どんなにチートでも僕は南雲ハジメ (排他的)
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IF
IF・異世界召喚イベントをハジメが潰していたら・前半


少し行き詰まってきたので息抜きに。聖剣のほうも少し悩み始めてきたので。

……RTAか?ってぐらいテンポよく進みます。長期連載しないので短編みたいにこの一話とあと一話、合計2話で終わらせますね。


もし、ハジメがエヒトの召喚を無くそうとしたら。

 

もし、ハジメが本編より面倒くさがりだったら。

 

これはそんな転生者の意思が入ったハジメのどうやってエヒトの召喚を弾いたのか、それと高校卒業後の将来のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界線のハジメは、面倒なことを極力排除し、自分の未来をよりよくしていくタイプの人間だった。

 

そんな人間なハジメにとって、この世界においての面倒なことの筆頭とも言える異世界召喚(エヒトの遊び)は本当に迷惑でしかなかった。

 

ハジメは生まれてからすぐに別の世界線(本編)と同じユニゾンデバイス(クロトとアイン)を2人、そしてもう1人を作りだしてさらにあるものを作り出した。

 

魔法少女リリカルなのはStrikerSに登場する古代ベルカの遺産、聖王のゆりかごだ。エヒトを倒すならラスボスクラスの能力を持つものをぶつけるべきという結論に至ったためだ。

 

簡単には作れなかったが研究室に何年もこもって作れば意外と楽に作ることが出来た。

 

それを何機も量産し、ハジメは凶行に出る。面倒なことが起きる原因の大元を排除せんと、聖王のゆりかごをまずは1機トータスへと出撃させた。考え方としてはウルトラマンや仮面ライダー、スーパー戦隊などの敵の出し方と同じだ。

 

1機のみ出撃させた聖王のゆりかごはどうやらエヒトの配下である真の神の使徒と魔人族が共同で破壊したらしい。

 

だがトータス自体とその兵力は間違いなく壊滅的とは行かなくてもだいぶ削られていた。

 

ハジメの行動を非道な行いと言うものもハジメの行いを知れば出てくるだろう。だがしかし、エヒトという地球にとっても世界にとっても危険な存在を生きながらえさせるのはハジメ的にはNoだ。

 

「……全力を持ってトータスを消し飛ばす、協力しろ、クロト、アイン、()()()

 

タツヤと言われるユニゾンデバイスに誰よそれ?と思われる人もいるだろう。タツヤのモデルとなっているのは魔法科高校の劣等生に登場する主人公、司波達也だ。

 

彼の能力は分解と再生。その神のような能力は魔法を使うために存在する演算領域のほとんどを埋め、達也を魔法を満足に使えさせない人間にしてしまった。

 

その分解と再生を再現し、尚且つ魔法も使えるようにしたのがタツヤだ。何故、タツヤが3人目のユニゾンデバイスに選ばれたのか。其れは、物語の終盤に登場する魔法、『アストラル・ディスパージョン』に目をつけたからだ。

 

エヒトは原作ではユエを乗っ取ることで実体を得ていた。そのために、ハジメはエヒトが精神体であると仮定したのだ。『アストラル・ディスパージョン』は精神体を破壊して、この世界からの繋がりを離すという魔法だ。

 

これを使うためにハジメはタツヤを作り出したのだ。

 

3人は原作通りの性格をしながらハジメをサポートし、ハジメの目的を達成させるために動く。

 

ハジメが15歳になり、不老不死になるためのコードとギアスを得た頃に(高校にはまだ入ってない)、ハジメ達は動いた。

 

量産した聖王のゆりかごと、次元航行艦を再現したものでトータスへと攻め入ったのだ。

 

エヒトとその眷属が貼った防壁は次元航行艦の放つアルカンシェルによって紙を破るかのように崩れ去り、ワルキューレ達は蟻を踏み潰すかのように聖王のゆりかごが出すガジェットドローンによって倒されて行く。

 

トータス自体は破壊しないように慎重に攻撃しながら、ハジメ達はエヒト達を着々と追い詰めていく。

 

「神の御前であるぞ!控えよ!貴様ら無礼で──「うるさいぞ」」

 

眷属神がハジメ達に向かって礼儀を説いたことがあったが、羽虫を潰すかのように聖王のゆりかごの餌食となった。

 

「おいお前、俺のところに来ないか?強いやつは歓迎するんだが!」

 

とある帝国の皇帝が聖王のゆりかごに向かって大声で叫んで勧誘の言葉を投げかけたが、それらを無視してハジメはエヒトの眷属神と使徒を消し飛ばしにそのまま突き進む。

 

皇帝はその後聖王のゆりかごに飛び乗ろうとしたが、アンチマジックフィールドと呼ばれる聖王のゆりかご全体に貼られた結界によって魔法発動を阻害され、風魔法が消されてそのまま地面に向かって落ちていっていた。

 

「神敵よ!貴様らは降伏すべきである!そして我らに隷属しろ!聞こえぬのか、神敵よ!」

 

聖職者のような服装をしたお爺さんがハジメ達に向かって警告していたが、そのまま無視されていた。

 

仕方ないとばかりにお爺さんとその周りの取り巻きが攻撃を仕掛けると、皇帝と同じようにアンチマジックフィールドに阻害され、魔力の無駄使いに終わった。

 

だがまだ性懲りも無く攻撃してくるので、試し打ちと言って、スターライトブレイカーの亜種、ブラックスターブレイカーを放ってちょっとほかの山より大きい、建物が頂上にある山を無に帰した。

 

その後は攻撃されることも無く、エヒト撲滅のためそのまま違う場所へと向かうのだった。去り際にお爺さんの叫びを聞いたが、別に気にしない一行だった。

 

「おのれ神敵ぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

時には攻撃されないこともある。外の異変を察知したのか、とある渓谷からロボット……というよりゴーレムが現れた。

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

 

「いや知らねぇよ」「誰だ君は」「邪魔だ」「消すか」

 

ハジメ達一行はそのセリフを聞いた途端少し苛立ちながらツッコミを入れ、ガジェットドローンを出撃させようとする。

 

それを慌てて止めたミレディ(ゴーレム)は解放者とエヒトの因縁を伝え、関係の無い者、危害を加えない者へ攻撃しないことを約束させてそのまま自分の住処へと戻って行った。

 

「あのクソ野郎、絶対に倒してね☆」

 

「無論だ。任せておけミレディ」

 

少しの友情が芽生えたのか、ハジメはミレディのことを呼び捨てで呼び、そのまま次の攻撃先へと飛んだのだった。

 

「我々も貴方がやっているその神殺しに参加させて欲しい。頼む……!」

 

竜人族と呼ばれる種族の住むところにやってきたハジメ一行、そこでアドゥルと呼ばれている竜人の長と話していた。

 

どうやら昔、神によって多くの仲間が殺されたらしく、アドゥルはエヒト討伐に参加させて欲しいと言ってきたのだ。

 

ハジメはその頼みを快く了承し、聖王のゆりかごと次元航行艦を取り巻くように精鋭の竜人族達は竜化して飛び、残りは次元航行艦の中で戦いに備えて暮らし始めたのだった。

 

リスタスとか言う竜人が若手?と思われる竜人達を引き連れて難癖をつけて喧嘩を売ってきたが、タツヤとアインによってひねり潰された。

 

「我々は干渉せん。神の討伐など好きにやってくれ」

 

獣人達が住む森、フェアベルゲンに来たハジメ達だったが獣人は攻撃などしないで、不干渉の意志をハジメ達に伝えた。

 

その言葉を聞いたハジメはその意志を了承し、そのままフェアベルゲンを飛び去った。

 

そんなこんなでトータスを一周しそうになっていたハジメ一行はついに魔人族の国へとたどり着いた。

 

「我々の神の敵を滅ぼせ、灰竜よ!」

 

赤髪褐色の豪奢な服を着た男が灰色のドラゴンをけしかけて聖王のゆりかごと次元航行艦に向かって攻撃を仕掛けたが、その攻撃はハジメの味方となった竜人達の手によって弾かれ、そのまま本物の竜のブレスによって男ごと消し飛ばされた。

 

「撃てー!神敵を滅ぼすのだー!」

 

魔人族が大勢ハジメ達に攻撃を仕掛けるが、ハジメの作り出した聖王のゆりかごと次元航行艦の敵ではなく、そのままアルカンシェルによって消し飛ばされた。

 

「ふっふっふ、ようやく来たなイレギュラー、これを見よ!」

 

神域と呼ばれるエヒトの住処、そこでハジメたちの前に出されるのは金髪の幼女。ハジメは原作知識からその少女がメインヒロインのユエであることを知る。

 

「……それがどうした」

 

「……ふ、これからこの少女を乗っ取って貴様を、貴様らをひねりつぶしてくれるわぁぁぁ!!」

 

「タツヤ」

 

「あぁ」

 

「「ユニゾン・イン」」

 

ハジメとタツヤの身体が一体化し、1つの姿となる。エヒトの目の前には白い制服をまとった少年があらわれる。

 

「それがどうした、今ここでこの少女を乗っ取れば──「遅い」」

 

ハジメの持つCADと呼ばれる魔法科高校の劣等生の主要武器から高温度のレーザーが放たれ、ユエの首を焼き切った。

 

ここに来るまでに抵抗していたのか、魔力は尽きており、首が焼ききれたらそのまま絶命した。

 

「貴様ァァァァァァァァァァァァァ!!?」

 

エヒトは絶叫しながらハジメに向かって魔法を放つが、ハジメはそれを分解して相殺し、エヒトを殺すための魔法を発動する。

 

ハジメが説明する暇もなく、エヒトはそのままアストラル・ディスパージョンによって身体が消えていき、そのままこの世界から消えていった。

 

「妾たちの勝利じゃあ!!」

 

ティオと呼ばれていた竜人の姫が勝鬨を上げると、これまで着いてきた竜人達が一斉に歓声を上げる。

 

だがそんな歓声の裏でエヒトの住処である神域は音を立てて崩壊しそうになっていた。

 

それを察知したハジメは竜人達に別れを告げて外へと放り出し、トータスの破壊を防ぐために神域全体を結界で包む。

 

「な、ハジメ殿!」

 

「じゃあ、さよならだ、アドゥルさん」

 

焦るアドゥルを見ながら結界をとじる。そしてハジメは3人のユニゾンデバイスに命じて、聖王のゆりかご全てを自爆させることにした。

 

次元航行艦でトータスという世界の外に出て、ハジメは聖王のゆりかご全てを爆発させる。

 

「少し名残惜しい感じもするけど……帰るぞ、皆」

 

「「「了解」」」

 

唯一協力してくれた種族に別れを告げているために、ハジメは次元航行艦の取り舵を回して地球への帰路へ着いた。

 

「……次は何をしますかね〜」

 

「高校生活、忘れてないか」

 

トータスでの戦いで自分が高校生になることを忘れていたハジメはタツヤに思い出させてくれたことに対してありがとうと言い、早く2度目の高校生活を楽しもうと思って次元航行艦のスピードを上げるのだった。

 

 




ミニイベント的なものが沢山重なってできた物語ですね。聖王のゆりかごを採用したのはリリカルなのは、魔法科、ハイスクールDxD、仮面ライダーからある程度の無効化能力とたくさんの戦闘用の駒を出せるものを探したからですね。

この世界線のハジメはイベントに備えておくタイプではなく、イベントそのものを潰すタイプです。面倒くさいことを無くすタイプですね。後々面倒くさいことをしないために、どんな犠牲を払っても。

ユエを殺したのもこの世界線では情なんてものもないからですね。いくら原作でメインヒロインであってもこの世界では関わりないですし。

本編と同じ作品の力を使うだけで他の作品は使ってません。魔法科もちょびっと出てますので探してみてくださいね!

ちょっとエヒト弱すぎじゃない?と思われるかもですが、本編はちゃんと書きますし、霊体状態はこんなもんだと思うんですよね……。ユエと合体してからハジメと戦ってましたし、実体のあるなしだと結構変わってくると思うんです。

これからもよろしくお願いします。


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本編
転生する魂


オリ主ばかり書いてましたし。まぁ奈落に落ちる前のハジメみたいな感じにしようかと。オリ主タグつけてますからオリ主:ハジメ=7:3くらいにしていきます。


どんなに優秀でも絶対に敵わない人間。そんなラノベみたいな非現実的な人間がこの世界には人知れず存在している。

 

その名は南雲ハジメ。ゲーム会社を運営している、所謂社長という職業に着いている両親を持ってはいるが、南雲ハジメほどイレギュラーではない。

 

そんな南雲ハジメがどうやって生まれたのかそれはハジメが生まれる数時間前に遡る。

 

 

 

 

 

『君を間違えて殺してしまった。申し訳ない』

 

間違えて殺してしまった人間を転生させる転生の間というある種の懺悔の場に魂と称するべきものと白髪の男がいた。

 

『……別に構いません、僕はどうなるのかだけ教えてくれればそれで大丈夫です』

 

白髪の男はその言葉に救われた。なんて誠実な子なのだろうか。初めてミスをしてしまい、どんな罵詈雑言を浴びせられてしまうかと思ったが、思いがけない言葉に心の中で涙を流す。

 

『君は、私……我々神の勝手なエゴによって転生させられる。君たちで言うラノベの世界だ』

 

『そうですか。……どうぞ、誰にでもミスはありますよ』

 

『……なぁ、君は何故私のことを罵らない。私は君の人生を潰したのだぞ?』

 

『罵ったところで、僕の人生は戻らない。どう思っても、どう怒っても僕の死ぬ前の人生の道には戻れませんから、僕は貴方を罵りません……逆に罵って欲しいんですか?』

 

『い、いや!私はノーマルだ!男に罵ってもらって本当はいけないのに快感を味わう程の変態ではない!』

 

白髪の男のその言葉に魂はにやりと笑う。……魂なので笑ってはいないはず。

 

『へぇ……男に?なら僕が女だったら快感を感じてたんですか?』

 

『……話……変えてもいい?』

 

『構いませんよ』

 

『(あ、良かった……いじりまくる子じゃなくて……)『あ、でも……』ん?』

 

『転生してできた友達に話しちゃいましょうかね……』

 

『やめて!?』

 

冗談ですよと笑う魂に冷や汗を垂らす白髪の男。

 

『話を変えさせてもらうよ、君が転生する世界はありふれた職業で世界最強。その主人公に転生して貰う』

 

『……』

 

『どうした?嫌かい?』

 

転生先を魂に言うと魂は黙りこくってしまった。

 

『……人格を塗り替えるのってありなんですか』

 

『……あぁそれか。ありだよ。塗り替える訳では無いからね』

 

『はぁ?』

 

わけがわからないよ(・д・`*)と言わんばかりの声を出す魂に白髪の男は説明しだす。

 

『良いかい?こんな言い方はダメなんだが、人格を形成し、南雲ハジメという人物が形成されるその時には南雲ハジメなんだが、形成される前なら話は違う。形成する瞬間に君をねじ込むことで転生させるんだ』

 

『……だいたいわかりました』

 

『さて、転生させる世界に問題は無いね?』

 

『はい』

 

『そうか……なら次は転生特典か』

 

『え……』

 

たんたんと進めていく白髪の男に疑問を抱く魂。

 

『なんだ?』

 

『転生させてくれるだけでなく特典もくれるんですか?』

 

『当たり前だ。私は君の人生を狂わせた。それ相応の償いをするのが当たり前であろうに』

 

『そうですか。そういうものですか』

 

『そういうものだ』

 

白髪の男は咳払いをしてから未来的でSFなバーチャルキーボードを出現させ、カタカタと指を動かし始めた。

 

『特典は昔は転生する者が選んでいたそうだが、毎回毎回王の財宝なりギアスなり大嘘憑きなりでね。のちのち後悔してしまうそうだ。だからルーレットで決めることにする。まずは個数だね、回したまえ』

 

『1から10……』

 

魂は突然目の前に出されたルーレットを見て言葉を漏らす。そして躊躇なくルーレットを回した。

 

『数は……』

 

『おめでとう!君の特典は7個だ!』

 

『7個……』

 

その数に少し落胆する魂。どうせなら10出したかったと。

 

『……』

 

その様子を見て少し可哀想に思う白髪の男だが、決まりは決まりなのでその魂の様子をなくなく無視し、次の説明に入る。

 

『ッ……さて、君には7つの特典を選んでもらう。情報はそこにあるスマホを使って調べてくれ……願いを増やすのは無理だからね』

 

『わかりました』

 

魂は不思議なパワーでスマホを浮かしてG〇ogleChr〇meを開いて欲しい能力の情報を調べだした。

 

 

 

 

 

 

〜数時間後、神的には数秒〜

 

『決まりました』

 

『じゃあ聞かせてくれ』

 

魂は白髪の男に自分の要望する特典を伝え始める。

 

『1つ目は快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャーに登場する高尾ノエルの変身と戦闘、盗む時に使ったアイテムと技能をお願いします』

 

『……いきなり王道かと思ったら結構思ってたのと違うな……どうして?』

 

『怪盗としての技能を持ち、銃と剣どちらも使える変身戦士であること、それに僕がスーパー戦隊で1番好きな戦士だからですね』

 

『絶対最後が決め手だろうね、次は?』

 

白髪の男は魂の言うことに笑いながらキーボードを打ち込み、続きを促す。

 

『2つ目は創作された物語の中にある様々な固有物質、例えば仮面ライダーでいえばネビュラガス、魔法科高校の劣等生でいえば感応石、アンティナイトなどを自由に作り出せる能力をお願いします』

 

『それを言ったのは君が初めてかもしれないな。みんな完成品を求めるらしいからね……』

 

感心したように白髪の男はこくこくと頷き、さぁ早く続きをと手をクイクイと動かす。

 

『3つ目は僕に、いや南雲ハジメに魔法少女リリカルなのはのリンカーコアを追加してください。魔力変換資質はなし、魔力量はSでお願いします』

 

『ふむ。次お願い』

 

前と比べるとそこまででは無いので反応はなく次を促す。

 

『4つ目は魔法少女リリカルなのはのデバイスの開発が出来る頭脳と設備を僕にください』

 

『……ふむ、なるほどね。いいよ、ついでに安全な空間もあげる。精神と時の部屋的なやつね』

 

『ありがとうございます』

 

魂は白髪の男に礼を言うと、次の願いを言い始めた。

 

『5つ目は仮面ライダーシリーズ全作品に登場する色々なベルトを作った人間の知識を僕にください』

 

『……完全記憶能力をつけておくよ。君が記憶で混乱しないようにね』

 

白髪の男は魂を心配そうに見ながら善意で能力を追加する。

 

『6つ目は黄金律をください』

 

『分かった、任せてくれ……Aにしておくよ』

 

そしてついに最後の特典になった。

 

『7つ目は、コードギアスのコードを15歳の時に胸につけて貰えますか』

 

『……分かった、任せてくれ』

 

白髪の男はキーボードを叩き終わり、キーボードを消す。そして魂に向き直る。

 

『これから君は転生する。これからはコード以外で君には干渉できない。それを理解した上で……行ってらっしゃい』

 

『ありがとうございました』

 

その言葉を最後に、魂はありふれた職業で世界最強の南雲ハジメに転生して行った。その様子を瞬きせずに見守る白髪の男。

 

転生を見終わった白髪の男は大きく背伸びをする。

 

『……ありがとう……私が殺してしまった魂よ』

 

 

 

 

 

 

 

元々の南雲ハジメとは大きく違う南雲ハジメが生まれた理由がこれでわかっただろう。ここからはその魂、南雲ハジメが異世界に転移するまでの話。

 

原作とは中身が違う南雲ハジメは特典で何をなすのだろうか?




ルパンエックスは昔の作品の名残です。

コードギアスのコードじゃなく蓬莱人の方がいいかと思ったんですけどコードギアスのコードにしました。だってあのマークかっこいいじゃないですか!



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早速動き出す幼少期

白髪の男によって転生させられた魂は無事南雲ハジメの身体に転生した。そこに原作での南雲ハジメの意思はなく、ただ魂の意思だけがそこにあった。

 

そんな彼は今、

 

「(いやわかってましたけど……)」

 

「あうあうあー」

 

「(羞恥にも程がありませんかァ!?)」

 

自分の2回目の赤ん坊生活に悶え死んでいた。彼の意識は生まれた瞬間からあり、それからずっと赤ちゃん言葉しか話せない、中々動けないという赤ちゃん特有のあるあるに苦しんでいた。

 

「(せめて母乳を飲む時くらいは意識を)」

 

「ハジメ〜ミルクの時間よ〜」

 

シャットアウトして欲しかったと思う前に、南雲ハジメであり、今世の自分を産んでくれた南雲菫が自分の乳房を服から出してハジメに飲ませる。

 

「(何故……私は人のお嫁さんのおっぱいをちゅーちゅー吸ってるんでしょうか……)」

 

自分を育てるために1人で今頑張ってゲームを作って、癖の強い社員をまとめる為に頑張る南雲愁に心の中で土下座しながら生きるために乳を吸うのだった。

 

「あうあうあー」

 

「(この気の抜けた自分を殴りたくなってきました……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が人のお嫁さんの乳を吸ってぐんぐんと育ち、嵐を呼ぶ幼稚園児と同い年になったハジメ。

 

「(やっと、私は……私は帰ってきたァァァ!!この身体でそろそろ特典を使用し始めますか!)」

 

叫ぶと近所迷惑になる上にこの世界にはガンダムがあるため、なんでネタ知ってんの?のようになってしまうので心の中で叫ぶハジメ。

 

「(じゃあマイルームに入って開発を始めましょうかね〜)」

 

白髪の男に与えられた精神と時の部屋の扉を呼び出して精神と時の部屋に入る。

 

精神と時の部屋には注意書きが書かれていた。

 

「なになに……何時間居ても何日居ても、なんなら何十年居ようと身体に影響はなく、時間に気にせず研究しよう!」

 

「……まぁいいです。さて、まず何からやりましょうか」

 

ハジメは自分の特典の再確認を始めた。

 

・怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャーのルパンエックス/パトレンエックスの力を使える。

 

・創作された物語にある特殊な物質を作り出せる。

 

・魔法少女リリカルなのはのリンカーコア、Sクラスが身体に搭載されている。

 

・全種類のデバイス開発能力とその開発するための設備

 

・仮面ライダー作品のドライバーを作り出した人間たちの知識+完全記憶能力

 

・黄金律A

 

・コードギアスのコード(10年後)

 

「……真面目に不味い、原作後だからいいけどバチカンやらベルセルクら辺が怖いです……悪魔もいるんでしたっけ……」

特典を見てまずはと作業机を取り出して仮面ライダーエグゼイドの檀黎斗の知識を呼び起こす。

 

「……レベル1の軽快な動きにレベル2からの様々な戦い方に魅力はありますけど……ゲームオーバーが怖いので却下ですね……」

 

他にも色々な知識を呼び起こすがどれも子供では扱いきれないものばかりだった。

 

「5歳では仕方ありません、デバイスにしましょう」

 

デバイスを作るのに必要な材料を作り出して、インテリジェントデバイスを作っていく。

 

「デュランダルみたいな感じがいいですが……待機状態は鍵にしますかね」

 

待機状態の形を考えてから使用する時の形状を考える。

 

「普通に杖型でいいでしょう。……いや未来を考えたら銃の方がいいんですかね、まぁ杖でいいか」

 

デバイスを開発できる頭脳の中に魔法も入っていた。それを使って防御用や攻撃、記憶処理などの魔法を組み込んでいく。

 

「よし、あとはこれを機械に作らせるだけだ。あとはもう戻ろう。長居してもデバイスがすぐにできる訳では無いからな」

 

デバイスの設定や形状、搭載する魔法や回路を作ればあとは全部機械がやってくれる。時間は外では1秒しか経たないが、完成には外の時間を適用する。ざっと1日くらいだろう。

 

「完成も一瞬だったら楽なんですが……まぁ仕方ないでしょう」

 

「……ここに確か他の特典も収納されてるんですよね」

 

ハジメがXチェンジャーと念ずると、目の前にパトレンエックス/ルパンエックスに変身するためのアイテム、Xチェンジャーが出現する。

 

「なるほど、戦う時にいちいち取りに戻らないといけないってことですか……早めに量子変換ができるようなアイテムを作らないといけませんね」

 

量子変換が出来る仮面ライダーは結構な数いる。まぁ作るとなると仮面ライダーエグゼイドが1番だろう。

 

「家に戻ったら色々と社会的立場を作るために勉強しないとです。異世界に召喚されることは確定、帰ってきた時の立場も考えないと……原作の時みたいに脅す訳には行かないのでね」

 

幸い、仮面ライダーゼロワンに出てくる天津垓のザイアスペックや、仮面ライダーエグゼイドに出てくるゲームを作って売るために会社を作れば社会的立場はできる。

 

「……5歳が会社作るのはあれだし、ユニゾンデバイスを作ってからにしましょうか」

 

代わりに自分の開発したものを売ってくれる大人を探すのは面倒臭いし、両親に言ってもどうやって作ったか説明するのも面倒臭い。

 

ユニゾンデバイスなら人の形をしていて自分の言うことをしっかり聞いて守ってくれるだろうからそちらの方が楽だ。

 

社会的立場はユニゾンデバイスを作ってから考えることにしたハジメだった。

 

 




2013年に投稿が始まったありふれですが、ありふれ時空って何年なんですかね。とりあえず高校2年の時を2020年ら辺に仮定して、今5歳なので2008年ということにしておきます。


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社長なお父さん

とあるゲーム会社が仕事で使っているビル、そこの社長室でハジメとその親の南雲 愁と南雲 菫が話していた。

 

「やっとハジメに俺がどんな仕事をしているのか説明できた……」

 

「まぁ仕方ないわよ、まだ子供だし、ゲームをそもそもやってないからねこの子」

 

肩の荷がおりたのかリラックスしている愁と、そのリラックスしている愁の頭を撫でている菫。なんでこんなことになっているのか。それは数日前に遡る。

 

 

 

 

 

 

インテリジェントデバイスの設定を完成させ、機械に作らせて暇なハジメは南雲ハジメの親がゲーム会社をやっていることを思い出した。

 

ユニゾンデバイスを完成させたあとに会社を作ろうと考えているハジメは資金のために株をやろうとも考えていたのだが(黄金律Aなら余裕)、原作終了後のマスコミなどを抑えるための有力な会社を作るための運営やらを学ぶ為にハジメの父、愁に頼んで会社を見に行ったのだった。

 

「(社員の人もいい人達だったし、ゲンムの知識はこっちで活かした方がいいんですかね……とりあえずはスマホを作って売るつもりですが)」

 

最初はザイアスペックを売ろうと考えていたのだが、ザイアスペックは現在2008年ではハイスペック過ぎるので、ビルドフォンなどの携帯のスペックを落としたものを作って売ろうとしている。

 

「ハジメ、ハジメ!大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫」

 

そんなことを考えていると愁がハジメのことを呼びかけていたことに気づく。

 

「そろそろ家に帰るか、あいつらも家に帰った頃だろうし」

 

あいつらというのは社員のことである。今はゲームの開発をしておらず、毎日次は何を作るのか議論しているらしい。

 

「今日は何を作ろうかしら〜」

 

「まだ何も作ってないの!?」

 

「当たり前でしょ〜そもそも今日会社に来ちゃったから作る暇ないしね〜」

 

「あ、確かに」

 

今、18時。菫が何も作っていないことに愁がツッコミを入れるが、それは躱されハジメは相槌を打っていた。

 

「じゃあどっか飯食いに行くか!」

 

「家の近くにウィステリアって洋食店があったからそこに行きましょうか」

 

「賛成〜」

 

「じゃあそこにするか!」

 

愁がどこかに食べに行くと提案すると菫が洋食店『ウィステリア』と言う店を提案、それに賛成したハジメを見て愁はウィステリアへ車を走らせたのだった。

 

「(ウィステリア……あ、原作の予感)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ!」

 

ハジメと愁、菫がウィステリアの店内に入る。すると快活な原作キャラの1人である園部優花の母親と思われる女性の声が聞こえてきた。

 

そのまま席に案内されてメニューを見ると、普通の洋食店の品書きが書かれていた。

 

「(まぁ原作でも変な名前のメニューとかありませんでしたし)父さん、これにする」

 

ハジメは少し考えてから決まったことを愁に伝えた。

 

「おう、店員さーん!」

 

「はい、ご注文はお決まりですか?」

 

「はい、えっと俺がエビフライセット、菫がハンバーグセット、ハジメがオムライス……エビフライセットとハンバーグセット、オムライスお願いします」

 

「わかりました!少々お待ち下さい!」

 

ハジメは注文が終わってから水を少し飲んでまた思考の海の中に潜る。

 

「(デバイスもあと少しで出来ますし、次は何をしますかね……剣の訓練でもした方がいいんですかね……でも八重樫道場に関わるのは……とりあえず帰ってから考えますかね)」

 

剣の訓練と考えるのはルパンエックスが剣、パトレンエックスが十手を使うからである。ただ白崎香織(ヤンデレ)がいる可能性を考えると八重樫道場はやめた方がいい気がする。ハジメはこの時からフラグを立てると監禁エンドしかないことを知っている。

 

「ハジメ、会社見てどうだった?」

 

「うーん、すごかった!(5歳児の返答のやり方がよく分からないですね……)」

 

「そうか、すごかったか〜」

 

まだ子供言葉に慣れていないハジメは最初に見て思ったすごいを愁に伝える。ハジメがすごいと感じているのは個性がある人達をまとめられる原作アフターでは見られなかった愁のカリスマ性だ。

 

「(どっかの吸血鬼のお嬢様みたいな父さんですよね……)」

 

カリスマがない時とある時のギャップが激しい神槍使いの吸血鬼を思い出してそれを愁に当てはめる。

 

「(帰ったらまともな社長だった人の記憶を見ておかないとね……います?)」

 

自分の転生特典の中のマトモな誰かの知識があるのかどうなのか疑問に思い始めたハジメだった。

 

「お待たせしました、エビフライセット、ハンバーグセット、オムライスです〜」

 

思考の海から浮かび上がり、スプーンを手に取る。

 

「「「いただきます」」」

 

三人一斉に食べ始める。

 

「(……美味しいな〜)」

 

ハジメはオムライスが気に入ったようで夢中でオムライスを食べる。

 

10分後、オムライスはなくなっていて、ハジメのお腹も満杯になっていた。

 

「お腹いっぱい……」

 

ハジメがスプーンを置いた数分後、愁と菫も食べ終わり、そのまま水を飲んでから席を立ってお会計を済ましてそのまま出ていった。

 

そして帰りの車の中でふと思う。

 

「(園部優花と話せてないような……)」

 

ウィステリアで食事をする前に思った原作の予感とはなんだったのか、原作キャラ……アフターくらいしか会っていないような気がするハジメだった。

 

 

 

 



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デバイスはもう出来ていた

投稿再開です!


愁のゲーム会社の見学&ウィステリアにて夕飯を食べるから5年後、つまり2013年になった頃、ハジメは10歳になっていた。

 

5歳から10歳の間、何が起きていたのか。……ほぼなんにも起きていない。ただ5年の間にデバイス作製やアイテムを作る部屋にトレーニングルームなるものが増設されていた。

 

デバイスと言えば、ハジメのデバイスは完成していた。今はトレーニングルームで使用している。

 

少しその様子を見てみよう。

 

「ブラックブラスター!セットアップ!」

 

ハジメはトレーニングルームの端の方でブラックブラスターと名付けられたインテリジェントデバイスをセットアップする。

 

展開されるバリアジャケットはエリオ・モンディアルのバリアジャケットを少し変えたもので、上着は黒、シャツはそのまま、ズボンは長ズボンで黒い。そして靴などの色々なところに着いている黄色の棒は赤くなっている。

 

デバイスは最初の頃は杖だったのだが、最近になって黒い拳銃に変わった。

 

セットアップが終わるとハジメの正面に訓練相手が現れる。仮面ライダーダブルに登場するトリガー・ドーパントである。

 

何故トリガー・ドーパントが現れるのか。それは少し前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

多分3年くらい前、ハジメが7歳くらいの頃、ハジメはブラックブラスターを使用して増設されたトレーニングルームで高町なのはやフェイト・テスタロッサなどのリリカルなのはキャラクターを時に苦戦しながらも倒していっていた。

 

「……オラ、もっと色んなやつと戦いてぇぞ!」

 

悟空的なことを言い出してトレーニングルームの投影装置の改造を行い始めた。

 

トレーニングルームはキャラクターのデータを投影することで戦うことが出来るため、データさえ登録出来れば戦える。

 

それがわかった瞬間、ハジメは即行動に移した。この世界は前世と同じ時間、同じ日に同じアニメが放送されていた。

 

黄金律でたまたま拾ったお金を使用して仮面ライダーや色々なアニメを借りてきたハジメはそれらのキャラクターのデータを仮面ライダーエグゼイドに出てくるガシャットにインストールした。(ほとんどの仮面ライダーの基礎アイテムは開発できるようになっていた)

 

そしてガシャットをセットすることができるように投影装置を改造し、ガシャットを挿入することで色々なキャラクターを訓練に使うことができるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

というのがハジメがトリガー・ドーパントと戦っている理由である。トリガー・ドーパントの正確な射撃がハジメのプロテクションを破り、ハジメに当たる。

 

「痛た……」

 

ダメージはないが、攻撃が当たるとその攻撃の実際の威力と合わせて電気ショックが与えられる。

 

「なら、カートリッジ・ロード!」

 

ブラックブラスターから薬莢が排出され、魔力がブラックブラスターに充填される。そしてハジメの目の前に巨大な魔法陣が発生する。

 

「喰らえ!一撃滅殺!」

 

魔法陣から黒い球状の魔力が現れ、黒い雷がほとばしる。

 

「ダークスターブレイカー!!」

 

黒い魔砲が球状の魔力から発射され、トリガー・ドーパントを飲み込む。そして魔力の中でトリガー・ドーパントは黒い雷をずっと浴びせられ、そのまま消滅した。

 

「次はライダーの力を使って倒してみるか」

 

ハジメはそう言って製作室からゲーマドライバーとライダーガシャットをとってくる。

 

今現在、ハジメが作った仮面ライダーは以下の通りだ。

 

・仮面ライダーG3

・仮面ライダーG3-X

・仮面ライダーナイト(基本のみ)

・仮面ライダーカイザ

・仮面ライダーグレイブ

・仮面ライダーザビー

・仮面ライダーイクサ(基本のみ)

・仮面ライダーアクセル(基本のみ)

・仮面ライダーバース

・仮面ライダーメテオ(基本のみ)

・仮面ライダー斬月(メロンのみ)

・魔進チェイサー

・仮面ライダーゲンム(レベル1からレベル10まで)

・仮面ライダービルド(忍バージョン・ハジメに最適化)

・仮面ライダー一型

 

ハジメが好きな仮面ライダーを作っているため、主人公ライダーはビルドしかいない。そしてパワーアップフォームはまだ作れていない。実質的にパワーアップできるのはバース、ゲンム、ビルドくらいだ。

 

そんな仮面ライダーの中からハジメが選んだのは、仮面ライダービルド。ビルドドライバーとラビットフルボトル、タンクフルボトルを取り出す。

 

《ビルドドライバー!》

 

ビルドドライバーを腰にまきつけてラビットフルボトルとタンクフルボトルを振ってビルドドライバーに装填する。

 

《ラビット!》《タンク!》

 

《Are you ready?》

 

「変身」

 

その言葉と共にスナップライドビルダーが展開され、トランジェントソリッドが注入され加工、アーマーとなってハジメに装着される。

 

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!!》

 

《イェーイ!!》

 

ハジメが仮面ライダービルド ラビットタンクフォームに変身するとハジメの目の前に仮面ライダービルドに登場するハードガーディアンが2体、仮面ライダージオウに登場するカッシーンが現れる。

 

「変身直後ですが、まずはコイツで速攻で倒します!」

 

《忍者!》《コミック!》

 

《Are you ready?》

 

「変身」

 

スナップライドビルダーが展開され、ラビットタンクに変身する時とは違う黄色と紫色のトランジェントソリッドが注入され加工、アーマーとなってハジメに装着される。

 

《忍びのエンターティナー!ニンニンコミック!!》

 

《イェーイ!!》

 

仮面ライダービルド ニンニンコミックフォームに変身し、4コマ忍法刀を生成してボルテックトリガーを引く。

 

《分身の術!》

 

ハジメは9人に分身してハードガーディアン2体を8人でタコ殴りにし始めた。残り1人はカッシーンを抑えている。

 

「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」」

 

実に合理的な?策であり、ハードガーディアン2体は一瞬でボコボコになり、消えてしまった。(ちなみにハジメのハザードレベルは4.3)

 

ハジメは残ったカッシーンを9人で火炙りにし始めた。

 

ボルテックトリガーを2回引くことで4コマ忍法刀に炎が帯び、4コマ忍法刀を振る。

 

《火遁の術!》

 

9発の火炎の斬撃がカッシーンを燃やし尽くし、カッシーンは消え去ってしまった。

 

「……ビルドは強いですよね。まぁ私に最適化してチューンしてますから当然ですがね!」

 

誰もいないところで自画自賛するハジメ。どこかに人がいたらハジメのことを可哀想な人を見る目で見ていただろう。

 

そしてまた新たな敵を出して訓練を再開するハジメだった。

 

 

 

 

 




ブラックブラスターはハジメの魔王時のイメージカラーが黒だからですね。黒、銃を合わせてブラックブラスター。



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ユニゾンデバイスと会社

デバイス&仮面ライダー完成からまた時は流れて1年後、2014年になり、ハジメは2機のユニゾンデバイスとともにひとつの会社を設立した。

 

その名はZAIA コーポレーション。スマートフォンとスマートフォン向けゲームを発売・配信する会社を作ったのだ。

 

「クロト、ゲームの配信はもう出来ますよね?」

 

「大丈夫だハジメ!私と君の才能さえあればマイティアクションX、タドルクエスト、バンバンシューティング、爆走バイクのスマホ配信など楽勝だ!」

 

ハジメは手始めに仮面ライダーエグゼイドたち4人のライダーのモチーフゲームをスマホで配信することにし、1人目のユニゾンデバイス、『クロト』とともにそれの準備を行なった。

 

どのような感じで編集されたのか、マイティアクションXで見てみよう。マイティアクションXは基本プレイ無料であり、要所要所で課金が必要なゲームとなっている。

 

例えばいい所でゲームオーバーになったら課金アイテムで復活などの課金要素だ。

 

そしてマイティアクションXにタドルクエストなどの違うゲームの敵キャラをゲーム内で登場させ、ボスとしても配置している。

 

「ゲームもいいがスマホは明日発売なんだ、受注先に送れるようにしておかないと不味いだろう、マスター?」

 

そう言ってゲームからスマホの発売に意識を向けさせるのは2人目のユニゾンデバイス、『アイン』だ。

 

クロトは仮面ライダーエグゼイドの檀黎斗をベースに狂いっぷりを少し抑えている。アインはリリカルなのはのリインフォース・アインスをベースにしている。まぁ著作権の侵害なり言われたくないので髪は黒にしたりカモフラージュしているが。

 

スマートフォンはゲームができるような性能に抑えるはずだったのだが、ハジメとクロトがはっちゃけてしまい、とてつもない性能になってしまった。(今の年代的に)

 

ゲームができるように画面は広くし、専用の充電器で現在世界で1番早く充電できるようにした。ワイヤレスイヤホンもこの年代ではできないような小型になっている。

 

「……やっちまったなぁ」

 

「何か問題でもあったのかマスター」

 

「まだ修正できるぞ、ハジメ」

 

「いや、ミスじゃなくて性能」

 

「「あぁ……」」

 

確かにと2人はハジメの言うことに納得する。ハジメとクロトが作り、今工場でAIによって量産されているスマホはこの世界ではオーバースペックすぎる。

 

今世界でトップに君臨している会社でも追いつけないであろうスペックをもう一度客観的に見るとため息も着きたくなる。

 

この会社はクロト……檀黎斗と名乗る社長とアイン……八神祝を名乗る副社長が代表している。明日から鳴り始めるであろう電話にもため息を着きたくなるだろう。

 

スマートフォン事業が上手く行けば、次のアイテムが発売される。ZAIAの代名詞、ザイアスペック。今回のザイアスペックはスマートグラスとスマートフォンとリンクして使用される。

 

これによってヒューマギア以上の処理能力が手に入る。

 

「AIって便利ですよね……本当に」

 

仮面ライダーもこの1年で増えている。スマートフォンをAIで製造しているように仮面ライダーもAIを併用して開発している。

 

装着して死ぬ可能性があるものもコードが来れば使えるようになるので躊躇わずに開発し、平成ライダーの開発できるライダーは全て開発した。

 

ただ基本フォームばかりでパワーアップフォームがあるのはオーズなどの基本フォームの変身アイテムがそのままパワーアップアイテムになるライダーだけだ。

 

それにクウガやアギトなどのライダー、響鬼などは作ることは叶わなかった。同じ姿だけど中身はパワードスーツを使うことになってしまうために作ることは諦めた。

 

それにジオウなどの資格が必要なライダーはそもそも使えないために使うことは断念した。

 

ちなみにゼロワンは社長(実質的)になったために使えるようになったので続々プログライズキーを生産している。

 

「檀黎斗社長、次のゲームのバグ確認をお願いします」

 

「わかっている、貸したまえ」

 

クロトの隣でクロトの秘書的なことをしているのはブログライズキーとAIによって生まれたヒューマギア・シエスタだ。

 

シエスタはクロトとアインのスケジュール管理とAIの管理をやっている。ちなみにAIの管理はハジメと分担しているためどちらが欠けても運用は可能だ。

 

これはハジメが異世界にいつ召喚されても構わないようにシエスタと権限を分けたのだ。

 

まぁマスター権限はハジメしか持ってないのだが。

 

「ハジメ様、貴方もバグの確認を」

 

「わかっています、今からやりますよ〜」

 

ハジメはクロトとともにデータの確認を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、全世界でZAIA コーポレーションの名でザイアフォンと呼ばれるスマートフォンが発売され、そのスマートフォンはそのスペックの高さと安さから高い反響を得た。

 

そしてマイティアクションXなどのゲームも、高い完成度と楽しさで徐々に人気を博していくのだった。

 



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本当のプロローグ・前編

早朝、ハジメはクロトと共有して使っている異空間の部屋のトレーニングルームを使用してとある姉弟と闘っていた。

 

「ダイレクトペイン!」

 

弟と言うには女の子に見える黒髪が拳を空中で振り下ろすとハジメの腹にハンマーに殴られたような痛みが走る。

 

だがハジメはそんなこと知らぬとばかりにブラックブラスターではない、銀色の銃を黒髪の男に向かって構えて撃つ。

 

銃からは氷の弾丸が放たれ、それは黒髪の男の頭にぶつかり脳震盪を引き起こしたのかそのまま倒れてしまった。

 

だが勝利の余韻を味わう暇はなく、弟の仇を打つように同じく黒髪の姉がスマートフォンを操作してハジメの元に急接近する。

 

「甘いですよ、セイ!」

 

ハジメの元に接近して手刀をハジメの首に入れようとした黒髪の姉はハジメの手から音もなく現れた刀によって意識を無くされた。

 

「……訓練終了です」

 

そのセリフと同時に黒髪の姉弟は消えていき、ハジメはそのまま刀と氷の弾丸を放った銃、別名『CAD』をジャケットのポケットの中にしまい込んだ。ポケットは四次元ポケットになっている。

 

「黒羽文弥、黒羽亜夜子は強かったな……2人同時にかかってこられると本当に苦戦する……」

 

ハジメの相手をしていたのは『魔法科高校の劣等生』に登場する黒羽姉弟だった。ちなみに黒羽文弥が女の子に見えたのは彼が任務で女装変装をしているためである。

 

仮面ライダーでもデバイスでもない武装を使っていることからわかると思うが、ユニゾンデバイスと会社設立から結構経っており、既に高校2年の17歳。最後の転生特典であるコードが渡されていた。

 

だが思わぬ副産物がハジメに付随された。コードギアスの世界においてコードとはギアスと呼ばれる特殊能力を最高潮まで引き上げ、両目に不死鳥のシンボルを灯らせなければならない。

 

だがハジメにはギアスがなく、コードを特典にしてくれと言ってはいたがコードを手に入れることが不可能になっていたのだ。

 

ハジメを転生させた神は苦肉の策としてギアスを追加で渡してきた。ただチート能力な絶対遵守や記憶操作ではなく、身に危険が現れた時目が赤く光って不死鳥のシンボルが灯るギアス、『危機察知のギアス』をハジメに宿したのだ。

 

そうすることでハジメはギアスを最高潮まで引き上げ、コードを手に入れたのだ。

 

「……そろそろ学校の時間ですね、行きましょうか」

 

ハジメは新たに身につけた2つの能力とともに学校へと向かい始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

戦闘訓練を終えてから学校に来たハジメは、いつものように始業チャイムがなるギリギリに登校し教室の扉を開けた。

 

その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら睨みやらを頂戴する。女子生徒も友好的な表情をする者はほぼいない。無関心ならまだいい方で、あからさまに嫌悪の表情を向ける者もいる。

 

ハジメはそんな視線や表情を欠片も気にすることなく教科書を取り出してザイアスペックを利用して一日のスケジュールを確認し始める。

 

そんなハジメにイラついているのか毎度の如くちょっかいを出してくる者がいる。

 

「よぉ、キモオタ! また、ザイアスペックでゲームか? どうせエロゲでもしてんだろ?」

 

「うわっ、キモ~。エロゲで学校でやるとかマジキモイじゃん~」

 

「(……うるさいです)」

 

ハジメは内心イラつきながら男子生徒達の妄言を聞き流す。ちなみにザイアスペックはSAOのオーディナル・スケール的な使い方ができる。

 

声を掛けてきたのは檜山大介といい、毎日飽きもせず日課のようにハジメに絡む生徒の筆頭だ。近くでバカ笑いをしているのは斎藤良樹、近藤礼一、中野信治の三人で、大体この四人が頻繁にハジメに絡む。

 

確かにハジメはオタクに入るだろう。だがそもそもキモイと言われる筋合いはない。ハジメ自身礼節を持って接しているはずなのだがいつもこう言われてしまうのだ。

 

それは何故なのか……その答えが彼女だ。

 

「ハジメくん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

 

ニコニコと微笑みながら一人の女子生徒がハジメのもとに歩み寄った。ハジメの恋人であり、この事態の原因でもある。

 

ハジメ的には恋人なのだがもう少し公の場での事を思って行動して欲しい……そう思っている。

 

名前は白崎香織といい、学校で二大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇る途轍とてつもない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげだ。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。

 

いつも微笑の絶えない彼女は、非常に面倒見がよく責任感も強いため学年を問わずよく頼られる。それを嫌な顔一つせず真摯に受け止めるのだから高校生とは思えない懐の深さだ。

 

ハジメと香織は去年から付き合っている。

 

「ごめんね香織さん、クロトと色々と……ね?」

 

「じゃあ仕方ないね!」

 

心が通じあっているというより心がお互い読めるのではないかと疑われるくらいの仲の良さによって熟練の夫婦にも見える。

 

ハジメがイケメンならまだ香織が構うのも許容できるのかもしれないが、生憎、ハジメの容姿は極々平凡でなぜ付き合っているのか全く理解できないだろう。

 

そんなわけでハジメは全校生徒のほとんどからきつい視線や言葉を受けているのだ。

 

ハジメが香織との会話を楽しんでいると、三人の男女が近寄って来た。

 

「南雲君、おはよう。本当に仲いいわね」

 

「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

 

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

三人の中で唯一朝の挨拶をした女子生徒の名前は八重樫雫。香織の親友であり、香織とハジメが付き合っていることを喜ばしく思っている本当に少ない人間だ。

 

ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。切れ長の目は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じられるため、冷たいというよりカッコイイという印象を与える。

 

百七十二センチメートルという女子にしては高い身長と引き締まった体、凛とした雰囲気は侍を彷彿とさせる。

 

事実、彼女の実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、雫自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。現代に現れた美少女剣士として雑誌の取材を受けることもしばしばあり、熱狂的なファンがいるらしい。後輩の女子生徒から熱を孕んだ瞳で〝お姉さま〟と慕われて頬を引き攣らせている光景はよく目撃されている。

 

次に臭いセリフで香織に声を掛けたのが天之河光輝。いかにもなキラキラネームの彼は、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人だ。

 

サラサラの茶髪と優しげな瞳、百八十センチメートル近い高身長に細身ながら引き締まった体。誰にでも優しく、正義感も強い。

 

小学生の頃から八重樫道場に通う門下生で、雫と同じく全国クラスの猛者だ。雫とは幼馴染である。ダース単位で惚れている女子生徒がいるそうだが、いつも一緒にいる雫や香織に気後れして告白に至っていない子は多いらしい。それでも月二回以上は学校に関係なく告白を受けるというのだから筋金入りのモテ男だ。

 

最後に投げやり気味な言動の男子生徒は坂上龍太郎といい、光輝の親友だ。短く刈り上げた髪に鋭さと陽気さを合わせたような瞳、百九十センチメートルの身長に熊の如き大柄な体格、見た目に反さず細かいことは気にしない脳筋タイプである。

 

龍太郎は努力とか熱血とか根性とかそういうのが大好きな人間なので、ハジメのように学校に来ても寝てばかりのやる気がなさそうな人間は嫌いなタイプらしい。現に今も、ハジメを一瞥した後フンッと鼻で笑い興味ないとばかりに無視している。

 

実際は日夜色々なゲームをクロトと2人で試行錯誤しながら作っていたり、アインやシエスタと経営やら資金繰りをしているために努力をしていない訳では無いのだがたかがクラスメイトに学校以外の面も見ろというのは酷というものだろう。

 

「おはようございます、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。こうなってるのは自業自得ですから仕方ないですね……」

 

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

 

光輝がハジメに忠告する。光輝の目にはハジメは香織の厚意を無下にする不真面目な生徒として映っているようだ。

 

ハジメとしては別に甘えたつもりもないのだが、光輝自身思い込みが激しいところがあるので反論しても無駄であろうことがわかっているので口を閉ざす。

 

「? 光輝くん、なに言ってるの? 私は、私がハジメくんと話したいから話してるだけだよ?」

 

ざわっと教室が騒がしくなる。男子達はギリッと歯を鳴らし呪い殺さんばかりにハジメを睨む。

 

「え? ……ああ、ホント、香織は優しいよな」

 

どうやら光輝の中で香織の発言はハジメに気を遣ったと解釈されたようだ。都合のいい思考回路してるなーとハジメは心の中で思う。

 

「……ごめんなさいね?光輝に悪気はないのだけど……」

 

この場で最も人間関係や各人の心情を把握している雫が、こっそりハジメに謝罪する。

 

ハジメ自身、自分のような容姿(それだけを見れば)の人間が香織と付き合うのは釣り合わないと思ってはいるので仕方ないと肩を竦める。

 

そうこうしている内に始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきた。教室の空気のおかしさには慣れてしまったのか何事もないように朝の連絡事項を伝える。

 

そしてハジメはいつものように眠りに入り、教師はそんなハジメに対して嫌な思いはするが起こしても無駄ということがわかっているためにハジメを無視して授業を始めたのだった。




ビスマルク・ヴァルトシュタインのギアスは近未来予知、その近未来予知の一部弱体化、一部強化のギアスとコードが憑依転生ハジメくんに追加されました。

CADは僕の好みですね。CADくらい仮面ライダーの技術あれば再現できるだろ、と思って使わせてみました。

香織とは彼氏彼女の関係です。原作だと鬱陶しく思っていましたけど、別にいいんじゃないかな?と思ってやってみました。

香織はZAIAコーポレーションのこととクロトとアインのことは知っていますが協力してくれている大人と思っています。転生云々や魔法関係、仮面ライダーに関しては全くの無関係です。

文字数がプロローグ全部一話に収めると7000行くので半分にわけました。次の話にもオリジナルストーリーを入れながらプロローグを進めますね。

仮面ライダーセイバーの方の話は少し休みます。オリジナル賢神を出したはいいんですけどストーリーが思いつかないんですよね。

とりあえず原作と同じ道を辿るこの物語を書きながら思いついたら投稿しますね。

ではでは、これからもよろしくお願いします!


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本当のプロローグ・後編

ザイアスペック内に構築された電脳空間にて、クロトとアイン、ハジメは椅子に座って会議を行っていた。電脳空間の中は檀黎斗神、新檀黎斗が収監されていた檻を広くした殺風景な内装になっている。

 

「さて、授業中ですがザイアスペックで会議を行いますよ」

 

「ツッコミどころ満載なんですが……」

 

「細かいことは気にするなぁ!私とハジメの才能によってこの空間が実現したという事実さえ覚えていればそれでいい!!」

 

「あ〜はい(思考停止)」

 

ハジメは手を叩いてホロウィンドウを3人の中心に出現させ、とあるものを2人に見せる。

 

「これが新しいゲーム案です。もうほとんどエグゼイド関連のゲームは出し尽くしたので!なら最後にこのゲームで行こうじゃありませんか!」

 

そこには緑のふちと黒の背景に彩られた『仮面ライダーCHRONICLE』の文字が書かれており、エグゼイド、ブレイブ、スナイプなどの仮面ライダーや『マイティアクションX』や『タドルクエスト』などこれまで出したゲームの敵キャラであるソルティやアランブラ達がスマ〇ラ的な感じで並んでいた。

 

《ガッチョーン!》

 

無言でガシャコンバグヴァイザーを腰にまきつけるクロト、アインに至っては氷の弾丸を作り出してハジメにロックオンしていた。

 

「お、落ち着いてください2人共!なにが気に食わないんです!?」

 

「デスゲームじゃないですか!?」

 

「ハジメ、貴様……」

 

「(いつもは便乗するのに……クロトさん!今回は一緒に止めましょ「なぜ私も誘わないんだ!」…………え?)」

 

クロトの発言によってアインは自分の甘い幻想から引き戻される。

 

クロトはハジメを止めるためにバグヴァイザーを使おうとしたのではなく、勝手に作ろうとしたハジメに怒っていたためにバグヴァイザーを巻き付けたのだ。

 

「2人であのゲームを再現するぞ、ハジメ!」

 

「はい!クロト、行きましょう!」

 

2人でスキップしながら異空間の研究室に向かおうとしたその瞬間、クロトとハジメの足元を氷の弾丸が撃ち抜いた。

 

「……させるわけないでしょう…デスゲームの再現なんてやらせませんよ!ホーリークロイツ、セットアップ」

 

アインはホーリークロイツと言う、八神はやてが使用するシュベルトクロイツというデバイスと同型のものを使用してバリアジャケットを展開する。

 

「刃を以て…血に染めよ…」

 

《Blutiger Dolch》

 

「ブラッディーダガー!」

 

赤い刃がアインの周りを回り始め、ハジメとクロトに対して狙いを定める。

 

《デンジャラスゾンビ!》《ガシャット!》

 

《タカ!》《ガトリング!》《ベストマッチ!》

クロトはバグヴァイザーにガシャットを装填、ハジメはタカフルボトルとガトリングフルボトルをビルドドライバーに装填して変身しようとする。

 

「遅いですよ!」

 

赤い刃は変身する時間を待ってくれず、装填したその後、その瞬間にハジメとクロトを襲う。

 

「チィ!ブラックブラスター、セットアップ!」

 

「変身!」

 

《バグルアップ!》

 

《デンジャー!デンジャー!デスクライシス!デンジャラスゾンビ!!》

 

ハジメとクロトは左右に飛んでその攻撃を避け、ハジメはブラックブラスターのバリアジャケット展開、クロトはそのまま仮面ライダーゲンム ゾンビゲーマーへと変身する。

 

そして2人は夜天の書(レプリカ)を取り出して止める気(殺す気)満々なアインの攻撃を魔法とライダーのスペックで避けるか相殺し始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室のざわめきによって電脳空間からハジメは意識が覚醒していくのを感じた。ハジメは先程までアインの殺意MAXな魔法にクロトと追いかけられていたのだ。

 

「ハジメ〜貴様〜逃げるな〜そして私を置いて行くな〜!!」

 

クロトの断末魔が聞こえたような気がしないでもなかったがそれを無視してハジメは周囲を見渡す。

 

朝の授業はほとんど終わり、昼休憩に入っているようだ。

 

購買組は既に飛び出していったのか人数が減っている。それでもハジメの所属するクラスは弁当組が多いので三分の二くらいの生徒が残っており、それに加えて四時間目の社会科教師である畑山愛子先生(二十五歳)が教壇で数人の生徒と談笑していた。

 

ハジメは愛子先生と生徒達の談笑を見てまだ昼休憩が始まったばかりと見てお弁当を取り出す。お弁当はアインがクロトのお弁当と一緒に作ってくれた。

 

そんなハジメの元に一人の女の子がお弁当片手にやってくる。言わずもがな、ハジメの彼女たる香織だ。

 

「ハジメくんお弁当、一緒にどうかな?」

 

ハジメに投げかけられる言葉、その言葉は教室に響き渡り、教室を不穏な空気にした。なんなら朝の再来か、ハジメに向かってきつい視線が集中してきた。

 

「ええ、わかりました。一緒に食べましょう」

 

ハジメが香織の言葉に答えるとさらに空気が悪くなる。男子のほとんどはあまりの嫉妬に殺意が大量に込められた言葉が口から毀れていた。

 

そんな最中、光輝達がハジメと香織の元にやってきた。

 

「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ眠たそうだし、眠たいまま食べても意味ないだろ?香織と眠たそうな顔で一緒に食べるなんて俺が許さないよ?」

 

爽やかに笑いながら見当違いのセリフを吐く光輝にキョトンとする香織。少々鈍感というか天然が入っている彼女には、光輝のイケメンスマイルやセリフも効果がないようだ。

 

「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」

 

素で聞き返す香織に思わず雫が「ブフッ」と吹き出した。光輝は困ったように笑いながらあれこれ話しているが、結局、ハジメの席に学校一有名な四人組が集まっている事実に変わりはなく視線の圧力は弱まらない。

 

「(香織さんだけならまだいいんですけどね…香織さん以外異世界に召喚されませんかね…そういう何かに巻き込まれそうな雰囲気ありそうですし。……どこかの世界の神か姫か巫女か誰でもいいので召喚してくれませんか…)」

 

香織以外いなくなって欲しいと思いながら異世界に電波を飛ばすハジメ。

 

香織以外を撒いて昼飯を香織と食べようとしたその瞬間、教室内の空気が凍りついた。

 

ハジメの目の前、光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学きかがく模様が現れたからだ。その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様、俗に言う魔法陣らしきものを注視する。

 

その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。

 

「(……オワタ、原作開始ですか!?)」

 

自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

 

数秒か、数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。

 

この事件は、白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。

 

 

 




アインのデバイスを登場させました。アインのデバイス、魔法は全て闇の書の闇、八神はやてから来ています。ハジメが全力全開で作り上げたものの1つですね。

ホーリークロイツはシュベルトクロイツの色違いです。

クロトはゲンムしか武装がありません。というか檀黎斗が仮面ライダーゲンム以外の武装を使うということ自体想像できませんし、最終的にはゴッドマキシマムマイティXを使わせたいなと思ってます。

ある意味ハジメとクロトは親子なのでクロノスとゲンムのコラボレーションもいいかもです。


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異世界召喚

片腕で顔を庇い、目をギュッと閉じていたハジメは、ざわざわと騒ぐ無数の気配を感じてゆっくりと目を開いた。そして、周囲を見渡す。

 

まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。

 

背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。美しい壁画だ。素晴らしい壁画だ。だがしかし、ハジメは原作知識がある。普通に目を逸らした。

 

よくよく周囲を見てみると、どうやら自分達は巨大な広間にいるらしいということが分かった。

 

素材は大理石のような美しい光沢を放つ滑らかな白い石造りの建築物の美しい彫刻が彫られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。大聖堂という言葉が自然と湧き上がるような荘厳な雰囲気の広間である。

 

ハジメ達はその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。周囲より位置が高い。周りにはハジメと同じように呆然と周囲を見渡すクラスメイト達がいた。どうやらあの時教室にいた生徒は全員この状況に巻き込まれてしまったようである。

 

ハジメはチラリと背後を振り返った。そこにはやはり呆然としてへたり込む香織の姿があった。怪我はないようで、ハジメはホッと胸を撫で下ろす。

 

そして、おそらくこの状況を説明できるであろう台座の周囲を取り囲む者達への観察に移った。

 

そう、この広間にいるのはハジメ達だけではない。少なくとも三十人近い人々が、ハジメ達の乗っている台座の前にいたのだ。まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好で。

 

彼等は一様に白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏まとい、傍らに錫杖のような物を置いている。その錫杖は先端が扇状に広がっており、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられていた。

 

その内の一人、法衣集団の中でも特に豪奢な衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子のような物を被っている七十代くらいの老人が進み出てきた。

 

もっとも、老人と表現するには纏う覇気が強すぎる。顔に刻まれた皺や老熟した目がなければ五十代と言っても通るかもしれない。

 

そんな彼は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でハジメ達に話しかけた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、ハジメ達は場所を移り、十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。

 

この部屋も例に漏れず煌びやかな作りだ。素人目にも調度品や飾られた絵、壁紙が職人芸の粋を集めたものなのだろうとわかる。

 

おそらく、晩餐会などをする場所なのではないだろうか。上座に近い方に畑山愛子先生と光輝、龍太郎、雫が座り、後はその取り巻き順に適当に座っている。ハジメと香織は最後方だ。香織を光輝は自分の方に引き寄せようとしたが香織はそのままハジメの方へと行ってしまった。

 

ここに案内されるまで、誰も大して騒がなかったのは未だ現実に認識が追いついていないからだろう。イシュタルが事情を説明すると告げたことや、カリスマレベルMAXの光輝が落ち着かせたことも理由だろう。

 

教師としての役目を完全に奪われた愛子先生は涙目だったが。

 

全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさん達が入ってきた。

 

全員が美女、美少女だったがハジメは見向きもしない。お茶を入れてくれたことには礼を言ったがメイドには視線を向けない。なぜ向けないのか、それは香織がすごい目でハジメをじーっと見つめているからだ。

 

「(…見ないからそんな目で見ないでください香織さん)」

 

全員に飲み物が行き渡るのを確認するとイシュタルが話し始めた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

そう言って始めたイシュタルの話は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもないくらい勝手なものだった。

 

要約するとこうだ。まずこの世界はトータスと呼ばれており、トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。

 

人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。

 

この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

 

魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。

 

それが、魔人族による魔物の使役だ。

 

魔物とは野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことでこの世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。

 

今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。

 

これの意味するところは、人間族側の〝数〟というアドバンテージが崩れたということ。つまり、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

イシュタルはどこか恍惚とした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。

 

イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 

ハジメが、『神の意志』を疑いなく、それどころか嬉々として従うのであろうこの世界の歪さに危機感を覚えていると、突然立ち上がり猛然と抗議する人、愛子先生が現れた。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

ぷりぷりと怒る愛子先生。彼女は今年二十五歳になる社会科の教師で非常に人気がある。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら、生徒のためにとあくせく走り回る姿はなんとも微笑ましく、そのいつでも一生懸命な姿と大抵空回ってしまう残念さのギャップに庇護欲を掻き立てられる生徒は少なくない。

 

愛ちゃんと呼ばれ親しまれているのだが、本人はそう呼ばれると直ぐに怒る。なんでも威厳ある教師を目指しているらしい。

 

今回も理不尽な召喚理由に怒り、ウガーと立ち上がったのだ。その様子にほんわかした気持ちでイシュタルに食ってかかる愛子先生を眺めていた生徒達だったが、次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に押しかかっているようだ。誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

愛子先生が叫ぶ。

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

 

「そ、そんな……」

 

愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

 

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

 

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

 

「なんで、なんで、なんで……」

 

パニックになる生徒達。

 

ハジメはこうなることを知っていたし、覚悟はしていた。が、帰れないという事実と召喚が突然だったということも相まって少し頭が混乱していた。

 

誰もが狼狽える中、イシュタルは特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた。

 

何故、神の信託を受け入れられない…そんなことを思っているんでしょうか

 

ハジメは一人小声で香織にも聞こえないように呟く。イシュタルがそう言う目で自分たちを見ていることを察したからだ。

 

パニックが収まらない中、光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

ギュッと握り拳を作りそう宣言する光輝。無駄に歯がキラリと光る。

 

同時に、彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

 

「龍太郎……」

 

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

 

「雫……よし!みんなで頑張ろう!」

 

香織を除くカースト上位が光輝に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子先生はオロオロと辞めるように涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。

 

結局全員で戦争に参加することになってしまった。ハジメと香織は賛同しなかったが多数決によって戦争に参加することは確定してしまったのだ。

 

こうしてただの高校生の集まりは人の勝手な我儘によってその身を戦火に投じることになったのだった。

 

 




香織は戦争否定派です。光輝と雫の意見に合わせることはこの話では無いですね。

最近魔法先生ネギま!を全巻買いました。今麻帆良祭のネギとクウネル・サンダースの試合ら辺ですね。イノチノシヘン、面白い能力だな〜と思いながら見てます。

魔法科高校の劣等生もメイジアンカンパニーの3巻が出たのでアニメイトで買ってきました。

魔法科高校の劣等生 追憶編とありふれの二期が楽しみです!

…FGOの最新のイベントに参加できなくて泣いてますが(まだ2章どころか7章まで来ていない)。出雲阿国が出なくて泣いてますが。

これからもよろしくお願いします!








評価してくれた風音鈴鹿さん、神城卓也さん、ふぉるとうなさん、基礎体温さん!ありがとうございます!



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紹介と晩餐

戦争参加の決意をした以上、生徒達は戦いの術を学ばなければならない。いくら規格外の力を潜在的に持っていると言っても、元は平和主義という名のぬるま湯に浸かりきった日本の高校生だ。いきなり魔物や魔人と戦うなど不可能である。ハジメは例外だが。

 

しかし、その辺の事情は当然予想していたらしく、イシュタル曰く、この聖教教会本山がある神山の麓のハイリヒ王国にて受け入れ態勢が整っているらしい。

 

王国は聖教教会と密接な関係があり、聖教教会の崇める神である創世神エヒトの眷属であるシャルム・バーンなる人物が建国した最も伝統ある国ということだ。国の背後に教会があるのだからその繋がりの強さが分かるだろう。

 

ハジメ達は聖教教会の正面門にやって来た。下山しハイリヒ王国に行くためだ。

 

聖教教会は【神山】の頂上にあるらしく、凱旋門もかくやという荘厳な門を潜るとそこには雲海が広がっていた。

 

高山特有の息苦しさなど感じていなかったので、高山にあるとは気がつかなかった。おそらく魔法で生活環境を整えているのだろう。このトータスの魔法をデバイスで使用できないかハジメは考え始めていた。

 

ハジメ以外の生徒達は、太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色に呆然と見蕩れた。ハジメは思考の海へダイブしているため景色など見てすらいない。

 

どこか自慢気なイシュタルに促されて先へ進むと、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が見えてきた。大聖堂で見たのと同じ素材で出来た美しい回廊を進みながら促されるままその台座に乗る。

 

台座には巨大な魔法陣が刻まれていた。柵の向こう側は雲海なので大多数の生徒が中央に身を寄せる。それでも興味が湧くのは止められないようでキョロキョロと周りを見渡していると、イシュタルが何やら唱えだした。

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――〝天道〟」

 

その途端、足元の魔法陣がキラキラと輝き出した。そして、まるでロープウェイのように滑らかに台座が動き出し、地上へ向けて斜めに下っていく。

 

どうやら、先ほどの詠唱で台座に刻まれた魔法陣を起動したようだ。この台座は正しくロープウェイなのだろう。ある意味、初めて見る魔法に生徒達がキャッキャッと騒ぎ出す。雲海に突入する頃には大騒ぎだ。

 

やがて雲海を抜け地上が見えてきた。眼下には大きな町、ではなく国が見える。山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。ハイリヒ王国の王都だ。台座は、王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているようだ。

 

そんな演出にもハジメは興味を示さない。持ち前の頭脳を使ってどんな風に魔法をデバイスに登録しようか悩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王宮に着くと、ハジメ達は真っ直ぐに玉座の間に案内された。

 

教会に負けないくらい煌びやかな内装の廊下を歩く。道中、騎士っぽい装備を身につけた者や文官らしき者、メイド等の使用人とすれ違うのだが、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた眼差しを向けて来る。ハジメ達が何者か、ある程度知っているようだ。

 

「(クロトに異空間の研究室で魔法登録手伝ってもらいましょうか、そもそもの話、まだ魔法を知りませんからね〜魔法のスペシャリストでもいないですかね…って、もう扉に着いたんですか)」

 

トータスの魔法を使いこなす魔法使いでも使って魔法を登録しようという結論が出たところで王宮の一番大きい扉に着いた。兵士二人が扉を守っている。

 

兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。

 

イシュタルは、それが当然というように悠々と扉を通る。光輝等一部の者を除いて生徒達は恐る恐るといった感じで扉を潜った。

 

扉を潜った先には、真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪奢な椅子――玉座があった。玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っていた。

 

その隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。更に、レッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者達が、右側には文官らしき者達がざっと三十人以上並んで佇んでいる。

 

玉座の手前に着くと、イシュタルはハジメ達をそこに止め置き、自分は国王の隣へと進んだ。

 

そこで、おもむろに手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。どうやら、教皇の方が立場は上のようだ。

 

そこからはただの自己紹介だ。国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナという。

 

後は、騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介がなされた。

 

その後、晩餐会が大広間で開かれ、ハジメ達は会話と異世界の料理を堪能していた。

 

「ハジメくん、このお肉美味しいよ?」

 

「ええ、美味しいですね香織さん」

 

「どうしたの?」

 

何処か元気がないハジメを見て香織は首を傾げる。

 

「戦争参加を止められなかったなぁと思いまして」

 

「仕方ないよ、光輝くんが扇動したら他の子達は参加するからね」

 

「…ifの話をしても意味ないってことですか、まぁ…頑張って生き抜きますかね」

 

「うん!一緒に頑張ろうね!」

 

ハジメと香織はそのまま異世界の夜景を前にこれからについて話し合っていたのだった。

 

ランデル殿下がしきりに香織に話しかけようとハジメと香織の間に割り込もうとしたのだが、話しかけることが出来ず、ハジメのことを恨めしく思っていたのはまた別の話。

 

晩餐会が終わって各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。

 

「おぉ、これは…私たちの世界でも中々お目にかかれない天蓋付きのベッドじゃないですか!」

 

ハジメの目の前には貴族や金持ちが使っていると思っている豪華な装飾が施された天蓋付きのベッドだった。

 

一通り部屋の中を見て回ったハジメは時間も遅いからとそのままベッドの中へと飛び込んでそのまま眠りについたのだった。

 

 




仮面ライダーセンチュリー、一型に似てるのは気の所為ですかね?いや目の色顔の色、全体見ても似てますし…

仮面ライダーリバイスのライブ/エビルのシステムも良さげですからビルドとスーパー戦隊枠のルパンエックス/パトレンエックスと一緒に使ってみたいですね。


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錬成師

召喚と召喚された理由を説明された日の翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

指示された場所に集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

騎士団長が訓練に付きっきりでいいのかとも思った生徒達だったが、対外的にも対内的にも勇者様一行を半端な者に預けるわけにはいかないということらしい。

 

メルド団長本人も、「むしろ面倒な雑事を部下達に押し付ける理由ができて助かった!」と豪快に笑っていたくらいだから大丈夫なのだろう。もっとも部下の皆さんは大丈夫ではないかもしれないが……

 

ハジメは内心1つのグループのリーダーがそんなんでいいのかと思っていたが口には出さなかった。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落な性格で、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

 

生徒達もその方が気楽で良かった。遥か年上の人達から慇懃な態度を取られると居心地が悪くてしょうがないのだ。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

「アーティファクト?」

 

アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

なるほど、と頷き生徒達は、顔を顰しかめながら指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。ハジメも同じように血を擦りつけ表を見る。

 

すると……

 

───────────────────────

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

 

天職:錬成師

 

筋力:100

 

体力:100

 

耐性:100

 

敏捷:100

 

魔力:200

 

魔耐:100

 

技能:錬成・全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・危機察知・高速魔力回復・魔力供給・言語理解

 

───────────────────────

 

「…いい感じですかね?職業が錬成師なのが少し不満ですが…どうせなら錬金術師とかそこら辺の職業がよかったです」

 

ハジメのステータスは原作よりも遥かに高く、魔力は光輝よりも上であり、錬成と言語理解の技能以外にも使える技能が大量にあった。

 

「ハジメくん、どうだった?私は治癒術師だったよ!」

 

香織がメルドと一緒にこっちに歩いてくる。香織の職業は香織のイメージにあっているな〜と思いながらメルドにステータスプレートを手渡す。

 

ハジメからステータスプレートを受け取ったメルドは最初は職業を見て苦い顔をしていたが下のステータスや技能を見ると驚いた顔をしていた。

 

「職業が錬成師と見た時はハズレかと思ったがステータスや技能は素晴らしいな!魔力はさっきまでトップだった勇者の光輝を上回っている!というかなんでこの技能で錬成師なのか全くわからん!」

 

メルドのレベルは62でステータスの平均は300程度なのだが、ハジメの魔力やほかのステータスはすぐにメルドを追い抜くだろう。

 

それに光輝のステータス平均を上回っているのを見てハジメの将来に期待を膨らますメルド。

 

ハジメが錬成師と聞いてちょっかいをかけようとした檜山達だったがステータスと技能を聞くと顔を青ざめさせてちょっかいをかけるのをやめた。

 

ハジメのステータスに対して驚いた後、愛子先生の職業、作農師に対してまた驚いているメルドを見てハジメは忙しい人だな〜と思いながら次に指定された場所まで行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒達はステータスを確認し終えた後、ハイリヒ王国の宝と言えるアーティファクトが入った宝物庫に来ていた。

 

深呼吸して息を整えたメルドが生徒達に向かって次に何をするのか説明を始める。

 

「これから自分たちの職業にあったアーティファクトを選んでもらう。戦闘系の職業の者は自分が使えるなと思ったアーティファクトを持って行ってくれ!安心しろ!好きなのを持って行っていい!国庫大放出だ!……光輝、ハジメ、愛子は俺のところに残ってくれ、お前達のは俺と宮廷魔法使いで選ばせてもらうからな!」

 

メルドに指定された3人以外はそれぞれ良いと思ったアーティファクトを持って行った。香織は治癒能力を増幅させる杖、雫は直剣ではなく曲刀を、龍太郎は篭手を持って行って国庫から出ていった。

 

「光輝は鎧と頭飾りと…この聖剣だな!」

 

生徒が全員出ていくとメルドが光輝の職業、勇者にあった装備を選定して渡していく。その装備は黄金に輝いており、どう見ても勇者に見える。

 

ハジメは手袋と杖をぽんと渡される。手袋は錬成を行うための魔法陣が描かれているようで、ただ素材に触れるだけで錬成を行うことが出来る優れものらしい。

 

杖は上質な素材で出来た杖らしく、上級魔法を扱うことも可能という魔法関係の職業の生徒が持って行っていたのと同じものだ。

 

作農師の愛子先生も少し悩まれながらも装備を渡されてそのまま国庫から出ていくのだった。

 

「じゃあ、これから頑張ってくれよ!」

 

メルドはハジメと光輝、愛子先生に激励の言葉をかけると魔法使いと共に生徒達の元へと一足先に走っていくのだった。

 

「(私も頑張りましょうか…魔法の取得を!)」

 

ハジメは王宮の図書室へと向かって早速この世界の魔法などの本を読み漁り始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




ハジメに魔法の適性をくっつけました。ハジメには色々と使って欲しいものがありますし、ユエと一緒にダブルで魔法を使わせてみたいです。

…月下の語らいまで連投させてもらいます。連投の理由は月下の語らいの最後の後書きに書いてありますし、内容でも分かります。


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魔法を複合できるなら違う世界の魔法も再現できるんじゃないかな?

ハジメのステータス発覚から2週間が経過した。

 

ハジメは今、王宮の図書室で大量の本を読んで自分の脳内にこの世界の情報と魔法について頭に叩きこんだものを駆使してひたすら魔法を使用していた。部屋で。

 

何故そのようなことをしているのか、錬成を鍛えるべきだろうと言われるかもしれない。だがそれはハジメの職業のメインと言っても構わない技能である錬成をこれ以上現段階では成長しないだろうというくらい成長させたからだ。

 

成長というのは派生技能のことであり、派生技能とは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる『壁を越える』に至った者が取得する後天的技能である。簡単に言えば今まで出来なかったことが、ある日突然、コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということだ。

 

ハジメはその派生技能を自分の異空間内で大量に派生させたのだ。

 

今のハジメのステータスはこうなっている。

 

───────────────────────

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:10

 

天職:錬成師

 

筋力:200

 

体力:200

 

耐性:200 

 

敏捷:200

 

魔力:400

 

魔耐:200

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+遠隔錬成]・全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・危機察知・高速魔力回復・魔力供給・言語理解

───────────────────────

もはや錬成を完璧に使いこなしていた。ハジメ的には遠隔錬成の取得が1番難しかったらしい。

 

そんなわけでハジメは訓練をすっぽかして本の虫と化していた。時折香織が様子を見にお弁当片手にやってくるが、それでも本からは目を離さない。

 

そしてハジメはついに全属性の魔法を使いこなすに至ったのだ。上級魔法まで全てを1週間で。原作ハジメなど見る影もない。

 

 

「えっと確か…サギタ・マギカ…ウナ・ルークス…!」

 

ハジメは部屋で自分だけの魔法を開発していた。デバイスに魔法登録云々はどうしたと言いたいが、ハジメはもうそのことは頭の中にない。

 

既存の詠唱ではなく、自分だけの詠唱でオリジナルの魔法を発動することができるように練習していたのだ。

 

「よしこれで…!魔法の射手(サギタ・マギカ)光の一矢(ウナ・ルークス)!」

 

ハジメは奇妙な呪文を唱え、自分の目の前に光の矢を出したのだ。

 

この魔法は『魔法先生ネギま!』に登場する魔法、魔法の射手を光の初級魔法を使用して再現したものだ。

 

「これぞオタクの夢!ファンの夢ですよ!ネギまの魔法が使えるようになりました!」

 

ハジメは魔法の射手の発動数を増やしたり、ほかの魔法を使えるようにまた試行錯誤を繰り返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメはとある布に包まれた棒状の物を抱えながら訓練施設にやってきていた。訓練施設では何人もの生徒達がやって来て談笑したり自主練したりしていた。

 

ハジメは目的の人物を探すために辺りをキョロキョロと見回していると、唐突に後ろから衝撃を受けてハジメは少しよろけた。

 

顔をしかめながら背後を振り返ったハジメは予想通りの面子に心底うんざりした表情をした。

 

そこにいたのは、檜山大介率いる小悪党四人組である。ハジメは内心学校だけでなくここでも妨害を行なうのかと内心辟易していた。

 

「よぉ、南雲。なにしてんの?訓練しないで本ばっか読んでるお前が来ても意味ないだろが。マジ無能なんだしよ~」

 

「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

 

「なんで今更訓練に出てくるわけ? 俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」

 

「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」

 

一体なにがそんなに面白いのかニヤニヤ、ゲラゲラと笑う檜山達。

 

「あぁ? おいおい、信治、お前マジ優し過ぎじゃね? まぁ、俺も優しいし? 稽古つけてやってもいいけどさぁ~」

 

「おお、いいじゃん。俺ら超優しいじゃん。無能のために時間使ってやるとかさ~。南雲~感謝しろよ?」

 

そんなことを言いながら馴れ馴れしく肩を組み人目につかない方へ連行していく檜山達。それにクラスメイト達は気がついたようだが見て見ぬふりをする。

 

「申し訳ないですが用があって来たんです、訓練は自分でやってるから大丈夫ですよ」

 

一応、やんわりと断ってみるハジメ。

 

だがその断り方は檜山達の琴線に触れたようだ。

 

「はぁ? 俺らがわざわざ無能のお前を鍛えてやろうってのに何言ってんの? マジ有り得ないんだけど。お前はただ、ありがとうございますって言ってればいいんだよ!」

 

ハジメのことを蹴り飛ばそうと足を振り抜く檜山、だがハジメはその攻撃を軽々とかわす。

 

それを見て舌打ちしながら檜山達は蹴りや殴りを行いハジメはそれを避け続ける。次第にハジメと檜山達は訓練施設からは死角になっている人気のない場所に来た。

 

「ここなら本気でやれるぜ、さァ楽しい訓練の時間だァ!」

 

檜山は隠し持っていた剣をハジメに向かって振るう。

 

戦いの歌(カントゥス べラークス)!」

 

ハジメは全身に魔力を滾らせて檜山の持つ剣を砕く。

 

「は?どうなってやがる…」

 

ハジメが剣を砕いたことで呆然としている檜山を見てそのまま立ち去ろうとするハジメに火の球が飛ぶ。

 

「何、逃げようとしてんだよ!ここに焼撃を望む――火球!」

 

「本当に用があるというのに…!魔法の射手(サギタ・マギカ)氷の三矢(グラキアーリス)!」

 

氷の矢が三本ハジメの周りに現れ、ハジメに襲いかかる火の球を打ち消す。

 

「ここに焼撃を望む––火球!」

 

「ここに焼撃を望む––火球!」

 

2人の小悪党組が火の球を放つ。

 

「ほい!」

 

その攻撃をハジメは上着のポケットから取り出した鉄球で迎え撃つ。

 

鉄球は地面をバウンドして火の球に当たる。すると火の球を吸収してそのまま爆発した。

 

「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」

 

鉄球の正体は閃光玉。それもただの閃光玉ではなく魔法の魔力を吸収して閃光の威力を増幅する代物である。ハジメが錬成を始めて一日で出来た。

 

小悪党組がゆっくりと目を開け始めた頃、突然、怒りに満ちた女の子の声が響いた。

 

「何やってるの!?…ってあれ?」

 

その声に「やべっ」という顔をする檜山達。それはそうだろう。その女の子は檜山達が惚れている香織だったのだから。香織だけでなく雫や光輝、龍太郎もいる。

 

香織は一目散にハジメの元に向かう。

 

「大丈夫?なんともない?」

 

「ないですよ、頼まれたものも無事ですから」

 

香織とハジメが話しているさなか、檜山達を見てハジメが檜山達をいじめていたのでないかと疑いの目をかける光輝と龍太郎。

 

うるさい文句が出る前にハジメはとあるものを光輝に向かって投げる。

 

「おっと…これは、ボイスレコーダー?!」

 

色々なことに使われるボイスレコーダーを渡されて驚く光輝。

 

「それにさっきまでの様子が録音されてます。それを聞いて私が悪いというならその時はどんな懲罰でも受けましょう」

 

ハジメはそう光輝に言うと自分の後ろに持っていたものを香織に手渡す。

 

「頼まれていた刀です」

 

「ありがとう!はい雫ちゃん!」

 

ハジメの用とは香織に頼まれていた刀を訓練施設まで持ってきて渡すこと。その刀は雫の手に渡った。

 

「…いい刀ね。気に入ったわ、ありがとう南雲君」

 

「どういたしまして」

 

ハジメの作った刀を気に入った雫はハジメに礼を言うと光輝と龍太郎に檜山達を運ばせてそのまま自分たちが訓練していたところまで戻って行ったのだった。

 

ちなみに小悪党組はハジメが持っていたボイスレコーダーが証拠となってそのまま罰を食らったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方、夕食の場でメルド団長からとあることが伝えられるらしく、珍しくハジメも夕食の場に来ていた。

 

何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では食事を始めていいぞ!」

 

そう言って伝えることだけ伝えるとさっさと飯をかきこんで行ってしまった。ハジメはそれを聞いて、

 

「(本格的な異世界の戦いの始まりですね!)」

 

これから始まることに胸を踊らせるのだった。




ネギまの魔法を使わせてみたかったんですよね。奈落に落ちてからはリリカルの魔法も併用して戦わせてみたいですから!




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月下の語らい

『オルクス大迷宮』

 

それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。

 

にもかかわらず、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さを測りやすいからということと、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。

 

魔石とは、魔物を魔物たらしめる力の核をいう。強力な魔物ほど良質で大きな核を備えており、この魔石は魔法陣を作成する際の原料となる。魔法陣はただ描くだけでも発動するが、魔石を粉末にし、刻み込むなり染料として使うなりした場合と比較すると、その効果は三分の一程度にまで減退する。

 

ハジメの杖も高品質な魔石を使用したものを材料にされている。

 

要するに魔石を使う方が魔力の通りがよく効率的ということだ。その他にも、日常生活用の魔法具などには魔石が原動力として使われる。魔石は軍関係だけでなく、日常生活にも必要な大変需要の高い品なのである。

 

ちなみに、良質な魔石を持つ魔物ほど強力な固有魔法を使う。固有魔法とは、詠唱や魔法陣を使えないため魔力はあっても多彩な魔法を使えない魔物が使う唯一の魔法である。一種類しか使えない代わりに詠唱も魔法陣もなしに放つことができる。魔物が油断ならない最大の理由だ。

 

ハジメ達は、メルド団長率いる騎士団員複数名と共に、『オルクス大迷宮』へ挑戦する冒険者達のための宿場町『ホルアド』に到着した。新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。

 

久しぶりに普通の部屋を見た気がするハジメはベッドにダイブし「ふぅ~」と気を緩めた。全員が最低でも二人部屋なのにハジメだけ一人部屋だ。

 

明日から早速、迷宮に挑戦だ。今回は行っても二十階層までらしく、高スペックな光輝達やハジメがいれば楽勝だとメルドは笑っていた。

 

その台詞を聞いてハジメは「それフラグですよね…」と苦笑いをしていたがそれは別の話。

 

ザイアスペックを使った通信ができない今、ハジメはクロトとアインと話せないため退屈にしていたため特典の一つである、『創作された物語にある特殊な物質を作り出せる』能力を使用して色々な物質を錬成で色々な形に変形させて遊んでいた。

 

ハジメが楽しいと思い始めた頃、扉をノックする音が響いた。

 

「ハジメくん、起きてる? 白崎です。ちょっと、いいかな?」

 

ハジメは錬成遊びをやめて扉に向かう。そして、鍵を外して扉を開けると、そこには純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織が立っていた。

 

「いらっしゃい、香織さん」

 

香織の服装に少し驚きつつも気を取り直して香織を部屋の中へと入れる。そして缶コーヒーを取り出して部屋の中のテーブルに載せる。

 

「悪いけど缶コーヒーしか無くてですね…紅茶なんてものはないんですよ…」

 

「別に大丈夫だよ。私は少しハジメくんと話したいだけだからさ…」

 

少し怖い顔をしながらハジメに近寄ってくる香織。その様子に少し怖くなって後ずさるハジメ。

 

「そ、それで話したいこととはなんでしょうか?」

 

ハジメの目が何故か不死鳥のマークへと変わっていく。ギアスという香織にとって未知なものを悟られないように目を通常の目に無理やり変える。

 

「(何故、何故ギアスが発動するんですか!)」

 

「私、夢を見たんだ…」

 

「ゆ、夢?」

 

ハジメのギアスがまた発動する。徐々に反応が強くなっていく。

 

「ハジメくんがオルクス大迷宮に向かって、強大な敵を単独で打倒するの…」

 

「う、うん…(ギアスが強く…どうなっているんですか!)」

 

「でもね?ハジメくんが消えてしまって、その後…」

 

「その後?」

 

ハジメはさらに強くなって行くギアスを抑えながら香織の話の続きを促す。何処か怖いと思いながらも知りたくなったからだ。

 

「私の手の届かない存在になってしまうの…」

 

「そうなんですね…」

 

ハジメは危機察知のギアスの反応が消えたことと香織の怖さが消えたことで少し落ち着いた。そして香織の次の言葉を促す。

 

「ねぇ、ハジメくん、この前私の家に来たこと…覚えてるかな?」

 

「はい、覚えていますよ」

 

ハジメは香織の家に来たことがある。香織の両親にもあって、彼女の父、白崎智一にキレられたこともある。

 

「その後ね、お母さんにこう教えられたの…」

 

次の瞬間、ハジメは香織にベッドに押し倒されていた。ギアスの反応もあった、スペックでも香織よりハジメは上だ。だがハジメは香織に押し倒されていた。

 

「好きな人は絶対に手放しちゃダメ、囲ってでも盗られないように、逃げられないようにしなさい…って」

 

「異世界に召喚される前は今年中に同棲してハジメくんをがんじがらめに束縛するつもりだったの…」

 

「でも、召喚されてしまった。そして私の手から届かない存在になるかもしれない…」

 

「IFかもしれないけど、私の手からハジメくんが離れるなんて耐えられない。だから、ハジメくん…」

 

「私のことを忘れられないようにして、私の手が届かないなんてことを無くしてあげるね…!」

 

ハジメはその台詞を聞いた瞬間、唇を奪われた。

 

「む…むぅぅぅ……!」

 

浅いキスではなく、深い、所謂ディープキスというものだ。香織は舌をハジメの口の中へ入れ、身体をハジメに密着させる。

 

それが数分経つとやっと香織はハジメの唇から唇を話した。

 

「はぁ…はぁ…か、香織さぁん…」

 

「まだ、終わらないよ?」

 

「…はぁ…はぁ…え?」

 

香織のまだ終わってない宣言に呆然とするハジメ。

 

「お母さんから懇切丁寧に教えてもらったんだ…ハジメくん、私のハジメテ…君にあげるね…」

 

「(…薫子さん、なんてことしてくれてんですか…防音結界、展開)」

 

ハジメは待機形態になっているブラックブラスターでこれから起こるであろう音が誰にも聞こえないように結界を作り、息を整えながら香織の方を向く。

 

「…ありがとう…ございます、香織さん」

 

ハジメは息も絶え絶えながら、香織のことを抱き締めて香織にその身を委ねたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、ハジメの部屋から入って未だ出てこない香織に対して醜く歪んだ感情を持つ者がいた事を誰も知らない。




危機察知のギアスが発動したのは貞操の危機が起きる可能性があったからですね。実際唇奪われてますし。半ば逆レイプですが香織とヤッちゃいましたね。

連投の理由は正にこの展開です。

この話を書く前に月下の語らいを読んでいたんですが、ハジメと恋人な香織さんならハジメが好きな理由とか話さないと思うんです。

それに転移しても転移しなくても監禁エンドが有り得たということがアフターのトータス旅行記でわかっていますので、ハジメを監禁というか束縛するんじゃないかな〜なんて考えていました。

それに恋人として白崎家に紹介しているならどうやってお父さんと結婚したか薫子さんなら話してそうですよね。

さて、私、初めてこんな展開書いているんですよね。

上手く書けてるのか不安でして。研究者の時も、ありふれない転生者の時も、聖剣の時もこんなエロ展開は書いたこと無かったんですよね。意図的に避けていたというのもありますが。

うん、こんな長い話をしている本当の理由は、この展開に対しての批評が欲しいというものです。正直これを投稿するのすごい迷ったんですけど、少し皆さんの感想が聞いてみたいので、投稿しようと決意しました。

この展開が宜しくないという意見が多ければこの話を消して新しく書き直します。

コメ稼ぎやめろという意見もあるかもしれませんが、率直な感想を投げていただけると幸いです。


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突入、オルクス大迷宮

香織のお話は残してこのままR18ギリギリの話も入れていこうと思います。




現在、生徒達は『オルクス大迷宮』の正面入口がある広場に集まっていた。

 

そこはまるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。

 

なんでも、ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。戦争を控え、多大な死者を出さない措置だろう。 

 

入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。まるでお祭り騒ぎだ。

 

浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したのだとか。入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので、迷宮に潜る者は重宝しているらしい。

 

ハジメは昨日の夜の激しい運動で疲れた身体を動かしながらメルドについて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。

 

縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、『オルクス大迷宮』は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。

 

一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。

 

と、その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

その言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた。

 

灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はねずみっぽいが……二足歩行で上半身がムキムキだった。八つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように。

 

正面に立つ光輝達――特に前衛である雫の頬が引き攣っている。やはり、気持ち悪いらしい。

 

間合いに入ったラットマンを光輝、雫、龍太郎の三人で迎撃する。その間に、香織と特に親しい女子二人、メガネっ娘の中村恵里とロリ元気っ子の谷口鈴が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入る。訓練通りの堅実なフォーメーションだ。

 

光輝は純白に輝くバスタードソードを視認も難しい程の速度で振るって数体をまとめて葬っている。

 

彼の持つその剣はハイリヒ王国が管理するアーティファクトの一つで、お約束に漏れず名称は『聖剣』である。光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという『聖なる』というには実に嫌らしい性能を誇っている。

 

龍太郎は、空手部らしく天職が『拳士』であることから籠手と脛当てを付けている。これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだという。龍太郎はどっしりと構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。無手でありながら、その姿は盾役の重戦士のようだ。

 

雫は、サムライガールらしく『剣士』の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬で敵を切り裂いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員をして感嘆させるほどである。

 

生徒達が光輝達の戦いぶりに見蕩れていると、詠唱が響き渡った。

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ――『螺炎』」」」

 

三人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。「キィイイッ」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。

 

気がつけば、広間のラットマンは全滅していた。他の生徒の出番はなしである。どうやら、光輝達召喚組の戦力では一階層の敵は弱すぎるらしい。

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

メルド団長の言葉に香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。

 

そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調に階層を下げて行った。

 

そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。

 

そして大迷宮のトラップを見ることが出来るアーティファクト『フェアスコープ』を使用しながらロックマウントという魔物に遭遇する。

 

保護色のようなもので壁に隠れていたらしいが、生徒達が来たことで大量に現れる。2本の剛腕が胸を叩いてゴリラのようなドラミングを行う。

 

だがメルドは冷静だ。メルドは短時間で広範囲高火力で敵を殲滅可能であろう人材に声をかける。

 

「ハジメ、やれ!」

 

「承りました、錬成!」

 

ハジメはロックマウントが隠れていた壁を遠隔錬成で錬成し、壁を狭めてロックマウントの動きを阻害させる。その的確な戦い方に騎士団員は感心する。

 

来れ雷精(ケノテートス)虚空の雷(アストラプサトー)薙ぎ払え(デ・テメトー)雷の斧(ディオス・テュコス)!!!」

 

ハジメの手から雷の斧が現れ、動けないロックマウントを全て薙ぎ払う。この魔法は魔法の射手から繋げる形で使われるのだが、魔法の射手を使わずに使った。

 

その威力は絶大であり、上級魔法を使って再現したために、奥の壁すら破壊して亀裂を入れていた。

 

「…こんなものですか(もう少し威力が出ると思ったのですが…)」

 

「こんなものですかではないわ!何やってんだ!ここを崩壊させる気か!」

 

ハジメはやりすぎと言われながら重い拳骨を頭に喰らう。香織が苦笑いしながらハジメの頭を撫でるのをクラスの男子が憎しみの対象を見るように見る。

 

そんな中、ハジメを撫でていた香織がキラキラとした鉱石を見つける。

 

「あ、あれ何かな?」

 

その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

 

そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。

 

「素敵……」

 

香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長だ。

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

 

メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

「団長! トラップです!」

 

「ッ!?」

 

しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。

 

檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。

 

魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 

部屋の中に光が満ち、ハジメ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

ハジメ達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 

尻の痛みを気にせずにハジメは周囲を見渡す。クラスメイトのほとんどはハジメと同じように尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

ハジメも立ち上がって魔法の準備を行なう。

 

「(原作通りなら敵は…)」

 

ハジメ達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。

 

橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

 

それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

 

しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……

 

その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

――まさか……ベヒモス……なのか……

 

「(ベヒモス、旧約聖書の陸の怪物の名を冠する魔物!)」




ベヒモス、旧約聖書に出てることを偶然知った作者。そのネタを早速載っけてみました。

ありふれの2期も楽しみですし、仮面ライダーの冬映画も楽しみですね!


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対決、ベヒモス

橋の両サイドに現れた赤黒い光を放つ魔法陣。通路側の魔法陣は十メートル近くあり、階段側の魔法陣は一メートル位の大きさだが、その数がおびただしい。

 

小さな無数の魔法陣からは、骨格だけの体に剣を携えた魔物『トラウムソルジャー』が溢れるように出現した。空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き目玉の様にギョロギョロと辺りを見回している。その数は、既に百体近くに上っており、尚、増え続けているようだ。

 

「錬成!」

 

ハジメは靴に仕込んである錬成を発動させるための魔法陣に魔力を流してトラウムソルジャーがいる場所に遠隔で錬成を行なう。

 

トラウムソルジャー100体が一瞬で串刺しになり、塵になっていくのだが、さらに大量のトラウムソルジャーが現れる。

 

大量発生するそれに加えてハジメの反対側にいるベヒモスが居る。ベヒモスの方でなにやらメルドが結界を展開させながら光輝と揉めている。

 

だがハジメはそんなところではない。トラウムソルジャー100体を倒した時はそんなにパニックではなかったが、今は大変混乱している。クラスメイトがだ。

 

ベヒモスという強大な敵とトラウムソルジャーという無限に出てくる敵に対して恐怖を抱かない方がおかしいが何とか抑えて欲しいというのがハジメの本音である。

 

カースト上位全員、香織含めてベヒモスの方へ行ってしまったため統率できる人間もいないのだ。

 

そんな中、一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまった。「うっ」と呻きながら顔を上げると、眼前で一体のトラウムソルジャーが剣を振りかぶっていた。

 

魔法の射手(サギタ・マギカ)光の一矢(ウナ・ルークス)!」

 

そのトラウムソルジャー目掛けて光の矢を1本飛ばすハジメ。そのトラウムソルジャーはその光の矢によって何体かを巻き込んで消し飛ばす。

 

「大丈夫ですか、立てるならさっさと動いて逃げなさい」

 

錬成を使って無理やり階段までの道を作り出すハジメ、そんなハジメをマジマジと見る女子生徒は、次の瞬間には「うん! ありがとう!」と元気に返事をして駆け出した。

 

誰も彼もがパニックになりながら滅茶苦茶に武器や魔法を振り回している。このままでは、いずれ死者が出る可能性が高い。騎士アランが必死に纏めようとしているが上手くいっていない。そうしている間にも魔法陣から続々と増援が送られてくる。

 

「…行きますか…」

 

ハジメは走り出した。この状況を何とかできる統率力のあるリーダーのいるベヒモスの方へ向かって。

 

ベヒモスは騎士たちの貼った障壁に向かって突進を繰り返していた。

 

障壁に衝突する度に壮絶な衝撃波が周囲に撒き散らされ、石造りの橋が悲鳴を上げる。障壁も既に全体に亀裂が入っており砕けるのは時間の問題だ。既にメルド団長も障壁の展開に加わっているが焼け石に水だった。

 

「ええい、くそ! もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達も早く行け!」

 

「嫌です! メルドさん達を置いていくわけには行きません! 絶対、皆で生き残るんです!」

 

「くっ、こんな時にわがままを……」

 

メルド団長は苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

この限定された空間ではベヒモスの突進を回避するのは難しい。それ故、逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。

 

しかし、その微妙なさじ加減は戦闘のベテランだからこそ出来るのであって、今の光輝達には難しい注文だ。

 

その辺の事情を掻い摘んで説明し撤退を促しているのだが、光輝は〝置いていく〟ということがどうしても納得できないらしく、また、自分ならベヒモスをどうにかできると思っているのか目の輝きが明らかに攻撃色を放っている。

 

まだ、若いから仕方ないとは言え、少し自分の力を過信してしまっているようである。戦闘素人の光輝達に自信を持たせようと、まずは褒めて伸ばす方針が裏目に出たようだ。

 

「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

 

雫は状況がわかっているようで光輝を諌めようと腕を掴む。

 

「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ? 付き合うぜ、光輝!」

 

「龍太郎……ありがとな」

 

しかし、龍太郎の言葉に更にやる気を見せる光輝。それに雫は舌打ちする。

 

「状況に酔ってんじゃないわよ! この馬鹿ども!」

 

「雫ちゃん……」

 

苛立つ雫に心配そうな香織。

 

その時、1人の生徒が光輝達の前に飛び込んできた。

 

「早く撤退しなさい、時間は稼いであげますから」

 

「いきなりなんだ? それより、なんでこんな所にいるんだ! ここは君がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて南雲は……」

 

召喚前の上辺だけを見た物言いに優しく言ったつもりのハジメの堪忍袋の緒が切れる。

 

「丁寧に言っても無駄ですね、邪魔だからさっさと行けって言ってんだよ、ウスノロ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

恋人として付き合っている香織ですら聞いたことがないであろう、怒りによっていつもの丁寧語が消え去ったハジメの声に5人が驚く。

 

「リーダーがいなければ統率できないんですよ、さっさと行きなさい。私がここは抑えますから」

 

「で、でも…!」

 

香織が恋人を置いていくまいとごねると、ハジメは檜山達に使ったものと同じ大きさの鉄球を取り出す。

 

「さっさと…………行ってきてください!!」

 

鉄球を地面に打ち付けると、光輝達は風に乗せられてクラスメイトとトラウムソルジャーの方へと飛ばされた。

 

「頼むぞ、ハジメ」

 

「お任せを」

 

メルドは去り際にハジメに抑えを頼むと光輝とともに風に包まれて飛ばされた。

 

そしてちょうど待っていたかのように、結界は破り去られ、ベヒモスが出てくる。

 

「…デバイスは使えない、ライダーも使えない…所詮は他人の真似事ですが、刀を使うとしましょう」

 

ハジメは魔法の杖を持ちながら白い柄の刀を取り出す。

 

戦いの歌(カントゥス・べラークス)!」

 

全身に魔力を滾らせてベヒモスに高速で接近する。

 

「神鳴流、模倣奥義!雷鳴剣!」

 

気ではなく、魔力を使用して刀の刃に雷を乗せ、ベヒモスの足を切り落とす。ベヒモスは帯電というおまけをくらいながら足を1本なくした。

 

だがベヒモスは立つ。旧約聖書に出てくる怪物の名を冠するだけの事はあると感心しながら魔法の用意をする。

 

「集え氷の精霊!槍もて迅雨となりて、敵を貫け!」

 

ハジメの周りに氷の槍が何本も現れる。そんなハジメに相対するベヒモスは頭の角がキィーーーという甲高い音を立てながら赤熱化していく。そして、遂に頭部の兜全体がマグマのように燃えたぎった。

 

「ふむ、それが貴方の必殺ですか…さぁ、永久なる氷の槍にて貫かれなさい!氷槍弾雨(ヤクラーティオー・グランディニス)!!!」

 

氷の槍がベヒモスに一斉に投擲される一方、ベヒモスもハジメに向かって突進を始める。赤熱の兜を前に押し出してハジメを溶かそうとする。

 

氷の槍がベヒモスの兜を貫こうと赤熱された兜に突き立てられるが1本、また1本と溶けていく。だがベヒモスの突進は止まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって脱出の鍵となる橋、風によって飛ばされた光輝達の高威力の魔法によって両側にいたソルジャー達も押し出されて奈落へと落ちていく。その魔法の後は、直ぐに雪崩れ込むように集まったトラウムソルジャー達で埋まってしまったが、生徒達は確かに、一瞬空いた隙間から上階へと続く階段を見た。今まで渇望し、どれだけ剣を振るっても見えなかった希望が見えたのだ。

 

香織の魔法によるリラクゼーションも相まって今度はパニックにならずに安全に階段へと向かう生徒達、それを光輝達は護衛する。

 

そしてクラスメイト全員が階段前に到達するとメルドはそこで全員を待機させる。生徒達はそのメルドの指示を疑問に思う。

 

「皆、待って! ハジメくんを助けなきゃ! ハジメくんがたった一人であの怪物を抑えてるの!」

 

香織のその言葉に何を言っているんだという顔をするクラスメイト達。ハジメは『無能』と思われているのだから仕方ない。いくら技能が優れていても固定概念というのは変わらないものだ。そう簡単には。

 

だが、困惑するクラスメイト達が、数の減ったトラウムソルジャー越しに橋の方を見ると、そこには確かにハジメの姿があった。

 

「魔法で、しかも1人で押し返してる!」

 

「だけど魔力も切れるかもしれないな!」

 

「そうだ! 坊主がたった一人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ! 前衛組! ソルジャーどもを寄せ付けるな! 後衛組は遠距離魔法準備! もうすぐ坊主の魔力が尽きる。アイツが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」

 

ビリビリと腹の底まで響くような声に気を引き締め直す生徒達。中には階段の方向を未練に満ちた表情で見ている者もいる。

 

ハジメの魔力は未だ尽きてはいないのだが、離脱が今のハジメでは難しいために援護は欲しいところだ。本気を出せば簡単に脱出できるが。

 

その中には檜山大介もいた。自分の仕出かした事とはいえ、本気で恐怖を感じていた檜山は、直ぐにでもこの場から逃げ出したかった。

 

しかし、ふと脳裏にあの日の情景が浮かび上がる。

 

それは、迷宮に入る前日、ホルアドの町で宿泊していたときのこと。

 

緊張のせいか中々寝付けずにいた檜山は、トイレついでに外の風を浴びに行った。涼やかな風に気持ちが落ち着いたのを感じ部屋に戻ろうとしたのだが、その途中、ネグリジェ姿の香織を見かけたのだ。

 

初めて見る香織の姿に思わず物陰に隠れて息を詰めていると、香織は檜山に気がつかずに通り過ぎて行った。

 

気になって後を追うと、香織は、とある部屋の前で立ち止まりノックをした。その扉から出てきたのは……ハジメだった。

 

それに加えてどれだけ遅くても出てこなかったという時点で何が部屋で起きてるのか分からないほど檜山はアホではない。

 

檜山は頭が真っ白になった。檜山は香織に好意を持っている。しかし、自分とでは釣り合わないと思っており、光輝のような相手なら、所詮住む世界が違うと諦められた。

 

しかし、ハジメは違う。自分より劣った存在(檜山はそう思っている)が香織の傍にいるのはおかしい。それなら自分でもいいじゃないか、と端から聞けば頭大丈夫? と言われそうな考えを檜山は本気で持っていた。

 

ただでさえ溜まっていた不満は、すでに憎悪にまで膨れ上がっていた。香織が見蕩れていたグランツ鉱石を手に入れようとしたのも、その気持ちが焦りとなってあらわれたからだろう。

 

その時のことを思い出した檜山は、たった一人でベヒモスを抑えるハジメを見て、今も祈るようにハジメを案じる香織を視界に捉え……

 

ほの暗い笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(そろそろ脱出しますか…)」

 

その頃、ハジメは後ろに魔力の反応があることを知る。チラリと後ろを見るとどうやら全員撤退できたようである。隊列を組んで詠唱の準備に入っているのがわかる。

 

最後に氷の槍をもう1本投擲してハジメは自分に戦いの歌(カントゥス・べラークス)と待機状態のデバイスで発動した身体強化を掛けて駆け出す。

 

ハジメが駆け出した瞬間、色とりどりの魔法がベヒモスに向かって放たれる。

 

「(これで………)え?」

 

走っていて無防備なハジメの腹に火球に風球が当たり、ハジメは地面に転がる。

 

「ハジメくん!!」

 

香織の悲鳴が階層内に響くが、そんなことお構い無しにハジメに魔法の弾丸が当たる。

 

「(どうなって……まさか檜山か!)セットあっがァァァ!!!」

 

仕方なくデバイスを展開してバリアジャケットを着ようとしても今度は上級魔法が当たる。

 

「(…真面目にどうなってるんですか!檜山がこうも上級魔法を発動できるなんて…)」

 

ハジメは諦めずに駆け出すがそこはさっきまで錬成を多用して橋の部分が薄くなったベヒモスと戦った場所、ベヒモスに対する魔法攻撃の振動でヒビが入っていた。

 

「(…これは……仕方ないですかね)」

 

さらなる援護魔法によってヒビが入っていた床は崩れ、ハジメとベヒモスは落下する。

 

「ごめんなさい、香織さん…必ず迎えに行きますから」

 

デバイスを使用しようとしてもベヒモスがハジメの上に覆いかぶさってハジメを殺そうとしているため意味が無い。

 

「ハジメくん!ハジメくーん!」

 

ハジメが落ちていくのを助けようと穴まで駆け寄ってきた香織を光輝と雫が必死に押え、香織は落ちていくハジメに対して叫ぶのだった。




嫉妬のエネルギーは無限大?なんでしょうか?

ハジメに制限がかかっているのでベヒモス相手に無双という訳にはいかないです。ネギまの魔法と錬成された魔法仕込みの鉄球、擬似的な神鳴流…意外と行けそうではありますよね。

まぁ互角という感じにしましたが。次回からはハジメの無双が始まります。

これからもよろしくお願いします!


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奈落に落ちても変わらないハジメくん17歳

ザァーと水の流れる音がする。

 

冷たい微風が頬を撫で、冷え切った体が身震いした。頬に当たる硬い感触と下半身の刺すような冷たい感触によってハジメは意識を覚醒させる。

 

ボーとする頭、ズキズキと痛む全身に眉根を寄せながら両腕に力を入れて上体を起こす。

 

「痛っ~、ここは……私は原作通り奈落に落ちたんでしたっけ」

 

ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回す。コードによって不老不死ではあるがダメージがない訳では無いのだ。

 

周りは薄暗いが緑光石の発光のおかげで何も見えないほどではない。視線の先には幅五メートル程の川があり、ハジメの下半身が浸かっていた。上半身が、突き出た川辺の岩に引っかかって乗り上げたようだ。

 

ハジメが奈落に落ちていながら助かったのは全くの幸運だった。

 

落下途中の崖の壁に穴があいており、そこから鉄砲水の如く水が噴き出していたのだ。ちょっとした滝である。そのような滝が無数にあり、ハジメは何度もその滝に吹き飛ばされながら次第に壁際に押しやられ、最終的に壁からせり出ていた横穴からウォータースライダーの如く流されたのである。とてつもない奇跡だ。

 

まぁその奇跡もコードによって無駄になっている。どうせ回復するのだから。

 

火よ灯れ(アールデスカット)

 

指先に炎を灯し、自分の服を乾かす。そして自分の服が水を全て蒸発させた頃に、ハジメは立ち上がった。

 

「そろそろ動きましょうか、セットアップ」

 

ハジメは自らのデバイスであるブラックブラスターを展開してバリアジャケットを着る。そして浮遊しながら大迷宮を攻略し始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメが進む道は洞窟といった感じだった。

 

低層の四角い通路ではなく岩や壁があちこちからせり出し通路自体も複雑にうねっている。二十階層の最後の部屋のようだ。

 

「…錬成、錬成、錬成!」

 

ハジメは錬成の練習になると思って道を整地していた。せり出している岩や壁を無くして行く。

 

ちなみにハジメの周囲はサーチャーによって警戒されており、いつ魔物が来ても対応可能だ。

 

そんなハジメだったが遂に初めての分かれ道にたどり着いた。巨大な四辻である。ハジメはどの道に進むべきか逡巡した。

 

考え中の最中、ハジメのサーチャーに魔物の反応があった。

 

よく肉眼で見てみるとハジメのいる通路から直進方向の道に白い毛玉がピョンピョンと跳ねているのがわかった。長い耳もある。見た目はまんまウサギだった。

 

ただし、大きさが中型犬くらいあり、後ろ足がやたらと大きく発達している。そして何より赤黒い線がまるで血管のように幾本も体を走り、ドクンドクンと心臓のように脈打っていた。

 

だがそんな魔物を見てもハジメは冷静だった。

 

「魔物ですね、ぶっ倒します!」

 

《Black Shooter!》

 

ブラックブラスターの銃口から7つの黒い魔力弾が放たれ、ウサギに向かって放たれる。ウサギが反応して迎撃する頃には包囲され魔力弾の餌食になっていた。

 

だがその後すぐに別の魔物が襲いかかって来た。どうやらウサギはハジメではなくその別の魔物と対峙していたようである。

 

その白い狼は大型犬くらいの大きさで尻尾が二本あり、ウサギと同じように赤黒い線が体に走って脈打っている。

 

どこから現れたのか一体目が飛びかかった瞬間、別の岩陰から更に二体の二尾狼が飛び出す。

 

「ほい!」

 

《Black Shooter Phalanx Shift!》

 

無数の黒い魔力弾がハジメの前に現れ、二尾狼三体に攻撃していく。圧倒的な弾幕に、基本理性的な考えができない魔物が避けられるはずもなく、そのまま消し飛んだ。

 

「弱いですね…あ、神結晶でも探しましょうかね、神水は魅力的な効能がある水です。確かこの辺りを錬成すれば出てくると思うんですが……」

 

考え事をしているハジメの背後に迫る、巨体な魔物。二メートルはあるだろう巨躯に白い毛皮。例に漏れず赤黒い線が幾本も体を走っている。その姿は、たとえるなら熊だった。ただ、足元まで伸びた太く長い腕に、三十センチはありそうな鋭い爪が三本生えている。

 

「この階層全体を錬成、およびブランチマイニングすれば出てきますよね!錬成!」

 

巨体な魔物、爪熊はハジメが後ろを向いている瞬間に自慢の爪を振り下ろそうと力む。だがハジメが錬成と言った瞬間に、地面が揺れ始め、爪熊は転び、ベルトコンベアに乗っているかのようにハジメから離れていく。

 

何が起こっているのか分からない爪熊は辺りをキョロキョロし、ハジメの方を見る。すると…

 

「さよなら〜」

 

爪熊に向かって手を振っていた。元々サーチャーで気づいていたのだが、普通に倒すのも飽きたので、神結晶を探すついでにこの階層の魔物もミンチにしようと考えたのだ。

 

そんな適当な殺され方をされた爪熊は…

 

グルルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウ!!?(このクソ野郎ぅぅぅぅ!!?)」

 

とうるさい声で叫んでそのまま周辺の壁や床によってミンチ肉にされたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから少したち、ハジメの目の前には回収された有用な鉱石や魔石、魔物の肉、神結晶が並んでいた。

 

「さてっと…鉱石類は異空間にしまって…魔物の魔石もかな…」

 

ハジメは異空間に適当に鉱石と魔石を仕舞い、神結晶から神水を抽出する。

 

そして急ごしらえのトングと皿、ナイフにフォークを用意してトングで魔物の肉を掴む。

 

「…まずそうですね」

 

ハジメが掴んでいるのは二尾狼の肉。見るからに硬そうで酷い匂いでとても食べれる気がしないのだが、これを食べて果たして原作のように技能が手に入るのか気になっているのだ。

 

火よ灯れ(アールデスカット)

 

手から火を出して二尾狼の肉を焼いていく。よく焼いて生焼けの部分がないようにしてからそれを口に入れた。

 

「ぐぅぅぅぅ!?不味っ!?」

 

いつもの丁寧語はどこに行ったのか、形容しずらい不味さにハジメはのたうち回る。

 

硬い筋ばかりの肉を、血を滴らせながら噛み千切り必死に飲み込んでいく。およそ二週間振りの食事だ。いきなり肉を放り込まれた胃が驚き、キリキリと痛みをもって抗議する。

 

コードがあるとはいえこんな食事続けていられない。そもそも食事はコードを手に入れた時点でいらないのだが。

 

肉を食べるのでは無く飲み込んでいると、ハジメの体に異変が起こり始めた。

 

「あ。アガァァァァ!?」

 

突如全身を激しい痛みが襲った。まるで体の内側から何かに侵食されているようなおぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。

 

コードが回復をしているのだが痛みは収まらない。仕方なしに神水を口に含んで回復をブーストする。

 

「ぐぅぅぅぅ!?なお、治らない!治らないィィィィ!?」

 

回復の後に激痛、さらに回復してもまた激痛が起きる。

 

ハジメの体が痛みに合わせて脈動を始めた。ドクンッ、ドクンッと体全体が脈打つ。至る所からミシッ、メキッという音さえ聞こえてきた。

 

ハジメは転生してから初めての苦しみに苛まれながらこの激痛が治ることを願う。

 

すると、ハジメの体に変化が現れ始めた。

 

まず髪から色が抜け落ちてゆく。許容量を超えた痛みのせいか、それとも別の原因か、日本人特有の黒髪がどんどん白くなってゆく。

 

次いで、筋肉や骨格が徐々に太くなり、体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮き出始める。

 

だがコードがその変化を抑え始める。白髪が元の色に、赤黒い線が徐々に消えていく。

 

そして元の体に戻っていくのだが、また日本人離れした姿へと変わっていく。

 

数時間後、痛みも完全に引き、身体の変化も収まった頃…

 

「で、なんでこんな身体に…」

 

白髪、赤目、赤黒い線が体の内側に浮いているのは変わらない。だがハジメの目に常に不死鳥のギアスマークが現れている。

 

赤目のせいか、不死鳥のマークはジェレミアのギアスキャンセラー、レイラ・マルカルのギアスと同じ色、即ち青になってしまっていた。

 

「…はぁ…ステータス見てみるか」

 

───────────────────────

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:15

 

天職:錬成師

 

筋力:500

 

体力:500

 

耐性:500

 

敏捷:500

 

魔力:700

 

魔耐:500

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+遠隔錬成][+整地]・全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法[+ネギま!]・危機察知・高速魔力回復・魔力供給・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解

───────────────────────

 

ハジメは原作通りの技能を見てあることを思い付く。

 

「…これ、闇の魔法(マギア・エレベア)再現行けるような気がするんですが…」

 

ハジメは纏雷を発動する。すると指先に赤い稲妻が走る。

 

纏雷はその名の通り、身体に電気を纏わせることも可能になっている。

 

「試しにやってみますか、魔力操作で詠唱しなくても発動できますから詠唱なしで!」

 

ハジメはその身に赤き稲妻を纏う。そして自らの身体を雷に変えていく。

 

「ぐぅぅぅぅ!?はァァァァァァァ!!!」

 

ドラゴンボール並の掛け声で身体を変えていく。正にスーパーサイヤ人になろうとする悟空のように!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分後…

 

「はぁはぁはぁ……無理です…」

 

魔力が無くなるギリギリまで闇の魔法(マギア・エレベア)したために身体中が疲れ果ててしまい、そのままうつ伏せになるハジメ。

 

そんなハジメが導き出した結論は…

 

「うん、ダメです…また今度やりましょう。今度は電気じゃなくて違う魔法で」

 

ネギの雷の術式兵装を諦め、違う術式兵装を今度再現するという結論に達したようだ。ハジメはそのまま使ってないリンカーコアの方の魔力を使って結界を展開してそのまま死んだように眠りにつくのだった。

 

ブランチマイニングモドキで魔物を全て殺して血だらけの岩の床の上でそのまま眠るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴェハハハハハ!遂に完成だ!これぞ仮面ライダークロニクルを改良した私とハジメの最高傑作!ゲンムゲームズファイターズ!私とハジメの神の力、思いし「黙れ」グバ!」

 

「…連絡取れないな…マスター、貴方は無事なのか?」

 

ハジメのことを思いながらもゲーム開発に精を出し暴走するクロト(ゲーム狂)とそんなクロトにツッコミという名の手刀を首に撃ち込むアイン(常識人)

 

ハジメと連絡が取れず、徐々に不安になるデバイスが地球(ハジメの故郷)に2人……

 




闇の魔法は再現できませんでした。そもそも魔法を掌握しないといけないんですよね。身体に纏わせて電磁バリアのようにすることはできるかもですけど、身体を雷に…なんてことは難しいでしょうね。

再現するなら氷の術式兵装が楽かもしれません。

今はシアの武装をどうしようか悩み中です。拳にしようかハンマーにしようかパイルバンカーにしようか……まだ登場すらしてませんが。


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香織の目覚め

テスト終わりました。クラスメイトsideの話です。


ハジメの術式兵装試しから時間は少し遡る。

 

ハイリヒ王国王宮内、召喚者達に与えられた部屋の一室で、八重樫雫は、暗く沈んだ表情でハジメが奈落に落ちたショックで眠る親友を見つめていた。

 

あの日、迷宮で死闘と喪失を味わった日から既に五日が過ぎている。

 

あの後、宿場町ホルアドで一泊し、早朝には高速馬車に乗って一行は王国へと戻った。とても、迷宮内で実戦訓練を続行できる雰囲気ではなかったし、ハジメは錬成師ではあるが優秀であったため国王にも教会にも報告は必要だった。

 

それに、厳しくはあるが、こんな所で折れてしまっては困るのだ。致命的な障害が発生する前に、勇者一行のケアが必要だという判断もあった。

 

雫は、王国に帰って来てからのことを思い出し、香織に早く目覚めて欲しいと思いながらも、同時に眠ったままで良かったとも思っていた。

 

帰還を果たしハジメの死亡が伝えられた時、王国側の人間は誰も彼もが愕然とした。メルドの話や宮廷魔法使いの話でハジメの優秀さは聞いていたのだから。

 

だが錬成師と言う戦えない生産系職業を持っているハジメが落ちたのは仕方ないだの、死んだのが無能でよかっただの、神の使徒でありながら役立たずなど死んで当然だの、それはもう好き放題に貶していた。

 

王宮にいた人間はハジメの優秀さを知っていたために貶している人間を、主に貴族を諌めようとしたがそれは止められなかった。

 

まさに、死人に鞭打つ行為に、雫は憤激に駆られて何度も手が出そうになった。

 

実際、正義感の強い光輝が真っ先に怒らなければ飛びかかっていてもおかしくなかった。光輝が激しく抗議したことで国王や教会も悪い印象を持たれては真面目にマズイと判断したのか、ハジメを罵った人物達は処分を受けたようだが……

 

逆に、光輝は無能にも心を砕く優しい勇者であると貴族間で噂が広まり、結局、光輝の株が上がっただけで、ハジメは勇者の手を煩わせただけの無能であるという勝手な評価は覆らなかった。

 

あの時、自分達を救ったのは紛れもなく、勇者も歯が立たなかった化け物をたった一人で食い止め続けたハジメだというのに。そんな彼を死に追いやったのはクラスメイトの誰かが放った魔法だというのに。

 

クラスメイト達は図ったように、あの時の誤爆・・の話をしない。自分の魔法は把握していたはずだが、あの時は無数の魔法が嵐の如く吹き荒れており、『万一自分の魔法だったら』と思うと、どうしても話題に出せないのだ。それは、自分が人殺しであることを示してしまうから。

 

結果、現実逃避をするように、あれはハジメが自分で何かしてドジったせいだと思うようにしているようだ。死人に口なし。無闇に犯人探しをするより、ハジメの自業自得にしておけば誰もが悩まなくて済む。クラスメイト達の意見は意思の疎通を図ることもなく一致していた。

 

メルド団長は、あの時の経緯を明らかにするため、生徒達に事情聴取をする必要があると考えていた。生徒達のように現実逃避して、単純な誤爆であるとは考え難かったこともあるし、仮に過失だったのだとしても、白黒はっきりさせた上で心理的ケアをした方が生徒達のためになると確信していたからだ。

 

こういうことは有耶無耶にした方が、後で問題になるものなのである。なにより、メルド自身、はっきりさせたかった。『助ける』と言っておいて、ハジメを救えなかったことに心を痛めているのはメルド団長も同様だったからだ。

 

しかし、メルド団長は行動すること叶わなかった。イシュタルが、生徒達への詮索を禁止したからだ。メルド団長は食い下がったが、この国では宗教第一だ。意味はなかった。

 

「あなたが知ったら……怒るのでしょうね?」

 

あの日から一度も目を覚ましていない香織の手を取り、そう呟く雫。

 

医者の診断では、体に異常はなく、おそらく精神的ショックから心を守るため防衛措置として深い眠りについているのだろうということだった。故に、時が経てば自然と目を覚ますと。

 

雫は香織の手を握りながら、「どうかこれ以上、私の優しい親友を傷つけないで下さい」と、誰ともなしに祈った。

 

その時、不意に、握り締めた香織の手がピクッと動いた。

 

「!? 香織! 聞こえる!? 香織!」

 

雫が必死に呼びかける。すると、閉じられた香織の目蓋がふるふると震え始めた。雫は更に呼びかけた。その声に反応してか香織の手がギュッと雫の手を握り返す。

 

そして、香織はゆっくりと目を覚ました。

 

「香織!」

 

「……雫ちゃん?」

 

ベッドに身を乗り出し、目の端に涙を浮かべながら香織を見下ろす雫。

 

香織は、しばらくボーと焦点の合わない瞳で周囲を見渡していたのだが、やがて頭が活動を始めたのか見下ろす雫に焦点を合わせ、名前を呼んだ。

 

「ええ、そうよ。私よ。香織、体はどう? 違和感はない?」

 

「う、うん。平気だよ。ちょっと怠いけど……寝てたからだろうし……」

 

「そうね、もう五日も眠っていたのだもの……怠くもなるわ」

 

そうやって体を起こそうとする香織を補助し苦笑いしながら、どれくらい眠っていたのかを伝える雫。香織はそれに反応する。

 

「五日? そんなに……どうして……私、確か迷宮に行って……それで……」

 

徐々に焦点が合わなくなっていく目を見て、マズイと感じた雫が咄嗟に話を逸らそうとする。しかし、香織が記憶を取り戻す方が早かった。

 

「それで……あ…………………………ハジメくんは?」

 

「ッ……それは」

 

苦しげな表情でどう伝えるべきか悩む雫。そんな雫の様子で自分の記憶にある悲劇が現実であったことを悟る。だが、香織は決して絶望することは無かった。

 

「ふふっ、やっぱりそうなっちゃったか〜」

 

「…え?」

 

これから起きる展開を、香織がおかしくなってしまうという展開を予測していた雫だったが、その予想は簡単に破られた。

 

香織は、微笑しながらハジメが落ちたことを認めていたのだから。

 

「ハジメくんがそうなることくらい夢に出てきてから覚悟してるよ…」

 

「ゆ、夢?それって確かホルアドの宿の時の…」

 

今度は香織ではなく雫が記憶を思い出す。

 

「確か、南雲くんが消えて手の届かない人になってしまう…そんな話だったかしら?」

 

「うん。それと雫ちゃんにも、もちろんハジメくんにも言ってなかったことがあるの」

 

「?」

 

香織がハジメに関することを雫はまだしもハジメにも伝えないことがあろうかと雫は首を傾げる。

 

「実は…ハジメくんが消えたシーンから少し経ってからまたハジメくんが私の前に現れたの…」

 

「ゴクリ」

 

神妙そうな顔で話す香織に雫は緊張する。

 

だがその緊張は───

 

「ハジメくんの両隣りに色んな女の子を侍らせながら出てきたんだよ!おかしいでしょ!?」

 

香織いわく、ハジメの1番近くには小柄な少女がいたらしい。その隣にはウサギっぽい少女、髪の長い妖艶そうな女性、1番近くにいた少女よりもさらに小さい幼女、その幼女とよく似た女性、更には何故か既視感のある少女が3人もいたらしい。

 

「姿もぼやけててシルエットしかわからなかったけど…このままじゃまずいと思ってハジメくんに処女あげて来ちゃった…

 

「…処女南雲くんにあげたの!?というかどこでやりやがったァァァ!?」

 

いつもの口調はどこに行ったのか。香織がしでかしたことに驚いていた。

 

「…ハジメくんも最後はちゃんと私を忘れないって言ってくれたもん!それにハジメくん強いから生きて帰ってくるから大丈夫だよ!」

 

「…まぁそういうことならもう何も言わないわ、南雲くんが生きて帰ってくることを信じて一緒に頑張りましょ?」

 

「うん!勿論だよ!」

 

その後すぐに騒ぎを聞きつけた光輝と龍太郎がやってきて香織の元気の入りように驚くのはまた別の話。



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ハジメは強化する

「さっさと下に行きましょう。上に行く階段はやはりないみたいですし」

 

この階層の魔物全てをブランチマイニングで殺してから三日、ハジメは上階へと続く道を探し続けていた。

 

既にこの階層の八割は探索を終えている。爪熊を喰らってからというものステータスがまた跳ね上がり、今や、この階層でハジメにとって脅威となる存在はおらず、広大ではあるものの探索は急ピッチで進められていた。にもかかわらず、いくら探しても何も見つからない。

 

いや原作でもないのは分かってはいるのだが、それでも探したくなる。

 

ただ『階下』への道なら二日前に発見している。ここが迷宮で階層状になっているのなら上階への道も必ずあるはずなのだが、どうしても見つからないのだ。

 

仕方ないのでハジメは階下への道を進むことにした。もちろんギアスとサーチャーは常時展開したままである。どんな不意打ちがあるかわからないのだから。

 

その階段はなんとも雑な作りだった。

 

階段というより凸凹した坂道と言った方が正しいかもしれない。そしてその先は、緑光石がないのか真っ暗な闇に閉ざされ、不気味な雰囲気を醸し出していた。まるで、巨大な怪物の口内のようだ。一度入れば二度と出てこられない、そんな気持ちが自然と浮かび上がる。

 

「…行きますか、さっさと攻略しないと香織さんに逢えませんし…地球に帰る時間さえ遅くなります」

 

とっとと終わらそう。そう考えたハジメはブラックブラスターを前方に突き出しながら暗闇の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その階層はとにかく暗かった。

 

地下迷宮である以上それが当たり前なのだが、今まで潜ったことのある階層は全て緑光石が存在し、薄暗くとも先を視認できないほどではなかった。

 

だが、どうやらこの階層には緑光石が存在しないらしい。しばらくその場に止まり、目が慣れて多少見えるようにならないかと期待したハジメだったが、何時まで経ってもさほど違いはなかった。

 

仕方ないのでこの世界に来たことで得たリンカーコアでは無い方の魔力をつかって辺りを明るくする。

 

火よ灯れ(アールデスカット)

 

どうせ自分に傷をつけることは敵わないと思って少し慢心しているハジメは堂々と道の真ん中を通っていた。するとサーチャーに反応があった。左の壁だ。

 

そこには体長二メートル程の灰色のトカゲが壁に張り付いており、金色の瞳でハジメを睨んでいた。

 

その時、その金眼が一瞬光を帯びた。

 

「グッ、石化か!氷神の戦鎚(マレウス・アクイローニス)!!」

 

魔力操作によって詠唱がいらなくなったため、魔法名だけ叫ぶとハジメの頭上に氷の大きな塊が現れてトカゲをミンチ肉に変えた。

 

石化はハジメにとって結構ダメージを与えるものだ。切り傷などのハジメの身体に傷を与えるものは簡単、そして即座に回復する。

 

だが石化はその石化した部分を切り落として再生せねばならないため、ダメージが大きいのだ。

 

仕方なく腕を切り落として回復させ、ハジメはバジリスクに向かって炎を投げてそのまま燃やし尽くしたのだった。

 

そしてまたハジメはブランチマイニングを行なう。希少な鉱石や魔物の肉─魔物の技能を全て手に入れるために。

 

つい先程わかったことなのだが、ある程度の深さや高さまでブランチマイニングするとそこからは干渉できなくなっているのだ。

 

「新しい武器でも作りながら待ちますかね」

 

もう錬成しながら魔法を使用することを別に苦でもなんでもないように思っているハジメだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ハザードオン!》

 

「……うん、作り方知ってるなら作れないわけないですもんね…」

 

ブランチマイニングが終わる頃にはハジメの手に禁断のアイテムこと、ハザードトリガーとファントムリキッドというネビュラガスの進化版が握られていた。

 

「……ファントムリキッド、注入しておきますかね。コードもありますし…」

 

黄色い液体、ファントムリキッドを水のようにゴクゴクと飲み始めるハジメ。

 

「あれ、なんか身体が……」

 

身体が少し変化し始める。だが神水とコードの力で身体を元に戻して行く。

 

「魔物は結構キツかったけど今回はあまりキツくないですね」

 

そのまま何も起こらずにファントムリキッドはハジメの身体に浸透していったのだった。

 

「ネビュラガスでは暴走の恐れがありましたが、ファントムリキッドならハザードトリガーを使っても暴走することはないでしょうね…」

 

魔物の肉を焼かずにそのまま口に含み、神水で流し込みながら考える。

 

「ビルドドライバーに、60本のフルボトル、ハザードトリガー……今開発できるライダーの中では最高戦力と言っていい……それに暴走もしませんし」

 

「……暴走……」

 

その時、ハジメの頭が何かを受信した。

 

「暴走しない暴走フォームなんて……」

 

「暴走フォームじゃない!」

 

そこからのハジメは素早かった。奈落なんて関係なしに自分の研究所に籠ってハザードトリガーとビルドドライバーを改造しだしたのだ。

 

奈落2階層目なのに、ハジメは持ち前の頭脳と錬成、特典を併用してハザードトリガーとビルドドライバーを生まれ変わらせる。

 

途中、願いを曲げて叶える宝石やら汚れ切った黄金の杯やらの危険物がハジメの手から出てきていたが、ハザードトリガーとビルドドライバーの改造は着々と進んでいた。

 

研究所内で3時間たった頃、ハジメの両手には完全に変位したビルドドライバーとハザードトリガーがあった。

 

というか、エボルドライバーとエボルトリガーに変化していた。

 

「……あ、エボルドライバーの製造者の知識も混ぜちゃった……ま、いっか」

 

こんなことを改造中に呟いていた。

 

「ふっふっふ……これぞ、ビルドドライバー改め、エボルドライバーVERSIONハジメ、そしてハザードトリガー改めエボルトリガーVERSIONハジメです!ついでに60本のフルボトルをエボルボトルに改造してやりました!ハジメさんに不可能は無いのだ!」

 

息切れすることなく喋るハジメ。

 

なぜエボルドライバーとエボルトリガーにVERSIONハジメという名称がついているのかそれは、ビルドをベースに作っているからである。

 

コブラエボルボトルとライダーエボルボトルはなく、ラビットエボルボトルを初めとした60本のエボルボトルを有機物、無機物に分けて2本挿すことで変身することができるようになっている。

 

そしてエボルトリガーもハザードトリガーと同じくビルドの形態を黒くして暴走させるようになっているため、ブラックホールフォームにはならない。

 

……単純、そして簡潔に言えば、ビルドのスペックを仮面ライダーエボルまで引き上げたようなものである。

 

「……疲れました。次の階層はまた明日にして今日はもう寝ましょう。おやすみなさい……」

 

ハジメはそのまま研究所内の机に突っ伏して寝た。ちなみに研究所内では時間が経っているが、外では時間は経っていないため、無駄に1日使ったという訳では無いのでご安心ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロト、ハジメの居場所がわかりました」

 

「どこだ?」

 

「異世界、トータス。座標はここです」

 

「わかった、ゴッドマキシマムマイティXを完成させたら共に行くぞ。ハジメを連れ戻す」

 

「「また、共にゲームを作るために」」

 

 

 

 




グリスの映画をNetflixで見ていた時にファントムリキッドはハザードトリガーの人の暴走化効果を抑制できる効果でもあるのかと思ってやってみました。

強化されたビルドのフォームは変わりません。ただ、ベルトがビルドドライバーからエボルドライバーに、フルボトルからエボルボトルに変わるだけです。

音声もオリジナルでやっていこうと思います。この小説内で仮面ライダーは大量に開発しましたが、トータスで戦うのはビルドです。

知らぬ間に評価バーが赤くなっていました。投票してくださった方々、ありがとうございます。

これからもこの『どんなにチートでも僕は南雲ハジメ』をよろしくお願いします!


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大迷宮攻略は終わらない

ブランチマイニングによってハジメの階段発見のタイムは縮んでいく。すぐに階下の階段を見つけて次の階層に向かう。

 

その階層は、地面がどこもかしこもタールのように粘着く泥沼のような場所だった。足を取られるので凄まじく動きにくい。

 

ハジメはフライアーフィンという靴から魔力の羽を生やして飛ぶ魔法を使用して空中を飛びながら移動する。

 

このタールのようなものはフラム鉱石というらしく、熱を加えると融解しタール状になり、火がつくと勢いよく燃え、摂氏3000℃の暑さになるらしい。

 

ハジメは発火しない魔法、魔力弾を攻撃に使うと心に決めて階層内のブランチマイニングを慎重に行なう。

 

するとハジメの目が青くなり、ギアスマークが浮き出てくる。

 

「サーチャーに反応無し、方向がわからないんですが!」

 

ハジメが辺りをキョロキョロしていると鋭い歯が無数に並んだ巨大な顎門を開いて、サメのような魔物がタールの中から飛び出してきた。ハジメの頭部を狙った顎門は歯と歯を打ち鳴らしながら閉じられる。咄嗟に身を動かしてかわしたもののハジメは戦慄した。

 

「……サーチャーが意味をなさないなんて……」

 

ハジメはどうしようか悩んでいると、ハジメの頭の中に天啓が降りてくる。

 

「そうだ。ここ全体を燃やしちゃえばいいんですね……」

 

ハジメは自分も萌えてしまいそうな考えを思いつき、それを実行に移す。

 

ハジメは集中するために必要の無い呪文を詠唱して魔法の準備を行う。

 

契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアーコネートー・モイ) 炎の覇王(ホ・テュラネ・フロゴス)

 

来れ(エピゲネーテートー) 浄化の炎(フロクス・カタルセオース) 燃え盛る大剣(フロギネー・ロンファイア)

 

ほとばしれよ(レウサントーン) ソドムを(ピュール・カイ) 焼きし(テイオン)

 

火と硫黄(ハ・エペプレゴン・ソドマ) 罪ありし者を(ハマル・トートゥス) 死の塵に(エイス・クーン・タナトゥ)

 

ハジメの両手に業火が灯り、火花がバチバチと光る。ハジメの目がこれから起こることを予期してチカチカと青く点滅する。

 

燃える天空(ウーラニア・フロゴーシス)!!!」

 

燃え盛る炎の業火が、フラム鉱石を包み込み、次の瞬間、この階層内全てが炎の海で埋め尽くされる。

 

ハジメは魔法を発動し終えるとすぐに異空間の研究所の中に避難する。どうやらハジメは魔法を打ち捨てて邪魔なものを全て焼き払うつもりだったようだ。

 

「これぞ、環境を利用した戦法です!」

 

誇らしげに言っているが、こんな攻略法で攻略されるなんてこの迷宮の製作者は思っていないだろう。というか少し涙目になっていそうだ。

 

そしてハジメはまた呪文を詠唱する。

 

契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアーコネートー・モイ・へー) 氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア)

 

来れ(エピゲネーテートー) 永久の(タイオーニオン)(エレボス)!」

 

永遠の氷河(ハイオーニエ・クリュスタレ)!!!」

 

ハジメは燃え盛る外に向かって氷を放つ。すると階層内の火が全て消え去り、フラム鉱石も全てなくなって、辺り一面氷となっていた。そしてハジメの足元には、ハジメを襲ったサメの丸焼きが氷漬けになってそこに残っていた。

 

「作戦完了。このサメ食べてからまた進みましょう」

 

ハジメは氷漬けになったサメを取り出してそれを食べて技能を得てからまた階下に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タールから出てきて多分迷宮攻略史上最も変なやられ方をしたサメからもう五十階層は進んだ。ハジメに時間の感覚は既にないので、どれくらいの日数が過ぎたのかはわからない。それでも、驚異的な速度で進んできたのは間違いない。

 

ハジメの中では全ての魔物が弱く感じたが、トータスという世界の人間から見たら化け物と言っても過言ではないほどの魔物と戦ってきた。

 

例えば迷宮全体が薄い毒霧で覆われた階層では、毒の痰を吐き出す二メートルのカエルを電撃攻撃で感電させたり、逆に麻痺させてくるモネラモドキの蛾にはカエルの吐いた毒を投げつけて殺していた。

 

他にも分離して攻撃してくるムカデややたら美味しい果実を投げてくるトレントもいたが、ミッド式の魔法とネギま式の魔法で簡単にねじ伏せられた。

 

そんな感じで階層を突き進み、気がつけば五十層。未だ終わりが見える気配はない。

 

そしてその五十階層は明らかに異質な場所であった。

 

脇道の突き当りにある空けた場所には高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。

 

「……強化されたビルドの試運転にちょうどいいですね……!」

 

だがハジメには関係ない。フルボトルからエボルボトルに進化した仮面ライダービルドを試す体のいい実験場と思っている。

 

ハジメは遠隔で扉を無理やり錬成で開けようとすると、一つ目巨人が壁を破壊して現れる。

 

「さて、実験を始めましょうか」

 

ハジメはラビットエボルボトルとタンクエボルボトルをカシャカシャと片手で振りながらエボルドライバーを身につける。

 

《エボルドライバー!》

 

そしてハジメはラビットエボルボトルとタンクエボルボトルをエボルドライバーに装填する。

 

《ラビット!》《タンク!》

 

《エボリューションマッチ!!》

 

そしてハジメはエボルドライバーのレバーを回し始める。交響曲第9番第4楽章・歓喜の歌が流れ、ハジメの周りに赤い粒子と青い粒子が舞い散る。

 

「変身……開始!!」

 

ハジメの周りの粒子がハジメの身体に鎧を付けていき、次第にビルドのシルエットが現れ始める。

 

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!!》

 

《イェーイ!!!》

 

そして最後の音声がなり終わると、ハジメの身体は仮面ライダービルド ラビットタンクフォームに包まれ、変身を完了させた。

 

「さぁ、進化したこの力……その身で味わいなさい!」

 

ハジメは一つ目巨人──サイクロプスに向かって宣言すると、進化したそのスペックを活かして一瞬で二体の背後に回る。

 

「まぁ、感想を言う暇もなく撃沈するんですが……ね!!!」

 

ラビットエボルボトルの成分を使って作り出された赤い左脚でサイクロプスを踏んでジャンプし、タンクエボルボトルの成分を使った青い右脚で一体目のサイクロプスの頭にかかと落としをお見舞する。

 

そしてそのまま───サイクロプスの頭から股間までを抉って真っ二つにした。

 

「あぁ、すいません……スペックが違いすぎて

 

もう一体のサイクロプスはハジメにバカにされたことを知ってか知らずか怒り狂ってハジメに重い攻撃を仕掛けてくる。だがその攻撃をハジメは難なくかわしていく。

 

「遅いですね。さて面白いものを見せてあげます」

 

ハジメは右手にスマホのようなものを持って操作する。するとハジメの右脚に魔法陣が通り抜けて行き、異質なエネルギーが灯る。

 

「これはとある妹しか愛せない兄の魔法を再現したものです。完璧なものは戦闘中では使えませんが──貴方には問題ないでしょう」

 

そしてハジメはエボルドライバーのレバーを回し始める。また交響曲第9番第4楽章・歓喜の歌が流れ始め、音声が辺り一帯に響き渡る。

 

《Ready Go!》

 

ハジメの両脚に凄まじい圧を感じる程のエネルギーが集まり、それが一点に収束する。そしてサイクロプスを錬成で封じ込め、ラビットの脚力で飛び上がる。

 

《エボルテックフィニッシュ!!!》

 

そしてハジメは右脚を突き出してライダーキックを行ない、拘束され動けないサイクロプスの腹に凄まじい威力の蹴りを撃つ。

 

すると拘束はあまりの衝撃で耐えきれずそのまま砕け散り、サイクロプスはそのまま扉の方に吹き飛び、大きな音を立てて倒れる。

 

《Adieu……♪》

 

さよならの意味を込めた言葉が流れるとサイクロプスの身体は粒子となってそのまま消え失せ、その場には青い炎しか残らなかったのだった。

 

「これにて実験終了、実験の協力…ありがとうございました♪」

 

ハジメはにこやかに笑いながら自分の攻撃で殺され、消え失せたサイクロプスに礼を言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメがサイクロプスに蹴りを叩き込む少し前──

 

「……なんの音?うるさい音…」

 

ハジメの実験で意識が覚醒する者が1人、階層の最深部に存在していた。

 

 



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奈落の封印されし少女

ユエのところまで書けた!奈落終了まであと少しだ!


ハジメはサイクロプスを倒した後、変身を解除したあとにサイクロプスの肉を採取してサイクロプスを分解する。

 

そしてハジメは少し考え始める。

 

「ビルドのスペックを引き上げすぎましたかね……でもこれからの事を考えれば妥当ですよね……!」

 

一瞬オーバーキルすぎると思ってスペックを下げようかと思ったが、その考えを一瞬で捨て去る。スペックを落とさなくても問題ないのと、自分の作ったものを作り直して改良するわけでないためだからだ。

 

「さて、そろそろ入りましょうか♪」

 

ハジメは自分の身長より高い荘厳な装飾が施された両開きの扉を無理やり錬成でこじ開ける。何かを入れる穴があったがそれらを無視して扉を融解させて行く。魔力を流したせいか、部屋が赤黒く発光する。

 

扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。ハジメの手に入れた技能『夜目』と光によって少しずつ全容がわかってくる。

 

中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、つるりとした光沢を放っている。

 

その立方体を注視していたハジメは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。

 

「(原作における(ハジメ)のメインヒロインですか)」

 

その正体を知りながらもハジメは知らないふりをしながら扉の融解を完全に終了させる。その時だった。

 

「……だれ?」

 

かすれた、弱々しい女の子の声だ。ハジメは部屋の中央を凝視する。すると、先程の『立方体に刺さった何か』がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。

 

その正体は人だった。

 

「(こうしてみると中々異様な光景です。立方体の中に刺さった人間なんて見ること自体ありませんからね)」

 

上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。

 

「……?」

 

ハジメが動かないことに首を傾げる立方体に刺さった少女。そんなことは露知らず、ハジメの脳は今までにないほどのスピードで高速回転していた。何故なら、これを予想していたとはいえ、実際に起こるとパニックになってしまったからだ。

 

そしてそんなハジメが導き出した答えは───

 

「失礼しました」

 

ハジメはそんな答えを出してそのまま外に出て錬成で扉を閉じようとする。

 

それを見て少女は慌てて言葉を出そうとするが、上手く話すことが出来ない。だが言葉を紡ごうと努力する。

 

「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」

 

その言葉を聞いてハジメのパニックは収まった。ハジメは助けて欲しいという言葉を聞いて無視するほど外道ではない。

 

そもそも魔王化していないのだから気性も荒くなっていない。

 

「(落ち着いてください私、あんな小さい子がたすけてと言っているのです。見捨てたらこの力を使う訳にはいかなくなるでしょう……!)」

 

ハジメは自分が仮面ライダーの力を使っていることを、LOVE&Peaceの為に戦った戦士の力を使っていることを思い出して錬成を行なっている腕を止めて少女の元にゆっくりと向かう。

 

そしてハジメは少女の元に着くと少女にひとつの質問を投げかける。

 

「貴女、なんでこんなところで封印されてるんです?」

 

何故戻ってきたのか分からないためか、ジッと、豊かだが薄汚れた金髪の間から除く紅眼でハジメを見つめる。

 

少し経ってから少女は封印された理由を語り始めた。

 

「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

枯れた喉で必死にポツリポツリと語る女の子。話を聞きながらハジメは呻いた。小説を読んで知ってはいるが本当に可哀想な話だ。()()を知っていてもだ。

 

「貴女はどこかの国の王族だったんですか?」

 

「……(コクコク)」

 

「貴女は殺せないと言いましたがどういうことですか?」

 

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

 

「成程、私と同じですか」

 

「?」

 

「私もね、不老不死なんですよ」

 

「……そうなの?」

 

意外な共通点を見つけて少し嬉しそうにする少女。年相応の反応をする少女を見てハジメは立方体の上に手を置く。

 

「錬成開始」

 

魔力を流して立方体の魔力抵抗をなくして錬成を行なう。すると立方体が形を変え、少女を出していく。ハジメは落ちてくる少女をキャッチして助ける。

 

原作のハジメなら苦労するだろうが、様々な魔法を使い始めていて、魔力消費に慣れているハジメなら余裕だった。

 

少女はハジメを見つめる。顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

ハジメは少女に笑い掛け、少女の頭を撫でる。

 

少しにこやかに笑い始める少女はハジメにひとつ問い掛けた。

 

「名前、なに?」

 

「私の名前ですか?南雲ハジメです。あなたは?」

 

少女は「ハジメ、ハジメ」と、さも大事なものを内に刻み込むように繰り返し呟いた。そして、問われた名前を答えようとして、思い直したようにハジメにお願いをした。

 

「……名前、付けて」

 

「名前ですか?ネーミングセンスないんですよ私」

 

確かにハジメにネーミングセンスがあるとは思えない。会社名も繋げただけであるし、エボルドライバーは後ろにVERSIONハジメを付けただけだ。

 

仕方ないのでハジメは原作通りの名前を付けることにした。

 

「私の故郷の、違う国ではありますが……月と書いてユエ、なんてどうでしょう?あなたの髪、金色で綺麗ですし、目の色も相まって月に見えたんですよね」

 

名前の由来を聞いて相変わらず無表情ではあるが、どことなく嬉しそうに瞳を輝かせた。

 

「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

「とりあえずですね…」

 

「?」

 

ハジメは予備のストレージデバイス(リンカーコアいらない・トータスの魔力OK)と神水を出してユエに手渡す。

 

「魔力を流して着たい服を心の中で思い浮かべてください、神水を飲めば魔力も回復しますしね」

 

ユエは首を傾げながらハジメの言う通りのことを行なう。するとユエの身体をバリアジャケットが包み込む。

 

ユエが心の中に浮かべたのは原作でも着ていたゴシック衣装。

 

「似合ってますね、上手く機能して良かったです」

 

「ん、ありがとう」

 

ハジメにユエがストレージデバイスの礼を言っていると、上から今まで感じたことの無いほどの強さを持つ魔物が降ってきた。

 

その魔物は体長五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。

 

「……はぁ、魔物かー死んでくださいよ」

 

ハジメは戦いの歌(カントゥス・べラークス)を使いながら上に飛び上がり、サソリモドキの腹を蹴りあげてさらにユエに当たらないように斜め下に蹴る。

 

「……さて、これより実験を始めましょうか」

 

ハジメがそう言葉を紡ぐとハジメはエボルドライバーを巻き付けてドラゴンエボルボトルとロックエボルボトルを取り出す。そしてそれらのボトルを振りながら装填する。

 

《ドラゴン!》《ロック!》

 

《エボリューションマッチ!》

 

ハジメはエボルドライバーのレバーを回し、青と金色の粒子がハジメの周りを舞散り始める。

 

「変身……!」

 

ハジメの周りの粒子がハジメの身体に鎧を付けていき、次第にビルドのシルエットが現れ始める。

 

《封印のファンタジスタ!!》

 

《キードラゴン!!!》

 

《イェーイ!!!》

 

ハジメは仮面ライダービルド キードラゴンフォームに変身し終え、右腕に青い炎を纏わせながらサソリモドキを見る。

 

「さぁ、さっさと終わらせましょうか」

 




ユエが出てくることでやりたいことができるようになりました。

モンストの覇者の塔をこれから登り始めます。

……FGOまだソロモンすら行ってないからツングースカ行けないんですが、メリュジーヌ出ないんですが……!

ドラコー可愛かったです。アーケードやってませんが。

来週辺りにまた投稿します。これからもよろしくお願いします。


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吸血姫の魔法

あけましておめでとうございます!新年初投稿は聖剣ではなくハジメです!


ハジメは仮面ライダービルド キードラゴンフォームに変身してから青い炎を放ってサソリモドキの動きを抑制する。そしてエボルドライバーからとある剣を生み出す。

 

「さて、これを使ってみましょうか」

 

《ビートクローザー!》

 

その剣の名はビートクローザー、主に仮面ライダークローズが使っていた剣である。

 

《ヒッパレー!》

 

《スマッシュヒット!》

 

ハジメはビートクローザーのグリップエンドを1回引くことでビートクローザーに青い炎を纏わせてサソリモドキの殻を切りつける。

 

だが殻が硬いのか少しヒビが入るだけで終わる。

 

「なら、さらに強い攻撃を加えるだけです!」

 

《ヒッパレー!ヒッパレー!》

 

《ミリオンヒット!》

 

サソリモドキに向かって波形のエネルギー斬撃を喰らわせるハジメ。サソリモドキの足や腕、ハサミが徐々に削れていく。

 

そして殻が敗れて中身が見えてくる。

 

「よし!そろそろトドメだ!」

 

ビートクローザーをその辺に投げ捨ててハジメはエボルドライバーのレバーを回し始める。

 

その隙をついてサソリモドキは残っているハサミでハジメに向かって攻撃を行おうとする。

 

「ちょっとやばいですね……」

 

「『蒼天』」

 

ハジメがレバーを回しながらビートクローザーを拾おうと動こうとした瞬間、後ろから声が聞こえ、サソリモドキに6、7メートルはありそうな青白い炎の球体が何個も当たる。

 

たちまちサソリモドキは後退し、ハジメのレバー回しが終わり、必殺技のチャージが完了する。

 

《Ready Go!》

 

ビートクローザーをサソリモドキの背中に投擲することで目印にして高く飛び上がって左足に青い炎を充填する。

 

サソリモドキが後ろに跳んで逃げようとすると、ハジメが目印に刺したビートクローザーから鎖が現れサソリモドキの動きを阻害する。

 

「『緋槍』」

 

ハジメの周りに円錐状の炎の槍を何本も作り出してハジメの青い炎が充填されている左足に合わさる。

 

「これでエンドマークだ!」

 

《エボルテックフィニッシュ!!!》

 

ハジメは勢いよく斜めに降下し、そのまま高熱の蹴りをサソリモドキに刺したビートクローザー目掛けて放ち、ビートクローザーごとサソリモドキを貫いた。

 

《Adieu……♪》

 

貫かれたサソリモドキは身体に残った炎によって燃え尽き、そのまま塵となって消え去った。

 

「ありがとうございます、ユエ」

 

「どういたしまして」

 

ハジメとユエは言葉を交わしながら手と手を合わせてハイタッチした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい……ここ、見たことないものがいっぱいある」

 

サソリモドキを倒した後、ハジメはユエを自分の異空間に連れてきていた。

 

ユエは研究室に置いてあるパソコンや開発された仮面ライダーなどを見て目を輝かせていた。どれも自分の世界で、自分の時代で見たことないからだ。

 

一頻り見たあと、ハジメはユエを椅子に座らせてお互いのことを話し始める。

 

「ユエは今300さ「マナー違反」いやあの「マナー違反」……はい」

 

どこの時代もどこの世界も、女性の年齢を聞くのはマナー違反。ハジメは強く2回も念を押された。

 

原作知識でも知っていたが、知っていても聞きたいことがあったためハジメはユエに質問する。

 

「他にも不老不死な吸血鬼、それかほかの種族を知りません?」

 

「知らない、寿命が長い種族ならいっぱいいるけど」

 

「そうですか……」

 

不老不死な種族がいるならその生態を調べたかったがいないならいいかとハジメは諦める。ユエの不老不死の仕組みは知っているために調べる必要も無い。

 

「あれ、何?」

 

ユエの魔法についてやどうやってこの奈落に封印されたのか、それとこの迷宮について知っていることを話してからハジメにユエも質問する。

 

「あれ?あぁ仮面ライダーですか」

 

「そうそれ。あんな技術の塊は昔のアーティファクトでも見たことない。それにこの杖型のアーティファクトも。王族だった私が」

 

確かにユエからしてみればハジメの使っている仮面ライダー、デバイスは未知の技術の塊だろう。神代のアーティファクトでもこんなものは無い。

 

「私が作ってるんですよ。これはエボルドライバー、エボルボトル。それに貴女が使っているのがデバイス。私が作ったこの世界にも、そして私の世界にも私と若干1名しか作れない道具です」

 

別に隠すことでもないのでハジメはユエにさっさと話してしまう。若干1名というのはクロトのことだ。実際ハジメの世界でゴッドマキシマムマイティXを作ろうと奔走している。

 

「なるほど。これはどう使う?」

 

デバイスの使い方が気になったようだ。ハジメはユエにそのストレージデバイスの使い方を説明し始めた。

 

30分後───

 

「これから宜しく、スカーレットムーン」

 

紅い月、そう名付けたストレージデバイスを持ちながらこれから使うデバイスに挨拶する。

 

そして今度はユエがハジメにハジメのことを話すよう促す。

 

「そういえばハジメ、なんでこの迷宮にいる?」

 

自分(ユエ)はともかくとして、普通この迷宮は魔物が生息するところだ。不老不死のコードユーザーだとしても生きるのに適した場所では無いだろう。

 

ユエには他にも聞きたいことがあった。自分とは違う仕組みの不老不死とはなんなのか、何故魔物の固有魔法が複数使えるのか、本当に種族が人間なのか。これらが主な質問で、他にも細かい質問があった。

 

それらの質問に1つずつ律儀に答えていくハジメ。

 

いつもは独り言で1人で寂しく会話しているためにユエと話すのに楽しさを覚えたのかもしれない。転生者であることは隠して、自分のことをある程度話す。

 

奈落に落ちる過程の話を話しているうちに、すすり泣く音が聞こえ始める。ユエの方を見ればユエはハラハラと涙を流していた。

 

ハンカチでユエの涙を拭きながらハジメは尋ねる。

 

「どうしました?」

 

「……ぐす……ハジメ……つらい……私もつらい……」

 

どうやら、ハジメのために泣いているらしい。ハジメは少し驚くと、表情を苦笑いに変えてユエの頭を撫でる。

 

「気にしなくていいですよ、私は気にしてませんからね。それに私はさっさと脱出手段を確保して1人連れていく人連れてこの世界から脱出します」

 

スンスンと鼻を鳴らしながら、撫でられるのが気持ちいいのか猫のように目を細めていたユエが、故郷に帰るというハジメの言葉にピクリと反応する。

 

「……帰るの?」

 

「ええ、別に私はこの世界で成し遂げたいこともありませんし、魔人族との戦いも知ったこっちゃありませんからね。私の家族、そして私の仲間に早く再会したいですから」

 

「……そう」

 

ユエは沈んだ表情で顔を俯かせる。そして、ポツリと呟いた。

 

「……私にはもう、帰る場所……ない……」

 

「……」

 

そんなユエの様子に彼女の頭を撫でていた手を引っ込めると、ハジメは、カリカリと自分の頭を掻いた。

 

ハジメは鈍感ではない。人の好意に過敏であり、香織の好意に気付いて付き合っている。ユエを原作通り連れていけば香織の心を裏切ることになるのは目に見えている。

 

だが1人の少女を置いていくのは心が痛く、そこまで性根が腐っている訳では無い。ユエを悲しませるのは本意ではない。

 

ハジメの出した答えは───

 

「ユエも来ますか?」

 

「……え?」

 

ハジメの言葉に驚愕をあらわにして目を見開くユエ。涙で潤んだ紅い瞳にマジマジと見つめられ、なんとなく落ち着かない気持ちになったハジメは、若干、早口になりながら告げる。

 

「ユエが望むなら私は貴女を私の世界に連れていきます。何人か政府側にも奴隷……またの名を協力してくれる人がいますから正体さえ隠せば窮屈な思いもさせませんよ……どうです?」

 

しばらく呆然としていたユエだが、理解が追いついたのか、おずおずと「いいの?」と遠慮がちに尋ねる。しかし、その瞳には隠しようもない期待の色が宿っていた。

 

キラキラと輝くユエの瞳に、苦笑いしながらハジメは頷く。すると、今までの無表情が嘘のように、ユエはふわりと花が咲いたように微笑んだ。思わず、見蕩れてしまうハジメ。呆けた自分に気がついて慌てて首を振った。

 

「……そ、そろそろご飯にしますか、何食べますか?ユエ」

 

「ハジメの血」

 

「へ?」

 

「ハジメの血を飲みたい」

 

ハジメが何を食べたいかユエに聞くとユエはハジメの血を求める。二言目と同時にユエはハジメの首に飛びついてハジメの首筋に噛み付く。

 

「ッ!?」

 

「チュー……チュー……チュー……美味しい」

 

「お、美味しいって、私最近魔物の肉しか食べてませんし、私の世界でも殆どコーヒーとウィダーインゼリーで済ませてきたんですけど……」

 

「コクのある濃厚なスープの味がする……今までのだれよりも美味しい」

 

「さ、さいですか」

 

また飲みたそうに妖艶な空気を醸し出すユエに、香織とはまた別の魅力を感じてしまうのは仕方ないだろう。結局1時間くらいチューチュー血を吸われたハジメだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──その頃の香織──

 

「……なんだろう、ハジメ君が知り合って間もない女の子にプロポーズもどきをしてキスみたいなことをしているような気がする」

 

「……どんなシチュエーションよ」

 

 

 

 




ユエのスカーレットムーンの待機状態は球状の紅い宝石、戦闘の時は杖です。モデルはレイジングハートです。

FGOの福袋でネロ・ブライド引いたり、秋葉原行ったりしていたので投稿遅れました!

今年もよろしくお願いします!


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治癒術師は挫けない

ハジメがユエと出会い、サソリモドキを協力してぶちのめしていた頃、光輝達勇者御一行は再びオルクス大迷宮へ向かっていた。

 

ただ訪れているのはクラス全員ではなく、光輝や香織が属する上位カースト組と小悪党4人組、柔道部に属する永山重吾率いる男女5人組だけだった。

 

クラスメイトはハジメの死亡、そこまでに至る経緯、凶悪な魔物に対するイメージがこびりついているために、トラウマを抱えてしまったのだ。

 

まぁ実際は生きているのだが。

 

これらの事態に聖教教会はてんやわんやの大騒ぎ。待っていればまた戦いに身を投じると信じきっていた彼らは大急ぎでクラスメイトの説得を行い始める。時には甘言を、時には帰れなくなると脅したりして。

 

それに待ったをかけたのは愛子先生だ。

 

愛子先生はハジメの訃報を聞いて自らが戦争を食糧面で有利に勧められる作農師であるために遠征に参加しなかったばっかりにと寝込んでしまっていた。

 

だからこそ戦えないという生徒をこれ以上戦場に送り出すことなど断じて許せなかった。

 

愛子の天職は、この世界の食料関係を一変させる可能性がある激レアである。その愛子先生が、不退転の意志で生徒達への戦闘訓練の強制に抗議しているのだ。関係の悪化を避けたい教会側は、愛子の抗議を受け入れた。

 

結果、自ら戦闘訓練を望んだ勇者パーティーと小悪党組、永山重吾のパーティーのみが訓練を継続することになった。そんな彼等は、再び訓練を兼ねて【オルクス大迷宮】に挑むことになったのだ。今回もメルド団長と数人の騎士団員が付き添っている。

 

今日で迷宮攻略六日目。

 

現在の階層は六十層だ。確認されている最高到達階数まで後五層である。

 

しかし、光輝達は現在、立ち往生していた。正確には先へ行けないのではなく、何時かの悪夢を思い出して思わず立ち止まってしまったのだ。

 

そう、彼等の目の前には何時かのものとは異なるが同じような断崖絶壁が広がっていたのである。次の階層へ行くには崖にかかった吊り橋を進まなければならない。それ自体は問題ないが、やはり思い出してしまうのだろう。

 

だが香織は違った。

 

「さっさと行くよ、雫ちゃん!」

 

ハジメが生きていることを確信しているために、トラウマなどとっくに乗り越えて次の階層に行くための吊り橋を渡らせようとグイグイと雫を引っ張る。

 

ただ、その行動を曲解して取る人間がいた。

 

そんな人間な光輝の目には、クラスメイトの1人が死んで無理に元気に振舞って皆を勇気づけているように見えていた。謎のフィルターも相まって、香織は今も苦しんでいると勝手に決めつけている。

 

そして、香織がハジメを特別に想っていて、まだ生存の可能性を信じているなどと露ほどにも思っていない光輝は、度々、香織に的外れな慰めの言葉をかけてしまうのだ。

 

「香織……君の優しいところ俺は好きだ。でも、クラスメイトの死に、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ。きっと、南雲もそれを望んでる」

 

「ちょっと、光輝……」

 

「雫は黙っていてくれ! 例え厳しくても、幼馴染である俺が言わないといけないんだ。……香織、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は死んだりしない。もう誰も死なせはしない。香織を悲しませたりしないと約束するよ」

 

いや約束されても困るんだけど……

 

既にハジメにゾッコンな香織、光輝のプロポーズ(的外れな慰め)を受けても別に気にしない。他の女子のように頬を赤く染めることもない。

 

小声で不満を零しながら香織は光輝に大して言い返すのを諦める。友としての付き合いなら雫より少ないと言えど、恋人であるハジメより長い光輝の思考パターンは読めている香織。

 

何も言わずに光輝の言葉を流していく。

 

「香織ちゃん、私、応援しているから、出来ることがあったら言ってね」

 

「そうだよ~、鈴は何時でもカオリンの味方だからね!」

 

そんな光輝との会話を傍で聞いていて、会話に参加したのは中村恵里と谷口鈴だ。

 

二人共、高校に入ってからではあるが香織達の親友と言っていい程仲の良い関係で、光輝率いる勇者パーティーにも加わっている実力者だ。

 

中村恵里はメガネを掛け、ナチュラルボブにした黒髪の美人である。性格は温和で大人しく基本的に一歩引いて全体を見ているポジションだ。本が好きで、まさに典型的な図書委員といった感じの女の子である。実際、図書委員である。

 

谷口鈴は、身長百四十二センチのちみっ子である。もっとも、その小さな体には、何処に隠しているのかと思うほど無尽蔵の元気が詰まっており、常に楽しげでチョロリンと垂れたおさげと共にぴょんぴょんと跳ねている。その姿は微笑ましく、クラスのマスコット的な存在だ。

 

そんな二人も、ハジメのことが好きであったことを知っているために香織が悲しみを押し殺していると誤認している。

 

「うん、恵里ちゃん、鈴ちゃん、ありがとう」

 

高校で出来た親友二人の言葉に、嬉しげに微笑む香織。

 

「うぅ~、カオリンは健気だねぇ~、南雲君め! 鈴のカオリンをこんなに悲しませて! 生きてなかったら鈴が殺っちゃうんだからね!」

 

「す、鈴? 生きてなかったら、その、こ、殺せないと思うよ?」

 

「細かいことはいいの! そうだ、死んでたらエリリンの降霊術でカオリンに侍せちゃえばいいんだよ!」

 

「す、鈴、デリカシーないよ! 香織ちゃんは、南雲君は生きてるって信じてるんだから! それに、私、降霊術は……」

 

鈴が暴走し恵里が諌める。それがデフォだ。

 

何時も通りの光景を見せる姦しい二人に、楽しげな表情を見せる香織と雫。ちなみに、光輝達は少し離れているので聞こえていない。肝心な話やセリフに限って聞こえなくなる難聴スキルは、当然の如く光輝にも備わっている。

 

「恵里ちゃん、私は気にしてないから平気だよ?」

 

「鈴もそれくらいにしなさい。恵里が困ってるわよ?」

 

香織と雫の苦笑い混じりの言葉に「むぅ~」と頬を膨らませる鈴。恵里は、香織が鈴の言葉を本気で気にしていない様子にホッとしながら、降霊術という言葉に顔を青褪めさせる。

 

「エリリン、やっぱり降霊術苦手? せっかくの天職なのに……」

 

「……うん、ごめんね。ちゃんと使えれば、もっと役に立てるのに……」

 

「恵里。誰にだって得手不得手はあるわ。魔法の適性だって高いんだから気にすることないわよ?」

 

「そうだよ、恵里ちゃん。天職って言っても、その分野の才能があるというだけで好き嫌いとは別なんだから。恵里ちゃんの魔法は的確で正確だから皆助かってるよ?」

 

「うん、でもやっぱり頑張って克服する。もっと、皆の役に立ちたいから」

 

恵里が小さく拳を握って決意を表す。鈴はそんな様子に「その意気だよ、エリリン!」とぴょんぴょん飛び跳ね、香織と雫は友人の頑張りに頬を緩める。

 

恵里の職業は降霊術師だ。その能力は死者の残留思念、そして死者を傀儡とすることが出来る。

 

ただその能力や使役すると顔が青白くなることから倫理観やら色々なものが削られるため、恵里はその能力を進んで使おうとはしない。

 

そんな女子四人の姿を、正確には香織を、後方から暗い瞳で見つめる者がいた。

 

檜山大介である。何故か上級魔法を使えてハジメを奈落につき落とせたのか分からないが、ハジメが落ちたあとすぐにクラスメイトに責められた。

 

それについての対応策は練っていたのか、ただひたすら光輝の目の前で土下座した。そのおかげか光輝は檜山をとりなし、クラスメイトをなだめたのだ。

 

それらの対応に香織と雫はいい顔をしていない。前者はハジメを行方不明にした原因に対して、後者は幼なじみを利用したからだ。

 

それと檜山はとあるクラスメイトと手を組んでいた。檜山はそのクラスメイトの指示を黙々とこなしていた。その命令に戦慄していた時もあったが……

 

しかし、クラスにごく自然と溶け込みながら裏では恐ろしい計画を練っているその人物に、檜山は畏怖と同時に歓喜の念も抱いていた。

 

(あいつは狂ってやがる。……だが、付いて行けば香織は俺の……)

 

言うことを聞けば香織が手に入る、その言葉とそれからできるであろう薄汚い欲望に暗い喜びを感じ思わず口元に笑みが浮かぶ檜山。

 

「おい、大介? どうかしたのか?」

 

檜山のおかしな様子に、近藤や中野、斎藤が怪訝そうな表情をしている。この三人は今でも檜山とつるんでいる。

 

元々、類は友を呼ぶと言うように似た者同士の四人。一時期はギクシャクしたものの、檜山の殊勝な態度に友情を取り戻していた。

 

もっとも、それが本当の意味での友情と言えるかは甚だ微妙ではあるが……

 

「い、いや、何でもない。もう六十層を越えたんだと思うと嬉しくてな」

 

「あ~、確かにな。あと五層で歴代最高だもんな~」

 

「俺等、相当強くなってるよな。全く、居残り組は根性なさすぎだろ」

 

「まぁ、そう言うなって。俺らみたいな方が特別なんだからよ」

 

檜山の誤魔化しに、特に何の疑問も抱かず同調する三人。

 

戦い続ける自分達を特別と思って調子づいているのは小悪党が小悪党たる所以だろう。王宮でも居残り組に対して実に態度がでかい。横柄な態度に苦情が出ているくらいだ。しかし、六十層を突破できるだけの確かな実力があるので、強く文句を言えないところである。

 

もっとも、勇者パーティーには及ばないので、彼らも光輝達の傍では実に大人しい。小物らしい行動原理である。

 

それから一行は特に問題もなく、遂に歴代最高到達階層である六十五層にたどり着いた。

 

「気を引き締めろ! ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 

付き添いのメルド団長の声が響く。光輝達は表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れた。

 

しばらく進んでいると、大きな広間に出た。何となく嫌な予感がする一同。

 

その予感は的中した。広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上がったのだ。赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣。それは、とても見覚えのある魔法陣だった。

 

「ま、まさか……アイツなのか!?」

 

光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。

 

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

 

龍太郎も驚愕をあらわにして叫ぶ。それに応えたのは、険しい表情をしながらも冷静な声音のメルド団長だ。

 

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな!」

 

いざと言う時、確実に逃げられるように、まず退路の確保を優先する指示を出すメルド団長。それに部下が即座に従う。だが、光輝がそれに不満そうに言葉を返した。

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

 

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

龍太郎も不敵な笑みを浮かべて呼応する。メルド団長はやれやれと肩を竦め、確かに今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと、同じく不敵な笑みを浮かべた。

 

そして、遂に魔法陣が爆発したように輝き、かつての悪夢が再び光輝達の前に現れた。

 

「グゥガァアアア!!!」

 

咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスが光輝達を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む。

 

そのベヒモスに睨みを利かせる少女が一人──

 

「あなたを倒して、私は愛しい人を見つけてみせる……覚悟してね」

 

ハジメを探すため、過去の強敵を乗り越える戦いが始まった。




シグルドのメガネが欲しい今日この頃です。売ってるとは知りませんでした。誕生日に買ってきます。

早くユエとハジメを書きたいけどその前に立ち塞がるベヒモス回……

ちなみにアインとクロトの挿話を書いているところですのでお楽しみに……誕生秘話とかそこら辺の話です。


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香織は魔法使いに

先手は光輝──ではなく香織だった。光輝が飛び上がると同時に飛び上がって攻撃を光輝より早くベヒモスに与える。

 

戦いの歌(カントゥス・べラークス)──来れ雷精(ケノテートス)虚空の雷(アストラプサトー)薙ぎ払え(デ・テメトー)雷の斧(ディオス・テュコス)!!」

 

香織は自らの身体の能力を上昇させ、ベヒモスの背中まで飛び上がり、雷の斧を背中に浴びせる。

 

いきなりの攻撃、しかも上級魔法に驚いたのか感電しながら暴れるベヒモス。そこに光輝の天翔閃が当たり吹き飛ばされる。

 

ベヒモスには切り傷が残り、赤黒い血が溢れ出ていた。

 

「あれって南雲くんのよね?」

 

「ハジメくんが使っていたのを見た時、あ、これ魔法先生ネギま!の魔法だ!って思って私も使えるようになったの。まぁハジメくんの使った魔法しかまだ使えないけどね」

 

その言葉に雫はポカーンとなる。ハジメのオリジナル魔法をハジメの教えなくして理解し、それを実用できるようにしていたのだ。驚かない方がおかしい。

 

まぁこれも愛がなせる技だろう。

 

「いける! 俺達は確実に強くなってる! 永山達は左側から、檜山達は背後を、メルド団長達は右側から! 後衛は魔法準備! 上級を頼む!」

 

そんなことを話しているうちに光輝は全員に指示を出す。メルド団長直々の指揮官訓練の賜物だ。

 

メルド団長が叫び騎士団員を引き連れベヒモスの右サイドに回り込むべく走り出した。それを機に一斉に動き出し、ベヒモスを包囲する。

 

前衛組が暴れるベヒモスを後衛には行かすまいと必死の防衛線を張る。

 

「グルゥアアア!!」

 

ベヒモスが踏み込みで地面を粉砕しながら突進を始める。

 

「させるかっ!」

 

「行かせん!」

 

クラスの二大巨漢、坂上龍太郎と永山重吾がスクラムを組むようにベヒモスに組み付いた。

 

「「猛り地を割る力をここに!『剛力』!」」

 

身体能力、特に膂力を強化する魔法を使い、地を滑りながらベヒモスの突進を受け止める。

 

「ガァアア!!」

 

「らぁあああ!!」

 

「おぉおおお!!」

 

三者三様に雄叫びをあげ力を振り絞る。ベヒモスは矮小な人間ごときに完全には止められないまでも勢いを殺され苛立つように地を踏み鳴らした。

 

その隙を他のメンバーが逃さない。

 

「全てを切り裂く至上の一閃『絶斬』!」

 

雫の抜刀術がベヒモスの角に直撃する。魔法によって切れ味を増したアーティファクトの剣が半ばまで食い込むが切断するには至らない。

 

「ぐっ、相変わらず堅い!」

 

「任せろ! 粉砕せよ、破砕せよ、爆砕せよ『豪撃』!」

 

メルド団長が飛び込み、半ばまで刺さった雫の剣の上から自らの騎士剣を叩きつけた。魔法で剣速を上げると同時に腕力をも強化した鋭く重い一撃が雫の剣を押し込むように衝撃を与える。

 

そして、遂にベヒモスの角の一本が半ばから断ち切られた。

 

「ガァアアアア!?」

 

角を切り落とされた衝撃にベヒモスが渾身の力で大暴れし、永山、龍太郎、雫、メルド団長の四人を吹き飛ばす。

 

「優しき光は全てを抱く『光輪』!」

 

衝撃に息を詰まらせ地面に叩きつけられそうになった四人を光の輪が無数に合わさって出来た網が優しく包み込んだ。香織が行使した、形を変化させることで衝撃を殺す光の防御魔法だ。

 

香織は間髪入れず、回復系呪文を唱える。

 

「天恵よ 遍く子らに癒しを『回天』」

 

香織の詠唱完了と同時に触れてもいないのに四人が同時に癒されていく。遠隔の、それも複数人を同時に癒せる中級光系回復魔法だ。

 

さらに香織は呪文を唱える。

 

魔法の射手(サギタ・マギカ)光の八矢(セリエス・ルーキス)!!」

 

光の矢が8本現れ、ベヒモスに投擲され刺さり、爆発する。

 

そこに光輝がベヒモスを聖剣で刺し、光輝の『光爆』が発動してベヒモスが爆発する。

 

「ガァアアア!!」

 

傷口を抉られ大量の出血をしながら、技後硬直中の僅かな隙を逃さずベヒモスが鋭い爪を光輝に振るった。

 

「ぐぅうう!!」

 

呻き声を上げ吹き飛ばされる光輝。爪自体はアーティファクトの聖鎧が弾いてくれたが、衝撃が内部に通り激しく咳き込む。しかし、その苦しみも一瞬だ。すかさず、香織の回復魔法がかけられる。

 

「天恵よ 彼の者に今一度力を『焦天』!」

 

先ほどの回復魔法が複数人を対象に同時回復できる代わりに効果が下がるものとすれば、これは個人を対象に回復効果を高めた魔法だ。光輝は光に包まれ一瞬で全快する。

 

ベヒモスが、光輝が飛ばされた間奮闘していた他のメンバーを咆哮と跳躍による衝撃波で吹き飛ばし、折れた角にもお構いなく赤熱化させていく。

 

「……角が折れても出来るのね。あれが来るわよ!」

 

雫の警告とベヒモスの跳躍は同時だった。ベヒモスの固有魔法は経験済みなので皆一斉に身構える。しかし、今回のベヒモスの跳躍距離は予想外だった。何と、光輝達前衛組を置き去りにし、その頭上を軽々と超えて後衛組にまで跳んだのだ。大橋での戦いでは直近にしか跳躍しなかったし、あの巨体でここまで跳躍できるとは夢にも思わず、前衛組が焦りの表情を見せる。

 

だが、後衛組の一人が呪文詠唱を中断して、一歩前に出た。谷口鈴だ。

 

「ここは聖域なりて 神敵を通さず『聖絶』!!」

 

呪文の詠唱により光のドームができるのとベヒモスが隕石のごとく着弾するのは同時だった。凄まじい衝撃音と衝撃波が辺りに撒き散らされ、周囲の石畳を蜘蛛の巣状に粉砕する。

 

しかし、鈴の発動した絶対の防御はしっかりとベヒモスの必殺を受け止めた。だが、本来の四節からなる詠唱ではなく、二節で無理やり展開した詠唱省略の〝聖絶〟では本来の力は発揮できない。

 

実際、既に障壁にはヒビが入り始めている。天職『結界師』を持つ鈴でなければ、ここまで持たせるどころか、発動すら出来なかっただろう。

 

鈴は歯を食いしばり、二節分しか注げない魔力を注ぎ込みながら、必死に両手を掲げてそこに絶対の障壁をイメージする。ヒビ割れた障壁など存在しない。自分の守りは絶対だと。

 

「ぅううう! 負けるもんかぁー!」

 

障壁越しにベヒモスの殺意に満ちた眼光が鈴を貫き、全身を襲う恐怖と不安に、掲げた両手が震える。弱気を払って必死に叫ぶが限界はもうそこだ。ベヒモスの攻撃は未だ続いており、もう十秒も持たない。

 

破られる!鈴がそう心の内で叫んだ瞬間、

 

「天恵よ 神秘をここに『譲天』」

 

 鈴の体が光に包まれ、『聖絶』に注がれる魔力量が跳ね上がった。香織の回復系魔法だ。本来は、他者の魔力を回復させる魔法だが、魔法陣に注ぐ魔力に合わせて発動することで、流入量を本来の量まで増幅させることができる。『譲天』の応用技だ。天職『治癒術師』である香織だからこそできる魔法である。

 

「これなら! カオリン愛してる!」

 

鈴は、一気に本来の四節分の魔力が流れ込むと同時に完璧な『聖絶』を張り直す。パシンッと乾いた音を響かせ障壁のヒビが一瞬で修復された。ベヒモスは、障壁を突破できないことに苛立ち、怒りも表に生意気な術者を睨みつけるが、鈴も気丈に睨み返し一歩も引かない。

 

そして遂に、ベヒモスの角の赤熱化が効果を失い始めた。ベヒモスが突進力を失って地に落ちる。同時に、鈴の『聖絶』も消滅した。

 

肩で息をする鈴にベヒモスが狙いを定めるが、既に前衛組がベヒモスに肉薄している。

 

「後衛は後退しろ!」

 

光輝の指示に後衛組が一気に下がり、前衛組が再び取り囲んだ。ヒット&アウェイでベヒモスを翻弄し続け、遂に待ちに待った後衛の詠唱が完了する。

 

「下がって!」

 

後衛代表の恵里から合図がでる。光輝達は、渾身の一撃をベヒモスに放ちつつ、その反動も利用して一気に距離をとった。

 

その直後、炎系上級攻撃魔法のトリガーが引かれた。

 

「「「「「『炎天』」」」」」

 

術者五人による上級魔法。超高温の炎が球体となり、さながら太陽のように周囲一帯を焼き尽くす。ベヒモスの直上に創られた『炎天』は一瞬で直径八メートルに膨らみ、直後、ベヒモスへと落下した。

 

絶大な熱量がベヒモスを襲う。あまりの威力の大きさに味方までダメージを負いそうになり、慌てて結界を張っていく。『炎天』は、ベヒモスに逃げる暇すら与えずに、その堅固な外殻を融解していった。

 

「グゥルァガァアアアア!!!!」

 

だが──ベヒモスは消滅しなかった。悲鳴を上げながら、体中から熱を発しながら、弱々しくも光輝達を睨みながら立っていた。

 

「まだ立つの!?もう魔力切れてるよ!」

 

恵里が悲鳴を上げるも、ベヒモスは残って折れている角を赤熱化させていく。

 

「───雷の斧(ディオス・テュコス)!!!」

 

ベヒモスが足を踏み出したその瞬間、雷の斧が外殻がなくなって切りやすくなったベヒモスを切り裂いた。

 

「グゥルァガァアアアア!!!!」

 

2度目の悲鳴──ではなく断末魔。その叫びは徐々に小さくなり、ベヒモスはそのまま消滅した。

 

「か、勝ったのか?」

 

「勝ったんだろ……」

 

「勝っちまったよ……」

 

「マジか?」

 

「マジで?」

 

皆が皆、呆然とベヒモスがいた場所を眺め、ポツリポツリと勝利を確認するように呟く。同じく、呆然としていた光輝が、我を取り戻したのかスっと背筋を伸ばし聖剣を頭上へ真っ直ぐに掲げた。

 

「そうだ! 俺達の勝ちだ!」

 

キラリと輝く聖剣を掲げながら勝鬨を上げる光輝。その声にようやく勝利を実感したのか、一斉に歓声が沸きあがった。男子連中は肩を叩き合い、女子達はお互いに抱き合って喜びを表にしている。メルド団長達も感慨深そうだ。

 

そんな中雫は香織の方を叩いて話しかけていた。

 

「魔力、残しておいたんだ」

 

「うん、奥の手は残しておくべきだと思って……ハジメくんに会うために、こんなところで躓く訳には行かないしね」

 

「……そうね。頑張って最終階層まで行きましょ!」

 

「うん!」

 

2人で気合いを入れていると光輝がやってきた。

 

「二人共、無事か? 香織、最高の治癒魔法と雷魔法だったよ。香織がいれば何も怖くないな!」

 

爽やかな笑みを浮かべながら香織と雫を労う光輝。

 

「ええ、大丈夫よ。光輝は……まぁ、大丈夫よね」

 

「うん、平気だよ、光輝くん。皆の役に立ててよかったよ」

 

同じく微笑をもって返す二人。しかし、次ぐ光輝の言葉に少し心に影が差した。

 

「これで、南雲も浮かばれるな。自分を突き落とした魔物を自分が守ったクラスメイトが討伐したんだから」

 

「「……」」

 

光輝のその言葉はハジメを落とした原因を忘れているように見える。檜山の悪意も善意も全て信じきったためにハジメの落ちた原因なんてもう頭に入っていないのだろう。

 

若干、微妙な空気が漂う中、クラス一の元気っ子が飛び込んできた。

 

「カッオリ~ン!」

 

そんな奇怪な呼び声とともに鈴が香織にヒシッと抱きつく。

 

「ふわっ!?」

 

「えへへ、カオリン超愛してるよ~! カオリンが援護してくれなかったらペッシャンコになってるところだよ~」

 

「も、もう、鈴ちゃんったら。ってどこ触ってるの!」

 

「げへへ、ここがええのんか? ここがええんやっへぶぅ!?」

 

どこかの子狸魔法少女的なことをしている鈴に雫の手刀が炸裂する。

 

「いい加減にしなさい。誰が鈴のものなのよ……香織は私のよ?」

 

「雫ちゃん!?私はハジメくんのものだよ!」

 

「ふっ、そうはさせないよ~、カオリンと○○○で○○なことするのは鈴なんだよ!」

 

「鈴ちゃん!? 一体何する気なの!?」

 

雫と鈴の香織を挟んでのジャレ合いに、香織が忙しそうにツッコミを入れる。いつしか微妙な空気は払拭されていた。

 

これより先は完全に未知の領域。光輝達は過去の悪夢を振り払い先へと進むのだった。

 




雷って光魔法に入りますよね?香織が全属性適正持ってたら氷魔法も使わせられたんですけどね〜。

今DxDじゃなくて他の中古本を買おうか迷っているところです。

これからもよろしくお願いします。


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パートナー

「ホイっと!」

 

《Dark Shooter Phalanx Shift!》

 

「『緋槍』!」

 

大量の黒い魔力弾と燃えたぎる炎の槍がティラノサウルスのような魔物達を襲い、魔力弾はティラノサウルスの身体を食い破り、炎の槍はティラノサウルスの身体を焼いて貫く。

 

だがまだまだティラノサウルス、そしてラプトルのような魔物がハジメ達の元に向かってくる。

 

何故こうなったのか、それは少し前に遡る。

 

少し前、ハジメとユエは十メートルを超える木々が鬱蒼と茂っていて空気はどこか湿っぽいけれど以前通った熱帯林の階層と違ってそれほど暑くはない樹海のような階層に降りていた。

 

ハジメとユエが階下への階段を探して探索していると、突然、ズズンッという地響きが響き渡った。何事かと身構える二人の前に現れたのは、巨大な爬虫類を思わせる魔物だ。見た目は完全にティラノサウルスである。

 

但し、なぜか頭に一輪の可憐な花を生やしていたが……。

 

鋭い牙と迸る殺気が議論の余地なくこの魔物の強力さを示していたが、ついっと視線を上に向けると向日葵に似た花がふりふりと動く。かつてないシュールさだった。

 

さっさと片付けようとハジメは魔法を発動しようとしたその瞬間、それを制するように前に出たユエがスッと手を掲げた。

 

「『緋槍』」

 

ユエの手から燃えたぎる槍が現れ、ティラノサウルスを貫いて絶命させた。頭に生えていた花は地面に落ちた。

 

「……」

 

その様子にハジメは押し黙る。

 

最近、ユエ無双が激しい。最初はハジメの援護に徹していたはずだが、何故か途中からハジメに対抗するように先制攻撃を仕掛け魔物を瞬殺するようになってしまったのだ。

 

そのせいでハジメの魔法はいらないと思われているのではないかと思い始めていた。

 

ハジメはブラックブラスターを下ろすと苦笑いしながらユエに話しかけた。

 

「ユエ、張り切るのはいいんですが……最近私動いていないような気が……」

 

ユエは振り返ってハジメを見ると、無表情ながらどこか得意げな顔をする。

 

「……私、役に立つ。……パートナーだから。ハジメのパートナーだから!」

 

どうやら、ただハジメの援護だけしているのが我慢ならなかったらしい。

 

「(なんでこんなに強調するんでしょう……?)」

 

確か、少し前に一蓮托生のパートナーなのだから頼りにしているみたいな事を言ったような、と、ハジメは首を傾げる。

 

その時は、ユエが、魔力枯渇するまで魔法を使い戦闘中にブッ倒れてちょっとした窮地に陥ってしまい、何とか脱した後、その事をひどく気にするので慰める意味で言ったのだが……思いのほか深く心に残ったようである。パートナーとして役立つところを見せたいのだろう。

 

「いえいえ、十分役に立っていますよ。私も魔法が使えるんですから、私にも仕事を分けてくださいね」

 

「ハジメ……わかった」

 

ハジメに注意されてしまい若干シュンとするユエ。

 

ハジメは、どうにもハジメの役に立つことにこだわり過ぎる嫌いのあるユエに苦笑いしながら、彼女の柔らかな髪を撫でる。それだけで、ユエはほっこりした表情になって機嫌が戻ってしまうのだから、ハジメとしてはもう何とも言えない。

 

香織がいながらも可愛い故に優しくしてしまう。そんな中、魔物が大量に現れる。

 

ラプトルのような魔物と先程ユエが燃やしたティラノサウルスがそこにいた。しかも大量に。そして全ての魔物の頭に花が生えている。

 

「「…………」」

 

2人は顔を見合わせるとそれぞれ自分の得意魔法を発動していく。ハジメは簡単に発動できる《Black Shooter》、ユエは緋槍を発動して魔物の軍勢を殺していく。

 

だがいくら経っても魔物が減らない。殺しても殺しても魔物が出てくる。それが最初の状況だった。

 

「こうなったら、全ての魔物を殺し尽くすだけです!ユエ、時間を稼いでください!」

 

「ん、わかった!」

 

ハジメは空中に飛び上がると、階層内の魔力の残滓をブラックブラスターが展開する魔法陣に収束させる。さらにブラックブラスターに内蔵されているカートリッジシステムを使用し、薬莢を排出する。

 

「さぁ、全てを黒に染めよう!」

 

魔法陣が黒いプラズマを発し、大きな黒い魔力球が魔法陣から現れる。そしてそこから魔力砲が放たれた。

 

《Dark Star Braeker!!》

 

「ダークスターブレイカー!!!」

 

黒い魔力砲、ダークスターブレイカーが放たれ、ティラノサウルス、ラプトルを全て飲み込み、消し去った。

 

「……まだ魔力に残量はあるな」

 

ハジメはユエの元に降り立った。するとそこには呆然としたユエがそこにいた。

 

「ゆ、ユエ?どうしました?」

 

「な、何あれ……?」

 

どうやらブラックブラスターを携えたハジメが放ったブラックブラスターの威力に呆然としているようだった。

 

「ダークスターブレイカーは魔力の残滓を吸収して放つ技です。そう易々と放てるものでは無いです。それに撃つのに隙を晒すことになりますから、ユエが気に病む必要は無いですよ」

 

ハジメはユエの頭を撫でながらユエのことを慰める。

 

「……そう。絶対負けない……!」

 

ダークスターブレイカーにライバル心を燃やすユエだった。

 

「それにしてもあの花、それにあの結束力……」

 

「ん、寄生」

 

「そうですよね……はぁめんどくさい」

 

ハジメの推測を肯定するようにユエがコクンと頷く。

 

「……本体がいるはず」

 

「ですね、あの花を取り付けている魔物を殺さぬ限り、めちゃくちゃな数の魔物をぶつけられてこちらが先に死ぬか魔力が切れて死んでしまいます」

 

ハジメ達は物量で押しつぶされる前に、おそらく魔物達を操っているのであろう魔物の本体を探すことにした。でなければ、とても階下探しなどしていられない。

 

さらに先程の数の2倍がハジメ達の前に立ち塞がる。

 

「なら、つき崩すまでです……これを使うのは久しぶりなんですがね……」

 

ハジメは仮面ライダーエグゼイドの劇中内で見たことの無いガシャットとガシャコンバグヴァイザーを取りだし、ガシャットを起動する。

 

「?何それ」

 

「あぁ、これは……」

 

《仮面ライダービルド!》

 

《ガッシャット!》

 

そのガシャットはハジメが転移するまで使っていた訓練用のNPCを投影するためのガシャット。それをガシャコンバグヴァイザーに差し込み、ウィルスとして噴射すると──

 

そこには大量のハードガーディアン──仮面ライダービルドに登場する戦闘員がいた。

 

ハジメは手を振り上げるとハードガーディアンはティラノサウルスとラプトルを押さえ込んでハジメとユエの道を作り出す。

 

「行きますよ、ユエ」

 

「ん、わかってる」

 

ハジメとユエは漏れ出た魔物を倒しながら道を進んでいく。

 

ハジメ達が部屋の中央までやってきたとき、とあることが起きた。

 

全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできたのだ。ハジメとユエは背中合わせになってそれを迎撃する。

 

しかし、その数は優に百を超え、尚、激しく撃ち込まれるのでハジメは障壁を展開してそれを防ぎ、ユエは風魔法で弾いていた。

 

「ユエ、恐らくは本体の攻撃です。どうします?……ゆ、ユエ?どうしました?」

 

「……」

 

「ユエ?……!?」

 

ハジメがユエに対して意見を聞こうとして、ユエの返答が聞こえないため後ろを振り向いたその瞬間、ハジメは後ろに飛び退いた。

 

ハジメに向かって緋槍が放たれたのである。

 

「に、逃げて、ハジメ!」

 

ハジメの目の前にいるユエの頭の上に花が咲いていた。緑色の玉のせいと考えるべきだろうと頭の中で考えながらユエの攻撃を避ける。

 

ハジメに殺到する緋槍、それを防ぐか避けるハジメ。そんなことを続けているとハジメの目の前、ユエの真後ろにアルラウネのような魔物が現れた。アルラウネというには些か醜悪ではあるが。

 

ハジメはブラックブラスターをエセアルラウネに向けるがエセアルラウネは斜線上にユエを配置して攻撃をさせない。

 

「ハジメ……ごめんなさい……」

 

悔しそうな表情で歯を食いしばっているユエ。自分が足でまといなっていることが耐え難いのだろう。今も必死に抵抗しているはずだ。口は動くようで、謝罪しながらも引き結ばれた口元からは血が滴り落ちている。鋭い犬歯が唇を傷つけているのだ。悔しいためか、呪縛を解くためか、あるいはその両方か。

 

「別に大丈夫ですよ、すぐに終わらせます」

 

緑色の玉を打ち込もうとするエセアルラウネとユエを見ながらハジメは走り出す。それも、エセアルラウネとユエが視認できないほどの速さで。

 

《Sonic Form》《Sonic Move》

 

ハジメのバリアジャケットの上着がなくなりスピードが上がる。

 

ハジメはユエに当たらないように、エセアルラウネがユエを移動させる暇がないほどの速さで動きながら蹴りや拳をエセアルラウネに入れていく。

 

《Saber Mode》

 

ブラックブラスターの持ち手が銃身と垂直になるように変形し、銃口から極太の魔力で出来たレーザーブレードが現れる。

 

《Jet Plasma Saber!!》

 

レーザーブレードがさらにプラズマを発し、エセアルラウネを切り裂く。エセアルラウネは一瞬で半分になり、そのまま塵となって消え去った。

 

ユエは頭の花をプチッと抜かれ少し痛そうにしながらハジメに感謝しながら自分を責める。

 

「次は足でまといにならないようにする」

 

「ユエは足でまといじゃありませんよ……いつも手助けしてくれて助かってますよ」

 

ハジメはユエの頭を撫でながら次の階層に繋がる階段を探し始めたのだった。

 




ハジメのブラックブラスターと戦い方はなのはとフェイトのハイブリッド的な感じにしました。




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前座の騎士

今回は完璧にオリジナル回です。


エセアルラウネをスピードで翻弄し切り裂いて、ユエがライバル心やら向上心を燃やした日から随分経った。あの後血を吸われすぎてコードがなかったら気絶していたかもしれないハジメはユエと協力しながら迷宮攻略を着々と進めていた。

 

そして遂に、次の階層でハジメが最初にいた階層から百階目になるところまで来た。その一歩手前の階層でハジメはあることを試していた。

 

本当に最初の頃試していた闇の魔法(マギア・エレベア)である。その力を使うために今慎重に呪文を用いながら特訓していた。

 

来れ雷精(ウェニアント・スピーリトゥス)  風の精(アエリアーレス・フルグリエンテース)

 

雷を纏いて(クム・フルグラティオーネ)  吹きすさべ(フレット・テンペスタース) 南洋の嵐(アウストリーナ)

 

雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)!!」

 

雷を纏った嵐がハジメの前で荒れ狂いながら顕現する。

 

「(よし、後はこれを慎重に……)ス、固定(スタグネット)!」

 

風を巻き起こしながら雷の暴風が球体へと変化していき、完全な球体となる。

 

「こ、掌握(コンプレクシオー)!」

 

球体となった雷の暴風を手で握りつぶす。その風に何度傷つけられようとコードが再生していく。

 

魔力充填(スプレーメントゥム・プロ)!」

 

そしてその手を胸に当て、身体に雷の暴風を浸透させていく。ハジメの体が段々と白くなっていき、雷と風のオーラがハジメを包む。

 

術式兵装(アルマティオーネ) 疾風迅(アギリタース・フルミニ)アガァァァァァァ!?」

 

もう少しで完成するというところで雷の暴風がハジメの身体から弾き出され、そのままオーラとともに浸透していた魔力が即座にハジメの身体から霧散する。

 

そしてハジメはそのまま壁に激突し、床を転がりながらハジメの闇の魔法(マギア・エレベア)を見学していたユエの元に帰ってきた。

 

「……これで十二回目の失敗。大丈夫ハジメ?」

 

ユエはハジメの頭を自分の膝に乗せて休ませていた。ユエが言う十二回目というのは闇の魔法を失敗したのがこれで十二回目ということだ。

 

「……いやいい所まで行ってるんですけどねー」

 

「でも失敗続き。普通にミッド式の魔法とトータスの魔法を組み合わせた方がいい気がする」

 

「……まだ諦める訳には行かないんです、今度こそ成功させてみせますよ」

 

「……ん」

 

また詠唱を行い、雷の暴風を自分の身体に入れて苦しむハジメを心配そうに見ながらユエはスカーレットムーンの使える魔法の練習に励むのだった。

 

疾風迅(アギリタース・フルミニ)あがァァァァァァ!!?」

 

「……ハジメ」

 

失敗する度に悲しそうな目をしてハジメを見るユエに根負けして闇の魔法の練習を諦め、次の階層、最終階層に行くことにしたのだった。

 

三十四回目の失敗でユエに根負けした。

 

 

 

最終階層前の現在のハジメのステータスは──

───────────────────────

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:76

 

天職:錬成師

 

筋力:3400

 

体力:3400

 

耐性:3400

 

敏捷:3400

 

魔力:3900

 

魔耐:3400

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+遠隔錬成][+整地]・全属性適性[+全属性効果上昇]・全属性耐性・物理耐性・複合魔法[+ネギま!]・危機察知・高速魔力回復・魔力供給・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・言語理解

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリアジャケットを纏い、ハジメとユエは最終階層へと続く階段を降りる。

 

その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは三十メートルはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。

 

ハジメ達が、しばしその光景に見惚れつつ足を踏み入れる。すると、全ての柱が淡く輝き始めた。ハッと我を取り戻し警戒するハジメとユエ。柱はハジメ達を起点に奥の方へ順次輝いていく。

 

ハジメ達はしばらく警戒していたが特に何も起こらないので先へ進むことにした。感知系の技能をフル活用しながら歩みを進める。二百メートルも進んだ頃、前方に行き止まりを見つけた。いや、行き止まりではなく、それは巨大な扉だ。全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。

 

「これはまた凄いですねーこんなのクロトと作ったタドルクエストで見て以来ですね……」

 

「反逆者の住処?」

 

いかにもラスボスの部屋といった感じだ。実際、感知系技能には反応がなくともギアスが反応しており、ユエも冷や汗を流している。

 

「ならようやくゴールですか、よかったですね、ユエ」

 

ハジメはにこやかな、しかし覚悟のこもった笑みをユエに向ける。ユエも負けずに覚悟を決めた表情を向けた。

 

そして、二人揃って扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた。

 

その瞬間、鏡で出来た板がハジメとユエを四方八方から包囲した。

 

「「!?」」

 

ハジメとユエはキョロキョロと辺りを見回す。だがその時既に八角形の空間ができており、完全に閉じ込められてしまっていた。

 

「何が……」

 

何が起きたのか戸惑っているハジメ達の前に現れたのは超巨大な騎士。大きさは40メートルを超えている。

 

「……巨大ロボット!?」

 

騎士が巨大な剣を振り上げるのを見てハジメとユエは左右に飛んで避け、雷の暴風と緋槍を騎士に向かって飛ばす。

 

だがその攻撃は騎士の鎧には当たりはしたが大したダメージにはならなかった。

 

「くっ、どうしますユエ」

 

「ダークスターブレイカーは?」

 

「魔力の残滓がほとんどない今無理です!」

 

「『天灼』!」「──魔法の射手(サギタ・マギカ) 雷の八矢(フルグラリース)!」

 

「『蒼天』!」「──雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)!」

 

議論しながら魔法を当てるが中々ダメージが入らない。

 

「ダメだァァァ!?」

 

「真面目に危機……」

 

ハジメとユエが珍しく慌て、ハジメは頭をフル回転させて解決策を見つけ出す。

 

「なにかないかなにかないか……あぁ!あれがあるじゃないですか!」

 

「ハジメ!何かある?」

 

「勿論!この状況下で一番使えると思われるものが残ってました!」

 

ハジメは懐から銃のようなものを取り出す。ハジメが未だに使っていなかった、パトレン/ルパンエックスの変身アイテム、Xチェンジャーだ。

 

ハジメはXチェンジャーを回転させて新幹線の方向を正面にする。

 

《エックスナイズ!》

 

《怪盗Xチェンジ!》

 

Xチェンジャーのトリガーを引いてルパンレンジャーマークがハジメの体を透過し、銀の装甲がハジメを包み込む。

 

《ルパンエックス!!》

 

「孤高に煌めく怪盗!ルパンエックス!!」

 

スーパー戦隊第四十二作目、快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャーに登場する怪盗戦隊側の追加戦士。

 

その名乗りをあげたハジメが浴びる視線は、戸惑いだった。

 

「は、ハジメ?」

 

「……うん、こういう様式美なんです」

 

ユエからの戸惑いの視線は答えたようでハジメは名乗りをこういうものだと伝える。香織が向けてもこういう反応だっただろう。

 

「さぁ、行きましょうか!」

《前方ヨーシ!》《信号ヨーシ!》《発車ヨーシ!》

 

ハジメはXチェンジャーを回転させて再び新幹線の方向を正面に向ける。

 

《駆けろ! 駆けろ! 駆けろ!》

 

《出発!進行!!》

 

《エ・エ・エ・エーックス!》

 

エックスチェンジャーが巨大化し、エックストレインとなってハジメとユエの前に現れる。

 

「乗りますよ、ユエ!」

 

「ん!」

 

ハジメとユエは飛び上がってエックストレインに搭乗する。

 

そこには十手状の武器、Xロッドソードが納刀されたコクピットの操縦機があり、そこに座るハジメ、横に立つユエ。

 

どこからかエックストレインファイアー、エックストレインサンダーも現れて騎士に向かって攻撃を行い始める。

 

《ファ・ファ・ファ・ファイアー!》

 

《疾・風・迅・雷!》

 

ハジメはXロッドソードのレバーを回すことでルパンレンジャーマークを回転させて出す。

 

「エックス合体!」

 

エックストレインファイアーとサンダーがエックストレインと連結し、エックストレインシルバーとエックストレインファイアーを上半身、エックストレインゴールドとサンダーを下半身として立ち上がる。

 

《快盗エックスガッタイム!》

 

操縦機が頭部に移動すると、そこには銀色の巨大なロボットがいた。

 

《エ・エ・エ・エーックス!》

 

「完成、エックスエンペラースラッシュ!!」

 

ハジメはエックスエンペラースラッシュを動かして騎士を攻撃する。騎士の攻撃を避けながらスラッシュの名の通りの右腕のブレードで騎士を切りつける。

 

時にはブースターを吹かせながら蹴りを騎士にお見舞して鏡の壁にぶつけたりとダメージを着実に与えていく。

 

「次はこいつです!」

 

エックスエンペラースラッシュに倒立をさせて上半身と下半身を入れ替える。

 

《警察エックスガッタイム!》

 

金色の巨大なロボット、エックスエンペラーガンナーとなって肩に掛かっている巨大なガトリング砲を腰にまで移動させ、そのガトリング砲を撃つ。

 

薬莢が辺りに大量に転がり出した頃、騎士が肩や足に巨大な穴を作っていた。ちなみに薬莢のせいで地面はボコボコになっている。

 

それを見たハジメはXロッドソードを操縦機から引き抜いてエックスエンペラーガンナーにあるガトリング、そして腰部と頭部の銃口にエネルギーをチャージする。

 

「エックスエンペラー!ガンナーストライク!!」

 

ハジメはXロッドソードを前に突き出しながらエックスエンペラーガンナーにビームと実弾を騎士に叩き込み、騎士を粉砕した。

 

「終わった……地味に激戦でした」

 

「ん、魔力も少し減った……」

 

エックスエンペラーガンナーを消して、地面に降り立ち、錬成で鏡の壁を破壊するハジメとユエ。そして2人は柱の間を超えるのだった。

 

その瞬間、扉とハジメ達の間三十メートル程の空間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。

 

ハジメは、その魔法陣に見覚えがあった。忘れようもない、あの日、ハジメが奈落へと落ちた日に見た自分達を窮地に追い込んだトラップと同じものだ。だが、ベヒモスの魔法陣が直径十メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は三倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。

 

「ラスボスですか……さっきの騎士もラスボスっぽかったですけど……」

 

「……大丈夫……私達、負けない……」

 

少し心配そうにするハジメ、だがユエはハジメを勇気づける。

 

魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにするハジメとユエ。光が収まった時、そこに現れたのは……

 

人型サイズのあのハジメがエックスエンペラーで倒した騎士2体と、体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物、例えるならヒュドラだった。

 

「……マジですか」

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

オルクス大迷宮最後の戦いが今、始まった。

 




やっと、やっとルパンエックス・パトレンエックス出せました!まぁ出せたのロボットだけですけど……

ルパンレンジャーVSパトレンジャーは私的にトップ5に入るくらい神作なのでおすすめです!

騎士のイメージはパズドラの岩の魔剣士です!


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最奥のガーディアン

目の前には6つの首を持つ大蛇、通称ヒュドラに恐らくは魔法に対して耐性を持っているだろう巨大なロボット的な騎士の縮小版。

 

「ハジメ、ヒュドラは私がやる」

 

「わかりました、任せますよ」

 

ユエとハジメ、お互いにハイタッチしながら各々の敵に対して向かい合う。ユエは魔法に対して耐性というものが無いであろうヒュドラ、ハジメは魔法以外にも戦闘能力があるので騎士。

 

「封時結界、展開!」

 

ハジメの足元からユエとヒュドラを隔絶する結界を作り出し、騎士2体との決戦の場を作り出す。

 

「本当に魔法が効かないのか試してみますか、まずはこれで……!」

 

《Black Shooter!》

 

ハジメは接近してくる騎士めがけて魔力弾を1発ずつ放つ。騎士は魔法をかき消さず攻撃をそのまま受けるが、傷一つはいらない。

 

「なるほど、魔法を消す訳では無いというわけですね。魔耐と耐性が高いと考えるべき……でしょうね!」

 

《Saber Mode!》

 

ブラックブラスターをレーザーブレードにして騎士2人に斬撃という攻撃を浴びせていく。ただ簡単には削れないのか高温のレーザーによる焦げしか出来ない。

 

少しづつ焼ききれてはいるが、二体を一気に破壊するにはもっとちゃんとした破壊力が必要だろう。

 

「こういう頑丈なのを倒すのを逃げたらまた逃げますからね、今回で倒して逃げ道を塞ぐ!……今度はこれです!」

 

《Axe Mode!》

 

ブラックブラスターの通常形態に戻り、銃口から長い棒──持ち手が現れ、銃状態の持ち手から刃が拡張されて出現し、そこから黒い魔力の刃が現れる。

 

《Saber Mode》でダメージを与えられない時の場合に備えてあった打撃系・高威力武装形態のひとつだ。

 

「セイ!」

 

《Axe Mode》による斬撃は重く、騎士の硬い装甲すら簡単に凹ませた。ハジメは騎士の攻撃を避けながら騎士を倒すために二体を切り続ける。

 

「もう少しですが……ユエは大丈夫でしょうか!」

 

《Break Impulse!》

 

騎士を破壊するのに必要な振動数を即座に割り出し、一体の騎士にデバイスを振るい、振動エネルギーを騎士に対して送り込んで装甲ごと騎士を破壊した。

 

「……後一体って、嘘ですよね!?」

 

破壊した騎士が粉々となっても再生して元の騎士の姿となってまたハジメに対して攻撃を行い始めたのだ。ギアスのおかげでその攻撃はよけれたが、なかったら結構な一撃を貰っていただろう。

 

「いっぺんに破壊すればいいということでしょうか……?なら、今度はこれです!」

 

《Ring Bind!》

 

デバイスからリングが現れ、騎士2体の腰を拘束する。ジリジリと動いて破壊しようとするのでハジメまた新しい捕縛魔法を発動する。

 

《Dark Chain Bind!》

 

闇の鎖が《Ring Bind》を上書きするように騎士を拘束し、破壊されそうになるのを防ぐ。

 

そしてハジメはカートリッジを1回ロードし、薬莢を1つ排出、魔力を充填する。

 

《Break Impulse!》

 

さっきの《Break Impulse》よりもカートリッジをロードしたことで威力が上がっており、拘束された騎士に対して必要な振動数を割り出して《Axe Mode》のブラックブラスターを騎士2体にぶつける。

 

騎士2体は今度こそ再生せず砕け散り、ハジメは結界を解除する。そしてユエとヒュドラの戦いに介入しようとするのだが、そこには満身創痍のユエとユエに向かって最後の攻撃を放とうとするヒュドラの姿があった。

 

どうしてこうなったのか、それはユエが順当にヒュドラの首を破壊していた頃に遡る。

 

ユエは封時結界に消えたハジメのことを気にしながらも最上級魔法を放って順当にヒュドラの攻撃を行う赤頭や緑頭などを破壊していた。

 

だがヒュドラは白頭の能力である回復を使い、ユエが破壊した首を再生していく。それを見たユエは魔法の狙い目を白頭に向け、攻撃した。

 

だが黄頭が頭を肥大化させてそれを防御し、黒頭がなにかを行なった。そのなにかが問題だった。

 

「……は、ハジメ、みす…見捨てないで……」

 

黒頭は対象にダークなイメージを見せることが出来、ユエはそこでハジメに見捨てられて再度封印されるイメージを見た。

 

動きが止まったユエに対して赤頭が火炎放射を、緑頭が風の刃を、青頭がキラリと輝く牙を突き立てる。

 

痛みによってダークなイメージからは解放されたが再生しながら立て続けに攻撃を食らったために魔力が切れてしまい、バリアジャケットを維持することも出来ずにそのまま倒れてしまった。

 

そして最後の一撃をユエに刺そうとするヒュドラが今の現状だ。

 

ユエを襲った一斉掃射が再度ユエを襲おうとするのを見て、ハジメは魔法を展開しながら動き出した。

 

《Wide Area Protection!》

 

前面への防御と、背面のユエを守るための魔法を発動するハジメ。その防御は一時ハジメ達を守ったが、徐々にひび割れていく。

 

《Circle Protection!》

 

半球状の障壁が展開され、《Wide Area Protection》が破られてもハジメ達を守る盾となる。リンカーコアからの魔力を流し続けて防御力を極限まで上げる。

 

原作より防御(バリアジャケット)を上げてこれならユエ単独でも勝てるのではという慢心を後悔しながらこれ以上ユエに攻撃が当たらないように気合いで防御する。

 

「グゥゥゥゥ!!」

 

ハジメは障壁を展開しながら新たな魔法を発動する。結界や先程騎士に放った魔力の残滓をかき集めて収束し、リンカーコア内の魔力をその魔法に回す。

 

魔法陣が展開され、魔法陣が黒いプラズマを発し、大きな黒い魔力球が魔法陣から現れる。障壁を破壊して瞬時に魔力球をヒュドラの攻撃の方向に向けて、そこからその方向に魔力砲が放たれた。

 

《Dark Star Braeker!!》

 

「ダークスターブレイカァァァァ!!!」

 

ヒュドラの攻撃を追い出し、赤頭と緑頭を破壊して遠距離攻撃を封じ、柱を何本か余波で壊す。

 

「……ま、魔力が……」

 

リンカーコアの魔力がバリアジャケットを展開できないほど消耗し、バリアジャケットが解除される。

 

「……まだ来ますよね……」

 

ダークスターブレイカーによって破壊された赤頭と緑頭が再度攻撃を開始しようとする。だがリンカーコアの魔力がない今、デバイスを介してのミッド式の魔法は使うことが出来ない。

 

「……やるしかない、ですよね」

 

ちまちま魔法を撃っても、ビルドで潰しても回復される可能性が高い。それを考えてハジメが導き出した答えは──

 

来れ雷精(ウェニアント・スピーリトゥス) 風の精(アエリアーレス・フルグリエンテース)

 

「(闇の魔法しかヒュドラを倒す術はないです!)」

 

雷を纏いて(クム・フラグティオーネ) 吹きすさべ(フレット・テンペスタース) 南洋の嵐(アウストリーナ)

 

雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)!!」

 

雷の嵐がハジメの前に現れ、ハジメはその嵐を球体へと変化させる。

 

固定(スタグネット)掌握(コンプレクシオー)!」

 

そしてハジメはその球体を握りしめてゆっくりと胸に手を当てる。

 

魔力充填(スプレーメントゥム・プロ)!」

 

身体に雷の暴風を浸透させていく。ハジメの体が段々と白くなっていき、雷と風のオーラがハジメを包む。

 

「(逃がすかァァァ!)戦いの歌(カントゥス・べラークス)!!」

 

ハジメの身体から雷の暴風が出ていこうとするが、魔力を身体全体に流して雷の暴風を浸透させていく。

 

そしてハジメの身体はついに完全に真っ白となり、周囲に雷と風のオーラを出す。

 

術式兵装(アルマティオーネ)

 

疾風迅雷(アギリタース・フルミニス)

 

完成

 

「……出来ました!闇の魔法、再現完了です!」

 

術式兵装・疾風迅雷が完成し、ハジメは行動し始める。

 

ヒュドラが放った先程の一斉掃射を風を操って気流を作ることで天井にその攻撃を逸らす。

 

「──白き雷(フラグラティオー・アルビカンス)!!」

 

白い稲妻を放射して白頭を先に電光石火の如く潰し、気流を操作して瓦礫をぶつけながらユエに神水を口移しで飲まして体力と魔力を回復させ、ユエを気付けさせる。

 

「………………ん?は、ハジメ?」

 

「ごめんなさい、ユエ……一緒に戦っていればこんなことにはならなかったのに……」

 

ユエが目覚めた瞬間にユエを抱きしめ、こんなことになってしまったことについて謝る。ユエはいきなり抱きしめられていることに驚いていて、ハジメの謝罪の言葉をあまり耳に入れてないが。

 

「クルゥアン!」

 

「──雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)白き雷(フラグラティオー・アルビカンス)

 

ヒュドラが白頭以外の頭で攻撃しようとするが、ハジメが雷の暴風と白き雷を放つことでその頭は黒頭と黄頭以外全て消え去る。

 

「──ん、大丈夫。私はこうしてハジメのおかげで助かってる」

 

ハジメの言葉をようやく理解したユエは頬を赤く染めながら抱きしめるハジメの頭を撫でて宥める。

 

「わかりました……さっさとあれをこの闇の魔法で駆逐してきます…そしたらゆっくりと傷を癒しましょうね」

 

ハジメは空中に気流を操作して飛び上がると、気流を操ってヒュドラに向かって特攻を行い、ヒュドラの残りの黄頭と黒頭に電撃と風を纏った拳を繰り出す。黒頭と黄頭は感電してそのまま気絶、白き雷を浴びて完全に消え去ってしまった。

 

全ての首を破壊してこれで終わりかと思ったユエだったが突如として極光が放たれる。ハジメはこれを急いで気流を操作してユエを抱きかかえて当たらない所へと避ける。

 

「またも私の大切な人を狙うんですね……ならあなたをこの一撃を持って沈めましょう!」

 

大切な人の部分でユエがまた頬を赤く染めるが、ハジメは真面目に自らが放つ最強の魔法の1つの呪文をとなえる。

 

百重千重と(ヘカトンタキス・カイ) 重なりて(キーリアキス) 走れよ稲妻(アストラプサトー)

 

千の雷(キーリプル・アストラペー)!!!」

 

100を超える数の雷が──文字通り千の雷が──ハジメの周りに現れ、ヒュドラの最後の頭である、銀頭に向かって落ちる。

 

それらの雷は落ちる度に轟音を起こし、ヒュドラの肉体を焼き焦がしていく。ユエはおもわず身体を縮こまらせて耳を塞いでいたくらいだ。

 

数分後、ハジメが生み出した雷が全てヒュドラに落ち終わると、そこにはヒュドラの肉片と思わしきものはほとんど残っておらず、欠片が少し残っているくらいで、残りは全て焼けて消えてしまっていた。

 

「……あ、ちょ……魔力がもう……」

 

「は、ハジメ!?」

 

調子に乗って千の雷なんて言う広域殲滅魔法なんてものを使ったために、ハジメに残った魔力など欠片も残っておらず、ゆっくりと地面に落ちながら術式兵装が解除され、ハジメはそのまま眠りについたのだった。

 




騎士のあの前の話の圧倒的防御力はとある法則が使われています。

スーパー戦隊の戦闘後は巨大戦がありますよね。そこでは通常、ロボットでしかダメージを与えることができません。一部例外がいますが。

前話でハジメとユエが最上級魔法を巨大騎士に当てましたが、それは巨大化した敵に攻撃が当たってもダメージが与えられなかったという事ですね。

じゃあヒュドラはどうなの?って話ですが、あれってでかくても巨大化した敵程大きくないと思います。

スーパー戦隊の法則を使ってみました。

これからもよろしくお願いします。


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反逆者の真名と本当の歴史

久しぶりの投稿です!


ハジメは、体全体が何か温かで柔らかな物に包まれているのを感じた。随分と久しぶりな感触だ。ベッドの感触である。頭と背中を優しく受け止めるクッションと、体を包む羽毛の柔らかさを感じ、ハジメのまどろむ意識は混乱する。

 

「(いやー気持ちいいですねー本当に……研究室にはベッドなんて高尚なものはないから本当に久しぶりで……ん?)」

 

ハジメはその研究室にないベッドに違和感を抱いてゆっくりと起きると、ハジメは全てが純白なベッドの上で寝ていることが分かった。しかも神々しいまでの神殿のような出で立ちのテラスに置かれたベッドの上で。

 

「あ〜そうでしたそうでした……闇の魔法を完成させて無事ヒュドラを倒したんでした……」

 

「……んぁ……ハジメ……ぁう……」

 

「!?」

 

ハジメが今まで起きたことを思い出しているとその思考の途中で艶めかしい声が聞こえ、その思考を中断してハジメは布団を捲ると、そこにはカッターシャツ1枚で寝ているユエがいた。

 

「……私は……はい、服着てますよね……バリアジャケットで服には汚れ1つ着きませんし、その後闇の魔法で無双したから服に傷もない……良かった……」

 

「……んぅ~……んっ……」

 

さらに艶めかしい声を聞こえる。

 

「……落ち着いてください、私……私には香織さんという素敵な女性が彼女としているんです…………どうやって起こそう?」

 

どうやって起こすかで数十分、その後その方法を実行するのにさらに数十分かけて起こしたのだった。

 

「な、なぜにそんなカッコで寝てるんですか……」

 

どうやって起こしたのかは秘密だが、いつものハジメらしくない暴力的起こし方でユエの目を覚ます。

 

「うにゅ……ハジメ?」

 

「ええ、ハジメさんですよー起きまウゴォ!?」

 

「ハジメ!ハジメ!」

 

目を覚ましたユエは茫洋とした目でハジメを見ると、次の瞬間にはカッと目を見開きハジメに飛びついた。もちろん素っ裸で。動揺するハジメ。カッターシャツなんて勢いで吹っ飛んだ。

 

しかし、ユエがハジメの首筋に顔を埋めながら、ぐすっと鼻を鳴らしていることに気が付くと、仕方ないなと苦笑いして頭を撫でた。

 

「ごめんなさい、今度からはこんなことないようにしますから……」

 

「んっ……心配した……」

 

しばらくしがみついたまま離れそうになかったし、倒れた後面倒を見てくれたのはユエなので気が済むまでこうしていようと、ハジメは優しくユエの頭を撫で続けた。

 

それからしばらくして、ようやくユエが落ち着いたので、ハジメは事情を尋ねた。ユエにもう一度吹っ飛んだカッターシャツを着せて。

 

「それで、あれから何があったんです?それにここは?」

 

「……あの後……」

 

ユエ曰く、ハジメの魔力がリンカーコアとトータスの魔力どちらも枯渇し動けなくなったが、ユエはハジメに神水を飲まされていたので魔力と傷どちらも再生し終えていた。

 

とりあえず魔力を回復させるために神水を口移しで飲ませながらハジメを引きずって歩いていると、迷宮の一番奥にあった扉を確認無しで通って行ったらしい。

 

そして、踏み込んだ扉の奥は、

 

「……反逆者の住処」

 

中は広大な空間に住み心地の良さそうな住居があったというのだ。そのあと、危険がないことを確認して、ベッドルームを確認したユエは、ハジメを背負ってベッドに寝かせ看病していたのだという。神結晶から最近めっきり量が少なくなった神水をさらに抽出し、ハジメが目を早く覚ますように飲ませ続けた。

 

だがそのまま飲ませていると疲れてしまったのか糸が切れたように寝てしまったらしい。

 

「なるほど、ありがとうございます」

 

「んっ!」

 

ハジメが感謝の言葉を伝えると、ユエは心底嬉しそうに瞳を輝かせる。無表情ではあるが、その分瞳は雄弁だ。

 

ハジメはユエを連れてベッドルームから出て行く。すると、見たことも無い周囲の光景に圧倒され呆然とした。

 

まず、目に入ったのは太陽だ。もちろんここは地下迷宮であり本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず『太陽』と称したのである。

 

「……夜になると月みたいになる」

 

「え、ホントですか?」

 

ハジメ的には驚きである。

 

他にも天井近くの滝から流れる水によって生まれた川、そして畑に動物の小屋があった。どう考えても誰かが住むために作ったものにしか見えない。

 

「サーチャーに反応無し」

 

「開かない部屋も多い……」

 

サーチャーを飛ばして何かないか調べたり、扉を開けようとするが異常もなく、そして開かないために警戒するハジメとユエ。だがギアスにも反応はない。

 

どうやら三階建てらしく、上まで吹き抜けになっていた。全体的に白く石灰のような手触りだ。全体的に清潔感があり、エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。

 

内装は1階に台所やらリビングなどがあり、奥に進むとそこには大きな円状の穴があり、その淵にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。彫刻の隣には魔法陣が刻まれている。試しに魔力を注いでみると、ライオンモドキの口から勢いよく温水が飛び出した。

 

「お風呂かぁ〜久しぶりに入りたいですねぇ〜」

 

久しぶりのお風呂を見て目を輝かせるハジメ。ハジメの研究室もお風呂があるほど快適では無いため嬉しい気持ちが溢れ出る。

 

そんなハジメを見てユエが一言、

 

「……入る? 一緒に……」

 

「……一人でのんびりさせてください(私には香織さんが……)」

 

「むぅ……」

 

素足でパシャパシャと温水を蹴るユエの姿を見て、一緒に入ったらくつろぎ、そして貞操が危ういと原作知識で断るハジメ。ユエは唇が尖らせて不満顔だ。

 

それから、二階で書斎や工房らしき部屋を発見した。しかし、書棚も工房の中の扉も封印がされているらしく開けることはできなかった。

 

二人は三階の奥の部屋に向かった。三階は一部屋しかないようだ。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。

 

しかし、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。人影は骸だった。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。ちなみに汚れはない。

 

「……怪しい……どうする?」

 

ユエもこの骸に疑問を抱いたようだ。おそらく反逆者と言われる者達の一人なのだろうが、苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、まるで誰かを待っているようである。

 

「……錬成しても開かない扉の数々……これですよね鍵って……!」

 

ハジメは魔法陣に向かって足を踏み出す。すると、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。

 

転移した時のことを思い出しているとやがて光が収まり、目を開けたハジメの目の前には、黒衣の青年が立っていた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

オスカー・オルクスの登場にハジメは驚かず、サーチャーに録画させる。

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

そうして始まったオスカーの話は、ハジメが聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだった。

 

「(ワーオドロキ、ビックリダナー)」

 

原作知識のあるハジメの目の前には無力だったが。

 

長いので簡略化すると、神によって争われていた世界、それを止めるべく勇者のごとく現れた者たちこそ、『解放者』。

 

解放者は神々直系の子孫で、神々の真意を知ってしまう。解放者のリーダーはそれに耐えかねて志を同じくするものを集めて『神域』と呼ばれるところに突入、そして神々に戦いを挑む。

 

だが神々は人々の認識を操作、そして解放者を助けるべき人に襲わせてそのまま自滅、神に恩恵を与えられているのに神に仇なした『反逆者』のレッテルを貼られて、そのままほぼ全滅した。

 

最後まで残ったのは中心の七人だけだった。世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 

長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、ハジメの脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいたためと知っているために大人しく耐えた。

 

やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる。ハジメはゆっくり息を吐いた。

 

「ハジメ……大丈夫?」

 

「大丈夫、さて……変な話を聞きましたね……」

 

「……ん……どうするの?」

 

ユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと尋ねる。

 

「関係ないです。神殺しなんてどこぞのカンピオーネでもないんですからやりませんし、私はさっさと元の世界に帰ってゲーム制作に勤しみたいんでね…それに香織さんも迎えにいかないといけませんし」

 

「(カオリ……誰?)」

 

「あぁ、あと神代魔法っていうのを覚えました。生成魔法……錬成師専用かもしれませんが覚えておいて損は無いですよ」

 

「………………んっ!」

 

少し動揺していたのか気づくのに少し遅れたユエは魔法陣に触り、またあの長い話を聞く。

 

そして生成魔法を習得後、2人はオスカー・オルクスの白骨を見る。

 

「あれ、どうする?」

 

「……骨ですよね〜使い道なさそうです」

 

「……畑の肥料」

 

「……弔いましょうか、なんか祟られたら怖いです」

 

オスカー・オルクスの服や指からロックのかかった扉の鍵と思われる指輪や装飾品を取り出して身につける。

 

そして錬成で棺を作り出してオスカー・オルクスの遺体を入れて魔法で1階の地面に穴を開けてそこにオスカー・オルクスの遺体を投げ入れ、そのまま埋める。

 

ついでにオスカーオルクスが眠っていることを示す墓石も立てておく。

 

埋葬が終わると、書斎に向かって本棚にかけられたロックを解除していく。めぼしいものを見ていくとこの住居の設計書を見つけて色々と見ていく。

 

「なるほど、ここはこうなってるんですね……」

 

「面白い……!」

 

良くも悪くも魔法馬鹿な2人、住居に付けられている魔法に夢中になりながら清潔に保たれている原因や色々なことを理解していく。

 

設計書には先ほどの三階にある魔法陣がそのまま地上に施した魔法陣と繋がっているらしい。オルクスの指輪を持っていないと起動しないようだ。出口が見つかって嬉しがるハジメとユエ。

 

他にもアーティファクトや色々なものを書いた本を見ていると、ユエがハジメに一冊の本を渡す、そこにはどこに解放者のアジト兼迷宮があるのか、そして解放者の日常について書かれてあった。

 

「……帰る方法見つかるかも」

 

そこにあるであろう神代魔法を使えば帰れる。それでハジメたちの方針は決まった。

 

ハジメは他にも色々なところを見てひとつの決心を固める。

 

「少しの間、ここで暮らそう!」

 

「ん、わかった」

 

ここで実力を高めてから脱出することにして、ハジメとユエははここで可能な限りの鍛錬と装備の充実を図ることになった。

 

 

 

 

 

 

その日の晩、天井の太陽が月に変わり淡い光を放つ様を、ハジメは風呂に浸かりながら全身を弛緩させてぼんやりと眺めていた。

 

「あ〜心が、この身が暖まるー!さて〜明日から何作りますかねー」

 

ハジメからは考えられないほど気の抜けた声が風呂場に響く。全身をだらんとさせたままボーとしていると、突如、ヒタヒタと足音が聞こえ始めた。完全に油断していたハジメの目が赤く光り、ギアスが発動する。

 

「また貞操の危機か!だが甘い……マッ缶より甘いぞ、ユエ!私はこういう時に備えてこんな魔法を作っておいたのだ!」

 

ハジメはユエが近づいてくるのを感じながら透明になる。

 

しばらくするとユエが入ってきた。ハジメはユエの方を見ないように目を逸らす。

 

「……ハジメがいない……どういう……!」

 

ユエはなにかに気づいたのかタオルを浴槽の横に置くとハジメの膝の上に座って自分の身体をハジメに押し付ける。見えていないのに、だ。

 

「(何故だ……場所はバレてないはず……!)」

 

「……透明魔法の発想には驚いた、けど、ハジメのいるところに穴が空いてたからすぐにわかった」

 

「あ、やべ」

 

ハジメはユエの指摘につい声を出してしまい、そのまま魔法を解除してしまう。するとユエは身体を反転させて、ハジメをジーッと見つめる。

 

「ハジメ、カオリって誰?」

 

「香織さん!?なぜユエが香織さんのことを……!」

 

「ハジメが言ってた、それにたまに上の空になるから」

 

「……私の恋人です」

 

ハジメはジト目のユエに耐えきれなくなり白状する。するとユエはハジメにさらに近づいて行き、ハジメの身体とユエの身体は密着し、ユエの顔はハジメの耳の隣になる。

 

そしてハジメの耳元で喋り始める。

 

「私は2番目でもいい」

 

「いや、でもそれは……」

 

「ハジメ、私はハジメの力になりたい。ハジメのモノになりたい……それを拒絶しないで」

 

「でも手を出したらかおムグッ!?」

 

ユエの唇がハジメの口を閉ざさせる。舌を入れてハジメを喋らせないようにする。

 

そして口を離すとハジメは逃げる気力を失っていた。

 

「ハジメが拒否するなら拒否できないようにするだけ……!」

 

「ちょ、ちょっと待って……」

 

「待たない!」

 

この後、何があったか、それはご想像にお任せします……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハジメくんが…(_ ..)_ バタリ」

 

「香織、ちょ香織!何がどうなって……!」

 

何かを受信して倒れる治癒術師が1人……。




ハジメくん、またも逆レ〇プされる。今度はロリ系吸血姫に……次は餅つき兎かな?

R18投稿しました!……更新に時間かかりますが(大体3ヶ月……)更新はしていきますので……よろしくお願いします。

https://syosetu.org/novel/280826/

では、これからもよろしくお願いします!


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新たな力

ワールドトリガーの二宮さんの弾幕に憧れて……でもでもワールドトリガーのトリガーはライセン終わってから出してみたい……


ハジメがユエに香織とは違う大人の貫禄──見た目幼女だが──を見せられてから少し経ち、ハジメは新たな力を身につけていた。

 

灰色が混じった緑色のイナゴをモチーフとした仮面ライダー、『仮面ライダーアバドン』100体を相手にハジメは幾何学な模様が描かれた赤、青、緑、黄色の魔法陣を向けていた。

 

そこから炎、氷、風、土砂が現れ、アバドンを燃やし、凍らせ、吹き飛ばしていく。

 

「どうです?『戦姫絶唱シンフォギア』の魔法のような……確か異端技術……いや錬金術でしたか……」

 

「……早すぎる、まだ大迷宮攻略からまだそんな経ってないのに……!」

 

誇らしげにアバドンを粉砕していくハジメを見て、ユエは悔しさから蹲る。短期間で新たな力を身につけたハジメに嫉妬して。

 

「『ソードブレイカー』!!」

 

スラッシュアバドライザーで斬りかかってくるアバドンの攻撃を西洋剣で受け止める。

 

「哲学兵装……やれば出来るもんですね、『埒外物理学』は無理でしたが、これなら出来ましたよ」

 

ソードブレイカー、それは剣と相手が思うもの、そして剣と定義するもの全てを破壊する『哲学兵装』と呼ばれる、錬金術によって作られる武装だ。

 

「……そろそろ終わらせましょうか」

 

ハジメの使う錬金術、それは使う時、何か代償を払わなければならない。ハジメは自らの魔力と血を代償に使っている。

 

思い出を使うほど長く生きていないため、そうするしか無かったのだ。それに、ハジメはコードによって簡単に血を回復できたのだ。

 

ハジメは氷の錬金術でアバドン達を氷漬けにし、オスカーが保有していたアーティファクト、『宝物庫』から高圧縮カーボンロッドを取り出し、風の錬金術で勢いよく発射する。

 

宝物庫とは、ハジメがオスカー・オルクスの遺体から手に入れた四次元ポケットのアーティファクト版の物である。

 

「行きます!」

 

アバドン達はカーボンロッドによって貫かれ、それでも五体満足に残っているアバドンは、ハジメの持つソードブレイカーに切り裂かれる。

 

「終わりですね」

 

ハジメは空中に手を伸ばして魔力を伝わせる。すると機械のリングがハジメの元にやってきてハジメの手に収まる。

 

そのリングの名前は『シンクネット』、ナノマシンを散布しており、そこから仮面ライダーアバドンを生成し、倒されてもすぐさまリスポーンするエリアに変えることができるアーティファクトだ。

 

強さはハジメとユエからすれば大したことないが、光輝3人を1人で倒すことができるくらいには強い。

 

他にもアーティファクトはある。錬金術を使うのにもアーティファクトを使っている。『Alchemy Organ』、それは体内に埋め込むことで魔力と血を代償に戦姫絶唱シンフォギアの錬金術を擬似的に使わせることが出来るものだ。

 

ユエは落胆していたが、ハジメは技術で手に入れた能力のため、努力はほぼしていないため実際は落胆しなくてもいい。英語名なのはカッコイイかららしい。

 

ハジメは一度『ワールドトリガー』のトリオン器官を作って使ってみようかと思ったが、錬金術の方が使いたかったのでこちらを選んだようだ。

 

「次は私…ハジメやろ?」

 

「ええ、喜んで」

 

ユエはハジメとの契約によって得た『思考停止のギアス』を展開する。ユエの片目がさらに赤く発光し、不死鳥のマークが浮き出る。

 

ユエのギアス能力は対象の思考を数秒停止させるギアスで、無機物には効かない。

 

ハジメとの初セックスの後、ギアスの詳細を聞いたあとでハジメと契約した。

 

「私のギアスとの差よ…いやまぁ仕方ないんですけどね…」

 

コードとの同時獲得のための弱体化であるため、仕方ないと割り切るハジメ。だがどう見てもユエとのギアスの差を割り切れているようには見えなかった。

 

ユエの思考停止のギアスは万能である。有機物…生物であればなんでも思考を停止させることが出来るのだ。ヒュドラ戦でこれがあればと嘆いていてもいた。

 

「ハジメ、戦うなら私は容赦しない」

 

「それはこちらのセリフでもあるね」

 

お互い不老不死であるがために、模擬戦であろうとも容赦はしない2人。ヒュドラ戦で使われた階層で模擬戦しているが、その階層はあちこちがヒビ割れ、破壊されている。

 

ハジメとユエの何回にも渡る戦闘が行われていたという証拠だ。

 

解放・固定(エーミッタム・エト・スタグネット)

 

「|千年氷華《アントス・パゲトゥー・キリオーン・エトーン》」

 

街を氷漬けにする氷の魔法を球体に押し込め、手でそれを持つ。ユエが闇の魔法を阻止すべく攻撃を放ってくるが、詠唱の必要ない錬金術が紡ぐエーテルのバリアがそれを防いでいる。

掌握(コンプレクシオー)

 

氷の球体を手で砕き、それをゆっくりと自らの胸の中へと押し込もうとする。

 

「術式装填『千年氷華』」

 

魔力を身体に流して千年氷華を身体から逃がさないようにし、自らの身体を雪のように白くさせ、背中から無数の氷が生える。

 

術式兵装(プロ・アルマティオーネ)

 

氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア)

 

完成

 

ハジメはついに、闇の魔法を安定して使用できるようになったのだ。だが成功したという達成感から束の間、ユエがハジメの防御を破ってハジメの懐に潜り込み、ユエがギアスをハジメに掛ける。

 

ハジメの思考が数秒止まり、ユエは魔法を大量にハジメの周囲に放つ。だがユエの攻撃を予測していたのか、インテリジェントデバイスであるブラックブラスターがハジメの周りに黒い魔力弾を並べる。

 

《Dark Shooter!》

 

魔法と魔法、同時に当たることでそれらは爆発し、とんでもない衝撃を生み出して2人をはじき飛ばす。いち早く復帰したユエはハジメが思考停止を解く前に倒そうと魔法を放つ。

 

だがその攻撃はハジメが展開した氷の盾に防がれた。

 

「…思考停止は本当に辛いですが、停止中の攻撃を防げればわけないんですよね…」

 

ハジメはAI搭載の武装を何個か持っている。ハジメのデバイス然り、シンクネットも搭載されている。ユエの攻撃を防ぐだけならできるのだ。

 

「氷刀輪舞!」

 

ハジメの魔力にものを言わせた大量の氷の刀がユエを襲う。それをユエは緋槍で燃やし尽くしていくが、何個かはユエの攻撃を通り抜けてユエを攻撃していく。

 

「『蒼天』」

 

炎の最上級魔法がハジメの操る氷の刀を襲い、全てを燃やしてさらにハジメを攻撃しようとする、だがその攻撃はハジメには届かない。

 

氷盾(リフレクシオー)

 

氷の盾がハジメの前に現れてその攻撃を防いだ。そしてハジメはこの闇の魔法、氷の女王の真の力を使いだした。

 

ヒュドラの階層が氷で覆われ、氷の魔法の射手が無限に現れ、ユエに向かって連射されていく。それはまさに台風の日の雨や風のように。

 

「魔法を放つ暇がッ!」

 

上、左、右からの魔法攻撃に魔法を放つ暇すらなく攻撃を食らっていく。

 

「まだまだっ!」

 

錬金術によって生み出された四大元素(アリストテレス)とブラックブラスターから生成される黒い魔力弾が放たれ、ユエに対する攻撃の密度を増やしていく。

 

ハジメの強みは色々ある。その類稀なる技術力、豊富な魔力にすぐに蘇り、どんな傷でも回復する不老不死……だが戦闘での1番の強みはそれら全て組み合わさってできる手数の多さとそれによって生まれる圧倒的な弾幕だ。

 

弾幕というか絨毯爆撃だけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

3時間後、ユエは黒焦げになってハジメの膝の上で寝ていた。あの圧倒的な弾幕を見せつけられても屈することなく攻撃していたが、さらに密度を増した弾幕に耐えることが出来ず、あえなく轟沈したのだった。

 

「ハジメ……酷い」

 

「あはは……ごめんなさい」

 

模擬戦とはいえ、女の子に向かって放つ量の弾幕では無い。ユエが圧倒的な強者であろうと無かろうと、あんな弾幕を放つバカはそうは居ない。

 

ユエはハジメにぷりぷりと怒りながらも、ハジメの膝を堪能したのだった。

 

「……香織さんにも1回だけやったことあったな……やられたことは何回もあったけど……」

 

「ッ!」

 

ユエは少し香織に嫉妬した。

 

 




シンクネットは兵力が必要な時に登場します。次の話も奈落の日常生活ですかね。

これからもよろしくお願いします。


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ユエの料理

ある日、ハジメが魔物肉を食べているのを見てユエの頭に電流が流れる。ユエは思った。

 

「ハジメに魔物肉以外のものを食べさせたい」

 

と。そう思ったユエは一目散に100階層から上の階層、この大迷宮で唯一美味しいものが取れる所へと駆けて行った。

 

ユエが向かったのはトレントモドキの階層。そこにはめちゃくちゃ美味しいとハジメから言われた赤い果実が実るトレントが沢山いた。

 

ユエはハジメからくすね…借りてきたシンクネットを使用して仮面ライダーアバドンを大量に作り出し、トレントを倒させて収穫を開始した。

 

ただ、アバドンは収穫なんて関係ないとばかりにトレントを倒しながら転がっている赤い果実を踏んでしまっていた。

 

「……『蒼天』」

 

その様子を見てユエはアバドンを燃やし尽くしてシンクネットを解除、回収した。地面に転がっていた赤い果実も燃えてしまった。

 

ユエはトレントを丁寧に魔法で倒し、きれいな状態で残っている赤い果実を回収していく。ユエが選別する赤い果実はどれも光り輝いており、とても美味しそうに見えた。

 

「ん、これであとは拠点にあるものを使えば…!」

 

ユエは現れる魔物を思考停止のギアスを、魔法を使ってなぎ倒しながら拠点へと急いで戻る。出口は知っているのでそこまでの時間はかからなかった。

 

拠点に戻ったユエは昔食べたものを思い出す。思い出すべきなのはスイーツだ。王族としてユエは美味しいものを血以外のものも食べていたのだ。

 

そしてユエはひとつのスイーツを頭の中に思い浮かべた。それは地球から来た転移者が見ればアップルパイと答えるであろうものだ。

 

「小麦粉…砂糖…これだ!」

 

ユエはキッチンの中にある小麦粉、砂糖を取り出した。さらにユエはキッチンの近くにあった冷蔵庫の中からバター、卵を見つける。

 

「調理開始…!」

 

ユエはタルト生地用と、クリーム用の2つのオスカーが作ったであろう金属製のボウルを用意。それぞれのボウルに、柔らかくしたバターと砂糖を目分量で入れる。

 

「入れすぎた…?まぁいいか」

 

次にユエはバターと砂糖を風魔法でしっかりまぜ、卵を加えてさらに勢いよく風魔法の出力を上げて混ぜる。多少の液が飛び散ったがユエは気にしない。

 

ユエはその後、小麦粉を計らないでドバーッとボウルの中に入れ、風魔法でさらに勢いよくしっかりと混ざり会うようにする。

 

「ん、いい調子♪」

 

生地を平たくしてそれをキッチンにあったまな板に載せ、冷やそうと氷魔法を使う。

 

「『凍柩』!!」

 

明らかにさっきから魔法の威力がおかしいが気にせずユエは魔法を使う。数時間経って、十分冷えたと確信したユエは凍柩から生地を取り出そうとする。

 

「…やりすぎた。『緋槍』」

 

炎の槍を使って氷を溶かして生地を取り出すユエ。生地が凍っていたので炎の槍で少し溶かす。

 

少し焦げた生地を型にはめて敷き詰める。タルト生地に赤い果実を敷き詰めてユエはそれを手に載っける。

 

「火力を抑えて…『蒼天』!」

 

ゴォーッと炎がユエの手のひらにあるタルトを包み焼いていく。少し焦げ臭い匂いがした頃にやっとユエは蒼天を解除して型を外してタルトを取り出す。

 

そしてタルトの上に砂糖をふりかけて完成させた。なんか焦げくさい上に黒っぽい果実が載っているが赤い果実のタルトの完成である。

 

なんか工程を何個かすっぽかして、料理に最上級魔法を組み込んでいたが、タルトである。ユエは初めて料理したには上出来だと自画自賛し、それを冷蔵庫の中に入れておく。

 

スイーツ以外にも何かを作ろうとユエは冷蔵庫から赤い果実を取りに行く道中、取ってきたサイクロプスの肉と畑で取れた野菜を持ってくる。

 

それらにキッチンから発掘した塩コショウをかけ、火力を調整した蒼天でまた焼く。また焦げくさい匂いが出てきたら蒼天を解除して皿にキレイに並べる。

 

「数が足りない…」

 

ユエが調理する前に切っておいた野菜の数と、焼き終えた野菜の数が合わないのだ。

 

それに焼いた肉も黒焦げであり、残った野菜も本来の色のところが少ないくらいだ。

 

「…まぁ大丈夫。よく焼いたから身体にも良い」

 

確かによく焼けば衛生的には大丈夫だろう。焼きすぎは良くないが。それらを皿に載せてダイニングへと運び、ハジメを呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメはうきうきとしていた。香織以外から女子に料理を振る舞われるという経験がないため、とても楽しみにしていたのだ。

 

原作の描写的にユエは作らないかな?と思っていた矢先の事だったため尚更嬉しい。ハジメは心の中で小躍りしながらダイニングへ向かうと…

 

そこには黒焦げの野菜と肉が待っていた。

 

上がりまくっていたテンションは一気に下がった。なんか既視感あるなと。昔、転生する前の頃、2人目の恋人が作ってくれた料理に似たようなものがあった。

 

「えっと…ユエさん、これは?」

 

思わずユエにさんをつけてしまったハジメ。

 

「え?サイクロプスのステーキと焼き野菜」

 

「…へ?」

 

サイクロプスというのは見たことある。というか焼いて食べたが、こんな色はしてなかった。それに焼き野菜にしてもこんな黒くなるはずがない。しかも周りに何かのカスがある。

 

「(サーチャー)」

 

ハジメはサーチャーを起動してユエに見つからないようにキッチンを見る。するとそこには飛び散りまくったなにか黄色い液体に氷の欠片、そして天井が焼け焦げていた。

 

「(最上級魔法を使ったのか…!?)」

 

ハジメは驚愕した。あのユエが戦闘でつかう魔法はどう考えても料理で使う魔法ではない。そんなことを考えているとユエに無理やりテーブルに座らされ、肉を魔法で切り分けてフォークでハジメの口元に持っていく。

 

いわゆる、はいアーンってやつである。

 

「(見た目はあれでも美味しいはずです…!)」

 

脳裏に蘇るのは今世の父の言葉。

 

「女の子がアーンしてきたらどんなものでも食べなきゃダメなんだ」

 

恋愛アニメを見ながら幼きハジメに言う愁の姿が思い出される。確かにそうだとその頃は首を縦に振った。

 

怪訝そうにするユエを見ながら覚悟を決めたハジメはユエのアーンを受け入れ、黒焦げているステーキと焼き野菜を全て食べた。

 

その結果、ハジメはダイニングテーブルの上で顔を青くしながら気絶しそうになっていた。

 

ユエはハジメに食べさせ終えると新たな料理を持ってきた。

 

「…タルトか、助かった……」

 

よくタルトが見えなかったが形状からしてタルトと判断したハジメはユエが切り分けたタルトを食べると、さらに顔を青くした。

 

「(また、焦げている…!)」

 

甘いような苦いようなそんな訳の分からない味に混乱し、食べ終わった頃にはもうハジメは本当に気絶しそうになっていた。

 

「美味しかった?」

 

ハジメは一目散に酷評しようとしたが、ユエの不安そうにしている顔を見てその言葉を急いで飲み込む。

 

赤い果実はこの拠点には無かったはずだ。それを使えたということは持ってきてくれたということ。途中危険な階層もあっただろうに、1人でだ。

 

そんなことを考えれば、酷評してしまっては可愛そうである。

 

「えぇ、美味しかったですよ」

 

ハジメは青ざめた顔を元の普通の顔を戻してユエを抱きしめて頭を撫でる。それに嬉しそうにするユエ。

 

これでこの件は終わったとハジメは思っていた。だがそれは間違いだった。

 

ユエはこの件で味を占め、さらに料理を作ればハジメがもっと褒めてくれると思ったのだ。

 

最上級魔法調理は変わらず、毎度の如く黒焦げていた。ハジメはやはり優しめにでも注意するべきだったと思いながらユエの料理を食べてユエを褒めるのだった。




ユエ、ご多分に漏れない料理できないキャラ。シアが作ってた理由が分かります。五天龍をチョコにするあたりそれが伺えると思います(バレンタイン記念の2作目参照)



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装備と旅立ち

期末が終わったので投稿します。ストックが完全に両方とも無くなりました。


オスカー・オルクスのホログラムを見て、神代魔法である生成魔法を手に入れた場所にて、ハジメとユエはお互いの装備を確認しながら出発しようとしていた。

 

ハジメのステータスは今、このようなものになっている。

 

───────────────────────

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

 

天職:錬成師

 

筋力:21000

 

体力:21000

 

耐性:21000

 

敏捷:21000

 

魔力:45000

 

魔耐:21000

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+遠隔錬成][+整地]・全属性適性[+全属性効果上昇]・全属性耐性・物理耐性・複合魔法[+ネギま!]・危機察知・高速魔力回復・魔力供給・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・錬金術・言語理解

 

───────────────────────

レベルは100を成長限度とするその人物の現在の成長度合いを示す。しかし、魔物の肉を喰いすぎて体が変質し過ぎたのか、ある時期からステータスは上がれどレベルは変動しなくなり、遂には非表示になってしまった。

 

魔物の肉を喰ったハジメの成長は、初期値と成長率から考えれば明らかに異常な上がり方だった。ステータスが上がると同時に肉体の変質に伴って成長限界も上昇していったと推測するなら遂にステータスプレートを以てしてもハジメの限界というものが計測できなくなったのかもしれない。

 

そして今のハジメは原作の奈落脱出頃のハジメを圧倒するほどの強さを誇る。魔王としてトータスに名を轟かせ、神を討ち滅ぼした時のハジメよりも圧倒的にステータスだけなら超えている可能性もある。

 

ハジメのシンクネット、Alchemy Organ以外の新装備を少し紹介しよう。シンクネットとAlchemy Organを作った頃より少し時が進んでいるために新装備が何個かできているのだ。

 

1つ目は装備と言えるか怪しいが、ハジメのバリアジャケットの新造だ。ユエのバリアジャケットは原作と同じようになっている。だがハジメのは『魔法少女リリカルなのはStrikerS』のエリオ・モンディアルと同じものになっているために作り替えたのだ。

 

その時のハジメの様子がこれだ。

 

「ああでもないこうでもない…!原作の私だとどう見ても厨二病感が出てしまいますから変えたいんですが…!どれ選んでも黒い!イタい!どうすればいいんだ〜!?」

 

「(珍しく叫んでる…レアハジメ…!)」

 

結局ユエに選んでもらい、原作のハジメと同じ姿になった。ちなみに私服も同じ。

 

「ユエが着てくれって頼んだんです…!だから私は断じて厨二病なんかじゃない…!」

 

2つ目はハジメお手製調理器具。最上級魔法を惜しげも無く使って料理するユエのために作った、アザンチウムとヒヒイロカネの混合素材製の調理器具。どんな使い方をしても朽ちない、溶けない、壊れない。ハジメのダークスターブレイカーにも耐える硬さを誇る。

 

「ヒヒイロカネを特典から引っ張り出した甲斐がありました…!これで壊れることなんてないでしょう!」

 

『創作された物語にある特殊な物質を作り出せる』という特典が久しぶりに役立った瞬間である。

 

この後ハジメからもらった調理器具を見て感極まったユエが作ったフルコース料理で地獄を見ることになったのは言うまでもない。

 

ユエの今のマイブームは料理の見た目を鮮やかにすること。そのためには多少食べれないものを使うのも厭わない。

 

「どう頑張っても昔見た料理の色にならない…!」

 

最近はコードと胃酸強化がユエの料理を受け付けなくなったらしい。

 

3つ目は魔晶石で作られた指輪(魔力収束+魔力高速回復+魔力供給付与+アザンチウム+ヒヒイロカネコーティング)だ。絶対に壊れず、永遠に魔力を供給するための指輪であり、指輪をつけながら限界突破を使用し、戦いの歌を掛けながら全力全開で金剛使用した敵を殴ってもヒビ一つ入らない代物。

 

これを作るのに三日三晩ずっと錬成と生成魔法を使用し続けていた。

 

「精密作業がッ!…あッ、バランス崩したァ!?」

 

装飾にもこだわりすぎて、少しズレただけでも作り直していたため、同じ能力を持つ魔晶石の指輪が大量にハジメの宝物庫に入っている。

 

ユエはそんなハジメの様子を知っているためにその指輪を大事にしている。

 

香織の分を作っていた時は少女とは思えない顔をしながら圧倒的なこれまた少女と思えない筋力で危うく壁を壊しそうになっていたが…。

 

4つ目は乗り物。原作ハジメはバイクと車を持っていたが、この世界のハジメもバイクと車を作った。

 

バイクはダークカブト仕様の『カブトエクステンダー』と『マシンビルダー』、車は『アナザートライドロン』。ハジメは楽しそうに作業していた。(ユエ談)

 

5番目は『対ユエ用超高性能胃薬』。ハジメが一番真剣に作業していた。その能力は、神水とエリクサーをふんだんに使った胃薬という名の氷である。

 

口に含んで砕けばどんな病気すらも一網打尽…と銘打っているのだが、最近のユエの料理には勝てないらしい。

 

「…ユエの料理ってどう対策すればいいんでしょう?」

 

犠牲者がこれからも増えることを考えれば対策を考えた方がいいのだが…ハジメの頭脳をもってしても考えつかない。なんということだろうか!

 

ハジメは今日もユエの料理を食べる。早くカモン!料理できるヒロイン達よ!

 

 

 

 

 

 

 

遂にハジメとユエは地上へ出る。

 

三階の魔法陣を起動させながら、ハジメはユエに静かな声で告げる。

 

「ユエ…私たちの力は地上では異端です。聖教教会や各国が黙っているということはないでしょう」

 

「ん……」

 

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きいです(そんなことしたら即ダークスターブレイカーですが)」

 

「ん……」

 

「教会や国だけならまだしも、後ろ盾の神を自称するおバカさんとも敵対するかもしれません」

 

「ん……」

 

「世界を敵にまわす可能性が大きいです。命がいくつあっても足りないかもです(私たち不老不死ですけど)」

 

「今更……」

 

ユエの言葉に思わず苦笑いするハジメ。真っ直ぐ自分を見つめてくるユエのふわふわな髪を優しく撫でる。気持ちよさそうに目を細めるユエに、ハジメは一呼吸を置くと、キラキラと輝く紅眼を見つめ返し、望みと覚悟を言葉にして魂に刻み込む。

 

「私とユエ、お互いを守る、神代魔法を全て手に入れて世界を越えましょう」

 

ハジメの言葉を、ユエはまるで抱きしめるように、両手を胸の前でギュッと握り締めた。そして、無表情を崩し花が咲くような笑みを浮かべた。

 

「んっ!」




アナザートライドロンってトライドロンにブースターくっつけたみたいな見た目でめちゃくちゃかっこいいんですよね。

ステータスは全体的に高めです。

これからもよろしくお願いします。


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王城への帰還

時間は少し戻り、ハジメがヒュドラとの死闘を制し倒れた頃、勇者一行は、一時迷宮攻略を中断しハイリヒ王国に戻っていた。

 

道順のわかっている今までの階層と異なり、完全な探索攻略であることから、その攻略速度は一気に落ちたこと、また、魔物の強さも一筋縄では行かなくなって来た為、メンバーの疲労が激しいことから一度中断して休養を取るべきという結論に至ったのだ。

 

もっとも、休養だけなら宿場町ホルアドでもよかった。王宮まで戻る必要があったのは、迎えが来たからである。何でも、ヘルシャー帝国から勇者一行に会いに使者が来るのだという。

 

元々、エヒト神による『神託』がなされてから光輝達が召喚されるまでほとんど間がなかった。そのため、同盟国である帝国に知らせが行く前に勇者召喚が行われてしまい、召喚直後の顔合わせができなかったのだ。

 

もっとも、仮に勇者召喚の知らせがあっても帝国は動かなかったと考えられる。なぜなら、帝国は三百年前にとある名を馳せた傭兵が建国した国であり、冒険者や傭兵の聖地とも言うべき完全実力主義の国だからである。

 

突然現れ、人間族を率いる勇者と言われても納得はできないだろう。聖教教会は帝国にもあり、帝国民も例外なく信徒であるが、王国民に比べれば信仰度は低い。大多数の民が傭兵か傭兵業からの成り上がり者で占められていることから信仰よりも実益を取りたがる者が多いのだ。もっとも、あくまでどちらかといえばという話であり、熱心な信者であることに変わりはないのだが。

 

そんな訳で、召喚されたばかりの頃の光輝達と顔合わせをしても軽んじられる可能性があった。もちろん、教会を前に、神の使徒に対してあからさまな態度は取らないだろうが。王国が顔合わせを引き伸ばすのを幸いに、帝国側、特に皇帝陛下は興味を持っていなかったので、今まで関わることがなかったのである。

 

しかし、今回の『オルクス大迷宮』攻略で、歴史上の最高記録である六十五層が突破されたという事実をもって帝国側も光輝達に興味を持つに至った。帝国側から是非会ってみたいという知らせが来たのだ。王国側も、王国に本部を置く聖教教会も、いい時期だと了承したのである。

 

そして帝国が動いたのはもうひとつ理由があるのだが、それを王国の面々が知る由はない。

 

そんな話を帰りの馬車の中でツラツラと教えられながら、光輝達は王宮に到着した。

 

馬車が王宮に入り、全員が降車すると王宮の方から一人の少年が駆けて来るのが見えた。十歳位の金髪碧眼の美少年である。光輝と似た雰囲気を持つが、ずっとやんちゃそうだ。その正体はハイリヒ王国王子ランデル・S・B・ハイリヒである。

 

ランデル殿下は、思わず犬耳とブンブンと振られた尻尾を幻視してしまいそうな雰囲気で駆け寄ってくると大声で叫んだ。

 

「香織! よく帰った! 待ちわびたぞ!」

 

もちろんこの場には、香織だけでなく他にも帰還を果たした生徒達が勢ぞろいしている。その中で、香織以外見えないという様子のランデル殿下の態度を見ればどういう感情を持っているかは容易に想像つくだろう。

 

実は、召喚された翌日から、ランデル殿下は香織に猛アプローチを掛けていた。と言っても、彼は十歳。香織から見れば小さい子に懐かれている程度の認識であり、その思いが実る気配は微塵もない。ハジメがいるのに他を選ぶなんてありえないと考えてもいる。

 

「ランデル殿下。お久しぶりです」

 

パタパタ振られる尻尾を幻視しながら微笑む香織。そんな香織の笑みに一瞬で顔を真っ赤にするランデル殿下は、それでも精一杯男らしい表情を作って香織にアプローチをかける。

 

「ああ、本当に久しぶりだな。お前が迷宮に行ってる間は生きた心地がしなかったぞ。怪我はしてないか? 余がもっと強ければお前にこんなことさせないのに……」

 

ランデル殿下は悔しそうに唇を噛む。香織としてはハジメを助けたいのだから守られるだけなんて耐えられないのだが…。

 

「お気づかい下さりありがとうございます。ですが、私なら大丈夫ですよ? 自分で望んでやっていることですから」

 

「いや、香織に戦いは似合わない。そ、その、ほら、もっとこう安全な仕事もあるだろう?」

 

「安全な仕事ですか?」

 

ランデル殿下の言葉に首を傾げる香織。ランデル殿下の顔は更に赤みを増す。となりで面白そうに成り行きを見ている雫は察しがついて、少年の健気なアプローチに思わず苦笑いする。

 

「う、うむ。例えば、侍女とかどうだ? その、今なら余の専属にしてやってもいいぞ」

 

「侍女ですか? いえ、すみません。私は治癒師ですから……」

 

「な、なら医療院に入ればいい。迷宮なんて危険な場所や前線なんて行く必要ないだ「いい加減にしなさい、ランデル」あ、姉上!?」

 

ランデル殿下のアプローチで少し困り気だった香織を助けるように王女リリアーナが首の根っこを掴んで香織から引き離す。

 

「みなさんお疲れなのですからこんなところに引き止めないでください…少しは他の方にも気を配りなさい!それに貴方はまだ勉強が残っているでしょう!先生が怒ってらっしゃっていましたよ……」

 

「ひ、はい!今すぐ戻ります!」

 

姉への恐怖心からか、または先生への恐怖心からか香織に手を振ってから急いで駆けていくランデル。

 

「香織、弟が失礼しました。代わってお詫び致しますわ」

 

リリアーナはそう言って頭を下げた。美しいストレートの金髪がさらりと流れる。

 

「ううん、気にしてないよ、リリィ。ランデル殿下は気を使ってくれただけだよ」

 

香織の言葉に苦笑いするリリアーナ。姉として弟の恋心を知っているが、それが叶わないことがよくわかっている。

 

リリアーナ姫は、現在十四歳の才媛だ。その容姿も非常に優れていて、国民にも大変人気のある金髪碧眼の美少女である。性格は真面目で温和、しかし、硬すぎるということもない。TPOをわきまえつつも使用人達とも気さくに接する人当たりの良さを持っている。

 

光輝達召喚された者にも、王女としての立場だけでなく一個人としても心を砕いてくれている。彼等を関係ない自分達の世界の問題に巻き込んでしまったと罪悪感もあるようだ。 

 

そんな訳で、率先して生徒達と関わるリリアーナと彼等が親しくなるのに時間はかからなかった。特に同年代の香織や雫達との関係は非常に良好で、今では愛称と呼び捨て、タメ口で言葉を交わす仲である。

 

「改めて、お帰りなさいませ、皆様。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」

 

リリアーナはそう言うと、ふわりと微笑んだ。香織や雫といった美少女が身近にいるクラスメイト達だが、その笑顔を見てこぞって頬を染めた。リリアーナの美しさには二人にない洗練された王族としての気品や優雅さというものがあり、多少の美少女耐性で太刀打ちできるものではなかった。

 

現に、永山組や小悪党組の男子は顔を真っ赤にしてボーと心を奪われているし、女子メンバーですら頬をうっすら染めている。お姫様オーラに負けないで昔からの親友のように接することができる香織達の方がおかしいのだ。

 

「ありがとう、リリィ。君の笑顔で疲れも吹っ飛んだよ。俺も、また君に会えて嬉しいよ」

 

さらりとキザなセリフを爽やかな笑顔で言ってしまう光輝。繰り返し言うが、光輝に下心は一切ない。生きて戻り再び友人に会えて嬉しい、本当にそれだけなのだ。単に自分の容姿や言動の及ぼす効果に病的なレベルで鈍感なだけで。

 

「えっ、そ、そうですか? え、えっと」

 

王女である以上、国の貴族や各都市、帝国の使者等からお世辞混じりの褒め言葉をもらうのは慣れている。なので、彼の笑顔の仮面の下に隠れた下心を見抜く目も自然と鍛えられている。それ故、光輝が一切下心なく素で言っているのがわかってしまう。そういう経験は家族以外ではほとんどないので、つい頬が赤くなってしまうリリアーナ。どう返すべきかオロオロとしてしまう。こういうギャップも人気の一つだったりする。

 

光輝は相変わらず、ニコニコと笑っており自分の言動が及ぼした影響に気がついていない。それに、深々と溜息を吐くのはやはり雫だった。苦労性が板についてきている。本人は断固として認めないだろうが。

 

「えっと、とにかくお疲れ様でした。お食事の準備も、清めの準備もできておりますから、ゆっくりお寛ぎくださいませ。帝国からの使者様が来られるには未だ数日は掛かりますから、お気になさらず」

 

どうにか乱れた精神を立て直したリリアーナは、光輝達を促した。

 

光輝達が迷宮での疲れを癒しつつ、居残り組にベヒモスの討伐を伝え歓声が上がったり、これにより戦線復帰するメンバーが増えたり、愛子先生が一部で『豊穣の女神』と呼ばれ始めていることが話題になり彼女を身悶えさせたりと色々あったが光輝達はゆっくり迷宮攻略で疲弊した体を癒した。

 

香織はハジメのことを考えてソワソワしていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ、初めての馬車は」

 

「新鮮な感じです、僕のいたところではこれは昔のものでしたから」

 

「ふん、お前の言っていたクルマとやらもいつか乗ってみたいものよ」

 

「錬成師に言えば再現…難しそうです」

 

「まぁいい、王城に着いたらやってもらうことがあるからな、帝国の勇者よ」

 




帝国の勇者はオリキャラです!職業名は勇者に変わりありません!


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帝国の聖なる勇者

次の話を何にしようか悩んでます…アインとクロトの回にしようかもうそのままライセンに入るか…でもライセンに入っちゃうとシアが来るからR18が2話溜まることになるんですよね…。


それから三日、遂に帝国の使者が訪れた。

 

帝国の使者が来た時、エリヒド陛下とイシュタルが驚いていた。なぜ驚いたのか、それは帝国の皇帝がわざわざ王国まで来ていたからである。

 

帝国の皇帝の名はガハルド・D・ヘルシャー。帝国最強を誇る皇帝だ。

 

現在、光輝達、迷宮攻略に赴いたメンバーと王国の重鎮達、そしてイシュタル率いる司祭数人が謁見の間に勢ぞろいし、レッドカーペットの中央にガハルド皇帝陛下とその護衛が五人ほど立ったままエリヒド陛下と向かい合っていた。

 

「まさかガハルド殿直々に参られるとは思わなんだ。では勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」

 

「あぁ、その前に俺の方からも帝国の勇者を紹介させて頂こう」

 

「「は?」」

 

エリヒド陛下とイシュタルの声が重なる。ガハルド皇帝陛下の言ったことを理解できなかったようだ。その反応を笑いながらガハルド皇帝陛下は1人の男を前に出す。

 

その男は光輝のようなイケメンでありながらキラキラオーラは抑え目であり、ボサボサとした黒髪の容姿をしていた。

 

「神谷 遥人、と申します。この世界、そしてヘルシャー帝国に召喚された帝国の勇者…です。よろしくお願いします」

 

神谷遥人と名乗ったその男は光輝や王国の使徒と比べると鎧や武装が心もとないようにも見える。

 

「コイツはエヒト様が我々に与えてくださった2人目の勇者だ、もう魔人族との戦争に出て武功を上げている。そちらは何をなさったのだったかな?」

 

「うむ、では説明の前にまずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」

 

「は、はい」

 

予想だにしない新たな勇者の登場に少し戸惑いながらも光輝はエリヒド陛下に促されるまま前に進み出る。

 

そして、光輝を筆頭に、次々と迷宮攻略のメンバーが紹介された。

 

「へぇ、お前が王国の勇者か。本当にベヒモスを討伐したのか?話を聞く限り、王国に召喚された錬成師がベヒモスを撃退して勇者達は逃げ帰ったと聞いているんだが…」

 

ガハルド皇帝陛下が疑いの視線と声を光輝に向ける。その視線と声に居心地悪そうに身じろぎしながら、光輝が答える。

 

「えっと、ではお話しましょうか? どのように倒したかとか、あっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょう?」

 

光輝は信じてもらおうと色々提案するがガハルド皇帝陛下はあっさり首を振りニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「いんや、話は結構。実力はこの場で示してもらおう。言葉ではなく、実戦でな…遥人!」

 

「あぁ、わかりました皇帝陛下」

 

前から示し合わせていたかのようにガハルド皇帝陛下の前に立つ遥人、光輝は若干戸惑ったようにエリヒド陛下を振り返る。エリヒド陛下は光輝の視線を受けてイシュタルに確認を取る。イシュタルは頷いた。神威をもって帝国に光輝を人間族のリーダーとして認めさせることは簡単だが、完全実力主義の帝国を早々に本心から認めさせるには、実際戦ってもらうのが手っ取り早いと判断したのだ。

 

「構わんよ。光輝殿、その実力、存分に示されよ」

 

「決まりですな、では場所の用意をお願いします」

 

こうして急遽、王国の勇者対帝国の勇者という模擬戦の開催が決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光輝の目の前には何も武器らしい物を持っていない遥人が居り、対する光輝はいつもの聖剣と鎧を身にまとっている。

 

「えっと…神谷さん、武器はどうしたんです」

 

「あぁ、遥人でいいよ、僕と君同年代だし、僕も光輝って呼ぶからさ。後武器は今から出すよ」

 

「え、あぁわかった遥人」

 

怪訝な表情の光輝を尻目に遥人は何かを念じ始めた。すると遥人の手が光りだしてその手にサークル型のシルバー、レッド、ブルー、ブラックの色で色付けられたアイテム、『オーブリング』が現れる。

 

「さて行くか」

 

「え?」

 

戸惑う光輝を無視してオーブリングを起動する遥人。今まで来ていた服がなくなり、黒いスーツに換装する。そして赤と銀色の戦士『ウルトラマン』とそれに黄色と紫を足し、姿が少し違う戦士『ウルトラマンティガ』が描かれた『フュージョンカード』をリードさせる。

 

「ウルトラマン!」《ウルトラマン!》

 

『ヘアッ!!』

 

ウルトラマンの幻像が遥人の右横に現れる。地球から転移した者たちはそのウルトラマンが何であるか知っているために驚きを隠せないでいる。

 

「ティガ!」《ウルトラマンティガ!》

 

『デアッ!!』

 

次はウルトラマンティガが遥人の左横に現れる。地球から転移した者たちは何がどうなっているのか分からずに混乱し始める。

 

なにかのウルトラマンに変身するのか、だが見たことがないと地球組の頭はごちゃごちゃになっていた。

 

「光の力、お借りしますッ!」

 

《フュージョンアップ!》

 

オーブリングを片手で掲げ、2人のウルトラマンも同じ手を天に掲げる。そしてオーブリングのトリガーを引くと2人のウルトラマンが遥人の身体に同時に融合…否、『フュージョンアップ』した。

 

ウルトラマンオーブ!スペシウムゼペリオン!

 

そこには2人のウルトラマンの意匠が込められた赤、黒、紫の色をメインカラーとするウルトラマン、『ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン』がそこにいた。

 

ただウルトラマンの特徴である巨大化はしておらず、依然として人間サイズだが。

 

「…皇帝陛下がお望みだからね、やろうか、光輝」

 

「あ、あぁ、わかった。行くぞ!」

 

光輝が真正面から斬りかかってくるのを遥人は手で軽く捌く。そして光輝の腹に一発ジャブを入れる。

 

「遅いよ、それじゃあ魔人族は倒せない!」

 

ただのジャブで痛がる光輝はその言葉に反論することが出来ない。遥人は手のひらから紫色のエネルギーで構成された手裏剣状のカッター光線、『スペリオンスラッシュ』を光輝に放つ。

 

「我が身を守りたまえ、『光絶』!」

 

その攻撃は咄嗟に繰り出した光の障壁魔法によって阻まれる。遥人は意外そうな表情をマスクの下で浮かべながら右手を上に掲げ、左手を横に広げてエネルギーをチャージする。

 

そしてそこからギザギザの刃が丸くなってできた『スペリオン光輪』を作り出して光輝に向かって投擲する。

 

「あァァァ!」

 

スペリオン光輪を破壊しようと光輝は聖剣でその攻撃を防ぐ。だがその攻撃は破壊されず、ジリジリと光輝を押していく。

 

遥人のスペリオン光輪をやっとのことで破壊した頃には、光輝は先程スペリオン光輪を受けたところからだいぶ離れたところまで押されていた。

 

「…期待外れだな、やはり錬成師に任せて逃げ帰ったってのは本当そうだな」

 

ガハルド皇帝陛下は光輝のその体たらくを見てそう判断した。イシュタルやエリヒド陛下、雫達が何かを言いたそうにしていたが、何を言っても意味は無いと苦虫を噛み潰したような顔になっていた。

 

「…ならこれでお前を倒す!喰らえ遥人!万翔羽ばたき、天へと至れ――『天翔閃』!」

 

「素直に食らうわけないよ、ほいっと」

 

光の奔流が遥人を襲うがそれを軽々と避け、遥人は再度右手を上に掲げ、左手を横に広げてエネルギーをチャージする。

 

そしてゆっくりと両腕を十字に組んで紫色のエネルギーで構成された、必殺光線、『スペリオン光線』を放つ。

 

「君は正直すぎるよ、光輝…スペリオン光線ッ!!!」

 

紫色の天翔閃よりも大きな光の奔流が天翔閃を放った光輝に向かって放たれ、それは光輝に直撃するかのように思われた。

 

だがそれは突如として現れた光の壁に防がれることになる。

 

「神の加護よ、貴方の従者たる勇者を守りたまえ…『聖絶』!」

 

スペリオン光線を止めるために幾重にも重ねられたイシュタルが作り出した聖絶がそれを止めた。

 

「…フゥ……それくらいにしましょうか。これ以上は、模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。ガハルド殿もそれでよろしいですな?」

 

「ちっ、仕方ねぇな…遥人、戻れ」

 

「わかりました」

 

イシュタルの介入によってなし崩しで模擬戦も終わってしまい、その後に予定されていた晩餐で帝国からも遥人のスペリオン光輪を止めたことで勇者を『一応』認めるとの言質をとることができ、一応、今回の訪問の目的は達成されたようだ。

 

ちなみに晩餐会でガハルド皇帝陛下は雫を口説いていて、光輝がそれを止め、ガハルド皇帝陛下に軽くあしらわれるということがあったのだが、そのすぐ近くで遥人がとある人を口説いていた。

 

「あの、一緒に帝国に来て頂けませんか?私が生涯をかけてお守りしますから…!」

 

「え、ちょっとその…困ります…!」

 

恵里を口説く遥人がそこにいた。鈴がエリリンは渡さない的なことを言っていたがそれを無視して口説いていた。

 

終始恵里は顔を真っ赤にしていた。

 




神谷遥人の力はウルトラマンオーブ!とりあえず聖剣を自前で持っている戦士にしました!

それにチートと言える能力もあまり持っていませんから人型なら勇者パーティー全員と神谷遥人はバランスが取れていると思います。

ちなみにホーリーライブが出た時に執筆したので、最初はエビル/ライブにしようと思いましたが、ハジメが仮面ライダーとスーパー戦隊を使うのでウルトラマンにしました!


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短編 クロトとアインのハジメ救出

「つ、ついに…!」

 

「出来たんですか!?クロト!」

 

とあるゲームとスマホで有名な会社、ZAIA コーポレーションにて、クロトとアインは2人の間にある、紫色の巨大なガシャットを見て感極まっていた。

 

数ヶ月かけて『ゴッドマキシマムマイティX』を作っていたのだ。失敗したり、会社が危うく爆発しかけていたが、その感動はとても大きい。

 

「これでハジメを助けに行ける…!行くぞ、アイン!」

 

ゴッドマキシマムマイティX!!!

 

「グレード10億(Billion)…変身!」

 

クロトは仮面ライダーエクゼイドやゲンムが変身するために使う『ゲーマドライバー』にゴッドマキシマムマイティXを装填する。

 

マキシマムガシャットッ!!

 

ガッチャーン!!

 

不ー滅ー!!!

 

ゲーマドライバーのレバーを解放し、『GOD MAXIMUM MIGHTY X』と書かれ、ロボットに乗ったゲンムが描かれているゲームのスタート画面から黒き神の鎧、『ゴッドマキシマムマイティゲーマ』が現れる。

 

最上級の神の才能!!クロトダーン!

 

ゴッドマキシマム!!エックス!!!

 

ゴッドマキシマムマイティXガシャットの小さいゲンムを拳で押し込むことで、ゴッドマキシマムマイティゲーマがクロトを体内に搭乗させ、変身を完了させる。

 

その姿は正しく、黒の最高神と言っても過言ではない。

 

「ふむ、では行こうか」

 

「では私も……シエスタ、あとはお願いします」

 

「お任せを、行ってらっしゃいませ」

 

アインもセットアップを行ない、ホーリークロイツからバリアジャケットを纏う。

 

「では、転移の際の安全のため『ハイパームテキ』、転移するための『ワープクロニクル』……起動!!!」

 

金色のエグゼイドと『HYPER MUTEKI』と書かれたスタート画面から金の粒子がクロトとアインに降り注ぎ、ワープクロニクルの能力によって転移が開始される。

 

「待っていろよ、ハジメェェェェ!!!」

 

「うるさい!」

 

「痛っ!……あれ?ハイパームテキの効果はッ!!?」

 

効果はどうした…そう言おうとした矢先にクロトとアインはハジメ救出のために転移したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、間違えてしまった」

 

「え、ちょっとどういうことですか?」

 

クロトとアインが『ワープクロニクル』を使用した先は、空にいつも浮かんでおり、夜になると太陽の光を利用して光り輝く月だった。

 

「……転移するためのエネルギーが足りなかったらしい…!」

 

「そのエネルギーは作れないんですか?」

 

「……無から有を作ることは少し難しいな、チャージが必要だ……そしてもうひとつわかったのは、ゴッドマキシマムマイティXの展開するゲームエリアではハジメのいる座標まで届かない、ということだ」

 

「と言うと?」

 

「どれだけエネルギーを貯めてもハジメの座標まで行くことは叶わないらしいな……帰るか」

 

「…………そうですね。これからはゲームエリアを広くすることを考えましょう。それがハジメ救出のために必要なことです」

 

「……こりゃまた考え直しか…」

 

クロトとアインは月で少し遊んでから再びワープクロニクルで会社まで戻ったのでした。ちなみにシエスタは帰ってきた2人を見て少しの間フリーズしていた。




短編なので1000文字です。ゴッドマキシマムマイティXのゲームエリアは月まで届きますが、トータスまでは届かないことにしました。ちなみにちゃっかりハイパームテキを完成させています。

あと特典に追加で強化が入ったんですよね。ジョージ狩崎です。あの人、映画でとんでもないものを2つ作ってます。まだDVDになってないけど、もう上映終わったので書いておきます。

クローンライダーと仮面ライダーセンチュリーです。クローンライダーは全てのライダーの再現に成功しており、センチュリーは複数人の精神体をタイムトラベル可能にします。

……これってハジメ、全ライダーを作れるってことですよね。


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ライセン大峡谷

魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱よどんだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気にハジメの頬が緩む。

 

やがて光が収まり目を開けたハジメの視界に写ったものは洞窟だった。

 

「…あれ〜日の目がないんですけど…」

 

魔法陣の向こうは地上だと原作を忘れて信じていたハジメは、代わり映えしない光景に思わず半眼になってツッコミを入れてしまった。正直、めちゃくちゃガッカリだった。

 

そんなハジメの服の裾をクイクイと引っ張るユエ。どうしました? と顔を向けてくるハジメにユエは自分の推測を話す。慰めるように。

 

「……秘密の通路……隠すのが普通」

 

「あ、ああ、そうですね。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないですよね…はぁ…」

 

「よしよし」

 

項垂れるハジメにユエが頭を撫でてなぐさめる。自分の浅慮さに落ちこむハジメを可愛く思いながら。

 

「…改めて、行きますか」

 

「ん!」

 

気を取り直したハジメはユエを連れて洞窟の出口を目指す。途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。二人は、一応警戒していたのだが、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。ハジメはこの数ヶ月、ユエに至っては三百年間、求めてやまなかった光。

 

ハジメとユエは、それを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせた。それから互いにニッと笑みを浮かべ、同時に求めた光に向かって駆け出した。

 

近づくにつれ徐々に大きくなる光。外から風も吹き込んでくる。奈落のような澱んだ空気ではない。ずっと清涼で新鮮な風だ。

 

そして、ハジメとユエは同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。

 

地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の『グリューエン大砂漠』から東の『ハルツィナ樹海』まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。

 

『ライセン大峡谷』と。

 

どんなところだろうとハジメとユエにとっては久しぶりに見る地上だ。其れは感動的で──「ガァアアアア!!」

 

「………感動的な時に魔物ですか。とりあえず死んでください」

 

「無粋、さっさと消えるか死ぬか──選んで?」

 

そうは言っても知性はない魔物、ハジメとユエに向かって牙を向ける。それを見るとハジメは錬金術を使って魔物を吹き飛ばす。ヒュドラを吹き飛ばすほどの暴風で。

 

「…あ」

 

ハジメが生み出した風によって飛ばされた魔物はそのまま遥か彼方へと飛んでいってしまい、そのまま帰ってこなくなった。

 

「…やりすぎ」

 

「すいません」

 

2人とも魔法使いであり、攻撃するのに魔力を使って魔法を発動する。だがここライセン大峡谷では使う魔力が段違いに多い。

 

だがここで役に立つのが魔晶石の指輪だ。魔力を無尽蔵に生み出すために───

 

「『蒼天』!『緋槍』!もう1回『蒼天』!!」

 

いつもと同じように魔法を使うことが可能となっている。

 

ハジメは魔晶石の指輪をつけてはいるが、魔力を体内で消費することで錬金術を使うようにして魔力の消費を普段と変わらないようにしているためにほぼ変わらない。

 

だが数が多いため、ハジメは錬金術からネギまの魔法へと切り替えていく。

 

「───雷の斧(ディオス・テュコス)!!」

 

(13話)と比べれば見違えるほどの威力のある雷の斧が魔物達の身体を焼き切る。

 

「…弱いですね……!──白き雷(フラグティオー・アルビカンス)!!」

 

ハジメの両手から稲妻が放たれ、魔物の動きよりも早くその身を焼いていく。

 

氷神の戦鎚(マレウス・アクイローニス)!」

 

「『蒼天』」

 

氷の巨大なハンマーと燃えたぎる炎の一撃が目の前に残っている魔物全てを倒しきると、2人は口を揃えてこう言った。

 

「「……弱い(です)」」

 

何回言っているか分からないが、少なくとも5回は言っている。ハジメ達は地上の魔物の戦力を過大評価していたのだ。苦戦はしないだろうが、一階層のウサギレベルはあるのではないか、と。

 

だが実際は数十体でベヒモスに相当するという圧倒的な弱さ。いやハジメ達が強すぎて測り間違えたのかもしれないが。

 

魔物を倒し終えたハジメ達はこれからどうするか話し出す。

 

「この絶壁を登ってもいいんですが……どうします?樹海の方に行きますか?」

 

「……街に近い方がいい」

 

「そうですね、あ、それとこれ渡すの忘れてました」

 

「ん?」

 

ユエに渡すはハジメが持っているものと同じ十二センチ×七センチ位の銀色のプレート、ステータスプレートが手渡される。

 

「偽装が出来るステータスプレートです、ユエの身分証がないと後々怖いですからね」

 

「ん、ありがとう」

 

ユエがそれを受け取るとハジメは宝物庫からビルドフォンを取り出し、ライオンフルボトルを装填しビルドフォンをマシンビルダーに変形させそれに跨る。

 

「ユエも乗ってください。マシンビルダーでさっさと移動しますよ」

 

「ん」

 

ライオンフルボトルのエネルギーを使用して走るので魔力は関係ない。ライセン大峡谷で魔力を使って走るものを利用したら死ぬことになるかもしれないからだ。

 

ライセン大峡谷は基本的に東西に真っ直ぐ伸びた断崖だ。そのため脇道などはほとんどなく道なりに進めば迷うことなく樹海に到着する。

 

だがその道には大量の魔物が居り、ユエとハジメは口を忙しなく動かして魔法を発射して蹴散らしていかないといけないのだが。

 

マシンビルダーを走らせていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。中々の威圧である。少なくとも今まで相対した谷底の魔物とは一線を画すようだ。もう三十秒もしない内に会敵するだろう。

 

マシンビルダーを走らせ突き出した崖を回り込むと、その向こう側に大型の魔物が現れた。かつて見たティラノモドキに似ているが頭が二つある。双頭のティラノサウルスモドキだ。

 

だが、真に注目すべきは双頭ティラノではなく、その足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女だろう。

 

ハジメはマシンビルダーを止めて変なものを見る目でウサミミ少女を見る。

 

「なんですかあれ」

 

「……兎人族?」

 

「なんでこんなとこに? 兎人族って谷底が住処なんでしたっけ?」

 

「……聞いたことない」

 

「犯罪者として落とされたんですかね? 処刑の方法としてありましたし……」

 

「……悪ウサギ?」

 

ハジメとユエは首を傾げながら、逃げ惑うウサミミ少女を尻目に呑気にお喋りに興じる。

 

「可愛そうではありますから……助けますか」

 

「え?……別にいいけど面倒なことが起きるような気が……」

 

「───雷の斧(ディオス・テュコス)!」

 

雷の斧が双頭ティラノを両断し、爆発させる。これで手助けは終わりだと考えていたのだが、爆発した衝撃でウサミミ少女が吹き飛んでしまっていた。しかもハジメの方へと。

 

「きゃぁああああー! た、助けてくださ~い!」

 

風よ(ウェンテ)

 

風が優しくウサミミ少女を包み込み、ウサミミ少女をゆっくりと地面に落とす。

 

自分に起こったことがわからなかったのか混乱している様子だったが上手く持ち直したのか立ち上がり、サッとハジメの方に駆けてくる。攻撃しようと構えるが、ウサミミ少女はハジメの足にしがみついてお願いをしてきた。

 

「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

とても図々しいお願いを、図太いのか恥ずかしげもなくしてきたのだった。

 




魔法科の方を書いていて書けていませんでしたがとりあえず書けました!

シアの登場です!


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依頼の対価

……やっと書き終えました…シアとの出会いどう書きゃいいのよとなっていたのがようやく解決しました……


「私の家族も助けて下さい!」

 

峡谷にウサミミ少女改めシア・ハウリアの声が響く。どうやら、このウサギ一人ではないらしい。仲間も同じ様な窮地にあるようだ。よほど必死なのか、先程から相当強くユエに蹴りを食らっているのだが、頬に靴をめり込ませながらも離す気配がない。

 

ハジメは足を引っ張ってもなかなか取れないその吸着力に驚きながら風の錬金術でシアを離す。というか吹き飛ばす。

 

「…………」

 

シアは吹き飛ばされ地面に激突した痛みに悶えながらこちらを鼻水と涙を流しながらジリジリと四つん這いになりながら寄ってくる。ハジメはそれを見て罪悪感と怖さでいっぱいになる。

 

「に、にがじませんよ~」

 

ゾンビの如く起き上がりハジメの脚にしがみつくシア。そのガッツに心底驚きながら錬金術でまた吹き飛ばそうとするが……

 

今度は風を喰らわずに一旦離れてからすぐにまた走りよってハジメの足にしがみついてきたのだ。

 

「なんて知略を……!」

 

「……ハジメが困ってる、離れて」

 

苦戦するハジメに今まで静観していたユエが動く。静観していたというより見たことの無いほど厚かましい存在にびっくりしていただけなのだが。

 

ユエはシアの足を引っ張ってハジメから離そうとするが思ったよりシアの吸着力が強くて離せない。

 

「くっ、仕方ありません。話を聞きましょう」

 

これ以上やっても埒が明かないと判断したのかハジメは地面に目線をやり即席の石のテーブルと椅子を作り出す。

 

「……ハジメ?」

 

「話を聞くだけです」

 

だから別に大丈夫と、ハジメはユエに邪魔しないよう言う。

 

「改めまして、私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実は……」

 

語り始めたシアの話を要約するとこうだ。

 

シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。兎人族は、聴覚や隠密行動に優れているものの、他の亜人族に比べればスペックは低いらしく、突出したものがないので亜人族の中でも格下と見られる傾向が強いらしい。性格は総じて温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱う仲間同士の絆が深い種族だ。また、総じて容姿に優れており、エルフのような美しさとは異なった、可愛らしさがあるので、帝国などに捕まり奴隷にされたときは愛玩用として人気の商品となる。

 

そんな兎人族の一つ、ハウリア族に、ある日異常な女の子が生まれた。兎人族は基本的に濃紺の髪をしているのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。しかも、亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操るすべと、とある固有魔法まで使えたのだ。

 

当然、一族は大いに困惑した。兎人族として、いや、亜人族として有り得ない子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となるだろう。しかし、彼女が生まれたのは亜人族一、家族の情が深い種族である兎人族だ。百数十人全員を一つの家族と称する種族なのだ。ハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持たなかった。

 

しかし、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】に女の子の存在がばれれば間違いなく処刑される。魔物とはそれだけ忌み嫌われており、不倶戴天の敵なのである。国の規律にも魔物を見つけ次第、できる限り殲滅しなければならないと有り、過去にわざと魔物を逃がした人物が追放処分を受けたという記録もある。また、被差別種族ということもあり、魔法を振りかざして自分達亜人族を迫害する人間族や魔人族に対してもいい感情など持っていない。樹海に侵入した魔力を持つ他種族は、総じて即殺が暗黙の了解となっているほどだ。

 

故に、ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。その為、ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。

 

行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。

 

しかし、彼等の試みは、その帝国により潰えた。樹海を出て直ぐに運悪く帝国兵に見つかってしまったのだ。巡回中だったのか訓練だったのかは分からないが、一個中隊規模と出くわしたハウリア族は南に逃げるしかなかった。

 

女子供を逃がすため男達が追っ手の妨害を試みるが、元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。

 

全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。

 

しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。

 

そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い……

 

「……気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」

 

ハジメは少し悩む。助けるべきか助けないべきか。助けなければハウリア族は全滅、だがそれは助けなくていい存在だ。気にしなくてもいい。だが助けなければいけないだろうと考える。

 

手を伸ばさなければユエの時、助けなかった場合と同じく後悔することになるだろう。ハジメの判断は早かった。

 

「いいでしょう」

 

「ハジメ?」

 

「(いえ、無償でやるつもりは無いですよ?)」

 

「(……わかった)」

 

「助けることは約束しましょう、ですがそちらには対価を払っていただきます」

 

「え、身体ですか?」

 

「あ、それは要らないです、ユエ居ますし」

 

「ハジメ……!」

 

対価と聞いて身体が目的かと宣うシアを無視してユエの肩に手を回す。ユエはハジメのことをキラキラした目で見る。

 

「……わ、私じゃ不満なんですか!」

 

「言っているでしょう、ユエが居るからその対価は要りません、私が言っているのは違う「そっちの娘はぺったんこじゃないですか!」……あぁ……」

 

ハジメがシアの言葉を否定していると言ってはいけないことをシアが言ってしまった。

 

ユエが香織の話を聞く度に胸をぺたぺたと触っているのも、たまに風呂に入る時にもぺたぺたと触って苦悩しているのも知っている。成長期こないかなーとユエが言って、女性に対する禁句(年齢)を言って成長期なんか来るわけないと言った瞬間に緋槍が降ってきたこともあった。

 

ハジメ(バカ)は「久しぶりに死ぬかと思った」と供述していた。

 

それだけユエが気にしていることをシアはなんの躊躇いもなく言ってしまったのだ。

 

「(終わった……完全に終わった……)」

 

ギリギリとシアを、シアのたわわに育ったその胸を睨みつけるユエ。その目は親の仇を見るかのように鋭かったがシアは全く気づいてない。

 

だが奇妙なことにユエは魔法も、なんなら攻撃をしなかった。ただ歯ぎしりをしながらシアを睨むだけだ。

 

「た、対価は、ハルツィナ樹海の案内です。出来ますか?」

 

「で、できます!やらせてください!」

 

取引は成立したと、ハジメはシアにアナザートライドロンに乗るよう勧める。

 

そしてハジメは残っていたユエに言葉をかける。

 

「……どうして、手を出さなかったんです?」

 

「邪魔をするなって、言ってたから……」

 

「……!すいません」

 

「大丈夫」

 

謝るハジメにユエは朗らかな笑顔を向ける。

 

「……後で必ずやり返すから……!」

 

「(……怖い。めちゃくちゃ怖い)」

 

拳を握り、シアにやり返すことを宣言するユエにガクガク震えながらハジメはアナザートライドロンに初めて乗り、楽しそうにするシアに憐れみの感情を向けるのだった。

 




どうでもいいことなんですが、ハイスクールDxDの作品を書こうとして断念、また書こうとして断念、シンフォギアを書こうとして断念しました。というかそのせいで投稿の間が空いたんですけどね……


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