もんす↓たぁ↑ぱれぇど♬ (かりん2022)
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いつの間にかCMに出演してた

 夏油は職員室まで呼び出しを受けていた。

 正直、心当たりは山ほどあるが、悟がよばれていないのには納得がいかない。

 あいつもセットのはずだろ。

 

「傑。お前に呪詛師の疑いが掛かっている」

「えっ なんでですか」

「とりあえず、どこかの企業のCMに出たか」

「出てません。出るわけないじゃないですか」

「ではこれに覚えがあるか」

 

 見せられた画像には、ゲームのような可愛らしい魔物の群れと戦う夏油(狐耳)が映っていた。

 

「もんすたぁぱれぇど♬」

 

 一瞬の隙をついて、ポーズをとってそういってウィンク。あざとい。

 魔物の群れがテーマらしく、夏油以外にも見目の良い男女が魔物の群れから戦ったり逃げたり隠れたりしながら、モンパレもしくはモンスターパレードと言う動画が流れる。だが、圧倒的に夏油(狐耳)率が多い。そしてあざとい。

 

「全然覚えがないですけど、どう見ても私、ですね。気色わる……記憶が飛んでる覚えもないんですけど。CGですか?」

「そうか。実は、ここに映っている少年少女も記憶がないそうだ」

 

 そう言いながらも、次の動画を再生していく。

 

 心がやけに惹かれる、そして何故か聴き慣れた音楽が流れる。

 曲名はモンスターパレード。動画に表示されている。

 そこに、夏油(狐耳)と夏油の操る呪霊が映っていた。

 

「!??」

 

 呪霊が映るなどありえない。だが、確かに夏油の呪霊だ。

 黒尽くめでマントの仮面の男に躊躇いながらも手を伸ばす夏油(狐耳)。

 手を取り合って竜に乗る2人。

 

 仮面の男の操る魔物と夏油の操る呪霊の激突するシーンや、仮面の男との異世界での交流のシーン。どうみても夏油がヒロインで仮面の男がヒーローポジです。そしてロミジュリです。

 鳥籠に閉じ込められて必死に声を荒げる夏油(狐耳)と、鳥籠の外で睨み合う白尽くめの男と黒尽くめの男。取り合いですか?

 

 そして、魔物に蹂躙される街。次々に倒されていく仲間。

 そして、画面のこちら側を見る夏油。

 

『君なら、運命を変えられるか?』

『アプリゲームモンスターパレード、事前登録開始!』

 

 最後に、撫でられてトロ顔を晒す夏油(狐耳)。

 

『勇者様♡』

 

「なんなんですか、これ!?? 肖像権侵害ですよ!??」

「やはり心当たりはないか……」

「ありませんよ!!」

 

 夜蛾は深くため息をつく。

 

「このシーンの呪霊だが、最近手に入れた者で間違いないな」

「あ……! えっ 攻撃受けたの最近ってことですか!?」

「そういうことだ。しばらく、潔白の証明も兼ねて悟に護衛してもらえ」

「悟に、これを見せるんですか!?」

「注意喚起の為に硝子はもちろん、他の学生にも見せるぞ。それと、任務は必ず2人以上で行ってもらう」

 

 夏油は絶望した。

 

「アプリゲームなんですよね? 開発元を締められないんですか?」

「これは呪詛師の持っている携帯から発見された動画だ。呪詛師は記憶がなく、総じて残穢もない。いや、誤魔化すのはやめよう。呪力以外の異能者が現れる事件が相次いでいる。手がかりはこれだけだ。呪詛師たちにも記憶がないようでな。ある日、いつの間にか携帯にその動画があって異能が使えるようになっていたらしい」

「それって、私も異能に目覚めているかもってことですか?」

「わからんが、おそらく目覚めている。心当たりはあるか?」

「そんな覚えも自覚もありませんが」

「後で悟と硝子を交えた健康診断は念入りに行うが、普段と変わったことがないか傑の方でも確認をしておけ」

「はい」

 

 気分が沈む。悟に護衛されるなんて。

 私と悟の差は開く一方だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悟は笑わなかった。

 

「異能者達だけど、呪力は関係ない。傑が洗脳されてても、俺にはわからない。だから、俺のそばを離れんなよ」

「わかったよ、悟」

「俺が守ってやるよ、傑」

 

 情けない。

 反論したいけど、できなかった。

 ただ、顔を伏せて、礼を言った。

 




夏油 傑
夏油は記憶を失っているだけ。
夢の中なら全部思い出せる。そしてどんどん闇落ちしていく自分にめちゃくちゃ悶える。
誰かなんとかして。
夢の中でVRMMOのゲームを延々とさせられてる。
他にも沢山のプレイヤーがいる。
夏油の百鬼夜行で一度はクリアできたが、百鬼夜行は夏油しか出来ないので、モンパレがたびたび起こる世界では不向きなのでモンパレ時には捕まるようになった。

白尽くめの男。
モンパレの運営をしている。(プレイヤー側)
目的は、モンスターパレードに悩まされる異世界を救うこと。
そのために世界シミュレーション装置に神様(白尽くめの男)が魂をぶっ込んでる。
勇者達の中でめぼしいの(夏油含む)に移住を進める予定である。



黒尽くめの男
モンパレの運営をしている。(魔物側)
転生魔王で、神様に地球の事を教えたり見つけたり
優秀な夏油を夢の世界に引き込んだりするけど、
それはそれとして侵略は行う。
転生前は呪術界のことを知らず、夏油を気に入っている。
地球をファンタジーな世界にするのもいいんじゃない?


禪院直哉
プレイヤー。狐獣人。なんでや。狼やないんか? リアルロボット作ろうと頑張るが、
記憶が現実に持ち越せないので調べ物とかができず苦労している。
リアルでは仲悪いが(記憶ないのでむしろ認識されてすらいない)、夢の中では割と仲が良い。

天内 理子
移住した魂。夢の世界で待機中。

黒井
移住した魂。夢の世界で待機中。

伏黒 甚爾
移住した魂。夢の世界で待機中。


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アニマル(が)セラピー(される)

「すごく良い曲じゃん。PV格好いい」

 

 何度もリピートする硝子。

 

「それは否定しないけど、記憶がないんだよね……」

「とりあえず、動画が入ってないか見てみようぜ」

 

 健康診断が終わり、早速携帯を調べる事となった。

 

「あ、動画入ってる……気づかなかった」

「見る見る」

 

 3人で顔を寄せ合ってみる。

 注意喚起動画があった。

 

『勇者様。異能者を追う組織がいるから、異能をリアルで使っちゃダメだよ。もしも守れなかった場合、残念だけど命の保証はできない。まとめて捕まるのを避ける為に、私達に会っても、知らないふりをしてね』

 

「傑……これ、いつ撮った?」

「全然覚えがない……」

 

 流石に夏油はゾッとする。まさかこの短い間に?

 

「撮った時間は……一昨日か。傑が寝てるはずの時間だな」

 

 その言葉に、夏油は少しほっとする。

 

「とりあえず、寝てる間に観察してみるか」

「面倒を掛けてごめん」

「全然面倒じゃねーし」

「この曲好きだからよし」

 

 そして、PVを色々見た。

 

「この狐獣人、この前禪院家で見た。甚爾いるし」

「はあ?」

 

 そこに写っているのは、ロボットと踊る直哉だった。

 甚爾に撫でられて、やはりトロ顔を晒していた。

 

 獣人即堕ち撫で方講座なんて歌もある。

 色々な獣人が蕩けていた。そこに夏油はいなかったが、それらをわらってもいられない。

 夏油が歌って踊りながら人間から獣人に変身する動画もあったのだ。

 

 そんなふうに、色々動画を繰り返し見たり記録するだけで時間は過ぎていった。

 

「このゲーム俺もしたい」

「なんか楽しそうだな」

「あっちょっとごめん時間だ」

 

 携帯にアプリが唐突に出現し、夏油はそれをタップ……しようとする手を悟に止められる。

 アプリの名はモンパレ。

 

 アウトォォォォォ!

 

「傑、このアプリに覚えは?」

「モンパレだろ。遅れちゃう。早く始めないと」

「始めないと?」

「イベントに乗り遅れる」

「どんなイベント?」

「邪魔をしないでくれないか、悟」

「いいから答えろ。これはどんなゲーム?」

「異世界を救いに行くゲームだよ」

「それ、俺も出来る?」

「悟と硝子を巻き込めない!!!」

 

 叫んで、叫んだことに自分でびっくりしているようだった。

 

「ごめん、私」

「私は巻き込まれたいんだよ」

 

 アプリを硝子がタップした。硝子が消える。

 

「「硝子!!」」

 

 そうして、2人もアプリを次々とタップしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うー……おはよ」

「なんで、悟と傑が……あー。思い出した。アプリタップしたんだ」

「それから何も覚えてない……。携帯見てみよ」

「アプリ?」

 

 夏油が首を傾げる。

 

「覚えてない、か……。昨日、思いっきり操られてたぜ、お前」

「記憶にない……」

 

 肩を下げる夏油。

 携帯には3人の写真が沢山入っていた。

 硝子はエルフのようだった。

 人間なのは悟だけだ。

 PVもしこたま撮っていた。なんだかとても楽しそうである。

 なんと天内と黒井との写真もある。彼らもプレイヤーで、魂を本人の同意のもと回収したらしい。

 

 メールで報告書も書かれていた。

 

「異世界の神による勇者召喚計画……?」

 

 どうやら、異界の魂を世界シミュレーション装置に突っ込み、代わりに問題解決の方法を探してもらい、見つかった有益な情報は本物の異世界にフィードバック、というようなことをするらしい。

 シミュレーション装置での死は現実への帰還。記憶は奪われるのと、携帯に保存する情報も検閲が入るので情報漏洩による混乱もない。唯一異能の問題があるが、異能を使うことへの忌避感を運営が埋め込んでくれるとのこと。

 

 

 悟から自分への手紙があった。1人で読めとのことだが、当然3人で読む。

 書かれていたのは注意点が三つ。

『携帯でその人のテーマの音楽を流しつつ歌って踊るとゲーム内の姿になれちゃうから絶対にしないように。

 戻る時は寝るだけでオーケーだから絶対にしないように。絶対だぞ。

 後、獣人を撫でるとマジでメロメロになるから、夏油を撫でてはいけません。絶対だぞ。絶対だぞ。

 夏油、天内のことを気に病み過ぎて、闇堕ちしかけてるから、ぎゅうっと抱きしめたり、一緒に食事したり、しっかり食べさせて睡眠取らせたり、気にかけてやってくれ。間違ってもハイパーなでなでタイムはしてはダメだぞ! 絶対だぞ。絶対だぞ。ゲーム内でやり過ぎた時は怒る通り越して泣かれちゃったから殴られる程度に留めておけ』

 

 夏油はジリっと距離を取った。

 

「ごめん!!」

「? な、何がだい?」

「何って、傑が泣くってよっぽどだろ。記憶にないけど、そこまでひどい事したなら謝らないとって。しかも、天内の件で弱ってる時にそんな酷いことしたんだろ。ごめん」

「そ、そう、だね。覚えてないけど、『許す』よ。でも、謝ったってことは、もうそんな酷い真似しないよな?」

「傑が嫌だって言ったらやめる。でもちょっと撫でてみたい。ちょっとだけ」

「……本当にちょっとだけだよ? それと、私は大丈夫だから、抱きしめたりとかはいいよ。理子ちゃん達も、向こうで元気みたいだしね」

「傑……」

「傑、記録の準備はばっちりだ。早速歌って踊ってくれ」

「は?」

「傑、がんばれ!」

 

 悟と硝子は完全に見学モード。写メをかまえている。

 

「「ほら、歌って踊って」音楽データコレだと思う。夏油傑のテーマって題名だし」

「まず、携帯を構えるのをやめようか」

「報告しないとだし」

「上手くできるかわからないよ?」

 

 そう言いながらも、音楽を流す。

 夏油の中の何かのスイッチが入った。

 

 手をかざして声を発する。

 

 その度に、光がふわりと浮かんだ。

 

「「おおー!」」

 

 踊る。歌う。その度に、狐火のような色とりどりの火が浮かぶ。

 

 そしてセクシーポーズ!!ちょっとズボンを下げる。

 

 耳と尻尾がぴょこんと生える。

 魔法陣が浮かんだり、光ったり、風が吹いたり、光の蝶が出たり、見応えたっぷりの踊りだった。

 

 踊り終わると同時、2人は拍手する。

 

「う、うわ。うわあああああああ」

 

 夏油は真っ赤な顔を隠して震える。体が半分勝手に動いたらしい。

 

「じゃあ、次俺の番な。五条 悟のテーマ!! ……あれ? 体、勝手に動かないじゃん」

「傑の体に染み付いてんじゃね。ゲーム歴違うんだし」

「染みつくほど踊ってんのかよww」

「そんなわけないだろ!」

「じゃあ、他の歌と踊りができるかできないかやってみろよ」

 

 踊れました。

 

 

「傑ダンス好きなの? アイドルになりたかった?」

「目立ちたがりだしな」

「濡れ衣だよ!!」

「後は抱きしめたり、食事をしたり、撫でたりか……」

「尻尾を抱きしめるのは私な」

 

 硝子がモフッと抱きつく。

 

「ヒャアっ!?」

「ウケる感覚あるの? じゃあ俺は耳な」

 

 サワサワ。

 

「ちょ、やだってば!」

 

 2人はパッと手を離す。すると、夏油は一瞬好物を奪われたような表情を浮かべてしまう。

 

「え……」

「なんで残念そうなんだよ」

「モフってやろうか?」

 

 

 手をわきわきとさせて夏油に近づく2人。

 

 ちゃんと殴られる程度で済ませました。

 

 お風呂の後には硝子に尻尾をドライヤーとブラッシングしてもらい、天国を見た夏油だった。



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夢の世界で阿鼻叫喚

「罠にみすみすかかるな、悟、硝子」

 

 報告を受けて、ため息を吐いて夜蛾が注意する。

 ちなみに朝風呂で天国に行ってしまった傑は就寝中である。無事元の姿に戻っている。

 

「まーでも、割と無害なんじゃない? 連れてかれる時間も決まってるし、運営と交渉もできるみたいだし」

「そんなわけに行くか。禪院直哉もいたそうだが……」

「いたな」

「いたね」

「変身できたということは、異能もあるのか? 起きろ、傑! 今日も午後から任務だろう!」

「ふ、ふわ!?」

「異能について教えてって」

「ああ、筋力が少し上がった他、狐火が出せるようになりました。元の姿でも出せますけど、かなり忌避感があります。相当強制されないとしたくないくらい」

「変身すれば?」

「問題なく出せますね」

「……まあ、実際にフルで歌って踊ってみようというのはそうそうないか。となると、早々に問題解決してお引き取り願うしかないな。禪院家にも話しておく」

 

 そうして、直哉も巻き込まれる事となったのだった。

 

「んー。異能事件? 呪力が関係ないって嘘やろ?」

「そこで、直哉。お前が関わっているという話が出ている」

「なんでや。接点ないやろ」

「それを証明するために、携帯の動画を確認させてもらう」

「別に、変なもん入ってないからええけど……入ってへんよな? 確認するわ」

 

 その場で携帯を見る直哉。

 見知らぬフォルダに気づく。

 

「……? なんやこれ」

 

 大量の動画データ。その全てに覚えがない。

 タップしてみる。最初に見るようにという動画があった。

 

『これに気づいたら動画データ全部消しとき!!』

「???」

「関係者のようだな。確認させろ。六眼も誤魔化す術だ、何があっても今までの事では責めはせん。ただ、動画は消さずに見せてもらうぞ」

「自分ぜんっぜん覚えないんやけど……。悟くんも誤魔化すんか? なんか怖いなぁ」

 

 そう言いながらも、見る。

 ノリノリで撮っているのがわかるPVに、直哉はほっとした。

 確かにこれは少し恥ずかしいが、楽しいし、我ながらよく撮れている。

 

 うわ、ノリノリで踊って歌っているなぁ。

 

「これは後で再現しろよ。実験の一環だ」

「なんやのそれ?」

 

 どうやら、呪霊ではないようだ。デザインが可愛らしすぎる。

 とにかく、大量に発生するそれを倒すのが目的らしかった。

 

 獣人の撫で方講座などもやっていて面白い。

 直哉は狐獣人のようだが……甚爾もいた。これは狼獣人のようだ。

 

「あっ 甚爾くんもお……る……?」

 

 大変です。エロ動画が入ってます。エロ動画が入ってます。憧れの人のエロ動画が入っています。

 ただ頭を撫でているだけですがこれはエロ動画です。そしてその隣にある動画のサムネイルは、直哉の頭の上に手が乗っていた。大変です。隣は自分自身のエロ動画です。

 

「……後で報告するからまず1人で見せてや」

「それはダメだ。記録もする。だが、儂の所で止めておこう」

 

 大変に気まずい時間が過ぎたのだった。とはいえ、甚爾のデータは大切に保存しておこう。

 

「酷い罰ゲームやな……」

 

 そう言いながらも、音楽スタート。

 直哉の中の何かのスイッチが入った。

 

 勝手に出る光は狐火や魔法陣などのエフェクトに驚きつつも、完璧に踊りきってフィニッシュ。

 

 直哉には無事狐耳と大きな尻尾が生えた。

 

「うわ、すご」

 

 サワサワと狐の尻尾を撫でる。とても手入れが丁寧にされていてサラっサラのフワッフワである。

 

「ふむ」

「ひょわっ 触らんといて!」

 

 直毘人が尻尾を撫でたのだ。

 

「感覚はあるのか」

「あるで。めっちゃあるで!」

 

 耳を忙しなくぴこぴこさせつつ、直哉はブワッと広がった尻尾を抱きしめ守る。触り心地最高のそれに名残惜しく思いながらも、手を引っ込める直毘人。

 

「それでは、いろいろ試してみるか。ステータスと言ってみろ」

「せやな。ステータス!」

 

 のちに自分自身の首を閉めることなど夢にも思わず、直哉は嬉々として出来ることを調べ始めた。

 元々オタクの2人だ。こういった現象に興味はあるし、何を試すべきかは心得ていた。

 

 そして、発見してしまう。

 

 直哉が懸命に貯めた、アイテムボックスを。

 直哉は、夢の中での記憶がない。だから、仕方ない。

 仕方ないのだが、あまりに悲しい事件だった。

 

 ひとまず、直哉は庭に出た。

 

「一番、気になるのはこれやな。NAOYA36号!」

 

 非道にも、作ったばかりでまた試し乗りをしてさえいない最新作を出した直哉。

 出たのはとても格好いい、巨大人型ロボットだった。

 

「「おおー!!!」」

「乗れるのか、直哉?」

「コックピット見てみるわ」

「いや、直哉はとりあえずアイテムボックスを全て出してみろ。そうだな。専門家を呼ぶしかあるまい」

 

 直毘人は政府を通じて近くの大学から人を呼ぶことを決定。

 そして、直哉はアイテムボックスの中身を出していく。鬼! 悪魔!! 自分!!!

 憎むべきは記憶喪失であることか……。きっかけとなった夏油が八つ当たりされる運命はもはや不可避である。

 

 魔法の武器、道具、魔石、NAOYA1から36号、書籍、辞書など様々なものが並んだ。

 しかも、直哉は異世界語をある程度読めた。

 

「これは素晴らしいですよ! 異世界の技術と物資と現物HUUUUUUUUUUU!!」

 

 やってきた大学教授にポーションなどといった呪霊退治に必要なもの以外を全て預け、解析を楽しみに待つオタクの親子2人。

 もちろん、この出来事は波及し、悟達もアイデムを吐き出させられ、さらに収集を命じられる事となるのだった。ああ、なんという悲劇であろうか。

 この事件により、形骸化しつつあった夢の世界の銀行が力を持つようになる。

 



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そして謎のまま終わる

久々に更新です。これでプロローグ終わり。
本編(ゲーム内で何があったか)読みたい方います?


マシュマロください
https://marshmallow-qa.com/lucaluca


「ゲームの自分から怒られてしまったね」

「ゲーム内の記憶がないから、どうしようもないよな」

 

 エルフ、人間、黒狐の獣人が3人仲良く並んでの言葉である。コスプレ済み。

 勇者っぽいコスプレをした人間は、モフッと獣人の尻尾を抱いた。

 エルフと人間で順番制である。本日は勇者のばん。

 

 そしてそれを受け入れる獣人。喉とか鳴らしたりする。仲良きことは良きことかな。

 

 しかし、ゲームの住人のアイテムは私有財産だから手を出すなと口をすっぱくして言われてしまった。携帯の動画内で。無理だって、上からの命令だもの。特にポーションは収集しろと言われた。

 

 なんでも、世界を救わない事にはゲームは終わらないらしい。

 ゲームの中の3人は早く終わらせるべく頑張っているが、リアルの3人及び上層部はゲームの世界に大変興味があり、まだプレイしてていいんじゃないの、という感じ。

 

 ゲーム内とリアルの齟齬がひどい。記憶がないからね。仕方ないね。

 

 時間の流れもわりかし違うらしく、一晩で動画がいっぱい出る。

 

 傑の割と際どい動画が多いのはどういうことかと問い詰めたい今日この頃。

 傑はお色気系アイドルでも狙っているのだろうか。聞いたら殴られた。ひどい。

 でもあれだな。

 俺らだけ楽しんでいるのはずるいよな。不公平だよな。俺ってば後輩思いー!!

 

 尚、直哉は危機を感じて学校に泊まり込んでいるらしい。

 全ては狐獣人の尻尾が魅惑のもふもふなのがいけないのである。早く尻尾モフらせて、役目でしょ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうことですか……」

 

 半分切れている七海である。灰原は楽しそうに動画を見ている。

 

「ねぇ七海、僕らは何だと思う? エルフもいいけど、獣人もいいよね!」

「なんで参加前提なんですか? しませんよ! 先輩でさえ手に負えない案件なんて!」

「まあまあ。七海と灰原がいると、本当に助かるよ。お願い」

「っ しかし……」

 

 翌日、竜人と狼人の動画への出演に、東京校は盛り上がった。

 七海が竜人は意外だったけど、似合うじゃーん!

 早速鱗を磨かないとな。ブラッシングもするから安心しろよ。全て俺に任せろ、七海、灰原! 後、傑も!

 

 獣人に尽くすことを覚えた悟は、2時間後、爽やかな勤労の汗を流した。

 お坊ちゃんだった悟の成長である。

 

 その背後には天国を見せられた3人がいる。エルフでよかったと硝子は安堵に胸を撫で下ろした。

 鱗を歯ブラシで磨くのは鬼畜の所業だと思います。

 

 そんなわけで、後輩も交えて、ゲーム内の自分を説得したりして、ちまちまとポーション集めが始まった。

 

 灰原と七海の知らないところで、2人に対する暗殺計画は消えた。ポーション持ってくる人が消えちゃうからね。よかったね。

 

 

 

 そして夏油は任務中、幼女2人を保護した。

 傷ついた幼女にどうしていいかわからず、そっと尻尾を差し出す夏油。

 

 幼女にぎゅっと尻尾を握られて恍惚とする絵面やばい。

 らめぇもふっちゃらめぇ! そんなこんなで村人への殺意は有耶無耶になり、這々の体で呪専に戻る夏油。

 え、もふもふしてないと眠れない? そんなぁ。

 

 

 そんなふうに、呑気に日常を送る日々は、唐突に終わりを告げた。

 

不思議なゲームは、卒業する頃何が何だかわからない間にそっと携帯から消えていたのだ。

おそらくクリアしたのであろう。

後に残るのは、変身できる異能と少しばかりのアイテムばかりである。

記憶もどんないのかよ。

 

学生時代の、ちょっと不思議な思い出。

 

でもそれは、リアルの話。

 

ゲーム内では、それなりに大変だったのだ。

 

 

 

訂正。

 

 

 

 

とっても大変だったのだ。

 

これはそんなゲームのお話である。



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絶対にやらない

ぐるぐると魔法陣が回る真っ暗な場所に、私はいた。

 

あなたのキャラクターは、獣人です!

 

鏡が現れ、体が勝手に動く。踊る。

 

なんらかの呪霊か……!? しかし呪力は感じない。

 

踊り終わると、ボフッと耳と尻尾が生えた。

 

尻尾がぎょっとするほど大きい。

それに、耳も。とてももふっとしている。

それから、空間の色は黒から白へ。

 

四角いウィンドウが現れて、そこにステータスやアイテム名が並ぶ。

 

「ええと、ゲームの呪霊かな?」

 

 答えるように、浮遊感がして、落下した先は石造りの街の中だった。

 

「見ろよ、獣人だ……!」

「なんてふわふわの尻尾!」

「撫でさせてもらってもいいですか?」

「エロ可愛い……」

「最後の誰かな?」

 

 非術師にしてはやたらと強い相手をボッコボコにして、事情を聞く。

 

「ここは滅びを目前にした異世界をコピーした世界なんですよ」

「異世界をコピーした世界?」

「そうっす。ここで開発した技術は、その異世界に送られる。そうして、滅びを回避できるだけの作戦や技術を異世界に送り込めた時点でゲームクリアっす。それまで、この夢の世界は滅びを繰り返すっす。あっでも、滅んだり死んだら現実世界に戻れるし、時間も経ってないので安心っすよ」

「へぇ。面倒だな。で、滅ぶ理由は?」

「モンパレっす! モンスターがわあっとダンジョンから出てきて滅ぶっす。モンスターパレード、略してモンパレ!」

「それさえ回避すれば、クリアってわけだね」

「そっす!」

 

 なら、さっさとクリアしてしまおう。

 呪霊は……出せるな。出した途端、一気に騒ぎになった。

 

「わっ な、なんすか、それ!?」

「きもっ!!」

「新しいスキル!?」

「これが見える……みたいだね」

 

 面倒になって、呪霊を引っ込めて腰を抜かした男に問う。

 

「で、滅びの時はいつなの」

「ひっ 一年後っす! なので一年間は夢の中っすね!」

「は?」

「さっきのモンスターって」

 

 面倒臭くなった私は、走ってその場を離れた。

 街の外に行けば、モンスターいるかな?

 

 どんなものか、見てみようじゃないか。

 

 周囲を見ながら、とにかくまっすぐ進む。

 昔の西洋風な雰囲気だね。本当にゲームみたい。

 

 城壁の外へ出ると、可愛らしいぽよぽよした半透明なのを、何人かが袋叩きにしていた。

 

「尻尾がある体で戦うのって面倒そうだし、早めに感覚に慣れないとね」

 

 私も早速スライムに殴りかかる。

 何度か攻撃を加えると、スライムは動かなくなった。

 その中心にある石をなんとなく引き抜いてみると、消えてしまう。

 どこに消えたんだろうと考えると、ウィンドウが開いた。

 そこにはアイテム名が並んでいる。

 食事のアイテムもいくつか。

 

「……もしかして、一年間サバイバル? 本当に?」

 

 思わずげんなりしてしまう。とにかく、一年後の情報収集もしなくては。

 あれ、もしかして結構忙しい?

 

 慌てて戻って、宿を見つけた時にはすでに周囲は暗くなっていた。

 宿代はちょうど三日分。

 

 三日で生計を立てる方法を見つけないとならないということだ。

 参ったな。

 ちなみに、スライムの核は二束三文だった。

 魔物を倒しても、その素材を適切に加工して然るべき場所に売らないとお金にはならないらしい。

 宿の食堂でため息を吐いていると、声をかけられた。

 

「お兄さん、困ってる? 見目の良い獣人には仕事あるよ。大変なのとえっちなのどっちがいい?」

「体は売らないからな。ぶん殴るぞ」

「何、ダンジョンでモンパレって言うだけの仕事だ。モンスターと戦ったりして大変だけどね。後はひたすらモフモフされて動画に撮られるお仕事さ」

「絶対やらない」

 

 



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