テイワット旅紀行 (青い灰)
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プロローグ



天理「なんだこいつ……(ドン引き)」

計150連して星5キャラいないのです。
厨二皇女と空飛ぶ非常食すき。





 

 

 

いつの間にか、落ちている感覚。

 

目を開けるどころか、全身が存在しない。

まるで、質量のない魂だけが落下しているような。

 

形容するならばそんな感覚だ。

そしていつも、この感覚の後には─────

 

 

 

「いってぇ!!?」

 

 

 

頭から、地面に突っ込む痛みが来る。

それが堪らなく痛くて、生きているのを実感する。

 

 

………記載しておくが、断じて被虐気質ではない。

 

繰り返す。

 

 

 

俺は断じて被虐気質(ドM)ではない。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「あークソがよ、()()する時の

 頭から着地どうにかなんねぇのかよ……」

 

毎回起こるその事象に思わず溜め息をつく。

柔らかな砂だったので衝撃と痛みは薄いが、混じる小石が地味に痛いんだ、これ。冷たい雪に突っ込むとかよりは遥かにマシではあるけれど。

 

「いつもの現在地の確認はー、っと………」

 

立ち上がり、周囲を見渡してみる。

ここは水辺のようで、落ちた場所は砂浜のようだ。目の前には広大な水…これは海だろうか。周りは切り立った崖に囲まれていて、後ろには丘へと続く道がある。舗装されているのを見る限り、文明はある。

 

「道があるからと言って意思疎通できる

 人間がいるとは限らないしなぁ…………」

 

以前、ワニみたいな種族に追い回されたことを思い出す。連中怖かった。言葉分からないのに攻撃してくるし仕方なく殴ったらまた追いかけてくるし。

 

「言語機能働いてますかねー、この世界。

 それはそれとして、これ海なのかな………

 潮の匂いするし……青いし………海だよね?」

 

目の前に広がる美しい海原を見ながら腰を下ろし、両手で水を掬って水質確認、その指を舐めてみる。あっ塩の味、絶対これ海ですやん。よく見れば魚もいるし。

 

「あーそうだ、剣は………ん?」

 

御用達の絶対に折れない愛剣を取ろうと腰を探る、……………えっマジで?愛剣ちゃん無いんだけど。丸腰だと原住民とかいたら死ぬよ?多少殴れるけど刃物使われたら結構死ぬよ?

 

慌てて全身を探ってみると。

 

「えっ?」

 

愛剣は、右手にあった。

特に装飾のない簡素な形状で、刀身は1mほどの剣。

しかし、その刃は狭く、柄は長い。

片手、両手のどちらでも使える便利な代物。

……………しかし、そんな見慣れた愛剣はともかく。

 

「……………どっから出てきた、これ」

 

遂にボケが回ってきたか、と頭を抱える。

あれか、リモコン握ったまま

『リモコンどこやったっけ? あっ持ってたわ』

的なあれか? 剣だぞ有り得ねえだろ。

 

「…………あれっ?」

 

そして、手から剣が消えたことに気がつく。

更に、背中にその重みが来ていることにも。

そして、1つの仮説に行き着く。

 

「…………えっ、これは……えっ? まさか……」

 

剣くん出番だよー。

 

「っとぉ!?」

 

瞬間、背中の剣の重みが消えたと思うと、凄まじい

速度で光の粒子が手の中に収束、愛剣を形造る。

そして、抑え難い興奮が爆発する。

 

 

「なにこれすっげぇ! フォースか!?

 遂に俺ちゃんにもフォースが宿ったのか!?」

 

 

剣を納める、そう意識すれば剣は光の粒子となって手の中から消え失せ、背中に剣を形造る。

 

「いやすげぇなこれ………これは……あれか?

 原始的な世界に見せかけて……超科学的な。

 いやただのファンタジーな世界っつー可能性も

 無きにしも非ずだな………どうなんだろう」

 

これが普通、という可能性もある。

普通なことで興奮しているのは他人から見て完全に

ヤヴァい人でしかない。クールになるんだ。

ていうか、今まで世界移動で便利な力が手に入った

試しはないし、これが普通なんだろう、この世界。

 

「うん、虚しくなってきた。

 やめよう。早く順応しようぜ俺ちゃん」

 

 

立ち上れば、海の水面に自分が映る。

 

 

 

 

背中には白くシンプルな片手半剣。

 

獣革から作られた動きやすいポケット多めの旅服。

 

パッとしない灰色の髪に黒い眼。

 

そしてこれまたパッとしない顔立ち。

 

 

 

「失礼な………パッとしてろよ」

 

 

 

そんな自分で自分に突っ込みを入れるくらい孤独に

慣れてしまったが、まぁ今回も死なないように。

 

 

「諸国漫遊、もとい、諸世界漫遊。

 男ウーシア、今日も今日とて未知の世界へ!」

 

 

拳を掲げて、丘を登る。

こうして、いつもの旅が始まる。

 

 

 

 

 

 

知らない世界、知らない文化、知らない力。

 

幾つもの世界を経たとして、

〝未知〟とは決して無くなりはしないもの。

 

なら見に行こう、知りに行こう、気の向くままに。

世界を旅して、知らないものを見に行こう。

 

 

それが、俺の存在意義だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風が気持ちいい………

 おっ、城が見えるな。行ってみるか!」

 

 

 

色褪せぬ景色を見に行こう。

世界を、時間を、次元すらも越えて。

 

 

 

 



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1話


嬉しいことに早速感想を頂きました。
そして単発教に入信し、キャラ当たればいいな
感覚で10連だけ単発で引いてみました。

……単発10連目で初星5、珊瑚宮心海、引けました。
感謝感激雨霰。もう二度と10連で引きません。
感想くれた方……本当に……
本当に……『ありがとう』……
それしか言う言葉がみつからない………





 

 

 

 

 

どうにもこの世界は自然が豊かでいい。

 

 

 

 

 

「しかし、まぁ………!」

 

丘を下っていると、謎の種族に囲まれた。

数は5、持っている武器は近くの3体は棍棒、遠くに(いしゆみ)が2体。仮面をつけた原始的な種族だ。

 

「面倒だな……こいつら殺して良いのか?」

 

どうやら言語で仲間とコミュニケーションを取っているようだが、当然理解することは出来ない。

襲ってきたのは事実だ、背中の剣に手を添えたまま相手の様子見に徹する。

もしも、この世界の住民だとしたら面倒だ。

襲ってきた理由も不明だ、こちらに非があったかも知れないし、あちらの本能かも知れない。

 

「ヤーーッ!」

 

「っ、と!」

 

遠くの高台にいる奴が何かを叫ぶ。それと同時に、もう一体の奴が弩を発射してくる。速度はそれほどでもないし、髪を掠ったが銃弾よりも威力はない。ただの弩だ。目視してからの回避も十分間に合う。

 

「「「ヤーッ!」」」

 

だが、こちらを囲んでいる奴等も棍棒を掲げて叫び

始める。これは不味いかもしれない。

 

剣を掴み、正中に構える。

 

 

「……死んだら悪く思えよ!」

 

 

面倒だし、とにかく黙らせるしかない。

 

 

 

 

 

 

先手必勝、目の前の棍棒持ちに接近。

 

「おらァ!!」

 

「ガッ!?」

 

薙ぎ払う剣の腹で殴り飛ばす。

どうやら意外と軽いようで、きりもみ回転しながら派手に吹っ飛ぶ様は爽快だ。そのまま追撃、倒れたそいつの頭を踏みつけて仮面を砕き割る。

しばらくは動けないだろう。……死んでないよね?

 

「し─────ッ!」

 

風を切る音、振り向き様に剣を振り抜き、飛翔してきた弩の弾であろう削られた石矢を斬り砕く。

そのまま振り抜く勢いを利用して身体を回転させ、再び追撃してきた石矢を弾き飛ばす。

 

「ヤァ゛ッ!?」

 

「中々に良い精度してる弩だ、

 俺も欲しいけどボルトが粗雑すぎるかな」

 

構造を遠目に見る限り装填は簡単そうだが、発射音大きいし、そこまで弾速もない。直撃したら痛そうだが、それも避けるか迎撃でどうにかなる。

 

「よ、っ!」

 

「ャアッ!?」

 

足元に転がってる奴を棍棒持ちの片方に蹴りつけ、もう片方へと走り出す。一々反応が面白い。右手の剣を両手に持ち変え、怯んでいるそいつの顔面へと剣の腹を上から叩きつける。

仮面に亀裂が走るが、まぁ威力は抑えたつもりだ。

 

「ヤァァッ!!」

 

「おっと」

 

仲間を蹴りつけられたせいか、怒り狂う敵が棍棒を振り上げて跳びかかってくる。動きは単調、多少の技術力はあるが、知能はそこまで高く無さそうだ。

 

だが仲間との会話能力や、高台を見る限り、どこか原始的な人のようにも見える。仮面は人間が作った文化で、自らの正体を隠す他、神を降ろしや神宿しという宗教的側面も兼ねている。

 

だが、こいつらの仮面の素材は砕ける音や色調から見るに、おそらく骨だろう。骨を加工する技術力、身に付けている装飾は明らかに人工物だ。装飾品をつけるような知能は持っているように見えないが……人の面影が多すぎる。

 

(まさかねぇ………)

 

思いついた仮説に目を細める。

もしそうだとしたら普通に気持ち悪い。

今までも仮面の連中や仮面に関わるとロクなことが

なかったし、現に今もこうやって襲われている。

 

「オラ寝てろ!」

 

「ギャァッ!」

 

剣の腹で敵を殴り飛ばす。

だとしたら楽に(ころ)しても良いのでは?

…………やっぱりまだ原住民説もあるので却下。

 

「ヤーーッ!」

 

「ちっ、うざってぇな弩持ちぃっ!」

 

そう叫び、剣を片手に高台へと走り出そうとした時だった。遠くから弓の弦の音、風切り音が聞こえ、高台の上にいた敵を射抜く。

 

■■■(大丈夫)!?」

 

高い声。

その方向から更にもう一本の矢が飛び、高台の上にいたもう一体を射抜く。だが、まだ倒れていない。接近し、足で頭を押さえつける。

どこかで聞いたことのある言語と発音だ。

 

「良かった、無事みたいだね……

 風神のご加護があらんことを」

 

声のした方へ視線を向けると、大きな赤いリボンをつけた少女がそこにいた。手には弓を持っており、間違いなく先ほどの矢は彼女によるものだろう。

言語は確か、こんな感じだっただろうか。

 

「あー、あー……言語ってこれで合ってる?

 助かった、ありがとう」

 

「いえいえ、西風(セピュロス)騎士団の役目だよ。

 それより言語って……間違ってはないけど……

 もしかしてモンドの外から来たの?」

 

 

聞き慣れない言葉が飛び出す。

せぴゅろす騎士団、もんど……………モンドはあの国の名前だろうか。だとして彼女はそこの騎士か。

 

彼女の言葉に肯定の頷きを返す。

 

「あぁ、そうなんだよ……言葉が通じて良かった。

 ここはモンドって名前の国なのか」

 

「えぇ、そうよ。

 わたしは西風騎士団の偵察騎士、アンバー。

 何か身分を証明できるものはある?」

 

「無いな」

 

「えっ」

 

「身分を証明できる物は無いな」

 

「……………うーん、困ったな……

 取り敢えず名前を聞かせてくれる?」

 

「ウーシア。しがない旅人だよ」

 

 

いつもの。

本当にしがない旅人だし。

 

 

「ウーシア……旅人? 最近は多いなぁ」

 

「ん? 最近も旅人がいたのか」

 

「うん、モンドを救った栄誉騎士がね。

 今はテイワット中を旅してる筈よ」

 

「へー、国の救世主か。

 俺ちゃんにゃ無理な話だわなぁ」

 

「あっ、なにも旅人の全員に

 そんなことを求めてる訳じゃないからね?」

 

「分かってるって、ただ凄いな、と。

 本当に俺ちゃん何の力もない只の旅人だしね」

 

「その割には……………」

 

アンバーと名乗った少女の苦い顔が、痙攣している奴等へと向けられる。未だに動く気配はない。

 

 

「ヒルチャールを大した傷も無しに

 1人で半分以上を倒しちゃうなんて……」

 

「ヒルチャールって言うのか、こいつら。

 襲ってきたから迎撃したけど殺していいのか?」

 

「うん、まぁ幾らでも湧いてくるし……

 倒してもいいけど、深追いしないようにね」

 

(……ヒルチャールのことまで知らないなんて……)

 

 

そんな小声が聞こえてくる。

凄い疑われてるみたいだが、まぁ仕方ない。

本当に身分証明なんて出来ないし、別世界から来た

なんて言えば間違いなくヤバい人扱いされる。

 

しかも今話している相手は少女とはいえ、騎士だ。

弓持ちでも近距離迎撃手段がないとは思えないし、

最悪、戦闘になるのも覚悟しておかないと。

 

そういえば彼女はテイワット、と言ったか。

その旅人とやらの話の流れからして、この世界か。

勿論聞いたことのない世界だ。先手を打つか。

 

 

「ここがテイワットって言うのなら……

 多分俺、テイワットの外から来てるぞ」

 

「……本当に?」

 

「まぁ信じるか信じないかは勝手だけど、

 モンドやらヒルチャールやらは全く知らない。

 つーか、テイワットを全く知らないし」

 

「まさか……記憶喪失?」

 

「そう疑うのも分かるけど…………まぁ

 似たような感じか。それで良いんじゃない?」

 

「…………………色々と気になるけど。

 あなたを騎士団に連行します、悪く思わないで」

 

「適切な対処だよねー」

 

 

まぁ当然ですか。

 

 

 






赤リボン……少女……うっ、頭が……
3デブ周回………放射物理27.2……刺突32.6……

全て……長い夜の夢だったよ………



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2話


過労死する前にジン団長と賢王とタカキは休んで。
ジン団長にアイスティー飲ませる(迫真)。




 

 

 

「ほへー、ここがモンドか………」

 

連行とは言ってもアンバーについて行くだけだったので、普通に拘束されないままで、モンドまで来てしまったが。

長い橋を渡り、高壁に囲まれた城らしい城だ。

 

「自由の国モンドへようこそ。

 こんな形じゃなければ良かったんだけどね」

 

「自由の国、ねぇ。

 俺も自由にさせて貰いたいなー。

 まぁ仕事だろうし責めるつもりはないけどさ」

 

「すぐに自由にさせて貰えると思うよ。

 モンドは西風騎士団が管理してるから、

 ジン団長から許しを貰えば、あなたも自由だよ」

 

「へぇ……王じゃなく騎士団が管理してるのか?」

 

「うん、話せば長くなるけどね」

 

町は活気があり、人々も笑顔が多い。

平和そうで何よりだが………竜巻か何か災害の起きた後のような感じがある。片付けをする人々も多い。

 

「…………ふーん」

 

「おやおや、アンバー。また旅人か?」

 

「ん?」

 

「あっ」

 

声をかけてきたのは、路地から出てきた青髪の男。

どこか不思議な雰囲気の男で、アンバーやモンドの人々とは何かが違う感じがする。

 

「ガイア先輩! 確かにそうなんですが………」

 

「ふーむ………見ない格好だ……

 ただの旅人では、ないだろうな」

 

「さぁ? 本当にただの旅人だったら?」

 

「ハハハッ、そりゃ傑作だ……なんせ最近は

 色々と物騒なもんでな………モンドだけじゃない、

 瑠月(リーユエ)も稲妻も少しピリついてるんだ。

 そして渦中にいるのが、あの旅人だったからな」

 

「ほー………栄誉騎士って旅人か。

 別国でも凄いことしてるみたいだけど、

 俺ちゃん本当にただの旅人なんだけどなぁ」

 

ガイア先輩、ね………勘良さそうでめっちゃ怖い。

まぁ別にバラしても良いんだけど、信じるかどうかって話なんだよな…じゃないとヤバい人扱いだし。

対人関係で印象が悪いと色々と困る。

 

「テイワットの外から来たなんて言ってる

 旅人がただの旅人な訳ないでしょ……………」

 

「ほーう? テイワットの外から………

 面白い冗談、とも取れるが、

 そいつの真偽は確かめないといけないな。

 お前さんがテイワットの言葉を

 話せるのも考えてみればおかしいだろう?」

 

「あっ……!?」

 

「言語が同じ、って可能性もあるだろ?

 話を聞く限り、2人ともテイワットの

 外を知らないようだしな」

 

言い逃れもそろそろ限界かな。本当なら連行された先で騎士団の団長にだけ明かそうと思ってたけど。

ガイア先輩めっちゃ怖いなー。

 

「はいはい2人ともそこまで!

 話はジン団長に聞いてもらいます!

 ガイア先輩も、そ、尊敬すべき旅人さんを

 煽るようなことを言うのはやめて下さい!」

 

「おっと。こりゃ失敬、()()()()()()()さん」

 

「なんで急に尊敬するんだ………」

 

「『騎士団ガイド』だよ。遅れたが、俺はガイア。

 騎士団じゃ騎兵隊長をしてるんだ。

 名前を聞かせてくれるか、尊敬すべき旅人さん」

 

「ムズ痒いからやめてくれよそれ……

 ウーシアだ。よろしく、ガイア先輩」

 

取り敢えず信用を得られるようにと手を差し出す。それに、ガイアは笑みを顔に貼り付けたまま握手を交わしてくれた。まぁこれで信用はされないか。

 

「俺も騎士団に行く所だったんだ。では行こう」

 

「はぁ………」

 

「騎士団も大変そうだな」

 

疲れた様子のアンバーに、そう皮肉る。

現に疲れさせている原因に聞かれた彼女は苦い顔をして頷き、ガイアがけらけらと笑う。

 

「騎士団は仕事が多くてな。

 大部分は遠征に出ていて人手不足なのさ」

 

「私たちが言ったジン団長も本当は代理団長なの。

 でもジンさんは少し働き過ぎな所があって…….」

 

「仕事人間なのか……怖い人じゃないといいなぁ」

 

「ジンさんは良い人だからそれは大丈夫!

 あなたが悪い人じゃないなら、だけど」

 

「悪いことはしてないから大丈夫だな!」

 

 

 

そうして、騎士団へと向かう。

途中、ガイアの視線が凄かったが気にしないようにした。疑われ過ぎだろ………

 

 

 

 

 

 

 

 

騎士団本部は大きな建物だった。

近くに見えた聖堂も大きかったが、それに並ぶほど大きい。流石はモンドを管理している騎士団だ。

 

中に入ると、2人の女性が待っていた。

片方は魔女のような見た目のとんがり帽子の女性、もう片方はキリッとした顔立ちの金髪の女性だ。

 

「今戻ったぜ、代理団長殿」

 

「ただいま戻りました、ジン団長!」

 

「あぁ、よく戻った」

 

それに頷くのは金髪の女性。

多分、彼女がジン代理団長だろう。彼女はこちらへ視線を向けてくる。

 

「そして君がウーシア、で合っているか?」

 

「合ってるよ。それにしても耳が早いことだ」

 

「彼が他の騎士に伝えてくれたからだ」

 

「ん?」

 

彼、というのはガイアしかいない。

そちらへ目を向けると、彼はヘラヘラとした笑いを浮かべたまま「やれやれ」と首を振る。

 

「任務中、怪しい奴がいたからな。

 悪いが尾行させて貰ったぜ」

 

「えっ!? そうだったんですか!?」

 

「いつからだよ………」

 

「お前がヒルチャールに襲われる前だな」

 

「着いた瞬間からかよ………」

 

こりゃ()()の瞬間も見られたかもな…………

ちっと不味いかもしれないな。

つーかアンバーも気付いてなかったのかよ……

 

「じゃあ俺は任務に戻らせて貰うとしよう」

 

「あぁ、頼んだぞ」

 

そしてガイアは踵を返して本部から出ていく……………そのすれ違った瞬間に、耳打ちされる。

 

(何もない所から出てきたのは黙っておいてやるよ)

 

(…………ありがとう)

 

「ハハハッ、じゃあな」

 

口だけ動かして礼を言うと、彼は笑いながら去っていった。怖すぎんよ……完全に見られてたし。 

 

 

「さて、早速だが話を………」

 

「ジン、仕事を急ぐのは分かるけれど、

 自己紹介くらいはしたらどうなのかしら?」

 

「あぁ、そうだったか………すまない」

 

……………しかしまぁ、大分疲れが見えるな。

団長の目には隈が酷いし、身体は強張っている。

見た所、3日は寝てねぇな……

何度もワーカホリックを見たことがあるが、奴等と似たような感覚だ。国のため、誰かのために、そういった意思をひしひしと感じさせる。

 

 

「では、改めて自己紹介をさせてもらおう。

 西風騎士団、代理団長のジン・グンヒルドだ」

 

「西風騎士団、図書司書のリサ・ミンツよ」

 

「…………俺はウーシア。しがない旅人だ」

 

 

 

 

「では、話を聞かせてもらいたい。

 君の素性を少しでも、明らかにするために」

 

 

 

 



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3話



嫌な予感がしたので原神世界における
大剣の大きさを計ることにしました。
(クソ長いので興味無い方は読み飛ばし推奨)


成人女性の平均身長158cmに対して調べてみた所、
ノエルの身長は158.8cm。

実際の平均女性の頭身は7.2頭身ですが、
ノンフィクションにおける比率で、女性は6.5頭身。
平地でのスクショにおけるノエルは6.2頭身でした。

ノエルの頭高を求めます。
158.8 ÷ 6.2 = 25.6129032258。
微妙な所ですが四捨五入して約26cmとします。
(ちなみに実際の日本人女性の平均頭高は約22cm)


それを利用して『西風大剣』(公式ノエルが装備)、
『訓練用大剣』(全大剣で平均程度の大きさ)の
刀身をスクショを利用して計算します。

結果は『西風大剣』は5.25頭身、
  『訓練用大剣』は5頭身でした。
これと頭高を利用して刀身を求められます。


26 × 5.25 = 136.5(西風大剣)
26 × 5 = 130(訓練用大剣)




つまり、原神世界における大剣は130cm程度です。

実際の両手剣(ツーハンデッドソード)のサイズは
120~180cm(Wiki調べ おそらく全長)なので
柄も含めれば丁度の大きさですね。

主人公の片手半剣の刀身は120cm、
もうこの時点でアウトですね、はい。

ちなみにWikiで調べてみると、片手半剣を
ロングソードと同一視した場合、刀身は90~110。
(ダメじゃねぇか)


編集してきます。
ノエルさん御協力ありがとうございました。




追記
武器はキャラによって大きさ変わるんすね………
感想で教えてくれた方、ありがとうございます!





 

 

「それで……身分を証明できるものはないと?」

 

「悪いけど無い」

 

それから騎士団に身体検査を受けた後、ジン団長に連れられて、小さな部屋に入る。テーブルを挟んで向かい合わせの椅子があるくらいだ。尋問室かな?尋問室だろうなぁ………

 

「そうか………取り敢えず座ってくれ」

 

「はいよ」

 

椅子に座る。ちなみに身体検査の時に旅の思い出は没収されてしまった。ちょいとだけ腹立ちはするがこればかりは仕方がない。後で返してもらえるよう取り合ってみますかね。危険物じゃねぇし。

 

「本来の旅人への対応ではないんだが……すまない。

 しかし、テイワットの外から来たという

 君の言葉を疑うわけではないんだが、

 モンドの西風騎士団として見過ごせないんだ」

 

「いや……そう申し訳なさそうにしないでくれよ。

 俺も色んなとこを旅してるワケだし、

 こういう対応は正しいってのも知ってるさ」

 

「………感謝する」

 

「あぁ、あと俺の言葉を疑うわけじゃない、って

 話だけど…………本当に悪いんだが、ありゃ嘘だ」

 

「な、っ………!?」

 

驚きに立ち上がる彼女に本気で申し訳なくなる。

言い逃れにも限界あるし早めに嘘を謝る。

彼女は大きな溜め息をつき、ゆっくりと腰を下ろし額へと手をやる。

 

「……………、……………では君はテイワットの……」

 

「あぁいや、俺はテイワットの生まれじゃない」

 

「……どういう事だ?」

 

 

「別の世界から来た、って言って信じる?」

 

 

「……………………………………………」

 

次に彼女は顎に手をやり、黙り込む。

考えるのか………真面目すぎるだろ、この人……寧ろ、信じてもらえないのが自然な流れなんだが……この人本当に騎士団長の代理なのか……?

 

すると、彼女は何かを思い付いたような顔をする。

 

 

「…………君は、まさか天空の島から……?」

 

「天空の島? いや、空に浮かぶ島にゃ

 行ったことあるが……そもそもが違うな」

 

「……いや、すまない……聞かせてくれ」

 

 

彼女の言った『天空の島』は気になるが……………空の上にある世界には行ったことがある。だが、彼女の求める答えではないだろう。

真剣な顔に戻るジンに説明を始める。

 

 

「テイワットどころか、この世界から

 完全に隔絶された別次元、別時空の世界から。

 信じるかはあんた次第だけど」

 

「……………にわかには受け入れ難いが……

 そうか、理解はした。その言葉を信じよう」

 

「ほー? 信じるのか」

 

 

 

 

「君の話が全て嘘ならば、

 『テイワットの外から来た』話を通す筈だ。

 テイワットの外は未知の世界だ。

 適当なことを言っても受け入れやすい。

 そちらの方が私を騙しやすいだろうからな。

 

 だが君は、わざわざ理解し難い

 『別世界から来た』という話を切り出した。

 

 正直に言うが、私は今、君を拘束している。

 

 それはすぐに解放されたい者の言葉ではない。

 この場で嘘を正直に話したことから、

 私にだけ真実を知っておいて欲しい……

 そんな意図を感じた。

 だから他の騎士団には話さなかったのだろう」

 

 

 

「…………はっ」

 

 

………………いや、流石だ。

乾いた笑みが出る。図星だ。

 

先程は代理騎士団長という立場を疑ったが、これは

前言撤回させて貰わなければならない。

 

 

「凄ぇな……図星だ。

 その真摯な姿勢、真面目さ、正直さ……

 それらを突き詰めれば、こうも思考が回るのか」

 

「………そう軽々と言うが、君も相当だ。

 こんな危険の伴う賭けに出るとは…………」

 

「あんたが慕われてるからこそ、だな。

 民衆に慕われる理想の騎士、

 その信頼と勘に賭けさせてもらっただけだ」

 

 

まぁ賭けに負けたらどうなるか分からないが…………まぁ取り敢えず、賭けには勝った。

 

 

「いいや、モンドを守る騎士として

 私はまだまだ未熟だ」

 

「……謙遜するのは良いことでもあるけどさぁ、

 時には自分に優しくしないと擦り切れるぞ。

 そういう奴を何人も見てきたし」

 

「……………忠告として受け取っておこう」

 

「他人に時間を奪われるより、

 自分に時間を使った方が有意義だ。

 それがどんなに無駄なことだとしても、な。

 まぁ、しがない旅人の私見なんだけど」

 

「確かに、それも1つの考えだな」

 

「多少は自分勝手になるのも良いもんだぞ?」

 

「フッ……そうだな…だが、モンドを守る者として

 私は皆の規律でなければならない。

 君が言う『民衆に慕われる騎士』として………

 そう在り続けるためにも、な」

 

 

「自分を殺し続ければ、いつか必ず擦り切れる。

 『民衆に慕われる騎士』が生き続けるためにも

 今のあんたに必要なのは休憩だと俺は思うがね。

 

 …………人は、足を止めずに

 歩き続けることなんて出来やしないんだからな」

 

 

「………………」

 

「こんな言い方で悪いけど心配なんだわ。

 つまり、身体を大事にしろ、ってこと」

 

「……君の忠告は心に留めておこう。

 話が逸れたな、本題に戻らせてもらおう」

 

「はいよ」

 

そういえば尋問受けてる所だった。

長い無駄話をしてしまったので申し訳なくなる。

 

「アンバーに会う前、

 ヒルチャールの集団に襲われたそうだな」

 

「うん、そうだな」

 

「その半分を倒したとアンバーからの報告だ。

 神の目は持っているんだろう?」

 

「いや持ってない。

 神の目って単語も知らないし、なんだそれ?」

 

「…………そうか、私としたことが………

 別世界には神の目は存在しないということか」

 

「神サマの眼球なのか、それ?」

 

かなり神サマもグロいことしてるな。

あーいや、目玉が沢山あるような生き物もいるし、こっちの世界で神って呼ばれてる奴もそうなのか。

もしくは、神が人間を監視するための遠隔装置か。

 

「いいや、真の意味での目ではないだろう。

 そう呼ばれているだけだと私は思うが………

 神の目は、強い願いに呼応して現れる、と聞く」

 

「その言い方からして、まだ分かっていないのか。

 神の目とやらを手に入れた者はどうなる?」

 

「神の目を手に入れた者は高い身体能力を得て、

 元素の力を引き出し、感知出来るようになる。

 ヒルチャールを無傷で倒せるような者なら

 大抵は神の目を保有しているだろう」

 

「ふーん………まぁ俺も似たようなことしてるか」

 

「そうなのか?」

 

俺の場合、別世界で教えてもらった方法なのだが、

全ての人が持つ力である魔力を身体能力に変換することで強度を上げている。その世界では魔法とかも撃ってたりしたが、俺には無理だった。

魔力はあっても魔法を撃つための出口がないとか。

 

「まぁとにかく、あの剣を

 片手で振り回すくらいは出来るぞ」

 

「中途半端に大きな剣だったが………」

 

「おっ、言ったな?

 両手でも振れて岩すら斬れる業物だぞ」

 

「フッ、そうか。それはともかく、

 元素力は使えない、ということか?」

 

鼻で笑ってスルーされたんだが。

それはともかく、その元素力は使えないので頷く。

それよりも。

 

「その元素力とやらについても説明お願い」

 

「神の目を与えた七神によって、

 我々が引き出すことのできる元素力は決まる。

 例えば──────」

 

 

ジンが立ち上がり、それを見せてくる。

腰につけられた、薄緑の淡い光を放つそれが、神の目と呼ばれるものだろう。宝石のようなものが嵌め込まれているそれをよく見れば、広げた翼のような模様があることに気が付く。これは興味深い。

 

「触ってみてもい……いや、やっぱ止めとくわ」

 

よくよく見れば、つけられているのは後ろ腰だ。

装飾品のような物とはいえ、あまり女性の腰にあるものに触れるというのは気が引けた。

 

 

「そうか。そして、これが神の目の力だ」

 

 

ジンがこちらに掌を向ける。

すると、室内だというのに強い風がこちらへ向けて吹き始める。思わず目を瞑るほどの強い風はすぐに収まったが、これは驚いた。

 

「凄いな………室内で風を起こせるのか。

 それに神の目を与えた七神ってことは、

 風以外にも起こせる元素があるのか………?」

 

「あぁ、七神に合わせ、元素には

 風、岩、雷、草、水、炎、氷の七種類がある」

 

「へぇ、そりゃ凄いなぁ!

 さっきの風もまだ強く出来るんだろうな。

 最大出力がどこまでなのか……使用限界も………

 いや、気になることが多過ぎる………ともかく。

 ありがとう。いいもんを見せてもらった」

 

それは後で聞こうと礼を言う。

再び椅子に腰掛けたジンは、呆れたような微笑みを浮かべている。何ら珍しいことではないのかもしれないが、俺にとってはいい経験だ。

 

「他のも見てみたいなぁ……

 っと、また話が逸れるとこだな。悪い悪い」

 

「いいや、構わないとも。

 とはいえ、君を危険視する必要は無さそうだ」

 

「本当か!?」

 

「あぁ、だがモンドの者たちや団員たちに

 君が潔白だと言うことを証明するためには

 それ相応の行動が必要になる……君自身の行動が」

 

「働け、と?」

 

「あぁ、以前、モンドが風魔龍と呼ばれる存在に

 襲われてから、目に見えてヒルチャールや

 奴等を操るアビス教団と呼ばれる存在たち、

 組織、ファデュイの動向が怪しくなりつつある」

 

「全滅させりゃいいのか?」

 

「……………ファデュイは人だ。

 君を襲ってくることもあるかもしれないが、

 モンドで潔白を示す君が殺してしまうのは困る」

 

成る程、ファデュイとかいう組織が動いているようだが。流石に、殺すのは不味い組織ということか。国の問題ならば首を突っ込む訳にはいかない。

ということは、やはり『いつもの』だろうか。

 

「………別に俺はただの旅人で良い。

 そうだな、俺を知る者は少ないだろう?」

 

「──────何をする気だ」

 

ジンの目付きが変わる。

どうやら人殺しを警戒しているようだが。

 

「俺は別にモンドの人間じゃない。

 普通ならば関係ない存在だからな…………

 人殺しはしない。だがまぁ、

 縛って放置くらいなら別に構わないだろう?」

 

「……すまない、そういうことか」

 

「あぁ、だから…………10回だ」

 

「10回?」

 

机に乗り出し、ジンの目を見据える。

取引をする時は、相手を逃がさないことが必要だ。

 

 

「俺は10回……あんたら騎士団の頼みを聞こう。

 代わりにそちらから提供して貰いたい物がある」

 

「取引、ということか」

 

「あぁ。便所掃除から暗殺まで、何だってしよう」

 

「…………………求める物を聞こう」

 

「一食分の金と旅人証みたいな物があれば」

 

 

その言葉に、ジンは目を見開く。

どうやら想像していた物と違ったようだが。

 

 

「………そ、そんなものでいいのか?」

 

「俺は旅人だからな、どこまで行こうと。

 食事と交通証さえありゃ生きていける」

 

「ならば………騎士団の仕事の中でも

 危険が伴うものを頼みたい。構わないか?」

 

「あぁ、簡単には死なないから安心して

 この命、存分に使い潰してくれていい」

 

「いや、騎士団の者と共に頼みたい。

 私はまだ君の実力も知らないからな」

 

監視もあるだろうが、そう言うことか。やはりまだ緊張が抜けきっていないか。どこまでもお人好しな団長様だ。

 

 

なら、折角だから証明してみよう。

流れの旅人として、モンドに。

 

 

「なら………今の状況で言うことじゃないが

 頼みたいことがあるんだけど」

 

「なんだ?」

 

 

 

 

頼れる旅人になることが出来るか。

何はともあれ…………必要なのは『信頼』だ。

 

それにはまず、騎士団に示すべきだろう。

紙一重で団長様に負ける程度に。

 

と、いうわけで。

 

 

 

 

「俺と手合わせしてくれない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────は?」

 

 

 

 

 

 



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