麦わらの副船長はうちはの忍者〜大海原を駆ける写輪眼〜 (クロス創作者)
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プロフィール・設定集
プロフィール うちはマダラ


続きよりも設定になり申し訳ございません!簡潔に纏めたかったので!


うちはマダラ

 

異名:“伝説と戦い続けた男” “世界最凶の犯罪者” “破壊神” “ロックスの再来” “四皇全てに挑んだ男”

 

肩書き:元うちは一族長

 

懸賞金:100億ベリー

 

誕生日:12月24日

 

星座:やぎ座

 

一人称:俺

 

身長:179.0cm

 

体重:71.3kg

 

血液型:X型

 

年齢:享年51歳

 

出身地:新世界“ワノ国”

 

好きな食べ物:稲荷寿司

 

嫌いな食べ物:白子

 

好きなもの:月光、復讐、戦うこと、競い合うこと

 

嫌いなもの:負けること、見下されること、弱い者、迫害、黒炭オロチ、カイドウ、世界政府、天竜人

 

戦ってみたい相手:千手柱間、光月おでん、白ひげ、カイドウ、ビック・マム、ゴール・D・ロジャー、シキ、ダグラス・バレット

 

容姿:NARUTO世界のうちはマダラと同じ

 

覇気:武装色(内部破壊レベル)、見聞色(未来視レベル)、覇王色(纏えるレベル)

 

趣味:鷹狩り

 

好きな季節:冬島の冬(寒い“林檎”生まれのため)

 

入浴頻度:暇な時に入る為、一応毎日

 

就寝・起床時間:午前12時〜朝8時

 

家族に例えると:長男

 

イメージカラー:青(須佐能乎の色から)

 

職業に就いていたとしたら:戦争屋

 

 

 

経歴

 

うちは一族の長で後のうちは一族でのタカ派のリーダー。彼が起こした事件で世間からは“伝説と戦い続けた男”“世界最凶の犯罪者”“破壊神”“ロックスの再来”と恐れられている。

光月スキヤキが将軍の時代のワノ国の“林檎”にある忍里でうちは一族の嫡男として生まれる。弟である“うちはイズナ“と共に忍の腕を鍛える一方、各郷から追放された罪人・浪人が徒党を組み暴れ回る無法地帯だった九里で後に最大の友兼ライバルとなる千手柱間と出会い、のちにおでん城が立つ高台から九里を一望して「ここにオレ達の集落を作ろう」と言い出した柱間と語らい、共にワノ国と光月家を支えようと決意し、また互いに競い合って技を磨いていた。また、この頃に光月おでんとも出会い、彼の人望と器に惚れ込み、おでんが時期将軍となった時には彼を一生支えると柱間と共に誓った。

 その後、柱間と共にそれぞれの一族の長となり光月スキヤキや白舞の大名だった霜月康イエにも仕えた。また九里大名となったおでんの元を訪れ、錦えもん達“赤鞘九人男”や当時花の都の裏社会を取り仕切っていたワノ国一のヤクザの大親分“花のヒョウ五郎”と知り合う。そして、本格的におでんを支えるべく、原作開始28年前におでんがスキヤキに家臣団一行を連れて久方ぶりに花の都へ訪れた際に柱間と共に将軍スキヤキにうちは一族と千手一族の集落を自由で笑いの絶えない活気ある“郷”となった九里に移動することを直訴し、自身を支えることに感嘆したおでんの嘆願もあり、一族の集落をおでん城下へと移し、自分の主君となったおでんを将軍にする為に尽力していく。また同年、ワノ国に流れ着いた白ひげ海賊団に乗船を懇願するおでんを守る為に船長“白ひげ”エドワード・ニューゲートと交戦、ほぼ互角の戦いを繰り広げたが柱間や錦えもんの仲裁もあり決着は付かなかった。その後、柱間や錦えもん達と共に結託しておでんの出航を阻むが結局おでんと彼を止めようと駆け付けたイゾウが白ひげ海賊団と共に出航してしまう。そんな主君に呆れながらもおでんが帰還するまで柱間や錦えもん達と共に九里やワノ国の平和を支えて続けていった。

 しかし、原作開始26年前に将軍スキヤキが病死するとスキヤキ(正確にはマネマネの実でスキヤキに化けた黒炭ひぐらし)により将軍代理となった黒炭オロチが光月家転覆を目論み始める。光月家転覆を目論むオロチにとって光月家を支えるうちは一族と千手一族は邪魔な存在であった為、手始めにうちは一族のワノ国追放の陰謀を企てる。手を組んだカイドウ率いる百獣海賊団、ひぐらしの力や写輪眼の力を恐れる世界政府の助けもあり、うちは一族がワノ国に謀反を起こそうとしていると捏造し、プロパガンダによりワノ国の民衆と共にうちはを弾圧。柱間や錦えもん達が庇うものも最終的にうちは一族はワノ国から追放されてしまう。一族を弾圧したワノ国に絶望したマダラはうちは一族のワノ国追放と弾圧を謀ったワノ国や世界政府が支配するこの世界に憎悪を抱き、ワノ国と世界政府を復讐へと目標を定め、タカ派のリーダーとなる。また復讐の為に封印されていた九尾を解放し、写輪眼でコントロールすることに成功する。

 うちは一族を信じる柱間率いる千手一族や錦えもん達、穏健派が制止するが復讐へと走るマダラは説得に応じなかった。そして、無理にでもマダラを止めようとする柱間と九里の浜辺にて開放した九尾を口寄せして本気の死闘を繰り広げる。勝負は柱間の勝利となったが一瞬の隙をついてマダラは逃亡し、タカ派を連れてワノ国を後にした。その際にオロチや彼と手を組んでいたカイドウ率いる百獣海賊団にたった一人で勝負を挑み込む。オロチや福ロクジュ率いるお庭番衆達をほぼ一撃で戦闘不能に追い込むが殺さず(オロチ達は殺す価値もなかった為)にそのまま百獣海賊団に挑む。クイーン、キングの大看板を無傷で避け、カイドウとのサシでの対決ではカイドウを圧倒。カイドウに後一歩で殺せる程の致命傷を与えて、勝利するが殺しはしなかった。

 ワノ国を後にしたマダラはタカ派を連れて、聖地マリージョアを襲撃。九尾を口寄せし、マリージョアを火の海にするがマリージョアでの海軍本部の全戦力との戦いで弟のイズナをはじめとしたタカ派の仲間達を全員失う。その後、弟の眼を移植し、一気に永遠の万華鏡写輪眼を開眼、さらに弟や仲間達を失った憂さ晴らしに破壊活動を始めていく。

 原作開始25年前の新世界のエッド・ウォー沖で後の“海賊王”と呼ばれることとなるゴール・D・ロジャー率いるロジャー海賊団と“金獅子”のシキ率いる金獅子海賊団との間に起こった“エッド・ウォーの海戦”に乱入。ロジャー海賊団や当時ロジャー海賊団で見習いだったシャンクスとバギー、さらにシキ率いる金獅子海賊団と激突した。シャンクスやバギーに深傷を負わせ、ロジャーやシキを劣勢に追い込むが戦闘中に突如起こった嵐によりロジャー海賊団が戦場から離脱してしまう。標的を金獅子海賊団へ変更し、事故により頭に舵輪がめり込んだシキを倒し(殺しはしなかった)、シキの艦隊の半分を壊滅させた。同年、“ビッグ・マム”シャーロット・リンリンが支配する“万国”トットランドへ侵入し、ホールケーキアイランドでビッグ・マム海賊団と交戦する。ペロスペローやダイフク、オーブンに無傷で勝利し、カタクリに擦り傷を負わされるも圧勝する。その後、ビック・マム本人と交戦し、ビック・マム本人に大怪我を負わせる程のダメージを与えて勝利する(殺しはしなかった)。その1年後の原作開始24年前にはロジャー海賊団から独立したダグラス・バレットと交戦。互角の戦いを繰り広げるも僅かな誤差で勝利した。

 原作開始22年前、海賊王となったロジャーが処刑されることを知ると身分を隠して東の海のローグタウンに上陸、ロジャーの処刑と“大海賊時代”の幕開けを見届けた。また同年にジェルマ王国を襲撃、若い頃のヴィンスモーク・ジャッジと交戦した。

 原作開始21年前、マリンフォードにある海軍本部を一人で襲撃。完成体須佐能乎や写輪眼の幻術で操った九尾や海王類達を口寄せし、海軍全戦力相手に大暴れした。海軍本部をほぼ全壊させるがこれまでの強敵達との戦いで蓄積されたダメージやマダラを迎え撃ったガープ、センゴク、ゼファーの三人の戦いでおった傷が致命傷となり、最後は海軍の一斉攻撃を喰らい死亡する。

 後にロジャー海賊団解散後にワノ国へと帰還したおでんは柱間や錦えもん達からオロチとカイドウ、世界政府の陰謀によってワノ国から一族諸共追放され、最後は海軍と戦って死んだことを知ると酷く悲しんだという。また、柱間は痛み分けとなり逃げ勝ちとなったマダラがいつかワノ国へ帰ってくると信じて、後に一族や穏健派のうちは一族を率いておでん達とカイドウ率いる百獣海賊団に戦いを挑みこむがオロチに綱手という自分の娘を人質に取られて敗北、花の都でおでんの釜茹での刑が執行される前日にオロチとカイドウに処刑された。

 その圧倒的な強さから自分達の居住地であるマリージョアを襲撃された天竜人達からは“破壊神”と恐れられ、オロチには「もう二度と見たくない顔で赤鞘の亡霊達よりも恐ろしい」ほどの恐怖を与えている。彼に大怪我を負わされたビッグ・マムは「人の姿をした本当の怪物で俺よりも強い」とペロスペローやカタクリには「神の領域に踏み込んだ人間で思い出すだけでも恐ろしい・自分が演じている完璧主義者そのもの」と言われている。彼に殺されかけたカイドウは「本当に死を覚悟した」とシキからは「強さも頭のネジも自分よりイカれている」と思われている。“エッド・ウォーの海戦”で深傷を負わせられ、ロジャーとシキと戦うマダラを目の当たりにしたシャンクスやバギーからは「戦うことで心の穴を埋めようとしている破壊者・人間のレベルをとうに超えた怪物で四皇の比じゃない」と評している。またセンゴクやガープは「同情はしたくないが奴の憎しみもどうにかしてやりたかった・世界政府に挑む姿はかつてのロックスそのもので、復讐などしなければロックスのような破壊者にはならなかった」と嘆いていた。

 



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尾獣の設定

 

尾獣

空白の100年で滅びたある巨大な王国を守る為に生まれた魔獣達でジョイボーイの仲間達。歴史の本文ポーネグリフにも彼等の記述が残されている。空白の100年の時代の頃はまだ幼い子供を思わせる小さな姿だった。空白の100年後に王国が崩壊した後は世界政府の手から逃れる為に世界各地へと離散するが離散した地で封印される者、眠りにつく者、姿を隠して生息する者へと分かれてしまう。いつかジョイボーイが帰ってくることを信じて待ち続けている。

 五老星曰く“生きた古代兵器”でその力は暴走すれば世界も滅ぼすとされている。世界政府はその力を抑止しようと海軍やCPサイファーポールに尾獣の回収を急がせているが未だに発見に至っていない。しかし、九尾のみがうちはマダラによる事件でワノ国から解き放たれると世界中でその力を振るう。マダラの死後は青雉・グザンの“ヒエヒエの実”の能力により氷漬けにされ、世界政府によって政府直轄の島の“パンクハザード”へ封印された。

 

一尾(守鶴)

アラバスタに封印されている巨大な狸の魔獣。空白の100年後の王国崩壊後はアラバスタのネフェルタリ家が管理しており、歴代のアラバスタの王には古代兵器・プルトンの在処が記された歴史の本文ポーネグリフと共に守鶴の存在とその封印を守ることが義務づけられており、王位と共に継承される秘密でもある。NARUTOの守鶴と会見は同じく、性格も好戦的でファンキーなところも一致している。

 

二尾(又旅)

北の海ノースブルーに封印されている巨大な猫又の魔獣。NARUTOの又旅と会見は同じく、性格も獰猛だが穏やかな口調で女性的な所も同じ。

 

三尾(磯撫)

魚人島・リュウグウ王国に眠る巨大な人亀の魔獣。リュウグウ王国では魚人島を守る守護神として崇められており、魚人島が危機に陥る時に目覚めるという伝説が残されている。NARUTOの磯撫と会見は同じく、子供っぽい性格も同じ。

 

四尾(孫悟空)

火の国・キラウエア(映画 エピソードオブチョッパー+で登場したワポルの兄、ムッシュールが国外追放され幽閉された国)に封印されている巨大な赤いゴリラの魔獣。キラウエアでは国を守る守り神で“孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖”と崇められている。NARUTOの孫悟空と会見は同じく、自己主張が強い所も同じ。

 

五尾(穆王)

西の海ウエストブルーに封印されているイルカの頭部と馬の胴体を持つ巨大な魔獣。NARUTOの穆王と会見は同じで女性的で礼儀正しい性格も同じ。

 

六尾(犀犬)

東の海イーストブルー・ゴア王国のコルボ山に生息している巨大な白い蛞蝓の魔獣。コルボ山の洞窟に生息しており、コルボ山の自然を荒らす者には容赦なく攻撃する。NARUTOの犀犬と会見は同じで少し訛った口調な所も同じだが、オリジナルより攻撃的な性格。

 

七尾(重明)

南の海サウスブルーに封印されている背に巨大な角を持つカブトムシに近い巨大な虫の魔獣。NARUTOの重明と外見は同じでファンキーな性格も同じ。

 

八尾(牛鬼)

北の海ノースブルーの北極に生息している蛸足が尾である巨大な牛の魔獣。北極に住むクラーケンの兄弟と住んでおり、種族は違うものの仲は良好で二匹の為なら命をかけて守ろうとする。NARUTOの牛鬼と外見は同じで優しさと思いやり、思慮深さもあるところも同じだが、普段は海の中で生息しており水の中でも生きていけるというオリジナルにはない水陸両用生物である。

 

九尾(九喇嘛)

ワノ国に封印されている巨大な狐の魔獣で最強の尾獣。世界政府や天竜人に殺された人々の憎しみの集合体でもあり、それ故に九尾の肉体には“憎しみの声”という負のエネルギーが溢れている。この“憎しみの声”は九尾の意思で自分の肉体から負のエネルギーを放出をすることも可能で放出された負のエネルギーは凄まじく、エネルギーを吸った者は息もできなくなるほどの苦しみに襲われる。 だが、人の負の感情により生み出された存在であるため、負のエネルギーとは対を成す自然エネルギーをコントロールすることができる仙人モードを扱う者に対しては“憎しみの声”が届かない。

 かつてはジョイボーイの一番のお気に入りの尾獣だったが空白の100年の後には自身が守っていた王国を滅ぼした人間達や天竜人達が支配する世界政府に憎悪を抱く。さらに世界政府や天竜人に殺された人々の憎しみを吸収し、世界を滅ぼそうとする破壊の魔獣と化した。その後はワノ国で暴れており、自身を封印しようとした光月家が率いる侍達と忍達を圧倒し、ワノ国を壊滅寸前に追い込むが写輪眼を持つうちは一族と仙人モードが使える千手一族により封印される。しかし、封印された後も世界政府や天竜人に殺された人々の憎しみによる負の感情はさらに集まり、封印されながらも成長していった。うちは一族がワノ国から追放される時にうちらマダラが封印を解放し、写輪眼の幻術で操られる。その後、マダラに操られた状態で柱間やカイドウ、ビッグ・マム、ロジャー、シキ、ダグラス・バレット、世界政府や海軍と激闘を繰り広げた。海軍本部での戦いでマダラが死亡した後は当時、海軍のルーキーだった青雉・グザンにより氷漬けされ、“パンクハザード”にあるDr.ベガパンクの研究所にある巨大な冷凍庫へ封印された。尚、九尾がパンクハザードに封印されているのを知っているのはベガパンクや政府上層部、海軍上層部の人間だけだけであり、パンクハザードで同じ科学班のNo.2だったシーザー・クラウンは知らなかった。原作開始2年前のシーザー・クラウンによる化学兵器暴発事故の時の影響は特に受けず、1年後にシーザーがパンクハザードに戻ってきても、存在を知られずまま氷の中で封印されたままとなっている。外見はNARUTOの九喇嘛と同じで圧倒的で禍々しい存在感を放ち、凶暴性を秘めた冷徹な性格も同じだがこの世界では王国を滅ぼした人間達や天竜人達が支配する世界政府への憎悪も重なり、さらに凶暴な性格となっている。

 



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序章 四皇全てに挑んだ男
プロローグ① 神話と大海賊時代


 

昔、妖狐ありけり

 

その狐、九つの尾あり

 

その尾、一度振らば、山崩れ津波立つ

 

これに困じて、光月の者等、侍と忍の輩を集めけり。

 

光月の命を受け、うちはと千手の忍の輩、生死かけ光月の者等と一丸となりてこれを封印せしめる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──富、名声、力。かつてこの世の全てを手に入れ男──

 

“海賊王”ゴールド・ロジャー

 

──彼の死に際に放った一言は全世界の人々を海に駆り立てた──

 

「おれの財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!!! この世の全てをそこに置いてきた!!!!」

 

それは僅かに灯った火が世界中に燃え上がる激しい業火へと姿を変えた瞬間だった。

 

ロジャーの死に際に放った一言に死に万雷のごとき喝采が響き渡る。新たな時代が始まったのだ。

 

海賊が跋扈するこの時代に終わりを告げるために世界政府は他の海賊達への芽を摘むための見せしめとして“海賊王”ロジャーを処刑したはずだった。

 

しかし、ロジャーの最期の言葉により彼の公開処刑が新しい時代の開幕の式典へと一変してしまったのである。世界政府や海軍も予想だにしなかっただろう。

 

そして……このロジャーの一言により迎えたこの時代の名を人々はこう呼ぶのであった。

 

 

 

“大海賊時代“

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロジャーの処刑後、あらゆる海賊達が海へと、さらにひとつなぎの大秘宝ワンピースが眠る島であるラフテルのある“偉大なる航路”グランドラインへと漕ぎ出す中で海賊の中でも“海の皇帝”とも呼ばれる四人の大海賊がこの世には存在していた。

 

海賊の世界。そして、ロジャーと渡り合った男にしてこの世で海賊王に最も近い世界最強の海賊。

 

“白ひげ海賊団”船長──“白ひげ”エドワード・ニューゲート

 

暴れさせれば手に負えない、バランスの良い鉄壁の海賊団を率いる元ロジャー海賊団の船員。

 

“赤髪海賊団”大頭──“赤髪のシャンクス”

 

生まれついてのモンスターで血縁以外を信用せずに自身の子供達と共に“万国”トットランドというお菓子の王国を創設したワンマン女王。

 

“ビッグ・マム海賊団”船長──“ビッグ・マム”シャーロット・リンリン

 

一人で海軍及び四皇に挑み、捕まるも多くの拷問や死刑宣告に耐えられる強靭な肉体を持ち、この世の生きとし生けるものの中で最強の生物と恐れられる海賊。

 

“百獣海賊団”総督──“百獣のカイドウ”

 

“偉大なる航路”グランドラインの後半の海、通称“新世界”にてまるで“皇帝”の様に君臨する四人を人々はこう呼ぶ。

 

“四皇”と。

 

だが、かつてこの世にはその四皇全員と戦った男が存在していたーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男の名は

 

『うちはマダラ』

 



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プロローグ② 最悪の世代と激戦の聖地

光が当たるところには必ず影がある

 

勝者という概念がある以上敗者は同じくして存在する

 

平和を保ちたいとする利己的な意志が戦争を起こし愛を守るために憎しみが生まれる

 

これらは因果関係にあり切り離すことができん

  

だが勝者だけの世界。平和だけの世界。愛だけの世界。それらだけの世界を創ることができる

 

by うちはマダラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロジャー処刑後から20年余り、大海賊時代は一つの節目を迎えていた。

 

“マリンフォード頂上戦争”

 

海賊王・ロジャーの遺児であるポートガス・D・エースの公開処刑の発表より彼の身柄をめぐって、四皇・白ひげ海賊団と海軍本部&王下七武海の連合軍の間で繰り広げられた決戦は白ひげ海賊団によるエースの奪還成功と“白ひげ”エドワード・ニューゲートの死によって幕を閉じた。

 

伝説の海賊の死。

 

世間では“海軍本部の辛勝” “痛み分け”となっている。しかし、世界政府が望んでいたものとは逆の方向へと進んでいく。

 

ーーーひとつなぎの大秘宝ワンピースは実在するーーー

 

ニューゲートもロジャーと同様に死に際に告げた一言や長年、偉大なる航路後半部の海である通称“新世界”のパワーバランスの一角を担っていた四皇・白ひげ海賊団の崩壊と“白ひげ”の死は世界中で海賊達の動きが活発化し、世界情勢は不安定となった。

 

さらに戦争のさなか乱入した白ひげを裏切って全てを奪った“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチ率いる黒ひげ海賊団。私欲から白ひげ海賊団の鉄のルールを破り、仲間殺しの罪によって追われる身となっていたティーチは、かつての部下にケジメをつけに来たエースを“バナロ島の決闘”にて返り討ちにして、エースの身柄を海軍に引き渡した。これがマリンフォード頂上戦争の引き金になった。それで得た七武海の地位を踏み台にしたティーチは白ひげ海賊団の残党達との“落とし前戦争”にも勝利し、今や白ひげ亡き後の新世界の海で四皇の一人として数えられている。

 

さらに頂上戦争後に新世界へ流れ込んだ億越えのルーキー海賊達によって勢力争いが加速していく。

 

磁気を操る“ジキジキの実”の能力者にして、凶暴で好戦的な

 

ユースタス・“キャプテン”キッド

 

キッドの相棒にして、同海賊団所属の

 

“殺戮武人”キラー

 

“西の海"の元ギャングである“シロシロの実”の能力者

 

カポネ・“ギャング”ベッジ

 

年齢を操作できる能力を持つ

 

“大喰らい”ジュエリー・ボニー

 

全身を藁人形のように変身させる“ワラワラの実”の能力者である

 

“魔術師”バジル・ホーキンス

 

全身のあらゆる箇所を様々な楽器に変化させる“オトオトの実”の能力者である

 

“海鳴り”スクラッチメン・アプー

 

動物ゾオン系古代種、太古の恐竜“アロサウルス”の能力を持つ元海兵の

 

“赤旗”Xディエスドレーク

 

受けたダメージに応じてパワーアップし、巨大化する能力を持つ空島出身の

 

“怪僧”ウルージ

 

“オペオペの実”の“改造自在人間”にして一度は世界政府公認の“王下七武海“の一角にも名を連ねた

 

“死の外科医”トラファルガー・ロー

 

ーーーーそしてーーーー

 

“海軍の英雄“ガープの孫にして革命家ドラゴンの息子。さらにエースとは義兄弟であり、マリンフォード頂上戦争を引っ掻き回した“ゴムゴムの実”の能力者

 

“麦わら“モンキー・D・ルフィ

 

ルフィの最初の仲間にして、“麦わらの一味”の三刀流の剣豪である

 

“海賊狩り”のロロノア・ゾロ

 

そして、ルフィには一味の副船長を任せる青年がいた。手配書に乗る顔写真からその青年は見るもの全てを見透かすかの如く赤い眼“写輪眼”が手配書を見る者を睨むかのように写っていた。

 

これらに“黒ひげ”ティーチを含めた者達全員を世間ではこう呼ぶ。

 

“最悪の世代” と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーしかしーーーー

 

ー聖地“マリージョア“ー

 

「ハァ………ハァ………!」

 

“最悪の世代”のルーキー達は聖地での戦闘ですぐには再起不可能に近い程のダメージを受けて、ことごとく倒されていた。

 

聖地“マリージョア”

 

世界を分断する巨大な赤い壁── “赤い土の大陸”レッドラインの頂上にはこの世界を創造した“神”である天竜人が住む聖地が存在する。

 

その天竜人に従う恩恵を得た政府の役人や衛兵や天竜人達に虐げられる奴隷達がいた。

 

神は世界を支配し、下界の人々を権力で脅し、虐げ、苦しめては弄んだ。

 

天竜人には誰も逆らわない──それが鉄則の世界。

 

しかし、今日。神の住む聖地は地獄絵図と化した。

 

聖地の至るところで火の手があがり、マリージョアの中心にそびえたつ巨大な城“パンゲア城”も炎上している。天竜人や奴隷の多くが重症者となり倒れ、中には無惨にも焼け死んだ者もいた。

 

そんな中で“最悪の世代”のルーキー達はとある敵と戦っていた。しかし、その敵は想像を絶する相手だった。

 

「ぐぅ……………!」

 

「キ、キッド………」

 

「ハァ………!テメェ、よくもキラーを………!!」

 

ボニーとキラーは串刺しにされ、相棒を串刺しにされたキッドは敵の男を睨みつけるも、息切れしながらも片膝をついていた。

 

「ギャォォォォ………」

 

「くっ………!」

 

ドレークは恐竜の姿となって倒れ、その身体の下には吹き飛ばれたのかウルージが仰向けとなって倒れている。

 

「ぐぉぉ……!」

 

「ぐほっ………ゲホッ、ゲホッ!」

 

「くっ………遊んでやがる!!」

 

ホーキンスとベッジもそれぞれ、藁人形と“大頭目”ビック・ファーザー

の姿となって倒れ、アプーはまだ立てるものの、敵からのダメージで自慢の“手長族”の腕をやられていた。

 

「チィ………!次元が違いすぎる………!」

 

一度は世界政府公認の海賊“王下七武海”にも名をつらね、今では“麦わらの一味”と海賊同盟を組んでいるローも立っているのがやっという姿となっていた。

 

「ハァ………ハァ…………!」

 

「ゔっ…………!」

 

近日“五番目の海の皇帝”と呼ばれるようになった“麦わらの一味”の船長、ルフィもボロボロとなり、倒れている。隣にいる青年も膝を突きながら、両眼の写輪眼で敵を睨みつける。その片目からは血が流れていた。

 

「少しはやるようだが………お前等の力もここまでだ“最悪の世代”。最もお前等のような砂利共相手に本気を出すまでもなかったがな」

 

『!!?』

 

「何………!?」

 

「コイツ………まだ本気ですらないのか!?」

 

“最悪の世代”のルーキー達を追い込んだ男の声に皆は驚く。この敵はまだ本気すら出していなかったのだ。

 

「砂利のガキ共相手に本気でケンカする大人がいるか?そんなことより…………もう終わりか?」

 

『!!』

 

「ま、まだだ………!」

 

『?』

 

「こんな所で…………諦めるわけにはいかない!!」

 

本気ですらない敵に絶望する面々の中で写輪眼の青年は眼に未だに光を保つ。

 

「やはりその中で一番厄介なのは貴様か………だが、貴様の写輪眼如きでは俺には届かんぞ」

 

「うちは屋…………」

 

「やっとここまで来たんだ…………!ここで終わってたまるか!!例えがアンタのような亡霊が相手でもね!」

 

「………まだ踊れそうだな」

 

写輪眼の青年はフラつきながらも立ち上がり、彼の覚悟に反応するかのように彼の写輪眼は万華鏡写輪眼へと変化し、身体に紫色の須佐能乎が浮かび上がる。

 

「………シンジ」

 

「ハァ………ハァ………悪いね、船長キャプテン。アイツはボクが殺る!!」

 

「お、おい!?待て、シンジ!!」

 

「うちは屋!!」

 

ルフィとローの静止を聞かず、青年は自身の須佐能乎と共に六式の月歩で空を駆ける。そして、彼の須佐能乎が巨大化していくと天狗のような顔をした完全な人型“完成体・須佐能乎”へと変化する。

 

「いいだろう…………ならば俺も本気で答えよう。最悪の世代も七武海も四皇も海軍も世界政府も…………全ての存在が無駄になるということをな!」

 

敵も青年の覚悟に応える為に身体に須佐能乎を出現させると共に巨大化させ、“完成体・須佐能乎”へと変化させる。

 

「未来の為に!己の為に!ルフィを海賊王にする為に!アンタはここで倒す!!うちはマダラ!!」

 

「やってみろ………!!」

 

青年の須佐能乎と戦っていた敵“うちはマダラ”の須佐能乎が彼等の意思を受けとるかのように武装である大刀を鞘から抜くと“武装色の覇気”を纏わせ、大刀が黒く染まる。

 

「「ウオォォォォォォォォォ!!!」」

 

覇気を纏った二つの須佐能乎の大刀が激突する──その瞬間。

 

バリバリ、バリバリ………!!!

 

『!!?』

 

二人の“覇王色の覇気”が激突し──天が割れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー全てが想定外となっていく中でも戦いは続いていくーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーこれは革命軍副参謀総長にして麦わらの一味副船長

 

うちはシンジ

 

の物語ーー

 



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第1章 旅立ち編
1話 釜茹での刑


 

ーワノ国・花の都ー

 

「これより光月おでん並びにその家臣九名の“公開処刑”を執り行う!!!」

 

巨大な大釜には琥珀のごとく橙の茹る油が火に茹でられ、グズグズと音を鳴らす。

 

花の都にてワノ国の将軍“黒炭オロチ”に逆らった“将軍の謀反人”として、筋肉質で屈強な体格が特徴の偉丈夫、角帽のような太いモミアゲ頭の侍にして九里の大名“光月おでん”とその家臣達である“赤鞘九人男”が公開処刑が行われようとしていた。

 

「結局勝てなかったんだな。“バカ殿”でもカイドウに………」

 

「強さだけは本物だと思ってたのに………何だったんだ?あいつ……」

 

処刑を見に来た民衆が嫌味を次々に口にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光月おでん

 

ーーーー破天荒な育ちから九里の大名となり、海へと飛び出したワノ国の侍。

 

“白ひげ”エドワード・ニューゲート率いる白ひげ海賊団の2番隊隊長を経て、ライバルだったゴール・D・ロジャー率いるロジャー海賊団の一員として“海賊王”と共に最後の島“ラフテル”への旅へと同行した。

 

ロジャー海賊団解散後、ワノ国に帰国。未来のために“ワノ国の開国”を新たな目標として掲げ、新たなワノ国の将軍として国を引っ張っていく………………筈だった。

 

おでんが海へと出ている間、彼の父であり将軍だった“光月スキヤキ”が病没。亡くなる前、息子であるおでんが国に帰るまでの間、“おでんの代役”として“将軍代理”として指名したオロチが海賊“百獣のカイドウ”と結託し、国中に武器工場を建設。食うには不十分な賃金で重労働を強いるなどの悪政で国民を苦しめ始める。

 

また、外界での冒険中に出会った妻の“光月トキ”が長年の航海による疲弊などから体調を崩し、一度おでんがワノ国に帰国した際にロジャー海賊団の船を下りた後にオロチが光月の血を断絶させるために息子である“光月モモの助”の命を狙って襲撃をかけさせたのだが失敗に終わる。しかし、モモの助を庇ったトキが脚に大怪我を負ってしまう。

 

さらにおでんを支えるべく、自身についてくるべく自分達の集落を自身の城がある九里へと移した“うちは一族”の長であった“うちはマダラ”がオロチにより「うちは一族がワノ国に謀反を起こそうとしている」と捏造。また共に自分を支えるべくマダラの親友にして、最大の友である“千手一族”の長である“千手柱間”やおでんの家臣達が庇うも最終的にうちは一族はワノ国から追放されることが決定的となってしまう。これに怒り、ワノ国に絶望した彼は分裂した一族のタカ派のリーダーとなり、マダラは復讐者としての人生を歩むことを決めてしまう。柱間達がそれを制止するが復讐へと走るマダラは説得に応じず、無理にでもマダラを止めようとする柱間ととうとう九里の浜辺にて本気の死闘を繰り広げる。その際にマダラは復讐の為に大昔にワノ国で大暴れし、光月家の命を受けた大昔のうちは一族と千手一族に封印されていた九尾を封印から解放し、口寄せして戦わせていたのだった。

勝負は柱間の勝利となったが一瞬の隙をついてマダラは逃亡。その後、オロチや彼と手を組んでいたカイドウ率いる百獣海賊団にたった一人で勝負を挑み込み、彼等を圧倒的な強さでねじ伏せて、ワノ国を後にしたという悲惨なものだった。

 

それらを知り激怒したおでんは単身で花の都のオロチの下へ乗り込み、問答無用で斬りかかかるも傍にいた黒炭家の家臣達“黒炭ひぐらし“と“黒炭せみ丸”により阻まれる。

 

オロチは黒炭ひぐらしの能力である“マネマネの実“を明かし、策略を使って将軍の座を簒奪した事を告げる。さらにカイドウへの貢物として誘拐された数百人の民やオロチやカイドウに逆らった“穏健派のうちは一族”と“千手一族”の者達の姿を見せられたおでんはその場に居合わせたカイドウに怒り、刃を向けるも人質となった民の手前からオロチに制されしまう。そして、オロチと“取引”を持ちかけた…………。

 

そして、その数時間後

 

─光月おでんは 将軍オロチの城の前で裸になりおどけていた──

 

その後もおでんは週に一度都に現れ、国民の前で裸踊りを続けては僅かな賃金を得る生活を過ごすようになる。

 

オロチによる悪政を打破する希望として期待を寄せていたおでんのこの振る舞いから期待を裏切られた人々は失望し、その評判は“バカ殿“として罵るようになった。

 

それから5年後、ロジャー処刑による“大海賊時代”の開幕や林檎にて後に世界政府公認の海賊“王下七武海”として名を連ねることになる“ゲッコー・モリア”率いるゲッコー海賊団とカイドウ率いる百獣海賊団の戦争などの大事件が起こる中でも裸踊りを続けたおでんだったがオロチにとある約束を反故にされた上、自身に変わらず接してくれていたワノ国の侠客であるヤクザの大親分“花のヒョウ五郎”達が捕縛され、その際に彼の妻や子分達が殺されたことを知る。 さらにオロチからワノ国を追放されたマダラが世界政府に挑み、海軍との戦いで死亡したことも知らされ、おでんは余りにも酷い最後だったマダラを想い、涙を流した。

 

これに5年間溜め込んでいた感情が爆発し、堪忍袋の緒が切れたおでんは遂に家臣達と共にカイドウの討伐を決意。だが何処から情報が漏れたのか、兎丼の森にてカイドウと百獣海賊団が待ち構えているという一行は想定外の数をたった10人で相手することになる。兎丼の森にてとうとう百獣海賊団との戦いは幕を開けてしまう。

 

途中、カイドウの討伐を決意したおでんを援護すべく柱間率いる千手一族とマダラを失った穏健派のうちは一族の忍者軍団が味方したこともあり、戦いは拮抗する。おでん達は遂には柱間の“木遁忍術”で動きを止めることで“地上最強の生物”と恐れられるカイドウの腹に傷を負わせるなど奮戦するも最終的には柱間と共に敗北。家臣共々投獄され、大衆の面前で“釜茹での刑”に処されることになるーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、今日に至る。

 

「チャンスが欲しい!!おれは生きねばならない」

 

処刑を待つおでんが彼等の処刑を面白げに眺めているオロチとカイドウに口を開く。

 

その言葉にオロチの部下の役人が「命乞いをするな」と棒でせっつくが大釜へ足を滑らせてしまう。

 

「ブェヤアアォアァ!!!!助けで!!助け……!!」

 

助けを求めるもそれに応える者は誰一人とおらず、やっとの思いで大釜から這い出るも断末魔の叫びをあげながらも地面から崩れ落ちる。それを遠巻きに見ていた者達は唖然とする。

 

「10人全員で釜に入る。もしお前たちの決めた時間耐えきった者がいたら解放してくれ!!!」

 

それを他所におでんはカイドウたオロチに罪人とは考えられないと堂々とした命乞いをしたのだ。すぐに終わる公開処刑にも関わず、おでんは助命を乞うた。

 

それを聞いた家臣達だけではなく、カイドウも驚く。一方のオロチは「一瞬で終わる処刑だ」と嘲るがカイドウは部下に時計を持ってこいと命令する。

 

「1時間だ!ウォロロロロ!!耐えてみろ!風呂でものぼせる時間だ!!」

 

おでんからの嘆願に対し、カイドウはこのように告げる。さらにおでんから「二言はないな?」と確認すると、カイドウはそれに「勿論」と回答する。

 

このやりとりを聞いていた者達は当然「往生際が悪い」と口々に零す。

 

だがそんな声にも聞く耳を持たず、おでんは遂に大釜の中にその身を落とす。

 

ジュアアア!!!

 

「ウォアアア〜〜〜〜!!!」

 

油煮えたぎる釜のあまりの熱さにさすがのおでんも叫び声をあげる。そこへ共に処刑される家臣達が「主君を1人にするな」「あの世で会おうぞお前達!!!」と後に続く。

 

「そのまま橋板に乗ってろお前ら!!!」

 

『!!?』

 

だが、覚悟を決めた家臣におでんは橋板に乗れと命令する。なんとおでんは、そのまま家臣達9人が乗った橋板ごと両手と角帽モミアゲで担いたのである。

 

その行動に家臣達は「やめてくさだい!!」「立場が逆だ!!」「代わってくれ!!」と訴えるがおでんは「黙って乗ってろ!」と命令する。

 

「何だありゃあ!?油に浸かってねぇじゃねぇか!」

 

「ウォロロロロロロ!確かに10人釜に入ってやがる!くるしうねぇぞ!おでん!」

 

このおでんの行動に一切油に浸かっていないことを不服に思うオロチに屁理屈ながらも確かに10人釜に入っていることに酒を飲みながら笑うカイドウ。

 

民衆は信じられない表情で見つめてどよめくもすぐに終わる筈だったおでん達が釜に入ってから4分が経つと耐え続けるおでんを前に「つまらない」と徐々にしらけはじめる。

 

「先を急ぐんだよなー“バカ殿”にこれ以上つきあえねェな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰がバカ殿だ!!!もう一度言ったら殺してやる!!!」

 

とうとうこの言葉に怒りの限界を抑えられなくなり、民衆の1人を押し倒しては刀を突きつけて大声を上げる女がいた。

 

その者の名は“しのぶ”。

 

元々ワノ国の将軍お抱えの公儀隠密“お庭番衆”の忍者であるくノ一だったが、いつかおでんに仕えることを夢見ていた為オロチに寝返った“お庭番衆”を見限り、抜け忍となりながらもおでん一行とカイドウ達の兎丼の森での戦いで、柱間が率いた忍者軍団と共におでん一行側に付いて戦った。おでん達が投獄される際にはおでんに庇われたことで自身は捕まらずにいたのである。

 

「バカはお前たちだ!!!誰のお陰であんた達が今平和に生きてられてると思う!!?ここでおでん様を失ったらみんな思い知ることになる!!どれ程の不幸が食い止められていたか!!!」

 

乱入したしのぶにより、5年前のおでんとオロチとの取引の内容と真実が語られる。

 

オロチは“将軍”でも“独裁者”でもない。人の上に立ちたいわけでもない。

 

「おれが“将軍”の座についたのは!!この国を滅ぼすためだ!!復讐するためだ!!!」

 

まだおでんが生まれる前、オロチの祖父は将軍の座を狙うべく“大名殺し”の罪を犯し、切腹させられていた。領地は没収、お家は転落。そこまではオロチも黒炭家の罪には納得していた。

 

だが、処刑されたのは当時の黒炭家の当主であり、親族は皆生き残っていた。その親族まで“大名殺しの血族”という理由で暴走した正義の使者という名のワノ国の民衆達に迫害を受け、殺されていたのである。オロチ自身も暴走したワノ国の人々が恐くて夜も眠れなかったほどである。

 

「罪を犯した張本人はとうに死んでんのによ!!“黒炭”の名がつけばガキでも罪人になるらしい!!だからワノ国の奴等は全員、復讐されて然るべきなんだ!!お前等の身から出たサビだ!!!」

 

そして、奥の部屋から出された物はカイドウの貢ぎとして誘拐されたあの数百人の民やオロチやカイドウに逆らった“うちは一族”と“千手一族”の者達の姿だった。

 

売るか遊ぶか殺すか。彼等が引き渡されたら最後およそ人間の生活は送れない。

 

一度はおでんも激怒、カイドウへと立ち向かうがオロチがある提案をしていた。それがあの取引である。

 

オロチは元より“ワノ国”に興味すらない“復讐者”。仮にカイドウやオロチに勝ったとしても大きなものを失うのは明らかだった。

 

オロチから出された提案。それは「毎週定時刻に“黒炭家”への謝罪の“裸踊り”をすれば一回踊る度に100人の命を開放する」という内容だった。

 

この提案を、おでんは呑んでいた。自分自身はあらゆるものを失うが一回踊るたびに100人の命を救えるからだった。

 

さらにおでんがオロチのこの提案をのんだのは当時造船中であった船が完成したら5年後にワノ国を出国するという約束を信じたからだったからである。さらにその後もで裸踊りを続けながらも毎週各郷をめぐり変わりはないかと確認までしていた。 

 

「おでん様はずっとこの国を守り続けてたんだ!!!誰がバカ殿だ!?言ってみろ!!!」

 

『!!!』

 

おでんが裸踊りをしていた真相をしのぶから聞かされた民衆は困惑し、感情が追いつかず動揺を隠せないでいた。

 

そこへ、かつてはしのぶもいた“お庭番衆”の隊長である頭部と福耳が長い僧形姿のサングラスの男“福ロクジュ”は即座に彼女を捕まえて「“真実'”など混乱を招くだけ」「将軍に逆らった“バカ殿”が死ぬ」「それで皆理解し刑はやがて終わる」と口ずさむ。

 

「お前も………覚悟の上で喋ったんだろうな」

 

「わたすはもう! 彼等と生死を共にした! おでん様の家臣だ! お前には従わない! 彼等にもしものことがあれば“光月”や“うちは”“千手”と共に死ぬ覚悟!!いいや……全員生きて、次こそはあんた達を討つ!!」

 

元々覚悟を決めていたしのぶのこの言葉に対して福ロクジュは「夢だ」と嘲笑う。

 

真相を知った多くの民衆がおでん達の処刑取りやめを嘆願し、口々に叫ぶ。だがそれは届かない。

 

叫んでいた者に矢が打たれる。気がつけば民衆を囲むようにカイドウやオロチの部下が武器を手に集っていた。民衆は一瞬にして“復讐者”の怖さを理解した。もはや今目にしている“長引いている処刑”こそが今ワノ国で唯一の希望となっていた。さらにこの5年間でのおでんの奇行の真実は瞬く間にワノ国中へと伝わっていく。

 

おでんにかけられていた罵声はやがて声援へと変わる。非難の言葉から一変、励ましや謝罪へと変わっていく。だが叫ぶ民衆達に対しておでんが担いでいる橋板の上にいる家臣達は「何を今更………!」「調子いい奴ら」と声援が嫌味にも聞こえていい気分ではなかった。家臣達は「気にとめるな」と言おうとしたがおでんは素直に民衆からの声援に対して馬鹿正直に礼を言った。

 

「……お前達!!もしこの釜茹でをしのいだら、おれはこの国を“開国”したいんだ……!!」

 

『……!!?』

 

そんな中、おでんは体勢を維持しつつも突如として自分の想いを叫び出す。

 

「大昔………この国を海外からは閉ざしたのは“光月家”だった!!それは“巨大な力”からワノ国を守る為……!!」

 

白ひげやロジャーとの冒険で得たもの。それは世界政府が調査するのを禁止している“空白の100年”についてだった。

 

ワノ国、いや世界はある人物を待っている。その者が800年後に現れた時に迎え入れ協力できる強力な国でなくてはいけないとおでんは語る。

 

「はっきり言うぞ。あいつらは今日………必ずおれを殺す。だから………頼む、お前達!!おれの代わりに“ワノ国“を“開国”して欲しい!!」

 

おでんからの頼み。それはワノ国は800年の時を超えて現れるある人物を迎え入れる為にそれまでは開国させたい。

 

ここで殺されることを確信しているおでんはここでお役御免。その願いは次世代の者に任せることにする。今は自分ができることはここで最期まで抵抗し、自分の意思を継ぐ者達を生かすことだった。

 

その頼みに家臣達は答える。あんたの夢なら自分達の夢だと。その言葉に「よく言った!!」と笑みを浮かべる。

 

そして処刑開始から30分が経過。炎の勢いは更に凄まじくなるがおでんは死なない。オロチは「もっと温度を上げろ!」と焦り始める。

 

やがて10分、5分、1分、30秒、10秒と時間は過ぎていく。そして時計の針が丁度ーーー

 

カチッ!

 

ーーー1時間を切った音を立てた。

 

「やったぁ〜〜〜!!!」

 

「奇跡が起きたぁぁ!」

 

「おでん様が釜茹でに耐え抜いた!!!」

 

民衆は大歓声をあげる。内容はそれぞれだが、1時間の釜茹でを耐え抜いたことは驚愕という事実に変わりない。そしておでんは生き延びた。皆がそう思った筈だった。

 

しかしーー

 

カチャ!!!

 

銃を構える役人と百獣海賊団の船員。大釜の周りを囲み、逃がさまいとおでんと家臣達に銃口を向ける。それを見た民衆達の背筋が凍りつく。

 

「ムハハ……!!“銃殺の刑”に変えることを、1分前に思いついた。さらに一家皆殺し!生き残っているうちはと千手も一族全員皆殺しだ!!」

 

『!!?』

 

口を大きく開きオロチは笑い叫ぶ。屁理屈にも程がある戯言だった。民衆は「約束が違う」と抗議するがカイドウの部下達が狙撃する。

 

「頼んだぞ、お前ら……!!“ワノ国”を開国せよ!!!」

 

混乱が生じていることいち早く察知したおでんは叫び上に乗る家臣達を手にしていた橋板もろとも放り投げる。そして、ただ一つの願いである自分の夢を、想いを口にする。

 

「走れェ!」

 

「九里へ!」

 

「振り返るな!」

 

放り投げられ宙に浮いた家臣達“赤鞘九人男”は地面に着地するや否や一斉に走り出す。そのリーダーである“錦えもん”が仲間達へ叫ぶ。さらに福ロクジュの拘束を解いたしのぶも逃げ出す。それをカイドウの部下達が「全員、撃ち殺せ!」「“光月”の名を抹消しろ!!」と走る者達へ銃を撃ちながら、追いかける。

 

家臣達は走る。皆それぞれ、おでんとの思い出を振り返りながらおでんの家族がいる九里の“おでん城”へと。しかし、主君を置いて。だが、これはおでんからの最期の命令でもある。できれば逆らいたかった。だが、ここで誰か一人でもおでんと運命を共にしたら、おでんの決死の覚悟も無駄になる。おでんの夢を叶える為にもここからいち早く逃げなければいけなかったのだ。

 

「ウォロロ……!!上手くやりやがったな……だがどの道、お前の体はもう死んでる筈。せめてもの“情け”だ。おれが撃ってやる。“光月”の時代はここで終わりだな!!全員が死ぬ………!!」

 

「………ウチの侍達をナメンじゃねえぞ!!だがおれの魂は生き続ける!!」

 

自分の家臣達を逃したおでんに対して、カイドウは懐から銃を取り出す。おでんもまた何かを確信し、信じ切っている様子でカイドウをギロリと睨んで笑う。

 

「見事な死に様と、お前は語り継がれる。それとババアの件は悪かったな。殺しておいた」 

 

「真面目だな…せいぜい強くなれ。それと一つ、一つ質問がある」

 

「?」

 

「柱間は………どうした?」

 

「奴か………!!昨日、処刑しておいた」

 

「そうか………!!(柱間………)」

 

「最後までマダラのことを気にかけていたぞ。必ずあいつが帰ってくると」

 

「…………………」

 

「………まだ何か言い残すことは?」

 

「いいや、おれは………」

 

カイドウに銃を向けられても未だに笑うおでん。ボロボロになりながらも希望に染まった強い光を灯した瞳をしていた。もうすぐ死ぬことがわかっていても彼は最後まで抵抗する。

 

「“一献の”」

 

「“酒のお伽きになればよし”」

 

「“煮えて“」

 

「“なんぼのォ〜”」

 

(俺の侍達………!!トキ、モモの助、日和………!!行って参るぞ!!そして…………マダラ、柱間よ!今、そちらへ向かうぞ!!)

 

自身の処刑を見届けている者達の中でおでんは最期の言葉を残す。

 

パァァァン!!!

 

ここでカイドウがおでんが言い終わらぬうちに銃の照準をあわせ、引き金を引いた。銃弾がおでんの頭に風穴を開け、おでんの身体は大釜の中に沈んでいく…………。

 

そこへワノ国の国民達が深く息を吸い込み、彼に代わって叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『“おでんに候”!!!!』

 

民達は皆、泣きながら叫ぶ。だが油の中に沈んだおでんの口元は未だに微笑んでいた…………。

 

ここにワノ国最強の侍“光月おでん”は笑みを浮かべ息を引きとった。

 

ーーここに一つの伝説が幕を下ろし次なる舞台の主役達へと受け継がれることになるーー

 

べべんっ!!!

 



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2話 それぞれの旅立ち

「光月の血筋を殺せ!」

 

「皆殺しだァ!!」

 

「うちはと千手もだ!!奴らの血筋も滅ぼせ!!」

 

九里へと向かう中、しのぶから武器を渡された錦えもん達はカイドウやオロチの部下の攻撃から死にもの狂いで逃げていた。

 

道中、何やら言い争いをする“イヌアラシ”と“ネコマムシ”が巨大な敵に捕まり、あまりに追手の多さに“傅ジロー”と“アシュラ童子”は殿役を買って出るなど赤鞘九人男は徐々に人数を減らしていた。

 

だが、それでも彼等は走る。自分達の主君であるおでんの家族達がいる九里のおでん城へ。

 

しかし、それでも敵は多い。

 

「ぎゃっはっは〜!!逃げられると思うなよ!」

 

「もう既にバカ殿の城にはカイドウ様がついてる筈さ!!おでんの家族もこれで終わりだァ!!」

 

「貴様等………!!!」

 

下品な笑い声で迫る追手達に錦えもんの目が彼等を睨む。

 

「ここでお前等も終わりだ!死ねェ!!」

 

「「「土遁・土流壁!!!」」」

 

『!!?』

 

カイドウとオロチの手下達が向けている銃が火を吹くも、その弾丸は突如、地面から現れた土の壁に防がれる。

 

「錦様!!!」

 

「ここは我等にお任せを!!」

 

そこへ数名の忍が土の壁へと立ち、錦えもん達を守る為に追手に立ち塞がる。それはうちは一族と千手一族の生き残りの忍だった。

 

「お主達………!!ここで何をしている!?綱手様はどうしたのだ!?」

 

「拙者達に構わないでください!早く綱手様の元へ!」

 

殿として残る忍達を振り返った錦えもんと“菊の丞”が叫ぶ。おでん処刑後、うちは一族も千手一族も皆殺しの対象となっており、彼等は千手柱間の娘である綱手を守る為に彼女の元へと向かった筈だった。

 

「ご安心を!!綱手様はもう安全なところです!」

 

「それにここで貴方方が死ねば、おでん様や柱間様の想いも無駄となります!!」

 

「ここは我等が殿を務めていただく!!さあ、早くおでん城へ!」

 

「うちはと千手の忍共か………へへへ!!奴等を討ち取りゃ、俺達も大手柄だ!!!」

 

「奴等も皆殺しの対象だ!やっちまえ!!」

 

『ウオオオ~~~~!!!』

 

殺しの対象が増えたことにカイドウとオロチの部下達はいきりたつ。荒くれ者達の号砲が迫ってくる。

 

「ここは通さんぞ!!カイドウとオロチの犬共め!火遁・火龍炎弾!!」

 

「柱間様の仇だ!!水遁・水龍弾の術!!」

 

「モモの助様を頼んだぞ!!風遁・大突破!!」

 

『ギャアアアア!!!』

 

「…………皆、すまぬ!!走れ!!(柱間殿……!!)」

 

殿の忍達は印を組み、皆それぞれ忍術を繰り出しては追手達へと立ち向かう。圧倒してるようにも見えるが兵力が違う。いかにワノ国の名門である忍の一族でもいつかは限界がくる筈だ。そんな彼等に背を向けて錦えもん達は再び走り出しては涙を流す。その脳裏にはマダラ亡き後、忍達のリーダー格だった柱間の顔が浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがーーーー

 

「く、くそ…………!」

 

「カイドウめ………!!」

 

「ウォロロロ………!!手ェ煩わせやがって…………!だが、お前らの力もここまでだ」

 

『………!!!』

 

ーーーー赤鞘の努力も虚しく、九里のおでん城は燃えた。カイドウの部下達が火を放つ。さらにカイドウ達に立ち向かったのがおでん城の周囲には多くのうちは一族や千手一族の忍達が倒れ、龍の姿となったカイドウが彼等を見下していた。カイドウが食べた悪魔の実、ウオウオの実(幻獣種)モデル“青龍”の力である。

 

カイドウへ投げたのか多くの手裏剣やクナイがおでん城周囲が散らばっている。その中を人の姿へと戻ったカイドウは城の中の多くの侍達を殺し、おでん城のとある場所へと向かう。目指すは光月の生き残りの所へ。

 

「母上〜〜〜!!」

 

「………お前の名は?」

 

「……ハァ……おぇ……!!ハァ……ハァ……!!」

 

「お前の父は……バカ殿だ」

 

最後に立ちはだかった妻トキを跳ね除け、おでんの息子であるモモの助を追い詰めたカイドウは彼を捕まえては掴み上げる。

 

「光月はお前が死んで終わりだな」

 

「ちがう……!! ひっく……!!」

 

おでんの息子にカイドウは興味があった。自分自身に傷を負わせたあのおでんの息子に。

 

「父上は……!!偉大な武士で…………せ、拙者は……ひっく……いつかこの国を!!しょって立つをとくぉでぃぐじゃる!!」

 

だが、それはすぐに失望へと変わる。おでんの息子である光月モモの助はカイドウの迫力に怯え、ただ泣き散らすただの子供だったからである。

 

「言わされた夢…………ここまで幼いとは…………!!」

 

「う……うわああああん!!父上ェ~~~~!!!」

 

「あれがおでんの息子とは…………城と共に燃えて死ね…………」

 

とてもあのおでんの息子とは思えないほどの器にカイドウはモモの助を殺すこともせずに燃える城の中へと投げ捨てた後、龍の姿へと変えた後にそう呟く。興味を失った彼は自らの拠点である“鬼ヶ島”へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モモの助様!!日和様!!トキ様〜〜!!」

 

赤鞘の侍達が燃えるおでん城へと辿り着いたのはその直後だった。辿り着いた赤鞘の侍達はようやくおでんの家族達と再会を果たすのであった。

 

「申し訳ございません!!我々がついていながら………!!」

 

「トキ様!ここは危険です!!城を出ましょう!!」

 

「トキ様!我々が命ある限り、お守り致します!!」

 

「トキ様!!」

 

「いいえ………私はここに留まります」

 

『え!!?』

 

錦えもん、そして“雷ぞう““カン十郎”“河松”から逃げることを勧められるも、トキはそれを断る。そして、錦えもん達へこう告げる。

 

「皆………お逃げなさい、未来へ」

 

「未来へ!?」

 

「人は決して過去には戻れないけれど、未来なら行けるのよ……」

 

トキは家臣達にそう言うと、モモの助を錦えもんへと預ける。それに何かを察したのかモモの助が泣き騒ぎ始める。

 

「………嫌でござる!!拙者は母上と一緒に残ります!!母上、やめてください!!母上〜〜〜!!」

 

モモの助の必死の抗議だがトキは涙を流しながらも笑顔で能力を行使する。

 

今から800年前に生まれた光月トキこと天月トキの悪魔の実、トキトキの実。その能力は自分や他者を未来へ飛ばすこと。

 

彼女のその力によって、この時代から五名の侍達が20年後のワノ国へと飛ばれされていった。

 

“光月モモの助”

 

“錦えもん”

 

“カン十郎”

 

“雷ぞう”

 

“菊の丞”

 

ーー未来へ飛ばされた者ーー

 

その後、トキは娘の日和を残された河松へと託す。河松は日和と川へ飛び込み脱出した。そして、トキ自身は燃え盛る城から出るとワノ国の人々に対してある言葉を残す。

 

月は夜明けを知らぬ君。叶わばその一念は

 

二十年はたとせを編む月夜に九つの影を落とし

 

まばゆき夜明けを知る君と成る

 

やがてトキもカイドウの部下達からの銃撃によりその命を落とす。これが光月おでんの妻、光月トキの最期の夜となるのであった。

 

「終わりだ………。光月家を……!おでん様を、そしてマダラとうちは一族を信じ抜けなかった我々に天罰が下るのさ。開けることのない永遠の夜が始まるんだ」

 

燃えるおでん城を見つける人々はそう呟く。自分達が信じきれなかった後悔だけが彼等の心の中では渦巻いていた。

 

ワノ国に夜が訪れる。永遠に開けない夜が。ワノ国でのカイドウとオロチの支配が決定的となった瞬間でもあった。

 

だが、残された者たちもまた動き始める。

 

「………二十年はたとせとは……トキ様……。あいつ等生きてんのか……?」

 

ーー戦い生き延びた者ーー

 

「姫!!カッパ踊りでござい〜〜♪」

 

「……………」

 

ーー唯一の生き残りを託された者ーー

 

「ウオオオオ〜〜〜!!!ウオォオオ〜〜!!ウゥ……!!」

 

ーー主君を失った悲しみと怒りへ囚われる者ーー

 

赤鞘の侍達は皆、それぞれの道へと旅立ち始める。目指すは亡き主君、光月おでんの夢。

 

ワノ国への開国へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…………旅立ったのは彼等だけではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー九里ーー

 

「二人を逃すなァ!!」

 

「抹殺しろ!!」

 

「ハァ………ハァ…………」

 

おでん城が燃えている頃、九里のとある森の中でもカイドウの部下達から逃げるうちはの兄弟の姿があった。

 

「急げ!!」

 

「兄上………!」

 

二人の兄弟は九里の森の木の枝から枝へと飛び越えながら追手から逃げる。

 

「おい待てよ、ガキ共!!」

 

「逃げられると思うな!!」

 

そこへ、カイドウの部下達がジャンプして彼等に斬りかかろうとする。

 

「一旦、止めるぞ!豪火球だ!!」

 

「うん!」

 

二人は振り返るな否や、巳・未・申・亥・午・寅……と印を結んでいく。そして二人は背を逸らし、空気を吸い込む動作をとると顔を突出させ、口から特大の炎の球が吹き出され、カイドウとオロチの部下達へと直撃する。

 

「「火遁・豪火球の術!!!」」

 

「「ぎゃぁあああっ!!」

 

「行くぞ!」

 

「はい!!」

 

カイドウの部下達を退けた兄弟は再び、木の枝から枝へと飛び移りながらも移動を開始する。二人の写輪眼の瞳をしっかりとそこを捉える。目指すは“九里ヶ浜”へ。

 

「に、逃すかよ……!!」

 

パアァァン!!

 

「ぐっ………!!足が…!?」

 

「しまった………!!まだ意識があったのか!!」

 

「へへへ………!!」

 

先程、豪火球を喰らったカイドウの部下がしぶとくも弟の足を銃で撃ち抜く。撃たれた弟を見て兄はしてやったりと笑うカイドウの部下を不覚をとったと思いながらも睨みつけた。

 

「くそっ………!!肩を貸せ!急ぐぞ!!」

 

「あ、兄上………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー九里ヶ浜ーー

 

「見つけたぞ!!」

 

「二人を殺せ!」

 

「くそっ!!もう追手が………!!」

 

「おまけにあの数じゃ……!!折角、小舟一隻見つけたのに!!」

 

足を負傷した弟を背負ってようやく九里ヶ浜へと到着し、うまい具合に小舟一隻も見つかり、後は海へ出るだけだった。だが、二人はまだ来る追手に再び見つかってしまう。しかも、その数は100名近くはいる。

 

「一人は足を撃たれてんだ!!そいつはもう碌に動くことは出来ねぇはずだ!」

 

「ぎゃははは!!袋のネズミだァ!!」

 

「く、くそ……!!」

 

「くっ………!!(まだ、こんなに追手がいる!!あの数相手じゃ、負傷したコイツを連れて逃げるのはもう無理か………!!それならば………!!)」

 

迫り来る追手に対し、二人の兄弟は追い詰められる。小舟に乗り込み、負傷した弟は迫り来る敵やその数を見て、歯を食いしばる。それを見た兄は心の中であることを決めた。

 

「死ねェ!!」

 

「くたばれ!!」

 

「(もう考えている時間はない……!!)うちは火炎陣!!」

 

追手達は持っている矢や銃、剣などで兄弟達の命を狙う。だが、兄の方が印を組むと地面に手をつける。

 

ゴゴォォォォォォォ……!!

 

『熱ちゃァァァァッッ!!!』

 

「何だこりゃ!?炎の壁か!?」

 

「これじゃ入れねェ!!」

 

地面から炎の壁という名の結界が二人の兄弟を守るように囲み、二人を狙って迫ってきた追手の数名はその炎で焼かれる。

 

「…………すまないなシンジ・・・。どうやら俺がお前と一緒にいられるのはここまでみたいだ」

 

「え…………?」

 

「シンジ!お前だけでも海へ出ろ!!」

 

「え!?」

 

追手から自分達を守る為に結界忍術を張った兄からの言葉に弟………うちはシンジは驚愕する。

 

「やだよ!兄上も一緒に、海へ!」

 

「それはダメだ!この数相手じゃ、二人は厳しい!誰かがここに残って足止めするしかない!!お前は生きろ、シンジ!!」

 

「兄上……!!」

 

シンジは兄を止めようとするが既に多勢に無勢。ここで仮に出航できたとしても、あの数が相手ではいずれは蜂の巣となるのが見えている。兄はそれを分かっており、自ら殿として残ることで弟を逃がそうとしていたのだ。

 

「それに………ただお前とここで別れるのも癪だからな。実はお前に渡しておきたいものがあるんだ」

 

「………?」

 

「お前に…………俺の眼をわたしておくよ」

 

「……!!?兄上、一体何を!?」

 

兄の言っていることが理解できないシンジだが、その意味はすぐにわかることになる。なんと兄は両眼の瞳を自ら取るとそれを一本の巻物に入れるとそれをシンジの両手に渡す。

 

「昔、父上から聞いたことがあるだろ………?うちはに伝わる伝説………強力な瞳力から万華鏡がその光を失う時、他者の万華鏡を移植することで、その瞳力は永遠の物になると」

 

「…………………」

 

「俺の眼はお前に託すよ………いつか俺の眼が役に立つ時が来る筈だ」

 

「それでもやだよ!自分も共に戦うよ!それに海には誰もいないよ!」

 

「生きるんだ!シンジ!!海は広いんだ!いつか必ず!!お前と共に戦ってくれる”仲間”が現れる!!」

 

「…………仲間?」

 

「そうさ!おでん様と同じさ………!元々、一人だったあの人だってこのワノ国のならず者達をまとめ上げただけじゃないか!!そして、外界へ出ても多くの仲間達を得たはずさ!」

 

そして、瞳を閉じたまま兄は笑顔でこう語る。

 

「この世の中で決して一人ということは絶対にあり得ない!!」

 

「…………!!」

 

「さあ、行くんだ!!シンジ!うちはを………ワノ国をおでん様の侍達とモモの助様と共に救ってくれ!!(水遁・爆水衝波!!)」

 

「う、うわわわぁぁっ!!?」

 

兄はそう言うと、印を組むと強力な水遁の術を口から放つ。放たれた大量の水は巨大な波となる形でシンジが乗る小舟を浜辺から海へと押し流す。さらにその水は二人を囲んでいた炎の結界忍術を消火させた。

 

「ゴホッ!ゴホッ……!!あ………兄上ーーーーーっ!!!兄上ーーーーーっ!!!!」

 

シンジは自分を逃した兄に涙を流しながらも大声で叫ぶも小舟はどんどんワノ国から離れていく。

 

「へへへ………!!やってくれるじゃねぇか……!!」

 

「ん?何だ、コイツ?目を閉じているぞ?」

 

「俺の弟の船出だ………よしなに頼むよ」

 

炎の結界が消えたことでカイドウの部下達は兄へと迫る。それに対して兄は目を閉じたまま、笑みを浮かべながらもクナイを構える。

 

「チッ………!一人は逃したか………だが足を怪我した負傷者!あのまま、放って置いてもいずれはどうせ犬死だ!!」

 

「ハハハ!!死んだな、アイツ!!」

 

「フッ………!そいつはどうかな…………?」

 

「ぎゃっはっはっは!!!今更、お前一人で何ができる!!もうその目は開かけねェのか?目を閉じたままで勝てると思ってんのか!?」

 

「お前、一応名を聞いておこうか!!何モンだ!?」

 

「俺の名か…………俺の名は“うちはシスイ”!!弟“うちはシンジ”の兄にて、別名“瞬身のシスイ”だ!!」

 

シンジを逃した兄…………うちはシスイはカイドウの部下達を前にしてそう名乗る。

 

「がはは……そうか、そうか。だがなぁ………もうこの国には金輪際、うちはも千手の名も通用しねぇんだよ!!おい野郎共、やっちまえ!!!」

 

『ウオオオ~~~~!!!』

 

「俺の弟の船出は誰も邪魔させないぞ!!行くぞ!!(瞬身の術!!)」

 

遂にカイドウ部下達がシスイへと襲いかかる。それにシスイはお得意の“瞬身の術”で迎え撃つ。

 

「(さらばだ、シンジ。俺はお前の兄として、ほとんど何もしてやれなかった。だが、もしかしたらお前はあのマダラ以上の忍になれるかもな…………)」

 

例え、勝てなくてもいい。弟、シンジを逃すためならば。別れた弟に対してそんなことを思いながら、シスイは敵の中へと突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、兄上………!」

 

兄のシスイがカイドウの部下達へ突っ込んでいた直後、その群衆からは多くの血飛沫が舞っていくのがシンジの写輪眼へと映る。だが、それは徐々に少なくなっていく。やがてカイドウの部下達が何かを囲むようにして、何かを斬りつけるのを確認するとその刹那、その周辺に血飛沫が飛び散った。

 

「あ……………!!兄上〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」

 

それを見たシンジは兄が死んだと確信したのか、涙を流しながら絶叫するほど泣く。

 

その時、その瞬間――シンジの両眼の写輪眼が万華鏡写輪眼と覚醒する。だが、兄の死で動揺して気が動転している彼はそのことには気づかない。そんな中でもシンジを乗せた小舟はワノ国から離れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここに今、光月おでんの意思を受け継ぐ赤鞘の侍達とは別に一人の忍者が旅立つ。これが“うちはシンジ”のワノ国を奪還する為の冒険の始まりとなった…………。

 



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3話 モンキー・D・ドラゴン

長く更新を止めてしまってすみませんでした!!また少しずつですが更新していきます!!あとFILM RED観てきました!!


 

ーーワノ国・近海ーー

 

常に嵐が起きそうな悪天候。多くの岩礁と渦潮が渦巻いているこの海の最後に待ち構えるのは淡水が流れる巨大な滝。その断崖絶壁に流れる滝を登った先に“ワノ国”は聳え立っている。近海の波は荒れ潮の流れも速いことや最後に待ち構える滝を登らなければならないため、ワノ国への入国は困難となっている。

 

座礁したのか船があちこちに流れ着いており、その中にシンジを乗せた小さな小舟も大破していた。

 

(助けて……………。兄上、父上、母上…………)

 

兄のシスイの犠牲もあり、ワノ国を出国したシンジ。だが滝を降りる所で小舟は木っ端微塵となり、バラバラとなってしまった。その後、ワノ国特有の近海の渦潮に飲み込まれてしまい、海流に流される形で岩礁に身体をぶつけるなどで大怪我を負っていたのだったがたった今、なんとかバラバラとなった小舟の残骸の木片にしがみついていたのである。

 

(助け…………て………誰か…………)

 

身体も動かず、意識も朦朧とする中で彼は助けにくる筈もない何者かに助けを求める。とうとう、彼の身体は限界を超えたのか荒れる海へと沈み始める。

 

(助…………け…………て……………)

 

遂にシンジの意識がなくたったほんの一瞬だった。シンジを中心に風が吹き荒れ始めると何者かが沈みゆくシンジの手を掴む。

 

「………………………」

 

その者はフードを被って顔を隠し、外套に身を包む高身長の男だった。男はそのまま引き上げると気絶したシンジのボロボロとなった顔を見る。

 

「………!!」

 

まだ幼い少年の傷ついた素顔を見た左顔面を縦断する大きな赤色の刺青のある男、モンキー・D・ドラゴンは殺意が込められた目をギロッ………!!と睨んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅ーいっ!!遅いッ、チャッブル!!」

 

「イワンコフさん、落ち着いて!!」

 

同じ頃、ワノ国近海に浮かぶとある船では常人より遥かに大きな顔面が特徴のオカマが誰かを待っているのか転げ回っていた。それを周りの仲間達が落ち着かせようとしている。彼等の仲間である“ホルホルの実”の能力者、エンポリオ・イワンコフである。

 

「もう………ヴァターシ!!頭が破裂、破裂…………」

 

『え………ええっ!?』

 

「破裂しなーーーーい!!!」

 

『しねぇのかよっ!!』

 

「ヒーハー!!!」

 

閑話休題。この男、言った事を直後にノリツッコミの如く否定する様に仲間達がツッコミを入れるという、ある意味漫才師的な人物でもある。

 

そこへ、風が吹き始めると船の甲板に彼等のリーダーであるドラゴンが着地した。

 

「遅いじゃないのよ、ドラゴン!!いつまで待たせチャブルの!?」

 

「…………すまん」

 

「ん?ヴァナタその子は………?」

 

自分達を待たせていたドラゴンにイワンコフは文句を言うが、同時にドラゴンが抱えている1人の少年、シンジに気づく。彼は重傷を負っていた。

 

「こ、これは………酷い!!」

 

「重傷だ!!おい!手当てを急げ!」

 

重傷のシンジの姿を見た彼等は手当ての為に慌ただしく動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん……っ?」

 

「あ、起きたぞ!」

 

「起きた〜〜〜?」

 

「おわーーっ!!?」

 

包帯を巻かれてベッドで寝ていたシンジが目覚めると手当をしていた船医らしき人物の声に反応し、目の前に迫ったイワンコフのデカイ顔に思わず悲鳴をあげる。

 

「脅かすな、イワンコフ」

 

イワンコフに聖書を持った巨漢の大男、バーソロミュー・くまが注意する。

 

「そんなつもりじゃないチャブルよ、くま!失礼しちゃうわね!ヴァナタのその顔でも同じだっチャブル!!」

 

「それは的を得ている………」

 

「………?」

 

言い争いをしようとする二人のやり取りにまだ意識が多少朦朧としているシンジは呆然としている。

 

「二人共、その辺にしておけ。その子が怖がるぞ」

 

「ドラゴン………!」

 

「………………」

 

言い争いをしようとする二人に奥から出てきたドラゴンが二人を仲裁すると二人は止める。

 

「………こ、ここは?」

 

「我々の船の中よ」

 

弱々しい声で質問したシンジにドラゴンの部下の一人であるイナズマが女性の声で答える。

 

「船………?」

 

「俺達はワノ国へ行く途中なんだ」

 

「ワノ国へ………?貴方達は一体………?」

 

「坊やは何故、こんな危ない場所に?一人で航海してるとは思えないが………」

 

「……………………」

 

ドラゴンの部下の一人からの言葉にシンジは言いたくないのか黙り込む。

 

「この少年の格好からするにワノ国の侍か忍者の少年であることは間違いない」

 

「ドラゴンさん、このままワノ国へ送り届けましょう」

 

「うむ」

 

「そ、それはダメだ!!今、ワノ国へ行ったら……!」

 

部下の言葉にドラゴンは賛同し、船をワノ国へ進めようとすることに聞いたシンジの目がカッと開き、拒絶反応を起こすようにドラゴン達を止めようと声を上げる。

 

「どうして?」

 

「もうあの国は…………!!」

 

『…………?』

 

ドラゴンの部下の男の質問にシンジは思い出したくないのか身体を震え出す。その様子に彼等は首を傾げた。

 

「…………少年よ。一体ワノ国で何があったのだ?詳しく、話してはくれないか?」

 

「はい。実は…………………」

 

ドラゴンからの言葉にシンジはワノ国で起こった出来事を一つ一つ語り始めた。

 



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4話 革命軍へ

 

『え…………えええええっ!!?』

 

シンジからドラゴン達に話した内容はあまりにも衝撃的な内容だった。

 

「百獣海賊団!?」

 

「まさかカイドウの一味!?」

 

「…………はい。ワノ国は今占領されています」

 

「そ、そんな………!」

 

ワノ国が現在、カイドウ率いる百獣海賊団とカイドウと手を組んだ将軍・黒炭オロチに占領されているという信じられない事実に彼等は驚愕する。イワンコフも驚きのあまりに口をポカンと開けていた。

 

「光月おでんはどうした?昔、ロジャーや白ひげの船に乗っていたあの侍ならカイドウに対抗できたのではないのか?」

 

ロジャー海賊団、白ひげ海賊団でのおでんの活躍を知ってるのか、ドラゴンがシンジにおでんのことを尋ねる。

 

「…………おでん様は処刑されました」

 

『!!?』

 

「…………な、なんだと!?」

 

だが、彼から返ってきたおでんの処刑という無残な答えにドラゴンは驚く。

 

「おでん様は家臣達や自分の一族を筆頭とした忍者達と共にカイドウ達と戦いました。でも、虚しくも負け戦………!その後はカイドウとオロチ達におでん様は釜茹での刑にされて、自分の一族も家族も全員皆殺しに………!!」

 

「なんてことだ……………」

 

「あの光月おでんが………!?」

 

「信じられん………!!」

 

おでんの最後とカイドウやオロチ達に自分の一族も家族も皆殺しにされたことシンジは頭を抱えながも彼等に伝える。そのことを聞いたドラゴンは顔色を悪くし、海外でのおでんの活躍を知る者達もざわめく。

 

「どうしましょう?ドラゴンさん、これではワノ国の入国はもう…………」

 

「やむを得ん、諦めるしかないな。カイドウにワノ国が墜ちたとなれば今、奴等と今事を荒立てるのは不味い。ワノ国には一度、上陸しておきたかったが………!」

 

部下からの問いに目的地だったワノ国がまさかこんな事態になっていたことでドラゴンはここでワノ国への入国を悔しくも断念する。ここで入国すればカイドウ率いる百獣海賊団と戦闘になり、返り討ちにあうのが目に見えているからだ。

 

「すると君はカイドウ達に占領されたワノ国から逃げてきたということかね?」

 

「はい……………」

 

「成程…………」

 

この状況から彼がこんな危険な海域にいたのかもドラゴンの部下達は納得する。

 

「だから………頼みがあります」

 

「え?」

 

「このまま自分も連れてってください!!お願いします!!」

 

『!?』

 

既に動けない筈の身体でシンジはドラゴン達に決死の嘆願を叫ぶ。

 

「海へ出たこともない子供が!バカ言ってんじゃないチャブル!!それに今のヴァターシ達にはやらねばならない事があるのよ!!」

 

ワノ国から外の海へ出たことがないシンジにイワンコフは反対するように怒鳴りつける。

 

「それはこっちも同じだ!!カイドウとオロチから………ワノ国を取り返したいんだ……!!でも、今の自分にはその力がない…………!!」

 

『……………………』

 

だが、シンジも引かない。自身を逃した兄から頼まれた“ワノ国の解放”。既に尽きかねていた彼の命を唯一繋げていた小さな灯火というべき願望が彼を突き動かしているようでもあった。

 

シンジからの嘆願に暫く船内に沈黙が流れるがそれを破ったのはドラゴンだった。

 

「少年よ」

 

「………?」

 

「ワノ国を取り返したい。そう言ったな?」

 

「ゔん…………!!」

 

涙声で彼はドラゴンにそう答える。

 

「強者達や権力者達から力のない弱者への暴力や理不尽極まりない格差。しかし、それがこの世界では罷り通っている」

 

「………………?」

 

「残念ながら今の我々には暴力で支配された国を変えられるほどの力はない………!!だが、その不条理な社会と自由の為に共に戦う仲間を集めている」

 

「…………!(同じだ………!)」

 

ドラゴンから語られる内容にシンジは当初わからず困惑するも徐々に彼等の思想や目的が自身の野望に近いものと感じたのか目を開く。

 

「少年よ、改めて問おう。自由の為に戦う意志とその覚悟があるか?」

 

「………はい!」

 

覚悟を決めたのかシンジはドラゴンにそう答える。その瞳はまるで燃えているかの如く強い光を宿していた。

 

「……………いいだろう。お前の気が済むまで我々の所にいればいい」

 

「ちょっと、ドラゴン!?いいの!?」

 

彼の覚悟を受け取ったドラゴンはシンジを連れていくことを許すがイワンコフが反論する。

 

「いいのだ、イワ。この子も力や権力だけの理不尽な社会に立ち向かう一人だ。その同志を我々が受け入れなくてどうする?世界政府でも近づけないあのワノ国でもこのような子供達は生まれてくるのだ………!!」

 

「…………!」

 

リーダーのドラゴンの言葉に流石のイワンコフも押し黙る。ドラゴンの言うことは何も反論できなかったのだ。

 

「そういえば少年、まだ名前を聞いていなかったな。お前の名は?」

 

「拙者…………いや、僕の名はシンジです!」

 

「そうか、シンジ。今日からお前は我々の仲間だ。だが、これからは辛い戦いの日々がお前には待っているだろう」

 

「はい!覚悟はできてます!」

 

まだシンジの名を聞いてなかったドラゴンは彼の名前とその覚悟を改めて受け止める。

 

「わかった。我々は“革命軍”、権力や暴力に苦しむ人々を目的とした組織だ。覚えていくといい」

 

「………!?か、革命軍……!?」

 

自分達の組織の事を話したドラゴンはそう言うと船室の扉を開いて部屋から出ていく。部屋から出たドラゴンに未だ続くワノ国近海での悪天候の風があたり、被っていた黒いフードを吹き飛ばす。そして、顔の半分に大きな赤色の刺繍がある自分の素顔を露わにしたドラゴンは部下達に命令を伝える。

 

「出港するぞ、バルディゴへ帰還する!!」

 

『はっ!!』

 



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5話 ゼロから

 

ーー白土の島・バルディゴーー

 

「もっと重心を下げろ!戦えない者をここには置いておけんぞ!」

 

『はい!』

 

島全体が白土の砂漠に覆われたこの島に革命軍の総本部は置かれている。その地で革命軍兵士でエビスダイの魚人、ハックがまだ少数であるが子供達に戦闘を教えていた。

 

まだ革命軍は小規模の組織だが、共に戦う同志達が集まりつつあるのも事実。さらにまだ活動は小規模ではあるが世界政府や海賊に虐げられる人々の解放や救助を行う中で行く当てを失った戦災孤児を保護することも出てきた。

 

そのような孤児達を革命軍は保護後も世話を続け、多少自立できる様になるまでは戦闘を含め、生きていく上で必要なことを指導しているのだ。その中でシンジもハックの指導を受けていたが、なんと途中で止めてその場を立ち去ろうとする。

 

「おい!?待て、シンジ!」

 

「こんなの僕なら十分できるよ」

 

「どこへ行くんだ!?ちょっと待てっ!!」

 

ボン!!

 

「な!?」

 

立ち去ろうとするシンジにハックは彼を止めようとするがシンジの身体はボン!!と音を立てて消えてしまった。

 

「ど、何処へいった!?」

 

チャリ………!!

 

「…………っ!?」

 

突如消えたシンジを探すハックだが、後ろから聞こえた金属音に振り返るとそこにはクナイをハックの背中に向けたシンジの姿があった。

 

「一本」

 

「ぐ………!?(い、いつの間に………!?)」

 

「部屋に戻るね、それじゃ」

 

シンジはそう言うと総本部の中へと向かっていく。一本取られたハックはその後ろ姿を呆然と見てることしかできなかった。

 

「ばぁーっ!!」

 

「うわあああああっ!!」

 

呆然としていたハックにイワンコフのデカイ顔が横から入ってきた。

 

「どう?シンジボーイは?」

 

「うむ。まだ5歳の子供だが流石はワノ国!侍か忍者の生まれとは聞いてはおったが………あの身体も身のこなしからどうやらあの国でしっかり鍛えられたらしい。どうやら私の指導は必要ないようだ」

 

「ヘェ………………」

 

ハックからの言葉にイワンコフは総本部へ戻っていくシンジを見て、感嘆するように呟く。当の彼は総本部の岩盤を手を使わずに足だけで登っていた。

 

「おとなしい子で素直な奴だが…………ある問題が一つだけある」

 

「あら?あんなに優秀な子にどんな問題が?」

 

「彼はワノ国出身だ。だからあの国の外の世界をまだ知らない。それに……………」

 

「それに…………?」

 

イワンコフは一瞬、首を傾げる。そして、ハックはあるものを懐から取り出してイワンコフに見せた。

 

「…………彼には戦闘よりもこちらの方が重要なようだ」

 

「……………本?」

 

ハックから見せられた本を見て、イワンコフは思わずそう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジ side

 

「う〜〜〜〜〜〜〜ん」

 

一人称を“拙者”から“僕”へ変えた自分、シンジは今、総本部のとある部屋の中で目の前にある本を相手に悪戦苦闘して頭を抱えていた。

 

ワノ国を脱出してドラゴンさんに救われてから半年。怪我もすっかり治り、僕は一人前の革命軍の兵士となるべく修行の日々に明け暮れていた。

 

当初は革命軍が保護している孤児達と共に魚人のハックさんに戦闘の稽古をつけてもらったがそれはワノ国で兄上………いいや、兄さんと共に身体で覚えた忍組手を始めとした“体術”や写輪眼を主体とした“幻術”、そしてうちは一族として一人前認めてられるために必死で修行した豪火球や影分身などの“忍術”で十分戦闘に関してはほぼ問題なしと言われた。だが、それでもあることに関してはどうしても苦手だった。

 

「………ダメだ。なんて書いてあるか全然わからない」

 

「………まだ読めないか。今のお前では」

 

「ドラゴンさん…………」

 

頭を抱えて困っている僕にドラゴンさんと彼の部下の一人であるバーソロミュー・くまさんが部屋へと入ってくる。

 

そう。ドラゴンさんの言う通り、僕にはワノ国外の世界の文字が全く読めない。もう、ちんぷんかんぷんだ。

 

ワノ国でも一人前の忍者として学問も身につけなければならない。その為に花の都の寺子屋で預けられて一生懸命に覚えた学問の知識だったが、ここではそれが全く通用しなかった。

 

まず、なりよりワノ国と外の世界の文字が全然違う。お陰で世界中で発行されているというワノ国では瓦版と言うべき海外の新聞も読めない。今の自分では外の世界の学問の分野がもう致命的でスキルがゼロの状態だった。

 

「すみません…………」

 

「お前が謝る事じゃない。ワノ国は鎖国国家。外の世界の情報はほぼ入ってはこないから知らないし、文字が読めないのも無理はない。これはもう一から学んでいくしかないな、シンジよ」

 

「……………………」

 

「ありがとうございます………」

 

ドラゴンさんは優しく僕にそう語る。一方のくまさんは普段から無口なのか、特に何も言わなかった。でも、イワさんや他の革命軍の兵士達によると優しい性格で穏やかな笑顔を見せる人らしいけど本当かなぁ?

 

「それにお前はワノ国の外の世界をまだ知らない。文字や知識だけではなく、今の世界情勢のこともお前には学んでもらうぞ」

 

「わかりました」

 

「それに少しでもお前が早く文字を覚えてもらう為に俺からプレゼントがある。受け取れ」

 

「え………?」

 

ドラゴンさんはそう言うとあるモノを僕に渡してくれた。

 

「これは本…………ですか?でも何も書いていない………」

 

渡されたのは一冊の本だった。でも、それには何も書かれていない。中は真っ白だった。

 

「その中はお前が書いていくのだ、シンジよ。そうだな………航海者達がつけるならばそれは航海日誌と読んだ方がいいかな?」

 

「日誌?」

 

「………俺もこれは噂でしか聞いたことはないが、かつて光月おでんはロジャーや白ひげの船に乗る前から日誌を毎日のようにつけていたらしい」

 

「おでん様が…………」

 

「お前もおでんのように強くなりたいならば、日々の鍛錬だけではなくこれから毎日何が起こったかをその日誌に記録しておくのだ。無論、ワノ国外での文字でな。日誌を書いていけば自然に海外での文字にも慣れていくだろう。直ぐに覚える事を期待しているぞ、シンジ」

 

ドラゴンさんはそう言うとくまさんと共に部屋を立ち去っていく。

 

「…………………………」

 

ドラゴンさんに言われた僕は彼からもらった今は何も書かれていない日誌をじーっと見つめていく。

 

簡単には強くはなれない。それはわかっていた。だが、それを成すには強さや力だけでは足りない。やはり、単純な答えだったが海外の知識は必要不可欠だ。

 

ワノ国を必ずカイドウとオロチから取り戻す。今の僕にはそれが生き甲斐でもあり野望でもある。それにドラゴンさんは僕が早く海外の世界に慣れることを期待しているようでもあった。それは嬉しかったし、同時に励ましでもあった。

 

ならばその期待を裏切るわけにはいかない。僕は日誌の最初のページを開くとペンを取り始めた。

 



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番外編 バルディゴ編①
1話 シンジの日誌① 1年目


しばらく次の章まで日記形式で進みます。またアンケートもしばらく置いておきますので是非見てください!


XXXX年○月○日

本日より僕は日誌をつけることを始めた。でも海外の文字は慣れない。そこでしばらくはワノ国の文字で下書きを書いてから、海外の文字で丸写しをすることに決めた。最初の内はわからない文字ばかりだろうから他人に教えてもらってから書こう。

 

XXXX年○月○日

なかなか海外の文字には慣れない日々が続いている。だけど少しは覚え始めているし、コツコツ進めていくしかない。それにわからないところは革命軍の兵士達が優しく教えてくれるのでとても嬉しかった。

 

XXXX年○月○日

海外の知識や文字を覚えるのも大事だが、やはり身体を鈍らせる訳にはいかない。そこで忍術や手裏剣術の修行だけでも合間を見つけてはすることに決めた。

 

XXXX年○月○日

僕が革命軍に保護されてから10ヶ月の月日が経っていた。海外の文字にもだいぶ慣れてきて、本も文字もだいぶ読めるようになってきた。

また今日、この世の中の世界情勢について他の孤児達と共にドラゴンさん達から学んだ。

 この世界は今から約800年前に20人のとある王達に設立された“世界政府”が世界を支配している巨大な組織として君臨している。加盟国は170カ国以上に及び、その本拠地は世界を直角に一周する巨大な大陸赤い土の大陸レッドラインにある聖地マリージョアと呼ばれる所にある。

 また政府の軍事組織として世界政府直属の海上治安維持組織として“海軍”が世界政府直属の諜報機関であるCPサイファーポールが存在している。

 そして、今や世界は海賊王と呼ばれたゴール・D・ロジャーの処刑後、ひとつなぎの大秘宝ワンピースが眠る島であるラフテルを目指して、多くの猛者たちが海へと放たれたことで“大海賊時代“が始まってから既に4年の月日が経っている。ワノ国をオロチと共に支配している“百獣のカイドウ”は今や四皇と呼ばれているらしい。因みにおでん様も昔、その船に乗っていたという“白ひげ”エドワード・ニューゲートも四皇の一人である。

 四皇とはワノ国がある“偉大なる航路”グランドラインの後半の海、通称“新世界”にて皇帝ように君臨する四人の大海賊のことを意味する。現四皇は“白ひげ”・“カイドウ”・そして、ロジャー世代の大海賊でお菓子の王国を作った女王、シャーロット・リンリン“ビッグ・マム”が位置付けられている。残る一つは大海賊時代が始まる前にかつてロジャー・白ひげと覇権を競った海賊艦隊提督の“金獅子のシキ”が四皇に近い存在だった。だが、シキはロジャー処刑前に単身で海軍本部に乗り込んだ時の海軍との戦いで海軍本部のある島“マリンフォード”を半壊させるほどのの激闘の末に敗北し、大監獄“インペルダウン”へと投獄される。しかし、投獄から2年後にシキは突如脱獄。“史上初のインペルダウンの脱獄者”として再び海賊に復帰するもその後は表舞台から姿を消しており、世間からは四皇から脱落したと言われてるらしい。その為に残る四皇の席は一つ空席状態となっているらしく、一つの席を巡って海賊達の覇権争いが続いているそうだ。またロジャーよりも前の世代には“ロックス海賊団”という海賊団が世界を制しており、そこには船長であるロックス・D・ジーベックを筆頭にあの白ひげやカイドウ、ビッグ・マム、さらにはシキも加入していたといいまさに世界最強の海賊団として君臨していた。だが、ロックス海賊団はゴッドバレー事件という事件で壊滅、船長のロックスはこの事件で死亡した。しかし、船長を失った後も残党である白ひげやカイドウ、ビッグ・マムなどの存在が後に四皇と呼ばれる勢力となっていったそうだ。

 また、大海賊時代は三大勢力による均衡で世界の平穏を保っている。海賊の最高峰にして最も海賊王に近い四人の大海賊“四皇”に対し、それを食い止めるための正義の軍隊“海軍本部”と“王下七武海”という世界政府が公認する合法的な七人の海賊達が加担する形で世界の均衡を維持しているという。海賊がその制度に加盟する為には他の海賊への抑止力となりうる強さと知名度が重要視されるらしい。

 だが、王下七武海にはまだ七人全部揃ってはおらず今は若くして七武海となった“サー・クロコダイル”とかつてワノ国でカイドウと渡り合ったという“ゲッコーモリア”という海賊しか加盟してないそうだ。そこで政府は三大戦力の均衡維持と為に七武海にふさわしい海賊を探すのに躍起になってるとか。

 

ここでドラゴンさんから今日はここまでと言われて本日は終わりとなった。覚えることはまだまだありそうだ。

 

XXXX年○月○日

先日からの続きで本日も世界情勢について学ぶことになった。

 

まずは世界政府について。約800年前に設立された“世界政府”は世界平和に尽力しているが政府にとって都合の悪い事などは民間人の犠牲もやむなしとして海軍などの軍事力を用いてもみ消しを行うという。そこで最初に出てくるのは天竜人、または世界貴族と呼ばれる人達だった。政府の本拠地であるマリージョアの住民にして、この世界の頂点に君臨する者達だという。実は約800年前に世界政府を創設した20人の王達の内19人の王達の末裔でもある。中でも天竜人の最高位で世界政府の最高権力者である五老星と呼ばれる5人の老人達が存在している。

 

この話を聞いた後は僕はとても気分が悪くなった。何故なら天竜人達の権力は絶大で例え彼等が他人を殺しても、奴隷にしてもなんの罪にも囚われないとちう治外法権が認められてという酷い内容だった。その為、彼等が道を通る際は一般人は常に土下座をしてやり過ごさなければならないことや世界政府の加盟国から自分達の為の“天上金”を徴収させ、酷い場合は加盟国を飢餓で滅ぼしている例まであるという。だが、彼等が横暴な振る舞いから誰からも報復されないのは、海軍や政府上層部が大きく関係してるからで仮に天竜人達が何者かが傷つけられると海軍本部の大将が軍艦を率いて派遣される為である事を聞かされた。

 

また天竜人達が住んでいる聖地マリージョアには数多くの奴隷達が囚われており、その人種は人間やかつておでん様に仕えていたイヌアラシさんやネコマムシさんに当てはまるミンク族、更には巨人族と多種多様で特にハックさんに当てはまる魚人族や人魚族に対しては差別がとても酷く、彼等の奴隷の数はほぼ多数を占めるらしい。

 

この話を聞いた僕はワノ国で自分を助けてくれた時にドラゴンさんが話した“弱者への暴力や理不尽極まりない格差がこの世では罷り通っている”ことがようやくわかった。そして、最後にドラゴンさんは僕を含めた孤児達にこう語る。

 

「我々が解放や自由の為に戦うのに世界政府や海軍は大きく立ちはだかるだろう。しかし、これだけは覚えてほしい。我々が本当に倒したいのは世界政府ではなく、その政府を支配する天竜人達だ」

 

ドラゴンさんのこの言葉に僕は大きく共感し、そして決意した。勿論、カイドウやオロチを倒し、ワノ国を解放することを。そして、いつの日か僕を助けてくれた恩返しとしてドラゴンさん達と共にその世界を支配する天竜人達を必ず倒す事を。そして、その為にはもっと強くならなければならない。そう、改めて誓った。

 



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2話 シンジの日誌② 5年目

すみません、一気に時系列が5年後になります。


 

XXXX年○月○日

日誌を書き始めてもう5年。海外の文字も今ではもう一人でスラスラと読めるし、この日誌も自分の書きたい文字で書けることができる。

 

また、この5年間で革命軍にいる様々な人達とも関わることもできた。皆とても優しかったし、海外の文字がわからなかった僕にも丁寧に教えてくれた。そのお陰で今の自分がいる。中でもこの1年間で世話になったのはドラゴンさん、イワさん、ハックさん、イナズマさん、くまさんの5人だろう。

 

革命軍の総司令官で僕の恩人であるドラゴンさんは思慮深く厳格な一面が強そうなイメージの人だが、根は優しい人だ。わからないことを聞いたら直ぐにわかりやすいようにも教えてくれた。今やあの人は僕にとっては親代わり当然の人でもあった。

 

イワさんは…………正直、苦手な人だ。けど嫌いじゃない。普段からハイテンションでふざけているお笑いオカマの人だが、あの人もドラゴンさんと同じく弱き者の味方だ。いざとなったら、頼りにもなる。

 

ハックさんは僕が革命軍に来てから直ぐに戦闘の指導をしてくれた。最もワノ国で基礎戦闘能力を得ていた僕には既に必要なかったけどね。手合わせの際には何度も後ろを取っては一本勝ちしたかな?もう忘れてしまったよ。もう手合わせでは僕の相手にならないので本気の真剣勝負をしてみたい。でも、今では僕の体術や忍組手の相手をしてくれる練習相手の大先輩だ。

 

イナズマさんはよく僕や孤児達に授業をしてくれる。普段は冷静沈着な人だが革命軍に入ったばかりで海外の文字がわからなかった時の慣れない自分に対しては自分のスピードに合わせて授業をしてくれたので優しい人ではあるようだ。でも、何故か女性の時と男性の時がある。この人の性別は結局どちらだろうか?正直、わからない。

 

くまさんはイメージ通りの無口で無表情な人だった(何故か聖書を手に持って暇な時は読んでいる)。けど根は優しい人で時々だが笑顔を見せてくれる。稽古の相手をしてくれるがハックさんとは違ってかなり手強く、なかなか一本が取れない。今ではこの人に一本取ることが今の僕の目標になった。まだまだ鍛錬が必要だ。

 

XXXX年○月○日

今日もくまさんに挑んだが負けてしまった。体術はほぼ通用しないし、幻術による騙し討ちや忍術も効果がない。くまさんの悪魔の実の能力はやはり強力だ。

 

悪魔の実。それは海の悪魔の化身と呼ばれる不思議な果実で一口でも食べると実に宿っている特殊能力を得ることができる。この能力を得た者はこの世では能力者と言われており、ワノ国では“妖術使い”と呼ばれていた。現在、この革命軍にはドラゴンさん、イワさん、イナズマさん、くまさんが能力者となっているらしい。

 

この世に存在する悪魔の実には3つの種類がある。

 

人智を超えた能力が身に付く“超人パラミシア系”

 

動物の変身能力を得ることができる“動物系ゾオン系”

 

身体を自然物そのものに変化させて自在に操り、悪魔の実の中では最強種とされている“自然系ロギア系”

 

どれも強力な力を得る力だが、決定的なデメリットが二つ存在している。まずは一口でも口にすれば、死ぬまで一生カナヅチ。つまり死ぬまで泳げなくなるということだ。その理由は簡単。悪魔の実は海の悪魔の化身。悪魔は海に嫌われるという由来からだそうだ。

 

もつ一つは悪魔の実は二つ以上の能力を得ることができないことだ。どうやら二つ以上口にしたら体が跡形も無く飛び散って死ぬというらしい。ただでさえ実一つで負うリスクは大きいのに二つ目でどれ程のリスクがあることを考えれば当然だろう。

 

因みにくまさんの能力は“超人パラミシア系”に位置する“ニキュニキュの実”の肉球人間。一瞬、癒し系の能力にも見えるが実際は逆。相当な弾力性の力が身につき、あらゆるものに手が触れた瞬間、弾いてしまうのだ。剣や銃弾、砲弾は勿論、大気でさえ弾く事も可能(くまさん曰く、圧力パッド砲というらしい)。あの人と手合わせした時は僕の豪火球まで手で弾いてしまった。 

 おまけにくまさん自身、瞬間移動する能力まであるからあの人の後ろを取ることも至難の技。一度、多重影分身で陽動作戦もしてみたが分身全員を圧力パッド砲で消し飛ばされ、最後は本体の自分自身も吹っ飛ばされてしまった。あの人に一本取る方法はあるのだろうか?今度、イワさんにでも聞いてみよう。

 

XXXX年○月○日

この日、世界中がある大事件に騒めいた。僕がハックさんと体術の練習をしていると、ドラゴンさんから革命軍兵士全員に緊急招集がかけられた。理由はこの日、世界中で号外として配られた世界経済新聞のある記事だった。

 

フィッシャー・タイガーという魚人があの高く聳え立つ赤い土の大陸レッドラインを素手でよし登り、たった一人で天竜人達の住む聖地マリージョアに乗り込み、天竜人達が所有する奴隷達を人種を区別することなく解放したというのだ。

 

天竜人には決して逆らわないとがこの世の鉄則。それを破り、こんな大それたことをしたことに誰もが驚いていたがこのニュースに一番驚いていたのは同じ魚人ということもあるのかハックさんだった。ハックさんによるとフィッシャー・タイガーは世界中を旅する冒険家でハックさんの故郷である魚人島では誰もが親しまれる人だったらしい。そのことから「まさかあの人が…………!?」と言うほどに彼は驚いていた。

 

フィッシャー・タイガーはこの事件で“奴隷解放の英雄”の呼ばれると共に世界政府から追われる身となり大犯罪者となった。

 また、ドラゴンさんはタイガーが逃した奴隷達を発見次第、保護するようにと革命軍全体に指示を出した。どうやらタイガーが逃した奴隷達を革命軍に取り込むそうだ。

 

XXXX年○月○日

奴隷解放事件を起こしたフィッシャー・タイガーが彼に解放された魚人や彼を慕う魚人の猛者が集い、魚人達による“タイヨウの海賊団”が結成された。海軍の追手の軍艦を何隻も海に沈めたタイヨウの海賊団は“不殺主義”を掲げて快進撃を続けているそうだ。

 

革命軍内からタイガーと手を組んではどうかと意見があがったがドラゴンさんは反対した。今、世間で注目を集めているタイヨウの海賊団と合流すれば世界政府や天竜人達と戦う為に同志達を集めている自分達まで政府や海軍から目をつけられるという判断らしい(内心ではタイガー達に手を貸したいそうにも見えたが)。その為、今はタイガーが逃した元奴隷達の保護を引き続き継続することが決定された。

 

XXXX年○月○日

ドラゴンさんからタイガーが逃した元奴隷達を保護する為に船に乗るように誘われた。僕が革命軍としての初めての任務となる。5年振りにこの島の外へ出ることができることに僕は感激した。もう今日はワクワクと興奮が収まらない。でも、遊びじゃないんだ。僕みたいに虐げられた人達の保護と救済が目的だ。さあ、革命軍としての最初の任務が始まる。明日から忙しくなりそうだ。

 

XXXX年○月○日

平和な1日だった。船の上での海風にあたるのはとても気持ちいい。かつてのおでん様も海賊時代はこんな気分だったではないかと感じた。

 

XXXX年○月○日

航海中に僕らに目をつけた海賊との戦闘があった。だがこちらもそう簡単に負けるようなタマじゃない。海賊との戦闘はくまさんやハックさん、イワさんの三人が相手をすることになった。最も直ぐに決着がついてしまった。やはりこの三人の強さなら、そこら辺の海賊なら相手にならない。僕も早く強くなろうと決心した。

 

XXXX年○月○日

様々な島でタイガーが逃した元奴隷達を保護することに成功した。中には僕がワノ国から逃げる時と同じ年頃の子供までいた。この子には僕が手を差し伸べたが奴隷時代の恐怖からか、とても怖がっていた。結局、ドラゴンさんが説得して保護することには成功したが、自分の力がまだ足りないことを実感した。バルティゴに戻ってさらに力と強さをつけなければ。

 



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3話 シンジの日誌③8年目

すみません。小説名を変えました!
※注意 FILM REDのネタバレが一部あります!


 

XXXX年○月○日

革命軍に所属して、8年が経った。今日もバルティゴで修行に励む日々が続く。今でもくまさんへの挑戦は続けているが相変わらず負けっぱなしだ。未だに一本とれないことが悔しいや。

 

この数年で世界情勢も大きく変化した。マリージョアの事件で奴隷解放の英雄となったタイガー率いるタイヨウの海賊団は執拗に現れる海軍の船を何隻も沈めて快進撃を続け、政府のお尋ね者としてタイガー自身も2億3000万ベリーの懸賞金が懸けられている。彼等の海賊団は今でも不殺主義を貫いて、活動してるらしい。

 また、世界政府公認の海賊である王下七武海には18歳にして8000万ベリーの懸賞金が懸けられた九蛇海賊団船長“海賊女帝”ボア・ハンコックと世界最強の剣士“鷹の目”ジュラキュール・ミホークが新たに加盟した。これで王下七武海は先に加盟したクロコダイルとモリアを含めて四名となった。

 

さらにこの数年で北の海ノースブルーでも事件が起きている。天夜叉の異名を持つ海賊ドンキホーテ・ドフラミンゴ率いるドンキホーテ海賊団ファミリーの活動が活発しているそうだ。彼等は主に闇取引を専門としており、武器・兵器・ドラッグ・さらには悪魔の実とあらゆる危険物の闇取引を仕切っている。約1年程前に北の海ノースブルーで起きたミニオン島での“オペオペの実”の取引事件にも彼等が関与してるそうだ。

 

一方、“ジェルマ66ダブルシックス”の動きも活発化しており、1年前には活動地域を北の海ノースブルーから東の海イーストブルーへ移しているらしい。

 

“ジェルマ66ダブルシックス”とは世間一般では世界経済新聞に掲載された絵物語“海の戦士ソラ”の敵役として登場する空想上の悪の軍隊である。しかし、実際には彼等は実在している。

 

その正体は北の海ノースブルーの国土を持たない海遊国家“ジェルマ王国”が所有する科学戦闘部隊。人殺しの一族として闇社会で有名な“ヴィンスモーク家”の治める“ジェルマ王国”は世界政府の正式な加盟国として認めらていることから、4年に一度聖地マリージョアで開催される政府加盟国代表の50か国の王達による世界中の種々の案件について討論する世界政府レヴェリーの参加も許可されている。更に“ジェルマ66ダブルシックス”の兵隊達は理由はわからないがヴィンスモーク家の命令に従順に従いそのためならば死も恐れないことから各国から恐れられているそうだ。

 またその歴史を調べていくと北の国を制圧した時代があったがそれは僅か66日の天下に終わり、国土を追われてしまった過去があることがわかった。その為、今は国土こそないものの、国が保有する水陸両用の巨大電伝虫の殻の上に人工の大地や建物を乗せたものを複数繋げたことで“国”となるそうだ。ジェルマは元々科学の国であり、その高度な科学力を活かして各地の戦争に傭兵として参加するビジネスを行っている事から、“ジェルマ66ダブルシックス”は別名戦争屋として呼ばれているらしい。おまけに彼等が所有する巨大電伝虫はなんと赤い土の大陸レッドラインも超えることができるという驚異の機動力まで持っている。その為、元々の活動地域だった北の海ノースブルーから東の海イーストブルーへ移ることができるのもこれが理由だ。

 ドラゴンさんも今後の革命軍の活動においてもジェルマの存在は無視できない為なのか「今後もジェルマの動向には注意しろ」と革命軍全体に命令が下っている。彼等がどんな組織なのかは自分の目で見てみるまではわからない。もし、今後ジェルマとぶつかる時があったら是非手合わせしてみたいと思った。

 

XXXX年○月○日

ドラゴンさんが革命軍全体に考古学の聖地だった“オハラ”の生き残りであるニコ・ロビンの捜索を命じてから約1年。まだ彼女の足取りすら掴めていない。

 

“オハラの悪魔”ニコ・ロビン。ドラゴンさんから彼女の人生を聞かされた時はとても悲痛な思いで聞いていた。彼女の故郷だった“オハラ”は今から10年前に島の学者達が空白の100年と歴史の本文ポーネグリフを研究していたという理由だけで世界政府から命令された作戦“バスターコール”で招集された海軍中将5名と海軍本部の軍艦10隻による一斉砲撃により世界地図の上から消されてしまった。また学者も島の民間人も全員砲撃で死亡し、その唯一の生き残りがニコ・ロビンだという。

 

オハラの学者達が研究していた空白の100年とはこの世界の約900年前~800年前の時代でどの書物にもこの100年間の記録が一切ないという。その100年間の記録を今の世に残しているのが壊れないキューブ状の石碑である歴史の本文ポーネグリフでそれは世界各地にある。これは僕自身も元々知っていた内容だ。何故ならこの歴史の本文ポーネグリフを作り出したのが僕の故郷であるワノ国の将軍家だった“光月家”でその当主には代々古代文字の読み書きが伝えられてきた。

 そして、奇妙な事にこの100年の間に丁度誕生したのが世界政府である。その何故か世界政府は歴史の本文ポーネグリフの研究や解読を探索すら法で固く禁じており、破った者には死罪が言い渡される。どうやら世界政府は一部の歴史の本文ポーネグリフにその所在が記録されている“古代兵器”の力があまりにも強力すぎるため、復活やそれを悪用されないことを防ぐ為に古代兵器復活阻止を名目に探索を法で禁止しているそうだがドラゴンさんによると「まだその100年間の実態こそわからないが恐らく世界政府とっては“不都合な歴史”にも当てはまるからこそ、研究や解読を禁止しているからかもしれない」だという。

 その世界と戦ったオハラの生き残りであるロビンは海軍本部の軍艦を6隻沈めたとして、指名手配された当時は8歳にして7900万ベリーの賞金首となったのである。その後の彼女がどんな想いで生きていたことを考えるともう想像したくもない。恐らく、まだ政府から手配されていない僕以上に辛い人生を過ごしていることだろう。

ドラゴンさんは“革命の灯火”として彼女を保護したいと考えているが僕も同じ考えだ。今から10年前で8歳だったから今では18歳ぐらい。僕から見れば約5歳年上のお姉さんのような人ということになる。辛い人生を送っている彼女を早く見つけなければ。

 

XXXX年○月○日

この日、ある世経のニュースが世界中にを駆け巡り、誰もが驚いていた。

 

現在、四皇に次ぐ実力者であるという海賊、赤髪のシャンクスが東の海イーストブルーで方腕を失ったという衝撃的な事件だった。

 

赤髪のシャンクス。かつておでん様も乗っていたあのロジャー海賊団の元見習いであり、七武海の“鷹の目のミホーク”とは幾度となく戦いを繰り広げたライバルであり今やその決闘は伝説として語られる程だ。現在は彼に懸けられた懸賞金額は10億4000万ベリーと高額だ。最近では“音楽の島”と呼ばれたエレジアを崩壊させた事件の犯人として名前が上がっていた。そのような存在が世間では最弱の海と呼ばれる東の海イーストブルーで片腕を失ったのである。誰もが驚くのも無理はない。僕自身も驚いているよ。

 

世経ではその理由などは特に載っていない為、片腕を失った原因やその経過が一切わからない状態だ。果たして彼の海賊人生は今後どうなるのかも現在、注目が集まっている。僕自身もいつかシャンクスには会いたいと思っている。元ロジャー海賊団の全員の為、当然おでん様は知っている筈。海外へ情報が飛ばない鎖国国家とはいえおでん様の故郷であるワノ国がカイドウに占領されていることやおでん様の死などはもしかしたら薄々は気づいているかもしれない。きっとおでん様の仇討ちもしたいとも考えているかもしれないから、きっとワノ国に来れば味方になってくれる筈だ。もし、今後の革命軍の活動で彼と遭遇することがあれば是非味方に誘おう。

 

そして、シャンクスが片腕を失った東の海イーストブルーといえば、一つ気になっていたことがある。それは革命軍の総司令官であるドラゴン自身のことだ。

 

ドラゴンさんはバルティゴの総本部の屋上でよく風に当たっている。それは革命軍内ではもはや日常茶飯事だった。だが、僕が気になるのはその風に当たっている時に彼が向いてる方角だ。その方角は東、つまりそのまま辿っていけば東の海イーストブルーへ向いているということになる。

 前にイワさんもこのことをドラゴンさんに聞いたことがあるそうでこれを「動物の帰巣本能かその方角に家族がいるからではないか?」と尋ねたらしい。まあ、その時はドラゴンさん自身から「素性の詮索はよせ」と言われたけどね。

 

確かにこれは僕自身も気にはなっていた。何故、ドラゴンさんは風に当たる時にいつも東を向いてるのか?やはりイワさんのいうとおり、その方向、または先の東の海イーストブルーにあの人の家族がいるのではないのか。となればドラゴンさんの出身は東の海イーストブルーということになる。未だに謎が多く、得体の知れない僕達のボスの素性もいつか知る日が来るのだろうか?

 




次章からゴア王国編とエレジア編が始まります。もちろんウタが登場します!


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