ワイ、ヘドロ。思ったより個性強ぇーわ (恋狸)
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ヘドロに転生したんやけど原作と色々ちゃう

独自設定、解釈が強いです。
そして、作者は二次創作を書くのがほぼほぼ初です。
本場の関西人の方は読むことをオススメいたしません。作者は感性でエセ関西弁として描写しています。エセです。偽です。


 ワイ、ヘドロ。4歳や。

 ヘドロってなんや? って?

 

 それはな。『僕のヒーローアカデミア』っちゅー大人気漫画に登場する悪役や。

 名は体を表すとは言ったもんやけど、見た目その物がヘドロなんよね。ゴミよ。

 

 Mサイズの隠れミノぉ、と良い個性の隠れミノ、って言って、主人公とそのライバルを襲う(ヴィラン)やねん。

 その後、呆気なくナンバーワンヒーロー『オールマイト』ってガチムチのおっさんに倒されるやつや。草生える。

 

 まあ、そんなエセ関西弁はさておき。

 

 『個性』と呼ばれる特殊能力を持つ人が大半の超人社会。

 そんな中、個性を悪用し犯罪をはたらく通称ヴィラン。それらをぶっ飛ばし、平和を維持する通称ヒーロー。

 だがしかし、その社会の中で個性を持たない主人公がひょんなことをきっかけにヒーローを目指すっつのが、『僕のヒーローアカデミア』って漫画なんや。

 

 まあ、何が言いたいかって言うとな?

 

 

 ワイ、ヘドロに転生したみたいやねん……

 

 

「アァァァァァァァァァ!!!!!!!!! 何でやねん!!!!!!!!! 何でヘドロやねん!! オリキャラでええから! ブスでも何でもええからヘドロだけは嫌ァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 

 人知れず足を運んだ、人気の無い空き地でワイは全力で叫んだ。そうでもしないと気が狂いそうだ。

 

 ちゅーか、何でワイがヘドロに転生したことを知ったかというとな。

 

 ……まあ、まずは衝撃の事実の講評から始めるで。

 

 ヘドロの個性な。……発動型やねん。

 

 異形型ちゃうねん。さすがにビビったわ。

 個性発現しても人間のままやったからな。

 

「でもなぁ。原作だと異形型っぽかったけどなぁ」

 

 ワイな。乗っ取る個性やと思ったんやけど、違ったっぽいんや。

 

 でも、全身をヘドロに変えて、鏡見たら、確かに()()ヘドロやったんよ。4歳やからリトルヘドロベイベーやったけど。

 

 ワイが転生したことによって、原作と何かが変わった可能性もある。原作だとヘドロは主人公を襲った時は大人やと思うけど、ワイの近所に主人公いたねん。しかも、同い年やねん。

 

「何らかの作為を感じるぅぅぅぅぅ!!!!」

 

 誰かワイを助けーや。産まれた時には親もいないし。施設育ちや。しかも、環境が死ぬほど悪い。

 そりゃあ、ヴィランにもなるよと思ったね。ワイが長男じゃなくて次男だったら耐えられなかったと思うで。キラッ。兄弟いないけどな。

 叫びつつ、現状打破のために策を練る。

 

 あ、というか。転生というかなんと言うか。今さっきなのよ。ヘドロに転生したの。

 じゃなくて、前世の記憶が蘇った的なやつや。でも、ヘドロの記憶も持っとる。

 あくまで主人格がワイなんやな。

 

「関西弁でキャラ付けしないとメンタルが持たないのぉ」

 

 前世で死んだ理由は覚えてへんけど、とりあえず切り替えるしかなさそうだ。

 異形型じゃないなら、社会に溶け込めるからな。ワイが宿ったからには、ヴィランなんて自ら茨の道に飛び込もうとは思わん。

 

 しかしな。主人公とそのライバル兼幼なじみを襲うイベント──ヘドロ事件って言うんやけど、あの事件は所謂原作のキー事件や。

 あれがないと、主人公はヒーローになれへん。

 

 主人公がヒーローに……というか、ヒーロー育成学校──『雄英高校』に入らなければ、めっちゃ死人出るし、最悪、世界征服に似たことされるんやで。 

 そうなったら、せっかく社会に溶け込めたのに社会の荒波に溶かされる可能性が高いんや。堪忍して。

 

「何しても、ヴィランになる以外選択肢あるぅ? でも、犯罪なんて勘弁に決まっとるやろぉぉぉ!!! そんな度胸もないし、良心が痛むやろぉぉぉ!!! だが両親は痛んでくれ!」

 

 なーんてことを叫びながらも、頭はフル回転。どうすれば良いかを考える。

 ワイが演技してってのは無理や。演技=普通に犯罪やし。ガチムチのおっさんに風圧で殺られてペットボトルに詰められるのも勘弁や。

 

 ぐぅぅ、主人公の覚醒イベやからなぁぁ。

 

「よし、決めた」

 

 

 すまんな、主人公。ヒーローは諦めてくれ。

 世界の修正力で主人公になれることを祈ってる。

 

「となると、ワイが出来ることはただ一つ。来たる破滅を生き抜くために個性を鍛えるだけや」

 

 良くも悪くも、この世界は歪で。

 力が全て。人々は偶像(ヒーロー)を求めて、他人にすがる。

 

 ワイはそんなの勘弁や。いつも遅れてくるヒーローなんかゴミに等しい。……ホークスは別か。

 ま、自衛手段を身に付けるのも大切だろうよ。

 

「個性ヘドロ。原作でも特に触れられてないし、鍛えがいはありそうや。どうせ弱いと思うけど」

 

 初っ端でブタ箱にぶちこまれるヴィランの個性なんて弱いに決まっとるやろ。

 確かに乗っ取るのは強かった。でも、風に弱いし、範囲攻撃系は恐らく弱点。

 

 強いには強いけど、乗っ取る力が使えないというか使いたくない以上、持てる力は限られる。

 

 おっと、エセ関西弁が抜けてたな。

 

 そんなわけで、個性の強化の始まりや。

 ん? 個性一斉カウンセリング? そんなもん知らんな。  

 4歳になると受けるらしいけど、うちの施設、そんなもん受けさせてくれないやろ。一応、まともな倫理観あるし受ける必要性がそもそもないからなぁ。

 

 死柄木弔クゥン。受けよ? ね?

 今のうちにまともな倫理観覚えよ?

 

 いや、あかんわ。多分今頃オルフォワちゃんと一緒におるわ。

 くぅぅぅ、手遅れだったか……!

 でも、あいつはあいつで壮絶な過去があるから筆舌し難い……!!

 ガキの癇癪起こしてる間にブタ箱にぶちこみたいけど、黒霧が厄介やわ。

 

 まあ、先の話は置いといて。

 

 個性の強化や。筋繊維と同じで、個性は使えば使うほど伸びる。

 だけれども、それに技術が追い付かなかったらまったくもって意味がない。平行して戦闘技術を学ばねば。

 

「自己流じゃ限界あるで、これ」

 

 むしろ、変な癖が付く。

 その自己流をミルコ並みに昇華できれば問題ないんやけど、あれは個性の性質上真似するのは無理や。

 異形型の複数能力持ちはこれだから……。

 

 でも、体をヘドロに変えるワイ。多角的方面で見れば複数能力を持ってそうなんよねぇ……。

 一応、脳内にビジョンはあるけれど、その九割は使えへんと思う。

 例えば、ヘドロを分裂させて破片を媒介に瞬間移動するとかな。…。百パー無理やろ。

 あとはなぁ……分裂したヘドロに意識を移して索敵とか。

 

 ヘドロ分裂が前提やけど、これならまだ希望はある。実際、とかげせつなちゃんが似たようなことやってたし。

 分裂して動かせることは可能や。

 

 これでも厄介な行動派オタクやからな。試すことは試すで。伊達に原作知識持っとらんわ!

 

 とりま、小学校(通えるかわからへんけど)卒業までを目処に、ある程度、個性の把握と強化や。施設にバレても面倒やから早く金を稼いで出たいもんや。

 

 ……今さらやけど、瞬間移動は絶対無理に決まってるわ。草生える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 どうしまひょ。

 

 

 瞬間移動できたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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思ったより強すぎる個性

 

 ワイ、ヘドロ。ピチピチの4歳。

 

 ちょっと聞いてくれよ。

 瞬間移動出来ちゃったんよ。

 

 さあ、早速個性を試すんや、と色々試行錯誤してたら、一番無理やと思った瞬間移動が出来たんやで。

 

 

「これを瞬間移動と認識して良いものかは微妙やけど」

 

 ワイはもう一度試す。

 

「分裂っっ!!」

 

 全身をヘドロと化し、四方八方に体の一部を飛ばす。

 ビチャビチャと地面に落ちたヘドロベイベーたちが嫌な音を立てる。

 

「かーらーのー! 移動っ!」

 

 シュンッと視界が切り替わり、分裂したヘドロの一つに意識が移り変わる。そのまま体を再生すれば……はい! 瞬間移動の完成や!!

 

「できちゃった。できちゃったかぁ……」

 

 体を再生した後に、遠隔操作で飛び散ったヘドロを消せば、証拠は消える。

 なんか自由度高いんよ……序盤でペットボトルに詰められる系ヴィランのくせに個性強すぎやないか?

 パワーバランスが崩れるわ。力があって悪いことは確かにないんやけど、限度があるやん? 

 

 この瞬間移動やけど、ワイが妄想してた力、どっちも使えるんよね。索敵も意識移せたから可能やし。仮に風圧で吹き飛ばされても、安全圏に置いたヘドロに移動したら済む話や。

 

「もう……個性がヴィラン向きなのに弱点ないんやけど。なんならヒーロー科にも受かれるレベルなんだが」 

 

 機械だし、ヘドロを侵食させてショートさせりゃあええ。

 

「でもなぁ。機動力はあることがわかったけど、直接的な攻撃能力に欠けるんやな」

 

 ヘドロ化したって、身体能力が上がるわけやないし。

 

 んー。ワカメみたいにフルカウルで強くなれりゃ良いのにな。

 ヘドロ・フォー・オール、フルカウル!! 的な? いや、ダサいわ。ヘドロの時点で格好良い要素ゼロやん。おまけにヘドロに救われても嬉しくないやろ。

 

 でも、実際にヘドロ化状態の身体能力ってどうなんやろ。試してないからな。

 

「ヘドロ化!」

 

 全身が茶色のドロドロヘドロに変貌する。やはり、原作の見た目に酷似しているが、目だけがつぶらな瞳だ。多分、心が荒んでないからだと思う。草生える。

 

 

 そのままジャンプ!!

 

 ……お? お? ヘドロ全部が一斉にジャンプするっちゅー、シュールな光景が起きたぞ? 

 身体能力は変わってないみたいやね。残念。

 

 確認し終えると、ヘドロ化を解く。

 

「んじゃ、次は人間状態で何処まで個性を扱えるかを実験や」

 

 個性はイメージ。それと、創意工夫や。だから、瞬間移動も可能になった。

 

「まずは、一部のヘドロ化……できたな」

 

 腕だけをヘドロ化してみたが、難なくできた。

 順々に一部のみをヘドロ化したが、全て可能だった。

 

「うーん。でも、全身ヘドロ化の方が効率ええよね。でも、見た目が完全にヴィランやし、誤解されたりするのは勘弁や」

 

 どうにか人間形態で個性を扱えないかと悩む。

 ワイの灰色の脳細胞よ、動くんや……!!

 

 ゆっくりと全身をヘドロ化してみる。近くに池があったため、自分の姿を映して観察する。

 

「うわっ、キモい」

 

 全身が溶けていくように液体状になってから、色が変わり見慣れたヘドロになる。いや、見慣れなくないわ! ボケっ!

 

 うーむ、色が変わるのが謎やな。

 

「色変えてみるか……できたな。ヘドロの意義よ」

 

 虹色のヘドロに変身できた。目が痛い。草生える。

 試しに全身蛍光色にしてみた。暖色系なのに目が痛い。草生える。

 

「例え色変えてもシュールさがちょびっと出るだけでなんの意味もないわ」

 

 あ、でもつゆちゃんの保護色の真似事はできたみたいやな。完全な透明とはいかないから葉隠ちゃんの下位互換やけど。

 

「次は人間形態にヘドロを纏わせてみよう」

 

 さっきよりもゆっくりと、ヘドロ化する溶ける間際を見極めて……キープ! ……うぉぉぉぉ!! 

 

「キツイぃぃぃぃ!! 体が崩壊すりゅヴぅぅぅ!!」

 

 人間とヘドロで存在を行き来したせいで、曖昧な存在になっとる。維持できへんことはないけど、めちゃくちゃ集中力必要や!

 

「でもやんなきゃぁぁぁ!! 輝かしい未来のためェェェェェ!! らめぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 あ、解けちゃった。

 

 肩で息をしつつ、訓練やな。と自分の課題を認識することに成功。

 

 日も落ちてることだし、そろそろ帰らねばならん。あそこは、基本的に自由奔放主義やけど、門限には厳しい。

 え? 理由はなんやって? 補導されたら監督不行き届きを問われるからだってよ。つくづく自分のことしか考えないやつやで。

 

 ふむ。しかしまだ4歳や。ピチピチの。

 個性発現したばかりやし、こんなに訓練するやついないやろな。とんがりコーンくんは別やけど。爆破大好きくんの思考回路は窺えん。

 

 将来どうしたいかとかは決めてないけど、好きに生きたいのぉ。もちろん、ヴィランは嫌やで。

 

「このまま小学校に通うことになったら、確実にワカメととんがりコーンと同じ学校に通うことになるんよねぇ……近所やし」

 

 関わりたくないのぉ。それに、無個性のデクがなんちゃらかんちゃら、とか苛められてるの見たくないわぁ……これでも、良心の量が多いんや。いじめられてるのを見過ごすわけにはいか……ないとは思わんけど。巻き込まれると嫌やし。

 良心が痛むけど、しゃーない。諦めてくれ。主人公なんやから苦難くらい乗り越えなサイヤ! 某野菜人みたいに!

 

 

 うん、まあ、ワイは訓練しないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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施設の新入りがやべぇわ

ヘドロのヒロイン…(草)←いや、笑じゃなくて草なんよ。


  ワイやで。みんなご存知ヘドロやで。ヘドロ化したら体積大きなるヘドロやで。仕組みはわからんわ。

 

 日も落ちてきたし帰ったらガキどもが騒いでた。何やら新入りが入ってくるらしい。

 こんなクソの掃き溜めしかいない施設に来るなんてドンマイやなとしか思わへん。

 

 よく見たらマスタードくんもこの施設にいるんよね。でも、あやつってなかなかの坊っちゃんの産まれやなかった? 学歴至上社会に嫌気がさしてヴィランになったって記憶あるんやけど。

 個性毒ガスは健在やけど、明るい性格してるで。ほんまに原作と色々ちゃうな。

 

「ヘドロくん。新しく入ってくるのどんな子なんだろうね」

 

「せやね。あんま興味ないけど新人教育したるわ」

 

「……なんか喋り方おかしくない?」

 

 噂のマスタードくんに話し掛けられたから素で答えた。そういえば、元の喋り方こんなんちゃうな。

 まあ、良い。慣れてもらおう。人間の適応能力で頑張ってくれ。

 

「まあええやろ。どうせ施設長に雑用押し付けられんのが目に見えとるんやから」

 

「……うん。僕も入った翌日にやらされたもん」

 

「子どもにやらせることちゃうんや。うんこみたいな性格やからな」

 

 うんこが居ないことを確認してから毒を吐く。

 マスタードくんが、ビクッとビビってたけど愚痴吐かんとやってられへん。

 

「ヘドロくんは早く出たいって思う?」

 

「そらそうやろ。拾ってくれた恩なんて微塵も感じとらんし」

 

「まあ、入ってから地獄だったからね……」

 

「せや。まあ、義務教育終えるか、引き取り先が見つかるまでは我慢やな」

 

「僕なんかを引き取ってくれる人いるかなぁ」

 

 もしかしたら、その後で金持ちに引き取られるのかもな。

 

「ま、嫌なことあったら溜め込まずに誰かに相談するんやで」

 

「え? うん、まあ」

 

 原作通りだとお縄についちゃうマスタードくん。どう言ったらええかわからんから、曖昧な表情でアドバイスをすると、マスタードくんも曖昧な表情をした。強く生きろよ兄弟。

 

 なんてことを話していると、

 

『食堂に集まれぇぇぇ!! クソガキどもぉぉぉ!!』

 

 と、うんこの大声がした。声だけでわかる。臭い奴やん。くっさ、まじでうんこ。

 

「なんで鼻つまんでるの……?」

 

 マスタードくんの疑問を無視して、食堂に向かう。

 

 わらわらと子ども十数人が集まると、うんこの匂いのするうんこが現れた。  

 筋骨粒々の悪役顔。顔には縦一線の傷痕。あーた、ヴィランかなにかかよ、という顔のうんこ。なんで施設長やってんねん。ヴィランやってろよ。そんで捕まれよ。

 

 なんてことを言うと、容赦なく顔面に拳が叩き付けられることは間違いない。

 ワイが宿る前のモノホンヘドロくんはなかなかに生意気だったからの。目ぇ付けられて毎回殴られてたわ。

 

「よーし、クソガキども。喜べ! 新入りが入ったぞ!」

 

「「わーい」」

 

 全員棒読みで草。

 ここでなんの反応もしなかったら怒鳴られるからな。多分、同年代の子どもの中で施設メンバー全員、世渡り上手いで。

 

「よしよし。入ってこい!」

 

 棒読みに気が付かないうんこが満足そうに笑う。やめろ、人殺してる奴の微笑みやめろ。うんこ漏らす。

 

 さて、新入りはどんな奴……ふぁ……?

 

 新入りが現れた瞬間、ザワザワとどよめきが起こった。

 ワイの場合はフリーズしとったわ。

 

「可愛い……」

 

 誰かが言った言葉は、まさしく新入りの容姿を体現していた。

 金髪ショート。クリクリした目に、間違いなく将来は傾国の美女になるであろう整い過ぎた容姿。微笑を浮かべて、儚げな雰囲気を醸し出す姿は庇護欲をそそられる。

 

「絶対個性やな」

 

 ワイは小さく呟く。

 個性によって見た目が変わる例は多い。その多くは異形型やけど、発動型、増強型でも例がないわけではない。

 恐らく、魅了とかそういう感じのやつやね。

 

 おーけーおーけー。現状判断したら正気に戻ったわ。

 

「へい」

 

「あ痛っ」

 

 隣で惚けてるマスタードくんの鼻をつまむ。

 

「落ち着けぇや。あれ、多分個性やで」

 

「えぇ……そうなの?」

 

「あんな可愛い子がいるわけないやろ!」

 

「わけはあると思うんだけどな……」

 

 何処か呆れる様子のマスタードくん。危機感無いなぁ。そんなんじゃ某ヘドロくんに乗っ取られんよ。

 

「じゃ、自己紹介をしろ!」

 

 うんこがざわつくガキどもを怒鳴って正気に戻す。

 すると、新入りが鈴の音のように響く声で言った。

 

「オレはてめぇらみてぇなガキどもにつるむ気はねぇんだよ。精々オレの足枷にならねぇ程度に気張れや」

 

 

 

 …………うわぁ……クソを下水で煮込んだ性格しとるぅぅぅぅぅぅ!!!!!!

 

 某とんがりコーンやないかいぃぃぃぃぃぃ!!!!

 

 なんや!? 姉弟か!? とんがりコーンの姿は確認できてるからTSとかじゃないのはわかっとるで!? でも、似すぎやろぉぉ!!!!

 

「可愛い声でえげつない性格してるね……」

 

 マスタードくんは、顔をひきつらせていた。普通そうよね。他のガキどもはフリーズしてるし、マスタードくんはええほうやで。

 ワイは表情取り繕うの好きやから澄ました顔してるで。

 

 

「へっ。少しはマシな奴もいるみてぇだな」

 

 ワイの顔見て言わないで? 存外めたくそに引いてるで? 関わりたくないで!?

 

 てか、自己紹介のくせに名前も年齢も何も言わないってどうゆう性格してるねん、こいつ。あ、クソを下水で煮込んだ性格やったわ。草生える。

 

「おい、名前くらいは言えよ」

 

 おっ、施設長うんこさんも良い仕事するじゃないか。つか、あんたも若干引いとるんやな。知らなかったんか?

 まあ、平気で笑顔でこんなこと言う奴はさすがに施設に入れんか。

 

 

「けっ。そんな意味ねぇことやりたくねぇ、が……仕方ねぇからクソガキどもに教えてるよ。オレの名をなぁ! 刻み付けとけや! オレの名は──」

 

「そこまでして知りたくないわ。自意識過剰乙」

 

「あ゛あ゛?」

 

 あらやだ思わず口に出してしまったわ、オホホ。

 いや、ワイな。基本、とんがりコーンの性格とか嫌いねんよ。しかも、こいつの場合もっと酷いんちゃう?

 某手が一杯崩壊先生大好きマンが、ガキと礼儀知らずの奴が嫌いって言っとったけど、フル装備やん、こいつ。

 

 天使みたいな顔してガン付けてくる女を真顔で見つめると、段々ピキピキと青筋が立っていた。

 

「てめぇ……今なんて言った? あ゛あ゛!?」

 

「一昔前の不良やね。ワイはお前の名前なんて興味ないんや。自由時間欲しいからやるなら手短にやれぃ」

 

 手をヒュッヒュッと振ってため息を吐いていると、女の顔が怒髪天に歪んだ。

 

「てめぇ、後悔するぞ……!! オレに歯向かったことをなぁ……!!」

 

 倒置法使いまくってて草生える。

 とりあえず、なんか面倒だから食堂から出たら、てめぇ、逃げてんじゃねぇぞごらぁ!! って声聞こえたけど無視や。

 面倒事には関わりたくないわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ワイ。あと2つでバーが点灯するんやけど、今までの作品に赤バー点いたことないんよね。
もし、おもろかったらよろしくたのんます(作品に影響されてエセ関西弁使い始めた作者)


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新入りに目を付けられたんやけど、普通立場逆ちゃう?

待つんや。
自分で書いておいてあれやけど、王水系ヒロインってなんや!
あれか?濃塩酸と濃硝酸足してぶちまけたような性格のヒロインってことか!?
王水の個性だと芦戸三奈ちゃんと被るやんけ…
が、頑張るわ……!

作者「主人公クズやな」
シリアス「せやな。まじでカスやな」
作者「な、何故貴様がここにぃ!?」
シリアス「こんにちは!」


 ワイ、ヘドロ。新入りにガン付けられたごくごく普通の4歳。上昇思考も夢も希望もないし、日々生き抜くのに必死なヘドロ系よんちゃいや。

 

「へい。新入り。何で着いてくるんや」

 

「うるせぇ! 行き先が同じだけだわ!」

 

 可愛げのないやつやなぁ……。なんて考えながら個性実験のための空き地に移動中なんやけど、後を着いてくるんよね、例の新入り。

 黙ってたら天使やけど、口を開けば罵倒。罵倒系ヒロインは古いて。

 でもなぁ、着いてこられるのは不都合なんよねぇ……。さすがに怪しまれるだろうし、これを施設長に告げ口されたらちょいと困る。

 まあ、こいつは告げ口とかするタイプじゃないだろうから、そこは安心なんやけど……ほんまに何で着いてくるんやろな……

 昨日の復讐かね。自尊心お高い感じに見えるしな。

 

「あっ、待てやっ!」

 

 脱兎の如く走り去ると、後ろから止められる。へっ、待てって言って待つ奴はいないねん。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 やべぇ、追い付かれた。何でや。ストーカーの素質ありすぎやろ。いや、待て途中でヘドロ移動(ワイ命名)も使ったんやで!? 子供の足じゃ追い付けんはずや。

 

「お前。何の用や。ワイは時間取られることが嫌やねん。用もないのに追い掛けてきたんゆーねんならさっさと(こう)れや」

 

 振り向き様に息を荒げる女に言い放つと、ギリッと歯ぎしりをして怒鳴る。

 

「ハァハァ……。てめぇに負けたみたいになってるのが許せねぇんだよ……っ! オレは誰にも負けるわけにはいかねぇのに……っ!!」

 

「負け? 勝負した覚えはないで?」

 

 某温かくて冷たい紅白饅頭みたいなこと言うなぁ……。なかなかに苦労抱えてそうやけど、ワイには関係ない。それに、あの施設にいる全員が事情しかないかてのう。

 

「てめぇに舐められてっとオレが一番になれねぇんだよ!」

 

「別に順列とか意識してへんで。そんなに拘りたいなら……はいはい、お前が一番や。おめでとー」

 

「ふざけんなっ!」

 

 パチパチ拍手しながら祝福した途端、目の前に拳が見えた。

 咄嗟に頭をヘドロ化して無効化する。

 

 ……危ねー。予備動作ゼロやったで……? そんな、喧嘩っ早いとこまでもとんがりコーンに似なくてええんやけど……?

 

「ちっ。それがてめぇの個性か」

 

「いきなり人に拳入れてきたくせに悪びれもせんとはなぁ」

 

「ぐちゃぐちゃうるせぇよヘドロ野郎!」

 

 再び目の前に拳が見えた。小さい拳だけど、速さが洒落にならん。人間形態時に当たったら頭蓋骨割れるで……?

 もう一度頭……いや、腹をヘドロ化する。

 頭に振りかぶった右手をいなし、本命の左手のパンチを、ヘドロ化によって無効化する。

 

 ヤバい、ヤバいて。こいつ戦闘センスもとんがりコーン並みや。ちゃんと考えて動いてやがる。めんどくさい!

 

「てめぇ、ズルいぞ!」

 

「お前こそ予備動作なしに人を簡単に殺せる威力バンバン出してきてんぞ」

 

 拳を振りかぶったりしない。気が付くと目の前にいて、当たる寸前だ。これは確実に個性。

 身のこなしも異常やし、発動型……いや、増強型か? でも、あり得ん。異形型でもないなら、個性を()()持っとる可能性がある。

 

 なるほど。これは事情ありと見てええな。

 

 しばらく似たような応酬を繰り広げること十数分。ワイを追い掛けてきて、すでに体力の切れた女はもうバテている。

 

「くそ! くそ! クソっ!」

 

 悪態を吐きながら女はついに倒れ込んだ。

 地面を叩いて涙を浮かべている。

 

 はぁ……面倒だなぁ。ガキの涙には弱いねん、ワイ。ロリコンちゃうで。

 

「話聞いちゃる。ワイじゃなかったら死んどるで本当に。そこまで焦る理由はなんや」

 

「言いたくねぇ……」

 

 ブスッとそっぽを向いて一言。

 人を殺しかけておいて、その相手が譲歩しとんのに言いたくないとは何事や。

 

「別に言わなあかんわけじゃないけどな? このままだとワイは、公共の場における個性の無断使用及び殺人未遂を警察に言わなあかんくなる。お前の居場所。()()()()なくなるで」

 

 ワイは多分冷たい目をしていたんやと思う。

 女は一瞬ヒッと喉をしゃくりあげると、あからさまに恐怖と後悔が顔に現れる。

 

 我ながらズルい言い方やったと思う。傷をえぐるような問いかけやった。でも、そうでもしないとこいつは意地でも話さへん。このままだと他の奴にも迷惑かけるし、最悪死人が出る。

 女の様子から虚勢を張ってんのはまるわかりやったが、それを崩すにはそれ相応の言葉が必要や。

 

 ────本当に面倒やな。

 

 こういう時に偶像(ヒーロー)は助けにこない。

 

 差し伸べる手を取って欲しい時に限って奴らはいない。

 

 傷を負った心を癒そうとしない。

 

 当たり前の出来事に気付こうとしない。

 

 だから、だから……女みたいな奴が現れる。

 

 

 ワイはもう事情は薄々察しとる。

 その予想が正しければ、女は凄い。手放しで称賛できる。決してバカにしているわけではなく、本物の称賛。

 

 ワイは敢えてその傷口に触れることにした。

 

 

 

 

「お前。両親をヴィランに殺されてるな? そして、お前は逃げた。違うか?」

 

 

 

 

 

 

「なん、で……」

 

 女は目を見開いた。

 図星やったみたいだな。やっぱりか。やっぱりな。だからこの世界はどこまでも不条理だ。

 

「お前すげぇよ。本当にすげぇよ」

 

 エセ関西弁を忘れて言っていた。

 

「ば、バカにしてんじゃねぇよ!! オレは! オレは、あんなにもオレのことを愛してくれた父さんと母さんを。助けられなかった! 逃げたんだよっ!!」

 

「だから個性伸ばして復讐するために努力してきたんだろ? やっぱりすげぇよ」

 

「は!? そんなこと。オレのせいで死んだんだから当たり前だろ……!!」

 

 俺は女に近づいた。ただひたすら困惑を浮かべている女の顔を俺は真っ直ぐ見つめた。

 

 

 

「────でも、お前はその傷口から目を逸らさなかった」

 

「世に蔓延る不条理に抗おうとした」

 

「必死で勉強した」

 

「何度も泣いた」

 

「それでも。諦めなかった」

 

 最初に女を見た時。目が赤く腫れていたのが少し気になった。全員が全員、美貌に頬を染めていたがために俺しか気が付かなかっただろうが。

 そして、俺と同い年のくせに同等の会話が交わせる知能。圧倒的戦闘センスと練り込まれた創意工夫。

 

 そして、それらを支えたのは恐らく個性。

 

 

「『"努力"』したんだな」

 

「あ゛ぁ……。あ、あぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 女は子どものように。いや、年相応に泣いた。喚いた。鼻水を撒き散らし、俺にすがり付いて泣いた。

 

 もう、大丈夫やな。ワイや! ワイやで!!

 エセ関西弁の機能を補修し、ワイは女の頭を撫でながら険しい顔つきになっていた。

 

 

 女の個性は二つや。一つは『努力』。ワイの名称やけど、効果は恐らく努力したらその分だけ伸びる。最強個性の一つやな。

 

 それともう一つは……ハッキリ分からへん。多分、ワイの位置を把握した個性やと思う。それにしては、パンチの速度とかが異常やったし、やっぱり分からん。

 

 まあええわ。人生の先輩として、後輩の道を正せたならば。

 

 このままじゃ、復讐の道に染まってたやろ。間違いなく。

 

 そうなったら、足にエンジンつけた眼鏡委員長みたいになるで。ホンマに。

 

 まあ、ワイも軽々しく傷口をえぐったし、反省点も多いわ。

 

 

 

 

 

 あれ。ワイの個性の実験はどうなったんや……

 

 

 

 

 

 

 明日から頑張りゅのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公キモいわ。
あ。赤バーの夢見れましたわ。1日だけの儚い夢やったけど。

次話から時が進んでいきまっせ。相棒を添えて。

ちゃ、ちゃんと話進めるから捨てないで…!
うわーん、エセなんよ!エセ関西弁なんよ!
作者、最北に住んでるんよ!勘弁してくださぃぃ!


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懐かれた……まあええか

作品自体の批判じゃなくて、関西圏の人からの関西弁に対する批判が多すぎて草生える。
低評価の理由の九割が関西弁って……読者おもろすぎやろぉぉぉぉ!!!!
まじ、ワイより才能あるで。


 ワイ、ヘドロ。ピチピチの6歳や。

 

 転生というか憑依してから二年経ったんやなぁと感慨深い気持ちになりながら、隣で筋トレする奴を見る。

 

「あ? 何見てんだよ、殺すぞ」

 

「相変わらず物騒やな。有紗(ありさ)

 

「……ちぃっ!」

 

 名前で呼ぶと盛大に舌打ちにしてくるのなんなん? ずっと女って呼んどったからワイも違和感強いんやけど。

 つか、二年経っても性格が治らへんわ、こいつ。

 

 数奇なことに、派手に殴り合いしてからワイの個性がバレたやろ? それから、何故か有紗はワイがトレーニングしてる横で同じようにトレーニングしてくるようになった。

 

 ワイは凡人の塊やから人の何倍も努力せんといけんけど、有紗は才能の塊の上で努力家っつー最強パラメーター持っとるせいで追い付かれそうや。転生者のアドバンテージ生かせてないや。草生える。

 

 

「おい、ヘドロ。手合わせするぞ」

 

「またかいな。ワイはしばらく対人は避けて個性の練習したいって言ったやろ?」

 

「っるせぇ! オレがやるっつったらやるんだよッッ!」

 

 そんな横暴なことを言い出すや否や殴りかかってくる有紗。

 ……やれやれ、これでも女の子(笑)なんだからもっと慎ましくありなさいや。なんてことを心で愚痴りつつ正面から素手で受ける。

 パンッと渇いた音が鳴り響く。ワイの手はまったくの無傷。

 

「ちっ、その能力おかしいだろが!」

 

「何言っとるかわからんなぁ……」

 

「黙れエセ関西弁野郎ッッ!」

 

 シュタタタッとオノマトペが付きそうなくらい正確かつ凄まじいスピードで放たれる拳を全て受け止める。

 うむうむ、見えてるし完璧に止められるな。

 

 あのなぁ……でも、人体の急所を正確に打ち込むの止めてもろてええか?

 こめかみ、額、目、顎、首、心臓、肋骨、肝臓、みぞおち、金的……ランダムに狙って来やがる……。相変わらず予備動作ないから、反射と能力で避けるしかないわ! えげつねぇ!

 

 

 自身の個性を確認する。

 

 ワイがこの二年で一番練習したのは、ズバリ!

 

 

 ノリで適当に言った『ヘドロ・フォー・オール。フルカウル』や!!!! 草生える。

 人間形態のままヘドロを操る練習をしていた時に出来た副次的効果やな。

 何故か人間形態でヘドロ化すると身体能力が爆上がりしたんや。本当に謎。仕組みは一切わからん。

 まあ、使えるもんは使うべきやろ、って精神で練習を重ねてきたんやけど、少なくとも殺人級の拳を放つ有紗の一撃程度は軽く受け止められることがわかったのでよし、いくぞう。

 

 デメリットはフルカウル状態だと物理攻撃が効いてしまうことやな。しかも、完全ヘドロ化に切り替えるには少し集中せなあかんから、デメリットを打ち消せん。

 でも、これで攻撃力は手に入った。

 

 最初に全身ヘドロ化して、一部をばらまいてからフルカウルにすれば瞬間移動も使えるしな。

 無敵ってわけでは全然ないけど便利にはなったな。

 

 ガチムチキンニクマンと戦ったら三秒も持たんけど。草生える。

 一回シミュレーションしてみたんやけど、全身ヘドロ化は原作通りに吹き飛ばされるやろし、フルカウル状態だと、素の力で負けとるから意味ない。結構器用貧乏やなぁ……。

 まあそこは年齢上がりゃあ解決するやろ。そう信じたいわ。

 

 

 と、そんなことを考えてる間に有紗は息を荒げてバテていた。

 

「有紗は体力の無さがネックやねぇ……」

 

「……っるせぇ。わかってるわ!」

 

 まあ、増強型の個性でもないのによくやってると思うわ。ワイは複合型やと思うから分類はできへんけど。

 

「さてさて、もう少しで小学校入学やな」

 

「……ヘドロは行くのか?」

 

「義務教育やし、行って損はないやろ」

 

 なまじ前世の知識のせいで簡単すぎるけど。ワイの目的は人脈作ることやな。個性とかから将来大物になる奴をピックアップして友達になるんやで。

 そうすれば、後で良いこともあるやろ……げへへ。ってワイってこんなゲスいこと考える奴やっけ? ……まあ時が経てば性格も変わるもんな、うん。

 

 うんうんと自分で謎の納得をしていると、有紗が何かを悩んでいた。

 

「どうした?」

 

「……ヘドロが行くならオレも行く」

 

「小学校?」

 

「ああ。正直勉強は高校まで履修してっから意味ねぇけど、ヘドロも他の目的があんだろ?」

 

 あらら、見抜かれてーら。

 つか、高校まで履修ってヤバくないか? やっぱり化け物やろ。それにワイの目的(ゲス)まで当てられるとは成長しとるやんか。グッドやで!

 

「まあ、さっきも言った通り、行って損はないっちゅーことやな。でも、お前の性格やと馴染めないで?」

 

 ビクッとあからさまに首を逸らした有紗。自覚あったんか……治せや……。

 

「別に。馴染めなくなってもヘドロがいりゃあ良いし」

 

 可愛いことを言いやがる。何だかワイも気恥ずかしくなってきたわ。

 でもな……

 

「性格治さんかったら、学校で話し掛けないで」

 

「ふざけんな、何でだよッッ! さっきの反応見るに頷く場面だろがっっ!」

 

「そこまで計算してやっとんのかい」

 

 あかん。頭の良さのベクトルをくだらないことに使ってやがる。

 

「せめて、外面を取り繕えばええやろ。別に一朝一夕で治るとは思ってへんし。それもお前の『個性』やろ?」

 

「……ちっ。わかったよ。ゴホン。……みなさん、こんにちは。有紗です。こんな感じか?」

 

 

 

「ぶはははははははっっ!!!!!! キャラに合わんっ!!!! あーはっは!!!!!!!!!!」

 

 全力で爆笑した。

 初めて会った時のような微笑を浮かべて丁寧語で挨拶をした有紗。

 本性を知ってるワイからすると違和感しかねぇ……あはははははっ!!!!!

 

 涙目を浮かべて爆笑していると、肩をプルプル震わせる有紗。やりすぎたか?

 

 

「ふっざけんな、てめぇ、絶対ぶっ殺すッッ!!!」

 

 今までの最高速度を叩き出した拳が向かってきた……けど正面から勝負を受ける義理はないねん。

 

「さらば! アデュー!」

 

 近くのヘドロに瞬間移動する。

 

 

「くそったれがぁぁぁぁ!!! 逃げんじゃねぇぇぇ!!!!!」

 

 戦略的撤退や!! しかも、有紗の丁寧語が頭の中にリフレインしてるせいで笑いが止まらないんよ……ぶはははははははっっ!!!!!!

 

 夕日の射した施設近くの森には、しばらく怒りに染まった怒鳴り声と、ただひたすら笑い続ける声が響いたそう。

 

 

 

 

 草! 生える!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヘドロに転生じゃなくて、主人公気が付いてないだけで憑依なんよね。だから、主人公はキモいし、発言が薄っぺらい。
有紗に関してはチョロインやから良かったのぉ、って話やね。

ところで、もう一回聞くけど、


王 水 系 ヒ ロ イ ン っ て な ん す か ?


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とあるヴィランのハードラック

読者の感想、センスありすぎやないか?
王水系ヒロインが脳無て笑笑

今回はちょっと視点を変えてみた。


「何処を見てもヒーロー。生きづらいったらありゃしねぇ」

 

 とある喫茶店でコーヒーを一口飲みながらぼやく一人の男。

 

 中肉中背の目付きが悪い男はヴィランであった。

 

「超常黎明期以外にゃあ、名を残したヴィランなんていねぇし。というか名を上げるつもりもねぇ。どのみち、こんな時代じゃなかったら俺だってこんなことやってねぇよ」

 

 誰が聞いているわけでもない。店内に人はまばらで、小さくぼやく男の声は誰にも聞こえていない。

 男はすでに犯行を重ね、指名手配犯になっていた。強盗二十八件。殺人二件。特に強盗致死傷は運が悪ければ即刻死刑である。

 そもそも殺人を犯している時点でこんなことも何もないただの極悪人であるが、男にとっては自分は被害者で、世界そのものが敵なのである。

 

 変装してふらっと入った喫茶店すらも、金を盗んでやろうかと悩む。伊達に頭が良いことが悩みどころで、人の配置、周りの警備システムを確認するのが癖になっている。

 

「ちっ。しけてんなぁ」

 

 止めだ止めだ、と店の経営がカツカツなことを見抜き、手を振ってため息を吐く。

 

「チャンスは平等とは言うが、強盗のチャンスも平等にしてほしいぜ」

 

 したら世界が混乱することをどうか察して欲しい。バカと天才は紙一重だと言うが、この男の場合バカ具合と天才が微妙な塩梅でマッチしているがために面倒臭い。

 

「そろそろ金もねぇし、コンビニでも行くかぁ」

 

 金がないからコンビニに行くという謎の考えであるが、もちろん、男は強盗する気満々である。

 

 

 

☆☆☆

 

 

「警備システムは手薄。人通りは普通。店内に人は少ないが、お昼時は混む……ここだな」

 

 男はとあるコンビニに目を付けた。男は個性があるからと逃げきる気だ。

 決してヒーローは無能ではない。強盗を二十八件も見逃して何だ、と思うかもしれないが、それだけ男の個性とそれを悪用する頭脳が凶悪なだけである。

 個性に振り回されている現代において、男のように個性を十二分に扱えている存在は希少である。それを悪用していては意味がないが。

 

 世のため人のためなんて言わないから犯罪に使わない方法を模索してほしい限りである(ヒーロー一同)。

 

 男は客を装い平然と門戸を潜る。

 

「いらっしゃいませー」

 

 店員の言葉を聞くことなく、店内の人数を把握する。

 

(ふむ。店員がレジに一人。客は三人か……一人が惣菜パンコーナー。二人はカップラーメンコーナー。近いな……脅せば通報することは無さそうだ。

 だが、それでも合間を盗んで通報する奴もいるから……そういう時は誰か一人を人質にすれば良い。人質にして都合の良い奴は……やはり子どもか。

 ちょうど良いことに小学校低学年ほどの少年がいるじゃないか……ははは、悪く思うなよ。死ぬか死なないかは俺の都合上によるがね)

 

 男は一人の少年に目を付けた。

 惣菜パンをじっと見つめる、銀髪に赤い目をした不思議な雰囲気を持つ少年だ。少し浮世離れしているような風貌と雰囲気だが、男は子どもという認識に縛られその事に気が付かない。

 その少年の異常性にも気が付かない。なまじ、凝り固まった頭がその少年の異常に気が付かないふりをしたのだ。

 それが男の運命(最後)だったのだ。

 

「悪く思うなよ!」

 

 男が懐からナイフを取り出し、少年の首に突きつけようとした時だった。

 

 

「バ○ス!!!!!」

 

「あんぎゃぁぁぁぁ!!! 目がぁぁぁぁ!! メガぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 謎の掛け声と共に少年の全身が『虹色』に光るッッ!

 強烈な七色の閃光はたちまち男の視界を奪う。

 

「そんな危ないもん持っちゃあかんで!!」

 

 そんなエセ関西弁の言葉が聞こえ、男が衝撃を感じた瞬間悟った。

 

(殴り飛ばされた……?)

 

 目の見えぬまま男は錐揉み回転をしながら商品棚に突っ込んだ。

 

「あ、あがっ……」

 

 すでに男の意識はなく、ピクッ、ピクッと電気に撃たれた蛙のように痙攣し続けた。

 

 

 

「え!? 何!?」

 

 店員が騒ぎに駆け付けた時には、気絶する男以外誰もいなかった。この間三秒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男……ヴィラン名『クラールハイト』。本名、保古色波(ほごいろなみ)。個性『保護色』を持つ男は呆気なく駆け付けたヒーローの御用となった。

 格好付けて、透明をドイツ語にしたヴィランである。しかも、別に周りの景色に溶け込むだけで、透明でも何でもない恥ずかしい男は後に警官との事情聴取にこう語る。

 

 

 

「お、おい、俺はありのまま見たこと起こったこと聞いたことを話すぜ!? 良いコンビニがあったから強盗をしようと思ったんだが……ここまでは良いだろ?」

 

「何も良くねぇよ」

 

「人質を探してたら小学生くらいのガキを見つけたからこりゃ、良い人質だぜ、ひゃっはぁ! って近づいたらな……? ……いきなり虹色に光り輝いたと思ったらその瞬間吹き飛ばされたんだ……! 店員曰く錐揉み回転しながらな……そして、最後に聞こえたのは妙にイケボなエセ関西弁だったんだ……っ! 俺は恐ろしい何かの片鱗を味わった気分だぜ……っ!」

 

「虚偽は罪が重くなるぞ。どうせお前死刑だけどな」

 

「よく思えばあれは俺の罪を裁きに来た神かなにかだったのかもしれねぇな……」

 

「話聞けよ」

 

「くそ、あんなコンビニに目星付けたのが間違いだったぜ」

 

「強盗そのものが間違いだぞ」

 

「はぁ、人生お先真っ黒だ」

 

「だから話聞けよ」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 ワイ、ヘドロ。ピチピチの七歳。

 小学校の入学式を明日に控えた今日。珍しくうんこ施設長から小遣いを貰ったんや。曰く入学祝い(200円)らしいな。けちくせぇと思わんでもないけど、貰えるもんは貰っとくべきやな、そして、使える時にさっさと使うべきやな、とコンビニ行ったんや。

 

 惣菜パンなんてまともに食べたことないから、買おうかなとボーッと見とったんやけど、突然ナイフ持ったおじさんが来たから、虹色に光輝いてやった。

 そしたら、某ジ○リ映画の大佐やった。草生える。

 

 その後で、身体能力強化全開で殴り飛ばしたら13回転して吹っ飛んでた。草生える。

 

 後の始末とかめんどいから逃げたわ。

 あー、あのヴィランのせいでパン、買い損ねたやないかい。恨むわー。

 

 ナイフなんてそもそもワイに効かないんやけど。

 

 別に楽しみでも何でもない小学校やけど……大物とかいればええな。

 

 

 願わくば、ワカメと、とんがりコーンと一緒のクラスにはなりとうない。

 

 

 

 




主人公は基本クズなんでよろしく。


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ちくしょう、恨むぜ運命

補足……強盗で死刑にならないのでは、とありましたが、世の中には強盗致死傷罪というものがありまして。
強盗中に人殺したら無期懲役か死刑なんですよ。しかも、奴の話からわかるように、人質殺してるんですよ。その場合、もう一つの犯罪にも引っ掛かるので100%死刑なわけで。
ついでに言えばヒロアカ世界に死刑があるか、ということに関しても、オールフォーワンをタルタロスにぶちこんだ時に、看守が『ここは死刑すら生温い罪人が行き着く場所だッッ!』的なこと言ってるんで、死刑は恐らくあるでしょう。


更新遅くなってごめんなちゃい。


 

「よ、よろしく。ヘドロくん」

 

「ちぃっ!」

 

 ワイ、ヘドロ。ピチピチの七歳。

 少しだけ待ち望んでいた小学校に入学したんやけど……嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!

 

 ワカメいりゅぅぅぇぅぅぅぅ!!!!!!!!!

 

 関わりたくないワイは舌打ちして即刻立ち去ったんやけど、心は絶望や。

 教室入って、緑色のワカメ見つけた途端に思考停止したんやけどな。有紗とも別のクラスになったしな。

 

 ちくしょう。運命呪うぜ。

 

 その前にワカメの説明いるか? 

 まあ……『僕のヒーローアカデミア』……通称ヒロアカの主人公なんよ、こいつ。ナヨナヨしてるけど根性あるこいつ。

 緑谷出久ちゅー名前なんやが、こいつは生まれながらの無個性でな、日々誰か(主にとんがりコーン)から嘲笑とイジメを受けるばかりやったんやけど、ヘドロ事件……まあ原作のワイが暴れまわるやつやな。それを切っ掛けに個性ワンフォーオールを授かるんやけど……なんかバツが悪いんよねぇ……

 何せ、折角のヒーローとして輝ける場面をワイが奪うわけやから……。

 

 だからと言って犯罪者にはなりとうないし、その選択に後悔はないんやけど、悪い気はするんよ。

 

 だから、関わりたないって意思表示をしたつもりなんやけど……

 

 

「ねぇねぇ、ヘドロくんって────」

 

 こいつめちゃくちゃウザイねん!

 隣の席になったことを良いことにめっちゃ話し掛けてくる! 無視してんのに一向にへこたれへん!

 いや、とんがりコーンの罵倒に耐えてきたんだから、このこんにゃくみたいな性格(※殴っても感触ない)になってもしゃーなしやけど!!

 ワイに関わらんといて!!!!

 

「ほら、先生来たんやからさっさと前向きぃ」

 

「あ、うん。そうだね、ありがとう!」

 

 くぅぅ! 混じり気のない純粋な笑みを浮かべられると本当に主人公属性あるんやなぁ……としみじみに思う。

 

 

 ちな、先公は特筆すべき点が何もない凡骨やったわ。あぁ、すまぬすまぬ。先生=うんこ施設長みたいなイメージあるから、ついあたりがキツくなるんや、堪忍して。

 

 

 小学生だからか、入学式が終わると即刻解散になった。ワイは、ワカメの口撃を避けて有紗と一緒に帰ることになった。

 

 

「小学生はどうやった?」

 

「ガキばっかでつまんねー」

 

「お前もガキやろ……」

 

 と言うと睨まれた。刺々しい性格は一向に治らんのぉ。

 

 ま、知能指数が猿と成人並みに違うからギャップを感じるのもしゃーないと思うけど。

 そもそも、チート個性持ちとそこら中の有象無象と比べるのが間違ってるんやろな。

 有紗に関しては猫を被れば人気者になれると思うんやけど、上手くやれたんだろか。何となく評判を聞くのが怖いし、本人に聞いても答えてくれないだろうから手段がないわ。

 いや、前に笑ってからそういう所を話してもらえなくなったんよね。でも、あれは不可抗力やわ。笑わない方が脳ミソ腐ってる。

 

 

 そんなこんなで、施設に帰った後は修行タイムや。

 

 今日は有紗が付いてこないらしいから、ワイ一人で存分にできる。

 シュンっと修行場に瞬間移動したワイは、ぐっくっと屈伸運動をする。

 

「準備運動は大事やな。うん」

 

 それから、膝をヘドロ化して屈伸(笑)をする。ぐにょんぐにょんしてるわ。草生える。

 

 それから、ジャンプ!

 ビヨーンと悟空が甲羅を外して跳んだように高く舞い上がる。そして、全身をヘドロ化して落ち、破片を撒き散らす。

 

「やっぱりこの流れおもろいなぁ」

 

 あ、ふざけてるわけちゃうで?

 修行の成果の確認や。わかる人にはわかったと思うけど、長年の修行のかいありか、人間形態からのヘドロ化、またその逆の動きがスムーズにできるようになったんや。お蔭で、何とか実戦レベルまでには引き上げできたで。

 

 それから……ワイは体を再生しながら飛び散ったヘドロの破片を操作して浮かび上がらせる。

 

「うーむ、硬質化!! 散弾!」

 

 ヘドロを鉄並みの硬度に変化させ、攻撃対象にした一本の木に撃ち込む。

 

 ドドドドドドドドッッッ!!!!

 

 次々と撃ち込まれていったヘドロが、木の表面を削っていく。

 十数秒経つと、そこには表面が抉りとられた無惨な木があった。

 

「うーん……」

 

 ワイは厳しい表情をした。

 足らん。

 

「圧倒的に威力が足らんな。硬度が足りないのか散弾のスピードが足らんのか……どっちもやな」

 

 課題が浮き彫りになった。やはり実験はええな。

 確かに手数は増えたけど、これなら人間形態で殴った方が何百倍もマシやな。

 ガチムチ筋肉マンにこの技放ってもバッティングセンターみたいに一個ずつ跳ね返されそうやしなぁ……。

 

 遠距離攻撃も欲しいし、しばらくはこれの修行やな。

 

 

 一体何を目指すつもりなんだと言われそうやけど、とにかく強さを貪欲に求めてるんや、としか言いようがない。

 

 今のところの攻撃手段は……人間形態での物理攻撃。バ○ス。ヘドロでの窒息。遠距離攻撃(未完成)。

 正直窒息は原作を思い出すから使いたくないで。

 

 これだけ見れば便利な増強型っぽいなぁ。それ以外の能力がえげつないんやけど。

 瞬間移動からのヒット&アウェイ。もしくは、ヘドロの索敵を使ってのサーチ&デストロイ。

 

 

「暗殺向きやない??? 物騒すぎない??」

 

 本当に何を目指してるかわからんくなってきたわ。

 

 

 

 

 

 

 




1話ごとに一年進む予定。中学まで


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ワイ、臭いらしい

 ワイ、ヘドロ。ピチピチビチビチの八歳。

 小学校二年生になって少し成長したで。

 

 何の勘違いか、ずっと『個性一斉カウンセリング』は四歳、五歳の時にやるかと思っとったけど、小学生の時にやるらしいな。

 てなわけで、先日やってきたんやけど……

 

 まあ、自分の個性を把握して、どう使うか、何をしてはいけないのか、等を話し合うのが『個性一斉カウンセリング』なんや。力を持った子供を抑える役割やな。

 

 そんなわけで、ワイの個性を発動させたんや。さすがに、瞬間移動とか物騒なもんは発動せんへんけど、全身ヘドロ化したんやが、そこでワイが思いもよらない大問題が発生したんや。

 

 

 

 

 

 ワイ、臭いらしい。

 

 ぬぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! さすがに傷付くぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!

 

 確かに、全身ヘドロ化は有紗の前でもそんな使わんかったし、大体一人だったけど!! 

 しかも、クソを下水で煮込んだ匂いとか言われたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 くそ、有紗め! それはお前の性格やないかい!!

 

 個性一斉カウンセリングは他クラス合同やったから、早々にワイの噂は広まった。曰く、臭い奴だと。

 

 前世で付けられたあだ名のうんこマンより傷付くんやが?

 てか、有紗ととんがりコーンって一緒のクラスだったんやな。初めて知ったわ。

 

 あ、とんがりコーンっちゅーのは元祖『クソを下水で煮込んだ性格』の爆豪(ばくごう)勝己(かつき)や。

 主人公であるワカメの幼なじみ兼ライバルや。あんな性格のくせにやけに女性人気が高いのが腹立つ。下水のくせに!! あ、それワイやったわ。ちくしょう!!

 

 

「大丈夫? ヘドロくん。僕は気にしないから元気出してよ!」

 

 あぁ……ワカメきゅん……君はなんて素晴らしい人間なんだ……。

 ワイを慰めてくれるワカメくんの背後に後光が射している気がする。

 

「大丈夫や……匂いくらい特訓したら消える」

 

「そう、なんだ。僕は無個性だから……特訓とか憧れたんだけどなぁ」

 

 すでに諦めきった顔をしているワカメくん。

 無個性が判明して4年。ワカメくんはどうやら個性に関しては諦めているようだった。

 うーむ、やっぱりどうかしてあげたいのぉ。このまま暗い人生を歩ませるには惜しい人材や。

 

 どうにかして、ワンフォーオールを継承させてあげられないやろか……。ワイ以外のヴィランを誘導してガチムチ筋肉マンに対処させる……いや、その後でとんがりコーンを襲わせなきゃいけんし、現実的に人一人を操ることは不可能やな。

 いや……最初からとんがりコーンを襲わせればええのか? 状況を見計らって。

 

 ……ダメや! あれでも、とんがりコーンは正真正銘の強個性。爆破は単純故に強力すぎる。生半可な力じゃヴィランが倒されちまう。それにそのヴィランが人質を取るとは限らんし……。

 

 原作開始まで6、7年……くらいか?

 それまでに何とか対処せなあかん。

 

 

 

 一先ずは……匂いの特訓や!! 臭いはさすがに傷付いた!!!

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「あっははは!!!!! てめぇ、臭い言われて……あはははは!!!!!!」

 

「こんちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 家の方向的に一緒に帰ることになってしまう。

 有紗はワイを見るなり爆笑し始めた。あの時の有紗の気持ちがほんの少しわかったわ。だが許さん……っ!!

 

 ワイは笑う有紗を尻目に全身をヘドロ化させ、呼吸器を塞がぬように気を付けながら有紗の全身をヘドロで包んだ。

 

「あぁぁぁ!!! 臭っ。てめぇ、何しやがる!! くそ、動かねぇ!!」

 

 包んだ上に硬質化ずみや。ちょっとやそっとや動かんようになっとる。

 

「臭い言うなや!! これで、ワイの小学生時代のあだ名決まっちゃうやろ!!」

 

「るせぇ! 臭ぇのが悪いんだろが!!!」

 

「好きで臭くなってるわけちゃう!!!!」

 

 モガモガと動く有紗を睨み付ける。……ちょっと、冷静になってみたら、ちょいと事案じゃないか。

 涙目で睨む幼女をベトベトな物質で拘束する。あー、お巡りさんマッタなしやな。こいつだからええか。

 

 

 ワイは10分ほどで放してやった。

 瞬間殴り付けてきたから、即刻瞬間移動で退避した。

 

「まったく、あのロリは加減というものを知らん……!」

 

 少しだけ瞬間移動が間に合わんかった……。

 頬に付いたかすり傷に触れながら、このままじゃ負けるな、と改めて強くなることを決める。

 何となく有紗に負けることだけは気に食わん。あのロリにはずっとマウントを取り続けるんや!!

 

 

「さて、匂いを消す訓練や!!」

 

 いつもの修行場所や。

 ワイは全身ヘドロ化した上で、そのヘドロの匂いを嗅ぐ。

 

「……ワイは臭いとは思わん……というか無臭なんやが」

 

 さては、エンデヴァーが自分の炎が効かないのと一緒で、匂いがわからんのか……!?

 

 待て、そうなると、この匂いって攻撃判定付いてるってことになるやん!?!?

 待て待て待て、そんなの望んどらん!! 匂い消したいのに、匂いを感じないってどうすることもできんやん!!!

 

 

 どうする……どうする……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 結論から言おう。

 

 

 

 フローラルな香りがするヘドロが出来上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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決別と夢

決してサボってたわけじゃないんですよ信じてくださいお願いしますテストとか修学旅行とか色々あってマジで忙しかったんですなにもする暇がなくて日々忙殺されて書くことができなかったんです悪気はないですごめんなちゃい。


 ワイ、ヘドロ。もうすぐ二桁になる9歳や。

 

 あ? 誰だ9歳(くさい)とか言ったやつぶっ殺すぞ。

 

 ワイは臭くないねん! ちゃんとフローラルな香りのするヘドロになったんや!!

 でもなぁ、有紗に匂い嗅がせてみたら、鼻つまんで『下痢した後に無理やり匂いのキツイ芳香剤をぶちまけた不快な匂いがする』って言われたんや!!!!!!!!!

 

 Fu○k!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 誰がウンコじゃごら!

 

 なんて軽口(?)を言う元気はないんや。

 というより、今それどころちゃうんや。過去を思い出したのはちょっとあまりのショックに記憶がごちゃごちゃに……まあ、ええ。

 

 現在問題なのは、()()()()()()()()()()()をどうするかが問題やな。

 

「オレの家族はヘドロだけだ!! 引き取りなんてするなぁぁぁ!!!!」

 

 そう、いずれ覚悟はしていたが、有紗の引き取り手……里親となる人物が決まってしまったんや。

 もちろん、ワイも嫌や。

 問題児及び面倒な奴とはいえ、5年も付き合いがあるし、情というより家族って感じや。共に色々やってきたし、切っても切れぬ関係やと思ってた。

 

 でも……ワイには何もできない。

 

 ここで、有紗の手を掴んで逃げれたら、と思う。

 

 やけど、前世の記憶、経験がワイに語りかける。

 このまま、逃げた所でヴィランに身をやつすしか方法がない、と。

 

 正式な手続きを交わしてる以上、それを反故にすることは犯罪や。見つかったらワイは少年院にぶちこまれるし、有紗とは二度と近づけなくなるだろう。

 それを有紗もわかってるからこそ、口では言っても決して暴力を振るわない。

 

 くそ、ワイは無力や。力を着けた気になってたのに家族すら守れん……。こんな個性があろうと年齢と社会に勝つことができんのや!

 

 無力にうちひしがれていると、喚いてた有紗が近づいてきた。

 

 

「なんで、てめぇが泣いてんだよ。オレがいなくなって清々してるんじゃねぇのかよ」

 

 さっきまで、オレの家族はワイだけとか言ってたのに、よくそんなことを言える。いや、ワイに対してのいつもの軽口やな……。

 

 ならば、とワイもいつもの調子で返す。

 

「なんや。さっきまでワイのことを求めてびーちくびーちく、泣いてた癖にようそんなこと言えるなぁ」

 

「てめぇも……泣いてるじゃねぇか……」

 

 涙が止まることはない。止められるわけがない。

 最早有紗はワイの半身みたいなもんや。欠けてはいけない存在。

 そう認識して、思ってたより有紗が好きだったのだと気がつく。いや、家族としてやけど。

 まだピチピチの9歳やし恋愛とかわからん。

 

 有紗は気丈に不適な笑みを浮かべると、ワイに一通の手紙と言葉を残す。

 

「次は……雄英だ。オレはヒーローになる。てめぇも来い。じゃあな」

 

 ワイは有紗の言ったことに固まる。覚悟の決まった表情をして立ち去る有紗が手を振るまで、ワイはフリーズしたままやった。

 

 

 

 

「ふぁ!? 雄英!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 なしてそんな覚悟が決まったのかはさっぱりわからない。

 有紗がいなくなった喪失感に打ち震えつつ、自室に戻ったワイは、有紗から貰った手紙を読むことにした。

 

 

 

『拝啓 ウンk……ヘドロ

 

 オレは家族を殺したヴィランに復讐するつもりだった。胸に煮えたぎる復讐心が消えていくことはねぇが、オレにはもう一つ夢ができた。

 ヒーローだ。英雄だ。てめぇはヒーローが嫌いなようだから……嫌がらせだ!

 というのは嘘で、オレはてめぇと会って守りたいものを知ったんだ。友達も少しだけどできた。それは守りてぇと思うのは普通じゃねぇか?

 それに、オレはいつかてめぇよりも強くなって、誰もが憧れるヒーローになって……てめぇも守りたい。

 面と向かって言うのは……ちょっと無理。

 

 だから、次は。雄英で。その時に、オレがまたその言葉を直接言うまで。

 待っててくれねぇか?

 

 誰よりも臭いヘドロの家族 有紗』

 

 

 

 

 

 

「有紗…………許さん」

 

 感動してた気持ちがラスト一文で全て吹っ飛んだんやけど? わざとやな? わざとやってるよな? 恥ずかしいのを誤魔化してるのバレバレやで?

 

 やけど……有紗がそんなことを思っとるんなんて……予想もしてなかった。

 ワイの心は今、かつてないほどに奮い立っている。

 

 友達であり、家族であり、そしてライバルである有紗にそんなことを言われちゃワイは黙ってるわけにはいかない。

 

「行くか。雄英。誰が見ても恥ずかしくないほど立派になって」

 

 

 

 その瞬間、ワイは……いや、()は決別と共に知った有紗の夢を追うことを決める。

 少し先で。先を知る者として待ち受けるために。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、ちょっとオールマイト探しに出掛けようかな」

 

 

 雄英の()()()()()に♪

 

「ワカメ……緑谷には予定通りワン・フォー・オールは取得してもらう。最初()()は原作をなぞろうか。あとは、知らないな。起こる不条理なんて全部ぶち壊してやる」

 

 原作ブレイク? 上等上等。誰かが死ぬよりかは百倍まし。

 目下やるべきことは定めた。あとは、期間内にやりきるだけだ。

 

 それは俺にかかっている。

 

 転生者としての知識は一応『頼り』にはしよう。

 確実に有紗が受かるから、その時点でもう無茶苦茶だ。筋書きを調整しつつ何とかするしかない。

 

 俺の『ヘドロ』で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヘドロ──覚醒。
ちょっと、時が飛びます。
原作開始まで巻きで行くよん。


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やべぇ……No.1ヒーロー舐めてた

え、2ヶ月間何やってた?……ノーコメントで


 

 いやぁ……オールマイト全然見つからねぇぇぇ!!!!

 

 見かけたことは何度かあるけど、追い掛けても速すぎて無駄だわ。忙しさ舐めてた。No.1ヒーロー舐めてた……ッッ!!!!

 

 となれば原作デクが追い付けたのは奇跡だよな。奇跡というか執念な気もするけど。暇に見えるオールマイトだけど、今時期はかなり忙しいらしい。てなわけで、まだチャンスを伺う必要があるようです。ふぁっく。

 

 

 はい! どうも、似非関西弁を卒業したヘドロです!! 十三歳です!!

 

 中学一年生になりました!! 僕はイケメンです!!

 

 

 え、ヘドロみたいなド腐れ外道……いや、下水道みたいな奴がイケメンなわけあるかって? あ゛? 誰が臭いって、ぶっ殺すぞッッ!!!

 

 ……それはさておき、ヘドロ人間形態は面白いことに銀髪赤目のイケメンルック。人生舐めれます(笑)。

 バンバン告白されますわ。俺ウハウハですわ。

 

 

 

 ……まあ、付き合うとかそんな暇無いので全部断ってるんですけどね。

 

 

 スゥゥーーーーーーーーッッ(悲しみ)

 

 

 

 別に戦闘狂でもないのに、自衛のために日々トレーニングを積み重ねる毎日。彩りなんてこの世にはなかったよ。……無彩色ッッ!!!! 俺の人生モノトーンお先真っ暗ァァァァァァァ!!!!!

 

 

「どうしたの? この世に絶望した挙げ句にペペロンチーノが鼻に詰まったような顔して」

 

「そんな顔あったら見てみてぇわ」  

 

 世の儚さに諸行無常してたら(意味違う)、友人の一人から不審に思われたようだ。語彙力あるようで何よりです。

 

 

「そろそろテストかぁ。ヘドロは大丈夫?」

 

 あー、そろそろそんな時期か。

 一年生最初の定期テストが幕を開ける時期だ。正直、数学は『+』『-』系統の楽勝計算問題だし、国語はフィーリング。英語は前世じゃペラペラだったし余裕。社会は日本史も世界史も暇な時に暗記したからノープロ。理科は個性関連の研究する時に勉強したしいけるだろ。

 ハイスペックとは俺のこと!!!

 

 ……って誇れたら良いんだけど、全部この後の生活を楽にするためだから……死に物狂いでやんなきゃ殺られるだけなんだよ。

 

 そういえば雄英って偏差値『79』らしいな。

 もし強個性の奴が頭悪かったらどうなるんだよ、と思ったけど、ただ個性が強いだけじゃヒーローはやっていけないって話だな。最近は身に染みてわかるわー。俺は匂いが染みて困るわー。え、聞いてない? 聞けよ、ぶっ殺すぞ。やっべボキャ貧。

 

 独り言がうるさいとか言わないで。

 

 

「いきなり黙ってどした? マジでテストヤバい感じ?」

 

「いや。何でもない。ちなみにテストは余裕。入試成績1位舐めんなよ」 

 

「やっぱり余裕か……。俺は……ヤバい」

 

「お、おう。強く生きろよ」

 

 UMA(未確認生物)みたいな顔で落ち込んでいる友人を適当に励ましながら、俺は荷物を纏めて教室を出る。

 

 そこそこ有名な公立中学に入学した俺だけど、授業の拘束時間長いし選択をミスった説がある。

 それも一重にワカメととんがりコーンから逃げるためだけど、何もそこまで徹底する必要なかったし……。

 

 

 目下の悩みはワン・フォー・オールのことだけど、今一度原作を振り返ってみようか。

 

 あの時、オールマイトが何故デクに継承したか。

 

 

 ヘドロ事件の全貌は、デクがヘドロに取り憑かれる→オールマイトに助けられる→去ろうとしていたオールマイトをデクが止める→なんやかんやあってデクがオールマイトに無個性でもヒーローになれるか訊く→有耶無耶にしながら、暗にデクを諭すオールマイトォ!→意気消沈しながらデクが帰っていると、ヘドロに囚われたかっちゃんの姿ァ!→ついつい飛び出し助けようとするぅ!→オールマイトが助けるぅ!→あの時脇目も振らずに助けようとしたデクにオールマイトの心が動くぅ!

 

 →君はヒーローになれる(キリッとオールマイト。

 

 →デク、号泣。

 

 

 だろ?

 

 つまり、ヘドロ事件でオールマイトの心が動いた要因は2つあるわけで。

 

 前提条件として、最初にデクが襲われた時にオールマイトはデクが無個性であることを知る。それは、元無個性のオールマイトに少しばかり響く内容なわけだ。

 ここでデクの印象がオールマイトの心の片隅に植え付けられる。

 

 あとは知っている通りなわけで。

 

 

 ……マッチポンプするのはほぼ不可能。

 

 第一条件ですら達成困難だし。

 まず、デクとオールマイトが人気のない場所で会うってシチュエーションがなぁぁ。

 

 

 うーん、前途ォォォォ多難んんんん!!!(某透過の人)

 

 

 

「いや、ナニコレ無理ゲーすぎるだろ……」

 

 諦めたいくらいだけど、あんな良い奴の夢ぶっ壊すの忍びないし……。打算で言えばあいつ、いないと世界がピンチだし…………ちなみにお察しの通り、打算が9割だけど何か? え、クズ? んなもん知っとるわボケ!

 

「早いとこオールマイト見つけないとヤバい……。ネットとか使えないし手段限られすぎぃぃ」

 

 ネットさえ使えればな。犯罪だけどオールマイト宛にひっそり犯罪予告送れば来ると思うし。でも、御存じの通り施設なんで。うんこ施設長なんで。ネットなんか使わせてもらえるわけねーですよ。

 

 学校のパソコンでやるのは……ねぇ? 倫理的にどうなの? 今更だけど。物凄い今更だけど!!!

 

 

「ネカフェも金ないから無理なんだよ、うちの学校っつーか、中学生にバイトはキツイ」

 

 新聞配達でもやってやらァ!! って思ってたけど、うちの学校そういうの厳しいからな。

 

 

 

 

 ん、待てよ?

 

 

 

 個性使って変装すれば良くね?

 

 

 

 待って、俺天才かもしれない。

 

 

 早速試すか。

 

 

「ヘドロ式瞬間移動術! とりゃ!」

 

 

 というわけでやってきました何時もの修行場所。

 ヘドロを端末として置いてるんで何時でも瞬間移動可能でしゅ!!

 

 

「変装、変装か。ヘドロ・フォー・フルカウルの状態で、ヘドロだけを形態変化させればいけるのか? 虹色に光るし、保護色の応用みたいなもんかなぁ」

 

 ふんっ!!! ヘドロ・フォー・フルカウル!!

 別にデクみたいに緑色の光がバチバチなるわけでもないのよね。身体能力上がるのは永遠の謎。

 そのフルカウル状態で顔のヘドロの色を変えていく。

 

 

 ぐぬっ、意外に操作がムズイ。顔全体じゃなくて所々を変えてるのも細かな精密操作が必要だし。

 

「ヤバい、油断したら顔溶けるなこりゃ。端から見たらホラーじゃん。通報待ったなしなんだが」

 

 いやん、この年で警察のご厄介になるのはらめぇぇ!!

 もうちょっと!! もうちょっとおっさんになってからなら良いよー! いや、良くはないけども!!

 もしも俺が30歳童貞の引きニートだったら……務所で適当に余生過ごすわ。そうなったらよろしくぅぅ! 国家公務員の皆様!! 尊敬しておりますわ!

 

 

 

 そんなことを考えながら試行錯誤を繰り返していく。

 ふむ、瞬間移動のように何時間かで出来るようになるのは無理だな。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 一ヶ月後に何とか物にすることができた。

 

 

 

 

 やっほい!! バイトしまくるぜ、てやんでぇちくしょうめ!!

 

 

 

 

 

 

 



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やべぇ……人生舐めてた……

 

 バイトが思いの外辛いことを知った。

 

 ごめんなさい、人生舐めてました。舐め腐ってました。イケメンだからって調子乗ってました、許してください。だが、主任、貴様は許さんッッ!!!! 時間外労働させやがって!!! たかがスーパーのバイトで残業連続させる奴あるかぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

 はい、ヘドロです。  

 変装を身に付けてから半年が経過しました。

 

 いやぁ、仕事ってしゅごい(小並感)

 普通に大変なんだが。上司はイビってくるし、後輩は煽ってくるし。

 

 本当に全員ヘドロで窒息してやろうか……おっとヴィランヴィラン。

 ふっ、ヴィランはいつだって人間の心に巣食うのさ(キリッ

 

 そんなことはさておき、金は手に入った。やったぜ、金だぜ。金ぇぇぇぇぇぇ!!!!!(情緒崩壊)

 

 いや、しゃーねーだろ。

 こちとら転生してから早13年。今の一度も札を見たことがなかったんだからな?? 冗談抜きに小銭しか見たことないから。万札とか本当に存在してたのか疑ってたわ。

 

 単にうんこ施設長がお金を渋ってるだけなのか、はたまた経営がカツカツなのか分からないけど、俺は多分前者だと思う。うんこだし、うわっ、臭っ。やべ、それは自虐。

 

 臭い奴というあだ名は中学に持ち越しにならなかったのが幸いだぜ。時たま小学校の奴らから言われるけど。あいつらとの関わり無くしたい。イケメンだからって嫉妬か? ああん、ごら? ふっ、醜いな。嫉妬するよりも自分を磨けよ。

 

 

「そんなことはさておき、やってきましたネカフェ! 一歩間違えれば犯罪者!! 成功すれば英雄に!! ま、どのみち犯罪だけど!!」

 

 脅迫罪という奴がありまして……(ry   

 

 危ない橋は渡りたくないけど、ほら、石橋は叩いて云々って言うやん。多分意味は違うけど。

 

 てなわけで、パソコンをテレレと起動。

 オールマイト、と検索した所で、俺の指が止まる。

 

 

「……どうやってオールマイトの目に触れさせんの?」

 

 単純な疑問だったッッ!!!!

 あんな為りしてエゴサしてるとは思えないし、犯罪の予兆があれば来るだろうけど、自分でそれを起こすのはリスク高いし。

  

 うんうんうん、と便を絞り出すように唸っていると、とあるニュースがふと視界に入った。

 

 

『凶悪ヴィラン、○○市に潜伏か!?』

 

「ほう……」

 

 ニヤッと思わず笑みが深まる。

 この情報は真新しいな。それにここから近い。

 

 凶悪ヴィランと銘打ってあるが、調べたところ凶悪どころか極悪だ。

 殺人4件、強姦7件、強盗六件。うわっ、これは酷い。

 

 日本の犯罪率って4%じゃなかった? その4%に極悪人が詰め込まれているのか、クソだな。

 

 まァ、幾らオールマイトが抑止力になるって言っても、人一人じゃ限度がある。逆に言えば、人一人でアメリカと16%も犯罪率に差がある時点でさすがNO.1ヒーローだなと思うが。

 

 

「電車賃もあるし行けるか。ま、会えるかどうかは運ゲーだし、気負わずに行きますか」

 

 5分しかネカフェにはいなかったせいか、店員に怪訝な顔をされながらも会計を終えた俺は、近くの駅へと向かう。

 ガタンゴトンと久しぶりの電車に微かな充足感を覚えながら、揺れること二十分。

 俺は件のヴィランがいるとされている『潜土市(せんとし)』へ降り立った。

 

 都会とも言えず、田舎とも言えない中間点にあるような、なんの変哲もない場所だ。

 だからこそ、目立たないという利点がヴィランにとって好都合。どこに潜伏しているかは不明だが、ここにいると見て間違いなさそうだ。

 

 

「ふむ、まずはヴィランを探すか」

 

 ふっ、俺が索敵できないとでも思ったか?

 このヘドロ様に不可能はないのだッッ!!!!!

 

 俺は人目の着かない場所に移動するなり手をクロスにして──大きく広げるッッ!!

 

 

「散開ッッ!!!」

 

 俺の体が即座にヘドロへと変わり、四方八方に飛び散る。

 

 かーらーのー!!

 

 

「『意識拡張』。『シンクロ』!!」

 

 ヘドロ全てと意識の波長を合わせて、自らの意識と同期させる。

 

 

「ぐっ」

 

 瞬間頭に鈍痛が走るが、それを何とか堪えてヘドロを街中に飛ばしてヴィランを探る。

 

 何か途中で変態三兄弟のヴィランがいたけど無視。

 

 

 うおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!

 

 ッッッッ!!??

 

 

「っ、見つけた!!」

 

 

 俺の頭に映る光景は、薄暗い工場で息を潜めるヴィラン──黒い豚を象ったマスクを被り、黒いマントを羽織るヴィラン名『ダーク』。

 

 個性『漆黒』。自分の身に付けている黒い物から、物理攻撃力を有する球状を造り出す能力だ。

 かなり個性を鍛え上げているのか、『漆黒』の威力は高い。

 名のあるヒーローでも、当たれば一発で沈むと言われている。

 

 

 目的のヴィランを見つけた俺は『シンクロ』を解き、工場近くに瞬間移動する。

 

 

「ここか」

 

 そこそこ大きい廃工場だ。周りに人影はなく、所々錆びている工場は近付き難い雰囲気を感じさせる。隠れるにはもってこいの場所だろう。

 

 

「ふむ、どうしようかな」

 

 別に完璧超人イケメンである俺が、さっさとヴィランを捕まえてオールマイトに引き渡すことでコネクションを得る、という方法はある。

 

 

「でも、面白くないよな」

 

 普通すぎる。もっとインパクトある出来事の方がオールマイトの心に残るよな!!!

 

 

 

 うーーーーむ。

 

 

 

 あ、そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 オールマイトぶっ飛ばせばよくね?

 

 

 

 

 

 




鬼滅の二次創作投稿したんで、暇あったら読んでくれる嬉しいでゴザル。


あ、そうだ。
ウマ娘やってたら投稿遅れても良いってマジ?


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