ザフト一般兵転生録~ジンさえあれば何も言わない~ (カニタマックス)
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え!?種世界に転生!?良いんですか!

ジン...いいよね...


 やっとこの時が来た...夢にまでみたガンダムSEEDのMS達が目の前にズラっと並んでいる。茶髪の青年があまりの興奮に自然とガッツポーズをしていた。

 

「俺が...フリーダムを倒す! ジンが最強と言うことを世に知らしめるんだ...!」

 

 軍学校の正門前でなかなか頭イカれたことを言っているこの男はガイ・ランディア16歳コーディネーターだ

 

 ガイはザフト穏健派の議員である父を持ち母はMSのエンジニアでジンの関節を作った人である。

 両親ともコズミックイラ世界に置いては凄い人たちに思えるがシーゲルの側近とか一から1人でジンの関節を作り出した訳ではないので名前を調べれば出てくる人位..ただそこそこ裕福と言うだけの家庭環境に育った。

 ガイが8歳の時、母が持ち帰っていた資料が目に入ると

「MS開発報告書」と書かれていた。まだ8歳の為msしか読めなかったが、その文字を読んだとき猛烈な頭痛が走りそのまま気絶してしまった。

 家政婦さんが見つけてくれたので大事には至らなかったが目が覚めた瞬間、前世の記憶が甦っていた。

 前世は平凡な就活に喘ぐ大学生だったが狂気のジン好きで、夏休みにプレハブ小屋をまるまるジオラマにしてヤキンドゥーエを再現しようとして一週間休まず作業に没頭して死ぬくらいである。正気の沙汰ではない。

 ガンダムSEEDのことになると厄介オタクになるため手がつけられない。ジンを語らせると更に加速する。

 フリーダムに並々ならぬ恨みを持っておりそれもそのはず、ジンはフリーダムに瞬時にバラバラにされるからである。

 10歳の時には今がどの時系列か父と母の職場関係を独自に調べ尽くした。そしてひたすら勉強とトレーニングを重ね、13歳の時両親に軍人になりたいと話した。両親は複雑な顔をしていたので自分から何でもないと伝えた。

 15歳の自宅で趣味の格闘技をやっていると血相を変えた両親から呼び出された。何事かと居間へ向かうとテレビでは幾度となくみたユニウスセブンの爆発が目に飛び込んできた。母は泣いていた...友人が巻き込まれたらしい...父は急いで議会に登院する準備をしながらいつになく真剣な眼差しで俺の両肩をがっしり掴んで口を開いた。

「これをみても本当に軍人になりたいと思うなら止めはしない。これからナチュラルと戦争になるだろう...ガイどうする? 今決めろ。」

 

「.....やるよおれは。俺は戦争に行きたい訳でもないしナチュラルとかコーディネーターとかどうでも良いけど俺は母さんが手掛けるMSに乗って父さんが信じる世界を守っていけたらって...それに父さんが何時も言ってるじゃないか。例え死んだとしても後悔の残る死に方だけはするなって...此処で有象無象に紛れたら絶対に後悔する...そう思ったんだ。」

 

 父はそうか..と納得したように肩から手を下ろした。

 母は父に支えられながら立ち上がり、「ガイが乗るなら

 最高の物を作らないとね!」声を震わせながら目に涙を残しながら明るく笑った。

 ガイは2人の手を握り、芯の入った声で両親に語った。

「この中で誰が死んでも後悔は残さない。死ぬ一秒まで全力で生きよう。」

 三人は各々を見つめながら黙って頷いた。

 ガイはそれから12月の軍学校試験まで必死に勉強し、筆記、適性検査、面接と次々にパスしていった。努力の甲斐もあり、総合8位を取ることが出来た。血のバレンタインから急激に忙しくなりげっそりして帰ってくる両親だが合格通知と成績優秀賞が届いた日は生気を取り戻し盛大に祝ってくれた。

 そして今、その軍学校の門を叩こうとしていると聞いたことのある声を聞いた。どうやら親御さんと別れの挨拶をしているようだ。...お。どうやら終わったらしい此方に向かって歩いてくる。

 ちらっと後ろを確認するとやはりそうだ。特徴的な緑の髪、幼さが残る中性的な容姿に目を惹かれる。元の世界では32回回想で殺された男として界隈で有名になった。有名人を見かけた時のように長時間凝視してしまい

 それに気づいたニコルはガイの元へ寄ってきた。話しかけてくるつもりだ...正直に言うわけにもいかないしどうするか...

 

「ボクをジロジロ見て、なにかありましたか?」

 

「いや、すまない。綺麗な声が聞こえたから気になってな...」

 

「はぁ...? そうですか..貴方もここに入校するんですよね? ニコル・アマルフィです。どうぞ宜しくお願いします。」

 

「ああ...丁寧にどうも。ガイ・ランディアだ。よろしく。」

 

「ランディア....? どこかで............」

 

 ニコルが俺の名前を聞いた瞬間、若干顔が険しくなり考え事を始めてしまった。どういうことだろう? するとニコルが閃いたようでニコニコしながら話しかけてきた。

 

「あっ! 思い出しましたよ! もしかしてお父さんは穏健派のランディア議員ですか? たしかランディア議員の奥さんはジンを開発したteamの1人だったような

 

 驚いた...ニコルが博識キャラなのはアニメを見たら誰もが感じることだろうが何故知っているのかわからない

 実際自分でも両親をネットで調べたことがあるが案外出てこない。裏方役みたいなものと父さんも母さんも言っていたしそう言うことなんだろうと納得したが一体何処まで知られているのだろう...? 

 

「良く知ってるな。家は目立つ感じじゃないんだが

 

「軍に入るって決めた頃色々調べたんですよ。偶々覚えていただけなのであんまり深い意味はないです。」

 

「なんだそうなのか。おれはてっきり....ん?」

 

 後ろの方で軽い人だかりが出来ている...どうやら人が喧嘩をしているようだ。巻き込まれるのは面倒だが見る分には面白い。

 

「誰かが口喧嘩になっているみたいですね。」

 

「みたいだな。ちょっと見に行こう」

 

「ええっ! ちょっと!」

 

 ニコルを引き連れ人だかりに近づく...一応原作キャラが居ないか確認するため人の隙間から中心を覗くと、そもそも喧嘩しているのはイザークとアスランだった。

 てかこれ喧嘩っていうよりアスランがボコボコに言われてるだけだわ。めっちゃ啖呵切ってる。圧が凄い。

 要するに成績が2番だったからひねてるようだ。しかもアスランが煮え切らない感じの対応だから火に油を注いでる状態だわ。....ん? 向かいにいるのディアッカだ! 

 あのニヤつきかた楽しんでるなぁ...因みにミゲルは期が違うため居ない。今頃エース級の戦果を挙げているころだろう。そんなことを考えているとニコルが話しかけられていた....だれだ? 

 

「なぁなぁ。なんの人だかりなんだ? これ。」

 

「え? ああなんか喧嘩みたいですよ」

 

「ん? 誰と話してるんだ? ....なっ! ラスティ! 

 

「うぉ! なんでおれの名前を知ってんだよ!」

 

「え! あ! いや...そう! 顔が瓜二つのラスティっていう友達がいてなぁ! そいつはラスティ・マックイーンって言うんだ! 不思議なこともあるもんだなぁ! ハハハハ...」

 

「へぇ...? 確かに不思議だな? まぁいいか! おれはラスティ・マッケンジーっていうんだ宜しくな! 

 

「俺はガイ・ランディアだ。よろしく。」

 

「ボクはニコル・アマルフィって言います。よろしくお願いしますね。」

 

 それなりな握手をして俺たちは校内の案内に沿って手続きを進め、制服の採寸や備品の受領をして終わった。その後学生が住む部屋に案内された。二人部屋配分のようで部屋割りはアスランとラスティ、イザークとディアッカ、ニコルと俺になった。危なかった...イザークと一緒になったら目も当てられない。説教されるのは御免だ

 因みにこの3部屋隣通しである。入試成績上位者を固めるのには何か訳があるのだろうか? まぁ明らかにクルーゼ隊メンバーの奴らは優秀だから、講義の内容が分からなかったら直ぐ相談できるのがいい点か...今日はもう寝よう...

 

 ~翌朝~

 

「んお...まだ5時半か。起床まであと30分...起きるか。」

 

 ニコルはまだすやすやと寝ている。毛布が若干崩れておりニコルの意外な一面が見えたところで交付された衣類の手入れや身支度を済ませる。一通り終わったところで

 ニコルを見るとまだ起きない。あまり大きい音は出さないように注意はしたものの振動や音は少なからず出ているので起きてもおかしくはない。初日でここまでぐっすり眠れるのは最早才能である。そして起床を促すサイレンがなった。

 

「んん...おはようございます..」

 

「おはようニコル。朝、弱いのか?」

 

「はい...あんまり得意では...」

 

「そうか...兎に角着替えろ。点呼に出てから飯にいくぞ。」

 

 ニコルはそんなに早くはないながらも的確な動きで身支度をぱっぱと済ませ健康状態の異常の有無を報告すると直ぐ様食堂に向かった。用意されているトレーを受け取り空いている席にさっと座る。ニコルは一口目から顔が渋くなった。

 

「....それなりですね。ここのご飯は。」

 

「口に合わないってか? おれはそこそこだと思うけど...」

 

「口に合わない程じゃないですけど美味しい訳じゃないですよね。」

 

「まぁな。栄養重視で味は二の次なんだよ。たぶんね。」

 

 食堂の朝食について、あれやこれや話していると隣に誰か座ってきた。反射的にそちらを向いたらラスティともう1人...誰だ? 全くわからない主要キャラではないだろう。滅茶苦茶顔が厳ついってこと以外わからん

 

「よっ! ガイ! ニコル! 隣いいか?」

 

「別にいいけど、もう座ってるじゃないか...」

 

「隣の方は?」

 

 ラスティ「コイツは俺のルームメイトでゴルドリオって言うんだ。なかなか威圧感あるやつだが話せばなかなか面白いやつだぜ!」

 

「ゴルドリオ・エヴァンスだよろしく頼む。」

 

「ガイ・ランディアだ。よろしくな。」

 

「ニコル・アマルフィです。よろしく。」

 

「挨拶が済んだところでさっさと食おうぜ。飯が冷めちまう。」

 

 時間も押していた為急いで朝食を食べ、講義に向かった

 今日は初日という事で施設の説明やカリキュラムのスケジュール等の確認で1日が終わった。次の日から座学が始まったがザフトの歴史やMSの基本構造いわゆるロボット工学である。また学生からやり直すのは面倒かと思っていたが意外と楽しめている。暗記系の学問は得意だしMSについて学ぶのは全ガンダムファンの夢でもある

 そして一週間が過ぎた頃、遂に来た...MSシミュレーターの時間である。機体設定はプロトジンである。基本操作と最後にメビウスを撃墜するという内容だった。当然ながら未来のクルーゼ隊はぶっちぎりだった。アスランが歴代新記録でメビウスを撃墜し、イザークがそれにミリ単位で届かずキレていた。次点でディアッカ、ラスティ、ニコルって感じだった。大体5秒刻みでアスランと差がある。モニターで見ててわかったが、めっちゃ自由度が高い戦場の絆ってとこだろう。はっきり言ってメチャメチャ楽しそうだ。それにしてもゴルドリオ上手いな

 お...倒した。てことは次は俺の番か。

 

「7番ガイ! シミュレーターに着け!」

 

「はい!」

 

 先ずは起動から諸々立ち上げていく。講義を寝ていなければ簡単である。見たことあるコックピット画面が出てきた。実際叫びたいくらいテンション上がっている。周りの目があるので流石に我慢したが。基礎操作は歩く、止まる、ブースト、視点操作、コンテナ運搬、マシンガンを的に撃つ、重斬刀をふる、最後の2つがカッコ良すぎて涙がでそうだった。いよいよメビウスが出てきた。

 このメビウス意外と動くマシンガンで落とそうとすると時間がかかる。だがガン前ブーなら直ぐ追い付けるので

 片手に刀、片手にマシンガンで突っ込む作戦にした。メビウスが来るまでに武器を持ち、作戦区域の真ん中に陣取る。すると間もなく教官からメビウスの作戦区域侵入を通知される。

 俺はレーダーに敵機が反応するとスラスターを目一杯吹かし有効射程に入るメビウスに向かってマシンガンを乱射する。メビウスは戦闘機の持ち味を生かしバレルロールで弾丸を回避しながら近づいてくる。ワンマガジン使ったところでマシンガンを捨て、格闘圏内まで接近する

 メビウスが機体を水平にし、レールガンが火を吹こうとしたところで砲身にむかって斬りかかった。

 

「うおおおぉぉぉぉ!!」

 

 メビウスの砲身は綺麗に真っ二つになり、そのまま横薙ぎにメビウスを横一閃に切り裂かれ爆散した。

 

「そこまで! いい腕だ! ガイ学生、暫定3位!」

 

 周りの学生から歓声があがる。ニコニコしながら歓声に応える。めっちゃ余裕な感じを醸し出しているが、内心あまりの興奮に悶絶していた。

 

「(ヤバヤバヤバカッコ良すぎんか! 何今のあんなんジオラマ確定のカッコ良さやんけ! やっぱジン最高! 

 

 興奮もつかの間イザークがイライラしながら此方に向かってくる。説教タイムだろう。

 

「キサマ! なんだあの戦いかたは! 遊び感覚で戦場に出る気か!」

 

「おい! イザーク! ....」

 

 アスランが俺を庇いに来ようとした瞬間に教官がわざとらしい咳払いで場を止めた。そしてわざと周りに聞こえるように俺に話しかけた。

 

「ランディア学生! 君の攻めかたは目を見張る物があった。後学の為何故あの様な攻めかたをしたのか聞きたい!」

 

「はっはい! 観戦モニターで前の学生の戦闘を見る限り敵機は回避を優先することに気づきました。」

 

「ほう...確かにそうだ。それで?」

 

「なので弾で牽制して回避させ、体制が崩れた所で武装を無力化、他に敵が居ないのでそのまま撃墜しました。」

 

「素晴らしい! ここで周りの学生諸君に問題だが、先にやったザラ学生以下とランディア学生の決定的な違いがある。それは何か...わかった者挙手!」

 

 ざわ...ざわ...と近くの人たちと相談しあう学生たち。

 なかなか手が上がらない中でニコルがはっと閃いた顔で

 手を上げる。すると教官がビシッと指名した。

 

「よし! アマルフィ学生!」

 

「敵を意識した行動が出来ているかどうかではないでしょうか。」

 

「その心は?」

 

「僕らはメビウスを一体倒せば良いと油断して動いていました。実際の戦闘なら急な増援等で有利が不利になる可能性があります。その点ランディア学生は敵の脅威を排除してから撃墜させていたのでそこが違う点だと思います。」

 

「よし! 今年の学生は優秀だな! 因みに本教育課程の最後にMS小隊練度判定と言うものがある。5人一組で

 ジンに搭乗し、ペイント弾で模擬戦闘を正規部隊とやるというものだ! 今言ったことが意識出来てないと戦闘にもならないぞ! 今のうちに意識しておくように! よし! じゃあ次!」

 

「クソッ! あいつ!」

 

「イザーク落ち着けよ。取り敢えずお前の方が順位は上なんだしさ。そうイラつくなって。」

 

「イラついてなどないわ!」

 

 イザークイメージとまんまだな...ディアッカ楽しんでるじゃん。クルーゼ隊の空間に癒されているとラスティ

 ゴルドリオ、ニコルが寄ってきた。ラスティはやたらニコニコしてる。

 

「凄いじゃないか! どうやったらあんな動きができるんだ!?」

 

「MSの構造が理解できればわけないよ。」

 

「ガイのお母さんはジンの設計チームの方でしたね。」

 

「む!? そうだったのか...あとで師事を頼めないだろうか。」

 

「座学ならニコルの方が適任だぜ?」

 

「いや、MSの格闘戦についてだ...座学は間に合っている。」

 

「あ、そう...でもシミュレーターが使え無いんじゃあ...」

 

「そこまで! よし! 全員終了したな。後日掲示板に結果を貼り出しておくので確認するように! 加えてシミュレーターは明日から課業外でも使用可能とするのでどんどん使うように! だが使用状況が悪い場合使用禁止とするので心しておくように! 以上解散!」

 

 解散の号令がかかり他の学生が続々と居室に帰る中、俺に目を光らせるゴルドリオ、明日の俺を察して苦笑いするニコル、ニヤリと笑って俺を見るラスティ。ラスティが俺の肩にポンと手を置き、去り際に「明日からヨロシクな♪」と一言添えて帰っていった。ゴルドリオもラスティに付いていった。

 

「ボクも協力しますよ。勉強になりそうですし。」

 

「ああ...頼む。俺たちも戻ろうか...」

 

 ショボくれる俺に慰めてくれるニコル。普通に染みた。

 ニコル良い子やホントに...原作だと生意気な感じが若干感じられたけども優しさが身に染みる。明日から地獄の千本ノックみたいなことに付き合うと思うと足が重い

 取り敢えず休もうと居室に向かって歩きだした所でCV石田彰に呼び止められた。何だよ全く...

 

「あの! ちょっといいかな...」

 

「...何か用事カナ?」

 

 あまりの精神的疲労度にカタコトになっていたがまだいける...まだ大丈夫と言い聞かせた。

 

「さっき教官が小隊での試験があると言っていただろ?」

 

「....そうだな。」

 

「だから..その...俺も組に入れて欲しい!」

 

「それに関してはニコルは誘おうと思っていたくらいだから問題ないが...続きがありそうだな。」

 

「それにともなって俺も明日の特訓に入れて貰えないか!」

 

 ガイ「なん....だと....(気絶」

 

「わっ! ガイ!」

 

 ただでさえ勉強と訓練で忙しいのにコイツらの面倒なんか見ていられない...あまりのプレッシャーにストレスがマッハになってしまい気絶してしまった。夜には目が覚めたので取り敢えず良しである。流石に倒れた次の日から無理させないだろうと淡い期待を持っていたがいとも容易く打ち砕かれ時間ギリギリまでやらされた。おかげでMSでのバレルロールが死ぬほど上手くなったよクソが。俺の受難はまだまだ続く...



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ジンを駆る俺に不可能は無い!

月1と言ったな...?あれは嘘だ。
暇な時間が多いのでドンドン書けますね。
助言を受けて名前を取ってみましたが意外といけるもんですね。
軍学校編は10話前後で終わらそうかなとか考えてます。
まぁノリで書いているのでわかりませんがHAHAHA



 プラントに管理された晴れやかな早朝、景気の良い天気とはうらはらに死人のようにふらふらと食堂に向かう男がいた。徹夜明けである。

 

「クソっ....何で朝なんだ。誰だよ最大24時で終わろうって言ったやつ...もう朝の6時だぞ! こんなコンディションで講義が受けれるかってんだ...」

 

「文句言っても仕方ありませんよ。それに24時までって言ったのもガイだし、延長を嬉々として容認したのもガイですよ。」

 

「ガイ...悪かった。俺から声を掛けるべきだった。」

 

「いや、良いんだ。ゴルドがスポンジ並みに教えた事を吸収してくれるから此方も楽しくなっちゃったのは間違いないし、途中でヤバいってわかってても続けたのは俺だ...罰は甘んじて受けよう。」

 

 ガイ達が入校してから大体一週間経ち、仲良しグループも固まってきた。

 ここ数日は先日のシミュレーター以外は座学がほとんどで一回の講義が濃密の為そろそろパンクする人が出てきた。

 ゴルドリオもその1人で、全然ついていけているガイに解説を頼んでいた。因みにゴルドリオの同部屋のラスティにも頼んだが天才肌過ぎて教えれないしアスランは速攻で寝てしまいとても良い寝顔をしているため頼みづらく此方に来たのだという。

 食堂に向かっている途中の角でイザークとディアッカが現れた。イザークとディアッカとはシミュレータールームで度々顔を会わせる内にそれなりに話す仲になった。

 たまにスコア勝負をすると流石にエースパイロットなかなかに強く勝てない。その度にドヤられるのはウザい反面可愛くもある。

 このまま顔を会わせた時の反応でも予想しておこう。

 おい! キサマ! かなんだその覇気のない面は! かなと思いつつすれ違い様に今出せる精一杯のパッションで挨拶しようと思う。

 

「オファヨウ...イザーク。」

 

「おい! ガイ! なんだその面は! もっとシャキッとせんか!」

 

「徹夜明けなんだ...勘弁してくれ。」

 

「そんなことで今日のシミュレーター不甲斐ない結果だったら許さんぞ!」

 

「そんなに熱くなんなよイザーク。そろそろスコア追い付かれそうだからってカリカリしてても仕方ないだろ?」

 

「ええい! 五月蝿いわ! 行くぞディアッカ!」

 

「へいへい。じゃあなガイ。お前らも。」

 

「ええ、また。」

 

「ああ、またな。」

 

 イザーク達は嵐のように去っていったが、予想はだいたい合っていたがまさか名前呼びされるとは...多少驚いた。

 食堂内ではアスランとラスティが一緒に朝食をとっているのを見かけたが、直ぐに食べ終わったようでさっさと行ってしまった為接触は無かった。そう言えばアイツらルームメイトじゃん...アスランのコミュニケーション下手は軍学校からなんだろう。まぁ父親あれだし母親亡くしてるし、マトモな友人が小さいキラだけとなればおかしくはない...のか? まぁいいか。此方もたわいも無い話をしながら食事を済ませ講義へと向かった。

 

「集まったな! 今回は待ちに待ったMSシミュレーションだ!」

 

 昨日の講義で発表されていたので知っていたが楽しみにしていた学生達から歓喜の声があがる。それもその筈だこれまで座学尽くし、戦場の怖さを今一理解できてない学生達からすれば退屈な座学がリアルなTVゲームなったような物。嬉しくない筈がない。

 

「ハッハッハッハ! 相当座学が堪えているようだな! 今回の想定はMSジン2機で哨戒任務中、敵1分隊メビウス3機と遭遇し戦闘になった! ...ということなので

 先ずペアを作って貰う! ルームメイトが良いか? うん! 取り敢えず今回はルームメイトで組んで貰おう! やる順番は部屋番号の若い方からとする! 各人、規定兵装の中で好きに武装を選択してよいぞ!」

 

「僕らは遅い方ですね。」

 

「そうだな...イザークやアスランは部屋隣だからアイツらも遅くなるか...てかアスランの所どうするんだ? 気になるな...教官!」

 

「どうした! ランディア学生!」

 

「アスランの部屋だけ三人部屋です!」

 

 教官「なにィ? ....ホントだ。では三人で行くか! その代わりメビウス隊の一段階練度を高めておく。それで良いかザラ学生! マッケンジー学生! エヴァンス学生!」

 

「問題ありません。」

 

「此方も問題ありません!」

 

「右に同じく!」

 

 教官「その意気だ! メビウスとはいえ設定としてはネームド一歩手前くらいの実力だ! 余裕かましているとあっという間に撃墜されてしまうので注意するように!」

 

 教官がニヤリと笑う。基本的にコーディネーターはナチュラルを侮っている節があるので他の奴らは今の発言にそんな危険は感じていないと思うが、ネームド一歩手前というのは劣化版ムウさんということである。学生が相手にできる代物ではない。しかも一段階と言った。

 軍が保有しているシミュレータの難易度設定にこれ程の振れ幅があるのかと...多分この前のとは比較にならない強さだろう。まぁ前は反応はするが受け身過ぎた。此方が仕掛けなければ棒立ち状態なのだ。

 それがバンバン動いてくるとなるとこれは相当地獄になるぞと...

 

「何だコイツら! 動きが...うわぁぁぁぁ!」

 

「クッソー! コイツら! ぐわぁぁぁ!」

 

 mission falied

 

 教官「油断したな! この前のとは格が違うぞ! 集中して挑めよ! 撃墜された者はサーキットトレーニングをした後再チャレンジしてもらうからな! お前ら行けぇ!」

 

「「ひぃぃぃぃ!」」

 

 撃墜された学生がトレーニングルームに走っていく。

 

「ヘヘッおれは二刀流で行くぜ! シミュレーターだろうがナチュラル共に負けるわけねぇだろ!」

 

「おい! それは舐めすぎだって! 教官も許さないって....教官?」

 

「ククク...まぁやってみろ。」

 

「あっいいんだ。」

 

「ほらなぁ!? おれはスピード特化でメッタ切りにするからよ! 後ろから援護しろよ!」

 

「わかった!」

 

「アホだろアイツら...」

 

 ~数分後~

 

「ぎゃああぁぁぁぁ!」

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

「愚か者がぁ! 格闘オンリーなど学生風情が扱えるかぁ! 行けぇ!」

 

「ちくしょー!」

 

 その後も即席だが色々な戦法考え、それに合わせた装備を持って挑んでいったがクリアするものは殆どいなかった。そのクリアした組もまぐれ当たりでのクリアだったので参考にならなかった。そして原作組の番トップはイザークディアッカ組だ。イザークのジンはマシンガンスピード重視カスタム。ディアッカのジンは特火重粒子砲

 射撃特化カスタム。この頃から戦法は固まってたんだなとちょっと感動してしまった。

 

「次はイザーク達の番ですね...」

 

「ああ、万に一つでも負けることは有り得ないが良く見ておくか。」

 

 因みにこのシミュレーションは最初から敵が出てくるわけではなく、巡回ルートの途中で出てくる。意外と余裕があるのだ。まぁ自信のない者にとっては死刑執行待ちのような絶望感があるが...ナチュラル差別民の二人にはそんな物はなかった。

 

「ディアッカ! 最初は俺が牽制する抜かるなよ!」

 

「りょーかい! じゃあまっ行きますか!」

 

 すると間もなくレーダーが敵を視認。横隊でバランス良くレールガンを浴びせてきた。

 

「そんな眠っちまいそうな攻撃でぇ!」

 

 イザークのジンが一気に前にでてマシンガンを乱射。回避運動を取りながら下がりつつ、大きく避けた為に孤立した1機にディアッカが狙いを定める。ロックが完了した瞬間躊躇いもなくいつもの決め台詞が飛び出た。

 

「グゥレィト!」

 

 そこそこのチャージ時間から放たれる極太ビームは一直線にメビウスを貫き破壊した。残るは2機、合流した2機のジンは旋回して同時に強襲してくるメビウスに応戦しつつ隙を伺っていた。

 

「ええい! チョロチョロと! ディアッカ!」

 

「オーケイ! こいつでビンゴだ!」

 

 特火重粒子砲が1発2発3発と火を吹くが、この武装ビーム兵器とは言え狙撃が目的ではないため弾速が遅い。

 距離が離れているとなかなか当たらないのである。

 だがそこは射撃の名手ディアッカ。メビウス1機にビームをかすらせ動きを抑制、才能の片鱗を見せつける。

 ここで好機と見たイザークがマシンガンを無傷のメビウスに向け乱射しながらスラスターフルスロットルで近づく。

 

「でぃぃええぇぇぇぇい!」

 

 此方もマシンガンを何発か当て動きを止めたところで重斬刀を抜き放ち、豊富なスラスターを生かして2連続で

 メビウスを切り伏せた。当然メビウスは爆散し、イザーク、ディアッカのコンビは突破した。次は俺らか...

 

「良し! 初めての高得点がでたな! 次! ランディア学生の組!」

 

「はい! よし...行くぞ!」

 

「はい! 頑張りましょうねガイ!」

 

 ここまでかなりの時間があったので機体編成や作戦はもう決まっているし打ち合わせも済んでいるので早々と機体と武装を決める。決めた設定は他の学生達が見ているモニターで表示されるのだが表示された瞬間、学生達に

 どよめきが走る。ガイがスピード特化一歩手前のマシンガン装備、ニコルが大型ミサイル装備にマシンガンを載せた重武装。何が悪いのかというのも特化型と大型ミサイルは今のところ良いとこなしのほぼ自滅で終わっているからである。どよめきを他所にシミュレーターに乗り込もうとした二人だが教官から話しかけられた。

 

「なかなか興味深い選択だが何か考えがあるのか?」

 

「一か八かってところの作戦ですがね...決まれば直ぐでしょう。」

 

 ガイの強気な発言にウオオオオオと沸き立つ学生達。

 シミュレーターを起動し前へと進む。この次点で若干の差が着き始めている。ニコルのジンは過積載なので移動速度が明らかに遅いのである。そんなこともどこ吹く風と先を進んでいく。するとレーダーが敵を捉えた。

 

「来た! 俺の合図で正面に撃て! 離れるなよ!」

 

「了解です! 気をつけてくださいね!」

 

 メビウス隊は此方を補足するとともにいつものパターンで突っ込んで来た。まだ距離があるがレールガンは射程が段違いなので先制されるのは予想通りだ。

 

「出来るだけ最小限で避けろ!」

 

「わかってますよ! 話しかけないで!」

 

 イザーク達と違って2機ともほぼ隣にいる位の距離感であるため高密度な弾幕が来たが何とか回避し、相手の射撃が止んだ所でニコルに指示をだす。

 

「今だ! 撃て!」

 

「了解です!」

 

「良し! 突貫する! そっちは頼んだぞ!」

 

「任せてください!」

 

 ニコルのジンから大型ミサイルが中央2発、左右1発ずつ三方向に射出される。その有効範囲ギリギリ後方にビッタリ着くようにガイのジンが後を追う。大型ミサイルは軽く避けるだけで避けれるのでメビウスもあまり動かない。それを理解した上での戦法だった。

 

「そこだ! 当たれぇぇぇ!!」

 

 ミサイルがメビウスに避けられた瞬間に一糸乱れぬ掃射でミサイルを爆発させる。そこそこの近距離で爆発したミサイルはメビウスにそれなりな損傷を与え、正面の視界を爆煙で奪う。メビウス隊はランダム回避で動こうとした瞬間、眼前に重斬刀を今にも振り下ろそうとしているジンが煙の中から現れた。

 

「チェェェストォォォォォォ!!」

 

「もう一丁! でぇぇぇぇやぁぁぁ!」

 

 そのまま中央のメビウスを真っ二つにし、直ぐ様近場のメビウスに急接近し、ゴルドリオとの特訓で極めたバレルロールからの回転切りで左のメビウスを続けざまに破壊した。その頃には右のメビウスが煙幕の中を離脱した

 がそこにはもう一機のジンが3連装ミサイルを構えて回り込んでいた。

 

「これで終わりです!」

 

 両腕の小型ミサイルを近距離で全弾撃ち尽くし、一発がコックピットに直撃し綺麗に爆散した。

 

「良し! ナイスだニコル!」

 

「ボクもこのくらいやらなきゃ! マシンガンは要らなかったですね。」

 

「まぁ保険だ保険。大は小を兼ねるって言うだろ?」

 

「良し! 作戦成功だ! 暫定1位だぞ! やったな!」

 

 教官の熱い激励に迎えられシミュレーターを降りた。

 蓋を開けてみれば完勝だったな。ダメージは受けていないし、最速での突破だったからスコアも高かったらしい

 まぁでもあの戦法が刺さらなかった場合、マシンガンでジリ貧戦闘を繰り広げるしかなかったんだけどね。

 刺さったからよしとするかな...おっ、でたな本日のトリを務める最強トリオ。

 

「再チャレンジといったが、時間が押している為に次で最後だ! 早くシミュレーターへ搭乗しろ!」

 

 時間が思ったより無いため略式でささっとシミュレーターに乗せられた。準エース級の部隊設定らしいが実際どの程度の実力なのだろう? それに連携の不安もある。ラスティとゴルドリオはそれなりに癖を掴んでいるが、問題があるとすればアスランだ。殆どシミュレーターを使っているのを見たことがない。普通に考えれば連携などとれるわけないが...キラと同等の操縦センスがあるとするならばあるいはって処か...

 

「ニコル...どうみる?」

 

「アスランが連携とれないんじゃないかと思いますね。ガイはとれると思います?」

 

「いや...どうだろうな。だが俺の見立てではそんな直ぐにはやられないと思うんだ。ん、編成が決まったようだな。」

 

 ニコルも大体同じ意見のようだが流石にアスランの本質ポテンシャルまでは見きれていないようだ。武装はアスランがバス装備、ゴルドリオが特火重粒子砲装備追加装甲型、ラスティがマシンガン近接仕様のようだ。やはり事前に作戦を練ってるわけでは無さそうだ。この限られた環境の中でどうするのか...

 

「作戦開始! 哨戒任務にあたれ!」

 

 教官の命令でナビの通りに進んでいく。するといつもの

 倍の早さで敵が出現した。教官...時間そんな時間無いのか...

 

「敵っ!? 二人とも先行してくれ。援護する。」

 

「了解だ! 仕掛ける!」

 

「俺たちは作戦通り行くぞ! 援護しろよ? アスラン!」

 

 ゴルドリオとラスティが前にでて、それをアスランが少し後ろで出方を伺う形となった。射程の長い特火重粒子砲を持つゴルドリオが敵に向かって攻撃を仕掛ける。

 それなりに狙いはつけている筈だが掠りもしない。お互いランダム回避で攻撃を避けて続け一進一退の攻防を繰り広げるが、ゴルドリオの特火重粒子砲にレールガンが被弾してしまい投げ捨てる。直ぐ様マシンガンに持ち替え戦闘を継続する。敵のメビウスの今までとは格段に精度の良い射撃に加え、少しでも隙を見せれば裏を取ろうとしてくるので非常に精神が磨り減る。痺れを切らしたラスティが再度突撃をかけた。

 

「ああっクソ! アスラン援護しろ! 数を減らすぞ!」

 

「了解だ! 無理はするなよ!」

 

 アスランは一機に狙いを定めバズーカ3連射で進路を塞ぎ、相手が最小限の回避で避けようと動いたところに上からラスティが切りかかった。スラスターが上手い具合に破壊できたのでダメージコントロールする前にマシンガンで仕留めた。その間ゴルドリオは無理ない程度に他の2機にむかって牽制射撃を行っていた。遅れてアスランも射撃を開始したが、間を突かれて止めを差し終えて瞬間無防備のジンに目掛けてレールガンが迫る! 抜かれたのがわかったアスランがラスティに向け叫ぶ! 

 

「しまった!? ラスティ!」

 

「!? チィ! ぐあぁ!」

 

「ラスティ! 大丈夫か!」

 

「クソ! 左腕をやられた! ダメージコントロール! よし! まだいける!」

 

 流石にエース級、一瞬の隙を突かれラスティに攻撃を許してしまい左腕が損傷してしまう。ここを好機と前線を張っていたジン2機を回り込みラスティに向け突撃を掛けるメビウス。即座に反応したアスランがゴルドリオに

 指示を出しラスティの救援に向かう。

 

「下がれ! ラスティ! 俺たちも行くぞ!」

 

「応! 食らえィ!」

 

 全力でメビウスの後ろを着いていきマシンガンを連射する。そんなのは百も承知でランダム回避で避けられてしまう。いや若干当たってはいるが機能不全に至るほどのダメージは与えられていない。焦る二人、そろそろレールガンの射程に入る筈...あの精度で狙い撃たれれば一堪りもない。長期戦になっているため残弾も残り少ない

 どうする...二人が思案を巡らし集中を欠いているとラスティの声が響いた。

 

「ゴルド! アスラン!」

 

 なんと言うことか! ここでまさかの2機同時のインメルマンターンで瞬時に後ろに回られてしまった。全速力で前にスラスターを吹かしているため急には方向変換できない。背後には数秒後には放たれるであろうレールガン圧倒的窮地に立たされたアスランは無意識にSEEDを覚醒させた。

 

「ヘェアアアアア!!!」

 

 まさかの慣性はそのままその場で半回転して重斬刀を投げつけコックピットを破壊するというどっかで見たことある離れ業をやってのけた。だがまだ安心できない。ゴルドリオが反応できていなかった。このままではゴルドリオが撃墜されてしまうだろう。確認すると遅れながらもマシンガンを後ろに構えようとはしているがだが流石に....間に合わない。

 

「うおおぉぉぉぉ!!! 間に合えぇぇぇぇ!!」

 

 ゴルドリオのジンが撃たれようとしているその刹那ラスティが重斬刀を前に突き出し一直線に突撃していた。

 放たれたレールガンは割って入ったラスティのジンの頭部を捉えたが綺麗に頭部だけ爆散したので剣はそのままメビウスに突き刺さり機能停止した。劇的な幕切れでアスラン組は勝利を納めたのだ。

 

「素晴らしい! 作戦は終了だ! 入って間もないヒヨッ子が準エースを倒すなんてな! ヴェステンフルス学生以来か! なんにせよ文句無しのトップだ! おめでとう!」

 

「やっぱ原作主人公は違うな...」

 

「?何か言いました?」

 

「いや...何でもないさ。」

 

 大歓声の中、シミュレーターから出てくる三人。圧倒的疲労感でボーッとしてしまうが歓声になんとか応えるのであった。当然時間が押していたので即座に解散になり課業外となる。普段なら勉強会なりシミュレーターの追加訓練などやるところだが、皆結構な疲労感でスッと寝てしまった。特にアスラン組の疲労は凄まじくバッチリ朝礼を寝過ごし大目玉を食らったのはまた別のお話し。因みに後から聞いた話によると同じ快挙を成し遂げたヴェステンフルス先輩も同じ事をやっていたそうな、なにやってんだよハイネェ...

 それからはと言うと結果的にクルーゼ隊の面子以外は不合格の為他の学生の追試をやったり、また座学をしたりであっという間に1ヶ月過ぎた。ここの生活にも慣れ始めた頃俺はスケジュール表の確認に来ていた。漠然とまたシミュレーターとかなんとかだろうと思っていたが表を確認してはっとした。

 

「そう言えばなんかやってたなぁ...これ。えっもしかしてあれやるの?これ!?」

 

 科目徒手格闘及びナイフ技術..デスティニーでやってたあれである。




こんなに早く反応が感想が頂けるとは思ってもみなかったです!
大変有り難うございます!励みになります !
試験的に話すキャラの名前消してみましたが、こっちのほうが良いという意見多ければこの方針で行かせてもらうと共に一話修正しますのでアンケート回答頂けると助かります。


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パ...パワーが違いすぎる!

さぁ見切り発車過ぎて設定どころかヒロインすらいない状況に震えながら書いております。やはり1人の脳内では限界があるんだよね


 朝...黒タンクトップにOD色のズボンに身を包み俺たちは屋外訓練場に出ていた。月の一週目は格闘とナイフ技術である。

MSの操縦ではまだ人が見えないからか人を殺す技術を学んでいるのだと実感させられる。目の前にリアルな訓練用のナイフが置いてあるので尚更だ。

 こう言う命を簡単に奪える日常的に使われている世界に来てしまったんだなぁと思うとやるせない気持ちで一杯になる。だが入隊する時両親と誓ったのだ...後悔はしないと。

 

「よぉし!今日も始めるぞ!」

 

 教官の気合の入った号令で今日も訓練が始まる。因みに

 教官はシミュレーターの教官とは別の人である。どの教官も熱い漢なのだろうかと思っていた所でウォーミングアップ兼打ち込みが始まった。実の所これが肉体的に一番キツい。何やかんやで体は鍛えられているがそれでもキツいし実際殆どが付いていけてない。それもその筈まだ3日目なので体中筋肉痛だらけなのだ。でもイザークは何時でも元気だ...弱音を吐くのが嫌なのだろう。

 

「どうした!キサマら!動きが鈍いぞ!」

 

「そりゃ無いぜイザーク。ここにいる奴ら全員カラダガタガタだってのに。」

 

「うるさい!言い訳何ぞ、聞きたくもないわ!」

 

 厳しいだけに見えるイザークだが、何だかんだ言っても面倒見が良く、これまでも怪我や疲労で動けなくなった学生に罵声浴びせてるようで励ましてたり教官に通報して対処してもらったりと実際助けて貰っている学生は日に日に数を増している。休日には俺らのクラスにはいない一個下らしい女学生をチンピラから助けたのを見た同期がいたそうな。まぁディアッカなんだけど。

 

「良し!並べ!準備が出来たらペアを作れ!組み手を始めるぞ!手を抜いたものや負けたものは罰を受けて貰う!」

 

「俺はどうしようかな....っとニコルとラスティはやったからなぁ。ディア...は今ニコルと組んだなぁ..となると、あの二人が残るんだよなやっぱり。アスラン!」

 

「今日はガイか...よろしくな。」

 

 どうせなら最強にコテンパンされたほうが潔いだろう。

 うん...初日に圧倒的な強さを見せつけたイザークとアスランだが二日目には誰も寄り付かなくなり、それならばと二人で組んだ所大体互角なのだがイザークの動きがアスランに読まれてしまい後半は負けていた為アスランが学生の中で一位ということになった。力はイザークの方が強いが、原作でカガリにやっていた通り技の繋がりに無駄が無く合気の如く投げられては無力化されてしまうのでどうしようもない。イザーク程圧は凄くないが強者達を倒してきたオーラを感じる。

 

「(だが俺だって格闘技をやってきた身、幾ら相手がアスランだろうと捩じ伏せる!)...お手柔らかに」

 

「フッ...どうかな!」

 

 初日に格闘技をやっていたものはあまり技術を使わないようにと言われているが、そんな甘い事など言ってられない!確実に倒す!そして罰ゲーム回避するんだ!

 迫りくるアスラン!キレのあるストレートをスウェーで回避しジャブを繰り出す。

 

「!!そう言えばお前、格闘技やってなかったっけ!」

 

「なんの事だが!セイ!フン!」

 

「うおっ!しまった!?」

 

 出ました被弾ボイス!思ったことが口に出るのは良くない癖だなぁ!貰ったァ!

 バランスが崩れたアスランの腕を抜けられない様にがっちりホールドし背負い投げを決める。勝ったな!アスラン罰ゲーム確定!

 

「うおおおおおおお!!!」

 

「へっ?うわぁ!」

 

 気づいたら通常の倍の勢いで投げられていた。全く何が起きたかわからなかったが後から聞いた話だと投げられたアスランがしゃがむように着地しそのまま投げに移行したという、流れるような動きでマウントをとられ訓練用ナイフを突きつけられた。そんなんありかよ....

 

「油断したな、ガイ。俺の勝ちだ。」

 

「いちいち...控えめなドヤ顔なのがムカつく。」

 

「えっ!?そんなつもりじゃ...」

 

「解ってるよ。お前のそれは天性の物だ。」

 

 本気で気づいてなかったのか...その後もボコボコにやられたので当然俺含む敗北者が罰ゲームの対象となった。広大な屋外訓練場(グラウンド)の整備である。トレーニングと称してダッシュでの整備だった。整備を終えた俺たちは即時解散となった。

 夕飯をとる前に浴場に行くのが今週のルーティンになっているので部屋も近い事もありディアッカ、ラスティ、俺で浴場に向かった。

 プラントではシャワーで済ますのが一般的だがその昔は

 湯船に浸かる人も一定数いたそうな。元日本人の俺としては非常有り難いが、コズミックイラでは入浴の習慣がオーブが主で連合も若干あるため、ナチュラルの遅れた習慣だとする声が多く人気がない。ここも取り壊しの話が出ているほどだ。こんなに疲れたカラダに有効だというのに勿体ない...

 

「ガイはまた浸かってんの?ナチュラルの習慣なんて意味あんのかよ?」

 

「そんなに気になるならお前もどうた?ディアッカ。」

 

「俺は遠慮しとく...ってラスティもかよ!」

 

「俺は今週までだ...あぁ~効くわこれ。」

 

「チッ、わかったよお前らに話があるし入るよ!」

 

 最初こそラスティも渋っていたが勧めて入れたら沼の如くハマっていった。まぁ元々差別が強い方でもないしな

 ディアッカはあと少しだな...それよりディアッカが話とは珍しい。大体色恋沙汰なのは間違いないが今俺らの中でアツい恋愛事情はヤツについての情報が入ったに違いない。

 

「まさか追加の情報が...?」

 

「ああ...しかも特大のネタだ。」

 

「ホントか?この前もそう言ってしょうもないネタだったじゃないか。」

 

「まぁ聞けよ...先週の休養日イザークが助けた学生は隣のプラントから来ている軍学校の学生だったってのは言ったよな?なんとこの前の休養日に奇跡的にまた会ったんだよ!」

 

「何!そのはなしもっとkwsk。」

 

「ガイ、なんだ?その喋り方。」

 

「すまん。ちょっとネイティブが出た。続けてくれ。」

 

 これはひょっとしなくてもイザークとシホの馴れ初めが聞ける可能性があるな...良いぞ、あのカップリングは一番優遇されていたとは言え結局あんまり掘り下げられなかったカプだからなぁ(ニチャ...ここで全ての真相を明かす時が来たって訳だ!HAHAHA!

 

「んで?その後どうしたんだよ?この前と違ってお前と一緒に出掛けてたんだろ?良い雰囲気にはならないんじゃないか?」

 

「ところがニコルから全然関係ない電話がかかってきたんだ。」

 

「ああ、端末貸して返ってこないってぶーたれてたな。

 俺も近くにいたから覚えてるよ。」

 

「ん?お前まさか...尾けたか?」

 

「ビンゴ!そのまさかよ!ニコルに呼ばれたと言って帰ったふりをして後をつけたんだ。」

 

「おお!でかした!」

 

 果てしなく盛り上がるテンション。忘れていたが前世の歳を含まなければうら若き中高生。この手の話題は大好物である。しかもターゲットがまったくイメージに無い

 イザークと言うのも話題性を高める。本人にバレるのを防ぐため、この話しはクルーゼ組に留めているがバレれば一貫の終わりであるのは間違いないのでデリケートな話題でもある。

 それでもガイとラスティは鬼気迫る勢いで根掘り葉掘り聞き出した。その後目の前の喫茶店に入っていったらしい。そして偶々持っていた双眼鏡のようなバイザーで監視したそうな。なぜそんなものを持っているのか甚だ疑問だが此方としては助かっているので追及はしない。ディアッカの物ではなくゴルドリオの私物らしい...借りパク魔なのか?コイツ...?

 

「お前の覚悟が凄いことはわかったし、イザークが渋くコーヒーブラックで決めてたのはわかった!それがどうした!?このままじゃいつもと同じじゃないか!」

 

「落ち着けガイ!あまり騒げば気取られる!」

 

「ぐっ...そうだな。すまない...」

 

 依然としてシャワーゾーン以外には人は来てない。まばらに人がいるのは確認しているが同期はいないし前世のサウナルームのようにドア一つ隔たれているので抜かりはない。だが時間がそこそこ経っているのでそろそろ混む時間帯だ。イザークは平均的にこの時間が多いのが気になるところだ。

 

「だがそろそろ時間がヤバイ。結果的に何が起こったんだ?」

 

「ああ、イザークはその女性から手紙らしきもの受け取っていたんだ...」

 

「なん...だと...?」

 

「あのイザークに....?」

 

「明日は槍か?」

 

「?プラントに槍が降るわけないだろ?」

 

「ああいや言葉のあやだよ。ショック死するまえにあがるとするか。」

 

「全くだ...一年分くらい驚いてもうお腹いっぱいだぜ

 

 吹っ切れたような清々しい良い顔つきで浴場を後にする三人だった。その異様な後ろ姿に周りの好奇な視線が刺さりまくっていたが賢者タイムガンギマリだったので彼らを止められる者はいなかった。優雅に食堂に入り夕飯を食べ解散した。二人とも用事があるそうで1人になってしまった。特にやりたいことも無いので部屋に戻ろうと歩いていると前からイザークが来た...無駄に緊張してしまう。

 

「ようイザーク。購買でも行くのか?」

 

「ガイか...お前ちょっと付き合えよ。」

 

「え!?あぁ...良いよ。何かするのか?」

 

「とりあえず来い。話しはそれからだ。」

 

 いつになく落ち着いて見えるイザークに一抹の不安を覚えながらも後をついていく。めちゃめちゃ平静を装っているが内心バクバクで俺らのコミュニティの存在がバレたのか...?とかビビり倒しながらも逆に開き直ってイザークが渡されたラブレターの相談をしてくるんじゃないかと自分に言い聞かせた。イザークが足を止める。

 

「ここは....シミュレータールーム?」

 

 なぁんだよ...もっと浮わついた話を期待してたが、これは稀に頼まれるシミュレーターの相手だな?MSの操縦に関してはトントンだが奴は攻めっ気が強すぎるから相手するのが疲れるんだよなぁ...

 

「なんだよイザーク。勿体ぶらずシミュレーターの相手をしてくれって言えばいいのに。」

 

「うるさい!.....行くぞ。」

 

「........なんだぁ?」

 

 あまりにも様子がおかしい。カリカリしているのは何時もだが、決死の覚悟に溢れた顔をしている。まるでこれから戦場にいくかのよう。実際俺らは戦場で生きる為に日々訓練しているのだが...何であれイザークが話さなければわからない。黙ってシミュレータールームに入る

 するとイザークは此方に向き直り芯のある目で目を合わせた。

 

「ガイ...お前に頼みがある。」

 

「...普段なら軽口の一つや二つ言うところだが、生半可な頼みではなさそうだな。要件を聞こう。」

 

「俺にMS戦闘の特訓を頼みたい!」

 

「..........は?ちょっと待て。何故おれなんだ?」

 

 予想外の依頼に気の抜けた返事をしてしまう。普段のイザークなら叱責が飛んでくる所だがイザークはそのまま

 誠意の強い眼差しをぶつける。

 

「確かに成績だけで言えばアスランや俺の方が高いがそれはお前が奇抜な戦術、戦闘を使うからだ。実際俺とお前では...悔しいがガイの方が強いと感じる。」

 

「いやいや待て待て!確かに試験で教範に無い戦法を試したりするが...操縦に関してはイザークが差を感じていたとしても俺が教える立場になる程ではないだろ!?

 

「ガイ!...頼む。」

 

「...........」

 

 原作崩壊て言うレベルじゃないぞこれ!めちゃめちゃ低姿勢じゃねぇか!?一体何があったんだ?シホと何か関係が進展したからか?クソ!全然情報が足りない!こうなったらイザークを練習台にするしかないな。

 

「何か理由があるんだな...わかった。時間限り付き合う。だが後でどう言うことか教えてくれよ?」

 

 黙って頷きシミュレーターに乗り設定をするイザーク。俺も習って設定を始める。機体と敵情報以外はイザークに任せているので特に弄らない。機体はジンのバズーカ装備で一番無難な物を選んだ。するとイザークの設定が終わったようで地形が表示される。デブリがそこそこある宇宙で普通に闘う分には可もなく不可もない地形で味方はイザークのみ。おや?デブリの密集具合が良い感じの様子、ガンダムファンとして確かめる事が一つある...イザークには悪いが楽しませてもらおう。

 

「イザーク!俺が指揮を執らせてもらう。ついてきてくれ。」

 

「あんまり上から物を言われるのは好きじゃないが、わかった。」

 

 作戦内容は2km先のアガメムノン級の戦艦を撃沈させること。その防衛には3機のメビウスを配置している。相手のレベルは高くないが一定時間にメビウスが倍に増える。三倍で打ち止めだが減った瞬間すぐ出てくるのでメビウスを相手にするなら一気に倒さないと詰んでしまう

 こちらの弾は無限だがエネルギーは有限に設定しているのであまり時間をかけられない。ジンの稼働時間を考えると敵陣に突っ込んで一気に破壊するほか無いのだ。

 因みに設定はしたが気分で敵マシマシにしたので対策があるわけではない。行き当たりばったりである。

 

「接敵するまであと1000だが今のうちに伝えておくよ

 絶対に油断するなよ?」

 

「なんだ?ていうかお前そんな助言するくらいだからこの設定で突破したことがあるのか?」

 

「いや若干緩いやつならあるが...」

 

「フン!所詮は雑魚の集まりだろ?相手になるのか?」

 

「確かに三機程度なら俺たち二人で封殺しながら撃沈させることが出来るかもしれないが...それじゃ意味がない。そう簡単に行かないように設定しているさ。」

 

「ほう?ならお手並み拝見といこうか。ガイ!」

 

「良いとこまで耐えて見せるさ。そろそろだ!...きた!」

 

 アガメムノン級からメビウスが発進し、主砲のロックが来たためアラート音がけたたましく響く。離れているため実際そこまでの脅威は無いが、隙を見せて主砲を撃ち込まれれば当然一発アウトなので油断はできない。それにメビウス隊も無視は出来ない。実は最初のウェーブと

 キツくなってくる5ウェーブのメビウス隊を結構強めに設定している。イザークが此処で舐めてかかると一瞬で

 落とされる。しっかり援護しなければ。

 

「そんな動きで!墜ちろ!」

 

「援護する!」

 

 綺麗な編隊飛行で向かってくるメビウスをマシンガンを一斉射撃で散らす。バラけた所をイザークが左に逃げたメビウスを追い込み数を減らしにかかる。実際MS戦闘の教範でもジン1機にメビウス3機で対等の戦力なので

 各個撃破が望ましいと言った文もある。だがこの場合

 パイロットの技量がその差を埋める。

 

「でぃええええええい!」

 

 イザークの駆るジンがメビウスに向けて斬り込んでいく

 複雑な機動で相手の射線を合わさせないようにしながら

 巧くメビウスの下をとり唐竹割りでスラスターを勢い良く吹かして必殺の一撃を放つ。イザークの得意技である

 シミュレーターではこれまでメビウス相手に避けられた

 事はない。だが重斬刀は空を切った。

 

「なんだと!?」

 

「イザーク!止まるな!右!」

 

「ええい!クソォ!」

 

 必殺の一撃が避けられた衝撃の事実に数秒動きが止まってしまった。その隙を逃さないメビウス隊、突出したイザークのジンに小型ミサイルを多方面から間髪いれずに浴びせかける。遠中近と角度や距離を最大限活用した完璧なミサイルの雨。並みのパイロットなら動けもせず撃墜されていることだろう。だが気合の回避とマシンガンで何とか捌いていく。しかし残り3発の所でマガジンがきれてしまった。

 

「何!?ぐぅぅぅぅ!ナメた真似を!」

 

「イザーク!うぉ!?」

 

 イザークを援護しようと全速力で近づこうとするがアガメムノン級の砲撃がそれを阻む。メビウスもいつの間にか後ろに一機回られていた。追い込み漁が如くリニアガンで追い込まれる。

 

「クッ...不味いな。ピッタリついてきやがるし...こうなったら!うぉぉぉぉ!」

 

 競馬の騎手のようにリニアガンを流してくるメビウス。

 イザークも凄まじい機動のメビウス二機に防戦一方。何とか状況を打開するべく賭けに出る。弾を当てられないギリギリまでメビウスを引き付けて急速でバク転の要領で一時的に上を取る。直ぐ様自分の中心にマシンガンを弾が無くなるまで撃ちまくる。動き自体は個人的にめちゃめちゃ練習しているが攻撃に使うことはしていなかったため有効打は与えられなかった。それでもメビウスは装甲が薄いため、若干動きが遅くなっていた。この動きを息を吐くように出来る主人公がどれだけヤバイかわかる。

 

「良し!後ろを取れば此方の物よ!チェェストォォ!」

 

 マシンガンを乱射しながら動きを抑制して重斬刀を叩き込む。メビウスもバレルロールで避けようとするがスラスターの出力が足りず回転が遅くなってしまい片側のスラスターを斬られ撃墜された。

 

「イザークは!おお!流石だな!」

 

「キサマ!感心してる場合か!早く援護しろ!」

 

「任せとけって!」

 

 イザークはあれから反撃こそ出来てないがダメージも食らっていない状態だった。冷静に一つ一つ回避してこれ以上損傷を出さないように立ち回っている。熱くなりやすいだけで普段はクールな性格が功を奏しているのだろうか。だが窮地に立たされているのは変わらないので牽制射撃で散らす。ここまでは何時も通り、ここで攻めいっても返り討ちに合う可能性がある。どうするべきか..

 

「!!これだ!イザーク!デブリに引き付けろ!」

 

「なにぃ!?今仕掛けなくて何時仕掛ける!」

 

「良いから!時間がない!」

 

「チィ!これでしょうもない策だったら只じゃ置かんぞ!」

 

 戦闘しているうちにデブリ帯の近くにいることに気づいた。そろそろ倒しきらなくては増援が来てしまう。状況は依然として不利だが若干流れが此方に傾き始めている

 量産機×デブリのパターンはアレしか考えられない。こういう時の為に猛特訓したのだ。失敗は許されない。

 デフリが近づく、イザークはメビウス2機を引き連れて一歩遅れて此方に来ている。マガジン良し。スラスター良し。パチもん彗星の始まりだ!

 

「イザーク!逸れろ!うぉぉぉぉ!三倍だぁ!」

 

「速い!?何なんだよ!あの動きは!?」

 

 デフリに侵入させた瞬間、スラスターを全開で吹かしメビウスに突撃する。イザークは引き腰、俺は突っ込んでくるとなれば撃墜対象は俺に変更、リニアガンでバンバン撃ってくる。普通に回避すればデフリの中被弾は免れない。

小惑星や戦艦の大きい残骸を足場にしながらピョンピョン飛び移り通常の三倍の加速で弾を回避し移動する。赤い彗星のシャアがやっていた戦法である。

実際今やってるのは2倍しか加速出来ていない。踏み切りとブーストその他諸々全てが噛み合わないと上手く加速出来ないのだ。それを連発する赤い彗星は超人的な存在なのだと思い知らされた。だがメビウスを翻弄するには十分な動きをしているのでどんどん攻めたてていく。

 

「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!!貰ったァ!」

 

 一点突破で1直線に飛び出したメビウスを発見しこれは逃すまいと五段飛びで一気に真横まで詰めより六回目で

 加速をパワーに変えて神速の蹴りを喰らわした。おもいっきり吹き飛んだメビウスはデブリに当たりながら最後はドレイク級の残骸に刺さり爆発した。

 

「よし!ラスト一機!ってあれ?」

 

 まさかの最後のメビウスが取った行動がイザークを狙うでも此方を狙うでもなくアガメムノン級に全速力で逃げていった。

 

「何!?腰抜けがァ!」

 

「ヤバい!もう時間が!」

 

 此方も全速力で追いかける。戦艦をフリーにして攻撃しないと次の部隊が湧いてしまう。その前に仕留めてブリッジに2マガジン程度叩き込まなければジリ貧になる。

 デブリ帯を抜けたところでリニアガンが大量に飛んできた。

 

「うぉぉぉぉ!?間に合わなかったか!?」

 

 ガイの想像通り増援の時間が来てしまい4機のメビウス

 が反撃してきた。そこからは良いとこ無しで何とか粘っていたが1機撃墜するころにはまた増援でジリ貧に加えて被弾も増え、集中力もゴリゴリと削られていった。

 精神をすり減らしながらの戦闘だったが最後はバッテリー切れで敗北となった。シミュレーターから降ると、そこにはガイを探しに来たニコルがいた。

 

「なかなか帰ってこないと思ったらシミュレーターで特訓していたんですね。」

 

「ああ、ニコルか。悪いな何も連絡せずに。」

 

「いえ、ディアッカに聞いたらイザークもいないと言うんで大体アタリはつけれましたよ。にしても凄い想定ですねこれ。ドリンク持ってきておいて正解でした。」

 

「すまない。あの程度捌けなければまだまだだ。」

 

「ありがとうニコル。設定したのは俺だがイザークに頼まれなければこんなこの世の終わりみたいな設定にはしてないさ。」

 

「へぇそうなんですか。最近のイザークはやけに努力家ですね。好きな人でも出来たんですか?」

 

「ちょ!おま....!」

 

「そういう訳じゃない。似たような理由ではあるがな

 

「......!!(な!ナンダッテー!」

 

 三人であの手この手で調べようとしていた事がニコルの純粋無垢な問いかけで謎の真相が解明されていく。俺はイザークを誤解していたようだ。絶対キレると思っていた。

 

「それって今噂の喫茶店デートの娘ですか?」

 

「何ィ!?キサマ!それ誰から聞いた!」

 

 オイオイオイ終わったわ。何で最後の最後に核爆弾投下するんだよお前はよ!え?て言うことは俺らの中の誰かがバラしてるって事かよ!はぁ~マジでやってくれたな

 当人のイザーク目の前にいるんだけど!やめてくれ!ニコル!はぐらかしてくれ!俺の第2の人生原作始まる前に終わりそうなんだけど!めっちゃアイコンタクトしてるんだけど気づいて!早く!

 

「うわぁ!何でそんなに怒るんですか!ディアッカとラスティですよ!」

 

「............(チーン」

 

「アァイィツゥラァァァァァ!!!」

 

 猛ダッシュで犯罪グループを叩きのめしにいったイザークの後ろ姿を俺は見守ることしか出来なかった。鬼神のごときオーラを放っている事から間違いなく生き残れないと確信出来る。俺が生き残れる唯一の手はアイツらが仲間意識で俺を名前を出さない事だが確率はほぼゼロだろう。さて辞世の句でも書いておくか...

 




戦闘描写はノリノリで書くとワケわかんなくなりがち


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俺と同じ匂いがする...!

新年明けましておめでとうごさいます。
12月はマジで忙しく書いてる暇ありませんでした。
何とか12月にあげたかったのですが寝てしまったので今に至ります。
次には学生編終わらせるのでよろしくお願いします



「有難うございます! ...じゃ行くか」

 

「ああ。言った通り朝から夜まで全部奢ってもらうからな」

 

「わかってるよ。シミュレーターでのされた奴らよりかマシだからな」

 

 受付から外出許可を得て二人組の男子が定期便でプラントへくり出す。あのあと予想通りディアッカとラスティがバラし、ガイも共犯者だと宣ったが特訓を頼んでいる身であるということで減刑となり、ディアッカとラスティは仲間を売る根性が大変気に食わないと激怒しシミュレーターに引きづられていった...合掌。

 今日はイザークと贖罪の旅へ出ることになっている。

 外食全奢りオプションのツアーである。懐は寂しくなるが俺にもメリットが存在しており、イザークとシホが出会ったプラントの区画に来ているのだ。上手く行けばばったり出くわす可能性がある。のだが...

 

「おいガイ。どうした? 食わないのか?」

 

「あ、ああ。そうだな..」

 

 なんもねぇ~!!! このままだと無難にご飯奢って終わりだよこれ! 現在昼飯終わり、イザークは奴らと違って

 分別があるので奢りだからと卑しく死ぬほど食べたりしないし、アホみたいに高い店に入ったりしない。食べたい物を普通に食べる主義なのだ。しかもそれが若干高くなる場合軽く気を遣ってくる。言うなれば自然体のイザークはメチャメチャカッコいいのだ。だがそれは俺ではなく異性、主にシホに向けてほしいものである。

 

「イザーク、包丁を買っていってもいいか?」

 

「かまわないが、また買うのか? 先月も買っていなかったか?」

 

「確かにそうなんだが、また試したい料理に必要でな。

 まぁ俺はそんなに散財しないし、さして問題はないな」

 

「そういうものか」

 

 前世で料理をかじっていたこともあり此方でもたまにしたくなる。そう言うことでちまちま料理器具を買ったりしている。調理スペースは学生にも開放されているので問題なく料理が出来る。

 因みに俺以外だもゴルドリオとたまにディアッカ、ゴルドリオは小さい兄弟が多くお菓子を振る舞うことが多いんだとか。ホールケーキを作ってしかもそれを贈っていたことに驚いた。それ腐らないんか? 

 ディアッカは料理をした事がなかったそうだがチャーハンだけ作るのがメチャメチャ巧い。ある意味イメージ通りである。

 雑貨店でささっと包丁とバターナイフ的な物を何本か買っていく。イザークがやたら悩んで突っ立っていたので遠目に何を見てるのか確認すると、なんと御守りコーナーだった。

 

「!! (オイオイオイ! シホにあげる御守りこんなとこで買ってたのかよ! もっと良いのあるから! 考え直せ! 

 てか会って二回目でしょ!? まだ早いって!)」

 

 1人であたふたしているとイザークが何も取らず何処かへ行ったので一呼吸おいて普段通りの雰囲気で合流する

 若干妙な顔をされたが問題なく店を出る。

 その後、今度の休養日に試そうと思っていた料理の材料を買いに大型ショッピングセンターに入る。ここは何でもありのショッピングセンターで平日だろうが人でごった返している。軍学校からも近く周囲を見渡せば大体顔見知りはいる。今の時間はラスティあたりがいると思ったがどうだろうか...

 

「なぁイザーク。この時間なら誰かいるんじゃないか? 

 ラスティあたりウロついてそうだけど...イザーク?」

 

 急にイザークの反応が無くなるのが気になり振り返る。

 すると立ち止まってやたら険しい顔で銀行をみている。

 金を下ろしたい訳でもないだろうにどうしたんだろうか。ボケッとイザークを見ているとイザークが頭をガッと掴み地面に叩きつける。急な出来事で驚いたし困惑でパニックになりかけたが次の瞬間全てが繋がった。

 

「ガイ! 伏せろ!」

 

 凄まじい爆音と共に入り口が塞がれた。轟音と共に三人組が拳銃2ライフル1の構成で周囲を取り囲む。まさかの銀行強盗らしい。周囲にいた俺たち含む合計30人の民間人が人質になった。

 

「てめぇら! 死にたくなかったら中央に固まれ! 早くしろ!」

 

 パァンパァン! と遠慮無く発砲する犯人グループ。顔はフルフェイスヘルメットで隠しており確認できない。移動する間に知り合いがいないか確認するが誰もいなかった。子供が泣いたり恐怖する人々でごちゃごちゃしている隙にイザークに鋭めな小さいナイフをアイコンタクトで渡す。イザークの目は覚悟に満ちている。対照的に自分の手は小刻みに震えていた。

 

「落ち着け....これから何人もの人を殺すんだぞ...? 

 こんなんじゃ駄目なんだよ...!」

 

 機を伺うフリして初めての殺害行為にビビっていると拳銃を持っている1人が周囲に圧をかけるように叫びながら女性の腕を引っ張り上げる。

 

「女ァ! テメェは俺たちと来てもらうぜ!」

 

「やめて! はなして!」

 

「暴れんじゃねぇ! ぶち殺すぞ!」

 

「セルカ! 彼女を離して! 私が代わりになるから!」

 

「動くんじゃねぇ! 殺すぞ!」

 

 イザークと俺は驚愕した。まさかの人質に取られた女性の連れがシホだったのだ。全然気づかなかった、男は激昂しシホに拳銃を向ける。直感で判る...撃つ気だ、人が死ぬんだとそう気づいた瞬間に自分の中で何かが切れた音がした。

 

「うおおおおおおあぁぁぁ!!」

 

「ガイ!? でぃええええええい!」

 

「ぐえぇ! ゴポッ! ゴポッ!」

 

「うあああああ!!!」

 

「ぐっ! あっ! あっ! ...」

 

 首に目掛けてナイフを突き刺し怯んだ所で拳銃を掴んで

 蹴飛ばしながら奪い取る。戦闘経験はあまりないのか急な抵抗に対応が遅れたリーダー格の男にむけ銃を発砲する。何度も、何度も。もう弾はとっくに切れているのに

 

「おいガイもういい..」

 

 カチッ...カチッ...カチッ...

 

「おい! 止めろ! ガイ!」

 

「あ...ああ。悪い...ちょっと休ませてくれ..」

 

 思考がハッキリしない中、近くにトイレがあったのでそのままふらふらと中に入り、内蔵がひっくり返る程吐いた。初めての殺人。終わったあとに嫌でも目に映る無惨な死体、次第に漂う血の匂い、赤の他人がやったなら未だしも殺害したのは自分。幾ら覚悟を決めようが平和な日本に住んでいた普通の大学生にこのような事実耐えられる筈もなかった。

 程無くして治安部隊が現れ他の犯人グループは拘束された。後から聞いた話だと犯人グループは10人程度で全員ナチュラルだそうだ。最近はブルーコスモスの思想の下テロやテロ紛いの犯罪が多く今回もその類いらしい。

 治安部隊の人たちに色々質問されたが結果的にナチュラルを殺した勇気ある学生として褒められた。人を殺して褒められるこの環境に狂気しか感じなかった。

 精神的疲労が限界に達し褒められ若干上機嫌のイザークに声をかけ帰路に着こうとする。だがそこで二人の女性に呼び止められた。シホと人質にされかけたもう1人の女性、確かセルカとか言っていたか...

 

「お前は...シホか! 無事でなによりだ」

 

「イザークさんと...そちらの方もセルカを助けて頂き有り難うございました! その...大丈夫ですか?」

 

「少々具合が悪くて...すみません」

 

 あまりに気分が悪いので無意識に立ち去ろうとしていたようで助けた女性から腕を掴まれて引き留められた。

 

「待ってください! 今度...一緒にお食事でもどうですか! どうしてもお礼がしたくて..」

 

 恥ずかしさを紛らわす為か妙に大きな声で食事のお誘いをされた。

 下向きながら顔を真っ赤にして話す彼女は愛らしく思えた。

 渋った訳ではないが何処と無く遠慮している雰囲気を出すと掴まれている腕の力が徐々に強くなったので了承した。

 その後は、連絡先を交換し学生寮に戻った。教官に事情を話すと、次の日の訓練は休んでも良いとの許可を得たので早速連絡した。異性との連絡はあまり経験が無かったのでやたら緊張したが直ぐに返信が帰って来たので変にホッとした。

 

<私も明日は休んでいいって言われました! 明日あいてますか?>

 

<うん。楽しみにしてるよ>

 

 ありきたりな返事をして直ぐに床についた。それにしても今日は静かだった。パリピ集団が冷やかしにくるかと思ったが何も来ず、部屋には最低限の会話しかしないニコルがいるだけ。後から聞いた話だがイザークとニコルとアスランが冷やかしは止めるように触れ回ったらしい普段はアスランが止めただけでは止まる筈が無いが、イザークが今日の事件を有りのまま事細かく話すと鎮まったらしい。

 早く今日の出来事を忘れようと目を瞑るが2回の人生で初めて見た殺人死体がちらつく。殺されそうだったので仕方ないのではあるが殺したのは事実というのが頭に残る。虚ろな死体の顔が現れては消えを繰り返し一向に寝れなかった。4時間くらい格闘していると体力に限界が来て気絶するように寝てしまった。

 

「......はっ!」

 

「お早うガイ。大丈夫ですか? 昨日の夜は結構うなされてましたけど..」

 

「意外とスパッと切り換えれる物なんだな。思ったより快調だな」

 

「そうですか。軍人としては良い資質ですね。心配して損しましたよ...これから出るんですよね? また巻きこれないように気をつけてくださいね」

 

「ああ...避けれるかどうか判らんが努力するよ。じゃあ訓練頑張ってくれ」

 

 ぱぱっと身支度を済ませ町に繰り出す。イザークとすれ違った時説教を食らうかと思ったが何も言われなかったイザークも俺と同じで休みがとれるのだが、休日返上して訓練に出ている。精神的にまいっている俺が不思議なのだろう。大半のコーディネーターはナチュラルに対して差別的思想が少なからずあるため罪悪感が少ないのもあるだろう。軽く挨拶を交わし市街地へ向かった。

 

「ここか...? もう一個奥のところか。5分前には着きそうだな」

 

「うーん...(緊張でちょっと早く着いちゃった...それにしてもガイさんだったっけ、結構参ってたけど大丈夫かな?)」

 

「よし着いた! あっ」

「よし着いた! あっ」

 2人とも端末でナビを出しながら歩いていた為声が重なった時に初めて気づいた。しかも角で待ち合わせしていたため近距離で向かい合う形になり二人とも軽く赤くなってしまった。ガイが後退り軽く息を吐いた後、声をかける。

 

「ハハ...ごめんな。いるとは思わなかったよ」

 

「い、いえ! 私こそ! 来ていただいて有り難うございます!」

 

「いやいや。おれも誘ってもらえて嬉しかったよ。早速だけど行き先は決まってるのかい?」

 

「はい! といっても直ぐそこのレストランですけどね。

 

「そうだったのか! それじゃ入るか」

 

 時間帯的に客は居ないが雰囲気の良い店内に相手のセンスを感じつつお互いの状況や体調について情報交換した。その後はかなり詳しくお互いの自己紹介を始めた。就活中であることやシホと同じくMSの研究者でセルカはスラスター工学らしい。流石に前世のことは話さなかったが一番驚いたのは母を知っていた事だ。

 卒論のような物があったそうだが専攻と言えど闇雲にスラスターの推力向上をするだけでは当然使えないので本体の姿勢制御も考えなければならない。そこで母の姿勢制御理論が大いに役にたったそうだ。

 そう言えば母の研究所は何処なのかとかリーダーは誰なのかとか全然気にしたこともなかった。前世から親のやることにはあまり興味がなかったし仕方ないと言えるか

 

「あの...ガイさん。ガイさんはジンに乗るのを想定して訓練されてるんですよね?」

 

「そうだけど、まだ実機は歩かせるくらいしか乗ったことはないよ?」

 

「後学の為に使用感とか改善点とか色々教えてもらってもいいです?」

 

「もちろん! 詳細なことはあまり話せないけどね」

 

「有難うございます! まずは...」

 

 なるほどな...コズミックイラは宇宙世紀のようにジオニックとツイマッドで会社で争っているわけではないから浪漫屋が分裂しなかったのか。こいつは間違いなくスラスター狂のツイマッドだ...物凄い圧を感じる。

 

「へぇ...やっぱりそのままのジンは遅く感じますか? 

 

「イザークもそうだが、シミュレーターをするときはデフォルトからかなり足回りの性能を上げている。そろそろ上限を叩きそうだがまだ物足りない感じがする」

 

「ええ!? 軍学校のシミュレーターは制限等かけられていませんよ!?」

 

「え? そうなのか? てっきり学生用に調整されたものだと思ってたよ..」

 

「そうですよ! ふわぁ~..!! こんなエース級の逸材と知り合えるなんて! 夢みたいです!」

 

 わかってはいたが圧が凄すぎる...怒涛の質問攻めに泡を吹きそうになりながらも何とか捌いていく。だが専門用語の雨にだんだんキツくなってきたので会話を無理矢理切り替えようと話題を差し込む

 

「ですから! 現行の機体では! ..」

 

「セルカさん!」

 

「はい? 何か質問でもありますか?」

 

「機体に関しては大変勉強になった。そう言えばセルカさんのフルネームはなんなんだろうと思ってさ」

 

 動きが固まりポカンとした顔で此方を見る...話をまともに聞いてないと思われたか...? 何でも良いとにかく何か喋ってくれ! この空気はキツすぎる! 

 

「それもそうでしたね! 私はセルカ・ターナーと言います。父は市議会員をやっていて母はMSの開発をしています!」

 

「俺はガイ・ランディアだ。父は議員をやってるがトップの取り巻き程度だ。母はセルカのお母さんと同じくMSの技術開発をしている」

 

 すると幽体離脱でもしたかのようにセルカの動きが止まる。そして念仏のようにぶつぶつと呟き始めたかと思いきやカッと目を開き此方に詰め寄る。

 

「もしかしてお母様はアリア・ランディア技師では無いでしょうか!!」

 

 激しく目を煌めかせ大声で更に詰め寄る。何故母を知っているのかという謎と上品な態度だったのが急に崩壊した衝撃と美少女に詰め寄られるという未知の経験によって頭が限界を迎え冷静さを保つことが出来なくなった。

 テンパった思考で理性的な言動など出来る筈も無く...

 

「セルカさん!? 近い近い! 可愛すぎてドキドキするからちょっと離れて! ...ん?」

 

 瞬間、時が止まる。咄嗟に口走った事のヤバさを徐々に

 感じながら彼女の顔を見る。するとあちらも急な爆弾発言に固まっていたが、段々と言葉の意味が理解できたようでどんどん顔が真っ赤に染まってく。セルカの恥ずかしさが頂点に達した所で神速の平手が飛んで来た。

 

「ぶふわぁ!!」

 

「もう! ガイさんたら! 可愛すぎてドキドキするだなんてあるわけ無いじゃないですか~///」

 

「ぐふぅ...そんな事無いと思うけどな..」

 

「え? 何か言いました?」

 

「いや...何でもない」

 

 酷い目にあったがもう一度軽く褒めようとしただけで若干赤くなったので止めた。単なる照れ隠しで毎回鋭い平手をもらっていては体が持たない。二人とも軽く落ち着いた所で話を戻す。

 どうやらセルカは、うちの母親と知り合いらしい。なんでも卒業論文みたいなものでスラスターを改良させる研究をした際、行き詰まり悩んでいたところで母アリアから助言を受け姿勢制御を見直しをすると上手く行き、賞を貰ったらしい。そしてその実績から同じ会社に就職することが出来たらしい。

 

「ガイさんはMSの開発に興味は無いですか?」

 

「え? 無くはないが技術的な面はそこまで明るくないからなぁ...今更1から勉強するくらいならパイロットやってた方が興味あるかもしれないな..」

 

 当たり前である。SEED本編の登場人物と関わりを持ちたい。MSを操縦して戦闘したい。直ぐ側に殺し合いがあるという現実に打ちのめされそうにもなったがそれは変わらない。いちファンとして世界見届ける使命感すら感じる。だからこそ前線に身を投じずにはいられないのかもしれない。当面の目標はクルーゼ隊に入る事だ。言っちゃ悪いが悠長に研究などしてられないのだ。

 

「そうですか...でもでも! テストパイロットとして配属される人も中にはいますので考えてみて下さい!」

 

「テストパイロットか、考えとくよ」

 

 内心そこまで良く思ってなかった為当たり障りの無い返しをした。セルカとはなかなか濃い出会いをしたが、まだ会って一週間も経っていない。しかもオリジナルキャラなので思い入れもない。エース達と共に戦える喜びを投げ捨ててまでMSの開発に携わろうとは思わなかった

 そろそろ良い時間になったので解散する流れになり会計を済ませ店を出た。

 

「今日はありがとうございました! タメになる話が出来て良かったです! また連絡してもいいですか?」

 

「ああ俺は問題ない。独自の理論とか素人目でも面白かったから母さんにも話してみるよ」

 

「アリアさんにですか!? お手柔らかにお願いします..」

 

「? まぁいいか。ともかく今日は楽しかったよ。機会があればまた集まろうな!」

 

「はい! またお話聞かせてください!」

 

 そのまま寮に帰ったが、俺が普段通りと見るやディアッカとラスティがめちゃめちゃセルカについて聞いてきた

 清楚系なのか元気系なのかとか色々質問攻めにあったが

 ガチメカニックと答えると二人は固まりススッーと消えていった。休みはもらったがボーッとしていると直ぐに最終訓練評価が来る。成績にめちゃくちゃ影響するやつである。赤服にはなれないまでも一歩手前位でなくてはクルーゼ隊には入れないだろう。少しでも使える択を増やしておこう..

 



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