暗殺教室 ✕ 仮面ライダーダブル (全て儚き名も無き遠い理想郷)
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第1章:開校のA 編
開校のA / 始業の時間
主人公は仮面ライダーだけれど暗殺教室の中では最強ではない、そんな感じの作品を書きたいなと思いました。
作品の中での時系列などは次回以降やっていければなと。
暗殺教室の原作を集め直しながら書いていますので基本更新は遅いし、不定期です。
ダブルの方は風都探偵やオリジナルのフォーム等も出せればなと思います。
感想などあれば。
それではどうぞ。
風都。
善と悪、その二つを風に乗せて運んでくる街。
そんな風都にて俺ーーー黒月翔太朗は探偵業を営んでいる。とは言っても中学生の身で事務所経営なんてできるわけがないので姉の名義と言う形ではあるのだが、そこら辺の事情はまたの機会にしよう。
そんな俺も中学三年生。通ってるのは電車で二駅ほど行った所にある椚ヶ丘中学。今は諸事情で停学処分の身ではあるが、四月後半になってようやく復帰することになった。
「事情は今話した通りだ。地球の危機ゆえ秘密の口外は絶対に禁止。もし漏らせば記憶消去の治療を受けていただくことになる」
「は、はぁ…」
「E組の全員に同じ説明をして他の皆は既に任務に入っている。君より先に停学が解けた生徒も既に合流して任務に参加している」
黒月探偵事務所を訪ねてきたのは防衛省の烏間惟臣という男。
予約がある依頼人も特にいなく、受けた依頼も特になかったので話を聞いてみることにした。
4月上旬、月が爆発して7割が蒸発するという異例の事件が起きた。一生三日月しか拝めないのかと世間が騒いでいたのが記憶に強く残っている。その時はドーパント事件の方に取り掛かっていたため、相棒に頼んでドーパントが関係しているかを調べて可能性が低かったから放置していた。
しかし、月を爆破した犯人と名乗る怪物が「来年の3月、地球も爆破する」という予告付きで椚ヶ丘中学校3年E組の担任になった。この事を知るのは各国首脳だけで、世界がパニックになる前に何とか殺そうとしているわけだった。
どういうわけか怪物は椚ヶ丘中学3年E組の担任となることを希望し、政府も生徒に一切の危害を加えないのを条件に承諾した。成功報酬は100億円。
「あの、烏間さん」
「なんだ」
「ガイアメモリの案件に関わっておいてなんですが、フィクションじゃないですよね?」
「気持ちはわかるが、残念ながら現実だ」
聞けば最高速度はマッハ20。アクセルトライアルより速いじゃないか。
ナイフを避けながら丁寧に眉毛の手入れをし、最新鋭の戦闘機に襲われれば空中でワックスをかけるなど下手すればドーパント以上じゃないかと思うほどのエピソードのオンパレード。
「君は風都で噂の仮面ライダー。赤井警視から聞いている」
「…なるほど。いざとなればダブルの力で解決を、といったところですか」
「そういうことだ」
「お断りします」
これだけは譲るわけにはいかない。
「E組に復帰する以上、暗殺には参加します。けど、ダブルの力はその怪物がドーパントかそれに匹敵するほどの脅威と判断しない限りは使いません。これに納得いただけないようでしたらお引き取りを」
これは黒月探偵事務所の方針であり、俺が親父から受け継いだポリシーでもある。
地球の危機に何を言ってるのかと言われればそれまでだが、ガイアメモリ犯罪の案件と言い切れない以上は安易に肯定するわけにいかない。
赤井さんから話を聞いているということはダブルのことについての公表を避けてほしい意向も理解してくれていると思いたいが。
「ああ。赤井警視から聞いている。君の探偵活動については我々も干渉しないし、生徒にも公表しない」
「…ありがとうございます。それとさっきはすみません」
「いい。政府としてもガイアメモリ犯罪は見過ごせないものだ」
「感謝します」
こうして俺は担任教師の暗殺という任務を受けてE組に復帰することになった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ー渚sideー
4月下旬。
カルマ君が復帰し、奥田さんの毒騒動から数日経ったある日のこと。
僕たちE組は担任の超生物ーーー殺せんせーの暗殺が日常に定着しつつあった。
「今日からこのクラスに復帰する生徒が一人いるそうですね」
「ああ、黒月か」
朝のHRにて。
いつものように全員での一斉射撃を終え、一時間目の授業前に殺せんせーが言った言葉に反応したのはクラス委員の磯貝君。
今現在、このE組に在籍する生徒で停学処分を受けていたのは復帰したカルマ君を除いて彼一人だけ。
「にゅや?お知合いですか」
「あー、何て言うか」
「変わったやつだよ」
黒月君を知らない殺せんせーに反応したのは岡野さんと前原君。
黒月翔太朗。E組に限らず本校舎の生徒含めて彼のことを知らない人は恐らくいない。
このエンドのE組は成績不良や素行不良が原因で落とされた生徒が大半だが、彼だけは落とされた理由が少し違う。
成績は恐らく普通。素行も遅刻するのが多いのを除けば悪くないと言える。
「何かあったのですか?」
「A組と揉めたんだよ、黒月のやつ」
殺せんせーの質問に杉野が答える。
黒月君は差別の扱いを受けるE組の生徒とも対等に接しようとするこの椚ヶ丘中学の中でもかなり珍しい生徒だった。本校舎時代から噂で彼の名前が広まるぐらい有名な生徒だった。
E組の扱いはこの学校に入学すると嫌でも覚えさせられる。それを受けて生徒は主に二つに分けられる。E組の差別に加担する者と見て見ぬ振りをする者。僕の体感だと前者が八割、後者が二割と言ったところだ。
「おやおや」
「E組の先輩たちをカツアゲしてたA組の先輩たちを偶然見かけて止めに入って口喧嘩。その後先輩たちにタコ殴りにされた挙句、理事長からのお説教受けてE組行き決定の上で停学処分」
「それはそれは」
そこまで話したところで烏間先生が入ってくる。
僕はクラス全体を軽く見渡してみる。
黒月君が来ると聞いてからクラスの殆どはどこか浮かない表情を浮かべていた。かく言う僕も黒月君が復帰すると聞いて少し複雑な気分だった。
「入ってきてください」
「失礼します」
そう言って扉を開けた黒月君は殺せんせーに視線を向け、その場で停止した。
「にゅ?」
「…」
黒月君は無言で扉を閉め、そして扉をもう一度開けて殺せんせーを凝視すると口を開いた。
「どうかしましたか?」
「……いや、何も。停学明けで少し疲れてるみたいで」
「そうですか」
目元を抑えながら答えた黒月君を見て僕たちは忘れかけていたことを思い出した。
(そりゃ驚くよな…)
(2mはある超生物を前にして平気でいられる俺らの方がずれてたわ…)
殺せんせーと過ごして約一ヶ月、殺せんせーと毎日顔を合わせていたら嫌でも慣れてしまう。カルマ君が平然としてたから気に留めてなかったけど普通に考えて殺せんせーが初見の人なら普通今のような反応をするだろう。
見れば烏間先生でさえ納得したように頷いている。
「黒月翔太郎です。ちょっと先輩方や理事長と拗れて停学してましたが、気にしないでください。よろしくお願いします」
簡単な自己紹介を済ませると黒月君は菅谷君の後ろの席に座る。
彼の方に視線を向けるとどこか変わったような様子はなかった。机の中に入っていた対先生用ナイフをペラペラと振って疑問を浮かべたような表情をしたけどすぐに元の表情に戻った。
一時間目の授業が終わると、僕は彼に声をかけようと席を立つ。すると既にカルマ君が黒月君と話していた。
「久しぶりだね、黒月」
「おう。カルマはいつ復帰したんだ?」
「つい最近。それよりどう?殺せんせーを見た感想は」
「……色々、衝撃すぎて言葉が見つからん」
「あはは、そりゃそうだよね」
黒月君の言うことは最もだ。僕たちにとっては見慣れた光景でも復帰したての黒月君にとっては衝撃だろう。
「黒月君、久しぶり」
「久しぶり渚。あれ、髪型変わったんだな」
「う、うん」
そんな感じで他愛もない話をしていると一人の女子生徒が黒月君に話しかけた。
「ハロー、翔太朗。久しぶり」
「詩乃。朝に会ったんだから久しぶりは違うだろ」
「まあまあ、少し外で話さない?殺せんせーにナイフとBB弾が効くかどうか確かめときたいでしょ?」
「そりゃまあ」
「なら、挨拶も兼ねて暗殺しに行こうよ」
「暗殺しに行くってなお前…」
「いいじゃん。俺もついてくからさ」
「カルマまで…」
三枝詩乃。
自由な性格で時折殺せんせーを焦らせるほど奇抜な行動を取ることがあるけど、何故だか許せてしまう不思議な雰囲気を持った人だ。黒月君の幼馴染らしく二人で話してるのを何回か見かけたことがある。
黒月君は三枝さんとカルマ君に流されるように連れられて教室を出て行った。去り際に「また後でな」と手を振ってきたので手を振り返す。
「…黒月、
誰かがそう言った。
「あの理事長にしこたま言われて、なんで平然としていられるんだよ」
「
「せっかく暗殺で盛り上がってきたのにな」
この3年E組において黒月君は浮いた存在だ。
彼の復帰は殺せんせーが来てから変わりつつあったE組を元に戻すような、そんな気がした。
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ー浅野學峯sideー
「今日から復帰だったか」
未だに思いだす。彼にE組行きだと宣告した時の事を。
恐らく彼は知らないのだろう。
自分がどのように思われ、どのように扱われているのか。
やはり、彼はあの場所にいるべきではない。
私の理想はエンドがエンドであってこそ成し遂げられる。
瞬間、疼くような感覚を覚える。
かつて親友に殴られた右の頬に手を添え、
『俺が何故、お前を殴ったかわかるか?』
未だに理解できない。
『俺は俺の罪を数えた』
君は一体、何の罪を犯した。
『次はお前の番だ』
私が数えるべき罪は一体、何だと言うんだ。
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ー翔太朗sideー
詩乃とカルマに連れられて職員室に行き、烏間さんに改めて挨拶をしてから殺せんせーに確認を兼ねて触手にナイフを当ててみたが、本当に効果があるようだった。
それからは特に何かあるというわけでは無く、普通に授業を受けて時折クラスメイトが暗殺するのを見てその度に規格外の動きで避けた挙句に次の暗殺のアドバイスをするという謎な一面が見られたがそれ以外は特に何かあるわけでは無かった。
「黒月君、一緒に帰らない?」
帰り支度をしていると渚が近寄ってきた。
別に断るような理由もないので了承する。渚とは本校舎にいた頃、カルマ経由で知り合った。
「翔太朗、一緒に帰らない?」
「渚も一緒だけどいいか?」
「潮田君も?いいよ。途中まででしょ?」
「渚もそれでいいか?」
「う、うん」
そんなわけで渚と三枝の二人と帰ることになった。
帰り道、俺がいない間の事を二人からいくつか聞いた。
寺坂、吉田、村松が主導で行った渚の自爆テロ暗殺、杉野のためにプロ野球選手が殺せんせーの触手に絡まれた話、カルマの飛び降り暗殺、奥田お手製の毒による暗殺など。
随分と一ヶ月の間に暗殺を仕掛けたなと思う。それほどまでに成功報酬100億円が効いているのだろうか。
「じゃあ、僕はここで」
「おう。また明日な」
「うん」
渚と別れてから詩乃と共に風都に着いた直後のこと。
鞄に入れていたスタッグフォンに着信が入る。画面に映された着信相手は相棒のアグネスタキオン。
「どうした?」
『今どこにいるんだい?私はお腹が空いた』
「…姉さんに頼めばいいだろ。それより何かあったのか?」
『依頼だ。ドーパントが関わっている可能性が高い』
「それを先に言え。すぐ戻る」
タキオンとの電話を終えると隣にいる詩乃が聞いてきた。
「依頼?」
「ああ。急いで帰るぞ」
「オッケー」
超生物暗殺の任務を受けることになっても俺のやるべきことは変わらない。
依頼人のために探偵としてやるべきことをやる、ただそれだけだ。
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