結婚破棄を前提に許嫁にしてください (哀上)
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プロローグ

 プロローグ

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 悪役令嬢「婚約破棄を前提に許嫁にしてください」

 

 王子「??」

 

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 身分違いの恋というのは大変な苦労があるという。

 それは、低い身分の者が高い身分の者に抱く恋というのももちろんではあるが、高い身分の者が低い身分の者にする恋というのそれはそれで様々な困難がある。

 それが一国の王子ともなれば、その苦労というのは察するに余りあるものがあるだろう。

 

 王子の場合、愛人でもいいからとなんとかして関係を築きたがる貴族の娘というのは多い。

 それをうまくやりくりして自分の派閥なんてものを作り王になり国を動かすのだ。

 それを自分の好きな人、それも庶民の女の子を優先しようなんて、そんなこと不可能である。

 

 王位継承のレースから外れるだけならまだマシ。

 母親の家やら自分が生まれる前から自分のことを勝手に支援してきた貴族やらに殺されてしまっても何も不思議ではない。

 

 しかし、恋というのは意識すれば止められるというものでもない。

 好きになってしまったのだから、仕方がない。

 

 何もかも捨てて駆け落ちする貴族がいるように、処刑されると分かっていて同性愛に燃え上がる者がいるように、誰も止まることなど出来はしない。

 

 例えその恋にどれだけの困難と障害が待ち受けていようとも。

 

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 王子は生まれて初めて恋をした。

 相手が平民だと分かった今も、その想いは変わることがない。

 

「王子、陛下がお呼びです」

 

「わかった。すぐに向かう」

 

 縁談の話だった。

 第貴族の令嬢とのお話、王子という立場から見ればけして悪い話ではない。

 未来のことを考えればむしろ歓迎すべきことだ。

 その貴族は父親の、現国王の有力な支援者のうちの1人であり、俺の支援者の中で最も力を持つ貴族でもあるのだから。

 国王となる未来に一歩近づく、他の後継者より優位に立てる。

 

 しかし……

 

 まぁ、俺に選択肢なんてものはない。

 これだけの有力貴族からの、王位に確実に近づけるほどの案件ということはそれはもう力の入れようが違う。

 当然、断ることなんてできない。

 

 身分上自分の方が上ではあるはずなのだが、実際に何かできるような権限王子にはない。

 たとえ王になったとしても、結局は貴族のご機嫌取りが主な仕事だ。

 本当に生きにくい限りである。

 

「はぁ〜」

 

 婚約、か。

 

 明日縁談とは言っても、僕の意見が何か決定に反映を及ぼすことはないだろう。

 もすでに決定していて、縁談と言いながらほぼ婚約者同士の顔見せのような物であろう。

 

 相手も貴族の娘だ。

 顔は社交界などで何度か見たことはあるし、軽い挨拶程度なら交わしたことがある。

 でも、それだけでしかない。

 一度もまともに話したことない相手と将来を誓う、そういう物だとは理解していても非常に気が進まない。

 

 少し前なら特に何か思うこともなく、それが当然だとすんなり受け入れられたんだろうけどな。

 嫌で堪らないが、特にいい解決策が浮かぶわけでもない。

 婚約したくないなんて我儘、許されるはずもない。

 

 ましてや、平民の女の子に一目惚れしたからなんて理由で。

 

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 ひたすら考え、考え続け、気がついたら朝になっていた。

 タイムリミット、か

 

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第一話 王子様と少女の柔肌

 第一話 王子様と少女の柔肌

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 縁談は想像通りの内容だった。

 

 親同士が横で話し、連れてこられた女の子も僕も子供はただ黙って話を聞いているだけ。

 親が話しているのも世間話がほとんどで、本当にこの縁談が形だけでしかないのをよく物語っている。

 どうせ形だけでしかないのだから、こんなものやらなくてもいいと思うのだが貴族とはそういう生き物なのだろう。

 

 黙ってじっとしている少女は、整った容姿もあいまりまるで人形のように見えた。

 まぁ、俺も少女から見れば人形のように見えたことだろうが。

 

 俺が少女のことを興味深げに観察していると、何を勘違いしたのか「あとは若い2人で」なんて勝手なことを言って2人っきりにされてしまった。

 あいつらは、本当に何を考えているのだろうか。

 いくら女と男が一緒にいても、初対面同士でそんなこと起こるはずもないだろう。

 ただ気まずいだけである。

 

 あいつら、脳が性欲にやられてしまっているのだろうか?

 ……本当にやられてしまっているのかも知れない。

 毎日、いろんな女取っ替え引っ替えしてやりまりだし、脳が焼かれてても何も不思議ではない。

 

 脳内でこんな余計な縁談を持ち込みやがった公爵とそれを勝手に受け入れた王をボロクソに言っていると、少女が淡々と服を脱ぎ始めた。

 

「え?」

 

 本来秘すべき柔肌が、僕の眼前でゆっくりとそして着実に露わになっていく。

 

 ??

 

 僕が混乱している間に、彼女は身に纏うものを全て脱いでしまった。

 生まれたままの姿となった少女は、なんら羞恥心を感じていない様子で特に秘部を隠すこともなくまっすぐに僕を見つめてくる。

 

 目のやり場に困る。

 僕はその視線を真すぐ返すことも、その柔肌を直視することも、かといって視線を完全に逸らしてしまうことも僕にはできなかった。

 

 惜しげもなく晒された美しい裸体に僕の男はどうしようもなく惹かれてしまっていた。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 理性を限界まで総動員してなんとか思いとどまる。

 

「あれ? 致さないのですか?」

 

 少女は首をコテンと可愛らしく傾げた。

 全裸で。

 

 これはまずい。

 犯罪臭がすごい。

 いや、俺が仮にどうこうしたところで何も問題はないし、なんならそうした方がいいまであるんだけど。

 でも、とにかくこれはまずい。

 

 密室で裸の美少女と2人っきりとか、脳がおかしくなりそうだ。

 

「そ、そういうことは好きな人とだね……」

 

「私、王子様のこと好きですよ?」

 

 また可愛らしく首を傾げる少女。

 

「第一、僕と君はまだ出会ったばかりでそういうことは……」

 

 僕がなんとか理性を総動員して誘惑に抗っていると、少女は顎に手を当てて少し考えるような仕草をしてニヤリと口元を歪ませた。

 

「もしかして王子様……」

 

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第二話 裸の少女に弱い所を握られる

 第二話 裸の少女に弱い所を握られる

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「もしかして王子様好きな人でもいるんですか!?」

 

 そう身を乗り出して聞いてくる少女。

 さっきまでどこか幻想的で人形のようだった彼女は、顔いっぱいに笑顔を浮かべまさに年相応の元気一杯な少女といった様子だ。

 

 興味津々といった様子でジリジリと詰め寄ってくる。

 女子が恋バナ好きとは聞いたことあったけど、ここまで食いつくものなの!?

 

「え、えっと」

 

 ジリジリと後退しながら少女との距離を一定に保つ。

 

 人形さんよりはまだ接しやすいが、それにしたってこう前のめりで来られると対応に困る。

 なんたって、こいつまだ全裸のままだ。

 結果として年相応の少女がテンション高めに全裸のまま僕に詰め寄ってくるという惨状が出来上がったわけである。

 

「と、とりあえず落ち着いてくれ」

 

 なんとか少女を宥める。

 裸のままの少女に詰め寄られるというのは非常にくるものがある訳で、これまでの俺の理性による制止が一瞬で無に帰しかねない破壊力を誇る。

 

 淡々と来られる人形モードもそれはそれでやばかったが、無邪気に来られるとそれはそれで……

 

 いや、違う。

 断じて俺はそんなとこ見てなんか、って誰に言い訳してるんだ僕は。

 このままじゃ僕本当に頭がおかしくなっちゃうよ。

 

「誤魔化すんですか? 女の子に恥描かせておいて」

 

 頭を抱え悶え苦しむ僕に少女がそんなことを言ってきた。

 

 恥?

 まぁ、誘って断られるというのは常識的にいえば恥なのだろうけど、全然そんな風に思ってそうには見えないんだが?

 というか、仮にそれを恥ずかしいと感じたとして初対面の男に裸を晒すのは恥ずかしくないの?

 

 僕が首を傾げると、少女がじとっとした視線を向けてきた。

 目は口ほどに物を言うとはよくいったものだ。

 僕の感想への抗議の意がこれでもかと伝わってくる。

 

 まっすぐ目を見返して僕も抗議の意を

 

 ……だめだ。

 どうしても視線が下がってしまう。

 目をまっすぐ見ようとしても、膨らみとポッチがチラチラと視界に入って。

 この状態で勝ち目はない。

 

 男のサガなのだ。

 そこにあれば、自然と視線が行ってしまう。

 

「は、話すから。とにかくさっさと服を着てくれ」

 

 とにかく服を着てもらわないと話が前に進まない。

 

「絶対ですよ」

 

 服を着て欲しい一心で、深く考えることなくうなずく。

 

 少女はそんなことを言いながら、いそいそと服を着込みだした。

 決して残念なんて思っていない。

 当然だ。

 僕は紳士だ。

 

 むしろ、女性が服を脱ぐ姿はもちろんいいが、着込むのもそれはそれで……

 って、何を考えているんだ。

 

「はぁ〜」

 

 やっと服を着てくれた。

 助かった。

 断じて残念なんて思ってないぞ。

 ほんとだよ?

 

 そういや「絶対ですよ」って、俺話さなきゃいけないの?

 恋バナを?

 

 いや、気恥ずかしさとかもあるけどそれ以上に王子が平民に一目惚れって結構なスキャンダルでは?

 僕こいつに弱み握られるの?

 しかも色仕掛けで?

 

 なんか、すっごい屈辱的なんだけど。

 

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