マクロスΔ ハヤテの兄貴はデルタ小隊で頑張ります (ELS@花園メルン)
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戦場のプロローグ 前

劇場版のマクロスΔを見て、創作意欲が沸き上がりました。
どうも、メルンです。

今回は、オリ主をハヤテの兄というポジションにおいて物語を進めたいと思います。
劇場版のネタバレにならないようにアニメをメインにおいて進めると思いますが、オリジナル展開なんかも考えていこうと思います。


人類が種の存続を目的とした銀河への果てしない航海を始めて、早半世紀が経過した。

 

2067年――フロンティア船団が異星体〈バジュラ〉との戦いが終結した8年後。各地の銀河系で人々が突発的に狂暴化する謎の現象〈ヴァールシンドローム〉が発生し、混乱をもたらしていた。

しかし、その脅威に対し歌の力を用いて立ち向かう〈戦術音楽ユニット ワルキューレ〉。彼女たちの歌声はヴァール化した者たちに干渉し、鎮静化させるという効果があった。

 

 

ブリージンガル球状星団――惑星アル・シャハル

広大な砂漠が広がる星で、観光産業を営むために都市部の開発が進められているこの惑星に一人の青年がやってきていた。

黒を基調としたジャケットを羽織り、グレーのパンツを履き、蒼く少し長い髪を後ろ手に縛って、首元には小さなロケットをかけていた。

 

 

「いやぁ、砂漠の中の観光都市って聞いてたからどんなのかと思ってたけど、とんでもないな!凄い賑わってるし、食べ物も旨い。――アイツも、ここで元気に働いてんのかねぇ?」

 

 

青年は初めて来た惑星の活気を五感で堪能しながら、首元のロケットを開き、中に入っている写真を確認する。

写真には少し幼いころの青年と彼より少し小柄な少年が2人の両親と思しき人に肩を抱かれながら笑っている姿が写っていた。

 

 

「お?これはワルキューレの曲か?――やっぱり人気があるんだねぇ。向こうにいた頃のシェリルさんやランカさんみたいなもんか」

 

 

青年はアル・シャハルのとある宇宙港の受付へと向かい、そこの担当者に声をかけた。

 

 

「いらっしゃいませ、どの様な御用でしょうか?」

 

「ドーモ、お姉さん。知人を探してるんだけどね。ハヤテ・インメルマンっているかな?ここで働いてるって聞いたんだけどさ」

 

「少々お待ちください。――ハヤテ・インメルマンさん。ええ、確かにこちらで働いておりました」

 

「おお!やっぱり――「ですが、本日付けでクビになっています」――は?クビになったんですか?」

 

「はい。まだこの惑星内にいるとは思いますが、どこにいらっしゃるかは解り兼ねます」

 

 

それを聞いて青年は宇宙港を出た。

そのまま、近くの見晴らしの良いカフェに向かい、休憩していた。

 

 

「職を転々としてるってのは聞いたけど、まさか今回も辞めてるなんて…。どーこにいるんだよ、ハヤテのヤツぅ」

 

「お客様、失礼します」

 

「あ、はい?」

 

「申し訳ございませんが、ただいま店内が込み合っておりまして、相席でも構わないでしょうか?」

 

「あ、どうぞどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 

シャハルシティ名物といわれるトロピカルドリンクとホットドックを食べている青年にカフェの店員が声をかけ、相席の許可を貰いに来た。

青年は軽く了承し、すると店内からサングラスを掛けた青年より少し若い少女が青年のいる席にやってきた。

 

 

「あ、お兄さん、ありがとね」

 

「ああ、いいよいいよ。どうせ少ししたら出るしさ。君は、観光?」

 

「うん!お友達と一緒に来てるんだけどね、今は別行動なの。そういうお兄さんは?」

 

「俺は近くの惑星に用があるんだけどね?同じ星団内に弟がいるから、久々に会いに来たんだ。……まぁ、まだ会えてないんだけど」

 

「あらら…。久々ってことは、お兄さんは星団の外から来たのかな?」

 

 

目の前の少女はドリンクを啜りながら、興味深そうに青年に尋ねる。

 

 

「そうだよ。俺はフロンティア船団から来たんだ」

 

「ほえ~すっごい長旅だね!でも、家族なのにそんなに離れて生活してたんだ?」

 

「まぁね。母さんが死んでから、お互いにこれからは自分の力で生きようって決めて、それぞれ別の星に向かったんだよ」

 

「あ、ごめんね。あんまり聞いちゃまずかった話題かな?」

 

 

青年が家族について考えながら話してると、尋ねた少女が少し申し訳なさそうにしていた。

 

 

「大丈夫だよ。俺もアイツも完全に吹っ切れたって訳じゃないけど、元気にやってるってのは銀河便で送られてくる手紙とかで把握できてるし」

 

「そっかそっか。大切なんだね、弟さんのこと」

 

「ああ。自由人で職を転々としてるような奴だけど、自分の芯を持ってる自慢の弟だよ」

 

「ふふ、いいね、そういう兄弟愛――って、あぁ!?」

 

 

唐突に少女が青年の後ろのほうを見て席を立ち、声を荒げた。

 

 

「うおっ!?何だ、どうした!?」

 

「一〇四式リガードちゃん!それにあっちはクァドラン!!う~ん、きゃわわ!」

 

 

どうやら、少女は青年の背後に見えるゼントラーディの駐屯基地にある兵器を見ていたようで、それを見て大変ご満悦な顔をしていた。

 

 

「中々、いい趣味してるんだな」

 

「そうなんだよぉ、私って実家がメカニック家系なんだけどね?おじいちゃんの整備姿をずっと見てたから、私もメカメカちゃんたちが大好きになったの!」

 

「ってことは、君もメカニックってこと?」

 

「そうそう!自分のやりたかったことが叶って、私、とっても充実してるんだぁ!」

 

「楽しそうだな。ん-、俺の機体もそろそろ整備しなくちゃなぁ。長距離移動で酷使してるし」

 

 

青年が少女の話を聞いて、自分が使っていた機体の心配をポツリと呟くと、そこに少女が食いついてきた。

 

 

「自分の機体ってことは。お兄さんって戦闘機乗りなの!?機体は?VF?SV?それとも、もしかしてYF!?」

 

「ち、近い、近いから!―――VFだよVF-27」

 

「え?でも、あれってサイボーグ兵仕様の超ピーキー機体だよね?お兄さん、サイボーグには見えないけど」

 

「俺はれっきとした人間だよ。まぁ、それに関しては秘密かな――っと、長居しちゃったし、そろそろ行かないと。あ、そうだ、折角だし君の名前聞いてもいいか?これも何かの縁ってことで」

 

「む~、そういうのは先ず、自分から名乗るのが普通じゃない?」

 

 

青年が名前を訪ねた時、少女は頬を膨らませそう返した。

 

 

「それもそうか。俺はナギト。ナギト・インメルマン」

 

「ナギト…じゃあ、ナギナギだね!わ~た~し~は~」

 

 

そう延ばしながらゆっくりと青年――ナギトに近づき、少女は耳打ちするために近づいていく。

 

 

「マキナ。マキナ・中島。マキナでいいよ、ナギナギ――秘密だからね?」

 

「――ああ、分かったよ。それじゃ、俺はもう行くよ、話せて楽しかったよ、マキナ」

 

「うん!私もだよ!」

 

 

マキナ・中島――彼女は戦術音楽ユニット〈ワルキューレ〉に所属するメンバーだった。名前を聞き、周りに内緒だという理由を悟ったナギトはそれに納得し、席を立つ準備をした。

ナギトは空になったグラスとトレイを持ち、店内の返却口へと返すべく、荷物を持って向かっていった。

一方、座席に残ったマキナはドリンクを飲みながら、先ほどまで一緒に話していた青年――ナギトについて考えていた。

 

 

〈そっか、ナギナギってパイロットだったんだ。それに、近くの惑星に用があるって言ってたけど、ひょっとしてラグナだったりしないかなぁ?

そういえば、カナカナが言ってたっけ、デルタ小隊に新隊員が加わるって。それなら…うん!きゃわわ!!)

 

 

マキナは仲間がこの星に来る前に言っていたことを思い出し、それとナギトの言っていたことを照らし合わせて、一人推測し、納得してから残っていたドリンクを飲み干した。

 

 

「こちら、マキマキ~。シャハルシティの方は異常ないよ~」

 

 

マキナは付け爪型デバイスから一緒にアル・シャハルに来ている仲間や親友であるレイナ・プラウラーに定期連絡を行った。

 

 

『マキナ、上機嫌?』

 

「レイレ~イ!まぁね、ドリンクも美味しいし、きゃわわな機体も見れたし、不思議な出会いもあったし!――あ、メサメサ?聞きたいことがあるんだけど」

 

『そっか』

 

『メサメサでは無い。それで、なんだ?』

 

「デルタ小隊に新しく増員されるって人、名前何だっけ?」

 

『ナギト・インメルマン。フロンティア船団からこちらに出向予定だと聞いたが?』

 

「う~ん!やっぱり!その人、今シャハルシティにいるよ」

 

『会ったのか?』

 

「うん!たまたま相席した相手がそうだったんだよねぇ」

 

『すごい偶然』

 

「ホントだよ~!これって運命だったりしない!?あー、ナギナギの機体、弄ってみたい!」

 

『今は任務に集中しろ。――チャック、お前もだ』

 

『ウ、ウーラサー!』

 

 

定期連絡を終え、マキナも店を後にした。

 

 

 

――――――

 

 

場所は変わり、ナギトは弟のハヤテを探すべく、当てもなくシャハルシティを歩いていた。

 

 

「なんか、密航犯がどうのって、言ってたけど、ハヤテの奴、関わってたりしねぇよな?」

 

 

カフェを出たナギトは宇宙港近くということもあり、密航犯がこの星の宇宙港にいたことを知り、辞めてしまったが、弟が関わっていないかと少し心配していた。

そのまま、市街地方面の路地に入ると、女性の厳しい声が聞こえてきた。

 

 

「動くな、この変態!!」

 

「なんだ?暴漢でもいたのか?」

 

 

ナギトは声のした路地方面に向かい、こっそりと角からその様子を覗くと、きっちりとしたthe・軍人です!といった格好をした女性とその隣であわあわしている少女と、組み伏せられていて顔は見えないが、おそらく男だろう人物がいた。

すると、隣にいた少女が勢いよく手を挙げ、

 

 

「はい!密航犯はわたしですっ!!」

 

 

そう勢いよく宣言した。

 

 

「…え?あなたが密航犯?じゃあ、この人は?」

 

「だから、違うって言ってんだろ!?俺は、こいつが上から落ちそうになったのを庇おうとしただけだよ!!」

 

 

少女の宣言に女性はキョトンとし、組み伏せられていた男も否定する。

 

 

(そんな馬鹿正直な密航犯がいるかよ――――ってか、今の声、ハヤテか?)

 

 

組み伏せられていた男の声を聴いて、その声が自分の弟であるとナギトは認識し、その場に近づいて行った。

それに気づいた少女がナギトの方を見て声をかける。

 

 

「ほえ?誰ね?」

 

「いやぁ、そこの女性が変態だなんだって叫んでたのが聞こえて手助けしようと思って来たんだけどさ――ようやく見つけたぞ、ハヤテ」

 

「へ…?あ、兄貴!?」

 

「お、お知合いですか?」

 

「まぁ、今、アンタが組み伏せてるのは俺の弟だよ。そろそろ離してやってくれない?」

 

「―――はッ!?し、失礼しました!」

 

 

そういって、女性が男――ナギトの弟であるハヤテ・インメルマンの拘束を解き、体の上から離れた。

そして、女性は持っていた拳銃を腰のホルスターに仕舞い、きっちりとした姿勢で頭を下げた。

 

 

「すみませんでした!現場を見て、思わず早とちりを!」

 

 

ハヤテは締め上げられた腕の回し、痛みを緩和させながら、女性に問い詰める。

 

 

「っ痛てて、アンタ、空港の警備員じゃないな?」

 

「私は、ケイオス・ラグナ第三航空団デルタ小隊所属、ミラージュ・ファリーナ・ジーナス少尉です!」

 

「ほわっ!?デルタ小隊!?」

 

 

女性――ミラージュの名乗りに反応したのはハヤテではなく、隣にいた少女――フレイア・ヴィオンだった。

その反応に対しミラージュは疑問に思ったが、ハヤテがそれに答えた。

 

 

「ファンなんだとよ。アンタらとワルキューレの」

 

「はいな!」

 

「そ、そうですか。先ほどは失礼しました!苦情でしたら、広報の方へお願いします!」

 

「いや、まぁいきなり押さえつけられて、何だこいつとは思ったが、怪我もしてないし、別に報告したりはしないけどさ」

 

 

ハヤテはミラージュにそう返しながら、隣で憧れのデルタ小隊に所属しているミラージュを見てトリップしているフレイアを見ながらあきれていた。

そのまま、視線をナギトの方へ向け久しぶりに会った兄弟に質問する。

 

 

「で、なんで兄貴がいるんだよ?」

 

「そこのミラージュさんの声を聞いて手助けでもって思ったからだけど?」

 

「じゃなくて!兄貴はフロンティア船団の方で仕事してただろ!なんで、ラグナにいるのかって聞いてんだよ!」

 

「そりゃ、もちろん、可愛い可愛い弟に会いに来た――と言いたいんだけど、仕事だよ、仕事」

 

「?こっちに来てまでか?」

 

「まぁな。それより、ミラージュさん?」

 

「はい、なんでしょう?」

 

 

ハヤテの疑問を返しながら、ナギトはミラージュに声をかける。

 

 

「そちらの隊長さん―――アラド・メルダース少佐に連絡してもらっていいかな?」

 

「隊長に、ですか?」

 

「そうそう。ホントはもう少し後に合流する予定だったんだけど、デルタ小隊にワルキューレがこの惑星に来てるんだ。いっその事、そのままラグナに乗っけて貰おうと思ってさ」

 

「は?失礼ですが、お名前は?」

 

「元フロンティア船団S.M.S所属のナギト・インメルマンだ。これからよろしく、先輩殿?」

 

 

ナギトはミラージュに対し、S.M.S式の敬礼をもって自己紹介を行った。

その名乗りを聞いて、その場にいた3人共が驚いていた。

 

 

「あなたがナギト・インメルマンでしたか!名前は伺っていましたが、顔までは存じ上げなかったので」

 

「ほえ!フロンティア船団ってことは〈銀河の妖精〉のシェリルさんや〈超時空シンデレラ〉のランカさんにも会ったことあるんかね!?」

 

「兄貴がパイロット!?」

 

「「なんで貴方(ハヤテ〉が知らないんですか(知らんの〉!?」」

 

「いや、元気にやってるってことは偶の連絡で知ってたけど、何の仕事してるか聞いたことねぇから」

 

 

自身の兄の仕事を把握してないハヤテに対し、ミラージュとフレイアは思わず突っ込みをいれてしまった。

 

 

「一応、会ったことはあるよ。何なら、俺の先輩たちがランカさんと一緒の学校にいたみたいだし、それ繋がりで多少は話したこともあるしね」

 

「デルタ小隊に入るってのも凄いし、ランカさんたちにも会ったことがあるんもごりごり凄いんよ」

 

「ナギトさんのことは分かりました。それでは――――」

 

 

突如、シティ内に警報が鳴り響き、ミラージュにも通信が入る。

通信の内容に返答し、ハヤテとフレイアに声をかける。

 

 

「はい、はい!了解しました!すぐに向かいます!―――私はこれで失礼します!皆さんはシェルターへ避難を!」

 

「何だ?一体、何が始まったっていうんだ!?」

 

「――ヴァールが発生しました」

 

「ヴァール、シンドローム?」

 

 

ヴァール・シンドロームの発生、それにフレイアが恐る恐るミラージュに尋ねる。

 

 

「はい、これからここは――――戦場になります」

 

「っ!」

 

「戦場…?」

 

「ですから皆さんは避難を!」

 

 

そう言って、ミラージュは路地から離れ去っていった。

 

 

「ハヤテ……」

 

「大丈夫だ、フレイア。それより避難するぞ、フレイア、兄貴」

 

「悪いな、ハヤテ。俺も行かなきゃなんだ」

 

「は?兄貴?」

 

「いくらまだ入隊を済ませてないからって、御同輩が戦場に向かうんだ。俺も手助けしないとな。―――だから、ハヤテ。お前が、フレイアちゃんを守るんだ」

 

「…兄貴」

 

 

少し不安そうな目をするハヤテにナギトはポンと頭に手をのせる。

 

 

「大丈夫さ、ハヤテ。お前は俺の自慢の弟なんだからな」

 

「っ!ああ、分かった!――行くぞ、フレイア」

 

「う、うん!あ、あの、ナギトさん?」

 

「ん?」

 

「き、気を付けて!」

 

「大丈夫だよ、さぁ行った行った!」

 

 

そして、ハヤテとフレイアはシェルターのある方面へと向かい、路地から離れた。

 

 

「さて、俺も行きますか」

 

 

そのままナギトも自分の機体を取りに行くべく、路地を離れ、駆け出した。

空は夜に包まれるが、かすかに爆発の炎の光が揺らめいている。




お読みいただきありがとうございます。
一応、以下にオリジナル主人公の簡単なプロフを

ナギト・インメルマン
20歳
所属:元フロンティア船団S.M.S→デルタ小隊
機体:VF-27ルシファー 機体カラー(YF-29デュランダルアルト機のカラーリングの赤い部分を青に置き換えた感じ)

オリ主君の機体は過去に一時期投稿していた主人公がVF-27に乗っていたのでそれを参考にしました。


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戦場のプロローグ 後

とりあえず前後編を作ってからの投稿!

これからも二話作ってからの投稿って感じにした方がええかな?

久々のロボットの戦闘描写しかも三人称視点なので難しい…


惑星アル・シャハル、その市街地にてヴァール化したゼントラーディ人たちが暴れている。

日が落ちて、夜となったこの星空も今は火災や銃撃の光で照らされていた。

 

ヴァール化したゼントラーディ人と彼らを鎮圧せんと出撃したアル・シャハルの新統合軍により、戦闘は泥沼化していた。

 

 

『市民に被害を出させるな!』

 

『止まれ!大人しく駐屯基地へと引き返すんだ!!』

 

 

そう新統合軍のパイロットたちは呼びかけるが、ゼントラーディ人は誰も反応せず、彼らの駆るリガードによるミサイルやビーム砲が返答の代わりに新統合軍を襲った。

そんな戦場の中をハヤテとフレイアはシェルターを目指し、駆けていた。

 

 

「まだ走れるな、フレイア!?」

 

「う、うん…!」

 

 

フレイアが転ばないように肩を支えながら、ハヤテはフレイアの安否を確認した。

 

その時―――ドォォォン!!!

リガードの放ったミサイルがハヤテたちの避難経路途中の建造物に被弾し、建物は崩れ落ちる。

 

 

「ぐっ!!」

 

「きゃあ!!」

 

 

がれきに巻き込まれないようにと、咄嗟にフレイアを抱え、ハヤテは横っ飛びし、崩落の範囲から脱した。

急な動作を行ったことでハヤテは息が上がっており、フレイアは自分を助けてくれたハヤテに礼を言った。

 

 

「―――」

 

「あ、あんがと、ハヤテ」

 

「い、いや、大丈夫だ」

 

 

2人して体を起こし、再び避難しようとしたその時、周囲に女性の歌声が響き渡った。

 

 

≪~♪~♪≫

 

「これ…虹色の声?」

 

「虹色…?」

 

 

フレイアは立ち上がり周囲を見回すと、自分たちが避難する方向とは逆の、戦場方面に一人の女性が歩いているのを目にした。

 

 

「ふふ、いい感じに温まってきたわね!

さぁ!イッツ、ショウタイム!

 

 

女性は深く被っていた帽子を投げ捨て、そのまま駆け出した。

すると、それまで女性が着ていた服は変化し、アイドルさながらのライトブルーが基調のコスチュームへと変化した。

 

 

「あの人、美雲さん!?」

 

「それって、ワルキューレのか?」

 

「そう!」

 

「うぐっ」

 

 

興奮のあまり、フレイアは思わずハヤテの頭をグイっと押し込み、ハヤテは苦しそうな声を上げた。

 

そして、空から4機の戦闘機が飛来し、その機体背部から無数のドローンを射出させ、複座型のコクピットから1人、2人、3人と女性が飛び降り、彼女たちの服装もそれぞれ、ライトグリーン、レッド、ライトピンクのコスチュームへと変わっていく。

 

 

歌は神秘!

 

歌は愛!

 

歌は希望!

 

歌は命!

 

「聴かせてあげる、女神の歌を!」

 

「「「「超時空ヴィーナス ワルキューレ!」」」」

 

 

戦闘機から射出されたドローンたちからスポットライトが彼女たちに当たり、別のドローンがワルキューレのトレードマークである妖精を映し出し、彼女たち4人に注目が集まるようにアピールする。

戦術音楽ユニット ワルキューレ、彼女たちが戦場に降り立ったことで、先ほどまで不安一色だった市民たちの顔に喜色が戻る。

 

しかし、注目を集めたのは市民だけじゃなく、ヴァール化したゼントラーディ人も対象だった。

彼らの格好の的となっているワルキューレたちにリガードから砲撃が放たれるが、ドローンがシールドを展開して防いだり、スカートからガスジェットを噴出し、空を舞いながら華麗に避けていく。

戦場で歌い、踊り、華麗に飛ぶその姿は正に女神そのものだった。

 

 

「す、すげぇ、あいつ等戦場であんな風に…!」

 

「それがワルキューレなんよ!」

 

「って、向こうに注目が集まってるうちに俺たちは避難するぞ!」

 

「え、も、もうちょっと見たいんやけど…」

 

 

 

ガスジェットで器用に舞いながら、ワルキューレのエース 美雲・ギンヌメールはワルキューレのサポートを行うデルタ小隊の隊長であるアラド・メルダースが操る可変戦闘機 VF-31Sジークフリードに飛び乗り、リガードへと向かう。

 

 

「うおぉぉぉ!」

 

 

アラドの咆哮と共に、機体から二本のアサルトナイフが抜かれ、リガードの武装や脚部を切り落として行動不能にする。

行動不能となったリガードに美雲は飛び乗り、そのパイロットに歌を届けるように、コクピットの至近距離で歌を歌う。

 

 

ぶつかって 銀河級 ドキュッ! とブッ込み デ・カルチャー!

 

 

その歌を聴いたゼントラーディ人は自分の中にあった悪いものが抜け落ちた表情になり、美雲の歌声に聴き惚れていた。

 

 

「…ヤックデカルチャー……」

 

 

ヴァール化が解除されたことを確認した美雲は次の舞台へと向かうように颯爽と空を飛び、次の機体へと向かっていった。

 

 

他のデルタ小隊の隊員もワルキューレの戦場ライブをサポートするように敵の武装を破壊しながら、舞うように戦場を駆け巡る。

 

機体に死神のデカールが貼られたメッサ―・イーレフェルトが操るVF-31Fは複数の敵機がいる中へガウォーク形態で滑り込み、バトロイド形態に変形し、両腕に装備されているガンポッドで敵の抵抗力を奪う。

ハヤテたちが出会ったミラージュも赤を基調としたVF-31Cに乗り、ガンポッドやアサルトナイフで行動を不能にしていく。

 

 

そして、ワルキューレ周囲の敵をすべて行動不能にした後、4機が整列し、ガウォークからファイター形態に変形し、空へと飛び立つ。

 

 

「す、すごか~!」

 

「?一機、動きがずれてる…?」

 

 

フレイアはデルタ小隊とワルキューレのパフォーマンスに目を奪われ、感動していたが、一緒に見ていたハヤテはデルタ小隊の内、ミラージュの操る機体が少し動きが遅れて飛び立つのを冷静に見ていた。

 

 

「よし!ワルキューレたちの歌が聴いてきたな!」

 

 

アラドは空から戦況を見下ろし、避難民に近いところのヴァールの鎮静が始まったのを確認し、一息をついたが、そこにデルタ小隊の母艦であるアイテールから通信が入る。

 

 

『アラド隊長、先ほど、アル・シャハル宙域の新統合軍艦隊がアンノウンの攻撃を受け、半壊した。そのアンノウンたちは降下しながらそちらへ向かっている』

 

「アンノウンだぁ?」

 

 

アラドが宇宙方面を確認すると、複数の戦闘機が降下してきているのを目にした。

見慣れない機体は戦場に散らばり、ヴァール化したゼントラーディを援護するように新統合軍に攻撃を開始する。

 

 

「デルタ小隊各機!アンノウンを敵機と認定!All Weapons Free!市民とワルキューレを守るぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

 

アンノウンにデルタ小隊がそれぞれ対処に当たるが、アンノウンの側部に付随していたブースターらしき小型の戦闘機が分離し、数でデルタ小隊を圧し始めた。

 

 

「なんだよ、これはぁ!?」

 

「この動き、ゴースト!?は、早い!?」

 

 

チャック、ミラージュは協力して複数のゴーストと大本のアンノウンに攻撃を行うが、無人機であるゴーストを落とせても、有人機であるアンノウンに攻撃を当てられずにいた。

 

 

「ぐ、か、数が…!―――不味い、リーダーそちらに一機向かったぞ!!」

 

 

アラドはアンノウンの内の一機がワルキューレのいるステージに向かっているのを目にし、ワルキューレのリーダーであるカナメ・バッカニアに警告する。

 

 

『くたばれ、ワルキューレェ!!』

 

 

アンノウンのパイロットはそう言いながら、ミサイルポッドから無数のミサイルと内蔵してあるガンポッドからビーム攻撃を行い、新統合軍守備隊を壊滅させながら、ワルキューレたちに攻撃する。

ミサイルの一発が不運にも美雲が着地した建物に着弾し、美雲は建物の瓦礫に埋もれてしまう。

 

 

「あ…美雲さん!!」

 

 

自分の憧れであったワルキューレに攻撃が当たり、フレイアは思わず悲鳴を上げる。

 

 

「美雲!!――マキナ、レイナ危ない!!」

 

 

美雲へ向かったミサイル攻撃の他に、複数のミサイルがマキナとレイナのいるステージ目掛けて飛来する。

 

 

「くっ!」

 

『フッ、終わりだ!』

 

 

咄嗟にサポートドローンのシールドを展開し数発は防いだが、シールドを搔い潜り、ミサイルが2人へと向かう。

マキナとレイナはお互いを庇うように身を寄せ合う。

 

 

「マキナ!」「レイレイ!」

 

 

その時だった。

空からガンポッドによる機銃が降り注ぎ、2人へ向かっていたミサイルを撃ち落とした。

 

 

『何だと!?』

 

 

止めを刺したと思った一撃を防がれ、アンノウンのパイロットは驚愕する。

 

 

「マキナ、レイナ、無事!?」

 

「カナカナ…うん…」

 

「よかったわ。助かりました、アラド隊長」

 

『いや、今のは俺たちの攻撃じゃない』

 

「じゃあ、一体…?」

 

「来て…くれたんだ…」

 

「マキナ?」

 

 

マキナが空を見上げており、釣られてカナメとレイナも空を見上げる。

そこには青と白を基調にゆっくりとガウォークでホバリングしながら降下する一機のバルキリーの姿があった。

 

 

「隊長、ワルキューレ付近に更にアンノウン出現!ですが、これは味方のIFFです!」

 

「あれは、VF-27?――通信か」

 

 

ミラージュの報告を受け、アラドはワルキューレの近くに降下した機体を確認する。

すると、そのパイロットと思しき者からの通信が届いた。

 

 

「こちらは、元フロンティア船団S.M.S所属のナギト・インメルマンだ。まだ入隊してないが、これよりデルタ小隊とワルキューレを支援する」

 

「こちらはデルタ小隊隊長のアラド・メルダースだ。援護感謝する。まだ入隊してないのに一仕事任せて悪いが、守るために力を貸してくれ」

 

「了解!」

 

「デルタ小隊及びワルキューレへ!この青いVF-27は味方だ!間違っても攻撃を当てるなよ!」

 

「「了解!」」「ウーラサー!」

 

 

思いがけない援軍にデルタ小隊一同の指揮が上がり、反撃が開始された。

 

 

「よし、俺もいっちょやってやるか!」

 

 

VF-27に搭乗するナギトは一度深呼吸を行い、再び空へと飛び立つ。

 

 

「ナギナギ…!」

 

「あれがさっきマキナが言ってた?」

 

「うん!そうだよ、レイレイ!」

 

「二人とも、いけるわね?美雲も復帰したし、私たちも歌うわよ!」

 

「「はい!」」

 

 

瓦礫に埋もれていた美雲はドローンによる撤去で瓦礫から抜け出し、再び歌を歌うためにリズムをとっていた。

それを確認し、美雲の無事を確認したカナメはマキナとレイナを連れ、再び戦場に歌を届けるために準備をする。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

戦線に加わったナギトは先ほど、ワルキューレに攻撃を行ったアンノウンに対し、攻撃を仕掛けるべく、上空から急襲する。

 

 

「ワルキューレはやらせないぜ!」

 

 

上空から放ったガンポッドは回避され、アンノウンからミサイルと共に二機のゴーストが射出され、三機編隊でナギトにミサイルとガンポッドで攻撃を行う。

 

 

「当たるかよっ!」

 

 

ミサイルの雨を掻い潜り、一発一発をガンポッドの連射で破壊しながら、ナギトは反撃の機会を伺っていた。

そして、ゴースト二機が急接近し、レーザーで攻撃を行おうとしたタイミングで急減速し、ゴーストに自分を追い越させたタイミングで機体底部に取り付けられたガンポッドでゴースト二機を撃墜する。

それを見て、アンノウンはナギトから距離を取り、その場を離れた。

 

 

『チィッ!!俺たちの邪魔をするな!!』

 

「アンタらこそ、いたずらに被害を増やしてんじゃねぇよ!!」

 

 

そんなときだった。

ワルキューレが歌っていないところで新たに歌声が響き、それはナギト自身にも伝わってきていた。

 

 

「何だ、この歌?――――この声、フレイアちゃんか?」

 

 

ナギトはバトロイド形態に変形し、大型のビームガンポッドを構え、狙撃スコープを覗きこみ、フレイアの歌声が聴こえる方へと機体を向けた。

そこでは、新統合軍に配備されているVF-171 ナイトメアプラスがバトロイド形態でリガードたちの間を抜けるように華麗なステップを見せていた。そのマニピュレータに小さな少女を抱えたまま。

そのパイロットを確認し、ナギトは思わず驚いてしまう。

 

 

「ハ、ハヤテ!?軍の機体を勝手に持ち出して、何やってんだあいつは!?」

 

 

ブレイクダンスをするように下に潜り込み、リガードを蹴り飛ばすハヤテの動きを見て、ナギトは声を出して笑った。

 

 

「はっはっは!あいつ等いいコンビじゃないか!―――俺も負けてられないよな!」

 

 

ナギトはハヤテの援護をするようにガンポッドの狙撃モードでリガードたちの武装や脚部を狙撃していく。

しかし、そんな時間もつかの間、ハヤテに対してリガードからミサイル攻撃が放たれる。

咄嗟に後方へスラスターを吹かし距離を稼ぐが、ミサイルは追尾してきてハヤテに襲い掛かる。

 

 

「ま、不味い!」

 

「そこから上に飛んで空へ逃げろ、ハヤテ!!」

 

「―――っ!うおおおおおおぁ!!!」

 

 

機体の後方のビルに沿うように上昇させ、ハヤテは機体をファイター形態へ変形させ、空へと飛び立った。

ミサイルは咄嗟の動きに反応できずビルにぶつかりすべて爆発していく。

 

 

「っはぁ!」

 

「飛んだ!!

ギリギリ愛 いけないボーダーライン!―――」

 

 

ハヤテは自分の咄嗟の判断で機体を操れたことに驚き、フレイアは風を感じながら再びワルキューレの歌を歌う。

 

 

「無事か、ハヤテ?」

 

「あ、兄貴?その機体に乗ってるのは兄貴なのか!?」

 

「そうだぞ。――にしても、軍の機体を盗んで飛ぶなんて、犯罪だぞ、お前」

 

「い、いや、これは仕方なく…!あのままだったら、フレイアが危なかったし」

 

「まぁいい。今の俺には咎める権利なんてないからな。

それより、2人とも、空の旅は終わりだ。敵も引いてるみたいだしな」

 

 

偵察が目的だったのか、アンノウンたちが撤退していくのを確認したナギトはハヤテにそう声をかける。

ヴァール化していた兵士たちも落ち着きを取り戻し、新統合軍による市民の安否確認や災害救助が行われていた。

すると、ボォン!!という音と共に、ハヤテの乗っていた機体のエンジン部が爆発し、墜落しそうになる。

 

 

「うおっ!?」「きゃあ!?」

 

 

しかし、それをナギトが機体をガウォークに変形させ、機体を支えながら、ゆっくりと地上へ降りていく。

 

 

「び、びっくりしたんよ…」

 

「助かった、兄貴…」

 

「あとは俺の方で支えるからお前は休んでな、ハヤテ」

 

「ああ。――――なぁ、兄貴?」

 

「何だ?」

 

「空を飛ぶのって、気持ちいんだな…」

 

「ああ、そうだろ?」

 

 




んがああああああ!!

難しすぎるよぉぉぉぉ!!!


それでは、また次回!!


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