生体兵器、人類を救い、そして忘れ去られる (CODE-CARAUCHI)
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序章
壊滅:序章
夜の街中で燃え盛る炎が地面へと叩き付けられた。
それと同時に聞こえる悲鳴。
助けを求める叫び。
それを無視して走り、出口へとただひたすらに走る彼は自分の事しか考えていなかった。
彼の手には黒い箱があった。
ダイアル式の鍵が付いているいかにも大事そうな黒いボックス。
そのボックスには、赤黒く変色した血液がこびり付いていた。
街中を走り、瓦礫の下敷きになった女性を見るも通りすぎる。
そして、走る事をやめて立ち止まる。
ここなら安全だろうと路地裏へと入った。
「ハァ···ハァ···クソォ!俺は、俺は天才なんだッ!!今ここで死んではいけない、人物なんだ···ハァ···ハァ···ゲッホゲホ!クソォ!」
息がまだ完全に整っていないのにも関わらず、歩き出す。
過呼吸になりながら歩き、路地裏を進み続ける。
そして、前方から突然悲鳴が聴こえた。
曲がり角から男性が壁へと体を叩き付け、こちらに逃げようとするも···、突然飛来してきた槍が頭へと突き刺さり、醜い姿は呻き声と共に命を落とした。
槍が壁へと突き刺さり、穂先は完全に壁へと埋まっている。
血が飛び散り、脳味噌が少しながら地面や壁へと引っ付いていた。
それを見ていた彼は驚きのあまり動く事が出来ず、曲がり角の奥から近付いてくる影が見えてきた。
そして、曲がり角から出てきた魔導人形、第2世代型の内の1種、【コボルト】
コボルトがゆっくりと振り返る。
コボルトの二つの目が彼の目を捉え、そして近付いてくる。
そのコボルトの拳には血液だけでなく、肉片やコンクリートの破片が指へと突き刺さっている。
しかし、魔導人形のコボルトには血は流れていない。
流れているのは···、ただの魔力。
どんなに傷を負おうと、血の1滴もその体からは出ないのである。
コボルトが拳を体の後ろへと溜めに入った。
その時である。
突然、コボルトの頭部にガンッ!という鈍い音が響いた。
コボルトが後ろを見る。
そこに居たのは白衣を着た男の人間だった。
ヒゲを生やし、メガネには亀裂がたくさん出来ていた。
人間がまた瓦礫を投げる。
今度は当たらず······コボルトの顔の横を通り過ぎる。
コボルトが人間へと近付く。
その隙に彼は逃げた。
後ろから聞こえたドンッ!という音は、彼に恐怖を更に与えた。
炎が街中を埋め付くし、爆発音が絶え間無く聴こえてくる。
建物に出来た穴から出てきた人間は炎に包まれ、悲鳴を上げずに道路へと倒れた。
彼はそれを避けて街の外へと走る。
そして、街の門から外へと出た時に彼は笑い···、ほくそ笑み···、街を見ようと振り返る。
そして、同時に彼の記憶に逃れられないトラウマを植え付けた。
とても遠くから見た街は、炎の明かりで夜の砂漠を照らしていた。
月明かりよりも明るく。そして、悲鳴や炎の燃え盛る音。コボルトが投げた槍が壁へと突き刺さる光景を思い出して、彼は泣いた。
砂漠へと膝を突き、また笑い始めた。
彼が目を閉じると、瞼の裏に槍が突き刺さる景色が繰り返し、また繰り返し流れ始める。
彼の耳には、炎のパチパチと鳴る音よりも大きい悲鳴が途絶えずに聞こえ続ける。
その悲鳴は男性と女性の声が入り交じるように聞こえる。
子供の泣き声も彼には聞こえてくる。
目を開けると、あの槍が突き刺さった男性が近付いてくる。
瓦礫に埋もれていた女性がこちらを見ている。
彼の目をずっと見つめてくる。
砂漠で泣いている彼は···死ぬまでずっと、それに悩まされるだろう。
砂漠の砂が、ボックスへと付いた。
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壊滅、そして希望
前回みてくれた人には感謝!!
今回見てくれる人にも感謝!!
前回のおさらいをします。
簡単に言うと、研究都市にて魔導人形が暴走し、都市の人間を虐殺したという大まかな内容です。
今回も楽しんでくださいね〜 (*´ω`*)
壊滅、そして希望
魔導人形が都市の住人を虐殺し、悲鳴と爆発と炎に包まれたあの日からどれほどの時間が過ぎたのだろうか。
研究都市から命からがら逃げることが出来た研究員のチョベル・ラムは、同じく研究都市から逃げることが出来たプログラマーのカイマンと一緒に首都の魔科学技術の最高峰と言われる施設にやって来ていた。
施設長とたまたま来ていた政府の高官に会うことができ、彼は研究都市で起きたことを報告した。
魔導人形の暴走と都市の惨状を報告したあと、身体検査を受け、異常がないことが確認された。
報告を受けた施設と政府は、調査隊を派遣すると共に、今後の対応について会議を行った。
ただ、この会議では話がまとまらず、調査隊の報告が提出されてから、再度会議を行うこととなった。
数日後、調査隊は6割の損害を出しながら研究都市の調査を完了し、首都に帰還した。
調査隊の報告によると
・生存者の確認が出来なかったこと
・魔導人形が攻撃を仕掛けてきたこと
・魔導人形の中で崇拝されている存在がいること
・都市のインフラが変化していること
が挙げられた
研究都市の唯一の生き残りと思われる者たちが話した内容と調査隊が提出した報告を元に、施設の責任者らと政府の高官たちによる会議の末、魔導人形の研究や開発、製造が禁止されることとなり、研究都市を手放すことが決まった。
一旦騒ぎが収まり、平穏を取り戻したと皆が思っただろう。
だが現実は酷なものである。
カイマンは魔導人形のシステム構築をしていたため、研究都市で起きた事件の主犯とされ、極刑に処されたが、死因は研究都市での事故死とされている。
それから数日後......。
崇拝されている魔導人形を元に、魔導人形が列を成して攻めてくるではないか。
第1世代から第2世代、更には第2.5世代まで全ての魔導人形が人類に対して敵対して侵攻している。
その様子は、まさに地獄とでも言うべきか。
政府と施設の関係者は、崇拝されている魔導人形を〖マザー・ドール〗と名付け、魔導人形軍のことを〖フェンリル・ドールズ〗と名付けた。
侵攻してくるフェンリル・ドールズに対抗する手段がないため、人類に避難警報を出した。
そして、人類は魔導人形軍とマザー・ドールに怯える日々が始まった。
人類と政府や魔科学技術研究施設は、各地を転々と移動し魔導人形軍から逃げながら、対抗する手段を研究したが、研究した全てが上手くいかなかった。
このまま人類は魔導人形軍に蹂躙されるがままなのか、そして魔科学技術は自分達にとって益があるのか、危険なものなのではないか、人類の大半がそう思い始めた時には人類の4.5割がフェンリル・ドールズによって殺害されていた。
人類がフェンリル・ドールズから身を潜める生活が始まって、いくほどの時間が過ぎただろうか。
人類は一応深い森の中に逃げ込むことで魔導人形軍の猛攻から逃れることが出来、その森を開拓し仮の首都を作り上げた。
首都の都市開発が一段落し、政府と魔科学技術研究施設の長は今後の対策を考えるため、会議を行った。
その会議では
・魔科学技術特殊兵器開発所を建造し、魔導人形に対抗するための兵器を開発すること
・それまでは魔導人形軍が攻めてきた時の為に、特務部隊を育成すること
・都市の住人が安心して住めるように、首都周辺に巨大な防壁を建造すること
以上の3点を早急に行うこととなった。
都市を覆う巨大な防壁の建造が終了した頃、先に建造されたアポリュロン特殊兵器研究開発所では、魔導人形軍に対抗するための兵器の開発が進み、完成間近まで培養が進んでいた。
ダミーネーム、〖ニンゲン〗
彼ら技術者が魂を込めて開発した、その生体兵器(人造人間)がまさに今、生まれようとしていた。
最後まで読んでくれてありがとう。
次回からは遂に主人公が登場しますし、バトルシーンもあるかも?
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生体兵器の軌跡の始まり
今回も見てくれる読者にも感謝!!
前回のおさらい
マザー・ドール率いるフェンリル・ドールズが、人類に対して侵攻してきたため人類は各地を転々と移動した後、深い森に逃げ込んだあと、その森を開拓し都市を作った。
その後アポリュロン特殊兵器研究開発所にて、生体兵器の開発がほぼ終わりを迎えた。まぁこんなところかなぁ〜
今回はついに、戦闘シーンがあります!!
今回も楽しんでいってね。
アポリュロン特殊兵器研究開発所にて開発された、
超個体化人造人間である〖ニンゲン〗識別名:XΛ(カイラムダ)がここで生まれてから、どれぐらいの時が過ぎただろうか。
彼女はアポリュロン特殊兵器研究開発所にて、最終試験を終えようとしていた。
それはΧΛ専用の兵器の適合性テストだ。
【複波動磁気分裂刀】
魔導人形の弱点をとことん突いた剣である。
東洋の剣は叩くではなく斬る事を重視した刀を開発したらしく、その性能はとてつもなく素晴らしい物であった。
魔導人形の関節部を狙って斬れば、魔導人形は一瞬にして無力化される。
いままでは叩いて内部への衝撃波で壊していたがこの刀を使えば楽に、効率的にあの忌々しい魔導人形を駆逐できるのだ。
そして、魔導人形の弱点はもう1つある。
それは磁気だ。
磁石を所々に使用している魔導人形がある。
それは斬る事がほぼ不可能と言っても良い。
しかし、この刀には複数の磁石と、刀の形状を生かした空気圧による磁気の無力化によりスルリと関節部を斬り、外す事ができるのだ。
しかし、それには微量ながらも電力が必要なのだ。
それを自身の体から刀へと注ぎ、この鉄板を斬る事ができれば実験は成功し、晴れて我々はこれの量産化が可能になる。
この場所も今や前線付近の研究施設になった。
早い所、この研究を終えて後方へと飛び帰りたい。
そんな思いで挑んだテストは、何事も起こらず成功した。
しかし、それとほぼ同時にサイレンが施設内に鳴り響いた。
「このサイレンは!?」
サイレンは......〘 敵襲 〙
つまり、あの忌々しい魔導人形が攻めてきたのだ。
幸いにもデータは後方へと送っている。
あとはこのΧΛを持ち帰り、改良を続ければ良いのだ。
「実験データの保存、完了しました!」
「よし、急いで逃げるぞ。」
私達は彼女を連れて逃げ始めた。
他の研究員も一緒にだ。
XΛは刀を左手に穿きながら逃げていると、他の研究員とぶつかって刀を落としてしまった。
それを私が急いで取り、彼女の手を引いて脱出口へと向かう。
しかし、一度に大勢が集まってしまい、脱出口には人で溢れかえってしまっていた。
それを遠くから見ていると、突然悲鳴が聞こえた。
その時である。
脱出口で突然爆発が起こり、私達は吹き飛ばされた。
(まさか、魔法!?)
すぐさまΧΛを連れてその場から逃げ出した。
後ろでは案の定、爆発と壁に質量物体が豪快にぶつかった音が聞こえた。
とにかく走り、私はとある部屋へと飛び込んだ。
そして怪しまれないよう鍵を開けたまま天井の通路への入り口を開けてΧΛを先に入れて、私も中へと入った。
そして閉めたその瞬間、扉が開け放たれた。
鍵が閉まっていなかったからか、魔導人形は部屋を見るとすぐに出ていった。
それよりもだ。
この子を連れてこれたのは幸運だった。
不幸中の幸いとゆうやつだ。
そして、私達は移動を開始した。
脱出口は私達が行った場所の他に5つ。
予測では残り2つの脱出口が安全だろうと思った。
それよりも、彼女の装備をあと2つほど回収しなければならない。
1つが魔流効率化制御回路。
鎧のように固い魔石をふんだんに使っている魔素の回路。
ほとんどの魔法の発動が思考1つで済むようになる。
2つ目が妖精。
ΧΛの専用に作られたとある妖精の模造品。
この2つだけはどうしても回収しておきたい。
ここから一度近いのは魔流効率化制御回路。
そこへと向かい、扉を開ける。
梯子が展開されて私はそれを使って降り立った。
そして彼女も梯子で降りて魔流効率化制御回路を装着し始めた。
魔流効率化制御回路は、紫色のバイハイフルと呼ばれる魔石を純度98%にまで上げた魔石を使用している障がい者用の機械を改良した外骨格鎧だ。
体の邪魔にならないように後頭部から椀部、背骨からかかとまでちょっとした間を開けながら体へと引っ付いた。
腰にわざわざ取り付けた鞘の取り付け場所に私が四苦八苦しながらカチャンと鳴るまで押し込み、上下に動く事を確認して私は他の魔流効率化制御回路を破壊し、また脱出口へと戻る。
もしも、その時突然通路に使用していた脱出行路が老朽化で底が抜けたとしたら、それは緊張が緩まった証拠だろう。
何事も起きなかった。
それが緊張を脆くした。
石橋を叩いて渡るとゆうことわざがある。
意味はもう覚えていないが、言葉通りにゆっくりと調べながら進んで行けば良かった。
突然、床がガゴッ!っと外れ、廊下へと落ちた。
そこには魔導人形が背を向けて歩いている所だった。
その魔導人形は素早くこちらを振り返り、手に持っている鉄製の血に濡れた剣を振ったその瞬間、ΧΛがそれを防いだ。
たった数秒...。
魔導人形と私が視線を交わした、そのたった数秒の内の出来事だった。
この子が満足に戦えていない。
私はそれを理解できるだけの理性は持っていた。
素早くその場から離れると、ΧΛは魔導人形とのつばぜり合いから体を勢いよく魔導人形の背後へと回るようにして、柄付近の刃から刃先まで滑らかに首を切った。
首から青緑の液体が溢れながら地面へと落ちた。
魔導人形は斬られた事に気が付かないのかそこに立っていた。
彼女の衣服へと付着したオイルが防水加工された衣服に水滴として張り付いた。
そして、刀へと付いた物を振り払い、腰の鞘へと格納する。
その一連の動作に停止する所が無かった。
この子は確かに成長している。
狙う位置。
そして、あの教えてすらいない斬り方。
それを私は見惚れていた。
私の娘とも言える存在が魔導人形に傷一つ受けずに勝ったのである。
その事に私は喜び、涙が1滴......、私の目尻に溜まった。
夫婦で作っていた娘が、やっと。
やっと、母の仇を討ち取ってくれた。
それになんとも言えない気持ちになり、私はXΛを連れて堂々と廊下を歩いた。
今回の話を読んでくれてありがとう!!
次回のお話は...未定...です。
多対一の戦闘シーンはあるかも...。
まぁ、気長にお待ちください。
次の話も読んでくださいねぇ〜!!
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