幻覚がゴジラがないので漫画を描けとか言ってくるので悩んでいる (袴紋太郎)
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幻覚がゴジラがないので漫画を描けとか言ってくるので悩んでいる

描きたいもの描いていこうぜ


 

『なんでゴジラシリーズがないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』

 

目の前の半透明な男?らしき物体が喚きだした。

 

引越しバイトのシフトを多めに入れたのが仇になったか、まさか幻覚と幻聴に悩まされるとは。

 

自室のPCを操作し、それを横から覗き込む幻覚を疎ましく感じながらも趣味のWEB漫画を描いていく。

 

『おい無視するなって、見えてるし聞こえてるだろ? 仕草でわかるんだよ、なぁ返事しろって』

 

うるさい、黙れ気が散る。

 

主人公に襲いかかる強大な怪物のデザインが浮かばず、ストレスが溜まっているのだ。

 

まず、そう…暴力的で、ひたすらにタフ。

 

口からは炎を吐き、情け容赦のないまるで天災…

 

『それもうゴジラでいいじゃん』

 

うるさいな、なんだよゴジラって鯨の仲間かああん?

 

『だからゴジラ、ゴジラザウルスっていう恐竜の生き残りが水爆実験で巨大化して人間に襲いかかるんだよ』

 

 

 

…幻覚の癖に設定とかあるのか、続けてどうぞ。

 

『その為にはまずゴジラについて語らねばならんな』

 

どこぞの学者の如く踏ん反りがえって、幻覚はヘラヘラと語りだした。

 

ゴジラとは、特撮怪獣映画として長きにわたって人気を誇っていたシリーズ作品であること。

 

だというのにこの世界?では、ゴジラのゴの字もない、それどころかまともな怪獣映画が存在しない。

 

嘆かわしい、この姿ではどうすることも出来ないのが悔しくて堪らない。

 

そういった前置きを聞き流すも、語られた設定は斬新な内容だった。

 

昭和、平成と世代ごとに「ゴジラ」という怪獣の設定は移り変わった。

 

水爆実験の被害者。

 

最強の生物。

 

地球という惑星が生み出した兵器。

 

息を呑む、とはこの事なのだろうか。

 

ハリウッド化(幻覚は別物、ジラは絶許だそうだ)したとまであれば、世界的にも評価された映像コンテンツ。

 

しかし、そんな物は見たことも聞いたこともない。

 

ネット検索してもそれらしき記述はない…やはり自分の妄想なのだろうか。

 

『ゴジラもモスラもガメラもないとか、この世界終わってるわかぁーかぁー』

 

しかし、話を聞くだけでも面白そうだ。

 

精神科にかかるまえに、この幻覚から得た情報を創作として出力するのもいいかもしれない。

 

『え? ゴジラのデザイン? まず二本足で肌がケロイドみたく黒くて~』

 

◆◆◆

 

おかしい、どうしてこうなった。

 

「では新人読み切り枠として掲載されるから、細部の調整よろしく」

 

菊瀬と名乗るこの人物、なんとあの週刊少年ジャンプの編集者の一人である。

 

見た目冴えないおっさんで、切り込みも厳しいが言うこと言うこと正論なので余計キツイ。

 

『ふっ、ゴジラシリーズを書ききるにはまだ実力不足だがな』

 

ええいうるさい、1年経ってもまだ消えないのか。

 

1年前、この幻覚からデザインと設定を聞き出しWEB漫画として投稿すると評価が格段に上昇。

 

以前のは絵は上手いけどシナリオや設定が陳腐だという書き込みに、何度心折れたことか。

 

しかし、個人的にも漫画を書くのが楽しかったので試しに新人枠の募集に応募してみたら大当たり。

 

そこからトントン拍子でここに至る、なんだこれは何処から妄想だ。

 

「で、だ…これ主人公が毒?爆弾で怪獣を道連れにしてるけど次の構想はあるのか」

 

菊瀬編集の質問に対し、今後は人間、ゴジラ、それ以外の怪獣という構成で作っていくことを話した。

 

ガイガン、ラドン、キングギドラ、ほかにも数多くある魅力的な怪獣達。

 

それを活かせる技量があるのか、ただのフリーターでしかない自分にそれが出来るのか。

 

『でも漫画だから仕方ないとはいえ、人間の主人公がいなきゃいけないのがなぁーあと機龍の設定どうするかなー』

 

少し黙ってろ幻覚。

 

「怪獣を倒す組織のいち戦闘員が、現場と読者によるメタ視点交互に怪獣との戦いを描写すると」

 

あとはそれっぽいロボットだったり兵器だったりと、こんな感じでして。

 

「もうほとんどデザイン出来てるのかよ…とりあえず、内容次第で連載するかどうか決まるから」

 

出来れば作家さんのアシの仕事紹介とか無理ですかね。

 

「グイグイ来るなお前…考えとくよ、結果次第だがな」

 

よろしくお願いします。

 

集英社からの帰り道、幻覚の声が虚空に響く。

 

『売れるのは確定として約束忘れるなよー、売上は7が特撮化への仕込み、3が報酬だからな』

 

売れたらな。

 

まぁ、いい夢は見れた気がする。

 

就職、頑張らなきゃな。

 

『漫画家だろてめー』

 

一生食えるわけじゃないんだ、貰った知識とアイデアで威張れるほど厚顔にはなれないよ。

 

点滅する街灯の下、幻覚との対話というあまりな姿を見られぬようそそくさと帰宅した。

 

そして読み切り掲載後、暫くして…

 

「来月から連載スタートだ、アシスタントはこっちで見繕う」

 

どうしてこうなった。

 

 




漫画版になったゴジラシリーズもいいものだ


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アニメ化とマジっすか

展開が早すぎる気がする


 

嘘だろおい、人気投票トップとか普通そうはならんやろ。

 

『なっとるやろがい!』

 

「ゴジラ/怪獣王」のタイトルで執筆を始めたのだが、予想を大きく上回り人気に火が付いた。

 

ジャンプの表紙をデカデカと飾り、単行本は発売してすぐに在庫切れ。

 

電子書籍ってこういう時便利よねぇ。

 

『わーはっはっはっはっはっは、ゴジラの魅力に取り憑かれた時点で勝ち確よ!』

 

わぁいファンレターの山、返事どうしよう。

 

で、映画って特撮…というか実写だろ?

 

何処にどうすればいいわけ?

 

『馬鹿だなぁモブ太くんは』

 

やかましい。

 

『そういうのは詳しい人に聞けばいいじゃないか』

 

…それもそうか。

 

そもそも、人気なんて今だけだし逸り過ぎか。

 

よし! 今日は牛丼特盛で卵もつけるぞ!

 

『やっすいなぁ、お前』

 

◆◆◆

 

読み切りから連載開始というのは、実は非常に稀だ。

 

漫画雑誌というものは、その性質上読者からの人気によって引っ張り上げられる。

 

どれほど技量があろうと、シナリオが秀逸であろうと、読者の関心を惹かなければ意味がない。

 

今週号を手にとった男は、自宅でページを捲っていく。

 

「怪獣王ゴジラ、敵対する怪獣、人類の戦い…」

 

技量はある。

 

設定も悪くない。

 

登場する怪獣はどれも手強く、キーとなるゴジラは人類の天敵。

 

人類の科学力を結集して生み出された兵器は時に爆散、時に活躍、時には怪獣を打倒する。

 

だが誰もが好むかと問えばそれは否だ。

 

対象はほぼほぼ男性に限定される、戦闘が多いタイプなのでさらに絞られるだろう。

 

沢山の人に楽しめる作品とは言い難いものだ。

 

これは自分の求める作品とは絶対に違う。

 

…だから、菊瀬編集の言葉は、どうでもいい。

 

【男か、女か、少年か、大人か、誰に向けたものでどんなテーマがあるのかサッパリだ】

 

【こいつを応募した作家は、怪獣が好きな男性向けとして描いてるとハッキリ言ったぞ】

 

【お前何か勘違いしてないか?】

 

どうでもいい。

 

どうでもいい。

 

どうでも、いい。

 

ボツ扱いされた原稿を机に置いて、新作を描くためペンを握るのだ。

 

何が悪いのか理解出来ない男は、事実に目を向けることなく陰鬱な日々を過ごしていた。

 

◆◆◆

 

「今季の冬アニメ、枠取れたぞ」

 

マジっすか。

 

菊瀬編集からの電話で集英社に駆けつけた矢先、いきなりアニメ化の話が出てきた。

 

早すぎません?

 

「SNSやツイッターでも盛り上がってるからな、話題性にアニメ会社も乗っかるそうだ」

 

『実写化に一歩近づいたな、進撃○巨人もやったし余裕余裕』

 

マジっすか。

 

つか幻覚うるさい。

 

「でだ、作家本人から何か要望あるか?」

 

アニオリでゴジラが歩み寄る的なそれはやめてください、解釈違いなんで。

 

声優? いやそういうのは別に自由にで。

 

あ、可能なら特撮とかやってる人たちと渡りつけたいっす。

 

実写映画希望なので。

 

「実写ぁ? だいたい外れるだろそれ」

 

約束なんで。

 

『分かってるじゃないか!』

 

ええいうるさいよ幻覚!

 

「んじゃさっきの条件だけに注視してそれ以外は自由にと」

 

当たるといいっすね。

 

「そればっかりは俺らじゃ口出しすることしか出来ねぇよ」

 

うっす。

 

◆◆◆

 

「先生! 私をアシスタントにしてください!」

 

家に帰ったら女子中学生から弟子入り志願された。

 

どゆこと?

 

 




時期的には原作より1~2年くらい前かなぁ


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JCが弟子入り志願しに来て怖いんだけど

祝日に昼間から書くのは久々に楽しいっすなぁ


えーはい、えっとまずお名前は?

 

「藍野伊月です、高知から来ました!」

 

はぁ、カツオ美味しいよね。

 

『やべーぞこのJC、圧がすげぇ』

 

勢いに乗せられて部屋に入れちゃったし…ねぇ。

 

と、とりあえず、緑茶でいいかな。

 

「お構いなく! というか私が淹れます!」

 

いやいや、お客さんだし…やばいよやばいよ、なにこれパパラッチの手先?

 

怖いよ怖いよ、なんなんこの状況。

 

頭が恐怖に呑まれるのを耐えて、緑茶を三人分淹れてしまう。

 

しまった、一つ多い。

 

『は?俺の分やろがい!』

 

幻覚にお茶出しとかアホじゃねぇの、最近やってるけど。

 

えっと、とりあえず大福でいいかな。

 

ソファの対面に座る藍野さんと向き合う、一息ついてから口を開く。

 

弟子入りって、お…私に?

 

「はい!」

 

ごめん無理。

 

「ええ?!」

 

意地悪で言ってるわけじゃないから、一応聞いて欲しいな。

 

まず君は中学生…だよね、何年生?

 

「三年ですから卒業すぐです!」

 

受験シーズン真っ只中じゃないか…

 

というかどうやって住所を…

 

「ネットやら聞き込みやらで調べました!」

 

『やべぇぞこいつ』

 

怖い、怖いよ…とにかく全力で断らなきゃ。

 

弟子入りの話だけど、まず前提を出させてもらう。

 

つまり最低限のラインだ、いいかい?

 

「…はい」

 

まず、義務教育をちゃんと修了させてから来なさい。

 

これは法律の問題だからね。

 

それと親御さんの許可を取ってから言いなさい。

 

未成年の女の子だ、きっと心配しているよ。

 

「分かりました」

 

分かってるのかなぁ(汗

 

『おい、大丈夫かおい』

 

今だけは黙らないでくれ幻覚、クモの巣張った脳味噌フル回転させてるから。

 

で、うん…弟子入り、そう弟子入りだ、何で私に?

 

「先生の作品を読んで、なんというかここ数年にないオーラのようなものを感じたんです」

 

「私、漫画描いてて…その、プロを目指してるんですけど…こ、これ、読んでもらえませんか!」

 

ほほう、どれどれ。

 

まぁ所詮JCのアレやしなぁーとタカを括っていたのだが、「ホワイトナイト(仮名)」と書かれた内容に

 

『なんやこのJC、バケモンか』

 

幻覚ともども圧倒された。

 

まだまだ荒いところはあるが、ストーリー構成から演出、設定、どれも完成度が高い。

 

えっと、これ本気で君が書いたの?

 

「はい!」

 

…道具渡すから試しに続き書いてくれない?

 

「お借りします!」

 

「出来ました!」

 

誰かから借りてきたとかそんなオチだろうという安い願いは、眼前の天才による速筆によって叩き潰された。

 

1ページだけのつもりが、まるまる1話分描かれてしまった…どうしよう。

 

なるほど、実に素晴らしい出来だ。

 

才能がある、今度何かのコンテストで出してみるといい。

 

おっほん、えーえーえーえーえー…………まず条件を言い渡します。

 

1、せめて高校くらいは入る事、中卒だと世の中大変だからね。

 

大卒でも結局は就職難のフリーターになるのさ…

 

2、君の書いた作品で何かしらの漫画コンテストに応募して入賞すること

 

結果次第で他のとこ行くやろ。

 

3、直接来るのは問題だから Skype通話などでのみ参加しなさい。

 

アニメ化したら色々整理しなきゃ…

 

以上の三つだ、それが出来なきゃこの話は無しだよ。

 

「卒業、入学、説得と入賞…分かりました、 Skypeはそれ以外全て終えてから連絡を入れさせてください」

 

ははは、期待しているよ未来の漫画家さん。

 

周囲を一瞥してからそっと帰らせ、急ぎ物件情報を探しに不動産屋へと向かう。

 

急いで住所変えなきゃ!

 

『また特定されそうだな』

 

ホラーじゃんよ!?

 

◆◆◆

 

見なくてもいいキャラ設定

 

「主人公/ゴジラ作家」

絵の技量云々は高いが、設定やシナリオが陳腐、面白い原作者と組めば強いタイプ。

 

突如として出現した幻覚から「ゴジラ」の設定を聞き、趣味のWEB漫画に投稿。

 

何故かそれがヒットして色々驚いている日々

 

「幻覚/幽霊?」

ゴジラ大好き野郎、ゴジラシリーズ完結からシン・ゴジラを見てアニメを見て自作の着ぐるみまで作った。

 

実物を着込んでいるとき、住んでいたアパートの隣部屋から出火して火事に巻き込まれて死亡。

 

その後、気づけばゴジラ作家の背後霊となり溜まっていた鬱憤を晴らすことに。

 

お供え物的なフィーリングでなら飲食可能

 

 




このJCやべーよやべーよ


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行動力ありすぎるよこの子…

JKにお世話されたかった高校時代


 

「春アニメでシーズン2入るぞ、あと夏には映画化するからそれ用のシナリオ頼むわ」

 

嘘だろおい。

 

雪解けから春の兆しを待ちわびている所に、菊瀬編集からいきなりの爆弾発言。

 

どうやらアニメも好調だったらしい、印税うまいっすわ。

 

『特撮業界の監督さんとかも見てねぇかなぁ』

 

そっち方面まだまだ全然だからな、焦るなよ幻覚。

 

『そろそろ認めちまえって』

 

ええいうるさいうるさい。

 

しかし映画かーちとペース早すぎないっすか?

 

「それだけ期待している人間が多いんだよ、作品の人気ってのは単純に面白さだけじゃない」

 

「流行りだから、周りも知ってるから、ネットやテレビで見た、まず最初に興味を惹かなきゃ始まらないんだよ」

 

「ファンが増えればアンチも増える、その結果知名度が上がって次のステージに登る、この繰り返しだ」

 

なるほどねぇ…ん? なんすかその原稿。

 

「可燃物」

 

そりゃ紙は燃えますわ。

 

「…お前これ読んでみろ」

 

渡された原稿をペラリペラリ…う~ん、言っちゃ悪いけど。

 

『つまんね』

 

ああうん、こんにゃくをそのまま切り取って皿に出されたような味気なさ。

 

何がしたいのか、何を伝えたいのか分からん。

 

「何度も描いては持ち込んでくるんだが、いい加減ウンザリだ。漫画に限らず創作物ってのは何かしら傾向やら特色がある」

 

「”何もない”、空っぽだ」

 

よくある展開、演出、それを使うことは間違いじゃない。

 

斬新なアイデアを出せるのは才能だ、しかし使われてきた技法を用いることが間違いか?

 

器が同じでも中身が変われば品は変わる、要はどう使いこなすか。

 

70億人もいる人間が、百年以上も重ねてきた漫画という概念。

 

斬新なネタなんてそうそうありはしない。

 

『つーかこんな読んでもつまんないモノ、書いてて楽しいんか?』

 

漫画の最初の読者は書き手である。

 

漫画家という職業故、売れる漫画を書くのが最前提。

 

しかし自分が楽しいと思えない作品を読んでもらいたいというのは、何処か違う気がする。

 

この人とは合わなそうっすわ。

 

「アレと意気投合できる奴がいるかよ、どんなつまんない人間だ」

 

◆◆◆

 

「中学卒業して東京の高校合格しました! 春から一人暮らしです!」

 

『マジかよこいつ』

 

嘘だろおい。

 

帰り道、ス○バでくっそ長いラテでも飲もうかと思案していたら、藍野ちゃんと遭遇。

 

あれだけ濃いと忘れられないなぁと口元を引きつらせていた所、何故かファミレスで相席。

 

先ほどの発言にあわせて、「ホワイトナイト」がとある漫画コンクールにて最優秀賞を取った事を知らされた。

 

スマホで調べれば嘘だろおい、集英社が絡んでるじゃんやべぇよこいつ。

 

『おい、条件大半クリアしてんぞこの女』

 

嘘だろおい。

 

OKOK、落ち着こうじゃないか。

 

受賞だけでも凄いのに、最優秀賞とは凄いじゃないか!

 

「えへへ、ありがとうございます」

 

照れる様子の彼女は言うまでもなく美少女だ、通報されるかもという思考を脳の隅へ。

 

それにしても凄い行動力だ、だからこそ問わねばならない。

 

藍野さん、どうして私なんだい?

 

デビューしてすぐの、コネも何もない私の元で何がしたいんだい?

 

「――――全人類を楽しませる漫画が描きたいんです」

 

 

……

 

………えーと?

 

『何言ってんだこいつ』

 

藍野さん、一つ厳しいこと言うけどそれはちょっと厳しい。

 

人間の感性はそれぞれだ、何が面白いかは皆違う。

 

全人類が共通して興味と関心を抱き、そこに面白みを感じるというのはまずありえない。

 

だから私自身は不可能だと言おう、私には出来ない。

 

「…そう、ですか」

 

でも目指すのは君の自由だ。

 

応援しよう、可能な限りの助力もしよう。

 

だから…うん。

 

私のアシスタントになってくれないかな(震え声

 

「…!!! はい、藍野伊月は全力で先生をサポートし技術を学ばせて頂きます!」

 

『ええんか』

 

目的はなんだろうと目指すのは自由だし、それに向かって努力するのは健全じゃないか。

 

それに思春期だよ? そういう年頃なんだから否定するのもアレじゃん(遠い目

 

約束は約束だし、一応ねぇ?

 

ま、程々によろしくね。

 

 




全人類が面白いと思える作品を作りたい=高校生の台詞なら、普通に子供の夢っぽくて
健全じゃなかろうかねぇ


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掲示板と派生の可能性

 

637匹切りの怪獣王

アニメ三期決定!

 

638匹切りの怪獣王

そりゃ(国外興行収入120億突破すれば)そうよ

 

639匹切りの怪獣王

海外の評論家「モンスターキングは世界に通用する可能性を秘めたコンテンツだ」

 

640匹切りの怪獣王

BGMがいいよね、あれ作者が考案なんだっけ?

 

641匹切りの怪獣王

マジでか

 

642匹切りの怪獣王

音楽もいけんの!?

 

643匹切りの怪獣王

違う、作画修正で鼻歌やりながらしてたのを作曲担当が完コピした

 

644匹切りの怪獣王

作者「ゴジラを書くときはこれが頭の中で響く」

 

645匹切りの怪獣王

怪獣王は作者に漫画を書かせていた!?

 

646匹切りの怪獣王

あながち違うとは言い切れない

 

647匹切りの怪獣王

いいよねあのBGM、勇壮かつ強大な敵であり大自然の驚異って感じ

 

648匹切りの怪獣王

今回の宇宙からきたキングギドラVS地球の怪獣王の対比が美しかった

 

649匹切りの怪獣王

どっちが勝っても地獄である

 

650匹切りの怪獣王

戦術チート指揮官「勝ったほうが我々の敵になるだけです」

 

651匹切りの怪獣王

それな

 

652匹切りの怪獣王

それな

 

653匹切りの怪獣王

それな

 

654匹切りの怪獣王

つか作者若いっても体良く持つよね、取材旅行で南極行ってきたばっかじゃん

 

655匹切りの怪獣王

作者「南極の氷見て犬ぞりしてきました」

 

656匹切りの怪獣王

体験主義者というか、そこらへん遊びじゃなくてガチの取材なんだよなぁ

 

657匹切りの怪獣王

でも犬に餌やってる映像ニュースで出てたけど、楽しそうだったよ

 

658匹切りの怪獣王

クレバスで落ちかけた犬引っ張り上げたんだよなぁ

 

659匹切りの怪獣王

お前それサバンナでも同じ事言えんの?→サバンナ行ってくるわ(作者→大変やったわ(動物たちのスケッチ片手に、乾いた血がついてる

 

660匹切りの怪獣王

カバに襲われたんだよなぁ

 

661匹切りの怪獣王

カバが一番やばいってそれ作者もツイートしてた件について

 

662匹切りの怪獣王

でも休載せずにやるのは偉い

 

663匹切りの怪獣王

現地でも書いてるし、一ヶ月分は先に書いちゃうらしいよ

 

664匹切りの怪獣王

ツイート見たわ、エベレストはすぐには無理なのでとりあえず富士山登ってくるって

 

665匹切りの怪獣王

今度の舞台はエベレストか()

 

◆◆◆

 

スマホで覗いた掲示板、やはり映画化は違うなと私…藍野伊月は息を呑んだ。

 

東京は地元の高知と比べても人と物も多く、親が借りたアパートの窓から都会の喧騒というものを見下ろす。

 

「やっぱり、先生に弟子入りして正解だった」

 

私の目指す漫画、全人類を楽しませる漫画に今最も近いのは先生だ。

 

日本、世界と駆け足で影響を広げていく怪獣王ゴジラ。

 

それを手がける先生の名前は、新聞にニュース、ネットと爆発的に認知されていく。

 

人の心をつかむモノが、ゴジラにはあるのだと改めて確信した。

 

”夢は実写化です”

 

劇場版の発表会に出演した時の一言。

 

漫画の実写化は外れが大きいというのが定番だが、私はなるほどと思った。

 

ゴジラほど実写化が合う漫画はない、アニメ映画も良いがCGと合わせればむしろ実写版の方がイメージに添うだろう。

 

ペラリと、風によって書きかけの原稿がめくれる。

 

ホワイトナイト、主人公と仲間たちの冒険活劇。

 

私の処女作であり、先生に認められた作品。

 

しかし、これは私の求めているものではない。

 

全人類を楽しませる、つまりそれは「読者」を「選んではいけない」のだ。

 

書き手の癖、作画、シナリオ、どれも漫画を構成する重要な部品。

 

読者が分け隔てなく楽しめ、興味を持たねばならない。

 

故にホワイトナイトは目指すべきものではない、無いのだ。

 

富士山に同行して疲労と筋肉痛から執筆を中断していたが、そろそろ書かねばならない。

 

ホワイトナイトを超えるもの。

 

ゴジラに続くもの。

 

私の新作、藍野伊月渾身の漫画を。

 

でも何故だろう。

 

どうして私は、これを読んで…

 

「つまらないと思っちゃったんだろ」

 

どうして?

 

◆◆◆

 

エベレスト登頂を目指すと言ったら編集に怒られたでござる。

 

『いや普通行かねぇよ、危ないじゃん』

 

いやだってシナリオも設定も幻覚の発言じゃん、だったら作画やリアリティを追求しなきゃじゃん。

 

『職人かてめー。とにかく実写に大きく近づいたな!』

 

今更ながら夢じゃないのか、今自分は病院のベッドの上ではないのか。

 

まぁとにかくアッシーズには今回付き合わせちゃったし、なんか美味いの食ってもらうかぁ。

 

何がいいべ、焼肉?

 

『てめぇ俺が食えないのに…そういえばスタッフの一人がまさか!ってのを持ってきたなー』

 

ああ、アレな。

 

ウルトラマンだっけ、作画鍛えればヒットすると思うよねぇ。

 

巨大なヒーローがいるなら人間大のヒーローもいいよね、改造されて…そう、バイク! バイクに乗るんだ!

 

『それなんて仮面ライダー』

 

.




直接見に行かなきゃ(決意


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楽しくなければ書けないって話

 

「アニメ映画第二弾だ、これが受ければ実写化の話が本格化するぞ」

 

嘘だろおい。

 

昨年の映画化からすぐに映画化とは思わなかったぞ。

 

しかし疲れてますね菊瀬さん。

 

「…そう見えるか」

 

うっす。

 

『なんかミスでもしたんかおい』

 

「…近々、お前の担当から外されると思う」

 

あれま。

 

色々と理解がある貴方が外れると面倒なんですが。

 

なんです、週刊誌に激写されました?

 

「編集の顔なんて誰も撮らねぇよ…才能ないと思ってたのが、とんでもねぇもん持ってきてな」

 

「それが編集長の目にとまって、後はまぁ完全に俺が無能だって空気で会議が進んだ」

 

えぇ…それはちょっと無理があるんじゃ。

 

「来週号で読み切りが出るから見てみろよ…じゃあな、お前との仕事は楽しかったよ」

 

力なくデスクから離れる菊瀬編集の背中は、随分と小さく見えた。

 

どう思う?

 

『まぁ才能開花って話だろ? それにしてもたった一つだけで無能扱いってのは違くね? ゴジラの編集ぞ、神の御技ぞ』

 

だよねぇ。

 

…業界厳しいわぁ。

 

◆◆◆

 

「先生! これ読んでみてくれませんか!」

 

あいよ伊月ちゃん、今更だけど名前呼びになっちゃったねぇ。

 

で、新作? ホワイトナイト地味に楽しみにしてたんだけど。

 

「はい! これが私の新作―――ANIMAです」

 

おっし、アッシーズ休憩入れるべ。

 

「藍野ちゃんの新作っすか」

 

「相変わらずの鬼作画かな」

 

「というか先生の作り込みがバイヤーなんすけど」

 

まぁまぁ、また今度焼肉奢るから。

 

んじゃま、読ませてもらいますかねぇ。

 

『…』

 

「すっげぇ…」

 

「これは…」

 

「おほう…」

 

ん~面白いねこれ。

 

作画やシナリオも特上、さらにキャラ描写が秀逸だ。

 

これ今出しても連載行けると思うよ。

 

「~~~~~~~~~~ありがとうございます!!!」

 

でも個人的にはホワイトナイトが好きかな。

 

喜びを噛み締める伊月ちゃんには悪いが、これは個人の感想なのだ。

 

面白いよ、うん、もしかしたらゴジラも超えてしまうかもね。

 

でも、ホワイトナイトの方が好きかな。

 

「…ど、どうしてですか」

 

その前にアッシーズにも聞きなよ、読者は多いんだからさ。

 

「僕はこっちが好きですね、技術の向上が見て取れるし癖がなくて読みやすい」

 

「俺も先生と同じでホワイトナイトかなぁ、こう冒険を楽しんでるって感じが好き!」

 

「ゴジラの方が好きっす」

 

最後は要らないよもう!

 

ん~伊月ちゃん、これは技術とかそういうのじゃなくてさ。

 

これ書いてて、楽しかった?

 

「…いいえ」

 

これ読んでて、面白かった?

 

「……いいえ」

 

作家のポリシーとかそういうのは特に無いんだけどさ。

 

自分が面白いって思えるものを出さなきゃ、ちょっと違う気がするね。

 

勿論、そういったものを抜きにして書くのも仕事さ。

 

だから何が悪いとかじゃなく、個人の感想でしかないよ。

 

『誰が読んでも面白いな、これ』

 

『でもきっと、誰が書いても同じだぜこいつは』

 

『再現出来るか否かを解決出来れば、きっと誰にでも描ける』

 

「…先生」

 

うん。

 

「私、弟子入り志願に来たとき、言いましたよね。全人類が楽しめる漫画を作りたいって」

 

言ってたね(ガチだったか…)

 

「未熟、でした。先生のようにはいきませんね」

 

伊月ちゃん。

 

「で、ですけど、これからもそれを目標に! ANIMAよりもっと!」

 

泣きそうな顔で、それ言っちゃダメだよ。

 

作り手が、自分の作品を否定しちゃダメだ。

 

自分が本気で書いたのを、自分で投げ捨てちゃ悔いが残るよ。

 

「でも! ANIMAよりホワイトナイトが好きだって感想が出ちゃったじゃないですか!」

 

「ANIMAじゃ、理想には届かないってことじゃないですか!」

 

ねぇ伊月ちゃん、君の理想の漫画ってどういうものだい?

 

「書き手の癖も、思想も、作家の「個性」です。個性の出る漫画にはどうしても合わない人が出てしまう!」

 

「それじゃ意味がない、もっと客観的に作らなきゃ」

 

無理なんだよ。

 

客観的ってのは、要するに他人の主観なんだ。

 

自分以外の主観が集まって、客観的と呼ぶんだよ。

 

伊月ちゃん、漫画の一番最初の読者は作者だ。

 

個性が入らない作品というのは、全人類70億全ての「主観」を統合して初めて作れるものだよ。

 

「………………ぁ」

 

うん、無理だよね。

 

だからさ、せめて楽しく書こうよ。

 

「たの、しく?」

 

うん。

 

「無理ですよ…」

 

どうして?

 

「空っぽなんです、私…中身がない、技術ばかりあって、作品に込める想いもない、漫画家失格の」

 

でも君の漫画は面白いよ。

 

「ぶっちゃけ、ゴジラ無かったら僕は藍野さんの所で仕事するね」

 

「読んでてワクワクするし、満たされる作品ってのは十分だと思うぜ」

 

「………ウルトラマンの方がおもしれーし」

 

もうJKに対抗心燃やすなって。

 

俺はさ、ゴジラ書くの好きだよ。

 

グッズとかアニメとか、売れまくりってニュース出たらにやけちゃうよ。

 

読者がワクワクして考察して二次創作とか考えたらもう最高!

 

MADとか見てるだけで時間が過ぎるね!

 

「……私も、ゴジラ好きです」

 

ありがとう。

 

中身が無いなら、これから注げばいい。

 

伝える思いも、これから作っていけばいい。

 

焦ることはない、なにせ人生だいたい百年はあるんだから。

 

よぉーしアッシーズ、とりあえず焼肉行くかー

 

これから正式に4人目のアシスタントの歓迎会だ、酒はあかんぞ!

 

「「「えええええええええーーーーーーーー!?」」」

 

おやかましいわ!

 

創作活動は楽しんでなんぼ。

 

それでええやん。

 

「―――はい!」

 

 




楽しくないものは書けない!


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掲載する雑誌を選ぶ権利

※特定雑誌を貶める思想はございません


 

「今週号のゴジラも面白いですよ! ますます先生の筆も脂がのって」

 

具体的に何処が面白いのか言って欲しいなぁ…

 

「あ、いえ、そんな、自分なんかが…」

 

いいのいいの、編集者と作家なんだからイーブンだよ…あ、これオフレコで。

 

菊瀬さん、どうなん新人くん。

 

「腫れもの扱いですよ、編集長が目に見えてアレみたいな感じにしちゃって」

 

それなんで自分がゴジラ担当にしてもらえたと、若い編集は複雑だとばかりに苦笑している。

 

新作、ねぇ。

 

伊月ちゃんが言ってこないから無視してたけど、ううん。

 

「”ホワイトナイト”ですよね、いやぁー遅咲きって程じゃないけどあんな才能あるんですねぇ。いっつも菊瀬さんからボロクソ言われてた記憶があるけど」

 

そっかーホワイトナイトかぁ

 

『いつからジャンプはパクリ有りになったわけよー』

 

うーん…新人くん、悪いんだけど今週号の人気投票、出たら確認しててよ。

 

「分かりました!」

 

さて帰るか…幻覚に尋ねるって自分の頭が心配になるんだけどさ。

 

『お前マジでさぁ…』

 

マガジンとサンデー、移るならどっちにするべ。

 

『サンデーはない』

 

◆◆◆

 

では伊月ちゃん含めアッシーズ、改めて今週号を買ってきましたが。

 

なんでホワイトナイトあるの?

 

「「「盗作だぁーーーーーーー!」」」

 

だよねぇ…いやーまずいっす。

 

結局5話分まで何も言わなかったけど、これ伊月ちゃんの作画だよねぇ。

 

伊月ちゃんがこっそり出してるってのは…

 

「いいえ、そんな記憶ありません…私が書いたのとは細部が違うけれど、ホワイトナイトです」

 

『編集ぇ…』

 

う~ん、大事になる前に鎮火させたいなぁ。

 

下手したら飛び火して実写化がポシャる。

 

コンクール受賞品なんだし、意図して無視してるとは思えないんだけどなぁ。

 

となると、アマチュア作だからそもそも知らない…かなぁ。

 

まずいよまずいよ、不味すぎて吐くよこれ。

 

「…この佐々木という人、僕知ってますよ」

 

そうなん?

 

「菊瀬編集に何度も持ち込んではボツ食らってた人です、試しに読ませてもらったけど酷い内容でした」

 

……あぁ、たぶん読んだかもしれない。

 

作画、違いすぎない?

 

なんというか、個性が全然出てない。

 

「藍野さんが書いたのをそのまま出したってのがシックリくるなこれ」

 

「コンクールの原稿そのまま抜き出してきたんじゃ」

 

黙って読みふけってた伊月ちゃんに視線を向けると、眉を八の字にしている。

 

「”私”のホワイトナイトです、間違いなく…構成や表現も、私のだって分かる」

 

どうしたもんかねぇ。

 

正直、掲載先が変わるのは別に良いんだけど。

 

知り合いも増えたし、まぁなにより義理があるしね。

 

「先生…」

 

ん?

 

「先生は、盗作そのものには何も言わないんですね」

 

(俺も似たようなものなので)言えない、かなぁ。

 

例えそうでも問題になってないのなら、これも仕事だよ。

 

惜しい、と感じるのは…うん。

 

なんでこの人は”自分”のホワイトナイトを書かなかったのかなぁ。

 

◆◆◆

 

「また、2位…!?」

 

アパートの自室にて今週号の読者投票の結果、ホワイトナイトは2位。

 

1位独占は言うまでもなく、ゴジラだ。

 

俺…佐々木哲平は奥歯を噛み締め、瞑目する。

 

売れない作家、そもそも作家ですらない自分。

 

25になる後のない自分。

 

何度出してもボツとされる現実。

 

落雷によって10年後のジャンプが送られるタイムマシンとなった電子レンジ。

 

その中の【ゴジラのないジャンプで一番人気のホワイトナイト】を、俺は模写し持ち込んだ。

 

未来の人気漫画という可能性を踏みつけて。

 

今まで俺の漫画を没にし続けた菊瀬編集の意見を押しのけ、こうして連載を獲得してしまった。

 

俺には、未来の人気漫画を潰した責任がある。

 

だからこそ、ホワイトナイトを世に出す使命があるんだ。

 

そう、自分に言い訳して…

 

こうして毎週来る未来のジャンプに掲載された「ホワイトナイト」を模写している…

 

なのに。

 

「どうして…」

 

なのに…

 

「ゴジラを超えられない…!?」

 

背負った十字架が、のしかかる。

 

愕然とする中、携帯に着信が入る。

 

編集部からのそれに、言いようもない不安感を感じるのであった。

 

 



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漫画界の闇!

こういう設定だからこう!

そういうのでいいんだよ。


とある一室、そこには俺と伊月ちゃん、編集者達、そして…

 

「ご要件は、なんでしょうか」

 

顔色の悪い佐々木氏だった。

 

大丈夫? とりあえず水いっぱいどうぞ。

 

「はぁ、貴方は…」

 

ゴジラ書かせてもらってるもんです、こっちはアシスタントの一人。

 

まぁ長々と話すのもアレなんで、単刀直入にいかせてもらいますが。

 

佐々木さん、「ホワイトナイト」が盗作だというのはご存知…ですかねぇ。

 

「…ッ!」

 

強ばった表情に、血の気が失せていく様子を見てため息が吐きたくなった。

 

少なくとも本人は完全に黒じゃん。

 

「そ、その、何故貴方が、関係ないじゃないか!」

 

『見苦しい…』

 

いえ、関係があるのはこっちの…

 

「はじめまして、藍野伊月と申します。学生ではありますが、アシスタントとして先生の所でバイトさせてもらってます」

 

「アイノ、イツキ…!?」

 

愕然とする佐々木氏、伊月ちゃんもこれ結構キてるなぁ。

 

「ホワイトナイト」は藍野さんが漫画コンクールに出展し、最優秀賞を受賞した作品です。

 

この時点で著作権が成立し、貴方はその権利を侵害、不当な利益を得たとして提訴する予定でした。

 

しかし、ご両親が未成年である彼女の将来に悪影響を及ぼすのではと危惧された為、関係者を集めて話し合いの場を設けさせて頂きました。

 

今回、私は高知にいらっしゃる藍野さんのご両親の代理、雇用主と保護者として参加させて頂きます。

 

『え、なにお前ガチじゃん』

 

ガチだよ、色々と。

 

「まぁ、そういうわけでしてね佐々木先生…我々もこの一件に関しては共犯者ですからねぇ」

 

「藍野さん、確認を怠り貴女の作品を盗用してしまい申し訳ありませんでした…!」

 

菊瀬編集を除いた編集者たちは、編集長と共に伊月ちゃんへ深々と頭を下げた。

 

佐々木さん、本件に関しては以下の条件を被害者側は提示します。

 

・三百万円の賠償金

・「ホワイトナイト」の連載を即刻停止

・関係者への説明

・「ホワイトナイト」で得た全ての利益を藍野伊月に返却する

 

「そん、な…」

 

というのが、当初の条件だったのですが。

 

藍野さんとも話して、色々と変えることにしました。

 

端的に言えば、貴方にはこれからホワイトナイトの”正式”な作者になって頂きます。

 

「僕が、ホワイトナイトの」

 

賠償金1千万、藍野さんに対して支払うのであればホワイトナイトの著作権をお譲りしましょう。

 

人気低迷による打ち切りをさせず、1年以上の執筆にて完結させるのであれば三百万に減額。

 

その後ホワイトナイトによる全利益の内、約半分を藍野さんに譲渡する。

 

賠償金、利益返却を除き藍野伊月とその関係者に対して一切の接触を禁ずる。

 

この提案を呑んでいただけるのであれば、この一件を手打ちとする…如何でしょうか。

 

「あ、貴方は漫画による問題を金銭で解決するのか!?」

 

そうです、それが最も円満に解決出来る手段であれば。

 

若輩なれどプロとして、漫画の執筆で生活している身です。

 

その仕事を補助する藍野さんは、プロの仕事に携わっているということ。

 

彼女の作品が盗作されたというならば、私は全力で戦います。

 

これまでゴジラという作品を支えてくれた彼女が、アシスタントの方々が不当な損害を受けるというのなら。

 

黙って見ていることは出来ませんし、望まないならば自分の意見を通す事はしません。

 

これが私なりの筋です。

 

佐々木さん、ご不満であれば次は法廷の場でお会いしましょう。

 

『あ、これは一歩も退かねぇって目だわ』

 

うん、退かない。

 

最初は流れで始めたゴジラの執筆。

 

でも、俺はゴジラが好きなんだ。

 

それに携わった人の描いた漫画を、好き勝手されたらやるしかない。

 

これだけは絶対に譲れない。

 

膝から崩れ落ちる佐々木氏に、俺は怒りを視線に宿し続けた。

 

佐々木さん、これは私個人の質問です。

 

何故、貴方は「ホワイトナイト」を自分なりのアレンジを加えて出さなかったのですか?

 

「…………」

 

読み切りを受けてもらわなければ後がない、それならば最初の持ち込みは理解出来ます。

 

しかし、その後も完全に藍野さんの画風を模倣し、佐々木さんのホワイトナイトを執筆しなかった理由を教えてください。

 

「…感動、したんだ」

 

 

「ストーリーも、キャラ描写も、設定も構成も素晴らしかった、感動したんだ! だからこれを世の中に見てもらいたくて」

 

「それが、俺の使命なんだって、だから」

 

「ふざけんな!!!!」

 

い、伊月ちゃん?

 

ああ、椅子も蹴っ飛ばして…

 

「世の中に読んでもらいたい!? 使命!? ふざけんな、誰が頼んだ!」

 

「私はホワイトナイトをこれ以上出さないと決めた、望んだものじゃないと机の中にしまいこんだ…」

 

「でも! 誰かが御託並べて好き勝手されていいなんて思ってない!!!」

 

あわわわわわわ、いかんよ伊月ちゃん暴力はいかんて。

 

『あっちゃ~』

 

「精々、私の後追いで満足してろ! このプリンターめ!!!」

 

頭から湯気を出す勢いで、部屋から出ていく伊月ちゃん。

 

アッシーズ、悪いけど伊月ちゃんに飲み物あげて宥めといて。

 

佐々木さん、先ほどの内容で問題ないならば一度お帰りください。

 

詳しいことは、後々ということで。

 

一気に活力を失った佐々木氏を帰すと、編集者たちは下を向いて退室していった。

 

「…迷惑かけたな」

 

菊瀬編集がすれ違いざまにそう呟いて、残ったのは俺と編集長…一応、幻覚。

 

正直このまま帰りたいんですけど、一応確認しなきゃと思いまして。

 

編集長、盗作だってこと分かってたんじゃありませんか。

 

「…なんでそう思うの」

 

違うって言ってほしかったわーそう聴いてる時点でクロだわー

 

いえね、コンクールの最優秀賞、それも自分のところが噛んでるものを出されたら顔潰れる人いるじゃないですか。

 

だから暫く様子見してたんですが、一向に出てくる気配無し。

 

これって、たぶん編集部だけじゃないんじゃないかなーって。

 

違うなら鼻で笑ってくださいよ、俺にミステリーは無理だって割り切れるんで。

 

「…ゴジラの影響力が予想以上でさ、本誌や単行本の売り上げ凄いよね。アニメに映画もだ」

 

どうも。

 

「だけど他の漫画に対する興味が低くなってるのを危惧した”偉い人”がいるわけ」

 

「ゴジラに並ぶ~っていって出した肝いりの作家も似たような結果、だから仕込みをしろってうるさいんだ」

 

「菊瀬を外して新人つければ、経験の薄い君なら調子崩すんじゃないかって」

 

『うっわ、マジかよ』

 

ひえぇ…

 

「勿論、こっちだって潰れられちゃ困るさ。今までの貯金があれば大崩れはしない、足踏みしてる所で他のをプッシュして整合を取る」

 

「そう考えてた矢先に、彼が来たわけ」

 

会議中、警備員押しのけてでしたか。

 

もうちょいそこらへんを書く方に回してほしかったな~

 

「実際凄い良かったし、問題ないならそれでいこうって話になった…だけどそれが盗作だって分かった時は焦ったよ」

 

「そこを偉い人がご登場、関係者に手回しして読み切り枠で掲載、人気上昇万々歳」

 

「都合のいいスケープゴートの誕生というわけだ」

 

あーあーあーあーなんとも、闇が深い。

 

「娘がまだ学生なんだ、断れなかった…のは言い訳だけど、どうするこのネタ」

 

勘弁してくださいよ、これで手打ちだと決めたんです。

 

…ところで、伊月ちゃんのご両親にも手回ししました?

 

明らかに提訴するの渋い顔されたんですが。

 

「当たり、諭吉さんたんまり持ってったらしいよ。結局受け取らなかったみたいだけど」

 

漫画家なんて安定しない職業、親としては反対したかったでしょうしねぇ。

 

夢からさめて、別の道を…親心ですね。

 

本人には絶対に聞かせられないことを除けばよぉ~!

 

あーはいはい、世の中ブラックで逆に安心ですわ。

 

「どうする、今度はこっちを訴えるか?」

 

だから勘弁してくださいって、墓までもってきますよ。

 

だけど流石にこのままってのは無理なんで、今度の映画で一度切って他誌で再スタートしますわ。

 

「上手くいくかねぇ」

 

最悪は同人誌で自腹切りますんで。

 

まぁ、アレですよ。

 

もし俺がダメでも、誰かがその人のゴジラを始めたのなら。

 

自分の出る幕はありませんし、大勝ちってことで。

 

んじゃ! 来週分は新人クンに渡しましたので!

 

ひとり残される編集長は、ボリボリ頭をかいて。

 

「仕事するか…」

 

 




他誌に移動したのか
10年後には完結したのか
そもそも別の世界線なのか

それは貴方次第…(まるなげ

追加
いや、流石にここで完結はしないよ?
個人的にも後味悪いし


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自分の作画と相手の作画

気分悪い話かと思いますが、二次創作なのでそこらへん描写しなければと判断しました


「あームカつく」

 

炭酸飲料を飲み干して、自分の中の溜まったものを吐き出した。

 

アシスタントの先輩たちは色々とやる事があるらしく、私はこうして先生を待っていた。

 

「アイノさん…!」

 

そこへ来たのは、先ほど怒鳴り散らした佐々木という男。

 

いっぺんぶん殴ってやりたかったが、【意趣返し】は済んでいるので気持ちを落ち着かせる。

 

「なにか?」

 

…語尾が強くなったのは、私の未熟故だろう。

 

「…す、すまなかった、俺は君のホワイトナイトを!」

 

「佐々木先生、やめてください」

 

これ以上聞くに堪えない、さっさと終わらせるのが吉だろう。

 

「ホワイトナイトの連載続行は、私から先生にお願いして条件に出してもらいました」

 

正直な所、裁判云々は必要ない。

 

私に必要なのは、この男への意趣返しによる「禊」だ。

 

「先程はああ言いましたが、私個人としては書いていない部分もよく出来ていたと思います」

 

「ですから、私からホワイトナイトを【託そう】と思いました」

 

「…キツい言い方になったこと、ごめんなさい―――ホワイトナイトをお願いします」

 

頭を下げて、背を向ける。

 

これで―――佐々木哲平の漫画家としての人生は終わった。

 

こちらに向ける視線…安堵、決意、謝意、何かは分からない。

 

しかし、彼は最後まで描き続けなければならない…“藍野伊月のホワイトナイト”を。

 

途中で逃げ出すことは許されない。

 

自分を守ってきた建前が、それを許さない。

 

描いて、描いて、描き続けて。

 

貴方は【自分の作画】を見失う。

 

自分の漫画を描くことは出来なくなる、私の描いた漫画のコピーマシンに成り下がる。

 

自分でやって反吐が出る、だけどそれくらいしないと気がすまなかった。

 

私が危惧したのは、この一件で先生の執筆に影響が出ること。

 

もし盗作であることを公表すれば、今後の連載に支障が出てしまう。

 

全てを丸くおさめるために、佐々木哲平が作者である方が好ましいのだ。

 

名誉なんてくれてやる。

 

利益だって欲しければくれてやる。

 

だから潰れろ、盗作家。

 

バキリと、手の中の空き缶が潰れた。

 

◆◆◆

 

『で、あのJK大丈夫か?』

 

そこなんだよねぇ。

 

どんな形だろうとホワイトナイトが表に出た以上、書ききって欲しい…と言われたのは驚いたけど。

 

暫く、休ませたほうがいいかもね。

 

実写は流れるかもしれんが、ウダウダ抱えるよりスッキリするか

 

『移動の理由はどうすんだよ』

 

ゴジラの作風がジャンプ掲載としてのニーズが合わない…辺りで誤魔化すさ。

 

恩義や義理もある、関係者には自分から説明しに行くよ。

 

しかし、ちょいと佐々木氏におっかぶせ過ぎたなぁ。

 

『コピペ野郎に何言っても無駄じゃねぇか』

 

だからってこっちが不義理していい理由にはならんだろ。

 

…あの場ではあえて流したけど、あれだけの完成度の原稿どうやって手に入れたんだ。

 

コンクールに出したのよりもいい出来だった、佐々木氏が手直ししたというなら個性が出るはずなんだけど。

 

まるで、成長した彼女の書いた漫画を真似たみたいな…はは、SF過ぎるか。

 

「先生ー!」

 

ああ伊月ちゃん、ごめんね気分悪かったでしょ。

 

「もういいんですよ、この話はこれで終わりってことで。それで映画のシナリオはもう出来てますか?」

 

そう、だね…ねぇ伊月ちゃん、正直な所、幻滅したんじゃないかな。

 

結局、何も無かったで済ませたわけだしさ。

 

「今更ですよ」

 

だよねぇ…未成年の高校生だ、これ以上トラブルに関わらせるよりはスパッと終わらせるべきと判断したけど。

 

自分でも薄情だと思うよ。

 

「だから今更ですって。そんなに謝るなら毎週分のジャンプ代ください!」

 

え、もしかして買ってたの!?

 

言ってくれたらあげたのに…

 

「毎週分は結構馬鹿になりませんからねぇ、ちゃんと買うのがファンです!」

 

…ありがとう。

 

頑張らなきゃね、ファンがいてくれるなら…頑張ろう。

 

 




活動報告などにも記載しましたが、本作はまだ続きます。
原作の内容的にも前話含めて書く必要があると判断しました。
気分を害しましたこと、お詫びします


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仕事納めは焼肉がいい

乗るときは乗る、乗らないときは乗らないが私の筆


 

685箇所目の怪獣墓場

「速報」ゴジラとジャンプ決裂

 

686箇所目の怪獣墓場

あらー!?

 

687箇所目の怪獣墓場

えー!

 

688箇所目の怪獣墓場

えー!

 

689箇所目の怪獣墓場

マジかー

 

690箇所目の怪獣墓場

あららー

 

691箇所目の怪獣墓場

これ実写流れね

 

692箇所目の怪獣墓場

たぶん会社側で色々と言ってきそう

 

693箇所目の怪獣墓場

でも作者本人が結構投資してる

 

694箇所目の怪獣墓場

理由はよ

 

はよ

 

695箇所目の怪獣墓場

作者

「友情・努力・勝利が主体となる少年ジャンプにおいて、ゴジラの作風は暴力的過ぎる」

「今後は講○社の少年マガジンにて新シリーズを開始することが決定した事をお伝えします」

「これまで応援して頂いた読者の皆様、関係者の方々に深くお詫びしたい」

 

696箇所目の怪獣墓場

アニメ会社「じゃあ今後はマガジンとやるわ」

 

697箇所目の怪獣墓場

ゲーム会社「ゴジラのゲーム作らせて(はぁと」

 

698箇所目の怪獣墓場

グッズ会社「もっと他にも作らせて」

 

699箇所目の怪獣墓場

集○社「あげません!」

 

700箇所目の怪獣墓場

うるせぇ、買わねぇぞ!

 

701箇所目の怪獣墓場

ホワイトナイトはあるし

 

702箇所目の怪獣墓場

ゴジラが強すぎて他のが霞む、漫画雑誌を殺す作品だ

 

 

 

 

だからゴジラ専用のを作ろう

 

703箇所目の怪獣墓場

ツンデレ乙

 

704箇所目の怪獣墓場

作者、二次創作歓迎してるもんな

 

705箇所目の怪獣墓場

ぼくのかんがえたさいきょうのかいじゅう のサイトにも出没するらしい

 

706箇所目の怪獣墓場

???「いいの出来たらHPか葉書で投稿よろしく!」

 

707箇所目の怪獣墓場

MAD見て爆笑してるんだよなぁ

 

708箇所目の怪獣墓場

映画予告見たぞ!

 

709箇所目の怪獣墓場

ゴジラ、死す

 

710箇所目の怪獣墓場

最強の敵現る!

 

711箇所目の怪獣墓場

たぶん読み切りで出てたアレかな

 

712箇所目の怪獣墓場

ネタバレ禁止!

 

713箇所目の怪獣墓場

そういうのは考察スレでやろう

 

714箇所目の怪獣墓場

実際の所、他誌移動はありだと思う。

マガ○ンは長期連載作品の完結が続いたから、そこに上手くはまるんじゃないかな

 

715箇所目の怪獣墓場

エログロに期待

 

716箇所目の怪獣墓場

作者ならやるという期待

 

717箇所目の怪獣墓場

なんだかんだでメカの造形いいしな、スーパーXシリーズいいぞー

 

718箇所目の怪獣墓場

X1:弁当箱

X2:ター○ル号

X3:期待

 

719箇所目の怪獣墓場

モゲラがイイ線いったんだけどなぁ

 

720箇所目の怪獣墓場

宇宙人のメカゴジラVS地球人のメカゴジラ

 

ファイッ!

 

721箇所目の怪獣墓場

キングギドラもっかい出してくんないかなー

 

722箇所目の怪獣墓場

ゴジラは特撮だから盗作だ

 

723箇所目の怪獣墓場

(特撮)出来てねぇんだよ!

 

724箇所目の怪獣墓場

あったら見てるんだよなぁ

 

725箇所目の怪獣墓場

ちくわ大明神

 

726箇所目の怪獣墓場

誰だいまの

 

◆◆◆

 

えーでは、マガ○ンへの移動成功&菊瀬編集と新人くんの転職成功を祝いましてかんぱーい

 

「「「「「「かんぱーい!」」」」」」

 

恒例となった焼肉屋にて、アッシーズと菊瀬編集に担当してくれた新人くんを呼んで祝うことになった。

 

今更だけど良かったの? こっちとしては助かるけど。

 

「あいつらの面を拝まずに済むなら万々歳だ、やり甲斐のある仕事もな」

 

「ご迷惑かけた分、少しでもお返ししたいんです! あと近くでゴジラ読みたい!」

 

う~ん、編集者の極みぃ

 

とりあえず付いてきてくれたアッシーズにも感謝を。

 

というわけで肉食って飲もう。

 

「タン塩!」

 

「豚トロ!」

 

「上ロース!」

 

「あ、烏龍茶くださーい」

 

おうアッシーズ、後輩の謙虚さを見習え。

 

『お前らだけずりぃよ…』

 

所詮は幻覚よ…

 

『うるへー!』

 

おっと、そういえば皆には話してなかったけど月刊誌にも出す話が出てるんだ。

 

そこで外伝としてモスラ、ガメラを書こうと思ってる。

 

で…だ、一枠だけ読み切りとして推薦状を貰っちゃったわけなんだけど。

 

出したい人、いる?

 

「「「「ガタッ」」」」

 

おーけ、みなまで言うな。

 

珠玉の読み切り、見せてくれな。

 

 




胃腸がね! 脂がね! 受け付けないの!


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最後までやるのが筋だ

お久しぶりです

たぶんあと2話か3話くらいですね


 

連休で家に篭ってる伊月ちゃんの様子を見に来たんですが。

 

『なにこれ、オーラが出てる』

 

うん、なんかこう澱んだダークなオーラが部屋の前から漏れ出てるよ。

 

周りに人がいないかだけ確認。

 

そーれ、ピンポーン。

 

伊月ちゃーん、生きてる、よねー(汗

 

『救急車呼ぶ準備だけしとくか』

 

「あ~い」

 

生きてはいるようだ、ゾンビみたいな声してるけど。

 

しつれーします。

 

 

……

 

………え、ここJKの部屋だよね?

 

『うっそだろ、最低限の家具しかねぇぞ』

 

ミニマリストでござったかー

 

伊月ちゃんは…あらら、なんて色気のない格好で突っ伏してるんだか。

 

ちょっとー嫁の貰い手無くすわよあんた!

 

「そのときはせんせーもらってくださいよー」

 

馬鹿言ってないでほら、牛丼買ってきたから食べなさい。

 

「ごはん!」

 

モリモリ食べる伊月ちゃんを横目に、書きかけの原稿を覗く。

 

うん、相変わらず流石の書き込み料。

 

Gペンじゃなくて、ペンタブの方がよくない?

 

『紙とインク代も馬鹿にならねぇしなぁ』

 

「いやー慣れてる物が一番いいというか、中々切り替えられなくて」

 

そこは個人の好き好きだしねぇ(パラパラ

 

あーやっぱり怪獣漫画に近いか。

 

「う、マズイでしょうか」

 

いやいや、他のアッシーズもこんな感じだしね。

 

…最近思うよ、描きたい漫画と売れる漫画は違うって。

 

今更別方向にーってのは、うん、無理だね、勇気が出ないや。

 

「―――先生、どうしてガメラやモスラも描こうって気になったんですか?」

 

いきなりどしたの。

 

「だって先生、考案やネタ帳だけでそれ以上描こうとしなかったし、なんでかなって」

 

………出てきてくれないかなぁって。

 

「誰がです?」

 

原作者。

 

「原作者って、ゴジラの!? 居るんですか!」

 

『いるぜ! 別の世界にな!』

 

いやまぁ、うん、そうね、うん。

 

いるなら、知ってるなら、名乗り出て、教えて欲しいんだよね…名前。

 

分からないんだ、これが。

 

肝心の名前を聞こうとしても、ノイズが走って分からなくなる。

 

キーボードやら絵の頭文字、果てはモールス信号まで試した。

 

なのに、何故か途中から認識出来なくなる。

 

他の人に頼んでも同様、まさしくオカルトだ。

 

盗作扱いなら、それでいい。

 

裁判だろうがなんだろうが受けるべきさ。

 

これ以上、このコンテンツを自分のオリジナルだと言い張るのは、しんどい。

 

佐々木さんの事を私はどうこう言えないんだよ。

 

私は…私たちは幽霊(ゴースト)書き手(ライター)なのだ。

 

名誉を独占するのは、許されない。

 

『…』

 

「もし、もし現れなかったら、どうするんですか」

 

事実を公表しようかなぁ、あはは連載ストップで漫画界追放かも。

 

「それはダメですよ」

 

ダメかな。

 

「ダメです」

 

どうして?

 

「だって【ゴジラを実写化】してないじゃないですか」

 

「先生が言ったんでしょ、夢は実写化だって」

 

「筋を通してください、最後までやりきって作品に向き合う…それが先生の責任です」

 

筋、か。

 

そうだね、うん。

 

書ききるのが、筋だ。

 

ねぇ伊月ちゃん、こんな感じに言われて恐縮なんだけど。

 

「はい!」

 

ウルトラマン見たでしょ? たぶんアレが最有力だわ悪いけど。

 

「んぎゃー!」

 

作業机に突っ伏す伊月ちゃんに、めんごめんごと。

 

筋、うん、筋だ…ちょっくら、様子見に行くかね。

 

今週号の、読者人気が下がったホワイトナイトのジャンプを手に取る。

 

一度、本気で話してみよう。

 

 



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いきなり消える奴がいるかよ

どうぞ、お収めください


 

見つけるのは苦労しなかった。

 

集英社からの帰りか、日が傾く中で相対する。

 

コケた頬、目の下の隈は深く、明らかに生気の感じられない表情。

 

どうも佐々木先生、コーヒーでもどうです?

 

近場の公園のベンチで、缶コーヒーのプルタブを開ける。

 

なんとなく暖かいというよりはぬるいって感じ、寒くなれば変わるだろうか。

 

「…何の用、ですか。連載はまだ」

 

ええ、拝見させて貰いました。

 

技量云々ではなく、単純に興味を惹かれない。

 

アレが、貴方の「ホワイトナイト」なんですね。

 

「ッ…」

 

我ながら嫌な言い方だ、正直自分でもどうかと思う。

 

だが、たぶん、今を逃せばきっと聞けないだろう。

 

あえて問わなかった疑問を、投げる時だ。

 

佐々木先生、「ホワイトナイト」の原稿を「参考」にしたのではなく、「模写」したのだと確信しました。

 

どうやって手に入れたんですか、その、本来書かれてないはずの「藍野伊月」さんの作品を。

 

ベンチに座り、暫くの間空き缶を見つめ続ける佐々木氏。

 

…実はですね、私も0からゴジラを生み出したわけではないのですよ。

 

互いに執筆の秘密を抱えている同士、暴露もまたアイデアの一つではありませんか?

 

沈黙から数秒、あるいは数分、夕焼け空に黒点となる烏の鳴き声だけがBGM。

 

「タイムマシンだよ」

 

ほう?

 

「落雷で電子レンジがタイムマシンになって、未来のジャンプが出てきたんだ」

 

「それでホワイトナイトを読んで、俺はそれを模写した」

 

「………もう出てこないけどな」

 

壊れたのか、壊したのか、判断はつかないが。

 

タイムマシン、なるほど面白い。

 

未来からの贈り物、つまり現在…未来からの過去を観測する存在がある。

 

うん面白い、これはいいネタだ。

 

某潜入ゲームにもあったが、過去を変えたことで未来が変化するタイムパラドックス!

 

今度使ってみよう…どうしました、そんな驚いた顔して。

 

「信じるのか…?」

 

疑ってどうするんです、しかし面白いですね是非読みたかった。

 

ホワイトナイト以外の作品も気になりますね、おっと今度はこちらの番だ。

 

そして語る。

 

自分にしか見えない幽霊の存在。

 

そこから得た情報を基にゴジラを描いたこと。

 

別の誰かが作った話を、自分のものにしたゴーストライターであること。

 

どうです? 私も大して変わらな…「自慢かよ…」はい?

 

「なにが幽霊だ! ただ、ただ自分の”想像”から生まれたのなら、それは自分のものじゃないか!」

 

「あんたに分かるのかよ! 才能のない俺の気持ちが、あるあんたに分かるのかよ!?」

 

「特定のジャンルに逃げるだけなのに、それも出来ない俺は哀れか! ふざけんな!」

 

空き缶を地面に叩きつけ、走り去る佐々木氏。

 

それを見送る自分。

 

自慢? 才能?

 

………ああ、なるほど、そう捉えられる所もあるのか。

 

俺は何がしたかったんだ?

 

ただ秘密を吐き出したかったのか?

 

同類だと思い込んでいた彼に、糾弾してほしかったのか?

 

…………馬鹿馬鹿しい、何もかも自分勝手が過ぎる。

 

『ゴジラが見たかった』

 

幻覚…?

 

『好きなんだ、子供の頃に見てからずっと…でもこっちには無かった』

 

『誰にも知覚されず』

 

『誰にも干渉できない』

 

『そんな中で、ただ一人だけ声が聞こえるやつがいた』

 

『そいつ通して、世界が見れた気がした』

 

『そのための手段に、大好きなものを利用した』

 

『違うんだ、俺は作り手なんかじゃない』

 

『ただかつてあった世界への縁を求めて…』

 

『その為だけに、大好きなものを勝手に使ったんだ』

 

『でも、それでも俺は―――』

 

風が吹く。

 

空気を切り裂く音が、鼓膜を叩き、咄嗟に目をつぶってしまった。

 

聞こえない、煩わしいと思っていたあの声が。

 

見えない、顔もあやふやな半透明の物体が。

 

消えてしまった。

 

おい幻覚…おい。

 

語りかける声は虚空に消え、返す者など何処にもいない。

 

なんだよ、いきなり現れたくせに。

 

まだ、望みが叶っていないのに。

 

いきなり消えるやつがいるかよ。

 

 




竜頭蛇尾どころか終始ドジョウでありますが、それでも一応完結させるべきと判断しています
ご不満に思われる方もいらっしゃると思いますが、次の最終話までお付き合い頂ければ幸いです。

※ヒカ○の碁って言っちゃあかんぞ!


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とりあえず、見ますお隣さん

最終回っす


 

625体目の人類の敵

えがった…

 

626体目の人類の敵

えがったわぁ…

 

627体目の人類の敵

監督の拘りとキャストの熱演もえがった…

 

628体目の人類の敵

ゴ ジ ラ の 着 ぐ る み 超 欲 し い

 

629体目の人類の敵

それな

 

630体目の人類の敵

ほんそれ

 

631体目の人類の敵

わーお、海外でも大反響

 

632体目の人類の敵

今の時代の技術を総動員して作られたゴジラやぞ!

 

633体目の人類の敵

これは波が来るで工藤!

 

634体目の人類の敵

駄作も増えるってことだぞ工藤!

 

635体目の人類の敵

なにそれも味がある

 

636体目の人類の敵

「悲報」作者ハリウッドシナリオ協力断る

 

637体目の人類の敵

え!?

 

638体目の人類の敵

なんで!

 

639体目の人類の敵

あーほんまや、結構騒いでる

 

640体目の人類の敵

ハリウッド「ゴジラ作らせて?」

作者「ええで」

ハリウッド「シナリオ作って?」

作者「嫌や」

ハリウッド「!?」

 

641体目の人類の敵

「ゴジラというコンテンツをアメリカの映画会社が造るというのなら、それは私が手がけるべきではない」

「私は日本のゴジラを作りました、アメリカのゴジラを作れるのは皆さんだけです」

「楽しみにしています」

 

642体目の人類の敵

これは、挑発?

 

643体目の人類の敵

というより激励やろ、自分で作るんやったら自分でキッチリ作れやってことや

 

644体目の人類の敵

いけるいける、ジュラ○ックパークも出来たし!

 

645体目の人類の敵

最初以外パッとしないシリーズなんですがそれは

 

646体目の人類の敵

集○社涙目wwwうぇwww

 

647体目の人類の敵

アレはしゃーない。

 

648体目の人類の敵

これからが大変だぞ!

 

649体目の人類の敵

アニメ映画だけでも三つある!

 

650体目の人類の敵

そこからアニメ版をピックアップや!

 

651体目の人類の敵

グッズ買い占めなきゃ

 

652体目の人類の敵

出たなテンバイヤー!

 

653体目の人類の敵

恥を知れ恥を!

 

654体目の人類の敵

急報「作者倒れた」

 

655体目の人類の敵

は?

 

◆◆◆

 

「盲腸ですね」

 

はぁ、盲腸。

 

実写映画の上映開始から暫くして、インタビューを受けていたら突然の腹痛。

 

食い合わせが悪かったのかと冷や汗を流していると、医者から告げられた事実。

 

盲腸、具体的にどういうものかは知らないが滅茶苦茶痛かった…

 

薬で炎症を抑えてから手術をするらしい。

 

いやぁーアッシーズ、すまんね心配かけちゃって。

 

「勘弁してくださいよ…」

 

「寿命縮みましたわ」

 

「いやぁ、でも救急車って初めて乗りましたよ!」

 

「仕事道具持ってきました」

 

働けと申すか!?

 

いや、まぁ、暇つぶし的に描くのは有りか。

 

「おっと、先生コレ!」

 

え、なにこのブルーレイ。

 

「特別にってことで、実写ゴジラ焼いてもらいました!」

 

わーお。

 

ありがと、暇になったら見るよ。

 

 

……

 

………暇になっちゃったなぁ。

 

「だからさー!もう行けるって!ゴジラ見に行かせてよ途中から記憶切れちゃって気になるんだってばー!」

 

なんだ、この聴き慣れた声は…

 

病室の扉が開け、車椅子を押された青年が入ってきた。

 

互いに視線を交わし、特に語ることもなく。

 

とりあえず、見ますお隣さん。

 

「おう、頼むわ」

 

《ギャーンゴーン グワワァン》

 

.




はい、感想でも厳しいコメントを頂きましたが、この通り畳むことにしました。
最初の頃の勢いが無くなり、結局オリジナルで書いたほうがマシだったのでは?と
思い始めた辺りから執筆意欲が薄れてしまっていました。
期待してくださった皆様には、大変申し訳ありませんでした。
今後も創作活動を続けていくつもりですので何卒よろしくお願いいたします


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