小動物で内気な幼馴染 (アッシュクフォルダー)
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第一話 こはねとの出会い

今では、もう日課になっていた、

この挨拶も、あの時とは違う暑い日差しに照らされていた。

 

俺が最初に、小豆沢こはねと出会ったのは、

四年前の春過ぎ、俺が小学四年生の時だった。

 

珍しく早起きして、朝食も食べて、

桜も散りかけていた時の季節だった。

 

学校に着いた時、目に入って来たのは、

門をくぐって、すぐの校舎の端に置かれた、

うさぎのゲージの前にうずくまっていた、

可愛らしい女の子だった。

 

目が合って、三秒ほど交わさると、すっと離された視線

それが、なんだか、気に食わないようで…

詰め寄って、声をかけてきた。

 

「飼育委員?」

 

「そ、そうです…」

 

恐る恐る紡がれる言葉に、相変わらず、いつも通り、

自分の声が威圧感を感じた。

風に揺られて、そっと問いかけてみた。

 

「名前は?」

 

「こはね…小豆沢こはねです…」

 

僅かに聞き取れた、その名前が、その当時、

どれだけ、輝いて聞こえたか、それは、いまでも、変わらない。

 

「俺は高木雅利」

 

「へっ?」

 

気づけば、名乗っていた名前を繰り返すように、

ゆっくりと、言葉にする、こはね。

 

「雅利くん…?」

 

「呼び捨てでいいよ」

 

呼ばれた名前に、少し動く心が終わりかけの春を再び知らされた。

 

 

それから、あの時のぎこちない会話の日から、

毎日のように、早起きして、飼育ゲージにいる、

こはねに喋りかけていた、自分が懐かしい…

 

「おはよう、こはね」

 

「お、おはようございます…」

 

「先輩なんだから、敬語なんて、いらないのに…」

 

「じゃ、じゃあ、おはよう」

 

「うん、その方がいい」

 

なんて、毎日、ワクワクしていた、自分がいたのは、確かだ

認めたくもないけど、半分くらい。

 

 

あの日から、四年ちょっと、今は夏だ、

俺が小学四年生の時、こはねは、小学六年生、

宮益坂女子学園の中等部に入学することになってから、

会える時間が、一気に減ったが、あまり、気にしていなかった。

 

むしろ、たまに会うくらいが、ちょうどよかった。

そうやって、言い聞かせることで、

たまにしか、会えない日々にも、次第に慣れていった。

 

だから、こそ、あの日とは違う笑顔で…

 

「おはよう!」

 

こはねの柔らかい笑顔も、風に乗った太陽の光に照らされる。

こはねが、呼んでくれるようになってから、

この名前も、好きになっていった。

 

「今日は、どこに行きたい?」

 

「ずっと、一緒に行きたいと思っていた、カフェ!

いい天気だから、歩いて行きたいな~って、思っていて!」

 

「そうなんだね、

あのね、雅利くん、今でも飼育委員やっているんだ」

 

「そうなんだね、やっぱり、動物かわいい?」

 

「うん、毎日、癒されています」

 

「こはね、動物が好きだもんな」

 

「好きじゃないの?動物?」

 

「俺は好きだけど、好かれないだけ」

 

「ふふっ、雅利くんって、面白いね!」

 

「うん、ありがとう」

 

なんて、他愛もない話が続くのだった…



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第二話 こはねの恋心

こはねは、恋心に揺れていた

高木雅利とは、長い付き合いだし、

何よりも、こはねの心の支えとなっている。

 

だから、彼に対して、

必然的にも、恋心を抱くようになったのだった。

 

 

こはねは、杏に、恋の事を相談するのだった。

 

「なるほどね…」

 

「どうしたら、私と雅利くんが、結ばれるだろう…」

 

「まぁ、雅利くんも、本当は、こはねのこと

一番に考えていると、思っているけど、

でも、まさか、恋するなんてね」

 

「雅利くんが、他の女の子と、

付き合っていたら、どうしよう…」

 

「うーん、それは、考えられないかな?」

 

「どうして?」

 

「だって、本人も言っていたし、女友達だって!」

 

「そっか、じゃあ、雅利くんには、彼女が…」

 

「いないよ、絶対」

 

「そ、そうだよね…聞かないと…ダメかな?」

 

「うーん、まぁ、聞いてみたら?

聞かないことには、何も始まらないし!」

 

「えっ、そ、そんなこと言われても…」

 

「こはねの内気さは、この数日でよくわかった

その中で、イベントに出られるくらいの

勇気があるから、大丈夫!」

 

「そっか…そうだよね!

聞いてみないとね!」

 

こはねは、決意を固めた、

雅利くんと、恋人になるんだと、決めるのだった。

 

自分に嘘はつかない、頑張って、事の真相を聞くんだ!

そう、こはねは、覚悟を持つのだった。

 

後日、日曜日になり、公園に向かった。

 

「こはねちゃん…話って何?」

 

「他の女の子と話しているみたいだけど…

どんな関係なの?」

 

「この二人はな…俺の大切な友達なんだ」

 

雅利の口から出た、言葉は、予想通りの内容だった。

しかし、ここからが、本題だった。

 

「キスとか、してるの?」

 

「ちょっとだけ…」

 

と、雅利は、顔を真っ赤にして、そう言った。

 

「キスもしたんだ…好きだったからかな?」

 

「うん、憧れの気持ちもあるけど、

でも、恋愛的に好きになるのは、まだ、先の話だし…」

 

「じゃあ…彼女は、いるの?」

 

「まだ、いないよ」

 

「じ、じゃあ…わ、私と…付き合ってくれませんか!?」

 

「えっ?」

 

「私、ずっと前から、雅利くんのことが、好きだったの!

だから…こんな、私だけど…

でも、いつも、そばにいてくれて、助けてくれて、

それで、本当に感謝している!

だから!私と付き合ってください!お願いします!」

 

と、こはねは、お辞儀をした…

 

そして、答えは…

 

「うん、いいよ」

 

「えっ?本当に?」

 

「うん、俺も前から、こはねの事が、好きだった、

だから、俺からも、お願いするよ」

 

「雅利くん…ありがとう!」

 

「どういたしまして」

 

こうして、こはねの恋心は、実を結ぶのだった…



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第三話 高木雅利と石瀬千尋

高木雅利は愛嬌を、どこかに置いてきたかの

ように不愛想な男だった。

常にツンと前を向き、

冷めた言葉を口にしては周囲から人を遠ざける。

親しい者を相手にしている時ですら滅多に心を開かない、

気まぐれな猫のような性格だった。

 

彼には、石瀬千尋という、もう一人の幼馴染がいる。

高木とは正反対な穏やかで心優しい性格で、

大人しくて臆病な小動物のような

印象を与える可愛らしい少女だ

 

二人は同じ、中学校に通っており今も家が近くにある。

しかし、この年になって男女が肩を並べて登校するのは

少しばかり恥ずかしく思え、高木は入学当初にあった

石瀬からの誘いを断ってしまった。

 

それからふたりは、たとえ同じ時間に家を出たとしても

せいぜい簡単に挨拶を交わす程度で、

一緒に登校することなどほとんどなかった。

休日行動を共にすることは抵抗がないのに、

どうして行き先が学校だとこんなにも

複雑な気持ちが芽生えてしまうのか。

 

今日も高木は一人で学校に向かっていた。

 

(……石瀬だ)

 

数分先に家を出たはずの石瀬が

支度中外から声が聞こえたので確かだ、前方をゆっくりと歩いている。

彼女とは歩幅も歩調も違うので、

こうして追いついてしまうことも珍しくない。

そんな時 高木はわざと歩調を緩め、

彼女に追いつかないよう調節を図るのだ。

 

(髪、跳ねてるな)

 

歩くたび揺れる髪が一か所不自然に浮いている。

学校につく前に教えてやるべきか少し迷った。

 

わざわざ自分が教えるようなことではないのか?

いや、もしかしたらあれはそういうものなのかもしれない。

 

高木は、そんなことを考えていながら、登校していった。

 

高木は担任に呼ばれ職員室に向かった なんてことのない内容だ

どうしてそんなことで放課後に呼び出すんだと少し不満に思う。

こんなことなら荷物も持ってくればよかった。

もう誰もいないであろう教室に高木は戻る。

 

「!」

 

高木は机の上に放置していた筆記用具を鞄に収め、

物音を立てないようにして席を立った。

そんなことをする必要は

どこにもないのに気配を消してしまおうとしていた。

 

「わっ」

 

そんな高木に後方から何かがぶつかってきた。

ちょうど教室を出るところだったため躓き転びかけてしまう。

 

「…………」

 

高木が少しムッとした顔で振り返ると、

そこには高木以上にムッとした顔の石瀬が立っていた。

 

「一緒に帰ろうよ、雅利くん」

 

石瀬が小さな声でそう言った。

緊張しているのか握りしめた手は震えているし、

声は少し掠れて聞き取りづらかった。

耳まで真っ赤に染めた彼女が高木の返事を待っている。

まるで告白でもされているかのようだった。

 

「…ああ」

 

高木はやっとの思いでそう返した。

彼女にその気はなくとも一度意識してしまえば

まるで本当に告白されているかのように思えてしまうのだ。

 

石瀬がドアと高木の横を通り抜けて歩き出す。

高木は暫し茫然とその姿を見詰めていたが、数歩先で立ち止まり振り向いた

石瀬に我に返って彼女の横に並んだ。

ちらりと見降ろした石瀬は拗ねているのか小さく口をとがらせており、

それでいていつもと変わらず可愛く映った。

 

 



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第四話 千尋と悠里 こはねと杏と出会う

高木雅利は、石瀬千尋と天宮悠里を

連れて、ライブカフェにやって来るのだった…

 

石瀬千尋と天宮悠里は、小学生の頃からの

友達であり、幼馴染

 

雅利と千尋は、公立の中学に進学したのに対し

悠里は、私学の女子校に通うことになった。

 

それから、連絡は取り合っているものの、

出会うことができない日々を送っていたのだった。

 

そんな、日曜日、雅利は、千尋と悠里を連れて、

杏の父が、経営する、カフェに、やって来るのだった…

 

 

「ここだよ」

 

「ここが、雅利くんが、言っていた、

ライブカフェ?」

 

「初めて見たけど…オシャレな店だね!」

 

「だろ?」

 

「いらっしゃい!雅利くん!

あれ?後ろにいるのは、雅利くんの友達?」

 

「うん、そうだよ」

 

「そうなんだね!初めまして!

私、白石杏!よろしくね!」

 

「どうも、石瀬千尋です…」

 

「天宮悠里です!」

 

「二人とも、小学生の頃からの、馴染みでね、

仲良くしてもらっているんだ」

 

「へぇ~そうなんだね、二人とも、

イベントや、ライブに、興味があるとか?」

 

「少しは…興味あります」

 

「見てみたいです、雅利くんが、言っていた、

イベントやライブの事とか!」

 

「オッケーじゃあ、そのことを、話すね」

 

杏は、千尋と悠里に、ライブやイベントの事を

話すのだった。

 

 

「ということ!二人には、次のイベントを

観に行ってほしいな!」

 

「はい!ぜひ、観に行きます!」

 

「悠里も、観に行きたいな…イベントに…」

 

「連れってやるよ」

 

「ホントに?ありがとう!雅利くん!」

 

「どういたしまして」

 

「じゃあ、これが、そのチラシね」

 

杏は、千尋と悠里に、イベントのチラシを

渡すのだった。

 

 

「ありがとうございます!」

 

「どういたしまして!

イベント、絶対に、成功するから!」

 

「うん、俺も、楽しみにしているよ」

 

「じゃあ、私の歌、聴いてみる?」

 

「聴いてみるかな?」

 

「私も聴きたいです!」

 

「悠里も聴きたい!」

 

「じゃあ、歌うね!」

 

杏は、三人の為に、アカペラで

歌を歌うのだった!

 

「どうかな?」

 

「すっごくいいです!」

 

「当日のイベントは、盛り上げるから

楽しみにしていてね!」

 

「雅利くんに、こんな、知り合いがいたなんて…」

 

「まぁ、幼馴染の、こはねが、

イベントやライブで、歌いたいって、言っていたからね」

 

「へぇ~雅利くんって、幼馴染

何人いるの?」

 

「三人だけど?」

 

「それって、私たちを含めて?」

 

「うん、そうだよ?」

 

「へぇ~雅利くんって、モテモテだね~」

 

「そんなことないよ…」

 

「だって、雅利くん、

勉強もできるし、文武両道だし、

女の子にも、モテるんだよね~」

 

「よせって…そんな趣味はねーよ」

 

他愛もない、話が続くのだった。



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第五話 高木雅利と天宮悠里

よく晴れた日曜日

 

ぽかぽかと日差しが暖かく、思わずうとうとしてしまうほど。

高木雅利は友達である、天宮悠里と

デートに出かけるのだった。

 

「悠里ちゃん、まだ…だよな」

 

時刻を確認すると、まだ待ち合わせの十分前。

待ち合わせをしている

天宮悠里は、まだやって来ないだろう。

 

待ち遠しくて、何度も時間を確認してしまう。

と、そこへ。

 

「雅利君! お待たせ!」

 

元気いっぱいな明るい声が聞こえてきた。

振り返ると、そこには会いたかった人の姿が。

 

「悠里ちゃん」

 

名前を呼ばれ、えへへと無邪気に笑う悠里の姿に、雅利は安心した。

自分の好きな悠里の無邪気な笑顔は変わっていない。

久々に会った悠里は、清楚系で大人っぽいファッションで、やって来た。

背が少し伸びて大人っぽくスラッとしている。

 

「楽しみすぎて早く来ちゃったかなーと思ったら、

雅利君の方が早かったね! 会えなくて寂しかった?」

 

悠里も今日を楽しみにしてくれていたのだと思うと、

思わず笑みがこぼれそうになる。

だが、雅利は平静を装ってこう言った。

 

「別に……連絡は取りあっていたから」

 

「もう、素直じゃないなぁ」

 

拗ねたように悠里が頬を膨らました。見た目は大人っぽいのに対して

悠里はたまに子供っぽい動作をする。そういうところも、雅利は好きだ。

トレーナーのお姉さんからアナウンスがあった。

 

「皆さん、本日はイルカの触れあい体験に、

お越しいただきありがとうございます。

イルカたちも私たちも大変喜んでいます。ここで、体験コーナーです。

イルカに餌をあげたい人~」

 

「はーい!」

 

と、悠里が自分の手ではなくなぜだか雅利の手を挙げた。

 

「ちょ、悠里ちゃん、何やって…」

 

「はい、じゃあ、後ろの席に座っているお二人! お願いします!」

 

悠里と一緒に指名されてしまった。

イルカの近くまで行き、トレーナーの指示に従って、餌をあげる。

初めての体験のため、幾分緊張したが、イルカは美味しそうに餌を食べていた。

その後、お礼を言っているのかは分からないが、

イルカが尾びれをヒラヒラさせている。

 

 

「ショー楽しかったね、雅利君」

 

「そうだね。次は魚を見ようか」「うん!」

 

 

 

 

次に二人は、クラゲのコーナーにいた。

 

「雅利君、見て。このクラゲ、光っているよ」

 

小さい水槽でぷかぷかとクラゲが泳いでいる。

 

「綺麗だね」「だよね! 泳いでいるところ、可愛いなぁ」

 

薄暗い中で、白く綺麗に光っているクラゲたち。幻想的だ、と雅利は感じた。

それから悠里に手を引かれるまま、大水槽に移る。

そこにはジンベイザメやエイ、色々な種類の魚が泳いでいた。

魚や水槽の近くにある説明書を見ながら、二人は水族館を楽しんだ。

 

 

 

「お土産、見ていこうよ」

 

出口付近に着いたところで、雅利は切り出した。

 

「もちろん!」

 

悠里もその気だったようで、二人はお土産コーナーへと入っていった。

イルカやジンベイザメのぬいぐるみ、サンゴやカクレクマノミが

プリントされたクッキーなど、

色々なものが売っている。「あ、あのさ、悠里ちゃん」

面と向かって言うのが恥ずかしくて、

悠里が商品に夢中になっている隙に話しかけてみる。

聞こえなくてもいい、とさえ雅利は思っていた。

 

「なあに?」

 

きょとん、と悠里が首を傾げる。

 

「……おそろいのもの、買わない?」

 

悠里と会えたのは久々だ。今日の記念に何か形になるものがあれば、

と思い、雅利は提案してみた。

 

「買おう! 一緒に選ぼっ」

 

心なしか悠里の顔がぱああっと輝いたような気がした。

二人はぐるりとお土産コーナーを見て、色違いのシャーペンとくっつけると

ハートになるイルカのキーホルダーを買った。

 

 

「楽しかったね! 今日はありがとう」

 

水族館を出た後、悠里は満足げに笑顔でそう言ってくれた。

 

「あれ? 雅利君は、楽しくなかった?」

 

すぐに答えなかった雅利に、悠里は不安そうにこちらを振り返った。

その隙に。

 

雅利の唇に温かいものが触れた。

 

「とても楽しかったよ。ありがとう、悠里ちゃん」

 

「き、キスするときは言ってよ!でも…嬉しい…」

 

 悠里は恥ずかしいようで、赤い頬を両手で包み込んだ。

 

「また出かけようね」

 

「うん。今日買ったシャーペン、早速学校で使うね」

 

「うん、わかった」

 

たわいない話をして、水族館を後にする。

今日一日、可愛い幼馴染である悠里に会えてとても幸せだった、

と雅利は思うのだった。



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第六話 嬉し泣きとキス

俺は驚くのだった。

あれだけ、引っ込み思案で、

自分の気持ちを真面に言えないような奴が、

人に気持ちを伝えることができるなんて…

 

俺は、その告白を受けることになったのだった。

 

あの時の、こはねの白い肌と、顔が赤くなっている瞬間と、

告白が上手くいった時の、笑顔は、

二度と忘れることは、無いだろう

 

幼い印象を受ける、こはねは、告白しても、

変わっていなかった。

 

こはねは、俺が知っている、こはねのままだった。

 

なぜか、心に、安堵感があった

なぜだ?それは、俺にもわからなかった。

 

今日も、俺とこはねは、一緒にいる

 

「あっ、こはねちゃん」

 

「雅利くん…」

 

まるで、恋人のような、会話をしていた、

俺たちだったが…

 

「き、昨日から、すっごく、ドキドキしていて…

それで、どうしたら、いいのかな…

って、思っていて…それでね…」

 

「そっか」

 

こはねの顔が、どんよりしていたように、感じていた。

俺は、いつもそうだ、

論理的、理論的、理知である。

 

不愛想で、覚めた発言が多く、どういう訳か、

可愛い女の子ばかり、好かれていた。

 

クールな印象を受けるからか?

 

いや、深く考えないでおこう…

 

そんなんだから、友達が出来ない、

そんな中でも、俺と仲良くしてくれた、

こはねちゃんや、千尋ちゃん、それに、悠里ちゃんには、

とても、感謝していた。

 

俺のかけがえのない、友達と恋人…

これからも、大切にしたいほどだ…

 

って、何言ってんだ俺?

 

なんだか、変な沈黙が、続きそうだったので…

 

言えよ、俺、言うんだ、俺

せっかく、恋人になったからには…

この一言を言うんだ!

 

「か…」

 

「か?」

 

不思議そうな、表情で、こはねは、こちらを、見ていた…

 

「かっ…可愛く…なっ、なった…な…こはね」

 

目を逸らしているから、こはねの表情が分からない

俺は、思い切って、こはねの方を向いた

 

「なっ、なんで…」

 

今にも、泣きそうで顔で、赤い顔をしている。

 

「えっ!?」

 

やっぱり、変だったのかな?

と、不安に思いつつも、どうしたら、いいのか、わからなかった…

 

心配になりながらも、俺は、こはねの頭を撫でた。

 

「そんなこと、前の雅利くんだったら、

絶対に、言っていないもん…」

 

と、泣きながら、こはねは、そう答えた。

 

「ありがとう…こはね…」

 

思わず、俺も泣いた

 

「どうして、雅利くんも、泣いているの?」

 

「嬉し泣きだよ…だって、嬉しいもん…そう言ってくれて…」

 

こはねは、俺のほっぺに、優しくキスをした…

これからも、ずっと、雅利くんのそばに

いてほしいと、願うためのキスだった…



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第七話 プレゼントを選ぼう

俺は今、こはねにプレゼントを買おうと思っていた。

 

恋人のアイツが、いくら、幼い見た目でも、

子どもっぽくても、プレゼントに手を抜くわけにはいかない。

 

可愛らしいものが、好きなのは、わかるけど、

一体どうしたらいいのか、わからなかった。

 

今は、こはねに合いそうな、雑貨を探しに、

雑貨屋さんに来ていた。

 

だが、何を渡せばいいのか、わからなかった。

 

香水といっても、こはねからは、

いい匂いと香りがしているので、

そんな、必要は、無い。

 

じゃあ、化粧品?

すっぴん姿でも、十分にカワイイ

何もしなくても、カワイイからな、アイツは

 

インテリア?

花瓶とかだったら、すぐに壊れそうだ

 

じゃあ、花束?

粋がっていると、思われる可能性大だが、

こはねは、そんなこと、言わないが…

 

なんなら、文房具か?

まだ、高校生だから、筆記用具でも、いいかもしれない

 

頭を抱えていた、俺に、

店員さんが、話しかけてきた。

 

「何かお探しですか?」

 

「はい」

 

俺は店員に、これまでの話をするのだった。

 

「実は…恋人への、プレゼントですけど…」

 

目を輝かせて、店員さんは、

俺にこう尋ねた

 

「何か記念日ですか?誕生日ですか?」

 

「実は、少し前に、付き合ったばかりで…

付き合った記念かな?」

 

「そうなんですよね!

ただ、気持ちがこもったら、いい訳じゃないですから…」

 

店員は、テディベアを提案したが、

だが、値段が高額で、とても、手が出せる値段ではなかった。

 

「すみません…これは…」

 

「予算は、どれくらいですか?」

 

「6000円くらい…」

 

結構、頑張って、出してみた値段だが、

中学生であることから、少ない値段で、出すことしか、

出来なかった。

 

「すごく、恋人想いの方なんですね!

私なら、そんなに出せませんよ!」

 

その後、いくつかの物を選ぶのだった。

 

ひとつは、ネックレス、

パズル型のピースであり、2人でピース同士を

合わせることができるらしい。

イニシャルを刻むこともできるらしい。

 

もうひとつは、透明のリップ

可愛らしい、コンパクトな、リップクリーム

 

俺は、この二つを買うことになった。

 

可愛くラッピングされ、メッセージカードを入れるのだった。

 

その後、その日のうちに、連絡を入れて、

家の下まで、降りてもらうようにした。

 

「こ、こはねちゃん…」

 

「あっ…雅利くん」

 

「その…プレゼントがあるんだ…

喜んでもらえると…嬉しいな…」

 

こはねの顔が、赤くなるのは、

俺でも分かった。

 

こはねを目を合わせることができない…

 

「開けてみて」

 

「うん…」

 

こはねが、プレゼントを開けると、

そこには、メッセージカードと、透明のリップが、

入っていた…

 

「喜んでもらえるか、わからないけど…

でも、透明のリップだから、学校でも、付けていけれるし

だから…これからも、よろしく」

 

「雅利くん…ありがとう!」

 

「おい!抱き着くな!」

 

「だって、嬉しいんだもん!」

 

「俺も嬉しいよ」

 

こはねに、抱き着かれて、

俺は嬉しい気持ちになるのだった…

 

これからも、こはねを、守ってやる!

この命に懸けてまでだ!



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第八話 デートの約束

今日も1日疲れたなと、思いつつ…

雅利は七百中学校から1人で帰宅していた。

 

「あ、雅利くん〜」

 

雅利が声のする方へと振り返ると、

千尋ちゃんがいた

 

「千尋ちゃん」

 

「一緒の中学なのに、帰ること無くなっちゃったもんね…」

 

「そうだね」

 

「雅利くんは、もう友達できた?」

 

「いいや、全然だよ」

 

「え?雅利くんならすぐ友達できそうなのに」

 

「あんな子どもっぽいノリに俺はついていけない」

 

「雅利くんは大人っぽいもんね」

 

「俺が大人っぽいんじゃなく、みんなが子どもっぽいんだよ

千尋ちゃんは?友達できた?」

 

「まぁまぁかな…」

 

「なんかあった?」

 

「え?な、なにもないよ…」

 

「顔赤いけど、なんか悩みとかあるならいつでも聞くからな」

 

「あ、ありがとう…」

 

千尋は雅利の横顔を見ながら顔を赤く染めていた

 

「でも、本当久しぶりだな」

 

「本当だね、悠里ちゃん元気にしてるかな」

 

「別の学校になると会わなくなるもんな」

雅利は千尋ちゃんと家の方へと歩いていた

 

「わぁ、雅利くんに、千尋ちゃん!」

 

2人の前から悠里ちゃんが小走りで向かってきた

「悠里ちゃんだ」

 

「タイミングがいいな」

 

「なになに?2人だけ仲良くしてずるいよ」

 

悠里ちゃんは頬を膨らませる

 

「いま丁度、悠里ちゃんの話をしていたんだよ」

 

「悠里の話し?どんなどんな」

 

「悠里ちゃんと学校変わっちゃって会わなくなっちゃって

元気にしてるかなってお話してたところだったの」

 

 

「そしたら目の前から悠里ちゃんが来たところだよ」

 

「えぇ〜悠里のこと話してくれてたなんて嬉しい!

2人は中学入っても一緒で仲良さそうでいいな」

 

「でも中学入ってから、あまり会わなくなっちゃって」

 

「でも一緒に帰ってるの羨ましい

悠里も一緒に帰りたいもん」

 

「千尋ちゃんと一緒に帰るのは中学入って今日が初めてだよ

悠里ちゃんやっぱりその制服似合ってるね」

 

「ほんと?雅利くんに褒められたら悠里嬉しい!」

 

「でも本当久しぶりだね、こうして3人で会うの」

 

「本当、なんか懐かしいね」

 

「あ!そうだ〜今度の日曜日に、3人で動物園行かない?」

 

「動物園?」

 

「楽しそう!」

 

「でしょでしょ?雅利くん明日用事ある?」

 

「ないよ」

 

「なら、三人で行こうよ」

 

「たまには動物園もいいね、行こうか」

 

「やった!楽しみだね千尋ちゃん」

 

「うんっ」

 

「じゃあ、明日10時に待ち合わせね」

 

「わかったじゃあ、明日ね!」 

 

悠里ちゃんは2人に手を振り家へと帰って行く。

 

「相変わらず元気だな」

 

「悠里ちゃんらしいね、じゃあ私も帰るね、明日楽しみにしてる」

 

「うん、じゃあ、明日ね」

 

3人は、それぞれ自宅に帰り、

悠里ちゃんと千尋ちゃんは明日を楽しみに準備をしていた。

 

 



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第九話 動物園デート

雅利と千尋と悠里は、動物園に向かって歩いていた。

 

「そういえば、この服見て〜可愛いでしょ」

 

「あ、それ悠里ちゃんが好きなのだね〜」

 

「千尋ちゃん気づいてくれるの嬉しい」

 

「悠里ちゃんに似合ってるよ〜」

 

「千尋ちゃんこそ女の子って感じでかわいい〜」

 

「動物園行くだけなのに…」

 

「雅利くんひどーい、この服かわいいでしょ〜?」

 

「そんなこと言われてもな…」

 

「も〜雅利くんは乙女心分かってないな〜」

 

「乙女心?」

 

「な、なんでもないよっ!」

 

悠里ちゃんは慌てた様子で顔を逸らす

 

「ん?どうした?」

 

「ほ、ほら、着いたよ!」

 

「それは、見たらわかるよ」

 

雅利の言葉で2人は笑いながら動物園へと入っていく

 

「まず入り口から回っていくか」

 

「そうだね〜」

 

「も〜ならどうして聞いたの〜」

 

「どこ見たか分かんなくなっちゃうだろ?」

 

「それもそっか〜♪」

 

「見て、フラミンゴだよ〜」

 

「フラミンゴって本当バランス感覚すごいね♪」

 

「フラミンゴは寒い時期に体を冷やさないために

冷える部分を少なくするために片足で立ち始めたんだ

だからバランス感覚は関係ないらしいよ」

 

「へぇ〜雅利くん相変わらず物知りだね♪」

 

「でも、片足だと足疲れちゃいそうだよね」

 

「両足を1度に使うんじゃなく

片足ずつ使って片足ずつ休ませてるって言う説もあるんだ」

 

「フラミンゴって頭いいね!」

 

「動物は人間より頭がいい生き物が多いんだよ」

 

「わぁ〜、見て見て〜こっちにレッサーパンダいるって♪」

 

「悠里ちゃん、私も見たい〜」

 

二人はレッサーパンダの方へと小走りで向かっていく

雅利は楽しそうに、はしゃぐ2人を見つめていた。

 

 

その後、お昼になり…

 

「お腹すいちゃったね〜♪」

 

「お弁当作ってきたからみんなで食べよう?」

 

「悠里も作ってきたんだあ♪」

 

「俺持ってきてないや」

 

「悠里の食べさせてあげる♪」

 

「私のもあげるよ〜」

 

芝生にシートを引きお弁当を広げる

 

「悠里が作ってきたのはこれ〜♪」

 

「美味しそうだね」

 

「千尋ちゃんのも見たい〜♪」

 

「私のは、これっ、悠里ちゃんみたいにお洒落じゃないけど…」

 

千尋ちゃんはお弁当箱を広げる。

 

「え?!これ千尋ちゃんが作ったの!?」

 

「うん…」

 

 

「え、すっごく美味しそう!

千尋ちゃんお料理上手なの羨ましい〜

少しもらってもいい?♪」

 

「食べて食べて〜」

 

「悠里のサンドイッチも食べてみて♪」

 

「このサンドイッチ美味しい!」

 

「このオムレツも美味しい♪」

 

「ほんと?嬉しいな〜」

 

「千尋ちゃん、今度、お料理教えてほしい♪」

 

「私なんかでいいなら、いつでも〜」

 

「雅利くんも、ほら、あーん♡」

 

「自分で食べれるよ」

 

「いいから、口開けて、あーん♡」

 

 

(な、なんだこの人前で…)

 

雅利は口を開けサンドイッチを食べる。

 

「こっちも、あーん!」

 

(ち、千尋ちゃんまでか…)

 

 

楽しそうにご飯を食べていた。

 

「おなかいっぱいになったからまた動物見に行こ♪」

 

「次は、ゾウの方だな」

 

3人はシートを畳みゾウのエリアへと向かっていた

 

「この坂登るの?!」

 

「キツそうな坂だな」

 

「他の道ないのかな…」

 

「ここから行くしかないね〜あ、そうだ♪

雅利くん、手繋ご♡」

 

「手?なんで、?」

 

「3人で手繋いでたら登れそうでしょ?♪」

 

「なんだその理屈は」

 

「いいからいいから♪」

 

悠里ちゃんは雅利の手を握り

反対側で千尋ちゃんも雅利の手を握る。

 

「これで登れるね♪」

 

(なんだこの状況は…)

 

「登れたあ♪」

 

「手繋いでたらなんだか登りやすかったね〜」

 

「逆に腕振った方が登りやすいと思うけど…」

 

「登れたんだから細かいこと気にしないの♪」

 

「ほら、雅利くん行こう〜?」

 

「そんなに急がなくても動物は逃げないよ」

 

雅利は2人に手を引かれながら動物を見て回っていた

 

「わぁ、みてみて〜♪プリクラ機だよ♪」

 

「ほんとだね〜」

 

「雅利くん、2人で一緒にプリクラ撮ろ♡」

 

「2人で?3人でならいいけど」

 

「雅利くんと2人で撮りたいの〜♪」

 

「でも、千尋ちゃんが」

 

「私も雅利くんと2人で撮りたい」

 

「ち、千尋ちゃんまで、、」

 

「千尋ちゃんならそう言うと思ってたもん♪

ほらほら、雅利くん、撮ろうよ〜」

 

「俺、写真はちょっと…」

 

「だめ?」

 

千尋ちゃんは上目遣いで雅利を見つめる

 

「お願い!」

 

悠里ちゃんは雅利の腕に腕を絡め無自覚で、

胸を当てながら雅利を見つめる

 

「人が見てるからやめて…」

 

「撮ってくれる?」

 

「撮る、2人と2回撮ればいいんだよな?」

 

千尋・悠里「やった〜♡」

 

 

 

2人は入れ替わりで雅利とプリクラを撮る。

 

「せっかくだから3人でも撮ろ♪」

 

「それ私も思ってた♪」

 

「ほら雅利くん、行くよ♪」

 

雅利は手を引かれ結局、楽しくプリクラを撮っていた。

 

(女の子はこういう生き物なのか、写真が好きなのか)

 

「もう暗くなってきたから、そろそろ帰ろうか〜♪」

 

「あっという間だったね〜」

 

「楽しかったな〜」

 

「ほんっとに楽しかった〜♪」

 

「またみんなで遊びに行こうな」

 

「ねえ、雅利くん」

 

「どうした?」

 

「っ…」

 

悠里ちゃんは背伸びをして雅利の頬に手を当て唇を重ねる

 

(ど、どういうことだよ、友達同士でキス…?)

 

「ふふっ、それが悠里の気持ち♡」

 

(気持ち?どういうことだ、楽しかったから、キス…?

いやいや、そんなわけない、キスは好きな人とするもの、じゃないのか?)

俺は困惑し思わずしゃがみこんでいた

 

「ま、雅利くん、」

 

(待ってくれ、理解が追いついていないから、話しかけられても…)

 

「っ…」

 

千尋ちゃんはしゃがみこみ雅利と唇を重ねた。

 

「ん!?」

 

(なんだこの状況は、最近の女子は楽しかったらキスをするのか!?

それとも、キスが挨拶に?!)

 

「私の気持ち…」

 

千尋ちゃんと悠里ちゃんは顔を赤くしながら

また楽しそうに会話をしながら歩き出している

 

「雅利くん〜こっちこっち〜♪」

 

「雅利くん、帰るよ〜?」

 

2人は振り向き雅利に笑顔を見せる

 

(な、なんなんだ…理解が追いつかない…)

 

千尋ちゃんと悠里ちゃんは乙女な顔をしながら

笑顔を見せていた

 

(だめだ、全然意味わかんない。

まあでも、2人とも楽しそうだしいっか)

 

「また今度3人で遊ぼうね♪」

 

「楽しみだね!」

 

「あぁ、そうだな」

 

動物園を楽しみ満喫していた、

石瀬千尋も、天宮悠里も、心の奥底から、

高木雅利が好きだ。

 



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第十話 石瀬千尋と天宮悠里

高木雅利は、石瀬千尋と天宮悠里と一緒に、

ショッピングモールに来ていた。

 

「はぁ…疲れた…」

 

「雅利くん!何言っているの!デートはこれからだよ?」

 

「そんなこと言われても…」

 

俺と千尋と悠里は、同じ、幼稚園と小学校出身、

俺と千尋が、公立の中学に出て、

悠里が付属の女子校の中等部に通ってからは、

三人で、遊ぶ機会は、めっきり減ったのだったが、

今日は日曜日だったのか、三人で遊びに行くことになった。

 

「ねぇ、雅利くん、聞いている?」

 

「えっ、あっ、ごめん!ボーッとしちゃった…」

 

「もう!雅利くん!悠里たちのこと、ちゃんと、見ていてね!」

 

「私のことも、見てよね!」

 

「わ、わかった!ちゃんと見るから!」

 

「じゃあ、今日のお昼のおごりは、雅利くんね!」

 

「うん、わかったから」

 

三人でカフェへと、向かった。

 

「俺、ブラックコーヒーかな?」

 

「ブラック飲めるの?」

 

「一応、飲めるよ?」

 

「雅利くんは、オトナだな…他の男子とは違って!」

 

「だよね?なんか、理想の王子様!って感じ!」

 

「おいおい、それは、言い過ぎだよ…」

俺はブラックを頼み、千尋はカプチーノ、悠里はココアを、

それぞれ頼み、その後、レタスのサンドイッチを頼むのだった。

 

カフェから出た後、三人で俺の家に向い、

今は、俺と千尋と悠里が、俺の部屋にいた。

 

「雅利くんって、勉強が得意で、

いつも、私に五教科を教えているんだよ?」

 

「えー!悠里も、雅利くんに、五教科教わりたいよー!」

 

「でも、悠里は付属女子中学校だから、

七百中学とは、勉強のカリキュラムが違うからな…

まぁ、五教科は見れるだけ、見れるからな、

今度、俺に見せてよ」

 

「やったー!ありがとう!雅利くん!」

 

と、悠里は雅利に抱き着いた!

 

「あっ!悠里ちゃん、雅利くんに、抱き着いて、ずるーい!私も!」

 

千尋も、雅利に抱き着いた!

 

「千尋!悠里!いきなり、抱き着くなよ…」

 

「だって、カッコいいんだもん!」

 

「うん!カッコいいよ!」

 

二人のカワイイ美少女たちに抱き着かれて…

助けてくれ~!

 

 

「雅利くん、どうかしたの?」

 

「雅利くん、顔が真っ赤だよ?」

 

「そりゃ…そうだよ…」

 

「じゃあ、一緒に寝よ!」

 

「こっち、こっち!」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

俺は千尋と悠里の間に挟まれながら、

ベッドで、寝ていた。

 

「ねぇねぇ、悠里と千尋ちゃん、どっちが好き?」

 

「…」

 

「悠里だよね?」

 

「私だよね?」

 

「選べないよ…だって…俺…」

 

「こはねさんが、好きなんでしょう?」

 

「う、うん…」

 

「でもね、私も悠里ちゃんも、雅利くんのこと、好きだから!」

 

「う…うん…」

 

「忘れないでね?まだ、雅利くんのこと、諦めたわけじゃないから」

 

「そんなこと言われても…」

 

俺は悩むのだった。

 



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第十一話 夏の林間学校

今現在、公立七百中学校二年生は、

林間学校に来ていた。

 

今日が最終日だった。

 

「雅利くんって、料理が出来るの?」

 

「一通りはね」

 

「雅利くんの、ご飯、とっても、美味しそう!」

 

「照れるじゃん…」

 

「もーう!雅利くんの照れ屋さん!」

 

「高木君、こっちも、手伝ってくれない?」

 

「あぁ、今すぐ行くよ!」

 

「雅利くん、頑張って!」

 

「ありがとう、行ってくるよ!」

 

俺は他の男子に呼ばれて、調理の手伝いをするのだった。

その後、みんなで、カレーを食べていた。

 

「美味しい!雅利くんの作った、カレー!

すっごく、美味しいよ!」

 

「言い過ぎだし、褒めすぎ、

カレーくらいで、大袈裟なんだから…」

 

「こんな、美味い、カレー作れるなんて、

高木、モテるんじゃねーの?

ルックスもいいし」

 

「だな!羨ましい!」

 

「戸田も、兵藤も、大袈裟なんだから…」

 

「美味しかったよ!雅利くん!」

 

「はいはい」

 

 

皿洗いしている時に、また、石瀬千尋に話しかけられた。

 

「ねぇ、この林間学校で、キャンプファイヤーがあるじゃん?

最後の日に、そこでね、ダンスのペア同士が、

結ばれるって、伝説があるんだよ!

それでね!永遠に幸せになれるんだよ!」

 

「そんなの、ウワサだろ?」

 

 

そして、その後、学級委員主催の、

肝試し大会が始まった、その後に、キャンプファイヤーの時間だ。

 

「お前ら、今宵は肝試しだよ?」

 

「えー!怖いよー!」

 

「暗い所とか、ムリだし…」

 

「俺達、学級委員会が、マジで、驚かせてやるからな!

腰をぬかすなよ!」

 

「雅利くんは、お化けとか、大丈夫なの?」

 

「作り物ならともかく、いるかどうか、分からないし」

 

「私は…怖いから、雅利くんと一緒に行きたい…」

 

「あっ、肝試しのペアは、くじ引きで決めるから、

勝手にペアになるのは、ムリだけどね」

 

「そう…なんだ…」

 

千尋は、しゅんとした、表情で、雅利を見ていた。

 

 

そして、委員長の真木が、声をかける。

 

「これから、ペアをくじ引きで決めます!

番号を勝手に言ったらダメだよ?

じゃあ、ペアを決めます!一番の人!」

 

と、続き、二番の人と続いていた。

 

「じゃあ、三番の人!」

 

そして、偶然にも、高木雅利と石瀬千尋のペアだった!

 

「当たったね!雅利くん!」

 

「お、おう」

 

「緊張する…ちゃんと、私の事、守ってね?」

 

「当たり前だ!」

 

 

俺がライトを照らしながらも、暗い夜の道を歩いて行った。

 

「うわっ!ゴメン!」

 

「大丈夫?」

 

「うん…」

 

そして、前へと進んでいった、お化けっているのか?

進行方向に従って、ルートを進んでいった。

 

石瀬千尋は、高木雅利の腕に寄り添った。

よっぽど、面倒くさいだろうか?

 

「はぁ…しょうがないな…」

 

雅利は千尋の手を握った!

 

「えっ?」

 

「俺から、離れるなよ!」

 

「握った手、少し冷たい気がする…」

 

「山の中だからだよ、夜だし、案外、涼しいな、

こう見えてさ、暗い道って、意外と怖いけど、

千尋ちゃんと一緒なら、お前を守るためなら、

平気だからさ」

 

「雅利くん…面白いね!」

 

石瀬千尋の頬を伸ばして、笑わした。

 

「笑った方が、可愛いって、

じゃあ、早く終わらせて、キャンプファイヤーでも、見ますか!」

 

「うんっ!」

 

 

肝試しの後、キャンプファイヤーが、始まったのだった。

高木雅利と石瀬千尋は、ペアでダンスを踊るのだった。

 

「夢みたい、夢を見ているみたい、雅利くんと、踊るの、

王子様と踊ったみたい…」

 

「だから、大袈裟だよ…」

 

何がともあれ、林間学校は、終わりを告げるのだった…

二泊三日に及ぶ、林間学校は、色々あったけど、

最高の思い出になった。



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第十二話 千尋と悠里のデート

高木雅利には、女の子の、友達がいた。

 

石瀬千尋と天宮悠里という、女の子の存在だった。

 

千尋と悠里にとって、雅利は、想い人のようで、

王子様のような存在。

千尋と悠里は、雅利に対し、恋心を抱いていた。

 

そんな、ある日の朝、石瀬千尋は起床するのだった。

 

「ふぁっ…眠いなぁ~」

 

千尋は、歯を磨き、朝ご飯を食べて、

外出するための服に着替えて、出かけるのだった。

 

「行ってきまーす!」

 

 

 

しばらく、歩いていた。

 

「今日は悠里ちゃんとのデートの日…

だけれど、雅利君がいないな…」

 

「千尋ちゃん?」

 

「あっ、悠里ちゃん!」

 

と、悠里は千尋にハグをした。

 

「えへへー気持ちいいでしょう?」

 

「うんっ!悠里ちゃんって、肌がスベスベで気持ちいいね!」

 

「ふふっ、ありがとう!千尋ちゃん!

あっ、ねぇねぇ、早く行こうよ!」

 

「うん!」

 

しばらくして、千尋と悠里は、手を繋いで歩いた。

 

「ねぇ、千尋ちゃんって、雅利くんのこと、

どう思っている?」

 

「うーん…大切な人かな?」

 

「悠里もだよ!雅利くんのこと、大切に思っているよ!」

 

「お互い様だね」

 

「そうだね」

 

「でも、雅利くん、私と悠里ちゃんの事、

あんまり、見てくれない気がする…」

 

「悠里もそう思う、ひょっとして…」

 

「まさか…ね」

 

しばらくして、歩いていると、ショッピングモールへと、

辿り着くのだった。

 

 

千尋は、以前から、悠里に対して、

恋心を持っていた、女の子同士のはずなのに、

どうして、彼女が好きになるのか、

正直言って、意味が分からなかった。

 

千尋と悠里は、別々の学校に通っている。

千尋は、公立の共学校

悠里は、私立の女子校

 

中学に上がった今でも、時より、遊んでいるのだった。

 

嬉しくて、悲しい気持ちが、

千尋の心に渦巻いていくのであった。

 

そして、しばらくして、服が売っている、

お店へと、辿り着いた。

 

「可愛い服…着てみる?」

 

「私が…?」

 

「雅利くんを振り向かすには、

まず、オシャレしないと!」

 

「そうだね、悠里ちゃんは?」

 

「悠里はね…この服かな?」

 

「すっごく、似合う!」

 

「ありがとう、千尋ちゃん!」

 

私は悠里ちゃんのことが好きだ、

恋の感情や、懸想に、当てはまるべき言葉であった。

 

「試着してみようよ!」

 

「うん!」

 

二人は試着するのだった。

 

「似合う!買おうよ!この服!」

 

「悠里ちゃんは、白が似合うね」

 

「千尋ちゃんも、白が似合うよ?」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ!」

 

こうして、二人で服を買うのだった。

 

 

服を選んでいたら、中学生が帰る時間帯になった。

近くにある、アイス屋で、

二人はバニラとイチゴの、アイスカップを食べるのだった。

 

アイスを食べた後、また、手を繋いで、帰路に着くのだった。

 

「今日も楽しかった!また、遊ぼうね!

ありがとう!悠里ちゃん!」

 

「悠里も楽しかった!また、遊ぼうね!千尋ちゃん!」

 

「ねぇ、千尋ちゃん」

 

「?」

 

近づいてくる、すると…

 

チュッ

 

「大好きな人には、キスをするじゃない?

だから…これは、一番大好きな友達の、千尋ちゃんへのキスだよ!」

 

「は、反則だよ…悠里ちゃん…」

 

先ほどまで、触れていた、柔らくて甘い唇は、

思いを巡らせるのだった。

 

 

こうして、二人のデートは、終わりを迎えるのだった。



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第十三話 恋は必然か偶然か

公立七百中学校の校門に、

ある女の子が、俺の顔を見ていた。

 

「悠里ちゃん…」

 

「雅利くん!待っていたよ!」

 

「待っていたって、何でいるんだ?」

 

「学校、抜け出しちゃった!会いたくて!」

 

「抜け出しは、よくないぞ!」

 

と、俺は、少し怒った。

 

「悠里ね、雅利くんに会いたかったんだ」

 

「そんなに、俺に会いたかったのか?」

 

「そうだよ!ねぇねぇ、今日は何して遊ぶ?」

 

「そんな事、急に言われても…」

 

 

すると、しばらくして、石瀬千尋も現れて…

 

「雅利くん、それに、悠里ちゃん?」

 

「あっ、千尋ちゃんだ!

ねぇねぇ、悠里と千尋ちゃん、どっちが好き?」

 

「急にそんなこと言われてもな…」

 

「それじゃあ、どっちを愛している!?」

 

「言い方、ほぼほぼ、一緒じゃん!」

 

「私と悠里ちゃん、付き合うなら?」

 

「…」

 

俺には、小豆沢こはねという、女の子がいるが、

そんなこと、言うと、二人が、悲しむに決まっている…

そして、俺は、こう言い放った。

 

「片思いをずっと続けるなら、

それは、両想いより、幸せだと思わないか?」

 

「それって…」

 

「どういう意味?」

 

「片思いしている人って、大抵、破局する事が多いって、

ウワサだぜ?そして、両想いしている人は、

長続きもせずに、別れてしまう」

 

「じゃあ、結局、同じじゃん!」

 

「そうよ!それで、どっちが好き?」

 

二人とも、俺の顔を、じっと、見つめている。

パーソナルスペースが、明らかに狭かった。

 

「もっと、簡単に言えば、恋は、難しくて、

怖いことなんだよ」

 

「…」

 

「…」

 

「じゃあ、私と悠里ちゃんのこと、

ちゃんと、見ていてよね?」

 

「えっ、わ、わかったよ…」

 

「じゃあ、雅利くんの家に行きたいなー」

 

「悠里も!」

 

「う、うん、わかった、今日は両親がいないから、

大丈夫だと思うよ?」

 

父親と母親は夜遅くまで働ているため、

一人でいることが非常に多い。

同い年の女の子を二人も、

家に招くのは、マズい気がして仕方がない。

 

「ここが、雅利くんの部屋なんだね」

 

「初めて来たけど、キレイにしているね」

 

「こまめに掃除しているからだ、

飲み物、持ってくるから、じゃあね」

 

こうして、俺は彼女たちの為に、

お茶を淹れるのだった。

 

「雅利くんは、悠里のこと、どう思っている?」

 

「私のことも!」

 

「好きで愛しているよね?」

 

「ずっと、大切にするよね?」

 

「えっと…」

 

「悠里のことは?」

 

「あっ!私のことは?」

 

「千尋も悠里も、大切な女の子だ、

それ以上でも、それ以下でもない。

大切な女の子だ」

 

と、俺はそう言い切るのだった。

 



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第十四話 こはねとの再会

高木雅利は、小豆沢こはねと再会するのだった。

 

「こはね」

 

「あっ!雅利くん!」

 

「久しぶりだね」

 

「ねぇ、雅利くん」

 

「どうかしたの?」

 

「私のこと、どう思っている?」

 

「えっと、千尋ちゃんや悠里ちゃんも、大切だけど、

こはねちゃんの方が…」

 

「もっと、大切ってこと?」

 

「う、うん、そんな感じ…」

 

「そうなんだね」

 

「でも、あの二人には、悪いことを、

してしまったな…」

 

「どうして?」

 

「だってさ、幼馴染二人を差し置いて、

こはねと付き合うのは、なんていうか、

気まずかったというか…何て言うか…」

 

「そんなことないよ!

雅利くんが、私を選んでくれて、嬉しい!」

 

「そ、そうかな…?」

 

「そうだよ!私には、雅利くんが必要だから…」

 

「しょうがないんだから」

 

「えっ?」

 

「だってさ、自分で言うのもなんだけど、

俺って、女の子の友達が多くてさ、

男なのに、男の人と会話したことなんて、

父親以外に、ほとんど無い状態だしな…」

 

「そうだったんだね」

 

「ねぇ、こはねちゃん」

 

「どうしたの?雅利くん?」

 

「俺と白石杏、どっちが好き?」

 

「杏ちゃん…かな?」

 

「じゃあ、白石杏が、もし、こはねと、

結婚したい、って、言われたら?」

 

「うーん、どうだろう…?

杏ちゃんは、大切な人だから…結婚したいって思うけど…」

 

「ふーん、まだ、決まっていないって事?」

 

「そう…だね」

 

「なぁ、何か食べに行かないか?

俺が、奢ってやるよ」

 

「えぇ、いいよ…私の方が年上だし」

 

「いいの、こんな話に、付き合わされて、

変な気持ちになったから、何て言うか…機嫌直しっていうか…」

 

「ありがとう、じゃあ、何食べる?」

 

「中華料理でも、食べに行くか」

 

「うん!中華は、どれも、美味しいから、

つい、沢山、食べちゃうんだ…」

 

「俺もだ、天津飯と、餃子は、美味いからな!」

 

 

二人は、お値段が安くて、味が美味しい、

中華料理店へと、やって来るのだった。

 

学生でも、手軽に、食べられるような、値段である。

 

 

「どれにする?」

 

「私は、あんあんと、ももまん、かな?」

 

「じゃあ、俺は天津飯、

餃子二人分頼んで、一緒に食べるか?」

 

「うん!」

 

二人は中華料理を食べるのだった。

 

 

「うん、美味い、ここの店の天津飯は、

やっぱり、美味い!」

 

「そんなに、美味しいの?

じゃあ、今度、食べてみようかな?

雅利くんの好物だよね?」

 

「うん、そうだよ、食べて見てよ!」

 

こうして、二人で中華料理を、満喫するのだった。

 

「本当に良いの?」

 

「まぁ…千円程で、収められたし問題ないと思う…」

 



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第十五話 秋の球技大会

9月に入り、公立七百中学校は、

毎年恒例の行事が行われた。

それは、球技大会だった。

 

卓球とバレーボールに分かれて、

卓球は、個人で参加し、

バレーボールは、クラス対抗で、行われる。

 

ちなみに、俺は卓球に参加した。

様々な生徒と対戦して、

トーナメント方式で、勝ち抜いていくルールだ。

 

学校の体育館にて、球技大会、

卓球の部が幕を開けるのだった。

 

まず、最初は、一年生の中橋という、

男子生徒と、対戦することになった。

 

「さぁ、お手柔らかに願おうかな?」

 

「先輩、手加減は要りません!

よろしくお願いします!」

 

「おう!腕がなるぜ!」

 

中橋からのサーブ、その後、彼に一点も取らせないまま、

楽々と、圧勝した。

 

「先輩、強すぎますって!」

 

 

二回戦は、同じ一年生の芝原と対戦、

 

「先輩!いきます!」

 

「よし、来い!」

 

俺のサーブから、始まった。

そして、こちらも、一点も取らせないまま、

圧勝するのだった。

 

「先輩!才能ありますって!」

 

「そうかな?でも、上には上がいるからな」

 

 

三回戦は、三年生で生徒会の書記を務めている、

東条と対戦した。

 

「言っておくけど、僕は手強いよ?」

 

「やっと、実力者のお出ましか…見せてやろうか?」

 

東条のサーブから、始まった。

俺は苦戦を強いられた、なんとか、僅かな差で、勝利した。

 

四回戦は、三年生の佐野と対戦した。

 

「僕は卓球部の部員だけど、補欠なんだ!

でも、補欠だからって、油断するんじゃねぇぞ!」

 

「その言葉、そっくり、そのまま、返してやるよ」

 

佐野のサーブから、始まった。

しかし、互いに、接戦を繰り広げて、

僅かな差をつけて、勝利した。

 

「何て強さなんだ…卓球部じゃない癖して…」

 

「悪いな、俺の勝ちだ」

 

「チッ…リア充、羨ましいぜ…」

 

「えっ?」

 

「あぁ、羨ましい、それだけだ」

 

「あ、ありがとう…」

 

 

そして、準決勝は、一年生の須藤と対戦した。

 

「僕は卓球部のレギュラーだ、

たっぷりと、その実力を味わうが良い」

 

「じゃあ、その力、見せてみろ」

 

須藤のサーブから、始まった。

しかし、俺は、レギュラーの実力に全く歯が立たず、

自滅してしまうのだった。

 

 

「な、何て強さなんだ…」

 

「佐野先輩から、実力は聞いていたが、

才能や力としては、悪くない方だ、

また、相手にしてやるよ」

 

「あぁ、もっと、実力を上げるつもりでいるからな」

 

「楽しみにしておくよ」

 

 

そして、その後、決勝が行われ、

結果は、卓球部の部長である、高倉智也先輩の優勝だった。

 

こうして、球技大会、卓球の部は、

幕を下ろすのだった。



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第十六話 誘惑される時

早朝から、出かけた、俺の両親。

さて、この後、予定もないし、

両親から留守番を頼まれているから、

学校の宿題を進めて、

それで、のんびり過ごすのも、悪くはない。

 

そんなことを考えながら、

母さんが用意してくれた、朝食を食べて、

食器を片付けて、しばらく、経った後だった。

 

玄関のインターホンが鳴り響き、

雅利が玄関を開けた時、

二人の女の子が、やって来た。

 

「雅利くん!」

 

「千尋ちゃんに悠里ちゃん!

ま、まぁ…いいけど?

今日は親は、しばらく帰ってこないし」

 

「そうなの?」

 

「うん、とりあえず上がってよ、

俺の部屋でゲームでもするか?」

 

「いいよ、この前は負けちゃったけど、

今回は負けないよ?」

 

そして、雅利は千尋と悠里を、自分の部屋に案内した。

家にある、携帯ゲームやテレビゲームや

ボードゲームでも遊んでおけば、

多分、問題ないだろう。

 

しかし、俺はまだ知る由も無かった。

彼女たちが、あることをするとは…

 

「はい、俺の勝ち、これで、三連勝だな」

 

「もう、勉強もだけど、ゲームでも、

本当に手加減してないし!」

 

「千尋ちゃん、そうなの?」

 

「うん、勉強が出来てね、

いつも、私、雅利くんから、勉強教わっているの」

 

「えーいいなぁ…悠里は女子校だからな…」

 

しばらく、何気ない会話が続き、

ゲームを楽しんでいた。

 

雅利は勉強とゲームが、どれをとっても出来るため、

千尋や悠里からも、羨ましがられている。

 

「のどか沸いただろ?」

 

「ジュースある?」

 

「オレンジジュースだったら、ある」

 

「じゃあ、それで」

 

「悠里も」

 

「わかった」

 

 

雅利は千尋と悠里の為に、オレンジジュースを、

コップに入れた。

 

そして、自分の部屋に戻ると、

衝撃な光景を、彼は見てしまう。

 

「ジュース持ってきたけど…何やっているんだよ!?」

 

悠里と千尋は、ブラジャーとショーツ姿で、

誘惑しようとしていた。

 

「あの…雅利くん、見てくれないかな?」

 

「悠里と千尋ちゃんのこと、もっと見てよ」

 

テーブルに一旦、飲み物を置き、

雅利は手で自分の目を隠した。

 

しかし、右手に悠里、左手に千尋が、

ガシッと、掴まれた。

 

「な、なんのつもりだ!?」

 

「気づいてくれないもん、幼馴染なのに」

 

「もっと、仲良くしたい」

 

二人の身体を目の当たりにした、雅利は、

その身体の成長ぶりに、息を吞んでいた。

 

ついこの間まで、小学生だったはずの、自分たちが、

中学生になって、いつの間にか、こんなに身体が成長していたのだろうか。

 

二人の身体は、もうかつてのあどけない子どもの身体ではない。

大人になる過程、女の子から素敵なレディに変わる、

入り口を踏み越えた身体だ。

 

「雅利くん、悠里の胸、触ってみてよ」

 

「私の胸も、触っていいよ?」

 

困惑する、雅利に対して、

千尋と悠里は、自分たちの身体を触れてほしいと迫ってきた。

 

同い年の女子中学生の身体を、触っていいのか?

しかも、男である、彼がだ。

 

「そんな…急に言われても…」

 

「嫌なの?」

 

「えっと…」

 

「いつか、愛し合うためにも、

こういうことが必要だから…」

 

そして、意を決して、千尋と悠里の胸を、

人差し指で、ツンと、触れた。

 

「…!」

 

その後、千尋と悠里は、

自分たちで、雅利の手を動かし、胸を触らせた。

 

「どう…かな?」

 

「気持ちいいかな?雅利くん?

悠里の胸、もう、子どもじゃないんだから」

 

やがて、二人は、ベッドに連れて行った。

 

「ちょ、ちょっと待てよ…」

 

そのまま、二人は雅利を挟むように、

彼の右には悠里、左には千尋がいる状態で寝ていた。

 

「雅利くんの身体、すっごく、温かい…

心臓がドキドキしている!」

 

「もしかして、悠里たちの姿に、ドキドキしているの?」

 

今でさえ、両脇に下着姿の美少女に、

挟まれている、俺は、一体、どうなってしまうのだろうか?

 

「これからも、一緒だよね?雅利くん?」

 

「一緒じゃないと、ダメだからね?

悠里との約束だよ?破ったら許さないから」

 

「う、うん…」

 

そう言いながら、絶対に離さない意思を表明するかのように、

彼の身体に密着させた。

 

自分たちは、これから、どうなってしまうのだろうか?

 

この先の未来を想像して、

不安を覚えるようになったのだった。



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第十七話 千尋の気持ちと悠里の気持ち

石瀬千尋と天宮悠里は、こう思った。

 

二人は、高木雅利くんしか、

愛せなかった。

 

彼だけしか、もはや眼中になかった。

 

 

どうしたら、千尋だけの、悠里だけの、

雅利で、いてくれるの…?

 

千尋と悠里が初めて愛したのは、雅利くんでした。

 

おはよう、雅利くん一緒に学校行こうー♪

なんでー?って…それは…幼馴染みじゃん、

私達…だから一緒に登校しても、別に、いいでしょ?

えっ…一緒に行く人居るからって…?

好きな人が、いるわけじゃないよね…?

 

そっか…ごめん、じゃあ、私、先に行くね

ん?放課後話があるの?

なんの話し??

 

はいはい、放課後まで秘密ね。

わかった、予定開けておくね

 

恋人が、出来て付き合っているなんて、冗談だよね?

 

千尋と悠里は、雅利くんの事、待っているからね…?

 

 

千尋と悠里は、雅利くんのこと、大好きなのに…!

 

 

一緒に行く人居るって言ってたし…

 

えっ?恥ずかしかったからって…

 

あのね、こっち来て、

うん、もっと近づいて…!

 

ぎゅーってして欲しいな!

千尋と悠里のこと!

 

あのね、千尋と悠里にも告白させて

雅利くんのこと

 

出会った時、から。

 

うん!ずっと前から大好きだよ!

 

今日からは、幼馴染みじゃなくて、

千尋か悠里の彼女になってくれると、嬉しいな…!

 

どうしたら、千尋だけの雅利くん、

もしくは、悠里だけの雅利くんに、なってくれるの…?

 

と、常に思っていた。

 

「やっぱり、納得いかないよ」

 

「うん、雅利くんは、悠里のだから!」

 

「ううん、私!千尋の!」

 

「何としても、雅利くんと付き合いたい!」

 

「でも、どうしたらいいんだろう?」

 

「大人っぽいコーデとか、どうかな?」

 

「雅利くん、大人っぽいからね。

雅利くんは、成績優秀で、

学年でも、五本指に入る位の優秀な成績だからね~」

 

「あ、勉強会とか、どう?

悠里、数学が、ピンチなんだよね~」

 

「私も数学~」

 

「雅利くんから、教わっちゃえ!」

 

「そうだね」

 

その後、雅利の家に、千尋と悠里が、やって来て、

二学期のテスト対策として、

数学の勉強会をした。

 

「ここの方程式や分数や少数…

あー要は、数学が全部できないの!」

 

「悠里も、ここの数式とが、出来なくて…」

 

「わかった、わかった、俺が面倒見てやるよ。

とりあえず、一緒に、解いてみようよ」

 

「ありがとう。雅利くん!やさしー!」

 

「さすがは、雅利くん、私達の幼馴染だね!」

 

「あの…雅利くんっ!」

 

「?」

 

「こ、これからも、一緒にいて欲しいな…お願い!」

 

「お、おう」

 

「悠里たちと一緒にいてね?」

 

「ずっと、これからも、一緒にいてね?

 

「う、うん…」

 

戸惑う、雅利だった。



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第十八話 狂気の沙汰のデート

今日は、俺と石瀬千尋ちゃんと、

天宮悠里ちゃんの三人で、

ショッピングモールで、お買い物だったが…

 

千尋と悠里の様子が、明らかにおかしい。

 

何かあったのか…?

 

「雅利くん、もっと、私のことを、

見て欲しいな」

 

「悠里のことも、見て欲しいな」

 

「う、うん…」

 

頷く事しか、出来なかった。

 

やって来たのは、中学生と高校生の女の子、

御用達のアパレルショップ。

 

今どきから、大人っぽい服装まで、

取り揃えている、お店だ。

 

「雅利くんに、決めてもらうね、

どんな、服が似合うか」

 

「悠里の大人っぽさ、

雅利くんに見て欲しいな」

 

「うん…」

 

彼は相当浮かない顔をしている。

 

色々なコーディネートを見た、

千尋ちゃんと悠里ちゃん、

どの服も、似合っているとは思い、

特段とコレと、思うのが見当たらない。

 

「どのコーディネートが、よかった?」

 

「ねぇねぇ、教えてよ」

 

「えっと…これと、これかな…?」

 

「雅利くん、センスいいね。

私は、カワイイ服が似合うんだね」

 

「悠里は、ちょっと背伸びした方が、

似合うみたいだね」

 

二人とも、納得している様だ。

 

「ねぇ、雅利くんの家、誰もいない?」

 

「あっ、今日は、俺以外、誰もいないけど?

親は共働きだし」

 

「じゃあ、寄ってもいい?」

 

「悠里からも、お願いっ!」

 

キラキラと純粋無垢な瞳で、

俺に面と向かって言っても、困るのだが…

千尋と悠里のお願いなら、出来るだけ、聞きたい。

 

「わ、わかったよ…」

 

雅利の家、もとい、マンションの203号室にて…

 

「ねぇ、雅利くん、私と悠里ちゃんが、

一緒に料理を作るね!」

 

「冷蔵庫の中、あったかな…?」

 

「何が食べたい?」

 

「私、肉じゃがと、オムライスが作れるよ?」

 

「悠里は、料理をするの苦手で…」

 

「大丈夫!私と一緒に、作ろうよ!

悠里ちゃん!」

 

「うんっ!雅利くんを喜ばせよう!」

 

「じ、じゃあ…期待しておくね…?」

 

その後、俺は千尋と悠里が作った、

オムライスと肉じゃがを食べようとしていた。

 

「いただきます」

 

と、俺が、ある程度、食事をしていたら、

だんだんと、眠気が襲い掛かり、

次第に、意識が遠のき、意識を失った。

 

目が覚めると、自分の部屋にいた。

 

どういう訳か、身動きが、全く取れなかった。

 

なんだろうか…?体が妙に重たく感じる。

 

「ねぇ、雅利くんは、好きな人いる?

私のこと好き?大好きだよね?」

 

「悠里のこと好き?大好きだよね?」

 

「愛しているよね?」

 

「どうして、悠里のことを愛してくれないの?」

 

「好きな人がいるのは、わかっているんだから…」

 

「うぅ…」

 

わかってはいた。ダメだとは、思っていた。

 

もはや、どうしたいいのか、

自分のやった過ちを、後悔しても遅かった。



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第十九話 病んだ二人の恋の行く末

石瀬千尋と天宮悠里は、

異常に病みはじめている。

 

雅利くんに、好きな人が出来たことに対して、

横取りしたり、奪い取ろうとしていた。

 

もちろん、彼だって、

千尋と悠里を、傷つけたくないとは、

わかっていはいたが…

 

とはいえ、俺は昏睡状態になっていた。

 

千尋に右腕、悠里に左腕を掴まれている状態で、

身体が全く言う事を聞いてくれなかった。

 

「こ、これは…!」

 

思った以上に体が動いてくれない状態だった。

 

 

千尋と悠里は、瞳がハートで、

キラキラになっていて、俺に顔を近づいてきた。

 

ダ、ダメだ…!俺に近づくな…!

 

「ねぇねぇ、雅利くん?」

 

「聞いているの?雅利くん?」

 

「ひどいよね?雅利くんには、悠里か千尋ちゃんしか、

いないのに!」

 

「私の雅利くんだよね?」

 

「悠里の雅利くんだよね?」

 

「…!」

 

中学生だからか、身体的にも、精神的にも、

大人に近づこうとしている、千尋と悠里。

 

世間一般から見たら、思春期のようだ。

 

「私はね、雅利くんと結婚したいの、

それでね、幸せな家庭を築きたいの」

 

「悠里もね、雅利くんと結婚したい。

たくさんの愛情を注げるよ。もう、注げてますけど」

 

「…うぅ…!」

 

苦しい…千尋と悠里に、腕を掴まれて、

身動きが全く取れない!

 

「悠里たち、幼馴染なのに、

こんなにカワイイ幼馴染なのに、

どうして、他の女の子と付き合っているの?」

 

「ひどいよ、雅利くん。

私の愛が足りなかったのかな?」

 

「お、俺は…その、好きだから…」

 

「誰が?私だよね?私だけを見て欲しいな」

 

「悠里だけを見て欲しいな」

 

いくらカワイイ幼馴染でも…

誰よりもカワイイ美少女でも…

 

すると、千尋と悠里が脱ぎ始めた。

 

バサッと音がした。

 

雅利は、慌てて後ろを向いて、

目を手で隠して、顔を真っ赤にした!

 

「や、やめろ!こんなところで、脱ぐな…!」

 

「雅利くんは、もう、大人だから、

私のブラジャーとショーツ姿を見て、

いやらしい気持ちには、ならないよね?」

 

「悠里はね、雅利くんのこと、誘惑できるよ?

こんなに、カワイイ女の子が、

ブラジャーとショーツ姿なんだよ?」

 

千尋と悠里は、ものすごいスピードで、

雅利に近づいて、再度、腕を掴んだ。

 

「ねぇ、今日、親は帰ってこないよね?」

 

「うん…」

 

「じゃあ、朝まで一緒に寝よ!」

 

「悠里と千尋ちゃんが、いっぱい、愛情を注いであげる」

 

「あがっ…!」

 

その夜、右には悠里、左には千尋が、

雅利の腕を掴んだまま、彼女たちは、

ブラジャーとショーツ姿のまま、俺と一緒に寝るのだった…

 

当たり前だが、一切、眠れなかった。

 

おかげで、寝不足になった…



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