶ加減していたのは分かったが……それでもやり過ぎだな今回は。……ランガ』

 

「んぅ……ご、ゴメンナサイ」

 

「……え? あぁ……その……」

 

『僕からも謝らせてもらうよ……この事態は此方の不手際だ。実力差は理解していたが、常識面の配慮が十分では無かった』

 

「……は? ちょっと待て……コレがお前達の常識なのか?!」

 

 補助テクニック(身体強化魔法)は使ってないし、ランガも力の制御は十分に出来ていた……それであの結果を招いたのだから、此方の想定が甘かったという事になる。

 

「なん……だと……」

 

 無言となる僕らに、アレで最低限の威力だった……暗にそういう事だと理解してしまったのか、悪魔と契約して後悔したみたいな顔をするヤオ……

 非常に申し訳ないのだが、今回の件で彼女には「このレベルを目指して貰う」のだ……心苦しいのは山々だが、背に腹は代えられない。

 

「いやコッチの方がだいぶ命の危機ではないのか!?」

 

 残念だけど、僕ら(こっち)は殺す気全く無いけど炎龍(あっち)は見敵必殺……どう見ても、訓練で済むコチラが安全である。

 

 ……無慈悲だけど、コレが現実だ。

 

「……ッ……あぁ……」

 

 早くも涙目となったヤオ。予定時間はまだ1/3しか経っておらず、地獄の時間はまだ始まったばかり……

 

 それからしばらくの間、ヤオはランガの一撃で吹き飛ばされては気絶からの復帰を繰り返し……修行初日が終わる頃には魂が抜け掛けている様な顔をしていたという。南無三……

 

――――――――――

 

 数日後……僕らはアルヌスから帝都へと移動し、ピニャ殿下の講和工作に協力する事になった。

 

 対外的に僕らは“炎龍騒動の生き残り”となり、僕とリィスは殿下の側仕えとして召し抱えられたという体で護衛に付きながら、リィスは裏で情報収集、イリスには帝都へ潜入している自衛隊(黒川さん達)との繋ぎをして貰い、僕は直接日本国の使者として来ている菅原さん達の護衛(帝国側の内通役も兼ねる)となった。

 なおイリスには、アルヌスに残っているランガを経由して、アルヌス側の自衛隊への連絡役も兼ねて貰っている。

 勿論、自衛隊にも自前の連絡ルートがあるのだが、帝都とアルヌスでは如何せん距離がある為か、僅かながらタイムラグがあるし、有事の際の不備を極力避ける為に有線通信網を敷設する必要があった……その点、僕らアークスが使う「フォトン通信システム」は時空間の制約が無いから基本無線通信でタイムラグ無し、超長距離の通信も可能な上よほどでなければ映像込みの高品質、しかもこの世界の建物や地形程度ならたとえどれだけ障害物があったとしてもスルーできる。

 

 これからも自衛隊にはどれだけ世話になるかも分からないし、迅速な情報伝達は部隊を支える重要なものだ。

 ……という事で、簡易的とはいえ設備の提供をした……無論、ウルク司令やシャオにも許可は取ってあるよ。

 

 現状は迅速さと正確さを求める為、連絡役を兼務してる状態だけど……隊員達が機材に慣れたら、交代制に順次変更予定である。

 

 

 それから数日後……菅原さんと殿下の共催。という体で、帝国の元老院達を懐柔する為「宴遊会」が開催された。

 

 これは日本から提案された一種の内部工作で、帝国元老院の重鎮達と秘密裏に接触し、先の「銀座事変」で日本側が拘束している帝国の捕虜(主に要人や高官の子息など)の返還を条件に譲歩を引き出す目的がある……

 その他にも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()目的がある。

 

 戦力差という点で見れば、だいぶ脅し的な要素が大きい……しかし、帝国は圧倒的に技術レベルの劣る国ではあるものの、話を聞かない蛮族とは違うし、第三皇女ピニャ・コ・ラーダは(成り行きやら不可抗力ではあるものの)ほぼ既に懐柔済み……既に帝国の中枢に影響を及ぼせる存在と接触し、なおかつ殿下自身が講和に意欲的なのだから、無用な流血を避けられるとあれば、日本側からしても正に“渡りに船”となっていた。

 

(……さて、悪い事が起きなければ良いんだけどね……)

 

 園遊会会場の警備を兼ね、菅原さんの護衛役を務める僕は、菅原さんがテュエリ家ご令嬢と会話するのを聞き流しながら空を見上げるのだった。

 

――――――――――

 

 あれからピニャ殿下の兄……長兄ゾルザル殿下が乱入してきたが、自衛隊との連携による迅速な行動で元老院議員達は退避。園遊会自体はそのまま続けられ、ピニャ殿下の機転と用意された食事のお陰で、ゾルザル殿下には真意を悟られる事なく済んだ……

 

 しかし、殿下曰く“和気藹々とした事には無関心”な帝国の第一皇子が、対外的には“特に何の変哲もない園遊会”の様子を見に来る……誰かに唆された? だとすれば、この園遊会の真意も、皇帝に露見していると思って良いだろう。

 

 皇帝の真意は読めないが、政治の中枢である元老院を切り崩す敵側の策を黙って見ている筈は……いや、もしかしたら帝国も一枚岩ではないのか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜……帝都は2つの意味で“激震”に見舞われた。

*1
6枚羽根を持つ鳥人の様な戦闘フォームの方で、難易度ウルトラハードのフリーフィールドに出現する奴。




流れ的には原作と大きく変わりは無いですが、イリスがアルヌスに来た時点でリィスには帝国に潜入して貰っているので、この後の流れが少しずつ変わってきます。

また、アークスのフォトン通信網を自衛隊にも提供しているので、自衛隊は大規模な通信設備の用意をスキップ出来ました……もちろんオラクル側とは別回線であり、帝都とアルヌスに展開した自衛隊の連携にフォトン通信を利用した形です。

次回……帝都、激震。



感想・評価よろしくお願い致します。


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第23話 帝都、激震。

お待たせ致しました。
ゲートのアークスくん最新話更新です。

前回、しれっと流してましたが……
菅原さんとテュエリ家のご令嬢の会話シーン、例の誑し込み現場に立ち会った癖にノータッチだったアークスくん。

この辺りは彼が色恋沙汰に無関心故の悲劇w



 時刻は正確に記憶していないが、あれは夜半過ぎに差し掛かろうかという頃だ……

 イリスからの緊急回線で、僕はスリープモードから強制的に復帰させられた。

 

《自衛隊員から緊急事態発生の連絡あり! まもなく地震発生の兆候を察知! 推定規模は不明、すぐに屋外へ退避をとの事です!!》

 

 惑星全体の地理情報の把握はさすがに出来ていない……当然ながら地形情報の把握は本来、宇宙から降下する前に取得を済ませ、進行ルートやその他計画を完全把握してから降り立つのがアークスの定番だ。

 だが今回は特殊な事情が重なり、最初から地上の一区域から探索をスタートした為、大陸の形状や海岸線等の位置情報はほとんど無い。

 

 あるのは近隣の山岳地帯までの距離や、通過した土地等の大雑把な地図上の位置関係……そして帝都やアルヌス等、都市部近辺の地形図くらい。

 

『屋内にいる者は今すぐ外へ出ろ!! 地震……地揺れが来るぞ!?』

 

 伊丹との通信を繋ぎつつ、トリニティは帝国の騎士を演じてピニャの部屋へと走りながら叫ぶ。

 この屋敷には殿下の近衛と騎士団関係者しか居ない為、そう人数は多くない。だがこの世界の建築技術では、恐らく震度5を超えるレベルの地震に耐え得る保証はない。

 

 6を超えるなら、倒壊してもおかしくは無いだろう……

 

『急げ! すぐに殿下を庭園へお連れしろ! 建物の下敷きにされたくなくば足を止めるな!!』

 

 その発声から約数十秒後。この世界で初の……推定マグニチュード8.5クラスの巨大地震が発生した。

 

――――――――――

 

「……ッ……?!」

「で、殿下ぁぁぁ……」

 

 現地人であるピニャや他の兵達は、地震の兆候を感じ不安に駆られている……それから間を置かず大地は徐々に揺れ始め、彼女達は生まれて始めて感じる奇妙な感覚と、有り得ない事が起きているという常識崩壊を無理矢理に理解させられ、泣き叫ぶ者も居た。

 

「……結構揺れてるなぁ〜」

 

『そうですね……体感で震度3〜4程度、でしょうか? 震源地は近くない様ですが』

 

「……キャストって震度計まで付いてんの?」

 

『センサー類で得ているデータを、提供して頂いた情報に照らし合わせて概算を出しているだけですから……正確性は本家に及びませんけどね』

 

 そんな……不気味な音を立てて大地が揺れ動く最中を平然と歩きながら、まるで他愛無い会話をするように揺れの強さの話をしている伊丹とトリニティ……そんな平然としている姿を見て、泣き叫びそうなのを必死に堪えていたピニャは、理不尽さも手伝って2人に言葉で噛み付いた。

 

「お、お前達は……何故そんな平気な顔をしておるのだ?!」

 

「え? だってこの程度なら日本じゃしょっちゅうだし……」

 

『僕らは基本的に、コレ以上で更に危ない目に遭う事も少なくないですからね……』

 

 その「え、こんなの日常茶飯事ですが何か?」という返しに、地震よりも有り得ない物を見た様に沈黙してしまうピニャ……

 それは事実であり、慣れてしまえばそんなもの扱いになってしまう……悪い傾向ではあるが、それはひとつの真理でもあった。

 

――――――――――

 

 地震が収まった後、ピニャは宮殿に赴く為トリニティや伊丹らを連れて夜の帝都を進む……道中には天変地異を肌で感じ、逃げられないという錯覚も手伝ってその場で泣き叫び許しを請う者や、恐怖に身を強張らせ、ガチガチと歯を震わせながら蹲っている者……運悪く落下物に当たって気を失っている者も見られた。

 

(地震を知らない……いや、この世界ではこれまで地震が無かったのか。だとしたら妙だ……これだけ地球に酷似した環境なのに。いや、まだ沿岸や海洋のデータは不足しているから早計過ぎるか……)

 

 ふと頭に浮かんだ事を頭の隅に置きつつも、トリニティは伊丹達を追いながら歩みを進めた。

 

 

 玉座の間に着いた僕達は殿下から、地震に詳しい専門家として皇帝に紹介された。

 

(彼がモルト皇帝……なるほど、この威圧感……歴戦の将兵を束ねる存在と言うなら噂に違わないな)

 

「……父上ェッ!!」

 

 だが、父と娘の会話を掻き消す騒音の如き大声を発し、皇太子ゾルザルが乱入してきた。ゾルザルは、地震が収まったがまた揺れる事を口にし「今のうちに」と避難勧告に来たのだった。

 

(おかしい……この地震は現地人にとって初めての事だ。何故、アイツが地震の……揺り戻しが来る可能性まで知っている?)

 

 僕は伊丹さんからレクチャーを受けたし、地球の情報はインターネットを利用してあらかた検索済みだ。だが彼にはそんな接点など持たないのに地震の情報を持っていた。

 

 ……ならば地震の情報を持つ者が存在している……?

 直近の出来事で接点のある現地人以外の存在……

 

 ……まさか……?!

 

「……おい、連れてこい!」

 

 ゾルザルの言動からトリニティが推測した、1つの答え……それが正解だと言わんばかりに、彼等の前へ、ボロボロの麻布服1枚しか着せられていない黒髪の少女が引き摺り出される。

 

「……ゃ……ッ……?! たす……け……て……っ」

 

「「「……?!」」」

 

 か細いが、確かに少女が喋ったのは間違いなく“日本語”。

 そしてトリニティのセンサーが取得した彼女の外見的特徴はデータとなり、“あるリスト”と照合される。その結果は……

 

 ……該当者“1名”。

 

 

『伊丹さん……彼女は、銀座事変での失踪者です……外見特徴92%一致、服装と(やつ)れ具合以外は間違いなく……っ……』

 

「なっ……?!」

 

 自身の言葉の筈なのに、やたらと遠く聞こえてくる……湧き上がる衝動が、激しい感情の波が止まらない。

 

 ドス黒いその衝動が、僕の思考を塗り潰していく……

 

 ……彼女は、何故あんな姿なのか……あれでは彼女を対等にみていない……もはや奴隷も同然の扱いだ。

 

「……ッ……!」

 

 何故、彼女はあのような扱いを……やはり、敵対する国の人間だからか? だから情など欠片も無い……

 

 敵に情けなど不要……それは1つの真理といえど、さすがに僕の許容にも限界がある。

 

 彼ら日本人は、たとえ相手が敵対国の人間であろうと一定の配慮を行っていたし……異邦人である僕さえも、暖かく歓待してくれた。

 

 そんな彼らを害し、奴隷の如く無碍に扱う……そんな事が許されて良いのか?

 

 それはヒトとして倫理に反する行為だ。決して許される事ではない……

 

 

 

 

 

 だが奴らはそれを平然と行っている……何故だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現状、帝国は日本と戦争状態にある……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奴等は、日本を敵対国として……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、そうだった……奴等は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……敵、だったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 伊丹がトリニティの報告……いや、呟きを耳にしてから僅か数秒後……

 

「…………!」

 

 自分達が銃を構える間もない時間で、ゾルザル達に瞬足で接近していたトリニティ……彼はこの一瞬で、ボロボロの少女の手足に繋がれた枷と鎖を瞬く間に破壊し、同時に彼女を引き摺っていた男の腕を、巨大な光刃で切り飛ばしていた。

 

「……ッぁ……?!」

 

 腕を斬られた男はそのまま更に頭から一刀両断され、声を上げる間もなく命を散らす……これまで頑として物理的に影響する攻撃をせず、フォトンによって大ダメージを与えても命までは取らなかった彼が……始めて人を殺めたのだ。

 

 頬に返り血が付着しているトリニティ……その顔に一切の感情はなく、冷めきったその視線を帝国兵に向けている。帝国兵は一瞬たじろぐが、状況を理解し武器を構えた。

 

「……富田、栗林。各自の判断で撃って良し。2人を回収して撤収する……菅原さんは下がってて下さい」

 

 伊丹も状況を理解し、すぐさま部下の2人へと指示……捕虜となり、辱めを受けたであろう日本人の少女とトリニティを連れてこの場を去る事を決める。

 

 そんな中トリニティの身体からは、視覚的に見える殺意……荒れ狂う風の様に巻き起こるフォトンの奔流が、敵と定めた帝国兵やゾルザルへと“赤黒く輝きながら”打ち付けられ始めた。

 

「トリニティ!!」

 

 だがそこに伊丹の一声が響き、栗林がトリニティの背後を取り襲おうとしていた兵士の頭を狙い撃って倒す。

 

 帝国兵が倒れるのを確認する間もなく栗林はトリニティ達へと急接近し、足元に倒れた格好の少女に「貴女、日本人ね? 助けてあげる」と声を掛けながら、緊急用として持って来ていた長布を少女の肩へと掛けた後、威嚇を止めない狼の如く睨みを効かせていたトリニティの頭を殴りながら罵声を浴びせるのだった。

 

「このお馬鹿ッ! 一人で突っ込むな!」

 

――――――――――

 

 彼女のこの一言が、闇に囚われたトリニティの心を引き戻した……

 

 殺意の波動……ドス黒く赤い闇のフォトンは急速に搔き消え、トリニティは視界に収まる惨劇の光景を認識し、驚愕する。

 

(……人を……殺めたのか……この僕が……)

 

 しかし、感傷に浸っている場合ではない……センサー類から来るアラートに従い、背後をカバーする栗林の挙動に合わせながらトリニティは瞬時に大剣を双機銃に持ち替え、帝国兵の手足の関節を撃ち貫きに掛かる。

 もちろん武器の出力は既に非殺傷設定へ戻してあるらしく、撃ち抜かれた帝国兵は痛みに呻きながらも死んではいない。

 

「うあ"っ?!」

「ギャッ?!」

「ガハァッ!?」

 

 乾いた炸裂音、そして独特の射撃音が複数回……不規則なタイミングで発せられる。

 

 瞬く間に制圧されていく帝国兵。表情一つ変えず、黙々と相手を無力化していく緑衣の女と騎士服の男……

 

 あまりにも理不尽過ぎる光景……もはや蚊帳の外となっていたピニャ殿下や小間使い達は言葉すら発する事もできず、ただ見ているだけしかできなかった……

 

 

 時間にして凡そ数分……たったそれだけの間に、敵対の意志を見せた帝国兵は全て撃ち倒され、残されたのはゾルザル1人。

 伊丹は自国民の保護を念頭に置きながらもゾルザルへ拳銃を突き付け、他にも捕虜が居ないかを問い質す……

 

 しかし当然ながら、己のプライドを優先するゾルザルは口を割らず、反対に伊丹へと啖呵を切る始末……

 

「……栗林……」

 

「はい」

 

 どうあっても口を割らない強情な相手には、その身体に聞くしかない……伊丹は栗林に実力行使の許可を出し、彼女は薄ら笑みを浮かべながら、両手に嵌めていたグローブの具合を確かめ始める。

 

『……もう少し冷静(マトモ)な判断が出来るのなら、痛い目を見ずとも済んだだろうに……』

 

 そう溢しながらも、トリニティは内心の動揺が収まってはいなかった。

 

 怒りに任せた暴力行為……アークスとなった彼が最も忌諱していた短絡的な行動。絶対に行ってはならない、と自ら戒めていた事を……己の手で破ってしまった。

 

 ふと、彼は自身の足跡に目をやる……

 

 そこにはかつてのダークファルス等が動いた時と同様の……黒いフォトンに侵食され、焦げ付いたような足跡が点々と残されていたのだった……




アークス君をはじめ、組織の構成員としてのアークスは本来の任務である「未開拓惑星」や「現地調査」等で、理不尽な目に遭う事も想定済みとして任務にあたります。
ゲーム等では基本的に語られませんが、彼らは宇宙の「開拓民」という側面も持っているので、当然ながらあらゆる危険を承知の上で活動しています。

なお、本作で明記したマグニチュードや震度は、アニメ版の描写を元にした推定情報ですのであしからず。

図らずも闇のフォトン……その深淵に囚われ掛けたトリニティ。
これからの彼の動向も気になる所ですが……今回はここまで!

次回もお楽しみに。


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第24話 不穏と安堵、そして……

そろそろ話がややこしくなってくる……

帝国は日本と敵対関係にある。

しかし帝国第三皇女ピニャは、イタリカの街……そして日本へ赴いて実感してしまった。
日本との軍事力における圧倒的な差、そしてその先に待つであろう確定した未来を……

このまま日本との戦争を続ければ、間違いなく帝国は滅ぶ……
絶望に満ちた未来を回避すべく、ピニャは日本との講和を目指し奔走する。

……しかし、誰もまだ理解していない。
この世界には既に、()()()()()()()()()()の魔手が迫って来ている事を……



 あの晩から一夜明け……

 

 ピニャ殿下の屋敷で再び目覚めた僕は、昨日の事を改めて考えていた。

 

(あの時の感覚……そしてあの痕跡……。少なくともシミュレーションじゃない……間違いなく、ダークファルス系統のフォトン反応が記録されていた。なら、あの時……僕は「深淵なる闇」に影響されていたのか……?)

 

 かつて、アークスは「深淵なる闇」と呼ばれる存在を不倶戴天の敵として戦っていた……

 「深淵なる闇」とは、全宇宙を滅びに向かわせる究極の存在……

 

 その大元は、ヒトの怠惰の果てに生み出された「全知存在(アカシックレコード)」と呼ばれるモノの模倣品だ。

 

 宇宙の全ての事象を演算し尽くし、その全てを余さず記憶している「アカシックレコード」……

 

 その究極的な演算能力を利用するために、ヒトが自らの手でアカシックレコードを模倣しようとし、数え切れぬ失敗を繰り返し、なお諦めず……いつしかその狂った執念が生み出してしまった、極悪の根源……

 

 正しく理解する為には大いに説明不足だが、そこまで語るには世界が違う。

 この世界では「ヒトの悪意で狂った究極存在」という程度で十分だ……

 

 トリニティは今回の「日本人奴隷」騒動で、自身の奥底で無意識のうちに溜め込み封印していた“負の感情”が精神を激しく揺り動かし……それに堪え切れず暴走してしまったのだ。

 

 アークスの力の源である「フォトン」とは、使い手の精神に多大な影響を受けるもの……この症状もアークスシップにある医療施設へ定期的に通う事で治療できるのだが、根治には莫大な時間を要する上、ゲーム(PSO2-NGS)では一時的な帰還しか出来ず、環境や状況によっては途中で接続を切らなければならない事態に発展する事も含め、適切な処置を十分に受けれない可能性が高かった。

 

(あの時……感情の沈静化が追い付いていなかった。それだけ彼女に対する扱いを嫌悪したという事か……)

 

 文化レベルや常識の違いを考慮すれば、仕方ない事ではある。

 郷に入っては郷に従え。と諺にもあるように……

 

 ……だが、感情はそう上手く処理など出来ない。

 

(老練や古参の者ならば、多少なりとも自制が働いたはず……まだまだ青いな、僕も……)

 

──────────

 

 数日後、イタリカ経由でアルヌスに帰還した僕らを待っていたのは……

 

「テュカの様子が変だって……?」

 

「……はい。数日前の地揺れの後から……以前にも、日暮れ時に誰かを探す彼女を見かける事はありましたが、夜には宿舎へ戻っているのを確認しているので」

 

 テュカは昼間こそいつも通りに仕事をこなし、日暮れ時に奇行こそあるものの目立った不調も見られなかった……しかし、最近の彼女の奇行は目に余る状態であり、日暮れ時には発作のように焦燥感に駆られて誰かを探し回り、寝食すら忘れてしまう……

 

『……最悪だ……もしかすると、手遅れの可能性もある』

 

 僕のこの言葉に、さすがの伊丹さんも押し黙ってしまう。

 原因といえばもちろん、件の炎龍騒動なのだろうが……この事態に発展したのは間違いなく自分たちの行動の結果だ。

 

「…………」

 

 僕らも黒川さんも任務で帝都に出向いていた為、アルヌスには彼女を気に掛けてくれる人物が居なかった……と、悪化の要因はすぐに合点が行く。

 

『コレは明らかに、彼女の状態の把握不足です……せめて、ランガに様子を伺う位させておけば……』

 

「それを言うなら、根本の責任は連れて来た俺にある……目の前の事に感けて、テュカの状態を軽く見ていた」

 

 トリニティも伊丹も、自分がもう少し何かしら手を打っていれば……と自分を責めるが、そんな事をしても解決になどならない。

 

「……俺が何とかする」

 

 そう言って立ち上がり、席を後にする伊丹……トリニティと黒川は、そんな彼の背中を見送るしか出来なかった。

 

──────────

 

 その翌日の昼下がり、アルヌスの街中を笑顔で伊丹さんの手を引くテュカを目撃した……と、ランガから報告を受けた。

 

『……で、それがさ……』

 

 武器の手入れをしていた僕に、ランガが耳打ちしてくる。

 その言葉に、僕は思わず素っ頓狂な声を上げるしか無かったのだった……

 

 

(……崩壊しつつある己の精神の保護を他人に求めた結果、伊丹さんを自分の父親と認識した……か。)

 

 アルヌス常駐の医者から告げられた現状……

 

 テュカの精神状態は既に崩壊寸前……その回復と保護を無意識に肉親へと求めるのは正常な推移だが、彼女の肉親は既に他界している。それ故、近しい人物……背格好が似ており、自身の知己の人物を父親と“思い込む”事で、辛うじて精神崩壊を避けたのだと言う。

 

(何とも不思議すぎる光景だが……彼自身はどういう思いなのか……)

 

 伊丹さんには悪いが、シエラに彼の過去を探って貰った……その結果、彼も過去に家族間の問題を抱えていたらしい。

 詳しくは分からなかったが、学生の頃には既に家庭崩壊の域であった……との事である。

 

(誰しも、辛い過去を抱えている……か)

 

 自らの目でテュカの状態を見るため、僕自身も、休暇を取って彼女の側に居る伊丹さんを遠くから見る……

 

『……向き合わなきゃいけない時は来る。でもせめて、今だけは……』

 

 炎龍討伐は既にアークスとして僕が請け負っており、自衛隊側にも連絡してある……しかし、件の炎龍自体が今も活動しており、被害が更に広がるのなら……

 

(計画を早めなきゃいけないな……)

 

──────────

 

 その日の夜、後宮での銃乱射事件で救出した日本人……望月紀子さんが部屋を訪ねて来た。

 

「貴方が……私を助けてくれたんですよね……?」

 

『……ええ、事実としてはそうなります』

 

 含みのある言い方だが、此方としては半ば暴走状態であったのだから、推移を正しく認識できていなかった立場としては“暴走の結果でそうなった”としか言えず、言葉に迷った……そこへランガが機転を利かせてこう続けてくれた。

 

『マスターってば、貴方が捕らわれているのにすっごく怒って、全員ブッ飛ばしちゃったんですよ〜』

 

 ケラケラ笑いながらそう言い、彼女に紅茶を出すランガ。しかし、望月さんの顔は最初こそ軽く笑っていたが、すぐに暗くなる……

 

「……まだ、検疫期間なんで……日本には帰れないし、あっちの家族とも……自衛隊の設備では連絡はできないって言われて……それに……あの時、離れ離れになった彼もまだ……」

 

 彼女の一言に、僕はリィスの報告を思い出した。

 

『貴方と一緒に捕まった男性の行方ですか……』

 

「……はい」

 

 リィスはあの時、奴隷となっていた日本人男性2人を発見したと言っていた……タイミングとしては、ちょうど園遊会の数日前。事を荒立てない為に、現状を維持しつつ彼等を保護する様に言っておいたが……その後はまだ報告を受けていないな。

 

『ちょっと失礼するよ……』

 

「あ、はい」

 

 視線を彼女から外し、テーブルに設置していた簡易端末を起動……通信システムで、帝都に潜入中のリィスへ連絡を取る。

 

《ご主人様、この度はどの様なご要件で?》

 

『先週に受けた報告の進捗を聞きたい……保護観察対象の要人2名は今、どうしている?』

 

《御二方は現在、私が直接保護しております……ただ、手続きの際に揉め事が発生し、うち1名が私を庇って軽傷を負ってしまった為、自衛隊の方に協力を求め、治療を依頼しようとしていた所なのですが……》

 

 どうやら2人とも無事らしい……しかし、揉め事で1人が負傷したとは、なかなか厄介な現場だった様だな。

 

『データには“鉱山奴隷”とあるな……』

 

《……はい。両名の作業中、例の地震が起きて落盤事故が発生し、咄嗟に私が救出したのですが……その一部始終を鉱山管理者が目撃し、私を雇おうとしてきたのです。勿論、丁重にお断りしましたが……》

 

 淡々と応えるリィス……彼女は有能だし、誰に対しても温和に対応するメイドの鑑だ。その彼女が厄介事に巻き込まれるという事は……

 

『……大方、罠に嵌めて奴隷化する手筈だったという訳か』

 

《はい。その際に……その……私の背後に迫った男に要人の御一人が気付いて体当たりし、反撃に拳打を受け……その……腕を骨折して……》

 

 目を伏せ、申し訳無さそうに続けるリィス……彼女の性根からのメイド気質が彼の負傷を“己の失態”だとしたのだろうが、僕からすれば、負傷した彼の行動は称賛に値するし、リィスを咎める理由にもならない。

 

『分かった……自衛隊側には此方からも一報を入れる。連絡が付き次第、要人の保護を自衛隊側に委譲。君は僕の代わりに殿下の護衛へ入ってくれ。以上だ』

 

《……は……い? あの……要人を負傷させた不手際の処罰は……》

 

『それは彼の勇気ある行動の結果だ。彼の行為は君を救う為であったし、事実君はそれに救われている……彼の名誉の負傷だ。君を処罰する理由にはならない……リィス・ステイヤー、任務を継続せよ』

 

《……了解しました》

 

 心なしか安堵した様な返答を聞き、通信を終える。

 通信の内容はオラクル言語なので望月さんには分からない……改めて伝える必要はあるが、良い報告には変わりないな。




アークス君の帰還できない弊害がコレですよ……
どうしろって言うんですか?

あと、テュカもヤバヤバ一歩手前。
唯一の救いは、原作で片方は死亡してた男性の日本人奴隷を2名とも救出に成功していた事でしょうか……
サラッと言うけど、落盤事故から二人とも救出……リィスさん有能過ぎるわ、タダでさえ体格小さいサポパなのに。

しかし、コレでは炎龍の件とテュカの件が繋がらない事に……話の流れ的にマズイのでは?
そりゃまた次回のお楽しみ♪

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