OSAKA KINGDOM (Iaなんとか)
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OSAKA KINGDOM
*この作品に出てくる全ての人物、組織、国家は実在する、一切と関係ありません
202X年 福岡
街が燃えていた。民間人はとうに逃げ出し、トラップだらけの街を戦車は進軍している。かといって、山を行けば、土砂や水に押し潰される。数十万台のトラックは即席の装甲車や自走砲と化し、ありとあらゆる場所から現れ、敵を足止めし、今、敵がいる地点をキルゾーンに変えていった。だが、C国の指揮官は勝つ自信があった。なぜならば、日本の頼りのK国はA国を裏切り、同盟国の軍隊によって消滅し、更に核抑止が働いたことで、迂闊に動けなくなったからだ。また、K国は我らが約束した、国家の統一と日本への復讐に燃えている。反対派は我らの強大さに怯えて、何も出来ない。だから、K国軍は幾らでも使える。後は質と量で押し潰せばいい、そう…思っていた。だが、本国から衝撃的な報告が入った。黄河と長江が決壊し、武漢のウイルス研究所から強力なウイルスが漏れ出し、新疆やチベットの教育施設が武力放棄し、国境には世界の全ての武力が集結し始めたからだ。このままでは共倒れとなるだろう。幸いにも、両本国は日本から提示された停戦を受け入れようとしている。その前に可能な限り占領しなければならない、そう考えた。
203X年 Osaka
大阪城から、一人の少年が大阪を見下ろしていた。
少年が手前を見ると、数百メートルのビルが地平を埋め尽くし、奥に僅かに見える山脈には連なったレールガンが空を睨んでいた。
たった数年で、この景色を作り出したのだから日本は負けなかったのだろうと少年は思った。
だが、一度山を超えると、数万輌の戦車の残骸が未だ残り、嘗て、都市があった場所には、倒れたビルや焼けた民家が見渡す限り続いている。また、停戦ラインの向こうには未だ多くの日本人がとり残されている。
自室に戻るとテレビから「軌道エレベータにより、枢軸にリードを」や、「海上フロートに移住しよう」など、数年前まで夢物語だったことが当たり前にニュースに流れている。
街では未来人、宇宙人の技術供与だとか、騒がれているが、少年は政府のなりふり構わない政策と失われた全てを取り戻そうとする国民の異常な熱量によって実現されていることを知っている。
十年以内に起こるであろう復讐戦に向かって国民は突き進み、そして、文字通り、敵を滅ぼして勝つだろう、と少年は漠然とした確信があった。
今の少年の一番の悩みごとは、血の繋がりは一切ないのに、何故かプリンス・トヨトミと揶揄われることだった。
204X年
世界大戦が始まった。
各国の都市を数十万発の極超音速ミサイルが襲い、レールガンやレーザーの防備を持たない都市は地図から消えた。
空から降り注いだ核や岩石は無防備な自然を攻撃し、山は噴火し、ダムは崩れ、雪崩、土砂、洪水、津波などあらゆる災害が襲った。
だが、枢軸国には、世界全ての軍隊が迫り、陸海空全てから虎視眈々と狙っている。その中には一時、多くの人口を失った日本が兵員削減のため、かろうじて実用化した人型機動兵器も混じっている。
少し前までのSFは現実となった。
もはや、戦場には何も残らないだろう。
青年は自身の予感が当たらないことを祈った。
少年の正体は政府関係者の子供であることしか書いていない。立場も曖昧にしている。問題ナシ!
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