闇を駆けるヒーローアカデミア (シロロ少尉)
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プロフィール

主人公のプロフィールです。設定をミスったので少しいじってます。


名前:狩迅龍輝(かじりゅうき)

個性名:迅竜

出身校:辺須瓶中学校(耳郎と同じだが、面識は無い)

誕生日:12月2日

身長:177cm

体重:63kg

血液型:AB

好きなもの:戦闘 刀 ふかふかのマフラー 楽器

嫌いなもの:性格の悪い人

好きな食べ物:お寿司 紅茶

嫌いな食べ物:口の中が乾燥する食べ物(クッキーとか苦手)

CV通常:福山潤

迅竜状態:井上和彦

【性格】

冷静沈着で、常に周りをみており僅かな変化にもいち早く気づくことができる高い状況判断能力をもっている。また、非常に仲間想いで命の順序を、家族やクラスメイト←先生←自分と決めている。

一見無愛想に見えるが、場が和んでいたり、自分の望む事が起きたりしたらたまーに微笑む。ちなみに迅竜の血がそうさせているのか、かなりの戦闘狂である。基本的にサシを好む。

 

 

【見た目】

綺麗な黒髪をしており、少し長い。目はキリッとしており轟と爆豪を足して2で割った感じ。

普段からはあまり見えないが、それなりに体を鍛えており見事なシックスパック。

 

【個性】

個性名:迅竜、言わずと知れたモンハンのナルガクルガの個性。音速で移動することが可能で、尚且肘からカーズ様のごとく刃を出すこともできる。

体の一部分だけを変化させることができ(もちろん全身ナルガクルガ化もできる)そこの部位だけの運動能力を爆発的に上げることができる。ちなみに迅竜化させた部位は硬い皮膚と毛並みで覆われており、並の攻撃じゃ痛みすら感じない。

尻尾もはやせる。あの針みたいなのも飛ばせる。

 

↓技名

【鎌鼬】(かまいたち)

一番使いやすく、殺傷能力もそれなりに高いので愛用している。

腕の刃を高速に振ることによって斬撃を飛ばす。ワンピースで言う嵐脚の腕バージョンみたいな感じ。

 

【十字鎌鼬】(じゅうじかまいたち)

鎌鼬の改良版、腕を縦と横にクロスさせて放つ。威力は通常の鎌鼬の2倍以上。

 

【竜の鉤爪】(りゅうのかぎづめ)

指から迅竜の鉤爪を出し切り裂く単純にして、強力な技。鉄も紙みたいにスパスパ切れる。 

 

【嚇眼】(かくがん)

一時的に運動能力を爆発的に上げる事ができる。目が赤く染まり、運動能力だけではなく、視力、嗅覚、聴覚、味覚、触覚の五感を上げる事もできる。

ただし、この形態は体力をごっそりと持っていかれるため、最大40分、訓練しても90分が限界。戦闘力は10倍にまで跳ね上がる。

 

【竜の咆哮】(りゅうのほうこう)

声帯を迅竜化させ大声で叫ぶと言う単純な技だが、その声量はプレゼントマイクに匹敵し、敵の感覚を一時的に麻痺させ、行動不能にさせることができる。

 

【竜釘】(りゅうくぎ)

ナルガクルガを倒した人は知っているであろう、尻尾から釘みたいなのを飛ばす技。

 

【亜種羅】(あしゅら)

阿修羅ではなくて亜種羅ダヨ。これも強化技で毛並みが緑色と化し、身体能力を向上させることができる。これの持続時間は約2時間、嚇眼と合わせると50分しかなれない。       訓練しても1時間が限界。

戦闘力は15倍に跳ね上がる。

嚇眼と合わせると合計25倍。メッチャツオイ

 

【極み駆ける】

体中の体毛が白銀となり、圧倒的な威圧感とプレッシャーを放つ。1分しか持続できない代わりに戦闘力は7000倍、全盛期のオールマイトにも匹敵するか下手したらそれ以上。

わざの終わりには極(きょく)がつく。ただし、代償としてかなりの生命エネルギーを持っていかれるため、10秒ごとに症状が出る。本人はあまり好きじゃない模様。

 

10秒後:目眩、立ちくらみ、耳鳴り

 

20秒後:心拍数200以上、常に息切れ

 

30秒後:吐血、戦闘力が半減

 

40秒後:血涙、鼻血、鼓膜に深刻なダメージ

 

50秒後:体中の骨と筋繊維が悲鳴をあげ、壊れ始める。

 

60秒後:気絶、最悪死ぬ可能性あり

 

 

後付設定

【月迅竜】(げつじんりゅう)

月白色に輝き、見た目は完全に身勝○の極意(兆)

戦闘力は通常の約100倍むっちゃつおい。制限時間は20分!

現在のオールマイトの半分くらいの実力。一番安定感が良い。

 

 

【霧隠れ】(きりがくれ)

月迅竜の状態でしか発揮できない限定的な技。

透明になると言う葉隠涙目の技!しかも服も隠せる…

霧と書いてあるが、ぶっちゃけ必要無い!

 

 

【白疾風】(シロハヤテ)

体の至るところに白いの紋章のような物ができ、尻尾技がより強化された。

その戦闘力は200倍!インフレが激しい!持続時間は8分!

現在のオールマイト並!つおい!しかしこれも勿論代償はあり、使うことで好戦的な性格となり、周りの状況が判断しづらくなる。爆豪みたいな天才型には少し弱い。

 

 

【真空波】(しんくうは)

鎌鼬と十字鎌鼬の完全上位互換。ただし威力が強い分、体力を結構持っていかれる。

 

 

【スパイラルエッジ】

自身の感情が大きく動いたときにのみ発動できる現在の最大最強の技。目にも留まらぬ

スピードで、たった一秒で何百回と敵を切り刻む。また、攻撃を一回だけに絞り攻撃力と速度を底上げする事も可能。

 

 

【エアーグラウンド】

ワンピースのサンジが使うスカイウォークと同じ様な物。




正直タマミツネかバルファルクとかとめっちゃ悩みました。
ストーリーはとりあえず、文化祭編までは行きたいです。なるべく投稿スピードは早くします。
現在、設定を変えております。矛盾が発生したら申し訳ないです。


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プロローグ

早速投稿〜文章力が低いのは大目に見てください。^_^


世界総人口の約8割が"個性"と言う超常能力を持った超常社会、それがこの世界だ。

 

ーーそんな世の中で何も起きない訳もなく、混沌としたこの世界では、正義に憧れる者 悪に魅力を感じる者も勿論いる。それ故に生まれた存在が。

 

【ヒーロー】と【ヴィラン】である。

 

個性を私利私欲のためや犯罪に使う者。それを世間では主に"敵"と書いて【ヴィラン】と呼ぶようになった。

そしてそれを個性を使って取り締まる者。これを【ヒーロー】と呼び、讃えられた。

 

 

ーーだが、それ以外にも2つの者達がいた。

 

 

それは、【無個性】と【突然変異】である。

 

世界総人口の8割が個性持ちなら、あとの2割は感のいい人はすぐにわかるだろう。

そう、無個性は個性を持たない者のこと。

 

そして、もう一つ"突然変異"これは親の遺伝子とは関係なく、全く新しい個性で生まれてきた者のこと。

 

『た、助けてくれ!化け物だ!』『こっちにくんじゃねぇよクズが』

 

『お前はヒーローよりもヴィランのほうが向いているな』

 

 

そう、これは、ーー突然変異に苛まれた少年の黙示録であるーー

 

 

▼▼▼

 

ーー目覚まし時計の音とスマホのアラームでとある"少年"が目を覚ました。

今日は大切な日、遅刻するわけにはいかないと、いつもより早くに体を起こし、洗面所にいき顔を洗い、歯を磨き、身支度を済ませる。

簡単な朝食を取り、"制服"に着替える。

 

 

少年の家はとあるマンションの一室。なかなか広く、最新の家具などが置かれておりあまり不自由はない。

 

 

時間が余ったので、少し今日のニュースなどを見てから出ようと思い、テレビをつけた。

 

 

『今日の天気はー.........』

 

 

見慣れたニュース番組のアナウンサーが天気予報やヴィラン警報、ヒーロー活動のことなどについて代わり映えのないことを言っていく。

時間が7時を過ぎると、少年はテレビの電源を切った。

 

 

「....いってきます。母さん。」

 

 

彼の母はいない、父もいない。10年ほど前に他界したのだ。謎のヴィランの襲撃によって、普通の"日常"は奪われた。そのヴィランの正体や詳細は未だ未特定であり、調査も諦めざるを得なかった。父は昔、不慮の事故で亡くなっており、女手ひとつで育ててくれた。     醜い個性だと周りから咎められても、母だけは彼の味方だった。『大丈夫よ、龍輝は醜くなんかない。安心して、何があろうとお母さんは龍輝の味方だから。』これが、狩迅龍輝が聞いた母の最後の言葉だった。個性のせいで、実の母を殺したのは自分何じゃないのか…と言う事も言われ、親戚も誰も気にかけてくれる人はいなかった。約一年を施設で過ごす事となった。だが、それでも強く生きてこれたのは、ある一匹の人のおかげでもあった。その人は絶望のどん底にいた少年に毎日会いに行き、話しかけた。誰もが邪険にしてあたるはずの彼に、唯一家族以外で笑顔で会話をしてくれた。その人は言ってくれた、君もヒーローになって悪い人を退治しないかと。彼は決心した、もう二度と同じ過ちは繰り返さないと。

 

 

彼はバッグを持ち、靴を履き、家を出た。

ゆっくりと扉を開けて、閉める音だけが響き渡った。

 

 

ここから始まる。ーー少年の闘いがーー

 

 

 

 

 

 

 

 




イマイチな文章力で申し訳ないです。
とりあえず次は入学編です。しばしお時間を....


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入学編
第一話:雄英高校入試


休みなんで3話目突入!(本編はまだこれで一話目だけど)



徒歩10分、電車で5分掛けて、到着した。

少年の新しい物語がここからはじまる。

 

 

「柄にもなく、楽しみになってきたな」

 

 

そう、少年は、小さくつぶやく。

期待に胸を膨らませ、少しだが、緊張もしてしまっている。

そうして少年は、会場へ向かっていった。

そこで目にしたのは、

 

 

『今日は俺のライブにようこそー!エヴィバディセイヘイ!?』

 

 

(来る場所を間違えたか?)

 

 

少年は困惑していた。いや、そうせざるを得なかった。他の者たちもかなり困惑している様に見えた。

あとなんか無駄に声がでかい。

 

 

『ん〜こいつぁシヴィー!』

 

 

目の前の人は誰も反応しなかったことに対して、全くめげずにプレゼントマイクは説明を続けていく。

 

 

試験内容は、点数が振られた3種類の仮想敵を行動不能、または破壊することで得点を獲得でき、その合計得点で競い合うらしい。

ただひとつ、0ポイントのお邪魔虫なるやつがいるらしいが、問題はないだろう。

 

 

『俺からは以上だ!最後にリスナー諸君へ我が校の"校訓"をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えてゆく者」と!"Plus Ultra"!それでば皆、良い受難を!』

 

 

ーーーー

 

 

「かなり広いな」

 

 

それもそのはず、なんと敷地内に市街地が作られていたからである。

 

 

しかもそれはここ以外にも複数あり、その数だけ、ここと同じような市街地たてられているのだろう。

 

 

そう考えるだけで、頭が痛くなってきた。資金の莫大さに驚くことしかできなかった。

 

 

周囲を見渡していると、多くの学生が準備体操や精神統一をおこなっていた。

 

 

狩迅(まぁ、それもそうか。多くの奴らは将来や夢の実現のために必死になっているんだからな。だが、俺とてここでつまづく訳にはいかない)

 

 

そう一人で静かに闘志を燃やしていたら、一つの声が聞こえてきた。

 

 

『ハイ、スタートー!』

 

 

その言葉と共に反射的に体が前に進んだ。

 

 

周囲の学生はポカンと困惑している中、狩迅はその間をくぐり抜け、いち早くに市街地にはいっていった。

 

 

『どうした!?実践にカウントダウンなんざねぇよ!走れ走れ、賽はなげられてんだよ!お前らがポカンとしてる間にリスナーの一人が既に試験会場に入ってったぜぇ?』

 

 

「え!?まじかよ!」

「出遅れちゃった!」

「やべぇ!急げぇ!」

 

 

ーーーー

 

 

『目標発見。ぶっ殺s「無駄だ…」』

 

 

他の学生よりも早く飛び出した狩迅は、的確に、そして迅速に仮想ヴィランを倒していった。3方向から仮想ヴィランがやってくるも…

 

 

「無駄だと言ったはずだ…」

 

 

仮想ヴィランはそんな狩迅を血祭りにあげようとしたが、刹那、襲ってきた仮想ヴィランが3体とも縦に綺麗に割れていた。

 

 

「…鎌鼬」

 

 

一瞬にして、仮想ヴィランを3体とも鉄くずに仕立て上げた。

この仮想ヴィランはそこまで強く設定はされていないように感じた。

 

 

そのまま他の学生を助けたりしながら仮想ヴィランを順調に倒していると、変な違和感が起きた。

 

 

「なんだ、この地響きは…」

 

 

突然地震が起きたかのような地響きが起きた。

だが、その正体は、すぐに理解することになった。

 

 

「なるほどな…確かに邪魔だな…」

 

 

そこに現れたのは0ポイント仮想ヴィラン。

大きさはビルなどをゆうに超えるほどの巨体、普通なら誰もが逃げ惑うが、狩迅だけは違った。彼の状況判断能力は別格。

すぐ下に足がすくんで立てない少女を発見した。

 

 

「おい…無事か」

 

「あんたは…」

 

「話は後だ…兎に角あの仮想ヴィランを倒す」

 

「倒す!?無茶でしょ!?向かっていったら潰されておしまいに決まってる!」

 

「無茶すんのがヒーローってもんだろうよ」

 

 

狩迅はそう言うと、足と腕を迅竜化し呟いた

 

 

「嚇眼…」

 

 

目が真紅に染まり、構えると同時に、その姿を消した。

その瞬間………

 

 

「竜の……」

 

 

「鉤爪!」

 

 

狩迅がそう叫ぶと、仮想ヴィランは見事に5枚おろしとなった

それを見ていた学生の皆は、目の前で起きたことを信じられないといった表情で彼を見ていた。

 

 

「ウッソだろ……」

「あんなでけぇのを!?」

 

 

反応はそれぞれだったが、皆が思ったことは一つ

 

 

ーーあいつ…………すげぇ!?ーー

 

 

何事も無かったかのような表情で近づく狩迅に対して足がすくんでいた少女は身構える。

 

 

「怪我はあるか?」

 

「い…いや、ない…けど……」

 

「そうか…なら良かった…」

 

 

去って行こうとする狩迅に対して少女は勇気を振り絞って口を開いた。

 

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「ん?」

 

「ウチの名前、耳郎…耳郎響香…あんたの名前は?」

 

「狩迅…狩迅龍輝だ」

 

「えっと…その…あ、アリガト」

 

 

その言葉を聞いた狩迅は何も言わず、後ろを向きながら手を振って去っていった。

 

 

こうして無事に試験は終わりを迎え、結果を待つだけになったが、

 

 

(すっご……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




耳郎を何とかヒロインにしたいいいいいいいい!!!
私のちょっとした、欲です(*^^*)


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第二話:試験合否

一日で4話はつらいンゴ


ーーーー

 

 

試験から一週間程が経った日、雄英高校の合否通知が届いていた。

中を確認をすると、スイッチのようなものがあり、興味本意でおしてみたら、

 

 

『HAHAHAHA!やぁはじめましてだな!狩迅少年!私の名はオールマイト!先日の入試試験、実に見事だったぞ!ん?私がなぜこんなことをしているかって?それはだな…私がこれから雄英高校の教師として働く事になったからさ!』

 

 

「ほぅ」

 

 

かなり意外だった。オールマイトと言えば国民からの支持率、信頼度、人気度共にナンバーワンヒーロー。そんなオールマイトが雄英の教師になるのはなかなか興味が湧いてきた。

 

 

『さて、先日の試験結果だが、筆記は満点!ビックリしたよ!いったいどんな勉強をしたんだい!?満点の点数なんて今まで雄英の入試を受けてきた者の中で片手で数えられる程だよ!?』

 

 

満点だったか。と納得している様子。彼は昔から両親の遺伝からか、頭がずば抜けて良かった。満点意外の点数はこれまで、4回しか取った事がないほどである。ただし残念な事に他人に教える事は絶望的に下手である。だってやったことないんだもん。

 

 

『そして実技の方だが、敵ポイント143点!これだけでも文句なしの首席合格だが、実はもう一つの採点基準があったのさ!その名も救助ポイント!この点数は審査制なのだが、これの得点も本当に素晴らしい!救助ポイント74点!合計得点217点!勿論合格さ!』

 

 

そんなに稼いでいたか?と首をかしげる狩迅。

 

 

『来いよ、狩迅少年!ここが君のヒーローアカデミアだ!』

 

 

そうしてプツンと電源が切れた。

 

 

「首席か」

 

 

悪くない響きだなと、心の中で思う狩迅。だがそんな想いとは裏腹に、

 

 

「なんだか、嫌な予感がする……」

 

 

ーーーー

 

 

「ざっけんな!なんで俺が首席じゃねぇんだよ!?クソが!」

 

 

ーーーー

 

 

その予感は的中であるが、狩迅はそんなのを知るよしもなかった。

 

 

プルルルル プルルルル

 

 

狩迅は誰かに電話をかける。3コール程して、誰かが電話に出た。

 

 

「もしもし、雄英高校合格したよ、"父さん"しかも首席だって」

 

「そうかい!よかったね。父親として鼻が高いよ」

 

「今日はいっぱいお祝いしなきゃいけないね」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

彼の父親は死んだはず。ならば今電話に出ている"父親"はいったい誰なのだろうか。

 

 

「さぁ、明日から忙しくなるな。ある程度準備は今の段階でしておくとしよう。」

 

 

ーーーー

 

 

時は過ぎいよいよ入学式。彼のヒーローアカデミアはここから始まる。




ごめんなさい!個性把握テストのところまでいけませんでした!次こそは、次こそは必ず!


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第三話:個性把握テスト

さぁて前回で出てきた首席じゃなくてイライラしていた奴はダレダロナー
その正体がアカサレルゾー



雄英高校に入学が決まり、今日は登校日。そんな彼は雄英高校の校門の前にいる。

緊張するが、前に進もうとすると、とある"少女"から声を掛けられた。

 

 

「あ!アンタは!」

 

 

そこにいたのは以前、入試の時に助けたイヤホンジャックの女の子だった。

 

 

「君は……そうか、良かった受かったんだな」

 

 

「うん。受かってるとは思ってたけど会えてよかったよ。あの時のお礼もう一度ちゃんと言いたかったから…」

 

 

「別に構わんさ…人を助けるのがヒーローだろ?」

 

 

狩迅がそう言うと、その少女、耳郎は安心したかのように少し微笑んだ。

 

 

「ヤバ!?入学式まであと十分じゃん!」

 

 

どうやら入学式が始まるまであと十分らしい。まだ校内を把握していない狩迅と耳郎は急いで教室に向かっていった。

道中で歩きながら話していると、二人は偶然にも同じクラスだったらしい。

そうして、しばらく歩いていると"1-A"と書かれているクラスを見つけた。

 

 

「ここか…」

 

 

「でっか!?」

 

 

そこには随分と大きな扉が待ち構えていた。

異型形やそう言う個性の学生の為なのかと思いながら、ゆっくりと扉を開けた。

するとそこには眼鏡をかけている委員長気質な人と爆発頭の人がどうやら口論をしているようだった。

それを二人して困惑しながら見ていると、その爆発頭の人がこっちに気がついて、近づいてきた。

 

 

「てめぇかぁ、入試一位だったっつぅ野郎は?」

 

 

喧嘩腰のこの学生は爆豪勝己。どうやら中学時代は相当なヤンチャをしていて問題視されていたらしい。

そんな爆豪に対し、狩迅は…

 

 

「あぁ、そうらしいな。それがどうかしたか?」

 

 

狩迅は爆豪のこの態度で分かった。恐らくこいつは自尊心の塊だと…

 

 

「いいか、たまたま一位だったからって調子にのんなよ?モブが見下してんじゃねえ、殺すぞ!」

 

 

「ちょっと!っ!」

 

 

前に出ようとする耳郎を腕を横にしてとめ、爆豪に反論する。

 

 

「俺は別にお前の事を見下してなどいない。この雄英に受かったと言うことは、それだけ努力をし、力をつけてきたからだろう。必死になっている奴を馬鹿にする事程、馬鹿な事はない…」

 

 

それだけを言うと、耳郎を連れて席についた。これまた偶然にも席は隣同士だった。

 

 

「チッ…」

 

 

爆豪も舌打ちをしただけで、それ以上はこっちにかかってこなかった。

 

 

(そういえば、あの特徴的な髪型…確かヘドロ事件の被害者か)

 

 

そう考えていると、周りからゾロゾロとひとが自分の元へ集まってきた。

すると一人が声を掛けて来た。

 

 

「なぁお前!」

 

 

「ん?何か用か?」

 

 

「さっきの言葉めっちゃ漢気あったぜ!俺は切島鋭児郎、よろしくな!」

 

 

「当たり前の事を言っただけだ…俺の名前は狩迅龍輝こちらこそ三年間よろしく頼む」

 

 

彼以外にも、芦戸や葉隠、佐藤や八百万といったメンツも話しかけてきた。

早速友人ができたのか、狩迅は少しホッとしたようだ。

そうしてクラスのみんなと少し会話していると、芋虫みたいなのが入ってきた。

 

 

「お前ら、お友達ごっこしたいなら他所へいけ」

 

 

低く、気だるげの男の声がクラスを黙らせた。

 

 

「ここはヒーロー科だ。」

 

 

『何かいるうううう!?』

 

 

クラスのみんなが初めて心が一つになった瞬間だろう。

 

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠けるね」

 

 

謎の男はそう言うとゼリー飲料を全て飲み干し

 

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 

その姿は教師とは言い難く、それぞれが困惑していると相澤先生が一言

 

 

「早速だが、体操服着て、グラウンドに出ろ」

 

 

それだけを言って教室を出ていった。

入学式やガイダンスはどうなるのかと言った不満の声があったが、渋々着替えて、全員

グラウンドに出ていった。

どうやらこれから『個性把握テスト』なるものをするらしい。

 

 

「首席の狩迅、中学時代のソフトボール投げの最高得点は?」

 

 

「確か80ジャストだったはず…」

 

 

「じゃあ"個性"使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。思いっきりやれ。」

 

 

そう言われて、嚇眼と亜種羅を一瞬だけ発動させ思いきり投げる。その瞬間ボールは弾丸の様な速さで空を飛び、最終的な結果は……

ピロンと音が相澤の持つスマホの様なものから流れ、ボールの飛距離である

ーー3046.8m の記録が表示される。

 

 

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの道を形成する合理的手段」

 

 

いきなり途轍もない記録を叩き出した狩迅に対して、クラスは驚愕していた。

 

 

「初っ端から3000オーバーって嘘だろ!?」

 

 

「ナニコレ面白そう!」

 

 

「"個性"を全力で使えるなんて、流石ヒーロー科!」

 

 

「面白そう、ねぇ…」

 

 

誰かの不器用な一言で、相澤の周りの空気がいきなり豹変した。

 

 

「ヒーローになる為の三年間、そんな腹積もりで過ごすのかい?よし、決めた。じゃあこのテストのトータル成績最下位は、ヒーローになる見込みなしと判断して、除籍処分とする。」

 

 

1−A全員が驚愕と絶句に苛まれた。

 

 

「自由な校風が売り文句だと言った筈だ。君ら生徒の如何もまた俺たちの自由だ。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 

これに対し様々な批判が出てきた。

 

 

それに対し相澤は…

 

 

「自然災害、大事故、身勝手な敵。いつどこから来るか分からない厄災。日本は理不尽に塗れている。そんなピンチを覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったのならお生憎。これから三年間、お前達には絶えず試練が与えられていく。Pulse Ultra、全力で乗り越えてこい。デモンストレーションはこれで終わり。これからが本番だ。」

 

 

 

 

第一種目:50m走

 

 

「嚇眼、亜種羅……!」

 

 

さっきと同じ様に一瞬だけ、個性を発動し、駆け抜けていく。

一緒だった爆豪は、楽勝して叩きのめしてやると思っていたが、あまりの速さに驚愕してしまう。

 

 

「狩迅・0秒,24!爆豪・4秒13!」

 

 

「クソがああああああ!」

 

 

「まさか、得意分野で越されるとは……!?」

 

 

爆豪は悔しがっていたが、それ以上に飯田が一番悔しがっていた。

 

 

「スッゴ……」

 

 

狩迅のタイムを聞いて驚く耳郎とクラスメイト

 

 

第2種目:握力

 

 

 

「ハッ!」

 

 

ーーーメキメキメキメキ………バキィ!!

 

 

「先生!狩迅君が測定器壊しちゃいましたー!」

 

 

「測定不能って書いとけ」

 

 

「は~い」

 

 

障子&八百万「「…………………………」」

 

 

狩迅の記録をメモする葉隠、自信があった二人だが…その自信を粉々にされた様で放心状態に近い状態になっていた。アーメン。

 

 

 

 

第3種目:反復横跳び

 

 

「よーい………はじめ!」

 

 

「フッ!」

 

 

さっきと同様に、個性をうまく使いながら左右に飛んだ。

 

 

「ピピ…測定不能…」

 

 

「……なんだあれ!?見えねぇ!?」

 

 

「残像拳か!?」

 

 

「んなもんドラゴ○ボールでしか見たことねぇよ!」

 

 

「ぬおほっほぉうぉぉおぉおぉあああああ(´;ω;`)」

 

 

まじで残像拳何じゃないかと疑う上鳴と瀬呂…一番自信あったであろう峰田は膝をついて泣いていた。

 

 

 

 

第4種目:立ち幅跳び

 

 

 

「ずえゃあああ!」

 

 

今回の種目は特別得意ではない。足を迅竜化させ、さらに尻尾を生やし、嚇眼と亜種羅も発動させ、本気で飛んだ。

 

 

「俺と同じ尻尾!?」

 

 

「1734m」

 

 

「あの人すっごいなー!私もがんばろ!」

 

 

 

 

第5種目:長座体前屈

 

 

「ピピ…74,2cm」

 

「普通なのね…」

「普通だ!」

「普通か…」

「普通や!」

「普通だな」

「普通なのか…」

「普通だね!」

「普通ですわね」

「これもまた一興」

「そこ普通なんだ…」

「普通だ!」

「クソがああ!」

「いつまで怒ってんだよ!?」

「0,3mm負けてんだよ!」

「細か!?」

 

 

 

 

第6種目:ハンドボール投げ

 

 

 

「えいっ!」

 

 

そのままボールは果てしなく飛んでいき、………

 

 

「無限…」

 

 

『無限でたー!』

 

 

「すげぇ!無限でた!」

 

 

「凄いわお茶子ちゃん!」

 

 

「えへへ///」

 

 

「おい、狩迅、あの人からお前の詳細は聞いている。そろそろ全力でやってみたらどうだ。」

 

 

『へ?』

 

 

その衝撃的な言葉にクラスメイト全員が狩迅の方へ振り向いた。

 

 

「嘘!?」

 

 

「今までのやつですら、全力じゃなかったのか!?どんな個性なんだろう…やっぱり増強係か…それとも………」

 

 

「……けんな…ざっけんなよ…!」

 

 

狩迅はそう言われると円の中に入っていった。そして解き放つ。極み駆ける、その姿を。

その瞬間髪色が白銀と化し、その姿は……

 

 

「天使様みたい………」

 

 

その美しくも、圧倒的なプレッシャーを持つその姿に全員は息を呑んだ。

そして………

 

 

「………鎌鼬・………極!」

 

 

音速を越えたその豪速球は一秒と掛からずに大気圏を越していき、その結果……

 

 

「あの人が推すだけはあるな…麗日と同じ、無限だ。」

 

 

『はぁ~~!?』

 

 

「宇宙空間に重力はない。押された物体は留まることなく、進んでいく。」

 

 

ほとんどが驚いている中、一人だけ闘争心を燃やしている者がいた。

 

 

(狩迅龍輝……個性、迅竜…か)

 

 

轟は静かに狩迅の方を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




狩迅君少し強くしすぎたかも、まぁいっかぁ\(^o^)/
次は戦闘訓練ですかね!頑張りまっせ〜


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第四話:戦いの前の一時

間違えて、2回も文章消してしもうた………
第四話………はじまるよぉ


個性把握テストが終わり、しばらくの時が経った。個性把握テストはそのあとも持久走で八百万がバイクを創造して半ば反則の様なことをしたり、飯田のエンジンが活躍したり、除籍処分は合理的虚偽だったりとあったが、狩迅は一つ疑問を浮かべていた。

 

 

「緑谷の個性…何か違和感を感じる。体が個性の負荷に耐えられないなんてことありえるのか?」

 

 

狩迅が"極み駆ける"を発動してハンドボール投げを終えた後のこと。

狩迅が円を出ていくと同時に緑谷が円の中を入っていった。

一度目は無茶をしようとしていたらしく、相澤先生こと抹消ヒーローイレイザーヘッドにとめられ、二度目はうまく個性を発動させボールを高く上げることに成功した。

最終的な結果は700m超え、素晴らしい成績だが、投げた指は青紫に腫れ上がっていたのだ。

 

 

「個性は普通、体の身体機能の一部…手足の様に動かせて当然のはず。だが緑谷は未だに個性を扱い切れていないように感じる………あれは…まるで………」

 

 

狩迅がそのように考えていると一人の生徒から声をかけられた。

 

 

「狩迅君!良ければなんだが一緒に昼食を取らないかい!」

 

 

横には麗日と緑谷もいる。

 

 

「僕も君の個性に関して、少し話を聞きたいんだ!」

 

 

「あっそうそう!凄かったよね〜あの白いの!」

 

 

飯田達に昼食の提案をされ、狩迅は勿論断る訳もなく…

 

 

「あぁ、俺で良ければ構わない。」

 

 

友達らしい友達ができた事に狩迅はとても嬉しく思っていた。

自分の個性を見せたら、怖がられるんじゃないかと思っていたが、その逆で尊敬をされていたのだ。

 

 

「あれ、狩迅君はお弁当なの?」

 

 

「あぁ、一人暮らしでな…習慣付いているんだ。ランチラッシュには劣るかもしれないが…」

 

 

「そんなことないよ!とっても美味しそうだよ!!」

 

 

「あぁ見ているだけで、腹が空いてくるようだ!」

 

 

そんな他愛の無い会話をしていた。だがそれは狩迅にとっては酷く暖かい物だった。

常に人から後ろ指を刺され続けてきた彼にとっては、自分から歩み寄ってくれる、自分を友人として接してくれることに幸福を感じていた。

それからしばらくの時が経ち………午後の授業がはじまる。

 

 

「わぁあたぁしいぃがぁあ!!普通にドアから来た!!!!!!!!」

 

 

どうやらオールマイトが雄英の教師をやっているというのは本当だったようだ。

それぞれが違う反応をしているが、全員等しく興奮していた。

 

 

「マジで教師やってるのか!!」

 

 

「今着ているのは…銀時代のコスチュームみたいね」

 

 

オールマイトといえば数多の事件を解決し、実力、人気度共にナンバーワンのヒーロー。

そんなオールマイトから直々に授業を受けれるのだから興奮しない者はほぼいないだろう。

 

 

「さてでは早速行こうか!!私が受け持つ授業、それはヒーロー基礎学!!少年少女達が目指すヒーローとしての土台、素地を作るために様々な訓練を行う科目だ!!正にヒーローになるためには必須とも言える!!単位数も多いから気をつけたまえ!!そして早速今日はこれ、コンバット!!戦闘訓練!!!」

 

 

オールマイトが持っているプレートには、BATTLEと書かれており殆どの者が闘争心を燃やしていた。それと同時にオールマイトが指を鳴らすと、壁が動き出した。

そこに収められていたのは各自が入学前に頼んでいた戦闘コスチュームだった。

 

 

「着替えたら各自、グラウンドBに集まるように。遅刻はなしでたのむぞ!」

 

『はいっ!』

 

皆が勢いよく自分のコスチュームを手に取り、駆け足で更衣室へとむかっていった。

 

 

「形から入るって事も大切な事だぜ少年少女諸君、そして自覚するのさ!今日から自分はヒーローなんだと!!」

 

 

それぞれが希望したコスチュームへ着替え、グラウンドへ向かった。

ちなみに狩迅のコスチュームは頭を抜いたナルガ装備一式である。

 

 

「狩迅お前っ!?それ最早忍者じゃねぇか!?」

 

 

「あそこだけジャンルちげぇ!?」

 

 

「まぁ…問題は無いだろう。」

 

 

「だけどめっちゃかっこいいよ!狙った獲物は逃さない…みたいな感じで!」

 

 

「あ…あぁ、ありがとう葉隠さん。」

 

 

狩迅は葉隠のコスチュームについて、あえて触れないでおいた。

 

 

それからオールマイトの戦闘訓練の説明が行われた。今回は基礎を知る為、屋内戦闘訓練、ヒーローとヴィランに分かれて戦うらしい。

ヒーローチームはヴィランチームか核兵器を確保したら勝利。

対するヴィランは、ヒーローチームを確保するか、制限時間まで核兵器を守り抜くことで勝利できる。

今回は二人一組でクジによって決めるらしいが、今年は異例の21人クラス、一人余ってしまう。そんな中狩迅が引いたクジには、【ハズレ】と書いてあった。

 

 

「ハズレ?」

 

 

「狩迅少年が引いてしまったかぁ。そのクジは、一人で、つまり2対1で戦わなければいけないんだ。ヒーローをしていると人数不利なんてのはよくある事!

PulseUltraで乗り越えていけ!ちなみに戦いたい相手を選べるから考えていたほうがいいぞ!」

 

 

戦いたい相手を選べる。そんな言葉を聞いて、二人の男が名乗りを上げた。

 

 

「おい、忍者野郎!」

 

 

「狩迅…」

 

 

『俺と戦え!』

 

 

 

 




次回は"轟&爆豪VS狩迅"です!
この二人は果たして、迅竜の進撃を止められるのか!
次もぜってぇ見てくれよな!


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第五話:戦闘訓練

今回から本格的に戦闘訓練が始まります!
爆豪達と狩迅果たしてどっちが勝つのか!
それではどぞ〜


『俺と戦え!』

 

 

その言葉は皆の注目の的となった。それもそうだろう、狩迅は以前個性把握テストでプロヒーロー顔負けの大記録を叩き出した。

そんな彼に挑むのは、余程自信があるのか、もしくは命知らずだけだろう。

だが、みんなは二人の顔を見て少し納得してしまったようだ。

爆豪はその爆破と言う個性でかなりの好成績を残しており、入試は狩迅に次いで2位。

轟は推薦入学で入ったほどの実力と個性。

 

 

「あの二人が組むのかよ…流石の狩迅でもやばいんじゃねぇか!?」

 

 

「ですが狩迅さんはあの二人の成績を大きく上回っている。2対1とはいえ、油断は出来るはずはありませんわ………」

 

 

「こりゃ……どっちが勝つかわからねぇな………………」

 

 

周りから3人の勝敗を予測する声が聞こえてくる。人数有利で汎用性の高い二人が勝つやら

、その二人を真正面からねじ伏せて狩迅が勝つやら……

その声とは関係なく、3人の間には見えないが稲妻が走っていた。

 

 

「お前等が相手か………」

 

 

「あぁ!?俺一人で十分だわ!!半分野郎は引っ込んでろっ!!」

 

 

「俺にも…引けない理由がある。」

 

 

「た…対戦相手は決まったようだね!よしじゃあ早速戦い合うペアを発表するぞ!」

 

 

         ヒーロー                ヴィラン

第1試合    緑谷&麗日                爆豪&飯田

 

第2試合     轟&障子                尾白&葉隠

 

第3試合    蛙吹&常闇                切島&瀬呂

 

第4試合    上鳴&耳郎                八百万&峰田

 

第5試合    青山&芦戸                佐藤&口田

 

第6試合     狩迅                  爆豪&轟

 

 

結果から言うと、第1試合は緑谷達の勝利だった。半分反則のような物と八百万が言っていたが負けは負け…

爆豪はかなり精神的に来ているように見える。

 

第2試合は轟達の圧勝。一面を氷漬けにし、葉隠達を行動不能にし、そのまま核兵器に触れた。

 

第3試合と第4試合は共にヒーローチームの勝利。第5試合は佐藤達の勝利で終わった。

 

そして始まる第6試合……………

 

 

「3人とも、準備はいいかい?」

 

 

『あぁ』

 

 

「準備なんざ必要ねぇ!正面から叩きのめしてやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どう攻めようか……轟は半冷半熱…爆豪は爆破だったな…」

 

 

そう言うと狩迅は静かに中へと入っていった。そこはこれから戦いが始まるというのに恐ろしいほど静かだった。

とにかく上を目指すため階段を探す。

 

 

(とにかく一人をおびき寄せてから確保してもうひとりを倒しに行くのが妥当か……)

 

 

そう考えているといきなり目の前から爆豪が姿を表した。緑谷に負けたからか、落ち着きが無いようにみえる。

 

 

「死ねぇええええええええ!!!!!!」

 

 

「緑谷の時の戦法か…甘い!」

 

 

狩迅は既に対緑谷の時に爆豪の戦闘スタイルを見抜いていた。最初は右の大振り、その次はこっちに向かって突進してくる。

 

 

「亜種羅!」

 

 

狩迅はまるで爆豪がそこにいるのがわかっていたかのようにバックステップでギリギリでかわす。

 

 

「なっ!?」

 

 

「お前の位置は既に"嚇眼"で見抜いている!」

 

 

嚇眼はただ身体能力が上がるわけではない。視覚、嗅覚、聴覚と言った五感全ての感覚が研ぎ澄まされ、相手の位置を特定する事やその人数、どんな武器を持っているかも感知することができる。

 

 

「轟は……核兵器のところか…」

 

 

「あんな半分野郎のことなんざどうでいいだろうが!!舐めてんのかぁ!?」

 

 

爆豪はそう言うと、腕についてあるピンを抜こうとした。

 

 

ーーーー

 

「まさかっ!?やめろ爆豪少年!!」

 

ーーーー

 

 

「威力はデクの時程じゃねぇよ、だが……充分だ!!!」

 

 

爆豪はピンを外し、狩迅に向けて爆破を解き放つ。

 

 

「くたばれぇええええええ!!!!」

 

 

その爆破は見事に狩迅に直撃した。普通ならもう立つことはできないだろう。

 

 

ーーーー

「爆豪の野郎っ!?マジでやりやがった!?」

 

 

「なんてことを!?」

 

 

「あんの馬鹿!?マジで撃つやつがいるかぁ!?」

 

 

(…………………………)

 

 

耳郎は心配そうに見ていたが、何故か心の奥底で"大丈夫"と言う文字があった。

たしかに爆豪は強いが、それは狩迅だって同じ。それに彼が"あれ程度で"負ける程、弱くないと確信していた。

この矛盾した感情は、耳郎自信にも理解できなかった。

 

 

ーーーー

 

「終わりか……随分と呆気ねぇな………」

 

 

爆豪は後ろを振り向き、教室へ戻ろうとするが…………

 

 

『悪くはない…だが詰めが甘いな。』

 

 

「だと…思ったぜ…忍者野郎」

 

 

煙が少しずつ晴れていく。爆豪は柄にもなく、少しばかり恐れを抱いていた。

そこには、傷一つ無く、平然と立っている狩迅の姿があった。

 

 

「チッ!」

 

 

爆豪は余っているもう片腕のピンを外して迎え撃とうとしたが、時はもう既に遅かった。

 

 

「言っただろう…………"詰めが甘い"と……」

 

 

その瞬間爆豪の視界は……黒に染まった。

 

 

「とどめを刺したあとはちゃんと確認しておけ。あとは……………轟か…」

 

 

 

 

 

 

 

 




ナルガクルガの完全体は体育祭辺りで出すとしましょう。本戦ぐらいだとおもいます。
それではまた次回で〜


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第六話:無音の蹂躪

蹂躪してくよ


「あとは……………轟か…」

 

 

15m程離れていた距離を一瞬にして詰め、音も無く爆豪を仕留めている狩迅の姿があった。

頸動脈を親指と中指ではさみ、正確にそして確実に……………

 

 

ーーーー

「嘘だろ…あの爆豪が手も足も………」

 

「何という暗殺術…!音も無く、確実に……!」

 

(出来るとはおもっていたが、まさかここまでとは…!やるじゃないか狩迅少年!!)

 

 

その姿はオールマイトですら、息を呑むほどだった。それほど彼は人間離れした技を披露したのだ。

ーーーー

 

(デカい音が聞こえた…爆豪か?だがそれにしては不自然だ…何故一発しか鳴っていない……まさか…もうやられたのか…!?)

 

 

流石の轟も焦りを隠せないようだった。

だがその焦りは決定的な物へとかわった。

すぐそこの廊下からコツコツと歩いて来る音が聞こえた。轟は何か妙な寒気がし、少し扉から間合いを取った。

足音がすぐそこまでくると轟は躊躇無く廊下ごと凍らせた。不意打ち…確実に仕留めた…………はずだった………………

 

 

(いない!?ならあの足音は……)

 

 

轟がそう考えているとき、すぐ後ろから悪魔の囁きが聞こえてきた。

 

 

「爆豪にも言ったが、とどめを刺したらしっかり確認しておけ。」

 

「ッ!?」

 

 

轟のすぐ後ろには目が真紅に染まった狩迅がたたずんでいた。

ただ立っているだけ。なのに彼からは途方も無いプレッシャーと威圧感があった。

轟は冷や汗を流すが、すかさず切り替え、もう一度氷を放った。だがそれは虚しくも当たるはずも無く………

 

 

「あともう一つ…あまり自分を強いと思うな。俺は過去、それで一度死にかけた。」

 

 

狩迅は轟の肩に優しく触れる。その瞬間轟は意識を奪われた。

試合が開始されてから2分と17秒…二人は完膚なきまでに敗北の二文字を背負わされた………

 

 

ーーーー

『っ……………………』

 

誰もが声を出すことは出来なかった。彼ら二人は戦闘力で言えばプロにも負けないだろう。

そんな二人がなすすべなく敗れ去った事実に皆は思考が停止していた。

 

 

「ヒ、ヒーローチームWIN!!!!!!」

 

 

それは戦いと呼ぶには、おこがましく、一方的な"鏖殺"だった。

 

 

「さて、今回のMVPは……言わなくともわかるね?」

 

 

これが分からないのは本当の馬鹿な者だけだろう。

 

 

(誰も何も喋らない………怖がらせてしまったか………)

 

 

ーーーーーー 一方 ーーーーーー

 

『かっけぇ!?』

 

 

怖がるよりもむしろ、その強さに憧れや尊敬を抱いていた1−A組だった。

ちなみにやられた二人はリカバリーガールの元へ連れて行かれた。

授業が終わり、狩迅は緑谷の元へ向かっていた。

 

 

「失礼します。ん…あなたは…」

 

 

そこにはやせ細っているスーツを来た男性が緑谷の近くに座っていた。

 

 

「あぁ…私は八木俊典、緑谷少年の親戚みたいなものだよ」

 

 

「そうでしたか…私の名は狩迅龍輝…お見知りおきを…」

 

 

(いやまぁ…しってるんだけどね!)

 

 

「うっ……あれ…」

 

 

「目を覚ましたか、緑谷…」

 

 

「狩迅…君?」

 

 

「無理はしなくていい。一つお前の個性について、助言をやろうと思ってな。」

 

 

「助言?」

 

 

「あぁ…俺とお前の個性は種類こそ違うが同じタイプだと思っているんだ。」

 

 

狩迅の個性は迅竜、漆黒の毛皮を持つ巨大な竜へと変化できるが、狭い場所では戦いづらい為改良を重ねた結果、一部分だけを変化させる事に成功した。

対して緑谷は0か100しか出せず、狩迅の個性のように、全体に"身に纏う"と言うことをしていなかった。二人は強大な力を抑える為、出力を抑えられるようにまた、それを長時間維持できるように考えていた。

 

 

「お前の個性は、"身に纏う"ことはできないのか?」

 

「身に纏う……ハッ!」

 

「ありがとう狩迅君、一つ考えができたよ」

 

「それを極める事を推奨しよう。」

 

狩迅はそれだけを言うと、部屋からでていった。そして教室へたどり着くと………

 

 

「あっ!おい狩迅!」

 

 

みんなが一斉にこっちに振り向いてくる。

 

 

「今さっきの訓練の反省会みたいなのしてんだが、お前も来いよ!」

 

 

「俺も同じスピード系の個性として君にアドバイスを貰いたかったんだ!」

 

 

「ねぇねぇ!あの肩にポンてして気絶させるやつ、あれどうやんの!?」

 

 

「今度教えてくれよ〜」

 

 

「しっかしすごかったねー!あの二人をけちょんけちょんにするなんて!」

 

 

「まったくだ。いつか指南を願おう。」

 

 

といった感じでみんなが語りかけてきた。怖がらせてしまったと思っていた狩迅からしてみたら少し驚いていたが、安心したようだ。

 

 

「そうだ!みんなでマック行かね?緑谷も連れてさ!そこで続き話そうぜ!」

 

 

『賛成〜』

 

 

(フッ)

 

 

「狩迅ちゃん…」

 

 

「蛙吹さんか、どうした?」

 

 

「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの今の笑顔とっても素敵だったわよ」

 

 

(笑顔…………か……)

 

 

 

その後のことだが、緑谷は爆豪と何かを話しており、轟は一人で帰っていった。

 

 

(久しく笑顔なんてしたな。オールマイトに教えてもらうか…)

 

 

『HAHAHAHAHA!!!』

 

 

「やっぱやめておこう…」

 

 

 

 

 

 




まさしく圧倒!!ん〜かっきょいい\(^o^)/

次回からはついにUSJ編です!
それではまた〜


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第七話:委員長決め〜

今日は2話、行けたら3話くらい投稿しよかな思ってます!


「すみません!雄英生ですよね?オールマイトの授業に関してインタビューお願いします!!!」

 

 

「えぇ……?」

 

 

(邪魔だな……)

 

 

耳郎と偶然会ったので一緒に登校していたら、校門前に大きな人だかりがあった。どうやらオールマイトの授業に関しての感想などを聞きたいらしいが、ここに留まっているということは恐らく取材許可を貰っていないのだろう。

 

 

「一言!一言でいいので!!」

 

 

「ハァ…耳郎、掴まれ。」

 

 

「え?…ってちょ!?」

 

 

狩迅がそう言うと耳郎を所謂お姫様抱っこして校門の上を飛び越えていった。

あまりの唐突な出来事に耳郎は困惑しているようだった。

 

 

「おいコラ、今個性使ったろ。今回は見逃すが次やったら反省文だからな。」

 

 

「了解…」

 

 

(ウチが?狩迅に?お姫様抱っこ?ウチが?狩迅に?……………へ!?)

 

 

なんとかマスコミは撒けたが、耳郎はそれどころではなかったようだ。

リンゴのように顔を赤くしている耳郎であった…………

 

 

ーーーー

 

「今日は突然だが、学級委員長を決めてもらう。」

 

 

『学校っぽいの来たああああああ!!!!』

 

 

先日の実践演習の説教から始まった授業だが、そこからのどんでん返し。

ようやく学校らしい事ができて、みんな安心したようだ。

だがまだ入学してから2日目、お互いがお互いを理解仕切っておらず、自己推薦のオンパレード、ここはヒーロー科…普通ならやりたくはないが集団を導く役目はヒーローにとって必須。ほぼ全員が手を上げていた。

 

 

(我の強いこいつらを動かすのは流石に骨が折れる。やめておこう……)

 

 

ここにいる全員は、一癖も二癖もある連中ばかり、狩迅はあえて手を上げないでいた。

 

 

「静粛にしたまえ!!多を導く大変な仕事だぞ!それをただやりたいからと、簡単に決めていい筈がない。今こそ!信頼できるリーダーを決める為、投票を行うべきだ!!」

 

 

飯田が声を上げる。周りの興奮を鎮め、投票の提案を出したが、そんな彼もまた、真っ直ぐに手を上げていた。

 

 

「うそつけ!?そびえたってんじゃねぇかよ!!」

 

 

「日も浅いのだから信頼も何も無いわよ飯田ちゃん…」

 

 

「だからこそだ!ここで票を取った者こそ本物だと思わないか!」

 

 

蛙吹の言葉に押されながらもなんとか反論した。確かに殆どの者が自分に入れようとする中ここで票を取ったものは本物だろう。

 

 

(ああ言った迅速な判断力と決断力はあいつの強みだろうな…)

 

 

少し考えていたが、狩迅は投票する相手を既に飯田に決めていた。八百万が配った用紙に飯田の名前を記入し、それで終わりだ。

そして投票の結果だが、大半が自分に投票のする中、3票と2票を勝ち取っていた者がいた。緑谷と八百万である。

 

 

「えぇ!?僕が3票!?」

 

 

「あと一票…悔しいですわ。」

 

 

結局、緑谷が委員長に八百万が副委員長に決定した。そんな中一番やりたがっていた飯田は黒板に書かれている自分の名前を見つめていた。

 

 

「俺にも一票が………いったい誰が………」

 

 

誰が自分に投票してくれたのか気になる飯田…それとは別に眠りかけていた狩迅…

 

 

「ほら、ちゃんと起きて!」

 

 

「やめてくれ、冬眠してる…」

 

 

「今春だわっ!」

 

 

そんな適当な会話をする二人であった。

午前中の授業が終わり、昼の時間になったが狩迅は食堂には行かず、教室に残っていた。

 

 

「あれ、狩迅は食堂行かないの?」

 

 

「俺には弁当がある」

 

 

「自炊してんの?」

 

 

「あぁ、昔からの習慣でな」

 

 

そんな会話を交わしている時だった。

 

 

『緊急警報発令!セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは屋外へと避難してください。これは訓練ではありません。繰り返します…………………』

 

 

「な、なにこれ!?」

 

 

「セキュリティ3……どうやら何者かが校内に侵入したようだな…」

 

 

「侵入………ってヤバいじゃん!避難しないと!?」

 

 

「問題無い。嚇眼で感知したが、ただのマスコミの連中だ。」

 

 

狩迅が言うと少しずつ周りが落ち着きを取り戻していった。そして再び放送がなった。

 

 

『やぁ!校長の根津です!侵入者はどうやらマスコミのようだから心配ご無用さ!

このことは先生達で対処するので、生徒諸君はクラスに戻り待機するように』

 

 

「ホントにマスコミだった…焦ったぁ…」

 

 

「恐らく朝の奴らだろうな。本当にハエのようにしつこいな…」

 

 

「はぁ~~あほらし…」

 

 

(だが妙だ。雄英のセキュリティシステムはかなりの物…ヴィランですら簡単には侵入できはしないだろう…警備システムか何かに細工でもしたのか…)

 

 

悪意はすぐそこまで迫っている。だがそのことに気づく訳もなくそのまま午後の授業がはじまった。

 

 

「狩迅君!少しいいかい?」

 

 

5時間目の休み時間、飯田が息を切らしながら話しかけてきた。

どうやら急いでここに来ているようだった。

 

 

「どうした、そんなに焦って…何かを問題でも起きたのか?」

 

 

「投票の件で君に聞きたいことがある……」

 

 

「僕に投票してくれたのは、君なのか!?」

 

 

飯田は真っ直ぐに狩迅を見ていた。確かに狩迅は飯田に投票したが、その真意が分からず

沈黙を返してしまった。

 

 

「ずっと気になって、みんなに聞いてきたんだ、僕はあの投票で自分には投票していなかった。残るは君だけだったんだ。」

 

 

「君が、僕に投票してくれたのかい!!」

 

 

狩迅は焦っている飯田の額を指で弾いた。

 

 

「ッ!?」

 

 

「少し冷静になれ。確かに俺がお前に投票した。だがそれは決して適当な理由でしたものじゃ無い。」

 

 

狩迅「お前はあの場で一瞬だが、我の強いアイツらを鎮めた。その判断力と決断力を買ったんだ。見込みがあると判断してな…あれを平然と行ったお前は大した奴だ。要約すると……

お前なら俺たちを導けるんじゃないかと、そう思っただけさ。」

 

 

 

 

「………」

 

 

飯田は下を向いたまま、固まっていた。その後の事だが緑谷は飯田に委員長の座を渡し、晴れて飯田が委員長となった。

その日以来、飯田はよく狩迅に話しかけるようになった。

 

 

 

 

 

 

 




ごめん………やっぱりUSJ編次からで(;・∀・)
今日中には出すので、数時間ほどお待ちを!!


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USJ編
第八話:ヴィラン襲撃!加速する悪意…


ついに始まるUSJ編…さてどうなることやら…


マスコミが起こした騒動から数日が経った。

今日の授業は特殊なヒーロー基礎学らしく、相澤から内容が話される。

 

 

「今日のヒーロー基礎学は俺ともう一人も含めての3人体制で教えることになった。

今回は色々と場所が制限されるだろう。故にコスチュームは各々の判断で着るか考えるように。」

 

 

「それと訓練場所はここから少しはなれている。だから移動はバスだ。準備は急ぐように…」

 

 

説明を終えた相澤は教室を出ていった。狩迅達は除籍の事などを考え、素早くコスチュームに着換え、校内バスへ向かった。

 

 

(忘れ物は………無いな、よし行くか)

 

 

「耳郎、忘れ物は無いな」

 

 

「あんたはウチの母親か…」

 

 

バスへ向かっている途中、確認した狩迅に耳郎がツッコむ。周りも見慣れた様子で見守っていた。

 

 

周りを見たら、全員コスチュームを着ており唯一着ていないのは修理が終わっていない緑谷だけだった。

 

 

「緑谷、怪我はもう大丈夫そうだな」

 

 

「狩迅君!うん、取り敢えずは動かせるよ。ギプスははめてるけどね。」

 

 

リカバリーガールに治してもらったそうだが、かなり怪我が深く体力の都合で完治とまではいかなかったそうだ。

 

 

「それよりも麗日さんから聞いたよ!かっちゃんと轟君を一人で倒したんだって?

すごいじゃないか!」

 

 

「私もすっごく驚いたよ〜!忍者みたいに二人を倒しちゃうんだもん!」

 

 

「ありがとう…だが単に相性が良かっただけだ。」

 

 

二人は自分に対して好印象を持ってくれているため少し嬉しくなった。

 

 

「それでも凄いよ!僕なんか、狩迅君に言われた事を実践してみてるんだけどなかなか上手く行かなくて…」

 

 

個性の話をする緑谷の表情はとても暗かった。

緑谷と同じように自分の個性に悩みを持っている狩迅は呟くように言った。

 

 

「俺も最初はお前のように力が暴走することが数え切れない程あった。

それに比べれば上出来さ。」

 

 

「狩迅君…うん、頑張ってみるよ」

 

 

「頑張ってデク君!応援しとるよ!!」

 

 

(妹と弟を持った気分だな…)

 

 

狩迅にはあの二人はどこか幼いところを感じ取っていた。

守りたい、そしてあの二人の成長を見届けたい。そう思っていた。

 

 

(他人を守る…か、俺があの時今ぐらいの強さがあれば…)

 

 

「おーい、何ボーってしてんの?」

 

 

そんな事を考えていると、耳郎が話しかけてきた。バスの出発まであと少し、急いで行こうとした瞬間、轟が話しかけてきた。

 

 

「狩迅、次は負けねぇ……」

 

 

「…………いつでも掛かってこい」

 

 

リベンジの宣言。轟には狩迅に対する闘争心が燃え盛っていた。

それ以外にももう一人………

 

 

(必ず、デク諸共叩き潰してやるッ!!)

 

 

爆豪もまた、狩迅に対して闘争心を燃やしていた。

 

 

「良し!みんな、きちんと出席番号順に並んでバスに乗り込むんだ!」

 

 

飯田は相変わらずだった。

 

 

「こういうタイプだったか……不覚!」

 

 

バスの作りに対して飯田は叫んでいた。てっきり左右に2席ずつが奥まであるタイプだと思っていたが、前部分は左右に座席があって向かい合うタイプだったのだ。

 

 

「意味ないね!」

 

 

「ぐおぉおあぁぉお!」

 

 

芦戸がトドメをさし、意気消沈の飯田。そんなのは関係なくみんなは会話を始めていく。

 

 

「私、思った事は口に出しちゃうの……緑谷ちゃん?」

 

 

「えっ!?…あ うん。蛙吹さん?」

 

 

蛙「梅雨ちゃんと呼んで?」

 

 

女子との会話が馴れていない緑谷は冷や汗を流しまくっていた。

 

 

「あなたの個性、オールマイトに似てるわね?」

 

 

蛙吹がそう言った瞬間、同時に緑谷が挙動不審になった。

 

 

「えっ!?そ、そうかな……何処にでもあるような個性な気も…」

 

 

「そうだぜ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我なんかしねぇ。似て非なるものだぜ?」

 

 

切島の介入によって緑谷は冷静を取り戻したかのように動きが止まる。

そのまま切島が会話を続けていく。

 

 

「でも増強係の個性ってのは良いな。鍛えれば、やれる事が増えるだろ?俺の硬化は対人戦じゃ強いんだが、いかんせん地味なんだよなぁ」

 

 

「そ、そうかな?プロにも通用するかっこいい個性だと思うけど?」

 

 

そう言う緑谷に対して、切島は若干否定する。

 

 

「プロなぁ!けどよ、プロって人気商売みたいなとこあんだろ?そう思うと地味なのは致命傷なのかもな?」

 

 

「僕のネビルレーザーは威力も派手さもプロ並み☆」

 

 

「お腹壊すのは致命傷だけどね!」

 

 

飯田と共に青山も撃沈。

 

 

「派手さと強さってなんなら……やっぱ爆豪と轟と狩迅だよな!」

 

 

「けど、爆豪ちゃんはすぐキレるから人気はでなさそうね。」

 

 

「んだと!?出すわゴラァ!!こんな半分野郎と忍者野郎よりもメッチャ出すわぁッ!!!!」

 

 

「ほらキレる」

 

 

爆豪は二人に対して指を指しながら叫ぶが、蛙吹にまたも指摘されてしまう。

そんな中、葉隠が狩迅に話しかける。

 

 

「そう言えば聞くの忘れてたけど、狩迅君って体のどこかを動物みたいに出来るよね!尻尾も生えるし」

 

 

葉隠がふと気になっていたことを狩迅に質問する。

 

 

「俺の個性はとある伝説上の竜になれる個性なんだ。尻尾は針みたいなのが付いていてそれを飛ばして攻撃することができるし、変化させた部分は硬い皮膚に覆われている。

拳銃ぐらいじゃ痛みも感じない。刃も出せる」

 

 

「切島と尾白と飯田の上位互換じゃねぇか!?才能マンすげぇ…」

 

 

「ドラグーンヒーローのリューキュウみてぇだな…」

 

 

「ぐっ……」

 

 

それを聞いていた切島、尾白、飯田の三人は落ち込んでいるようだった。

 

 

「強すぎんだろ……」

 

 

「それで尚且斬撃飛ばせんだろ?最強じゃね?」

 

 

「驚きましたわ…」

 

 

「チッ……」

 

 

「………………」

 

 

全員がそれぞれの反応をしていおり、狩迅を見ていた。

 

 

「自信なくしちゃうな……」

 

 

「ジャンプ力も1700mぐらいだから、梅雨ちゃんよりも高いし、パワーも緑谷以上だよな多分…」

 

 

「流石だな、他を圧倒するその力…お前が全ての頂点に立つものなのか……」

 

 

個性が被っている組はまた落ち込んでいた。自分よりもできることが多く、尚且強力なのだから。そんな才能マンに息を呑む者が多数いた。

 

 

「でも、狩迅の全力ってどんくらいか見てみたくね?」

 

 

「確かに!どんくらいなんやろ…」

 

 

「街一つ破壊出来んじゃない?」

 

 

「いやマジであり得るぞ……」

 

 

上鳴に続き耳郎や切島、瀬呂などが狩迅の個性に話し合っていた。

 

 

「だがまぁ…強い個性でも、悩みの一つや二つはあるもんだ。今じゃそれなりに強いが、昔は暴走する事が多々あったし、この個性のせいで………」

 

 

「ッ……!」

 

 

その言葉に轟が反応した。彼もまた自分の個性に苛まれている一人なのである。

 

 

時は過ぎは、ようやく到着した。

 

 

『USJかよ!?』

 

 

巨大な遊園地の様な広いエリアが周りに広がっていた。

 

 

「いろんな災害の演習を可能にした僕が作ったこの場所…嘘の災害や事故ルーム、略してUSJ!」

 

 

『本当にUSJだった!?』

 

 

何人かその名前はまずいんじゃないかと思っていたが、あえて触れないでいた。

 

 

「スペースヒーローの13号だ!」

 

 

「私大好き!」

 

 

「分かったから静かにしろ。それより13号、オールマイトは?ここで落ち合う筈だろ。」

 

 

「それなんですが…」

 

 

二人がなにかヒソヒソ話を始める。その顔でなにかあったのか察した狩迅。

 

 

「もう良い、始めるぞ」

 

 

「分かりました。では始める前にお小言を一つ、二つ、三つ、四つ……」

 

 

『増えてる!?』

 

 

「皆さんご存知だと思いますが、僕の個性はブラックホールです。全てをチリにすることができ、災害現場ではそれで瓦礫などをチリにして人命救助を行っております。

ですが同時に」

 

 

ーー人を簡単に殺せる個性です。

 

 

『ッ!?』

 

 

全員がビクリと体を動かす。13号はそのまま続けていく。

 

 

「そして…この授業では各々の個性をどう人命救助に生かすのかを学んでいきましょう。君達の個性が他者を傷つけるだけの物ではない。その事を学んで帰っていってください。」

 

 

『はいっ!!』

 

 

13号の言葉に皆やる気を出しており、歓声をあげていた。

そんな中、突如として、それは起こった。

 

 

「ッ!?お前等!周りを警戒しろ!!」

 

 

反射的に狩迅は噴水の方向へ顔を向けていた。

 

 

「狩迅!?」

 

 

「オイオイ、どうした?」

 

 

突然の叫びに切島と瀬呂が反応した。突然噴水の近くに、謎の黒いモヤが現れ、そこから出てきたのは、"ヴィラン"だった。

 

 

「なんだあれ?もう始まってるパターン?」

 

 

「動くな!!あれは………ヴィランだ!!」

 

 

『え!?』

 

 

相澤がそう言うと全員が噴射の方へと目を向けた。

 

 

「なんでヒーローの学校にヴィランが来るんだよおぉぉぉおお!!??」

 

 

「どっちみち馬鹿だろ!?ここはヒーロー学校だぞ!」

 

 

「やはり、あのマスコミ共はあいつらの仕業か…」

 

 

そんな中、顔と全身に手を付けた異質な人物が周りを見渡したあと首を傾げた。

 

 

「おい…オールマイトがいないぞ。子供を殺せば来るのか?」

 

 

「13号!お前は生徒を避難させろ!上鳴は学校へ連絡を試みろ!」

 

 

戦闘態勢をとる相澤。今にもヴィランの方に飛び出そうとしていた事に気づいた緑谷が止めようとする。

 

 

「待ってください!イレイザーヘッドの本来の戦い方だと、あの人数は!」

 

 

「一芸だけではヒーローは務まらん!」

 

 

それと同時に相澤は飛び出し、ヴィランと交戦する。

それを黙ってみてるほど狩迅は大人しくはなかった。

 

 

「がぁぁぁぁあああああ!!!」

 

 

両腕、両足を迅竜化させ、尻尾も生やし戦闘態勢を取る。

 

 

(やる気だ、狩迅君!)

 

 

底が見えない狩迅が本気を出す。その意味が分かったクラスメイトは次々と行動を取る。

 

 

(あの時と同じ結末へは、辿り着けさせない!)

 

 

悪夢が始まる………………

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで!次回から脳無との戦闘だと思います。
いよいよ狩迅の全力が見れますでしょう。




それではバイナラー


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第九話:終

USJ編はこれで終了になります。早いって?気にするな!


『はじめまして……我々は敵連合と言います。そして単刀直入に言いますと、我々の目的はオールマイト……』

 

 

ーーー平和の象徴の殺害でございます。

 

 

『は?』

 

 

A組全員がその言葉を理解することができなかった。

平和の象徴は言わば、ヴィランに対しての抑止力でもある。そんなオールマイトを殺害するために学校に奇襲を仕掛ける。

そんな事を実行するのがいるなんて誰が想像できただろうか。

 

 

『しかし………肝心のオールマイトはいらっしゃらない様子。仕方ありません………

ならばまずは………』

 

 

黒霧の目線が13号に変わった。どうやら13号を狙い陣形を乱そうとしているらしい。

狩迅はそれをいち早くに察知し、先手を打った。

 

 

「敵を仕留めるとき、複数人の場合は目線を動かさないほうがいいぞ…」

 

 

十字鎌鼬を放ち、ヴィランに直撃したかのように見えた。だが実体が無いからかダメージを与えることには失敗した。そしてすかさず爆豪と切島が攻撃を仕掛けた。

 

 

「死ねぇえええええッ!!!」

 

 

「どりゃあぁあぁぁあ!!!」

 

 

だがその攻撃は空を切り、当たることはなかった。

 

 

『危ない危ない……流石は金の卵達。だが所詮は………卵』

 

 

ーー散らして、嬲り殺す。

 

 

そんな言葉とともに黒いモヤが狩迅達を包み込んだ。

 

 

(間に合わないか!)

 

 

「チィ!」

 

 

狩迅は近くにいた上鳴と八百万、そして耳郎を抱え、そのまま黒いモヤに包み込まれてしまった。

 

 

狩迅達が運ばれたところは山岳ゾーンと呼ばれる訓練場所だった。

 

 

「なに…どうなったの?」

 

 

「悪いがそれに答えてる暇は無さそうだ。」

 

 

周りには敵連合の一味と思える連中に囲まれていた。

 

 

「おっ?来た来た!」

 

 

「やっと出番だぜ!」

 

 

ヴィランに囲まれていることに恐怖した上鳴は思わず声を上げてしまった。

 

 

「えぇえ!?囲まれてんじゃねぇか!?」

 

 

「かなりまずい状況ですわね……」

 

 

「最初から分断が目的だったわけか!」

 

 

「平和の象徴の殺害とは…大きく出たな敵連合!」

 

 

「おい狩迅どうするよこれ…」

 

 

「囲まれていますわ!」

 

 

「個性も分からない…かなり不利だよ…」

 

 

「相澤先生みたいなのがいなければ問題無い。伏せていろ!」

 

 

狩迅は考えると、20人以上いたヴィランを一瞬で片付けた。

目にもとまらぬその速度、ついて行けるどころか目で追うことすら出来ないだろう。

 

 

『な!?』

 

 

その出来事に三人は驚愕していた。あれだけのヴィランが狩迅の手によって瞬きする間に倒されていたのだ。

 

 

「俺は一旦みんなの所に応援に行く。三人は待機していてくれ。」

 

 

「ウチらも行く!足手まといにはならない!」

 

 

「お前に任せっきりは後でみんなに馬鹿にされちまう!」

 

 

「その通りですわ、私達なら!」

 

 

狩迅のそばには月白色に輝いているオーラのようなものがついており、神々しい姿になっていた。

 

 

「俺に…任せて欲しい。」

 

 

三人は諦め、狩迅の言葉に静かに頷いた。それを見届け、すぐに行動に移った。

 

 

刹那…耳郎達の視界から彼が姿を消した。

周りからヴィラン達の悲鳴やうめき声が聞こえてきた。恐らく原因は狩迅で間違いないであろう。

この一瞬で全てのフロアに行き、全てのヴィランを討伐していたのだ。

 

 

「なんだ!?いきなり倒れてッ!?」

 

 

「おいっ!どうなってる!?」

 

 

ヴィラン達の親玉であろう二人も困惑を隠せないようだった。

 

 

『雄英を襲うと言うことは、覚悟は良いんだな!』

 

 

「ッ!?」

 

 

「敵連合!!」

 

 

「てめぇッ!!」

 

 

「ここで捕らえる!」

 

 

「チッ!やれ脳無!!あのガキを殺せ!」

 

 

二人の間には、脳がむき出しになっている黒い巨体の男がたたずんでいた。

その脳無と言う男は死柄木の言う言葉聞き、狩迅に突進していった。

 

 

 

「あいつだけ異様に様子がおかしい、やるだけやるか…」

 

 

狩迅は脳無を最大限警戒し、月迅竜の状態で腕を迅竜化させ全力で殴った。

 

 

「………………」

 

 

「ッ!?急所を外したとはいえ…まさか!?」

 

 

「当たり前だ…脳無にはショック吸収がある。やるだけ無駄なんだよ!」

 

 

「これまた厄介な奴めッ!」

 

 

狩迅が死柄木に目を移したその刹那だった。戦いの最中によそ見をしてしまうという、

油断をしてしまった。脳無は目にも留まらぬ速度で狩迅を殴り、壁に衝突させた。

 

 

「うごぁっ!?」

 

 

「狩迅君!?」

 

 

「あの馬鹿、突っ込んでいきやがって!」

 

 

(何が…起こった。あの敵に、殴られた?だとしたら、たった一発で…まずい意識が…)

 

 

脳無の猛攻は止まらない、周囲から爆豪や轟、切島に相澤がやってきて攻撃をするがまるで効いてない。

 

 

「そうだ…ムカついたから他の連中を殺して、絶望させてから嬲り殺しにしてやろう!オールマイトも含めてなぁ!まずは………あの緑色のガキをやれ!首を吹きとばせ!」

 

 

死柄木は大笑いしながら緑谷を指差した。

 

 

「まさか…逃げろ緑谷!」

 

 

「緑谷ぁぁぁぁぁ!!」

 

 

切島と峰田が緑谷に逃げるように叫ぶが、それも意味を成さない。その黒い悪魔は刻一刻と迫ってくる。

 

 

(緑谷…………詰めが甘いのは俺か…体が動かねぇ…動けよ、何一発だけで死にかけになってんだ…もうさせないんだろ…誰も…)

 

 

脳無が緑谷に近づき、首を吹き飛ばそうとする。誰もが緑谷の死を確信した。だが、瀕死だったはずの男はそうはさせなかった。

 

 

「させねぇよ…俺はあの時に誓ったんだ…もう誰も、俺の視界から消えさせねぇってよ」

 

 

緑谷に脳無の攻撃が当たる寸前、狩迅が前に出て攻撃を両腕で止めていた。

 

 

「狩迅…君…」

 

 

狩迅には体中に白い紋章が出てきており、色々な情報に緑谷は頭がついていかなかった。

 

 

「まだ動けんのかよ…このチート野郎!もういい殺れ、脳無!」 

 

 

「俺は、誓ったァッ!」

 

 

「来てみろ…ヴィラン、俺は決して跪きはしせんぞッ!」

 

 

その瞬間、狩迅と脳無の真正面の攻防戦が開始される。

 

 

「エィアアアアアアア!!!!」

 

 

「風圧が、こっちまで!」

 

 

「すっげぇ!?」

 

 

(あの傷で、更にリミッターを…あの個性把握テストの時の白い姿にならないのは、きっと…体力が持たないからッ。いつ気絶してもおかしくない。それなのに…)

 

 

「僕達を、命掛けで守るために!」

 

 

「オールマイトから習った、ヒーローはいつだってピンチを乗り越えていくってな!」

 

 

狩迅は脳無を膝蹴りで真上に飛ばし、更に追い打ちで一気に地面に叩きつける。

 

 

『ッ!?』

 

 

「ヒーローに変わって言わせて貰おう!」

 

 

「Pulse Ultraを!」

 

 

『死柄木弔!これでは……』

 

 

「なんでだ…なんで脳無にそこまで食い下がれんだ!」

 

 

「これで、終わらせる!」

 

 

渾身の一撃、それは脳無のみぞおちに深く入り死柄木のそばまで吹き飛ばした。

 

 

「脳無!このクソチート野郎が!」

 

 

「ですが、あの学生は瀕死のはず…今のうちにトドメを!」

 

 

「いつまでも忍者野郎によそ見すんなぁ!」

 

 

爆豪がすぐさま飛びかかり、黒霧を捕らえる。

 

 

「黒霧!クソッて…なんだよこれ!」

 

 

『させねぇよ』

 

 

爆豪と同じく、轟と相澤が個性を使用し、死柄木を止める。一見これで勝ったかのように見え、みんなが安心していると、死柄木の後ろから狩迅が倒したはずの脳無がゆっくりと立ち上がってきた。

 

 

「いい忘れてたけどよ、脳無には超回復もついてんだ。残念だったなぁ」

 

 

再び絶望に叩き落される。もう希望は無い…全員が、そう思っていた。

 

 

「脳無…あのガキを殺せ!」

 

 

脳無が再び狩迅に襲いかかる。そこに一人の少年が立ち上がる。

 

 

「彼に………触るな!」

 

 

緑谷は脳無に攻撃を仕掛ける。フルカウル、限界を超えた20%…脳無に効かないことぐらい分かっている。けれど、緑谷は行動せずにはいられなかった。

 

 

「ありがとよ…緑谷。だがその心配は大丈夫だ。」

 

 

「やってください…オールマイト…!」

 

 

刹那轟音と共に脳無がまたも吹き飛ばされた。

 

 

「みんな、おそくなってすまなかった。もう大丈夫…」

 

 

誰もが聞いたことのある平和の象徴の決め台詞、ハッとその声を辿る。

 

 

「私が、来た!」

 

 

いつもの笑顔では無い、怒りが溢れているオールマイトの姿がそこにはあった。

 

 

「遅いですよ。あとは…頼みました。オールマイト…」

 

 

「勿論だ…緑谷少年も爆豪少年も轟少年も、全員よくやってくれた。」

 

 

「さぁ、始めようか……」

 

 

そこからは脳無とオールマイトの激しい攻防戦が狩迅に続き、行われた。

両者互角、だが脳無には戦闘力はあっても戦略性は無い。徐々にオールマイトに押されていき、最終的にはPulse Ultraの声とともに脳無は吹き飛んでいった。

 

 

「全盛期だったら4発で終わっていたものが、300発以上も打ってしまった。」

 

 

 

死柄木と黒霧は爆豪と轟の包囲を解き、オールマイトに迫っていった。脳無との戦闘で

限界を迎えていたが、飯田が呼びに行った雄英の教師達によって反撃が開始される。

 

 

「1年A組学級委員長、飯田天哉…ただいま戻りました!」

 

 

死柄木と黒影を除く敵連合は壊滅させられていった。

 

 

「オールマイト…次はあのガキと一緒に必ず殺してやる」

 

 

死柄木はそんな事を吐き捨てて、黒霧の個性によって去っていった。こうしてUSJ事件は幕を降ろすこととなる。悪意を残したまま……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大きく話を改変させてもらいました。以前の方が良いという方は申し訳ありません。


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雄英体育祭編
第十話:始まる体育祭


わぁ~い遂に十話だ〜………………言うことねぇ〜
第十話始まるよ☆


結局あのあとヴィラン達には逃げられてしまった。飯田が呼びに言った事により、

オールマイトや他の教師陣のみんなが来たが誰も怪我なく無事に事が終わっていたので

拍子抜けしていた。

一方そのころ……………

 

 

ーーーー敵連合側ーーーー

 

 

「危うかった…もしあと少し逃げるのが遅れていたら…」

 

 

「なんなんだよ…最高傑作じゃなかったのかよ!?ざっけんな!!オールマイトには負けるし、あの狩迅とか言うガキにまで押されやがった!!」

 

 

「そうかい、脳無がやられてしまったか……でもめげてはいけないよ弔。今回は運が悪かっただけさ、チャンスはまだある、やり直して行けばいいんだよ………」

 

 

バーのような暗い空間にあるテレビから謎の男の声が聞こえてくる。

どうやら真の悪夢は、ここからのようだ…………

 

 

ーーーー

 

 

その後、1−A組の全員は一度教室に戻り、起こった出来事を説明し、解散することになった。

 

 

「おい、狩迅…俺が何言いたいかわかるな?」

 

 

『…………』

 

 

「えぇ、分かっています。勝手な行動をしてしまい、すみませんでした。」

 

 

相澤は狩迅に対しての静かな怒りを向けていた。

 

 

「お前は敵が未知数なのにも関わらず、単独で突っ込んでいった。個性の相性が悪ければ、お前が死んでいた可能性もあったんだ。」

 

 

「………」

 

 

「で…でもよぉ先生!狩迅は俺たちを守るために戦ってくれたんすよ?何もそこまで…、」

 

 

上鳴以外にもそのようなことを言う者も多数いたが、相澤は立て続けに言葉を放った。

 

 

「お前らはつくづく合理性に欠ける。もし俺のように個性を無効化する奴がいたらどうする?それこそ集団リンチにされて終わりだ。」

 

 

『……………』

 

 

「まぁいい…今日は解散しろ。」

 

 

A組のみんなはそう言われると、バッグを持って解散した。

その中の数人は帰る途中、狩迅に話を持ちかけた。

 

 

「なぁ狩迅、先生はああ言ったけどさ…俺達お前に感謝してんだぜ?」

 

 

「あぁ、お前がいなかったらと思うとヒヤヒヤしたぜ!」

 

 

「あんまさ、別に気にせんくてもいいんだよ?」

 

 

みんなそう言ってくれているが、狩迅は相澤の言うことに納得をしていた。

狩迅は護身術は身につけて入るが、大方個性に頼っている節がある。

相澤に言われ、その事を痛感していた。

 

 

「ありがとよ…だが先生の言った事も事実…俺も今一度個性と向き合う必要がある。」

 

 

狩迅はそう言うと、一人でそそくさと帰ってしまった。その後ろをA組のみんなはみつめていた。

 

 

(狩迅君…………)

 

 

校門の近くにまで行くと、とある人物が立っていた。

 

 

「今日は大変だっね…君が無事でよかったのさ!」

 

 

「校長……」

 

 

「二人のときは"父さん"と読んでくれたまえ!」

 

 

「あぁ……」

 

 

「あまり無茶はしてはいけないよ。命は一つなんだから…」

 

 

「ありがとう…心配はいらないよ。自愛する。」

 

 

根津校長は雄英高校の教師であり、狩迅の養父でもある。今から約10年前、父と母を失った小さい少年は心の底からヴィランを憎み、それと同時に自分と同じような人を増やしたくない…そう思うようになった。根津と会うのはそこから約1年後、ヴィランに親を殺され、個性のせいで怖がられ、挙句の果て彼自身が殺ったのではないかと噂になっている事を偶然聞いた根津は、事情を聞いたあとすぐに行動をとり、周りの意見も聞かないで引き取った。

狩迅も根津には頭が上がらない。雄英の事を根津に聞いたのはそこから約一週間後。

 

 

狩迅はそう言うと校門をくぐり抜け、自分の家へ帰っていった。

そして数日の時がたった。

 

 

「みんなーーーーー!!!朝のHRが始まるぞ!!席につけーーー!!」 

 

 

「ついてるよ、ついてねーのおめーだけだ。」

 

 

瀬呂が飯田にツッコむ。そんなやりとりをし、飯田は渋々席についた。そして教室の扉が開かれ、相澤が教室に入ってくる。

 

 

「おはよう」

 

 

『おはようございます!』

 

 

相澤は教卓に立つと周りを見渡す。

 

 

「まだ戦いは終わってねぇ。」

 

 

「戦い?」

 

 

「まさか………」

 

 

「またヴィランが!?」

 

 

そして相澤から告げられたその戦いとは……………

 

 

「雄英体育祭が迫ってる。」

 

 

『クソ学校ぽいの来たぁぁぁ!!!!』

 

 

「待って待って!ヴィランに侵入されたばっかなのにも大丈夫なんですか!?」

 

 

「だからこそだ。逆に開催する事によって雄英の危機管理体制が盤石だと示す…って考えらしい。警備は例年の5倍に強化するそうだ。何より雄英の体育祭は…最大のチャンス、ヴィラン如きで中止していい物じゃねぇ。」

 

 

雄英高校の体育祭は日本のビッグイベントの一つ。かつてのオリンピックに変わるのが、この雄英体育祭である。ほかにもスカウト目的でプロヒーローが観に来るぞ。

 

 

「時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に一回、計三回だけのチャンス、ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ。」

 

 

『おおおおお!!』

 

 

みんながみんな、自分なりに気合をいれ、燃え盛っている。一方狩迅はというと…

 

 

(腹…減ったな)

 

 

そんな事を考えている狩迅であった。

そうして放課後、みんなが帰る準備をしていると教室の前に人集りができていた。

 

 

「何事だぁ!?」

 

 

「出れねーじゃん!何しに来たんだよ!」

 

 

「敵情視察だろ雑魚。ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だから体育祭前に見ておきてぇんだろ。」

 

 

「偵察なんて意味ねぇからどけ」

 

 

爆豪は睨みながら、威圧感たっぷりで言った。すると人混みの奥から声が聞こえてくる。

 

 

「どんなもんかと見に来たが随分偉そうだな。ヒーロー科に在籍する奴はみんなこんななのかい?」

 

 

「あぁ!?」

 

 

緑谷達はその言葉に対して全力で首を横に振る。人混みの奥にはやけに気だるげな顔の生徒がいた。

 

 

「こういうの見ちゃうと幻滅するな。普通科にはヒーロー科落ちたから入ったって奴が結構多いんだ。知ってた?そんな俺らにも学校側がチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃ、俺達のヒーロー科への移籍を認めてくれるんだとよ。その逆もまた然り。敵情視察?少なくとも俺は、いくらヒーロー科とはいえ調子に乗ってると足元ごっそり掬っちゃうぞって宣戦布告に来たんだけど。」

 

 

 

大胆不敵な宣戦布告をする普通科の心操人使、そして奥からもう一人…

 

 

「隣のB組のもんだけどよぉ!!ヴィランと戦ったっつぅから話聞こうと思っていたんだがよ!!エラく調子づいちゃってんなオイ!!本番で恥ずかしい事になっぞ!!」

 

 

その後もいろいろとなにかいっていたが狩迅はくだらないといった様子で帰り際に

 

 

「そんな様子じゃ一生かかっても俺達には勝てないぞ?」

 

 

狩迅が挑発的な言葉を放つ。その様子に緑谷は驚き、周囲からは罵声を浴びせられたが

彼は立て続けにこう言った。

 

 

「俺達は常に個性に磨きを掛け、尚且実戦まで経験している。見ただけで勝てると思い上がるな。そんな事をしている暇があったら少しでも力を付けろ。そっちの方が合理的だ。」

 

 

『相澤先生みたいな事言ってる!?』

 

 

驚くA組を尻目に狩迅は去っていった。そしていよいよ体育祭当日。狩迅は音楽を聞きながらその時を待っていた。

 

 

「狩迅君何聞いてるの?」

 

 

「Life Will Change、ペルソナって言うゲームの音楽なんだが、これが良くてな、初めて聞いたときは鳥肌が立った。」

 

 

「僕も今度聞いてみようかな?」

 

 

「他にもRivers in the DesertやReach Out to The Truth、Mass Destructionもいいぞ。

 

 

「英語だと覚えづらいな………」

 

 

そんな他愛もない事を話していると、轟が緑谷に近づいてきた。

所謂宣戦布告と言うもの、狩迅は邪魔しない様にとそっぽ向いていたが、その標的は緑谷だけでは無く狩迅にもあった。

 

 

「そして狩迅、お前にも勝つ。」

 

 

「………俺も…負ける訳にはいかない。」

 

 

「オイゴラァ!!俺抜きでんな事話すなクソがぁ…いいか?この体育祭で勝つのは俺だ…てめぇらまとめて始末してやらぁ!!!」

 

 

1−A組のトップ4が互いに宣戦布告をし合う。

 

 

 

『雄英体育祭!ヒーローのたまごたちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせテメーらアレだろ?こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにもかかわらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!』

 

 

『ヒーロー科!一年A組だろぉ!!!!???』

 

 

入場と共に大きな歓声が流れてくる。会場360度人だらけだ。

 

 

「す…凄い人が……」

 

 

「俄然やる気が出てくる…」

 

 

会場の中心に各クラス事に整列し、開会式が始まる。

 

 

「選手宣誓!」

 

 

「18禁なのに高校にいても良いものか……」

 

 

「いい!!」

 

 

即答、流石変態。

 

 

「選手代表!一年A組、狩迅龍輝!」

 

 

「委員長の飯田か、誰かじゃないのか?」

 

 

「えぇ!?アンタなの!?」

 

 

「まぁ入試一位通過だからな……」

 

 

「まぁいい…行ってくる。」

 

 

「ほらほら早く!飽きられちゃうわよ?」

 

 

「分かっていますよ」

 

 

狩迅はそう言うとマイクの前に立ち、選手宣言をする。

 

 

「まず一言。ここにいる奴らは、人一倍何かを努力し、励んできた。だからここに立っているんだろう。」

 

 

予想外の発言に会場全体が静まり返る。

 

 

「だがそこには、ヒーロー科や普通科、サポート科などと言ったものは関係ない。その諦めなかった過程に俺は全力で敬意を払いたい。」

 

 

「だからあえて言わせてもらおう。宣誓!!俺は、油断も隙も見せない。全力でぶつからせて貰う。一人一人、強敵として。」

 

 

刹那、会場から歓声があがる。ヒーロー科だけでは無く、全ての科からも声があがった。

ヒーロー科は爆豪の件で他の科を舐め腐ってると言う噂を全て掻き消した。

 

 

「ん〜ッそういうの…………本っ当に好み!!!さて興が醒めないうちに、早速始めましょうか!!」

 

 

遂に始まった雄英体育祭、果たして優勝のメダルを掲げるのはいったい誰なのだろうか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ソーラン節のとこも変えました。それでなぜペルソナかって?好きだからだよ(*^^*)
あとスクランブルのCounter Strikeもいいゾ。
一回プレイしてみ?飛ぶぞ?俺飛んだぞ?
ちなみに優勝するの誰だと思います?(^o^)実はねぇ………………


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第十一話:障害物競走

なんか変な方向に向かっていってしまってる………卍解アッチガウ挽回しなければ。


「それでは早速始めるわよ!!第一競技、障害物競走よ!!計11クラスに総当たりレース!コースはこのスタジアムの外周、距離は4kmよ!そしてルールはコースを守れば何でもあり!!」

 

 

「全員のアキレス腱切ってもいいのか?」

 

 

「やめといたほうがいいよ、その全員の恨み買うから」

 

 

真顔で言う狩迅にツッコむ耳郎、今日も平常運転らしい。説明しながらミッドナイトがムチを向けた場所は、一つのゲートだった。二人は有利に進もうと、少し後ろからスタンバイする。ゲートの上にあるスタートのランプが点灯する。

狩迅は足を迅竜化させ、力を込める。そして全てのランプが点灯した瞬間、全員が一斉に飛び出していく。

 

 

「上がガラ空きだ…」

 

 

狩迅は立ち幅跳びの容量で高く飛び、スタジアムの上を通っていった。

 

 

「うっそ!?」

 

 

『マジかよ!?忍者ボーイ狩迅!!スタジアムの上をジャンプで通っていきやがった!?』

 

 

(今だ!)

 

 

轟は全員の視線が狩迅に向いているその隙に半冷の個性を発動させ、ほぼ全員の足を凍らせた。

 

 

「な…なにこれぇ!?」

 

「動けねぇッ!?」

 

 

プレゼントマイク「と思ったら開始早々轟がぶっ放したぁ!全員漏れなく氷漬けだぁ!!」

 

 

「飛んで正解だったな…ん?あれは………」

 

 

狩迅の目線の先にはなにやら見覚えがある物があった。

 

 

『スタートダッシュで先頭に立ったのはA組の轟だ!!さらに連続妨害で氷結を連発していく!!しかし実力者はそれを躱し轟を追いかける!!そしていきなり障害物だ!まずは手始め……第1関門ロボ・インフェルノ!!』

 

 

ヒーロー科の入試の時に出てきたお邪魔虫のヴィランが立ちはだかっていた。

 

 

「入試んときの0ポイントヴィランじゃねぇか!?」

 

「まじかよ!ヒーロー科あんなのと戦ったの!?」

 

「多すぎて通れねぇ!!」

 

「どこからお金出てくるのかしら……」

 

 

轟は冷静に分析している中、八百万はお金の出どころが気になっていた。

 

 

「だが、もっと凄いのを用意して欲しかったな。クソ親父が見てんだからな………」

 

 

轟は氷結で巨大ヴィランを凍らせ、そのまま走り抜ける。みんなはそれに便乗して

できた道を通り抜けようとするが、奥からどんどんと巨大ヴィランが出てくる。

 

 

「通れねぇじゃん!どうすんだよ!?」

 

 

峰田がそう叫んだ瞬間2つの声があがった。

 

 

「竜の…鉤爪!」

 

「フルカウル5%!スマッシュ!」

 

 

狩迅と緑谷である。緑谷はこの数日間で個性の出力を抑え、全身に"身に纏う"事に成功していた。

 

 

「この短期間に…流石に驚いたぞ、緑谷。」

 

 

「君の助言があったからだよ!」

 

 

二人は巨大ヴィランを切り裂き、殴り飛ばしたあとそのまま突き進んでいった。

 

 

『すげぇ!?流石はヴィランの襲撃を耐え抜いただけはあるぜ超新星共!!そして先頭が変わって轟に並んで緑谷と狩迅が追いついたァ!!そしてそうこう言ってる間に第二の仕掛けまで到達!!第一がそんなにぬるかったかぁ?ならこれはどうだ!!奈落に落ちたら即アウト!!ザ・フォール!!』

 

 

「問題無い……この距離なら!」

 

 

狩迅は嚇眼と亜種羅を同時発動させ、地面を蹴り思い切り飛んだ。

緑谷はフルカウルの上限を飛ぶ瞬間一瞬だけ10%にまで上げ、狩迅と同じように飛んだ。

 

 

『二人してなんだあの跳躍力は!?お前のクラスどうなってんの!?』

 

 

「俺に聞くな、彼奴等が勝手に火をつけ合ってんだろうが…」

 

 

『とやかく言っているうちに第二関門突破ァ!!ん?なんだ?後ろから誰かが猛烈な追い上げをしている!!』

 

 

三人は後ろを振り向くと同時に少し冷や汗を掻いた。そこにいたのは…

 

 

「まてやこのクソ共がァッ!!!!」

 

 

爆破の推進力で一気に追いついてきた爆豪がいた。それを見て緑谷はフルカウルを8%に引き上げ、轟は更に個性の威力を上げていき、狩迅は腕も迅竜化させ四足歩行型へとそれぞれが己を鼓舞させていった。

 

 

「狩迅何だ…それは、猫みたいだな…」

 

 

「今思ったんだが、二足歩行より四足歩行の方が速いに決まっていたな」

 

 

「確かに!?」

 

 

「てめぇらふざけてねぇで真面目にやれぇ!!!殺すぞッ!!!」

 

 

『四人とも一気にギアを上げてきたァ!!!このまま最後の第三関門へ突入!一面地雷原!怒りのアフガンだ!!!ってあれぇ!?』

 

 

緑谷と狩迅はジャンプで、轟と爆豪は個性を発動させ空中を進んでいった。

 

 

『忘れてたのかよ、あいつら方法は違えど"飛べるぞ"…』

 

 

『そうだった!!!あそこだけ次元がちげぇ!?』

 

 

実況席、会場ともにその接線に目を離せなかった。そのまま通路に入っていく。

 

 

「ッ!!加速しろッ!!」

 

「負けるかァァァァ!!!フルカウル上限12%!!!」

 

「俺がナンバーワンだァァァ!!!!爆速ターボ!!」

 

狩迅「………………」

 

 

それぞれが自分の最大限を出し勝利を取りにいった。

会場にはほぼ全員同時到着だった。

 

 

『ゴーーーーーール!!っておい!?誰が勝ったんだ!?』

 

 

『ミッドナイト、ビデオを…』

 

 

「えぇ、それではビデオ判定に入ります!画面にご注目!!」

 

 

ビデオが映し出され、会場の全員が目を向ける。コンマ何秒かの差でその場を制したのは…

 

 

 

 

 

「これは………一位通過は、緑谷君!!」

 

 

「えっ?えぇっ!?僕ぅ!?」

 

 

「クソがァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

 

「負けたか…だけど次は勝つぞ…」

 

 

「凄いな緑谷、完敗だ。」

 

 

「う…うん!ありがとう。」

 

 

会場全体が緑谷に対する称賛の声で溢れている中、緑谷は一人考えていた。

 

 

(なんで、狩迅君はあの白い姿を使ってこなかったんだろう。)

 

 

その後も続々とゴールをする一年生。42位までゴールし、中央のスクリーンに結果が映った。

 

1位緑谷出久

2位狩迅龍輝

3位轟焦凍

4位爆豪勝己

5位塩崎茨

6位骨抜柔造

7位飯田天哉

8位常闇踏陰

9位瀬呂範太

10位切島鋭児郎

11位鉄哲徹鐵

12位尾白猿尾

13位泡瀬洋雪

14位蛙吹梅雨

15位障子目蔵

16位砂糖力道

17位麗日お茶子

18位八百万百

19位峰田実

20位芦戸三奈

21位口田甲司

22位耳郎響香

23位回原旋

24位円場硬成

25位上鳴電気

26位凡戸固次郎

27位柳レイ子

28位心操人使

29位拳藤一佳

30位宍田獣郎太

31位黒色支配

32位小大唯

33位鱗飛龍

34位庄田二連撃

35位小森希乃子

36位鎌切尖

37位物間寧人

38位角取ポニー

39位葉隠透

40位取蔭切奈

41位吹出漫我

42位発目明

 

 

「ヒーロー科ばかりだと思っていたが、普通科とサポート科が一人ずつだがいるな」

 

 

「あ?大方まぐれだろ。雑魚には興味なんざねぇよ」

 

 

「さぁ…………どうだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなんか余っちゃった。

 




んな事は置いといて、次回からは騎馬戦か…………どうしよ……


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第十二話:嵐の前の戦い

なんとかギリギリ投稿できたぁ!本日は一本だけとなります。すんません…
とゆことで第十二話騎馬戦はっじまーるよ〜


第一種目が終わり、結果は緑谷の勝ち。それに続き狩迅・轟・爆豪と名前がモニターに映し出され、もうすぐ第二種目のルールが説明される。

 

 

「落ちちゃった人もまだ見せ場はあるから安心しなさい!それよりもここからが本戦!第二種目………」

 

 

『騎馬戦よ!!』

 

 

まさかの個人競技では無く、団体戦。その事に周囲がざわつく中ミッドナイトは説明を始めた。

 

「参加者は二人から四人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じだけど、一つ違うのが先程の結果に従い各自にポイントが振り当てられる事!」

 

 

モニターに例の図が映し出された。オールマイトが騎手、騎馬が13号、プレゼントマイク、スナイプとかなりバランスが悪く見えるが、全員あえてツッコまなかった。

 

 

「そして与えられるポイントは下から5ずつ!42位は5ポイント、41位が10ポイントと言った具合よ!」

 

 

「そして1位に与えられるポイントは、1000万!!」

 

 

緑谷が目を点にしている。無理もないだろう、突然の予想外の発言、更に追い打ちで、みんなからネズミを見つけたときのハイエナの様な目線を送られていたのだ。

 

 

「そんな訳で、上位のやつ程狙われちゃう…下剋上サバイバルよ!」

 

 

「なる程、実質緑谷のそれの奪い合いか…」

 

 

「…………………」

 

 

緑谷から大量の汗が吹きでる。だが時は残酷で、どんどんと過ぎていく。

 

 

「今から15分間、交渉時間のスタートよ!」

 

 

「ど…どうしよう…………」

 

 

ーーーー

 

「まさか……飯田君に断られるなんて…!」

ーーーー

 

『君の申し出は嬉しいが、断らせてもらう。俺は君に挑みたいんだ………』

 

ーーーー

 

「まずいよ!どうしよう…………」

 

 

緑谷の元には麗日が一緒にいた。この状況下で緑谷の味方に付くということは皆から一斉攻撃で狙われるということ、それを跳ね除け彼の味方になった麗日は流石と言うべきだろう。

 

 

緑谷は飯田に断られたことにより、作戦が白紙に戻ってしまったが、そこはヒーロー達を見てきた経験を生かしすぐに新しい作戦を考える。まずは防御力を補うため、一人の生徒に声を掛けた。

 

 

「君の力を借りたいんだ!常闇君!!」

 

 

「理由を聞こうか…………」

 

 

常闇の個性は黒影、意思を持っていることにより、変幻自在に物事に対応する事ができ、

尚且遠距離も可能。緑谷は常闇に力を借りたい理由を話し、無事に入ってくれる事になった。

 

 

「だが緑谷、流石にこの戦力じゃ轟や爆豪にかなうとは思えん。何か策はあるのか?」

 

 

「うん…これは賭けだけど、一人だけ知ってる………」

 

 

「轟君よりも強くて、かっちゃんよりも怯むことを知らない人を………」

 

 

 

 

 

 

 

「僕達と一緒に戦ってほしいんだ……狩迅君!!」

 

 

「何故俺を選んだ」

 

 

誰を味方にするか考えていた狩迅の元へ、緑谷達が訪れた。

 

 

「まず君は、単純な戦闘力に加え遠距離攻撃もできる。尚且硬度は切島君よりも硬く常闇君と一緒に防御に徹する事もできるし、冷静な状況判断ができる。」

 

 

「正直言って、君が味方になる事以上に心強い事は無いよ。」

 

 

「お願い狩迅君ッ!狩迅君が一緒にだとすっごい心強いよ!」

 

 

「俺からも頼もう、闇に生きる者同士としてな」

 

 

狩迅は少し迷ったが、即座に返事をした。

 

 

「作戦を教えろ…必ず勝つぞ」

 

 

「……狩迅君!」

 

 

緑谷は常闇の時以上の涙の滝を流し、麗日と常闇も嬉しそうに頷いていた

 

 

『終了!!交渉タイムは終わりよ!早速騎馬を作りなさい!』

 

 

「急げ緑谷!早く策を!」

 

 

「う…うん!えっとまずは…………………」

 

 

ーーーー

 

 

「あいつらが組むのかよ!」

 

 

「まさか…油断したら終わりですわね………」

 

 

「策士と最強かよ……」

 

 

周意からも不安の声や警戒する声などがあがる。だがその中でも轟と爆豪はひたすらに闘争心を燃やしていた。

 

 

「纏めて凍らせる………」

 

 

「纏めてぶっ殺す!!」

 

 

緑谷の作戦により、陣形は狩迅が前騎馬、麗日が左、常闇が右、緑谷が騎手となった。         

 

 

「いくよ、みんな!」

 

 

「うんッ!!」

 

 

「任せろ、黒影!」

 

 

「あぁ」

 

 

そして1000万争奪戦である第二種目、騎馬戦が開始した。

 

 

 

『さぁ始まっぞ!?今!合戦が!スタァァァァァト!!!』

 

 

プレゼントマイクの叫びと共に騎馬戦が開始した。狩迅は足を迅竜化させ、素早く対応しようとしていた。

ただ一つ問題が生まれ、常闇は光に弱いらしく夜は獰猛で強く、昼は弱いが制御できると言う。

それを聞いた緑谷は常闇は防御に徹してほしいと願った。

 

 

「オラァ!!実質1000万の奪い合いだ!」

 

 

「悪いけど、貰うよ!1000万!!」

 

 

「早速か…これも追われし者の宿命!選択しろ緑谷!」

 

 

「勿論!逃げの一手!!」

 

 

「了解……ッ!?」

 

 

逃げようとする為に動こうとした瞬間、地面が沈み始めた。これは鉄哲の騎馬の一人である骨抜の個性。

 

 

「そういえばあいつも推薦入学者か!麗日!」

 

 

「うん!」

 

 

麗日は全員の重力をゼロにする。狩迅は尻尾を生やし地面を叩きつけ、脱出した。

 

 

「と…飛びやがった!?」

 

 

「まだまだ!発目ちゃん!!」

 

 

サポート科、発目明特製品のアーム射出装置が起動し、緑谷達を捕まえようとする。

 

 

「捕えなさい!ベイビー!!」

 

 

「チッ黒影!」

 

 

『アイヨ!』

 

 

常闇の黒影が装置を薙ぎ払い、足止めをする。すかさずその隙に狩迅が攻撃する。

 

 

「お前ら!耳塞げ!」

 

 

狩迅はそう言うと、全員の耳を塞がせた。

 

 

「ッ!?ヤバい、なにか来る!!」

 

 

(竜の……………咆吼!!!)

 

 

狩迅は声帯を迅竜化させ、思い切り叫んだ。

 

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

 

これは葉隠達だけでは無く、その大音量に会場全体の人が耳を塞ぐ。間近で受けていた葉隠達は勿論、

他の数組も感覚が麻痺し、立ち止まっていた。

 

 

「すっごい………」

 

 

「お前らには被害が及ばないよう声帯を改造したが、大丈夫そうだな。逃げるぞ!」

 

 

確認を取るとすぐさま走って逃げていく狩迅達、だが追っていたのは勿論葉隠達だけでは無い。

 

 

「ッ!?下に何かあるよ!!」

 

 

「あれは峰田君の……!」

 

 

そこには着地点を見計らっていたかのように峰田のもぎもぎが設置されていた。

あれに付いたら最後、この騎馬戦が終わるまでは決して離れられないだろう。狩迅と常闇は連携して

軌道を変え、着地していく。その時だった。

 

 

「真空波!」

 

 

スパァンと言う音と共にこちらに向かっていたもぎもぎが真っ二つになった。

 

 

「障子君!?えっ一人だけ?」

 

 

緑谷が困惑してる中、すぐに嚇眼で確認をする狩迅。

 

 

「障子の背中の上に蛙吹と峰田がいる!大方あの二人は小さいからスッポリと入ったんだろう。」

 

 

「流石ね狩迅ちゃん。あと私の事は梅雨ちゃんと呼んで…………!」

 

 

蛙吹の舌が伸び、緑谷のハチマキを奪おうとする。間一髪で避けて入るが、当たるのも時間の問題だろう。

 

 

「勝たせてもらうぞ、緑谷、常闇、麗日、狩迅!」

 

 

緑谷「三人共!早く逃げ……えっ!?かっちゃん!?」

 

 

障子の後ろからまさかの爆豪が空を飛んで突撃を仕掛けてきた。

 

 

「デェェェェクゥゥゥゥッッ!!!調子乗ってんじゃねぇ!!死ねぇぇぇ!!!!」

 

 

『サセネーヨ』

 

 

爆豪の爆破を防ごうとする黒影が飛び出した。攻撃は不発になり、瀬呂によって回収された。

 

 

「行くときゃ何とか言え爆豪!」

 

 

「俺が狙うのは完膚無きまでの一位なんだよッ!!」

 

 

麗日「すごい狙われてるね………」

 

 

「あぁ…だが全員が全員、1000万を取ろうとしている訳じゃない。一位はやめて二位三位を狙う奴もいる。」

 

 

「それがせめてもの救いだな。」

 

 

「うん!この調子で逃げ切ろう!」

 

 

「そんな事を俺が許すと思うか」

 

 

そんな声と共に轟が姿を表した。四人とも全員、表情が険しくなる。

 

 

「………一番厄介な奴が来やがったな………轟!!」

 

 

「狩迅…お前は単体だったら強ぇが、周りには緑谷達がいる。自由には動けねぇだろ」

 

 

「……やってみなきゃ分からんさ」

 

 

「皆!足を止めないで!仕掛けてくるのは轟君達だけじゃない!」

 

 

周りからも一斉に攻めてき始めた。本命は緑谷の1000万だが、轟も三位で200ポイント程ある。取れるなら取っておきたいだろう。

 

 

「クソッ!黒影!」

 

 

『アイヨ』

 

 

常闇の黒影で峰田のチームに応戦、狩迅は葉隠、爆豪のチームに対応する。

 

 

「いけぇ障子!全部ぶん取ってやれ!」

 

 

「どけ葡萄野郎!コラデクゥゥゥ!!」

 

 

「数が多すぎる!麗日さんもう一度重力を!」

 

 

「八百万、あれを作ってくれ」

 

 

「もう準備できていますわ、上鳴さん!」

 

 

「おうよ!」

 

 

上鳴が何かを仕掛けてくる。狩迅はそれをいち早くに確認し、常闇の黒影を下げさせた。

 

 

「麗日!早く!」

 

 

「避けろよ轟!無差別放電130万Vだ!!」

 

 

上鳴が叫んだ瞬間、周囲を眩しい電撃が駆け巡る。

 

 

「あっぶね!?」

 

 

「あと一歩前に出てたら死んでた………!」

 

 

間一髪で避けていた緑谷たちだが、轟の氷結が更に追い打ちをかける。周りの騎馬の足を氷結させ、動きを止めた。

 

 

「まずい!?」

 

 

「麗日!右へ避けろ!鎌鼬!」

 

 

狩迅の鎌鼬と轟の氷結が相殺する。

 

 

「チッ、追いかけるぞ!…ッ!?」

 

 

「うぇ〜いうぇ〜い!」

 

 

「上鳴君!?」

 

 

「まさかさっきので使い果たして……」

 

 

そこにいたのはジャミングウェイ状態の上鳴だった。電気の使いすぎにより起こり、しばらくの間著しくアホになる。

 

 

「クソッ!立て直す。ここであいつらを捉える!」

 

 

轟はすぐさま態勢を立て直し、緑谷の元へ向かう。だがこの戦いはA組の物だけだは無い。B組の学生達も緑谷チームを追いかける。

 

 

「B組の奴らも来やがった…麗日!もういちd!?」

 

 

狩迅達の足には謎の白い液体が絡みついて離れない。B組の凡戸固次郎の個性のボンド、その名のとうり強力なボンドを飛ばす事ができる個性。

 

 

「う…動けへん!」

 

 

なんとかして抜け出そうとするが、徐々にボンドが固まっていき動けなくなっていく。更に追い打ちを仕掛けられ、

轟の氷結、骨抜の地面に沈む個性、発明の装置、爆豪の爆破などにより退路を断たれ、動けなくなってしまう。

 

 

「戦ってるのはA組だけじゃねぇよ」

 

 

「そのままくたばれぇぇぇッッ!!」

 

 

「ごめんだけど、ウチらだって勝ちたいんだよ」

 

 

「今だ!畳み掛けろ!」

 

 

「オラァァァ!待てぇ!!」

 

 

「…………」

 

 

全方位から一斉に仕掛けられ、万事休すとなってしまった。

 

 

「まずい!?はやく態勢を!」

 

 

緊急事態だと言うのに、狩迅がなにか妙な事を言い始める。

 

 

 

「緑谷、逆だ…いっそ近づけてしまえばいい!」

 

 

「どういう事!?」

 

 

「緑谷!麗日!常闇!」

 

 

『ッ!!』

 

 

「俺に考えがある。しっかり掴まっといてくれよ…」

 

 

「狩迅君ッ!」

 

 

「掴まる?どういう事だ。」

 

 

「もうすぐそこまで!」

 

 

「忘れてないだろうな…USJの時のやつをよ」

 

 

 

月迅竜に似た白いオーラのような物が溢れてきた。だが決定的に違うものがある。

 

 

『なんだなんだ!?いきなり緑谷チームが白い光に包まれたぞ!?いやホントになんだ!?』

 

 

「まさかこりゃ…ヴィラン連合ん時の!」

 

 

「みなさん!警戒を!」

 

 

「分かってる。遂に使ってきたか………」

 

 

「クソがッ近づけねぇ!」

 

 

周囲がざわつく中、光の中で限りなく小さい声で狩迅が呟いた。

 

 

 

「名前をつけ忘れていたな………よし決めた、"白疾風"…なんてどうだ」

 

 

その白い光の中から現れたのは、以前対脳無戦で見せた、"極み駆ける"に次ぐ力、白疾風

だった。

 

 

「制限時間は10分も無いだろう…速攻で終わらせる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




USJ編のやつと一回ちょっと書き直しました。これでもまだ未完成なのでしばらくお待ちを。流石に厨二臭くて恥ずかしかったぞ!あと他の人のやつに似てた!ごめんなさい!
完全体はもうちょい後で


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第十三話:騎馬戦 終

どうも、最近鬼滅の二期がくることを知ったけどけどフジテ○ビが関係している事も知って焦っているシロロです。
一つ訪ねたいことがあります…………タグの付け方誰か教えて下さい………


「狩迅君…その姿は……」

 

 

「白い痣だ!」

 

 

「痣じゃなくて紋章って言ってほしいんだが…まぁいい」

 

 

「この姿にはあまり慣れてない。そして尚且制限時間は体感だが恐らく8分程度、

この騎馬戦の残り時間はあと9分…あとの1分は何とか考えておいてくれ!」

 

 

狩迅はそれだけを言うと他の騎馬へ一直線に向かう。そのスピードはオールマイト並、

誰も目で追うことは出来なかった。

 

 

「はっや!?見えなかったぞ!!」

 

 

「確かに速い、だけどオイラのもぎもぎの前には速さなど無力よ!」

 

 

「そういう事は自分のハチマキを守りきってから言うんだな」

 

 

「おい!お前ハチマキはどうした!?」

 

「いつの間にか無くなってる!?」

 

「いやどうやったんだ!?」

 

 

「なッ!オイラのハチマキが!!」

 

 

「俺のも、ねぇ…!」

 

 

「あんのシマシマ野郎ッッッッ!!!」

 

 

いつの間にか狩迅によって全てのハチマキが回収されていた。冷静に解析する者もいるが、

大抵が大焦り、すぐに狩迅の元へ奪い介しに行く。

 

 

「僕達以外のポイントが、0になってる!なんでみんなのまで!?」

 

 

『オーっとォ!!ここで緑谷チームが怒涛の反撃!まさかの全ポイント奪取!!まじではえぇ!!!合計10004305ポイントだぁッ!!』

 

 

「爆豪と同じ意見になるが、勝つんなら圧倒的な勝利がいいだろ?」

 

 

「そんな無茶な!?」

 

 

「俺が漆黒のヒーローなら、差詰お前は白銀の戦士か!悪くない…」

 

 

「みんなの目が更に殺意増々になっとる……」

 

 

「変な異名をつけるな!喋ってる暇は無いぞ…!」

 

 

緑谷達が会話をしている間にも刻一刻と全ての騎馬がやってくる。

 

 

「返して貰うぞッ!」

 

 

「デェェェェクゥゥゥゥッッ!返しやがれぇぇ!」

 

 

「ひっ!?か…かっちゃん!!」

 

 

「憎きA組め……そこまでして目立ちたいか!いいだろう、受けて立ってあげるよ……

B組全員、一時休戦だ!」

 

 

「お前の言うことはあんま聞きたくないけど、そう言ってる場合じゃないね……しょうがない…手伝ってあげるよ!」

 

 

「ぬぉぉぉぉァァァッ!!負けるかぁァァァ!!」

 

 

「みんなこっち来る!狩迅君、お願い!」

 

 

「耐えるぞ、ここが正念場!」

 

 

騎馬戦終了まで残り7分………

 

 

「ならもう一回!離れてて!」

 

 

「行って!爆豪!」

 

 

「わかってらぁ!!」

 

 

「塩崎、頼む!」

 

 

「お任せを、神のご加護があらんことを……」

 

 

「障子!急げぇ!」

 

 

「分かってる、クソッ!」

 

 

四方八方から先程の様な攻撃が飛んでくる。狩迅はこの状態では状況判断がうまくできなくなる為、できるだけ素早く済ませ、黒影に指示を出した。

 

 

「2度はくらわん!!すまない、黒影!緑谷達を抱えてくれ!」

 

 

『マカセロ』

 

 

「何を言って…うわ!?」

 

 

緑谷達を上方向に投げ飛ばし、周囲の目線が上に向く。全員に一瞬の隙ができ、狩迅はそこを突いた。

 

 

(竜の………)

 

 

大きく息を吸うと、腰を低く落とし態勢を作る。それにいち早くに気づいたのは葉隠達だった。

 

 

「耳郎ちゃん!狩迅君が!」

 

 

「まずいね…砂糖、地面思いっきり殴って!」

 

 

「あ…あぁ、分かった!」

 

 

耳郎は地面に自身のイヤホン・ジャックを刺し、砂糖に地面を殴らせ、竜の咆哮を相殺しようとしていた。

 

 

(咆哮!)

 

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

 

狩迅の竜の咆哮と耳郎のイヤホン・ジャックを応用した技は、始めは互角かに見えたが、

すぐに耳郎の音が掻き消され、もろにくらってしまった。

 

 

「うっぐッ…これは、私のベイビーでもどうしようもできません……!」

 

 

「なんでッ!?前のとは比べ物にならない!」

 

 

(そりゃそうだろう。なにせ"白疾風"の影響で更に強化されているんだからな。自分の耳ですら痛え!)

 

 

「黒影!こっちに戻れ!」

 

 

『オッケー、あとお前うるせぇ』

 

 

「それは悪かったな!」

 

 

上に投げていた緑谷と常闇と麗日を回収し、すぐさま撤退する。

 

 

「私に言ってくれればよかったのに…」

 

 

「麗日は無重力ってだけで、そこまで速度は無い。上手く立ち回れなくて悪かった…」

 

 

「大丈夫!このまま行っちゃおう!」

 

 

騎馬戦、残り時間3分…

 

 

「緑谷!残り一分のときの作戦は思い付いたか!」

 

 

「ごめんまだ!」

 

 

(狩迅君がダウン状態の時、無個性の人と同等のレベルになる事を仮定して…

麗日さんのゼログラビティで空中へ……いやかっちゃんや轟君にやられるのが目に見えてる。なら僕の個性で敵をふっ飛ばす?駄目だ、これも悪質な妨害として扱われる可能性がある。なら…いったいどうすれば………)

 

 

「まずいぞ緑谷、狩迅の息があがってきている。」

 

 

狩迅の活動限界時間まで残り2分、絶望的な状況の中で一人の救世主が囁いた。

 

 

「デク君!私に…考えがあるの…」

 

 

「ッ!是非、教えてほしい!」

 

 

麗日は自分なりの考えを話した。

 

 

「本当に上手くいくのか?」

 

 

「ここまで来たら、やるしかないよ…」

 

 

「……………頼んだ」

 

 

「まず、時間になったら常闇君の黒影で狩迅君の周りに張り付いて黒いオーラみたいにしといて、その次にデク君が後ろでバレないようパンチか何かで風を起こして!最後の仕上げに私が狩迅君を浮かす!黒影は飛んでいかないようにつかんでて!」

 

 

「そして狩迅君は"お遊びは終わりだ"みたいな事言ってまだ変身できるアピールをする!これで行くよ!でも、もしもそれでも駄目だったら………」

 

 

ここまで聞いて分かったとは思うが…これは周りの人が狩迅の持続時間に気づいていないからこそできる芸当、つまりは"ハッタリ"である。

 

 

(残り………5秒、4、3、2、1!)

 

 

「残り一分!」

 

 

その声と共に作戦は実行された。

 

 

「さて……お遊びはここまでだ。」

 

 

狩迅は殺意を最大限に込めて言い放った。その言葉に周囲がざわつく。動きを止め、冷や汗を流す。

 

 

「お遊びって……まさかあれで全力じゃねぇのか!?」

 

 

「まさかあれですら、力の一端だと言うのですか!」

 

 

「確かにあの白い姿を使っていねぇし、やつの今の姿は不気味な程何故か黒い………チッ…迂闊に近づけねぇ」

 

 

残り三十秒………

 

 

「だけど……だからといって、恐ろしいからと言って引き下がるわけにはいかない!轟君!今から奥の手を出す!しばらくの間、俺は使い物にならない!頼んだよ!」

 

 

残り二十秒……

 

 

「んなもん関係ねぇ!瀬呂!」

 

 

「言うと思ったよ、畜生!ぜってぇ取ってこいよ!」

 

 

「レシプロ……」

 

 

「爆速……」

 

 

残り十秒……

 

 

(だと思ったよ……これくらいじゃあ、お前らが怯む訳がなかった…)

 

 

「バースト!」

 

 

「ターボォ!」

 

 

「だからこそだ………緑谷!!」

 

 

「黒影!二人を守れ!」

 

 

『アイヨ!』

 

 

「いくよ、デク君!」

 

 

「スマァァァァッシュゥゥゥ!!」

 

 

緑谷は麗日の個性とタイミングを合わせ、指を全力で弾き空高く飛び上がっていった。

指は怪我をしてしまうが、最早関係ない。リカバリーガールに治してもらえればいい。

 

 

(もしもの事を考えて正解だった、…あの距離は、残りの時間じゃ誰も追いつけはしない!)

 

 

「囮か!」

 

 

「まてよ…俺はまた…てめぇに!」

 

 

そして時はやってくる。

 

 

『タイムアップ!激戦の中勝利の栄光を手に入れたチームは、開始早々のピンチからのどんでん返し!その力と頭脳で全てのポイントを根こそぎ奪い尽くしたクレイジー野郎共!!緑谷出久チームだァァァ!!』

 

 

(緑谷の奴…泣きながら笑ってやがる)

 

 

宙に浮きながら、緑谷は心のなかでオールマイトが言ったことを有言実行できた事を途方もなく喜んでいた。

 

 

(オールマイト……僕がいるって事、世界に伝えられたよ!)

 

 

観客席からは盛大な拍手と称賛の声で溢れかえっていた。オールマイトを含め、その5人は微笑み合いながら喜び合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




保険として:狩迅君は基本的に短期決戦型で、長い間全力で戦うことが出来ません。
他にも何か、欠点やおかしな部分があったら教えて下さい。ふぅ…ツカレタ
あといくつかの話を編集したので、厨二臭い発言はあらかた片付けた…………はず……


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第十四話:トーナメント

色々と大変ダッタナァ。行事が最近多くて困るわい。


見事ぶっちぎりの1位をもぎ取った緑谷チーム、緑谷はこれで障害物競走、騎馬戦と共に

素晴らしい成績を収め、現在プロヒーローから一番の注目を集めている。

 

そして結局、2位以下の順位が存在しなかったため敢え無くもう一度緑谷達のポイントを除外した騎馬戦が開始された。

そして最もポイントを取ったチームは1位爆豪チーム、2位轟チーム、3位心操チームとなった。

そんな中、緑谷は轟に呼ばれ薄暗い通路に足を運んでいた。

 

 

「わりぃな。急に呼び出しちまって」

 

 

「う…ううん大丈夫だよ。僕もう食べ終わってたし…」

 

 

「話がしたかった。聞きてぇ事があってな…緑谷」

 

 

「な…なに?」

 

 

「気になってたんだ。おまえ、オールマイトの隠し子かなんかか?」

 

 

「えッ!?」

 

 

オールマイトとの関係性について問いただされた緑谷は激しく動揺していた。

緑谷にはオールマイトと約束した、決してバレてはいけない秘密がある。

 

 

「そ…そんな、僕がオールマイトの隠し子なんて………」

 

 

「そうか…」

 

 

その後も轟は話を続けた。自分の父親であるエンデヴァーの事、自分の過去の事、個性婚によって産まされた事…

轟が、やけに右しか使わない理由も。緑谷はその壮絶な轟の過去に絶句していた。

そして通路の死角からその事を静かに狩迅と爆豪も聞いていた。

 

 

「……………」

 

 

(様子がおかしいと来てみれば…)

 

 

「記憶の中の母さんは、いつも泣いてる。あんな男のくだらない理想の為に、今も病院で一人でいる。

だからこそだ…左の炎は使わねぇ…母さんの力で一番になって、あいつを真っ向から完全否定する。」

 

 

(片方の力しか使わない…それは爆豪は勿論、戦う者全てを侮辱しているとしか…俺は思えんな。)

 

 

狩迅は爆豪を残してそのまま音も無く去っていった。

 

 

ーーーー

 

『昼休憩がおわり、最終種目の時間だァ!だがその前に失格者のみんなに朗報だ。あくまでも体育祭!全員参加のレクリエーションがあるぞ!更にアメリカからマジもんのチアリーディングのみんなも来て会場も大盛り上がり!と言いたいんだが………どうしたA組!?』

 

 

「よく考えりゃあ相澤先生がこの二人に伝言頼む訳なかったじゃん……」

 

 

「騙しましたわね!?」

 

 

「イエアアアアア!!!」

 

 

A組の女子がチアの服を着ており、案の定その犯人は変態トップツーの上鳴と峰田だった。

 

 

「まぁー花があっていいんじゃねぇか!?そんじゃあ仕切り直してレクリエーションを始めるぜ!」

 

マイクの合図でレクリエーションがスタートした。

 

ーーーー

 

「爆豪〜ちょっと来てくれ」

 

 

「あ?」

 

 

「性格悪い人連れてこいだってよ」

 

 

「コロス」

 

ーーーー

 

『いよいよお待ちかね!勝ち残るのは誰かッ!?本日のメインイベントォ!トーナメント戦の開幕だァァァ!!!実況は自称解説王ことプレゼントマイクと!ミイラマン改めイレイザーヘッドでお送りするぜ!!』

 

 

『自称かよ…時間が惜しいから早く説明しろ。』

 

 

『まったくせっかちな野郎だぜー?ま、やるけど!そんじゃあ早速ルール説明だ!』

 

 

『ルールは簡単!このバトルステージでタイマンで戦って、戦闘不能あるいは場外にした方の勝ちだ!!当然だがアンチヒーローな行動はご法度だぜ!?それじゃあミッドナイト!』

 

 

「では、対戦カードを発表していくわ!」

 

 

モニターに勝ち上がった16名の名前がランダムに配置される。

 

 

第1試合:緑谷vs心操

 

第2試合:轟vs瀬呂

 

第3試合:上鳴vs塩崎

 

第4試合:飯田vs青山

 

第5試合:芦戸vs常闇 

 

第6試合:狩迅vs八百万

 

第7試合:鉄哲vs切島

 

第8試合:麗日vs爆豪

 

 

(こんなに早くに轟君と…!?)

 

 

(初手から轟かよぉおお!?)

 

 

「麗日ぁ?」

 

 

「ひぃぃぃぃ!!?」

 

 

それぞれが多種多様な反応をし、それと同時に緊張していた。

 

 

『なかなか愉快な組み合わせじゃねぇか!第一回戦は十分後に始まるぜ!楽しみにまってな!』

 

 

ちなみにだが、心操チームだった青山以外の二人は何もしてない者が戦うのは相応しくないと言い辞退し、

塩崎と鉄哲が入る事となった。そして十分後…いよいよ始まる。

 

 

『リスナー諸君ッ!待たせたなッ!気分はデートの待ちあわせ場所で待つ恋人気分かぁ!?

もう意中の相手は目の前だぜ!!』

 

 

『キャラに合ってねぇ例えだな』

 

 

『うっせぇ!?第1試合はこの二人の対戦だァ!!』

 

 

プレゼントマイクの呼びかけでスタジアムに向かっていく。

 

 

『障害物競走、騎馬戦と共に1位をもぎ取ったクレイジーBOY!人は顔で判断しちゃいけねぇってのはこいつのことかぁ?緑谷出久!!!』

 

 

(緊張してきたぁ……)

 

 

『対して!ごめんまだそれっぽい活躍見てねぇ…普通科、心操人使!!』

 

 

「………」

 

 

そして始まる第1試合、緑谷vs心操。結果から言うと緑谷の勝利だった。心操の個性は自分の問に答えた相手を洗脳すると言う物。緑谷は心操の挑発に乗ってしまい場外付近にまで近づいていき終わりかと思われたが、間一髪で指を弾く事でそれを回避し、心操を場外にフルカウルでふっ飛ばした。指は思わず50%の力で放出してしまいかなり痛むがリカバリーガールにかかればすぐに治るものだった。心操はこの一軒で普通科の希望の星と讃えられ、緑谷に礼を言い去っていった。

 

 

続いて第2試合轟vs瀬呂、瀬呂が轟を不意打ちで場外に押し出そうとするが、轟は一瞬にしてスタジアムをはみ出す程の氷結をくり出し瀬呂を圧倒。周りからもドンマイコールが流れるほどだった。

 

 

第3試合上鳴vs塩崎。上鳴は調子に乗り塩崎を食事の誘いをし、一瞬で勝負をつける…つもりだったらしいが

塩崎には電撃系の個性は効かないらしく、場外に放り投げられた。

 

 

第4試合飯田vs青山、言わずもがな飯田の勝利である。青山はネビルレーザーを連発し腹痛を起こしたところを

飯田が脳天キック一発でノックダウン。

 

 

第5試合芦戸vs常闇、芦戸の酸は黒影には効かないらしく、終始常闇が圧倒していた。芦戸はそれらしい遠距離技を

持っておらず、近距離戦に持ち込もうとするが黒影はそれを許さず場外に押し出されてしまった。

 

 

そして第6試合…

 

 

(お相手は…狩迅さん。情報によると長期決戦が苦手とのこと。ここは耐えるしか…!)

 

 

「………………」

 

 

「第6試合、初め!!」

 

 

八百万は素早く大盾を創造し、狩迅の攻撃を警戒する。それに合わせ狩迅は右腕を迅竜化させ後ろに引き、構えを取る。そしてあのとき見せた白疾風の姿になる。

 

 

(その距離からは攻撃は当たらない!だとしたら、いったいどこから…ッ!)

 

 

狩迅は引いていた拳を突きだす。前では無く、真上に。その瞬間、途轍もない風圧が会場全体を襲う。

体重が軽い峰田のようなのは吹き飛びかけ、八百万は壁に叩きつけられた。

 

 

『………………………ッ!?』

 

 

轟の時のように、その迫力に全員が口を開けなかった。

 

 

「お…おい、あれ……」

 

 

ヒーローらしき男が空を指差す。そこにあったのは、ものの見事に風穴が空いた雲だった。

 

 

(拳を振り上げただけで…あの威力ッ!?あんな事ができるのは…オールマイト並の…!!)

 

 

「そんな……まさか………」

 

 

八百万はそう言うと気絶してしまった。この時緑谷を含め、全員が自覚した。自分等が挑むのは、戦闘力なら平和の象徴にも引けを取らない、史上最強の高校生だと。

 

 

「ミッドナイト……審判を」

 

 

「し…勝者、狩迅君!」

 

 

歓声は起きなかった。

 

 

その後も試合は続き、第7試合は鉄哲と切島の暑苦しいぶん殴り合いが始まり両者共にダウンした。

最終的な判断は後で腕相撲か何かで決めるらしい。

 

 

第8試合爆豪vs麗日。爆豪は爆破の個性で麗日を圧倒していた。驚異的なのはその反射速度。麗日が近づいても

爆豪には辿り着けなかった。そうして繰り返すうちに会場から批判の声があがった。

つまり、ブーイングである。

 

 

「それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力者があんならさっさと外に出せよ!」

 

「女の子をいたぶってあそんでんじゃねぇよ!」

 

 

(…………)

 

 

狩迅は真剣に戦ってる爆豪を批判する声に対し青筋を立て、怒りの表情を浮かべている。

 

 

「虫酸が走る…これ程腹がたったのは久しぶりだ…爆豪は麗日を認めている、だからこそだ、だからこそ最大限の警戒をして戦ってんだろうが。そして始めから麗日が負けると思い込んでいることにも腹が立つッ…何故自分等が

あの二人を最も侮辱している事に気が付かないんだ……」

 

 

狩迅は小さく呟く。

 

 

『今言ったのプロか?何年目だ?くだらない事言ってんなら、帰って転職サイトでも見てろ。』

 

 

相澤から喝が入る。その場の批判していた全員が黙った。

 

 

『爆豪はここまで来た麗日を認めてるから、油断も隙も見せないんだろうが。』

 

 

『…………………』

 

 

その後も爆豪の猛攻は止まらなかったが、麗日も決して諦めない。油断しない爆豪に感謝をしながら、密かに流星群を作っていた麗日だったが、爆豪の爆破により一撃で吹き飛ばされた。それでも立ち上がる。父と母の為に、

そして少しでも緑谷に近づく為に。だがその思いも儚く散り、キャパオーバーしてしまい気絶…爆豪の勝利となった。

 

 

「どこが…か弱いんだよ…」

 

 

緑谷はすぐに麗日の元へ駆けつけていった。

 

 

そして第9試合以降の対戦カードは

 

 

第9試合:緑谷vs轟

 

第10試合:飯田vs塩崎

 

第11試合:狩迅vs常闇

 

第12試合:爆豪vs切島

 

となった。2回戦第1試合が始まるまで時間があったため狩迅は自分と戦った八百万の元へ行っていた。

 

 

「八百万、いるか…」

 

 

「狩迅さん…先程の戦い、お見事でしたわ…」

 

 

八百万は下をうつむいたまま暗い表情で言った。

 

 

「怪我は…浅い様だな」

 

 

「えぇ……」

 

 

「…八百万、俺はハッキリ言って、お前の個性は恐ろしいと思っている。最強と言っても過言じゃないくらいにな。」

 

 

「お世辞はいいですわ…試合がもうすぐ始まるでしょう」

 

 

「世辞を言いに来たんじゃない。お前の個性は創造…生物以外なら何でも作り出す個性だろう。」

 

 

「何が…言いたいんですか」

 

 

「何でも作り出せる。それは即ち、相手からしたら次の一手が読めないということ。」

 

 

「……………」

 

 

「まぁ何が言いたいんだと言われると、助言だな。煩わしいかもしれんが」

 

 

「助言…?」

 

 

「あぁ、緑谷にもした。八百万、お前の個性は生み出す物の情報が無いと作れないんだろ?その為に多くの情報を頭に入れ、自分の限界に挑戦し続けた。俺だったら諦めてたかもな。お前はすげぇよ。」

 

 

「慰めならッ!」

 

 

「慰めなんかじゃねぇ、これは心の底からの物だ。」

 

 

「…………っ」

 

 

「また…戦いたい、それだけだ。……………もうそろそろ時間だ、俺は行く。最後に、お前は咄嗟の判断力を身に着けたほうがいい。それを会得した時、更に上を目指せる。生意気な事をいってすまなかった、それじゃあな」

 

 

「助言…ありがとうございます。次も頑張ってくださいまし。」

 

 

「お前程の奴に勝てたんだ…優勝しなきゃ面目が無いな。」

 

ーーーー

 

 

『さぁ休憩は終いだ!2回戦第1試合を始めるぞ!まずは圧倒的な強個性!推薦入学者、轟焦凍!対して、圧倒的なパワー!人は顔じゃねぇ!緑谷出久!』

 

 

(…………)

 

 

(……………)

 

 

「2回戦第1試合、始め!」

 

 

両者が構える。これから激闘が起こる、そんな予感が会場全体に行き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




緑谷と轟…原作どうりだったら轟の勝利ですが、今の緑谷はフルカウルを発動できる。
ここはやっぱ………


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第十五話:一つの分岐点

今回は緑谷vs轟だけです。スンマセン………


「2回戦第1試合、始め!」

 

 

ミッドナイトの掛け声と共に轟が早期決着で緑谷に氷結を放った。

 

 

「フルカウル12%、スマッシュ!」

 

 

緑谷は轟の放った氷結をフルカウルを発動させ、思い切り腕を振るい相殺した。けたたましい轟音が会場全体を包んでいく。

 

 

「チッ…」

 

 

以前までの緑谷なら指を負傷しながら戦っていただろうが、今はそのリスクを無くすことができる。轟はもう一度氷結を放つが、これもまた相殺される。

 

 

『またまた轟の攻撃を打ち消した、緑谷ァ!!』

 

 

(轟は右半身ばかりを使ってくる…なら轟君から見て、左側にいけば一瞬轟君の攻撃を遅らせることができる!)

 

 

轟は父親の因縁の為、右半身の氷結しか使わず戦っている。ならばその反対側から攻撃すれば炎を使ってさえ来なければほぼ安全、これが現時点の最善策だろう。そしてそのまま緑谷は轟の左半身に回り込みながら少しずつ近づいていく。

 

 

「クソッ…!」

 

 

記憶の中の母はいつも泣いている。お前の左側が憎い。轟は戦う最中、そんな事が脳裏に浮かび上がっていた。

 

 

「俺は…絶対に左は使わねぇッ!」

 

 

轟は何度も何度も氷結を放つ。緑谷はそれを寸前で回避。それを繰り返し、お互いに体力が消耗していく。

 

 

『轟が氷をブッパァ!もうそこら中に氷の柱みてぇなもんがそびえ立ってるぜぇ!

対して緑谷は轟の氷結を躱しながらぶん殴っていく!』

 

 

「ハァ…ハァ…くっ!スマッシュ!」

 

 

轟の氷結をまた相殺する。

 

 

「俺ももうそこまで体力は無いが…まだ俺の方が有利らしいな。ありがとう、緑谷。お陰で…奴の表情が曇りかけてる。」

 

 

轟は自分の父親であるエンデヴァーを見ていた。緑谷は最初の頃の様に負傷こそはしていなかったが、それでも体力に限界がくるのは時間の問題だった。

 

 

「終わらせる…」

 

 

轟が再度氷結を放った。

 

 

「まだ…勝負は終わってないぞ…どこを見てるんだ」

 

 

「ッ!?」

 

 

さっきよりも更に強烈な突風が吹く。氷結は勿論、轟自身も場外ギリギリまで吹っ飛んでいた。

 

 

(ワン・フォー・オール)「フルカウル…20%!」

 

 

『緑谷!限界ギリギリだっつぅのにも関わらず、更にギアを上げたっぽいぞ!こっから逆襲の始まりかぁ!?』

 

 

「フルカウルは立体的な所で絶大な力を発揮できる…そして、今この場は、轟君…君の作った氷柱で囲まれている!誰が…有利だって!?」

 

 

刹那、緑谷は姿を消した。よく見ると影のような物が高速で轟の作り出した氷結の柱を飛び回っている。そして

次の瞬間、轟の左脇腹に緑谷の渾身の蹴りが炸裂する。

 

 

「ぐ…がぁ!?」

 

 

緑谷は轟に蹴りを放った後、少し距離を置いて話しかけた。

 

 

「震えてるよ…轟君」

 

 

「ッ!」

 

 

「ハァ…ハァ、個性だって…身体機能の一つ、君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう!

それは君の左側の熱を使えば解決出来るけど…」

 

 

どんな個性にもデメリットは少なからずある。麗日なら使いすぎると酔いが起こり、上鳴なら使いすぎるとアホになる。耳郎は音質が悪くなり、芦戸は酸で手が焼ける。このように誰にでもデメリットはある。

 

 

そして轟は氷結を使うことによって、真冬の中放置されたかのように体が震えだし、寒くなる。

だが轟の個性は氷結では無い。半冷半熱…つまり熱を使えば自身の体温を調節する事ができ、デメリットはほぼ無いようなものなのだ。それでも轟は父親の炎を使いたがらない、それは意地である。全力を出していないのである。

 

 

「みんな…本気でやってるんだ」

 

 

「勝って……目標に近づく為に…一番になる為に!」

 

 

緑谷は肩で息をしながら轟に大声で叫ぶ。

 

 

「半分の力で勝つ!?僕はまだ…君に傷一つつけられちゃいないぞ!」

 

 

「全力でかかってこいッッ!!!!」

 

 

「なんの…つもりだ!」

 

 

緑谷は再び飛び上がる。氷柱を利用しながら轟に攻撃を仕掛けていく。轟はデメリットの効果で動きが通常よりも大きく遅くなり、攻撃の威力もかなり下がってきている。

 

 

「デトロイト…スマッシュ!」

 

 

「またかッ!」

 

 

緑谷の攻撃をギリギリで躱す。だがお互いにもう本当に限界が来ている。もうあと一分も戦っていられないだろう。

 

 

「なんで…そこまで!」

 

 

「期待に、答えたいんだ…!」

 

 

「笑って応えられるような……カッコいいヒーローに…なりたいんだ!!」

 

 

緑谷は再度轟に殴りかかる。鈍い音と共に轟が吹っ飛ぶ。数秒間空中を漂い、地面に落下する。

その時、轟はほんの1秒か2秒、夢を見た。泣いている母親、兄弟の顔…そして父親の暴力を。

幼少期に父親に殴られ、蹴られ…悲鳴を上げている自分の姿がそこにはあった。

 

 

(母…さん………俺は………)

 

 

母親が優しく自分を包み込んでくれた時…轟は目を覚ました。そしてゆっくりと立ち上がる。

 

 

「俺は…………親父を……親父の力をッ!」

 

 

「君のッ…力じゃないかッ!!!」

 

 

「ッ……!」

 

 

轟はずっと囚われていた。父親と言う牢獄に。それでもずっと…"オールマイト"に、ヒーローに憧れてきた。

そんな自分に母親はなりたい自分になっていいと言っていくれた。笑顔で多くの人を助ける、強いヒーローになりたかった。夢の中で母親が最後に言ってくれた言葉を覚えている。

 

 

『なりたい自分に…なっていいんだよ……』

 

 

その時、轟の左が熱く燃えたぎっていく。それは個性の力だけでは無く、自分が抱くヒーローへの想い。

轟は父親と言う牢獄から十数年掛けてようやく解放された。猛々しい炎が轟を包み込んでいく。

 

 

『これは!?』

 

 

プレゼントマイク以外にも会場全体に居る者たち全員が驚愕する。

 

 

「勝ちてぇクセに……畜生……敵に塩送るなんて……どっちがふざけてるって話だ…!」

 

 

「……凄」

 

 

「俺だって…………ヒーローにッ!!!」

 

 

お互い、最後の一撃に全てを賭ける。轟の炎は更に燃え盛り、緑谷は足は20%のまま、左腕の出力を100%にまで無理矢理あげる。そして次の瞬間緑谷が駆け出していく。轟は左手をゆっくりと前に出し、小さく囁く。

 

 

「緑谷………ありがとな」

 

 

「ミッドナイト!これ以上は!!」

 

 

「くッ!!」

 

 

セメントスとミッドナイトが二人を止めようと個性を発動させるが最早この二人の前でそれは無意味に近かった。

刹那、けたたましい轟音が響いた。ステージは弾け飛び、水蒸気が立ち込む。両者がどのようになっているかも確認出来ない。そして少しずつ水蒸気が晴れていく。そこにはボロボロになってステージ中央に倒れている緑谷と微かに意識はあるが虫の息の轟がステージ外に出ていた。

 

 

爆風で吹き飛ばされたミッドナイトはそれを確認すると、ステージ中央にいる緑谷の方に旗を上げ、高らかに声を上げた。

 

 

「轟君、場外!緑谷君、準決勝進出!!」

 

 

スタジアムから歓声が上がる。気絶している緑谷に、それは届かなかった。轟は少しだけ微笑み、そのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 




本当だったら轟君が勝つけど敢えてデク君の勝利にしてみました。フルカウルを完璧とは言えないけど使いこなしてるからこれもありかな〜とね………ね?


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第十六話:加速する闘争心

最近忙しくて文章が滅茶苦茶になってるかも……… それでもいいよって人だけウェルカム。




(谷…………緑谷………………)

 

 

どこからか自分を呼ぶ声が聞こえる。そう思い、少しずつ目を開けていく。

 

 

「おっ、目が覚めたか」

 

 

「狩迅君…それに麗日さん…」

 

 

緑谷を呼んでいた声の正体は狩迅だった。横には心配そうな顔をしている麗日もいた。

 

 

「デク君だいじょぶ!?左腕スッゴイ腫れてる!」

 

 

麗日が心配そうに声を上げる。

 

 

「うん、ありがとう。………ここは…」

 

 

緑谷は辺りを見渡すと、狩迅と麗日に再び目をやった。

 

 

「ここはリカバリーガールの治療室みたいなもんだ。今は飯田とB組の塩崎と言う奴が戦っている。」

 

 

「そっか………あっ!轟君は!?あと勝負の結果は!!?」

 

 

「轟もお前と同じく治療中、轟との勝負の結果はお前の勝ちだ」

 

 

「良かった…………でも……僕が、本当に轟君に……」

 

 

「凄かったね!私めっちゃドキドキしながら見てたよー!」

 

 

「うん、心配かけてごめんね」

 

 

「いいさ、今は安静にしてた方がいい」

 

 

「そうさせてもらうよ……」

 

 

ーーーー  一方その頃 ーーーー

 

 

「キャッ!」

 

 

「フンッ!」

 

 

上鳴に見事勝負した塩崎は、前回のように髪の茨を駆使し飯田を捕らえようとするが、飯田のスピードについて来られず肩を押されて場外に出てしまった。

 

 

「塩崎さん場外!飯田君、準決勝進出!」

 

 

結果的に飯田の勝利となっていた。

 

 

ーーーー

 

 

「今のは、飯田の勝利らしいな。そうなると…緑谷、次のお前の対戦相手は飯田か」

 

 

「やっぱ飯田君も強いなー!もう見えないもん。」

 

 

「うん、あのレシプロバースト…凄い加速度だ。僕でも追いつけられないと思う」

 

 

「えらく弱腰だな。もう少し自分に自信を持つことも大事だぞ?」

 

 

「うん、でも実際あの速度は狩迅君に匹敵するか、それ以上かもしれない。そんな相手に余裕はかましていられない…」

 

 

「お前らしいな。さてと、次は俺と常闇か」

 

 

「頑張って!応援しとるから!」

 

 

「僕も少ししたら見に行くよ」

 

 

二人から応援の声が自分に向けられる。狩迅はその声を聞いたらゆっくりと扉を開け二人に言葉を返す。

 

 

「あぁ、行ってくる」

 

 

ーーーー

 

『さぁ始めて行くぜぇ?厨二だがその実力は本物!その個性最強なんじゃね!?ヒーロー科、常闇踏陰エエエエ!対して、まさに圧倒的!その個性も最強なんじゃね?同じくヒーロー科、狩迅龍騎イイイイ!!!』

 

 

『ガキみてぇな事いってんじゃねぇよ』

 

 

「双方準備はいいわね?それじゃあ第二回戦第2試合、始め!」

 

 

その瞬間会場全体から歓声があがる。常闇を応援する声、狩迅を応援する声…はたまた両方応援する欲張りもいる。狩迅と常闇はその歓声を押し退け、ただ真っ直ぐ相手を見ていた。

 

 

「こうして戦うのは初めてだな、常闇。」

 

 

「あぁ、この時を待ちわびた。白銀の戦士であるお前と相見えるこの時を!」

 

 

「だから変な二つ名をつけるな……騎馬戦のときはありがとよ、だがそれとこれとは別だ。一切油断はしない。お前なら特にな。」

 

 

「お前程の奴に言われるとは、俺も少しは強くなったと言う事か………いくぞ!」

 

 

「来い、嚇眼!」

 

 

常闇の黒影が勢い良く狩迅に向かっていき殴りかかる。狩迅はそれを受け止めるか躱すなどをして攻撃を防いでいた。

 

 

「あの姿は使わないのか!」

 

 

「あれは体力の消耗が激しいからな、まず相手の戦闘力を測りバランスの取れた形態になって戦うのが俺の一連の流れなんでね。」

 

 

「様子見か…」

 

 

常闇は狩迅の本気を引き出す為、更に黒影にギアを上げさせる。より強く、より速くなって行く黒影に若干狩迅は押されそうになるが、

 

 

「黒影の動きはいいが、常闇…お前は少し個性に頼り切っているな。横がガラ空

きだ!」

 

 

『ゲッ!』

 

 

狩迅は黒影の攻撃を受け流し、常闇の方へ走っていく。

 

 

「そう来るか!黒影!」

 

 

黒影が猛スピードで狩迅を追い掛けるが、スピードに関しては狩迅に分がある。常闇に近づきそのまま腹部に重い一撃を入れる。間一髪で両腕でガードするが、それでもダメージは通ってくる。

 

 

「ずぇあッ!!」

 

 

「ぐッ!!?」

 

 

常闇は一気に後方に飛んでいく。場外には行かなかったがあと一歩ガードが遅かったら失神していたかもしれない。

常闇は腕の痛みと冷や汗に苛まれていく。

 

 

(思った以上だ………腕が一瞬吹っ飛んだかと思った……)

 

 

「流石だな…その個性は…」

 

 

「案外意外な弱点があるかもよ?」

 

 

「今の俺には分からないな、だが俺とてヒーロー志望…死力を尽くす!黒影!」

 

 

『アイヨ!』

 

 

常闇の体に黒影が纏わりつく。常闇も常闇で自分の個性に研究し、磨きをかけたらしい。

 

 

「前から考えてはいたが、最早お前相手に出し惜しみはしていられん。」

 

 

「成程な、黒影を身に纏うことで苦手だった機動性を克服し、尚且自分を守る鎧に………考えたな」

 

 

「あぁ、その名も…深淵闇躯!」

 

 

「ならば俺も……迅竜!」

 

 

狩迅は腕を迅竜化させ、常闇と真正面の殴り合いを始める。

 

 

「うぉあァァァ!」

 

 

(突きの鋭さ、そして速さが増している………!)

 

 

「ッ!ここだぁ!」

 

 

「何!?」

 

 

数秒の殴り合いを勝利したのは狩迅だった。常闇が大振りの構えをした所を放つ寸前で止め、顔面に一発入れる事に成功する。

 

 

「チッ…まだだ!」

 

 

常闇は口の中に溜まった血を吐き捨て、歯を食いしばり突撃していく。中途半端な作戦は最早効かないと思ったのだろうか、ただただひたすらに拳を前に出す。

 

 

ーーーー観客席ーーーー

 

 

「おい…ワンチャン常闇勝てんじゃね!?」

 

 

「すっげぇ!狩迅とまともにやり合ってやがる!」

 

 

「どっちも頑張れー!」

 

 

(……………)

 

ーーーー

 

 

「ハァ…ハァ……グッ!」

 

 

(流石に体力が低下しているな。動きが遅くなっている)

 

 

狩迅は隙を伺い後方に下がる。

 

 

「常闇…終わらせるぞ」

 

 

「あぁ」

 

 

狩迅は嚇眼、迅竜化に更に亜種羅を上乗せし拳を構える。常闇はその攻撃を最大限警戒し最後の力を振り絞る。

 

 

「黒影!」

 

 

『イクゼ!』

 

 

「………」

 

 

「これが、俺の全てだ!深淵闇躯…宵闇よりし穿つ爪!」

 

 

「竜の………鉤爪!」

 

 

二人の力が衝突する。辺りには埃が舞っておりステージも半壊していた。そして二人が誇りの中から姿を表す。

 

 

「常闇君、戦闘不能!狩迅君準決勝進出!」

 

 

狩迅との衝突により、常闇は力尽き倒れていた。

 

 

「常闇、いつかまた…再戦を申し込む。」

 

 

狩迅は常闇の肩を担ぎ、リカバリーガールの元へ運んでいった。そんな二人を会場の者たちは拍手と称賛の声で見送った。

 

 

ーーーー観客席ーーーー

 

 

常闇との試合が終わり、狩迅は観客席に戻っていた。もうすぐ爆豪と切島の試合が始まろうとしていた。

 

 

「今戻った」

 

 

「あ!お疲れ様〜、さっきの試合凄かったね!二人共めっちゃカッコ良かったよ!」

 

 

「こっちだ、席を取ってあるぞ!」

 

 

「ありがとう、助かる。」

 

 

席に座った後も緑谷を含める三人と爆豪vs切島の試合が始まるまで会話していた。途中物間とか言う変な奴が煽り散らかしてきたが、拳藤の手によって止められた。

 

 

そして時間が過ぎ爆豪と切島が会場に上がって来る。会場にいる観客は大声で二人の健闘を祈る。

だが特に以上なのが………

 

 

「切島ぁぁぁあ!!!負けんじゃねぇぞオオオオオオオ!!」

 

 

B組の鉄哲徹鐵だった。先程の試合で二人はライバル関係となったらしく、狂ったように応援していた。

 

 

「2回戦第4試合、始め!」

 

 

ミッドナイトの掛け声と共に切島が爆豪に突進していく。爆豪はそれを爆破で止めようとするが切島の個性は硬化で爆豪との相性は最悪、切島にとっては少し痛む程度。爆豪は怯まない切島に対し個性を連発する。

それでも切島は止まることはない。試合が開始して数分が経過した頃だった、ようやく爆豪の攻撃が切島に刺さった。

切島は時間経過と共に段々と硬化の効力が弱まっていく弱点がある。逆に爆豪はスロースターター、勝負が長引く程手汗が多くなり、爆破の威力、範囲も大きくなる特性があった。切島は爆豪の反撃の猛攻に耐える事ができずそのまま敗退した。

 

 

「切島君、戦闘不能!爆豪君、準決勝進出!」

 

ーーーー

 

 

ーーーー

 

「時間と共に立場が逆転したな」

 

 

「かっちゃんの個性は手の汗腺からニトロみたいな物を放つから、手汗をかく程強くなるんだ。」

 

 

「狩迅君の次の対戦相手はかっちゃんか…戦闘訓練の時みたいにはならないかも知れないよ。多分、狩迅君の事を研究してきたはず…」

 

 

「だろうな、油断はできん。それはそうと次はお前と飯田じゃないか、急がなくてもいいのか?飯田はもう行ってるぞ」

 

 

「えっ!?ホントだ、行ってくる!」

 

 

「健闘を祈る」

 

 

ーーーー

 

3回戦のトーナメント

 

 

第1試合:緑谷vs飯田

 

 

第2試合:爆豪vs狩迅

 

 

ーーーー

 

 

『さぁ時間が来たぜぇ?早速紹介と行こうかぁ!圧倒的なスピードとパワーッッ!本当君強すぎない?ヒーロー科、緑谷出久ゥゥゥ!対してブレーキを知らない男!お前はスピードの鬼だな…スーパーソニックマン!同じくヒーロー科、飯田天哉ァァァ!』

 

 

「以前にも言ったが、俺は君に挑戦する。全力で行かせてもらうぞ!」

 

 

「僕だって勝ちに来たんだ!絶対に負けない!」

 

 

「両者準備はいいようね!では、試合開始!」

 

 

「レシプロバースト!」

 

 

飯田は長期戦は不利だと思ったのかいきなり奥の手を使ってきた。レシプロバーストは途轍もない程のスピードで動ける代わりに、一度使ったら1分弱のインターバルが必要。これに全てをかけるつもりだろう。

 

 

「いきなりきたッ!!フルカウル15%!」

 

 

緑谷もフルカウルを発動させ、応戦するが飯田の速さにはまだついていけていない。飯田は緑谷との距離を一瞬にして詰め右蹴りを放つ。緑谷はそれをしゃがむ事で間一髪で避けることに成功する。

 

 

「クソッ!当たらなかったか!」

 

 

「あっぶな!?」

 

 

「まだだ!もっと加速しろ!」

 

 

飯田のスピードは更に上がっていく。最早観客は何が起きているのか理解する事が出来なかった。緑谷も同じく見えず、飯田の蹴りをモロにくらってしまう。

 

 

「ごふぅ!?」

 

 

飯田は一瞬ふらついた緑谷に追撃をする。残像で何百にも見える足蹴りで緑谷を場外まで追い詰める。

だがあと一歩の所で緑谷は反撃をしてきた。

 

 

「ま…けるかぁぁぁ!!カロライナ…スマッシュ!!」

 

 

緑谷はガードでクロスして使っていた両腕を刃の形にし、飯田に反撃する。

 

 

「グッ!!」

 

 

「ウオァァァァァァァァア!!!!!」

 

 

「レシプロ…バーストォォォォォ!!!」

 

 

緑谷は腕で、飯田は蹴りで。両者の攻撃は風を起こし、何度も何度も打ち付け合う。さっきよりも更に速く、鋭く

、腕と足が何本も生えているかのようにも見える。

 

 

(体中が痛い………だけど、オールマイトに言われたんだ…僕がここにいるって事を示してくれって!ここで負けられない。負ける訳には、いかない!)

 

 

(兄さんに誓ったんだ…兄さんのようなヒーローになるって。強くて、みんなを助けるヒーローになるって…。俺は勝って、インゲニウムの弟がここにいるという事を証明する!)

 

 

『ウオァァァァァァ!!!』

 

 

永遠とも思えるその攻防戦、だが全ての物には終わりがある。晴れる埃の中で立っていたのは緑谷だった。

決着がついた……この事を見ていた者達の頭の中にそうよぎった。時間にしてたった数十秒の戦い、だが何時間にも戦っていたようにも思えた。

 

 

「飯田君、戦闘不能!緑谷君、決勝戦進出!」

 

 

「ハァ…ハァ………ぐっ…」

 

 

緑谷は予想以上の激戦になり、膝を落とす。疲労が体から抜けない、痛みも引かない。リカバリーガールの元直行だろう。

 

 

歓声があがる。戦った二人に敬意を払う者、ただひたすらに憧れた者など様々ではあったが、みなすべからく称賛していた。

 

 

ーーーー

 

 

【爆豪との試合が始まる数分前】

 

緑谷と飯田の様態を見た後、狩迅は待機室に行っていたが、そこに爆豪が入ってくる。

 

 

「お前が来るなんて珍しいな、爆豪。」

 

 

「………あん時みてぇな失敗はしねぇ。勝つのは俺だ」

 

 

「………………」

 

 

「だから全力でかかって来やがれ。あの白い奴を使って来い。俺が…それを真正面から叩き落としてやる。」

 

 

ーーーー

 

 

 

「確か、真正面から叩き落としてやる…だったな」

 

 

「俺はやると言ったらやる男だ。嘘も半端な事も言わねぇ。」

 

 

「そうか、なら見せてやってみろ!」

 

 

「3回戦第2試合、始め!!」

 

 

ミッドナイトの開始の合図で試合が始まる。爆豪の眼には闘志が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ツカレタ  


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第十七話:ナルガクルガ

注意:今回結構厨二臭いかも。あと結構トントン拍子で進んでいきます。


「………………」

 

 

試合が開始されるが両者、微動だにしない。互いに様子を伺っている。それが十秒程経った頃、爆豪が先手を打った。

 

 

「今度こそ、潰す!」

 

 

爆豪は狩迅に突進していく。まずは右の大振りだと思っていた狩迅はすぐにガードの態勢に移り、警戒する。

 

 

「ッ!」

 

 

予想は外れた。そのまま攻撃するかの様に思えたそれは、戦闘訓練の緑谷戦の時の様にフェイントを仕掛け、瞬時に後ろに回り込みながら攻撃する。

 

 

「死ねぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「チッ…亜種羅!」

 

 

狩迅は直ぐ様亜種羅に形態変化し、ダメージを軽減させる。そして爆豪はふと、とある事に気がつく。狩迅の背中が自分の爆破で傷を負っていた。

 

 

「てめぇ…あの鳥野郎と同じで暗い所で力が増すタイプか。だからあの時脳無に一発で殺されかけた訳か。」

 

 

「御名答、俺の個性は夜行性なんでな。」

 

 

「それともう一つだ。てめぇはデクと同じで狭い場所や立体的な空間の方が専門だろ」

 

 

「どこまで読み取ってやがんだ…」

 

 

「単純だ。てめぇは戦闘訓練以外の時じゃあ動きが大雑把だったからな。」

 

 

狩迅は暗く、そして狭い空間などによって最大のパフォーマンスを披露できる。だがそれを逆に言ってしまえば、それが一つも当てはまらなければ圧倒的に不利だと言うこと。

そして相手は戦闘に関してはセンスの塊である爆豪。狩迅は開始数秒にして窮地に立たされていた。

 

 

(迂闊には攻撃できんな…だがやるしかない。)

 

 

「鎌鼬!」

 

 

「オラァ!!!」

 

 

狩迅は一旦距離を取り、遠距離から攻撃を仕掛ける。爆豪は素早く反応し、相殺する。

 

 

「甘い!」

 

 

爆豪の放った爆破の影響でできた煙幕を利用し死角から横薙ぎの手刀をくり出す。爆豪は持ち前の反射神経でバックステップで躱す。

 

 

「クソがッ!!」

 

 

「この程度じゃ当たらねぇか…」

 

 

「あん時みてぇな失敗はしねぇって言っただろうがッ!」

 

 

爆豪は左手を開き、その中心に丸を作った右手を乗せると言う不可解なポーズを取った。

 

 

「徹甲弾!!」

 

 

「新技ってやつか。」

 

 

狩迅は両腕を迅竜化させ、攻撃を防ごうとするが…

 

 

「がッ!?」

 

 

予想以上に威力が高かった。幸い怪我は無いが相当なダメージである。

 

 

(おいおい、冗談だろ?腕が痺れてやがる………!?)

 

 

「ちったァ効いたみてぇだなぁ?」

 

 

「威力を丸めた手で一点に集中させ、貫通力に優れさせたような物か。」

 

 

「デクだけじゃねぇよ。強くなってんのはよォ!つってもデクは俺の足元にも及ばねぇがなぁ!!」

 

 

「徹甲弾……厄介な」

 

 

「まだだ!!徹甲弾 機関銃!!」

 

 

先程の徹甲弾のような物が無数に飛んでくる。威力はあれ程では無いが、それでも充分殺傷能力はあった。狩迅の体には少しづつ切り傷ができ、押され始める。

 

 

「さっさと使えよ…あの白いのをッッ!!」

 

 

(緑谷や他の奴らもだが、急成長が過ぎるっ!?オマケに爆豪は気付いてねぇかも知れないが、俺は雷や爆発とかの光系の個性には弱いんだよ………!)

 

 

狩迅の個性である迅竜は一見無敵の力の様に思えるが、実際ちゃんと弱点は存在する。

麻痺や毒、ミッドナイトの眠気を誘う個性とも相性が悪い。特に爆破と雷系は最悪である。

何故そんな物が苦手なのかと言うと、モンハンの公式サイトを見よう。そんなこんなで意外と弱点は多い。何が言いたいかというと、狩迅は爆豪との相性は最悪であるという事。

 

 

「チィッ!!」

 

 

飛んでくる爆豪の放つ徹甲弾 機関銃を腕で薙ぎ払い、反撃しようとするが、そこに爆豪の姿は無かった。

 

 

「ッ!?嚇眼!」

 

 

狩迅は嚇眼を使い、爆豪の居場所を特定しようとする。

 

 

「後ろか!」

 

 

勢い良く後ろに振り返るが、爆豪は既に攻撃の態勢で直ぐ側までやって来ていた。

 

 

「気付くのが遅せぇよ…」

 

 

「しまっ………」

 

 

「閃光弾ッ!!」

 

 

爆豪が声を上げると凄まじい光が辺りを照らした。観客席にいた緑谷達でさえ目を瞑る程。

近くにいた狩迅は当然目を開ける事は愚か、平衡感覚も失っていた。

 

 

「いくらてめぇでも、目が見えなきゃただのモブと同じだ!!」

 

 

「それに多分だが、嚇眼は目を酷使するから当分は使えねぇ!俺の場所を特定する事もできねぇだろ。」

 

 

「考えたな…畜生!」

 

 

「これで終いだ!!」

 

 

爆豪は個性を応用し、空高く飛び上がる。一方狩迅は場外ギリギリだった。

 

 

ーーーー 観客席 ーーーー

 

 

「かっちゃんが……狩迅君を、本当に!!?」

 

 

緑谷だけでは無い。A組全員が爆豪の勝利が間近に迫っていた事を予感していた。

治療が終わっていた八百万と轟と常闇も居合わせていた。

 

 

(まさか…狩迅さんが……)

 

 

(…………)

 

 

「何故、白銀の姿にならない…狩迅!」

 

 

(…………)

 

 

轟と耳郎は黙って狩迅を見ていた。圧倒的不利、状況も覆るはずも無い…だが何故か心の中に、心配の二文字は無かった。

 

 

ーーーー

 

 

「俺の……勝ちだァァァァ!!!!」

 

 

爆豪が爆破で回転しながら突進してくる。狩迅は少しだけ目が見えて来た。だが未だに平衡感覚が戻らない。

 

 

「榴弾砲着弾ォォォォォ!!!」

 

 

(場外は……もうすぐ後ろ、万事休すってやつか。)

 

 

あと数秒で負ける。そんな事は分かっていた。だが狩迅の心は恐ろしく穏やかだった。

 

 

(まったく……調子に乗りやがって…自分が一番強いと思って疑わない。)

 

 

ようやく平衡感覚が戻ってきた。まだ若干頭は痛むが問題はない。

 

 

(いつも、誰もが自分より下だと思って仕方がない。そんな奴は何時まで経っても成長出来ないって昔本で読んだな。)

 

 

爆豪はいつも世界中の人が、自分には及ばないと考えていた。

 

 

(そんな奴の治療法を昔習った。単純明快……)

 

 

爆豪は緑谷、そして狩迅に一度敗れている。それを挽回するために爆豪は戦っている、

もう一度二人を自分より下にする為に。

 

 

(一回…その自尊心をボロボロにしてしまえば良い。)

 

 

だがしかし、その自尊心をもう一度破壊されたらどうなるだろうか。答えは簡単。

 

 

(数日は凹むだろうな…)

 

 

「くたばれェェェェェェェッッ!!!!」

 

 

爆豪の攻撃が見事ヒットする。煙と埃が舞い上がり、狩迅の姿は見えない。

 

 

「やったか………チッ…納得いかねぇ。」

 

 

戦いの結果に満足しない爆豪、煙が晴れ姿を現す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『迅竜……かつて人類が今の様な大きな文明を持っていなかった時代…』

 

 

「ッ!?」

 

 

『人類の天敵がその一つ。雷狼竜ジンオウガ、火竜リオレウス、角竜ディアボロス、泡狐竜タマミツネ、全てを合わせ百以上にもなるその巨竜達。名だたる狩人が束になっても…ただただ屍を増やすだけだった。そして最も恐れられた竜の一つ、それは闇に潜み…紅き眼光で、正確にそして確実に人の首と胴を泣き別れにさせた。』

 

 

『人々はそれを恐れ、こう名付けた…』

 

 

 

 

 

 

 

『闇に走る赤い残光…迅竜ナルガクルガ……ってな…』

 

 

「聞いてねぇぞ………おい……」

 

 

姿を現したのは、狩迅では無く…かつて人々を恐怖のどん底に叩き落した一匹の竜だった。

 

 

ーーーー 観客席 ーーーー

 

 

「なんだあれ!?」

 

「竜!?」

 

「ドラグーンヒーローのリューキュウと同じタイプか!!?」

 

 

 

「あれが…狩迅君の全て………」

 

「でっかい………」

 

「嘘だろ…!?」

 

「それがお前の内に潜む、黒き獣神か……」

 

 

全員が狩迅のその異質な存在感に目を奪われた。そして飯田が妙な事を言い出す。

 

 

「なぁ…みんな、何故か分からないが…体が震えるんだ……気温は普通のはずだろ?……」

 

 

「偶然ですわね…私もです……」

 

 

「わ…私も……」

 

 

人間には、太古から人間が植え付けた"本能"と言う物がある。母親が自分の子供を愛くるしいと思う、これは母性本能…男は死の寸前、種を残そうとし体中が興奮状態となる、これも本能。今彼らが感じ取っているのは、大昔から人を貪ってきた竜に対する逃走本能である。

 

ーーーー

 

 

『大抵の奴はこれを見て逃げ出すんだが、流石と言わざるを得んな。俺の本当の姿はこっちだ…爆豪。』

 

 

「な…めんな……」

 

 

そうは言うが、内心爆豪も恐怖で震え上がっていた。目の前にいるのは人間ではない。

人類の天敵の、竜である。人一人が相手して良いレベルでは無い事は爆豪自身、よく分かっていた。

 

 

(ここで引いたら…今までのもん全部否定する事になる。んなこと…)

 

 

「許せるかァァァァァァァァァ!!!」

 

 

爆豪は恐怖を抑え込み、狩迅に攻撃を仕掛ける。

 

 

『第2ラウンドだ……』

 

 

その目は酷く冷徹に、獲物をとらえていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




因みにナルガの戦闘力的には 嚇眼→亜種羅→嚇眼&亜種羅→月迅竜→ナルガクルガ→白疾風→極み駆ける ですかねー


オールマイトの7割ぐらい。ただメリットデメリットを上げるとするなら

メリット:月迅竜、白疾風、極み駆けるを上乗せできる。体力消耗が少ない。


デメリット:手加減が下手。狭い場所じゃ戦えない。軽い暴走状態になる。


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第十八話:決着

今回はお話をギュウギュウに詰めております、ので、話が結構ゴッチャになってます。あまり、ここどう言う事?みたいな感じじゃなくてお気楽に読んでみてください。


『だがまぁ…中には古龍とか言う化け物もいるがな』

 

 

「クソがァァァァァァ!!!」

 

 

爆豪はいきなり麗日の時の様に最大火力を連続で放つ。それは見事狩迅に直撃するが、

 

 

『痛ぇなぁ……あまりそう急かすな、この力には慣れてねぇんだ』

 

 

「ふざけ…やがってぇッ!!」

 

 

皮膚が少し焦げた程度のダメージで、なんら問題はない。

 

 

『次はこっちからか?ちゃんと防いだ方がいいぞ…』

 

 

爆豪はすぐに警戒態勢を取り、ニ歩、三歩と後退る。

 

 

『無駄だがな…』

 

 

刹那、狩迅の姿が見えなくなる。その巨体に見合わない途轍もないスピードで爆豪を蹴散らす…地面に這いつくばる爆豪を尻尾で叩きのめす。圧倒的有利…なのにも関わらず、全くと行っていい程容赦は無かった。狩迅は血反吐を吐く爆豪をただただ打ちのめして行く。

 

 

『伊達にドラゴンじゃねぇんだよ』

 

 

「うごぉあ!?」

 

 

(一切の躊躇無しか、クソがぁ……)

 

 

爆豪は半ば勝つのは無理なのでは、ここは諦めて降参した方が良いのでは…と言う言葉が脳裏を横切った。それを一番許せないのは爆豪自身、叩きのめされながらも少しずつ立ち上がる。

 

 

『まだ…立つか』

 

 

「どうしたよ…これ程度かぁ?大した事無さ過ぎてあくびが出るわァ……」

 

 

『その勝利に対する執念は認める…終わりだ。』

 

 

狩迅の攻撃が迫ってくる。あぁは言ったが実の所指一つ動かない、敗北…この二文字が目の前にハッキリと見えた。爆豪はゆっくりと両腕を前にし、最後の力を振り絞る。

 

 

『ッ!』

 

 

「俺は…オールマイトを超えるヒーローになる男だ……」

 

 

その刹那…爆豪の手からこれまでに見たことの無いような光が放たれる。その威力は最大火力の比ではなく、下手したら緑谷の100%並かもしれない。イタチの最後っ屁と言うやつだろうか…爆豪はそのまま倒れ気絶した。

 

 

『……………根性は、麗日並だな。』

 

 

『ミ…ミッドナイトォ』

 

 

珍しく力が無い声でプレゼントマイクがミッドナイトに勝敗の結果を審判させる。

 

 

「えぇ、爆豪君戦闘不能!狩迅君、決勝戦進出!」

 

 

狩迅は人間の姿になると、頭を抱え呟いた。

 

 

「本当に…痛ぇなぁ……」

 

 

ーーーー 観客席 ーーーー

 

 

「あの姿は…」

 

 

「飯田君知ってる?あの大っきい猫…」

 

 

「猫かどうかは知らないが…分からないな」

 

 

「じゃあこう言う時はヤオモモ!お願い!」

 

 

全員が八百万の方へ視線を向ける。狩迅のあの姿の正体について、詳しく知りたいのだろう。

 

 

「昔、書物で見たことがありますが、大昔に生きていた事以外よく分かりませんわ…お役に立てれず申し訳ありません。」

 

 

「別に良いって。でも、ホントに何なんだろ…」

 

 

「闇に走る赤い残光…って言ってたな……何か光と関係があるのか?」

 

ーーーー

 

狩迅と爆豪との試合が終わり、残るは決勝戦である緑谷と狩迅の試合だけ、会場の観客も待ちきれないといった様子だった。

 

 

『これまで数々のプロを驚かせ続けた二人の戦いが、今始まる!余計な言葉はいらねぇ…決勝戦、健闘を祈るぜぇ?最強の卵共!!』

 

 

緑谷と狩迅がステージに上がっていく。緑谷はあきらかに緊張している事が分かる。一方狩迅はと言うと、酷く冷静だった。まるでこう言う場面に慣れているかのように。

 

 

会場は決勝戦だが、恐ろしい程静かだった。

 

 

「二人共しっかりやりなさい!決勝戦、始め!」

 

 

試合が始まる、両者はまだ動かない。

 

 

(向き合っているだけで…体が震える…)

 

 

緑谷が警戒していると、狩迅が急に語りかけてきた。

 

 

「今日はいい天気だ…程よく雲がある」

 

 

上を向きながら、緑谷に話しかける。緑谷は狩迅の意図が分からずにいた。

 

 

「………………悪いな、聞き逃してもらって構わない。俺も緊張してるんだ。」

 

 

「傍から見たら、結構冷静に見えるよ…」

 

 

「そうか…」

 

 

『………………』

 

 

しばらくの沈黙が流れる。その時は酷く長い様に感じ、中には数時間待ったんじゃないかと錯覚する者もいた。

 

 

「始めるか、緑谷。」

 

 

狩迅はそう言うと軽く構えを取り、戦闘態勢になる。

 

 

(遂に始まる…僕なんかが、狩迅君に勝てるのか?八百万さんや常闇君を簡単に倒して、挙句の果てにはかっちゃんまで…でも、ここで引いちゃ駄目だ…ここで…引いちゃ…!)

 

 

緑谷は酷く焦っていた。これまでヒーローやクラスメイトの事を研究して来た彼でも、狩迅の個性を理解しきっていない。攻めるか、守るか…緑谷は迷っていた。戦いの中で起きる迷いは、足を引っ張る物でしかなく命取りでもある。

 

 

その瞬間、狩迅から恐ろしい程の殺気が放たれ、激しい風が起こる。

 

 

「迷いが生じているな…」

 

 

緑谷から冷や汗が止まることは無かった。そのプレッシャーに押し潰されそうになるのを必死で堪える。

 

 

ーーーー

 

 

観客席には、治療から戻った爆豪もいた。

 

 

「この殺気…」

 

 

「これがたった一人の人間が放つ殺気かよ…クソがッ…」

 

 

「緑谷君……」

 

 

飯田と麗日は緑谷の無事を祈り、手を握り締める。

 

ーーーー

 

「あの姿になると、しばらくの間好戦的になってしまうんだ。なんとか殺気を抑えたいんだが……そんな事はどうでもいいか………今度こそ始めるぞ」

 

 

「……行くよ。」

 

 

「あぁ、来い。月迅竜…」

 

 

先制攻撃は緑谷だった。最初はMAXの20%ではなく、5%からだった。狩迅に何度も殴りかかるがガードすらしないし痛そうな素振りを見せない。ならばと次は8%、これも少し体が動いただけで殆どダメージは通らない。12、13%と上げていき、15%でようやく腕を使わせた。だがたかが腕一本、これだけで全ての攻撃を受け止められた。

 

 

『緑谷の怒涛の連続攻撃!だが対して狩迅は涼しい顔して簡単に受け止めていやがる!地面が既にクレーターが空き、突風も吹いてるぞ!?やっべぇ!!』

 

 

「……………」

 

 

「やっぱこれ程度じゃ、本気を出してくれる訳が無いか…なら!」

 

 

緑谷は体中に力を行き渡らせ、そして解放する。今の自分の最大、MAXフルカウル20%を…周りには緑色の雷のような物が飛び交っており、これから大激突が起きるのは火を見るよりも明らかだった。そして向かい合う二人…

 

 

『………………』

 

 

これで何度目だろうか、またもや沈黙の時が流れる。刹那、緑谷が攻め始める。拳を前に出し、狩迅を場外に押し出そうとするが、狩迅は攻撃を受け流し超スピードの戦闘を展開する。

 

 

攻撃がぶつかり合う度、ステージ全体から爆発と雷が起こる。二人の速さは最早人間の目にとまるものでは無く、緑色の彗星と白色の閃光の様な物がぶつかり合っている様に見える。途中途中で少し見える時もあるが、すぐに消え別の場所に移動している。

 

 

(速いッ……追いつけない!それに狩迅はあれだけのスピードを出しているのにまだ平然としてる…全力を出し切っていないんだ…!)

 

 

速さに関してなら狩迅に分がある、最初は飯田並のスピードだと思っていたがそれを遥かに超越していた事に緑谷は驚愕する。

 

 

 

緑谷が何度も攻撃をしようとしても、狩迅はそれを簡単に受け流す。走る度に地面にひびが入る

 

 

(本当に底が知れない…)

 

 

二人はステージ中央に着陸し、足を一歩も動かさない純粋な真正面からの殴り合いを展開する。

 

 

「ぐっ……!!」

 

 

狩迅「……………」

 

 

ーーーー 観客席 ーーーー

 

 

「互角……なのか?」

 

 

「そうっぽいな」

 

 

二人以外にも、1Aの何人かは狩迅と緑谷がかなりの接戦をしていると思い込んでいる。

 

 

(あの野郎…どこか妙に様子がおかしい。)

 

 

ーーーー

 

「デトロイト、スマッシュ!」

 

 

「ッ…」

 

 

緑谷の一撃が狩迅に深く刺さる、流石にダメージはあるように見えるがそれでも顔一つ動かさない。緑谷にはそれが、とても人間とは思えなかった。まるでもう一つの人格があるかのように思えた。

 

 

(なんだ…この違和感は……何かが崩れているように感じる。狩迅君の何かが…)

 

 

戦っている緑谷にはその正体は分からずとも、何か大切な物だと言う事は理解していた。緑谷は一度距離を取り、今度はこっちから話しかける。

 

 

「迷っているのは…君なんじゃないの?」

 

 

「………何故そう思う」

 

 

「分からないよ…分からないけど、何故か感じるんだ。それに…今の君からは少しも殺気を感じないからね」

 

 

「………勝負に余計な私情は持ち込むな…」

 

 

狩迅はそれだけを言うと再び緑谷に襲いかかる。緑谷はすかさずガードをするが、その上からでも通ってくる程の威力…そのまま殴り飛ばされ、場外付近にまで後退してしまう。

 

 

「真空波!」

 

 

「スマッシュ!」

 

 

二人の衝撃波が互いを相殺し、爆発が巻き起こる。ステージは嵐が通っているかのように崩壊している。

 

 

「やっぱりだ…あの姿になってから、君はいつもの君じゃなくなってる、無口だし、どこか余裕が無さそうにも見える…一体何が君をそうさせてるの…?」

 

 

緑谷が狩迅に問いかける。一緒にいた時間はほんの数ヶ月、だが情に厚い緑谷には分かっていた。狩迅は観念したかのように言葉を吐き出す。

 

 

「轟や心操と一緒だ。俺も過去に因縁があるんだよ…俺はこの個性のせいで周りからいつも後ろ指を刺されて来た。唯一の俺の味方だった母がヴィランに殺されたとき、周りは殺したのは俺だと、ある事無い事言われて虫唾が走った。俺は思うんだ…本当に恐ろしいのはヴィランなんかじゃ無く、泥沼に落っこちた人間を寄ってたかって袋叩きにする善良な市民何じゃないかってな。」

 

 

「ッ………」

 

 

「友だと言ってくれた人間も、あの姿を見て俺を化け物だと言って袋叩きにして来やがる。俺は、嘘をつくことが出来ない人間だ。もう…失いたくなかったんだよ…だが時々、俺じゃない何かが…俺を支配しようとしているのを感じるんだ。爆豪との試合も、あまり覚えていない。」

 

 

拳を固め、どこか悲しげな表情になっている狩迅が緑谷の目に映った。

 

 

「今は、とある人に拾われてここまで来れた。だけどよ、俺は怖かったんだ…お前らが、どこか遠くに行ってしまわないか……」

 

 

「………………」

 

 

緑谷はどの言葉を選べば正解なのか、分からなかった。緑谷自身も自分が無個性だからと言われ、同級生から馬鹿にされてきた。それでもやってこれたのは親が自分を励ましてくれて、オールマイトが選んでくれたからと言っても過言じゃない。対して彼は、親代わりはいるが、本当の親はいない…味方がいなかった、世間が敵だった。

 

 

(僕は……)

 

 

弱々しい声で、狩迅が緑谷に語りかける。

 

 

「今度はこっちが質問させてくれ。お前は、あの姿を見ても尚……俺を友と呼んでくれるのか?」

 

 

緑谷が言う言葉はもう既に決まっていた。

 

 

「君がいったいどんな過去を過ごして来たのかは、僕には理解しきれないと思う。

だけどさ…それで君を見捨てる程、僕達弱く見えるかい?」

 

 

「君は君だ。醜くも無いし、僕は君の事を信じるよ。友達だから…」

 

 

狩迅はその言葉を聞いた瞬間、母の言葉を思い出す。頬を何かがつたったのを感じた。ずっと誰でもいいから自分に言ってほしかった。その言葉を何年も待っていた。そしてようやく会えた、母以外に自分を理解してくれる人に…

 

 

「轟といい爆豪といい、本当にお前は人の心に……」

 

 

狩迅から流れる白いオーラがだんだんと輝いていく。

 

 

「眩しいや……」

 

 

「戦いの最中のクセして…」

 

 

ーーーー

 

「あの姿は…!?」

 

 

「個性把握テストん時の……」

 

 

「眩し!?」

 

 

(デクなんざに使いやがって……クソが……)

 

 

ーーーー

 

 

狩迅が白い光に包まれていく、狩迅が立っていたところには光の柱がそびえ立っていた。

それを見ていた者は、神でも降臨したんじゃないかと錯覚してしまう。それ程の気迫があった。そして緑谷だけに聞こえるような小さい声で囁く。

 

 

「展開が早すぎんだよ……だがまぁ…ありがとよ…」

 

 

緑谷はワンフォーオールを100%まで引き出し、最後の一撃を放とうとする。狩迅も全身全霊の最大最高の一撃を緑谷に向ける。

 

 

『おい!やべぇってこれ!?止めたほうが良いんじゃねぇか!?』

 

 

『その方が合理的だろうが、俺はヒーローとして…何よりも教師としてこの戦いを見届けたい。セメントスもミッドナイトも止めることを忘れてるぞ。』

 

 

尋常ならざる被害が出る事は分かっていたが、誰もあの二人を止めようとは思わない。

この勝負の結末を知りたいのだ。

 

 

「僕の全てを持って…君を倒す!!」

 

 

「かかって来やがれッ…!」

 

 

緑谷が決死の覚悟で足を100%にして飛びかかる。狩迅も同様足を迅竜化させ、飛びかかる。お互いにこれが最後の一撃だろう。

 

 

「デトロイト……スマァァァァァッシュゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!」

 

 

「スパイラル……」

 

 

狩迅の刃が白く光り、目が真紅に染まる。その刹那、轟音が響いた。通常の何倍も速く地を駆けて行く。

 

 

「ウオァァァァァァァァ!!!」

 

 

「エッジ……!」

 

 

二人がぶつかった瞬間、凄まじい衝撃波が起こり観客席にまで被害が出ていた。埃が舞い上がり両者を包み込む。

 

 

ーーーー

 

 

「脳無の時以上だ!?」

 

 

「風圧がこっちまで!!」

 

 

「髪の毛がー!すっごいぶわぶわに!?」

 

 

「葉隠ちゃん…見えないから安心してちょうだい。」

 

 

風圧は会場全体にひびを入れる程凄まじく、観客席にも被害が出ていた。特に峰田のような身長が小さい者は吹っ飛びかけている。

 

 

「け…結果は!?」

 

 

「緑谷君!狩迅君!」

 

 

ーーーー

 

 

 

 

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

 

 

 

 

 

少しずつ、轟の時のように埃が晴れていく。そして見えた、白銀の竜の姿が…

それは勝利の雄叫びを高々とあげ、見るものを惹きつけた。

決着……見ていた者は…その壮絶な戦いに歓声と拍手を惜しみなく送った。




新技:スパイラルエッジ

ある一定の条件を満たした時に使える最終奥義。限界を超えた超スピードで相手を切り刻み、再起不能にさせる。


ストーリーズの技ですねー。本来なら何回も切り刻むんですが、今回では一撃必殺みたいな感じにしました。今後は本来の使い方をします。



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第十九話:体育祭終了&ヒーロー名決め〜 

色々とゴッチャになってしまいましたがこれで体育祭は終わりです!つまらない作品ですが見てくださり感謝感激雨あられでございまする。



激闘が終わり、結果発表に移る。花火が打ち上がり、観客の歓声も途絶えない。

 

 

「それではこれより、表彰式に移ります!」

 

 

地面から表彰台があがり、上位3名の姿が見えるようになるが………

 

 

「#$!$#-#$*#/$-*-**-?+#*/#?*$+#¶]≤9\0@9\!°$=€=$×$=≥×¢¶|¢}|∆¶!!」

 

 

「い…痛い……」

 

 

「た…立てん………」

 

 

見るも悲惨な光景が会場にいる全員の目に映る。爆豪は緑谷より下の順位と言う事を今更理解し、暴れ出したらしく拘束されていた。緑谷は体中に包帯が巻かれており、特に左足と

右腕の損傷が激しくグルグル巻きにされている。狩迅に関しては"極み駆ける"と迅竜の

合成形態は初めてらしく、消耗が激しい為膝をついて立ち上がれずにいた。

 

 

「絞まらねぇ終わり方だなぁ…」

 

 

「爆豪の顔やべぇww」

 

 

「{$`×=^{°}=$•{π√¶${$€¶£¶×~=|¶€[¶^¶^{•[∆¢✓¢±±¢{≥¢!!!!!!」

 

 

「何て言ってんだあれ?」

 

 

全員が呆れている中で、表彰式は始まった。

 

 

「何かちょっと思ってたのと違うけど、まぁいいわ!メダル授与!贈呈するのは勿論この人よ!!」

 

 

ミッドナイトが上空を鞭で刺すと、誰もが聞いたことのあるでかい自身満々の笑い声が響いた。

 

 

「HAHAHAHAHAHA!!!!」

 

 

「え?まじ!?」

 

 

「今年の一年オールマイトからメダル貰えるのかよ、いいなぁー!」

 

 

周りからオールマイトが来たことに驚きを隠せないでいた。そうしているとオールマイトが高く飛び上がり、こっちの方へ飛んできた。

 

 

「私がァァ!」

 

 

「我らがヒーロー!!オー「メダルを持ってきたァ!!」ルマイトォ!!」

 

 

見事に被った。微妙な空気になりながらも、謝りながらメダルを授与する。

 

 

「気を取り直して、爆豪少年!……っと初っ端からこれはあんまりだな!」

 

 

爆豪からはまるで獣のような叫びを上げており、オールマイトは口につけられている拘束を解くが……

 

 

「オールマイトォ…3位に価値なんざねェェェェ!!一位以外には価値なんざねぇんだよ!!しかも……俺が、デクなんざよりも……クソがァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

「oh……まぁ、今の世の中で不変の絶対評価を持てる者は少ない!受け取っとけ、傷として!」

 

 

「いらねぇっつってんだろうがァァァ!!」

 

 

オールマイトは爆豪が犬の様にグルグルと唸るが、構わず無理矢理メダルを渡す。そして次にオールマイトは緑谷の方に振り向く。そして緑谷にしか聞こえないような小さな声で話しかける。

 

 

「緑谷少年……」

 

 

「ごめんなさい、オールマイト…負けてしまいました…」

 

 

「いいんだ、君は良くやってくれたよ!私の自慢の弟子だ…」

 

 

緑谷はその言葉を聞いて、少し泣きそうになっていた。

 

 

「だけど、その泣き虫な性格は治していかないとね!」

 

 

「はいッ!」

 

 

緑谷に銀メダルを渡し、抱きしめる。そしてメダルを渡すのは最後である狩迅のみとなる。

 

 

「君も君で大変そうだね…」

 

 

狩迅は馴れていない力を発動させた反動で肉体がうまく言う事を聞いてくれなく、膝をついている。傍から見たらオールマイトに跪いている様にも見える。

 

 

「申し訳ない、こんな不格好な状態で」

 

 

「それだけ頑張ったってことさ、それにしてもいい戦いぶりだった!思わず私も手に汗握ってしまったよ!君はあの時、轟少年の様にどこか吹っ切れた様になっていたね。何かきっかけはあったのかい?」

 

 

「………俺はずっと濁流に呑まれていました。何処からともなく現れる不安に、ずっと押しつぶされそうでした。だけど…彼に、緑谷に救われました。緑谷は俺を友達と言ってくれました。その時、体に纏わり付いていた物が解けた様に、スっと軽くなったんです。本当に、ヒーローらしい性格だと思いましたよ。あなたが一目置くだけはある…感謝したいんです。おかげで俺は、また一つ強くなれた。」

 

 

オールマイトは何も言わずフッと微笑み返し、その言葉を狩迅に向ける。

 

 

「もうなにも言うまいね。優勝おめでとう、狩迅少年!」

 

 

狩迅は無意識に微笑んでいた。オールマイトは狩迅の首に優しく金メダルを掛ける。そして振り向き、大きく叫ぶ。

 

 

「さぁ皆さん!今回は彼らだった!!しかし、この場の誰にもここに立つ可能性はあった!競い合い、高め合い、次代のヒーロー達は確実に芽を伸ばしている!それでは皆さん、ご唱和ください!せーの……」

 

 

『プルス・ウルt……』

 

 

「お疲れさまでしたァァァ!!」

 

 

『えぇぇぇぇッ!?!?』

 

 

『そりゃねぇーだろオールマイト!』

 

 

『そこはプルスウルトラでしょ!』

 

 

周りからブーイングが飛んでくるが、次第にそれは笑いに変わっていく。こうして激闘が巻き起こった雄英体育祭は無事に終わりを迎える事になった。一人を除いて……

 

 

「クソがァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日〜

 

 

生徒は全員二日間の休みを与えられた。各々ゆっくりと羽を休め、今回の体育祭の反省をしていた。そして登校の日がやってくる。狩迅は相変わらずに過ごしていた。

 

 

(眠い……永遠に夜が続けばいいのに)

 

 

狩迅は動かない体に鞭を打ち、学校へ向かう。電車に乗ったあたりからなにやら声が聞こえ、視線も感じる。

 

 

(なんだ…?またヴィランの襲撃でも起こったのか?)

 

 

否、それは全て君に対する興味の声である。雄英体育祭はいわば、オリンピック代わり…全国の市民が彼らを見ていた訳である。そして尚且狩迅は、インパクトのある個性&優勝者の肩書を手にしている。街行く人に、次から次へと声をかけられるのは必然だった。

 

 

「あの人って体育祭で優勝した……」

 

 

「2位の人とすっげぇ戦いをした人だ!」

 

 

「まじか!?すげぇ!」

 

 

周りからいろいろ聞こえる。悪い気分では無いが………意外と恥ずかしいものであった。そんな狩迅の元へ一人の少女が話しかけてくる。

 

 

「えっと、た…体育祭すごかったです!恐竜さんかっこよかったです!」

 

 

見た目からして恐らく5歳から6歳前半くらいだろうか、狩迅はこんな女の子も見ていてくれたのかと嬉しくなる。

 

 

「ありがとよ…」

 

 

狩迅はそれだけ言い、微笑みながらそっと頭を撫でる。そこで一瞬、"カシャ"と言う音が聞こえた気がした。

 

 

(ん?……気のせいか?)

 

 

少し戸惑いながらも気にせず、女の子を親の元へ返した。めっちゃ親御さんに感謝された。そのまま電車を降りて登校をしようとするが、世間と言う物は思った以上に厄介らしい。

 

 

学校につくまでに恐らく100は超える回数話しかけられたであろう。体力はあっても精神力が保たない。やれファンになっただの、やれ握手してほしいだの……まるで有名人のようだった。

 

 

(実際有名人になったらしいが……ようやく学校についた……)

 

 

「まぁ…俺が受け入れられていると考えるのがいいか」

 

 

そんな事を考えながら、校舎内に入っていった。教室に入ると、皆が声をかけられた事に関しての話で持ちきりだった。

 

 

「チョー声かけられたよ!!」

 

 

「よくよく考えたら全国中継だもんな!」

 

 

(やはり全員声をかけられていたか。それにしてもよくあんなに元気でいられるな……俺はもうしぼんだ風船みたいになってるぞ…)

 

 

「狩迅!狩迅!やばいって!」

 

 

疲れ果てた様子の狩迅に耳郎が慌ただしく話しかける

 

 

「どうした、トイレか?一緒には行かねぇよ?」

 

 

「違うっての!これ!!」

 

 

耳郎が手に持ってあるスマホから、何やら画像のような物が映されております狩迅に見せつける。その瞬間…頭の中が真っ白になった。そこにあったのは電車の中であった少女とのツーショットが何故かネットにあげられて、何故かバズっている自分の姿だった。

 

 

「あんたいつこんなの撮られ……って、おーい?」

 

 

狩迅は無表情で、世間の闇を悟っていた。

 

 

(盗撮は駄目だろ…………てかあの時の音はこれかぁ…)

 

 

最悪…この一言に限る。

 

 

「トップヒーローはこんなの毎日くらってんのか……」

 

 

ちょこっと有名になった狩迅君であった。少し時間が経ち、相澤が教室に入ってくる。

わいわい賑わっていた皆は、その瞬間無言で即座に席に座る。

 

 

「今日のヒーロー情報学はちょっと特殊だ」

 

 

『特殊………!』

 

 

(テストか!?テストなのか!?)

 

 

(ヤダァァァァァァ!!!)

 

 

ヒーロー情報学はヒーローに関するルールのような物が事細かく授業される。

恐らく苦手な分野に属する生徒は一番多い。A組のおバカトップ2の二人は絶望していた。

 

 

「コードネーム、つまりはヒーロー名の考案だ」

 

 

『胸膨らむやつ来たァァァァ!!』

 

 

「静かにしろ…」

 

 

どうやら体育祭の活躍を見ていたプロ達から指名が入り、それを元に職場体験に行かせるのが学校の考えらしい。

 

 

「指名が本格化するのは2・3年生…つまりは即戦力になってからだ。1年は大体将来への興味によるもので、情けない姿を見せれば一方的にキャンセルも珍しくない。」

 

 

「で、肝心の指名の集計結果がこれだ。」

 

 

黒板から映像が表示され、そこに名前と指名数があり全員が意識を向ける。

 

 

ーーーー指名数

 

 狩迅:4618

 

 緑谷:4271

 

  轟:3179

 

 爆豪:2705

 

 飯田:1425

 

 常闇:976

 

 上鳴:79

 

八百万:62

 

 切島:59

 

 麗日:31

 

 芦戸:24

 

 瀬呂:11

 

 

「例年はもっとバラけるが、今回は特出した連中が多くてな。四人に偏った。」

 

 

「あれ?なんで3位の爆豪より轟の方が多いんだよ?」

 

 

「そりゃあ推薦入学者だし、瀬呂が瞬殺されたの見たろ?」

 

 

「忘れろ!!」

 

 

(僕に指名がこんなに!?)

 

 

「なんで俺がこれっぽっちなんだよ!!」

 

 

「お前最後顔怖かったからじゃね?」

 

 

「ビビんなプロがッ!!!」

 

 

指名が多いことに嬉しく思う狩迅、意外にも指名が多すぎてビックリする緑谷、無表情の轟、怒る爆豪、煽る切島…それぞれがプロの評価に目を見張っている。

轟に関しては緑谷との試合が凄まじく、体育祭2位をあと一歩まで追い詰めたのがトリガーとなったらしい。

 

 

「ネットでも現実でも偉いことになってるねぇ?」

 

 

「その事は忘れてくれ……」

 

 

「指名数分けろ!!」

 

 

「見る目ないよね☆」

 

 

騒がしくなっていたクラスを相澤が一喝し、話を進める。

 

 

「まぁつまりは職場体験…プロの仕事を実際に体験させるという事だ。それで必要なのがヒーロー名だが、適当なもんつけちまうと……」

 

 

その瞬間教室のドアが勢いよく開く。そこから入ってきたのは…

 

 

「地獄を見ちゃうよ!!」

 

 

『ミッドナイト先生!?』

 

 

「この時に付けた名前がそのまま認知されちゃって、プロになってる人も多いからね!」

 

 

「そういう事だ。俺には無理だからその辺はミッドナイトさんに頼んだ…」

 

 

相澤は持っていた寝袋に入り、主導権はミッドナイトが握る。

 

 

「さぁ!早速やるわよ!名前は自分の未来へのイメージ!変な名前にすれば全て自分に返ってくるから真剣にやりなさい!!」

 

 

「ヒーロー名かぁ…」

 

 

「まぁ…大切だろうな。オールマイトのヒーロー名が筋骨隆々マンとかだったら嫌だろ?」

 

 

「筋骨隆々………!」ブフゥゥ!

 

 

「吹くな」

 

 

ヒーロー名は発表形式になり、それぞれが前で発表することになる。約20分の考えの末、トップバッターの青山と芦戸が先陣を切る。

 

 

「I can not stop twinkling☆」

 

 

「エイリアンクイーン!」

 

 

二人のせいで大喜利みたいになってしまった。青山に至っては最早短文である。キラキラが止められないよ☆

 

 

その後はなんとか梅雨ちゃんが流れを戻してくれた。

 

 

「梅雨入りヒーロー フロッピー!」

 

 

「ウラビティ//!」

 

 

「テイルマン!」

 

 

お笑いの雰囲気になっていたがなんとか持ち堪えた。テンポ良く発表が進んでいき、いよいよ狩迅の番となる。

 

 

「次は狩迅君よ!」

 

 

狩迅が前に立ち、全員が注目する。そしてその名をに口にする。

 

 

「まぁ、これしかないよな。本当は嫌いだったが、戒めとして残しておきたい。」

 

 

「かつて人々を喰らってきた怪物、俺はこの力でヴィランの悪意を喰い尽くすヒーローになる。闇に走る赤い残光 迅竜ヒーロー"ナルガクルガ"、これが俺のヒーロー名だ。」

 

 

覚悟を決めた。いままでの全ての邪念を破壊し、次へと進む。そんな意志を胸に狩迅は

その名に恥じぬ闘いをすると誓っていた。

 

 

一瞬緊迫感に包まれたがそのまま続行、緑谷は頑張れって感じのデク、轟と飯田は自分の本名をヒーロー名にした。ちなみにだが爆豪はと言うと……

 

 

「爆殺王!爆殺卿!!爆殺!!!」

 

 

「どれも駄目ね」

 

 

「あぁん!?」

 

 

予想道理であった。

 

 

ーーーー

 

 

ヒーロー名が決まり、残るは体験先の選択だけだったが……

 

 

「流石に………この量は応えるな」

 

 

「えへへ//どのヒーローにしよ〜//」

 

 

狩迅はあまりの量に疲れ果てていた。一方緑谷はと言うと重度のヒーローオタク、まったく疲れているように見えなかった。

 

 

(末恐ろしい………)

 

 

「二人共すごい量ね」

 

 

「すげぇな……エンデヴァー以外のトップヒーロー全部入ってるぞ……」

 

 

「個人的には同じ竜個性のリューキュウの元へ行きたいと思ってるんだが、これは…

中々に迷う…」

 

 

「じっくりと考えていけばいいですわ。私達もお手伝いさせていただきます!」

 

 

「じゃあウチも〜」

 

 

「良かったら俺も手伝うぞ」

 

 

「あぁすまん…甘えさせてもらう。」

 

 

放課後しばらくの間候補選びに専念したが、それでも中々決まらずにいた。トップヒーローも勿論いいが、意外と知られていない実力のあるヒーローがいるかもしれない。

結局クラス全員で手分けして探すことになった。 

 

 

一方緑谷は……

 

 

「誰にしようかな〜…夢みたいだぁ………」

 

 

ヒーローの事が関連したら止まることはない、無尽蔵の体力でじっくりと観察していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




安心してください………緑谷はちゃんとグラントリノの所へ行かせます。
結局狩迅君の職場体験先どうしよ……


追記:リューキュウさん圧倒的過ぎる…ホークス9、ミルコ27、リューキュウ70以上て……


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職場体験&ステイン編  
第二十話:リューキュウ事務所


リューキュウ圧倒的過ぎねぇか!?まぁ美人だしかっこいいからなぁ… 
あとねじれちゃんもいるしね(^o^)…………戦わせるかぁ……


ーーーー 職場体験当日 ーーーー

 

 

都市駅に集合した1−A組はそれぞれコスチュームの入ったケースを片手に、事務所先の電車が来るまで待っていた。

狩迅は緑谷、飯田、麗日と共に時間が来るまで会話している。ちなみに狩迅はリューキュウ

、緑谷はオールマイトの推奨でグラントリノ、麗日はガンヘッド、飯田はマニュアルと言うヒーローの元へ行くことになる。

 

 

「緊張して来たぁ……」

 

 

「確か緑谷はグラントリノだったな。聞いたことのない名前だが…」

 

 

「えっと…相澤先生みたいに表に出てないタイプの実力派ヒーローなんだ!かなりの凄腕らしいからね!」

 

 

「デク君、狩迅君、飯田君、もうすぐ電車来るよ!」

 

 

「いつの間にか時間が来てたな。そろそろ出発するか」

 

 

「あぁ、そうだな」

 

 

(飯田君、そういえばお兄さんがヒーロー殺しに………)

 

 

「飯田君…あまり無茶しないでね?なにか困ったら相談してよ!友達だから…」

 

 

「ッ……あぁ、ありがとう。」

 

 

飯田はそれだけ言って、立ち去ろうとする。

 

 

「飯田……」

 

 

「狩迅君…」

 

 

狩迅が飯田の事を呼び止める。

 

 

「忠告だ。憎悪はヒーローから最も遠い感情だ、気をつけろ。」

 

 

「………………分かった。忠告ありがとう。」

 

 

飯田は今度こそ立ち去っていったが、どこか悲しみを背負っている背中を見て、どこか複雑な感情に陥っていた。

緑谷と麗日に別れを告げ、ドラグーンヒーローの元へ進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 移動中 ーーーー

 

 

 

 

 

「ここがリューキュウの事務所か。随分と大きいな……トップヒーローは全員こんな物なのか?」

 

 

狩迅は巨大なビルを見上げ、インターホンを鳴らした。そうすると水色のロングヘアの可愛らしい女性が出てきた。

 

 

「雄英高校1年A組の狩迅龍騎です。職場体験をさせて頂きたく、参りました。指名ありがとうございます。」

 

 

「あ!あなたがリューキュウの言っていた狩迅君ね!私は波動ねじれ、よろしくね!」

 

 

「よ…よろしくお願いします」

 

 

かなり距離感が近い。それにも驚いたが、中々に好奇心旺盛な性格らしく質問攻めにされる。

 

 

「ねぇねぇ!なんでリューキュウの事務所選んだの?ヒーロースーツどんなのなの?どんな個性なの?不思議だねぇ!!」

 

 

「あー何から話せばいいのか……」

 

 

答える前に次々と質問される為、狩迅は内心かなり困っていた。すると後ろから声が聞こえる。

 

 

「ねじれ、その子困ってるわよ?君が狩迅君ね、私はリューキュウ。指名に応じてくれてありがとう。短い期間だけどよろしくね。」

 

 

青髪の女性にも負けず劣らずの美人さんが微笑みを向けてやってきた。彼女がリューキュウで間違いないだろう。中国風のチャイナドレスを着て、顔に爪のような物をつけている。

リューキュウは26歳と言う若さで速くも独立し、ビルボードでは9位の上位ランカー。彼女とは似た個性同士、きっと何かを身につけることができると思い、狩迅はここを選んだ。

 

 

「中に入って。案内するわ。」

 

 

事務所の内装はかなりキラキラしていた、目が眩しい。至る所に装飾品のような物が飾られており、女性らしさがあった。と言うよりも女性しかいなかった。途中サイドキックの人と会ったが人数が4人とトップヒーローにしてはかなり少なかった。

 

 

彼女曰く、最近独立したばかりでまだ色々な事が残っているらしい。ちなみにさっきの青髪の人はずっと不思議そうに見つめてくる。ちょっと恥ずかしい。

それでも彼女こと波動ねじれは雄英高校の3年、仮免を既に取っており事務所の即戦力。

 

 

「ごめんなさいね…これでもねじれは雄英ビッグ3の一人になれるほどの実力があるのよ?」

 

 

「ビッグ3?」

 

 

狩迅はそういう事にはあまり詳しくない。ビッグ3と言う名前も初めて聞く。

 

 

「ねぇねぇ知ってる?ビッグ3って言うのは雄英高校でとっても強い3人の事だよ!凄いでしょ!私以外には通形君と天喰君って言う人がいるの!みんなとっても仲良しだよ!」

 

 

(そんなのがあったのか。それにしてもビッグ3か…雄英のトップ3って事だよな?)

 

 

狩迅はその集団に興味があった。実力はどれ程なのか、一度戦ってみたいと思っていた。そんなこんなで時間が経ち、更衣室に移動し、そこでナルガクルガのコスチュームに着替える。実は少しコスチュームを改良していて、顔面の防御もしないといけないと思い耐熱性と耐冷性のある赤いマフラーのような物を加えていた。

 

 

「独特なコスチュームね。忍者かしら?」

 

 

「何で忍者みたいにしたの?そのマフラーは何なの?ねぇねぇ何で?不思議〜!」

 

 

「あー…俺の個性は迅竜、大昔に人々を襲ったとされる怪物です。通り名は闇に走る赤い残光……それらしいでしょう?」

 

 

コスチュームは結構好評らしい。リューキュウの中国風のドレスに狩迅の日本らしい忍のコスチューム、並んで見てみるとかなり…

 

 

「かっこいいねぇ!」

 

 

「そう言ってくれると幸いです。波動……"先輩"?」

 

 

先輩と言われると波動はにっこりと目をキラキラさせながら嬉しがっていた。

 

 

「わぁ〜!後輩が出来たよ!!ねぇねぇリューキュウ!!」

 

 

 

何度か波動に対して"先輩"をつけて呼ぶと子犬の様にとても喜んでいた。後輩ができた事に喜びながら頭を撫でてくる。

 

 

「えへへ〜〜」

 

 

「本当にごめんね……」

 

 

「別に構いませんよ。」

 

 

(幼く感じる反応なのにどこか包容力がある。不思議な人だな………)

 

 

狩迅も狩迅で悪い気はしなかった。頭を撫でられたのは何年ぶりだろう、これが俗に言うほっこりと言うのだろうか?しばらく撫でたら満足したようで手を離してくれた。

 

 

(髪がくしゃくしゃになってる…)

 

 

「そういえば聞き忘れていたわね。あなたのヒーロー名は?」

 

 

「ナルガクルガ、それが俺のヒーロー名です。」

 

 

「いい名前ね、気に入ったわ。それじゃあ早速本題に入るわよ。」

 

 

(パトロールか?もしくは他の任務から始めるのか…)

 

 

狩迅がそんな事を考えているとリューキュウがとんでもない事を言ってきた。

 

 

「まずはパトロール……と言いたい所だけど、まずは君の実力を見させてもらいたいの。言うなれば"模擬戦"ね」

 

 

狩迅はその言葉に少し嬉しさを感じ、不敵な笑顔を作っていた。狩迅は個性による物なのか分からないが意外と戦闘好きなのである。

 

 

「いきなりですか?」

 

 

「基本的にどこの事務所でもやっているわ。画面上だけじゃ実力は測れないからね、特に君は… あとここでは戦闘訓練もやっていくわよ。気を引き締めてね?」

 

 

「そういう事なら仕方がない…それで俺の相手は誰が?」

 

 

気になる相手だが、狩迅はそんなもの初めから分かっている。

 

 

「勿論私よ。これでも力には自身があるのよ。私じゃ不満だったかしら?」

 

 

「いえ、寧ろ好都合……」

 

 

「リューキュウが久しぶりに燃えてるね!なんでなんで?どうして?」

 

 

「強いて言うなら、竜同士だからかもね…」

 

 

 

ロビーから移動し、結構な広さがある戦闘室のような所に来た。狩迅は指をの骨をポキポキと鳴らしながら軽く準備体操をする。柄にも無く楽しみにしていた。

 

 

「ここなら思う存分暴れられる。波動先輩、合図をお願いします。」

 

 

「任せて!リューキュウ、準備はいい?いいよね?」

 

 

「いつでもいいわよ。」

 

 

「うん!じゃあ始め!」

 

 

(ナンバー9の実力、見せて貰う!)

 

 

狩迅は掛け声と共に個性を発動させる。腕と足を迅竜化、亜種羅と嚇眼を同時発動し走りかかる。対してリューキュウは個性を発動させ、巨大な竜へ変貌する。

 

 

「フッ!」

 

 

空中へ飛び上がり、渾身の回し蹴りを放つ。見事リューキュウの顔面に当たるが、痛そうな素振りをしない。

 

 

「いい蹴りね。あの体育祭で優勝しただけあるわ」

 

 

「だったら少しは痛がってくれてもいいと思うんですがね」

 

 

リューキュウは微笑みながら言い放つ。狩迅はノーダメージのリューキュウを見て少し戸惑い、すぐに態勢を立て直すが、その隙を逃さず物凄い速さで突進して反撃してくる。狩迅は横に回避し、何とか避けることに成功するが当たった壁には巨大なクレーターができている。

 

 

(あの巨体であそこまでの速度…決して侮っていたわけではないが、予想以上だ。)

 

 

「竜の鉤爪!」

 

 

「爪なら私も負けてないわよ!」

 

 

リューキュウと狩迅の攻撃が互いにぶつかり合い、火花が飛ぶ。拮抗していたかのようにも見えたが、あと少しの所で押し負けてしまう。

 

 

その後はリューキュウの止まらない猛攻が続き、狩迅は防戦一方となる。そして回避する時思わず足を崩し、倒れかけてしまう。

 

 

「君の実力はそれ程度じゃない筈よ!あの時見せた力を解放しなさい!」

 

 

「チィ!」

 

 

狩迅は迫ってきたリューキュウの頭を両腕で抑える。一瞬止めたかと思ったら次の瞬間には吹き飛ばされて壁に叩きつけられていた。

 

 

「本当に馬鹿げた戦闘力だ…だがこれで良い、これで俺はまた強くなれる…」

 

変身を解き右腕、左腕、右足、左足と壁にめり込んだ体を前にだす。リューキュウがこっちへ向かってくる。狩迅は左腕腕をゆっくりと前に出し、静かに目を閉じる。

 

 

「…………………」

 

 

リューキュウが迫ってくるが狩迅は全く動かない。リューキュウの第六感は警告を流す。

 

 

(遂に使ってくるわね、迅竜を!)

 

 

勢いは止まらず、そのまま狩迅に激突するがリューキュウの頭は左手で簡単に止められてしまう。瞬間、狩迅の後ろから衝撃波が流れる。

 

 

「ッ!?」

 

 

「えぇ!?リューキュウの突進止めちゃった!」

 

 

「ゼァア!!」

 

 

狩迅はそのままリューキュウの顔を鷲掴みにし、片手で投げ飛ばす。今の姿のリューキュウは恐らく7トンはあるだろう。勿論、そんじょそこらの個性ではそんな芸当は出来ない。

 

 

「ハァァァァァァァァァッッッ!!!」

 

 

狩迅の姿が白く輝いていく、体からは月白色のオーラがにじみ出ている。リューキュウは雰囲気がガラリと変わった狩迅に対して最大限の警戒をし、同じく波動もその異様な姿に目を見開いていた。

 

 

(私を簡単に投げ飛ばす程の怪力、あの姿は…)

 

 

今度は逆に投げ飛ばされた事で、リューキュウの方が壁に叩きつけられていた。

 

 

「迅竜は、使わないのね?」

 

 

「あれはまだ慣れていないんです……………あれ程の戦闘力はありませんが、こっちは安定感が良い。月迅竜…俺はそう名付けました。」

 

 

圧倒的なプレッシャー、リューキュウはまるで凶悪なヴィランと対峙しているような錯覚に陥った。

 

 

(凄いプレッシャー…本当にこの子は高校生なの?)

 

 

「……………」

 

 

ここは室内なのにも関わらず、何故か狩迅の髪やコスチュームは静かに優しく風に吹かれたかのようになびいていた。その眼は真紅に光っており、どこか神々しくも見える。

 

 

「ふぅ…ここらでやめときましょうか。」

 

 

「ッ?もういいの?」

 

 

「俺は短期決戦派なので長時間の戦闘は無理なんですよ。」

 

 

狩迅はオーラを解くと、疲れたかのように座り込む。ハッと我に返ったリューキュウも同様で返信を解き、人間の状態へ戻る。

 

 

「ねぇねぇ?この場合はどっちの勝ちなの?引き分け?」

 

 

「え?あ~………まぁ引き分けって事にしておいてください。」

 

 

彼は引き分けと言うが、どうにもリューキュウにはその言葉が信じられなかった。

 

 

(引き分け…か。あのまま続行していたらどっちが倒れていたのかしら……)

 

 

リューキュウは立ち上がり、波動に質問攻めされている狩迅の近くに寄って話しかける。

 

 

「ナルガクルガ、君の力は良く理解できたわ。無茶なお願いを聞いて貰ってごめんなさいね。それにしても驚いたわ…生中継で見ていたけど、ここまで出来るなんて。」

 

 

「強さには結構自身があるんです。簡単には負けませんよ。」

 

 

「頼もしい限りね、でも一つ注意点があるわ。君は短期決戦だけど相手の実力をじっくりと図る癖のような物があるわ、それは戦場では命取りになるから気をつけなさい。」

 

 

「申し訳ない、精進します。それでパトロールとかの方はどうするんですか?」

 

 

狩迅は波動の手を取りながら、立ち上がりリューキュウにパトロールの方法やいつするのかを聞いていた。

 

 

「そうね、大体は学校で習ってると思うけど細かい所は今から説明するから会議室に集合しましょう」

 

 

「狩迅君こっちこっち!」

 

 

波動が疲れている狩迅の手を引っ張り、会議室へ走っていった。

 

 

「先輩として、後輩をエスコートしたいのかしら?」

 

 

波動はいつもの3割増しで元気だった。

 

 

 

ーーーー 会議室 ーーーー

 

 

「到着〜!」

 

 

「ここもここで光り物がゴロゴロと……光が反射して目が痛い」

 

 

「二人共いるわね、じゃあ適当なところに座って」

 

 

そんなこんなでリューキュウのヒーロー雑学が始まった。波動は聞く必要無いのに何故かすぐ隣に座っている。

 

 

ーーーー 三十分後〜 ーーーー

 

 

「…………と言う事で、あらかた説明したけど理解できたかしら?」

 

 

「問題無く。ただ一つを除いてですがね。」

 

 

聞き飽きて眠くなってしまったのか、狩迅の肩に寄りかかってスヤスヤと眠っている波動がいた。

 

 

「zzz……」

 

 

「ねじれ〜起きなさい!」

 

 

リューキュウは波動のほっぺたをつねって起こす。

 

 

「ん〜、おはよう〜」

 

 

ほやほやした顔であくびをして寝ぼけていた。

 

 

「これが……母性本能と言うやつか」

 

 

「ちょっと違うわね」

 

 

「?」

 

 

眠い波動さんであった。




女の子は葉隠さんとねじれちゃん、男の子はファットガムが好きです。かあいいです。



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第二十一話:ヒーロー殺しの確保に向けて〜

そういえば忘れてた。狩迅の声のイメージなんですけど通常は福山潤さん、ナルガクルガ化したら井上和彦さんのイメージです。


福山さんで有名なのはコードギアスのルルーシュやペルソナ5の主人公とかでしょうか


井上さんはニャンコ先生やカカシ先生ですね。おっきくなってるニャンコ先生みたいな声だと想像してくださいな。プロフィールに書いときます。


雑学が終わった後軽く昼食を取り、リューキュウ達とパトロールへ向かった狩迅一行。

 

 

「そういえば君はファンサービスとかのやり方は知ってる?」

 

 

「俺はまだ仮免すら取ってないですよ、そういった事もあるんですか?」

 

 

「雄英の体育祭を侮らない方がいいわよ。影響力は随一なんだから」

 

 

「あのねあのね!私も一年生の時すっごく話しかけられたの!なんでだろうねぇ!」

 

 

「そりゃあ…活躍したからでしょう」

 

 

「それが起きるから気をつけなさい、君…いま結構ネットで話題になってるのよ?」

 

 

「その事は忘れてください。俺の精神が保ちません。」

 

 

「なんでなんで?どうして精神がこわr…ムグ…!」

 

 

「ねじれちゃん、お静かに」

 

 

波動の頭と顎を抑え込んで話せなくした。あまりその事には触れないで欲しい。

狩迅はこれでも結構恥ずかしがっているのだ。

そんなこんなでパトロールをしていると、だんだんと人が集まってくる。

 

 

「えっ!?リューキュウだ!」

 

「ウォオオ!本物だ!?リューキュウ!」

 

「すみません、サインいいですか!?」

 

 

次から次へと人が集まってくる。サインだったり握手だったりと忙しそうにしていたが、

そこはプロらしく迅速にこなしていっている。

 

 

「人集りが……」

 

 

「今日はちょっと少ないね!いっつもライブ会場みたいになってるのに!」

 

 

狩迅は若干引きながらも、リューキュウの到着を波動と共に待っていた。のだが…人々の

標的はリューキュウからこっちに向かってくる事になる。

 

 

「なんかこっち来てないですか?」

 

 

「なんでだろうねぇ?」

 

 

答えは明白、二人は二人でかなりの有名人。まだ学生だがプロにも匹敵、あるいはそれ以上の逸材として世間に認知されており、将来を任せる金の卵……

勿論、ファンぐらいはできるに決まってる。

 

 

「あの人って一年の部で優勝した……」

 

「まじか!?リューキュウの所に来てんの!?」

 

「隣には3年の部でトップ3だった人がいるぞ!」

 

「リューキュウ良いとこ取りだな!?」

 

「リューキュウと一緒にドラゴンなってみて!」

 

 

ほんの数秒でこの人集り。周りには恐らく数百人はいるんじゃないだろうか、車の渋滞も起こっている始末…

 

 

「ごめん!いつもと同じくらいだった!」

 

 

「油断した俺が馬鹿だった……」

 

 

狩迅は周りを落ち着かせようとするが、まるでに聞いてくれていない。狩迅はその個性のかっこよさと強さ、波動はルックスの良さが周りの人を更に集めてしまう。

 

 

「多すぎる…」

 

 

「困ったねぇ!!」

 

 

何人も対応するが、まるで人数が減らない。結局終わったのは2時間程後だった。

 

 

「二人共、お疲れさま。結構大変だったでしょう?」

 

 

ぐで~としながら二人は近くにあった椅子に座りんでいた。

 

 

「これだけは慣れないね!」

 

 

「他の奴らもこんな事やってんだろうか…」

 

 

波動は今までに何回かやって来てたからある程度は体力が残っている。

 

 

「初めてにしては上出来よ。と言っても初めてがあの状況だとね?」

 

 

リューキュウも絶賛心中お察ししていた。初めてがあれは中々にハードだったらしい。

 

 

「今日は後一時間程周ったら、終わりにしましょう?」

 

 

「えぇ…」

 

 

「がんばろー!」

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

パトロールを終え、事務所に戻って来た狩迅。あの後大体の流れと明日の予定を聞いて解散する事になる。宿泊先は波動と同じ所なので案内してもらった。

 

 

ーーーー 部屋 ーーーー

 

 

「はい!ここが君の部屋ね!あんまりうるさくしちゃ駄目だよ?」

 

 

「ありがとうございます、ではまた明日…」

 

 

「バイバ〜イ!」

 

 

部屋の中は普通にちょっと高いホテルの様な雰囲気だった。早速風呂に入り、夜食を取って一日の疲れを癒やす。ベッドに座り、テレビをつけるが内容はヒーロー殺しの事ばかり。最近またヒーローがやられたらしい。

意識不明の重体で発見され、現在生死の境を彷徨っている状況とのこと。

狩迅は飯田の事を思い出し、どうしょうもない不安感を抱いていた………

 

 

(飯田のあのときの目…確実にヒーロー殺しに対しての殺意があった。面倒事に巻き込まれていなければ良いが………)

 

 

そんな事を考えていてもしょうがないと思い、床についた。いつの間にやら寝てしまっていたらしい。

 

 

 

ーーーー 次の日 ーーーー

 

 

先日と同様に戦闘訓練を行っていた。今回はリューキュウとでは無く、波動と模擬戦をする事になっている。

 

 

「チャージ満タン 出力30…グリングウェイブ!!」

 

 

「鎌鼬!」 

 

 

二人の技が相殺する。狩迅は亜種羅と赫眼を発動させ、波動は個性の応用で空中に浮きながら遠距離攻撃を仕掛ける。

 

 

「爆風で見えない……何処だ」

 

 

「こっちー!」

 

 

爆風によってできた煙に身を潜め、波動が不意打ちをしてきた。赫眼を発動させていた為、なんとかしゃがむ事で回避し距離を取る。

 

 

「あれ?今のどうやって避けたの?なんでなんで?」

 

 

「赫眼は身体能力の向上だけじゃ無く、五感全ての感覚を研ぎ澄ませることができるんです。不意打ちはもう喰らいません。」

 

 

「じゃあこれならどう!?チャージ満タン 出力50、グリングウェイブ!」

 

 

先程よりも大きいエネルギー波を放ってくる。狩迅は上に飛び上がり回避するが、空中での隙を突かれもう片方の腕で準備していたグリングウェイブをくらってしまう。

 

 

(個性に頼り切った動きじゃない…長年の研究と努力が感じられる。ビッグ3の名は伊達じゃないな。)

 

 

「少しは効いたかな?やりすぎちゃった?」

 

 

狩迅は天井に頭ごとめり込んで下半身しか見えない状態になっていた。

 

 

「不意打ちが駄目なら騙し討ちか…流石に効きましたよ。頭が痛い……」

 

 

上からひゅ〜と落ちてくる。頭と腰を抑えている。結構痛いらしい。

 

 

「聞きたいことがあるのだけど、何故君は私と戦った時の姿にならないの?あれだったらねじれとも善戦出来ると思うのだけれど…」

 

 

リューキュウが腕を軽く組みながら質問してきた。

 

 

「俺の強みは単純な戦闘力であって、あなた方の様に高い技術力がある訳ではないんです。以前知り合いに言われたんですが、俺は特定の状況下以外では動きが大雑把らしいんです。」

 

 

「だけど、今さっきねじれの不意打ち避けたじゃない?」

 

 

「あれは…………赫眼を発動させてはいましたがほぼ勘です。」

 

 

「勘で避けられちゃった!ちょっとショックだね!」

 

 

ちょっと悲しんでいる波動を横目にリューキュウが話を続ける。

 

 

「そう言っても戦いの勘は馬鹿に出来ないわよ。私もそれに何回も助けられたことがあるからね。」

 

 

「まぁ…つまりただただ殴る蹴るだけじゃ実力が上だったとしても足をすくわれる事もあるから、そこら辺を見直したいってことです。」

 

 

「過去に一度、そうやって負けかけましたから。」

 

 

狩迅は体育祭での爆豪との戦いを思い出していた。二人の戦力差は戦闘訓練の時からあまり変わっていないはずだった。だが爆豪は戦闘の天才、大きく離れていた差を技術で埋め合わせていたのだ。

 

 

「己の実力を過信しないのは良いことよ。君の場合はそうね…ジークンドーとかやってみたらどう?意外と似合うかも。できるだけの協力はするわよ。」

 

 

ここで余談だが、ジークンドーとはかのブルース・リーが考案した打撃や投技などのあらゆる局面で戦うことを想定した総合格闘技である。元々は中国拳法などを参考にし、ボクシングやムエタイ、柔道などで使う戦術や技術を取り入れ、"最短で相手を倒す"と言うことに特化している。(wiki参考)

 

 

最短で相手を倒す、つまり短期決戦で絶大な戦闘力を誇る狩迅に取っては相性抜群な格闘技なのである。(主はジークンドー好き)

 

 

「時間があったら動画か何かで見てみます。」

 

 

「えぇ、頑張ってちょうだい。あ…そうだった。二人に言わないといけない事があるの。」

 

 

『?』

 

 

「明日、ヒーロー殺しの件で保須市へ向かう事になったの。いわば出張ね、その際、二人にも同行してもらいたいのよ。」

 

 

「ヒーロー殺しがまた?」

 

 

「えぇ、市から抑止力として救援要請を出されたの。既にかなりの数のプロヒーローがやれているわ、保須はヒーロー事務所が多いからね。私以外にもエンデヴァーや他のかなりの腕利きのヒーローが向かうらしいわ。」

 

 

「それにヒーロー殺しは活動した区域では必ず4名以上を攻撃していて、保須ではまだインゲニウムの一人しか危害を加えていない。恐らく前例道理に動くのであれば、まだ動くはず。私達は抑止力が任務だけど最終的な目標は捕らえることよ。」

 

 

「分かりました。できる限りのことは実践します。」

 

 

「ありがとう、頼もしい限りよ。ねじれ、彼にもしもの事があったら助けてあげて。彼は強いけれど、実戦は初めて。私が側に居ないときはあなたが見ていてあげて。」

 

 

「うん!狩迅君のことは任せて、リューキュウ!」

 

 

「申し訳ない。面倒掛けさせてしまって。」

 

 

「大丈夫だよ〜!私、先輩なんだから!」

 

 

えっへんといったポーズで自身満々に胸を張る。これでも実は戦闘訓練が始まる前では狩迅の尻尾で猫みたいに遊んでいたのだ。

 

 

(本当に不思議な人……)

 

 

「突然の事でごめんなさいね。あなたにはまだ成長してもらいたいの。ヒーロー殺しの件………出来るわね?」

 

 

「トップヒーローから言われたら、後には引けない…勿論、全力で掛からせてもらいます。」

 

 

「ありがとう。期待しているわ。」

 

 

狩迅は覚悟を決め、明日に備え早くに休んだ。




ジークンドー………好きなんデス。

次回はヒーロー殺しとの戦闘です。しばしお待ちを………


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第二十二話:打倒ヒーロー殺し

職場体験編って脳無が出てくるんですけど、今回の話で出てくる脳無は原作よりちょっと、強い設定です。




現在朝6時…各自はヒーロー殺し確保に向け、準備を行っている。早朝からバタバタと慌ただしい。

 

 

「おはよう〜…狩迅君速いんだねぇ……それより喋るネズミさんはどこに行ったの?」

 

 

眠そうなホヤホヤとした顔で波動が話しかけてきた。

 

 

「寝ぼけてないで、速く準備してください。喋るネズミはあの人しかいませんよ。」

 

 

「それより歯磨きしました?顔はちゃんと洗ってくださいよ。」

 

 

「は〜い」

 

 

そう言うとそそくさと洗面所に向かっていく波動。

 

 

「狩迅君、おはよう。ねじれったら、これじゃあどっちが年上か分からないわね。」

 

 

その光景を見て少し微笑みながら、リューキュウがこっちに歩いてくる。一番最初に起きて作業に取り掛かっていたらしく、身なりがきちんとしている。狩迅は波動のとこを思い、少し複雑な顔をしていた。

 

 

「リューキュウ、今回の作戦は?」

 

 

「その事は後で会議室で話すわ。みんなを呼んでちょうだい。」

 

 

全員の支度が終わり、サイドキックの人達が集まってくる。会議室へ移動すると、即座に話が始まる。今回の作戦はリューキュウ側とサイドキック側で二手に分かれ、詮索するらしい。狩迅と波動はリューキュウ側につくことになった。

基本的には保須の中央部を主に活動区域とし、ヒーロー殺しがいたら増援を呼び、即座に撃退する。説明が終わり、すぐにヒーローコスチュームに着替え持ち場につく。

 

 

 

ーーー 活動開始してから数時間後 ーーー

 

 

「かなり数のヒーローがいる…ここまで警戒度を高くするのか。」

 

 

「でもぜんぜん異変起きないね!どうしてだろう?」

 

 

「警戒しているのか、はたまた選んでいるのか……」

 

 

辺りは不自然なほど静かで平和だった。熱心に仕事に集中する社会人、カフェでコーヒーを飲む老人、風邪の子供を連れる母親、何もかもが平和だった。

嵐の前の静けさとはこの事だろう。だが確実にヒーロー殺しは活動するはず…

 

 

「ナルガクルガ、どう?」

 

 

狩迅は常に赫眼を発動させ、空間の把握を行っていた。本人によれば、頑張れば1km先の音も聞こえるらしい。索敵にもってこいの能力である。

 

 

「いえ、まったく……」

 

 

「ヒーロー殺しは夜に動くことが多いらしいわ。もう少し待ってみましょう。必ず尻尾を出すはず…」

 

 

「リューキュウ、やる気いっぱいだねぇ!」

 

 

「勿論よ。必ず捕らえるわ、私だってトップヒーローの肩書背負っているんだから。恥じない戦いをしないといけないの。」

 

 

リューキュウの目はいつもの優しい目では無く、決意と覚悟を決めた顔をしていた。

 

 

「これが俗に言う百人力って言うんでしょうね?」

 

 

「そうだね!リューキュウ何かいつもよりかっこいいね!なんでだろ?不思議〜!」

 

 

二人がリューキュウを相手にほんの少しばかり茶化す。リューキュウは少し恥ずかしながら、優しく怒った。そんな時だった。時刻にして大体4〜5時程だろうか、狩迅は違和感を覚えていた。

 

 

「……………二人共、待ってください。」

 

 

『?』

 

 

「血の匂いがする………」

 

 

狩迅は不自然な事を口にしたあと、そこにあった壁に耳を当て、研ぎ澄ませる。

悲鳴が聞こえる。炎の音やヒーローが奮闘する声も聞こえてきた。

 

 

「来ました。ここから3時の方向…距離800、恐らくヴィランです!」

 

 

リューキュウ「ッ!良くやったわ!ねじれ、急ぐわよ!」

 

 

「うん!」

 

 

リューキュウはドラゴンの姿になり飛行、波動は個性の応用で足からエネルギーを出し飛ぶ。狩迅は飛ぶ事は出来ない為、足を迅竜化させ立体物を利用しながら同行する。

 

 

「先に様子を見てきます!」

 

 

「ええ、お願い!後で追いつくわ!」

 

 

「よろしくねーーー!」

 

 

狩迅はギアを外し更に速度を上げる。たどり着いた先のビルの上で見たのは一面炎の海となっていた戦場だった。

 

 

「あれは…脳無!?」

 

 

ヒーロー達が苦戦していたのは、かつて自分達がA組やオールマイトをギリギリまで追い詰めた脳無だった。

 

 

「だがあの時程戦闘力は無さそうに見える。量産型みたいなものなのか?一先ず、さっさとプロを助けるか…」

 

 

狩迅は亜種羅と赫眼を同時発動させ、街を襲っている脳無目掛けて渾身の蹴りを放つ。

 

 

「あれはたしか……」

 

「リューキュウの所の!!」

 

「俺達が苦戦していたあのヴィランをたった一発で……」

 

 

「怪我人はいますか!現在の被害状況は!」

 

 

脳無を再起不能にさせ、プロヒーロー達に現在の状況を聞き出す。この脳無は他にも数体ほどいるらしく、各所で戦闘が行われている。怪我人は何人かいるが死亡者はいない。

不幸中の幸いだろう。

 

 

「リューキュウ!」

 

 

「これは……」

 

 

狩迅は聞いたことを完結に話し、リューキュウの指示を待っていた。

 

 

「正体不明の脳無、突然の襲撃……考えるだけで頭が痛くなるわね。兎に角私達は他の所の増援、及びに民間人の救出を最優先するわ!ねじれはナルガクルガと一緒に行って、私は他のヒーローの応援に行くわ!」

 

 

それだけを言ってリューキュウは迅速に行動に移し飛び立っていった。

 

 

「頼みます。ねじれちゃん、急ぎますよ。」

 

 

「任せて!どこから行くの?一番近い所からの方が良いと思うよ!」

 

 

「勿論そのつもりです。向かいましょう。」

 

 

狩迅と波動は他の苦戦していたヒーローの手助けを行いながら、この事件の発端を探っていた。更に数十分後………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「超再生………厄介な」

 

 

倒していたはずの脳無が復活を繰り返していた。USJの時の脳無といくつか同じとこ特徴を持っているらしい。その中の一つが超再生。文字道理再生速度が異常な程速くなるというもの、単純で強力……そのタフさに二人も少し苦戦してしまっていた。

 

 

「あんまり強くないけど、復活されちゃったら困っちゃうな……」

 

 

「…………ねじれちゃん、民間人を誘導してきてください。この2体は俺がやります。」

 

 

「なんでなんで?二人で戦った方が良いはずだよ?リューキュウに言われたの!君を守ってって!」

 

 

「その頼みは断っておいてください。このままじゃ俺がジリ貧で、体力切れを起こしてどっちにしろいずれ負けてしまいます。」

 

 

狩迅達は戦闘を開始しておよそ数十分間脳無を抑えていたが、狩迅は短期決戦が専門の為、体力がもう僅かしかない。

 

 

「リューキュウと戦った時の姿………覚えていますか?あれは消耗が激しいので早めに決着をつけたいんです。ここじゃ被害が出る可能性がある、あなたに任せたいんです。周囲の状況をいち早く理解できるあなたなら適任かと」

 

 

波動は少し悩んでから結論を言った。答えは"はい"、確かにリューキュウを一瞬だが圧倒したあの姿なら倒せるはず。ここは狩迅に任せ、波動は周囲の民間人の誘導を開始した。

 

 

「かっこ悪くてごめんねー!」

 

 

波動は全速力で被害があった場所に駆け付けた。

 

 

「高い状況判断能力があるヒーローはより多くの人を助けられる、その行動は最善と言えます…………さぁ、脳無共……早いとこ決着を………つけてぇなぁ……」

 

 

狩迅はもう既に息切れが起こり、余裕が無かった。

 

 

「ガァァァァァァァアアアアア!!!!!」

 

 

体力の無い体に鞭を打つ。ヒーローは例え凶悪犯罪者が相手だったとしても殺害してはいけないが、今対峙している敵は超再生付き……手加減は必要無いと判断した狩迅は月迅竜を

発動させ、目が4つある脳無に飛びかかり顔面を掴みながら地面に叩き落とす。

 

 

「前の時のような失態は晒さない!」

 

 

もう一体の脳無が掴みかかってくるが、両手を広げた瞬間、懐に入り右腕で顎をアッパーカットしそのまま左足の回し蹴りをくらわせる。その脳無は真横に吹っ飛んでいき、ビルの壁にめり込む。

 

 

「ちったぁ…効いたかよ。ッ!」

 

 

手を離した四つ目の脳無が個性で全身を肥大化させ筋力を底上げして、近くにあった大型トラックを投げ飛ばしてくるが狩迅は斬撃を放ち真っ二つにし、四つ目脳無に急接近し、みぞおちに拳を深く入れた。

 

 

「ハァ…ハァ……これでしばらくは動かんだろ……数十秒はな。」

 

 

そんな事を言っている狩迅の後ろにビルに激突していた顔の無い脳無が襲いかかっていた。

バレバレに音を出していた為簡単に気配を探れた。すぐに後ろを向き、首元に手刀をくりだす。超再生でも回復するのは遅れる程のダメージを与えた。

 

 

「俺の役目はここまでだな、後はエンデヴァー、頼みます。」

 

 

偶然近くにいたプロヒーローのエンデヴァーと選手を交代した。

 

 

「チッ…」

 

 

他のヒーローが応援要請を出していたのかは分からないが、エンデヴァーがここに来ていた。狩迅はここをプロヒーローであるエンデヴァーに託し、リューキュウ達の元へ向かおうとする。

 

 

「本当に展開が早い。いきなりの脳無襲撃……まさか敵連合が…………」

 

 

ピロン

 

 

「通信機?……………ッ!」

 

 

通信機から出された信号は自分の居場所を教えるものだった。一見すると不可解な行動に見えるが、これを一括で送信してきたのは………

 

 

(緑谷………あいつが無意味な事をするとは思えないな。)

 

 

どうしょうもない不安感が、身を包んでいっている。仮に誤送信だったら今頃連絡が来ているはず。それに慎重派の緑谷がこんな事をしでかすとは誰も思えない。

 

 

(念の為………見に行っておくか。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 路地裏 ーーーー

 

 

人気の無いこの場所でヒーロー殺しであるステインと戦っている者がいた。

緑谷、飯田、そして轟である。飯田が倒れているヒーローとステインを見つけたことにより、復讐心が大きく揺さぶられ立ち向かうが、返り討ちにあう。ギリギリの所で緑谷に助けられるがそれでも状況は不利…ステインの個性は凝血、相手の血を舐めることにより一定時間行動不能にするという物、緑谷もそれに掛かってしまい絶体絶命に陥ったところを運良く轟が間に合った。

 

 

「こいつらは、殺させねぇぞ。ヒーロー殺し!」

 

 

「轟君!そいつに血ィみせちゃあ駄目だ!」

 

 

「俺なら距離を保って戦えrッ!」

 

 

ステインの投げナイフが轟の頬に掠ってしまった。間髪入れずステインが飛びかかる。

 

 

「良い友人を持ったじゃないか、インゲニウム!」

 

 

ステインが持っていた刀を振り下げる。轟の氷による防御で防ぐことができるが、ステインに服の袖を握られ血を舐められそうになる。炎を出すことによって間一髪回避できた。

轟は氷結でステインを捕らえようとするが、身のこなしが速く狭い空間をうまく利用している。

 

 

「お前も………良い!」

 

 

「しまっ…」

 

 

轟の腕にはステインの鎖のようなものが突き刺さっており、身動きが取れない。

倒れているヒーロー目掛けて刀を一直線にし、トドメを刺そうとする。

 

 

「ッ!!」

 

 

「トドメッ!」

 

 

「させん。」

 

 

緑谷の送信を見て駆け付けた狩迅が上から落ちてきてその場に到着する。ヒーロー殺しと思われるその人物に一発蹴りを入れ、距離を置いた。

 

 

「狩迅君!」 

 

 

「悪い、遅くなった。あいつがヒーロー殺しで間違いないな?」

 

 

「邪魔だ……どけ、俺はそこにいる贋作を殺す義務がある!」

 

 

「贋作…か。お前の言う贋作ってのは、何なんだ?」

 

 

ヒーロー殺しが怒りの表情を見せ、荒々しい声で狩迅の問に答える。

 

 

「ヒーローは、見返りを求めてはならない。自己犠牲を持って得られる称号でなくてはならない!全ては、正しき社会の為に……」

 

 

狩迅はヒーロー殺しの思想に少し疑問を抱いていた。見返りを求めてはならない…それは本当にそうなのだろうか…

 

 

「そうか…一つ質問したい。ヒーローは金を貰える職業だ。だがその金を自分の家族や愛する者の為に必要とする者もいる。人を助けながら、親に楽をさせてやりたいって愛情を抱える者がいる。お前から見て、そいつも贋作か?」

 

 

ヒーロー殺しは少しの間を開ける。

 

 

「……………さぁな………」

 

 

「少なくとも、俺は本物だと思う。だが、お前が仕留めてきた者の中にもこういった奴が少なからず居たはずだ。人は人の自由を奪える程自由じゃねぇ。」

 

 

「貴様は……分からない。贋作か、それとも本物か?」

 

 

「どうだろうな…」

 

 

再び戦闘が始まる。

 

 

「下がれ!お前ら!」

 

 

轟が氷結で再度ステインを捕らえようとするが、これも牽制になっただけであった。

 

 

「何か動けるようになってた!」

 

 

「緑谷!奴の個性は!」

 

 

「多分、血を舐めた相手の身動きをさせなくする……だと思う。」

 

 

「緑谷が動けるならなんで飯田は動けてねぇんだ?」

 

 

「血に関係あるなら、血液型がトリガーか?」

 

 

現に一番最初に血を舐められた飯田は未だに動けそうにない。

 

 

「飯田はAだったな。緑谷はOか…」

 

 

「…………」

 

 

「狩迅君の血液型なんだっけ!」

 

 

「AB、多分飯田より長い。一度捕まったら終いだな……それに俺はさっきの脳無との長期戦で体力があまり残っていない。この場での最大戦力は緑谷…お前だ。」

 

 

「クッ……轟君、僕と狩迅君が奴の気を引き付けるから、君は後方支援を!」

 

 

「あぁ、3人で守るぞ!」

 

 

「3対1か…甘くは無いな。」

 

 

緑谷はフルカウルを15%に、狩迅はなけなしの体力で赫眼を発動させ周りの建物を利用しながら攻撃を仕掛ける。だがステインは速い身のこなしで二人の攻撃を避け、反撃をしようとするが轟の氷結と炎がそれを邪魔する。

 

 

戦いの最中緑谷はステインに足を切られ、血を流してしまう。ギリギリの所で轟の支援が間に合うが、連携があまり上手く行かない。そんな時、轟の後ろから飯田のか細い声が聞こえてくる。

 

 

「やめてくれ………」

 

 

「ッ!」

 

 

「もう……やめてくれ………!」

 

 

飯田は涙を浮かべながら悲痛に語りかける。

 

 

「やめてほしけりゃ立て!!」

 

 

ステインに切られたことにより、刀に血がついていた。緑谷は体の自由が再度効かなくなり、動けなくなってしまう。

 

 

「なりてぇもんちゃんと見ろ!!」

 

 

轟が炎を噴出し、ステインを後退させる。飯田はその言葉に自分が情けなく感じ、奮い立とうとする。

 

 

(何がヒーロー…ともに守られ、血を流させて……ヒーロー殺しステイン奴に罪を思い知らせんが為に僕は兄の名を使った。目の前のことだけ、自分のことだけしか見れちゃいない。……お前の言うとおりだ。ヒーロー殺し、僕は彼らとは違う!未熟者だ…足元にも及ばない!それでも……!)

 

 

「チッ…速い、轟!」

 

 

「氷と炎、言われたことはないか?個性に感け、動きが大雑把だと!」

 

 

轟は懐に入られてしまい、ステインによって胴体を切られそうになってしまう。

 

 

「轟君ッ!!!」

 

 

「ハァ…ハァ…体が……言う事を聞かねぇ…」

 

 

狩迅も体力に限界が来ていた。このままでは轟が殺される……そう思ったときだった。

 

 

(今ここで立たなきゃ……二度と…もう二度と彼らに!兄さんに追いつけなくなってしまう!)

 

 

「レシプロ、バーストォォォ!!」

 

 

飯田が遂に復活した。レシプロバーストによる高速の蹴りでステインを吹き飛ばす。

 

 

「速い!」

 

 

「余所見してんじゃねぇよ…」

 

 

「なにっ!?」

 

 

「お前寸勁って知ってるか?体当たりの力を拳に集中させるイメージなんだがよ…」

 

 

吹き飛ばされたステインの真後ろに狩迅は即座に移動し、背中に軽い手刀を当てていた。

 

 

「個性無しでも人の骨をバキバキ折れるんだってよ?俺は初心者だから下手だけど、大目に見てくれよ?」

 

 

「させるかッ!」

 

 

「遅ぇ…」

 

 

次の瞬間、ステインは背中から猛烈な痛みがほとばしる。体の骨の何本かがいってしまっただろう。口から血反吐を吐いた。

 

 

「やるぞ…これで最後だ!」

 

 

「俺が折れれば……インゲニウムは死んでしまう!」

 

 

「論………外ィ!」

 

 

ステインに向かって轟が炎を放出する。倒れていたヒーローから逃げろと言われるが、

恐らくそんな時間は与えてくれないだろう。だがステインも狩迅による背中へのダメージとヒーローの増援がもうすぐ来ることには焦りを感じていた。

 

 

「飯田、お前のレシプロの発動時間は短いだろ。早めに蹴りをつけねぇとまずいぞ。」

 

 

「確かにそうだ…轟君!俺の足を凍らせてくれ!排気口は凍らせずにな!」

 

 

「邪魔だ!」

 

 

ステインの投げナイフが轟に向かって飛んでくる。

 

 

間一髪で飯田が腕を犠牲にすることで轟を助ける。その頃緑谷は少しずつではあるが、

段々と動けるようになっていた。フルカウルを発動させ、3人の元へ駆けつけようとする。

 

 

轟は狩迅が時間を稼いでる間に、飯田の足を凍らせる。

 

 

(戦うんだ……腕がどうなろうといい!)

 

 

「レシプロ……エクステンド!!」

 

 

「ワンフォーオール、フルカウル25%!」

 

 

「限界を超える。双眸赫然……亜種羅ァァ!」

 

 

ビルから落下するステインに飯田と緑谷と狩迅が迎え撃つ。

 

 

『今は………』

 

 

「行け!」

 

 

(足が……)

 

 

(拳が……)

 

 

(腕が……)

 

 

『あれば……いい!!』

 

 

「ッ!!?」

 

 

飯田の蹴りは横腹に、緑谷の拳は顔面に、狩迅の刃は胴体にそれぞれ深々と刺さった。

 

 

「出力を上げるには、無茶があった……腕が、痛い……!」

 

 

(駄目だ……腕の感覚が……)

 

 

(奴の動きを止められた!チャンスだ!)

 

 

「ッ!シャァ!」

 

 

一瞬意識が飛んだが、すぐに持ち直し、刀を振るう。

 

 

「お前を倒そう、今度は犯罪者として!」

 

 

「畳み掛けろォ!!」

 

 

「ヒーローとして!!!」

 

 

飯田が蹴りでステインを上へふっ飛ばし、轟の炎で追い打ちをかける。流石のステインもこのダメージは大きく、意識を手放した。

落下する三人を轟の氷でうまく救出し、ステインの状態を確認する。

 

 

「流石に気絶してる……っぽい」

 

 

「じゃあ拘束して通りに出よう。」

 

 

「何か縛れるものは……ゴミ箱にねぇか?」

 

 

「探してみるか。」

 

 

「念の為、武器は全部外しておこう。」

 

 

「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「ネイティブさん、動けますか?」

 

 

「あぁ、大丈夫になった!」

 

 

倒れていたヒーローはしばらくしたら動けるようになって、負傷した緑谷をおぶって連れて行っていた。

 

 

「轟、それじゃあすぐに解けねぇか?」

 

 

「もう一つぐらい巻いとくか………」

 

 

「轟君!やはり僕が引く!」

 

 

「お前腕グチャグチャだろ…」

 

 

「悪かった…プロの俺が完全に足手まといだった。」

 

 

「いえ、一対一でヒーロー殺しの個性だと…仕方ないです。」

 

 

「狩迅と飯田が疲弊してたとはいえ、4対1の上にこいつ自身のミスがあってギリギリ勝てた。」

 

 

「確かに最終局面ではヒーロー殺しの動きに焦りが生じていた。緑谷の時間に気を取られていたんだろう。」

 

 

移動している最中、今回の事の話をしていたが、飯田はあまり喋らなかった。そしてしばらく歩いていると前から小さい黄色の格好をしたお爺さんが緑谷の事を呼んでいた。

 

 

「な…何故お前がここに!?」

 

 

「グラントリノ!」

 

 

「新幹線で待っていろっていったろ!」

 

 

道路の向こう側にいたのが、瞬時にこっちに移動して緑谷に顔面キックをお見舞いする。

緑谷はグラントリノに謝罪し、3人に紹介した。

その後はプロヒーロー達が集合、応援に来てくれたらしい。

 

 

「子供?」

 

「酷い怪我じゃないか!」

 

「君は、確か脳無と戦っていた……」

 

 

「どうも、ヒーロー殺しは捕まえましたよ。」

 

 

周囲のヒーロー達が驚く。すぐに警察を呼び出し、事の片付けを行おうとしていた。

そんな中、飯田がいきなり謝罪をしてきた。

 

 

「みんな、僕のせいで傷を負わせた、本当にすまなかった……怒りで何も……見えなくなってしまっていた………」

 

 

涙を浮かべながら、深々と頭を下げる飯田。三人は彼に慰めの言葉をかける。

飯田は少し、立ち直れたようだった。

 

 

「ッ!伏せろ!」

 

 

グラントリノが突然声を上げる。上空を見ると、翼の生えた脳無の姿がある。

その脳無は緑谷を掴むと、そのまま飛び去ろうとする。

 

 

『緑谷!』

 

 

脳無の片目はヒーローとの戦いで負傷したのか、抉れており血を流して近くにいたヒーローの顔にかかる。

 

 

(まずい…あまり上空に行かれると!俺の個性じゃ届かなくなる!)

 

 

いきなりの絶体絶命、その時だった……

 

 

「……………」

 

 

隠し持っていた小さいナイフで縄を切り、ヒーローの顔にかかった脳無の血をなめ取る。

 

 

「偽物が蔓延るこの社会も………いたずらに力を振りまく犯罪者も……」

 

 

ステインが脳無の頭にナイフを突き刺す。脳無はそのまま地面に落下し、ステインに殺された。結果的に緑谷は助かったが、ヒーロー殺しの腕に掴まれている。

 

 

「ハァ…ハァ……粛清対象だ…!」

 

 

「ッ!?」

 

 

「全ては……正しき社会の為にッ!!」

 

 

(あれ程のダメージを受けて、まだ立つのか!?)

 

 

飯田を始めとする現地の者全員がステインの復活を驚いていた。

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

「おいおいおいおい……何殺されてんだあの脳無!なんであのガキ共がいる!」

 

 

悪意が近くに潜んでいた。

 

 

「言いたい事が追いつかないぜ……めちゃくちゃだッ!!なんで…思い道理にならない…」

 

 

その少年は、既に傷がある首をがむしゃらに掻いていた。

 

 

ーーーー

 

 

ヒーロー全員が戦闘態勢に入る。ステインへの警戒心を最大にし、緊迫感が芽生える。

そこへ、現ナンバー2であり、轟の父でもあるエンデヴァーが到着した。

あの脳無を取り逃がしたのはエンデヴァーのようだ。

 

 

「何故一塊になっている。こっちにヴィランが逃げて来たはずだが……」

 

 

「あちらは……もう!?」

 

 

「多少手荒になってしまったがな。して、あの男はまさか……」

 

 

「ハァ…ハァ……エンデヴァーッ!!」

 

 

ステインの顔についていた布が落ち、素顔が露わになる。

 

 

「ヒーロー殺し!!」

 

 

「まて!轟!」

 

 

ステインがゆっくりとこっちを見てくる。その表情はとても人間とは思えない、化け物のような顔だった。

 

 

「偽物ォ!!」

 

 

体はもう動かないはず、それでも立ち上がりヒーロー達を睨みつける。全員がその姿に戦慄し、恐怖を覚えていた。

 

 

「正さねば、誰かが血に染まらねば、ヒーローを取り戻さねば!!」

 

 

「来い、偽物共ォ!俺を殺して良いのは、本物のヒーロー…オールマイトだけだァァァ!!!」

 

 

その異様な姿には、狩迅やエンデヴァーすらも恐れ慄いていた。それ程の気迫と威圧感があったのだ。その時の感覚は正に、蛇に睨まれた蛙だった。

だが力尽きたのだろうか、手に持っていたナイフを手放し立ったまま気絶した。

 

 

あとから聞いた話だが、この時、ヒーロー殺しは折れた肋骨が肺に刺さっていたらしい。

誰も血を舐め取られてなんかいなかった。なのに、あの場であの一瞬…ヒーロー殺しだけが

確かに相手に立ち向かっていた。

 

 

 

その意志はまた、他の意志へ受け継がれる事になる事を、まだ誰も知る由もなかった。




もうすぐ林間合宿編………今のうちに決めておこう。


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第二十三話:職場体験の終わり&救助訓練

これで職場体験は終わりです!リューキュウにはインターンでもお世話になるでしょう……


「腕が…」

 

 

「痛い……」

 

 

あの事件から一夜が明け、ヒーロー殺しとの戦闘の影響による怪我をここ、保須総合病院で治していた。轟と狩迅以外の二人は腕の傷が深いらしく、しばらくの間入院と言う事になった。

 

 

「やってくれたな、ヒーロー殺し…腕が包帯でグルグル巻だ。」

 

 

「…………」

 

 

「狩迅君はよく動けるね…」

 

 

「迅竜の腕のおかげだろうな。皮膚の強度は通常の数十倍にもなる、そう簡単には折れん。」

 

 

狩迅は二人と比べると比較的軽症で済んでいた。と言っても骨にひびが入ってる程度のこと…

 

 

「でも、冷静に考えると…凄いことしちゃったね」

 

 

「そうだな…」

 

 

「あんな姿見せられたら、生きてるのが奇跡だと思っちゃうよ。僕のこの足、殺そうと思えば殺せてたと思うんだ。」

 

 

「あぁ、俺らはあからさまに生かされた。あんだけ殺意向けられて、尚立ち向かったお前はすげぇよ。」

 

 

轟は飯田に対して称賛を贈る。

 

 

「いや違うさ…俺は………」

 

 

「お前ら、誰か来るみたいだぞ。」

 

 

狩迅がそんなことを言うと、三人は不思議な顔をする。そしてその数秒後、ドアから轟以外の職場体験先で世話になったヒーロー達が面会に来ていた。

 

 

「おぉ、起きてるな怪我人共。」

 

 

「グラントリノ!」

 

 

「マニュアルさん…」

 

 

「リューキュウ、それに何故波動先輩が?」

 

 

「まったく…心配したのよ?ヒーロー殺しと遭遇したら、増援を呼びなさいっていったでしょう?」

 

 

リューキュウが心配そうな顔をして、優しく怒る。一方波動はと言うと、いつもの不思議っ子全開で狩迅に近寄っていた。

 

 

「ねぇねぇ!あの後脳無はどうなったの?ヒーロー殺しは?なんでみんな腕に包帯巻いてるの?不思議〜!」

 

 

「え…えっとぉ…」

 

 

緑谷を含む狩迅以外の三人はかなり困惑していた。狩迅はなんとか波動の事について簡潔にまとめ、緑谷達に話した。

 

 

「とても、個性的な人だね…」

 

 

「無茶はしなくていい、俺も最初は戸惑った。」

 

 

「う…うむ。」

 

 

「?なんでみんな静かなの?」

 

 

「お嬢ちゃん、少しいいかい?」

 

 

グラントリノが波動と場所を交換し、緑谷に話しかける。

 

 

「小僧、お前には色々グチグチ言いたい。が、その前に、来客だぜ?」

 

 

「え?」

 

 

ドアからヒーロー達以外にもう一人入ってくる。そこには犬の顔をして、スーツを着ている男性がいた。

 

 

「保須警察署所長の面構犬嗣さんだ。」

 

 

(面構……所長!?)

 

 

緑谷達は一度立ち上がり、挨拶をしようとする。

 

 

「あぁ、かけたままで結構だワン。」

 

 

(ワン!?)

 

 

(語尾について話していいのか?)

 

 

「君たちがヒーロー殺しを捕まえた雄英生徒だワンね?」

 

 

「はい」

 

(所長が態々……なんだ?)

 

 

「逮捕したヒーロー殺しだが、火傷に骨折と中々重症で現在厳戒態勢の元、治療中だワン。」

 

 

「雄英生徒なら分かっていると思うが、超常黎明期、警察は統率と規格を重要視し、個性を武に用いない事とした。そしてヒーローはその穴を埋める形で対当してきた職業だワン。」

 

 

「個人の武力行使、容易に人を殺められる力、本来なら糾弾されて然るべきこれらが公に認められているのは、先人たちがモラルやルールをしっかり順守してきたからなんだワン。資格未取得者が保護管理者の指示無く個性で危害を加えた事、例え相手がヒーロー殺しであろうとも、これは立派な規則違反だワン。」

 

 

「ッ!」

 

 

「君たち狩迅龍騎とリューキュウ、波動ねじれを除く三人及び、プロヒーローエンデヴァー、マニュアル、グラントリノこの6名には厳正な処分がくだされなければならない。」

 

 

そのあまりにも理不尽なルールに、轟は怒りを見せる。

 

 

「なんで狩迅君だけ?」

 

 

「俺は事前に許可を貰っていたからな。」

 

 

「待ってくださいよ。飯田と狩迅が動いてなければネイティブさんが殺られてた。緑谷が来なければ二人は殺されてた。誰もヒーロー殺しの出現に気づいていなかったんですよ!規則を守って見殺しにしろってッ!!」

 

 

「結果オーライであれば、規則は有耶無耶でいいと?」

 

 

「ッ!」

 

 

「人を…助けるのがヒーローだろ!!」

 

 

「だから君は卵だ…まったく良い教育をしてるワンね、雄英も…エンデヴァーも…」

 

 

「ッ!……この犬がッ!」

 

 

轟が面構に怒鳴ろうとする瞬間、狩迅が声を上げる。

 

 

「止まれ、轟。」

 

 

「だが狩迅ッ!!」

 

 

狩迅は面構の方面をゆっくりと目で見てから、轟に視点を戻した。

 

「そう焦るな、まだ話は終わっちゃいない。これで終わるんだったら面子丸潰れだろうが。それ相応の解決策みたいなのが、あるんじゃないか?」

 

 

「………話が早いワンね。その通りだワン。」

 

 

「先程までの物が、警察としての公式見解、んで、処分云々はあくまで公表すればの話だワン。公表すれば世論は君たちを褒め称えるだろうが、処罰は免れない。一方で汚い話、公表しない場合、ヒーロー殺しの火傷痕から、エンデヴァーを功労者として擁立してしまえるワン。幸い目撃者は極めて限られている。」

 

 

「この違反はここで握りつぶせるんだワン。だが君達の英断と功績も誰にも知られる事は無い。強いて言うなら、エンデヴァーの助力に狩迅君がいたぐらいだワン。」

 

 

「こいつらが書かれてないんじゃ欲しいとも思わねぇな……俺のも取り消しておいてください。後々で面倒な事になるかもしれん。」

 

 

「分かったワン。それで、どっちがいい?一人の人間としては…前途ある若者の偉大なる過ちに、ケチをつけたくないんだワン。」

 

 

親指をグッと立て、前に出す仕草を取る。

 

 

「まっ、リューキュウさん以外は監督不行届きで俺らは責任取らないと出しな」

 

 

涙を浮かべながら語るマニュアル。

 

 

(なんだか…ごめんなさいね)

 

 

罪悪感を覚えていたリューキュウであった。

 

 

 

 

 

 

それからしばらくし、無事に退院する事ができた四人はそれぞれ自分の事務所へと戻り、また活動を再開させていた。

現在狩迅はリューキュウと模擬戦をしている真っ最中、病み上がりの体ではあるが、支障はない模様。

 

 

「発勁衝ッ!」

 

 

「ングッ!」

 

 

狩迅が手の平でドラゴンと化したリューキュウの胴体に触れると同時に、強い衝撃が走った。ここしばらくの間でいくつか武術を学んでいたらしい。今のは先日のヒーロー殺しとの戦いで見せた寸勁の応用技、攻撃力はないが、吹き飛ばし力に重点を置いた技である。

 

 

「加速…」

 

 

移動速度を更に上げ、リューキュウを追い詰めていく、だがリューキュウとてトップヒーロー…簡単にはやられはしない。

 

 

「君の動きには必ずパターンがある。相手を囲むように動き、死角から不意打ち……ここッ!」

 

 

「ッ!」

 

 

狩迅が背後から蹴りを入れようとするが、リューキュウは即座にしゃがみ込み尻尾でカウンターを狙う。

 

 

(普通の人間なら反応すら出来ないはず…予測か…長年培ってきた物はやはり違う。)

 

 

「確かに目に見えない程の速度、だけど君の動きはどこから来るのかが分かりやすい。後はタイミングさえ掴めばどうとでもなるわよ。」

 

 

「流石としか言いようが無いな。この短時間で人の癖を見抜くなんてよ…」

 

 

狩迅は構えを解き、リューキュウに振り向く。

 

 

「そろそろ次の段階へ進みたい…迅竜を…」

 

 

「使いこなしたいって事ね。」

 

 

「そういう事です。ですが軽い暴走状態になってしまうので、もしもの事があれば波動先輩と助力してでも鎮めて頂けるとありがたいです。」

 

 

「分かったわ。ねじれ、少し下がっていて。」

 

 

「うん!」

 

 

(さて、この力を解禁するのはこれで"三度目"果たして上手くいくか?)

 

 

(まぁ、二人を信じることとしよう。折角の職場体験、力をつけなければ勿体無い。)

 

 

狩迅は脱力し、心を落ち着かせる。少しの間瞑想を初め、できるだけ邪念を祓う。

呼吸を整え、その力に身を委ねる。その刹那、狩迅の体から突如として黒い煙の様な物が辺りを包もうとしていた。

 

 

「………………」

 

 

煙の中から見る者を戦慄させる、過去に実在した闇の先駆者がそこに居た。

 

 

「早めに終わらせよう…」

 

 

「ねじれ、ごめんだけど、あなたの力も借りる事になるかもしれないわ。」

 

 

リューキュウは冷や汗を流す、今までの力の比ではない、むしろ可愛く思える程の強靭さがそこにはあった。まだ戦っていない、なのにも関わらず敗北の二文字がデカデカと見えていた。

 

 

「始めようか。」

 

 

その紅い眼光は確実に彼女を捉えていた。

 

 

「手加減は、必要ないわね?」

 

 

リューキュウは確認を取った刹那、猛スピードで狩迅に襲いかかる。一方で狩迅はまったく動かない、次の瞬間、狩迅から途轍もない轟音が響き渡る。体育祭で見せた竜の咆哮だろう。

 

 

「壁にひびが……」

 

 

「すっごく大きい声!」

 

 

『スゥ………フッ!』

 

 

刹那、リューキュウ達の目から狩迅の姿が消え、次の瞬間背後から途轍もない威圧感が芽生える。その巨体にも関わらず、あまりにも速すぎるその速度。リューキュウは後退り、距離を置く。

 

 

「リューキュウ!後ろ!」

 

 

(ッ!……反応出来なかった……)

 

 

『まだだ…』

 

 

狩迅はその強靭な爪でリューキュウを攻撃しようとする。リューキュウも自身の鉤爪で反撃しようとするが、力もスピードも狩迅の方が上だった。一瞬にして数トンもある肉体を軽々と吹き飛ばされた。

 

 

(以前とは比べ物にならない!なんて言う破壊力!?)

 

 

『チッ…あまり長い時間できねぇか…』

 

 

『制御は、取り敢えず出来るようだ。リューキュウ、ここらでやめておこう。充分に実験できた。これ以上は意識が保たない。』

 

 

狩迅は元の状態に戻り、床に座る。リューキュウはその姿に不覚にもホッとしてしまっていた。

 

 

「そんなに体力を使うのかしら?」

 

 

「いえ、体力自体は減りません。ただ、何かに意識を乗っ取られそうになるんです。」

 

 

「ねぇねぇ、なんで個性が暴走しちゃうの?なんで乗っ取られるの?教えて!」

 

 

距離感を無視して話しかける波動。狩迅はもう慣れている様に質問に答えた。

 

 

「そこに関してはなんて言えばいいのか…元々俺の個性は突然変異によって生まれた物なんです。母の個性は猫又、文字道理猫らしい事ができます、父の個性は確か………」

 

 

「なんだったか…"ティガ"……、すみません忘れてしまいました。だけど結構強い個性らしく、ヒーローもやっていたそうです。」

 

 

「少し違和感のある言い方ね?今君の両親はどうしているの?」

 

 

リューキュウは狩迅の言い方に少し疑問を抱いていた。まるで今は居ないかのように話していた狩迅に質問する。

 

 

「いえ、昔に他界しました。母は謎のヴィランに、父は不慮の事故らしいです。」

 

 

「……ごめんなさい、聞いてはいけなかったことかしら…」

 

 

「いえ、母の事は残念でしたが、今では養父がいるので大丈夫です。まぁその人は他にも俺の様に親がいない子供を保護したり、殺処分にされる動物を保護する活動をやっているらしく、大変そうだからあまり会えませんが。父に関しては、顔も名前も知りませんしね。」

 

 

少し気まずい空気になった。リューキュウはどのような言葉をかけるか迷っていた所、波動がいつも通りの元気な声で狩迅に話しかける。

 

 

「じゃあさじゃあさ!私、お姉ちゃんになろっか!」

 

 

『………ハ?』

 

 

これまた不思議な事を言い出す波動。突然の事にリューキュウは口が閉じなかった。

 

 

「ふっ……」

 

 

狩迅はそんな彼女の事を見て、少し笑ってしまう。

 

 

「む〜なんで笑ってるの〜」

 

 

頬を膨らせムッとしている波動。狩迅は優しく話す。

 

 

「前から思っていましたが、本当にあなたは不思議な人だ。本気でそんなことを言う…だから俺も惹かれたのかもしれない…」

 

 

「気が楽になりました。ですが波動先輩は波動先輩のままでいて欲しいんです。」

 

 

「そっか〜…でも大変な時は言わないと駄目だよ!私、先輩なんだから!」

 

 

波動はにっこりとしながら狩迅の頭を撫でる。狩迅は波動の優しさがかつての母に似ていて、思わず温もりを感じ取り、涙腺が緩みかけた。狩迅は尻尾でゆっくりと波動の頭を撫で返す。

 

 

「もふもふだー!」

 

 

「こうして見ると、本当に姉弟みたいね。なんだか感慨深いわ。」

 

 

「もう少し、二人には早くに会っていたかったですよ。」

 

 

 

 

 

 

こうして時は過ぎていき、職場体験も終わりを迎える。そして翌日の午後……

 

荷物を纏め、一度事務所に戻り挨拶をする。見送りの為、リューキュウや波動、サイドキックのみんなも前に立っていた。

 

 

「短い間、世話になりました。」

 

 

「一週間、お疲れ様。もう少し教えてあげたい事があったけど、それは次の機会に回すとするわ。今から数カ月後になると思うけど、仮免試験があるはずよ。もし取れたときはうちに連絡をちょうだい。インターン先として受け入れさせてもらいたいの。」

 

 

「えぇ、ありがとうございます。」

 

 

「また来てね!絶対だよ!絶対だからね!」

 

 

波動は狩迅の腕をブンブン振りながらまた来るよう促す。狩迅自身としても必ずここに戻ってくると思っていた。

 

 

「その力、しっかり自分の物にしなさい。雄英じゃあ林間合宿もあったはずだから、今後の君に期待させてね。高い戦闘力、状況判断能力、索敵もできる…本当はうちのサイドキックに欲しいくらいなのよ?」

 

 

「そう言って頂けるとこちらとしても嬉しい限りですよ。」

 

 

『こうして見ると親子みたいだな〜』

 

 

サイドキックの面々は会話する二人を見て、そんな事を考えていた。そして時間が来る。

 

 

「もうそろそろ電車が来る時間です。それではここら辺で…」

 

 

「時間が経つのがやけに早く感じるわね。また会える日を楽しみにしているわ、ナルガクルガ。」

 

 

狩迅は少し微笑んだ後、後ろを振り向き帰るべき場所へと帰ろうとする。その後ろ姿を

リューキュウ達は黙って見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 翌日の朝 ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「女の本性は………お…女?アァァアァァァァ!!!」

 

 

「コォォォオォォオォ………」

 

 

「ヒィィィハッハッwwww爆豪wwおまっww髪型wwwww」

 

 

「笑うな…癖になって直らねぇんだ殺すぞ……」

 

 

体験明けの初日。A組の殆どが自身の体験について話を盛り上がらせていた。皆いい経験ができたのだろう。中には発狂してる奴や波紋の呼吸法を取得した者、髪型が8:2ヘアーになっている者もいる。

 

 

そんな中、彼らの注目がとある四人に集中する。ヒーロー殺しに遭遇した緑谷達である。

 

 

「まぁ、一番変化したっていうか大変だったのはお前等四人だな!」

 

 

「そうそうヒーロー殺し!」

 

 

「命あって何よりだぜ、まじでさ…」

 

 

「心配しましたわ…」

 

 

「エンデヴァーが助けてくれたんだってな!」

 

 

「凄いねぇ…流石ナンバー2ヒーロー!」

 

 

轟は面構に言われた事を思い出し、みんなに嘘を付く。

 

 

「………そうだな、助けられた。」

 

 

「俺ニュースで見たんだけどさ、ヒーロー殺し、敵連合とも繋がってたんだろ?もしあんな奴がUSJ来てたらと思うと、ゾッとするよ…」

 

 

「でもさ、確かに怖ぇけどさ、尾白動画見た?」

 

 

ヒーロー殺しが気絶する瞬間の映像が、付近にあった監視カメラによって撮られており、それが動画として公開されていた。それは短期間でかなりの視聴率を獲得しており、やはりヒーロー殺しの執念に共感していた者も少なからずいた。

 

 

「なんつーか、一本気つーか執念つーか、かっこよくね、とか思っちゃわね?」

 

 

「上鳴君!」

 

 

「あ!?わりぃ飯田!」

 

 

「いや、いいさ…」

 

 

ヒーロー殺しは確かにヒーローに対する信念はあった。ただやり方を間違えただけのヒーローに憧れた者の一人に過ぎなかった。飯田は奴の事は憎くはあるが、同時に敬意を払っていた。

 

 

「俺は俺のような人を出さない為にも、改めて、ヒーローとしての道を俺は歩む!」

 

 

腕をまっすぐピンと伸ばし、他の人を誘導する。いつもの飯田が戻ってきた。

 

 

「さぁ!そろそろ始業だ!全員席につきたまえ!」

 

 

『うるさい………』

 

 

(かっこいいよ、飯田君!)

 

 

ーーーー

 

 

ーーーー 一時間目の授業開始 ーーーー

 

 

A組はヒーロー基礎学として、救助訓練をする事となり、運動場に集まっていた。

しかし運動場と言っても、パイプや建物が蔓延っている市街地のような場所、訓練にはうってつけの場所でもある。

 

 

「ハイ私が来たーてな感じでやっていくわけだけどもね!」

 

 

(ネタ切れか…)

 

 

「久しぶりだ少年少女!元気か?さて今回のヒーロー基礎学だが、職場体験直後って事で、遊びの要素を取り入れた救助訓練レースを行うこととする!」

 

 

「救助訓練ならUSJでやるべきではないのですか!」

 

 

飯田が腕を真っ直ぐに上げ、オールマイトに質問する。

 

 

「あそこは災害時の訓練だからなぁ!私はなんて言ったかな?そう、レース!ここは運動場γ!複雑に入り乱れた密集工業地帯!5人4組に別れて一組ずつ訓練を行う!」

 

 

要約すると、オールマイトがどこかで助けを求めているので誰が一番速くに到着するかを競うと言うことだ。その際、周りに被害は出してはいけない。

 

 

「勿論建物の被害は最小限にな!」

 

 

オールマイトが爆豪に向けて指を指す。

 

 

「指指すなや…」

 

 

 

そうして組が決まり、訓練が始まる。

 

 

一組:緑谷 飯田 尾白 瀬呂 芦戸

 

二組:切島 狩迅 八百万 砂糖 耳郎

 

三組:口田 爆豪 峰田 葉隠 障子

 

四組:常闇 青山 上鳴 轟 蛙吹 麗日

 

 

「じゃ!始めの組は位置について!」

 

 

クラスの中でも機動力が良い者が揃った。緑谷は言わずと知られたパワーと機動力、飯田のスピード、尾白のバランスの良さ、瀬呂の市街地での縦横無尽さ、芦戸の運動神経。

 

 

残ったクラスのみんなは誰が一番速いか考察していた。こういった場所では瀬呂が有利だっり、芦戸の運動神経は個性無しなら爆豪や狩迅にも匹敵する。緑谷に関しては結構な人数が投票していた。尾白と飯田もまずまず……

 

 

そうして開始される訓練レース、瀬呂は持ち前の機動力で縦横無尽に飛び回る。芦戸も酸で滑りながら移動、尾白は尻尾を駆使し、飯田は全速力で走る。

一方で緑谷はと言うと………

 

 

「ちょーと今回俺にうってつけ過ぎるッウェエ!?」

 

 

「うってつけ過ぎる!」

 

 

今までは20%が限界だったのを職場体験を通じて常時25%瞬間的には30%まで上げられるようになっていた。その速度は凄まじく、みるみるうちにオールマイトに近づいていく。

 

ーーーー

『おぉぉぉーーーーー!!!緑谷!!!』

 

 

「前よりも速くなってねぇか!?」

 

 

「デクくん…スッゴ……」

 

ーーーー

 

「ウッソだろ!?」

 

 

緑谷は何故か爆豪の様な動きで建物を飛びながら移動していた。その姿にA組の全員が驚く。

 

 

(俺が職場体験でアホみてぇな時間過ごしてる間に……また………クッソがぁ…)

 

 

「はっや!?何あれ!!」

 

 

「骨折関係無しかよ!!?」

 

 

そうしてあっという間に緑谷はオールマイトの元へつき、一位を獲得した。

 

 

「フィニーーーーッシュ」

 

 

「ありがとう!そしておめでとう!」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「きぃぃ悔しい!」

 

 

「俺の面子丸潰れじゃねぇか!?」

 

 

「本当に凄いな…以前よりも速度が上がっていないかい!?」

 

 

「一位は緑谷少年だったか、みんな入学時より個性の使い方に幅が出来ているぞ!この調子で期末テストに向けて頑張ってくれ!」

 

 

『はい!』

 

 

「一組目退場!次の組!位置について!」

 

 

嬉しそうにする緑谷にオールマイトが近づき、話しかける。

 

 

「見違えたよ、凄いじゃないか緑谷少年!この授業が終わったら、私の元へ来なさい。君に話さなければいけない時が来た。私とワンフォーオールについて………」

 

 

「え………」

 

 

オールマイトらしくも無い、真面目な表情をしながら、緑谷に話した。

ーーーー

 

「それじゃあ二組目!開始!」

 

 

「さて、赫眼…」

 

 

狩迅はまず、オールマイトの正確な場所を特定し、すぐに亜種羅へと変化する。

 

 

(緑谷にとってうってつけかもしれんが…この訓練、俺にとってもうってつけだ。)

 

 

狩迅は自分よりも早めに移動しているみんなを無視し、高速で突っ走る。

 

 

「速い!緑谷さんの様な動きですわ!?」

 

 

「そうだった…うちのクラスにはもう一人化け物がいたんだった……」

 

 

ーーーー

 

 

「いや狩迅も狩迅ですっげぇな!?」

 

 

「あの形態はパワーとスピードは緑谷には劣るが、安定性は抜群だ。動き方には関しては奴の方に軍配があがっている。」

 

 

「いやだから俺の面子が!?」

 

 

「緑谷といい、狩迅といい、流石だな。俺も追いつかねぇと…」

 

 

「チッ…」

 

 

ーーーー

 

 

そんなこんなでほんの一分弱で狩迅はオールマイトの元へぶっちぎりの速さでゴールした。

それに続き、八百万、砂糖、切島、耳郎の順番でたどり着く。

 

 

「おめでとう!狩迅少年!以前よりも動きにキレが入ってたよ!」

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

「おま…あれは速すぎんだろ!?」

 

 

「驚いたぜ!?」

 

 

「何したらあんな動きできんの……」

 

 

「また完敗ですわ…」

 

 

「速さには自身があるんでな。少し本気を出させてもらった。」

 

 

「先程の組と言い、ホントに君達は成長しまくっているね!この調子で期末テストまで頑張りたまえ!」

 

 

『はい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

こうして訓練が終わり、全員更衣室で着替えをしている。ちなみにあのあとは爆豪と轟の圧勝ではあったが、全員それぞれが以前よりも遥かに強くなっており、特に成長ぶりが凄かったのは常闇と麗日、狩迅の組も入れると八百万も大きく成長していた。

常闇に関しては飛んでいた。個性の応用らしい。職場体験でホークスに色々教われた様だ。

 

 

「中々ハードな訓練だったな〜!」

 

 

「久々の授業、汗かいちゃった☆」

 

 

「俺は機動力課題だなー」

 

 

「情報収集で補うしかないな。」

 

 

それぞれが今回の訓練での反省をしていた。確かに全員成長はしていたがまだまだ成長過程、今よりももっと強くなれるだろう。そんな時だった……

 

 

「おい緑谷!すげぇ事が発覚した…こっちにこい!」

 

 

峰田が手をクイクイさせながら緑谷を呼ぶ。なんとそこには女子更衣室に繋がる細い穴があった!

 

 

「見ろよこの穴、恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう……」

 

 

『ッ!?』

 

 

「峰田君やめたまえ!覗きは立派な犯罪行為だ!」

 

 

飯田が止めるが峰田は止まらない。性欲を抑えることができないのだ。

 

 

「オイラのリトル峰田はもう立派な万歳行為なんだよぉ!!」

 

 

「八百万のヤオヨロッパイ…芦戸の腰つき…葉隠の浮かぶ下着!麗日の麗日ボディに蛙吹の意外オォォォッッパァァァァァァァァ」

 

 

その瞬間ぶちゃっと言う鈍い音が響き渡る。

 

 

「イィィィィィィ!!!!」

 

 

峰田の目に耳郎のイヤホンジャックが炸裂!これは痛い!

 

 

「ありがとう響香ちゃん!」

 

 

「なんて卑劣…すぐに塞いでしまいましょう。」

 

 

「ウチだけ…何も言われてなかったな…」

 

 

どこか残念がる耳郎であった。

 

 

 

 

 

 




次回からは期末テスト編……しばらくのお待ちを……









ここで少し余談、狩迅と特に仲が良いのは緑谷、轟、耳郎、八百万、飯田、麗日の6人なんデス。


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期末テスト編
第二十四話:期末テスト頑張りましょう!


ちょこっと遅くなってしもうた。色々と行事続き…大変ゾイ。まぁそんなこんなで24話、始まります


ーーーー 町中 ーーーー

 

狩迅達の職場体験が終わり、2日が経った頃のこと……

 

 

『保須市での暴動事件で、逮捕、拘束された3人のヴィランはいずれも住所戸籍不明の男…』

 

 

「エンデヴァーがヒーロー殺しを倒したのか、なんか残念…」

 

 

「あっ!なんか分かる〜」

 

 

「俺、保須にいた友達から聞いたんだけどさ、あのヴィランってヒーローが束になっても勝てなかったらしいんだけどよ、雄英高校の体育祭で優勝した子が瞬殺したらしいぜ!しかも2対1で!」

 

 

「まじで!?強くね!?流石雄英だな〜、こりゃ将来安泰だな!」

 

 

町中からヒーロー殺しや、謎のヴィランについての話が飛び交っている。一人は雄英高校の生徒の事、また一人はヒーロー殺しを逮捕したエンデヴァーの事…

だがしかし、肝心なのはそこじゃない。最後の最後で、ヒーロー殺しはとんでもない物を置いてきてしまっていたのだ。

 

 

「…………」

 

ここに一つ目の悪意が。

 

ーーーー 森の中 ーーーー

 

薄暗い森の中で、何か巨大な物が見える。それは人と呼ぶに値するのか否か……

 

『重症を負ったヒーロー殺しステインは、現在警察の監視下の中、治療中警察は被害者の回復を待ち…………』

 

 

「……………」

 

ここに2つ目の悪意が。

 

ーーーー どこかの工場 ーーーー

 

暗く、様々な荷物が置かれている工場跡の様な場所で、楽しげにスキップしながら歩く少女がいた。その少女もまた、ヒーロー殺しの意思に惹かれたものだろう。

 

 

『間違いなく日本の…いや、世界の犯罪市場に名を残すであろうヴィラン、ヒーロー殺しステイン。彼は何の為に犯罪を繰り返してきたのか………』

 

 

「ステ様//…………」

 

ここに3つ目の悪意が。

 

ーーーー ビルの屋上 ーーーー

 

保須市のどこかのビルの屋上で、オレンジ色の髪をした男が立っていた。

 

 

『一体ヒーロー殺しは、どのような意志で現在のヒーローについて語ったのでしょうか。

現在警察では、ヒーロー殺しについて調査を実施しているようです。』

 

 

「……あなたの意志のままに、"オールフォーワン"…」

 

そして"4つ目"の悪意が。

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 薄暗いバーの中 ーーーー

 

テーブルで新聞を読む異様な姿の男の名は死柄木弔、かつてUSJで緑谷達を襲った敵連合のリーダーである。つけてあったテレビを消し、愚痴を溢す。

 

 

「どこもかしこも………脳無は二の次かよ…」

 

 

新聞をくしゃくしゃにしながら腹を立て、投げ捨てる。

 

 

ーーーー

 

『クハハハハッ!夜が明ければ世間はあんたの事なんか忘れてるぜ!』

 

ーーーー

 

 

「忘れるどころか…俺らの方がおまけ扱いかッ……!」

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 一年A組 ーーーー

 

 

「全く勉強してねー!!?」←20位

 

 

「アッハハー!!」←19位

 

 

上鳴の悲痛の叫びと芦戸の諦めた渇いた笑い声が教室内に響き渡った。

 

 

「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねー!!」←20位

 

 

「確かに、行事続きではあったが…」←14位

 

 

「中間はまぁ、入学したてで範囲狭いし特に苦労なかったんだけどな…」←12位

 

 

「ウン…」←11位

 

 

「演習試験もあるのが、辛ぇとこだよな!」←9位

 

 

『中間9位!?』

 

 

ため息を吐き、偉そうな態度で峰田がふんぞり返っていた。

 

 

「あんたは同族だと思ったのに!」←19位

 

 

「お前みたいな奴は馬鹿で初めて愛嬌出るんだろうが!どこに需要があんだよ!?」←20位

 

 

「世界……かな?」←9位

 

 

「芦戸さん、上鳴君!頑張ろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん!」←4位

 

 

「うむ!俺もクラス委員長として皆の奮起を期待している!」←2位

 

 

「普通に授業受けたら赤点は出ねぇだろ?」←5位

 

 

「努力は報われる……多分な」←1位

 

 

四人の言葉が無意識の内に二人を殺しかけていた。そんな彼らに一人の天使が舞い降りる。

 

 

「お二人共、座学ならお力添えできるかもしれません…演習の方はからっきしでしょうけど………」←同率1位

 

 

「ヤオモモ!!」

 

 

「お二人じゃないけど、ウチもいいかな?二次関数の応用でつまずいて…」←7位

 

 

「悪い八百万!俺も頼む!」←17位

 

 

「俺もいいかな?いくつかわからない所があって…」←8位

 

 

次々と手助けを求めるクラスメイト、八百万はなんだかとても嬉しそうにプリプリしている。

 

 

「皆さん…良いですとも!では週末にでも私の家でお勉強会を模様しましょう!」

 

 

「まじで!ヤオモモんちちょー楽しみ!」←19位

 

 

「おい狩迅…お前もヤオモモと一緒で1位だったな…お前も来い!」←20位

 

 

「少々面倒なんだg」←同率1位

 

 

「てめぇの脳細胞を少しでもよこせぇぇぇ!!!」←20位

 

 

上鳴は狩迅の肩を鷲掴みにし、ブンブンと振り回す。

 

 

「やめろ!俺は電気タイプには弱いんだ。それに俺は考えるのは得意でも教える事はできないと思うぞ?」←同率1位

 

 

「ピ○チュウみてぇに言うな!?」←20位

 

 

「んなもんどうでもいいから!」←19位

 

 

肩鷲掴みに芦戸も参戦してきた。

 

 

「そうなるとまず、お母様に報告して歩道を開けて頂かないと!」←同率1位

 

 

『歩道?』

 

 

「みなさん、お紅茶はどこかご贔屓はありまして!?」←同率1位

 

 

『お紅茶!?』

 

 

「ラクシュミーで頼む。緑谷、学食に行きたい。お前らも来るか?」←同率1位

 

 

「かしこまりましたわ!!」←同率1位

 

 

『いやお前詳しいのかい!?』

 

 

「この人徳の差よ?w」←15位

 

 

「俺もあるゥッ…てめぇ教え殺したろかぁ?」←3位

 

 

鬼の形相で何かに対して怒っていた。そう、何かに怒っていたのだ。

 

 

「ふふ、みんな慌てちゃって、今更ジタバタしたってどうにもならないのに☆」

 

 

「お前は少しジタバタした方がいいんじゃないか?」←10位

 

 

「それが何かな?ナニカナ?」←18位

 

 

ーーーー 学食 ーーーー

 

 

「実習試験か…内容不透明で怖いね」

 

 

カツ丼を食べながら緑谷は少し自信なさげに呟く。

 

 

「突飛な事はしないと思うがな…」

 

 

「筆記試験は授業内だから、まだ何とかなるけど…」

 

 

「ヒーロー科だから十中八九戦闘に関係するものだろうな。また機械か?」

 

 

「あれ、狩迅あんた今日弁当じゃないんだ。」

 

 

「たまにはな。」

 

 

(皆さん…私を頼ってくださっている…期待に答えなければ!)

 

 

「実習試験かぁ、自信ないなー。」

 

 

「ワンチャン先生と戦ったりして!」

 

 

「変なフラグ立てんな!」

 

 

「デクくん…まだ、何とかなるんや…」←13位

 

 

絶望的な顔をしながらお米をチビチビと食べる。結果は良くなかったようだ。

 

 

「一学期でやった事の総合的な内容…」←16位

 

 

「とだけしか教えてくれないんだもの…相澤先生」←6位

 

 

この場にいる殆どの者が、謎の試験について考察していた。今までやってきたのは戦闘訓練や基礎トレ、救助活動などなど…

緑谷がその事を踏まえて、考察していると…

 

 

ーーーガコンッ!

 

 

(ん?今頭に何か…)

 

 

狩迅の頭に何かぶつかった。幸い彼の頭は硬く、石を投げつけられても傷一つ付かない石頭なのである。

 

 

「硬ッ!あ、あーいやーごめん、頭が大きいから当たってしまったよ。」

 

 

と言うものの、彼は悪意を持ってやっていた。彼の名は物間寧人。いろいろといちいちA組に突っかかってくる問題児である。個性はコピーとかなり強力な物だが、いかんせんその性格のせいで最大限発揮出来ていない模様。

 

 

「B組の!えっと…物間君!よくも!?」

 

 

(俺は頭がでかいのか?)

 

 

「君等がヒーロー殺しに遭遇したんだってね?体育祭に続いて、注目を集める要素ばかり増えていくよねぇA組って?ただその注目って決して期待値とかじゃ無くって、トラブルを引き付ける的なものだよねぇ?」

 

 

中々の下衆な顔をしながら、A組の連中を煽り散らす。

 

 

「あ~怖い、いつか君たちが呼ぶトラブルに巻き込まれて僕等まで被害が及ぶかもしれないなぁ。疫病神に祟られたみたいにぃ?あー怖」

 

 

「脇腹粉砕チョップ」

 

 

刹那、物間が奇声をあげながら壁に顔面からめり込んでいた。食事はかわりに預かっておく。

 

 

「あ……あが……」

 

 

「顔がウザい。」

 

 

「同感、あっそれこっちが預かっとくよ」

 

 

出て来たのはB組のクラス委員長拳藤一佳。物間がよく暴走するので、その抑止力として彼女がいる。

 

 

「ごめんね、迷惑掛けた上に鉄拳制裁してもらって。後で叩きのめしておくよ」

 

 

「構わない。そっちもそっちで大変だな、B組の。」

 

 

「アハハ…そういえば、さっき期末試験が不透明とかって言ってたよね。入試の時みたいな体ロボットの実践演習らしいよ。」

 

 

「え、本当!!?なんで知ってるの!?」

 

 

「私知り合いに先輩がいるからさ、聞いた。ちょっとずるだけど。」

 

 

「いや、ズルじゃないよ!そうだ…期末テストの本領は…ブツブツブツブツ」

 

 

「………」

 

 

「馬鹿なのかい、拳藤?折角の情報アドバンテージを…こここそ憎きA組を出し抜くチャンスだったn」

 

 

また余計な事を言おうとする物間に拳藤がトドメの一撃。

 

 

「まだ生きていたか。」

 

 

「ホントこいつって生命力はゴキブリ並なのよね…」

 

 

そう言って、コツコツと向こう側へ歩いていく拳藤。B組にはどうやら雄英の負の面がいるらしい。

 

 

ーーーー

 

 

「やった~~~!!」

 

 

「対ロボなら楽ちんだぜ!」

 

 

「ホントホント!」

 

 

「お前等は対人線だと個性の調整大変そうだからな。」

 

 

「ロボなら一発で楽勝だァ!」

 

 

「アタシは溶かして楽勝だァ!」

 

 

「あとは八百万に期末教えてもらえれば楽勝だ!」

 

 

『これで林間合宿バッチリだァ!』

 

 

相手が入試の時のロボットだと聞いて安心するバカ二人。そんな中緑谷はオールマイトに言われた事を思い出していた。

 

 

『君はいつか…その巨悪と戦わなければいけない。』

 

 

(あの言葉に備える意味でも、これからの全てを糧にしなくちゃ…)

 

 

「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろ。なにが楽チンだアホが」

 

 

場の雰囲気を一気に爆豪がひっくり返す。

 

 

「アホとは何だアホとは!」

 

 

「うっせーな!調整なんざ勝手に出来るもんだろ!?アホか!!」

 

 

「なぁ、デク!」

 

 

「っ!」

 

 

標的が緑谷に変わる。以前の戦いを未だに忘れず、闘争心を燃やしていたようだ。

空気が重くなる。その場にいた全員が黙ってしまっていた。

 

 

「個性の使い方、ちょっと分かってきたか知らねぇがよ…てめぇはつくづく俺の神経を逆撫でするなァ!体育祭みたいな半端な結果はいらねぇ。次の期末なら、個人成績で否が応でも優劣がつく。完膚無きまでに差ァつけて、ぶっ殺してやる!」

 

 

「狩迅!轟ィ!てめぇ等もなァ!!」

 

 

「………」

 

 

「…………」

 

 

爆豪は勢い良く、教室を出ていった。

 

 

「久々にガチな爆豪だ」

 

 

「焦燥、あるいは憎悪………」

 

 

ーーーー

 

 

(爆豪、思ったよりこじれてやがる。)

 

 

ーーーー

 

 

その後、期末テストに向け各々が準備に取り掛かった。八百万の家で勉強しているA組のメンバーはその家のデカさに驚いていた。四六時中血眼になりながら勉強する者、

走りながら暗記をする者、爆豪に叩かれまくりながら必死でやる者……

 

 

 

そして当日、二日目、三日目と経っていき………

 

 

「全員手を止めろ!各列の一番後ろ、答案を集めてこい。」

 

 

「ありがとーヤオモモ!」

 

 

「取り敢えず全部埋められたわ!」

 

 

こうして三日間の筆記試験は終了、演習試験の日がやってきた。

 

 

 

 

 

ーーーー 実技試験会場中央広場 ーーーー

 

 

(試験はロボットじゃないのか?何故教師陣の殆どが集まっている?)

 

 

そこには相澤を始めとする一年の担当教師の殆どが集合していた。

 

 

「それじゃ、演習試験を始めていく。この試験でも、勿論赤点はある。林間合宿行きたけりゃ、みっともないヘマはするなよ」

 

 

「先生多いな?」

 

 

「諸君なら事前に情報を手にして、何をするか聞いていると思うが…」

 

 

「入試みてぇなロボ無双だろォ?」

 

 

「花火〜カレ〜肝試し〜!!!」

 

 

「残念!」

 

 

突如としてどこからか声がする。その声の正体は相澤の服の中からでてきた。

ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は……

 

 

「校長さ!諸事情があって、今回から内容を変更しちゃうのさ!」

 

 

『校長先生!?』

 

 

「変更って……」

 

 

こころなしか、上鳴と芦戸の表情が死んでいる様に見えた。

そして話を戻すと、今回から対人戦、つまり実戦に近い方法で検査するらしい。

 

 

「という訳で、諸君にはこれから二人一組でここにいる教師と戦闘を行ってもらう!」

 

 

『先生と!?』

 

 

「尚、対戦するペアはこっちで既に決めてある。動きの傾向や成績に親密度、諸々を踏まえて独断で決めさせてもらったから、発表してくぞ」

 

 

対戦カード↓

 

 

轟&八百万  VS   相澤         芦戸&上鳴  VS   根津校長

 

 

麗日&青山  VS   13号         口田&耳郎  VS  プレゼントマイク

 

 

蛙吹&常闇  VS  エクトプラズム     峰田&瀬呂  VS ミッドナイト

 

 

障子&葉隠  VS  スナイプ        砂糖&切島  VS  セメントス

 

 

飯田&尾白  VS  パワーローダー     緑谷&爆豪 VS  ??????

 

 

 

「なっ!?」

 

 

「俺がデクと!?」

 

 

(まさか相手は…)

 

 

「相手は……」

 

 

その瞬間、上空から謎の影ができる。その正体とは…

 

 

「私が、する!」

 

 

『オールマイトが!?』

 

 

「協力して勝ちに来いよ、お二人さん!」

 

 

ーーーー 数日前 ーーーー

 

 

「ヒーロー殺しステインと、敵連合によるヴィランの活性化の恐れ…か」

 

 

生徒たちが帰り、静けさが漂う夜の会議室で今後の動きを決める会議を行っていた。

 

 

「勿論、それを事前に防ぐ事が最善ですが、学校としては万全を期したい。これからの社会、現状以上に対ヴィラン戦闘が激化すると考えればロボとの戦闘は実戦的では無い。そもそもロボは入学試験という場で人に危害を加えるのか、等のクレームを回避する為

…」

 

 

「無視しときゃいいんだそんなもん。言いたいだけなんだから…」

 

 

「そういう訳にも行かないでしょ?」

 

 

「試験の変更については分かりましたが、生徒を二人一組して我々と戦わせるというのは…」

 

 

「えぇ、少し酷だと思います。」

 

 

「俺等があっさり勝っちまったら点数もつけられないよォ?」

 

 

「勿論その辺りを考慮して、教師側にはハンデをつける予定だ。」

 

 

「校長如何でしょうか。」

 

 

「如何も何も、僕は演習試験の変更について賛成しているよ。これ以上生徒達を危険にさせない為に、我々は何をすればいいか…答えは簡単、生徒自身に強くなってもらえればいいのさ!」

 

 

「ですね」

 

 

「異論はありません」

 

 

「では、組の采配についてですが…」

 

 

相澤はそれぞれの生徒の強みや弱点、互いの親密度などを自分が知る限り話した。

緑谷と爆豪が組んでしまったのは単純に仲が悪いかららしい。

 

 

「うまく誘導しておいてくださいよ…」

 

 

それからも相澤の話は続いていき、教師との相性良し悪しを考慮してペアを決めていく。

そこで一つ問題が発生した。

 

 

「このクラスは異例の21人、よって一人余る事になる。教師のハンデを減らして3人でやらせるか、はたまた…」

 

 

余ってしまう生徒の事を考え、頭を悩ませていると根津が口を開く。

 

 

「狩迅龍騎…彼を一人で戦わせてあげておくれ」

 

 

『え!?』

 

 

「校長、それはいくらなんでも…」

 

 

「いや、一理ある。」

 

 

「どういう事?相澤君」

 

 

「あいつの個性の力は未だに未知数、自分ですら制御しきれていないらしい。そんな奴を他の奴と組ませたら二次災害が起こるかも知れない。それに狩迅は単体でも純粋な戦闘力だったらオールマイトさんを除く我々が束になっても勝てるかどうかです。USJでの事件、忘れましたか?」

 

 

「確かに彼はオールマイトさんですら負けかけたヴィラン相手に、一時的とはいえ優勢になっていた。既に並のプロヒーローは軽く凌駕しているでしょう。」

 

 

「でもいいの?この試験は点数をつけると同時に相性の良し悪しを確認する為の物でもあるのよ?」

 

 

「そこに関しては今まででも充分に確認できたはずだよ。それに僕は彼の保護者さ。

強みや弱点は知り尽くしているよ。そしてそれに合わせ、彼に最も適任なのが、」

 

 

「オールマイト君、君だよ。」

 

 

ーーーー

 

「狩迅、お前の対戦カードだが、オールマイトさんとタイマンだ。覚悟しておけよ」

 

 

『は?…………ハァ!?』

 

 

教師陣以外の全員がその言葉に驚く。オールマイトは平和の象徴と謳われる所以の一つとして、その圧倒的な力、それがある事によって存在だけでヴィランの抑止力として成り立つ。そのような者と一対一など、自殺行為に等しい。驚く…それは至極当然の事と言えるだろう。

 

 

 

「いやいやいやいや…待ってくださいよ!確かに狩迅は俺等一年の中じゃ一番強ぇですけど、流石にオールマイト相手に、サシは…」

 

 

「せめてハンデは今よりも更に倍増するべきです!」

 

 

「オールマイト相手じゃ流石にまずいですって!?」

 

 

狩迅は静かに震えていた。それは恐怖によるものか、緊張によるものか…

 

 

「ほらぁ…流石の狩迅でも震えていm」

 

 

「いいんだな、父さ……校長」

 

 

「あぁ、良いとも、存分に力を振るいなさい!」

 

 

根津がそう言った瞬間、狩迅から狂気的な笑みが溢れた。それはまるで、飢えた獣のように。体中から血管が浮き出て、今にでも暴れだしそうな雰囲気である。

 

 

「願ってもない……」

 

 

「そういえば君は爆豪以上の戦闘狂だったね!武者震いでした!すんません!」

 

 

笑顔で狩迅の戦闘狂ぶりを思い出す上鳴、もう駄目だと諦めてしまった。

 

 

「その代わり、ハンデの重りは少し追加させてもらうよ。」

 

 

「これでも教師だからね。」

 

 

「了解」

 

 

「早速始めるぞ、一組目!持ち場につけ!」

 

 

こうして始まる実戦演習、狩迅はなんとあのオールマイトとタイマンを張ることになった。

はたして、勝つのはどちらなのか…

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 




若干無理矢理かもしれないけどオールマイトとタイマンさせることになりました。
あと新キャラ出しました〜詳細はまた後日





余談:何故狩迅が頭が良かったり、紅茶の事を知っているかと言うと根津校長のおかげですな。小学生〜中学生の間に勉強を教えてもらったようです。休憩にはよく紅茶を出されていたとかなんとか…


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第二十五話:一皮剥けろ!

対戦カードの順番少し変えてしまいました。純粋に間違えました。書き直すのめんどくさいです。諦めました。許してください。


ーーーー 蛙吹 常闇チーム 演習試験スタート ーーーー

 

ブザー音と共に、演習試験が始まった。初手は蛙吹と常闇VSエクトプラズム、開始されると同時にエクトプラズムの個性による分身体が次々と姿を現す。

常闇が黒影で応戦しようとするが、数が多く倒し切るのは難しい。一旦退却し、体制を整え、戦闘を避けようと全速力でゴールへ向かう。だかしかし…

 

 

エクトプラズム個性:分身 口からエクトプラズムを出し、任意の位置で本人に化けさせられる。一度に出せる人数は大体三十人。カラオケで歌ったあとは三十六人ぐらいになれる。

 

 

常闇が黒影で応戦するが、それでもエクトプラズムの猛攻は止まらない。突然現れた巨大なエクトプラズムが出現し、二人を捕まえてしまう。常闇はそれでも諦めず黒影に戦うよう指示する。その間蛙吹は事前に用意していた隠し玉を常闇に話す。できれば見ないでいて欲しいらしい。

 

 

もう一度黒影で攻撃すると、何故かエクトプラズムの足にはカフスが掛かっていた。

蛙吹の胃袋は出し入れする事が可能で、咄嗟に飲み込んでいたらしい。

 

 

ーーーー 蛙吹&常闇チーム WIN ーーーー

 

 

ーーーー 飯田 尾白チーム 演習試験スタート ーーーー

 

 

飯田と尾白は地面があってこそ実力を発揮できるが、パワーローダーの個性はモグラ!

相性はハッキリ言って最悪である。地面はパワーローダーが支配しており、少しでも触れると落とし穴が発動してしまう地雷のような仕組みがあった。

 

 

そこで考案したのが、合体!と言っても尾白をおんぶしているだけである。飯田がレシプロバーストで一気に加速し、尾白を投げ飛ばす。見事な連携で条件を達成は出来たものの、

飯田は首から下が地面に埋もれており、かなりカッコ悪かった。

 

 

ーーーー 飯田&尾白チーム WIN ーーーー

 

 

その後も着々と続いていき、蛙吹達よりも前に試験を始めた砂糖&切島チーム以外は辛くも勝利をもぎ取ることに成功していた。

残す所は八百万&轟VS相澤  芦戸&上鳴VS根津  緑谷&爆豪VSオールマイト 狩迅VSオールマイトだけとなる。

 

 

「轟、八百万、次はお前らじゃないか?」

 

 

「そうだな、行ってくる。」

 

 

「頑張ってね、二人共!」

 

 

「………」

 

 

なにやら様子がおかしい八百万、俯いたまま暗い表情をしていた。

 

 

(八百万……)

 

 

 

ーーーー 八百万 轟チーム 演習試験スタート ーーーー

 

 

戦闘開始後すぐに轟は八百万に指示を出した。常時個性を発動してマトリョーシカを作る。相澤をいち早く視認するためらしい。轟が相澤を引き付けている間に八百万がゲートをくぐる作戦だったが、相澤に先手を取られてしまう。轟は炎で応戦しようとするが、個性を無力化されてしまい縄で宙吊りになってしまった。

八百万には逃げてもらったが下にはマキビシを敷かれ、個性を発動しても足元には着陸出来なくなってしまう。応援に行けない状況になった。

 

 

「マキビシ、忍者かよ…いやらしい対策してくるな…」

 

 

「ヒーロー殺しの時とは違うからな、ヒーローの個性も人数も知ってる。迎撃体制バッチリだ、随分と負担の偏った作じゃないか。女の子を思うのは立派だが、もう少し話し合っても良かったんじゃないか?」

 

 

相澤はすぐさま八百万の元へ急ぐ、その間轟は相澤の言った言葉に何か引っかかったようだ。

 

ーーーー

 

 

 

「ハァ…ハァ……」

 

 

八百万は相澤から逃げ続けてはいるが、捕まるのは時間の問題。いま自分が何をすればいいか、戸惑っていたのだ。

 

 

(脱出ゲートまで後どのくらい…もっと最短ルートがあるのでは…轟さんは無事?

これでいいの?時間を犠牲にしてでも移動用のアイテムを作るべき?これでいいの?私はこのまま逃げ切れる?私は…どこを走っているの?駄目何で…考えが!?)

 

 

(体育祭での狩迅との戦闘で完全に自身の喪失が見て取れる。)

 

 

(相澤先生!?じゃあもう轟さんは…)

 

 

「痛い所はついていくぞ!手数勝負しようか!」

 

 

「しまっ…!?」

 

 

八百万は何も抵抗できないまま相澤の捕縛布で腕を捕らえられてしまう。

 

 

(先生相手に、私じゃ勝ち目が…!)

 

 

(どうすれば…緑谷さんなら、爆豪さんなら、狩迅さんなら…どうするの!?)

 

 

 

 

 

ーーーー 回想 ーーーー

 

 

体育祭が終わってからしばらく経った頃のこと

 

 

「じゃあ今日はここまでぇ!しっかり予習しておくようにイェア!」

 

 

『は~い』

 

 

授業が終わり、休み時間になった。昼の時間となり、食事を取ろうとする狩迅、そんな彼に八百万が近づいてくる。

 

 

「どうした、八百万」

 

 

「いえ…その…」

 

 

誰もいない静かな教室…そんな中なにか言いたげな八百万、何かに迷っている様子を狩迅は見逃しはしない。

 

 

「今日は生憎と、腹は減ってないんだ。」

 

 

遠回しに話す狩迅、八百万はその言葉の意味に気づき、少しずつ口を開いていく。

 

 

「……そのですね、私…ずっと考えていたんですの、どうしたらあなた方の様に強くなれるのか…狩迅さんは以前、私を強いと言ってくれました。ですがどうしても、そうは思えないのです。」

 

 

「あまり自分を過小評価しない方がいい。それほどの力がお前にはある。」

 

 

「ですが…」

 

 

「前にも言ったが、お前に足りないのは咄嗟の判断力だ。だが逆に言えばそれさえ身につけられれば、限りなく無敵に近くなれるだろうな。常に相手の予測を大きく超える行動を取らなければならない。少しついてこい」

 

 

狩迅は八百万をつれて運動場へと向かう。八百万は少し戸惑いながらも狩迅についていった。

 

 

「あの…ここで何を?」

 

 

「至極単純、俺との再戦だ」

 

 

「えぇ!?」

 

 

いきなり再戦を申し込まれる八百万、当然焦らない訳は無い。

 

 

「咄嗟の判断力、それを手に入れる方法は唯一つ、それが必要となる状況での実戦だ。俺もこの力を実戦によって作り上げてきた。なんにせよ、多少なりとも努力をしないと何も入らないからな。」

 

 

「だからって…何も戦うことは!」

 

 

「ボサッとすんな、いくぞ」

 

 

亜種羅を発動する。刹那、狩迅の姿が八百万の視界から消えた。壁を足場にし飛び跳ねる。

 

 

(速い!?見えな…)

 

 

「女だろうが友人だろうが俺は手加減はせんぞ」

 

 

頭上から狩迅が手刀を繰り出す。間一髪で避ける八百万だが、いきなりの攻撃で混乱してしまう。

 

 

(今の…本気で!地面がえぐれてる…やるしか…!)

 

 

八百万は腕からガトリングガンを生成し、狩迅を狙い撃つ。しかしどれだけ打っても当たることはない。その状況が八百万の混乱を更に促進させていった。

 

 

「真空波!」

 

 

足を横に薙ぎ、真空波を飛ばす。八百万は事前に用意していた盾で防ぐも一発でボロボロに砕け散る。すぐに次の一手を考えるが全くアイデアが浮かばない。

 

 

(まずい…来る!?)

 

 

「竜の鉤爪!」

 

 

「俺が以前言った事を忘れたか!」

 

 

(ッ!?)

 

 

何でも作り出せる、それは即ち、次の一手が読めないという事

 

 

「次の…一手?」

 

 

八百万の頭の中に浮かんできたのはその言葉だった。ずっと忘れていた、自分の一番の強さは個性による物じゃなく、それによって相手の予測を大きく超える行動を取れるということを。

 

 

(相手に、想定外を起こす、それが私の…)

 

 

八百万は右側手から何かを創造し、狩迅に投げつけ目を左手で隠す。

 

 

「これは!?」

 

 

「ライジング!」

 

 

その瞬間、辺りを照らす眩しい光が解き放たれた。

 

 

(M84スタングレネード…警察が使うこの世で最も強力な閃光弾ですわ!これを受けた者は全員、耳を塞ぎながらうずくまる。光が弱点の狩迅さんには効果抜群のはず!)

 

 

八百万の決死の作戦は見事に成功していた。狩迅の光が弱点だということは以前、緑谷に聞いていたそうだ。狩迅は咄嗟のことに驚愕し、怯んでしまっている。

 

 

「してやられた。流石じゃないか…八百万。」

 

 

狩迅の首元には八百万の創造した鋼の剣が向けてあった。あとほんの少し力を入れれば頸動脈が切る事ができるだろう。

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

 

「咄嗟の判断力…今の一瞬、お前は俺より強かった。」

 

 

「私が…本当に…」

 

 

腰が抜けたようにどっと座り込む。自分がたった今、雄英高校の1年生で無敵と言われている彼に勝った…そんな事実に八百万は呆然としていた。

 

 

「言っておくが、俺は一切手加減はしていない。これはお前自身の勝利だ。

凄いじゃないか。んがぁ目と耳が痛ぇ…」

 

 

「ですが、私が勝てたのはあくまでも…狩迅さんが下位の形態であったからで…」

 

 

「阿呆……自慢になってしまうかも知れんが、俺はこの状態であの入試2位の爆豪とお前と同じ推薦入学者である轟を倒した。そんな俺をお前が倒した。しかも一対一の上、俺に有利な状況でだ。これで少しは自身を持ったか?」

 

 

「…………」

 

 

「一つ教えてやる。過ぎた謙遜は時に人を不快にさせるもんだ。そうなるくらいだったら自慢しろ。自身を持て、自分は強いってな」

 

 

「ッ!」

 

 

ーーーー

 

 

(いいえ、ここで諦めたりなんか…こんな姿を見られては、狩迅さんに、轟さんに面目がつきませんわ!)

 

 

もう一度闘志を燃やす。彼女の目にはもう迷いは無い。あるのは覚悟だけ、手を握りしめ、頭をフル回転させる。次の一手だけじゃない、二手三手、百手先も考え尽くす。

 

 

(様子が変わった、こいつ…ふっきれやがったか!?こんな土壇場で!)

 

 

(個性が消されていない!)

 

 

「創造!」

 

 

腕から空洞の空いた丸いものを創造し、相澤の捕縛布から脱却する。

 

 

「まだですわ!」

 

 

創造で足元に地雷を設置し、分厚い鉄板で叩く。すると体育祭での緑谷の時の様に鉄板ごと吹き飛んでいった。

 

 

「何だ、さっきとは別人みてぇに変わり果てていやがる。」

 

 

(轟さんは……いた!)

 

 

上空からなので、轟の発見を早く済ませることができる。八百万はすぐにパラシュートを創造し、轟の元へ着陸する。

 

 

「八百万、お前…ッ!」

 

 

「すみません、お待たせしました!」

 

 

八百万は轟に掛けてある捕縛布をゆっくりと落とし、布を剣で切る。晴れて自由になった轟だが、肝心の相澤がどんどんとこちらへ迫ってきていた。

 

 

「ありがとよ、八百万。で、相澤先生はどうする?考えがあるんだろ?」

 

 

「勿論ですわ!」

 

 

「話し合いは終わったか?」

 

 

『ッ!』

 

 

いつの間にか相澤が頭上にまで接近していた。だが今の八百万に抜け目は無い。

 

 

(考えるよりも先にッ!)

 

 

「轟さん、目を閉じて!」

 

 

持っていたマトリョーシカを何個か上へ投げ飛ばす。

 

 

「んだこりゃ?」

 

 

相澤が手で払おうとすると、中から爆弾が出てきた。その爆弾こそ、対狩迅戦での切り札となった閃光弾である。ドライアイの相澤には効果は的面、しばらく硬直していた。

 

 

「しまっ!?」

 

 

「轟さん、今ですわ!氷を!」

 

 

硬直する相澤に轟の氷結が追い打ちをかける。それは瞬く間に相澤の体中を凍らせ、身動きをできなくさせていた。

 

 

「危ねぇ…あと少し判断が遅れていたら負けていたな。」

 

 

「こりゃあ、駄目だな。俺の負けだ。」

 

 

ーーーー

 

 

「八百万さん、凄い!あの咄嗟の判断力と行動力…体育祭の時の比じゃない!」

 

 

「うん!」

 

 

 

ーーーー

 

 

「今回ばかりは、俺の油断が招いた事だな。全く…我ながら非合理な事をしたもんだ。見事な作戦だった。完敗だ。」

 

 

「あぁ、お前がいて助かった。ありがとな、八百万」

 

 

八百万はその達成感に涙を浮かべていた。

 

 

「どうした、目ぇ痒いのか?」

 

 

「違います!」

 

 

ーーーー

 

 

「凄かったねぇヤオモモ!私ビックリしたよ〜」

 

 

「あの機転の速さ、見事だ。」

 

 

「二人共かっこよかったわ!ケロケロ」

 

 

「轟もお疲れさん!凄かったなーあれ!」

 

 

他のみんなからも労いの言葉が飛び交うが、今の八百万にとって最も嬉しかったのは…

 

 

「俺の言った通りだったろ?」

 

 

いつも通りの無表情だが、八百万にはどこか温かく思えた。

 

 

「お疲れさん、良くやったよ。」

 

 

「ッ…はい!」

 

 

 

ーーーー

 

 

 

ーーーー 芦戸 上鳴チーム 演習試験スタート ーーーー

 

 

 

作戦は取り敢えず逃げる。仮に見つかったとしても放電で倒せると言う浅はかな考えだが、

個性もわからない以上、それにかける他ない。

 

 

余裕しゃくしゃくな二人だが、この数十秒後、地獄を見るとは思いもしなかっただろう。

辺りからガシャンと何かが崩れる音がする。

 

 

「何、この音?」

 

 

「校長先生…じゃねぇよな?」

 

 

その瞬間、頭上にあった鉄パイプが上鳴に落ちてきた。なんとか避けるも、次々と落ちてくる建物の部品、何が起きているのか分からないといった表情の二人。

 

 

「上鳴!これどうなってんの!?」

 

 

「分かんねぇけどきっと、校長先生の仕業だァァァァァァァ!」

 

 

「当たりさ!」

 

 

重機に乗りながら鉄球で高密度な計算で建物を破壊し、紅茶を優雅に飲んでいる根津の姿があった。

 

 

ーーーー

 

「校長先生が重機に乗っているのか!?」

 

 

「けど、どうやって攻撃を…」

 

 

「あんなに離れているのに?」

 

 

「個性ハイスペック、人間以上の頭脳が発現するという世にも珍しい個性だ。あの人にに掛かれば、精密な計算も遊び感覚で解けてしまう。」

 

 

『え!?』

 

 

ーーーー

 

 

「どこをどう壊せばどう連鎖していくか、そんな計算、お茶を入れるのと同じくらい簡単さ!」

 

 

次々と崩壊していく試験会場、芦戸と上鳴にはもう殆ど逃げ場は無くなっていた。

 

 

「そして君らは気づかない、脱出ゲートへの出口が着々と封鎖されていることに…!頭脳派ヴィランは高みの見物さ!」

 

 

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!!!!!!!!」

 

 

ーーーー

 

「あの人は昔、人間に色々といじられていたそうでな…時々素が出てしまうんだ。」

 

 

『えぇ…………』

 

 

「まったく…」

 

 

リカバリーガールもこれにはため息をついてしまう。それほど根津の暴走は酷かった。

 

 

ーーーー

 

 

「脱出方法はあるさ!ほら頭を使って!よく考えて!知恵を絞ってェェェ!!!」

 

 

狩迅が戦闘に対して狂気的な笑みを浮かべるのは、根津の影響があるからなのかもしれない。

 

 

結局最後は何も抵抗できずにタイムアップで敗北してしまった。

 

 

「脱出ルートは一つだけ残しておいたのに、残念だったね!HAHAHAHAHA!!!!」

 

 

ーーーー 根津 WIN ーーーー

 

 

「校長、怖ぇ…」

 

 

「そういえば、何で狩迅君は校長先生の事詳しいの?」

 

 

「相澤先生から聞いた。絶対に怒らせるなってよ。なにされるか分からねぇぞ」

 

 

またもやその場にいた全員がドン引きしてしまう。それも仕方のないことなのだろう。

 

 

 

 

ーーーー 緑谷 爆豪チーム 演習試験スタート ーーーー

 

 

そして始まる第十試験、二人の相手はあのオールマイト、爆豪の作戦は正面戦闘、対する緑谷は逃げる一択。全くと言っていい程の息の合わなさ、オールマイトはそこを突き文字通り手のひらの上状態となってしまう。

 

 

それでも爆豪は戦って勝つ事がヒーローだと言う信念を曲げようとしない。緑谷の急成長に焦り、怒り、疑問、様々な感情が入り乱れているのだ。挙句の果てには緑谷の力を借りるくらいだったら負けたほうがマシだと言い出す。

 

 

「負けた方がマシだなんて、君が言うなよ!!」

 

 

緑谷はそう叫び、爆豪を殴る。

 

 

「諦める前に僕を使うくらいしてみろよ!!」

 

 

爆豪を抱えオールマイトから逃げ切る二人、そしてそれを探すオールマイト。

そしてその背後から爆豪が現れる、オールマイトの気を逸らしそれと同時に緑谷が爆豪から事前に借りた籠手でオールマイトを攻撃する。

最大出力で攻撃しながら距離を取り、ステージから脱出すると言う作戦だ。

 

 

なんとか逃げ切ろうとする二人だが、ゲートまであと少しという所でオールマイトに捕まってしまう。

 

 

「君達は終わりだ」

 

 

籠手は壊され、掴まれる緑谷と踏みつけられる爆豪、しかしそれでも爆豪は諦めなかった。

爆風を出しオールマイトを浮かせた瞬間、緑谷を掴んで投げ飛ばす。

 

 

「籠手は最大火力をノーリスクで撃つためだ」

 

 

リスクを取り、再び最大火力でオールマイトを攻撃するが、オールマイトはそのやり方を褒めてはならないとトドメの一撃をくらわす。緑谷は振り返りゲートの近くから離れ、オールマイトを思い切り殴り飛ばす。気絶している爆豪を拾い再びゲートへ向かう。

 

 

「そうだよ、君は助けてしまう。そしてその時、そこに壁など一つも無いんだ。」

 

 

オールマイトは脱出を許し、緑谷と爆豪のチームは演習試験をクリアすることができた。

 

 

ーーーー

 

 

「あ…焦った〜!」

 

 

「何はともあれ良かった!内心ヒヤヒヤしたぞ!?」

 

 

「流石緑谷ちゃん達ね」

 

 

二人の勝利に、モニターに集まっていた全員が安堵の息を漏らす。

 

 

(改めて見ると圧倒的な力だな。ハンデをプラスするとしても、俺が一人でどうこう出来るものか…)

 

 

「次は狩迅さんではありませんか?」

 

 

「そうだな、行ってくる。」

 

 

「相手はあのオールマイトだが、頑張ってくれ!」

 

 

「ご健闘をお祈りいたします」

 

 

「応援しとるよ!」

 

 

「あぁ……」

 

 

オールマイトとの戦闘、楽しみではあるが、同時に緊張もしていた。ナンバーワンの力を、その身で受ける…狩迅の武者震いは止まることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 狩迅ソロ 演習試験スタート ーーーー

 

 

(本当に弱点を突いてくるな、この地形…)

 

 

狩迅の試験会場は辺り一面平で障害物が無い平原の様な場所だった。狩迅の本領が発揮できる好条件は夜の時間帯で、狭く障害物が多い場所。どう考えても不利である。

 

 

「なんでもありだな、雄英は…」

 

 

刹那、轟音と共に途轍もない威力の突風が起きた。これの原因は誰でも分かるだろう。

 

 

「私が……」

 

 

砂埃の中からその姿が見えてくる。前まではその言葉に安心感を覚えていたはずだが、今ではその逆、いきなりの緊迫感が襲ってくる。

 

 

「来た!!」

 

 

「随分と…早い登場だ、オールマイトッ!」

 

 

「緑谷少年達との戦闘で少し疲れてしまってね。だから少し、全力で行かせてもらうよ。」

 

 

互いに距離は射程範囲内、拳が届く位置である。

 

 

(平和の象徴の力、見せてもらう!)

 

 

「来い、少年…………」

 

 

重い空気が、辺りを包み込んでいた。




書くの忘れてましたが、今作はA組メンバーの成長を速くしています。




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第二十六話: VSオールマイト

今回は短いお話です。あまり期待せずに…あと戦闘ばかりなので文章力が下がっているかもです。


全身に力を込める、足、腰、胴体、腕、体中の血管が浮き出てくる。狩迅の体から白い半透明のオーラが流れ出てき始めた。

 

 

(凄いじゃないか、本当に。少し戦慄してしまったよ…)

 

 

表情はいつも通りの笑顔ではあるが、内心としてはかなり焦っていた。以前言っていた相澤の言葉を思い出し、納得してしまっていた。

 

 

「ガァァァァァァァァ!!」

 

 

その瞬間、辺りから爆発が起きた。狩迅の強力な気合は地面をえぐり、空気を更に重くする。その埃の中から見えたのは体育祭の時に見せた月迅竜の姿である。

 

 

「準備はできたようだね」

 

 

「待たせました、生半可な力ではアンタには勝てないんでね…」

 

 

再度静寂が訪れる。向き合っているだけなのにも関わらず、その様子は龍と虎の大喧嘩を想像させる。

 

 

ーーーー

 

 

「麗日君、君は…どっちが勝つと思うかい…」

 

 

「私はどっちの実力も間近で見たからこそ言わせてもらうけど、正直言って分からないな…」

 

 

「戦闘力が互角だと仮定して、ハンデを背負っているオールマイト先生の方が若干不利でしょうか?」

 

 

「でも狩迅ちゃんは立体的な場所でしか本領を発揮できないわ。この勝負、お互いにハンデを背負っているわね…」

 

 

「だがあの人にとって重りはハンデの内に入るのか?」

 

 

 

ーーーー

 

 

「いくぞ狩迅少年、今の私はヴィランだ。遠慮せず掛かってきたまえ!」

 

 

「それでは遠慮無く」

 

 

そういった瞬間、狩迅はオールマイトを殴り飛ばし弾丸の様な音が響く。オールマイトは間一髪でガードしていたが、不意を突かれ大きめのダメージになってしまった。

 

 

「この威力…本当に君学生かい?」

 

 

「アンタからしたら大したこともないでしょうに」

 

 

地面を蹴り、巨大なクレーターを作り出す。オールマイトの足場を不安定にして、隙を突く作戦だ。

 

 

「セァ!!」

 

 

オールマイトの顔面を蹴りで吹き飛ばそうとするが、寸前で右腕で受け止められる。

 

 

「そう簡単には、いかないか」

 

 

「まだまだ詰めが甘いな、少年!」

 

 

オールマイトは狩迅をまるでヌンチャクのようにして振り回し、何度も地面に叩きつける。

その度に小さい地震が起こり、砂埃が舞う。6回程叩きつけられただろうか、次の瞬間には彼方まで吹き飛ばされ岩に衝突してしまっていた。

 

 

「痛ぇ…なんつぅ馬鹿力だ…!」

 

 

だが狩迅とてやられっぱなしとは行かない。次はこっちの番だと言わんばかりにオールマイトへ突撃していく。

 

 

「結構本気でやったんだけどな…ならば!!デトロイト………」

 

 

「ガンヘッド…」

 

 

オールマイトが右腕のデトロイトスマッシュを放ったと同時に、狩迅は懐に入り込み腕を掴み無力化する。

 

 

「これは!?」

 

 

「マーシャルアーツッ!!!」

 

 

麗日がやっていたのを見様見真似でやってみたが、なんとか成功、オールマイトは地面に投げられ血反吐を吐く。倒れたオールマイトの顔面にパンチで追撃をする。

 

 

「危ねえ!?あっちょ危ない!!」

 

 

横に転びながら回避するオールマイト、狩迅に足払いを仕掛け、なんとか態勢を直す事に成功する。

 

 

「チッ」

 

 

「チャンス!!カロライナ!!」

 

 

狩迅は足を崩して、バランスが取れていない状況。両腕をクロスさせ手刀による打撃をくらわす。

 

 

(まず…!?)

 

 

「スマァァァァッシュ!!!!」

 

 

「ゼァッ!」

 

 

当たる寸前に地面を思い切り殴り、その勢いで空中に飛ぶ事で難を逃れる。オールマイトもその動きにすぐ対応し、追い打ちをかける。

 

 

「想定内!!空中戦は私も得意なんだぜ?」

 

 

「終わりだ!テキサァァァス……スマッシュ!!!」

 

 

「必殺技バンバン打って来やがって…だがまだ終わらせはしない…」

 

 

目を閉じ、全神経を研ぎ澄ませる。狩迅の体から流れるオーラが変わり、より白く、より力強い、現状狩迅が扱いきれる最大最強の形態…

 

 

「白疾風…!」

 

 

体中から白い紋章が浮き出てくる。その姿はオールマイトの渾身の一撃を片手で受け止め、

カウンターまで放つ。左のストレートを右手で抑えながら、左足でオールマイトの腹を蹴り飛ばす。

 

 

「遂に使ってきたかッ!それを!!」

 

 

「…………」

 

 

「なら、先生も本気でいっちゃうぞ…!!」

 

 

狩迅の足が地面に付いたその時だった。

 

 

ーーーー

 

 

『!?』

 

 

「二人の姿が消えた!?」

 

 

「どこ行ったの!?」

 

 

(いえ、消えたんじゃない…恐らくこれは至極単純…)

 

 

「安心しな、二人共超スピードで戦ってるだけだよ。ほれ、よく見てみぃ」

 

 

よくよく見てみると衝撃波の様な物が周りから起こっている。リカバリーガールの言っている事は本当らしい。

 

 

「二人共、力と速さに特化してるからかねぇ。」

 

 

「あそこだけジャンルがまるで違うわね」

 

 

ーーーー

 

 

(体育祭で見せた動きとはまるで違うッ!!こりぁ…)

 

 

拳圧がぶつかり合う毎に爆発や嵐が舞起こる。地面はえぐれ、大気は震え始める、モニターで見ていた麗日達の所にも影響が出ていた。

 

 

「…………」

 

 

(ガチでやらないとちょっとやばいかも!!)

 

 

オールマイトはワンフォーオールの出力を脳無の時同様100%以上に解放し、狩迅を近くにあった岩に叩きつけ追い詰めていく。パワーでは流石にオールマイトに軍配が上がるが、スピードでは狩迅が有利、まさに力と速さの頂上決戦とも言えるだろう。

 

 

「………ガッ!?」

 

 

オールマイトに数え切れない程の超連打をもろに受けてしまう狩迅、しかし、獣というのは

やられる寸前にも、悪あがきをする者…

 

 

「まだだ……まだ終わらせねぇ…」

 

 

体中血みどろになりながらも、闘志は燃え尽きてはいない。オールマイトがトドメのスマッシュを放とうとするが、真正面から受け止める。

 

 

(ノーガード!?)

 

 

「悪アガきィ…さセ…てモら…ウゼェッ…!!」

 

 

ドスの利いた声と血塗れの顔でオールマイトを睨む。その表情は、ヴィラン顔負けの形相…正面にいたオールマイトは嫌なことを思い出してしまう。その笑顔を自分は知っていた。

 

 

「獣の…真の力が発揮される時は……いつだと思う?」

 

 

「どこにそんな余力が…」

 

 

痛みを無視してオールマイトへ手をのばす。

 

 

「飢えている時と、死にかけの時だ…!!」

 

 

腕を掴み、そのまま数十m前に投げ飛ばす。そして次の瞬間、狩迅は空に向かって大きく飛び跳ねる。

 

 

(なんだ!?)

 

 

「今咄嗟に考えついた……重力に逆らう方法」

 

 

「気持ち悪いほど脳が冴えてきた。ここから先は、俺の絶対領域だ」

 

 

飛び上がった狩迅は落ちてくることは無かった、それは何故か、普通の人間ならばそのような個性がなければ長時間の飛行はできないはず、ならば竜だから?それも違う…

彼の個性は竜ではあるが、恐竜で有名なティラノサウルスと同様飛ぶ事はできない。

 

 

「空気を足場にしているのか!?」

 

 

足を力強く下に突き出し、それによって起こる衝撃波で飛んでいたのだ。なんとも脳筋な技であるが、それ故に強力である。

 

 

「エアーグラウンド(空気の大地)」

 

 

「この短時間で………ッ!」

 

 

全てが足場となった狩迅にとって、もはや自分の重りになっている物は何一つとして無い。

あとはオールマイトを倒し、カフスをつけるだけだ。

 

 

(時間が無い、さっさと決着をつけたい所だが…)

 

 

「君には時間制限があるんだってね!!もうそろそろ来るんじゃないかァ!?」

 

 

(チッ…やはり聞いていたかッ!)

 

 

土壇場で進化したはいいものの、オールマイトにダメージはそこまで入っていない。

対して狩迅は時間が迫って来ている上に骨が数本折れている程のダメージ、これを覆さない限り彼に勝利は無い。

 

 

「なら…次で仕留めればいい話ッ」

 

 

動きを更に加速させていき、オールマイトの周りを囲むようにして飛び回る。体が悲鳴をあげるが、関係ない。痛みを無視して最大の一撃を準備する。

 

 

「竜の…」

 

 

狩迅の得意技であり決め手の竜の鉤爪でトドメを刺す。右腕を迅竜化させ、超スピードで突進する。空気が足場となっている為通常より遥かに速い速度で移動できる。

 

 

「テキサス…」

 

 

左腕に全神経を集中させる。オールマイトもこの一撃で終わらせるつもりだろう。

そしてその時は来る。

 

 

「鉤爪ェェェェェェェェ!!!」

 

 

「スマァァァァァァッシュゥ!!!」

 

 

ーーーー

 

 

「振動がこっちまで!?」

 

 

「あの二人ちょっとやり過ぎだよ!!限度ってのを知らないのかい!?」

 

 

遠くで閲覧していた飯田達の元にもその衝撃は行き渡っていた。非控室で休んでいた者達も、その事に気がついており動揺していた。

 

 

「うわァァァ!天井がぁ!!」

 

 

「崩れかけてるわ…」

 

 

「皆さん!!災害マットを作りましたので早く中へ!」

 

 

ーーーー

 

 

「……………」

 

 

「参ったな…ガッ…!」

 

 

体力が底をつき、膝から崩れるオールマイト。激しい爆風の中、決着はついた。オールマイトの腕にはカフスがつけられていた。狩迅は制限時間が迫ってきていた為、最大の一撃が放てずにいた。

 

 

攻撃される瞬間倒すことは諦め確保に専念し、直前まで迫ってきたところをギリギリでカフスをつけることに成功した。

 

 

「ハァ…ハァ…戦闘訓練での緑谷少年の時のような、捨て身の一撃か…」

 

 

正に勝負に勝ち戦いに負けた、と言うやつだろう。気絶した狩迅はリカバリーガールの元へ運ばれていっていた。

 

 

ーーーー

 

 

「なんで私があんたの治療までせんといけないのかねぇ…」

 

 

「すみません…」

 

 

「緑谷といい爆豪といい狩迅といい…まったく!!アンタは手加減ってもんを知らないのかい!!」

 

 

「冗談抜きで死ぬかと思いましたよ。取り敢えず傷も塞がった、彼奴等の元に戻ります。」

 

 

「こら!!あんたはまだ安静にしてな!!」

 

 

「いや、すまない狩迅少年…」

 

 

咳き込みながらリカバリーガールから説教をされるオールマイト。少しやりすぎてしまったと反省はしているようだ。

 

 

(初めて出会った頃より、見違える程強くなったな、緑谷少年。そしてそれ以上にこの子も…爆豪少年。何故なら君も壁を前にしてよく笑う!!そう、君達はまだまだ強くなれる!!)

 

 

色々なことがあった。自分の弱さを知り前に進んだ人、ヒーローに必要な物を教えられた人、高い壁に阻まれた人、自分の無力さを知った人、新たな目標に向けて進む人、更に強くなりたいと願う人、悲喜こもごもの中、期末試験は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 薄暗いバー ーーーー

 

 

「気になりますか?死柄木弔、その二人の少年。緑谷出久と狩迅龍騎…」

 

 

死柄木の手には、緑谷と狩迅の写真が握られていた。

 

 

ーーー ガチャ

 

 

扉が開く音がする。そこに立っていたのは…

 

 

「死柄木さん、こっちじゃ連日あんたらの話で持ちきりだぜ?何かデケェ事が始まるんじゃねぇかと?」

 

 

タバコを吸いながら、軽快に話す男の名は義爛(ぎらん)現在敵連合と協力関係のようだ。

 

 

「で?そいつらが」

 

 

写真を崩壊させ、義爛に問いただす。義爛は不敵な笑みを浮かべ、誰かを呼びに行った。

 

 

「あんたがそうか…写真で見ていたが、生で見てみると気色わりぃな」

 

 

「わは!!手の人!!ステ様の仲間だよねぇ!?私も入れてよ、敵連合!!」

 

 

全身火傷の様な痕がついている奇妙な男と、中学生の女の子、そしてもう一人…

 

 

「あなたが、あの方の後継者…か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エアーグラウンド(空気の地面):ワンピースに出てくるサンジのスカイウォークと同じ様なものだと思ってください。名前ダサくてすんません。


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第二十七話:ショッピングモールでの事件

今回はショッピングだけですので、戦闘はヌァイ。あとさりげなく新キャラ入れときます。


ーーーー 薄暗いバー ーーーー

 

 

「黒霧、コイツラ飛ばせッ、俺の大嫌いなモンがセットで来やがった」

 

 

「ガキと礼儀知らず…!てめぇに関しちゃ何を言ってんのかさっぱりだ…」

 

 

子供と全身火傷の男を見たあと、??に視線を移す。

 

 

「まぁまぁ、折角ご足労頂いたのですから話だけでも伺いましょう、死柄木弔。それに、あの大物ブローカーの紹介、戦力的に間違い無いはずです。」

 

 

「何でもいいが手数料を頼むよォ、黒霧さん〜。取り敢えず紹介だけでも聞いときなよ?まずこちらのかわいい女子高生、名前も顔もしっかりメディアが隠してくれちゃってるが、連続失血死事件の容疑者として追われている。」

 

 

「トガです!トガヒミコ!!生きにくいです、生きやすい世の中になってほしいものです!ステ様になりたいです!ステ様を殺したい!!だから敵連合に入れてよ弔君!!」

 

 

「意味がわからん…破綻者か?」

 

 

「会話は一応成り立つ、きっと役に立つよ?次、こっちの彼、目立った罪は犯してないが、ヒーロー殺しの思想にえらく固執してる。」

 

 

「不安だな…この組織、本当に大義はあるのか?まさかこのイカレ女を入れるんじゃねぇだろうな?」

 

 

「えぇ!!?」

 

 

「おいおい、その破綻JKすら出来ていることをお前は出来てない、まず名乗れ大人だろ。」

 

 

「今は荼毘で通してる。」

 

 

「通すな本名だ!」

 

 

「出すときになったら出すさ…兎に角、ヒーロー殺しの意思は俺が全うする。」

 

 

「聞いてないことは言わなくていいんだ、まったく…どいつもこいつもステインステイン…良く無いな…気分が良くないッ!!」

 

 

「死柄木ッ!!」

 

 

殺意を剥き出しにしながら立ち上がる死柄木弔、その様子を見ていた黒霧がなだめようとするがまるで聞いていない。

 

 

「駄目だお前ら!!」

 

 

死柄木が手を伸ばし、二人を崩壊させようとする。対するトガヒミコはナイフを用い、荼毘という男は個性で戦おうとする。

 

 

間一髪のところで黒霧が割って入り事なきを得る。

 

 

「おついてください死柄木弔、あなたが望むままをするなら組織の拡大は必須、奇しくも注目されてる今がチャンス…排斥ではなく需要を、利用しなければ全て、彼の残した思想も全て…それにまだ、紹介されていない方が一人残っています。最後まで聞いてみましょう。」

 

 

「チッ…」

 

 

「喧嘩は終わったか?まだ名前すら名乗れていないのだが…」

 

 

「さてと、じゃあ気を取り直して最後の紹介だよ。彼の犯罪履歴は…あげたら切りが無いな…まぁ結構な罪を犯した犯罪者さ…今まで何人もの向かってきたヒーローを葬ってきたかなりの凄腕ヴィランだよ?」

 

 

「いったでしょう?聞いておいたほうがいいと、彼はかなりの戦力になるかもしれません。今後の為にも顔ぐらいは覚えておきましょう。」

 

 

「チッ…で、てめぇ名前は、個性は、洗いざらい全部言え」

 

 

「オールフォーワンから、あなたの成長を手助けしてほしいと頼まれた。私の名は牙剥(ガハク)で通している、以後よろしく。」

 

 

「ッ!てめぇ今何つった!?」

 

 

衝撃の言葉が彼から出てきた。オールフォーワン、それは死柄木の先生のような存在、それを知っているのはごく一部の人間だけのはず…

 

 

「私はあの方の直属の配下、いわば幹部のような者、しもべとも言うかな。取り敢えず、これから協力関係になるんだ。失望させてくれるな、死柄木弔。」

 

 

手を伸ばし、握手をしようとする。

 

 

「…………手は握らねぇ」

 

 

「まぁ、そう言うな………」

 

 

そう言って半ば無理矢理手を握る。死柄木は油断していたようで、咄嗟のことに反応できなかった。

 

 

だが、異変はすぐに起きた…

 

 

(なんで…こいつ崩壊しない!?)

 

 

死柄木弔の個性は、五指で触れたものを崩壊させるという物。だが彼は触れているにも関わらず、崩壊する気配がまるでない。

 

 

「私には、そういう個性があるんだ。あの方から頂いた物がな……」

 

 

「ッ…………!?」

 

 

「そうそう、私の個性を言っていなかったな…仲間になるんだ教えておかないとね。私の個性は…………」

 

 

不気味な笑顔を浮かべる謎の人物…自分はオールフォーワンの配下だと言うが、死柄木はその事実を受け止めきれずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「びんなぁ…がっじゅぐのびやげばなじ…だのじびにじでるがらぁぁ」

  (みんな、合宿の土産話楽しみにしてるから)

 

 

試験が失敗した組は酷くドンヨリとしていた。いつもははっちゃけている切島や上鳴ですらも、いまでは餌を無くした小鳥のような表情になっている。

 

 

「ま…まだ分かんないよ、どんでん返しがあるかも知れないよ!」

 

 

「よせ緑谷、それ口にしたら無くなるパターンだ」

 

 

緑谷の肩にポンと手を当てる瀬呂、四人の絶望が更に加速した。

 

 

「試験で赤点取ったら林間合宿行けずに補習地獄、そして俺達は実技クリアならず…これでまだ分からんのなら貴様の偏差値はサル以下だァァァァァァァ!!!」

 

 

「ンガァァァァァ!!!」

 

 

チョキの手で緑谷の目にダイレクトアタック…どうやら絶望と怒りと悲しみが頂点に達したらしい。瀬呂がなんとか上鳴達を慰めようとするが、ときは既に遅かった。

そして予鈴がなりの相澤が教室に入ってくる。全員訓練されたかのようにサッと座る。

その光景はもはや自衛隊並、相澤も感心している。

 

 

「おはよう、今回の期末試験だが残念ながら赤点が出た。したがって林間合宿は……

全員行きます!」

 

 

『どんでん返し来たァァァァァァァァァァァァ!!!!』

 

 

「ウェ!?」

 

 

「いっていいんすか俺ら!!?」

 

 

「ホントに!?」

 

 

「あぁ、赤点者の方だが筆記の方はゼロ、実技は芦戸、砂糖、切島、上鳴、あと瀬呂が赤点だ。」

 

 

「やっぱかぁ、確かにクリアしたら合格とは言ってなかったもんなぁ」

 

 

「今回の試験、我々ヴィラン側は生徒に勝ち筋を残しつつ、どう課題と向き合うかを見るよう動いた。でなければ、課題云々より詰むやつばかりだっただろうからな。」

 

 

合理的虚偽、林間合宿とはそもそも強化をする為に行く場所、赤点を取った者ほど行かなければならないらしい。飯田が信頼に欠けるとか何とか言っていたが5人は気にしない。

 

 

「だが赤点は赤点だ、お前らはセットで補習時間がある。ぶっちゃけ学校に残ってよりキツいからな。」

 

 

結局絶望の底へ叩きつけられる5人、これはドンマイとしか言いようがない。

あと翌日は休みという事なので夏休みに向けて色々と買い出しをするという事になった。

爆豪と轟以外は全員参加らしい。

 

ーーーー ショッピングモール ーーーー

 

 

「ナウでヤングでな〜んてトレンディーな場所なんだろうか」

↑青のジーパン、茶色の服に黒のジャケット姿

 

 

「絶対思ってないだろお前…」

 

 

「個性の差による多様な…ブツブツブツブツブツブツ」

 

 

「幼子が怖がるぞ、やめておけ…」

 

 

「あ!あれ雄英生徒じゃん!!」

 

「1年!?」

 

「テレビで見てたぜ!!」

 

『体育祭ウェーーイ!!』

 

 

周りから一気に注目を浴びる狩迅達、未だに体育祭の影響は残っていた。流石雄英高校…

 

 

「お前の真似か?」

 

 

「うっせ忘れろ!!?」

 

 

「取り敢えず、ウチ大きめのキャリーバッグ買わなきゃ」

 

 

「あら、では一緒に回りましょうか!」

 

 

「わりぃ八百万、耳郎、俺こういうのは初めてでな、詳しかったら何を買えばいいか教えてほしいんだが」

 

 

「構いませんわ!丁度お呼びしようかと思っていましたの!」

 

 

「ピッキング用品や小型ドリルはどこに……」

 

 

「俺アウトドア系の靴無ぇから買ってくるわ!」

 

 

「あ、私も私も!」

 

 

「靴は履き慣れたものとしおりに書いてッ!!しかしなるほど、用途にあった物を選ぶべきか……」

 

 

全員何故かテンションがおかしい程上がっていた。もうすぐ林間合宿だからだろうか…

目的も買いたいものもバラバラなので、一旦別れ、時間を決めて自由行動になった。

 

 

ーーーー

 

 

「なんだ……この変な模様のバッグは…これでいいのか!?」

 

 

耳郎から渡されたのはミッ○ーマウスを彷彿とさせる奇妙なバッグだった。

 

 

「いいじゃん、可愛いし……くっ…似合ってるよ…」

 

 

笑いながら親指を立て、ドヤ顔で話すがお世辞にも狩迅に似合うとは思えない。八百万に助けを求めようとするが…

 

 

「これとかはどうでしょう!!」

 

 

こっちもこっちで感覚がおかしかった。

 

 

「ミッ○ーマウスの次はジェ○ーってか?ディ○ニーじゃなければいいって訳じゃないんだが……」

 

 

ネズミ違いである。

 

 

ーーーー

 

 

「へッ…クシッ!!」

 

 

「風邪ですか?最近働きすぎなのでは…」

 

 

「大丈夫、問題ないさ!」

 

 

ーーーー

 

 

 

「水着も必要だから、どうするか…耳郎、もうからかいには付き合わんぞ。遊んでないでちゃんと選びな。」

 

 

後ろからスーッと女性用の水着を持ってくるが、見事撃退。

 

 

「チェッ」

 

 

「狩迅さん耳郎さん!これなんていかがでしょう!!」

 

 

開始してから約三十分、ようやくまともなのが来た。夏を彷彿とさせる綺麗な青色の水着である。こんな感じでしばらく経っていった頃……

 

 

「これは少し小さいな、こっちの方が…ッ………すまん二人共、少しトイレに行ってくる。」

 

 

「はいはーい、すぐに戻ってきてよー?」

 

 

「あぁ、すぐ戻る。」

 

 

(この臭い、知っている。どこだ…)

 

 

ーーーー

 

「ッ!!?」

 

 

現在緑谷は何故か現れた死柄木と遭遇し、会話をしていた。

 

 

「あぁ…なんかスッキリした、点が線になった気がする。何でヒーロー殺しがムカつくか…なんでお前が鬱陶しいかわかった気がする…」

 

 

恐ろしい程の狂気的な笑みを浮かべ、緑谷を見つめる。その様子に、緑谷は息を止めてしまっていた。

 

 

「全部、オールマイトだ…!そうか…そうだよな、結局そこに辿り着くんだ。ハハッ…何を悶々と考えていたんだろう俺は…こいつらがヘラヘラと笑っているのは、オールマイトがヘラヘラと笑ってるからだよなぁ!?」

 

 

緑谷の首を締める力を更にあげる。

 

 

「ぐっ…!?」

 

 

「あのゴミが、救えなかった人間なんていなかったかのように、ヘラヘラと笑ってるからだよなぁ!?話せてよかった、いいんだ…ありがとう緑谷ァ!俺はなんら曲がることはない。だァ動くなよ、死にたいのかァ?民衆が死んでいいって事かァ?」

 

 

「皮肉なもんだぜヒーロー殺し、対局にある俺を生かしたお前の理想、信念、全部俺の踏み台となる。」

 

 

「う…ぐぅうあ!」

 

 

緑谷の首が締まり、意識を失うあと一歩手前のところで彼が来た。

 

 

「手を離してもらおうか、死柄木弔。」

 

 

「あぁ? てめぇは…」

 

 

「久しぶりだな、元気にしていたか?」

 

 

右手の手刀を死柄木の首に軽く押し当てる。この距離でも万が一のことがあれば、すぐにでも首をはねられる。

 

 

「許可は出てねぇだろ、良いのかぁ?俺は最後まで悪足掻きをするタイプだぜ?最低でも、十人は殺す。」

 

 

(どうする、ここでこいつを捕らえなければ二次災害が…だが今この場で何も被害を出さずに、穏便に済ませる方法は…無いッ!ここは逃がすのが最善策か…緑谷の命も危うい。)

 

 

「デク君?狩迅君?」

 

 

(麗日(さん)!?)

 

 

「お友達、じゃないよね?」

 

 

死柄木に笑みが戻る。何かを考えているのだろうか…

 

 

(最悪のタイミングだ!麗日!!やるしかねぇか!?)

 

 

腕に迅竜化させ、力を込める。少しでも怪しい動きをしたらいつでもやれるよう構えていた。

 

 

「手…離して?」

 

 

怯えながら小さい声で言う麗日、だがやつが取った行動は意外な物となる。

 

 

「連れがいたのか!ごめんごめん、じゃあ行くわ!!」

 

 

邪気の無い笑顔でその場を去る死柄木弔、帰り際に何かを言っていたが狩迅には聞こえなかった。

 

 

「デク君!」

 

 

(事なきを得たか…)

 

 

「緑谷、無事か?」

 

 

「待て、死柄木弔ッ!!オールフォーワンは何が目的なんだ!!」

 

 

「死柄木!?」

 

 

「麗日、下がっていろ。」

 

 

「知らないな…それよりも気をつけときな、次会うときは、殺すと決めたときだろうから…」

 

 

人混みに紛れ、静かに姿を消した死柄木弔、麗日の通報によりショッピングモールは一時的に封鎖、区内の警察とヒーローが緑谷から事情聴取し捜査に向かうが痕跡は一切なしだったらしい。

 

 

ーーーー 夜 自宅 ーーーー

 

 

「結局は分からずじまいか、思った以上に連合共は厄介らしいな。」

 

 

「どうにも胸騒ぎがする。オールフォーワン、みんなは一人の為…いったい何を言っていたんだ、緑谷。」

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

「いやに、嬉しそうじゃないか先生。敵連合が着実に仲間を増やしているからかね?」

 

 

五十階はありそうなビルの屋上に、その男はいた。全ての元凶であり、かつてオールマイトが倒した筈の人物…

 

 

「ふふふ…違うよドクター。死柄木弔が信念を抱いたことさ…その信念に賛同する者達こそが、敵連合には必要なのだ。全ては彼に任せる、助けを求めるなら当然助ける。」

 

 

「そうなった時の準備もしている。彼が次の、僕となる為のねぇ?」

 

 

 

 

 

悪意はすぐそこにまでやってきている。




牙剥のプロフィール

個性:現在不明 オールフォーワンの関係者らしく、恐らく複数所持者
身長:180cm程
年齢:20代後半
見た目:オールバックのオレンジ色の髪。鋭い目をしており、服装は黒色の長ズボン、赤色    
の服に茶色のテーラージャケット。
CV:江口拓也 
  ↑
(転スラのソウエイや、バキの花山薫に近い声だと思ってください)


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林間合宿編
第二十八話:夏休み!プール!&林間合宿〜


林間合宿編ではありますが、プールの所を先に書きます。ご了承を…


ーーーー 自宅 ーーーー

 

 

 

ショッピングモールでの事件が終わり夏休みへと突入した頃、音楽を聞きながら机に向かい勉学に励んでいた狩迅の元へ一通のメールが届く。

 

 

(メール?緑谷からか…)

 

 

『上鳴君と峰田君からトレーニングの一環でプールに誘われたんだけど来ない?』

 

 

狩迅は一応全員分のメールを交換していた為、早速それが役に立っていた。

 

 

(上鳴と峰田がか…何か企みがあるだろうな。まぁいい)

 

 

『分かった、俺も行くとする。準備は何をすればいい?』

 

 

『多分水着だけでいいと思うよ!』

 

 

『了解、他の奴等には伝えたのか?』

 

 

『いや、まだ轟君と飯田君しか伝えてないよ?』

 

 

『なら手分けして誘おう、緑谷は口田と尾白と瀬呂と障子を頼む。』

 

 

『俺は爆豪と切島と砂糖に青山、常闇を誘う。』

 

 

『ありがとう!助かるよ〜!じゃあ明日学校のプールで集合でよろしくね!』

 

 

『了解』

 

 

その後、A組の全員からOKを貰えることになった。プールに行きたい理由は十中八九峰田達が女子生徒の水着姿を見たいからだろう。残念だが、その夢は潰させてもらうことになる。そして翌日の約束の日に全員集合する事になった。

 

 

ーーーー 学校のプール ーーーー

 

 

「軽く準備体操しておくか」

 

 

「そうだね、それにしてもあの二人が特訓したいだなんて言うなんてビックリしたよ。」

 

 

「恐らく淫らな事が目的だろうな。彼奴等はそう言った目的の事で行動する事が多い」

 

 

「そう言っている間に来たぞあの二人」

 

 

プールに繋がる廊下からドタドタと2つの足音が聞こえる。何か"いざ行かん!!"とか何とか言っていたが恐らく峰田と上鳴で間違いないだろう。ドアを開けた瞬間の二人に飯田が挨拶をすると、勢い良くズコォォォと地面に顔面を押し付けながら転んでいった。

 

 

「遅かったじゃないか!」

 

 

「な…なんでお前らがいんだよォ!?」

 

 

「プールで体力強化するからみんなにメールで送っておいたんだ!」

 

 

その言葉に上鳴が非常に悔しそうな顔を浮かべていた。緑谷は生真面目な為、こういった事は素直に受け取ってしまう。二人にとっては盲点だった。

 

 

「落ち着け上鳴、まだ水着姿の女子達がいるのは間違いねぇ!!」

 

 

「ハ!?この目に焼き付けるぜ!」

 

 

「新しく買った水着をぉ!」

 

 

まだ希望が残っている、それを理解した瞬間二人の目には輝きが戻っていた。女子達の水着姿を目に焼き付けようと振り返るが………

 

 

「あ、峰田ちゃん」

 

 

「上鳴も来てたんだ」

 

 

残念だが、水着は水着でもスク水であった。上鳴は膝をついて絶望していたが、性癖が幅広い峰田にとってはスク水でも眼福だった。どこか爽やかな顔をしている。

そんな二人を飯田が学校内での体力強化の提案が素晴らしいと評価され、男どもの元へ運ばれていってしまった。

 

 

ーーーー

 

 

女子達はプールでボールを使い遊んでいるのに対して男子側はみっちり特訓していた。

 

 

「よし、十五分休憩しよう!俺からの差し入れだ、飲んでくれ!」

 

 

飯田はクーラーボックスを持参しており、その中には冷えたオレンジジュースが入っている。真夏の特訓後にはこれ以上ない物、運動後はちゃんと水分を取ろう。

飯田と緑谷が何かを話していると爆豪が何故か怒りながら喧嘩を吹っかけていた。

 

 

「僕は色んな人に助けられてここにいるんだ、もっと頑張らないと…」

 

 

「当たりめぇだ!!でなきゃ俺がテメェ見てぇなクソナードに負けるわけねぇだろ!」

 

 

緑谷に鬼の形相をしながら向かっていく爆豪を抑えながら切島が緑谷に謝る。

 

 

「メールくれたのに遅れてわりぃ!爆豪連れ出すのに手間取っちまって…」

 

 

「おいクソデクゥ!なんなら今すぐ白黒つけるかぁ?あぁ!?」

 

 

手から爆発を起こしながら、緑谷を挑発する爆豪。緑谷自身としても、あまり乗り気では無い。

 

 

「いやぁ…そんな…!?」

 

 

「確かに、訓練ばかりじゃつまらないな」

 

 

飯田が何か閃いた様に顎に手を置く、出てきた提案は男子で50mを誰が一番速く泳げるか、という物。全員がその意見に賛成し、早速ルールを説明する。

 

 

「ぶっ潰してやるよクソデクゥ…勿論お前等もなぁ、半分野郎、忍者野郎!!」

 

 

「………」

 

 

「俺もマークされてんのかよ」

 

 

ーーーー

 

 

最初の組は上鳴、爆豪、口田、常闇、峰田の順番、水泳に有利な個性はいない気がするが…

 

 

「それでは位置について!よーい…」

 

 

「爆速ターボ!!どうだこのモブ共!!?」

 

 

ホイッスルの音で開始された。爆豪は爆速ターボで泳がずにゴールまで辿り着いてしまう。これはありなのかと切島と瀬呂が言うと、どうやらこれは自由形なのでOKらしい。

 

 

ーーーー

 

 

二組目は切島、砂糖、瀬呂、轟、青山、狩迅の6人、これは強いて言うなら轟が有利だろうか、狩迅はあまり水泳は得意ではないらしいが…

 

 

「位置について、よーい…」

 

 

ーーー ピーーッ!

 

 

狩迅はホイッスルの音が聞こえたと同時に水の中に潜る。

 

 

(うまくいくか…水中での戦闘を想定したエアーグラウンドの改良版……一瞬にして大量の水を押し付けながら加速する、ブルーグラウンド!)

 

 

以前オールマイト戦で見せたエアーグラウンドの応用技、ブルーグラウンド、原理は一緒で水を蹴り飛ばし、一気に進むという物。狩迅は足を迅竜化させ、一直線に進む。

 

 

(上手く行ったが…轟のそれずるくねぇか?)

 

 

轟は氷結を発動させ、水の上を進んでいた。爆豪と同じで泳いでいない、結局同時ゴールになってしまった。

 

 

「ッ…轟、あれずるくねぇか?」

 

 

「自由形だから大丈夫だろ。それよりも狩迅、あれどうやったんだ?」

 

 

「あれは空気を蹴る事によって発生する衝撃波を水の中で応用したただけだ。」

 

 

「よくわからねぇな、と言うより結構同時にゴールしたぞ。この場合はどうなるんだ?」

 

 

「それは最終ラウンドで決めるとしよう!」

 

 

 

ーーーー

 

 

続いての組は飯田、緑谷、障子、尾白、スピードに、特化している飯田か緑谷が有利そうだが…

 

 

「位置について、よーい…」

 

 

ーーーー ピーーッ!

 

 

開始される第三回戦、緑谷はフルカウルを発動させ一気に進んでいく。それに対抗するは

スピードの鬼、飯田であるが…泳いでいない。体育祭の時のような感じでフロートの上を直進している。激闘(?)の末、ギリギリで緑谷が勝利する。

 

 

ーーーー

 

 

「各予選の勝者、緑谷君、爆豪君、轟君、狩迅君で優勝者を決める!それでいいか?」

 

 

「うん」

 

 

「あぁ」

 

 

「問題無い」

 

 

「忍者野郎、体育祭の時みてぇに手加減なんざすんじゃねぇぞ。本気で来やがれ!」

 

 

「勿論、手加減はせんぞ。」

 

 

「上等だぶっ殺したるわァ!」

 

 

互いに睨み合う爆豪と狩迅、爆豪は以前の時の結果をまだ根に持っているようだ。狩迅自身としてもあれは手加減というよりも制御がきかなかっただけだが、そっちの方が面白そうなので、あえて挑発してみる。

 

 

「お前らもだ、クソデク!半分野郎!」

 

 

「分かったよ、かっちゃん」

 

 

「あぁ」

 

 

ーーーー

 

 

「それでは50m自由形の決勝を始める!!」

 

 

始まる決勝戦、周りの人も皆興奮しているように見える。

 

 

「やったれ爆豪!」

 

 

「相手殺すなよォ?」

 

 

「轟も負けんなー!」

 

 

「デク君頑張れー!」

 

 

「狩迅ー!ボッコボコにしちゃいなー!」

 

 

「狩迅さんファイト!」

 

 

「みんな頑張ってちょうだい!」

 

 

峰田が若干緑谷と狩迅を睨みつけているように感じるが取り敢えず始める事になった決勝戦、誰が勝つのか胸を躍らせるA組のメンバー。そして飯田のホイッスルが開始を知らせる。

 

 

(一気に駆け抜ける!)

 

 

(滑り抜く…)

 

 

(全力で泳ぎきれ!)

 

 

(踏みつけて駆ける)

 

 

「よーい!」

 

 

ーーー ピーー

 

 

『な!?』

 

 

勢い良く飛び出す四人、かと思われたが何故か個性が発動しない。そのまま水に落っこちてしまった。

 

 

「17時、プールの使用時間はたった今終わった。早く家に帰れ、」

 

 

「そんな!?」

 

 

「せっかくいいところなのに!」

 

 

何人かが相澤に対してイチャモンをつける。四人の決着が気になっていて仕方が無いようだが、相澤はそれで引き下がるほどおしとやかでは無かった。

 

 

「なんか言ったか!?」

 

 

威圧感たっぷりで生徒らを睨みつける。個性を発動している為目が赤く、それが更に怖さを引き立てていた。

 

 

『なんでもありません!』

 

 

結局決勝戦はなしという事になってしまった、相澤のドスの利いた声が効いたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 敵連合 ーーーー

 

 

 

 

 

「流石先生だ、どんなに調べても分からなかった目的地をこうも容易く見つけてくれた。」

 

 

トランプで遊びながらその先生について語る死柄木、オールフォーワンの事だろう。

 

 

「彼らを待機させておいたかいがありましたね。」

 

 

「まぁな」

 

 

ーーー ガチャ

 

 

そこのドアが開き、男の声が薄暗いバーの中に響き渡る。

 

 

「組合から連絡が来た、明日の朝までに届けるそうだ。給与次第なんで見て呉れはヒト酷いが、品質は保証するってよ?」

 

 

「無理なお願いをしました、申し訳ありません。」

 

 

「なぁ死柄木さん、組合があんたの無茶な要求を飲んだ理由が分かるかい?皆あんたに期待してるからさ、敵連合が活気づけば闇の中でくすぶってる連中が動き出す。そうなりゃあ俺達みたいなのも、そのおこぼれに預かれるってね。」

 

 

「安心しろ、時期忙しさで手が回らなくなる。」

 

 

「はは、そりゃ楽しみだ…んじゃまいど」

 

 

にやけた顔を隠しながら、その空間から出ていった。

 

 

「目的地に手駒、獲物がさらった。なら、ゲームスタートだァ…」

 

 

笑みを浮かべながら、死柄木はその時を待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 1年A組 ーーーー

 

 

ーーーー ミーンミンミンミンミーン

 

 

「雄英高は一学期を終え、現在夏休み期間に入っている。だがヒーローを目指す諸君に安息の日々は訪れない。この林間合宿でさらなる高みへ、PulseUltraを目指してもらう」

 

 

『はい!!』

 

 

林間合宿に行く為、全員外に出ていた。出発まであと少し時間があったので軽くみんな雑談していた。

 

 

 

「デク君!遂に林間合宿の始まりだね!」

 

 

「う…うんそうだね麗日さん!!」

 

 

(近いィィ!!?)

 

 

緑谷は麗日の急接近に緊張し、顔を真っ赤にして照れていた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「いやーそのー!?」

 

 

麗日は一瞬心配するが、期末試験の時の青山の言葉を思い出しこちらも顔を真っ赤にしてし、一気に距離を取る。

 

 

「が…合宿だね!合宿〜合宿〜」

 

 

「合宿〜合宿〜」

 

 

「テンション高いなー麗日さん達…」

 

 

楽しげな雰囲気のA組、きっとこの合宿は楽しい物になると心踊ろさせていた中、あの男がまたやって来た。

 

 

「え?なになに?A組補習いるのぉ?つまり期末で赤点取った人がいるって事ぉ?あれぇ?おかしくない?おかしくない?A組はB組よりずっと優秀なのにぃ?あれれれれれ?」

 

 

また物間が喧嘩を吹っかけてきたが、狩迅が腹にボディブロー、拳藤が首に手刀で難無く撃破する。

 

 

「懲りないなこいつも」

 

 

「ごめんなA組…」

 

 

「う…気持ち悪…オロロロロロ……」

 

 

物間は拳藤に連れて行かれた。なにかキラキラした物を吐き出していたようにも見えるが、恐らく気のせいだろう。

 

 

「物間怖」

 

 

「B組の!」

 

 

「体育祭じゃ色々あったけど、まっよろしくねA組!」

 

 

「ウン」

 

 

「確か、B組に配属された推薦入学者の一人だったな。取蔭切奈だったか?」

 

 

「あぁよろしく!そっちはその推薦入学者フルボッコにしたんだってね?」

 

 

「相性が良かっただけだ、こちらこそよろしく頼むよ。」

 

 

「あの野郎また女の子と仲良くなりやがって…だがB組もB組で…ジュル…よりどりみどりじゃあねぇか!!」

 

 

「お前駄目だぞ、そろそろ」

 

 

よだれを垂らしながら、B組の女子を凝視する峰田を切島がそろそろ本当に危ないと警告する。このあと本当に事件を起こすのは言うまでもない。

 

 

「みんな!A組のバスはこっちだ!席順に並びたまえ!」

 

 

ーーーー しばらくして…バスの中 ーーーー

 

 

「お前ら、一時間後にバスを一時停止させる。その後しばらく…」

 

 

相澤が話をしようとするが、周りはガヤガヤとしているためまったく聞こえない。

どこか呆れた様子で見つめていたが、たまには見過ごすことにする。

 

 

「まぁいいか…ワイワイ出来るのも、今のうちだけだ。」

 

 

ーーーー 到着 ーーーー

 

 

「ようやく休憩かー!」

 

 

 

「おしっこ!おしっこ漏れる!」

 

 

 

「つかここパーキングじゃなくね?」

 

 

 

「あれ、B組は?」

 

 

なにやら様子がおかしい、同時に出発したはずのB組のバスがきていないし、なにより休憩場としての役割を果たしていない所についた。嫌な予感がする。

 

 

「なんの目的もなくでは、意味が薄いからな。」

 

 

「トイレは…?」

 

 

「やぁイレイザー!」

 

 

突然隣の黒い車から相澤のヒーロー名を呼ぶ女の声が聞こえてきた。

 

 

「ご無沙汰してます」

 

 

「煌めく眼で~?ロックオン!」

 

 

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

 

「ワイルドワイルドプッシーキャッツ!」+謎の少年

 

 

奇抜な格好をしたヒーロー(?)が出てきた。それはプ○キュアやセー○ームーンが言う決め台詞のようなものなのだろうかと、狩迅は心のなかで思っていた。

 

 

「今回お世話になるプロヒーローのプッシーキャッツの皆さんだ。」

 

 

「有名事務所を構える四名一組のヒーロー集団!山岳救助などを得意とするベテランだよ!キャリアは今年で12年にもなる…ぶべら!?」

 

 

いきなり金髪の方に頭を鷲掴みにされる緑谷、どうやら年齢のことには触れないでほしいらしい。

 

 

「心は18!」

 

 

「心はぁ?」

 

 

「じ…18……」

 

 

「高校卒業が18歳だとしたら…大体30…」

 

 

その後、狩迅は緑谷のように頭を鷲掴みにされたとさ

 

 

「お前ら、挨拶しろ」

 

 

『よろしくお願いします!』

 

 

「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね、あんたらの宿泊施設はあの山の向こうね?」

 

 

『遠!?』

 

 

「え…じゃあなんでこんな半端な所に?」

 

 

「これってもしかして…」

 

 

A組のメンバーは直感した、これはヤバい。全員バスに戻ろうとするが…

 

 

「今は午前9時30分、速ければぁ、12時前後かしら?」

 

 

「駄目だ…おい!」

 

 

「やばいって!?」

 

 

「バスに戻れェェェェ!」

 

 

「12時半までかかったキティは、お昼抜きねー?」

 

 

「悪いな諸君、合宿はもう…始まってる。」

 

 

前に突然ピクシーボブが現れると個性を発動させ、地面を動かし波のようにして崖から落とす。

 

 

『ウワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』

 

 

「あ…危ねぇ……」

 

 

間一髪で足を迅竜化させ、エアーグラウンドで空中を飛んでいた狩迅はその悲惨な光景を目の当たりにして、戦慄していた。

 

 

「あら?一人取り逃がしちゃった」

 

 

「狩迅、悪いがお前も行くんだよ」

 

 

「だと思った…行ってくる」

 

 

「おーい!私有地につき、個性の使用は自由だよー!今から三時間、自分の足で施設までおいでませ!この、魔獣の森を抜けてね!」

 

 

「魔獣の森!?」

 

 

「なんだそのドラクエめいた名称は!?」

 

 

「雄英こう言うの多すぎでしょ…」

 

 

「文句ばっか言ってもしゃーねーよ、行くっきゃねぇ!」

 

 

「うおぉおぉぁぁぉ!!」

 

 

(オイラ、耐えた、耐えたんだ!)

 

 

峰田が閉じ込めておいた聖水を解放すべく、物陰へと入っていく。

 

 

『グアガァァ…………』

 

 

だがその願いも叶わず、奥から化け物が出てきた。

 

 

『ま…魔獣だぁぁぁぁぁ!?』

 

 

「ア…」

 

 

「静まりなさい獣よ!!」

 

 

「口田の個性が効かない!?緑谷、峰田を!」

 

 

「峰田君!」

 

 

「真空波!!」

 

 

緑谷が魔獣に押し潰されそうになっていた峰田を間一髪で助けだし、赫眼&亜種羅を発動させた狩迅が真空波で一刀両断にする。

 

 

「峰田、無事…か?」

 

 

峰田は神のような微笑みをしながら黙って頷いた。

 

 

「ま…まぁいい、取り敢えず魔獣の森って名前もどうやらハッタリではないらしい。この先もこんなやつがゴロゴロといると考えたら、少々面倒だ。」

 

 

「まじかよ、道中死人でんじゃねぇかこれ!?」

 

 

「やめろぉ!そういうの!!?」

 

 

「てめぇら!ゴチャゴチャ言ってねぇでさっさと構えやがれ!次来るぞ!」

 

 

奥の方から魔獣らしきものがこっちに向かってくる。一匹だけではなく、数匹に囲まれてしまった。

 

 

「おいおい、いったい何匹いるんだよ…」

 

 

「どうする、逃げる!?」

 

 

「冗談、12時までに施設につかなきゃ昼飯抜きだぜ?」

 

 

「なら、ここを突破して最短ルートで駆け抜けるしかありませんわ!」

 

 

「よし、いくぞA組!」

 

 

『おおおおおおおお!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー PM5:20 ーーーー

 

「あっやっときたにゃ~?」

 

 

「ずいぶん遅かったね~?」

 

 

「ッ……」

 

 

「くそがぁ……」

 

 

「う…く……」

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

「チッ……」

 

 

轟達に続いて他の面子も続々と集まってきた。現在の時刻は夕方、約8時間ほど経過していた。

 

 

「何が三時間ですかぁ!?」

 

 

「それ、私達ならって意味、悪いね~!」

 

 

「実力差自慢かよ!やらしいな!?」

 

 

「ねっこねこねこねこ!でももっとかかるかと思ってたよ?私の土魔獣が簡単に攻略されちゃった!いいよ君ら、特に~?そこの五人!躊躇のなさは経験値によるものかしら~?」

 

 

「あ?俺らか?」

 

 

「らしいな」

 

 

狩迅達五人を指差して何か笑ってるピクシーボブ、次の瞬間猛スピードで突進してくる。

 

 

「三年後が楽しみ!唾つけとこー!ペッペッ!」

 

 

「きたねぇ!?んだてめぇ!」

 

 

「マンダレイ、あの人あんなでしたっけ?」

 

 

「彼女焦ってるの、適齢期的なあれで」

 

 

「適齢期といえばあの…」

 

 

またもや口が滑ってしまう緑谷、ピクシーボブに頭を鷲掴みにされるのは本日二回目。

 

 

「といえばってぇ?」

 

 

「ず…ずっと気になってたんですが!その子はどなたのお子さんですか!?」

 

 

マンダレイの近くにいた詳細が不明の小さな男の子の方へ指を向ける。確かにそういえば最初からいたが、名前すら聞いていない。

 

 

「あー違う、この子は私の従兄弟の子でね。洸汰、ほら挨拶しな、一週間一緒に過ごすんだから。」

 

 

「えっと僕雄英高校ヒーロー科の緑谷、よろしくね洸汰く…!?」

 

 

緑谷のリトル緑谷に渾身のパンチ、流石の緑谷も廃人化してしまっていた。

 

 

「ァ…ァァ…………」

 

 

「緑谷君!おのれ、何故緑谷君の陰嚢を!」

 

 

「ヒーローになりたいなんて連中と、つるむ気なんかねぇよ」

 

 

「つるむ!?いくつだ君は!?」

 

 

「ハッ!マセガキぃがよぉ?」

 

 

「お前に似てねぇか?」

 

 

「あぁ?似てねぇよ!」

 

 

「茶番はいい、バスから荷物を下ろせ。部屋に荷物を置いたら夕食、その後風呂に入って就寝だ。本格的なスタートは明日からだ、さぁ早くしろ。」

 

 

ーーーー

 

 

「いただきます!」

 

 

苛烈な道のりを終えて、ようやく食事にありつけたA組。中には涙しながら食らいつく生徒もいる程、今日の疲れを癒すべく食事に集中する。

 

 

「へぇーじゃあ女子部屋は普通の広さなんだな!」

 

 

「男子は違うの?」

 

 

「見た~い!ねぇねぇ、後で見に行っていい?」

 

 

「おお!こいこい!」

 

 

「おいしい!!米おいしい!!」

 

 

「ほっかほかに温まってやがる!あぁ、ありがてぇ…」

 

 

「この体に染み渡る、ランチラッシュに匹敵するつぶだち…いつまでも噛んでいたい!!ハッ…土鍋?」

 

 

米を飲み込むようにかきこむ切島と上鳴と狩迅、疲弊した体には非常に効果的面!

 

 

「土鍋ですかぁぁぁぁ!!?」

 

 

「あぁ、つぅか腹減りすぎて妙なテンションになってんね……まぁ色々と世話できるのは今日だけだし、食べれるだけ食べな!」

 

 

『あざす!』

 

 

 

ーーーー 風呂 ーーーー

 

 

 

「まぁ、飯とかはね、ぶっちゃけどうでもいいんすよ。求められてんのはそこじゃないんすよ、その辺分かってるんすよオイラ。求められてんのは、この壁の向こうなんすよ。」

 

 

女子風呂に繋がってる大きな木材の壁の前に立ち、峰田は何かよからぬことを独りでに呟いていた。

 

 

「一人で何を言ってるの、峰田君?」

 

 

(嫌な予感がする。)

 

 

キモチイネー  オンセンアルナンテサイコウヤワー

 

 

「ほらぁ、いるんすよ。男子の入浴時間と入れ換えないなんて、事故。そう、もうこれは事故なんすよ。」

 

 

そう言ったことに興味がある系の男子はのぼせているのか、はたまた興奮しているのか分からないが、顔が赤くなっていた。

 

 

「お前、まさか!?」

 

 

「やめたまえ峰田君!君のやろうとしていることは、己も女性陣も貶める様なことだ!!」

 

 

飯田が峰田を止めようとするが、今の峰田に歯止めは効かない。神々しい表情で優しく飯田に言い返す。

 

 

「やかましいっすよ。壁とは、越えるためにある!PulseUltraaaaaaaaaaa!!!」

 

 

自分の個性であるもぎもぎを駆使し、壁をよじ登っていく。峰田は生まれてこの十数年、最も自分の個性に感謝しただろう。

 

 

「この時のため…この時のためにオイラはァァァ!!」

 

 

あと少しで頂上に手がついてしまう。もう駄目だと男子陣の一部が思っていたとき、峰田にとって一人の悪魔が舞い降りる。

 

 

「ヒーロー以前に、人のあれこれから学び直せ」

 

 

手をパチッと叩き、峰田を落とす。

 

 

「クソガキィィィィィィィィィィ!!!」

 

 

峰田はそのまま落下、飯田の顔面に尻を押しつけて沈んでいった。

 

 

ーーーー

 

 

「やっぱり峰田ちゃん最低ね」

 

 

「ありがと洸汰君ー!」

 

 

後ろを振り返ると、そこには男なら誰しもが一度は求める楽園があった。うっかり見てしまった洸汰は………

 

 

「うぇいうぇーい!」

 

 

「んが!?」

 

 

『あ!?』

 

 

足を踏み外して落っこちてしまった。地面にぶつかる直前に緑谷に助けてもらうが、鼻血を出しながら気絶していた。

 

 

「ナイスキャッチ緑谷!」

 

 

「失神してるな、落下の恐怖か。今すぐマンダレイの元に連れていった方がいいな。」

 

 

「うん!ごめんみんな!」

 

 

緑谷はそそくさとマンダレイの元へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 合宿二日目 AM5:30 ーーーー

 

 

「おはよう諸君、本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化、それによる仮免の取得、具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備だ。心して挑むように、というわけで狩迅、そいつを投げてみろ。」

 

 

「これは、個性把握テストのときのやつか」

 

 

相澤からハンドボール用のボールを投げ渡された。

 

 

「前回、入学直後の記録は3046.8m、どんだけ延びてるかな?前回と同じ形態でやってみろ。」

 

 

「おぉ!成長具合か!!」

 

 

「この3ヶ月色々濃かったからなぁ。ワンチャンもうあのままで宇宙まで行くんじゃねぇの!?」

 

 

「いったれ狩迅ィ!」

 

 

狩迅は前に出て、ボールを投げる為の構えを取る。

 

 

(悪いが、恐らく期待には答えられないな。)

 

 

「赫眼、亜種羅!」

 

 

狩迅の髪の色が緑色に光り、目は深紅に染まる。右腕を迅竜化させ、以前のように思い切り投げ飛ばす。

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

 

轟音が辺りに響き渡り、飛んでいったボールはもはや見えなくなってしまった。

 

 

「3053.2m」

 

 

「あれ、思ったより…」

 

 

「だと思ったよ…」

 

 

『え?』

 

 

「入学してから、確かに色々とあってはいたがそれによって成長したのはおおよそ精神面や技術面だけだ。今回の合宿は、その点を埋める為の物って訳だな。」

 

 

「そう言うことだ。個性は今見た通り、あまり成長していない。だから今日から君らの個性を伸ばす。死ぬ程キツいが、くれぐれも死なないように…」

 

 

不敵な笑みで生徒達を向かい入れる相澤、死ぬ程キツいと言っていたが果たしてその過酷さとはどのようなものなのだろうか…A組のメンバーはその言葉に固唾を飲んでいた。

 

 

 




次回から個性強化の話です。多分。できたら敵連合襲撃の所まで行けたらいいな〜と…


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第二十九話:絶対強者

今回もちょっとぎゅうぎゅう詰めかも…


『なっ!?』

 

 

早朝から早くに叩き起こされたB組のメンバー、担任であるブラドから個性を伸ばすため、限界突破をすると言われだす。その時に見たものは発狂しながら訓練するA組だったのである。

 

 

ーーーー

 

 

「グイァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

爆豪勝己、熱湯に両手を突っ込んで汗腺の拡大、および爆破を繰り返して規模を大きくする特訓!

 

 

「クソガァァァ!!」

 

 

ーーーー

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

轟焦凍、凍結と炎を交互に出し風呂の温度を一定にする。凍結に体を馴れさせ、炎の温度調整を試みる特訓!二つの個性を同時に出せるかも!

 

 

「チッ…」

 

 

ーーーー

 

 

「アアアアアアアアアア!!?!?」

 

 

瀬呂範太、テープを出し続けることで容量の拡大、テープ強度と射出速度を上げる特訓!

 

 

ーーーー

 

 

「ぐぁ!?くっ…こい!」

 

 

「フッ!セイッ!」

 

 

切島鋭児郎、尾白猿夫、硬化した切島を尾白の尻尾で殴ることで互いの個性強度を高める特訓!

 

 

ーーーー

 

 

「ギイィヤァァァァバババババババババ!!?」

 

 

上鳴電気、大容量バッテリーと通電することで、大きな電力にも耐えられるようにする特訓!

 

 

ーーーー

 

 

「わぁァァァァァァ!!」

 

 

口田甲司、生き物を操る声が遠くまで聞こえるように、声帯を鍛える発声の特訓!内気な性格を直すのにも効果的!

 

 

ーーーー

 

 

「AN! OH! UU!」

 

 

青山優雅、腹痛を起こしてもネビルレーザーを打ちまくって、体を馴らし、かつレーザーの飛距離アップを目指す特訓!

 

 

「ウウ…」グギュルルルル

 

 

ーーーー

 

 

「グアガァァァァァ!!!」

 

 

常闇踏影、暗闇で暴走する黒影を制御する特訓!

 

 

「黒影ォォォォォ!!」

 

 

【ケンカ中】

 

ーーーー

 

 

麗日お茶子、無重力で回転し続けることによって三半規管の鍛練と酔いの軽減、また限界重量を増やす特訓!

 

 

「ンンンンッンン!!!オエ…」

 

 

ーーーー

 

 

「ンンンンンンンンン!!!」

 

 

飯田天哉、脚力と持久力を高めるために走り込みの特訓!

 

 

ーーーー

 

 

「ケロ…ケロ」

 

 

蛙吹梅雨、全身の筋肉と舌を鍛える特訓!

 

 

ーーーー

 

 

砂糖力道、個性発動のために必要な甘いものを食べながら筋トレし、パワーアップを目指す特訓!

 

 

八百万百、同じく食べながら個性を発動させて、創造物の拡大、また創造時間の短縮を目指す特訓!

 

 

『あんぐ…モグモグ』

 

 

ーーーー

 

 

耳郎響香、ピンジャックを鍛えることで音質を高める特訓!

 

 

芦戸三奈、断続的に酸を出し続けて、皮膚の耐久度を上げる特訓!

 

 

「んがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「うがぁっ…イィイイィ………」

 

 

ーーーー

 

 

「はぐぁぁっぐうぇぇぇ!!」

 

 

峰田実、モギッてもモギッても血が出ないように頭皮を強化する特訓!

 

 

葉隠透、障子目蔵、気配を消す葉隠を複製腕を素早く同時に変化させることで、互いの個性を強化する特訓!

 

 

ーーーー

 

 

「ズエァァァァァァァァァ!!!」

 

 

狩迅龍騎、弱点である形態の持続時間を克服するために、"白疾風"に変身した状態で山をサンドバッグ代わりにぶん殴る特訓!

 

 

「い…意識が……」

 

 

ーーーー

 

 

「なんだ…これ…」

 

 

「地獄絵図じゃねぇか…」

 

 

「許容上限のある発動型は上限の底上げ、異形型、その他複合型は個性に関連する気管の更なる強化、通常ならば肉体の成長に合わせて行うが…」

 

 

「まっ時間が無いんでな、B組も早くしろ」

 

 

時間が無いのは分かったが、A組とB組を合わせたら合計40名にもなる。そんな人数をたった6人で管理できるのかという質問が出てきた。

 

 

「だから彼女らだ。」

 

 

相澤が話し終わると、突然として4人の影が出てくる。

 

 

「そうなの!あちきら四位一体!!」

 

 

「煌めく眼で~?ロックオン!!」

 

 

「猫の手手助けやってくる!!」

 

 

「何処からともなくぅ、やって来るぅ…」ゴゴゴゴ

 

 

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

 

『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!フルバージョン!!』

 

 

「クソガァ!」

 

 

フルバージョンの決めポーズが決まり、爆豪の爆破で更にいい感じに決まるが、ただ何か、筋骨隆々の化物みたいなのが一人いた

 

 

「あちきの個性サーチ!この目で見た人の情報を100人まで丸分かり!居場所も弱点も!」

 

 

「私の土流で、各々の鍛練に見合う場所を形成!」

 

 

「そして私のテレパスで、一度に複数の人間へアドバイス!」

 

 

「そこを我が、殴る蹴るの暴行よ…」

 

 

「色々駄目だ…」

 

 

「クソガァ!!」

 

 

ーーーー 夕方 ーーーー

 

 

合宿二日目にしてかなりのハードな訓練を無事(?)に乗り越え、夕食の時間となる。全員ボロボロだが、食事は自分達で作らないといけない。

 

 

「だが、災害時などで避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環…流石雄英無駄が無い!世界一うまいカレーを作ろう、みんな!!」

 

 

『お…おぉ~………』

 

 

(飯田、便利)

 

 

ーーーー 料理開始 ーーーー

 

 

「轟~こっちもお願い!」

 

 

「爆豪、爆発で火ぃつけれね?」

 

 

「つけれるわクソガァ!」

 

 

ーーー ドカァン!

 

 

『えぇ……』

 

 

爆豪の爆破を利用し、火をつけようとしたのが間違いだった。勢い余って台所を破壊してしまった。

 

 

「みなさん、人に頼ってばかりでは火の起こしかたも学べませんわよ?」

 

 

「えぇ…」

 

 

「いや、いいよ」

 

 

「いやぁ悪いね、私らB組なのに手伝って貰っちゃって。」

 

 

「構わん、月迅竜!ハァァァァァァァ!!」

 

 

A組の準備はあらかた完了したため、狩迅はB組の手伝いに行っていた。B組には火を扱えたり、特別料理が上手い者がいないため、狩迅の存在はかなりありがたい。

 

 

「摩擦で火を起こすのかよ…かなり原始的だな。」

 

 

「はっはっは!!いいよその様!さぁもっと僕らの為に働け!動け!汗水垂らして作れぇ!あがっ!?」

 

 

「うるさい」

 

 

そんなこんなでなんとか料理をこなしていくA組とB組、互いに協力し合い、取り敢えず作ることに成功した。

 

 

『いただきまーす!!』

 

 

「店とかで出したら微妙かもしねぇが、この状況も相まってうめぇ!!」

 

 

「ヤオモモがっつくねぇ!」

 

 

「私の個性は脂質を様々な原資に変換して創造するので、沢山蓄える程沢出せるのです。」

 

 

「ングング…う○こみてぇ」

 

 

「…………………」

 

 

「謝れぇ!!」

 

 

「すみませぇん!」

 

 

「そういや常闇」

 

 

「ん?」

 

 

「聞きたい事があるんだが、俺の肘から刃が出るのは知ってるか?」

 

 

「あぁ、あの鋭く輝く刃、忘れはしない。それで、それがどうした?」

 

 

「俺は技名とかってあるんだが、この刃にはつけてなくてな、どうせならお前に決めて貰おうと思って。」

 

 

「成る程、どうしたものか」

 

 

「じゃあさじゃあさ!肘から出る刃だから、エルボーブレードとかは!」

 

 

「悪いが却下だ」

 

 

「えぇ!?」

 

 

「ならば…こんなのはどうだ?」

 

 

顎に手を置き、変な方向を向きながら考える常闇。そして出てきた案が…

 

 

「斬夜の太刀!」

 

 

「よしそれで行こう。」

 

 

「酷い!!?」

 

 

無念なり、葉隠さん…

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

みんなが寝静まった夜、静かに、そして着々と作戦を進めていた。

 

 

「ん~て言うかこれやだ、可愛くないです!」

 

 

「裏のデザイナー、開発者が設計したんでしょう?見た目はともかく、利には叶ってるはずだよ?」

 

 

「そんなこと聞いてないです!可愛くないって話です!」

 

 

「は~い、オマタ~?」

 

 

「ひぎょと、しぎょと……」

 

 

「…へっ…」

 

 

人の通らないどこかの高い山の上に、合宿先を襲撃しようと集まっていた。その中には新参の者もいる。以前にも増して、勢力が拡大したようだ。

 

 

「これで七人…」

 

 

「どうでもいいから早くやらせろぉ、わくわくがとまんねぇよぉ!」

 

 

指をぽきぽきと鳴らしながら、今にも突撃しそうな男がいた。からだ全体を隠すようにフードを被っており、外見が分からない。

 

 

「黙ってろイカレ野郎共、まだだ、決行は十一人全員揃ってからだ。威勢のいいチンピラを何人集めたところでリスクが増えるだけだ。

 

 

「やるなら経験豊富な少数精鋭、まずは思い知らせろ。てめぇらの平穏は、俺達の手のひらの上ってことをな。」

 

 

 

 

 

 

ーーーー 合宿三日目 ーーーー

 

 

昨日と同様、個性の強化とデメリットの克服を行っていた。体が馴れてきたからか、少しはマシになったがそれでも辛いものは辛い。

 

 

補修組は夜中まで授業をしていたらしく、目の下にクマが出来ていた。赤点は免れたものの、麗日と青山も危うく補修組の一員になるところだったらしい。

 

 

「気を抜くなよ、何をするにも常に原点を意識しとけ。向上ってのはそう言うもんだ。何のために汗を流しているか、何のためにこうしてグチグチ言われるか、常に頭に入れておけ!」

 

 

「そういえば相澤先生、もう三日目ですが…」

 

 

「言ったそばからフラッと来るな。」

 

 

少し高めの崖から飛び降りて、緑谷の前に立つ。

 

 

「今回はオールマイト…いや、他の先生方は来ないんですか?」

 

 

「合宿前にも言った通り、ヴィランに動向を悟られぬよう人員は必要最低限。」

 

 

「よってあちきら四人の合宿先ね!」

 

 

「そして特に、オールマイトはヴィラン側の目的の一つと推測されている以上、来てもらう訳にはいかん。良くも悪くも目立つからこうなるんだあの人は。ケッ」

 

 

(悪くもの割合がデカそう…)

 

 

「ねこねこねこ!それよりみんな!今日の晩はね?クラス対抗肝試しを決行するよ!!しっかり訓練した後は、しっかり楽しい事がある!The飴と鞭!!」

 

 

(そういえば忘れていたな、肝試し。)

 

 

「闇の狂宴…」

 

 

「という訳で、今は全力で励むのだー!」

 

 

『イエッサー!』

 

 

ーーーー 夕方 ーーーー

 

 

ーーー トントントントン

 

 

「爆豪君包丁使うのウマ!?意外やわぁ…」

 

 

「意外ってなんだゴラァ!?包丁に上手いも下手もねぇだろうが!!」

 

 

「でた、久々に才能マン」

 

 

「みんな元気すぎ…」

 

 

爆豪は何故か昔から料理が途轍もなく上手かった為、包丁の扱い方も超一流なのである。

高速で野菜を切っていると、爆豪の横からも包丁を使う音が聞こえてきた。

 

 

「あ?」

 

 

「ん?」

 

 

『…………』

 

 

しばらくの沈黙が流れる。何故だろう、二人の間に物凄い稲妻が見える。恐らくは爆豪の一方的な物だろうが…

 

 

「てめぇなんざよりもなぁ、包丁捌きは俺の方が上だぁ!」

 

 

「さっき上手い下手関係無いって言ってただろうが…」

 

 

「んなもん関係ねぇ!!!」

 

 

ーーートントントントントントントントントン

 

 

意味の無い戦いが今始まった。簡単に言えばどちらが先に野菜を切り終える事ができるのか…周りは呆れた表情をしながら自分の作業に勤しんでいる。

 

 

「どっちも速ぇ…てか見えねぇぞ!?」

 

 

「上鳴、お前どっちが速いと思うよ?賭けようぜ!負けた方作業負担な〜俺狩迅!」

 

 

「やったれかっちゃん!」

 

 

「かっちゃん言うなクソが!!」

 

 

ちなみに、コンマ1秒か2秒の差で狩迅が勝った。

 

 

ーーーー 夜の肝試し〜 ーーーー

 

 

「さて、腹も膨れた、皿も洗った…お次は〜?」

 

 

「肝を試す時間だー!」

 

 

『よっしゃァァァァ!!!』

 

 

「その前に、大変心苦しいが、補習組はこれから俺と授業だ。」

 

 

「嘘だろおおおおおおおお!?」

 

 

相澤の捕縛布で5人とも捕まってしまった。希望に満ち溢れていた表情が一気にどん底に叩き落され、絶望に染まっていた。

 

 

「すまんな、日中の訓練が思ってたよりも疎かになっていたので、こっちを削る。」

 

 

「勘弁してくれぇぇぇぇ!!!」

 

 

『肝を試させてくれぇぇぇぇぇぇ!!!』

 

 

相澤に連れて行かれた補習組、まるで明日地球が終わるかのような表情をしながら声が遠ざかっていく。それを見ていた全員はなんともやるせない気持ちになっていた。

まぁ気を取り直して…

 

 

「はい!という訳で脅かす側先行はB組、A組は二人一組で3分おきに出発、ルートの真ん中に名前が書いた御札があるからそれを持って帰ること!」

 

 

「闇の狂宴…」

 

 

(また言ってる!?)

 

 

「脅かす側は直接接触禁止で、個性を使った脅かしネタを使ってくるよ?」

 

 

「創意工夫でより多くの者を失禁させた方の勝ちだ!」

 

 

「やめてください汚い。」

 

 

「なるほど、競争させることでアイデアを遂行させ、そのおかげで個性にさらなる幅が生まれるということか!流石雄英!!!」

 

 

「飯田、ちょっと違うと思うぞ?」

 

 

「さぁ!クジ引きでパートナーを決めるよ!」

 

 

「えっと僕は…」

 

 

「緑谷、お前何番だ?俺は8番なんだが…」

 

 

「あっ、じゃあ僕と一緒だね!狩迅君がパートナーで良かったよ〜よろしくね!」

 

 

「あぁ」

 

 

「おい尻尾ぉ、変われ!」

 

 

「なぁ青山ぁ、オイラと変わってくれよぉ?」

 

 

「………闇の狂宴………」

 

 

(朝からそれしか言ってないな…)

 

 

ーーーー 15分後 ーーーー

 

 

ーーーイヤァァァァァァァァァァ!!!

 

 

ーーーアァァァイァァァアァァ!!

 

 

「さっきから発狂が止まらないな、どうしたんだ?」

 

 

「いや…怖いからじゃないかな…?」

 

 

「次は何番だっt…!?」

 

 

狩迅が突然立ち上がり、目を見開きながら赫眼を発動させる。かなりの焦った顔をしながら

緑谷に告げる。

 

 

「どうしたの?いきなり…」

 

 

「何故だ…嫌な匂いがする。ヴィランだ!」

 

 

「えっ!?」

 

 

周りをよく見れば、ガスのような匂いがする。それだけじゃない、山火事も起きていた。

たった今この瞬間、生徒達に最悪が降りかかろうとしていた。すると突然ピクシーボブが何かに引き寄せられたように後ろへ飛んでいった。

 

 

「なんでだよ…なんでここに、ヴィランがいるんだよぉ!?」

 

 

「飼い猫ちゃんは邪魔ね?」

 

 

「へっへっへ」

 

 

ーーーー

 

 

「さぁ、始まりだ。死に落とせ、ヒーローと言う名の偽りの輝きを…断罪するは我ら敵連合。開闢行動隊…」

 

 

ーーーー

 

 

「ピクシーボブ!!」

 

 

 

緑谷がヴィランへ突撃を仕掛ける寸前、虎が手を前に出し抑える。

 

 

「まずいね…」

 

 

(ッ…洸汰君!!?)

 

 

「緑谷、お前は早く洸汰の所へ向かえ。俺は周りを偵察してくる。」

 

 

「え!?」

 

 

「被害を拡大させない為にも、俺が動くべきだ。それに森の方には二人一組と言う少数組が別れていて、尚且あの毒ガスらしき物を見る限り不意打ちを受けているはず。マンダレイは早めに個性の使用許可を全員に出してください!」

 

 

「分かったわ、だけどなるべく戦闘は避けなさい!」

 

 

狩迅はそれだけを言うと、危険地帯である森の方へ急いで向かっていく。止める声も聞こえていたが、関係なしに突っ込んでいった。

 

 

「足を迅竜化!赫眼、亜種羅!!」

 

 

エアーグラウンドを利用し、高速で空中を駆け抜ける。一面が炎の海と化していた森を見ると、狩迅の不安はドンドンと加速していった。

 

 

「誰から助ければいい…どこへ向かえば良い…!」

 

 

ーーーー

 

 

「必ず助けるってかぁ?どこにでも現れて正義面しやがる。」

 

 

「くっ……」

 

 

ーーーー

 

 

「ラグドールの応答が無い…」

 

 

「貴様ら、ラグドールに何をした!!」

 

 

「さぁ?」

 

ーーーー

 

 

「どうしたら被害を最小限にできる…!!」

 

 

助ける者が多すぎる。どこもかしこもヴィランによる被害だらけ、冷静な判断力を持つ狩迅でも、戸惑いや葛藤、命の順番を選択しなければならなかった。

 

 

その瞬間だった、狩迅の耳に僅かながら自分の名を呼ぶ声が聞こえてきた。狩迅の体は勝手にその方向へと向き、走り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「耳郎ちゃん……逃げて……」

 

 

「葉隠……」

 

 

危機は耳郎達にも迫っていた。耳郎の目に写っていたのは腕が異型と化し、葉隠の首を掴み持ち上げる謎の男だった。葉隠の力無い声が耳郎をますます恐怖へと誘う。

 

 

(葉隠…死んじゃう…足がすくんで立てない…死ぬ…なんでこんな所にヴィランが…嫌だ…

死にたくない…葉隠が…)

 

 

涙を浮かべながら自分の無力さを痛感する耳郎、今にも殺されそうな葉隠、そんな二人に対して面白そうに嗤う男、正に地獄絵図である。

 

 

「あ……じ…ろ……ちゃ…………」

 

 

葉隠の首を締める力が強まる。葉隠の腕がだらんと下に降りてもう限界だと知らせる。

 

 

(やだ…助けて…)

 

 

最後の力を振り絞り、その名前を呼ぶ。

 

 

「狩迅いいいいいいい!!!」

 

 

呼んでも無駄だと言うことは理解していた。だが人というのは絶望の底にいる時、僅かな光に頼ってしまうもの、勿論来るはずも無い…男が葉隠を掴みながら耳郎に近づく。

 

 

「あ……」

 

 

男が空いていた腕を上げ、振り下げる。一瞬だが走馬灯のような物が見えた。時間が遅く感じる、だが体は動かない。死にたくないと願う耳郎、異型の腕が直撃する瞬間だった。

 

 

「…………」

 

 

頭が変形する程の威力である蹴りを右足で放つ。男は葉隠を手放し、木を数十本叩きつけられながら吹き飛んで行く。

 

 

「ッ……」

 

 

「すまない、遅くなった。」

 

 

葉隠を抱きかかえながら、耳郎と葉隠に敵が吹き飛んだ方向を見ながら謝る。

 

 

「葉隠を連れて逃げてくれ、俺が奴の足止めをする。」

 

 

狩迅が葉隠を耳郎に渡す。

 

 

「でも…」

 

 

「さっさとしろ!俺と一緒に墓場には行きたくはないだろ!」

 

 

怒ったような表情で怒鳴る狩迅。耳郎は少し戸惑った後にうなずき、葉隠を連れて逃げる。

 

 

「いいのかい?盾にでも使えばよかったじゃないか」

 

 

吹っ飛ばした男がこっちに歩いて向かってくる。負わせたはずの傷は何故か綺麗に治っていた。

 

 

「………」

 

 

「紹介が遅れたね、私の名は牙剥。以後よろしく頼むよ、狩迅龍騎君。」

 

 

「その腕…貴様、俺と"同じタイプ"か…」

 

 

牙剥の右腕は狩迅の様に不気味に変形していた。

 

 

「あぁこれか、気になるかい?私は近年稀に見る複数個性持ちでね、これがその一つだよ。君の放った蹴りが治ったのは超再生のおかげさ。」

 

 

「複数個性…脳無みたいな物か。」

 

 

(だがこいつには理性がある。指示待ち人間じゃない…どうにも辻褄が合わない。)

 

 

「少し違うが、まぁいい。で、どうするんだい。私を殺すか?」

 

 

「その一歩手前までやらせて貰う。」

 

 

狩迅は戦慄していた。この男から放たれる威圧感やプレッシャーは間違いなく自分以上である。そこらにいるようなチンピラでは無い。

 

 

「白疾風!!」

 

 

「さぁ、始めよう。」

 

 

牙剥の腕が蒼く輝いていく。髪の色も青が混じったように変化していた。

 

 

「荒鉤爪…二つ名同士、仲良くやろうじゃないか?」

 

 

 




牙剥のちょっとした詳細

見た目は二十代後半だが、実際は個性の影響で年を取らないだけで実年齢は不明




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第三十話:轟竜vs迅竜

今回は完全オリジナル会なので駄文です。


「竜の鉤爪!!」

 

 

狩迅が先制を取った。牙剥に対して正面からの殴り合いをするつもりだろう。突撃されているにも関わらず、牙剥は酷く冷静に対処する。

 

 

「竜の…」

 

 

狩迅とは対象的に右腕を後ろに下げ、構えを取る。そして次の瞬間…

 

 

「轟拳ッ!!」

 

 

二人の拳が交わる事によって発生する稲妻や爆発、衝撃波が辺り一面を灰と化させる。草は燃え、木は重いものでも遠くに吹き飛んでいってしまう。ここに二人以外の誰かがいたらプロヒーローでも死亡者が出ていたかもしれない。耳郎達を逃して正解だった。

 

 

(このパワーは!?)

 

 

「がっ!?」

 

 

力に自信のある狩迅がオールマイト以外にパワー負けしてしまった。しかも牙剥は涼しい顔をしており、まるでまだ全力では無いと言っているように佇んでいた。

 

 

「痒…」

 

 

今度は牙剥が仕掛けてくる。。腕を大きく横に薙ぎ払い、真空波を作り出す。

 

 

「辻斬り!」

 

 

「ちッ、真空波!」

 

 

(相殺か…ッ!奴の姿が消えた!?)

 

 

相殺した事によって起きた煙幕を囮に牙剥は姿を消した。赫眼で捜索するがまるで気配が無い。

 

 

(違う…まさか!)

 

 

地面がえぐれ、下から牙剥の拳が顎にモロに入る。確かに地中ならば匂いもあまり届かず、尚且気配も消せる。

 

 

「盲点だったろ?半端変異!」

 

 

「脳が…くそったれ!十字…ッ!」

 

 

技を放とうとするが脳が麻痺しており、視界が揺れている。その隙を狙われ、横腹に爪を刺される。

 

 

「ガハッ!?」

 

 

「痛いかい?そうだろうな…痛いだろうなぇ…内蔵を削られたらそりゃ痛いだろうなぁ?」

 

 

吐血をしてしまう。その爪は狩迅の横腹に深々と突き刺さっており、見るも痛々しい。

それでも狩迅は止まらない。刺している腕を掴み、蹴り飛ばす。

 

 

「ふぅ…確かに痛みは感じるが、おかげで目が覚めた。俺にとってメリットの方がデカかったな。」

 

 

「痩せ我慢はやめておいたほうが身のためだ、言っただろう?私は複数個性だと」

 

 

「私は何の策略も無しに突撃していく馬鹿な獣とは違う、追撃は打撃だけじゃない。猛毒、爪に仕込んでおいたんだ。テトロドトキシン、知っているだろう?忠告さ、気をつけなよ?」

 

 

「やらしい小細工をしてやがる。だがそれがどうした、それ程度俺が引く理由にはならねぇよ」

 

 

とは言っているものの、もう既に具合が悪くなってきていた。呼吸も難しい。手足が痺れ始めてくる。目眩や立ち眩みもこの短時間で引き起こしてしまう。

 

 

「そうかい、なら…」

 

 

「ッ!?」

 

 

『終わりにしようかな』

 

 

牙剥の体がドンドンと巨大化していく、狩迅の記憶にはこれが何なのかは記録してあった。

ナルガクルガと同じ、超常黎明期よりもずっと前、かつて殺戮の限りを尽くしてきた化物…

 

 

「ティガレックス…何故お前が…」

 

 

『何故だろうなぁ?どうしてだろうなぁ?何でなんだろうなぁ!?君の父親が独りでに死んだのが原因じゃないのかい!?』

 

 

「………」

 

 

『轟竜ティガレックス、知ってるだろう?君は幸せものだね…会いたかった顔も知らない父親に会えたんだから…まぁ、中身は知らないがね。貰ったんだよ、君の父親にも』

 

 

狩迅は牙剥の言った言葉が妙に引っかかった。貰った、それはつまり他人から個性を奪ったと言う事かもしれない。個性を奪う個性、超常や能力が当たり前となったこの世界では充分ありえる可能性だ。

 

 

(貰った…脳無…複数個性に、緑谷の言っていたオールフォーワン…皆は一人の為に…

色々と、話が見えてきたな…これは勘だが、俺達の敵は敵連合だけじゃない。裏に何か…)

 

 

(何かデカいのが隠れていやがるッ!)

 

 

「本当に…人を苛立たせるのが上手いやつだ…」

 

 

曖昧になっていた父親への記憶が戻ってきた。そう、狩迅の父親の個性はティガレックス、

余りある怪力で全てを破壊する個性。その力でいろんな人々を助けていたという事は生前の母からよく聞いていた。

 

 

「貴様らの目的は何だ…何故俺達雄英生を襲う!」

 

 

牙剥の顔が少しずつ新しいおもちゃを貰った子供のように、楽しそうな顔になっていく。

 

 

『私以外の者には何かしらの目的があるそうだが、私にはそんな物はどうでもいい。私はただ、この余りある力を試してみたいだけだ。そう、つまりは解明…手段を講じれるなら目的なんてどうでもいい。』

 

 

ニタニタと笑いながら語り始める牙剥、そんな彼に狩迅は正気の沙汰ではないと、気色悪がっていた。

 

 

「貴様さっき貰ったと言ったな…自分の欲求の為に…他者を殺し、個性を奪って…挙句の果てにはその力で人殺しか…中々下衆な事をしやがる。」

 

 

『生きとし生けるもの全ては何かを殺していかないと生きていけない。これは仕方の無い犠牲だったんだよ』

 

 

「貴様はその命を己の快楽の為に使っていると言っているんだ、正当化できると思うな!何故そんなにも簡単に人の命を踏みにじれる!」

 

 

『環境さ、人ってのはその場の環境でどうとでもなる。それが人間としての当たり前…。だからこの世に善悪は無いんだよ、誰もが常に誰かの正義であり、それと同時に悪だ。そしてそれを決めるのはいつも世間さ。』

 

 

『そういった経験、君ならあるんじゃないか?』

 

 

「皮肉か?」

 

 

『どうだろうねぇ、だが今の君には関係ないか…』

 

 

「余計な事は口に出さないほうがいいぞ、今俺は、怒りが溢れて仕方が無い…」

 

 

『そうか、ならば…』

 

 

「ッ!?」

 

 

『本当の終わりにしよう』

 

 

牙剥が腕を振り上げると真空波が狩迅に向かって飛ぶ。狩迅はその速度に反応できずに…

 

 

「あッ…」

 

 

気がつくと左腕の関節から少し上らへんが綺麗に両断されてしまっていた。血が次から次へと流れ出てくる。下手したら失血死してしまうかもしれない。

 

 

「グ…アガ…!?」

 

 

『胴体目掛けて狙った一撃なんだが、流石の反射神経…称賛に値するよ。あぁ、安心してくれ、ちゃんとくっつくように綺麗に切断しておいたから。』

 

 

狩迅はその激痛に耐えながら着ていたシャツを包帯代わりに腕に巻いていく。

 

 

「ングッ!」

 

 

『拾っておいてあげたよ、そら』

 

 

牙剥が狩迅の左腕を尻尾で投げて渡してくる。

 

 

『顔色が悪いようだが、大丈夫かい?まだいけるだろう?』

 

 

またもや不意打ちを仕掛けてくる牙剥、だが2度も同じ手をくらいはしない。狩迅も左腕が無いならと尻尾でカバーをする。

 

 

『遅い!弱い!!さっきまでの威勢はどうした!!』

 

 

周りの地形を破壊しながら突進してくる。体力が無い狩迅はただ受け止める事しかできていなかった。それでも徐々に体が悲鳴をあげてくる。

 

 

「ゔ…がぁ!!」

 

 

何本もの木に叩きつけられながら、血反吐を吐く狩迅。その時、狩迅に何か違和感が募った。

 

 

(こっちの方角は…耳郎達が…)

 

 

『死体の山と化していくこの地に、せめてもの救いとして奴らと一緒に死なせてやろうッ!』

 

 

狩迅が吹き飛ばされている方向は、さっき耳郎達が逃げていた方向だった。歯を食いしばり右腕と尻尾で牙剥の動きを止めようとする。

 

 

「行かせると…思うのか!俺が、貴様を…みすみすとッ!」

 

 

『ッ!』

 

 

「任せろと言ったんだ、ならば最後までその責務を全うするッ!」

 

 

「貴様なんぞに…俺の全てを渡してたまるかぁ!!」

 

 

狩迅の体が黒く輝いていく、この姿になるのはこれで4回目だろうか…しかも体力の無い状態での変形、身体に来る負担は尋常ならざるものだろう。そんな事は分かっていた、だがしかし…

 

 

(命惜しさなんぞ、とっくの前に捨て去った!もうやらせはしない…誰一人として…!犠牲にはさせないッ!)

 

 

『勝って守る…それが本当のヒーローの姿だッ!!』

 

 

『…………』

 

 

『ガァァァァァァAAAAAAAAAAA!!』

 

 

失ったはずの左手は黒い炎によって擬似的に再生していた。そして黒炎の中から二つ名の迅竜の姿が映される。

 

 

『いいなぁ、さぁ第2ラウンドだ!』

 

 

『GAAAAAAAAAA!!!』

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「なんだ、さっきから起こっているこの地響きは…」

 

 

「ちょっとスピナー、これ計画の内に入ってた!?」

 

 

「知らねぇよ!」

 

 

ーーーー

 

 

「鉄哲!この震動なに!?こんな事できる個性持ってた人いたっけ!?」

 

 

「はぁ…はぁ…分かんねぇよ!!なんなんだよさっきから!」

 

 

ーーーー

 

 

「てめぇよりもすげぇ奴がいんのかぁ!?おいおい…本当に…ワクワクが止まらねぇなぁおい!!」

 

 

(この力は…狩迅君の…)

 

 

ーーーー

 

 

二匹の竜の攻防戦は他の地帯にまで影響を及ぼしていた。敵連合ですらもこの力の発端は分からなかった。

 

 

『GAAAAAAAAAAA』

 

 

『衰えることの無い…己を突き動かすのは単純な闘争本能ッ!』

 

 

下手な小細工は無い、純粋な力と力のぶつかり合い…それだけなのにも関わらず、その被害は尋常では無かった。殴る蹴るで山が崩壊し、技の放出で地図を書き換えなければならないほどの影響を及ぼしていく。

 

 

『GAAAAAAAAAAA!!』

 

 

『素晴らしいなぁ!その力…欲しくて堪らない!!』

 

 

『UGAAAAAAAAA!!』

 

 

『だがしかし、その強大な力の前に、逆に呑み込まれているぞ?結局は半端変異か…少し残念だな。』

 

 

(起きろ…何故思い通りに動かないッ…。このままじゃ俺が、みんなを殺してしまう…!それだけは駄目だッ…体を支配されても…心とヒーローとしての誇りだけは守り抜くッ!)

 

 

薄れゆく意識の中で、狩迅は必死に理性を保っていた。少しでも気を抜くと、力に呑み込まれきってしまう。

 

 

(命を捨て去る覚悟は持っているさ…それでも俺は、あいつらの元へ…!)

 

 

『カエ…ラナケ…レバ…ナラナイッ!』

 

 

いきなり狩迅が悶え苦しみだした。それを見ていた牙剥は予想外の出来事に目を見開いていた。

 

 

『個性の副作用か…さっきから随分と戦闘力が下がっている。』

 

 

『ならば、今が好機!!』

 

 

(やられはしない、俺の力も心も…全部俺の物だ!!)

 

 

体の隅々まで力を込める。血管がはち切れそうだが、それも関係無い。

 

 

『ガァァァァァァァァァッッ!!!』

 

 

『こいつ!意識が!?』

 

 

迫ってきていた牙剥諸共、失った擬似的な左腕で遠くまで殴り飛ばす。

 

 

『傷が…治らない…』

 

 

吹き飛ばされた牙剥の前には、怒りの表情をあらわにした狩迅が仁王立ちしていた。

 

 

『その力、本当に…』

 

 

『一体お前は何人もの罪も無い人を殺してきた…何人殺せば気が済む!』

 

 

今度は狩迅が牙剥を地面に叩きつける。両足と尻尾を利用し、何度も何度も踏み潰す。

 

 

『実に良いものだ…』

 

 

『クソッ!』

 

 

牙剥は大きく息を吸うと、少し溜めてから雄叫びをあげる。

 

 

『竜の号哭!!』

 

 

『GUOOOOGAAAAAAAAAAAAA!!!!』

 

 

その威力は凄まじく、プレゼント・マイク顔負けの大音量だった。狩迅の竜の咆哮を遥かに凌駕する音量で狩迅を引かせる。その隙を狙い、首元に爪を突き刺そうとするが狩迅の反射神経で難無く受け流し、カウンターに成功する。

 

 

『再生が…追いつかない……』

 

 

『さっきは随分と楽しそうに耳郎達をいたぶっていたな!!』

 

 

エアーグラウンドで空を飛び、両腕を上にあげる。

 

 

『いい…実にいい…しっかりとした痛みをくれる…』

 

 

『今度はこっちが楽しむ番だよなぁ!!?』

 

 

『私はまだ…楽しんでいるさ』

 

 

狩迅は高速で腕を振ることにより、無数の斬撃を牙剥に向ける。防ぐ術が無い牙剥は全ての斬撃を真正面から受けてしまい、体中が切り刻まれる。

 

 

『ウオァァァァァァァァ!!!』

 

 

『ウガァァァァァァァッ!!?』

 

 

あまりの攻撃に力を抜いてしまい、牙剥は人間の状態に戻ってしまった。狩迅はすかさず迅竜を解き牙剥の元へ急ぐ。手刀で牙剥の左胸を穿きいつでも心臓を握りつぶせる状況にする。

 

 

「はぁ…はぁ…超再生持ちでも、直接心臓握り潰されたらどうなるだろうな?」

 

 

「君も…中々ヴィランらしいこと…するじゃ…ないか?狩迅龍騎…」

 

 

血を吐きながら弱々しく笑う牙剥。

 

 

「安心しろ、貴様は大事な情報源だ。簡単には殺しはしねぇよ…多分な」

 

 

(あとは誰かが来るまで耐えたら俺の勝ちだ。俺の体…あと少し、あと少しだけ耐えてくれ…)

 

 

「デカい口叩いてた割にはそんなガキに負けちまうなんてな。」

 

 

「誰だ!」

 

 

暗闇の奥から誰かが歩いてきた。口の聞き方から察するに、恐らく連合側の人間だろう。

普段の狩迅なら難無く対処できるが、今は左腕が無い上に牙剥の管理もしなければならない。

 

 

「負けてないよ…引き分けさ。お馬鹿さん…」

 

 

「てめぇ死にてぇのか生きてぇのかハッキリしやがれイカレ野郎。」

 

 

(今日は本当に最悪が何度も起きやがる。どうすりゃあ良い…)

 

 

すると突然後ろから気配がした。振り向くとそこには…

 

 

「あっバレちゃいました」

 

 

ナイフを持った少女がいた。刺されそうになるところをギリギリで躱すが、牙剥から手を離してしまった。そのまま牙剥は少女に持っていかれてしまう。

 

 

「待て!がっ…」

 

 

「カッコイイねぇ//でももっとボロボロの方がカッコいいよ!私トガです!トガヒミコ!」

 

 

「おい、さっさと来いイカレ女。時間潰してる暇はねぇんだよ。今頃コンプレスが何人かさらってるはずだ。」

 

 

「そうですか…またね龍騎君//今度会う時はもっとボロボロにカッコよくしてあげるね!」

 

 

「今回は痛み分けといこう…。次会う時は、遠慮なく、躊躇なく、必ず殺してあげよう。案外、すぐに再会できるかもなぁ…」

 

 

「まだまだ、序章さ…ふぅ、喋ってる間にようやく治ったよ。では、我々はこれで…」

 

 

三人はそれだけ言うと暗闇の中に消えていった。

 

 

「さらった…誘拐したって事か!?早くあいつらの所へ…」

 

 

みんなの所へ行こうとするが体がうまく言う事を聞いてくれない。個性も発動させることができない程に狩迅は衰弱していた。足を引きずりながら耳郎達が走って行った方向へと戻っていく。だが…

 

 

(意識が…遠く………)

 

 

遂に力尽きてしまう。膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れてしまう。

 

 

(クソッ…分かってはいたが、想像以上に…意識が…)

 

 

狩迅の意識はそこで途絶えた……………

 

 

今日この日この時、敵連合との戦闘で狩迅達ヒーロー側は完全敗北した。怪我人合計で30人以上、無傷だったのはたった7人程だったらしい。その他に行方不明者2人、意識不明の重体者が1人だった。

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

「さて、何人かがやられたそうだね。」

 

 

「危うくテメェもその仲間入り果たす所を俺が助けてやったんだ。きっちり恩は返してもらうぜ。」

 

 

「今日はカッコいい人が二人もいました//もっとボロボロにしておけばよかったです…」

 

 

「彼奴等のことは残念だったぜ…ケッ!ガキになんざ負けちまうなんて雑魚いな!!」

 

 

あの事件で3名ほど連合側は味方を失ったらしい。雄英生徒の猛反撃を視野に入れていた者はあまりいなく、不意を突かれたのだろう。

 

 

「おい、作戦通りに行ったのは良いがこのガキはどうすんだ。」

 

 

死柄木が指を指す方向には、敵連合が誘拐してきた爆豪の姿があった。今は荼毘の手で捕らえており、不自然な動きをした瞬間に焼き殺せる。

 

 

「少し気絶させようか、失礼」

 

 

牙剥が爆豪のみぞおちに深く拳を入れると、その瞬間爆豪の視界は黒に染まった。

 

 

(クソッ…が…)

 

 

爆豪を眠らせたあと、何か考え事をするように顎に手を置く。

 

 

「……………」

 

 

「あら牙剥、貴方にしては随分と真剣な顔ね。何か考えていたの?」

 

 

「いいや、ちょっとね。私は外に行ってくるよ。」

 

 

タバコの箱を持ってそそくさと外に出て行こうとする牙剥。だが事件が起きた直後なのに関わらず、妙に冷静である。

 

 

 

ーーーー 人気の無い路地裏 ーーーー

 

 

「あーあー、はぁ…無理矢理笑顔を作るのも大変だな。」

 

 

顎をガクガクさせながら、愚痴を溢す。

 

 

「個人個人に対する性格も変えなければならない…あと十通りほど考えておこうかな。今後の為にも」

 

 

「しかし、狩迅龍騎、あいつに対する狂人設定は間違えたな、かなり痛かった…わざと負けておいて正解だったよ。顔も変えていた方が良かったかな?」

 

 

「個性以外の事はあまり知られたくないからな、もう少し頑張るとしようか」

 

 

ライターでタバコに火をつけ、そのままコツコツと音を立てながら路地裏の暗闇に消えていった。

 

 

「俺は欲しいと思った物は必ず手に入れる。例えそれが引き金で命の落とし合いになろうがね…」

 

 

「迅竜、半端変異の個性だが、それでも充分俺の血肉となる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




牙剥の設定

現在判明している個性:轟竜 超再生 変形 


変形:顔、体格、髪の色、血液型、指紋、果てには性別まで変えることができる。本来の姿を見た事があるのはオールフォーワンただ一人


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神野事件編
第三十一話:目前


学生の皆さん、今頃は持久走で死にかけている最中でしょうか。私は足が死にました。
今回は戦闘無しのお話です。


ーーーー ??? ーーーー

 

 

(何だ…俺は、奴と戦って…ここは…?)

 

 

赤ん坊の泣く声と、二人の影が見える。狩迅は走馬灯か何かと考えたが、その可能性は低い。目の前にいる男女二人はこれまでの人生の中で見たことが無い。

 

 

(誰だ………ん?)

 

 

奥からもう一人の影が出てくる。声をあげず、すすり泣いているこの女性は…

 

 

(母さん…?)

 

 

昔他界した狩迅の母親がそこにいた。1歳にも満たない子供を抱きかかえているこの男女は抱いていた赤ん坊を狩迅の母親に渡すと、少しずつ涙を浮かべ始めた。

 

 

『この子を、お願いね…』

 

 

『……………』

 

 

そう言うと、その女性は赤ん坊の額に額をくっつけ、小さな光が放たれる。それは本当に豆電球程の小さな光、だが狩迅はその光がどこか、とても温かく感じていた。

 

 

『……………』

 

 

『ず……あ……………らね、私……………い……や』

 

 

(今…なんて………)

 

 

女性の声は少しずつ遠くなっていき、やがて聞こえなくなってしまった。視界が白から黒に変わっていく。

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

(ここは…?)

 

 

目を開けると、今度は昔母親と二人暮らしで住んでいた家が目の前にあった。夢だとしても、まるで意味が分からないと狩迅は内心思っていたが、家のドアを開けずにはいられなかった。

 

 

(あの時と全く同じか、懐かしいな…)

 

 

あまりの懐かしさに、少し涙腺が崩壊しかけた狩迅。泣きたい思いをグッと堪え、中を見ていく。すると、どこかから二人の声が聞こえてきた。

 

 

(この二人は…)

 

 

リビングのような所ですすり泣く少年を、母親が抱いて慰めている。恐らく小さい頃の狩迅と他界した母親だろう。

 

 

『お…がァ…さんっ……』

 

 

『……………』

 

 

狩迅の母親は、何も言わずに黙って小さい頃の狩迅を抱きしめていた。

 

 

(……不覚にも、もう夢から覚めたくないって思ってしまったな……)

 

 

狩迅は拳をギュッと固めて、少し歯を食いしばった。その瞬間だった…

 

 

『………』

 

 

(ッ!?)

 

 

狩迅の母が、まぐれかもしれないがこっちを見て、微笑みを浮かべた。狩迅はその事に戸惑いながら、心臓がギュウッと締め付けられる感覚に襲われる。

 

 

(母…さん………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 病院 ーーーー

 

 

「あ………」

 

 

目が覚めると、白い壁が目に写った。壁というよりも天井だろう。

 

 

(病院か……腕が治ってる。リカバリーガールが治していてくれたのか)

 

 

(思うように体が動かないな。ん?)

 

 

妙に体が重いと思ったら、横にはベットに上半身だけ乗せて、うつ伏せで寝ていた耳郎だった。恐らくずっと看病していてくれたのだろう。

 

 

「怪我が無くて良かった…。ありがとよ、耳郎。」

 

 

寝ている耳郎に小さくつぶやく。

 

 

「時間的には夕方らへんか。ッ!そういえばあの後どうなったんだ。被害は…」

 

 

狩迅が慌てていると、むくりと耳郎が起き上がった。寝ぼけているのか、滑舌が悪い。

 

 

「ん…かひ…?……………狩迅!?」

 

 

「随分と、待たせたみたいだな。悪い」

 

 

安心したかのように泣きじゃくりながら狩迅に抱きつく耳郎。しばらくして落ち着いたあとに、林間合宿の後の事について色々と教えてもらった。まず一つとして、爆豪が敵連合に連れ去られたこと、ラグドールが行方不明になった事、などなど…

 

 

(思った以上に深刻な状況だな。チッ…)

 

 

「俺が寝ていた間に、色々と起きていたみたいだな。そういや、他の奴らは?」

 

 

「爆豪以外みんな大丈夫、緑谷とヤオモモは狩迅とは違う部屋で休んでるよ。あの二人の怪我、結構酷いからさ」

 

 

「そうか…」

 

 

冷静に見える狩迅だが、内心は酷く焦っていた。狩迅は直感していた、このままでは爆豪が危ないと。オールマイトが中心となって様々な名のあるヒーロー達で奪還しに行くことは想像がつくが、それでも嫌な予感というものはする物。

 

 

「少し、緑谷達と会話したい。」

 

 

「ちょっ…ちょっと!!まだ安静に…」

 

 

「大丈夫だ、体はなんとか動く。」

 

 

「なんとか、だったら駄目なんだって!!」

 

 

立ち上がろうとする狩迅を無理矢理ベットに戻す耳郎、疲れたような表情で狩迅に怒る。

 

 

「あんたはまだ安静にしてなきゃ駄目なんだっての!ジッとしてろ!!押し合いでウチに負けるぐらいなんだから!!」

 

 

「悪かった悪かった、もうしねぇよ」

 

 

頭をバシバシと叩かれながら説教をされた。

 

 

ーーーー 夜 ーーーー

 

 

「と言うことでね、君のその腕、綺麗に真っ二つになってたのが唯一の救いだね。轟って生徒が冷やして持ってこなかったら今頃君の左腕は無い物になってたよ。」

 

 

「えぇ、ありがとうございます。」

 

 

「あまり動かずに、絶対安静ね。毒も回ってたんだから、常人ならとっくに死んでいたよ?正直、もう手遅れだと思っていたんだけどね。驚いたよ君の再生力。」

 

 

「昔から体は丈夫なモンで」

 

 

「リカバリーガールにも感謝しときなよ。それじゃこれで」

 

 

「あぁそうそう、伝え忘れていたよ。君の友達から、助けてくれてありがとうって」

 

 

医者は狩迅に注意すると、扉を開け出ていった。一人残された狩迅は静寂の中で、一人ぼっちでいるのが少し心細く感じていた。

 

 

(助けてくれて……耳郎か………ん、手紙?)

 

 

しばらく気が付かなかったが、狩迅のベットの横にある机に小さな書き置きメモが置いてあった。

 

 

ーーーー 今夜、爆豪を助けに行く。一応みんなには伝えているけど、お前は眠ったままだったからな。腕失って、身体に毒が回って苦しいし、痛ぇかも知んねぇけど、それでも聞きたいんだ。お前はどうする、どうしたらいいと思う。         【切島】

 

 

「体は……動く。少し行ってみるか。」

 

 

狩迅は立ち上がり、体を捻らせたり腕を伸ばしたりして準備体操のような事をする。その後壁をつたっていきながらゆっくりと歩いていき、緑谷達の元へ進んで行く。

 

 

 

 

 

 

ーーーー 病院前 ーーーー

 

 

飯田が緑谷を殴り飛ばし、涙を浮かべながら必死に問いかけていた。何故自分と同じ過ちをしようとしているのか、その責任は誰が取るのか、そして思い浮かべる兄の姿と傷だらけになっても戦おうとする緑谷の姿が同じように見えてしまう…と

 

 

「俺は学級委員長だ!クラスメイトを心配するんだッ!!爆豪君だけじゃない、君の怪我を見て床に伏せる兄の姿を重ねた!君達が暴走した挙げ句、兄のように取り返しの付かない事態になったら……僕の心配はどうでもいいって言うのかッ!?」

 

 

緑谷の肩を掴み、そして小さく、無力にも等しいかすれた声で緑谷に問う。

 

 

「僕の気持ちは………どうでもいいっていうのか…………………」

 

 

「………飯田君」

 

 

「飯田、俺達だってなにも正面きってかちこむ気なんざねぇよ。戦闘無しで助ける」

 

 

「要は隠密活動、それが俺ら卵にできる、ルールにギリ触れねぇ戦い方だろ!」

 

 

「私は轟さんを信頼しています。が、万が一の事を考え、私がストッパーとなれるよう、同行するつもりで参りました。」

 

 

八百万の言葉に、飯田は度肝を抜かれる。切島はその言葉に、頼り甲斐を感じていた。

 

 

「僕だって…自分でも分からないんだ。手が届くと言って、居ても立っても居られなくなって、助けたいと思っちゃうんだッ!!」

 

 

緑谷のその覚悟の前に、飯田はもはや頷くことしかできなかった。だが、それでも心配は治まらない、当然だろう。飯田は行かせる代わりに自分も連れて行ってほしいと言う要求をだした。勿論緑谷達は驚くが、飯田の覚悟が十分に理解出来たのだろう、同行を許可した。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

「楽しみになって来たね、そう思わないかい?」

 

 

「十中八九、ヒーロー達が救出に来るでしょう、それも精鋭中の精鋭が。やはり、貴方はオールマイトが目的ですか?」

 

 

誰もいない薄暗い空間の中、二人はその時を待っていた。

 

 

「昔の様には動けなくなってしまったからね、勿論それはオールマイトも同じだろうさ。僕は確実性を持って、彼を殺したい。」

 

 

A「君は僕の為に、戦ってくれるかい?」

 

 

狂気じみたその笑顔を、牙剥を向ける。オールマイトが平和の象徴ならば、さしずめ恐怖の象徴と言ったところか…

 

 

「俺の心臓は既に、貴方が握っている。その言葉を裏切るつもりは、毛頭ない。」

 

 

「期待しているよ牙剥、君は僕の最高傑作だからね。」

 

 

不気味に笑うその巨悪、悪意はもう、目前だった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 病院前 ーーーー

 

 

「飯田も加わった事だし、さぁ始めようぜ!爆豪救出作戦!!」

 

 

切島の言葉に共鳴するかのように声を上げ、病院を後にしようとする。その時、後ろから声が聞こえてきた。

 

 

「随分と、揉めていたみたいだな。」

 

 

全員が後ろを素早く振り向く、そこにいたのは重症でまだ動けないはずの狩迅だった。

なにもないかのように平然と立つその姿に、5人は驚愕していた。

 

 

「狩迅君!?まだ寝ていたんじゃないの!?」

 

 

「いや、俺はどうやら回復が早いらしくてな、完治した。」 

 

 

「説得力が無ぇぞ。お前は一度腕を失っていたはずだ。それがたかが数日や数時間で…」

 

 

「だから言ったろ、俺は再生力が早いってな。それよりもだ切島。」

 

 

狩迅の目線が切島に移り変わる。狩迅と目があった切島は、まるでこれから戦場に赴く兵士の様にどこか震えていた。

 

 

「あぁ、言いたい事は分かってる。本気だ、爆豪を助けに行く。」

 

 

「飯田に言われたかも知れないが、それがどれ程無謀な事か理解しているのか?」

 

 

狩迅の言葉が最もだろう。切島は黙って狩迅の話を聞いていた。緑谷達には怪我のことは完治したと伝えたが勿論嘘である。例えどれだけ嘘を言っても体は正直な為、少し蹌踉めきながら壁に手を置き、緑谷達に話しかける。

 

 

「ハッキリ言って、お前達全員殺される可能性だってある。大袈裟じゃなく、本気でだ。彼奴等はまだ本領を発揮していない。俺が林間合宿で戦ったやつにオールマイトに匹敵するほどの戦闘力を持っていたやつもいる。」

 

 

「それにそいつだけじゃない。憶測だが、俺は裏にとんでも無い化物が隠れていると見た…。そうだろ、緑谷」

 

 

(オールフォーワン……)

 

 

「そんな事分かっております!!ですから、私がみなさんが暴走した時のストッパーの役割を…!」

 

 

「ストッパー程度で足りると思っているのか?仮に全員無事帰還できたとして、相澤先生から除籍処分を下されるのがオチだ。後先の事を考えろ」

 

 

狩迅の言葉に、5人は無意識に一歩後ろに足を引いていた。狩迅は疲れたかのようにその場に座り込み、目元を抑えた。そして弱々しい声で、最後の忠告を流す。

 

 

「俺達は、まずここにいること自体が奇跡に等しいんだ。だが2回連続でそんなデカい奇跡なんて起こりはしない。今度は本当に………死ぬかもしれないんだ。」

 

 

『………………』

 

 

あまり感情を表に出さない狩迅が必死になって自分らを呼び止めている姿に、緑谷達は心臓を握られている様な感覚に陥った。しばらくの沈黙が流れる、時間にしておよそ10秒程だろうか、その沈黙を緑谷が断ち切る。

 

 

「それでも助けたい、行かないと…。考える前に、体が動いちゃうんだ。」

 

 

緑谷の言葉に、狩迅は深くため息をついた。全員の目を見た後すぐに緑谷へ視線を戻す。

 

 

「………………だと思ったさ。いつもそうだ…」

 

 

立ち上がり、愚痴を溢すかのようにして緑谷に話しかける。

 

 

「個性把握テストから戦闘訓練、USJでの事件も体育祭も職場体験も…、逃げようともせず必死に足抗って、知恵を振り絞って…足掻いて…足掻いて足掻いて足掻きまくって……子供らしくねぇな、本当に。だが実にヒーローらしい。」

 

 

「ついていかせてくれ、足手まといにはならない。」

 

 

『ッ!!』

 

 

「本当か!!?」

 

 

「だがまて、狩迅お前、相当無理してんじゃねぇのか?以前よりも若干痩せている気がするんだが…」

 

 

「関係無ぇよ、それに言ったろ。ストッパーじゃ足りねぇってよ、万が一の時は俺が盾にでもなんにでもなってやる。それが俺の覚悟だ、不満か?」

 

 

 

「不満なんか無いよ、寧ろ…」

 

 

顔を上げ、今の今まで暗い表情だった緑谷の瞳に光が宿る。拳を握りしめ、無理矢理に笑顔を作り出す。

 

 

「とっても、心強い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

 

「今戻ったぞ。」

 

 

「うへぁ!?ビビったぁ!?」

 

 

何もない空間から、突如として現れた牙剥。使い勝手の良い個性は全て手の内に入れる性な為に強力、または便利な個性は数え切れないほど持ち合わせている。ちなみに今使ったのは瞬間移動である。

 

 

「貴方一体個性何個持ってるの?」

 

 

「知らないな、数えていない。いつも死ぬ寸前まで追い詰めてから貰ってるからな。道端にいたアリを何体踏み潰したかなんて覚えてないだろう?だが使い方は分かるんだ、人が手足を自由に動かせるみたいにね。便利なものだろう?」

 

 

「なんでもありだな…」

 

 

「完全記憶と完全理解の個性を取っておいて正解だったよ。それよりも、この少年」

 

 

牙剥が向いたその先にいたのは、以前林間合宿で襲撃した際に誘拐した爆豪である。

手足には錠がかけられており、現在死柄木は爆豪の性格に興味が湧き、連合の仲間に引き入れようとしていた。

 

 

(個性が?普通個性は一人一つのハズだ、クソが…ますます厄介になって来やがった…)

 

 

「まぁいい、荼毘拘束外せ」

 

 

「は?暴れるぞ、こいつ」

 

 

「いいんだよ、対等に扱わなきゃな。スカウトだろ?それに、この状況で暴れて勝てるかどうか、分からない男じゃないだろ?雄英生」 

 

 

しばらくの沈黙が続いた。その空間は謎の緊迫感に包まれており、誰も喋らずにいた。

そしてそれがほんの数秒経った時、荼毘が口を開く。

 

 

「トゥワイス、外せ」

 

 

「俺ぇ!?やだしィ!!」

 

 

「さっさとやれ」

 

 

「えぇもうやだぁ〜」

 

 

渋々と荼毘の要求を承諾し、爆豪の拘束を外す。その間、その場にいたMr.コンプレスや死柄木はこの組織の意味を伝えた。この敵連合は人やルール、そしてヒーローによって苦しめられた、いわば身勝手な社会から追放された者達の集まりだった。ただ闇雲に力を振りまく連中では無い、その事を理解してほしかったのだが…

 

 

「エェアアアアアアア!!」

 

 

拘束が外れた瞬間、トゥワイスを吹き飛ばし死柄木を攻撃する。

 

 

「黙って聞いてりゃダラッダラよぉ、馬鹿は要約できねぇから話が長ぇ…要は嫌がらせしたいから仲間になってくださいだろぉ…無駄だよッ」

 

 

「俺はオールマイトに勝つ姿に憧れたッ!誰が何言って来ようが……そこはもう曲がらねぇ!!」

 

 

爆豪は不敵な笑みを浮かべながらその場にいた全員に向かって威嚇する。死柄木は顔につけていた手が剥がれ落ち、何かを思い浮かべていた。

 

 

「お父さん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三十ニ話:狼煙

しばらくぶりでした、今回から戦闘に入ります。ツカレタ


ーーーー 時は遡り… ーーーー

 

 

爆豪が敵連合に連れ去られてから丸一日が経過した。その間、オールマイトを中心とするヒーロー部隊が結成されていた。中にはエンデヴァーやエッジショット、ギャングオルカやベストジーニストなどの名だたるヒーロー達が集っている。

 

 

警察も県単位で動き始め、本格的に作戦が開始されようとしていた頃、緑谷、轟、飯田、八百万、切島、そして狩迅の6人も爆豪救出の為、現在新幹線に乗って神奈川県 横浜市の神野区に向かっていた。

 

 

どうやら八百万は敵連合と交戦中、配下の脳無に襲われていたらしいが、しばらくしたら時間切れのように歩いて去っていったらしく、八百万はここぞとばかりにGPSを脳無の背中につけ、現在地が分かるようにしていたらしい。

 

 

 

 

 

ーーーー 神野区 ーーーー

 

 

敵連合がいると思わしき神野に2時間程かけようやく到着した。神奈川県は東京の隣にあるからか、大きな建造物がいくつもそびえ立っており、人口も多い。早速行動に移した緑谷達だが………

 

 

ーーー 現在 ーーー

 

 

「オラァァ!?コラァァ!?」

 

 

カーテンのような物をどかして真っ先に見えたのは、ヤクザ者の格好をした緑谷だった。

八百万の提案により、敵連合には素顔がバレているため変装する必要があるとの事、その為ドン・○ホーテではなく……激安の王道!鈍器_大手!!に訪れていた。だが実際のところ何か妙に入りたそうにウズウズしており、彼女の事を理解していた轟と狩迅は少し不安になりつつも渋々と入っていった。

 

 

「なるほど、変装か」

 

 

轟は特徴的な髪色を隠すため、カツラを被っている。服装は……なんというか、育ちのいい不完全ジェントルマンみたいな………?

 

 

「そういう事ですわ!」

 

 

八百万はどっかの上級キャバ嬢みたいなピンクのドレスのような格好をしていた。それはそれで色々とアウトではある。あとなんか髪をセットする為のスプレーみたいなのも買っていた。

 

 

「この格好は何だ?」

 

 

首元にリボンをつけ、髪型はツーブロック、まるでどこかの執事のような服装をしていた。

違和感抜群である。

 

 

「あとで教えっから!」

 

 

頭に変なのがついてる。

 

 

と、このように順調に(?)変装が進んで行くがここで一つ問題が発生した。狩迅は服装などにはそこまで興味が無い為、八百万と切島に選んでもらっていたのだが……

 

 

「なんで俺だけこれなんだ」←狩迅と思わしき人

 

 

狩迅の変装はロングスカート(中にはちゃんとジーンズ)にハイヒール、縦セーターそしてロングヘアーのカツラをつけていた。つまりは女装である。切島によると、五人の男の中で一人だけしか女性がいないと逆に民間人から怪しまれる可能性があるとの事。そして狩迅はこれでも轟に負けず劣らずの美形でもあるため、奇跡的にかなりの美女が完成していた。

 

 

「いや…まさかとは思ったが、結構イケたな」

 

 

「よくお似合いですわ!」

 

 

「いや嬉しくはねぇよ?」

 

 

(切島君、絶対それアウトだよぉ!?)

 

 

緑谷の心の悲痛の叫びも空しく散っていき、狩迅はそのまま移動することになった。

後に轟が創造で作ればよかったのではとツッコミが入るが、八百万の日本国民として経済を回さなければならないという見え見えの嘘をつく。結局入りたかっただけらしい。

 

 

(鈍器入りたかったんだな、このピュアセレブ)

 

 

「みなさん、目的地はこちらの方角で…」

 

 

変装も完了し、早速爆豪の元へ向かおうとした瞬間、背後から雄英の名前を言う青年の声が聞こえた。まさかこんなにも慎重に(?)選んだ変装がすぐにバレたのか、そう焦りながらも振り向くと…

 

 

そこには雄英高校の謝罪会見が巨大スクリーンによって放送されていた。画面には相澤、ブラド、根津の三人が並んでおり、深々と頭を下げていた。

 

 

『この度、我々の不備からヒーロー科一年生28名に被害が及んでしまった事、ヒーロー育成場でありながら敵意への防御を怠り、社会に不安を与えた事、謹んでお詫び申し上げます。誠に申し訳ありませんでした。』

 

 

三人は深々と頭を下げ、その後も会見を進めていった。メディア嫌いである相澤がテレビに直接出ていた事に驚いていた6人も、その会見に注目していた。そこで読売テレビの記者が、相澤に質問を投げかける。

 

 

『雄英高校は今年に入って4回、生徒がヴィランと接触していますが今回生徒に被害が出るまで、各ご家庭にどのような説明をされていたのか、また具体的にどのような対策をしてきたのかお聞かせください。』

 

 

(体育祭開催の件から、雄英の基本姿勢は把握しているはずなのに…言わせるのか!?)

 

 

「悪者扱い……かよ」

 

 

悔しそうに拳を固めながら、緑谷はそうつぶやく。そして記者の質問には根津が答えた。

様々な防犯システムを作動させ、強い姿勢で生徒の安全を保証すると答えた。

周りからの反応は批判ばかり、鼻で笑い飛ばす者もいれば、呆れていた者もいた。

結果が全て、緑谷達はこの現実を深く叩き込まれていた。空気がよどみ、悪い方向へと走り出していく。

 

 

 

 

 

 

ーーーー そして現在 敵連合 ーーーー

 

 

別の記者から質問攻めにされた相澤だが、感情を押し殺し爆豪の事について話した。体育祭での一連の行動は理想の強さを追い求めるが故の行動であり、誰よりも強くなりたいと願い、トップヒーローを目指している。そんな彼を隙と捉えた敵連合は浅はかだと言い切る。

 

 

「はっ!言ってくれるじゃねぇか、雄英も先生もッ!!そう言うこった、クソカス連合!」

 

 

(あんだけ大掛かりな襲撃かち込んで、成果は俺一人…現地も取れてる!こいつらにとって俺ァ、利用価値のある重要人物…俺の心に取り入ろうとする以上、本気で殺しに来るこたぁねぇ。こいつらの方針が変わんねぇウチに、2〜3人ぶっ殺して脱出したる!!)

 

 

「言っとくが俺ァまだ、戦闘許可取れてねぇぞ!!」

 

 

持ち前の頭脳をフル回転させ、不利だった状況を有利に進めていく爆豪。自分の立場を利用し、今にも戦闘を始めようとしていた。

 

 

「自分の立場をよく分かってるわね…小賢しい子ッ!」

 

 

「いや、馬鹿だろ」

 

 

「刺しましょう〜!」

 

 

「その気がねぇなら、懐柔されたフリでもしときゃいいものを…やっちまったな?」

 

 

次々と前に出る敵連合のメンバー、数に勝るものはないと言うが、爆豪はそれ以上に死柄木の隣にいた謎の男を特に警戒していた。

 

 

「少々管理が甘かったんじゃないか?」

 

 

眉間にシワを寄せ、爆豪に向けて手をかざす。

 

 

(そして一番警戒すべきヤツはこいつだ。他の奴とは何かが違ぇ…この異様なプレッシャーと圧迫感、思い出したくはねぇが体育祭での忍者野郎にそっくりだ…)

 

 

「したくねぇもんは嘘でもしねぇんだ俺ァ、こんな辛気臭ぇ所、長居する気もねぇ!」

 

 

「………死柄木、手が落ちてるぞ。」

 

 

「あぁ…」

 

 

死柄木がゆっくりと落ちた顔についていた手を拾い上げ、もう一度顔につけ直した。

 

 

「少しは聞く耳を持っていると思っていたんだが、残念だ。非常に残念だ。もう一度、拘束するとしようか。筋力増強×8」

 

 

その瞬間、牙剥の右腕が僅かに巨大化し、握り拳を作った。

 

 

「てめぇ複数個性持ちだろ?たった一つの個性で俺とやり合う気かァ?随分と舐められたもんだなァ!!」

 

 

「生憎と、私は何も考えずただ闇雲に突撃するような獣ではないのでね。」

 

 

「牙剥、殺すなよ。丁重に扱え、対等に話さなきゃならないからな。」

 

 

「分かっているさ」

 

 

牙剥が爆豪の元へじわじわと歩いて接近する。隙だらけな格好、だが爆豪は中々手出しができずにいた。隙がありそうに見えて、全くと言っていいほど無かった。流石の爆豪でも冷や汗はかかずにいられなかった。

 

 

ーーー ピンポ~ン

 

 

すると突然、後ろのドアからインターホンが鳴り響いた。

 

 

「あ?」

 

 

「どうも〜ピザーラ神野店です〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 数分前 ーーーー

 

 

記者会見での後味の悪さを残して、緑谷達は更に進んでいき、ついに目的地の建物まで到達していた。人通りが多い為、目立つ動きができない。緑谷の案で裏から回ることに、細い建物と建物の間をくぐり抜けていく。そして…

 

 

「あの高さなら、中の様子を見れそうだよ!」

 

 

「この暗さで見られるか?」

 

 

辺りはすっかりと暗くなっており、あまり視界が良くない。八百万が暗視機を創造しようとするが、事前に切島が買っていた為、それを使用することになる。まずは切島と緑谷が中の様子を見ることになった。飯田と轟が二人の足場になって、切島が暗視機を使い中を見る。

すると切島の様子がおかしくなり始めた。挙動不審になり、顔が真っ青になっている。

続いて緑谷が中を見るとそこには……

 

 

「嘘……あれ全部……………脳無ッ!?」

 

 

ーーーー 敵連合 ーーーー

 

 

「あ?」

 

 

「どうも〜ピザーラ神野店です〜」

 

 

突然の事に、その場にいた全員の脳が一瞬フリーズした。牙剥は声がしたドアにそっと手を当て、何かをつぶやく。

 

 

「気配把握、26…69…107…163…あーこりゃ軽く500はいるな」

 

 

『え?』

 

 

牙剥の言葉にキョトンとする連合の諸君、その意味はすぐに分かるものとなった。次の瞬間、スピナーがもたれかかっていた壁からいきなりオールマイトが飛び出してきたのだ!

 

 

「スマァァァァッシュ!!」

 

 

「なんだ!?」

 

 

「黒霧!!」

 

 

黒霧の個性で脱出を図ろうとするも、若手実力派であるシンリンカムイの束縛術によって簡単に捕えられてしまった。

 

 

「チッ」

 

 

荼毘が炎で燃やそうとするも、グラントリノの高速足蹴りで気絶させられてしまう。

 

 

「もう逃げられんぞ、敵連合!!なぜって?我々が来たァァッ!!!」

 

 

時間にしてほんの10秒程度、流石プロヒーローといったところだろう。この短時間で全員戦闘不能にさせられてしまった。外にはエンデヴァーが待ち構えており、完全に包囲されていた。

 

 

「せっかく色々こねくり回したのに…何そっちから来てくれてんだよ、ラスボス!」

 

 

(全員抑えられていて、簡単には逃げられない。チッ)

 

 

「仕方が無い。黒霧!持ってこれるだけ持ってこい!!!」

 

 

「脳無だな!」

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「お…おい!?」

 

 

切島が叫ぶとその方向には、トラックを持ち上げている巨大な足があった。そして、それを振り下げることにより、二人が見ていた脳無の生産場が粉々に破壊される。

 

 

「あの馬鹿デカい足は、Mt.レディか…」

 

 

ーーーー

 

 

「ッ!?おい黒霧!!」

 

 

「すみません、死柄木弔……所定の位置にいるはずの脳無が、無い!?」

 

 

「は!?」

 

 

脳無はMt.レディ、ベストジーニスト、ギャングオルカと警察達によって完全に無力化されていた。彼らは侮っていたのだ。ヒーロー達と警察達の努力と怒りを…

 

 

「お痛が過ぎたな、ここで終わりだ。死柄木弔!!」

 

 

「油断し過ぎたね。どうするんだい?死柄木弔、諦めるかい?」

 

 

「冗談は休み休み言えよ牙剥、諦める?終わり?ふざけるな……始まったばかりだ。正義だの悪だの、あやふやなモンで蓋されたこの掃き溜めをぶっ壊す…その為にオールマイトを取り除く、仲間も集まり始めた。ここからなんだよ…黒霧!!」

 

 

死柄木がそう呼ぶと同時にエッジショットによって強制的に眠らされてしまう。ヒーロー達は、ヴィランには何もさせないつもりだろう。徹底的に叩きのめしている。警察官の手によってヴィラン達の本名までバレてしまった。もはやどこにも逃げ場が無い、万事休すの状況になっている。

 

 

「分かるかね?もう逃げ場はねぇってことよ!なぁ死柄木、聞きてぇんだが、お前さんのボスはどこにいる?」

 

 

(こんな……こんなところでッ!呆気なく…ふざけるな……ッ!!)

 

 

「ふざけるな……ふざけるなッ!!失せろ…消えろッ…」

 

 

「死柄木!!」

 

 

「お前がッ………キライダァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

死柄木の最後の雄叫び、悪足掻きと言うのだろうか、それが奇跡を起こしたのか否か、突然後ろから謎の黒い液体から脳無が湧き出てきた。爆豪もその黒い液体によってどこかへワープさせられてしまう。外ではすでにエンデヴァー達が交戦しており、一気に状況が覆り始めた。

 

 

その後も牙剥以外の者達もその黒い液体によってどこかへワープさせられてしまう。その場に残っていたのは、シンリンカムイに捕らえられている牙剥ただ一人だった。

 

 

「オールマイト!!牙剥以外全員逃げられてッ!!」

 

 

「君はそのままそいつを拘束していてくれ!!エンデヴァー!私は持ち場を離れる!ここは任せたぞ!!」

 

 

「行くならとっとと行くがいい!!」

 

 

オールマイトはすぐさま飛んでいき、爆豪と敵連合の元へ急ぐ。

 

 

「…………」

 

 

(何だ?この男…妙に違和感が…)

 

 

シンリンカムイが不審に思った瞬間、拘束していたはずの腕が何故か元に戻り、個性が発動できなくなってしまう。

 

 

「なに!?」

 

 

「個性強制解除、君の個性は好きじゃない。眠っていなさい、シンリンカムイ」

 

 

牙剥は一瞬にしてシンリンカムイとの距離をゼロにし、頭を鷲掴みにし、一度地面に叩きつけてエッジショットの元へ投げ飛ばす。

 

 

「ガウハァッ!!?」

 

 

「エッジショット!シンリンカムイ!貴様、そういえば詳細が不明だったな。本名、指紋、血液型、個性、何もかもが分からずじまい。貴様、一体何者だ!!」

 

 

エンデヴァーが手をかざしながら、空中に浮いている牙剥に質問を投げかける。

 

 

「無知というのはこの世で最も恐ろしいものだよ、だから私は私を晒さない。それよりもだ、エンデヴァー。君達は本当に詰めが甘い、もう少し精鋭を足すべきだったな。既に警察官の何人かが脳無によって無駄死にしているぞ?」

 

 

「黙れ!!ここで終わりにしてやる!赫灼熱拳!!」

 

 

炎を纏った拳で牙剥に殴りかかる。しかし牙剥は避ける動作もせず、真正面から受け止めようとしていた。

 

 

「衝撃吸収+放出、威力×3」

 

 

エンデヴァーの拳は確かに牙剥の胸に直撃したが、何もなかったかのように佇んでいた。そして次の瞬間、エンデヴァーの炎がかなりの大きさになって返ってきた。

 

 

「馬鹿な!?」

 

 

「この組み合わせは楽しいなぁ、愉快だ、実に愉快だ。そう思わないかい?エンデヴァー」

 

 

「チッ!プロミネンス……」

 

 

迫ってくる炎を掻き消そうとするエンデヴァー、だがその手段は悪手である。

 

 

「ベクトル反転」

 

 

牙剥がそう唱えた瞬間、エンデヴァーの意思とは関係無くその攻撃は放出した瞬間自分に向けられてしまった。更にそこへ追い打ちで、先程の赫灼熱拳の分も直撃し、一気に押され始める。後ろから、倒れていたシンリンカムイとエッジショットも不意打ちを仕掛けてくるが、牙剥の重力操作により、無理矢理地面に叩き落される。

 

 

「残念だったな、あともう少し、あとここにトップヒーローであるベストジーニストやミルコ、ホークスやリューキュウなどがいれば話が変わっていたのかも知れなかったのになぁ?」

 

 

首の骨をポキポキと鳴らしながら、不敵な笑みでエンデヴァー達を見つめる。

 

 

「エンデヴァー!このままでは…」

 

 

「分かっている、そんな事…!だが……体が…!?」

 

 

「限界の様だな。蜘蛛の束縛」

 

 

牙剥の五指から糸のようなものが飛び出し、そのままエンデヴァー達を巻きつけるかのようにして拘束した。その場にいた警察は、牙剥によって殆どが無残にも殺されていた。そこら辺には既に死体の山が転がっており、体が真っ二つになっている者や原型を留めていない者、その死因は様々だった。

 

 

「貴様ァ!!」

 

 

「少しここで大人しくして貰おうか、ナンバー2。そこの戦力外と一緒にな。」

 

 

牙剥はそれだけを言うと、すぐさま"彼"の元へ向かっていった。

 

 

「脳無も巻き添えで死なせてしまったか。まぁいい、所詮は成熟していない下級ばかり、俺だけで十分だ。」

 

 

ポケットからタバコの箱を取り出し、個性を使いタバコに火をつける。その時、牙剥は例えようもないような、狂気に満ちた笑顔をしていた。

 

 

 

 

 

 




牙剥強くしすぎたかも


あと少し余談なんですが、牙剥君の個性の一つである轟竜はお気に入りなので、相手が強くないと使いたくないんです


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第三十三話:暗闇の中で輝く灯火

最近忙しくてたまらない……申し訳ないですが本来2〜3話かけて書こうと思ったのをギュッと凝縮させてもらいました。読みづらかったら申し訳ねぇ……戦闘中心会です。どぞ


ーーーー 緑谷side ーーーー

 

 

死柄木達を見事に捕らえ、脳無の生産場も完全に制圧したヒーロー達だったが、土壇場に来て謎の黒い液体に牙剥を除く敵連合全員と爆豪がどこかへ連れ去られてしまった。

オールマイトは何かを察し、すぐにどこかへ向かっていく。

 

 

持ち場はエンデヴァーに託されたが、捕獲されていた牙剥がいきなり動き出しものの数秒でシンリンカムイやエッジショットを戦闘不能に、その他にも数百にも及ぶ警察官を鏖殺する。エンデヴァーも他のヒーローと同じく戦闘不能にさせられていた。グラントリノはオールマイトとともに行動しており、現状は理解しきれていない。

 

 

これが現在までの流れ、だが驚異となるのは牙剥だけでは無い。彼はあくまでもナンバー2、そう、ナンバー2なのだ。今その"恐怖の象徴"が動き出す。

 

 

「なるほど、相当の練習量と実務経験故の強さだ。君のはいらないなぁ、弔とは性の合わない個性だ。」

 

 

制圧が完了していたこの場に、一人の男性が現れた。それは異様な存在感を放っており、ベストジーニストがすぐに捕獲するも、一瞬にして消し飛ばされる。見ていた者は何が起きたのかすら理解出来ていなかった。

 

 

(何だあいつ…何が起きたッ!?)

 

 

(一瞬で全部……かき消されたッ…)

 

 

(逃げなくては………分かっているのにッ…!)

 

 

恐怖というのは残酷なものである、人は真に怯えたとき、何をするだろうか。必死で逃げる?助けを求めて叫ぶ?命乞いをする?どれも違う。何もできないのだ。

動くことも、叫ぶ事も、あまつさえ目を閉じる事も…彼らの脳裏にはあまりの恐怖に、自分の無残に殺される姿が明確に映っていた。まさに圧倒的な存在感だった。

 

 

「プヘァ!!くっせぇ…!?んじゃこりゃ…!?」

 

 

(あれは…爆豪!?一体どこから…)

 

 

狩迅の赫眼には一切反応しなかった爆豪が、いきなり現れた。それに続き敵連合の連中も続々とその謎の黒い液体から姿を現していた。恐らくワープの類か何かだろう。

 

 

「悪いね爆豪君」

 

 

「あぁ!?」

 

 

「ぐへぁ…」

 

 

「これ嫌な匂いです…」

 

 

「なんかくっせぇ!いい匂いだな〜」

 

 

(あれが敵連合の連中か、だがおかしい。牙剥はどうした、捕まったのか?だが並のヒーローじゃ手も足も出ないはず…状況が掴めん。迂闊に手を出したらこっちが殺られる。どうする…)

 

 

狩迅がこの状況の打開策を考えている最中の出来事だった。緑谷が振り返り、進もうとする所を必死な表情な飯田に止められる。ストッパーの役割を持つ飯田と八百万も必死で頭を動かす。その瞬間…

 

 

「全てを返してもらうぞ…オールフォーワンッ!!」

 

 

「また僕を殺すかぁ?オールマイト!!」

 

 

空からいきなり現れたオールマイトがオールフォーワンに向かって殴りかかる。対するオールフォーワンはその拳を軽々と受け止め、跳ね返した。

 

 

「随分遅かったじゃないか、バーからここまで5キロ余り、衰えたねオールマイト」

 

 

「貴様こそなんだ、その工業地帯のようなマスクは!だいぶ無理してるんじゃあないか?6年前とは同じ過ちはしない。オールフォーワン!!爆豪少年を助ける、そして今度こそ貴様を刑務所にぶち込む!貴様の操る敵連合諸共ォォォ!!!」

 

 

「それはやる事が多くて大変だな、お互いに!」

 

 

オールマイトが左腕で攻撃しようとするが、オールフォーワンから衝撃波が流れオールマイトを遠くまで吹き飛ばす。ビルを薙ぎ倒しながらドンドンとその場が崩れ去っていく…

 

 

「空気を押し出す+筋骨バネ化、瞬発力×4 膂力増強×3……この組み合わせは楽しいなぁ、増強系はもう少し足すか」

 

 

「オールマイト!!」

 

 

「心配しなくてもこの程度では死なないよ。だからこの場は逃げろ弔、その子を連れて…

黒霧、皆を逃がすんだ。」

 

 

オールフォーワンの指から何か黒い物が飛び出し、黒霧の胸を貫く。マグネが心配するが、問題なしに個性を発動する。

 

 

「個性強制発動、さぁ行け!常に考えろ弔、君はまだまだ成長できるんだ!」

 

 

オールフォーワンは空中へ浮かびあがると、再びオールマイトと真正面からの戦闘を行い出した。

 

 

(オ…オールマイト!オールフォーワンが邪魔して、かっちゃんを助けられないんだ!その隙に敵連合はかっちゃん諸共逃走しようとしてる!かっちゃんは囲まれてて、逃げられる状況じゃない!!?)

 

 

(僕らは…戦うことが許されないッ)

 

 

(俺が全てを投げ売って、一か八かの突進をすれば一瞬だけでも時間が作れるか?だが…)

 

 

狩迅は自分の右腕を抑え、苦悩した表情を浮かべる。

 

 

(俺の体は本調子とは程遠い、しかも全員の個性を把握しきれていない。仮に俺が行ったとしても、爆豪の二の舞いになるかもしれん。戦わずして、この場を退けるには…)

 

 

「みんなっ!」

 

 

突然、緑谷が5人に声をかける。飯田は突撃するかと焦り、すぐに止めるがそうじゃないらしい。この場を戦わずに爆豪を救出できて、尚且誰もオールマイトの邪魔をせずにできる方法が緑谷の頭の中に浮かび上がる。

 

 

その作戦を完結にまとめ、全員に話し始める。緑谷のフルカウルと飯田のレシプロで加速し、切島が壁を破壊する。その瞬間に轟が最大量の氷結を発生させ、ヴィラン達の注意を引く。その時はまだ恐らく気づかれていない。

 

 

『!?』

 

 

「あれは…」

 

 

そして空中に飛んだところを切島が爆豪を呼び求める。簡単に話すとこうだ。八百万と狩迅はそのまま待機して、あとは爆豪の意思で全てが決まる。

 

 

オールフォーワンが手をかざし、緑谷達に攻撃しようとするが、邪魔するのはオールマイトも同様、誰にも邪魔はできない。そして今まで爆豪と対等な関係をしてきた切島だからこそできること…

 

 

「来いッ!!!」

 

 

(ッ!?逃がすか!!)

 

 

「エェアアアアアア!!」

 

 

死柄木が爆豪を再び捕まえようとした瞬間、爆豪の手から爆発が起きる。その高い推進力で瞬く間に飛んでいき、見事切島の手を掴んだ。

 

 

「へ…馬鹿かよ…」

 

 

「なにィィィ!?」

 

 

「爆豪君!俺の合図に合わせて爆風で!」

 

 

「テメェが俺に合わせろや!!」

 

 

「張り合うなこんな時にィ!?」

 

 

ーーーー 待機組 ーーーー

 

 

「思った通り、あっちに釘付けか、逃げるぞ!」

 

 

「はい!」

 

 

待機していた轟と八百万が持ち場を離れようとするが、狩迅が動く気配が無かった。どこかを見つめている。

 

 

「おい狩迅、どうした?逃げるぞ!」

 

 

「お前ら、先逃げといてくれ。俺の出番が来るかもしれない。」

 

 

『え?』

 

 

「八百万、悪いがこれを持っていってくれ。」

 

 

狩迅は着ていたロングスカート、ハイヒール、長髪のカツラを脱ぎ八百万に手渡しした。

 

 

「何かが…起こる気がする。」

 

 

ーーーー

 

 

「どこにでも、現れやがる!!」

 

 

「まじかよ、全く!」

 

 

「逃がすな!遠距離あるやつは!!」

 

 

「荼毘に黒霧、両方ダウン!」

 

 

「あんたらくっついて!」

 

 

マグネ:個性、磁力。自身から半径4〜5mの人物に磁力を付加、全身、一部、力の調整可能。男がS極、女がN極となる!自身には付加出来ないぞ!

 

 

「いくわよ!」

 

 

スピナーをバネにして、コンプレスが空中へ一気に飛ぶ、その速度は凄まじくドンドンと爆豪達へと近づくが、瀕死のMT.レディの巨大化によって顔面でコンプレスを受け止める。

 

 

「救出…優先…………行って、バカガキ!」

 

 

「まだ間に合う、もう一発行くわ!」

 

 

マグネが再び個性を発動しようとしたその時、ようやく到着したグラントリノの高速蹴りによってトゥワイス、マグネ、スピナーが気絶させられる。

 

 

「遅いですよ!」

 

 

「お前が速すぎるんだよ!なぁあいつ緑谷、本当ますますお前に似てきとる!悪い方向に!!」

 

 

「えぇ、本当に………ッ!」

 

 

爆豪の救出に成功し、これでオールマイトも何も気にせず存分に戦うことができる。連合の殆ども気絶させ、うまくこの場を有利にさせることができた。しかし、ホッとしたのも束の間、突然地面が揺れ始めた。

 

 

「何だ!?」

 

 

「あれは…緑谷少年!避けろォォォォォ!!」

 

 

ーーーー

 

 

「オールマイト?」

 

 

「何だいきなr……ってなんだありゃ!?」

 

 

前を見るとそこには途轍もないスピードで自分らに向かってオレンジ色の閃光のようなものがやって来ていた。その正体は…

 

 

「よく生きていたものだ、あの地獄から。雄英生!!」

 

 

その何かは切島に向かって、殴りかかろうとしていた。そして拳と切島の顔の距離が30cmもなくなった瞬間、後ろからも白い光のようなものが現れ、その拳を受け止めていた。

 

 

「あの光は、月迅竜!狩迅君か!!」

 

 

「さっさと行け!!こいつは、俺がここで仕留める!」

 

 

「また死合うとしようか、狩迅龍騎…大轟竜!!」

 

 

大轟竜、とその名を呼ぶと、牙剥の髪と目の色が赤黒く染まっていき、威圧感が更に高くなっていく。

 

 

「ンッ!?」

 

 

牙剥は掴まれていた腕を解き、狩迅の腹部目掛けて轟竜化させて足でオールマイトの元へ吹き飛ばす。

 

 

「遅くなりました、オールフォーワン。少しエンデヴァーとやらに手こずりましてね。」

 

 

「な…待て!おい牙剥!」

 

 

牙剥がマグネに腕を差し込むと、死柄木達の体から妙なオーラが出始めた。トガ以外は全員青、トガだけピンク色に光り、その次の瞬間死柄木達は一気にトガの方へ向かっていきワープホールへ入っていった。そして最後にマグネを投げ飛ばし、そのワープホールは閉じた。

 

 

(いいかい弔、君はまだ戦い続けなければならない。君はまだまだ成長できるんだ)

 

 

「待っていたよ、牙剥。弔に似合った個性はあったかい?」

 

 

「有益な情報は伝えられないかと」

 

 

「そうか、それは残念だ。」

 

 

「待て貴様!エンデヴァー達はどうした!貴様はシンリンカムイによって捕らえられていたはずだ!!」

 

 

「あまりデカい声を出さないで貰いたいね、オールマイト。心配しなくてもちゃんと生かしているよ。ナンバー2の肩書を持っているにしては呆気なかったがね。」

 

 

「………警察の方々はどうした」

 

 

「弱者の事はあまり興味がない、それに私は過去には囚われない性格でね。もしかしたら、殺したかも知れないな…」

 

 

それを察したオールマイトは歯を食いしばり、血が出るほど拳を固く握りしめた。

 

 

「貴様ァァァァァ!!」

 

 

「荒鉤爪、竜の轟拳!!」

 

 

オールマイトが牙剥へ殴りかかろうとする。しかしその腕は簡単に受け止められ、跳ね返された。その反動か、血反吐を吐き、フラフラな状態になっている。

 

 

「流石に効いたな、腕が痺れたよ。」

 

 

「だがしかしだオールマイト。君、少しずつだが………パワーが落ちていっているだろう?」

 

 

(そうか!俊典…活動限界がもうッ!)

 

 

「今から6年前の戦いで負った腹部の傷、相当引きずっているらしいねぇ?体が悲鳴を上げているのが目に見えて分かるよ。君も無様に死ぬのかい?あの志村奈々のように…」

 

 

「お師匠の名を、軽々しく呼ぶなァァァ!!」

 

 

「牙剥」

 

 

「了解」

 

 

再びオールマイトが仕掛けるも、衝撃波によって逆に吹き飛ばされてしまう。今のオールマイトに態勢を立て直すような力は残っておらず、後ろにあるヘリに激突しようとしていた。もう駄目かと思った時…倒れていた狩迅が立ち上がり、オールマイトを連れ戻す。

 

 

「狩迅少年!!」

 

 

「今この場で感情的になったら、それは即ち死を意味する。冷静になってくれ…戦えるのは、俺たちしかいないんです。」

 

 

「あぁ、すまない、助かったよ。」

 

 

「バカ野郎、下手に動くんじゃない!ここからが正念場だぞ!!」

 

 

「オールフォーワン、彼は私が、オールマイトは貴方に任せましょう。」

 

 

「いいよ、そうするとしよう。」

 

 

横に並び立つ悪魔、対するは満身創痍の深手二人と少しダメージを受けているグラントリノ、どう考えても不利だった。それでも狩迅は体中に力を込め、再び月迅竜へと変身する。

 

 

「あんたが元凶を倒すまでは、絶対に手出しはさせない…平和の象徴としての役目を、ここで終えてくれ。」

 

 

「おい待て!!」

 

 

「それじゃあ、よろしく頼むよ。牙剥」

 

 

狩迅が牙剥へと突撃していき、牙剥もそれに対応する。高速の連打を超至近距離で互いに浴びせ合い、拳の衝撃が爆発のような音を起こす。

 

 

「ゼァアァァァァ!!!」

 

 

「どうした?以前戦ったときはもっと手応えを感じたが!?」

 

 

狩迅が蹴りを入れた瞬間、牙剥のカウンターの右裏拳が見事に決まる。狩迅は吹き飛ばされながらも態勢を立て直し、今度は腕を迅竜化させ殴り合う。

 

 

「遅い!やはりまだ完全には体力が戻っていないようだな。君のその攻撃、まるで痛くない。そんな状態で私と張り合う気かい?」

 

 

(チィ!)

 

 

「クソッタレめ!」

 

 

血反吐を吐きながら、牙剥へ向かってゆく狩迅。オールマイトはその姿を見て途方も無い焦りを感じていた。そのままでは、狩迅が殺される…と

 

 

『敵連合の一人と雄英生徒と思わしき人物が激しい攻防戦を繰り広げています!辺りには爆発のような音が響き渡り、こっちまで攻撃の衝撃波が流れてきます!もはや人間の目で追えるスピードではありません!!』

 

 

『現在、オールマイト氏も元凶と思われるヴィランと交戦中、辺り一帯が完全に崩壊しており、一瞬にして地獄のような光景が広がっております……信じられません!街を破壊し、平和の象徴と互角以上に渡り合っています!!』

 

 

「ガァァァァァァァ!!」

 

 

「筋力増強×3 膂力増強×4 瞬発力、反射神経×8!!どうしたぁ?顔色が悪いぞ?

随分と無理をしているようだね…!」

 

 

先程よりも強烈な殴り、蹴りが狩迅を襲う。体力的にも限界が近い体は既に悲鳴を上げ、視界も少しぼやけてきた。対する牙剥は無限の体力と精神力を併せ持つ個性によって全く怯んでいなかった。このままではジリ貧になってしまう、狩迅は保ってあと3分ほどだろう。

 

 

「どうだい?自分の大切な生徒が成す術もなく惨めに叩き潰されていく光景は…」

 

 

「君が僕を恨むように、僕も君を恨んでるんだぜ?僕は君の師匠を殺したが、君も僕の築き上げてきたものを壊しただろう?だから君には可能な限り醜く惨たらしい死を迎えてほしいんだ!!」

 

 

「避けろ!あのガキンチョが作ってくれている時間を無駄にするな!!」

 

 

オールフォーワンの腕が肥大化し、オールマイトへ照準を合わせる。避けようとするが、後ろには瓦礫に挟まって動けない一般の女性が倒れていた。

 

 

「君が守ってきたものを奪う!!」

 

 

(ッ!オールマイトが!!?)

 

 

「余所見してていいのか?」

 

 

助けに入ろうとするも、牙剥は逃がす訳もなく狩迅を顔面から地面に叩きつける。オールフォーワンの攻撃は直撃し、途轍もない風圧が飛び交った。

 

 

「最強というのは、弱い者と同じく早くに死ぬ。あれがこの言葉のいい例だな…」

 

 

「オールマイトォ!」

 

 

瓦礫のホコリが晴れると、そこには骸骨のような姿になったオールマイトがいた。先程までとは信じられないような代わり具合、平和の象徴がただの非力な人間になっていた。

 

 

(やはり…そうか。最初の戦闘訓練の時から匂いで察してはいたが、あの姿が本当の……)

 

 

「頬は痩け、目は窪み……貧相なトップヒーローだ!恥じるなよ?それがトゥルーフォーム、本当の君なんだろぉ!?」

 

 

己の本当の姿が世に晒され、力も失いかけている。絶望的な状況下、だがそれでも尚オールマイトの瞳に一切の曇りはかかっていなかった。拳を握り、前を向く。それは例えどのような姿になっても、平和の象徴としての誇りと信念を落としてはいなかった。

 

 

「体が朽ち、衰えようとも……その姿をさらされようとも、私の心は依然平和の象徴!

一欠片とて奪えるものじゃあないッ!!」

 

 

「素晴らしい、参った。強情で聞かなきゃならないことを忘れてた。」

 

 

「じゃあこれも君の心には支障ないかな?あのね、死柄木弔は、志村菜奈の孫だよ!!」

 

 

一泊を起き、放たれたその言葉はオールマイトに深い衝動を走らせた。死柄木弔が自身の師匠である志村菜奈の孫、オールマイトは強く握りしめていたはずの拳を、降ろしていた。

 

 

「君が嫌がることをずぅっと考えてた、君と弔が会う機会を作った。君は弔を下したね、なぁんにも知らない勝ち誇った笑顔でぇ?」

 

 

その後も淡々と、その非情なまでの攻撃は続いた。落ちぶれていくオールマイトを横目に、オールフォーワンは嘲笑う。オールマイトは以前、師匠である志村菜奈からこんなことを聞いた。

 

 

笑っている者が一番強いと…確かにその通りである。今、この場で、もっとも強い者は、大笑いしているオールフォーワンなのだから…悲痛な叫びを上げるオールマイト、そんな彼に後ろから声がかけられる。"助けて"と…

 

 

「お願い…負け…ないでッ………助けて…オールマイト…………」

 

 

「勿論さ、お嬢さん。あぁ、そうだよ守るものが多いんだよ、ヒーローは。だから、負けないんだよッ!」

 

 

残された最後の灯火を燃やし尽くす。右腕だけをマッスルフォームにし、全てをこの最後の一撃にかける。オールフォーワンも同様、空中に浮かび上がり、止めを刺そうとする。が…そこへいきなり高威力の衝撃波が飛んでくる。

 

 

「ッ!」

 

 

「はぁ…はぁ…たまには横ォ、見た方がいいぜ?」

 

 

「そうか…白疾風、か」

 

 

オールフォーワンが周りを見ると、建物に打ち付けられたような後がある牙剥が倒れていた。狩迅は一瞬だけ白疾風、に変身し、牙剥を吹き飛ばしていたのだ。

 

 

「取り逃がしたか、ハエのようにしぶといな。狩迅龍騎…」

 

 

「言っただろ、あんたがそいつを倒すまで…絶対に手出しはさせねぇってよ。だから、勝ってくれ。生きてくれ!例えズタボロになっても、あんたは依然として、平和の象徴だ!!」

 

 

「……………」

 

 

「邪魔だ、君は大人しく彼に殺されていろ!!」

 

 

「クソッタレめぇ!白疾風!!」

 

 

「まさか、時間稼ぎだとしても、君一人で僕らとやりあおうなんて言わないだろうねぇ!?」

 

 

「やれるだけやって、そして死んでやるさ」

 

 

「一人だけじゃねぇよ、小僧。」

 

 

瓦礫から、なんとか力を振り絞って出てきたグラントリノ、もうすでに体はボロボロだが、狩迅と同じく戦おうとしていた。

 

 

「動けるんでしょうね…」

 

 

「テメェみてぇな小僧に労られるほど、俺ァ衰えちゃいねぇよ!!」

 

 

(聞こえるか、俊典。弱りきった姿を晒されようとも、お前を応援し続ける皆の声が…お前の勝利を願う皆の声が…お前に憧れ、お前のようなヒーローになりたいと願う生徒達の声が………)

 

 

『勝ってッ!!』

 

 

『勝てやッ!!!』

 

 

『オールマイトォォォォォォォ!!!!』

 

 

「煩わしい。」

 

 

「茶番だな。」

 

 

『筋骨バネ化、筋力増強+衝撃波!!』

 

 

二人の腕から、強い衝撃波が流れてくる。その勢いに押され二人は吹き飛ばされてしまう。だが不幸中の幸いだろうか、グラントリノの吹き飛ばされた位置は倒れていた女性の近くだった為、グラントリノはオールマイトの足を引っ張らないようにすぐに退散させた。

 

 

「精神の話はよして、現実の話をしよう。牙剥、ここは僕一人で十分だ。君はあの少年の始末を、決着は、僕と彼だけで決めたい。」

 

 

「了解した、くれぐれも油断なさらず…」

 

 

「あぁ、ありがとう。さて、筋骨バネ化、瞬発力×4、膂力増強×3、増殖、肥大化、鋲、エアウォーク、造骨、今の僕が掛け合わせられる最高・最適の個性達で、君を殴る!」

 

 

様々な個性を一点に集中させる事により、その腕は巨大に肥大化していた。それは見るも恐ろしい姿になっており、中継を通して見ていた者は全員それから目を離せなかった。

 

 

「緑谷出久、ワンフォーオールの譲渡先は彼だろう?資格も無しにここまで来て、まるで制御できていないじゃないか。先生としても、君の負けだ!!」

 

 

「エェアアアアアア!!」

 

 

最初は互角のように見えたが、オールフォーワンが衝撃反転の個性を発動させ、オールマイトの攻撃そのものを跳ね返す。オールマイトは一気に押され始めるが、緑谷の事を思い浮かべ、無理矢理力を込める。

 

 

「象徴としてだけではない。お師匠が私にしてくれたように、私も彼を育てるまでは、まだ!死ねんのだァァァァァァァ!!」

 

 

右腕を犠牲にし、オールフォーワンに左のストレートを打ち付ける。だが…

 

 

「らしくない小細工だ。誰かの影響かな!?浅い!」

 

 

瞬間、オールマイトの左腕が萎み始める。

 

 

「ッ!?」

 

 

「そりゃぁ、腰が入ってなかったからなァァァァァ!!」

 

 

『何人もの人が、その力を次へと託してきたんだよ。みんなの為になりますようにと、一つの希望となりますようにと、次はお前の番だ。頑張ろうな、俊典…』

 

 

右腕に力を込め、再びマッスルフォームへと戻らせる。オールフォーワンの左腕の一振りを回避し、そして……

 

 

(さらばだ、オールフォーワン!)

 

 

「UNITED STATES OF………!」

 

 

「ッ!……オールフォーワンッ!」

 

 

「通すかよ、俺が…!あの人が、奴を倒すまではッ!」

 

 

牙剥が助けに入ろうとするが、狩迅の必死の抵抗により押さえつけられる。オールフォーワンはオールマイトに打ち付けられる寸前、とある事を思い浮かべていた。

 

 

(負けたよオールマイト、実に醜い足掻きだった。しかし君は間違えたよ。戦いの果て、君は弟子に寄り添う道を選んだ。君は離れどきを失った、死に時を失った。先生というのは、弟子を一人立ちさせる為にいる。)

 

 

(頼りにしていた師が手の届かぬ場所へ去り、彼は憎悪を募らせる。彼は真に先頭を歩んでいく…仲間もいる、仲間を増やす術も学んでいる。大丈夫だ死柄木弔。

経験も、憎悪も、悔恨も、全てを糧としろ。次は、君だ。)

 

 

「SMAAAAAAAAAAAAASH!!!!!」

 

 

不敵に笑うオールフォーワンを最後に、オールマイトは最後の一撃を放った。嵐が舞い、大地は崩れ、近くにいた味方も巻き込んでしまうほどだった。そして最後の力を使い切ったオールマイトは、小さく、呟くように囁いた。

 

 

「さらばだ、ワンフォーオール……」

 

 

オールフォーワンを倒したその左腕を高々と天に掲げ、平和の象徴として役目を遂に終えた。

 

 

ーーーー 市街地 ーーーー

 

 

「や…やった…やったぞぉぉぉぉ!!」

 

 

「やっぱり、最後の最後でオールマイトは決めてくれんだよ!!」

 

 

「流石だぜ!いつまで経ってもアンタは俺達のナンバー1ヒーローだ!!」

 

 

テレビ中継を通して見ていた者たちは全員すべからくオールマイトに称賛の声を上げていた。オールマイトの活躍に感動し涙を流す者もいれば、これが最後の戦いで悲しみの声を上げる者も…だが喜ぶのはまだ早い、あと一人、あと一人だけ悪魔残っている。

 

 

「まだだ、まだあの野郎がまだ残ってやがる………一番厄介なあいつがッ!」

 

 

そう声を上げたのは、先程切島達に助けられた爆豪だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 神野区 ーーーー

 

 

「さぁ、最後の踏ん張りどころか…」

 

 

嵐の中から雷が飛び交う、天に円型の空洞が空き、牙剥はそこからエアウォークでゆっくりと下降してきた。

 

 

「まさか、ここまで醜く抗ってくるとは………正直誤算だったよ。」

 

 

牙剥は額や首に血管を浮かび上がらせ、ドスの効いた声で狩迅達を睨みつける。その後、轟竜化させた腕を見ながら、苦悩したような表情を浮かべる牙剥。

 

 

「こんな感情は久しぶりだ。あぁ、なんて言うんだ?そう、怒りか……こんな風に追い詰められたのは君の父親振りか?血は争えないな…そう思わないか?雪凪…雄大ッ!………」

 

 

「やはりお前は、あの時、確実に殺しておくべきだったッ!俺もまだまだ詰めが甘い…だからこそだ。」

 

 

「ッ!」

 

 

牙剥の体が大きく肥大化していく。金属がぶつかる様な音や炎が燃え盛る音、聞いた事のないような奇妙な音があたりを包んだ。

 

 

「筋力増強×10、膂力増強×7、瞬発力+反射神経×5、エアウォーク、肥大化、重力低下、オートカウンター、衝撃吸収、衝撃反転、毒針、怪力無双、加速×8、怪焔王、剛拳、筋骨バネ化、雷帝、鋲、鉄骨化、造骨………」

 

 

「圧縮…収縮…」

 

 

牙剥の膨れ上がった体はみるみると小さくなっていき、元のサイズに戻った。着ていた服を破り捨て、異様な姿となった体を現す。所々に金属のような物がつけられており、周りには炎と雷が飛び回っている。

 

 

「そして、荒鉤爪……」

 

 

「…………」

 

 

「必ず始末する為、今の俺が掛け合わさせられる最強・最善の個性達で、お前を穿つ。こうなったからには、前のように手加減はできんぞ!!」

 

 

牙剥がいる方向をゆっくりと見上げる狩迅、拳を再び握りしめる。

 

 

「たった今、オールマイトと言う物語が終わった。平和の象徴が築き上げた平和を、必ず取り戻す…ここからは、俺達の物語だ。白疾風ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 市街地 ーーーー

 

 

「嘘だろ…まだ終わってないのかよ……」

 

 

「あの子学生だろ!?体育祭で見たぞ!」

 

 

「他のヒーローは何やってんのよ!!?」

 

 

「流石にいくら彼でも…」

 

 

周りからも恐怖と絶望の声が上がる。それはもちろん緑谷達も例外ではなかった。今あの場で戦えるのは満身創痍の狩迅龍騎ただ一人だけ、どちらが勝つかなんてものは、簡単に予測できた。

 

 

「駄目だ…殺されるぞ、狩迅の野郎!!?」

 

 

「助けに行かなければ…!」

 

 

「行ったところでどうする…」

 

 

「ですが!!」

 

 

飯田は拳を握りしめ、下唇から血が流れるほど噛み締めた。

 

 

「先程の戦いを見て分かっただろう!俺達が行ったところで足手まといになるだけ…

オールマイトの時でさえ、運が良かったから成功したんだ。だが……」

 

 

分かっているからこそ、その事実を受け入れたくなかった。

 

 

(僕達には……ただ見てるだけしかできないのかッ!)

 

 

緑谷は映像を見ながら、その悔しさを噛み締めた。何もできない、その言葉が永遠に頭の中を駆け巡った。

 

 

 

 

 

 

ーーーー 神野区 ーーーー

 

 

「狩迅少年……ここは危険だッ!早く逃げなさい!!」

 

 

体力の限界を迎え、トゥルーフォームとなったオールマイトが狩迅に叫ぶ。

 

 

「アンタはもう、恐らく力を使い果たしたんだろ…それに周りには援護してくれるようなヤツもいねぇ。そんな状況下で唯一戦える俺が、逃げてどうすんだッ!!」

 

 

「だが、君のその傷……」

 

 

狩迅の体には無数の切り傷や強く衝撃を受けたような箇所が幾つもあった。尚且林間合宿で受けた傷と毒もまだ完治した訳ではない。

 

 

「アンタが言ったんだろ、ヒーローは常に逆境を乗り越えていく者ってよ、その言葉を……俺は信じる。」

 

 

「ッ!狩迅少年ッ!!」

 

 

その瞬間、狩迅は白疾風に変身し、足を迅竜化させ、牙剥へ飛びかかった。牙剥もそれと同時に狩迅に突進していく、互いの距離が0になり、拳をぶつけ合う。

 

 

「終わらせるッ!」

 

 

「終わりはせんよ、ここからが始まりだッ!!」

 

 

辺りには雷が降り注ぎ、巨大な爆発と衝撃波がその場を包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




牙剥カッコつけ過ぎたかな……まぁいいか。初めて一万文字書いたので指がバッキバキやでぇ。間違いがあったら教えて下さいな、それでは……


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第三十四話:集う小さき英雄達

もうすぐ新年ですね。それだけです。


今回も原作大幅改変させていただきます。もしこうだったら面白いかも、という感じでやっているので、ここをこうしたらもっと良くなる、みたいな感想をくださると有難いです。





「クソっ……」

 

 

「随分と疲弊しているな、一撃一撃が軽い!」

 

 

ついに始まった狩迅と牙剥の最終決戦、だがそれは戦いと呼ぶにはあまりにも一方的なものだった。牙剥へ一直線に向かっていき白疾風+腕の迅竜化を合わせた猛攻撃も簡単に弾かれてしまい、呆気なくカウンターをくらい吹き飛ばされてしまう。回転しながら態勢を立て直し、地面にクレーターが空く程の脚力でもう一度突撃していく。

 

 

「タフだな、少し鋭さを増そう。物体は全体にダメージを行き渡らせるより、一点に集中させたほうが壊れやすい。猿でも知ってるだろう?貫通性に優れたこの個性たちで迎え撃とう。指鉄砲+波導弾」

 

 

指を銃の形にして、人差し指を狩迅へ向ける。すると指から弾丸のような物が発射され、それを波導弾と合わさることによって、より強固に、より精密に、より高速になって狩迅に襲いかかる。対する狩迅は赫眼を発動させ、飛んでいくる位置を素早く把握し、避けるか迅竜化させた腕で殴って弾くかで牙剥に接近していった。

 

 

「ッ!」

 

 

(腕に掠ったか、流石にこの体じゃ全部は避けきれねぇな…)

 

 

「まだまだ終わらんよ」

 

 

牙剥が指を鳴らすと後ろからいきなり何百というおびただしいほどの槍が生成された。そして牙剥が指をこっちに向けると同時にその何百という槍が一斉に向かってきた。

 

 

「計496本、今の俺が出せる最大量の聖槍達だ。幾千の真実を示せ、俺の勝利という真実を!!」

 

 

「竜の爪を舐めるなよ、エァアアアアア!!」

 

 

飛来してくる幾百もの槍を自身の爪で切り裂いていく。だが10本、20本と飛ぶ本数が多くなる度に飛来する速度が段段と速くなっていき、流石にまずいと思った狩迅は一旦後ろに下がるという選択を取ったがそれが間違いだった。

 

 

「吸引+ブラックホール」

 

 

「これは、引きつけ…!?」

 

 

「俺に、近づいてこい!」

 

 

後ろへ下がったと思ったら今度は逆に勢いよく引っ張られ、首を掴まれてしまう。そして次の瞬間、牙剥は手をゆっくりと狩迅の腹部に当て……

 

 

「衝撃波+能力覚醒!!」

 

 

威力を底上げした衝撃波により、狩迅は血反吐をぶち撒けながら後ろのビルに激突していく。

 

 

(意識が……クソっ……)

 

 

『…の……を…げ、そ………つを………だ……』

 

 

(あぁ?何だ、あの時と同じやつか?今はそれどころじゃないんだよ…)

 

 

途切れ掛けた意識の中で、どこからか男の声が聞こえた。だがその言葉は途切れ途切れで何を言っているのかは理解できなかったが、狩迅は何か大切なモノだというのは直感していた。そして再び目を覚ます。

 

 

(だァ…クッソ、頭までおかしくなっちまったのか……痛ぇ…)

 

 

「真空波ッ!!」

 

 

足を迅竜化させ、一気に横に薙ぐ。目の前には巨大な真空波ができ建物を切り刻みながら牙剥の方へ進んでいく。そして目前にまで迫った瞬間、牙剥は指を弾いただけで簡単にかき消す。

 

 

「まさかこれも効かねぇとはな、チッ…」

 

 

「どうした、お前の父親はもっと堪えたぞ?しっかり前を見たまえ…」

 

 

「舐めやがって、ハァァァァ!!」

 

 

再び牙剥に突進していく、狩迅は焦っていたのだ。自分が戦える時間はあと僅かだということに、ここで自分が倒れてしまったらこの神野区諸共全ての民間人が殺されてしまうということに……

 

 

(まずいぞ…狩迅少年ッ!君の弱点は私と同じく時間が限られていることだ!もうとっくに倒れていてもおかしくない………………だが…………)

 

 

二人の戦いを見ていたオールマイトはその悔しさから歯を食いしばっていた。助太刀に入りたいが、ワンフォーオールは使い果たしてしまい、尚且もう体は動かない。

 

 

「頼んだぞ、狩迅少年。この日本の未来は君にかかっているんだッ!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 市街地 ーーーー

 

 

『ゼェイヤァァァァァァァ!!』

 

 

「あの狩迅が、あんな一方的にッ!?」

 

 

「あの牙剥とかいう奴、化け物か!?汗どころか、息切れ一つしてねぇぞ……あんなのにどうやって勝ちゃいいんだよ!!」

 

 

絶体絶命の中で爆豪を救出に来た全員は酷く苦悩していた。それは何故か、至極単純、目の前に写っている映像がすべてを物語っている。ヴィランによっていたぶられてる友人を見て、落ち着いてる者はいないだろう。

 

 

しかもその規模は全国に影響を及ぼすかもしれないほどの一大事件、どれほど爆豪の時のように助け出すか考えてもその時間は無駄になるだけ。そんな時だった。一同が頭を抱えているとき、突然緑谷が走り出した。

 

 

「まさかッ……行っては駄目だ、緑谷君ッ!!!」

 

 

「あいついきなり!?」

 

 

(クソナード…………てめぇ…………)

 

 

『君が、助けを求めてる顔、してた!』

 

 

『彼に………触るなッ!』

 

 

『君のッ、力じゃないか!!』

 

 

緑谷は、考えるよりも先に動いていた。何をどうするべきかなんてものは頭には無い。ただ進まなければならないという言葉が強く脳裏に過ぎていっていたのだ。

 

 

「待てや、クソナードォ………何勝手に調子こいてんだぁ……!」

 

 

「なッ!?爆豪君まで!?」

 

 

「いけませんわ!!戻って!!」

 

 

爆豪は何故か泣きそうになっているのを必死で堪え、緑谷の元へ走る。いや、正確には狩迅の元へだろう。彼もまたオールマイトに憧れた生徒の一人、立派なヒーローになる為には目に映る全ての人を助けないといけない事はよく分かっていた。だから走る。例えその先に地獄が待ち構えていようとも……笑って、そして勝って、助ける。それが爆豪勝己という人間なのだから。

 

 

「クソがァァァ!クソデクゥゥ!!!」

 

 

「か…かっちゃん!?」

 

 

「テメェ見てぇな奴が何一人で勝手に調子こいてんだあぁん!?テメェだけであんなのに勝てるとでも思ってんのか!!?クソカスがァ!!」

 

 

「…………勝てるなんて思っちゃいないし、すごく怖いよ。でもかっちゃんだって分かるでしょ!!助けられてばかりなのは嫌だって!!僕達だって、今はヒーローの卵だけど……だけど、友達を助けるくらいの権利はあるはずだ!!」

 

 

「知るかんなもん!!あの野郎をぶっ殺すのは俺だ!引っ込んでろ!!」

 

 

「えぇ!?それじゃあ僕達が来た意味がッ!?」

 

 

「うっせぇ黙ってろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「ッチェァァァァァァ!!」

 

 

「バカの一つ覚えのように拳を振るったところで、俺には確実に届かないッ!恐怖のあまり頭が働かなくなったかぁ?」

 

 

連続して打つ狩迅の竜の鉤爪をいとも簡単に躱す牙剥、そして狩迅の手が届きそうになった瞬間、牙剥はその腕を掴み、引き寄せ腹部に強烈な蹴りを放った。吐血するが、痛みを無視して再び手を伸ばすが、牙剥の蹴りを10回程もろに受け、そして最後にはハイキックで吹き飛ばされてしまう。

 

 

「これでも届かねぇのか……ッ!?」

 

 

「威力向上+能力覚醒+個性活性化、そろそろ終わりにしようか!!」

 

 

「しまった!?」

 

 

「もう遅い!所詮貴様はただ半端変異だったのだよ!!」

 

 

轟竜化させた右腕で力を数百倍にも高めた剛拳を狩迅の顔面目掛けて放つ。狩迅は咄嗟に腕を迅竜化させガードすることができたが、尋常ならざるその威力の前にそれも意味を成さない。

 

 

(重いッ!)

 

 

腕から胴体へ、胴体から足へ、体中にそのダメージが蓄積されていた。狩迅は吹き飛ばされずその場に留まったがあとほんの0.1秒か2秒、反応が遅れていたら腕が使い物になっていなかっただろう。

 

 

「ぁ………ガ……ぅ……………」

 

 

「目が虚ろになっているな、瞳孔が機能していない。今の衝撃で左目が失明したか。」

 

 

ストン、と狩迅は足から崩れ落ち、膝を地面に付けた。牙剥の攻撃を受けた腕は小刻みに痙攣しており、変身していた白疾風も解けてしまう。

 

 

「終幕だ、少しばかり手こずったが、これで君の物語とやらも幕を引く訳だ。」

 

 

牙剥は狩迅の顔に手の平を向け、そこから黒い光を生み出す。最初は小さく、肉眼でも捉えづらい程だったが次第に巨大化していき、ボーリングの玉ほどの大きさに留まった。

 

 

「確か、君の父親もこうして……、君と君の父親に敬意を評して、遺言程度は聞いておこう。」

 

 

狩迅はゆっくりと頭を上げ、怒りを込めた鋭い眼差しで牙剥を睨んでいた。そして息を切らせながら、ゆっくりと言葉を紡いでいく。

 

 

「………………」

 

 

「遺言ってのは敗北を確信した者が口にする言葉だ。四肢をもがれても、心臓を撃ち抜かれても、足掻くぞ、俺は……」

 

 

(緑谷、お前が俺に教えてくれたように、俺も……)

 

 

「……死を前にして笑うか、どこまでも似ているな」

 

 

牙剥はかざした手を一度後ろへ引き、そして前に突き出し狩迅を殺そうとするその瞬間だった。後頭部に誰かから殴られたような感覚がした。

 

 

「ッ……………」

 

 

「…私を………忘れないでもらいたいね…」

 

 

「オールマイト、貴様まだ…」

 

 

「言っただろう、例えこの肉体が朽ちようとも、私の心は依然平和の象徴だと!!その少年にはもう、指一本触れさせはせん!!」

 

 

「ワンフォーオールを失った貴様など、もはや脅威ではない。役目を終えたならさっさと倒れていれば良いものを!」

 

 

「デトロイトッ!!」

 

 

平和の象徴としての力は失ったが、心は未だに燃え尽きてはいない。今にも折れそうな足を奮い立たせ、牙剥に立ち向かう。だが……

 

 

「スマッs「邪魔だ!消え失せろ!!」」

 

 

「ガハッ!!?」

 

 

牙剥は腕を横に薙ぎ、オールマイトを吹き飛ばす。今度こそ、狩迅にトドメを刺そうとするが、それでも尚オールマイトは立ち上がる。牙剥はその光景に驚愕しながらも怒りを抱いていた。何度も何度も吹き飛ばすが、立ち上がる。

 

 

「煩わしい、そこまでするのは意地か?平和の象徴…」

 

 

「ハァ…ハァ………」

 

 

「呆気ないものよ、平和の象徴と謳われた者の最後が……よもや少年の寿命を1分程度延ばすだけで終わるとはな。今度こそ最後だ。」

 

 

「オールマイト………逃げてくれ…!今のアンタじゃ、殺されるぞッ!!」

 

 

オールマイトへ叫ぶ狩迅を一瞬だけの見つめ、オールマイトは拳を前に出し親指を立てた。

 

 

「私は死なない、君達の成長を見届けるまでは………死ぬわけには、いかん…のだッ!!」

 

 

「そうか、ならば両方同時に始末してやる。あの世でしっかり成長を見届けるんだな」

 

 

「為す術…………なしか……」

 

 

(すまない、緑谷少年………だがそれでも、それでも私はッ!!)

 

 

「ウォアアアアアア!!!」

 

 

(立ち向かわなくてはならない。負けると分かっていても、ヒーローとしての誇りが私を奮い立たせる!お師匠、私もあなたの様にッ!!)

 

 

牙剥は両腕を広げ、右手は狩迅に、左手はオールマイトへ向けた。そして確実に仕留めるため、黒い光を更に巨大化させ、そして放つ。その黒い光は地面をえぐり、空間すらも削りながら動けなかった二人に着弾した。

 

 

「終わったな、遂に終わったのだ。これで誰も私の邪魔をする者はいないっ!私が唯一恐れた血族もここで途絶え、ヴィランへの抑止力もここで潰えたのだ!!」

 

 

「さて狩迅龍騎、君の個性は中々に良い。貰っておくとしようか、肉体が完全に消滅していなかったらの話だがなぁ!?」

 

 

牙剥は消し炭になった狩迅の元へ個性を奪う為に近づく、その道中あまりにも愉快だったのか笑いを堪えることができずにいた。そして……

 

 

「やはり消し炭になっていたか。まぁいい、想定内だ。オールフォーワンを回収してさっさと戻るとするか。あとの目的はマキアと米国ナンバーワンの個性だ、これから計画を練り直して………ん?」

 

 

牙剥が倒れていたオールフォーワンの元へ行こうとした時、後ろから妙な気配がした。ここにいるのは自分と倒れているオールフォーワンだけのはず、牙剥は不審に思いながらも振り向くとそこには緑色の稲妻と何かが爆発したような煙が漂っていた。

 

 

「はぁ…はぁ…間に…あった!!」

 

 

「テメェ俺より先に出んなっつったろうが!舐めてんのか!?」

 

 

「緑谷……なんでお前…」

 

 

「爆豪少年まで!?」

 

 

絶体絶命のピンチに駆け付けた二人、牙剥がエネルギー波を放つ寸前、緑谷と爆豪が最高速度で二人を助けていたのだ。

 

 

「チッ、手間が増えたな。……ッ!?」

 

 

突然現れた緑谷達を仕留めようと歩き出そうとした瞬間、横から牙剥に向かって何かが打たれた。その発砲音の元を辿るとそこには焦った表情の切島とクラッカーを創造した八百万が立っていた。

 

 

「こ…こっちですわ!こっちに向かってきなさい!!」

 

 

「引くぞ八百万、早く!!」

 

 

「雄英生か、死地に性懲りもなく戻ってくるとはな!!」

 

 

腕から衝撃波を飛ばす牙剥、その衝撃波は真っ直ぐに八百万たちの元へ向かっていく。

そして直撃しようとした瞬間、後ろから巨大な氷結生成され、八百万たちを守った。

 

 

「無事みてぇだな」

 

 

「まったく……俺も委員長失格だな。」

 

 

「お前ら……なんで…」

 

 

「友達が必死で戦ってるのに、駆け付けない奴なんているもんか!」

 

 

緑谷は抱きかかえていた狩迅をゆっくりと降ろし、戦闘態勢を取る。その時狩迅に向かって優しい笑みで言った。

 

 

「助けに来たよ!」

 

 

「ッ……!」

 

 

「だからどうした、形勢逆転とでも?中々に傲慢な事を言ってくれるじゃあないか。ここにはもうプロヒーローは来ない、私とオールフォーワンが再起不能にしたからな。時間稼ぎなどは考えない方が身の為だ。」

 

 

「鼻っからんなもんは必要ねぇ!テメェは俺だけで十分なんだよクソカスがぁ!!」

 

 

「君達……」

 

 

「ごめんなさい、オールマイト。でも居ても立っても居られなかったんです。僕達に戦わせてください、助けたいんです。狩迅君を、そしてあなたを…」

 

 

オールマイトは緑谷の言う事に反論できなかった。人一倍正義感の強い彼は、自己犠牲も覚悟して、頭より勝手に体が動いてしまう。それを理解していたからこそオールマイトは何も言えなかった。そして最後にこう言い残していった。

 

 

「ヒーローオールマイトの名に置いて、緑谷少年、爆豪少年、切島少年、八百万少女、飯田少年に個性使用許可を与える!もはやここにプロヒーローはもういないも同然だ!君達がやられたら、もうこの神野区は疎か、日本全土が支配されてしまう……必ず奴を倒せ、若きヒーロー達よ!!」

 

 

『はい!』

 

 

「それに私はもうオールフォーワンで経験済みだ。牙剥貴様、その姿長くは保たないだろう?」

 

 

「…………」

 

 

「図星だな、個性の大量使用は体に大きな負担がかかる!それを抑える様な個性があるんだろうが、無限という訳ではあるまい、もう貴様は本来の力を出す事は出来ないはずだ!!」

 

 

「あまりバラして欲しくなかったんだが、まぁ多方正解だよオールマイト。私はもう全力は出せない。だがしかしだ、貴様らを始末できる力は十分に残っている。逃げられると思うなよ、ここからは我慢比べと行こうじゃないか……」

 

 

牙剥の涼し気な表情が一気に鬼の様に変わる。そして右腕を前に向けると同時に雄英組は構えを取った。緑谷はフルカウルを最大の35%に、爆豪は手から爆発を起こし警戒態勢へ、轟は炎と氷結の準備を、切島は硬化を最大限に発動させ、飯田はいつでもレシプロで突撃できるように、八百万は巨大な大砲を用意し、狩迅は残り少ない体力で月迅竜に変身した。

 

 

「大丈夫、きっと勝てる。雄英一年の中でも特に戦闘が得意なこの7人なら……」

 

 

「どんなヴィランだって怖くない!!」

 

「やってやらァ、覚悟しやがれクソカスヴィラン!」

 

「やったろうぜお前ら!!」

 

「私だって役立ってみせますわ!!」

 

「いつでも行けるぞ!」

 

「合図は任せるぞ、緑谷」

 

 

「ここまで来て、もう負ける未来が見えないな。ありがとよ、これでやっと、勝てる」

 

 

「総力戦か、来てみろ蟻共。悉くを破壊してやる!!」

 

 

「第2ラウンドだ、こんどこそ終わらせる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後先フル無視で緑谷君達を登場させて大丈夫だったかなと、今更ながら心配している、どうも主です。


ヒロアカ世界での個性に関する法律の一つに、「個性の武力行使で他人を傷つけてはならない」みたいなことがあったはずなのですが、まだやってないからセーフ!!


町中でも個性は使用しちゃ駄目だったみたいな事もあった気がするが、まぁ軽犯罪で信号無視と同じくらいの刑罰で良いでしょう。罰金1〜3万円……くらい?


追記

多分言われる可能性があるから先に言っておく、牙剥君の一人称や二人称がコロコロ変わるのは、感情の変化が激しいからです。

例 めっちゃ焦ってる→お前、俺、口を閉じろ……
  
  ちょっと余裕→貴様、私、耳障りだ

  超余裕→君、私、少々騒がしいな?


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第三十五話:原点回帰

年越しになんで私マツケンサンバ見てんだろ…
新年明けまして おめでとうございます。



第三十五話、始まります。


互いに向き合う緑谷達と牙剥、辺りには風が吹いている音だけが響き渡り、睨み合う様子は恐ろしく静かだった。そして数十秒が経過した後、牙剥が動き出した。荒鉤爪を発動し、両足を轟竜化させる。まずは厄介そうな轟の顔面を蹴りで粉砕しようと接近する。

 

 

約10メートルもあった距離がコンマ一秒にも満たない時間で0距離になる。その速度に追いつけたは飯田だけだった。体育祭以降、自身の個性を改良に改良を重ね、新たに生み出したレシプロバーストよりも更に速く、そして持久力も高めた必殺技、レシプロターボで蹴り返す。

 

 

「私の速度についてくるか。丁度いい、加速系統の個性は欲しいと思っていたところだ。」

 

 

牙剥と飯田の蹴りがぶつかり合い、雷が落ちたかのような轟音が辺りを包む。

 

 

「ぐっ…ウォオオオオオオオ!!」

 

 

「飯田君そのまま!行くよかっちゃん!!」

 

 

「俺に指図すんなァ!!」

 

 

飯田が牙剥を抑えている間に、緑谷と爆豪が攻める。勿論その接近に気づかないわけもなく回避しようとするが、切島のタックルと八百万の顔面にガトリング砲の嵐、そして轟の氷結で行動に制限をかける。そして緑谷はパンチを、爆豪はその加速した勢いで横腹に蹴りを入れることに成功する。一瞬だけの表情を変えた牙剥だったが…

 

 

「やってくれるじゃないか、少しばかり痛かったよ」

 

 

「やべぇ……爆豪、避けろ!!」

 

 

攻撃の後には必ず隙ができる。牙剥はそれを分かっていたからこそ、本来抜け出せたはずの束縛に敢えて囚われていたのだ。そして爆豪の眼前にまでその拳は届いていた。

 

 

(やべぇ……死ぬ……!)

 

 

死を覚悟し、目を閉じた爆豪だったが、その攻撃が当たることは無かった。寸前のところで狩迅が牙剥に飛び蹴りを放ち吹き飛ばす、間一髪のところで爆豪は助かっていた。

 

 

「チッ、んな事できんなら、最初っからやりやがれ」

 

 

「感謝として受け取っとくぞ」

 

 

「してねぇわクソが!あんなん俺一人だけでどうとでも出来たんだよ!」

 

 

「こんな時にやめろって喧嘩!?」

 

 

「みなさん!また来ますわよ!!油断なさらず…」

 

 

視線を動かすと、そこには鬼の形相をした見るからにも苛ついてる牙剥が頭を抱えながら立ち上がっていた。目は血走り、獣の様に涎を垂らしている。その姿はまさに轟竜らしかろう。

 

 

「そろそろ…か、まずいな、非常にまずい……笑えない、途轍もなく不快…」

 

 

(やっぱりだ、オールマイトが言っていた通り牙剥の体力は限界に近い!!このまま休みを与えず攻め続ければ……)

 

 

「八百万さんは後方支援!轟君は氷結で奴の足元を、それ以外のみんなは兎に角攻め続けて!!奴の体力は、もうほんの僅かしか残されていない。休みを与えちゃ駄目だ!!」

 

 

緑谷の声と共にそれぞれが自分の取るべき行動を頭ではなく、体で理解する。気がついたらいつの間にか全員牙剥に向かって一斉攻撃を仕掛けていた。八百万の追尾式ロケットランチャーと轟の炎と氷結を援護に、切島と緑谷、飯田に、そして狩迅が一気に距離を縮める。

 

 

「オラオラオラオラオラァァァァ!!!」

 

「フルカウル、35%!!」

 

「ツェアアアアアアアア!!」

 

「レシプロ、エクステンドォォォ!!」

 

 

4人の躊躇の無いラッシュによる猛攻撃が牙剥を襲う。どうにか力を振り絞り、躱すか弾くかでダメージを軽減しているが全てを捌ききれているわけではない。確実にダメージが蓄積されていっていた。

 

 

「調子に乗るなよ………小僧共がァァァァァァ!!」

 

 

「そりゃあ、お互い様になぁ!?」

 

 

「やれ爆豪!」

 

 

「テメェら目ぇ閉じやがれ!!」

 

 

緑谷の肩を足場にして高く飛び上がる爆豪、咄嗟の事に反応できなかった牙剥は気づいたら爆豪に間合いの侵入を許してしまい、目の前で特大の閃光を浴びせられる。

牙剥は個性自体を無効化する事は可能だが、それによって派生する技は無効化できない。

 

 

間近でその光を見てしまった牙剥は無意識のうちに、頭を下げ丸く蹲まりかけていた。

その隙を逃さずに、すかさず轟が氷結で足を凍らせ、八百万の音爆弾で鼓膜にダメージを与える。

 

 

「これで少なくとも、約30秒は暗闇の中!このまま一斉に叩く!!」

 

 

「八百万、ありったけのリモート爆弾を作ってくれ!とびっきり強力なやつ!!ちっとばかし怖ぇが、こいつでトドメを刺す!」

 

 

「分かりましたわ!」

 

 

「デトロイト……スマッシュ!」

 

「竜の鉤爪ッ!!」

 

「レシプロターボ!」

 

「榴弾砲着弾ォォォォォ!!」

 

「赫灼熱拳……!」

 

 

「ッ…!」

 

 

「まだ終わんねぇぜ?即興必殺、打威那真威留(ダイナマイト)ォォォォォ!!」

 

 

5人の必殺技にプラスαで爆弾を体中に巻き付けた切島が牙剥に抱きつく。そして八百万がすかさずスイッチを押すとそこから核爆発が起きたかのような大爆発が辺りを吹き飛ばす。

煙の中からでてきた切島は決して無事とは言えないような怪我をしていたが、なんとか生きて戻ってきていた。

 

 

「がァァァ!くっそ痛ぇ!!」

 

 

「直撃したな、流石にこれで終わってほしいが…」

 

 

「ハッ、ブチ殺したったわァ!」

 

 

爆発によって起きた煙幕が少しずつ晴れていく。そこにいたのは地面に仰向けで倒れていた牙剥だった。体中から血が吹き出しており、目も虚ろになっていた。掛け合わせた個性も解除され、勝ったのかと安心した切島と八百万は地面に座り込んだ。

 

 

「よ…よっしゃあー……勝っtんが!?体が……動かねぇ…!?」

 

 

「いや、まぁあんな命知らずな事するんだから、いくら切島君でも負担は大きいよ。」

 

 

(随分と呆気ねぇな、これじゃあまるで……)

 

 

勝利に喜ぶみんなを尻目に、爆豪はふと、とある出来事を思い出していた。それは雄英高校体育祭での自身と狩迅との一騎打ちの記憶、牙剥は妙にどこか狩迅と似ていた。個性も似ている、威圧感やプレッシャー、戦いの動き方など、色々な所が非常に似ていた。

 

 

(嫌な予感がしやがんな、チッ……まぁいいか。さっさとオールm……ッ!)

 

 

爆豪はいきなりの事に脳がうまく機能していなかった。気がついたら誰かに背中を押されていた、一瞬だけ見えたが、なにやら青色の光が飛び散っている。周りからは爆豪を心配するような声も多数聞こえる。何故自分は背中を押されたのか、この短い時間で考えた結果、何も分からなかった。爆豪はその正体を知る為振り返ろうとする。

 

 

背中には何か液体がつけられたかのようにひんやりとした感覚があり、余計に不気味さを加速させた。いたずらか、もしくはどこからか水が流れてきたのか、そんな訳がない。

少し苛立ちのある顔で振り返った。背中を押した人物に怒鳴ろうとした爆豪だったが、怒りよりも、先に驚愕が襲い掛かってきた。

 

 

「…………………」

 

 

「は?……え…?」

 

 

爆豪が振り向いたその先には、身体のありとあらゆる箇所に風穴が空いた狩迅だった。

狩迅は爆豪が振り向き、一定の時間が経った後に力を使い果たしたかのように膝を地面につけた。

 

 

晴れかけている煙幕の中から、様子が激変した牙剥が歩いて出てきた。髪が蒼く輝き、周りにはフルカウルを発動させた緑谷の様に蒼色のスパークが飛び交っている。先程までの牙剥とは明らかに違う。

 

 

「ふ…はは……ははは…………ハハハハハハハ…こんな気分はいつぶりだ?ようやくだ、待ち焦がれていた。これが烈種か、雷轟竜!ディオレックス……!!」

 

 

周囲に電撃を放出し、あらゆるものを破壊しながらその中心で牙剥は新しい遊具を貰った少年のように大笑いしていた。その表情は純粋な物で悪意などは全く感じられなかった。

本当に心の底から喜んでいた、だからこそ凶暴、それでこそ獰猛、その笑顔はどこか、牙剥の心の奥底を映しているかのようだった。

 

 

「こっちまで電撃が!?」

 

 

「八百万!早く防電のシーツかなんか作ってくれ!!」

 

 

「そんな無茶な!?」

 

 

その電撃は留まることを知らず、更に威力を上げていく。放出する速度も、質量も毎秒毎に比べ物にならないほどに進化し続けていく。緑谷達は回避する事に手一杯で反撃しようにも、電撃がそれを妨害してくる。ただただ避け続ける、そしてふと、とある事に緑谷は気づく。

 

 

(放出している雷が、何故か倒れている狩迅君にだけ当たっていない……)

 

 

一番近くに、そして尚且倒れているはずの狩迅には何故か電撃が一切当たっていなかったのだ。当たったとしても服を掠る程度で身体にはなんの害も与えていなかった。

 

 

「爆豪!!なんとか狩迅の奴を回収してくれ!!!」

 

 

「んなもん分かってんだよ!!だが今近づいたらこっちがお陀仏だ!」

 

 

「いや、待って二人共!なんかあの雷、狩迅だけを不自然なくらい避け続けてる!わざとやっているのかも知れない、迂闊に近づいたら駄目だ!!」

 

 

「多分牙剥は、狩迅君の何かに固執しているはず。その隙を狙うんだ!!」

 

 

他の緑谷、爆豪、切島以外の三人も後ろへ下がり行動を一度観察する。確かに不自然な程その雷は狩迅の事を避けて攻撃していた。6人がそれを利用し、何か作戦か何かを考えている最中、突然その砲撃は止んだ。そして不気味な笑みを浮かべながら、牙剥がゆっくりとこっちに歩み寄ってくる。

 

 

「ヒーローだけじゃない、ヴィランだって進化はする。あの男ですら到達出来なかった頂へ、たった今俺が到達した。ハ…ハハハ…ク…ハハハハハハ!愉快だ、軽快だぁ、爽快だなぁ!!」

 

 

牙剥は狂ったように頭をがむしゃらに掻き乱した。血が流れ出ては再生し、血が流れ出ては再生するを繰り返し、いつしか顔は血で真っ赤に染まっていた。抜けた髪も何度も生えてくるが、くたびれて下がってしまう。

 

 

「えぇ…!?痛くねぇのかよあれ…」

 

 

「んな馬鹿みてぇな事ほざいてんじゃねぇ!!さっさと構えろ!」

 

 

「さっきとは随分と雰囲気が違うぞ。パワーアップしただけじゃ無さそうだ、先程の雷の放電もそう、以前とは、決定的に何かが違う!!」

 

 

「はぁ、もういいかぁ?話はそれだけでいいのかぁ?」

 

 

牙剥は両腕を真っ直ぐ横に伸ばし、バチバチとスパークを飛ばす。

 

 

「ならもう、終わりでいいな…」

 

 

『ッ!?』

 

 

それは速度という概念を完全に逸脱した速さへと到達していた。牙剥の周りにはそのあまりの速度にソニックブームが発生し、6人の間を通り過ぎただけで下手な必殺技よりも強力な真空波を起こし、かなりの深手を負わせていた。対する緑谷達は何が起きたのか、それを理解する事は疎か、考える事もできない。

 

 

緑谷達からすれば、牙剥がいきなり音も無く消え、その直後に途轍もない真空波と電撃が自分らを襲ったということだけ。息ができない、目の前が真っ暗、何もできない。

 

 

「いい気分だ。他の個性と掛け合わせずにこれか、まだまだ十分成長を残している。いいな、実にいいなぁ!!」

 

 

(僕は……かろうじてまだ動けるッ、咄嗟にワンフォーオールを40%まで引き上げておいて正解だった!!僕以外に動ける人はッ!?)

 

 

「ッ……クソ…が………」

 

 

「ング………」

 

 

(良かった、まだかっちゃんと狩迅君は気を失ってない。オールマイトに任されたんだ、ここは意地でも倒れるわけには行かない!)

 

 

今にも倒れそうな体を奮い立たせ、立ち上がる。ワンフォーオールの許容範囲をとっくに超え、そして牙剥からの猛反撃によってボロボロのになりながらも耐えるのは、ただ一つの理由だけ、ヒーローとしての意地だけである。

 

 

「まだ、僕は生きているぞ………牙剥ッ!!」

 

 

「そう来なくては面白くない、折角の機会だ。存分に、震わせてもらおう。」

 

 

「雷轟」

 

 

右腕から高圧の電流が弾け飛ぶ。それをゆっくりと前にさしだし、牙剥が"雷轟"と唱えるとその瞬間、先程のような電撃が緑谷に襲い掛かる。

 

 

「耐えてくれよ?ヒーロー…」

 

 

緑谷の後ろには倒れている切島達がいる。避けられない、そう悟った緑谷は覚悟を決め、その電撃を素手で受け止める。

 

 

「グァがァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

(耐えろ……耐えてくれよ、畜生ッ!!)

 

 

「負けて……たまるかぁァァァァァ!!」

 

 

手に触れた瞬間、感じたことのないような痛みが全身に駆け巡った。手が焼け、ただれる。皮膚が焦げ、燃え始める。火傷とはまるで比べ物にならない程の痛みと恐怖が緑谷の精神を蝕む。

 

 

(風、緑谷の声………眠い、体…動かない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

(どこだ?ここ……)

 

 

再び気を失ってしまった狩迅は、崩壊した町中に一人ポツンと立っていた。見たことのない場所、夢に出てくるとは思えない。一人残されていた狩迅はあてもなく歩いていく。

そして一つのことに気がついた、どこからか大勢の声が聞こえてきた。とりあえずそこに進んでみると、みんな老若男女問わず必死で何かに呼びかけていた。

 

 

『すみません、この人集りはいったい…』

 

 

近くにいた中年の男性にこの状況を聞いてみた。すると男性は驚いたような顔をしながらだったが色々と教えてくれた。どうやら今、凶悪なヴィランとトップヒーローが争っているらしい。先程までのオールマイトとオールフォーワンのようなものだろう。そこまでは理解できたが、次にその男性が放った一言に狩迅は度肝を抜かれた。

 

 

『今雪凪さんが必死に戦ってくれてんだよ!!』

 

 

雪凪、聞いたことのない名前だが、妙に既視感があった。その事が気になり、進んでみようとすると、一気に視界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

次に目覚めたのは、さっきの空間とあまり変わっていない崩壊した町中だった。だが一つだけ決定的に違うことがある。目の前にいる二人の男が、血を流しながら戦っているということ。そして片方の男が、轟竜の個性を使っているということ。

 

 

『ガァァァァァァァァァッ!!』

 

 

『ツェアアアアアアアアッ!!』

 

 

二人が衝突することによって、凄まじい程の嵐と爆風が巻き起こる。天は割れ大地は崩れ、まるで天変地異でも起きているかのような情景だった。そしてその様子を、狩迅は黙ってみていた。両者ほぼ互角のように見えた戦いだったが、轟竜を使っている男が若干押していた。そしてその勢いに任せ、決着をつけようとするが…

 

 

『ッ!』

 

 

所々にあった青色の模様が蒸発したように煙を出しながら消えかかっていた。狩迅の個性である迅竜にも同じようなことがあるので、狩迅はその重要性が嫌になるほど理解している。

今この状況で形態が解除されるということは、それは即ち敗北を意味する。

 

 

優勢だった轟竜の男が、今度は一気に押され始める。残り僅かの体力では手も足も出なく、

完全に状況が一変していた。そしてその男はそのまま…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

目の前には、女性が立っていた。

 

 

『母さん…?』

 

 

『……………』

 

 

黙ってこっちを見ている。

 

 

『なぁ、母さん。なんで俺…』

 

 

『龍騎』

 

 

『…!』

 

 

『ずっと、嘘を言い続けて、ごめんね』

 

 

狩迅はその言葉を聞くと同時に、色んな感情が溢れ出てきそうになった。

 

 

『薄々気づいてたよ、それでも、俺にとっての母さんは母さんだ。』

 

 

『…………ありがとう』

 

 

涙を浮かべながら微笑んでいた母を最後に、狩迅の意識はなくなった。

 

 

色々な事が頭の中でフラッシュバックした。父親のこと、母親のこと、そして父親と戦っていたあの男のこと、今ならあの見知らぬ二人が言っていた言葉が分かる。

 

 

(ごめん)

 

 

狩迅は、偽りの母に謝った。あの時そばにいてあげられなかったことではない。あの時はまだ幼く、個性を使い切れずにいた。母を殺したのは

 

 

『友達を、助けてあげて…竜爪………………』

 

 

最後に聞こえたのは、母でもなく、あの男の声でもない。本当の母の声だった。

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

近くで緑谷が決死の覚悟で戦っている。手を燃やしながら、必死に抑えている。だがそれも時間の問題、緑谷の体力が尽きるか、手が燃え尽きるか、どちらにせよ敗北しか残されていない。そう、思っていた。

 

 

(ごめん…みんなっ!ごめん、お母さんッ!ごめん…ごめんっ……!ごめん…狩迅君!結局君を、助けられなかったッ……ごめんッ…ごめん!!)

 

 

以前戦ったマスキュラーの時のように涙を流しながら、懸命に戦っていた。だがそれも虚しく、体力が限界を迎えた。蒼い雷が目の前まで迫ってきている。緑谷は最後の力を振り絞りなんとか押し返そうとするが、虚しくも無駄に終わる。もう駄目だと悟ってしまった緑谷は、心の中で数え切れない程の後悔と、大切な人達への謝罪を何回も繰り返し、そして意識を手放した。

 

 

無慈悲にもその電撃は意識を失った緑谷を吹き飛ばし、そして息の根を止めようと向かってくる。周りには助けてくれるような人もいない、その状況をテレビを通して見ていたクラスメイトや先生達、そして一般の人々も血の気が引いていく感覚を覚えた。そして眼前まで迫ってきたときの事だった…

 

 

「ッ!」

 

 

突如として現れた白く輝く光が緑谷を包み、そしてその迫ってきた雷轟を掻き消した。

 

 

「…………」

 

 

「狩迅……龍騎…!」

 

 

白く輝くその姿で、狩迅は緑谷を抱きかかえていた。

 

 

「今の俺は、狩迅龍騎でも、ナルガクルガでもない。」

 

 

牙剥の言葉を否定する。今の自分は、狩迅龍騎ではない。勿論それも大切な名ではあるが、今の牙剥を倒すための名前はこれではない。

 

 

「ヒーローティガレックス、雪凪雄大、そして雪凪遥の子、雪凪竜爪だ。」

 

 

緑谷をそっと地面に降ろし、怒りに溢れ、それでいて恐ろしく静かな眼差しを送った。

 

 

「極み駆ける……か、赤子だったお前がよもやここまで……誰かの入れ知恵か?」

 

 

「……………」

 

 

これは誰の入れ知恵でもない。

 

 

「母さんが言っていた、母さんだけは俺の味方だと」

 

 

恩を仇で返してしまった悔いが、今も自分を苦しめる。

 

 

「俺を拾ってくれた人が言っていた、君は独りじゃないと」

 

 

自分は化物、そう思い生きてきた。

 

 

「オールマイトが言っていた、ヒーローは常に逆境を乗り越えて行く者と」

 

 

それでも周りは、こんな自分を親切にしてくれた。

 

 

「緑谷が言ってくれた、俺を友達と」

 

 

優しさを知った、暖かさを知った、温もりを知った。

 

 

「とある少女が言ってくれた、こんな俺をかっこいい、と」

 

 

この場所で、生きていきたいと思ってしまった。

 

 

「とある先輩が言ってくれた、俺の姉になると」

 

 

友達が欲しいと思ってしまった。

 

 

「本当の母さんが言ってくれていた、俺を愛していると」

 

 

神からは許されないかもしれない。

 

 

「そして父さんが言っていた、俺の意志を継げ、そしてお前を倒せと」

 

 

それでも

 

 

「そう、言っていたんだ…!」

 

 

帰りたいと思ってしまうのは、愚かなことだろうか。

 

 

「だから俺は、俺に帰れる場所をくれたみんなを守る為に、俺が俺でいる為に……」

 

 

「ここでお前を、倒さなければならないんだッ!!」

 

 

「ならやってみろ、足掻いてみろ!知っているぞ、極み駆けるその姿、お前の突然変異としての本当の力が、それなんだろう?だがお前は半端だ、短時間でしかその効力を発揮出来ない。そしてその負傷した肉体というのも換算して、およそ30秒というところか?」

 

 

「それだけあれば十分だ。十分お前を再起不能にできる。」

 

 

「先程までの私と同じにするなよ?今の私は、一国の軍事力にも引けを取らない程の戦闘力を手に入れた。たかが一匹の鼠が、百獣の王に勝てる訳がないだろう。人はこれを総じて、無謀と呼んでいる。」

 

 

「過程をすっ飛ばして結果の話をするとは、随分と大きく出たな。」

 

 

ゆっくりと前に歩きだす。それにつられて、牙剥も目の前にいる敵に向かって歩き出した。

歩いているだけ、ただそれだけのはずなのにも関わらず、二人の間には例えようもない重い圧が流れていた。

 

 

「過程なんて物は必要無い。我々が欲するのは前にも後ろにも結果のみ、それだけあれば、それだけさえあれば良い。まぁ、この感覚は貴様には到底理解できんだろうがね。」

 

 

「あぁ、理解できないし、する気もない。今の俺には、お前という巨悪を断ち切る事のみしか頭にないからな」

 

 

その光景を見ていた者は、神に祈るようにして手を合わせ膝をつく者や、瞬きを忘れて見届ける者、必死に声を上げる者もいた。気づけば街中から彼の勝利を願う声で溢れており、今の彼はこの一瞬だけだが、誰にも超えられないナンバー1ヒーローへと成り上がっていた。

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

優しく吹く風に、髪がゆらりと靡いていた。いつものように真顔の彼だが、それはどこか決意に漲っており、覚悟を決めたような表情をしていた。

 

 

 
















ん〜、イマイチピンと来ない……ちょっと中途半端な出来だけど、これ大丈夫かぁ?
兎に角ストーリーを進ませなければ…あぁ頭が痛い、すっごく頭が痛いぞ!?


あと因みになんですが、竜爪は(りゅうそう)と呼びます。雪凪は(せつな)。






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第三十六話:雪凪竜爪

今日の日記:アアアアアアアアアアアアアア
























進撃の巨人、来週も楽しみだね。(個人的にエンディングが超絶好み)


「爆豪少年達、無事か!!」

 

 

遠くで見守っていたオールマイトが先程までの戦闘でやられた爆豪達を救出しようと、駆けつけてきた。幸い、爆豪は少なからず意識を保っており、目をオールマイトへと向ける。

 

 

「本当に、オールマイトなんだな……」

 

 

「あぁ、こんな姿だがね。」

 

 

「別にアンタがどんな格好になっても、アンタはアンタだ。俺ァ怪我なんざしてねぇからデクの野郎共の方に行け。」

 

 

「…………分かった。少し待っていてくれ」

 

 

「あぁ……」

 

 

 

風も無く、髪が揺らいでいる。ボロボロになり、着れたものじゃなくなった服を破り捨てる。そして露わになったその肉体は、数え切れない程の傷を負い血を流しているにも関わらず、その背中には一切の傷跡が無かった。

 

 

辛うじて意識を保っていた爆豪は、その戦いを見届けようと壁を支えにして立ち上がる。そして直感する。今の自分にできることは何もない程の次元へと、あの二人は到達していると。そして狩迅の……雪凪のあの輝きが消えたときこそが、この戦いの決着を意味すると。

 

 

『………………』

 

 

何も言わず、静かに歩き距離を詰めていく。嵐の前の静けさとはこの事を言うのだろうか、二人の間にある重い空気は、それを見ていた人々の時間感覚を狂わせた。

互いに最初はほんの数十メートルしか離れておらず、その距離を歩くだけ、本来ならほんの数秒で辿り着くだろうが、その空気感もあり何時間も見ている感覚に陥った。

 

 

少しずつ、少しずつ近づきそして互いの距離が0になると同時に、牙剥は右腕を大きく後ろに引き、そして前に突き出す。その瞬間、拳を放ったはずの牙剥が何故か後方に吹き飛ばされていた。

 

 

(なんだ!?あの野郎いきなり吹き飛びやがった!忍者野郎はまだ何もしてねぇ…なんだ、何が起きてやがる……)

 

 

爆豪は困惑していた。いや、それを見ていた者達も必然と目を見開いていた。攻撃した方が吹き飛ぶなど、それはアニメや漫画の世界でしか見たことがない。一体何をしたのか…

 

 

「居合か、成程…道理で速い訳だ。」

 

 

鼻血を拭い、立ち上がる牙剥がそう言い放つ。幸い急所には当たらなかったらしく、思いの外ダメージは多くなかったようだ。

 

 

「居合は抜刀した時にこそ最速が完成する。脱力し、そしてその一瞬にだけ力を込める。それを腕でやるとは………その両腕、力の消耗を抑えたいのかな?」

 

 

静かな表情で牙剥を睨む雪凪、何も答えない。何も言わない。ただただ睨み続ける。

 

 

「まぁいい、なら趣向を変えよう。」

 

 

体内に溜め込んだ帯電を一気に放出する。緑谷が受けていた物よりも更に大きく、更に威力が増している。牙剥はあの時でさえ力の発端程度しか出していなかった、その事実が見ていた者を恐怖へと落とす。

 

 

「弱点は光、爆発系や電系の個性には弱いだろう?」

 

 

光線の様に一直線にその放電は進んでいく。雪凪はスゥと息を吸い、吐き出す。そして蒼白い光が眼前にまで来た時、その中に勢い良く飛び込んだ。

牙剥は予想外の行動に目を見開き、困惑の声を漏らす。だが次の瞬間、目の前に強引にその放電の中を潜ってきた雪凪が現れ、油断した牙剥に手刀を当てようとする。

 

 

「満身創痍の体でそう来るか、流石に予想できなかったよ…チッ」

 

 

空いていた左腕で間一髪攻撃を防ぐ事に成功したが、受け止めたのは間違いだったかもしれない。少しずつ力が込められていき、押されていく。

 

 

(完全に力負けしている!?極み駆ける力とはここまで…)

 

 

力勝負は不利だと悟り、腕を払い受け流す。そしてもう片方の腕で雪凪の腹部へと拳を放つ。背中から衝撃波が流れ、雪凪の後ろに長いクレーターができる、常人が受ければ肉体が破裂する程の威力だろう。

 

 

「ッ!?」

 

 

しかし雪凪は牙剥を睨んだまま何事も無かったかのように仁王立ちしていた。この一瞬で牙剥は理解した。

奴と自分とでは、既に圧倒的なまでに力の差が開いているということを。

牙剥は無意識の内に恐怖を抱いていた。冷や汗が止まらない。第六感が逃げろと脳に訴えかけてくる。

 

 

「…………」

 

 

「チィッ!」

 

 

我武者羅に腕を振り回す。何度も雪凪に向かって打ち付ける。他の個性とも掛け合わせ、威力を上げる。だがそれでも大したダメージを与えられない。全てを左腕だけで捌かれる。炎も効かない、雷も爆発も効かない。

そして次の瞬間、放った両腕を簡単に捕まえられてしまう。

 

 

「貴様ァァァ!!」

 

 

「……覚悟はいいな、待ったは聞かねぇぞ。」

 

 

掴んだ両腕で、牙剥を地面に叩きつける。それを4回程度繰り返し、次は振り回し空の彼方へ吹き飛ばす。そして吹き飛ぶ牙剥より更に速い速度で背後に飛び、地面へと再び叩き落としていく。

更に追い打ちで地面に落とされバウンドした瞬間を狙い、足蹴りで倒壊したビルへ蹴り飛ばす。

牙剥からは色々と出してはいけない物を口から吐き出しながら後方へと飛ばされていった。

 

 

「さ…再生が追いつかん………嘘だ、何故ここま…」

 

 

「ベラベラと喋ってんじゃねぇ」

 

 

壁にめり込んでいる牙剥の顔面を今度は鷲掴み、そして地面に叩きつける。

 

 

「………」

 

 

「甘い、閃光弾!!」

 

 

「ッ!」

 

 

「超至近距離でのこれは中々に応えるだろう!阿呆が、俺の勝r…!?」

 

 

不覚にもよろめいてしまった雪凪の心臓目掛けて衝撃波を送り、鼓動を止めようとするがその腕は届くことはなかった。

目の見えない筈の雪凪が牙剥の腕の場所を正確に把握し、右足と右腕で挟みへし折る。

 

 

「ガァっ!?」

 

 

「阿呆は貴様だ、牙剥。目が見えなくても音と空気の流れで貴様の正確な位置は分かる!」

 

 

「生憎と、猛獣は五感が非常に優れているからな。さっさと来たらどうだ?まさか今までのが全力なんて言わないだろうな?」

 

 

子供が言う様な挑発だが、余裕の無い牙剥を誘い出すには十分な言葉だった。怒りに身を任せ、雄叫びを上げながら何度も何度も拳を振るう。

竜巻が発生し、嵐が吹く。地震も広範囲に響き渡り、たった一人の男がいくつもの災害を巻き起こす。

 

 

それ程の速く、そして強烈な攻撃もかすりもしない。当たったとしても全くダメージが入っていない。どうしても、どうやっても越えられない圧倒的なまでな壁が牙剥を苛つかせる。

 

 

「ハァ……ハァ………」

 

 

「終わりだな」

 

 

「終わり…?いやまだだ、まだ終わらせはせん…!僕は…私は…俺はァッ!」

 

 

牙剥がもう一度雪凪に立ち向かおうとするも、体はそれと反して膝と手を地面につけた。

 

 

「貴様は力を酷使し過ぎた、とっくに体の限界を超えている。もうこれ以上やっても意味は無ぇ、潔く降参しろ!」

 

 

何も言わずに、俯く牙剥。ようやく観念したのかと思った雪凪は極み駆けるを解こうとするが、次の瞬間牙剥が乾いた笑みを浮かべた。そして静かに笑う。負けて精神が可笑しくなったなったのか、もしくは…

 

 

「潔く?甚だ図々しい。俺とお前とでは戦いの歴が違う。キャリアが違う。センスが違う。賭けてきた物が違う。」

 

 

『そう、違うんだよ。何もかもが』

 

 

「ッ!」

 

 

気づいたときには遅かった。人の形を保ったまま牙剥の体に巨大な肉と骨が形成され、蒼色の皮膚が生み出される。

牙剥を中心に極太のスパークが飛び回り、岩やコンクリートさえも溶かし、燃やし尽くす。絶対強者の怒り、大地の暴君による制裁、雪凪はその姿に少なからず戦慄していた。

 

 

「その姿、まるで異形型だな。往生際が悪い」

 

 

『好きなだけ言えばいい。俺は全てを破壊し尽くす、それだけだ。』

 

 

「そうかい」

 

 

(さぁ、今の俺で一体どこまでやれるだろうか。そもそもとして既に"極み駆ける"の許容範囲はとっくに超えている。今はアドレナリンが大量に分泌しているからそこまで痛みは無いが、それも時間の問題だな。ならば早期決着か…)

 

 

牙剥の「行くぞォォォ!!」の掛け声で地面を蹴り一気に距離を縮める。その瞬間二人の姿は消え、彗星のように光りぶつかり合う。その巨体に見合わないスピードと豪快なパワーで雪凪はいくら"極み駆ける"になっていようとも少なからず苦戦を強いられていた。

 

 

「エエィアアアアアアアア!!」

 

 

『GUAGAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

飛竜種らしく空を駆け巡りながら真正面からの単純な殴り合いをする。流石に轟竜という名は伊達じゃない、荒々しいその戦い方と予測できない不可思議な暴れ方や強烈な噛みつき、何よりもパワーが凄まじい。

正直オールマイトと遜色ないのではないだろうか、だが雪凪にはその類稀なる動体視力と他を寄せ付けない圧倒的なスピードで牙剥の攻撃を紙一重で躱す。

 

 

(まずいな、左目がやれているせいか右目の負担が大き過ぎる。耳も…)

 

 

『ハァ……先程とは変わって、随分と弱ってるじゃないか』

 

 

「そりゃお互いにな…」

 

 

(牙剥の体が震えている………そうか、必死に抗ってくれているんだな。父さん…)

 

 

もう一度覚悟を決め、そして立ち向かう。戦って、闘って戰って、父親の犠牲を無駄にしたくない、自分の後ろへは行かせないが為に無我夢中で拳を振り続ける。体が悲鳴を上げるが無視し続ける。足が立たないのであれば腕を使う。腕が使えなければ噛みつけばいい。

 

 

たった15歳の少年が、命を賭けて必死に抗っている。血反吐を撒き散らし、骨が折れても立ち向かうその姿に、見ていた者の中には訳も分からず涙を流していた者もいた。

人々は一心に願った、少年の勝利を。少年の栄光を。

 

 

「真空波 極!!」

 

 

「空裂波 絶!!」

 

 

だが人々の願いも虚しく散り、雪凪はジワジワと追い詰められていく。戦闘力では勝っていた、短時間だけでしか動けないというデメリットが肝心なときに限って仇となる。

 

 

「…………………………」

 

 

『骨すら残さん、雪凪竜爪!!』

 

 

力を使い果たし、極み駆けるが解ける。白髪から黒髪に戻り、それは即ちヒーローの敗北を意味していた。そして牙剥は体内にある大量のエネルギーを溜め込み、そして確実に仕留める為緑谷の時のような光線状の電撃を飛ばす。

 

 

(火事場の馬鹿力ってやつか、よりによって……チッ、眩しいな……)

 

 

雪凪はゆっくりと辺りを見渡す。倒れている緑谷達、それを連れて撤退しようとするオールマイト、そして後ろには民間人がいる市街地、体が動かない。回避したとしても数万人の命が一瞬にして奪われてしまう。

 

 

(やるしかねぇよな)

 

 

歯を食いしばり、腕を一度後ろに引き、そして前に突き出す。

 

 

「ハァアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

死力を尽くし、最後の力を振り絞ってなんとか月迅竜にはなれるが、この体では勿論受け止めきれる訳がない。雪凪は手が焼ける感覚を覚えながら蒼白い光に勢い良く押され続ける。

 

 

『今度こそ終わりだな、父親譲りのその爆発力は非常なまでの驚異となる。少々誤算が発生したが、まぁこれで良しとしよう。さぁ、始末させてもらうぞ!』

 

 

放出しているエネルギーに増強系、強化系の個性を合わせ更に威力を高める。雪凪を押す力は少しずつ強まり、踏ん張っている足からは血が滝のように流れてくる。

 

 

(あぁ駄目か、結構頑張ったと思うんだがな…………結果なんて誰にも分かるわけねぇか。

クッソ……今日一日で一体何回意識失うんだ?だけど、まぁいいか、短かったが……いい"夢"が見られた。)

 

 

死は救いなんてよく言うよ、こんなクソッタレな気分で死ぬなんざ、俺はやだね。

 

 

ゆっくりと目を閉じる。目の前にはただただ暗闇が続くだけ。何もない、何も聞こえない。

だけどなんでか集中できない、落ち着けない。気持ちが悪い、気分が悪い。

仕方が無いから目を開ける。すると目は見えるけど、音が聞こえない。

 

 

(なんだ…これ)

 

 

それに何故か妙に意識がはっきりしている。痛みも少ない。

 

 

(耳鳴りがうるせぇ……頭が重い………)

 

 

そんな時、雪凪に聞こえていた耳鳴りの音が、変わっていく。いや、元々そうだったのかもしれない。人の声が聞こえる。しかも大勢の……

 

 

(がんばれ……か)

 

 

よく分からないが、そんな言葉がどこからか聞こえてきた。一人、また一人と声が増えていき、もう何人言ってるのか分からなくなっていた。

 

 

(頑張ってるやつに、頑張れって言葉は一番キツイんだよなぁ…)

 

 

雪凪は少しほくそ笑むと、背中に力を込める。動かなくなった指を無理矢理動かす。盲目になった左目ごと目を見開き、口に溜まった血を吐き出す。

 

 

「まぁ、一応やり遂げるけどよ。」

 

 

(だからアンタも頑張ってくれよ、父さん)

 

 

そしてもう一度再現する、その白銀の姿を。瞬間、雪凪から天にも届くような白い柱が立ち、牙剥の放っていたエネルギー波が食い止められた。

牙剥は突然の事に顔を青ざめる。万が一が起きてしまった。それをさせない為にすぐにトドメを刺そうとしたのにも関わらず。

 

 

『……ッ!?』

 

 

「ガァァァァァァァァァッ!!」

 

 

これまでの人生の中で最も焦りを感じているであろう牙剥は、体に大きな負担を覚悟で全ての個性を総動員させる。肩が外れそうになる。腕が壊れかけそうになる。それでも尚、押しきれない。

 

 

『馬鹿な……何故押し切れん!?』

 

 

「教えてやろうか」

 

 

「お前の中で、必死に足掻っているんだよ。」

 

 

その瞬間、牙剥の頭の中でおびただしい程の声が響いてきた。途轍もない頭痛と吐き気が襲ってくる。頭を必死に押さえつけ、痛みを堪えるがそれでも収まらない。

 

 

『なんだ!?頭の中に………声が…!!』

 

 

「個性はその人に宿った力だ、例え肉体が滅んでもその人は個性の中で生き続ける。」

 

 

「分かるか、その声は……お前に全てを奪われた者達の怒りだ!大切な物を奪われた者達の嗚咽だ!!」

 

 

『そのようなくだらん物で、俺が!!』

 

 

雪凪は歯を食いしばりながら、一歩一歩とその足を前に進める。少しずつ、少しずつ、牙剥との距離を縮めていく。

 

 

「貴様には分からんだろうさ、人を道具にしか思っていない貴様にはぁぁぁぁ!!」

 

 

『この、痴れ者がァァァァァァァ!!……ッ!?』

 

 

牙剥が怒りに身を任せ、更に力を込めようとする瞬間………突然横から爆発物の様な物が牙剥の横顔に直撃した。そこには…

 

 

『爆豪……勝己ッ!』

 

 

「さっさ……やれや、忍者野郎ッ!」

 

 

『今だやれ!!』近くには誰もいない。だが、確かにそう聞こえた。そして頭で考えるよりも、先に体が動いていた。

 

 

『ッ!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スパイラルエッジ…」

 

 

遠く離れていた距離を一瞬にして詰め、そしてその拳は牙剥に届いた。日本刀が風で落ちてきた桜の花を斬るかのように、その決着は静かなものだった。空気を斬る音だけが響き渡る。鉄の匂いがする。

 

 

「………………」

 

 

雪凪はうつ伏せで"倒れていた牙剥"を、静かに見つめていた。次の瞬間、街中から歓喜の声で溢れかえっていた。雪凪を称える声、奮闘した緑谷達を称賛する声。

だがそれとは別に、雪凪は牙剥に対し、やっとの思いで勝利したのにも関わらず、どこかやり切れない、やるせない様な表情をしていた。

 

 

「おい、忍者野郎………いや」

 

 

「"雪凪"だったか?」

 

 

「…………どっちでもいいさ」

 

 

雪凪は爆豪とは目を合わせず、背を向き話していた。だが爆豪は気づいていた、雪凪の声が微かに震えている。喜びで震えているのではない、何かもっと別の感情……それこそ泣きそうになっている程の。爆豪はわざと知らないフリをして、雪凪に話しかける。

 

 

「テメェ、これからどうするつもりだ」

 

 

風が二人の間を通り、髪をなびかせる。

 

 

「無断で個性を武力行使に用いた事を、罪に問われるだろうな。それ以前にこの体だ、次眠ったら確実に数日目を覚まさない。もしかしたら死ぬかもな。」

 

 

「まぁ、なんだ……助かったぞ、爆豪」

 

 

「俺は不意打ちしただけだろうが。」

 

 

白髪から黒髪へ戻し爆豪の方へ振り向く。

 

 

「………一つだけ聞いていいか」

 

 

「……………」

 

 

少しだけ沈黙が流れる。ほんの数秒、だけどとても長く感じる。

 

 

「俺は、お前らの所に……帰っても良いのか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………勝手にしろ」

 

 

爆豪はそれだけを言うと、オールマイトの方へ振り向き、去っていった。たった一言、たった一言のその言葉に、雪凪は救われていた。無意識に口角を上げ、そして誰にも聞こえない様な小さな声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとよ」














これでやっとこさ神野区編終了じゃあ!!疲れたァァァァァ!!!
次からはインターハイ編?だったはず……あぁあぁやるかぁぁぁぁ


あと補足で自分の文章力がクソ雑魚ナメクジ以下で分からない可能性があるので、牙剥の途中からの形態で【人の形を保ったまま〜】って書いてありますが、あれは簡単にいえば腕や足だけじゃなくて、フルカウルのように全身に個性を発動させる……つまりワンピースのロブルッチと同じ容量で、尚且DBGTの超サイヤ人4みたいな見た目だと思ってください。



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仮免許取得&インターン編
第三十七話:愛・悪・熱


はい遅くなったー、二十日〜、お久しぶりでこざいます。まぁ待ってる人いないと思うけどごめんなさい。リアルが忙しくてしょうがない……(サボってたとは言わせん)
適当な題名ですが一応一万文字ぐらいあるんで……ユルシテクダサァイ





























あ、あとZガンダム見てました。


「オールマイト」

 

 

「爆豪少年……」

 

 

救急隊に運ばれていた今にも意識を失いそうな爆豪がオールマイトの服を掴み、掠れた声で問いかける。

 

 

「すまねぇ……俺が……俺がアンタを終わらせちまったッ!俺がもっと強けりゃ、アンタがこんな姿を晒す事になんてならなかった!!」

 

 

「ッ!」

 

 

「君が、自尊心の高い君が謝るなんて………余程悔しかったんだろう。私がもっとしっかりしていればッ!私が悪いんだッ……何もしてあげられなかった私がッ!!」

 

 

「君は、もう十分戦ってくれた。もう休んでいなさい」

 

 

爆豪は拳を握りしめ、悔しそうにするオールマイトを最後に意識を手放した。

 

 

爆豪達を駆けつけて来た救急隊に任せ、オールマイトは緑谷を抱き抱えながら立ち尽くしていた。

 

 

(大馬鹿者だよ、君は。いつもいつも自分の事なんて後回しにして、他人を助けようとする。本当に馬鹿だよ…………だが、だからこそ私は君を選んだんだろう。)

 

 

窪んだ瞳で緑谷を見つめる。近くには現場を撮影していた者がオールマイトに取材しようと近付いて来ていた。

 

 

「オールマイトさん、そちらの少年も」

 

 

「あぁ、すまない。頼んだよ」

 

 

救急隊の隊員に負傷した緑谷を預けると、オールマイトはどこか遠くを見て、そして一言だけ、誰かに向けて発信する。その一言はこれからの運命を大きく変えるかもしれない。オールマイトは平和の象徴の役目を終え、そしてその意志を託す。

 

 

「次は……君だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 病院 ーーーー

 

 

「アンガ?」

 

 

目を覚ますと、そこにあったのは白い天井だった。恐らく牙剥との激戦でボロボロになった体が耐えきれず気を失ったのだろう。

 

 

「花………誰が置いたんだろ……」

 

 

ベッドの横にある小さなテーブルには花の入った花瓶が置かれていた。白に近い紫色、アサガオに似ているがこれは多分初夏から春に旬になる"ペチュニア"と言う花だろう。父親である根津が花にも詳しい為、いつの間にか花についての知識が身に付いていたようだ。

 

 

「……なんか、すげぇ長い夢見てた気がする…………そういや緑谷達は……」

 

 

緑谷達の安否に心配と不安を抱いていると、部屋の扉が開き白い衣服を纏ったこの病院のスタッフらしき男性が入ってきた。

 

 

「おっ!目を覚ましてる!」

 

 

「?」

 

 

「やぁ!ここは横浜市立大学附属市民総合医療センター、まぁ総合病院だよ。君があの爆豪勝己君と何か話をしたあと、バッタリと倒れていたそうだよ。覚えていないかい?」

 

 

確かに言われてみれば爆豪と会話したあとの記憶がない。と言う事は誰かがここまで運んで来てくれたのだろうか。

 

 

「分からない、何も覚えていない…」

 

 

「んーまぁしょうがないか!あんな戦いやった後じゃあね、じゃああのあとの事なんだけど………」

 

 

取り敢えず、スタッフの人からその後の事を聞いた。オールフォーワン、並びに牙剥での戦闘で雪凪を含めた雄英生徒はかなりの深手を負っており、最寄りのこの病院へと運ばれた。爆豪達は一昨日退院し、緑谷は昨日無事に退院したらしい。

 

 

つまり三日間以上は寝ていたという事だ。その後もオールマイトが事実上の引退と言う事で世間が慌ただしかったそうな。しかし、それとは別に世間が注目していた事がある。

どうやらあの戦いで牙剥に立ち向かった7人は、未来の英雄と讃えられ、そして雪凪に至っては敵連合ナンバー2である牙剥を倒した事でとんでもない程のファンが出来ていた。

 

 

その為、本来裁判が起こるはずの出来事が数万人にも昇る人々の署名活動や猛反発で知らない所で無罪放免になったらしい。なんという好都合………その間、雪凪についてのニュースなどが頻繁に放送されていた。芸能人やニュースキャスターが自分をベタ褒めしており、なんだかむず痒くてしょうがない。

 

 

「まぁすごいよ?君についた異名……赤き残光だの覇竜だの……」

 

 

(白疾風……俺の二つ名…………)

 

 

「特に呼ばれている異名が"不滅の極致"らしいけどね。みんなそう言ってる」

 

 

なんだその原点にして頂点のパクリみたいな名称は………考えたの誰だ!子供が好きそうな言葉を繋いだだけじゃないか!!

 

 

「嘘の災害や事故ルーム、強化合宿でのヴィラン強襲……そして神野区での事件……君は3回も死にかけた。そしてその度立ち上がり、結末を変えた。それが不滅の部分の由来。極致はそのままの意味だね、純粋な戦闘力……その年齢での強さの限界、だから極致……らしいね。」

 

 

「あぁ…そうですか……まぁ大体のことは理解しました。それで俺は何時になったら退院に?」

 

 

「大体2日ぐらいかな、本来なら一週間はいなきゃ駄目なんだけど君の再生力すごくてね。まぁ手術も初日で終わらせたし、リカバリーガールの手も借りたから問題無いよ」

 

 

ニコニコしながら話すスタッフの人だったが、次の瞬間少し落ち着いたように息を吐き、そして笑顔は崩さず、それでいて真剣な顔で雪凪に話しかけた。

 

 

「あそこには、神野区の近くには僕の妻と産まれたばかりの子供がいたんだ。」

 

 

「………」

 

 

「君がいなかったらみんな死んでたかもしれない。それは僕以外にも山程いると思う。君が運ばれてきた時は、何が何でも助けないとって思ったよ。だから2つだけ言わせてほしい。」

 

 

「まずはごめん、死力を尽くしたけど、君の事を治しきる事が出来なかった。左腕、右足に痺れの後遺症、左目の失明、鼓膜は機能の低下、時々頭痛も起きると思う。本当に、申し訳なかった。未来ある少年を、僕は助けられなかった。」

 

 

「そしてありがとう、君のお陰で僕の家族は………とっても元気だよ!」

 

 

悲しげな表情からニカっとした顔になった。雪凪はその言動にどこか温かみを感じていた、何故だろう。でも嫌な気分ではない、とても……清々しい。心に空いた穴に、何かがスッポリとハマったような……

 

 

「………そうですか、なら良かった」

 

 

男性は笑いながら泣いていた。俺はこの人の家族や友達じゃない、でも会えて堪らなく嬉しかった。これはヒーローとヴィランによる戦い、犠牲なんて山程払わなければならない。この怪我は仕方の無いもの、そう考えるしかない。

 

 

 

 

ーーーー そして二日後 ーーーー

 

 

あれから二日が経過し、退院日となった。少々、いや結構不自由な体だけど命があるだけ良かった。あの人には感謝しないと。あと因みになんだが、どうやらあの一件以来雄英は生徒の安全を考慮し、全寮制を取り入れたらしい。

 

 

「じゃあ、達者でね。無茶しちゃいけないよ」

 

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

「うん!あとそういえばなんだけど……」

 

 

男性は徐ろにポケットから小さい折られた紙を取り出し、雪凪に渡した。

 

 

「実はちょくちょく君の事を見に来ていた人がいてね。名前は分からなかったけど、青いロングヘアですっごく可愛らしい子だったんだけど…」

 

 

(波動先輩か………俺が寝ている間に花を置いていったのはあの人か。食事時にでも礼を……)

 

 

「もしかして恋人かい!?」

 

 

思いっきり目を見開いた。当然驚いた、心臓に悪い。だが雪凪と言えど男、彼女に気が無い訳ではないが……

 

 

「い…いえ、その人とはそう言った関係じゃ……」

 

 

(あれ、もしかして今僕……世界一強い高校生を圧倒してる?)

 

 

「俺は…………一途なんです」

 

 

「………兎に角、お世話になりました。それでは」

 

 

「お達者で〜〜〜」

 

 

スタッフの人に軽く頭を下げ、そして病院を去った。松葉杖、意外とやりにくい…。取り敢えず、近くにいたタクシーで駅まで連れてってもらおうとしたが……随分と周りがザワザワとしてこっちを見ている。まぁ大体予想は出来ているが。それにしても視線が痛い。彼奴等もこんな思いだったのだろうか?

 

 

タクシーの運転手にもすごい色々と話しかけられた。めっちゃ褒められた。駅までの道のりが凄く長く感じる。胃が痛い。

 

 

「………」

 

ーアノヒトッテ ヒソヒソ

 

ーユウエイノヒトダヨネ

 

ースゲー!サインモラオウカナ

 

 

結局電車の中でもヒソヒソされて、それが2時間続くとなると中々にヤバい。精神がメリケンサックでボッコボコに殴られたような恥ずかしさを乗り越え、なんとか目的地へ辿り着いた。

 

 

(離れてたのはたかだか数日のはずだが、随分と久し振りな気がする。)

 

 

「今の俺の姿を見てなんて言うか………」←全身ミイラ状態

 

 

校門を抜け、校舎の中に入って行く。今は午前12時程、他の生徒は授業中だろうか、所々からチョークを黒板に書き込む音が響き渡っている。外ではヒーロー科のみんなが特訓しているようだ。他の生徒の邪魔にならぬよう、気配を消して誰もいない道を通る。

 

 

「ここか」

 

 

目的地である校長室にようやく辿り着いた。そもそもとしてあまりここら辺には通らないので、少し迷子になりかけたのは秘密にしておこう。

 

 

ーーーコンコン  ハイリタマエ

 

 

ドアを軽くノックすると向こう側から声がした。雪凪はゆっくりとドアを開ける、そしてその奥には優しい笑みを浮かべながらこっちを見つめていた根津がいた。

 

 

「ただいま、今帰ったよ」

 

 

「あぁ、ご苦労さま…よく頑張ったね。」

 

 

その瞳には僅かに涙が溜まっていた。詰まる話も山程ある、二人はゆっくりとこれまでの事とこれからの事を話し合った。

 

 

「相澤君には君の事を伝えておいたよ。」

 

 

「そしたら、なんと?」

 

 

「本来なら除籍処分だったけど、そんな事をしたら世間からなんて言われるか分からない。ってさ。相澤君はメディアや世間の目が大の苦手だからね。」

 

 

「………ホント、どこまで不器用なんですか……」

 

 

「彼なりの最大限の優しさなのさ、しっかりお礼を言っておくんだよ。」

 

 

「えぇ、勿論。」

 

 

本当に不器用な人である。でもだからこそあの人はかっこいいんだと思う。ヒーローとしての責任も持っている、生徒である俺達を信頼しているし、信頼されている。

俺は多分、あの人を色んな意味で超えることは出来ないかも知れない。

 

 

(勝てる気がしねぇな、色んな意味で……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 牙剥Side ーーーー

 

 

「牙剥の輸送が完了しました。」

 

 

「分かったわ。あなた達は下がって」

 

 

ここは日本にある凶悪なヴィラン達を収容する系列第二位の監獄ペルセポネー、本来なら脱獄不可能と呼ばれている"タルタロス"へと収容するのだが、そこにはオールフォーワンが収容される事になる。二人の個性は未知数、故に同じ空間に居合わせるのは危険という判断、小学生でも分かるだろう。

 

 

もしテレパシーで会話できたら?それで脱獄の作戦でも立てられたら?そんな考えが人々の頭によぎった。その結果、政府で別々で隔離しようという判断が下された。そして現在、牙剥に対する尋問が行われている。

女性は目の前にいる強大な悪魔に対して、次々と質問を投げかける。

 

 

「貴方は何者?」

 

 

「さぁな」

 

 

「個性はどこから入手したの?その個数は?」

 

 

「数えるのも面倒だ、勝手に想像しろ」

 

 

「何が目的だったの?」

 

 

「旅行」

 

 

「ふざけないでッ!!真面目に答えなさい!!」

 

 

椅子から立ち上がり、机に手を叩きつける。それでも牙剥の表情は動かない。まるで全てを見透かしているようだ、その光景に女性は少なからず恐怖を抱いていた。

 

 

「私は大いに真剣だが?」

 

 

「どこか真剣だって言うのよ!私の質問にちゃんと答えなさい!」

 

 

「断る、何故私が君のような者に口を割らなければならない?」

 

 

「チッ、答えなさい、じゃないと痛い目にあうわよ?」

 

 

「と、いうと?」

 

 

「私の個性は"真実語り"。私の前で嘘言や黙秘をすると体中に雷が落ちたかの様な激痛が走る。この力でこれまでの犯罪者をブイブイ言わせてきたんだから。」

 

 

「最近の警官はロマンチストだな。真実語り、成程……素晴らしい個性だな。裁判官要らずじゃないか」

 

 

相変わらず不気味な冷たい笑みを消さず、茶化すように言う。

 

 

「だが時にして、真実は虚実よりも奇なる事もある。以前相まみえたエンデヴァーとやらにも言ったが、無知とはこの世で最も恐ろしい代物。」

 

 

「君達は私について何も知らない。」

 

 

拘束具がギチギチと音を鳴らす。

 

 

「ッ!?」

 

 

「だが、私は君達をよく知っている。もうこの時点で決定しているんだ」

 

 

ギチギチと音を鳴らしていた拘束具は遂にはち切れ、四方八方にその残骸が飛び散る。

女性は腰につけていたピストルを抜き出し発泡しようとするが、あと一歩遅かった。

 

 

「全ての個性は一つの柱に繋がっている。おかえり、有効活用させてもらおう。」

 

 

「だがそれにしても……耳障りだな、このサイレン。この縛鎖を解いたからか?まぁいい、大本を潰せば………死柄木らと合流する前に資材も調達しておこう。ここは中々に物資が揃っている、少し回ってみるとしよう。少々申し訳無いが、鏖殺させてもらおう。」

 

 

収容所内を散歩でもするかのように歩きながら、あちこちへと回ってみる。途中ピストルや個性を使用してきた者達もいたが勿論鏖殺。

 

 

「なんだ?隊列なんぞ作りおって」

 

 

「動くなッ!それ以上こっちに近づいたら発砲する!!」

 

 

ドアの前で銃を構えた男が20人程束になってこちらを警戒する。これまで出てきたのは必ず2人から3人だった、だがあそこのドアの前でここまでの人数……

 

 

「そこの奥になにかあるな、女でもいるのか?」

 

 

牙剥は警官の言うことを無視し、壁に手を当てる。

 

 

「おいッ!!?」

 

 

「やはりな、約15名……全員女か。いや違うな、微弱だが感じるぞ………子供か?」

 

 

その瞬間、警官達は発砲を開始していた。これほどまでの恐怖を感じたことは無い、そのような言葉が頭の中に一気に流れてきていた。

 

 

「言ったろう、鏖殺だと。一匹たりとも生かしはしない……」

 

 

「衝撃反転」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 外 ーーーー

 

 

爆発しながら崩れていく収容所。物資も調達できた牙剥は死柄木達の元へ戻ろうとするが、そこへ遅れてやって来たヒーロー達が立ちはだかる。

 

 

「御機嫌よう、一足遅かったようで?」

 

 

二十人以上の名だたるヒーロー達が牙剥の周りを囲むようにして包囲する。

 

 

「あの少年達が命を賭して戦ったんだ、俺達の後ろへは決して通さん!!」

 

 

「子供に任せっきりじゃ、大人としてもヒーローとしても恥ずかしいからね」

 

 

「あぁそうかい」

 

 

(数にして27、朝の体操代わりにはなるか。まぁ唯一警戒するべき人物は………奴だな)

 

 

顎に手を置きながら視線をとある女性に移す。

 

 

「久しぶりに骨のありそうな奴だな!蹴っ飛ばす!!テメェら手ぇ出すなよ!」

 

 

指をポキポキと鳴らしながら牙剥を凝視するのは、現在ヒーロービルボードチャートで上位に食い込む程の実力者、勝ち気なラビットで知られているミルコであった。個性は異形型の兎…

 

 

(兎のクセしてライオンより強い、癪に障る。)

 

 

「オラァ!!」

 

 

「フンッ!」

 

 

二人のくりだした上段蹴りがクロスし、火花を散らせる。その衝撃で二人の間には小さめのクレーターができ、周りにあった物や他のヒーロー達は吹っ飛んで行ってしまう。

 

 

「やるじゃねぇか、こりゃ久々に全力出せるなァァ!!」

 

 

(こいつは、少しまずいかもしれんな………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 雄英Side ーーーー

 

 

戻ってきたか、それじゃあこれまでの経緯を話そう。現在俺は体育館γへ来ている、なにやらもうすぐ仮免取得の試験があるそうだ。今回の授業では一人最低でも二つは必殺技を作れ……と言う事らしい。体は不自由だが勿論それには俺も参加する事にした。俺だって仮免は欲しい。

 

 

復帰したという事もあってみんなが俺の所へ集まってきた。大した怪我ではない……と言えば嘘にはなるが、それより常闇が俺の目に巻いてある包帯を凄くキラキラした目で見てくる。俗に言う"ちゅうにびょう"?と言うやつか……

まぁ相澤先生の呼びかけもあって再び特訓に戻り、俺も必殺技作りに参加した。←今ここ

 

 

「ト言ッテモ、オ前ニハ既ニイクツカノ必殺技ガアッタナ。」

 

 

現在俺は分身体のエクトプラズム先生に必殺技作りを手伝ってもらっている。だが俺は既に必殺技を持っているため、どうするか迷っている。

 

 

「改良をするにしても今の体じゃあ出来ないな。」

 

 

「「ウ〜ム」」

 

 

「ナラ趣向ヲ変エルトシヨウ。狩迅、オ前ノ技ハ殺傷能力ガ高過ギル。ソレデウッカリ相手ヲ殺シテシマウと言ウ事モ考エラレル。」

 

 

「なるほど、つまり斬撃ではなく打撃による無力化か……」

 

 

「ソウ言ウ事ダ」

 

 

確かに思い返してみれば、俺の技の殆どは斬撃系だ。もし仮に実力が拮抗している者と当たってしまったら、手加減出来ずに相手に致命傷を与えてしまう。

 

 

(近距離は肉弾戦で十分………となると遠距離から致命傷を与えない程度の、且つ効率的な打撃方法………)

 

 

ふと、俺は無意識に緑谷の姿を見ていた。彼やオールマイトの"スマッシュ"、これが鍵になるかも知れない。

少し参考にしてみよう。

 

 

「何カ思イツイタヨウダナ」

 

 

「えぇ、少しだけ。地味かも知れませんが、より効果的に、より速く、より不可視に……」

 

 

こうして、仮免取得に向けて着々と準備を進めていく雪凪達。訓練の日々を超え、そして試験当日となる。因みに余談ではあるが、これの後相澤先生にしこたま怒鳴られたぞ!あと入れ寮での雪凪の部屋は5階、砂糖、轟、瀬呂、八百万、蛙吹と同じ階層である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 仮免許取得試験会場 国立多古場競技場 ーーーー

 

 

「なんか、他校の人達みんなこっち見てない?」

 

 

「あぁ、特にこの7人に…」

 

 

「おい狩迅〜、ちょっとあそこの女子に手ぇ振ってみ?」

 

 

何故か瀬呂が訳のわからないことを言ってきた。どうしてか聞いてみても「いいからいいから!」で通してくる。まぁ簡単な頼み事だからやってはみるが…。

 

 

「……」ヒョイ

 

 

キャァァァァァア!!

 

 

軽く手を上げてみただけなのにみんな逃げていった。あと何故だろう、峰田と上鳴、あと耳郎と八百万が睨んできた。

 

 

「お前すげぇモテてんな!?」

 

 

「好かれているのか、俺が?」

 

 

「まさかお前、轟と同じで自覚ない系か!?」

 

 

「感覚が分からんが何故か恥ずかしい。女性経験無し、文句あるか!」

 

 

そう言うと瀬呂が大笑いし、吹きながら転がりまわった。何故だろう、無性に腹が立つ。一発殴っていいだろうか?

 

 

「ふぅ…緊張してきたぁ……」

 

 

「試験て何やるんだ?はぁ〜、仮免取れっかなぁ〜」

 

 

「峰田、取れるかじゃない。取ってこい」

 

 

「お…おお!モ○チンだぜ!!」

 

 

いつにも増して緊張感が漂っているA組全員、なにやら今年の雄英の仮免取得方法は特殊で、最近での雄英高校はヴィランの襲撃が激化している為、早めに即戦力として戦えるよう、本来2年でやる事を一年生の時点でやっている。

 

 

一年で仮免を取得する高校は少数派。つまり、今回の仮免の相手は自分達よりもヒーローについて学んできた年上達がほとんどだと言う。

唯でさえ倍率が低い、その上この状況とまで来ると本当に絶望的である。

 

 

「この試験に合格し、仮免許を取得できればお前ら卵は晴れてひよっ子……セミプロへと孵化出来る。頑張って来い!」

 

 

「シャア!なってやろうぜひよっ子によ!」

 

 

「いつもの一発決めていこうぜ!!せーの!」

 

 

「Pulse…」

 

 

「ULTRAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」←誰だこいつ!?

 

 

切島がいつものように喝を入れようとPulseUltraの掛け声と同時になんともまぁ、後ろから常に全力で生きていそうなガタイの良い坊主頭が出てきた。

 

 

「なんだこのハゲ、どっから出てきた!?」

 

 

「勝手に他所様の円陣に入るのは良くないよイナサ…」

 

 

「は!?しまったぁ!!どうも、大変失礼致しましたァァァァァァァ!!」アタマゴン!

 

 

土下座に匹敵する程のどストレートなお辞儀で地面に頭を叩きつける謎の男。どう見たってただの変態でしかない。変態だな、うん変態だ。

 

 

「あの制服、見覚えがあるぞ。士傑だ……」

 

 

「東の雄英、西の士傑…」

 

 

士傑高校、数ある名門校の中でも唯一雄英に匹敵すると言われている難関校、勿論その戦闘力も折り紙付き、雄英と同じく化け物だらけである。

 

 

「自分、一度言ってみたかったんす!PulseUltra!!自分、雄英高校大好きっす!!

雄英高校の皆さんと競えるなんて光栄の極みっす!!よろしくお願いしまァァァァす!!」

 

 

「あ、血」

 

 

「行くぞ」

 

 

その後も色々な過程があったが、あの夜嵐イナサと言う男……相澤先生がマークしておく様に言う程の実力者、極力戦闘は回避したほうがいいだろう。あとなんか相澤先生に求婚してくる人がいた。傑物学園の人達らしい。すごく握手を求められた、特に神野区で戦った7人に……

 

 

ーーー パチンッ!

 

 

「ッ!」

 

 

傑物の爽やか風のイケメンがみんなに握手を求めており、そして耳郎に触れようとした瞬間、何故か雪凪はその手を弾いていた。

 

 

「狩迅…?」

 

 

「…………」

 

 

「あ…あぁ、すまない。反射的に動いてしまったんだ、怪我は無いか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あれって…)←蛙吹

 

 

(まさか………!)←上鳴

 

 

(狩迅が!?)←峰田

 

 

(耳郎ちゃんに!!)←葉隠

 

 

(本能的に恋してる!!)←芦戸

 

 

獣は本能で動くことが殆ど、それがまさかこんなところで発動してしまう。あと芦戸はピョンピョンと跳ねており、寮に帰ったら絶対に問い詰めると決心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 会場内 ーーーー

 

 

ガヤガヤ

 

 

ザワザワ

 

 

「え~、では仮免のやつやりまーす。あぁ…僕ヒーロー公安委員会の米良です。好きな睡眠はノンレムスイ……よろしくぅ…」

 

 

やはり予想通り、会場は決して狭くはない、のはずなのにも関わらずぎゅうぎゅう詰めになる程の数、これは確かに倍率が高いわけだ。司会の人には敢えてツッコミはしないでおこう。

 

 

「仮免のやつの内容ですが、ずばりこの場にいる受験者数1540人、一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいます。現代はヒーロー保護社会と言われ、ステイン逮捕以降ヒーローの動きに疑問を呈する者も少なくありません。」

 

 

「まぁ一個人としては、動機がどうであれ命懸けで人助けしている人間に"なにも求めるな"は、現代社会に置いて無慈悲な話だと思うわけですが……まぁ単価にしろ理由にしろ、多くのヒーローが救助、ヴィラン退治に切磋琢磨してきた結果、事件発生から解決までの時間は今、引くくらい迅速になっています。」

 

 

「君たちは仮免許を取得し、いよいよその激流の中に身を投じる。そのスピードについていけない者、ハッキリ言って厳しい。よって試されるはスピード………」

 

 

「条件達成者数100名を通過としまーす。」

 

 

後ろのモニターにデカデカと一次試験通過者100名と写し出され、周りはザワザワと焦り出す。

 

 

「受験者数は合計1540人、合格者は5割だと聞いていましたのに……」

 

 

「つまり、合格者は1割を切ると言うわけね……」

 

 

「まぁしかし、社会で色々あったんで?運があれだと思って、あれしてくださーい。で、その条件と言うのがこれ、受験者はこのターゲットを自分の体の好きな箇所に、ただし常に晒されている場所に取り付けてください。」

 

 

「そしてこのボールを6つ携帯しまーす。まぁ簡単に言えば、ボールが当たったら発光するんで、3つ全部光ったら失格です。最後のターゲットにボールを当てたものを討伐者とし、二人倒した者を選抜していきます。」

 

 

「チームになってのバトルロワイヤルみたいな感じか?にしても入試よりも苛烈だな。」

 

 

「恐悦至極、それでこそ戦いがいがある。」

 

 

「雑魚共が、全員まとめてぶっ殺してやらぁ……」

 

 

「えーじゃあ、展開後、ボールとターゲット配るんで全員に行き渡って一分後にスタートします。」

 

 

『展開?』

 

 

疑問に思うのも束の間、その瞬間天井が大きく開きだし太陽の光が差し込む。そして雪凪達のいた会場が箱のように展開し、試験会場のど真ん中に居たことを理解させられる。

 

 

「各々苦手な地形、好きな地形だと思います。自分の個性を生かして頑張ってください。」

 

 

「な…なんじゃこりぁ!?」

 

 

「馬鹿広ぇ!?」

 

 

「え!何々!?どうすんの!?」

 

 

「みんな!あまり離れず塊で動こう!」

 

 

緑谷の案にほとんどの者が賛成するが、そのなかでも二人異を唱える者達がいた。爆豪と轟である。二人の性格と個性上、あまり塊にはなれない。さっさと何処かへ行ってしまう。

 

 

「あいつら、分かってねぇのか…俺達は既に体育祭で手の内を明かしてる。それがどれだけのハンデか…」

 

 

「そうか!確かにそう考えると、僕達はもう既に……」

 

 

「それだけじゃない、風の噂で聞いたことがある。毎年行われるこの試験では、恒例行事がある。」

 

 

「それって……」

 

 

「もしかして……」

 

 

サイレンの音と共に試験開始の合図が出される。次の瞬間、他校の生徒らが一斉にこっちへ向かってきた。

 

 

「テレビで見たよ、自分を破壊してしまうほどの攻撃力……そして」

 

 

「君の竜の力!!」

 

 

四方八方から数十にも昇る程の数のボールを投げつけられる。確かに他校からすれば雄英は最も危険で最も潰しやすい。合理的な判断だ、だがしかし……

 

 

(ワンフォーオール フルカウル…)

 

 

「シュートスタイル!!」

 

 

「黒影!!」

 

 

「えぇい!!」

 

 

「ヨッシャァァァ!!」

 

 

それでもこちら側はそのハンデがあったとしても、負ける理由にはならない。

 

 

(数だけで俺達を倒せると思ってやがる。舐められたもんだ)

 

 

「もう引く事は出来ねぇぞ、傑物!士傑諸共全員脱落だァァァ!!」

 

 

亜種羅を発動させ、ボールを持ち敵陣へと突っ込んでいく雪凪。

 

 

「みんな!先生が言っていたようにあの男には特に注意しろ!負傷し体育祭の時の様に動けないとは言え、その戦闘力は依然として脅威、最低でも10人で相手しろ!!」

 

 

雪凪はそれを無駄な行為だと言うように、進む速度を更に速める。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








無理矢理だね、うん無理矢理。牙剥の脱獄も無理矢理、雪凪の恋も無理矢理、頭が痛くなってきた……ちくしょうめぇ……
変な所あったら教えて下さい。月曜日、頑張ルィマシォオウォ……唯一の楽しみが月曜から夜ふかしと進撃の巨人しかねぇ……









次回 雪凪(狩迅)VS傑物&士傑   圧倒的数の暴力!!


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