金田一少年の事件簿─もう1人の幼馴染─ (金田一始)
しおりを挟む

プロローグ

「停学」。

それは、高等学校の生徒や大学の学生など教育を受けている者に対してあたえる罰則だ。罰則の内容は、停学を受けた生徒が所属している学校等の教育を受けることを一定期間停止させるというものだ。つまり、芸能人などが不倫や暴力行為などの問題を起こして所属している事務所からくらう自宅謹慎と同じかものだ。

 

停学になってしまう可能性がある行為は、自動車通学禁止に対する違反、校内外での飲酒や喫煙、窃盗や万引き、喧嘩や乱闘等での傷害、試験中のカンニングや替え玉受験など様々なものがある。

そして、これらの校則を犯してしまった場合は通常数日間から14日程度の停学を言い渡されるが、いじめなどで自殺や転校などに追い込んだ加害者は無期限の停学となってしまうらしい。

 

 

 

 

「Zzz………」

 

とある住宅街にある一件の家の縁側で1人の少年がイビキを立てながら昼寝をしていた。

この少年の名前は春川未来。不動高校に通う現役の高校2年生だ。

そんな、現役高校生がこんな平日の真昼間から学校にも行かずに呑気に縁側でイビキを立てながら昼寝をしているのにはある理由があった。

 

「未来、いい加減に起きなさい。いつまで寝てるの。今日で停学の期限が切れるから先生の所に行くって言ってたじゃない」

 

「・・・・・・あ〜、そう言えばそうだったな。取り敢えず、放課後になったら行くよ。授業中に行っても先生や他の奴らに迷惑がかかるしな」

 

昼寝をしている未来のことを起こした母親春川愛美が言った通り、未来が学校に行っていない理由は学校側から停学処分を受けていたからだった。

何故、未来が停学処分を受ける羽目になったのか、それは数週間前にまで遡る。

 

不動高校は、2年生に進級すると5月に2週間の施設実習と言うものがある。施設実習と言っても中学校などで行く職場体験のようなものだ。

この、施設実習では他のクラスメイト達はそれぞれ自分達の夢に関わる職場を選んでいたが、特に夢を持っていなかった未来だけは適当に大手の広告代理店を選んだのだった。

 

施設実習が始まり、未来は特に問題を起こすことなく施設実習に取り組んでいたが施設実習5日目未来は施設実習先の職場でイジメが行われていたことに気付いてしまった。

 

この時のイジメの被害者は夕月カンナと言う大学を卒業したばかりの女性で、加害者は山南敬助と言う50代ぐらいの男性だった。山南が夕月をイジメていた理由は新人歓迎会の時に迫ったが断れたというなんともくだらない理由だった。

その話しを聞き、実際に山南が夕月をイジメている場面に出くわした未来は流石に見過ごせず2人の間に入り山南にイジメを辞めるように言った。この時

山南は特に言い返す事もなく素直に引き下がったが、翌日からまた何一つ反省した素振りを見せずに夕月をイジメていた。その度に、未来は2人の間に入りイジメを止めていた。

 

しかし、山南はカンナのスマホに毎日送られてきていた彼氏からのメールを毎日削除しカンナを孤立させて精神的に追い込もうとしていたのだった。

この事に気が付いた未来は、いつもの様にカンナをいじめていた山南に近付き顔面を殴ってしまった。

この事は、直ぐに学校側に連絡が行き未来の施設実習は急遽中止になり、未来は施設実習先の人物を殴ったことで退学処分になりかけたが、会社側が未来はイジメを止める為に山南を殴ったと学校側に伝えた為退学処分は無くなり、未来の罰則は退学処分から1週間の停学処分となった。

 

因みに、夕月をイジメていた山南は未来に殴り飛ばされた後周りの証言からイジメを行っていたことが上層部に伝わり会社をクビになってしまったらしい。恐らく、山南が若い女性を毎日のようにイジメて会社をクビになったことは誰もが知っている為再就職はほぼ不可能に近いだろう。

 

「・・・・・・さてと、そろそろ学校に行くかな」

 

簡単に身支度を整えた未来は、今日で1週間の停学処分が解ける為、停学期間中のことを担任の教師に報告するために学校に向かって行った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オペラ座館殺人事件
第1話


───不動高校 職員室

 

不動高校職員室では、2人の男性教師が1人の男子生徒の事について話していた。

 

「───まぁーた、金田一ですか高山先生?」

 

「えぇ、そうですよ。また金田一がやらかしましてね。お陰で授業時間は20分も潰れてしまいましたよ」

 

「それは、大変でしたね」

 

「それにしても、あのアホと学年トップで生徒会長を務めている七瀬美雪が幼稚園からの幼馴染ってのが未だに信じられませんよ私は・・・」

 

「───そうかしら。私は、なかなか面白い子だと思いますよ」

 

「お・・・緒方先生!!」

 

話しの話題になっている男子生徒の名前は「金田一一」。その男子生徒は、男性教師たちの口ぶりからして結構な問題児のようだ。

だが、そんな問題児の金田一に対して「面白い子」と発言した女性教師が居た。その、女性教師の名前は緒方夏代。音楽を担当し演劇部の顧問を務めている美女だ。

 

「そー言えば、緒方先生が顧問を務めている演劇部の合宿に金田一を連れて行くんですって?」

 

「えぇ、七瀬さんの推薦で・・・」

 

「緒方先生、気を付けてくださいね。金田一は典型的落ちこぼれですから、合宿先で何をしでかすか分かりませんよ」

 

「・・・・・・なるほど。確かに、金田一君は落ちこぼれですわね・・・。遅刻・早退は当たり前。授業なんて半分はサボっているし、出席していても居眠りばかり、その為テストはほとんどが赤点。運動に関しても全然ダメ・・・。でも、私はそれは金田一君の本当の姿じゃないと思いますの」

 

「「え?」」

 

「金田一君には、他の生徒には無い「何か」を持っている・・・そんな気がするんです」

 

「またまたぁ」

 

「ははは。考えすぎですよ緒方先生!」

 

緒方は男性教師の「落ちこぼれ」と言う事に関しては認めたものの、「金田一には他の生徒には無い何かを持っている」と言った。それに対して、男性教師たちは笑ってそれを否定し信じることは無かった。

そして、授業の開始を告げるチャイムが鳴り男性教師たちは緒方を残して担当しているクラスに向かって行った。

 

「みなさん、ご存知無かったのね。金田一君はIQ180を誇る天才ってことを・・・」

 

1人の残された職員室で緒方はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、緒方先生」

 

「あら、春川君。そう言えば、今日で停学が切れるのだったわね」

 

「はい、1週間だったので結構短く感じました」

 

数十分後。自分の机で作業をしていた緒方の元に未来が訪れていた。緒方は未来に気が付くと作業をしていた手を止め、足を組み、椅子ごと未来の方を向いた。今日の緒方の服装はとても露出度が高く、健全な男子高校生にとっては目のやり場に困る服装だった。だが、未来は特に気にすること無く緒方と普通に話していた。

 

「そう。それで、私に何の用かしら?」

 

「実は、停学期間中だった時の授業の課題を受け取りに来たんですよ」

 

「そう。課題を取りに来たの」

 

未来が緒方の元を訪れた理由は、未来が停学期間中だった時の授業の課題を取りに来たからだった。

緒方は未来が課題を取りに来たことを知り、机の上に課題を用意したが、未来に渡そうとはしなかった。

 

「・・・・・・緒方先生、それが課題ですよね?」

 

「えぇ、これが今回私が用意した課題よ。ところで、春川君今回の課題は量が多いんでしょ?」

 

「まぁ、1週間分の課題なので結構量はありますけどら」

 

「そこで、春川君に私から1つ提案があるの・・・」

 

 

「・・・提案ですか?」

 

「えぇ、春川君に私が顧問を務めている演劇部の合宿に荷物持ち兼スタッフとして同行して欲しいの。

合宿にさえ参加してくれれば課題は提出しなくっても大丈夫だから」

 

緒方は未来に課題を提出する代わりに、自身が顧問を務めている演劇部の合宿に同行することを提案した。

未来は、この提案に対して考えた。確かに、課題の量は多く1つ課題が減るのは未来にとってメリットだが、演劇部には1人も友人が居らずコミュニケーションを取るのが難しいと言うのが未来にとってのデメリットだった。

 

「確かに、提出する課題が1つ減るの俺にとってメリットになると思いますが、生憎演劇部には友人が居ないんですよね」

 

「・・・それなら、心配は無いと思うわ」

 

「・・・それは、どうゆう事ですか緒方先生?」

 

「春川君は確か、金田一君と七瀬さんと幼馴染だったわよね?」

 

「えぇ、小学校からですけど」

 

「今回の演劇部の合宿には、去年ミステリー研究会の合宿で参加することが出来なかった七瀬さんとその推薦で金田一君が参加するの」

 

「・・・七瀬と金田一も参加するんですか」

 

「えぇ、その2人が居るなら友人が居ないことは解決したわね」

 

「・・・うーん、まぁ、その2人が居るなら演劇部の合宿に参加しますよ」

 

未来は、小学校からの幼馴染「金田一一」と「七瀬美雪」が今回の演劇部の合宿に参加することを緒方から聞かされると演劇部の合宿に参加することを承諾した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 20~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。