転生したら最凶最悪の邪竜だった件 (カルカルパッチョ)
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プロローグ
あ...ありのまま起こったことを話すぜ!
『俺は家でマンガを読んでいたと思ったらいつの間にか狭くて暗いところにいた』
な...何を言ってるか分からねーと思うが
俺も何をされたのか分からなかった...
頭がどうにかなりそうだった...
催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねぇ...
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...
はいどうも催眠術でも超スピードでもない体験をした人です
これいつかやってみたいと思ってたんだよねー
まぁそんなことしても現状は変わらないんだけど
にしても──
暗いし...狭い...どこだここは?
出ようとしても何か硬いものが邪魔して動けない
こういう硬いものは動きを邪魔するもんじゃねえだろ...
確かに敵から身を守るのには欲しいと思えるけどさぁ...
『確認しました。』
『ユニークスキル【
『成功しました。』
うわっ!ビックリしたぁ...何だこれ?頭に直接響く...
誰かいるのか?誰なんだお前は?
『確認しました』
『エクストラスキル【解析・鑑定ex】を獲得。』
『成功しました。』
何なんだよ一体
はぁ、意味が分からねぇ...まだ寝ぼけてんのか?
落ち着け~落ち着け~はい!そこで深呼..吸........
待てよ?今さらだけど...こんな狭い空間で息できるわけねぇじゃねぇか!
深呼吸してる場合じゃねぇ!早いところこの壁(?)壊さねぇと!
『確認しました。』
『ユニークスキル【
『成功しました』
『続いて、一定以下の魔素量に達しました』
『これより元となる肉体を生成します』
『成功しました。
『続いて、付属したスキルの獲得』
『成功しました。竜鱗、威圧、滑空翼、のスキルを獲得しました。』
スキル?まそ?肉体の生成?進化?本当に何いってんだ?
その時、うまく動かなかった体が動くようになる。コツコツという音はせず、それでもコツコツと壁をつついているとパキッと壁の一部が壊れて光がさす。
眩しさに顔をしかめつつようやく射し込んだ光に僅かな希望がうまれる。やっぱり狭くて真っ暗な空間に一人きりっーのは短時間でも怖いんだな。
割れてできた穴に頭をねじ込み、穴を広げていく。頭が出ればあとは腕を同じようにねじ込み、外へと這い出る。
うん!青い空、涼しい風、周りに薄い霧!
日本じゃねぇだろ何処ですかここ...
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1話 知らない天井だ(大空)
流れる風が肌を撫でる、と同時に体が震え上がった
何で俺の体、濡れてんの?
気分としては風呂上がりの扇風機みたいな感じ
つーかこれ卵の殻じゃね?俺が出てきたの卵じゃね?
俺が入っていた物を見る。白くて硬く、楕円形の形をしている。次に俺のいる地面を小枝や葉っぱなどを組み合わせた鳥の巣みたいなもの。
明らかに人外確定ですね、ありがとうございます
そういや俺、転生者だったわ
確かマンガを読んでいたところに地震が起きたんだ
その地震が想像以上に大きくて本棚が倒れてきた
それに押し潰されて圧死、その後に転生
うん、これなんてラノベ?
ちなみに読んでたマンガはドラゴンの無双もの
その影響かは知らないが頭に響いた言葉も幼竜だった
改めて自分の体を確認してみる
黒い鱗でおおわれた体に白いラインが入っている。腕から翼がはえ、後ろにいくにつれて太くなっている。
前足より後ろ足のが発達しているお陰で二足歩行は出来る。が、地を這うようにしたほうが楽である。
これ、地上型のドラゴンだね。
ドラゴンには3つの種類がある(俺調べ)。
空中戦を得意とし蛇のような胴体をもつ飛行型。
地上戦を得意とし四足歩行のトカゲのような地上型。
そしてこの二つを合わせた二足歩行のスタンダード型。
俺の地上型は全てを破壊するパワーとスピード、さらには鱗による防御と再生能力によるタフさが売りのドラゴンである。
代わりに遠距離、範囲攻撃の手段が少ない。なので攻略するときは前が抑えて弓や魔法で攻撃するのが定石である。
というのが小説やマンガで描かれるのが多い。まぁどちらかというと地上型以外のほうが登場は多いが。
...ゴホン、気を取り直して取りあえずまだまだ情報が足りない。こういうのは転生チートとかで何が出来るかを知っておいたほうがいいよな。
あの声が言うには【鑑定】だの【拒絶者】だのって言ってたな。【鑑定】とかそのままだろ。
!...【鑑定】で思い付いた。俺自身を鑑定すれば持ってるスキルとか分かるんじゃね?
思い立ったら吉日、善は急げ。頭の中で【鑑定】と思い浮かべるとウィンドウが見えた気がした。
────────────────
幼竜/ドラゴンベビー 種族:竜種
コモンスキル
【竜鱗】【威圧】【滑空翼】【思考加速】【苦痛耐性】
エクストラスキル
【解析・鑑定ex】
ユニークスキル
【
────────────────────
物騒すぎんか?
なに?【破壊者】って。
【
¢◆△¥*£○Φ⊿◆∋§゙§ι以外のあらゆるものを触れることで破壊する。
一部ユニークスキルで妨害が可能
ッスーめちゃくちゃ文字化けしとるやんけ...
【拒絶者】は?
【
物質を通さない壁をつくる。通すか通さないかは設定が可能で通すものの数で硬度が決まる
ふむ、攻撃の【破壊者】に防御の【拒絶者】...最強では?
よし!自分の状態も分かった!
あとはお母さん?かお父さん?が来てくれれば育ててくれるでしょ。他にも3つも卵あるし。
─俺は気づいていなかった。
例えここがラノベの世界だとして自分が
♪~(不穏な音楽)
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2話 鉄分直接摂取ゥ!
俺が産まれてから既に5日がたった。
いや正確な時間はわからないけど5回ほど日が昇って沈んだのでそれぐらいは経っている。
なのにこの5日間、一度も─そう一度も親らしき影どころか生物すらみたことがない。
どうにか草を食べて食い繋いでいるが、最強のドラゴンとはいえまだ子供だし空腹には勝てぬ...
いや、もしかしたら種族でかえるタイミングが決まっててその時に来るのかもしれない!オレが転生者で早めにかえっただけでな!
べ...別に寂しくなんて無いんだからねっ!
もさもさと草を食べながらそんなことを考えていると後ろからパキッという音が連続で聞こえてきた。
後ろにあるもの当然俺がいた巣である。ようやく目覚めたかと思って振り返れば、そこには俺より少し大きめの体躯を持った鳥のような生物が殻から出てくるところだった。
( は ? )
─俺は目を疑った。それはそいつらの体のデカさにじゃない。
別に全く違うというわけではない。大体のシルエットは同じだ。だが構造が違う
後ろ足が俺より発達し、前傾姿勢の二足歩行タイプ。腕についている翼は鳥のような羽で滑空すら出来なさそう。しかし流線形のフォルムは素早く走りそうだ。
そう、それは前世でもいたことが示唆されていた恐竜というものに良く似ていた。
すぐに【鑑定】のスキルを恐竜もどきに使う
────────────────
トカリプトル(幼体) 種族:亜竜
コモンスキル
【瞬足】【危機察知】【狩猟本能】【毒牙】【毒耐性】
────────────────────
【鑑定】した結果をみて思わずかたまった
種族:亜竜...竜じゃなくて...?
それがいけなかったのだろう。さらに困惑が他の感情に勝ち、相手をみてなかった。
その三体が天敵を見るかのような目でこちらを見ていることを。
右後ろに体が引っ張られる。次に感じたのは解放感と肩のあたりの涼しさ。そして──
「──ガアァァァァァァァア!?」
──今まで、前世も合わせて感じたことのない“激痛”だった。
すぐさま違和感のある右肩を見る。ない...ない。ついさっきまであったはずの、右腕がない...?
ピチャピチャという音に後ろを振り向けば群れている三匹のトカリプトル。その足元に赤く染まり、すでに半分が欠けている俺の腕が転がっていた。
恐怖を覚えた。命の危機を感じた。平和な日本での感覚が音を立てて崩れた気がした。
動けなかった
音が消える。こちらを見る。その三匹の獲物を見る目はまっすぐに俺を射ぬいてこう言った気がした。
『 次 は お 前 だ 』
俺は走った
腕を失ったせいでとれないバランスも
竜であるということも忘れてただひたすらに走った
死にたくない 死にたくない
その感情だけが俺の足を動かした
冷静さを取り戻したときにはもうどれほど走ったか分からなかった
それでも冷や汗が止まらない
あんな目を向けられたことなんてなかった。当然だ、平和な日本にいたんだから。
今更だがこの霧も5日の間一度も晴れたことがなかった。そういう気候なのだろうか、とも思ったが今からでも調べる価値はある。
そう思って霧にむかって【鑑定】を使用した
『毒霧』
結果が出る
『毒霧』 『毒霧』
『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』
『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』
『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』
『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』
『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』
『毒霧』『毒霧』 『毒霧』 『毒霧』『毒霧』
『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』『毒霧』
...は?
かちりとピースがはまった音が聞こえた気がした
だからトカゲも鳥も虫の一匹すらいない
何故ならそこに来るまでに毒で死ぬから
しかも子供の毒耐性を強化するために外に行くにつれて霧が濃い気がする
早く...!早く逃げなければ───何処へ?
外に向かっても耐性すらない俺では耐えきれない
少しでも生き残るためにあそこに戻らなきゃいけない
行きと同じで死にたくないという感情が足を動かす
思考が鈍る 足が重い 体がだるい 音が聞こえない 鼻がきかない 目が霞んできた 足の感覚もない
じっくり、ゆっくり、じわじわと
何かが失われ少しづつオレの体を蝕んでいく
あと少しだ──どこまでだ
霧が晴れてきてる──霧の濃さなんて分からない
まだ走れる──もう無理だ
諦めたら死ぬ──楽になりたい
考えずに足を動かせ──何でだ?
考えるな──何で俺がこんな目にあわなきゃいけない?
そんなの自分のせいだ──世界のせいさ
ようやく霧が晴れる。視界が広がる。足がもつれる。地面に倒れる。
体力は底をつき、空腹で力がでず、内部は毒に侵され、外部からはたった今目の前に現れた三体の脅威に破壊される。
生きなければ──死にたくないだけだろ?
あぁそうだ──ようやく気づいたか?
こいつらはオレを殺そうとした──そうこの世界は
『
俺のスキルである【思考加速】を使い体感時間を引き伸ばす。時間がゆっくりになった感覚だ。
今の状態で消耗がおおきいユニークスキルは使えない。やるならコモンスキルのほうが良い。
一匹のトカリプトルが【瞬足】を使いつつ噛みつこうと頭を伸ばす。それを左に転がり、腕で地面をなぐる反動をつかって立ち上がる。
前の動きとは明らかに違うそれに思いがけずにトカリプトルの動きが止まる。その隙を逃さずに地面を蹴って接近、そして力のままに一匹の首を噛みちぎった。
一瞬で絶命したのを見た二匹も動きが止まるとおもい、突撃したスピードを利用して頭部に蹴りを放つもぺたんと地面にひれ伏すことで回避。
続けてかかと落としを決めるもすでに下がった後で地面をえぐるだけだった。
自分が攻撃しようとする前に避けられたことからこれが【危機察知】の能力であることだと推測する。今も無策近づけば死ぬと分かっているのか睨みながら動かない。
残りの二匹に警戒しつつ先に殺した一匹に食らいつこうとする。しかし、それを許す者ではない。
二匹とも【瞬足】を使い、一匹はフェイントを交えた挑発で注意をひき、もう一匹は俺の右側から回り込み死角にはいる。
粗末ではあるが俺には有効な策ではある。攻撃系のスキルがない俺の一番の武器は強靭な顎による噛みつきである。それを【狩猟本能】の能力で感じ、背後についた。
その理不尽さに嘆いても状況は変わらない。
食いちぎった分、余裕はあるがユニークを一瞬発動させるだけでもガス欠になる自信がある。何より背後からの攻撃が防げない。
そこで思い出したのは前世の記憶。視覚を失うと他の感覚が鋭くなるという記憶だった。
藁にもすがる思いで目を閉じて感覚をとぎ澄ます、外にある酸素を取り込んだりして感じる感覚。少しは見える霧のような物の流れを感じとるように...。
トカリプトルはその光景に違和感を覚え、逆に警戒した。そう、警戒してしまった。その行動が最大の勝期を逃したといっても過言ではない。
この時は毒によってほとんどの感覚が制限されていた。触覚、嗅覚、聴覚がすでにないのにかろうじてあった視覚ですら捨てたのだ。故に、それは起きた
『確認しました。』
『エクストラスキル【魔力感知】を獲得』
『成功しました。』
その声が聞こえたと同時にスキルをONにする。すると自分の世界が広がり全てが手に取るように感じる、分かるという全能感に浸りそうになった。
トカリプトルは痺れを切らしたのか【瞬足】を使って飛びかかってくる。タイミングは同時、【魔力感知】がなかったら冗談抜きで死んでいたかもしれない。
分かったことは【瞬足】は直線にしか動けないことと使う前に少しのタメがあることだ。だから意外と捉えるのは難しくない。直線上に攻撃を置くだけでいいのだから。
後ろから来るヤツは尻尾で地面に叩きつけ、前から来るヤツは頭ごと噛み砕いた。
前のヤツはそのまま絶命、背後のヤツは気絶していただけだったので首を食いちぎった。
5日ぶりのマトモな食事に豪快にかぶりつく。
ぶちぶちと肉を切る音が聞こえる
喰らえ 蝕め 毒のように
『確認しました。』
『ユニークスキル【
『成功しました。』
『続いて、ユニークスキルに付属したスキルの獲得』
『成功しました。【毒食み】【毒耐性】のスキルを獲得しました。』
「─────」
俺の勝利の雄叫びが天をついた
原作の【魔力感知】って簡単に取れてるけどあれって【大賢者】がいたからだよな?エクストラだし簡単には取れないよな?ってビビりながら書いてました
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3話 紫色のミルフィーユ
初戦闘を終えた俺は片腕を治すためムシャムシャと三匹の肉を食らっていた。
うーん、ガッツリ香る鉄のにおい、噛むほどに溢れるグニュっとした柔らかい感触。これが(幼体)の肉かぁ...せめて焼きたい...
ブレスをはこうとしても遠距離手段が少ない地上型なことを思いだし、軽く泣いた。いっそ味覚がないほうが楽なまである。
ていうかよくあんなに動けたな。お兄さんもビックリよ。あれが『窮鼠ねこを噛む』。
三匹がこの場から消えたのを確認し、毒の霧に囲まれて安全なうちに自分にむかって【鑑定】を行う。
────────────────
コモンスキル
【竜鱗】【威圧】【滑空翼】【思考加速】【毒食み】【苦痛耐性】【毒耐性】
エクストラスキル
【魔力感知】【解析・鑑定ex】
ユニークスキル
【
────────────────────
【
触れたものを取り込む、または物質を浸蝕し100%魔素へと書き換える能力。さらに毒系の攻撃の解毒、利用が可能になる。
...つよ、余裕のある今のうちに試しておこう。
初戦闘で学んだことは自分の手札をしっかりと理解しておくことが何よりも重要だということだ。
ユニークスキルがどんな感じなのか体験もせずに使うのは愚の骨頂。だからあらかじめ試すに限る。
【毒食み】による『毒の物質化』で毒霧を食べる。霧の成分はほぼ100%が魔素で出来ているので回復には持ってこいである。それでも回復系のスキル持ってないから右肩の血が止まっただけだが。
3つのユニークスキルを試してみる。今さらだけど3個中2個が手を使うのに片腕失ってるこの状況ってヤバイのでは?
『ホ●ミ』とか『ベ●イミ』は切り傷は治せても欠損は戻せない感じあるよね。それこそ『自己再生』とかじゃなければ。
思えば回復って強キャラにのみ許された特権だとおもうんだよね。少なくとも序盤に出てきて良い魔法じゃない。
どうやったら獲得できそうかな?今までは望んだら『成功しました』とか言われて使えるようになったけど。
あーでもないこーでもないと考えているとき、急に自分の周囲が暗くなった。
直後、風を切るおとと【魔力感知】にひっかかった高速をだす物体。
本能が警鐘をならし、すぐさまその場から左へと離れることで危機一髪回避。
ドゴンという大地をえぐる音と同時に現れる巨体の影。
砂煙が晴れるとそこにいたのは──
「クェエェェェェェェ!!」
──鳥のような羽に鳥のようなくちばし、さらには鳥のようなかぎ爪と、詰まるところ体の大きさ以外鳥の姿のモンスターだった
────────────────
トカリプトル 種族:亜竜
称号:大陸を駆ける者
コモンスキル
【瞬足】【突撃】【毒食み】【スロースターター】【暗視】【危機察知】【狩猟本能】【自己再生】【毒撃】【毒無効】【熱変動耐性】【麻痺耐性】【石化耐性】【衝撃耐性】【痛覚耐性】【睡眠耐性】【刺突耐性】【痛覚耐性】【物理耐性】【電流耐性】【苦痛耐性】
エクストラスキル
【石化の魔眼】【肉体改造】【毒霧操作】【猛毒生成】【魔力感知】【高速飛翔】【演算省略】【高速演算】【自動演算】
ユニークスキル
【
────────────────────
えぇ...見た目グリフォンじゃん?それがなんでトカリプトルの成体なんだよ。
...ユニーク持ち、案外早く見つかったな。
称号ってなに?
警戒しつつ思考を巡らせ勝つ未来を想像する。どっかの人がいってた『人が想像できる物は必ず人が実現できる』と。今は人じゃないけど。
警戒を解かずにいると、先に動いたのは相手だった。いや、動いたというか蠢いたみたいな感じなのだけれど。
バキッボギバゴと骨が折れているんじゃないかと思うほどの轟音のあと、羽は消え後ろ足がさらに発達、流線形のボディにも磨きがかかった姿に変身した。
(今のが【肉体改造】の能力か?思ってたよりグロ──ッ...!)
目の前のヤツが足に力を込める。このモーションは知っている。ついさっき嫌というほど辛酸をなめさせられた【瞬足】の予兆だ。
左に避ける。直後、轟音と突風。
右腕があったならば、引っ張られるまま何が起きたかも分からず衝撃で死んでいただろう。それと同時にこうも思った。
幼体の【瞬足】はまだ目で追えた。【魔力感知】にもひっかかったし、【思考加速】を使った時では初動も読みやすく簡単に避けることが出来た。
だがコイツは違う。初速から途中まで見えなかったし【魔力感知】も【思考加速】もくぐり抜けた。
そしてもっと大変なことに気がついてしまった。
初動が見えた、タイミングが分かったからギリギリで回避することが可能だった。最初の一撃だって影がささなければ地上の染みとなっていただろう。
ならば毒霧によって
ドンッドンッと轟音が鳴り響く。アイツが地面を蹴る音だ。初撃を避けられるとは思わずに遠くへ行きすぎたから【魔力感知】でおれを探しているのだろう
あの攻撃のあとすぐに【魔力感知】を切り、毒霧の中に身を隠したのが正解だったようだ。【毒霧操作】の能力では感知は無いようだ。
走る、走る、走る
あのときのような恐怖の逃走ではない。
逃走ルートを考え、ジグザグに動きながら霧のそとを目指す。
毒霧は巣を中心にそとに行くほど濃くなっていた。そこから推測するに、巣から半径なんメートルという縄張りを持っているはずだ。
つまりは毒霧が届かないところに行けば逃げきれる
足音も気配も種族の圧的なヤツも消し方なんて分からないが抑えながら足を動かす。
『スキル【気配遮断】を獲得しました』
タイムリーなスキルに感謝しつつONに設定する。
走ってる間にもドンッドンと規則的な音が俺の耳に響く。だんだんと迫り来る恐怖に足腰を奮い立たせ、濃くなっていく霧の中を感で外に向かっていく。
急に視界が晴れる。ようやく霧のそとへ出られたようだ。いつの間にか止んだ大地を踏み抜く音で見失ったかと少し気を抜いた。
直後、強烈な悪寒が背筋をつたう。本能のままに背後に【拒絶者】の壁を『称号:大陸を駆ける者をもつトカリプトルの肉体』で設定し、残りの魔素全てを【竜鱗】に注ぎ込み今出来る最大の防御をおこなった。
「グガッ──」
最大の防御をギリギリで張り終えた、次の瞬間には巨体によりくり出された突進に体がくの字に曲がる。
そのまま勢いに吹き飛ばされ地面と平行に宙を舞う。
結構なスピードを出しながら巨大な岩に衝突し意識を飛ばしそうになるのを気合いで保つ。
途中で巻き込んだ魔物がいなければ岩に激突した衝撃で天に召されていたかもしれない。そんなことを考えながら【侵蝕者】によって魔物を吸収する。
後方からドォンという音が聞こえるも背後に見えるトカリプトルが動かずに鋭い眼光でこちらを見据えていた。
ようやく回り始めた頭であれが音速を超えていたことに改めて実力の差を突きつけられる。
アイツが睨むのをやめ、毒霧の中へと消えたのを確認したあと、緊張していた体の力が抜けて──そこで意識を手放した。
産まれて5日で最強核のユニークモンスターと遭遇
これが主人公...!
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4話 ひげのオジサンに投げられる爆弾の気持ち
3ヶ月ぶりの更新だぁー。
あと感想であったのですが今のところ出てくるのは原作キャラとかモンスターではありません。
ハーイ、私ドラゴンさん。今大空の空中散歩を楽しんでるの。
どういう状況か分からないと思うが俺も何故空を飛べてるのか分からない。しかも逆さまの状態なのだから余計わからない。
いや、本当はなんでこうなったかわかってる。
体の中の魔素が少なすぎて上のほう向けにくいけど、バサッバサッっていう音と捕まれてる感触が鳥の足みたいだから鳥系のモンスターに連れさらわれてるんだなって。
マジでずっと魔素足りてないんだけど?あのバカリプトルのせいで背中は痛いし身体中ボロボロだし。
そんな時に鳥型モンスターによる誘拐事件。おかしいな、竜って最強種じゃなかったっけ?そもそも竜ってなんだっけ?
まさかの初飛行が名も知らぬ怪鳥(推定:メス)との初デートになるとは思わずスペースキャット状態になってしまった。次飛ぶときは一人で飛びたい。
かろうじて頭を上げて【解析・鑑定】を使うと、頭に情報が流れ込んでくる。
──────────────────
ワコシトリ 種族:亜竜
【滞空】【飛行翼】【空間機動】【威圧】【毒牙】【衰弱の魔眼】【毒耐性】【麻痺毒】【腐蝕】
────────────────────
えっ【魔眼】持ちだ。かっけぇー!って思ったけどアイツも持ってたな。見るだけで倒せるってかっこよくね?真の英雄は目で殺す!
いつか使ってみたいものである。それまで生きてられるかの方が問題だがなァ!
この高さで落とされると地面とキスならぬ地面に頭突き&シミになる確定演出がでてるのでなんとしても避けなければならない。
とはいえ、どうにも出来ないのが現状である。いやほら、翼片方ないし、魔素足りないし。つーか亜竜多くね?この世界って竜であることがデフォルトだったりする?
つまりさ...この世界では普通のことに俺は一喜一憂してたってこと?うわ恥ず!
そんなこんなしている内に怪鳥の巣らしきものが見えてきた。そこにはどこか見たことある一匹のモンスターが───
「『キュィエエェェェ!』」
──────────────────
カッコーウ 種族:小鳥
コモンスキル
【擬態】【飛行翼】【仮死】
────────────────────
───口を開けて待っていた
そこに投下されるゥ、オレェ!
やめて!あなたが死んじゃったら次回から主人公は誰になるというの!?
次回、『俺氏、死す!』デュエルスタンバイ!
「(ってふざけとるんちゃうぞ貴様ァ!)」
指令を出す器官を失った魔物の体は地面に沈む。そのまま着地し、後ろから飛んでくるワシっぽいモンスターを裏拳で倒す。ははーんさてはオレってば最強?
あと今さらながら思ったのだが、ユニークスキルの【破壊者】を使うよりその分の魔素を身体強化に使った方が燃費が良い。
まぁそりゃそうだよな。今まで10で済むのを100で攻撃してたのが【破壊者】だからな。その分のロスをなくせば燃費が良くなるのは当たり前である。
やはり
ブチブチとワシもどきの肉を食いちぎる。独特の臭みと変な食感で吐きかけたが根性で耐えた。やっぱ成体はダメだな。食えたもんじゃない。
かわって、カッコウもどき。カッコウって前の世界でも『托卵』とか言って他のトリに育てさせるヤツじゃなかったか?そこら辺の生態は変わってないのか?
それはともかく肉自体は悪くない。臭みも少ないし...やっぱり食うんだったら子供の方が良いな。文字にすると倫理観バグった考えだけど、あれだ。羊のラムとマトンみたいな違いだ。これは元から別種だけど。
ふーむ、焼けばもっと美味しくいただけるだろうが...俺火炎ブレスとか出来ない?...出来ない。あ、そう...
いや、意外とやってみれば出来るかも知れん。あって良かった『
まず魔素がないのでかき集めます。
やり方!体の内から外の隅々まで知覚します。そしたら心臓辺りに魔素をいっぱい集めます。すると~
『確認しました』
『エクストラスキル【魔力炉】を獲得──』
『──成功しました』
...カァーいやー自分の才能がこわいよ!すみませんね、強すぎちゃって!やべ、やりすぎると燃える。炎上のがこわい。
早速【魔力炉】を駆動、すぐに魔素が貯まる感覚が来る、が...うん。なんか思ってたのと違う...魔素が回復するんじゃなくて魔力を作り出せるようになった。...魔素と魔力って別物なんだな。
にしても名前が【魔力炉】か。良いかもしれない。前世で読んだ異世界系のマンガでは『魔法は想像力、つまりイメージが重要だ。』って言ってたのが多かった気がするし。
現実でおこる当たり前なことを魔力で代用する。つまり
────────────────
コモンスキル
【竜鱗】【威圧】【滑空翼】【思考加速】【毒食み】【苦痛耐性】【毒耐性】
エクストラスキル
【魔力感知】【解析・鑑定ex】【魔力炉】
ユニークスキル
【
────────────────────
ハハッ、ない!仕方ないから魔素で代用しよ。口の中に魔力流して、吸い込んだ魔素で炎作っ──
──ところで知っているだろうか。地上から離れるほど空気が薄いと言うが魔素はその逆なのだ。
地上でモンスターが
一方、上空。住む場所は限られ、天候によっては飛ぶことも出来ずに地面にまっ逆さま。そんな環境下でかぎられたモンスター、もちろん数が少なく魔素は減らない。モンスターも強くなる。
今、この作品の主人公はワシのようなモンスターに連れ去られ、とても高い崖の頂上にいる。要は魔素が大量にあるのだ。
ちなみに主人公は地上と同じ感覚でやっている。魔素の回復量が多かったのは空気中の量が多かったからである。
前置きが長くなったがとどのつまり、結果は──
バボォォォォン!!!!
突然の衝撃に頭はまっしろになった彼は、よろよろと歩き回りそして──足を踏み外した。
『確認しました』
『スキル【火炎吐息】を獲得──』
『──成功しました』
口内の痛みと頭に響くアナウンスでようやく思考が戻ってきた。
まずいまずいまずい───
落ちたところが断崖絶壁だったせいかスピードを緩める取っ掛かりがない。必死に左手を伸ばすも勢いが少し緩んだだけで手が弾かれ、距離がさらに離れる。
すぐに頭を切り替え思考をまわす。さっき見たスキルで使えるものは...
・滑空翼→片方破損
・魔素→ブレスで回復待ち
・竜鱗→耐えきれない
・その他諸々→魔素がない
えっ!この状態からでも入れる保険があr───
念願の一人空の旅(自由落下)
ワコシトリ
鋭い爪をもった足で敵を捕らえ、尻尾のようについたヘビによる魔眼で生きたまま新鮮なものをあなたにお届け!ワシ+コカトリス。
カッコーウ
他の鳥系のモンスターの巣に卵を産みつけ、他の卵を巣から落とすことで親に育てさせる『託卵』ということをする。
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5話 この世界はファンタジーと聞きました
拝啓、お母さんお父さんお元気ですか?
俺は今───
「『ギャァォォォス!!』」「『アオォォォォン!!』」「『グゥガァァァァ!!』」「『キチチチチチ!!』」「
──
不甲斐ない息子でごめんなさい。でもこっちに来たらあなたも言うとおもいます。
『あれはムリ』と...
はい、どうもードラゴンさんだよー。
生まれ落ちて、兄弟に襲われ、親から逃亡。あれから10年ほどたち、いろいろあったけれど未だに幼竜なのはどうかと思う。
え?崖から落ちてどうやって生き残ったかって?偶然、真下にいたモンスターをクッションにして生き残ったけど、なにか?
俺的には最後の一瞬ギャグにしたことが分岐点だったと思うんだよねー。ほら、
10年。俺が過ごした時間は長いようで短い。人間は思い出が少ないほど時間がたったときに短いと感じるらしい。実際、俺はそうだった。
10年間では誕生してからと比べて驚くほどイベントがなかった。もちろん全然なかったわけではない。むしろスキルを使うほど性能が上がってったりした。
例を上げるなら【竜鱗】は【竜鎧】となり【解析・鑑定ex】は【
他にも親(?)に追いかけられたり、腕が異常発達したゴリラ、虹色に光るゴリラ、体が燃えるゴリラ、ミサイルを飛ばすゴリラなど、ゴリラフェスティバルが開催されてたりもした。
そう、10年の間なにが起こったか、なにをしたかも当時のように思い出せる。が、どうしても前世の記憶だけが薄れて消えかかっている。
なぜかは全くと言っていいほど分からない。
これが子供の時の記憶から消えていくなら分かる。だが違う。ぽっかりと穴が空いたように、虫食いが出来たように一部の記憶だけが抜け落ちていた。
まぁ、考えても分からないから今こうして肉を食らっているところなのだが。
【自己再生】を取得したのに相も変わらず右腕は再生せず、むしろ断面に【竜鎧】と呼ばれるにふさわしい大きな鱗が生え始めていた。
今の姿は前が面影程度にしか残っておらず、黒い鱗の一部が肥大化。さらに少しづつ成長しているのか生まれた時は2メートルに満たないぐらいだったのが今では5メートルを超えている。
ちなみに今のスキルがこれだ。
────────────────
コモンスキル
【威圧】【滑空翼】【思考加速】【毒食み】【苦痛耐性】【火炎吐息】
New!【竜鎧】【自己再生】【毒霧吐息】【猛毒生成】【熱変動耐性】【瞬足】【危機察知】【狩猟本能】【鎧硬化】【豪腕】【毒霧吐息】
エクストラスキル
【魔力炉】
New!【毒無効】【虫の知らせ】【悪食】【飛鱗操作】【念話】【環境適応】【分身体作成】【万能感知】【並列思考】
ユニークスキル
【
New!【
────────────────────
いやー頑張った頑張った。ん?スキル一気に増えすぎでは...だって?いや裏技があったんだよね。
【侵蝕者】で生きてる相手を取り込み、【看破者】で敵のスキルを解析する。そうすると限定的にだが敵のスキルを取得できるんだとさ。
もちろん制限はあった。
まずは生きている相手じゃないといけないこと。
死んでいる相手に【侵蝕者】を使ってしまうと全てが魔素として還元されてしまうのだ。当然、スキルとして存在しているものすらも還元されるので、解析できなくなってしまう。
2つ目は一部のスキルしか取得できないこと。
生きている相手だったとしても約半分は魔素として還元される。残りの半分にある魂の情報からスキルの情報を抜き取るので何体も取り込むはめになったし。
3つ目、解析が難しすぎてスキルを解析している間はほぼ無防備になることだ。
いや、マジでムズすぎる。【思考加速】に【看破者】のフル稼働でようやく3日で済むぐらい。実際はそれをやると外の脅威に抵抗できなくなるからやらない。が、敵がいないところでフル稼働したりしなかったりを繰り返して頑張った。
おかげでここまで強くなれたがまだ安心できない。
なんせほぼ全ての魔物を取り込んできたといっても過言ではない俺であるが、それでもアイツのスピードに勝てる者はいなかった。
体感だが半分どころか3割にも満たない。それほどまでに速かった。
まぁアイツはそろそろ倒そう。それはそれとして...
【
・『世界の言葉』への検索権限
・魔素量で上回る相手の真偽の判定
・感知系スキルの精度上昇
・高精度の解析・鑑定能力
・擬態系スキルの看破
【看破者】を鑑定してみた結果がこれだ。めっちゃ見やすくなってた。
あとスキルの獲得を告げるあの声って『世界の言葉』っていうんだな。つかなんだよ検索権限って。なんでも教えてくれるわけじゃなかったし。
それよりもファンタジー世界のくせしてスライムだのゴブリンだのはいなかった。かわりに凄い種類豊富なゴリラはいた。意味分からん。
このゴリラが意外とつよい。
デカイ見た目とは裏腹に出るスピード。一撃一撃が致命傷となりえるパワーに頭が回る。さらには群れをなす個体もいる。
パワーとスピード、ガードの硬さはそれぞれだが、どいつも高水準。空中からの敵にも投擲で対応する。あの
...ファンタジーってなんだっけ
オリ主チートスイッチオン!
っていうけどなろう系主人公のチート具合に勝てるわけないだろ!?リムルが成長チートすぎんだよォ!
ゴ・リラ
10匹に1匹の割合で逸脱した個体が生まれるモンスター。ほとんどが体の一部の肥大化だったりするが稀に最初からエクストラスキル複数持ちが現れることがある。
生物の中でも珍しく、力よりも知能で群れの頂点が決まる。
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6話 サブタイトルってちゃんと考えなきゃなとか考えてた時期があったけど考えてる間に寝落ちして投稿忘れてたしモチベ落ちるしで分からんくなってきた。実はサブタイトルって100文字まで行けるけどそこまで書く
自分に足りないものは何か
そう考えた理由は単純だ。どんな物語でもドラゴンっていうのは必ず負ける存在なのである。
ドラゴンの脅威はその大きさにある。巨大な足を踏みならせば、あらゆる者の動きをとめ、強力なアゴが獲物にくらいつく。剣や弓による攻撃は鱗が弾き、距離をとればブレスによる広大な範囲攻撃。
そんな力強く、硬く、巨大な最強種とよばれる竜。
それは何故か。答えは──
巨大=的だ。つまり大振りの技でも普通に当たる。当たらなければ問題ないものも余裕で当たる。
だから竜人形態がほしい。あ?本音を話せ?いいぜ、そこまで言うなら言ってやるよ!
『
─────────
──────
───
すみません取り乱しました。そう、俺だ。
ところで最近ゴリラが二足歩行になった。もしかしたらこの世界での人間の先祖はチンパンでもサルゥでもなくゴ・リラなのかもしれない。
ちなみに今はさっき上げた声に反応して群がってきた奴らを薙ぎ払っている最中だ。
【毒霧吐息】に【猛毒生成】で麻痺毒を生成し、襲ってきた群れに状態異常をばらまく。さらに【豪腕】【鎧硬化】で強化した左腕で一体を掴みとり【
今回、吸収したのはタダノガニというカニのモンスターである。コイツは幻術が得意で群れで襲ってくるように見せるのだ。
最初にエンカウントしたときは逃げまくっていたが、たまたま尻尾が当たったのに感触がなかったから【看破者】を使って倒せたんだよね。
わざわざカタカナ表記にしたが元は漢字で多堕乃我似と書くらしい。
敵を吸収するこの流れもなれてきたものだ。まぁ、10年もやっていればなれない訳もないが。
そういえばオレって属性系統の能力ないよな。
一番簡単そうな“炎”と親の能力の“毒”はあるけどそれ以外は兆候すらない。全くの皆無だ。
しかしまぁ、出来ないなら仕方がない。せめて手から炎を出せるくらいにはしておきたい。
今持っている火系のスキルは【火炎吐息】ぐらいだ。そう、
つまり炎は口から出るのであってもし人化できて、さらに魔法アリな世界だとしたら。口から炎を出すのは怪しまれないわけがない。なんならオレだって疑う。
だから手から炎を出す練習をしようって話。うん、ナニモオカシクナイ。
思い立ったらすぐ行動。善は急げ。
「『メラゾーマ!』」
※しかしなにもおこらなかった
次!
「『マハラギダイン!!』」
※しかしなにもおこらなかった
次ィ!
「『ファイガ!!!』」
※しかしなにもおこらなかった
...次ィ!
「『ファイヤァボルトォ!!!!』」
※しかしなにもおこら(ry
つぎ!
「『インフェルノ!!!』」
しかしなに(ry
「『ブラストバーン!!!』」
しか(ry
........................
「『
─────────
────────
─────
すみません取り乱しました。(二回目)
取りあえず半径10キロにわたって窪地になったから練習場は確保できた。ナニガアッタンダロウネー
いや、そもそもが間違ってるんだよなぁ
過程を何も考えずに炎を出そうとするからダメなんだよ。【火炎吐息】を入手したときもそうだったけど大事なのは『過程とイメージ』だな。
指先に
今の俺の姿を考えてみよう。発達した前足(片方欠損)に前足の半分もない後ろ足。あとは硬く、ゴツくなった鱗と尻尾ぐらいか。
...指先と考えられるものがない。片方しかない前足を上にあげると後ろ足だけでは支えられないし、尻尾の先はヒ●カゲみたいになるからなんかヤダ。
人化のスキルが使えるようになってから考えよう。
なお人化のスキルも過程とイメージが考えられないので出来ないと気づいたのは三年後だった。まる
そろそろあのトリ野郎を倒さなきゃとは思ってる
幻術を得意とする青い甲殻をもったカニのモンスター。目撃されるのは群れだが、一体を除いて全て幻術なので単独でしか行動しない。自分のテリトリーまで追い詰めエサにする。
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7話 嵐の前の静けさとか言うがうるせぇもんはうるせぇ
オイ、何で誰も教えてくれなかった!?
そうだよ元人間なんだから人間になろうとしたことねェよ!人間になろうとするのは人間じゃない証拠じゃねぇか!めっちゃ頑張った俺がバカみてぇじゃねぇか!
...おい今バカとか言ったヤツ、メタル系の敵にクリティカルが出ない呪いをかけといてやる。経験値稼げずに苦悩するんだな!フハハハハ
『確認しました。』
『ユニークスキル【
『成功しました。』
いや違うわ!つーか何で俺が渡さなきゃいけねぇんだよ!未だに【自己改造】のスキル持ちは最初のヤツしかみたことないし。
そういえば最近襲ってくるヤツが減ってきたな。
生後10年ほどはずっと襲撃に次ぐ襲撃で疲弊させられてきたのに、余裕を持って倒せるようになってからは誰も来なくなった。ただ視線を向けるだけ。
急になくなると少し寂しいと感じるものの、強者として認定されたと思うと悪い気はしない。
今日も『レッド・ボア』という名前の食えば翼が授けられそうなイノシシを食らう。
【悪食】の補正効果なのかは分からないが、食べられないようなものもギリギリ...本ッ当にギリギリだが食べられる味になっている。
まぁ生肉であるため体が拒絶反応を示すのは堪えるしかない。腹が減っては戦が出来ぬのだから食べるしかないのだけれども。
さっき話した通り、誰も攻撃してこなくなった。逆にいえばこっちから攻撃しなければ行けないのだ。
いつもなら自分から寄ってきてくれるからそいつらを食えば良いが、狩る側になるとその難しさがわかる。
腹が減っているのだから体力はこちらの方がないのは明白だ。だから考えナシで突っ込んでも無駄に体力を消費したまま終わる。割に合わないのだ。
だから空腹というありふれた極限状態であらゆることが要求される。
確実に仕留められる距離まで飛びつかない冷静さ。
気取られないよう気配を絶つ技術。
注意を別に向けさせるための仕掛け。
失敗したときに罠へと向かわせる知能。
いまこうやってイノシシにありつけているのも仕掛けていた罠にかかってくれたからだ。罠で捕らえると奪われる心配があると思うがそれには及ばない。それすらも食えばいいのだ。
...ところで生肉を【火炎吐息】で焼けば良いんじゃ?という疑問に答えたいと思う。
高すぎるのだ、火力が。
直接やったら炭になる。木に燃え移らせようとすると高温すぎて炭になる。遠赤外線みたいにやろうとしてもただの魔素でできた火だからか燃やしたいものしか燃やさない。
だから生肉で食うしかないのだ。
そう言い訳しながら次の肉に手を伸ばし──その手が空振った。
目を向けると3、4びき積んであったレッド・ボアが一匹もいなくなっており、文字通り尻尾を巻いて逃げる『ドッグシーフ』がいた。口にその肉を咥えて。
誰も襲ってこなくなったという言葉は訂正しよう。この犬だけは今までと変わらなかった。
アァ゛?許せねぇ!またやりやがった!
この奪う奪い返すという攻防は何度もやっている。ほとんどが奪われたら奪われたまま取り返せないのが普通ではあるが、それでも諦められない。
(今回こそは逃がすものか!)
ここら辺一帯は平原となっている。当然だ。ヤツと戦うために遮蔽物はハッキリ言って邪魔である。何度も何度も盗みやがって!今日という今日は許さぬ!
ドッグシーフは読まれにくいようにしているが、基本森への最短距離で走っている。実際、図体がデカイ俺みたいなのは森が一番追いづらい。
そもそも速さでいったらドッグシーフのほうが速いのだ。
これから当たり前の話をするが、二足歩行より四足歩行のほうが走るスピードは速い。当たり前だな。二倍の力をこめることができるのだから。
四本脚のドッグシーフと三本脚の俺。簡単だな。
ならばどうやって追いつくか。これもまた簡単だ。逃げる以上のスピードで追えばいい。
後ろ足がメキメキという音を立てて膨張する。以前、スライムから取った【限界突破】のスキルと【自己再生】の複合技である。
某ドラゴンの依頼系RPGでは最弱のモンスターとしているがこの世界では別だった。
エクストラスキルである【超速再生】にさっき言った【限界突破】。さらには2体目の特有個体である証のユニークスキル【
最初にそこに訪れた時は何もない荒野でただ大きいスライムが居ただけだった。しかしその荒野を作り出したのがスライムで星のエネルギーすらも食らおうとしてるのを看破し、【悪食】と【
...今更ながらよく腹から突き破られなかったな。
問題だったのは【限界突破】でこれをすると体が傷つけられる代わりに文字通り格が違くなるのだ。それプラス【超速再生】【痛覚無効】も持っていたためもう少し遅れただけで星は破壊されていただろう。
イメージとしては某運命のキングプロテアちゃんを想像すると分かりやすいだろう。
これを今、自分に使っている【痛覚無効】ではなく【痛覚耐性】だからめちゃくちゃ痛いが、問題ない。
よし最適化完了。目標ドッグシーフ。ア●ロ行きまーす!
地面を踏みしめ、進行方向に突っ込む。ドンと空気の壁を貫き、すれ違いざまに肉を奪い取る。一部の肉を持ってかれたが許容範囲だ。
よし、あと一つ──と思って力をこめたが視界の端に見えた3匹ほど子供につい力が抜けた。その間に取り囲まれてしまったがこれぐらい楽に突破できる。
やつらも分かっているはずだ。分かってるはずなのだ。しかし、やつらがとった行動は逃亡ではなく、撃退であった。
その全員が全員、俺の一挙手一投足に注意を向けつつ子供を守るように立ち回り、反対の方向にいるヤツが注意を引き付ける。誰もが協力して俺という強敵から子供を守ろうとする。
とてもイイ。実に俺好みな展開だ。
だから肉をその場に置いた。元はといえばコイツらを捕まえることが目的だったのだ。肉を取られるのが頭に来ただけでコイツらを殺そうとしてる訳じゃない。
そこまで言い訳してその場を立ち去った。
チラッと見えたドッグシーフの目には驚愕が浮かんでいたが、ただの気まぐれなので期待してほしくないところである。
近くで混乱に乗じて子供を殺そうと飛びかかった【ヘビ・ジャ・スネーク】を魔力弾で損傷が少ないように仕留めた。せっかく見逃したヤツが襲われるのは不愉快だ。
ドッグシーフにエサを取られたことがあり、徒党を組んでいたモンスターを皆殺しにして半分食べて、残りの半分はドッグシーフのところに置いてきた。
健やかに育てよ
俺はそう、星へと願った。
原作ではリムルが【超速再生】でハクロウに切られた腕を直してたけどあれは不定形のスライムは欠損という概念がないと考えてます。よって定型である主は【自己再生】で欠損を直すことが不可能でした。
あとモンスターは基本オリジナルです。
レッド・ボア
罠にはまっても進み続けるヤベー奴。設置した8割の罠を踏ませてようやく止まった。速度がのった時でトカリプトルの3割の速さを出せる。倒したモンスターの中でも一番美味しかったモノ。
ドッグシーフ
めっちゃ盗む。めっちゃ避ける。めっちゃ逃げ足が速い。どこぞのアサシンか、と思うほど隠蔽系のスキルを持つ。わざと姿を見せることでオリ主の反応を楽しんでることがある。
スライム
スライムである。2体目のユニークモンスター。
星すらも食らおうとするトカリプトルを抜いて一番の化け物。その大きさと体重から動きは鈍重である。もし星を食べてたら捕食者が暴食之王に進化してた。
限界突破と超速再生、暴食之王により別世界にも手を出す前にオリ主に食われた。
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8話 殺し愛は突然に
罠を仕掛け、待ち、追い詰める。
それが食糧を得る俺のルーティーンとなっていた。...相変わらずドッグシーフは俺の家(洞窟)から干し肉と『ストライキバード』の羽毛から作った布団を奪われたが。
キレちまったぜ...!久々によォ!
三回ほど太陽がのぼって沈んだのを繰り返した後、子犬が体を震わせながら布団にくるまっているのをみて癒された。
すごく良い気持ちで何も取り返さずに帰ったらちょうど別個体のドッグシーフが俺の家から干してあった『カキ元気』を咥えて外に出ようとするところだった。
しばらく見つめあったあとしっかりと奪い返した。
飯と布団という食欲と睡眠欲を満たせるものを渡してやったというのに嗜好品まで奪うとは...そんな子に育てた覚えはありません!(育ててない)
つーかどうやって家に入ってんだ?外からは俺以外入れないようにしたはずなのだが...
その疑問はすぐに氷解した。中に入った瞬間ガタンという音と同時に壺が揺れたからだ。見たことのある茶色の尻尾を出した状態で。
大方、俺が入る時に死角から侵入して中からカギを開けていたのだろう。外からは注意をしていたが中からは考えてなかったのが仇となったか。
取りあえず中にいたドッグシーフを外へ放り投げ、食糧の前に分かりにくい罠を設置することで対策としておく。
またアイツらのせいで食糧が減ったので取りに行かなきゃ行けない。ため息を吐きつつ洞窟から出る。ついでに周りにいたドッグシーフを追い払う。
【分身体作成】により自分の半分くらいの強さの分身を3体作り出す。強さ半分といってもそこら辺のヤツには十分脅威であるのはかわりない。
分身のうち一匹は罠の仕掛け直しを頼み、二匹プラス俺でその方向へと追い込む。罠を使わないに越したことは無いが捕らえ切れない時の保険として仕掛けておく。
分身と別れ、それぞれ獲物を探す。まだ生き残っていた干し肉をほおばりながら【万能感知】の範囲を広げていく。
ふと感知したものがあった。数が死ぬほど多い群れなのかゆっくりと動きながら【万能感知】に引っ掛かる量を増やしていく。
それを不審に感じながらも探索を進めていく。
何も起こらず3分ほどたったころ、俺の分身が感知に引っ掛かっていた群れらしきものに突っ込み──
その事実に唖然としながら思考をめぐらせようとして、また一匹死んだ。
分身体は傷つくか、死ぬとその情報を本体に送る。つい最近手に入れた【
その連絡すら来なかったということはする暇すら与えてもらえなかったということである。
【
【毒霧】
生まれてから一番最初にみた紫の壁、一番最初に見た
さらには既に囲まれている。おそらく毒霧には俺にとっての【万能感知】のような役割をしている。毒霧に突っ込めば分身体同様にその突進によって弾け飛ぶことだろう。
しかもその範囲も狭まっていくのを感じるから殺されるのも時間の問題である。
狩る側から一気に狩られる側へと変えられたことに焦燥を感じるが、もはやそれどころじゃない。
考える隙すら与えないように絶え間無く続く突進の嵐。
【危機察知】、【思考加速】、【虫の知らせ】、【万能感知】、【並列思考】。さらには俺自身の積み上げた経験から来るスキルでもなんでもないただの直感。
その全てを総動員することでやっと回避し続けることが可能になっていた。
それも長くは続かない。敵が圧倒的なスピードで迫る以上、どれだけ思考を加速しても体が追い付かないのでは意味がない。
不幸中の幸いというべきの相手からも俺の位置がわからないという問題も、時間と毒霧のおかげで解決することだろう。
いくら【危機察知】に【虫の知らせ】を重ねて発動率を上げているとはいえ限度がある。頭にひびく煩いほどの警鐘に思考することを妨害される。
取り囲まれたりした状況でよく空中に逃げるというものがあるが、俺と相手の能力を考えると自分は飛べずに相手は飛べるということより愚策であるのが分かるだろう。
ついに毒霧が俺の体をおおった瞬間、大地が揺れ、回避しようとする俺の動きを阻害する。野郎ついにやりやがった...!
悪態をついても体勢が崩れたことに変わりない。そこに追い討ちをかけるように【危機察知】のスキルが頭に鳴り響く。
その場から跳ぶようにして回避する。そのまま体勢を立て直そうとして、未だに鳴り続ける【危機察知】に行動の失敗を悟った。
いつもならスピードを一旦止め、もう一度突進をするまでに時間が空く。それでもスキルが反応するならば、答えは一つ。高速のまま、方向転換したのだろう。
方向転換する角度が緩やかなら問題ない。
方向転換する時の速度が緩やかなら問題ない。
しかし向かう方向が全くの逆方向であり、どんなものでも貫き通すほどのスピードを出していたならばその体にかかる負荷ははかりきれない。
そんな反動覚悟のことをしてでも俺を仕留めたいってことか?俺が何したってんだよ!
回避?──否、避けきれない。
防御?──否、間に合わない。
最初に会ったときのようにくちばしを鋭利に研ぎ澄ましたような
──俺の腹を貫いた
四足歩行の体で超高速の突進を避け続けるオリ主ヤバイな...
今後おそらく出てこないだろうと思うのでオリジナルモンスターの解説載せときます。
他の話の後書きにも追記していくので気になったらどうぞ。
『ストライキバード』
余計な運動をせずに羽根を作りまくる鳥。
寒い地方に多く存在し、倒せないと知ると雪崩をチームプレーで起こす。基本は突進。
『カキ元気』
炎に触れた瞬間、爆発する果実。火気厳禁。
爆発することで種が育つための栄養を撒き散らしつつ、種を遠くまで飛ばして繁殖する柿。
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9話 鳥竜戯画
世界がスローモーションのように遅くなる。
これが俗に言う走馬灯とやらなんだろう。今までの経験から死を回避する手段を探すために思考しまくるから相対的に遅く感じるということらしい。
結局、俺のスピードが上がったわけでも実際に相手が遅くなったわけでもないのだから直前に迫る
あーあ、これで二度目の人生...いや、龍生も終わりかぁ。享年13歳。死の瞬間が呆気ないのは前世でも今世でも変わらないのか。
まぁ、前世の機械のように仕事して、泥のように眠り、栄養摂取のためだけの食事を取る。そんな生活よりかは刺激的な日々だったし、出来なかったことも出来たし、俺としては満足、満足.........
(んなわけねェだろ!)
まだ人間とも会えてない。
まだ家族の温もりを感じてもない。
まだうまい飯も食ってない。
まだ何も考えず、ただ惰眠を貪ったこともない。
刺激的な日々?自分で狩りをして成功したときの快感?知ったことか!
『確認しました』
『エクストラスキル【環境適応】【虫の知らせ】【形態変化】【限界突破】をリソースとして還元』
『成功しました。』
『続いて、【
『検索結果、ユニークスキル【
『成功しました。【自己再生】が統合され、【超速再生】に変化しました。』
そして──因縁の相手が俺の腹を貫いた。
ただ貫いた。
【
逆に言えば一回でも貫通すれば勢いは遅くなる。
【鎧硬化】の使いすぎで並みの防御力じゃない俺の鱗。それで効果が無効化。さらには背中に貫通するときも鱗があるのだから突進の勢いだけでは俺を貫き通すことは出来ない。
左腕を使ってヤツの体を押さえ、だめ押しに筋肉を膨張させることで俺の体に固定する。これでヤツが抜け出しての追撃も、出血多量による死も、何よりスピードを封じ込めることに成功した。
暴れまわるトカリプトルに【悪食】を使った噛みつきと【
【侵蝕者】の効果値は接地面積が大きいほど大きくなる。今はトカリプトルの顔面が俺の体に埋まっている状態なので顔面からじわじわと溶かされている感覚をおぼえるだろう。
【悪食】の補正効果その2である顎が強靭になり、噛む力が増す。それを使って次々と硬い皮膚を破り、肉を食いちぎっていく。
しかしここで黙っているヤツでもない。
引いても頭を抜かせてもらえないことが分かると逆に大地を蹴るパワーを使い、貫き通そうとする。
ここで耐えなければ死ぬのでミチミチという音とともに穴を広げられる痛みが来るも地面を踏みしめて耐える。
動かないことを悟ったのか次の手を打ってきた。
ただの足による蹴り。しかしヤツがそれをするともはやただの蹴りではなくなる。【
俺の中で防御系のスキルは【鎧硬化】と【
ならばどうするか答えは簡単。
「グゥッ──」
肉を抉られる痛みにうめき声を出しながら耐える。スピードの乗らない突進が脅威でないように、力のこもらないキックも怖くない。
足をも俺の体に固定されたトカリプトルは【肉体改造】のスキルで抜けるための幅を作ろうとするがどれだけ細くしても【超速再生】の方が先に隙を埋めていく。
...俺の勝ちだ
普通ならフラグになっていた言葉をあえて出したくなる気持ちが分かる気がする。この快感はクセになりそうになる。
ただ、同時に少しの喪失感もあった。傲慢と言われるかもしれないが、ここら辺の魔物相手では文字通り敵無しといった無敵の強さを誇っている。
その中で唯一といって良いほどの強敵であるトカリプトルを倒したのだ。強敵と書いてトモと読むというのはあながち間違いではないのかも知れないほどその存在は大きかった。
【思考加速】に【並列思考】を重ねてフルスペックで発動させたせいか頭がいたい。【超速再生】の再生スピードを上げるためにも相当な体力を使ったので早々に家に帰ろう。
──ところでこんなことわざを知っているだろうか。
『泣きっ面に蜂』『一難去ってまた一難』『弱り目に祟り目』『傷口に塩を塗る』
どれも『不幸なことは立て続けに起きる』ということを表したことわざである。昔の人は失敗すらも後世に語り継いでいるからバカに出来ない。
まぁつまり何を言いたいのかって言うと──
家に帰ろうと体にムチ打って歩き出した俺が見たのは霧散した毒霧の影からでてくる無数の魔物たちだった。
──『嵐の夜はまだまだ続く』ってことさ
皆が殺したがってた敵が満身創痍なのを見逃すほど自然界は甘くねぇんだよなぁ...
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10話 勝者は敗者の血肉を喰らう
「アオォォォォォォォオン!!!」
開戦の合図は『ロンリーハウンド』の遠吠えだった。
数多の怪物たちが咆哮を上げつつ俺に向かってなだれ込む。そいつらが俺に近づく前に尻尾を振るって全方位を攻撃する。
殺せたなら良し。殺せなくても牽制として歩みを止められたら良し。回避することもあたわず、全力で振り抜いた全てを引き潰す一撃は──被害ゼロで止められる結果となった。
想定外のことに停止した思考は多方向から来る衝撃で覚醒した。その攻撃も一番の弱点である前足より発達していない後ろ足を集中して攻撃したものだ。
仕切り直しに【火炎吐息】を放つも、モンスター達はすでに届かない距離まで退いているし、俺の尻尾を止めた場所には燃え移った様子はない。しかもすぐに水が飛んできて鎮火されてしまった。
そこに見えたのは冷たく感じるほど真っ青な甲羅。俺の【竜鱗】から【竜鎧】へと進化させるために使った【外殻装甲】の持ち主がいた。
名前は『軍隊ガメ』。エクストラスキル【団結の力】を持つ、俺があった中で一番硬いモンスターだ。一部、モンスターの種族が必ず持つ固有能力を持っているカメ。
その固有能力は『軍隊ガメの数だけ堅くなる』こと。【団結の力】の効果は同じ種族に同じ分だけバフを盛るみたいなものだ。
もちろん【団結の力】はエクストラスキルなだけあり、持っていないヤツもいるのだが、【
それが約20体。どうりでビクともしないわけだ。
その影からチクチクと他の奴らも攻撃してくる。ダメージはそうでもない。当たり前だ、トカリプトルの速度でも貫き切れなかったものだぞ。
鬱陶しい攻撃を無視してカメに攻撃しようとした瞬間、頭の中に【危機感知】の警報が鳴る。しかし、反応する前に腹に衝撃が走った。
「ガハッ──」
口から空気が漏れる。【苦痛耐性】を持っていても痛覚はあるし衝撃も感じる。腹に感じたものはトカリプトルほどではないものの相当な大きさだった。
そしてその大きさで俺が目で追えないほどのスピードを出せるモンスターを俺はそいつしか知らない。
俺が幾度となく罠にかけ、その肉を喰らい、ドッグシーフが奪うほどエネルギーが高いどこまでも駆け続ける。『レッド・ボア』であった。
これで敵は俺の攻撃を通さない絶対的な盾と俺に確実にダメージを与えるだけの矛が揃ったわけだ。
俺の動きが止まったのを好機と見たか、もう一度全方位からなだれ込んでくるモンスター達。だが、二度目が通じるとおもうな─よッと!
尻尾を垂直に振り下ろし、重力を加えた重い一撃を繰り出す。もちろん軍隊ガメが届かないような方向へとだ。
だがそれも空振りに終わる。なぜならそれはタダノガニが出した幻影だったからだ。
砂ぼこりが舞い、視野が狭まる。そんな時に俺は【危機感知】が作用するよりも前に左腕を右に向かって振りかぶった。
肉を潰すような感覚をおぼえつつ、逆に無防備になった腹へとレッド・ボアの突進が突き刺さる。...どうやら俺が倒したのは別のモンスターだったようだ。
この状況では周囲に紛れて【万能感知】が役に立たない。だからこそ山勘で腕を振るって『当たるまで殴れば当たる』を実行しているのだが、これが誰かに操作されてるんじゃないかと思うくらいあたらない。
そして俺の体力が尽きかけていたころ、ようやくお目当てのものが届いた。
(あぁようやく終わった...)
『解析完了。情報より該当するスキルの獲得』
『成功しました。スキル【肉体改造】【高速飛翔】【高速演算】【演算省略】【毒霧操作】各種耐性を獲得しました。』
『続いて、条件を満たしたため各種耐性を統合し、【状態異常耐性】を獲得』
『成功しました。』
『続いて、【高速演算】【演算省略】【自動演算】【思考加速】【並列思考】【
『成功しました。【
俺に『世界の言葉』が終了を伝える。
声が聞こえなくなると同時に尻尾と前足を叩きつけ、砂ぼこりを起こす。俺が先に仕掛けてきたからか、またはやけくそになったと思われたか。どちらにしろモンスター達は一瞬攻撃すべきかを躊躇った。
そして俺はその一瞬の時間が欲しかった。
必要なのはイメージと行程。
腕の皮膜は背中に移動。そのままとじ込むようにして背中に隠す。前足よりも後ろ足を太く発達させ、二足で立てるように。からだの全体を小さくして足への負担を小さく。...とまぁこんな感じか。最後に俺の人間像を
「ふっ完成だ!」
髪の毛は鴉の濡れ羽色というような色で目は髪とは真逆の白。体は男としたらちょっと低め?と思うくらいの170センチ。
うわぁ全然違うな。手を組んで大きく延びをして体を慣らす。ポキポキと小気味良い音を鳴らしながら周りを見渡す。
モンスター達は一回り大きくなり(実際は自分が小さくなったからそう見えるだけだが)威圧感も増したように見える。
急に巨体から変わったのに驚いているのか唖然とした様子で見つめるモンスターを横目にスキルの動作を確認していく。
【竜鎧】ヨシ!【状態異常耐性】ヨシ!【魔力炉】ヨシ!【万能感知】ヨシ!【吐息】系ヨシ!【破壊者】【拒絶者】【浸蝕者】【予見者】【譲渡者】ヨシ!ヨシ!ヨーシ!
さっきまでトカリプトル(ユニーク)の解析に頭のほとんどを割いていたから出来なかったユニークスキルも発動出来てるな。同時発動も可能になったし。
指先から
さすがにこの熱に目を覚ましたのか、茫然自失といった様子だったモンスター達が俺の行動を止めようと動き出す。
ま、もう遅いけどな。
転生前に聞いたことあるヤツだが、炎を超高温にさせるとプラズマを発生させることが出来るらしい。それが今俺の手のひらで起こっている現象だ。
力技でプラズマと炎を分離させ、雷として周辺の空中に留まらせてから下に向かって──打ち下ろす。
「落ちろ─!」
空を引き裂くように落ちた雷は進み出した歩みを止めるには十分な威力であり、さらに軍隊ガメが苦手な属性であったがために二匹ほど殺すことが出来た。
しかし、俺の攻撃はまだ終わらない。
【肉体改造】を使って人になるついでに直した右腕に残った炎を自分が居たところのちょうど真上あたりに放り投げる。
──瞬間、音が消え、すぐに大爆発が起こり、全てを焼き尽くす。
実は仕込みはすでに完成済みであった。
砂ぼこりをあげると同時に二層構造の【拒絶者】でモンスターを囲むような一層目と俺だけを囲む二層目。
一層目の役割はモンスターを逃がさないこと──ではなく、逃がさないのは熱と水である。
一層目が出来た時点で【猛毒生成】によって水蒸気を作り出す。より正確に言うならば
水だって摂取しまくれば水中
気づかれないように足元に水溜まりが出来るほどに。
そうして出来たところを電気を流して分解する。...もうおわかりかな?水は電気分解されると水素が発生するのだ。
そこに炎を投げ込むことで皆さんご存知、水素爆発を起こせるということだ。つまりさっきの爆発は意図的に起こしたものである。もっとも──
見下ろした先にあるのは半径数キロにわたる巨大なクレーター。
──こんなになるとは思っていなかったけどね。
『ロンリーハウンド』
基本的には一匹で戦う文字通り一匹狼(犬)。
高速移動からの噛みつきや鋭い爪での攻撃で相手を翻弄しつつ、倒せなければ即時撤退する面倒なヤツ。
『軍隊ガメ』ATK 0 DEF 1700
数が多くなるほど防御力が上がる質より量というより質も量もという感じのモンスター。
某カードバトル系遊びの王様風に言うと場の軍隊ガメの数×200、場の軍隊ガメのDEFが上昇。戦闘時、ATKの半分をDEFに上乗せする。(団結の力装備)
固有能力
先天的に持っている能力のこと。スキルとは違い、同じ種族なら同じ固有能力を持っている。
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11話
山の突出した崖の上で一つの影が震えていた。目線の先には自然豊かだった平原は見る影なく草は焼け、飛び散った血肉は焦げ、巨大なクレーターが出来上がっていた。
(こんな...こんなはずではなかった─!)
その顔に浮かぶのは驚愕。
標的に変化が訪れた瞬間、急に起きた大爆発。あれだけで差し向けていた八割のモンスターが死んだ。
──何だあれは、想定外だ
そしてそれ以上ある感情が焦燥だった。
次、殺られるのは自分なのではないか。
すでに居場所がバレているのではないか。
優秀な頭脳が考えたくもない思考を広げていく。
種族の中でも自分だけが特別だった。誰も知らないことを自分だけが知っていた。分からないことなんて今までの一度もなかった。
【
一族の中でも私だけ違った。嫌われ避けられた。私だって仲間に入れて欲しかったのに誰もがいないものとして扱った。
そんな時に目に入ったのがアイツ。
誰もが嫌いな、私よりも疎まれたアイツ。
本能的に殺さなきゃと、取り返しのつかないことになるとみんなで襲いかかったアイツ。
それでも誰もアイツを倒せなかった。
夜のように鈍く光る黒い鱗も。失われた右腕を補うように自在に操る尻尾も。あらゆるものを噛み砕く強靭な顎も。それ以上に破壊する圧倒的なパワーも。誰もがそれに阻まれた。
だからこそアイツを殺せば今度こそみんな認めてくれる。私を『家族』という輪の中に入れてくれるはずだ。そう思った。
それからずっと観察してた。気づかれないように、息を殺して、気配を消して。そのうち【消音】と【隠密】のスキルを獲得したりして、どうにかバレずにここまで来た。
作戦を練って、みんなに伝えて、襲撃回数を徐々に減らした。アイツを油断させて好機が来るように。
私と似た者同士のアイツが生まれる前のここの主に情報をリークしたりして、仲間をかき集めて、5桁を越えるモンスターが集まってくれた。
今まで必死に集めた情報、アイツのクセ、縄張り、一対多数での戦い方。足りない情報を埋めて、継ぎ足して、長い時間をかけてようやく出来た作戦。
──その全てをまとめて焼き尽くされた。
そんなの一度だって使ってこなかったじゃないの。何よ、そのスキル。何よ、その姿。何なのよ、その強さは!
分からない、分からない。こんな感覚は初めて。
そんな時に響いたの。高速で落ちてきたものが地面を踏みしめる音と衝撃が。
「イッテェェ!くっそ、思ったより吹っ飛ばされたー!...で、お前が首謀者だな。」
いつもより小さい体なのに中身は圧縮されて強く見える。
「いやー分からなかったぜ。俺が知らないユニーク持ちがまだいたなんてなぁ。しかも知識系の能力か...どうりで妙に統率がとれてると思った。」
アイツが一歩踏み出すたびに私の体が勝手に後退する。焦点が定まらないし、体の震えも止まらない。
すでに後ろは断崖絶壁。それでも
「じゃあな。」
振りきられた右腕は私の腹を貫通し、的確に命を削りとっていった。血が流れ出すのが止められないことから何か細工をしたのだろう。
不思議と死ぬ恐怖を感じなかったため、残された少しの時間を何に使おうかと考えているときにアイツが口を開いた。
「あぁ、そうそう伝えたいことがあったんだった。」
アイツが背を向けた状態から振り返る。なに、最後に嘲りか?そう思っているところを真剣な表情で見つめられ、
「──良い策だった。もうちょっと解析に時間かかってたら危なかったな。」
「 」
そう言い放ったのだった。
本当は分かってた。コイツを殺したところで輪の中に入れるわけじゃないって。次の脅威として今度は私が排斥されて追われる番だって。
あの化け物みたいな大きいスライムをアイツが殺してからみんなの殺る気が、警戒度が引き上がったんだからアイツを倒した私も同じようにされるって。
でも仕方がないじゃないか。私が焦がれたものを手に入れる可能性が万に一つでもあるのなら、すがり付くしかないじゃないか。
それが最後の思考となって私は空中に溶けた。
想像以上に強い爆風で空飛んでたら黒幕らしきヤツが見えたからつい殺っちゃった☆そう俺だ。
俺がついさっき殺したのは『ウォーラット』のユニーク。他のモンスターとは違い、鋭い爪も倒すための力も持たない非力な存在ではあるが、類い稀な頭脳を持ったモンスターだ。
今回の件で分かったが、一番気をつけなければいけないのは強靭な体をもつモンスターではなく知性を持つモンスターだ。
策すらも正面から打ち破れるだけの力があれば別だが、俺はまだそこの域まで行くことが出来ていない。スピードも、パワーも、テクニックもだ。
まぁ、後は帰ってから考えるか
『魔素保有量が一定以上に達しました。これより進化を開始します。』
「──ォオ!?」
急に襲う虚脱感に思わず膝をつく。【肉体改造】が解除され、竜の姿に戻された。すぐに眠気が押し寄せてきて体が鉛になったかのように動かない。
やっべ、力が...抜ける!進化?マジかよこんなに辛いもんなのか!?とにかくどうにかして家には戻らねぇと襲われる!進化中で抵抗出来ずに死んだとか笑えねぇぞ!
這うことで少しずつ移動していたがそれも限界を迎えた。ついに目蓋が降りてきて、抗いようのない心地よさに包まれながら深い眠りへと落ちていった。
最後に犬のような鳴き声を聞きながら。
転スラ読みなおしするので次の投稿遅くなります。戦闘シーン終わったし遅くてもいいだろ。ガハ
『ウォーラット』
多くの魔物を先導し、戦争を起こすネズミ。
非力ではあるが誰もがその言葉に騙され、戦争に参加してしまう。そして勝った方を殺──すのではなく、そのおこぼれに預かる基本的に強者につくモンスターである。しかし、その特性から多くの魔物に嫌われることがある。
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12話 は、おまっ...それ住居不法侵入だぞ!?
誤字報告あざす!どう調べても分からん単語とかあるからマジで助かる。
『幼体から成体への進化...成功しました。』
『全ての身体能力が大幅に上昇しました。』
『
『【火炎吐息】が【竜の伊吹】に進化しました。』
『固有スキルに【竜の炉心】が追加され、【魔力炉】が統合されました。』
『また、竜種の固有スキルにより“不老不滅”となりました。』
『続けて、耐性の再獲得、及び新たな耐性の獲得を実行します。』
『痛覚緩和、物理攻撃耐性、自然影響耐性、状態異常無効、精神攻撃耐性、の耐性を得ました。』
『以上で進化を完了します。』
目が覚める。まぁどちらかというと意識の覚醒のほうに近いものだが、別に目を開けている訳じゃない。よし、言い訳完了。
まず、俺は気配...というより敵意には敏感だ。そう思っているだけかも知れないが襲撃を事前に知れたこともあったから思い違いではないと思いたい。
そして、意識が覚醒した今も目を開いていないわけだが、今の状況を【万能感知】からの情報から考えると...一番は背中に四足歩行の何かが乗っていると言うことだ。
もう一度言うが俺は敵意には敏感だ。背中という(【肉体改造】を使わなければ)攻撃できない弱点に乗られているのに敵意は感じられない。
そしてもう一つ。...俺の周りで何で低く唸るような声が聞こえてくるのかなぁ!?
しかも敵意は剥き出し、多分歯も剥き出し、警戒心バリバリである。いや、目開けづらいわ!
こんな状況でどうやって起きればいいか、そんなことを考えているときだった。背中の首に近い辺りに少しづつ水が流れてくる感覚が来たのは...
最初は雨かな?って思った。でも
その感覚はどんどんと増えていき、
嫌な予感がしつつも、そのままうつ伏せになっていると、液体が顔に垂れてくるのを感じた。そのまま鼻のところまで到達し──
「ガァアァァァァ!!!???」
水辺まで最短距離で駆け抜ける。途中で取り囲んでいた障害物が地面のシミと化したが、そんなこと気にしている暇はない。
おまっ、テメ...テメェ!やりやがったなァ!
俺、知ってる!これ知ってる!栄養分を全て吸いとった残りカスとなった茶色い物体と、血液からでた老廃物を水分と一緒に出される液体だろォ!?
つーかアレか!?もしかして
背中に乗っかっていた、ほかほかという効果音がしそうな物体を川底に押し付けて洗う。くっそ、どんだけ洗っても嫌な感じがするぅ...
進化の眠気に堪えられず寝たら敵に囲まれてるわ、俺の上でう◯ちするわお◯っこ引っ掛けられるわ、何なんだこの仕打ちは。もうお嫁...いや、お婿に行けない...
絶望にうちひしがれている中、俺の肩にぽむっと犬の手が置かれた。慰めてる雰囲気だしてるけどこれやったのお前らだからなァ!?
今の状況を好機と思ったか、取り囲んでいた『ワイルドバーニン』が【炎弾】を飛ばしてきた。それに続くように次々と炎の雨が降ってくる。
俺は【肉体改造】をつかって被弾面積を減らし、少し大げさに避ける。炎だからね。かするだけでも熱いってもんよ。
ところでこの【肉体改造】のスキルだが、めっちゃ使い勝手が良い。何せどれだけ姿を変えても肉体のスペックが落ちないのだ。
なのに必要なリスクは体が作り変えられる痛みと改造が完了するまでの少しの時間。リスクとリターンが合ってない気もするが、使えるものは使わせてもらおう。
【
手加減しつつ横から蹴りを入れたら軽くミンチになった。
...いや、ごめん。10%ぐらいでやったつもりなんだけど身体能力が10倍ぐらいになってたから前の本気ぐらいのパワーでたわ。
ついでに体の成長具合を確かめるために飛びかかってくる奴らを手加減しつつ倒していく。ワイルドバーニンは中の下くらいの強さなのでコイツが耐えられたらだいたい耐えられる。
雑にあしらったあとは家に向かう。俺の上でもよおしてたヤツらはドッグシーフで、どうやら俺が半日ほど寝てたときに守ってくれていたらしい。
俺は見てないから分からないがさすがに無防備な状態で遭遇するとヤバいヤツもいるから(
俺の認証をクリアし、ドアを開けたときそれを見た。
錯乱した室内。割れた水瓶。ボロボロのカーペット。荒らされたベッド。作りかけで砕けたガラス。火が消えた松明。
そして何より──
「わんっ!」
──解除された罠と消えた干し肉を見た。
「...」
こっちを見て尻尾を激しく振っているドッグシーフは「ほめてほめて!」とでも言うかのように目を輝かせている。
それを見た俺は笑顔のままソイツの頭を外に放り投げて叫ぶ。
「ぶっ殺したるわァ!こんの
なお、追いかけっこは敗北に終わった模様である。
まだ
これプラス名付け分(名を付ける人によるが)強化されるんだぜ?
ちなみにもともと
『ワイルドバーニン』
炎系の魔法をよく使い、その体自体も魔法のように燃えているので、集団で襲撃→炎魔法ぶっぱ→魔法に隠れて奇襲という方法で狩りをする。
見た目は、炎にワイバーンの翼が生えた感じでかわいい。
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13話 戦いの余波
ずるん、と新たな命が生まれ落ちた。
不思議なことに誰が産んだかは分からない。それが産まれた周辺には近くに親も似たような存在もいなかったからだ。
しいて言うならば、吐き気をもよおすほどの魔素濃度。それが彼女を産んだと言えよう。実際その個体が産まれた瞬間、目に見えるように濃度が下がったのだから。
──ダレモ、イナイ...?
体は頭、胸、腹に分かれており胸の部位からは足が八つ。全身には薄く毛が生えたそのフォルムは、皆さんご存知の蜘蛛という虫に似ていた。
もっとも、サイズはその限りではなかったが。
──...サビシイヨ
それは少し見渡してから巨大な体躯を縮こまらせた。それでもすぐにもとに戻り、他の個体を探しに歩き始めた。
しかし歩いても歩いても同じ種族の個体は現れない。
似たように八本足の生き物はいても彼女ほどの大きさは無く、彼女ほどの大きさの生き物はいても形が違う。当たり前だ。彼女はたった一匹の
しかし彼女が分かるはずもなく、やがてある一つの考えにたどり着いた。
──ソウダ。ゼンブ
近くにいたトカゲのモンスターに手を向ける。その手からは誰にも見えないほどに細く、どこまでも伸ばせるほどに長く、粘着質な糸が出ていた。
その糸が気づかれずにモンスターを絡めとり、その動きを封じる。動こうとするたびに締め付けて離さない。
──?...アソコ、ナンカ光ッテル?
それはモンスターの心臓部。
世界にいる全生物は三つのもので構成されている。
世界に存在するための肉体である
──アレ?ナンカ黒クナッチャッタ。
身動きが取れなくなったモンスターに近づき、星幽体に触れる。すると、もがいていたモンスターは動かなくなり、光り輝いていたものは黒く淀み、体も黒いもやで覆われた。
比較的人間に近い姿をしていたモンスターは糸から解放されると付き従うかのようにしてクモの後ろへと立つ。
──ウーン、マァイッカ。イッパイ増ヤソウ
この時行われたのは精神の支配と統合。ユニークスキル【
その効果はエクストラ以下の
手足を増やしながら蜘蛛は巡らす。糸を、
いったいいつになったらヴェルダナーヴァを出せるのだろうか...
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14話 オリ主の休憩回?──いいえ、作者のメンタルケアです。
ふわふわした感覚で空中を漂う。
しかして足がつかない不安定感はなく、暖かい何かに包まれたもので逆に安心感を自身に与える。
現在の状況を把握することは働かない脳が許さないが、最近のことは思い出せる。
進化してから辛いことが増えた気がする。【火炎吐息】から【竜の伊吹】に変わったせいでもっと火力の調整が難しくなったし、【魔力炉】が【竜の炉心】になったことでアクティブからパッシブになり、威力が倍増。
本当に泣きそう。
戦闘するたびにクレーターか焦土が完成するのだ。自分の力が人外過ぎてひそかな癒しでもあった『
あのウサギを触ると野生でろくに手入れされていないはずなのに滑らかな手触り、かつ自分よりあつい体温でほっこりさせてくれる。
そうそうちょうど今感じてるような感覚だ。
あぁ、こんな毛で布団が作れたらどんなに幸福な状態で寝れるだろうか。と思いつつ腕のなかにある抱き枕らしきものをぎゅっと抱き締める。
「キャウン!ウー、グルルル...」
なんか悲鳴みたいなものが聞こえた気がしたけど...なんだ音がでるタイプの抱き枕か...つーかスゴいなぁ。俺、いつの間にドラゴンパワーで壊れない抱き枕手にいr「ガウ!」いっだだだだだ!?
急な痛みに頭が冴えて感覚が肌寒いものへと変わっていく。くそぅ、【痛覚耐性】と防御力を貫いてダメージを与えるとは...何奴!
曲者の姿を確認しようとして目を開ければ、目の前に広がるもふもふの世界。ふむ、至福ッ!
「お前だったのかぁー...」
頭を噛みつかれたまま目の前の
よしよし、とアゴのあたりを撫でてあげれば幸せそうに目を細めた。その内に眠くなってきたのか首を揺らしながら必死に抵抗している。
しかし健闘むなしく俺の撫でスキルと睡魔には敵わず、ついには俺に体を預けたまま眠ってしまった。
姿こそ犬と変わりないドッグシーフだが、これでも俺の【万能感知】をすり抜けて幾度となく逃走を成功させた歴としたモンスターだ。今はこんなにも可愛いが。今はこんなにも可愛いが!(大事なことなので二回)
周りをしっかりと見回すと未だに寝続けるドッグシーフたちといつもと変わらない洞窟の壁。...どうやら俺はまだ寝ぼけているようだ。
俺に寄りかかっているのを起こさないように抜け出し、床に転がるドッグシーフを踏まないように移動して顔を洗ってさっぱりすると、もう一度周りを見渡した。
それでもやはり状況は変わらず、
全員自分の家かのように安心して眠っていて、起こすなんてことが出来るのは悪魔や天使もムリなのではないかと思うぐらい幸せそうな顔をしていた。
その状況にほっこりしつつも羽毛布団をとりだしてかぶせてやる。もう秋っぽい季節で少し肌寒いからなぁ。
今度は自分が寒くなったが、一人で居たときよりも確かな暖かさを感じつつもゆっくりと俺は目蓋を閉じた。
なお、寒そうにしているオリ主に起きたドッグシーフが上にのったりして暖めていたのを起きたオリ主が見て可愛さに悶絶するのは、また別の話。
作者はネコ派。
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15話 帳は落ちる、幕が開ける。
貴様ッ!見ているな!
一度はやってみたかったことをやってみた。俺も強いといえる部類に入ってるのではないかと思い始めた今日この頃の...そう、俺だ。
もはやドッグシーフは進化して半年も経たないうちに俺の家に入り浸るようになってきて、俺も諦めて家に入れるようにしてやった。
だんだん遠慮がなくなってきている気がするが、俺の食事を盗んでいた時点であってなかったようなものなのでほぼ誤差と考えるようにした。
今日も今日とて自分の分の食事(ドッグシーフに奪われる分、多く取ってきているので実質養っているといっても過言ではないほどの量)を取りに行こうとしたときに突っ込んできたので存分に遊んでやった。
このように俺が外に出るときに止めようとしたり、帰ってきたときに出迎えるなど普段の行いを差し引いても...うん、まぁ±0になるぐらいには可愛いところがあるのだ。
「わふっ!」
「よしよーし。本当に可愛いなぁ...お前らは心の癒しだよ。いやホントに」
「わんだふる!」
「ちゃんと聞き取れる言葉でしゃべってる犬初めて見たわ。さては相当知能高いな?」
あー、うちの家族が一番可愛い。だけど干し肉を勝手に持ってくのはやめてほしい。一応冬らしき季節のための蓄えなのだから。
なんと驚くことにこの世界でも夏と冬はあるのだ。
正確には暑いときと寒いときが交互にくるだけで日本の四季みたいにハッキリしてるわけでもないが、ほとんどのモンスターも冬眠する。
俺はこの前の進化のときに手に入れた【自然影響耐性】で寒さも暑さも凌げるから良いし、そもそも俺は飯は必要ない。進化したときに魔素さえあれば生きれるようになった。
だが、ドッグシーフたちは別だ。飯が無ければ空腹で死ぬし、寒ければ凍え死ぬ。
そのための干し肉なのだが...どうやら食べれるときに食べるという野生の本能的なものが働いてこのままでは野生に返せないほどに太りつつある。
ため息をつきつつもドッグシーフたちをようやくの思いで振り切り、扉から外へ出る。ここ最近はモンスターを狩りすぎて俺の家の近くには寄り付かなくなってしまった。
いつもは発動してない【万能感知】の範囲を広げる。普段狭めている理由は、進化する前では演算する容量を死ぬほど持ってかれるからだ。
これからは常時発動にしようかなぁ...トカリプトルのスキルを解析したおかげで楽になったし。ん?
感知を広げている間に次々と反応が増えていく。10...50.....100...範囲を広げれば広げるほど多くなり、今しがたおそらく4桁を越えた...と思う。
しかし、問題は数ではない。数ならばつい最近5桁の有象無象どもを爆散させて自分の糧にしてやるぐらいの力をもっている。
どうも輪郭がハッキリとせず、読み取りづらい。まるで霧が人間の形を取ったかのようにそこに居ることはわかるが分かりにくい。それが一匹二匹ではなく、全部そうなのである。
それが俺の家を取り囲むように円を作っていた。
懲りもせずにまた同じ戦法を取ってきた、と考えるのは愚の骨頂だろう。徒党を組んだということは大きく分けて二つ。
それぞれがそれぞれを利用しようとしながらも強敵を倒そうとする『利害の一致』タイプ。もう一つは先導者やまとめ役が存在する『黒幕がいる』タイプだ。
前者はまずない。基本、本能で動いている動物的なヤツらだからそこまで狡猾なのはいないはず。いたとしても両方争ったあとで漁夫の利狙ってくるぐらいだろう。
問題は後者だ。基本的にこの世界は“弱肉強食”。そんな中で相性の問題を無視して強者として君臨できるのだ。それも、俺に存在を認知されずにだ。
この前のウォーラットとも別種だろう。あれは
王が変われば思想も変わるように、上に立つ者によって策は無限に生まれる。つまり同じ策を考えるなんて余程のアホしかいないということだ。
そんな考えをしながらもようやく敵の姿を捕らえると俺は言葉を失った。
体全体が黒いもやで包まれ見えづらいが、頭はカエルで腕は長く鋭い爪をもっている。足はこの前見た『レッド・ボア』のように短いが蹄を持ち、体表には魚の鱗のようなものと背ビレがついていた。
特徴のバランスが取れてなければ重心のバランスも取れてなさそうなモンスターだが、しっかりと足をつけてこちらに向かって進軍している。
「【
────────────────
『情報の元となる
『断片から読み取った情報を掲示します。』
『豁」菴謎ク肴?』 種族:繧ュ繝。繝ゥ
繧ウ繝「繝ウ繧ケ繧ュ繝ォ
【繧ケ繧ュ繝ォ蜈ア譛】
繧ィ繧ッ繧ケ繝医Λ繧ケ繧ュ繝ォ
【鬲泌鴨螯ィ螳ウ】【遘√?隱ー】
────────────────────
「──は?」
想定外のことに思わず間抜けた声を出してしまう。しかし、今回に関しては仕方がないだろう。今まで出来ていた事が出来ないどころか分からないのだから。
中でも目を引くのが『精神体と星幽体が存在しない』の文字。
スキルの【解析鑑定】は相手の精神体や星幽体から個体差を識別し、『世界の言葉』にある情報と照合することでそのスキルを見ることが出来る。
この個体差の識別の際にスキルにより介入することで鑑定の妨害が可能となるのだ。が、今回は違う。
妨害とかではなくただ単純に
そして狼狽えたような俺を見つけると口が弧を描き、そこから覗いたキバは『ヘビ・ジャ・スネーク』と似て鋭く光っていた。
ようやく見えた尻尾も『ガンズスコルプ』というさそりのモンスターの物で、モンスターの体を切って張り付けたかのような姿であった。
しかもそれは一個体を見たときである。
別の個体をみれば、黒いもやにおおわれていることは変わらないが、それぞれ頭、腕、胴体、足、尻尾が別の物に変わっている。
部分的にみれば分かるが、全体として見ると分からないモンスター──漫画で良く見る
質も不明、量も不明、姿も不明で正体不明。何時、何処で、どうやって生まれたかも不明なら、目的も動きも声も不明、不明、不明。
『『ガガゴギガゴギガアァァァァ!!!!』』
不明だらけの戦争の幕が、今開けた。
『星幽体から鑑定出来ない』というのは独自設定です。【解析鑑定】の情報ってどこから来るの?って考えた結果、その精神か魂だな。と考えた結果です。
文字化けのやつは見たいならどうぞ。多分文字化けを直すやつでやれば治るはず。オリ主と一緒に推測するのも可。
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16話 汚物は消毒だァ!とか言いながらエタノールじゃなくて火をばら蒔くヤツいるけど消毒するんじゃなかったの?え、熱殺菌...そうですか。
【肉体改造】を解除、元の体へと戻してスキルの【威圧】を発動することで敵の足止めを狙う。しかし予想に反して俺を気に止める様子もない。
操られているというには動きは滑らかだし、それでも死んでいることに変わりはない。まさに
敵の目的が分からない以上、敗北の条件は『俺自身が死ぬ』ことと『
俺のストレスでもあり、アニマルセラピーでもあるドッグシーフには意外と助かっている。プラス、家にはバレないように食糧が置いてあるのだ。
健全な精神を保つために必要なのは人間の三大欲求。性欲の部分は娯楽みたいなものだから俺の場合、ドッグシーフとのたわむれがそうだな。だから三つのうち二つ出来なくなるのはすごく痛い。
逆に勝利条件は...『敵の撃破』と『黒幕の撃破』だな。尤も、数もどれだけ強いのかも分からないが──なッ!
小手調べとしてまだ距離がある状態で【竜の伊吹】を使いつつ横に凪払う。威力は分散するが、ゾンビと似ているのなら火葬が一番効く。燃え広がって近づけなければなお良い。
しかしやはりと言うべきか。体を焼かれながらも歩みは止まらない。推測ではあるがあの様子では【痛覚無効】を獲得しているだろう。さらに火傷は治っていないが、【自己再生】も全てのキメラが持っているようだ。
(死体が回復するとか...何の冗談だよ!)
小手調べといってもほとんどのモンスターが耐えきれずに炭になるレベルの炎だったが、まさか【熱耐性】も所持しているのだろうか。さすがに炭になった傍から再生しているのは違うはずだ。というか違ってくれ。
警戒度を二段階ほど引き上げ、取りあえず進行を止めるため【猛毒生成】から麻痺毒を作りだし、【毒霧吐息】【毒霧操作】で周囲にばらまく。
これを聞くとみんなは驚くかもしれないが、実はこの世界のモンスターは麻痺に耐性を持たない。
理由は麻痺毒も麻痺が起きる
植物は食べられないように...または食べられたとしてもその場で殺し、養分に出来るような即効性の毒を。
動物なら自分から口に飛び込み、自己犠牲の精神をもってして
後者に関しては電気といえるものの
──まぁ言ってしまえば毒が強力すぎて麻痺する前に死んじゃうよってことなのだ。
だから麻痺毒も電流も存在せず、存在しないものに耐性なんてつけられない。つまり俺のこれも防げるヤツはいない。土壇場で耐性を獲得できるヤツなんて一握りできるかすら怪しいのだ。
波のように並んでいるキメラたちが次々と倒れこむ。
やはり耐性を持っていない、と内心ほくそ笑むが足止めできる時間も少ないしその間に倒し方を考えて実行しなければならない。
一応【自己再生】以上のスピードで倒すとか、【竜の伊吹】で焼き尽くすなどの案は出たがどれも先に俺がスタミナ切れになりそうだ。
そう考えを巡らす中で──視界の端に動く影を見つけた。
(ウソだろ...麻痺が解けるのに
第一陣がよろよろと立ち始めたとき後ろから来た第二陣が第一陣を押し退け、毒霧に足を踏み入れる。決定的に違うのは全員が麻痺になっている訳ではないということだ。
さらに後ろから来た第三陣は誰も麻痺になった様子はなかった。
ここから新たな結論を導きだす。
(まさかスキルの共有!?第一陣の誰かが【麻痺耐性】を獲得したから起き上がるのが早かったし、第二陣も倒れる数が少なかった。第三陣にいたっては【麻痺無効】も獲得したってか!どう勝てッんだよ!)
高火力、一撃で、【自己再生】させる間もなく。言葉にするのは簡単だが、そんなことが出来るスキルは数多ある中でも片手で数えられるぐらいだろう。例えユニークスキルだったとしても。そして俺が今使えるものではない。
否──使えはする。だが、怖いのだ。
成功のために積み上げた失敗があるように、リターンにはそれ相応のリスクが存在する。それを危惧して封印したスキルが...俺が竜として生まれてから一度しか使ったことのないユニークスキル。
(いや、これ以外にもあるはずだ。探せ!)
そう思う俺とは裏腹にあらゆる手の悉くが封じられていく。
炎を撒き散らせば【対熱無効】へと。
毒を食わせば【毒無効】へと。
殴って殺せば【物理攻撃無効】へと。
打つ手がなくなり、戦況が硬直したとき、敵が普通のモンスターなら考え付かない、明らかに知性があるようで狂った考えを実行し始めた。
なんと、自分の尻尾を切断し始めたのである。
「オイオイ、マジかよォ!?」
切断したのはさそりの尻尾を持つキメラ。
『ガンズスコルプ』の注意すべき場所はその尻尾の針である。前世でのさそりの猛毒とかそういう話ではない。その針には【防御貫通】の効果がついているのだ。
だがガンズスコルプは致命的なまでにスピードが低い。だから気を付けることは奇襲だし、刺さったとしても火力も低いからそこまで脅威ではない。
そう、
もし他のモンスターと結託したなら
もしスピードの高いモンスターが持っていたなら
今回で言うならその尻尾を
『ゴ・リラ』の腕がついているキメラがゆっくり、しっかりと腕を引き絞る。無駄にフォームが良く、【豪腕】のスキルによってそれは爆発的な威力を出すことが容易に想像できる。
さらに、そのキメラと俺の延長線上には俺の家がある。そして、その家には
これで回避の選択肢は消えた。防御...も無理。
なら──そらす!
空気を貫く音とともに打ち出される弾丸。俺はそれにただ両手を前にだす。そして──衝突。
肉が削げていく感覚。防御とは呼べない俺の手に当たることで勢いが落ちていく。削りきられる前に逸らす。それも上ではなく横に。
(攻撃を凌ぐついでに囲まれてるヤツら殺そうとするとか俺も案外、余裕あるな。)
すぐさま【
...ということはガンズスコルプは持っていなかった【自己再生】でいくらでも弾丸を産み出せるってことで、
尻尾を振り回しながら正面を見据えた瞬間、
(あ、これ死──)
この中に終わり方見た気がするって思った人...だぁいせいかぁい!
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17話 責任を持ったのなら果たさなければいけないと思う今日この頃のオルェ!真剣に考えたタイトルってかたっくるしくて敵わねぇよな!
そもそもの話だが、コイツらはどこから生まれたのだろうか。
しかしこの世界に人間はいない。いや、『ゴ・リラ』という集団で行動して衣食住を作る人間に近いものはいるが、それでも原始人と呼ばれる程度のものだ。
しかもコイツらは生きていると同時に死んでいる存在だ。そんなものは見たことも聞いたこともない。可能性としては『スキルによって産み出された』か、『元からそうだったか』だな。
ならば何故生まれたか。
そういうスキル持ちが生まれたとしても、キメラという種族が生まれたとしても、そこには理由がある。某運命の時計塔のロード二世も『
まずモンスターが生まれるには魔素が必要だ。あれだけの数、質、相当な魔素だまりがないと生まれないだろう。それこそ、5桁のモンスターが一気に死ぬような...
そのとき俺は思い出した。
囲むように襲いくるモンスター。
俺の攻撃を耐えるだけの団結力。
それらを全て殺したスキルによる水素爆発。
あの後、ユニークの『ウォーラット』を殺した後すぐに進化したため死体が未処理のままだった。あれは5桁を超えていたのではないか?
もしそうだとしたらそれは──
──
********************
キメラ達は勝利を確信した。
二発同時に放たれる弾丸。呆然と立ち尽くす敵。命中すれば明らかにクリーンヒット。避けられない位置と速度。一つ目を弾けても二つ目が迫る。防御無視の弾。
すでにダメージが入ることは判明済み。
対して自分たちは未だ誰も死なず...正確には死んだが生き返ったの方が近いが、誰一匹として欠けていない。
我等が母に生け贄として捧げるため、強いモンスターを襲ったのは良いが想像以上の脅威であったため捕獲から排除へと移行したのは間違いではなかった。
そんな思考の途中で黒い鱗を持つ竜が手で防御しようとしているのが分かった。
その行動をキメラ達は嗤う。
『防御無視』というのは鎧や盾を貫くといった生ぬるいものではない。相殺を目的とした
しかし予想とは裏腹に弾丸が手に触れた瞬間、音も立てることなく消滅した。
ユニークスキル【
その効果は手に触れたモノの破壊。この効果を相殺、または防御することは一部ユニークスキルを除いて叶わない。だが、注目するべきはその真髄。
普通、モンスターが死に至る場合、魔素に還元される。もちろんロスは存在するが、それでも微々たるものであり、そのロスによってゆっくりと世界は死んでいく。
生物が死に、魔素から生まれ、成長してまた死へとむかう。【破壊者】とはその
死ではなく無。殺害ではなく消滅。
魔素すら生み出さずに無へと帰すこのスキルはやがて星の崩壊へとつながる。
「ようやく覚悟が決まったぜ...」
必殺の一撃を破壊した竜が言う。
「ちょっと考えりゃ分かることだったな。」
【肉体改造】により人獣化した
「簡単じゃねぇか。俺が死ねばどっちにしろ俺の家でスヤスヤ眠ってるアイツらが殺されちまう。だったらよォ──」
雄叫びをあげた一匹のキメラが向かい、その腕にて上半身を消し去られた。いままでどんなにやられてもしていた再生は...しない。
「──リスクなんざに迷ってる暇ねぇよなァ!」
その言葉を皮切りにキメラ達が次々と飛び出す。同時で、時間差で、フェイントを交えて、知性を感じる行動でありながらも攻撃方法は噛みつきや殴打程度。これまで数の暴力で経験など積まなかったのが仇となった。
対して俺が行うのは『触れるだけ』というシングルアクション。もちろん腕や足といった直接的に致命傷でない限り【自己再生】によって回復されるが普通の人間には存在しない尻尾で跳ね上げ、破壊する。
それでも問答無用とばかりに襲いかかる残りの第一波を地面を揺らして足止め。さらに【肉体改造】によって腕のみを肥大化、足を軸に独楽のように腕を振り回し、凪払う。
「ぐぅおッ─!」
その大振りの攻撃を回避したキメラが俺の腹にしがみついてきた。すぐに元の大きさに戻した腕で頭を消滅させるも、隙が出来たことには変わりない。
取り囲んだ第二波によって腕の動きを阻害され、足も掴まれたことで身動きがとれなくなる。
まだ攻撃は終わらず、【
『ガンズスコルプ』の尻尾を投げようとするキメラは力を込めているように見える。そういう系のスキルなのかは分からないが、剃らすことも不可能だろう。
周りにくっつくモノを【
弾丸が通ったところから包囲を抜け出し、また同じことの繰り返し。
触れて破壊、蹴って距離をとって破壊、掴んで破壊、凪払って破壊。
キメラを何匹も殺し、逆に傷一つない体ではあるが追い詰められているのは俺の方だった。
原因は無尽蔵なほどの数。殺しても殺しても湧いて出てくるキメラに膨大とも言える魔素が削られ、体力も使わされる。何より終わらない攻撃は精神を磨耗させる。
だからといって遊撃に出ると守れなくなる。?何か違和感を感じたが気のせいだろう。
遂に第三陣目にして
他にもまとまりになって俺の攻撃を止めようとしているが、逆に倒しやすくなってる。
二、三回やれば無駄だと気づいたのか、今度は散開して距離をとってきた。それを一歩踏み込むことでさっきと同じように破壊していく。
...確実に考えて行動しているのはもう突っ込まないでおこう。
出きるだけ攻撃をくらわないように紙一重で回避しながらカウンターを放つ。
竜の形態より小回りが効く分、敵を手数で攻められる人間型は良い。もちろん竜の形態だと処理しきれないところが必ず出てくるからな。
伏線を作った次の話で回収するっていうのあったんだけど伏線っていうのかっていう議論を友達と交わした。
最終的に『やっぱカレーは飲み物』ってことになったからよろしく。
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18話 【
奈落は用意した。あとは突き落とすだけ。
第三、第四陣と絶え間なく続くヤツらの強襲は突如として終わりを迎えた。
蜘蛛の子を散らすように四方八方へと逃げ始めたのだ。
いままでずっと攻撃しておきながら敵の端も見えてない状況で逃げ出した敵達に、思わず「は?」と声を出してしまったのは仕方ないことだと思う。
ここで下手に追撃すると手痛いしっぺ返しを受けることになるだろう。まぁあっても
それにしても何故急に撤退したのだろうか。
さっきの状況で逃げるのはハッキリ言って愚策だと思う。『数の暴力』の利点を生かせないからだ。
『数の暴力』の利点は
①疲弊を無視した波状攻撃
②囮としても有能
なところだろう。
①に関してはそのまんま。相手は疲れる一方でこっちは戦って、下がって、休憩してをローテーションするだけで敵は死ぬ。
②は、質が高いヤツをそこにとどめておけるからだ。その隙に王だの何だのを取ってしまえばいくら強くても関係ない。
これに対して撤退は利点を消すどころかマイナスまで持っていく。
『数の暴力』のデメリットは食糧。
長期戦ではなく短期決戦を行わなければすぐに食糧は底をつき、動けなくなるだろう。
だからこそ攻撃は絶え間なく行われなければ相手が休憩してしまう。目的を達成するまでは攻撃しないと利点が消える。
逆に言えば目的を達成さえすればすぐに撤退すべきだ。意味ないし被害が増えるだけだろうし。
しかしなぁ...拠点を壊された訳でも俺が死んだ訳でもないのに何で撤退なんk「イテッ」。
家(洞窟)に入ろうとしたら足の小指をぶつけた。あ?痛みはないだろって?いや、みんなも痛くもないのに痛いって言っちゃうとき有るだろ。あれだよ。
くっそ、戦ってる最中に元の竜の姿に戻っちまったし...ん?俺、戦ってる時って
ッ、頭が痛ェ...割れそうだ。
結局何でヤツらが帰ったのか分からずじまいだが...取りあえず家に入ろう。なんかもう、いろいろ疲れた...
倒れこむように入り口を抜けると中には犬のようなモンスターがいた。
ガツンと頭が殴られたような衝撃が走った。
そうだ...たしか俺は家族のためにヤツらと戦って殺したはずだ。じゃあ俺の家族って誰だ?
思考にもやがかかったようなものを感じながらぐるぐると考えを巡らせる。
家にいるのは家族。だがこんな犬のモンスターは
そう考えた瞬間、腹の奥から怒りがこみ上がってくる感覚をおぼえた。ヤツを殺す。殺す殺す殺す。
声になっていない慟哭が洞窟内に響き渡り、犬のモンスターがこちらを振り返った。顔に浮かんでいたのは心配の表情。その表情を家族がしていた気がして、怒りが加速し我を失った。
怒りに身を任せ、腕を振るう。
たったそれだけで俺の目の前の命は消える。
犬のモンスターの最後の顔に浮かんだ感情は『憐れみ』。まるで──自分に迫る“
その顔が赦せなくて胴体を【
なんども、なんども、なんども、なんども、なんども、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモ──
『──ユニークスキル【
『成功しました。』
脳内に響く『世界の言葉』にようやく正気を取り戻した。
冷静になって周りを見渡すと、床の岩は抉れ、血は飛び散り、家具として作った机などは折れて使い物にならず、壁に深々と突き刺さっていた。
現実逃避するために気になった新スキルを【
【
ナニモナイ 獲得条件:────
それを見た瞬間、ハ、とただ息が漏れた。なぜ、おかしい、こんなことが、ありえない、嘘だうそだウソだ!
考えたくない。肯定したくない。ありえてはいけない。胸が苦しい。息が詰まる。
獲得条件──そのままスキルを獲得する条件である。普通のスキルはそのスキルが出来るようになったら獲得することができる。
もちろん例外があり、魔素量が許容を超える際、魔素を消費してスキルを獲得することも可能だ。
しかし獲得条件が設定されているスキルは別である。一部のスキルにはこれが存在し、その行動さえすれば獲得できるのだ。効果はピンキリだが。
逆に、条件を満たしていなければいけない。
「ぁ...あ、ああぁぁァァaaaaaaaaa!!!」
獲得条件:──自らの手で家族を殺すこと
【
手に触れたものを無に帰すスキル。一部ユニークスキルとアルティメットスキル以外では防ぐ術はなく、精神体、星幽体すらも破壊するので不滅のものすらも破壊する。
その代償は『記憶の消滅』。
使うほどに古い記憶から消えていき、残るのは漠然とした感覚のみ。『かつてとても辛いことがあったはずだ』『あの時の幸せはどこへ消えた』という感覚は持ち主の精神を狂わせ破壊する。
完全に精神が壊れたとき、破壊衝動に従ってあらゆるものを破壊する災害となる。
感想にあった返しを今するとオリ主は【分身体】のスキルを持っていたのに存在を忘れていた。ただ『こういうスキルはある』ということしかおぼえてませんでした。
ちなみに最初使ったときに消えたのは『前世の自分の名前』。だからわざとオリ主の名前は使いませんでした。決して考えてなかったとかそういうことじゃないです。ホントダヨ
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19話 闇夜を照らす星の輝き
──殺した
手が赤く、紅く染まっている。
──ころした
返り血と肉片がくっついて気持ち悪い。
──コロシタ
もう家族の名前や種族すら思い出せない。
──俺が
あの優しく暖めるぬるま湯のような幸福も、時に遊び時に本気で怒った戯れも、ただただ惰眠を貪る時間も、冬に小さな布団で身を寄せあった温もりも
──全て俺が壊した。
いままでの記憶が浮かんでは消え、なかったはずの記憶が走馬灯のように流れていくクセに種族名も、その容姿も、何もかもがもやがかかったように出てきてはくれない。
悲しみに暮れるなか、洞窟に激震が走る。キメラ達は帰ったと見せかけて潜んでいたのだ。普段なら気づいていたかもしれないが蓄積された疲労から考えるのを止めたことで見逃してしまっていた。
そんなわけで奇襲を受けたのだが、竜は何もせずにこのまま死ぬつもりだった。
(もう、疲れた)
100年以上生きてきた。命を追われ、戦闘に次ぐ戦闘の日々。つかの間の休息すらも敵にとっての準備期間であり常日頃から警戒の網を張り巡らせた。一番は初めて一方的に命を奪ったときの鉄の匂い。
一つ一つは小さくても積もり積もって俺のココロを蝕んでくる。
疲れてしまったのだ。平和のへの字もない殺伐とした世界に。弱肉強食という自然の摂理に。
ピシッ、ミシッ、ピキピキピキと次第に大きくなる予兆に耳を傾けて──
──そんな時、視界の端に白い布を捉えた。
布団のように平たく長方形の形をしているが、一つの短い方から膨らんだ半球がくっついている。詰まるところ羽織るタイプのフード付きローブのようなものだった。
そう言えばいつの日か『クロウサギ』という幸運を呼ぶウサギを10体ほど狩ってきたとき、家族が内四体を絶対に離すものかといわんばかりに噛みついていたため、あげたのを思い出した。
そんな動物の皮から作られたからか、幸運にも俺が暴れた被害が出ることなく、俺の裁縫を見よう見まねで作ったのか所々ほつれているものの十分使えるレベルのものだった。
そこまで考えて、気づいたときにはそれを瓦礫から守るために覆い被さるように体が動いていた。
壁が、天井が、砕けて崩れ落ちる。
「グ、グゥオォォォォォ!!!!」
いくつもの大岩が雨のように容赦なくその巨体に降り注ぐ。受ける衝撃は計り知れず、翼の皮膜を貫くほどの鋭さのものもあれば、ひたすらに重くのしかかるものもある。
その衝撃に何度も膝を折り、何度も諦め欠けたが、目にうつる純白のローブを汚すまいと必死に身をていした。
洞窟といってもそこまで深度が浅かったことも幸いしてか、落石自体はすぐに終わった。それでも俺にとっては永遠とも感じられるような時間ではあったのだが。
もう一度言うが
しかし敵が瀕死の重症である好機をヤツらが見逃すはずもなく、追撃として少し盛り上がっている場所へと次々に銃弾が撃ち込まれる。
「ッ────!!!」
体を貫かれる感覚に歯を食い縛りながらも竜はしぶとく生き残っていた。
その理由はただ単に
時に全てをひっくり返す“運”というもの。今回の、
一つ目は精神が壊れかけた際に、ローブが
もしもそれに少しでも傷がついていたとしたら、罪悪感からさらに自分を責めて【破壊者】の名に恥じない行動を起こしていたことだろう。
二つ目は次々と撃ち込まれた弾丸が
いくら瓦礫に弾かれまっすぐ飛ばないとしても、何発も撃ち込まれれば話は別だ。例え1%だとしても100回やれば一回は当たるのだ。それが正確な位置が分かってはいないとは言えど真ん中に入らなかったことを考えると本当に、“運”がよかったとしか言えない。
そして三つ目は──
世界が灰色に染まる。
投げられた弾丸は勢いをそのままに空中で静止し、振りかぶった拳は前に進まず、沈みかけの太陽は位置を変えない。止んだ攻撃に訝しげに首を動かす竜だけが時間が停止した世界で動いていた。
『大丈夫...そうじゃないね。生きてるかな?』
突然、頭の中にひびく声にうろたえるも冷静な部分によって声の主が何かしたのだろうと推測する。
──何より、その姿が星王竜の目に止まったことだろう。
『星王竜ヴェルダナーヴァ』
一番最初に生まれた竜種であり、その力は世界の時間を止めるほどのものから、数多の星を創造するまでに及んだ。故にその管理者として多忙な日々を過ごしていた。
だからこそ普通ならば目に止まるはずもなかった。
そう、普通ではないからこそ“運”。
『たまたま』仕事が早期に終わり、
『たまたま』世界の中の様子が気になり、
『たまたま』一番最初に選んだのが竜のいる星だった。
これのどれか一つでも起きなければやられるのも時間の問題だろう。つまり竜はおそらく数十年分の運を使いきったことだろう。
「....」
『.....あれ、聞こえてない?』
反応しなかったことに不安そうな声色をひびかせ、俺に問いかけてくる。
そこで俺が思ったことはただ一つ。
『あーあー、マイクテストマイクテスト。もしもーし聞ーこーえーてーるー?...え、まさかの無視?ちょっフェルドウェイ!これ本当に繋がってる?』
なんだコイツ?
シリアスをシリアスのまま終わらせるとでも思ったか?
ヴェルダナーヴァの口調がわからんぬ。
『クロウサギ』
黒兎という名の白兎。ややこしい。
集団で行動し『なきごえ』と『つぶらなひとみ』『いかく』によって攻撃力を下げることで自分の身を守る。これをされて10匹も倒したオリ主は人じゃない。
普通のウサギよりも二回りほど大きいが、その肉はパサパサしているため、捕まえる労力と見た目に反した食べられる部位の少なさから別名『
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20話 Q1 女主人公ものを読みたいし書きたい気持ちはあるが、書きやすいのは圧倒的に男主人公ものである筆者が次にする行動を30字以内で答えよ。
アンケートとってます。協力お願いします!
最初に入った票が『拙僧』で笑った。
拝啓、お父さんお母さん。元気ですか?俺は今───
「.............」
『...おーい?聞こえてたら返事してくれないかなぁ?もしもーし?』
とても気まずい空気のまま硬直しています。
ほどなくして声だけじゃなく姿も写った人(?)は俺に何度も話しかけてくれているが俺が停止したまま動かないせいでわたわたしてる。
あれだ。人に話しかける時に心の準備って必要じゃん?は?『自分は違う』?おぉじゃあ聞いてやる。ホームセンターとかで店員に話しかけるのに30分かけてないヤツだけ石を投げろ!
痛ッ、暴力反対!あっ...やめて石を投げないで!
本当に投げるヤツがいるかよ...まったく、親の顔が見てみたいぜ。『人の嫌がることはやらないようにしましょう』とか道徳の授業で習わなかったのか?ちなみに俺は『人が嫌がることは進んでやりましょう』って習った。
あと、こう考えているずっと呼び掛けて来てくれてるんだがさすがに俺のなけなしの良心が悲鳴あげまくってるのでちゃんと返事はしましょう。
「...アンタ誰?」
『ようやく反応したと思ったら第一声がそれかい?...まぁお兄ちゃんだからね!答えてあげよう。』
『僕の名前はヴェルダナーヴァ。数多の星をつくった今現在、君と合わせてたった二体しかいない竜種の一体。
星王竜ヴェルダナーヴァだ。気軽にナーヴァ兄と呼んでほしいな!』
「...ちょっと時間をくれ」
『いいよー』
そういうわけで時間をもらった。時間が止まってるから実質もらえてないらしいけどそんなもん知らん。今は情報を処理しないとパンクしそうだ。
「えーっと、俺が今話してる相手は俺と同じ竜種で?」
『うん』
「その俺を除いた唯一の竜種様は世界をつくった創造神てきな存在で?」
『うん』
「なおかつ俺の兄?」
『そうだよー』
「...頭痛くなってきた」
『大丈夫かい?』
お前のせいだわ!と声を大にして言いたかったが、軽薄そうな見た目とは裏腹に底の見えない魔素量を考えると、あながち『世界をつくった』というのは間違いなさそうなので口をつぐんでおく。
そもそも俺は生まれてからずっと一人っ子である。しかも、もし本当に創造神さまなら
まぁそんな下らない考えはそこら辺に不法投棄するとして。俺は一番気になっていたことを聞いてみる。
「で?その創造神さまは『ナーヴァ兄』...ナーヴァ兄さんは俺に何の用だ?」
『よくぞ聞いてくれました!』
創造神さま...めんどくせぇな、同じでいいか。ナーヴァ兄は少し、いや結構興奮した様子で身を乗り出して反応する。そんなに弟が欲しかったのか?
フッフッフともったいぶるように前置きをしたあとその目的を声高々に口にした。
『実は今日は──君を助けに来たのだ!』
「...いらねぇ」
『そうだろう、そうだろう。いま転移陣を...何だって?』
「だから『助けなんざいらねぇ』っていったんだよ。」
ヴェルダが想像していたものとは真逆のその言葉に思わず聞き返した。だが何度聞いてもそれは変わらず、竜の口からでるのは拒絶の言葉。
ポカーンと呆けているナーヴァ兄に俺は意思を伝えるために大きく息を吸い込む。
「いいか?これは俺に売られて、俺が買った喧嘩だ。第三者が口出すもんじゃねぇんだよ!」
『“喧嘩”っていうよりかは“殺しあい”って感じだけど?』
うるせぇな話そらすんじゃねぇよ。
「そもそもピンチじゃねぇし」
『いやそれはウソでしょ。』
ウソである。どこからどう見ても、100人中100人がピンチと答えるお手本のようなピンチな場面である。
家の崩落に巻き込まれ、無数の弾丸の雨に撃ち抜かれ、攻撃するには距離があり届かない。むしろこの状況をピンチや絶体絶命と言わずして何を言うのだろうか。武装した敵に囲まれていたとしてもここまで酷くないと思う。
「いーや、ピンチじゃなかったね!ここから全員なぎはらってぶち飛ばすつもりだったしなァ!」
『負けず嫌いがすごいね君!?誰が後ろから操ってるかも、その位置もわかってないのに!』
「そこはもう良い感じにダーって行ってバッと潰せばどんなヤツでも殺れる。
『いや君の場合はむしろその
「...いやピンチはチャンスとも言うし、」
『ピンチって認めてんじゃん。』
ヴェルダのせいろんパンチ!
りゅうは9999のダメージをうけた▼
数十年、孤独でコミュニケーション力が衰えていた竜ではヴェルダに勝てるはずもなく、さっきまで啖呵を切っていた人物とは別人かと思うほどうなだれていた。
「あーとにかくだ。この戦いには手を出して欲しくないってことだ。これが終わったらそっち行かせてもらうからよ。」
『うーん、でもなぁ...』
そこまで同じ竜種が嬉しかったのか、死地に送り込むような真似をしたくはないのだろう。すぐにうんとは頷かず、ちゃんと考えてはいる。だが俺もここは退けない。意地でも通らせてもらおう。
「頼むよ、兄さん。俺は──」
『!よっしゃいいよー!ただし、僕が危険だと思ったら無理やりでも割って入るからー!』
「へ?」
思った以上の呆気なさに思わず気の抜けた声を出している間にピチュンと音を立てて消えた。しばらく放心状態ではあったが、気持ちを整えるための時間が貰えていたのは幸いである。
時間が流れだしたのはそこから5分後のことだった。
第三者視点と主人公視点がぐるぐるしてるような気がする。
一応、主人公視点だと自分は『俺』、ヴェルダナーヴァは『ナーヴァ
第三者視点だと主は『竜』、ヴェルダナーヴァは『ヴェルダ』と言っているので分かりにくかったらごめんなさい。
あとタイトルに対する解答を感想に書かないで下さい。おそらく利用規約てきなものに引っ掛かるので。
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21話 待てッ!話せば分か──グブォ!?
いつの間にか評価バーが赤くなってる!?
ありがとうございます!がんばるぜ!
「さーて、どうすっかなぁ...」
マジで何も考えてなかった俺は途方に暮れたのでした。まる。
何も考えてはいなかったが、別に何もしていなかった訳じゃない。ナーヴァ兄のにじみ出る覇気をバレないように解析させてもらった。まぁバレてた上に許されてた感じがしたけどな!
それでゲットしたのが【竜霊覇気】。
もちろん自分で獲得したわけじゃないから劣化版ということにはなるが、それでもエグい。
何だよ『耐性を無視した一種の麻痺状態を相手全員に与える』って!耐性を無視するって言っても同じ“気”系統ので対抗できるらしいけど獲得してるヤツは本当に一握りだろうし。
ちなみにこのチートがあってもどうにもできない状況が今です。ハイ。
まず俺が対処しないといけないことを考えていこう。
①防御貫通弾の排除
最優先事項。これをどうにか出来ないと例え他のことに対処出来てもゲームオーバー。帰ってもらったヴェルダ兄が超高速Uターンしてくる。
②黒幕(多分ユニークモンスター)を倒す
超高難易度クエスト。無数にいるワケわからん奴らの中からピンポイントで見つけ出して潰さなければいけない。なお、姿も強さも未知数である。
③上にいる奴らの掃討
②を達成出来ればこれも解決すると思いたい。出来るだけ【
あ、言い忘れていたがこの世界にも“G”は存在する。しかもラスボス感溢れる黒い装甲に威圧感にじみ出る体つき。それでいてスピードはそのまま、かつ空も飛ぶ。
下手なユニークよりも強く、耐性は数知れず、何より増える増える。一匹いたら30匹どころか三桁は覚悟した方が良いレベルである。おっと足が勝手に震えてきた。あれ、おかしいな。別に寒いわけではないんだけどな?
とにかく先程あげた三つが俺の生きるか死ぬかの境界線である。
そういえば俺のステータスどんなものだったか忘れたな。ではさっそく、【
────────────────
成竜 種族:竜種
個体名:なし
固有スキル:【不老不滅】【竜の炉心】【竜の伊吹】
コモンスキル
【飛行翼】【思考加速】【気配遮断】【毒食み】【毒霧吐息】【竜鎧】【猛毒生成】【熱変動耐性】【瞬足】【危機察知】【狩猟本能】【鎧硬化】【豪腕】【状態異常無効】【痛覚緩和】【物理攻撃耐性】【精神攻撃耐性】【自然影響耐性】
エクストラスキル
【万能感知】【悪食】【飛鱗操作】【念話】【分身体作成】【並列思考】【肉体改造】【毒霧操作】【高速飛翔】【竜霊覇気(劣化)】
ユニークスキル
【
────────────────────
いや多いなッ!?俺すご!
むしろこれにダメージ与えられるアイツらってやばくね?俺本当に勝てる?あ、ちょっと不安になってきた。兄さん呼び戻しそう。
『呼んだかい?』
「呼んでない」
『そう...』
シュンとうなだれてから映像が消える。オイやめろよ。事実なのに罪悪感が凄いだろ...。俺からしたら呼んでもないのに来たから突っぱねるようにしちゃったんだけども。いやごめんて。
...ごほん。まず①から対処していこう。
接近して弾丸を消すのは論外。遠くからワンショットワンキル決められて終わり。だとすると遠距離から奴らを潰せるのがいいだろう。
スキルを見る限り...【毒霧吐息】【竜の伊吹】【飛鱗操作】──少なくね?もしかして遠距離戦弱者の糞雑魚ワロた人間の方ですか?
毒はなぁ...いや、強酸ガスならいけるか。どうにか弾丸を触れただけで溶かせるとか、そんな感じの。聞いたことも見たこともないけど【猛毒生成】を使えば新しい物質だとしても作れるかもしれない。
弾丸の効果が『防御貫通』だからといって全く影響を受けないわけじゃない。防御しないよりも威力は落ちるし、そらすことだって出来る。なら防御として放った毒霧の中をとおっても潰せるはずだ。
!──いいこと思いついたぜ!どうせ新しい気体を作るんならもう一つ追加しちまおう!
りゅうのわるだくみ!
とくこうがぐーんとあがった!▼*1
あとは②の黒幕の見つけ方だが...こんなこと出来るならおそらくユニークモンスターの可能性が高い。つーかそうじゃなかったらヤバすぎる。
もし、万が一にもユニークモンスターじゃなかった場合は、俺の【予見者】によって奴らと黒幕のつながりをみる。辿れるかは分からないが、全員が全員繋がっているだろうから一体だけに絞り込めるだろう。
③...は後で考えよう。たぶんそろそろ時間だ。
そういえば言ってみたかったことあったんだよね。
「そして時は動き出す...」
あ、ヤベッ手の中にあるこれどうしよ。待てっ話せば分か──
竜のセリフと同タイミングで時は流れはじめ、静止していた弾丸がまた降り注ぎはじめる。
イッタァ!?ちょ、落ち着けって!いまローブを【
しかし状況は変わってないというのに心の声は段違いであった。ヴェルダと会ってなければこの余裕はなかったことだろう。それだけ心に余裕が出来たということだろうか。
収納が終了するのと同時に動かない体はそのままに首を180度回転させつつ奴らのいる方向へと【猛毒生成】【毒霧吐息】【毒霧操作】の三コンボで強酸性の壁を作り出す。
作成途中ではあったが顔面に飛んできた弾丸はドロドロの液体となって溶けていったことを見れば作戦が成功したということは一目瞭然だ。
問題は瓦礫すらも溶かして液体になったことで竜が窒息死という想像の斜め上をいく死因になりそうである、ということか。さすがは我らがオリ主である。そこに痺れる憧れるゥ!
さらにはいままでありとあらゆる状況を味わってきたため、さほどパニックに陥ることはなく、次の行動に移すことが出来ていた。
放出していた毒霧で俺の下に回るように操作し、首を元の状態に戻しておく。瓦礫が溶けたおかげで、その対処に追われた奴らが攻撃を止めてくれたことは僥倖だった。
俺が作ったのは『強酸性の可燃性ガス』。つまりは火気厳禁の爆発を起こすヤベー代物。それを下側に回したことでこれからすることの予想はついただろう。
奴らに体勢を整えられる前に意を決して【竜の伊吹】を使う。
ところで思ったのだが、
(あれ、この爆発で空を飛ぶのってなんか──)
「デジャブだあぁぁぁぁァァァァ!!??」
着地は考えているのだろうか?
久々の用語解説
『G』
お馴染みのアイツ。この世界にも存在するがオリ主が汚物として熱殺菌した。キメラのあり得ないレベルで増殖する原因はコイツのせい。たのむから一生日陰にこもってろ。
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22話 闇と夢と邪と悪と
シリアスってどうやって書いてたっけ...?
どうも、空中散歩中の俺こと竜だ。
は?のんきか、とでも思ったか?全然のんきじゃないわ!むしろ後ろからおびただしい数のキメラに追われてッからなァ!これじゃ
なんでこのスピードについてこれんだよ!?地上からのほうが遮蔽物が多いから遅いはずだろうが!ついでに石を投げてくんな。翼に当たったらダメージなくてもぐらつくんだよ!
あと全然黒幕が見つからない。
いや位置はわかるんだよ。爆発で空を飛び、【超速再生】で貫かれた翼を復活、【高速飛翔】による上空からの【
もう一度言おう。
ここで22話のことをおさらいしよう。
①弾丸の処理
②黒幕の処理
③キメラの処理
ああそう。奴らってのがなんか違和感あったから新しい名前をつけるってことで『キメラ』ということになりました。
話がそれたな。①は猛毒ブレスでどうにかなった。次に取りかかるのは②。そのためには③をどうにかする、もしくは黒幕をキメラから引き剥がさないといけない。
取り巻きのキメラをすべて【
途中、幻術にもひっかかり、いつの間にか砂漠地帯へと誘われたことでさらに不利になった。
砂漠地帯の気候は敵よりも自分により過酷な環境を押し付けてくる。
不規則な風が空を飛ぶ俺をあおり、照りつける太陽が体力を奪い、乾燥した空気が水分を不足させる。敵の遮蔽物はなく、平らであるため攻撃しやすくなっていた。
いや実際マジで終わる。仕掛けるなら早くしないと何も出来なくなるし、砂漠地帯から移動したいところではあるけど絶対動かねぇしなぁ。
弾丸を避けるために敵陣を中心に旋回しつつ、この状況の打開策を考えては消していく。
そもそも俺が使える手段が、
毒→効かない
炎→燃えない
物理→無効
うん、無☆理!
あとは倒すのではなくぶっ飛ばす。【物理攻撃無効】は体に入るダメージを無効化するだけで、衝撃はしっかり入る。その衝撃で彼方の先まで飛ばすのだ。
よし、これでいこう。やることが決まれば次は準備。
空を飛ぶスピードを上げて、加速、加速、加速。
やるんなら少し吹き飛ばすだけじゃダメだ。戻るのに時間がかかるぐらい、それどころか二度と戻ってこれないほど遠くへ。
さらに加速するために【肉体改造】で流線形のフォルムへと。そしてそれは、一番最初の強敵であり、自ら打ち倒した親の形に近づいていた。
加速しながらも敵を見失わないように円を描きながら飛行する。
そのスピードは風をおこし、円の形になることで周囲から空気を取り込む。竜を狙った弾丸は後ろを通り、風にあおられその威力を落としていった。
全てを切り裂く風刃を纏う何もかも巻き込む風は、のちに生まれる暴風竜が同じ現象を起こし、竜が
今回めっちゃ短くなったな...
蛇がとぐろをまくのは、360度どこから攻撃がきても瞬時に反撃に移れるからだそうです。
以下、読まなくても支障はないです。
キメラの中には空を飛べるヤツもいるんじゃないの?と思うひともいるかもしれませんが、それはいません。
そもそも、キメラは体が頭、胴体、腕、尻尾に分けたものをバラバラにくっつけた生命体です。バラバラにくっつける関係上、翼を持っていた者は無くなり、持っていなかった者が持つようになります。
この結果、飛ぼうとしても翼がなくて飛べず、翼を持っていても飛ぼうとしないのです。できるできないではなく、出来るけどやろうとしない状態になるので空を飛ぶキメラは存在しないのです。
つまり空こそが一番の安全地帯だったという訳ですね。音速に近いスピードで飛んでくる弾丸さえなければ。
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23話 クロVSクモ
難産だった...
コミュニケーションできる人がいないとギャグにもシリアスにも移りにくい今日このごろ。早く原作に突入したいところではある。
なお作者はクモが嫌いです。どれぐらい嫌いかと言われると夏の蚊、もしくは飛び回るGくらい嫌い。
未だ続く竜巻に突如として終わりをもたらしたのはその中心にいた存在だった。
白い光による一閃。
ただそれだけで猛威を振るっていた竜巻は霧散し晴れる。
そこに広がっていたのは雲一つない大空と巨大なクレーター。それと白い放射状に広がる太い糸と中心に佇む、竜の10倍は大きな黒光りする蜘蛛であった。
その他にモンスターはおらず、目的の一つとついでにボスの全体像も見えたことは、手段が違うとはいえ良い結果であることだろう。少なくとも一匹一匹を突進で飛ばすよりも遥かに効率的であるのは間違いなかった。
しかし、蜘蛛を壁となる存在がいなくなった今でもすぐに攻撃に移ることは叶わなかった。
危機感知系の
だがその感覚とは裏腹に口角は上がっていく。
さまざまなことを戦いで学んできた。
死に対する恐怖、戦いでの高揚感、自身の状況への怒り、ただひたすらに逃げることしか出来ない無力感、制限時間と動かない敵に感じた焦燥感、確実に強くなっていくと感じた時の充足感、戦場でする油断の危うさ、たったの一手が戦場を変える不安定さ、そして──攻撃が通らなかった相手にダメージが入った時の快感。
最近は格上や同格の敵がいなくて穏やかだった。平和だった。なにより──退屈だった。
何だかんだ言っても本質が闘争の中に生きる
対する蜘蛛もゆっくり黄色い目を開く。
その目に浮かぶのは驚愕、憤怒、警戒そして...歓喜。
自分だけのための軍団があった。
どんなにも強いヤツでもそれ以上の耐性、質を取得して、どんなに大きな群れでもそれ以上の量を持ってしてあらゆる者を蹂躙してきた。
今回は確かに何匹か殺されたことに驚きはした。
だが、それだけだ。すぐに耐性を獲得し、追い詰め、油断させ、奇襲し、
詰みから起死回生の一手。
今まで逃げることしかせず、狩られる側であった黒き蛇の思わぬ反撃。
「キチチチチチ...」
「グルルルルル...」
蜘蛛は怒りながらも冷静に、竜は今まで以上の敵に警戒して唸り声をあげる。
最初に動いたのは竜。
まず狙うのは蜘蛛の足場。その巨体の何倍もの広さを誇る放射状に伸びる糸で出来た巣の性質を竜は見抜いていた。
(さっき俺が起こした竜巻、防御貫通の弾も巻き上げて結構な火力だったはずだし、何より刃状の風がとんでいったのにアイツの体には傷一つねぇ。確信したりするのは良くないと思うが、理由があるとしたら足場だ。)
図体にかかる力を8本の足を通してしなやかに曲がる糸で衝撃を吸収することでダメージの軽減。柔らかいゆえに壊しにくく、風の刃でつけられた傷は7割近く修復が終わっていて、それでも完全に復活してるわけではないのは僥倖といえるだろう。
「グルゥ...ガァ!」
鑑定する隙などなく、また与えられることもない。
その事を理解しつつ、蜘蛛の周りを旋回しながら口に溜めた【竜之息吹】の炎が球状となって放たれる。
しかし、その目論見は失敗に終わった。
エクストラスキル【魔力妨害】
それは己を中心とした球の形にジャミング効果を持たせるスキル。このスキルによって魔法のみならず遠距離系のスキルすらも霧散させる。
むしろそれを受けつつも防御を超えてダメージを与えられたオリ主が化け物なまである。そう言えるほどのスキルなのだ。もっとも、体を振るっただけで消えるほど小さいダメージなのだが。
攻撃がほぼ不発に終わり、たじろぐ竜に対し、その隙をコモンスキルである【鋼糸】で攻撃を放つ。
ただ糸を吐いているだけでは空中という地の利をとっている竜には届かないが、鞭のようにしならせることで攻撃の範囲を広げていた。
さらにそれは一発だけでなく連続で放たれ、かつ高速で迫る糸に、竜は補足されないために急制動を繰り返しその距離を詰めていく。
しかしそのまま接近を許すはずもなく、同時に【粘糸】を使い【鋼糸】を操りつつ空中にばらまくことで、【鋼糸】に切られた【粘糸】が辺りに霧散し、動きを阻害する罠を張り巡らせた。
「ガッ...ハ」
苦し紛れに放った炎球の影から飛んできた糸が骨まではいかなかったが腕を切り裂き、深い傷を作った。
炎球のおかげで多少動きやすくはなったものの【鋼糸】を瞬間で燃やすほどの火力にはならず、燃え尽きる前に切り離して竜を狙っていたのだ。
痛みにうめき、体勢を崩したがそれも一瞬。すぐに立て直し炎球によって出来た道に突進する勢いのまま蜘蛛へと一直線に駆けた。
たしかに燃えた糸を切り離した直後である──が距離が縮まるより先に糸が放たれる。
高速で移動するということは高速で向かってくることと同義である。格子状に放たれた糸は大きく素早く避けるか、防御せねばならず、失敗は『死』を意味する。
思考の空白を許さない攻撃に対し竜は───
ドンッ
──空中を蹴る音と共に
「キチッ!?」
蜘蛛は驚愕した。
なぜなら加速した結果、回避は間に合わなくなり、防御以外で生きる方法を失ったからである。回避か防御を迫られている時にさらに選択肢を狭めるなんて自殺行為である。
「グルゥゥゥアァァァァァ!!!」
直後、竜が咆哮を上げる。それは攻撃を耐えて見せるといった恐怖を絶ちきる決意の声か、はたまた──
いや、蜘蛛にはそんなことはどうでもいい。
理解できない行動には驚いたものの、防御した時の速度低下を補うために行ったものだと思えば辻褄は合う。
──ならば、その防御すら貫くほどの火力を叩き込めばいいだけだ。
油断などしない。傲りもない。ただ、徹底的に叩き潰す。
蜘蛛は目を竜から逸らさず膨大なエネルギーを口内に溜めていく。糸を防御し、その速度が遅くなった時に防御ごと竜を切り裂くために。
ついに糸が竜に当たる瞬間、
次に目を開いたときに見たのは白い糸のみで、竜の姿はどこにもなかった。
「キチチ?」
まばたきという一瞬の隙に消えた敵をブレスのせいで振れない首の代わりに目だけで探す。が、見つからない。
ならば一帯を凪払おうとブレスを解放しようとしたとき、小さな豆粒のようなモノを見つけた。
気にせずブレスを吐こうとする次の瞬間、その豆粒から竜の腕が飛び出した。複眼でしっかりと捉えれば竜の時よりも小さいが、同じような翼も存在した。
ゾウがアリを見ても何も思わないように小さなものは見落としてしまいがちである。
「ギッ!?」
「しっかり食らえや...クソ蜘蛛野郎ォ!」
流星のごとき拳がその蜘蛛の額を捉え、
その巨体を地面に沈めさせた。
蜘蛛さん驚きすぎじゃね?と思ったそこのあなた。
そりゃそうだ。だって初戦闘何だもん。敵が何をしてくるか予想しつつ何が起きても平常心を保つ訓練とか練習とかしてるわけないでしょうよ。
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24話 戦いのなかでの覚醒は主人公なのだから第二形態を残している魔王も実質主人公。(過言)
作者の身勝手で一度消して再投稿しました。すみません。
理由は終わり方が気に入らなかったからです。といっても最後のシーンに少し追加しただけなので一度読んだ人も途中までは飛ばして読んでいただければ幸いです。
背後でしたバボン!という密閉空間で爆発した音のようなものを聞き成功を確信する。打撃は蜘蛛の糸に吸収されろくなダメージは入らないが、目的はブレスによる内部破壊だから問題ない。
ようやく一発。
そう思いつつ、殴った反動を利用して再び空へと向かう。
蜘蛛は口を閉じられたことでブレスが逆流して体内が傷だらけのはずだ。俺がするのは徹底したヒット&アウェイ。どんな手札があるか分からないのだからカードを切らせなければいい。
そうして翼をはためかせ、加速しようとした時に──ガクン、と急に引っ張られたように体に負荷がかかった。
後ろを振り返れば右足に白く粘着質で、太い蜘蛛の糸が絡まっていた。
糸の先にはもちろんあの蜘蛛。さらにその口にはすでに阻止したと思っていた竜巻を霧散させた原因であるブレスのエネルギー。
たしかに竜の目論見通り、ブレスは体内を逆流し、蜘蛛に大ダメージを与えていた。
しかし、蜘蛛は殴られる直前に口を起点として集まっているエネルギーにある指向性を与えた。
その結果、本来なら頭で暴発しそのまま地に沈んでいた威力を体全体に分散させ、頭へのダメージを軽減することですぐに立ち直ることを可能としていた。
その後は復帰したところで尻からだした糸を操り、右足に巻きつけて拘束。再度ブレスを溜めたのである。
といってもブレスは溜めている最中であったため竜巻を霧散させたほどの威力はないのだが...それも気休め程度にしかならないだろう。
(まずい、どうする、避ける?防御?何ができる、離れなければ、糸を切らないと、あと何秒残っている、動けない、耐えられない、無理だ、何か手は、死にたくない、死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない─────死にたくない!)
ブレスが迫る。それにどうすることも出来ず竜は飲み込まれ...
「グウゥゥ...!」
──なかった。
当たる直前、右足を切り落としたのだ。そのおかげで迫る『死』を回避することに成功していた。
しかしこの事に驚いたのは蜘蛛だけでなく、竜もまた痛みに耐えながらも驚いていた。理由は蜘蛛のブレスを避けられると思っていなかったからだ。
(どういうことだ?敵のスキル?いや、それならヤツが驚いてるのが分からないし、何よりそうするメリットもない。俺が足を切り落としてなかったら確実に死んでた。)
ブレスが放たれる直前、竜は想定以上に入らなかった攻撃とブレスの威力を知っていたが故の焦りで確実に冷静ではなかった。
にも関わらず、足を切り落とすことで迫る“死”を回避するというあの状況において最善とまではいかなくても良い判断と言える行動ができていた。
(俺を生かすように動くなんて...待て、一つだけあった。)
『生』と『死』という明確な始まりと終わりの始まりを象徴するユニークスキル【
いままでずっとエクストラスキルの【超速再生】ぐらいの感覚でしか使ってこなかったが...ユニークとエクストラには隔絶した差がある。他になにか能力が付属していたとしても不思議ではない。
そう、たとえば己の意思と関係なく
(いや、考えるのは一旦中止にしよう。体が無理矢理にでも避けようとする。それだけ覚えておけばいい。)
そうして思考を中断する。目の前にいるのは自分を殺しうる敵。そのために使えるものなら使わねば食卓に乗るのは自分の方だ。そう考え、敵の観察に戻る。
先ほどは牽制で放たれた蜘蛛糸を人化して間を通ることで不意を突けたが、次からは警戒して二度も同じ手は通じないだろう。
そして体内破壊を狙った攻撃もダメージは小さい。
ならばまずは足場を崩す。
思考を再起動させた蜘蛛が不意打ちに警戒しつつもう一度動きを封じるために『粘糸』を切り刻み、空中に浮遊させる。
さらに次こそはとブレスで確実に仕留めるため、自分と繋げたままの糸で竜を捕らえるために空中に伸ばしていく。
それを竜はあえて大袈裟に動き、作られた風を使って吹き飛ばす。加速するために空気抵抗を減らそうとしていた動きでは出来なかった対策だ。
さらに水中毒からの連想で【猛毒生成】を使うことで水球を生み出し、飛び回りながら顔面に向かって打ち出していく。
蜘蛛を守る【魔力妨害】の壁は魔力を使う過程を妨害するものであり、結果を妨害は出来ない。
燃えている最中の炎を減衰できても、すでに作られた水は減衰できないのだ。
とはいえダメージを与えるほどの勢いは出ず、ただ蜘蛛の苛立ちを加速させるだけである。
水ゆえに糸で切り裂くことはかなわず、ブレスで蹴散らすにも以前のことが頭にちらつく。
「ギッ...ヂヂヂヂヂヂ!!!」
しびれを切らした蜘蛛が怒りの声を上げる。
その意識を竜から反らした一瞬を見逃さず、高速で飛行し───
「ギィッ──グガッ!?」
その横から凄まじい速度で飛んできた岩に衝突した。
何が起きたか分からず、しかし理解する隙を蜘蛛が与えるはずもなく追撃に四方から岩が次々と飛び出し竜の体を捕らえた。
この岩は蜘蛛のスキルである【統一者】の能力、『結合』によって作られたもの。
つまり蜘蛛が放った糸は捕らえるためのものではなかった。糸を警戒させることでその後の行動から目をそらさせ、竜が攻撃にうつった瞬間に糸の先端に砂の結合で作った岩で封じ込めたのだ。
「まさかッ──!」
竜がようやく理解し、蜘蛛がブレスを溜めていることに気づくもすでに遅い。
もがけばもがくほど岩が崩れ、砂が入り込むことでさらに動きを阻害する。
その間に時間切れとなり、
──一筋の光が放たれた。
「ここまでうまく行くとは思ってなかったぜ。」
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25話 決着
ここで蜘蛛との戦闘は決着です。次の次の話から新章いくかも?
「いやー気になってたんだよ。」
岩に押し潰され、身動きが取れない。
差し迫るのは十分に溜められたブレス。その威力は竜巻を消し去り、片足も本の少しの抵抗すら許さず蒸発させるという結果ですでに示されている。
遠距離を持っていたとしても当たらないほどの距離まで離され、もはや取れる手立てはない。しかし、声だけはしっかりと蜘蛛の耳に聴こえていた。
どこの誰から見ても絶体絶命、にも関わらずその状況にある竜はうっすら笑う。
ついに放たれた必殺の光はまっすぐ飛び、竜を消し去る
ぐにゃり
そのような音が聞こえてくるほどに、蜘蛛から放たれた光が何かを焼く音といっしょに折れ曲がる。まるで光が自ら方向転換し、竜を焼くことを拒んだかのように曲がり、竜の左上を通りすぎた。
「キシッ─!?」
蜘蛛はそのまま遥か遠くへと伸びて星になった光を唖然と見送りそうになるが、すぐに我に返り、視線を竜へと戻す。
「あれだけ強いキメラが竜巻に巻き込まれた後、帰ってくる様子が一つもないこととか。...いや、一番気になったのはあれだな。」
未だ囚われた身で喋り続ける竜が何をしたのか蜘蛛には見当も付かないが、ブレスを曲げたのが何かのスキルならば最初から使っているはず。何かしらの制限があるだろう、という結論に至った。
続けて一発目よりも細いがチャージ時間を大幅に削減し、速度に優れたブレスにして二発目を放つ。しかし、これもまた曲げられ当たらなかった。
「竜巻が取り払われた後、俺がお前と相対したとき、始めに打った小手調べのあれ。」
『
不自然によく響く声を取り払うように、頭に浮かんだ自分の弱点に気づいている可能性を考え、左右に振って消し去る。
ぽつぽつと降り始めた雨をうっとうしく感じながらも今度こそ確実に仕留め、再度曲げられることを防ぐため即座に三発目のチャージへと入る。
──違和感。
その正体は分からず、竜の声に不安を煽られているだけだ、と無理やり納得してチャージを再開する。
「俺の【竜の息吹】──ダメージなんてないはずだよなぁ...
『
怒りで震えそうになるのをすでに強くなった雨が蜘蛛の体を打ち付けていたことで少しだけ冷静に戻す。
───違和感。
そうだ、やはりおかしい。なぜ──なぜ
空には黒い雲が太陽を覆い隠し、今までの熱射がウソだったかのように少し肌寒い風が吹く。
冷静になったことで正常な思考を取り戻した蜘蛛が考えを巡らせた。
まずい!雨が岩に染み込めば結合が切れて竜が解放されてしまう!まずはこの雲を払わねば!
竜から目を離し、溜め込んでいたブレスを雲に向かって打つために解放しようとする。
この時、蜘蛛は焦っていた。冷静に戻ったとしても変わりがないほどに。
全てを貫き破壊すると短い間でもその威力を信頼していたブレスが絶体避けられない状況で二度も外された。
竜の不敵な笑みと声も焦りを助長させるものだったのだろう。
追い詰めているのは蜘蛛のはずなのに逆に追い詰められているような焦燥感。そのせいで普通の砂岩ならともかく、スキルで結合された砂の間に水が入るわけもないのに可能性を考えてしまった。
ついには目も離した。戦闘において敵から目を離すというのは一番やってはいけない行為だというのに。
「助かったぜ。これでまだ冷静に行動してたんなら俺が死んでた。」
いつの間にか懐に潜り込んでいた竜が竜人形態の姿で蜘蛛の顎にむかってアッパーを放つ。
前回とは違い、打ち上げるように来た打撃は的確に脳を揺さぶり、最初の不意打ちのようにブレスに指向性を持たせる暇もない。
ドグオォォォォン
今度こそ確実に入った攻撃。さらに衝撃で意識が飛び、体重を支えきれなくなった体が沈む瞬間に二発目を腹に入れる。
「もう手は緩めねぇよ。ところで『酸性雨』って知ってるか?いま降ってるこれはその何倍もの強酸で出来ててよ。【毒霧操作】!」
空中の雲が竜のスキルによって蜘蛛の頭上で渦巻く。そしておもむろに上に掲げた右腕を勢いよく振り下ろした。
「【
──瞬間、いままで降っていた量とは比べ物にならないほどの雨が滝のような水流となって飛んでいる竜以外の全てを溶かし、洗い流す。
『ギォガァァァォァ!?』
当然、蜘蛛も逃れることどころか抵抗すら敵わず水流に飲み込まれ、次に顔を出したときにはボロボロの体であった。
『■■■■■■■───!!!!!』
それでも、生きている。毒の滝が溶かしたのはあくまでも表面だけであり、完全に倒しきるには同じ質量の攻撃をもう一度繰り出さなければならない。
しかし先ほどの毒の滝をもう一度出すほどの水は黒雲には残ってはいなかった。そもそも、この雨は蜘蛛に打ち出した水が蒸発して出来たものであり現状すぐに蒸発させるほどの力はない。
それを知ってか知らずか。激昂した蜘蛛は一直線に竜へと向かう。
その様子を見ても竜の表情は変わらず、正面から蜘蛛と向き合い、
「おわりだ」
直後、蜘蛛に狙ったかのように巨大な雷が墜ち──
『ギ...シシ......シ..............』
──その巨体を地に沈めた。
蜘蛛くんのプロフィール
『レーヴシュバリエ』
巨大な蜘蛛の怪物。オリ主が殺したまま放置されたモンスターたちの魔素から生まれた。
生まれたのはたった一匹にもかかわらず、【
【統一者】の所持者には効果がないものの『スキルの共有』という規格外の能力を操られる者に付与するため取り込んだ相手によっては星すらも壊しえる存在になっていた。
現在、【統一者】は星王竜ヴェルダナーヴァによって大幅に改変され【
強さ的にはカリュプディスにユニークスキルを与えて防御力を強化して【超速再生】を失わせた感じ。
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26話 A.これが答えだ
誤字報告ありがとうございます!
あと性転換要素を入れました。はい。完全に作者の趣味ですです。嫌な人はすみません。薄いか濃いかで言われたら薄くなる予定。
タグは随時追加していくのでよろしくお願いします。
「んあ?」
朝の日差しで意識がもどる。
ゆっくりと目を開けると透き通った水色の大空がどこまでも広がっていた。背中にあるのは砂ではなく草の感覚であるため誰かに移動させられたのだろう。
──つっても寝てる間に死んでないってことは一人しか居ねぇか...オイ、俺の頭のなかでダブルピース決めるな。
軽薄そうな笑みを浮かべた義兄の顔が映り、うざったいので別のことに思考を回す。蜘蛛を倒したところまでは覚えてるが...その後の記憶はない。いつの間にか寝てたみたいだ。
でもまぁ、とりあえず...
「知らない天井だ...」
「天井というか広がってるの空だけどね」
「どぅわぁぁぁぁ!?」
誰もいないと思ってつぶやいたセリフに返ってきた言葉に驚きその場から飛び退いた。なお、驚かせた本人(本竜?)はあまりの反応にゲラゲラと腹を抱えて笑っている模様。
くっそ、なんで真横に居るんだよ!何がしたいのか全く分からねぇわ!
「くくく...いやぁ目覚めるまで待ったかいがあったねぇ。まさかあそこまで驚かれるとは思ってなかったけど........ブフッ」
「いつまで笑ってんだテメェはよ!」
そう言いつつ殴りかかるも軽い足取りで攻撃を避け、その後でごめんごめんと謝っていた。もちろんそれも肩を震わせながらであり、反省の色は見えない。
「いやーこれでも頑張ったんだよ?なんか繋がりにくくなった世界に無理矢理パス通して魔素切れ起こした君をここにつれてきたりさ」
「そこら辺は感謝してるがそれ以上にヤベーやつだとは思ってる。」
「...そうそう名前ないでしょ?だから僕がつけてあげよう」
「今の流れから急展開すぎない?つーかいいよ、自分で決めるから。」
「というわけで今日から君の名前はヴェルディクスだ!」
「話聞けや、ァ゙?!」
問答無用で名前を決めやがった義兄に再び殴りかかろうとした瞬間、大量の自分のものではない魔素が流れ込んできた。
その魔素が兄のものであることに気づくのにそう時間はかからず、兄もいつになく真剣な顔で驚いている様子を見るに事実であることがわかる。
「へい!調子はどうだい?って聞かなくてもわかるね」
「ま、じで、ホントに、ふざけ、んな...」
「わーお、思ったより重症。こりゃそうとう相性がわるいんだろうね...」
でも、その顔は一瞬だけですぐにへらへらしたヤツに戻った。うわ、うぜぇ...殴りたい、がそれどころじゃない。聞かなくても分かるんなら聞くなよ、うぷ...キモチワルイ...。
小声で何か言ってるような気がして、それについて問い詰めようとしたけど想像以上の酔いにしばらくの間吐き続けるのだった。
****
「で、なんか弁解はあるか?」
「反省も後悔もない!」(キリッ
「ふんぬ!」
「ぐはぁっ!」
「当たったような声だして避けんな!」
「いや、当たったら痛いでしょ...?」
「これ俺が悪いのか!?」
さも避けるのは当然かのように言ってくるがコイツに殴りかかるのはそれこそ当然だとようなことをしたと思うのは俺だけか?
なんとか吐き気から復活した俺は圧をかけて兄を正座させ、説教をしていた。まぁ、すべてのらりくらりとかわし、ああ言えばこう言う状態となっているが。
正座してるんだから足を狙えば当たるんじゃないの?とお思いの皆さん。うちの兄をなめてもらっちゃ困る。このお兄さんはね、正座しながら平行移動できるんだ。
ほら、いまだって宙に浮かびながら超高速回転してる。うん、なめてるよね。やって良いかな、解体するよ?
「で、そろそろ説明してくんね?名付けって何。」
その質問をすると回転していた体が俺と向き合うかたちで急停止し、真剣な目で俺を見てきた。
妙に緊迫した空気がただよう。
「...き.......」
「き?」
「ぎも゙ぢわ゙る゙い゙オロロロロロ」
「吐きやがったぁぁァァァァ!?」
真剣な顔してたとおもってたらゲロ我慢してたのかよ!そりゃあれだけぐるぐるしてたら酔うよな!この話今のところ8割吐き気とゲロの話しかしてないけどいいのか!?
─
「──で、名付けについてだっけ?」
落ち着いてからしばらくして話を戻した。
「そう。結局のところお前の魔素が俺に流れ込んできたのは俺に名前をつけたときだったろ?それで何が起こったのか、せめて事後報告でも聞きたい。」
「えー、そうは言っても君にはデメリットはないよ?」
「俺にはってことは付けた側にはあるんだろ。」
「うん。でも高々渡した分の魔素が回復しなくなるだけだよ?」
「大問題じゃねぇか」
幼体のとき魔素が少ない状況で生きていたから分かる。魔素量ってのは=強さだ。魔素量が多い、それだけで警戒に値する。もちろん魔素量だけで決まるわけではないが決め手の一つにはなるということだ。
それが回復しなくなるということ。それはつまり事実上の弱体化を示している。まあ隠してないにもかかわらず俺にも読みきれないほどの魔素量をもつコイツなら些事なのかも知れんが。
「ん?そういえば兄よ。名付けについて知ってたんなら何で魔素が渡ったとき驚いてたんだ?」
「あー...あれ、思った以上に魔素取られてビックリしただけだよ。」
竜種への名付けは初めてだったからねぇ。と後に残し、それにしてはやけに真剣だったな、とは思うも深く考えずに家を紹介するといったナーヴァについていくのだった。
「...で、いつまで竜人形態でいるつもりなのさ。」
「へ?おお」
兄の指摘に自分の体を見ると確かにいつもの体よりも一回りほど大きいうろこをもつ肉体になっていた。たぶん肉体改造で省エネな人型に変えようとして途中で力尽きたんだろう。
でもなぁ...
「なぁ、兄よ...」
「なんだい?あぁ、【人化】のスキルがないとか?それなら【肉体改造】でも多分いけるさ。実際出来てたしね。」
「いや、まず
「....は?」
俺の言葉に兄は豆鉄砲をくらったようにぽかんとした顔で俺を見る。しかし割と真面目に人間ってのがわからない。
いや、正確にいえば人間自体はわかる...わかるのだが、俺がその人間の状態だった記憶がない。蜘蛛と戦ったときも出来るだけ小さくなりはしたがあれは竜人形態であり人間ではない。
でもまぁ、原因ははっきりしている。
【
まぁそんなわけで【人化】もないし、俺が人間になるイメージもないから無理だわ。ガハハ
「いやー困るなぁ...天星宮も広いとはいえ不便になるだろうし...。なんか代わりになりそうなスキルとかない?」
「代わりになるものねぇ。」
「別に何でも大丈夫だよ。君が『これを使えば人になれる!』っていうイメージが大切だから。いつだって力を与えるのは信じる力だからね!」
「なるほど...」
うんうん唸りながら頭の中のリストからいけそうなものをいくつかピックアップする。あ、これいけそう。
選んだのはスキルに含まれる能力『反転』。これならばきっと『竜のオレ』から『人間のオレ』にしてくれるだろう。
思い立ったが吉日、善は急げ。すぐに自分自身に能力を発動し、ボフンと煙に包まれる。
「かんせー...?」
思っていたよりも高い声、一気に下がった目線、色味の薄いなめらかな肌、銀色にひかる長い髪。なによりも平坦な体に少しだけ膨らんだ胸部。
「いや...ディクス、君って男じゃなかったっけ?」
──そう兄の言葉からも分かるように幼女になっていた。
「...なにこれ」
思わずつぶやいたその問いへの答えはなかった。
更新止まっててすんません。プロット見直したらちょっと不自然だなって思って修正したらオリ主がTSすることになってました。
名付けによって進化したオリ主、もといディクス君のスキルは後ほど。
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27話 切腹って痛そう(小並感)
できたてホヤホヤのホヤです。
久々のグロ描写。残念ながらまだ最強ではないオリ主じゃ勝てないよ。そしてこれは果たして死ネタになるのだろうか?
あといまいち天使たちの口調とか分からないんで感覚で書いてます。あとで直すかも。
前回のあらすじ!
俺は転生オリ主、ヴェルディクス。
怪しげな兄を名乗る人物についていき、巧みな話術でそそのかされた俺が気がついたときには───なんと幼女になっていた!
「...なんで?」
「いや僕に言われてもわからないけど。」
玄関前であることも忘れ2人で唸りながら原因を考えていく。
まず俺が使ったのは『反転』。【
【
主な能力としては3つ。
過去に起こった出来事を自在に変える『過去改変』。
現在においてあり得ない事象を作り出す『事実曲解』。
そして、今回の騒動の原因となった『反転』。
『反転』に関してはそのままで付与した物を真逆の物に変えるのだ。今やったのは自分自身に『反転』を付与する事。
「...何」
そこまで話を聞いたナーヴァ兄は呆れたような顔をしながらため息を吐いて話し始める。
「あのねぇ...それだけ聞いてもわかるけど、多分そのスキルの本質はあり得ないことを起こしたり、もしくは有ったことを無かったことにすることなんだよね。」
「でもって『反転』って効果だけは他の2つと比べて本質から離れてるってこと。」
「...だから?」
「言ってしまえば、応用編ってこと。...アルティメットスキル覚えたてかつ初使用が応用で基礎もできてないのに上手くいくわけがないでしょ。」
なるほど、そりゃあスキルも暴走していろんな所反転するだろうよ。今わかってるのは少なくとも種族、性別、身体年齢か。あとは口調もか?しゃべりづらいしありそう。
「ん...理解」
「じゃ、とりあえず中に入ろう。今下手に戻そうとしたら何が起こるかわからないし。ただいまー!」
ナーヴァ兄が扉を開くとそこには──誰もいなかった。
?...おかしいな。道中兄に聞かされた話では七人の部下たちが働いていて
隣の兄へ視線を向けるとその兄も首を捻っている。
「あー!ナーヴァ様やっと帰ってきたー!」
静かな屋内で明るい声が響く。声の方には白い翼を背中から生やしたツインテールの女の子、がめっちゃやべー速度で走ってくる。
「あっピコ!皆は──「そんなこといってる場合じゃないよ!3日分の仕事がたまってるんだから!」グェッ」
そしてそのままナーヴァ兄を連れていったとさ。いや俺に知らない場所でどうしろと言うのか。あれか今すぐ泣いてやろうか。今のこの幼女ボディーなら簡単だぞ?
...割とガチで何すれば良いかわからん。こんな時はぐー●る先生に頼ろう。
(えーっと、兄が連れ去られ知らないとこで一人にされました。私はどうすべきでしょうか。)
『解、今すぐその場所から離れることを推奨します。』
「ギャー!!!!!」
誰もいないはずの空間で声が響く。というわけでもなく、叫んでから声は頭の中でしているだけであることに気づいた。ということは自分の何らかのスキルということで
(あなたは何ていうスキル?)
『解、当スキル名は【
(『
『解、それは──』
「ピコ!ヴェルダナーヴァ様がご帰還なされたとは本当か!」
バンッと扉が壊れんばかりの開き方をして出てきたのはツンツン頭の青年。さっきのピコ?という少女を追ってきたらしい。あ、いま目があった。
「おい、そこの人間。貴様はなぜここにいる。」
(やべ、多分これ侵入者を見る目だ。軽く威圧してるもん。っていうことはちゃんとナーヴァ兄に連れてこられたって言わないと攻撃されるじゃん。)
「...........」
「答えられない、か。ならば死あるのみ。」
(ちょ...ちょっと待って!?何で動いてくれないんですかねマイボディー?敵対認定されちゃったよどうすんだよ。)
『告、個体名ヴェルディクスの体は『反転』により種族、性別、年齢、体質、性格などに効果が見られます。』
(つまり?)
『“普通に会話できる”から“寡黙”へと『反転』しています。さらに顔も“無表情”になっています。』
(Oh...そりゃ動かんわけだ)
「安心しろ、血が出る暇もなく一思いに殺ってやる。天星宮を汚されるわけにはいかないのでな。」
安心できる要素が一つもない宣告を聞きながら青年の動きに注意を払う。
最悪、ナーヴァ兄か話がわかる人が騒ぎを聞きつけてここにくるまでの時間稼ぎが出来ればいい。
青年がおそらくスキルで剣を召喚する。スキルで召喚する剣は魔素を使う量が他よりも段違いに多い。そのぶん切れ味は込めた魔素の分だけあがる。
まぁ、あの剣程度なら俺の鱗は傷が付く程度で深いものにはならないだろう。勝ったなガハハ
『告、個体名ヴェルディクスは『反転』によって種族または体質が変化したため一部スキルが使用不可となっています。』
ハ?
『主な使用不能のスキルは【竜の炉心】【竜鎧】【鎧硬化】【飛鱗操作】【飛行翼】【高速飛翔】です』
...ハ?
『故に逃げることを推奨します。』
ハハ、闘争じゃなくて逃走すべきだったってか!こりゃ一本とられたわ!ハハハハハハ
って言ってる場合かぁ?!
防御系スキルが軒並み使えないとわかった瞬間、【瞬足】でナーヴァ兄のもとへ
「遅い」
駆け出した体が
それが俺の体だということに気づくのにあまり時間はかからなくて
(うそだ、うそだ、うそだ、うそだ、うそだ、うそだ、うそだ、うそだ、うそだ、うそだ、うそだウソだ嘘だうそだウソだ嘘だうそだウソだ嘘だうそだウソだ嘘だうそだウソだうそウソ嘘嘘───)
「冥土の土産にでも覚えておけ。私の名はフェルドウェイ。ヴェルダナーヴァ様より天使長の立場を預かるものだ。」
(───俺が死ぬなんてこんな現実、ウソに決まっている)
瞬間、走馬灯のようにさっきの場面が自分とは違う目線で頭に流れる。
俺が足に力をこめる。
フェルドウェイと名乗った青年が力をこめる。
俺が加速するよりも早くフェルドウェイが加速する。
首を斬られる。
俺が加速する。
ばちばち、ジジジ。ノイズが走った。
俺が足に力をこめる。
フェルドウェイと名乗った青年が力をこめる。
俺が加速するよりも早くフェルドウェイが加速するをしようとして足が滑り、加速できなかった。
首を斬られる。
俺が加速する。
目を開いて後ろを見るとフェルドウェイが驚きの表情で固まっていた。しかしそれも一瞬で、舌打ちをしながらもすぐに体制を立て直す。
今度こそフェルドウェイも加速する。さらに使っているスキルの違いか速度も俺より速く、このまままっすぐ進めばすぐに追い付かれることになるだろう。
『告、解析の結果同スキルに違いない事が判明。おそらく単純な筋肉量であると推測されます。』
(筋肉なら俺もあるんだけどねぇ!)
『解、『反転』の影響です。』
(ちくしょう納得出来るのが腹立つ!!)
【瞬足】を解除しないまま、新しく【瞬足】を発動し保持する。【瞬足】は溜めのあとに加速するスキルだ。そして走っている時にためることも可能だ。
縮まりかけていた距離を2つ目の【瞬足】でもう一度突き放す。足に痛みがあったが気にせず走り続ける。
後ろから飛んできた斬撃に体が分断される。
何もないところでつまづいてその頭上を斬撃が通過した。
痛む腹を押さえながら前転の後に立ち上がって3つ目の【瞬足】で再加速。スピードは落ちたが最小限にとどめれたはずだ。
そしてさっきから起こってるこの自分が斬られたあとにノイズが走り、斬られなかった場面に変わるのはきっと【
ほら今も左に体勢を崩したところに斬撃が右側を通りすぎる。
ただ痛みだけはどうにもならないようで、前の場面で斬られた部分がじくじくと痛む。【痛覚緩和】で緩和できている気がしないから【痛覚無効】だったとしても効果はないだろう。
まあ、とりあえず【虚飾之王】で何とかはなっているがどれだけ魔素を使うのか分からない以上、防戦一方の状況は出来るだけ早くどうにかしなければいけない。
『告、残りの魔素量は全体の約八割です。』
(おもったより消費が少ないな...少なくとも半分は持ってかれてるかとおもってた。)
『解、個体名ヴェルディクスはヴェルダナーヴァの名付けにより魔素量が約十倍に上昇しています。』
(じゅっ!?なるほどねぇ、十分消費エグかったわ。前だったらすでに2回は魔素切れ起こしてるってことだぅわッ!?)
溜めていた【瞬足】が暴発し体が浮き上がり、そのすぐ下を斬撃が通りすぎる。
しかし直近の死は回避できるとはいえその後のことは保証されないのか、今の暴発によって足を怪我し、逃げる速度がすこしだけ落ちる。
すこしだけでも十分だったようで、フェルドウェイが離れていた距離をじわじわと詰まり始める。
(ヤバイヤバイヤバイ!このまま捕まったら死ぬまで殺される未来しかみえん!なんかこの窮地を脱する方法は──思い浮かばなかったので【真眼之王】にお願いしたいとおもいます。)
『...解、現状を回避するため近くの扉へ駆け込むことを推奨。その際スキルの使用により回避可能と判断。実行しますか?』
(何でもいいから早く!)
『了、実行します。』
【真眼之王】のいう通りに近くの扉を開き、俺の口がスキルの補助によって正確に言葉をつむぐ。
「『起きなさい【
切腹()
用語解説のこーなー
【
前回の元凶。ディクスちゃんは私が育てました。8番目の大罪系スキルであり、無いものを有るものに変える力を持つ。
能力は『過去改編』『事実曲解』『自己改竄』『反転』『真偽解明』『武器召喚(偽)』。
なお、ディクスちゃんは『武器召喚(偽)』を忘れていたため使いませんでした。
【
無事大賢者ポジにおさまったチートスキル。視野と解析に特化した感じ。
能力は『思考加速』『並列演算』『詠唱破棄』『千里眼』『完全看破』『森羅万象』etc...
【
【
めんどうなのでまたあとで
【
解析失敗。再度実行します。解析sssssこき、絵湯と、すたてらけほ、)
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28話 ありえざる世界
メリークリスマス。三田さんからプレゼントで抗体と副反応もらうからしばらく空くぜ。
結構短め。
スキルを発動して扉を開けた先は暗闇でした。
「え」
勢いよく飛び出したせいか急には止まれず、一歩踏み出し──足は空を切った。どうやら床は暗闇で見えないんじゃなくそもそも無かったらしい。
「え...」
とっさに戻ろうと空中で身をひねれば扉が勝手に閉まっていく。それを阻もうと手を伸ばすも、届かず扉から漏れでる光がゼロになる。
「えぇぇぇぇぇ.....」
これが『えの三段活用』たぶんフリー素材だからつかって良いよ。なんて考えることができるほど余裕がある。
何て言うんだろう。実家のような安心感ってヤツ?この何も見えない状況っていうかこの世界がかな。
(ところでこれっていつまで落ちてればいいの?これだけ落ちても底につかないんだけど。そろそろ底に到達してくれないと着いたときに染みになっちゃうー。)
『解、底は存在しないため、足場は作る以外にありません。』
(底がない...どういうことだ?体感速度的にはスピードが上がってないから深海とかに近いどこかだと思ってたんだけど。その割には水圧とかもないし。じゃあここはどこだよって話だな。)
『解、スキル名【
(ちょっとまって?
『...解、スキル名【
(ほへーすご。じゃあ兄さんが気づくのを待てば良いわけだ。)
『告、外部からの救援を期待するのは推奨できません。』
(は?)
『虚数空間の性質、無いもののみ有る特性上、時間の流れや空間などが失われています。さらにこれらは深度が大きくなるほどに現実世界歪みが大きくなります。』
(ヤバイじゃん。その深度?を押さえるには...)
『解、【境界之竜】による足場を作ることを提案。実行しますか?YES/NO』
(あ、はい)
半ば反射的に
落ちたっていう感覚はあったし、深度が大きいほど現実世界との歪みがでるってことは上にあがれば元の世界に戻れるのかな?
取りあえず目の前に階段状のものを作り出し駆け上がろうと一歩踏み出すがその足は空を切り、床から落ちそうになるのを寸でのところで踏みとどまる。
(なるほど...っと。方向の概念もないから目の前に出したつもりでもどこにあるかわからないのか。深度がある以上、縦には行けるはず何だけど。【
『解、【虚飾之王】を使用し現実世界の存在を確立させることができれば『虚数空間』から弾かれると考えます。』
(それいいね。それじゃあ)
「『俺は虚数空間にいるはず──』がぁ!?」
唐突に来た首根っこを引っ張る感覚に驚き、スキルをやめれば途端に体が浮上し始める...どころか逆バンジーの要領で引き戻されていく。
ちょっとまって、出そう。いや本当に汚いとは思ってるよ。でもさ、耐えきれるものじゃなくない?ほら吐き気は我慢するほうが辛いって言うでしょ。
「あ、やっぱりそんなところにいた!」
そうこうしてる内に現実世界に戻ってきたのか浮遊感だけが残り、光に慣れてきた目を開けばそこには兄の姿が。
「!貴様はッ」
「あは、あははは...」
それと数分の間リアル鬼ごっこを繰り広げた青年、フェルドウェイが目を見開きたたずんでいた。
取りあえず兄よ。下ろしてくれると助かる。
主人公の最強能力の一つがあばかれてしまったか...簡単にいうと限定空間でヴェルダナーヴァぐらいの力が手に入るってことです。強い(確信)
アァァァァァァンンンンンンンケート取ってますが選ばれなかったものが出てこないわけではないです。とりあえず全部習得しますがメインとして使うのはどれかっていう意味です。
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