ジパングフリート(改) (キョン提督)
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登場人物及び晴風について

【艦橋要員】

岬 明乃  艦長

宗谷ましろ 副長兼砲雷長(主人公)

立石 志摩 砲術長

西崎 芽依 水雷長

納沙 幸子 書記兼船務長

知床 鈴  航海長

五十六(猫)

多門丸(猫)

 

 

【機関科】

柳原 麻侖 機関長

黒木 洋美 機関助手

若狭 麗緒 機関員

伊勢 桜良 機関員

駿河 留奈 機関員

広田 空  機関員

和住 媛萌 応急長

青木 百々 応急員

 

 

【砲雷科】

小笠原 光  砲術員

武田 美千留 砲術員

日置 順子  砲術員

松永 理都子 水雷員

姫路 果代子 水雷員

万里小路 楓 水測員

 

 

【主計科】

等松 美海  主計長

伊良子 美甘 給養員

杵崎 ほまれ 給養員

杵崎 あかね 給養員

鏑木 美波  衛生長

 

 

【航海科】

勝田 聡子  航海員

山下 秀子  左舷航海管制員

内田 まゆみ 右舷航海管制員

八木 鶫   電信員

宇田 慧   電測員

野間 マチコ 見張員

 

 

【大日本帝国海軍】

山本 五十六

米内 光政

滝 栄一郎

津田 琴美(津田一馬)

如月薫(如月克己)

立石 良子(立石良則)

岡村 徳長

島本

河本

堀田

 

 

【大日本帝国陸軍】

東條 英樹

 

【その他】

吉村 次郎

石原 寛治

倉田 万作

宗谷 雪(ましろの先祖)

宗谷 霜(ましろの先祖)

片桐 真奈美(晴風に取材目的で乗り込む)

 

【???】

知名 もえか(主人公)

村野 憧子

吉田 親子

角田 夏美

 

 

【米国】

フランクリン・D・ルーズベルト

クリス・エバンス

サミュエル・D・ハットン

ウィリアム・テイラー

 

【ドイツ第三帝国】

カール・フォン・シュタイナー

アドルフ・ヒトラー

 

【イギリス】

ウィンストン・レオナルド・スペンサー・チャーチル

 

【中国】

毛沢東

 

【満州国】

愛新覚羅溥儀(あいしんかくら ふぎ/アイシンギョロ プーイー)

 

 

【晴風の武装等】

横須賀女子海洋学校所属の陽炎型航洋直接教育艦。

艦番号 Y469

正式名称 沖風(晴風Ⅱ)

主砲 55口径15センチ単装砲改 3基3門

副砲 無し

機銃 20ミリ単装機銃 2基

魚雷 61cm四連装魚雷発射基 2基8射線(酸素魚雷)  

爆雷 九四式爆雷投射機 1基

   爆雷投下台 1基

噴進兵器 四式四十糎噴進砲改 1基 8発(試験搭載、対艦用)

     十二糎二八連装噴進砲 1基 (試験搭載、対空用)

掃海具 67式普通掃海具 2基

ソナー OQS-101 艦首装備式 1基

艦載艇 中型スキッパー 2艇

最大速力 37ノット

乗組員 30人

全長 118.5m

全幅 10.8m

基準排水量 2033t

満載排水量 2553t

水線長 116.20m

垂線間長 111.00m

最大幅 10.80m

水線幅 10.80m

深さ 6.46m

喫水 4.02m

航続距離 5000海里(18kt時)

機関出力 55000馬力

機関 万里小路2胴水管型缶 2缶

   万里小路2胴衝動型蒸気タービン 2基

   スクリュープロペラ 2軸

レーダー OPS-12 3次元対噴進魚雷

     OPS-28 対水上

     OPS-20 航海用

安全装置 タイムスリップ時に機能しなくなる

電子戦・対抗手段 NOLR-6C電波探知装置(試験搭載、杉本 珊瑚作)

         OLT-3電波妨害装置(試験搭載、杉本 珊瑚作)



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序章 ~漂流者~

 パールハーバーで行われる共闘遊戯会に招待され、ハワイに向かう大和型大型直接教育艦武蔵と陽炎型航洋直接教育艦磯風。その行く手を阻むかのように湧き出てくる黒い雲。

「艦橋1番報告!前方に積乱雲発見!」

 予報になかった積乱雲の接近に動揺する艦橋。それを落ち着いた状況で対処するもえか。

「非直の子も総員配置について。時化に備えましょう」

「了解!総員配置につきます」

「磯風に連絡。距離を4キロに設定。連絡を密に」

 (こんな天気……今まで見たことが無い……)

 

 

 

 武蔵からの連絡に、蜂の巣をつついたように動き出す磯風の艦内。

「演習弾が飛んでくる前に台風ですって!」

「こんな話なかったのに!」

 文句をたれながらも配置につく磯風の乗組員たち。

「艦長、総員配置につきました」

 艦橋で報告する副長の声にも緊張の色が見える。

「季節外れの霧が出てきたわね……目視による監視を厳に……」

 磯風艦長が命令した瞬間、耳を疑うような言葉が電探室から飛んできた。

「電探室より艦橋……水上レーダーに反射波なし……武蔵を……」

電探員の声は震えていた。

「どうしたの!?はっきり報告しなさい!」

思わず声が大きくなる艦長。

「武蔵をロストしましたぁ!」

「き、消えたぁ?そんな訳あるか!出力最大で探して!!」

だが、電探室の返答は同じだった。

監視員(ワッチ)!目視による確認はできないか!?」

「ダメです!霧が濃くて何も見えません!」

「通信!」

「完全に沈黙しています!」

艦長は頭を抱えたくなった。

(まさか武蔵が沈没?……いや、そんなはずは無い)

すぐに顔を上げると指示を出した。

「総員全力を挙げて武蔵を探せ!」

 しかし、磯風の捜索虚しく武蔵に繋がる手がかりは無かった。先ほどまで確かにいたはずの武蔵の姿が忽然と消えてしまったのだ。まるで神隠しにあったかのように……。

 

 

■西暦20XX年8月某日

 

 武蔵失踪数日後、横須賀女子海洋学校総力を挙げた捜索が開始された。

 もちろん晴風も例外ではなかった。明乃が先陣を切って捜索する姿が他の乗組員の目に映る。

 晴風はほぼ不眠不休で捜索した。

「モカちゃん……」

 日に日憔悴していく明乃を裏目に、武蔵に繋がる手がかりはついに見つからなかった。

 武蔵の捜索が打ち切りになった日、明乃はましろに心のうちを明かした。

「シロちゃん……私……どうすればいいのか分からないよ……」

「艦長……」

「私は艦長だし……みんなをまとめないと……だけど……だけど……」

「大丈夫です。私に任せてください……」とはましろは言えなかった。

「岬さん……今は落ち着いて休んでください……その間、艦のことは私が……」と何とか声を絞り出して言うのが精一杯だった。

「だけど……」

「今ここであなたが無理をする事より、あなたが立派なブルマーになることを知名艦長は望んでいると思います……」

 こんなことしか言えないなんて……とましろは思いつつもその日はずっと明乃に寄り添い続けた。

 

 

 そして2年後。3年生になった明乃たちは卒業航海のためにパールハーバーに向かうことになった。

 物語はここから始まる……




なんか、あれですね……ハイ

こんな感じで進めていきます。よろしくお願いいたします。


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航跡1 出港でピンチ! 前編

(これは……?)

 ましろは浜辺に横たわる胴体に日の丸をつけた錆びた鉄くずを見つける。近くによってよく調べてみようとすると背後から声が聞こえた。

「これは日本の零戦だ……」

(ゼロセン……?)

 聞きなれない単語にましろは首をかしげる。

「昔、日本人はこんな南の島でも戦争をしていたんだ……」

(日本が戦争を?何を言っているのだ?)

 ましろが振り向くとそこには見たことがない男性が立っていた。胸のプレートには「角松洋介」とある。

「あなたは何を……?」

「日本は昭和20年8月15日ポツダム宣言を受諾し無条件降伏をした。この戦争で民間人を含めた約200万人が死亡した……」

 淡々と語り続ける男にましろはついていくことができず頭を抱えてしまう。

「あなたはいったい何を言っているんだ!日本が戦争をするなんて歴史はない!ブルーマーメイドは何のために作られているんだ!」

 そしてましろは突然目の前が真っ白になった。目が覚めるとそこには納沙幸子(のさこうこ)がましろを覗き込んでいた。

「な、なんだ!」

「大丈夫でしたか?とてもうなされていましたが……」

 幸子がましろにタオルを手渡す。ましろは汗でびしょ濡れという事に気が付いた。

「ありがとう……。ところで今何時だ?」

「0730ですが……」

 完全に遅刻である。

「納沙さん、西崎さんは?」

「もう江田島に……」

「なんで起こしてくれなかったんだぁ!!」

 ましろは幸子に責任転嫁しながら制服に着替え、宿舎を飛び出る。

 

 広島県安芸郡江田島町呉女子海洋学校 講堂

「我々ブルーマーメイド日本支部の主な役割は海賊から我が国のシーレーン防衛に主眼が置かれていた。しかし、ブルーマーメイド体制を取っていない隣国の台頭で今までの体制では対処できない可能性がでてきた。そこで現在、急ピッチで進められているのが『記念艦超甲巡あづま』の再就役である。」

 ましろが講堂のステージでマイクを握りながら熱演する。これは3年生となった学生が入学航海を終え、帰投した1年生に海洋学校とブルーマーメイドがどのようなものであるか学生の立場から説明することによって、相互理解を深めるというのが趣旨となっている。今年は晴風に白羽の矢が立ったわけだ。しかし、ましろは何やら勘違いしているのかもしれない。

「『あづま』では大和型と同等の攻撃力と防御力を備え、なおかつRATt事件で脆弱性が指摘された電子機器を極力使用しないでいる。このことによってECMなどの……」

 ステージの袖では幸子と芽依が熱演するましろを見ている。

「副長、なかなか様になってるじゃん」

「そうですかねぇ。私は何か勘違いしているようにも見えますけど……」

 ましろがステージ袖の目隠しを開け、幸子に合図を出す。

「一度舐められたら終生取り返しがつかんのがこの世間や……。時には命張ってでも……」

 幸子は1年生の前でお得意の任侠の真似をしている。

「あのバカは何を……」

 ましろは赤面しながら頭を抱えた。

「ズバリ!私たちに必要なのは撃て撃て魂!撃たれる前に撃つ!危険と判断したら……」

 芽依の発表の際もましろは赤面した。

「アイツは何が言いたいんだ……」

 1年生の中にトリガーハッピーが生まれないことを祈るばかりである。

 

 講堂での講義を終えた3人はすぐに荷物をまとめて帰りの船に乗った。そして翌日の05:30に横須賀フロート艦に帰投した。

 三人が晴風の停泊している埠頭に行くと、艦首で晴風を見つめる明乃を見つけた。

「岬艦長!ただいま帰投いたしました」

 ましろが声をかけると、晴風を見つめる明乃が振り向いて敬礼する。それに続いて三人も敬礼する。

「お帰りなさい!シロちゃん!メイちゃん!ココちゃん!」

「晴風に何かありましたか?」

「いや、ただ見ていただけだよ……出航前での癖で……」

 頭の後ろを書きながら少し照れたようにする明乃。

「そ、そうだ!思い出した。シロちゃん、ちょっと頼まれてくれない?」

「なんでしょう?」

「記者さんが晴風のことを取材したいって。それでシロちゃんにインタビューしていって……」

「確かに、ブルーマーメイドを牛耳る宗谷家のご令嬢に取材できる機会なんてそうそうありませんからね」

 幸子のからかいをましろは無視して晴風の舷側から手を振る長身の女性を見る。

「フリージャーナリストの片桐と言います!宗谷さん!待っていたんですよ。お話うかがっても?」

「出港前で多忙なので、夜まで待っていただければ!」

「了解です!艦内のスナップなどいただきながら時間を潰してますよ!」

 ましろたちが晴風に乗艦すると、丁度6時の起床ラッパと共に夜が明けた。

 

 

 横須賀港第一埠頭(バース)

 

 旗艦の金剛型大型直接教育艦比叡が出港の出航を伝える汽笛を鳴らす。各艦で出港のラッパを鳴らす。

 晴風でも万里小路が艦首の海軍旗の前でラッパを吹く。2年間あまり成長していないようだ。

 もやい作業が終わり、仕事のない砲雷科と主計科の面々が舷側にズラリと並ぶと艦が動き出す。

「両舷前進微速。赤黒なし」

 明乃の号令を航海長のリンが復唱し、舵輪をまわす。晴風が徐々に岸壁を離れていく。

 舷側に並んだ面々は港に並ぶギャラリーに手を振ったりして盛り上げる。

「両舷前進半速」

 晴風がある程度港から離れると舷側に並んでいた面々も艦内に戻っていく。

 

 

 その夜、食堂

「成程。代々一族がブルーマーメイドで自分も憧れて……それだけですか?」

「他に何か必要ですか?」

「いやぁ……例えば国防意識に燃えてとか、ブルーマーメイドの現在の状況を憂いてとか……」

「私にわかることは艦のことだけなので……」

 ましろがのらりくらりと質問を回避していると片桐がいやらしい顔をしてこう問いかけた。

「今後、隣国との関係悪化が予想されていますが……もし戦うことになったらブルーマーメイドは戦えると思いますか?」

 ましろは少し間をおいて答えた。

「片桐さん、あなたは人を殺したおことがありますか?」

「え?……」

「私たちもあなたと同じように人を殺したことは無い。でも、この服を着ているという事は命令があればヤルというのが私たちだ。人を殺す武器を持つことができるのはその武器で殺される覚悟があるもののみだけ。私たちはその覚悟で日々を過ごしている……」

「………」

「時間ですね。失礼します」

 ましろは食堂を出た。

 

 

 出港4日目 東経153度、北緯25度

 最上部の見張り台で遠くを眺めてぼんやりしていたマチコが眼鏡をはずし、見張り台を出る。

(この空……妙だな……)

そして伝声管に向かって報告した。

「艦橋、進路方向に積乱雲と思わしき雲を発見。気象班に問い合わせを!」

「こちら艦橋了解した」

 ましろが返答をするとすぐに電信室の鶫に海洋学校本部の気象班に問い合わせるように命令した。

 30分後、気象班からの返答があったと告げる。

「ミッドウェー島北西に低気圧あり。気圧965hp、風速40メートル。なおも勢力を増しているとの事です」

「予報にはなかったな……」

「そうだね。……シロちゃん、時化に備えて総員配置に。荒天準備となせ!」

「了解しました!」

 ましろが艦内に伝えると一気にあわただしくなる。艦橋にも幸子と芽依、志摩が駆け込んでくる。

「こんなの予報に無かったのにぃ!」

「Oui」

 遅れてリンが艦橋に駆け込んできた。そして総舵輪を聡子から受けようとした……その時だった。

 晴風を謎の光が雷鳴と共に包み込んだ。

「きゃあ!」

 頭を抱えてしゃがみ込む明乃。恐怖のあまり泣き出すリン。

「各部、損害を報告せよ!」

 ましろが咄嗟に伝声管に怒鳴ると、各所から次々に返答が返ってくる……一室を除いて……。

「電測室!電測室!」

 ましろが連呼するとようやく返答があった。

「れ、レーダーに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーダーに僚艦を捕えられません!!!」

 

 

「レーダーが利かないなんてことがあるか!通信は!?」

 電信室で鶫が機械をいじくるもどの艦とも連絡を取ることができない。

 同時刻、機関室から計器の針がグルグルと回り続けている事が報告された。

「一体……一体何が起きているんだぁ!!」




とりあえずここまで書きましたが疲れました。
もっとスピード上げないと……!


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航跡2 出港でピンチ! 後編

「一体……一体何が起きているんだぁ!!」

 ましろがそう叫んだ瞬間、晴風が雷鳴と共に光に包まれた。

「野間さん!大丈夫!?」

 見張り台の野間を明乃が心配する。同時にましろは艦内のダメージを報告させる。

「こちら野間、異常ありま……」

「どうしたの!?」

 マチコの手に舞い落ちた白い結晶……。

「雪……雪だ!雪が降っています!」

「雪?今は6月でしょ!?」

「Oui……」

 すると電探室の慧から報告が飛んでくる。

「電探に感あり!晴風の全周に艦が!!概算40を超過、大艦隊のど真ん中にいます!!」

「私たち、迷子になっちゃたのかな……」

「そんなはずないだろ!」

 鈴が泣き出す。

「アメリカのブルーマーメイドが出張ってきたのかもしれないね……ツグちゃん!」

 電探室で鶫が通信機器をいじくるも何の反応もない。その代わりに慧から戦艦クラスの艦が接近してくると報告が飛んできた。

「野間さん!何か見える!?」

 明乃はマチコに伝声管で伝えながら双眼鏡を覗く。そこには艦首に菊の紋章を着けた大きな戦艦が向かってきていた。

「戦艦……武蔵!?」

 野間が伝声管を通して艦内に伝わる。

「武蔵って!!」

「行方不明になっていた武蔵ッスか!?」

 艦内に動揺が広がる。

「武蔵……いえ、不明艦より発行信号!」

 マチコからの報告に明らかに動揺する明乃。

「艦長、まだ武蔵と決まった訳じゃ……」

「分かってる……分かってるよ……」

 そしてその発行信号をマチコが読み上げる

「『キカンノショゾクヲジョウコクしてテイセンセヨ』との事です!」

「艦長、どうしますか?」

 ましろはブルマーなら晴風のことを聞くはずがない。この武蔵は一体なんだと思いながら命令を訪ねる。

「……本物の武蔵ならそんなこと聞かないよ!リンちゃん!」

「逃げることなら任せて!」

 ましろは鈴のことを信じることしかできなかった。

「最大戦速!取舵20度!」 

 鈴がはきはきと命令を下すと機関室から了解の意が飛んでくる。

「右舷より駆逐艦接近してきます!距離500!」

「左舷からもです!」

「どうする!?撃っちゃう!?」

 まゆみと秀子から飛んでくる報告にも逃げ逃げ精神の鈴は冷静だった。撃て撃て魂の芽依は興奮気味だった。

「機動性随一の晴風ならかわせるよ!」

 鈴は取舵をとって一瞬左に艦を向けると、即座に面舵を取るというフェイントをかけ接近してくる駆逐艦の間のど真ん中を突っ切る。そして、そのまま艦隊から離れていった。

 

 

 

「対空、対水上レーダーに感ありません」

「ソーナーにも反応ありませんわ」

「見張り台、何も見えません……」

 一通りの報告が終わった後、艦橋では麻侖と美海も含めて軽い議論が行われていた。

「6月の雪、通信不能、僚艦の失探。それにあの艦隊の出現……。我々の身に何が起きているのだ?」

「あれはどう見たって武蔵ですよ!46㎝のどでかい主砲にあの艦橋!間違いありません!」

「大和型だから武蔵以外の可能性も捨てきれない」

「それに、武蔵……いや、学校の大和型なら私たちに向かってあんな内容の発行信号を送ってこないでしょ」

「Oui……」

「なら!ハリウッドが大金をかけて映画を撮ってるんですよ!『皇国の興廃はこの一戦にあり!各員一層奮励努力せよ!』」

「だったら無線封鎖なんてしないんじゃないかな……」

 謎が深まる一方であった。

「ねぇシロちゃん、あの艦隊には大和型のほかに何がいたのかな?」

「野間さんに聞いてみます」

 そして呼ばれたマチコが見張り台から降りてくる。

「艦橋形状から推測するに、大和型戦艦以下『長門』『陸奥』『扶桑』『山城』『伊勢』『日向』と続いていました。しかし、いずれの艦も海洋学校を示すエンブレムもカラーラインも入っていませんでした」

 マチコの報告の後、一瞬の沈黙が艦橋に流れる。

「きっと、異世界の艦隊が私たちの世界になだれ込んできたんですよ!『我々はこれより敵対勢力の討伐に当たる!』『全艦!第一種戦闘配置!』」

 やはり口を開いたのは幸子であった。

「なんでぃ?そりゃ?」

「だと良いのですが……逆ではないでしょうか?」

「どういうことだ?野間さん」

 ましろが疑問を呈する。

「昨日の月齢を覚えてますか?満月でしたよね……」

「まん丸お月様だったじゃねぇか」

「それが1日で変わるものなんでしょうか……?」

 艦橋にいる全員が空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

「は、半月!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、我々が異世界に来てしまったのではないでしょうか……」

 またもや艦橋に沈黙が流れる。

 そして、数分が経過した後、ましろが口を開いた。

「艦長、どうしますか……」

「……」

「学校からの命令変更は受け取っていないしね……このままパールハーバーに行けばこの世界のことがわかるかもしれない」

「了解しました。対水上、対潜警戒を厳となせ!」

 そして晴風は再びパールハーバーに向けて動き出した。

 




各キャラの個性を出すのが難しいですね。タマちゃんなんか「Oui」しか言ってないし……。頑張ります


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航跡3 ミッドウェー

誰のセリフか分かりやすいように、セリフ前に「」の前に発言したキャラの名前を入れてみます。
アンケートにこれが必要か必要でないかを設定しておきますので、ご協力お願いします。


慧「対空目標確認!10度、時速100、高度200から降下中!」

 慧の報告が艦橋に緊張を走らせる。

鈴「噴進魚雷!?」

ましろ「噴進魚雷にしては速度が遅い……一体何が……?」

明乃「飛んでくるものが脅威なのかそうでないのか……対空監視を厳に!」

 明乃はそう言うとまゆみの隣で双眼鏡を覗く。

まゆみ「ひ、火を吹きながら降下してます!」

明乃「あの形の飛行艇なんて見たことが無い……一体……」

 明乃が双眼鏡を目から話すと降下してきた物体が爆発する。

明乃「きゃっ!」

マチコ「アンノウン着水!190度!距離38!!」

明乃「洋上に何か浮いてない!?」

マチコ「ダメです!あっという間に海の底です!」

ましろ「人が……人が乗っていたように見えたのだが……」

 ましろが顔を青くして手を震わせ呟く。

幸子「まさか……あのような形の飛行艇は見たこともありませんし、人が乗ることができる飛行艇も存在しませんよ!」

ましろ「そ、そうだな……」

ましろ(ならばあの飛行艇は何なのだ?まさか……戦闘用か?……)

 ましろが頭の中でいろいろと考えを巡らせ始めたころ、一斉に各所から報告が飛んでくる。

マチコ「水平線上に黒煙多数!対空砲火によるものと思われます!」

鶫「通信傍受!解析内容は暗号文と思われ、解析不能!交戦中と思われます!」

慧「対空電探にも感!画面が見えなくなるほどビッシリ埋まってます!」

ましろは頭が混乱した。

ましろ(空から降ってきた謎の飛行艇。謎の無線交信に戦闘の可能性。ここも安全ではない……のか?)

幸子「艦長……どうしますか?」

 幸子が不安げな表情で尋ねてくる。

明乃「もし……本当に戦闘中なら……私たちは今、戦争に巻き込まれてるかもしれないんだよね……」

鈴「そんなぁ……」

芽衣「でも待ってよ!太平洋で戦争なんて出港前は無かったし、そんな気配もなかったじゃん!」

幸子「確かにそうですけど……事実は事実として受け入れるしかないですよ」

芽衣「なら、戦闘に飛び込むって言うの?」

幸子「それはさすがに無謀でしょうね……。でも、このままここに居ても危険だと思います」

明乃「……」

ましろ「艦長……」

 明乃はしばらく黙っていたが、意を決したように顔を上げた。そして伝声管のフタを開けて言った。

明乃「みんな聞いて……。晴風は現在パールハーバーに向けて航行中だけど、昨日からの不可解な事象を客観的に解析した結果……やっぱりここはもう私たちの知ってる世界じゃないと思う。だからこれからの方針を決めるために、一度横須賀に戻ろうと思ってるんだけどどうかな?」

「異議なし」「賛成」「私もそれが良いと思います」と艦橋要員たちは口々に賛成する。

明乃「それじゃあ、取舵一杯!針路180度、学校に戻るよ!」

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、同ミッドウェー海域 戦艦榛名

「ダメです。大和と通信ができません」

草加(通信士官の報告はさっきと変わっていない……。いっそのこと本隊まで飛んで報告するか?いや、私が飛んでいては艦の通信の責任者がいなくなる……)

草加(……彼女なら……彼女ならば報告ついでに山本長官に有効な意見具申ができるだろう)

 草加は???に命令し、大和まで戦闘詳報を届けるよう命令を下した。

???「草加少佐は私と同じ考えを持っていると思っています。しかし、それではダメなのです。私がやらねば……」

 彼女はそう言い残すと零式水偵に乗り込んだ。

 

 

航跡3 ミッドウェー 完



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航跡4 生存者

前回のアンケートでセリフの前にセリフを話したキャラクターの名前があった方が良いの方が多かったので今回からデフォルトにします。前々回以前はいつか更新し直します。


横須賀に向けて舵を切った晴風。雲の裂け目から月の明かりがまるで霧の中から現れたように海原に現れ、辺り一面を銀色に染め上げていた。

ましろ「誰からの指示もなく、自らの意思で行動する……。艦長、この先は今までのどんな航海よりも過酷な航海になりそうですね……」

 ましろは海図を明乃と眺めながら呟いた。

明乃「大丈夫だよ。シロちゃん。どんな荒波も乗り越えてきた私たちなら、今回もきっと……」

 明乃の無垢な笑顔に謎の説得力を感じるましろ。ましろは思う。自分は副長としてこの人の力になれているだろうか?そして願わくば今回も彼女と共にその先を見てみたい。そんな思いを抱く。だがその願いが叶わないことをこの時まだ知る由もなかった。

 

そして、数時間経過した頃……

マチコ「左舷20度、距離1500、漂流物です!人影が見えます!

 マチコからの報告に艦橋に緊張が走る。

明乃「両舷微速ーッ!探照灯照らして、スキッパーの用意!」

 明乃の言葉に従い、動き出す艦橋メンバー。しかし、ただ一人だけ動かずにいる人物がいた。

幸子「艦長、助けるんですか!?」

 幸子だ。

ましろ「どういうこと?」

幸子「我々は異世界に来てしまったのかもしれないんです。この世界の人間を異世界の人間が助けるなんて……。私たちはこの世界に干渉してはいけないのです!」

ましろ「何が言いたい」

幸子「バタフライ効果をご存じですか?北京で蝶が一匹羽ばたけば、その小さな気流が1ヶ月後ニューヨークに嵐を起こすこともありうるんです。ミクロな現象がマクロに大きな現象を与えるんです!」

 幸子の主張に明乃は反論する。

 確かに自分たちはこの世界にとっては異分子の可能性があり、自分たちの行動一つでどのような影響が出るのかわからない。しかし、だからと言って見捨てることが正しい選択と明乃は思えなかった。

明乃「私たちは蝶でも幽霊でもないよ。一人前の人魚の娘(横女学生)としてここにいるつもりだよ」

 明乃の真剣なまなざしに幸子は何も言えなくなった。

 

ましろ「スキッパー降ろせ!」

 ましろと百々、媛萌を乗せたスキッパーが晴風から降ろされ、漂流物へ向かっていく。

幸子(死んでいてください……それならこのまま見送れる……)

 

 スキッパーは漂流物に横付けした。

百々「銃弾でハチの巣にされてる……ッス……」

媛萌「これはもう……」

 ましろはよく目を凝らした。

ましろ「後ろの白い軍服を着た女性……どこかで見たことがあるような……」

 媛萌も気付いたようでハッとした表情をする。媛萌・百々・ましろは顔を見合わせた。

媛萌・百々・ましろ(まさか……ね……)

ましろ「外傷はないようだし、スキッパーに乗せるぞ……」

 その時、漂流物が沈み始める。

百々「し、沈むぞ!」

 

 

マチコ「漂流物が沈んでいきます!水密区画に浸水が始まったようです!」

幸子(これでいい……。これがこの世界の必然なんです……)

 幸子は自分に言い聞かせる。どんな御託を並べようとも、自分も人魚の卵なのだ。海で漂流している人を助けたいという気持ちは変わらない。

幸子(私は間違ってないはず……)

マチコ「副長が海に飛び込みました!」

幸子「えっ!?」

 

ましろ(命を守るというただ一点において命を奪う武力(ちから)を持つものは許される……!)

 ましろは漂流物の後部座席に座る女性を羽交い絞めにし、浮かび上がる。

ましろ「ぷはっ!………」

 女性をスキッパー乗せると無線機の子機を取る。

ましろ「艦橋へ!後部搭乗員及び、黒カバンを回収、肩章より、少佐クラスと思われます!なお……この者は……

 

 

 

 

 

 

 

 

知名もえかに酷似しています!」

 

 

 

 

 

ましろの言葉に一同が驚く中、明乃だけは冷静だった。

明乃(モカちゃんが……!)

ましろの報告を受けた明乃はすぐに決断を下した。

明乃「艦内での治療を許可する!シロちゃん!収容して!」

ましろ「了解!」

 

XXXX年X月X日01:30 北緯30.59 東経178.30の海上にて漂流物より知名もえかと思わしき人物を救助



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航跡5 潜水艦でピンチ! 前編

だいぶ遅くてしまい申し訳ない……


美波「失礼する」

 鏑木美波が艦橋に足を踏み入れる。

明乃「どうだった?」

 明乃が不安そうな顔を見せながら問う。美波は表情を変えずに、しかし僅かに驚いたような表情で答えた。

美波「外傷はないが脳圧が上がっている。絶対安静が必要だ……。そして血液検査をしていないから分からないが、知名もえかと瓜二つだ」

 明乃は息を飲む。そして、行方不明の幼なじみが見つかったかもしれないという喜びとそうであるはずがないという葛藤に、顔を顰める。

美波「まぁ、世の中には似ている人が三人いるというしな……」

 美波の言葉を聞きながら、明乃は表情を変える。

明乃「そんなはずないよ……だってもかちゃんだよ?でも、こんなことってあるのかな……?」

幸子「現に私たちが異世界に来てしまっているんです……知名艦長がこちらに来ていても不思議ではないですよね……」

 幸子が呟くように言う。

明乃「そうだよね……うん。きっとそう」

 自分に言い聞かせるように明乃は言った。しかし、なぜもえかのみがここで見つかったのか。それは誰にも分からなかった。

ましろ「とりあえず、意識を取り戻すまでは医務室にて様子を見るということでよろしいでしょうか?」

 ましろの確認に明乃はうなずく。

明乃「美波さん、お願いできる?」

美波「ああ、了解した」

 美波はそう呟くと艦橋を出る。

ましろ「ここは私が見ておきます。艦長はどうぞ行ってください」

明乃「ありがとうシロちゃん。でも、今日の当直は私とリンちゃんだから……」

ましろ「艦長……」

 

 

 

ーーー

 一方その頃、医務室前では救助者の姿を一目見ようと乗員が集まっていた。

百々「にしても、知名艦長にそっくりだったッス!」

百々はしみじみと言い、媛萌はそれに同意するように頷く。

片桐「異世界で艦長の親友と遭遇。これはスクープに成りますねぇ」

光「記者さん、元の世界に戻れないと記事にもできないけどね(笑)」

 光はクスリと笑う。そこに美波がやって来る。

美波「おい、お前たち。非番以外の者は持ち場に戻れ」

 美波の言葉に渋々と戻って行く。しかし片桐はニヤけた顔をして壁にもたれる。

片桐「いやぁ、船酔いしてしまってねぇ。チョイとアスピリンでもと……」

美波「潮風にでも当たってくれば治る…」

 美波は冷たい口調で言う。

片桐「いいでしょう?寝ているところを一枚……」

 片桐の好奇心からなる言葉を遮るように美波は医務室に入った。

 

 

ーーー

リン「後5分であの異変が起こった座標です……」

明乃「何が起こるカナ……?」

 リンの報告を受け明乃は不安げに言う。

リン「来た時みたいに雷が鳴ったり、雪が降ったりするんじゃないかな……」

 明乃は息を呑む。そして脳裏には救助したもえからしき人物のことが浮かんでいた。

明乃「大丈夫……きっと大丈夫だよネ」

 自分に言い聞かせるように明乃は言う。そして機関停止を命令しようとした時だった。

万里小路『未確認水中雑音、210°より高速でいらっしゃいました!』

 万里小路の声が伝声管を通して艦橋に響く。

明乃「水中雑音……?」

 万里小路からの報告に明乃は首を傾げる。そして、万里小路が続ける。

万里小路『接近中の雑音は魚雷です!雷数2、雷速44ノットでいらっしゃいました!距離3200、接触まで2分10秒でございます!』

明乃「ぎょ……らい……?」

 明乃はその言葉を聞き、全身の血の気が引くのを感じた。



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