あああああウインディちゃんが可愛いんじゃああああ (ガラクタ山のヌシ)
しおりを挟む

あああああウインディちゃんが可愛いんじゃああああ

シンコウウインディちゃんメインの小説が無かったので、とりあえず短編で書いてみました。


諸君、いきなりだがウチの担当ウマ娘は可愛い。

 

寂しがり屋なところが可愛い。何かにつけて噛み付いて来るところも可愛い。ゲートがめちゃくちゃ苦手なところも可愛い。

悪戯好きなところも、負けん気が強いところも、すぐ泥んこになっちゃうところも全てが可愛い。

 

そんなウチの担当ウマ娘は今、正にかまってちゃんモード全開なのだ(ウインディちゃん風味)。

バタンと勢い良くトレーナー室のドアを開けたかと思えば、ドタドタと近寄って来て椅子に座っている俺の後ろに回る。

そして、甘えとも脅しとも取れるようなことをいつもいつも言ってくる。可愛い。

「トレーナー!構ってくれなきゃ噛むのだー!」

「ごめんよウインディ、後いくつか書類の処理をしなきゃだから……」

「ヴ〜」

「唸ってもダメ」

「ガウ!」

「威嚇してもダメ」

「ガブー!」

「噛みついてもダメ〜」

正直言って今すぐ構ってあげたいし、うりうりしてあげたい。可愛いし。

しかし担当した以上、この子を勝たせてあげたい。これはトレーナーなら誰もが持っている共通の願いであり、決意だろう。

そのためにもまずは目の前の書類を片さなくてはならない。

この子はデビュー戦でダートだったから少しはトレーニングで芝でも見てみたい。

このままダートで行くなら行くで、ゆくゆくはジャパンダートダービーや、フェブラリーステークス、チャンピオンズカップや帝王賞も目指していきたい。

とは言え、まずは地道にトレーニングを積んだり、レースに慣れさせたりするより他はないのだが。

 

まぁ、分からなければ世話になった先輩方に色々と聞くのもありか。

聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と言うし。ヘンに意固地になって担当ウマ娘の将来をダメにしてしまう方が問題だ。

 

「う〜」

そうこう考えているうちにウチの担当ウマ娘ことシンコウウインディは構ってもらえず落ち込んでしまったようだ。

「…あと30分待てるかい?」

「…20分」

「25分は待てる?」

「分かったのだ」

「よしいい子だ」

ナデナデ

「えへへーやめるのだー」

と言いつつ手を払わないあたり、色々と正直な子なのだろう。

表情もニッコニコだし。

それを指摘すると怒るから言わないけども。

 

…やっぱ可愛いなぁ。

この小動物感がたまらなく可愛い。

よーし、チャチャッと終わらせちゃいましょうかね。

 

 

まったく、トレーナーも困ったヤツなのだ。

ウインディちゃんが構えと言えば構うのがトレーナーの仕事なのに。

噛み付いても動じないし、怖がらない。

ニガテなゲートのトレーニングも親身になって見てくれる。

イタズラも自分にするなら良いって言って本当に怒らない。

怒るのは他の子にイタズラを仕掛けた時だけ。

何なのだあいつ。

ヘンなやつなのだ。

 

 




たぶん続かない。

好評なら次話考える。

ウインディちゃんが育成で実装されたら連載になるかも。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

思いついちゃったもんはしょうがないよね

続いた。
心のウインディちゃんが噛みつきたがっているのか?(錯乱)


ウインディとの出会いは、美浦寮寮長のヒシアマゾンが彼女を探していたところから始まる。

オレは気晴らしも兼ねて、トレセン学園の中庭に備え付けてあるベンチに腰掛け、パラパラと数日かけて作ったこれまでの観察の結晶。つまりは次回の選抜レースを走る予定のウマ娘達のデータと睨めっこしていた。

どの子もトレセン学園に入るだけあってよりどりみどり。しかし、その中でもG1で勝利できるのはほんのひと握り。

どの子を選ぶにせよ責任重大である。

尤も、名家出身であったり入学前から名の知れたような子は大抵が同じような名門による先約があったり、ベテランが優先的にとったりするものだが。

まあ、新人よりベテランの方が安定しているのは事実だしそこは仕方ない。

無論ウマ娘とトレーナー、双方の間に齟齬があったり波長が合わなかったり、互いに違うなと思えば契約解消もアリと言えばアリだが、そういうのは無いに越したことは無い。

 

そうやって、うんうん悩んでいた時だった。

「アイツめ、またイタズラしやがって」

どうやら目の前の通りがかりの勝ち気そうな褐色のウマ娘はご立腹のようだ。

「一体どうしたんだ?」

オレは気になり聞いてみる。

「アンタは…、ああ新人トレーナーか」

トレーナーバッジを見るなり、彼女はオレが何者かわかったようで

「なあアンタ、ウインディ…っていってもわかんないか。このくらいの長さの栗毛でヤンチャっぽいウマ娘を見なかったかい?」

手で首のあたりを指し示しながら身振り手振りで聞いてくる。

しかしその時のオレはウインディのことを知らなかったし本当に見ていなかったので

その通りに伝えた。

「申し訳ないけど、こっちには来てないみたいだ」

「そうか…。すまなかったね、時間取らせちまって」

そう言うと、ハッとなったように

「あ、そういや自己紹介がまだだったね。アタシはヒシアマゾン。美浦の寮長を任されてるよ」

「そうか。オレは岡本。キミがさっき言ったように新人トレーナーだ」

そう話していると後ろの茂みからガサッという音が聞こえて来た。

それに気づいて思わず振り向けば頭に木の枝やら葉っぱを乗せて、制服も土まみれでボロボロのウインディがいたのだった。

「うぅ〜、まさか自分で掘った落とし穴にハマるとは、ウインディちゃんもツイてないのだぁ〜……」

「あっ」

オレと件のウマ娘の目が合う。

「あっ」

その反応にヒシアマゾンは「ん〜?」とクルリと後ろを振り返り、ニヤリと笑う。

「ほほ〜ぅ。自分から出て来るとは随分と殊勝じゃないか」

「ギクゥ?!」

自分でギクっていう子初めて見た。

その後、ヒシアマゾンに説教をされるも一向に反省する素振りを見せないウインディとの(ヒシアマゾン流に言えば)タイマンが小一時間続いた。

生徒達の憩いの場でもある中庭故に、人だかりが心配されたが、叱られている対象がウインディであると分かると、皆一様に「またか」といった表情でその場を後にしていたため、その心配は杞憂に終わった。

「まったく、そんなんじゃいつまで経っても担当トレーナーは決まらないよ。アンタもう高等部だろ。いい加減にしとかないと最悪退学処分になるよ」

「つーんなのだ。ウインディちゃんは誰のところでも問題なくやってけるのだ」

「ほーぅ、じゃあ何で未だにデビューもしてないのかね?」

「ふーん」

顔を背けながら頬を膨らませる。

そんなつっけんどんな彼女を見て、気づいた時には既に手がその頭の上に置かれていた。

ウインディは最初大人しく撫でられていたが、やがてハッとなり

「いきなり頭を撫でるとはひじょーしきなのだ!」

と手を払われ、ガルルルルと威嚇されてしまった。

今にして思えば当たり前すぎるほどに当たり前だが。

言い訳させてもらえるならその時は無性にそうしたかったのだ。

しかし同時に「この子だ」とも思った。

ただ優秀なだけじゃ無い。

本気でG1を狙うならこのくらいの跳ねっ返りは必要だと思った。

三冠ウマ娘を例に挙げれば、ナリタブライアンはトレーニング以外は割と気ままらしいし、ミスターシービーは日本ダービーのセオリーを破った正しく天衣無縫の体現者だ。

生徒会長でもある皇帝シンボリルドルフは優等生を突き詰めたようなウマ娘だが、彼女は色々と高水準過ぎて参考にならない点が多いため除外。

まぁ、いずれにせよ他とは違う何かが求められるのが競争ウマ娘の世界だと思う。

型通り、手本通りにやっても結局は似たようなカタチの量産でしか無い。

その中で特に優れたものだけがG1ウマ娘、ないし三冠ウマ娘などというのは勝手ながらあまりにつまらないと思う。

無論、基礎を蔑ろにしたいわけでは無いが。

「キミ、担当トレーナーはまだついてないんだっけ?」

「な、何なのだ急に」

「え、アンタまさか…」

「うん。そのまさか」

オレはウインディに向き直り、改まって提案する。

「キミ、確かウインディだよね。キミさえ良ければオレの担当ウマ娘になってはくれないか?」

緊張の瞬間。トレーナー稼業初の勧誘にオレの心臓はいつもより数段跳ね上がっていた。しかし、それ以上に

「……ふぇ?」

その言葉を聞いて、シンコウウインディがキョトンとしていたのをよく覚えている。




次はいつになるのだろうか…。
気長に待っていただけたら幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんはかしこいなぁ。

どうせ出ないだろうなと思いながら書いてたらなぜか出来ていた三本目。
次は時間かかるやろなぁ…。


 

 

ウマ娘という少女達は感情を顔以外で表現することが可能で、トレーナー学校では「彼女らの感情が表情で分からなければ耳を見、それでも分からなければ尻尾を見ろ。」と教わる。

 

そして、オレの担当ウマ娘はその全てに於いて分かりやすすぎる。

 

というのも

 

「うぅ〜。」

「なぁ、ウインディ。正直に言って欲しい。とうもろこし、大好物なんだろ?欲しいよな?食べたいよな?じゃあトレーニングを頑張ろうよ。」

「イヤなのだ!ウインディちゃんはイタズラで忙しいのだ!」

うん。トレーナー室のドアに黒板消し挟んでたね。わざわざ脚立まで借りてたね。

「じゃあ、このとうもろこしはオレが食べてもいいんだな?」

「か、勝手にすればいいのだ…。」

ウマ耳と尻尾が力なく垂れ下がり、声にもいつもの張りが無くなっている。可愛い。

なんならちょっと泣きそうになってさえいる。

オレはハァと一息つくと

「あのなウインディ、オレは別にお前が嫌いだったり困らせたくて言ってるんじゃないぞ?」

この言葉に嘘はない。

そもそも何が好物かという話題自体、彼女のことを少しでも知ろうとオレなりに考えた結果だ。

それをご褒美にすればウインディもトレーニングにやる気を出してくれると思って。

あれだ。ウマ娘の目の前にニンジンをぶら下げて頑張らせるやつ。

ところがウインディはまずニンジン(この場合はとうもろこしだが)を力づくで平らげ、明後日の方向に駆け出すタイプのウマ娘だったのだ。

本当に困ったちゃんである。だがそこが可愛い。

 

「そうだな、トレーニング前に三本、トレーニング後に四本食べていいことにする。どうだ?」

「ダメなのだ!少ないのだ!」

「じゃあ、トレーニング前に四本、トレーニング後に三本ならどうだ?」

「それならいいのだ!」

ウインディはムフーと得意げである。可愛い。

うりうりしてあげるとご満悦の表情である。

「じゃあ、レースに向けてトレーニング頑張ろうか。」

「やってやるのだ!」

「じゃあまずは適正を見たいから芝コースに行こうか。」

「まっかせるのだ!」

 

そして、この日のトレーニングが終了した。

出た結論は…………………………。

 

うん。ウインディはダート一本で行かせよう。

まさかいきなり芝で滑って転ぶとは。

泣きはしなかったが、やせ我慢しているのは目に見えて明らかだった。

その後何度かやらせてみたが、どうにもやりづらそうだった。

まずはご機嫌とらないとなぁ…。

30分程よしよしすればいいか。

その後ほぼ確定で構ってちゃんモードになるけど。

 

だがそこがいい。

 

やはりウチの担当ウマ娘は可愛い。

 

 

ふっふん。ウインディちゃんはこーしょーじょーずなのだ。

クラスの奴ら、今にすご〜いってウインディちゃんを称えるのだ〜♪

 

?どうしたのだ?そんなヘンな顔をして。

 

ちょーさんぼし?なんなのだそれ?




ウインディちゃん好きの同士が少しでも増えてくれると嬉しいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

なんでハロウィンに吸血鬼コスのウインディちゃんがいないんですか?(憤怒)

二次創作ルーキー日間五位、ありがとうございます。


いつもの昼下がり。

オレはいつものようにトレーナー室のデスクでパソコンに向かい、書類の作成をしていた。

そんなおりである。

ドタドタドタドタ

いつも通りの忙しない足音が聞こえる。もう可愛い。

バァンと勢いよく開けられた扉の先、悪魔的に可愛らしい我が担当ウマ娘がいた。

「トリックオアトリートなのだー!」

制服の上から黒いマントを羽織り、コウモリの羽飾りを背につけてニッコリ満面の笑顔のウインディ。可愛い。

「おお、似合ってるじゃないかウインディ。」

「似合ってるのは当たり前なのだ。」

フンスと鼻を鳴らし、腰に手を当てて言う。

「と言うと?」

「クラスメイトにウインディちゃんのイメージを聞いてその通りの格好をしているのだからな。」

ナイスだクラスメイトちゃんs。

「と、言うわけでお菓子を寄越すのだはやくはやくはやく〜!」

「って言われてもなぁ…。」

あいにくと今現在お菓子の持ち合わせはない。

と言うのも、そう言ったものを持っているとこっそりウインディが持ってって食べてしまうのだ。

カロリーコントロールも難しくなるし、控えて欲しいのはあるが、あまり縛ってストレスになってもいけないから強くは言えない。

決して、ションボリしているウインディに罪悪感を覚えるからではない(聞かれてない)。

あとバレてないと思ってるウチの担当ウマ娘超可愛い。

「そうだな。じゃあ今から買って来るからちょっと留守番頼めるか?」

「今!ウインディちゃんは今欲しいのだ!」

「そうか…。」

参ったな。流石にオレには手品のように今この場にお菓子を用意するなど出来はしないぞ。

「じゃあ、一緒に買いに行くか?」

直接店で見たほうが本人もどれが欲しいか分かりやすい。我ながらいい案だと思ったのだが

「むー。」

しかし、それでもウインディは不服そうだ。

ほっぺたを膨らませてマントの端を握っている。

「よし、じゃあ目をつぶって百数えてごらん。」

「なんでなのだ?」

不思議そうにこちらを見つめるウインディ。

「まあまあいいから。」

「分かったのだ。」

少し渋る様子を見せるも、きゅっと目をつぶるウインディ。可愛い。

「いーち、にーい…。」

よーし、ダッシュで先輩にもらいに行こう。

ここは一階。チームスピカの部室までは直線距離で比較的近い方だ。

走っていけば30秒とかからないだろう。

そしてウインディがハロウィンイベントの準備期間があったことから、チームを組んでいるトレーナー達はだいぶ前から用意自体はしているはず。

よーし、沖野先輩が部室にいる可能性に信じて、スライディング土下座を決めてやろうか!

 

 

わー、ほんとのほんとにお菓子がいっぱいあるのだ〜♪

 

トレーナー、なんでそんなにゼーゼーしてるのだ?




ハロウィンということでイベント回やってみました。
いや、別にね?吸血鬼ライスちゃんが可愛くないってんじゃないんですよ。
十分に可愛いんですけど、でもやっぱりウインディちゃんの競走馬時代の二つ名は噛みつきウインディなわけでして、じゃあ、噛みつき+ハロウィン=吸血鬼=ウインディちゃんってなるのは世の摂理じゃないですか。世界の法則じゃないですか。それをね?いつものブルライスでやるってのはどうなのかと。
もちろん商売ですし、売れるのを優先するってのは分かりますけどサポカ出してすぐキャラ出してってのは一点集中が過ぎるって言うか。
ウインディちゃんにお菓子をあげた上でイタズラされるとか、ガブーされるとかあったじゃないですか。
たまには新需要の開拓というか、ダート組でハロウィンイベとかでもいいんじゃないかと。
オグリとウララとファル子とウインディちゃん。
この四人をベースにイベント企画練ってくれたってバチは当たらないって言うか……。
以下エンドレス


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

もう、みんなのおかげでやる気が止まらないじゃないか。

なんやかんや出来ました。


トゥインクルシリーズ。

それはウマ娘達が各々己の大切なもののため競い合う一度限りのレースであり、学園をあげての一大イベントでもある。

ウチのウインディもまたデビュー戦を勝利で飾り、ジュニア級として一年間、クラシック級として一年間、そしてシニア級として一年間の合計三年間戦うこととなる。

 

彼女の適正距離から考えるに、走らせるならマイルから短めの中距離が妥当。ならばまず手始めに狙うべきは10月開催の東京レース場で行われるオープンのプラタナス賞か、同じく東京レース場で11月開催のカトレア賞あたりか。

 

ウインディの強み、それはレース中相手が誰でも物怖じしない、その食らいつくような胆力と闘志にある。

 

それをオレは、この日の併走トレーニングで実感したのだ。

 

「すみません沖野先輩。」

「なーに、ようやく担当ウマ娘を持った後輩の頼みを無碍には断れねえよ。丁度ダートを使ったトレーニングもしたかったしな。」

その言葉に偽りはなかったようで、現に先輩率いるチームスピカの面々は次々とダートコースで準備運動をはじめていた。

「でもよー、ウチにダート走れる奴なんていなくねーか?」

ゴールドシップ、いつの間にいたんだ?

まあ、芝を走る子達はそれこそトレーニングでしかダート使わないだろうしなあ。

「その点は心配無用だ。スペが食堂で捕まえといてくれた奴がいる。そいつとそいつのトレーナーに了承はもらってあるさ。」

そう言って一旦言葉を区切り、先輩はこちらを見て来る。

「しかし、いいのか?相手は芝ダート問わずG1で活躍した猛者だ。お前の担当、凹むんじゃねぇのか?」

「ええ、凹むでしょうし、拗ねるでしょうね。」

「なら…。」

「でも、だからこそウチのウインディにはそういった経験が"今"必要なんです。」

ウインディと彼女は適正距離も近いし、一緒に走るだけでもいい勉強になるだろう。

「……そうか。」

「皆さーん、連れてきましたよー!」

「すまない。遅れたか?」

そこにはスペシャルウィークとオグリキャップが並んで歩いていた。

オレは体操服姿のウインディに近づきそして言う。

「ウインディ、彼女の走りから盗めるものは全て盗むつもりでな。」

そうでなくとも、走る彼女の技術の一部でもモノに出来れば収穫としては上々か。

「なんだ?トレーナーは弱気なのだな。」

ウインディはいつも通り勝ち気な笑みを崩さず

「盗むも何も、相手が誰でもこのウインディちゃんがぶっちぎってやるから安心して見てるのだ。」

と自信満々に言う。

 

うん。レースじゃなくてトレーニングだから無茶はしてほしくないんだけどなあ。

まあ、こればかりは本人が経験することでしか分からないだろうけど。

そしてその結果……………。

 

「うがーー!負けたのだーー!」

「うん、楽しかった。また走ろう。」

夕日に照らされる中、オグリキャップはまだ余裕を感じさせる表情で爽やかに汗を流していたのに対し、ウインディはヘトヘトのボロボロになって悔しがっていた。

何度も突き放され、何度もヘロヘロになりながらも、彼女の闘志だけは走るごとに増していき、その姿が不思議と、とても尊いものに思えた。

ウインディは常に全力だから、悔しがる時も全力なんだろう。

そう思うと、ほんのちょっとだけ運命なんてものを信じてみたくもなる。

そうでなければ、オレは未だに誰を担当ウマ娘にするか決めかねていただろうから。

地面であお向きでへばっているウインディに歩み寄る。

「ウインディ。」

「なんなのだ!」

ちょっと怒っているような声色だが、今はそんなことはどうでもいい。

「やっぱりオレの担当がキミでよかった。」

「……っ!?」

「だから、これからもよろしくな!」

「ガ………」

「ガ?」

「ガブーーーーー!!!」

「痛ったぁーーーー!?」

 

その後約20分間腕にガジガジされ続けた。

 

そんなウインディも超可愛い。

 

 

う〜、トレーナーのヤツ何を言ってるのだ。

 

ウインディちゃんがゆーしゅーなのは当たり前なのだ。

 

でも………

 

 

 

 

 

 

ちょっとうれしかったかも……。




なお、出走レースはウマ娘準拠でやってくつもりです。
900万以下とかウマ娘には無いからねしょうがないね。

あと、距離適性はアオハル杯を参考にしました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

さーて、いつまで続くかな?

出来たので投稿。
ウインディちゃん早よ育てたいんじゃああああああ!


ここは、トレセン学園のトレーナー達行きつけのバーである。

雰囲気もよく、寡黙で腕の良いマスターが出す酒はいずれも好評を博している。

無論値段もそれなりにするが。

そのカウンター席に、二つの人物が腰掛け話していた。オレと沖野先輩である。

「ですからウチの担当ウマ娘は可愛いんですよ。」

「…お前口を開く度それ言うなぁ。」

沖野先輩が若干呆れ気味に言うが

「1日に5回は言いたいですからね。」

とオレは返す。

「今何回目だ?」

「忘れました。」

しかし5回以上言っているのは覚えている。

「しっかし、はじめての担当ウマ娘との間にそれだけの絆が芽生える新人は今日日珍しいぞ?」

「そうですかね?」

「そうだぞ?ましてあの悪戯っ子に周囲への悪戯をほぼやめさせるってどんなからくり使ったんだ?」

「別に特別なことは何も。褒めて、撫でて、たまに叱ってまた褒める。これだけです。むしろこっちが毎日元気をもらってますよ。」

何も難しいことはないと思うが。

実際、あの子は一度心を開いた相手にはとことんまで甘える性分なのだろう。

悪戯も噛みつきもその一環と思えばむしろ微笑ましくすらある。

「うん。まあお前がそれでいいならいいんだけどさ。」

「この前なんて、ゲート練習で地面に穴を掘ろうとしてまして、いやぁ可愛かったなぁ。」

「いや、和んでないで止めろよそれは。」

「もちろん止めましたよ。他の子達も使う場所ですし。20分ほどナデナデしたら満足してくれましたとも。」

ただ、あの子は可愛いよりカッコいいとか凄いといった賞賛の方が好きらしく、声を大にして可愛いと言うと途端に拗ね出す。そういうところもまた可愛い。

「ウインディ・コーナーです。」

そうこう考えている内、頼んでいたカクテルが来た。

スノースタイルにしたカクテルグラスにブラックベリーのリキュールを注ぎ、ナツメグをふりかけて完成。

シンプルなカクテルだが、アルコール度数は40あるので、ナッツでもつまみながらチビチビ飲むのが基本だ。とオレは思う。

「それで、本題はなんだ?」

「ええ、実はですね…。」

「おう。」

「ウイニングライブの練習にウインディが来てくれないんです。」

「あぁ〜。」

先輩はなんだか納得したような顔をする。

 

時は三日ほど前に遡る。

 

「みんな〜、今日は頑張ろうね〜。」

「おーーー!」

彼女はスマートファルコン。 

ウマドルという歌えて走れて踊れる、謂わばウマ娘版アイドルといえるものを夢に掲げ、またダート界隈に於いても、彼女が出て来るまで芝と比べほぼマイナーであったダートの人気を押し上げた第一人者でもあり、逃げ切りシスターズという学園の広報も任される凄いウマ娘である。

そんな彼女が、ライブ練習を合同で行おうと提案したらしい。

「みんなでやればもっと楽しく出来るよね。」

とのことだ。

故にか、彼女の存在はウインディの反骨心をこれでもかと刺激してしまったらしく、練習中終始オレをガジガジしている始末。

 

このままでは練習にならんと、どうにか宥めようとしたが暖簾に腕押し、糠に釘。

ついには練習をボイコットしてしまったのだ。

 

「それでどうしたもんかと先輩に話を聞いてもらおうと思った次第です。」

「まあ、確かにな。」

「オレはウチのウインディは決して弱くもなければ、スマートファルコンに比べて素質で劣るわけでもないと思ってます。」

「たいそうな自信だな。」

「そりゃもう。自慢の担当ウマ娘ですから。」

「なら、後はもう決まってるじゃねえか。」

「何がですか?」

「ちゃんと話し合えってことだよ。」

 

その翌日、オレはウインディをトレーナー室に呼んだ。先輩の言ったように、話し合いたかったからだ。

「って訳でなウインディ、思ってることハッキリ言って欲しい。」

ウインディはムスッとしてパイプ椅子に反対に腰掛けている。

「……………。」

「……………。」

暫しの沈黙、そしてそれに耐えかねたのかウインディがポツリと呟いた。

「アイツ、ウインディちゃんよりキラキラしてたのだ。」

それを聞いてオレはなるほど。と思った。

確かに、練習中のウインディは正直言ってそれほど上手いとは言えなかった。しかしそれはまだ始めたばかりだからだ。

実績で言っても、こっちもこれから頑張ればいい。先輩にも言ったが、ウインディはスマートファルコンと比べても素質で決して劣ってはいない。

「うん。それで?」

出来る限り優しく聞く。

「それで、トレーナーが取られちゃうと思ったのだ…。」

「なるほど、オレがウインディから離れると思ったのか。」

ウインディは耳を垂らし小さく、力無く頷く。

要は可愛いヤキモチか。まったく、こないだオレが言ったことをもう忘れたのか?可愛いなぁ。

「なんだ。なら答えは簡単だ。」

「え?」

「一緒に彼女に勝てるくらい強くなろう。」

驚く彼女にオレは続ける。

「今度はオレが言わせて見せるよ。ウインディにオレがトレーナーで良かったってな。」

 

それ以来、ウインディは吹っ切れたようにライブのトレーニングに打ち込むようになった。

 

 

う〜う〜

 

なんなのだこれ……。

アイツがトレーナーでよかったなんて、そんな…そんなこと……。

 

ウガーーー!!モヤモヤするのだぁーーー!!




先輩後輩とかリアル時系列は気にせんでください。
でなきゃ、ゴルシとマックイーンとかおかしくなるし。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

しょうがないなぁウインディちゃんは。

お気に入り登録120件ありがとうございます。

同室の子が居ないと寝られないって?
閃いた!!


カタカタカタカタカタ……。

深夜のトレーナー室に、キーボードを打ち込む音が響く。

オレはウインディのトレーニングの成果や、これからのレースに向けての予定の組み立て、息抜きのソリティアに提出用のレポートなど、色々と忙しい。

本当はたづなさんや理事長から残業は控えるようトレーナー一同は言われているが、今夜は不思議と眠れないしちょうどいい。

オレはマグカップに入った冷めかけのコーヒーを飲んで一息入れる。

「ふぅ。あともうちょっと片付いたらトレーナー寮に戻ろう。」

流石にこんなところをたづなさんにでも見られたら怖い笑顔でお説教間違いなしだ。

多分雷が落ちる。

くわばらくわばら。

そんな冗談めいたことを思いながらキーボードを打っていると、キィ…と扉が開く音がした。

まさか本当にたづなさんかと思い、チラリとそちらを見ると

「と、トレーナー…いるのだぁ?」

枕を抱え、恐る恐るといった風な、いつに無く弱々しいパジャマ姿の我が担当ウマ娘殿がそこにはいた。耳なんかはペタンとしており、如何にも元気がないのが目に見えて分かる。

「ウインディ?どうしたこんな時間にこんな場所で?」

たしか、学生寮には門限が設けられていたはずだが。

「うぅ〜。」

しかし、いつに無くしおらしいな。

「どうした?なにかあったのか?」

「じ、実はぁ…。」

「うん。」

なんだろう。担当ウマ娘の見慣れない姿を目にしているからかつい身構えてしまう。

「ね、眠れないのだ。」

「へ?」

「だから!眠れないのだ!!」

急に大声を出されたものだからビックリする。

「いやいや、いつも寮の自分の部屋で寝てるんだろ?なんで今夜に限って。」

「同室の子がトレーニングで合宿に出てるから、ウインディちゃんは部屋にひとりなのだ。」

え、もしかして。

「ウインディ、まさかとは思うが。」

「うう〜。」

「ひとりじゃ寝られないとか?」

しばしの逡巡の後、力無く頷く。

「ここに来ればトレーナーがいると思ったのだ。暗くって怖かったけど、なんとか頑張ってここまで来たのだ。」

「うぅ〜ん。」

だからって寮を抜け出すのはどうなんだろう。

しかし、既に弱っているウインディに追い討ちをかけることは出来ないし、したくない。

しばらく悩み、悩み、悩んで、ため息。

「ハァ。来ちゃったものはしょうがない。」

「!!」

「そこのソファーで良けりゃあ寝てていいぞ。」

OKを出した。

「わーいなのだ!」

さっきまでのしおらしさはどこへやら。余程心細かったのだろう。元気になって良かった良かった。

「ただし、明日は朝イチでヒシアマゾンに謝りに行くからな。」

「なんだっていいのだ!」

ボフンとウインディは勢いよくソファーにダイブする。

きちんとマットレスを洗ってあるからか埃は出ない。良かった。

 

翌朝、寮の前で腕組みしていたヒシアマゾンに平謝りに謝ったのは内緒だ。

 

 

学園の廊下は暗かったし怖かったけど、トレーナーに会えると思ったら暗がりもこわくなかったのだ。

 

………?? なんでなのだ?




まぁ、たまにはこういうのも。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

うん。レース描写どうしよう。

なにかアドバイスあれば嬉しいなぁ(チラッ)


さて、今日は東京レース場に来ている。

目的はもちろんウチの愛バ、ウインディの参加する第十レース、プラタナス賞である。

昼食を終え、レース場内で分かれたウインディは今頃控え室で集中しているのだろうか。寂しさで意気消沈しているだろうか。

或いはケロッとしてオヤツのとうもろこしを頬張っているのだろうか。

レースの区分けとしては、プレオープンという区分ではあるが、れっきとした本番であることに変わりはない。

 

これまでやって来たトレーニングを信じない訳ではない。

オレも一端のトレーナーである以上、そこだけは自信を持って言える。

 

だが、ダートメインの子達にしてみれば、選抜レース、メイクデビューを除けばここが初レース。

 

本番の空気感に慣れさせるためにも、何より、他のトレーナーの腕前を見る点に於いても、これ以上ない試金石でもある。

 

それに言い方は悪いが負けても次がある。

負けると言うのも成長するために大事な経験だし、それが重賞でないなら安心感も違う。

だからこそ、オレは一度ウインディにオグリキャップの走りを肌で感じてもらったのだ。

 

無論、勝つなら勝つに越したことはないのだが。

というか、勝って欲しい。

距離は1600メートルのマイル。距離適正に問題は無し。

得意の先行抜け出しで、ぶっちぎる走りをしてこそシンコウウインディだろう。

 

時刻は二時を指している。

あと三十分もせず始まるのだ。

楽しみであるし、同時に緊張もする。

結局は怪我せず楽しんでくれるのが一番なのかもしれないが。

一応、顔を出しに行くか。いやしかし……。

 

「さあ、はじまりました。東京レース場第十レース。プラタナス賞。」

 

そうこう悩んでいるうちに、アナウンスが流れる。

 

オレはハッとなり、急いで最前列に向かう。

やはり、初のダート戦ということで、客はそれなりにいるが、混雑というほどではなかったため直ぐに最前列に辿り着けた。

 

パドックで次がウインディの番だ。外枠なので、紹介が後の方になったのだろう。可愛い。

 

「一番人気、八枠十二番、シンコウウインディ。」

体操服にゼッケンをつけたウインディが現れる。

やったね!やっぱみんなちゃんと見てるんすねぇ。

そうだろうそうだろう。

ウチのウインディは強いのだ。

もちろん声には出さない。迷惑だしね。

幸いなことに、余計な緊張はしていないようだ。

 

「ウインディ〜〜〜!!」

手を振り、声をかける。

ウインディがこっちに気付いたようだ。

あ、笑いながら腕を上げて返してくれた!!めっちゃ可愛い!!!

 

嬉しーー!

 

 

 

どきどき、わくわく。

 

はやくはじまって欲しいのだ〜。

 

とうもろこしガブー。

 




ウインディちゃん、がんばってーーー!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レース描写の難しさを体感しました。※手直しするかも

UA10000、お気に入り150ありがとうござます!!

新しいピックアップ発表されましたね。
うん。
なしてカワカミ?
そして、なしてヤエノ?
タマくると思ってたんやけどなぁ。




アナウンサーによる、出走ウマ娘の紹介も終わり、ゲートが開く。

 

レースの立ち上がりは問題ない。

練習の甲斐あってか、ゲートに鼻をぶつけることも無く、ウチのウインディは問題なく四番手につけた。

「さあ、先頭は七番エフェメロン、彼女と先頭を争うのは二人、三番リボンバラードと十三番チェンバロリズム。

一番人気十二番シンコウウインディは四番手につけています。さらに後ろには十番ボヌールソナタ、二番ハイドロチョップ、五番クラヴァット、四番アストレアノーチェ、八番ブルックリンアイル、九番ストレートバレット、一番ミニロータス、六番カスタネットリズム、シンガリは十一番ブラボーセカンドと続きます。」

よしよし、理想的な動きだ。

慌てず焦らず、しかし油断無くことを運ぶ。

やはりオグリキャップと並走させたのが糧になっているようだ。

「おっと、先頭を行く逃げウマ娘三人、まるで何かに押し出されるかのように加速して行きます。」

「まだレースも序盤なのに変ですねぇ。」

前三人もどうやらウインディの走りに気圧されて、我先にと急ぐあまり掛かってしまっている様子だ。しかし、そのせいで余計にスタミナを使ってるな。

そして、それが後になってじわじわと効いてくる。

マイルは長い距離ではないが、飛ばすにしてもペース配分はとても大事だ。

短距離並のスプリントと中距離そこそこの持久力、このどちらが欠けても勝利はできない。

それ故に、その場その場で切り替える走り方を自転車のギアシフトに例えられる事もある。

 

そして勝負どころの第三コーナー。

「さあ、一番人気シンコウウインディ、ここで仕掛け…抜けた!」

「凄まじいレース勘ですね。とても初レースとは思えません。」

「差は三バ身から四バ身、最終直線でグングングングン突き放す!後方、ミニロータス、アストレアノーチェが食いつこうとしていますが届かない!」

「これは決まったか、シンコウウインディ、今一着でゴールイン!!」

「やったーーーー!」

あっ万歳しちゃった。

いつ以来だろう。

周りがギョッとした目でこちらを見てくるが気にしない。

「トレーナー!」

お、走り終えたウインディがニコニコ笑顔でこちらに駆け寄ってくる。可愛い。

そしてジャンプして………え?

「ガブーーーー!!」

「痛ったーーー!?」

噛み付いて来た〜〜〜?

「すごい。有り余る闘志だ。」

「ああ、レースの直後に自分のトレーナーにかじりつく程とは。これからが楽しみだな!」

外野が何か言っているが、まさかウインディがここまではしゃぐとは…まあ、はしゃぐか。

初の本番、それを勝利で飾れたのは今後の自信にも繋がる。可愛い。

なお、他のトレーナー達はこれをスキンシップと取っているのか特に何か言ってくることもなかった。

 

別にお前ら後で覚えてろよとかは思ってないよ。

 

ホントダヨ。

 

 

えっへっへー。

 

勝ったごほーびにイタズラしてやったのだー♪

 

ガブーーーー!!




シングレでタマ好きになった人は自分だけじゃないはず。
そしてダートに、ダートに光を………!!(切実)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

なんやかんや十話続いたね。

いやぁ、ありがとうございます。


 

 

ストレッチ、準備運動、そして整理運動。

それらは地味だが必要なことだ。

怠れば怪我のリスクは増すし、一度サボればクセになる。

だからオレはウインディに、必ず目の前でそれらをしてもらっている。

沖野先輩もそう言ったことにはかなり敏感で、必ずさせているという。

なんなら、先輩のメニューを参考にさせて貰っている部分もある。

無論、きちんとしていても理不尽に故障することもあるが。

それこそ、あのトウカイテイオーのように。

しかし、過ぎてしまったなら、たらればの妄想は無関係の観客に赦されこそすれ、当事者が何を言っても言い訳にしかならない。

勝負の世界であるから、それは仕方ないことだ。

だからこそ真っ当なトレーナーならば、誰もが重要視するのだ。

そして、それと同じく必要なのが食事である。

人間もウマ娘も、好物は飽きない程度にたくさん食べたいし、嫌いなものは見たくもないというのは珍しく無く、普通のことだ。

しかし、アスリートはそうであってはならない。

カロリーバランス、栄養バランスを日々計算し、足りない分は補い、取り過ぎた分は削ぎ落とす必要がある。

無論、極端にやり過ぎれば却って体を壊してしまうから、ウマ娘もひとりひとりにあったメニューを考えるのもトレーナーの仕事のうちだ。

しかし、しかしだ諸君。

ウチのウインディがそんな素直に従ってくれるだろうか?

とうもろこしを我慢し、もっと他の野菜なり栄養を摂取しろと言って聞くだろうか?

答えは…………

 

「いーやーなーのーだー!!」

NOだね。可愛い。

「でもね、ウインディ。トレーニング前のとうもろこしを一本減らすというのはオレとしても最大の譲歩なんだよ?」

とうもろこしは、ごはんやパンに比べカロリーも糖質も低い。

いわゆる低GI食品としても知られ、炭水化物や食物繊維、ビタミン、ミネラルを豊富に含み人間女性にとってはダイエット食ともなり得る。

しかし、野菜の中では糖質が高い方なので食べ過ぎは注意する必要がある。

無論、同年代の人間とウマ娘とでは一日の平均運動量や、摂取・消費カロリーなども違うので一概に比較できるものではないが。

まあ、それを差し引いても些か食べ過ぎの傾向があったため、まず一本減らして様子を見ようと思ったのだが。

「うぅ〜、トレーナーなんでいじわる言うのだ〜。」(ウルウル)

うん!やめよう!(テノヒラクルー)

可愛いウインディを泣かせるくらいならオレがもっとしっかりすればいいよね!(激甘)

「よ〜しよしよしよしよしよしよし。」

「いや、それはダメだろアンタ。」

あ、ヒシアマゾン。

どうやら話の一部始終を聞かれていたらしい。

それで、ウインディにあったレシピを一緒に考えてくれると言う。彼女もまたあのナリタブライアンと競うようにトリプルティアラを達成した偉大なるウマ娘である。

ならば、少しでも参考になるかもしれない。

オレはウインディのため、ヒシアマゾンにレシピを聞くと言う、側から見るとなかなかに情けない姿を晒すことになってしまった。

え、元から?まっさかー。

なお、彼女のトレーナーには二つ返事で了承してもらえた。

なんだかカカァの尻に敷かれてる旦那に見えなくもなかった。

 

え、卒業したらホントに籍入れんの?

マジかぁ………。

 

 

う〜、せっかくとうもろこしを減らされずに済むと思ったのに〜。

 

むねんなのだ〜。




ヒトヅアマゾンという可能性。
あると思います!(キリッ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

思ったよりヒトヅアマゾンの反響が大きくて作者ビックリ。

面白そうだし、別の短編であげようか考え中です。


 

さて、ウインディが初戦を勝利で飾れたのは大きい。

ならばと次のレースを見据えるが、今ウインディが走れそうな一番近いダートレースは京都レース場で開催されるもちの木賞、次いで東京レース場で開催されるカトレア賞だ。

その間にはなでしこ賞、オキザリス賞があるが、適正距離の関係でスルー。

そもそもダートには、芝でいう朝日杯フューチュリティステークスや阪神ジュべナイルフィリーズ、ホープフルステークスのようなG1はジュニア級の段階では無い。

ただ、それは言い換えるならば、ダートは重賞に関しては、芝と比べて一年の猶予があるとも言える。

だからこそクラシック級での重賞に向けて、少しでもウインディの経験値は稼いでおきたい。

無論、無茶のない範囲でだが。

「と、言うわけで偵察に行くぞー。」

「ワクワクなのだー♪」

「落とし穴は掘っちゃダメだぞ〜。」

「わ、分かってるのだ。」

「そうか、じゃあ今背に回したスコップについて詳しく聞こうじゃないか。」

「いよぅし!さっそく行くのだー!」

聞いてないなぁ、可愛い。

双眼鏡を持っていざ突撃。

まずは一緒にプレオープンを走った中でのライバル第一候補。

 

ミニロータス。

あの時は既に差が広がっていたから詰め切れていなかったが、末脚の爆発力はたぶんあの中では随一。

今後の成長も加味すれば、格下と侮れる相手ではないだろう。

何より、ダートに於いて不利とされる最内からあそこまで伸びるのは素直に凄い。

 

次に、クラシック級から共に走るだろうライバル候補達。これは沢山いるが、特に注意すべきはやはりタイキシャトルだろう。

今年クラシック級になり、来年はシニア級になるウマ娘だ。

特に雨天での彼女の走りの冴えは冗談抜きにオグリキャップに迫るものがあると思う。

マイルが得意ということからも、出走レースが被ることもあり得そうだ。

例えばJBCレディスクラシックや、チャンピオンズカップなどでぶつかれば苦戦するのは必至。

無論、ウチのウインディがまけるとは思っていないが。

しかし、出られるレースの幅を広げるためにも、スタミナをつけさせるのは必要か。

?笑顔でこちらに手を振っている気がしたが、きっと気のせいだろう。

だからウインディ、威嚇するのはやめようか。

まあ、何はともあれ退却退却。

別に東条トレーナーが苦手なわけでは無い。

尊敬できる大先輩だし。実績だってある。

チームリギルはそんな東条さんの汗と努力の結晶だし、自分だってゆくゆくはそんなチームを持てるくらい凄くなりたいと思う。

レース前の偵察だって別段珍しいことでも無い。

まして、リギルほどの強豪ならばなおのことだ。

「トレーナー、お腹減ったのだ〜。」

「よしよし、ウインディ。食堂行っといで〜。」

「わーいなのだ!」

「さて……。」

双眼鏡を改めて覗き見ると、見知った眼鏡姿の女性が。

「ほう…、逃げ出さないとは殊勝だな。」

あっヤベ……。

 

 

とうもろこしウマウマ〜なのだぁ♪

 

あっゴルシ、イタズラ対決をもうしこむのだぁ〜!!

 




カワカミ…ストーリーが面白いだけに性能が……orz
あっ、自分はウインディ貯金崩してませんよ。
評価サイトで見た感じめっちゃ現環境と噛み合ってないとか。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

因子継承、なかなか理想のが出ないorz

ヒトヅアマゾン、書けたので見てくれると嬉しいです。


 

 

さて、現状のウインディの能力と、先日の偵察の結果を鑑みてトレーニングはスタミナを重点的に鍛えることに決定した。

スピードやパワーはプラタナス賞での走りを見る限りジュニア級の中ではトップクラス。

勝負根性だって他に負けてない。賢さは…うん。

と言うわけで、坂路トレーニングをするためにコースまでやってきたオレとウインディである。

「さて、それじゃはじめようか。」

「ふふん、どんなトレーニングでもウインディちゃんならラクショーなのだ。」

胸を張ってドヤる担当ウマ娘可愛い。

トレセン学園の坂路コースはウッドチップが敷材に使われ、トレーニング負荷はかかるが意外とウマ娘達の体には優しい設計なのだ。

二冠ウマ娘のミホノブルボン以来、坂路トレーニングは注目されており利用するウマ娘も

以前に比べ増加傾向にある。

現に、芝コースやダートコースに引けを取らないほど活気があり、予約するのも一苦労だ。

次の目標は来年二月、東京レース場で開催されるクラシッククラス、オープン戦であるヒヤシンクスステークス。次に中山で四月に開催される伏竜ステークスだ。

そして六月に開催される初の重賞、G3ユニコーンステークスを制する。

「じゃあ早速、試しに坂路三本行ってみようか。」

「ふっふん。やってやるのだぁ〜〜!!」

ダダダダダダダ……………。

まだストップウォッチ押してないんだけど……。

「おう。」

急に後ろから話しかけられる。

誰かと思い振り向くと

「あっ、黒沼さん。」

帽子にグラサン、という珍しい格好の人物がいた。

件のミホノブルボンのトレーナー、黒沼トレーナーである。

しかし珍しい。寡黙で口数も少ない黒沼さんから声をかけられるなんて。

「どうかしましたか?」

気になってつい聞いてしまう。

「いや……。」

「?」

「初戦の勝利、おめでとう。」

まさかの祝辞である。

「いやぁ、まだはじまったばかりですから。」

褒められるのは嬉しいが、それで浮かれてばかりもいられない。

「そうだな。お前がそういう奴で良かったよ。」

「と、仰いますと?」

「初戦を勝って浮かれちまう。そんな奴らも残念ながら一定数はいる。」

なるほど、勝って兜の緒を締めよとそう言いたいわけか。身に染みるな。

強面で厳格なスパルタトレーナーとして知られる黒沼トレーナーは、オレとはやり方に違いがあるものの優秀な人物であることに違いはない。というか、オレなんぞまだまだ未熟者だが。

「そうですね。ウチのウインディもまだまだ足りない部分が大きいですから。」

「…そうか。」

そういうと黒沼さんはクルリと後ろを向くと

「邪魔したな。」

と言ってスタスタと坂路コースから出て行った。

?ウインディの仕上がりを見にきたんじゃないのか?

あっ、戻ってきた。

「トレーナー!行ってきたのだー!」

「そうかぁ、よしよしえらいなぁ。」

ナデナデナデナデ

「ふふーんなのだー。」

「じゃあ、三分休憩したらもう五本行ってきてもらえる?今度はタイムも測りたいからオレが合図したら行ってもらいたいんだけど。」

「どーしてもなのか?」

「うん、どうしてもウインディにしか頼めないんだよ。」

「じゃー、しょーがないのだ〜♪」

可愛いなぁ〜。

 

 

エヘヘ〜、ウインディちゃんはできる子なのだ〜。

 

だから今日はイタズラはかんべんしてやるのだ〜♪




シングレの子、逆輸入してくれてもええんやで?
なお、自分はブラッキーエール推しです。
え?聞いてない?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんの勝負服姿を早く見たい今日この頃

UA19000越え
お気に入り240越えありがとうございます!



 

それはいつものトレーニング後のことである。

「トレーナー!トレーニングたくさん頑張ったから、その分ウインディちゃんをたくさん構うのだー!」

なんて言ってくるウチの担当ウマ娘。可愛い。

「よしよし。それじゃあ何がしたい?」

うんうん。今の彼女はノリにノっている。つまりは伸び盛りの時期だ。ここで断ってわざわざそれを削ぐこともないだろう。

書類の作成は今日の記録をそのまま打ち込む以外は大方済んでいるので、他は後回しでいいか。それに息抜きというのも大切だ。

「エッへへー♪」

ウインディはオレの頭を掴むと

ガジガジして来た。

「どうしたー?そんな甘噛みなんかして?」

「へっへーん!困ったのだー?」

「そうだねー。困ったねー。」

「じゃあもっと構うのだ〜!」

うむ、露骨に甘えて来るウチの担当ウマ娘可愛い。

「よーしよしゃしゃしゃしゃ!!」

もう癒し、いや心の支えだなぁ。

トレーナー業はぶっちゃけ大変だ。

担当ウマ娘一人受け持つだけで、スケジュールがギッチギチだ。

まあ、これはオレ自身の手腕の未熟さもあるんだろうが。

そんなこんなでウインディと戯れていると

「こんにちは〜☆」

おっとオレ達に用かな?

そう思い振り返ると

「ひっさしぶりだねーウインディちゃん☆」

スマートファルコンが立っていた。

「がう?」

ウインディが彼女を視界に入れる。

「ガルルル!」

うん。わかりやすく威嚇してるなぁ。

出来るならすぐにでもやめさせたいが、でもウマ娘同士の関係性にあくまでもトレーナーのオレがとやかく言って良いものだろうか?

少なくともスマートファルコン側に敵意のようなものは感じない。

本当にたまたま見かけたから声をかけただけに見える。

「まあまあ、そんなに身構えないで欲しいなー。」

幸いと言うべきか、スマートファルコンは特に気にした風でも無い。

「わたしね。ウインディちゃんには期待してるんだー。一緒にダートを盛り上げてくれるって。あっ、もちろん誰でも良いってわけじゃ無いよ?」

朗らかな笑顔を浮かべながらそう言う。

本心、だとは思う。

そもそも彼女はすでに三年間を走り抜け、ドリームトロフィーリーグに駒を進めている猛者であり、更にはダート部門での年度代表ウマ娘も選出されている実力者。

声をかけられること自体、ダートウマ娘にしてみれば名誉なことだ。

故に、ここは一旦ウインディをなだめるべきか。

「ムー。」

そんなことを考えていると横から不満げな声が聞こえる。

「どうしたウインディ?」

「ガブーーーー!!!」

「痛ーー!?」

ウインディはいきなりオレの腕に噛みつくとフンと鼻を鳴らし、スマートファルコンを指差し叫ぶ。

「ウインディちゃんは、ぜったいぜったいぜーーったい、オマエを倒すのだーー!!」

と宣戦布告を一方的に告げ、オレを腕を掴むなり引きずってコースを後にした。

「ふふっ、楽しみだなぁ〜〜☆」

そんな言葉が聞こえた気がしたが、人間よりも力の強いウマ娘に引きずられていたため振り向く余裕も無かった。

 

 

ぷんすかぷんすか

 

ふん!!負けないのだ負けないのだ!

 

ゼーッタイに勝ってやるのだ〜!!




負けず嫌いなウインディちゃんならこのくらいはしそう。(妄想)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レジェンドレースでたまにボロ負けするのはなんなんだろう?

ウンスちゃんのピース集めがんばるます。


「たまには久しぶりに集まって呑まないか?」

そろそろ仕事を切り上げようと思い、寮に戻ろうと廊下を歩いていたオレにそう言って来たのはオレと同期の新米トレーナーである。

慰労なども兼ねて、騒いだり集まって飲むときの定番となっている駅前の居酒屋に集まろうとのこと。無論、周囲への迷惑も考慮して防音の個室である。

なお、バーは一人きりで静かに飲みたい時や先輩に相談を持ちかける時以外は利用しない。

少なくともオレはそうしてる。他がどうかは知らんが。

他にも何人か声を掛けているそうで、共通点は皆担当ウマ娘がいること。

そして……

「っぱ、ウチの子が一番だわ。」

「は?ウチの子が一番可愛いに決まってんでしょ?何言ってんの。」

「ウチの子が一番カッコよくて可愛くて強いんだよなぁ。」

「ウチの子は天使ってはっきりわかんだね。」

うん。

みんなトレバカな連中ばかりと言うことだ。

皆酒が入っては聞かれてもいない担当ウマ娘の自慢話を始めている。

まったくオレやウチのウインディを見習って欲しいものである。

しかし、やはりと言うべきか新人だろうがベテランだろうがトレーナーにとって担当ウマ娘というのはひとりひとりが特別なものだ。

共に成長していく教え子であり、自身の夢であり、場合によっては生涯のパートナーにもなり得るのだからそれも当然といえば当然。

時たま担当ウマ娘からのうまぴょい(意味深)未遂の話も聞くが、まあオレには関係なかろう。

それを分かっているからこそ、こういったじゃれあいの場でもトレーナーは互いの担当ウマ娘を貶すようなことはしない。トレーナーはあくまでもトレーナー同士の間でケンカやら牽制をし、情報を引き出そうと躍起になるのだ。

「岡本ぉ!次はウチのミニロータスが差し切ってやるからなぁ!」

故に、このように絡まれるのも慣れっこである。

「はっはっは!次もその次も返り討ちだバーーーーカ!!」

「なにをぉぅ!」

別にこいつの育成能力が低いと言うわけではない。そもそもの話、中央のウマ娘トレーナーになれている時点でその手腕は折り紙付きだ。

ただウチのウインディが圧倒的なだけなのだ!

ガハハハハハ!!

皆、二日酔いにならないよう加減しつつ、少しずつ近況を告げ合う。

この場にいる連中の内、誰だって担当ウマ娘に余計な心配はかけたくない。

というか二日酔いとか純粋にカッコ悪いし。

担当ウマ娘が心配してくれている顔を思い浮かべて若干ニヤけるも、申し訳なさが勝つ程度には心配はかけまいと思っている変人…もといトレーナー連中ばかりなのだ。

代わりにつまみの注文が遠慮なくなって来たが。

それからの話題は私生活での愚痴やら何やら情報のごった煮である。

やれあそこの店のジェラートが好評だっただの。

やれ担当ウマ娘とお出かけすることになっただの。

やれ怪我の予防はちゃんとしてるかだの。

やれトレーニングのタイムが縮んだだの。

やれうちの子が可愛いだの。

やれ担当ウマ娘とのコミュニケーションはどうしてるかだの。

ためになる話から情報ともいえないような雑談まで結構話し込んだ。

なんやかんや厳しい試験勉強やら、ブラックよりな職場やらを今日(こんにち)まで乗り越えた盟友であり、ライバルでもある互いを慰撫する目的は達成できそうだ。

 

さて、この後の二次会をどうやって回避しようか?

 

 

ぐがが〜 すぴぴ〜

 

えへへ〜、とれーなーもっとあそぶのだぁ〜

 

むにゃむにゃ




ウインディちゃんの寝顔絶対可愛い!!(確信)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

スーパーでキノコを見てたら思いつきました。

明日実装の新キャラが気になりますねぇ。
ライブラ杯どうしよ?


日曜日、秋晴れの朝。

ウチの担当ウマ娘がぴょんぴょん飛び跳ねている。

控えめに言ってめちゃくちゃはしゃいでいるのだろう。

「トレーナー!早く来るのだー!」

ニッコニコ笑顔でこちらに微笑みかけてくる。可愛い。

オレは背に負う荷物を担ぎ直す。再び坂を登ると、リュックにつけた熊よけの鈴がガランと鳴る。

ここは、トレセン学園私有地のとある山中。

オレたちは今日ここに、きのこ狩りにやって来ている。

なんでも、理事長が日頃の慰労と、いつもの思いつきできのこ狩り大会なるものを開催するとか。

オレたちは今、その会場に向かう途中である。

無論、登山道には他にもウマ娘とトレーナーの組み合わせがちらほら伺える。

「ウインディ、そんなにはしゃぐと転ぶぞー。」

「だいじょーぶなのだっ、たったとととと…。」

ベシャッと顔面から落ち葉のクッションに盛大にこける。可愛い。

オレは立ち止まり、そして歩み寄る。

「うへ〜、葉っぱが口に入っちゃったのだぁ〜」

「どれ、見せてみな。」

言うと素直に「あ〜」と口を開いて見せるウインディ。

流石に泥まみれの葉っぱが口に入る不快感には勝てなかったようだ。

実際彼女の口の中は泥だらけだ。

「ほら、これで口すすいで。」

ペットボトルの水を差し出すや、そのままひったくって口に含み、ガラガラとうがいをする。

「ペッペッ、災難だったのだぁ〜」

「まぁ、逆にこれできのこ狩りの最中は注意して周りを見回せるだろ。結果オーライと思おう」

そう言うとウインディは

「そーなのだな!」

と元気を取り戻したようだ。

この思考の切り替えの早さもウインディの長所だろう。可愛い。

そして再びテンションが上がったウインディと共に会場に着いた。

会場は山々に囲まれ凹地のようになっており、見回すだけで見事な紅葉が一望できる。

是非ともここで弁当を広げたくなる。

「感謝!諸君よくぞ集まってくれた!」

見上げてみると、ちびっちゃい少女のような見た目の女性が中央に設置された特設ステージの上に堂々と立っている。

あれこそは我らが敬愛すべきトレセン学園理事長、秋川やよい女史(年齢不詳)である。

なお、帽子の上のおネコ様は今日も健在のようだ。

ぐでーっとやる気なく伸びている様は見ていて癒される。

ちなみにオレはイヌとネコ、どっちも好き派である。

ガウガウと構ってちゃんオーラを出しまくってくるのも、気まぐれでツンケンされるのもどちらも好きなのだ。

あれ?ウインディ?

そうか。オレとウインディはやはり会うべくして会ったのだ!

脳内でそんな妄想を繰り広げている間に、理事長の挨拶は終わり大会の説明へと移る。

ウインディは、はやくはやくとキラキラする目をしつつ理事長を見上げる。

「説明!可食のキノコを計量し、一番多く持って来たトレーナーとウマ娘のコンビが優勝だ!」

とのこと。隣でたづなさんが嘆息しているように見える。後でお説教かな?

「警告!登山道から外れたところでのキノコの採取は厳禁とする!なお、制限時間は夕方の六時までとする!」 

まあ、そうだろうなぁ。でもまさかそんなところでまでキノコを取ろうとする命知らずは……

「よーし!山を隅から隅までキノコを取りまくるのだ〜〜!!」

うん。とりあえずウインディからは目を離さないようにしよう。

それからオレは、ウインディと手を繋いで山に入った。

いざ山に入ってみると本当にキノコの宝庫で驚く。

ウインディも興味津々と言った感じで

「これは食べられるのだ?」

「うーん、残念毒キノコだねぇ」

「じゃあこっちはどうなのだ?」

「それも毒キノコだねぇ」

とあちこちを指差して聞いて来る。

一応、ウインディとの約束事として、知らないキノコには触れないことや、かじらないこと、次に取る人の分までとらないことなど参加するに当たっていくつか条件を提示していた。

ちょっと調べただけでも、触れただけでかぶれる種類のものや、一見見慣れたキノコに見えて、猛毒だったりと案外油断ならない。

わざわざ分厚く重いキノコ図鑑を持ってきて良かった。

可愛いウインディに何かあればそれは世界の損失に他ならないのだから。

背中のカゴを揺らしながらウインディは次から次へと目に映るキノコについて聞いて来る。

その度に一喜一憂するウチの担当ウマ娘可愛い。

「おっ、それは食べられるやつだね。」

「ほんとーなのだ?」

「ほんとほんと。」

くぬぎの下にあるキノコを見て、図鑑を改めて確認して、確信する。

珍しいな。野生の舞茸だ。

キノコの中でも煮てよし揚げてよしという器量ものである。

しかも群生していると来た。

「エヘヘ〜、じゃあとっていいのだ?」

「うん。お願いできるかな?」

「まっかせるのだ〜!」

「ウインディは頼りになるなぁ」

「よーし!ウインディちゃんに続くのだ〜!」

「お〜!」

道を外れないよう細心の注意を払いつつ、ウインディについて行く。

「おっ、これはタマゴタケじゃないか?」

「おー、トレーナーもなかなかやるのだなー」

ぱっと見毒キノコのようだが、とても美味しいキノコらしい。まぁ、違っても会場で弾いて貰えばいいか。

「トレーナー、これはどうなのだー?」

サッと図鑑を開いて確認する。

「おお〜、ウインディやるなぁこれはクリタケだねえ。」

そんなこんなで、現時刻は五時三十五分。時間的にもいい頃合いになった。

キノコもカゴいっぱいに集まり、もう取れそうにない。

この中からいくつ毒キノコがあるのか少し不安だが、まあそれは今言っても仕方ない。

幸い会場からそう離れてはいない。

十分もあれば戻れる距離だろう。

「トレーナー、帰りも手を繋ぐのだ〜♪」

「はいはい。キノコ落とさないようにな」

「はーいなのだ」

会場に戻りカゴを提出して結果を待つオレとウインディ。

まあ、優勝できなくても最近練習漬けだったウインディにもいい息抜きになればそれでいいか。

 

え、優勝?マジで?

 




遭難ルートも考えたんですが、ウインディちゃんを泣かせるわけにもいかず日和りましたすみません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この中でウインディ貯金をカフェに使ったものは前に出なさい。

しゅくせーなのだ!!


 

「うぅ〜、トレーナー、まだ終わらないのだぁ〜?」

「後ちょっとだよウインディ、頑張ろう」

現在、場所はトレーナー室。

そこでオレはウインディの勉強を見ていた。

ことの発端は今朝、パソコンを開いてさあ仕事を始めようと思った矢先の出来事だった。

扉がバァン!!と音を立てて開くとウインディが深刻そうな顔をしてこちらに歩いて来る。

「トレーナー!一大事なのだー!」

「一体朝からどうしたんだい?」

「実は………」

「実は?」

「テストで赤点を取ってしまったのだぁーー!!」

あーなるほど。

ここトレセン学園は基本的にウマ娘のレースやライブの育成に力を入れているが、だからといって学生の本分たる学問に力を入れていないかと問われれば答えはNOだ。

他の一般的な学校のように普通の授業もあれば、テストもある。

だから赤点を取った者には、当然追試があるし、その分時間を勉強にとられる事となる。

クラシック級に上がるまでまだ猶予があるとはいえ、トレーニングができないのは流石に痛い。

そう言った意味では確かに一大事かもしれない。

「なるほど、それで勉強を見てほしいってことか?」

「そうなのだ!」

ウインディは力強く頷く。

そうして教科書を持って来てもらい、追試の範囲を教えてもらってどこが分からないのか聞いてみると自信満々に「全部なのだ!」と答えられた。

「トレーナーに教われば安心なのだ〜♪」

と呑気に構えているウインディ。可愛い。

取り敢えず5教科の範囲と追試の日取りに目を通し、基礎から教えているのだが……

「うぅ〜」

この通りウチの担当ウマ娘はぐでーっと机に突っ伏している。

こうしてわざわざオレに教わろうという姿勢がある分、やる気がないわけではないと思うが、本当に苦手なのだろう。

コンディションでいえば、さしずめ絶不調といったところだ。

ハァと一息つきオレはウインディにたずねる。

「今日はもうやめとくか?」

なんであれ、やる気が出ない時に嫌々やってもいい結果は出ない。

「うぅ〜、やるのだぁ!」

「でもなぁ…」

正直無理はしてほしくない。

勉強も大事だが、それが元で体を壊したんじゃレースにもトレーニングにも響く。

それに追試までの猶予はまだ幾らかある。

不調の時に無理くり詰め込むよりも、調子の良い時に少しでも覚えておいた方が結果として当人のためになると思うんだが……。

「うぅ〜」

正直目の前のしょぼくれたウインディは見たくない。

この場から逃げたいという訳ではない。大事な教え子を放っては置けない。

他の同期連中はそう言うだろうし、沖野先輩だってきっとそうだ。

故に

「ウインディ」

名前を呼ばれウインディはビクッと震える。

「遊ぶぞ!」

「ふぇ?」

 

「わーははは!トレーナーは下手くそなのだなー!」

「くぅ!もう一回!もう一回!」

トレセン学園最寄りのゲーセンで某ロボットの格ゲーに勤しんでいる。

ちなみに互いにCPUがタッグである。

「あー!オレのバ○バトスがーー!?」

「わーははは!νガ○ダムは伊達じゃないのだー!」

その後、公園で売っていたクレープを食べたり、喫茶店で一休みしたり、トレーニング用のシューズを見たりと色々と見て回った。

「ウインディ」

オレがそう呼ぶと

「なんなのだ?」

と笑顔で返して来る。可愛い。

「勉強を頑張ったら、また来ような」

そういうとウインディは思い出したように驚いた顔をするが

「分かったのだ!!」

その顔にはもう、無理をしていた時の影は無かった。

 

 

えへへー、トレーナーとお出かけたのしかったのだー♪

 

べんきょーのせいでトレーナーに会えなくなるのはイヤだったけど

 

また、行きたいのだ…な。




サブ垢でカフェきました(ボソッ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ナカヤマフェスタのサポカカッコよ。

ウチの長距離はクリークママが頼みの綱ですわ。


バァン!!

「トレーナー!しゅぎょーするのだー!」

トレーナー室の扉を最早恒例といわんばかりに勢いよく開けるのはご存知ウチの担当ウマ娘である。

「修行って言ったって、トレーニングはいつもしてるだろう?」

「ちーがーうーのーだ!トレーニングじゃなくってしゅぎょーがしたいのだー!」

修行って言ったってなぁ…

「あの漫画とかでよくある山籠りとか、滝に打たれるみたいなやつ?」

「そう!それなのだ!」

目をキラキラさせながらウインディは頷く。可愛い。

とはいえ、合宿場は基本夏に利用するもので、さらに今はシーズンでは無いため、空きはないだろう。

仮にあったとしても、学園の方針的にチーム持ちのトレーナーに優先してあてがわれるだろうことが想定できるため、近場だったりトレセン学園関係のところを使える可能性は非常に低い。

そのことを説明するとウインディは露骨に落ち込む。

「そもそも、どうしていきなり修行なんてしようと思ったんだ?」

そう聞くとウインディは思い出したように再び目をキラキラさせてとある本を見せつけて来る。

「コレに書いてあったのだーー!!」

ウインディが取り出したのはひと昔前の熱血スポ根マンガである。

あれだ。千本の矢を目にも止まらぬ動きでかわすとか、真剣白刃取りしたりとか、水中で休憩もなしに一時間泳ぎ回るとかそんなやつ。

「普通に危ないわ。修行の名を借りた拷問だよそれ。」とは流石に言えないためオレは可愛いウインディを傷つけないよう出来る限り慎重に言葉を選ぶ。

「あの〜ウインディさんや?どうしてそんなマンガを?」

「トレーニングのヒントになると思って図書室で色々探し回ったのだ!」

偉いのだ〜?と聞いて来るウインディは正しくエンジェルである。可愛い。

まぁ、確かにまだ体が出来上がったばかりのジュニア級のトレーニングは場合によっては退屈に感じるかもしれない。

基礎の繰り返しなど、大切だと頭では分かってもいざやってみると地味な割になかなか苦痛だったりする。

だからこそ、時たま手の空いたダートウマ娘に並走を頼んだりしているのだがなかなか相手が見つからないのが現状だ。

かと言って、ヘンに同期に頼んだりして手の内がバレるのも避けたいためその相手も必然的に限定されてしまう。

ならばここは気分を変える意味でも座学を教えるか?

いや、多分開幕五分で寝る!

そもそもウインディは直感でレースを運ぶタイプ、言うなれば本能型のウマ娘だ。

有名どころを例に挙げるなら、ナリタブライアンや、ウイニングチケットなどがそれに当たるだろうか。

無論、彼女らも全くの無勉強ではないだろうが、傾向としては似ている。

そして、そう言ったウマ娘は往々にして不器用な子が多い。説明が下手だったり、どうしても感覚的に伝えようとして上手くいかないパターンが多く見られる。

名選手が名監督になるとは限らないというアレだ。

無論、だからといって彼女らが決しておバカな訳ではないのは結果が物語っている。

片や三冠ウマ娘、片やダービーウマ娘という、トレセン学園の長い歴史にその名を刻んだ偉大なるウマ娘であることは疑いようもない。

それにヘンに知識を与えてそれにばかり固執するようになったり、あれもこれもとなって混乱を招くことになっては元も子もない。

無論、先行抜け出し一本でいく手がない訳ではないが、その場合露骨に対策、マークされるのは目に見えて明らか。使える武器は多いに越したことはないが、邪魔になる程抱えるのは悪手も悪手だろう。悩ましいことだ。

ここは一つ、模擬レースをやってみるのも手か……。

だがまぁ、モチベーションが高いのは良いことだ。修行のことだって彼女にやる気が満ち満ちているからこそやってみたいと言い出したのだろう。

とりあえず授業の時間が迫っているのでウインディに教室へ向かうよう促しオレはオレの仕事を始める。

 

「フフッ、面白そうなモルモットが転がっているじゃないか」

 

そんな謎の声が廊下に響いたことにも気付かずに。

 

 

う〜、トレーナーと山ごもり……

 

ピクニックみたいで楽しそうだと思ったのだぁ……

 

しゅん……。




いったい何ネスタキオンなんだ………?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

実際、育成して見ると頭脳派も本能派もどっちも魅力的よね。

ゴルシのフリーダムっぷりは何度見ても癒されますなぁ。


ウインディのトレーニングのため、オレが廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。

「やぁやぁそこなトレーナーくん。なにやら悩みを抱えているようだが、相談して見る気はないかい?例えばこの私とか」

声をかけられて振り返り、オレはフリーズした。

彼女の名はアグネスタキオン。

学園内では変人或いは問題児で通っており、そして三冠も夢ではないと言われるほどの実力者でもあり、あのシンボリルドルフも頭を抱えながらも気にかけているとかいないとか。

ただ、本音を言えば彼女とはできる限りお近づきにはなりたく無かった。

何故ならば、彼女はウマ娘やトレーナー達に手当たり次第試験薬を飲ませようとして来たり、選抜レースをなかなか走りたがらない等というよからぬ噂が後をたたなかったからだ。

そのせいもあって、なかなかトレーナーがつかなかったとか。

ただ、それによる退学もやむなしとなった時に彼女にいきなりトレーナーがついたとかなんとか。変わったヤツもいたものである。

ただ、オレは目の前で彼女のトレーナーの体が七色に光っているのを見た。

見間違いじゃなければ彼女はその光景を見て全く動じていなかったどころか笑顔を浮かべてすらいた。

そりゃあ我が身や担当ウマ娘が可愛ければ近寄りたくも近寄らせたくもなくなるだろう。

ただ、チャンスでもあるのは確かか。

未来の三冠ウマ娘からウチのウインディを見た所感を聞けるのは色々と参考になるだろう。

「……私に何のご用で?」

一応彼女は名門の生まれ。言葉遣いに気をつけながら話しかける。

「フフッ、まぁそう警戒しないでくれたまえ。ちょっとした老婆心というか、君たちに興味が湧いてね」

その後に、ああ敬語は結構だよと言われ少し気が楽になったのは余談だ。

「興味?」と言ったオレは怪訝な顔をしていただろう。そもそも彼女は芝のターフを走るウマ娘だ。ダートウマ娘であるウインディに興味を持つことなど想像もつかないが。

尤も、時たま芝とダートの両方を走れる勇者とも変態とも言える逸材が出て来るらしいが。

「へーっくしょん!!ズズッ、ウマ娘ちゃんの観察中に急にくしゃみが……」

……今、何か聞こえたような?

「別に芝を走るからといってダートに興味を持ってはいけないという決まりもないだろう?」

「まあ、それは確かに」

「それに…」

と言ってタキオンの目が妖しく光る。怖い。

「ダートウマ娘の実験データはまだあまり取れていなくてねぇ」

「はあ?」

「ああ勘違いしないでくれたまえ。別に君のところのシンコウウインディを実験台に…などとは考えていないさ。そもそも彼女は軽く見ただけでわかるくらいにはまだまだ未熟だしねぇ」

そりゃそうか。と納得すると同時に少し悔しくもなる。

「じゃあ、何が目的だ?」

「スマートファルコンさ」

「……ああ」

なるほど。スマートファルコンはウチのウインディを目にかけている。

だから、未来のウインディの成長幅を見ると同時に彼女のデータが欲しいと。

「そもそも彼女、近くで観察しようとするだけでも笑顔で寄って来て少々鬱陶しくてねぇ」

うんまあ、いろいろと周囲との距離感は近い感じがするが。

まあ、それも彼女のウマドルたる所以なのだろうが。

「報酬はその都度、私が調合した薬品でどうだろう?」

「…それ、ドーピングにならねえの?」

その言葉が彼女の中の何かに触れたのだろう。急に真顔になったと思ったらズズイと近寄って来て熱弁する。

「いや、いやいやいや!ドーピングは私が最も嫌う行動だとも!私の薬はあくまでも疲労回復や体調を整えるくらいなものさ!そもそもドーピングに使われるような薬剤は使用者のその後のことすら考えられていないものでデメリットが多すぎるうえ………」

目がマジ過ぎて怖い。

「わ、分かった分かった。不躾なことを聞いて悪かったよ…」

「フゥン、分かればいいん……ふぎゅっ!?」

彼女の後ろからチョップが飛んできているのが見える。

「こらタキオン。人様に迷惑かけるもんじゃないだろう?」

「と、トレーナーくん。いやしかし、交渉くらいは……」

「オレが用意した紅茶と弁当がいらないならすれば良いんじゃないか?」

「私に死ねと?」

「いやそこまでは言ってないだろう」

そういうと彼女のトレーナーは腰のあたりにしがみついて抗議するタキオンをズリズリと引きずりながら去っていった。

ちなみに去り際のタキオンの言葉は

「か〜ん〜が〜え〜て〜お〜い〜て〜く〜れ〜よ〜」

だった。

格好つかないことこの上ないと思ったのは言わぬが華か。

 

……………仕事に戻るか。

 

 

のだ?

 

アイツウインディちゃんのこと見てるのだ〜。

 

ピースピースなのだ〜♪




願わくば、ウインディちゃんも同じくらいぶっ飛んだストーリーを………


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ライブラ杯苦戦中ですわ。

思い切ってウマ箱買っちゃいました。



よく晴れた日曜日。

秋晴れの青空の下、トレセン学園内のダートコースでは模擬レースが開催されていた。

「さぁー始まりました!!ジュニア級ダートのトップを決めるこの戦い!!皆さん負けられませんねぇー!!」

マイクを片手にそう言うのは短距離熱血元気っ娘、自称頼れる学級委員長ことサクラバクシンオー。気分はさながら司会者と言わんばかりの台詞回しである。

なお、なぜ司会なのか問われれば本人が希望したから、としか言いようがない。

これも学級委員長の務めとかなんとか。

「そうだな。どんな走りが見られるか、わたしも今から楽しみだ」

今日も絶好調のサクラバクシンオーの隣でそう言うのは言わずと知れた笠松のスターウマ娘こと、オグリキャップ。

その脚もさることながら、よく後輩に餌付けされているところを目撃されており、その度にタマモクロスがツッこむというコンビ芸まで持っている。

彼女自身は不器用で口下手ゆえに、放たれる言葉は飾らず真摯なものでそれが後輩たちの糧となるだろうとのことでの抜擢らしい。とは言ってもそもそもこれ、模擬レースであって本番じゃないし。そう言った意味でも口下手は問題にならなかったのだろう。と勝手ながら憶測する。

学園内での模擬レース故にギャラリーは当事者であるトレーナー、ウマ娘含め20名程度とその他がそこそこ。

記者は呼んでいないため、参加するウマ娘はウチのウインディ含め比較的リラックスしている面持ちだ。

しかし向けられる眼差しは真剣そのもの。

オレとしてもウインディのデータを取られるのは癪だが、どうせなら他の奴らの担当ウマ娘も見させてもらおうという魂胆から同期たちにこの話を持ちかけた。

それに、仮にデータを取られたとしても連中の想定を越えて成長すれば良い。

ウインディにはそれが出来るだけの素質はあるし、オレもそれを全力でサポートするつもりだ。

 

その模擬レースの様子を窓から眺める人影が一つ。チラリと目の端に捉える。

「フフッ、見せてもらおうか。ダート界のホープの実力とやらを」

彼女、まだ諦めてなかったのか。

模擬レースの距離はダート1600メートルのマイル。左回り。

想定はさしずめ来年出走出来るクラシック級初のダート重賞、G3ユニコーンステークスか?

まぁ、ウチのウインディの場合はその前に同じ東京レース場で同条件のオープン戦のヒヤシンスステークスか青龍ステークスを走ってもらうことになるだろうが。

時間も朝イチであるためバ場状態も良好。

ゲートはくじ引きで決まり、ウインディは十人立てで五番目、良くも悪くも無いと言ったところ。

オレは最前列に行き、ウインディや他ウマ娘の様子を伺う。

何やら他の出走ウマ娘達と話しているようだが、意外と落ち着き払っている。

出会ってすぐの頃などはレースや並走トレーニングで今か今かとソワソワしていたのが嘘のようだ。

成長したなぁ。可愛い。

周囲の子達はその様子が気になって声をかけたのか、或いは今度こそ負けないという決意表明か、いずれにせよ良い傾向か。あの目の輝きはライバルを、強者を見るものだ。

人間であるオレはウマ娘ほど耳は良くないため、先程の会話内容はわからないが多分大方はこんな感じかなと思う。

まぁ、模擬レースだからって遠慮することも無い。

どうせなら度肝を抜いてやるのも一興か。

何より、常に全力であるのが長所のウインディに手抜きレースをしろなどとは口が裂けても言えやしない。

「ウインディ〜〜!!」

オレが声をあげるとウインディはすぐにこっちを見つけて手を振って来る。

「勝てるぞ〜!!」

そう言うとウインディはパッと明るい笑顔を浮かべる。可愛い。

時間になり、ウマ娘達がゲートに入る。

秋の風は少し冷えるが、彼女たちの闘志は燃え上がっていることだろう。

「さぁー!みなさん!全力でバクシンですよーー!」

「みんな、頑張れ」

その声の直後、ゲートが開きウマ娘達が一斉に駆け出した。

 

 

うん?きんちょー?してないのだ。

 

なんで?っていわれても……

 

トレーナーが勝てるって言ってくれたからなのだ〜♪




3期はやるとすれば、ダートメインでやって欲しいですわ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

20話続くとか筆者もびっくりですよ

UA30000
お気に入り360
ありがとうございます。


レース開始時、正確にはゲートイン時にウインディが豹変したのを両脇のウマ娘、四番ミニロータスと、六番リボンバラードは気づいていた様子だった。

と言うのも、ウインディはゲートに入るとほぼ必ずと言って良いほどやらかす。

つまり、ウインディはジュニア級ダートウマ娘の間でも有名なゲート難だった。

それが今は不気味なほどに落ち着いている。警戒するには十分な理由だろう。

何かある。そう思った時には周りは走り始めていた。

ミニロータスはまだ良かったろう。脚質的には差しであるし、序盤に於いて後ろにつくのは許容範囲。しかしリボンバラードはそうはいかない。なぜなら彼女の脚質は逃げであるからだ。

逃げウマ娘にとって最初に先頭に立てないのは死活問題といっても過言では無い。

何故なら逃げウマ娘は、基本的にレースのペースを自分自身で作ってナンボだからだ。

裏を返せば他の誰かの先頭を許せば、それだけで相手のペースに巻き込まれることを意味する。そうなれば先頭の奪い合いで消耗することは避けられない。

まして今回はマイルという長いとは言えない距離の中で、なんとか先頭に立たねばならないのだ。

「おーっと、二人ほど出遅れたようですねーオグリさん!」

「焦って怪我をしなければ良いが」

無事之名ウマ娘という言葉も指すように、大事無く走り切るのもまた才能である。

それに今回はあくまでも模擬レース。ムキになって故障でも発生すれば目も当てられない。

だが走っている当のウマ娘達、そして周囲のトレーナー達の目はいずれも真剣そのものだ。

抑え目に走らせあくまで他の出走ウマ娘の情報収集に勤しむ者、逆にウマ娘のしたいようにさせ、現時点での担当ウマ娘の周囲との成長の速度と照らし合わせ、今後のトレーニングの組み直しを図る者、方針によってどうさせるかは様々だが、その思いの根本は皆共通している。

勝たせてやりたいという、その一心だ。

ウチのウインディは現在四番手から五番手、やや後ろ気味だが問題はない。

まだ500メートルを通過したところだ。勝負どころではない。

「さぁー!先頭は八番ハートシーザーさん!やや遅れて九番サニーウェザーさん!その後ろに食いついているのは六番リボンバラードさん!三人の逃げウマ娘が火花を散らしていますよーー!!」

「ああ、それと五番のシンコウウインディは良い位置に着けている。逃げ切るならもう少し離しておきたいかもな」

 

 

(くっ、なんで?なんで離せないの?)

先頭を走るハートシーザーは、しかし全く安心出来ていない。

先頭集団が鎬を削る中、シンコウウインディは逃げウマ娘達から一定の距離を保ったままだからだ。

加速すれば同時に加速し、減速すれば同時に減速する。喉元に食らいついた獲物を逃さない、リカオンやライオンのように。

小技が効かない。罠も踏み抜かれる。

無論、自分たちがまだまだジュニア級で拙いのは分かっている。

しかし、相手もまたジュニア級のハズだろう!?

(最終直線まで、このまま疲弊させるつもりか?それが最適だと直感しているとでも?)

一瞬振り返ると紫色の瞳が細められるのがわかる。勝負どころを見計らっているのだろう。

地点は1000メートルを通過し、いよいよ最終直線に迫ろうと言うところ。その時

「ウインディーーー!!ブッちぎれーー!!」

その一言で気配が、爆発した。

 

 

「ぜーーーったい、勝つのだーーー!!」

ウインディの剛脚が炸裂する。

逃げウマ娘達の間をスルスルと抜け出し、一気に先頭に躍り出た。

「おーーっと!シンコウウインディさん、最終直線で一気に勝負に出ましたねぇ!」

「模擬レースでも手を抜かないのは見ていて清々しいな」

「後続も続きますが、グングン突き放されるばかり!!これは決まったかーー!」

そのまま後ろに三バ身 四バ身 五バ身と、最終的にウインディは後ろに大差をつけ勝利した。何気にミニロータスはまた二着だった。

「いやぁー!すごかったですねぇ!オグリさん!」

「うん。これからも頑張ってほしい子達ばかりだった」

実況の二人がそう言っている間に、ウインディはこちらに駆け寄り腕をガジガジして来る。

「楽しかったか?」

オレがそう聞くとウインディは腕から口を離し

「楽しかったのだ〜」

と笑顔で言う。すると

「ムキィー!悔しいーー!!」

と後ろから聞こえたので何事かと振り返るとミニロータスが地団駄を踏み、彼女のトレーナーがそれを宥めていた。

ウマ娘というのは走るのが好きだ。

そして、トレセン学園に入るような競争ウマ娘は大抵負けず嫌いなところがある。

模擬レースとは言え勝負は勝負。負けて気分が良くなるものではないだろう。

ミニロータスはウインディに気づくと、あちらに歩いて行ってしまった。

彼女のトレーナーがこちらに歩み寄って来て言う。

「次は負けねーぞ」

「ミニロータスも同じことを?」

「いや、アイツは勝ってから言うってさ」

「そうか」

「じゃ、言いたいことは言わせてもらったからな」

そう言うと、ミニロータスのトレーナーも彼女の後を追うように歩いて行った。

幸い、と言うべきか他ウマ娘達のデータは粗方取れた。

誰が注意すべき相手か、逆に誰が与し易いか、作戦の傾向や勝負を仕掛けるタイミング、ジュニア級出走レースでのそれらと比べ、どの程度精度が上昇しているか、それを元にしたこれからの伸び代等、判断材料は山とある。

本当に色々と今後が楽しみである。

そう思いながらオレは目をキラキラさせているウインディの頭を撫でた。

「のだ〜♪」

 

「フフッ、実に興味深いなぁ」

あっ、いたのね君。

 

 

ふっふ〜ん ラクショーだったのだ〜

 

油断はしないようにトレーナーに言われたけど

 

トレーナーの言うことなら間違いないのだ〜♪

 




スペちゃん可愛い。
でもウインディちゃんの方が可愛い。
(個人の感想)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんの持ってる獅子舞でガブーってされたい(真顔)

そんで油断してるところを本体に噛まれたい(真剣)


ピリリリリリリ………

かけていたデジタル目覚まし時計が鳴る。

朝である。

とは言え、外はまだ暗いが。

寝巻きを脱ぎ、シャワーを浴び、いつもの格好に着替え、その後コーヒーを淹れるために、お湯を沸かしている間にバターを食パンに乗せてトーストを焼く。

ちんまいサラダや使いかけのジャムを冷蔵庫から取り出して食卓の上に置き、順々に出来次第、トーストやコーヒーも置いていく。そしていただきますもそこそこに朝食を平らげて、パソコンを広げ、出勤時間までデータと睨めっこするのがオレの平日朝の日課だ。

そんな最中である。

ピンポーンとインターホンが鳴る。

こんな早朝になんの用だろうと不思議に思い、出てみると先輩トレーナーが立っていた。

「岡本くん?ちょっと良いかな?」

そういう先輩は困り顔である。

何でもウマ娘が訪ねて来ているとか。

「だーかーらー!!トレーナーを呼んで欲しいのだー!!」

「だからどのトレーナーかな?」

「ウインディちゃんのトレーナーって言えばわかるのだー!!」

「って言われてもなぁ……」

何やら可愛らしい声がトレーナー寮の一階の方から聞こえるではないか。

因みにオレのトレーナー寮での部屋は階段のすぐそばだ。

「まあ、そういう訳なんだよね」

先輩は苦笑いである。

「すぐ行ってあげてもらえる?とりあえず相手してくれてる警備員さんにもお礼は忘れずにね」

そう言うと先輩は自室に戻って行った。

すぐに階段を降りて玄関に向かうと、今にも中に入りたそうなウインディと慌てた様子の警備員さんが入れろ入れないのやりとりをしていた。

オレに気づくとウインディはパァッと明るい表情になり駆け寄ってくる。可愛い。

オレは警備員さんにお礼と会釈をすると事情を聞く。

「ウインディ、こんな早くからどうしたんだ?」

「トレーナー!!トレーナーはコイを食べたことあるのだ?」

「?なんで鯉?」

ちゃんと泥を落とした鯉は美味いと聞くが、そういえば食べたことはないな。

「実は……」

「うん」

 

「ねぇねぇ、みんなはコイの味って知ってる?」

「えー、まだそういうのは早いんじゃないかなぁ?」

「そうかなぁ?知っといて損は無いと思うけど」

「で、でも誰とでもって訳にはいかないよね?」

「まぁそうだけどさー」

「のだ?」

「うーん、ウインディちゃんにはまだちょっと早いよねー」

「うん。まぁ確かに」

「それでさー…………」

 

 

「ってことがあったのだー」

ざっくりとだが、話の流れはわかった。

まぁ、確かにクセが強そうで大人の味って言われればそんな気もするなぁ。勝手なイメージだけど。

「うん。なるほど、それは分かったけどなんで朝っぱらからトレーナー寮に?」

その日の放課後にでも言ってくれれば良かったのにと思う。

「最初はあまり美味しくなさそうだなって思って、でもやっぱり食べたことないから気になっちゃったのだー……」

なるほど、それで寝付けずにこんな早起きをしてしまったと。

まぁ、オグリキャップやスペシャルウィークと比べれば目立たないがウマ娘の例にもれず、ウインディも健啖家だしなぁ。

普段頑張ってるご褒美として、ちょっと良い料亭に行くくらいは良いかなぁ。

でもヘンに舌が肥えて、トレーニング用の食事メニューを食べてくれなくなるのも困るしなぁ。

「トレーナー、たべてみたいのだー」うるうる

「あ、もしもし?今度の日曜日なんですが、ウマ娘と男性の二名で予約したいんですけど…」

うん。オレは間違ってないな。

可愛いウインディが泣く方が間違っているのだ(断言)。

 

 

今度コイの味を知ることになったのだー♪

 

いつ?って今度の日曜日なのだ。

 

?みんな、なんでざわついているのだ?




勝負描写を描いた後だと、無性に日常回を書きたくなるのは何故だろうか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

またウインディ新ガチャにいなかったよorz

まぁ、時期的にはフェブラリーステークスあたりに合わせる感じでまだかかるんすかねぇ。


模擬レースを圧勝し、波に乗るオレとウインディだが当然そんな活躍をすればマークされるようになるのは必然。

相手の策に負けないような戦術、トレーニングの練り直しやクラシック級に上がってからの参加レースの調整などをしているところに、アグネスタキオンが何やら封筒を持ってトレーナー室までやって来た。

「やぁやぁ、シンコウウインディのトレーナーくん。お邪魔させてもらうよ」

「君も飽きずによく来るなぁ」

「まぁね」と答える彼女をとりあえずソファに案内する。

「コーヒーと紅茶どっちが良い?」

「では、紅茶で」

ちょっといいお茶っ葉を茶漉し入りのポットに入れ電気ケトルのお湯をポットとティーカップに注ぎ三分待つよう言いつつ砂時計と一緒に机の上に置く。

「しかし、急にどうしたんだ?」

「まぁまぁ、その話は紅茶が入ってからでもいいじゃないか」

そう言い、適当な雑談を交わす。

というか、ほぼ彼女の研究への熱意やら何やらがほとんどで、その間こちらが出来たのはもっぱら話を聞きつつ時たま合いの手を入れるくらいだった。

砂時計の砂が落ち切った頃を見計らって、温めていたカップに紅茶を注ぎ差し出すと砂糖をこれでもかと入れるアグネスタキオンに少し引いた。が、顔はしかめないようにしたつもりだ。

優雅に砂糖(大量)入り紅茶を飲み満足そうに微笑むと、ソーサーごとカップを机に置いて先程の封筒を差し出しながらタキオンは言う。

「菊花賞を見に来たまえ。G1で走ると言うその意味を肌で感じさせると良い」

自身のクラシック三冠、その最後の大舞台をウインディに見届けさせようと言うのだ。

「こないだウインディは一目見てわかるほど未熟とか言ってたような気がするが?」

少し言葉に険がこもるが、当のタキオンはどこ吹く風で

「未熟は未熟さ。だからどう育つのか楽しみなんだよ」

それに、と続ける。

「芝とダートの違いこそあれ、G1レースは生で見ておくに越したことはないと思うがね?」

その言葉に一理あるのは確かだ。

ジュニア級の時にはG1どころか重賞そのものに縁が無いのがダートウマ娘の現状だ。

そのためにじっくり育成出来るという利点もあるにはあるのだが。いかんせん重賞に場慣れ出来ないのは些か問題か。

「しかし、どうしてそこまでウチのウインディに肩入れするんだ?これまで特に面識も無かったんだろう?」

「?肩入れ?別にしているつもりはないがね。」

素でそう言っているのだろう。キョトンとした顔をされた後

「まぁ、元々彼女は色々と目立つところがあったからねぇ。主にイタズラとか」

少々茶化すように、勿体ぶるように言う。

もうタキオンはこういう奴だと割り切った方がいい気がしてきた。

というか、そうでもしないとずっと振り回されっぱなしな予感がしたオレは出来る限り無心になろうと努める。

「それで?」

「まあ、それでこちらに飛び火しない限りは特に気にも止めていなかったんだが、そんな彼女に突然トレーナーがつき、あまつさえほぼ代名詞になりかけていたイタズラもしなくなったというじゃないか。後者以外という限定でだが、まるで昔の自分を見ているようでね。これで気にするなという方が無理だろう?」

それを肩入れしてるって言うんじゃないか?というのは野暮か。

それとタキオンの実験はともすればウインディのイタズラより悪質だろうと思ったのは内緒だ。

「昔はダートにも三冠と呼べるものがあったそうだが、三つのうち二つがG1クラスでなかったこと、そして当時あまり盛り上がらなかったことを理由に無くなってしまったそうでね」

「確かに、その話はたびたび聞くな」

一つはG3ユニコーンステークス、一つはG1ジャパンダートダービー、そして最後の一つがG2スーパーダートダービー(後のスーパーチャンピオンシップ)だ。

ちなみに三つ目のスーパーダートダービーは当時のダートの不人気が祟って大会規模を縮小したのち廃止になったとか。

そんなわけで、芝でいうクラシック三冠やトリプルティアラといったものが現在のダートでは特に定められてはいない。

盛り上がりに欠けると言われる所以の一因はそこにあるのだろう。

三冠ウマ娘、トリプルティアラウマ娘と聞けば誰もがすごいと称賛する。

実際すごいし、それを達成できるのはほんのひと握り、いやひとつまみいるかどうかか。

それが無いのは客観的に見て、影が薄く見られても仕方ないだろう。

盛り上がらないから廃止にせざるを得ない。

レースを廃止にするから人が集まらない。

人が集まらないから、盛り上がりもしない。

まぁ、典型的なデフレスパイラルだな。

卵が先か鶏が先かという話になってしまうが、根本はそこだろう。

維持費や大会運営費用だってバカにはならない。

採算が取れないなら廃止になるのもやむなし。というのはあまりに大人の事情が透けて見え過ぎるが仕方ない面もあったのは確かか。

そう言った意味でも、やはりスマートファルコンの実績は偉大だと再認識させられる。

ダートがマイナー扱いされ、やがて芝を諦めたウマ娘達が最後の頼みの綱としてやっていたという認識だったダートレースを、再び一大コンテンツとして復活させたのだから。

「まぁ、来るかどうかは任せるさ、最前列の一等席だ。売ればそれなりにもなるだろうさ」

「いや、売らないよありがとう」

「そうか、なぁにお礼なら研究の協力で結構だよ」

そう軽口を叩いた後、アグネスタキオンはスッと立ち上がりトレーナー室を後にした。

「えーっと、菊花賞の日の予定は……」

十月二十四日、空欄。それが意味するところは

「京都でウインディが好きそうなもんってあったっけなぁ……」

圧倒的な努力と才気の爆発を目撃するということだった。

 

 

お〜コレすごいのだ〜♪

 

コレぜったい勝負服につけるのだ〜

 

このガブガブ〜♪

 




ウマ箱 特典のウマ本も面白いネッ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

駿大祭イベ、なんとかストーリー全開放出来ましたわ……

会長の新衣装かっこいいね。
回してないけど。


東京都府中にあるトレセン学園最寄りの府中駅より電車で数時間、途中で何度か乗り換えを挟んでたどり着いたのは京都レース場の最寄駅である淀駅だ。

なお、最初の方はしゃいでいたウインディは途中で駅弁を食べて満腹になったのかそのまま寝てしまい、起こすのも忍びなかったので乗り換え時はおんぶである。可愛い。

京都レース場についたオレとウインディは、外の屋台で買った焼きとうもろこしや飲み物を手にチケットに指定された席に着く。

やはり三冠の最後の舞台だけあり、観客も満席。

今年こそは三冠ウマ娘の誕生を見届けたいのだろう。皆一様にざわついている。

それだけでも、チケットをもらわなければ立って見ることになっていただろうことは想像に難くない。

隣に座るウインディはとうもろこしをニコニコしながら頬張っている。可愛い。

オレも自販機で買った缶コーヒーを飲みながら開幕の時間を待つ。

今回はデータを取ることよりも、ウインディに直にG1の空気に触れてもらうことが目的であるためいつもよりは気楽である。

無論、何かの役に立つかもしれないので取れるデータは取っておくが。

テンションが上がっているウインディをかまっていると時間になり、レースが始まる。

十月二十四日、京都レース場。間違いなく今日の目玉であろう第十一レース菊花賞が始まるファンファーレが鳴る。

天気は秋晴れ。バ場状態は良。気になる点としては内側がやや荒れているくらいか。

「一番人気はやはりこのウマ娘。二冠ウマ娘、アグネスタキオン。」

「月桂杯の参加をドタキャンしたことを咎める声はありましたが、流石の実力ですねぇ」

その会話で始まった菊花賞は、正に彼女の独壇場だった。

研究者のような白衣の勝負服を纏い、駆け抜ける様は正に圧巻の一言だ。

ゲートが開き、出遅れは無し。立ち上がり、序盤、中盤、最終コーナーに至るまでまるで隙がない途中にあった有名な淀の坂も問題無く突破する。

距離、芝の状態、坂や天気、対戦相手のペース配分やそのタイミング、得意とする戦術、苦手とする戦法全てを何度も何度もシミュレーションしてきたのだろう。そうでなくてここまで走れるならそれは神か悪魔くらいのものだろう。

レースは進み二番手との差が広がり、最終コーナーでさらに突き放す。

最前列の席にいる俺たちに気づいたのか、チラリとこちらを見やり、ニヤリと笑うと再び正面を見据え最終直線を駆け抜ける。

「誰も近寄れない!誰も寄せ付けない!アグネスタキオン、格の違いを見せつけてゴールイン!!」

「これまで中距離ばかり走っていたので、距離適正が不安視されていましたが、それを払拭する走りを見せてくれましたね」

「他のウマ娘も決して弱くは無いのですが、それを差し引いても余りある脚を見せてくれましたね」

「すごいな…」

三冠ウマ娘とは、その素養とは、かくも凄まじいものか。

何せ周りの強豪ウマ娘を軒並み赤子扱いだ。

しかし、先程アナウンサーが言っていたように他のウマ娘も決して弱いわけではない。

中央のトレセン学園に在学する選りすぐりの二千近い生徒の内、綺羅星のような才能と文字通り血の滲むような努力の果てに三冠の舞台に選び抜かれたのが今日走った彼女ら、十八名だ。

その中でアグネスタキオンは勝利をして見せた。

三冠の重圧にも負けず、己の力を出し切り栄冠を掴んで見せた。

長いレースの歴史の中で三冠を期待されていたにもかかわらず、無念にも二冠に終わってしまったウマ娘も決して少なくはない中でだ。

そう言った意味でも、今年の芝の主役はまず間違いなく彼女だろう。

「…確かに、これは良い刺激になりそうだな」

隣のウインディを見てそう思う。

屋台でたくさん買った焼きとうもろこしはすでに平らげ、ギラギラとした闘志、その炎が眼に映っているかのようでその体は武者振るいに震えている。

今にも駆け出したくてウズウズしていると全身で訴えかけてくる。

「トレーナー!!」

「うん。ウイニングライブが終わったら学園に帰ってすぐにトレーニングをはじめようか」

「のだ〜♪」

頭を撫でながらそう言うとウインディはグイグイと頭を押し付けて来た。可愛い。

やっぱりオレは、君に勝って欲しいよ。

そう思い、オレは彼女の頭をさらにうりうりするのだった。

 

 

 

ふっふ〜ん

 

なかなかやるのだ〜

 

でも、ウインディちゃんとトレーナーほどでは無いのだ〜♪




ブライアンは何故スタミナなんだろ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

冷蔵庫のなすが全滅してましたが、ウインディちゃんの可愛さに比べればなんてことは無いのです。

UA37000
お気に入り410
たくさん見て頂けて感謝すると同時に驚いております。
ありがとうございます。


 

ウチのウインディは、月に数回(主に暇すぎる時)にイタズラをしたい衝動に駆られるらしい。

なんでも、最初は構ってちゃん作戦だったのが次第にどハマりしてしまい、クセになってしまったと言う。

だからオレはウインディにその衝動に駆られたらオレにのみイタズラをするよう言い、他の人やウマ娘にそれをしようとすれば、心を鬼にして怒ったものだ。

とは言え最初はほぼ毎日、徐々に三〜四日に一度、そして週二、三回と回数を減らし今の月に数回と言うのに落ち着いたのだから、これでもかなり丸くなったというか、減った方だ。

他所様に迷惑をかけるわけにはいかないからね。べっ、別にあのかまってちゃん攻撃がクセになってる訳じゃないんだからねっ!(謎のツンデレ)

ちなみにであるが、何故いきなりこんな事を言っているのかと言うと。

「エッサ、ホイサ、ふっふーん。ここはトレーナーの通り道、絶対に引っかかるのだー♪」

目の前で何やら楽しそうに落とし穴を掘っているウチの可愛い担当ウマ娘を目撃したからだ。

なお、現在は近くの茂みに隠れて見守っている。

まぁ見たところ引っかかったところで何か怪我をするでも無し、ハシゴや脚立を持ち込んでいない時点で自力で出られるくらいの深さにしかならないだろう。仮に出られなくなったとしたら、さりげなくかつ即座に助けに行けるように見守る意味もあるのだ。

そもそも、この時のウインディの目的はイタズラにはめることそのものであり、落とし穴の深さやらはこの際関係ないため、結果的に安全性は増しているので、オレとしても気兼ねなく可愛いイタズラを見守っていられると言うのもある。

なお、この道をいつも朝一番に通るのはウインディも言っていた通りオレである。

というか、そのことを教えたのオレだし。

と言うか、ウインディはイタズラ癖が発揮する時はあからさまにソワソワするし、ハッキリ言ってわかりやすい。そこもまた可愛いのだが。

もうじき催される駿大祭の準備期間に、コレを放っておけば要らぬ被害が生まれるかもしれないしヘンな話、こういうイタズラはオレとウインディにとってある種のコミュニケーションにもなっている。

「おい、どうした?」

「!?」

後ろから声をかけられる。

一瞬ビクッとなったが、できる限り音を立てないよう振り返ると、そこには沖野先輩が立っていた。

「お前、今側から見たら完全に不審者だったぞ?」

そう言い、オレが何を見ていたのか気になったのだろう。身をかがめながら道の方を見る。

「………いつものか」

そう言うと先輩はため息をついて

「ほどほどにしろよ〜」

と言い、特に何を言うでも無くグラウンドの方に向かって行った。

本当に何があるのか気になっていただけらしい。

イタズラを完全に辞めさせないというオレの方針には特に何か言ってくる訳でもなかった。

そもそもの話、沖野先輩もゴールドシップという特急の暴走列車をチームメンバーに加えている(というか、チームスピカ最古参らしい)ので分かる苦労なのかも知れない。

改めてウインディの方を見遣ると、何やらバケツで水を落とし穴に入れていた。

なるほど、プールのようにしたいらしい。

でも、それだと土に水を吸われるんじゃ無いかなぁ。なんて呑気に思いつつウインディを見守る。

満足げに頷くウインディが、葉っぱを敷き詰めて落とし穴を隠す。

土の色が全然違うが、そんなことを気にするほどウインディは小さい器では無い。

ニシシと笑うウインディを横目に、オレはトレーナー寮の方へ向かう。

荷物を取りに戻るためでは無い。

さり気無く落とし穴にハマるためである。

大丈夫だ。着替えは持ってきている。

可愛いウインディの笑顔を見るためならばこのくらい安いものだ。

水を土が吸収し切る前に、オレはダッシュで来た道を戻り、支度をする。茂みに隠れたのであろうウインディが今か今かとワクワクしている道を通るために。

 

 

フッフーン。カンペキなのだ〜♪

 

ウインディちゃんは天才なのだ♪

 

まだかなまだかな〜 ソワソワ

 




ネタはあるのにサブタイが思いつかない……orz


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんのグッズが早く出ますように。

昨日久々にアキ○イターをやったらウインディちゃんを知ってて嬉しかったです( ´ ▽ ` )


 

秋という季節は、いろいろな側面を見せてくれる。日差しがさほど暑くないことから読書の秋、涼しくて動きやすいからスポーツの秋、美味い食べ物が豊富なことから食欲の秋などがそれだ。

天高くウマ娘肥ゆる秋。

この場合の肥えるとはただ太ると言う意味ではなく、ウマ娘にとってそれだけ過ごしやすく食欲とやる気に満ち満ちているということらしい。

なお、中には本当に食べ過ぎて体重管理が行き届かなくなる子も居るとか居ないとか。

そんなことを考えながら、オレはトレーナー室の椅子に腰掛けなんと無しに窓の外を見る。

見事な紅葉に色づいたトレセン学園の木々は思わず感嘆してしまうほどだ。

なんなら休日には、トレーナー寮の窓からこの景色を眺めつつお茶でも啜れば気分も盛り上がろうと言うもの。

そんなことを考えているといつものようにドタドタと足音が聞こえ、ふと振り返ればウインディが扉を勢いよく開けて言う。

「トレーナー!一緒に駿大祭をまわるのだ〜!!」

慣れってすごいね。そしてウチのウインディは今日も可愛い。

しかしひとつ疑問が残る。

「いやウインディ同級生ちゃん達とまわるって言ってなかった?」

そう言うとウインディはしょんぼりした様子で

「ん〜、なんか他の子達も自分のトレーナーとまわるって言ってたのだ〜」

と言う。

「そりゃまたなんで?」

「なんか、みんなでウインディちゃんに続けとかなんとか言ってた気がするけど、詳しくは聞いてないのだ〜」

ちょっとこわかったのだと言うウインディは少しぷるぷるしている。可愛い。

「そっかー」

う〜ん謎だなぁ。

ウインディの頭をうりうりしながら考える。

ウインディに続けって、別にオレはウインディに特別なことをしているつもりは無いから、なんかねだろうってことでは無い気がするし…もしくはイタズラとか?まさか各ウマ娘達が担当トレーナーにイタズラを敢行しようとしているとかか?

たぶん無いとは思うし、ウインディに続けってことは数人が一斉に動くと言うこと。

しかし、ウマ娘達にとって大切な駿大祭をわざわざ台無しにするようなことは流石にしないだろうし…………まぁ、考えても仕方がないか。

よその事はよその事。ウチのことはウチのこと。

彼女の目論見(と言えるほどのことかはさておき)切り替えは大事だ。

仕事もちょうどひと段落したところだし、息抜きにもちょうどいいだろう。

「じゃ、ウインディまわろうか」

「のだ〜♪」

手を伸ばすとウキウキ顔が更にパァッと笑顔になったウインディが手を繋いでくる。可愛い。

「まずはどこに行こうか」

有名どころで言えば元祖にんじん焼きやら、曳き神輿、奉納舞に流鏑メと見るべきものは沢山ある。

中でも三女神様に捧げる奉納舞と流鏑メの二つはトレセン学園がURAから担当を任された名誉あるものだ。

前者はゴールドシチーにカレンチャン、そしてユキノビジンという配役。

注目度やダンスの技量的にも問題は無いだろう。

後者は生徒会から二名、シンボリルドルフとナリタブライアンが参加する。

いずれも抜群の運動センスを有していることからも適任過ぎるほど適任だ。

どちらもなるほどと納得させられる選出だったと言える。

しかも後者は現代に合わせ、形だけ残したような霊山前の的を矢を射るだけのものではなく本来の形、何でも篝火が消えるまでの間に二人で山中の的を全て射抜くという内容で行われると言う。

どちらもわざわざ毎年駿大祭のために稽古合宿を組むほどと言うのだから、その力の入れようは疑いようもない。

「まずは焼きとうもろこしなのだ〜!」

そう言って元気よくオレを引っ張るウインディはいつに無く元気に満ち満ちて目も輝いているように感じた。

 

 

焼きとうもろこしウマウマのだ〜♪

 

お神輿ウインディちゃんも担ぐのだ〜

 

ふおおお〜!流鏑メカッコイイのだ〜!!




シングレ五巻はよ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

誰かウインディちゃんの子分になる方法を教えて下さい。

なんやかんや、書き始めて一ヶ月。
読んでくださった皆さんに感謝です。


ウチのウインディとそれなりに仲の良いウマ娘はクラスメイトちゃん達の他に、オレの思いつく限り二人ほどいる。

一人はオレとウインディが出会った時もそしてそれ以降もウインディがちょくちょく注意をされていたヒシアマゾン。そしてもう一人が

「ビコー!鬼ごっこするのだー!」

「おおー!ウインディ先輩!一緒に困ってる人を助けてくれるのか?」

「ちーがーうーのーだー!」

今ウインディと絡んでいるビコーことビコーペガサスだ。

ウインディのトレーニング中たまたま通りがかった公園で彼女を見かけ、ちょうどトレーニングもキリが良かったのでいったん休憩にしようと言ったら嬉々としてウインディがビコーペガサスを遊びに誘ったはいいがそのまま彼女のペースに巻き込まれてしまった。と言うのが今回のことの顛末だ。

彼女はテレビに出てくる正義の味方キャロットマン(おそらくウマ娘)に強い憧れを持っており、そのためトレーニングの合間に人助けやレースに向けて必殺技の考案をしているほどだ。

というか、ウマソルジャーV(ファイブ)と言うトレセン学園で子供向けに作られた戦隊特撮でリーダーもやっていることから、そのヒーロー好きは筋金入りなのだろう。

因みに他の四人はサクラバクシンオー、ハルウララ(共にピンク)セイウンスカイ(ブルー)、サイレンススズカ(グリーン)で、ヒシアマゾンは司令役をやっている。

なお、悪の科学者役は案の定と言うべきかアグネスタキオンである。因みに彼女も結構ノリノリだった。

そして、その強い正義感と裏表の無い人柄ゆえに意外と顔も広い。同じ短距離ウマ娘のサクラバクシンオーやヒシアケボノ、天才少女と名高いマヤノトップガンと一緒にいる所もよく見るし、そしてヒシアマゾンともちょくちょく交友があるようだ。

小柄な体格ながら、芝短距離にて活躍を期待されるホープでもある。

ウインディはどうやら彼女と仲良くなりたいようだが、どうにも素直になれないらしい。

彼女と別れ、トレーニングを終えてトレーナー室の机にぐでーっと寄り掛かって落ち込んでいるのがその良い証拠だろう。

「ウインディ、友達になりたいならそういえばいいんじゃない?」

「違うのだー!アイツがウインディちゃんの友達にどーーーしてもなりたいって言うならしてやってもいいってだけなのだー!!」 

ガバッと起き上がってそう言ったウインディの頬は膨らんでいた。可愛い。

「そっかー」

と言いながらオレはウインディにスタスタと歩み寄る。

まあウチのウインディはちょっとばかり不器用で素直じゃないところがあるからなぁ。

向こうも向こうで慣れっこだろうけど。

「ウインディ」

座っているソファーの後ろからそう呼びかけるとウインディはこちらを向く

「よ〜しよしよしよしよしよしよしよしよし」

「のだ〜♪」

ご機嫌取りにうりうりしたら、いつものウインディに戻ったようだ。可愛い。

うーむ、慣れればこの通り素直ないい子なんだがなぁ。

「ウインディ、ご飯食べに行くか?」

ちょうど良い時間だし、気分転換も兼ねてたまには外食も悪くは無いだろう。

外出届を出せば、すぐにでも出かけられるはずだ。

「わーい、トレーナーとごはんなのだー♪」

うん、ウインディも乗り気だしそうするか。

ちなみに鯉料理はしばらくはいいらしい。

まぁ、たらふく食べてたしなぁ。

そんなことを思いつつ支度を済ませようと席を立った時

コンコン、ガチャ

ノックと共にトレーナー室の扉が開く。

「すまない。次の並走トレーニングの件だが…」

そう言って入ってきたのはオグリキャップ。

オグリキャップ!?

確かに彼女との並走トレーニングは滅多にできないため、可能ならば連絡を入れて欲しいとは伝えたがまさか本人が直接やってくるとは。

なんと言うことだ。まさかメシの話題をして、今まさに出かけようと言うときに彼女に出くわすとは。彼女の健啖ぶりはそれこそ有名なのに。

「む?ウインディ、なにやら上機嫌だな」

そしてウインディの方に目を向ける。

「エヘヘ〜、実はコレからトレーナーとごはんに行くのだ〜♪」

「む…そうか、邪魔だったか?」

え、あ、うん、はい。とは流石に言えず、どうしたものかとオレは思案する。

するとご機嫌なウインディは

「フッフーン、なんならオグリも一緒に来るのだ〜?」

なんてことを言い出す。

ちょっとウインディちゃん?

「良いのか?」

何故だかオグリキャップの方も乗り気である。

いやちょっと……

そう言おうと思った矢先

「トレーナー、良いのだ〜?」キラキラ

「任せんしゃい(即答)」

そう言ってしまったが後悔は無かった。

仮にミストレセン学園という催しがあれば全ての賞を総ナメしてもおかしく無い笑顔である。

いや、出来なければそれは審査員の目がふし穴か、カネで買収されたかのどちらかだろう。

そうに違いない。

二人に外出届を書いてもらう間、オレは車を回す。

「途中、ちょっと銀行寄るな〜」

お金下ろさなきゃ。流石に三人前(内一名は大食漢)では手持ちが不安だしなぁ。

「はーいなのだ〜」

「うん、わかった」

二人とも素直である。

そうしてたどり着いた銀行の入り口に向かうと、ウィーンと自動ドアが開く、いや、それ自体は不思議ではないが……

「…………」

「…………」

ドンヨリとした雰囲気でどこか遠い目をした沖野先輩が出て来た。そして目が合った。

「あの…先輩…」

オレが言葉に詰まると

「皆まで言うな…」

そう言ってオレの肩を叩く。

「オレ達、何か悪いことしましたかねぇ?」

「さぁなぁ」

そう言う先輩と見上げる空は憎たらしいほどに青かった。

 

 

ムグムグ

 

焼き肉おいしいのだ〜♪

 

おばちゃーん、とうもろこし追加なのだ〜♪




トレーナーくんは少し混乱しております。
皆さんはご自身の推しを胸を張って堂々と推して下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

みんなはうまよん予約したかな?

うまよんでは勝負服でしたが、今回は衣装を着てやってもらってます。


トレセン学園では様々なイベントが生徒達自身によって、企画・実行されている。

無論、理事長及び生徒会の認可は必要だが余程の内容でも無ければ大抵は前もって言っておけばOKが出る。

そして、今回は催しのためのショーの試写会である。

見学は希望者を募るとのことだが、実際に集まったのは本番に負けず劣らず満員御礼である。

「ここは大阪ナニワの街、そこに現れたのは巨大な怪人!!一体どうなってしまうのか〜!?」

軽快な語り口で舞台の説明をするはトウカイテイオー。自他共に認める天才児で、シンボリルドルフ大好きっ娘である。

「わーっはっはっは〜!!あっちこっちウインディちゃんが噛み付いて歯形だらけにしてやるのだ〜」

続いて街で暴れる怪人役はご存知可愛いシンコウウインディ。両手に獅子舞を持ち、本体も唐松模様の布をマントのように纏って、大きな獅子舞の口の中から顔をのぞかせている。着ぐるみ姿も超可愛い。

「待たんかーい!!」

突如としてライトアップされた高所に人影が映る。

「響き渡るは大音声。通天閣の上に颯爽と現れたるアイツは何者だー!?」

「たこ焼きお好み二度漬け禁止、ナニワの平和はウチが守る!!ツッコミ武装ジャスティスクロス見参やでー!!」

勝負服と同じ赤と青が基調となったヒーロースーツに身を包むタマモクロス、もといジャスティスクロスがやって来た。

うおおおおおおお!!!

タマモセンパイカワイイーーー!!

抱っこしたーーい!!

会場は大盛り上がりである。

「やいやい怪人!大人しくお縄につくかウチにボコられるか好きな方選びやー!」

「フッフッフー、そんなこと出来るのだー?」

役になりきっているのだろうウインディがニヤリと笑う。

「噛みつき怪人ウインディ、何か秘策があるというのかー!?」

会場のボルテージに合わせ、トウカイテイオーも盛り上がっている様子。

「じゃーん。コレなんなのだー?」

「そ、それはーーー!?」

目を見開きソレを見つめるジャスティスクロス。

「あーっとアレは二度漬け禁止の串カツソース!!ま、まさか…」

「そのまさかなのだーー!!」

そういうと、ウインディはいつの間にか手に持っていた串カツを一口齧り、高笑いをしながらジャブジャブとソースにつけ出した。楽しそうで何より。

それを見たジャスティスクロスはぷるぷると震え出し、一喝。

「二度漬けは禁止やって登場する時も言ったやろがーー!!」

通天閣の上にいたジャスティスクロスは飛び蹴りをお見舞いしようとする。

「わーっはっは〜っムダムダなのだ〜」

ヒラリとかわすウインディ。

「更にこれに〜」

「おーっと!どこから取り出したか、ホカホカのたこ焼きを持ち出したー!!」

「しょうゆをかけてやるのだーー!!」

「おい!それは邪道やろがーー!!」

何故だろう。ジャスティスクロスから若干、素が出ている気がする。

「わーはっは〜美味ければいいのだーー!!」

そう言ってたこ焼きを平らげるウインディである。うん。今日のトレーニングは少し追加かな。

「そして、最後はこうなのだーー!!」

そう言うとウインディは、ジオラマの大阪の街に噛みつきまくる。

なお今回は噛み付くと言う演出上、ジオラマは口に含んでも問題のない素材でできている。

そのため、一部少し脆いところがあるが。無論そこは演者側にも説明されている。

「くぅっ、このままじゃ大阪がウインディに食われてまう」

「わっはっはー!!ウインディちゃんはムテキなのだーー!!」

そう言うウインディは誇らしげである。可愛い。

「やけど、正義は負けんでーー!!」

そう言うと飛び上がり、今度こそ飛び蹴りを命中させる。

「お、覚えてるのだーー!!」

そう言ってドタドタと逃げ出すウインディである。

「おおーっと!!正義の一撃が怪人から街を救ったぞーー!!」

「正義は勝つんやでーー!!」

うおおおおおおおーーー!!!

タマモセンパイカワイイーー!!

アーンしてあげたーーーい!!

このようにして、試写会は大反響に終わった。

オレはこの後のトレーニングのため、ウインディを迎えに行く。

「ウインディ、お疲れ」

会場から出てきたウインディはにこやかだ。

「トレーナー。ウインディちゃんカッコよかったのだー?」

「うん。サイコーだったよ」

「エヘヘーなのだー」

そう言ってウインディはオレの隣に来る。

「よしよし。トレーニングも頑張ろうなぁ〜」

「分かったのだ〜♪」

そう言うウインディに、周りは驚きの表情を浮かべていた。

 

 

エヘヘ〜

 

カッコよかったって褒められたのだ〜

 

本番でもレースでももーっとカッコよく活躍しちゃうのだ〜♪




ウインディちゃんはアク役でもかわいいな!!
なお、ジャスティスクロスの口上は筆者の思いつきです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あ〜ダメダメ可愛すぎます。

あれ?ウマ娘作品なのにレース描写が全然ないぞ?
ゴメンネ!!


 

ある秋の日の夕方。

ウチのウインディは今日の分のトレーニングメニューを終え、着替えに向かうところだ。

「のらぁ〜」フラフラ

少しキツイ内容にし過ぎただろうか。

これまでのトレーニングだと退屈だと豪語していたから少しばかりトレーニングのレベルを上げてみたのだが。

疲労のため、おんぶしているウインディに聞く。

「ウインディ、大丈夫か?」

「う〜、へっちゃらなのらぁ〜」

疲れからか語尾が若干舌ったらずになっている。可愛い。

「そんなキミに疲労回復の薬をあげようか。何礼はいいよ。今のところはね」

うわでた。今グラウンドに誰もいなかったよな?

「あー、アグネスタキオンさん?そっちはそっちでトレーニングなり作戦会議なり、なんなりあるんじゃ無いの?」

オレは気になったことを問う。

出る出ないは別として、もう時期的に天皇賞秋やジャパンカップと言ったG1が目白押しなのだ。出走はしないまでもデータ集めにこれ程適したレースもないだろうに。まず間違い無く出るだろう有馬記念が決して遠くない時期にもあるという大事な時期に彼女のトレーナーが見当たらないのはどういうことだろうか。

「ああ、なんだそんなことか。その辺りの調整は問題ないよ」

「そりゃまたなんで?」

「まあ、ウチにはそこそこ優秀なモルモット兼助手がいるからね」

アグネスタキオンは、すこしニヤニヤしながら意味深にそう言う。

「それ、もしかしなくてもキミのトレーナーのこと?」

「まぁね」

少し、いやかなり意外だ。

「なんだ。なんやかんや言いつつ、キミも自分のトレーナーを信頼してるんだな」

「やれやれ何を言い出すかと思えば、そんなことは当たり前だろう」

そう言いつつ実験自慢なのか、後輩への叱咤なのか色々とないまぜになっただろう言葉を彼女から聞く。特に彼女のトレーナーに関しては「卒業してからも世話をしてもらう」発言などはもう遠回しに気に入ったモルモットだと言っているようなもので、どんだけ研究好きなんだよと思うが。

まあ、趣味嗜好はウマ娘それぞれ。事情も知らずに第三者が好き勝手に否定の言葉を喚き散らかすのは違うと思うし、そもそもの話、彼女とトレーナーの関係性についてオレがとやかく言うことでも無いだろうし。

歩きつつ話していると、目的地である更衣室前に着く。

「ウインディ、待ってるから着替えて来な」

「分かったのらぁ〜」

ウインディが背中からのそのそと降りて更衣室の中に入る。

言いたいことを言ってスッキリしたのか、アグネスタキオンは例の疲労回復薬を渡すとさっさと帰って行ってしまった。曰く「新たな可能性の探究」とのことだ。

特にできることもないので更衣室前のベンチに座って待っているとガチャリとドアが何度か開く。

着替え終わったウマ娘達が出て来る度にウインディかなと思ってチラリと見るが違う顔と知ると、なんの気無しに夕焼けの空を見上げる。

覗きだと思われても嫌だしね。

すると少しして「あのっ、ウインディちゃんのトレーナーさんですよね?」

と声をかけられる。

視線を落とすと、そこにはウインディのクラスメイトちゃん達がいた。

オレと目が合ったのを確認すると彼女らはおもむろに少し寂しげな顔をして

「ウインディちゃんのこと、大事にしてあげてくださいね」

「ウインディちゃん、少し…いや結構アホの子だけど、トレーナーさんなら安心できるよね」

「トレーナーさんがついてから、ウインディちゃん結構丸くなったしね〜」

そう言うクラスメイトちゃん達は、なんだろう。

ウチの姉貴(ヒト娘)の結婚報告の時の姉旦那(エリートサラリーマン)に対するウチのお袋と同じような顔をしていたような……。

…………気のせいだな!!

クラスメイトちゃん達はそれだけ言うとタタタっと駆けて行った。

まぁ、確かにウインディはオレにとって大切な人生初の教え子だが。

ほっとけないし、可愛いし可愛いし可愛いし(大事なことなので三回言いました)。

そもそも学園にとって大事な生徒であるウマ娘とそんなことになっていればまず間違い無く理事長やたづなさんの耳に入るハズ。

しかし、そのどちらからも今のところ通常業務外でのやり取りはない。つまりはそれほど気にする必要もないということだ。

…………今のところは。

何の気無しに改めて空を見上げる。というか、ここではそのくらいしかできることが無い。

仕事道具のパソコンもトレーナー室に置いてあるし、携帯の充電も残りわずかでいじる気にもならない。仕事のメールでも来ない限りは。

とは言え、別に物悲しい思いに耽っていた訳ではない。

栗に芋にブドウ。キノコに秋刀魚と、この時期は美味いものが多い。

それをウインディと食べるとなおさら美味い。

栄養バランスは考えるが、基本的に食事は楽しいものだ。

前も言ったと思うが、華やかな食事はそれだけで心の栄養にもなる。

なんてことを考えていると

「だ〜れなのだっ!」

「このカッコいい声はウインディだなっ!」

そう言って振り返ると、にこやかなウインディが立っていた。

「トレーナー!お待たせなのだ〜」

「おう。しっかしさっきのは何だったんだ?」

思った疑問をそのまま伝える。

「のだー。何かクラスメイトがトレーナーさんにやって見たらって言ってたからやってみたのだ〜」

「そっかーそれでどうだった?」

そう聞かれたウインディは、うーんと少し悩んだ後

「やっぱりガジガジしてた方が楽しいのだ〜!」

そうウインディはにこやかに言った。 

「そういやぁ出て来るのちょっと遅かったけどどうしたんだ?」

「足ツボマッサージやってもらってたのだ〜」

上手い子がいるのだー。というウインディにいつもながら癒される。

「そうか。それとアグネスタキオンからコレ貰ったぞ」

そう言うとオレは怪しく光る試験管を差し出す。

「おぉ〜、何やら強そうなケハイがするのだぁ」

そう言うとウインディはオレの手から試験管を受け取り特にためらいなく中身をガブ飲みする。

するとウインディの顔が苦々しいものとなる。

「まじゅいのだぁ」

「スポーツドリンク飲むか?」

「飲むのだ!!」

スッと差し出したペットボトルを引ったくるように受け取って再び勢い良く飲み始める。

お腹がたぷたぷにならなければいいが。

ウインディと美浦寮の前で別れて、オレはトレーナー寮に戻り今日の分のトレーニングの成果やこれまで、そして今後の伸び代のビジョンを組み立てる。これを怠ると、どう言ったトレーニングが向いているか向いていないか、得意な分野や不得意な分野についてなどが分からなくなってしまうため、地味ながら大切なことだ。

日々の積み重ねは地道だからこそ結果が出た時の喜びもひとしおと言うものだ。

気がつくと、窓の外はすっかり暗くなっている。

少々打ち込み過ぎたか。

腹も減ったし夕飯でもと立ち上がると

ピピピピ、ピピピピ。

と充電器に差しっぱなしの電話が鳴る。

ん?こんな時間に誰だろう?

 

へ?たづなさん?

 

 

トレーナーにカッコいいって言われたのだ〜♪

 

わかってるのだなー。

 

エヘヘ〜♪

 




ウインディちゃん好きが増えて来て嬉しすぎる今日この頃であります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

また芝か……

トーセンジョーダン来ましたねぇ。
……ダート来なさ過ぎと違う?


 

ここはトレセン学園理事長室。

オレは昨夜、たづなさんからの呼び出しメールで朝イチでここに呼び出された次第。

「では、やましいところはないと?」

「当たり前じゃないですか」

なんでも、生徒たちの噂からオレとウインディの間に何かあるのではと思い、呼び出したのだとか。

なお、この部屋の主たる理事長は目を閉じてことの顛末を静かに聞いている。

「ではシンコウウインディさんが本気でそう言った関係を望んだとしたらどうしますか?」

茶化せない空気である。まぁ、茶化す気はないけど。

ウインディのことに関して、オレはいつだって本気である自負がある。

少なくとも目の前の女性は生徒の、そしてオレも含めたトレーナーの将来を本気で考えているからこそ真剣なのだろう。

「そうですねぇ」

オレは顎に手を当てて少し考える。

もし、仮にウインディが本気でオレをこれからも連れ添うパートナーとして必要としてくれるなら。

「それが心からのものならオレとしてもそれなりに考えますし、そのための準備も覚悟もしますよ。どんな結論になるかは置いといてね」

実際、ウインディに今のところそんな気は無いだろうが、可能性として本当にそうなることも無いことは無いだろう。

これはオレの自惚れというよりは、単に彼女自身が高等部という未だ多感な難しい時期であるのも関係している。

どうあれ、友情だの色恋だの、或いはそれ以外でも経験というのは得難いものだ。

だからこそ成功も失敗も、勝利も敗北も、酸いも甘いも彼女には知っていて欲しい。

もちろん、レースに関して言えば、出来る限り成功や勝利に向けて彼女をサポートするし、したいと思うのがトレーナーだと思うが、それでも全てのレースで勝利に導けるか問われると出来ると断言出来ない。情けない話ではあるがそもそもあらゆる勝負には不確定な要素も多いのだ。一番人気が常に一着とはいかないのがその良い証左だろう。

しかし、それでもそれらは必ずこれからの糧になるだろうし。少なくともそれを吐いて捨てるべき無駄と断じるほど愚かではないつもりだ。

なんて、今年になって担当ウマ娘を受け持つようになった新人トレーナーのオレが偉そうに言えた義理でも無いんだろうが。

そんなことをたづなさんに伝えたら、納得したようなしてないような、微妙な表情を浮かべた後ハァと一息ついて言う。

「わかりました。今日のところはここまでです。理事長も場所をお借りしてすみませんでした」

「うむ!大事な生徒とトレーナーのことだ!気にする必要はないぞ!」

理事長はそう言うと手にした扇子を広げて快活に笑う。

彼女もまた、若いながらに様々な苦労や重圧に耐える立場だ。

だからこそ悩める者のいい助言者なのだろう。

でなくば、私財を投じてまでトレーニング設備を充実させようなどとは思わない。

ウマ娘たちのことを本気で応援しているのがその熱意からも伝わって来るのだから、彼女が理事長を務めている学園で仕事ができるのはとても名誉であり幸運であり、また幸福なことだろう。

「ではオレはこれで…」

そう言って退室しようとすると

「少々お待ちを」

とたづなさんに肩を掴まれる。

ヒェッ…いつの間に距離を詰めて来たんだ?さっきまで理事長の隣にいましたよね貴女。

「もし、万が一にでも生徒を理不尽に泣かせることがあれば…分かりますね?」

「ハイ」

オレは反射的にそう言っていた。おっかねぇ。

「よろしい。では今度こそ出て行って構いませんよ」

そう言うたづなさんはいつもの優しそうな様子に戻っていた。

…………とりあえず、いつも通りトレーナー室でコーヒーでも飲んでリラックスしよう。

幸い始業時間までいくらか時間はあるし、今日の分の仕事はそれから始めればいい。

オレは愛読誌である『月刊ダート』を片手に、始業のベルを待つことにした。

 

 

ガジガジ…モグモグ…

 

朝はやっぱりとうもろこしに限るのだぁ〜♪

 

 

 




ダート“も”走れる子なら何人かいるんですけどねぇ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

もう30話ってマジですか!?

ウインディ実装まで、オレは止まらねぇからよ……


 

いつものトレーナー室に、ウインディがやって来る。

「トレーナー、いるのだー?」

普段は特に返事も聞かず、元気よく扉を開くウインディが、部屋の外から前もって声をかけて来た。それを珍しいなと思いつつ

「おーう。いるぞー」とオレは返事をした。

すると手に何やら茶色い紙袋を手にして、にこにことしたウインディがトレーナー室に入ってきた。

「エヘヘ〜、トレーナーお腹すいてるのだ?」

「うん。小腹は空いてるかな」

こんな穏やかなウインディ、なかなか見られないな。うん可愛い。

「ウインディちゃん、コーンクッキーっていうの焼いたのだぁ。だ、だから…あぅ…」

そう言うウインディはどこか気恥ずかしそうだ。

「ちょっと癪だったけど、ヒシアマ姐さんにも作るのを手伝ってもらったのだ……だから、味はたぶん問題ないと思うのだ」

そう言うとスススっと袋をこちらに渡して来た。

手放す間際、ちょっと袋に力を入れていたのはちゃんと上手くできたかという不安からだったのだろうか。

普段ツンケンしてばかりのウインディが手伝って欲しいと言い出すなんて、ヒシアマゾンもさぞ驚いただろう。

……後でお礼をしに行かないとな。

そっと手渡された袋を開けてみると、小さくて丸っこい可愛らしいクッキーが入っている。

少しコゲているものもちらほら見えるが、味に問題はなさそうだ。

「それじゃ、頂くよ」

ウインディに見られながら、クッキーを一個口の中に放る。

ウインディの気持ちがこもっているようで、普通のクッキーより美味しく感じる。

「お、美味しいのだ?」

しかしウインディはまだ不安げだ。

言葉にして安心させてあげねば(使命感)。

「うん。美味いよ。本当だ」

オレがそう言うとウインディの耳がぴょこんと立ち、尻尾もブンブンと元気良く動き出した。

「エヘヘー、よかったのだ。トレーナーにはいつももらってばっかりだったから、たまにはウインディちゃんも何かあげたかったのだ……」

そう言って人差し指をイジイジしているウインディ。

ぐはぁ!!!

なんていじらしい。なんて可愛らしい。

なんだろう。オレの中のナニかが目覚めそうだ。え、もう手遅れ?いやいや。

「うん。後でコーヒーと一緒に大事にいただくよ」

いやマジで。一個につき三日かけて食べたいくらいだ。

乾燥剤を入れてきちんと保存すればたぶんそのくらいは持つだろう。

「そんなに気に入ったなら、また作ってやってもいいのだ〜♪」

そう言うウインディはすっかりいつもの調子だ。

「そう言えばなんでクッキーなんだ?美味しいけどさ」

「クラスメイトに聞いて、簡単で喜ばれる贈り物って事で手作りのなにかって思ったのだ」

「ふんふん」

「それで、何かできないかなーって考えてたらお腹が空いてきて、オヤツにとうもろこし食べてたらこれなのだ!ってなったのだ」

「それでそれで?」

「それで…そのことを相談できる相手はヒシアマ姐さんくらいで…」

「それで、手伝って貰ったと」

「そうなのだ!!」

ウインディは元気よく頷く。

因みにクラスメイトちゃん達の誤解は理事長室に呼ばれた件の後、色々と察してしまったオレが説明したことによって解消された。

彼女らは「なーんだ」と言ってはいたが、落胆やがっかりした様子ではなくむしろ感謝されてしまった。

その理由としては、言い方は悪いが「ウインディちゃんでも」と思ってトレーナーに勇気を出してアタックし、OKをもらえた子がチラホラいたかららしい。

なお、告白を受けたトレーナーはその後もトレーナー業自体は続けるそうだ。

その彼らもたづなさんにこってり絞られたらしいが。

「エヘヘー、トレーナー楽しみにしてるのだ〜♪」

そう言うウインディは嬉しそうで、オレまで嬉しくなってしまう。

「のだ〜」

そう言って甘えて来るウインディを、それは撫でくりまわすのだった。

 

 

トレーナーにクッキー喜んでもらえたのだ〜

 

エヘヘ〜

 

がんばってよかったのだ〜♪




これからも、見て下さると嬉しいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

皆さん11月11日と言えば何か分かりますね?

そうだね!世界平和記念日だね!


「トレーナー!ポッ○ーゲームがやりたいのだー!!」

そう言って元気よくトレーナー室の扉を開けるのは他ならぬ我が愛バ、シンコウウインディ。

「ぽっ○ぃげぇむ?何だいそれは?」

いや、ポッ○ーなら知っている。コンビニなんかでもよく見るチョコがコーティングされた棒状のお菓子だ。

結構なロングセラー商品で、オレもたまに食べたくなる。

だが、ゲームが出ていたとは知らなかった。

「ウインディちゃんもよくわかんないのだ!!」

元気にそう言うウインディ。可愛い。

うんうん。ヘンに見栄を張らないのはいい事だ。

もちろん、レースの戦術として使う分には良いのだろうが、普段からそうしていては却って疲れるものだしな。

「だからウインディちゃんなりにゲームの内容を考えてみたのだ〜」

エライのだ〜?

と小首を傾げて聞いて来るウインディは控えめに言って可愛すぎる。

「エライぞ〜、カッコいいぞ〜」

そう言って撫でくりますとウインディはご満悦の表情を浮かべる。

この時、オレの頭からググると言う選択肢は既に消えていた。

そりゃあ検索すれば、ポッ○ーゲームなるものがなんであるのか一瞬にして分かるだろう。

だが、ウチのウインディが一生懸命に考えてくれたオリジナルのポッ○ーゲームを蔑ろに出来ようか。いや無い。(反語)

「で、どうやって遊ぶのかな?」

オレ自身ワクワクしながらそのことを聞く。

「エヘヘ〜。まずポッ○ーを袋から出すのだ〜」

カサカサとビニール袋からポッ○ーを一箱取り出す。

よく見れば結構な量だが。

「ウインディ、それだけのポッ○ーどうしたんだ?」

「クラスメイトがトレーナーさんとどうぞってくれたのだ〜。ふぬぬっ」

中身の銀色の袋を相手に悪戦苦闘するウインディ。可愛い。

「ふんふん。それから?」

「この時、何本かまとめて取るのがコツなのだ〜♪」

ほーほー。

「そして、机でトントンと揃えて〜フンッ!!」

おー、真っ二つだ。

「こーやって、何本折れるかしょーぶするのがポッ○ーゲームとウインディちゃんはにらんだのだ」

なるほど。これはストレス発散にもなりそうだ。

食べ物で遊ぶな。粗末にするな。そう言った言葉にも、直ぐに食べれば無駄はなくなる。と言う点で反論できる。つよい。

折れ目のキレイさを競うと言う競技もあれば面白そうだ。

流石はウインディ。シンプルながら画期的な遊びだな。(トレバカ脳)

「トレーナーもやってみるのだ〜」

「おう、何本かとって〜、フンッ!」

ポキっと折れる棒菓子を見て、なにやらオレは毛利元就になった気分である。いやまぁ、あの人は矢と自分の息子兄弟を例えて三人集まれば折れないって事を言ってたんだけどさ。

ウインディの喜ぶ声も相まって、何やら楽しくなって来た。

食べ過ぎるであろう分は、後でトレーナー寮の冷蔵庫に閉まっておけば問題は無いな。

結局、オレ達は真のポッ○ーゲームの何たらを知らぬままオリジナルの遊びに興じたのだった。

 

 

エヘヘー、トレーナーとポッキーゲームしてきたのだ〜♪

 

のだ?何でみんなガタタって立ち上がるのだ?

 

 




ポッ○ー美味しいよね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

えぇ?最近トレーナーがウインディちゃんを甘やかしまくってるって?まっさかー。

ウインディちゃんが可愛くってしゃーない。


 

さて十一月も後半に入った今日、ここ東京レース場にはウインディの他に十五人のウマ娘が揃い踏みしている。

東京レース場第九レース、カトレア賞。ウインディの適性的に参加できるジュニア級最後のレースだ。

走らせ過ぎてバテさせてもいけないが、逆にあまり走らせなさ過ぎても本番の感覚を忘れてしまいかねないため、疲労が残らない程度にはレースにも出していきたいところ。

もちろん無理強いは出来ないが。

と言うより、今回の参戦はウインディ自身の意思によるところだ。

「トレーナー、今年のうちにもう一回走っておきたいのだ〜」

そう言った時のウインディは心からレースを楽しみにしていた様子だった。

これまでの練習の成果(前回からわずかひと月だが)その全てをぶつける。

その楽しみをウインディが知ったような気がして、嬉しくなったものだ。

まぁ、クラシック級に上がってすぐのダートレースでウインディが出られそうなのは、一番近くとも二月下旬開催のヒヤシンスステークスなので、ローテーション的に出ても問題はないが。

彼女も今頃控え室でやる気を溜めている頃だろう。

さて、今回出走する中で注目すべきはやはりミニロータスか。

最終直線での伸びは驚異の一言。まだジュニア級とはいえ、いやだからこそ空恐ろしくもある。

ウインディが負けるとは露程にも考えてはいないが、しかしライバル候補は否応なしに注目せざるを得ない。

ひと月前のプラタナス賞に続き、模擬レースでもウインディに敗れての二着。ここで一つは勝っておきたいところだろう。

「ウインディ、油断はするなよ」

初戦と比べ、二回目ともなればコツなんかも掴んできている子もいるだろう。

それぞれの担当トレーナーによる他ウマ娘の分析なども進んでいると見て良い。

現にオレとウインディがそうなのだから。

取ったデータ以上の活躍をするウマ娘の人数如何によっては育成全体の見直しも視野に入れるべきか。

こういうのは柔軟に対応出来てこそだし、それでウインディの負担が減るならば徹夜くらい安いものだ。

ともあれ、まずはパドックでの状態次第なところが大きい。

オレは前回のように最前席にまで移動してパドックの様子を見る。

一枠一番からはじまり、そして次はウインディの番だ。

「四枠八番、シンコウウインディ。一番人気です」

よしよし。調子も良さそうだな。

他の子も、見た感じひと月前よりは成長はしている風に見受けられる。

そんなこんなでパドックの方を見ていたからか、こっちに気づいたのだろうウインディがニヤリと笑みを浮かべると腕を突き上げ

「今日も勝つのだ〜!!」と宣言する。

周囲はざわつくが、ウインディはご機嫌だ。

うんうん。気合も十分ノっているな。

自信というのは大事だ。それが傲慢になりさえしなければ。

そして、そうならないためにオレがいるのだ。

ウインディがビッグマウスにならないよう、頑張らなければ。

ウチのウインディのジュニア級最後の勝負が、始まる。

 

 

ふっふん。みんなウインディちゃんに注目してるのだ〜

 

トレーナー!!

 

勝ってくるのだ〜♪

 




レース描写、どしよ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

可愛いウインディちゃんを前にしても甘やかさずにいられる者だけがここのトレーナーをドロップキックしなさい。

レース回です。
描写ほんと難しいですわ。


 

各ウマ娘がゲートに入り、そして開く。

ウインディはゲートにぶつかる事なく、出遅れもなく善戦しているな。

立ち上がりは真ん中か、その少し前に位置取るのが先行の鉄板。

地味だが大事な基礎は、きっちりやっている。

ご褒美作戦はウインディ相手には破格の威力を発揮する。

「さあ、一番人気シンコウウインディ。現在の位置は三番手から四番手、絶好の位置につけています」

「後方の子達はまだ脚を溜めているようです。恐らくは最終直線で一気に抜こうという算段でしょうね」

「現在先頭を行くのは九番リボンバラード、続いて四番チェンバロリズム、十三番エフェメロン、八番シンコウウインディ、十番ボヌールソナタ、七番ハイドロチョップ、十二番クラヴァット、三番アストレアノーチェ、十五番ブルックリンアイル、十一番ミニロータス、二番ストレートバレット、五番カスタネットリズム、六番ムーンポップ、十四番ブリッツエクレール、十六番リードエスエフ、シンガリは一番インディアンブレスと続いています」

やっぱりと言うべきか、参加している面子はプラタナス賞の時とそう変わりないようだ。 

ところどころ今回は参加を見送り、見に回っている子らも見受けられるが、まぁそれはそれだ。

中盤に差し掛かり、少し動きが見受けられる。

ミニロータスとストレートバレットが位置争いをしているようだ。

接触するほど近づいてはいないとは言え、少しハラハラしてしまうな。

終盤、実況のアナウンサーの言うように最終直線、仕掛けるウマ娘が多く見受けられる。

しかし、それでも

「シンコウウインディ!ここで抜け出しました!」

「リボンバラードを尻目に、ゴール板に向かって一直線です!」

ウインディの方が上だ。

 

 

いつものトレーニング後のことだった。

「気負うなよロータス」

そう言うトレーナーさんはいつもの調子だ。

「そりゃぁ、俺はぺーぺーの若造さ。経験も知識もなんもかんもまだまださ。でもな、だからこそ気負うなってーの。師匠の教えに間違いはねーぞ?」

ダート一筋三十年。いぶし銀という言葉がこの上無く似合う。彼の師匠はそんな人物だったらしい。

「でも、また負けたらって思うと…」

アタシが弱音を吐くと、トレーナーさんはわしっと、頭を撫でる。

「良いじゃねぇか。負けだって立派な経験だ」

そう言われると余計に悔しくてつい反論してしまう。

「でも!勝ちたいんです!!」

「なら、トレーニングをいつも通りにこなすこったな。強さに近道は無いと教えただろう?」

「それでも、また届かなかったら…」

「届くさ、いつか届く。それまでは天狗にさせておけ。なーに、手を抜けってんじゃあないさ。ただ、忘れんなよ?最後に勝つのは…」

アタシらだ。

 

 

「悠々と走る!今!ゴール板を駆け抜けて、一着はシンコウウインディ!」

「ミニロータス、四バ身まで詰めましたが届かず!」

 

うん。ウインディは満足そうだ。

しかしミニロータスはすごいな。

中盤の競り合いで消耗してて二着か。

本当に油断ならない。

「トレーナー!勝ったのだー!」

そう言って駆け寄ってくるウインディ。

「おおーー!ウインディ!おめで……」

「ガブーー!!」

うん。知ってた。

だが、心構えがあると無いとじゃ全然違うぜ!!

「ウインディ」

「もが?」

「後どのくらいガジガジする感じかな?」

「プハっ、もーちょっとこうしてたいのだー」

「そっかそっかー、よーしよしよし」

そんな時、外野が何か言っていたがオレは特に気にしなかったのだった。

「スゲェ!全く動じてないぞあの人!」

「ああ!俺感動したよ!」

「そうだな!自分でウマ娘の噛みつきを引き受けるなんて!」

 

 

むー、トレーナー反応わるいのだー

 

まぁ、ウインディちゃんはやさしいから

 

ナデナデでごまかされてやるのだ〜♪




ライバル?出現ですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんとお祭りデートとな?

ハニトーってなんであんなデカいんですかね?


十一月某日。

今年最後のレースも終え、再びトレーニングに励むウインディ。

そんなウインディへのご褒美にオレは休日である明日、とある場所に連れて行こうとトレーニング終わりの彼女に話しかける。

「ウインディ。明日酉の市行ってみるか?」

「のだ?とりのいち?」

何のことだかわかっていないようで、「のだ〜?」と聞いてくる。

「まぁ、平たく言えばお祭りだな」

商売繁盛、武運長久、開運などを司るとされる日本武尊にちなんだ祭であり、同じく商売繁盛を司るえびす講と双璧を成す大きなお祭りだ。

なんでも日本武尊が東征に赴く際、祈願したのが始まりだとか何とか。

開催場所としては大鷲神社や(おおとり)神社、花園神社などで、特に鷲神社、花園神社、大國魂神社で行われるのは関東三大酉の市とも称されるほどだ。

「のだ!?お祭り行きたいのだ〜!!」   

「よしよし。それじゃあ明日は九時ごろに校門前なぁ〜」

オレはウインディをナデナデしながらそう言う。

「のだ〜♪わかったのだ〜♪」

そう言うとウインディはトレーニングの疲れが嘘のようにルンルンで寮に戻って行った。

翌日。校門の前で車を止めて待っていると、ウインディが小走りでやって来る。

「エヘヘ〜。お待たせなのだ〜」

「お〜う。外出届は書いて来たか?」

「もっちろんなのだ〜!」

そう言ってウインディは車に乗って来る。

「それじゃ、しゅっぱ〜つ」

「なのだ〜♪」

目的地は鷲神社。

さすがに大きな祭りだけあって開催前から大盛り上がりである。

オレとウインディは駐車場に車を停めて、近くの喫茶店で時間を潰す。

「オレはコーヒーとベイクドチーズケーキでいいかな。ウインディは?」 

「うーむ、悩みどころなのだぁ〜」

「ゆっくり決めてて構わないよ。いっしょに頼もう」

流石にオレだけ先に注文して先に食べ始めるのはちょっと気が引ける。

何やらしばらく悩んでいたウインディだったが、ついに決めたようで

「ハニートーストの大とココアにするのだ!!」

と高らかに宣言する。可愛い。

店員さんに来てもらい、先程の注文をしてしばらく待つ。

「お待たせしました〜ハニートーストの大とココアでーす」

そう言って店員が持って来たのはいわゆるデカ盛りのハニートーストである。

まるまる一本の食パンにその倍の高さのクリーム、チョコソースやバナナなどフルーツのトッピングはまさにカロリーお化け。

「のだ〜♪」

それをウインディは美味そうに食べている。可愛い。

うん。カロリー調整しなきゃ。

その後からオレのベイクドチーズケーキとコーヒーが来た。

やっぱりケーキといえばチーズケーキだと思う。

昔っから生クリームってやつがどうにも苦手でなぁ。

そんな事を思いつつ、ケーキとコーヒーを交互に口にしていると

「トレーナー」

とウインディが話しかけて来る。

「ん?どしたウインディ」

オレは思わずウインディに聞くと

「あ〜んなのだ♪」

と言いつつフォークに刺したハニートーストを差し出して来る。

オレは、考える暇も無く口を開けハニートーストを頬張った。

生クリーム?美味しいよね!!(手のひらクルー)

「美味しいのだ?」

「サイコーだね」

そんなこんなで喫茶店で時間を潰したオレたちは、目的地である鷲神社へと歩いて行く。

いくつもの提灯が灯され、しめ縄や熊手が飾られているのを見るのは壮観である。

既に出店や露店が居並ぶが、オレは既に腹一杯なので食べ物関係の店には特に惹かれはしなかった。

ウインディとはぐれないために手を繋ぎ、お祭りらしい射的やヨーヨー釣りなんかを楽しむ。

「トレーナー!あのぬいぐるみ欲しいのだー!」

みるとそれはデフォルメされた獅子舞だった。

「よしよし任せろ」

一回二回と当てるもなかなか取れないもんだ。

一回五発で300円の射的を五回ほどやったところで

「お兄さん。もう少し上を狙った方が良いですよ」

なんて店主に勧められて、何とかゲット。

「トレーナー、ありがとうなのだ〜」

なんて言われたら撫でない選択肢はないよね!

「よーしよしよし」

「エヘヘ〜、もっとまわるのだ〜」

お面を買ったり、くじ引きしたり、小腹をすかせたウインディに焼きそばや焼きとうもろこしを買ったりしていると、いつの間にやらあたりは暗くなって来た。

そしてオレはあることに気づく。

「あぁ、そう言えばまだ熊手買ってなかったな」

「くまで?なのだ?」

「そうそう。なんでも葉っぱなんかをかき集めるように福をかき集めるっていうものらしいんだが…」

「トレーナーものしりなのだな〜」

「まあ調べたからね」

そんな事を話しながら鷲神社の本殿に向かう。

せっかくだからと御祈願をかけて貰おうとも思ったが、ウインディが「ふっふーん。ウインディちゃんくらいになると、そんなの必要ないのだー」

と言っていたのでナシに。

熊手御守売り場は本殿の敷地内だったっけ?

確か太鼓が鳴り始めたら買い始めた方がいいとか何とか。

幸い売り場が開く前に着いたのでウインディと何気ないお話をしていたら太鼓が鳴った。

「ウインディ、先に買っていいぞ」

といってお代を渡すと、ウインディは熊手御守を買う。

何やら札?を渡されていたようだが後で聞いてみよう。

ついでオレも熊手御守を買って、先程の札について聞いてみる。

「ああ、あれは一番札ですね。妹さん運がいいですね〜」

とりあえず、言われた交換場所に行くと、なにやら大仰なストラップ?みたいなやつをウインディがもらってた。

何やら三名様限定の品だったらしい。

帰りの車内。ウインディは遊び疲れたのかぐっすり寝ている。

お面やら水ヨーヨーやら、ぬいぐるみやらストラップやらいっぱい抱えて寝こけている。

「ウインディ、これからもよろしくな」

助手席で眠るウインディにオレはそれとなく言う。

なお、この後再びヒシアマゾンにお説教をもらったのは余談である。

 

 

とれーなー

 

おまつり楽しかったのだぁ〜

 

ありがとーなのだぁ〜

 

zzzz




小判根付け、フクちゃんがマジで欲しがりそうだなぁって書いてて思いました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

予定外の安売りって嬉しい反面どうしようか悩むよね!

フジキセキのショータイム
なかなか目的の品来ないですなぁ


オレは今、トレセン学園近くの商店街に来ている。

目的は言わずもがな買い出しである。 

スポーツドリンクやテーピング、冷却スプレーにトレーニング用蹄鉄の替え等々必要な品は多岐にわたる。

通販だったり理事長に頼んで手配してもらうことも出来ないことはないが、オレ自身こう言った品は直接見たい性分であるため、緊急時以外はある程度減って来たら余裕があるうちに自分で買い溜めしておくのが良い気がする。

もちろん、シューズやら服類など本人の好みが強く出るものなんかはウインディと一緒に見に来ている。

「おう、ウインディのトレーナーじゃないか」

そんな事を考えていると後ろから聞き覚えのある声がかけられる。

「おお、ヒシアマゾン」

ウインディのトレーニング用レシピを一緒に考えてもらって以来だからこうして直接話すのも割と久しぶりか。

いや、しょっちゅう見かけた時とか挨拶くらいはしていたから厳密にはそんなに話してないわけでは無いだろうが。

というか、ついこないだも外出時間が思ったより伸びて怒られたし。

「精が出るねぇ。アンタも買い出しかい?」

「まぁ、トレーニング用品を一通りな」

オレがほれ、と手荷物を見せるとなるほど、とヒシアマゾンは納得した様子だ。

「あんま甘やかし過ぎるんじゃないよ?そりゃ可愛い教え子なのはわかるけどさ」

「おう、ウチのウインディは可愛いぞ?」

オレが即答するとヒシアマゾンは呆れた様子だ。

「相変わらずのトレバカだねぇ…。まあ、ウマ娘とトレーナーでギスギスしてるよりかは遥かにいいけどさ…」

「そう言うヒシアマゾンはなんの用で商店街に?」

「ああ、寮の子達に色々とね」

ホレ、と今度はヒシアマゾンが手荷物を見せてくる。テーピングやら珍しい本の栞やらコーヒー豆やらお茶っ葉やらと本当に色々とある。

寮の子一人一人の好みを熟知しているのだろう。

「さっきまでビコーもいてね。野菜類は傷むと悪いんで持ってってもらったのさ」

同じく栗東で寮長をつとめるフジキセキといい、本当に面倒見が良く、慕われているのが分かる。

だからこそ今回のビコーペガサスのように手伝いたいと申し出て来るウマ娘もいるのだろう。

なんやかんやウインディのことも気にかけてくれているようだし感謝しかないな。

「ま、好きでやってることさ」

そう言うヒシアマゾンはとても生き生きとしている。

「そういやあ、ウインディのヤツも来年クラシック級だねえ」

「ああ、だからこう言った買い物もより重要になって来るな」

なにせ、クラシック級と言えばダートウマ娘にしてみればやっと重賞に出られる時期だ。

体も出来上がって来て、これまでよりハードなトレーニングも可能になるだろう。

つまり、その分消耗品の消費も増すのだ。

「で、そのウインディは一緒じゃないのかい?」

「あぁ、なんでもクラスメイトちゃん達といっしょにお買い物だそうだ」

「へぇ〜、あのいたずらっこがねぇ〜」

「本人は楽しそうだし、担当トレーナーとしては嬉しい限りだけどな」

そんなことを言っていると、何やら周囲に人だかりができ始めている。

ただ、その理由はすぐに分かった。

すぐ側の薬局から店員が出てきてスピーカー片手に言った。

「えー、只今よりタイムセールでトイレットペーパー一袋十二ロールが198円、おひとり様あたりの制限はナシです!」

「おっ、はじまったねぇ」

いつの間にやらヒシアマゾンはその店に向かって歩いて行く。

どうやらここでコレを待っていたようだ。

「ホラホラ、アンタもこれ目当てだったんじゃないのかい?」

そう言うとヒシアマゾンはトイレットペーパーを放って来る。

…まぁ、あって困るもんでもないし運が良かったと思おう。

なお、帰りの車内は案の定一杯になってしまった。

 

 

コレとかいいかもなのだ♪

 

え?トレーナーのこと?

 

優しいし大好きなのだ!!

 

へ?そう言う意味じゃなく?どゆことなのだ?

 

何でみんなそこでため息を吐くのだ〜?

 




今日も!明日も!明後日も!
ウインディちゃんは可愛いのだ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

でっかい大根もらっちゃいました。

おでんの大根の旨さは異常。


 

「よっこいしょっと。ふぅこんなもんか」

トレーナー室内に時期的にちょっと早い気がするがコタツを出した。

外は日によっては風花が飛んでくる程度には冷えていたので設置自体は問題はない。と思う。

早速入ってみるが、まぁ当然というかまだ十分に暖まっていなかったのかそんなにだった。

なので、待ち時間にみかんやらパソコンやらをコタツの上に持って行く。

そうして改めて入ってみると、ぬくい。本当にぬくい。

心なしか仕事の進みも違う気がする。

そりゃあトレーナー室は冷暖房も完備してはいるが、それだけじゃあ何か味気ない。それにコタツの中でのびのびと足を伸ばせるのもリラックスできて良い。

まぁ、ちょうど何もないスペースだったしいいかなぁと思ってのことだったんだが…。

ここでひとつ問題が発生した。

「あぁ〜ごくらくなのだぁ〜」

ウインディがコタツの魔力にやられてしまったのだ。

いやまぁ、授業はきちんと受けているし(同級生ちゃん達の証言アリ)トレーニングもちゃんとやってくれるんだが、トレーニング上がりの度にトレーナー室に入り浸られるとなぁ…。

噂程度の話ではあるが、どこかのウマ娘は授業をサボタージュして昼寝をしているなんて話もあるが。

まあその辺はトレーナーの方針である程度の調整は効く場合もあるが。

だがそれは大抵やむを得ない場合だったりする。

たとえば「我思う。故に我あり」と言う言葉で有名なフランスの哲学者、ルネ・デカルトは幼い頃から寝坊による遅刻をよくしていたそうだが、それが体質的なものであると理解を示した当時の校長から寝坊による遅刻を免除してもらっていたという話もある。

そして、そんな彼の死因はスウェーデンの女王クリスティーナに、授業を依頼された際、普段とは逆の早起きを強いられ続けたことで風邪をこじらせ肺炎を併発させてしまったことだと言う。

慣れないことはするもんじゃないな。

それを考えると、そのウマ娘にもそのウマ娘なりの事情があるのかも知れない。

このように、どうしてもと言う事情がありさえすればそこからはトレーナーの匙加減なのだ。

「トレーナー、みかんむいて欲しいのだぁ〜」

まぁ長々と言ったが、要するに。

「しょうがないなぁ。ほれ」

「あ〜ん」パクッ

「こらこら、指を甘噛みしないのー」

「♪〜」カミカミ

ウチのウインディは天才的に可愛いってことだ。

「トレーナー、もういっこなのだ〜♪」

そんなこんなでみかんをむいては食べさせ、もう一度みかんをむいては食べさせを繰り返していると、やがて満足したのかウインディはコタツでまったりしている。

ちなみにオレは今そのウインディと向き合う形で座っている。

「トレーナー、隣に行っても良いのだ〜?」

「うん?どうした?別に良いけど」

今日はいつも以上に甘えたがりだな。

オレが了承するとウインディはモゾモゾとコタツの下をくぐって隣に来た。

至近距離、目と鼻の先にウインディがいる。

オレじゃなきゃ可愛すぎて心停止してるね。

「エヘヘ〜」

と笑顔で言うとズイッと頭を差し出す。撫でろと言うことらしい。

この行動にも慣れてきたあたり、オレもようやくトレーナーらしくなってきたってことかね?

なんて調子に乗って見ても仕方ない。

「よ〜しよしよしよしよし」

「のだ〜〜♪」

ウインディはいい子だなぁ。

まったく、将来悪い男に引っかからないか心配だ。

ふいに外をみやると少し雪が降っていた。

明日は大事をとって、室内トレーニングにするかなぁ。

ウインディに再び視点を戻すと何やらウトウトしている様子。

「ウインディ〜、コタツで寝るなよ〜風邪ひくぞ〜」

結局そのまま寝落ちしてしまったウインディをおんぶして美浦寮に連れて行ったのだった。

 

 

ふは〜

 

コタツは生き返るのだぁ〜

 

また行くのだ〜♪

 

 




コタツはいいぞぅ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

トレーニングのたびに見切れるウインディちゃんを見て切ない気持ちになったのは筆者だけでは無いはず。

次のガチャはドーベルかぁ…。


さて、オレとウインディは今トレセン学園内のトレーニングジムに来ている。

目的はもちろんウインディのトレーニングである。

前日予約でもなんとか利用許可が降りたため、オレは早速どれからやってもらおうか見繕っているところだ。

流石は天下のトレセン学園とでも言うべきか、数も種類もその辺のジムとは段違いである。もちろん、全てウマ娘用のチューンナップがなされているためオレには難しいなんてもんじゃないが。

有酸素運動に適したもので言えばドレッドミル、まぁ要するにランニングマシンだったりフィットネスバイク、それに背もたれのついたリカンベントバイクやクロストレーナーなんかが挙げられる。

無酸素運動で言えばウエイトリフティング、ベンチプレスなどが有名だろうか。その他にも腹筋ベンチや懸垂マシンなんかがいくらかある。

どれも一長一短であり、トレーニングの目的によって組み合わせも自由自在。

さらにウマ娘の調子や気分にも合わせるとなるとその選択肢はもはや無限にも思えるほどだ。

つまりはこう言った組み合わせなんかも、トレーナーのセンスや腕の見せどころといえる。

今日のウインディはご機嫌で調子も良さそうだし、体も出来上がりつつあるため、ちょっとキツめのトレーニングでも問題はなさそうだ。

あらかじめ考えておいた幾つかのプランのうち一番キツイものを選ぶ。

もちろん内容は今のウインディに無理がない範囲のものだ。

最初はもちろん準備運動だ。ケガを舐めてはいけない。十五分念入りにやってもらう。

「トレーナー、背中押して欲しいのだ〜」

「はいよー」グッグッ

「のだ〜♪」

次にランニングマシンで三十分ほど。

「トレーナー、もう少し速くっても大丈夫なのだ〜」

「いや、今回はこのくらいの速さで少し長めにやろうか」

「分かったのだ〜」

少し余裕がありそうだな。十分追加かな。

次は筋トレをたっぷり五十分。

レッグプレス(脚)→チェストプレス(胸部・腕)→シーテッドローイング(背中)と全体的に鍛える。

筋肉に偏りがあるのも怪我の元だからだ。

「ふふ〜んラクショーなのだ〜」

「じゃあもうちょっとゆーっくりやってみようか」

「はーいなのだ!!」

とまぁ、こんな感じでトレーニングをやってもらってみると、やはりと言うべきか前よりもしっかりと体が出来上がっている。

伸び代も当初予定していたよりもずっといい。

これは少し、メニューを見直す必要がありそうだ。

体が歓喜に震えるぜ!まぁ実際嬉しい悲鳴だ。トレーナー冥利に尽きるってもんだ。

「ウインディお疲れ」

整理運動を終えたウインディにオレは声をかける。

「へへーん。ちょっと疲れたけどウインディちゃんに不可能はないのだ〜」

疲労具合に関しては包み隠さず言うようにはしている。

無理をして一番困るのは本人だからだ。

しかし、ふむふむ。この前とは違ってこのくらいなら問題はないか。

こまめに水分補給もするよう言っていたため、足取りも良い。

オレはウマ耳をピクピクさせたり、尻尾をユラユラさせて話を待っているだろうウインディに聞く。

「ウインディ、この後なにか予定があったりするかな?」

「のだー?特にはないのだ」

「そうか。じゃあ学園の近くにおでんの屋台が来てるんだが一緒に行くか?とうもろこしもあるぞ」

そう言うと、とうもろこしという言葉に反応したのかウインディの耳がピクリと動く。可愛い。

「行くのだ〜!!」

トレーニング終わりとは思えないほどの屈託のない笑顔と元気な声でそう言うウインディ。可愛い。

「それじゃ、着替えて外出届を出したらすぐに行こうか。歩きで行ける距離だし」

その後、寒いからかウインディはやたらと引っ付いてきた。可愛い。

 

 

エヘヘ〜トレーナーと夜のお散歩なのだ〜♪

 

おでん美味しいのだ〜

 

とうもろこしガジガジ〜




おでんはからしじゃなくて柚子胡椒でも美味しいですよね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ぶっちゃけデジたんの気持ち分かりまくるんだが

レジェンドレースやってて思いつきました。


 

ウマ娘にとって一番のファン、つまりは一番最初のファンであり一番近くにいるファンとは他ならぬその子のトレーナーのことをこそ指すのだろう。

何故ならば、常にその子を励ます身近な存在であると同時に、共に成長するパートナーでもあるからだ。

故に他のファンが暴走してしまう際にも真っ先にその盾となるべきはトレーナーなのだとオレは思う。

いやまぁ、今回に関しては直接何か危害が加えられたわけではないのだが…。

「はああ…しゅきぃ…」

この目の前で放心状態になっているウマ娘はウインディが苦手とするタイプのようだ。

と言うのも、以前イタズラに興じていた際ふざけて「噛んでやるのだ〜」と言ったところ「はい喜んで〜」と嬉々としていたと言う。

その子がどうやらダートコースでのウインディのトレーニングを覗き見ていたようなのだ。彼女もダートを走れることから、最初は偵察かと思っていたが、それにしては様子が変だし。

ちなみにウインディには寮に戻るようオレから言ったため既にこの場にはいない。

「…とりあえず保健室に連れてくか」

ひとりのトレーナーとしても人間としても、流石に十一月の寒空の下このままここに放置しておくわけにもいかない。

どんなにウマ娘が基本頑丈とは言え流石に風邪を引いてしまいかねないからだ。

オレは彼女をおぶって保健室まで向かい、中に居た保険医さんに事情を話すと彼女は「またか」と言った表情を浮かべていたのが気になり色々と聞いてみた。

曰く、彼女の名はアグネスデジタルと言い、ウマ娘が好きすぎるとのこと。

そして、その思いが強すぎるがためか、度々失神してしまうということ。

特にライブでは何度もタンカで運ばれては目覚めて、またタンカで運ばれて…と言うのを繰り返した逸話(?)まであるとか。

…変わった子だなぁ。

「…ハッ、ここは…」

そうこうしているうちに当の本人が目を覚ましたらしい。

「も、もしかしてまた…」

「ええ。気を失ってたわよ」

そう言う保険医さんの声色は呆れ半分心配半分と言った感じだ。

「あぅぅ」

その言葉を聞いた彼女はなにやら申し訳なさそうだ。

「ちゃんとこちらのトレーナーさんにもお礼を言うのよ?」

「あっはい。ありがとうございました」

「あぁいや、無事なら何よりだよ」

ふーむ、普段は普通っぽいのか?

そりゃあどれだけ変人扱いされていようと、年がら年中奇行に走っている訳ではないんだろうが。

「アタシ、ウマ娘ちゃん達を前にするとどうにも落ち着かなくって…邪魔するつもりは無いんですよ?だから見守るときは出来るだけ離れるようにしてますし…」

どうやらウインディが言う、時たま感じる落ち着かない視線の正体はどうやら彼女のようだ。結果的にだが、先に寮に帰して正解だったか。

まぁ、可愛いウインディについ視線が向いてしまうのは分からないでもないが。

しかし困ったなぁ。彼女からは悪意やら妨害する意図は微塵も感じ取れないため、率直にやめるよう言うのも気が咎める。

むしろ、ウインディ含めウマ娘達に好意的だからこそ始末に負えないと言うか。

「そんなに見たいならあらかじめ君のトレーナーを通して言ってくれれば日程を合わせて一緒に練習するなりいくらでもやりようはあるだろうに」

と、折衷案を出して見たりもするが

「そんな!畏れ多すぎますぅ〜!!」

そう言う彼女は興奮冷めやらぬ様子でくねくねし出した。個性的な子だなぁ。

その後も何度か案を出すものの、一貫して「ひょえええ」だとか「尊死してしまいますぅ〜」とか言って遠慮されてしまった。面白い子だなぁ。

結局、アグネスデジタルは再度オレに一礼すると逃げるように帰って行ってしまったのだった。

 

 

トレーナー、またヘンな視線を感じるのだ〜

 

だから、また手を繋いでてもらって良いのだ〜?

 

エヘ〜♪




ちなみに筆者はデジたん持ってない勢です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんの育成イベント、どれが好きです?全部?分かってますなぁ…。

ウインディちゃんはもっと他所のサポカに出張多くて良いと思うの(贔屓)



いつも通りの休日。

オレは朝早くから訪ねてきたウチの担当ウマ娘に会うため、トレーナー寮の前まで行った。

そこまでは良かったのだが。

「むぅ〜っ」プリプリ

オレは今とても困惑している。何故ならば

「のだぁ〜っ」プンプン

ウチのウインディがなんでか不機嫌であるからだ。

「ウ、ウインディ?どうしたんだ?」

オレはその原因を聞こうとするも

「つーんなのだ!」

このようにそっぽを向かれてしまう。つらい。

ほっぺたを膨らませ、腕組みをして、顔を逸らされる。

ほぼ間違いなくオレが何かやってしまったのだろうが、かといってそれをわからないまま謝っても却って火に油を注ぐだけだろう。

だからと言って放置するわけにもいかない。

彼女の担当トレーナーとしての義務というのもあるが、なによりウインディが心配だったのだ。

それにこう言ったことは後になればなるほど引っ込みがつかなくなってしまうことも珍しくない。

そうなればレースはおろか、トレーニングどころでは無くなってしまう。

故にオレは必死になって原因を探る。

少なくとも昨日美浦寮に送り届けた時はまだ普段通りだった。

それが今朝になって会ってみればこの調子だ。

なら、その間に何かがあったと考えるべきだな。

変わったことと言えば、その後にアグネスデジタルを保健室まで送り届けたくらいだが…。

…まさか以前あったような理由なのか?

オレは意を決して改めてウインディに聞く。

「ウインディ、間違ってたらすまないんだが…」

ウインディは目だけこちらに向ける。

「もしかして、アグネスデジタルをおんぶしてるとこ、見たのか?」

「……ウインディちゃんは見てないのだ」

ウインディはムスッとしながら言う。

なんでも、クラスメイトちゃんのうちの一人がその様子を見てウインディに伝えたらしい。

なるほどと思っていると、おもむろにウインディが近づいて来るなり

「ガブガブガブガブガブー!!」

「うぉっ、ウインディ!?」

急に噛みついてくるウインディ。ただ、不謹慎ながら何やらこのやり取りも懐かしく感じる。

「プハっ、トレーナー!!」

「どうした?ウインディ?」

「トレーナーは、ウインディちゃんのトレーナーなのだ〜!」

そう言うと、再び腕に噛み付いてくる。

ただ、今回は甘噛みだった。

「ハモハモ」

それがなんとも言えないほどに可愛らしい。

「そんなの当たり前だろ〜?」

どうやらウチの担当ウマ娘はオレの思っていた以上にヤキモチ焼きだったようだ。

「不安にさせてごめんなぁ」

そう言ってウインディの頭をわしゃっと撫でる。

「これで仲直りしてくれるか?」

「もっとナデナデするのだ」

「よーしよしよしよしよしよしよし」

ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ

お詫びに四十分ほどうりうりしたらなんとか機嫌が直ったようだ。可愛い。

「エヘヘ〜、しょーがないのだなー!!許してやるのだー!!」

グゥ〜……。

ふぅむ、ちょうど腹も減ったところだ。

幸い今日はオレもウインディもオフだしちょうどいい。

「ウインディ、ゴハン食べに行こうか?」

「焼き肉がいいのだ〜♪」

「はいよ〜」

今回のお詫びも兼ねて、ちょっといい店行くか。

それと、後で通りがかりにチラチラ見てたトレーナー達の誤解も解かなきゃ。

流石にたづなさん召喚はシャレにならん!!

あの笑ってない目で見つめられるのは心臓に悪過ぎる。

まぁ、別に悪いことした訳じゃないし?

やましいところもないから?ヘーキだとは思うけども。

流石に今回は噂の裏くらいは取るだろうし…。

…大丈夫だよな?

 

 

モグモグ

 

上カルビおかわりなのだ〜

 

バターコーンも追加で頼むのだ〜♪




ウインディちゃんのSSRとかまだ来ないかぁ…。
いや、SR完凸勢が困るからまだかぁ…。
でもアオハルで勝負服姿見たいなぁ…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

もう40話…40話!?まじかぁ…。

我ながらよくここまで続いたなと。


 

 

とある日。トレーニングが終わった後のこと。

オレとウインディはトレーナー室に集まって、せっせと準備をしていた。

こたつの上にはジュースと飽きないようにと用意された数種類のポップコーンが置かれ、壁にかけるスクリーン投影機にはDVDプレイヤーが繋がっている。

映画館の雰囲気を出すため部屋は暗くしてあり、準備を終えて隣に座るウインディは今か今かと待ち遠しそうだ。

まぁつまりは現在映画を観るための下準備をしているところだ。

さて、映画を観ることとなったそもそもの発端は、ウインディがクラスメイトちゃんに「トレーナーさんと観るといいよ〜」と言われて、DVDを観たくなったとのことだ。

因みに彼女は自身のトレーナーとホラー物を観たとか。

しかし、DVDと一口に言っても種類が豊富にある。

ラブロマンスものは間違いなく二人して寝てしまうし、ホラーやスプラッタはオレが苦手だ。どのくらい苦手か問われれば、驚きのあまり思わず近くにいるウインディに引っ付いてしまいかねないくらいに苦手だ。セクハラ扱いされかねないうえ、万一ウチの可愛い可愛いウインディの心に傷をつけてしまったらと思うととても観る気にはなれない。かと言って最近のアニメなんかには疎いし、複雑なサスペンスものはウインディが退屈だろう。結果、二人共楽しめるだろうと一昔前の名作アクション物を見ることになった。

トレセン学園の近場のレンタルショップで、これで良いかと確認したところウインディは「トレーナーのオススメなら間違いないのだ〜♪」

と全幅の信頼を寄せてくれていた。可愛い。

ちなみに選んだのはアレだ。あのスピード狂のタクシー運転手のヤツの一作目だ。

舞台はフランス。とあるそば屋で出前として働いていた主人公はとうとう念願叶ってタクシーの運転手になれた。

喜び勇んで改造車タクシーで客を送り続ける日々。

良かれと思って爆速で飛ばしまくるために、通常より早く送り届けることはできるものの、それは言い換えればそれだけ速度を出していると言うこと。

案の定、ついにはスピード違反の現行犯で警察のお世話になることに。

『ウマ娘に産まれるべきだったんじゃね』

とまで言われるほど速度を愛する男と、ひょんなことから行動を共にすることとなった新米刑事が織りなすドタバタ捜査劇。

高級車を乗り回すマフィアとの戦いの結末は如何に?

というのがまぁ、ざっくりとしたこの映画のあらすじだ。

これがつまらないはずが無い。

現にオレはこのシリーズが大好きだし、作風自体もコメディ調でサクサク観られる。可能ならウインディにも好きになってもらいたいくらいだ。

共に映画について語らう仲間が欲しいという下心がないでは無いが、もちろん無理にとは言わないし、いったん好きになったけどやっぱ飽きたってのもアリだと思う。

そもそも趣味ってのはそう言うもんだし。

いざ映画鑑賞を開始すると、ウインディはキャッキャと楽しそうに観ている。可愛い。

「わっはは〜、もっとスピード出すのだ〜!!」

「おうおう、そうだそうだー!」

派手なカーアクションを観続けているからか、オレもウインディもだんだんとテンションがハイになってきた。

一応トレーナー室は作戦会議などが外部に漏れないようにとの配慮から防音完備であるため、事前に戸締りさえきちんとすれば廊下に声が響いて迷惑がかかることも無い。

もちろんそこのところのチェックは済ませているため安心だ。

そして、クライマックスの強盗団の逮捕シーンのあと、主人公は免許の剥奪を免れたもののスポンサーが警察と印刷されたマシンに乗ってのF3レーサーに転向してこの映画は終わった。当の主人公は苦い顔をしていたが。

まぁ、主人公に関してはかなり自業自得感はあるし、でも彼の活躍あっての強盗団逮捕だし、譲歩としてはそのくらいなんだろうなぁ。実際同じことがあればどうなるかは知らんけど。

「すっごく面白かったのだ〜」

「そうだろー?」

時計を見てみるともう良い時間である。

「じゃあウインディ、そろそろ寮に戻るか?」

「分かったのだ〜」

オレはそのまま映画の興奮冷めやらぬウインディを寮まで送り届けたのだった。

オレ?もうちょい仕事だよ。

 

 

映画たのしかったのだ〜♪

 

のだ?

 

なんで「そこはホラーでしょ」なのだ?




これからも見て下さると嬉しいです。
そして、ウインディちゃんをちょっとでも好きになっていただけたらもっと嬉しいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

自販機でコーンポタージュを見て、ウインディちゃん好きかななんて思ってしまう筆者はおかしいのだろうか。

ダートイベントとかまだかのぅ……。


 

ある夜中、とは言ってもついさっき日が暮れたばかりくらいだが、オレがトレーナー寮に戻ろうとトレセン学園の廊下を歩いていると

「やぁやぁ、シンコウウインディのトレーナーくん」

とアグネスタキオンに声をかけられる。

「おう、アグネスタキオン。なにやら久しぶりだな」

「まぁね。こちらも最近はそれなりに忙しかったしねぇ」

三冠ウマ娘へのインタビューやら年末に開催される有マに向けての調整やら色々あるだろうしなぁ。

「それで、なんの用かな?」

「まぁそう身構えないでおくれよ。モルモットは今のところ我がトレーナーくんだけで事足りているしね。今回は少しばかりお礼を言いたかっただけさ」

「お礼?」

って言われても何かしたっけ?

「デジタルくんとは一応寮の同室でね。研究対象としてもかなり興味深いから彼女を保健室まで連れて行ってもらえて助かったよ休まれると観察も何もできないからねぇ」

と、いつもの調子だ。結構仲間思いなんだなぁと思ったオレがバカなのだろうか。

それとも単純に照れ隠しなのか。気になるところだが、深くツッコむとなにやらよからぬものまで出てきそうなので追求はしない。

にしても研究かぁ…。

「前々から気になってたんだが…」

「うん?」

「その研究って具体的にどんなもんなんだ?」

可能性だとかなんとか漠然としたことはよく言うが、思い返せば詳しくは聞いたことがない。

学園側からある程度の規制はあっても完全にストップがかけられていないことからある程度節度は守っているのだろうが。

なんとなしにそう気になったことを聞く。

「ほう!気になるのかな!?」

アグネスタキオンは急に元気になり

「良ければ書き上がった論文をいくらでも読ませてあげるし、研究成果があればいくらでも聞かせてあげるとも。なに遠慮することは無いよ」

アグネスタキオンは興味を示されたのが嬉しいのかちょっとしたバーサク状態になっている。

やべー、まずったか。

逃げようにもウマ娘の膂力で引きずられると流石にまずい。

まぁ言い出しっぺはオレだし、これ以上ズズイと迫って来られる前に勘弁してついていこうかと思ったその時だった。

「…何をしているんです?」

オレの後ろから静かな、落ち着きのある声が聞こえた。

「おやカフェじゃないか」

気になって後ろを振り返るとそこにはミステリアスな雰囲気を醸し出す黒髪ロングのウマ娘、マンハッタンカフェがいた。

「…その人迷惑そうにしてますよ?」

「おや?そう見えるかな?」

「ええ」

マンハッタンカフェは短くしかし即座にそう返すとこちらに向き直り

「大丈夫ですか?」

とオレに訊ねてくる。

「あぁ、助かったよ」

アグネスタキオンは残念そうにしているが。まぁできる範囲での埋め合わせは後でするか。

しかしマンハッタンカフェか…。

「そう言えばキミのことは噂で聞いたことあるよ」

「おや?君もそう言うのを信じるタチかい?」

アグネスタキオンはイタズラっぽく聞いてくるが信じるってなんだ?

「……」

マンハッタンカフェは沈黙しているし。

「信じる?オレが聞いたのは彼女が非常に優れたステイヤーだってことだが」

「……ああなんだそっちか」

今度は一転して「何を当たり前のことを」とでも言いたそうな声色でそう言う。

「そっち?」

そうオレが聞き返すと、アグネスタキオンは意味深に笑う。しかし肝心のマンハッタンカフェは用が済んだと言わんばかりに踵を返して

「では、わたしはこれで」

とスタスタと立ち去って行った。

「フフッ、まあその内紹介して貰えばいいさ。彼女のお友達をね」

そう愉快そうに言うと、アグネスタキオンも「研究に戻るとするよ」

と言って立ち去って行った。

それにしてもお友達かぁ……。

人見知りする子なのかな?

…去り際にちょっとオレから視線ズラしてたのは気のせいダヨネ?

 

 

ホラー、ホラー……。

 

これとか面白いのだ?

 

え?けっこうえぐいやつなのだ?

 




スコーピオ杯むじゅい……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんにお世話されるのも一興。

みかんが美味しい季節です。


 

つい最近まで暑いくらいだったのが、急に冷え込んで来た。

季節の変わり目は気をつけるようウインディにも言っておいたんだが…。

「ハーーーックシュン」

まさかオレが風邪をひく羽目になるとは。

体の丈夫さにはそこそこ自信があったため、少し…いや結構ショックだ。

昨日アグネスタキオンとマンハッタンカフェの二人と分かれてから急に寒気が襲って来て、今朝一応病院に行ったら症状から風邪だろうと、風邪薬をもらって帰って来た。

一応学園の方に休む旨は伝えてあるので、その点は心配ない。理事長曰く

「休養!ゆっくり休んで欲しい!」

だそうだ。

今頃はウインディもそのことを聞いているだろう。寂しがっていないだろうか。

ベッド横の小さなテーブルにその薬と水、あとはティッシュと何本かの栄養ドリンクが置いてある。風邪薬以外は一応帰りに買って来たものだ。

安静にしているよう言われたものの、ウインディのことが気になって気になって眠れない。

「ヂーーーーン」

鼻をかんでティッシュを少し離れたゴミ箱に投げる。はずれた。

なんとなく悔しくなってもう一投。はずれた。ちくせう。

元々症状自体はそこまでだったし、食欲も減退こそしているもののあるにはあるため、帰りに買って来たレトルトパウチのおかゆもある。

先輩も同期も、今頃頑張ってるんだと思うとなにやら自分が情けなく感じてしまう。

いやまあ、好きで風邪ひいたわけじゃ無いんだが。

……ちょっと寝るかぁ。

 

zzzzz

 

ピーンポーン

 

オレはそんなチャイムの音で目が覚めた。

窓の外はまだ明るく、時計を見るとまだ昼時だった。

薬が効いたのかそれとも少し寝て楽になったのか、あるいはその両方か。

何にせよだるさも和らぎ、けっこう動けるようになったのでマスクをつけて玄関に向かい鍵を開ける。

「おーう。なんだ、思ったより元気そうだな」

ガチャリとドアを開けるとそこには沖野先輩がいた。

「あぁ、先輩すみません」

「いいってことよ。病人に無理はさせらんねぇだろ?」

そう言うと沖野先輩は「上がるぞー」と言ってスポーツドリンクやら何やらが結構入った袋をテーブルの上に置く。

「食欲あるか?」

「ええ、なんとか」

「そうか。じゃあちょっと待ってろ」

そう言うと、先輩はビニール袋を持ってキッチンに向かった。

しばらくすると先輩はお盆にお粥を乗せて持って来てくれた。ありがたいっす。

「ズズッ…ウマいです」

「そうか。レトルトだけどな」

「十分ありがたいですよ」

あぁ〜、なんか腹一杯になったら急に眠く……zzzzz。

 

 

「で、お前の担当ウマ娘なんだが…」

 

zzzz

 

寝てやがる。

まぁ、トレーナー業は激務だしな。

休める時にはしっかり休んだ方がいい。

「しっかし、おまえさんがなぁ…」

後輩の中でもそれなりに優秀だった覚えがあるこいつが、まさか担当を持った途端にあそこまでトレバカになるとは。

「ま、問題無いか」

コイツの担当ウマ娘、目に見えて気落ちしてたしなぁ…。

まぁ、騒がないことを条件にちょっと釘刺せば大丈夫か。

感謝しろよー?

 

 

「トレーナー?大丈夫なのだ〜?」

んー、ウインディの声が聞こえる…。

「よしよし…」ナデナデ…。

声のする方に腕を伸ばしいつものようにうりうりする。

「うぅ〜、いつもより弱いのだぁ〜…」

ごめんよ〜ちょっと寝れば大丈夫だからなぁ〜。

「…そうなのだ!」

?どした?

「よいしょ、よいしょ…あったかいのだぁ♪」

うーん、なにやら布団に潜り込まれたようだ。

「エヘヘ、こうすればカゼはすぐ治るってゴルシが言ってたのだ〜♪」

そっか〜、後で先輩に報告だなぁ〜。

「トレーナー、はやく元気になるのだぁ〜」

 

なにやら不思議な夢を見た気がした。

翌日、何故か先輩と一緒に呼び出された。

スゴク怖かったです。

 

 

エヘヘ〜、ゆうべトレーナーと寝ちゃったのだぁ〜

 

あったかかったのだぁ〜

 

ケガされた?ウインディちゃんどこもケガして無いのだ〜?

 




いったいクラスメイトちゃんはなにを勘違いしたんでしょうねぇ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次のピックアップこそは……。

十年以上使っていたコタツが壊れてしまいました。
悲しい。


たづなさんにこってり絞られた後、オレと沖野先輩は廊下を歩きつつ話をしていた。

「あー、怖かったですねぇ」

「ホントになぁ。おハナさんといい、たづなさんといい、美人は怒ると怖えよなぁ…」

おハナさんこと東條ハナトレーナーは、オレから見て沖野先輩より更に上の先輩で超管理主義のベテラントレーナーだ。

その育成手腕は本物で、彼女率いるチームリギルは毎年と言って良いほど結果を残している強豪チームだ。

担当しているウマ娘達とも良い関係を築けているらしく、あの生徒会長『皇帝』ことシンボリルドルフも所属しているほど。

トレーニングに関しても厳しいことで有名な人だが、むしろ強くなりたいとチーム加入希望者が毎年後をたたないほどだという。さすが中央トレセン生徒達の向上心が違う。

ホント、色んな意味でさすがとしか言いようがない偉大な先達だ。

まぁ、だからと言ってみすみす黙って負けるつもりもないが。

「って言うか、東條トレーナーを怒らせるって何したんです?」

ふと、気になったことを聞いてみる。

基本は面倒見がいい人なんだけどなぁ。

「ちょっと、バーでなぁ…」

言いにくそうだなぁ。

「あー…ひょっとして、手持ちが無くて奢ってもらったとかです?」

「おいおい、なんで分かったんだよ……あんま言うなよ?」

「言いませんって」

さんざん世話になった先輩の恥を言いふらすほど落ちぶれてはいないつもりだ。

そもそも、ウマ娘の育成にかかる諸費用は、基本的には学園側から支援してもらえるが、その対象でない出費、例えば出先での外食だったり、ウマ娘自身の趣味だったり、シューズや蹄鉄をオーダーメイドしたりとお金がかかる部分というのは少なからずある。

特に食費。これがデカい。

ある程度の実績と経験を積んだトレーナーはチーム持ちで先程の出費が更に人数分増え、且つ人並み以上に食べるウマ娘で財布にダブルパンチ。

それに加えて沖野先輩率いるチームスピカには、スペシャルウィークという特大の大食らい(日本総大将)がいるのだ。

まぁ、たくさん食べることそれ自体は別段悪いことでは無い。

それだけ彼女がトレーニングを頑張っているということでもあるし、食べ物を美味しそうに食べている姿は周りが見ていても微笑ましい。

お金が自分の財布から出ていくのでなければ、だが。

実際オレもスペシャルウィークと同じくらいかそれ以上に食べると噂のオグリキャップの一度分の食費を実際に見て目玉が飛び出しそうになったくらいだ。

先輩はそれを合宿やら学園のイベントの度に出しているのだろうと考えるだけで「そりゃあ素寒貧にもなるよなぁ」と妙に納得してしまった。

そうこう話し込んでいる内、オレの目的地に着く。

「じゃ、先輩。オレはこれで」

「おう。困ったら何でも相談しに来いよ」

金の相談は難しいがなと冗談めかして沖野先輩はチームスピカの部室に向かって歩いて行った。

トレーナー室に入り席に腰掛け、PCを開く。

一日ぶりの仕事だ。ウインディのためにも頑張らなければ。

気合を入れて今すべき仕事をする。

カタカタカタカタカタカタカタカタ……。

しばらく資料作成をしていたところ

ドタドタドタドタドタドタドタドタ…………。

廊下の方から何やら音が聞こえて来た。

ん?この足音は…。

バタァン!!

「トレーナー!!」

やっぱりウチの可愛いウインディじゃないか!!

「おおー、ウインディ!!」

オレは椅子から立ち上がり、思わずウインディに歩み寄る。

そっかー、もうそんな時間になっていたかー。

集中しているとどうにも時間が過ぎるのは早い。

「元気になったのだ〜?」

「おかげさまでね」

「エヘー、良かったのだ〜」

喜びの感情がよほど大きいのだろう。尻尾がブンブン振り回されている。可愛い。

「よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし」

「のだ〜♪もっとなでるのだ〜♪」

いつも以上に甘えん坊さんだなぁ。

一日とは言え、寂しい思いをさせちゃったみたいだなぁ。

「よーーーしよしよしよしよしよしよし」

「エヘヘ〜、今日はこのままトレーニングまでなでするのだ〜♪」

しょうがないなぁ〜。仕事?ほぼほぼ終わってるし、あとは持ち帰ればええやろ!!

「特別だぞ〜?」

「やったのだ〜♪」

ナ〜デナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ………。

結局オレは、ウインディが満足するまで撫で続けたのだった。

 

 

トレーナーはしょうがないのだな〜

 

ウインディちゃんがついててあげるのた〜♪

 

エヘヘ〜




最近物が壊れやすい気がします。
大事にしてるつもりなんですがねぇ…。
長いこと使ってるものが多いから一気にガタがきたのかなぁ。

それはそれとしてウインディちゃんは今日も可愛い。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あの勝負服の上からマフラーを着けたウインディちゃんとか絶対可愛い(確信)

こたつが無くなったので暖房でなんとかしてます。
なにやら物悲しいです。


 

オレの体調が回復してしばらく。

以前の業務も滞りなく行えるようになった。

その後、オレの使っているトレーナー室にやってきたマンハッタンカフェが

「すみません。お友達がイタズラしてしまって…」

と言ったが、気にしていない旨を伝えて彼女が帰ってちょっとしたら怖くなったので速攻で忘れることに。

あの声のトーンはからかっているわけではなかった気がしたが、気がしただけだなうん。

悪い子じゃないのはアグネスタキオンから助けてくれた事実から分かるし、何よりあまり偏見のある目で生徒を見たくはない。

オレも新人とは言え、一応は教育者という立場であるし、無くて七癖というくらいだから癖のある子なんだなぁくらいに留めておくことにした。

「おぉー。すごいなウインディ!また上がり3ハロンのタイム縮んでるぞ〜」

「エヘー、頑張ったのだ〜♪」

ちなみにメートルに直すと1ハロンは200メートルで3ハロンはつまり600メートル。

上がり3ハロンとは最後の600メートルの事を指し、逆にスタートからの600メートルはテン3ハロンと呼ばれる。

このタイムで知ることができるのは、レースを走り切った後のウマ娘の余力、距離適性、そしてレースの流れの三点。

で、オレが今回共に知りたかったのは一点目の余力、それと二点目の距離適性だ。

まぁ、要するに現状のウインディのスタミナが見たかったわけだ。

ダートレースは長くとも2100メートルで、芝の最長G2ステイヤーズステークスの3600メートルと比べてかなり短い。

ならば、スタミナはダートに於いて重要視すべきでは無いのかと問われれば否だろう。まぁ、優先順位は下がるだろうが。

ウマ娘でなくとも実際に走ってみるだけでもわかると思うが、スタミナの消費とはその時の調子だったり、走り方、地形などに影響されやすく必ずしも一定では無いし、少なくともあって困るものでは無い。

その好例と言えるのがゴールドシップだろう。

彼女の走りはどこで仕掛けてもバテることがほぼない。

彼女が得意とするのはその驚異的なスタミナから繰り出される追い込み走法。

レース中、最初はやる気が出ていなくとも、途中で覚醒したかの如くごぼう抜きを見せる姿は爽快の一言に尽きる。

正しくスタミナお化けとも呼ばれる彼女だからこそできる芸当だろう。

まぁ、彼女の場合はそれ以上に気まぐれが過ぎるところが大きいのだが。

もちろん彼女は芝で主に中長距離を走るウマ娘、ウインディはダートでマイルから中距離を走るウマ娘と違う点はあるので、全部が全部同じとはいかないだろうが。

まあ、要するにスタミナがあるなら、その量に於いては多少の無理もできると言う事だ。

あくまで多少だが。

それ以上となると文字通り身を削って、脚を犠牲にしての暴走しかない。

オレは、というか全てのトレーナーはそれは、それだけはして欲しくないのだ。

今回走ってもらった1800メートルでの上がり3ハロンのタイムは平均して33秒台。

ジュニア級である事を踏まえても充分な結果だろう。

やっぱりウチのウインディは超スゴイってことだな。

腕時計を見ると、トレーニング終了予定時間になろうというところ。

そろそろいい時間か。

ちょうど練習メニューを終えたウインディが駆け寄ってくるのが見える。可愛い。

「トレーナー!!」

おう、元気だなぁ。

「ウインディ、どうした?」

「もうちょっと走って来ていいのだ?」

まぁ、スタミナに余裕がありそうだし問題はないか。

「じゃぁ、ダートコースをゆっくりめに一回りして来てな。無理はしないように」

「はーいなのだ!!」

タッタッタッタッとそのままぐるりと走って行くウインディ。可愛い。

しかし、風も随分と冷たくなって来たもんだ。そりゃあ風邪のひとつもひかぁな。

……ウインディにもあったかくしておくよう改めて言っておくか。

 

 

エヘー

 

トレーナーのカイロもらったのだー

 

ぎゅっ…

 

あったかいのだぁ…♪

 




石油ストーブは埃まみれでなんだか怖いので使えてないです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オ、オグ、オグリ?ダート適正激高ウマ娘キタコレ?でででもウインディ貯金を崩すわけにはがごがががががが

ダートウマ娘はよ来て、筆者の理性が残っている内に………。


 

「そろそろお前の方でも歌の練習を本格的にした方がいいんじゃねーの?」

そう同期のひとりに言われてハッとなった。

まぁ確かに、ウイニングライブの踊りの練習はしていても肝心要の歌が出来ていなければ意味は無い。

スマートファルコンのレッスンも、どちらかと言えば踊りの方に注力している感じだし。

この際、出来を確認する意味でも一度見ておいた方が良かろうと思った次第。

故に、オレとウインディはトレーニングのためにカラオケボックスに来ていた。

もちろん最新の機械を入れているとこだ。

時間もたっぷり四時間とった事だし。わざわざ高めの部屋を借りたのでのびのび歌えるし、踊れるはずだ。

「トレーナーとカラオケ嬉しいのだ〜♪」

と、目の前には大はしゃぎテンション上がりまくりのウインディである。可愛い。

勝負服はまだ出来上がっていないため格好はトレセン学園の制服だが。

「練習で来てるんだからな〜?」

「分かったのだ〜♪」

ならばよし。

「ウインディはかしこいなぁ〜」

ナデナデナデナデナデナデナデナデ

「もっとほめるのだ〜♪」

ご機嫌だなぁ。

一応ノートパソコンで確認できる資料映像だったり、ウイニングライブで歌うだろう曲はピックアップしてある。

まぁウイニングライブは重賞、少なくともG2以上で勝たなければならないため、来年のしばらく機会はないのだが。

厳密には来年七月開催のジャパンダートダービーまで。改めて遠いなぁ。

まぁ、その分洗練出来ると思えばモチベーションにも繋がるだろう。

「じゃあまずはボイトレから始めようかー」

とは言っても、ストレッチみたいな簡単なもんだが。

「えー、歌わないのだー?」

ウキウキでマイクを手にしていたウインディから不満の声が漏れる。

「頑張ったらちゃんと延長するから、な!これはウインディにしか頼めない事なんだよ〜」

軽くなでながらそう言うと

「フフーン。しょーがないのだなー!!」

乗り気になってくれたようで何より。

内容としてはまず、姿勢と呼吸を意識させ、整える。

「猫背になったりしないようになー」

次にロングブレス、まぁ要するに長ーく息を吸って吐いてを繰り返す。

「スゥーーー、ハァーーーーー、のだーーーー」

次は口の動きを意識するトレーニング。あいうえおの形で表情筋も鍛える。

「顔の筋肉痛く無いかー?」

「大丈夫なのだー」

お次は滑舌及び発音トレーニング。早口言葉なんかを言ってもらう。

「赤パジャマ青パジャマ黄パジャマ!」

更にリップロール。唇に声を当てて振るわせるトレーニングだ。声帯のウォーミングアップなんかにちょうどいいらしいが。

「ゔーーーー」

これが結構難しい。

最後はタングトリル。内容はまぁ、簡単に言えば舌でトルルルと音を鳴らす事だ。

声帯周辺の筋肉を刺激すると共に舌のマッサージ効果が期待できる。

「ドゥルルルルルル」

「ドラムロールじゃないぞー」

以上のトレーニングをやってみたうえで歌ってもらった。

 

「うん、まあいいんじゃ無いかね」

「良かったのだ〜?」

「よーししよしよしよしよし、よかったぞー」

実際、特に音程を外したりしていたわけでは無い。

ところどころ力みすぎたり、声の抑揚や息継ぎのタイミングがズレたりしているくらいなものだ。

音痴度合いで言ったらオレの方が音痴なのでは無いかと不安になるくらいだ。

ただまぁ最悪歌唱力が低くても資料を元に教えることくらいはできる。

困ることと言えば、実際に歌ってみて手本を見せることができないくらいか。

先輩方を頼るにせよそれは自分ができる、思いつく限りの万策が尽きてからだ。

幸い、本番までは試行錯誤するだけの時間もある事だし。

そうでなければただの甘えになってしまう。

別に他のトレーナーがウインディに頼られてるのを目の当たりにするのが羨ましいとか妬ましいとかそう言うのでは無い。断じて無い。

なお、振り付けの方はほぼ完成されていた。

スマートファルコンしゅごい……。

それと、頑張った分の時間の延長をした結果、寮の門限ギリギリになってしまった。

外出届けて書いてもらっといてよかった。

 

 

むっふーん!!

 

トレーナーとカラオケ勝負で勝ったのだ〜♪

 

また行くのだ〜♪

 

 

 

 

 




因みに筆者の最高点数は74点です。
低いね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新サポカのマヤノが強いとかなんとか?

なんと無く思いついた。
気がついたら二千字を超えていた。
マジでかぁ。


それは、出先でたまたま居合わせた同期のトレーナーにそれとなく言われた。

「にしてもお前、けっこう世話好きだよなぁ」 

「そうかぁ?」

担当ウマ娘を持つトレーナーならばこのくらい普通だと思うが。

そもそもウインディの可愛さを前にしてお世話をせずにいられるヤツがいるなら是非連れて来て欲しい。ちょっと小一時間…いや半日ほど説教するから。

しばし沈黙していたオレをみて、気を悪くしたと思ったのか。

「あぁ、別に過干渉だーって文句を言いたいんじゃ無いさ。まぁ、ウマ娘とトレーナーの適度な距離感ってのはそれぞれによってまちまちだけどよ」

「まぁなぁ」

フォローを入れられてしまった。

気を使わせてしまったようで、なんだか申し訳なくなる。

しかし、距離感かぁ……。

実際にそれはある。

トレーニングはトレーニング、プライベートはプライベートできっちり分けたい子も中にはいるし、逆に常日頃からトレーナーとべったり付きっきりがいいって言うような子もいる。

因みに同期の担当は前者寄りだったらしい。

まぁ、相手は年頃の女の子だからして、ハラスメントにならない程度に近くで支えてやるのがトレーナーだったり、教師だったりと言った教育者の務めだ。

まぁ何かしてもらうよりしてあげたいと思える人でなければ、トレーナー業は務まらないだろうことは確かだろう。

ただまぁ、結果的にだがオレはトレーナーになって良かったと思ってる。

そのおかげでウインディとも出会えたわけだし。

「ふーむ」

オレは先程のトレーナーと別れ、思い返す。

「お世話かぁ…」

公園のベンチに腰掛け、なんと無しに物思いに耽る。

いや、改めて考えることでも無いのだろうが。

人間面倒なものでちょっとしたことから、なんとなく不意に『もし』を思い浮かべてしまう時というのはある。

勿論オレとしてはウインディをスカウトしたことは今でも後悔などしていないし、これからもしないと断言できるだろう。

しかし逆にオレは、ウインディにウザがられていないだろうか。

そうだったとしたら、結構…いや、かなり凹む。

いやでも過干渉を気にしすぎるあまり、ウインディに寂しい思いをさせるのも忍びない。

というかそれじゃあ本末転倒だ。

一年にも満たない間だが、オレとウインディはそれなりに良い関係を築けている…とは思う。

正真正銘、一人目の担当ウマ娘なので他の子を参考にして断言できるほどでは無いにせよだ。

なら迷わなくて良いのでは無いか、とも思うが。むむむむむ。

思考の坩堝(るつぼ)とはなんとも脱しがたい。

我がことながら面倒なヤツだ。

「あらあら〜、どうかしたんです?」

「ん?」

ふと、声をした方を見やると、トレセン学園の制服を着た腰のあたりまである鹿毛のウマ娘が声を掛けて来たのが分かる。

彼女はおっとりというか、穏やかそうな表情を浮かべてこちらを見ていた。

「えぇっと、キミは…」

どこかで見たような…。

「あらあら私ったら、すみません」

「い、いや…」

「では、改めて自己紹介ですね〜」

ニコニコとしながら彼女は名乗る。

「スーパークリークと申します、以後お見知り置きを〜」

スーパークリーク!!

菊花賞や、春の天皇賞を取ったステイヤーで知られる超有名ウマ娘!!

その上イナリワン、タマモクロスと同期でその二人と合わせて三強と呼ばれた一人!!

そして彼女のトレーナーは天才と名高い人だ。

更にタマモクロス経由でオグリキャップとの親交もあると言う。

なんで思い出せなかったんだ。

「我ながら気を抜きすぎだろ…」

「あらあら〜、そうご自分を責めないで下さい?」

声に出てたか。

オレは恥ずかしくなって顔が熱くなってしまう。

しばらくして頬の熱も取れた頃だ。

「スーパークリーク」

オレはなんとなく、この子に話を聞いてもらいたくなった。

なんというか包容力というか、寛容さというか。オレが目指すような先輩方と似たような雰囲気がしていたからかも知れない。

「はい〜?」

「ちょっと、聞いてもらいたいことがある。愚痴と言っても良いかもしれない」

「はい」

「それが不愉快だったり、嫌なら帰ってもらっても構わない」

「まだ時間もありますし、大丈夫ですよ〜?」

本人の了承も得たところで意を決して、隣に腰掛けた彼女にオレは先程の同僚との会話や、オレ自身の不安、ウインディのことなどを要約して伝える。

我ながら、よくここまで喋ったものだな。それだけ隣に座る彼女が聞き上手なんだろうけど。

「大丈夫だと思いますよ〜?」

返事は意外にもあっさりとしたものだった。

「そうか?」

「ふふっ、あなたは優しい人なのですね〜。それで色々と考えすぎてしまうタイプなのでは〜?」イイコイイコ

……そうなのだろうか。

「それじゃあ、これからもウインディを構ったり甘やかしても問題はないと?」

「そもそも、本人が迷惑そうにしてないのでしょう?お話を聞く限り、シンコウウインディちゃんは嫌なことは嫌とハッキリ言うタイプの子だと思いますし〜、その彼女が嬉しそうにしているのならそれが正解ということでは〜?」

その言葉を聞き、オレの心の迷いは晴れた気がした。

「キミとは色々と話が合いそうだ」

「うふふ〜♪そう言っていただけると嬉しいですね〜」

そう言いながらスッと差し出された手をオレはガシッと掴んだのだった。

そうして改めてトレーニングをやってみた結果。

「エヘー、トレーナー。ウインディちゃん頑張ったのだ〜♪」

「よーしよしよしよし。えらいぞー。つよいぞー。かっこいいぞー」

ナーデナデナデナデナデナデナデナデナデ…。

「トーゼンなのだ〜♪」

あ〜もう、ウチのウインディってば悩んでたのがバカバカしくなるくらい可愛い過ぎるんだが。

 

 

ウインディちゃんとトレーナーはムテキなのだ〜♪

 

エヘー♪

 

もっとなでるのだ〜♪




混ぜるな危険?回でしたね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オレはスーパークリークとアグネスデジタル、そしてウインディトレーナーを融合!現れよ!クッソダダ甘トレーナー!!

久々に遊○王mad見てたらこんなサブタイが浮かびました。 
別にデュエルはしないよ。


オレは今、とても珍しい光景を見ている。

「トレーナー、ここなんて読むのだ?」

「あぁ、ここはね……」

ウインディが読書をしている。

ウインディが どくしょを している。

まぁ勉強の本とかでは無く、息抜きにと勧められて半ば押し付けられるように渡された小説らしいのだが、かと言って全く読まないのは悪いと思ったのかいざ読み始めたら意外にも止まらないようだ。

しかしさすがはウチのウインディ。本を読んでいる姿もなかなか様になっているじゃないか。ウンウン。

その本というのは、なんでも今クラスメイトちゃん達の間で流行っているとかなんとか。

ウインディから聞いた内容としては、ある雪の日にトレーニング目的で雪山にトライしていた主人公(ウマ娘)が山中で足を滑らせて吹雪の中行き倒れてしまう。

最早ここまでか。そう思い目を閉じた主人公。誰かが助けに来るのも絶望的で、絶体絶命かに思われ、一時的に意識を手放してしまうが、気がつけば麓近くのログハウスに運ばれていた。

なんとかお礼をしようと恩人を待てども人っ子一人来ることなく、外を見ると、そこには蹄鉄付きの足跡が残るばかりだった…。

そして主人公は思うのだ。

「アタシも恩人に負けないくらいトレーニングを積んでやるんだから!」

なんと、彼女が目覚めてから決して短くはない時間が経っていたにもかかわらずその足跡はとても深く沈んでいたのだ。

こうして主人公は恩人を探しがてら、全国修行行脚の旅を始めるのだ!!というバトルものだ。

日本全国津々浦々を巡り、様々な武門の戸を叩いては挑み、叩いては挑みを繰り返すのだ。

ちなみにいまはすでに日本を出てオーストラリア編に突入したらしい。

カンガルー拳なるコンビネーションアタックは二十年に渡る研鑽の賜物だとかなんとか。

「後でトレーナーも読んでみるといいのだ〜♪」

そうにこやかに言うウインディは何やら新鮮で可愛らしい。もちろん普段もこの上なく可愛いが。

オレは仕事を早く終わらせてウインディと話題の共有をすることにした。

トレーナーとして、担当ウマ娘のモチベーションを下げるのも忍びないしな。

べっ別にウインディとキャッキャウフフと語らいたい訳じゃないんだからねっ!!

しかし、この時ひとつ失念していた。

ウインディの影響の受けやすさを。

それから少しして

「トレーナー!!山って今いけるのだー!?」

目をめっちゃキラキラさせながらそう言うウインディは相も変わらず愛くるしい。

うん。冬の山は危ないからねー。

何とか泣かせたり、ションボリされないように慎重に懇切丁寧にオレはウインディを宥めすかしたのだった。

「よーしよしよしよし」

「えへへ〜なのだ〜♪」

 

 

トレーナー!!

 

今欲しいものってあるのだー?

 

マフラー?分かったのだー!!

 

 




ちなみに筆者は初代しかよく知らないよ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

まだまだ終わらねぇぞオラァン!!

年末ガチャか正月ガチャか周年ガチャで満を持してウインディちゃんぶっ壊れ性能で実装されるから(フラグ)


十二月。それは多忙の時節。

普段は廊下を走るなと口を酸っぱくして言う教師がその廊下を走る様から師走と呼ばれるほどだ。

しかし忙しいとは言え、いや、だからこそ休息の大切さも身にしみるのだと思う。

ここはトレセン学園グラウンドの端っこにある、トレーナー用の休憩室。

中にはベンチや自販機、冷暖房も完備されており、ドリンクの種類もなかなかに豊富だ。

仕事の合間の息抜きや、トレーニングプランなどがマンネリ化したり煮詰まった時、オレ達トレーナーはふらりとここに来て一息入れる事がある。

オレは、そこでたまたま出会った学生時代からの馴染みのトレーナー数名とすっかり話し込んでいる。

もちろん内容的にも時間的にも業務に支障のない範囲でだ。流石にオレも相手もそこのところは弁えている。実際何人かは既に業務に戻ってるし。

別にデリケートな部分だったり守秘義務をきっちり守るなら自分の担当ウマ娘のことを話しても問題はないしな。

「ウチの担当ウマ娘が可愛くってしゃーないんだが」

「そら(担当を持つトレーナーならみんな)そうよ」 

「当然だな」

「むしろそうじゃなけりゃ、なんでトレーナーやってんだって話だな」

まぁ、途中からウチの子自慢大会にシフトしてしまっているのは薄々分かってはいるが。まぁ、複数人トレーナーが集まった時の恒例ではある。

きっとそこも含めての息抜きだよなうん。

そして話題は徐々に有マ、そしてクリスマスにシフトする。

「で、クリスマスプレゼントとかどうしてんの?」

「オレはもう買ってあるよ」

「オレもオレも〜」

「むしろ余程の理由でも無けりゃあプレゼント代ケチるとかねーだろ」

「でっかいケーキだって予約したからな〜アイツ驚くぞ〜」

言いながらソイツはニヤニヤしている。その様子は、さながら子煩悩な父親といった感じだ。

「そうか。カロリー計算頑張れよ」

「堅いこと言うなって〜、こう言うイベントじゃあそういうのは言わないお約束だろ〜。まぁ頑張るけどさ」

ウマ娘は人間女性と比べてカロリー消費が多い。

もちろんその分多く食べると言うことでもあり、カロリー計算をサボればすぐ太る。

デリカシーが無いことではあるが、同時に重要なことでもある。

そんなことを考えていると

「そういやぁ、お前のとこはどうなんだ?」

と、なんと無しに聞かれる。

「それなんがだなぁ…」

「おっ、どうした?」

「実はウインディがなぁ…」

「何かあったんか?」

別に何かあったわけではない。少なくともオレの方は。

「最近、トレーニングが終わるなり、すぐ寮に戻ってくんだが…」

「いいことじゃないの?」

「いや、でも何かあるのか聞いてもニコニコ笑ってなんでもないのだ〜って言われてなぁ」

「ふーむ。じゃあなんかありそうだな」

「いやでも寮長のヒシアマゾンとかクラスメイトちゃん達は心配いらない、むしろ楽しみにしててって言ってくれてるんだ。だから心配とかじゃ無いんだが…」

「だが?」

「トレーニング終わりにウインディとわちゃわちゃできなくて寂しいのさ…」

クラスメイトちゃんには「愛されてますねぇ♪」なんてニヤニヤ顔で意味深に言われるし…。

まぁ年頃の女の子はそう言った話題が好きなんだろうけども。

そう言うオレは余程哀愁があったのか、その後十分に渡って慰められたのだった。

 

 

うぅ〜むつかしいのだ〜

 

もういっかい

 

がんばるのだ〜!!

 




いやぁ、安泰ですなぁ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ラーメンって何であんなに急に食べたくなるんだ?

コッテリ系ってモノによっては気分が悪くなりますよね。


 

腹が減った。

いつものようにウインディのトレーニングを終え、それ以外の仕事も提出分はすでに出来ている。

ウインディはまた寮に帰って行ってしまったし、かと言ってすることも無い。グスン

そして、腹の虫が鳴った際にふと

「ラーメンが食いてえ」

と口にしていた。

要するにオレはいつの間にやらラーメンの口になっていたのだ。

いや、原因は見当がついている。

多分ついさっきまでラーメン特集なんてものをテレビで見たからだろう。

オレは意を決して、と言うと大袈裟だが久々のラーメンに胸を躍らせて学園の外へ。

しかし何系がいいだろうか。

味噌、塩、しょうゆは鉄板として、家系、和風系、魚介につけ麺、チャッチャ系…。

ぱっと思いつくだけでもこれだけある。

とは言え、オレもよく行くわけでは無いのでどこの店が美味いとか、そこまでとかそういうのは詳しくない。

トレセン学園の生徒達が行く店もまちまちで、参考になるほどのデータは無い。

いや、行列が出来ているとかいないとかで判断はできるものの、今度はそれが自分の腹にピンポイントで刺さるかというのは別問題。

かと言ってネットで評判を調べるのも何だか負けた気がするのでしない。

悩みに悩んだ結果、オレは地図でこの周辺のラーメン屋を調べてその中から適当に選んだ店に入ることにした。

選んだ店は『ら〜めん芝』

トレセン学園からも充分徒歩圏内にある店だ。

寒空の下、ラーメンを食べるためだけに歩く。

ある種の贅沢とも言えるだろうこの時間をウインディと共有できないのがなんとも寂しい。

クリスマスシーズンだからか街はいつも以上に活気に満ち満ちており、店によっては店先にクリスマスツリーだの、サンタのステッカーだのを貼って、それらがこれでもかと主張してくる。

夕飯時を少し外したからか、目的地のラーメン屋は思ったよりも空いていた。

運が良かったと思い、中に入ると

「お?ウイトレじゃねーか、珍しいなー!!」 

ちょうど目につくカウンター席に先輩率いるチームスピカのメンバー、ゴールドシップが座っていた。

どこでも存在感を発揮するなぁ彼女は。

ん?そういやゴールドシップについてなにか忘れているような…?

まぁいいか。この店は食券制では無いようで券売機も無く、自分の隣の席をポンポンと叩いているのを無碍にするのも悪いし、気遣いに甘えてそのまま席に着く。

「この店なぁ〜、メッチャ辛いラーメン出すんだよ〜、お前どう?」

ニヤニヤしながらそう聞いてくるゴールドシップ。

「まぁ、辛いのは好きだからそれでもいいが」

「おぉ〜!!そっか〜、じゃあおっちゃーんコイツにヒリ辛一丁な〜!!」

「あいよー」

それからしばらく、ゴールドシップと談笑して出て来たラーメンを見て驚いた。

赤い。とにかく赤い。

カプサイシンカプサイシンした匂いが鼻を突き抜ける。

「残さず食えよ〜?」

心なしかゴールドシップのニヤニヤが深まった気がした。

オレは一瞬ハメられた気がしたが、よく調べずにそれでいいと言ったのは他ならぬオレ自身だ。

ならばここはオレが平らげなくてはならない!気がする。

幸いオレは辛いのは得意な方だ。

ならばイケるハズ!!

「……いただきます」

カラァァァァイ!!

でもウマいかも…。

やっぱカラァァァァイ!!

しかし、食べ物を粗末には出来ない。少しずつ、着実に時間をかけてでも食べ切らねばトレーナーとして、教育者として示しがつかない!

「ズルズル…」

「おっ、おお…」

それから数十分後

「うっぷ。ごちそうさま」

「スッゲーな!!まさかホントに食い切るとは思わなかったぞー!!」

ゴールドシップのテンションが高い。

肩をバンバン叩かれる。が、一応加減はされてるのかそこまで痛くは無い。

よっぽど無茶と思っていたのか。

「それじゃあ、ゴルシちゃんからご褒美があるぞー♪」

「ご褒美?」

何やら嫌な予感がしてつい身構えてしまうが。

「まあそう警戒すんなって。この店出て左にある信号あるだろ?そこをちょっと真っ直ぐ行くと良いもん見られるぜ?」

言いたいだけ言って、あばよっと立ち去るゴールドシップ。

なお、彼女の分のラーメン代もオレ持ちな模様。

しっかし良いもんか……。

「騙されたと思ってちょっとだけ行ってみるか」

雪は降っていないものの、寒さは変わらぬ街中を歩く。

辛いものを食べたからか、ポカポカとしてきて食べる前より幾分楽になった気もする。

少々腹が満腹感で苦しいがそのくらいだ。

件の信号を渡り、少しまっすぐ。

キョロキョロと周りを見回しながら良いもんとやらを探す。

しばらくそうしていると、老舗で知られる手芸店のショーウィンドウの向こうにウインディとヒシアマゾンの姿を見つけた。

こちらには気づいていない様子で、なにやら毛糸を選んでいるようだ。

手触りを確認したり、色を吟味したり、パッと見で楽しそうな様子が伺える。

うんうん。ウインディ立派になってなどと、何やら目頭が熱くなる気がする。

確かに良いものを見させてもらえた。

女の子同士の買い物をこれ以上ジッと見ているのも野暮だろう。

ここは見つかる前に引き返すのが吉か。

学園へ戻るオレの足取りは、ラーメンを食べる前より幾分軽くなったように思えた。

 

 

失敗続きで穴だらけのマフラーばっかになっちゃうのだ〜

 

こっちの方がやりやすいのだ?

 

でも長く使ってほしいのだ〜

 




なお、筆者は塩が好きです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

50話なんだって。

ありがとうございます。


 

 

その日、厳密にはその日のトレーニング終了後、オレに激震走る。

「トレーナー!!この後ヒマなのだ?」

ウインディが久しぶりにこのセリフを言って来たのだ!!

「ちょーひま」

当然即答。ウインディの誘いを断るなど、トレーナーの名折れよ。(サムライ並感)

「それじゃ〜着替えが終わったらすぐに行くのだ〜♪」

そう言うとウインディは更衣室まで小走りで向かって行った。可愛い。

「ちゃんと前見て走れよー」

そう言うとウインディは振り返り、笑顔で手を振ってきた。可愛い。

さて、オレも出かける準備をするかな。

いったんトレーナー寮に戻り、着替えをささっと済ませると、置いていく荷物と持っていくものを取り替えてそのままトレセン学園の入り口に向かう。

そのすぐ後に、ウインディがやって来て

「待ったのだ?」

「いいや、今来たとこだよ」

と、軽く会話を交わして出かける。

外出届を書く時間もあるのでもうちょっと遅くなると思っていたので少々意外だった。

そのことを何となしに聞くと

「早くトレーナーと出かけたくってがんばったのだ〜♪」

と、返事が返って来た。可愛い。

なお、今回は車は使わず徒歩での移動だ。

人混みのため、はぐれないように手を繋ぐ。

「そういや今日は何の用があるんだ?」

ケーキやらターキーの予約は既にしてあるし、パーティーグッズも色々と取り揃えてある。

「?とくにないのだー」

「そっかー、特に無いのかー」

「のだー♪久しぶりにトレーナーとお出かけしたかったのだ〜」

エヘーと言って隣を歩くウインディ。

そういえばこの子はイタズラっ子だったな。

こんな絡め手を使うなんてやるじゃないか。

ご褒美というわけでは無いが、オレが頭をうりうりすると特に抵抗も無く耳を丸め、目を細め猫のように喉を鳴らす。しっぽなんかはもうブンブンだ。可愛い。

しょうがないなぁなんて思ってしまうオレは本当にウインディに甘いんだろうな。

否定はしないし出来ないが。

せっかくだから色々と見て回る。

本屋に寄ったり、たまたますぐ上映の映画を見たり、シューズを見たり、たまたま出会ったクラスメイトちゃんとお話ししたり。

気がついたらもう良い時間になっていた。

公園のベンチに座りつつ、クレープを食べているウインディが聞いてくる。

「そう言えば、トレーナーはどんな柄が好きなのだ〜?」

急だな。しかし柄かぁ〜……。

言われるとあんまりこだわりだったり、意識とかしたことないが…そう答えようと思った矢先に、ふとウインディの耳飾りに目が行く。

「……白地に紫のギザギザとかかな。」

「のだ?エヘヘ〜、ウインディちゃんの耳飾りとお揃いなのだ〜♪」

そう言うウインディは何やら嬉しそうだ。

「練習が終わったらその方向で行くのだ〜♪」

「練習って、トレーニングのことか?」

「ナイショなのだ〜♪」

そう言うウインディはお出かけ中、終始ご機嫌なのだった。可愛い。

 

 

ヒシアマ姐さん!!

 

作りたい柄が決まったのだ〜♪

 

のだ?ご機嫌?

 

よくわかったのだな〜♪




久々のお出かけ回。
ほっこりしていただけたら嬉しいなぁ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃん is kawaii

kawaii is ウインディちゃん


つい先日久しぶりに一緒にお出かけしたのを境に、ウインディはまた構ってちゃんモードになって来た。

何でも、作っているものの作業が順調に進んでいるとか。

なお、何を作っているのかはまだヒミツらしい。

まぁ、こないだの手芸店のことから察するに、編み物であろうことは分かるが、それを本人に告げるほど無粋では無いつもりだ。

しかし編み物か。

ニット帽やら手袋やら、リボンにコサージュ。あみぐるみなんかもあるし、余った毛糸でぽんぽん(段ボールやフォークなどの芯に束ねた毛糸をハサミで切って形を整えたもの、花やヒヨコなどの小動物を模したものが一般的らしい)を作ってもいいだろう。

ちょっと想像して見るが、どれもウインディに似合いそうだ。

出来上がったら是非、ウインディには作品を身につけた姿を見せて欲しいものだ。

もちろん、市販品と比べて彼女が恥ずかしいと感じるのなら無理にとは言わないけども。

最近はそう言ったは品は工場の機械で作られた量産品ばかり身につけているからか、なかなか馴染みがないように感じられるが、実際やってみると大変だろう。

授業か何かで作っているのだろうが、その経験は大切にして欲しいものだ。

ヒシアマゾンは色々と器用そうだし、何かやらかしそうになったとしてもフォローもバッチリ入れてくれるだろうからその辺りの心配もいらない。

オレとしてもできれば手伝ってやりたい気持ちもあるが、緊急時でも無ければ基本的に生徒以外出入り禁止の取り決めがある寮内のことは生徒達自身に任せるより他ないから、そこは仕方がない部分と割り切るより無い。

「よし。終わった」

物思いやら感慨に耽っている間に、なんとか今日分の作成資料のチェックを終わらせる。

次はトレーニングメニューの再構築やら、ライバルになるだろうウマ娘の再度の情報収集やら、ウインディと出かける場所のチェックやら、色々とやるべきことが、山積みだ。

しかし、改めて録画したレースの映像を見ると本当にウインディは天才なんだと思う。

そりゃあ、オレだってまったく何もしてないわけでは無いが、それだってウインディの素養があっての話だ。

普段の態度は周囲に対して丸くなったように見えるが、その実レースで勝つことへの執念はむしろ研ぎ澄まされている。

本当に今からクラシック級が楽しみなくらいだ。

「来年、ダートはきっと盛り上がるだろうなぁ」

ウインディがいるから、と言うのもあるが一時期に比べて知名度も高まっているのが大きい。

それに、ウインディのライバル達も決して弱くは無いのだ。

「…来週からもう少しだけトレーニングのレベルを上げるか」

今夜の仕事は、まだ終わりそうに無い。

 

 

うぅ〜

 

ギザギザのところむつかしいのだ〜

 

でも、ウインディちゃんはまけないのだ〜!!

 

がんばるのだ〜!!

 

 

 

 




初心に帰ろう的なサブタイにしたかった(こなみかん)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決してカレンちゃんにケンカを売ってるわけじゃ無いの。

ウインディちゃんは可愛い。
カレンちゃんもカワイイ。
それで良いと思うの。



ウチのウインディは相も変わらず可愛い。

今正に目と鼻の先に居るその姿はさながら甘えてくる仔犬のようだ。

なんて言うと、彼女は怒るだろうか。

こうなったことの顛末として、オレはいつものようにトレーナー室のコタツで小休憩を取っていた。

仕事もひと段落したし、ウインディが来るにもまだ時間があると思ってまったりしていたのだ。

ドタドタドタドタドタドタ……。

おや、そうこうしている間に可愛い足音が。

バターン!!

「トレーナー!!ウインディちゃんが来たのだーー!!」

いつものように元気いっぱい。

ハツラツ!!と言った様子のウインディが飛び込むようにしてトレーナー室に入ってきた。

「おおー、トレーナーお休み中なのだー?」

いつもこの時間は大体机の方で作業していることが多いからか、ウインディはなにやら意外なものを見るような目を向けてくる。

「そー。いまきゅーけーちゅー」

そう気の抜けた声で返事をすると、ウインディは何か閃いたように上履きを脱ぎ、コタツに潜り込む。

何かイタズラでも思いついたのかな?と思った瞬間。

ウインディはオレの脚の間に背中を預ける形でもたれかかって来た。

正直狭いし前が見えないが、オレは努めて冷静にウインディにその意図を問う。

「あのー、ウインディ?」

なにしてるの?と言おうとした時だった。

「エヘー、やっぱりなのだー」

と、ウインディはニコニコ顔で言う。

「何が?」

とオレが問うと

「大好きなトレーナーとコタツの間に入るといつもよりぽかぽかするのだ〜♪」

なっとくなのだ〜♪と、なにやら一人でうなずいているウインディに、何が言えるわけでも無く

「撫でても良いのだ〜♪」

と、いつものように差し出される頭をナデナデするしか出来ない。

「よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよし」

「エヘー、これがないとやる気が出ないのだ〜♪」

満足げな顔でそれを言われて、オレは幸せを噛み締める。

今たづなさんに見られたら、間違いなく笑顔でお説教だろうが。

そんなこんなでわちゃわちゃしている。

トレーニング開始まで色々と話したり、質問を受け付けたり、結構色々とやっているつもりだ。

「そう言えばウインディ、トレーニングでの意識する走り方分かって来た?」

「のだ〜。スーッと行って、グッとやってどかーん!!なのだ〜!!」

「そうそう」

言い方はちょっとアレだが、オレなりにウインディに合う走り方を模索した結果、そのリズムで仕掛けるのがちょうどいいと判断した。まぁ要するにウインディに合わせた感じか。

その時コンコン、と扉がノックされる。

オレは立ち上がり、ウインディはそのままコタツでぐでっとしている。

まだトレーニング開始時間には早いしまあいいかという判断だ。

「どうぞ」

「失礼する」

入って来たのは生徒会副会長、エアグルーヴだった。

そう言えば学年はウインディと同じか。

クラスはちがうようだけども。

わざわざここに来たイマイチ用件が分からない。

「?生徒会に出すような資料はオレは預かっていないが」

「あぁ、いやその件では無くてな。最近シンコウウインディの悪戯被害関係の書類が激減しているので、礼を言いにな」

「それ、本人がいるとこでするか?」

「すまん。だが今くらいしか時間を取れなくてな。それに、これでも私個人としては同期がデビューしたことを喜ぶ気持ちもあるのだ」

どうやらウインディの様子見に来てくれたらしい。

エアグルーヴは要件を済ませるとさっさと出て行ってしまった。

「へへーん。見てるのだ〜♪」

そう言うウインディの口ぶりは、初対面の悪戯っ子のものだった。気がする。

 

 

今におどろかせてやるのだ〜。

 

……のだ?

 

トレーナー!!

 

みかん無くなったのだ〜

 

 

 

 

 

 

 




そう言えば同期でしたねこの二人。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

イチゴって最近高いですよねぇ

なお、筆者はいちご大福が好きです。


それはいつものようにパソコンで作業をしていた時のこと。

ピロン、と軽い電子音が作業用パソコンから流れる。

どうやら学園からの定期メッセージが届いたようだ。

これはまぁ、この資料の提出期限守ってねーとか、どこそこのトレーニング施設が開きましたよーとか、後はチームを持っているような先輩方各位に向けての激励だったりが主な内容だ。

ん?

追記ででっかくなんか書いてあるな…。

えーっとなになに?

………………………。

ふむふむ。

ざっくり言うと、明言は避けるけどウマ娘とトレーナーの距離感がバグってるところがちらほらあるから気をつけてねって感じだ。

そっかそっか〜。そんなとこもあるのか。

 

ウチは関係無いな!!

 

そもそもオレからはもちろん、ウインディから引っ付くようなことは実はあまり無い。

それこそ、先日のコタツでの出来事くらいなもんだ。

外食に一緒に出たり、ついでに買い物したり、トレーニング用品を買ったりはした。

しかし公の場でベタベタはしてないし、おんぶしたことはあっても、それはトレーニング後のウインディ自身がヘトヘトで動けなかったからだ。

頭を撫でるのも、あくまでウインディのモチベーション維持のため。そりゃあ可愛くて可愛くてたまらなくなって一時間くらいナデナデしていたこともあったが、それだって十分コミュニケーションの範疇だと思う。

ついこないだ、偵察に行って何故だか速攻でバレたタイキシャトルにも、ついでと思ってオレたちの距離感について相談したら

「OH!ドンウォーリー、ダイジョーブデース!!」

っていい笑顔でサムズアップされながら太鼓判押されたし。

その後「マカセテクダサーイ!!ナイショにしときマース!!」とか言われたが、あれは偵察のことを黙っててくれるってことだろうし……。

って言うか今にして思うと生徒に相談するようなもんでも無いなこれ。

別に聞かれて恥ずかしいことでも無いけども。

まぁ、先輩方の話を聞いた感じ、担当ウマ娘との距離感がヘンになるのは新人トレーナーあるあるらしい。

まだ春のあの日。新人歓迎会で酒が入ったゴツイガタイの先輩が、あの過去を懐かしむような目は本当に優しかったなぁ…。

「ヘンな気起こすなよ〜。まぁウマ娘に人間は力で勝てんがなウワハハハ!!」なんてからかわれたりなんかもしたが。

ちなみに彼は既婚者。そして奥さんはウマ娘。

その意味するところは………うん。まぁそゆこと。

ああ言うのに対するうまい返しってなんなんだろうなぁ。

「っと、仕事仕事」

定期メッセージ見といて資料遅れましたーじゃギャグにもならない。

元々あとちょっとくらいまで出来てたから仕上げだけだし。

ここがこれでー、こうなってこうなるからー………

……………………。

よし、出来た。

あとは誤字脱字が無いか確認して、できる限りの推敲もしてー、送信!!

「ふぅー、ひとごこちついた」

ドタドタドタドタドタドタドタドタ……。

おお、この足音は

「トレーナー!!クラスメイトにイチゴ狩りのペアチケットもらったのだ〜!!」

そう元気よく言う、自慢の担当ウマ娘だった。

「って、結構遠いな」

ウインディに渡されたチケットを見て、オレはそう思った。

「まぁ期限は無いみたいだし、後で考えようか」

「のだ〜♪」ナデナデ

 

 

イチゴは甘くて好きなのだ〜♪

 

のだ?

 

あのツブツブが実なのだ?

 

あとでトレーナーに教えてあげるのだ〜♪

 

 

 

 

 




いやぁ、誰のとこなんでしょうねぇ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

はじめてプリコネ見たけどキャルちゃんが可愛いんだが!!

久々にグラブル開く→何となしにサイドストーリー開く→プリコネイベ発見→そういや見たことないな→アニメ借りる→見る→キャルちゃん可愛い!!←今ココ。


オレは今、保健室で謎の不審者とお見合い状態となっている。

目の前の不審者は長い金髪に白衣を纏い、謎のマスクを身につけて、「アンシーン!」などと言っている。

いや、全く安心できないんだが?

事態は少し前に遡る。

今日の授業が一通り終わり、いざトレーニングと思ったら廊下でたまたますれ違った同期に保健室への届け物を頼まれた。

急用が入ったとかで本当に急いでいるようだったので断るのも何だし、それほど遠くもなかったので了承して荷物を持ちつつ廊下を歩いていると、これまたたまたまウインディと遭遇。

「せっかくだし来るか?」と聞くと

「行くのだ〜!!」と元気よく返される。

放課後だから授業の心配もなかったし。

そうしてウインディとトレーニングのことやら授業のことなどの世間話をしつつ、たどり着いた保健室の扉を開けてみると

「いらっしゃ〜い☆」

不審者がそこにいた。

「お願い〜〜!!絶対役に立つから〜〜!!」

「いや、無理でしょ。たづなさんあたりに話を通してあるんならまだしも、完っ全なる侵入者の言うことなんて信じられるわけないでしょ!!」

昨今のハラスメント事情を鑑み、また学園の評判のためにも、そして他トレーナーが風評被害を被らないためにも、いきなり直接組み伏せたりは出来ないのでまずは話を聞いてみることにしたものの……。

彼女の話はなんというか要領を得ない。

彼女の名は安心沢刺々美と言い、伝説の笹針師とやらの弟子らしい。

何でも特殊な笹針でウマ娘特有のツボを刺激することによってその能力を引き出したり、疲労を回復させたり、レースで勝てるようになったり、魅力を引き出したり出来る……らしい。

いや、自分の知識にないことを全否定するつもりはないが、如何にも怪しいと言うか胡散臭い。

嘘か本当か、一時期謎の筋肉痛に悩まされたあの『皇帝』ことシンボリルドルフが一か八かで笹針治療を試み奇跡的に復活したとかなんとか。

少なくともウチのウインディはそこまで逼迫もしていないし、そもそもまともなトレーナーなら二つ返事で了承することも無いと思うんだが……。

「ホントにスッゴイんだから〜〜!!師匠は」

じゃあ師匠に来てもらうわ。

百歩譲っても、ずーーーーっとお茶汲みしてた人には任せらんないわ。

「うぅ〜、注射は嫌なのだぁ〜」

ウインディも嫌がっているし、かと言って素直に帰ってくれる雰囲気でも無い。

何より、他の手に握られた注射器のようにぶっとい針がウインディに刺されるところとか見たく無いし。

……仕方ない。騙し打ちするようで申し訳ないが、かと言って被害が出てからでは遅い。

「ハァ…じゃあちょっと待ってて下さい」

「え〜?なになに〜?」

「ちょっと貴女の治療を受けたい人を募集してくるので」

「オッケー!まっかせなさ〜い!!」

ウインディと一緒に廊下に出て保健室から少し離れて携帯を取り出す。

「あっ、もしもし?たづなさんですか?」

ピッ

よし。後はウインディだが……

「うぅ〜、こわかったのだぁ〜」ぷるぷる

「よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし」

なんとか落ち着けるためナデナデに勤しむ。

「トレーナー…」

「どうした?ウインディ?」

「今日、トレーナーのとこにお泊まりしてもいいのだ?」

いやぁー、それはさすがになぁ…。

「おねがいなのだぁ……」ウルウル

「よーし、ヒシアマゾンにはオレから言っておくからなぁ〜、よしよしよしよしよしよし」ナーデナデナデ

「エヘー、ありがとなのだ〜」

なお、その後たづなさんが駆けつけたであろう保健室方向から窓の割れるような音が聞こえて来たのは余談である。

 

 

エヘー

 

よくわかんないけどラッキーだったのだ〜♪

 

スヤァ〜〜

 

 

 




キャルちゃんにウインディちゃんみを感じるのだ……。
ウマ娘じゃないからセーフよね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

今回のお話はいつもよりフリーダムです。

え?いつもそう?
まっさかー。


とある昼下がり、と言ってもトレセン学園の昼休憩と言うだけだが、オレはトレーナー室で弁当を広げ、愛読誌である『月刊ダート』を読んで、それなりに優雅に過ごしていた。

その時である。

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ

「ん?」

まだ放課後じゃ無いハズだけども……

バタァン!!

「トレーナー!!ウインディちゃんダイエットするのだー!!」

と、半泣きになりながらうちのウインディが駆け込んで来た。

「よーしよしよし。何があったか順を追って説明してくれる?」

「のだぁ〜……」

ウインディが力なく頷く。

うーむ、なんやかんや結構仲がいい様子だったクラスメイトちゃんが、意図してウインディを傷つける発言をするとも思えないしなぁ…。

多分ウインディの早とちりだと思うが…。

「実はさっき…」

「やっぱり付き合うならトレーナーだよー」

「うぅん、もっと視野は広く持っていいと思うけど……」

と言う話をしていたら突然

「ウインディちゃんって結構アッサリオチそうよね〜」

「あぁ〜まぁ、警戒心の強い子ほど〜って言うしねぇ」

「そ、そんなことないと思うけどー……」

「そうかなぁー?」

「ムゥ〜」

 

「ってことがあったのだぁ〜…」

あぁ〜なるほど理解した。

確かに否定はしにくいよなぁ〜。

「ウインディ、それは多分太ってるってことじゃ無いぞ」 

その言葉にウインディは耳でピクッと反応する。

「のだ?そうなのだ?」

気持ち声が明るくなった気がする。

まぁ、アスリートだし重いと言ってもほとんどは筋肉だしな。

「うん。クラスメイトちゃんが言いたかったのは…」

「のだ?」

うぅん、言い出しにくいがここは誤解を解かねばなるまい。

「ウインディが…」

「ウインディちゃんが?」

「たまーに抜けてるとこがあるって事だと思う」

「のだ!?」

うん。多分これだろう。

何故付き合うなら〜からいきなりウインディへの注意喚起になったのかは分からないが、たぶん「もうちょいしっかりしないとそう言う相手は見つからないぞ」という助言だったのだろう。

しっかし、恋愛かぁ〜。

ウインディもいつかそう言う相手を見つけるのだろうか。

そりゃそうか。

身内の欲目無しにしても可愛いし、素直じゃ無いところはあってもかまってちゃんで、同時に人見知りもするタイプだが基本良い子だし。

ただまぁ、相手には最低限求めるものはあるよなぁ。

ウマ娘に理解があって、ウインディ自身が十分に懐いてて、高級取りでは無いにしろそれなりには稼いでて、それでもってウインディのことを常に考えているような……。

まぁそう都合良くはいないか。

それにまだまだ先のことになりそうだしなぁ…。考えたくはないが、万一ろくでもない野郎だったなら、その時は、親御さんより先にオレ自身が相手を見極める必要があるだろう。

ともすればトレセン学園恒例、トレーナーズvs相手の男という、事実上の圧迫面接…もとい、話し合いも辞さない。

舐め腐った態度や格好をして来たら即失格!!

ご両親に挨拶に行く時の持参品TEMIYAGEをもってしても懐柔は不可能という難攻不落の要塞だ。

はっはっは!!

え?過干渉だって?

トレバカ舐めんなぁ!!

ハッ、しまった。取り乱した。どうやらオレの中の教導的精神(トレーニングマインド)が暴走してしまったようだ。

ただまぁ、ここまでするのにも相応に理由はある。

高等部から入って来た子ならまだしも、中等部からいるような子なんかは女子校の、それも寮暮らしが長い。つまり世間知らずな子も少なからずいるのだ。

そう言った子を誑かし、あまつさえその稼ぎに甘えてヒモになろうなんてアホなことを考える野郎は残念ながらゼロでは無い。

それにこう言ったことをするのはあくまで親御さんからの相談が前提だ。

トレーナー側が一方的に我を通すことは当然ながらできない。

なんやかんやいいつつ、一番はその子の幸せだし。

逆に依頼さえされれば我々トレーナー一同、容赦無く相手の本心を曝け出すとも辞さないと言うだけで。

何故、トレーナーがライバルに手を貸すのか。それはトレセン学園の生徒同士が仲間であると同時にライバルでもあるのと同じことだ。

苦労自慢になるが、トレーナー学校は厳しい。

基礎となる学問はもちろん、語学に医学、栄養学その他多数を納める必要があるうえ、料理なんかも出来たほうがいいし体力も必要だ。

そんな中で、なんとか生き延び、教導的精神(トレーニングマインド)に目覚めた者同士助け合うのはむしろ当然の帰結と言える。

そんなトレーナー達にとって我が子も同然のウマ娘に変な虫がつこうもんならそりゃあ逆鱗ってもんだ。

因みに男側がトレーナーの場合、この圧迫面接はパスできる。

代わりにたづなさんとサシでの話し合いになるが。

まぁ、どっちも一緒だね!!

「のだぁ〜♪」

そんなことを思いつつ、オレはウインディをナデナデし続けたのだった。

 

 

へっへーん!!

 

ウインディちゃんにはトレーナーがいるからだいじょーぶなのだー!!

 

へ?やっぱり落ちてるって

 

なんでなのだ〜!?




※教導的精神は公式には無いよ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アレだね。「娘さんを下さい」って言う男にとってのラスボスがご両親だとするとトレーナーは四天王ポジだね。

キャルちゃんのフィギュアAm○zonで約16000円もする…お高いですねぇ。 orz


「よーし、ウインディ!合図をしたら走り出すんだぞ〜!!」

「わかったのだ〜」

オレとウインディはいつものようにトレーニングをしている、

今回は未だに苦手なゲートの練習中だ。

いくらかはマシになったとは言え、ウインディはまだ決してゲートが得意とはいえない。

なにより一瞬の出遅れが勝負の明暗を分つのはレースに関わる者ならば知っていることだ。

ジュニア級やクラシック級の序盤ならまだ巻き返しは効くだろうが、それ以降となるとそうも言っていられない。

敵もさる者ひっかく者。競争相手も学び、強くなる以上油断や慢心は大敵だ。

それこそ天狗になっている暇すらないほどに。

レースでの仕掛け時や、相手の動きをイメージするうえで大切なのは頭で理解し数をこなすこと。

今回はやっていないが、並走トレーニングなんかはそれにうってつけだ。

ただ、一対一に意識が向きすぎるのも問題だが。

もちろんどんなトレーニングにせよ、やり過ぎによる過度の消耗を避けつつ、切上げ時も見極める必要がある。

そう言う意味ではウインディのわかりやすさというのはトレーニングに於いてプラスに作用している。

特にウインディのような本能型は、磨き上げればむしろその闘志でもってレースの流れを直感する術を無意識にできるようになるらしい。

そればっかりは理屈で説明できないところのようだ。

ただまぁそういうのは不確定要素ではあるものの、オレはあってもいいとは思う。

むしろ不確定だからこそ、そう言うのがレースの中でドラマだったり感動を生み出すのは間違い無いからだ。

そのいい例が忘れもしないあの有マ記念。二度も骨折を経験したことで、もはや全盛期を過ぎたなどと言われたトウカイテイオーが、最後の直線でなんとビワハヤヒデを抜き、トップでゴールを果たしたのだ。

一応言っておくが、対戦相手のビワハヤヒデだって強いウマ娘であるのは間違いない。

現にあのレースで彼女は一番人気、対するトウカイテイオーは四番人気だったことからもその実力は分かろうというものだ。

とにかく、トウカイテイオーが意地を見せたあの時、あの瞬間ほど沖野先輩が喜びに咽び泣いていたのを見たことはないし、オレもああなりたいと強く思ったもんだ。

だからこそ、担当ウマ娘を決めなかなか決めかねていたとも言える…ってのは都合が良すぎるな。単にオレがウダウダしてただけのことだ。

オレには演出も脚本もできはしない。

しかしウインディのサポートならば出来る。

だからオレはオレにできる最大限をもってウインディに報いたい。

「よしスタート!!」

「のだー!!」

ゲートが開き、ウインディが飛び出す。真剣な顔も可愛い。

今のところ三回連続で成功している。

「よしよし、えらいぞ〜ウインディ〜」

「へっへーん!ウインディちゃんにふかのーはないのだぁ〜♪」

その前に五回連続で失敗しているが。まぁ言わぬが花だろう。

ともかく、まだまだ先は長いなぁ。

 

 

ウズウズ………

 

ウズウズゥ〜〜〜

 

ごほーびのためにガマンなのだぁ〜!!

 

エヘヘー

 

(ゲートが開く音)

 

あっ……

 




えっ?たづなさんはどうなのかって?

……………………

……………………

……………………

……………………

……………………

裏ボス…?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

なんとなく猫動画を見ていたら書きたくなったので。

ちなみに筆者は猫は短毛派です。



いやぁ〜可愛いなぁ〜。

「うへへへへへ〜」

オレはこの日、気分転換にと座ったベンチで手に持ったスマホを見ながら鼻歌まじりにニヨニヨしていた。

「どうしたんだ?」

「あぁ、先輩」

向こうのほうから歩いて来た沖野先輩に声をかけられる。

「お前今完全に変なヤツだったぞ?」

へ?オレが?まっさかー。

「いやいやご冗談を…」

そう言いつつ周りをキョロキョロと見回す。

今は授業中だからか生徒たちの姿は無い。

特に悪いことをしたわけではないが、オレはホッと胸を撫で下ろす。

「で、いったい何を見てたんだ?」

沖野先輩は興味ありげに隣に座り、オレのスマホに目を向ける。覗き込もうとしてこないのはさすがと言うか、無理強いする気はないのだろう。

「えぇ〜?それ聞いちゃいますぅ〜?」

オレは頬を緩めながらそう言う。

「いや、無理にとは…」

「いやぁ実はですねぇ…」

言いかける先輩にズイッと近寄りスマホを見せる。

「実家の猫が子猫を産んだんですよ〜」

そこには生まれて間もない四匹の子猫が寝ている写メが。

「えっマジか?おめでとうー!」

「いや、おめでとうはね、頑張ってくれた子に言ってあげてくださいよ〜」

そう言いながら、オレは「可愛いぃ〜」と呟きながらそれを見続ける。

「そういやぁ、お前んち猫飼ってたのか。名前はなんてんだ?」

「あぁ〜それがですねぇ、今家族みんなで考えてる最中らしくって…」

「いや、親猫の方の名前なんだが…」

あぁ〜、そっちかぁ。

「雄の方がフェブくん。メスの方がラリーちゃんっていうんですよ〜。どっちも二月生まれだからそんな名前になったんです」

そう言いながらオレは写真ファイルを開いて画像を選び、はいっと見せる。

「おぉ〜、シャッとしてるなぁ」

ふふふのふ。そうでしょうそうでしょう。

「これでも食べるものやら運動量には気を遣ってますからねぇ。ダニの予防薬やら健康診断だってちゃんと受けさせてますよ〜」 

なにせこの子たちも大事な家族だ。出来る限り一緒にいたいし長生きしてほしい。だからこそ健康にも気を使う。

オレの尊敬する爺ちゃんも口を酸っぱくして言っている言葉だ。

因みにこの子達の品種はロシアンブルー。その名の通りロシア原産で、寒さに強く暑さに弱い。外見は短毛で名前の由来ともなったブルーの毛色でグリーンの瞳。性格的特徴としては大人しくて物静かな子達だが、よその人への警戒心は強めだ。

しかし一度懐いてくれればめちゃくちゃ愛情たっぷりにスリスリしてくるので、犬のような猫とも言われており、気長に付き合うことさえ出来ればいい家族になれる。

思い返すとまるでウインディみたいだなぁ。

なお太りにくいその体はなかなかに筋肉質で、運動量も結構あるためお迎えする際にキャットタワーは必須だろう。

「なるほど。お前の家族がしっかり者だってのはわかったよ」

そう言って先輩はベンチから立ち上がる。

どうやらチームスピカの仕事がまだ済んでいないらしい。

「あぁ、そうそう」

立ち去ろうとした先輩がこちらに向き直り、茂みを指差す。

「猫もいいが、そこにいるデカいわんこもちゃんと構ってやれよ〜」

「へ?でかいわんこです?」

そんなことを言いながら、指で示された方向を見る。

いやいや流石にウインディとは言え、猫にヤキモチなんて………。

「ムゥ〜」ぷくー

あっ……。

「よ…よーしよしよ…」

「ガブーーーッッ!!」

その後、オレが必死にナデナデしたのは言うまでもない。

 

 

ふーん

 

おこってないのだ〜

 

べつにウインディちゃんはかわいいっていってほしいわけじゃないのだ〜

 

エヘヘ〜♪

 

 

 




毛の長い子も可愛いんですが手入れがね……
ノルウェージャンフォレストキャットとか可愛いとは思うんですけど…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

缶のホットドリンクって油断してるとめちゃ熱いですよね。

殿下は可愛いが、ウインディちゃん貯金を崩すには至らんよ。

ふっふっふ。


ここはトレセン学園に程近い商店街。

「寒いなぁ…」

「のだぁ…」

オレとウインディは休日を利用して競技用蹄鉄の確認のために用品店を見ていたところだ。

「ウインディ、大丈夫か?」

「だいじょばないのだぁ…」

しかし、やはり忙しい時期なのか思った以上に時間がかかり、やっとこさ用事が終わったため駐車場まで歩いて向かう途中、かなり冷え込んで来た。

「しょうがない…」

オレは近場の自販機に向かって歩き、ゴソゴソとポケットからサイフを取り出す。

ウインディもそれに続いて自販機の前でコーンポタージュのボタンをポチポチしながら今か今かとコインの投入を待つ。

「ちょっと待ってろ〜」

「はーい、なのだー!!」

チャリンチャリンと二回音がすると、ピッと小気味よく音が鳴りお目当ての品が取り出し口にガコンと出てくる。

「あちち〜なのだ〜」

「ヤケドしないようになぁ」

そのまま近くにあった公園のベンチに腰掛け、一旦休憩する。

ウインディにはオレが巻いていたマフラー(どこにでも売っているような青いチェック柄の市販品、何故かウインディに買い替えないように言われてある)を貸している。

因みにオレもさっきの自販機でペットボトルのホットコーヒーを買った。

ウインディはカーディガンの袖の中に手を入れ、何とか開けようとしていたがすべってうまくいかないようだ。可愛い。けど危ない。

「よかったら開けようか?」

「まかせたのだ!!」

自販機で買う缶飲料って何でこんなに熱いんだろうなぁ…。

そんなことを考えながらカシュッとふたが開く。

口広タイプなので、中のコーンが余さず飲めるヤツだ。

「ありがとなのだ〜」コクコク…

そう言って受け取るウインディ。可愛い。

「エヘー、とうもろこしはかじるのが一番だけど、飲むのもいいのだなぁ〜」

そう言うと、ウインディはシュルシュルとオレの貸したマフラーをほどいてオレの首に軽く巻きつけ、次いで自分の首にも巻く。結構長めのヤツだったからか案外二人でもいけたようだ。

「どした?」

「エヘヘ、おれいなのだー♪」

そう言うと、ウインディはオレに体を預けてくる。

すぐそばにある頭を撫でると、何やら寝息が聞こえて来る。

どうやら疲れたようだ。

今日は一日休みだったのにオレに引っ付いて来て、かと言って肝心の用事の方はずーっと待ちっぱなしだったもんなぁ…。

『待ちくたびれる』なんて言葉もあるくらいだしな。

ましてウインディみたいに元気のありあまる子には退屈極まりなかったろう。

あとで埋め合わせを考えないとなぁ…。

このままウインディに風邪を引かせるわけにはいかないため、オレはすぐにコーヒーを飲み終えると、何度目になるかわからないおんぶを敢行する。

ウインディが巻いてくれたマフラーがほどけないようになんとか気を遣いつつ駐車場に向かい、車にウインディを乗せるところで、結局名残惜しいがマフラーを解いた。

助手席で普段と打って変わって静かに眠るウインディを撫でつつ、オレはいつも思っていることを言う。

「お礼を言うのはこっちの方だよ」

そう言うと、ウインディが少しピクッと反応したのは気のせいか。

それは当人のみぞ知ることだった。

 

とれーなー

 

たのしかったのだぁ…♪

 

むにゃぁ……。




冬場は甘酒が恋しくなります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんのSSR実装で勝負服姿だけでも見たいです(血涙)

色々と新しい子実装されてるしワンチャン……。

ほんとお願いします(切実)


時刻はトレーニング終了後。

ウインディはオレの膝枕で寝ている。

と言うのも、ウインディが

「クラスメイトが膝枕がいいって聞いたのだー!!」

とのこと。

要約すれば、トレーナーとの仲を確認するには膝枕が一番。と言っていたらしい。

……どんな理屈だ?

まぁ、そんなこんなでトレーニングが終わるやトレーナー室でソファに腰掛けるよう催促したと思ったらボスンとオレの足の上に頭を置いてグッスリ眠るウインディ。可愛い。

ナデナデしたり、おでこをさすったり、ほっぺをモチモチしたりとオレとしても堪能させてもらったから文句は言えないが。

「しっかし、可愛いなぁ〜」

やはり贔屓目というか、担当ウマ娘というものはどうしたって可愛く感じるようだ。

いやまぁ、ウマ娘と呼ばれる彼女たちは皆容姿に優れると言うのもあるが、これはそう言ったものとは別だろう。

オレはウインディが風邪をひかないように目の前の机の上にあるリモコンでエアコンを起動。暖房をつける。

あいにくと、手の届く範囲に毛布などのかけるものも無いためオレの上着を脱いでウインディにかける。

「クサイのだぁ」とか言われたら軽く傷つくところだったが、そんな事もなかった。

どんな夢を見てるんだろうなぁ…。

「にへへ〜、ジュルリ……」

…どうやらとうもろこし食べ放題の夢でも見ているらしい。

本当に好きなんだなぁ…。

穏やかに眠るウインディを見ると、こっちまで幸せな気持ちになる。

「よーしよしよし…(小声)」

ゆっくりと頭を撫でるとくすぐったそうにウマ耳がピクリと動く。可愛い。

「さて、こっちはこっちでやることやるかぁ…」

オレはカバンからノートパソコンを取り出して仕事をはじめる。

ソファから立ち上がれば、すぐそこにいつもの作業用パソコンがあるものの、ウインディを起こすのも悪いので、そっとウインディの頭を右膝に、ノートパソコンを左膝に乗せて仕事をはじめる。

カタカタ… カタカタ…。

カタ… カタカタカタ…。

時折りウインディがモゾモゾと動くので、その度にキーボードを打つ手を止めてウインディの頭を撫でる。

そうこうしているうち、仕事も終わったのでウインディを起こそうとするが…。

「んゅう〜」

と言い、ウインディがうっすらと目を開ける。

「おぉ、ウインディ。そろそろ寮に帰る時間だぞ〜」

そう言うとウインディは起き上がる。

こう言っちゃ何だが結構珍しいことだ。

「エヘ〜、とれーなー」

寝ぼけているのか背中におぶさってくる。

「はいはい。おんぶな」

「のだぁ〜♪」

そう言うとウインディは思い切りしがみついてくるが、まぁいつものことだ。

伊達にトレーナー業をやっていないし、ある程度鍛えてもある。

美浦寮に向かって歩いている途中、なにやら微笑ましいものを見るまで見られ続けた気がするが、まあ気のせいか。

しばらくして美浦寮に着く。

門限まではまだ余裕があったため、入り口で寮生を待つとヒシアマゾンが出て来た。

「おや、またおんぶかい?仲がいいねぇ」

「あんまからかわないでくれよ」

「アハハ、そりゃ悪いね。ただ手を焼かされた問題児がこうも大人しいとねぇ」

なんだか親のようなことを言う。

まぁ寮母だからある意味親のようなものなんだろうけども。

ウインディをヒシアマゾンに預けるが、何故だかオレの上着はむずがってなかなかに離してくれない。

「ホンットこの子は…」

なんとか取り戻そうと苦心してくれているヒシアマゾンに

「あぁ、いやオレはこのまんま戻るよ」

「いいのかい?」

「まぁトレーナー寮に戻れば予備もあるしな」

そう言うとヒシアマゾンは「ホントに甘いねぇ…」と呆れたように嘆息しつつ、そのまま寮内に戻っていった。

……さて。

新しいのをウマゾンで買うかぁ……。

 

 

ひざまくら?

 

エヘヘ〜、すぐ寝ちゃったのだぁ〜♪

 

のだ?してあげた?

 

ウインディちゃんはしてもらったのだ〜♪

 

 

 




なお、シンコウウインディ(ガチウマ)のぬいぐるみはサイトによってまちまちだけどだいたい1万〜3万円くらいしたよ!!

高くって買えない……。

ほんと、ウインディちゃんのぱかぷちゲーセンの景品で出たら取れるまでやる。(断言)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

60話ありがとうございます。

これからもお付き合い頂けると嬉しいです。


それはある日の昼下がりのこと。

オレがたまたまそこを通りがかった際に、その光景は飛び込んで来た。

それはウチのウインディがトレセン学園中庭にあるベンチに腰掛け、腕を組んで目を閉じ、珍しく悩んでいる様子だった。

邪魔をするのもなんだし、オレはいつものように近くの茂みにスタンバイする。仕事?あとでまとめてやればええやろ!!

「む〜むむむむむ…」

首を傾げて考え事をするウインディ。可愛い。

しばらくするとウインディはくわっと目を開け立ち上がり、叫ぶ。

「ウインディちゃんはわすれていたのだ!!

おのれの内にあふれる野生を!!

わいるどをぼーきゃくしていたのだ〜!!」

そっかー。ワイルドかぁ〜(ほっこり)。

よしよししたくなるが、今はぐっとこらえる。

ただ、顔がニヤけるのが分かる。

いやぁ和むなぁ〜。

「と、いうわけで!!」

クルリと方向転換すると、そちらはトレーナー室の方角。

「今からトレーナーに思いっきりイタズラするのだぁ〜〜!!」

そう言うとウインディは明後日の方向に猛ダッシュして行った。

ウインディも他の子も怪我しなきゃいいけど。

そんなことがあったすぐ後、オレはトレーナー室でいつものように書類仕事をしていた。

「そ〜………」

そして、ウインディがイタズラ心を隠さずに近寄って来るのもわかっている。

「ガブ〜〜〜!!」

頭にかじりついてくるウインディ。

「ハモハモ……」ガジガジ

しかし、怒っているのでもないウインディの噛みつきは少しくすぐったいくらいだ。

「どした〜?ウインディ?」

「プハー、わいるどをとりもどすのだー!!」

「そっかー、よしよし」

「のだぁ〜♪ってマジメに聞くのだーー!!」

「ごめんごめん。それで、どうしてそう思ったんだ?」

「ウインディちゃんは気づいたのだ…」

「ん?何に?」

「最近、トレーナーがウインディちゃんにかまってこないのは、ウインディちゃんがわいるどを失ったからなのだ!!」

「ワイルド?」

「さらばなのだーー!!」

そう言うとウインディはトレーナー室を後にした。

「うぅ〜ん」

ワイルド?ってなんだ?

さっぱりわからん。

こういう時は先輩に相談すべきか。

オレはスマホから沖野先輩の番号にかける。

プルルルル…プルルルル…。

数回の呼び出し音の後、沖野先輩が電話に出る。

「おーう。どした?」

「ああ、先輩すみません。」

「いいっていいって。で?なんか困ったことでもあったのか?」

「実はですね…」

オレは先程のウインディの行動を振り返って先輩に伝える。

「……あぁ〜なるほどなぁ〜」

「何か思い当たる事が?」

「おう。お前さん最近担当ウマ娘とコミュニケーション取ってるか?」

「ええ。忙しい時期なので前ほどではないですけど、出来る限りウインディに気を配るようにはしているつもりですが……」

「そうか。じゃあもっとかまってやってみろ。多分解決するから」

「?はい。分かりました」

そうオレが返事するや、沖野先輩は電話を切った。

「それじゃあ、ウインディを探すとしますか」

オレはトレーナー室を出ると、ウインディが行きそうなところを色々と調べる。

練習用コースや畑。切り株の広場や、寮に戻っていないかなど確認する。

その最中に、たまたまウインディのクラスメイトちゃんのひとりとばったり鉢合わせた。

「あっ、ども……」

そう言う彼女はどこかソワソワしている。

「あの、話せる範囲でいいから、ウインディに何かあったか教えてくれる?」

「へ?まぁ別に構いませんけど…」

……………。

 

「そう言えばウインディちゃん、ウチらといない時ってトレーナーさんとべったりだよねぇ〜」

「のだぁ〜♪」

「でも最近はそうでもないよねー」

「たぶん単純にお仕事が忙しいんじゃ…あっでも…」

「ん?でも?」

「それだけウインディちゃんがしっかりして来たってことなんじゃないかな?ひとりでも大丈夫っていうか…」

「のだっ!?」

 

まぁ、ざっくりとだがそんなことがあったらしい。

ふむふむ。なるほど。

さっきの沖野先輩のアドバイスと、クラスメイトちゃんの証言を合わせると、つまりウインディ的には最近かまってもらえてない。それはひとりで問題ないと思われてるから。でもウインディ自身はかなりの寂しん坊で甘えん坊。なら前みたいにかまってちゃんモード全開!!

ってとこか。可愛い。

最近はトレーニング後のちょっとした時間くらいしか構ってあげられてないのはオレとしてもわかってはいたつもりではいたし、クリスマスになったら思いっきり構い倒そうと思っていたのが裏目に出ちゃった感じか。反省だな。

「ありがとうね」

「いえ」

そう言うとオレとクラスメイトちゃんは別れる。

その直後、ウインディが後ろにいたことに気付く。

「ウインディ、トレーナー室行こうか?」

「のだ…」

本心を知られて恥ずかしいのか少し顔を赤らめてうつむくウインディの手をひき、そしてトレーナー室に辿り着いた。

そしてオレはウインディの頭を撫で回した。

「よ〜しよしよしよしよし。寂しかったなぁ〜ごめんなぁ〜〜。よしよしよしよしよしよしよしよしよし」

「エヘー、もっとなでるのだぁ〜♪」

すっかりいつもの調子だ。

うん。この日はウインディの寂しさのケアのためにもトレーニングは短めにしようか。

「よ〜しよしよしよしよしよしよし」

「トレーナー」

「うん?」

「めーわくかけてごめんなのだ」

そう言うとウインディは耳を垂らして落ち込む。

「大丈夫。オレになら迷惑ドンドンかけていいからなぁ〜」

それこそ、トレーナーとしての責任ってやつでもあるだろうし、何よりウインディにならどんな迷惑でもかけられても問題ない。

「トレーナーやさしいのだぁ〜」

「ウインディだからなぁ〜よしよしよしよし」

これからもちゃんと相手してあげないとなぁ〜。

 

 

トレーナー

 

ありがとなのだぁ〜♪

 

エヘー♪




ニコニコのたぬき(23)のウインディちゃん可愛い。
出番少ないけど……。
みんなもぜひみて。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シングレ5巻買ったど〜〜!!

いやぁ、続々とライバルが登場しますねぇ。
6巻が今から楽しみです。


美味しいコーヒーを淹れるというのは案外難しいもんだ。

同じ豆、同じお湯の温度でも、淹れ方や挽き加減が違えば香りや味に違いがけっこう出る。

だから面白くもあるんだが。

まぁ、オレのささやかな趣味だ。別にプロのバリスタほど詳しくもないしな。

そりゃあエスプレッソマシーンとかのコーヒーを自動で淹れてくれる機械なんかもあるにはあるが、オレはあくまで自分で淹れたい人だ。掃除とか大変そうだし。

専用の口が細いヤカンに湯を沸かす間、ミルで用意しておいた豆を挽き、フィルターをセットしたドリッパーをコーヒーサーバーの上に乗せてそこに入れる。

沸いた湯を少し淹れて豆を膨らませ、蒸らした後にさらに湯をゆっくりと注ぐが、この時出来るだけお湯を細くするのがポイント。こうする事でより豆は空気を含むためコーヒーに湯が馴染みやすくなる。

注ぎ終わったあとは、コーヒーを入れる魔法瓶の水筒を二本用意する。

と言うのも、オレがコーヒーをいつも飲んでいるのを見ていたからか、ウインディが「飲んでみたいのだ〜♪」と言っていたからだ。可愛い。

そんなこんなでトレーニングを終えた後の時間、書類仕事の間にコーヒーブレイクを楽しむのが日課だが、今日は少し違った。

コタツに入るウインディに、水筒からコーヒーをカップに注いでソーサーに乗せて机伝いに渡す。

こぼすと危ないからな。

「ほいよ、ウインディ」

「おぉ〜、あったかいのだ〜」

「魔法瓶に入れて来たからな」

そう言ってオレは使用した魔法瓶を見せる。

「クッキーもあるからな〜」

某有名百貨店で買ったとっておきのちょっといいヤツだが、まぁウインディならいいか。

目をキラキラさせて、早速クッキーを食べるウインディ。可愛い。

「ん〜、おいしいのだ〜♪」

良かった。お気に召したようだ。

そしてカップを手にしてコーヒーを飲むが……。

「にがいのだぁ〜…」

どうやらこちらはそうではなかったようだ。

出来るだけ苦味を抑えたブレンドにしたんだが、それでもウインディには苦かったらしい。

「そっかー、じゃあミルクと砂糖入れようか?」

「たのんだのだ〜」

そう言ってウインディはカップを差し出してくる。念のため持って来ておいて良かった。

砂糖を一本、ミルクをひとつ入れて改めてウインディに勧めると、今度は気に入ったのかクッキーと交互に口に運んでいる。可愛い。

手にしたクッキーをサクサクサクサクと、リスのように頬を膨らませながら食べる姿は何とも愛らしい。

それに気づいたのか、ウインディはクッキーを飲み込むと

「トレーナーもたべるのだ〜?」

と言って、新たに手にしたクッキーをこちらに向ける。

「あ〜んなのだ〜♪」

おお三女神様、こんなに可愛らしく愛らしい天使に出逢わせてくれてありがとうございます。

オレはウインディに言われるがまま口を開け、クッキーを頬張る。

「美味しいのだ〜?」

そう可愛く聞いてくるウインディに対して、オレが言うべきとこは一つ。

「世界一美味いよ」

という、この世の真実であった。

 

 

エッヘン!

 

ウインディちゃんコーヒーのめるのだ〜

 

オトナなのだ〜♪




因みに筆者は、漫画は昔から単行本派です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんグッズがなかなか出ないので、無いなら自分で作ってやろうと生まれて初めてアイロンビーズを買いました。

なかなかに難しいですねぇ。
投稿が遅れたのもそのせいですね!!
HAHAHAHA!!


ホントすんません……。


めーたんてーウインディちゃん

トレーナー室の電気をつけると、そこにはトレセン学園の制服に鹿撃ち帽(いわゆる探偵帽子)をかぶったウインディがいた。

「どんな事件もガブっと解決!!逃げるヤツは大体犯人」

ウインディは椅子に座りながらおもちゃのパイプを咥えて格好をつけている。

「その名はめーたんてーウインディちゃん!!」

そして立ち上がり何やらポーズをキメる。

「のだ〜!!」

かわいい(確信)。

さらに言えば結構…いや、かなり、いや、めちゃくちゃ似合っている。

これはかしこいですねぇ。

わしわしと撫でると上機嫌で「のだ〜♪」と言って目を細める。可愛い。

「ふっふっふ。おちつくのだトレソンくん」

「トレソンくん?」

なにやらクレソンみたいな響きだなぁ。

「それで、どうしたの?」

「ふっふん。コレなのだ〜」

ウインディが取り出したそれは某英国の文豪の書いた探偵モノの漫画版だった。

「ウインディちゃんもいろんなジケンをガブっとかいけつしたいのだ〜」

「でも事件ったって…」

「この格好のウインディちゃんから逃げるヤツはたいてい犯人なのだ!!」

腰に手を当てて胸をそらしフンス!と鼻を鳴らすウインディ。可愛い。

「なるほど〜」

さすがウインディ。かしこいなぁ。

まぁそれはそれとして、見守るのは重要だな。

万が一の暴走も避けなきゃだし。

「ではトレーナー助手!!さっそく、事件をさがすのだ〜!!」

いつの間にやら手にしていた虫眼鏡を片手にウインディは歩き出す。

トレソンくんじゃないのか…。

走らないのはオレと手を繋いでいたらかな?やさしい。

学園の敷地を出たオレ達は街中を歩いて事件を探す。

そしてしばらく歩いていると……。

「え〜んえ〜ん」

小さな子供がしゃがみ込んで泣いている。

「のだ?事件なのだ?」

「どうしたの?」

オレがその子に話しかけると上の方を指差す。

「ふうせん、引っかけちゃったの…」

指し示された指を辿るように上を見てみると、確かに赤い風船が木の枝に引っ掛かっていた。

「ふふん、ここはめーたんてーにまかせるのだ〜」

そう言うとウインディは木によじ登り、風船を取るとスタッと飛び降りて

「こんなもんなのだ〜」

立ち上がってドヤ顔をキメるウインディ。可愛い。

風船が取れて嬉しいのか、しゃがみ込んでいた子もウインディに駆け寄ってお礼を言っている。

「あっ、ありがとうお姉ちゃん」

「いいのだいいのだ〜、めーたんてーウインディちゃんにかかれば軽いもんなのだ〜」

探偵関係ある?と思ったが、まぁ実際の探偵業ってだいたい何でも屋みたいなもんらしいしそう言った意味では合っているのかもしれない。 

実際しばらく歩いてみるが、思ったより平和だったのか特にこれといって変わったこともなく、したことと言えば、おばあちゃんの荷物を持ったり、魚を咥えた猫を追っかけたり、この辺がはじめてらしい人に道案内をしたくらいか。ウインディは不服そうにぶーたれている。可愛い。

「むぅ〜なかなかジケンが無いのだぁ〜」

「まぁまぁ、普段のお出かけと思えば…」

その時、ぴこーん!と音が聞こえそうなほどに閃いたらしく

「そうなのだ〜!!」

ウインディは元気よくそう声をあげる。

「どした?」

「ゴルシなのだ!!」

ゴルシって言うと…。

「沖野先輩のチームのゴールドシップのことか?」

「のだ〜!!ゴルシなら何かジケンのひとつでもおこしててもおかしく無いのだ!!」

いやぁそれは………。

………………………。

何故だろう。強く否定できない。

「そうと決まれば学園に戻るのだ〜〜!!」

「うおぅ!!」

テンションが上がったのが原因か、オレもつられて走り出す。

きちんと鍛えたトレーナーじゃなきゃ引きずられてるね。

そんなこんなでドタドタとチームスピカの部室前に到着。

「たのも〜なのだ〜!!」

ウインディが扉の前でそう叫ぶと、中からウインディのお目当ての人物が。

「あん?なんだ?」

「ふっふん!さぁはくじょーするのだゴルシ!!ネタはあがってるのだー!!」

うん。多分テキトーに漫画のセリフ言ってるだけだね。可愛い。

「ネタぁ?そりゃねーだろ、だって…」

ゴールドシップが扉を全開に開けると、そこには沖野先輩が倒れていた。

「今やったとこだしな」

「のだ〜!?さつじんなのだ〜!?」

流石のウインディも驚いたのか、オレにくっついて来る。可愛い。

「いや、生きてるっての」

先輩が「イツツ」と言いながら起き上がると何があったのか説明してくれた。 

と言うのも、ことのあらましとしては脚の仕上がりを確認するためにトモを触ったことで騒ぎになったと言う。

何でもチームスピカのいつもの光景らしい。

最近はチーム内で良心枠のスペシャルウィークも担当トレーナーのこの扱いに慣れつつあるとか愚痴っていた。

チームを持つって大変だなぁ。まぁその分学園側のサポートも手厚くなるらしいし、結果を出せればその分ボーナスも出してくれるらしい。

沖野先輩の場合、そのほとんどチームの支援に充てているためすぐ消えるそうだが。

まぁ、それで辞めると言い出さないあたり、先輩自身もなんだかんだ教え子が可愛いんだろう。

その気持ちはハッキリ言って超が付くほど分かりまくるが。

因みにゴールドシップ以外のメンバーはもうトレーニングも終えて各々寮に戻るなり、外出なりしているそうだ。

そして、オレたちトレーナーが話し込んでいる間に何やらあちらは佳境に入ったようだ。

「ふぉっふぉっふぉ。よくぞこのゴルアーティにたどり着いたな。ウインディ・ほぉむづよ」

「ふっふん。カンタンなことなのだ〜♪」

なにやらラスボスめいたことを言っているゴールドシップもノリノリだ。

ちょうどヒマしていたらしい。

まぁ、危ないことをしている訳でもないし、本人達も楽しそうだしいいか。

やがて満足したのかウインディはホクホク顔で戻って来た。

距離的にも近いので、いったんトレーナー室に寄って休憩する。

「楽しかったか?」

「のだ〜♪」

帽子を脱いで、いつもの制服姿でホットココアを飲むウインディは嬉しそうだ。

「まんぞくまんぞくなのだ〜♪」

「それは何よりだよ」

「エヘー♪いっぱい遊んだから次のトレーニングもがんばるのだ〜♪」

「そうだな。頑張ろうなぁ〜」

「のだぁ〜♪」

 

 

あぁ〜たのしかったのだ♪

 

トレーナー!つぎはどこに行くのだ?

 

どこまででもいっしょにいくのだ〜!!

 




みんなもウインディちゃんグッズの自作、しよう!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

タマモクロスついに来ましたねぇ……。

これはウインディちゃん実装も近いかもですねぇ。

………ホントはよ。


 

鍋料理というのは日本の冬に欠かせないもののひとつだろう。

その名の通り鍋の中に肉や白菜、きのこにネギに豆腐にと、さまざまな具材を入れるために栄養がいっぺんにとれ、またアレンジも好みや気分で自由自在。

シンプルな水炊きから、カレー鍋、ちゃんこ鍋、海鮮鍋や胡麻豆乳鍋、石狩鍋にみぞれ鍋とレパートリーも豊富だ。

そして、食べ終わった後の洗い物も少なくて済むと言う色々な意味でお手軽料理である。

と、まぁ何でこんなことを言っているのかと問われれば答えは簡単で、今晩ウインディと鍋パーティーをするからだ。

近所の商店街で食材を買うため歩いて回る。

「さて、何にするかねぇ」

「とうもろこしはほしいのだ!!」

「そうだな〜。じゃあ八百屋には寄ろうなぁ〜」ナデナデ

もちろん鍋には欠かせない白菜やきのこ、にんじんなんかも買いたいし。

そんなことを考えつつ、八百屋の方へ歩く。すると……。

「らっしゃいらっしゃ〜い!!ビックリするくらい美味しいにんじんはいかが〜!?もちろん他の野菜もとっても美味しいよっ!!」

何とも元気な呼び込みの声が響いていた。

その声の主が理由なのか、八百屋はいつも以上に盛況だ。

バイトの子でも雇ったのか?

ウインディとはぐれないよう気をつけつつ、目的の八百屋に着くと、そこにはトレセン学園のジャージ姿のウマ娘がいた。

「彼女は確か…」

「いやぁ〜ウララちゃん助かるよ!!」

「いいのいいの!!だってこのお店のにんじんほんとに美味しいもん!!」

ニコニコ笑顔でそう言うウララちゃんと呼ばれたウマ娘。

愛嬌のある笑顔だ。そりゃあ商店街の人気者にもなろうというもんだろう。

しかし妙だな?ジャージ姿ということは恐らく現在トレーニングの最中のはず。

いやまぁ、彼女が人が苦手で慣らすために彼女のトレーナーがバイトをさせているというなら分かるが、あの人懐こさは彼女に元々備わっているものに見える。

そうこうしているうちにあれよあれよと野菜が文字通り飛ぶように売れている。

考えるのは後にしないと、すぐに売り切れてしまう!!

「ウインディ、白菜とったか!?」

「のだ〜、とうもろこしもあるのだ〜」

「よーしえらいぞー」ヨシヨシ

こっちはにんじんにきのこ類、水菜を確保してある。

あとはついでにサラダ用のトマトやレタス、色々と使える大根やきゃべつを少々。

なんとかお会計を済ませてお客さんが一通り散った後、もう一人のウマ娘がやって来る。

「ちょっとウララさん?トレーニングはどうしたの?」

「あ、キングちゃん!!」

どうやら仲がいい子らしい。

「ごめんね!!にんじんはもう売り切れだよ〜!!」

「あぁ〜!間に合わなかった〜!!」

……結構ノリがいい子のようだ。

「じゃなくて!!あなたトレーニングはどうしたの!?貴女のトレーナーさんも心配してたわよ!?」

「え?…あぁ!!」

あぁ、やっぱりトレーニングじゃ無かったのか。

八百屋のおじさんは謝意と共に、どっさりと野菜をあげていた。

まぁ、そのくらいの仕事はしてたしなぁ。

やがて視線に気づいたのか、キングちゃんと呼ばれたウマ娘がこちらに向かって来る。

「あら?アナタもトレーナーのようね」

胸元のトレーナーバッジに気づいたようで、声をかけて来た。

「うん。たまたま買い物にね。オレは岡本。で、こちらはシンコウウインディ。ウチの担当ウマ娘だ」

「ふっふ〜ん」

何故かドヤ顔のウインディ。可愛い。

「そう。私はキングヘイロー。そこの彼女はハルウララさんよ」

「ずいぶんと仲がいいようだね」

「ええそうね。同室だし話す機会も多いから自然とね」

キングヘイローは聞いたことがある。

しかし、ハルウララか…興味深いなぁ。

その後二、三世間話をして結局その二人とは別れた。

彼女たちは彼女たちでこの後予定があるようだったし。

「じゃ、行こっかウインディ」

「のだ〜」

戦利品を手に、俺たちはトレセン学園へと戻る。

そしてトレーナー寮へ…。

買った野菜を切り、温めておいた鍋のスープの中に入れる。

なお、今回はとうもろこしの美味しさを十全に味わうため、味噌バター鍋にする。ちなみに〆はラーメンだ。

出来上がった時にほわほわと湧き上がる煙に甘いとうもろこしと味噌の濃厚な香りが合わさりそれだけで腹が減って来る。

コタツの上に鍋敷きを置いて、今か今かとソワソワしているウインディの目の前に置く。

「ヤケドしないように蓋を開けるときはちょっと離れるんだぞ〜」

「わかったのだ〜」

いい返事だ。可愛い。

箸を手に持ち、

「いただきま〜すなのだ〜!!」

「おう、召し上がれ」

ウインディはお玉で取り皿にとうもろこしをどっさりとよそう。

他の野菜も乗せると、ちょっとゲッという顔をしたが戻さなかったのでヨシ。

オレも取り皿に適当に具材をよそい、冷ましながら食べる。

こたつで食べる鍋は本当に格別だ。

「はふはふ…」

「鍋は逃げないからゆっくり食べてな〜」

「のだ〜」

しかし、ウインディはこの鍋が気に入ったのか、割とすぐに平らげた。

「ふぅ〜満腹なのだぁ〜」

オヤツにミカンを向いて食べているウインディ。可愛い。

ご満悦なのか尻尾もゆらゆらとご機嫌に揺れている。

「トレーナーもみかん食べるのだ〜?」

おもむろにそう言って来るウインディ。

「ああ、じゃあ一個もらおうかな」

ほいっと片手を出すが…。

「あ〜んなのだ♪」

とニコニコ笑顔でみかんを一粒差し出して来るウインディ。可愛い。

「ありがとう」

そう言ってウインディをひとなでしたあと、オレはそのみかんをいただいたのだった。

甘いぜ。

 

 

おなかいっぱいなのだ〜

 

のだ?最近たべてばっかり?

 

たべることはタイセツだからいいのだ〜♪




味噌バター鍋は実際美味いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

タマちゃん環境クラスで強いってマ?

うどんはともかく、お好み焼きはおかずだよね?


ドタドタドタドタドタドタ…。

今日も今日とてウインディが駆け込んでくる気配がする。もう可愛い。

バタァン!!

「トレーナー!!」

案の定、可愛い可愛いウインディが入ってきた。

「おぉ、どうしたウインディ?」

オレが仕事する手をいったん止めてそう聞くと、ウインディは後ろを向いてしっぽを指差し

「しっぽのお手入れをお願いしたいのだ〜!!」

と言って来た。

へ?しっぽ?

「えぇっと…、それはいったい何がどうしてそうなったんだ?」

とりあえず疑問に思ったことを聞いてみる。

「実は…」

 

 

「のだ〜?しっぽのとりーとめんと?クサくならなきゃなんでもいいのだ〜?」

「ええー?でもお手入れは大切だよー?」

「そうそう。実際いざやってみるとけっこうめんどいけどやるのとやらないのとじゃダンチよ?アタシらにとっちゃしっぽって大事だし」

「それに、トリートメントの良い匂いはリラックス効果がある〜とかなんとか聞くよね〜?」

「普段お疲れのトレーナーさんには効果てきめんなんじゃない?」

「のだっ!?」

 

 

「ってことがあったのだ〜」

ほうほう。まあしっぽはウマ娘にとっては体のバランスを支える大事な器官と聞くしな。

とくに冬場は乾燥する時期だから気になる子は気になるんだろう。

いやしかし……。

「いや、それにしたって同室の子にやってもらうとか…」

「それも考えたけど、トレーナーさんにやってもらえばもっと仲良くなれるって言われたのだ〜」

同室の子〜!?

「いやでも、トリートメントって言えば普通お風呂でするもんだろう?」

「?トレーナーも一緒におフロ入ればいいのだ〜?」

「やめて!首が飛んじゃう!!」

一緒にお風呂とか、たづなさん的にもアウトだろうし。

って言うかそんなことになったら言い訳無用ってことで首が物理的に飛びそう。

「のだ〜良いアイデアだと思ったのだ…」

しゅんとするウインディ。

罪悪感がヤバい。

「せめてブラッシングくらいにさせて」

「う〜ん。まぁそれでいいのだ〜!!」

少々考える素振りを見せたあと、ウインディは首を縦に振ってくれた。良かったぁ〜。

とりあえず、事情をヒシアマゾンに話してお手入れ用のブラシと仕上げ用の油を借りて実際にやってみる。

丸椅子にウインディに座ってもらい、しっぽを手に取る。

ウインディの言うように最低限の手入れはされていたためか、手触りは別段悪くは無い。

「じゃあはじめるぞー?」

「いつでもいいのだ〜」

意を決してしっぽを左手で支え、もう一方の右手に持つブラシをしっぽの毛先に当て、あまり力を入れないことを意識して動かす。と言うのも、最初に根元から通すと枝毛になったり毛にダメージが入ってしまうかららしい。

その度にしっぽの毛がほぐされていくようで、サラリサラリと手を流れる。

「あぁ〜、そこそこ〜なのだ〜」

言っていることは若干おっさんくさいが、どうやら気持ちがいいらしく、ウインディはとろ〜んとした表情だ。可愛い。

しばらくしたら、今度は逆向きにブラッシング。

優しく優しく…優しく優しく…。

そうしてしっぽにブラシを通していると、徐々に手触りが良くなって来た気がする。

いや、本当に気がするだけだが。

「さて、そろそろ仕上げだな」

「えぇ〜?もうちょっとして欲しいのだ〜」

「いやいや、手入れって言ってもあんまりし過ぎても良くないらしいぞー?」

実際、やり過ぎるとかえってキューティクルを損なう危険性もあるらしい。

「のだぁ〜…ざんねんなのだ〜…」

そう言うウインディ。

「なら、頼まれればまたやるさ」

なにせオレはウインディのトレーナーだからな!!可愛い教え子の頼みならたいてい聞き入れる自信があるぞー!! 

オレは仕上げ用にと渡された油をまんべんなく塗りこむ。

ツヤツヤとした輝きがしっぽから放たれる。

仕上げも終わり、ポンポンと頭を撫でるとウインディは再び元気を取り戻したように頷く。可愛い。

「じゃあまたたのむのだ〜!!」

「おーう。任せとけ〜」

そう答えると、ウインディは嬉しそうに走って行った。可愛い。

さて、ヒシアマゾンに返しに行くか。

 

 

みてみてなのだ〜!!

 

トレーナーにやってもらったのだ〜♪

 

エヘ〜♪

 

なかよしなのだ〜♪

 




未だに静電気ってビクッとしちゃいます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

さて、今年のクリスマスの予定は………あれ?真っ白?

筆者はウマ娘で忙しいから……(目をそらしながら)。


さて、今日は待ちに待ったクリスマス当日。

外は雪が降りしきり、正しくホワイトクリスマスと呼ぶにふさわしい。

今朝から学園全体で見ても多くの生徒が浮かれ気分で今日という日を楽しんでいるようだ。

まぁ以前のハロウィンの時と言い、きのこ狩りと言い、トレセン学園はこういった催し事というかイベントに関してはけっこう積極的に取り組む姿勢があるし、生徒も教職員も割とノリノリだ。

そしてそれは、きっとオレも例外では無いのだろう。

外部に向けてのイベントも結構あるしそれもまたトレセン学園の人気の所以でもあるのだろう。

もちろんオレ含め、教職員側は大人としての分別は弁えなくてはならないが。

今日、トレーナー室はクリスマスツリーやリース、あとはフワフワした白いやつなどの飾り付けがされており、大きなクリスマスケーキにターキーにジュース、その他いっぱい。もちろんウインディの好物である焼きとうもろこしも用意してある。

そして忘れちゃいけないクリスマスプレゼントも仕事用机の中にある。

中身は開けてからのお楽しみだ。

他のトレーナー達も、各々自身の担当ウマ娘と一緒にクリスマスを祝っていることだろう。

みんな張り切ってたし、ウチも今日のトレーニングは早めに切り上げることとした。

そんなこんなで準備を済ませスタンバイしていると…。

ドタドタドタドタドタドタドタドタ…。

バタァン!!

「トレーナー!!メリークリスマスなのだ〜!!」

勢いよく開いた扉の向こうからサンタクロースの格好をしたウインディが現れた。可愛い。

「おぉ〜ウインディ。似合ってるなぁ。よ〜しよしよし」

ナデナデするとウインディはご満悦で

「ふっふ〜ん。これもクラスメイトにみつくろってもらったのだ〜♪」

可愛い。

「そっか〜」ナデナデ

「のだ〜♪」しっぽフリフリ

とりあえず廊下の寒い風が室内に入るので、扉を閉めてウインディにはそのまま部屋に入ってもらう。

室内に入ったウインディはしっぽをブンブン振り回して喜んでいる。

「のだ〜!ごちそうがいっぱいなのだ〜!!」

「まぁウインディは普段頑張ってるからな〜、今日はめいっぱい食べていいからな〜」

そう言うとウインディはガバッと音がしそうな勢いでこちらを振り向き

「ホントなのだ〜?」

と可愛く聞いて来る。

「ホントホント」

「わーいなのだ〜♪」

喜んで飛び跳ねるウインディ。可愛い。

まぁ、その分のカロリー計算はきっちりしてある。どのくらい動けばいいのかも分かっているから少々トレーニングがハードにもなるが、まぁたまにはいいだろう。

こたつに入ってコップを持ち上げ乾杯する。

もちろん中身はジュースだ。

間違っても未成年飲酒をさせるわけにはいかないからなぁ。その辺は厳しいし、オレ自身そうであるべきだと思っている。

ただまぁ、それはそれとしてオレは今日、ウインディに構い倒すと決めていた。

「メリ〜クリスマ〜ス」

「のだ〜♪」

「何から食べる?取り分けてあげるぞ〜」

トングを手に、オレはウインディに問いかける。

「もちろんとうもろこしからなのだ〜」

「はいよ〜」

その後もウインディから注文を受け、ひょいひょいと皿に盛る。

オレとウインディ、二人きりのクリスマスパーティーはウインディのお陰もあって盛り上がり、そしてプレゼント交換に。

オレからはクリスマスプレゼントでイメージされるようなちょっと大きめのプレゼントの箱を。

ウインディからは何やら柔らかいものが梱包された包みが渡される。

「開けていいか?」

そう聞くとウインディはにこやかに頷く。

中身を見てみると、若干不恰好だが暖かそうなギザギザ柄のマフラーが入っていた。

「エヘー、ウインディちゃんがんばって編んだのだ〜」

その言葉を聞き、オレは感極まってウインディをいつも以上になでくりまわした。

「そっか〜。ウインディがわざわざ編んでくれたのか〜。ありがとなぁ〜。よ〜しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし…」

「くすぐったいのだ〜♪」

そう言うウインディもやはり手を払おうとしない。可愛い。

しばらくして、今度はウインディがオレからのプレゼントを開ける番だ。

「おぉ〜!!」

中身は小さな獅子舞の頭だ。

菊花賞を見に行った帰り、お店の前で物欲しそうに目を輝かせてたからな。

流石にデカいのは場所を取るからサイズは比較的控えめになったが、ウインディの反応を見る限りプレゼントとして正解だったようだ。良かった。

「ぜったい大事にするのだ〜♪」

「オレもウインディからのプレゼント大事にするよ」

まずは飾って置くための永久保管場所の確保を…。

「毎日使ってほしいのだ〜♪」

しなくていいかな!!

その後、オレとウインディは少しだけお出かけした。

まぁお出かけといっても、学園の敷地内を二人で散歩したくらいだけども。

まばらに星が見える冬空の下、外出前にさっそくウインディがせっせと巻いてくれたマフラーは、今まで使った方どの既製品よりも暖かかった……気がする。

 

エヘー♪

 

トレーナーからのプレゼント〜♪

 

だいじにだいじにしまうのだ〜♪




そういえば編み物なんて昔家庭科の授業でしかやったこと無いなぁ…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロードロイヤル…ボクっ娘だとぉ!?

サブタイにしそこねたや〜つ。


ここはトレセン学園のトレーナー行きつけのバー。

オレはちょっとした贅沢のためにこうしてひとり、カウンター席でチビチビやっている。

思えば先輩と来ないのは自分でも珍しいと思う。

ちなみに既にちょっと呑んでいる。

「…マスター、ウチのウインディが可愛すぎてつらいです」

オレは常に考えている思いの丈をマスターにこぼすが…。

「はぁ…」

こんな感じで流されてしまう。解せぬ。

「ウインディはねぇ…ホントに良い子なんですよ」

オレはなかなか理解を示してくれないマスターに切々とウインディの可愛さを伝えようとした。その時だった。

「お前もホントすっかりトレバカに染まったなぁ」

いつの間にやって来たのか、沖野先輩が隣の席に座って来た。

どうやらたまたま居合わせたらしい。

「いくら先輩でも担当は変わってあげませんからね?」

「いや、別に変わんなくていいけどよ…」

「なんですかその反応?ウチのウインディが可愛くないって言うんですか?」

ジロリと先輩を見る。

もちろん声は荒げない。他にも客は居るし店に迷惑はかけられないからだ。

「いやいや、そうは言ってないだろー?」

そう言うと、先輩も適当に注文をする。

「でも意外ですね。仕事の調整するから一緒に飲むときは大抵三週間前には知らせてくれって言ってたじゃないですか?」

「まあ、こっちもちょっとは時間ができてな。今回は本当にたまたま居合わせたってだけさ」

「そうですかぁ。にしてもどうしたんです?そんな笑顔で…」

「いやぁ、後輩が立派なトレーナーになってくれて嬉しいなってな」

「そんなにご心配かけてましたか?」

「あぁいや、気を悪くしたなら謝るって」

「いや、別にそこまでは…」

そう言うと、バーカウンターにコトリと小さな音が響く。どうやら注文の品が出てきたようだ。

「どうぞ。ウイニングランです」

「あっ、いただきます…」

ウイニングラン。簡単に言えば桃の酒を使ったカクテルだ。

度数はカクテルの中でも比較的弱く、イメージの通り甘い酒だがそのネーミングから願掛けや、逆に担当ウマ娘の勝利へのささやかな祝杯の意味を込めて飲むトレーナーも少なく無いとか。

そして……オレもどうやらそのクチだったようだ。

「まぁ、お前も初のクラシック級は緊張するか」

藪から棒に、先輩は聞いて来る。

「そりゃあしますよ当たり前じゃないですか」

別にオレだってこれまでのトレーニングの仕上がりに不安がある訳では無い。

ウインディに合ったトレーニングの模索や、芝・ダート合わせて過去にトレセン学園に在籍していたウインディによく似たタイプのウマ娘のトレーニングデータやその傾向の観察、考察してヒントを得ようともした。

或いは先輩トレーナーに聞いた話をまとめたり、有力なウマ娘との並走に模擬レースもやったし、たまに他所のウマ娘の偵察など新人として思いつく限りのことはやった。つもりだ。

…やったからこそ怖いのかもしれないな。

クラシック級はウマ娘にとっては文字通り一生に一度の晴れの舞台。

中にはシニア級になっても走れるレースもあるにはあるが、それは裏を返せばクラシック級の段階から一つ上のシニア級のウマ娘とぶつかると言うことに他ならない。

だからこそのタイキシャトルへの警戒でもあったのだ。

『オレではウインディの素質をここまでしか伸ばしてやれなかった』

そう思うのが何より怖い。

そしてそれが、新米トレーナーにとって目の前に立ちはだかる大きな壁のひとつだというのも先輩方から(嫌味でなく)ありがたい話として散々に聞いてきた。

「オレも、ウインディと一緒に成長しなくっちゃなぁ……」

「まぁ、緊張感ってのはなにも悪いことばかりじゃねぇだろ?」

先輩が気落ちしそうな、というかしつつあったオレにそう言う。

「そんだけ真剣にトレーニングやってんだったら問題ねぇよ」

そう続けて言って、先輩は自身の頼んでいた酒を呷る。

「そういうもんですかねぇ…」

「…やっぱオマエ、根本的な真面目は変わんねぇなぁ」

「はい?」

「いや、なんでもねぇよ」

なにやらぼかされた気がしたが、まぁ気落ちは軽くなった。

「今回は、オレが持ちますよ」

日頃世話にもなってるし。

「いいのか?」

「少し遅いですがクリスマスですから」

「そうかい。そんじゃあお言葉に甘えるなー」

「どうぞ〜」

そうやって、ついつい先輩と話し込んでしまったのだった。

 

 

「ウインディ〜。可愛いぞ〜ウインディ〜zzzz」

「あらら、寝ちまった」

コイツがここまで深酒するとは珍しい。というか初めて見るな。

「きっと、真面目だからこそ担当になったウマ娘にあそこまで入れ込むんだろうなぁ。お前は」

ついでに明日はコイツが休みの日だ。

自分が深酒することも想定してたのか、それとも明日もたづなさんに隠れて仕事するつもりだったのか…。

いずれにせよ、このまま寝たらコイツを送り届けるのはオレの役目になるんだろうなぁ。

「ハァ………」

せめて会計までには起きててほしいもんだなぁ。

切実に。

 

 

ガブガブガブ〜♪

 

ウインディちゃんの手にぴったりなのだ〜♪

 

こんどこれでトレーナーをおどろかすのだ〜♪




ヤンジャンにシングレのオリジナルブックカバー付きってあったので衝動買いしてしまいました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

育成中、気を抜くとけっこうタキオンに負けてる気がする。

レースパートで、悩んだんや…。
短くなったけど許して…。


 

有マ記念。

それは、その年を代表する実力者たちの集うレースだ。

選出方法はファンによる人気投票。

単に好きなウマ娘に入れてもいいし、自分が最強と信じるウマ娘に入れるのもいい。

とは言え、基本的には後者の方が多いのが常で、見た感じ今年もほぼそんな感じの顔ぶれだ。

そんな中、堂々の一番人気。つまりはグランプリウマ娘に最も近いと目されたウマ娘の名は……。

「アグネスタキオン」

その名を呼ぶオレは食い入るように彼女を見ていた。

最前列の席で、勿論研究用に録画機材も用意して。

生来の脚力と、しかしそれに耐えるのが難しい脚の脆さというネックを、彼女はどう言うカラクリを使ってか克服して来た。

まあ、彼女自身ドーピングなどと言った不正行為は嫌うタチなのはオレ自身が実際に見て肌で感じたため、そんな事はしていないと個人的には思う。

「しっかし今年もすごいなぁ…」

周囲を見回すだけで分かる人、人、人……。

レース場は例年の如く満員御礼だな。いいことだ。

各ウマ娘も傍目には落ち着いている様子の子がほとんどだ。

それだけでも伊達に重賞、G1の舞台を経験していないと言うのが分かる。

そんな中で、三冠ウマ娘たるアグネスタキオンはライバル達に興味津々と言った様子で目を爛々と輝かせている。

ある意味で、この図太さと言うか何というか。大舞台でも物怖じしないというか、特に普段と変わらない様子なのは、彼女が間違いなく大物である証左と言えるだろう。

現に彼女は今年の三冠ウマ娘。否応なくその実力は多方面に知れ渡っている。

そんな彼女の目を特に引いているのがマンハッタンカフェ。彼女は長距離を得意としており、今年の天皇賞春を制した同じく実力者で、またアグネスタキオン自身がライバル宣言したウマ娘でもあり、そのためかファン投票では二番人気に推されている。

スタミナに任せて走れると言うのはそれだけで武器だし、掛かりさえしなければ勝負は分からない。

そうでなくとも、ほかのウマ娘たちもただ黙して負けるつもりは無いだろう。

自分と自分のトレーナーのために、或いは家族のため仲間たちのためにグランプリウマ娘を賭けて走る彼女らは決して侮っていい相手では無い。

そして重要となって来るゲートの位置だが、アグネスタキオンは四枠八番。対するマンハッタンカフェは二枠四番。

位置的には内枠のマンハッタンカフェがやや有利か。

アナウンサーによるウマ娘たちの紹介も終わり、いま、今年最後のゲートが開いた。




結果前半だけで終わるって言うね!!
遅くってごめんね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

焼き芋おいちい。

アレ?ウインディちゃんは?


『さあ、一斉にゲートが開きました!!』

『各ウマ娘、各々立ち上がりは良好ですね』

年末の中山レース場。有マの舞台だからだろうか、実況のアナウンサーもやはり普段よりテンションが高い。まあそれもさもありなん。

さて、見た感じ十六人のどのウマ娘たちも手慣れた様子でゲートを飛び出している。

まぁ前年のジュニア級、そして今年のクラシック級での計二年の集大成を見せる場で、プレッシャーに潰されてもたつくような子はそうそう居ないか。

皆一様に、そして貪欲に勝利を求めて走り続ける。

だからこその駆け引きであり、一瞬の判断の勝負でもある。

また長距離故にペース配分も大事になって来るだろう。

彼女らの一挙手一投足に至るまで見逃せないな。

オレは三脚にセットしたカメラ越しにレースを見る。もちろん撮影許可もとってある。

因みにウインディは年末休みを利用しての同級生ちゃんたちとお泊まり会だ。楽しんどいで!!

それに今回は担当ウマ娘を持つトレーナーとして、何より一ウマ娘レースファンとして、有マの舞台は絶対に生で見ておきたいと言うのもあった。

『さあ、先頭を行くのは一番プレイスインヘヴン!!二番手との差は五バ身から六バ身と言ったところか』

『やや飛ばしている感じでしょうか。途中でバテなければ良いですが』

次いで二番手から三番手には六番クレセントエース、九番アイゼンテンツァーがほぼ並走状態。

その後ろに十番ジュエルルベライト。アグネスタキオンはその後ろか。

対してマンハッタンカフェは……後方四番手につけてるな。戦法は差しで行くつもりだろうか。

奇策では無く、あくまで自分の慣れたやり方でいくつもりか。

ここ一番で度肝を抜く奇策を打つ者は珍しく無い。それが良いか悪いかは時と場合によるが。

現にプレイスインヘヴンは長距離とは思えないペースで飛ばしている。先頭から最後尾まではパッと見た感じやや長いようにも感じられる。

その分のスタミナはトレーニングでつけてはいるんだろうが、実況の言うことも的を射てはいる。

プレイスインヘヴンは今のところは上手いこと蓋をしてはいるが、まだ序盤だ。ペース配分を間違えれば最後の短い直線でごぼう抜きされる恐れもある。

そして、その背後では…。

『後方では二番ピッコラバリアントが前に出ようとしている様子ですね』

『少し強引でも積極的に好位置を取りにいこうということでしょうか』

ピッコラバリアントは若干掛かり気味な様子か?

抜かれたアグネスタキオンは…釣られてないな。

というか彼女、よくよく見ると周囲のウマ娘の様子を観察しているような…この暮れの舞台で緊張どころかイキイキとしているようにさえ感じるな。

互いが互いを警戒し合い、やや拮抗状態とも思われたレースが動いたのはやはり後半。

『おっと、プレイスインヘヴン減速!!後方のウマ娘が迫って来る!!意地を見せられるか〜!?』

プレイスインヘヴン。やっぱり序盤に飛ばしすぎたのが今回は仇となったか。

『クレセントエース、アイゼンテンツァーが迫る!!踏ん張るか!!逃げ切れるか!!プレイスインヘヴン!!』

三人のウマ娘による熱い接戦。互いが互いに負けられない意地とプライドをぶつけ合う。

しかしその時だった。

後方から白衣を纏った栗毛の影が三人の横をスルリと抜いていったのは。

永くも短い刹那、アグネスタキオンは後方に向かって一瞬微笑みかけたような、そんな錯覚さえ感じさせる。

『あ…あ…アグネスタキオォォォン!!今年の三冠ウマ娘が、逃げウマ娘達をあっさりと追い抜く!!』

『何という…まるで飛んでいるかのような走りですね…』

これがアグネスタキオンの疾走。実況が感嘆の声を上げているように、これが見られただけでもウマ娘レースファンとしては中山レース場に来た甲斐があるというものだろう。

『さぁ、最終コーナーを越え、先頭はアグネスタキオン!!もう決まったか!!三冠ウマ娘の実力を見せつけて!!このまま行ってしまうのか!!』

いや、それだけじゃ無い。後方に見えるあの青鹿毛は三冠ウマ娘のライバルにして、今年の春の天皇賞ウマ娘。

その様を見た観客は大歓声を上げる。

『いっいや、ここでマンハッタンカフェ!!追い上げる!追い上げる!届くか!届くのか!』

『中山の直線は短いぞ!!差し切ることは出来るのか!!』

バ身が縮んで行く。六バ身から五バ身、五バ身から四バ身とゴールが近づくにつれ、二人の距離も短くなる。

観客席から聞こえるのは、より大きくなる声援。逆に声に出さずとも、きっと黙して祈る人もいるだろう。

各々、自身の推しのウマ娘の勝利を願って手に汗を握る。

先頭を往くアグネスタキオンに影が迫る。

しかし、そんなアグネスタキオンは三冠ウマ娘。今年のクラシック戦線に於いて最も強く、最も速く、そして……

 

 

 

 

最も幸運なウマ娘だ。

 

 

『ゴォォォォーーール!!』

 




レース描写に悩みまくって遅れました。
上手い人ほんとすごい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

おいおいおい、ジュニア級だけで70話くらい引っ張るヤツがいるんだって?ハッハッハッ…わたしです。

かがみもちって小さいのに高いやつ、アレなんなんですかね?
いい米使ってんのかなぁ?


ここはトレセン学園にあるトレーナー室。

「はぁ…」

今日はトレーナーの仕事納めの日だ。

まぁチーム持ちの先輩なんかはそれこそ正月早々に仕事があったり、中には担当ウマ娘の帰省に着いてったり、中にはいきなり家族に紹介されたり、また中には外堀埋められたりといろいろあるらしいが。

しかし、オレの気分は一向に晴れない。

別に仕事納めと言いつつ鬼のように怒涛の仕事がやって来ている。とかそういうのでは無い。

それは…。

「あぁ〜…ウインディがいないとしずかだなぁ…」

そう。ウチの可愛い可愛い可愛い可愛い(大切なことなので四回言いました)担当ウマ娘。ウインディことシンコウウインディが、今同級生ちゃん達とお泊まり会の真っ最中だからだ。

いやまぁ、友達関係は大事だ。相手によっては一生の宝にもなり得るのも分かる。

実際オレにもそう言う友人はいるし。

それにウインディはその純朴さゆえか、同級生ちゃん達にとってある種の癒しらしく、たまにほっぺたをぷにぷにされたりお菓子をもらったりしていた。

まぁその分オレがカロリー計算頑張ってるけど。それは別に対してなんかあるってわけじゃ無い。純粋に好意からのことだし。本人達に悪気がないのも分かってるしな。

一応仕事は一通り終わったし、先日の有マ記念のデータチェックやその整理もすでに終わっている。

もちろん何度も繰り返し見て、より研究しなければならないが、気落ちしている今見ても出来るような発見は無いようにも思う。

「息抜きに散歩でもするかあ…」

トレセン学園の中庭は本当に広い。

だから散歩するだけでも色々な景色が楽しめる。

場所によっては自販機とベンチもあるから、結構そこらで休憩しているトレーナーも見かける。

冷たい空気に触れることで、頭も少しすっきりするだろうし。

「よっこいしょ」

オレは椅子から立ち上がり、外は冷えるので上着を着るのとウインディからもらったマフラーを首に巻く。

もう最近はこればかり使っているなぁ。

扉を開けて廊下に出ると、なにやらヒソヒソ話す声が聞こえて来る。

「おぉ〜、ちゃんと使って貰えてるね〜」

「よかったじゃん」

「一生懸命作ったんだもんね〜」

「エヘー♪よかったのだ〜」

何やら可愛らしいウチの担当ウマ娘の声も聞こえてきた気がする。

幻聴か?ウインディにしばらく会えないからって、オレが勝手に聞いている幻聴なのか?

「のだ〜♪外に出たら後ろからとびついておどろかすのだ〜♪」

あぁ〜、計画の内容をすぐに漏らしちゃうの可愛い。

これは本物ですわ(確信)。

「っていうかたぶん話し声でバレ…モガモガ」

「そうだねぇ〜きっと驚くよ〜」

「へへーん。ウインディちゃんはテンサイなのだ〜♪」

そうだね〜。天才的に可愛いね〜。

オレは止めたくなる足を不自然では無い程度に緩め、時おり窓の外を見るようなそぶりを見せつつウインディ…いや、なぞの話し声に耳を向ける。

そして玄関にて靴を履き、いざ外に出ようと思ったその時だった。

「だ〜れなのだっ!?」

後ろから手で目を隠されなぞの元気いっぱいな声に話しかけられる。

おどろいたなぁ〜。いやぁおどろいた。

「う〜ん、ウインディは今いないはずだしなぁ〜」

いやぁ〜誰だろうなぁ〜。

わっかんないなぁ〜。

オレが悩むそぶりを見せたのが愉快だったのか声の主はなにやらご機嫌な様子だ。

「せーかいは〜」

視界が開けたと思ったら、目の前にウインディがガオガオ〜のポーズを取ってニヤリと笑っていた。

「えぇ〜!!ウインディ〜!?」

「のだ〜♪イタズラドッキリ大成功なのだ〜」

そっか〜。ドッキリかぁ〜。

可愛いなぁ〜。

「すみませんウインディちゃんのトレーナーさん」

「ウインディちゃんてば、トレーナーさんがちゃんとマフラー使ってくれてるか心配だったみたいで〜」

しばらくするとそう言いながらクラスメイトちゃんたちも姿を現す。

「わーわー!!それは言わないやくそくなのだ〜!!」

顔を真っ赤にしてアワアワし出すウインディ。可愛い。

「そっか〜、ちゃんと使ってるぞ〜」

「みてたからしってるのだ〜…」

ちょっとふてくされぎみのウインディ。可愛い。

「ありがとなぁ〜よ〜しよしよしよしよしよしよし」

「エヘー♪まぁいいのだ〜」

あっさりご機嫌である。可愛い。

「ねぇ…あれで付き合って無いって…」ヒソヒソ

「なぁ〜、ちょっとアヤシイなぁ…」ヒソヒソ

クラスメイトちゃん達が何やら話しているがよく聞こえないし、多分関係ないだろう。

「それじゃあいっしょに散歩でもするか?」

「行くのだ〜!!」

元気いっぱいに即答するウインディ。可愛い。

「クラスメイトちゃん達も年の瀬にありがとうな」

「いいっていいって」

「私たちも自分のトレーナーさんに似たようなことしようとしてますし〜」

「お気になさらずー」

そうかー。

「じゃあウインディ。手を繋ごっか?」

「モチロンなのだ〜♪」

そうして散歩をはじめたが、ウインディは終始ご機嫌だった。可愛い。

 

 

おっさんぽ♪おっさんぽ♪

 

たのしいのだ〜♪

 

ちょっとだけくっついちゃうのだ〜♪

 

エヘー♪




前回ウインディちゃんパート書かなかったのは、まぁそういうことです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いやぁ〜70話続いちゃいましたねぇ。

新衣装ウララ可愛いですねぇ。


で、ウインディちゃんの実装は?


 

今日は大晦日。

一年を締めくくる日であり、気持ちを新たに新年に備える日でもある。

特に年末の大掃除なんてのはその典型と言えるだろう。

さて、その面倒なもろもろが済んで時刻は深夜。

オレとウインディはとあるお寺に除夜の鐘を鳴らしに来た。

ウインディにはいつものように外出届を提出してもらい、以前のように校門前で待ち合わせた。

「このままいけば順番的に鳴らせそうだな」

「のだ〜♪いっしょにつくのだ〜」

ウインディは見るからにルンルン気分のようだ。

まぁ確かに、除夜の鐘が確実に鳴らせるだろうところってレアだろうしなぁ。

オレもどちらかと言うと鳴らしたい人と言うよりは、音を聞いて過ぎゆく年を思い返すくらいしか無かったから、何やら新鮮な心持ちだ。

そして、同じようなことを考えるウマ娘とトレーナーもちらほらいるようで、カップルや親子連れの参列客に紛れて結構トレセン学園の生徒とトレーナーの組み合わせが見える。

しっかし、石段のとこで待機ってのもなぁ…。

本堂から少し離れた登り道。その先の石段を登ったところに、ここのお寺の鐘はあるそうだ。

まぁこういうのは待つのも醍醐味と言われればそうなんだろうけど。

「トレーナー。やっぱり寒いのだな〜」

「そうだな〜」

石段周りの木には未だに溶け残りの雪が少し乗っている。

道理で寒いわけだ。

オレは持っているカバンから水筒を取り出すとフタにその中身を注ぐ。

入れたてなため湯気が立ち上るそれを、火傷をしないよう慎重に寒がるウインディに手渡す。

「ほ〜らウインディ。あったかい麦茶だぞ〜」

日本人に昔から親しまれてきた麦茶は、ミネラルやポリフェノールを含むため体に良く、なおかつノンカフェインで夜中眠れなくなるようなこともない。

「ありがとなのだ〜。フーフー」

コクコクと少しずつ飲んでるウインディ。可愛い。

そうして和んでいると、お寺の方からお坊さんが木製の番号札を前にいる順に渡しているのが見えた。

この寒い中大変だなぁ。

因みにオレ達は三十五番だった。

結構前の方だな。

そして、しばらくするとメガホンでたったいま除夜の鐘の準備が終わったとの旨が伝えられる。

 

ゴーーン………

 

それからすぐ、厳かというか、歴史を感じるような最初の除夜の鐘が聞こえて来た。

他に並んでいた人たちもその音を聞いてか、少しテンションが上がっているようだった。

一組ずつ除夜の鐘を突く度に石段を登り、オレ達はやっと鐘の前へと辿り着いた。

ただ、ウインディはワクワク感のためか興奮冷めやらぬ様子だ。

「よ〜しよしよし。もうちょいだからな〜」

頭を撫でつつ落ち着けるとウインディは

「たのしみなのだ〜♪」

と無邪気に言う。 

「では、番号札を」

「はいなのだ〜!!」

元気よく手渡すウインディ。

「ほっほ。元気な返事で何より」

札を受け取った白いヒゲをたくわえたお坊さんも微笑ましそうにウインディを見ていた。

鐘をつく際のコツを軽く教えてもらい、オレとウインディは鐘木のついたヒモを引いて、鐘にぶつける。

 

ゴーーン………。

 

「おぉ〜……」

「なったのだ〜〜!!」

ウインディは嬉しそうにはしゃいでいる。

「ありがとうございますお坊さん」

オレは暇になったタイミングでコツを教えてくれたお坊さんにお礼を言う。

「いやいや、ワシの妻もウマ娘でなぁ…」

「あっ、そうなんですか」

「あの子を見ていると若い頃の婆さんを見ているようでなぁ〜…」

遠く、何かを懐かしむような、優しい目をしている。

「それで、奥様は今…」

「ああ、いないよ」

「それは……」

聞いてはいけないことを聞いちゃったか?

ちょっと気まずいような…。

「福引で当たったハワイに行ってるからの」

吹き出しそうになるのをなんとか堪える。

「……お元気そうで何よりです」

と、それだけ伝える。

「ホッホッホ。ちょっとしたイタズラじゃよ」

いや、お坊さんが言っていいジョークなのだろうかそれ?

「まぁ、来年…いやもう今年か。今年がお主らにいい年であることを祈るぞい」

ホッホッホと笑いながらお坊さんは寺の中に戻って行った。

…たぶん長生きするなぁあの人。

そんなことを考えていると

「トレーナー!!」

ウインディがニコニコしながら隣にやって来る。

「かえるのだ〜♪」

「お〜う」

「あしたははつもーでにいくのだ〜♪」

ウインディは元気よく腕を突き上げながらそう言う。可愛い。

「そだな〜」ナデナデ

さて、明日初詣での神社に行く時間と、今年参加するだろうレースの確認と、それに合わせた新年初トレーニングの内容を練らないとなぁ。

 

 

ふっふーん。

 

これでぼんのーがきえて

 

新しい気持ちで、新しいイタズラができるのだ〜♪




まぁそんなこんなで今年も終わりますねぇ。

みなさん良いお年を〜!!





…まぁ、明日もあげる予定なんですがね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あけましておめでとうございます。

今年こそはウインディちゃん実装くるんやろなぁ。

……くるよね?


さて、除夜の鐘を鳴らしてからしばらく経った。

オレとウインディは一度トレセン学園に戻り、小休止と初日の出を一緒に見るため、そして初詣でのための準備をしていた。

そして、車を回してウインディを待っていたら

「お、お待たせ〜なのだ〜…」

ウインディにしては元気の無い声だ。

不思議に思い、声のした方を見てみると

「うぅ〜、動きづらいのだぁ〜」

振袖姿のウインディがいた。

「おぉ〜、似合ってるぞ〜ウインディ〜」

「へ?そ、そうなのだ?エヘヘ…よかったのだぁ♪」

初日の出を思わせる赤に花嫁衣装を思わせる白。縁の部分には縁起のいいとされる桜と鶴のコントラスト。

いやもうホント似合ってる。

普段活発なウインディだからこそのギャップと言うか、新鮮味と言うか、なんというか、なんかもうとにかく素晴らしく可愛い(語彙力喪失)。

しかし、それはそれとして本当に動きにくそうだなぁ。

「ウインディ、ほれ」

「たすかるのだぁ〜…」

なんとか手を貸して車に乗ってもらい、目的の神社に向かう。

その道中の車内にて思ったことを話す。

「しっかし、ウインディが振袖をもってたなんてなぁ〜」

「のだぁ〜、クラスメイトがしんねんのおいわいに〜ってくれたのだ」

マジか。確か振袖って買おうと思うと結構高いもんで、レンタルで済ませる人も結構いるって聞くぞ。

クラスメイトちゃん、かなり太っ腹だなぁ。

いや、女の子に太い腹ってのも失礼か。反省。

初日の出見たさに結構早めに出たのが幸いしたのか、ウインディの着付けの時間を差っ引いても道は比較的空いていた。

目的の神社に着くと、ウインディがオレに手を差し出して

「トレーナー、いっしょに階段のぼるのだぁ〜」

と言って来たので

「はいよ〜」

とオレはウインディと手を繋ぎ、一歩一歩石段を上がっていく。

登り切ったところで、東の方にうっすらと明かりが見えオレとウインディは急ぎつつ、しかし転ばないよう細心の注意を払い、景色のいい展望台になっている場所の手すりに近寄る。

すでに何組かの男女がいたが、空いているスペースを見つけてそこで開門時間と初日の出を待つ。

「トレーナー、もっと近づいてもいいのだ〜?」

「ん?寒いんなら別にいいぞ〜?」

そう言うとウインディがススッと近づいて来ると

「エヘ〜♪」と笑う。可愛い。

「よ〜しよしよしよしよし」

「新年初ナデナデなのだ〜♪」

そう言われればそうだなぁ。可愛い。

「ん?」

ウインディとそんなやりとりをしていると、空がだんだんと明るくなって来る。

「初日の出なのだ〜!!」

ウインディはテンションが上がっているらしく、しっぽをブンブン振り回している。

持ってきた一眼レフカメラで初日の出をバックにウインディを数枚撮る。

絵になるなぁ。

そして、タイマーをつけて二人いっしょに撮りもした。

「現像できたらあげるからな〜」

「たのしみなのだ〜♪」

やがて開門時間の八時となり、神社の境内は

初詣での客でいっぱいになった。

早めに来といてよかった。

「甘酒いかがですか〜?アルコールは入ってませんよ〜?」

どうやら巫女さんが甘酒を配っているようだ。

並ぶ間、オレはそれをウインディの分も合わせてもらう。

そしてオレ達の番になったので、賽銭箱の前に立ち小銭を投げ入れて、パン、パンと二回柏手を打つ。

ウインディもオレを真似て柏手を打つと、なにやら一生懸命にお祈りしていた。

そんなに心を込めてどんなことを頼んだのか気になりはするが、まぁ聞かないようにしよう。

こう言うのは口に出すと叶わないって言うしな。

お賽銭を入れ終わると、今度はおみくじだ。

六角形のおみくじ箱から木の棒を引いて、そこに書かれた一番〜百番までの番号の引き出しからおみくじを取り出してもらうシステムだ。

なお、この時の数字の大きい小さいは特に関係ないようだ。

ちなみにオレは五十五番で小吉。

喜ぶべきか落ち込むべきかかなり微妙だなぁ。

凶じゃなかっただけいいかぁ…。

ん?……この待ち人のとこ、すぐ近くにってなんだ?

一方、ウインディはと言うと……。

「わ〜い!大吉なのだ〜!!」

と、大吉を引いて大はしゃぎしている。可愛い。

「これ、もってかえっていいのだ〜?」

ウインディは大吉のおみくじを手に、ウキウキ気分でそう言って来る。

「大丈夫だと思うぞ〜?」

別に引いたおみくじを返却しなきゃならないようなことは少なくともオレは聞いたことがないし、木に結んで帰っていく人とかもいるが、あれはどちらかというとおみくじの結果が良くなかった人達だろうしな。

「帰りにお守り買ってくか?」

ちょうどいいお土産にもなるだろうし、普段ウチのウインディが世話になってるクラスメイトちゃん達の分も買って行くか。

「のだ〜!!」

「こらこら、動きにくい格好してるんだから転んじゃうぞ〜」

今年もウインディのおかげで楽しく退屈しない一年になりそうだなぁ。

 

 

のだ〜

 

前までは別に初日の出とかきょーみなかったけど

 

今年はトレーナーといっしょにみたかったのだ〜

 

エヘヘ〜♪




因みにおみくじにおける待ち人と言うのは自分の人生に大きな影響を与えるような人。また家で帰りを待っててくれるような人のことを指すそうで転じて『とても大切な人』という意味だそうですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お雑煮の餅って何個って答えてもついついおかわりしちゃう。

京都の方だとお雑煮にあんこ入れるそうですね。

おしるこかな?


三ヶ日の真ん中に位置する一月二日。

今日オレはトレーナー寮で今後のトレーニングについてのプランや、参加レースについての吟味をしていた。

ピーンポーン♪

「ん?」

来客を告げるインターホンにオレは首を傾げる。

新年会なら明日のはずだし、誰かに会う約束もしていない。

オレは椅子から立ち上がって玄関に向かい、扉についた覗き穴から外を伺う。

そこには……。

「トレーナー!来たのだ〜!!」

と元気いっぱいに手荷物を掲げるウインディがいた。

しかも、昨日と同じ振袖姿で。

オレは即座に扉を開けてウインディに問う。

いや、来てくれるのは大歓迎だけども。

「どした〜?ウインディ?」

「書き初めを見てほしいのだ〜!!」

「おぉ〜、書き初めかぁ〜」

懐かしいなぁ。

そう言えば、硯や半紙なんてしばらく見てないなぁ。

いや、視界に入ることはあっても今日日使う機会が中々無いのだ。

「でも警備員さんはどうしたんだ?」

「トレーナーのこと言ったらとおしてくれたのだ〜」

あぁ〜、前回の件で顔を覚えてもらえてたのか。

「分かったよ。ほら上がって上がって」

警備員さんが把握してるなら上げても問題はないか。

それにせっかくの来客、それも可愛い可愛い教え子の訪問を無碍に断るのも可哀想だ。

「おっじゃまするのだ〜♪」

「はいはいいらっしゃい。あぁ、履き物はちゃんと揃えてな〜」

「は〜いなのだ♪」

せっせと下駄を揃えるウインディ。素直で可愛い。

「ちょっと待っててなぁ」

オレはそう言うと部屋のど真ん中に置いてある椅子とテーブルをどけて、書き初め道具を置くスペースを確保する。

床に新聞紙を敷いてガムテープでとめ、膝置きにおろしたてのきれいな布巾を出し、万が一墨汁をこぼしたりした時のためのぞうきんも用意しておく。

十分もする頃には書き初め用のスペースはなんとか完成していた。

「それで、ウインディ。何を書くとか課題はあるのか?」

「すきなの書いていいって言われたのだ〜♪」

「そっか〜」

今年の抱負だったり目標だったり、各々好きに書けばいいってことか。

ウインディのクラシック級なら有名どころだと三冠ウマ娘だったり、トリプルティアラウマ娘なんかがそうか。

どっちも芝だけど。

ウインディの場合は初の重賞であるG3ユニコーンステークスを勝っておきたいからなぁ…。

「んじゃまぁ、まずは好きに書けばいいと思うぞ〜」

字の上手い下手だとかどことどこの線が近いとか離れてるだとか、そういうのはオレにはざっくりとしか分からん。

ただどんな内容にするにせよ、気持ちを込めて書くのは大事だとは思う。

ウインディはひとつ頷くとサラサラ〜と描き始める。

もう決まってたのか。意外と言うと失礼だが、ちょっとは悩むと思ったんだが。

「できたのだ〜♪」

「おぉ〜、どれどれ?」

「コレなのだ!!」

ウインディが嬉々として見せてくれた半紙には

“とうもろこし!!”

とデカデカと書かれていた。可愛い。

「エヘー」

ウインディはムフーと得意げだ。

「そっかそっかー。ウインディはとうもろこしが好きだもんなぁ〜」

「のだ〜♪」

まぁ、そんなこんなで書くものが決まったので、あとはウインディが自分で満足のいく提出用の物を書けるまでオレは部屋を貸すことにした。

たまに休憩で端っこに寄せたテーブルに麦茶を用意する。

しかしウインディはこだわりが強く、思ったよりも満足するものがなかなか出来ないらしく、気がつけば外は夕方になりつつあった。

終わったら夕飯を作ろうと思い冷蔵庫を見るが、中身が心許ない。

昨日は正月休みで商店街が閉まってたからなぁ。

仕方ないので、オレは買い出しに出ることにした。

「それじゃ、ウインディ。ちょっと夕飯の買い出しに行ってくるな〜」

「わかったのだ〜」

意外だな、着いてくるって言って来るかと思ったんだが…。

やっぱり動きにくい格好だからか?

まぁ課題に集中したいのかもしれないし、せっかくのやる気に水を差すわけにもいかないか。

「それじゃ、すぐ帰って来るなぁ〜」

「いってらっしゃいなのだ〜!!」

ウインディが居間の方から元気よく手を振ってくれてる。可愛い。

オレは財布と携帯、それからカバンを持って、トレセン学園の近場の商店街に買い出しに出るのだった。

 

 

う〜。

 

やっぱりコレをみせるのはゆーきがいるのだなぁ。

 

ぺらり

 

“とれーなー”

 

エヘー♪




ちなみに筆者は新年イベントのストーリーけっこう好きです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

かるたイベント、進んでますか?

和装は是非全キャラに実装してほしいですねぇ。
もちろん育成ウマ娘がひと通り出揃ったあとでですけど。


さて、今日はトレセン学園所属トレーナーの宴会の日だ。

なぜ元旦にやらないのか、それは主に多忙なチーム持ちの先輩方に考慮してのことだ。

まぁ幹事なんかは特に決めず、場所もトレセン学園の関係者用の中庭に各々つまみや酒を持ち寄っての宴になるが。

因みに切り上げる時間も早めで、仕事の都合から中には酒を飲まない人も居る。

これは、新人もまた多忙なウマ娘トレーナーならではのことかもしれない。

とはいえ、内容は特に普通の宴会と変わらない。

基本教え子自慢にはじまり、たまに真面目な話や乗ってもらいたい相談をして、最終的に再び教え子自慢で終わる。

あとは今年の抱負なんかを言い合うくらいか。

あっさりしているが、これはこれでいいもんだ。

さて、そんな宴会も終わって夕方に差し掛かろうと言う頃、トレーナー寮へ戻ろうとするまさにその時に、オレは背後から気配を感じた。

「のだぁ〜…………」

ついでにかまってちゃんオーラも感じるなぁ〜。

そして数分後…。

ガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジ…。

オレはトレーナー寮の自室で頭をウインディにかじりつかれていた。全く痛くは無いけど。

部屋に上げたウインディからマフラーを外すように言われ、そのまま椅子に座ると同時に首から肩あたりに腕をまわされ、ガブリンチョされて今に至る。

「ウインディ?どした?」

「ふはほはほは?」

「いったん離してから喋ろうなぁ〜」

「プハッ、トレーナー!!今年はなにどしなのかわかるのだ?」

今年?そりゃあ…。

「寅年だな」

今年、というか先月の十二月に送った年賀はがきにも虎の絵が書かれていたので間違いはないはずだ。

そう答えるとウインディは

「そうなのだ!!」

と満足げに答える。

「えぇっと…つまり?」

「今年はトラ年!!つまりトラのようにかみつくことによって、ウインディちゃんはさらに強くなるのだ〜!!ハモッ…」

ガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジ…。

そう力強く言うとウインディは再びオレに噛み付き始めた。なるほど可愛い。

「それで、なんでそれがオレに噛み付くことに繋がるんだ?」

「プハッ、それは新年初イタズラと初かみつきをかねてのことなのだ!!それとウインディちゃんを今年もちゃんとかまうのだ〜!!」

うんうん。ところどころ本音がだだ漏れで可愛い。

しかし実際にこうして噛み付かれているとは言え、甘噛み程度で済んでいるのはやっぱり構ってもらうことが目的だからかな?だとすればなおさら可愛い。

なお、同じくウインディの噛みつきを経験した美浦寮長のヒシアマゾンは、以前ウインディに噛まれた腕に包帯を巻くくらいのケガを負ったらしい。

もっとも、最近はそんなこともめっきり無くなったそうで、当事者のヒシアマゾンとしても、その時のことを恨んだりはしてないそうだが。

まだ勧誘前のこととは言え、これは彼女の寛容さに感謝だなぁ。

まぁでも、今月で明確に休みと言えるのはここ数日くらいしかないから、ほぼ一日をトレーニング抜きにウインディにかまってあげていられる日というのも意外と残り少ない。

普通に学園の授業や行事なんかもあるし、そのことを思えばなおさらか。

それを惜しんでのことなら、それだけオレがウインディから信頼されているような気もして嬉しくなってもくる。

トレーナーとして、担当ウマ娘との距離が確かに縮まっているのだという自信にも繋がるしなぁ。

単にウインディがそれだけ寂しがりというだけなのかもしれないが、そのことを言うと本人はほぼ間違い無くヘソを曲げそうなので言わぬが花だろうなぁ。

オレはナデナデ実行のため、慎重にウインディの頭上に手を持っていく。

間違って手が目とかにぶつかったら危ないからね!!

幸い頭の向きはほぼ固定されていたのでオレが首を回したりしない限りその心配は低かったが、念には念を入れておいて損はない。

まして、ウチの可愛いウインディのことなのだからなおのことだ。

途中で触れたウマ耳がピクピクと反応したのも可愛い。

「よ〜しよしよしよしよしよしよしよしよし」

噛みつかれながらオレはウインディにナデナデをかます。

「ほはぁ〜……♪」

撫でられて気持ちいいのか、それともかまってもらえて嬉しいのか、もしくはその両方か。ウインディは満足げな声をもらす。

結局、ウインディが完全にオレを離してくれたのは夕飯時にウインディの腹の虫が鳴ってからだった。

 

 

ふっふ〜ん。

 

これでクラスメイトのいったとーり…。

 

トレーナーにウインディちゃんのツバつけといたのだ〜♪

 

 




ただ、衣装違いは期間限定でええんやで…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

どうも。某まきばの物語で既婚データを未婚データに間違って上書きしたあげく、ふて寝をかました筆者です。

日記を読むを選んだはずが書くを選んでいたと言う……。


「終わったのだ〜!!」

ウインディはゴロンとベンチに横たわる。

かいた汗を首に巻いたタオルで拭き取っていたので、オレはウインディに新しいタオルとスポーツドリンクを渡しながら話しかける。

「お疲れウインディ〜。よしよしいい感じだなぁ」

ウインディは休み明け初日のトレーニングを無事に終えることが出来た。

普段から動き回っているからか、思っていたよりも走りの精彩が欠けていないのは幸いだった。実際、今日出たタイムも十分許容範囲だ。

あの後もきちんとゆっくり休めたのだろう。いいことだ。

さて、今年…つまりはクラシック級の参加レースだが、オレが定めたまずひとつめの目標は二月後半開催のヒヤシンスステークス。

これは六月開催のG3ユニコーンステークスと同じく東京レース場で開催されるレースで、さらに距離も同じ1600メートルのマイル。

重賞の前哨戦には持って来いだし、去年プラタナス賞で同じレース場、同じ距離を走っているので、更に慣れさせていきたいところ。

それにこのままの伸び幅で行けば油断はできないまでも、少なくともユニコーンステークスでの勝利は十分現実的と言える範疇だろう。

だからそれを目安にトレーニングを構築するのを優先とする。

仮に遅くなったとしても同じく東京レース場開催で同条件かつ五月開催の青竜ステークスには出したいところだ。

順調にいけば、七月に大井レース場で開催される夢のG1ジャパンダートダービーにも参加できるようになるだろう。まぁこれは距離が更に400メートル伸びて2000メートルの中距離になるのだが、今のウインディのスタミナならほぼほぼ問題無い。

現に今日、スタミナの限界まで実践ペースで走ってもらったが、そのくらいは走り切れる様子だった。

逆に言えば、それ以上の距離になると途端に厳しくなると言うことだが、少なくとも現状2000メートルを超える距離の重賞レースと言うのは日本のクラシック級ダートには無いため、それほど気にしなくてもいいだろう。

もちろん、レース時のウインディ自身の調子やバ場状態や天気など、不確定要素によってはどう転ぶか分からない部分もあるにはあるが、少なくともウチのウインディは多少の悪路なら問題なく走行できる。

これはウインディ自身の努力と生来持ち合わせていたセンスによるところが大きいが。

「とまぁ、今年出場するレースの予定はそんな感じでいいか?」

横になったままオレの説明を聞いていたウインディはぴょこんっと起き上がり

「トレーナーがそれでいいって決めたならいいのだ〜♪」

と、特に反対するわけでもなくオレの指示に従ってくれる。

ウインディは本当に素直でいい子だなぁ〜。

思えば最初の方の頃なんかは本当にザ・反抗期っていうか、反骨精神丸出しって感じだった。もちろんそっちはそっちで可愛いかったけども。

まぁ長い話になりそうなので割愛するとしよう。

その頃があったからこそ、心を開いてくれた今ウインディからの信頼にも応えたくなるんだろうなぁ。トレーナー冥利に尽きる話だ。

「そっかそっか〜。それじゃあ明日もトレーニング頑張ろうなぁ〜」

「まっかせるのだ〜♪」

いい笑顔でお返事するウインディ。可愛い。

「それじゃあ、この後着替えたらゴハン食べにいくか〜?」

「のだ〜!!ウインディちゃんカレーがたべたいのだ〜♪」

「おぉ〜奇遇だなぁ、オレもちょうどカレーが食べたかったんだよ〜」

「エヘ〜♪きぐーなのだ〜」

ウインディはそう言うと、立ち上がり寄ってくる。可愛い。

「それじゃ〜、いつものとこで待ってるのだ!!」

「あいよ〜、門のとこな〜」

遅れたら拗ねるだろうし、オレも準備を済ませて行きますかね〜。

 

 

カレー♪カレー♪

 

トレーナーとカレー♪

 

な〜のだ〜♪




あれか。浮気は良くないってことですかねぇ…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんの勝負服イベント、めっちゃ気になりますよねぇ。

コレ間違ってたら恥ずかしいヤツだわ…。

今更か!!


今日はオレにとってもウインディにとっても大切な日だ。

と言うのも、今日はトレーニングを終えたらクラシック級に上がり、かつジュニア級でそれなり以上の成果を上げたウマ娘が勝負服作成のための採寸をするのだ。

これは「弛まず努力を続けるように」という理事長からの激励の意味もあるんだろう。

そして、ウインディが考えたと言う勝負服のデザインを書き出した紙を見たオレは驚いた。

見た目は他の学校の制服に見える黒のブレザーにネクタイにスカート。そして右手には獅子舞のハンドパペットという衣装だったからだ。

オレは気になって「なんでブレザーなんだ?」と質問した。

勝負服とは、レースを走るそのウマ娘の憧れであったり、夢や目標、信念と言ったものをカタチとしたものだ。

故に、そのひとつひとつには明確に想いが込められており、文字通り世界に二つと無いものだ。

特に勝負服とは基本G1という、本当に一握りのウマ娘が走る舞台で袖を通すもので、それ以外は体操服で走るものという認識もある。だからこそウマ娘にとっては勝負服を持っていると言うことそれ自体が高い実力の証明でもあるのだ。

「エヘー、これならいつでもトレーナーとお出かけできるのだ〜♪」

ん?何故お出かけ?まぁオレとしてはいっしょに出かけることが楽しいと思ってもらえているようで、その点は嬉しいけども。

「トレセン学園の生徒って分からなかったらわざわざめんどーな紙に書かないで済むのだ〜♪」

……あぁ〜、なるほど。

つまりウインディ的には、外出届をいちいち書くのが面倒くさい。→それならトレセン学園の生徒の格好で外に出なければいい。→ならいっそのこと勝負服って言うことにして合法的に外出届を出さずに外に出ればいいじゃない!!ってことか。かしこい(トレバカ)。

しかし、こればっかりは注意しなければならないなぁ。

ごく当たり前のことではあるが、ルールを守ることはルールに守られることにも繋がる。

そりゃあ中には億劫な規則もちらほらあるが、だからこそトレセン学園の生徒無料で栄養満点の食堂やトレーニング施設という恩恵にあやかることもできる。

まぁそもそもの話、勝負服は最終的に生徒会に服装案を提出してその許諾があってはじめて作れるものだしな。

でなければ、色々とヘンなモノまで作られそうだしなぁ。

特にゴールドシップ。

いやまぁ、実際あの勝負服はカッコいいけどさ、絶対「何の規定もなく好きに勝負服作っていいぞ〜」って言われたら100%ヘンなモンになりそうで怖い。

……いやまぁ、さすがにそこは沖野先輩が止めるか。

「いいか〜?ウインディ、外出届を書くのはウインディのためにも必要なことだし、きちんと書いてくれればオレだって安心できる」

「のだ〜…でもメンドーなのだ〜」

ぷく〜とほっぺを膨らませ、不満げなウインディ。可愛い。

「逆に、それを書けばコソコソしなくてもちゃんと一緒にお出かけできるんだ。オレだってウインディとすぐ出かけたいけど、ちょっとの我慢で済むならむしろその間ワクワクしてられるよ」

「のだっ!?そんなにウインディちゃんとおでかけしたいのだ〜?」

うん?不満げな表情から一転して今度はしっぽをブンブンしだしたなぁ。可愛い。

「そうだね〜、採寸が終わったらまたお出かけしようなぁ〜」

「じゃあサッサと終わらせるのだ〜♪」

「それで、勝負服に込めたい願いとかって言うのはあるのか?」

「もっちろんなのだ〜!!」

「よかったら教えてくれるかな?」

「しょーがないのだな〜♪」

そう言うウインディはどこか楽しそうだ。可愛い。

「ズバリ!!食らい付く闘志とイタズラごころを忘れない!!なのだ〜!!」

結構しっかり考えてた。さっすがウチのウインディ。

「なるほど。それで獅子舞なわけか」

確かに大きな口でかまれそうな感じはあるけども。

それにブレザーというもある種、勝負服としては常識にとらわれないデザインではあると思う。

なるほどそう言った意味合いがあったのか〜。

じゃあしょうがないね!!

…もちろん外出届はきちんと書いてもらうけど。

「そうなのだ〜♪」

にこやかにそう言うウインディ。可愛い。

さて、そろそろ時間だな。

「それじゃあ行ってくるのだ〜♪」

「ちゃんとじっとしてるんだぞ〜?」

「ふっふ〜ん♪ほしょーはできないのだなぁ〜♪」

そう言って、ウインディは計測具を持っているであろう職員の待つ服飾室に入っていくのだった。

 

 

あっははは!!

 

くすぐったいのだ〜!!

 

ガマンガマン〜

 

なのだぁ〜……。

 

 




実際、ウインディちゃんはどんな願いを込めたのでしょうねぇ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ワールドワイドウインディ。もっと色々なウマ娘のエピソードに出てきてもいいのよ?

まだまだ続くんだよなぁ。


ここはトレセン学園トレーナー室。

「よ〜しよしよしよしよし」

ナ〜デナデナデナデナデ

オレはウインディを撫でくりまわしていた。

「のだぁ〜!?トレーナー、いきなりどーしたのだ〜!?」

さしものウインディも困惑している様子だ。

「いい子だなぁ〜ウインディは〜」

「ウガー!!ウインディちゃんはいいこじゃないのだぁ〜!!」 

あぁしまったしまった。

「じゃあわるいこわるいこ〜」

「ならいいのだ〜♪」

それでいいのかぁ……。

だがそんなところも超可愛い。

さて、なぜこんなことになっているかと言うと、その理由にとある一件が関わっているのだ。

「我ら世界にかみつくつむじ風」

「「ワールドワイドウインディ!!」」

「なのだ〜!!」

それは、元々はヒーローショーでのヒール役として組んだ際のコンビ名らしい。

片やワールドワイドに活躍の場を持つスーパーウマ娘シーキングザパール。

アメリカ生まれなためか、たまにグラスワンダーやエルコンドルパサーと一緒にいたり、あるいはケンカしている生徒たちの仲裁なんかをしている姿を見かけることもある、いわば姉御肌で世話好きなウマ娘なのだろう。ある意味でヒシアマゾンと似通ったところもあるようだ。

そしてもう片方はご存知ウチのウインディこと可愛い可愛いダート界のホープウマ娘、シンコウウインディだ。

そんなコンビがある日活躍した出来事があったというのだ。

ある日、トレセン学園購買でとあるパン(ゲソコロネというらしい)がテレビで紹介されたのを機に品薄になり、以前からのリピーターであるウマ娘が買えない事態に。

悲しみながらもう諦めようかと嘆く彼女の前にさっそうと現れたのが誰あろうワールドワイドウインディの二人だった。

「ゲソコロネが買えないなんて理不尽にはかみつくのだ〜!!」

「特訓よー!!」

と、言われるがまま特訓をしてみたら本当に買えるようになったとか。

「1000のかみつきもひとつめからなのだ〜!!」

という、ウインディのアドバイスを参考にしたとかしなかったとか。

さすがウインディと言いたくなるアドバイスだなぁ。可愛い。

というか、この話自体そのウマ娘…ナイスネイチャとたまたま廊下ですれ違った際に何やらお礼と共に説明され、今現在知るに至った訳だが。

「ウインディはすごいなぁ〜、かっこいいなぁ〜」

「エヘー、そんなのトーゼンなのだぁ〜♪」

「よしよしよ〜し。そんなかっこいいウインディちゃん。次のお休みの日にお出かけするか〜?」

せっかくのご褒美だ。トレーニング後の限られた時間ではなく、どうせならまる丸一日ウインディに楽しんでもらいたい。

「のだ〜♪それならウインディちゃん気になるお店があるのだ〜♪」

「そっかそっか〜。どんなお店かなぁ〜?」

「エヘー♪クラスメイトがトレーナーさんと出かける時にはぜひ寄ってねって言ってたのだ〜♪」

そう言いつつウインディが取り出したチラシには今度オープンするという喫茶店の名前が。

「えぇっとなになに?オープン記念として二人組以上のお客様には割引券を配布いたします。ヘぇ〜いいじゃないの」

清潔感もあるし、立地も学園から近くて通いやすそうだ。オープン日は…次の日曜か。

ちょうどトレーニングのガス抜きに一日休みにしてる日だな。

多少混雑するだろうが、せっかくだし行ってみようか。

「よ〜しいいぞ〜」

「わ〜いやったのだ〜♪」

ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶウインディ。可愛い。

「ただし、ちゃんと外出届は出すんだぞ〜」

「しょーがないから書いてあげるのだ〜♪」

「おう、たのんだぞ〜」

しかし、この時のオレは気付いていなかった。

日曜のオープン日に、雰囲気の良さそうな喫茶店…。

その意味するところは…。

「カップルの数がすごいなぁ…」

「のだぁ〜」

オープン日当日。

オレとウインディは結構早めに出たのが幸いしてか、結構列の前の方に来ることができた。

と言うか、ウインディが楽しみすぎてめちゃくちゃに急かして来たんだが、今にして思えばそれは正解だった。さすがウインディ。

やがてオープン時間になり、俺たちの番が回って来た。

「いらっしゃいませ〜」

「のだ〜♪」

「ん?クラスメイトちゃん?」

案内に来たウエイトレスは見間違いでなければ、ウインディとよく一緒にいるクラスメイトちゃんのひとりだ。

「あはは、いらっしゃい」

「来たのだ〜」

「あぁ、なるほどバイト先だったのか」

トレセン学園はきちんと申請さえすればアルバイトの許可も降りる。

だからアルバイトする生徒自体が珍しいわけでも無いが。

「それではお席の方ご案内いたしますね〜」

そう言われて案内された席は、窓際の光が程よく差し込むなかなかに良い席だ。

両者が対面する形となっており、まさに二人席といった趣だな。

すこし窓から覗き込めばちょっとした絵本の中庭のような空間が外には広がっており、なかなか心落ち着く空間となっている。

「それではご注文がお決まりになりましたらそちらのボタンでお呼び下さい」

そう言うとクラスメイトちゃんはススッといなくなった。

「まさかクラスメイトちゃんのバイト先だったとはなぁ…」

「でも、たまにはこーゆーのも楽しいのだぁ〜♪」

ウインディは初めてやって来たお店に興味津々だ。可愛い。

「ウインディ、先に決めていいぞ〜」

「のだぁ〜♪」

わくわくとしたようすでメニューをめくるウインディ。可愛い。

それから十分ほど経過して

「う〜ん…どっちもよさそうなのだぁ〜♪」

なにやら迷っている様子だ。

まぁカロリー計算の都合上、こういう時の注文はひとつまでと決めてあるからなぁ。

「なんなら、ウインディが片方頼んで、オレがその気になるもう一方を頼めばいいよ」

「のだっ!!めーあんなのだ〜♪」

そうと決まれば話は早い。

「どれが気になるんだ?」

オレはウインディにメニューを見せてもらう。

「これとこれなのだ〜」

と写真に指を差すウインディ。

「あぁ〜、確かにどっちも美味そうだなぁ」

片やフワッフワしてそうなパンケーキ。

片やなかなか豪勢にフルーツの乗ったパフェ。

なるほど悩むなぁこれは。

「それじゃ、両方頼もうか」

「トレーナーはこれでいいのだ?」

「美味そうだし問題ないよ。それに他のメニューを頼むんなら次来た時にそうすればいいしな」

割引券がもらえるんなら、次はもう少し安く済むだろうしな。

ボタンを押し、注文を取りに来るのを待つ。

ウインディはソワソワした様子だ。

「どした?」

「エヘー、じつはこーゆーお店にくるのはじめてなのだぁ…」

恥ずかしそうにちょっと赤面してそう言うウインディ。可愛い。

「でも、はじめて一緒に来たのがトレーナーで良かったのだぁ…」

「そっかぁ。それじゃあこれからも色々なとこに行こうなぁ」

そんな話をしていたところ

「ご注文はお決まりですか?」

と、クラスメイトちゃんがやってきた。

「あぁ、このパフェとパンケーキください」

オレはメニューで商品を指差しながらそう言う。

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

そう言うとクラスメイトちゃんは厨房の方に引っ込んでいった。

………ちょっと厨房が色めきたった気がするが、気のせいということにしておく。

ウインディとお話ししていると

「お待たせ致しました」

と、俺たちが注文した2つ商品の乗ったお盆を持ってきたクラスメイトちゃん。

テーブルの上に商品を置くと、ウインディになにやら耳打ちしている。

「うん。やってみるのだ〜!!」

そう言うウインディはなにやらやる気に満ち満ちている。よくわかんないけど可愛い。

さて、オレは目の前に置かれた結構大きめのパンケーキを食べようと付属のシロップをかけてナイフとフォークを手にするが…。

「トレーナー、あ〜んなのだ〜♪」

その言葉と共に、目の前に生クリームのかかったいちごが乗ったスプーンが。

顔を上げて見てみるとニコニコしたウインディがこちらにスプーンを差し出してきている。

「どうした?苦手なのか?」

確か前は普通に好きって言ってた気がするが…。

「のだ?クラスメイトがこのお店ではこーするのがルールだって言ってたのだ〜」

ええ〜、そんなわけが…。

不審に思われない程度にキョロキョロと周囲を見回す。

………確かにやってることにはやっているが、実行に移しているのは基本カップルらしき二人組だけだぞ?

そのことを言おうとウインディのほうを振り向くが…。

「トレーナー、たべてくれないのだ…?」

ウインディが悲しそうな顔をしていらっしゃる!!今にも泣き出しそうだ!!

「いや、もらう!もらうから!」

オレは焦りながらも、ウインディに差し出されたいちごを食べる。

パクリ。

うん。甘い。

「おいしいのだ〜?」

「めちゃくちゃ美味しいぞ〜。ウインディに食べさせてもらったからかなぁ〜?」

なんとかウインディを悲しませまいとちょっとオーバーに反応して見せる。

別に嘘でもないし。

「エヘー♪よかったのだぁ〜」

その言葉を聞いて、今度はウインディの表情がぱぁっと明るくなる。可愛い。

やっと食べられる。

そう思い、今度こそオレはパンケーキにナイフを入れるが…。

「のだぁ〜」キラキラキラキラ

ウインディが物欲しそうな目でこちらを見てくる。

あぁ、そう言えばこっちも食べたかったんだっけか。

オレは再び周りを見回し、誰もこちらを見ていないのを確認する。

ちらほら知り合いの顔も見えた気がしたが、彼らは目の前のウマ娘の相手に四苦八苦している様子。

こちらを気にする余裕は無いだろう。

意を決してオレはウインディにあーんを決行する。

「ほらウインディ。あ〜ん」

「のだぁ♪」

パクリ

秒で食いついてきた。可愛い。

その後もオレとウインディは自分のを食べつつたまに食べさせてを繰り返すことになったのだった。

いやぁ、いざやってみると恥ずかしすぎるなぁ…。

しかも次も来るって約束しちゃったし…。

しっかし、会計の呼び出した時にクラスメイトちゃんが意味深に笑っていたのが気になったが、あれはなんだったんだろうか?

 

 

のだぁ〜♪

 

どっちもおいしかったのだ〜♪

 

また行くのだ〜♪




思った以上に長くなっちゃった…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

またウインディちゃん来なかったよ……。

これはあれだな!!
次回に持ち越しだよな!!


 

今日の分のトレーニングが終わった。

ウインディはここのところ、トレーニング終わりにはほぼ毎日どこかに行っている。

「ウインディ、今日も行くのか?」

「そうなのだ〜♪ししょーのとこに行ってくるのだ〜!!」

しかし、毎度思っていることをオレは今回はじめて口にする。

「うん?師匠ってなんの?」

「エヘー♪ヒミツなのだ〜♪」

そう言うとウインディは笑顔で駆け出していった。

怪しい。

いや、別にウインディの交友関係にとやかく言うつもりはない。

クラスメイトちゃん達の様子を見る限り、ウインディは親しい相手にはそれなりに気遣いや心配りができる子だ。

しっかし師匠か〜。

いったいどこのどいつだコラぁ?(豹変)

いや、別にね?それ自体はね?良いんだけどね?

まっっっっっったく気にしてないんだけど。

全っっっっっっ然良いんだけど。

いやほらね?ものを教えるって基本教職員の役目じゃん?

そんな中で一番身近なのが自分のトレーナーなわけじゃん?

そんなトレーナーを差し置いてさぁ…師匠?

これは確かめるよりほかあるまい(使命感)。

さっさと今日の分の仕事を終え、ウインディの様子を探らねばなるまいて。

しかし探すとは言っても、流石にストーカーの真似事のようなことはしないしできない。

以前の落とし穴の時のようにトレーナー寮の近くで、生徒もあまり立ち寄らないような場所ならばいざ知らず、生徒の往来も少なくない学園内でそんなことをすればどうしたって生徒の目につくし、不審に思った生徒からたづなさんの耳に届くかもしれない。

故にあくまで自然体で偶然を装いつつチラチラッと様子を伺うのが安心安全というわけだ。

因みに変装というのもできればしたくはない。あまりに本格的過ぎると普段と見覚えのない人物がトレセン学園の敷地内にいるということになるし、その情報はともすれば学園のセキュリティ面での信用さえ危ぶまれることになりかねないからだ。

となると出来ることは、堂々とかつ慎重に遠目から偶然を装って探るしかない。

キャスケット帽に伊達メガネくらいならまあセーフだろう。

サングラスも考えたけど、そこはかとなく威圧感出ちゃうからね。やめといたわ。

そんなわけで中庭まで出て来た訳だが…。

「なかなか見当たらないなぁ〜…」

担当トレーナーのオレにも秘密にしているくらいだ。

秘密の特訓でもしてるんだろうか。

遊ぶんだったらひとこと「遊んでくるのだ〜」

と言えば済む話だしなぁ。

スタスタと歩いていると

「のだぁ〜っ!?」

何やら体育館の方から可愛い声が聞こえてくる。

オレは気になりそっと中を見てみることとした。

「うう〜、しっぱいしちゃったのだぁ…」

「大丈夫か?ウインディ。いいか〜?もう一回ターボの動きをよく見ておけよ〜?」

「わかったのだししょー!!」

「いや、ターボが師匠って大げさだよねぇー」

「まぁまぁ、出来ないことをやってみたいって思えるのは立派だよ〜」

「そうですね。私も見習いたいものです」

うん?彼女らはたしか…。

「こうやって、こうして…こうだ!!」

確か、今ムーンウォークを披露しているのはツインターボ。

チームカノープス所属のウマ娘で、大逃げが持ち味。お調子者ではあるが素直な子でもあり、いい意味で天真爛漫さが目立つ子だ。

「いやぁ〜、しっかしいつ見てもすごいよねぇ〜」

それを見て感心の声を上げているのはナイスネイチャ。

彼女はあのトウカイテイオーの同期であり、チームカノープスのキャプテンでもある。

出走したレースでは、基本的に一着こそ逃しているものの掲示板を外したことがなく、堅実な強さを持った子だな。

「すごいよねぇ〜、わたしにはちょっと真似できないかなぁ〜」

遠慮がちにそう言うのはマチカネタンホイザ。

彼女は…その…なんというか…。

色々とツイてない子って感じだなぁ…。

たまにウインディと同じ場所でトレーニングをやっていることもあり、その時の様子を見た感じ真面目な子だし強いんだろうけど、なかなか機会に恵まれないと言うか、巡り合わせが悪いと言うか、そんな感じだなぁ…。

「しかし、ウインディさんの動きも徐々に良くなってきていますから、ものにできるのも時間の問題ですね」

眼鏡を押し上げながらそう言うのはイクノディクタス。

綿密かつ精緻なトレーニングを好み、生来の頑健さゆえ故障知らずだと言う。

またメジロ家のご令嬢であり、生粋のステイヤーでもあるメジロマックイーンと同室でもある。

チームカノープスの四人。

チームリギルやスピカには知名度で負けるものの、それぞれがそれぞれ個性的で、観客にも人気を博する子たちだ。

「どうです?ウチの子たちはすごいでしょう?」

「うぉおう?」

後ろから聞こえた声にビクッとなり、咄嗟に振り返る。

なんとか声は抑えた自分を褒めたい気分だ。

「み、南坂先輩。急に声をかけられたら心臓に悪いですよ?」

声の主は南坂先輩。

穏やかな性格でトレーナーとしては基礎トレーニングを重んじる人だが、同時に映像機材の造詣も深い。

オレのような後輩や、担当ウマ娘たち相手にも敬語で話す人で、そんな性格からかトレーナー間でも結構慕われている。

「すみません。コソコソと…」

「いえいえ、こちらも似たようなものですから」

「へ?」

「可愛い教え子を見守りたいってだけですよ」

おぅバレて〜ら。

「しっかし、なんでウインディとチームカノープスの面々が…。いや別にそれが悪いってことじゃ無いんですけど」

「まあ、確かに見たところ接点は無いですよねぇ」

む?なにやら訳知りの様子。

そう思ったのを感じ取ったのか

「ちょっと前にこんなことがあったそうですよ?」

と続ける。

 

時は今日から少し遡る。

「ふっふ〜ん!!ターボのムーンウォークは今日も冴えてるもんね〜!!」

「はいはい。いつもすごいねー」

「何回見てもすごいよねぇ」

「こう言ってはなんですが、少し意外ですよね」

いつものメンバーでそう話していたところ。

「のだ〜!?スッゴイのだ〜!!」

と、ウインディが目をキラキラさせつつやって来たという。

「ウインディちゃんも!!ウインディちゃんもやってみたいのだ〜!!」

「お?なんだ?ターボといっしょにやるか?」

その純粋な熱意に、警戒するのもバカらしくなったのか、ツインターボのその発言にツッコミを入れる事も無く

「やるのだ〜!!」

二つ返事でそれを了承するウインディを止める機会も逸してしまった。

というのが今回のことのいきさつらしい。

 

…え、なにそれかわいい。

「でもさぁ、シンコウウインディさんや。ムーンウォークを覚えてどうすんの?」

ナイスネイチャが純粋に疑問を投げかける。 

その問いかけにウインディは笑顔で答える。

「トレーナーをビックリさせるのだ〜♪」

え?オレを?

「それでもっともっとホメてもらうのだ〜♪」

「おぉ〜、青春してますなぁ〜」

「仲がいいんだねぇ〜」

「ふっふん。ウインディとトレーナーはトレセン学園一仲良しなのだ〜♪」

ウインディ…そこまで信頼してくれるなんて…。

いかん。目頭が…。

伊達メガネを外し、ハンカチで目元を拭く。

もちろん、あちらの視線がこちらに向かないよう細心の注意を払って。

「……帰りますね」

「いいんですか?」

南坂先輩が聞いてくる。

「えぇ。本人が披露してくれるのを期待して待ってますよ」

そう言って、オレは体育館を後にしたのだった。

 

 

ウインディちゃんとトレーナーはさいきょーコンビなのだ〜。

 

のだ?

 

そーゆーカンケーってどんなカンケーのことなのだ?

 

のだ?いまのなし?

 

気になるのだ〜。




っていうか、なんでアンシーンなのよ?

たぶんギャンブル要素強いキャライベなりそう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一回限りの新春課金ガチャ…。う〜ん。ごった煮だろうなぁ…。

みんなは引く?引かない?


ここはトレセン学園のトレーナー室。

今日も今日とて、オレは仕事をしていたのだが……。

「トレーナー!トレーナー!トレーナー!トレーナー!!」

後ろからジャージ姿のウインディがオレのことを呼びながら笑顔で椅子をガタガタと揺らしてくる。可愛い。でも落ち着こうか。

「うん?どうしたウインディ?」

どうやら今のウインディは構ってちゃんモードのようだ。

オレは仕事の手を止めてウインディの方を振り返る。

「エヘー♪ちょっと見てほしいものがあるのだ〜」

そう言うとウインディはオレの手をグイグイと引っ張って来る。可愛い。

「おぉ〜それは楽しみだなぁ」

そのままトレーナー室を出て廊下を通り、途中で靴に履き替えてグラウンドの一角に辿り着くオレとウインディ。

「ちゃんと見てるのだ〜♪」

そう言うとウインディはムーンウォークを披露してくる。

「おぉ…」

うんうん。前にこっそり見た時よりも随分上達してるなぁ。

その後十分くらいその動きを見せてくれるウインディの表情は笑顔ながらもとても真剣なもので、彼女の頑張りの程が伺えた。

披露を終えたウインディは駆け寄ってきて頭を差し出す。褒めてほしいようだ。可愛い。

「頑張ったんだなぁ〜よしよしよしよし」

なでこなでこ。

「ビックリしたのだ〜?」

ウインディはワクワクとしたような表情でそう聞いてくる。

「もちろんしたよ。ウインディはムーンウォークも得意なんだなぁ〜スゴいなぁ〜。よ〜しよしよし」

「エヘー♪実はししょーのおかげなのだ〜」

ほぼほぼ確定でツインターボのことだろうなぁ。

「そう言えば師匠って前にも言ってたねぇ」

「のだ〜♪後でしょーかいするのだ〜」

いやぁ〜。楽しみだなぁ。

嬉しそうにウマ耳をピコピコと動かすウインディ。可愛い。

「うん?」

その時、視界の端に何やら人影が映った気がして、周囲を見回すがとくに誰が居たわけでもなかった。気のせいかなぁ?

「トレーナー」

「うん?」

声をかけられてウインディに視線を戻す。

「エヘー♪」

ウインディはもっと撫でろと言わんばかりに頭を突き出して来る。

「どうしたウインディ?今日はいつになくなでられたがりやさんだなぁ」

「上手くできたのがうれしくって、こうしたくなったのだ〜…メーワクなのだ?」

そう言うと、ウインディは不安げにウマ耳を垂れる。

感極まってナデナデを要求してくるとか可愛すぎるんだが。

本当に気分の浮き沈みが激しい子だなぁ…。 

だからこそきちんと力を合わせていかないとなぁ…。

「大丈夫だぞ〜。別に全然、まったく迷惑じゃないぞ〜」

オレはウインディを安心させるため、努めて優しく声をかける。

「よかったのだぁ…」

ホッと安堵の声を上げるウインディ。可愛い。

「よしよしよしよしよ〜しよし。ウインディはスゴいなぁ、強いなぁ、カッコいいなぁ〜」

そう言うとウインディはピクリと反応したかと思えば満面の笑顔を浮かべ

「うはは〜!!もっとホメるのだ〜!!」

と、すっかりいつもの調子だ。可愛い。

未熟者は未熟者なりに、担当ウマ娘を支えていかなくてはならない。

「これからも先輩方には世話になるなぁ…」

ホントに頭が上がらないなぁ。

オレは甘えてくるウインディを撫で回しながら常々思うことを再認識したのだった。

 

 

広い広いトレセン学園のグラウンドの端っこのほう。

ここは一部木陰にもなっていて、一部のウマ娘たちにはお昼寝スポットとしても有名な場所である。

そんな場所からウインディたちが去った後のこと……。

ガサッ。

近くの茂みから四人のウマ娘が顔を覗かせる。

「あっぶな!!こっち見た?こっち見た?」

一人はナイスネイチャ。とある調べでは、嫁にしたいウマ娘No. 1だとか。

「へー。アレがウインディのトレーナーかー。優しそうな人だなー」

続いて顔を出したのはツインターボ。シンコウウインディにムーンウォークを伝授したウマ娘で、シンコウウインディからは『ししょー』と呼ばれて慕われ、また尊敬されている。

「やっぱりこっそり見るのは良くなかったんじゃ…」

おずおずと顔を出すのはマチカネタンホイザ。よく転んで鼻血を出している。

「ですが、ターボさんはこういう時に言って聞くタイプじゃありませんし。どうせなら一緒に着いて行って飛び出しそうになったら抑えるのも十分にアリだったかと」

最後にイクノディクタス。

体重管理は今日も完璧だ。

何故この四人がここにいるのか。

それは今日シンコウウインディが披露する場を整えた張本人達だからだ。

わざわざここをよく利用するウマ娘たちに、ほんの少しの間だけ開けてくれないか交渉までして。

それで更にここに陣取ったのは、要するに教え子(?)が少し心配で見にきたというだけだが。

「まぁカンペキだったな!ターボが教えることはもう無いぞ!!」

「あれだけ短期間でものにしたんだもんねぇ」

「大した弟子ですよまったく」

「教えていたのはターボさんでは?」

「あの…心配なのは分かりますけどトレーニング…」

そして、南坂トレーナーは、今日も困り顔である。

 

 

 

トレーナーの前だとついつい気がゆるんじゃうのだ〜。

 

でも…。

 

それでもいいのだ〜♪

 

エヘー♪




安心沢、出る前は環境になるかもって噂だったのに、いざ実装されると評価サイトのコメントがどれも割と辛辣ですねぇ……。
金スキルは強いみたいですけど…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レーシングカーニバル。結晶片せめてSRの方だけでも二回交換できるようにしてほしい‥。ダメ?

それと、クローバーの交換先も、せめてsrチケットとかに…、なりませんかそうですか。


オレはいつも通り、トレーナー室で資料を作っていたのだが……。

カタカタカタカタカタ…。

「う〜む……」

どうにも仕事の進みが芳しくない。

残業に目を光らせているたづなさんの手前流石に徹夜はしていないが、しかしどうにも睡眠時間が些か足りていないようだ。

そんなに無茶はしていないつもりだったが、こういうのは蓄積するものだしなぁ…。

「仕方ない…」

ガタッ…。

オレはPC前から立ち上がり、ソファーの上に横になる。

流石にコタツで寝るのは風邪を引きかねないのでやらない。

とは言え、授業時間もそろそろ終わるのでウインディの事を考えるとあまり長く寝てはいられない。

チラリと壁にかけられている時計の時間を見やる。

「とりあえず三十分くらいかなぁ…」

携帯を取り出し、アラームをセットしてすぐそばにあるテーブルの上に置く。

充電は問題ないので、途中で切れて、鳴らないなんてマヌケな事にはならないはずだ(即興ギャグ)。

「それじゃ、おやすみ…」

特に誰が聞いているわけでもないが、オレは机の引き出しから取り出したアイマスクをつけると、やはり疲れていたのかそのまま眠りに落ちた。

………………………。

バタァン!!

「トッレーナー!!ウインディちゃんが来たのだー!!」

「zzzzz…」

「のだぁ?トレーナー、寝てるのだ?」

「zzzzz…」

「エヘー♪じゃあウインディちゃんもいっしょに…むー。狭いのだぁ…」

「zzzzz…」

「こーなったら…」

「上にのっかってやるのだ〜♪」

のし…。しっぽパタパタ。

「ウインディ〜…そう慌てるなよ〜」

「のだ!?トレーナー、起きたのだ?」

「zzzzz…」

「なんだ〜寝言だったのだ〜…でも…」

よじよじ……。

「夢でもウインディちゃんといっしょでうれしいのだ〜♪」スリスリ

「う〜ん…」

「のだ?トレーナーどうしたのだ?」

「おもい…」

プチっ…。

「ガブーーーーッ!!」

「あ痛〜〜〜っ!?」

 

頭を襲う謎の痛みで覚醒する。

「え?なになになに?」

「ほはぁ〜っっっ!!」

「え?ウインディ?授業は?」

「ほーほはっはほは〜!!」

「ごめんごめん、ちょっと離して…」

「プハァ…。もう終わったのだ〜!!」

「え、アラームは?」

ピピピピピ…。

ピピピピピ…。

あ、今鳴った…。

「で、どうして噛みついてきたんだ?」

わけを聞くとウインディはほっぺを膨らませて言う。

「ムゥ〜ッ、トレーナーがウインディちゃんのこと重いって言ったのだぁ〜!!」

「え、言った?」

「寝言で言ってたのだ!!」

ぷりぷりと怒るウインディ。可愛い。って言ってる場合じゃないな。

参ったなぁ。全っ然身に覚えがない。

しかし実際にウインディが怒っている以上、これはこっちの落ち度だしなぁ〜。

なによりヘンに言い訳を並べ立ててウインディに嫌われたりでもしたらオレはもう立ち直れないかもしれない。

「ごめんよ〜ウインディ。悪気は無かったんだよ。ホントだ」

精一杯謝る。

そこに偽りはないつもりだ。

「うぅ〜…」

オレからの謝意が伝わってくれたのか、ウインディは少し落ち着いたようだ。

「……じょーけんがあるのだ」

「条件?」

「この前の喫茶店で食べほーだいなのだ〜!!」

え、あそこ結構いい値段するんだが…。

しかし背に腹はかえられないよなぁ…。

割引券を貰って早速使う機会がくるとは…。

それとカロリー管理……。

まぁ頑張ればいっか!!

「うんうん分かった分かった。だから機嫌を直して、な?」

「ならいいのだ〜…」

ほっ…良かった。なんとか怒りを鎮めてくれたようだ。

「それじゃトレーナー」

「うん?」

「こんどはいっしょに寝るのだ〜♪」

そう言うとウインディはオレの上に乗っかってくる。可愛い。

その時だった…。

コンコン。

コンコン…。

「岡本トレーナー?次の資料の件ですが…」

ガチャリ…。

トレーナー室にたづなさんが入ってきた。

いや、それ自体は問題ない。

問題ないんだが…。

「……トレーナーさん?」

尋常でない声色に、オレは自分の状況を再確認する。

ソファーの上で横になるオレ。そこにウマ乗りになるウインディ。

側から見ればどう見てもクロだこれ!!

「あ、いやこれは別にヘンなことをしていたわけでは無く仮眠をとっていたと言うか…」

「………………」ニッコリ

ひぃ!?

目が笑ってない…。

「…ちょっと理事長室まで来ていただけますか?」

有無を言わせない威圧感にウインディまでもが気圧されている。こわい。

「あ、いやでも…」

「いいですね?」

静かな物言いが、さらに恐怖を駆り立てる。

こうなったらこの人は一切の言い訳に聞く耳を持たない。

「はい…」

そんな時、勇気ある言葉が我が担当ウマ娘から放たれる。

「ウ、ウインディちゃんも!ウインディちゃんもいくのだ!!」

「……まぁ良いでしょう。当事者の話も大事ですからね」

結局、オレはウインディの懸命な弁明により事なきを得た。

ありがとうウインディ。いやホントに助かった。

こりゃ食べ放題も妥当かも分からんね。

 

しかし怒ったたづなさん、ホント怖かったなぁ…。

 

 

と、ゆーわけで

 

今度食べほーだいに行かせてもらうのだ〜!!

 

のだ?

 

ちょーど大食いメニューもつくってたのだ?

 

それはよかったのだ〜♪




筆者はたづなさんのこと嫌いじゃないです。

ホントです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

おかげさまで八十話。ありがとうございます。………スーパーかな?

記念って訳じゃないですが、勧誘の時の裏話というか、続き見たいなのを描いてみました。


 

昔の夢を見ていた。

昔とは言っても何も幼い頃のことだとか、学生時代のあれこれを思い出してたりとか、そういうものでは無い。

これはオレが、ウインディのトレーナーになるまでの思い出だ。

「ふっ、ふん!どーじょーされてたんとーしてもらおーなんて、ウインディちゃんはそこまでおちぶれてないのだ〜!!」

そう言うとウインディはぷんすかと言った様子でサッサと行ってしまった。

トレーナー人生での初勧誘を断られた時は正直な話、なかなかガックリきたものだ。

しかしまぁ、後になってそれもそうかとも思った。

ついさっき会ったばかりのトレーナーということしか分かっていない人間。

それもなんの実績も無いペーペーの新人トレーナーが、いきなり勧誘して来たのだ。

不審に思うなと言う方が無理な話だ。

だからオレは、オレ自身の誠意をもってウインディの信頼を得るしかなかった。

そしてそれは何人かの先輩方に相談して、一番いいと思った方法。

まぁ言ってしまえば、とにかく当たって砕けろというものだった。

方針が定まったなら、そのための機会は逃すわけにはいかない。

例えば休み時間や放課後。

「シンコウウインディ!勧誘の件、考えてくれたか!?」

「しつっこいのだー!!ガブー!!」

「あ痛ーーっっ!?」

例えばイタズラを仕掛けようとしたのを見かけた時。

「話だけでも聞いてくれ〜!!」

「のだ〜!?ばかばか、ばれるのだ〜!!」

流石に寮内までは入れないので、そんな時は…、

「コレをウインディのヤツに届ければいいのかい?」

「ああ、よろしく頼むよ」

誠心誠意を込めた手紙をヒシアマゾンに届けてもらっていた。

「しっかしアンタも折れないねぇ」

「ああ。あの子は絶対に強くなる!!というかして見せる!!」

あの反骨精神、それに剥き出しの闘志は絶対に武器になる。

オレは初めて見た時からそう思ったし、その素養も折り紙付きだと新人トレーナーながら思ったものだ。そしてそれは今も変わらない。

「まさかウインディにそこまで惚れ込むヤツが現れるとはねぇ…」

ヒシアマゾンは呆れたように、と言うか実際呆れながらそう言う。

「迷惑をかけるなぁ…」

申し訳なくなって頭を下げる。

実際、頼まれた側はいい迷惑だろうしなぁ。

「いいや構わないさ。ウインディのヤツに関しちゃそもそも、今までなかなかデビューしなかったツケが回って来たってだけさね。良い機会だよ」

どうやら彼女も彼女で、ウインディの背中を押してやりたかったらしい。

「それに、アンタくらいの構いたがりの方がアイツには合ってるだろ」

「その分相手を選びそうだけどね〜」とも言われた。苦笑いで。

まぁそんなこんな、ヒシアマゾンの手助けもあってやっとのことでウインディと話し合いの席を設けてもらうことに成功したわけだ。

「えぇと…待ち合わせ場所は…結構人通りがないなぁ…おわぁっ!?」

オレは夕暮れ時の暗がりもあってか足元に設置された落とし穴に気づかず落下してしまう。

「ニシシ〜!!引っかかったのだ〜!!」

声がした方向を見上げると、そこにはウインディの姿が。

「オマエのせいで最近ヒシアマがうるさいのだ〜!!ガブ〜〜ッッッ!!」

飛び降りながら頭にかじりついてくる。

「あいたたたたたたたた〜っっ!?」

「ほはぁ〜っ!!はひはへふほはぁ〜っ!!」

「ゴメン何言ってるか分かんない〜っっっ!!」

そう言うとウインディは地面に着地する。

「プハッ…ここから出たくば、ウインディちゃんのかんゆーはあきらめるのだ〜っ!!」

ウインディはフシャーッと威嚇するようにそう言う。

「嫌だねっ!!」

「なんでなのだ!!デビューしたがってるウマ娘なら他にもいるのだ!!ソイツらならすぐにオッケー出すのだ〜!!」

「いいや!オレが惚れ込んだのは他ならぬシンコウウインディ、キミだけだ!!誰でも良いって訳じゃない!!」

そりゃあ、担当ウマ娘を決めかねて資料を前にうんうん唸ってたヤツに言われても説得力は無いだろう。

しかし今の言葉に嘘偽りはない。

「のだっ!?」

驚きの表情を浮かべるウインディ。

「なんならお試し契約からでもいい!!キミが本心から嫌だと言うなら無理強いもしないし、望むなら今後出来る限りキミに近寄ることもしない!!」

実際、ウインディから勧誘を断る旨の言葉はあっても、明確な拒絶の言葉はこれまで受けてはいなかった。

理由を聞いても答えを聞く前に逃げ出してしまっていたし。

「うぅ〜…」

「だから、オレにチャンスをくれないか!?」

正直都合のいい話だとは思う。ムシのいい勝手な話だとも。

しかし、ここでそのチャンスすら掴めなかったらきっとオレはこの先ずっと後悔し続ける。

「……………」

「……………」

しばしの沈黙。それを破ったのはウインディの方だった。

「…わかったのだ」

「ホントか!?」

ウインディから了承の言葉を受けオレは嬉しくなる。

「ただし!!ウインディちゃんがダメって言ったらその時点でけーやくはかいしょーなのだ!!」

ビシッとこっちを指差して言うウインディ。可愛い。

「おう!!それでいい!!」

もちろんオレも即答した。

「それで…なのだ」

「うん?」

なにやら真剣めいた表情を浮かべるウインディ。

「このじょーきょー、どうしようなのだ…」

そう言われ、途方に暮れるウインディに倣って上を見る。

結構な高さだ。たぶん深さ二メートルちょいはあるかなぁ…。

幅は…まあ太ってもない限り大の大人が四、五人は入れそうなくらいか。

「随分と気合を入れて掘ったなぁ」

いやほんと、この深さと大きさは結構前から用意してないとできないぞコレ。

人通りのほとんどないこんな場所だからできたことか。

「のだぁ〜…」

すっかり意気消沈するウインディ。

まさか自分も飛び込むことは想定していなかったようだ。可愛い。

まぁ出るアテはあるんだが。

「ど…どうやって出るのだ…?」

さっきとは打って変わって不安そうな表情を浮かべる。

辺りも徐々に暗くなってきているし、気持ち的にも沈んでいるんだろう。

「ヘーキヘーキ。多分そろそろ…」

「おーい。大丈夫かい?」

ヒシアマゾンの声と足音が近付いて来る。

途端にウインディがビクッと反応する。可愛い。

「お〜い!!こっちだ〜!!」

オレの声が聞こえたのだろう。その足取りは確かなものとしてこちらに向かってくる。

「お〜いたいた。まぁこんな事だろうと思ったよ」

落とし穴を発見したヒシアマゾンが懐中電灯を片手にひょこっと顔を覗かせる。

なお、若干呆れた表情をしてもいた。

「ちょっと待ってておくれよ〜…。よいしょっと!!」

「よーし。シンコウウインディ、オレに捕まれ!!」

「わ、わかったのだ…」

彼女が縄梯子を降ろしてくれて、それを使って何とか脱出するのに成功したオレとウインディ。

「で、契約は成功したのかい?」

「なんとかね。まぁまだ仮だけどな」

「のだ〜」

「そうかい、そりゃあよかった」

「ありがとうな」

色々と気を回してくれた彼女には頭が上がらないなぁ。

「それで…だ」

「うん?」

「のだ?」

オレとウインディは揃って首を傾げる。

「アンタら、ちゃんとその穴埋めときなよ」

笑顔でそう言うとヒシアマゾンは二本のスコップを置いて帰って行ってしまった。

「………」

「………」

何やら気まずい空気が流れる。

オレとウインディは目が合い、そしてオレが一言。

「やろうか?」

「のだ〜…」

その後ウインディは選抜レースに参加し、無事オレはトレーナー人生初の担当ウマ娘を持つに至った訳だ。

 

…………。

 

チュンチュン…。

チチチチ……。

 

う〜ん。何やら懐かしい夢を見たような気がする。

 

よ〜し。

 

今日はウインディをいつもの三倍くらい構うとしようかな!!

 

 

のだぁ〜!!

 

ジタバタジタバタ

 

うぅ〜、ヤなゆめをみたのだぁ〜。

 

トレーナーにきらわれないのだ〜?

 




これからも読んでもらえると嬉しいです。
(*´ω`*)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大丈夫大丈夫…ウインディちゃんは次のピックアップできっとくるから…(自己暗示)

アイロンビーズ……。
もみあげのとこと口元がうまくできない…orz
カラーバリエーションェ……。


すごく今更なことにはなるが、ウチの可愛いウインディには噛みつき癖がある。

しかし、そんな困った癖であっても慣れてしまえば日常のひとつでしかない。

自慢になるかは分からないが中央トレセン学園の、いやこの世界のどこを探してもオレほどウインディに噛まれたトレーナーもいないだろう。

ご機嫌な時の甘噛みにはじまり、怒った時の「ガブー!!」も貰った回数は一度や二度では無い。

それだけウインディと噛みつきは切っても切れないものだ。

それはシンボリルドルフのジョークやアグネスタキオンの研究、ゴールドシップの奇行、或いは夏場のアイス、納豆のねぎに相当すると言えるだろう。

そんな可愛いすぎるかみつきウインディちゃんだが……。

「トレーナー!ウインディちゃんはしばらく、かみつくのをガマンしてみるのだ〜!!」

と、意を決した表情でそう言われて狼狽えない訳がない。

「どうしたウインディ〜!?」

オレはガタッと椅子から立ち上がりウインディを凝視する。

なにか変なものでも食べたのだろうか?

嫌なことでもあったか?そうでなくとも他に何か重大な事件が起こってしまったのか〜?

「エヘヘ〜、実は……」

 

………………………………………

 

トレセン学園食堂

 

「ねぇ〜?アンタ最近どうしたのさ〜?」

「うん…ホントにどうしたの?スイーツ好きっていつも言ってたじゃない?」

「ダイエットなのだ?」

「あ〜、まぁそんなカンジ?実は昨日トレーナーに少し食べすぎ〜って注意受けてさ〜、ちょっとガマン中なんだ〜…」

「なるほどねぇ〜…」

「ガマンするとなにかあるのだ〜?」

「うん。一応ご褒美は用意してくれてるみたいで…」

「ごほーび?」

「そ、ちょっと奮発して贅沢スイーツ食べさせてくれるって話」

「は〜、なるほどねぇ」

「そうだったんだぁ〜。ごめんね。そうとは知らず私たちだけデザート頼んじゃって…」

「いいっていいって、ウチが言ってなかったんだし…」

「ごほーび…ごほーび…ひらめいたのだ〜!!」

 

………………………………

 

「ってことがあったのだ〜」

ほうほう。

確かにウインディはオレがカロリー管理しているため、隠れて食べたりでもしていない限り問題はない。

だから食べ物関係では無く、自分のアイデンティティをガマンしようと、そういうわけか…。

「だからごほーび用意しておいてほしいのだ〜!!」

あぁ〜、なるほど。

ご褒美という言葉の魅力に、自分も好きなことをら我慢しようと。そういうわけかぁ。えらい。

「それで、ウインディはご褒美に何が欲しいんだ?」

「う〜ん…なんでもいいのだ〜♪」

ウインディはちょっと考える素振りを見せたくらいで、特に考えていなかったらしい。可愛い。

なんでもいいのかぁ〜。

………よし。

「そっかそっか〜、それじゃあ考えとくなぁ〜」

そう言いつつ、オレはウインディをナデナデする。

「わーいなのだ〜♪」

うん?そう言えば……。

「我慢する期間はどのくらいにする予定なんだ?」

「う〜ん……とりあえず一週間頑張ってみるのだ〜!!」

一週間…まぁ無理なく我慢できるギリギリのラインかなぁ。

「分かったよ」

そうして、ウインディのかみつき我慢がはじまったのだが……。

一日目

「がんばるのだ〜!!」

「応援してるからなぁ〜」

「まっかせるのだ〜♪」

三日目

「ウズウズ…」

「大丈夫か〜?やめたくなったらいつでも言っていいからな〜?」

「ダイジョブなのだ!!まだやれるのだ!!」

ならいいけど……。

五日目

「ウズウズ、ウズウズ〜、うぅ〜…ガマンガマン〜なのだ〜…」

「無理はしないでくれなぁ〜」

幸い、トレーニング中は問題ないと言うか、むしろトレーニングで発散していると言うか…。心配だなぁ。

六日目

「ガブ〜〜〜ッッッッ!!」

「あ痛った〜っ!!だよねぇ〜!!」

そして、ギリギリのところでガマン期間が終了したのだった……。

「うぅ〜っ、惜しかったのだぁ〜……」

「まぁまぁ、あれ以上我慢してたら流石にトレーニングにも響きそうだったし」

「ごほーびほしかったのだぁ〜〜!!」

心底悔しそうにするウインディ。

如何な反骨精神の塊であっても、いやだからこそ自分で決めたことが出来なかったという悔しさはひとしおなのだろう。

なんならちょっと目元に涙が滲んでいる。

……仕方ない。『彼女』には申し訳ないが、目の前のウインディに悲しませ続けるのも忍びない。

「それじゃあご褒美じゃないけど、残念賞ってことで……」

オレは机の引き出しから紙袋を取り出す。

「はいよ、ウインディ」

「ふぇ?いいのだ〜?」

「いいっていいって、さっきも言ったろ?残念賞だよ」

ホントはご褒美に用意したんだが、まぁいいだろ。

「開けて良いのだ〜?」

「もちろんいいぞ〜」

ガサガサ……。

「のだっ?これは…」

「おう。特注品のダート蹄鉄だ」

学園の消耗品や、普段シューズに取り付けるような代物とはちょっと違う。

というか、コレは額縁に入れてあるもの。

つまりは使用を目的とはしていない。

というか、本来の役目はもう終えている。

「オレのお守りさ。きっとウインディのことも守ってくれるだろ」

子供の頃に、当時の現役ダートウマ娘からもらったお宝だ。

消耗しすぎてもう使えないからってな。

結局彼女はG1で勝てなかったが、それでもオレには憧れだった。

あの出会いがなければ、オレとウインディがこうして出会うことも無かっただろう。

そう考えると人生ってのは奇妙なもんだよなぁ。

ちなみにウインディにあげたのは右の方。オレの手元に残ったのが左だからオレとウインディでその左右を分け合う感じだな。

「い、いいのだ?」

「もちろんだともさ。むしろウインディに持っていて欲しい」

「エヘ〜♪だいじにするのだ〜♪」

そう言うと、ウインディはいつものように笑うのだった。

 

 

エヘー。

 

だいじなものをもらっちゃったのだ〜♪

 

ところでだれのなのだ〜?

 

えっと……。

 

カリブソング…なのだ〜?




なお、後の話でカリブソング姉さんは出てこないよ!!
書ければおもしろそうだけどねぇ。
書ければ…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

美味しい苺大福がたべたい。

みんなでウインディちゃんが来るよう祈るんだ!!
もちろん筆者は毎日してるぞ!!


 

さて、ウインディのトレーニングもこれからが佳境と言ったところ。

クラシック級こそはウマ娘の伸び代の最も重要なファクターと言える。

本番のレースも近づいており、こう言う時期こそ更に内容を詰めたより本格的な内容のトレーニングをやりたいところだ。

「ふ〜む。こんなものかなぁ…」

オレは出来上がったトレーニング内容とにらめっこする。

ウインディのこれまでのトレーニング状況や、その結果のデータなどを鑑みるにこれくらいが妥当かなぁ…。

オレの思い上がりでなければ、ウインディは全幅の信頼を寄せてくれている様子だし責任重大だなぁ。

「しっかし、楽しいなぁ〜」

ウインディのためと思えば、こう言った仕事も苦ではなくなるのだから不思議だ。

教え子がこうやって少しずつ成長してくれるのはこの上なく嬉しいものなんだなぁ〜なんて、ガラにもなくしみじみ思う。

ドタドタドタドタドタドタ……。

「おっ、もうウインディがくる時間かあ…」

廊下から聞こえる足音が近づくたびに顔を上げる。

「トッレーナー!!ウインディちゃんが来たのだ〜♪」

そう言うウインディは、何やらフタ付きのお盆を手にしてトレーナー室に入って来た。

「ウインディ、どうした〜?」

「えっへん!!トレーナーにねぎらいの品を持ってきたのだ〜!!」

そう言うとウインディはコタツの上に手にしたお盆を乗せて、こちらを手招きしてくる。

それに従ってオレはコタツに入ることとした。

そろそろコレも片さないとなぁ…。

「それで、労いの品って一体なんなんだ?」

「ふっふっふ〜。じゃ〜んなのだ〜♪」

ウインディは不敵に笑うとしゃがみつつ勿体ぶるように蓋を開ける。可愛い。

「おぉ〜これは…」

それを見た途端、オレのテンションは鰻登りになった。

「なかなか買えない一日限定50個の苺大福じゃないか!!」

コレ好きなんだよなぁ〜。

もっちりとした麗しいピンクの皮にほろほろとした甘さ控えめの餡子と真っ赤に輝くイチゴの酸味が効いてしかも嫌味なく鼻に香りが抜ける。

他の和菓子も美味しいが、あそこの店はコレがブッチギリの一番人気なのだ。

「エヘ〜♪たまたま買えたからトレーナーと分けっこしたかったのだ〜」

「ウインディ…」

なんていい子だ…。

思わずジーンときてしまった。

「それと……」

「うん?」

ウインディがおもむろに今度は水筒を用意する。

「ジャーン!!お茶はウインディちゃんがいれてみたのだ〜♪」

そう言って、オレのコーヒー用マグカップに水筒から緑茶を注ぐ。

「はいなのだ♪」

「ありがとなぁ〜ウインディ〜」

そう言ってオレはウインディの頭をくしゃりと撫でる。

「エヘー♪いつもみたいによしよししてもいいのだ〜♪」

言って、ウインディは一緒にコタツに入ってくると、コツンと頭を差し出してくる。

「それじゃあ、よ〜しよしよしよしよしよしよしよし」

「のだ〜〜〜〜♪」

お言葉に甘えて、オレはウインディを撫でくりまわすこととした。

……そしてしばらくののち。

「それじゃあ、せっかく淹れてもらったお茶が冷める前に頂くな〜」

皿の上には苺大福が二個。

オレとウインディで仲良く一個ずつ分け合う形だろう。

「それじゃあ、ウインディちゃんも食べるのだ〜♪」

そう言ってニコニコしながら自分の苺大福にかぶりつくウインディ。可愛い。

「ここのな〜。オレのお気に入りなんだよ」

「のだ〜。ウインディちゃんも、クラスメイトが買ってくれたのを食べて好きになったのだ〜♪」

「そっかぁ〜」

いいなぁ〜。こうして誰かと好きなものを共有できるのって。

ましてそれがウチの可愛いウインディとだもんなぁ。ほっこりするよなぁ〜。

しないわけがないよなぁ〜。

こんな忙しない時期だが、いやこんな時期だからこそ休むべき時に休むのは本当に大事だ。

……オレが言えたことじゃないかも知れないが。

「トレーナー♪」

コタツでうつ伏せになりながら、こちらを見てそう言うウインディの表情はとてもリラックスしている。

「どうしたウインディ?」

「ウインディちゃんのスキとトレーナーのスキがいっしょでよかったのだ〜♪」

ウインディはエヘー♪と笑う。

「それと…これからもヨロシクって、それを伝えたかったのだ〜♪」

「お、それもクラスメイトちゃんに?」

「ソレはヒミツなのだ〜?」

そう言うウインディはイタズラっぽく、しかしほんの少し大人っぽかった。

 

 

気がする。

 

 

のだ〜♪

 

教えられた通りやってみたのだ〜♪

 

みすてりあす?だったのだ?ミリョク的だったのだ〜?

 

なんでため息をつくのだ〜!?




やべぇ、話が全然すすんでねえ!!

いつものことだな!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いやぁ〜、何度見てもウインディちゃんの造形は神がかってますよねぇ…。

隙なく、無駄なく、余すとこなく可愛いとかもはや天使の領域ですなぁ〜。
え?贔屓目だって?まっさかー。


ここはトレーナー寮の一室。

ついさっき、ウインディのいつものトレーニングを終えたところだ。

そして……。

「のだぁ〜♪」

このように、今まさにオレの部屋にそのウインディがいる。というかくつろいでる。

ウマ娘のプライベート空間は寮の相部屋があるはずだが、ウインディ曰く……。

「トレーナーの部屋でえねるぎーちゃーじなのだ〜!!」

とのこと。

「エネルギーってなんの?」と聞いても

「よく分かんないのだ〜♪」

と返される始末。そっかー分かんないなら仕方ないねー。

ちょうど同室の子も所用で外出中らしく、帰ってくる頃までここにいたいと言う。

「それじゃあウインディ、何かして遊ぶか?」

「のだ〜♪」

とは言っても、ゲーム機器の類はこの部屋には無い。

地味に電気代食うし。

……別にオレが弱いからではない。断じて無い。

あってもトランプやUN○といったカード系や、某人生双六ゲームがメインだ。

「この中ならどれがいい?」

とりあえず部屋にある遊べるものを集めてウインディの所に持っていく。

「じゃあコレがいいのだ〜♪」

「そっか〜、それじゃ準備するなぁ〜」

そう言ってウインディが選んだのは某双六ゲームだ。

「ウインディちゃんもお手伝いするのだ〜♪」

「お、助かるよ〜エライなぁ〜」

「エヘー♪」

そして車やらゲーム内貨幣やら、色々と専用の道具を揃えていざスタート。

先攻はルーレットを回して大きい順にした。ジャンケンでも良かったが、せっかくだしルーレットを活用したくなったからそうしただけだが。

今回はウインディが先攻だ。

「それじゃ〜、スタートなのだ〜〜!!」

先攻のウインディが勢いよくルーレットを回す。結果は……。

「わ〜い!さっそく10が出たのだ〜♪」

ウキウキで駒を進めるウインディ。可愛い。

「進んだ先のマスは……、おっ、石油王を助けた。2000万もらう…どんな状況だ?」

「わ〜い!さいさきがいいのだ〜♪」

「それじゃあ、今度はオレの番か」

「ふふん♪トレーナーかかってくるのだ〜!!」

早速いいマスに止まれたからか、ウインディは上機嫌だ。可愛い。

「出た目は…3か」

まぁ最初はこんなもんだろう。

「で、マスは…」

美容室でおまかせで頼んで失敗、4000円支払う。

「マジかぁ…」

「ドンマイなのだ〜♪」

オレはせっせと4000円を支払い、再びウインディのターン。

「じゃあ回すのだ〜♪」

「どうぞどうぞ〜」

出目は…5。マスは……

「早起きは三文の徳。5000円もらう…おぉ、よかったなぁ〜」

「のだ〜♪なでてもいいのだ〜」

「快調な滑り出しだなぁウインディ」

ナ〜デナデナデナデナデ…。

「たのしいのだ〜♪」

そして、この双六ゲームは順調に進んでいき……。

「おっ、宝くじで当選。出た目×100万円もらう…で、金額は600万円か」

「良かったのだ〜♪」

そして就職。

「とーぜん競争ウマ娘になるのだ〜♪」

「オレは…まぁ順当にトレーナーかなぁ」

時に失敗し……。

「のだ〜?レース中他のウマ娘の妨害、25万円支払うのだ〜!?」

「トレーニングの最中、気づかずに貴重な花を踏んづけてしまった。1000万の賠償…どんな花だよ?」

オレは何となく昔あったと言うチューリップバブルの話を思い出した。

時に成功し…。

「おっ、結婚か。お祝儀もらえるな」

「のだっ?トレーナー!!いっちゃやなのだ〜!!」

「いや、ゲームだからな?」

たま〜にウインディをなだめ……。

「レースで勝利。グッズが売れて2500万円ゲットなのだ〜♪」

「よかったなぁ〜」ナデナデ

そして………。

「かったのだ〜♪」

「いやぁ〜、お互い結構山あり谷ありだったなぁ〜」

ちなみにオレの方はと言うと、本当にそこそこである。

………反応に困る。

逆にウインディは上下の差がめちゃくちゃ激しかったが、蓋を開けてみれば彼女の大勝利。

コロコロと一喜一憂する様は本当に見ていて飽きなかった。

「さてと」

「のだ?」

結構熱中していたから気づかなかったが、窓の外を見るともう暗くなり始めている。

門限までは少し余裕があるが、取り敢えず帰る準備だけは済ませておいてもらう。

「エネルギーはチャージできたか?」

「エヘ〜♪ばっちりなのだ〜」

そうして、準備のできたウインディとしばらくわちゃわちゃしてから、時間になったので送り出すために上着を着る。

「それじゃ、寮まで送るぞ〜」

「わかったのだ〜♪」

ウインディも、のそのそと立ち上がる。

月明かりの下、美浦寮まで歩いて向かう間はちょっとした散歩気分だ。

「トレーナー、寒いから近くに行っていいのだ〜?」

やっぱりウインディは甘えん坊だなぁ。可愛い。

「うん。構わないぞ〜?」

そう答えるや、ウインディは手が触れるか触れないかくらいのところにスッと近づいて来る。可愛い。

「エヘー♪」

ウインディは不意に笑う。

「どうした?」

「トレーナーとお散歩楽しいのだ〜♪」

「そっか〜」

そう答えると、今度はウインディが聞いてくる。

「トレーナーはどうなのだ〜?」

「そりゃ、ウインディとの散歩がつまらないわけないだろ〜?」

「よかったのだ〜♪」

その後しばらく、オレとウインディは月夜の散歩を楽しんだのだった。

 

 

のだ〜♪

 

今日はトレーナーともりあがったのだ〜!!

 

たっぷりちゃーじしてもらったのだ〜♪

 

 




フィギュア化とかしても…、ええんやで?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

なんでチヨノオーなんだよぉぉぉぉ……(うめくような声)。

桜にはまだ早いですよ……?


「の〜だっ♪の〜だっ♪」

ウインディは今日も絶好調。

どうやら、先日言っていたエネルギーのチャージとやらは本当にできていたらしい。う〜む。不思議だ。

ウマ娘特有のものなのか?トレーナーとして非常に興味深いし、大いに気になるが、今はトレーニングだ。

とは言っても、今日のところはすることと言えば、あと仕上げくらいなものだが。

「ウインディ〜〜!!あと三周ほど流したら上がっていいからな〜〜!!」

「分かったのだ〜!!」

オレが大声で指示を出すと、即座に返事が返って来る。

うむ。元気だなぁ〜。

ジュニア級の頃ならば間違いなくとっくにへばっていただろう内容のトレーニングもニコニコと笑いつつこなすとは、本当にウインディは底が知れないな。

うんうん頼もしい限りだ。

「終わったのだ〜!!」

ぱたぱたと駆け寄りそう言うウインディ。可愛い。

「それじゃ汗を流して、トレーナー室でちょっと休憩したら買い出しに行くか」

「りょーかいなのだ〜!!」

担当ウマ娘とのコミュニケーションは大切だ。

そして、プライベートも同じくらいに重要だ。

このバランスは、十人十色。

どれが正解っていうのは無い。

それは以前、同期と話していた通りだ。

「ウインディって、なんだかほっとけないんだよなぁ〜…」

別に頼りないってことじゃ無く、むしろ色々と頼りにはなる子だ。

超絶かまってちゃんってだけで、そこだってオレにしてみれば可愛いところでしかないが。

……オレがかまいたがりってのもあるんだろうけど。

「なになに?ウインディちゃんがほっとけないって、やっぱ気になってるんですか〜?コノコノ〜♪」

「おぉっ!?クラスメイトちゃん?」

後ろから小突かれて、振り返ってみるとそこにはウインディのクラスメイトのひとりがいた。

「こらこら、あんまり大人をからかわないの」

オレが呆れつつたしなめる。

年頃の健全な女の子だし、そう言った話題が好きなのはわかる。

ましてここは女子校。

そう言った関係性に憧れを抱く子は少なからずいるんだろう。

そして毎年のようにトレーナーが犠牲(意味深)になるのだ。

まぁ、これはウマ娘の本能的な部分でもあるようなので、一概に否定できるものでも無い。

それに無差別に暴走するわけではない(計画的?)ため、被害は対象者のみだ。

しかも、その後は結果的に幸せそうにしているのだからわからんもんだな。

「フフッ♪まぁどう転んでも私たちはお二人を応援しますよ〜?」

「はいはい。ありがと」

「ぶ〜。テキトーに聞き流してませんか〜?」

そりゃねぇ……。

恋バナ(ガチ)だもんねぇ。

少なくとも、オレには甘すぎるからなぁ…。

「ま、どうあれお邪魔する気はないんで。それじゃ〜☆」

言うだけ言って行ってしまった。

………何がしたかったんだ?

ウインディの友人として、その担当トレーナーに喝を入れたり応援がしたかったとかか?

或いは緊張をほぐしたかった?

「トレーナー!!一緒にきゅーけーするのだ〜♪」

考え込んでいると、今度は反対側…というか、もともとオレが向いていた方向からウインディがやって来た。

「そうだなぁ〜。そうしよっか〜。よ〜しよしよし」

すこーし弱めに頭を撫で回す。

「くすぐったいのだ〜♪」

そう言いつつも、相変わらず手は払いのけない。可愛い。

「そうだなぁ。それじゃ一緒にトレーナー室まで行こうか」

「荷物持ちはウインディちゃんにまっかせるのだ〜♪」

力こぶを作るように腕に力を込めるウインディ。可愛い。

「うん。頼りにしてるよウインディ」

オレはそう答える。

「それじゃ、トレーナー」

そう言うと、ウインディは手を差し出して来る。

「どした?ウインディ?」

「のだぁ〜♪手を繋ぎたいのだ♪」

……可愛すぎかよ。

ちょっとテレながらそう言うのが余計に可愛さを増している。

百点満点中百万点でも足りないんじゃなかろうか(トレバカ)。

「もちろんいいぞ〜」

これを振り払うなんて選択があろうか。いや無い(反語)。

「あったかいのだぁ…」

「そうか?そりゃあ良かった」

ずっと外にいたし、冷たい手で不快にならなかったんならよかったよ。

その後、オレとウインディは買い出しを済ませ、

 

思い切って行動してみたのだ〜!!

 

なにって?

 

ふふ〜ん。手をつないだのだ〜♪

 

エヘ〜♪

 

それだけ?ってそれいがいなにがあるのだ?




つ…次があるから…(震え声)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オレ、ウインディちゃんが実装されたらウインディちゃん愛好サークルをつくるんだ……(死亡フラグ)。

頼む!!次!!次来てくれウインディちゃん!!


「雨かぁ…」

オレは憂鬱な気分になりながら仕事の手を止め、ふと窓の外を見る。

この時期の雨は冷たいからなぁ…。

予報では曇りのはずが…。

うっかり傘をトレーナー寮に忘れて来たのが今更ながら悔やまれる。

「せめて折り畳みくらい常備しとくべきだったかなぁ…」

そんなことを呟いていると

「とれぇなぁ〜〜…」

そう言ってトレーナー室にやってきたのはご存知ウチのウインディことシンコウウインディ。

しかし、オレはその姿を見てギョッとした。

と言うのも、やって来たウインディはめっちゃ泥んこだったからだ。

「ウインディ〜!?いったいなにがあったんだ〜!?」

オレはウインディが心配になって立ち上がり、駆け寄る。

「うぅ〜…ツイてないのだぁ〜…」

「一体なにがあったんだ?」

オレは気になり質問する。

ウインディはダートウマ娘だ。

だから泥んこになることそれ自体は珍しく無い。

が、今はトレーニング後では無い。

むしろこれからトレーニングをしようと言う頃合いだ。

「水たまりで遊んでたらころんじゃったのだぁ〜…」

なるほど〜。

ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷらんらんらんと遊んでたらこけちゃったのか。

「あぁ〜、それはホントについてないなぁ」

オレは納得すると、取り敢えずトレーニング用のタオルを持って来てウインディの髪の毛やウマ耳、それとしっぽをふくことに。

それ以外の場所はウインディ自身にふいてもらった。

「ふぅ…よかった。ひとまずはこれで大丈夫だろ。とりあえずシャワー浴びて来てな〜」

「のだ〜…でもトレーニング…」

自分の不注意を悔いているのか、そのままトレーニングをはじめようとするウインディ。

「ウインディが体調を崩すことの方が問題だよ。ちゃんと汚れを落とすのと、ゆっくり温まってな。トレーニングはその分ちゃんと調整するから」

気落ちするウインディにオレはできるだけ優しく声をかける。

「トレーナー…」

「どした?ウインディ?」

「シャワー室の前で待っててもらえるのだ?」

「いや、それは…」

テンションがマックスに近い時、そして気落ちしている時のウインディは本当に甘えたがりになる。

まぁ、そんなところも可愛いんだが。

「お願いなのだぁ〜…」ウルウル

「わかった!!なんとかしよう!!」

ちなみにシャワー室は教室棟の方にあり、そのため生徒の往来も多い。

オレは着替えを持ったウインディに手を引かれつつ、そこに向かう。

「ぜったいに待ってるのだ!ぜったいなのだ!」

必死にそう言うウインディ。

「うん。大丈夫大丈夫。いなくなったりしないからなぁ〜」ナデナデ

「エヘ、よかったのだ〜♪」

欲しかった答えがもらえたからか、ウインディは安心した様子でシャワー室に入って行った。

「う〜ん。どうしたもんか…」

外にある更衣室前とは違い、ここは室内の廊下なため備え付けのベンチの類はない。

取り敢えず、覗き目的と思われないようにシャワー室の扉に背中を向けて窓の外を向いて、今日のトレーニングの調整を行う。

ヘンな噂には極力気をつけないとな。

「今日は負けないからね〜!!」

「それはこっちのセリフよ〜!!」

みんな、トレーニングを始める時間だからか、聞こえて来るセリフからも気合の入った子が多いのが分かる。

いいことだ。

「それでトレーナーが〜…」

「えぇ〜?いいなぁ〜」

中にはそんな甘酸っぱい言葉も聞こえて来る。

「今度トレーナーさんをお父様とお母様に紹介しますの」

「まぁまぁ、ではわたくしもあちらへご挨拶に…」

聞こえな〜い。

聞こえな〜い。

知り合いの担当らしきウマ娘(約二名)から不穏な言葉が聞こえてきたけど聞こえな〜い。

え?言葉が矛盾してるって?知らんな。

オレは取り敢えず携帯で簡単にトレーニング内容の変更をおこなったり、ライバル達の現状などのデータと睨めっこしていたため、時間を潰すのはそれほど苦にはならなかった。

やがてウインディが扉を開けて出て来る。

もちろんうっかりで誤解を招かないために開いた瞬間は見ていない。

「お待たせなのだ〜」

扉の閉まる音と、ウインディの声が聞こえた瞬間、オレは振り返る。

まぁ後者は単純に他の子と間違えないためだが。

「いやいや、災難だったな。ゆっくりできたか?」

「のだぁ〜♪あったまったのだ♪」

「それはよかったよ」

オレはそのままウインディと一緒に廊下を歩く。

「トレーナー」

「うん?どうしたウインディ?」

ウインディに話しかけられ、オレは足を止める。

「お風呂上がりのアイスが食べたいのだ〜♪」

「そっかそっか〜。じゃあ一個だけな〜?」

「りょーかいなのだ〜♪」

「それと、その服は面倒くさがらずにちゃんと洗濯に出すんだぞ〜?」

泥んこまみれでクサい服を着て困るのはウインディ自身だしな。

それに雑菌の繁殖的な意味でもほっとくのはよろしくない。

「だいじょーぶなのだ!ちゃんとだしとくのだ〜!!」

「おぉ、なら安心だな。」

こうやって元気いっぱいに言っている時は本当のことを言っている時だ。

すっかり元気になったようで何より。

「トレーナー♪」

「うん?どうしたんだ〜ウインディ?」

「エヘ〜♪トレーニングが終わったら、いっしょにてるてる坊主つくるのだ〜?」

「おぉ〜。それはいいアイデアだなぁ〜」

「おっきいのつくるのと、ちっちゃいのをい〜っぱいつくるの、どっちがいいのだ〜?」

「そうだなぁ…それじゃあ…」

まったく。

今からトレーニング後が楽しみだ。

 

 

ふっふ〜ん♪

 

けっこーな力作ができたのだ〜♪

 

コレなら明日はゼッタイ晴れるのだ〜♪

 

エヘー♪




そう言えば、ゲームコーナーで競走馬のぬいぐるみがちょこちょこ見られるようになりましたねぇ。

見た限りシンコウウインディはいませんけど……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あっ、ウィンディちゃんが勝負を仕掛けて来た!!

こちとら既にマス○ーボール(ガチャ石天井分)は用意できてんだよ……。


ここはいつものトレセン学園のトレーナー室。

今は通常の授業も終わり、トレーニング前の準備時間だ。

そのためオレも、トレーニングの準備をしていたんだが、その最中突然ウチのウインディがやって来た。

まぁそれ自体は全然構わないし、なんならこう言うのもいつもの事なんだが……。

「う〜む」

ここで何やら珍妙なことが起こっている。と言うのも………。

「むむむ〜っ!!」

グイ〜っ!グイ〜っ!

「ぐいぐいぃ〜っ!なのだぁ〜〜っ!!」

ウチの可愛いウインディが、なぜかオレの腕を引っ張っているのだ。

もちろん、ウインディなりに加減してくれているためあくまで痛くない程度でだが。

「あの〜ウインディ、いったいどうしたんだ?」

なにか無意識にウインディの機嫌を損ねることをしてしまったんだろうか?

かまってちゃんモードにしたって、こうやって腕をやたらと引っ張って来るようなことはあまり無かった。

オレはそのことが気になり聞くと、ウインディはピタッと動きをやめて説明をはじめる。

なお、手は掴んだままだ。

 

「のだ〜…実は今日……」

 

………………………………

 

「ウインディちゃんはさ〜、トレーナーさんにもっとぐいぐい行った方がいいんじゃない?」

「そ、そうかなぁ?なんだかんだで、このままでも順調に結構いい感じだと思うけど……」

「甘い甘い!!そんなんじゃー、勝てる勝負も勝てないよ〜?」

「ふぇ?しょーぶなのだ?」

「そー。アタシらにとってのホントに大事な勝負にね〜……………」

 

………………………………

 

「ってことがあったのだ〜!!」

「そっかぁ〜……」

う〜む。どう言うことだ?

「だからしょーぶなのだぁ〜〜!!」

グイッ、グイイイイ〜〜ッ!!

心なしか、腕を引っ張る力が増した気がする。

それでも痛くはない当たり、ウインディは優しい子だなぁ〜。

しかし…ふーむ。勝負かぁ〜……。

確かにレースで勝利を引き寄せるためには多少強引なくらいが丁度いい…のか?

とりあえず、オレは少々かかり気味なウインディをなだめることにする。

「まぁまぁ、ウインディ。やる気があるのはいいことだけど、気を張りすぎてても仕方ないぞ〜?」

リラックスすべき時と力む時、そのメリハリはとても大事だ。

特にスポーツなんかでそれは顕著だ。

野球やテニスの選手はボールを打つ瞬間にバットやラケットを握る手に力を込める。

これが出鱈目だとバットやラケットは弾き飛ばされて、最悪怪我人も出てしまうだろう。

そして、それは気持ちの上でも同じことだ。

「ううっ…でもなのだ〜…」

ウインディはウマ耳を垂らして、不安げに言う。

「大丈夫大丈夫。心配しなくてもウインディは強いし、これからだって絶対に強くなるよ。他でもないキミの担当トレーナーであるオレが保証するって」

それは、オレにとって紛れもない本心だ。

「でも…」

ふ〜む。まだ心配事があるのかぁ…。

「大丈夫だって〜。そんなに不安なら〜……ほれ、よ〜しよしよしよ〜しよしよしよ〜し」

気持ちを落ち着けるためにウインディの頭を撫で回す。

「ふぁ〜…のだぁ〜♪」

「よ〜しよしよしよし…」

「エヘー♪トレーナーがそう言うなら信じてみるのだぁ〜♪」

おお〜、ウインディすっかりご機嫌になったなぁ〜。可愛い。

思ったよりも効果覿面で、なんならちょっとオレの方が面食らったくらいだ。

まぁ、ウインディの心配というか、仲のいいクラスメイトちゃんに言われたことが気になるのは分からないでもないが、もうちょっとウインディにはウインディ自身を信じてあげて欲しいなぁ〜。

まぁ、そう言うところも可愛いんだけども。

どんどんと成長し、変わっていくウインディもまた可愛い。

何より色々と気になるお年頃なんだろうなぁ〜………。

そんなことを思いつつ、ふと、壁にかけられた時計を見やる。

ウインディも調子が戻ったようだし、ちょうど良い時間だな。

「さて、それじゃあ着替えてトレーニングをはじめようか」

「えっへん!!今日のウインディちゃんはひとあじ違うのだぁ〜♪」

その言葉とほぼ同時にウインディはピョインと立ち上がり、オレの腕から手を離す。

「おぉ〜!!そりゃあ楽しみだねぇ〜!!」

「ふふ〜ん♪見逃したらすねちゃうのだ〜!!」

「大丈夫だって。ウインディから目を離したりはしないよ」

「ならいいのだ〜♪」

その言葉の通り、今日のウインディの走りはいつもよりも冴え渡っていたのだった。

グイグイ…恐るべし……。

 

 

のだぁ〜♪

 

アドバイスどーり、グイグイやってみたのだ〜♪

 

のだ?どうなったかなのだ〜?

 

ふふ〜ん。それはヒミツなのだ〜♪

 

エヘ〜♪




その分キャラはそんなにいないんですがね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

久々にガ○プラつくってみたよ!!

いやぁ〜、最近のってすごいですねぇ〜。


「頑張れ〜!ウインディ〜!!」

「はぁ…ふぅ…ぬぬぬ〜っ!!まだまだイケるのだぁ〜〜〜っ!!」

ダダダダダダダダダダ……。

ここはトレセン学園に程近い神社。

毎年初詣には参拝客で活気に溢れる人気スポットで、普段も一般の参拝客がそれなり以上に来る知る人ぞ知る名所だ。

今回のトレーニングではそこの階段や、山の坂を使わせてもらっている。

これはトレーニング効果が期待できるのはもちろん、いつもいつも同じ風景ばかりでは飽きるかもと、ウチのウインディに気分を一新してもらう意味もある。

「すみません。場所をお借りさせていただいて…」

オレはすぐそばでトレーニングを見守る神主さん(三十代半ば既婚者)に謝意を告げる。

「いえいえ、トレセン学園さんには色々とお世話になっていますから…」

ニコニコと笑顔で答えてくれる神主さん。良い人だなぁ…。

オレはそんな神主さんに軽く会釈をすると、腕時計に目を落として時間の確認をする。よしよし。予定通り順調にトレーニングが進んでるな。

そして、時計から目を上げると、再び目を階段の下のウインディに声をかける。

「ウインディ〜〜!!あと一往復したら休憩入れるからなぁ〜〜!!」

「はあ…ふぅ…わかったのだぁ〜!!」

うんうん。いい返事が返って来たなぁ。

そして、一往復を終えて、ウインディが敷物の上にそのまま大の字になる。

「はぁ〜〜!!つかれたのだぁ〜〜!!」

「お疲れ。お腹を壊さないようにゆっくり飲むんだぞ〜?」

オレはそう言ってスポーツドリンクを取り出す。

「ありがとなのだ〜…コクコク…」

ウインディはムクリと起き上がってそれを受け取り、飲みはじめる。

「良い感じだぞ〜?ウインディ〜!!」

「エヘ〜♪うれしいのだ〜」

「ふふっ…」

不意に、零れたのだろう笑い声の方を見ると、先程の神主さんがニコニコと微笑んでいた。

「?どうかしましたか?」

「あぁ、お気を悪くしたのならすみません。ただ、随分と仲がよろしいと思いましてね」

「ふふん!そんなのトーゼンなのだ〜!!」

その言葉に気を良くしたのか、ウインディは腰に手を当て胸を張る。可愛い。

「と、仰いますと?」

「ウインディちゃんとトレーナーはムテキだからなのだ〜!!」

「ほうほう。なるほど」

なるほどなるほどと頷く神主さん。

う〜む。何がそこまで腑に落ちたのだろうか。

「よろしければ、お帰りの際に御守りを差し上げましょう。霊験あらたかな神様のご加護もありますし、きっとご利益もありますよ」

ご利益かぁ……。

「そう言えば、ここのご利益は…」

「無病息災の健康祈願に縁結びですね」

うん。そのおかげか毎年お守り売り場の一角が修羅場と化すんだよなぁ…。

「のだ〜?えんむすびってなんなのだ〜?」

ウインディが質問を投げかける。普段聞きなれない言葉にどうやら興味を示したようだ。

「そうですね。縁結びとは文字通り人と人との縁を結ぶことを差します。良い師やお友達、尊敬できる人と出会えますようにと、そう祈ることですね。もっとも、神様はあくまで縁を結ぶだけで、そこから先はご本人様の努力次第と言ったところですが…」

神主さんが丁寧に説明してくれている。さすが本職。

「ん〜……なるほどなのだ〜!!」

「それと…」

「それなら、ウインディちゃんはだいじょーぶなのだ!!」

付け加えて何かを言おうとした神主さんに、ウインディが元気に言う。

「ウインディちゃんにはトレーナーもクラスメイトの子達もいるのだ〜!!」

いい笑顔でそう言うウインディ。嬉しいなぁ〜。それと可愛い。

「おや、そうですか。これはお節介をしてしまいましたかね」

「いえ、お気持ちは十分に嬉しいです。ありがとうございます」

オレは神主さんに再び軽く会釈をして謝意を示す。

それから余裕を持って十五分ほどの休憩を挟むことにした。

ウインディもすっかり回復したようで、早くトレーニングの続きがしたくてウズウズしているようだ。

「さてと、それじゃウインディ、続きをやろうか?」

「よ〜し!かんばるのだ〜♪」

「それじゃあまた階段を二十往復したら坂の登り降りトレーニングしたらトレセン学園に帰ろうか?」

「ばっちこ〜い!!なのだ〜!!」

言うと、ウインディは再び階段を降り始めた。

「よい気合いがのっていますねぇ」

「神主さんが快く場所を貸して下さったおかげですよ」

オレがそう言うと神主さんは「いやぁ〜…」とくすぐったそうにしている。

「頑張ってください。微力ですが、私どもも応援させていただきますね」

「ええ!!ウチのウインディが活躍する様を是非、ご覧になってください!!」

そう言って、オレはウインディに視線を向ける。

さて、後はウインディの様子を見つつ、ペース配分なんかを注視するくらいかなぁ。

その後、日が暮れ周囲が見えなくなった頃に、トレーニングは切り上げにして、オレはウインディといっしょに車に乗って学園に帰ったのだった。

 

 

のっだ〜のだ〜♪

 

トレーナーとドライブなのだ〜♪

 

神社のトレーニングも楽しいのだなぁ〜♪




因みに作ったのはバ○バトスです。

けっこう好きなんですよねー。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いやぁ〜、とある可能性に戦慄したねぇ〜。バレンタインキャラなんて…、まさかそれでウインディちゃんの枠が潰されるなんて…あるわけ無い…よね?(震え声)

いやまさかね!!


う〜ん。遅くなってしまった。

まさかトレーニング後のちょっとした買い出しのついでに寄った店でけっこう長い行列に並ぶハメになるとは…。

なんか新しいゲーム?だか何だかの発売日だったかららしいが、それにしても異様な長さだったなぁ。

おかげで目的のものは一通り買えたが、こんなことならウインディも誘えば良かったか?

いやしかし、こないだから負荷を増やしたトレーニングで既に疲れているウインディに荷物持ちをしてくれなんてさすがに頼めないしなぁ…。

今日は一緒に外で夕飯を食べる約束をしていただけに申し訳なくなってくる。

同級生ちゃん達や同室の子もいるし、寂しがってなければいいんだが……。

トボトボと歩いているとやがて、トレセン学園の門が視界に入る。

「ん?」

トレセン学園の門の前に見慣れた人影がいる。

「ウインディ〜!!」

オレはその人影が誰かわかるや、地面に荷物の入った袋を置いて手を振ってウインディを呼ぶ。

「のだっ!!トレーナー!!」

オレを見つけるなり笑顔で走ってくるウインディ。可愛い。

そのまま跳躍したかと思うと、その手足でもってがっしりと飛びついて来た。

ちなみに今回はかまってちゃんモードの時の甘噛みもセットだ。

思った以上に心配かけてしまったみたいだなぁ。

「トレーナー!!おそかったのだ〜!!あむあむ…」

う〜ん、くすぐったい。そして可愛い。

ヨダレはふかなきゃだが。まあ今はそんなことはどうでもいい。

「ごめんなぁ。待たせちゃったなぁ。帰りについでと思って寄った店でけっこうな行列ができててなぁ…」

まずはウインディに謝るのが先決。

「エヘ〜♪それならいいのだ〜」

そう言うと、ウインディはゆっくりと地面に降りる。

「ご飯はもう食べたのか?」

オレは気になったことを尋ねる。

もう食べてるなら、後でそのメニューを聞いてメモをする必要があるのと、あとは単純にお腹を空かせていないかの確認だ。

「まだなのだ〜……」

首を横に振り、そう言うウインディ。

そういい終わるや、くぅと小さく腹の虫が鳴りなんだかめちゃくちゃ申し訳なくなって来る。

ず〜っと待っててくれたんだなぁ。健気すぎる……。

しかし…う〜ん。困ったなぁ〜。

学生寮の門限の都合上、時間的に食堂はもうやっていない。

厨房のスタッフさんはもう帰っているだろうしなぁ。

ヒシアマゾンにもこんな時間に甘えるのは流石に気がひけるし、そもそも彼女自身は既にクラシックシリーズを終えているとは言っても寮長である関係上かなり多忙だ。

かくなる上は…。

「それじゃ、ウインディさえ良ければこれからトレーナー寮に来るか?」

それなら外出届を出さずとも、学園の敷地内だしなんとかなるか。

先にヒシアマゾンに事情を話すことにはなるだろうが。

まぁ今回は明らかにオレの落ち度だし、何よりウインディのためだ。

「いいのだ〜!?」

提案した途端、ウインディの顔がぱぁっと明るくなる。

「警備員さんにも事情は話しておくし、なによりちょっと材料を買いすぎちゃってな…」

いやぁ、野菜とか日用品って安いからっていっぱい買うもんじゃないね。

その重量も帰りが遅れた一因なんだが。

もちろん途中で台車借りたけども。

「やったのだぁ〜♪」

「おっとお〜……」

今度はいきなりおんぶかぁ…。ホントにウインディは甘えん坊さんだなぁ。可愛い。

「ところでさっきといい今といい、なんで飛びついて来たんだ?」

「のだ〜。ウインディちゃん流のスキンシップなのだ〜♪」

「そっかー、スキンシップかぁ〜」

「最近ぜんぜんたりてなかったのだ〜」

そっかぁ〜。

なら仕方ないね!!

ウチの可愛いウインディのいや、担当ウマ娘からの可愛いスキンシップを拒否できるトレーナーが居ようか、いや居ない(反語)。

まぁ、実際問題このくらいなら十分許容範囲だと思うし…。許容範囲だよね?大丈夫だよね?

……とりあえず、これからすべきなのは美浦寮に向かい、ヒシアマゾンの許可を得ること。

そして、ウインディにキチンとご飯を食べてもらうことだ。

本当はもっとちゃんとした時間に食べて欲しかったが、まあ過ぎたことを気にしすぎて、引きずってても仕方ない。

その分消化に良いものを作るだけのことだ。

ウインディにヒシアマゾンを呼んで貰い、事情を話す。

「すまないなぁ、今回はホントにオレの落ち度なんだ。だからウインディは怒らないでやってくれないか?」

「はぁ〜、アンタほんっとウインディに甘いねぇ〜……まぁいいよ。それにウインディの方もアンタを待つって聞かなくってねぇ…」

「わ〜い!!ありがとなのだ〜!!」

「オレからもありがとうなぁ〜」

「はいはい。泊まらずに帰ってくるんだよ〜?」

こうして、なんとかヒシアマゾンの許しを得て、トレーナー寮に上がり込むウインディ。

「ちょっと待っててなぁ〜」

頭を拭いて、材料を取り出し、調理する。

「ほ〜らウインディ、みぞれ鍋だぞ〜」

やっぱこの時期は大根だよなぁ〜。

ヘルシーで消化にもいいし、鍋なら色々と栄養も摂れる。

「おぉ〜、おいしそーなのだ〜♪」

「ゆっくり食べたなぁ〜」

「はぐはぐ…おいひぃのだ〜♪」

「そりゃあ良かったよ」

その後、結局ウインディはたらふく食べたら満腹感と、まちくたびれた気疲れからか再び寝落ちしてしまい、オレは最早何度目になるか分からないおんぶでウインディを寮まで届けたのだった。

 

 

エヘヘ〜♪

 

おなべおいしかったのだ〜♪

 

はっ!!そうなのだ〜!!

 

今度はウインディちゃんがトレーナーをおりょーりで驚かせるのだ〜♪

 

 

 

 

 

 

 




バレンタインイベントは来てもいいけど、既存キャラの別バージョンでお茶を濁すのだけはやめてほしいですねぇ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

(ウインディちゃんが)カワイイカワイイカワイイ〜♪×無限(バクシンバクシンバクシ〜ンのリズムで)

汎用性メチャ高ですねコレは(自画自賛)。


ここはいつものトレーナー室。しかし、今日は何やら珍客がやって来ていた。

「うぅ〜む…」

そしてオレは唸っていた。

どう対応すべきか、もっと言えばどうすれば()()は波風立てずに帰ってくれるか。と言うことに関してだ。

「おや、どうかしたのかい?まるで悩みの種が近くにある時のような反応じゃないか?」

うん。まあ、実際そうなんだけども…。

分かっていて言っているのか、それとも天然なのか…。たぶん前者なんだろうけども。

「いや、去年の三冠ウマ娘兼グランプリウマ娘がこんなとこで遊んでていいのかなぁってさ…」

「ハッハッハ!!なに、グランプリウマ娘と言ってもほんのクビ差だろう?私の目指すところはそこよりもまだまだ遠くてねぇ」

愉快そうにそう言うのはアグネスタキオン。

研究者気質の問題児であるが、前述した結果を出したことによって評価が一転したウマ娘だ。

まぁ、そのたゆまぬ研究者魂とも言える姿勢は誉めるべきなのかどうなのか。判断に苦しむ子ではある。

「しかし、キミもヒマなのか?」

皮肉や嫌味抜きに、純粋に思ったことを訊ねる。

まぁレース後のトレーニングのお休みって言うのは十分に考えられるし、取材の類なんかは去年のうちに済ませてしまった可能性も無いことはないし…。

「おや、そう見えるかな?」

…質問に質問で返されるとは。

「とまぁ、冗談はさておき…」

そう言うとアグネスタキオンはいつの間にか手にしていた袋からゴソゴソと試験管を取り出す。

「この薬の効果をウマ娘で検証してみたくてね!!私からシンコウウインディに言ったところで飲んではくれないだろうが、最近のキミへの態度の軟化からキミが言えば飲んでくれるんじゃないかと思ってね」

うわぁ…、めっちゃ怪しく光ってる。

ピンクに青に黄色に緑…、もう一色あれば戦隊モノが組めるじゃないか。

「心配はいらない。副作用の類がないのはウチのモルモット…もとい、私のトレーナーくんで検証済みだ」

「…ちなみに自分では…」

人間とウマ娘では異なる作用なのではと思い、警戒して聞いてみるが……。

「もちろん飲んだとも。しかしデータを取るには一人分でも多くの検証が不可欠でねぇ…とくにウマ娘の」

自分自身も実験台にするとは、ほんとにマッドだなぁ…。

まぁ、彼女のやり方的にあくまでもお願いというか(てい)をとっている以上、無理強いしてこないだけ良心的なんだろうか…?

「安心したまえ。原材料も口にしても問題無いものしか使っていないよ」

「っていうか、前はウインディを実験台にしようだなんて思ってないって言ってたよな?それにキミとウインディって面識あったのか?」

「まあそこはね。キミの手伝いもあってか上手いこと彼女も成長してくれたしねぇ。面識に関しては以前…と言ってもまだまだ尖っていた頃の彼女にだが、悪戯がうまく行くようになる薬と偽って飲ませてみたことがあってねぇ…それ以来、彼女からは避けられるようになってしまった…というわけさ」

「自業自得って言葉知ってる?」

しまった。つい本音が。

「おや、思いの外ズバッと言うねぇ」

しかし効いていない様子だ。

もっとも、そのくらいの図太さというか、打たれ強さがなければ、問題児と呼ばれるまで学園内での実験を繰り返したりなんてしないか。

「…ハァ、ちなみにどんな効能なんだ?」

「おや?興味が出て来たのかい?」

一瞬、見間違いで無ければ彼女の目がギラリと光った気がした。

「まぁ、効能としては以前にも言った疲労回復薬の上位版と言ったところだね。取り出した順に効能が上がって行くっていう寸法さ」

言いながら手に持つ薬をもう一方の手で順々に指差す。

……どうやら今回に限っては比較的マトモな薬らしい。

それに、学園内にも彼女にわざわざ薬の依頼を出すウマ娘もいることから、多少の信用はあると見ていい…のか?

「はぁ…、わかったよ。とりあえずそこに置いといてくれ。オレが飲んで報告するから」

彼女のトレーナーが飲んでも問題無いと言うことは、人間とウマ娘での効能自体は変わらないようだし。

何よりウチの可愛い可愛いウインディに怪しいものを飲ませるわけにもいかない。

「キミ…、私の言っていたことが分からなかったのかい?私はシンコウウインディにだねぇ…」

アグネスタキオンが不服そうにそう言ったその瞬間。

バタァン!!

「やっと見つけたぞタキオン!!」

急にトレーナー室の扉が開いたと思うと、そこには怒り顔のエアグルーヴの姿が。

「おやおや、副会長殿。そんなに怖い顔をして私に何か用件かな?」

「また教室で無許可の実験を行ったそうだな?」

「そうだったかなぁ?」

アグネスタキオンは小首を傾げてのらりくらりとかわそうとするが…。

「とぼけるな」

エアグルーヴはガシッとその肩を掴む。

「イタタタタッ!なんだよ〜別に無人の教室で無害な煙が出ただけで、何も教室そのものを爆発させたわけじゃないだろ〜?」

そんなことがあったのか。

教室棟から遠いから気付かなかった。

「関係無い。掃除と反省文。終わるまで帰さんからそのつもりでな」

なんとか逃れようと画策するアグネスタキオンにエアグルーヴは釘を刺す。

こうなった彼女に一切の言い訳は通用しないらしい。

「タキオン…、頑張って掃除したら弁当をランクアップするから…」

トドメとばかりに、いつの間にかエアグルーヴの隣までやって来ていた彼女の担当トレーナーからの直接交渉。

どうやらエアグルーヴが連れて来ていたらしい。

まさに飴と鞭。

「ホントだな?絶対だぞ?」

先程とは打って変わり、今度はキラキラと目を輝かせるアグネスタキオン。

「フン。ミキサーに栄養素だけを考慮した材料を全部投入してスムージーにして飲んでた頃とは違うだろう。きちんと調理された栄養が取りたければ気張ることだな」

「え、なにそれは?」

よく腹を壊さなかったなぁ。いや、ウマ娘なら案外平気なのか?

しかし、三大欲求のひとつを交渉材料に入れるとは…トレセン学園生徒会恐るべし。

「うぅ…、わかったよ〜。やればいいんだろうやれば!!」

ほっぺを膨らませながら自分のトレーナーの手を引き現場へ向かう。

そう言うとこは年相応なのかねぇ。

結局、そのまま出て行った客を見送って、オレはそのまま仕事に戻ったのだった。

いやぁ、ホント退屈しないなぁ…。

 

 

さっきの音びっくりしたのだぁ…。

 

!!そうなのだ!!あとでトレーナーに言うのだ〜。

 

きっとおどろくのだぁ〜♪




まだ気が早いですが、ウインディちゃんのバレンタイン回…色々とお話案はあるんですが、アイデアとアイデアが喧嘩してる状態ですなぁ…。
イタズラルートか、いじっぱりルートか、素直ルートか…。
むむむ…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九十話…、あと十で三桁…、頑張ります〜!!

いやまぁ、数書いてるからって何だって言われたらそれまでなんですけども。


ここはいつものトレーナー室…では無い。

「ふんふんふ〜ん♪楽しみなのだ〜」

「そうだなぁ〜」

少し前にウインディに外出届を書いてもらい、早朝から車を走らせ一時間弱。今現在オレとウインディは開園前の遊園地の入場口に並んでいる。

と言うのも、オレのトレーナー学校時代の同期の一人が担当ウマ娘のためにとチケットを買ったものの、所用で行けなくなって勿体無いからと譲ってくれたのだが。

まぁ、日頃のトレーニングを頑張ったご褒美にちょうどよかったと思っておこうか。

人からのもらい物なのがちょっと心に引っかかるが。

「どれに乗りたいとかあるか?」

オレは隣にいるウインディに訊ねる。

「のだ〜♪ジェットコースターに〜、コーヒーカップに〜、バイキングとか、他にも色々乗りたいのだ〜」

並んでいる最中にスタッフさんに配布された遊園地の無料パンフレットを広げて、アトラクションの紹介文書や写真を眺めながら、ワクワクした様子でそう言うウインディ。可愛い。

かく言うオレ自身も久々のアミューズメントパークに少し楽しみにしている部分もあることは否定できない。

もっとも、あくまで保護者であると言うことを忘れない程度にだが。

さすがに今回は自制しないと。

ウインディに何かあったら凹むどころの話じゃ無いしな。

かれこれ三十分以上並んでいるが、ウインディは今か今かと期待に胸を膨らませている分苦では無いようだ。

まぁ先にチケットの列に並ばなくていい分、楽はできるんだが。

「お待たせいたしました〜。開園時間になりましたので、ゲートを開けさせていただきま〜す」

そのアナウンスが流れるや、入場口が開いて客たちはスタッフにチケットを見せて順番に入場する。

「まずはてーばんのジェットコースターなのだ〜♪」

ルンルンだなぁ、ウインディ。

「そっか。じゃあ行っといで」

「のだ?トレーナーは来ないのだ?」

「うん。オレは近くのベンチで待ってるからさ」

なにせ、絶叫ものは少〜し苦手だからなぁ…。

そう言えば、ジェットコースターといいゆっくりと上がってから勢いよく落ちるやつといい、小さい頃乗って以降、全然乗れてないなぁ。

「むぅ〜…」

うん?ウインディのご機嫌が若干ナナメになっているような……。

「トレーナーも来るのだ〜!!」

「うぉっ?どうしたウインディ〜!?」

ウインディに腕を引っ張られて、あれよあれよとジェットコースターに乗ることに。

…まぁこうなった以上、ウインディを見守りつつ楽しむことにも全力を尽くそう。

昔のことだし、大人になった今なら或いは……。

ゴオオオオオ…………!!

「のだ〜〜〜♪」

「うおおおお〜う!!まわる!!まわる〜!!」

…うん。

昔よりは多少マシになったかも知れない。

というか、朝メシ軽くすませて来てよかった…。

可愛い可愛いウインディにドン引きされたらオレはもう…。

「次行くのだ!次〜!!」

「おぉう。わかったわかった」

遊園地で元気にはしゃぎまくるウインディ。可愛い。

もう、さっきのダメージも癒されちゃう。

その後も、ウインディが楽しみにしていたアトラクションに順次乗ることに。

なお、もらったチケットはファストチケットだったらしく、何も知らずに並んでいたらスタッフさんが声をかけてくれた。

最初のジェットコースターは開園後直行して普通に乗れたから気づかなかった…。

他にもコーヒーカップをめっちゃ回したり…

「ぐるぐる〜〜!!なのだ〜〜!!」

「はっはっは〜!目が回るなぁ〜!!」

バイキングで語彙力を喪失したり…

「遠心力すごい!!遠心力!!」

「ふわぁってなるのだぁ〜♪」

巨大な迷路で頭を使ったり…

「こっちに何かありそうなのだ〜♪」

「お、これ謎解きのヒントなんじゃ無いか?」

気がつくと、童心に帰っている自分がいたことに驚きだ。

ウインディが楽しそうだとなんだかこっちまでどんどん楽しくなって来るなぁ。

やっぱりウチのウインディが一番可愛いってことだな。うん。

それ以外だとお化け屋敷で何とか見栄を張ってみたり…

「う、ウインディ〜?離れるなよ〜?暗いからなぁ、はぐれたら大変だからなぁ〜?」

「のだ〜。もっとくっつくのだ〜♪」

時折、園内のレストランやカフェで休憩を挟みつつ時間は過ぎていった。

「ここのピザなかなか美味いなぁ〜」

「焼きとうもろこし美味しいのだ〜♪」

そしてシメの観覧車。

よく分からんが、遊園地は最後に観覧車に乗るものらしい。

クラスメイトちゃん達もそう言ってたし、間違っては無い…ハズだ。 

夕焼けに照らされて、他のアトラクションの明かりがうっすらと見える観覧車の中、ウインディは少し落ち込んでいる様子だ。

「どうした?ウインディ、さっきまで楽しそうにしてたじゃないか?」

「……ごめんなのだトレーナー」

「うん?何がだ?」

別に謝られるようなことをされた覚えはないが。

「トレーナーと一緒に遊べるのがうれしくって、ついぼーそーしちゃったのだ〜…」

あぁ〜、あの序盤のハイテンションにオレがついていけてなかったことを今になって後悔してるのか…。優しい子だなぁ〜。可愛いなぁ〜。

「別にそのくらい何でも無いさ。オレはウインディの担当トレーナーなんだから、そのくらいどんと来いだよ」

「のだっ!?それじゃ、トレーナーもたのしかったのだ?」

ウインディ向かい合わせに座った不安そうにそう言う。

「もちろんだって。でなきゃ、そもそも同期にチケットをもらったこともウインディには話さないだろ〜?」

そう言うとウインディは一瞬ハッとなったような顔をする。

「エヘー、よかったのだぁ〜…」

う〜む…。はしゃぎ疲れてエネルギー切れを起こしちゃった感じかな?

「だから安心しろって、ウインディの幸せはオレの幸せなんだからな」

可愛い教え子の人生は我がことも同じだ。

だからこそ、注意すべき点も注意すべき点で気を引き締めて頑張らなきゃだな〜。

「トレーナー…」

心の内の不安を吐露してすっかり甘えたくなったのか、ウインディは頭をこちらに差し出して来る。

「よ〜しよしよしよしよしよしよし」ナ〜デナデナデナデナデ…。

「エヘー♪ありがとなのだぁ〜♪」

こういうことをした後のウインディはたいていかまってちゃんモードになる。

「トレーナー、これからもちゃんとウインディちゃんをかまうのだ♪」

「当たり前だろ〜?うりうり〜」

「のだ〜♪」

ピコピコと動くしっぽやウマ耳が可愛い。

なお、チケットをくれた同期はその後、フィアンセができたことを伝えて来たのだった。

まぁ、アイツ学生時代からからモテてたしなぁ〜。

え?お前も気をつけろって?心配しなくても元々オレには無縁だよ。

イヤミかまったく。

 

 

今日はトレーナーと遊園地に行って来たのだ〜!!

 

楽しかったのだ〜♪

 

のだ?しんてん?なんのなのだ〜?

 




これからも楽しみにしていただけたら嬉しいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この先、ウインディちゃんがあるぞ(ダ○ソ風)

どもです〜。


「やったのだぁ〜♪」

「は…はは…。喜んでもらえたようで良かったよ」

ここはトレセン学園に程近いゲームセンター。

ここらでも有数の規模を誇り、また景品も次々と新しいものを仕入れることで有名らしい。

らしい、というのは、オレとウインディが一緒にこのゲーセンに来るのはそう何度もないからだ。

さて、何故これほどまでにオレとウインディの反応が違うのかと言うと……。

時は、ほんの三十分ほど前まで遡る。

「トレーナー。きょうはけっこういいシューズが買えたのだな♪」

ウインディは鼻歌混じりに手にした箱を大事そうに抱えて歩いている。

「あぁ、やっぱりこういうのは使用する本人が直接確認しないとな」

データだけ取って、「はいキミこれ使ってね〜」じゃ、あまりにも味気ないし楽しみも少ないだろう。

結果のみでは無く、過程にも意味があるからトレーニングというものがあるんだとオレは思うわけで。

まぁ、そんなこんなであれやこれやと帰り道を談笑しながら歩くオレとウインディ。

なかなかいいものに巡り会えず、少し遠出になってしまったがまあ問題は無いない。

「のだ?」

そんな時に、不意にウインディが立ち止まってどこかを見ていた。

「どうした〜?ウインディ?」

「トレーナー!あれ!あれなのだ!!」

やや興奮気味にそう言うウインディが指差す先には、いつぞやのゲームセンターがあった。

もっと厳密に言えば、そのゲームセンターの入り口から見えるクレーンゲーム、その景品が気になっているようだった。

「あれ!あのブチ切れワンコさんのもちもちぬいぐるみ!!ほしいのだ〜!!」

「どれどれ〜?」

見てみると、大きな怒りマークを額につけ、歯を剥き出しにした柴犬らしきデフォルメされた犬がのぬいぐるみこちらを向いていた。

なるほど。ウインディはああ言うのが好きなのか。

ふむぅ。確かにこの後の予定にトレーニングは無い。

トレーニング施設の予約や、レースに出走するウマ娘の軽いデータ確認がせいぜいか。

まぁ、少しぐらいならいいだろう。

そう思って、ゲームセンターに入ったのが運の尽きだった。

「むぅ〜。なかなかとれないのだぁ〜」

ウインディに崩したお金を渡してやってみてもらったが、これがなかなか難しいようで。

押したり引っ掛けたり持ち上げたりと悪戦苦闘するも、一度に数センチ動けばいい方という有り様。

うーん。こんなもんなのか?

「トレーナー!!」

クルリと振り返るウインディ。

なんだか少し泣きそうな顔をしている。

「やってみてほしいのだ〜〜!!」

そう言って、途中からウインディと選手交代。

「いいか〜?こういうのは重心をきちんととらえてだな〜……」

ポトリ。

「あぁ〜、落ちちゃったのだ〜……」

しょんぼりと項垂れ、耳を倒すウインディ。

「い、いや、いまのは練習練習。よ〜し、もう一回やるぞ〜!!」

気を取り直して、オレは再びクレーンゲームに向かう。

「トレーナー!ファイトなのだ〜!!」

ウインディに応援され、期待されている以上、オレに敗北は許されない。

「よ〜し!!やったるぞ〜〜〜〜!!」

そう意気込んで、オレは何度も何度もクレーンゲームに挑んだ。

少しずつ、着実に、怒り顔の柴犬が前へ前へとやって来る。

来るのか、来るのか、落ちるか、落ちるか、落ちるのか。

途中で何度も両替に立ち、ウインディに台をキープしてもらい、時たままたやりたくなったと言うウインディにプレイを代わり、そうして……。

「やったのだ〜〜!!」

そういって、景品を掲げるウインディを見て、オレは嬉しい気持ちだった。

…このゲームだけで六千円ほど使ったけどね。

この時ほど、自分のゲーム下手を恨んだことはない。

「トレーナー、ありがとなのだ〜♪」

満面の笑顔でそう言うウインディ。可愛い。

「いや、ウインディが嬉しいならいいよ」

満足げな顔が見られて良かった良かった。

「それじゃ、これはトレーナーのなのだな〜♪」

「え?これウインディが欲しかったんじゃないのか?」

「のだ〜。だけどトレーナーけっこうお金使ってたし、ウインディちゃんはまたこんどでいいのだ♪」

ウインディは優しい子だなぁ。

「いやいや、そもそもこれはウインディのために取ったものだし…」

「でも、ウインディちゃんはトレーナーにもっててほしいのだ〜!!」

ウインディにあげたいオレ、オレにもってて欲しいというウインディ。

話はそのまま平行線を辿り、オレはふと思いついた折衷案を提示することに。

「それじゃ、トレーナー室に置いとくってのはどうだ?」

「のだ?トレーナー室?」

小首を傾げてどう言うことか説明を求めて来るウインディ。可愛い。

「そう。確かにお金はオレが出したけど、最後に取ったのはウインディだ。言わばこれは、オレとウインディの努力の結晶といっても過言では無い」

少し大げさだが、まぁ間違ってはいないだろう。

コクコクとウインディも頷いていることだし。

「それなら、俺たち二人にとって、最も身近な場所に置いておく方がいいと思うんだ」

「なるほどなのだ〜」

その説明でなんとか納得してくれたウインディ。可愛い。

「それじゃ、そう言うことにするのだ〜♪」

そういうとウインディは改めて抱きかかえたぬいぐるみもぎゅっとする。

なお、シューズの箱は今現在オレが持っている。

ウインディがゲームをしている間預かったままだからだ。

その後すぐに店員さんを呼び、袋に入れてもらったことで、オレは再び両手が自由になった。

「それじゃ、今度こそ帰ろうなぁ〜」

少し暗くなり始めた空の下、オレとウインディは冷たい風に吹かれながら車を目指したのだった。

 

 

エヘー♪

 

トレーナーとふたりのけっしょーができたのだ〜♪

 

のだ?ウインディちゃんのおなかぺたぺたさわってどうしたのだ〜?




ちなみに、ゲーセンでめっちゃ使っちゃったのは筆者の実体験です。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

コメ欄に予言者が現れたんですが…‥。

なぜ次の話がわかったのか……。

我々研究班(一人)はその謎に迫るのだった。


よく晴れた日の早朝。

トレセン学園の一室であるここ、オレの仕事場でもあるいつものトレーナー室は今朝方やって来た珍客によってただならぬ空気と化していた。

にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ。

その珍客とは我がトレセン学園が誇る理事長秘書たる駿川たづなその人だ。

「あ、あの〜……」

にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ。

なんだろう。ただならぬ雰囲気を醸し出しているが、彼女に怒られるようなことなんて身に覚えがないぞ。

笑顔は元々威嚇の意味があったという説があるようだが、今のこの状況では納得できる。

否、納得しかできない。

とりあえず、招いていないとは言え来客相手に粗相はできない。

コーヒーと茶菓子でも出そうかと立ち上がったその時だった。

「トレーナーさん」

「は、はい!?」

急に声をかけられ少しばかりビクッとなり、オレはそそくさと座り直す。

別にやましいところなんてないはずだが、知らず知らずのうちになにかしらやってしまったのだろうか。

「私は理事長と一緒に、これまで決して少なくない生徒達を迎え入れ、また送り出して来ました」

「は、はぁ…」

急に昔のことを語り出したが声色は真剣で、それは茶化すことを許さない重みと、理事長秘書という職務の責任を感じさせるには十分だった。

「もちろん、中には問題を起こす子も、授業をサボるような子もいました」

「良くも悪くも多感な時期ですしね」

「ええ、本当に」

しかし、う〜ん?話が見えないなぁ…。

「夢を叶えた子も、夢破れ学園を去っていった子もどちらも見て来ましたし、どちらもトレセン学園にとって二人といない大切な生徒達です」 

「立派に勤め上げて来られたんですね」

オレが世辞抜きにそういうと

「ありがとうございます」

と、朗らかに返される。

「別に、お二人の仲にどうこう言おうなんてつもりは無いです。本当にお互いがお互いを想い合い、節度を守って卒業まできちんと弁えた距離感を保っていただければ、その後お付き合いされようがご結婚されようが、それは当人達の問題ですから」

「え、え〜っと…オレ…いや、私は今現在特定の誰かとお付き合いの類はしてないんですが…」

そもそも担当ウマ娘を持ったことで色々と多忙でそんな余裕もないし。

オレがそう答えると、たづなさんはより真剣な表情で言って来る。

「シンコウウインディさんについて、何か言わなければならないことがあるのではないですか?」

「へ?ウインディですか?」

「えぇ、どうやら誰かさんとお付き合いされているそうですよ?」

顎に手を当て考えてみる。

う〜ん。提出する書類の類はなるはやで送ってるし、栄養管理にカロリーコントロールなんかも十全に出来てるはず。トレーニングだって今のところ順調だし、オレやクラスメイトちゃん達との間柄も別段不穏当なものでは無い…はずだ。

うん?お付き合い?

「ウチのウインディに恋人ができたって言うんですか!?」

驚きのあまり、大声をだしてしまう。

どこのどいつだこの野郎。相手は未成年だぞ恥を知れコラぁ!!

「シンコウウインディさんのご友人の話では、すでに懐妊もしているとか」

「はぇ?」

変な声が出たが、そんなことはどうでもいい。

「だ、誰なんです?その相手っていうのは?それにご懐妊?」

もう混乱が混乱を招いてさらなる混乱が…、いかん目が回る。

とにかく、それを聞いたオレは来客用の机に乗り出し質問を投げかける。

「ご存じなかったのですか?つい先日、トレーナーさんとの愛の結晶を授かったと…」

え?オレ?

一瞬頭が真っ白になりかけたが、あらぬ誤解をされたと言う事実に気が付き我に帰る。

「いやいやいやいやいやいやいや!!してないしてない!!してないです!!オレ、そんな自分の教え子に手を出すようなクソ野郎じゃないですよ!?」

「しかし、現にお出かけから帰ってきてから嬉しそうにそう言っていたと…」

お出かけ?確かにシューズを買いに行きはしたが……。

 

 

 

…………………あっ。

 

 

 

「身に覚えがおありですね?」

その反応に、オレが観念したと思ったのか、たづなさんの目つきが鋭くなる。

「いや!!いやいやいや!!違います!!そう言う意味じゃないんです!!」

そう言って、オレは棚に飾ってあったぬいぐるみを持って、たづなさんに見せる。

「それは?」

「これ!!これですよ、これのことですよ!!」

その言葉にたづなさんは怪訝な表情を浮かべるが、なんとか訳を話す。

主に、二人で協力して取ったからそれが努力の結晶だね〜と言うあたりを強調して。

なんならウインディ本人に確認を取ってもいいと言ったあたりからたづなさんからのただならぬ雰囲気は和らいでいた。

「はぁ…そう言うことでしたか。しかしなんと言うか…紛らわし過ぎませんか?」

「すみません…、けど分かっていただけたなら何よりですよ」

いやぁ〜、まさかそんな誤解が広まりそうになっていたとは。

なんとか噂レベルになるより前にたづなさんに報告があったようで、それが幸いしたようだ。

話を聞いたクラスメイトちゃん達がオレとウインディの間柄をある程度分かってくれていたのも大きかったんだろう。よかったぁ。

「ちなみに、噂が本当だったらどうするつもりだったんです?」

ふと気になったことを恐る恐る聞いてみる。

「そうですねぇ、その時は……行方不明になられるトレーナーさんがひとり増えていたかと」

なにそれこわい。

「ふふっ、まあ冗談です」

聞こえない。全っっ然冗談に聞こえない。

前々から薄々分かっちゃいたけど、この人だけは怒らせちゃアカン。

普段温厚な人ほど、怒らせると怖いって本当なんだなぁ…。

よく単純に怒っているイメージがないからそのギャップからそう見えるっていうし、オレ自身それだけかと思ったけども、少なくともこの人はマジでおっかない。

「紛らわしい真似をしてすみませんでした」

「いえ、何もないならよかったです」

そう言ってニコリと微笑む姿はいつものよく見るたづなさんその人だった。

「さてと、それではそろそろお暇させていただきます…」

たづなさんがそう言って席を立ったその時

バタァン!!

「トレーナー!!おっはよーはのだ〜!!」

渦中のウマ娘、ウチの可愛いウインディが入って来た。

「トレーナートレーナー!!ウインディちゃん頑張って早く起きたのだ〜♪ほめるのだ〜♪」

「おぉ〜さすがウインディだなぁ〜、よしよしよ〜し、エラいぞ〜、カッコいいぞ〜」

頭を撫でるとウインディは相変わらずしっぽをブンブン振ってリラックスした様子だ。可愛い。

こんないい子にひどいことなんてできる訳ないよなぁ?

「エヘヘ〜♪のだ?」

しばらくの間、いつものように撫でられていたウインディがたづなさんの存在に気づいたようだ。

「たづなさんもおはよーなのだ〜♪」

そう声をかけるウインディ。

「アレで何も無い?最近の子はあれくらいのスキンシップが普通?それともここからは時間の問題なんでしょうか?」

何やらぶつぶつ言っている。ちょっと怖い。

しかし、ウマ娘であるウインディの耳はその声を拾っていたようで。

「のだ?時間の問題なのだ〜?」

そう言うと撫でられていたウインディは時計をみやる。

「のだっ!?早くしないとおくれちゃうのだ〜!!たづなさんありがとなのだ〜♪」

ウインディはそう言うと、来た時のようにドアを勢いよく開け、教室等の方にダッシュで向かうのだった。

「……それでは失礼しますね?」

「あっはい…」

たづなさんはそのままトレーナー室を後にしたのだった。

うむ。ウインディのおかげでいらぬ嫌疑が晴れたようだ。

良かった良かった。

 

 

のだ〜。

 

朝トレーナーに会いにいったらたづなさんに問題を出されたのだ〜。

 

なんか、じかんのもんだい?だったのだ〜。

 




なぜだ!!何故ラ○ゥのhgがどこにもないのだ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

育成シナリオもう一個くらい欲しい…欲しくない?

まぁ、アオハルも基本URAシナリオだから来るにしてもそのへん変えるくらいなんでしょうけどもね。


ここはいつものトレーナー室。

「う〜〜ん……」

オレは今朝方配布されたチラシを見て唸り声を上げる。

「トレーナー?どうしたのだ?」

それを不思議に思ったのだろう。ウインディが声をかけてきた。

「あぁ、ウインディなんでもないぞ〜?よ〜しよしよし」

ナ〜デナデナデ…。

「のだ〜♪」

しっかし先日といい、その前といい、たづなさんの反応からして、オレとウインディの距離感近いのかなぁ〜。

かと言って距離を置くのはなぁ〜。それなりの付き合いで分かったことだが、ウチのウインディは普段の態度に反してけっこうその辺デリケートだから却って傷つけてしまいかねない。

「とれーなー。さいきんつめたいのだぁ〜…」(涙ジワァ)

なんて、ウルウルした目で言われた日にはもう…オレ生きていけない(確信)。

「グスッ…」

いかん。想像しただけで涙が…。

やっぱり、可愛いウインディに辛く当たるなんて出来ないよなぁ。

「のだっ!?トレーナー、どこか痛いのだぁ〜?」

ウインディが心配してくれたのか、そう聞きながらかけ寄り、顔を近づけて来る。可愛い。

「痛いの痛いの飛んでけ〜♪なのだ〜♪」

そして、オレの頭に手を置き、小さい子にするような仕草でそれをする。やはり天使かこの子は。

「いや、うん。もう大丈夫だよ…ホントにウインディは優しいなぁ〜…」

「ふふ〜ん!!それほどでもあるのだ〜♪」

そうご機嫌に言うウインディ。可愛い。

ふと、手にしたチラシを再び見やる。

どうやら毎年行われる製菓メーカー主催のバレンタインデーに関連したイベントらしい。

はぁ〜…にしても、バレンタインかぁ〜…。

オレみたくクラスメイトみんなに配ってくれるような子からのチョコや姉や母からの家族チョコしかもらったことないヤツには縁遠い世界だよなぁ〜…。

「そうだ。ウインディはこれには出ないのか?」

そこには『夕春チョコレートコンテスト』とデカデカと書かれていた。

参加者は早い者勝ちで、大会以外にも様々な有名店が競うように出店を出すらしい。

理事長イチオシの…というか、どのイベントも基本そうだけど…理事長って本当にこういうイベント好きだよなぁ。

まぁ、単に趣味というよりは、それだけ生徒達に楽しんでほしい一心なんだろうけども。

「う〜ん…ウインディちゃんはべつにいいのだ〜」

へぇ、少し意外だ。

ウインディは今まで同じような発言をすることは多々あれど、耳がピコピコしてたり、単純にそわそわしてたりと興味があるようなそぶりを見せたもんだ。けど今回はそれも無い。

「そっか〜、それじゃバイキングとかは行くか?」

その言葉を聞いた途端に、ウインディのウマ耳がぴょこんと反応する。可愛い。

「のだっ!?いいのだ〜?」

「あぁ、後で調整するからな。こういうイベントの時くらい気にしないでクラスメイトちゃん達と食べ歩いてていいぞ〜?」

大丈夫大丈夫。今月下旬に開催されるレースに参加予定だけど徹夜覚悟で予定を調整すればいけるいける。

まあ、こう言うイベントは楽しんでナンボだ。

ウインディにとっても、そう言った学園の思い出は多いに越したことはないだろう。

だからこそ気をつけなければならない事も少なく無いのもまた事実だが。

そんなことを考えていると、ウインディが不意に立ち上がる。

「それじゃ〜トレーナー!!いってくるのだ〜!!」

「おう、ヒシアマゾンと約束してるんだっけ?」

「そうなのだ!!」

扉に手をかけたウインディが振り返り笑顔で頷く。可愛い。

「それじゃー、トレーナー!!またあとでなのだ〜!!」

そう言うと、ウインディは笑顔のまま駆け出して行ったのだった。

「誰かにぶつからないように……って、もう聞こえてないか」

……仕事しよう。

そう思って席を立ち、いつものパソコン席に腰掛けようとした時だった。

「よ〜う。ウインディいるかい?」

ひょっこり扉から入って来たのは先ほど話に上がっていたヒシアマゾンその人。

噂をすれば影がさすとは言うが、まさか入れ違いになるとはなぁ。

「お、いらっしゃい。ウインディならついさっき出ていったけど…」

「アイツめ、迎えに行くって言ったろうに……」

ヤレヤレと言った様子のヒシアマゾン。

「なんかすまん」

「あぁ、いや、別にアンタは悪く無いだろ?それで、聞かれたかい?」

「聞かれた?何を?」

オレが首を傾げたのを見て、ヒシアマゾンはため息をひとつ。

「ああいや、聞かれてないんならそれはそれでいいさ。で、アンタは甘いのは得意な方かい?」

甘いもの?何かの参考にでもするのか?

まぁ、聞かれて困るようなことでも無いし、別に教えても問題はないか。

「うん?まあ人並みには…」

「そうかい。よ〜くわかったよ。それじゃあね」

「おう。ウチのウインディをよろしくなぁ〜」

「はいはい。ごちそうさん」

そう言って、ヒシアマゾンは元来た廊下を戻っていったのだった。

にしてもごちそうさんって……別に何か奢った訳じゃ無いよな?

 

 

むむ〜!!

 

またコゲちゃったのだ〜……。

 

でも、ウインディちゃんがんばるのだ〜〜!!




ダートイベント…いつ来るのかなぁ…(遠い目)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エプロン姿のウインディちゃん…、アリだと思います!!

やっぱり重要なのは普段とのギャップだよね。


それは、いつものように仕事に精を出していた時のこと……。

「へ?ウチのウインディにですか?」

「はい。鬼役の役者さんがギックリ腰をやってしまいまして、高名なトレセン学園さんの生徒さんにぜひお願いしたく…」

電話口の向こうにいる女性は何やら申し訳なさそうにそう言っている。

なんでも、公民館で近いうちに行われる節分のイベントで鬼の役をやって欲しいという。

確かに泣いた赤鬼とか一部例外を除いて鬼って大抵悪役だもんなぁ〜。

それに加え、参加レースが近いというので気がひける思いもあるのかもしれない。

「まぁ予定もありますし、何より本人に確認を取らないことには…」

「はい。はい。そのことは重々承知しておりますとも。もちろん、報酬の方もご用意させていただきますので、ぜひぜひ色良いお返事をお待ちしております〜」

ガチャッと受話器を置くと、ウインディがすでトレーナー室に来ていた。

どうやら話し中だったので静かに待っていたらしい。えらい。そして可愛い。

「のだ〜?ウインディちゃんになにかよーけんでもあったのだ?」

どうやら先ほどの話の一部が聞こえていたらしい。

まあちょうどいいか。

「あぁ、実は…」

先ほどの電話内容を要約して伝える。

「やるのだ〜〜!!」

目をキラキラさせて即答してきた。可愛い。

確かに演劇なんかでもヴィラン役とか喜んで引き受けてたしなぁ〜。

と言うか、今回のオファーもその話を聞いて是非ウインディにとお願いして来たみたいだし。

なお、ワールドワイドウインディのもう片方、シーキングザパールは今も世界を飛び回っているようだ。

「そうかわかった。それじゃ先方にもそう伝えておくな〜」

「ふふん♪ウインディちゃんのめーえんを子どもたちの目にやきつけてやるのだ〜!!」

おぉ〜、ウインディがやる気に燃えている。

その後、こちらの答えに喜んだ先方との脚本やらウインディ自身のキャラと演技の擦り合わせ、劇中での子供達への声かけのタイミングなど、付け焼き刃ながら少しずつウインディに覚えていってもらった。

まぁ、三十分も無い短い劇だけども。

「ウインディ、手応えはどうだ?」

「ふっふん!!バ〜ッチリなのだ〜!!」

右手でVサインを作り、そう言うウインディは頼もしいことこの上ない。

そして、イベント当日。

よく晴れた日の野外ステージにて、その劇は取り行われた。

「グワァ〜〜ハッハッハ〜〜!!世界にわが歯型を残してやるのだ〜〜!!」

 

ワーワー

 

キャーキャー

 

オニサンカッコイイ〜〜!!

 

鬼に仮装して、スモークと共に舞台袖から出てきたウインディに対して、様々な反応が。

……けっこう肯定的なリアクションもあるのが驚きなんだが。

その後も、悪魔の誘惑というか、鬼のやりたい放題というか、まぁそんな感じのセリフが。

例えば

「ゴハンの前におかしをいっぱいたべてやるのだ〜!!」とか

「宿題なんてやらずにゴロゴロするのだ〜♪」

「今日もイタズラしてやるのだ〜」

などと言ったセリフが続く。

その度にちょいちょい子どもたちから賛同の声もあったが、まぁ、そこは子どもだしなぁ。

なんやかんや、親御さんも楽しんでいる我が子に水を差すようなことはしてないし。

まぁ、後でお説教される子は何人かいるだろうが、今は関係ないか。

流石にまだトレセン学園の生徒でもない子たちの各ご家庭のことにまでとやかく言うほど野暮ではない。

「わっはっはっはっは〜♪い〜〜い気分なのだ〜♪」

ステージ上のウインディが言いたい放題、やりたい放題やっていると。

「たいへん!!このままじゃ悪い鬼さんに世界が支配されてしまうわ!!みんな!!手元にある豆を鬼さんにぶつけて退治するのよ!!」

マイクの前でそう言うのは、電話口に立っていたろうお姉さん。ちなみにウマ娘だった。

「鬼は〜〜そと!!」

その掛け声と共にいくつもの豆が空中を舞う。

うんうん。地味に壮観だな。

そうして、子ども達が豆を投げはじめて二、三分くらい経った頃。

「ウワァ〜〜覚えてるのだぁ〜〜!!」

そう言って、退散するように舞台袖までノリノリで引き上げるウインディ。可愛い。

そうして、節分の劇は成功に終わったのだった。

「いやぁ〜助かりました。ありがとうございます」

「いえ、お礼ならウインディに。彼女が引き受けたからこそ、今日の成功があるわけですから」

「それもそうですね。シンコウウインディさん。本日はありがとうございました」

「のだ〜。ウインディちゃんもけっこーたのしかったのだ〜♪」

ウインディがそう返すと、彼女は手にしていた袋を渡してくる。

「どうぞ。本日の謝礼です。お二人でお食べください」

「ありがとうございます。おっ恵方巻きか」

ウマ娘のウインディに配慮したのかサイズは大きめで、具材もたっぷり巻かれている。

それが二本入っていて、持ってみると結構な重さだ。

オレが袋を受け取ると、中身が気になったのか覗き見てくるウインディ。可愛い。

「美味しそうなのだ〜♪」

「だな。あとでいただこう」

そう言って、公民館を後にするオレとウインディ。

車に乗り込むと、ウインディは聞いてくる。

「トレーナー。トレーナーは今日たのしかったのだ〜?」

「あぁ、もちろんだよ。よく頑張ったな、えらいぞ〜」

「ふふ〜ん♪ナデナデしてもいいのだ〜♪」

そう言うと、自然な流れで頭を差し出してくる。可愛い。

「よ〜しよしよし〜」

「のだぁ〜♪」

その後、駐車場から車を出せたのは三十分ほど経ってからだった。

 

 

ふっふん♪

 

ウインディちゃんじょゆーにむいてるかもなのだ〜♪

 

えほーまきもぐもぐ〜♪

 




可愛いウインディちゃんが、トレーナーのためにチョコを作っていると言う姿が想像するだけで身悶えするくらい可愛い訳で……。
いや、だからってね?他の子が可愛くないとかそう言うことが言いたいんじゃなくてですねぇ…、やっぱりみんな自分のトレーナーに喜んでもらおうと言う姿勢は尊いんだけども、そこにさらに普段とのギャップって言うスパイスが加わるからイイのもあるってのはわかってほしいわけで…(以下略)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ナリタトップロード、出るみたいですね。

……ウインディちゃんの情報は?


「ふぅ…そろそろ一息入れるかな」

作業が一段落して、オレはふと時計を見る。

「げ…もう昼かぁ…」

楽しかったり忙しいと時間が過ぎるのはあっという間だ。

今回は後者だが。

オレはすぐそばに置いてあるカバンから弁当を取り出す。

これでも自炊はそれなりにはする方だ。

教え子に食事や栄養の大切さを説いておきながら、自分がそれを怠るようじゃ本末転倒だしな。

まぁ、どうしても忙しかったり自炊する暇も無い場合は外食やコンビニで済ませたりもするが。

仕事用のデスクを汚さないため来客用の机の方に移動し、その弁当を今正に机の上に広げようとしたその時だった。

「うん?」

ドタドタドタドタドタドタ…。

珍しいなぁ。お昼は大抵クラスメイトちゃん達と済ませるはずなんだが。

バタァン!!

「トレーナー!!まだお昼食べてないのだ〜!?」

そう言って、案の定というか、予想を裏切らずウチの可愛いウインディがトレーナー室に入って来た。

「おお、ウインディ。ちょうどこれから食べようとしてたところだけど、それよりクラスメイトちゃん達はどうしたんだ?」

気になったことを聞くと、ウインディは微笑みながら言う。

「のだ〜。たまにはトレーナーさんと食べたら?って言われたのだ〜!!」

「なるほどなぁ。ちなみになんだけど、他には何か言ってなかったか?」

そう言うとウインディは顎に手を当て少し考える、というか思い出す素振りを見せる。可愛い。

「うーん…たぶんカンケーないけど、ぜんれーがあればわんちゃん?とかいってたのだ〜」

前例?いったいなんのだ?

それにワンちゃん?家で犬でも飼ってるのか?

飼うと言えばたまに寮の方にこの辺じゃ見ない鳥が飛んでいるとかいう噂もあるが…。まぁ今回その件は関係ないか。

「まぁ、それはいいのだ!!トレーナー!!よければコレ!!たべてほしいのだ〜♪」

そう言って差し出してきたのは片手に持った弁当箱。

唐草模様の包みが可愛らしい。

「お、開けていいのか?」

オレはそれを受け取るとそう聞く。

「もっちろんなのだ〜♪」

ウインディの了承も得たところで中身のご開帳。

「おぉ、旨そうな肉じゃがだなあ」

肉とにんじんとじゃがいも玉ねぎ、そして絹さや。

うん。やっぱり旨そうだ。

「ふふん♪実はこっそりヒシアマ姐さんにならってたのだ〜♪」

「あ、そうなのか〜。じゃあこれはウインディのお手製ってことか?」

「のだ〜。まだれんしゅーちゅーだったけどせっかくだし、とちゅーけーかを見てもらうのだ〜♪」

そう言って箸を持ち、ニコニコと肉じゃがを差し出して来る。

「うん?どうした?ウインディ?」

以前行った喫茶店とは違い、わざわざ食べさせっこをしなければならないルールは無いはずだけども。

「エヘー♪ヒシアマ姐さんが自分のトレーナーにこーしてたから、ウインディちゃんもマネなのだ〜♪」

うん。それ、直接本人に言っちゃダメだぞ〜?

「そうか。それじゃあ頂こうかな?」

このままウダウダ食べるのを拒否すると、またウインディを悲しませることになりかねない。

「はいトレーナー。あ〜んなのだ〜♪」

「はいよ〜。あ〜ん」

開けた口の中に、醤油ベースの甘い味わいが広がる。

うん。肉じゃがだ。

少し味のしみが足りない気もするが、まぁ作ってすぐならこんな感じだろう。

「おいしいのだ〜?」

「うん。美味しいぞ〜。流石ウインディだなぁ〜」

「エヘー♪それならよかったのだ〜♪」

「ウインディもそろそろ自分の弁当、食べた方がいいんじゃないか?」

時計を見ると、昼休みもそろそろ半分が過ぎようといていた。

「のだっ!?わすれてたのだ〜」

そう言って、ウインディは手元にある弁当を食べ始める。

「ん〜♪おいひいのだ〜♪」

ウインディ、相変わらず幸せそうな顔をして食べてるなぁ。可愛い。

オレは一度席を立ち、ポットに入れたお茶を二つの湯呑みに注いで、机の上に置く。

言わずとも分かるが一つはオレの分、もう一つはウインディの分だ。

「はいよ。ウインディ、お茶だぞ〜。ちょっと熱いから火傷しないようにな〜?」

「トレーナー、ありがとなのだ〜♪」

そう言って湯呑みを受け取ると、箸を弁当箱に置いて両手で持ってフーフーと冷ましはじめる。可愛い。

互いに食べ終えると、昼休みは残り五分も無かったのでウインディは名残惜しそうにしつつもそのまま再び教室に戻って行った。

しかし…。

練習中の肉じゃがをわざわざ持ってきたのは何故だったんだろう?

みんなで味見でもするつもりだったのか?

 

 

エヘー。

 

おいしいっていってくれたのだ〜♪

 

がんばってよかったのだ〜♪

 

 




焦がしちゃったのは料理かチョコか…。

果たしてどっちだったんでしょうねぇ…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんのバレンタイン その1

バレンタインイベもそろそろ終わりそうなのでとりあえずルートひとつめ投稿しまする。




イタズラルート

 

「トレーナー、今日は何の日か分かるのだ?」

トレーニング終わり、トレーナー室に戻ろうとしたオレはそうウインディに聞かれる。

「そうだなぁ〜、何の日だっけ?」

もちろん、数日前からコンビニやら駅やらといった街中で色々とそのイベント名を見かけて、『もうそんな時期か』なんて思った程度には分かってはいるが、ウインディが何となく正解を言いたそうにしていたので聞いてみる。

「エヘー♪正解は〜…」

そう言ってウインディはゴソゴソと手にした紙袋から中身を取り出して渡して来る。

「バレンタインなのだ〜♪」

な、なんだって〜〜!?

「えぇ?くれるのか?」

その質問に、ウインディは満面の笑顔で大きく頷く。

「そのために作ったのだ〜♪」

ウインディ…なんていい子だ…。

「ありがとなぁ〜、ウインディ」

そう言って、オレは差し出された箱を受け取り、一応確認する。

後で開けてほしい場合もあるだろうし。

「開けてもいいか?」

「もちろんなのだ〜」

ウインディの了承も得たことで、その場で箱を開ける。

「お、緑色ってことは抹茶チョコクッキーかぁ?」

中身は500円玉より一回りくらい大きなクッキーが十枚ほど入っている。

珍しいなぁ。難しかったんじゃないか?

「ニシシ〜!!ちなみに当たり入りなのだ〜!!」

あたり…つまりはちょっとしたドッキリ要素もあるって感じか?

さすがウインディ!!いたずらっ子だな!!可愛い。

「ありがとう。後の楽しみにしておくな〜」

「わかったのだぁ〜」

しかし、その翌日。

「うぐぉぉぉぉぉ〜〜……」

「どうしたんだい!?そんな寝込んで!!」

なかなかやってこないオレを見かねて、トレーナー寮にやってきたヒシアマゾン。

因みに、理事長への連絡はすでに済ませてある。

流石に無断欠勤はまずいし。

「お、おぉ〜…ヒシアマゾンか…いらっしゃい…スマン…ちょっとな…」

ふぐぅっ!!

「のだぁ〜…、ちょっとイタズラが効きすぎちゃったのだ…」

「イタズラってどんなだい?」

「わ、ワサビを…」

「ワサビぃ?まぁ、イタズラにはよくあるけどもさ…にしても、この苦しみよう……一応聞くけど、どのくらい入れたんだい?」

ウインディは右人差し指を立てて、ヒシアマゾンに向ける。

「い…一本…いれたのだ…」

「一本?チューブまるまる一本を一個に入れたのかい?作ってる最中にコソコソしてたのはそれかぁ!!」

「のだぁ〜…」

なるほどなぁ、わざわざ抹茶フレーバーにしてたのはそれが理由か。かしこい。

しかし、辛いのは得意なつもりだったが……。

完っっ全に油断してた。

唐辛子とわさびって全然違うんだなぁ…。

というか、わさびって確か加熱すると辛くなくなるはずなんだけども。

まるまる一本も入ってたらそりゃあ辛味も残るってもんか。

「ひ、ヒシアマゾン…ウインディをあまり責めないでやってくれ…」

そもそもの話、何かあるとわかってそのうえでクッキーを食べたのはオレ自身だ。そこに関して、ウインディは純粋にびっくりさせようとしただけで、まさかこうなるとは夢にも思ってなかったんだろう。

今まさに、彼女自身がここまで申し訳なさそうに落ち込んでいるのがいい証拠だ。

「相変わらず甘いねぇ…。わかったわかった。食べた当人がそう言うならこれ以上は何も言わないさ。しっかし、ロシアンルーレットだったのが幸いしたね。作った本人の話じゃ、他は普通の抹茶チョコクッキーらしいから体調が回復したら食べられるだろ。ウインディ、アンタのトレーナーがちゃんと元気になるまで見てやんな。教官にはアタシから言っておくから」

そう言うと、ヒシアマゾンは行ってしまった。

「トレーナー、ごめんなのだ〜…」

ウインディは見るからにショボンとしている。可愛い。

「いや、ウインディはオレを楽しませようとしてくれたんだろ?なら、それを叱ることはできないよ」

ぽんぽんと頭を撫でる。

「トレーナー…」

「うん?どうしたウインディ?」

「今日はずっといっしょにいていいのだ?」

その言葉を拒絶できるトレーナーがいようか、いやいない(反語)。

「お〜、助かるよ。ありがとなぁ〜」

「エヘー♪」

その後、ウインディは寮の門限ギリギリまで、お話やババ抜きに付き合ってくれたのだった。可愛い。

 

 

うぅ〜…。

 

やりすぎちゃったのだぁ〜…。

 

でも、トレーナーゆるしてくれたのだ♪

 

やさしいのだ〜♪




すげぇ!!サブタイがサブタイしてる!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんのバレンタイン その2

いやぁ、運営さんも焦らすねぇ〜(震え声)。




いじっぱりルート

 

「むむ〜…」

今日、厳密には今日のトレーニング開始前にウインディがトレーナー室にやってきた。

それ自体は別にいつものことなんだが…。

「ど、どうした?ウインディ?」

ウインディは表情を見るからに、とっても不機嫌です。と言った感じだ。

しかし、一体何が原因なんだ?

「トレーナー!!」

オレが考え事をしていると、不意にウインディが話しかけて来る。

「ん?なんだ?」

「ウインディちゃんにかくしてることはないのだ〜?」

へ?ウインディに隠さなきゃならないようなこと?

三分ほど此処最近の記憶を辿るも、特に思い当たる節はない。

「いや…特には無いと思うけど…」

「むっす〜〜〜!!」

う〜ん?どうやらウインディの様子から、その隠し事とやらが、ウインディの不機嫌の理由らしいが……。

「ふ〜ん!!トレーナーなんてもうしらないのだ〜〜!!」

バタァン!!とトレーナー室の扉を思いっきり閉めて出て行ってしまった。

「よわったなぁ……」

心当たりがない以上、いい加減な謝罪は火に油を注ぐだけなのは明白。

かと言って放置するのも今後のためには良くない。

こういう時は……。

「なに?お前のとこのシンコウウインディが?」

オレは沖野先輩に相談することにした。

「はい…、でもオレとしても、不機嫌になられることなんてまるで身に覚えが無くて…」

「ふ〜む。そうだなぁ…、とりあえず彼女のクラスメイトに聞いてみるのはどうだ?」

「あぁ、なるほど」

言われて、その手があったことに気づく。

普通は真っ先にそっちに行くよなぁ〜、我がことながら情けない限りだ。

オレの見てないところで同室の子と同じくらいウインディに関わり合いのある子達だ。

きっとなにか知っているかも…。

「ありがとうございます!!すぐに聞いてきます!!」

「おぉ〜、頑張れよ〜」

お礼もそこそこにオレは先輩と別れると、すぐにクラスメイトちゃん達に接触を図る。

「ってわけで、ウチのウインディが不機嫌な原因をもし知ってたら聞かせてもらいたい!!」

頼む!!と頭を下げると、クラスメイトちゃん達は顔を見合わせ、何があったか切々と語る。

「あぁ〜、そんなにショックだったんだねぇ〜…」

「ウインディちゃん、トレーナーさんのこと信頼してるから…」

何やら納得した様子で話しているクラスメイトちゃん達。

どうやら彼女らには心当たりがあるようだ。

「へ?いったいどういうことだ?」

気まずそうな沈黙。

しかしこのままではいけないと思ったのだろう。

クラスメイトちゃんのひとりがポツリと言う。

「ウチが今朝見たことをそのまんま伝えたんだけど…」

 

 

「そういやさぁ〜、ウインディちゃんのトレーナーさん、今朝学園の門の前で女の人にチョコっぽい包みもらってたよ〜?」

「のだぁ!?」

「へぇ〜、結構モテるのかなぁ?」

「若いし、働き者だしねー。そりゃあ人気もそれなりには出るんじゃないの〜?わりかし親しげだったし」

「のだぁ〜……」

 

 

「ってことが…」

うん。他に思い当たる節もないし、原因はそれで確定かな。

間違ってたら、オレがただの自惚れ野郎ってことになるが。

まぁ、その時は甘んじて笑われ者にでもなんにでもなってやるさ。

「でもトレーナーさん、彼女いたんだねぇ〜」

クラスメイトちゃんのひとりが意外そうにそう言う。

なにやら釈然としないが、他の子達も一様に頷き賛同していたようなので、そこはスルー。

と言うかスルーしないと凹む。オレが。

「うん?いや、確かに今朝チョコはもらったけどあの人は彼女じゃなくて…」

どうやら、あらぬ誤解を招いたようだったので事情を彼女達に話すことにした。

 

………………………………

 

「あっ、な〜んだ!!そういうこと〜!!」

「良かったねぇ…ウインディちゃん…」

「ごめんなさい!!ウチが紛らわしい言い方したみたいで…」

「あぁ、いやいや、キミは別に悪くないよ」

彼女のやったことといえば、見たことをそのまんま伝えて、そこから想像を膨らませたってだけのこと。

つまりは世間話程度のことだ。

まして今回は話せば解ける誤解である以上、ヘンに拗れた噂でないだけまだいいってもんだ。

何はともあれわかってもらえてなによりだ。

ウインディのクラスメイトちゃん達と別れてしばらくの後…。

「ふぅ…、あとは美浦寮に行くだけかぁ…」

オレはウインディのいるだろう美浦寮に向かい、入り口でヒシアマゾンにウインディを呼んでもらう。

はじめはウインディの様子もあり、何事かと怪訝な表情をしていたヒシアマゾンも、順を追って訳を話すとうんうんと納得してくれて、ウインディを呼んでくれた。

「うぅ〜…」

目の前に現れたウインディは、何やら話したくなさそうだ。

しかしどの道誤解は解かねばならないため、オレは意を決してウインディに話しかけてみることに。

「ウインディ?あのな?」

「ふーんなのだ!!」

話しかけた途端にそっぽを向かれる。

いやぁ、懐かしいなぁこの反応。

…いやまぁ懐かしがってる場合じゃないんだが。

「ウインディ、確かにオレは今朝チョコを貰ったけど…」

「じゃー、ウインディちゃんからのチョコはいらないのだな〜!!つ〜〜ん!!」

チョコを貰ったのが本当だとわかるや、ウインディはますますヘソを曲げる。

って言うか、チョコをくれるつもりだったのか。

「いや、アレは…」

「きく耳もたないのだ〜!!」

ぷんすか、と言った様子でほっぺを膨らませ、そっぽを向くウインディ。可愛い。

けどどうしたもんか。

「いつまでいじけてるんだい!!いいから話だけでもお聞きよ!!」

頑としているウインディに立ち合いとしてそばに居たヒシアマゾンの一喝が飛ぶ。

それを聞いて、ウインディはしゅーんとなる。

後で慰めてあげよう。

「のだぁ〜……」

「ウインディ…、あのな?」

「…なんなのだ?」

一度叱られて冷静になったのか、ウインディはまだお世辞にも機嫌がいいとは言えない状態ではあるが、話くらいは聞いてくれそうな雰囲気になる。

「確かに今朝オレはチョコをもらったさ。けどな、あのチョコくれたの…オレの姉ちゃん(既婚者)なんだよ」

「………へ?」

一気に不機嫌オーラが霧散する。

が、今度は呆けた声を出すウインディ。

「いや、だからな?確かにチョコはもらったけど、アレはウチの姉ちゃん….」

「トレーナー!!」

「うぉっ」

急に大声を出したと思ったら、ひしっと抱きついて来る。可愛い。

「ごめんなのだ〜!!」

どうやら、ウインディから訳を聞くと、予想した通りオレが知らない誰かからチョコを貰ったのが気に入らなかったってので合ってたようだ。

え?なにその可愛い理由。

「ウインディ〜〜!!このこの〜〜!!」

オレは自らのナデナデ欲求に抗えず、いつもより多くウインディを撫でくりまわす。

「ふぇ?」

戸惑う声を出すウインディ。可愛い。

「よ〜〜〜〜〜〜しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし…」

「のだぁ〜!?」

あぁもう、可愛すぎる。ウチのウインディ、可愛すぎるぅぅぅ〜〜!!

「よ〜しよしよしよ〜〜〜しよしよしよしよし…」

それからどれだけ時間が経ったのか、分からなくなり始めた頃…。

「いつまでやってんだい!!」

「あいた〜!!」

ヒシアマゾンに背中をバシッと叩かれた。

もちろん加減はしてくれてるんだろうが、オレはそれで正気を取り戻した。

「エヘー♪トレーナー、ウインディちゃん部屋からチョコもってくるのだ〜♪」

そう言って、とたとたと部屋に戻り、再びやってきたウインディ。可愛い。

どうやらすっかり機嫌は治ったようだ。可愛い。

「トレーナー♪ハッピーバレンタインなのだ〜♪」

それ言われつつ、渡されたチョコは世界で一番美味かった(確信)。

 

 

ふんふ〜ん♪

 

のだ?じょーきげんのりゆーなのだ?

 

ヒ・ミ・ツなのだ〜♪




シングレキャラ出すにしてもさぁ…、このタイミングじゃなくても良い…よくない?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんのバレンタイン その3

バレンタイン回ラスト。

皆さんはどれがよかったですかね。


素直ルート

 

ここはいつものトレーナー室。

そして、二月十四日の今日はバレンタインデー。

廊下はチョコやら恋バナやらの話題でいっぱいだ。

普段は真面目にトレーニングをやっているような生徒達も、そう言った話題に混ざっていることから、やはり例に漏れずそういう年頃なんだろうことが分かって実に微笑ましい。

そんなことを考えていた時だ。

ドタドタドタドタドタドタ…。

キキィ〜ッ!!バタァン!!

「トレーナー!!ウインディちゃんチョコ作って来たのだ〜♪」

そう言って可愛い梱包のされた小さな箱を手に持ちやって来たのは、我がキューティープリティー担当ウマ娘。

そしてウチの可愛い可愛いウインディことシンコウウインディだ。

「おぉ〜!!ありがとなぁ〜ウインディ〜!!」

いやぁ〜、教え子からチョコをもらえるなんて嬉しいもんだなぁ〜。

「エヘー♪お礼ならナデナデでいいのだ〜♪」

そう言いつつ頭を差し出してくるウインディ。可愛い。

「そっかぁ〜!!それじゃ、よ〜〜〜しよしよしよしよしよしよしよし……」

「のだぁ〜♪もうちょっと強くしてもいいのだ〜♪」

ご機嫌だなぁ〜。そんなに嬉しそうだとこっちまで嬉しくなっちゃうよ。

「それじゃ、ご要望に応えてもうちょい強めにするなぁ〜?うりうりぃ〜〜」

「ふふ〜ん。こんどはちょーどいいのだ〜♪」

その後しばらくオレはウインディを撫でくりまわし続けた。

やがて、満足した様子のウインディがチョコが入っているだろう箱をオレに渡しながら言う。

「ウインディちゃんがんばってつくったのだ。食べてほしいのだ〜♪」

「おぉ〜。それじゃ、後で大事にいただくよ。ありがとなぁ〜」

そう言って、受け取ったチョコを机の引き出しにしまおうとすると

「いま!!いま食べるのだ〜!!」

オレの服の袖をグイグイ引っ張りながらそう主張する。可愛い。

「お、おう。わかったよ…。それじゃ失礼して…」

ピリリ…となるべく包装紙を破らないよう気を付けて開ける。

出来れば箱も包装ごと記念にとっておきたいからな。

出来るだけ丁寧に包装を剥がすと何やら青っぽい箱が顔を出す。

そして、その蓋をゆっくりと開けると、ココアパウダーが塗された四角いチョコが入っていた。

「お、これは…」

「ふふ〜ん、ウインディちゃんは今回、なまちょこにチャレンジしてみたのだ〜♪」

なるほど。生チョコかぁ〜。

それなら確かにすぐ食べないとだなぁ。

「すごいなぁ〜。けっこう難しかったんじゃないか?」

「だいじょーぶなのだ。二十回くらいしっぱいしたけど、なんとかりかばー出来たのだ〜!!」

二十回も失敗して、それでも諦めず…。

立派になったなぁ、ウインディ…。

教え子の成長に感涙を禁じ得ないよまったく。

「それじゃ、いただくよ」

しみじみとした感動を噛み締めて、付属していた白いプラスチックの二又フォーク(雪見だい○くについてるみたいなやつ)を生チョコの一切れに突き刺す。

フォークはスッと入り、持ち上げても形は崩れない。

普段作らない人が作ると上手く固まらなかったり分離しちゃったり、けっこうその手の失敗があるらしいが、上手くやったもんだなぁ。

「あむ、モグモグ」

うん。甘過ぎず、苦過ぎず。なめらかな口溶けで程よい感じだ。

オレは好きだなこういうの。

持ち上げたところの断面を見る限りダマになったりもしてなさそうだ。

そう考えるとかなりの完成度なんじゃないか?これ。

「ど、どうなのだ?」

少し緊張した様子で聞いてくるウインディ。可愛い。

オレは口に含んだ分を飲み込むと返事をする。

「美味しいぞ〜、さすがウインディだなぁ〜。よしよし〜」

「エ、エヘ〜、よかったのだぁ〜」

そう言うウインディは、見るからに緊張がほぐれた様子だ。

まぁ確かに、自分の作ったのものを誰かに食べてもらうのってヘンに緊張するしなぁ。

まして、今回は何度も何度も失敗を繰り返したチョコだ。もしこれでダメならと思うと、受けるショックは決して小さなものではないだろう。

だからこそ、オレはウインディに向かい、もう一度、感想を言う。

「美味しかったぞ〜ありがとうなぁ〜」

「のだ〜♪」

寮の冷蔵庫にしまって、後の楽しみに取っておくつもりが、ひょいパクひょいパクと食べ続けた結果、あっという間に完食してしまった。無念……。

「ご馳走様だなぁ〜」

「ふっふん!!来年も期待してまってるのだ〜♪」

腰に手を当ててそう言うウインディはすっかりいつもの調子だ。

「それじゃ、予定してた通りの買い出し、付き合ってくれるか?」

「まっかせるのだ〜♪」

ちなみに、思いの外セール品を買い込み過ぎてしまい、結局ウインディに頼る羽目になってしまってオレの格好がつかなかったのは余談も余談だろう。

 

 

ふふ〜ん♪

 

次はどんなチョコにちょーせんしようか

 

楽しみなのだ〜♪

 

 




筆者的には一番普通でしたね〜。

それでも可愛いウインディちゃんよ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

引かないぞ〜、例え同士デジたんだとしても引かないぞ〜!!

今回はトレーナーサイドのバレンタイン話って感じですな。


年に一度のお菓子の祭典

夕春チョコレートコンテスト

トレセン学園からの参加チームはエイシンフラッシュ、ミホノブルボンの二名で、助っ人はしっかり者のニシノフラワー、クラスメイト達に頼られる学級委員長ことサクラバクシンオー、そしてトーセンジョーダンだ。

エイシンフラッシュは確か父君がプロのパティシエであり、ミホノブルボンは機械のように精密な動きが菓子作りに生かされることだろう。

もちろん、他のチームも見どころいっぱいの豪勢な大会になるだろうことは想像に難くない。

「ふっふっふ…」

まぁ、それに当てられた訳ではないが、オレもたまには手作り菓子とやらを作ってみようと思った次第。

エプロンはいつもしているからいいとして、三角巾とか一体いつ以来だろうか。

いやまぁ、トレーナー寮の自室でやるなら好きな格好で良いだろうと自分でも思うが、なんとなくこの格好がしたくなったのだ。

「ウインディが喜んでくれればいいが…」

用意したのはマシュマロにチョコレート、そしてクラッカー。

最初はホットチョコレートくらいでいいかなぁなんて思っていたが、やっぱりもうちょいチャレンジしてみたい気持ちが沸々と湧き出てきたのだから仕方ない。

ちなみにウインディ自身にこのことは伝えていない。

オレにだって少しばかり驚かせたい気持ちはあるのだ。

まぁ今回のレシピははじめてだしいきなり上手くいくなんて都合のいいことは考えてない。

結構簡単そうだけど。

失敗したならば責任持って自分で食べるつもりだし。

なお、今頃ウインディはクラスメイトちゃん達とイベントを見て回っている頃だろう。

まぁそんなわけでたくさんあっても却って困るだろうし、そんなに量を作る訳でもないしな。

「え〜と…まずはチョコを砕いてスキレットに…ふむふむ」

そう言って、オレはスキレット…はないので小さめのフライパンを引っ張り出す。

まぁ、取手が取れるタイプのやつだし代用はできるだろう。

「しっかし砕くったってどの程度まで砕くんだ?」

粉々になるまでやるのか、ある程度手で割るくらいで良いのか。

細かいことが書いてないのは結構気になるもんで、慣れていないこっちからすれば未知の領域だ。

料理は自炊するんだが、菓子ともなると勝手が似てるようで所々違うからなぁ…。

とりあえず今回は、手で適当に砕いてスキレットに敷く。

間違ってたら知らん。

「えぇっと次は…オープンをあらかじめ200°Cに温めておく…」

ピッピッピっと。

で、温まるまでの間にマシュマロをチョコレートの上に並べておく。

この時ぎっしりになっても問題は無し。と。

レシピとにらめっこしながら、何度も何度も確認する。

「で〜、このクラッカーは…あぁ、つけて食べるのか」

ふむふむ。勉強になるなぁ。

ピンポーン♪

「うん?」

インターホンの音を聞き、玄関に向かう。

「はいはい〜?」

この時間に来客の予定はなかったはずだが…。

「トレーナー、ウインディちゃんがきたのだ〜♪」

おぉ、ちょうどいいタイミングだなぁ。

結構早く切り上げてきたのか?

「ウインディ〜、ちょっと待っててなぁ〜すぐ開けるからなぁ〜」

「エヘー♪ちゃんとまってるのだ〜♪」

玄関を開けるとすぐさま入ってくるウインディ。可愛い。

「のだ?甘い匂いがするのだ〜」

「あぁ、ちょうどお菓子作っててな。出来たらウインディを呼ぶつもりだったんだけど…」

当のウインディが思ったより早くきたもんで、まだ肝心のお菓子は試作すら出来てない。

ビックリさせたかったんだが、まあ過ぎたことを気にしても仕方ない。

「それじゃ〜、ウインディちゃんもお手伝いするのだ〜♪」

「おぉ、助かるけどいいのか?」

「ウインディちゃんがやりたいのだ〜♪」

いい子だなぁ〜……。トレーナー感激。

「それじゃ、ここにマシュマロを乗っけてくれるか?」

「任せるのだ〜♪」

ウインディはそういうやひょいひょいとマシュマロを乗っける。可愛い。

「それじゃ、後はオーブンにこれを入れて十分くらい待とうか」

「のだ〜♪それじゃ、そのあいだトランプでもするのだ〜」

十分じゃババ抜きも終わらないとは思うが、まぁウインディがやりたいなら別にいいか。

待ち時間でトランプを取り出して、ウインディと遊ぶことに。

そんなこんなで完成したのはスキレットスモア。

とろけるチョコとマシュマロをクラッカーにつけていただくらしい。

「それじゃ、食べようか?」

「エヘー♪おいしそうなのだ〜♪」

オレが試しにクラッカーにつけて食べてみると、ウインディもそれに傚う。

「う〜んあまいのだぁ〜」

幸せそうに食べるウインディ。可愛い。

既製品もいいが、こういうのは自分で作って食べてもいいもんだ。

「美味しいのはきっとウインディが手伝ってくれたからだなぁ〜」

しかし、コレはまた作るにしても本当にたまにだな。うん。おもに糖分とかカロリー的な意味で。

「エヘー♪まっかせるのだぁ〜」

その後、案の定と言うべきか体重の増量に悩まされたウインディだったが、あまり日を置かずに体重が戻ったのはさすがウマ娘と思った。

こりゃホワイトデーはもっと凝ったもんでも良さそうだなぁ〜。

 

 

おいしかったのだ〜♪

 

のだ?そんなに食べてだいじょぶ?なのだ?

 

ふっふん。ウインディちゃん昔っからあんまり太んないのだ〜♪

 

のだ?みんな?目がこわいのだ〜〜!?

 




百話目どうしよっかなぁ……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

まさか話数が三桁いくとは……。

ウインディちゃん側の過去(妄想)編。


ここはトレセン学園のトレーナー室。

オレはいつもの如くパソコンの前で作業を行なっていた。

カタカタカタカタカタッ…。

変わったことといえば…。

カタカタカタカタカタカタ…。

「エヘヘ〜♪」べったり

ウインディがトレーナー室にやって来るなり急に後ろから抱きついてきたことくらいか。

キーボードを打つ手を止め、ウインディに話しかける。

「ウインディ〜?どうした〜?」

ウインディはオレの背中に寄りかかるように引っ付いて、仕事の様子を眺めている。可愛い。

「ん〜、ヒマだったからトレーナーのお仕事みてたのだ〜♪」

まぁ〜確かにトレーニング開始まで後一時間以上あるが。

「あむあむ〜♪」

甘噛みまでし出したなぁ〜。可愛い。

「よ〜しよしよし……」

ちょうど撫でやすいところに頭があったので、撫でてみるとご満悦の表情を浮かべるウインディ。可愛い。

「♪〜〜」

こうやって甘えて来ることが増えたのも、やっぱりレースが近づいて緊張しているのが原因なんだろうか。

しっかりしないとなぁ〜。

ここまでウインディが気を許してくれている以上、その期待を裏切りたくはないし。

ウチのウインディことシンコウウインディ。

彼女は今でこそダートウマ娘のホープとして周囲の信頼や期待を背負ってこそいるものの、中等部時代の彼女はやんちゃの盛りだったそうだ。

と言うのも、彼女は幼少の頃より両親の愛情をこれでもかと受けて育った。

これは本人から聞いた話だから間違いない。

特に父親は幼い彼女がかまって欲しそうに服の裾を引っ張ると、どんなに忙しい中でも必ず相手をしてあげていたほど溺愛していたらしい。

それ故か、ウインディは両親が家にいる時は基本的にべったりで、同年代の子どもと遊ぶということにあまり関心を示さなかった。

ただ、ウマ娘であるが故に走ることは大好きで、勝っても褒めてもらえたし、負けても慰めてもらえたそうだ。

彼女がトレセン学園に入学したのは、かけっこで一着を取っていつものように両親に褒めてもらっている最中のことだった。

「キミ!!トレセン学園に入学してみないか?」

スカウトにそう声をかけられた彼女は困惑していたが、両親はたいそう喜んでいたという。

まぁ無理もない。

何せ、トレセン学園と言えば日本で知らない者はいないほどの超エリート学校。

広く門を広げていることで有名だが、そこのスカウトの目に留まったということは誰の目から見ても名誉なことだったのだ。

歓喜に震える両親に、彼女は嫌だと言ってその表情を曇らせて欲しくない。

それを思えば孝行娘の彼女は頷くしかなかった。

「がんばるのだ〜!!」と、明るく振る舞って。

そして小学校の卒業と同時に、彼女はトレセン学園の寮で暮らすことになったそうだ。

同室の子は不安ばかりだった彼女に優しく接してくれた。

しかし、幼い頃から両親にべったりで、誰かと遊んだりに関心をあまり示さない子だった彼女が、同年代の子たちと果たして友好関係をうまく築けるだろうか。

「う〜……」

答えは否だった。

クラスメイトに話しかけてくれる子も中にはいたが、言葉が詰まって上手くいかなかった。

結果、あちらが気を遣って「ごめんねー?」といって物理的にも精神的にも距離を取られてしまう日々。

「辛ければいつでも帰ってきていい」

両親は入寮する日にそう言ってくれたそうだし、実際何度もホームシックにはなったが自身より遠くから入学してきた子たちを思うとそう切り出すのも憚られた。

多分だが、この頃のウインディを本当に心から気にかけてくれていたのは寮長のヒシアマゾンと同室の子の両者くらいなものだったろう。

無論、教官やトレーナーといった教職員も相談に乗ろうとはしたが、見栄からか、それともから元気か、彼女はそれにも乗り気ではなかった。

やがて、模擬レースや選抜レースの話題が上がるようになってもすっぽかすようになってしまう。

かと言って、彼女が本質的にかまってちゃんなのは変わらず、しかし素直にもなれない彼女が最終的に至ったのはいたずらっ子という道だった。

最初こそ気が咎めたが、慣れて来ると次第に楽しくなって来る。

「ふふ〜ん♪ウインディちゃんワルなのだ〜♪」

結果、教員に注意を促されたり、叱られたりして時たま渋々走ったりもしたが、そんな時に走っても結果が振るうはずも無く…。

緊張のあまり教職員に噛みついてしまうことも少なくなかったそうだ。

「ガブーーー!!」

「痛〜〜?!」

結果、同期の中でも腫れ物に触れるような扱いをされるようになったのだった。

「ふ〜ん!!べつにウインディちゃんはいっぴきおーかみでいいのだ〜!!」

だからこそ、あの日のスカウトは運命だったのかもしれない。

そう思うと笑みがこぼれる。

「エヘー♪トレーナー、ありがとなのだ〜♪」

「うん?どうしたんだ急に?」

「急に言いたくなったのだ〜♪」

「そっかそっかー。よ〜しよしよし…」

ナ〜デナデナデ…。

「のだ〜〜♪」

 

 

のだ〜?

 

ウインディちゃんがトレーナーにかみつくりゆーなのだ〜?

 

おちつくからなのだ〜♪




妄想100%
収拾つかなそうだったのでだいぶ端折りました。
間違ってたら知らん。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

マス○ーデュエルで弟にボッコボコにされました……。

誰か、マ○クドチョッパーで勝てるデッキレシピおせーて…。


「よ〜しよしよし、ウインディ、そっち持ってなぁ〜」

「まっかせるのだぁ〜♪」

ここはいつものトレーナー室。

今は今日分のトレーニングも終わり、ここに設置してあるコタツを片付けているところだ。

最近はそろそろ暖かくなってきたし、何か機会がないとずっと置いてそうなのがなあ。

コタツの魔性というか、不思議な力というか…。

そんなモノがあるような無いような気がしてならない。

かと言って後々までダラダラと置いておくのも良くなかろうと思ってのことだが、ウインディ自身が乗り気で良かった良かった。

「せ〜ので持ち上げるぞ〜?せ〜のっ!!」

「のだぁ〜っ!!」

オレとウインディは二人で天板を持ち上げる。

別にそれほど重いもんじゃないが、面積的にぶつけると危ないしな。

「よ〜し、そのまま横に移動するぞ〜?落とさないようになぁ〜?」

「りょーかいなのだ〜♪」

少しずつ少しずつ、横に移動し、いったん来客用の机の上に置く。

どうせこの時間にアポは無いし、ちょうどいい。

「ふぅ。次にコタツ布団をたたむぞ〜!!」

「それじゃ〜、ウインディちゃんこっちおさえとくのだ〜♪」

そう言って、両端を床に押さえつけてくれるウインディ。やさしい。

「おぉ〜、助かるよ〜」

「エヘー♪もっとほめてもいいのだ〜♪」

そんな掛け合いをしつつ、二人がかりで正方形の布団を四つ折りにして、袋にしまう。

後でちゃんと洗いに出さないとなぁ。

流石に汚れたり湿気ったこたつ布団にウインディを入れるわけにはいかないしなぁ。

「よし。あとは抜いたコンセントをグルグルっと束ねて…」

「物置にしまうだけなのだなぁ〜」

「そうそう。よく覚えてたなぁ〜。エラいぞ〜」

後でナデナデしてあげなきゃ(使命感)。

「エヘー♪それじゃ、ウインディちゃん持ってくのだ〜♪」

そう言ってコタツの本体を抱えるウインディ。可愛い。

「いや、一緒に持ってこう」

何かの拍子に怪我でもしたら目も当てられない。

「のだ?ウインディちゃんならダイジョブなのだ〜?」

「いや、足元が見えないと困るだろ?」

そのまま廊下ですってんころりんなんてしてみろ。泣くぞ。オレが。

「のだっ!?しんぱいしてくれてるのだ〜?」

目をキラキラさせてこちらを見て来るウインディ。可愛い。

「そりゃあな。すぐ近くとは言え、途中で段差なんかもあるし」

コタツはまた買えばいいが、ウチの可愛いウインディはそうもいかない。

「それじゃ、きょーどーさぎょーなのだなぁ〜♪」

うん?共同作業って…。

その言葉に、オレの思考は一瞬フリーズする。

「ちょっとウインディちゃん?その言葉どこで習ったの?」

声が震えていないだろうか。慎重にそう問いかけるオレ。

だが、少なくとも日常生活で使う言葉でないのは確かだ。

「のだ?ゴルシがきょーどーさぎょーはなかよしのコツっていってたのだ〜?」

コテンと小首をかしげるウインディ。可愛い。

間違っては無いが、その響きは何と言うか、その…色々と誤解を招かないか?

とは言えず。

「……………まぁいいか。それじゃ、隣の物置まで一緒に運ぶぞ〜」

「りょーかいなのだ〜♪」

後であのフリーダムウマ娘…もといゴールドシップには問いたださないとなぁ。

「よいっしょ…ここなのだ〜?」

物置の扉を開けて、中に踏み込んでしばらく。

コタツをしまうためにと、ちょうど開けておいた場所に辿り着いた。

「そうそう。ここに置こうなぁ〜」

ゆっくりゆっくり…床やコタツを傷めないように慎重に置く。

掃除なんかは欠かさずしてもらっているため、ホコリが立ったりなんかはしないだろうが…。

ふぅ。取り敢えずこれでコタツは何とか片付いた。

空いたスペースには何か置こうかな。

「それじゃ、トレーナー」 

「ああ、お疲れさん。お茶でも飲むか?」

「それより、ウインディちゃんと遊ぶのだぁ〜!!」

そう言って背中に飛びついて来るウインディ。可愛い。

……まぁ、ゴールドシップの件は後でもいいか。

そんなことより……。

「よ〜しよしよし、それじゃなにして遊ぶ〜!?」

「エヘー♪こないだのゲームがいいのだ〜♪」

こないだの?あぁ、あれかぁ〜。

あの積み木ゲームかぁ…。

「そっかそっか〜!!」

「のだ〜♪」

ウインディ、いつもトレーニング頑張ってるし、たまにはご褒美は必要だよなぁ〜。

え?全然たまじゃないって?

ま、結果出てはいるし多少はね?

「よ〜し、それじゃあ三十分後にトレーナー寮の前に集合だなぁ〜!!」

「わ〜い!!たのしみなのだ〜♪」

 

 

うわはは〜!!

 

ここなら崩れないのだ〜!!

 

トレーナー、つぎそこいくのだ〜?

 

また崩れたのだぁ〜♪

 




大体やりたいことやる前に負ける印象。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新実装は…アヤベさんですかそうですか…。

これは、まさかの一周年でウインディちゃん実装がワンチャン……。

え?ない?


それはとある日のトレーニング後のことだった。

「の〜だっ、の〜だっ…」よじよじ

「どうした〜?ウインディ〜?」

なにやらウインディが着替えに向かうでも無く、オレの背後でもぞもぞやっている。可愛い。

「ちょっとじっとしてるのだ〜…」

などと急に言われるも、何か訳があるのかと思い、言われるがままになっておく。

「うん?別に構わないけども…」

そして、少し経った頃。

「エヘー♪かったぐ〜るま〜♪な〜のだ〜♪」

ふむ。どうやら肩車して欲しかったらしい。

可愛すぎるんだが。

「でも急にどうしたんだウインディ?」

ご機嫌なウインディにふと気になったことを問いかけてみる。

「のだ〜…ゆうべ見たちっちゃいころの夢でよく肩車してもらってたのを思い出して、むしょーにやりたくなったのだ〜♪」

恥ずかしいのか、ノスタルジーな気分になっているのか、ウインディは照れるような口調でそう言う。可愛い。

ふむ。なるほど。理解した。

「そっかぁ〜、それじゃ仕方ないなぁ〜」

「のだっ!?ダメっておこらないのだ〜?」

怒られると思ってたのか。可愛い。

「怒んないよ〜、このくらい言ってもらえればいくらでもするさ」

そもそも登られてから怒るくらいなら途中で何かしら抵抗もするだろうし。

「トレーナー…」

「それにな…」

「それに?なんなのだ〜?」

ウインディが気になったのか、上から覗き込むように聞いて来る。可愛い。

「トレーナーってのは担当ウマ娘のフィジカルだけじゃなく、心にも寄り添うもんだろ?だからいいんだよ、このくらい」

色々と成長しているとは言え、まだまだ子ども。

複雑な時期ではあるが、だからこそ担当トレーナーたる自分が支えてあげねばなるまい。

……トレーニングの影響で筋肉質なせいか、ちょっと重いが。

「エヘー♪それを聞いてあんしんしたのだ〜♪」

そういうと、ウインディは顔を上げて元気に叫ぶ。

「それじゃー、トレーナー!!あのゆーひにむかって走るのだ〜〜!!」

おおぅ、何かのドラマの影響かぁ?

きっと今、ウインディはいい顔で空を指差しているんだろう。

想像しただけでもう可愛い。

「了解したぞ〜!!ウインディ〜!!」

まぁ、ちょうどいい運動になりそうだしいいか。

そう思いタッタッタッと駆け出すオレ。

「うわっはっは〜!!楽しいのだ〜♪」

「そりゃあよかったよ」

そのまま学園外周のトレーニングコースまで走り出すオレとウインディ。

周囲の視線が気になるが、まぁいいか。

「ごーごーなのだ〜♪」

当のウインディもすっかりハイテンションだ。

しっぽもぺちぺちと背中を叩いてくる。可愛い。

実際、走る側になってみると色々と気付かされることも多かった。土手のあたりで釣りをしているウマ娘や、先日商店街で八百屋の手伝いをしていたウマ娘、一心不乱に疾走しているウマ娘もいたし、公園でヒーローごっこをしているウマ娘を見かけた時は、降りたがったウインディをいったん送ってベンチで自販機で買った缶コーヒーを片手に休憩を挟む。

しばらくしてホクホク顔のウインディを再び肩に乗せ出発。

惣菜屋でコロッケを買い、ウインディと食べる。

美味しい。

その後しばらく駆け回り、校門前まで戻って来ると満足した様子でウインディは肩から飛び降りた。

が、しかし…。

「あっ、やっぱりちょっと待つのだ」

何か忘れ物?いや、肩の上に何か置くなんてできないと思うが…。

「うん?別に構わないけど…」

「ニシシ〜♪」

ひょいっと背中に飛びつくと、ウインディは今度は慣れた様子で肩まで上がって来る。

すると…。

「あ〜〜…」

うん?あ〜〜?

「ガブ〜〜ッッッ!!」

「あ痛〜〜っっ!?」

いつもの噛みつきだったね。可愛い。

「ふっふん♪こーしないとウインディちゃんはちょーしがでないのだ〜♪」

肩から飛び降りて、いたずらっ子の笑顔でそう言うウインディ。可愛い。

「トレーナー!!ウインディちゃんは勝って勝って勝ちまくるのだ〜〜!!」

それは、まさに初対面の時のような闘志に満ち満ちたウインディの姿そのものだった。

 

ウインディのクラシックレースが幕を開ける。

険しい道のりだろうが、オレはウインディと共に駆け抜けてみせるとも。

 

 

う〜〜ん………。

 

昔されたかたぐるまとはなにかがちがうのだ〜?

 

このぽかぽかは、なんなのだ〜〜?

 

 

……まぁ、そのうちわかるのだ〜♪




なんで頑なにウインディちゃん出さないん?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんの実装が遠のいたと言うことはつまり……。

……まだ好き放題設定を盛れるってことなんじゃないか?


「第二回!!春の金船障害開催〜〜!!」

どんどんぱふぱふ〜〜!!

「は?」

スピーカーから響いて来るその声に、オレは唖然とする。

「お〜うどうしたウイトレ!?佃煮にしたイナゴが突然胃袋の中で跳ねたみたいな顔しやがって〜」

「いや、どんな顔だよそれ?」

って言うか、どっから見てるんだ?

オレは周囲をキョロキョロと見回すが声の主…ゴールドシップらしき人影は見当たらない。

今朝方指名されたウマ娘と担当トレーナー、その他一部スタッフはダートレース場に集まれとメッセージが来たから何事かと思って足を運ぶと、そこにはやる気満々のダートウマ娘達(二名+α)の姿。

その中にはもちろんウチの可愛いウインディもいる。

「あっ、トレーナー!!」

ウォーミングアップをしていたウインディが、オレと目が合うなりぱたぱたと走ってやって来る。可愛い。

「ウインディ!?一体どうしたんだ!?」

「のだ〜?ゴルシがせつめーしてなかったのだ?」

どうやらオレにも詳細が伝えられているものと思っていたようだ。

「あぁ、すまない。それでよければなんだが、この催しは一体何なんだ?」

「のだ〜。ざっくりいうと、前回やってたきんふねしょーがいのダートばん?なのだ〜」

「そっかぁ〜。満点の説明ありがとなぁ〜」ナデナデ

「のだ〜♪」

さて、ゴールドシップを探すか。

「説明しよう!!」

「うお!!観客席の下からゴールドシップがニュッと出てきた!!」

「今回はゴルシちゃんのゴルシちゃんによるゴルシちゃんのためのダートレースだぞ♪」

う〜ん。説明されても分からん。

まぁ、トレーナー学校でも担当になったウマ娘とのさまざまなコミュニケーション方法なんかも教科書に載っていたものだが、米印で『ただし、某黄金の一族が相手の場合は例外である』なんて書かれてたくらいだ。

「って言うか、理事長の許可は…」

「あん?降りてるぞ?」

「まじでか」

「おう。“了承!!生徒の自主性に任せる!!”って言ってたな」

随分とあっさり許可したなぁ。まぁ、あの人もあの人で大概トレバカ脳だからなぁ…。

なお、観客は放送で呼ばれた関係者に加え、暇してた生徒達まで集まりなかなかの盛況ぶりだ。

中には出店まで構える猛者まで現れるという。

この短期で出店の許可にまで手を回せるとか、割とゴールドシップはやり手なのかも知れない。

「さぁ〜〜!!出走するウマ娘がゲートイン!!まず一人目は〜……」

「うっらら〜!!たのしみだねー!!」

「一枠一番!!ハルウララ〜!!」

おお、参加者の方はちゃんとしてそうだ。

しかし、ハルウララ…相変わらず楽しそうだなぁ。

「ウララちゃ〜んファイトだよ〜〜!!」

「ありがと〜〜!!がんばるからね!!」

なお、相変わらずの人気者ぶりだ。

「続いて二枠二番!!アグネスデジタル〜!!」

「お、おひょ〜!?推しに挟まれるとか天国ですかぁぁぁ〜?」

……あの子は大丈夫なのか?いろいろと。

「そして三枠三番!!シンコウウインディ!!」

「やってやるのだ〜!!」

……可愛い!!(キリッ)

「さぁ〜〜!!第二回金船障害、いまゲートオープンだぁ〜〜!!」

「のだぁ〜〜!!ウインディちゃんがぶっちぎってやるのだ〜〜!!」

「最初の障害物にたどり着いたのはゴルシちゃんのイタズラ仲間、シンコウウインディ〜〜!!」

なお、内容は前回と同じらしい。

ひとつ目は粉の中から手を使わずにアメをとる奴。

ウインディは粉の中に漢らしく顔を突っ込んだ。後で拭いてやるからなぁ〜〜。

「よ〜し!!シンコウウインディ、第一障害クリアーー!!」

続いてやって来たのはアグネスデジタルだが……。

「ヒィィィィ!!推しが顔を付けた粉に顔を突っ込むだなんて、恐れ多すぎますぅ〜〜!!」

「おっ、じゃあリタイアすっか?」

「はいぃぃぃぃ!!」

「おい、三人の参加者のうち一人がまさかの第一障害でリタイアっていいのかそれ」

「おもしれーからよし!!」

ゆるいなぁ〜。

「アメ玉おいしーねー!!」

その間に追いついたハルウララが、見事にアメ玉を拾い上げ次き向かう。健気だ……。

「さぁぁぁぁ、次は早着替え〜〜!!」

ノリノリだなぁ〜。

試着室がそのままレース上に用意されると言うヘンな周到さまである。

そして、最初に飛び出して来たのは……。

「あ〜〜っと、シンコウウインディ!!婦警さんの格好だぁ〜〜!!」

「うはは〜!!タイホしちゃうのだ〜〜♪」

ノリノリだなぁ〜。そして可愛い。

「続いてハルウララはぁ〜!!」

「わ〜い!!かっこいい〜〜!!」

「戦隊モノのピンクだぁ〜〜!!」

そういやぁ、彼女もウマソルジャーVに出てたんだっけな。

「さぁぁぁぁ〜!!そして最後はぁ〜〜!!借り物競争だぁ〜〜!!」

「前回はキミだったんだよな?」

「おぅ!!だが今回は違うぞ〜!!適正的な意味でな!!」

「ほう。それじゃあ今回はちゃんとしたお題か。興味深いな」

ウインディはお題が書かれているだろう紙を手に取る。

そして中身を見た途端満面の笑みを浮かべ、こちらにやって来る。

「トレーナー!!一緒に来てほしいのだ〜!!」

「ん?オレか?別にいいけど」

お題はさしずめ自分の担当トレーナーってとこか?そりゃあ楽でいいなぁ。

ゴールドシップはニヤニヤしているがどういうことだろうか?

オレはウインディと手を繋いでゴールに向かう。

「さぁ、お題を見せてもらおうかぁ!!」

何故だかオレ達と一緒にゴールに向かうゴールドシップ。

まぁ主催者だから確認するのは間違いじゃないか。

「のだ〜♪コレなのだ♪」

え〜、どれどれ?

『大好きなひと』

……可愛い過ぎか!!

って言うかコレ場合によっちゃ公開処刑では!?

「フゥゥゥ〜♪愛されてるねぇ〜」

なにその酔っぱらいみたいな冷やかし。

「エヘー♪まっさきにトレーナーが思いついたのだ〜♪」

「ウインディ…」

そこまでオレを信頼してくれてるだなんて…。

嬉しいぞ〜〜!!

「よ〜しよしよし、今日はパーっとお祝いしようなぁ〜。」

「エヘー♪たのしみなのだ〜♪」

そんなこんなで話していると

「わ〜い!!わたしもゴール〜〜♪」

どうやらハルウララとアグネスデジタルも…ってアグネスデジタル?

「あれ?彼女は途中…っていうか序盤にリタイアしたんじゃ?」

「おぉ、ウララも来たか。それでお題は?」

「はいこれ〜!!」

『ウママニア』

狙い撃ちじゃねーか!!

「あばばばばばば……手を…推しと手を繋ぐだなんて…恐れ多すぎるぅぅぅ…ガクッ」

……失神したんだけど。

「と、いうわけで第二回金船障害はシンコウウインディの勝利だ〜♪皆の者拍手〜♪」

ゴールドシップがそう言うなり、周囲からは喝采が聞こえて来る。

「……それで、なんで最初から堂々と出てこなかったんだ?」

「それはなぁ〜、実を言うと聞くも涙、語るも涙の大悲劇が…」

ザッ…。

「見つけたぞゴォォォルシィィィィィ……」

「うん?ヒシアマゾ…うぉう!!」

目が、目が怒りに燃えている!!

普段は基本温厚な彼女だけに、正しく鬼の形相と言うに相応しい顔をしている様はこわい。

「なぁぁぁにが金船障害だい!!あの時の写真のネガ!!今日こそ渡してもらうよ!!」

「うわーお!!ウイトレパース!!」

「ちょっ……」

怒れるヒシアマゾンの前に押し出されるオレ。

「邪魔だてするのかい?」

ひぃ!!アマゾン!!

「どうぞどうぞ」

「あってめっ!!裏切ったか!!」

しょうがないでしょうよコレは。

止めたらこっちの息の根止められそうだったんだもんよ。

って言うかグルみたいに言うな。

何やかんやゴールドシップも笑いながら逃げてるし。

「はぁぁぁ…しゅきぃぃ……」

アグネスデジタルは失神しながら何か言ってるし。

「それじゃ、第二回金船障害はこれにて終了!!片付けよろしくなぁ〜〜。あばよっっ!!」

「待てぇえ!!ゴルシィィィ!!」

ドドドドドドドド……。

結局、彼女は何がしたかったんだ?

オレの中でゴールドシップの謎が一つ増えたのだった。

まぁ、ウインディは楽しそうだったしいいかぁ。

 

 

のだ?あつあつ?なんのことなのだ?

 

それよりゴハンなのだ〜♪

 

あっトレーナー!!いっしょにいくのだ〜♪




まぁじっくり待ちますよ。

でなけりゃ、またショック受けそうなんで…‥。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シングレ6巻に一言いいですか?

クラリッザちゃん可愛い!!


「ウインディ、準備はいいか?」

オレは控え室でウインディに問う。

オープン戦とは言え、久しぶりの本番でヘンに緊張していたり、食欲が無くなっていたりしないだろうかと心配だからだ。

「ふふ〜ん。しんぱいしなくても、ウインディちゃんは今日もぜっこーちょーなのだ〜♪」

ピースをしながらそう言うウインディ。可愛い。

これなら、クラシック初戦も問題なく勝利できるかも知れない。

「それじゃ、トレーナー!!いってくるのだ〜!!」

いい笑顔でそう言うウインディ。可愛い。

「おう。ゴールでまってるからなぁ〜」

そう言うとウインディは手を振って返事をした。可愛い。

クルリと振り返り、再びターフに向かうウインディの足取りは堂々としたものだった。

 

「さぁ、はじまりました。曇り空の下、東京レース場で今年初のクラシックダートレース、ヒヤシンスステークスが幕を開けます」

「オープン戦ですが、各ウマ娘大変気合が入っていますねぇ」

「距離は1600メートルのマイルの左回り。バ場状態は少し雪が降った影響があり、やや重との発表です」

「どの子にも頑張ってもらいたいですねぇ」

アナウンサーの声が響く。

ゴール近くの観客席に戻ったオレはカメラを構えつつ、今か今かとゲートが開くのを待つ。

パドックでのお披露目も終え、今まさにレースが始まろうとしている。

「各ウマ娘、今ゲートインです」

「一番人気は八番シンコウウインディ、とてもリラックスしている様子です」

「クラシックに上がって更に成長した姿を見せてほしいですね」

「二番人気は一番ミニロータス。こちらはやや不調気味でしょうか?」

「それでも流石の二番人気といったところでしょうか」

「三番人気は十一番リボンバラード」

「今日こそ勝ちに行きたいですね!!」

緊張の一瞬。

「今、ゲートが開きました!!」

先頭を行くのはリボンバラード。二番手にはハートシーザーがつけている。

三番手にはサニーウェザー、ウインディは四番手か。

「おっと!?これは!?」

アナウンサーが驚きの声をあげる。

「逃げウマ娘三人が横並びになって、シンコウウインディの進路にフタをしているようですね」

こうも露骨にやって来るか。

ウマ娘のレースは出る杭を打つような策が取られやすい。

もちろん他にも戦略はいくらでもあるが、やはり一番の有望株が警戒されやすいのは勝負の世界の常だろう。だが…。

「ウインディ、この二ヶ月ただ遊んでたわけじゃ無いってとこを見せてやるんだ」

オレはそう息巻いて、ウインディをカメラ越しに見るのだった。

 

 

(悪いな。だが勝負の世界ってのは残酷なんだよ)

リボンバラードは心の中でそう呟く。

後は他の二人をどう出し抜くか。

スタミナはどのくらい温存しておくべきか。

加速や減速のタイミングは、などなど考えを巡らせる。

そしてそれは他の二人も同様だ。

(シンコウウインディ。アンタは強いよ。多分ウチらの世代じゃナンバーワンのダートウマ娘だ。文句のつけようも無いほどにね)

(だが、私らだって負けっぱなしは嫌なんだよ)

三人は駆ける。前だけを見据えて、もう脅威でも何でも無いライバルを後ろに。

もう最終コーナー手前、勝負は合ったかのように思われた。

だが……。

「どくのだ…」

!!!

瞬間、背後から何やら恐ろしい気配がする。

「トレーナーがまってるのだ…」

それはまるで、鋭い歯の並んだ巨大な口を開けた怪物に追われているような感覚。

海でサメに遭遇してしまった時のような、あるいは山で熊に追いかけられているような。

そんな感覚が三人を襲う。

「や、やばい…」

「食い殺される…」

「で、でも…どくわけには…」

サニーウェザーは歯を食いしばり、グッと堪えようとするが、隣りのリボンバラードは思わず溜めていた足を炸裂させる。が、余りにも仕掛けるタイミングが悪すぎた。

「そこを…どくのだぁ〜〜!!」

瞬間、シンコウウインディが加速した。

 

 

「おぉ〜っと!!リボンバラード!!早めに仕掛けたか〜!?」

「しかし、まだ最終コーナー手前ですよ?曲がるときに減速するのになぜ今なんでしょう?」

ウインディが空いた隙間から抜け出す。

あのブロックを凌いだのか。ウインディ。

「さぁ、抜け出して来たシンコウウインディが、グングングングン加速します!!」

二番手からは二バ身から三バ身、いや、もっと突き放すか。

「完全に抜け出した!!これは強い!!」

ウインディ、やっぱりキミは最高だ!!

「今ゴールイン!!今年のクラシック戦線!!ダートマイルで今年の初勝ち星を挙げたのはシンコウウインディ〜〜!!」

その声と共に歓声が上がる。

「ウインディ〜〜!!」

声をかけるとウインディは笑顔で駆け寄ってくる。可愛い。

「トレーナ〜〜〜!!」

そのまま華麗にジャンプからの

「ガブーーー!!」

「やっぱりなぁぁぁ〜〜!!」

いつもの流れだね!!知ってた!!

「おお、ジャンプからかみつきまでのロスが短くなっている気がする!!」

「成長してるんだなぁ。うんうん」

そして特に止めないお客さんよ。

まったく。まるでオレが変なヤツみたいじゃないか。

まぁ、ウインディに噛まれるのは最早苦ではないがな!!

 

エヘー♪

 

やっぱりまっててくれたのだ〜。

 

がんばってよかったのだ〜♪

 

 




ウインディちゃんの次になぁ!! 

あとオベイちゃんもトリックスターっぽくてすき。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

星2で新ウマ娘実装…。

コレはウインディちゃんもワンチャン!?


「よしよしよしよし!!頑張ったなぁ〜〜!!ウインディ〜〜!!勝ったなぁ〜〜!!よ〜しよしよしよしよしよし……」

それは東京レース場の控え室でのこと。

オレはついさっきレースを終えたウインディに早速構い倒していた。

もちろん、アイシングや水分補給なんかは済ませた後でだ。

トレーナーの端くれとしてその辺に抜かりは無いね。

「えっへん!!もっとホメてもいいのだ〜〜♪」

ウチのウインディはムフーとご満悦の表情だ。可愛い。

実際、オープン戦とは言えジュニア級に引き続きクラシックの初戦を勝利で飾れたのは大きい。

だからこれはご褒美なのであって決して甘やかしでは無い(キリッ)!!

「よ〜し!!ウインディ!!次はどのレースに出る!?」

オレはカバンからピラっと今後のダートレースの予定表を取り出しウインディに確認を取る。

「ふっふ〜ん!!とーぜん、じゅーしょーのユニコーンステークスできまりなのだ〜!!」

左手を腰に当て、右手で堂々とユニコーンステークスを指差すウインディ。可愛い。

『ユニコーンステークス』。それはクラシック級ダートに於ける最初の重賞であり、G3ながらかつてはダート三冠の一角を担ったこともある重要なレースだ。

尤も、G3とは言え重賞は重賞。

そして、芝・ダート問わず新米トレーナーが一皮剥けて重賞トレーナーとなれるかどうかの鬼門でもある。

実際、ある程度トレーナー歴のある人でもG1勝利の経験者というのは本当に一握りだ。

しかし、ウインディなら出来るとオレは強く深く信じているつもりだし、ウインディの実力も着実について来ているのは事実だ。

なんならG1ウマ娘だって射程内に入る可能性だって十分にあり得る。

「いいねぇ〜、じゃあその前に東京レース場にもうちょい慣れておくためにも青竜ステークスにも出ておこうか〜?ちょうど距離も左回りも同じだし」

オレはウインディに問いかける。

参加の意思はあくまで当人によるものでないとだしなぁ。

「そこはトレーナーにまかせるのだ〜♪」

ウインディはそう笑顔で返してくれる。可愛い。

信頼してくれて嬉しいなぁ。これからも色々と頑張んないとなぁ〜。

「よ〜し、それじゃあ青竜ステークスの開催は五月だな。それまで頑張ってトレーニングしようなぁ〜」

「のだ〜♪」

うんうん。いいお返事だ。可愛い。

レースというのは出場しすぎても疲労してしまうが、走らなすぎてもせっかくのレース勘をなまらせてしまうからなぁ。

「あっ、それとトレーナー!!」

ウインディが不意に声をかけてくる。

「うん?どうした?ウインディ?」

何かあったのだろうか。

まさか、どこか怪我でも!?

オレが身構えていると……。

「ウインディちゃんお腹すいたからどっか食べに行きたいのだ〜……」

お腹を押さえてそう言うウインディ。可愛い。

くぅ…とお腹が可愛くなると、ウインディはテヘヘと照れ笑いを浮かべる。

「よ〜し!!それじゃどこか行きたい場所あるか?」

せっかくのクラシック初勝利だからね!!

それにご褒美があるか無いかは今後のパフォーマンスにも影響するだろう。

トレーナー奮発しちゃうぞ〜!!

もちろん栄養管理は…後ですればいいや!!

「エヘー♪いまウインディちゃんガッツリたべたいのだ〜♪」

「いいねぇ〜。それじゃあこないだ行った焼き肉屋とかどうかな?」 

「さんせーーーなのだーー!!」

ぴょいんと飛び跳ねるウインディ。可愛い。

「それと、寮に帰ったら嬉しいからって夜更かしはしないでな。ちゃんと疲れを癒やすことに専念してくれなぁ〜」

「わかったのだぁ〜♪」

そう言うウインディは、レース後だと言うのに元気いっぱいだった。可愛い。

 

 

う〜〜ん。

 

あの前をふさがれたときの感覚……。

 

あれなんだったのだぁ〜?

 

ふしぎなのだぁ〜〜………。




もうほんと、星一でいいから…。

勝負服は自力で解放しますから…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エルデンでゴドリック倒せて嬉しかったので投稿します。

新シナリオでもウインディちゃん大活躍でしたね。

特にワールドワイドウインディのお昼寝の話すき。

ハロウィンのたい焼きのお話もすき。

って言うかウインディちゃんの出るお話ぜんぶすき。


それは、とある日のトレーニング前のこと…。

「よ〜し出来た。あとはこの書類を…」

トレーナー室でいつものごとく仕事をしていたオレ。

ドタドタドタドタドタドタドタドタ…。

「お?来たなぁ〜ウインディ〜」

そんな呑気に構えつつ、ウインディが扉を開けるのを待っていると…。

バタァン!!

「うわーーん!!トレーナーーーー!!」

「うおぅ!?どうしたウインディ〜!?」

ウインディが扉を開けるなり泣きながら駆け寄ってくる。

何かあったのだろうか?

「く…」

「く?」

「ぐやじいのだぁ〜〜!!」

オレはそう言うウインディに訳を聞くことにした。

「うぅ…実はさっき…」

 

 

「スズカー!!いざじんじょーにしょーぶなのだー!!」

教室にウインディの元気な声が響く。

「……??えぇっと…勝負って?」

いきなり勝負を持ちかけられたスズカことサイレンススズカは困惑している。

と言うのも仮に勝負するとして、距離はマイルで良いが、コースは双方の適正の違いから芝とダートどちらのコースでやるにしてもどちらかには不利に働くためどちらが勝っても「それはそうか」としかならないからだ。

しかしウインディからの提案は意外なもので…。

「ふっふん!!オマエがペン回しが得意という事はわかってるのだ!!」

ネタはあがってるのだ〜!!とビシッと指をさし、ポーズを決めるウインディ。

「え?ペン回し?確かにささやかな特技だけど…ちなみにそれは誰から聞いたの?」

勝負内容がレースではないと知り、安心やら残念やらといった表情を一瞬浮かべると、サイレンススズカは問いを投げかけた。

「ふふ〜ん。ゴルシから聞いたのだ〜♪」

得意満面でそう言うウインディ。

何気にウインディはゴルシことゴールドシップとイタズラ仲間で意外と仲が良い。

「あぁ…」

それを聞いたサイレンススズカは呆れながらも納得した様子だ。

「でも、それでわたしに勝ったとしてどうするつもりなの?」

ウインディに再び問いかけるサイレンススズカ。

「のだぁ〜♪トレーナーにホメてもらうのだぁ〜」

ニコニコしながらウインディはそう言う。

その言葉に、ふとサイレンススズカは更に質問を投げかける。

「?貴女、自分のトレーナーに褒められた事がないの?」

「のだ?そんな事ないのだ?むしろいっつもホメてもらってるのだ〜♪」

「それじゃ、なんで?」

「もっと勝っても〜っとトレーナーにホメられたいからなのだ〜♪」

ニコニコ笑顔でそう言うウインディは尻尾をブンブン振ってワクワクを隠しきれない様子だ。

「そう…」

そう言うとサイレンススズカはペンを取り出す。

「のだ?やるきになったのだ〜?」

「休み時間の間でいいならね」

そう言うサイレンススズカはまんざらでもなさそうだ。

そして、約十分にわたる激闘を制したのは……。

 

 

「サイレンススズカだったと…」

「のだぁ〜……」

そっかぁ〜なるほどなぁ〜。

でもまぁ…これはこれでいい傾向…なのかな?

何であれ、負けず嫌いなのは良いことだ。

少なくとも負けて泣き寝入りするよりは遥かに良いし、その悔しさは必ず宝になる。

ウチのウインディはクラシック級になってもまだまだ成長できる余地がある。

それがわかっただけでも収穫だ。

なにより、誰にでも物怖じせずに挑みに行くその姿勢自体は良いものだ。

失敗や敗北をバネにできるのはそれだけで強みだし。

…まぁ、今回の内容はペン回しだったわけだけど。

未だに悔しがり落ち込むウインディに、オレは声をかける。

「じゃあウインディ。その悔しさをトレーニングにぶつけようか!!」

これを機にもう少しキツめのトレーニングをしてみても良いかもしれない。

もちろんそれが原因で怪我をしたりなど無理のない範囲でというのが大前提だが。

「分かったのだ〜!!でも、その前に…」

「うん?」

とてとてと歩いてこっちに来るウインディ。可愛い。

「ナデナデして欲しいのだぁ〜♪」

そういうと、ウインディは甘えたそうに頭をこちらに向けてくる。

え?この子ちょっと、いやかなり可愛い過ぎない?知ってたけど。

「よ〜しよしよしよしよしよし…」

「のだぁ〜♪」

「ウインディは強い子だぞ〜」

「エヘー♪しってるのだぁ〜♪」

その後、ウインディはトレーニングで著しい成長を見せたのだった。

 

 

のだぁ〜…。

 

かってトレーナーにジマンしたかったけど…。

 

これはこれでいいのだなぁ〜♪

 

ウインディちゃんがんばるのだぁ〜♪




なお、筆者はソウル系は脳筋ビルド大好きマンです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

これだけは絶対にあげたかった(鋼の意志)

だれか、ラダーンに勝つ方法おしえて…orz


「よ〜し。トレーナー室の飾り付けはこんなもんでいいかなぁ〜」

今日は三月三日。桃の節句…まぁ要するに雛祭りの日。

女の子の健康や幸福を祈っての行事だ。

なお、地方によっては流し雛と言って厄払いの意味もあったとか。

オレは今日分の仕事を済ませるとトレーナー室に雛人形を置いたりなんだりして準備を進めていた。

まぁ雛人形って言っても、スペース的に本格的な雛壇は難しいので、簡易的な一段だけの雛壇に御内裏様とお雛様の二つと、その背後の屏風に両脇のぼんぼりくらいなもんなんだが。

まぁ、許してくれるだろう。

お雛様を怒らせると結婚が遠のくなんて言われてるし、粗相には扱えない。それなりに高かったし。

ちなみにこう言ったイベントの日には食堂でも特別なメニューが出たりなんかもするそうだ。

多分今日なら菱餅や雛あられがパフェになったり色々とアレンジされていると思う。

「さて、あとは…」

忘れているものがないか、トレーナー室を見回す。

「トレーナー!!」

うん?足音が聞こえてこないと思えば…。

「ウインディ?どうしたー?」

扉の方を見ると、ひょっこり顔だけ覗かせるウインディ。

なにかイタズラでも思い付いたのだろうか。

「トレーナー…、いまからそっちいくけど、わらわないでほしいのだぁ〜…」

「うん?別にオレがウインディを笑うなんてしないぞ?」

「うぅ〜…わかってるけど…わかっててもかくにんしたかったのだ〜…」

何やら悩んでいるようだ。

いつも来慣れたトレーナー室に入るのを躊躇するようなことでもあるのだろうか。

「大丈夫だよウインディ、オレはなにがあっても笑わないから」

できるだけ優しく声をかける。

すると、ウインディも安心したようで

「エヘーそ、それじゃ…入るのだ…」

おずおずと言った感じでトレーナー室に入ってきた。

そして、オレはウインディの姿に驚いた。

「おぉ〜……」

なんと、ウインディは着物を着ていたのだ。

「に、にあってるのだ?」

「もちろん!!どうしたんだそれ!?」

「のだぁ〜…じつは…」

「うんうん」

時はお昼頃まで遡る。

 

 

「ウインディちゃん今日くらいはおしゃれしてみたら〜?」

「のだ?」

「そうそう。今日、いきなり綺麗な格好したらトレーナーさんもビックリするんじゃない?」

「イタズラにもちょうど良いしね〜」

「そ、それってイタズラっていうのかなぁ…」

「大丈夫大丈夫、ウインディちゃん可愛いし、絶対似合うって〜!!」

「のだ〜♪」

 

 

と言う会話があったそうな…。

返す返すもクラスメイトちゃん、良い仕事するなぁ…。

で、実際着てみたら思ったよりも動きにくいわ着慣れてないから不自然だわで四苦八苦しつつ、それでもひと目見て欲しさに頑張ってここまで来たと言う。可愛い。

ちなみにしっぽはちゃんと出せるスリット付きのやつだ。

なんでもウインディと仲のいいクラスメイトちゃんの一人の実家が友禅を取り扱う老舗着物店のオーナーらしい。しゅごい……。

「似合ってるぞ〜ウインディ〜お雛様みたいだぞ〜」ナデナデ

いやもうホント可愛い。

「エヘー♪でもやっぱり動きにくいのだぁ〜…」

まぁ、確かにウインディはどちらかといえば動きやすかったりとか機能的な服の方が好きそうだしなぁ…。

でももうちょっとこの姿を見ていたい自分もいるという。

まぁ、本気で嫌がるなら押し付ける気は無いけど。

「それじゃあ、着替えるか?もう十分見せてもらったし動きにくいのは困るだろ?」

その言葉にウインディは悩んだ様子で言う。

「う〜ん…でもトレーナーがにあってるっていってくれたからウインディちゃんもうちょっときてるのだ〜♪」

可愛い。

「それじゃ、せっかくだしちょっと出かけるか?」

「のだぁ〜♪ちょうど出店もでてるから一緒に見て回るのだ〜♪」

ルンルンで隣に来ると手を繋いでくる。可愛い。

「エヘー♪今日はトレーナーとおみせまわるのだ〜♪」

「ハハハ、ホントにお雛様みたいだなぁ」

おてんばの、が頭につきそうだが。

「それならトレーナーはおだいりさまなのだなぁ〜♪」

なんて返される。可愛い。

そのまま二人で中庭に行くと、生徒たちが経営する出店で買い食いし、ベンチで休んだり、お話ししたりしたのだった。

なお、他のウマ娘とトレーナーもちらほら見受けられた。

…たまにウマ娘側の目が怖かったけど。

まぁ、こう言う日もいいもんだなぁ…。

 

 

エヘー♪このふく、うごきにくかったけどトレーナーがホメてくれたからよかったのだ〜♪

 

やっぱりトレーナーはウインディちゃんのおだいりさまなのだなぁ〜♪

 

のだ?いみ?とってもなかよしってことじゃないのだー?

 

 




ウインディちゃんなんやかんやで和装も似合うと思うんですよねぇ〜。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

今回のキャラガチャ無料十連…ハヤヒデとブライアンの姉妹が出ました。ピックアップェ…。

なお、サポートの方はトプロちゃん一枚きましたねぇ。


小春日和と言えるような晴れた日のこと。

オレは理事長室に呼ばれていた。

とは言っても今回はお叱りではない。

たづなさんもいつもの温和な様子だったし、誤解を招くような言動も最近はしてない…はずだ。

それで、オレが呼び出されたその理由とは…。

「ウチのウインディに取材ですか?」

そう。なんと今回、ウインディに取材の話が来たのだ。

まぁ、取材対象はウインディだけでは無く、大方の初戦を終えた今年のクラシック級ウマ娘達の意気込みやら、今後の目標なんかを軽く聞くだけで、そんなに肩肘張らなくてもいいようなものらしいが。

「ええ。もちろんヘンなのは私がはじいてありますが、どうしても受けたくないというなら辞退するのもアリだと思いますよ?」

ふむぅ。

まぁ、確かにウインディはちょっとばかり人見知りと言うか緊張というか、初対面の相手を警戒しがちなところがあるのは確かだ。

いや、それが別にレースの観客ならいいようなんだが、一対一となると急に警戒するのだ。

だから、すぐさま即答はできなかった。

「ウインディと相談して決めます」

そう答えたオレに、たづなさんは笑顔で頷いた。

「ええ。では次の日曜日までに決めておいてください」と返してくれた。

「しっかし、ウインディに取材かぁ…」

トレーナー室に戻ったオレは椅子にもたれかかりながらそうつぶやく。

まぁ?ウチのウインディがちょー可愛くてちょー強いのは確かだし?

ウインディのこれまでの頑張りをサポートしつつ見守って来たトレーナーとして?鼻が高いってのもあるし?

いやまぁ…もちろんだからって慢心や油断はできないけども…。

「にしても、こないだのヒヤシンスステークスのレース中に見せたあの気迫は…」

一応、噂程度には聞いたことがある。

一定以上の強さや素質を持つウマ娘が到達できる領域…とかなんとか。

聞いた時は頭から否定はしないまでも、言語化しがたい天才の感覚の説明のようなもので正直眉ツバだと思ってはいたが…。

「こそ…こそ…」

もっとも、それが現れたからと言って何か日常生活に支障をきたすことはないそうだが、万が一ウインディに何かあっても嫌だしちょこちょこ確認してはいる。

「そろそろ〜…なのだ〜…」

何せ、ウインディはオレにとって特別な子だ。もちろんヘンな意味じゃ無く。一番最初の教え子で、はじめこそ難儀したものの、今となっては素直に慕ってくれてるし。可愛いし、落ち込んでても元気もらえるし、可愛いし、癒されるし、可愛いし、可愛いし…。

まぁそんな訳でウインディ自身にそれとなく聞いても特に変わったところもないし、かと言って嘘をついてまでやせ我慢してる風でも無かったし…。

かと言ってあの時のことを聞いてもイマイチ思い出せないようだったしなぁ…。

「わ〜っなのだ〜!!」

「うおぉぉう!!ビックリしたぁ〜!!」

考え事の最中に、背後から急に大声が聞こえて驚く。

「エヘヘ〜、イタズラだいせいこーなのだ〜♪」

ニコニコとご満悦の表情のウインディ。可愛い。

「ウインディ〜!!このこの〜!!」

オレはウインディを捕まえるや、流れるように頭にナデナデをお見舞いする。

「のだぁ〜♪」

「よ〜しよしよしよしよしよし…」

「エヘー♪もっとなでるのだぁ〜♪」

それから十五分ほどが経過した頃。

「のだ?ウインディちゃんにシュザイなのだ〜?」

ソファにもたれ掛かりながら小首を傾げるウインディ。可愛い。

「うん。まぁ取材って言っても今回は本当に簡単なものみたいだけど、受けてみたい?」

「のだぁ〜…」

なにやら考えるそぶりを見せるウインディ。可愛い。

「まぁ、ウインディは強いからなぁ〜。勝てば勝つほど、どしどし取材が来るかもだから、今回は敢えてパスってのも悪くないと思うし…」

「う〜ん…」

「何をそんなに悩んでるんだ?」

こう言ってはなんだが、意外だと思う。

と言うのもウインディ自身かなり正直な子で、こう言うのは受けるにせよ受けないにせよキッパリ決めるタイプの子だし。

「だって…」

「だって?」

「かつたびにシュザイをうけるんならしょーじきメンドーなのだぁ〜…」

うん?

「って言うと?」

「だってトレーナーがいるかぎりウインディちゃんはまけるわけないから、毎回時間をとられるのはめんどーなのだ〜!!」

プリプリと言った様子でとんでもない事を言うウインディ。

信頼してくれているのは嬉しいがまさかそこまでとは…。

こりゃあこれからもトレーニングや諸々頑張んないとなぁ!!

「そうかぁ〜!!それじゃ、この一回は受けといた方がいいなぁ〜!!」

ポンポンと頭を撫でるとウインディは「のだ?」と疑問を投げかけて来る。

「目指すはダート王!!そうだろ?ウインディ!?」

ここまで自信をつけたウインディに、オレも応えなきゃなぁ。

「ふっふ〜ん!!とーぜんなのだ〜!!」

その後、オレとウインディが受けた取材を元とした記事には『シンコウウインディ、早くもダート王に名乗りか!?』の文字がデカデカと載っていた。

 

 

ふっふ〜ん。

 

やってやるのだぁ〜。

 

トレーナーといっしょに勝って勝って勝ちまくるのだぁ〜♪




実際キタちゃんって強いんです?
貯金してる勢の筆者はこんな機会でもなきゃ引かないのでよく分からんのです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

今日はホワイトデー…いや、ただの平日だな!!

ウインディちゃん熱は未だに冷めておりませんのでご安心を…。


三月十四日。

バレンタインデーからひと月過ぎた今日は世に言うホワイトデー、つまりはバレンタインのお返しの日だ。

そして、オレもその準備は当然してある。

「ウインディ〜!!ホワイトデーだぞ〜!!バレンタインのお返しだぞ〜!!」

その日の朝、トレーナー室でオレはそう言ってチョコを差し出す。

あいにく時間がなかったため、手作りとはいかなかったが時間の許す限り考えに考えて選んだチョコだ。喜んでもらえるとこっちも嬉しい。

「のだ〜♪ありがとなのだトレーナー!!」

受け取り際、素直にお礼を言って来るウインディ。可愛い。

「よしよし。どこか行きたいとことか、食べたいものとか、したいこととかあるか?今日は特別に奮発しちゃうぞ〜?」

スケジュール的にさすがに遠出は難しいが、まあ日帰りプチ旅行くらいなら許容範囲だ。

そのために、今日はトレーニングをお休みにしてるしな。

「のだぁ〜…なんでもいいのだ?」

「もちろん!!ウインディのことで、オレに二言はない!!」

「それじゃあそれじゃあ!やってみたいことがあるのだ!!」

目をキラキラさせてそう言うウインディ。可愛い。

「うん?やってみたいこと?」

「のだぁ〜♪」

 

……で、今に至ると。

「トレーナー♪お茶入ったのだ〜♪」

とてとてと、急須と湯呑みの乗ったお盆を手にこちらにやって来るウインディ。可愛い。

「おぉ、ありがとなぁウインディ」

それを受け取り、ウインディが淹れてくれたお茶をさっそく飲んでみる。

……ちょっとだけ濃い気がするが、まぁ十分許容範囲だ。

いきなり「トレーナーのおせわをしてみたいのだ〜♪」

なんて言って来た時はビックリしたもんだが、割と出来ていることに驚きだ。

って言うか、ホワイトデーにオレが何かしてあげようって話からなんでオレのお世話の話に?って聞いたら、笑顔で「たまにはやってみたかったのだ〜」なんて、いい笑顔で言われちゃあ拒否なんてできないよなぁ…。

その後も、「お茶のおかわりはいるのだ?」とか「かたをもむのだ?」とか、色々と気遣ってくれるウインディ。可愛い。

カタカタ…カタカタ…グゥ……。

そんなこんな、しばらくの間トレーナー室で書類の確認をしていると腹の虫が空腹を告げる。

「そろそろお昼かぁ…」

突如としてなった腹をさすりつつ、時計を見やる。

バタァン!!

「トレーナー、おまたせなのだ〜♪」

そう言うや、少し部屋を開けていたウインディが弁当箱と水筒を持って再びやって来る。

「おぉ、ありがとなぁウインディ〜ちょうどハラ減ってたんだよ〜」

「エヘー♪いっぱいたべてほしいのだ〜♪」

差し出された大きめの弁当箱を受け取り、包みを広げ、蓋を開ける。

「おぉ〜…」

中身はテンプレのようなお弁当。

量もあり、足りないことはなさそうだなぁ。

卵焼きがちょっと焦げてたり、タコさん型に切られたウインナーがちょっと歪だったりしたが、それを差し引いても美味そうだ。

「ちょっとだけしっぱいしちゃったけど…ウインディちゃんがんばったのだ〜…」

弁当の中を見られて照れながらそう言うウインディ。可愛い。

「いやいや、美味しそうだぞ〜?」

そう言って、試しに卵焼きをパクリ。

すると不安げな顔をして、こちらの顔を覗いてくるウインディ。

「うん。美味しいぞ〜?ウインディ〜」ナデナデ

安心させるためにウインディの頭を撫でつつそう言うと

「あんしんしたのだぁ〜」

と、顔を綻ばせるウインディ。可愛い。

しばらくすると、「そうなのだ!!」と机に置いてあった水筒を手にするウインディ。

「おみそしるもあるのだ〜♪」

ウインディはそう言って、水筒の蓋を開けてキャップに味噌汁を注ぐ。

「おぉ〜。良い香りだなぁ〜」

ちなみに具は…油揚げとわかめか、いいねぇ〜。

「至れり尽くせりだなぁ〜」

「おだしからがんばったのだ〜♪」

うんうん。頑張ったなぁ〜ウインディ。

そう言えば、ウインディってあんまり料理のイメージ無いなぁ…。

少なくともバレンタインの時はヒシアマゾンに習いながら作ってたって言ってたし…。

ってことはちょっと待てよ?

「ウインディ…実は結構前から準備してた?」

オレは気になったことを聞いてみる。

よくよく見ると、ウインディの手には慣れない料理の跡…ちょっとした切り傷が。

「エヘ、バレたのだ〜?いちおー、火をつかうさぎょーはヒシアマ姐さんにやってもらったのだ〜…」

照れ臭そうに頬をかくウインディ。可愛い。

「そっかぁ〜、ありがとなぁ〜ウィンディ〜」

ウインディが一生懸命に作ってくれたゴハン…その気遣いに報いるためにも残すわけにはいかんなぁ。

「それで、その…トレーナー…」

「うん?どうした?」

もじもじとしながら、聞きにくいことを聞くように、ウインディは言う。

「このあとも…おでかけはいいから一日いっしょにいたいのだぁ〜…」

いつもの元気ぶりとは違い、珍しくしおらしいウインディ。

耳は垂れ、目は潤み、正に『お願い』の上目遣い。

それを、オレは担当トレーナーとして断れるわけもなかった。

 

 

エヘー♪

 

トレーナーにホメられたのだ〜♪

 

ヒシアマ姐さんといっしょに…

 

しゅぎょーなのだ〜〜!!




料理下手な子が実は陰でコッソリ練習してるのが好き。

まぁ…その…なんだ。

趣味だ!!筆者の!!

今更か!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

110話…まだまだ続くよー!

フ○ムめぇ〜…楽しいゲームを作りよって…。

ありがとうございます!!


「え〜いが♪映画♪トレーナーと映画〜なのだ〜♪」

 

とある晴れた日。オレは今、ルンルンなウインディと共に映画館にまでやって来ている。

それというのも日頃頑張っているご褒美として、前々からウインディの見たがっていた映画のチケットをなんとか取れたからだ。

 

「ふっふ〜ん!!『正義☆オールスターvsヴィラン軍団!』予告編ではヴィラン軍団がヒーローたちをあっとーしてたのだ〜♪トレーナーもいっしょにおーえんするのだ〜♪」

「そうだなぁ〜。きっと勝てるといいなぁ〜」ナデナデ

「のだぁ〜♪」

 

ポップコーンとジュースの置いてあるトレーを持ちながらウインディは鼻歌混じりにそう言う。可愛い。

ちなみに席はウインディの要望で一番前の席を二つ取った。

そうしてはじまった映画だったのだが…。

 

「うぅ〜…」

 

ストーリーの序盤こそヴィラン軍団が圧倒していたものの、ヒーロー達に徐々に押し返されている。

最初こそイキイキと応援していたウインディも、この調子では泣いてしまいそうだ。

 

「のだぁ〜……」

 

どうにかしてウインディを慰めてあげたいが、しかし、ここは映画館。まして一番前の席だ。

映画館は満員御礼。頭を撫でようと手を動かせば、後ろの席のちびっ子に申し訳ない。

かと言ってこのまま悲しむウインディを放っておくわけにも…。

むむむ…。

かくなるうえは…。

チラリとウインディの方を見る。

 

「ぐすぐす…」

 

鼻をすすり、今にも泣いてしまいそうだ。

………仕方ない。

オレはウインディの手に、そっと自分のそれを乗せる。

 

「のだっ…」

 

突然のことに驚くウインディ。

こちらを見て目を見開くも、安堵の表情を浮かべる。可愛い。

結局、ヴィラン軍団は最後の最後まで戦況を巻き返せず敗北してしまった。

まぁ、これはヒーローもののお話の定番的に仕方ないところではあるが、まぁそれは言うだけ無粋というものだろう。

近場のカフェに寄って、ウインディにケーキを奢ることに。

 

「ヴィラン軍団、負けちゃったのだぁ〜…」

「そうだなぁ〜…」

「やっぱり、アクはヒーローにはかてないのだぁ〜?」

 

ウインディは切実にそう言う。

純粋に応援していただけに、ショックも大きいのだろう。

 

「まぁ、次に勝てればいいだろ?」

「つぎなのだ?」

「そうさ。ウインディが応援してたヴィラン達は、体を張って守られた悪玉キングの仲間たちは、一回負けたくらいで諦めるような軟弱者なのか?」

「そんなわけないのだ〜!!」

 

ウインディがバン!!とテーブルを叩いて立ち上がる。個室でよかった。

 

「それなら、信じてあげよう。彼らにも今はお休みが必要なのさ」

 

今のところ公式レースで勝ち続けてるウインディだって、模擬レースや併走では勝ったり負けたりの繰り返しだ。

今日負けたからって明日も負けるとは限らない。

逆に今日勝ったからと言って明日も勝てると慢心して努力を怠るなら、それは敗北への一歩に他ならないだろう。

しかし…。

 

「最近のヒーロー映画って結構出来がいいんだなぁ〜」

「のだぁ〜♪ビコーとは正義かアクかで言い合いになるけど、実はきょうのえいがもビコーに教えてもらったのだぁ〜♪」

 

ほうほう。犬猿の仲かと思いきや、意外と彼女とは仲がいいのか。

…本人に言ったら思いっきり否定されそうだけど。

正直、特撮モノとかあんまり見ないから新鮮な気持ちで見られたし、ウインディやビコーペガサスが好きになる気持ちもまぁ分からないでもない。

CGの出来も、オレが知ってた頃とは随分進化していたし、人によっては考察もはかどりそうな点も随所に見られた。

正直ただの子ども向け映画となめていたが、認識を改める必要がありそうだなぁ。

 

「トレーナー!!悪玉キングのムネンをはらすためにも、ウインディちゃんがんばるのだぁ〜!!」

 

両手を上げてむんっ!!とやる気満々のポーズをとるウインディ。可愛い。

 

「うんうん。そうだなぁ〜。でも無茶はダメだぞ〜?」ナデナデ

「エヘー♪分かったのだぁ〜♪」

 

無理を重ねて身体を壊されたら本末転倒だしなぁ〜。

やがて注文していたケーキがやって来ると、ウインディはそれを頬張り、先ほどのションボリ顔とは真逆のニッコニコ笑顔を浮かべてくれた。可愛い。

 

 

エヘー♪

 

トレーナーに手をきゅ〜ってしてもらえたのだぁ〜♪

 

えーが…またいっしょにいきたいのだぁ〜♪




あと二週間で、ウインディちゃんのお誕生日ですねぇ〜。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エイプリルフール…ウインディちゃん的にも出すっきゃないでしょ!!

再びの新衣装キャラ…、普通に新キャラ出して欲しい…欲しくない?

いやまぁ、スケジュールとかあるのはわかるけども…。


今日は四月一日。

すなわちエイプリルフール。

合法的に嘘をつける日だ。

 

もちろんそれは不謹慎なものだったり、相手を深く傷つけるものであったり、それでトラウマになってしまわない程度のものと、嘘の内容的にも限度はあるんだが。

まぁ、そんなこんな、今日一日は、イタズラ好きのウインディがイキイキしているに違いない。

オレはトレーナー室にやってきたウインディに早速声をかける。

 

「やぁやぁウインディ。さぁカモン!!」

「のだっ!?トレーナーなのだ〜♪」

 

あれっ?思ってた反応と違う。

日付を間違えたのかと携帯を取り出すも、日付は変わらず四月一日。

…うん。エイプリルフールで間違ってない。

 

「ウインディ〜?今日は何の日か知ってるか〜?」

「のだ?」

 

小首を傾げたのち、オレの言いたいことが分かったようで、ウインディはフフンと胸を張る。

 

「ちっちっち、トレーナーは甘いのだなぁ〜」

「うん?どう言うことだ?」

「今日はエイプリルフールだからウインディちゃんがすきほーだいウソをつくとおもったのだ〜?でも、ウソをついてもいい日にウソをついてもつまんないのだ〜。それにウインディちゃんはエイプリルフールにも噛みついてやるのだ!!つまり〜…」

「つまり?」

 

そう言うなり、ウインディはオレに近づいてきて。

 

「今日一日、しょーじきにすごしてやるのだ〜♪」

 

そう笑顔で言う。可愛い。

 

「ほうほうなるほど。それで、今日一日正直者のウインディは一体何がしたいんだ〜?」ナデナデ

「エヘー♪今日はトレーナーのへやにいきたいのだ〜♪」

 

更に甘えながらそう言って来る。可愛い。

 

「へ?オレの部屋に?いやぁ、でもこないだやったゲーム類以外、ウインディが楽しめそうなモンは何もないぞ?」

「それでもいいのだ〜♪」

 

と言って、ニコニコしているウインディ。可愛い。

 

確かに、時たまトレーナー寮に出入りしている生徒も見かけはするが、それはトレーナー本人への学園側からの信頼ありきなところもある。

まぁ、学生寮と比べれば相対的に緩いように感じられることも多いが、実際はきちんとした規則そのものはあるっちゃあるのだ。

え?それにしてはウチのウインディも結構出入り出来てるって?

………それは言いっこナシってヤツよ。

実際、オレ自身ウインディに対して何かやましい気持ちがあるわけじゃないしな。

そりゃあ週二や週三でトレーナー寮に泊まっているようなら問題だが、二、三カ月に一度あるか無いかくらいなら十分に許容範囲だろう。

学園敷地内だから外出扱いにはならないし。

…チーム持ちの先輩方からすれば寮にまで押し入られるのはたまったもんじゃ無さそうだけど。

「そうだなぁ〜…それじゃあ、今日のトレーニングを頑張ったら許可をもらうよ」

「のだ〜♪やくそくなのだ〜♪」

「うんうん。約束だなぁ〜」

 

そして、その日のトレーニング。

 

ダダダダダダダダダダダダ…。

 

ピッ。

目の前を駆け抜けた瞬間ストップウォッチを止める。

お、このタイムは…。

 

「おぉ〜!!調子いいなぁウインディ〜!!」

 

すごいな。トレーニング中の新記録だ。

これは次のレースも十分に期待できる。

 

「エヘー♪がんばったのだ〜♪」

「よ〜しよしよし、偉いなぁ〜ウインディ〜」

「のだぁ〜♪」

 

結果として、ウインディはトレーナー寮のオレの部屋で夕飯を食べることになり、その買い出しで学園近くの商店街に行くことに。

 

「ウインディ、何か食べたいとかあるか〜?」

「のだぁ〜おさかなとか食べたいのだ〜♪」

「そうかぁ、それじゃあ魚屋寄ろうなぁ〜」

 

夕飯時の少し前、近所の人たちで賑わう商店街で魚屋を見つけ、近づいてみるとねじり鉢巻の良く似合う大将に話しかけられる。

 

「らっしゃい!!お客さん何にするんだい?」

「今が旬の魚ってなんですか?」

「おう!それならちょうどい〜いサワラが入ってんだ。ほれ!!」

 

そう言うなり、大将は分厚いゴム手袋をつけた手で大ぶりのサワラを持ち上げて見せて来る。

 

「照り焼きにも煮付けにも、ムニエルにしたってうめぇよ〜?」

「あぁ〜、いいですねぇ。ウインディはどうかな?」

 

オレは隣にいるウインディに問いかける。

ウインディの夕飯でもある以上、彼女の意見を聞くのも大事だ。

 

「いいとおもうのだ〜♪」

「そっか〜。それじゃ、サワラでお願いします」

「あいよ〜!!三枚おろしにするからちぃっと待っててなぁ」

 

しばらくすると、袋に入った切り身を渡され、その分のお代を払う。

他にも必要な調味料や少なくなってきた物なんかを買って回り、トレーナー寮にウインディと共に帰ってきたのは正に夕飯時。

 

「ウインディちゃんもてつだうのだ〜♪」

「おお〜、助かるよ〜ウインディ〜」

 

漬け込む料理は出来ないから何日か漬け込むような、西京焼きなんかはまた今度かなぁ。

それで良さげなものというので、今回はムニエルにすることに。

バットに切り身を乗せて、塩胡椒、しばらく置いたら水気を拭き取って小麦粉を全体にまぶし、余計な粉ははたく。

 

「バターでやくのだ〜♪」

「皮の方からなぁ〜」

「わかったのだ♪」

 

フライパンにバターを熱して溶かし、焼き色がついたら裏返して中まで火を通す。

 

味の方は〜。

 

「んん〜♪おいひいのだぁ〜♪」

「だなぁ〜、こりゃあ当たりだ」

 

自分達で作った分、美味しさもひとしおなんだろう。

ウインディもニコニコしながらウマ娘の量をしっかり完食していた。可愛い。

 

 

エヘー♪トレーナーといっしょにおりょーりしたのだ〜♪

 

のだ?なんで今日ウソをつかなかったか…なのだ?

 

トレーナーにきらわれたくなかったのだ〜…。

 

 

 

 

 




エイプリルフール回が何故かお料理回になってしまっていた…。

最初は普通にウソをつくお話にしようと思ったんですけど、ちょっとだけ鬱っぽくなっちゃったので明るい感じにしたらこんなお話に…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんのお誕生日じゃぁぁぁぁ!!

おめでとうウインディちゃん!!


四月十四日。

トレセン学園トレーナー室。

今日ここでオレは、我が生涯に於ける重大なイベントを催していた。

 

「ウッインディ〜〜!!」

「のだぁ〜〜♪」

 

クラスメイトちゃん達にも協力してもらい、飾り付けられたトレーナー室で、ウインディをナデナデする。

無論、クラスメイトちゃん達も用事が済み次第これから来るそうだ。

 

「お誕生日おめでとうなぁウインディ〜!!」

「エヘー♪ありがとなのだトレーナー♪」

「今度都合つけるから、どっか行きたいとこあるか?欲しいものは?オレにできる範囲でなら何でもいいぞ〜〜?」

「のだ〜…そう言われるとまよっちゃうのだ〜」

 

可愛いなぁ〜なんて思いつつ、ケーキやらチキンやら、とうもろこしの準備を済ませてお話しつつ、彼女達を待つ。

ウマ娘基準だからちょっとばかり大変だったけど…可愛いウインディのためだ。屁でもないね!!

 

「失礼しま〜す」

「お、お邪魔します…」

「ヤッホー!!待った〜?」

 

お、噂をすればなんとやら。

クラスメイトちゃん達がプレゼントらしき箱を手にトレーナー室に入ってくる。

 

「ウインディちゃん、お誕生日おめでとう〜」

「よかったねぇ、トレーナーさんの都合が合って…」

「ホントホント、いやぁ〜飾り付け頑張ったよなぁウチら。あ、もちろんトレーナーさんもね〜」

「いらっしゃ〜い。歓迎するよ〜」

「のだぁ〜♪」

 

ウインディもご機嫌だ。良かった良かった。

用意していた取り皿を、そのまま席についたクラスメイトちゃん達のところに置く。

もちろんウインディはいわゆるお誕生日席だ。

 

「いっぱい買って来たから好きなの食べてなぁ〜」

「ありがとうございます〜」

「おっ、コレうめぇ!!」

「ちょ、ちょっと…話の最中に食べるのは…」

「まぁまぁ、せっかくのパーティーなんだし多少の無礼講は大目に見るよ」

 

三者三様の反応を示すが、みんなウインディを祝ってくれてるのが伝わってくる。

お喋りにパーティーゲームにご馳走と。本当に楽しそうで、オレもウインディが仲のいい子とわいわいやっているのを見て何やらホッとする。

 

「イエーイ!!トレーナーさんドロー4〜♪」

「うがっ!!またかぁ!?」

「トレーナーさん、ゲーム弱いって〜」

「つ、次がありますから…」

「そう言って、四連敗中ねぇ〜」

 

それから二、三時間ほど経過し、皆の腹も膨れてプレゼントを渡す頃合いに。

ウインディは皆が後ろ手に持っているプレゼントに興味津々だ。

 

「たのしみなのだ〜♪」

 

皆一様にそわそわしているウインディにプレゼントを手渡し、それを受け取ったウインディは、ひとつひとつ噛み締めるように開けていく。

 

「アタシからは〜イケてるしっぽトリートメントセット〜♪」

「わ、私からは…本のしおり…」

「わたしは〜…ウインディちゃんに似合いそうな簪、買ってきたわよ〜。今度、和装するときにでも着けてね」

 

「エヘー♪ありがとなのだ〜♪」

 

無邪気に微笑むウインディ。可愛い。

 

「ちなみにオレからもあるぞ〜」

「のだっ!?さっききいてたのはなんだったのだ?」

「ああ、もちろんあれもウインディに贈るぞ。それでオレからは…」

 

仕事机の引き出しを開け、中身を取り出す。

 

「こないだ歩いてたらウインディに結構似合いそうなのあったからさ。はいコレ」

「おぉ〜!!何やら高級感ある箱が…」

「開けてもいいのだ〜!?」

「もっちろん!!」

 

その言葉を聞いて、ウインディは包装を外してゆっくりと箱の蓋を開ける。

 

中身は…。

 

「おぉ〜、ブレスレットなのだ〜」

 

そう。ウマ娘の象徴とも言える、蹄鉄を模したブレスレットだ。

 

「そんなに締め付けが強くなくて、たまのオシャレにつけるのにちょうど良いかなぁって思ってなぁ…」

 

勝手なイメージなんだけど、ネックレスはなんかオバさんっぽいし、ピアスは痛そうだしってんでこれを選んだんだけど…。

 

「ありがとうなのだトレーナー!!大事にするのだ〜♪」

 

ほっ…。良かったぁ〜…。趣味じゃなかったら大変だった。

 

「よかったねぇウインディちゃん」

「のだぁ〜♪」

 

その後、しばらくウインディとクラスメイトちゃん達とでわちゃわちゃして、縁もたけなわとなった頃合いにクラスメイトちゃん達は各々寮に戻って行った。

 

「トレーナー…」

「うん?どうしたウインディ?」

「来年もその次も…またトレーナーとお誕生会したいのだ〜♪」

 

満面の笑顔でそう言うウインディ。可愛い。

 

「そりゃもちろん!!ウインディが嫌じゃなければね」

「それじゃ、ず〜っとなのだ〜♪」

 

卒業するまでず〜っとか。

トレーナー冥利に尽きるなぁ〜。

 

「それじゃ、ウインディそろそろ…」

 

うん?いない?

 

「ガブ〜〜〜!!」

「うぉおう!!久々〜!!」

 

 

ふっふん♪

 

イタズラ成功なのだ〜♪

 

これからもずっとヨロシクなのだ。トレーナー♪




投稿期間が開いて申し訳ない。

次も気長に待っていただけると嬉しいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

久々投稿ウインディちゃん。

ウインディちゃん成分が足りなくなったので投下。

ちょっと短いです!!ごめんね!!


ここはトレセン学園内にあるトレーニングルーム前の廊下。

 

そして今は生徒たちの寝静まった深夜だ。

 

「ふっふ〜ん♪トレーナーといっしょなら安心なっのだ〜♪」

 

鼻歌混じりにそう言うのはウチの可愛いウインディだ。

 

「暗いんだから足元気をつけてなぁ〜?」

「エヘー♪それじゃあ手をつなぐのだ〜♪」

 

ニコニコと、懐中電灯を持っていない方を差し出して来るウインディ。可愛い。

 

なぜこんなことになったかと言うと、それは数日前の昼頃にまで遡る。

 

 

「えっ?深夜のトレーニングルームからですか?」

「うむ。何やらガチャガチャと重いものを持ち上げるような音が聞こえてくるらしくてな」

「ですが、それは単に生徒がトレーニングルームを利用しているというだけでは?」

「怪奇、それなんだがなぁ…各トレーナーに確認をとったところ、深夜のトレーニングは基本推奨しないという意見が多くてな。現に音が聞こえて来たと言う晩も、特に担当ウマ娘たちから利用したい旨の話は無かったそうなのだ」

「だから、隠れてトレーニングしているような生徒がいるようなら見つけて注意をして欲しい…と?」

「賢明!!話が早くて助かる。たづなも昨日から所用で学園を離れていてな。どうしたものかと思っていたところ、シンコウウインディが名乗り出てくれた、ということだ。」

「なるほど…」

 

さすがウインディ。可愛くてかっこよくて優しくて正義感も強いとは。

 

「忙しいのは重々承知だ。だから無理のない範囲でいい。生徒が無茶をして体を壊すようなことは理事長として、いち教育者として放ってはおけないのでな」

 

 

と、まぁこんな経緯があったわけで…。

美浦寮長のヒシアマゾンにも話を通して許可を得たうえで、こうして一緒に見回りをしているんだが…。

 

「ここ数日毎晩のように見て回ってはいるが、特に利用してる生徒も見かけないしなぁ…」

「エヘー♪でも、肝試しみたいでウインディちゃんはちょっと楽しいのだ〜♪」

 

最初の方は「怖いから手をつないで欲しいのだ〜…」と涙目で言っていたウインディももう慣れたもんで…。

 

「そっかー。そりゃあよかったなぁ〜」ナデナデ

「のだぁ〜♪」

 

とまぁ、このようにオレとじゃれ合う心の余裕も出てきた。

 

そんな時だった。

 

ガチャ…ガチャ…

 

「!!」

「のだっ…!!」

 

深夜のため小声で反応するウインディ。可愛い。

 

「今の、聞こえたか?」

「のだぁ〜…」

 

ウインディはその言葉にコクコクと頷く。

 

現在位置は、ちょうどトレーニングルームまであと少しといったところ。オレとウインディは息を殺してそろりそろりと足音を極力立てないよう忍び足で慎重に進む。

…たづなさんを呼ぼうか?いやでも普段から忙しいだろうし…出張帰りに夜中に起こすのは失礼か…。

 

「…のだ?」

 

その時、ウインディが足元に落ちている何かに気がつく。

それが気になったのか、ウインディは懐中電灯それを照らさずに持ち上げようとするが…。

 

「のだっ!?けっこー重いのだ〜!?」

「えっ?マジか?」

 

ウマ娘のウインディが重さを感じるほどとは…いったいなんだろ…っ!?

 

気がつくと、オレとウインディは各寮の自室のベッドで寝ていた。

えっ?なにがあったの?

その後、オレとウインディは理事長室に呼ばれ

 

「シンコウウインディさん?トレーナーさん?その後、異常はありませんか?」

 

そうたづなさんに問いかけられた。

 

「え、ええ。おかげさまで…」

「のだぁ〜!!ウインディちゃんは今日もトレーニングがんばったのだ〜♪」

「…そうですか。それは何よりです」

 

うん?なにやら安堵しているような…。

 

「それと…お二人とも、深夜のトレーニングルームの件はすでに解決しましたので大丈夫ですよ?」

「のだ?」

「でも…」

 

たづなさん、トレーニングルームのこと、出張しててあんまり知らないはずじゃ…。

 

「だ・い・じょ・う・ぶ・です♪」

 

ヒエッ…。

そのままオレ達はたづなさんの笑顔に押し切られる形で、今回の件からは身を引くのだった。

 

笑顔がこわぁい…。

 

 

う〜ん…。

 

アレ…けっきょくなんだったのだぁ〜?

 

きになるのだぁ〜…。

 

こんど、トレーナーとたしかめるのだ〜♪




待ってくれてた人たち…。

間隔空いちゃって申し訳ないです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アイネスフウジン来たし、これはウインディちゃんも希望が…

賢さシービーが強いとかなんとか。


その日、オレはそれなりに大荷物を持って廊下を歩いていた。

一応、視界は確保できるくらいの量にはセーブしたつもりだったが…。

 

なお、それらは全てウインディのトレーニングに必要な器材だったり、そのリストだ。

 

「しっかし…減らしたつもりだったけど一度に欲張り過ぎたかなぁ…仕方ない。いったん台車でも借りて…」

「あっ、トレーナーなのだ〜♪」

 

うん?この可愛いらしい声は…。

クルリと振り返ると、そこにはやはりウチの可愛い可愛いウインディがいた。

 

「ウインディ〜〜!!」

「ぐーぜんなのだ〜♪」

 

出来ることならすぐにでもナデナデしたいところだが…。

くっ、両手が塞がっているのが悔やまれる。

 

「トレーナー、けっこータイヘンなのだ〜?」

「おぉ、心配してくれるのか〜?ありがとなぁ〜」

 

ウインディは優しいなぁ。

 

「エヘー♪べつにお礼はいいのだ〜♪」

「それじゃあ、ウインディはトレーニングの準備を済ませて、いつものとこに…」

「ウインディちゃんもおてつだいするのだ〜♪」

「いや、事務所で台車借りるから大丈夫だぞ〜?」

 

今、ウインディは初の重賞レースであるG3ユニコーンステークスを目前に控えた状況。

少しでもトレーニングに身を入れて欲しいと思うのは、トレーナーとして当然の…

 

「うぅ〜…よけーなおせわだったのだ〜?」(涙ジワァ…)

「是非手伝ってもらおうかな!!いやぁ〜助かるな〜!!」

 

え?チョロいって?

ウインディに涙は流してほしく無いのだよ。キリッ

 

そんなこんなでウインディに荷物を持ってもらうこととなった。  

 

「どこまで運ぶのだ〜?」

 

皆、トレーニングに向かっているのだろう人影の少ない夕方の廊下をオレとウインディは歩く。

 

「とりあえず、トレーナー室だなぁ」

 

結局、ウインディには荷物を半分ほど持ってもらうことになった。

その途中、クラスメイトちゃんのひとりとすれ違う。

格好からして、トレーニングに向かう途中のようだ。

 

「あれ?ウインディちゃんどしたの〜?」

「エヘー♪トレーナーのおてつだいなのだ〜♪」

「そっかー、エラいねぇ〜」

「ふっふん!!このくらいトーゼンなのだ〜♪」

 

そう返すウインディもなんだかんだで、満更でも無さそうだ。可愛い。

その後二、三会話をするウインディとクラスメイトちゃん。

うんうん。友達と関係が良好なのはいいことだ。

それに確かあの子は芝適性が高く、ダート適性が低め。レースのライバルとして競合していないのも大きいか。

もちろん、ライバル相手でも仲良くしちゃいけない訳では無いけども。

むしろ、その方が燃えるって子もいるだろうしなぁ。

 

「それじゃー、またね〜♪」

「まったな〜のだ〜♪」

 

そう言うと、クラスメイトちゃんはトレーニングに向かって行った。

 

「トレーナー!!」

「うん?どうした〜?ウインディ〜?」

「ウインディちゃん、この時間すきなのだ〜♪」

 

ニヘ〜と笑って、ちょっと照れ臭そうにしているウインディ。可愛い。

 

「そっか〜」

「そーなのだ〜♪」

 

そんなこんな、オレとウインディはお喋りしつつトレーナー室に辿り着く。

 

「とーちゃくなのだ〜♪」

「お疲れ〜。荷物はソファーのあたりに置いといてくれな〜」

「りょーかいなのだ〜」

 

ふと時計を見る。よし、後はトレーニングの準備だなぁ〜。

 

「ウインディ、時間的にもちょうどいいしいっしょに行こうか?」

「のだ〜♪ウインディちゃん着替えて来るのだ〜」

 

とてとてと、笑顔で更衣室に向かうウインディを見送る。可愛い。

うんうん。やる気になってくれるのはいいことだ。

さて…こっちも準備しようかなぁ〜。

 

 

ふんふ〜ん♪

 

ウインディちゃん、トレーナーのやくにたったのだ〜♪

 

あとはレースに勝つだけなのだ〜♪




最近スパ○ファミリー見ました。

面白いですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新実装、メジロパーマーかぁ…。

ク○スレイズムズイので、ダ○ソで息抜き。


それは、いつものごとくウインディのトレーニングメニューを考えていた時のこと。

 

ドタドタドタドタドタドタ…。

 

バタァン!!

 

「トレーナー!!トレーナーはうんめーってしんじるのだ〜?」

 

と、ウチの可愛いウインディがそう言ったことに端を発する。

 

「うん?急にどした〜?ウインディ〜?」

 

取り敢えず、ことの経緯を聞かないことにはどうにも出来ない。

故にオレは質問を投げかけた。

 

「のだ〜…フクキタルが大きい声でそんなこと言ってたからきになったのだ〜」

「そっか〜…」

 

あぁ〜…年頃の女の子だしなぁ〜…。

そう言うのが好きな子もまぁいるわなぁ〜。

しっかし運命…ねぇ。

う〜〜〜ん……。どうなんだろ?

 

別に個人の趣味嗜好にどうこう言うつもりはないけど、努力できるとか出来ないだとか、レースの結果まで運命によって決められている、なんて言うのは教育者としてはあまりに思考放棄が過ぎるとは思う。

そもそも、そんな人はトレーナーやら競争ウマ娘なんて基本目指さないだろうし…。

でもまぁ…。

 

「どっちでもいいと思うよ。オレは」

「のだ?どっちでもいいのだ〜?」

 

意外そうに目をパチクリさせながら小首をかしげるウインディ。可愛い。

 

「そうだぞ〜?例えば、オレがウインディと出会って担当トレーナーになったのが運命だったとしても、逆にそうじゃなかったとしても…」

「のだ〜?」

「きっと、オレはウインディの担当トレーナーになってたさ」

「え?なんでなのだ〜?」

 

オレがそう言った理由が気になるのか、前のめりになりながら顔を近づけてくるウインディ。可愛い。

そりゃあ、もちろん…。

 

「それだけ、ウインディには人を惹きつけるものがあるし、それだけのものを持ってる子を放ってなんて置けないからなぁ〜…」

 

近づいていたウインディの頭をポンポン撫でながら、オレは思ったことをそのまま言う。

 

「きっと仮に過去を百回やり直せたとしても、きっと百回全部ウインディの担当トレーナーになってると思うな。オレは」

 

可愛いしつよいし、トレーニングも最初はサボりがちだったけど、最近はそうでも無いどころかけっこう真面目に取り組んでくれてるし。

割と友だち思いなところもあってそういう意味でもなんだかんだでいい子だし。

けっこう真面目にそう思うなぁ。

運命が味方するまでも無く、逆に立ち塞がるなら乗り越えてでも担当トレーナーに、とそう思わせるものがウインディにはあると思う。

まぁ、自分の担当ウマ娘へのひいき目だと言われれば否定はできないけど。

 

「のだ〜♪ウインディちゃんもきっとそーなのだー♪」

「そっか〜、嬉しいなぁ〜」

「のだっ!?うれしいのだ〜?」

「そりゃあね〜担当ウマ娘に頼りにされるのはトレーナーなら誰だって嬉しいさ」

「エヘー♪それならよかったのだ〜♪」

 

以降、ウインディからのスキンシップが何故だかちょっと激しくなったのは余談だ。

 

 

ふふ〜ん♪

 

ウインディちゃんはうんめーにしばられないのだ〜。

 

のだ?トレーナー?

 

別にしばってこないのだ〜?




ホントにダートウマ娘の実装来ないっすねぇ…。

気長に待ちますけども。

(゚ω゚)

短くってゴメンネ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エタらねぇよ?

なお、投稿ペース…。


「のだっ♪のだ〜♪」

「ウインディ〜、転ばないようにな〜」

 

オレとウインディは今、商店街を歩いている。

しかし、目的はいつもの買い出しではない。

 

「もくてきちはもーちょっとなのだ〜?」

「まぁ、そうだね〜」

 

ルンルンのウインディ。しかしそれも無理も無い。

 

それは、先日の電話に関係している。

 

 

「はい…はい…そうですか…」

「のだぁ〜?」

 

ソファでゴロゴロしていたウインディが何だろうとこっちを見ながら小首を傾げている。可愛い。

 

「では、後日確認に伺います。はい…はい…失礼します」

 

通話を切るなり、ウインディは気になる様子で立ち上がると近寄って来て

 

「何かあったのだ〜?」

 

と聞いてくる。可愛い。

 

「おお、もうすぐウインディの勝負服の試作品ができるみたいだぞ〜?」

「のだっ…」

 

ウインディがピクリと反応する。

ウマ娘側のイメージとのすり合わせやら、色合いの調整など、細かい部分を詰めるためにある程度以上複雑な作りだったり、こだわりが感じられるような勝負服は試作を挟むこともある。

特に、今回のウインディの場合は獅子舞と言う未知を取り入れる特殊な衣装なだけにまぁ、そりゃそうだ。と納得もいく。

 

「のだぁ〜♪それ、ウインディちゃんもついてっていいのだ〜?」

「まぁ、他でもないウインディの勝負服だしな。その場で意見がもらえるんなら店側も助かるだろうし、都合がつくんならこっちからお願いしたいくらいだ」

「のだぁ〜♪それじゃ、たのしみにしてるのだ〜♪」

 

ウインディはそう言うなり、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねてる。可愛い。

 

「それじゃあその日、予定空けといてなぁ〜」

「りょーかいなのだ〜♪」

 

 

で、今日美浦寮前まで迎えに行くとウインディは…。

 

「のだぁ〜♪おっでかっけなっのだぁ〜♪」

 

ご機嫌だなぁ〜。

暖かい時期だからか、Tシャツにジーパンと服装もけっこうラフながら小洒落た感じだ。

クラスメイトちゃんが見繕ってくれたのかな?可愛い。

 

「比較的学園の近くの店だからそれほど遠出するわけじゃないけどな」

「エヘー♪べつにどこだっていいのだ〜♪」

 

門から出て、そのまま商店街の方へ歩く。

店に向かう最中もウインディは「ふんふ〜ん♪」と鼻歌まじりだ。可愛い。

徒歩で向かうこと十分足らず、落ち着きと風情ある建物の中に入ると、店主が現れる。

 

「お電話頂きました、トレセン学園の…」

 

自己紹介をしようとするとひと目で分かったのか、店主はぺこりと一礼する。

 

「お待ちしておりました。ささ、どうぞ奥まで…」

 

ニコニコしながら招かれる。

 

「こちらです」

 

取り出されたのは仮の勝負服。

飾り付けも簡素で、機能性や丈夫さの部分に重きを置いた正に試作品といった趣だ。

とは言え、ウインディの元々の希望がブレザー風の勝負服だったからか、よその制服と言われてもすでに違和感のない出来栄えだが。

 

「シンコウウインディさんですね?是非袖を通して、ご感想を頂きたいのですが…」

「のだっ、それじゃ着てくるのだ〜♪」

 

ウインディはそれを受け取るや、奥の更衣室へと向かう。

 

「思ったことがあれば、ドンドン言ってくださいね〜」

 

そして、実際に着てみてもらうとまぁ要望も出てくるもので…。

まあ、勝負服はそのひとつひとつがオーダーメイドだから当然と言えば当然の話なのだが。

 

「この獅子舞のアゴのかどーいきをもっとふやしてほしいのだ〜♪」

 

とウインディが希望すれば

 

「そうすればパーツが脆くなってしまいます。かと言って丈夫さを取り入れようとすれば必然的にその獅子舞部分が重くなってしまいます」

 

と、返される。

 

なるほど。確かに走る際のウエイトバランスは大事だし、万が一にでもパーツがターフに転がりでもしたら取り返しのつかない事故に繋がりかねない。

 

「このあたりの生地、もーちょっと肌ざわりいいのにできないのだ〜?」

 

という問いかけには

 

「でしたら、こちらの9番の生地と24番の生地など…」

 

と、複数のアンサーを用意してくれていたり道は違えどプロの仕事ぶりに感嘆しきりだった。

 

オレからの素朴な質問にも丁寧に答えてくれたし、なかなか勉強させてもらえた。

ウインディも言いたい事はひとしきり言えたのか、満足げな表情をしている。

昼過ぎに学園を出て、気がつけば日が落ちかけた頃にオレとウインディは商店街を歩く。

 

「ところで、なんで勝負服の色を黒基調にしたんだ?」

 

なんとなしに気になったことを聞くと、ウインディは笑みを深め

 

「ふふ〜ん♪いいことを聞いたのだなぁトレーナー」

 

もったいぶるように、しかし嬉しそうに腕組みしつつしっぽフリフリしているウインディ。可愛い。

 

「しりたいのだぁ〜?おしえてほしーのだ〜?」

 

夕焼けの街をバックにイタズラっぽい笑みを浮かべているウインディ。可愛い。

 

「知りたいなぁ〜、教えてくれるととっても助かるなぁ〜」

「それじゃーおしえるのだ〜」

 

とくべつなのだ〜♪とウインディはそう言うなりビシッとポーズを決めて

 

「黒はなにものにもそまらない…いわば、さいきょーの色だからなのだ〜!!」

「ほうほう。なるほど」

 

我が道を征く、正にウインディに相応しい色と言えるわけだ。可愛い。

 

「そっかぁ〜、それじゃあオレもますます頑張らなきゃなぁ〜」

「エヘー♪トレーナーにまかせればダイジョブなのだ〜♪」

 

そんな信頼の言葉をかけてくるウインディが、とても可愛らしい一日だった。

 

 

ふふ〜ん♪

ウインディちゃんはなにものにもそまらないのだ〜♪

のだ?なんできゅーにウエディングドレスのはなしになるのだ〜?




マチカネタンホイザ以降音沙汰ないし、ウマ娘はもうちょい新キャラを星2以下で出しても良いと思うの(願望)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

たい焼きを食べてたらウインディちゃんのイベントを思い出したので

たい焼きって、結局普通の小倉あんが一番美味しい印象です。


さて、今日も今日とてウチの可愛いウインディのためのお仕事を…と思ってトレーナー寮を出たんだが…。

 

「ウズウズ…」

 

あれぇ〜?

どっかで見た最かわウマ娘が木の影に隠れてチラチラこっちを見て来てるぞう〜〜!?

 

「ウズウズ…ウズウズ〜のだぁ〜…」

 

はい可愛い!!(確信)

まぁ、放置するわけにもいかないし、話しかけてみるかね。

 

「ウインディ〜?何やってんだ〜?」

「のだっ♪……ハッ、う、ウインディちゃん?ダレナノダ〜ソノサイキョーのウマ娘ハ〜?」

 

すっとぼけるウインディ。可愛い。

 

「そっかぁ〜、気のせいかぁ〜」

「そ、そーなのだーきのせいなのだぁ〜」

「それじゃあ、新しく出来たたい焼き屋にはオレひとりで…」

「のだっ!?それはズルっこなのだぁ〜!!」

 

ガサガサと茂みから出てくるウインディ。可愛い。

 

「そっかぁ〜。それじゃあ訳を話してくれれば、すぐにでも出かけようなぁ〜」

「のだっ♪わかったのだぁ〜♪」

 

 

「毎度思ってたんだけどさ〜」

「なになに?」

「ど、どうしたの?改まって?」 

「のだぁ?」

「いや、ウインディちゃんってウチらと同学年だけど、なぁんか子どもっぽいよねぇってさ…」

「のだ!?」

「あぁ〜…」

「ま、まぁ…それは別に悪いことじゃあ…」

「まぁ、そうなんだけどねぇ…」

「それでさ〜……」

 

 

「ってことがあったのだ〜…」

 

しょんぼりと落ち込んだ様子でそう言うウインディ。

なるほどなるほど〜…。

つまりウインディは、子ども扱いに不満がある…と。

なんやかんや、そう言うのはあんまり気にしないタチみたいに見えてたから少し意外だなぁ。

それに子どもっぽいってのは、なにも悪い意味ばかりじゃないとは思う。

立ち直りの早さだったり、ポジティブさとか、メリットと言える点も少なからずあるんだけども…。

 

「ウインディはそう思われるのは嫌なのか?」

「のだぁ〜…べつに、そこまできにはならないけど…ちょっとだけモヤモヤするのだぁ〜…」

 

う〜む…。

やっぱりウインディも難しい年頃なんだなぁ。

まぁ、中高生なんて正しく大人と子どもの中間みたいなモンだし。

 

…今はともかく、ウインディを元気付けるのが優先かなぁ。

 

「トレーナー…」

「よ〜しよしよしよしよしよしよし…」

 

いつものような勢いのある感じではなく、できる限り優しく優しくウインディの頭をナデナデする。

 

「のだぁ〜…」

 

目を細めて大人しく頭を撫でられるがままのウインディ。可愛い。

いやぁ〜…最初の方からは想像もつかない反応だなぁ〜。

 

「ウインディ」

「のだ?」

「大人っぽくても、子どもっぽくても、どんなウインディでも、オレは大好きだぞ〜」

「エヘー♪ウインディちゃんもなのだ〜♪」

 

いやぁ〜、やっぱりどんな時も味方で居てくれる大人って欲しくなるもんなぁ〜。

 

その点オレはほら、自分で言うのもアレだけど適任だと思うんだよね。

 

「トレーナー♪」

「うん?どした〜、ウインディ?」

 

オレがそう言うなり、にぱっと笑うウインディ。可愛い。

 

「ウインディちゃん、お腹すいたのだぁ〜♪」

「そっかそっかぁ〜、それじゃあたい焼き、いっしょに食べに行くか?」

「わ〜いなのだ〜♪」

 

うん?視界の端で倒れてるあのウマ娘は確か…。

 

 

ムグムグ…。

 

たい焼き美味しいのだぁ〜♪

 

トレーナー、ひとくちどうなのだ〜?




いやぁ〜なかよしだなぁ〜。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新しい子は…イナリワンですかそうですか。

ま…まだ、ユニコーンステークスがあるから…。


う〜むむむ…コレは…どうなんだ?

 

オレは昼休みに立ち寄った購買部に新たに入荷したとある商品と睨めっこしていた。

その名も『ロイヤルビタージュース』

説明の通りなら、とてつも無く苦い代わりにたちまちのうちにウマ娘の疲れを癒やし、休憩を挟まずともトレーニング効率もアップする…というシロモノらしいんだが…。

 

「う…胡散臭い…」

 

まぁ、仕入れたのは他ならぬ理事長らしいし、こうして堂々と売り物として並んでいる以上はたづなさんのチェックもクリアしていると見ていい。

でもなぁ〜…。

 

「先輩方の話しを聞く限り、大抵の子は一度飲むと二度と飲みたがらなくなるらしいし…」

 

例えばアグネスタキオンやミホノブルボンのように、口にするものの味を特に気にしなかったり、エイシンフラッシュのようにレースへの姿勢がかなりストイックなウマ娘ならともかく、実際に飲んでみたと言う子達の大半が抱くのがすこぶる否定的な意見だもんなぁ…。

それも効能じゃなくて、ほぼ全てが味覚面の。

 

「ウチのウインディにも一回だけ試して…いや、でもなぁ…」

 

ウインディがイタズラに使えるのだ〜♪と、オレの飲み物にこっそり混入させてくるならまだいい。というかウエルカムなくらいなもの。

問題なのはこの不味すぎることで有名なドリンクがウチの可愛い可愛いウインディの心の傷にならないかと言うことだ。

たまたま店に立ち寄っていたヒシアマゾンにも確認をとったところ「イタズラ防止にもってこいじゃないか」と笑って言っていたが…。

もちろん、だからといってトレーニングに関しては手を抜いてはいない。というか抜けない。

ウインディとの約束のためにもそこはオレなりに真剣にやっているつもりだ。

普段は少しばかりウインディに甘い自覚はオレ自身もあるが、それはトレーニングの外でのことだ。

コースの外でも、見ることや聞くことの全てがトレーニングに繋がる…という人もまぁいるにはいるが、そう言う人も自分の担当ウマ娘に無茶なトレーニングメニューを強いると言うよりはどちらかと言うとトレーナー側が常にそのヒントを探っているといった具合だしなぁ…。

 

かと言ってコレが人気商品であることに変わりはなく、現に店頭に並んでいるのはコレがラスト。

店員に確認したところ、バックヤードにももう同じ商品はないとのこと。

このチャンスを逃せば、次の入荷は数ヶ月先になるかも…。

この、幸運とも不幸とも取れる出来事は結局昼休みギリギリまで続き、結局買うことになったのだった。

 

 

はぁ〜…喉かわいたのだぁ〜…。

 

トレーナー室は涼しいのだなぁ〜♪

 

のだ?机の上のアレ…なんなのだ〜?




短くって申し訳ない…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

とうもろこしのシーズンですね!!

焼きとうもろこしの美味しさは異常。

バター醤油も好きです。


さて、ユニコーンステークスも近づき、トレーニングもあと一押しというところまで来ている訳だが、かと言って根を詰めすぎるのも良くない。

そのため、オレはウインディと息抜きにとある場所まで向かう事としたわけだが…。

 

「たのしみなのだ〜♪」

 

私服姿で電車に揺られながら、鼻歌混じりにそう言うウインディ。可愛い。

 

「そっかそっかぁ〜、そんなに喜んでもらえるなら何よりだ」

 

ふふふのふ…。

六月といえば夏のはじめ。

そして夏といえばそう!!

ウインディの大好物、とうもろこしが旬を迎える時期だ。

今日はウインディの士気向上のため、オレは知人のとうもろこし農家に話を通し、ありがたいことに収穫を手伝うことの見返りに幾らかいただける事となったのだ。

 

「張り切ってお手伝いしようなぁ〜?」ナデナデ

「のだぁ〜♪ウインディちゃん、がんばるのだぁ〜♪」

 

府中の都会の景色からしばらくすると、大きな畑がいくつも広がる風景が飛び込んでくる。

着いたのは千葉県某駅。

北海道には届かずとも、国内相場二位を誇るとうもろこしの一大産地だ。

 

「着いたぞ〜ウインディ〜」

 

目的の駅に着いたので、涎を垂らしながら肩に頭を乗せて寝るウインディを起こす。

まぁ、収穫の時間に合わせてまだ暗い時間から電車に乗ってるんだもんなぁ〜。

無理もないかぁ。

 

「のらぁ〜…」

 

むにゃむにゃと目をこすりながら起きるウインディ。可愛い。

 

「トレーナー…おんぶ…なのだぁ〜」

「はいはい。タクシー呼ぶからなぁ〜」

 

甘えてくるウインディ。可愛い。

 

ウインディにタクシーに座ってもらい、オレもその隣に座って、やがて目的地に辿り着く。

 

「のだぁ〜♪一面のとうもろこし畑なのだぁ〜♪」

 

ウインディが喜んでいる間、出迎えてくれた農家のおばさんに挨拶を済ませる。

「今日はお忙しい中ありがとうございます」

「ふふ〜ん!!しゅーかくはウインディちゃんにまっかせるのだ〜!!」

「あれま、こりゃあ元気いっぱいでねぇ〜。うらやましいよぉ〜」

「まかせるのだ〜♪」

「それじゃ、葉っぱで手を切らないために軍手と…あと日差しが強いから、はい」

「のだ?」

「あらぁ〜麦わら帽子似合うわねえ〜」

 

ピョコン、と耳出し穴を用意されたウマ娘用の麦わら帽子を渡されるウインディ。可愛い。

 

「トレーナー、似合ってるのだ〜?」

「おぉ、似合うぞ〜かっこいいぞ〜」

「エヘー♪」

 

いやまぁ、ホントに似合うなぁ〜。可愛い。

そうして、はじまったとうもろこしの収穫。

 

「このくらいの大きさで、おヒゲが茶色くなってたら、付け根をねじってカゴに入れてねぇ」

 

まずは最初に、おばさんが実物のとうもろこしをとるのを見本に見せてもらう。

葉っぱを剥くと、中にはぎっしりと黄色いつぶつぶが。

 

「美味しそーなのだ〜♪」

「ちゃんとお手伝いしたら、ご褒美にいただけるからなぁ〜」ナデナデ

 

オレも手伝いつつ、ウインディの様子をチラリと確認する。

最初は四苦八苦していた様子だが、ウインディはコツを掴んだのか、途中からひょいひょいと収穫を進めていく。

途中で昼休憩を挟み、作業を再開。

やがて仕事を終え、おばさんの許可も得て広い畑を駆け回るウインディ。

その姿はとても生き生きとしていて、青空の下麦わら帽子に手を添え、笑顔を浮かべるウインディはなんとも言えないくらいに眩しい。

 

「だから、いっしょに勝ちたいんだよなぁ…」

「んだば、頑張るしかねぇよー?」

 

うおぅ!?

 

「き、聞かれてましたか…?」

 

いやまぁ、別に聞かれて困る事じゃないけども。

 

「ま、あたしゃ専門の知識があるわけじゃないけどねぇ。今日一日あの子見てみたけど、ありゃあいい子さ。応援くらいはさせておくれな」

「あっ、ありがとうございます!!」

「それと…はい」

 

見てみると、どっさりとカゴいっぱいのとうもろこし。

っていうか、体力勝負の仕事してるだけあって農家のおばさんパワフルだなぁ。

 

「えっ!?いいんですか?こんなに?」

「いいのいいの。いっぱい食べさせてあげて」

 

いい人だなぁ。

まぁ、今回はお言葉に甘えることにしようか。

そのまま、元気に駆け回るウインディが戻ってくるのを待って、農家のおばさんに軽トラで駅まで送ってもらい、帰りの電車で学園に帰還。

慣れない作業にクタクタだったウインディも、さっそくいただいたとうもろこしを塩茹でにしている時に匂いで目を覚ましたのだった。可愛い。

 

 

ん〜〜♪

 

とれたてはサイコーなのだぁ〜♪

 

がんばってよかったのだ〜♪

 

トレーニングもがんばるのだぁ〜♪

 




麦わら帽子のウインディちゃん…絶対可愛い(確信)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

120話続きましたなぁ。ユニコーンステークス…ウインディちゃん、来てくれると嬉しいなぁ〜。

シーキングザパールとか、ビコーとか、ウインディちゃんと接点のある子も見どころですけど…。




ここは東京レース場。

いやに晴れた青空の下、オレは今日ここで開催されるユニコーンステークスに参加するウインディの控え室に向かう所だ。

 

「ふぅ〜……」

 

関係者用出入り口を通ると、途端にため息が出てくる。

オレ自身が走る訳でも無いのに、やけに緊張してきたなぁ〜…。

ウインディは大丈夫だろうか?

ピラリ、と手にしたポスターを見る。

G3 ユニコーンステークス。テレビにだって映る伝統あるウマ娘のレース。

そう、G3とは言え、これがオレ達の初の重賞。

それ以下のレースを遊びと断じるつもりは無いが、これまでとは明らかに格が違うレース。

ここが…オレとウインディの、ダート重賞の入り口。

 

「ここだな…」

 

『シンコウウインディ様控え室』

そう印刷されたドアを見つけてオレは取り敢えず一安心。

ウインディは…プレッシャーに押し潰されてはいないだろうか。

ウチのウインディにはジュニア級の頃から期待されている。

まぁ、それはインタビューの時の強気な発言も間違いなく原因の一つなんだろうけども。

それを、それらを、重荷に感じてはいないだろうか?

オレは、意を決して扉を開け…。

 

「のだ?」

「……ウインディ?」

 

そこには、いつも通りの見慣れたウインディがいた。

 

「のだっ♪トレーナー♪まってたのだ〜♪」

 

座っていた椅子から立ち上がり、こちらに歩み寄ってくるウインディ。可愛い。

 

「よしよしよ〜し。遅れてゴメンなぁ〜?ウインディ〜」ナデナデ

「エヘー♪これでウインディちゃんはムテキなのだ〜♪」

 

あくまでも自然体なウインディ。

普段の落ち着きのなさとはまるで正反対の姿に驚く。

そして、悟った。

ああ、そうか。

この子は信じている。

信じてくれている。

オレとのトレーニングの日々を。

そして、この子自身の頑張りを。

ならば、改めてオレも覚悟を決めなければ。

 

「そうだな。ウインディ」

「のだぁ?」

 

オレたちはまだ重賞レースの入り口に立ったに過ぎない。

その中には、この大舞台で結果を残せず涙を飲んだウマ娘とトレーナーも決して少なくない。

だからこそ、オレも今一度信じなければならない。

ウチのウインディは誰よりも強いウマ娘だと。

ウチのウインディは誰よりも速いウマ娘だと。

今日、今、この日、この時までで、オレに出来る限りのことはしてきた。

時にトレーナー学校で培ったノウハウを活かし、時に偉大なる先輩方のトレーニング法をこの目で盗んで。

それを初担当であるものの、どうにかこうにか落とし込んで、ウインディに合う形にしてジュニア級の頃から馴染ませて来た。

それだけのことを、ウインディには教えて来たつもりだ。

もちろん、それは他のトレーナーも同じだろうが…。

 

「トレーナー?」

 

いや、違うな…。

 

「トレーナー!!」

 

だからこそ…。

 

「ウヴ〜ッッ…」

 

負けられな…

 

「ガブ〜〜〜〜ッッッ!!!」

「あ痛ったぁ〜〜!?」

 

え、ちょ、なに?なんで?

 

「ど、どうかしたか?ウインディ?」

「トレーナー、むつかしいカオしてたのだ!!」

 

う…バレてたか…。

 

「ダイジョーブなのだ!!トレーナー!!」

 

不敵にニッと笑うウインディ。

 

「まず一勝、勝って来るのだ!!」

「ああ!!信じてるぞ!!」

 

カッコイイな、キミは。

 

 

ふっふん!!

 

トレーナーはむつかしくかんがえすぎなのだ〜。

 

だから…。

 

ウインディちゃんがかてばいいのだ〜♪

 

 

 




やっぱりウインディちゃんがNo. 1なんだよなぁ…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いやぁ〜、遅くなって申し訳ないです。

レース描写って難しい…orz


「さぁ、開幕です。初夏の太陽がダートウマ娘達の行く末を占うG3ユニコーンステークス」

「今年初のダート重賞レースですからねぇ。期待したいところです」

 

オレはアナウンスを聞きつつ、客席でいつもの如くカメラの準備を済ませる。

今後の資料として、そしてウインディの初重賞の記録として。

そして、パドックでウインディが紹介される。

ユニコーンステークス…十四人立てのレースで、ウチのウインディは…

 

「一枠一番、シンコウウインディ」

「やってやるのだ〜!!」

 

ウインディは最内…しかし、ウインディはそんなこと関係なさそうにフフンと余裕ある表情を浮かべている。

 

「やる気十分、と言ったところです」

「掛かり気味にならなければいいですが…」

 

そして、他のウマ娘の紹介も終わり、いざ出走の時。

 

オレはいつものように客席でカメラを構えつつ、固唾を飲んでウインディの入った一番ゲートを見据える。

そして…ウインディはこのレースで、オレの予想を上回る走りを見せてくれた。

 

「シンコウウインディ!!枠の不利など知ったことかと言わんばかりの走り!!砂塵を巻き上げ、十八番の先行抜け出し戦法で今、最終コーナーに入ると同時に…先頭を!!今!!抜き去りました!!」

「体幹もしっかりしていて、表情にも余裕が伺えますねぇ!!」

 

まるで重賞でも走れることを見せつけるような走り。

何より走ってるウインディ自身がとてもイキイキと、楽しそうにしている。

これが、オレを安心させるためのものと思うのは自惚れだろうか。

 

それに幸いと言うべきか、ウインディは今回無茶な走りはしていない。

ペースの配分、そしてコース取りもおおよそ当初の作戦の理想通りだ。

 

「シンコウウインディ!!二位に四バ身の差をつけて、今一着でゴールイン!!」

「いやぁ〜!!彼女といい、他の子達といい、これからのダート重賞が楽しみですねぇ〜!!」

 

「ウインディ〜!!」

「エヘー♪トレーナー、勝ったのだ〜♪」

「よ〜よしよしよし。すぐにシャワーで汗流そうなぁ〜?」

「のだぁ〜♪」

 

…ありがとうなぁウインディ。

オレは、少し心配し過ぎていたのかも知れない。

もっとウインディと、ウインディが信じてくれてるオレ自身を信じなくっちゃなぁ…。

 

「のだ〜」ヨジヨジ

「うん?ウインディ?」

「エヘー♪ガブ〜〜ッッッ!!」

「おおう!!さっき振りだなぁ〜!!」

 

いやまぁ、ある程度加減はしてくれてるんだろうけども。

周囲の観客も

 

「あらあら、いつものねぇ〜」

「もう味しないんじゃないか〜?」

 

なんて、ほのぼのと見慣れたものを見る目をしてるもんなぁ〜。

 

一緒に控え室に戻ったオレは、ウインディにお礼を言う。

 

「ありがとうな。ウインディ」

「のだ〜?ウインディちゃん、べつにトクベツなことはしてないのだ〜」

 

本心なんだろう。コテン、と小首をかしげるウインディ。可愛い。

 

「いや、オレが言いたかったんだ」

「エヘー♪それじゃーどーいたしましてなのだ〜♪」

 

 

「それじゃあ、ウインディ〜?シャワー浴びて着替えたら夕飯食べに行こうなぁ〜?」

「のだっ?いいのだ!?」

「おう。好きなの頼んでいいぞ〜?」

「わ〜いなのだ〜♪」

 

目をキラキラさせてこちらを見て来るウインディ。可愛い。

 

…よし!!

 

「オレも頑張ろう」

「のだ?どーしたのだトレーナー?」

「なんでもないぞ〜?よ〜しよしよしよし…」

 

やっぱり、ウチのウインディは可愛いなぁ〜。

 

 

ふふ〜ん♪

 

ウインディちゃんはまけないのだ〜♪

 

ふんすぅ〜!!




なお、次回は夏合宿の予定です〜。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

海の家って、なんか近寄りがたいイメージ…。

なお、かき氷は王道のいちご練乳が一番好きです。


少し蒸し暑い朝。

嫌でも耳に入って来るセミの鳴く声を聞いて、ああ…今年も夏になったんだなぁと実感しつつ、オレは手でパタパタと顔を扇ぐ。

オレは今、美浦寮の前でウインディを待っている。

と、言うのも今年からウチのウインディもクラシック級ということで夏合宿をする許可が降りたからだ。

とは言え、まだ約束の時間より二十分ほど早いんだが。

 

「お?アンタ、ウインディのトレーナーじゃないか」

 

寮の前で箒を手に掃除をしていたウマ娘が、その手を止めて話しかけて来る。

 

「お、久しぶりだなぁ。ヒシアマゾン」

「なんだい?またウインディに用かい?呼んで来ようか?」

 

またって…別にそう何度も来てる訳でも無いはずだけども…。

 

「いや、今朝は気が急いてね。車の準備も出来てるんだが、オレ自身今回が初合宿でなぁ」

 

少しばかりソワソワしてしまった。

なんなら、ゆうべの忙しなさは小さい頃の初旅行のとき以来なんじゃなかろうか。

 

「あぁ〜…だからあんなに張り切ってたのか…」

 

なにやら納得したような様子でうんうん。とひとり頷くヒシアマゾン。

どうやらウインディの方も初合宿にテンションが上がっていたようだ。可愛い。

まぁ、今回の合宿プランは先輩方の日頃のアドバイスを何度も思い出しながら何度も何度も調整しつつ組み立てていたから問題はないと思う。

 

「まぁ、なんだ。アンタがウインディのトレーナーになってくれて良かったよ」

「そうか?そう言ってもらえるんならトレーナー冥利にも尽きるが…」

「ああ。なんせあの子は…」

「へぇ〜…そんなことが…」

 

そして、十分ほどヒシアマゾンと話し込んでいたところ…。

 

ドタドタドタドタドタドタ…。

 

「のだぁ〜!!やっと準備できたのだぁ〜!!」

 

寮の中から聞き慣れた足音と声が聞こえて来る。可愛い。

 

「おお、ウインディ〜!!待ってたぞ〜!!」

 

軽く手を振って、ウインディにアピールしてみる。

 

「のだっ!?トレーナー♪」

 

嬉しそうに駆け寄ってくるウインディ。可愛い。

 

「忘れ物は無いかぁ?」

「のだぁ〜♪ちゃんとプリントのものはかばんにいれたのだ〜」

 

そう言いつつ、旅行鞄を指差すウインディ。可愛い。

よしよし。それなら問題は無いな。

 

「それじゃあ、車も準備出来てるし、行くか!!」

「のだぁ〜♪」

 

車に乗り込み数時間。

途中で数度の小休止を挟んで辿り着いたのは、海とそれに面した緑豊かな山に囲まれた合宿所。

チーム持ちのトレーナーにあてがわれるホテルのような豪勢さこそ無いが、それでもトレセン学園の設備だけあって、色々と充実している。

 

関係者駐車場に車を止め、助手席で寝ていたウインディを心苦しく思いながらも起こし、荷物を持って宿泊施設前に移動する。

 

「それじゃあ、オレは荷物置きに行くから、ウインディも荷物を置いて移動の疲れを癒してなぁ〜」

「りょーかいなのだ〜♪」

 

ウインディに鍵を渡して、オレも向かいにあるトレーナー用の合宿施設に荷物を置く。

そして、備え付けの椅子に腰掛け、これからのトレーニングについて思案をめぐらせる。

 

そうして一時間ほど経った頃…。

 

「トレーナー!!外に海の家があるからいっしょに行くのだ〜!!」

「おぉ、何か食べたいものでもあったのか〜?」

「エヘー♪フランクフルトに、焼きそばに、かき氷に…焼きとうもろこしもあったのだ〜♪」

 

おう…ザ・海の家って感じのメニューだなぁ…。

まぁ…オレもちょうど腹が減って来てたし…景気付けにも悪くない。

 

「よ〜し!!それじゃ行くかぁ!!」

「わ〜いなのだ〜♪」

 

結果、オレの給料二ヶ月分が早速飛びましたとさ。

夏って怖いね!!

いやまぁ…後悔はしてないけどもさ…。

この二ヶ月、せっかくのチャンスを十全に生かさないとな。

 

 

むぐむぐ…。

 

コレもおいしーのだ〜♪

 

トレーナー、かき氷ひとくちもらってもいいのだ〜?

 

こっちもひとくちあげるのだ〜♪




ウマ娘…早く地方レース追加されないかなぁ…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七夕って大抵曇り空ですよねー。

覚えてる限りだけど、天の川って見たことない…。


「それじゃあ、ウインディ。まずはここで走り込み十五分3セットやってみようか」

「まっかせるのだ〜♪」

「それじゃあ、よ〜い…はい!!」

「のだ〜!!」

 

オレの声を合図に砂浜を駆けるウインディ。

砂浜ダッシュはトレーニングとしてかなり効果的なやり方だ。

体幹を鍛え、バランス感覚を養えるのはもちろんのこと、悪路にも強くなるし、スタミナもつく。

それに加えて合宿所という普段とは違うところを走ることで新鮮味も出る。

オレはバインダーとストップウォッチを手に、ウインディの様子を見る。

その後も次から次へとトレーニングをこなし、ちょうど最後のトレーニングを終えたところだ。

 

夕暮れに、お疲れのウインディにスポーツドリンクといっしょに塩あめを渡す。

 

「おつかれウインディ〜。ほ〜ら塩あめなめるか〜?」

「もらうのだ〜」

 

差し出した個包装になった飴玉を受け取るや、個包装をピリッと破り美味しそうに食べるウインディ。可愛い。

 

ゴミを受け取り、ポケットに入れる。

ふと携帯を見ると、夕飯にちょうどいい時間だ。

 

そして今晩は、ささやかながら七夕行事もやるらしい。

 

「ウインディ、短冊に書く願いは決まってるか〜?」

「のだ?たんざく?なのだ?」

 

小首をかしげるウインディ。可愛い。

 

「ほら、今日は七夕だろ?何か願い事は無いかなってさ」

「う〜ん…いまは特に思いつかないのだ〜」

「そっか〜。それじゃ、夕飯の後に笹の木のとこ集まってなぁ〜」

「りょーかいなのだ〜♪」

 

その後、少し喋ってウインディは着替えに戻る。

オレもまた、今日の成果の記録と準備のために部屋に戻ることとする。

 

「さて…オレはどうしようかなぁ…」

 

今回の七夕イベント。一応、トレーナー側にも短冊は配られてはいるが…。

 

「必勝…は、自分達で掴み取るものだからなぁ…」

 

これに関してはたぶん、オレ以外のトレーナーも同意見だろう。

もちろん書いちゃいけないってわけじゃないんだろうけども…。

 

「かと言って、その他だと金銭…健康…勉強…恋愛…ご利益でパッと思いつくのはこのくらいかなぁ…」

 

金銭は、まぁ忙しいなりに給料はいいし、健康もウインディのためにも気を使った食事してるし、勉強も、まぁ人並みにはして来たつもりだし、誰に言われずともこれからもしていきたい。

恋愛は…そもそも出会いがないからなぁ…。

あったとしても、忙しくてデートだとか夜中のあれやこれやなんてしてる暇無いだろうし…。

となると、それ以外かなぁ…。

 

『ウインディが、いつまでも元気で幸せでいてくれますように』

 

まぁ、こんなとこかな。

 

さて…夜まで時間があるし、さっさと仕事をすませちゃおうかなぁ。

 

そして、夕飯を済ませ、笹の木のところに集まったオレとウインディ。

トレーニングに使ったのが海側だが、こちらは山側に面している。

なお、オレはいつものスーツ姿だが、ウインディは浴衣を着てる。可愛い。

 

「うお〜。けっこうデカいなぁ」

「のだ〜♪」

 

流石はトレセン学園というべきか。

側から見ても相当に立派な笹の木だ。

やがて時間が経つにつれて、続々とトレーナーとウマ娘が集まって来る。

 

「やっぱり、みんなイベント事って好きだよなぁ〜」

「エヘー♪トレーナーとのおもいでなのだ〜♪」

 

元気よくそう言ってくれるウインディ。可愛い。

 

「さて、それじゃ書いた短冊を飾りに行こうか」

 

比較的空いてるところをウインディと手を繋いで進む。

 

「ウインディちゃん、ここがいいのだ〜♪」

 

にこーっと笑うと、ウインディは気に入ったのだろう場所を指差す。

 

「それじゃ、ウインディから…」

「トレーナー!!」

「うん?どうした?ウインディ?」

「エヘー♪肩車して欲しいのだ〜♪」

「えっ?」

 

確かに人混みからは割と離れた位置だけども…。

 

「いやぁ、ウインディ?出来れば普通に手が届くところにだなぁ…」

「トレーナー、ダメなのだ〜?」ウルウル

「よっしゃまかせろ!!」キッパリ

 

そんなこんなで短冊を結び終えたウインディ。

ついでだからと、オレの短冊も吊るしてもらった。

 

「そういえば…ウインディはどんなお願いを書いたのかなぁ?」

「のだ〜?ヒミツなのだ〜♪」

 

そっか〜。

 

可愛い。

 

 

エヘー♪

 

一番目立つところに短冊つけたのだ〜♪

 

これでウインディちゃんのお願い…。

 

かなうといいのだ〜♪

 

 




彦星と織姫って、恋人じゃなくて夫婦らしいですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次の実装はエアシャカール…どんどん古参組が実装されてて嬉しいですなぁ。

ウインディちゃん…SSRサポカで来ないもんですかねぇ〜。


「さて…ウインディの次のレースは…」

 

トレーナー用の宿泊施設で手帳を開いて確認する。

 

『ジャパンダートダービー』

 

クラシック級でのみ走れるダートG1。

しかも夏合宿の最中というかなり難しい時期に開催されるレース。

芝レースでは夏は暇になるとは言うが、ダートはジュニア級に重賞レースが無かったからか、その分詰め込んでいるのかも知れない。

大井レース場への移動を考えると…。

 

「成長ペースと体力の回復も考えるとあと二、三日でいったん切り上げかなぁ…」

 

となると…。

比較的安全かつ、成長の一押しになりそうなトレーニングが望ましいかな。

そしてなにより重要なのは、コレだな。

オレはカバンからとある物を取り出す。

それは、できたばかりのウインディの勝負服。

初のG1の舞台で、袖を通すもの。

コレを着て走ると言う事は、ウインディが最も熾烈な舞台でライバル達と鎬を削るということ。

だがオレにはもう、以前のような不安は無い。

と言うよりもそれ以上に…。

 

「ウチのウインディが…やっと…やっとウイニングライブデビューができる…!!」

 

これは涙が出るほど嬉しい。

いやまぁ、実際の涙は本番まで取っておきたいからなんとか堪えるが。

もう勝った気になるほど浮かれる事はできないものの、しかし負けるとも思わない。

それは、ウインディのトレーニングを一番近くで見て来たウインディのトレーナーとして、そして彼女のいちファンとして断言できる。

もちろんライバル達も皆成長を遂げているだろう。

しかし、それでもなおウチのウインディは負けない。

 

相手に食らいつくような熱い闘志。

それは紛れもなくウインディに教えてもらった事だ。

 

「トレーナー、来たのだ〜♪」

 

お、来た来た。

 

「入っていいぞ〜」

「わかったのだ〜♪」

 

ウキウキした様子で入って来るウインディ。可愛い。

 

「トレーナー、次はついに…」

「ああ、G1レースだ」

 

それを聞くなり、ウインディはギラギラとやる気に満ち満ちた表情を見せる。

 

「そして、これがウインディの勝負服だ」

「エヘー♪預かっててくれてありがとなのだ〜♪」

 

勝負服…それはウマ娘の目標や憧れや信念、そして魂のこもった大切な衣服だ。

例えばトウカイテイオーの勝負服が『皇帝』シンボリルドルフの勝負服を模したものであることが有名だ。

 

「あと二、三日トレーニングをしたら、大井に移動。それから向こうで最後の調整をする」

 

ざっくりとだがウインディに今後の予定を伝えると、自信満々に頷く。可愛い。

 

「それじゃ、後はゆっくりしててな。オレはもう少し書類を整理したら早めに寝るから…」

「トレーナー」

「うん?どした?ウインディ」

「お仕事終わったら、ちょっと時間もらっていいのだ〜?」

「別にいいけども…」

「エヘー♪それじゃあ浜辺にしゅーごーなのだ〜♪」

「ああ、わかったよ」

 

そう言うなり、ウインディは鼻歌混じりに自分の部屋に戻っていった。

 

そして数時間後…。

 

ひと通り仕事を終えたオレは、トレーニングに使用した浜辺にやって来た。

 

「あっトレーナー、こっちなのだ〜♪」

「おぉ〜ウインディ〜待たせちゃってゴメンなぁ〜」

「ダイジョーブなのだ〜♪」

 

そう言うとウインディは手にした袋をこちらに見せつける。可愛い。

 

「なるほど、花火か」

「のだ〜、夏といえばコレなのだ〜♪」

 

確かに、ここらはきちんと後始末する前提だが、敷地内での花火も許可されている。

現にウインディもきちんとバケツを足元に置いている。かしこい。

 

「それじゃ、さっそくはじめるのだ〜♪」

 

ガサガサと袋から幾つか気になったのだろう花火を手にニコニコしているウインディ。可愛い。

 

「それじゃ、花火の先っぽを足元向けないようにして、可燃物…燃えるものも離して置いて、バケツに水…は入ってるなえらいぞ〜」

「エヘー♪」

 

そんなこんなで色々と準備も済ませ、いざ着火。

 

シュワワワワ…。

 

「おぉ、キレイだなぁ〜」

「のだぁ〜♪」

 

花火を手にはしゃいでいるウインディ。可愛い。

 

シュワ…シュ…。

お、消えた。

 

「次、どれがいい?」

「のだっ!!コレ、コレがいいのだ〜!!」

「そっかそっか〜、それじゃあ火をつけるぞ〜」

 

シュワワワワ…。

 

「わ〜いなのだ〜♪」

 

再び元気になるウインディ。可愛い。

 

「トレーナーもやるのだ〜」

「おぉ、そうだな。それじゃ、オレはこれを…」

 

そうして一袋分、花火を使い終える。

 

「それじゃ、帰るか?」

「のだ…」

 

うん?ウインディが元気ないなぁ…。

 

「ウインディ、花火ならまた…」

「ちがうのだ」

 

うん?

 

「その…トレーナー」

「どうした?ウインディ」

 

なにやらモジモジしているウインディ。

いや、本当にどうしたんだ?

 

「その…今度のレースでウインディちゃんが勝ったら…」

「勝ったら?」

 

ウインディはスーハーと深呼吸している。

 

「いっしょに、お祭りに行きたいのだ…」

 

…うん?

 

「いや、そのくらいは別に構わないけども…」

「のだっ!?ホントにいいのだ!?」

 

返事を聞くなり、表情がパァっと明るくなるウインディ。可愛い。

 

「それじゃ、約束なのだ!!」

「おぉ、それじゃ花火片したら戻ろうなぁ」

「ちゃちゃっと済ませるのだ〜♪」

 

そうして、一緒に花火の後片付けをして、お互い宿泊施設に戻ったのだった。

 

 

ふんふふん♪

 

おっまつり♪おっまつり♪

 

ふふ〜んウインディちゃん負けないのだ〜♪

 

でも…なんでトレーナーをさそうのにあんなにキンチョーしたのだ〜?

 

フシギなのだ〜




せめて、ワールドワイドウインディのイベント増やして…増やして…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウマ娘ウエハース…。ウインディちゃんのやつ無事ゲット出来ました。

かわいいいいい!!(尊死)


「さあ、はじまりました!!ジャパンダートダービー十六人立て。今年のクラシック初G1というだけあり、参加するウマ娘達もやる気に満ち満ちた表情をしております!!」

「夏の青空の下ここから見てもわかるほど各ウマ娘の全員目の輝きが違いますねぇ!!」

「やはり、初の勝負服を纏ってのレースですからねぇ、気合の入り方も違って来るのでしょう!!」

 

オレはそんなアナウンスを聞きつつウインディを見守るべくカメラを持って関係者席に座る。

 

「ウインディ〜…あんまり気負いすぎるなよ〜…」

 

初のG1でよくあるのが、やはりウマ娘側のリラックス不足…まぁ要するに緊張で動きが固くなってしまうことだ。

このジャパンダートダービー、2000メートル右回り、そしてコースも比較的平坦…つまりはある意味で一番ウマ娘の地力が試されるレース内容とも言える。

 

「何より、ウインディが今まで走ってきた中で最も長いのが懸念点だが…」

 

ウインディが勝利したG3ユニコーンステークスは1600メートルのマイル、そこから400メートルも伸びて中距離になっている。

もちろん、ウインディにはスタミナも付けさせているし、普段通りできていれば問題はない。

控え室に行った時も、特に普段と変わったところはなかった。

強がりや嘘をついていればウインディは分かりやすいから、そこに偽りはないだろうし…。

 

「やっぱり、アナウンスの通りみんな気合の入りが違うなぁ…」

 

オレはカメラを構えつつ、他の観客達と同じようにパドックからゲートに入るウマ娘達を見守る。

そんな時、一般席の方から会話が聞こえて来る。

 

「なあなあ、今回誰が勝つと思う?」

「やっぱシンコウウインディじゃないの?」

「いやいや、ミニロータスだって先月スレイプニルステークス勝ってたろ!!」

「いやでも、直接対決がなぁ…」

「い〜や、2100メートルで勝ったんだ!!2000メートルで勝てないわけないだろ!!」

 

ふっふん!!ウチのウインディが話題に上っている!!

これほど嬉しいこともない!!

しかしミニロータス…やっぱりウインディのライバルのひとりだけあって油断ならないなぁ…。

 

「でも、ウチのウインディだって頑張ってきたんだ」

 

オレは気持ちを切り替え、ターフの方を見る。

ちょうどゲートインを終えたところだ。

 

「三番人気は二番アストレアノーチェ。この評価は少し不満か、二番人気は十一番ミニロータス。そして…」

 

少し間を開け、発表された一番人気はもちろん…。

 

「一番人気はこの娘、九番シンコウウインディ!!」

「余裕のある表情。そしてこの落ち着き…風格を感じさせますねぇ〜」

 

おぉ!!やっぱりウインディ〜!!

みんなわかってるなぁ〜。

 

さぁ…緊張感あふれる空気。

ざわめきは静まり、オレ含め客席の面々は固唾を呑んでその時を今か今か待ちわびる。

 

そして…沈黙が会場を支配したその時。

 

運命のゲートが今…ガコンッ…と開いた。

 

 

よし…よし…。

イケる…勝てる…出し抜ける…。

先頭はとれた!!

足元は良バ場、大丈夫、しっかり踏み抜ける!!

 

「さぁ〜!!まず先頭に躍り出たのは二番リボンバラード!!勢いそのままグングン逃げ続けております!!」

「コーナーに入り少し減速しましたが、それでもそのまま逃げていますねぇ…緩めなくて大丈夫でしょうか?」

 

大丈夫!!大丈夫!!スタミナもつけたし、ペースは配分は何度も何度も練習した!!

勝つんだ!!G1で!!この舞台で!!

みんな初G1で、だから様子見だった!!

この奇策は一度晒せば二度と使えない!!

ここを逃しても次がある…?

そんなバカなことはない!!私みたいな無名なウマ娘には、一戦一戦が全力なんだ。

 

なのに…。

 

そうだと言うのに…。

 

何故、お前達は着いて来る!!

 

 

「さぁぁぁぁ!!本領発揮だ!!九番シンコウウインディ!!」

「前目前目につけて、いつでも抜け出し可能な距離感を保っています!!」

「虎視眈々と後ろから様子を伺う十一番、ミニロータスの末脚も注目ですよ!!」

 

ウマ娘達は現在第二コーナーを越え、直ぐに最終コーナーに差し掛かるところ、所謂ダンゴ状態になっている。

観客達の興奮のボルテージも高まっており、立ち上がる土煙に塗れるウマ娘達は、なんとも泥臭く、しかし美しい。

なお、ウチのウインディは四番手に着けている。

 

「最終コーナーを越え、ウマ娘達が勝負を仕掛ける!!」

 

ウチのウインディも、先頭争いに加わる。

それまで先頭を維持していたリボンバラードは苦しそうに前だけを見据える。

 

「ひりつく競り合い!!ミニロータスもここで溜めていた末脚を繰り出したァァァ!!」

「残り300!!リボンバラード、頑張りましたがここまで!!入れ替わりにシンコウウインディが先頭に立ちます!!」

「しかし、ミニロータスの勢いも止まらない!!バ身を徐々に徐々に詰めていく!!」

「差し切るか!!譲らないか!!ジュニア級からのライバル対決!!どちらが勝ってもおかしくない!!」

 

勝負の…行く末は…。




さて…ウインディちゃんは…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レース描写…ムズカシイ…ムズカシイ…。

最近中古で買ったメタ○マックス2リローデッドにハマってます。



『ジャパンダートダービー』もいよいよ佳境だ。

最終コーナーを越え、ウマ娘達は最後の直線に入る。

そして、その目には当然諦めなど微塵も浮かんではいない。

皆が皆、最後の一瞬まで己の勝利を見据えている。

そして、その中でも特に鮮烈に映る二つの影があった。

 

「さぁぁ!!激しく競り合う二人!!勝つのはシンコウウインディか!!ミニロータスか!!」

「熾烈な先頭争い、凄まじい闘志と闘志のぶつかり合いから一時(いっとき)も目が離せません!!」

「ミニロータス!!詰める詰める詰める!!見ていて恐ろしくなるほどの末脚!!その冴えだ!!」

 

ウインディ…負けるな…!!

カメラを握る手に、思わず力がこもる。

 

「残り200を切った!!」

「シンコウウインディ!!まだ先頭を譲らない!!しかしミニロータスはもう二バ身ほど後ろにつけている!!」

 

レース前はあれほどまでの沈黙を保っていた周囲は、それぞれの想いを託すウマ娘達への声援が続く。

そして、その中には…。

 

「差し切れ〜!!ミニロータス〜!!」

「いや!!まだやれる!!まだ行ける!!負けるなぁ〜!!シンコウウインディ〜!!」

 

ウチのウインディを応援する声も多くある。

 

そして、その声援を耳にした時、オレはカメラから手を離し…。

 

 

よし!!よし!!よし!!

もう射程圏だ!!距離はあと150を切った!!

十分だ!!十分差し切れる!!

 

「…………!!」

 

言葉なんて出ない。こっちだっていっぱいいっぱいなんだ。

あとはタイミングを測るだけ。

焦るな…しかし、瞬時に差せ…。

そうすれば勝てると、お前が今年のダートG1初の一着だと、そう自分に言い聞かせていた時だった。

 

「ウインディ〜〜!!」

 

声だ。ウマ娘の間でもあのトレバカで有名な、シンコウウインディのトレーナーの。

 

「一緒にお祭り行くんだろ〜!?オレは待ってるぞ〜!!」

 

なにを…っ!?

 

「トレーナー…」

 

ゾワッ…

 

前をゆくウマ娘の…気配が変わった。

ただがむしゃらに抜かせるものかと、そう息を切らしていた標的が、ガチリ…とスイッチが切り替わったように研ぎ澄まされるのを肌で感じた。

しかし…それでもわたしのすることは変わらない。変わっちゃいけない。

残り距離は…100を切ろうとしている。

ここだ。ここが仕掛け時だ。

残った脚を…そのありったけ溜め、炸裂させる。

最後の加速。アイツを追い抜くその時のために。

…勝負だ。シンコウウインディ!!

 

 

「ウインディ〜!!負けるなぁ〜!!」

 

気がつけば、席を立って声を張り上げ、ウインディに声援を向けていた。

 

「さぁぁ!!ミニロータス、今!!今仕掛けました!!差せるか!!差せるか!!」

「差し切っ…いや!!シンコウウインディ!!負けじと抜き返す!!」

 

迫るミニロータス。離すウインディ。

そして、ゴールまでの距離があと20メートルを切った頃…その均衡は崩れた。

 

「シンコウウインディ!!突き放した!!ミニロータス!!最後の力を振り絞るも届かない!!」

「シンコウウインディ!!1バ身ほどの差をつけ今!!今ゴールイン!!」

「クラシック級ダート王の称号は今!!彼女のものとなりました!!」

 

着順が確定してから、オレはウインディを労おうとターフに駆け寄る。

 

「ウインディ〜〜!!」

「のだっ♪トレーナ〜〜!!」

 

先ほどまでの戦士の顔は何処へやら。

いつもの調子で駆け寄って来るウインディ。可愛い。

 

「勝ったのだ〜♪」

「うぉっ…」

 

急にこっちに飛びついて来るウインディ。

オレは怪我をさせまいと、何とかバランスをとって持ち堪える。

そのまま後ろに回ると…

 

「ガブガブガブ〜っ♪」

 

おお。いつもの一発では無く何度も噛みついてくるパターンだ。可愛い。

今日、はじめて袖を通したウインディの勝負服は、ちょっと砂で埃っぽいが、全く気にならない。

むしろあの頑張りを目にした後だからか勲章のようにさえ感じられ、むしろとても誇らしかった。

 

「ほらほらウインディ〜、今日はウイニングライブが…」

「のだ〜♪も〜ちょっと降りたくないのだ〜」

 

いつになく甘えて来るウインディ。可愛い。

まぁ、あの激戦を制したわけだし、疲れているのは本当だろう。

結局オレはそのままウインディを連れてステージの準備が整うまで控え室へ。

脚をアイシングしつつ、ウイニングライブでの曲と振り付けを、PCで最終確認しつつ、頭の中で繰り返してもらう。

 

曲名は…『UNLIMITED IMPACT』




ドロップ狙い…しんどい…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウイニングライブの様子…どうやっても上手く表現できず…orz

次のガチャこそは…。

最近は時期とかあんまり関係ないし、古参ウマ娘だし、ワンチャンっ……。


『UNLIMITED IMPACT』

その曲は正に『不屈』の象徴とも言えるものだった。

どんな逆境の最中でも、それを乗り越え進化する。

新芽のような力強さと、その成長を歌い上げるような…素晴らしい曲だった。

それを、レース場をひとつ使って自分の担当ウマ娘がセンターで堂々と歌っているのだ。

正直言って涙を堪えることなどオレには出来ようはずもなかった。

長く、そして短い時の中で、オレは確かにウインディの成長と、そしてその通過点を見た。

そして改めてウマ娘を育てることの難しさやそんな自身が責任重大とも思い知ったし、これからのウインディのことを考えるとワクワクしても来ていた。

 

ウチのウインディのメイクデビュー以来のウイニングライブも終了し、控え室に戻ったウインディにオレがまずしたことといえば…。

 

「ウッインディ〜〜〜!!」

「トッレーナ〜〜!!」

 

お互い笑顔で向かい合うと飛び込んで来るウインディ。可愛い。

 

「ウインディ〜ウインディ〜ウインディ〜〜!!」

「トレーナートレーナートレーナ〜〜!!」

「よ〜しよしよしよしよし……」

 

ナ〜〜〜〜デナデナデナデナデナデナデ…。

 

「ウインディ〜偉かったぞ〜!!強かったぞ〜!!かっこよかったぞ〜〜〜〜!!」

「エヘー♪トレーナー、ウインディちゃんをもっと撫でるのだ〜♪ホメるのだ〜♪かまうのだ〜♪」

 

当のウインディもライブ終わりということもありテンションが上がっている様子。

何よりウインディ自身もあの後、ライバル達に色々と宣戦布告を受けたらしい。

それに、いつものレース終わりのナデナデもライブのことも踏まえるとだいぶ短めになっちゃってたし……。

だからこれは必要なケアだからしょうがないよね!!

現に今のウインディは誰がいつどこからどう見ても分かるくらいにご機嫌だ。

 

「よしよしよ〜し」

「のだぁ〜〜♪」

 

ひとしきりウインディにかまい倒して控え室も片付け、スタッフや他トレーナーとも挨拶を終えて合宿所に戻るための電車に乗る。

 

「ウインディ」

「のだぁ?」

 

隣に座るウインディはこちらを見上げて首を傾げている。可愛い。

 

「次もウイニングライブ、センター取ろうなぁ」

「ふっふん!!とーぜんなのだ〜〜!!」

 

快活に笑い、無邪気にそう返すウインディ。

この子もいつか引退し、やがて生涯のパートナーを見つけるんだろうか。

疲れからか、不意に普段は考えないような、そんなことを考えてしまう。

まぁ、未来のことなど三女神様にも分からない。

なら、いや、だからこそ今は…。

 

「じゃ、そのためにもゆっくり休んでなぁ」

 

この子の、一番のファンで、トレーナーで、誇れる師になりたいと…心の底の底からそう強く思った。

 

 

ウインディちゃんかったのだ〜♪

 

エヘヘー♪トレーナー、ごほーびわすれてないのだ〜?

 

おまつり、今からたのしみなのだぁ〜♪




ウインディちゃんの旦那…いったい誰がなるんですかねぇ…?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ダートウマ娘、続々と発表されてますね〜。

これは、ウインディちゃんの実装も近いかも…?


さて、今は約束のお祭りに行く日の夕方。

 

トレーニング終わりにウインディと約束したお祭りに備えてオレは今、万全に万全を期すためにも、手荷物の最終確認をしている最中だ。

 

「ハンカチよし。ティッシュよし。サイフよし。万一のための折りたたみ傘よし。虫除けスプレーよし。花火を見る時用のレジャーシートよし。万が一ウインディがこけた時のための絆創膏及び傷薬よし。服装よし…」

 

持っていく手荷物を改めて確認する。

と言うか、そのくらいしかできることも無い。

今日分のトレーニング資料も全部出来てるし、確認も三回はしたから抜かりはない。

我ながら頑張った。うん。

早速G1を取れたこともあって、しばらくはトレーニングに専念してもらうつもりだけども。

まぁ、それは後でいい。

この近場で行われるお祭りは規模も大きく珍しい屋台も目白押しのようで、毎年好評を博しているとか。特に今日は花火大会も行われるらしい。

ウインディが行きたがるのも正直わかる。

準備も終わり、待ち合わせ場所の宿泊所の前に立つ。

なお、他にも結構待ってるトレーナーもいた。

やっぱり年頃の子って、こういうイベントごとが好きなんだろうなぁ…。

 

「トレーナー、おまたせなのだぁ〜♪」

「おぉ、ウインディ。別にそこまで待ってないぞ〜?」

 

振り返ると、ウインディは浴衣を着ていた。可愛い。

 

「おぉ〜。なかなか似合うなぁ〜」

「エヘー♪良かったのだ〜」

 

その後、ウインディの希望でそう遠くない祭り会場に歩いて向かうことに。

道はある程度舗装されてはいるものの、あまり街灯もない山の方だからか提灯の灯りがある程度離れていてもよく見える。

そうして辿り着いたお祭り会場では太鼓や笛の音が響き渡り、屋台では食べ物だけでも王道のフランクフルトやウインディの大好物の焼きとうもろこし。鈴カステラ、焼きそばにわたあめにリンゴ飴、タコ焼きイカ焼きクロワッサンたい焼きなどなど目移りしそうなほどにたくさんあった。

しかもウマ娘に対応するためか量も結構ある。

毎年トレセン学園の生徒が来ることもわかってるんだろう。

 

「ハグハグっ…これもこれも美味しいのだ〜♪」 

 

両手に食べ物を持ちつつ、満足げな表情を浮かべるウインディ。可愛い。

 

「まぁ、約束してたご褒美だしな。今日はカロリーとか気にしないで食べてもいいからなぁ〜?」

 

そんなこんな、食べ物の他にも射的やヨーヨー釣り、途中でお面を買ったり型抜きや輪投げ…色々と屋台を巡った…んだが…。

 

「のだぁ〜…」

 

隣でウインディが何やらモジモジしてるなぁ。

チラリと横目でこっそり見ると、こちらの手を取ろうとしては躊躇ってまた取ろうとしては引っ込めてを繰り返してる感じだ。

 

「ウインディ?」

「のだっ…?」

 

ピクッと反応するウインディ。可愛い。

 

「いや、この人混みではぐれると困るから、手を繋いでくれると助かるなぁって思ってさ」

 

オレがそう言うなり、ウインディの表情がパァァァァっと明るくなる。可愛い。

 

「ふ、ふふ〜ん!!しょーがないのだなぁトレーナーは〜!!」

 

手を差し出しながらニッコニコでそんなことを言うウインディ。可愛い。

 

「しょーがないからウインディちゃんが手を繋いであげるのだ〜♪」

 

きゅっ…と手を握ると、何やら温かい。

 

「おぉ、助かるなぁ〜。ありがとうウインディ」

「ふふ〜ん!!おれーなら焼きとうもろこしでいいのだ〜♪」

 

そう言ってふんす!!といつもの様子に戻るウインディ。可愛い。

お祭り会場は散策するだけでも楽しいもんで、気がつけば花火大会の時間もだいぶ近づいてきている。

 

「そろそろ花火見られるポイント押さえに行かないとキツいな」

「のだぁ〜♪クラスメイトにとっておきのポイント教えてもらったのだ〜♪」

 

そう言ってウインディに連れてきてもらったのは、お祭り会場から少し離れた小高い丘の上。

定期的に手入れがされているのか草がボーボーというほどでも無く、しかし若干木陰になっているからか周囲からはなかなか見つけにくいスポットだ。

 

「おぉ〜、ここからなら確かに花火見放題だなぁ〜」

「エヘー♪トレーナーさんといっしょにどうぞ〜って言ってもらったのだ〜♪」

 

優しいクラスメイトちゃんたちだなぁ〜。

 

「それじゃあ、座ろうか」

 

そう言ってカバンから小さめのレジャーシートを草の上に敷く。

 

「それじゃ、どうぞウインディ」

 

そう促すと、ウインディはぽすんっ…と腰を下ろす。

そして、その次にオレが座る形になる。

 

「エヘー♪トレーナーの隣なのだ〜♪」

 

ニコニコ顔でそう言ってくるウインディ。可愛い。

 

「まぁそうだなぁ〜」

 

その後もそんなこんな、取り留めもないような話を続け、ふと時計を見遣る。

 

「そろそろだな」

「楽しみなのだぁ〜♪」

 

わくわくしているのがひと目でわかるほどしっぽをぱたぱたさせ、空を見上げるウインディ。

 

そして…

 

ヒュ〜〜〜…どっぱぁ〜〜ん!!

 

打ち上げ花火の大きな音とともに花火大会がはじまった。

 

 

エヘー♪トレーナーと花火見れてよかったのだ〜。

 

まったく、トレーナーはウインディちゃんがいないとしまらないのだな〜♪

 

来年もその次も、ずっといっしょに見たいのだ〜♪




他のダートウマ娘達も可愛いが、やっぱりウインディちゃんがNo. 1で可愛いなぁ〜〜!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

地方レース場の追加…十九日のガチャ更新がずっと楽しみな筆者です。

ウインディちゃん、補正どうなるかなぁ…。

勝負服も気になるし…。

まぁ、気が早いんですがね。


さて、合宿所の勝手にもある程度慣れてきた頃。

トレーニング開始前にウインディが浜辺で

 

「トレーナー!!ウインディちゃん海で泳ぎたいのだ〜♪」

 

と言ってくる。

 

「ふむぅ…」

 

確かに水泳は全身運動だし、身体への負担も少ない。

リカビリ施設なんかにもプールがあったりするし、そう言う点でも割とポピュラーだ。

 

「そっか〜。それじゃあトレーニングに組み込んで…」

「む〜…」

 

うん?なにやら不満そうな表情…。

 

「違うのだ〜〜!!」

 

ほっぺたを膨らませてそう言うウインディ。可愛い。

…じゃなくて、一体何が不満なんだろうか?

 

 

「ウインディ?一体何が違うのか教えてもらえるかな?」

 

とりあえず、原因を聞いて見ないことには分からない。

 

「ウインディちゃんは、トレーナーと遊びたいのだ〜〜!!」

 

ぶんぶんと両腕を上下に動かしながらそう言うウインディ。

 

「あぁ〜…なるほどなぁ…」

 

いやまぁ、確かに水着は持って来てる…というか現在進行形で海パン履いてるけども…。

それは遊ぶためではなく、トレーニング中に水中で足がつったりして溺れているウマ娘を救助するためのものだ。

でもまぁ…確かにここ最近はお祭りに行った分トレーニング漬けだったし、たまのガス抜きも必要かなぁ…。

スパンが短いような気もするけど、まぁそこは個人差だろうし。

 

「よ〜し、分かった。それじゃあトレーニングが終わってからでいいか〜?」

 

そう言うと、ウインディは不機嫌そうな表情から一転、ぱぁっと明るくなる。可愛い。

 

「エヘー♪やくそくなのだ〜♪」

 

ニコニコとそう言って改めてトレーニングに励むウインディ。

最近は成果も上々と言って差し支えない。

ただ、G1をとったとは言え、まだまだ道は長い。

気を抜けばすぐに追い越されてしまいかねないのがウマ娘のレースというものだ。

気を張りすぎず、かといって緩めすぎず…いっしょに歩いて行こう。

それにやっぱり、メリハリはきちんとしないとだしなぁ。

………別にウチの可愛い可愛いウインディを甘やかす口実が欲しいわけじゃないぞぅ?(誰にも聞かれない言い訳)

 

「それじゃ、ビーチボールとか水鉄砲とか浮き輪とか、色々用意しとくからなぁ〜」

「ふっふん!!任せたのだ〜♪」

 

そんなこんなでトレーニングが終わり、色々と準備を済ませて再び浜辺へ。

早めに切り上げたからかまだ明るい空の下、何人かの生徒に話しかけられ談笑しているウインディ。なお、格好はトレーニングの都合上、学園の指定水着だ。

 

「あっ、来たみたいだよ〜」

 

話していた生徒の一人がオレに気がつき、ウインディもこちらを向く。

 

「あっトレーナー♪待ってたのだ〜♪」

 

ブンブンと手を振るウインディ。可愛い。

 

「それじゃ、あたしらはお邪魔にならないうちに…」

「ガンバ〜ウインディちゃ〜ん」

「のだ?よくわかんないけど、がんばるのだ〜!!」

 

てっきりいっしょに遊ぶものかと思っていたが、どうやら違ったようだ。

っていうか邪魔って…べつにトレーニングは今日は切り上げなんだけども…。

 

「あの子達は友だちか?」

「のだ?なんかウワサ?かなんかでウインディちゃんとトレーナーのこと聞かれてただけなのだ〜」

 

噂ねぇ…なんだろ?

 

「それじゃ〜遊ぶのだ〜♪」

 

待ちきれないと言わんばかりにグイグイと腕を引っ張るウインディ。可愛い。

 

「まぁまぁ、まずはボールを膨らませてだなぁ〜」

「それじゃー、ウインディちゃんはうきわふくらませるのだ〜♪」

「おお、頼めるか〜?」

「まっかせるのだ〜♪」

 

そうして準備が終わり…。

 

「いくぞ〜ウインディ〜〜!!」

「のだ〜〜♪」

 

ウインディと夕暮れ時まで遊んだのだった。

 

 

 

 

ふっふ〜ん♪

 

トレーナーとあそんでたのしかったのだ〜♪

 

のだ?しんてんって、なんのことなのだ〜?




そういや、海なのに泳ぐ的なの無かったなぁと。
そう思って書いた次第です。はい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

130話ですねぇ〜…。

いや、まさかコパノリッキー育成実装とは…。

来るにしてもサポカかなぁなんて思ってたんですけどもねぇ…。

(・ω・`)


「ふんふんふ〜ん♪」

 

カタカタカタッ…。

 

トレーナー用の宿泊施設で、オレは今日の分の仕事をしている。

変な話だが、ここ最近これが楽しみになりつつあった。

何せ、ウチの可愛いウインディの成長が見られるわけなのだから。

 

「やっぱり、ここ最近の上がり幅はすごいなぁ〜」

 

もちろん、急に不自然なまでに上がったりはしないが、夏合宿を始めてからと言うもの、伸び幅は確実に上がっている。

ふいに、窓を見遣るとうすぼんやりと見える海から波の音が聞こえる。

これも仕事の効率が上がった理由だったりしてな。

 

「とは言え…それもこれも、先輩方のアドバイスの賜物だなぁ…」

 

学生の頃から可愛がってくれた先輩に感謝だなぁ。

 

「さて、これが済んだらさっさとシャワーでも浴びて寝るかなぁ…」

 

そう思い、先を立ったすぐ後のこと。

 

コンコン…。

 

遠慮がちに扉がたたかれる。

 

「うん?は〜い」

 

こんな時間に来客とは珍しい。

 

ガチャリ、と扉を開けた先には…。

 

「うぅ〜…トレーナー…」

 

不安そうな表情を浮かべたウインディが。

ただごとではない予感がしたオレは、すぐにウインディを部屋にあげる。

 

「どしたウインディ〜〜?」

 

何事かと思ったものの、流石に今のウインディの前で声を荒げる訳にもいかず、努めて優しく声をかける。

 

「………」

 

グスグスと鼻をすするウインディにティッシュで鼻をかませる。

 

「よ〜しよしよし…大丈夫だからなぁ〜?オレはウインディの味方だぞ〜〜?」

 

ウインディを落ち着かせようとゆっくりゆっくり頭を撫でる。

しばらくして気持ちが落ち着いたのか、ウインディは「じつは…」と、わけを話し始める。

 

「真っ暗なとこにいる夢を見てたのだ…」

「夢…かぁ…」

 

たかが夢と侮るなかれ。

過度の緊張やストレスから悪夢にうなされると言うのはアスリートに限らずあることだ。

そのまま少しずつ少しずつ話し続けるウインディの夢の内容を纏めると、何やら暗いところで他のウマ娘達と励ましあっていたものの、ひとり、またひとりとそこからいなくなってしまい、最後にはウインディが一人ぼっちになってしまうというものだったという。

 

「なるほどなぁ〜…」

 

寂しがり屋のウインディには確かにこの上なく辛い夢だったろう。

もしかしたら、オレは知らず知らずのうちに、ウインディを…

そうネガティブな考えになりそうな時

 

「でも、トレーナーがいてよかったのだ〜…」

 

さっきまでとは打って変わりホッとしたような表情でウインディはそう言った。

その後、喉がかわいたというウインディにアイスココアを入れ、気持ちもだいぶ落ち着いたウインディにオレは切り出す。

 

「それじゃあ、そんな怖い夢を見たんなら…今晩は泊まってくか?」

「いいのだ?」

 

キラキラとした目でこちらを見つめるウインディ。可愛い。

 

「ああ、シャワーは浴びたか?」

「それはダイジョーブなのだ!!」

 

そう言うウインディに安心したオレは立ち上がってふすまを開ける。

 

「のだ?それなんなのだ?」

 

小首をかしげてたずねてくるウインディ。

 

「寝袋だよ。オレはコレで寝るからウインディはベッド使いな」

 

そう言って寝袋を広げようとしたところ…。

 

「トレーナーといっしょがいいのだ〜!!」

 

甘えん坊が顔を出してきた。

が、しかし…。

 

「いや、流石に教え子と同じベッドで寝るのは…」

「うぅ〜…トレーナーはウインディちゃんのことキライなのだぁ〜…?」

 

じわり…と涙を浮かべるウインディ。

 

「いや!!やっぱりベッドで寝ようかなぁ!!」

「エヘー♪ありがとなのだ〜♪」

 

そう言ってベッドで横になるウインディ。

 

「ウインディが寝るまで見守ってるから、安心してな」

「トレーナー…やさしいのだぁ〜…」

 

布団をかぶせ、ポンポンと撫でつつウインディが寝るまで待つ。

元々、トレーニングの疲れがあったんだろう。

ウインディは思いのほかあっさりと眠りに落ち…

うなされるような声も無かった。

 

 

あの夢はもう見なくなったのだ〜♪

 

トレーナー……………

 

ありがとなのだぁ〜〜♪




ウインディちゃん実装…。

首を長くして待っとります…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃん…リッキーの育成イベでも空気なの…orz

SSRタキオン…強いんですかねー。
まぁ、余程高性能でもなければウインディちゃん貯金は崩す予定は無いですが。


オレはその日、朝から参考資料として様々なウマ娘のレースを見ていた。

取り分け驚いたのは去年の帝王賞。

 

「やっぱりすごいな、この子は…」

 

内ラチギリギリを攻める度胸、スピードに比例して強まる遠心力に耐えうる足腰にバランス感覚、関節の柔軟な動かし方、そして勝負勘、どれを取っても並のそれではないのが見て取れる。

コーナーをフルスロットルで駆け抜け、後続が釣られて速度を上げるも、それゆえに最後は脚が残らず、結果すり潰すように逃げ勝つ。

気がつけば一着でゴール板を踏んでいた彼女の…『スマートファルコン』のコース取りは正しく芸術的と呼ぶに相応しい。

二着に一秒以上の差をつけて、なお笑顔で客席に手を振る様は彼女の言うウマドルの理想そのものだろう。

そのどこまでも自然体なありようは或いは勝って当然、センターを取って当然。

その自信の表れゆえか。

少しでも多くの情報を書き出してウインディのためのヒントにしなければとメモを取る手が止まらない。

これだけのこと、一朝一夕で出来るとは思えないが、それでも何もしないよりはマシだ。

圧倒的実力差は明らか。

『砂の隼』は未だ、誰にも止められないのだろう。

 

だが、それでも…

 

「ウチのウインディだって着実に成長してるさ」

 

ふいに口をついて出た言葉だが、オレに…いや、オレ達に驕りはない。もちろん焦ってもいないつもりだ。

これを見たのもウインディのための今後のレース研究のためと、何よりオレ自身が初心を忘れまいと己に喝を入れるためだ。

あの時スマートファルコンに「期待している」と言われたのだから、油断も慢心も出来ようはずもない。

 

カラン…とコップの中の氷が鳴る。

注いで置いたアイスコーヒーは最早コップの底の方に心もとなく溶けた氷で薄まった分しか無い。

 

「さて。もうちょいしたらいったん休憩を…」

 

コーヒーを淹れ直そうと、立ち上がったその時………

 

ドタドタドタドタドタドタドタドタ…。

 

うん?この何やら久しぶりな足音は…。

 

「トレーナー!!ウインディちゃんと探検するのだ〜〜!!」

 

バァン!!とトレーナー用宿泊施設の扉を開けてそう言ってくるウインディ。

その格好は麦わら帽子にジャージ姿、手には虫取り網と、おまけに背中には大きなリュックを背負い、今にもワクワクという擬音が聞こえてきそうなほどだ。可愛い。

 

「うん?ウインディ、急にどうしたんだ〜?遊びに行くんなら行ってもいいんだぞ〜?」

 

今日はトレーニングもお休みでウインディには好きにしていいと前もって伝えてもある。

トレーニング漬けの日々故に、休息もまた大切なことだ。

 

「エヘー♪だからトレーナーと遊びにいくのだ〜♪」

 

ニコニコとそう言うウインディ。

まぁ確かに、同級生ちゃん達のトレーナーとは別々の宿泊施設だし、そもそもあの子達は走るの芝だから予定も合いにくいのもあるのかもなぁ…。

いやでも、今日はレース研究をしたいし…。

 

「いや…オレは…」

「のだ?何見てるのだ?」

 

ウインディは気になったのかヒョイと画面を覗き見ようと身を乗り出す。

まぁ、別に見られて困るものでもないからいいんだけども…。

 

「うん?ウインディも見るか?」

 

オレは椅子に座ったまま横に移動し画面を見せる。

そこにはウイニングライブで歌う準備をしているウマ娘達が写っていた。

 

「………………」

 

あれ?ウインディちゃん?

急に静かになったなぁ?

 

「ヴ〜〜……」

「ウインディ?」

 

何でそんなに唸って…。

 

「ガブ〜〜〜!!」

「あ痛ァァァっ〜〜〜!!」

 

その後、ウインディの機嫌を直してもらうのに小一時間を要したのはナイショだ。

 

 

ふんなのだ!!ふんなのだ!!

 

あんなステージで踊ってたようなれんちゅーよりウインディちゃんの方がスゴいのだ〜〜!!

 

…でも、かんだのは後であやまるのだ〜…。

 




新キャラが増えるのは良いんですよ…。

ただ、ウインディちゃんが実装のタイミングを毎回流してるのを見てると、こう…思うところをある訳で。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

まさか、ガチャ二連続で新衣装だなんて…orz

ウインディちゃんはもっと色んなイベントに顔を出してもいいと思うな…。


「ふ〜む…」

 

オレは今、薄暗い中で、腕を組み考え込んでいた。

 

それと言うのも…。

 

「まさか、合宿帰りで油断してたところにさっそく落とし穴とは…」

 

いやぁ、我ながらウインディの行動パターンを読み切れていなかったなぁ。

なんて、反省するのは後だ。

 

コンコン、と壁面を叩く。

 

「……よし」

 

このままでは仕事に差し障りも出てしまうので、とりあえず穴を登ることとする。

 

「よっ…と」

 

壁面に手で触れ、次いで足も引っ掛ける。

幸い、周囲の土はある程度硬さがあるのと、落とし穴の広さ自体さして大きいわけでもなかったので、登ること自体はそれほど大変でも無い。

まぁ、オレ自身の慣れっていうのも多少はあるのかも知れないが…。

 

「にしても…少し意外だなぁ」

 

最近のウインディの落とし穴はもう少しバリエーションというか、登るのも骨が折れる仕様のものが多い。

まぁ、凝ったものほどウインディが出られなくなって一度助けに入るワンクッションが入るんだが…そう言うところも本当に可愛い。

そう言った意味で、こんな初歩的な落とし穴を掘ること自体逆に新鮮と言うか…。

 

「ウインディ?何か悩み事でもあるのか〜?」

 

今日の分のトレーニングを終えて、トレーナー室のソファーで寝そべるウインディに声をかける。

 

「のだっ!?わかるのだ〜?」

 

びっくりしたような、それでいて少し嬉しそうな顔でこっちを見るウインディ。可愛い。

 

「まぁ、オレとウインディの付き合いだしなぁ〜」

 

その言葉を聞いたウインディはソファーから顔を上げると、胸元に抱えたクッションを抱きしめながら何やら神妙な面持ちで話し出す。

 

「のだぁ〜…実は…」

 

時は遡り、数時間前のこと。

 

 

「はぁ〜…どうすればトレーナーさんをオトせるのかなぁ?」

「いやいや、流石に厳しんじゃない?」

「そうかなぁ?」

「いやでも、気持ちはわかるけどさ〜?」

 

なんてことをウインディのクラスメイトであるウマ娘が数名の友人たちと相談しあっていた。

 

「ふふ〜ん!!そんなのカンタンなのだ〜!!」

「え、ウインディちゃん!?」

「どうすればいいのが分かるの!?」

「ふっふん!!気になるのだ〜?」

 

ウインディはフンスッとひとつ鼻を鳴らすと

 

「落とし穴を掘ればいいのだ〜〜!!」

 

と、誇らしげに胸を張り堂々と言う。

すると、悩ましげにしていたクラスメイトが

 

「…そだね。ウインディちゃんはそのままでいてね〜?」

 

と、ウインディをナデナデしつつ、優しい笑顔でそう言われた。

 

 

「う〜ん…何が違うのだぁ〜…?」

 

なるほど、そう言うことか…。

 

「ウインディ」

「のだ?」

 

これはオレの勝手な憶測ではあるがウインディの記憶にあるセリフからして恐らく、そう言うことだろう…。

 

「多分、オトすっていうのは…」

 

 

 

のだ〜♪

 

トレーナーからプロレスのチケットもらってきたのだ〜♪

 

のだ?なんでまたナデナデしてくるのだ〜?

 




ちょっと短くなっちゃったです…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ユキノビジン、実装おめでとうございます…。

結局、ライバルいない問題はこれからもブリュスクマン方式でやってく感じなんですかねぇ?
それならウインディちゃんも実装の目処がたちそうですねぇ。


ここはトレセン学園トレーナー室。

 

「ふむぅ…」

 

オレはそこで作業用PCの画面を前に腕組みをしていた。

さて、大変なことが起きてしまった。

いやまぁ、それほど事件かって言うとそうでもない。

むしろ、こう言った仕事をしていれば避けては通れない道だ。

それというのも…

 

「ウマ娘トレーナーの合同セミナーかぁ…」

 

日取りはちょうど来週の土日。

場所は電車で数時間。

この時期はめぼしいレースもやっていないから芝・ダート共に参加しやすかろうとのことだろう。

そこで二泊三日で行われるものらしい。

クラシック級ウマ娘のトレーナー達が一堂に会する様はきっと壮観だ。

そう言った人たちと会って話をするだけでも得られるものは多いだろう。

 

「ウインディの更なる成長のためにも気張って参加しなければ…」

 

その間ウインディはオレが用意した自主トレーニングなり、わからないところは教官に任せるなり、やりようはあるものの…。

 

「大変なようならクラスメイトちゃん達に頼んで…いやそこまでするのは流石に過干渉だよなぁ…」

 

あの子達もあの子達でトレーニングのスケジュールもあるだろうし…。

しかし、うちのウインディはあのさびしんぼうのかまってちゃんだ。

たったの二泊三日とはいえ大丈夫かどうか不安な部分は大きい。

クラスメイトちゃん達ともまぁ、普通に仲良く話せるくらいにはなってるだろうし、オレの杞憂に終わるならそれに越したことはない。

どう説明したものかと頭を悩ませていると…。

 

ドタドタドタドタドタドタドタドタ…。

 

「ん?噂をすれば…」

 

バタァン!!

 

「トレーナー!!ウインディちゃんと遊ぶのだ〜〜!!」

「おぉ〜ウインディ。実はなぁ…」

 

ちょうど良いし黙ってるわけにもいかない。

オレはウインディに予定を伝える。

 

「と言うわけで、来週はオレが用意したトレーニングメニューをやって…」

「む〜〜……」

 

最初は「のだぁ〜〜?」と呑気に聞いていたウインディ。

しかし、話が進むにつれてほっぺたを膨らませるなど、見るからに不機嫌になっていく。

 

「これもウインディのため!!それに帰ってきたらちゃんと埋め合わせするから!!な!!」

 

オレが拝み倒す姿勢をするとウインディは「じゃ〜…」と言ってスタスタ近寄ってくる。

 

「それまでウインディちゃんをめいっぱいかまうのだ〜〜〜!!」

 

そう言ってひっついてくるウインディ。可愛いけどちょっと痛い。

 

「よ〜しよしよしよし…」

 

結局、オレは出発の直前までウインディをかまい倒すことになったのだった。

 

 

む〜…トレーナー!!

 

かえってきたらおぼえてるのだ〜!!

 

………ちょっとだけLANEでれんらくしてみるのだ〜〜。




短くて申し訳ない〜。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パール姉さん、実装おめです…。

次こそは、ウインディちゃん…。

お願いします…。


二泊三日のウマ娘トレーナーのセミナーも無事終わり、電車でトレセン学園最寄りの駅で降りる。

オレは学園近くの居酒屋で他のトレーナー達と打ち上げというか、お疲れ会のような飲み会に参加していた。

 

「それじゃーみんなー!!お疲れ〜〜!!」

 

音頭を取るトレーナーの言葉とともにグラスを持ち、乾杯する。

 

うまい料理に舌鼓を打ちつつ、アルコールも入って皆饒舌になり出す。

ワイワイガヤガヤと、駄弁ったり真面目な仕事の話から入り、徐々にやれあの子がすごいだの、やれあの先輩が寿退職しただのといった話題がのぼり、そしてお決まりのアレもはじまった。

 

「いやぁ〜、やっぱウチの子が可愛くってなぁ〜…」

「分かる分かる。やっぱ担当ってホントかわいいよねぇ〜」

「ウチの子はちょっといじっぱりさんだけど、たまに見せる笑顔が可愛くて…」

「ウチの子も頑張り屋で、毎日毎日成長してる姿を見ると涙が出てきて…」

 

なんて、すっかりトレバカと化した同期達の担当談義が始まる。

 

「ま!!ウチの子が一番可愛いんだけどな!!」

 

と、内心皆が思っているのはご愛嬌。

 

そんな訳でオレも出番とばかりに話題に加わる。

 

「そういやぁウチのウインディもなぁ〜…」

「おぉ〜、そうかそうか〜!!」

 

やがて飲み会もお開きとなり、トレーナー達は各々自分の担当ウマ娘にこれから帰る連絡を電話やLANEで入れていた。

 

オレもウインディに連絡を入れようとは思ったが、携帯の充電がもう心もとなかったため、今から戻る旨だけを伝え、とりあえずトレーナー室に仕事道具を置きに戻ることにした。

それほど酒も飲んで無かったからか、我ながら足元はしっかりとしており、特に眠気が来たりなんかもしてはいない。

いやまぁ、寮の自室に着けば疲れと共にどっと出てきそうではあったが。

こんな時ほど自分のトレーナー室が一階で良かったと思ったことはない。

正直駅やら何やらで今日のところは階段はできれば避けたかったからだ。

廊下を歩いていると夕陽がトレセン学園全体を照らし出す。

オレはそれがなんとなく懐かしくなりながらトレーナー室の扉を開く。

 

ガララ…

 

「お、空いてる…」

 

留守の間はウインディに鍵を預けてたからなぁ…。

もしかして閉め忘れたのか?

まぁ慣れないことだろうし、貴重品は持ち歩いてるから大丈夫だとは思うけど…。

 

「あとで鍵を返してもらうときにそれとなく注意しとくか…」

 

もうすぐ暗くなる時間帯のため、そのままなるべく音を立てないようトレーナー室の扉を開ける。

すると…。

 

「zzzz…zzzz…うぅ〜ん、とれぇなぁ〜…」

 

どういうわけかウインディが、オレの仕事机につっぷして眠っていた。

正直寝顔は可愛いが、流石にこの時間にこんなところで寝ていたら体調を崩しかねない。

少々の罪悪感を抱きながらオレは意を決してウインディの肩をゆする。

 

「お〜い、ウインディ〜…もう夕方だぞ〜?」

「う…うぅ〜ん…ウインディちゃんは…トレーナーが帰ってくるまでまつのだぁ〜…」

 

寝ぼけているのか、そんなことを言うウインディ。可愛い。

 

「そっかぁ〜、ありがとなぁ〜。でも起きないとカゼひいちゃうぞ〜?」

「のだ…でもトレーナーが…トレーナー?」

 

顔を上げ、ウインディの寝ぼけまなこと目が合う。

 

「ウインディ、ただい…」

「トレーナーーー!!」

 

オレを認識するやノーモーションで飛びついてくるウインディ。可愛い。

 

「トレーナートレーナー、ウインディちゃん頑張ったのだ〜〜♪ホメるのだ〜、いっぱいいっぱいホメるのだぁ〜♪」

 

よっぽど慣れない状況で感極まったのかスリスリまでしてくるウインディ。可愛い。

 

「そっかー、頑張ったなぁウインディ。よくやったなぁ〜」

「エヘー♪こーするのもひさびさなのだ〜♪」

「そだなぁ〜」

 

しばらくするとウインディが離れ、降りる。

 

「それで、ちゃんとトレーニングは出来てたか?」

「のだぁ〜…それが…」

 

うん?

 

「最初はがんばれたけど…次の日からなんか物足りなくて…今日はトレーニング終わってからずっとここにいたのだ〜…」

 

落ち込んだようにそう言うウインディ。

 

「そっか〜…」

「のだぁ〜…」

 

肩を落としたウインディをナデナデしつつ

 

「頑張ったなぁ〜」と言うと

 

「エヘー♪」と返してくる。

 

甘えてくるウインディをおんぶしつつ美浦寮に連れていくや、ヒシアマゾンが出迎え、「お疲れさん」と労いの言葉をかけてくれた。

 

「ウインディを部屋までお願い出来るかな?」

「お安い御用だよ!!」

 

そう即答してくれた彼女は学生ながら本当に頼りになった。

 

その後、ウインディが若干ぐずったのは余談だが。

 

 

 

エヘー♪

 

トレーナーがかえってきたのだ〜♪

 

またイタズラしほーだいなのだ〜♪




トレーナー出張中のウインディちゃん

一日目

ふっふん♪トレーナーがいなくてもがんばるのだ〜♪
やっぱりウインディちゃんはスゴいのだなぁ〜♪

二日目

トレーナー!!終わったのだ〜!!

………………

のだ?
なんか物足りないのだぁ〜…。

三日目

うぅ〜…トレーナー、早くかえってくるのだぁ〜…。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いやもう、ウインディちゃんがイベントの主役に抜擢されるとは、感謝の極みですはい。

いやもう、ウインディちゃんというキャラクターのいいとこずくめなイベントでしたね。
素直になれない、自分の考えを否定されたく無い。
だから少数精鋭でやろうとするも現実的なことを考えたら人手は必要なわけで…。
そんな中で新たな仲間が、各々できることをやって行くのが本当に眩しくて…。
何が言いたいかと言うと…この神イベント大好きです。はい。


秋に入り、そろそろ聖蹄祭の時期も近づいて来たと思う今日この頃。

 

ドタドタドタドタドタドタドタドタ…。

 

バタァン!!

 

「トレーナー!!お知らせがあるのだ〜〜!!」

 

いつも通り元気な声でそう言ってくるウインディ。可愛い。

 

「おお、ウインディ。やけに嬉しそうだけどなにかいいことでもあったのか?」

 

そう聞いてみると、ウインディはにんまりと笑い

 

「へへ〜ん♪よく分かったのだなぁ〜♪実はウインディちゃん、せーてーさいで魔王城をやるのだ!!そして〜…ウインディちゃんがその魔王なのだ〜!!ゼッタイに来るのだ〜!!がお〜〜!!」

 

しっぽをブンブンふりつつ、ニコニコ笑顔でそう言ってくるウインディ。可愛い。

 

「おぉ〜、そっかそっかぁ。わかったよ。仕事が一段落済んだら絶対行くからなぁ〜?」

 

まぁ、ウチのウインディがクラスメイトちゃんたちと頑張ろうとしてるんだ。行かないって選択肢はないよね。

 

「エヘー♪やくそくなのだ〜♪」

 

そう言うなり、ウインディは再びドタドタと戻って行った。

 

「よし。もうひと頑張りだなぁ」

 

オレはマグカップに入れてあったぬるくなったコーヒーを一気飲みして、気合を入れ直す。

 

聖蹄祭の準備期間中、ウインディのためにもトレーニングは控えめにすることに。

もちろん短時間なりに効率の良いやり方はしてたが。

まぁ、作業中のウインディやクラスメイトちゃん達は楽しそうだったみたいだし、それは良かったけど。

しかし、メイショウドトウやアグネスデジタル、メジロパーマーにダイタクヘリオスが手伝いに来てくれるとは…。

ウインディもいい友だちに恵まれたなぁ〜、なんてヘンに感傷的になってみたり…。

 

そして、待ちに待った聖蹄祭当日。

なんとか開始時間に間に合ったオレはウインディとの当初の約束通りにウインディのクラスを見に行こうとすると、なにやら話し声が聞こえてくる。

たぶんクラスメイトちゃん達と開始前の最終確認かなぁ、なんて思ってたんだが…。

 

「ウインディちゃんって、トレーナーさんのこと大好きだよね〜」

「違うのだ〜♪トレーナーがウインディちゃんのことダイスキなのだ〜♪」

 

うんうん。まぁ、学生らしい会話だよなぁ。

オレはウインディをちょっと驚かせようと後ろから声をかける。

 

「うんうん。よしよし、そうだなぁ〜」ナデナデ

「のだっ!?トレーナー!!まってたのだ〜♪」

 

振り返るなりひっついてくるウインディ。弾ける笑顔が眩しい。そして可愛い。

 

「それじゃー、ウインディちゃんは中で待ってるのだ。ちゃんと順路はまもるのだ〜!!」

 

流石にウインディに会いたいからってショートカットをするような野暮はしたくない。

それこそ、ウインディや彼女に協力してくれた子たちに対して失礼というものだろう。

 

「うんうん。楽しませてもらうからなぁ〜」

 

そして、「またあとでなのだ〜♪」と手を振り戻って行くウインディを見届ける。

オレは列に並び受付を済ませ、いざウインディ渾身の出来だと言う魔王城の中へ。

 

「おぉ〜、すごいなぁ」

 

ウインディちゃん魔王城をひとことで表すと『本当にスゴい』

いやほんと薄暗い中でも装飾だったり、けっこう演出が細かい。

上手いこと仕切り板で迷路みたいになってるし、なるほど、これはクラスひとつまるまる使うわけだと感心する。

後で聞いたが、これ全部ウインディの発案らしい。スゴいなぁ。

 

「ばぁ〜〜!!」

「うぉおう!!ビックリしたぁ!!」

 

観察に熱中しすぎた。

そういやぁ暗いし、たぶんコンセプトはお化け屋敷みたいなモンかな?

気を取り直したオレは改めて進んで行く。

道中やはりお化けらしき格好の生徒が現れる。

が、彼女らの格好もなかなか本格的だ。

 

例えば……

 

「ウェ〜〜イ☆お菓子いる〜〜?」

 

と聞いてくる天使や…

 

「あれ、ウインディのトレーナーさんじゃん。楽しんでくれてる〜?」

 

何故かフレンドリーな悪魔っ子。

 

「じゅるりら…メジロパーマーさんもダイタクヘリオスさんも尊い…しゅきい…」

 

と、何故か自滅するキョンシー。

 

「お…おばけだぞぉっ?て…はわわわぁ〜〜!!こ、転んじゃいましたぁ〜…」

 

こんな時でもドジっ子を発動するかぼちゃのお化け等々…楽しませてもらいつつ、出来の良さに感心しつつ進む。

 

そして、最後の部屋らしき場所に着くや…。

 

「わ〜っはっはっは〜!!しんにゅーしゃよ!!さびしかっ…じゃなくて!!待ち侘びたのだ〜!!」

 

椅子に腰掛けそう声高らかに言うのは間違えるはずもない、我が担当ウマ娘。

なるほど。魔王とはよく言ったモンだなぁ。

黒いティアラに、あのツノはカチューシャかな?

肩に乗った獅子舞がなんとも可愛い。

表側には赤い渦巻きのような模様がプリントされ、真っ赤な裏地のマントは威厳を感じさせる。

その下の紫色の衣装は、ギラつきながらも大人っぽさも演出していてなんとも似合っている。

立ち上がるなりマントをバサァっと翻す。

そんなウインディのドヤ顔を見ると、何回も練習したんだろうなぁ…なんてほっこりする。

 

ウインディはふんす!!と胸を張り

 

「スゴいのだ〜?」

 

と聞いてくる。可愛い。

 

「スゴいぞ〜」

「こわいのだ〜?」

「そうだなぁ〜怖くって思わずなでなでしたくなるくらいには怖いなぁ〜」

「エヘー♪それならイイのだ〜♪」

 

そう言うなり歩み寄ってくるウインディ。可愛い。

最後に記念にと写真をパチリと撮ると、オレはふと、言っていた。

 

「もう一回、並んで来るからなぁ〜」

「のだっ!?トレーナーが気に入ったなら良かったのだ〜♪」

 

結局、オレはウインディ魔王城を五周はしたのだった。

 

 

ふふ〜ん♪

 

ウインディちゃん大満足なのだ〜♪

 

トレーナーにもホメられたし…。

 

たのしかったのだ〜♪




もうホント、イベントの最後までウインディちゃんらしさMAXな訳ですよ。
まだやってない人は是非是非やってほしい。
四天王の活躍もホントすごくて…特にギャル二人がいい子すぎてなぁ…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

イベントウインディちゃん完凸出来ましたですはい!!

やっぱりウインディちゃんは可愛いなぁ。

育成実装待ちきれないです。


ウチの可愛い可愛いウインディが、ここ最近魔王様のカッコでトレーナー室をうろついてるんだが。

 

よっぽどその服装が気に入ったのか、それとも企画が大成功したのが嬉しかったのか…。

でも出来る限り安く仕上げるためって事で、あんまりいい生地使ってないっぽいから、なんかの拍子に破けたりしそうで心配なんだよなぁ…。

かと言って苦手なりに編み物を頑張ったのかな、なんて思うと着るなとは言えないし…。

 

まぁ、そんなわけでここはちょっと遠回しに…。

 

「ウインディ〜?」

「のだぁ?」

 

今日も今日とて魔王様ルックなウインディが小首をかしげる。可愛い。

 

「いやそのカッコ、気に入ってるのは分かるんだけど、もうちょい控えた方が…」

「のだぁ〜…でも…」

 

何やらウインディが口ごもる。

 

「でも?何か理由があるのか〜?」

 

訳も聞かずに全否定するのは流石に良く無い。

そう思って聞いてみたんだけども…。

 

「のだ…」

 

相変わらず、何やら言いにくそうにモジモジしてるウインディ。

 

「うん?言いにくいんならゆっくりでもいいんだぞ〜?」

 

それに言いたく無いのを無理に聞くのもなぁ…。

やっぱり気にしてない旨を伝えようとしたが…

 

「その…トレーナーが…」

「うん?オレが?」

「あぅ…」

 

オレがなにか関係あるのか?

 

「その…トレーナーが…ホメて…くれたから…なのだぁ」

 

ああもうウチの担当可愛すぎるなぁ〜。

 

「そっかそっかぁ〜!!」ナ〜デナデナデ…

「のだ〜♪」

「でもせっかくの思い出だしなぁ〜新しく作るかぁ〜?」

「のだぁ〜?でも、コレを捨てるのは…」

「大丈夫大丈夫。場所を作って飾っておけば大丈夫」

 

とは言え、寮は相部屋だからあんまりスペースを取るのは却って邪魔になっちゃうだろうし、かと言って教室にいつまでも飾っておくものでも無いだろうし…となると…。

 

「トレーナー室にでも置いとけば、いつでも思い出せるだろ?」

 

そう言いつつ、色々と増えた思い出の品が置かれている部屋の一角を指差す。

幸い衣装類なら畳んでしまうなり、マネキンに着せて飾るなり、方法はいくらでもあるし。

 

「なんなら、普段使いとして勝負服を作ってもらったとこにもっと丈夫な布で、これと同じデザインで依頼してもいいしな」

 

思い出が大切なのは誰だっていっしょだ。

ましてや楽しい思い出は大人になってからでも語れる一生ものの宝だろうしなぁ。

 

「のだぁ……」

 

う〜ん。随分と悩んでる様子だなぁ。

それだけ、この衣装が本当に大切なんだろう。

いいことだ。

 

「な?万が一大切な思い出のこもったその衣装が破けたり、汚れたりしちゃう方が悲しいし問題だろ?オレとしてもウインディの楽しい思い出はちゃんと綺麗なまんまであって欲しいからさ」

 

そう言いつつナデナデすると、ウインディはニコニコして

 

「エヘー♪わかったのだ〜♪」

 

そう言うなり、ウインディは

 

「それじゃーさっそくおでかけなのだ〜♪」

 

と、オレの手を取り駆け出した。

 

 

のっだ〜♪のっだ〜♪

 

あっ、四天王なのだ!!

 

へへ〜ん。ウインディちゃんはこれからトレーナーとおでかけなのだ〜♪

 

のだ?がんばって?

 

何をなのだ〜?




次はウインディちゃんの勝負服実装だな!!

別に勝負服ない状態からいきなり育成実装来てもいいのよ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

復刻のサポカガチャ、コレは逆に次の育成ガチャに期待できると言うことでは?

ユキノビジン→パール姉さん→衣装違いを挟んで→ウインディちゃんの株爆上げ…からのマーチャン…えぇ…。


さて、メールを送信して来たたづなさん曰く、今日はトレーナー一同に対し、トレーニング後に答えて欲しいアンケートがあるそうだ。

昨今、というより結構前からトレーナーの寿退職が問題視されているそうで、その参考のために…とのことで、現行のトレーナーにはこうしてアンケートを募るそうだ。

なお、ウチの可愛いウインディはもう寮に帰っているため、かまえなくなる心配はない。

 

「え〜っと…連絡メールの一番下…これか」

 

仕事机の椅子に座って、

『ウマ娘トレーナー一同へのアンケートのお願い』と、やけにデカデカと表示されているそれをクリックする。

 

その隣の必須!!と書かれた扇子を広げる理事長のスタンプが地味に再現率が高い。

 

その後はよくある冒頭の質問。

最終学歴やトレーナー歴はどのくらいかにはじまり、担当ウマ娘の人数、恋人や結婚相手の有無、その他諸々の質問を終え、そして最後に『くれぐれも偽りの無い回答をお願いします』という念押しがされて、やっと本題だ。

 

まぁ、よくある形式だろう。

イエスかノーか、どちらとも言えないか。

その隣にチェック欄があるくらいのやつだろう。

そう思いはじめたものの…。

 

問一、担当ウマ娘からの積極的なアピールはありますか?

 

例・両親の紹介、「結婚して欲しい」「付き合って欲しい」発言等。

 

「いきなりぶっ込んで来たなぁ…」

 

例がやけに具体的というか、いやに生々しい。

まぁでもこれは問題ないか。『いいえ』。

 

問二、担当ウマ娘の距離感は近すぎると感じることはありますか?

 

例・人前で他のウマ娘に見せつけるかのように自身のトレーナーにひっつく、「互いが互いにとっていい匂いなのは遺伝子レベルで相性がいい」といった発言をする等

 

「うぅ〜ん…最近はオレを見かけるなりよく駆け寄って来てはくれるけど、別に見せつけてはないと思うんだよなぁ…」

 

だからこれも『いいえ』。

 

問三、担当トレーナーがウマ娘に近すぎると感じることはありますか。

 

例・極端に甘やかす、毎日口説き文句のようなことを言う等

 

「……………」

 

うん。これは…『どちらでもない』かなぁ…。

いやまぁ、担当ウマ娘との適切な距離感ってのはそれぞれだからね。

大丈夫大丈夫。まぁ、ついこないだは……。

 

 

「よ〜〜〜しよしよし、ウインディ〜!!トレーニング頑張ったなぁ〜!!エライなぁ〜〜〜!!」ナ〜デナデナデナデナデ…。

「のだぁ〜♪」

「お腹空いてないか〜?何か食べたいものはあるか〜?」

「エヘー♪それじゃ、焼肉がいいのだ〜♪」

「よ〜しよしよし、好きなだけ食べるんだぞ〜?体重管理は任せてなぁ〜?」

 

 

なんてことがあったが、まぁセーフだろう。

ご褒美はやる気に直結するからね。仕方ないね。

 

問四、担当ウマ娘の好きなものをきちんと理解してあげられていますか?

 

例・バナナ、にんじんぷりん、肉、ニンニク味噌等

 

「うんまぁ…これは『はい』だな」

 

ウチの可愛いウインディの大好物と言えばとうもろこしだな。間違いない。

 

問五、担当ウマ娘の嫌い、或いは苦手なものをきちんと理解してあげられていますか?

 

例、ブロッコリー、虫、会長のダジャレ等

 

「これもまぁ…『はい』かな」

 

ウインディはああ見えて寂しがり屋でひとりぼっちが何より苦手だ。

まぁ、最近はクラスメイトちゃん達と話したり、魔王城の時の四天王とも変わらず仲良くしてるみたいで良かったけど。

 

その後も引き続きアンケートに答え続け、無事回答を送信。

まぁ、オレはまだ結婚とかは別にいいかなって思ってるし関係ないとは思うけども…。

 

 

にへ〜♪

 

のだ?何見てるのかなのだ?

 

トレーナーからもらったものを見てるのだ〜♪

 

だいじにしまってるのだ〜♪




いやまぁ、マーチャンが来たことそれ自体はいいんですよ?でもそこはせめて初期キャラの中から出してあげてほしかったって言うか…。
ヘリオスとか…ビコーとか…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんとウマさんぽ行きたかったのだ…。(前)

ウマさんぽ…屋内、屋外、お食事…三つあるなら三つとも書きたくなってしまい…。

結果、前中後編にしてみました。




今日も今日とてトレーナー業は忙しい。

まぁ、オレが望んでついた仕事である以上、それが苦にならないとは言わないが、しかし可愛い可愛い担当ウマ娘のためならば頑張れるってもんだ。

一息つきつつ、そんなことを考えていると…。

 

ドタドタドタドタ…。

 

いつものように、廊下をかけてくるのは恐らくウチの可愛いウインディだろう。

 

バタァン!!

 

「トレーナートレーナートレーナー!!」

 

笑顔で駆け寄ってくるウインディ。可愛い。

 

「おさんぽいくのだ〜♪天気がいいのだ〜♪」

「散歩?どうしてまた…」

 

気を落ち着けるようにナデナデしつつ、オレはウインディに質問してみる。

 

「のだ〜…なんでも最近流行ってるらしいのだ〜。ウインディちゃんもこのビッグウェーブにのるのだ〜!!」

 

たぶんビッグウェーブの使い方間違ってるけど、そんなところも可愛い。

 

「そっか〜、それじゃ今日のトレーニングが終わったら行くか?」

「わ〜い♪やったのだ〜♪」

 

嬉しそうに飛び跳ねるウインディ。可愛い。

 

そんなこんな、放課後にトレーニングも終え、ウインディとトレセン学園の正面入り口で待ち合わせることに。

 

少し早めに着いたのか、ウインディはまだいない。

まぁ、気長に待つかとそう思った矢先。

 

「トレーナー♪おまたせなのだ〜♪」

 

トレーニング疲れを感じさせない走りでやってきたウインディ。

 

「行きたいとことかあるのか?」

「エヘー♪お腹すいたからハンバーガーでも食べるのだ〜」

「おぉ、ハンバーガーとはまたジャンクな…まぁ、たまにはいいか」

 

そんなこんな、駅前のハンバーガーショップまで歩いて行く。

ウインディが最近流行ってると言っていたのも事実だったようで、トレーナーと担当らしきウマ娘の姿もちらほら見かける。

レジに並び、注文の番を待つ。

隣でニコニコしながら手を繋いでくるウインディ。可愛い。

やがて列も進み、注文のタイミングが来る。

 

「こちらのメニューからお選びください」

 

店員が愛想よくそう聞いてくる。

しっかし、こう言った店って本当に久しぶりだからどうしたもんか…。

 

「オレはそうだなぁ…この期間限定のやつのセットで」

「ウインディちゃんもそれとおんなじのでいいのだぁ〜♪」

「かしこまりました。お持ち帰りですか?こちらでお召し上がりになりますか?」

「あ、お店でいただきます」

「では、番号でお呼びしますのでお席の方でお待ちください」

 

そう言われて番号札を渡される。

ウインディの希望で窓際の席が空いていたので、そこで待つことに。

 

「ふんふん〜♪楽しみなのだ〜♪」

「ウインディ、何で急にハンバーガーが食べたくなったんだ?」

 

目の前の席ではしゃぐウインディに、それとなく聞いてみる。

 

「のだ?べつにハンバーガーは目的じゃないのだ〜?」

「うん?そうなのか?」

「のだぁ〜♪トレーナーが忙しそうだったから…ちょっと息抜きできればって…メーワクだったのだ?」

 

しゅん…となるウインディ。

しかし、そのやさしさを無碍に出来ようか。いやない(キッパリ)。

 

「いやいや、気を遣ってくれてありがとうなぁ〜。ウインディは優しいなぁ〜」

「のだ…トレーナーのやくにたてたならよかったのだぁ〜…」

 

何ということのない日常ではあったが、ウインディが誘ってくれたと言う事実だけで、オレはこれからもトレーナーの仕事を頑張ろうと思えた。

 

 

エヘー♪

ぶじに誘えたのだ〜♪

次の目的地は〜…あそこなのだ〜♪




今回はお食事編。

ウインディちゃんは定食かラーメンかハンバーガーならハンバーガーだろうなぁと勝手に想像しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんとウマさんぽ行きたかったのだ…。(中)

ゼンノロブロイ実装おめでとうございます。

それと遅くなって申し訳ありません。
今回は屋外です。


「次に行きたいトコがあるのだ〜♪」

 

そうウインディに言われて、オレとウインディは『ハロンタワー』に向かう。

ハロンタワーとは、ここらで知らない人はいないほどに大きく、そして人気の商業施設で毎年、毎シーズン何かしらのイベントごとにライトアップされ、それが評判で親しまれている。

ここからだと電車で二駅だから本当にすぐだ。

ICカード乗車券を使って電車に乗り、すぐ降りるので入り口の近くに邪魔にならないよう立って待つことに。

座ってても良いと言っても、ウインディは「ダイジョーブなのだ〜」と隣でニコニコしていた。可愛い。

そうして十五分ほど経過した頃、オレ達は特にトラブルも無く目的地に到着した。

ライトアップまではまだ時間に余裕があるので、時間潰しも兼ねてオレとウインディは散策する。

 

「わ〜いなのだ〜♪」

「お、ウインディこういう小物とかどうだ?」

「エヘー♪それじゃあいっこ買うのだ〜♪」

「はちみー屋ってここにもあるんだなぁ〜」

 

歩き回るのも疲れたのでベンチに腰掛けて、屋台で買ったはちみーに舌鼓をうちながらご機嫌な様子のウインディ。可愛い。

こういう子には是非とも将来幸せを掴んで欲しいものだ。

トレーナーの中には意識的にせよ無意識にせよ、担当ウマ娘を甘やかしに甘やかし、依存されてしまうこともあるとか。

不埒なヤツもいたもんだなぁまったく。

その辺のリスク管理が出来ていないトレーナーがウマ娘に求婚されたり、卒業の際に記者会見で婚約発表されたりなんだりするんだろう。

いやまぁ、ウチのウインディは大丈夫だと思うけどね!!

高等部の割に子どもっぽいところも可愛いし、頑固で寂しがりやなところもあるけど根は良い子なのは分かってるし、魔王軍の時みたくひとつの目標に向かう場合はリーダーシップも発揮できる。つよい。

 

ウインディとしばらくまったりと過ごして、ふと周囲を見ると、人混みが増えて来た。

そろそろイベントが始まる頃合いなんだろう。

腕時計を見ると、ウインディに教えてもらった開始時間の十分前を指していた。

オレは隣ではちみーに夢中なウインディに問いかける。

 

「ウインディ〜?そろそろ移動しなくて大丈夫か〜?」

「のだぁ?ちゃんと穴場を教えてもらったからダイジョーブなのだ〜♪」

 

そう言って立ち上がり、飲み終わったはちみーのカップをベンチ横のゴミ箱に捨てるウインディ。えらい。

 

「ウインディちゃんについてくるのだ〜♪」

 

そう言って、ウインディはオレの手を引っ張る。

やがて大通りを少し過ぎた辺りに辿り着くと、カラフルなイルミネーションが施された木々やライトアップされたここら一帯の建物に圧倒され、童心に帰るような気持ちだった。

特に並木道をウインディに引っ張られながら軽く駆けた時なんかは光のトンネルを抜けているようで、気分も良く心なしか晴れやかな気持ちになれた気もする。

 

「エヘー♪みんなおっきいタワーの方ばっかり見てるけど、こっちもこっちでいいのだ〜♪」

 

確かに、穴場というだけあって大通りほど人はいない。

どちらかと言うと一時的に休憩するために年配者や家族連れが利用しているようにも見える。

その後もウインディといっしょにおしゃべりに興じたり、時たま散策したりして、気がつけばあっという間に終了時間が迫って来ていた。

 

「昨日このイベントをクラスメイトから聞いて、今日が最終日だったから、ちょっと急いじゃったけど…楽しかったのだ?」

 

振り回した自覚はあるんだろう。ウインディが帰り際にそう聞いて来た。

 

「もちろん。ウインディといっしょなら何でも楽しいぞ〜?」

「エヘー♪それならよかったのだ〜♪」

 

くすぐったそうに笑いながら、ウインディはそう言っていた。可愛い。

 

 

エヘヘ〜。だいせーこーなのだ〜。

のだ?そっちは逆?

でも反対側ってきゅーけー?用のホテルばっかりだったのだ〜?

 




ウインディちゃんってなんとなく卒業後もトレーナーと一緒にいることを微塵も疑ってなさそう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

140話…間が空いてごめんよ…。

おかしいなぁ〜、リッキーに、ばぁばにタルマエに、ファル子に…ダートウマ娘がいっぱい出て来るイベントなのに…一人足りない気がするなぁ〜…( ;∀;)


さて、今日は世にいうクリスマス。

基本的には家族や恋人との楽しいひとときを過ごすものだが、あいにくとウマ娘のトレーナーであるオレに、そんなことは無縁…トレーナーだからだよ?モテないわけじゃないからね?

アレ…涙が…。

 

そんなどーでも良いようなことを考えていた最中…。

 

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ…。

 

バタァン!!

 

「メリークリスマスなのだ〜♪」

 

白いふわふわのついた暖かそうな赤い帽子に、似たような赤い服、そしてもこもこの付けひげと、およそサンタらしい格好をしてそう言って来るウチのウインディ。可愛い。

 

「おぉ〜似合ってるなぁ〜、ウインディ〜」

 

オレは仕事する手を止めて、ウインディに歩み寄る。が、しかし……。

 

「ちがうのだ〜!!」

 

どうやら何かが違うらしい。

 

「違うって?」

 

オレはその言葉の意味がわからず首を傾げる。

 

「ウインディちゃんじゃなくって、ウインディちゃんサンタなのだ〜〜!!」

 

そう言って背中の袋を見せつけるとフンスっと得意げに鼻を鳴らす。可愛い。

 

「そっかそっかぁ〜、そりゃ悪かったなぁ〜」

「ふっふん!!わかればいいのだ〜♪」

 

そう満足げにいうと、ウインディ…もとい、サンタウインディはゴソゴソと手にした袋をまさぐる。

そうして取り出したるは……。

 

「じゃじゃ〜んなのだ〜♪」

 

何とも可愛らしいラッピングが施されたプレゼント。

 

「頑張ってるトレーナーにあげるのだ〜♪」

 

そうして、それを笑顔でオレに差し出すウインディ。可愛い。

 

「あ…ありがとなぁ〜、ウイン…いや、サンタウインディ〜」

 

そう感謝の言葉を告げて帽子越しにナデナデすると、ウインディはいつものように表情を綻ばせ、「のだぁ〜♪」と嬉しそうな声を出す。

 

「それじゃ、プレゼントは後で開けるからなぁ〜」

「のだ〜…」

 

その言葉にムスッとするサンタウインディ。そんなところも超可愛い。

 

「いま!!いま開けるのだ〜!!」

 

微笑ましくそんなことを思っていると、飛びかかってきたウインディが頭にかじりつく。

 

「ガブ〜〜〜〜!!」

「あいたたたたた!!開ける!!今開けるから離して〜!!」

 

そうして、いざ渡された箱を開けて見ると…。

 

ビヨヨヨヨヨ〜ン!!

 

小さなウインディがギザギザの歯を剥き出しに飛び出してきた!!

 

「おぉ〜!!」

 

結構細かいディテールまで再現されてる…。

完成まで一体何時間かかったんだコレ…。

 

「ふふ〜ん、おどろいたのだ〜?」

 

ウインディサンタは目をキラキラさせて顔を覗き込んでくる。

 

「あぁ、十分驚かせてもらったよ」

「それじゃ〜、も〜っと驚かせるのだ〜♪」

 

そう言って、もう一度袋から何かを取り出し、組み立てはじめる。

 

それはやがてプレゼントボックスのような形になり…。

サンタウインディは最後の仕上げにとその中に入っていそいそと蓋を閉める。

 

「さぁ〜!!あけるがいいのだ〜!!」

 

ワクワクという音が聞こえてきそうなほどに元気な声が箱の中から聞こえて来る。

オレは少し悩んだが、ウインディを落胆させる訳にもいかず、結局その大きな箱の蓋を開けた。

 

「エヘー♪プレゼントは〜…一日中ウインディちゃんと遊ぶけんりなのだ〜♪」

 

…うん。

満面の笑みでそう言われたら、早上がりするのも仕方ないよね!!

 

 

フンフンフ〜ン♪

のだ?ゴキゲンなりゆーなのだ〜?

トレーナーといっしょにクリスマスを過ごしたからなのだ〜♪

のだ?よそーどーり?

そんなにわかりやすいのだ〜?




信じてるからね…来年こそウインディちゃん…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃん、田舎に行くの巻。

年始あたりから端末の調子が悪くて、投稿がだいぶ遅れました…。

申し訳ない。

それと、ホッコータルマエ実装おめです。


年末年始、実家に一旦帰るのは生徒、トレーナー双方どちらもありえることだ。

近況報告するだけならメールやら何やらと便利な時代になったとはいえ、やっぱり直接親兄弟に会って話す方がオレは好きだし大事なことだと思う。

 

そんな帰省したオレが今見ている光景は……。

 

「ほ〜らウインディちゃん♪みかんをお食べみかん」

「おしるこおかわりあるでなおしるこ」

「のだ〜〜!?」

「いやぁ〜初の担当がダートウマ娘とは分かっているなぁ息子よ〜〜!!」

 

コタツに入りながら我が一族からチヤホヤされるウインディだった。

 

ことの発端はつい先日にまで遡る。

 

オレは去年実家に帰らなかったので、今年は年末を家族と過ごすつもりだったんだが…。

 

「うん?ウインディもオレの実家に来たいって?」

「そうなのだ〜!!」

 

年末も近いトレーナー室。

去年と同じように引っ張り出したこたつで向かい合い、ぬくぬくしながらウインディはオレに言う。

 

しっかし…ウインディをウチにかぁ…。

まぁ?確かに?ウチの可愛い可愛い目に入れても痛くないウインディを実家の家族連中に紹介したいかしたくないかでいえば、まぁしたいけども…。

 

「別にいいけど、けっこう田舎の方だし…たぶんそれほど楽しくはないぞ〜?」

「それでもいっしょに行きたいのだ〜♪」

 

変わらず笑顔でそういって来るウインディ。可愛い。

う〜ん…一応チケットは前もって二枚買っておいてはあるけど…。

 

「そっかそっかぁ〜、それじゃあ一緒にいこうなぁ〜?」

「わ〜い♪やったのだ〜♪」

 

オレが了承すると嬉しそうににへらっ…とするウインディ。可愛い。

 

「分かった。それじゃそのことも含めて実家に伝えておくよ。ウインディも、ちゃんと親御さんには連絡忘れずになぁ〜?」

「りょーかいなのだ〜♪」

 

ちょうど仕事もひと段落ついたところで、当面は問題ないはず。

チームトレーナーってわけでもないし、ある程度年末年始の時間の自由はきくのは大きい。

 

「よ〜し、それじゃ早速準備に取り掛かろうか」

「わ〜いなのだ〜♪」

「ウインディも、ちゃんとご実家には連絡を入れておくんだぞ〜?」

 

元気いっぱいのウインディに、オレは改めて言っておく。

 

「わかったのだ〜♪」

 

返ってきたのは元気な返事だ。可愛い。

 

その後、オレとウインディはトレーナー室から出てそのまま互いの寮の部屋で準備を済ませることとした。

外泊届も無事提出して、オレたちは電車で移動。

世間は年越しシーズン、混雑も見越してお高めの個室を早めにとったのが幸いした。

列車に揺られて数時間、ウインディは楽しそうにババ抜きをしている。

 

「むむむ〜…」

 

最後の二枚、可愛いウインディが悩みに悩んで選んだのは……。

 

「のだぁ〜♪またウインディちゃんのアガリなのだ〜♪」

「おぉ〜、流石ウインディは強いなぁ〜」

「へへ〜ん♪もーいっかいやるのだ〜♪」

 

窓の外に広がる様々な景色に旅行気分を味わいながら、駅弁を食べたり時折ゲームをしたりと、遊びに勤しむ。

たまにはこんな日も悪くない。

 

早朝、まだ日が出る前に学園を出発して、実家最寄りの駅に辿り着いたのはちょうどお昼頃。迎えが来ると言うので待ち合わせ、駅の中にある待合室でウインディと待っていると、十分もしないで姉が最近買い替えたと言う水色の軽自動車がやって来た。

 

「お、アレだな」

「のだ〜♪」

 

オレとウインディは各々の荷物を手に、駅から出る。

 

「待った〜?」

「少しね」

 

オレは姉と話しつつ、ウインディの荷物を預かってオレのものと一緒にトランクに乗せる。

 

「少し狭いけど、大丈夫?」

「だ…ダイジョブ、です…のだ…」

「ど〜した〜?緊張してるのかぁ〜?よ〜しよしよし…」

「エヘー♪」

 

慣れない土地で、(ウインディからすれば)よく知らない相手の車に乗ったせいか少し緊張した面持ちのウインディをオレはナデナデすることでリラックスしてもらう。

昭和情緒溢れるレトロ街を抜け、コンクリート舗装がされていない田んぼ道を進むと懐かしの我が家が見えて来た。

 

「いやぁ〜、まさかアンタが教え子連れて来るだなんてね〜」

 

オレと姉貴は荷台から各々の荷物を下ろしながらそんなことを駄弁る。

 

「まぁなぁ〜、あんまりからかってやるなよ。多感な時期なんだからな」

「分かってるって〜」

 

ウチの姉は人を揶揄ったりするのが好きなタチで、こう言う言葉はあまり信用できない。

まぁ、面倒見はいい方なんだろうけど。

 

「そういや、義兄さんは?」

「ご近所の畑手伝ってるってさ〜」

「ま〜た頼まれたのか…」

「あの人お人好しだからね〜」

 

そのままウインディをワイワイと集まってた親戚のみんなに紹介したらこんなことに…。

特にオヤジは昔っからダートレースが大好きなモンで、食いつきも尋常じゃなくてなぁ…。

 

「ほらほら〜、これおねーさんの昔の着物!!初詣に来ていくといいよ〜♪」

「おぉ〜!!カッコイイのだ〜!!」

 

そして馴染むウインディ。可愛い。

結局ウインディはそのまま甘やかされ続けた。

 

 

のだ〜♪

 

トレーナーの家族、みんなやさしいのだ〜♪

 

のだ?ウインディちゃんもかぞくになるのだ〜?

 

かんがえとくのだ〜♪




時期は遅れましたけどせっかくなのであげましたー。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんの育成実装…待ってるからね♪

二周年手前で来るのに期待ですね。


突然だがウチのオヤジのダートレース好きはなかなかに年季が長く、そしてそれゆえか造詣も深い。

 

オヤジの書斎には今でも毎月買っているという月刊ダートが全巻そろっていたり、今でも懇意にしているダートウマ娘のサインや蹄鉄が飾ってあったりするくらいにはダートファンだ。

 

オレも昔からオヤジの許可をもらってはちょくちょくコレクションから借りて読んでいる。

ここまでハマるきっかけになったのは、オレの地元の歴史が関係していたりする。

 

ウチの地元は田舎だからかそれとも立地のせいか、あるいはその両方か…山に囲まれていて坂道も多かったことから、昔から割と仕事がウマ娘頼りなことが多かったようで、いざ便利なモノが入ってきた際、幸いなことにそこそこ栄えたらしい。オレの先祖をはじめとした当時の住民達はそれまでの感謝のしるしとして何かしたいと思ったらしく…なんと市にかけあってレース場の建設に携わることとなったらしい。

 

以来、ウマ娘はこの辺りだとことさらに親しまれていて、それに加えて地方ということもあり、それなりにレース好きも(地方だからダートがメインだが…)多いと言うわけだ…とまぁ、昔の話ばかりしても仕方ない。

大事なのはウチの可愛い可愛いウインディが今どうしてるかなわけで…。

 

「のだぁ〜…かわむき、むつかしいのだ〜…」

 

どういうわけかピーラー片手に我が家の台所に立っていた。

エプロン姿も超可愛い。

頭の三角巾も何気に似合っている。

隣ではお袋がニコニコと見守っている。

 

「アッハッハ!!最初っから上手くはいかないさね。もうちょっと優しく押し当てな〜?」

「のだ…」

 

何故ウインディがこんなことをしているのか。

それと言うのも、炬燵でぬくぬくとしていたウインディが何かを思い出したように「おてつだいしたいのだ〜♪」と言い出したのがきっかけだ。

 

既に三が日も終わって親戚たちは粗方帰っていたし、そこまで忙しいわけでも無い。

姉貴のお下がりの和装も着て、初詣も済んでまったりしていたところだったわけだが…。

 

「お客さんにそこまでしてもらわなくっても…」と、お袋も申し訳なさそうにしていたが…

 

「のだ〜!!しゅぎょーしたいのだ〜!!」

 

のひとことに、何やら合点が行った様子のお袋は何かを察した様子で

 

「おやおや、それじゃちょっとだけお手伝いしてもらおうかねぇ〜」

 

なんて、最初とは打って変わって嬉々として教え出した。

しかし、修行かぁ…。

 

「ウインディも、いろんな角度から学ぼうとしてるのかなぁ…」

 

「ブッ‥」

 

その言葉に、何故かお茶を吹き出すオヤジ。

……何なんだぁ?

 

 

ふっふっふ〜。

 

クラスメイトにおしえてもらったトレーナーとナカヨシけーかくはじゅんちょーなのだ〜♪

 

えっと…メモメモ…ごりょーしんにあいさつのつぎは…。

 

むむ〜…おりょーりはにがてなのだぁ〜…。




遅くなって申し訳ない…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次回チャンミ、フェブラリーステークス?ヤッタネ!!

コレはウインディちゃんの育成実装あるかもですね(歓喜)。


休みにかえった実家からトレセン学園に戻って、オレはトレーナー室で休みあけのウインディのトレーニングの予定を組んでいた。

もちろん、ウインディを勝たせたい…いや、一緒に勝ちたいから、と言うのもあるが…オレのやる気を最高潮からさらに上へと押し上げたのは、先日の集会での理事長の言葉だ。

 

「発表ッ!!本年度より、いくつかの重賞レースを昇格とするッ!!」

 

その言葉に場はざわつく。

それだけ、レースの昇格というのは滅多に無いことだからだ。

 

「期待ッ!!どのレースを昇格するのかは追って伝える!!後日掲示板に張り出すので、待機ッ!!」

 

いつもの如くバサっと扇子を広げてそう言うのはなかなか様になっている。

そうして後日張り出された紙に、いくつかのレース名がそれぞれ昇格の旨が記されていた。

その中には二月に開催されるダートレースである、フェブラリーステークスのことも。

 

ウインディも今年からシニア級だし、フェブラリーステークスが昇格対象なのはありがたい。

G1勝利という結果は誰でも欲しいし、まして昇格してすぐのレースで勝ったとなれば、未来永劫語られる初代王者だ。

 

であれば、トレーニングにもいっそう熱が入るというもの。

とはいえ、無理をさせない範囲で、と言うのが大前提だが。

さすがにレースを走る前に故障してしまいましたでは笑い話にもならないし。

 

そんなこんな、トレーナー室で業務に勤しんでいると…。

 

「バァ〜!!なのだぁ〜♪」

 

いつの間にか背後にウインディが。可愛い。

 

「おぉ、どうした〜ウインディ〜?」

 

実家から帰ってきてからと言うものの、ご機嫌な日が続いている。

なんなら休み時間の度にトレーナー室までやって来てる。可愛い。

かと言ってクラスメイトちゃんたちに聞いてみても意味深に微笑むばかりで、何が何やら…。

 

「ウインディちゃん、またトレーナーの家に行きたいのだ〜♪」

「うん?またオレの実家に行きたいのか〜?」

 

確かに、実家では割と歓迎されてたし、することもないだろうと、退屈しそうだと言うオレの懸念に反してけっこう充実してたみたいだし…なんならウチの子猫達やらお袋とも帰り際にかなり仲良くなってた感じがしたけども…。

 

「まぁ、行くにしても来年だなぁ〜」

 

長期休暇はなかなか取れないし、たまたま実家の近くのレース場で走った時に寄るくらいしか出来そうもない。

それでもウインディは嬉しそうに笑う。

 

「のだぁ♪たのしみなのだ〜♪」

「そっかぁ〜、それじゃ親父とお袋…それとウインディのご両親にいい報告をするためにも、トレーニング頑張らないとだなぁ〜」

「エヘー♪わかったのだ〜♪」

 

素直なウインディ。可愛い。

目指せ年度代表ウマ娘だな!!

いやまぁ、可愛さなら既に最早宇宙一なんだけども…。

 

 

のだぁ〜♪

 

冬休みのあいだに、トレーナーとナカヨシになれたきがするのだ〜♪

 

けーかくどーりなのだ〜♪




ウインディちゃん…来て下さいお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ギャラリーキーでウインディちゃんイベント解放しました。可愛い。

ちなみにBACK FIRE!ってイベントです。

見たことないイベントだったので、ウインディちゃん関係だと解放してから知りました。



レースに向けての今日のトレーニングも終わりぎわ。

今日のトレーニング内容は主に彼女の強みを伸ばす方向だ。

 

今日は…というか、ここ最近は最後の仕上げに目標距離のタイムを測ることにしている。

自分の走行タイムを明確な数字として分かっていれば、それだけモチベーションにも繋がるだろうし、ウインディ自身も自分の成長を実感できると思ったからだ。

もちろん、調子の良し悪しである程度の変化はあるものの、概ね結果は良好なもので、今回もまたそうだった。

 

「スゴいなぁ〜ウインディ〜。またタイム良くなってるぞ〜」

「のだっ!?ホントなのだ〜?」

 

そう言ってニコニコと小走りでオレの手元のストップウォッチを見に来るウインディ。可愛い。

 

「ほら、こないだより0.2秒早くなってるだろ〜?」

「エヘー♪コレもトレーニングのせーかなのだなぁ〜♪」

「だなぁ〜、いいことだ」

 

まぁ、並走相手のレベルが高いのと、元々のウインディの素養ならこのくらいは当然と言えば当然なわけだが。

まぁだからといって褒めない理由にはならない。オレとしてはむしろ褒めまくりたい。

 

「蹄鉄の手入れもちゃんとしてるみたいだなぁ〜エライぞ〜」

「ふっふん!!ウインディちゃんにかかればたけのこさいさいのさいなのだ〜♪」

 

お茶の子さいさいって言いたいのかな?そんな言い間違えるウインディもまた可愛い。

それに担当ウマ娘がご機嫌なところにわざわざ指摘するほど野暮でもない。

 

それにしても、G1か…。

G1の舞台に立てる。それだけでウマ娘の実力も分かろうというものだ。

何故ならば、トレセン学園が世界に誇る天才達エリート達の中から更に研ぎ澄まされ、選び抜かれた実力派しかいないからだ。

彼女らに油断はない。慢心もない。

しかし…その一人一人に、負けるつもりも毛頭ない。

それぞれがそれぞれ負けられない願いと、思い思いの夢を掲げて、胸を張ってそこに立っている。

厳しい勝負の世界の最前線で、参加した幾つものレースで勝って負けて、ライバル達と鎬を削り、時に怪我に泣き、時に逆境に心が折れそうになりながらも、それでも決して歩みを止めなかった本物の猛者達…それが彼女らだ。

芝だろうがダートであろうが、次代に繋がる歴史に蹄跡を残す、尊敬に値する偉大なるウマ娘達だ。

そして、ウチのウインディもまたその例には漏れない。可愛いけど。

だからこそ、G1勝者の栄光と称号は多くの人々に夢を与え、感動を与え、今日まで語り継がれる伝説なんだろう。

 

だからこそ…オレもまた覚悟を持ってウインディと勝ちにいく。

トレーニングは本人のためにも厳しくするが、無理も無茶もさせない。

ウインディに今現在させているのも、地味で堅実なトレーニングの積み重ねだが、ウインディはオレを疑うことなく指示に従ってくれる。

 

「アイシングはちゃんとしてなぁ〜?」

「わかったのだぁ〜♪」

 

そう言って鼻歌まじりに脚に渡したスプレーをするウインディ。えらい。

 

「ウインディちゃんはまだまだ強くなるのだ〜♪」

「うん。そうだなぁ」

 

一緒に頑張ろうなぁ〜。

 

 

ふんふ〜ん♪

 

ウインディちゃんはぜっこーちょーなのだ〜♪

 

のだ?レースの不安?

 

とくにはないのだ〜♪




イベントを見る度に、ウインディちゃんの育成実装はよ来て…ってなっちゃいます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃん、育成実装おめでとおおおおおおお!!!!

いやぁ〜、次回ガチャが発表されてからホントに数々の温かい感想ありがとうございます。

いざ実装されるってなると、感無量というか何と言うか…。

これからも投稿頑張りますので、拙作をよろしくお願いします!!


「今日もトレーニング頑張ったなウインディ〜!!よくやったぞウインディ〜!!」ナデナデナデナデ…。

「ふふ〜ん♪ウインディちゃんをもっともっともぉぉぉ〜〜っとホメるのだぁ〜♪」

 

フェブラリーステークスに向けてのトレーニングもそろそろ佳境に入ったところか。

まだまだ油断はできないが、だからといってここまで頑張ってきた可愛い可愛いウインディに何のご褒美もないのはいいのだろうか。いや、良くない(反語)。

 

「それでウインディ〜?何か欲しいものはあるか〜?」

「のだぁ〜…ほしいものはだいたいもうあるのだ〜」

「そっかぁ〜」

 

じゃあどうしようかなぁ。やっぱりウインディのお気に入りの店でご飯でも…。

 

「でも…」

「でも、何だ?」

「その…こんど、いつでも良いからちょっと時間をつくってほしいのだ…」

 

ちょっとモジモジしながら上目遣いでそんなことを言ってくるウインディ。可愛い。

 

「うん?そのくらいなら別に良いけど…何かあるのか?」

「エヘー♪それはナイショなのだぁ〜♪」

 

ふ〜む。声の感じからして何かしら深刻な話ではなさそうだ。

 

「楽しみにしててもらえるとうれしいのだ〜♪」

 

オレとお話ししつつ整理運動を終えたウインディはそれだけ言うと、そのまま更衣室へ向かって行った。

 

「楽しみ…ああ、そういえばもうバレンタインも近いのか…」

 

今年も一生懸命作ってくれるのかな。

ウインディ、楽しそうだったなぁ…。

クラスメイトちゃん達ともうまくいってるみたいでよかったよかった。

にしても、早いなぁ…最初三年は長い道のりだと思ったが、それと過ぎてみればあっという間だ。

なんて、じじくさい感傷は今はいいか。

オレは手にした端末で、データを見てみる。

主に、天候やバ場状態がもたらす所を重点的に。

 

「フェブラリーステークス…バ場状態が悪ければ、そこはウインディの独壇場になるだろうなぁ…」

 

オレは屈んで、ぬかるんだダートコースに刻みつけられた蹄鉄跡を見て確信する。

ウインディはやはり、荒れたバ場や泥の中でこそ輝くウマ娘だ。

ぶっちゃけ、担当トレーナーの贔屓目と言われて仕舞えばそれまでだが…。

 

「ウインディは強くなった。ジュニア級からずっとずっと頑張り続けて、磨き上げた」

 

さてと…これからはますます気が抜けなくなるな。

オレは後片付けを済ませ、トレーナー室に向かい……。

 

「ガブ〜〜〜ッッッ!!」

「あ痛ぁぁぁ〜〜!?」

 

え?え?なになに?

 

「えっと、ウインディ?」

 

オレの背後に周り、頭を咥えているのだろうウインディに声をかける。

何か変なことでもあったのか?

 

「プハッ…トレーナーがぜんぜんうごかないから、ウインディちゃんが噛みついてみたのだ〜!!」

「えっ?」

 

慌てて腕時計を見ると、ウインディを見送ってから既に三十分以上が経過していた。

後ろにいるからもう着替えてるの分からなかった…。

 

「トレーナー、ダイジョブなのだ!!」

「ウインディ?」

「ウインディちゃんは負けないのだ!!ゼッタイゼッタイ!!勝ってみせるのだ!!」

 

むん!!とそう言うウインディに、思わず固くなっていた頬が緩む。

 

あぁ…今度はオレが心配かけちゃったかぁ…。

 

「そうだな!!ウインディは無敵だもんな!!」

 

どうやらオレは、少しばかり心配し過ぎていたようだ。

でも、あんまり不安にばっかりなってても、オレの愛バに…ウインディに失礼ってもんだよな。

オレは背後のウインディをおんぶする形で腕を回す。

思えば、背中でこの重みと温もりを感じるのも随分と久しぶりな気がする。

 

「あったりまえなのだ!!」

「そうだな。それじゃ、一緒にトレーナー室行くか?」

「ふふ〜ん♪かまわないのだ〜♪」

 

そう言うなり、ウインディはそのまま体重を預けてくるのだった。

 

 

ふふ〜ん♪

 

ウインディちゃんのチョコをうけとるトレーナーがシケたかおしてたら困るのだ〜!!

 

シンパイなんて…。

 

ちょっとだけ…したかも…なのだ…。




何が嬉しいって、バレンタインチョコがもらえるタイミングってことですよね!!

絶対特別なチョコ貰うぞ〜!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんから特別なチョコもらったど〜〜!!

ああもう可愛い。ホント可愛い。
可愛いしか出てこないくらい可愛い。
昨日キャラガチャ天井分回して星5にしたけど全然後悔してない。可愛い。


さて、今年もやって来たバレンタインデー。

オレは今、ウチの可愛い可愛いウインディのたってのお願いにより、トレーナー室にいる。

まぁ、とは言え出張で居なかったり、トレーニングの時以外は基本普段は大抵ここにいるんだけども…。

とにかく時間潰しも兼ねて仕事を終わらせようと作業を続けていると……。

 

「そろ〜り…そろり…なのだぁ〜〜…」

 

背後に何やら可愛い気配を感じる。もう可愛い。

が、敢えて振り返らない。

せっかくのイタズラに水をさしてウチの可愛いウインディをションボリさせるのはオレとしても本意では無いし。

 

「ガオ〜〜!!」

「おおう!!なんだぁ、ウインディかぁ〜」

「ふっふん!!驚いたのだ〜?どんなモンなのだ〜♪」

 

ドヤヤァ…と効果音が聞こえて来そうなほどのドヤ顔をするウインディ。可愛い。

 

「そうだなぁ〜驚いたなぁ〜流石だなぁ〜」ナ〜デナデナデナデ…。

「ふふ〜ん♪トーゼンなのだ〜♪」

 

イタズラ成功に嬉々としてしっぽをブンブンしているウインディ。可愛い。

 

「のだぁ〜♪それじゃ、イタズラも成功したところで…今年もトレーナーにチョコをあげるのだ〜♪」

 

差し出される箱。

それを持つ手の傷は去年よりもだいぶ減っている。

チョコ作りの腕を上げたんだなぁウインディ…。

教え子の成長と言うのはいつ見ても良いものだ…ん?

ホロリと涙ぐんでいると、なにやら違和感が。

 

「あれ、ウインディ?箱ふたつあるけど…」

「ふふ〜ん。今回はどっちか好きな方を選ぶと良いのだ〜♪」

 

方やゴテゴテっとした大きな箱。

方や飾りっ気の無い小さな箱。

 

なんかの昔話で見たことがあるような…。

 

「ちなみに〜…当たりはあの、有名メーカーの数量百個限定チョコなのだ〜!!」

「おぉ〜豪勢に来たなぁ〜」

「まぁ、ウインディちゃんにかかれば手に入れるのだってカンタンなのだ〜♪」

 

ウインディはそう言って得意満面だ。

 

「ちなみに…ハズレは何が入ってるんだ〜?」

「お?気になるか?気になるのだ?」

 

オレの質問に食い気味に答えてくれるウインディ。可愛い。

 

「それはな〜?引いてみてからのオ・タ・ノ・シ・ミ!!なのだ〜♪」

 

ニシシッとイタズラっ子むき出しの笑顔を浮かべるウインディ。

 

しかし、どちらを選ぼうかと目線を行き来させていると、明らかに反応が違う。

 

コレでも、それなりに付き合いがある身だ。

ウインディの本心はある程度はわかるつもりだ。

何より、オレの心は言っている。

 

 

ハズレ(アタリ)を選べ』…と。

 

 

のだ〜…。

 

チョコ作り…試食しすぎちゃって、何とかリカバーしたら、思ったよりちっちゃくなっちゃったのだ…。

 

でも!!コレだけわかりやすかったらトレーナーは当たりを引くハズなのだ!!

 

ホントは…ウインディちゃんのチョコ…食べてほしいけど…。

 

しょーがないのだ…。

 




アマノジャク的バレンタインでした〜。

短くって申し訳ない…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ホーム画面にいてくれるウインディちゃん…可愛すぎるっっ!!

バレンタインの続きですはい。


オレはウインディが用意してくれたチョコの片方に手を伸ばし、箱を開ける。

中身は、ちょっと不恰好なトリュフが一個だけ。

付属のプラスチックフォークで刺して、口に運ぶ。

 

「うん。美味しい」

 

その声にウインディが観念したかのように、そ〜…っと目を開ける。

 

「のだっ!?なんでウインディちゃんの…じゃなくて、ハズレ選んでるのだ!?」

「え?何でって、オレにはこっちの方が当たりだからだよ?」

 

驚愕と、困惑の混じった表情を浮かべるウインディに、オレはそう答える。

 

「のだ?でも…高いのに比べたら味も…量だって…」

 

徐々に小さくなっていく声。

おおかた、予想より出来上がった量が少なかったのか、それとも試食しすぎたのか…。

いずれにせよ可愛い理由だ。

 

「大事なのは量とか値段じゃなくて、こもってる気持ちだろ?」

 

オレは未だ困惑しているウインディにゆっくりと近づき、その頭をくしゃりと撫でる。

 

「別に高いものがいけないってことじゃなくてさ。単純にオレが、ウインディが作ったチョコの方が食べたかったってだけの話だよ。だから気にしないで」

「のだぁ〜…」

 

何かいいたそうにしてるウインディ。可愛い。

 

「どうした〜?」

「その…それ…」

 

ウインディはチョコの入っていた箱をおずおずと指差す。

 

「うん?」

「ホントに、おいしいのだ?」

 

いつになく不安そうな声で質問してくるウインディ。

きっと精一杯作ったんだろう。でもだからこそ、作り終えて気が抜けてしまい…ついつい食べてしまったんだろう。

それほどに気持ちがこもったチョコが不味いはずがない。

 

「ホントだぞ〜?」

「ホントの、ホントに…か?」

「ホントのホント」

「ホントのホントの…」

「よしよし…」

 

いつもの勢い任せのナデナデでは無く、小さな子にするような控えめなナデナデだ。

「ウインディ?」

「…のだ?」

 

オレはウインディとそっと目を合わせる。

泣きそうになってたせいか、少し潤んでいたが。それでもウインディは真っ直ぐにこっちを見つめ返してくれた。

 

「こんなことで、オレがウインディに嘘ついたことあったか?」

 

不安そうにしているウインディに、オレはできる限りゆっくりと…それでいて優しく声をかける。

 

「…………」ふるふる

 

ウインディは勢いよく首を横に振る。

 

「ね?だから大丈夫。こないだウインディも言ってくれたろ?」

「のだ…」

 

ぐしぐし…と制服の袖で涙を拭くウインディ。

苦笑いしながらハンカチを渡すと、ひったくるように勢いよくオレから受け取り、ゴシゴシと顔を拭う。

そして、現れた表情は…。

 

「そうだな!!ウインディちゃんらしくなかったのだ!!」

 

今度は無理をしてない、いつもの快活な笑顔だ。

 

「そうそう。ウインディは元気すぎるくらいでちょうど良いんだよ」

「エヘー♪それじゃ、トレーナー!!」

「うん?どうした〜?」

 

ウインディは大きな方のチョコの箱を手に取ると、シュルル…と包装を解き…。

 

「高級チョコ!!せっかくだから、ウインディといっしょに食べるのだ〜!!」

 

そう言って、お高いチョコをひとつこちらに差し出して来たのだった。

 

 

ふふ〜ん♪

 

ウインディちゃんのチョコ…おいしかったのか…。

 

それじゃー、来年もそのさきも…。

 

ずっとず〜っと!!

 

チョコを作ってやるのだ〜!!

 

エヘー♪




曇らせなんて、ウインディちゃんには似合わないよね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

フェブラリーステークス!!遅くなって申し訳ない!!

ウインディちゃんとの温泉旅行がまっったく当たらず…(´;ω;`)

ストーリーキー使おうか悩んでますよ…。


府中駅から電車に乗ってオレとウインディが向かうのは、東京レース場だ。

お目当てはもちろん、今年G1に昇格したフェブラリーステークスだ。

今日の予報によれば天気は雨。

レースの時刻には止む予報だが、降水量がかなり高い。

 

「ウインディ、調子はどうだ?」

 

オレは隣に座る担当ウマ娘に声をかける。

 

「のだ?ウインディちゃんはいつでもぜっこーちょーなのだ〜♪」

「そっかぁ〜、それは良かったなぁ〜」ナデナデ

「のだ!!だからトレーナーは安心してウインディちゃんの活躍を見てるのだ〜♪」

 

電車で約十分という短い間、オレとウインディは他愛無い話をする。

選手控え室に入る時も、ウインディはかなり落ち着いていた。

耳にも、しっぽにも違和感は無い。

 

「ゴールのとこで待ってるからな。オレを目掛けて駆けて来い」 

「ふふ〜ん♪りょーかいなのだ〜♪」

 

メンタルケアのためにも、その後二、三話して控え室を後にする。

もちろん、本番前のストレッチも忘れずにやってもらった。

後は、トレーナーであるオレには見守ることしか出来ない。

 

「あぁ〜…緊張してきた〜…」

 

いつものようにカメラの三脚を組み上げ、望遠レンズの調整をする。

ウチのウインディは…八番ゲート。

可もなく不可も無く、と言ったところか。

 

やがて刻限になり、ひとりひとりパドックに出て来る。

やはりというべきか、皆かなり仕上がっている。

ともあれ、意外なのはビコーペガサスの出走だ。

彼女はなかなか勝ちきれていないようだが…ダートに路線を変更するのか?

確認しようにもビコーペガサスのトレーナーは近くにいない。

 

当然ターフは重バ場の発表。

 

それでも、ダートウマ娘達は飛沫を上げて疾駆する。

己のプライドのため、G1勝利という名誉のため、或いはかけがえの無い誰かとの約束のために…。

 

G1フェブラリーステークス。

昇格したばかりのその舞台の足元は悪く、もはやターフというよりは田んぼと言い換えた方がいいくらいだろう。

しかし、案外そのくらいの方が彼女には似つかわしいのかもしれない。

 

「各ウマ娘、バラついたスタートとなりました!!」

 

はじめから小綺麗に勝とうだなんてオレもウインディも微塵も思っちゃいない。

ダートの玉座はいつだって泥まみれで、一見荘厳とは程遠い。

だが、だからこそ皮肉抜きで彼女らにはよく似合う。

 

「ハナを進む四番ドラグーンスピア、そのすぐ後ろにはエフェメロンがつけています」

 

そんな中で、ウチの担当ウマ娘…ウインディはその悪路の中でこそ、輝く脚を持っていた。

踏み込みを力強く、泥の底の底にまで届くように。

その分脚への負荷もかかるが…なに、そのためのトレーニングだ。

ぬかるみに刻まれた蹄跡は、誰よりも深く。

顔に跳ねた泥が跳ねても目に入らなければ問題は無いと言わんばかりに拭うこともなく、ゴール板だけを目指して駆け続ける。

オレはそんなダートウマ娘に魅せられ今日まで生きてきた。

 

レースの運びは…ウチのウインディはまずは三番手から四番手、良い位置どりだ。

何度も何度も併走やレースで体に叩き込んだ戦術が生きている。

 

「先頭を行く二人の逃げウマ娘も思いのほか脚を取られてる。かと言って、下手に減速すれば再加速にかなり手間取るだろうな…」

「ああ…だが、それは後続も同じ。1600メートルを加速し続けて勝つなんて、よっぽどスタミナに自信があるか、もしくは決して長くは無い距離を、途中まで速度の微調整を続けるような繊細さが必要になってくるだろう…この足場の悪さではな…」

 

なるほど。

観客は足場の悪さを、そのまま不利になると思っているようだ。

それは一般的には正しいだろう。

だが、それもウチのウインディには…メリットになるんだよなぁ。

 

「あっと、シンコウウインディ!!最終直線残り200メートルで距離を詰める!!わずかにシンコウウインディリードか!!しかし後続も巻き返して来ている!!」

 

流石にG1、やすやすとは勝たせてはくれない。

だけど、だからこそだ…。

ぎゅっと握った掌に汗をかいているのが分かる。

 

「よ〜し!!そのまま!!勝てる!!イケる!!ウインディ〜!!」

 

半バ身ほど抜け出す泥まみれの栗毛、いつものイタズラに失敗した時のような、或いは落とし穴を掘って出られなくなってしまった時のような、そんな可愛い担当ウマ娘の真剣な表情が、オレの中の何かを射抜いたんだ。

 

 

のだ〜…思ったよりドロが跳ねるのだぁ…。

 

でも…ウインディちゃんはゼ〜〜〜ッタイに!!

 

負けてやらないのだ〜〜!!

 





ちょっと駆け足過ぎた感。

書き直すかも。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃん、ダートで汚れた姿もキュート!!

また遅くなった!!そして短い!!許して…(´;ω;`)


雨上がりの曇天に、ざわざわとどよめきが支配する。

G1フェブラリーステークス。

地方のそれとは違い、中央のG1に勝利するということは、歴史に名を刻むに等しい正しく偉業と言っても過言では無い。

その初代王者が決まったのを、皆肌で感じているのだろう。

 

「G1フェブラリーステークス、初代王者に輝いたのは…シンコウウインディ〜〜!!」

 

何せ…ウチの可愛い可愛いウインディがそうなったのだから。

 

「ウインディ〜!!やったなぁ〜!!」

「のだ〜!!トレーナー♪」

 

こっちに気づいたウインディがパシャパシャと駆け寄ってくる。可愛い。

 

「勝ったのだ〜!!」

「うおっと〜!!」

 

ウインディがドロドロな格好で飛びかかってくる。

オレの来ていた服もそのおかげで汚れるが、まぁそれも今は勲章のようなものだ。

ウマ娘の脚力で跳び上がり、ガッチリと頭を両手で抑えつつ、その鍛えられた脚でオレの腰から上にしがみつく。

 

「おっとと…」

 

このおかげで随分と体幹が鍛えられた。

 

「やったのだ〜♪ウインディちゃん頑張ったのだ〜♪」

 

頭上から聞こえてくるウインディの歓喜の声。可愛い。

 

「おぉ〜良かったなぁ〜頑張ったなぁ〜」ノールックナデナデ…

「ふふ〜ん♪それじゃーお決まりのアレやるのだ〜♪」

 

その言葉に、周囲の観客はやんややんやと盛り上がる。

 

「ガブ〜〜ッ!!」

「あ痛ァァァ〜〜ッ!!」

 

ずっと噛みついて来たから加減を理解したのか強さは歯形が薄らとつく程度だが、それでもちょっと痛い。

まぁ、可愛いから良いんだけど。

 

「いやぁ〜、コレをみないとシンコウウインディ〜って感じしないよなぁ」

「ホントホント。わざわざダートレースに来たのもこの漫才見たさとかあるからなぁ〜」

 

わいわいと周囲でお客さんが盛り上がっているのがわかる。

ウチの可愛い可愛いウインディも、随分と愛されキャラになったもんだなぁ〜なんて、しみじみ思う。

いやもうホント、ダートのマイルに関してはほぼ敵無しなんじゃなかろうか。

流石はウインディ。可愛い強いかしこい。三拍子揃った天才ウマ娘だ。

な〜んて…油断はまだまだ出来ないんだが…。

何せウインディの後輩ダートウマ娘達も有望株が何人かいる。

そんな彼女らと鎬を削るためにも、さらなる成長は不可欠。

だがまぁ…いまはそういうのは忘れて、ウインディと、それからわざわざ来てくれたお客さんたちと純粋に勝利を喜び合おうか。

 

「ウインディの担当になれて、オレは幸せ者だなぁ〜」

「のだ!!のんなのトーゼンなのだ〜♪」

 

噛みつき終えてそのままさらによじ登り、肩車の形になる。

 

「ふっふん!!ビコー!!ウインディちゃんの勇姿!!とくと目に焼き付けたのだ〜!?」

 

ターフに向かって叫ぶウインディ。

その姿はいつかの大魔王の姿を彷彿とさせ、会場を大いに盛り上げたのだった。

 

 

ふふ〜んやったのだ〜♪

 

ウインディちゃんのイタズラ…みんな驚いてたのだ〜♪

 

トレーナー!!次はどんなイタズラするのだ〜?

 

ムテキのウインディちゃんに、ふかのーは無いのだ〜!!




次回150話…なんかイベント的なやつでやりたいですなぁ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

150話…遅ればせながらホワイトデーのお話…。

お話自体は割と早い段階で出来てたんですが、前と似たようなお話になってしまって…。

書き直してたら遅れにおくれちゃいました。はい。

そして短め…orz


トレセン学園トレーナー室。

今日、オレからやって来たウインディに声をかけた。

 

「ウインディ〜」

「のだぁ〜?」

 

ソファでゴロゴロリラックスしていたウインディがこっちを向く。可愛い。

 

「今日は何の日か分かるか〜?」

「う〜んと…三月の十四日…のだっ!!」

 

おっ、気付いたみたいだなぁ〜。

耳がピンっと立ってて可愛いなぁ。

 

「ほらウインディ〜、バレンタインはありがとなぁ。これ、ホワイトデーのプレゼントだぞ〜」

 

オレは引き出しから用意していたものを取り出す。

 

「ウインディが好きなザクザク食感のマカロンだぞ〜」

 

ウインディは歯応えのあるモノが好みだ。

だからオレは仕事の合間に時間を見つけて何度か試作を繰り返し、なんとか間に合わせた。

 

「のだぁ〜♪トレーナー、ありがとなのだ〜♪あむ〜っ!!」

 

上機嫌で甘噛みして来るウインディ。可愛い。

 

「よ〜よしよしよしよし。気に入ってもらえたんなら良かったなぁ〜」

 

こっちまで嬉しくなっちゃうなぁ〜。

可愛い可愛い担当ウマ娘に喜んで貰えるのはトレーナー冥利に尽きるなぁ〜。

 

「それじゃーお礼にウインディちゃんのお気に入りのおひるねスポットに案内するのだ〜♪」

 

そう言ってオレの腕をぐいぐいと引っ張ってくるウインディ。可愛い。

 

「ふふ〜んふ〜ん♪のっだのだぁ〜♪」

 

上機嫌な様子で、鼻歌まじりに廊下を歩くウインディについて行く。

 

階段を登り続けると、そこはトレセン生達の憩いの場のひとつである屋上だった。

 

「この時間はだいたい独り占めできるのだ〜♪」

 

ウインディがウキウキで屋上のドアを開ける。

 

吹き抜ける風が気持ちよく、手すりの向こうからはトレセン学園を一望出来る。

 

「ウインディちゃんは高いトコが好きなのだ!!」

 

覚えておくのだ〜♪とにっこりと太陽のような笑顔でそう言ってくるウインディ。可愛い。

 

「そうかぁ〜」

 

手すりに向かって小走りで向かうウインディ。

そっと寄りかかると、そよ風に気持ちよさそうに目を細める。

 

「それじゃ、レースでもトップを目指して頑張ろうなぁ〜?」

「ふふ〜ん♪トーゼンなのだ〜♪」

 

しっかし…本当に心地良いなぁ〜。

ウインディのお気に入りスポットっていうのも納得だ。

 

「因みになんだけど…」

 

オレは、トレーニングコースの方を見ているウインディにふとした疑問を問いかける。

 

「のだ?」

「ウインディの一番お気に入りのお昼寝スポットはどこなんだ?」

 

ウインディは耳をピンっと立てる。可愛い。

これはウインディがいたずらを思いついた時の動きだ。

現にウインディはイタズラっぽく笑うとこっちに顔を向け、ニシシと笑い…

 

「へへ〜ん。ナイショなのだぁ〜♪」

 

と、なぜか満足げな顔をしていたのだった。可愛い。

 

 

ふふ〜ん♪

 

ウインディちゃんのお気に入りスポットは〜…。

 

まだ言ってやらないのだ〜♪

 




ウインディちゃんへの想いがある以上、エタりはしない。

そこだけは曲げられない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウインディちゃんと温泉やっといけましたわ〜。

久しぶりすぎて忘れられてないよね?


さて…。

 

オレが可愛い可愛いウインディと出会って、シニア級にまでやってきた。

 

出るレース出るレース良い結果を残し、ウインディ本人との関係性も良好…のはすだ。

 

そんなオレとウインディは今…。

 

「な?ウインディ?お願いだから…」

「むぅ〜〜!!ぜぇぇぇっったいに!!イヤなのだぁ〜〜〜!!」

 

どういうわけか修羅場を迎えていた。

 

ことの発端はつい先日…。

トレセン学園を所属の全ウマ娘トレーナーへ送られてきたとある業務メールだ。

 

『各担当ウマ娘への予防接種のお知らせとお願い』

 

まぁ、こう言うのが大事なのは分かるし、逆にイヤな気持ちもわかる。

オレも子どもの頃はイヤイヤ泣いていた記憶もあるし…。

 

特にウチの可愛いウインディなどは、ほんの…ほんっっの少しばかり子供っぽいところがあるから、説得には骨が折れるのは覚悟のうえだったんだが…。

 

「ウインディ!!大人しく受けてくれたらとうもろこし食べ放題でいいから!!なっ!!」

「うぅ〜〜……」

 

両腕を上げ、唸り声をあげてこちらを威嚇してくるウインディ。可愛い。

が、しかし…今はそんなことを考えている余裕などあるはずもなく…。

 

「フン!!ちゅーしゃしろって言ってくるトレーナーなんて大っキライなのだ〜!!」

 

ダダダダダダ…。

 

「へ?」ガァァァァン!!

 

頭を鈍器で殴られたようなショックというのはこう言うことを言うんだろう。

 

怒りにほっぺたを膨らませ、そのままトレーナー室を出ていくウインディ。

一瞬呆気にとられたが、ハッとなったオレはそのままウインディを追いかけることに。

 

とは言え…ウマ娘の脚の速さに追いつけるかと言われれば答えは「NO」な訳で……。

この疲労校舎の中、オレは担当ウマ娘を割とすぐに見失ってしまった。

 

「ウインディ〜?どこにいるんだ〜?」

 

オレは当然、ウチの可愛い担当ウマ娘を探して回ることにした。

 

グラウンドに、トレーナー寮付近の森、屋上に、ヒシアマゾンに頼んで美浦寮も確認してもらったが戻ってきてはいないそうだ。

 

かと言って、学園外に逃げ出したのかもと思って生徒たちや教官の人たちに確認するも、出かけた様子はないとのこと。

携帯に連絡を入れても当然出ない。

 

学園内にいることはほぼ確実。

であれば、何か事件や事故に巻き込まれている心配は無いので、そこは安心できた。

 

結局、オレは途方に暮れて学園の廊下をトボトボと歩いていた。

やがて、高等部の教室前にやってきたオレは、ウインディの通う教室の前を通ったことに気づいて、何となしに誰もいないだろう教室を覗き見る。

 

半ば、ウインディがここにいることを期待してのことだったが。

 

結果、ウインディはそこにいた。

夕暮れに染まる教室の窓際の席で、大きな耳を力無く垂らしてしゅんとしている。

相当反省しているのか、それとも他に理由があるのか…。

兎も角、そのままにしておくわけにもいかず、オレはウインディに呼びかけることにした。

 

「ウインディ〜?大丈夫か〜?」

「…のだ?トレーナー?」

 

パッと顔を上げるも、そのすぐ後にはすんっ…と顔を伏せてしまうウインディ。

 

「…………ごめんなさいなのだ…」

「うん?何がだ?」

 

オレはしゃがんで、席に座るウインディにできる限り優しく問いかける。

 

「その…言い方が…悪かったのだ…」

「何の言い方かな?」

 

オレのその言葉に、ウインディは言いづらそうに、申し訳無さそうに続ける。

 

「ウインディちゃん…別に、トレーナーのコト、キライじゃ…ないのだ…」

「うんうん。そっかぁ、嬉しいなぁ〜ありがとなぁ〜ウインディ〜」ナデナデ…。

「…エヘー♪」

 

いつもの如く頭を撫でると、ご機嫌な声を漏らすウインディ。

 

「それと…あとひとつ、あるよね?」

「うっ…」

「ウインディ〜?」

「のだ…」

「ウインディは強い子だ。そうだろ?」

 

ウインディはしょぼくれた表情をするも、意を決したように返事をする。

 

「お…おちゅーしゃ、受けるのだ…」

「うんうん。そうだね〜?偉いぞ〜」

「ふ…ふん!!ウインディちゃんがエライのはトーゼンなのだ〜!!」

 

空元気なのか、胸のつかえが取れたからか、明るい声色でそう言うウインディ。

 

「うんうん。約束通り、ご褒美にはちゃ〜んととうもろこしもい〜〜っぱい用意しとくからなぁ〜?」

「う…痛くないように、してほしいのだ…」

 

頭が冷えたのか、オレの服の袖口を掴んで気恥ずかしそうにそう言ってくれるウインディ。えらい。

 

「うん。わかってる。それじゃあ早速…」

 

病院に予約の連絡を…と、そう思い携帯を取り出したその時だった。

 

ガラガラ…

 

うん?誰か忘れ物でも取りに来たのか?

 

そう思い振り返ると…

 

「………」ニコニコニコニコ

 

そこには笑顔のたづなさんが立っていた。

 

「トレーナーさん?」

 

なぜか怒っているような声を出すたづなさん。

 

「お話…よろしいですね?」

 

有無を言わせぬ物言いに、オレは頷くより他何もできなかった。

 

 

ふんふ〜ん♪

 

おちゅーしゃ、思ったより痛く無かったのだ〜♪

 

ウインディちゃんがつよすぎるだけかもしれないのだなぁ〜♪

 

ふふ〜ん♪




ウインディちゃんに因子繋げる用のフジ寮長ばっかり育成してましたわ…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

辛いのが苦手なウインディちゃん…可愛いね。

くっ…ウインディちゃんのお誕生日をスルーしてしまった。
これは大失態だ!!

と言うわけで、遅ればせながら…。


その日…その事故は起こってしまった。

 

「ごめんよウインディ〜!!」

「うう〜…ヒリヒリするのだぁ〜…」

 

きっかけは、トレセン学園のトレーナー達の間で人気が出つつあると言う、とあるインドカレー屋の話を聞いたことだった。

 

「それでなぁ、そこのカレーってのがまぁ〜絶品でよ〜!!ナンにサモサも生地から手作りで、これがまた自家製のルーに合うんだなぁ!!」

 

同期は満足げな表情で、早速昼に食べてきたと言うそのカレー屋のホームページを見せながらそう言ってきた。

 

ふむふむ…。

 

サイトを見る限り、辛さもかなり細かく設定されている…。

辛いのが苦手な人への配慮もバッチリってことか…。

 

「なるほど…それはいい話を聞いた」

「お前も今度担当と食べてくるといいさ」

「うん。そうさせてもらうよ。情報提供ありがとう」

 

それで…忙しかったお詫びに、少し遅めの誕生日祝いも兼ねて、カレー店へと赴いたわけだ。

 

店内はさまざまなインドの神様の印刷された壁掛けが所狭しとかけられており、案内された個室のテレビには、何やら陽気に踊る男女が映っている。

 

椅子に座ると、ウインディは嬉しそうに注文用のタブレットを手に取る。可愛い。

メニューを眺めているだけでも楽しいのか、鼻歌まじりに何を頼むのか選んでいる。

 

「ふんふんふ〜ん♪トレーナー!!ウインディちゃん、このカレーのセットが気になるのだ〜!!」

「そっかぁ〜、それじゃあオレはこっちにしようかなぁ〜」

 

注文の内容が決まって呼び出しボタンを押す。

 

「イラッシャイマセ〜、ゴ注文ドゾ〜」

 

注文をとりにきたのはインドウマ娘らしきどこかエキゾチックな女性。

オレとウインディは注文をして、そのまま談笑していた。

 

「それにしても、最近忙しくってごめんなぁ〜ウインディ〜」

「のだ〜♪でもこーして連れてきてくれたから、気にしてないのだ〜♪」

 

なんていい子…流石は我が教え子。可愛いくってしゃーない。

そんな、楽しいひとときを過ごしていた時のこと…。

 

ピピピピピ…。

 

「うん?」

 

ポケットから着信音が聞こえ、すぐにオレの携帯が鳴っていたことに気がつく。

 

「ごめんなぁ〜ウインディ〜、ちょっと電話してくるなぁ〜?」

「ふっふん!!気にしないで待ってるのだ〜♪」

 

ウインディに断りを入れて席を離れ、電話に出ると、相手はたづなさんだった。

 

「すみません。突然…」

「いえ、それで内容は…ふむふむ…」

 

どうやら来週、ウマ娘のちびっ子クラブが見学にやってくるので、その案内を頼みたいとのこと。

中庭まで案内すれば、あとは寮長のヒシアマゾンおよび、フジキセキに引き継ぐので、仕事に支障はさほど出ないはず…か。

 

「分かりました。責任重大ですが、やらせていただきます」

 

最近…どうにもたづなさんには誤解されっぱなしだからなぁ〜…、少しでも貢献しておかないと…。

 

やがてたづなさんとの通話が終わり、そこそこ時間が過ぎていたことに気づく。

 

「少し…話しすぎたかな」

 

オレはそのまま早足で席に向かう。

するとそこには…。

 

「うぅ〜…トレーナー…」

 

涙目でこちらを見上げるウインディの姿が。

 

「ウインディ〜!!どうした〜!?」

「のだぁ〜…間違ってとれーなーの、食べちゃったのだぁ〜…」

 

話を聞くと、ウインディもあの後お手洗いに行って、戻った頃には二つカレーが置かれていたそうだ。

頼んだのは同じセットで、ぱっと見はそう変わらない。

きっと、さっきの店員さんが持ってきてくれたのだろうと思ったウインディは、オレを待とうと思ったが、我慢できず食べてしまった。

しかし、どうやら持ってきてくれた店員さんは注文をとりにきてくれた人とは別人だったようで…。

 

それがオレの頼んだ激辛カレーとも知らずに食べてしまったと言う。

 

「うぅ〜…まだ辛いのだぁ〜…」

「ほらウインディ〜!!ラッシー飲んで、な?」

 

今度からウインディとカレーを食べにくる時は…オレも甘口にしよう。

 

オレはそう、心に固く誓ったのだった。

 

 

うぅ〜…やってしまったのだぁ〜…。

 

ちょっとしたぼーけんしんってやつでトレーナーの頼んだのひとくちもらったら…失敗しちゃったのだ…。

 

でも、こんどお出かけの約束してくれたからいいのだ〜♪




ウインディちゃんのちょっとしたイタズラ。

失敗。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ギャルさんぽのキラキラウインディちゃん…可愛い過ぎるな!!

お久しぶりすぎる更新…。

忘れられてないよね…。


今日は珍しくトレセンの仕事もひと段落して、オレは貴重な休日をトレーナー寮で過ごしていた。

とは言え、ウインディのためになることを少しでもやりたくなったオレは、仕事用のPCを立ち上げようと思った、そんなときだった。

 

そろそろ昼になろうというそんな時、扉の前からインターホンと共に元気でご機嫌な声が響いてきた。

 

「トレーナ〜〜!!」

 

どうやら、ウチの可愛い可愛いウインディがやって来たようだ。

 

「うん?どうしたんだ〜?ウインディ〜?」

 

オレは扉の方に急ぎ足で向かい、扉を開ける。

ウインディはオレの顔を見ると、笑顔をさらに深める。可愛い。

 

「見てほしいのだ〜♪」

 

と言って、パッと手を見せてくる。

 

「おぉ〜、マニキュアとは‥また珍しいなぁ」

「エヘー♪似合うのだ?似合うのだ〜!?」

 

褒めて欲しいと言わんばかりに、笑顔でグイグイと近づいてくるウインディ。

 

「うんうん。似合ってるぞ〜?」ナデナデ…

 

普段こう言った事に興味は無さそうなだけに、意外性に驚くと同時に、似合っている事実についつい微笑んでしまう。

 

「わ〜い♪トレーナーにホメられたのだ〜♪」

 

嬉しそうにしっぽを振るウインディ。可愛い。

 

「そうかぁ〜でもウインディがネイルって、珍しいなぁ〜」

「ふっふ〜ん♪実はジョーダンがやってくれたのだ!!」

「へぇ〜、トーセンジョーダンが?」

 

まぁ確かに…あの子はよく爪を気にしているし、マニキュアが上手くても納得はいく。

 

あまりウインディとの絡みは無いように見えたが…まぁ、無邪気なウインディが嬉しそうにしてるあたり、悪い子じゃ無いんだろうし…ウチのウインディが楽しそうなら何よりだ。

 

「それとそれと!!シチーとオススメのお店にも行ったのだ!!後でトレーナーもいくのだ〜♪」

「おぉ、いいねぇ〜」

 

ちょうど午後は暇だったし、ちょうどいいか。

 

「それじゃ、お昼食べてから一緒にお出かけしようか?」

「わ〜い♪やったのだ〜♪」

 

ウインディを部屋に上げて、そのまま昼メシと洒落込む。

もちろん栄養バランスは考えて、ウマ娘であるウインディにも満足感も得られるレシピだ。

 

床に座りつつ、ぱたぱたとしっぽを振って待ち遠しそうにするウインディ。可愛い。

 

「ほ〜らウインディ〜、出来たぞ〜?」

「のだっ!!いっしょに運ぶのだ〜♪」

 

とたとた…と、こっちにやって来るウインディにお盆を持ってもらう。

 

「今日のお昼はスパゲッティだぞ〜?」

「エヘー♪ウインディちゃん、トレーナーのスパゲッティすきなのだ〜♪」

「そっかそっかぁ〜、それは良かった」

 

ウインディとお喋りに興じつつお昼をぺろりと平らげ、部屋着から私服に着替えると、オレはウインディと買い物に出かけた。

街に繰り出したウインディはご機嫌に、ゴールドシチーに教えてもらったと言う店を次々に巡る。

 

「あそこのお店が人気らしーのだ〜♪」

「そっかぁ〜、それじゃ、行こうなぁ〜」

「エヘー♪楽しいのだ〜♪」

 

その日はほぼ一日中、ウインディの買い物に付き合ったが…やはり、担当の元気な姿には癒される…。

 

「えっと〜…このこすめ?っていうのがいいとか聞いたけど…よくわかんないのだ〜…」

「別に、紹介されたからって絶対買わなきゃいけないわけでもないし…ウインディがいいと思ったものを買えばいいんじゃないか?」

「のだぁ〜、そうするのだ!!」

 

あぁ〜…何度思ったか忘れたけども、この子の担当しててよかった…。

 

明日からまた頑張れる…。

 

「トレーナー♪」

「うん?どうした〜?ウインディ〜?」

 

荷物を両手に持ちつつ、少し休憩に座ったベンチでウインディがご機嫌に声をかけて来る。可愛い。

 

「またいっしょにお買い物来るのだ〜♪」

 

そう無邪気に笑うウインディは、最強に可愛いのだった。

 

ぐふっ…。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 35~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。