陸戦空挺ウィッチの残火 (Type6)
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陸戦空挺ウィッチの残火

初めての投稿です。「陸戦空挺ウィッチが書きたい!陸戦空挺ウィッチが陸戦ウィッチにボコボコにされるのを書きたい!」という欲望のままに書きました。計4時間で書き上げたので、マトモな資料集めや考察はしていない上にかなり雑な内容となっています。ご了承ください。


高度3000m、M551A5陸戦空挺ストライカーユニットを12機抱えるC-130Hは3機のF-4E航空ストライカーユニットを装備したウィッチに守られながらキエフ大公国の隣国ルーシの上空を飛んでいた。

 

 キエフ大公国に侵攻してきたオラーシャを退ける為にNATOはキエフ大公国の支援を決定した。しかしながら、オラーシャ陸軍の綿密な計画と圧倒的な機甲戦力によって苦戦を強いられていた。それを打開するために戦線後方の補給基地を襲撃することとなったのだ。

 

 C-130の1番機には第1小隊が乗り込んでいる。4機のストライカーが詰め込まれているため、いくらC-130といっても狭く感じる。

 

 貨物室前方にあるウィッチの休憩スペースではElicia Cañizares(エリシア・カニザレス)Jerry Duffy(ジェリー・ダフィー)が談笑している。ブリタニア系移民のErin Bishop(エリン・ビショップ)は私と作戦前のティータイムだ。

 

 各々が好きに時間を潰しているところに、機内に機長のアナウンスが響く。

 

「間もなく降下ポイントに到達する。降下準備始め。」

 

 四人の表情に力が籠もる。装備を整えて、ストライカーに足を入れる。M551A54機のうち3機は90mm砲とM73機銃を装備、残りの1機には25mm機関砲が装備されている。一つの機体に複数の武装を選択して取り付けられるようにして個人だけでなく、部隊全体の汎用性を上昇させることができるようになっている。A4からの大きな差異だ。

 「しゅるん」としか形容のできない音とともに使い魔の耳と尻尾が発現する。脚に力を入れて魔導エンジンを始動させた。重く響く音を発する魔導エンジンが機内に4つもあるのだから、うるさいことこの上無い。スロートマイクの電源を入れる。

 

 それぞれの準備を完了したとの報告が入ってくる。機種の方向からロードマスターがやってきてスロートマイク越しに確認を取ってきた。

 

「ファレル少佐、準備はよろしいでしょうか!?」

 

「準備OKよ!。」

 

「了解!ハッチ開きます!」

 

 ゴォォォといったエンジンなどの音とモーターの音が入り混じると同時にハッチが開く。目の前に夜空が広がった。

 

「Go!Go!Go!」

 

 いつものように声を荒らげる。レールに繋がれたワイヤーに引っ張られて機体が動く、後ろの3機も同様だ。レールの先端に来るとワイヤーが外れて夜闇に放り出される。放り出されてた瞬間に護衛のF-4E航空ストライカーを履いたウィッチが笑顔で手を振っている。思わず手を振り返した。そして猛烈な速度で地面に吸い寄せられる。航空ウィッチの顔ももうわからなくなった。

 

 他の小隊も同時に降下を始めたようだ。上を見るとC-130とF-4E航空ストライカーの識別灯などもどんどん見えなくなっていく。あちら側からはこちらの機体についている夜間降下する際に自分の前に降りたストライカーを追いかけるためのライトがどんどん小さくなっているだろう。

 

 横に目をやると2つの細い光が共に降下している。自分の小隊もしっかりと着いて来ている。機体の左側についている高度計に目を通す。あと12秒でパラシュートの展開だ。

 

 バックパックから伸びる紐を引っ張ってパラシュートを開く。バサッという音と同時に上向きに猛烈に引っ張られる。そうしてゆったりとした降下に切り替わる。そして自分たちの頭の上でもバサッ、バサッと音がした。これまで一列だった4機が横に広がる。地上までもう少しだ。

 

 そう思って安堵した瞬間に自分の少し前にいるエリシアを光の奔流が貫いた。

 

「キャッ」

 

 一瞬だけ悲鳴を上げたエリシアはストライカー共々、光の奔流によってズタズタにされ、ついにはパラシュートを破られて地面に向かって真っ逆さまに落ちていった。一瞬、何が起こったかわからなかったが、すぐに声を上げた。

 

敵襲(インカミング)!」

 

ビショップ准尉が黙って素早く頭部に装着したバイザー型照準器を下ろし、ストライカーにダクトテープで貼り付けたいたM82A2を、ダクトテープを引きちぎって構えた。

 

「やれ!」

 

 そういう前にビショップ准尉は撃ち始めていた。ドンッドンッドンッと腹に響く銃声、いや、砲声と表現した方が適切かもしれない音が夜空に響く。

 

「命中です。ZSU-23-4陸戦対空ストライカー沈黙。」

 

 流石の腕だ。固有魔法「弾道補正」によって飛翔中の弾丸は目標に吸われるように飛んでいく。この固有魔法を持つ彼女はパラシュート降下中だとしても確実に敵を仕留めることができる。

 

 勿論、敵も1機だけではない。今度は光の線が自分の横を掠めた。幸いなことに命中弾は無い。

 

「いいわよ、そいつも仕留めて。」

 

「了解。」

 

 またしても無慈悲な3連射がZSU-23-4を襲い、沈黙させた。敵もこれだけでは無いはずだ。予想を裏切ることなく第2、第3小隊も23mm砲弾の雨に晒されていた。ポロリポロリと撃墜されているのが見てわかる。

 

「ビショップ准尉!あっちのやつらも撃って!」

 

「了解。」

 

 ドンッといった銃声がまた響く。今度は途中で弾倉交換を間に挟んで6連射。今度こそ完全に沈黙したようだ。

 

「お見事ね、ビショップ准尉。」

 

「ありがとうございます。ファレル少佐。」

 

 間もなく地面に足がついた。覆いかぶさって来るパラシュートを切り離してビショップ准尉とダフィー伍長の安否を確認する。カニザレス伍長は…確認するまでも無いだろう。幸いにも二人とも怪我はなかった上にすぐに合流することができた。

 

 しかしダフィー伍長が心配だ。半狂乱になっていて、こちらの声が通じていない。長年付き合ってきた親友が目の前で撃ち落とされたのだ。無理もないだろう。しかし、今敵に空挺降下したことを知られてしまった以上、ここでモタモタすることもできない。

 

「ダフィー伍長!ボサッとしないで!死にたくなければ動いて!ダフィーのことは残念だけど、動かなければ自分が死ぬのはわかってるでしょう!?」

 

 しかしながら「あぁ…あ…」と声を出して目が明後日の方向を向くだけでまともな会話が成立しない。いつまでもこうしているわけにはいかない。まずは会話の成立するビショップ准尉と話すことにしよう。そうした瞬間にドンッドンッと第2、第3小隊のいる方向から砲声が聞こえてきた。

 

「ッ…明らかにM551の90mm砲じゃないわね…。」

 

「そうですね…。もっと大口径の、高初速の砲の音のようですね。」

 

「と、なるとかなり厄介ね。空挺降下したことがバレてるのはもう分かりきってるけど、ここに機甲部隊が送られてきたのね。」

 

 一瞬考えこんだ隙に飛来してきたAPFSDSがダフィー伍長の顎から上をヘルメットごと吹き飛ばした。顎から上が無くなったダフィー伍長の体は彼女自身の固有魔法「超回復能力」を発動して体の失った部分、つまり頭部を再生しようとしていた。気道から空気が漏れる音と共に断面がブクブクと泡立ち、すぐに頭部が少しずつ再成され始めている。それと同時に手足が頭を求めているのか、バタバタと異常なレベルの痙攣を起こす。こうまでしてもダフィー伍長の体がストライカーごと倒れることがないのは、M551A5「シェリダン」陸戦空挺ストライカーの能力の高さ故だろう。彼女の異常な回復能力のことは聞いていた。四肢の全てが一度に欠損しても、下半身が吹き飛ばされたとしても元の状態に復帰するという。頭部はどうかと言われれば聞いたことはないが、もしかしたら回復できるのかもしれない。

 

 肉眼では茂みの奥には特に何も見られない。バイザー型照準器を装着しようとした瞬間に夜の森に微かな明かりが灯った。そして次に飛んで来た砲弾は未だ頭部を生成途中のダフィー伍長のストライカーの腰回りのタレットに据え付けられ、今は右側に固定された短砲身90mm砲に接続されている自動装填機構に命中、弾薬が誘爆しダフィーはストライカーと共に炎に包まれ、爆散した。

 

 額にあるバイザー型の照準器を目の高さに下ろす。暗視装置を兼ね備えたそれは闇夜の中の景色を不鮮明ではあるが敵の姿を映し出した。T-64陸戦ストライカーだ。オラーシャ帝国の三座の主力陸戦ストライカーの一つである。

 

 森の方から閃光が走った。自身の固有魔法「思考加速」を利用して一瞬でシールドに角度を付けて展開する。真正面から飛んで来た115mm対ウィッチ榴弾は信管が作動せず、角度の付いたシールドを跳ねて明後日の方向に飛んでいった。リネット准尉が素早く狙いを付けて短砲身90mm砲を放った。柔らかな放物線を描いた砲弾はT-64の操縦席にいるウィッチに命中した。勿論、体に榴弾が直撃したのであれば、ウィッチといえども粉々になる。そして信管が作動した対ウィッチ榴弾は容赦無くT-64の車長と砲手に破片と爆風を浴びせた。そして乗員とバランスを失った三座の大型ストライカーは先程まで陸戦の王者だったにも関わらず、あっさりと横に倒れた。このときは割とあっさりと弾が当たったことを素直に喜んだ。

 

 次の瞬間にはもう一つのT-64が視界に映り込む。狙いをつけて90mm砲のトリガーを引く。これまた緩やかな放物線を描いた砲弾はT-64に吸い込まれていった。そして暗視装置が着弾直前に光を捉えた。砲弾が炸裂し、目標が見えなくなる。やったか、そう思った次の瞬間には自分の手前の木に榴弾が命中してへし折れた。それを見てもう一発撃ち込む。そして自分が撃ってからワンテンポ置いてからリネット准尉が90mm砲を撃った。自分の砲弾は一発目と同じく、シールドで防がれたが、そのシールドを相手が解除した瞬間にリネット准尉が発射した砲弾が着弾した。結果的にはダフィー伍長と引き換えにT-64陸戦ストライカーを2台撃破した。

 

「ファレル少佐、お怪我は。」

 

「私は大丈夫、あなたは…大丈夫そうね。」

 

「はい、大丈夫です。…しかし小隊が半分になってしまってはこの先の作戦…どうしましょうか。」

 

 話している間にも第2、第3小隊の方向から砲声が聞こえてくる。幾つかの砲声の中には友軍のものと思われるものもあったが、明らかに先程のT-64と同じのものと思われる砲声の方が多かった。 

 

「マズイことにったわね…。IFVぐらいならよかったけどMBTとはね。」

 

 通常の陸戦ストライカーと空挺陸戦ストライカーの戦力の差は歴然だ。こちらが単座で軽装甲、軽火力なのに対してあちらは三座で重装甲、高火力だ。搭乗員が多い分、魔力量では勝ち目がない。それ故、火力とシールドの性能には大きく差が開く。こちらの取り柄は軽量で的が小さいことぐらいだ。まともにやり合って勝てる相手ではない。その上、数もあちらの方が多いとなると絶望的である。そう考えているうちに、無線が入ってきた。第2小隊からだ。

 

『こちら第2小隊、繰り返す。こちら第2小隊。支援を求む。T-64ストライカー5機に遭遇、戦闘になった。小隊長は死亡、降下時に1人墜とされてもう二人しかいない!早く!』

 

 そこで通信が途切れた。居ても立っても居られずにビショップ准尉と共に第2小隊の降下した方へ向かう。

 

 数分進んだところに第2小隊の戦闘の跡が残っていた。破片まみれのストライカーとウィッチ、上半身が残っていないのもある。露骨にM551A5の貧弱性が現れていた。ストライカー本体の装甲の薄さは勿論、90mm砲弾は装填直前に異空間から取り出される機構ではなく、装填される前の数発がストライカーの背部に異空間から取り出されてストックされるという機構を採用しているからだ。砲弾やそれらが収納される部分にはストライカー全体の軽量化のために誘爆対策も取られず、M551A5の貧弱性の要素の一つになっている。

 

 警戒しつつ、生存者を探すが見当たらない。第3小隊はどうなったのかと今更になって気づき、連絡を取ろうとするが反応は無い。半ば諦めていたときに魔導エンジンの甲高い独特な音が聞こえてきた。短砲身90mm砲を指向する。音が段々と近くなっているのがわかる。。草むらから出てきた瞬間、引き金を引こうとしたが「駄目です!」 とビショップ准尉の声で指が止まった。目の前に飛び出してきたのは友軍であった。第3小隊につい最近配属された新入りだ。名前はまだ知らない。

 

「あぁ、良かった…良かった。まだ残っていたんですね。残った第3小隊は私だけです。」

 

 まだ子供の面影のある彼女は泥と血潮で汚れた顔を歪ませた。安堵して笑みを浮かべているのか、そうではないのか判別することはできない。

 

「早くしないと奴らが追ってきます。さぁ早く、急いで…ぎゃあっ」

 

 動こうとした瞬間に目の前が曳光弾で染め上げられた。23mm砲弾がM551と薄い装甲と彼女の体を引き裂く。そして地面を舐めるように弾幕がこちらに向かって来た。

 

「クソッ!」

 

 悪態を付いて回避行動を取る。 さらには115mm砲弾も飛んで来ているようだ。手前の地面に当たって破片が少し飛んできたりもする。左大腿に鋭い痛みが走るが、すぐにその感覚は曖昧になった。ビショップ准尉も同時に回避行動を取った。全速力で後退する。必死になって木々を避け、草を掻き分けながら、できるだけ轍が見つかりづらいルートを選択して数分は逃げた。

 

「ふぅ…、ビショップ准尉、大丈夫?どこにいるの?」

 

「はい、ファレル少佐の2時の方向、50mぐらいです。」

 

「あぁ、良かった。にしてもさっきの娘、多分餌にされてたわね。わざと泳がせて私達をおびき出すために。さて、ここからどうしようか。一番良いのははとにかく逃げてルーシに入ることね。そこなら多分安全だわ。」

 

 今後の行動をどうするか話しているうちにまた魔導エンジンの音が大きくなってくる。

 

「何っ、またT-64か。どうして?こちらの位置がバレるのが早すぎる!」

 

 そう言った瞬間に顔の横をT-64の対ウィッチ榴弾が通り抜ける。こちらの位置はバレている。どうして。考える間もなくバックステップで茂みに飛び込む。敵の射線から逃れて、さらに後退する。ビショップ准尉もそれに続いた。しかしそこにも追撃が飛んでくる。早すぎる。いくらあちらの庭だからといってあまりにも追撃が早すぎる。

 

「もしかして…、ビショップ准尉、上空に何かいない?」

 

『上空?はい、見てみます。』

 

ビショップ准尉がそう返事すると、茂みから少し顔を出して夜空を見上げた。

 

『……あっ!あれは…航空ウィッチが、航空ウィッチがいます!』

 

 夜空に僅かなノイズ。高度はわからないが、空中でグルグルと低速で飛び回っている。サプレッサーを装備しているためなのか、魔導エンジンの音は殆ど聞こえてこない。

 

「やっぱりね。だからこっちの位置がバレていたのね。そうとなったらコレの出番ね。」

 

 ストライカーの自分の腰の後ろあたりにダクトテープで貼り付けていたFIM-43を持ち上げ、照準する。普段はあまり精度が高くないと言われているが今回は別だ。魔力浸透対応型なので性能が向上している。そして今回は威力ではなく、誘導性能の向上に魔力を割り振った。ビショップの指示する方向に照準器ごと本体を向ける。すぐにグリップのブザーが振動する。引き金を引くと軽い振動と共にミサイルが発射筒から吐き出され、すぐにロケットモーターに点火され勢いよく敵の方向に飛んでいく。空中で小さな爆発が起こるのが見て取れた。しかし、FIM-42の発射でおおよその位置がバレているだろう。上空からの目が無くなったとしても厳しい状況には変わりない。そしてまたT-64の魔導エンジンの音。逃げてばかりではいられない。

 

「ビショップ准尉。敵の航空ウィッチを排除したけれど、不利なことには変わりない。状況をひっくり返すには奴らに一発でも浴びせないと脱出は不可能だわ。」

 

「はい、わかってますよ。」

 

 左大腿に固定されたM73機銃を大体の方向に向けてバラ撒く。90mm砲に比べて軽い発射音が連続して響いた。そして敵のいるはず方向でシールドを展開、弾を弾く音が聞こえる。思いっきり魔導エンジンの出力を上げ、敵のいるはず方向に向かう。そして移動しながら90mm砲から榴弾を放つ。今度は効果範囲の広い通常の榴弾だ。またシールドを展開する音が聞こえた。次の瞬間、敵の撃った砲弾に思考加速を利用して備える。今度は徹甲弾、APFSDS。元々このストライカーで防げるような弾では無い。ましてやこんな距離で防げるわけがない。祈りながらシールドを展開する。APFSDSはシールドを容易く突き破り、こちらのストライカーの背部オプションを引き千切った。あと何十センチがズレていたら弾薬に直撃だっただろう。外れたことに感謝して撃ち返す。今度は煙幕弾。充填された白鱗が展開されて敵からの反撃が止む。それを見計らって距離を詰め、煙幕を中心にして周囲をグルグルとビショップ准尉と共に旋回しながら榴弾を撃ち込む。煙幕が晴れる。そこには破片まみれになったT-64とそれに搭乗するウィッチが倒れていた。

 

 敵も冷静さを欠いてきたのだろう。機銃と榴弾を連射しながら次のT-64が接近してきた。自分もリネット准尉もシールドを展開してそれらを防御する。そして敵の弾が途切れた一瞬を見計らってリネット准尉が90mm砲を発射する。その砲弾はわずかに狙いを外してT-64の履帯に命中した。致命傷にはならなかったが、敵の機動力は封じ込めた。敵も動揺しているのだろう。攻撃がピタリと止む。バイザー越しに敵の車長と目が合うと同時に憎悪に満ちたその目がこちらに照準を定めるのがわかる。そしてコンマ数秒後にはリネット准尉の撃った対ウィッチ榴弾によって粉砕されていた。砲手も一緒に仕留めたが、操縦手は破片にまみれながら辛うじて生きていたようだ。当たるはずもない拳銃をこちらに乱射していた。そこに容赦なくM73機銃を撃ち込む。T-64は完全に沈黙した。

 

 そしてまた次の敵だ。終わりがないように思えてきた。バイザー越しの視界が敵の方向からの弾幕を捉える。まだZSU-23-4が残っているのか。自分は左に、ビショップ准尉は右に回避する。

 

『ぎゃあっ!腕が、私の腕がっ!痛いぃぃぃ!』

 

 ガシャンと派手にストライカーが倒れる音が聞こえた。さっきのZSU-23-4の弾幕が手に当たって、その動揺でバランスを取るのを失敗、転んだのだろうか。しかし敵の弾幕の中、ビショップ准尉を助けに行く余裕など無い。

 

『やだっ!少佐!置いて行かないで!死にたくない、こんなところで死にたくない。助けて、助けて、お願いします、少佐!ファレル少佐!』

 

 ビショップ准尉の絶叫。助けに行く余裕なんて無い。数秒間あたりを掃射してから弾幕が止んだ。ギュルギュルと唸るストライカーの履帯を操作してZSU-23-4がいると思われる方向に向かう。そしてまたビショップ准尉の叫びが。

 

『やだっ!来ないで!嫌だ!死にたくない死にたくない!助けて!お願い、何でもする!だから撃たないで!お願い、私にも家族がいるの、ここで死ねない!こんなところで!嫌だっ、嫌だっ!』

 

115mmの発射音と同時にビショップ准尉の声が途絶えた。

 

「クソッ、クソッ!なんでこんなことに!」

 

『あら?仲間が死んだ割には随分と元気じゃない。まだ遊び足りないのかしら?』

 

「な、何だお前は!…そうかリネット准尉のを…」

 

『物わかりがいいじゃない。あ、ついでにこの子の持ってるものお土産にさせてもらうわね。』

 

「おいっ、何を考えてる!やめろ、薄汚いオラーシャ人め!すぐに殺してやる!こっちに来い!」

 

 思っていることが自分でもびっくりするぐらいに口からするりと流れ出る。そう言った瞬間に無線からプツッという音が流れ、自分に向かって対ウィッチ榴弾が撃ち込まれるのがわかった。直撃だ。咄嗟にシールドを展開して防ぐ。今回は信管がキッチリと作動したようで目と鼻の先で爆発が起こった。

 

 お返しに90mm砲を撃ち込む。対装甲化ウィッチ榴弾。モンロー・ノイマン効果で敵の装甲の一点にエネルギーを集中させて貫く砲弾。破片効果が他の榴弾に比べて弱いので直撃を狙う必要はある。放たれた砲弾は操縦手の下腹部に当たった。操縦ができなくなったT-64陸戦ストライカーはつんのめって倒れる。近づくともう抵抗はできないようで、まだ生きている砲手が必死命乞いをしてくる。喉が潰れているのだろうか。口をパクパクと動かして空気が口から漏れ出る音しかしない。車長は横転したさいにどこかに頭を引っ掛けたか、ぶつけたのだろう。あらぬ方向に首が曲がり、口からブクブクと血の泡を吹いていた。

 

「これでチャラね。」

 

 砲手の顔に素早く榴弾を撃ち込む。爆発で肉が爆ぜて、こちらまで飛んで来た。そうしていると横から23mm砲弾の雨が降ってくる。バックステップでかわし、そのまま砲を指向して撃った。当たるとは思っていなかったが、偶然にも弾薬に命中したようで、かなり大きな爆発が起きる。

 

「 次だ。次はどこにいる!?」

 

 五感をフル稼働させて敵を探す。敵の気配が見え隠れするが、ハッキリとしない。

 

「どこだ!出てこい!腰抜け共!国は無駄にデカいくせにお前らは小心者か!出てこい!ぶっ殺してやる!」

 

 そう言った瞬間に自分の顔目掛けて対ウィッチ榴弾が飛んでくる。斜めに展開したシールドでそれを防ぎ、反撃の対ウィッチ榴弾をお見舞いする。

 

「そこかぁ!」

 

 爆発とほぼ同時に悲鳴がしてそれ以上の反応は無くなった。そして別の方向から2発目が飛んで来る。APFSDSだ。直撃する。シールドを展開するも、先程のように楽に貫徹されてしまい、貫徹したペネトレーターは自分のストライカーに直撃し、そのまま膝に命中。一瞬何が起きたかわからなかった。体がただ、後ろに倒れるだけ。膝に力を入れて体勢を立て直そうとするも膝から下が吹き飛んだせいで力が入らない。地面に背中が着いた直後に激痛が襲う。

 

「キャァァァ!痛い、痛い!足がっ!足がっ!」

 

 痛みにのたうち回る。やけにはっきりとしている意識

の中、敵が近づいてくるのがわかった。そして茂みからT-64陸戦ストライカーが現れた。陸戦空挺ストライカーでは敵わないような装甲、大振りな115mm砲。まさに陸戦の王者といった貫禄だった。そして最後の力を振り絞って腰に提げてある、M1911を構えで思いっきり引き金を引きまくる。弾はどれも明後日の方向に飛んでいくか、全てシールドで防がれた。

 

「あぁ!クソッ!畜生!」

 

 そう言って自分のこめかみに焼けた銃口を押し当てて引き金を引く。ここで45.ACP弾が自分の脳を掻き混ぜて終わりかと思った。しかしそれはM1911の装弾数が許さない。カチッと乾いた音がするだけ。

 

「残念ね。弾切れよ」

 

 オラーシャの陸戦ウィッチが言った。そうしてるうちにT-64陸戦ストライカーの車長はストライカーから降りて自分に歩み寄ってきた。銀髪でショートカットのウィッチだ。オラーシャ特有の迷彩が描かれた服を着用している。

 

「じゃあね、リベリオンのクズ犬。本当にバカね、そっちの情報はダダ漏れ、手にとるように降下位置がわかったわ。あんた達に勝利と…祖国は渡さない。」

 

「ふん…国の大きさの割に脳の中身は全然足りてないのね。」

 

 脚の痛みを噛み締めつつ精一杯の返事をする。痛みで今にも意識が飛びそうだ。

 

「うるさいわね…良いこと教えてあげる。ここね、冬になるとまぁまぁ雪が降って春になると泥濘地帯みたいになるの。」

 

「はぁ?…それが?」

 

「あんたの大好きな泥水が飲み放題ってことよ。地面に頭を擦り付けて泥水啜れるのを楽しみにしてなさいな。」

 

 そういうと彼女は手に持っていたAK-47Sのセレクターをフルオートの位置に動かして引き金をゆっくりと絞って意識を吹き飛ばした。




かなり読みづらい所やおかしな部分があったとは思いますが、楽しく読んでいただければ幸いです。今後も色々と余裕があれば書いていけたらと思っています。


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