祝福の歌声~コナン世界でライスは頑張って生きてみるよお姉さま!~ (クレナイハルハ)
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祝福の始まり

以前にコナン×ガンダム00でもいっていた作品です。

キャラ崩壊の可能性がございますのでお読みになるさいは注意して下さい。


※第一話の内容を少し変更しました。






 

 

誰もいない静かな夜道

 

異質な少女は、走っていた。

 

目元は酷い隈、暗く濁り光のない瞳

 

痩せ細った体の少女はフラフラと右へ左へよりつつも走っている

 

「やっぱり■■■は………誰も幸せに出来ないんだ」

 

少女は限界だった

 

耳元で聞こえる罵詈雑言の幻聴

 

騒ぎ散らかすマスコミ

 

少女の心は磨り減り、好きであったはずの走ることをやめ、部屋に閉じ籠った

 

だがネットですら見える自身への罵詈雑言の書き込みの数々に少女の心の芯は折れた

 

「■■■■さん、ごめんね……■■■はもう、無理だよ」

 

わざわざ自身元へと来てくれた■■■■さんにそう言って■■■はこうして夜道へと逃げ出した

 

震える体を抱き、少女は大地を蹴り歩きだす

 

必死に、見えない何かから逃れるように

 

そのときだった

 

少女はふと自身の右側が白くなっていることに気付いた。真っ白で何も見えない

 

少女が頭にはてなを浮かべたとき、ゆっくりと動くときのなかで少女は自身のいる場所を見た

 

居た場所は、専門の道路ではなく車が走る一般路。少女はようやく理解した

 

あぁ、■■■は車に轢かれるんだ。

 

ようやく、解放される

 

そう少女が思い、笑みを浮かべた。

 

その日、一人の小さき命がこの世界から消え去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   それは一人の不幸な少女の終わり

 

         そして

 

 やがて祝福の歌姫と呼ばれる少女の始まり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さんは『ウマ娘 プリティーダービー』と言うアプリゲームをこ存じだろうか?

 

簡単に言うなら現実での競馬史に実在する競走馬を擬人化したキャラクター達がレースを走るというモノである

 

またウマ娘の世界では馬と言う生物は存在しておらず、漢字もない。そのため、馬鹿もウマ娘世界では『バ鹿』である。

 

話がそれたが、ウマ娘には沢山の可愛いキャラクターが存在する。

 

有名なキャラクターとしてはトウカイテイオーやシンボリルドルフ、ハルウララやスペシャルウィーク等が挙げられるであろう。また、ネットではうまぴょいや遊戯王との融合MADや量産型ライスシャワー、ゴルシが上げられる。

 

そんな数々のウマ娘の中に、ライスシャワーと言うウマ娘がいる。

 

背中まで伸びる綺麗な黒髪で幸薄そうな少女、勝負服では小さな短剣のついた黒いドレスを身に付け、青薔薇の装飾品の付いた帽子を斜めに被った姿で、周りで起きる不幸は全て自分のせいと思い込んでいる臆病で弱気なウマ娘。

 

実際は単に間が悪いだけだが、完全にジンクス化していてそれをどうにか拭おうとしており、漆黒のステイヤーとも呼ばれている

 

そんな彼女は物語で純粋に走り、レースに勝利することを望んでいたが、とあるウマ娘の勝利を阻止した事から、そのウマ娘のファン達からヒールとして扱われて嫌がらせを受け、罵声を浴びせられ、自分が走っても誰も喜ばない、笑顔にならないと知り走ることを拒否するようになる。

 

だが、一人のウマ娘に言われた一言でレースにもう一度出走した。全てを敵に回しても、一人のウマ娘の為に走り抜く。そう、ヒールではなくヒーローてして。彼女の姿に沢山の人が彼女を守らねばとトレーナーになったと噂で聞いた。

 

そしてゲームでは育て上げた彼女はトレーナーのことを、お兄さま、お姉さまと呼ぶため沢山のファンを獲得している

 

まぁ、こんな事を話している自分はウマ娘にわかでたまたま覗いたサイトの内容を思い出しているだけで、たまに夢小説を読む程度だが、もしアプリを始めるならライスシャワーを育ててあげたいかな。と思っていた

 

さて、何故()がこんな事を思い出していたのか。

 

まぁ、簡単にはいえば現実逃避である

 

目の前に広がっているのは誰一人としていない廃墟と思われる部屋

 

男である、いやあった自身の声とは思えない程に高い、そして暗く弱々しい声に以前よりも低い視線。

 

ふと足元にある割れた鏡の破片を見る

 

自身の身に付けている黒いゴシックドレスに装飾品の短剣、頭に斜めに被っている帽子についた青薔薇の装飾品

 

何故か自身に生えた尻尾はシュンと下がり、頭に生えているウマ耳もまたペタリと垂れている。目には大きな隈が出来ており、体も少し痩せているように見える

 

「はぁ、どうしよう……」

 

簡単にいうとしたら、何故か私はライスシャワーに成って知りもしない、誰もいない変な場所に立っていた。でもライスシャワーってこんなに痩せてないし目に隈なんてないよね?

 

「どういうこと?助けてお姉さま………」

 

取り敢えず、ドッキリでは無いことは確かだ

 

だってこの姿になってから既に体感三時間は過ぎてるし、お腹空いたし

 

ライスシャワーに憑依?転生?してしまったっぽいけど、まずここは何処なのだろうか?

 

ライスシャワーに転生したのだから、恐らくはウマ娘の世界なのだろうけど、こんな場所は聞いたことが無い

 

取り敢えず、自身が死んだ記憶はない

 

ふむ、本当にどうしようか………

 

まぁ、考えてても駄目だ。

 

取り敢えず、この部屋?らしき場所にある物を確認する。

 

立て掛けられているギターケース、外套らしき黒い布

 

うん、一つ目はまだ良いよ?まだ不自然じゃない、でも外套って……怪しいものですって言ってるようなものじゃん

 

まぁ、この耳とかを隠すなら良いかもしれないけどさ

 

取り敢えずギターケースを肩に掛けてみる、ウマ娘特有の異常な身体能力のおかげか、簡単に持ち上げ肩に掛けても走れそうである

 

一度、外套を羽織りウマ耳と尻尾を隠してからギターケースを持つ。うん、破片に映るのは明らかに不審者である

 

まぁ、ウマ娘の世界に転生したとしてこの見た目なら騒がれるだろうし、この方が良いのかな?

 

一回外に出てみよう、一歩を踏み出してみないとわからないし、そう思い私は部屋の扉を開けて出口への道と思われる場所へと一歩を踏み出した。

 

そして、目の前に広がるのは沢山のパトカーに囲まれるマンションの中だった。どういう状況?早くもこの姿で外に出ると言う行いが無理そうです、助けてお姉さま…………

 

取り敢えずこの場から離れた方が良いよね?あの警察は私を捕まえに来たとかじゃないよね?

 

そう言えば、私がさっきまで居たところって

 

そう思い振り替えるとそこには入居者待ちと書かれている紙の貼られた部屋があった。あれ?私、何処に住めば?

 

考えてみれば私の手持ちってこのギターとケース、外套しかない。ギターを質に入れようかな………いや、それとも賭けで公園とかでストリートライブみたいなのやって稼げないかな。一応、吹奏楽部の助っ人したことがあるから、ある程度はギター弾けるし。

 

まさか、あの時の経験が今になって役立つとは思わなかったよ

 

「な!?まだ住居者が残ってたのか!?」

 

背後から聞こえてきた声に思わず振り返るとそこにはタバコを加えた男の人が立っていた。

 

男性の加えているタバコの匂いが私の鼻を刺激し、思わず顔を顰める。もしかして、ウマ娘って嗅覚も良くなってるのか?

 

そんな事を考えていると男の人が近付いてきて私の腕を引いて階段へと向けて走り出す。

 

「な、何を」

 

「このマンションには爆弾が仕掛けられているんだぞ!?避難勧告が聞こえなかったのか!?」

 

「ば、爆弾!?」

 

驚きのあまり、無意識に頭のウマ耳がピンと広がる

 

「へぁ!?」

 

「あ……」

 

即座に片手で両耳を頭にペタリと押し付ける、男の人は私の耳に驚いて口元からタバコを落とす。えっと、タバコの火を消さなくて大丈夫?

 

「え、えへへ?」

 

「お前………取り敢えず、急いで降りるぞ」

 

そう言って私の手を引く男の人の後を付いて階段を下がる。誰一人としていないマンションの中に二人の足音が響き渡る

 

一階の非常用の出口から出る、すると男の人は近くの警察の人の元まで走り出す

 

そしてそのまま話しているのを見るに仲の良いひとなのだろうか?取り敢えず今のうちのこの場所から離れなきゃ

 

そう思いながら男の人とは逆の方向へと向かおうとしたそのとき、私の耳を爆音が襲った。

 

ウマ娘は馬と同じで聴覚が鋭い、普通の人間が耳を塞ぐ程の爆音を直で聞いたらどうなるか

 

そう、ただじゃすまない

 

あまりの爆音に、意識が遠退き肩に乗せていたギターケースがずり落ちる

 

どうにか意識を失わないように気をしっかり持つが体が倒れるのを止められない

 

地面へと転がると思ったそのときだった、すんでの所で誰かに抱き止められる。見ればさっきの男の人だった。

 

さっきの男の人が私の体を支え、倒れないようにしてくれたらしい

 

だが男の人は私を助けられた安堵ではなく、驚きに近い表情をしていた。なんでだろ?

 

男の人が口を開いて何か言っていると思うけど、爆音のショックか何も聞こえないのでとりあえず愛想笑いを浮かべなから首をかしげ、気づいた

 

「っ!?」

 

頭を覆っていたフードが外れ、ウマ耳と顔が見えるようになっている事に気付き慌てて外套を被り直す

 

そして近くに落ちたままのギターケースを広い男の人から離れて駆け出す

 

自分の中で何かが訴えてくる

 

『姿を見られた』『また色々と言われる』『騒がれる』『逃げなきゃ』と。

 

本能に近い何かに従い走り、そして次の瞬間に浮遊感のような物を感じ、気が付くと私は観覧車に乗っていた

 

訳が分からないよ………助けて、お姉さま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

萩原side

 

 

目の前で倒れる自分の恩人と言っても可笑しくはない少女を支える。外套を羽織り姿を隠すようにした少しだけ変な少女

 

階段を降りて避難させている時に何故か外套のフードの中で何かあったが、そのときは気にしていなかった。

 

そして今、倒れそうになった少女は支えた際にその顔が露わになる。綺麗な黒髪だが、目元には大きな隈ができており、何よりも目に止まったのは、頭部についていた二つの動物の耳のような物

 

明らかにオモチャやアクセサリーの類の物ではないそれは、本物の耳で間違いなかった。

 

「おい、お前その頭のそれ!?」

 

そう言うが、少女は此方を見て不思議そうに首をかしげながら笑った。まるでその場から消えてしまいそうな程、脆く儚い笑顔。

 

「っ!?」

 

だが、少女は外套のフードが外れている事に気付いたのか目を見開き即座にフードを深く被り直した。まるで何かに怯えるかのような感じが見てとれる。

 

持っていたギターケースを拾うと少女はその場から人間ではあり得ない程の速度で走り出した

 

「あ、ちょっと!」

 

そう言いながら手を伸ばすが、間に合わずその場から少女は遠退いていった。

 

後から分かったことだが、あの娘に似た少女はあのマンションの付近では確認できず誰に聞いても知らないと答えた。

 

いくら調べても恩人の彼女を見つけることは叶わなかった。確かに目の前に居た、そう言えるが俺以外は誰も彼女を見てすらいなかった。

 

あの時の少女にもう一度だけ会いたい、会ってお礼を伝えたい

 

そう思いながら俺は彼女の事を忘れず、今日もしっかりと防護服を着用し仕事へと向かった。

 

 

 

 




ウマ娘を実際にプレイしたことがなく知識がにわかですが書きたいと思っていたので書いてしまいました。
コナン×ウマ娘の話はあまり見かけないので、皆様に楽しんで頂けたら嬉しいです。

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ライスはチートじゃないよねお姉さま?

うp主は警察学校組については二次創作でしか知らないため、あまりキャラを理解&話し方もこんな感じかな?で書いています。それでもよければ見ていって下さい。




思わず目を見開いて目の前に広がる観覧車の一つの中にいつの間にか先ほどと同じで格好で立っていた。

 

「あれ?ライスは…………」

 

ふと観覧車の窓から外を眺めると、観覧車の下の方には沢山の人が集まっており遠くではパトカーのランプが光っているのが見える

 

うん、ライスはすっごくデジャブを感じてるよお姉さま……。取り敢えず外套を深く被り直してからそっと外を眺める

 

なんであんなに観覧車に沢山の人が押し寄せてるのかな?

 

そんな事を考えている内に私の乗る観覧車のゴンドラが下がっていき、またもや知らない男の人が入ってくる

 

「?」

 

取り敢えず頭を傾げると、男の人の動きが止まる。沈黙が続き観覧車も降りれないぐらいの高さまで来ていた

 

「え?ひ、人が乗っていたのか!?」

 

男の人の驚きの声にまたもや耳がピクリと動き出そうとしたのを両手で押さえて止める

 

「ひぅ!?は、はい。一応」

 

そう返事をしながらゆっくりと頭から手を下ろす。

 

「取り敢えず落ち着いて聞け、このゴンドラには爆弾が仕掛けられている。」

 

「ば、爆弾!?」

 

二回目とはいえ、爆弾と言う単語に思わず小さく悲鳴を上げると同時に頭のウマ耳がピンと立つ

 

「は?」

 

「あ……えへへ?」

 

即座に両手で外套の上から耳を押さえて前と同じように愛想笑いを浮かべる。それにしても、また爆弾か………ライス、不幸なのかも

 

「取り敢えず、仕方ないか」

 

そう言いながら男の人は私の向かいの席に置いてある何かに向かい合う。恐らくは男の人の向き合っている機械のような物が爆弾なのたろう

 

「あ、あの?」

 

「安心しろ、この爆弾を解体してお前を下ろしてやるからな」

 

振り向かず、そう言う男の人の声には少しだけ優しさを感じた。取り敢えず座って待っていると解体することが出来たのか安堵の息を吐く

 

次の瞬間だった。男の人の顔が強ばる

 

見れば様々な配線が切断されている機械の画面に移った数字がゆっくりと減っていく

 

あと数十秒もすれば、カウントは0となり私と男の人は死ぬ。せめて窓かドアが空いていればウマ娘としての身体能力をごり押ししてこの爆弾を外に投げるんだけど………観覧車は密室なんだよね。

 

何かでドアか窓を壊すか切れれば良いんどけど……あ

 

外套に隠れた勝負服に付いている短剣柄に触れる

 

もし、ワンチャン、ウマ娘の異常な身体能力ならあるならこの短剣で切れないかな?試してみる価値はある、かな?

 

そう考えながら席から立ち上がり、ウマ娘プリティダービーでライスシャワーが発動する固有スキル『ブルーローズチェイサー』を思い浮かべる。Fate風にするなら青薔薇の追跡者(ブルーローズチェイサー)かな。

 

以前に動画でみたライスシャワーを思い出しながら静かに短剣の柄へと手を置き瞳を閉じる

 

頭の中で暗い教会を青薔薇の花束を持った私が歩く。

 

私は生きる、生きていく。私の何かで誰かを幸せにする、その時まで!

 

「───誓います。生きるべき人の為に、幸せの青いバラに……ライスだって」

 

目をカッ!と開いて短剣を半分程抜いて、即座にしまう。改めて冷静に考えよう

 

そもそも、いくらウマ娘の異常な程の身体能力でもそんなアニメみたいにライスが居合とか出来る訳ないのだ。

 

あれ、このままじゃライスあの人に頭の痛い人だと思われて死んじゃうんじゃ?

 

そう思っているとガタン!と言う大きな音がして思わず目を開くと私の目の前にあったはずの閉じられたドアに切れ目のようなものが入っていた

 

ワンチャン、ウマ娘の蹴りならドアを吹き飛ばせるかな?

 

そう思いながらドアを出来るだけ強く蹴る。

 

「咲いて見せるッ!」

 

 

すると、扉は簡単に外れ目の前には綺麗な青空が広がっていた。

 

「え?」

 

もしかして、ライスがやったの!?

 

嘘でしょ!?そ、そんな分けないよね?偶然、壊れただけ、だよね?

 

男の人の方を見ると、男の人は私をまるで信じられない物を見るような目で見ている。

 

え?まさか、本当にライスがやったの?元々ボロボロだったとか、寿命とかではなくて?

 

と、取り敢えず今は爆弾をどうにかしないと!

 

男の人の近くに置いてある爆弾を手に取り、そして

 

「えい!」

 

観覧車より少し上の空へと向けて全力で投げる。そして次の瞬間に投げた爆弾が爆発し突風が私を襲う、あまりの風の強さに顔を覆っていた外套が外れ後ろへと尻餅を付く

 

「うぅ」

 

痛い、でも取り敢えず爆弾で死ななくて良かった。そう思いなが一息付く

 

取り敢えずこれでまだ生きていられるかな?

 

「お前………」

「あ」

 

男の人がまるで信じられない物を見るような目で私を見る。いや、正確には私の頭の上……あれ?耳にあたる外套の感触が無い?

 

急いで頭の上に手を置くとウマ耳と顔が外に出ている状態だった。私は即座に外套を羽織り顔の耳を隠す。

 

また、だ。本能のような何かがまた頭の中で言うのだ『逃げなきゃ』『このままじゃ周りも不幸になる』と。

 

訳が分からない、なんで?そう思いながら外套を握る。あと少しでゴンドラが下に付く、逃げなきゃ

 

ゴンドラが地に付いた、扉が開く男の人と外に出る

 

そして即座に走り出す

 

「なっ!お、おい!」

 

本能に任せてただ走る、男の人には悪いけど私は逃げなきゃ

 

そう思いながら走り出し、また一瞬の浮遊感がして気が付くと私は最初にいた廃墟ビルのような場所に立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

松田side

 

 

「え?ひ、人が乗っていたのか!?」

 

観覧車のゴンドラに乗って、中にいたのは外套を被った怪しい女。

 

観覧車から一般の人はもう既に避難していても可笑しくない程の時間が立っているはずだ。

 

なのに、そこにいる女。しかも外套を羽織っている、まさか爆弾の犯人か?

 

「ひぅ!?は、はい。一応」

 

座っていた女から聞こえてきた声は思ったよりも幼く、小さな少女だった

 

外套からわずかに見える顔、どこか怯えるように両手で頭を押さえてそう答える少女に、思わず親からの虐待等を考えた。

 

それにしてもどうしてそんな少女が外套を羽織り、ギターケースを持っている。家出、か?

 

取り敢えず落ち着いてきたのか両手を膝の上でギュッと握る少女は怯えさせないよう出来るだけ優しい声色で口を開く

 

「取り敢えず落ち着いて聞け、このゴンドラには爆弾が仕掛けられている。」

 

「ば、爆弾!?」

 

少女の驚きの声からまさか、なにも知らずに乗っていたのか?

 

そう思っていると、少女の羽織っていた外套のフードから2ヵ所が内側から押し上げられる

 

「は?」

 

思わず困惑の声が口から漏れる、何が起こっている?

 

「あ……えへへ?」

 

そんな俺にまるで隠すように笑う少女の笑顔は、守りたいと思えるほどに幼く

 

同時に、いつの間にか消えてしまいそうな程儚かった。なんで、お前はそんな風に笑うんだ?

 

いや、取り敢えずこの子のことは爆弾を解体した後だな。萩原を殺そうとした犯人と恐らくは同じ犯罪者、絶対に捕まえる

 

でも、今はまずこの子を助けて無事に地上に返して上げないとな

 

「取り敢えず、仕方ないか」

 

目の前の爆弾に向き合い、解体するための道具を握りしめその爆弾の解体を始める

 

「あ、あの?」

 

後ろから、不思議そうと言うよりは心配そうな少女の声が聞こえ振り返らずに返事をする

 

「安心しろ、この爆弾を解体してお前を下ろしてやるからな」

 

そう言いながら作業を続け、無事に解体をすることが出来た。思わずため息が出る、防護服無しでの解体

 

とてもじゃないが心臓に悪いな、そう思い少女に爆弾の事を教えようとした

 

その時だった

 

確かに解体したはずの爆弾に付いたデジタルタイマーが動き始めた

 

思わず息を飲む、まさか遠隔操作だと!?

 

早く解体……だが残り数十秒

 

もはや俺に出来ることは何もない、俺の後ろにいる小さな命を守ることすら。

 

思わずゴンドラ椅子に座る、今更ながら恐怖で体が震え始めた

 

情けないな。頭の中に警察学校で仲の良かった四人の姿が脳裏によぎる

 

悪いな、みんな。俺は……

 

そう思った、その時だった。俺の目の前に座ってた少女は突如として立ち上がると遊園地の係員の人じゃなければ開けられないしまったドアの前に立つ。チラリと外套から見えた少女の表情はまだ諦めていない、そう見えた。少女は両手を胸の前で重ね祈るようなポーズを取ると、口を開いた

 

「───誓います。」

 

まるで、教会で祈るシスターのように。静かな声がゴンドラに響き渡る

 

「生きるべき人の為に、幸せの青いバラに……」

 

青いバラ?一体何を?そう思った次の瞬間だった、外套の中へとバッっと右手を入れるとチャキと、まるで、刃物を抜刀するかのような金属音がした。

 

「ライスだって」

 

瞬きをした瞬間だった、刃物が納刀される音が耳へと聞こえたと思ったら目の前のゴンドラの扉がまるで何かに切られたかのように切れ目が入る

 

「咲いて見せるッ!」

 

少女の蹴りでドアは外へと落下していった。一体、何が起こった?偶然、扉が壊れた?いや違う少女が()()()のだ。動く手、そして振り上げられる刃が見えないほどの高速の居合切り。

 

人間にはあり得ない、そんな限界を越えた先の得ることの無い速さ。噂に聞くルパン三世の仲間である石川五ェ門と同等か?

 

ゴンドラの扉を蹴り飛ばした少女は残り十秒を切った爆弾を片手で持つと

 

「えい!」

 

そんな可愛らしい声とは裏腹にとてつもない速さで爆弾を斜め上へと投げた。投げられた爆弾は恐ろしいほどの速さで飛んで行き、次の瞬間に空中で爆発した。

 

強い爆風がゴンドラへとも入ってくる、思わず顔を覆うように両腕を目の前にクロスさせて耐える。だが、少女は耐えきれず尻餅を付く形で後ろへと倒れた

 

「うぅ」

 

そして倒れると同時に少女の外套のフードが外れ、少女の顔が見えた。黒い髪に斜めに被っている青いバラの装飾品が付いた帽子。そして目元には大きな隈が出来ている、そんな彼女の顔で何よりも目を引くのはその頭部に生え時折動いているように見える獣と思われる耳。

 

「お前………」

 

本来なら人体にあるのはあり得ない位置にある耳、本来ならコスプレ等を考えるであろう。でも人間で耳のある場所には耳が無いことから、あの耳が本物の耳であることが想像できる

「あ」

 

すると少女は俺の視線に気付いたのか即座に外套を被り直し置いてあったギターケースを握りしめる。その場を沈黙が支配する

 

あり得ないとは思うが、何かの組織で薬品を飲まされ体が変化して、組織から逃げ出してきたとかだろうか?

 

そんなありもしない事を想像していると、ゴンドラが地上に降り俺と少女がゴンドラから出た

 

次の瞬間、少女が走り出す。

 

「なっ!お、おい!」

 

駆け出し、異常な程の速さで俺からどんどんと離れていく。そして近くから走りよってくる複数の足音に振り向くと佐藤達が俺の元へと走ってきているのか見えた。

 

その後、俺は佐藤達に酷く怒られた。そういえば、あれから思い出したことがある。『獣耳に目元に隈がある少女』その容姿に頭の中で過去に萩原から聞いた話を思い出した

 

“あのさ、あり得ない話なんだけど。実は前に防護服を着ずに爆弾を解体しようとして本物の獣耳をつけた女の子に命を助けられたんだ”

 

後から萩原と話したところ、恐らくは俺と萩原を助けたのはおんなじ女の子だと分かった。

 

そして彼女についての情報が一切無かったことも。

 

 

 





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???
「沢山の評価そして感想、感謝いたしますわ!感想と評価があればずっとずっと執筆できますわ!!小説といったらライス×コナンですわ!00×コナンもよろしくですわ!」

???
「何言ってるの?■■■■■■」

???
「ハッ!?■■■■?私は一体何を?私は少し前まで優雅にお茶をしていたはず………」




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生きるために

先ほどまでは正午であったはずの辺りは気がつけば月の出た夜へと変化していた

 

何故ライスは時間も場所も違う場所にいるの?さっきから走ってたら、ずっと変な所にいる気がするよ………。

 

そう思いながら取り敢えず廃墟と思わしき建物の中を歩く、取り敢えず今日はここで寝ようかな………ここなら雨と風はしのげそうだし

 

そんなことを考えていると、ふたりの男性が言い争っているのが遠目に見えた。こんなところで言い争う?喧嘩………もしかしてヤが付く人だったりする?でももしかしたらここが何処か聞けるかも?

 

取り敢えずそう思いながら彼らのもとに走る。すいませーん、ライスに道を教えて下さーい

 

「っ!?」

 

「誰だ!」

 

そう言いながらお兄さんは振り向きながら、チャキと言う音と共に私の方へと拳銃を向けてきた。みただけでそれはオモチャではなく本物の拳銃であることが分かった。

 

ライス、やっぱり不幸かも………

 

つきだされた拳銃に体が震え、地面へと座り込みそうになるのを耐える

 

「あ、あの………ここは何処ですか?」

 

そう口を開くとふたりの男性は私を見て不思議そうに、そしてありえないといった顔で此方を見てくる。

 

「まさか、組織の人間じゃないのか?」

 

へ?組織?えっと、特撮か何かですか?そんな事を思いながら首を傾げる。

 

「えっと、その………な、何をしてるんですか?」

 

「お前には関係ないことだ。ここから……!」

 

その時、カンカンと遠くから誰かが歩いてくる。思わず耳がピクリと動く。両手で外套の上からウマミミに被せて意識を集中する。

 

「なにか、聞こえる……」

 

荒い息遣い、廃工場の地面を蹴る足音。慌ててる、それに心配、焦り。時折聞こえる『ヒロ』と言う単語

 

「誰か、近くまで来てる……」

 

「ッ!」

 

「追ってか!?」

 

「ヒロ?誰のことを言ってるの?もしかしてお兄さん達の知り合いですか?」

 

「あ、あぁ………」

 

「俺たちには全く聞こえないが………っ!?」

 

だいぶ足音が近付いてくる、それに応じて聞こえる音も大きくなる。たぶん、一人かな?

 

足音が重なって聞こえないし、息遣いも1つだけ

 

「聞こえる足音は、一人だけか?」

 

「は、はい。そうです………」

 

そうこうしているうちに足音はすぐそこまで来ていた。

 

「ライ!スコッチ!」

 

聞こえてきた方をチラリと見ると金髪に褐色の肌の男の人が慌てた様子で此方へと来ていた。

 

え?ライにスコッチ?この人たちすごいキラキラネーム………ライスもそうだったわ

 

「ゼロ!違うんだ、ライは俺を逃がそうとしてくれて………俺たちと同じNOCなんだ!」

 

「本当、なんですか?」

 

取り敢えず、なんかさっきから嫌な予感がする………ハッ!?これはウマ娘としての直感!

 

なら即座に、逃ーげるんだよーう!

 

その場から即座に走り出し、夜の道を駆け抜ける、なんか後ろから声が聞こえるけど気のせいだよね

 

そうして走り続け、一瞬の浮遊感。またかと気が付けば私は雪の降る道路に佇んでいた。

 

ぶるりと体が震え、羽織っている外套を握りしめる。うん、取り敢えずまた知らない所に、しかもさっきまで夜だったのにお昼ぐらいの時間帯になってる……どういうこと?

 

取り敢えず暖かい所を探そう………勝負服ってドレスだから寒いと思ってたけど、思ったより暖かいんだね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライ(赤井秀一)side

 

 

スコッチに自身がNOCだと告げ、それを疑い自決しようとするスコッチをリボルバーのシリンダーを掴み、どうにか止めていた時だった。

 

背後から足音が聞こえ、急いで振り返りながら持っていた拳銃を向ける。そこには外套を羽織っている小さな少女らしき人物がそこに立っていた。

 

まさか、こんな子も組織の一員なのか?

 

「あ、あの………ここは何処ですか?」

 

体が震えながらもそう弱々しく口を開いた彼女の声から出たのは、道を聞くただの質問だった。

 

「まさか、組織の人間じゃないのか?」

 

その言葉に首を傾げる少女

 

「えっと、その………な、何をしてるんですか?」

 

「お前には関係ないことだ。ここから……!」

 

去れ、そう言おうとした言葉は突如として少女が見せたの驚きの表情で止められた。両手で頭を押さえるようにし、目を瞑る少女

 

「なにか、聞こえる……誰か、近くまで来てる……」

 

「ッ!」

 

その声に思わず耳を済まし気配を感じ取れるように周囲を見るが何も聞こえない。俺たちの気を引く嘘かそう思った、その瞬間

 

遠くからカン!カン!と此方へと走ってくる何者かの足音。が俺たちの耳に聞こえた

 

ありえない、この足音を俺たちよりはるかに前から気付くなど

 

「追っ手か!?」

 

俺の声に顔を険しそうに変えたスコッチ、このままでは彼を助けることは……

 

だが、そんな予想を覆す答えを少女が放った

 

「……ヒロ?誰のことを言ってるの?もしかしてお兄さん達の知り合いですか?」

 

「あ、あぁ………」

 

ヒロ、その単語にスコッチの表情が僅かに綻ぶ

 

恐らくは今から来る奴は俺らと同じように組織に潜入しているスコッチの同僚か?

 

「聞こえる足音は、一人だけか?」

 

「は、はい。そうです………」

 

俺の問いに即座に返す少女の情報が確かなら、そう思いスコッチの胸元から拳銃を放す

 

やがて足音が俺たちの目の前まで迫り、この場に現れたのは金髪に褐色の肌を持つ組織の探り屋、バーボンだった

 

「ライ!スコッチ!」

 

バーボンは俺を睨み、此方へと駆け出す。構えているのを見るに俺から彼を助けようと考えているのだろう

 

だが、その前にスコッチが俺の前に出た。

 

「ゼロ!違うんだ、ライは俺を逃がそうとしてくれて………俺たちと同じNOCなんだ!」

 

「本当、なんですか?」

 

「あぁ、俺はFBIの赤井秀一。お前らと同じだ」

 

その後、バーボンとスコッチで話し取り敢えずバーボンの持つセーフハウスに彼を匿うこととなった。恐らく、スコッチは警察の方から裏切られた、いや見捨てられた可能性がある。

 

暫くは家から出ない方が良いだろう

 

取り敢えずバーボンがスコッチを連れていくのを見届け、スコッチの死体を偽装しようとした。そのときだった、先ほどまでは俺に道を聞いてきた少女がその場から消えていることに気付いた。家に帰ったのだろうか?取り敢えず彼女が無事に家へと帰ることを祈り俺はスコッチの死体を偽装するためその場に証拠を作り組織へと報告した。

 

それにしても、彼女の異常な程高い気配察知……いや聴力か?いったい、どうすればあのような聴覚が身に付くのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライスシャワーside

 

 

またもや変わった目の前の風景に温度に目を見開きつつ歩く。おかしい、さっきまで夏か秋みたいな感じで暖かかったのになぁ

 

さすがに1日で雪が積もることなんて東北じゃないとありえないし、いったい、何が起こってるの……

 

そう考えながら歩き、同じ疑問を何度も考える。それにしても、本当に外套があってよかったなぁ。外套のおかげで耳や尻尾は隠せるし、雪で体や服が濡れなくて助かる。

 

ん?

 

その時、何処からか少し変な匂いがして思わず足を止める。なんだろう?そう思いながら匂いを追いかけていくと少し暗い路地裏のような場所の入り口へとたどり着いた。見れば近くの建物に座り込むように全身真っ黒な服を来た綺麗な銀髪の男性が倒れている。お酒の飲みすぎで倒れたのかな?

 

そう思いながら近付くと、男の人の近くに赤い何かが擦れて地面が赤く染まっていた。もしかして、死んじゃってるのかな?

 

そう思いながらさらに近付いていく

 

もし、死んでたらあの人には悪いけど財布からお金を少しだけ頂いちゃおうかな?ライス、この身とギター以外はなにもないから、ご飯食べたり、何処かに泊まらせて貰うのにもお金がないから何も出来ないどころかこのまま餓死endすはあり得る

 

故に、お金が必要だ。

 

もし、生きてたら心配して近付いた事に出来るし。そう思いながら私は男の人に近付いてしゃがむ

 

「あ、あの……大丈夫ですか?」

 

「あ?」

 

声を掛けるとその声とともに男の人の鋭い目が私を睨み付ける。い、生きてたんだ……

 

「よかった、倒れていたから心配だったんです。あの、大丈夫ですか?血が……」

 

「問題ねぇ、さっさと行け」

 

「は、はい…………」

 

そう言いながら路地裏から出る、ううお金も手に入らない。ストリートミュージシャンするとしてもこんな雪じゃ公園なんて誰もいないよね………

 

はぁ、どうやって寒い冬を越そうかな………

 

そう思いながら歩いていると、何処か慌てた様子で辺りをキョロキョロと見回しながら走るガタイの良い真っ黒な服を来てグラサンを着けている人がいた。時折、男の人の口から『兄貴』と言う単語が聞こえたので、なんとなくさっき倒れてた男の人の場所を教えたら、すぐに走っていった。

 

なんだったんだろ、あの人たち。そう思いながらまた一歩を踏み出しあの浮遊感を感じた

 

あぁ、またなの?私の目、鏡が無いから見えないけどレイプ目になっているような気がするよ。ねぇお姉さま、そろそろ私普通に歌って稼がないとヤバいです。どうか転移しないで暫くは暮らせて歌える場所に目を開いたらいることを願い私は瞳を閉じた

 

 

 

 

 





ご愛読ありがとうですわ!

そろそろライスさんが死神のいる時代に次々と近付いているようで楽しみですわ!

感想、お気に入り登録、高評価

お待ちしておりますわ!



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はじめてのストリートライブ

また、あの浮遊感を感じまさかと思いながら目を開く。目の前に広がるのは沢山の人々や車が行き来していて、周囲には沢山のビル等の建物が立っている。そんな町に(ライス)は立っていた。

 

車の排気ガスや時折聞こえるクラクションに鼻やウマミミが少し苦しいけど、そこまでヤバい訳ではない。取り敢えず、また別の場所にいたんだし、まずは近くの公園でもさがそうかな。この昼ぐらいの時間帯に暖かい気温なら公園に人はいるだろうし。少し歩きながら思った

 

(ライス)、この町の地理全く知らないし近くの人に公園の場所を教えてもらった方が早いんじゃね?よし、早速話を聞けそうな人を。

 

そう思いながら周囲を見回すと、優しそうな男性とガタイが良く高身長の男の人が並んで交差点の信号を待っているのが見えた。あの人たちなら大丈夫そう

 

私は信号が変わらないうちに聞こうと思い軽く走り、口を開く

 

「あの、すいません。少し、良いですか?」

 

そう言うと二人が振り向き私を見たとたんに眉がピクリと動く。あれ?そう言えば私どんな格好してた?

 

こんな沢山の人がいる街中で怪しげな外套を被ってギターケースを肩に背負っている少女。考えてみれば(ライス)、凄く不審者なんじゃ……

 

「近くに、公園ってありますか?ら、(ライス)はストリートライブをしたくて、公園を探しているんです。」

 

「そ、そうなんだ、公園なら近くにあるよ。そこの道を右に曲がって少し歩けば公園だよ」

 

「ありがとうございます!」

 

よし、これでやっとストリートライブでお金を稼げる。出来れば早くに有名にならないと

 

「だけど、警察の僕たちだからよかったけど、あまり知らない人に道を聞いちゃ駄目だよ?怪しい人だったりしたら大変だったらね」

 

そう言う優しそうな男の人、確かにそうかも。たまたまこの人たちが警察だったから良かったものの………警察?

 

「えっと、お兄さんたち警察官なんだ」

 

あれ?ヤバくない?だって(ライス)の姿って不審者だよね?補導されない?取り敢えず早めにこの人達から離れて公園に向かった方が良いかな?

 

そう思いながら先程教えて貰った場所へと向かうために一歩を踏み出して、私とお兄さん達の目の前をすごいスピードで車が通り過ぎ、電柱にぶつかった。

 

「高木!救急車を!」

 

「は、はい!」

 

そう言ってお兄さん達が車へと駆け出していくのを見てから私も公園へとお兄さん達から逃げるように駆け出し、またも一瞬の浮遊感を感じ気が付けば(ライス)は公園のベンチと思われる場所に座っていた。

 

ま、またなの?そう思いながら今の過ごしやすい気温や天気を確認する。暖かい気温、天気は晴れで時間帯は午後。うん、大丈夫そう

 

それに公園に居たのは良いかな?、そう思いながらベンチにギターケースを置いてケースを開けてギターを取り出す。そしてギターケースの中に着ていた外套を脱いで入れる。こっちの勝負服姿の方が可愛いから客引き出来るだろうし、ウマミミと尻尾はアクセサリーだと思うよね?

 

肩に掛けたギターを持って構え、軽く弦を弾きながらギターを調整する。ギターの音がなった瞬間に公園で遊んでいた子供たちは私の方を向き、公園の入り口近くにいた人達が私へと視線を向けてくる。

 

ストリートライブは掴みが大事、なら私はこの曲で勝負してみる。(ライス)のファーストライブの始まりだね、お姉さま!考えた(ライス)用の歌を、いま歌う!

 

(ライス)の歌を聞いてください。“いつか、叶う夢へ”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ライス)はアニメに置いてのライスシャワーを思い浮かべながら、彼女へと送るエールの歌を静かにギターを弾き涙を流さず、静かに歌い終えた。

 

歌詞に込めた思い「諦めないで」「不可能なんてない」「もう一度歩んでみよう」「そしたらきっと、夢は叶うはず」「だから進もう」「少しずつでも良いから」「まっすぐに、夢へと歩んでみよう」

 

さすがに掴みには少し難しい曲だったかな?

 

そう思った瞬間に見てくれた人達が手を重ね拍手してくれた。可愛い、声が綺麗、良い歌といった声も耳に入る。どうやら掴みは良いみたい、こっからはどんどん歌うよ。もしかしたら“おひねり”も貰えるかもしれないよね!

 

そんな事を考えながら私は次の曲を引くため、指をギターへと伸ばす

 

「ありがとうございます!(ライス)の名前はライスシャワー、ストリートミュージシャンをしてます。出来れば、少しでもおひねりを貰えたら嬉しい、です。それじゃあ次の曲も聞いてください」

 

そう言って私はまた歌い出す、前世で聞いた沢山の歌を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歌を歌い終えた頃には沢山の人が少しだけどおひねりをギターケースに入れていってくれた。

 

まぁ、合計で二千円と少しだけど稼げたのは大きな一歩だよね。アハハ、これじゃ今日の晩御飯でなくなっちゃうよね………確かライスって大食いだったし

 

そう思いながら、外套を羽織ろうとしたそのときだった

 

「おい」

 

「は、はい!?」

 

後ろから聞こえてきた怖い声に思わずピクリと反応する。だ、大丈夫だよね?ウマ耳が動いたの見られてないよね?

 

そう思いながら恐る恐る振り替えるとそこには全身真っ黒な服装をした銀髪の男の人が立っていた。あれ?どこかでみたことがあるような………(ライス)の気のせい?

 

もしかして、この公園でのストリートライブって禁止だったとか!?

 

「いつも、ここで歌うのか?」

 

「は、はい。毎日かはわからないですけど、少しでも稼がないと、生きられないですから」

 

「そうか」

 

私と男の人の間に沈黙が続く、少し気まずい

 

「さっきの歌」

 

「は、はい!」

 

「良い歌声だった、また来る。じゃあな」

 

そう言いながら男の人は茶色い封筒をギターケースに放ると、公園の出口へと歩いて行きやがて見えなくなった。取り敢えず先程の封筒を確認すると1万円札が大量に入っていた。

 

「………へ!?」

 

い、一気に今日の稼ぎが増えちゃった……取り敢えず近くの泊まれそうな場所を探そうかな。せっかく貰ったんだし、大事に使わせて貰おう。

 

そう思いながら、私は外套を羽織りギターケースを持って公園を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………なんだろう、この声。

 

■■■を呼んでる?なんで?

 

■■■は回りを不幸にする駄目な子なのに……

 

あれ?なんだか、すっごく眠い……

 

おやすみ、なさ、い…

 

 

 

 

 

 




皆様、本作をご愛読ありがとうございます。突然ですが、今後の今作品の投稿に関して、悩んでいます。
皆様の中でもご存じの方はいるかも知れませんが、感想にアンチと思われるコメントが付きました。
一応、反論はしたのですがそれから改めて考えまして、ウマ娘は公式が二次創作を許していない、と友人から言われ自身のこの作品は大丈夫だろうか?訴えられたりしないだろうか?消した方かよいのだろうか?

このまま、考えていた通りに執筆して投稿すれば良いのか、それとも早めに終わらせればよいのか、作品を消去するべきかわからないのです。

そしてウマ娘の死は酷く厳しい判定のあると聞き、そしてアンチからのコメントも読んで考え、先に皆様に今作のネタバレを書き込もうと決意しました。先に伝えていれば運営からも消される可能性が少しでも無くなると考えたからです。

もし、ネタバレは知りたくない。と言う方はブラウザバックを推奨します。

────────ネタバレ─────────














実は本作のライスシャワーは生きている。











─────────────────────

もしかしたら今回の話を読んで、そう考えた人もいるでしょう。その通りでございます。

主人公の秘密、何故憑依したのか等は今後の展開をお楽しみに頂ければ嬉しいです。

本来ならばもっと先にてライスの生存を匂わせる文を少しずつ出していく予定だったのですが、小説を消去されるのではないかと言う恐怖などに囚われた結果、今後の話を本来予定していたものよりも早くライスの生存の匂わせを書きました。

ついでですが、今作品でライスの歌った『いつか、叶う夢へ』は作者が考えた歌です。一応、歌詞は現在書いています。



改めまして皆様、今回もご愛読ありがとうございます

感想、お気に入り登録、高評価

よろしくお願いいたします


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理想を追いかけて

皆様の意見を貰い本作、ライスの物語は続きます

そして今回の話しにはオリ展開、キャラ崩壊が多く含まれているかもしれません。

沢山の応援の声を頂き、すごく嬉しかったです。

今後もどうか本作をよろしくお願いします


 

ライスside

 

はじめのストリートライブから数日が過ぎた。あれからも毎日私はあの公園でストリートライブを行っていた。

 

前までのように、いつの間にか知らない場所にいる、季節が変わってるなんて事は無かった。取り敢えず銀髪のお兄さんから貰ったお金のお陰かホテルで寝泊まりする生活が出来ている。考えてみれば始めてこの体に成ってからベットで寝たような気がする。それと、あれから変わったことと言えば、スマートフォンを手に入れたこと。

 

私のライブに来てくれたあの銀髪のお兄さんの友達のガタイの良いお兄さんがネットで告知をすれば来てくれる人も増えるのではないかと意見してくれたからだ。でも、考えてみれば今の私の戸籍も何も無いわけで契約することは出来ない。取り敢えずお兄さんには色々とあって戸籍や色々と無いのでスマホを契約出来ないと伝えたのだ。

 

そうしたら、何故か銀髪のお兄さんが持っていた携帯をくれた。お兄さんが言うには元々予備の携帯を多く持っていて、そのうちの1つを貰えると言うのだ。さすがに貰うのは不味いから断ろうとしたら、代金として歌ってくれれば良いと言われ、私はこうしてスマートフォンを手に入れてしまった。

 

あの銀髪のお兄さんには本当に頭が上がらないよ…………お礼にお兄様って呼んだ方が良いのでは?よし、次からはお兄様と呼ぶことにする!最初こそ怪しい人だと思ったけど、すごく良い人らしい

 

あのときにガタイの良いお兄さんにお兄様の居場所を教えて助けてよかった!やっぱり人助けとかした良いことは帰ってくるんだねお姉さま!そんな訳で即座にスマートフォンのアプリを入れて某有名な青い鳥に登録して告知することにした。どうせ誰もライスシャワーって名前を本名だと思わないだろうしそのままの名前を使った。

 

青い鳥のアプリを見たからこそ分かったのだが、この世界にはウマ娘はいない。ウマ娘と言う謎の人も、アプリも漫画もアニメもない。

 

つまり、この世界はウマ娘の世界ではない。そこから考えられるのは、私が表に出た場合に研究所での研究。実験をされる毎日だ。

 

偏見かもしれないけど、こうして家も戸籍もない状況はすごく不味い。まぁ、もしもの時は荷物をもって逃げる。ウマ娘の身体能力でごり押すしかない。まぁ、ストリートミュージシャンを名乗ればウマ耳と尻尾もコスプレだと思われるはず。今日歌う予定の曲を考えながら荷物をもってホテルを出る。

 

そして近くの邪魔にならない場所でスマホの青い鳥でライブの予告をすると、即座に携帯に電話が入った。

 

「もしもし?」

 

『俺だ』

 

もしかしてこの声ってあの銀髪のお兄さんだ!

 

「お兄様、どうしたの?」

 

『その呼び方はいまは良い、今日のお前のライブは急用で行けなくなった』

 

「べ、別に毎日無理して聞きにこなくて大丈夫だよ?」

 

『………そうか。じゃあな』

 

その声と同時に通話が切れた。

 

あの人は本当に良い人だな、こんか良い人がファン?として(ライス)の歌を楽しみにしてくれてるなんて、なんだか(ライス)には勿体ない人だな。そう思いながら、いつもの服装で歩きだした。

 

その姿を、とある男にみられながら

 

「あの娘………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公園でのライブ最初の2、3回目は少しぎこちなかったけど今となっては普通にギターを出して軽く歌いながら弾くくらいには慣れた、と思う。ギターを弾きながら調整して、軽く声を出して喉を整える。

 

告知した開始時間が近くなり外套を脱いで勝負服になる。公園には遊びにきた子供の親御さん方やいろんな人がちらほらと私の前にいる、あのほんの少ししか居ない状態からこんなに沢山の人が来てくれるなんて、なんだか嬉しい

 

「なぁ、ちょっと良いか?」

 

そう思っていると、黒髪で何処か優しそうに笑う少し髭を生やした男の人が立っていた。あれ?この人、どこかで………

 

「は、はい。(ライス)に何の用ですか?」

 

「えっと、俺、昔にお前とあったことがあるんだが。覚えてないか?」

 

「へ?」

 

も、もしかしてこれってナンパ?(ライス)、ナンパなんて始めてだよ………ん?改めて見たらこの人、あの廃墟みたいな所にいた男の人?

 

「もしかして、あの廃墟みたいな場所にいたお兄さん?」

 

「シー、確かにそうだけど、あの場所の事は秘密にしてくれないかな?」

 

「は、はい。分かりました、あのそろそろ時間なので」

 

「時間?誰か………待ってるの?」

 

いや、どっちかと言うと待たせてます………

 

「ちょっと、その(ライス)はストリートミュージシャンだから。そろそろ歌わないと、お兄さんまだ話す事があるなら後でも良いですか?」

 

「あ、それはごめん。じゃあ、後で」

 

そう言ってお兄さんが私から少し離れた場所に向かう。

 

ふぅ、まさかあの時の人と再会するなんて思わなかったな。

 

立ち上がりギターを一度鳴らす、ギターの音に公園の私たちの周りが静かになる

 

(ライス)のストリートライブに、来てくれてありがとうございます!(ライス)の名前はライスシャワー、青い鳥のアカウントでライブの告知をするので、よければフォローお願いします!」

 

そう言うと拍手が帰ってきた、今のところ私のライブを見に来てくれた人は十人と少しだ。よし、がんばるねお姉さま!

 

今回歌うのは、私の本来のストーリーをたどったライスシャワーに送る?歌。ただ純粋に誰かを笑顔に、幸せにしたいと言う夢を追いかけ、心なき人達に心を砕かれた彼女が、もう一度理想を思い出して歩けるように。

 

これは、一人の理想を追った男の歌。

 

“正義の味方”と言う理想を追いかけ、過去の自分をも越えて見せたたった一人の男の歌。

 

「最初の歌、聞いて下さい

      ……“LAST STARDUST”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諸伏 景光side

 

 

俺がNOCだとバレ、ライ……赤井秀一に助けられ別の名前を使い生活にするように成ってからしばらく経った。

 

そんな今日、結果的には俺を救ったあの不思議な女の子。すごく耳が良い事が印象的だった、外套から僅かに見えたあの顔とそっくりな彼女を見つけた。

 

あの時と同じ外套を羽織りギターケースを持った彼女に、俺は話がしたかった。あの時に俺を救ってくれた彼女に一言言いたかった。そんな思いから彼女を追いかけ公園にはたどり着いた。

 

その時、何故か公園にはたくさんの人がベンチの周りで佇んでおり、なにかを待っているようだった。取り敢えず彼女に話しかけようと彼女の歩いて言った方を見れば外套を外し、黒いドレスと帽子に青い薔薇の装飾がされた服装をしていた。さらには頭には獣の耳がつけてあり、後ろの腰あたりには、馬と思われる尻尾が着いている。

 

コスプレだろうか?そう思い、ふと違和感に気付いた。彼女の髪に隠れただけかもしれないが彼女には耳が無かった。

 

しかも、何故か分かったのだが本来あるはずの耳はなく、あるのは恐らく馬と思われる物の耳と尻尾。最近、何かと有名な異世界アニメ等に出てくる獣人。

 

俺と赤井秀一の目の前に現れた不思議な空想上の生き物。まさか………

 

頭の中に思い当たる事があった。それはまだスコッチとして組織に潜入していたときに、ゼロから聞いた1つの出来事。

 

人間と他の生物の遺伝子を掛け合わせ、新たな生命を作り出す実験。小さな子供を誘拐し、その子達で実験を行っている。少し前に組織との間に裏切りがあり、その実験を行っていた研究所の研究員は皆殺しにされた。

 

その際に研究内には沢山の人体に異変のある子供の遺体が保管されていたらしい。

 

研究の資料によると、子供の中では牙が生えている子や目の色があり得ない色に変化した子。頭に生えた耳が聞こえ、人間としての耳が機能を失った子もいるらしい。

 

この研究員はたった一人の完成した最高傑作である少女の存在を話し自らの心臓を撃ち抜いて死んだ。だがその後、組織がその少女を捜索したが、見付からずその少女に関する情報も全て破棄され、これ以上の捜索は不可能となりこの話は終わりとなったらしい。

 

目の前で歌う彼女の頭に着いている耳は時折ピクリと動き、尻尾は左右に小さく揺れている。まさか、あの子が?

 

だとしたら、あの聴力にも耳や尻尾を隠すように外套を羽織っているのにも納得出来る。

 

あの日、僅かにフードから見えた彼女の瞳に酷い隈があった。今の彼女の隈が以前より消えているのを見るに、もしかしたら組織以外にも追手がいてそいつらから逃げ回っていてロクに眠れていなかったのだろうか?隈が少し消えていると言う事は眠れているということだと思うけど。

 

目の前の彼女が歌う歌は、あんな子供からは想像も出来ないほどに深い歌詞だと思った。いつの間にか周りと同じように携帯で彼女の歌を録画している

 

傷付くのが定めだとしても、心はまだ彩を放つ。それはまるで、俺が体感した出来事。

 

沢山の人の暮らす日本の平和を守りたい、その思いから警察官となりゼロ同じ公安の潜入捜査を行うことになった。正義のために、NOCだとバレない様に人を殺した。平和を守りたい、日本に住む人々を守りたいと思っていたはずなのに、行っているのは人殺し。

 

そんな、磨耗していく心をしっかりと保ち潜入捜査を続けた俺に待ち受けていたのはゼロが組織の更に上へと行くため、NOCだと組織に知らせ、警察から切り捨てられた。

 

今となってはゼロが上に掛け合ってくれたお陰か、俺の情報を組織に売った人物を上に報告。

俺やゼロの上司にあたるその人は、独断での指示や行動を出していた事が多く、警察から去ることとなった。

 

今では名前を変えて、ゼロの手伝いをしている。警察に裏切られたけど、俺の思いは変わらなかった。

 

ゼロやみんなと共に、この日本の平和を守る。

 

あの日、彼女がいなかったら俺はここには居ない。

 

だから

 

「ありがとう」

 

心から、俺を救ってくれた彼女へのお礼が口から漏れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、ゼロ。お布施ってどのぐらいの額が普通なんだ?」

 

「どうしたんだ?急に」

 

「いやさ、ストリートミュージシャンをしてる子がいてファンになったからさ。お布施で取り敢えず5万ぐらいいれてきたんだけど」

 

「え、は?」

 

「やっぱりもっと多い方が良いのかな?」

 

「……………」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、また聞こえる

 

真っ暗な中で膝を抱える■■■に聞こえてくるのは■■■を苦しめる声じゃない

 

■■■は周りを不幸にするダメな子なのに、なんで?なんで、■■■にお礼を言う声がするの?

 

それに、歌みたいな何かが聞こえる

 

静かで、心が熱くなるような音楽。

 

でも、なんて歌ってるのかわからない

 

■■■は膝に顔を埋め、ゆっくりと眠気に身を委ねる

 

まだ、眠い。おや、すみ…な…さい…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





???
「今回のお話。ご愛読、感謝いたしますわ!」

???
「みんなの沢山の応援のお掛けでこの話は続くよ!沢山の応援、本当にありがとう!」

???
「お陰で私たちもまたここに来れましたわ。本当に出番がまた回ってきて良かったです。」

???
「そうだね。読者のみんな!感想、お気に入り登録、高評価!よろしくお願いしまーす!」

???
「それではまた次回にお会いしましょう、失礼しますわ。」

???
「じゃーねー!バイバーイ!」




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怪しむ子供、美味しいニンジン

 

 

 

(ライス)がこの世界に来て色々な場所や時間に飛ばされなくなり、お兄様のお布施のおかげか安定したストリートライブ生活をしている。

 

お金は出来るだけ節約してるけどね?だってお兄様のおひねりを無しで考えたら私のストリートライブでの収入は結構低いから。というか改めて考えるとお兄様って凄いお金持ちなのかな?一回ライブに来たら20から40万円前後のおひねりを貰える。(ライス)は戸籍や通帳なんてものもないから残ってるお金は全部現金で持ち歩いてる状況なんだ………このリュックと財布を忘れたり落としたりしたらアウトだよ………気を付けないと!

 

そう考えながら、ここ最近の日課を行う。日課とは(ライス)の宿泊しているホテルの周辺を散策することだ。(ライス)はまだこの町の道に詳しくない、この町の地理や建物の場所を覚えていた方が今後の役に立つと思った私は日課として散策を行うことにしたのだ。

 

散策し(ライス)が泊まっているホテルに泊まれなくなった時の為の宿泊施設、そして病院や警察署の場所を何とか覚えることができた。まぁ、警察署はまだしも病院はあまり行きたくない。このウマ娘の容姿なら即座に研究所送りとなる事が目に見えているからだ。

 

警察署………(ライス)の見た目は外套のフードを被っている。補導や通報されそうなのは(ライス)だった。身の安全のためにと警察署を覚えたけど、意味なかったかな?

 

そんな事を考えながらホテルの近くにあった商店街へと入る。昔ながらと言うべきか、肉屋さんや八百屋さんが並んでいて、少し耳が苦しいと感じるほどに賑わっていた。

 

商店街の中の道を歩く、まっすぐに歩いていた(ライス)は思わず色々な店に目が向かうなか、1つの店のあるものから(ライス)は目が離せなくなった。八百屋さんの元にある1つ、ウマ娘の好物であるオレンジ色の野菜、にんじんから。

 

元々、私はかなりの偏食で野菜などは好んで食べなかった。と言うか単に野菜嫌いなだけ、野菜を買ったり見るのは大丈夫だが匂いと味がダメで食べられない………はずなのだけど、先程からニンジンから目が離せない。

 

ニンジンを食べたいと言う欲求が頭から離れない、欲を押えられない。気が付けば私は八百屋さんのニンジンを数本買っていた。値段は安かったから良いけど………。えっと、食べてみようかな。一応、洗った方が良いよね?

 

そう思いながら私はニンジンを片手に近くの公園へと来たのだが、歩いて来る途中から何故か違和感を感じる……と言うか違和感と言うよりは視線、かな?

 

今のところ危害はないから無視してるけど……。

 

水飲み場の蛇口を捻り、流れてきた水でニンジンを洗う。よし、水洗いはしたし、食べられる状態にはなったけど。

 

頭の中のニンジンを食べたいと言う欲と今までのニンジンの苦い味と記憶が対立して、中々ニンジンを口に運べない

 

「がんばれ(ライス)、がんばれ……!」

 

意を決してニンジンを口に運び噛みきって咀嚼する。あれ?いつもの吐き気が来ない………!?

 

え!あ、甘い!?

 

口の中で広がった甘味に思わず目を見開く。

 

これ、本当に野菜!?甘い、私の知ってる野菜は全部苦くて口に入れたら直ぐに吐き気がして食べられないのに…………。

 

そう思いながらボリボリとニンジンを齧る。やばい、(ライス)ニンジンにハマったかも。これからは1日に1本は食べたいなぁ。そう言えば暫くお兄様はストリートライブに来れないらしい。

 

なんでも、お仕事で外国に行くのだとか。(ライス)のストリートライブに来れなくて残念だと言ってたから、ストリートライブで来なくても聞けるように動画も投稿した方が良いのかな?

 

青い鳥のアプリでも良く曲の動画を投稿しないのかとコメントされてたし、どこか防音の部屋を借りられたら良いんだけど。

 

二本目のニンジンをボリボリ齧りながらスマホの青い鳥を開いてこの場で十分後にストリートライブを行うと告知する。よし、あとは何処かのベンチに座って準備するだけ

 

よーし、今日もがんばるぞ……おー!

 

「ふぅ、んしょ」

 

ギターケースを持つ手を変え、二本目のニンジンを最後まで食べる。そして最後である三本目のニンジンへと手を伸ばし

 

「あの、さっきから何をしてるんですか?」

 

突如として背後から掛けられた声に思わずウマ耳と尻尾が跳ねそうになったのを我慢し、振り向く。

 

ランドセルを背負った茶髪でクールな女の子

 

黒髪で天真爛漫な女の子

 

背が高く太った男の子

 

痩せていて(ライス)に話しかけてきた博識そうな男の子。

 

計4人の子達が並んで(ライス)へと話しかけて来ていた。

 

「えっと、ニンジンを食べていただけだよ?」

 

そう言いながら外套のフードから顔が見えるようにして、最後のニンジンを取り出して見せる。すると、クールな子は信じられないと言った目をして此方を見て引いている。

 

「すごーい!お姉さんニンジンを生で食べられるんだー!」

 

「う、うん。えっと、どうかしたの?」

 

そう聞くと、さっき私に声を掛けてきた

 

「そのギターケースって実はカモフラージュで本当は銃が入ってるとか!」

 

え、えっと想像力が逞しい子なのかな?そんな平和な日本で映画みたいな事あるわけないのに………

 

「え、えっと普通にギターが入ってるよ?」

 

そう言ってギターケースを開けて中のギターを見せる。すると男の子は少し残念そうと言うか、納得が行かないような顔をしていた。

 

「全く、漫画の読みすぎよ。」

 

「真っ黒なマント付けてて怪しいと思ったんですが……」

 

そ、それに関しては何も反論出来ないかな……あ、アハハ

 

「えっと、服はこれを付けないと目立っちゃうから」

 

そう言いながら横目で携帯を確認すると後5分で告知した時間だった

 

「それじゃあ(ライス)はやることがあるから」

 

そう言いながら私は少年達の前から駆け出し、ベンチのある場所まで向かう。そしていつも通りギターケースをベンチに置いてギターを取り出し、外套を脱いで背負っていたリュックに仕舞い込む。ギターを構えて少し調整していればいつの間にか、私の周りをいつも見に来る人やたまたま通りがかった人達がいた。良く見ればさっきの小学生達もいる……ランドセルを背負ってるけど一度家に帰らなくて良いのかな?親御さんが心配するよ?

 

そう思いながらギターを構えて立ち上がり深呼吸してから、口を開いた

 

「み、みんな!今日は(ライス)のストリートライブに来てくれてありがとう!始めての人も来てくれてありがとう!(ライス)の名前はライスシャワー、青い鳥でライブでの広告とかしてるから、よかったらチェックしてください!」

 

「せ、精一杯歌います!聞いてください、Just Fly Away!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰原 哀side

 

今日もいつもの三人と私は博士の家へと下校していた。工藤君は欲しい本を買いにいくため、途中で別れたからだ。

 

そのため、今は円谷くんがリーダーのような立ち位置となって私達の前を歩いている。今のところは普通だ、事件も起きてない平穏な日常だ。もしかしたら今頃、工藤君は事件にも巻き込まれていたりするのかしら?

 

そんな事を考えていると、前の三人が立ち止まり、少し先の方を見つめている。また何かを見つけたのかと三人の視線の先を見るとそこには黒い外套のフードを深く被り、片手にはギターケースを肩から下げ、もう片手にはビニール袋を下げた凄く怪しい人が歩いていた。

しかも身長は小学六年生ぐらいの為、いつ通報されても可笑しくない見た目をしている。

 

黒い外套を見て、一瞬だが黒の組織を思い浮かべたがあの感じがないのを見るに、恐らくは関係のない人ね。いや、関係はなくてもあれは普通に気になるわね………

 

「あの子、真っ黒なマントつけてフードまで被ってる。変なの」

 

いや、マントじゃ……まぁこの年齢だと外套ってまず知らないわよね。

 

「そうですね歩美ちゃん、もしかしたら事件の犯人だったりして!以前に本で読んだことがあります!スパイなどの人はあのようにギターケースに実は銃を隠していて、周りからバレないようにしていたりするんですよ!」

 

「でもよ、アイツ大人じゃねぇし、身長だってオレ達と同じくらいだろ。本当に銃とかもってんのか?」

 

「いやいや!更に言えばあの買い物袋だって──」

 

はぁ、なんでこういう時に限って工藤君が居ないのかしら?彼ならあの推理力でこの子達の考えを勘違いだと教えられるのに。

 

そう言えば、今朝冷蔵庫にあったケーキ。恐らくは博士のよね、あれだけ間食は控える様に言ったのに買ってくるんだから、困っちゃうわ。私が低カロリーの食事を考えるの、結構大変なのだけど。

 

それに、博士もさっきの外套の子みたいに()()()()()()()()()()ぐらい野菜を食べてくれたならメタボも改善されるだろうし………?

 

自身の視界にある光景が少し可笑しく思い、一度目を擦ってからもう一度見るがあの外套の子がニンジンを丸齧りしている光景は変わらなかった。

 

は?何やってるのあの子!?確かにニンジンは生でも食べられるけど、それはあくまでも皮を向いてスティックに切った物を何かのソースに浸けて食べるのが普通でしょ!?

 

「あの、さっきから何をしてるんですか?」

 

円谷くんが話しかけると、外套の子は驚いたのかピクリと震えたあと、深く被っていた外套を浅く被り直す。すると外套から彼女の顔が見えた。

 

何処か幸薄そうでいて、何処か儚さを感じさせられる少女。目元の大きな隈以外は普通だが、いったいどれだけ眠らなかったらこんなに成るのかしら?もしかしたら虐待とかなのかしら?それとも家出?

 

「えっと、ニンジンを食べていただけだよ?」

 

いや、もしかして家出をして、お金がなかったから商店街で買える安いニンジンでお腹を満たそうとして………今日の晩御飯に招待しようかしら。それに、さっきの考え通りだとしたら彼女が少し痩せ気味なのも理解出来る。

 

「すごーい!お姉さんニンジンを生で食べられるんだー!」

 

「う、うん。えっと、どうかしたの?」

 

突然話しかけられた事に困惑しているのか、頭を傾げている。

 

「そのギターケースって実はカモフラージュで本当は銃が入ってるとか!」

 

「え、えっと普通にギターが入ってるよ?」

 

すると、何処か疑うときの工藤君に似せた感じで聞く円谷くんに対して、彼女は少し困惑しつつギターケースを開いてギターが入っているのを見せた。

 

「全く、漫画の読みすぎよ。」

 

「真っ黒なマント付けてて怪しいと思ったんですが……」

 

そう言われると、確かに彼女の着ている外套は怪しく感じるわね。

 

「えっと、服はこれを付けないと目立っちゃうから」

 

つまり、外套の中の服装が恥ずかしくて出せない?近くで何かのイベントは確か無かったはずだからコスプレは無いわね

 

そう考えていると、外套の子は手に持っていていた携帯を見ると

 

「それじゃあ(ライス)はやることがあるから」

 

少し焦った様子でそう言うと駆け出して行った。それしてと、ずいぶんと独特な一人称ね。

それに駄目よ、そんな急に駆け出したらこの子達が怪しまない筈が無いわ。

 

「急に逃げ出すなんて変です!追いかけましょう元太くん!」

 

「おう!」

 

そう思いながら三人を見ると即座に円谷くんと小嶋くんが駆け出し彼女の後を追いかけていく。

 

「哀ちゃんも行こ!」

 

そう言って吉田さんが私の手を取って走り出す。

 

「わ、分かったから手を離して!」

 

二人で走っていた二人を追いかける。だが公園の道の途中で円谷くんと小嶋くんがキョロキョロしているのを見るに、あの子を見失ったらしい。

 

「あれ、あの子は?」

 

「それが見失ってしまって」

 

「アイツあんなに重そうな物もってんのにスゲェ早く走るんだぜ。あんなのコナンじゃねぇと追い付けてねぇよ」

 

もしかしてあの子、陸上か何かやってたのかしら?だとしたらなんでギターを?軽く息を整える。

 

「ねぇ、もうさっきの人の事は忘れて帰りま─」

 

もう帰ろう、そう提案しようとしたその時だった、近くからギターを弾く音が聞こえた。

 

「この音、もしかしてさっきの!」

 

「だとしたら近くにいますね!音の聞こえる方に行ってみましょう!」

 

そう言ってまた皆が聞こえる方へと向かうと、沢山の人が集まっている所に付いた。普通ならこんなに公園に成人してる人が集まらないと思うのだけど………。

 

すると二人が集まっている人の足元を潜り抜け、前へと向かっていく。私も吉田さんに手を引かれて同じように前の方へと歩いていく。

そして目の前に広がっていたのは青い薔薇の装飾が付いた黒いドレス、帽子を着て、頭に獣らしき耳と馬と思われる動物の尻尾を付けている先程の少女がギターを構えていた。

 

「み、みんな!今日は(ライス)のストリートライブに来てくれてありがとう!」

 

あの子の視線と私の目線が合う、すると少し驚いたが笑いかけてくる。

 

「初めての人も来てくれてありがとう!(ライス)の名前はライスシャワー、青い鳥でライブでの広告とかしてるから、よかったらチェックしてください!」

 

ライスシャワー?だから、ライスと言う一人称。でも、ライスシャワーって何処かで………。

 

「せ、精一杯歌います!聞いてください、Just Fly Away!」

 

そう言ってあの子がギターを弾く、あの子からは想像の出来ない程に激しいスタートだった。

 

歌詞は、夢に向かい走る。諦めずにひたすら前へと駆け抜けていくような歌だった。いつの間にか私達はあの子の曲に引き込まれていた。

 

そして彼女が唄を紡ぎ終えた瞬間にその場にいた沢山の人が手を叩き拍手する。聞き入って放心状態だった私も遅れて拍手する。それに彼女は嬉しそうに笑って返し、新たな唄を歌い始めた。パソコンで彼女のアカウント、チェックして見ようかしら?

 

そんな事を思いながら、私達はそれぞれの家へと下校するのだった。

 

………余談だが、私達がライスシャワーの歌を聞いている間に工藤くんは殺人事件に遭遇していたらしい。

 

 

 

 






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投稿が遅くなった理由
→少年探偵団の口調や呼び方がムズいんじゃ…


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漆黒の追跡者

ウマ娘のグミを3つだけ購入し、見事ライスとマックイーンのレアのシールを引けたので初投稿です。ちなみにもう一つはノーマルのマチカネタンホイザでした。


 

 

今日、私はいつも通り米花町を散策していた。姿はいつもと変わらず勝負服の上から外套を羽織っている。

あれからファンの人達の意見が多かったため、防音の部屋を借り歌っていた歌を録音し歌だけの動画も上げてみた。

 

思ったよりも高評で、沢山の人が感想を書き込んでくれている。何故か分からないが今のところ、ライスシャワーと言う名前に違和感を持つ人は居ないみたいだ。

 

そう言えば、お兄様はまだ海外の仕事が忙しいらしく日本に戻って来れていないらしい。歌の動画の事はLIVEに行けなくても聞けるから嬉しいらしいと連絡が来た。

最近は青い鳥のアプリで次はどの場所で歌うのか等を聞いてくる人が増えてきた。ちょっとは人気が出てきたし、おひねりも少しずつは増えている。

 

あとニンジンを美味しいと感じたあの日から1日3本はニンジンを丸齧りしている。いや本当に野菜嫌いだった頃じゃ考えられない事をしてるよ(ライス)は………。

 

「あら!いつもニンジンを買ってくれるニンジンのお嬢ちゃんじゃない!」

 

そんな声が聞こえて振り替えるといつもニンジンを買っている八百屋さんのおばさんがバックを持って立っていた。

 

「こ、こんにちわ……です」

 

「うんうん、こんにちわ。最近はどう?ちゃんとご飯食べてる?ニンジンばっかり食べてちゃ駄目よ?他のお野菜やお肉も食べなきゃ」

 

「た、食べてるので大丈夫です……」

 

優しい人だな、数日通っただけでこうも心配してくれるなんて。そう言えば思い出したけど、ようやく最近になって目元の隈がちょっとずつではあるが消えていっている。あと少しで普通の顔になるかなぁ……。

 

「あの、買い物ですか?」

 

「まぁね、お味噌をきらしてたの忘れちゃっててね」

 

そう言いながらおばさんは私にバックを持ち上げて見せる。恐らくこれに財布やらが入っていて今から買いにいくのだろう。

 

その時だった。

 

「きゃ!?」

 

「痛っ!」

 

私とおばさんの間を男の人がぶつかりながら通り抜けたのだ。

 

男の人の勢いの強さにおばさんが思わず横に転ぶ。

 

「引ったくりよ!誰か!……痛っ」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

おばさんの声におばさんのバックが取られたことに気付いた。更におばさんの足元を見れば少し足首が腫れているように見える。(ライス)がおばさんと長話しなかったら、(ライス)のせいで、そう考えそうになり私は首を振ってその考えを消す。

 

「おい!大丈夫か!ってお前は……」

 

「ひったくりと聞こえたが大丈夫か……!?」

 

見ると以前に観覧車であった人とマンションで会ったことがある男の人が二人立っていた。

 

このままじゃ男の人に逃げられちゃう、追いかけないと。

 

「あの、誰かこの人と(ライス)の荷物をお願いします!」

 

「あ、あぁ。松田は一応警察に」

 

「わ、分かった!」

 

そう言いながら急いで道の端にギターケースを置いて駆け出す。アップも何も無しに走る、ただひたすらにあのおばさんのバックを盗んだ男を追いかけて、バックを取り返す事を1番に考える。

 

絶対に、おばさんを怪我させたあの男に追い付く。そう思いながら足を動かすが、走る速度は人間の出せる速さのまま。原因は分かっている

 

(ライス)の体を隠す外套、ウマ娘である私の耳と尻尾を隠す最後の砦。それが風の抵抗を受け、私の体を引き戻し、私の走りを邪魔する。だからこそ、人間としての速さしか出せていない。

 

本気で走れない、追い付けない。そう考えた瞬間にその考えを頭を振って振り払う。

 

走りながら先を見ると、男の近くに車が止まり、ドアが空いた。男は近くにいた人達の前をぶつかりながらも乗り込む。不味い、そう思った次の瞬間、車は走り去っていってしまう。

 

「な、なんだなんだ!?」

 

「大丈夫ですか!毛利先生!」

 

「お父さん大丈夫?」

 

「ッ!………」

 

先ほどまで車の有った場所で思わず立ち止まる。このままじゃ、追い付けない。

 

もし追い付くのなら、(ライス)は外套を捨て去らないと行けない。この外套を脱ぐこと、それは世界に異常な存在、この世界には存在しないウマ娘と言う存在を世に知らしめること。

 

「君、どうかしたのかい?あの車に乗っていた人を追いかけていたようだけど」

 

膝に手を置いて呼吸しながら走っていく車を睨み付ける。頭に浮かぶのはバックを取られたときのおばさんの悲しそうな顔。

 

(ライス)が、()()()が走るのは誰かを不幸にするのではなく、誰かを幸せにする青い薔薇になる為。

 

なら、答えは決まっている。例え、この世界にウマ娘の存在が露見して研究所に連行され実験さる事になるのだとしても、最後に誰かの笑顔を取り戻す事が出来るなら。

 

(ライス)は胸を張ってライス(ライスシャワー)に伝えられる。貴方の体を借りた形とはいえ、貴方は誰かを幸せにする事が出来たのだと。幸せにする力があるのだと!

 

研究所に連行され実験をされる恐怖を捨てる。

 

(ライスシャワー)は何のために走る?

 

(ライス)が走るのは『()()()()()()()()()()()()()()()』ために。

 

原点回帰し、頭にあるのは、あの男の車に追い付きおばさんのバックを取り返しおばさんの笑顔を取り戻すこと。

 

私はふと、先ほど聞こえてきた方にいる人達を見る。そこにいたのは先程の男にぶつかりそうになっていたおじさん、褐色の肌に金髪の男の人に高校生ぐらいの女の人、そして何故か自分を怪しむ目で見てくる子供。

 

「あの、大丈夫ですか?さっきの人は──」

 

私は片手を外套へと伸ばし、しっかりと掴む

 

「すいません、少しの間(ライス)の外套を預かって下さい!」

 

そう言いながら外套を思いっきり引く。バサッその音と共に外套が外れ褐色の男性の手へと向かい、(ライス)は全てをさらけ出した。

 

胸元に青い薔薇の装飾品の付いた漆黒のドレス、腰には小さな短剣がベルトで固定され、頭には斜めに青い薔薇の装飾品が付いた漆黒の帽子が付けられている。靴は黒いソックスに踵にリボンが付けられた漆黒の蹄鉄靴。

 

私専用(ライスシャワー)が、ウマ娘が走るための勝負服、そして揺れ動く人ならざる馬の尻尾と長い馬耳。

 

「なっ!?」

 

一度瞳を閉じる、私は上半身を前に出し少し前傾姿勢となり足に力を溜める。

 

頭の中にある考えは“走りあの車に追い付く”こと。ウマ娘が出せる全力の速さで、今度こそ追い付く。

 

もう一度瞳を開いた瞬間、何故か周りの人が凄く驚いた様に見えた。

 

(ライス)は全力で足を踏み込む。

 

次の瞬間、米花街に黒い閃光が誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の人々は見た。

 

圧倒的な速度で走る()()()を。

 

そのナニカは少女の姿をしたナニカ。

 

黒い少女の姿をしたナニカは歩道を駆けていたが、突如として飛び上がり車道の真ん中の白線。

 

唯一、車道にて車がめったに現れることの無い場所。

 

そこへ飛び移り少女はまた走り出す、車をも越える速度で走る、その目に青い炎を宿して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──駆ける。

 

────────駆ける。

 

─────────────駆ける。

 

初めて、(ライス)は全力で走っている。

 

さっきまでとは比べ物にならないくらいに速い、先ほどから景色が次々と後ろへと流れていく、ウマ娘がいつも見ている世界。

 

そう思いながら、一台の車を追い駆け車の走らない真ん中の白線をなぞるように走る。

 

車が先程より加速し前へと走っていく。

負けない、そう思いながらまた走る足に力を込め、加速する。(ライス)はステイヤー、体力はまだ余っている。

 

「………」

 

加速する車、私はあの車へと追い付くため、歯を食いしばり腰に身に付けた短剣の柄へと触れる。

 

『……………誓います。』

 

脳内に思い浮かぶ光景、ステンドグラスの綺麗な教会にて青薔薇の花束を持ち歩む(ライス)の姿。

 

『大好きな人の為に、幸せの青い薔薇に』

 

そう言いながら(ライス)は短剣を手に伸ばし、そのまま柄を強く握りそのまま前へと足で強く踏み込む。

 

(ライス)だって、咲けるッ!!」

 

私は更なる速度の領域へと一歩を踏み込む。

私と車の間に開いていた差は二馬身、一馬身とどんどんと縮められていく。どんどんと車が目の前にせまり、(ライス)はその車の横に並んだ。

 

走りながら、ガラス越しに男ともう一人共犯と思われる男を睨み付ける。男達は恐怖に顔を歪めた。(ライス)は車を追い越して前へと走り即座に振り返る。

 

そして私へと進んでくる車へと両手を突き出し、走ってきた車を両手で()()()

 

普通ならあり無い事だが、(ライス)はウマ娘、10枚は積まれた瓦を拳の一撃で叩き割ったり、自分より遥かに大きい超巨大重機のタイヤを引きずったり、側溝に嵌った車を持ち上げたりするほどの力を持つウマ娘である。

 

ゆえに、このようなことも出来る。少し手首がしびれたけど。

 

すると男達が車から出て来るが、表情を見る限り抵抗する気は無さそうだ。(ライス)は男達の近くにゆっくりと歩いて行く

 

「な、なんなんだよ……なんなんだよお前は!?途中まで、上手く行っていたのに!」

 

酷く怯えながらも私を指差し喚き散らす男。普通なら少し落ち着いて貰ってから話すのが良いのだろうが、関係ない。

 

「返して、あの人のカバン。今すぐ」

 

自分の口から酷く冷たい言葉が吐き出される。そう言うともう一人の男が体を震わしながら車へと戻りおばさんのバックを持ってくる。私はそれを受け取った瞬間に男達の溢した呟きをウマ耳が拾った。

 

「ば、化け物………」

 

そんな言葉を無視して、(ライス)は彼らに背を向け歩きだす。このカバンを持ち主に返すために。

 

歩き、暫くして後ろからはパトカーのサイレン音が響き渡っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り返して、来ました」

 

そう口を開き、ゆっくりと八百屋のおばさんへと歩みを進めカバンをおばさんへと手渡す。

 

どうやらあのときに頼んだ二人は、さっき聞こえたパトカーの方へと行くよう頼まれたのかは分からないが、この場所から居なくなっていた。

 

「あんた、まさか………」

 

数秒間の沈黙がすぎ、カバンを受け取ったおばさんはやがて驚愕の表情を浮かべた。そっか考えて見れば、おばさんにはちゃんと顔を見せたことは無かったっけ?それに普段からフードで耳を隠してるから分からないのも仕方ないかな。

 

「ニンジンのお嬢ちゃん、なのかい?」

 

「は、はい」

 

「ありがとうねぇ……これ実は旦那が初めてくれたプレゼントでね、ずっと大事に使ってたんだよ。本当にありがとうねぇ」

 

そう言いながらバックを抱き締めるおばさん、おばさんの浮かべた笑顔を見て、全力で走って良かったと感じた。

 

「またうちにおいで?いっぱいニンジン仕入れといてあげるから」

 

「………はい」

 

そう返事を返し、預けていたギターケースを肩に掛け私は外套を返して貰うためあの人達のいた場所へと向かった。

 

 







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タイムリミット~動き出す時計~

遅くなりました、やっぱりコナンキャラの口調はムズいんじゃあ………







 

ライスシャワーside

 

 

外套を返して貰うため、(ライス)は褐色のお兄さんの居た場所へと小走りで向かっていた。おばさんの鞄を返して貰うために走ったとは言え、改めて考えれば警察の人にお世話になっても可笑しくない事、しちゃったかな。

 

うぅ、不安だ。それに、目立っちゃったからか、それともこの服とウマ耳のせいかずっと見られてるしスマホにも先程からずっと通知音が成っている。

 

取り敢えず外套を返して貰おう、それから携帯を見る事にしよう。そんな事を考えながらさっき外套を預けた褐色のお兄さん達がいた場所へと向かう。

 

早足で歩いているけど、あのお兄さんは外国人っぽかったしすぐに見つかると良いな。そんな事を考えているとさっきの人達が立ち話しているのが見えた。

 

「す、すいませーん!」

 

そう叫びながら走っているとお兄さん達が私の方に気づいた。

 

「君は………」

 

(ライス)の外套、ありがとうございました突然頼んだのに……」

 

「いえ、大丈夫です。」

 

「それにしても、ずいぶんと個性的なファッションですね。」

 

「え、あ!アハハ、そうですね」

 

金髪で褐色のお兄さんの言葉を濁しながらささっと外套を被りフードを被る。よし、一先ずこれで大丈夫。

 

「それにしても、お前スゲー足早いな。すぐに見えなくなってビックリしたぜ。」

 

近くにいたおじさんも話しに入ってくる。

 

(ライス)、その……走るのが好き、だから

 

「走るのが好きで、あんなに早く走れるなんて凄いですよ!陸上とかやってたんですか?」

 

「いえ、その……」

 

さ、さすがにウマ娘の存在する世界のトレーニングセンター学園なんて言えるわけが無いし、独学で誤魔化せるかな?

 

「ど、独学です」

 

「へぇー!お姉さん凄いんだね!」

 

「そ、そんなこと……エヘヘ」

 

さっきから褒められてばかりだから少し恥ずかしいな。

 

「そう言えば、名前を教えてはいませんでしたね。僕は安室透。此方の毛利探偵の弟子です」

 

「私が名探偵、毛利小五郎です!何かあったら相談に乗りますよ、お嬢さん。こっちは娘の蘭、そしてこいつはコナンです。」

 

た、探偵さんなんだ。ま、漫画とかでしか見たことがなかったけど本当に探偵はいたんだ。でも、収入とか大丈夫なのかな?そんな事を考えながら差し出された名刺を受けとる。

 

「よろしくねお姉さん!ねぇねぇ!どうやったらあんなに早く走れるの?」

 

どうしよう、人として走る時のアドバイス……思い付かない。だって(ライス)はウマ娘だし

 

(ライス)はその、教える方法わからないから……」

 

「お姉さんの名前は?」

 

取り敢えずそう言っているとき、このコナン君に対して何処か見覚えのあるような気がする。

 

気のせい、かな?そう言えば皆も自己紹介したし、私も自己紹介した方が良いよね?

 

(ライス)の名前はその……ライスシャワー、です」

 

そう言うと毛利さんは目を見開いて驚きコナン君と蘭さんは首を傾げ、安室さんは一瞬顔を歪めたような気がした。

 

「ほぅ!ライスシャワー!ライスシャワーを知っとるとは!お嬢さんも競馬が好きなのか!」

 

「ッ!」

 

ライスの事を、知っている。その事から頭の中で久しぶりとも言える感覚が頭を支配する。

 

「ちょ、お父さん!なんでライスシャワーさんの名前が競馬なんかに繋がるのよ!」

 

「良いか蘭!ライスシャワーはな!」

 

目の前が真っ暗になって、何も見えない。

体を支配するの恐怖心、そして強く植え付けられた他人からの感情。

 

『また罵倒される』『逃げなきゃ』

 

『また不幸になる』『また不幸にしてしまう』

 

『怖い』『嫌』『悲しい』

 

『誰もライスの走りを望まない』

 

()()()は今すぐにでも走り出したい、この場から逃げ出したい。

 

「すげぇ!馬なんだよ!」

 

そんな思いは、そんな毛利さんのたった一言で砕け散る。

 

「え?」

 

まるでカーテンを開けたように、真っ暗な中に目の前に光が差し込んできた。

 

「菊花賞でミホノブルボンのクラシック三冠制覇!それに1993年の天皇賞春ではメジロマックイーンの同競走三連覇をそれぞれレコードタイムを叩き出して阻止したすげぇ馬なんだよ!!」

 

それは、ずっと否定され続けていた()()()の初めて自身の耳で聞いた自分以外がライスへ向けた肯定的な言葉。

 

「そんなことからライスシャワーは『関東の刺客』『黒い刺客』『レコードブレイカー』の異名を持つんだぜ!くぅ!俺も映像見てて思わず胸が熱く───」

 

なんで、なんで罵倒しないの?

 

ライスが走ると皆嫌な顔をするのに、なんでこの人はこんなにも楽しそうにライスの走りを語るの?

 

「よかったら此方を」

 

そう言って安室さんがハンカチを差し出してくる。意図が分からず、首を傾げその拍子に頬から涙が頬を滴り、地面へと落ちる。

 

泣いている事に、今気付いた。

 

「ちょっとお父さん!泣いちゃったじゃない!!」

 

「い、いやその!俺は馬の話をしてるだけで……」

 

ライスは、沢山の人から否定され続けた。そう思った、ライスの全てが壊れた日。あのライブでも、罵倒のみが耳に聞こえると思っていた

けど、違ったんだ。ライスを応援してくれる人も、いたんだ。

 

「ありがとう、ございます。」

 

気が付けばライスはそう口を開いていた。

 

()()()に、気付かせてくれて、肯定してくれて……ありがとう、ございます。」

 

そのまま()()()は久しぶりに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、(ライス)のお腹からグゥーと大きな音が鳴った。恥ずかしい、顔が熱い。恐らく今はトマトのように頬が赤くなっている。

 

そう言えば、(ライス)の体って一度本気で走ると凄くお腹が減っちゃうんだよね。ウマ娘って少し燃費が悪いのかな……。

 

「あの、し、失礼します」

 

そう言って走り出そうとして、私の手を誰かが握る。見れば、コナン君が私の手を握っていた。

 

「ねぇねぇお姉さん!この後みんなでご飯食べにいくんだけど、お姉さんも一緒に行かない?ボク、もっとお姉さんとお話したいなぁ」

 

………ごめんなさいお姉さま、(ライス)ご飯には勝てなかったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安室透side

 

 

出会ったのは偶然だった。本来ならば保護するはずであった黒の組織の研究者達の行った人間と他の生物の遺伝子を掛け合わせ、新たな生命を作り出す実験。

 

小さな子供を誘拐し、その子達で実験を行っている。少し前に組織との間に裏切りがあり、実験を行っていた研究所についた時には研究員は皆殺しにされていた。

 

研究内には沢山の人体に異変のある子供の遺体が保管されていたらしい。研究の資料によると、子供の中では牙が生えている子や目の色があり得ない色に変化した子。頭に生えた耳が聞こえ、人間としての耳が機能を失った子もいるらしい。現実ではあり得ない空想上の生物、獣人。

 

せめて、生きている子供だけでも保護したかった。だが報告書にはこのたった一人の完成した最高傑作である少女を残しすべての子供たちは殺された。

 

親元に返すことも叶わなかった、その現実が自分の力不足を痛感させられた。その後、組織がその少女を捜索した。もちろん、俺も風見に捜索の指示を出したが少女は見付からず、その少女に関する情報も無く、これ以上の捜索は不可能となりこの話は終わりとなった。

 

最近になって分かったのだが少女に現れた体の異変、それは馬の耳と尻尾らしい。

 

そんな事が今分かったとしても、もう少女が何処にいるか、そもそも生きているのかも分からない。

 

そんなある日、安室透として毛利先生やコナン君達と共に行動していた時だった。毛利先生の近くに止まった車に毛利先生を押し退けるように男性が入っていく。男性が車に入る瞬間に、女性物のバックが見えた。頭の中で男の車に乗る様子から、盗難が思い当たる時には車は走っていった。

 

そんな時だった、僕達の前に黒い外套を羽織りフードを深く被った小さな子供が両膝に手をついて呼吸していた。やはり、あの男は盗難を?いや、まずこの子から話を聞いて見るしかない。

 

「君、どうかしたのかい?あの車に乗っていた人を追いかけていたようだけど」

 

そう声をかけてみるが、子供は此方を向かず俯いて呼吸を繰り返す。何か聞き出さないと、さっきの車の男に関しても何も分からないままだ。

 

すると外套から僅かに見えた顔が此方を捉える、恐らくは僕たちに気付いたのだろう。

 

「あの、大丈夫ですか?さっきの人は─」

 

態度を改めて、刺激しないように話しかけるなか、突如として少女が外套へと手を伸ばし強く掴む

 

「すいません、少しの間私ライスの外套預かって下さい!」

 

その声と共に外套がバサリと音を立てて宙に放り出され僕の腕に乗る。そしてそれの同時に外套を羽織っていた少女が姿を表した。漆黒のドレスを纏い頭に馬の耳、そして尻尾が生えた異常な姿の少女。

 

「なっ!」

 

あの実験の中で生き残った、たった一人の生き残りの少女。

 

そんな彼女は前傾姿勢になり、瞳を閉じた瞬間、まるで金縛りにあったような感覚がした。まるで蛇に睨まれている蛙のように全く動くことが出来ない。

 

その時だ、少女がゆっくりと目を開く。一瞬だが、俺には少女の片目に青い炎が灯っているように見えた。そして次の瞬間には俺達の前から消えた。いや正確には走っていった、それも人の出せるとは思えない速度でだ。

 

とてもだが信じられない気持ちでいると少し先で車と何かが衝突するような音が聞こえた。事故か?いや、まさかさっきの少女が?

 

そんな事を考えながら毛利先生達と会話する。

 

幸い、彼女の外套を預かっているから戻っては来るはず。その時に聞くか

 

そして帰ってきた少女は僕から外套を受け取ると直ぐに羽織りその尻尾や耳を隠す。

 

毛利先生やコナン君と話すなか、彼女の名前が分かった。彼女の名はライスシャワー、日本語でも英語でもない、そんな果たして名前と呼んでも良いのかわからない名前。この名は自ら名付けたのか?はたまた研究所の誰かが名付けたのかわからない

 

ライスシャワー、その意味は結婚式後に出てくる新郎新婦へお米を撒いて祝福する事を差す。奴らが作り出した、改造されたこの子に付けられた名が祝福を意味するライスシャワー。そんな考えに思わず安室透としての顔が一瞬だが剥がれ、急いで安室透としての仮面を被り直す。

 

「ほぅ!ライスシャワー!ライスシャワーを知っとるとは!お嬢さんも競馬が好きなのか!」

 

「ッ!」

 

「ちょ、お父さん!なんでライスシャワーさんの名前が競馬なんかに繋がるのよ!」

 

競馬?何故ライスシャワーと競馬が繋がる?毛利先生は一体何を?

 

そう思いながらライスシャワーと名乗る少女を見ると俯いていた。まるでこの場の何かに怯え逃げ出したそうに。

 

「良いか蘭!ライスシャワーはな!すげぇ!馬なんだよ!」

 

馬?

 

「え?」

 

まるで俺の心を代弁するかのようにライスシャワーが目を見開き顔を上げる。その表情は驚愕に染まっていた

 

「菊花賞でミホノブルボンのクラシック三冠制覇!それに1993年の天皇賞春ではメジロマックイーンの同競走三連覇をそれぞれレコードタイムを叩き出して阻止したすげぇ馬なんだよ!!」

 

なるほど、つまり毛利先生は過去の競馬の馬の事を言っていたのか。

 

「そんなことからライスシャワーは『関東の刺客』『黒い刺客』『レコードブレイカー』の異名を持つんだぜ!くぅ!俺も映像見てて思わず胸が熱く───」

 

見ると、ライスシャワーは泣いていた。綺麗な瞳から大粒の涙を流して。

 

「よかったら此方を」

 

そう言って持っていたハンカチを渡すと彼女は少し頭を下げハンカチで頬の涙を拭う。だが様子を見る限り恐怖や悲しみからの涙ではなかった。

 

「ちょっとお父さん!泣いちゃったじゃない!!」

 

「い、いやその!俺は馬の話をしてるだけで……」

 

蘭さんに言われて慌てる毛利先生、コナン君も少し驚いているように見える。

 

「ありがとう、ございます。」

 

そんな時、少女がそう口を開いた

 

()()()に、気付かせてくれて、肯定してくれて……ありがとう、ございます。」

 

まるで子供がオモチャを与えられた時のような純粋な笑顔、瞳からは涙が少し流れていながらも、口から出た言葉は重かった。

 

肯定してくれた、と言うことは彼女は今まで否定され続けていたと言う意味を考えられる。

 

しかも人体実験のために誘拐され、産み出された命。周りの人とは違う、そんな彼女は周りからは嫌われて育ってきたからこそ、毛利先生に名前を褒められた事にこんなにも嬉し涙を流して出る言葉。

 

こんなにも優しい少女へど人体実験を施した組織を必ず、解体して見せる。

 

そんな思いを胸に、俺は安室透として彼女に接するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても

 

「凄いですね………」

 

目の前では先程のライスシャワーさんが沢山の料理を平らげていた。しかも今もラーメンを食べ続けているのを見てそう呟いた。

 

コナン君がライスシャワーを晩御飯に誘いファミレスに入ったのだが、最初に毛利先生が全員分を奢るとお金を出そうとしたのだが、ライスシャワーさんが自分の分は払いますと言って聞かなかった。今となっては毛利先生は少し安堵しているように見える

 

「お姉さん大食いの人?」

 

「違うよ?!…変だよね?こんなに食べるの。」

 

「そんな事ないですよ?」

 

「そうですよ!ねぇお父さん」

 

「蘭の言う通りだ、今度テレビでやる大食いの番組にチャレンジ出来るんじゃねぇか?」

 

「エヘヘ、(ライス)はウマ娘だから本気で走ると凄くお腹が減っちゃって」

 

そう言いながら麺を啜るライスシャワーさんの口から出た『ウマ娘』と言う単語は何だろうか?。文字通りならライスシャワーさんの事を差すのだろうけど、でもそのような単語があると言うことは少なくともライスさん以外にも同じウマの特徴を持った子供達がいると言う事だろうか?

 

「ところで、お姉さんは何処の学校に通ってるの?」

 

(ライス)、これでも成人してるよ?だから学校には通ってないの」

 

「へー、じゃあ何のお仕事してるの?」

 

「え、えーと(ライス)はお仕事はしてないの。ストリートミュージシャンをしてるの。えっとこれがライスのアカウントだからよかったら見に来てね」

 

そう言ってライスシャワーさんが差し出したスマホにはライスシャワーと言うアカウント名と自分で撮ったのであろう彼女の顔写真。

 

なんとなくどこかで見たことがあるような気がしながらも俺はパクパクと料理を平らげる彼女を見るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、ライスの走る姿を撮った動画は拡散され彼女のファンの元へと辿り着く。

 

 

某国、某所にて。

 

全身を真っ黒な服装で統一したガタイの良い男性がとある動画を上司である銀髪の男性へと

見せる。

 

「兄貴、これって」

 

「………早めに終わらせて帰るぞ」

 

「へい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

米花、某所にて。

 

少女がふと、調理の手を止めテレビのニュースを見る。

 

『先日あげられたこの動画、車道を車を越える速度で駆け抜けていく少女の動画ですが今ではその動画サイトでは100万回再生されており』

 

「これって……一体彼女に何が?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所、一人の女性が目を閉じ祈るように腕を組んでいた。女性は瞳開き、何処か心配するような表情は浮かべ口を開いた。

 

 

 

 

「そろそろ限界、ですか。彼女の傷は深い、もっと時間を掛けるべきですが……このまま()()()()()()()を止めておくことは出来ない。少しでも時間を動かすしかない、あの世界で彼女が消えてから数日ならまだ()()が効きます。ですが、一年間も経てばもう修正は難しい………速く彼女の傷を癒すのです。頼みましたよ、カノン………。」

 

 

 

 

 

 




謎のメジロ仮面X
「ご愛読ありがとうございますわ!
次回辺りからこの作品はENDへ向けて追い込みに入りりますわ!
出来るだけ止まらないよう書き続けますわ!
感想、お気に入り登録、高評価
お待ちしていますわ!
同じくウマ娘作品である
『パクパクですわ!のキャラに転生したんだけど、何か違いますわ……』
もよろしくですわ!」

???
「あいつ変な仮面着けて何してんだ?」

???
「さぁ?最近のマックイーン何か変だよね?」



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心分かつ時

ライスシャワーside

 

 

 

(ライス)は今、防音の部屋を借り真っ白な部屋の中で少し前に録音した曲、(ライス)の歌ったうまぴょい伝説を踊っていていた。

 

「うまぴょい!うまぴょい!」

 

初めてネットにあげる歌の動画はうまぴょい伝説にした。これは(ライス)がウマ娘なのと、電波曲が受け入れて貰えるかを試す為だ。

 

一連を踊り終える、さすがに駆け出したりは出来ないから、その部分はミニキャラバージョンのうまぴょいを踊るミニキャラを参考にした。

 

取り敢えず踊り終えた後に先程の動画を軽く編集し、青い鳥のアカウントを開く。

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

そう言うと共に画面をタップしうまぴょい伝説を世に送り出した。

 

そう言えばだが、なぜか(ライス)のストリートライブに沢山の人が来るようになってそれなりに稼げるようになってきた。と言うかお兄様と廃墟にいたお兄様は毎度高額をお布施してくれるんだけど、大丈夫なのかな?

 

廃墟のお兄さんは大丈夫だと言っているし、お兄様も大丈夫らしい。

 

そう言えば、私が全力で走った後に会ったときお兄様はいつもより何処か私を気遣うような感じがしたけど、気のせいかな?

 

取り敢えず、今日はうまぴょいを踊って少し疲れたし早めに休もうかな。

 

そう思いながらホテルに戻り、お風呂や御飯を終えた後に部屋のベッドへと入り目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと(ライス)は真っ白な世界に立っていた。真っ白な世界の通路の先にある部屋に体が勝手に向かっていく。

 

ザフキエル様、お呼びですか?

 

扉を開き中に入ると背中に羽を生やした女の人が立っていた。この人、なんで背中から羽が生えてるの?まるでお伽噺の天使みたい。

 

それにザフキエルって確かにユダヤ教の天使で「神の番人」「神の監視者」「神の知識」などを意味するとされ、にわか雨を司る天使。だったかな?

 

『今は私と貴方しかいないわ。だからそんなにかしこまらずいつも通り話して良いわよ?』

 

?恐らくは私の視点、恐らくは今はその人の目線なのだろうか?

 

………わかった

 

『それで良いわ、貴方に座天使ザフキエルより任務を与えます。貴方は今より天使である一時的に記憶を封じ、ウマ娘世界のライスシャワーへと憑依するのです。』

 

………え?

 

ライスシャワーに、憑依?

 

ザフキエルともう1人の誰かの会話が聞こえるが(ライス)は声を発することが出来なかった。

 

………何で?

 

『今、ウマ娘プリティーダービーの世界に異変があったの。ウマ娘の世界の中でも主要人物に当たるはずのライスシャワーが交通事故で亡くなってしまう所だったの、()()()()()の歴史ではそんなことあるはずないのに。』

 

淡々と聞こえる会話、そして聞こえたライスシャワーの交通事故。そんな展開はゲームにもアニメにもなかったはず……。

 

確かに原作にそんな描写、なかった。

 

『えぇ、恐らくはイレギュラーな事態が発生していたの。原作のライスシャワーへのバッシングよりも酷いバッシングを受けてしまったようで、今のライスシャワーは食事もせず、睡眠すら取れていない状況よ。』

 

原作以上のバッシング、もしかして。

 

頭に思い浮かぶのは、沢山の人を見たときに感じた異様なほどの恐怖、逃げないとと言う思い。あれは、ライスシャワーの心深くに根付いたトラウマ?

 

次の瞬間、(ライス)の頭がズキンと痛んだ。熱い、熱い、熱い………頭が熱い、痛い。

 

頭がボーっと成っていくなかでも、天使と思われる人達の会話は続く。

 

『だから貴方は、まずライスシャワーに憑依したらしっかりと睡眠と食事を取って暫く暮らしてちょうだい。出きるならメンタルケアを、ギフトの付与も許可します。』

 

(ライス)はライスシャワー、ウマ娘のライスシャワーに憑依した音楽が好きでギターを少し使える転生者。

 

ライスはライスシャワー、走るのが好きで。そんな走りであの絵本みたいに沢山の人を幸せにしたいと思っていた。でもそんなことが出来なくて、不幸にしてばかりで、全てが嫌になってトレセン学園から逃げ出した。

 

わかった、憑依する。

 

『封印した天使としての記憶は、戻るようにしておきます。貴方がもう大丈夫だと判断したなら、彼女を元の世界に返してあげて下さい』

 

 

そうだ、私は…………ライスシャワーでもウマ娘でも元人間でも転生者でもない。

 

 

ザフキエル補佐カノン、任務を遂行します。

 

 

 

 

 

 

 

私の本当の名前は、カノン。

 

かつて人が対神、対天使に向け開発した人型兵器、造られた天使……それが本当の私。

 

そして今は、カノンを本物の天使にしてくれた座天使ザフキエル様の補佐。ライスシャワーの体を元の状態に改善し救済、彼女を元の世界に返す任務を任された者。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~【ストリートミュージシャン、ライスシャワーちゃん】に付いて語るスレ~

 

 

1:名無しのお兄様 ID:LX2m/a8PJ

とにかく可愛い、それ以外にあるか?

 

2:名無しのお兄様 ID:WhUA0cuPA

歌は上手いし歌詞は良いし、見た目も可愛い。

凄く個性的な服だけど、可愛く着こなす

ライスちゃんは可愛い。つまり天使!

何故そこらの事務所にスカウトされないんだ?

 

3:名無しのお兄様 ID:DVS5Q4Oiw

ライスちゃんのLIVEの時、近くにはいつも銀髪の男性おるやろ?変な事務所とか来ると目で追い返すんや。

 

4:名無しのお兄様 ID:nJ481wnyR

真の英雄は目で殺す!

 

5:名無しのお兄様 ID:xSFnT/rsP

ランサーが死んだ!

 

6:名無しのお兄様 ID:eU1TPoXSX

この人でなし!!

 

7:名無しのお兄様 ID:lW4P1PJkQ

確かにあの目ならやれそう。それぐらいにヤバかった。

 

8:名無しのお兄様 ID:o1hR8o+LL

蛇に睨まれたカエルの気分って言うの?そんな感じだったよ、たまたまオレの近くに事務所の奴いたせいで凄く怖い思いした(恐怖)

 

9:名無しのお兄様 ID:Zv0gqAHMf

((( ;゚Д゚)))ソーダソーダ!

 

10:名無しのお兄様 ID:Z7RR9VodE

冤罪で睨まれるのマジで勘弁

 

11:名無しのお兄様 ID:7E/aCpwPy

そう言えば昨日のライスちゃんの新曲見た?

 

12:名無しのお兄様 ID:OI+p6yOyQ

うまぴょいうまぴょい!

 

13:名無しのお兄様 ID:A969yFIUr

聞いたに決まってるよなぁー!!

 

14:名無しのお兄様 ID:l/FQVibFr

うまぴょい伝説、かなり質です。

 

15:名無しのお兄様 ID:3o3xLaJCp

電波曲だったけど、なんかどっかで聞いた事がある何かの雰囲気に似てるんだよね。曲の出だしの所とかさ

 

16:名無しのお兄様 ID:IjCiwe8TI

あぁ、G1のファンファーレのあれな

 

17:名無しのお兄様 ID:IFeaj5MbZ

G1って何ですか?

 

18:名無しのお兄様 ID:xxNX/SgKU

ggrks

 

19:名無しのお兄様 ID:K8PEGCZ0L

17》説明しよう!

G1とは、業界で一番位が高いレースの事だ!

 

20:名無しのお兄様 ID:U919VBIqM

何のレース?徒競走?オリンピックかなにか?

 

21:名無しのお兄様 ID:AuWhLnF1t

競馬だよ、競馬。

 

22:名無しのお兄様 ID:71/o6OVUs

競馬だ?なんでそうなるんだってばよ?

 

23:名無しのお兄様 ID:C/AwL8wzy

ナァズェデス!?

 

24:名無しのお兄様 ID:zwuZym9Ls

ケンジャキはやめい!そう言えば歌詞にもそれっぽいコールがあったな。

 

25:名無しのお兄様 ID:OB0VE91YZ

君の愛馬が!って所か?

 

26:名無しのお兄様 ID:mTeInTS+f

それに彼女の名乗ってるライスシャワーって芸名も元々は馬の名前、だと思う。

 

27:名無しのお兄様 ID:058icj4Mi

あってる、実際に馬でライスシャワーおった。

 

28:名無しのお兄様 ID:SJ5fBTTx0

kwsk

 

29:名無しのお兄様 ID:Ciu85SQHS

誰か教えてエロい人!

 

30:名無しのお兄様 ID:DK4m6Y5RT

俺っち、競馬詳しくないので教えてよにゃんこ先生!

 

31:名無しのお兄様 ID:hyVliga60

解説の兄貴!オナシャス!

 

32:名無しのお兄様 ID:7r1Ac0j94

しょうがないにゃあ。

『ライスシャワー』

日本の競走馬で1992年の菊花賞、1993年・1995年春の天皇賞と中央競馬の長距離GI競走に優勝した馬。

菊花賞ではミホノブルボンって言う馬のクラシック三冠制覇を、1993年春の天皇賞ではメジロマックイーンの同競走三連覇をそれぞれ当時のレコードタイムで阻止したことから「関東の刺客」「黒い刺客」「レコードブレイカー」と呼ばれてた。

その後の低迷から1995年春の天皇賞で優勝し復活するけど、続いて出走した宝塚記念の競走中に骨折、予後不良と診断され安楽死したんよ。

 

33:名無しのお兄様 ID:tmHnR5SFT

つまり、凄い馬って事でok?

 

34:名無しのお兄様 ID:sCl4tDeDc

馬の着け耳と尻尾着けてるし、ライスちゃんは競馬好きでライスシャワー好き?

 

35:名無しのお兄様 ID:AmZgPuBRZ

結構珍しい趣味だね、競馬女子か。

 

36:名無しのお兄様 ID:G8Lvvnd+8

なぁ、ライスちゃんの馬耳と尻尾って本物だったりするのか?

 

37:名無しのお兄様 ID:JJ6JeTk5D

なに言ってんの?バカなの?

 

38:名無しのお兄様 ID:ePWfnzNy4

36》

貴方、疲れてるのよ。何徹したの?

 

39:名無しのお兄様 ID:NuZ9z+kf5

前にライスちゃんのライブ見に行ったんだけど、ファンの人に褒められたりすると馬耳がピクピク動いたり、尻尾が左右に揺れたのを見た。

 

40:名無しのお兄様 ID:Q+3qLiuXQ

風で揺れてただけじゃない?

 

41:名無しのお兄様 ID:s09FC3/hx

いくら風でも左右交互に吹くのはあり得んでしょ……。そん時は無風だったし

 

42:名無しのお兄様 ID:7ZsLiQ7VQ

え?じゃあライスちゃんってファンダジーな存在だった?

 

43:名無しのお兄様 ID:3lyo1r9k9

そう言えばライスシャワーの自己紹介プロフィールにウマ娘だって書いてあったな。

 

44:名無しのお兄様 ID:VRS93CrgD

ウマ娘?

 

45:名無しのお兄様 ID:y+CjtS6hO

UMAMUSUME?

 

46:名無しのお兄様 ID:tPxBL3Hof

あれか、白い悪魔と同類?

 

47:名無しのお兄様 ID:DhWLJhyVC

あっちは悪魔、こっちは天使

 

48:名無しのお兄様 ID:RqiMrB7fq

………少し、頭冷やそうか?

 

49:名無しのお兄様 ID:puyfig2b0

((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

 

50:名無しのお兄様 ID:qu8cZSz9o

はーい、スタブレされる前に話戻しますよ!

 

51:名無しのお兄様 ID:0TJr4G7by

はーい先生!

 

52:名無しのお兄様 ID:rwK+9rvZW

取り敢えず今の所のライスちゃんについて分かったこと?

1:ライスシャワーリスペクト?

2:ライスちゃんはウマ娘らしい

3:競馬女子?

4:歌詞と歌がふつくしい……

5:服が個性的

6:可愛い

だな。

 

53:名無しのお兄様 ID:0HioEuV8j

おい6w

 

54:名無しのお兄様 ID:yXBqAfglV

可笑しいことはないなw

 

55:名無しのお兄様 ID:uOwWetd4C

 

56:名無しのお兄様 ID:OCvqjJJLQ

社長いて草

 

57:名無しのお兄様 ID:CDjAIqPem

まぁ、可愛いは当たり前だな。歌も上手いし、リアルで見に行くのは当然、お布施も当たり前だな。

 

58:名無しのお兄様 ID:B/BYMZ9cD

そうね、当たり前ね。

 

59:名無しのお兄様 ID:dNCXJIsi+

………当然だ。

 

 

こうして真夜中、ネットスレに集まった紳士淑女はライスシャワーに付いて語り合うのであった。他に、新たなスレが立ち盛り上がっているとは知らずに。

 

 

 

 

 

 





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二人でのスタート

カノンside

 

目が覚める、確かにザフキエル様の言っていた通りカノンは天使としての記憶を忘れて数日間はライスシャワーに憑依した人間として暮らしていたようだ。既にライスシャワーの体はだいぶ改善されている。鏡を見ると目元の隈は消え、体も毎日食事を取っていたからか痩せ気味から、原作と同じくらいの姿に戻っていたライスシャワーが佇んでいた。

 

だが、この世界。名探偵コナンの世界の主要人物である、江戸川コナンこと工藤新一やジン、降谷 零達と出会ってしまった。更には彼らの他の死ぬはずであった人達を助ける形と成ってしまったのは凄く不味い。

 

世界が変わる、ザフキエル様に怒られるかも。いくらその時に天使としての記憶がなかったと言え、報告書書かされる。カノンは報告書を書くの面倒。

 

カノンがライスシャワーに憑依してから少なくとも二回は時を超えて、今の状態で体感だと1ヶ月半程は過ぎている。ザフキエル様でも、ずっと一つの世界を止めていられる訳じゃない。

 

恐らく、本来ライスシャワーがいるべきだったウマ娘の世界も少しずつだが時は動き出している。早く、彼女をウマ娘の世界に返した方が良い。でも、今のライスシャワーの状態は憑依したカノンが本気で走り、それを通してライスシャワーは走る意味を少し思い出した状態だ。

 

走る意味を思い出したとしても、それ以上に彼女の心の奥底に根付いたトラウマはそう簡単には消せない。もし、効率を求める……もとい早く済ませるなら、天使としての力を一つ使いそのトラウマとなってしまった時の記憶を消せば良い。

 

でも、それだと後々彼女に問題が起こるだろう。だからカノンはこうしてライスシャワーを元気付けていくしかない。貴方は凄い、貴方は出来るって。それが今のカノンに出来る事。

 

「ふぅ 」

 

目を閉じてゆっくりとベッドに横になり直す。ゆっくりと深呼吸をしながらライスシャワーの意識が起きている精神世界へとゆっくりとカノンの意識を繋げる。

 

すると、真っ暗で何も見えない世界が広がっていた。静かで足が地に付いてない、それに手を動かしても何かに触れる事もない。まるで空中。

 

「んっ!」

 

現実世界なら不可能だが、精神世界ならカノンは天使。だからライスシャワーの体に憑依していても翼は生やせる。背中からバサッと言う音と共に翼が現れた。

 

取り敢えず、翼をゆっくりと羽ばたかせながら下降していくと、やがて地面らしき場所にライスシャワーが佇んでいるのが見えた。見つけた、カノンはライスシャワーの丁度目の前にゆっくりと降り立つ。

 

「ライスと同じ姿の天使様?……」

 

驚いた表情でカノンの顔と背中の翼を見るライスシャワー。

 

「それはカノンが貴方の体に憑依し、貴方の体を借りているから。本来、天使のほとんどは自身の姿を持たない、だからカノンは貴方の姿を参考にした。」

 

「ライスの体に憑依って………どういうこと?」

 

「自己紹介、カノンはカノン。天使、ザフキエル様の補佐。」

 

「えっと、ライスシャワーです」

 

「カノンの任務、貴方の体に憑依して、体を元の状態に戻すこと。」

 

「元の状態?」

 

「ライスシャワー、貴方はある事から食事を取らず睡眠も取らなくなった……あってる?」

 

「はい…………。」

 

「だからカノンが貴方に憑依して寝れない貴方の変わりに寝て、ご飯を食べた。貴方の体は、もう元の状態に戻ってる。」

 

そう説明しながらライスシャワーの表情を伺う。その表情には驚愕が出ていた、確かに自分の知らぬ間に自分の体が治ってるってびっくりするよね。

 

「どうして、ライスなんかを……」

 

「貴方は少し悪い方に考えすぎる感じがある」

 

憑依していた時、カノンは彼女を知る人として彼女らしく行動していた。確かあの天使様が言うロールプレイだったかな?していたけど、彼女は、物事を凄く悪く考えてしまう節がある。自分のせいでって。

 

「もっと広く世界を見てみよ?カノンが貴方に憑依した時、貴方らしい行動をした。どうだった?」

 

「うらやましいって、思いました。歌で沢山の人を笑顔にして……ライスもそうなれたら良かったなって。」

 

「みんなを笑顔に出来たのはカノンだったからじゃない、ライスシャワーだったから」

 

「え?」

 

「貴方の姿で、貴方の声だったから出来たこと。」

 

カノンじゃ出来なかった、たぶん。決まった実態を持たなかったから

 

「それに、貴方だったからあの人の鞄を取り返せた。それに、走ってたとき貴方も意識あったでしょ?」

 

いくらウマ娘へと憑依した天使であっても、その時は普通の人として行動していた。急に人としての走り方からウマ娘への走りに変わるのは難しい。だからこそ、意識のあった彼女が正しい走り方へと正してくれた。

 

「あの人は、怪しく見える格好をするライスにも笑顔で優しく接してくれて、ニンジンも売ってくれたから……」

 

「貴方も一緒に走ってくれたから、あの人の鞄と笑顔を取り返せた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

あの時、彼女に伝えたいと思った言葉。その言葉を伝えると彼女は肩を震わせながら俯く。

 

「少しなら、大丈夫なんです………でも!」

 

ライスシャワーが顔を上げる、彼女はその瞳から涙を流していた。

 

「怖いんです……」

 

「?」

 

「沢山の人の前に出ると、あの時の事を思い出して……声が聞こえて、怖くて体が震えて、逃げ出したくなるんです……。」

 

悔しそうに、悲しそうにそう話す彼女の声は段々と大きくなっていく

 

「ライスは………ライスはもう一度走りたい!でも!……でも、怖い。怖くて、体が震えて止まっちゃう!それに誰も私が走ることを望まない!ライスは、ライスは………どうすれば良いの……」

 

どうすることも、誰かに助けを求める事も出来ずに涙を流す彼女を私はそっと優しく、痛くしないように抱き締め、頭を撫でる。

 

「あ………」

 

昔に女の子が泣いてたらこうやって抱き締めて頭を撫でてあげたらその子は落ち着くって、前にお仕事を手伝った時にエロース様に教えてもらった。だから実践してみたけど、本当に落ち着くんだ。その後変な事も言ってたっけ?確か『今の天界の中、女の子同士での愛もありなのよ!女の子同士で恋愛するべきなの』だっけ?

 

見れば先ほどまで悲しそうに、苦しそうに話していたライスシャワーが目を閉じて、少し恥ずかしそうにしながら私にされるがままに成っていた。

 

「大丈夫、貴方の走りはカノンが望む。」

 

「ライスの走りを、天使様が?」

 

「ん、もし貴方が苦しくて止まりそうなときはカノンが手を引いてあげる。泣きそうに成るなら抱き締めて上げる。カノンは天使、貴方を導くのも天使の……カノンの使命、だから」

 

「天使様………」

 

「一緒に進もう、少しずつでも良いから」

 

そう言ってカノンは笑う、優しく安心させるように。するとライスシャワーは再び涙を流した、先ほどまでの苦しそうな物ではない、安心したように笑って。

 

でも、カノンは彼女が元気になったら帰らないといけない。彼女を元気付け、元の世界に早く返さないといけないから。

 

でも、今は彼女を泣き止ませよう。そう思い、止めていた彼女を撫でる手を動かす事を再開する。

 

「あの、天使様」

 

「何?」

 

「名前で、ライスって呼んで下さい」

 

「いいよ、カノンは貴方をライスと呼ぶ。」

 

「はい!天使様!」

 

まず、彼女を人に馴れさせる事が良い。憑依して彼女を動かしている状態で大きなライブでも開いてみるの良いかも。

 

そう思いながらカノンとライスは、一人で二人。二人三脚で、ライスを元の世界に返すために頑張ろう。そう思った。

 

精神世界から現実世界に戻ったカノンは早速スマホで近くで借りれられそうなライブ施設を探す。

 

『天使様、これからどうするの?』

 

「まず、ライスが人に馴れる為に何時もの数人、数十人でのライブから少しだけスケールアップする。次のカノンたちのライブは近くのステージで、沢山のお客さんを呼ぶ。今からその告知をする。ライスが意識だけ起きた状態で歌うから、それで沢山の人に対する耐性を付ける」

 

まず、近くのライブ施設を今から3日後の日の午後に借りる予約をつける。電話したところ、無事に借りることは出来た。なら、あとは告知と、ライブの入場料を設定して当日に施設の入り口で待つだけ。

早速カノン達はスマホの青い鳥のアプリで告知した。

 


ライスシャワー

フォロー中
@BlueRose,Riseshower

ライスはウマ娘のライスシャワー。

ストリートミュージシャンです、何処でストリートライブをするかの告知をします!

歌った歌の動画も上げていく予定です!

沢山の人にライスの歌を聴いてもらえたら嬉しいです!


ライスシャワー@BlueRose,Riseshower

#新曲 #うまぴょい

新しく歌った歌で『うまぴょい伝説』です!

楽しい曲です、楽しんで聞いて下さい!

 

 

 

【動画表示】

 

 

 


ライスシャワー@BlueRose,Riseshower

#LIVEのお知らせ

みんなのお陰で、米花街のLIVEハウスを借りてLIVEすることが決まったよ!

みんな本当にありがとう!3日後の◇月◆日

米花街、桜西ビル地下のステージでみんなを待ってるね!入場者は100~120人くらい。

入場料は一人500円を予定しています。

動画でライスの歌を聞いてくれてる人も、いつもストリートライブに来てくれてる人も、会場に足を運んでくれたら嬉しいです!

歌う曲は全部その日に発表するね!新曲もあるから楽しみにしてて下さい!


 

 

 

「多くの人に馴れられるよう頑張ろう、ライス」

 

『う、うん。がんばれライスがんばれー、天使様もライブがんばれー、おー!』

 

こうして、カノンとライスは多くの人に馴れるためライブを行うことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 





次回、ライブの告知を知ったお兄様お姉様の反応はいかに?

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始めてのライブ

 

 

灰原哀side

 

パソコンに通知があった。工藤くんからの緊急のメールではなく、ネットのサイト。正確には青い鳥と言うアプリだ。

 

あの一件以来、私は彼女……ライスシャワーの奏でる音楽が好きになっていた。

 

ネット上に投稿される、彼女の歌う動画。

 

様々な歌は私が年齢と見た目を偽り小学生として暮らす上で発生するストレスを忘れさせてくれた。

 

そんな青い鳥のアプリに付いた通知、新しい歌が投稿されたのだろうか?そう思い、青い鳥で彼女のアカウントへと飛ぶ。

 

そこにあったのは、彼女が近日に米花町でLIVEをライブハウスを借りて開くと言う事だ。しかも新曲の発表も行うらしい。

 

可能なら行きたい、開催日は幸運な事に祝日。

 

博士に頼んでみようかしら?

 

そんな事を考えながら、パソコンを閉じて自室から出て博士の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジンside

 

 

海外での仕事を終わらせ、日本へと帰るため俺達は空港へと来ていた。

 

ウォッカが帰りの飛行機の時刻を確認するため、電子掲示板を見に向かった。

 

そんな時、アイツのアカウント。最近見ていなかったな。青い鳥にログインすると、アイツのコメントがあったことを知らせる通知があった。即座にアイツのコメントへと飛ぶ。そこには、数日後の午後にアイツがLIVEを開くことを通知していた。

 

「兄貴、掲示板を見てきましたが普通の便じゃあ日本へは最低でも3日、4日かかるものしか──」

 

「明日だ」

 

「はい?」

 

「アイツがライヴハウスを借りて初のLIVEを開くらしい。」

 

「お嬢が?」

 

ウォッカは驚きからか、サングラスの奥で目を見開いている。

 

そりゃあそうだろうな、携帯を渡しインターネットで広告すればと提案したのは俺達だが、日本から離れている間にそこまで成長していたと言う事に俺でも驚いた。

 

アカウントには沢山のフォロワー、動画はほとんどが高評価。

 

あの日、お互いにボロボロだったはずが今じゃアイツは立派なミュージシャンとなり体も痩せこけていたあの頃と比べれば、良く成長していた。

 

「すぐに、日本へと迎えそうなチケットをとってきます」

 

「頼んだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

降谷 零side

 

 

あの一件から、彼女のアカウントを定期的に見るようにしていた。

 

フォローしたのは、俺ではなく安室透だが。もし彼女が本当にあの実験の生き残りなら、そう考える。

 

いくら彼女の身元を調べても、彼女の身元を証明する物は存在しない。周りからの目は彼女が自身をライスシャワーだと名乗るミュージシャンだとしか認識していない。

 

もし、このまま彼女がミュージシャンとしての活動を行うなら必ずしも彼女の容姿は組織を引き寄せてしまう。

 

このまま、言う酷いかもしれないがストリートミュージシャンのままでいて欲しい。もし彼女が有名となったら、奴らの目が必ず彼女を捕らえてしまう。

 

どうにか彼女に見張りをつけられないか、そう考えるが彼女を守るのに公安の人員は派遣できない。

 

既に他の同僚は、他の人物の情報収集や潜入に行ってしまっている。もし彼女の事を頼めるとしたら、それは………。

 

脳内に浮かんだのはアイツ、ヒロ。組織には死んだと思われている筈だから、頼むとしたらアイツしかいない。だが、危険じゃないか?またアイツが死にかけるのでは無いか?

 

そんな考えが脳内に浮かんでは消えていく。

 

そんな時、彼女のアカウントに動きがあった。即座に確認すると、彼女がライヴハウスを借りてLIVEを行うと言う告知だった。

 

ライヴハウスの大きさとしては、まだ小さい方だろう。だが、向かう100の中に組織の奴らが居ないとも限らない。

 

アイツに頼むしかない。

 

そう思い、俺は携帯でアイツへと電話をかけた。

 

『ゼロ、どうしたんだ?』

 

「ヒロ、お前に頼みがある……数日後の■日、予定を開けておいてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノンside

 

 

青い鳥での告知は思ったよりも反響があった。

 

LIVE当日、私達の会場には想像以上に沢山の観客が入っていた。最初としては100人くらいで慣れようか、そう思っていたけど120人という観客席は満員となってしまった。

 

『みんな……ライス達のライブの為に?』

 

うん、そうだよ。

 

ライスにそう返しながら、観客席を見るとやはりかお兄様が変装して紛れてた。他にも前にあった灰原哀ちゃんや萩原さん達警察組も来ているのが見えた。

 

降谷零と諸伏景光は仕事をしなくて良いのだろうか?確か彼らは休日より仕事だったはずだけど……すぐ近くに捕まえるべき奴らがいるのに。

 

と言うか少年探偵団組がいたら事件がおこるんじゃ?てかその前にそれぞれの事を気付きそうなんだけど……。

 

取り敢えず、みんなを楽しませる為に頑張ろうかライス。

 

『う、うん。ライス頑張る!』

 

無理はしないでね?

 

一応、練習はしたけどその時は観客無しだった。このLIVEを通してライスが人に慣れていけば良いけど。

 

そう思いながら私達は衣装、まぁライスの勝負服を着てギターを持つ。

 

さぁ、私達のステージを始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土日の祝日、様々な年の人々が1つのライブハウスへと入っていく。中には子供や外人もそのハウスへと入っていく。

 

今まで、公園で歌っていたストリートミュージシャンである少女にとっての晴れ姿を見ようと会場へと足を踏み入れていく。

 

ザワザワと発表されない曲で何の曲が出るのかと騒ぐ者達、はたまたステージで彼女の歌が聞けることが出来る事に感動する者達。

 

そんな中でも、歌う以前から彼女を知る者達も今日このLIVEへと訪れていた。

 

本来ならば、その人物達が同じ場所に集えば劇場版となり殺人事件が起こるであろう。

 

そんな時だった、会場の明かりが段々と暗くなっていき真っ暗になった時だった。

 

会場にファンファーレが鳴り響く。その曲に気付いた者はペンライトに光を灯し掲げ始める。

 

そして明かりが点灯し、そこには漆黒の少女が俯き立っていた。そして次の瞬間にスタートのコールが鳴り響き彼女のLIVEはスタートした。

 

楽しげに、観客のコールを聞いて躍りながらも歌う。他にギターを引きながら、いつものそれは様々な歌、祈りのような。心からの声のような歌。素早くテンポの良い歌。勇気を貰えるような歌。沢山の歌が彼女の口から響き渡り、観客達は楽しそうにペンライトを降る。

 

中には掲げるだけの者や、ただ立って見ているだけの者。初めてLIVE等のイベントに参加したのか、ペンライトを見様見真似で振る人がいた。

 

そんな観客の反応は歌う彼女の本来の人格にとって幻のような光景だった。

 

『みんなが、ライスの色のペンライトを振ってくれてる。』

 

うん、みんな私とライスの歌を楽しんでくれてるんだよ。

 

さて、次で最後の曲だよ。最後まで頑張れる?

 

『うん、みんなにありがとうって伝える為に最後まで頑張るよ天使様!』

 

ライスの言葉を聞き、私はマイクをもう一度握りしめる。

 

「みんな、今日はライスの初めてのLIVEに来てくれてありがとう!最後に、新曲を歌って終わろうと思います。聞いてください、青空のラプソディー!」

 

この曲は私からライスへのメッセージも入っている。

 

それは『ボクはキミの翼になる勇気がある』と言う歌詞。

 

ライスが彼女の住む世界へと帰るための、そして彼女が前を向いて行けるように導くツバサ。

 

カノンがライスの翼になる、ライス自身が自力で羽ばたけるようになるまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場にて、彼女の発表した新曲。

 

それは明るく、元気な歌い出しそして彼女が趣味の歌をこうして皆に聞いてもらえるまでを表しているよう。

 

「扉開けてほら、声が聴こえるよ。

     さあ!行こう!     」

 

その声と共に、彼女のバックにあるモニターには青空が浮かび上がる。

 

「僕は君の翼になれる勇気があるよ。

どんな試練も怖くない、その魔法があるから」

 

沢山の人に歌で勇気を与えてくれているような、背中を押してくれるような歌。

 

でも、それに対して二番の歌詞を楽しげに歌う彼女と共に盛り上がり、その場にいた者達はその時、歌詞にあった違和感に気付かなかった。

 

「僕は君を背中に乗せて空を舞うよ!

  ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんな、意味深な歌詞に気付いた者は果たして──。

 

 

 






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それぞれの願い

 

いつかは、終わるその日まで。

 

人へと怯えるライスを支える、ライスの心はゆっくりだがその形を修復している。

 

あと数日で完全な物になるだろう、早く彼女を元の世界に返さないといけない。

 

……今も彼女の世界の刻をゆっくりと流しているザフキエル様の為にも。

 

でも、心の何処かにライスと別れたくない。

 

叶うなら、このままライスの元に。

 

そう思いながら、ライスシャワーの眠る姿を見つめる。胎児のように体を縮め、心の世界で眠っている彼女。

 

だけど、彼女の片手は私の手を掴んで離そうとしない。

 

でも、それは叶わぬ願い。

 

カノンは天使、ライスはウマ娘。

 

カノンは天界、ライスはウマ娘の世界。

 

住む世界も流れる時間も違う。

 

いつか会う約束をして分かれたとしても、私にとっての数日はライスに取っての何十年にもなる。

 

再会など、出来るはずがない。

 

でも、私は……カノンは分かれた方が良いのだと分かっている、彼女は元の世界で良いトレーナーと出会い、多くの祝福を得るのだ。

 

その方が、私と共にこの世界にいるより彼女に取っての幸せなのだろうから。

 

だから、せめて今だけは……彼女の心が治るまではどうか……一緒に、居させてね。

 

そう思いながら空いた手で彼女の髪を梳く。あの日、あの子にして貰ったように、主にして貰っているように。

 

それをライスは心地良さそうな表情を浮かべ眠っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライスシャワーは夢を見る。

 

あの日、レースを走った後のウイニングライブを。

 

今でもその光景が、深く深く心の中に刻まれている。

 

自身の走った事へ対する批判の声に罵倒。ありもしないフェイクニュース。

 

でも、そんな夢の中でも一人だけライスシャワーと共にその光景を見る物がいる。

 

カノン、ライスシャワーに憑依した天使。

 

ライスシャワーは彼女が隣にいることに安堵した。

 

天使様がいるなら、ライスは一人じゃない。

 

今見ている夢はとても楽しい物だ。

 

先ほどまでの暗い場所から綺麗な丘へと変わる。花が咲き、蝶が舞う。丘の上には1本の木が根を張り、その枝に付いた葉で小さな日陰を作り出していた。

 

天使様とライスが一緒に野原を走り、一緒に笑う、一緒にご飯を食べる。

 

そして天使様が気に寄り掛かって座りギターを弾きながら歌い、その隣に座り天使様の体に寄り掛かってライスも歌う。

 

そんな夢は彼女をとても幸せにした。

 

でもそんな夢にも終わりが来る。

 

ライスはふと自身の寄り掛かっている物の指を見た。

 

金色の粒子が指から零れ、少しづつ指が、手が消えていく。

 

ライスシャワーは彼女抱き締める。

 

ライスを一人にしないで、消えないで、寂しいと願い涙を浮かべる。

 

そんなライスシャワーに彼女は微笑みかけ、口を開いた。

 

だがそこで、ライスシャワーの夢は終わり彼女の言葉は聞こえなかった。

 

 

 






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勇気の歌

 

 

どんな時でも、勇気は必要になる。

 

親と話す時、ゲームのラスボスに挑む時

 

ネットの友達と初めて通話する時

 

クラスの人と友達になる時、家出をする時

 

大きなステージに立つ時、先生と話す時

 

大切な人と別れる時。

 

どんなに下らないと思うことでも、些細な事だとしても。

 

みんなが行動に起こすとき、必ずみんな勇気を出して1歩を踏み出している。

 

だから私は人々は生まれ関り合い、発展し今の文化を、世界を作り上げている。

 

そんな人々が思いを言葉と音にした歌、それが私は好き。

 

だから、歌で貴方に勇気を与えたい。

 

みんなにも、彼女にも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノンside

 

初めてライブ施設を借りてのライブから数日、何時もと同じようにストリートライブを行いがらお兄様であるジンから貰ったお金を出来るだけ使いきる形で大きなライブ施設を借りた。

 

あの日から、ライスシャワーは少しづつ前向きに成り始めた。

 

青い鳥のアプリでの広告もすませ、次回のライブまでの日々を過ごす。

 

最近はライスシャワーが私からギターを習っている。部屋でライスシャワーが自身の意思でギターを弾く練習を始めた。なんでも私の演奏やライブの思い出して、自身も音楽に触れてみたくなったらしい。嬉しい、音楽はいい、全てを教えてくれる。

 

私は、ゆっくり基本から教えた。ギターの弾き方、発声の仕方。ライスはすぐに覚えて、ギターを弾きながら歌うことが出来るようになっていた。

 

そろそろ、私は彼女に全てを語ろう。

 

私は瞳を閉じてホテルのベットへと倒れ込み、意識をライスシャワーの心へと繋げる。

 

すると目の前にはライスシャワーが立っており、嬉しそうに此方を見つめている。

 

「ライス、カノンは貴方に大事な話がある」

 

「?なに、天使様」

 

「ライスの心は、あと数日で完全な物になる。」

 

「え?」

 

「カノンが貴方に憑依したのは貴方の体と心を癒すため。これは説明したよね?」

 

「う、うん。」

 

「貴方の元いた世界へ返す。」

 

「え?」

 

そう言うとライスシャワーは驚愕の表情を浮かべた。

 

「なにも、今すぐじゃない。あと二回、大きなLIVEを開いて、最後のライブを終えたらこの世界から帰る。だからライスにも教えておいた」

 

「元の世界、に……」

 

ライスは過去のウイニングライブを思い出したのか、顔をしかめていた。

 

「そして、ライスにもう一つ。大事な話がある、カノンはライスを元の世界に返したらライスから離れる。」

 

「そ、そんな…天使様と一緒じゃないと、ライスは……嫌だよ!お願い、これからもずっと一緒にいてよ!天使様!」

 

「ごめん、ライス。天使としての決まりで、カノンはずっとに一緒にいる事は出来ない。」

 

懇願するライス、でも天使としての決まりがある。憑依者が完全になったらば、元の世界へと帰還させ憑依した天使は天界へと帰還する。

 

そうしなければならない。

 

ライスは両目から涙を流して、座り込む。なんども手で涙を拭うが涙が止まらない、そんなライスをそっと抱き締める。優しく頭を撫でる。

 

「ごめんね、ライス。数日後のライブでカノンはライスに歌を贈る。歌で、ライスはカノンと離れてウマ娘の世界に帰る覚悟、勇気を持って貰いたい」

 

そう言い、暫くそのままの状態が続きライスは静かに頷いた。

 

告知された日となった。今回は200人が入れる施設だったが、前と同じく満員であり会場からは沢山の声が聞こえる。

 

聞いていてライス、私の歌を。

 

私は会場のステージの中央に設置された椅子へと向かう。それだけで会場からは私達を呼ぶ声が飛び交う。

 

軽く手を振りながら椅子へと座り、ギターを構える。

 

「みんな、今日もライスのライブに来てくれてありがとう。今日は最初に新曲を発表しようと思います。聞いてください、BRAVE HEART」

 

その声と共にギターを弾き始める、今回は本家よりと言うよりは弾き語りのような感じだ。

 

「逃げたりあきらめるコトは誰も

    一瞬あればできるから歩き続けよう」

 

どんなに苦しくても悲しくても、諦めないで欲しい。

 

「君にしかできないコトが

    ある青い星に光が失くせぬように」

 

ライスシャワーと言う、個にしか出来ない事。

 

「掴め!描いた夢を、守れ!大事な友を

   たくましい自分になれるさ」

 

元のウマ娘の世界に帰って、ライスシャワーの夢である幸せの青い薔薇となる夢を叶えて欲しい。

 

貴方の好きな走る事で、走り続けていつか祝福されるその日へ、1歩を踏み出して欲しい。

 

「知らないパワーが宿るハートに火がついたら

  どんな願いも 嘘じゃないきっと叶うから...

         show me your brave heart(貴方の勇気をみせて)

 

会場の人達はゆっくりペンライトを揺らす、すすり泣く声も聞こえたような気がした。最初に歌う歌ではない気もするが、今日は許して欲しい。

 

「晴れの日ばかりじゃないから

    たまに、冷たい雨も降るけれど」

 

ライスが元の世界に帰って走るとしたら、恐らくは暗い心をもつ人間は彼女へと嫌がらせや、悪質な報道をする者も現れるだろう。

 

「傘ひろげよう、生き方に地図なんかないけどだから自由、どこへだって行ける君も」

 

そんな嫌がらせにも負けず、ライスには走って欲しい。

 

「走れ! 風より速く、目指せ! 空より遠く」

 

そうして走り続けたら、きっとライスは前よりも強くなる。罵倒に負けず、夢へと駆け抜けたら。

 

「新しい自分に逢えるさ知らない

  勇気が眠る ハートに気がついたら」

 

きっとライスは自信が着いて、沢山の人が走ることを望んで、見たら笑顔になる。

 

そんなウマ娘になれる。

 

「胸の中のどしゃ降りも きっと止むから...

       show me your brave heart」

 

ここで少しだけギターを早く奏で最後の歌詞に繋げる。

 

だからね、ライス。

 

「掴め!眩しい明日を!守れ!愛する人を!

たくましい自分になれるさ!

壊せ!弱気な君を!崩せ! ぶつかる壁を!

熱い鼓動、武器になるから」

 

ウマ娘の世界に帰る前に壊して、弱い自分を。

 

私と離れていても、きっとライスならもう大丈夫だから。カノンと別れるのを受け入れて、ライスはきっと強い心で進んでいけるよ。

 

believe in your heart(貴女の心を信じてる)

 

その歌詞と共に歌い終える、会場からはゆっくりと沢山の拍手が広がっていった。

 

『天使様、ライスは頑張るね……最後のライブまでに天使様と別れても大丈夫だと言えるようになる。だから、それまでは』

 

うん、一緒にいるよ。

 

それが、カノンの仕事で……私の願いだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ライスシャワー@BlueRose,Riseshower

#LIVEのお知らせ

 

皆さん、今日はライブに来てくれてありがとうございました。

 

次回のライブで、重要な発表があります。

 

ライブは■月├日、沢山の人が来ても大丈夫なように大きな会場を借りました。

 

いつも動画をみて下さる方々も是非、来てくださいね。

 


 






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最後の歌~祝福の風~

本来ならこの世界で死ぬはずであった者達は一人の少女によって救われた。

 

偶然か、必然か。

 

でもそれは事実と残り少女の姿は彼らの心に残り続けた。

 

故に、彼女が開いた大きなライブを見付けそれぞれが様々な行動を起こして彼女のライブを見るため会場へと向かう。

 

だが、そのライブは終わりのライブ。

 

彼女がこの世界から消える、最後の日。

 

様々な人物の中には彼女を調べようとした者達が数多く存在するが、だれも彼女の存在の真実へとたどり着かない。

 

たどり着くはずがない。

 

そんな彼女はお世話になった一人の人物へと手紙を書いていた。その人だけに真実を告げる、これは本人が望んだこと。

 

彼女に憑いた天使は止めず手紙を書く彼女を見守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノンside

 

LIVE当日、計画通りにセッティングした舞台。

 

会場から聞こえる沢山の人達の声に私とライスは覚悟を決めていた。そしてライスは青い鳥のアプリにツイートを行い、アカウントから抜け携帯の自分のデータを曲を残して全てを削除する。

 

これで準備は整った。

 

歌おうライス、最後のLIVEを。

 

(うん。天使様)

 

ライスの返事を聞き、私は全てを持って会場へと向かう。

 

「さぁ、最後のLIVEだ……楽しもう」

 

私達が会場へと歩き、登場したとき今までとは考えられないほど沢山の声が聞こえた。それはそうだ、この会場はこの世界の売れてるミュージシャンが借りてLIVEをするような施設だ。

 

こんな場所でLIVEするため、お兄様……ジンや沢山の人から貰ったお布施でこうして借りてイベントを開くことが出来た。

 

この場所で投稿した文を確認出来た者は恐らくは少数だろう。

 

セットされたのは天界のようなステージ、中央には大きな扉が設置され足元にはスモークが焚かれている。持っているのはいつものギター、着ているのはいつもの勝負服。

 

スタンドマイクのある中央についた私は会場へと向けてマイクに向けて言葉を紡ぐ。

 

「皆さんこんにちは、今日はライスのLIVEに来てくれてありがとう。こんな場所でLIVE出来るなんて、まるで夢みたい」

 

そう言って笑うと会場の人の一部がペンライトを用意しているのが見えた。

 

「最初は、そんな思いを胸に。皆で楽しくなるような歌を歌います、聞いてください。」

 

そう言って私達はギターを構え、マイクへと視線を向けギターを鳴らし歌い始めた。

 

初めてストリートLIVEを行ったあの日の歌を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰原哀side

 

 

今日、私は江戸川くんや他の皆と共に彼女のLIVEへと来ていた。到着し会場へと入り、彼女のLIVEを楽しんだ。ストリートLIVEをしていた時と変わらない歌い方、そしてそんな彼女が歌ってきた数々の歌をこの会場で披露していた。

 

ストリートミュージシャンであった彼女がこんなに大きな会場を借りてLIVEを開くまでに成長したとき考えるだけで感動した。

 

そんな彼女のLIVEの前半が終わり、休憩となった。私は江戸川くん達はトイレへと向かっていくなかで、私と博士はその場で待つことにした。

 

マナーモードにしていたスマホを取り出し、彼女のLIVEの後半までは時間を潰そう、そう思いふと青い鳥のアプリに通知が付いている事に気付いた。

 

そこには、LIVEの始まる直前と思われる時刻に投稿された彼女のメッセージがあった。さっそくアプリを開き、彼女のアカウントを見た。

 

 


ライスシャワー@BlueRose,Riseshower

#お知らせ

 

皆さん、今日はライスのライブに来てくれてありがとうございます。

 

ライスは今回のLIVEを最後に、引退します。

 

今まで応援してくれて、本当にありがとうございました。

 


 

「いん、たい?」

 

そんな彼女のメッセージに思わずそう呟いた。ふと、周囲を見渡せば私と同じように彼女のメッセージを見て驚きの声を挙げている人がいた。

 

一体どういうこと?こんな、まさか……誰かに脅迫されているとか?

 

それとも本心?本当に止める?

 

何故?どうして?

 

そう考える私や会場の人を無視するように、後半の始まりを告げるブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察組side

 

松田と萩原の二人は自信を助けてくれた少女だと思われる彼女の開いた大きなLIVEへと来ていた。

 

「いやぁ、初めて来たけどめっちゃいいな!歌もいいし、あの娘も元気そうだったし」

 

「そうだな。今のうちにトイレにいくか」

 

「だーね」

 

そう言って二人がトイレに向かう中で、他にも来ていた警察関係の人物がいた。

 

「いやぁ、良かったぁ……後半が楽しみだなゼロ」

 

「ヒロ、僕らは彼女を組織から守るためにこうしてイベントに来てるんだぞ?もっと緊張感を……」

 

降谷零と諸伏景光である。彼らは降谷零の考えた組織の産み出した研究の被害者である彼女を組織から守るため、そしてこうして大きなイベントで彼女の耳や尻尾といった人外のサンプル、言わばデータを得るために現れるのであろう人物を警戒し捕らえるために来ていた。

 

そんな彼らもトイレに向かう中で、ふと降谷零が携帯に連絡が来ていないか確認し、目を見開いた。それを変に思い、諸伏景光が携帯を覗き込む。

 

そこには、彼女の引退を示すメッセージが投稿されている画面だった。

 

「なっ!?どうして急に!?せっかくこんなに立派にLIVEを開けるまで成長したのに!?」

 

そんな彼女のメッセージで降谷零が考えたのは、自分は彼女が研究所や組織から逃げ切れたと言う()()()をしているだけなのではないか?

 

と言う物だった。

 

彼女は今、誰かに狙われている。黒の組織か、はたまた他の組織か。人とは異なる獣の要素を持った獣人である彼女は、せめて研究所に連れていかれる前にとこうしてLIVEを開いたのではないか?

 

このLIVEを終えれば、彼女はまた実験される日々をくりかえすことになるのだろう。

 

何者かに拉致される事によって、引退を宣言していれば警察は動かず、誰も彼女が消えたことに何の疑問を浮かべない。

 

そこまで考えて、降谷零は自身の持つ携帯を握りしめた。

 

急いで彼は携帯で自身の部下へとメッセージを送り、会場の周辺を警戒するよう指示を飛ばした。

 

そして次の瞬間に、次のLIVEの始まりを告げるブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノンside

 

 

後半、ステージへと立つ私を迎えたのは心配そうな表情を浮かべる人達。恐らくはあの投稿したメッセージをこの会場にいる人達の殆どが確認したのだろう。

 

だから私達は、引退を宣言するため口を開いた。

 

「みんな、私のメッセージを見てくれたかな。」

 

まず、そう話すとか会場から多くの声や頷く人達が見えてとれた。

 

「ライスは今日のこのLIVEにでストリートミュージシャンを引退します。」

 

そうはっきりと宣言すれば、会場がシーンと静まりかえる。

 

「ライスはウマ娘で、みんなの住むこの世界じゃない、別の世界で生きていたの。ある事故で、この世界に来てしまった。そして、帰らないといけない」

 

引退が悲しいからか、会場の所々では涙を流す人が見えた。

 

「もう少しで、迎えが……元の世界へ通じる扉が開く」

 

そう言って背に設置された置物の扉を指差す。

 

「ライスが今まで生きてこれたのは、みんながライスの事を応援してお布施をくれたおかげです。だから、最後はそんなみんなに、沢山の祝福を届けたい。みんなの悲しむ顔じゃなくて笑顔が見たい、だから……最後まで楽しく、一緒に歌って笑って下さい」

 

目から流れた涙を拭き取りながら、そう告げて最後の歌を歌う為にギターを構える。

 

そこからはひたすらに笑いながら歌った、泣かないように。悲しませないように。

 

ライスと共に歌い続けた。

 

そうして向かえた最後の歌、アンコールの声に答えて私は口を開いた。

 

「これで最後の歌になります。聞いてください、Blessing」

 

そう言って歌い出すのは祝福の意味を持つ歌。

 

この世界で私やライスを助けてくれた人やお世話になった人、そして沢山の人。そしてライスへも向けた祝福の歌。

 

「Blessings for your birthday.Blessings for your everyday最後の一秒まで前を向け」

 

私が、人間界の歌で一番好きな歌。

 

天使としての生活の中で歌に触れて初めて自分で見つけて、好きになった歌。祝福の歌だ。

 

歌うなかで、沢山の人がライス色のペンライトを振る。

 

「よく食べて、よく眠って、よく遊んで、よく学んで、よく喋って、よく喧嘩して、歌えなくても、何がなくても、愛せなくても、愛されなくても、ごく普通な毎日を。」

 

「泣けなくても、笑えなくても、歌えなくても何もなくてもそれでも生きて欲しい!

Blessings for your birthday Blessings for your everyday.たとえ明日世界が滅んでも」

 

ライス、例えレースに負けたって、悪く言われたって思い詰めないで?私がいなくても

 

「Blessings for your birthday Blessings for your everyday.最後の一秒まで前を向け」

 

最後まで前を向いて、走っていってね。

 

「Hip hip HOORAY これから先も

  Hip hip HOORAY 君に幸あれ

   Hip hip HOORAY これから先も

    Hip hip HOORAY 君に幸あれ

           Hip hip HOORAY」

 

歌い終えた時、会場からは沢山の笑顔と歓声が鳴り響く。

 

「みんな、本当にライスを助けて、笑顔をくれてありがとう!」

 

そう言って手を振りながら、私達はゆっくりと背後に設置されたステージの扉へと向かう。

 

「さようなら、沢山の人に青薔薇の奇跡と祝福を」

 

そう言って持っていたマイクの電源を切って足元に置きドアを開く。そして開いたドアの向こうから差し込んでくる光に目を細める。

 

このドアを天界への入り口と繋いだ。この扉の向こうでカノンとライスを別ける。

 

最後に振り返り観客のみんなに手を振りながら笑い、ドアの向こうに入り扉を閉めた。

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女、ライスシャワーが扉の向こうへ消えた瞬間に彼らは動き出した。

 

降谷零は彼女が居ると思われる待機部屋へ、諸伏景光はステージのドアが繋がっていると思われる会場の裏へ、だが全く見つからず降谷零が、向かった先には、誰もいなかった。

 

そんな現実が2人に無力感を感じさせた。

 

一方、彼女が初めてストリートミュージシャンとして歌った公園には、全身黒の服装に黒い帽子を被った長い銀髪の男性が立っていた。

 

そしてそんな彼の目の前にあるベンチには、彼をお兄様と慕っていた彼女に渡した携帯と、携帯に押さえられていた封筒が置いてあった。

 

彼はその封筒を開き、中の手紙を取り出す。そこには彼女の書いたものと思われる文書があった。

 

お兄様へ

 

この手紙を読んでると言う事は、ライスはもうこの世界にはいないと思います。

 

突然こんな話をして困惑すると思うけど、ライスはウマ娘。こことは別の世界に存在する種族で、ライスはそんな世界からこの世界に事故で迷い込んでしまいました。

 

お兄様は路頭に迷っていたライスを助けてくれました。お兄様がお布施してくれなかったらライスはきっと………危険な目に遭っていたかもしれません。

 

あの後、ストリートミュージシャンをしてたら天使様がいたの。ライスを元の世界に連れて帰ってくれるって、それでライスは元の世界に帰ることになって、今日はみんなにさようならって言う為にLIVEをしたの。

 

お兄様、お兄様がライスを助けて携帯までくれたからライスはこの世界で生きられました。

 

なので、ライスの歌の動画以外のライスに関するアカウントやメールアドレスを全て消して、この携帯をこの公園に置いておきます。

 

さようなら、お兄様。

 

            ライスシャワーより

 

 

「じゃあな、俺のステラ()。お前の唄が届かない程の闇の底で俺は足掻くさ、お前も足掻け。」

 

そんな手紙と携帯を男はフッと笑い胸ポケットにしまい込み、その場を後にした。

 

その後、ライスシャワーの事は新聞に載るほどのニュースとなった。

 

『祝福の青薔薇、扉へと消える』

 

海外にもいた彼女のファンが、そして日本のファンが大きく悲しむと共に自身へと祝福と笑顔をくれた彼女に沢山の人が感謝をネットに投稿した。

 

残されたネットでの動画は切り抜きのみしか存在しておらず、彼女自身の動画とアカウントは全て削除されており、彼女のその後を知るものは誰いない。

 

ただ一人、彼女の残した動画を持つ彼のみを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが真っ白な世界に瓜二つな少女が並んでいた。

 

瓜二つな彼女達の違いは服だろう、片方は真っ白な服に金の装飾の施された神々しさを感じさせ、もう片方の少女は真っ黒なドレスに青い薔薇の装飾のついた帽子。そして短剣を腰のベルトから吊るしており、馬の耳と尻尾が生えている。

 

「天使様………」

 

心の奥底、そこで出会った天使であるカノンに改めて向き合うライスシャワー。

 

「ライス、今から貴方を元の世界に帰す。でもその前に」

 

そう言って白い服の少女カノンは手を胸に当てて瞳を閉じる。

 

「我が祝福、生涯永劫……貴女だけに。」

 

そう唱えるカノンの手の中に、彼女の胸……心臓と思われる場所からゆっくりと光が集まり、収束し1つの形を作っていく。

 

光はゆっくりと収まり、現れたのは宝石の埋め込まれた1つの指輪。そんな指輪に埋め込まれたのは、光り輝くダイヤモンド。

 

天使の祝福(エンジェル・ギフト)

 

それは天使が一生に1度、自身の認めた一人の相手のみに送ることを許される祝福を形にしたアイテム。

 

そう言ってカノンはライスシャワーの手を取り、掌の上に指輪を落とすとしっかり握らせる。

 

「大切にするね。天使様」

 

「ん、こっち」

 

頷いて、カノンはライスシャワーの手を取って1つの扉へと導く。赤い木の扉に金の装飾がされた高級感のあるドア、この先がライスシャワーの住むウマ娘の世界に通じている。

 

ライスシャワーはゆっくりとそのドアノブを握しめると、何故か懐かしいと言う感情を感じた。

 

「じゃあね、ライス。頑張って」

 

「うん、ありがとう。ライスがんばるね、天使様!」

 

そう言ってライスシャワーはカノンに見送られ、扉の向こうへ消えた。扉に入ったライスシャワーはカノンとの別れに悲しみながらも、カノンに言った頑張ると言う約束のため走り、いつの間にか気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本ウマ娘トレーニングセンター学園

 

通称、トレセン学園。

 

その廊下を幼い容姿の少女が歩いていた。

 

彼女の名は秋川 やよい。

 

トレセン学園の理事長を努める女性である。

 

頭に白い帽子を被った幼い見た目の彼女は、何処か疲れた様子でトボトボと理事長室へと歩いていた。

 

それも、1ヶ月前に起こった事件で失踪したウマ娘を探す為に尽力していたからである。

 

ライスシャワー、その名は良くも悪くも有名である。彼女を守りきれなかった、その事実にトレーナーである彼女と私は失踪した彼女に対して、酷く無力感を感じていた。

 

たった一人のウマ娘を守れず、何が理事長か。

 

そんな呟きを何度吐いたかわからない。

 

失踪した彼女は全く情報は少なかった。

 

彼女の唯一の情報とすれば、彼女が最後に見られたのは山道で、車にぶつかり谷へ落ちていったと言う情報。

 

即座に捜索を出したものの、彼女に関する物は何も見つからなかった。そのようにウマ娘を探すことに尽力していた為に、学園での書類が溜まってしまった。

 

早く終わらせて、彼女の捜索を続けなければ。

 

そう思いながら彼女は自室への扉を開き中に入り、ふと自身の椅子に体を預けるようにして眠っている誰かが見えた。

 

「?」

 

不審者、侵入者等の考えが頭を過るなか部屋に響く目の前の人物の規則正しい寝息。恐らくは眠っているのだろう、せめて誰かだけでも確かめよう。学園の生徒なら問題ない、起こして教室へと向かわせれば良いのだから。

 

そう思い音を立てぬようゆっくりと、机に隠れて見えない侵入者を机の横から見た。

 

「きょ、驚愕!?何故彼女がここに!?」

 

そこには1ヶ月前に失踪したはずのウマ娘、ライスシャワーがいた。何故か眠っている彼女の肩にはギターケースがかけられており、なんとも不思議な光景が広がっていた。

 

少女は走って学園の廊下へと出ると大声で叫んだ

 

「たづな!たづなーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        E  N  D

          o r

      N  E  X  T

 

 

 








ご愛読、ありがとうございました。


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祝福の歌

日本ウマ娘トレーニングセンター学園……通称、トレセン学園在学中のウマ娘。

 

ライスシャワーの失踪は世間を良くも悪くも大きく騒がせた。

 

中には彼女にたいしてのネットや現地の人たちへのマナーについて非難する者が増え、ライスシャワーへの酷い発言は完全にでは無いが消えていった。

 

そんな中でも、絶えず彼女に対する誹謗中傷が消えた訳ではなかった。

 

毎日の様に彼女に対するコメントや意見がニュースで流れる。

 

そんな事が続き1ヶ月、失踪していたウマ娘。

 

彼女の生存と帰還が報道された。

 

記者会見では失踪していた事に対する謝罪、そして理事長による彼女の復帰戦である特別レースの開催が報道された。

 

そのレースに参加するウマ娘はライスシャワー以外は今のところは発表されていない。

 

 

 

 

 

 

 

───⏰───

 

 

 

 

 

 

 

 

ライスシャワーはグラウンドを走っていた。

 

一人でずっと、ひたすらに走っていた。頭に思い浮かぶのは記者会見前、この世界に帰ってきた時の事だ。

学園の理事長である秋川やよいに理事長室に呼び出されたライスシャワーは理事長から自身の復帰レースの開催を考えていることを告げられた。

 

『質問!君の帰還を祝い復帰レースを開催したいと思う。』

 

『ふ、復帰レース、ですか?ライスの?』

 

『うむ!』

 

そんな問に、ライスシャワーは迷った。脳内には今でのあの時の記憶は深く残っている、怖い、逃げたい、そんな思いが心の中で呟かれるなか、ライスシャワーは思い出した。

 

あの日、別れるのが自身も辛いと語りながらも勇気を持てる歌を、思いを歌ってくれた天使の事を。

 

壊せ、弱気な君を。たくましい自分になれるさ。そう励ましてくれた。

 

だから、ライスは頑張らないといけない。

 

そう思いライスシャワーは理事長の提案に同意した。

 

このレースに参加するウマ娘は既に決まっている。

 

ライスシャワー、ハルウララ、メジロマックイーン、ミホノブルボン、ヒシアマゾン、アグネスデジタル、キングヘイロー。

 

ライスシャワーとの仲の良いウマ娘や、彼女の事を心配していたウマ娘達が集められている。

 

そんなレースに向けてライスシャワーは、今まで走ってこなかった分の遅れを取り戻す為にこうして練習に取り組んでいた。

 

だが、一つだけ彼女が乗り越えられていない物があった。それは集団でのレース、正確にはレースの会場にいる人達の非難の声……幻聴だ。

 

その声に反応し彼女は失速してしまう。

 

彼女がそれを乗り越え、レースを走ることが出来るのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライスシャワーside

 

今日の練習はここまでにしよう、そう思いながら寮へと戻る。部屋には同室のゼンノロブロイの姿があった。

 

「ライスさん、お帰りなさい」

 

「ただいま、ロブロイちゃん」

 

そう言って鞄を起き、手荒いやうがいを終える。そしてシャワーを浴びて汗を流した彼女はこの世界に帰ってきたとき持っていたギターの入ったケースをベットの上において、その隣に座りケースに触れる。

 

天使様………。

 

この世界に帰ってきたとき、ライスは天使様のくれた指輪を付けた状態で理事長さんの部屋で眠っていたらしい。

 

あの後、今まで何処にいたのかを聞かされたときライスは何と説明すれば良いのか分からなかった。この世界とは違う世界、それもウマ娘がいなくて、うま?と言う動物がいる世界。

 

そんなの話して、信じて貰えるか分からなかった。天使様は自身の存在や、別の世界に関連する出来事を話してはいけない、そんな事を言っていない。

 

だから天使様の事を話してみた、でも信じてくれたのはやよいさんとたづなさんだけ。

 

話して信じて貰えてライスは思わず本当に信じてくれるのかと二人に聞いた。それに対し二人はウマ娘の、ライスの言うことを信じくれた。

 

でも天使様や別の世界にいたことを信じてくれなかったウマ娘もいた。

 

当たり前だと思う、ライスももし別の世界に言っていたなって言われたら信じられないと思うから。

 

ふと、薬指に嵌めた天使様のくれた指輪に触れる。学校に没収されたりするのかと思ったけど、やよいさんとたづなさんは付けていた方が良いと言って、この指輪は着用することを許可されている。

 

「ライスさん、ギター弾けたんですか?」

 

「ライスはまだまだ下手だけど、一応弾けるよ?」

 

そう言うとロブロイちゃんは弾いて見てください!そうワクワクした様子でお願いされた。ライスシャワーは少し恥ずかしそうにしながらも了承し、ギターを構え深呼吸をした。

 

ライスが引いたのは、自身に憑依した天使様がライスへ向けて作ってくれた歌。次に最後に歌った祝福の意味を持つ歌。

 

歌いながらギターを弾くのを終える、するとロブロイちゃんは凄いと褒めてくれた。

 

も、もっとギターを弾けるように練習しないと。

 

そう思いながらライスはギターをケースにしまいながら窓から見える空を見つめる。

 

天使様、ライス頑張るよ。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして向かえた復帰レース日、勝負服に着替えたライスシャワーはレース場に入る前に付けていた指輪に触れる。

 

心臓がドクドクと早く鼓動し、それと同時に冷や汗が流れる。

 

脳裏に浮かぶトラウマ、幻聴。罵倒の中聞こえてきたのは、天使様の声。大丈夫、大丈夫と自身に言い聞かせ、彼女はレース場へと向かう。

 

「天使様、みててね……」

 

 

 

 

 

 

───⏰───

 

 

 

 

 

 

会場にレースの開始を知らせるファンファナーレが響き渡り、実況席からの放送が開始される。

 

『上空には雲1つない青空が広がっています。さぁ、始まって参りました。ライスシャワー復活特別レース、良バ場の発表です』

 

実況からの放送を聞き流しながらライスシャワーは深呼吸しゲートに入る。自身に落ち着け、大丈夫だと言い聞かせ続ける。それでも、自身に送られる悪意ある視線をライスシャワーは感じていた。

 

故に体が緊張で、恐怖で固まるなかゲートが開きレースが始まった。自身への鼓舞、そして恐怖に耐える事で集中が途切れ、レースに出遅れ焦りつつも走り出すライスシャワー。

 

無論、この会場にはライスシャワーに対しての良い思いを思っている人物達も少なくとも存在する。だが、今回の彼女の失踪を通して、後悔をしたもの達もいる。後悔したからこそ、こうしてこの場で彼女を応援することが贖罪になると思って。

 

この場で彼女を悪く話し、叫ぶ者はいない。

 

だが、こういった場所でも邪魔をしようとする者や妨害しようとする人たちは少なからず存在するのだ。

 

レースも終盤、なんとか上位には入り込んだライスシャワー。最後の直線、1番前へと走り出そうと足に力を入れた。

 

『────』

 

その時だった、聞こえてしまった。

 

大声でわざととしか感じられない、彼女への罵倒が、幻聴を引き起こす。

 

目の前が真っ暗になり、道は見えない。

 

体を支配するの恐怖心、悲しみ等。強く植え付けられたトラウマ。

 

『また罵倒される』『逃げなきゃ』

 

『また不幸になる』『また不幸にしてしまう』

 

『怖い』『嫌』『悲しい』

 

そんな思いが走る体の動きを抑制し、走る速度が遅くなっていき次々と他のウマ娘達に追い抜かれて行く。

 

走る彼女達の距離、頑張れば抜き去ることが出来る距離が、遠くに見える。

 

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい

 

()()()()

 

その言葉が浮かび上がり彼女は心の中でそう唱え続ける。

 

ごめんなさい天使様、やっぱりライスは……

 

涙が頬を伝う。

 

走る事を止めよう、彼女が立ち止まろうとした時、何者かが彼女の手を掴んだ。彼女は腕を光引っ張られた事で走り出す。

 

「───あ」

 

彼女は、ライスシャワーと瓜二つの姿をしていた。

 

違いは真っ白な髪、真っ白なドレスに真っ白な薔薇の装飾の付いた帽子。漆黒のライスシャワーと対局の純白の少女。

 

ライスシャワーの手を引いて走る彼女は、走りながらライスシャワーへと振り向くと、彼女を安堵させるような優しい笑みを浮かべ、口を開いた。

 

『大丈夫、私の思いが貴方を守るから。ほらライス、行こ?』

 

その聞こえてきた声、言葉が恐怖に固まっていたライスシャワーの心と体を温かい何かが包み込む。気づけば、幻聴は聞こえなくなっていて会場からは私を応援する声が聞こえた。

 

「うん、ライス頑張るよ。だから見てて、()使()()!!」

 

そんなライスシャワーに真っ白な少女は走るのを止め、掴んでいた手を離してゴールへと走るようライスシャワーを促す。

 

ライスシャワーは走り出す、先程までとは何段階も違う走り。先程まで以上の速度で駆け出した。

 

『おおっと!ここで失速していたライスシャワー驚異の追い上げです!どんどんと加速していく!?自身を抜いていったウマ娘達を一人、二人とどんどん追い抜いていく!!』

 

ライスシャワーには目の前の景色が先程までの世界よりも光輝いていた。

 

どんどんと加速して、先頭争いをするメジロマックイーン、ミホノブルボンを外から追い抜き、そのまま3バ身以上の差を着けて差しきり見事1位に輝いた。

 

そんなライスシャワーの走りに沢山の人たちからの拍手が会場に響き渡るなか、ライスシャワーは深呼吸を繰り返し、顔を上げる。

 

「やりましたねライスさん!」

 

「凄いよライスちゃん!最後のビューンって早く走ってたの!」

 

「ライスさん、見事な走りでしたわ!」

 

沢山のウマ娘から祝福の言葉を受け取り、彼女は涙を流しながら笑っていた。

 

「みんな、ありがとう!」

 

ふと、さっきと同じように後ろを振り返る。だが、そこには見た天使様の姿はなかった。

 

「天使様、ライスやったよ……」

 

幻覚だったのか、本物なのか。どちらにしても、もう会えない。その事が悲しくて自身の左手の薬指に着けたダイヤモンドに触れ目を瞑った。

 

天使様、ありがとう。

 

でも、もっと話したかったな……。

 

そんな彼女の思いを他所に、1位を祝福するウイニングライブが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───⏰───

 

 

 

 

 

 

 

 

ウイニングライブも終え、解散したライスシャワーは学園の寮へと向かっていた。そのはずなのだが、何故かライスシャワーは三女神像のある広場へと来ていた。

 

「なんで?ライスは、確か寮に……」

 

周囲を見回す、学校の前なのにも関わらず周囲には全くウマ娘が居なかった。

 

流石におかしい、校舎前がこんなに静かなんて。

 

そう思っていたライスシャワーの背後からギターを弾く音が聞こえた。振り替えると、三女神像の近くに設置されたベンチの上に彼女はいた。

 

ライスシャワーと瓜二つの姿をした少女、彼女は足を組みその上に置いたギターを持ちライスシャワーへと微笑んだ。

 

「ライス、頑張ったね」

 

「てんし、さま?……」

 

天使、カノンはライスシャワーの反応にクスリと笑う。

 

「天使様!」

 

ライスシャワーはその瞳から涙を流し、カノンへと抱きつく。そこいるのが幻覚や幻ではないことを、カノンに触れた事を感じさせた。

 

「心配で、来た。これで、会えるのは本当の最後。もうライスは一人でも大丈夫だと分かったから。最後に送る歌、聞いてくれる?」

 

抱きついてきたライスシャワーを離すと、そう顔を傾げ問うカノンにライスシャワーは頷きベンチの隣に座る。

 

「ライスに送る最後の歌、『往け』」

 

カノンはギターを弾く。最初はゆっくりとしたリズムだがだんだんと早くなっていくリズムと歌詞。

 

「『いけ、 わたしよ 行け!って もう、誰も追いつけない場所まで加速していけ、運命なんて気にしてる暇ないんだって』」

 

まるで詩ではなく、誰かの独白や思いに近い歌を目蓋を閉じて隣でウマ耳を澄まし聞き入るライス。

 

「『昔から弱虫のくせに 気づかないふりをしてきたね "大事” だって守りながら いつも 「大丈夫」って笑いながら』「ツラくない」いながら

「変わりたい」と泣いていた」

 

ライスシャワーは隣から聞こえてくる歌と演奏に胸が温かくなっていくのを感じた。そして思い出すのは今までの記憶。

 

全てが嫌になって、天使様と一緒になって過ごして沢山の事を知って、沢山勇気を貰った。何度も天使様の歌が、助けてくれた。

 

今日だって、天使様が手を引いてくれなかったら。

 

「『わたしよ行け!って、もう誰も追いつけない場所まで!加速していけ運命なんて気にしてる暇ないんだって。いま、わたしの今!って』」

 

天使様はきっと、ライスの背中を押してくれている。誰も追い付けない場所まで、加速して走れ。そう応援してくれているような歌。

 

「『そう、あの日の涙からの未来、辿り着いたわ。嗚呼、 まだみてみたいの 嗚呼』」

 

きっと、天使様は私の今後を、レースを見たいのかな?

 

「『キミトアスへ 世界は万華鏡』」

 

そう歌い最後の演奏を終えた天使様はゆっくりとし深呼吸した。ライスシャワーは閉じていた目蓋を開き、瞳から涙を流した。

 

「ライス、やっぱり天使様ともっと一緒にいたいよ」

 

「ライス……」

 

来ている服の袖で涙を拭うライスシャワーに、困った顔をしてライスの頭を撫でるカノン。

 

ライスシャワーは寂しい、悲しいといった負の状態の時にカノンと共に過ごして心の傷を癒していた。故に、彼女と一緒にいることが当たり前の日々を過ごし、彼女を家族の様に思っていた。

 

そんな時に知らされた、別れなければならないという事実。それを理解してライス自身も分かった、頑張ると告げた。

 

でもそれは心からの言葉じゃなかった。

 

本当は別れたくない、ずっと一緒にいたい。

 

その思い全てを、これ以上天使様に迷惑がかからないように、そう決意して我慢していた。

 

決意していた思いが、崩れてしまった。感情のダムが崩れて溜まっていた感情が爆発した。

 

「ずっと、ずっと一緒にいたいよ。」

 

そういってカノンをぎゅっと抱き締めるライスシャワー。

 

「カノンもそう思うけど……」

 

「お願い、()()!ライスは天使様と……一緒にいたい!」

 

そうライスシャワーが声を上げた。目の前にいる天使ではなく、普通の言葉として神に祈った。

 

故に、その祈りを聞いた神は現れた。

 

空に光が生まれた、眩しいほどの光。でも目に痛くなく、ずっと見ていたいと思えるほどの温かい光。

 

やがて、光の中から一人の女性が降りてきた。亜麻色の髪に、背中から生えた純白の翼の生えた白いドレスを来た女性。その存在にライスは呆然とし、カノンは驚きの様子で女性を見ていた。

 

「ふぅ、久しぶりに下界に来たわね。さて──」

 

女性はライスシャワーとカノンを見ると、カノンへと歩み寄って行く。それに対しカノンはギターをベンチに置いて急いで女性の元へと走り目の前で跪いた。

 

「て、天使様!?」

 

そんなカノンの様子に驚きアワアワとしているライスシャワー。

 

「お久しぶり、エロース様」

 

「お久しぶり、元気にしてた?カノンちゃん。」

 

「はい……」

 

「別にいつも通りの話し方で良いわよ。」

 

現れたのは以前にカノンが手伝いに向かった際にお世話になった愛の神、エロース。

 

「さて、天使、ザフキエル様の補佐カノン。」

 

「ん……」

 

「貴方に新たに命令を与えるわね。これより………うーんと、そうね!暫く休暇を与えるわ!」

 

「んッ!?」

 

「せっかく貴方がギフトを送る程の子が一緒にいたいって言ってるんだし、暫くは一緒に過ごしなさい。私が許可するわ」

 

「えっと、つまり天使様と一緒にいれるの?」

 

ライスの疑問に笑顔で答えるエロース、そして突然の休暇を言い渡され驚き固まるカノン。

 

「そうよ!」

 

「やったよ天使様!一緒にいられるって!」

 

「エロース様、なんで……?」

 

その声に嬉しさのあまりに跪くカノンに後ろから抱き付くライスシャワー。抱き付くライスシャワーを一度見てから再びエロースへと向き直るカノンにエロースはため息を付きながら口を開いた。

 

「カノン、貴方は全く休暇を取らないからザフちゃんも心配してたのよ。彼女と一緒にこの世界に留まって、休暇を消化してちょうだい」

 

「……分かった。カノンはライスとこの世界にいる」

 

そういって嬉しそうに笑いながら抱き付いているライスシャワーの頭を撫でてから、カノンはエロースへと頭を下げた。それを見てヴッ!?と胸を押さえるエロース。

 

「カノン×ライス……尊い。これを癒しに仕事頑張れるわぁ……それじゃあザフちゃんには私から言っておくからね?」

 

そういって消えていくエロースを見送りカノンとライスは改めて向き直ると口を開いた。

 

「これからもよろしくね、天使様!!」

 

まるで夢の叶った様子で笑うライスに、微笑んでカノンは返し握手する。

 

「こちらこそ、よろしくライス。」

 

「そういえば、天使様お家はどうするの?」

 

「取り敢えず、歌って稼ぐ──」

 

「それだとライスが週末しか会えないよ!?うぅ、理事長さんに話して頼んでみる!行こ!天使様!」

 

そういってレースの時とは逆に手を引き走るライスと、ライスに引っ張られ走り出すカノン。仲良く走り出す二人は笑い会いながら学園の中へと歩いていく。

 

ライスシャワーの左手の薬指に嵌められている指輪。

 

その指輪に埋め込まれたダイヤモンドに秘められた意味、それは『()()()()』。

 

これは絆が繋いだ祝福の未来。

 

青薔薇のウマ娘は白薔薇の天使と共に、日々を過ごしていく。今までの生活で彼女が感じていた不幸の全てを、幸福へと変えて。

 

 

 

 

 

 






テーテーテ♪テーテーテテー♪


テーテーテテーテーテー♪



╲ガコン!!╱


「ライスは、頑張って……走るッ!」


 NEW
   〔天使の祝福〕
      ライスシャワー
            ☆☆☆


固有スキル『天使の祝福(エンジェルギフト)
【スキル演出】
レース場、ライスを追い抜いていくウマ娘達を見てライスは悲しそうに俯く。
指輪が光り、ライスシャワーに瓜二つの真っ白な少女が現れて彼女の手を引いて走り、連れてライスシャワーも走り出す。

「──あ」

そして少女は優しく笑いかけると、ゴールへと走るよう促す。

『────』

「うん、頑張る、だから見てて!天使様!!」

そういってライスシャワーは走り出す。









ご愛読ありがとうございました

これにて本作は完結と差せていただきます。

本作は色々と会ったものの、こうして完結させられて良かったです。

皆様の感想や評価のおかげで、ここまで書くことが出来ました。

読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございました。

………ついでですが『白薔薇』の花言葉は『心からの尊敬』『無邪気』『純潔』『相思相愛』『約束を守る』『私はあなたにふさわしい』『あなたの色に染まる』らしいですよ。



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