魔盾の魔法使い (匿名希望)
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プロローグ

 ––––大分裂戦争。些細な辺境の争いに端を発するヘラス帝国によるアルギュレー・シルシチス亜大陸侵攻。

 

 正に大戦争と呼べるこの世界大戦の真っ只中、オスティア回復作戦の主戦場に彼……キュアヌス・オルニスは居る。

 

 理由は酷くシンプル。父と母が魔法使いであり、だからこそこの大戦で名を挙げようとしたのか––––純粋に正義に燃えていたのか。定かでは無いが、兎角その両親と共にこの世界に渡ってきた。

 

 それがきっかけ、それ以上でも以下でも無い。戦地に息子を連れてくるバカが両親だったと言う不幸と、その上で子を残してヴァルハラへ旅立たれたと言う不幸が重なっただけ。

 

 天涯孤独。戦地では戦える者なら年齢を問わずに人手としてカウントされたから死に物狂いで戦った。幸い、魔術障壁に関しては才能とやらはあったらしいから生き残る事は充分に可能だった。

 

 と言いつつも、だ。物事を正確に伝えるならば()()()()()()()()()()()()()()()()()のだが。

 

 

 走馬灯の様に脳裏に駆け巡る己の半生に半ば現実逃避の様な感情と共に苦笑いを浮かべつつも、彼は()()()()()の放つ雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)を障壁によって受け流す。

 

 否、受け流すと言う表現は正しく無い。何重にも重ねた障壁を食い破る様に破壊を進めるソレに対して瞬間的に障壁を展開し続け、可能な限り威力を減衰させながら気と魔力の反発を利用し、魔法のみを弾くオリジナルの障壁で弾いている。それでも尚、十数枚の障壁を喰わせて威力を削いだにも関わらず、受け流しが限度。彼の魔力や気の総量的に完全反射は不可能だろう。

 

 彼の才能は両親に言わせれば臆病者の才能––––障壁特化の完全防御型。昔は理屈抜きの直感で新しい障壁を作ったりしていたが、このバグキャラと何度かやり合って何度も死線を彷徨ってる内に理論と理屈を取り入れて、最速化や最適化を繰り返して生存能力に特化している。お陰でこのバグキャラとやり合っても五体満足で帰れる様にはなった。––––尤も、そのせいで今相対している連中が戦場に来ると抑えとして投入される様になったが。

 

 

 「またテメェか!! ガッチガチに固めやがって!!」

 

 「それはこっちのセリフだあんちょこ野郎!!」

 

 「あんちょこ使って何が悪いんだよ!! こちとら魔法学校中退だ!! 恐れ入ったか!!」

 

 「んな自慢してんじゃねぇよ!! てか何を恐れりゃ良いんだ!?」

 

 

 と言いつつも、あんちょこ片手に大魔法をポンポン撃つ化け物、名前はナギ・スプリングフィールド。彼は自他共に認めるバグキャラであり、一撃一撃が規格外の威力を誇る。現に弾かれた筈の雷の暴風が着弾した場所には巨大なクレーターが出来上がっている。

 

 キュアヌスはその一撃を横目で見ながら冷や汗を流しつつ、背後の殺気に対してほぼ反射的に反応する。

 

 

 「斬魔剣・弐の太刀!!」

 

 

 真後ろから障壁無視の斬撃が容赦無く放たれる。彼はその一撃を防ぐ為に彼の手元に障壁を展開し、刀身そのものでは無くその握る手を受け止める。

 

 京都神鳴流、サムライマスター・青山詠春。何故彼の刀身を止めなかったか? それは障壁を素通りして人間を斬り捨てる技を放つ男であり、刀身に障壁を展開したのならば骸を晒していただろう。

 

 

 「あっち行けむっつりメガネ!! お前とやるよりそこのあんちょこ野郎とやり合った方がまだマシだ!! 寝る間も惜しんで作った障壁素通りしやがって!!」

 

 「誰がむっつりだ!! そもそも戦場で敵を斬るのは当然だろうがッ!!」

 

 

 敵同士でありながら軽口の応酬、それは幾度も戦場で戦い、その度に最低限の働きをして生き延びるキュアヌスに対して彼ら−–––紅き翼(アラルブラ)との一種の友情に近い物だった。

 

 高火力の魔法と、対応を間違えれば一刀両断の斬撃、この二つを必死の表情で同時に捌きながら対応するキュアヌスを遠巻きで眺めている二人もまた紅き翼の一員であり、彼は二人の方をチラチラと見ている。と言っても警戒心などでは無く…………。

 

 

 「四対一は無理!! 四対一は無理!! 四対一は無理だから!! 見逃して!! マジで!! 俺とお前らの仲だろ!?」

 

 涙目の命乞いに似たような物だが。

 

 そもそも、既にナギ・スプリングフィールドとの一対一でギリギリだったところに青山詠春の介入である、実力のキャパシティはとうに越えており、肝心の声を掛けられた二人––––アルビレオ・イマとゼクトはと言うと。

 

 

 「ふーむ、しかしな。ワシらは一つ賭けをしておってな」

 

 「今日の夕飯を貴方に一撃入れた者に全員で奢ると言う物でしてね?」

 

 

 だから諦めろ。そんな笑顔に『神は死んだッ!!』と彼が叫んだ瞬間だった。

 

 ナギ・スプリングフィールドから放たれた千の雷(キーリプル・アストラペー)が帝国の艦隊を焼き尽くして行く。

 

 その光景は今作戦の主戦力へ対する大打撃であり、引いては戦場の主導権の喪失に近く−–––勝敗が決定的となった瞬間である。

 

 キュアヌスはその光景を見るや否や、即座に転移符を使用する事で戦線を離脱する。元々フリーの傭兵で、かつ生存に特化したからこそ戦機に敏感であり、この一撃で今作戦の趨勢が決したのを悟ったのだ。

 

 

 –––––彼の人生の転機はある意味此処であり、この直後にアリアドネーなどに身を寄せて居れば、平和に暮らせたであろう。

 

 だが、彼は既に魅せられていた。

 

 ナギ・スプリングフィールドと呼ばれる男が軽々と振るう圧倒的な力と、戦場で豪胆に笑うそのカリスマ性に。

 

 それはある意味必然とも呼べる巡り合わせであり、運命の歯車に組み込まれるかの如く、その後何処かの戦場で味方として出会い、そのまま紅き翼のその一翼としてその鉄壁を張り巡らせる様になる。

 

 そして––––その出会いこそが彼の人生を短い生涯に変える物でもあった。

 



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#1 紅き翼

 

 

 いつの間にか紅き翼の一員になってからはや数日。俺はと言うと、コイツらとめちゃくちゃ馴染んでた。

 

 戦場で何度もやり合ってたし、顔馴染みっちゃ顔馴染みだったけどもまるで昔からの友人とでも言わんばかりに居心地が良い。

 

 一人で生き抜いて来た俺にとって集団生活ってのがあまり慣れない物だったのに、冗談に笑ったりナギやアルにツッコミを入れたりと、戦時中だってのに俺自身信じられないくらい気楽だ。

 

 今も魔法に関して博識なアルとゼクトに講義を受けている。ナギの奴は同い年のくせにあのバグキャラだから話半分に聞いてるが、俺にとって術式の構築能力は生命線と断言出来る物だからお粗末には出来ないからね。

 

 俺の障壁は大別すると大きく四種。衝突時に敢えて破壊させる事で威力を殺す物・威力を殺した際に発生する余波や被害を受け止める物・気と魔力の反発し合う性質を利用した魔法を反射する気の障壁・その反対で気の攻撃を反射する魔力の障壁。

 

 この四つに絞りながら、その状況に合わせて術式を再構築して最適化した障壁を展開するのが俺の戦術。魔力や気の量が一般的な魔法使いと同じ量しか無い人間が戦場で生き残ろうとして生み出した技だからか、確かに硬さは随一なんだけど、致命的な欠点として持久力と耐久力が皆無だ。

 

 一部以外は魔力消費軽減と展開速度を徹底して重要視し、他を削ぎ落とした結果だから仕方ないと思ってたんだけど、こうして二人の講義を聞いてると勉強になる。

 

 

「おーい、できたぞー」

 

 

 メモ帳に二人から教わった新しい術式を書いていると、食事が出来たのか詠春が鍋を持っているのが見えた。確か旧世界の極東に伝わる鍋料理とかなんとか言ってたよな?

 

 ポトフみたいなもんかと思い、野菜やら肉やらを纏めて鍋に突っ込もうとしたら詠春に拳骨を食らった。

 

 

 「バカっ、肉と野菜を適当に突っ込むな!! 火の通る時間差って物がだなぁ!!」

 

 「いいじゃねぇかよ、旨いもんから先でよ。ほらほら」

 

 

 そう言いながらナギが次々と肉を入れていく、なんならゼクトもこっそりとトカゲ肉を鍋に忍ばせている。てかちょっと待てやゼクト。

 

 そんな風に騒いでいると、静かに鍋をつついていたアルが訳知り顔で呟いた。

 

 

 「フフ……詠春。知っていますよ、日本では貴方の様な者を『鍋将軍』と呼び習わすそうですね」

 

 「ナベ・ショーグン……だって!?」

 

 「つ、つよそうじゃな」

 

 

 俺たちはその響きに戦慄し、その後の鍋の指揮を詠春に任せる事になった。あのナギですら素直に敗北を認めるほどの称号だ。妙な緊張感と共に食事をする事になったが、なんだかんだで料理が美味しい事も重なってワイワイと食べる事になった。

 

 

 「しっかし、この鍋って奴は姫子ちゃんにも食わせてやりたいくらいの旨さだな」

 

 「あーオスティアの姫御子の事? 俺は帝国側で傭兵してたから直接の面識ないんだけど、良い子なのか?」

 

 「まぁ、な」

 

 

 含みのあるナギの言い方に、俺はある種戦場の負の一面を感じ、それ以上話題を広げる事なく相槌に止めるだけにした。

 

 一番下の武人には政治は分からないし、その中で行われる非道を正す事も出来ない。ナギですらそれが出来ないのなら、守ることしか能の無い俺には何も言えない。

 

 そんな雰囲気を払拭するかの如く、アルは『戦が終われば彼女を自由にする機会も得られるかもしれない』とフォローをしている。普通なら一集団ができる様な話じゃ無いだろうに、紅き翼なら出来そうで困る。

 

 

 「その戦だが……如何にも不自然に思えてならん」

 

 

 詠春がキノコを口に運びながら、この大分裂戦争に対する違和感を口にしようとした瞬間だった。少し離れた所から何かが投擲された気配を感じ、障壁を展開する。

 

 恐らくは帝国側からの刺客だろう、紅き翼に参加してからはもう慣れてしまったので、特に意識を向けずに弾こうとしたんだけど、ナギの雷の暴風レベルでもなけりゃ突破出来ない障壁を軽々ブチ抜かれてしまった。うそん。

 

 そして飛来物は俺たちの真ん中にある鍋を弾き飛ばす。

 

 障壁が粉砕された事に一瞬驚いたのが致命的な隙となったのか、俺は宙を舞う具材から器用に箸を使って肉を奪う仲間達に反応が出来なかった。お陰で俺の皿には野菜しか無い。

 

 

 「お前ら……襲撃担当がガードミスったんだから少しくらいフォローしてくれたっていいじゃん。肉残せよ肉」

 

 「逆に聞くけどよ、俺が迎撃ミスったらお前肉残したのかよ?」

 

 「鳥頭のナギ君の知能指数を上げるお手伝いの為にそんな事はしません」

 

 「あっはっはっ、ぶん殴るぞ?」

 

 「やれるもんならやってみな?」

 

 などと軽口の応酬をしながら野菜を食ってると、鍋をひっくり返された事にキレた詠春が斬りかかっていった。

 

 ––––瞬動で一気に距離を詰めた瞬間には襲撃者の持つ大剣が断たれている。親父も剣士だったから護身程度には剣術習ってるけど、何が起きたのか付け焼き刃の剣術じゃ全然わかんねーわ。戦場なら殺気とか気配を察知して対応出来るんだけどね。

 

 そんな風に眺めてると詠春の猛攻を余裕で捌いている襲撃者がジャック・ラカンである事に気が付いた、お色気目的の精霊達に詠春がやられてしまった。このむっつりめ。

 

 ただ、詠春とやり合ってるジャック・ラカンを見て闘志に火が付いたのか、『てめぇら、手ェ出すなよ』とか言ってナギが突っ込んで行った。

 

 やる気満々な辺り、周りの地形とかお構い無しなんだろうなぁと察した俺は、環境保護の観点から二人の戦闘の余波が周りを壊さない様に障壁を展開して行く。性質的に秒で壊れるから連続で貼り直さなきゃいけないから飯食えねぇ。

 

 

 「いやぁしかし何度見ても芸が細かいですねぇ、地形だけを守る様に障壁を貼るなんて」

 

 「うむ、ワシも長く生きておるがお前ほど魔法障壁に通じた魔法使いは見た事がない」

 

 「まぁ俺は剣士としても魔法使いとしても三流だからなぁ、戦闘能力が格段に低いから割り切って特化しないと生き残れないんだよ」

 

 

 だからこその防御特化。障壁の持久力・強度を犠牲にしてでも手に入れた連続展開能力と、それによる多重障壁による防御策。欠点が存在する事を理解しながらも可能な限り最速で障壁を展開する事で生き残っている。

 

 まぁ、その分攻撃力が全く無いのが困るんだけどね。

 

 特に紅き翼に入ってからはその非力さを痛感する。俺の戦法は基本的に障壁で威力を削いで反射系の障壁を使って相手へ魔法やら気やらを弾き返す物で、自力で仕掛けるのは三流剣術しか無いから却って返り討ちに合う。障壁無視できる詠春が天敵な理由もそれだ、単純に防御一辺倒になって反撃出来ない。

 

 と、そんな風に肩を落としてると向こうが本格的にノって来たのか、環境保護用に貼ってる障壁の破壊スピードが尋常じゃなくなってきた。と言うか無理。何あいつら人間?突然変異のバケモンじゃねーの?

 

 

「だぁぁぁあ!! もう知るかッ!! 好きに環境破壊してやがれッ!!」

 

「まぁ持った方じゃないですか? あの様子ですとまだ激しくなりそうですし」

 

「バカはバカ同士気が合うんじゃろ、付き合うだけ疲れるだけじゃ」

 

 

 

 叫び声と共に余計なお世話を止めた俺は呆れ混じりにそう話す二人にまた授業をして貰えないかなと思ったんだけど、戦闘の余波が煩くてそれどころじゃ無い。

 

 んで、終わるまで待つかぁとか呑気に構えて詠春に近接戦習ってたら戦闘が終わるまでに13時間経ってた。

 

 ナギはジャック・ラカンが気に入ったのか、そのまま再戦の約束をしている。俺とやり合ってた時見たいに生き生きとした笑顔で啖呵を切ながら。

 

 我らのリーダーに呆れながら、俺たちも追撃はせずにその場を去る。ナギに小言を言うゼクトと、それを見て笑うアル、歩けないナギを背負う詠春。仲間の隊列からほんの少しだけ離れて、俺は後ろを振り返って自分の足であるくジャック・ラカンを見る。

 

 

 「…………アイツも紅き翼に入りそうだなぁ」

 

 

 理由は無いけど、何故か確信があった。俺と同じ様に、敵として出会っても尚、人を惹きつけるナギをきっと奴は気にいるだろう、と。

 

 

 「おーい、何やってんだー!! 置いてくぜー!!」

 

 

 ボロボロで詠春に背負われてる癖に手を振りながらそう叫ぶ我らがリーダー。いつの間にか、と言ってもいいくらい自然に紅き翼に加入したのは、アイツのカリスマに惹かれたんだろうなぁ。

 

 

 「おー。今行くー!!」

 

 

 ––––俺は防御特化で良かった。ナギを、紅き翼を守る盾になれるんだから。

 

 無意識のうちに口元が緩みながら、俺は仲間達の後を追うのだった。



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#2 グレート=ブリッジ奪還作戦

 主人公の剣術はアークザラッドシリーズより、トッシュが使用する技です(個人的趣味


 

 

 ジャック・ラカン襲撃事件から暫くの間、事あるごとにラカンは俺たちを襲い、そしてナギと激闘を繰り返して引き分けて行った。

 

 鬱屈とした戦時下の中で何のしがらみも無く戦える事が余程気に入ったのか、段々と二人は仲良くなって行き、勝負が終わった後に一緒に飯を食ったり、夜の街を遊び回ったりする様になり、案の定ジャック・ラカンも紅き翼へ加入し、名実共に紅き翼は無敵の集団になったと思う。てか誰が勝てるんだこんなバグ集団。

 

 そんな事を連合の上層部も思ったのか、とある大規模な作戦に駆り出される事になった。

 

 『グレート=ブリッジ奪還作戦』

 

 ヘラス帝国の侵攻力はその国力も相まって圧倒的で、二度のオスティア攻略戦こそ失敗したものの、大勢的にはメセンブリーナ連合の劣勢であり、連合側で無敵の活躍をしている紅き翼の力こそあれど、それは状況を覆す程の物では無かった。……当時は紅き翼とは敵同士だったから、コイツらの影響力がそこまでって事にめちゃくちゃ疑問に思ったけど。

 

 実際、戦力としての紅き翼はAAAクラス以上は硬い。その制圧力はやり合ったから肌身で分かってる。並の戦力じゃ返り討ちに合うし、絶望的な数の暴力を質で捩じ伏せる事が出来る連中だ、積極登用していれば絶対に戦局に影響を与えられる筈。

 

 俺が紅き翼に加入するきっかけになった戦場は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。本気で勝ちたいのなら送るべき場所じゃない。

 

 そう考えると以前ナギが言っていたらしい『この戦争の違和感』が何となく実感として湧いてくる。

 

 今回の作戦も、元はと言えばヘラス帝国の大規模転移魔法による戦力投入によって戦線をすり抜け、首都であるメガロメセンブリアの喉元であるグレート=ブリッジが陥落した為の物だ。

 

 確かに大陸間の連絡通路である此処を落とされると、MM(メガロメセンブリア)への王手が掛かるのは勿論、王都オスティアが地理的に孤立する。

 

 いや、既に失陥している以上ほぼ詰みとも言える。だからこそこの作戦に紅き翼を投入するのは分かる、分かるんだけど……。

 

 

 「どうしたんだ? 難しい顔をして」

 

 「ん? ああ、ガトウか。ちょっと……な」

 

 

 作戦前に輸送艦の艦橋から外を眺めて居たら背後から声を掛けられた。

 

 その声の主はガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ。グレート=ブリッジが陥落した辺りで前線に戻された俺たちの仲間になった連合の元捜査官だ。

 

 前線に戻された俺たちは辺境で干された鬱憤晴らしと言わんばかりの活躍をして、その最中に出会った男だ。彼だけじゃなく、彼の連れている少年探偵団も仲間になって、紅き翼も賑やかになったとナギは笑ってたっけか。

 

 

 「なぁガトウ、この情勢は連合側の完全敗北って言ってもいい状況だと思わないか? 普通なら厭戦派が騒いで講和まで持って行かれる。連合だって一枚岩じゃ無い筈だ。正直に言ってこの戦争、本気で勝つ気があるのかな?」

 

 「…………鋭いな」

 

 

 元捜査官であり、紅き翼の頭脳担当組になったガトウに薄々感じていた疑問を投げかけると、彼はタバコを吸いながら険しい表情を浮かべている。どうやら、何かを知っているらしい。

 

 

 「……情報の裏付けがまだ取れていないから確信は無いが、予想通り何かしらの作意がこの戦争の裏で働いている」

 

 「…………そっか」

 

 

 俺の感じてる疑問はあたりだったのかと、何故だか確信に近い納得を伴って胸の中へと落ちる。水平線の向こうに立つ、まだ見えないグレート=ブリッジを睨む様に俺は口を開く。思わず出てきたのは––––––亡き両親の事だった。

 

 

 「…………別にさ、俺は特別父さんや母さんと仲が良かった訳じゃ無いんだ。普通の家庭と同じ様な距離感だったし、別に話さない訳じゃ無かった」

 

 

 ぽつりと、溢れた言葉をガトウは無言で聞いてくれる。こんな話が出てきたのは紅き翼に入って日が浅いガトウだから話しやすかったのかも知れない。

 

 

 「…………父さんは爺さんが日本人で、そこに伝わる『紋字流』って技を使う剣士で、母さんは典型的な固定砲台型の魔法使いでさ、俺と全然タイプが違うのよ」

 

 

 俺は攻撃魔法が苦手だ。性格云々以前に気力と魔力量的に魔法剣士型も固定砲台型も難しい中途半端な才能で、だからそれも障壁展開に特化しなきゃいけなかった理由だった。

 

 魔法の射手(サギタ・マギカ)一発分の魔力で障壁を10枚は展開出来る。この術式弄りの才能を攻撃魔法に特化できてりゃもう少し両親と仲が良かったのかもしれない。

 

 

 「母さんは色々魔法を教えてくれたし、父さんも全部の技を教えてくれたんだけどさぁ、なっかなか上達しなくって『臆病者の才能』なんて言われて大喧嘩したんだよ、あの時は本当に頭に来た。『精一杯俺なりにやってんのにっ!!』て思ってよ」

 

 

 でも、そんな恨み言はもう言えない。

 

 

 「なのに、俺をこっちに連れて来た癖にあっさり死ぬなんてさー。しかも、戦争の裏にはなんかしらない陰謀が渦巻いてるとかさー。–––––ほんっと、報われないって」

 

 

 茶化す様な独白をガトウは無言で聞いて、最後に俺の頭を乱暴に撫でてくれた。タバコの煙が目に沁みたのか、思わず涙が出て来たが、これはきっとガトウのせいだろう。

 

 

 

 

 –––––暫くして、作戦時間になった。

 

 俺たちは既に甲板に並んでおり、目の前に展開する帝国の大群と睨み合って居る。

 

 

 「うっへぇ、鬼神兵までいるよ。面倒くせぇ」

 

 「へっ、上等じゃねぇか!! 俺たちは無敵の紅き翼だ!! 返り討ちにして一番槍と洒落込もうぜ!!」

 

 

 ナギのその言葉に俺たちは呆れながらもほぼ全員同意見だった為か、作戦開始と同時に戦場に向かって飛び出して行った。

 

 その直後に大規模殲滅魔法を含む無数の雨が俺たち目掛けて降り注ぐが、今日までゼクトとアルの授業と修行を受けて来たからか派手ではあるけど圧がない。

 

 これなら行けると確信した俺は、可能な限り認識している魔法に対して障壁を展開して衝突させて勢いを最大限に散らせると同時に、拡散した余波を全てもう一つの障壁で反射してそのまま帝国側へ返す。

 

 

 「俺が居る戦場で考え無しの魔法が通ると思うなよ!!」

 

 

 上手く全カウンターが決まったから思わずそう返し、全員の足元に反射障壁を展開すると、そこを足場に虚空瞬動を行う。

 

 こうする事で障壁の性質による反発力と瞬動時の加速力が合わさり、通常の瞬動術とは比べ物にならない速さと距離で向こう岸まで渡る事が出来る。

 そして、城壁に取り付いてる連中は迎撃が目的の固定砲台型、魔法剣士の連中は開戦と共に出撃してしまっており、魔法では止める事が出来ない。つまるところだ––––俺たち紅き翼の一番槍が確定だ!!

 

 

 「っしゃあッ!! 無敵のサウザンドマスター!! ナギ・スプリングフィールド様一番乗り!!」

 

 「っらぁッ!! 千の刃のジャック・ラカン様!! 一番乗りぃ!!」

 

 「は? 俺の方が早かったろうが?」

 

 「あん? 俺様の方が早かっただろ、足のデカさ考えろ」

 

 「敵前で喧嘩するな!! 馬鹿者共!!」

 

 「やれやれ、バカ共は緊張感が無いのじゃ」

 

 「それは私達もですよ、ゼクト」

 

 

 初手の魔法反射によって外壁に空いた大穴に突入した俺たちは、混乱する帝国兵達の前で余裕を見せている……いや、俺はそんな胆力無いけどさ。

 

 

 「れ、連合の赤毛の悪魔だと!? ならば貴様らは紅き翼か!? だ、だが貴様らとは言え突出した一部隊!! この数の中に切り込んで来るなど死にに来た様なものだ!! 此処で討ち取ってくれるッ!!」

 

 「はっ、面白ぇ!! 俺たち無敵の紅き翼に勝てるんなら勝ってみやがれッ!!」

 

 

 司令官らしき男の言葉に返す様にナギが啖呵で切り返し、それを合図に戦闘が始まった。相手の言葉通り、俺たちは突出した一部隊で周囲は四面楚歌、しかし俺たちは遊撃部隊として戦場に斬り込み戦機をこちらに呼び込む作戦であるのでこれで問題ない。

 

 敵の腹の中だから当然四方から魔法が飛んでくるが、味方に誤射しない為に威力が控えめな物しか飛んで来ない。––––その程度じゃ、俺の盾は抜けないよ。

 

 降り注ぐ魔法の軌道上に瞬きする間の瞬間だけ反射障壁を展開する。持続性と障壁の大きさを徹底して削り、その分弾きの性能だけを尖らせた特別性、よっぽど動体視力が良くなけりゃ何が起きたのか分からないだろう。

 

 それを証明するかの如く、放った魔法が全て自分へ返ってくる事に驚き、慌てて障壁を展開するが、それでは手遅れだ。

 

 何故なら、紅き翼の一人一人が特級戦力。つまるところ誰一人ノーマークで居られない相手であり、返ってきた攻撃に注意を割こう物なら彼らの先制攻撃を浴びる事になるのだから。

 

 ナギの魔法とラカンの無茶苦茶な技が包囲を破り、撃ち漏らしをアルとゼクトが殲滅して行く。そして反撃を整えようとした者を詠春が斬り伏せる、毎度毎度思うけど絶対相手にしたくねぇ集団だわ。

 

 と、そんな風に思う存分暴れ回るバグキャラ達に戦慄していると、背後から気配を感じて瞬間的に障壁を展開する。

 

 交通事故でも起きた様な激しい衝突音を聞いて振り向くと、拳を構えた獣人が有り得ない物を見た様な目で俺の目を見ていた。

 

 恐らく点と呼べるサイズの障壁で自分の拳が止められた事に驚いているんだろう、物理的な破壊力が最も乗り辛い一点に置いてるんだから、見た目以上に硬いよ?

 

 

 「うわっ、背後取られたのかよ。やっぱ近接戦苦手だわ」

 

 「くっ、千の盾を極めた男(シールドマスター)は伊達じゃないなッ!!」

 

 「俺、んな二つ名で呼ばれてんのか!?」

 

 

 驚きながらも親父の遺品である日本刀『紅蓮』を抜き打ちするが、首を狙った一閃は難なく上体を逸らされてしまう。

 

 

 「貴様さえ倒せば紅き翼の防御力は下がる、近接戦は不得手と見た以上此処で仕留めさせて貰うぞ!!」

 

 「参ったなぁ。お互いに見逃し合いっこしない? マジで近接戦苦手なんだって」

 

 「問答無用!!」

 

 

 そう言って、獣人の兵士は此方に殴り掛かる。踏み込みの速度が尋常では無い事から瞬動術を使えるのだろう、拳にも気が込められて居て障壁を上から殴り砕く魂胆なのも分かる……が、コイツでは俺には勝てない。

 

 俺は確かに近接戦が苦手だし、まともにやり合ったらそれなりに腕の立つ相手には勝てないのは事実だ。ただし、()()()()()()()()()()だが。

 

 障壁の使い方は何も盾としてだけじゃない、物理的な壁としても使えるのだ。だからこそ、そこを念頭においていない相手に負ける訳が無い。

 

 

 彼の瞬動に合わせ、その進行方向に普段使いしている割らせる障壁を複数枚展開し、突進の威力を削ぎ落とす。

 

 瞬動時の加速が失速した事に驚いた隙を突き、紅蓮を納刀しながら居合斬りの構えを取り、斬撃を警戒させながら彼の背後を囲う様に障壁を展開し、紋字流の技を放つ。こんな時発動媒体が指輪だからマジで便利。

 

 

 「–––––真空斬!!」

 

 

 使ったのは鞘内に充填された気を居合い斬りに乗せて抜き放ち、遠距離を斬り裂く技。神鳴流にも似た技があるし、飛ぶ斬撃はみんな考えるんだろうが、この技は斬れ味が非常に鋭く、斬られた後に一呼吸置いて傷口が開く。

 

 だからこそ、回避行動を取ろうとして壁に阻まれた彼は身体を素通りした斬撃に疑問を浮かべながら此方に踏み込み––––真一文字に斬り裂かれた胸元から鮮血を上げて倒れて行った。

 

 

 「…………近接戦はやっぱ慣れねぇわ、人殺した感覚がダイレクトに来るし」

 

 

 ボソッと吐き捨てる様に俺はそう呟くと、気持ちを切り替えながら侵入口から殴り掛かって来た鬼神兵の拳を障壁で受け止めるのであった。



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#3 完全なる世界

 

 

 激戦となったグレート=ブリッジ奪還作戦は連合の圧倒的勝利によって幕を閉じる。

 

 その要因の中に俺達紅き翼の活躍も少なからず含まれてはいるだろうけれど、正直に言って勝鬨を上げる周りの兵士と同じ気分にはなれなかった。

 

 感情に浸る訳じゃ無いけれど、大陸間を繋ぐ要塞から見える海岸線には魔法によって沈んだ戦艦が墓標の様に突き刺さっている。その中には俺が魔法や砲撃を反射して沈めた物も含まれていて、戦争の悲惨さを見せつけられている様で気分が悪い。

 

 戦争の勝ち負けが何時までも決まらない不毛な戦争。戦場で戦う者は無限に相手の命を奪い合い、そして俺の様な親を亡くした孤児もまた、戦火に飛び込んで行く。

 

 終わらない争いの無限回廊。何時になったら戦争は終わる? 政治的にも敗北を認める事が出来るこの要衝が落ちても講和が出来ないこの戦争–––––終わりがあるのか?

 

 薄ら寒いそんな感覚に舌打ちをしながら頭を掻いていると、俺と同じ様に水平線を眺めていたナギが口を開いた。

 

 

 「俺の故郷がある旧世界じゃ強力な科学爆弾が発明されててこんな大戦はもう起こらねえそうだ。戦を始めたが最後、みんなまとめて滅んじまうからだってよ」

 

 「核兵器……だろ? 俺も旧世界出身だから知ってるよ、ナギ。キューバ危機なんてのもあったけど、瀬戸際でなんとかなったって話だね」

 

 

 ナギは俺と似たような気分の悪さを感じてたのか、似た様な思いを口にし、この戦争への怒りを口にする様に声を荒げて行く。

 

 「ああ、そうだよ。あっちじゃその辺りを分かってた。だがこっちの戦争は何時終わる? 帝都ヘラスを攻め滅ぼすってか? やる気になりゃこの世界にだって旧世界の科学爆弾以上の大魔法だってある!! こんな事続けてどうなる? 意味ねぇぜッ!! まるで……」

 

 「––––まるで誰かがこの世界を滅ぼそうとしている。ですか?」

 

 

 ナギの言わんとすることを遮る様に放たれたアルの言葉は、荒唐無稽に見えて『そう』なのでは?と考えてしまいそうになる謎の説得力を感じた。

 

 いや、自分でも何故その様な説得力を感じたのかは意味が分からないけど、戦場を生で感じて戦い抜いて来た感性が告げているのだ。

 

 そう考えると帝国側にいた頃、やけにコイツらに当てられた事を思い出す。あの時は生きる事に必死だったし、戦争の裏側とか考える余裕が無かったけど、もしかしたらそういう『役割』を当て嵌められてたのか? あのままもし、帝国側に着いてたのなら、ラカンと一緒に紅き翼討伐に駆り出されてたか、帝国側の『英雄』として祭り上げられたか………見えざる神の手でも働いてるってか?

 

 底知れない『ナニカ』が渦巻いてる様な錯覚、それを打ち切ったのは新しい仲間の声であり––––それは同時にこの戦争の裏を垣間見る物だった。

 

 

 「––––ある意味、その通りかもしれないぞ?」

 

 「……ガトウ」

 

 「俺とタカミチ少年探偵団の成果が出たぜ。

 

 

 

 ––––––秘密結社『完全なる世界(コズモエンテレケイア)

 

 自身の尾を噛む竜に鳳凰をあしらった様な紋章が特徴的な謎の集団であり、ガトウの話では帝国・連合の双方の中枢に食い込んでいると言う。

 

 詳しい話は本国首都で……との事なので、俺達紅き翼はMMまで足を運んだのだが、話の前にあって欲しい人物がいるそうだ。

 

 それは我々への協力者。そう言われて奥の通路から現れたのは現元老院議員、マクギル元老院議員…………だったが、この人では無いらしい。

 

 本人の否定と共に紹介されたのは、ウェスペルタティア王国、王都オスティアの姫殿下。アリカ王女。

 

 お忍びの為か白いフードを被ってはいるが、その端正な顔立ちは十二分な覇気を感じさせる。歳の頃は俺達と然程変わりない様に見えて…………まぁ有り体に言えば凄い美人だ。

 

 ナギは珍しく見惚れたのか無言で彼女を見つめており、ラカンがそれを見てニヤついている。多分後で揶揄う気なんだろうけど、俺には正に高嶺の花。後そう言う対象として見るんならもう少し胸元が膨らんでる方が好みだ。

 

 –––––とか考えてたらその考えが見透かされたのか思いっきりビンタを食らった。『不敬な視線を向けるな』だそうだ。…………女性の胸に目が行くのは男のさがじゃないかな?

 

 張り手を食らった頬を撫でていると、どうやら紅き翼のリーダーであるナギと話がしたかったらしく、二人で何やら話している……が、ナギはなんだかんだで口が悪いからなぁ。

 

 

 「んで? オスティアの姫殿下と秘密結社がどう繋がるんだ? ガトウ」

 

 「ん? ああ、説明がまだだったな」

 

 

 頬の痛みを誤魔化す様に『協力者』と言うアリカ王女についてを聞くと、どうやら彼女は帝国と連合の双方が無限に潰し合うこの大分裂戦争の中で自ら調停役になろうとしたらしい。

 

 しかし、件の秘密結社の手による物と思われる有形無形の妨害工作や暗殺未遂などにより力及ばず。打開策を模索していたタイミングで戦争の裏側を探っていたガトウが偶々接触し、俺達に助けを求めに来たとの事。

 

 俺はその話を聞き、感心して思わず口笛を吹いてしまった。

 

 孤立無援の状態且つ身内にすらその疑いが掛かる者達が居る中で、命の危険すら顧みずに調停役を買って出ようとした事は勿論、内偵調査中のガトウを信用して俺達に接触する勇気もまた凄い。

 

 俺達は連合側の『英雄』だ。言ってしまえば『完全なる世界』と繋がりを持っている可能性だって十二分に考えられる訳だ。いや、この場合はその方が可能性としては高いかな? 四方手を尽くして八方塞がりになったところへ接触して来た連合の英雄。怪しく無い訳がない。

 

 その疑いを晴らしたガトウの手腕も去る事ながら、命の危険を呑んでまで俺達に接触するなんて––––––良い女じゃん。

 

 

 が、話の内容を総括するとあまりふざけていられないのが分かった。

 

 完全なる世界。奴等は王都オスティアにすらその勢力を伸ばしており、つまるところ世界情勢的な視点で言うのならばこの魔法世界全てを操っていると言い切っても過言では無い。

 

 アルは珍しく『コレは思ったより根が深い……』と神妙な顔で考え込んでおり、ガトウも同じ結論なのか、紅き翼による独自内偵を提案していた。

 

 それに関しては全員異議が無かったらしく、アル・詠春・ゼクト・俺がガトウ達を手伝う形で内偵を行う事になった。…………壊す担当どもは完全休暇だったけどな。しかもナギなんざ、アリカ王女とデートだとよ。これだからイケメンは……。

 

 –––––ま、しゃーない。頭脳担当組に割り振られたんだし、やるだけやりますか。



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#4 戦争の裏側へ!!

 

 

 ––––休暇を利用した独自内偵は順調に進んではいる。

 

 『完全なる世界』の構成組織だと思われるマフィアや武器商人を調べながらそれらしいモノへ目星を付け、ある程度纏ったら本格的に絞っていくと言う地道な捜査活動で面白味がないが、かと言って手を抜く訳にも行かない。

 

 金の流れや人の出入りは勿論、取引先や関係組織の洗い出しを徹底しなければ尻尾が掴めない上に、本格的に調査をし始めた途端、面白いくらいすんなり白だと判定される組織も出てくる。そいつらを徹底して洗うと確固たる証拠こそ手に入らないが、状況証拠的にほぼ当たりに違いないと判定できる者も多い。

 

 コレは他のメンツとも相談して出た結論であり、他の黒だとあからさまに出る情報は明確な流れや関係性が見えるが、早々に白判定で弾かれた者達には奇妙なくらいそれらとの関連性が見えない。平時ならそれで良かったろうが、今は戦時下であり、清濁混在する情勢であるほど()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 「…………と、言うところまでは分かったんだけどなぁ」

 

 

 公園のベンチに座りながら屋台で買った軽食をもそもそも口に運びながら肩を落とす。

 

 国政に食い込んでいる以上頭を叩かなきゃ意味が無い。だから俺は末端組織だけじゃなく、名義だけの幽霊組織も徹底して洗い出しながら徹夜で繋がりを手繰って行き、漸く『関連疑惑』と言う部分まで漕ぎつけた相手が居る。

 

 それが現在任期中のMM執政官(コンスル)、言ってしまえばMMのNo.2。

 

かなりの大物であり、確証が無い状況で突けば俺達が逆賊として指名手配されかねない。内偵調査は慎重にしなければならないが、徹底した情報秘匿がされている以上小さな証拠一つ手に入れるだけでも一苦労だ。

 

 今もこうして目星を付けた組織の拠点へ張り込みを行なって監視を続けている。出入りの人間の顔と数は一応抑えてるけど、魔法使われたらあまり意味が無い。直接侵入して証拠探しをする手もあったけど、空振りだった場合のリスクが大き過ぎる。

 

 今日で3日目であり、あまり進展が無いからこうして公園でメシ食ってるんだけど、ガトウの方は奴等の行動の真意に迫るファイルを見つけたらしいし、一旦情報共有に戻った方が良いかな?

 

 埒があかない調査に何度目か分からない溜め息を吐いていると、視界の端に見知った顔を見た。

 

 どうやら我らがリーダー様は姫殿下を連れてお忍びデートに洒落込んでいる様子、あの野郎後で覚えとけ? ある事無いことラカンに吹き込んでおちょくってやるからな。

 

 ––––––そう、モテ男(ナギ)への嫉妬を膨らませていた次の瞬間、ナギ達の居る場所へ魔法が放たれた。

 

 咄嗟に障壁を展開して威力を抑えつつ爆発系の魔法だった為、爆風が民間人に被害を出さない様に衝撃波そのものを上空へ反射するがなにせ真昼間の公園。昼休みに食事をしに来た人や、子連れの親子が多すぎて反射だけでは細かい破片による被害をカバー出来ない。

 

 仕方ないけど……やるしか無い!!

 

 ざっと見ただけで爆破範囲内には約二十人から三十人の民間人が居る。それだけの人間を守る障壁を個々人に展開すれば俺が内偵している事が完全に割れてしまうが、人命には変えられない。

 

 そう判断し、俺は民間人の前へ壁になる様に障壁を展開すると同時にデート中の二人へ瞬動を使って移動する。

 

 

 「お二人さん大丈夫か!?」

 

 「キュアヌスか!! サンキュー助かったぜ!! けどこんな街中でデカイ魔法使いやがって!!」

 

 「やはり今のは……」

 

 「奴等の刺客、だろうね。ナギか殿下のどっちを狙ったのかは分からないけど」

 

 

 こうなったら却って好都合かもしれない。今の行動で俺の存在が割れた以上、尻尾を出した奴等を逃す手は無いだろう。ナギもやる気満々で追跡魔法掛けておいたらしく、乗り込む気だ。

 

 

 「つー訳で、姫さんは皆のトコ帰ってろ。俺達は奴等の本拠地をぶっ潰し––––」

 

 「––––私も行こう」

 

 

 そう言ってナギの裾を引くアリカ王女。肝が座ってるとは思ってたけど、まさかの武闘派でしたか。

 

 

 「あーっと、姫殿下? 不敬かも知れませんが戦えるんです?」

 

 「少なくとも帯刀していない人間よりは戦えるぞ?」

 

 

 そう言って真っ直ぐに俺を見る姫殿下。言葉に棘はあるけども表情は真面目なので事実なんだろう、捜査の為に変装してるから剣術が使えない俺よりは確かに戦えるかも。

 

 

 「そもそも、ここに私を一人残しておく方が危険だと分からぬか愚か者。それに私の魔法は役に立つぞ? 忘れたか鳥頭」

 

 「…………ハッ!! いいぜ姫さん、ついてきな!!」

 

 「コイツら、独り身の前でイチャイチャしやがって。俺もファンクラブとか可愛い彼女が欲しいんですけど!?」

 

 「うるさいぞシールドマスター。その様な真似はしておらん」

 

 「ウェスペルタティア(そっち)でもその名前で呼ばれてんのか……」

 

 

 俺千種類も障壁展開出来ねぇってのに……なんでこう一人歩きするのかなぁ。

 

 苦笑いもそこそこにナギの追尾魔法の反応を追いながら街中を走る俺達。民家の壁や屋根を足場にしながら転々としつつ、久々の戦いだからかウキウキしているナギと、同じくどこかやる気に満ちてる姫殿下。後ろから見てるとマジでお似合い、はぁ羨ましい。

 

 

 「てかキュアヌス。俺止めなくていいのかよ? お前内偵組だろ?」

 

 

 そう言いながら、当たり前の様に目の前で剣を構えながら待ち伏せをしていた男を裏拳で殴り飛ばすナギ。その問いに対し、俺は左右から放たれる魔法の矢を反射しながら答えを返す。

 

 

 「確かに止めるべきだろうけどね。直接ナギと姫殿下を狙ったって事は紅き翼(俺達)姫殿下(調停役)のどっちかが邪魔な連中だ。正直な話、敵の下部組織を潰して警戒度を上げるリスクよりも、威力偵察して命令の証拠を手に入れた方が良いと思ったんだよ。それに––––俺は紅き翼(お前ら)の盾だ。リーダーが突撃するのについて行かない訳無いだろ?」

 

 

 俺が答えを返すと同時に進行方向にいた魔法使いからまたもデカイ魔法が放たれる。真正面から打ち出されたのは雷の暴風であり、周囲への被害を考えると無思慮に反射は出来ない。

 

 ただし詠唱自体は聞こえていた為、とっておきの切り札が使用できる。俺は迎え撃つ様に新作の障壁を展開し受け止めると同時に雷の暴風をその場から()()()()

 

 その光景を見て目を見開く姫殿下と襲撃者。ナギも驚いてたが、口笛を吹きながら感心して放心状態の襲撃者を殴り倒している。こりゃ誤解される前にざっくり説明しなきゃいけないな?

 

 

 「魔法無効化能力(マジックキャンセル)だと!?」

 

 「全然違います姫殿下。原理の説明は時間無いから省きますけど、旧世界の陰陽道から五行思想ってのを取り入れて作った障壁で––––ぶっちゃけると対の属性で相剋現象引き起こして無害化してるだけ」

 

 

 詠春から教わった五行思想を術式に組み込んで作った対魔法への最凶障壁。絶対誤解されるから道中で二人に説明をすると、ざっくり言えば西洋魔法の属性を東洋の五行の属性に無理矢理当て嵌めて五行相剋を発生させる物だ。

 

 正直この世界でこの障壁が普及したら絶対魔法使いが食い扶持無くすから他人には教えられない代物であり、使い方を変えれば味方の放つ魔法の威力を増幅させられる。

 

 

 「んじゃあなんでさっきの公園で使わなかったんだよ? そうすりゃあお前も楽だったんじゃねーのか?」

 

 「術式がクッッッッッソ複雑でさ。正直作った俺もこれのどこがどう作用して効果を発揮してんのかマジで分からんのと、性質的に相手がぶっ放す魔法が分からなきゃ無効化出来ないんだよ。だから無詠唱で発動させたとしても見てからの反応になるから対処が後手になるから詠唱か術式が見えてるんならともかく、不意打ちには基本対処出来ないんだよ」

 

 「それを差し引いても恐ろしい盾だな、魔法使い殺しと言ってもいい。なるほど、主も紅き翼の一員である以上最強の一角だったか、認識を改めよう」

 

 「お褒めに預かり光栄です。まぁ正直コレ使うよりは普通の障壁の方が早いし燃費が十倍以上良いし、応用効くしであんまり使いたく無い部類なんですけどね」

 

 

 効率化はしているとは言え、さっきも言った通り作った俺にすらどう言う原理で動いてるのか完全に理解出来ない障壁だ。つまるところ燃費が悪く、魔力量が並の俺だと一日に数えるぐらいにしか展開できない上にそもそもの原理としての相剋現象をどうやって引き起こしてるのかが全く分からん。

 

 後は周りに耳がある以上言わなかった弱点として、あくまで障壁である以上、障壁突破能力を持つ魔法は止められないのも欠点か。

 

 これらの欠点を改善したくても手の入れようがないし、手を入れてコレが普及したら俺は全世界の魔法使いから殺されるだろうから改善する訳にも行かない。

 

 悲しい事実に思わず涙しながらも、本拠地まで辿り着いた俺達はそのまま敵陣に斬り込むのだった。

 



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#5 白髪の刺客

 

 

 ––––敵の追跡と共にその本拠点に乗り込んだ俺はナギと姫殿下のサポートに徹しながらひたすら証拠集めを行ってた。

 

 威力偵察となった以上、証拠を隠滅される前に確保しなくてはならず、是が非でも実になる情報を入手しなければならなかったが、正直言って二人の制圧力が凄まじ過ぎて戦闘自体は直ぐに終わってしまい、必要な証拠集めを終える方が時間が掛かるとは思わなかった。つか、なんなら俺要らなかったよ。

 

 しかしお陰で決定的な証拠を発見した。それは要調査対象となっていた執政官とこの組織との繋がりを示す手紙と、その関連書類。

 

 ざっと目を通しただけで俺たちが目を付けていた組織や、要調査対象との繋がりが薄らと感じられる。流石に流し読みだけでは情報精査までは難しいけど、ガトウに渡せば数日で裏を取る事は可能だろう。

 

 ナギの運命力が引き寄せたのかと思うほど今の俺たちが必要としていた物であり、思わずナギとハイタッチしてしまった。

 

 とりあえずは戦争を終わらせる事が出来る鍵を手に入れた為、騒ぎを聞いて駆けつけて来た警察からの事情聴取を終えて帰ってきたんだけど、姫殿下は一昼夜暴れ回って機嫌が良かったのか、廊下ですれ違ったゼクトとタカミチ君に笑いかけている。

 

 その光景をガトウへの報告帰りに見た俺はきっと悪くない。てかあんだけ暴れたら鉄面皮も剥がれるわな。

 

 んな事を思いつつも、俺は大量に手に入れた情報を整理する為に破壊担当以外の面子と共に情報精査をしようとしたんだけど、ナギや姫殿下狙いの大魔法がポンポン飛んでくるから周りの被害を抑える為に頑張り過ぎたのか、数時間もしない内に疲労感からの眠気に襲われて頭が回らない。

 

 何度も船を漕いでいた俺の様子を見かねたのか、ガトウから『情報の内容次第ではマクギル議員との面会で証人としてナギと共に会ってもらう事になるから寝ておけ』と言われ一足先に寝させて貰い、マクギル議員との面会に体調を整える事になった。

 

 

 –––––そして仮眠を取らせて貰った後、体調が万全な事を確認してからナギ・ラカン・ガトウと一緒にマクギル議員の元へと向かう事となった。

 

 姫殿下は俺が寝ている間に帝国の第三皇女と接触しに行ったらしく面子には居ない。

 

 正直同中にもう一度仕掛けてくるかとも考えたけど、不思議と妨害も追跡も無く、その順調さに言いようの無い胸騒ぎを感じるのは何故だろうか?

 

 思わず発動媒体の指輪を付けた手を握るが、胸騒ぎを疑問として口に出そうとする前にマクギル議員の待つ部屋へと到着する。

 

 中へと入り、ガトウが窓際に立つ議員に向かって声を掛けたんだけど……様子がおかしい。

 

 ––––()()()()()()()()()

 

 

 「マクギル元老院議員」

 

 「御苦労、証拠品はオリジナルだろうね?」

 

 「ハッ……法務官(ブラエトル)はまだいらっしゃいませんか?」

 

 「……法務官は来られぬ事となった」

 

 

 その言葉に疑問を抱くガトウ。それは俺も同感であり、何故今更こんな事を言い出すのだろうか?

 

 仮眠によって回復した思考が思わず回る。マクギル議員は張り詰めた……いや、ナイフの様に鋭い緊張感を出す様な人だったか? いや、そんな人じゃ無かった筈。

 

 ガトウの影に隠れながら議員の言葉を聞き流しつつもそのように考え、胸騒ぎが焦燥感に変化した瞬間––––ナギがいきなり議員へ魔法を放った。

 

 会話の流れに意識を割いていなかった為、思わず驚いてしまったが、それが却って良かったのかナギに声を掛けようとする前に複数人の気配を感じ、臨戦体制を取る。

 

 

 「ちょっ!? ナギおまっ……何やってんだよッ!? 元老院議員の頭いきなり燃やしておまっ!?」

 

 「バーカ、よく見てみなおっさん」

 

 

 ガトウの困惑を制する様にナギが鋭い口調でそう言い放ち、目の前の男を睨む。

 

 

 「––––よく分かったね、千の呪文の男。こんなに簡単に見破られるとは、もう少し研究が必要なようだ」

 

 

 そう言って爆炎の中から一人の少年が姿を現す。

 

 白髪の無表情に近い同年代に見える男、一見無防備に見えるが少なくとも俺じゃ不意を突いたとしても一太刀入れられるか怪しいほど隙がない。……月並みな言葉だけどただ者じゃない。

 

 

「本物のマクギル元老院議員は残念ながら、既にメガロ湾の底だよ」

 

 

 安い挑発だが、直情家のナギを激昂させるには充分な言葉であり、その挑発に乗って殴りかかりに行ってしまった。

 

 しかしその特攻は炎と水を操る男に止められる。俺はナギの援護をしたかったが、目的が俺らじゃなく紅き翼(俺達)だとしたら、マクギル元老院議員として助けを呼ばれたらマズイ!!

 

 幸い政治家では無く生身の戦闘の方がやり易いと張り切るラカンと、居合い拳の達人であるガトウが前衛を貼ってくれている、やるしかない!!

 

 「イス・アス・アイギス・イージス!! 光の精霊11柱(ウンデキム・スピーリトウス・ルーキス)!! 集い来たりて(コエウンテース)敵を射て(サギテント・イニミクム)!! ––––魔法の射手(サギタ・マギカ)!!」

 

 

 障壁構築へ特化した弊害で初歩的な呪文である魔法の射手すら無詠唱で使えない自分に焦りながらも、彼が変声魔法を使用する寸前で呪文を唱え終わり、11本の光の矢を撃ち込もうとした。

 

 しかしその瞬間、部屋の窓を突き破って大量の水が流れ込み、俺の光弾を飲み込んで行く。鼻を突くような潮の匂いから察するに、メガロ湾の海水だろう。そして、盛大にぶち開けた風穴からまた新手が侵入してくる。

 

 

 「––––––6(セクストゥム)。水のアーウェルンクスを拝命」

 

 「水も滴る良い女……って言うには無表情過ぎない? もう少し表情柔らかくしていこうぜ?」

 

 

 思わずそんな軽口が口を突いて出てしまう。海水を浴びたのか多少身体が濡れている彼女はマクギル元老院議員に変装していた男に何処か似ている上に、彼と同じように膨大な魔力量による圧力(プレッシャー)を感じる。

 

 ただし体捌き的には彼よりはどうにかなる感じはするけど……問題は相性が悪いって事だ。

 

 俺自身が障壁を自分に合わせた形に最適化し、状況に応じて特化した盾を作り出す事でこの防御力を維持している。それが魔力量の足りない俺の生きる術だったけど、その反面()()()()()()()()()()()()へは対応し切れない。

 

 

 何故なら障壁で一方向のみを防いだとしても、水流操作を行われれば障壁を起点に二つに裂けた流体に挟み討ちにされる。かと言って全方位を囲ったとしても、人間一人丸呑みに出来る水量を操る術者との魔力量勝負になってジリ貧になり、最終的に押し潰されるのがオチだ。

 

 

 「……抵抗は無意味です、千の盾を極めた男。貴方では私に勝てません。大人しく死になさい」

 

 「ハッ!! 生憎、俺の人生のスケジュールは埋まっててね!! 美人の嫁さん貰って孫に囲まれて大往生するって決めてんだよ!!」

 

 

 そう言って紅蓮を抜き放ちながらセクストゥムと名乗った少女へと斬りかかる。瞬動の入りに合わせ、足元に反射障壁を展開する事でその反発を利用した加速を斬撃に乗せて放ったが、水流操作によって作った水の壁により阻まれ、まんまと反逆者として通報されてしまう。

 

 そして目の前の水壁が形を変えて大量の鞭となって俺に襲い掛かる。相剋障壁を使いたいが、あくまでも海水は実体を持つ液体、本職ならいざ知らず、聞き齧った原理だけを利用しているあの障壁じゃ到底捌けないだろう。

 

 自分の周囲に反射障壁を大量展開しながら、それを足場に空中機動を行い、水流操作の隙間を縫って背後に周り、首筋を一閃する。

 

 しかし、俺の放った一撃は曼陀羅の障壁によって阻まれ、首を落とすどころか皮一枚斬る事が出来ない。…………やっぱ詠春の奴ずりぃ。

 

 ––––けど、だ。一太刀実際に振った事で一つだけ分かった。この女、俺の動きを()()()()()()()()。明らかな実戦経験不足だ。

 

 

 「っ!? 私の背後を!?」

 

 「おいおい、俺程度の動きを見切れないってのは良く無いぜ 初心者(ルーキー)ちゃん?」

 

 「こ、のッ!!」

 

 

 挑発に乗った彼女は無表情ながらも若干の苛立ち混じりに俺の周囲に水の箱を形成し、その内に閉じ込めてようとするが、その程度じゃ相性不利は簡単に覆せる。

 

 四方を囲うように障壁を展開し、水の檻の中で一定の空間を作り出しながら瞬間的に術式へ別の術式を加え直して気と魔力を同時に流し込む。

 

 そして、その反発を起爆剤替わりにしつつ爆発によって水流を派手に吹き飛ばすと同時に瞬動で間合いを詰め、刀へ気を込めて一気に斬り裂く。

 

 「虎影斬!!」

 

虎の様に俊敏且つ鋭い一撃を放つこの技は単純な剛剣に加えてもう一つ能力があり、それこそが障壁や鎧を破壊する装甲破壊の技だ。

 

 

 「障壁がッ!?」

 

 「よーく覚えておきな初心者(ルーキー)ちゃん!! これが紅き翼のシールドマスター、その実力だッ!!」

 

 

 俺は振り抜いた刀の刃を反転させ、胴体目掛けて逆袈裟に振り抜き、その場から彼女を吹き飛ばす。

 

 そしてトドメを刺そうとした瞬間、床から巨大な石の柱が隆起し、周囲ごと全て吹き飛ばされた。

 

 その衝撃に便乗し、メガロ湾に飛び込んだ俺達は闇夜に紛れながら逃走する事となるのだった。

 

 

 「昨日までの英雄呼ばわりが一転、反逆者か。ヌッフフ、いいねぇ人生は波瀾万丈でなくっちゃな」

 

 「タカミチ君達は脱出出来たかな……」

 

 「……姫さんがやべぇな」

 

 「まっ、とっととトンズラしようぜ?」

 

 

 そんな風にため息を吐きながら、俺達は警備が手薄な場所目指して泳ぐのだった。





 セクストゥムちゃんがフライング登場。作中でも語られてましたが、対主人公にかんしての相性が非常に良いので彼を倒すために予定より大幅に早く起動しました。

 その為、フェイトの様なデフォルト状態に近いです。

 


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