ウマ娘単発短編まとめ (づほたけ)
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スーパークリークと駅で遭難した件
ちなみにクリークに溺れさせられた夢は見てないです。(涙目)
〜某日某駅にて〜
「んぅ〜っ…トレーナーさん、着きましたよ〜♪」
列車を降りると、スーパークリークが伸びをしながら声を掛けてきた。
今日は彼女と温泉旅行に出掛けている。と言っても、以前に商店街の福引で当てた旅行券とは違い、僕と彼女で一緒に仕立てた旅行だ。
「ん〜っ……着いたね〜。でも温泉まではもうちょっとの辛抱だぞ。」
僕もクリークと同じように伸びをして、長旅で固まった身体を伸ばした。
「次はローカル線に乗り換え、でしたよね? それじゃあ、行きましょうか〜。」
クリークはそう言うと、僕をリードするように前を歩き始めた。僕もそれに続く。
東京から今日の目的地の温泉に行くには、新幹線でこのターミナル駅に着いたあと、さらに地方私鉄のローカル線に乗り換える必要がある。これだけなら観光地ではよくあることだろうが、ここはそのローカル線が非常に厄介な存在で、JR線や新幹線から乗り換える場合、JRの改札を出た後、連絡通路を渡って大手私鉄線の改札に入りホームへ降り、その端にある専用改札抜けてようやく乗り場へ辿り着くという、旅人泣かせで有名な「乗り換え難×」の路線なのだ。
このことは僕もクリークも事前に確認していて、構内地図など読んでしっかりと予習した上で現地に赴いているので、迷わず行ける……筈だった。
「あら〜?」
「どうした?」
しばらく進んだところで、クリークが足を止めて首を傾げていた。気になって声を掛けてみたが、
「いえ、大丈夫ですよ〜♪」
と返事をすると、再び歩き始めたので僕も続いて歩き出した。
「あらら〜???」
「えーと、クリーク……?」
「すみませんトレーナーさん、道に迷ってしまったみたいです……」
「あれまぁ」
「ごめんなさい、迷わないように何度も地図を読んできたんですが……」
「大丈夫よ。難しいもんね、ここ。」
クリークが涙目で謝ってきたので、頭を撫でつつ慰めてあげた。
「大丈夫、あとは任せて。」
「トレーナーさん……!!」
そう言って僕は彼女を連れて歩き出した。僕もしっかり予習してきたし、「乗り換え上手」に「土地勘〇」も持っているので今度こそ大丈夫な筈だ。
「うーん???」
おかしい。新幹線を降りてからかれこれ30分は経っているが、一向に辿り着かない。というか、事前に調べた情報とは駅の様子が全然違っている。実際、今僕らは地図になかったはずの場所を歩かされている。
(さては改修工事やってるなこれ……)
「トレーナーさん……?」
クリークが涙目でこちらを見つめてくるので、口を開くのを一瞬躊躇われたが、最早誤魔化しも効くまい。
「えーっと……ごめんクリーク。」
「ふぇ……?」
「僕も迷ったわ。」
「トレーナーさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!」
絶望に打ちひしがれたクリークはとうとうその場で泣き出してしまった。
「落ち着いた?」
僕は今ベンチに座りながら隣に座るクリークをハグして彼女をなだめている。時々頭を撫でてあげると嬉しそうな反応を示すのが可愛い。
「……あと5分だけ……」スリスリ
「ん、いいよ。」ナデナデ
普段はクリークに自分を甘やかさせることで彼女を甘やかしているのだが、今回は状況が状況すぎるので普通に直接甘やかしている。
「普段は甘やかす側ですけど、たまには甘やかされるのも良いですね♪」
腕の中でクリークがそう呟く。
「でしょ?たまにと言わずもっと甘えてくれたっていいのよ?」
「ふふっ……考えておきます♪」
「そろそろ5分よ。」
「え〜もうですか〜?……あともう5分だけ……ダメですか?」ウルウル
「そんな上目遣いされてもダメですよ。日が暮れちゃうよ。」
「むぅ〜……」プク-
膨れっ面になりながらも、クリークは渋々僕から離れた。そうやって一々可愛い仕草をするな、意思が揺らぐ。
「トレーナーさん。」
「ん?」
クリークが顔を寄せてきて、そのままキスしてきた。少しの間重なった後唇が離れると、今度は耳元まで寄ってきて、
「今夜はいーっぱい、いいこいいこしてあげまちゅからね♡」
蠱惑的な甘ったるい声でそう囁かれた。
その後は何だかんだでローカル線のホームに辿り着くことができ、無事に温泉を満喫することができた。
ちなみにその夜、昼間に彼女を甘やかした分が50倍くらいになって帰ってきて、でちゅねに溺れさせられた話はまた別の機会にでも。
クリークは中途半端に甘やかすと多分後で痛い目を見るので彼女を甘やかすときは妥協せず徹底的に甘やかして蕩けさせないといけないと思うんです。その点このトレーナーは途中で甘やかすのを止めてしまったので敗者。
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