目覚めし龍たちはありふれない能力で反逆する (Wareware)
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特別章 季節の思い出
特別節 新年の集い〜2022〜


新年あけましておめでとう御座います。いかがお過ごしですか?Warewareでございます。
さて新年一発目は特別編。少しギャグ調です。最後には重大発表があります。
最後までお楽しみください。


樹 「新年明けまして…」

ルルーシュ「あけまして〜」

樹「え、ちょちょ待ってよ。俺が挨拶してるの!」

ルルーシュ「俺に振ってくれたんじゃないの?」

樹「違うから、もう一回!」

 

樹「新年、あけまして…」

ユエ「新年、あけまして」

樹「ねぇユエ話聞いてた?まぁ来ると思ったけど!」

ユエ「ん、ここで被せると良いって本に」

樹「なんでそんなバラエティー慣れしてるの?」

ユエ「大丈夫、もう邪魔しない」

樹「ではもう一回」

 

樹「良い?もう邪魔しないでよ。行くよ行くよ〜」

ハジメ「新年明けまして!」

樹「ねぇちょっと!フハハハハハハハ」

ルルーシュ「ちょっとあれはアハハハハハハハハ」

ユエ「ん、面白くて、エヘヘヘヘヘヘヘヘ」

ハジメ「ナイスだったでしょ。」

樹「そうだなぁ、ではもう一回」

 

樹「新年あけまして…」

全員「おめでとうございます!

 

ルルーシュ「いや〜まさかこのメンバーで新年も迎えられるなんてな」

ハジメ「皆浴衣だしね〜」

 

樹:マスタードラゴンをイメージした白い浴衣、背中に稲妻の刺繍。

ルルーシュ:ズァークをイメージした黒い浴衣、背中に4匹の龍の刺繍。

ハジメ:サジットをイメージした赤い浴衣、背中にケンタウロスの刺繍。

ユエ、ヴィエルジェをイメージした黄色い浴衣、背中に乙女の刺繍。

 

ユエ「でもこの4人で新年というのもなんか嬉しい。」

ルルーシュ「そうだなぁ。まぁ4人しか居ないからなぁ」

ハジメ「そんな固いことを言わないの」

樹「まあまず、神社で初詣しようぜ!」

全員「おお〜」

 

ルルーシュ「2礼2拍1礼を忘れずにな」

ユエ「ん、わかった」

樹「終わったらおみくじ引くぞ〜」

ハジメ「今行く〜」

 

そして隣の建物へ、

樹「じゃぁおみくじ引くぞ〜」

全員「おお〜」

全員が選び終わり、ついに開封の儀へ。

 

樹「じゃぁ開けるぞ〜」

3人「おお〜」

全員「せ〜〜〜〜〜〜〜〜〜の」

ピラッ!とめくると

全員「…………」

 

樹「俺、中吉!」

ルルーシュ「末吉だった!」

ユエ「私はこれ、でも読めない。」

樹「どれどれ…大吉じゃんおめでとう!」

ユエ「これすごいの?」

ルルーシュ「1番運がいいのさ」

ユエ「ん、ありがとう」

樹「あれ、ハジメ?どうした?」

ハジメ「見てよ〜僕…」

全員「大凶だって〜〜〜〜!!!」

 

ハジメ「なんとか落ち着いた。迷惑おかけしました。」

全員「いや、全く」

 

樹「あ、読んでる皆様にもご挨拶!」

全員「新年、あけましておめでとうございます。本年も『目覚めし龍たちはありふれない能力で反逆する』をよろしくお願いします!」

 

樹「ん、なんか新しい節の初出しがあるみたいです。そちらをお出ししてお別れになります。」

全員「今年もよろしくお願いします。」

 

 

 

目覚めし龍たちはついに知る。

「どうか僕たちの意思を受け継ぎ、この邪神の遊戯に終止符を打ってくれ!」

現れる新たな仲間。

「ルルーシュさんについて行きたいのです。しゅきなので〜」

さらに激しさを増す、迷宮ををかけた戦い。

「ヤッホーみんな大好き、ミレディちゃんだよ〜」

そして再会!

「ルル君なの?」

「ハジメ?ハジメよね?」

そして現れる、最悪の敵!

「俺は誰でもない!俺は『道化師』だ!だが、そうだなぁあえて名乗るなら『ハーメルン』

そうだ、『ハーメルン』と名乗ろう」

 

そして、暴走!

「俺が貴様をぶっ潰す!」

「やれるものならやってみろ!」

「「ウオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」」

 

『目覚めし龍たちはありふれない能力で反逆する』2章

 

『封印された禁忌たち』

 

3月スタート お楽しみに




改めまして、あけましておめでとうございます。
いかがでしたか?今年も障害抱えた小説家、
Warewareをどうかよろしくお願いします。


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特別節2 他人が兄弟になった日

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。本日は私、Warewareの誕生日ということで、
この小説の主人公、樹とルルーシュの星龍兄弟の誕生日でもあります。

という訳で特別編第2弾 兄弟誕生編、スタートです。


星龍 樹の父は『海斗』職業は声優である。容姿は某幕末をイメージした漫画に出ていた天パーのフリーター侍の黒髪である。母は『まどか』職業はアニメクリエイターとなっている。金髪碧眼の女性で、何処となくミレディを彷彿とさせる姿だった。まどかが作成したアニメのキャラクターオーディションに海斗が訪れた事から交際に発展。そのまま2ヶ月で結婚となった。今回はこの2人の話から、星龍兄弟の話をしていこう。

 

ーーーーーーーーーー

 

本編開始の17年前のこと、1人の女性が雨の中を走っていた。

 

「ああ、降って来ちゃった…どうしよう!」

 

この女性こそ、樹の母、まどかである。彼女は今、仕事を終えて帰宅中であった。彼女は仕事万能、性格良し、美人、の3拍子揃っており、まさにパーフェクトであった。

 

「朝は降らないって言っていたのに!『一応持っていけば?』と言う海くんの言う事無視して…私のバカ〜〜」

 

…前言撤回、本当はそれを上回る程に天然だった。この天然でおっちょこちょいの妻を夫が支えるかなりのおしどり夫婦だったと言う。

 

「早く帰らなきゃ、樹も海君も待ってる!」

 

嬉しそうに駆けていく。その時…

 

-うええ-

 

何処からか赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

 

「え?どこから?」

 

耳を澄ますとかなり遠い所から聞こえてきた。

 

「とりあえず、行ってみよう。」

 

声のする方へ行ってみると、そこはゴミ捨て場だった。

 

「嘘、こんな所に赤ちゃんが?」

 

あまりの驚きに思わず声が出てしまう。そこには、生まれてから数日は経っているであろう赤ん坊であった。その服の上には、手紙が置いてあった。

 

まどかは手に取り、読んでみた。

 

『息子を拾ってくれた方へ。

この子の名前はルルーシュと言います。ルルーシュは何か不思議な力を持っているそうです。しかし、息子の力を悪用しようとする者達に、私たち家族は追われる身となってしまいました。このままこの子が私たちの側に入れば、この子に不幸が訪れるかもしれない。悩みましたが息子は息子が幸せに生きていけるように、拾ってくれた方に託すことにします。

どうか息子をよろしくお願いいたします。』

 

まどかは手紙を閉じると、ルルーシュと名付けられた子供を抱き抱え、帰路に着いた。

 

海斗に理由を話すと、

 

「そっか、それでルルーシュ君を育てることにしたんだね。まどか」

「海くんは反対じゃないの?」

「何言ってるの?まどかが決めたことに反対はしないさ。それに樹にも幸せでいてほしいからね。」

「ありがとう…よかったね樹、双子の弟だよ〜」

 

樹は感じ取ったのか、無意識に手を握った。この日は樹が生まれて3か月が経つ日。2人は樹が生まれた日を樹とルルーシュの誕生日にしたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

樹とルルーシュが兄弟になってから17年後の今年、2人は異世界で、新たな仲間と共に誕生日を迎えていた。

 

「「樹(ルルーシュ)、誕生日おめでとう!」」

 

「「ありがとう、みんな」」

 

「ほら、早くしないと料理食べちゃうよ〜」

 

ミレディに催促されながら料理に手をつける樹とルルーシュ。この料理は、シアと優花、ミレディに雫、美玖に双葉に恵里といった面々が作ってくれたものだった。

 

「でも2人が兄弟になった理由がそんな過酷なものだったなんてね?」

「…ん、知らなかった。」

「ルルーシュさんには、その頃から不思議な力があったんですね。」

 

「まああの時は何も知らなかったからな。このトータスに来て初めてその力を知ったワケだからな」

 

ルルーシュは少し照れながらサイダーを啜った。

 

「あああああああああああ!!」

 

「「どうした?」」

 

「「「「ミレディがまたつまみ食いしてる〜〜」」」」

 

「「全く」」

 

外れていた場所から、パーティー会場に戻る樹とルルーシュ。

 

「ルルーシュ」

「うん?」

 

ルルーシュが振り返ると樹が肩を叩き、こう言った。

 

「ありがとう、俺と兄弟になってくれて」

 

「真顔で言うな!恥ずかしい!」

 

(逆さ、樹。俺がお前に言いたい…俺と兄弟になってくれて、ありがとう。義父さん、義母さん、俺をもう一度、産んでくれて、ありがとう)

 

ルルーシュの背中を優しい風が押してくれた。

 

 

 

 

星龍 樹   星龍 ルルーシュ  happy birthday




いかがでしたでしょうか?
私、Warewareは障害を抱えながら生まれてきました。
だからなのでしょうか?母が時々、幸せか?とたずねる時があります。

どんな人間も元気に生まれて、健やかに成長して、天寿を全うできるだけで、既に幸せだと私は思います。

お父さん、お母さん、産んでくれてありがとう。


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特別編 新年の集い〜2023〜

皆さん、明けましておめでとうございます!
Warewareでございます。新年を迎えましたね。今年もよろしくお願いします。
今年も楽しく突っ走っていきましょう!


「あけまして」

「「「「「「「おめでとうございます(ですう、だよー、のじゃ)」」」」」」」

 

突然の挨拶で申し訳ない。この挨拶があったという事は、新年を迎えたという事である。昨年もこの時期になって、新年の挨拶をしたのだが、その際は、樹、ルルーシュ、ハジメ、ユエだった。

 

しかし今回は、シア、ミレディ、ティオが追加された。この小説も1周年を迎え、キャラが追加されたりしたので、今回は7人でお送りしている。なおここは『次元の狭間』なので、時間には干渉されていない。

 

樹 「いや〜年が明けましたね。」

ルルーシュ 「去年は4人だったけど、今回は賑やかだなあ!」

ハジメ 「で…その人たちはどこに?」

ユエ 「ん…あっちに固まっている…」

 

ユエが指し示した場所には、シア、ミレディ、ティオの3人が写真を撮りまくっていた…

 

なお、樹、ルルーシュ、ハジメ、ユエは昨年と同じ浴衣姿であり、他の3人はそれぞれ、

 

シア:金のウサギが刺繍された黒い浴衣

ミレディ:樹のシルエットが刺繍された白い浴衣

ティオ:赤い龍が刺繍された黄色い浴衣

となっている。

 

シア 「みんなの浴衣、かわいいですう!写真撮らなきゃですう!」

ミレディ 「ミレディちゃんもビックリだよ〜 まさか数千年ぶりに浴衣を着れて、新年を迎えられて嬉しいよ〜」

ティオ 「全く…少しは落ち着かんか!たかが新年で浮かれすぎじゃろう」

2人 「でもティオさん(ちゃん)もすごくはしゃいでいました(いた)よねえ」

ティオ 「よ…余計なことを言うんじゃ無いわ〜」

 

シアとミレディを追いかけ回し始めるティオ。その様子に、樹は呆れ、ルルーシュは心配し、ハジメとユエは我関せずモノづくりを始めていた。まさに四社四葉である。これだけバラバラでも、戦闘中は息ぴったりに動くのだから驚きである。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

その後、この次元の狭間にある神社にお参りをして、おみくじを引いた。その時の反応は様々である。喜ぶ者、叫ぶ者、煽る者、笑う者、それぞれがそれぞれの反応をしていた。

 

この者たちを観ると、仲間や家族、あるいは友達とも思えるかも知れない。

 

だが忘れてはならない。ここにいる者たちは、様々な使命があることを。

 

果たせなかった約束を果たすために動く者、叔父の濡れ衣を晴らそうと動く者、使命を受け継ぎ歩み出した者、

その使命を支えようとする者、使命の終わりを見届けようとする者…

 

この物語は、龍に導かれし者たちが自らの使命を果たすために異世界を冒険する物語である!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼らは後に知る…自分たちの出生と親の秘密、自分たちの罪を…




いよいよ彼らの秘密が明かされていきます。なぜ樹は雫と美玖を救おうとしているのか?
ルルーシュとハジメ、樹の出会いについて…そして彼らの親の秘密…
全て明らかにしていきます。よろしくお願いいたします。


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序章 記憶の断片
序章 記憶の断片


初めまして、Warewareと申します!今までは見る専だったのですが、この度書いてみたいと思い、
投稿して見ました。
至らない所もあると思いますが、暖かく見守っていただけると嬉しいです。
よろしくおねがいします。
なお、誹謗中傷のコメントは決して送らないでください。


ある戦いが起こった際、本に記載されるのは勝者である。さらに描かれる際は、まるで勝者が全て正しく汚れた記憶などを一切合切記されるものはない!

 

では、敗者はどうだろう?答えは言うまでもない。全て無かったことにされる。どんな理由があっても、いかなる信念があろうとも無へと化す。

これは絶対のルールである。

****************************

 

「おい!しっかりしてくれ!」

 

ある場所でとある男の悲鳴が聞こえる。彼の腕の中には血に塗れ

動くことのない女性がいた。もちろん彼自身も無事ではない。鎧や服は飛び散り、全身から血を吹き出し、

至る所に傷を負っていた。

 

お前たちはなぜ我々から全てを奪う!なぜ我々は生きていてはならない!

 

別の所にいる黒い服を着た男の怒号が響いた。

その言葉には誰も答えなかった。

そして白銀の鎧を着たものは、ぼう然自失の状態で立っていた。足元にはやはり傷つき、息絶えている女性がいる。

 

そして彼らをあまたの騎士が囲んでいた!その中には肌の黒いものや人の姿をしながら、生物っぽいものもいた。

包囲しているもののうちの1人が言った。

 

「そんなのは簡単だ!貴様らは(ドラゴン)!だから殺される!それだけだ!」

 

そんなこともわからないのかと呆れながら言う。

 

「さぁとどめと行こうか」

 

その瞬間、大きな爆発が起きた。

 

「ギャーギャーやかましいんだよ‼️」

 

その言葉と共に白銀の鎧を纏った男が立ち上がった。

 

「お前たちがなんと言おうと関係ない!俺たちは俺たちだ、普通に生活できれば良かったんだ!」

 

その言葉と共に持っていた剣に力を込める!

 

「美しく最期を飾るなら、最後まで醜く生き延びてやる!かかってこい!」

そう言った。すると

 

「お前だけで逝かせると思うなよ!俺も一緒に逝ってやる」

 

黒い服の男も立ち上がる。

 

「俺を置いて逝くなんて絶対に許さないからな!俺も連れて逝けよ!」

そう言いながら残った男も立ち上がる!

 

『竜王 イツキ』

 

『覇王龍皇帝 ルルーシュ』

 

『光龍騎神 ハジメ』

 

『『『參る!』』』

 

その言葉を言いながら、彼らは無数の騎士に立ち向かっていった。

 

************************

おい…おい……おい…

「いつまで寝てるんだ!さっさと起きろ!」

 

その声を聴くと少年は起きた。

 

「ああ、おはようルル」

 

「おはようじゃない!そろそろ起きないと遅刻だぞ!」

 

えっと思いながら時計を見ると8時20分を差していた。

 

「ヤバ、急げ!」

 

「お、おい待てよイツキ」

 

2人はそう言い合いながら学校を目指して行った。

 

(なんだったんだろう、あの夢。なんか見た事があるんだけど…まぁいっか)

 

そう思いながら過ぎていく。

 

この夢が現実になるとは思わずに。




まずは序章という形で1話投稿しました。
もし、書き方変だよとか、ここもう少ししたら良いよ。と思ったらどんどんコメントしてください。
次回はついにハジメが出てきます。


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第1章 目覚めし龍たち
第1節 呼ばれし世界


UAが既に800オーバーでした。こんな駄文に付き合っていただき、
ありがとうございます。さて、今回は第3の主人公とオリヒロイン達の登場です。
さらに、少しずつ力が目覚めていきます。


なんとか俺たちは15分かけて学校にたどり着いた。そして俺たちが滑り込もうとした時、

もう1人猛スピードで教室に入ってきた。

「ふー、ギリギリセーフ」

 

「「アウトだよ」」

そう言いながら俺たちはど突いた。

 

「痛いよ〜。イツキ、ルルーシュ」

 

「いいじゃん、生きてる証拠だ。」

 

俺、星龍 樹はそう言った。ここで自己紹介しておこう。

 

俺は星龍 樹170を越える身長と学生ながら程よく鍛えた肉体。顔は某人斬りの俳優によく似ている。一応文武両道で、オタクである。まぁ健全なんですが…

 

「それよりギリギリということは、またゲームのバグか?」

 

と訊ねたのは、弟の星龍ルルーシュ。容姿はあの悪逆皇帝にそっくりである。だが彼と違うのは、

すごく運動が得意なのである!そして彼もオタクである。

 

「そうなんだよ、大きなバグが見つかってその直し」

 

と答えたのは南雲ハジメ。

父は有名ゲーム会社社長、母は少女漫画家というまさに生粋のオタクだが、見た目はそうではない。容姿は良い!家事がこなせる!文武両道!イケメン!鍛えている肉体!もはや完璧である!因みに俺たちは、幼なじみであり、家族ぐるみで仲良くしている。

 

「仕事もいいが、やり過ぎると体壊すぞ!程々にな」

 

と俺が言うと

 

「あはは〜わかっちゃいるけど〜」

 

と答えるハジメ。こいつ本当にわかっているのか?

 

「おいおい、そろそろ入るぞ!2人とも」

 

「わかってるぜ、ルル」

 

「いくよ〜」

 

「「「せーーーーの」」」

 

ガラッと開けると、

 

「「「おはよう〜3人とも!!」」」

 

「「「うわ!びっくりした〜」」」

 

3人の美女がドアの前で立っていた。

 

(((いや〜心臓飛び出るわ〜)))

 

と俺たち3人の気持ちが揃うと

 

「「「「「「あははは」」」」」」

 

6人全員一斉に笑い出した。待っていたのは白崎香織、

中村恵里、園部優花の3人だった。

 

白崎は、175近い身長に黒く長い髪、スラっと伸びた手足にアイドル顔負けのプロポーションである。

 

恵里は白崎と同じようなプロポーションにボブカットと眼鏡がトレードマークの文学少女である。

 

優花はショートカットに少し赤い髪に、優しそうな顔綺麗な手をした少女である。なお、全員胸がでかい。って何思っているんだよ。

 

「どうしたの今日は、皆ギリギリだよ。何があったの?」

 

と聞く白崎に、

 

「僕は仕事、2人は…」

 

「「唯の寝坊です!」」

 

と返す俺たち。もぉという顔をする恵里と優花を他所に中に入ると、男子たちは羨ましいというような顔をし、女子からは黄色い声援が飛ぶ。昔の俺たちはかなり嫌われていた。というか、オタクの俺たちは居場所がないくらいだった。

 

その理由は…

 

「そんな訳ねえだろ!どうせエロゲーしてたに決まってるだろー」

 

ギャハハと笑いながら檜山大介とその取り巻きが言って来る。俺たちは無視を決め込んだ。こいつらがいるからオタクは皆肩身の狭い思いをしているのだ。

 

「おい、無視するなよ!」

 

と言ってくるので睨んでやる。そうすると奴等は怯んだ。そんな事をしていると

 

「よっ3人とも、この間のアニメ見たか?」

 

「あぁアレな。遠藤も見たのか」

 

と話しかけてくる者達がいた。遠藤浩介と清水幸利である。この2人もオタクであり、俺たち3人の大切な友人だ。どれだけ仲が良いかと言うと、秩父が舞台になった小学生の幼馴染が成長して、昔の約束を守るというアニメを5人で見るくらいである。あの時は大変だったなぁ。全員ガン泣きだったもんな。

 

「あれか、もちろん見たぜ」

 

「とても面白い作品だったな」

 

「続き気になるよね〜」

 

3者3用の言葉で返すと、俺たち5人はポケットからカードの束、いわゆるデッキを出した。この学校はなぜか好きなカードゲームのデッキを持ってきて良いというルールがある。5人は色んなカードゲームをプレイするが、ルルーシュと清水は遊戯王、ハジメと遠藤はバトスピ、樹はありとあらゆるカードゲームをメインとしている。

 

「今日も後でプレイしようぜ」

 

「「「「もちろん」」」」

 

なんて言っていると、

 

「なんでそんなものを持ってきているんだ!」

 

と言ってくるものがいた。

 

(出たー俺らの天敵)

 

(ちょっとはほっといてくれよ)

 

(本当に困る)

俺らがこう反応するのも無理はない。

彼の名は天之河光輝。容姿は良い、成績優秀、スポーツ万能、なのだが…致命的な欠点がある。

それは自分が正しいと思い込むと人の話を聞かない。自分の考えを押し付ける。勝ってに人のことを押しはかる…などがある。

 

「勉強に必要がないものは持って来るな!そして香織と優花と恵里をそっちに連れて行くな」

 

と言ってくるが、樹は

 

「俺たちは俺たちで迷惑を掛けずに生きているんだ。お前が指図するな!」

 

というと席に着く。すると

 

「おはよう樹、大変ね」

 

「イツキは無理をしすぎ」

 

と言ってきた者がいた。八重樫雫と八重樫美玖である。

 

雫はポニーテールの髪形で180を越える身長に程よく筋肉質であり女性っぽい体つきである。美玖は某5つ子の3女によく似た容姿だが、髪色は黒で首にストールを巻いていてベレー帽を被っている。

 

「やあ雫、美玖おはよう。そうか?いつものことだから慣れてるよ。天之河(あいつ)がああなのはいつものことだろ。」

 

そんなことを言っているとルルーシュのそばに女子が行くのが見えた。

 

「ルル、大丈夫?またもめていたけど。」

 

「双葉か。平気さ、気にしていない。」

 

彼女は中村双葉。某5つ子の次女によく似ており、黒髪をサイドテールにしている。雫と美玖、恵里と双葉、樹とルルーシュは双子である。1つのクラスに双子が3組は天文学的確率ではまずいけど。

 

************

 

さて、時間は過ぎ、昼時になった。樹とルルーシュはおもむろに弁当を取り出す。そして樹は2つのうち1つをハジメに渡した。

 

「今日作ってないんだろう。食っとけ。」

 

「ありがとう。2人とも」

 

3人が弁当を口に運ぼうとすると、あら~6人の天使様が。ここだけの話だが、香織、恵里、優花、雫、美玖、双葉の6人のことをまとめて『青春天使団(レジェンダリーエンジェルス)』と呼ぶ。

他のクラスでは、そう呼ばれているらしい。

 

「お昼一緒にどうかな?」

 

と笑顔で香織が聞いてくる。

 

「もちろんだ。皆で食べたほうが良い」

 

ルルーシュが言ったので6人が3人のもとへ向かう。

すると、

 

「6人とも、こっちで食べよう。その3人と食べるとお昼が不味くなるから」

 

と天之河が言ってくる。

 

「私たちが誰と食べようと勝手でしょ。なんで決められなきゃいけないの」

 

と美玖が言うと周りの女子からそうだそうだとヤジが飛ぶ。

 

「それはそうだろう。あの原罪三銃士(エグゼキューショナー)と関わるとろくなことはない」

 

という天之河。ブチっと切れた音がして樹が向かってくるその時!

 

突如、立派な幾何学模様で描かれた魔法陣が足元に現れ、教室にいた全員が光に飲まれて消えてしまった。

 

*************

 

----我 ノゾム カタワレヲ---- そんな声が薄っすら聞こえた。




さて、いかがだったでしょうか。最後の声は何だったのか
それではまた次回。感想をよろしくお願いいたします。


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第2節 戦争の意味

今回からタグを追加しました。日常組からあのキャラが出ます。
このキャラがどう絡んでくるのか!お楽しみに


光が晴れるとクラスの全員が全く見覚えのない場所にいた。まるで海外にある大きな大聖堂にいるみたいだった。豪華なシャンデリアに大きなタペストリー、立派なステンドグラスとあるが何故か抽象的な顔立ちの男性の絵が額に入れられ、飾ってあった。あまりに気持ち悪い。すると、奥から大きな司祭の服を着て高帽子をかぶり、錫杖を持った7~80代の老人が姿を現した。

「ようこそトータスへ。勇者様、ご同胞の皆様、歓迎いたしますぞ。私は聖教教会の教皇、イシュタル・ランゴバルドと申します。以後お見知りおきを」

老人は微笑んだ。

********

---樹side---

 

俺たちは教会の大広間で、話を聞くことになった。全員が席に着くとタイミングよく美人なメイドたちが入って来る

 

(絶対ハニトラでしょ。)

(だよねー)

(わかりやすいな)

俺たち3人はすぐに話ができるように集まっていた。また、青春天使(レジェンダリーエンジェルズ)もそれぞれ集まっていた。

 

「では、この老いぼれの話を聞いてくだされ。」

 

とイシュタルさんは話し出した。

 

---樹side Off---

 

この世界は数千年前に大きな戦いがあったそうだ。その名も『滅龍大戦』(ドラゴン)という種族と人間、魔人、亜人の3つの種族が手を組んだ、連合軍との戦い。その戦いの果てに(ドラゴン)は絶滅!そこから平和が続いていた。

 

しかし、3000年たった今魔人族が魔物を使役するようになってしまい、今や人族は滅亡の危機に瀕しているという。その時にこの世界の神から、勇者が現れて世界を救うとお告げがあったらしい。

 

「あなたがたを召喚したのはエヒト様です。どうか我らをお救いください」

 

話が終わると、なぜか畑山先生が怒っていた。おそらく戦争なんてさせずにとっとと帰せと言っているのだろう。俺たちは集まって話をし出した。

(どう思う?)

 

(いやいやヤバいでしょ)

 

(あいつが扇動しないことを祈ろう)

 

(馬鹿じゃなければ大丈夫でしょ)

 

(問題は、戦えない香織さんたちだけど)

 

(俺たちが戦えば問題ないだろ。)

 

((そうだね!))

 

なんて相談していたら、

バンと音がして振り返ると、天之河がテーブルを叩きこう言った。

「皆帰れないからって文句を言ってもしょうがない!イシュタルさんにもできない事があるんだ。俺は戦おうと思う」

 

(((はぁ!あいつ何言ってるかわかってるの?戦争に参加するの意味わかってないだろ)))

 

天之河がそう言ってしまったので他のクラスの人達も戦争に参加する事になってしまう。

 

「雫も美玖も手伝ってくれるよな」

と天之河が聞く。だが、

 

「ごめんなさい、流石に無理よ」

 

「私も無理」

 

と言ったのだ。

 

「な、なんで無理なんだ。皆で力を合わせてやればきっと」

 

「それは無理だよ。」

 

香織も優花も恵里も双葉も無理と判断したのだ。

 

「いくら私たちでも戦うことはできないよ。それに戦争だよ。人と戦うんだよ。私たちでも絶対できないよ。」

 

香織が言う。そこに

 

「ちゃんと皆にも理由を聞いた方がいいぜ」

と樹が言う。

 

「戦いたくない人もいるし、戦うのが向いていない人もいるんだ。その人の気持ちも考えろ!」

 

「お前が余計なことを言うな。それに人殺しには俺が絶対にさせない。」

 

「そう言える根拠は?まさか話し合いで解決できると思っているのか?」

 

「そうだ!」

 

そこまで言うならやらせてみるかと思った樹は、

 

「ならやってみろよ。本当にそんな事ができるかどうか」と言った。

 

*******************

このハイリヒ王国で最大限のバックアップをしてくれるそうでよかった。そして王様への謁見。俺たちが見て思ったのは、

 

(((ジャック・アトラスじゃん!)))

 

「よく来た!勇者たちよ。俺はジャック・A(アトラス)ハイリヒだ!国のためよろしく頼むぞ」

なお、王妃はカーリー・A(アトラス)ハイリヒ、王子はランゲル、王女はリリアーナという。

 

***************

 

----ルルーシュside----

俺たちは謁見の後、大きな晩餐会に参加する事になった。その中で俺は食事を摂りながら、樹とハジメ、遠藤と清水に話を付けていた。もちろん、秘密の話で。

 

 

(お前たちはどうする?)

 

(俺は参加だよ)

 

(僕もかな)

 

(一応俺も参加だ)

 

(俺は能力によってかな)

 

(俺も参加だ。だが微妙だな。)

 

まあそうなるよな。そんな事を言いながらお開きとなった。

俺たちはあてがわれた部屋で今日は休むことになった。その時

 

ワレハマツ!ツイノアラワレヲ!」

 

ゾワって背筋が凍った。だが後ろを向いても誰もいない。

 

「なんだったんだ?今の」

 

俺はそう思いながら眠りについた。

 

********************

 

翌日、訓練場に集められた樹たちの前にガタイの良い騎士が現れた。

「俺は騎士団長のメルドだ!今日から俺が訓練していく。よろしくな!」

 

他の仕事は良いのかと樹が効くと、

 

「それは全て副団長に押し付けてきた。」

 

とメルド団長は言った。そこへ

 

「そんな事はないぞ。ちゃんと他の仕事もするんだ。そう副団長に伝えた。」

 

と言いながら1人の人物が入ってきた。

その人物は看守服に身を包み、帽子を目深にかぶって、警棒や拳銃、剣を腰につけた男がいた。

 

「今日からお前たちの訓練を担当する、看守長のリアムだ!よろしく頼む」

 

(((((なっ、なんだって〜〜〜)))))

 

良く知っている人物が出てきてしまい、呆気に取られた幼馴染5人だった!




さぁいかがでしたか?現れたキャラクターはリアムでした〜
ちなみに、この先ステ兄弟や、最悪の敵も出てきます。
皆さんもお楽しみに〜さぁ次回は、いよいよステータス発表です。


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第3節 目覚めし龍王

さぁお待ちかねのステータス発表です。
彼らの能力をどうぞご堪能ください。


訓練が始まる前にまず、メルド団長から全員に金色の手のひらサイズのカードが渡された。

「それはステータスプレートというものだ。

それに1滴、血を垂らしてステータスオープンと言うだけでお前たちのステータスを表示してくれる。身分証にもなるから無くすなよ」

 

いわゆるマイナンバー的なものかと思うメンバー。言われた通りにやってみると確かに表示された。

 

*************

 

----ルルーシュside----

 

俺たちも言われた通りに、ステータスを登録した。したのだが想像を絶する内容だった。

 

###############

 

星龍 樹  男 Lv1

天職 龍王、龍騎士、破壊神

 

筋力 ∞

体力 ∞

耐性 ∞

敏捷 ∞

魔力 ∞

魔耐 ∞

 

機能:光龍の魂、龍使い、使役、召喚、封印、全知全能、森羅万象

破壊、龍解、武器マスター、戦術士、武器鍛治師、闇堕ち(祖龍)

 

#################

 

星龍 ルルーシュ  男 Lv1

天職 龍皇帝、龍騎士、覇王

 

筋力 ∞

体力 ∞

耐性 ∞

敏捷 ∞

魔力 ∞

魔耐 ∞

 

機能:覇王龍の魂、4天の龍、4天召喚(融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム)

その他召喚(アドバンス・儀式・リンク)

龍使い、使役、召喚、封印、全知全能、森羅万象、戦術師、錬金術師、闇堕ち(黒龍)

 

#################

 

南雲 ハジメ  男 Lv1

天職 光龍騎神、龍騎士、龍神

 

筋力 ∞

体力 ∞

耐性 ∞

敏捷 ∞

魔力 ∞

魔耐 ∞

 

機能:光龍騎神の魂、スピリット召喚(スピリット・アルティメット・ブレイブ)

12宮Xレア使役、3龍神、騎神覚醒、転生

龍使い、使役、召喚、封印、全知全能、森羅万象、錬成師、闇堕ち(紅龍)

##################

 

となっていた。いやいやいやいや嫌嫌嫌嫌嫌〜〜〜!

どこがどうしてこうなった〜!もう全員人間やめてますやん!龍の魂って何?闇堕ちは?

全知全能と森羅万象とかえげつないよ〜。

 

リアム看守は淡々と説明していく。

「レベルはそいつの成長限界を指す。ここに到達するともう成長できない。100じゃない場合もあるからよく見るように。ちなみに俺はレベル89だ」

 

「「「「「まぁそうですよね」」」」」

 

「天職はそいつの職業を指す。大体1人1つはあるから心配するな。そして機能という欄があるが、これはそいつが持っている能力だ。これは訓練をしたりして自分が限界を超えると増えていく。覚えておくように。」

 

う〜〜ん…つまり俺たち3人はただのバケモンってことか?ちょっとやだなぁと思っていたら、

 

どかーーーんと音がした。よく見ると、天之河がリアム看守に叩きつけられていた。

 

「え〜〜わかっていないようだから一応言っておく。ステータスを教えるのはご法度だ!そこから人の差別が始まるからな。また、ここでは問題行為を起こした場合は俺が武力を行使していいと言われている。気をつけるように…」

 

と少し笑いながらリアムさんは言った。

 

---ルルーシュsideoff---

 

---リアムside---

 

俺はさらに王から言われた事を伝える。

 

「これから呼ぶものは、メルドではなく俺が直々に指導する。まず、星龍樹」

 

「はい」

 

「星龍ルルーシュ」

 

「はい」

 

「遠藤浩介」

 

「はい」

 

「清水幸利」

 

「はい」

 

「そして最後に南雲ハジメ」

 

「はい」

 

「以上5名、よろしく頼むぞ。」

 

「ま、待ってください。」

 

と呼ぶ者がいた。それは天之河と檜山、近藤、中野、斉藤だった。

 

「なんであいつらが選ばれているんですか?」

 

「俺たちの方がよほど凄いです。」

と言ってくるので、俺はバコーンと警棒で殴ってやった。そして言った。

 

「これは王からの命令だ!今後、この件にいちゃもんをつけるやつは、俺の権限で牢に送る!たとえ勇者の仲間でも容赦はしない!覚えておけ!」

 

と言いつつ、

 

「これより、武器を選んでもらう。まずは今言った5人。めんどくさいから優等生と呼ぼう!樹、ルル、ハジメ、幸利、浩介はついてくるように。わかったな」

 

と言って5人を武器庫に案内した。

 

---リアムsideoff---

 

---樹side---

 

俺たちはリアム看守に武器庫に案内された。

 

「今から武器を選んでもらうが、その前にお前たちはなぜか俺のことを知っていた。理由を教えてくれ。」

 

と言われた。

 

(どうする?)

 

(話していいんじゃない)

 

(どうせバレるからなぁ)

 

(OKー)

 

俺たちは素直に話した。リアム看守は俺たちの世界の本の登場人物だった事。その中でも看守だった事。そしてそこの囚人と結託して自分達の領主に扮した道化師を追い詰めた事。そしてその中で囚人を逃がす為に亡くなった事を…

 

「そうか…俺が本の中の人物だから驚いたのか」

 

「びっくりしましたか?」

 

俺が聞くと

 

「いや、そうは思わない。ただ妙に知ってそうだったのでな」

 

「よかったです。」

 

「まぁ、それは良い。では好きに武器を選べ!」

 

皆選び出したのだが、

(何にしよう)

 

と思っていると

 

(コッチダ)

 

と聞こえた。奥を見ると立派な剣があった。

 

龍の顔がつかに象られ、顔の反対側には龍の尾が形取られ、鋭そうな刃を綺麗な鱗の鞘に収めていた。

 

「これ、なんですか?」

 

「あぁ、それは天龍の剣だ。」

 

「天龍の剣?」

 

「大昔の滅龍大戦時に使われた剣だ、と言われているがな」

 

「ふ〜〜ん」

 

そう思いながら見ていると、

 

(我を取れ)

 

と言う声が聞こえた。

 

(この剣が呼んでいるのか?)

 

俺は剣を見つめた。そして

 

(面白い、やってやろうじゃん)

 

と思いながら剣を手に取った。

 

##############

 

目を開けると荒野が広がっていた。そして沢山の兵士に囲まれた3人の人間がいた。その側には白い鱗に覆われた4足歩行で大きな翼を持った巨大な龍、大きな翼と漆黒の鱗に包まれた龍、ケンタウロスのような姿で弓を持った龍がいた。

その3人は武器を構えると、兵に 向かって突っ込んで行った。

 

(待っていた)

 

カタコトではなく普通の声が聞こえた。振り向くと先ほど見た、白い鱗で大きな

翼、4足歩行の龍がいた。

 

(我はマスタードラゴン。我はそなたを待っていた。)

 

(俺を?)

 

(そなたはかつての龍王の生まれ変わりだ。時間がないので手短に言う。我と契約しろ。)

 

(はい?)

 

(我と契約し龍王となれ。そしてこの世界を救ってほしい)

 

(どう言うこと?)

 

(この世界の神は遊びで戦争を起こし、そなたたちの世界にも戦争を起こそうとしている。)

 

(だから俺に戦えと)

 

(そうだ)

 

(…いいだろう)

 

(本当か!)

 

(大事な人たちが戦争に巻き込まれるのは嫌だしな。それに、先代の龍王も戦っていたみたいだし。)

 

(ありがとう)

 

(行こうぜ、相棒!)

 

(ああ)

 

##############

 

俺は気付くと天龍の剣を握っていた。さらに左腕に腕を覆う程の籠手をつけ、手にはデッキを握っていた。

それを見たリアムさんはこう言った。

 

「龍王として選ばれたか。おめでとう樹」

 

と言われた。4人にも揉みくちゃにされた。

 

この時の俺は知らなかった。この先、同じような者が現れることを。そして大きな戦いに巻き込まれることを。




はい、ついに力を継承しましたね。おめでとう。
そしてリアム看守に真実を伝えました。今後、彼はキーパーソンになっていきます。
さぁ次回はあのちょっと胸糞悪いところです。
少し長くなります。そして、今回からアンケートを実施します。
答えて頂けると嬉しいです。


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第4節 光龍騎神の兆しと覇王龍の威嚇

はい、どうもWarewareです。
もう11月ですね〜。あっという間だ〜
さぁ、あの4人はどうなるでしょうか?
さらにあの2人に力の片鱗が!


武器を選んでから1週間、優等生組はとてもきついリアム看守の訓練に食らいついていた。

あの後、樹以外のメンバーの武器はこうなった

ルルーシュ(銃と剣)

ハジメ(錬成用の籠手と銃)

浩介(暗殺用のナイフと拳銃)

幸利(錫杖と仕込みの剣)

となっている。なぜこの中世のような世界に銃があるかしらないが。

 

「そこまで!」

 

別の看守の声がする。

 

「ぐわー」

「ああくっそー」

「全然決まらね〜」

 

今やっているのは、5人で一斉に攻めてリアム看守から一本取ると言うもので一見簡単そうである。しかしそうではない。なぜなら向こうはプロ、こちらは武芸を少しやる程度である。差は歴然だ。

 

「まぁ、落ち込まなくてもいいじゃ無いか?」

 

「そうだよ、ねぇ兄さん」

 

そう言うのはリアム看守長の部下であるステイサム看守と王室のエネルギー機関長も兼任するステイサムの弟、スティーブ看守である。

 

「さぁおやつにしようか」

 

「スティーブ、食べさせるのはいいけど程々にね。この後皆は冒険者ギルドの仕事もあるから」

 

「わかってるって」

 

そう、樹たちは今訓練の一環で冒険者ギルドにも所属している。冒険者はこの世界ではメジャーな職業で、沢山の迷宮や冒険できる場所がある。また、そういう場所には魔物が生息しており、魔物から取れる素材は換金すると、いいお金になるのだ。なので小遣い稼ぎの為に冒険者登録をする者も多い。

 

「いえ、今日は特に予定が無いので大丈夫ですよ。」

 

ルルーシュが答える。

 

「なら、いいけどさ〜」

 

スティーブ看守は紅茶を淹れながら話す。

 

「あぁ俺はコーヒーで良い」

 

「俺もです。」

 

樹とリアム看守はコーヒーを淹れる。この2人かなり趣味が似ている。武器を見るのが好きだったり、自分達で武器を造ったり、コーヒーだってそうだ。訓練の1日目にコーヒー談議で盛り上がったぐらいだ。

 

「あ、僕使った道具片付けて来ますね。」

 

そう言いハジメが出て行く。

 

「いや〜しかし、午前はこの世界の勉強、午後は戦闘訓練、夜はギルドの仕事、この1週間でだいぶ成長しました。」

 

「そうか、それは良かったな。ところで、……そいつは何してるんだ。」

 

リアム看守は樹の肩を見る。そこには…

 

(良いだろう。我もコーヒーは飲む。)

 

小さなマスタードラゴンがコーヒーを飲んでいた。

 

「まさかリアム看守達にも見えてるとは…」

 

「これ、誰でも見えてるんじゃ無いの」

 

「いえ、見えない人もいますよスティーブ看守」

 

「それはそうだろう。誰でも見えたら怖くないか?」

 

「確かにそうだね、兄さん」

 

(すまないが、フランをくれ。)

 

フランはこの国のクッキーである。

 

「よく食うな、相棒」

 

(まぁ本来は食事は要らないのだがな)

 

「そうなのか?」

 

(ドラゴンだからな)

 

「そうか」

 

なんていう話をしているが、

 

「それにしてもハジメ、遅くないか?」

 

もう20分も経つ。戻って来ないのはおかしすぎる。

 

(!これは!)

 

「どうした!」

 

と言った途端

どっが〜〜〜〜〜〜ん

 

「なんだ!」

 

(向こうだ!)

 

急いで訓練場の物置小屋に向かうと、そこには……

 

「あ、あの〜…この人達縛ってもらえます?一応戦闘不能にしているのですが」

 

そこには小悪党組4人を再起不能(リタイア)させて、檜山を取り抑えているハジメの姿だった。

 

「何があった?」

 

「実は…」

 

---ハジメside---

 

僕は訓練に使用した道具を片付けに、訓練場の物置倉庫に入った。元あった場所に道具を戻していると視線を感じた。

 

「そこにいるのは分かってるから出てきなよ」

 

と言うと

 

「よう、無能の南雲くん!」

 

と檜山、近藤、中野、斉藤が出てきた。

 

「お前みたいな無能が居ると俺達の価値が下がるのさぁ。ヒヒ」

 

「そうだぜ、ささっと消えろよ」

 

「俺たちの方が強いから、こいつに稽古を付けてやろうぜ。」

 

「お、いいな。そうしてやろうぜ」

 

ギャハハと笑いながらこっちを挑発してくる。

 

「良いよ、かかってきなよ。この1週間でどれだけ成長したのか、見せてもらえる?」

 

「チッ、なめんな!」

 

檜山が殴りかかってくるが、僕はバックステップで回避して檜山の伸ばした腕を掴み前に投げ飛ばす。

 

「ぎゃー」

 

「大介!」

 

「このーなめんな!」

 

今度は近藤が足払いをかけるがそれも回避して相手のアゴを蹴り上げる。

 

「ぐわー」

 

次に動こうとすると、急に動けなくなった。檜山が羽交締めにしていたからだ!

 

「ヒヒヒ、捕まえたぜ!斎藤!中野!やっちまえ!」

 

「おうよ!ここに焼撃を望む!火球!」

 

「ここに風撃を望む!風球!」

 

2つの魔法が襲ってくるが

 

「えい!」

 

 

「ぐっ!」

 

檜山が悲鳴にならない声をあげて手を離す。というのも檜山の股間を僕が蹴り上げたからだ。その隙に手を地面につけ

 

「錬成!」

 

と言う。すると大きな土の壁が瞬時に形成され2つの魔法を防いだ。

 

「「なんだと!」」

 

驚いている間に僕は次の武器を作成する準備をする。

 

その時、

 

(少年よ。)

 

何かの声がした。

 

(誰?)

 

(今はこの際関係ない!それよりこの武器を錬成しろ)

 

(わかった、やってみる!)

 

僕は大きな弓を作成する。さらに太陽のような光から、輝く矢を作りそれをつがえ、2人に放った!

 

「「のわー!!」」

 

2人は大きくのけぞり吹き飛んでいく。

 

どかーーーーーーん

 

大きな音がして2人は伸びていた。気絶している3人を放置して檜山の上に座り他のみんなが来るのを待つ。するとすぐに皆が来た。だから僕は笑顔で答えた。

 

「あ、あの〜…この人達縛ってもらえます?一応戦闘不能にしているのですが」と。

 

---ハジメsideoff---

 

---樹side---

 

え〜〜マジかよ!あの4人組を一捻りですか?しかも自分はノーダメージって…

 

 

「「南雲(君)」」

 

香織と優花が心配して向かって来るが、

 

「大丈夫!訓練が役に立ったよ」

 

と答える。他のクラスメイトも

 

「すげ〜じゃん」

 

「かっこいいわね〜」

 

と言う。

 

そんな中、

 

「なんて事をしたんだ!南雲、早く檜山たちに謝れ!」

 

と言ってくる奴がいる。天之河だ!いや、何言ってんだ?

 

「おいおい、いくらなんでも可笑しいだろ。なんでハジメが謝罪しないといけないんだ。何も悪いことしてないだろ。」

 

「いや!南雲が悪い!檜山たちをボコボコにした上に謝らないなんて最低だ!」

 

「向こうが先に待ち伏せしてたって言ってるだろ。そして攻撃してきたのも向こうだろ!なんでハジメが悪いんだよ。イジメしてる方が悪くなくて何でいじめられてるやつが謝るんだよ!可笑しいだろ!」

 

「俺は間違った事を言っていない!そもそもイジメも起きてないだろ!どこをどう聞いたんだよ!」

 

俺とバカ勇者の口論がヒートアップするが

 

いい加減にしろ!黙れ!」 

とあまり怒鳴らないルルーシュが声を荒らげた。

---樹sideoff---

 

---ルルーシュside---

俺は我慢ならなかった。普通の喧嘩やちょっとしたふざけなら俺は我慢しただろう。しかし、今回は状況が違う。親友の事をあんなに悪く言われたらどんな人間だって我慢ならない。何か言おうとした時声が聞こえた。

 

(どうした?言わないのか?)

 

初めてここに来た日の夜に聞こえた声だった。

 

(何者だ)

 

俺はその声にきいてみた

 

(まあそう警戒するな。それより言わなくて良いのか?あいつを守る事ができるのはお前だけだぞ)

 

と言われた。何も言わないなんて卑怯者だと思った俺は

 

(良いだろう。その契約受けよう)

 

(いいだろう力を貸してやろう!だが真の契約はまだだ!少し力をやるだけだ。この先我が力を引き継ぐにふさわしいか楽しみにしてるぞ!小僧!)

 

そして俺は一歩を踏み出した。

 

いい加減にしろ!黙れ!

 

俺が声を荒らげた事に皆驚いていたが俺は構わず続けた。

 

「なぜ貴様はそうやって自らのエゴで人を苦しめる。なぜ貴様は人の事を顧みない。貴様の行っていることはガキの癇癪だ!もっと他人の事も考えろ」

それだけ言うと俺はスッキリした。後はここに来たリアム看守に任せる事にしよう。

---ルルーシュsideoff---

 

「そうか、大体の事はわかった。では処分を言い渡す。檜山、近藤、斉藤、中野は保護監察として他の看守を見張りに付ける。そして天之河は1週間の訓練禁止とする。いいな!」

 

流石の天之河もこれは応えたようで何も言わなかった。

 

だがその後驚くべきことを言う。

「なお、1月後に『オルクス大迷宮』で訓練を行うからそのつもりでいるように!」

いよいよ俺たちの本格的な初陣が訪れようとしていた

 




ちなみにステイサムとスティーブですが、見分け方としては。
話し方がちょっとフランクなのがスティーブで、しっかりしているのがステイサムです。
さらに見た目では蝶ネクタイがスティーブでネクタイがステイサムです。
2人とも帽子はかぶっていますが、リアムのように目深に被ってはいません。


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第5節 月下の語らい 〜思い出のアイリス〜

どうも、Warewareです〜。皆様おまちかねの話となります。
ここにきて、オリ主の樹と八重樫姉妹の話に入ります。
なお、この月下の語らいは3部に分けて書いていきます。
お楽しみに。


それから1月後、俺たちは『オルクス大迷宮』にほど近い『ホルアド』という宿場町にいた。この日は一応実戦訓練の前ということでそれぞれ過ごして良いとの事だった。もちろん樹たちも例外では無い。この日は樹たち5人もそれぞれ過ごす…

 

「……お前たちいい加減に休んだらどうだ。」

 

「これ終わるまで待ってもらえます?」

 

彼らは自分達に出来ることを極限まで高めていた。

 

「よっしゃ〜終わった〜」

 

「お疲れ様だな。よくここまで頑張ったな。流石俺の教え子だ!」

とリアム看守が言う。一応ステイサム看守もスティーブ看守もいるのだが、今回はいない。別の場所に待機していていざとなったら出てくる手筈になっている。

 

「明日のために早めに休めよ。」

 

「分かっています」

 

樹たちもそれは分かっている。しかし、今は関係ないのだ。というのも

 

「「「「「せ〜〜〜の」」」」」

 

と声を合わせて5人はリアム看守にある物を渡した。それは真新しい帽子とネクタイ、そして拳銃だった。

 

「帽子とネクタイは幸利と浩輔が選んでくれました。俺たち3人はこの拳銃を。一応リアム看守に合わせて作成してあります。多分使いやすいかと」

 

「お前たち、これの為に時間をかけていたのか?」

 

「もちろんです。」

 

「…ありがとう。大事に使わせてもらうぞ。」

 

リアム看守は帽子をいつもより目深に被り進んでいく。

 

「きちんと休めよ。また明日な」

 

「「「「「はい」」」」」

 

と言って樹たちは出て行く。すると

 

「リアム看守、これを」

 

「これはなんだ、ルルーシュ?」

 

「何もないと思いたいですが、何かあった時はこれを聞いてください」

 

「お前たちの世界で言う『録音機』だったな。わかったそうしておこう。」

 

「ありがとうございます」

 

「ステイサムとスティーブにも伝えておく。別にいいな。」

 

「もちろんです。よろしくお願いします。」

 

「わかった」

 

---樹side---

 

1人になった俺は食事を済ませ、夜になるのを待った。夜になると『天龍の剣』といつものデッキ、そしてアコースティックギターを持って中庭に出る。そしてギターを弾き歌を歌う。あの思い出の歌を。

 

〜悲しみも弱さも全て、受け止めてきた。胸に〜

〜ずっと消えない傷を残し、抱えてきたの〜

 

この歌はいつも歌っていた。…両親が死んだ時も。俺が綺麗な歌声を披露していると

 

「やっぱりここに居たのね」

 

「歌っていたってことはやっぱり不安?」

 

2人の女子の声が聞こえてきた。

「雫、美玖。」

 

「何か心配事でも?」

 

「まぁな」

 

「大丈夫?イツキ」

 

「2人の顔を見たら吹き飛んだ」

 

「「もう」」

 

3人で笑い出す。

 

「ほら、笑顔になった。」

 

と美玖が言う。

 

「無茶して欲しくないから。樹には」

 

雫もそう言う。

 

「大丈夫さ、あの時みたいにはならないから。」

 

「「あの時ね」」

 

「あぁ」

 

---樹sideoff---

 

---雫side---

 

小学生の頃は私達は剣道をやっていた。父と祖父が道場の師範だった事もあり、私達も自然とやりだしていた。そしてその中に光輝もいた。

 

元々は幼馴染だったのだが、私達が常に光輝の側に一緒にいた為か、私達は他の女の子からイジメを受けていた。悪口や暴力はもちろん、酷い時には私がぬいぐるみを持っていただけでそれをぐちゃぐちゃにされる始末。さらには

 

「あなた、女だったの?」

 

と言われた。この言葉をきっかけに私は女でいる事を諦め、より剣道に没頭する様になった。

 

美玖へのイジメも酷かった。物を隠されるのは当たり前、発表を強制されたり頭から水をかけられたりもした。結局美玖はそれが原因で一時期、人間不信になってしまった。これ以上酷くならない為に私は光輝にイジメを止めてくれる様に頼んだ。

 

しかし、あろう事かイジメをしている本人達に直接言ってしまったので、イジメはより陰湿により狡猾になってしまった。

 

ある日の夕方、私達姉妹は河川敷を歩いていた。もう私達の精神はボロボロになっていた。

 

(誰か助けて)

 

(私たちを姉さんを助けて)

 

そう思いながら河川敷を歩いていると、

 

〜〜♪〜〜〜〜〜〜♫〜〜〜♩

 

何処からか綺麗な歌声が聞こえてきた。

 

「何だろう?」

 

「誰かの歌だよ。雫姉さん。」

 

河川敷の下の方に目をやるとそこには、自分達と同い年くらいの男の子が小さなギターを弾きながら、歌を歌っていた。何故か喪服で。

 

---雫sideoff---

 

---樹side---

 

俺が歌を歌っていたら、いつの間にかギャラリーが出来ていた。と言っても2人だけだが。1人はショートカットに黒っぽい長袖、長いズボンを穿いていて、いかにもサムライガールみたいだった。もう1人は花柄の長袖にチノパン、ロングヘアーで右目が隠れていたが、大和撫子の様な見た目だった。だが2人とも目を赤く腫らしていて只事では無さそうだった。

 

「どうしたんだ?」

 

俺は聞く。

 

「なんでもないわ」

 

「私も姉さんもいい歌だったからつい聴いてしまって」

 

そう2人は声をかける。

 

「そうか」

 

この2人を今このまま帰すと何か起こるかもしれないと思った俺は彼女たちの悩みを聞くことにした。

 

「なんかあったのか?」

 

「「え?」」

 

「人生嫌だって顔をしてたから」

 

「「……」」

 

「当たりかよ。俺で良ければ聞くよ。溜めすぎると、決壊していつか溢れちまう。何があったんだ?」

 

「実は…」

 

話を聞いた俺はこう言った。

「そうか、なら俺が2人のイジメを止めてやるよ」

 

「「何かするの?」」

 

「ああ、任せとけ!」

 

---樹sideoff---

 

---美玖side---

 

次の日の放課後、私達は学校側の公園にいた。またしてもイジメを行う女子達に呼ばれたのだ。

 

「早く天之河君から離れてくれない?」

 

「だから私達には関係ない!」

 

「あんたたちみたいな女もどき、近付かないで!」

 

殴られそうになった時、

 

ビシッ

 

となにかが当たった音がした。見るとその子の手の甲に石が当たり、赤くなっていた。

 

「こんな素敵なレディ2人をイジメるとは、たとえ女だろうと容赦しないよ〜」

 

そう言いながら昨日の男の子がやってきた。

 

《イメージBGM ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風より、golden wind》

 

「お前たちのやっている事はただの自己満足、人間としては最低なことだ。そう理解できている?」

 

「何よあんた?」

 

「俺か?俺は通りすがりの小学生さ。それより聞いてた?そんなことしてていいの?」

 

「はぁ?あんたには関係ないでしょ!」

 

「いいや、大ありさ!」

 

そう言うとその男の子は、カメラとレコーダーを取り出した。さらに持ってきてパソコンに繋げ、映像と音声をそれぞれ流し始めた。

 

「あら〜怖いね!ここにイジメの一部始終が映ってるじゃない!音も取れてるな〜!」

 

「あ、あんたそれどうするの?」

 

「ん〜、投稿サイトに投稿しようかな?そうすればこの悪事は全て世界の人々に見てもらえるし、誰かが然るべき処置を起こすでしょう!」

 

「や…やめてよ…」

 

「やめてねぇ〜。その言葉、何度この2人が言った?その子たちの気持ち考えた?聞いてないよね〜だから今までやめなかったんでしょ?自分達は言葉を聞かず、散々やったのにやめてだ〜   ふざけるのも大概にしろ!

 

今まで煽っていた話し方から一変、ついに彼は怒りだした。

 

「これがお前らへの罰さ!自分達が何をしたか、その身を持って知れ! てめえら全員、地獄の底で悔い改めろ!

 

そして彼は、エンターキーを押した。

 

---美玖sideoff---

 

「これで良かったろ」

 

「「ありがとう」」

 

あの後、樹が投稿した動画と音声のお陰で彼女らの悪事は全てバレ、彼女達は転校していった。おそらく、もう普通の生活はできないだろう。

 

「ねぇ、まだ名前聞いてないんだ。教えて?」

 

「そうだったな。星龍 樹、小学6年だ。」

 

「イツキ?不思議な名前。そういえばなんであの時、歌っていたの?」

 

「あぁ、両親の葬式の後だったんだ。つい先日亡くなったんだ。病気でね。」

 

「そうだったんだ」

 

「でも、2人の最期の願いが笑顔でいてだったから、笑顔になれるように歌を歌ってたんだ。歌が歌える内は悲しくないから。」

 

「そう…ねぇ樹。友達になってくれない?」

 

「いいぜ」

 

「あの歌の歌詞、教えて?」

 

「もちろんさ!」

 

 

「そういえばそんな事もあったなぁ」

 

「忘れていたのね」

 

「いやいや〜忘れる訳ないでしょ!2人との出会いなんだから」

 

「そうだよね。イツキ」

 

夜の月明かりを浴びながらそんな会話をしていた。

 

「あの曲で繋がった仲よね」

 

「アイリスなぁ」

 

「いい曲だものね」

 

だが、話をしすぎていた為、夜が更けていた。

 

「明日、がんばろうね。」

 

「あ、まって」

 

樹は2人にそれぞれ1振りの刀を渡した。

 

「これは?」

 

「俺が打った刀だ。多分使いやすいかなって思って。」

 

「「ありがとう。大切にするね」」

 

「じゃあいくか?」

 

「待って」

 

「うん?」

 

すると、両頬に柔らかい感触がした。

 

「え…」

 

「私、八重樫雫は、あなたの事を愛しています」

 

「えっ」

 

さらに

 

「私、八重樫美玖も、あなたの事を愛しています。」

 

「…マジで?」

 

樹は驚いていたがこう言った。

 

「ありがとう、でもまだいきなりで心の準備ができていないから。明日の遠征が終わったら、改めて気持ちを言うよ。」

 

「わかった。じゃぁまた明日。」

 

「またね」

 

2人は部屋に戻っていった。

 

「どうしようどうしよう!私、樹にキスしちゃった。」

 

「私も〜もうイツキの顔見れないよ〜」

 

2人は部屋で顔を真っ赤にしてベッドでバタバタしていた。

 

「「明日、頑張ろう」」

 

《イメージEDソング 藍井エイル『アイリス』》

 

(よかったじゃないか。相棒!)

 

(全くうるさいなぁ、どっから聞いてたのよ。)

 

(昔の話をしていたあたりから)

 

(ほぼ最初からかよ!)

 

樹はマスタードラゴンと話をしていた。

 

(でも、明日は…)

 

(あぁ、予言の日だ)

 

(生きて帰らなければな)

 

(あぁ)

 

その時、

 

「うっ!」

 

樹は右目を押さえてうずくまった。

 

(どうした!)

 

「大丈夫だ」

 

(そうか?)

 

「なんだったんだ?今の?」

 

樹も部屋へと戻っていった。

 

その右目は…龍の眼の様になっていた。

 

「あれがこの世界に召喚された戦士か。面白い、明日が楽しみだ。フフフ…フフフフフ…フハハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハハハハ」

 

暗闇の中、いかつい甲冑に身を包み、盾と剣が一対になっている武器を掲げながら笑っていた男がいたが、誰も気づかなかった。




いかがでしたか?今回からEDを入れてみました。私自身藍井エイルさんの『アイリス』好きなんですよね〜
この先も話に合いそうな曲を書いていくので、もしよろしければ、聞きながら読んでいただけると嬉しいです。
最後に出てきた騎士はなんだったんでしょうね。


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第6節 月下の語らい 〜モザイクカケラ〜

皆さん、おまたせしました。月下の語らい、2話目になります。
前回は樹と八重樫姉妹の過去と恋模様を描きました。今回はルルーシュ君の過去になります。
中村姉妹とルルーシュに何があったのか。お楽しみに


ルルーシュは4人と別れた後に王室のキッチンにいた。彼は料理が得意だった。また食べながら本を読むことで、より集中力が高まるという謎の能力を持っている。キッチンに向かうと

 

「ん?」

 

と言った。というのもキッチンのカウンターに誰かが作ったとされるサンドイッチと紅茶がトレーと一緒に置いてあったのだ。そばには手紙が置いてあった。そこには、

 

『ルル君へ、これを持って図書館に来て。待ってるから』

 

と書いてあった。

 

(あの2人か)

 

そう思ったルルーシュはトレーを持つと、図書館に向かった。元々本は好きだった。本を読み、知識を深め、実践し、人の役に立つ。それが彼の楽しみだった。

 

ルルーシュには親がいない。孤児だったルルーシュを樹の両親が引き取って育てていたのだ。その両親も2人が小学6年生の頃に急な病で亡くなり、以来ルルーシュは樹と共に両親の従兄弟である『兵藤家』で生活していた。

 

特にルルーシュは『兵藤』の長男、健三と仲が良く、様々なことでルルーシュと知恵比べをしていたのだ。もっとも高校生になった今は2人だけで生活しているので兵藤家にも帰っていないのだが。

 

(元の世界に戻ったらたまには帰るか)

 

と思うと、

 

(小僧、どうした?何か考え事でもあるのか?)

 

と、あいつが聞いてきた。

 

(なんだ、お前は)

 

(まぁなんとも言えないがな、それよりわしをお前呼ばわりするのはやめろ!)

 

(なら名前を教えてくれ)

 

(我が名はズァーク、覚えておくのだ!)

 

(!ズァークってあのズァークか?)

 

(あれの意味がわからんが…)

 

(すまん、忘れてくれ)

 

そんな話をしていると、図書館に着いた。ルルーシュは意を決して扉を開けて、中へ入った。

 

「待っていたよ、ルル君」

 

「すまない、双葉。恵里はどこだ?」

 

「ここだよ!」

 

上から恵里が降りてきた。

 

「キッチンの料理、作ったの2人だろ」

 

「うん、ボク達で作ったんだ!思い出の食べ物だから」

 

「あぁ、あの時のな」

 

「ええ」

 

---双葉side---

 

私達姉妹は普通の家族とは違う、真っ黒な生活を送ってきた。小学1年生までは普通に生活できていた。だが、小学1年のある日、公園からの帰り道、信号無視をしてきた車から恵里を守るために、父は車に轢かれて亡くなった。

 

その事がきっかけで、母から日常的に虐待を受ける様になっていった。

 

さらに、中学1年生の時に母が再婚した相手が最悪で、私達の事を性の捌け口としか見ていなかった。そして一度、恵里が襲われかけた。

幸い、恵里が反撃し、逃げ出したことで私が警察に連絡してそいつは逮捕された。

それから1月も経たないうちに恵里がいなくなってしまった。

 

「恵里〜!恵里!何処へ行ったの?ねぇ!」

 

必死に探したがどこにもいない。嫌な予感がしてきた。

 

「どこに…どこに行ったのよ…返事してよ」

 

目から涙が溢れ出る。

 

その時、

 

「大丈夫ですか?」

 

と声が聞こえてきた。

 

「え…」

 

顔を上げるとそこには、制服を着て手提げ鞄を持ち、顔だけ見ると女性と間違えそうな美形の少年がいた。

 

「何かありましたか?」

 

「え…ええと、妹が居なくなってしまって…一緒に探してもらえますか?」

 

「なんだって!それは大変だ、わかりました。一緒に探します!」

 

「助かります。よろしくお願いします」

 

これが、ルル君と私の出会いだった。

 

---双葉side off---

 

---ルルーシュside---

 

俺は図書館の帰り道に女の子を見つけた。その子は顔を伏せ、泣いていた。気になった俺は声をかけた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「え…」

 

女の子は顔を上げた。とてもきれいな顔をしていて思わず顔を背ける。だが、その顔からはとめどなく涙が溢れており、只事ではないことがわかる。

 

「何かありましたか?」

 

「え…ええと、妹がいなくなってしまって…一緒に探してもらえますか?」

 

と言ってきた。これは一大事だ!そう思った俺は、気づいたら叫んでいた。

 

「なんだって!それは大変だ、わかりました。一緒に探します!」

 

「助かります。よろしくお願いします。」

 

***************

 

その後、手分けをして探し出したが、一向に見つからなかった。

 

(まずいぞ、このままでは…)

 

彼女のあの慌てようだと恐らく虐待を受けていた可能性がある。それが原因だとすると自殺を図るかもしれない。

急がなければ。しかし心当たりはもうない。

 

「仕方ない!やるか!」

 

そう言うと俺は、逆立ちをした。これは俺のシンキングポーズである。こうする事で見えていないものや分からなかったものが見えてくるのだ!

 

「まずい!今度はマジでまずい!」

 

「ちょっと、どこへ行くの!?」

 

その声も無視して俺は進む。ダッシュして向かったのは大きな川。そこには…今にも飛び込みそうな女の子がいた。

 

---ルルーシュ side off---

 

---恵里side---

 

ボクはもう生きているのが嫌だった。だから、父親に襲われかけたのはちょうど良かったんだ。実の父は僕を車から守って死んだ。それから母は変わってしまった。毎日、暴力や暴言が日常的になり、精神はボロボロだった。

 

だからお姉ちゃんには悪いけど僕だけは死のうと思ってこの川にに来た。

 

「さようなら、皆。お姉ちゃん。」

 

と言って落ちようとした。すると、

 

「待ってくれ!早まるな!」

 

と言う声が聞こえた。そしてボクは道に叩きつけられた。僕が顔を上げるとそこには、女性の顔によく似ていて、でも真っ直ぐな瞳をした男の子だった。

 

「なんで止めたの?ボクはこれで苦しみから解放されるんだよ!なんで邪魔するんだよ!」

 

「君が死を望んでいないからだ!」

 

え…なんでそんなことを言うの?そんなこと、思っていないのに。

 

「君には関係ないよ!どうして適当なことを言うのさ!」

 

「…さっきの君の一言さ。君はお姉さんに謝っていた。お姉さんを残してしまうのが辛かったんだろう。」

 

「え…」

 

「家族を置いて逝くのは辛いもんさ。君のお姉さんは必死だった。泣いていた。自分でどうしようもなかったからこそ、俺に協力してもらったんだろう。そうだろう、お姉さん?」

 

「恵里!」

 

彼の後ろからお姉ちゃんが走ってきた。息を切らしているあたり、あちこち探していたのだろう。

 

「ごめんね、恵里!あなたの苦しみ、わかってあげられなかった!」

 

「ううん、ボクの方こそ悪かったよ。1人だけ楽になれれば、それで良いと思っちゃった。お姉ちゃんの事、考えてなかった。」

 

ホッとしたら、なんか涙が出てきた。

 

「恵里?」

 

「ごめんね、双葉お姉ちゃん…泣いたらダメだよね。迷惑を掛けたんだから…」

 

「……泣いていいんじゃないのか?」

 

「「え…」」

 

「人を想って泣くのは、人である証拠だ。絶対に泣かないと言うやつを俺は信用しない」

 

「「うう…うわあああ〜」」

 

彼の側でボクたちは泣き続けた。

 

---恵里 side off---

 

「大丈夫か?」

 

「ええ、ありがとう。もう大丈夫よ」

 

「ごめんね、僕たちのために色々迷惑かけて。」

 

「別にいいさ。」

 

そう言うとルルーシュは鞄の中から紙袋に包まれたサンドイッチを取り出した。

 

「食べよう、俺たち3人の秘密だ!」

 

「ねえ、名前を教えて?」

 

「星龍ルルーシュ、よろしくな。恵里、双葉。」

 

「「うん、よろしくルルーシュ君」」

 

その時のサンドイッチは、今までで一番美味しかった。

 

***********

 

「そんなこともあったなぁ」

 

「今でも思い出すのね、私もだけど。」

 

「ボク達はあの日から始まったんだよね」

 

「そうだな」

 

《EDテーマ sunset switch:モザイクカケラ》

 

「明日また頑張ろうな。」

 

「「うん」」

 

そしてルルーシュはあるものを渡した。

 

「「これは?」」

 

「お守りだ、持っといてくれ。」

 

そのお守りはグランツ鉱石でできていた。プロポーズなどに使われる高級な宝石だ。

 

「ちょっとルル君、これは」

 

「もしかして、僕達の事…」

 

「そのまさかだ、俺は2人を愛している。」

 

2人の時が止まった。

 

「じゃ、じゃあそう言うことだから!」

 

そう言うとルルーシュはどこかに行ってしまった。

 

「「え…ええ〜」」

 

フリーズから戻り、2人は顔を赤くして狼狽えていた。

 

「ねえ恵里、明日頑張ろう。そしてきちんと返事をしよう!」

 

「うん!そうしよう!」

 

2人は硬く誓い合った。

 

「ふう…」

 

(ハハハハ流石だな!小僧)

 

(おい、やめろ!ズァーク!恥ずかしい!)

 

(すまないな!でも明日は色々あるぞ!)

 

(あぁ、だから力を貸してくれ、相棒!)

 

(了解した!小僧)

 

その彼の左眼には…翼を広げた龍が描かれていた。




はい、いかがでしたでしょうか?ルルーシュの方が2人に惚れていたのですね〜
いや〜よかった。

次回はハジメ君の過去です。原作とは違い…チンピラの止め方がスマートなのでそこに注目してください。
また、アンケートを締め切らせていただきます。
圧倒的なアマテラスドラゴン推しで正直びっくりしております。
この結果は後々、反映していきますので、今後もよろしくお願いします。

では、また次回!


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第7節 月下の語らい 〜真の強者〜

どうもこんにちは。Warewareです。月下の語らい最後になります。
いよいよハジメ君の物語になります。最後の最後にある人物の名が明かされます。
いつもよりちょっと長めの話。お楽しみください。


樹が庭に行き、ルルーシュが図書室に向かった頃、ハジメは自分の部屋にいた。特にやることはなかったのだがやっぱり準備は必要ということで、部屋でデッキを組み立てていた。

 

(あ、あのさ…)

 

(何?)

 

(明日、初陣だよね)

 

(そうだけど)

 

(じゃあなんでデッキ組み立てているの?)

 

(明日の戦いで使えるようにだよ。何かあってからじゃ遅いから)

 

(…ところで君のキーカードは何?)

 

(これだけど?)

 

1枚のカードを取り出し、それを見せた。

 

(…‥…よりにもよってジークブルムノヴァかい?)

 

(ダメ?)

 

(頼む!こっちにしてくれ!)

 

(え、これ!)

 

それはなんとサジットアポロドラゴンだった!

 

(なんでこれを?)

 

(それは…)

 

すると目の前のテーブルに、手のひらサイズのドラゴンが現れた。

 

(私が『サジットアポロドラゴン』本人だからだ!)

 

「……マジで!」

 

ハジメは驚き、大声をだしてしまった。

 

(マジです。)

 

(そっか…ちなみに、僕みたいに龍と契約しているのは誰?)

 

(君の知り合いだ。2人ともな)

 

(なるほど〜!)

 

それから1時間後、

 

「よし!デッキ調整終わり〜!」

 

(よかったね、ハジメ)

 

そんな話をしてると、コンコン、と扉を叩く音がした。

 

「どちら様ですか?」と尋ねると、

 

「ハジメ君起きてる?白崎です。」

 

「園部よ、今平気?」

 

「うん、もちろんいいよ」

 

2人を部屋に招き入れ、紅茶を入れるハジメ。

 

「で…どうしたの?何かあったんでしょ。」

 

2人がきた理由を訪ねる。すると、

 

「ハジメ君には悪いけど、明日の訓練はこのホルアドで待ってて欲しいの!お願い!」

 

「そうらしいのよ」

 

そう言われたハジメは少し驚いたが、すぐに普通に戻って理由を尋ねた。

 

「どうして?僕が足手纏いだから?」

 

「そうじゃ無いの!さっきとても怖い夢を見て…それで」

 

「よければ、その夢の中身を教えてくれる?」

 

「うん、実は…夢ではハジメ君達3人を追いかけても追いつけなくて最後には…龍になって居なくなってしまうの…」

 

「そっか…」

 

ハジメは顔を伏せながらこう言った。

 

「大丈夫。僕は死なない。いなくなったりしない。ってこんな言い方、天之河くんみたいだなぁ。でも心配しないで」

 

「でも…」

 

「香織、いいんじゃない?心配なのはわかるけどハジメには樹とルルーシュがいる。どんなことがあっても帰ってくるわよ!」

 

「…そうだね!」

 

香織は笑顔になる。

 

「でも変わらないね。ハジメ君は。」

 

「え…どう言うこと?」

 

「実はね…」

 

---香織side---

 

中学2年の頃、私は買い物の帰り道にハジメ君に出会った。その時はハジメ君の側に小さな男の子とその子の祖母みたいな人がいた。

そして目の前に不良っぽい人がいた。その人を前にして何か話している。すると急に不良っぽい人は一目散に逃げていった。

 

何が起こったかわからなかったが、その時はこう思った。

 

(腕で勝つんじゃない。ああやって話して勝つ人がいるんだ)

 

私はそう思った。

 

---香織side off---

 

「って言う訳なの。あれ、ハジメ君?」

 

その当事者はと言うと…部屋の隅で縮こまっていた。

 

「ワタシハカイニナリタイ」

 

「落ち着いてハジメ!香織もこれ以上はやめて!」

 

それからハジメが元に戻るまで10分かかった。

 

「落ち着いた?」

 

「うん、ごめんね。あの時の事きちんと話すから」

 

「教えて!ハジメ君。」

 

「あの時は」

 

---ハジメ side---

あの日、僕は新しく出た漫画を買って帰る所だった。

 

「早く帰って読もう〜 うん?」

 

目に飛び込んで来たのはアイスを片手に泣いている男の子と謝り続けるお婆さん、そして不良の様に見える人だった。そして不良の服はアイスで汚れていた。

 

おそらく、男の子がアイスで不良の服を汚してしまい、それに怒った不良がお婆ちゃんを脅しているのだろう。

なんとかしなければと思った僕はその場に向かった。

 

「どう落とし前付けんだよババア!?あんコラ!」

 

「ごめんなさい」

 

こんな話が続いていた。するとウウー

何処からかサイレンが聴こえてきた。

 

「すみません、これ以上は見過ごせないので警察を呼びました。」

 

「なんだよテメェ」

 

「名乗るほどのものではありません。ところでいいんですか?このままだとあなたは捕まりますよ。僕が証言しますので。どうしますか?」

 

「クソー、この件は無かったことにしてやる!じゃあな」

 

と言っていなくなってしまった。

 

「ふう、大丈夫ですか?」

 

そう聞きながら僕はポケットからスマホを取り出す。先程のサイレンは僕がスマホから流したモノだった。

 

「ありがとうございますぜひお礼を」

 

「あ、いえ。大丈夫ですよ。」

 

「ではお名前を教えてください」

 

「名乗る程のものではありません。では」

 

そう言った僕はその場を去った。

 

優花さんと香織さんに会ったのはそれから1月後の事だ。自分の家に樹が2人を連れてきたのだ。

 

「お客さんだぞ、ハジメ」

 

「ありがとう。えっと君たちは…」

 

「白崎香織です。」

 

「園部優花よ。よろしくね。」

 

「えっと、どんな御用で?」

 

「なんか小説を探してるみたいなんだけど、ハジメ持ってないかなっと思ってな!」

 

「そっか、まぁとりあえず上がって」

 

「「お邪魔します」」

 

これが僕たちの出会いだ。

 

---ハジメside off---

 

「じゃあ2人とも見てたって事?」

 

「そうなんだよ、ハジメ君」

 

「私たち思ったの。喧嘩が強い事が強さじゃない。天之河みたいな人よりもハジメのような人が1番強いんだって。」

 

「そっか…」

 

「だから」

 

そう言うと香織はハジメの右手を、優花はハジメの左手を握る。

 

「絶対に帰って来ようね。ハジメ君。」

 

「約束よ、ハジメ」

 

「うん、頑張ろうと思う」

 

「それとね私たち言いたいことがあるの」

 

「何?」

 

ハジメの前で2人はこう言った。

 

「白崎香織はハジメ君が大好きです。」

 

「園部優花もあなたが好きです。」

 

2人から告白された。

 

「そう言ってくれるのは嬉しいよ。明日の訓練が終わったら返事して良い?」

 

「「うん待ってるから」」

 

「じゃあまた明日」

 

「「うん、またね」」

 

そう言って2人は帰っていった。

 

(ハジメ君、明日は絶対に帰って来ようね)

 

(うん、よろしくね。サジット!)

 

(ああ、私の相棒)

 

EDテーマ Uber WORLD AVARANNTI

 

だが、ハジメは知らなかったこれを見ていた者がいた事を。そしてその者の顔が醜く笑っていた事を。

 

「やはり思った通りだな」

 

その醜く笑っていた者も監視対象だったとは気付かなかった。

 

「なんとかしなければな」

 

***********

 

「フッ、やはり面白い」

 

外から見ていた聖騎士はこう言った。その側には、青い眼をした白銀の龍、機械の体をした騎士、巨大な銃を持ったゾンビのような龍、全身金属の獅子がいた。

 

「珍しくやる気に見えるな、グランオーディン

 

そう白銀の龍が言えば、

「それはお前だろ。ブルーアイズ!

 

機械の騎士が答える。

「我らを楽しませくれよ!我が好敵手!」

 

とリーダー格の獅子が喜ぶ。

 

そして参謀長のゾンビの龍が聖騎士に尋ねる。

 

「珍しくやる気ですね。我らが騎士王、ミスリル様!

 

グランオーディン

 

「ハッ」

 

ブルーアイズ

 

おう

 

ストライクブルムレオ

 

承知しました

 

ロマノフ

 

お任せを!

 

「出るぞ!」

 

「「「「ラジャー」」」」

 

そして騎士王ミスリルはつぶやいた。

 

「待っているぞ、我が愛すべき友よ」




ついに出ました。騎士王ミスリル!彼は魔人族ではありませんが訳あって行動を共にしています。
そして本日より、次回予告を入れます。

〜ハジメです。ついに始まったオルクス大迷宮での訓練!
順調に進むがトラップにかかり、最強のベヒモスが現れる。
だが、それを1撃で沈める騎士王ミスリル!
彼は戦いを楽しむ王だった!
次回 騎士王降臨。
決めろアタックステップ!〜


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第8節 騎士王降臨

どうもWarewareです。連続投稿出来ました!
いよいよ迷宮編です。樹たちの前に立ちはだかる騎士王ミスリル!
彼の目的は?


翌日、樹達は『オルクス大迷宮』へと向かった。迷宮と名はあるが入り口にはゲートができており、まるでテーマパークの様である。ゲートでステータスプレートを見せて、中へと入る。

 

「面倒だがすまない。これは必要な事なんでな」

 

リアム看守がそう言う。

 

今回の訓練には引率として、メルド団長率いる騎士団とリアム看守率いる3名の看守がついてきている。

何もないことを祈りたいがこればかりはわからない。一応、皆それなりに考えているのだが…

進み始めて15分で、ムキムキのネズミと青いゴムのような魔物、イグアナがバギーに乗った魔物が出てきた。

 

「よし、光輝達が出ろ!他は下がれ!交代で出てもらうからな!あれはラットマンとスライム、イグアバギーだ!素早いだけで大した事ない!慎重に行くんだ!」

 

「「「軽くディスるなよ!」」」

 

メルド団長の解説に軽くツッコミを入れる看守達。

 

光輝達はそれぞれ聖剣やら籠手やらで魔物を倒していく。メイジである恵里と鈴、アタッカーである雫と美玖が刀で敵を斬る。がやはり手応えがあるので顔を顰める。

 

「大丈夫か?」

 

「樹、ありがとう。大丈夫よ」

 

「辛くなったら言うから、イツキ」

 

「了解」

 

「魔石は回収する様に」

 

リアム看守の指示が飛ぶ。その後もローテーションが周り、樹達の番になった。

 

「よし、行くぞ!」

 

「前衛は任せた!」

 

「無理はしないでね」

 

樹は天龍の剣で魔物の急所を的確に斬る。ルルーシュはその後ろから遠距離でハドロンマグナムを放つ。ハジメは相手に近づき錬成で魔物の体内を内側から破壊する。まさに慣れた手つきで行う樹たちに皆が驚いた。

 

「ふう、やったぜ」

 

「次も頑張ろう。」

 

「そうだね」

 

さらに進む事20階層、今回の最終目的地にたどり着いた。今回はこの20階層までで訓練は終了となっている。なお、迷宮で1番怖いのはトラップである。これを見破る為にフェアスコープと言う魔法具がある。これで覗くとトラップを見極める事ができるのだ。

 

「ここから複数の種類の魔物が現れる。気をつけろよ。擬態する魔物もいるからな」

 

すると目の前に石でできた機械兵が擬態を解いて現れた。

 

「ロックゴレムだ」

 

「気をつけろ、あいつらは固有スキルで動きを封じてくるぞ」

そう言い終わらないうちにロックゴレムが衝撃波を放ち、動きを止めてくる。これがスキル『粉砕』である。

さらにロックゴレムがロックゴレムを投げると言う珍事が発生。

 

「ヒィ」

 

女性陣は怯えて詠唱をやめてしまった。

しかし、空中の敵をハジメが弓で撃ち抜き、樹が叩き斬る。

 

「お見事!」

 

スティーブ看守の褒め言葉が出る。が、

 

「よくも皆を、許さない。」

 

どうやら怯えた理由を死の恐怖と考えた天之河がキレたらしい。

 

「天翔羽ばたき天へと至れ!天翔閃!」

 

「おい、バカ!」

 

リアム看守の忠告も虚しく、大技が炸裂!敵は全滅した。もう大丈夫とイケメンスマイルで言おうとした時、

 

「オラァ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

 

ものすごいパンチのラッシュで天之河が吹き飛び、顔面から壁にめぐり込んだ!

リアム看守は腕をポキポキ鳴らしながらこう言った。

 

「今のが命令違反した場合の制裁だ!仲間の事を考えずに大技を出し、犠牲者を出したらどうするんだ!周りをよく見て戦え!」

 

リアム看守の後ろに牛の様な龍が見えた様な気がした。

 

「リアム看守はやっぱり怒ると怖いですね〜ステイサム看守」

 

「まぁ、あれは怒られるよ。いくらなんでも犠牲者を出したら意味ないから〜」

 

「兄さん、やっぱりリアムさん、あの事気にしているのかな?」

 

「あの事?」

 

「樹達には後で教えるよ。」

 

「はい」

 

「ねえ、あれ何?ルル君。」

 

双葉が指差す場所には丸見えのグランツ鉱石があった。

 

「おお、グランツ鉱石だ。大きさも素晴らしい。これでプロポーズすると喜ばれるぞ。」

 

「でもおかしくないか?あんな風に置いてあって。触ってくださいって言ってるようなものだぞ!」

 

メルド団長の解説があったが、確かにおかしすぎる。

 

「マスタードラゴン!」

 

(承知した!)

 

樹は目を閉じて強く念じる。再び目を開けると…龍の眼になっていた!

 

これは龍の体(ドラゴンフォーゼ)といい、体の一部を龍化させる事で、常人ではあり得ない能力を得ることができるのである。

例えば目の場合は、エネルギー回路の目視と相手の弱点表示、トラップの有無などができるのだ。

 

「あれはトラップだ。触れるなよ!」

 

「いや、もう遅いよ…」

 

既に檜山が触れてしまった後だった。足元に魔法陣が描かれ、全員転移させられる。

 

「あのバカやろ〜!」

 

樹の声が迷宮にこだました!

 

*************

 

転移した場所の壁には

『60階層』と掘られていた。樹たちはその大きな橋の上に投げ出された。

 

「お前たち、早く橋の反対側へ向かえ!」

 

しかし、リアム看守の言葉も意味をなさない。

橋の後ろ側には、骸骨の兵隊の大群が現れた。しかし、橋の前に現れたものの方がヤバかった。

 

「鋭い牛のような角、ゴリラのようなマッシブな体、そして巨大な体型、間違いない!あれは『暴力獣 ベヒーモス』だ。まずい!早く逃げろ!」

 

「アラン、生徒たちを率いてトラウムソルジャーを突破しろ!カイン、イヴァン、ベイル、全力で障壁を張れ!奴を食い止めるぞ!光輝、お前も早く行け!」

 

「いや、俺たちもやります。あのゴリラみたいなのを倒せばいいんでしょう!」

 

「あれが本当にベヒーモスなら誰も勝てないんだぞ!その昔に巨大な隕石を呼び寄せ、世界を壊滅させた猛獣だぞ!早く逃げ…」

 

そこまでしか言えなかった。なぜならベヒーモスは頭のてっぺんから一刀両断されてしまったからだ。その影響によりトラウムソルジャーも消えてしまった。

 

ベヒーモスの亡き骸の下に白に少し紫の混じった鎧を纏い、盾の後ろに剣を収納したものを左手に持った騎士が現れた。

 

「我が名は騎士王ミスリル!魔人族の騎士で有る!ここの最強の戦士を呼べ!我と戦おうぞ!」その騎士はそう述べた。

 

「騎士王ミスリルよ!なぜ戦う!戦って何の意味がある!」

 

リアム看守は訪ねる。

 

「そんなことか。強き者と戦うのは武を極める者の楽しみ!

我の趣味である!さぁ我と戦おうぞ!

 

そう述べると彼は笑った。




はい、いかがでしたか?
度重なる違反により、ついに鉄拳制裁が炸裂しました。
そしてリアム看守にも何やら兆しが…

【ナレーション 樹】
〜騎士王ミスリルの質問に意気揚々と答える天之河
おいおい、おまえ強くないだろ!
見事にあしらわれる天之河、次の指名は…え
俺たち?
いいぜ〜!ミスリルのお眼鏡に叶うとは思わないがやってやろうじゃん!
そして、運命の時が訪れる。
次回 騎士王激突!そして…
ドラゴン、スタンバイ!〜


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第9節 騎士王激突!そして…

どうも、Warewareです。
始めて大規模な戦闘描写を行います。変なところや改善点がありましたら
コメントで教えてください!よろしくお願いします。


目の前に現れた騎士王ミスリルと名乗る魔人族を前に、ほとんどの生徒は身動きが取れなくなってしまった。それもそのはず、クラスメイトは全員最近武器を持ったばかりの素人。かたや向こうは戦いを生業とする騎士。どちらが上かは言うまでもない。

普通なら逃げるのが賢明な判断だが、

 

「俺がこの中では最強だ!俺が相手になってやる!」

 

「「「なっなんだって!」」」

 

そう挑発に乗ったのは天之河。樹、ルルーシュ、ハジメの3人は驚いてしまった。

 

---樹 side---

 

(あいつ、リアム看守に殴られてバカになったか!?)

 

俺の心情はそうだった。こう言う時は相手に納得してもらい逃げるのが1番効果的だ。だがこのいいタイミングで得たチャンス。逃すはずがなかった。

 

「貴様は私が手を下すまでもない!グランオーディン!」

 

ハッ!

 

そう呼ばれると白い鎧に身をつつみ背に大きな翼を生やし、フルフェイスの兜を被った騎士が現れた!

 

「わたくしが相手をいたしましょう。さぁ、どこからでもどうぞ!」

 

「俺が1番強いんだ!」

 

そう言いながら突っ込んで、聖剣を振り下ろすが…何と 指1本で止められてしまった!

 

「まるでなっていませんね。これではせっかくの聖剣が泣いていますよ。」

 

「ふざけるな〜!」

 

煽られ、攻撃が単調になっていく。右上から袈裟斬り、突き、剣を上げながら斬ると連続攻撃をしても右に左に上に下によけられるだけ。意味をなさない。ついには横に薙ぎ払った剣の上に乗られてしまった!

 

「凄いな〜あの騎士さん。」

 

俺は普通にグランオーディンの身のこなしに見惚れていた。いくらこちらが初心者とはいえ、天之河も弱い訳ではないはずだ。それでも向こうの方がはるかに強く美しくすら感じる。

俺は始めて、戦いを見て楽しいと感じていた。ふと、誰かからの視線を感じ取る。

 

(見られておるな)

 

マスタードラゴンから話しかけられる。

 

(誰が?)

 

(あのミスリルと言う騎士だ!)

 

そう言われて見ると、確かにこちらを見つめている王がいた。だがなんとなく楽しみがあって見られている感じがした。まるで『次はお前だ!』と言われているようだった。

---樹 side off---

 

「つまらない戦いですね。もう終わりにしましょう。」

 

《イメージソング: 『林原めぐみ』集結の園へ》

 

そう言うとグランオーディンは目の前から消えてしまった。いや、正確には視認できない程のスピードで攻撃しているのだ!右から左、上から下と気づいた時にはもうその場にいないため反撃ができない。

 

突き、上げ斬り、唐竹割り、回し斬り、斬り流し、兜割りとまさに斬り技のオンパレード!

砂埃が晴れると、既に天之河は虫の息になっていた。

 

「あなたが勇者とは笑わせてくれますね。人間の陣営はよほど人手が足りない様子。だから他の世界から、戦い慣れしてない者を連れてくるのですよ!」

 

煽っているようで、まとを得た解答に誰も答えられなかった。それ以上に天之河の敗北がみんなの心に絶望を与えていたのだ。彼ならできる。そう思っていた者はその考えは甘かったと自覚させられた。

 

「これで終わりです」

 

そう言うとグランオーディンは自らの剣に冷気を纏わせた。とてつもない冷気のため、周りの気温も一気に下がっていく。

 

天彗剣!氷結泡孤斬!

 

凄まじい冷気と共に一刀両断!天之河は大きく吹き飛び、その立派な鎧は粉々に粉砕されてしまった。

《イメージソング 終了》

 

グランオーディンはミスリルの方へ戻っていく。

 

「済みました。相手になりません…」

 

「そうか、ご苦労だったな」

 

ミスリルは肩を落としたが直ぐに向き直り、

 

「さぁ次に向かってくるのは誰だ!」

 

天之河がやられたことにより誰も戦おうとしない。

すると

 

「うむ、そこの3人の戦士よ!我と戦え!」

 

指名されたのは…樹、ルルーシュ、ハジメだった。

 

「「「えっ俺(僕)たち?」」」

 

「そうだ、我と戦え。もちろん3対1だ」

 

急に指名され狼狽える樹たち。だがその顔は……笑っていた!

 

「わかりました。胸を借ります!」

 

樹は前に出た。

 

「やらせてください!」

 

ルルーシュは指を鳴らしながら前に出る。

 

「よろしくお願いします」

 

ハジメは少し怯えながら前に出る。

するとミスリルは妙な事を言った。

 

「そうか…お前たちが今代の龍騎士達か…」

 

「「「なにか言いましたか?」」」

 

「いや、なんでもない!では行くぞ!」

 

その戦闘は静かだった。始まって5分はどちらも動かなかったのだ。樹たちはわかっていた。この戦いは殺し合いである…と、それと同じく、先に動いた方が負けるという事も…

 

先に動いたのはミスリルだった。彼は真っ先に樹の前まで距離を詰めた。そして盾から剣を抜き、上から斬りつける。樹も天龍の剣を抜き鍔迫り合いの状態にした。

 

「なるほど、その様子だとまだカードの能力は使えないようだな。」

 

「カードの能力だと?」

 

「まあ良い。それがなくてもここまでやれるとは、やはり素晴らしい!」

 

「俺1人だけ見てると、足元掬われますよ。」

 

「何?」

 

樹の後ろから右手に剣を、左手にハドロンマグナムを持ち撃ちながら牽制するルルーシュ。ミスリルは盾で受けようとするが、何かを感じすぐに回避する。案の定、壁に当たった弾は壁を溶かしていた。

 

「なるほど、毒か」

 

「毒ではありません。ビームです。」

 

「高出力エネルギーか。さすがだ!」

 

「それだけではない!」

 

「錬成!」

 

脇から錬成を行い、壁を作り、ミスリルの視界を潰す。その視界の外から矢を放つ。

 

「流石だな!視界の外から気を伺い一発を放つ!見事なコンビネーションだ!」

 

「「「お褒めに預かり光栄です!」」」

 

樹たちは楽しくてしょうがなかった。

 

「フフフ、フフフフ、フハハハハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハ!これだから楽しい!これだから戦いはやめられない!」

 

ミスリルのボルテージは最高潮に達した。

 

「さぁ、もっと戦おう!もっと俺を楽しませてくれよ!」

 

その一言でまた戦い出した。

 

樹の唐竹割りをミスリルが剣で受け止めて、盾の先端で突き刺す。それを樹はバックステップで回避して回転斬りを見舞う。それを後ろへ避けようとするミスリル。が、その後ろからルルーシュがマグナムを撃つ。それを察知して上に逃げようとするが、上からハジメが矢を放ち攻撃してくる。

 

「「「もらった〜」」」

 

樹たちは勝ちを確信した。

 

「甘い!」

 

ミスリルは1枚のカードを盾に入れた。すると突然、大きな氷の壁が現れ攻撃を防いだ。

 

「「「マジ!」」」

 

その壁は攻撃を防ぐとすぐに消えてしまった。

 

「カードの能力を使うとはこう言う事だ!」

 

「なるほど、今のがそうか」

 

ルルーシュは納得していた。

 

「お〜〜い」

 

リアム看守の声が聞こえる。

 

「早く来い!撤退するぞ!」

ミスリルを見ると彼は早く行けと言わんばかりに顔を動かしていた。

だがその時、ガラガラと変な音がして橋が崩れ出した!樹たちの戦いが激しすぎたので、耐えられなかったのだ。

 

崩れる橋を急いで渡る。だがその3人の目の前に大きな火球が現れた。咄嗟の事で彼らは回避が間に合わず…

 

3人は落ちていった…

 

《EDテーマ:家入レオ 未完成》

 

檜山は前日の夜、眠れなかったためトイレに行った。その帰りに香織と優花がある部屋に向かうのを見た。その部屋から出てきたのは…ハジメだった。

檜山は激怒した。自分より下のただのオタクで有るハジメが2人に好かれてるなんておかしいと思ったのだ。そしてこの訓練内で殺してしまおうと考えたのだ。

そして樹たちが逃げていて無防備な状態の今、火球を放った。そして彼らは落ちていった。

これで邪魔はいない。香織と優花を自分の物にできる…はずだった。

 

神聖な戦いに水を刺すな!

 

ミスリルの怒りの一撃が発動!檜山はバラバラにされてしまった。

 

「「樹(イツキ)!」」

 

「「ルル君(ルル)!」」

 

「「ハジメ君(ハジメ)!」」

 

6人の女子の悲鳴が迷宮内にこだましていた。




〈イメージボイス:リアム看守〉
〜落ちていった樹たち。え、犯人は誰だって?
さらなる強さを求め奔走する女子達。
そしてついにあの男が動き出す。
よし、頑張って樹達の穴を埋めるぞ!
次回:再起する者たち
君の心も監禁しちゃうぞ!〜


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幕間 再起する者たち

本来なら先に奈落組をやる予定でしたが、こちらを先にやります。
一気に話が急転直下のヤバい話になります!


樹、ルルーシュ、ハジメの3人が奈落に落ちた後、他のクラスメイトは訓練を終えて、ハイリヒ王国に帰還した。あまりに様々な出来事が多くなり、誰もどう戻ったのかわからない状況だった。

香織と優花は気を失ってしまい、美玖と雫がそれぞれ背負って歩いていた。自分達も辛い筈なのに…恵里と双葉は泣くのを必死に堪え、前へ足を出す。誰も話すことはなく必死になって歩いていた。

 

「そうか…」

 

「はい、星龍 樹、星龍ルルーシュ、南雲ハジメは栄誉の殉職を果たしました。」

 

ジャック国王に苦い顔をしながら報告をするリアム看守。その顔から悔しさが滲み出ている。

 

「そして落とした者の特定は?」

 

「まだ出来ておりません!」

 

「そうか…この事は国には流すな!他の者が心配しないように、いいな!」

 

「はっ!!」

 

そして王は部屋に戻って行く。部屋に入ると、

 

「いよいよ時が来たぞ!我が魂!」

 

と声をかける。すると、

 

(待っていたぞ!我が半身!)

 

と声が聞こえた。それはジャックのポケットに入っていたカードから聞こえた。

 

「あの本の通りになっているな。それなら生きている可能性がある。

 我らも動くぞ!レッドデーモンズドラゴン!」

 

(心得た!)

 

1人と1体はそう言い合った。

 

リアム、ステイサム、スティーブの3人の看守は看守執務室の中でコーヒーと紅茶で献杯をしていた。

 

「彼ら、向こうの世界で楽しくやってるといいね。」

とスティーブは言う。

 

「あまりそう言うな。スティーブ…」

 

「と言われてもさ〜。あそこまで頑張っていたのにこんなあっけない終わり方、俺は許せないよ!」

 

スティーブは机に拳を叩きつける。元々、スティーブは道化を演じていただけで本来の性格はこんなにアツい男なのだ。

 

静かになった部屋でリアムがふと思い出した。

 

「そういえば、あいつらからメッセージもらってなかったか?」

 

「「あ」」

 

「あれを聞いてみようと思う!」

 

「「賛成!」」

 

早速準備をする。録音機の再生ボタンを押し、音声を聞く。

 

『え、え〜テストテスト。ただいまマイクのテスト中…おしOK。もしもし、樹です。』

 

『ルルーシュです。』

 

『ハジメです。』

 

『これ聞いていることは僕らに何かあったと言う事です。もしかして奈落に落ちたかな?』

 

『そうだろハジメ、でも俺たちはこうなることがわかっていました。』

 

『俺の相棒であるマスタードラゴンには【未来予知】の能力があるんです。この能力でこの状況を読んでいました。』

 

『多分犯人は檜山君かなぁ。僕に嫉妬してやったんかな?』

 

『そうだなぁ、それと大事な事を言っておきます。俺たちは生きています!

 

『まぁこれも予言なんですけどね。俺たちの事は心配しないでください』

 

『『『ではまた!』』』

 

樹たちのメッセージはここで終わっていた。

 

「ふふ、なんだ。心配させやがって!これも全て計算か?」

 

「そうだろリアム。彼らはまた戻ってくる」

 

「そうだね兄さん!俺たちも頑張ろう。」

 

そう誓い合うリアムの手には牡牛座の12宮Xレアが、ステイサムの手には牡羊座の12宮Xレアが、スティーブの手には双子座の12宮Xレアが、それぞれ握られていた。

 

一方、女子の6人は誰も信じられなくなっていた。城に戻ってきたクラスメイト達はすぐに樹、ルルーシュ、ハジメの3人を落とした犯人を探そうとした。だが、天之河が

 

「そんな奴はこの中にいない!悪いのはあの騎士だ!あの騎士が3人を落とし、檜山を殺した!だからあいつが悪い!」

 

と言ったのだ。その一言に全員が固まった。ミスリルが最後に言った言葉を聞いていたのにそう言ったからで有る。その直後に香織と優花が目覚めたのだが、彼女達はハジメたちの死を聞き、天之河に近づかなくなっていた。

 

今、彼女たちは1つの部屋に入っていた。リアムから用意されたものである。

すぐに彼らを助けたいが、今の自分達は弱い。そのたった一つの事実が彼女たちの心に影を落としていた。

 

「「「「「「一体どうしたら……」」」」」」

 

そんな事を思っていると。

 

「こんばんは、今日は月が綺麗ですね〜」

 

そう言いながら窓から入ってきたのは、ドラゴンが2足歩行したような姿で、大きな銃を装備し、マントを羽織った貴族風のドラゴンだった。

 

「「「「「「誰?」」」」」」

 

「お初にお目にかかります。私はミスリル様の腹心の邪眼皇ロマノフI世と申します。以後お見知り置きを」

そう言って彼は頭を下げた。

 

「それでどんな用で?ロマノフ様?」

 

紅茶を淹れながら双葉が訪ねる。

 

「我が君主の汚名を注ぐためです。」

 

彼はそう答えた。

 

「「どう言う意味ですか?」

 

雫と美玖が言う。

 

「言葉の通りですよ。ミスリル様は何も悪くないのです。」

 

6人は真剣に話を聞く。

「ミスリル様は元々、純粋に戦いを好むお方。そのため、戦う方には敬意を払いズルや騙し討ちは絶対に許しません!なので本日のような事はあり得ないのです。」

 

そう言うと彼は…土下座をした!

 

「許せないのはわかっています!もしあの世で詫びれと言うのなら自害します!だからどうか…どうかお許しください!」

 

なんと素晴らしい忠義だろうと思った。彼は自分のことは許さなくても、君主のことは許してほしいと訴えたのだ。その姿を非難する者は誰も居なかった。

 

〈EDテーマ シャイニースター〉

 

「1つお願い出来ますか?」

 

「なんでしょう?」

 

「私たちを鍛えてください!」

 

雫はそう頼んだ!今のままだと誰も救えない。守ることも出来ないと思ったのだ。

 

「皆さんもですか?」

 

ロマノフが聞くと6人は大きく頷いた。

 

「分かりました。明日の夜から皆さんに稽古をつけましょう」

 

「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」

 

「では失礼致します。」

 

そう言うとロマノフは去って行った。黒いブローチを残して。

 

「頑張ろう、皆」

 

「「「「「うん」」」」」

 

皆が一つになった瞬間だった。




〜次回、龍王、真覚醒〜
目覚めよ、我らが王!


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第10節 龍王・真覚醒

ついに本当の覚醒です。皆で祝いましょう〜


(起きろ…起きるのだ、おい…いつまで寝ておる!さっさと起きろ!)

 

「ん」

 

その一言で目が覚める。樹はあたりを見渡し、今自分がどこにいるか確認する。しかし暗闇で何も見えない。

 

「顕現せよ、火種」

 

そう唱え火を起こす。1回1回唱えないと使えない炎に樹は苛立ちを覚えた。

幸にしてルルーシュとハジメはまだ眠ったままだ。2人を炎の近くに移動させ樹は現在地を確認する。壁には

真・オルクス大迷宮第1層

と記されていた。

 

「マジかよ…」

 

樹はつぶやいた。ここが本当の迷宮?だとすると上はそれをカムフラージュするために作られたものという事になる。つまりここに落ちたことが、ある意味ラッキーだったことになる。

 

「落とした奴、誰だった?」

 

(そなたの予想通りの男だったぞ)

 

「檜山か。全くどうして予言通りになるのか…」

 

そう話をしながら樹は持ち物を整理する。幸い天龍の剣とカードデッキは無事だった。だが、食糧と飲み水は調達しなければならない。樹は、自らの武装を整えると食糧調達のために探索し始めた。

 

進み初めて1時間、暗闇の中松明の灯りを頼りに来たがなかなか見つからない。

その時、

 

「見つけた…え!」

樹はやっと獲物を見つけたが、驚いてしまった。そこには、脚がありえない程発達して赤黒い血管が浮き出たウサギと、雷を纏った大きなオオカミが睨み合っていた。

だが、どちらも目の前の敵と合間見えていたので樹には気づいていない。そして、生き残りをかけた戦いが始まった!

 

ウオ〜〜〜ンと遠吠えをしながら電撃を放つオオカミ。だがその攻撃をギリギリのラインで躱すウサギ。電撃は当たればひとたまりもないが当たらないので、オオカミはイライラしているように見えた。

 

ついにオオカミは痺れを切らし、雷を全身に纏いウサギに突っ込む。これがオオカミの最後の一撃だろう。この一撃で全てを終わらせるつもりだろう。

 

「いや、それは悪手だよ!」

 

樹はツッコむ。その通りだった。オオカミが突っ込んでくる、刹那オオカミはウサギに首を蹴られ、絶命し地面に落下した。

 

 

「…マジで!?」

 

樹の第1声はまさにそれだった。普通ならオオカミが勝利すると思うだろう。だが、現実は違った。まさかの逆転サヨナラホームラン!食われる側のウサギが倒すという結果となった。樹は恐ろしさのあまり静かに…なっていなかった!

 

(どうした?)

 

「いや〜だって普通の強者感覚通じないんだろ?まさに弱肉強食!これで満足しない訳ないだろ?」

 

(…そうだな)

 

だが、そんな考えも浅かった!迷宮の奥からとてつもない大きさの魔物が現れた。遠くから見てもわかる図体の大きさ!鋭い大きな牙!極めつきは大きく発達した爪!名付けるなら爪熊だろう。そんな凶暴そうな魔物が出てきたのだ。その熊は巨大な爪を一振りするとウサギが八つ裂きになり、バラバラになってしまった。熊はその死体に近づくとおもむろに食べ出した。

 

流石の樹も震え出した。まさにあいつはこの生態系の頂点!怯えるのも無理はない。思わず後ずさる。その行為が甘かった。思わず足元の石を蹴ってしまい、熊に気づかれてしまった。

 

ウォォォォォォォ

 

と雄叫びをあげながらこちらに向かってくる爪熊!咄嗟に避ける樹。しかし、爪を振るうと大きめの爪痕が壁についた。

 

「なるほど、かまいたちね。」

 

それを利用して間合いを伸ばしていたのだ。熊は勝ち誇ったように雄叫びをあげる。

 

(逃げろ相棒!お前はあいつには勝てない!)

 

「だが、断る!」

 

普通に断る樹!

 

(何故だ!)

 

「マスタードラゴン、人間は一度でも逃げたら一生逃げなきゃいけない!その上、逃げるのは本当に弱いからやることだ!ここから進むには強くならなければいけない!俺はたとえ死んでもこいつを倒す!」

 

と言い切った。その途端、デッキと天龍の剣が光出した。デッキにある1番上のカードを取ると、そこには…

マスタードラゴンの絵が描かれたカードがあった。

「これは…」

 

(お前の勇気に感動した!お前と契約してよかったと思う!)

 

「そうか」

 

(我と真の契約を交わそう)

 

「どうしたらいい?」

 

(イメージソング:通りすがりの仮面ライダーだ)

樹は爪熊の前に立ちはだかる。

 

「よう熊さん?お前ここでどれだけの命、奪ってきた?その命の分だけ、自分が死んだ様を思った?」

 

そう言いながら樹は剣の柄を開き、空いたトレーにマスタードラゴンのカードを装填して閉じる。

 

「そんな事を言うな、それからお前は何者だ。と言いたげだな。いいだろう!教えてやる。」

 

樹は天龍の剣を左手の籠手に添える。そしてあの言葉を発した!かつての龍王が叫んでいた言葉を!

 

俺は通りすがりのドラゴンの王だ!覚えておけ!覚醒!

 

その一言と共に籠手に添えた剣を横に引く!すると大きな光に包まれた!

辺りに眩い光が溢れる。やがて光が晴れるとそこには…

 

純白の鱗で作られた鎧を纏い、龍の顔を模した籠手を付けて、龍の顎門をかたどったフルフェイスヘルメットを装備した戦士がいた!

 

(あ…相棒…まさか、ここまでとは…)

 

ようやく敵と判断したのか爪熊は向かってくる。そんな中、樹は籠手のスキャナーにマスタードラゴンのカードを読み込んだ!

 

ファイナルアタック!

 

その言葉が聞こえた後、天龍の剣に巨大な光が纏われた!その光は迷宮の天井にまで達し、大きな刃となる!

 

ビッグバン…スラッシュ!

 

その声と共に剣を振り下ろした!爪熊は真っ二つになってしまい、そのまま爆発した!

 

「やったぜ!」

 

樹はガッツポーズをする。

 

(流石だな!相棒!)

 

マスタードラゴンも嬉しそうだ。

 

「相棒!俺はこの力と共に生きていく。これからも頼むぞ!」

 

(おう)

 

こうして、1人と1匹は再び、契約を結んだのだった。

 

*************

 

ハイリヒ王国のとある場所。

 

「ふう、やっぱり爺さんの声を演じるのは大変だなぁ!」

 

そう言いながら、イシュタルは顔の皮を外す。すると、別の顔が出てきた。

 

「やっぱり君たちは変わらないなぁ。龍騎士よ。会える日が楽しみだ!」

 

彼に名は無い!だが誰かが言った!『道化師』と…




(イメージボイス スティーブ)
ついに覚醒した樹!さすが!
目を覚ました2人!え…なんで悲しんでいるの?
ちょっとちょっと、この封印されているの誰?
次回〜
『懺悔と悔恨』進め、未来へ


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第11節 懺悔と悔恨

今回は強化回。出てきた武器の特徴は活動報告で行います。
主にドンナー以外の武器を解説しますので、そちらもよろしくお願いします。


樹は元いた場所に戻ると横たわる2人を回復させることにした。使用するカードは

バトスピの回復魔法『リゲイン』これを籠手に入れてカバーを閉めた。

 

ヒールマジック!

 

その言葉と共に2人の周りに白い楔のような模様が回り出す。

 

「これで回復するのか?」

 

(大丈夫だ。精神的な疲労なのでな。だが時間はかかるぞ)

 

「その間に魔物の肉、調理しとくわ」

 

樹は食事の準備をしながら2人の回復を待つ。待つ事1時間…

 

「「うーん」」

 

2人は目を覚ました。

 

「良かった〜!2人共目覚めた!」

 

2人が目を覚ました事に安心した樹。しかし、2人は

 

「俺は…」

 

「僕は…」

 

と何やら責める様な感じだった。

 

「…マジで何があった?」

 

心配しながら尋ねるが、2人は全く答えようとしない。

 

「まぁ言いたくないならいいさ。まず、飯食ってからだ。」

 

「え、どこで取ってきた?」

 

「これ大丈夫なの?」

 

矢継ぎ早にくる質問に対して樹は、

 

「とりあえず、食いながら話すよ。」

 

と言い、これまでの事を話し始めた。ここが裏の迷宮だった事、魔物同士の争いの事、頂点に立つ爪熊を倒す為に龍王として覚醒した事を。

 

「そうだったのか。早く目覚めれば良かったのになぁ」

 

そう言うルルーシュに樹は、

 

「気にするな!俺は感謝してるんだぜ。なんせ強化してもらって強くなれたからなぁ。でも、驕らない様にしないとな」

 

(確かに新しい力はいいが、飲まれないようにしないと堕ちる事もある。気をつけろよ)

 

そうマスタードラゴンから忠告が飛んだ。すると、樹は

 

「お前らが自分を責めていたのは、無力さを痛感したからか?

 

「!!」

 

「図星かよ…気にするなって言ってるだろ」

 

樹は言うが、今まで一言も発さなかったハジメが言い出した。

 

「僕達が落ちたのは自分達の強さに溺れたからだ。もし、力を手に入れなければこんな事には…」

そんな事を言うと、

 

(いや、そんな事はないよ。)

 

そう言ったものがいた。

 

(やはりお前か、サジット!)

 

(久しぶりだね、マスタードラゴン!とにかく、力を手にしたのは間違いじゃない。現に君達は大切な者を守れただろ)

 

ルルーシュとハジメは考えた。自分達の守りたかった者を。自分達を愛してくれた女の子達の事を…

 

(小僧どもは考え過ぎなんだよ!まずは助けられたものを数えろ!落ち込まれるとこっちが疲れる)

 

(お主がそんな事言えるのか?ズァーク!)

 

(うっせぇわ)

 

ドラゴン達の微笑ましい話に樹達は

 

「ハハハハハハハハ」

 

と笑い出した。今まで分もチャージする様に。

 

樹達は今後の方針を固めることにした。

 

「上には戻れないからこのまま降りよう。」

 

と樹が言う。

 

「食料は調達しながら行こうね。」

 

ハジメは提案する。

 

ルルーシュは話し合いには参加せず、別の事をしていた。

 

(小僧、これは必要だろ!)

 

「いや、こうすればいいのさ」

 

なにやら言いあってるが…ただ、デッキを組んでいるだけだった。

 

(デッキ調整で盛り上がるの始めてみたよ)

 

サジットも呆れている。すると、

 

「おい、魔物の中から何か出てきたぞ!」

 

樹がそう言いながら取り出したのは…オカリナだった。それを見るや否やサジットが

 

(それは時のオカリナ!私の私物だ!)

 

「「「え〜〜〜〜」」」

 

大きな声が迷宮中に響き渡った。

 

あの後、時のオカリナはハジメが使う事になった。理由としてはサジットが認めた者しか使えないからだと言う。迷宮の地下は沢山の鉱石で溢れていた。樹達は迷宮の1層から動かず、準備を行なっていた。

ハジメが大きさ30センチくらいのリボルバー銃を作り、樹は自分の機能で長めの単発銃と長いライフル銃を2丁作った。

 

ハジメの銃はドンナーと言う名前にして、樹のは、ハイブリッドマグナムとツインバスターライフルと名付けた。

また、ルルーシュのハドロンマグナムも強化して、広範囲に打てるようになった。ちなみにカードの力が使えるのは樹のみで他はまだ使えなかった。そして準備を終えて、ついに動く時が来た。

 

「いいか、俺たちはこれから動く!」

 

「「おう。」」

 

「目指すはこの迷宮からの脱出だ!行くぞ〜」

 

「よっしゃ〜〜」

 

3人は掛け声をかけて進む。

 

*****************

 

真・オルクス大迷宮第50層

 

ここまでくるのに3週間かかった。それはあまりにも早すぎた。というのも樹達の武器が強くなってしまい、あまりに敵が弱かったのだ。したがってここまで早く来れたのだ。

そしてこの50層には大きな部屋があった。その扉には何かの模様が描かれていた。

 

「なんだこれ?」

 

樹が言うと、

 

(これは吸血鬼族の紋章だ。おそらく何かあるのだろう。)

 

マスタードラゴンが解説する。そんな中、

 

(ハジメ、時のオカリナを!)

 

「どうしたの?」

 

(今からいう音を奏でるんだ)

 

「わかった!」

 

そういうとハジメはオカリナを演奏し出した。

 

〜♪ 〜♫ ♪〜〜♬

 

ある曲が演奏されると、扉が開いた。

 

「さっきの曲は?」

 

(あれは『吸血の子守唄』という、吸血鬼に伝わる子守唄さ。あれで封印が解けたのだろう)

 

そう言われながら中に入る3人。すると

 

「誰…?」

 

と声が聞こえた。その部屋の中央には大きな十字架があり、その周りを不思議な模様が描かれた柱で

封印されている女の子がいた。

 

「君は?」

 

ハジメが訪ねる。

 

「私…吸血鬼の女王。どんなことをされても死なない。ある時、クーデターが起こった。叔父様が逃してくれた。でも捕まった…敵が私を殺せないと分かったら私、封印された…助けて」

 

女の子は力無い声でそう言ってきた。

 

「どうする、みんな」

 

そう尋ねるハジメ。すると…

 

「助けたいんだろ、俺たちに聞くなよ。」

 

「樹のいう通りだ!お前の好きにすればいいさ。誰も怒らないから」

 

そう言ってくれた。

 

「ありがとう、2人とも」

 

「お待たせ、今から助けるよ」

 

(よし、『時の歌』だ)

 

♪〜〜♫〜〜♪

 

吹き終わると、十字架と柱が崩れて少女が落ちてきた。その子をハジメは受け止める。

 

「大丈夫?」

 

「ありがとう…」

 

そんな会話が聞こえた途端!

 

ドーーーーーーーーン

 

大きな音が聞こえた!後ろを向くとそこには…

鉱石で出来た大きな蠍。

『天蠍神騎スコルスピア』がそこにいた。

 




《イメージボイス:ステイサム》

〜救出した女の子を狙うスコルスピア!お前、なぜ狙う?
ハサミで動きを封じられ、なすすべないハジメ!
ちょっと、何よこの赤い戦士は?
次回、復活の光龍騎神〜
運命を射抜け!


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第12節 復活の光龍騎神

すみません、寒さが厳しくなってきて、障害を持つ私には少し大変な時期になりました。
これからも、投稿が遅くなりますが、変わらず応援をよろしくお願いします。
長くなったので、2つに分けました。


「「「こいつはスコルスピア!」」」

 

3人の声が重なった。おそらく女の子を救出すると、最後の番人として現れる様にできていたのだろう。

すぐに3人は戦闘準備に入る。

 

「覚醒!」

 

樹は龍王の力を解放して鋼鉄のサソリに切り掛かる。が…

 

カキーーーーーーーン!

 

「硬った!」

 

何と弾かれてしまった。さらに回転凪払いを受け、樹は吹き飛ばされる。

 

「樹!なら弾丸で!」

 

ルルーシュはハドロンマグナムを構え、相手に怯まず連写していく。

しかし、スコルスピアは尾にある槍から拡散タイプのビームを発射する。

 

ルルーシュは思わず足が止まってしまう。その瞬間を相手は待っていた。自らのハサミでルルーシュを掴み、そのまま持ち上げ投げ飛ばした。

 

「ルルーシュ!なら僕が。」

 

すぐに攻撃できるように矢をつがえるが…あっという間に距離を詰められ体当たりを受ける。

 

「グッ!」

 

まともに受けたハジメは動けなくなった。

 

女の子は驚いていた。あんなに大きく強い相手に立ち向かう3人、なぜそこまでできるのか?気になり出していた。

 

「どうして…?」

 

「はい?」

 

「どうしてそこまでできるの?」

 

1番近くにいた弓を持った彼に聞く。

 

「君は助けを求めた。だから助ける!それ以外に理由はないよ。」

 

ハジメと呼ばれた彼は笑いながら答える。その顔を見て、彼女は覚悟を決める。

 

「ハジメ!信じて…」

 

「え…うん、良いよ」

 

察したハジメは首筋を出す。そこに少女は噛み付く。おそらく血を吸ってるのだろう。

 

「ご馳走様!」

 

そう答えると彼女は

 

「蒼天!」

 

と一言、魔法を詠唱する。すると上空に巨大な火球が出現する。

 

「「「な…何〜〜〜?」」」

 

3人は驚く。しかしこれだけでは終わらない。

 

「お願い、ヴィエルジェ!

 

彼女は手に持ったカードに声をかける、するとさらに火球が大きくなる。それをスコルスピアに投げつける。奴は火球をまともに受け、一瞬悲鳴をあげると動かなくなった。

 

「ん…疲れた。」

 

少女はそう言うと座り込む。その周りに少年たちが集まってくる。

 

「すごいな、君!」

 

剣を持った少年が聞くと、

 

「助かった、ありがとう。」

 

と銃を持った彼が激励する。

 

「そういえば自己紹介してなかった。俺、星龍 樹」

 

「星龍ルルーシュだ、よろしく」

 

「僕は南雲ハジメ」

 

それぞれ、名前を名乗る。次は彼女の番なのだが…

 

「昔の名前は嫌!新しく付けて。」

 

「「「え…え〜」」」

 

流石にビックリ!名付けなんてした事ない。すると、

 

「確かさあ、ヴィエルジェってさ、乙女座の12宮xレアじゃない?そのうえでこの子は月のように綺麗だから『ユエ』はどうかなぁ」

 

とハジメが言った。

 

「ん…気に入った。私、今日からユエ!」

 

そう言うと彼女は笑顔になった。

 

その途端、グォオオオオオオオオオオオオオと大きな咆哮が聞こえた。

 

「まさか!」

 

「おいおいマジかよ!」

 

「嘘だよねぇ!」

 

「なんで?」

 

そのまさかだ。なんとスコルスピアは生きていたのだ!しかも、甲殻を新しくして。

 

「おいおい、あいつの甲殻、アザンチウム鉱石だぞ!この世界で一番硬いものだ!」

 

樹は龍の体(ドラゴンフォーゼ)を使い、敵の甲殻の材質を確認する。樹たちは再び立ち上がったスコルスピアに向かって行こうとするが…

 

カチン、と音がして樹とルルーシュは結界の中に閉じ込められてしまった!

 

「何!」

 

「マジか!」

 

残されたハジメとユエはスコルスピアと対峙する。

 

「ユエ、隠れてて。僕が引き受けるから。」

 

「ん」

 

ハジメはさっきと同じように甲殻の薄い節の部分を狙い、10本以上の矢を放つ。だが敵は尾についた針から無数のビーム弾を放ち、追い詰めていく。

 

「このままじゃ…」

 

全ての矢を撃ち落とされ、攻撃のチャンスを失ったハジメは攻撃の集中していないスコルスピアの頭上に飛ぶ。

 

その瞬間、ニヤッ!と身の毛もよだつきみの悪い笑みをスコルスピアが浮かべた。スコルスピアの針は変わっていたのだ…

 

巨大な槍に!

 

その槍を突き出した。ハジメはそのまま貫かれ、地面に落下した。

 

「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

ユエの悲鳴が轟く。スコルスピアは敵を排除した事を確認すると、グォオオオオオオオオと勝ち誇ったような雄叫びをあげた。

 

「…嫌、死んじゃいや…ハジメ」

 

ユエは絶望の淵にいた。自分を助けてくれた歳はもいかない少年に恋をした自分が

いた。1番好きな人が目の前で殺されたのだ。無理もない。

 

しかし、

「え…」

 

自分の持っていたヴィエルジェのカードが輝き、姿が変わった。そのカードの名前は

 

戦神乙女 ヴィエルジェX

 

(ユエさん、気をしっかりして)

 

「ヴィエルジェ?どう言う事?」

 

(彼はまだ生きている。彼を救えるのはあなただけ!あの剣を)

 

「!わかった!」

 

彼女は急いで部屋の隅に置いてある剣を取り、戻ってくる。その剣の名は

マスターソード!

 

「ハジメ!目を覚まして!」

 

ユエはハジメの手にマスターソードを持たせる。そして、ハジメの唇に口付けた。

 

---ハジメside---

 

「ここは?」

 

僕は目を覚ます。そこはどこまでも広がる虚無の世界だった。

 

(これで良いのかい?)

 

「え?」

 

そばにはサジットアポロが立っていた。

 

(君はどうしたい?彼らはまだ挑むみたいだよ)

 

サジットが手を振るとそこには、

必死に結界を壊そうとする樹とルルーシュ、ハジメを回復させようとしているユエが映っていた。

 

「みんな!そうだ、僕は1人じゃない!みんながいる!戦いはここからだ!」

 

(うん!行こう!)

 

---ハジメside off---

 

辺りに赤い光が立ち込める。その光は暖かく、そして眩い!

光が晴れるとそこには…

 

赤と白の2色で彩られ、強靭な鱗で作られた鎧を纏い、右手にマスターソード、腰に弓を刺した勇者がいた。

 

ここに光龍騎神が復活したのであった!

 

さぁ、反撃開始だ!




次回、最深部に潜むもの!
お楽しみに


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第13節 最深部に潜む者

どうも皆さん、年の瀬大晦日はいかがお過ごしでしょうか?
私は、「孤独のグルメ」を見たりしています。
今夜は紅白か、鬼退治でも観ながらお寿司ですかね?
さて、今年最後の更新です。一応、来年一発目は元日にあげられるように頑張ります。
では、今年最後の更新。お楽しみください。


赤き甲冑に身を包んだハジメは、龍の体(ドラゴンフォーゼ)を使い名前と特性を確認した。

敵の名は、

 

『天蠍神騎スコルスピアX』

 

やはり進化してしまい、普通の倒し方が出来ない。ハジメの考える倒し方は、

甲殻を剥がし、そこに強力な一撃を叩き込む!これを考えていたのだ。しかし、甲殻の材質が変わってしまった以上、剥がすのは困難!そこで、

 

「サジット、炎を出して。」

 

(了解!任せて)

大きな炎を当て甲殻を炙る。もちろん、スコルスピアにダメージは無い!だがそれこそが狙いだった。

 

「これで終わりだ〜!」

ハジメは溶けた甲殻の間にマスターソードの刃をねじ込み、超高圧力の熱を流し込む。スコルスピアは熱に耐えきれず苦しみ出す。

そして、

ズバッ!と大きな音を立て、その体が2つに分かたれた。

ギュアアアアア!と雄叫びをあげてスコルスピアは爆発し、その場にカードだけが残された。

 

「カード回収っと!」

 

(さすがだね、ハジメ)

 

1人と1匹はお互いを讃えていると、

 

「ハジメ!良かった!」

 

ユエが突撃して、ハジメに抱きついてきた。

 

「ありがとう…ありがたいんだけど…これ着て。」

 

ハジメは来ていたコートをユエに渡す。

 

「いつまでも何も着てないのはちょっと…」

 

「…エッチ」

 

その後、ユエが服を着て、結界を壊した樹とルルーシュが2人と合流した。その際にユエがハジメにくっついていたので、樹とルルーシュにいじられる事になった。

 

「ハジメ、ついに春が来たか〜」

 

「ちょっとやめてよ〜」

 

「しかしハジメ、ついに覚醒したのか」

 

(サジットアポロだよ。よろしくね。)

 

「戦闘中は進化するけどね〜サジットブルムノヴァに!」

 

「「おお〜〜」」

 

(久しぶりね。サジット)

 

(ヴィエルジェ、この子についていたのか?)

 

(ええ、解放者の皆と一緒に戦ってからはずっと)

 

(そうか)

 

(マスタードラゴンも久しぶり!)

 

(ヴィエルジェ、君はいつ目覚めたのだ?)

 

(ずっと前からよ)

 

なんて話をしていると、

 

ピカっ!と床が輝き、大きな宝箱が現れた。

 

「これ、僕用?」

 

(おそらく、もらっておけば?)

 

「うん」

 

箱を開けるとそこには…

 

70センチはありそうな弓が出てきた。

 

(勇者の弓だ!こんな所にあったなんて)

 

「これ、僕用なの?」

 

(というか君しか使えない)

 

「じゃあ遠慮なく!」

 

弓を回収して、部屋を出る。いつまでも囚われていた部屋にいては、ユエの気分が悪くなるだろうと思ったためだ。

 

「ユエさんの歳は…」

 

「「「「聞くなバカ!」」」」

 

樹とルルーシュだけではなくマスタードラゴンとサジットにまで突っ込まれてしまったハジメ。

 

「いくら天然女垂らしでもそれはダメだろ!」

 

「嫌、違うから!僕は女垂らしじゃないから」

 

「あれ、そうなのか?香織と優花から告られてユエも惚れたんだろ?じゃあ女垂ら

しだろ?」

 

「違うって!ルル!」

 

移動しながら話す樹たち4人。

 

「賑やかでごめんね、ユエちゃん。」

 

「いい、樹、とても楽しい。でもどうしてここに?」

 

訪ねられた樹は話すことにした。

 

自分達は異世界に呼ばれた事。龍の力に目覚め周りから妬まれた事。幼馴染と生き抜く事を誓ったが、戦闘中に仲間の裏切られて奈落に落とされた事を。

 

「グスッ、皆辛い!私も辛い。」

 

(私もつらいわ。とても大変だったのね)

 

「でも辛いだけじゃないさ。こうやって旅できて、相棒が生まれて、強くなって。この先の目標は、まず皆の所に戻らなきゃ。もちろん君もね。」

 

「え?」

 

樹の1言に驚くユエ。その言葉の続きをハジメが堪える。

 

「ユエには帰る場所がないかもしれない。でも、僕たちは仲間だから僕たちが帰る場所が君の帰る場所。それじゃダメ?」

 

「ううん、そんな事ない。ありがとう。」

 

納得してもらえて一安心。

 

「そういえばここは誰が造ったんだ?」

 

ルルーシュの質問にユエが答える。

 

「反逆者の1人が造ったと言われてる。かなり古いからわからないけど。」

 

「「「なるほど〜」」」

 

樹達は降りながら、武器を作ったりして準備をしていた。

スコルスピアXの甲殻だったアザンチウム鉱石とシュタル鉱石を溶かして作った合金。

 

(アザンシュタル合金:樹命名)

 

を使用してついにハイブリッドマグナムとツインバスターライフルが完成した。

ちなみにどちらも樹が使う事になった。(この2つの武器を誰が使うか、仁義なきジャンケンが行われた)

 

そして、ユエと合流して3週間。ついに最深部へと辿り着いた。

真・オルクス大迷宮 最終層

 

「よし、いよいよこの迷宮の最深部だ!ここを突破して地上に戻るぞ!」

 

「もちろん」

 

「よっしゃ」

 

「ん、頑張る」

 

(そうだな)

 

(了解)

 

(行くわよ)

 

そして扉を開けるあの言葉を叫ぶ!

 

「「「「「「「ゲートオープン!解放!」」」」」」」

そう言うと大きな扉が開いていく。完全に開き終わった扉をくぐり、部屋の中へ!

 

「いや〜何もない」

 

「確かにな」

 

「何かあるのかな」

 

「ん、おかしい」

 

部屋の中を探したが何も見つからない。最深部に何もないのはさすがに拍子抜けで有る。

 

(何か条件があるのでは?)

 

「「「あぁ〜〜」」」

 

マスタードラゴンの一言に納得する一同。そこでもう一度部屋を探索する事に。

すると…部屋の真ん中に大きな魔法陣が。

 

「「「「これだ〜」」」」

 

しかもその魔法陣は『時の紋章』と言う、太陽が昇ってくるような絵が描いてあった。

 

(ハジメ、時の歌だ!)

 

「ん、もうやってるよ、サジット」

 

(ユエ、ありがとう)

 

オカリナの音色が響き渡る。この音色はどんな生き物が聴いてもリラックスできたり勇ましく感じたりすると言う。

そして、ハジメの演奏が終わった。すると突然、

魔法陣が輝くと、中から大きな生物が出てきた。その生物を見た時、戦慄が走る。

 

「なんだと!」

 

「嘘だろ!」

 

「本当に?」

 

「何で?」

 

(こいつは)

 

(まさか!)

 

(そんな!)

 

そこにはかつて、人々が信仰していて、堕落していた人間を残らず滅ぼした龍。

 

絶対なる幻龍神 アマテラスドラゴン』がそこにいたからだ。

そして、アマテラスドラゴンが一叫びすると…全てがブラックアウトした。




《イメージボイス、リアム》
〜突然の先制攻撃を受けて倒れるメンバー、おいおい、それは卑怯でしょ。
おや、ここはルルーシュの記憶の中?ちょっと、どうするつもり?
そして目覚める!最後にして最悪の龍!ついに覚醒!
次回、 『未来を歪める覇王の龍』それでは皆さま、良いお年を〜


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第14節 未来歪める覇王の龍

やっと書けた〜〜〜
…すみません、かなり遅くなりました。
冬場は身体が動きにくく、障害を持つ私には正直、小説を書くのも大変です。

久しぶりすぎて文法等間違っていたらコメントにて教えてください。


アマテラスドラゴンは、自らの眼前に広がる光景に安心していた。彼女の足元には倒れ伏している樹、ハジメ、ユエ、そしてハジメがいた。これは彼女の能力である。アマテラスドラゴンは自分のテリトリーに入った者にいななきとも取れる咆哮を行う。

 

その咆哮には催眠効果があり、食らった相手を精神世界に誘い対象を意のままに操る事ができるのだ。この能力こそ、彼女が古の文明を滅ぼしたと言う言い伝えの正体である。侵入者を倒した彼女は元いた場所へと戻っていく。

 

1人、指が動いた者がいた事に気づかず…

 

---ルルーシュside---

 

「ここは?」

 

俺は何故か知らないが白い場所に居た。だが、ここはどこかで…

 

(気づいたか?小僧)

 

「お前は、ズァーク!」

 

俺の目の前には50メートルはあろうかという巨体に10メートルはある翼、そして全身を黒く染めた龍がいた。

 

「お前、そんな姿をしていたのか?」

 

(そうだ、漸くこの姿に戻れたわい)

 

こいつ、こんなに話すやつだったか?

 

「ところでここは…?」

 

(ここはお前の心の中だ!)

 

「心の中…」

 

(お前が大切にしているものや、その逆のトラウマになっているものもある。ほら見な)

 

顔を向けられた俺はそこを見る。そこには…

 

樹にハジメ、双葉や恵里、雫に美玖に香織に優花といった面々と楽しく暮らす日々の映像が見えた。

 

「本当だ!うん?」

反対側に顔を向けるとそこには…

 

自分が捨てられていた日や、義理の親が亡くなった日、そして、自分の油断で奈落に落ちた日の様子が映った。

 

(小僧!貴様の怒りはこの辺りだなぁ。この時が一番嫌な記憶だな。)

 

「…」

 

(沈黙は肯定と見るぞ。やはりか)

 

「…そうだ。俺は悔しかった!力が無いが故にいつも樹やハジメの後ろにいて守られてばかりだった。間違っているかもしれない。だが、俺にもみんなと共に戦える力を渡してくれ!

 

そう言うと俺は頭を下げた。

 

(…わしは貴様を甘く見ていたようだ。未熟!未熟未熟!こんな腑抜けた者と契約した自分が愚かしい!)

 

「そんな…俺に戦う資格は無いと言うのか?俺はいつまでも弱者のままなのか。」

 

そんな弱気になった俺にズァークはこう言った。

 

(お前は何をする?大きな力を手にしてお前は何をしたい?)

 

「俺は…俺は大層な理由や世界のことなんてどうでも良い!滅ぶなら滅べ!だが、俺から奪うなら容赦はしない!奪うやつや殺す奴は、自分も奪われたり殺されたりする覚悟を持つべきだ!それを行使する力が欲しい!ズァークよ、力を寄越せ!

 

(フッ!フフフ!ンフフフフフフ!フハハハハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハ!いいだろう、小僧!貴様にわしの力を全て託そう!使いこなして見せろよ!フハハハハハハハハハハハハハ!)

 

ズァークの高笑いが響きながら俺は意識を覚醒させていった。

 

---ルルーシュside off---

 

《イメージソング:flow colors》

 

アマテラスドラゴンが最初に感じた感情は、

 

「あり得ない!」

だった。彼女の能力は今まで誰にも解かれたことは無く、むしろどんな力を持っていたとしてもその能力から逃れる術は無かった。そう、今までは…

 

だからこそ、目の前で起こっている事に理解が出来なかった。今、彼女の目の前には…

 

黒き甲冑に身をを包み、巨大な翼を生やし、黒き禍々しい刀と銃が合わさった武器を装備した戦士が立っていた。顔の仮面には、Ω(オメガ)の文字が記されている。

 

「どうした?もののけでも見たような顔をして?何か起こったか?」

 

そうルルーシュは煽っていく。アマテラスドラゴンはその煽りに耐えられなかったのか、甲高い叫び声を挙げながら向かってくる。ルルーシュはその攻撃を…指2本で止めて見せた!

 

 

「温いな!これが全力か?だとしたらただのぬるゲームだなぁ」

 

そう言ってルルーシュは回し蹴りを放ちそのままサマーソルト、さらに頭部にかかと落としを決める!連続攻撃を受け、アマテラスドラゴンはふらふらになってしまった。

 

「これで終わりだ!」

 

右手にあるスキャナーに1枚のカードを読み込む。そのカードにはズァークの紋様が描かれていた。

 

ファイナルアタック!

 

その効果音の後、刀の掬についた銃から光弾を放つ。その光弾はアマテラスドラゴンに直撃!さらに信じられない事に着弾点から石化していくのだ!

次に、刀の刃に手をかざしなぞっていく。刀は漆黒、いや純黒に染まり、雷も纏っていく。

そしてそのまま、真一文字に刀を振るい切り裂いた!

 

ダークネスムーンブレイク!

 

その言葉とともにアマテラスドラゴンは大爆発!爆煙の中、最後に立っていたのは…

 

「ふぅ…なんとかなったなぁ」

 

ルルーシュの方だった。

 

(いきなり宿ヌシに死なれたら困る。流石に勝つだろ!)

 

ズァークは呆れ顔で返す。彼は宿ヌシが負けるとは思わなかったらしい。

しかし、ルルーシュも疲労が溜まってきたようだ。

 

すると、奥の扉が開き進める様になった。

 

「はぁ、少しは休めると良いが…」

 

倒れているハジメ、ユエ、樹を抱えながら部屋の中へ消えていった。




《イメージボイス:リアム》
〜最後の龍もついに目覚めて、これでついに3人覚醒だ!おめでとう!
何?ここは畑に釣り堀、畜産もできるのか?一生住めそうだぞ。
そして書斎の奥に謎の遺体。ここは一体?

次回 待ち続ける反逆者

邂逅の時は近い 〜


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第15節 待ち続ける反逆者

マスタードラゴンは長いので、しゃべる際はマスターと書きます。
サジットアポロはサジットと書きます。
今回は遅くなってしまいましたが、待っていただきありがとうございます。
では、どうぞ。


「う、うーん」

 

ハジメが目を覚ますと、そこはベッドの上だった。

 

「ん?うえ!」

 

 

ハジメは起き上がった!のだが…彼の格好は全裸だった!

「何で何で?」

 

「お、目が覚めたか。」

 

ちょうどそのタイミングで樹が部屋に入ってきた。樹は上半身を包帯で巻き、下半身だけジーパンを履いている。

 

「樹、ここは何処?」

 

「ここは反逆者の住処らしいぞ」

 

樹は普通に答えた。その後、2人はベッドの部屋から出て、内部の探検を始めた。

もちろん、ハジメは自分が錬成したジャージに身を包んでいる。

 

ベッドの部屋以外には、厨房があった。もちろん調理器具も込み込みで。

そして別の部屋には、

 

「「やった〜風呂があった!」」

 

まさかの浴室に喜ぶ2人。

元々風呂が好きな2人は、元の世界でもよく銭湯に通う無類の風呂好きである。最も、トータスに呼ばれてからは全くと言っていいほどゆっくり湯に浸かれなかったので、久しぶりの風呂に喜びを爆発させた。

 

その他にもたくさんの部屋があり、改めて反逆者の凄さに関心が止まらなかった。

例えば…豚、牛、鶏のそっくりさんがたくさん生息している畜産の部屋、海と川の魚がたくさん釣れる釣り部屋、農業の部屋ももちろんある。極め付けは、人工太陽があった事。つまり部屋の中にいても昼夜が分かるようになっているのだ!

 

「…‥…」

 

もはや技術が圧倒的に違いすぎて訳分からなくなってきて、コメントが消えた2人。そして気づいた。

 

「そういえばルルーシュは?」

 

「あぁ〜 なんか書斎を見つけたらしく、ユエと共に入り浸ってるな〜」

 

「じゃあ行ってみようよ」

 

という事で大きくガッチリとした扉の書斎に行くことに…

 

「ルル!入るぞ〜」

 

「ん?樹か?あぁ入っていいぞ〜」

 

「じゃ、お邪魔しま〜〜す」

 

扉を開けて中に入る。そこは…

3メートル近くありそうな本棚が連なる大きな書斎だった。

 

「所蔵されてる本、全部読むつもりかよ。もう3日ぐらいいるだろ。」

 

「残念ながら、もう2週目だ。」

 

「もうすでにクリア済みかよ!ユエもそばで読んでるし!」

 

「んっ!色々面白い本がいっぱい!」

 

「ところで…僕、何日寝てたの?」

 

「今日で1週間だ」

 

「な…なんだって〜〜〜!

 

---------------------

 

「で?これからどうするの?」

 

マスター(確かもう1部屋あった気がしたが…)

 

「ズァーク、お前は覚えてないのか?」

 

ズァーク(我が知っていると思っているのか?この中じゃ1番新しいわ)

 

「だよなぁ」

「ヴィエルジェ、何か知ってる?」

ヴィエルジェ(ごめんなさい。私も詳しくは知らないの…でももしかしたら)

 

「よく知っているのはサジット?」

 

サジット(あぁ、確か1番奥に反逆者の部屋があったはずだ…行ってみよう)

 

という事で全員でその部屋に向かうことになった。

 

-------------------

 

全員「白骨化してる…」

 

書斎の奥に隠し部屋があり、そこには豪華な椅子に座った白骨化した遺体が置いてあった。荘厳なローブを身に纏った状態で。

ルルーシュ「この遺体がオルクスさんだなぁ」

 

サジット(そうだよ。彼が反逆者最初のメンバー、オスカー・オルクス)

 

「なんとなく思うんだけど、彼は絶対変人だよね。」

 

サジット(う〜〜〜〜ん。そんなことなかったけど)

 

「それよりさ、足元の魔方陣が気になるんだけど…」

 

確かに大きな魔方陣が描かれている。

 

「乗ってみる?」

 

「「「「もちろん」」」」」

 

全員で乗ってみる。

 

すると、

 

「試練クリアおめでとう。私がこの迷宮の創設者。オスカー・オルクスだ。」

 

と映像が始まった。そこから先は、彼らは反逆者ではなかったことが語られた。

 

元々、この世界は多神教で人間、亜人、魔人、竜人、そして『龍人』と呼ばれる種が支え合って暮らしていた。だが、突如この世界に『神』を名乗る者が現れ、人間と魔人達を巧みに誘導して、戦争を引き起こした。亜人達は迫害の対象になり、竜人達は絶滅してしまった。

この事態を重く見た人間と亜人、魔人の一部は『龍人』と手を組み、7人の『解放者』を出した。

 

そして、『龍騎士』と呼ばれる龍の力をカードに封印し、その力を使用して戦う戦士達と共に神エヒトに立ち向かおうとした。

 

しかし、神エヒトは解放者達こそが敵だと先導し、解放者を次々に捉えた。残った始まりの7人は迷宮を創り、そこを攻略したものに、神の討伐を任せる事にしたという。

龍騎士達は『龍人』、つまり他の同志たちを根絶やしにされ、最後に残った3人も倒されてしまったという。

 

「我々は知っていて欲しかった。この神から世界を救うために戦った者がいたことを。そしてできれば我々の悲願を達成してほしい。そのための力を授けよう。」

 

その言葉と共に、解放者が自分達に代々伝わる魔法。『神代魔法』を樹達の頭に刷り込む。

 

「これからも君たちに幸があらんことを」

 

その言葉を最後にオスカーのメッセージは終わった。

 

樹「神殺しか〜。だいぶ大きな夢を託されたなぁ。どうする?」

 

とりあえず訪ねてみる樹。

 

ルルーシュ「ここまで来たらやってやろう。この世界の神にギャフンと言わせて帰ろうぜ。」

 

ユエ「ん、もちろんやる。」

 

ハジメ「みんなでやっていこうよ。このメンバーなら絶対できるから。」

 

皆で新たな夢が生まれたのだった。




《イメージボイス ロマノフ》
〜世界の全てを知った龍騎士の皆様。神殺しの実現へ。
しかし準備はまだできていない。準備のために籠るそうです。
そして封印されていた部屋には3枚のカードが!一体誰の?

次回、紫電と星屑と聖剣

待っているぞ!我が好敵手!〜


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第16節 紫電と星屑と聖剣

皆さんどうも〜
Werewere です。
新入生や新入社員のみなさん、新生活はいかがですか?
私も社会人3年目、頑張って行きましょう〜


解放者の部屋にあるオルクスの部屋。ここに1つのお墓がある。亡くなった人や動物を供養し、忘れないようにする大切なものだ。

そして、このお墓を作るにあたって、こんなやり取りがあった。

--------

樹「このお骨、ちゃんと供養しようかな。」

 

ズァーク(土に返したらどうだ?)

 

ユエ「…ん。畑の肥料」

 

ルルーシュ「いやいや、それはやめよう!墓は作ろう!」

 

ハジメ「そうだね、いくらなんでもそんな事したら祟られそうだし。」

 

こうして、心許ない発言が飛び出たが、お墓は造られた。その時、樹はホッと胸を撫で下ろしているオルクスが見えたらしいが、それはこの際黙っておこう。

---------

 

さらに樹からこんな発言が飛び出た。

 

樹「ここでしばらく準備してから旅立たないか?」

 

マスター(我もそう思っていた。ここから皆は急に重い運命の元、生きなければならない。準備も無しに戦うのはいささか無謀…武器や生活品等を作ってから旅立てば問題無い)

 

樹の言うことは最もだろう。今、自分達に有るのは、デッキと変身時に使用するカードスキャナー、デッキケースに樹は『天龍の剣』、ハジメは『マスターソード』と『勇者の弓』、ルルーシュは自分の銃と剣を融合したような新武器、『覇王銃剣レクイエム』のみ。

 

いくら何でもこれで進むのは…うん、無理!

 

「「「「「賛成!」」」」

 

という訳で…まず、武器作り。

と思っていたら、

 

ユエ「なんかあった」

オルクスの部屋から持ってきたのは3枚のカード。それぞれ、

『ボルバルザーク紫電ドラゴン』、『スターダストドラゴン』、『龍騎神シャイニングドラゴンオーバーレイ』だった。

 

するとそのカードが輝き出し、樹は精神世界にいた。

 

---樹 side---

 

紫電「お待ちしておりました」

 

樹「君が紫電?」

 

紫電「はい、私が『ボルバルザーク紫電ドラゴン』です。あなた様と共に戦えるのを待っていました。」

 

樹「オルクスについていたのか?」

 

紫電「いえ、かつての龍騎士の『龍王』に仕えていました。」

 

樹「俺はまず、自分達が元の世界に帰る事を第1に考えて動く。だからこっちの世界の方はお留守になる場合がある。それでも構わないか?」

 

紫電「それでも構いません。元の世界に戻るには、迷宮の攻略が絶対条件なのです。」

 

樹「そうか…よろしく頼むよ。」

 

こうして樹は、精神世界から戻っていった。

 

---樹 side off ---

 

樹が現実に戻ってきたら、ルルーシュとハジメも自己紹介をしていた。どうやら2人も精神世界で話していたらしい。そして、ようやく武器作りに入る。

 

全ての鉱石を使い、生成魔法で加工して大破したハイブリッドマグナムとツインバスターライフルを完成させた。さらにルルーシュの手元武器が少ないことが気になったので、ハジメがハドロンエネルギーを強力なカートリッジに込めて相手に打ち込み内側から破壊する『ハドロンビームマグナム』を作成した。

 

この二月で作った武器は様々だが、ざっと言うとメイスや銃、ナックルにランス、ガトリングやランチャー、など。

さらにオルクスの部屋に卵が3つあった。それぞれ赤と青、水色と藍色、朱1色の卵だった。それが武器を作成している間に孵った。

 

赤と青のからは『斬竜ディノバルド』、水色と藍色からは『海竜ラギアクルス』、朱色からは『火竜リオレウス』が生まれた。それぞれ『空の王者』『大海の王』『陸のリオレウス』と呼ばれる化け物だ。

 

樹はディノバルドを、ルルーシュはラギアクルスを、ハジメはリオレウスをそれぞれ相棒として迎え入れた。

 

---ハジメ side ---

 

ハジメ「あぁ〜!極楽極楽〜!」

 

レウス「ギャウギャウ」

 

サジット(こうやって湯に浸かれるのが久しぶりにできて嬉しいよ。)

僕達は風呂に入っていた。しばらく入っていなかったので、僕は数ヶ月ぶり、サジットは数千年ぶりの風呂である。

 

ハジメ「昔も入っていたの?」

 

サジット(昔の光龍騎神によく実体化させてもらってね。もう入れなくなったと思ったよ。)

 

なんて言っていると…

 

ヒタヒタ

 

ハジメ「…!」

 

ユエ「ん〜気持ちいい〜!」

 

ハジメ「アイエエエエエエエ!ユエサン!ユエサンナンで!」

 

ユエさんが入ってきたのだ。流石にバスタオルは巻いているが、色々見えてしまいそうで精神がすり減りそうである。

すると、

 

ユエ「…えい」

 

なんと背中に抱きついてきた。

 

ハジメ「ユエさん、ちょっと当たってるって!」

 

ユエ「…当ててるのよ。」

 

ハジメ「どうしてそのネタ知っているの?」

 

もちろんこんな事をなぜしてくるのか、僕は答えが出ている。でも、彼女を傷つけることはしたくないが言わなければならない。と思っていたら…

 

ユエ「…ハジメ、私ハジメが好き。私を助けてくれた、私に居場所をくれた貴方が好き!」

 

と言ってくれた。

 

でも、僕は…

 

ハジメ「ごめんなさい、ユエさんの想いには答えられない。」

 

そう伝えた。すると、

 

ユエ「…ん、分かっていた。でも伝えたかった。」

 

そう言われた。だから僕も理由を伝えた。

 

ハジメ「僕には、恋人になりたいと言ってくれた人がいる。2人も。だからその人達に想いを伝えたい。だから…」

 

ユエ「わかった。でも諦めない。」

 

ハジメ「…え!」

 

ユエ「私は振り向いてもらえるようにする。だから…」

 

そう言うと、妖艶な笑みでこちらを見て、

 

ユエ「覚悟して?」

そう宣戦布告された。

 

ハジメ「ええ〜〜〜〜〜〜!」

 

僕の驚きの声は風呂場中にこだました。

 

ちなみにこの声は樹とルルーシュにも聞こえていたらしく、

 

「「夫婦漫才、お疲れ様!」」

 

と言われた。許せん!

 

---ハジメ side off ---




《イメージボイス:ボルバルザーク紫電ドラゴン》
〜我が龍王殿は龍皇帝殿と光龍騎神殿と一緒に特訓中!楽しそう。
龍皇帝殿は何やら情報収集。なんですと!帝国の皇帝が?
そして、ついに出発の日が!

次回 スダチ×ト×タビダチ では、参りましょう。 〜


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第17節 スダチ×ト×タビダチ

はい、どうも〜
Werewereでございます〜
間もなくゴールデンウィークですね〜
皆さんはいかがするのかわかりませんが、この小説もついに1章が完結です。
この後に外伝を投稿してから、2章に入っていきます。
よろしくお願いします〜


樹とハジメは今、向かい合っていた。ここは訓練室。オルクスの隠れ家にある特訓専用の部屋だ。

 

樹「行くぜ!ハジメ。」

 

ハジメ「来い!」

 

その声が響いた直後、

ビュンという音と共にハジメの目の前に現れ、そのまま右顔面に蹴りを入れる。ハジメはそれを受け止め、上へ弾く。ハジメはサマーソルトを放ち顎を狙う。

 

だが、樹は飛びながら後ろへバック転。回避してすぐに突撃し、剣を横になぐ。ハジメも剣で受け止め、鍔迫り合いになる。膠着状態になるが、ハジメが急に力を解いた。樹はそのまま倒れそうになる。

 

樹「おっと!」

 

ハジメ「それ!」

 

だが、樹はそのままマントで体を隠して、猛スピードで回避する。その隙に、

新しい腰のベルトに手を伸ばす。そこには…

カメラのような装置が付いていた。樹はそこにカードを挿入し、両脇のレバーを押し込む。すると、

 

『バトルスペル!Thunder!』と音が聞こえる、樹が剣を横に振ると雷を纏った斬撃が飛ぶ。

 

---2日前---

 

樹は考えていた。

元々、樹は攻撃をスピードで回避し、カウンターを叩き込むのが得意だが、腕のスキャナーの重みで引っ張られてしまうのだ。そのため、このスキャナーを腰に装着できないか考えていた。

 

樹「なぁ、マスタードラゴン?このスキャナーさベルトにできない?」

 

マスター(これは心の意志で形を好きにできる。相棒が求めれば変えられるぞ。)

 

樹「あのさ…そういうの…」

 

マスター(何だ?)

 

「早く言ってくれよ〜〜!」

 

試しに行ってみると意外と上手く出来てしまった。そして戦闘中にカードが使えるか確認するために、模擬戦を行うことにしたのだ。

 

---そして冒頭のシーンへ---

 

ハジメの目の前で斬撃は消える。樹がドライバーを外したからだ。ちなみにハジメもルルーシュもスキャナーをベルトにしていて、樹は某平成ライダーの10番目、ルルーシュは5番目、ハジメは3番目をモチーフにしている。

 

ハジメ「ゼエ、ゼエ、どうだった〜」

 

息を整えながら訪ねるハジメ。やはり戦闘訓練は身体に負担がかかるのだろう。

 

樹「最高だな!使いやすいし起動も早いし完璧だな!」

 

最早、何処かのデュエリストの口調になりつつある樹。

 

一方のルルーシュは、離れた所で自分用の『相転移砲』のメンテナンスをしていた。

このビーム砲は特殊なプリズム体を発射し、そこに目掛けてハドロンビームを撃つことで、有りとあらゆる場所に放つ回避不能のビーム砲である。

 

それをメンテナンスしながら、ズァークの網膜投影で新聞を読んでいるルルーシュ。

 

ルルーシュ「ふ〜〜ん。神の使徒がヘルシャー帝国の皇帝と謁見だと。」

 

ユエ「それってハジメ達の元仲間?」

 

ハジメ「いや、仲間でもないよ。接点ないし…」

 

ヴィエルジェ(ユエ、気にしない方がイイわよ。皆には関係ないし)

 

ヘルシャー帝国とは、冒険者や傭兵の聖地とも言うべき完全実力主義の国である。本来は、突然現れた者達が人間族を率いる勇者達と言われても納得出来ない理由から、ダンマリを決め込んでいた。(帝国にも聖教協会の教会はあるが、この国の人達の信仰心は低いようだ)。

 

しかし、今回のオルクス大迷宮攻略で、歴史上の最高記録である六十五層が突破されたのがキッカケで帝国側から是非会ってみたいという知らせが来たため、その顔合わせのために今回謁見するという訳だ。

 

樹「あのバカ勇者が帝国に認められることはないだろう?ミスリルって言う騎士にも戦ってもらえなかったしな。」

 

ハジメ「優花さんや香織さん、雫さんに美玖さん、恵里さんに双葉さんが頑張ったんだよ。」

 

マスター(我もそう思うぞ。相棒。)

 

樹「だよなぁ」

 

なんて言う皆をよそ目にルルーシュはメンテナンスを終えた。そして立ち上がるといきなり

 

ルルーシュ「俺も皇帝に会ってくる!」

 

そう言った。

 

全員「「「「「な…なんだって〜〜〜!」」」」」

 

急に驚くような事を言い出したルルーシュ。

 

樹「いやいや、無理に決まっているだろ。どうやって会うんだよ。」

 

ルルーシュ「ズァークの能力を使う。こいつの能力に『質量を持った分身を作成し、魂を移して操作する』能力がある。これを使って会いに行く。」

 

全員「「「「「マジ…ヤベーイ!」」」」」

 

何処かのヒーローが使いそうな言葉を言うメンバーであった。この話から数日後、トータス中の新聞に倒れ伏す勇者とそれを見つめる謎の仮面の戦士『オメガ』が一面を飾るのだが、それは別の話である。

 

---樹 side ---

俺は夢を見ていた。これが夢だとわかったのは、この夢にはかつて見た戦士が映っていたからだ。この夢は前にも見たことがある。だが、今回はいつもの夢ではなかった。

今回の夢はいつも見た白い甲冑の騎士の他に、金髪紺眼の少女が映っていた。おそらく騎士の恋人だろう。そしてこんなやり取りがあった。

 

?「みんないなくなっちゃった。オー君もナーちゃんもメル姉もハル姉もシーちゃんもラー君も、皆いない。残ったのは私と龍騎士だけになっちゃった。」

 

少女はガッカリした様に見える。そばにいた騎士はこういった。

 

?「ミレディ、大丈夫さ。まだ君は生きている。俺がそばにいるから。諦めないで。」

 

少女の名前はミレディと言うらしい。

 

ミレディ「ありがとう、いーちゃん。でも無理しないで。いーちゃんまでいなくなったらわたし…」

 

?「それ以上言うな、ミレディ。」

 

そう言ってミレディを抱きしめる騎士。その顔を見て、俺は愕然とした。

その顔は… 俺の顔と全く同じだったからだ!

なぜ同じなのかはわからないが、俺はもしかしたらこの時代の騎士の生まれ変わりなのかもしれない。そのうち騎士は龍に跨がり、飛び立って行った。

 

その瞬間、俺は目が覚めた。はじめて見た夢なのに、妙に既視感がある。なぜか人ごととは思えなかった。

 

---樹 side off ---

 

ハジメは手に入れた神石に魔力を封じ込め、魔力タンクにする方法を開発した。これが俗に言う『魔性石シリーズ』そのペンダント(カードを入れられるようになっていて、ヴィエルジェのカードを入れた。)

だが…

 

ユエ「これ、プレゼント?それともプロポーズ?」

 

ハジメ「ただのプレゼントです!これで長時間、魔法が使えるよ。これからも頑張ろう。」

 

ユエ「ん、ありがとう!」

 

そして、このやり取りから数日後、ついに出発の日を迎えた。奈落に落ちて2か月過ぎのことである。

 

樹「みんな…俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

 

ユエ「ん……」

 

樹「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」

 

ルルーシュ「おう……」

 

樹「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」

 

ハジメ「大丈夫……」

 

樹「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」

 

マスター「今更……」

 

サジット「いつもじゃない?」

 

ズァーク「関係ないな」

 

ヴィエルジェ「気にしないもの」

 

全員の言葉に思わず苦笑いする樹。これで覚悟は決まった。ここから先はもう引けない旅が始まる!

 

樹「俺達は最強だ。いっちょ世界を救おうぜ!」

 

全員「「「「「おう!!!」」」」」

 

そして、全員一歩を踏み出し、地上へと繋がる扉の中に入っていった。

 

〈イメージソング:小野正利 departure !)




《イメージボイス:ルルーシュ》

ついに旅だった俺たち。ここで勇者一向に一旦戻ろう。
65層に再び挑む一向。強くなった者たちの運命は…
そして新たな旅立ちもお届け!

次回 外伝 〜復活の天使〜

いざ、参らん。可能性の空へ!


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外伝 〜天使と龍のラプソディ〜
外伝 復活の天使


いつもより長いですがお楽しみに。
最近、ゲームが忙しくて、あんまり筆が進まない。
マスターデュエルにモンストに、コラボが多すぎ!


ハジメ達がユエと出会い、光龍騎神として覚醒した頃。

 

 光輝達勇者一行は、再び【オルクス大迷宮】にやって来ていた。但し、訪れているのは光輝達勇者パーティーと、天使組6人、それに永山重吾という大柄な柔道部の男子生徒が率いる男女五人のパーティーだけだった。

 

 理由は簡単だ。話題には出さなくとも、ハジメ達の死が、多くの生徒達の心に深く重い影を落としてしまったのである。(ミスリルに倒されたはずの檜山はなぜか生きて帰還し、リアム看守によって牢にぶち込まれた。その時天之河が説得して普通に鉄拳制裁されたのは余談である。)〝戦いの果ての死〟というものを強く実感させられてしまい、まともに戦闘などできなくなったのだ。一種のトラウマというやつである。

 

 当然、聖教教会関係者はいい顔をしなかった。実戦を繰り返し、時が経てばまた戦えるだろうと、毎日のようにやんわり復帰を促してくる。

 

 しかし、それに猛然と抗議した者がいた。愛子先生だ。

 

 愛子は、当時、遠征には参加していなかった。作農師という特殊かつ激レアな天職のため、実戦訓練するよりも、教会側としては農地開拓の方に力を入れて欲しかったのである。

 

 愛子はハジメ達の死亡を知るとショックのあまり寝込んでしまった。自分が安全圏でのんびりしている間に、生徒が死んでしまったという事実に、全員を日本に連れ帰ることができなくなったということに、責任感の強い愛子は強いショックを受けたのだ。

 

 だからこそ、戦えないという生徒をこれ以上戦場に送り出すことなど断じて許せなかった。

 

 愛子の天職は、この世界の食料関係を一変させる可能性がある激レアである。関係の悪化を避けたい教会側は、愛子の抗議を受け入れた。

 

 結果、自ら戦闘訓練を望んだ勇者パーティーと天使組、永山重吾のパーティーのみが訓練を継続することになった。そんな彼等は、再び訓練を兼ねて【オルクス大迷宮】に挑むことになったのだ。今回もメルド団長とリアム、ステイサム、スティーブの3看守が付き添っている。

 

迷宮攻略は13日目。

 

現在の階層は六十層だ。確認されている最高到達階数まで後五層である。

 

 しかし、光輝達は現在、立ち往生していた。正確には先へ行けないのではなく、何時かの悪夢を思い出して思わず立ち止まってしまったのだ。

 

 そう、彼等の目の前には何時かのものとは異なるが同じような断崖絶壁が広がっていたのである。次の階層へ行くには崖にかかった吊り橋を進まなければならない。それ自体は問題ないが、やはり思い出してしまうのだろう。特に、香織は、奈落へと続いているかのような崖下の闇をジッと見つめたまま動かなかった。

 

香織「ハジメ君…ルルーシュ君…樹君…」

 

雫「大丈夫よ香織。皆生きているはずよ。ロマノフさんも言っていたじゃない。」

 

香織「うん、わかってる!6人でまた、皆に会うんだ。」

2人は互いに手を取り合い、覚悟を決めた。

 

だが、そんな空気は読まないのが勇者(笑)クオリティー。光輝の目には、眼下を見つめる香織の姿が、ハジメ達の死を思い出し嘆いているように映った。クラスメイトの死に、優しい香織は今も苦しんでいるのだと結論づけた。

 

故に、思い込みというフィルターがかかり、微笑む香織の姿も無理しているようにしか見えない。

 

ましてや、ハジメと香織が想いあっており、騎士王ミスリルの腹心である邪眼皇ロマノフⅠ世から、生存報告を聞かされているなんて知るよしもない。だから検討違いの言葉をかけてしまった。

 

天之河「香織……君の優しいところ俺は好きだ。でも、クラスメイトの死に、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ。きっと、南雲も星龍もそれを望んでる」

 

雫「ちょっと、光輝……」

 

天之河「雫は黙っていてくれ! 例え厳しくても、幼馴染である俺が言わないといけないんだ。……香織、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は死んだりしない。もう誰も死なせはしない。香織を悲しませたりしないと約束するよ」

 

雫「あんた!いい加減に…」

 

香織の気持ちに気づかず、思い込みで適当な事を言う勇者(笑)。雫はもう我慢出来なかった。天之河を引っ叩こうした、その時である。

 

バシッ!

 

雫が叩くより早く、重い一発が天之河にお見舞いされた。お見舞いしたのは、一言も話していなかった龍太郎であった。

 

龍太郎「いい加減にしろ!光輝!確証の無いことを言って、流石に言い過ぎだ!」

 

光輝「龍太郎、何故だ?俺は香織や雫の事を思って…」

 

龍太郎「勝手な妄想で周りを巻き込むなよ!そもそも南雲も星龍兄弟が落ちたのも、俺たちが不甲斐ないからだぞ!俺たちがしっかりしていればあいつらは落ちなかったんだ!」

 

そう、龍太郎はずっと後悔していた。元々はハジメの事は、やる気が無いなど、勝手に決めつけて関わらない様にしていた。だがトータスに来てからその考えが変わる事になる。

 

たまたま別室で訓練していた樹、ルルーシュ、ハジメ、遠藤、清水の訓練をのぞいた時に感じとったのだ。彼らの強い意志を、思いを、そして…希望を。

 

龍太郎「あいつらも頑張っているんだ。俺も進もう。」

 

その言葉は、彼なりの誠意の表れであった。

 

そしてオルクス大迷宮での戦いで目の当たりにしたのだ。彼らの本気を。天之河を完膚なきまでに叩きのめした騎士とその上司にあたる騎士王との激戦を。その際に救えなかった3人の事を。

 

スティーブ「もう良いよ。これ以上話しても無駄だから。そろそろ下層へ向かおう。」

 

いつもの話し方だが、その声の端々から冷酷さが滲み出ているスティーブに促され、一向は下層へ進んだ。

 

--オルクス大迷宮 65層--

 

メルド「気を引き締めろ! ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 

 付き添いのメルド団長の声が響く。光輝達は表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れた。

 

 しばらく進んでいると、大きな広間に出た。何となく嫌な予感がする一同。

 

 その予感は的中した。広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上がったのだ。赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣。それは、とても見覚えのある魔法陣だった。

 

光輝「ま、まさか……アイツなのか!?」

 

 光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。

 

龍太郎「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

 

 龍太郎も驚愕をあらわにして叫ぶ。それに応えたのは、険しい表情をしながらも冷静な声音のリアム看守だ。

 

リアム「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな!」

 

 いざと言う時、確実に逃げられるように、まず退路の確保を優先する指示を出すリアム看守。それに部下が即座に従う。だが、光輝がそれに不満そうに言葉を返した。

光輝「リアムさん、。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

 

そう言う光輝の言葉を尻目に、目の前にベヒモスが現れる。

が…しかし、

 

光輝の目の前には、香織、雫、美玖、恵里、双葉、優花の6人が立ちはだかった。彼女たちの目には、覚悟が宿っていた。

香織は誰にも聞こえないくらいの、しかし、確かな意志の力を宿らせた声音で宣言した。

 

香織「もう誰も奪わせない。あなたを踏み越えて、私は彼のもとへ行く」

 

その声と同時に、6人はそれぞれ、首に掛けてあるカードに触れた。

 

---昨日 ホルアドの宿屋---

 

ロマノフ「今日で訓練は終了です。お疲れ様でした。」

 

6人「ありがとうございました。」

 

香織、雫、美玖、恵里、双葉、優花の6人はついに、ロマノフによる訓練を終えることができた。その最後に6人にカードを渡してきたのだ。

 

香織「これは何ですか?」

 

ロマノフ「いわゆる、卒業証書みたいなものです。龍騎士の皆様を支えるのでしょう?持っておくと良いですよ。」

 

困惑する6人に、ロマノフはさらに続ける。

 

ロマノフ「我が君主、ミスリル様があなた方なら使いこなせる。と申しておりました。どんな時でもあると安心ですよ。では、私はこれで」

 

大きな風と共に、ロマノフは消えてしまった。それぞれ渡されたカードを眺めながら覚悟を決める。

 

香織「みんな、頑張ろうね!」

 

5人「うん!」

 

そう誓ったのだった。

 

-------------------

 

雫「U・ベルゼビート!」

雫はベヒモスと同じ大きさのハエのような騎士を呼び出す。2人は居合い切りの構えをとると、真一文字に切り裂く。

 

「ギャアアアアアアアアアアアア!」

ベヒモスはよろける。その足下に双葉と恵里が先回りしてそれぞれカードを持つ。

 

双葉「ブラックローズドラゴン!」

 

恵里「ブラックマジシャンガール!」

 

薔薇を模したドラゴンは下からベヒモスをかち上げ、その隙に恵里と同じ大きさの魔術士が巨大な魔法を放つ。

 

恵里「ブラックバーニング!」

 

魔法は炸裂し、ベヒモスを怯ませる。しかし、まだ終わらない。

 

香織「U・ヴァリエル!」

 

サングラスをかけたベヒモスと同じ大きさの天使が現れ、巨大な魔方陣を展開!ベヒモスを拘束する。

 

優花と美玖は少し離れたところから、カードの力を呼び起こす。

 

美玖「ジークブルムX!」

 

優花「ホウオウガX!」

 

呼び出された竜と鳳凰の巨大なブレスが直撃し、ベヒモスを粉々に打ち砕いた!

 

 

一同「「や…やった〜〜」」

大きな歓声に包まれる。ついに強大な敵を討ち倒したのだ。

 

光輝「やったな!俺たちで勝つことができたな。あいつらも浮かばれるな。」

 

お前は何かしたのか?とツッコミたくなる6人を他所に、看守3人は呟く。

 

リアム「この先が大変だな」

 

ステイサム「どうなっていくだろうね」

 

スティーブ「ふぁーあ、マジ疲れた。」

 

3人の気疲れは、まだ続きそうだ。

 

双葉「私と優花は愛ちゃん先生に着いて行くね」

 

帰り際、そんな事を言った双葉。

 

香織「どうしたの?急に」

 

優花「その方が早く会えそうな気がするから。」

 

双葉「みんなのこと、よろしくね」

 

4人「任せて」

 

こうして双葉と優花は愛ちゃん先生について行くことになった。

 

 

---とある場所---

 

「ええ、済みました。どうやら目覚めたようです。」

 

『そうか、これからも頼むぞ!ミスリル』

 

ミスリル「了解!」

 

その言葉と共に通信を切るミスリル。

 

「そろそろ行くぞー」

 

「早く来いよー」

 

ミスリル「待ってくれ!スザク、バローネ!」

 

彼らは帝国と魔人族に着く騎士たち。

龍騎士のライバルである聖騎士。彼らがついに動き出そうとしていた。




《イメージボイス:ミスリル》
よう、はじめましてだな。次回は外伝の第2章だぜ!
次回はヘルシャーの皇帝がついに謁見に。
勇者と決闘かと思えば、ん?見たことのない騎士が!
果たしてその名は?

次回、黒の龍騎士 〜その名はΩ〜

さあ、showtime だ!


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外伝2 黒の龍騎士 〜その名はΩ〜

どうもWarewareです。外伝第2章おまたせしました。
これが終了して、いよいよ2章になりますー
お楽しみに〜

ラブライブの真姫と希っていいよね…


ハジメ達がヒュドラを打ち倒して、(正確には、覇王龍皇帝に目覚めたルルーシュが、圧倒的な力で捻じ伏せたが)旅の準備をし出した頃。勇者一行は、一時迷宮攻略を中断しハイリヒ王国に戻っていた。

 

何故かというと、この先は、完全な探索攻略であることから、その攻略速度は一気に落ちたこと、また、魔物の強さも一筋縄では行かなくなって来た為、メンバーの疲労が激しいことから一度中断して休養を取るべきという結論に至ったのだ。

 

 

もっとも、休養だけなら宿場町ホルアドでもよかった。王宮まで戻る必要があったのは、迎えが来たからである。何でも、ヘルシャー帝国から勇者一行に会いに使者が来るのだという。

 

このタイミングで来たのは、もちろん【オルクス大迷宮】攻略で、歴史上の最高記録である六十五層が突破されたという事実をもって帝国側も光輝達に興味を持つに至ったからである。帝国側から是非会ってみたいという知らせが来たのだ。王国側も聖教教会も、そろそろと考えていたので、了承したのである。

 

馬車が王宮に入り、全員が降車すると王宮の方から一人の少年が駆けて来るのが見えた。十歳位の金髪碧眼の美少年である。光輝と似た雰囲気を持つが、ずっとやんちゃそうだ。その正体はハイリヒ王国王子ランデル・A・ハイリヒである。

 

 ランデル殿下は、思わず犬耳とブンブンと振られた尻尾を幻視してしまいそうな雰囲気で駆け寄ってくると大声で叫んだ。

 

「香織! よく帰った! 待ちわびたぞ!」

 

もちろん、このような発言をしたのは訳がある。

 

「して、イツキ達はどうだった?何か生存の手掛かりは見つかったのか?」

 

そう、樹は召喚された次の日からランデル殿下の部屋を訪ねては、自分達の世界にあるカードゲームを教えていた。樹以外にも、ルルーシュとハジメも可愛い弟みたいに思っていた事もあり、気づけばランデルの部屋には樹たちがたむろする様になっていた。

 

そして、樹達が奈落に落ちて死んだと聞いた時に信じなかった人物の1人でもある。理由は至ってシンプル。

 

「あいつらは何処かで生きてる。なんとなくそう思うのだ。」

まあ、あながち間違ってはいないのだが。

 

「お久しぶりです。ランデル殿下。すみません、実は…」

 

「そうか…だが大丈夫だ!そのうちヒョコッと帰って来ると思うからな。」

 

そう言うとランデルは大きな笑顔を見せた。その顔には雫も美玖も双葉も恵里も優花も、救われた気分になった。そこへ空気を読まない厄介な善意の塊、勇者光輝がにこやかに参戦する。

 

「ランデル殿下、香織は俺の大切な幼馴染です。俺がいる限り絶対に守り抜きますよ」

 

いやそうじゃないんですけど!とツッコミたくなる言動だが、、さらに光輝は続けた。

 

「それに彼らの仇は討ちました!これで彼らも安心して、眠れるでしょう!」

 

流石にこの言葉には、その場が凍りついた。いくらそれが真実でも言ってはいけない事がある。ランデルは何か言いたそうだったが、顔をしかめているのを悟らせないように下を向きながら、走って戻って行った。その背を見送りながら、王女リリアーナは溜息を吐く。

 

「香織、光輝さん、弟が失礼しました。代わってお詫び致しますわ」

 

 リリアーナはそう言って頭を下げた。美しいストレートの金髪がさらりと流れる。

 

「ううん、気にしてないよ、リリィ。ランデル殿下は気を使ってくれただけだよ」

「そうだな。なぜ、怒っていたのかわからないけど……何か失礼なことをしたんなら俺の方こそ謝らないと」

 

 香織と光輝の言葉に苦笑いするリリアーナ。

 

流石に今回の事に関しては、誰が何と言おうと十中八九、光輝が悪いのだがそんな事を言うことも出来ない。

 

リリアーナ姫は、現在十四歳の才媛だ。その容姿も非常に優れていて、国民にも大変人気のある金髪碧眼の美少女である。性格は真面目で温和、しかし、硬すぎるということもない。TPOをわきまえつつも使用人達とも気さくに接する人当たりの良さを持っている。

 

そんな訳で、率先して生徒達と関わるリリアーナと彼等が親しくなるのに時間はかからなかった。特に同年代の香織や雫達との関係は非常に良好で、今では愛称と呼び捨て、タメ口で言葉を交わす仲である。

 

「いえ、光輝さん。ランデルのことは気にする必要ありませんわ。あの子にはあの子の考えが、きっとあるのでしょう。それよりも……改めて、お帰りなさいませ、皆様。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」

 

リリアーナはそう言うとフワッと笑った。心のこもった笑顔…

ではなく、いわゆる『営業スマイル』というやつである。光輝の事をリリィは遠回しに嫌っていた。その理由は…

 

「ありがとう、リリィ。君の笑顔で疲れも吹っ飛んだよ。俺も、また君に会えて嬉しいよ」

 

これが原因である。 さらりとキザなセリフを爽やかな笑顔で言ってしまう光輝。繰り返し言うが、光輝に下心は一切ない。生きて戻り再び友人に会えて嬉しい、本当にそれだけなのだ。

 

これがいかにも女垂らしの様に思えてしまい、リリィはおろか他の女貴族やメイドにも伝わっており、光輝には意外に人望が無かった。

 

「えっと、とにかくお疲れ様でした。お食事の準備も、清めの準備もできておりますから、ゆっくりお寛ぎくださいませ。帝国からの使者様が来られるには未だ数日は掛かりますから、お気になさらず」

 

そう言うとリリィは部屋に戻って行った。リリィは部屋に入るやいなや部屋のベッドに顔を埋めてこう言った。

 

「ミスリル様、あなたにお会いしたいですわ」

 

かつて自分の王女就任を記念して、ヘルシャー帝国の使者が来た際に、その使者の護衛として訪れた騎士王ミスリル。

彼はリリアーナの部屋を訪れて、彼女の悩みを聞いていた。その後も彼は帝国に内緒で、頻繁にリリアーナの部屋を訪れ、話をする様に。それが続く内に、リリアーナは彼に好意を抱くようになり、今では文通を行う程の仲になっていた。

 

だが今回は、ミスリルは樹達を落とした張本人になってしまい、申し訳無いが来れないと連絡が来ていた。想い人が来ない悲しみが、彼女に重くのしかかっていた。

 

光輝達が迷宮での疲れを癒しつつ、居残り組にベヒモスの討伐を伝え歓声が上がったり、愛子先生が一部で〝豊穣の女神〟と呼ばれ始めていることが話題になり彼女を身悶えさせたりと色々あったが光輝達はゆっくり迷宮攻略で疲弊した体を癒した。

 

香織や雫といった天使組は、迷宮に行きたくてソワソワしていたが。

 

それから三日、遂に帝国の使者が訪れた。

 

 現在、光輝達、迷宮攻略に赴いたメンバーと王国の重鎮達、そしてイシュタル率いる司祭数人が謁見の間に勢ぞろいし、レッドカーペットの中央に帝国の使者が五人ほど立ったままジャック陛下と向かい合っていた。

 

「使者殿、よく参られた。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」

「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。して、どなたが勇者様なのでしょう?」

「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」

「はい」

 

陛下と使者の定型的な挨拶のあと、早速、光輝達のお披露目となった。陛下に促され前にでる光輝。そして、光輝を筆頭に、次々と迷宮攻略のメンバーが紹介された。

 

「ほぅ、貴方が勇者様ですか。随分とお若いですな。失礼ですが、本当に六十五層を突破したので? 確か、あそこにはベヒモスという化物が出ると記憶しておりますが……」

 

そう護衛の1人が言う。その顔は、全く見覚えのない人物であって。

 

「失礼ながら、あなたは?」

 

光輝に尋ねられた護衛騎士はこう述べた。

 

「我が名は、天空騎士スザク!本日は騎士王ミスリルの代理人として参りました。」

 

そう騎士は答えた。姿を見ると、白と緑を基調とした鎧に蛍光色の緑をメインにした翼の装甲。右の腰に剣を下げ、左の腰に銃を下げている。

 

その騎士は強さを見極めるためにこう提案した。

 

「使者様の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか? それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」

「えっと、俺は構いませんが……」

 

そう光輝が認めた時、

 

「待て!その戦い、私が引き受けよう!」

 

その声を聞き、上を見ると騎士が城のてっぺんにいた。龍の鱗をメインにした、純黒というのにふさわしい鎧、その上から黒のマントを羽織り、右腰に黒い長剣を吊っている戦士だった。それより特徴的なのは、顔につけたΩの文字が記されたフルフェイスの仮面を被っている事である。この仮面により素顔は分からなかった。

 

「おいおい、おめえさんは何者だ〜」

 

使者の護衛のフリをしていたヘルシャー帝国の皇帝、ガハルド・D・ヘルシャーまでもが、変装を解除して見入っていた。

 

「私の名はオメガ!私がそこの勇者と戦い、実力を確かめよう!」

 

こうして、急遽、光輝VSオメガ というバトルが行われるのだった。

 

---専用闘技場---

 

光輝とオメガはお互いに睨みあっていた。これより今世紀最大の戦いが始まるのだ。

 

「では始めよう。なあに、どちらかが倒れるまで戦おう!」

「お願いです。降参してください。」

 

オメガにそう忠告する光輝。

 

「フフフフフフ!ワハハハハハハ!アハハハハハ!」

「何がおかしいんですか!?」

「キミはワタシが負けて、怪我をすると思っているようだ。安心しろ!負けるのはキミだ!」

 

この一言にカチンと来た天之河。これがどう影響するのか。

 

「はじめ!」

 

その言葉を皮切りに突撃する天之河。

 

「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――〝神威〟!」

 

正に勇者の一撃にふさわしい技だ。その後も猛攻を浴びせていく。唐竹、袈裟斬り、切り上げ、突き、と〝縮地〟を使いこなしながら超高速の剣撃を振るう。その速度は既に、光輝の体をブレさせて残像を生み出しているほどだ。

 

やがて土煙が晴れると、オメガは満身創痍の状態で立っていた。いや、立つ事もままならない感じである。そんな状態のオメガに近づき、またしても述べる。

 

「これでわかりましたよね。これ以上はやめましょう。降参してください。」

「確かにそうだな」

 

そう言うと何とオメガは、幻のように消えてしまった。

 

「いったいどこに?  うっ!」

 

そううなって下を見ると…胸の部分から剣の先が出ていた。

 

「グフっ……どうして?」

「これが実力だ!若造!お前の敗因は私の前に立った事だ。」

 

そう言うと天之河の4隅に4匹の龍が現れる。それは…

 

『オッドアイズペンデュラムドラゴン』

『ダークリベリオンエクシーズドラゴン』

『クリアウイングシンクロドラゴン』

『スターブヴェノムフュージョンドラゴン』の4体だった。

 

「な…なにをする」

「さらばだ!自称勇者(笑)!」

 

そしてカードを剣にラウズし、技を放つ。

 

『bless』

『darkness』

『splash』

 

『WORLD GENESIS』

 

4体の龍は同時にブレスを放つ。それらは1つにまとまり大きな龍となる。その巨龍は天之河を飲み込んだ。

そして‥‥… 大爆発!

 

天之河は、鎧がなくなり、聖剣は折れ、観るも無惨な姿になってしまった。

 

------------------

 

次の日の新聞には、全裸で倒れ伏した姿の写真がトータス中に流れた。これにより、ハイリヒ王国の勇者は、自称勇者(笑)になってしまった。むしろオメガが伝説の勇者になってしまい、オメガはそれを断った。

 

彼の作ったギルド『黒の騎士団』は入団者が急増したという。帝国の騎士、スザクは終始楽しそうに帰っていった。皇帝ガハルドは勇者をこう評価している。

 

「ありゃ、ダメだな。ただの子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだな。〝神の使徒〟である以上蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろう」

「それで、あわよくば死なせるつもりだったのですか?」

「あぁ? 違ぇよ。少しは腑抜けた精神を叩き治せるかと思っただけだ。あのまま、あの騎士がやっても教皇が邪魔して絶対殺れなかっただろうよ」

 

そんな評価を下されているとは露にも思わず、光輝達は、翌日に帰国するという皇帝陛下一行を見送ることになった。用事はもう済んだ以上留まる理由もないということだ。本当にフットワークの軽い皇帝である。

 

ちなみに、オメガの行方はわかっておらず、オルクス大迷宮に消えて行った。という噂がたったがそれを知るものはいない。




《イメージボイス:樹》

ヨォ、みんな樹だぜ。いよいよ本編に戻るぞ!
俺たちは、新たな場所に向かう。
その道中で出会うウサギのシア・ハウリア。
彼女を助けたいと言いだすルルーシュに俺たちは…

次回 〜残念ウサギと黒ドラゴン 〜

さぁ、振り切るぜ!


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第2章 封印された禁忌たち
第18節 残念ウサギと黒ドラゴン


皆さん、こんにちは。Warewareでございます。
ついに第2章に突入です〜
この章では新しいヒロイン候補に次の聖騎士、さらに本作のラスボスが動き出すなど、
一気に物語が動きます。

それと共に新しいアンケートも行いますので、回答をよろしくお願いします〜

感想など、お待ちしております。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

少女は走り続けていた。この荒れ果てた大地を懸命に。

少女は追い求めていた。自分を導いてくれるその人物の元へ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

少女の名は シア・ハウリア。兎の亜人族、ハウリア族の娘である。そして今は救援を求めて走り続けていた。一族を守るために、ただ、走り続けていた。

 

「早く会わなきゃ。みんなが死んじゃう。」

 

運命の出会いまで、残りわずかである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

扉の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱んだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気に樹達の頬が緩む。

 

 やがて光が収まり目を開けた樹達の視界に写ったものは……

 

 洞窟だった。

 

「「「「なんでやねん」」」」

 

((((どないやねん))))

 

 魔法陣の向こうは地上だと無条件に信じていた樹、ルルーシュ、ハジメ、ユエは、代わり映えしない光景に思わず半眼になってツッコミを入れてしまった。正直、めちゃくちゃガッカリだった。まあなんとなく気付いていたマスタードラゴン、ズァーク、サジット、ヴィエルジェはそのツッコミに乗るという仲の良さを見せる。

 

そんなハジメの服の裾をクイクイと引っ張るユエ。何?と顔を向けてくるハジメにユエは自分の推測を話す。慰めるように。

 

「……秘密の通路……隠すのが普通」

「あ、そうか。確かに。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないね。」

 

 そんな簡単なことにも頭が回らないとは、どうやら自分は相当浮かれていたらしいと恥じるハジメ。頭をカリカリと掻きながら気を取り直す。緑光石の輝きもなく、真っ暗な洞窟ではあるが、ハジメ達もユエも暗闇を問題としないので道なりに進むことにした。

 

 途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。4人は、一応警戒していたのだが、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。樹、ルルーシュ、ハジメはこの数ヶ月、ユエに至っては三百年間、求めてやまなかった光。

 

 ハジメ達とユエの4人は、それを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせた。それから互いにニッと笑みを浮かべ、同時に求めた光に向かって駆け出した。

 

近づくにつれ徐々に大きくなる光。外から風も吹き込んでくる。奈落のような澱んだ空気ではない。ずっと清涼で新鮮な風だ。ハジメは、樹は、ルルーシュは、〝空気が旨い〟という感覚を、この時ほど実感したことはなかった。

 

 そして、ハジメと樹とルルーシュ、そしてユエは同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。

 

 地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。

 

 【ライセン大峡谷】と。

 

 ハジメ達は、そのライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口にいた。

 

 たとえどんな場所だろうと、確かにそこは地上だった。呆然と頭上の太陽を仰ぎ見ていた。特にハジメとユエの表情が次第に笑みを作る。無表情がデフォルトのユエでさえ誰が見てもわかるほど頬がほころんでいる。

 

「……戻って来たんだな……」

「……んっ」

「やっと来たな……」

「…ついに来た……」

 

そして、4人は一際大きな歓声を上げる。

 

「「「「人々よ…私は帰ってきた〜〜〜!!」」」」

 

ついにその一言を言い、感動をぶつけていると。

普通にライセン大峡谷の魔物に取り囲まれていた。

 

「全く…もうちょい感動させてくれよ!」

「仕方ないだろ、樹、相手さんも必死なんだから〜」

「ねえユエさん、ここって魔法使えないんだっけ?」

座学に励んでいたハジメには、ここがライセン大峡谷であり魔法が使えない場所であると理解していた。

 

「……分解される。でも力づくでいく」

 

 ライセン大峡谷で魔法が使えない理由は、発動した魔法に込められた魔力が分解され散らされてしまうからである。もちろん、ユエの魔法も例外ではない。しかし、ユエはかつての吸血姫であり、内包魔力は相当なものであるうえ、今は外付け魔力タンクである魔晶石シリーズを所持している。

つまり、ユエ曰く、分解される前に大威力を持って殲滅すればよいということらしい。

 

「力づくって……効率は?」

「……十倍くらい」

 

 どうやら、初級魔法を放つのに上級レベルの魔力が必要らしい。射程も相当短くなるようだ。

 

「ならユエさんは休んでて僕らでやるから。」

「ウッ‥でも」

「大丈夫だから」

 

そう言うと、ハジメは大きな火球を作り、それを泥を被った魔物『ボルボロス』にぶつける。もちろん、ボルボロスは灰になる。怯えるモンスター達を余所に彼らは続ける。

 

「ごめんね。キミ達に恨みは無いけど…お命頂戴!」

 

その言葉を皮切りに蹂躙劇が始まる。蹂躙が終わるまで3分とかからなかった。

 

「ねぇ、弱くない?」

 

唐突なハジメの一言。おそらく峡谷の魔物が弱すぎるあまりに出た言葉だろう。

 

「俺らが強すぎるだけだろ?そもそも、オルクスの迷宮は最後の方で攻略するんじゃないか?」

(そうだよ、確か1番最後なんだよね)

樹の疑問に答えるサジット。どうやら当たっていたらしい。

 

「さて、この絶壁、登ろうと思えば登れるだろうが……どうする? ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だ。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」

「いや、なんで樹海側?」

「おいおい峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ? 樹海側なら、町にも近そうだし。」

「……それは最もだ」

 

兄弟話をしながら、それぞれのモンスターに乗るハジメたち。その後、ディノバルド、リオレウス、ラギアクルスは樹海側に向かっていった。ユエはレウスにハジメと乗り、樹は執事の『ボルバルザーク紫電ドラゴン』を後ろに乗っけ、バルドに乗って進んでいく。ラギアに乗るのはルルーシュ1人だ。

 

しばらく進むとそれほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。中々の威圧である。少なくとも今まで相対した谷底の魔物とは一線を画すようだ。もう三十秒もしない内に会敵するだろう。

 

崖を回ると、アロサウルスに似たモンスターと金色の鱗に身を包んだ竜がいた。前者は『アンジャナフ』後者は『セルレギオス』である。

 

だが、真に注目すべきはその足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら逃げ惑うウサミミを生やした少女だろう。

 

「……何だあれ?」

「兎人族?だよね…」

「なんでこんなとこに? 兎人族って谷底が住処なのか?」

「いいや、聞かないけど」

「じゃあ、あれか? 犯罪者として落とされたとか? 処刑の方法としてあったよな?」

「……悪ウサギ?」

 

そう言い合うメンバー。だが、この後の一言で空気が変わる。

彼女は4人を見つけると叫んだ。

「すみません、私の家族を助けて!」

 

その言葉により全員が反応する。主にルルーシュが。

 

「助けていいか?あの子を。」

 

そう言うルルーシュに皆は言う。

 

「良いぜ、いちいち許可取るなよ。ルルーシュ」

「だが…」

「気にしないで。家族だと尚更ね。」

「……ん、ルルーシュが優しいのは知ってる」

(だそうだぞ、小僧)

 

樹に、ユエに、ハジメに、そしてズァークに言われたルルーシュは救出に入る。

 

ルルーシュは自分の銃剣レクイエムを銃モードに切り替え、3つのエネルギー弾を放つ。当然、アンジャナフに避けられる。だが、その隙にルルーシュの新武器『ハドロンシューター』を構え、追尾型の銃弾を足に撃ち、動けなくなったアンジャナフの脳天を撃ち抜く。

 

一方、樹は自分の『ハイブリッドマグナム』でセルレギオスの翼を正確に撃ち抜く。落ちてきたタイミングで剣を抜き、横に薙ぐ。すると強力な斬撃、いわゆる『ソニックブーム』が飛び出し、翼の腱と胸と腹に一撃を入れ。大ダメージを与えた。

 

すかさず樹は何も書かれていない『ブランクカード』をセルレギオスに投げる。すると刺さったカードにセルレギオスは吸い込まれ。カードにはセルレギオスの紋章が描かれた。

 

「うそ、アンジャナフとセルレギオスが…」

 

ウサミミ少女の感想を尻目にルルーシュと樹は戻ってきた。そして樹はこう言った。

 

「俺、空飛んでくるから理由聞いといて」

「「「…ハァア!」

樹の解答に呆れるユエ、ハジメ、ルルーシュであった。

 




《イメージボイス:ユエ》

…ん、ユエ。私が次回予告。
ウサミミの少女はシア・ハウリア。彼女の知られざる過去。
知った樹達は当然、救出のため動き出す。
救出を終えた私達と彼らの新しい契約とは!

次回 〜契約と制約〜
 …私、全然役に立ってない…ぐすん…


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第19節 契約と制約

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。アンケートの回答を見ましたが…
ブリタニア軍を求める声が多い!

やっぱり登場人物の名前の問題かなぁ?
まあ、軍隊ってカッコいいもんね!かく言う私も憧れるしね。

感想、コメント、お待ちしてます!


「イヤッホー!」

「ギュアホー!」

 

樹は新しいセルレギオスのカードをスキャンし、セルレギオスを出して空を飛んでいた。ちなみに他のモンスター(リオレウス、ディノバルド、ラギアクルスなど)もカードにして持ち歩く事ができる。

 

楽しそうに空中散歩を楽しむ樹を無視して、ルルーシュは訪ねる。

 

「で、助けてとはどう言う事なんだ?えっと」

「シアです。シア・ハウリアです。実は…」

 

シア・ハウリアと名乗ったウサミミ少女は、語り出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。兎人族は、聴覚や隠密行動に優れており、暗殺術に長けているのだが、他の亜人族に比べればスペックは低いらしく、突出したものがないので亜人族の中でも格下と見られる傾向が強いらしい。性格は総じて温厚で争いを嫌うが、とても仲間思いの優しい種族だった。

 

 そんな兎人族の一つ、ハウリア族に、ある日異常な女の子が生まれた。兎人族は基本的に濃紺の髪をしているのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。しかも、亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操るすべと、とある固有魔法まで使えたのだ。

 

 当然、一族は大いに困惑した。兎人族として、いや、亜人族として有り得ない子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となるだろう。しかし、彼女が生まれたのは亜人族一、家族の情が深い種族である兎人族だ。見捨てるなど考えられない。

 

 しかし、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】に女の子の存在がばれれば間違いなく処刑される。魔物とはそれだけ忌み嫌われており、不倶戴天の敵なのである。また、被差別種族ということもあり、魔法を振りかざして自分達亜人族を迫害する人間族や魔人族に対してもいい感情など持っていない。樹海に侵入した魔力を持つ他種族は、総じて即殺が暗黙の了解となっているほどだ。

 

 故に、ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。その為、ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。

 

 行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。

 

 しかし、彼等の試みは、その帝国により潰えた。樹海を出て直ぐに運悪く帝国兵に見つかってしまったのだ。巡回中だったのか訓練だったのかは分からないが、一個中隊規模と出くわしたハウリア族は南に逃げるしかなかった。

 

 女子供を逃がすため男達が追っ手の妨害を試みるが、元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。

 

 全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとした。

 

 しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。

 

 そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。

 

そんな中、自らの能力で危機の打破を考えたシアが救援を求めて走ってきたと言う。一部の望みをかけて。

 

「……気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」

 

 最初の感じとは打って変わって悲痛な表情で懇願するシア。どうやら、シアは、ユエと同じ、この世界の例外というヤツらしい。特に、ユエと同じ、先祖返りと言うやつなのかもしれない。

 

「そうか、つらかったな。」

「え…」

 

ルルーシュの一言に驚き、言葉にならない声を出すシア。それもそのはず、見ず知らずの人物に助けてくれ、と頼むのは図々しい。断られるか、運良く願いを聞いてもらっても何か対価を求められるかもしれない。

 

そう思っていた。なのにこのお人好しは…

 

「大丈夫!絶対助ける!」

そう言ってくれた。そう言って頭を撫でてくれた。どうしてここまで…優しいのだろう。

 

ドクン!

 

シアは自分の心が何故か高鳴る感じがした。

 

「行くぞ、案内頼むな。」

「…ハイです!」

 

そう言うとルルーシュとシアはハウリア族救出に向かった。

 

そうして走ること二分。最後の大岩を迂回した先には、今まさに襲われようとしている数十人の兎人族達がいた。ライセン大峡谷に悲鳴と怒号が木霊する。

 

 ウサミミを生やした人影が岩陰に逃げ込み必死に体を縮めている。あちこちの岩陰からウサミミだけがちょこんと見えており、数からすると二十人ちょっと。見えない部分も合わせれば四十人といったところか。

 

彼らを襲うのは一角竜『モノブロス』飛びはしないが強靭な脚での突進を武器にするモンスターである。

 

「モ、モノブロスが6体も…」

その内の一匹が遂に行動を起こした。大きな岩と岩の間に隠れていた兎人族の下へ走っていく。踏み潰されてしまいそうである。その時、

 

「大丈夫だ。…樹!」

「了解!レギオス、爆裂刃燐!」

 

セルレギオスは鱗を飛ばし、モノブロスに突き刺す。鱗は衝撃を加えると爆発し傷口を抉るので大ダメージが入るのだ。その攻撃を6体に満遍なく行った。そして次は、

 

「ハジメ!」

 

「任せて!レウス、火炎ブレス!」

 

レウスは強力な炎を吐き、モノブロスを焼く。

 

そして次はルルーシュの番。ラギアに雷を纏わせモノブロスに飛びかからせる。そして、モノブロスの苦手な雷属性を解放。辺りは閃光に包まれた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「シア! 無事だったのか!」

「父様!」

 

 真っ先に声をかけてきたのは、濃紺の短髪にウサミミを生やした初老の男性だった。はっきりいってウサミミのおっさんとか誰得である。シュールな光景に微妙な気分になっていると、その間に、シアと父様と呼ばれた兎人族は話が終わったようで、互いの無事を喜んだ後、ルルーシュ達の方へ向き直った。

 

「ルルーシュ殿、樹殿、ハジメ殿で宜しいか? 私は、カム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとか……父として、族長として深く感謝致します」

 

「ルルーシュです。優しい娘さんですね。僕らに必死で助けを求めて来たのですから。」

 

そうルルーシュは言い、握手を求める。握手を行った後、ルルーシュはある交渉にでる。

 

「ですが、すみません。ここからは交渉と言う名のお願いです。そちらの安全を保証する代わりに、樹海の案内をして頂きたいのです。よろしいでしょうか?」

 

「それぐらいで良ければ。ではよろしくお願いします。」

 

ルルーシュの提案に速攻でOKをだすカム。

 

「…随分簡単に信じるんだな。」

「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから…」

 

だがルルーシュは急に声のトーンを下げ、話しだした。

 

「これは1つ我々のお願いです。我々の指示に従って頂くので、我々の考えに異議を申さないで頂きたいのです。」

「それはどう言う…」

「契約と制約ですよ。ルールが存在しないと後々面倒なので。契約するにあたって守ってほしいルール、いわゆる制約は必要かと」

「それもそうですね。樹海の案内はお任せください。」

 

話がまとまった2人は離れて、ルルーシュは決まった話を樹、ハジメ、ユエに報告する。

 

「すまないが頼む。」

 

ルルーシュの報告を聞いて樹は答える。

 

「周期的に直ぐに樹海の探索は無理だし、良いんじゃね?」

 

「周期って?」

 

「ハジメ知らねえの?ハルツィナ樹海は霧に覆われていて、それが薄くなるのが周期的だから、直ぐには動けないのよ。」

 

「へえ〜、ルルーシュの決めた事でいいんじゃない?」

 

「ん…私も異論なし」

 

全員の意見を聞き、方向性が決まった。

 

「よし、これより帝国兵を片づけて樹海に行く。皆着いてこい!」

 

「「「「「「おお〜〜〜!!!」

 

大所帯となったパーティを引き連れ、樹海に向かうルルーシュ。

 

(で、どうするのだ?小僧)

 

ルルーシュに訪ねるズァーク。

 

「心配は要らない。奴等に、撃っていいのは撃たれる覚悟を持つべきなのを……

             教えるだけだ!

 

ルルーシュの両眼には、龍が羽ばたいたような紋章がついていた。




《イメージボイス:ルルーシュ》

ルルーシュだ。次回予告を行う。
ついに帝国兵と会敵する俺たち。
奴等の卑劣で残逆な行為の前に怒りが募る!
そしてとある覚悟を尋ねるが、その回答がついに逆鱗に触れた!

次回 撃たれる覚悟  ルルーシュ・D・ズァークが命じる!


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第20節 撃たれる覚悟

こんにちは、こんばんは。Warewareです。
今回でアンケートを締め切ります。
さあブリタニアっぽく強化するぞ〜〜

ブリタニアとルルーシュといえばのネタが登場します〜

みなさん、もしよければ、曲を聴きながらお読みください。

感想などよろしくお願いします〜


「そういえば気になったんだが…」

 

移動しながらルルーシュは尋ねる。

 

「シア、君の固有魔法ってなんだ?」

「あ、『未来視』と言いまして、未来を見る事が出来るんですよ。もちろん確定ではないですけど…」

 

「「「「それチートじゃん!」

あまりにもチートな能力だった。予想の斜め上を行く能力に驚く4人。

 

「でもさ、なんでそんな能力なのにモンスターに襲われていたの?未来が見えるのなら危機は回避できたんじゃ?」

ハジメが尋ねる。

 

「一度使うと魔力をごっそり持っていかれるので連発出来ないんです。」

「何に使ったの?」

「友達の恋路が気になって?」

 

「「「「おバカ〜〜〜」」」」

 

4人は一斉にツッコんだ!いくら何でもそんなどうでもいい事に使ってしまうなんて、残念にも程がある。

 

「何してんねん!このドアホ!」

 

「もうちょい考えてよ。このすっとこどっこい!」

 

「……残念ウサギ!」

 

「うっ!ヒドイです〜!」

 

上から樹、ハジメ、ユエの順にツッコまれるシア。ちなみに今、シアは元々着ていた民族衣装がボロボロになってしまったので、ユエが仕立てたルルーシュとお揃いの制服を着ている。

ここで、樹達が今何を着ているかチェックしよう!

 

樹は、黒いタンクトップの上からレザーのジャケットを羽織り、下は黒の長ズボンを着て、黒のスニーカーを履いている。。ハジメは赤地に金のラインが入ってる長袖シャツに赤いスカーフを首に巻いて、白地に赤のストライプのズボンで、靴は黒いスニーカーである。

 

ユエは、前面にフリルのあしらわれた純白のドレスシャツに、これまたフリル付きの黒色ミニスカート、その上から純白に青のラインが入ったロングコートを羽織っている。足元はショートブーツにニーソだ。

 

(本当はハジメとお揃いの赤と金の服にしたがったが、ハジメが恥ずかしがったのであえなく断念した)

 

ルルーシュは先述した通り、制服である。どれもモンスターの素材をユエとハジメが仕立てた逸品なので、耐久性や防御力も抜群である。

 

「そういえばルルーシュさん達はどうしてここに?」

「ああ…それはな」

 

シアにこれまでの事を話すルルーシュ。全て話し終えると、シアは

 

「そうだったんですね。ごめんなさい。辛い過去でしたよね。」

と謝罪した。だがルルーシュは、

 

「気にしてないから良い。魔法を扱えるのは俺たちも一緒だ。シアだけじゃない。」

そう言って頭を撫でた。

 

「……あの2人付き合ってるの?」

「いや初対面でそれはないだろ。多分。」

「もうすでに恋愛フラグが立ってる!」

 

ユエ、樹、ハジメは2人の仲睦まじい様子を見てモヤモヤしていた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「樹様、間もなく帝国兵と会敵します。」

「紫電、ありがとう。さていよいよか。」

 

ボルバルザーク紫電ドラゴンの索敵に答える樹。周りに緊張が走る。

 

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……ルルーシュさん……どうするのですか?」

「? どうするって何が?」

 

 質問の意図がわからず首を傾げるルルーシュに、意を決したようにシアが尋ねる。

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。皆さんと同じ。……敵対できますか?」

「もちろんするな。差別する奴は許さないし、何より帝国自体好きじゃない…あの時、マジで腐ってると思ったからな

 

あの時思った事を再確認するルルーシュ。他の皆も同じ思いだった。

 

そしてライセン大峡谷を抜けると、そこには…

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

 三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、ハジメ達を見るなり驚いた表情を見せた。

 

 だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ? こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」

 

 帝国兵は、兎人族達を完全に獲物としてしか見ていないのか戦闘態勢をとる事もなく、下卑た笑みを浮かべ舐めるような視線を兎人族の女性達に向けている。兎人族は、その視線にただ怯えて震えるばかりだ。

 

「紫電、頼む」

「お任せを…」

 

紫電は自らの能力で帝国兵の心を読む。

 

「おまえは何だ。人間か?」

「それ以外にどう見える」

ルルーシュは帝国兵と対話を始める。

 

「はぁ~? なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

「断る。」

そう答えるルルーシュ。

 

「はあ。なんだと!」

怒る帝国兵を尻目にルルーシュは続ける。

 

「他の亜人はどうした?」

「あ?答える訳ねえだろ。」

 

(既に移送済みだそうです。人数を絞ったとでているので、おそらく…)

(マジかよ)

(…最低)

(思った通りだね)

 

紫電の念話の内容に顔を歪める3人。ルルーシュは聞きたかった事を聞く。

 

「おまえ達はなぜ奪う?亜人族をどう思っている。」

 

その回答は…

「そんなの決まっているだろ!半端者は人間様に支配される。良いように使われて死ねるなんて本望だろうよ!亜人どもはヘイコラ言って言う通りにしてりゃ良いんだよ!」

 

案の定ゲスだった。

 

「あ…」

「何?」

「これ終わったね」

ルルーシュの態度に危険を感じ、その場を離れる3人とハウリア。

 

「撃って良いのは撃たれる覚悟を持つものだけだ!撃たれる覚悟を持たない者は、撃つことも、支配する事も、ましてや見下す事もしてはならない!」

 

「ごちゃごちゃうるせえよこのガキ!てめえは這いつくばってろ」

その言葉がトリガーとなった。ルルーシュは両眼に龍の紋章を移しそれを帝国兵に見せた!そして宣言する。

 

「ルルーシュ・D・ズァークが命ずる!貴様ら、この場にて死ぬが良い!

 

すると帝国兵達は、

 

YES My Lord!

と叫び、笑顔で自害した!

 

「ふう」

(流石だな小僧!一回のギアスで両眼開眼とはな。だが長続きはしないな。少しずつ使っていけ。)

「そうさせてもらう」

ルルーシュは4天の龍を呼び出すと、帝国兵の遺体を食わせた。

 

しばらくして、みんなが戻ってくると、ルルーシュは能力を説明した。ギアスはいわゆる呪いである。使用者の眼に龍の紋章を出し、相手に見せる。その相手になんでも命ずる事ができ、絶対に守らせるのである。

 

これを聞いたシアは怖がっていたが、自分達には使わないと聞いてホッとしていた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「ルルーシュさん、ありがとうございます。」

シアはそう言った。

 

「何がだ?」

「私達の為に怒ってくれたんですよね。」

「まあそうだ。ここからが樹海だろ。案内頼むぞ。」

「はい、神官さんと『霞龍』さんと行けば余裕ですよ!」

 

「「「「え?」」」」

4人は凍った。すかさず答えるルルーシュ。

 

「な…なぁ、その神官って『マハード』で龍は『オオナズチ』か?」

「そうですけど…」

 

「「何〜〜〜〜!!!」」

 

衝撃の事実に3人の悲鳴が樹海中に響いた。

 




《イメージボイス:ハジメ》

ハジメです。やっと樹海に着いたけどまた問題が。
罪人のハウリア族は処刑するから案内出来ないって。なんだそりゃ!
そしてマハードさんと対話。え、ハルツィナさんをしってるの?
そしていよいよハウリア族を強化だー。

次回 神官と掟と真の悪 はぁ、胃薬ないかなぁ


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第21節 神官と掟と真の悪

こんにちは、こんばんは。
Warewareでございます。連続投稿できた〜〜

すみません、なんとか出来ました。
今回はルルーシュと神官がキレます。
なんか、ルルーシュ最近キレてばかりじゃないかな…

今回は力作です。みなさん、お楽しみください。


今、樹達はフェアベルゲンにいる。樹海に入ってからというもの、災難ばかりだ。虎の亜人族に敵対され、龍皇帝がいるとわかればお祭り騒ぎになり、森人族の長老が出てきてフェアベルゲンにつけば、今度は他の亜人族に敵対される始末。

 

樹は腹痛になり、ハジメから薬を渡され、服用していた。

 

ルルーシュはと言うと、襲ってきた熊の亜人族を返り討ちにしていた。どうやら口伝を信じておらず、敵対してしまいルルーシュに制圧されていた。

 

ちなみに口伝は、【ハルツィナ樹海】の大迷宮の創始者リューティリス・ハルツィナが、自分が〝解放者〟という存在である事(解放者が何者かは伝えなかった)を、仲間の名前と共に伝えたものなのだという。フェアベルゲンという国ができる前からこの地に住んでいた一族が延々と伝えてきたのだとか。最初の敵対せずというのは、大迷宮の試練を越えた者の実力が途轍もないことを知っているからこその忠告だ。

 

 そして、オルクスの指輪の紋章にアルフレリックが反応したのは、大樹の根元に七つの紋章が刻まれた石碑があり、その内の一つと同じだったからだそうだ。

 

さらにハルツィナは前の覇王龍皇帝の妻であり、龍皇帝を継ぐものが現れたら強力するよう伝えていたのだ。それを知らずに敵対するなんて、バカ以外の何者でもない。

 

現在は、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族(俗に言うドワーフ)のグゼ、そして森人族のアルフレリックがルルーシュと向かい合って座っていた。ルルーシュの傍らにはカム、シアが座り、その後ろにハウリア族が固まって座っている。樹達はハウリアのそばにいるが、話し合いには参加しない。

 

「神官様は来るのか?」

 

「今向かっておる。先に話を進めよう。」

 

そのアルフレリックの言葉で話し合いが始まった。

だが、その前に他の亜人族が待ったをかけた。

「こちらの仲間を再起不能にしておいて、第一声がそれか……それで友好的になれるとでも?」

 

 グゼが苦虫を噛み潰したような表情で呻くように呟いた。

「何言ってるかわからない。先に殺意を向けてきたのは、あいつだ。俺は返り討ちにしただけだ。再起不能になったのは自業自得だ」

「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」

「それが、初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

「そ、それは! しかし!」

 

「勘違いするなよ? 俺が被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えるなよ?」

 

樹も話に参加する。

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼らの言い分は正論だ」

 

 アルフレリックの諌めの言葉に、立ち上がりかけたグゼは表情を歪めてドスンッと音を立てながら座り込んだ。そのまま、むっつりと黙り込む。

 

「確かに、この少年たちは、紋章の一つを所持しているし、その実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 

 そう言ったのは狐人族の長老ルアだ。糸のように細めた目でハジメを見た後、他の長老はどうするのかと周囲を見渡す。

 

 その視線を受けて、翼人族のマオ、虎人族のゼルも相当思うところはあるようだが、同意を示した。代表して、アルフレリックがハジメに伝える。

 

しかし、そこで虎人族のゼルが口を挟んだ。

 

「だが、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

ルルーシュの顔が歪む。

 

「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

 ゼルの言葉に、シアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。

 

「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」

「シア! 止めなさい! 皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

「でも、父様!」

 

 土下座しながら必死に寛恕を請うシアだったが、ゼルの言葉に容赦はなかった。

 

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 

 ワッと泣き出すシア。それをカム達は優しく慰めた。長老会議で決定したというのは本当なのだろう。他の長老達も何も言わなかった。おそらく、忌み子であるということよりも、そのような危険因子をフェアベルゲンの傍に隠し続けたという事実が罪を重くしたのだろう。

 

「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが? どうする? 運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」

 

もう我慢の限界だった。樹たちがカードデッキを出そうとした時、

 

「誰が決めたそんな掟。君たちは口伝を何だと思っている。」

 

そんな声が聞こえた。振り返ると、古代神官の衣装に身を包み、不思議なリングを首に掛け、手に錫杖を持った青年がいた。

 

「神官様!」

 

全ての亜人族の長老が跪く。この方がハルツィナの守護神官『マハード』なのだろう。マハードはルルーシュの前に跪く。

 

「お、おやめください神官様!」

だが、マハードはやめなかった。

 

「龍皇帝殿、申し訳ない!亜人族の者に罪はない、許していただきたい!」

 

さすがのルルーシュも焦り、

「顔を上げてください。」

と言う始末。ルルーシュの前から起き上がると、マハードは長老達に厳しい言葉をかけた。

 

「君らはバカか?なぜ皇帝と敵対する!ハルツィナはそんな事の為に口伝を残してはいない!魔力があってもなくても亜人は亜人!君たちは自分の子や孫が魔力を持って生まれて来た時も、掟の名の下に、皆殺しにするのか?それほど掟が大事か?」

 

返す言葉がない長老たち。事の重大さにようやく気づいたのだろう。

 

「どんな時も平等に接する。それが亜人族だ。仲間を大事にしないものこそ、真の悪人だ!」

 

そう言い切るとマハードはルルーシュの方を向き、

「樹殿、ルルーシュ殿、ハジメ殿、ユエ殿、すまなかった。ハウリア族の罪は、私の名で帳消しにしよう。フェアベルゲンでの滞在を許す。ゆっくりして行ってくれ。」

 

そう言うとマハードは去って行った。マハードが去った部屋で樹達は荷物をまとめる。まとめ終えると、ルルーシュは声をかけた。

 

「行かないのか?」

シアが、オロオロしながらルルーシュに尋ねた。

 

「あ、あの、私達……死ななくていいんですか?」

「? さっきの話聞いてなかったのか?」

「い、いえ、聞いてはいましたが……その、何だかトントン拍子で窮地を脱してしまったので実感が湧かないといいますか……信じられない状況といいますか……」

 

 周りのハウリア族も同様なのか困惑したような表情だ。それだけ、長老会議の決定というのは亜人にとって絶対的なものなのだろう。どう処理していいのか分からず困惑するシアにユエが呟くように話しかけた。

 

「……素直に喜べばいい」

「ユエさん?」

「……ルルーシュに救われた。それが事実。受け入れて喜べばいい」

「……」

 

 ユエの言葉に、シアはそっと隣を歩くルルーシュに視線をやった。ルルーシュは前を向いたまま肩を竦める。周りを見ると、サムズアップをする樹、笑顔で見つめるハジメ、優しい目で見つめるユエがいた。

 

「まぁ、契約の範疇だからな〜」

「ッ……」

 

ドクン!

 

再びシアの心が高鳴った。初めに助けてくれた時も、そして今も。ルルーシュの事を思うと心が高鳴り、胸が熱くなる。この気持ちは最初は分からなかったが今はわかる。

 

(そっか、私はルルーシュさんが大好きなんだ。)

 

「ルルーシュさん、ありがとうございます!」

「おいおい、抱きつくな!離れろ!」

「えへへ〜離しませんよ〜」

 

(会ったことはないけど、恵里さん、双葉さん、ごめんなさい。でも今は許してください。もし会えたら、ルルーシュさんの彼女に、3人目でもいいのでさせてください。)

 

シアは心の中で思った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて、お前等には戦闘訓練を受けてもらおうと思う」

唐突に樹に言われたハウリアたち。

 

「ど…どうして?」

「いや、契約は案内するまでだから。契約なくなったらみんな死んじゃうよ…そしたらシアに悪いじゃん。」

 

樹は続ける。

「お前等に逃げ場はない。隠れ家も庇護もない。だが、魔物も人も容赦なく弱いお前達を狙ってくる。このままではどちらにしろ全滅は必定だ……それでいいのか? 弱さを理由に淘汰されることを許容するか? 幸運にも拾った命を無駄に散らすか? どうなんだ?」

 

「ダメでしょ。負けたら意味ないよ。生きれるなら生きて足掻け!最後まで戦え!生きれる術を俺と紫電で教えてやる。俺について来い!」

 

「「「お〜〜〜!!」」」

人一倍大きな歓声が上がった。樹はどうハウリアを強化するのか?

 

ーーーーーーーーーー

 

「はぁ〜〜〜です!」

「フッ」

 

シアはユエと戦っていた。ルルーシュから出された課題は、『ユエに傷をつけろ』である。これが出来なければ、ルルーシュと一緒に旅できない。課題を達成すれば、ユエもルルーシュに一緒にお願いしてくれるのだ。

 

(ルルーシュさん、私頑張ります。絶対に着いていきますから〜。そして私の思いを伝えるんです〜)

さあ、シアはユエを攻略できるのか!




《イメージボイス シア》

みなさん、はじめまして。シアです。
私も次回予告しますよ〜

樹さんに育てられた父様たち、その成果は…
私はあと一歩でユエさんに勝てます。頑張ります。
そして、約束を破った熊人族にハウリアが襲いかかる!

次回 出撃!ハウリア軍!お楽しゅみに。あ、噛んじゃった。


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第22節 出撃!ハウリア軍!

こんにちは、こんばんは。
Warewareでございます。遅くなり、申し訳ございません。
さあハウリアの強化話と参りましょう。あんまり長くは書きませんが…

感想ください。待ってますので。よろしくお願いします〜


「シャら〜〜です。」

「…白鯨!」

 

シアが打撃で、ユエが魔法で戦いを行なっている。『ユエに傷をつける』と言う絶対出来なさそうな難題に挑み始めて、10日が経っていた。

 

ズガンッ! ドギャッ! バキッバキッバキッ! ドグシャッ!

 

 樹海の中、凄まじい破壊音が響く。野太い樹が幾本も半ばから折られ、地面には隕石でも落下したかのようなクレーターがあちこちに出来上がっており、更には、燃えて炭化した樹や氷漬けになっている樹まであった。

 

そして、その破壊活動は現在進行形で続いている。

 

「でぇやぁああ!!」

 

 裂帛の気合とともに撃ち出されたのは直径一メートル程の樹だ。半ばから折られたそれは豪速を以て目標へと飛翔する。確かな質量と速度が、唯の樹に凶悪な破壊力を与え、道中の障害を尽く破壊しながら目標を撃破せんと突き進む。

 

「……〝緋槍〟」

 

 それを正面から迎え撃つのは全てを灰塵に帰す豪炎の槍。巨大な質量を物ともせず触れた端から焼滅させていく。砲弾と化した丸太は相殺され灰となって宙を舞った。

 

「まだです!」

 

 〝緋槍〟と投擲された丸太の衝突がもたらした衝撃波で払われた霧の向こう側に影が走ったかと思えば、直後、隕石のごとく天より丸太が落下し、轟音を響かせながら大地に突き刺さった。バックステップで衝撃波の範囲からも脱出していた目標は再度、火炎の槍を放つ。

 

「ああああ!」

 

ダメージを受け、倒れてしまうシア。既に彼女はボロボロになっていた。だが、彼女の眼から闘気は消えていなかった。それは1つの目標のため。

 

(ルルーシュさんについて行くんだ!私を絶望から救ってくれた人のために、その為にも)

 

「負けない!絶対に!」

 

シアの身体が光る。その光は、ハジメの持つとあるカードにも。

 

「あ、あれ、スコルスピアが!」

 

スコルスピアのカードはシアの首元に飛んでいき、ペンダントのロケットに入った。そして、光に包まれたシアは一気に力を振り絞る。

 

〈BGM:熱き決闘者達〉

 

「はああああああああああああああ!」

「……ん、これはヤバいかも。ヴィエルジェ!」

(任せて)

 

シアの気迫にユエは防御の構えをとる。シアは更なる攻撃力の向上に出る。

 

「スコルさん、お願いします。」

(任せな、うさぎ)

「う、うさぎって…」

 

ちょっと動揺するシア。やがて溜めた力は巨大な槍になる!

 

「天蠍魔槍スコルランス!」

 

その槍を構え全速力で駆け出した。

 

「くらうです。ドリルヴィダール!」

「…ん、アルテミスシールド!」

 

シアの槍とユエの盾がぶつかる。次の瞬間、大きな爆発が起こり、辺り一帯が無に期した。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「「はぁ、はぁ、はぁ」」

2人は息が切れていた。槍はギリギリ届いておらず、ユエには傷もなかった。

 

「そんな…」

 

シアの顔に絶望が映る。自分の全力は届かなかったのだ。そう思ったシア。だが、

 

「シアの勝ちだね。」

 

ハジメが言ってきた。実は衝撃により、ユエは内臓にダメージを負っていたのだ。一瞬で治ってしまったがダメージはダメージ。シアは勝ったのだ。

 

「やった〜やりました。」

 

シアは笑顔になる。そこに…

 

「よくやったな、シア」

 

ルルーシュがやってきた。シアとユエのバトルを見ていたのだった。

 

「ユエ、シアはどうだ?」

「……魔法の適性はない」

「ありゃま、で? それだけじゃないんだろ? あのレベルの大槍担いだとなると……」

「……ん、身体強化に特化してる。正直、化物レベル」

「……へぇ。俺達と比べると?」

 

 

「……覚醒しているハジメの……六割くらい」

「マジか……最大値でか?」

「ん……でも、鍛錬次第でまだ上がるかも」

「おぉう。そいつは確かに化物レベルだ」

 

「いや、僕バケモノじゃないんだけど!」

 

そんな話が落ち着いた頃、

 

「ルルーシュさん、お話があります。」

シアが話しだす。

 

「連れて行ってください。」

「いや、ごめんな。危ない目には…」

「ですよね、ユエさん。」

 

そう言うとユエも続ける。

 

「連れて行こう。本当は危険な目に合わせたくない。でも覚悟も本物」

 

そういった。

 

ルルーシュは感心した。きっと、シアは、直接ルルーシュに、頼んだところで望みを聞いてもらえるとは思えず、自分の力だけでは本気は伝わらないと考えたのだろう。また、ルルーシュが納得しても皆の一言が優先されることを危惧したということも考えたはずだ。それ故に、ユエを味方につけるという方法をとった。〝命懸け〟というのもあながち誇張した表現ではないはずだ。生半可な気持ちでユエを納得させることなど不可能なのだから。この十日間、ほとんど見かけなかったが文字通り死に物狂いでユエを攻略しにかかったに違いない。つまり、それだけシアの想いは本物ということだ。

 

「僕は関係ないからね。」

「オオイ!」

 

ハジメは逃げた。ルルーシュは呆れながらも続ける。

 

「どうして付いてきたいんだ?」

「ルルーシュさんの傍に居たいからですぅ! しゅきなのでぇ!」

 

「「噛むんかい」」

 

思わずツッコまれてしまった。ルルーシュはさらに続ける。

 

「俺、彼女いるぞ。」

「3人目で構いません」

 

そんな事では止まらない。

 

「危険だらけの旅だ」

「化物でよかったです。御蔭で貴方について行けます」

 

 長老方にも言われた蔑称。しかし、今はむしろ誇りだ。化物でなければ為すことのできない事があると知ったから。

 

「俺等の望みは故郷に帰ることだ。もう家族とは会えないかもしれないぞ?」

「話し合いました。〝それでも〟です。父様達もわかってくれました」

 

 今まで、ずっと守ってくれた家族。感謝の念しかない。何処までも一緒に生きてくれた家族に、気持ちを打ち明けて微笑まれたときの感情はきっと一生言葉にできないだろう。

 

「俺たちの故郷は、お前には住み難いところだ」

「何度でも言いましょう。〝それでも〟です」

 

 シアの想いは既に示した。そんな〝言葉〟では止まらない。止められない。これはそういう類の気持ちなのだ。

 

「…完敗だ。よろしく頼むぞ!シア」

「……ルルーシュさん!」

 

シアは嬉しそうに抱きついた。その様子を見ているハジメとユエ。

 

「…ハジメ、私も3人目で良い。愛して?」

「…分かったよ。よろしくね、ユエ!」

「…ん!ありがとう!」

 

ビッグカップルが2組生まれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

4人は樹の訓練所に向かう。樹から

 

『訓練は終わってるぜ!結構やり過ぎたけど…』

 

と連絡があったからである。嫌な予感しかしないのだが。

 

訓練所に着くとそこには、

「ちっ、フェアベルゲンには伝えておく。覚えてろ〜〜」

と言って逃げていく熊人族。そして、お揃いの軍服に身を包み、様々な武器で武装した騎士たちであった。

 

「樹様、ありがとうございます。」

「お疲れ様、カム。」

「ありがたき幸せです。」

 

「「「「‥‥……………………」」」」

 

樹はさらに続ける。

 

「皆が戦うのは?」

「「「「「生きるため!!」」」」」

 

「守るためには?」

「「「「「戦うべき」」」」」

 

「戦わなければ?」

「「「「「生き残れない」」」」」

 

「進めハウリアよ!人のために世のために、君達の働きに未来がある!All Heil ハウリア!!」

「「「「「All Heil ハウリア!All Heil ハウリア!!All Heil ハウリア!!」」」」」

 

まるでどっかの独裁国家である。樹は何をしたのだろう?

 

「お、みんな来てくれたか?どうだ、俺の育てた『ハウリア軍』は?」

 

「な、何したんだよ。樹?」

「ルルーシュ、別に俺は何も?ただ、攻撃の仕方と知略を教えて、守るべきものを考えさせただけさ。」

「「「「やりすぎだ!(デスゥ)」」」」

 

「グヘぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

樹は4人の渾身のツッコみ打撃を受け、ひっくり返ってしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

それから1日が経った。今は待ち合わせをしている。その人物とは、

 

「すまない、遅くなった。新時代の龍騎士達よ。」

 

マハードが『霞龍 オオナズチ』に跨り現れた。

 

「では、大樹へ向かおう。」

 

いよいよ大樹へ向かうのであった。




《イメージボイス:マハード》

マハードだ。ついに大樹へ着く。だが大樹は既に枯れていた。
次なる目的地として、『ライセン大迷宮』に向かうことにした王たち。
だが、その前に準備をしよう。と町へ、

次回、計画的に準備を いざ参る!


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第23節 計画的に準備を

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。連続投稿第2弾でございます。
なんとか間に合った〜〜〜!

この回もしかしたら多くなるかも…

こんな駄作に付き合っていただきありがとうございます。
感想などお待ちしてます。


皆は大樹と聞くと何を思うだろうか?日本の屋久島にある『縄文杉』か?某巨人の漫画に出てくる大きな木か?そのような物を思い浮かべるだろう。

 

4人もそう思っていたが…

 

「枯れてる?」

 

「枯れてるな」

 

「枯れてるね」

 

「…枯れてる」

 

しかし、実際の大樹は……見事に枯れていたのだ。

 

 大きさに関しては想像通り途轍もない。直径は目算では測りづらいほど大きいが直径五十メートルはあるのではないだろうか。明らかに周囲の木々とは異なる異様だ。周りの木々が青々とした葉を盛大に広げているのにもかかわらず、大樹だけが枯れ木となっているのである。

 

「大樹は、フェアベルゲン建国前から枯れている。しかし、朽ちることはない。枯れたまま変化なく、ずっとある。周囲の霧と大樹の枯れながらも朽ちないという点からいつしか神聖視されるようになった。それだけだ。」

 

 4人の疑問顔にマハードが解説を入れる。それを聞きながらハジメは大樹の根元まで歩み寄った。そこには、アルフレリックが言っていた通り石板が建てられていた。

 

「これは……オルクスの扉の……」

「……ん、同じ文様」

「裏に窪みがあるな。」

 

ハジメ、ユエ、ルルーシュの順で話す。だが、樹とシアが気付く。

 

「これ、攻略の印を入れるんじゃ?」

「シア、ありがとさん。やってみる。」

 

試しに樹が手に持っているオルクスの指輪を表のオルクスの文様に対応している窪みに嵌めてみる。

すると……石板が淡く輝きだした。

しばらく、輝く石板を見ていると、次第に光が収まり、代わりに何やら文字が浮き出始める。そこにはこう書かれていた。

 

〝四つの証〟

〝再生の力〟

〝紡がれた絆の道標〟

〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟

 

「4つ迷宮をクリアするのか?」

「その後に亜人族の案内を得るってことだな。」

「再生って私?」

「いや、違うよ。再生の神代魔法を使うんだと思う」

 

後回しにすることになってしまった迷宮。仕方がないので次の目的地へ。

「はぁ、ため息しか出ね〜」

ーーーーーーーーーーーーー

 

「マハードさん、ありがとうございました。ハウリア族の事は任せます。」

「任された。ルルーシュ殿。またいらしてくれ。今度は私も仲間に加えてくれよ。」

「承知しました。」

 

握手を交わし、ラギアに跨るルルーシュ。後ろに乗り手を回すシア。

 

「みんな〜行ってきます!」

「「「「「いってらっしゃい!シア!」」」」」

 

盛大なお見送りを受けて、出発する一行。次の目指す場所は『ライセン大迷宮』。その次に挑む予定の『グリューエン火山』を目指す前に挑んでしまおう。と言う魂胆だ。

 

だが、その前に……

 

「ルルーシュさん、どこへ行くんですか?」

「『ブルックの町』へ向かう。そこで準備をしようかと」

「ま、町ですか?」

 

ちょっと驚くシア。野宿をすると思ったのだろう。4人は食料や調味料、着替えの補充と、素材の換金をするために、町によるつもりだったのだ。

 

数時間ほど走り、そろそろ日が暮れるという頃、前方に町が見えてきた。シア以外の頬が綻ぶ、奈落から出て空を見上げた時のような、〝戻ってきた〟という気持ちが湧き出したからだ。シアもどこかワクワクした様子。きっと、皆と同じ気持ちなのだろう。お互いに微笑みを浮かべた。

 

ちなみにルルーシュは今、『オメガ』の仮面を被っている。余計なトラブルを防ぐ為だ。シアに付けている奴隷の首輪風のチョーカーと同じである。

 

これを渡した時シアは、

 

「ルルーシュさん、ありがとうございます。このチョーカー、一生大事にしますね!」

と喜んでいた。

 

町の近くで『オトモモンスター』から降りる一行。徒歩で向かうのだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

遂に町の門までたどり着いた。案の定、門の脇の小屋は門番の詰所だったらしく、武装した男が出てきた。格好は、革鎧に長剣を腰に身につけているだけで、兵士というより冒険者に見える。その冒険者風の男が一行を呼び止めた。が、『オメガ』を見るや否や、

 

「どうぞお通りください」

 

と通してくれた。どうやら最強ギルド『黒の騎士団』だからか、色々免除があるのだろう。今はギルドのランクも金であり、それより上の虹ランクに上げることが決まったばかりなのだ。そんなに帝国に認められたことがスゴイのだろうか?ちなみに、樹もハジメも冒険者ランクは金である。

 

メインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドに比べて二回りほど小さい。

 

5人は中に入っていく。

 

カウンターには大変魅力的な……笑顔を浮かべたオバチャンがいた。恰幅がいい。横幅がユエ二人分はある。

 

「冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」

「ああ、素材の買取をお願いしたい」

「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

 

素直に出していく。割り増しで買い取るためだ。ちなみにこの世界の貨幣はルタである。 ルタとは、この世界トータスの北大陸共通の通貨だ。ザガルタ鉱石という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜることで異なった色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われている。青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類があり、左から一、五、十、五十、百、五百、千、五千、一万ルタとなっている。驚いたことに貨幣価値は日本と同じだ。

 

「ここで買い取りも頼む」

淡々とルルーシュは話す。

 

「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

 オバチャンは受付だけでなく買取品の査定もできるらしい。優秀なオバチャンだ。ハジメは、あらかじめ〝宝物庫〟から出してバックに入れ替えておいた素材を取り出す。品目は、魔物の毛皮や爪、牙、そして魔石だ。カウンターの受け取り用の入れ物に入れられていく素材を見て、再びオバチャンが驚愕の表情をする。

 

「こ、これは!」

 

 恐る恐る手に取り、隅から隅まで丹念に確かめる。息を詰めるような緊張感の中、ようやく顔を上げたオバチャンは、溜息を吐き視線を転じた。

 

「とんでもないものを持ってきたね。これは…………樹海の魔物だね?」

「ああ、そうだ」

 

まあ普通の人間では持ってこない素材である。呆れられるのも無理はない。きちんと換金してもらって…

 

「簡単な地図を頂いてもいいか?」

 

「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

 手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。これが無料とは、ちょっと信じられないくらいの出来である。

 

「はあ?」

「マジ??」

「…嘘?」

「すごいですぅ」

「おいおい、いいのか? こんな立派な地図を無料で。十分金が取れるレベルだと思うんだが……」

「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

 

そう言ってくれたオバチャン(キャサリンさん)やっぱりすごい人だ…

 

ーーーーーーーーーーー

 

キャサリンさんに勧められた宿に向かう。名前は『ハクビの宿』6つ子が経営する宿である。中に入ると、

 

「はい、こんにちは。『ハクビの宿』へ。長男の nakamu です」

 

「次男の burooookです」

 

「三男のシャーくんです」

 

「四男きんとき」

 

「五男スマイルです」

 

「六男きりやんです」

 

元気な6つ子が案内してくれた。

 

樹たちはそれぞれ部屋に入る。部屋割りはこうだ。

 

ハジメとユエで1部屋。

 

ルルーシュとシアで1部屋。

 

樹で1部屋である。ちなみにユエとシアは翌日に買い物の約束をしていた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

樹は夢を見ていた。最近よく見る夢である。金髪青眼の美少女が泣きながら迷宮の奥に入って行くのである。いつもその子の悲しい声が聞こえるため、心に響くのだ。もちろん、自分の体験談ではないし、そんな美女に会ったこともない。だが、なんとなく懐かしい感じがするのだ。

 

しかし、いつもは美女は話さないのだが、今回は話した。

 

「待ってるよ、イーちゃん。迎えに来てね」

 

と。そこで眼が覚めた。

 

「ああ、わかってるよ。ミレディ」

 

そう言った後に

 

「ミレディって誰だ?もしかして前の『龍王』の記憶が戻ってきているのか?」

 

と言う樹。

ますます、疑問が残るのだった。




《イメージボイス:ルルーシュ》

ルルーシュだ。次回予告をする。

ユエとシアが訪れた服屋には、イカ人間が。
さらにブタの獣人と青鬼が…
他にも緑の恐竜に女の子っぽい人がいた。
やっぱりこの街普通じゃない!

次回 変人の都?その名はブルック! なんか見覚えあるなぁ?


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第24節 変人の都?その名はブルック

はい、こんにちは、こんばんは。
Warewareでございます。

最近暑くなってきましたね。今日は今年1番の暑さだそうです。暑いのやだなあ〜
この小説はぜひ、エアコンの効いた涼しい部屋で、冷たい飲み物を飲みながらお読みください。

よろしくお願いします〜〜


現在、シアとユエは町に出ていた。昼ごろまで数時間といったところなので計画的に動かなければならない。目標は、食料品関係とシアの衣服、それと薬関係だ。ちなみにもう1人、

 

「俺がついてきて良かったの?」

 

「樹がいた方がいい。荷物を運ぶ人が欲しい。」

 

「ごめんなさい。2人より3人が良いと思ったので」

 

「別にいいけど…」

 

2人が気にするが樹は別によかった。気にしていないからである。

 

二人はまず、シアの衣服から揃えることにした。

 

 オバチャン改めキャサリンさんの地図には、きちんと普段着用の店、高級な礼服等の専門店、冒険者や旅人用の店と分けてオススメの店が記載されている。やはりオバ……キャサリンさんは出来る人だ。痒いところに手が届いている。

 

 二人は、早速、とある冒険者向きの店に足を運んだ。ある程度の普段着もまとめて買えるという点が決め手だ。

 

 その店は、流石はキャサリンさんがオススメするだけあって、品揃え豊富、品質良質、機能的で実用的、されど見た目も忘れずという期待を裏切らない良店だった。

 

その店の名は『ブティック 運営』

 

「……聞き覚えあるんだけど!」

 

樹のツッコみは誰にも届かないが、ここにルルーシュかハジメがいたら同じ事を思うだろう。自分たちが応援しているグループと名が似ているからだ。

 

「すみません〜!!」

 

樹は大声で店の人を呼ぶ。

 

「はい〜」

 

奥から出てきたのは…イカだった!

いや、正確に言えばイカではない。イカの頭が人間の体にくっついた化け物。

いわゆる『イカ人間』であった。そのイカ人間が紺色のスーツを着ていたのだ。

 

「いらっしゃい。どうされました?」

 

イカの店員に驚き、何も言わなくなってしまったユエとシア。すると、

 

「何してんねん!コンちゃん!お客さん逃げちゃうやろ!」

 

奥から金色の豚の亜人が出てきた。その人を見るや樹が訊ねる。

 

「もしかしてお名前『きょーさん』ですか?」

「?確かに俺は『金豚のきょー』やけど…どしたの?」

「すみません、このウサギの亜人さんに合う服をお願いできますか?」

「あ〜オバちゃんとこからの紹介ね!ちょい待ち…『らだお』〜『どりみ』〜『レウ』さん〜来て〜」

 

さらに店の奥から、赤いマフラーをしてニット帽を被った青鬼。緑色の恐竜。女性っぽい服を着て、特殊な帽子をした男性が出てきた。

 

5人は並び、自己紹介をする。

 

「イカの『コンタミ』です。」

「『金豚のきょー』や!よろしく!」

「オレ『緑クン』。ヨロシク。」

「『レウクラウド』やで〜〜」

「と、言うことでねどうもこんにちは。『らっだぁ』…です!」

 

自己紹介を終えるとそれぞれ仕事に取り掛かった。シアをレウさん、コンちゃん、緑クンが連れていき、いろんなコーディネートを作り、きょーさんとらっだぁがレジを打つ。その動きはもはや洗練されたダンスのようだった。

 

「何年やってるんですか?」

「もう10年以上だね。このメンバーで店開いて」

「…この町、普通の人いない?」

「ちょっとユエ!」

「ええよ。確かに変人の大半はここにいるかもね。まあ昔は普通やったけど、この辺変人がよく集まるのよ。オバチャンがここ来てからなおさら増えたかもしれん」

「「え〜〜〜」」

 

きょーさんのカミングアウトに驚く樹とユエ。この町、普通じゃないかもしれないと思ったのであった。

 

ーーーーーーーーーー

 

「「「「「また来てね〜〜〜〜〜」」」」」

 

5人に見送られながら帰路に着く3人。

 

「素敵な人たちでしたね。」

「まあ変人が多いのはびっくりだったけどね。」

「……ん。大変。」

 

と言いながら歩いていると、気がつけば数十人の男達に囲まれていた。冒険者風の男が大半だが、中にはどこかの店のエプロンをしている男もいる。

 

「ユエちゃんとシアちゃんで名前あってるよな?」

「? ……合ってる」

 

 何のようだと訝しそうに目を細めるユエ。シアは、亜人族であるにもかかわらず〝ちゃん〟付けで呼ばれたことに驚いた表情をする。

 

ユエの返答を聞くとその男は、後ろを振り返り他の男連中に頷くと覚悟を決めた目でユエを見つめた。他の男連中も前に進み出て、ユエかシアの前に出る。

 

「「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」」

「「「「「「シアちゃん! 俺の奴隷になれ!!」」」」」」

 

と告白する男達。しかし、

 

ビュンッ!! と大きな音がした。樹が高速で剣を振ったのだ。男の頬に斬撃を掠め、

樹は告げる。

 

「その2人。『オメガ』様の仲間だけど、敵対するで良い?」

 

「「「「失礼しました〜〜〜〜〜」」」」

 

男たちを追い払いながら帰るのであった。

 

ーーーーーーーーーーー

 

戻ってきた3人。ルルーシュは戦略を考え、ハジメは武器の開発を行なっていた。

 

「お疲れ様。みんな平気?」

「実は…」

 

樹が起こったことの顛末を伝えると…

 

「はあ?なんで連れて行かなかったんだ!」

「会いたかったよ」

 

大声で騒いでいた。ある程度騒ぐと、ルルーシュは小さなキーホルダーをシアに渡す。

 

「これ何ですか?」

「魔力を流してくれ」

 

言われた通りにすると、キーホルダーが巨大化し、2メートルは有に超える槍と肩に嵌めるタイプの盾になった。

 

「シア専用の槍だ。名は『突撃盾槍 キマリス』2人で作った。まだシアは危なっかしい。この槍で自分と皆を守ってくれ。」

 

「ルルーシュさん…はい、ありがとうございます。」

 

シアは喜んでいた。槍をプレゼントされて喜ぶのはシュールだけど…

そんなみんなに樹は言った。

 

「そんじゃ行くか?」

 

「「「「どこへ?」」」」

 

「決まっているだろう!次の迷宮にさ!」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ライセン峡谷。

 

「なあ樹。本当にこの辺か?」

「何もないけど」

「……まだ行くの?」

「疲れました」

 

「まあついてきてくれ」

 

樹が皆を案内しだして、既に7時間。日はとっくに暮れていて星が見えだしている。樹が案内しているのは、夢の中でかつての龍王の記憶を見たからである。一応全員が知っているし、なんならルルーシュとハジメも同じ体験をしているので、分からなくは無いが、こうも見つからないと、流石に心配になる。

 

だが…結論を言おう。あったのだ!とある崖。そこには、巨大な一枚岩が谷の壁面にもたれ掛かるように倒れおり、壁面と一枚岩との間に隙間が空いている場所があった。

 

その壁に直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。

 

〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟

 

〝!〟や〝♪〟のマークが妙に凝っている所が何とも腹立たしい。

 

「……なんじゃこりゃ」

「……なんだろう?」

「……なにこれ」

「……なんですか?これ?」

 

4人それぞれの感想を述べる。樹は入り口を探そうと壁に手を当てる。と…

 

グルン!

 

「おわあああああ!」

 

回転扉で回された樹。すぐに何かが刺さった音がする。4人も扉を押して入ると、矢の装置を破壊した樹がいた。樹の眼は赤に染まっており、キレているのがわかる。

 

そして部屋の中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた。

 

〝ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ〟

〝それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ〟

 

「「……」」

 

 4人の内心はかつてないほど一致している。すなわち「うぜぇ~」と。わざわざ、〝ニヤニヤ〟と〝ぶふっ〟の部分だけ彫りが深く強調されているのが余計腹立たしい。特に、パーティーで踏み込んで誰か死んでいたら、間違いなく生き残りは怒髪天を衝くだろう。

 

 ハジメもユエも、額に青筋を浮かべてイラッとした表情をしている。ルルーシュは無反応だが、顔が引きつっているあたり、やはりキレていた。無言だったシアは、おもむろにキマリスを取り出すと一瞬で展開し、渾身の一撃を石板に叩き込んだ。ゴギャ! という破壊音を響かせて粉砕される石板。

 

 よほど腹に据えかねたのか、親の仇と言わんばかりの勢いでキマリスを何度も何度も振り下ろした。

 

 すると、砕けた石板の跡、地面の部分に何やら文字が彫ってあり、そこには……

 

〝ざんね~ん♪ この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~プークスクス!!〟

 

「ムキィーー!!」

 

 シアが遂にマジギレして更に激しくキマリスを振い始めた。部屋全体が小規模な地震が発生したかのように揺れ、途轍もない衝撃音が何度も響き渡る。

 

が、樹がシアを落ち着かせると、籠手を取り出した。その名は『絶滅拳 ラース』それを嵌めると

 

セイヤーーーーーーーーーーー!!

 

その怒声と共に修復された石板を殴りつけた!

 

ドッガーーーーーーーーーーーン!!

 

石板は木っ端微塵になった。その破片を踏み潰して叫ぶ!

 

「この俺をキレさせるとはいい度胸だ!じわりじわりとなぶり殺してやらあ〜〜〜〜〜!!」

 

そう言いながら走って行った樹。この時4人は思った。

 

「「「「樹は怒らせたらヤバい!!!」」」」

と…

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

この迷宮の奥地。そこには金髪碧眼の少女が迷宮の様子を見ていた。映像には樹が石板を壊すのが写っている。それを見ると、

 

「やっぱりそうだ!変わらないね。君は。最深部で待ってるよ、『イっちゃん』」

 

そう言うとさらに奥へ入っていった。誰も居なくなった部屋。その机には解放者と龍騎士で撮った写真が飾ってある。その真ん中には、樹によく似た少年と、少年に横から抱きつく金髪碧眼の少女がいた。




《イメージボイス:樹》

おっス。久しぶり!樹だぜ!次回予告だ。
『ライセン大迷宮』に入ったは良いが、沢山のトラップが!
その山を越え、最深部につくとそこには…
そして、ついに俺の怒りが頂点に!

次回 〜普段、キレない人がキレると並大抵では止まらない〜

許さないぞミレディ!オ〜っホッホッホッホッホッホ!


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第25節 普段、キレない人がキレると並大抵では止まらない

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。
今回も連続投稿です。

今回は4400文字以上という歴代最長です。
皆さん、熱中症はくれぐれもご注意下さい。この先も暑い日が続くので、体調管理には気をつけてください。
よろしくお願いします〜

感想もよろしくお願いします〜


ライセンの大迷宮は想像以上に厄介な場所だった。

 

 まず、魔法がまともに使えない。谷底より遥かに強力な分解作用が働いているためだ。魔法特化のユエにとっては相当負担のかかる場所である。何せ、上級以上の魔法は使用できず、中級以下でも射程が極端に短い。五メートルも効果を出せれば御の字という状況だ。何とか、瞬間的に魔力を高めれば実戦でも使えるレベルではあるが、今までのように強力な魔法で一撃とは行かなくなった。

 

もちろん龍騎士も例外ではない。彼らの真骨頂の『龍覚醒』は魔力と龍の力を使って変身し、魔力を鎧のように纏うので、魔力は垂れ流しになってしまう。そのため燃費が非常に悪い!

 

さらに龍の性質上、ルルーシュは魔法を多用するので戦力外、ハジメも武器の魔力とカードの使用により魔力消費が激しいので長時間は戦えない。一方の樹は、元々の戦闘スタイルが格闘術であり、龍の能力に『魔力自動回復』があるので魔力を気にせず戦える。さらに樹は体術を魔法で強化して戦うのでこの迷宮はうってつけである。

 

よって身体強化ができるシアと樹の独壇場となる領域なのだ。

 

 で、そのハジメ達の頼みの綱はと言うと……

 

「さてさてさ〜〜て、デテコイヨー!ミレディ!ギッタンギッタンのバッキンバッキンにシテヤルからデテコイヨーー」

 

機械的な声と思えるような言葉を発していた。

一歩進むごとに腕をダラ〜ンと下げて、眼を赫く染めながら上半身を左右に揺らして進んでいる。明らかにキレている。それはもう深く深~くキレている。言葉のイントネーションも所々おかしいことになっている。その理由は、ミレディ・ライセンの意地の悪さを考えれば容易に想像がつくだろう。

 

普段、人はおちょくるがそれでも自分は我関せずでマイペースな樹だが、誰かに利用されたり舐められると、あっという間に振り切ってしまうのである。兄弟であるルルーシュですら『キレた樹は止められない』と恐れているあたり、本当にどうしようもなくなってしまう。

 

樹はそのままにしておくとして、とりあえず進むことにした4人であった。

ーーーーーーーーーーー

 

最初のウザイ石板を破壊し尽くしたあと、ハジメ達は道なりに通路を進み、とある広大な空間に出た。

 

そこは、階段や通路、奥へと続く入口が何の規則性もなくごちゃごちゃにつながり合っており、一階から伸びる階段が三階の通路に繋がっているかと思えば、その三階の通路は緩やかなスロープとなって一階の通路に繋がっていたり、二階から伸びる階段の先が、何もない唯の壁だったり、本当にめちゃくちゃだった。

 

「本当にごちゃごちゃしてるね。」

「……ん、迷いそう」

「ルルーシュさん、樹さんほっといていいんですか?」

「ああ、ほっとけ。樹がキレてればこっちは冷静になってくるから。」

 

なんて言っていると。

 

ガコンッ!

という音を響かせてハジメの足が床のブロックの一つを踏み抜いた。全員が一瞬凍る。

その瞬間、

 

シャァアアア!!

 

 そんな刃が滑るような音を響かせながら、左右の壁のブロックとブロックの隙間から高速回転・振動する円形でノコギリ状の巨大な刃が飛び出してきた。右の壁からは首の高さで、左の壁からは腰の高さで前方から薙ぐように迫ってくる。

 

「回避!」

 

 ハジメは咄嗟にそう叫びつつ、後ろに倒れ込みながら二本の凶悪な刃を回避する。ユエは元々背が小さいのでしゃがむだけで回避した。シアも何とか回避したようだ。後ろから「はわわ、はわわわわ」と動揺に揺れる声が聞こえてくる。苦悶の声ではないようなので、怪我はしていないのだろうと推測するハジメ。実際は、かなりギリギリでウサミミの先端の毛がスッパリ持って行かれたのだが……問題ないだろう。

 

ルルーシュはマントで透明になり、物理トラップを直接無効化する。樹は天井に張り付いて回避した。

 二枚の殺意と悪意がたっぷりと乗った刃はハジメ達を通り過ぎると何事もなかったように再び壁の中に消えていった。

 

ーーーーーーーー

 

さらに進んでいくと、誰かがうっかりトラップの線を切ってしまい、床が傾き、一斉に落ちていく。滑りを良くするタールのような液体が流れるオマケ付きで。

 

急いで全員を反対側に投げる樹。しかし、本人は間に合わず、そのまま落ちてしまう。

 

「「「「樹(さん)!!」」」」

 

皆が心配して下を覗いた。覗いてしまったのだ。

 

カサカサカサ、ワシャワシャワシャ、キィキィ、カサカサカサ

 

 そんな音を立てながらおびただしい数のサソリが蠢いていたのだ。体長はどれも十センチくらいだろう。かつてのサソリモドキのような脅威は感じないのだが、生理的嫌悪感はこちらの方が圧倒的に上だ。

 

「「「「……」」」」

 

 思わず黙り込む4人。下を見たくなくて、天井に視線を転じる。すると、何やら発光する文字があることに気がついた。既に察しはついているが、つい読んでしまうハジメ達。

 

〝彼等に致死性の毒はありません〟

〝でも麻痺はします〟

〝存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能して下さい、プギャー!!〟

 

それを見ても何も思わなかった。樹は無事だとわかったからである。

次の瞬間!

 

ドーーーーーーーーーン!!

 

という盛大な音と共に、サソリを樹が吹き飛ばしてその場に立っていた。

 

「さあ、行こうぜ!ミレディに地獄を見せるんだ!」

 

この言葉で、再び4人を

 

「「「「樹は怒らせるとヤバい!!」」」」

 

と再確認させることになった。

 

ーーーーーーーーー

 

その後もトラップに引っかかること、70回以上!

現在は大広間にて、50体ものゴーレムを相手取っていた。

 

「ドララーーーーーーーーー!」

 

キマリスで10体のゴーレムを貫通するシア。大穴を開けて動かなくなるゴーレム。

 

「無駄無駄ーーーーーーーーー!!」

 

大声をだしてラースの拳で、相手を粉砕する樹。2人の鬼神のごとき活躍で、ゴーレムはドンドン破壊されていく。

不用意に部屋そのものに傷を与えないようにしながら次々とゴーレム騎士達を屠っていった。

 

 だが……

 

「……?」

 

 ゴーレム騎士達の襲撃をかわし反撃しながら、ハジメは訝しそうに眉を寄せた。というのも、先程から相当な数のゴーレム騎士を破壊しているはずなのだが、迫り来る彼等の密度が全く変わらないのだ。

 

「これ再生しているよ!」

 

「「「「マジか?」」」」

 

4人のツッコミが決まる。

 

「ユエ!おそらく奥の扉に仕掛けがあるはずだ!解除を頼む!」

 

「……ん!わかった。」

 

その言葉と共に奥の扉に向かう。そこには、見るからに怪しい祭壇があった。

 

ユエは、祭壇に置かれている黄色の水晶を手に取った。その水晶は、正双四角錐をしており、よくみれば幾つもの小さな立体ブロックが組み合わさって出来ているようだ。

 

 ユエは、背後の扉を振り返る。其処には三つの窪みがあった。ユエは、少し考える素振りを見せると、正双四角錐を分解し始めた。分解し、各ブロックを組み立て直すことで、扉の窪みにハマる新たな立方体を作ろうと考えたのだ。

 

 分解しながら、ユエは、扉の窪みを観察する。そして、よく観察しなければ見つからないくらい薄く文字が彫ってあることに気がついた。それは……

 

〝とっけるかなぁ~、とっけるかなぁ~〟

〝早くしないと死んじゃうよぉ~〟

〝まぁ、解けなくても仕方ないよぉ! 私と違って君は凡人なんだから!〟

〝大丈夫! 頭が悪くても生きて……いけないねぇ! ざんねぇ~ん! プギャアー!〟

 

 何時ものウザイ文だった。めちゃくちゃイラっとするユエ。いつも以上に無表情となり、扉を殴りつけたい衝動を堪えながらパズルの解読に集中する。

 

「シア、ここを切り抜ける。カードをキマリスのスロットに。」

「了解ですう」

 

樹の指示でカードを装填し、レバーを引く。

 

ヒッサツ!フルスロットル!

 

そんな音声と共にエネルギーが溜まっていく。溜まりきると、キマリスを構えて突撃していく。そのまま槍を突き刺し、エネルギーを流し込んだ!

 

「キマリススコルピア!」

 

その言葉と共に大爆発!さらに扉も開いた。5人は一斉に扉に飛び込んだ!その部屋には特に何もないが突然、動き出す。

 

「「おわっと!」」

「「きゃあ!」」

「……」

 

それぞれがそれぞれの反応を示し、かかるGに耐えながら移動を終えると…

 

「……何か見覚えないか? この部屋。」

「なんかすごくあるんだけど。」

「……物凄くある。特にあの石板」

 

 扉を開けた先は、別の部屋に繋がっていた。その部屋は中央に石板が立っており左側に通路がある。見覚えがあるはずだ。なぜなら、その部屋は、

 

「最初の部屋……みたいですね?」

 

 シアが、思っていても口に出したくなかった事を言ってしまう。だが、確かに、シアの言う通り最初に入ったウザイ文が彫り込まれた石板のある部屋だった。よく似た部屋ではない。それは、扉を開いて数秒後に元の部屋の床に浮き出た文字が証明していた。

 

〝ねぇ、今、どんな気持ち?〟

〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?〟

〝ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ〟

 

「「「「……」」」」

 

 ハジメ達の顔から表情がストンと抜け落ちる。能面という言葉がピッタリと当てはまる表情だ。4人とも、微動だにせず無言で文字を見つめている。すると、更に文字が浮き出始めた。

 

〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟

〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです〟

〝嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいよぉ! 好きでやってるだけだからぁ!〟

〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟

〝ひょっとして作っちゃった? 苦労しちゃった? 残念! プギャァー〟

 

プッチン!!バッチン!ブチブッチン!!!

 

ヤバい音がした。鳴ってはならない音が聞こえてしまった。4人が振り返るとそこには…

 

「ハア、ハア、ハア」

 

化け物だった!マジで化け物だった。樹の眼はとうとう開ききり、龍の眼となり、口から牙が大きく生え、尾まで生えていた。そして…

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

と吠えると、拳にはめていたラースにカードをスキャンする。

 

〈final attack dragon ゴ・ゴ・ゴ・ゴア・マガラ!〉

 

オラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 

咆哮と共に迷宮の壁を殴りつけると大きな爆発と共に弾け飛んだ!

 

大きな爆発の後には、迷宮のありとあらゆる部分が破壊され、トラップはひしゃげ、ゴーレムは崩壊し、全てが見るも無惨な姿になっていた…

 

その先には一つの扉があった。

 

「はあ…最初から全部壊して進めば一発だったなあ!そうすれば無駄な労力と時間をかけなくてすんだのに!ふはははははは!あははははははは!」

 

もう振り切ってしまった樹はそのまま、剥き出しになった部屋へと向かって行った。

 

「樹、大丈夫か?もう怒ってないか?」

「ルルーシュ、大丈夫さ。俺は怒ってナイサ!ははははははハハハハハ!」

 

((((終わったな、ミレディ!ご愁傷様でした!!))))

 

そう心で思った4人はルルーシュ、ハジメ、ユエ、シアの順で部屋へと向かっていった。




《イメージボイス:ハジメ》

ハジメです。次回予告します。

ついに最深部の部屋にたどり着く僕たち。
そこにいたのはミレディ本人だった!
記憶を知りたい樹はついにミレディと激突!
僕たちは勝利できるのか?

次回 覚悟を超えて! 樹、怒りすぎだよ〜〜!


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第26節 覚悟を超えて!

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。モンハンライズサンブレイク
みなさんプレイしているでしょうか?
私もハンターなのでプレイしております。

今回は少し、龍騎士の過去が明かされます。そして樹のヒロインも登場?
ここまで少しずつ伏線を張ってきたのですが、ようやくです。

お楽しみに!


全てがぶっ壊されて更地の迷宮となった『ライセン大迷宮』樹の一撃は見えた部屋の中も大破していた。そこは先程訪れた、ゴーレム騎士団の部屋であり、それが無残な姿で置いてあった。

 

しかし、部屋の中央に差し掛かると、案の定、ガシャンガシャンと音を立ててゴーレム騎士達が両サイドの窪みから飛び出してくる。出鼻を抉いて前方のゴーレム騎士達を銃撃し蹴散らしておく。そうやって稼いだ時間で、ハジメ達は更に加速し包囲される前に祭壇の傍まで到達した。

 

すぐに扉に飛び込む!が…

 

「重力無視で天井走ってる〜」

「嘘だろ」

「どうして?」

「重力さん、仕事してください〜」

「とりあえず走れ〜」

 

怒りが少し落ち着いた樹も猛スピードで走っていく。追いかけてきたゴーレム騎士達は、まるで重力など知らんとばかり壁やら天井やらをガシャンガシャンと重そうな全身甲冑の音を響かせながら走っているのである。これには、流石のハジメ達も度肝を抜かれた。

 

さらに壊したゴーレムの残骸はどんどん重力を無視して落ちてくるのだ。そのまま勢いを減じることなく壁や天井、床に激突しながら前方へと転がっていった。

 

「おいおい、あれじゃまるで……」

「ん……〝落ちた〟みたい」

「重力さんが適当な仕事してるのですね、わかります」

 

 まさしくユエやシアの言葉が一番しっくりくる表現だった。どうやらゴーレム騎士達は重力を操作できるらしい。なぜ、前回は使わなかったのかはわからないが、もしかすると部屋から先の、この通路以降でなければならなかったのかもしれない。

 

「ごめんな!みんな!耳塞いでろ!」

 

樹は後ろを向き、両腕を前に突き出した。右手に光の力、左手に闇の力を溜める。そして、

 

龍王一斉唱波(りゅうおういっせいしょうは)!」

 

極太のビームを放つ!その一撃でゴーレムの破片を吹き飛ばす。さらに

 

「「「「えっ!」」」」

 

反動の力で一気に部屋の最深部に降りる。

 

が、思った通りにいかないのがこの大迷宮の特徴。何と、放物線を描いて跳んだハジメ達の目の前で正方形のブロックがスィーと移動し始めたのだ。

 

「「「「「なにぃ!?」」」」」

 

 この迷宮に来てから何度目かの叫びを上げる5人!目測が狂いこのままでは落下する。チラリと見た下は相当深い。咄嗟にアンカーを撃ち込もうと左手を掲げた直後、ユエの声が響いた。

 

「〝来翔〟!」

 

 発動した風系統の魔法により上昇気流が発生しハジメ達の跳躍距離を延ばす。一瞬の効果しかなかったが十分だった。未だに離れていこうとするブロックに追いつき何とか端に手を掛けてしがみつくことに成功する。ぶら下がったハジメにユエとシアもしがみついた。ルルーシュと樹は龍の翼を生やし、ギリギリで着地する。

 

「ふう、助かった」

 

樹の一言に全てが集約されていた。しかし、

 

「みんな避けて〜!」

「「「「ヘ?」」」」

 

シアが4人を押し出す。その直後、

 

ズゥガガガン!!

 

 隕石が落下してきたのかと錯覚するような衝撃が今の今までハジメ達がいたブロックを直撃し木っ端微塵に爆砕した。隕石というのはあながち間違った表現ではないだろう。赤熱化する巨大な何かが落下してきて、ブロックを破壊すると勢いそのままに通り過ぎていったのだ。

 

「シア、助かった。ありがとう」

「……ん、お手柄」

「サンキュー、シア」

「ナイスだよ。シアさん。」

「えへへ、〝未来視〟が発動して良かったです。代わりに魔力をごっそり持って行かれましたけど……」

 

これはシアの固有魔法〝未来視〟が発動したからである。〝未来視〟は、シア自身が任意に発動する場合、シアが仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだが、もう一つ、自動発動する場合がある。今回のように死を伴うような大きな危険に対しては直接・間接を問わず見えるのだ。

 

わかりやすく言うと、全滅する可能性があった!

と言うことだ。

と、下の方で何かが動いたかと思うと猛烈な勢いで上昇してきた。それは瞬く間にハジメ達の頭上に出ると、その場に留まりギンッと光る眼光をもってハジメ達を睥睨した。

 

ハジメ達の目の前に現れたのは、宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。全身甲冑はそのままだが、全長が二十メートル弱はある。右手はヒートナックルとでも言うのか赤熱化しており、先ほどブロックを爆砕したのはこれが原因かもしれない。左手には鎖がジャラジャラと巻きついていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。

 

「ねえ、待ってよ〜」

「……すごく……大きい」

「お、親玉って感じですね」

「ここからが本番か?」

 

4人が各々感想を述べるなか、

 

「………」

 

樹は無言だった。樹の心の中は

 

(懐かしい)

 

だった。見覚えはない。だが、なんとなく懐かしい。そして樹の違和感は、ゴーレムの挨拶で確信へと変わった。

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

「「「「……は?」」」」

「……やっぱりか」

 

 凶悪な装備と全身甲冑に身を固めた眼光鋭い巨体ゴーレムから、やたらと軽い挨拶をされた。頭がどうにかなる前に現実逃避しそうだった。ユエとシアも、包囲されているということも忘れてポカンと口を開けている。

ルルーシュとハジメは驚きすぎて、物も言えなくなっている。

 そんな硬直する4人に、巨体ゴーレムは不機嫌そうな声を出した。声質は女性のものだ。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

「そいつはすまなかった。ミレディ」

 

樹が返事をする。

 

「改めて、今代の『龍王』星龍 樹と申します。」

「『覇王龍皇帝』星龍 ルルーシュ」

「『光龍騎神』の南雲 ハジメです。」

 

3人が自己紹介を行う。それを聞くとミレディは、

 

「そっか、変わらないんだね。」

と呟いた。それを聞くと樹が尋ねる。

 

「俺は昔の龍王とは違う。でも、前の龍王の記憶も多少はある。あなたは彼のなんだったんですか?」

と言った。

 

「そうだね……『龍王妃』いわゆる恋人だよ。私とメイル、そしてハルツィナ、それぞれが龍騎士の恋人だった。騎士のみんなは死んじゃったけどね…」

「そうか…」

「驚かないんだ。」

「夢で知っていましたから」

 

樹の返答を聞いたミレディが今度は尋ねる。

 

「目的は何? 何のために神代魔法を求める?」

 

 嘘偽りは許さないという意思が込められた声音で、ふざけた雰囲気など微塵もなく問いかけるミレディ。もしかすると、本来の彼女はこちらの方なのかもしれない。思えば、彼女も大衆のために神に挑んだ者。自らが託した魔法で何を為す気なのか知らないわけにはいかないのだろう。オスカーが記録映像を遺言として残したのと違い、何百年もの間、意思を持った状態で迷宮の奥深くで挑戦者を待ち続けるというのは、ある意味拷問ではないだろうか。軽薄な態度はブラフで、本当の彼女は凄まじい程の忍耐と意志、そして責任感を持っている人なのかもしれない。

 

「この世界の解放と元の世界への帰還。かつての騎士が果たせなかった思いを受け継ぐ。そのために進む。それが俺たちだ。これで解答になってるか?」

 

樹は真っ直ぐ、ミレディ・ゴーレムの眼を見つめて語る。

 

「…ズルいよ。もう二度と誰かを失いたくないのに…また惚れちゃうじゃん。

 

そんな言葉を呟き、ミレディは前を向く。

 

「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~よし、ならば戦争だ! 見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」

 

「「「「「望むところ!」」」」」

 

樹とルルーシュ、ハジメはドライバーを取り出して腰に巻く。そして、その中にカードをセット。

 

「「「覚醒!」」」

 

その言葉と共に樹はハンドルを押し込み、ルルーシュはスイッチを反転、ハジメはデッキをドライバーに接続!

3人は龍騎士の姿になった。

 

「さあ、君たちの覚悟を見せてもらうよ!」

「いや、覚悟じゃない…覚悟を超えた俺たちの絆の力を見せてやる!

 

今ここに、『ライセン大迷宮』における最後の戦いの火蓋が切って落とされた!




《イメージボイス:ルルーシュ》

ついにミレディとの決戦に臨む俺たち、
だがミレディは神代魔法で攻撃してくる。
トリッキーかつ高威力の攻撃になすすべなし。
そんな中、樹がかつての『龍王』と会話して…

次回 廻り廻って廻帰せん 進め、過去を受け入れて!


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第27節 廻り廻って廻帰せん

こんにちは、こんばんは。Warewareでございます。
すみません、遅くなりましたが、27話です。
ただいまモンハン中なので今後も遅くなるかもしれませんがよろしくお願いします〜
感想をお待ちしております。

では27話、スタート!
今回は歴代最長です。


〈attack dragon ブラキディオス〉

「おりゃあああああああ」

樹がブラキの能力でパンチを強化し、殴りつける。

 

ズガァアアアン!!

 

 凄絶な爆音が空間全体を振動させながら響き渡る。もうもうとたつ爆煙。

 

「やりましたか!?」

「シア、それはフラグだ!」

 

 シアが先手必勝ですぅ! と喜色を浮かべ、ルルーシュがツッコミを入れる。結果、正しいのはルルーシュだった。煙の中から赤熱化した右手がボバッと音を立てながら現れると横薙ぎに振るわれ煙が吹き散らされる。

 

 煙の晴れた奥からは、両腕の前腕部の一部を砕かれながらも大して堪えた様子のないミレディ・ゴーレムが現れた。ミレディ・ゴーレムは、近くを通ったブロックを引き寄せると、それを砕きそのまま欠けた両腕の材料にして再構成する。

 

「ふふ、先制攻撃とはやってくれるねぇ~、さぁ、もしかしたら私の神代魔法が君のお目当てのものかもしれないよぉ~、私は強いけどぉ~、死なないように頑張ってねぇ~」

 

 そう楽しそうに笑って、ミレディ・ゴーレムは左腕のフレイル型モーニングスターをハジメ達に向かって射出した。投げつけたのではない。予備動作なくいきなりモーニングスターが猛烈な勢いで飛び出したのだ。おそらく、ゴーレム達と同じく重力方向を調整して〝落下〟させたのだろう。

 

 ハジメ達は、近くの浮遊ブロックに跳躍してモーニングスターを躱す。モーニングスターは、ハジメ達がいたブロックを木っ端微塵に破壊しそのまま宙を泳ぐように旋回しつつ、ミレディ・ゴーレムの手元に戻った。

 

「目標!ミレディゴーレム!徹底的に駆逐する!」

「「「「了解!!」」」」

 

樹の一言に皆が了解したところで、散開し攻撃をしかける。

 

〈revolving!〉

ルルーシュが『ヴァレルロード S ドラゴン』をラウズし、

 

「狙い撃つ!」

ルルーシュがハドロンマグナムでガトリングガンのごとく撃ち続ける。さすがにこれは効いたのか、当たった左手部分は融解してしまった。

 

「うそ?アザンチウム製のボディだよ!」

「残念だったな、ズァークのエネルギーはアザンチウムなんて一発だ。」

 

なんて言っていると大剣を掲げたまま待機状態だったゴーレム騎士達が、ルルーシュの言葉を合図にしたかのように一斉に動き出した。通路でそうしたのと同じように、頭をハジメ達に向けて一気に突っ込んでくる。

 

「あはは、やるねぇ~、でも総数五十体の無限に再生する騎士達と私、果たして同時に捌けるかなぁ~」

 

 嫌味ったらしい口調で、ミレディ・ゴーレムが再度、モーニングスターを射出した。シアが大きく跳躍し、上方を移動していた三角錐のブロックに飛び乗る。ユエはその場を動かずにハジメからもらったお揃いの弓で矢をモーニングスターに向けて連射した。着弾地点から爆発する。早打ちにより解き放たれた閃光は狙い違わず豪速で迫るモーニングスターに直撃する。流石に大質量の金属球とは言え、ハジメ特製のアザンシュタルの矢の衝撃を同時に受けて無影響とはいかなかった。その軌道がハジメから大きく逸れる。

 

同時に、上方のブロックに跳躍していたシアがミレディの頭上を取り、飛び降りながらキマリスを突き刺した。

 

「見え透いてるよぉ~」

 

 そんな言葉と共に、ミレディ・ゴーレムは急激な勢いで横へ移動する。横へ〝落ちた〟のだろう。

 

「くぅ、このっ!」

 

 目測を狂わされたシアは、歯噛みしながら手元の引き金を引きキマリスの先端の火薬を爆発させる。薬莢が排出されるのを横目に、その反動で軌道を修正。三回転しながら、遠心力もたっぷり乗せた一撃をミレディ・ゴーレムに叩き込んだ。

 

ズゥガガン!!

 

 咄嗟に左腕でガードするミレディ・ゴーレム。凄まじい衝突音と共に左腕が大きくひしゃげる。しかし、ミレディ・ゴーレムはそれがどうしたと言わんばかりに、そのまま左腕を横薙ぎにした。

 

「きゃぁああ!!」

「シア!」

 

 悲鳴を上げながらぶっ飛ぶシア。何とか空中でキマリスの引き金を引き爆発力で体勢を整えると、更に反動を利用して近くのブロックに不時着する。

 

「ナイスだシア、全くどんな訓練受けたんだか?」

「……ひたすら追い込んだだけ」

「……なるほど、しぶとく生き残る術が一番磨かれたってところか」

 

 遠目にシアがピョンピョンと浮遊ブロックを飛び移りながら戻ってくるのを確認しつつ内心感心するルルーシュ。そんな、ルルーシュとユエのブロックに、遂にユエ一人では捌ききれない程のゴーレム騎士達が殺到する。

 

「射程圏だよ」

 

〈Advent!〉

 

ハジメは小手のスキャナーにカードをスキャン、実体化したサジットが火炎放射と矢の雨を降らす。瞬く間に四十体以上のゴーレム騎士達が無残な姿を晒しながら空間の底面へと墜落した。時間が経てば、また再構築を終えて戦線に復帰するだろうが、しばらく邪魔が入らなければそれでいい。そう、親玉であるミレディ・ゴーレムを破壊するまで。

 

「ちょっ、なにそれぇ! そんなの見たことも聞いたこともないんですけどぉ!」

「僕のオリジナルさ、戦術は刻一刻と変わっていくんだよ!」

「このクソガキ!」

 

女性にはとても相応しくない言葉を放つミレディ。

 

「ミレディの核は、心臓と同じ位置だ! あれを破壊するぞ!」

「んなっ! 何で、わかったのぉ!」

 

 再度、驚愕の声をあげるミレディ。まさか、樹が魔力そのものを見通す龍眼を使っているとは思いもしないのだろう。ゴーレムを倒すセオリーである核の位置が判明し、4人の眼光も鋭くなる。

 

が…そう甘くはない。

 

 ミレディ・ゴーレムの目が一瞬光ったかと思うと、彼女の頭上の浮遊ブロックが猛烈な勢いで宙を移動するハジメへと迫った。

 

「!?」

「操れるのが騎士だけとは一言も言ってないよぉ~」

「確かに…僕だけならね?紫電さん!」

「お任せあれ!」

 

ボルバルザーク紫電ドラゴンがハジメよりも高い位置から、居合切りで急降下!着地した後、静かに納刀する。

 

「…紫電二刀流、真・鬼刃斬!」

「きゃああああああああああああああああああああ!」

ゴーレムの胸の部分が爆発する!胸部から煙を吹き上げながら弾き飛ばされるミレディ・ゴーレム。ハジメもルルーシュも樹も反動で後方に飛ばされた。それぞれフックショットを飛ばし、近くの浮遊ブロックに取り付けると巻き上げる勢いそのままに空中で反転して飛び乗る。そして、ミレディ・ゴーレムの様子を観察した。

 

 ユエとシアも3人の近くの浮遊ブロックに飛び乗ってくる。

 

「……いけた?」

「手応えはあったけどな……」

「これで、終わって欲しいですぅ」

「…‥‥…」

「樹?どうしたの?」

「多分だが…」

 樹が言い終わらないうちに胸部の装甲を破壊されたままのミレディ・ゴーレムが、何事もなかったように近くの浮遊ブロックを手元に移動させながら、感心したような声音でハジメ達に話しかけてきた。

 

「いやぁ~大したもんだねぇ、ちょっとヒヤっとしたよぉ。分解作用がなくて、そのアーティファクトが本来の力を発揮していたら危なかったかもねぇ~、うん、この場所に苦労して迷宮作ったミレディちゃん天才!!」

「なるほど、私の技も弱体化していたのか。」

「そうだよ!さあ第2ラウンド…の前に、ハジメ君だっけ?これどうぞ」

 

足下に宝箱が現れる。ハジメが開けると、中には鉄で作られた大きなハンマーが入っていた。

 

「これって『メガトンハンマー』だね。ハジメ。君専用だよ。」

「また僕の?物が多くて大変」

 

カードにしてデッキにしまうハジメ。その直後、空間全体が鳴動する。低い地鳴りのような音が響き、天井からパラパラと破片が落ちくる。いや、破片だけではない。天井そのものが落下しようとしているのだ。

 

「「「「「ええ〜〜〜〜!!!」」」」」

「ふふふ、お返しだよぉ。騎士以外は同時に複数を操作することは出来ないけど、ただ一斉に〝落とす〟だけなら数百単位でいけるからねぇ~、見事凌いで見せてねぇ~」

 

 のんきなミレディの言葉に苛立つが、そんな事に気を取られている余裕はない。この空間の壁には幾つものブロックが敷き詰められているのだが、天井に敷き詰められた数多のブロックが全て落下しようとしているのだ。一つ一つのブロックが、軽く十トン以上ありそうな巨石である。そんなものが豪雨の如く降ってくるのだ。

 

「全員集合!退避〜〜!」

 

 何とか、ハジメ達が合流するのと天から巨石群が降り注ぐのは同時だった。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ゴバッ!!

 

 天井からブロックが外れ、地響きが鳴り止む代わりに轟音を立てながら自由落下する巨石群。しかもご丁寧に、ある程度軌道を調整するくらいは出来るのか、ハジメ達のいる場所に特に密集して落ちてくる。ミレディ・ゴーレムも心中するつもりはないだろうから、彼女のもとへ行けば安全かと視線を巡らせるが、ちょうど猛スピードで壁際に退避して行くところだった。今から追ったのでは間に合わない。

全員の頭上に岩石が落下し、大きな音が響いた!

 

ーーーーーーーーーー

 

「ここは?」

 

気付くと樹は広い荒野にいた。荒野と言っても何もない訳ではない。黄金色のススキが生えていて、塔のようなものが倒れている。そばには白っぽいような金色のような龍が眠っていて、荒野の中心には真っ二つに割れた岩があった。

 

「気づいた?」

 

声をかけられたので振り向くと、同じ顔、同じ武装、同じ背格好の人物がいた。

 

「はじめましてだね。未来の『龍王』」

「あなたは過去の龍王ですか?」

「そうだよ、名前は『インドラ』よろしく!」

 

インドラは握手を求めてきた。樹はもちろん応える。

 

「そうだ!戻らないと」

「どうして戻るの?」

「え?」

 

樹はインドラに聞かれて、足を止めてしまう。

 

「みんなが待っているんだ。早く行かなきゃ」

「君はなんのために戦うの?僕の意志を受け継ぐため?」

「俺は…」

 

言い淀んだ樹の肩を掴んでインドラが言う。

 

「僕の意志を継いでくれるのは嬉しい…でも君には君の理由を見つけて欲しいんだ。既にこの世にいない僕ではなく、今を生きる君たちだけの理由ををさ。」

「俺だけの理由を…」

 

少し間を空けて樹が言う。

 

「俺は守りたい…自分が守りたいものを。全てじゃなくて手が届く範囲の人達を。」

「そうか…」

 

インドラは樹の言葉を聞くと樹の頭に手をおく。

 

「僕の力を全て解放するよ。2人で『輝龍王』の力を解放するんだ!でも、気をつけて…強い力は自分を蝕み、やがて暴走するようになる。どんなことがあっても、自分を見失わないでね!」

「分かりました!ありがとうございます。」

 

そう樹が答えると、樹の体は透けていった。時間が経つにつれどんどん薄くなっていく。

 

「時間切れみたいだね。またここに来てね!その時はぜひ、一緒にお話しさせてね!」

「ありがとうございました。インドラさん!」

 

樹は完全に消え、現実に戻っていった。

「ミレディを頼むよ…」

最後に何かを言っていたが、最後まで聞き取れなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ハジメ達の様子を壁際で観察していたミレディには、ハジメ達が一瞬で巨石群に飲み込まれたように見えた。悪あがきをしていたようだが、流石にあの大質量は凌ぎきれなかったかと、僅かな落胆と共に巨石群にかけていた〝落下〟を解いた。

 

 巨石群の落下に呑み込まれ地に落ちていた浮遊ブロックが天井の残骸と共に空間全体に散開するように浮かび上がる。

 

「う~ん、やっぱり、無理だったかなぁ~、でもこれくらいは何とかできないと、あのクソ野郎共には勝てないしねぇ~」

 

 ミレディは、そう呟きながらハジメ達の死体を探す。と、その時、

 

「ねえ、生きてる?」

「ああ、助かった!」

「……ん、ハジメありがとう!」

「危機一髪でしたね。」

 

多少ボロボロになっていたが、ハジメ、ルルーシュ、ユエ、シアの4人が出てきた。ミレディは驚きを隠せない!

 

「え〜〜〜〜なんでなんで?」

「ギリギリで僕が〈guard vent〉を使って盾を呼び出したんだ。だからノーダメージだったのさ。」

「ふーん、でも1人は助からなかったみたいだね!」

 

そう挑発するミレディ。だが、

 

「あいつは死なないさ!」

 

ルルーシュがそう言い切った!

 

「あいつは俺より往生際が悪くて、どんな時でも一生懸命で、何があっても諦めない男だからな!俺の相棒を舐めるな!」

 

そう言った時…

ある一箇所から光が溢れていた。そして、

 

バカアアアアアアアアアアアアアアアアン!

 

と大きな音がして、岩石が飛び散った!そこには…

 

いつもの樹がいた。だが所々違う。

 

翼が少し大きくなった。さらに尻尾が生えて、さながらゴア・マガラの成体、古龍『シャガルマガラ』のような角が生えていた!さらに剣が一本増えて二刀流になっていた。

 

その姿を見て、ミレディはつぶやいた。

 

「『イっちゃん』?」

 

そう、その姿は前の『龍王』インドラそのものだったからだ!

 

「待たせたなミレディ!さあ最終決戦だ!」

 

いよいよ神代魔法をかけた最後の戦いが始まる!

 




《イメージボイス:樹》

次回予告だ。
輝龍王の力を解放した俺。一気にキメるぜ。
4枚のカードを使い、ミレディを追い詰める!
そして、決着の時…

次回 『輝龍王』乱舞 さあ、ブラックホールが吹き荒れるぜ!


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第28節 『輝龍王』乱舞

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。先週も様々な出来事がありました。
ですが、この小説も佳境になっていきます。

このあとですが、活動報告の方に『例の件』についてコメントします。
気になる方はぜひチェックをお願いいたします。

では、今回のバトルシーンはぜひ、LISAさんの『Oath sign を聴きながら、
読んでいただけると嬉しいです。

それでは。


《イメージソング:LISA Oath Sign》

 

『輝龍王』の力を解放した樹は自分のカードデッキから4枚のカードを取り出すとそれを手札持ちする。

 

「おやおや?何をしているのかなぁ?」

「あんたはこの4枚を使用して倒す!俺の決め事だ。」

「ふっ!それは厄介だね!」

 

樹はミレディを煽り、カードを発動する。

〈samonn dragon ゴクマジオス〉

 

樹は『巨戟龍 ゴクマジオス』をスキャンし、ゴクマジオスを呼び出す。樹は『輝龍王』の力を使えるようになってから、古龍の能力を使えるようになった。他にも龍自体を召喚し、使役する事ができるようになった。

 

(あくまで『輝龍王』の力が目覚めるとカード化した古龍をそのままの姿で召喚できる力が追加されるのであり、竜を召喚することや能力の付与、その龍の力を持った武器は今まで通りに使える)

 

呼び出されたゴクマジオスは熱線を放つ。咄嗟に左腕でガードするミレディ。だが、左腕はいきなり大爆発を起こした!

 

「きゃああああ!なにこれ?」

「ゴクマジオスは、熱線と特殊な油で大爆発を起こすのさ。これで1枚。次!」

 

樹は次のカードをスキャン!

〈weapon dragon オウギンガ BIG sword〉

 

『最強熱血 オウギンガ』のカードで大剣を装備してミレディに切り掛かる。切ったそばから切り口は燃え、再生を阻害する。やがて左腕は焼け、落ちてしまった!そして再生もしなくなった。

 

「ウソ!なんで再生しないの?」

「俺1人で戦ってるなんて言ってないぜ!見てみな!」

 

ミレディが下を向くと…

 

『スターブヴェノムフュージョンドラゴン』のカードを使い、再生の力を横取りするルルーシュ、右腕を先程手に入れた『メガトンハンマー』で殴り壊すハジメがいた。さらに…跳躍してきたユエが更に魔法を発動した。

 

「凍って! 〝凍柩〟!」

 

 願いと共に本来は氷の柩に対象を閉じ込める魔法のトリガーが引かれる。しかし、氷系統の魔法は、水系統の魔法の上級魔法だ。この領域では中級以上は使えないはずである。それでも、ミレディ・ゴーレムを一時的に拘束するためにどうしてもこの魔法が必要だった。

 

 背中から天井ブロックに叩きつけられていたミレディ・ゴーレムの背面が一瞬で凍りつき、浮遊ブロックに固定される。

 

「なっ!? 何で上級魔法が!?」

 

 驚愕の声を上げるミレディ。ユエが上級魔法である氷系統の魔法を使えたのは単純な話だ。元となる水を用意して消費魔力量を減らしただけである。あらかじめ、ミレディ・ゴーレムを叩きつけるブロックを決めておき水を撒いておく。そして、隙をついてミレディ・ゴーレム自身の背面にも水を撒いておく。水は樹が『溟龍 ネロミェール』のカードで呼び出しておいた。

 

 それでも、莫大な魔力が消費され、ユエが所持している魔晶石の全てから魔力のストックを取り出す羽目になった。ユエは肩で息をしながら近場の浮遊ブロックに退避する。

 

「よくやったぞ、ユエ!」

 

樹はそう叫ぶと、最後の4枚目のカードを挿入する。そして発動した!

 

〈final attack dragon マ・マ・マ・マスタードラゴン〉

 

すると、右手の『天龍の剣』と左手の新しい剣、『THE セイヴァー』に稲妻が迸る。

 

「やば!」

 

そう感じたのか、ミレディはガードしようとするが…

 

〈ダークネスムーンブレイク!〉

「おりゃああああああああああああああ!」

 

ルルーシュの1撃が炸裂!ミレディゴーレムの右腕と胸部の装甲が弾け飛ぶ。さらに…

 

〈final vent〉

「はあああああああああああ!」

 

ハジメがサジットアポロドラゴンの炎をマスターソードに纏わせて十時に切る技、『フレイムバーストスラッシュ』を放つ。食らったミレディは剥き出しになったコアに傷をつける。さらに…

 

「食らうです!!!」

 

キマリスを持ったシアが突撃し、コアの亀裂に全体重をかけた1撃をお見舞いするが…

 

途中で止まってしまった…

 

「ハ、ハハ。どうやら未だ威力が足りなかったようだねぇ。だけど、まぁ大したものだよぉ?四分の三くらいは貫けたんじゃないかなぁ?」

 

 若干、かたい声で、それでも余裕を装うミレディ。内心は冷や汗を掻いている。シアの必殺である『ドリルヴィダール』ではあったが、加速が足りず本来の威力は発揮できなかった。それ故に惜しいところで貫通には至らなかったのだ。だが、シアの目に諦めの色は皆無だった。まるで、そんなことは想定済みと言わんばかりに。

 

「ええ、わかってます…でも、私1人だけじゃないです…樹さん!」

「おし、ご苦労さん!」

 

チャージし終わった樹がシアを踏み、さらに上に上がる。二刀を振り上げ、X字に切り裂いた!

 

着地した樹は二刀を鞘に戻しながら呟く。

 

「ギガ・クロス・ブレイクーーー!」

 

「いやああああああああああああああああああああああ!」

 

その大きな悲鳴ののちに核は粉砕され、粉々になった。 ミレディ・ゴーレムの目から光が消える。樹はそれを確認するとようやく全身から力を抜き安堵の溜息を吐いた。直後、背後から着地音が聞こえ振り向く樹。そこには予想通りハジメとユエ、シアとルルーシュがいた。樹は、4人に向けて満面の笑みでサムズアップする。ハジメとユエは、それに応えるように笑みを浮かべながらサムズアップを返し、ルルーシュとシアは笑顔を見せた。

 

 七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮の最後の試練が確かに攻略された瞬間だった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「ようやっと終わった〜〜〜」

「お疲れだったな、樹」

「ありがとよルルーシュ!やっぱりこの力慣れて無くてな」

 

そこにハジメも加わる。

 

「あれは前の『龍王』さんの力なの?」

「ああ、『インドラ』さんの力さ!みんなも昔の騎士さんから力をもらえるかもな。」

「イツキ、お疲れ!」

「すごい一撃でしたね!」

 

と会話していると、

 

「あのぉ~、いい雰囲気で悪いんだけどぉ~、そろそろヤバイんで、ちょっといいかなぁ~?」

 

 物凄く聞き覚えのある声。ハジメ達がハッとしてミレディ・ゴーレムを見ると、消えたはずの眼の光がいつの間にか戻っていることに気がついた。咄嗟に、飛び退り距離を置くハジメ達。確かに核は砕いたはずなのにと警戒心もあらわに身構える。

 

「ちょっと、ちょっと、大丈夫だってぇ~。試練はクリア! あんたたちの勝ち! 核の欠片に残った力で少しだけ話す時間をとっただけだよぉ~、もう数分も持たないから」

 

 その言葉を証明するように、ミレディ・ゴーレムはピクリとも動かず、眼に宿った光は儚げに明滅を繰り返している。今にも消えてしまいそうだ。どうやら、数分しかもたないというのは本当らしい。

 

「そんで、他に話したいことがあるんでしょ。」

「話したい……というより忠告だね。訪れた迷宮で目当ての神代魔法がなくても、必ず私達全員の神代魔法を手に入れること……君達の望みのために必要だから……」

 

 ミレディの力が尽きかけているのか、次第に言葉が不鮮明に、途切れ途切れになってゆく。だが、そんなことは気にした様子もなくルルーシュが疑問を口にする。

 

「他の迷宮の場所を教えてくれるか?失伝していて、ほとんどわかってなくてな。」

「あぁ、そうなんだ……そっか、迷宮の場所がわからなくなるほど……長い時が経ったんだね……うん、場所……場所はね……」

 

 いよいよ、ミレディ・ゴーレムの声が力を失い始める。どこか感傷的な響きすら含まれた声に、ユエやシアが神妙な表情をする。長い時を、使命、あるいは願いのために意志が宿る器を入れ替えてまで生きた者への敬意を瞳に宿した。

 

 ミレディは、ポツリポツリと残りの七大迷宮の所在を語っていく。中には驚くような場所にあるようだ。

 

「以上だよ……頑張ってね」

「……あのウザったい口調やらセリフはどうした?」

 

ルルーシュの言う通り、今のミレディは、迷宮内のウザイ文を用意したり、あの人の神経を逆なでする口調とは無縁の誠実さや真面目さを感じさせた。戦闘前にハジメの目的を聞いたときに垣間見せた、おそらく彼女の素顔が出ているのだろう。消滅を前にして取り繕う必要がなくなったということなのかもしれない。

 

「あはは、ごめんね~。でもさ……あのクソ野郎共って……ホントに嫌なヤツらでさ……嫌らしいことばっかりしてくるんだよね……だから、少しでも……慣れておいて欲しくてね……」

「そういう事かい。でも俺たちは自分の事しかやらないよ」

「ふふ……それでいい……君は君の思った通りに生きればいい…………君の選択が……きっと…………この世界にとっての……最良だから……」

 

 いつしか、ミレディ・ゴーレムの体は燐光のような青白い光に包まれていた。その光が蛍火の如く、淡い小さな光となって天へと登っていく。死した魂が天へと召されていくようだ。とても、とても神秘的な光景である。

 

 その時、おもむろに樹がミレディ・ゴーレムの傍へと寄って行った。既に、ほとんど光を失っている眼をジッと見つめる。

 

「何かな?」

 

 囁くようなミレディの声。それに同じく、囁くように樹が一言、消えゆく偉大な〝解放者〟に言葉を贈った。

 

「お疲れさん、よく頑張ったな」

「……」

 

 それは労いの言葉。たった一人、深い闇の底で希望を待ち続けた偉大な存在への、今を生きる者からのささやかな贈り物。本来なら、遥かに年下の者からの言葉としては不適切かもしれない。だが、やはり、これ以外の言葉を、樹は思いつかなかった。

 

 ミレディにとっても意外な言葉だったのだろう。言葉もなく呆然とした雰囲気を漂わせている。やがて、穏やかな声でミレディがポツリと呟く。

 

まるでかつて自分が愛した男の子に伝えるように…

「……ありがとね」

「どうも」

 

樹も優しく伝える。

 

「……さて、時間の……ようだね……君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを……」

 

 オスカーと同じ言葉をハジメ達に贈り、〝解放者〟の一人、ミレディは淡い光となって天へと消えていった。

 

「……最初は、性根が捻じ曲がった最悪の人だと思っていたんですけどね。ただ、一生懸命なだけだったんですね」

「……ん」

「そうだな」

「だね。」

 

 そんな雑談をしていると、いつの間にか壁の一角が光を放っていることに気がついたハジメ達。気を取り直して、その場所に向かう。上方の壁にあるので浮遊ブロックを足場に跳んでいこうと、ブロックの一つに5人で跳び乗った。と、その途端、足場の浮遊ブロックがスィーと動き出し、光る壁までハジメ達を運んでいく。

 

「……」

「わわっ、勝手に動いてますよ、これ。便利ですねぇ」

「……サービス?」

「違うと思うが、まあいいか」

「気にしないほうが良いかもね。」

 

ハジメ達の乗る浮遊ブロックは、そのまま通路を滑るように移動していく。どうやら、ミレディ・ライセンの住処まで乗せて行ってくれるようだ。そうして進んだ先には、オルクス大迷宮にあったオスカーの住処へと続く扉に刻まれていた七つの文様と同じものが描かれた壁があった。ハジメ達が近づくと、やはりタイミングよく壁が横にスライドし奥へと誘う。浮遊ブロックは止まることなく壁の向こう側へと進んでいった。

 

 くぐり抜けた壁の向こうには……

 

「やっほー、さっきぶり! ミレディちゃんだよ!」

 

 ちっこいミレディ・ゴーレムがいた。

 

「「「「……」」」」

「でしょうね…まあ、分かりきってたけど」

 

確かに、一度クリアしただけで最終関門の人間が消えたりしたら、他の人が攻略出来なくなる。こうするのは当然だと、樹は気づいていた。

 

「あれぇ? あれぇ? テンション低いよぉ~? もっと驚いてもいいんだよぉ~? あっ、それとも驚きすぎても言葉が出ないとか? だったら、ドッキリ大成功ぉ~だね☆」

 

 ちっこいミレディ・ゴーレムは、巨体版と異なり人間らしいデザインだ。華奢なボディに乳白色の長いローブを身に纏い、白い仮面を付けている。ニコちゃんマークなところが微妙に腹立たしい。そんなミニ・ミレディは、語尾にキラッ! と星が瞬かせながら、ハジメ達の眼前までやってくる。

 

「あのさ、いつまでやってるんだよ!神代魔法ちょうだいよ。あまり時間掛けたくないんだけど…」

「ああ、わかった。ちょっと待ってね。」

 

 魔法陣の中に入るハジメ達。今回は、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。ハジメとユエに樹とルルーシュは経験済みなので無反応だったが、シアは初めての経験にビクンッと体を跳ねさせた。

 

 ものの数秒で刻み込みは終了し、あっさりとハジメ達はミレディ・ライセンの神代魔法を手に入れる。

 

「これは……やっぱり重力操作の魔法か」

「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね…って言いたいところだけど、光龍騎神くんとウサギちゃんは適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」

 

ミニ・ミレディの言う通り、ハジメとシアは重力魔法の知識等を刻まれてもまともに使える気がしなかった。ユエが、生成魔法をきちんと使えないのと同じく、適性がないのだろう。

 

「まぁ、ウサギちゃんは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君は……生成魔法使えるんだから、それで何とかしなよ。金髪ちゃんは適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ。兄弟君は…すごい適性だよ!鍛えれば金髪ちゃんより化けそうだね。」

 

その他にもたくさんのアーティファクト(いわゆる高い技術を持つアイテム)やら鉱石やらを貰い、迷宮を出ようとする一行。

 

「じゃあ、またね。もう会わないかもしれないけど」

「「「「では、ありがとうございました」」」」

 

と言いながら立ち去ろうとした時、

 

ガシッ!

 

樹がミニ・ミレディの手を掴みこう言った。

 

「いつまでそうやって本心を隠しておくんだよ。ついでにお前自身もな。お前、本当は肉体があるんだろう?」

 

「「「「「え…ええええええええええええええええ」」」」」

 

樹の一言に、ミレディ含めた全員の悲鳴がこだました!

 




《イメージボイス:ミレディ》

ヤッホー、ミレディちゃんだよ。
次回予告をするね。

イッ君に本心を見破られた私、一緒に行っていいの?
そしてこの先を一緒に進む新たなカードもゲット!やったね!
そして、ようやっと次の目的地へ…

次回 行ってきます! 私を仲間に入れてください。


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第29節 行ってきます!

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。

活動報告の方に記入したコメント、見ていただけたでしょうか?
あんまりこういう事を書くと『ネタ受けの為に書いている』と思われるかもしれませんが、
そうではないという事を分かっていただきたいと思ったので、書かせていただきました。

さて、いつまでもしんみりしていては、前に進めないので、この辺で失礼いたします。
では29話、お楽しみください。


「そ、そんな事ないよ!一体何を思ってそんな事言うの?」

 

ミレディはパニックになりながら樹に訊ねる。

 

「理由はシンプル!自分から『龍騎士の恋人だった』と言ったんだぜ。つまり、キスやら何やらをやったって言ってるようなもんだよ!その際に龍の遺伝子が入ってもおかしくない。龍の寿命は数百から数千年、半分くらい龍のミレディも肉体があったりして…と思ったのさ。」

 

樹が言ってる事はごもっともである。龍は何者にも倒せないので寿命でしか死ねない。例えそうではなくても、ただ待ち続けるだけなら、肉体は残っているはずと思ったのだ。

 

「全部お見通しか…うん、そうだよ!私には肉体がある。ちょっと待ってね〜」

 

と言うとミニ・ミレディは部屋の奥に入っていく。やがて出てきたのは、

金髪碧眼で身長160センチちょっとの、ユエ以上シア未満の胸を持った少女だった。

 

「ジャジャーン!天っ才魔法少女、ミレディライセン参上!ごめんね。騙すような事しちゃって。」

「いや、問題ないけど…ねえ?」

「ああ、樹がいいなら」

「僕も気にしてない」

「…ん、ハジメがそうなら」

「私もです。」

 

皆特に気にしていなそうだった。さらに樹が尋ねる。

 

「で、どうするの?このままクソみたいな神が倒されるのを待つの?それとも殺るの?」

「…‥………」

「自分はどうしたい?みんなの仇を撃つチャンスが来たんだよ!こんな大事な事は自分でやらなくちゃ、どうする?」

 

「…私も腐った神を倒したい!お願い、私を仲間に入れてください!」

 

「「「「「もちろん!」」」」」

 

5人の思いは1つだった。

 

「じゃあ、準備してくるね」

 

そう言うと間もなく、ミレディは沢山の荷物を『宝物庫』に入れて出てきた。さらに、

「はい、これ『イっちゃん』が使っていたデッキだよ。色んなカードがあるから使ってね」

「ありがとう、ミレディ」

 

そのデッキの中には、『U・ジークブルムノヴァ』や『ボルメテウスサファイアドラゴン』

そして、メインの『天廻龍 シャガルマガラ』などなど、強力なカードを貰った。

 

「はい、ルルちゃんとハジ君にもカードね。」

 

渡されたカードは『U・サジットアポロドラゴン』と『聖龍皇アルティメットセイヴァー』だった。バトスピ使いのハジメはともかくデュエリストのルルーシュは使えないはずだが…

 

「これ、どうしたらいいんだ?」

「それ、使う時はどんなデッキやゲームでも使えるカードだから気にしなくて良いよ〜」

「…成る程な〜」

 

さすが、元龍騎士のカードたち。どんなものにも使えるのはすごい。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

何もなくなった部屋を見てミレディは呟く。

 

「みんな、行ってきます!」

 

『行ってらっしゃい!』

 

そんな声が聞こえて振り返ると…

解放者と龍騎士のメンバーが手を振っていた。

 

「早く行くよ〜ミレディ!」

「うん、いま行くよ〜」

 

ミレディは樹達の元へと向かって行った。

 

ーーーーーーーーーー

 

「で、どうやってここから出ていくの?」

「ちょっと待ってね〜脱出水路を動かすね。」

「え?」

「「「え?」」」

「え?」

「「「「「ええ!」」」」」

 

聞き返しているうちに、

ガコン!とトラップの発動音が聞こえた。その音が響き渡った瞬間、轟音と共に四方の壁から途轍もない勢いで水が流れ込んできた。正面ではなく斜め方向へ鉄砲水の様に吹き出す大量の水は、瞬く間に部屋の中を激流で満たす。同時に、部屋の中央にある魔法陣を中心にアリジゴクのように床が沈み、中央にぽっかりと穴が空いた。激流はその穴に向かって一気に流れ込む。

 

「「「うわ〜〜〜〜」」」

 

「「「きゃああああああああああああああああ」」」

 

6人は大きな悲鳴と共に水に流されていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 町と町、あるいは村々をつなぐ街道を一台の馬車と数頭の馬がパッカパッカとリズミカルな足音と共にのんびりと進んでいた。もちろん、その馬上には人が乗っている。冒険者風の出で立ちをした男が三人と女が一人だ。馬車の方には、御者台には20代くらいの男性と30代くらいの青鬼が乗っていた。

 

「nakamu ?次の泉で休憩ね!」

「了解です、らっだあさん」

 

らっだあと呼ばれた青鬼は、何を隠そうブルックの町でユエとシアが世話になった服飾店の店長である。そして、そのらっだあの隣に座る少年は、〝ハクビの宿〟の看板6つ子の長男、nakamu ハクビである。亜人っぽい名前をしているが、パンダのフードを被っている普通の人間である。

 

 この二人、現在、冒険者の護衛を付けながら、隣町からブルックへの帰還中なのである。らっだあは、その種族からも分かる通り鬼強いので、服飾関係の素材を自分で取りに行く事が多い。今回も仕入れ等のために一時、町を出たのだ。それに便乗したのがnakamu である。隣町の親戚が大怪我を負ったと聞き、見舞いの品を届けに行ったのだ。冒険者達は元々ブルックの町の冒険者で任務帰りなので、ついでに護衛しているのである。

 

 ブルックの町まであと一日といったところ。らっだあ達は、街道の傍にある泉でお昼休憩を取ることにした。

 

 泉に到着したらっだあ達が、馬に水を飲ませながら自分達も泉の畔で昼食の準備をする。nakamu が水を汲みに泉の傍までやって来た。そして、いざ水を汲もうと入れ物を泉に浸けたその瞬間、

 

ゴポッ! ゴポゴポッゴバッ!!

 

 と音を立てながら突如、泉の中央が泡立ち一気に水が噴き出始めた。

 

「わあああああああああああああ!!」

 

「nakamu !」

 

 悲鳴を上げて尻餅をつくnakamu に、らっだあが一瞬で駆け寄り庇うように抱き上げ他の冒険者達のもとへ戻る。その間にも、噴き上げる水は激しさを増していき、遂には高さ十メートル以上はありそうな水柱となった。

 

 この泉は街道沿いの休憩場所としては、よく知られた場所で、こんな現象は一度として報告されていない。それ故に、らっだあもnakamu も冒険者達も驚愕に口をポカンと開き、降り注ぐ雨の如き水滴も気にせず巨大な水柱を見上げた。

 

 すると、

 

「ぬあああああああああああああああ!」

「ひゃあああああああああああああああ!」

「どぅわぁあああーー!!」

「んっーーーー!!」

「ヤッホオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「…………」

 

噴き上がる水の勢いそのままに、6人……の内5人が悲鳴を上げながら飛び出してきた。思わず「なにぃー!」と目が飛び出るらっだあ達。飛び出してきた6人は、悲鳴を上げながら十メートル近くまで吹き飛ばされると、そのまま、らっだあ達の対岸側にドボンッ! と音を立てながら落下した。

 

「「「「「「……」」」」」」

「な、何なの一体……」

 

 言葉もない冒険者達とらっだあ、nakamu の呟きが皆の気持ちを代弁していた。

 

「大丈夫か?みんな」

「僕は平気!」

「ん……私も平気」

「ふう、助かったです。」

「ごめんね〜こうするしか方法がなかったんだよ。」

 

水から上がり、各々感想を延べるが…

 

「樹はどうしたの?」

 

「「「「あ…ああああああああああああああああああ!」」」」

 

そこには、顔面蒼白で白眼を剥いた樹がいた!

 

そう…樹はカナヅチである!全くもって泳げないのだ!

 

「きゃああああああああああああああ!『イっ君』しっかりして〜!」

 

悲鳴を上げながらも、ミレディが意を決して心肺蘇生を行った。ただ、必然とマウストゥーマウスになるのでキスしているようにしか見えないのだが…

 

やがて…樹は眼を覚ました。

 

「ん…ここは?」

「イっ君!よかったよ〜生きてて〜死んじゃったかと思ったよ〜!」

 

ガン泣きをして樹に抱きつくミレディ。皆は微笑ましく見守っていた。

 

「あ、あの〜…一緒に戻ります?」

 

nakamu に尋ねられ、お言葉に甘える事にした。

 

自分達のいる場所が、ブルックの町から一日ほどの場所にあると判明し、ハジメ達も町に寄って行くことにした。らっだあの馬車に便乗させてくれるというので、その厚意に甘えることにする。濡れた服を着替え、道中、色々話をしながら、暖かな日差しの中を馬の足音をBGMに進んでいく。

 

 新たな仲間と共に、二つ目の大迷宮の攻略を成し遂げたハジメ、ルルーシュ、そして樹。馬車の荷台に寝転び燦々と輝く太陽を眩しげに見つめながら、樹たちは、これからも色々あるだろう旅を思い薄らと口元に笑みを浮かべるのだった。

 




《イメージボイス:マスタードラゴン》

皆、覚えておるか?マスタードラゴンだ。本日は疲れている樹の代わりに我が次回予告だ。

少しばかりの休息を終えて、ブルックの町を後にする一行。
次の目的地は『商業都市 ヒューレン』、さあ目指そう。
しかし…一緒に向かう小隊の方々にやはり見覚えが…

次回 〜 日常へ向かう商団 〜 我も見覚えがあるな…


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第30節 日常へ向かう商団

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。

ここから物語は原作を大幅に変更していきます。
ミレディが仲間としてついていくことになってきましたが…
ミレディの過去も今回で明らかに!

ではみなさん、今後も応援をよろしくお願いいたします。


「んん〜、アレここは?」

 

大きな欠伸をしながら体を伸ばし、眼を覚ますミレディ。寝ぼけ眼で辺りを見渡すと、いつもいた殺風景な部屋…ではなく、木造でありながら大きな部屋だった。そして自分は大きなベッドで数千年ぶりに眠ったのだ。

 

「そうだ、私…旅に出たんだ。」

 

眼が覚めていくと同時に記憶が戻っていく。昨日だけで様々な事があった。いつも通りに迷宮で待っていて、迷宮をめちゃくちゃにされた。それだけではなく、戦っている最中に5人組の1人が覚醒して、すぐに自分は負けた。そして神代魔法を渡して終わり…ではなかった。

 

『お前はどうする?』

 

その言葉がかつての恋人と重なった。

 

ーーーーーーーーーーー

 

『ライセン峡谷』 そこは処刑場と呼ばれ、代々ライセンの一族が異端者の処刑を担ってきた。罪人は様々で、盗みを働いた者、人を殺めた者、人を騙した者などいたが、1番多いのは『異教徒である事』である。一神教である『聖教教会』に楯突いたものがほとんどだった。もちろんミレディも多数の人間の処刑を行なってきた。処刑と言っても谷底に魔法で人間を落とすだけ。あとは魔物に襲われて死ぬ。ミレディは特に何も感じる事なく仕事を行なっていた。

 

ある日、いつも通り処刑を終えて帰ろうとした時、

 

〜♪ 〜〜♫ 〜♩〜〜〜〜♬

 

どこからともなくハーモニカの音が聞こえてきた。振り向くと、夕日を背に1人の男子が立っていた。

 

「誰?」

「俺は『龍騎士のインドラ』世界の全てを知った者さ。」

 

その少年は話してくれた。この世界は神を名乗った何者かによって作られた事。その神は自らの暇つぶしで戦争を始めた事を…

 

「俺は世界を救うために戦う!君はどうする?」

 

そう尋ねた彼が伸ばした手を…彼女は掴んだ。なぜ掴んだかは今でもわからない。だが、自分の中に『戦争が何者かによって起こされたのなら、それを終結させて堕神を倒し、この世界を解放しよう』という思いがあったのだろう。

 

こうして、『解放者』は1組の男女から始まった。その後も同じ志を持つ者や龍騎士、亜人や竜人、吸血鬼も仲間にしていき、自分は『インドラ』と、メイルは『ハジメ』と、リューティリスは『ルルーシュ』と恋人になった。そして、体制を盤石にして神殺しの準備が整った頃…解放者は崩壊した。

 

神が先手を打ち、解放者こそ敵であると洗脳したのである。仲間たちは再起を図るために迷宮を作り、立て篭った。次の世代に神殺しを託すために…

 

だが…龍騎士たちは仲間である『聖騎士』たちに告げた。

『最後の戦いを仕掛けるので、退却せよ。そのかわり、ミレディたちの安全を確保してくれ』と

 

もちろんやめるように伝えた。だが、龍騎士の決意は堅く、渋々その依頼を受けた。

 

そして…龍騎士は全滅した。

 

その知らせを受けたミレディは、迷宮内で号泣していた。

 

「ごめん!ごめんね『イっちゃん』…私が殺しちゃった…私があの時止めていれば、手を取らなければ良かったのに…」

 

ミレディは後悔をしていた。だが、インドラの残した手紙には、自分の事は気にせず、先へ進んでくれと書いてあった。この言葉を頼りに生きてきた。

ーーーーーーーーーーーー

 

そして数千年後に訪れた5人の男女。その中にいたかつての恋人と偶然、同じ『輝龍王』を名乗る少年に

 

『お前はどうする?』

 

と尋ねられた。数千年経っても変わらない声で言われた同じ言葉。運命を感じざるを得なかった。だからこそ、もう一度進もうと思った。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ベッドから起きたミレディは隣の少年の方を向く。起きている時は大人のような冷静さと強さを見せつけるが、布団の中ではあどけない、年相応の少年の寝顔だった。

 

「全く、寝顔だけは変わらないんだから…」

 

そう言いながらミレディは樹の顔を見る。だが、ミレディは顔が赤く、熱くなっていた。まあ人工呼吸とはいえ、キスをしているのである。意識しないはずがないのだ。

 

「恥ずかしいけど…‥…えい!」

 

ミレディは樹の横顔に、頬にキスをした。

 

「『イッ君』!これからもよろしくね」

 

と小声で呟く。それをすると、着替えのために別の部屋に入っていった。

 

 

「全く…照れるからやめて欲しいんだけどなぁ」

 

そう言いながら頬を触るのは、同じ部屋で同じベッドで寝ていた樹である。実は樹はずっと前から起きており、ミレディが行った事を全てわかっていたのだ。当然、恋心を向けられていることも…

 

「はあ…2人になんて言おうかなぁ…」

 

今は会えない恋人2人に、どう言い訳をするか考える樹であった。

 

ーーーーーーーーーーー

 

カラン、カラン

 

 そんな音を立てて冒険者ギルド:ブルック支部の扉は開いた。入ってきたのは1人の人影、ここ数日ですっかり有名人となった樹である。ギルド内のカフェには、何時もの如く何組かの冒険者達が思い思いの時を過ごしており、樹の姿に気がつくと片手を上げて挨拶してくる者もいる。

 

 ブルックに滞在して一週間、すっかり樹は溶け込んでいた。滞在中は、ほぼ全ての依頼をこなし出禁になりかけたぐらいである。

 

「おや、今日は1人かい?」

 

 樹がカウンターに近づくと、いつも通り、おばちゃ……キャサリンがおり、先に声をかけた。キャサリンの声音に意外さが含まれているのは、この一週間でギルドにやって来たのは大抵、樹とルルーシュ、もしくは樹とハジメだったからである。

 

ちなみに女性陣はミレディの新しい衣服を買いに、ルルーシュとハジメはあちこちにお礼参りを行っている。

 

「ああ。明日にでも町を出るんで、オバチャンには色々世話になったし、一応挨拶をとね。ついでに、目的地関連で依頼があれば受けておこうと思ったのさ。」

 

 世話になったというのは、樹たちがギルドの一室を無償で借りていたことだ。せっかくの重力魔法なので生成魔法と組み合わせを試行錯誤するのに、それなりに広い部屋が欲しかったのである。キャサリンに心当たりを聞いたところ、それならギルドの部屋を使っていいと無償で提供してくれたのだ。

 

「そうかい。行っちまうのかい。そりゃあ、寂しくなるねぇ。あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ~」

「待って待って、いくらなんでもまずいでしょ〜ここらにいるの変人ばっかだよ〜服屋の変人だったり、宿屋の変人だったり、ギルドの変人だったり…変人しかいないじゃないか!」

 

 そんな出来事を思い出し顔をしかめる樹に、キャサリンは苦笑いだ。

 

「まぁまぁ、何だかんで活気があったのは事実さね」

「それはそうだけど」

「で、何処に行くんだい?」

「フューレンですね」

 

 そんな風に雑談しながらも、仕事はきっちりこなすキャサリン。早速、フューレン関連の依頼がないかを探し始める。

 

 フューレンとは、中立商業都市のことだ。樹達の次の目的地は【グリューエン大砂漠】にある七大迷宮の一つ【グリューエン大火山】である。その為、大陸の西に向かわなければならないのだが、その途中に【中立商業都市フューレン】があるので、大陸一の商業都市に一度は寄ってみようという話になったのである。なお、【グリューエン大火山】の次は、大砂漠を超えた更に西にある海底に沈む大迷宮【メルジーネ海底遺跡】が目的地だ。

 

「う~ん、おや。ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。ちょうど空きが後一人分あるよ……どうだい? 受けるかい?」

「もちろん、よろしくお願いします〜」

 

樹は依頼書を受け取る。

 

「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ」

「了解です。」

 

そんな話をしながらキャサリンが一通の手紙を差し出す。疑問顔で、それを受け取る樹。

 

「これは?」

「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びのようなものだよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」

 

 バッチリとウインクするキャサリンに、驚く樹。手紙一つでお偉いさんに影響を及ぼせるあなたは一体何者?という疑問がありありと表情に浮かんでいる。

 

「おや、詮索はなしだよ? いい女に秘密はつきものさね」

「……了解!」

「素直でよろしい! 色々あるだろうけど、死なないようにね」

 

 謎多き、片田舎の町のギルド職員キャサリン。樹達は、そんな彼女の愛嬌のある魅力的な笑みと共に送り出された。

 

そして翌日早朝。

 

 そんな愉快? なブルックの町民達を思い出にしながら、正面門にやって来たハジメ達を迎えたのは商隊のまとめ役だった。

 

だが…その商団の名前は『日常組』と記され、メンバーは…

 

「はい、おはようございます。こんにちはこんばんは。『ぺいんと』でございます。」

「『クロノア』でございます。」

「『しにがみ』でございます。」

「『トラゾー』でございます。」

 

「「「って日常組かよ〜〜」」」

 

樹、ルルーシュ、ハジメの声がこだました。




《イメージボイス:サジットアポロドラゴン》

サジットだよ〜次回予告するね。

出会った日常組と旅を続ける一行。
その中で、メンバーの『クロノア』さんから、奴隷についての現実を知る!
ヒューレンに着くまでの6日間のちょっとした旅が始まる。

時間 〜 優しい日常と冷たい日常 〜 やっぱり世界は残酷…


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第31節 優しい日常と冷たい日常

はい、こんにちは、こんばんは。
Warewareでございます。
いや〜ホント暑い、すっごく暑いですがいかがお過ごしでしょうか?
今回は、原作では、少しだけ描かれたフューレンへ向かう所の話です。
ここに出てくる商団はしばらく出てくる…いわゆる準レギュラーとなります。

では少し胸糞悪くなるシーンがありますけど、暖かい目で見ていただけると嬉しいです〜
よろしくお願いします〜


ブルックの町から中立商業都市フューレンまでは馬車で約六日の距離である。

 

 日の出前に出発し、日が沈む前に野営の準備に入る。それを繰り返すこと三回目。ハジメ達は、フューレンまで三日の位置まで来ていた。道程はあと半分である。ここまで特に何事もなく順調に進んで来た。ハジメ達は、隊の後方を預かっているのだが実にのどかなものである。

 

 この日も、特に何もないまま野営の準備となった。冒険者達の食事関係は自腹である。周囲を警戒しながらの食事なので、商隊の人々としては一緒に食べても落ち着かないのだろう。別々に食べるのは暗黙のルールになっているようだ。そして、冒険者達も任務中は酷く簡易な食事で済ませてしまう。ある程度凝った食事を準備すると、それだけで荷物が増えて、いざという時邪魔になるからなのだという。

 

だがそんな事は関係ない!と樹が異議を唱えた。

 

『むしろ、俺は縁を大事にしたいと思っています。なので一緒に旅する時だけでもいいので、みんなで食事をしませんか?』

 

と言ったら、それに向こうも大いに賛成してくれたので、料理担当のユエ、シア、ミレディの3人がそれぞれ、『日常組』のメンバーの分も食事を作り、みんなで食べることになった。

1日目はユエが、2日目はミレディが食事当番だったので、3日目はシアの番となっていた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「カッーー、うめぇ! ホント、美味いわぁ~、流石シアちゃん! もう、亜人とか関係ないから俺の嫁にならない?」

 

そう話しかけるのは『日常組』のリーダーである、黄色で表と裏に『ぺ』と描かれたシャツを着た男性『ぺいんと』

 

「ガツッガツッ、ゴクンッ、ぷはっ、何言ってるんですか?ぺいんとさん。いくらモテないからってそうやって口説くのはダメですよ〜」

 

そうリーダーをたしなめるのは、ドクロの描かれたパーカーを羽織っている少女のような声と容姿の男性『しにがみ』

 

「あのさ、こういう時にもさ、そんな女性がドン引きするような話、やめなよ!」

 

2人に冷静なツッコミを入れるのが、『日常組』最年長の、猫耳付きのパーカーを着た男性の『クロノア』

 

「ごめんなさいね。このメンバーいつもこうだから、気にしないでください。」

 

3人のやり取りを呆れたように話すのが、迷彩服を着て、頭に袋を被った男性の『トラゾー』である。

 

「あ、大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます。」

 

シアが笑顔で応える。普通の人であれば堕ちる事間違いなしだが、既に首輪が付いているので『奴隷』としては無理だし、自己紹介の際に

 

『私はルルーシュさんの彼女です〜』

 

と公言しているので心配はなしである。

 

「そういえばクロノアさんは猫の亜人と住んでましたよね?」

「ノア子の事?うん、今も元気でやってるよ」

「どうやって一緒に住む事に?」

 

話の流れで、唯一奴隷と生活しているクロノアにしにがみが訊ねる。

 

「う〜〜〜ん…ちょっと嫌な話になるけど、みんなも聞いといて。」

 

クロノアは全員に話始める。

 

「ノア子は5年前にさ、俺の家の前に捨てられていたんだよね。ボロボロの状態でね。」

「え…」

 

衝撃な内容にしにがみが小さくつぶやく。

 

「怪我を治して、食事して、一緒に2、3日過ごしたら話してくれたんだ。どうやらノア子は何処かの貴族に奴隷として扱き使われていたんだって。性的な事もやらされていたとも言ってた。そんで、いらなくなったから捨てられたんだって…」

「マジかよ…」

「ん…ひどい」

「最っ低」

 

樹、ユエ、ミレディの順に反応する。

 

「俺は奴隷だとは思ってないし、むしろ家族としてノア子を大事にしているんだ。まあ面倒ごとにならないように、シアちゃんのように首輪に見えるアクセサリーをつけているけどね。」

 

クロノアはルルーシュを見つめて真剣な表情で話す。

 

「ルルーシュ君、覚えておいて。 この世は残酷だ。

君の求める平等で争いのない世界には、亜人は含まれていない。それはこれから行く『フューレン』でも同じ。後、神殿騎士には君の目指す目標は絶対に笑われるし、シアちゃんも差別的に見られると思う。それでも負けないで!俺は応援しているから。必ず、シアちゃんを守ってね!

 

「はい、任せてください!」

「ルルーシュさん、お願いしますです♪」

「うん。おっと、こんな時間だ。そろそろ寝ようか?明日も早いし!」

 

話はここでお開きとなり、全員次の日に備えて寝ることになった。

 

ーーーーーーーーーー

 

それから二日。残す道程があと一日に迫った頃、遂にのどかな旅路を壊す無粋な襲撃者が現れた。

 

 最初にそれに気がついたのはシアだ。街道沿いの森の方へウサミミを向けピコピコと動かすと、のほほんとした表情を一気に引き締めて警告を発した。

 

「敵襲です! 数は…50!森の中から来ます!」

 

 その警告を聞いて、冒険者達の間に一気に緊張が走る。現在通っている街道は、森に隣接してはいるが其処まで危険な場所ではない。何せ、大陸一の商業都市へのルートなのだ。道中の安全は、それなりに確保されている。なので、魔物に遭遇する話はよく聞くが、せいぜい二十体前後、多くても四十体くらいが限度のはずなのだ。

 

「樹くん、敵のコード、確認できる?」

「今、行っています!」

 

トラゾーに指示され、すぐに識別コードを見る。

 

「確認しました!コードは、森林系のモンスター『ヤンオーガ』です。」

「「「「嘘〜〜〜〜〜!!!」」」」

 

ヤンオーガとは、顔がトンボに似た鬼の様なモンスターである。本来は群れを作らないのだが、まれに群れを作る者もいる。そういう時は、群れを作れる上位種がいるか、もしくは…

 

「勇者が来てからモンスターが増えたって事か」

 

ルルーシュは1人納得したように呟く。そういう事である。モンスターの数は前より増えている。そうなってくると自然と群れになっていくのだ。

 

「俺たちは足手まといだから特に何もしないよ。」

ぺいんとがそう言うと、『日常組』メンバーはそのまま、ヤンオーガの群れに突っ込んでいく。

 

「任せてください。速攻全滅させますよ!…うちの魔女っ子ちゃん2人が!」

「「まさかの人任せ!」」

 

樹の一言にルルーシュとハジメがツッコむ。

 

「任せて!この天っ才魔女っ子のミレディちゃんと弟子のユエちゃんが倒しちゃうから。」

「……すぐ終わる」

 

2人は馬車の上部に立ち、準備を始める。

 

「ユエさん、一応詠唱はしといてね。余計なトラブルは避けたいから。」

「……詠唱……詠唱……?」

「……もしかして知らないとか?」

「……大丈夫、問題ない」

「接敵、十秒前ですよ~」

 

 周囲に追及されるのも面倒なので、ユエに詠唱をしておくよう告げるハジメだったが、ユエの方は、元々、詠唱が不要だったせいか頭に〝?〟を浮かべている。なければないで、小声で唱えていたとでもすればいいので、大した問題ではないのだが、返された言葉が何故か激しくハジメを不安にさせた。

 

 そうこうしている内に、シアから報告が入る。ユエは、右手をスっと森に向けて掲げると、透き通るような声で詠唱を始めた。

 

「目覚めたるは光の翼、その大いなる光の刃にて全てを照らせ、落ちし雷は地を削り、淵源滅ぼす一撃となれ!

淵源・霹靂神」

 

ユエの詠唱が終わり、魔法のトリガーが引かれた。その瞬間、詠唱の途中から立ち込めた暗雲より雷で出きた槍が地面に刺さった。その槍はヤンオーガの周りを回転しながらどんどん外へと広がっていく。やがて、中心に白い光が一瞬瞬いたかと思うと…大爆発を起こした。

 

轟音と閃光、そして激震に思わず身を竦める。ようやく、その身を襲う畏怖にも似た感情と衝撃が過ぎ去り、薄ら目を開けて前方の様子を見ると……そこにはもう何もなかった。あえて言うなら大きなクレーターと化した大地だけが、先の非現実的な光景が確かに起きた事実であると証明していた。

 

「……ん、やりすぎた」

「ミレディちゃんの出番、なくなっちゃったじゃん!」

「てか、さっきのって元々あったの?」

「ユエさんのオリジナルらしいですよ? ハジメさんから聞いた龍の話と例の魔法を組み合わせたものらしいです」

「なーる、流石ハジメの嫁だな。」

「まだ、嫁じゃないよ!はあ、ルルーシュが言うと冗談に聞こえない。」

 

今回、ユエがみまった『淵源・霹靂神』は〝雷槌〟という空に暗雲を創り極大の雷を降らせるという上級魔法と重力魔法の複合魔法である。本来落ちるだけの雷を重力魔法により纏めて、任意でコントロールする。その後、中心に小さなエネルギーの塊を落とし、一定時間経過した後に爆発させる技だ。

もちろんこんな技を見るのは初めてであり、皆驚きを隠せずにいた。

 

「よ…よしそろそろ出発しようか?」

「「「「「「「「「切り替え早!!」」」」」」」」

 

トラゾーの切り替えの早さに口があんぐり空いてしまった9人であった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ユエが、商団の人々の度肝を抜いた日以降、特に何事もなく、一行は遂に中立商業都市フューレンに到着した。

 

 フューレンの東門には六つの入場受付があり、そこで持ち込み品のチェックをするそうだ。ハジメ達も、その内の一つの列に並んでいた。順番が来るまでしばらくかかりそうである。

 

「じゃあここでお別れになるかな。またね、皆さん。」

「ありがとうございました。ぺいんとさん、しにがみさん、クロノアさん、トラゾーさん」

 

4人に挨拶をして、その場を離れようとする6人

 

「あ…ちょっと待って」

 

トラゾーに声をかけられ、立ち止まる。

 

「君たちドラゴン、つまりは龍騎士でしょ。気をつけた方が良いよ。」

「そうなのか?」

「そう、人にも魔物にも成れる半端者。なのに恐ろしく強い。そして、どの神も信仰していなかった不信心者。教会の権威主義者には面白くない存在だから」

「ていうか気づいてたんですね。」

「僕もトラゾーさんもぺいんとさんもクロノアさんもわかっていたよ。まあ通報したりしないから心配しないでください。」

「ありがとうございます」

 

「「「「「「ではまた!」」」」」」

「「「「またね!」」」」

 

4人と別れ、フューレンの中へと入っていく。

 

 

その姿を見送っていく『日常組』

 

「う〜〜〜〜ん」

「どうしたんですか?ぺいんとさん?」

「なんか、すぐ会いそうな気がするんだけど…」

「「「え…えええ〜まっさか〜〜」」」

 

そう冗談のように話す4人。しかし、ぺいんとが言った言葉が、すぐに事実になってしまう事にこの時はまだ気づかなかった。




《イメージボイス:ズァーク》

皆のモノ、忘れたとは言わせんぞ。ズァークが次回予告をしてやろう。

フューレンに渡った小僧どもは依頼を受け、そのままウルと言う町へ向かう。忙しいのう。
そして、そこにはかつての教師がおった。
そして、ルルーシュの小僧とハジメの小僧は恋人と再会。良い話じゃのう。
だが…神殿騎士の奴らに邪魔をされ、ついにルルーシュの小僧がブチ切れる。

次回 サイカイ×ト×ハカイ ワシもそろそろ酒が飲みたい…


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第32節 サイカイ×ト×ハカイ

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。

今回からウルの町編に入っていきます。いや〜2ヶ月でここまで来ましたよ〜
これも皆様の応援のおかげです。マジ感謝!ありがとうございます。

では今回もぜひお楽しみください。
…やっと原作ヒロインとオリヒロの邂逅だなぁ。

そして、すみません。大作です。5600文字オーバーってある意味すげ〜な…


「フハハハハハハハハハハハハハ!」

 

「あはははははははははははははは!」

 

「ギャハハハハハハハハハハハハハ!」

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

「わ、笑わないでくださいよ〜〜」

 

大声で笑われて赤面している樹。それもそのはず、目の前にはつい数時間前に別れたばかりの商団『日常組』の面々が…

 

今、一行は湖と稲作の町『ウル』へと向かっている。何故こうなったのか。

遡ること2時間前…

 

ーーーーーーーーーーー

 

樹達はフューレンのギルドに着くとすぐに他のギルドに絡まれていた。そんな奴らを伸ばしていたら、ギルドのお偉いさんが出てきたのだ。そしてステータスプレートを見せろと要求されてしまい、面倒事にしたくない樹は、キャサリンからもらった手紙を見せることにしたのだ。

 

「身分証明の代わりになるかわからないが、知り合いのギルド職員に、困ったらギルドのお偉いさんに渡せと言われてたものがある」

「? 知り合いのギルド職員ですか? ……拝見します」

 

その手紙を見ると目を丸くして、大きく見開いてしまった。そして応接室に案内された。ハジメ達が応接室に案内されてから、きっかり十分後、遂に、扉がノックされた。ハジメの返事から一拍置いて扉が開かれる。そこから現れたのは、金髪をオールバックにした鋭い目付きの三十代後半くらいの男性とドットという秘書だった。

 

「初めまして、冒険者ギルド、フューレン支部支部長イルワ・チャングだ。イツキ君、ルルーシュ君、ハジメ君、ユエ君、シア君、ミレディ君……でいいかな?」

 

 簡潔な自己紹介の後、ハジメ達の名を確認がてらに呼び握手を求める支部長イルワ。ハジメも握手を返しながら返事をする。

 

「ああ、構わない。名前は、手紙に?」

「その通りだ。先生からの手紙に書いてあったよ。随分と目をかけられている……というより注目されているようだね。将来有望、ただしトラブル体質なので、出来れば目をかけてやって欲しいという旨の内容だったよ」

「トラブル体質……ね。まぁ、それはいい。肝心の身分証明の方はどうなんだ? それで問題ないのか?」

「ああ、先生が問題のある人物ではないと書いているからね。あの人の人を見る目は確かだ。わざわざ手紙を持たせるほどだし、この手紙を以て君達の身分証明とさせてもらうよ」

 

ルルーシュが『キャサリンは何者か』と訊ねると、

 

「ん? 本人から聞いてないのかい? 彼女は、王都のギルド本部でギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。その後、ギルド運営に関する教育係になってね。今、各町に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。私もその一人で、彼女には頭が上がらなくてね。その後、結婚してブルックの町のギルド支部に転勤したんだよ。子供を育てるにも田舎の方がいいって言ってね。彼女の結婚発表は青天の霹靂でね。荒れたよ。ギルドどころか、王都が」

 

「嘘だろ!」

「マジか!」

「びっくり!」

「ん…すごい!」

「驚きです〜」

「そうだったんだ〜」

 

各々の反応はこの通りである。その後、イルワの方から依頼を受け、クデタ伯爵家の三男ウィル・クデタという人物の捜索をすることとなった。クデタ伯爵は、家出同然に冒険者になると飛び出していった息子の動向を密かに追っていたそうなのだが、今回の調査依頼に出た後、息子に付けていた連絡員も消息が不明となり、これはただ事ではないと慌てて捜索願を出したそうだ。

 

「生存は絶望的だが、可能性はゼロではない。伯爵は個人的にも友人でね、できる限り早く捜索したいと考えている。どうかな。今は君達しかいないんだ。引き受けてはもらえないだろうか?」

 

どうやら、ウィルに依頼したのは彼のようだ。元々は冒険者に憧れていた彼を、その道から諦めさせる為に依頼したのだろう。樹達はユエ、シア、ミレディのステータスプレートの発行と、ギルドに自分達の後ろ立てになってもらう事を条件に、『ウルの町』へ向かう事となったのだ。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

そんな話をしていると、『ウルの町』にたどり着いた。

 

「俺たちもここにしばらく滞在するから、何かあったら連絡ちょうだい!」

「ありがとうございます〜」

 

樹たちは『日常組』と別れ、大きな宿へ向かう。

 

「そういえばここって稲作が有名だったな」

「という事は…」

「つまり…」

 

「お米が…」

『『『酒が…』』』

 

「「「食べられる〜〜〜」」」

 

『『『飲めるな(わ)〔ね〕〜〜〜』』』

 

どちらも喜んでいた。そして、宿の扉を開けて中に入った。この後、衝撃的な再会が待っているとは思わずに…

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ、今日も手掛かりはなしですか……清水君、一体どこに行ってしまったんですか……」

 

 悄然と肩を落とし、ウルの町の表通りをトボトボと歩くのは召喚組の一人にして教師、畑山愛子だ。普段の快活な様子がなりを潜め、今は、不安と心配に苛まれて陰鬱な雰囲気を漂わせている。

樹たちが高級宿『水妖精の宿』に入る数分程前、愛子達一行が宿に入った。

 

当初、愛子達は、高級すぎては落ち着かないと他の宿を希望したのだが、〝神の使徒〟あるいは〝豊穣の女神〟とまで呼ばれ始めている愛子や生徒達を普通の宿に泊めるのは外聞的に有り得ないので、騎士達の説得の末、ウルの町における滞在場所として目出度く確定した。

 

 元々、王宮の一室で過ごしていたこともあり、愛子も生徒達も次第に慣れ、今では、すっかりリラックス出来る場所になっていた。農地改善や清水の捜索に東奔西走し疲れた体で帰って来る愛子達にとって、この宿でとる米料理は毎日の楽しみになっていた。

 

「愛子、あまり気を落とすな。まだ、何も分かっていないんだ。無事という可能性は十分にある。お前が信じなくてどうするんだ」

 

 元気のない愛子に、そう声をかけたのは愛子専属護衛隊隊長のデビッドだ。周りには他にも、毎度お馴染みの騎士達と生徒達がいる。彼等も口々に愛子を気遣うような言葉をかけた。

 

清水幸利が失踪してから既に二週間と少し。愛子達は、八方手を尽くして清水を探したが、その行方はようとして知れなかった。町中に目撃情報はなく、近隣の町や村にも使いを出して目撃情報を求めたが、全て空振りだった。

 

樹達と共にリアム、ステイサム、スティーブの3看守に鍛え上げられた清水は樹達の友人である。樹達が奈落に落ちた後に、樹達の手がかりを探して、一行に加わった経緯があるので自分からいなくなる事は無いと思うが…

 

皆が食事に入る中、カウンターに座り、俯いているサイドテールの少女がいた。ルルーシュの恋人の『中村双葉』である。ルルーシュの手がかりを探す為に旅に出たが、4ヶ月経っても手がかり無しという事が彼女から笑顔を奪っていた。

 

「はあ、ルル君…どこにいるのよ。」

「なーにしけた顔してるのよ!」

 

「きゃあああああああああああ!」

 

後ろから大声で脅かしたのは、ハジメの彼女の『園部優花』である。双葉が心配している反面、優花は『どうせひょっこり帰ってくるでしょ!』という感じであまり心配していない様子。

 

「そんなに気にしなくてもいいじゃない。」

「優花は心配じゃないの?」

「みんな一緒にいるだろうから、そんなに気にしないわよ。まあ、死んじゃっていたら一生許さないけどね!」

「……そうね。ああ、なんか安心したらお腹空いちゃった。何食べようかなあ」

 

と話していると…

 

カランカラン

 

と扉が開いた。そして男女6人ほどの声が聞こえてきた。

 

「ふう、やっとメシだ〜唐揚げと白米とか無いかなあ」

「樹は本当に白飯好きだよなあ。俺はハンバーグがあれば良いが…」

「もうルルーシュも楽しみすぎでしょ〜僕も楽しみだけど。」

「「うっさいぞ!ハジメ」」

「3人ともうるさい、みんなに迷惑でしょ〜ミレディちゃん怒るよ!」

「……ん、私も怒る!でもみんな嬉しそう。」

「それはそうですよユエさん。ふるさとの味は大事ですから。シアも楽しみですぅ。」

 

それは懐かしい声だった。双葉と優花が何度も聞いていた声だった。少し大人っぽくなった低い声だったが聞き間違いではなかった。後ろを振り向くとそこには…

 

冒険者とは思えないラフな格好をした少年が2人と制服を着こなす少年が女性3人といた。その顔は忘れない。いや、忘れる事などできない顔だった。あの頃より傷が目立つが間違いなかった。

 

「ル…ルル君なの?」

「ハジメ?ハジメよね!」

 

声をかけられた2人と目があう。

 

「双葉…その…」

「優花さん…これは誤解なんだけど…」

 

2人が言い終わらないうちに、ルルーシュは双葉に、ハジメは優花に抱きしめられていた。

 

「ルル君のバカ!バカバカ!生きているなら…連絡ぐらいしてよ!」

「ごめんな!君を泣かせないと決めたのに…でも、無事でよかった。あの時守れてよかった。」

 

「ハジメ!いや『ハッ君』良かった…無事で…ううう、うわ〜〜〜〜ん」

「大丈夫…大丈夫、僕はここにいるよ。だから、泣かないで…」

 

そんな様子を見ている愛子に樹が声をかける。

 

「どうも先生、お久しぶりです。星龍樹、星龍ルルーシュ、南雲ハジメ、無事に帰還しました。」

「よかった…本当に良かったです。」

「先生、すみませんが食事後に全て話すので良いですか?」

「え…ええ」

 

樹達も注文を行い、すぐに自己紹介を行う。

 

「3人とも、自己紹介して」

 

「……ユエ」

「シアですぅ」

「天っ才魔法少女 ミレディライセンちゃんだよ〜〜」

「ありがとうな」

 

だがその後にとんでもない爆弾が投下される!

 

「ハジメの女」

「ルルーシュさんの女ですう」

「イっ君の彼女だよお」

「「「おい〜〜〜なに修羅場にしてんだ〜〜」」」

 

樹達の悲鳴がこだました。もちろん愛ちゃん先生の雷が落ちたのは言うまでもない。ちなみに双葉と優花の反応はというと

 

「ルル君はイケメンだから今更ハーレムになっても気にしないわ。」

「ハッ君はみんな平等に愛してくれるから良いの!」

 

という感じだった。

 

ーーーーーーーーーーー

 

散々愛子の怒りを受けた後、樹は答えられる範囲で自分達の事を答えた。

 

Q 、橋から落ちた後、どうした?

「脱出経路を探して抜けました。」

Q 、どうして連絡しなかった?

「普通に忘れていました。」

Q 、どうして戻って来なかった?

「逆に戻る理由が見つからないです。」

 

樹達は真面目なのだが、そこまで聞いて愛子が、「真面目に答えなさい!」と頬を膨らませて怒る。だが、樹達も食べながら解答していたのと、他言無用な事が多いので必然とこうなってしまう。まあ話をしながらも、食事に舌鼓を打っている分、真面目さは伝わってこない。

 

 その様子にキレたのは、愛子専属護衛隊隊長のデビッドだ。愛する女性が蔑ろにされていることに耐えられなかったのだろう。拳をテーブルに叩きつけながら大声を上げた。

 

「おい、お前! 愛子が質問しているのだぞ! 真面目に答えろ!」

 

 ルルーシュは、チラリとデビッドを見ると、はぁと溜息を吐いた。

 

「食事中だぞ? 行儀よくしろ」

 

 全く相手にされていないことが丸分かりの物言いに、元々、神殿騎士にして重要人物の護衛隊長を任されているということから自然とプライドも高くなっているデビッドは、我慢ならないと顔を真っ赤にした。そして、何を言ってものらりくらりとして明確な答えを返さないルルーシュから矛先を変え、その視線がシアに向く。

 

「ふん、行儀だと? その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ? 少しは人間らしくなるだろう」

 

 侮蔑をたっぷりと含んだ眼で睨まれたシアはビクッと体を震わせた。ブルックの町では、宿屋での第一印象や、キャサリンと親しくしていたこと、ルルーシュの存在もあって、むしろ友好的な人達が多かったし、フューレンでも蔑む目は多かったが、奴隷と認識されていたからか直接的な言葉を浴びせかけられる事はなかった。

 

つまり、ハジメ達と旅に出てから初めて、亜人族に対する直接的な差別的言葉の暴力を受けたのである。よく見れば、デビッドだけでなく、チェイス達他の騎士達も同じような目でシアを見ている。

 

(クロノアさんが言っていたのは本当だったのか)

『小僧!落ち着けよ〜〜』

(わかっている!)

 

心でわかっていてもやはり体は動こうとしてしまう。そこへ、

 

「ふん、何言ってるのよ!今のはあんたが悪いでしょ!謝ってよ!」

 

そう声をかけたのは…双葉だった。

 

「何だ、その言葉は、無礼だぞ!神殿騎士に逆らうのか!」

「あら、間違っているかしら?亜人だから何?そんな理由で差別するなんて最低よ!それとも、そういう小さな事でしか、主導権を握れないのかしら?」

 

双葉の口撃は止まらない。流石に言い過ぎかと思うが…唯でさえ、怒りで冷静さを失っていたデビッドは、よりによって愛子の前で男としての器の小ささを嗤われ完全にキレた。

 

「……異教徒め。そこの獣風情と一緒に地獄へ送ってやる」

 

 無表情で静かに呟き、傍らの剣に手をかけるデビッド。突如現れた修羅場に、生徒達はオロオロし、愛子やチェイス達は止めようとする。だが、デビッドは周りの声も聞こえない様子で、遂に鞘から剣を僅かに引き抜いた。

 

その瞬間、

 

ガシャン!

 

と音がした。デビットの手をルルーシュが掴み、樹はハイブリッドマグナムを構え、ハジメはマスターソードの刃をデビットの首元に当てる!

 

「いい加減にしろ!それ以上はこの俺が容赦しない!シアの悪口も双葉の悪口も許さない!それでも許せないなら…俺を殺せ!」

 

そう言うルルーシュの眼には、怒りの炎が燃えていた。正に一触即発といったところである。

 

その時…

 

パチパチパチパチ!

 

どこからか拍手の音が聞こえてきた。音の方を見ると、耳が尖り、薄い黒色の皮膚をして、頭にツノを生やした男がいた。腰にはハジメと同じようなバックルを付け、デッキケースを挿している。

 

「何者だ貴様!」

 

「俺は『月光騎士 バローネ』今は名前は関係ない。それよりも、そんなに互いに譲れないなら、決闘 いわゆる『デュエル』で決着をつけたらどうだ?」

 

そう言うと、バローネと名乗った騎士は薄い笑みを浮かべた。




《イメージボイス:双葉》

はじめましてかしら?双葉よ!次回予告をするわね。

ルル君とデビットさんの『デュエル』が始まる。ルル君、勝機はあるの?
私達は世界の全てを知る。まさか…帰れないの?
そして、ルル君達の依頼について行くことにした私と優花。
そこにはあの騎士、バローネさんもいて…え?一緒に来るの?

次回 神聖闘技と真実とライバル ルル君、私信じてるから…


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第33節 神聖闘技と真実とライバル

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。

ファンの方にはおまたせしました。いよいよデュエルです。
ただ、もちろん現実のものとは違うのでご了承ください。

それではどうぞ〜


『デュエル』

それは、デッキからカードを1枚選び、そのモンスターとタッグを組んで決闘を行うものである。プレイヤーが倒される、またはモンスターと人間の両方が戦闘不能になると、敗北するのである。相棒のモンスターの交替は一度だけ行える。

さらに、武器の使用や魔法の使用は認められるが、魔法・罠カードの使用は許可されていない。現実の『デュエル』と違うのはそこのところだ。

 

「ルル君だけで大丈夫なの?始めての『デュエル』何でしょう?」

「心配するな。ルルは負けない。俺の弟だからな」

 

双葉の心配をよそに樹はルルーシュの勝利を確信している。ハジメはルルーシュのデッキからカードを1枚取った。

 

「はい、今日の相棒は『オッドアイズペンデュラムドラゴン』ね」

「感謝する。ハジメ!行ってくる。」

 

そう言うとルルーシュは闘技場へ向かっていった。

 

ーーーーーーーーーー

 

ルルーシュとデビットは互いに向き合っていた。

 

「ほう、この神殿騎士デビットから逃げなかったのは褒めてやる!だが異教徒!貴様の敗北は決まっている!」

「御託はいい、さっさと初めよう。」

 

ルルーシュはいつもより低い声でデビットに応える。シアをバカにされ、双葉共々斬ろうとした事によほど腹が立っているようだ。

 

「審判はこの『バローネ』が受け持とう!互いにモンスターを繰り出せ!」

 

その言葉と共にモンスターを繰り出す。デビットのモンスターは『ネイキッドギアフリード』だった。もちろんルルーシュも『オッドアイズペンデュラムドラゴン』を繰り出す。だが、ルルーシュのモンスターを見るや、観客達は悲鳴をあげた。やはりドラゴンはエヒト神の神敵ということもあり、嫌われているのだろう。

 

「その龍、『四天の龍』か、やはり貴様は異教徒だなぁ!このデビットが成敗してやる!」

 

そう言うと、まだ開始とも言われていないのに、いきなりルルーシュに向かって剣を振り下ろした!とっさにルルーシュはかわす。

 

「まだ始まってないだろ!卑怯だろうが!」

「黙れ、勝利のためには何をしても良いのだ!」

 

何という暴論だろう。勝つためならどんな手段を使って良いと平気で言っているのだ。これには樹もハジメも呆れ顔。ユエやシアは真顔になっており、ミレディは怒りを露わにする。

 

「何してるんだ〜!」

「いくらなんでも卑怯だろう〜〜!」

 

決闘を観ている観客も流石に擁護出来ずに野次を飛ばす。一方、勝負の方はと言うとルルーシュはひたすら回避を行い、オッドアイズは、ギアフリードの攻撃を必死に耐えていた。

 

「どうした!威勢が良いのは声だけか?」

「……」

「何だ!言ってみろ!それとも自分が負けるのが怖いのか?」

 

どうやら追い詰めても全く攻撃してくる素振りを見せないルルーシュに腹が立ってきたようだ。そして、彼の前で言ってはならない言葉を口にした!

 

「貴様の存在もクズだが貴様の兄弟もクズだなぁ!そもそも異教徒の分際で生きている事が烏滸がましい!貴様も亜人も異教徒の女も貴様の兄も全員殺してやる!全てはエヒト様の為に!」

 

そう言ってルルーシュにトドメを刺そうと剣を振り下ろした!

 

「ルル君!」

 

双葉の悲鳴がこだます。だがその前に樹の一言がこだました。

 

「ルルーシュ!俺が許す。怒れ!バカにされたままで良いのか?良くねえだろ!お前の真骨頂、見せてやれ!」

「樹…ああ分かっているよ!今、条件が整った!」

 

いつの間にかルルーシュの左腕には、カードをセットしてさらにスキャンできるスキャナー『ラウズセッター』が装着されていた。その中に『聖龍皇 アルティメットセイバー』のカードをセットする。

 

〈SET SEIVA〉

そして、そのセッターに4対の龍が刻まれたカードをスキャンした!

〈fusion Dragon〉

 

するとルルーシュの体が変化した!背中の翼が巨大になり、その後ろに大きな輪っかが出現した。さらに、腕と脚が龍のようになり、Ωの字が描かれた仮面がさらに禍々しいものとなった。

 

「なんだ!その姿は?」

「この姿は怒りの姿!名付けてFury(フューリー)スタイル》だ!」

 

ルルーシュは4枚のカードを取り出し、全てスキャンする。

 

「相棒モンスターの交替を行う!審判、問題ないか?」

「もちろんだ」

 

4対のモンスターは何と、『四天の龍』の強化形態だった!

 

『オッドアイズペンデュラムドラゴン』は『オッドアイズペンデュラムグラフドラゴン』に、

『ダークリベリオンエクシーズドラゴン』は『ダークレクイエムエクシーズドラゴン』に、

『クリアウイングシンクロドラゴン』は『クリスタルウイングシンクロドラゴン』に、

『スターヴヴェノムフュージョンドラゴン』は『グリーディーヴェノムフュージョンドラゴン』に、

それぞれ姿を変えていた。

 

「な…何だと、そんなに沢山のモンスターを出すなんて…卑怯じゃないのか?」

「俺はルールの中で公平に行っている。確か、{モンスターは一回だけ交替する事ができる}とルールにあるだけでモンスターの上限は決められていない!」

「な、なんだと…私には、卑怯な!と…言ってた…くせに…」

「勝つ為には何をしても良い!そうだったな…己の勝利の為にルールを捻じ曲げ、自らが負けそうになれば卑怯と罵る…そんな甘くて美味しい話があると思うのか?  お前の様な人間風情に!」

「な…なんてひどいやつだ〜〜」

 

デビットは怒りで我を忘れて斬りかかってくるが…

 

「蹂躙しろ!我が僕ども!」

 

4対の龍は手当たり次第に攻撃を始めた!

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄だ!

WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!

無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄

 

無駄ぁ!」

 

デビットは闘技場の外へ、いや、空の彼方へとぶっ飛ばされてしまった…

 

「貴様は私を怒らせた!それが敗因だ!」

 

周りの観客からは大歓声が上がった。後にこのトータスには身の程を知らぬものが相手を侮辱し、返り討ちに遭うことを『触れぬ覇王に裁きなし!神殿の中に覇王アリ!』と言うことわざが生まれるのだが、それは別の話である。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

深夜、樹とルルーシュ、ハジメの3人はとある部屋でとある人物を待っていた。その人物とは…

 

「3人とも、何でしょうか?」

「ルル君、どうしたの?」

「ハジ君、話って?」

 

その人物とは、愛子、双葉、優花の3人である。樹達が呼んだのはもちろん理由があった。

 

「3人を呼んだのはな、他の連中に見られたくなかったんだ、この訪問を。先生たち3人には話しておきたい事があったんだが、さっきは、教会やら王国の奴等がいたから話せなかったんだよ。内容的に、アイツ等発狂でもして暴れそうだし」

 

と樹が話す。

 

「話ですか? 樹君たちは、先生達のことはどうでもよかったんじゃ……」

 

 もしや、本当は戻ってくるつもりなのではと、期待に目を輝かせる愛子。生徒からの相談とあれば、まさに教師の役どころである。しかし、そこはルルーシュがその期待を即行で否定した。

 

「いや、戻るつもりはないから?だから、そんな期待した目で見るのは止めてくれ……今から話す話は、先生が一番冷静に受け止められるだろうと思ったから話すんです。聞いた後、どうするかは先生の判断に任せるよ」

 

 そう言って3人は、オスカーから聞いた〝解放者〟と狂った神の遊戯の物語を話し始めた。特に理由があった訳ではない。だが、樹たち3人は元々、信用できる者たちには真実を話すつもりでいた。味方は多い方が良い。

 

ハジメたちから、この世界の真実を聞かされ呆然とする愛子、双葉、優花どう受け止めていいか分からないようだ。情報を咀嚼し、自らの考えを持つに至るには、まだ時間が掛かりそうである。

 

「まぁ、そういうわけだ。俺が奈落の底で知った事はな。これを知ってどうするかは先生に任せるよ。戯言と切って捨てるもよし、真実として行動を起こすもよし。好きにしてくれ」

「な、南雲君と星龍君たちは、もしかして、その〝狂った神〟をどうにかしようと……旅を?」

「「「まあそういう事」」」

 

3人は声を合わせてそう叫んだ。

 

「実を言うと、みんなで元の世界に帰還するのに神殺しをする必要があるからなんだけどね」

 

そうハジメは語る。

 

「アテはあるんですか?」

「まぁ。大迷宮が鍵だ。興味があるなら探索したらいい。オルクスの百階を超えれば、めでたく本当の大迷宮だ。もっとも、今日の様子を見る限り、行っても直ぐに死ぬと思うけどな。あの程度の〝威圧〟に耐えられないようじゃ論外だよ」

 

今度はルルーシュが語る。

 

 愛子は、夕食時のハジメ達、決闘中のルルーシュから放たれたプレッシャーを思い出す。そして、どれだけ過酷な状況を生き抜いたのかと改めて樹、ルルーシュ、ハジメに同情やら称賛やら色々なものが詰まった複雑な目差しを向けた。

 

 しばらく、沈黙が続く。静寂が部屋に満ちた。愛子と双葉、優花は部屋から出ようとする。すると、オルクス大迷宮という言葉で思い出したとある生徒の事を伝えようと優花と双葉が話しかけた。

 

「ハジ君、香織は諦めてないわよ。今もあなたを探しているわ」

「ルル君と樹君、恵里も雫も美玖もよ。やっぱり愛されているわね」

「「「そ…そうなのね…」」」

 

3人は呆れ顔である。そこに樹が尋ねた。

 

「という事は、誰が俺たちを落としたかわかっているのか?」

「ええ、檜山が落としたそうよ。天之河は最後まであの騎士さんが悪いって言ってたけどね…今は看守さんたちが牢屋に閉じ込めているわ。」

 

双葉が答えた。それだけ言うと3人は戻っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

夜明けに近い夜中、樹たち5人は旅支度を済ませ、ウィルを探しに行こうとしていた。そこには…

双葉と優花がいた。

 

「ねえ、優花さん?何でここに?」

「双葉…お前なんで?」

「ルル君(ハジ君)が行くところに私が行かないわけないでしょ〜」

「「はあ…好きにして(しろ)」

 

なんて諦めながら認めると、

 

「ん?あれ『バローネ』さんじゃねえ?」

 

樹の言った方を見ると、審判を務めてくれた『月光騎士 バローネ』が3対のメカメカしいドラゴンに月光を浴びせていた。樹が話しかけようとすると、

 

「もう少し待ってくれ。今日は満月だから、我が友たちに、たっぷりと月光を浴びさせてくれ。」

 

その内の1体は、ミスリルが持っている1体に似ているが、樹たちは知るよしもない。月光を浴びせているのは

『月光龍 ストライクジークブルム』と『月光神龍 ルナティックストライクブルム』

そして『獅機龍神 ストライクヴルムレオ』だった。

 

やがて、それぞれの龍に月光を浴びせ終わったのか、バローネは3体の龍をカードに戻しデッキに入れた。

 

「待たせてすまない。人助けに行くのだろう。俺も同行させてくれ。」

 

そう言うとバローネは夜明けの空をバックに、誰もが見惚れる笑顔をつくった。




《イメージボイス:優花》

優花よ。次回予告をするわね。
8人でウィルさんを探す私たち、ねえ本当にいるの?
見つけたウィルさんのそばにはその命を狙う竜が、どうして?
そして、ハジ君とバローネさんの共闘が始まる。

次回 月光と太陽 ハジ君、一緒に頑張ろうね!


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第34節 月光と太陽

はい、こんにちはこんばんは。
Warewareでございます。

34話を迎えました。みなさん本当に応援ありがとうございます。
今回はハジメ君回となります。バローネとの出会いにより何か変わるのでしょうか?

お楽しみください。
しかしながら、最近の分量のムラがすげえな…


山へと向かっていく道を歩いて、いや、飛んで行く龍がいる。夜明けを迎えた時間から、樹たちは龍に乗り、山へと飛び出した。今、樹たちが乗っている龍は、最初の頃と変わっている。樹は前の輝龍王の『インドラ』から受け継いだ

『天廻龍 シャガルマガラ』に乗り、ルルーシュは、Fury(フューリー)スタイルとして覚醒した際に手に入れた『爵銀龍 メル・ゼナ』に乗っている。なお、シャガルに乗っているのは樹とミレディ。メル・ゼナにはルルーシュとシア、そして双葉である。

 

ハジメはというと…『リオレウス』に優花とユエが乗っていてハジメは1人後ろから飛んで追いかけて来ていた。

実は

 

「お前はまだあの2人に追いついていない!サジットアポロしか使えないのがその証拠。『ジークアポロ』と『ライジングアポロ』が使えるまで、特訓だ。」

 

とバローネに言われ…後ろから空を飛びながら必死に追いかけている。

 

「ハジ君!頑張って!」

「…ん!頑張れ!」

「みんな、絶対楽しんでいるでしょう!」

 

ハジメの声が山にこだました。

 

ーーーーーーーーーーー

 

北の山脈地帯

 

 標高千メートルから八千メートル級の山々が連なるそこは、どういうわけか生えている木々や植物、環境がバラバラという不思議な場所だ。日本の秋の山のような色彩が見られたかと思ったら、次のエリアでは真夏の木のように青々とした葉を広げていたり、逆に枯れ木ばかりという場所もある。

 

 また、普段見えている山脈を越えても、その向こう側には更に山脈が広がっており、北へ北へと幾重にも重なっている。現在確認されているのは四つ目の山脈までで、その向こうは完全に未知の領域である。何処まで続いているのかと、とある冒険者が五つ目の山脈越えを狙ったことがあるそうだが、山を一つ越えるたびに生息する魔物が強力になっていくので、結局、成功はしなかった。

 

樹たちはその山の麓に着陸すると、カードを読み込み、龍を召喚する。樹は「ボルバルザーク紫電ドラゴン」と「炎王龍 テオ・テスカトル」を、ルルーシュは、「クリスタルウイング」と「スターダストドラゴン」を、バローネは「月光龍 ストライクジークブルム」と「月光神龍 ルナティックストライクブルム」の2体を召喚し、こう命じた。

 

「「「行方不明者を探してこい!」」」

 

そう命じられた龍たちは勢いよく飛び立っていった。やがて見えなくなると、双葉が聞いてきた。

 

「何であの龍にお願いしたの?」

「簡単に言えば…あの龍たちは赤外線や音、あとはスピードが速いのさ。探しものをする時には便利なのさ。」

 

ルルーシュの解説が飛ぶ。9人は山を一気に登り、6合目まで登った。もう少し上に行こうと思っていたが、双葉と優花がへばってしまうのを防ぐためである。ハジメ達がたどり着いた川は、小川と呼ぶには少し大きい規模のものだった。

そこで男性陣は特訓を行い、女性陣は水を飲みながら女子トークを始めた。まあ主に樹とルルーシュとハジメの恥ずかしいことや、秘密を暴露されるハメになり、男性陣はそそくさと退散した。途中、バローネから

 

「あれ、本当なのか?」

と尋ねられ、男性陣は

「「「ノーコメントでお願いします…」」」

と答えたのだった。すると、

 

「樹様〜」

 

捜索にあたっていた龍たちが一斉に戻ってきた。

 

「紫電、見つかったのか?」

「もちろんでございます。上流の方に戦闘の痕跡がありました。それと…」

 

そう言うと紫電は、懐からロケットペンダントを取りだす。

 

「こちらも落ちておりました。遺品と思ったのですが。近くで生体反応がありました。しかし」

「自分がいくとドラゴンということもあり騒動になる。か?」

「その通りです」

 

全員で行こうとする。が…

 

「すまない、先に行っててくれ。俺は『光龍騎神』と共に後から行く」

「「?何かありましたか?」」

「ちょっとした会話だ。優花とユエも来てくれ」

 

という事もあり、樹とルルーシュ、ミレディ、シア、双葉の5人はウィルの救出に先に向かった。

 

ーーーーーーーー

 

「僕を置いて皆を行かせたのは僕の本音が気になったからですか?」

「わかっていたか…まあそういう事だ。」

 

ハジメの眼を見てバローネは核心をつく言葉を口にする。

 

「お前、自分が弱いと思っていないか?」

 

ハジメは驚いた顔をした。

 

ここで一応説明しておこう。この話は元々の原作とは離れている。確かに本来の世界ではハジメは一度、腕を失ったり死にそうな目に遭って心が壊れた。その後全てを殺してでも進む冷酷な人間に堕ちるところを、ユエと出会って少しは人間らしさを取り戻している。

 

つまり今、この話のハジメは初めて挫折を味わっているのだ。

 

「2人はどんどん先へ進んでいく。でも僕は強くない。このままだと戦力外に…」

「それで良いんじゃないか?」

「え…」

 

ハジメは驚いていた。否定すると思っていたので驚くのも無理はない。

 

「強くなるスピードは人それぞれだ。すぐに成長するのも大事だが、ゆっくり進む方が大事だろ。いつもそうじゃなかったのか?」

「いつもそうじゃありませんよ。全部偶然なんです。」

「本当にそうか?」

「…どういう意味ですか?」

 

ハジメは尋ねる。

 

「たしかに君がその龍の力を手に入れたのは偶然かも知れない。だが、『光龍騎神』になるのを決めたのは自分であって、偶然ではないだろう」

「あ…そうか」

「その時君はなぜ力を欲したんだ。」

「僕が思った理由…」

 

(そうだ僕は、誰かを助けたいと思ったんだ!天之河君のように全てではなく、大切な人たちを、手の届く範囲の人たちを…)

 

そう考えていると誰かに手を握られた。それはユエと優花だった。

 

「…私たちは助けられてる。ハジメ、自分を責めないで、樹たちもハジメは弱いなんて思ってないよ。」

「そうよハジ君、あなたは弱くない。そうやって悩むことができるでしょ。だから平気だよ。」

 

「ありがとう2人とも」

 

そう言った時、デッキが光り、2枚のカードが飛び出した。カードには「太陽龍 ジークアポロドラゴン」と「太陽神龍 ライジングアポロドラゴン」だった。

 

「吹っ切れたようだな。良い顔をしている。それでこそ我がライバルだ。その気持ちを忘れるな!」

「はい!」

 

するとハジメの通信機が鳴った。

 

「樹?どうしたの?」

『すまないハジメ、ウィルクデタさんを見つけたんだが黒竜に襲われていて、ちょっと厳しいのよ!来れる?』

「了解!すぐ向かう!」

 

ハジメはすぐに通話を切り、準備を整える。

 

「呼ばれたようだな、行くぞ!ハジメ!」

「うん!バローネ!」

 

ハジメたち4人はそれぞれ龍にまたがり、救援に向かった。

 

ーーーーーーーー

 

その竜の体長は七メートル程。漆黒の鱗に全身を覆われ、長い前足には五本の鋭い爪がある。背中からは大きな翼が生えており、薄らと輝いて見えることから魔力で纏われているようだ。

 

空中で翼をはためかせる度に、翼の大きさからは考えられない程の風が渦巻く。だが、何より印象的なのは、夜闇に浮かぶ月の如き黄金の瞳だろう。爬虫類らしく縦に割れた瞳孔は、剣呑に細められていながら、なお美しさを感じさせる光を放っている。

 

 その黄金の瞳が、空中より樹達を睥睨していた。低い唸り声が、黒竜の喉から漏れ出している。

 

既に樹たちは覚醒しており、『輝龍王』と『覇龍皇』となっている。

 

〈attack dragon ガイラオウ〉

〈rapid Blake ストームブリンガー〉

 

巨大な火球と斬撃が襲うが竜はものともしない。そこに

 

「いっきますよ〜10倍強化!」

「よそ見しないでよ ”熱波”」

 

シアが拳を叩きつけ、ミレディが魔法を放つが、これも効かず、レーザーのようなブレスを放つ。かろうじてルルーシュが双葉と共に防ぐが…

 

「くううう…うわあああああああああ」

「「きゃああああああああああ」」

 

なすすべなく吹き飛ばされていく。ウィルはこの場におらず、既に安全な別空間に移してある。こんな大きな戦いにいたらひとたまりもない。魔法で竜の攻撃を防ぐが、

 

「ゴォアアア!!」

 

 竜の咆哮による衝撃だけであっさり吹き散らされてしまった。しかも、その咆哮の凄まじさと黄金の瞳に睨まれて、吹き飛ばされてしまった。

 

「にゃろう、なんて奴!」

「本当、竜って敵に回ると最悪だなあ。」

「ほんとですう。このままだとジリ貧ですう。」

「ええ、厳しいわねえ!」

「ミレディちゃんも流石にそろそろ限界かなあ。」

 

疲労が溜まってきた5人。そこへ

 

「はああああああああああああああ」

「おりゃああああああああああああ」

 

2人の戦士が蹴りを喰らわせながら落ちてきた。落ちて来たのはもちろん、

 

「お待たせ、みんな」

「何とか間に合ったな。ハジメ」

 

ハジメとバローネだった。ユエと優花も降りてきた。バローネとハジメは互いにデッキを前に出す。するとベルトが巻かれた。そして、

 

「「覚醒」」」

 

バックルにデッキを差し込んだ。ハジメを赫い甲冑が包んだ。だが、いつもと違う。翼は4枚になり、額に龍の紋章が描かれ、脚の部分に大きな刃が付いた。

 

一方でバローネの鎧は落ち着いた白で彩られ、額に龍の紋章は一緒だが、金属質な翼が2枚に小さなジェットエンジンが付いており、機動性が上がっている。脚部分も綺麗な装甲で覆われ、踵にはカッターがついていた。

 

ハジメは剣を抜き、バローネも槍を取り出した。刃の上部は砲門が輝いている。いわゆる『ガンランス』である。

 

「さあここからは僕らのステージだ!行くよ、バローネ!」

「もちろんだ、ハジメ!」

 

そう言うと2人は黒竜に向かって走っていった。

 




《イメージボイス:バローネ》

次回予告をさせてもらおう。

俺とハジメの共闘作業。綺麗に決まったな。
竜の正体は竜人族のお姫様。え…俺知らないぞ。
そしてウィルに状況説明、ええ…ちょっと落ち着けって

次回 龍の誇り さあ、思いのその先へ


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第35節 龍の誇り

はい、こんにちは、こんばんは。
Warewareでございます。

前回の話の投稿後に、久しぶりにアンチコメントが届きました。
私の作品に対してのコメントの場合は甘んじて受けますが…
私の文才に対してのコメントはお控えください。

文才がないのは私も充分理解していますので、そこをご理解の上、お読みいただくと嬉しいです。
よろしくお願いいたします。


《イメージソング:カラス free》

 

ハジメは大地を蹴って黒竜に向かっていき、バローネはジェット噴射で空中から攻める。黒竜は牽制のために火球を吐くが、

 

「はあ!」

 

ハジメに蹴られてしまう。蹴られた火球は黒竜に跳ね返り、そのまま顔面に着弾した。

 

「ギャオオオオオオオ!」

 

黒竜が悲鳴を上げる中、バローネはカードをスキャンし、ランスの柄付近にあるスキャナーの蓋を閉じる。

 

〈Advent〉

 

すると全身が機械の装甲に覆われた獅子が現れた。『獅機龍神 ストライクブルムレオ』である。そのままレオは黒竜に組み付き、噛みつきやひっかき、尾による薙ぎ払いで攻撃をする。その様子を見ていたハジメは、

 

「へえ〜、そこまで攻撃に徹せられるのね…じゃあ僕は」

 

〈Advent〉

 

サジットを呼び出すハジメ。そこにもう一枚のカードをスキャンした。

 

〈samonn vent 〉

 

呼び出したのは『輝竜 シャインブレイザー』そしてハジメはあの言葉を口にした。

 

「いくよ…合体(ブレイブ)!」

 

するとシャインブレイザーは翼を残して消えてしまう。その瞬間!

サジットの翼も消え、空いた場所にシャインブレイザーの翼がハマった!

 

これが合体(ブレイブ)である。メインのカードに合体(ブレイブ)専用のカードを重ねることで、効果や攻撃力といったものを上乗せする事ができるのだ。後見た目がカッコよくなる!

 

今のサジットの見た目は龍のような翼が消え、メカメカしい翼が生えた何処かクールに見える姿となった。

 

(これが僕の新しい姿!いつもより力がみなぎるよ)

「サジット!お願いして良い?」

(任せて、ハジメ)

 

サジットが飛び出し、威力の上がった弓で攻撃を加えていく。サジットとレオに攻撃を任せ、ハジメとバローネは考察に入る。

 

(この竜は先程から見るに、近づくものを蹴散らすと言うより目標がないから邪魔者を仕留める様に動いているな)

(狙いはウイルさんみたいだね。そして今気づいたけど、この竜自分の意志に関係なく動いているっぽいなぁ。誰かに操られているのかも。なら…)

 

分析を終えたハジメは『時のオカリナ』を取り出すとある曲を吹き始めた。

 

「グオオオオオオオオオ!ヌオオオオオオオオオオオ!」

 

直後、明らかに苦しそうに声をあげ、腕で頭を抱え始めた。おそらく抵抗しているのだろう。ハジメが吹いている曲は『竜の子守唄』その名の通り、竜の郷に伝わる子守唄で王家の紋章を起動させたり、悪しきものを祓う効果がある。

 

やがて、黒竜は動きを止めたかと思うとそのまま眼を閉じたが、すぐに起き上がった。

 

「ここは…妾は何を…」

 

そう話した黒竜。声質は女だ。直接声を出しているわけではなく、広域版の念話の様に響いている。竜の声帯と口内では人間の言葉など話せないから、空気の振動以外の方法で伝達しているのは間違いない。

 

 だが、そもそも人の言葉を話せる魔物自体が有り得ないのだ。現在、唯一、確認されているのは何処ぞの人面魚だけだ。一般的な認識でも、人の言語を解する魔物など唯一の例外を除いて存在しないはずである。

 

「……おまえ、竜人族か?」

〝む? いかにも。妾は誇り高き竜人族の一人じゃ。偉いんじゃぞ? 凄いんじゃぞ〟

 

「……なぜ、こんなところに?」

 

ユエが黒竜に質問をする。ユエにとっても竜人族は伝説の生き物だ。自分と同じ絶滅したはずの種族の生き残りとなれば、興味を惹かれるのだろう。瞳に好奇の光が宿っている。

 

「あのさ…」

 

そこに樹が声をかける。

 

「長くなるならさ、とりあえずウィル君も出してあげてからにしようよ。一応当事者だから…」

 

ーーーーーーーーーーー

 

ウィルを異次元から出して、樹、ルルーシュ、ハジメ、バローネ、ユエ、シア、ミレディ、双葉、優花の9人はそれぞれ座り、話を聞くことになった。(ウィルはおとぎ話の龍騎士が眼の前にいるということに興奮して、サインを求めてきた。樹たちはもちろん応えていた。)

 

話は要約するとこうである。

 

この黒竜は、ある目的のために竜人族の隠れ里を飛び出して来たらしい。その目的とは、異世界からの来訪者について調べるというものだ。詳細は省かれたが、竜人族の中には魔力感知に優れた者がおり、数ヶ月前に大魔力の放出と何かがこの世界にやって来たことを感知したらしい。

 

 竜人族は表舞台には関わらないという種族の掟があるらしいのだが、流石に、この未知の来訪者の件を何も知らないまま放置するのは、自分達にとっても不味いのではないかと、議論の末、遂に調査の決定がなされたそうだ。

 

 目の前の黒竜は、その調査の目的で集落から出てきたらしい。本来なら、山脈を越えた後は人型で市井に紛れ込み、竜人族であることを秘匿して情報収集に励むつもりだったのだが、その前に一度しっかり休息をと思い、この一つ目の山脈と二つ目の山脈の中間辺りで休んでいたらしい。

 

だが、その休息中にローブを羽織った男により洗脳されてしまったと言う。もちろん竜というだけあって精神耐性は持っているため、すぐにかかるわけではないのだ。

 

ではなぜここまで洗脳されてしまったのか?

 

〝恐ろしい男じゃった。闇系統の魔法に関しては天才と言っていいレベルじゃろうな。そんな男に丸一日かけて間断なく魔法を行使されたのじゃ。いくら妾と言えど、流石に耐えられんかった……〟

 

 一生の不覚! と言った感じで悲痛そうな声を上げる黒竜。

 

「いや、どんだけすごかったんだよ。そいつ、特徴とかないの?」

 

樹が尋ねるが、

 

〝いや全くもって分からないのじゃ。それだけ能力が高かったのじゃろう〟

 

「それで…山に調査依頼で訪れていたウィル達と遭遇し、目撃者は消せという命令を受けていたから、追いかけた。そして万一、自分が魔物を洗脳して数を集めていると知られるのは不味いと万全を期してお前を差し向けた。と言う訳か。」

 

ルルーシュが納得した様子で締める。後はご存じの通り、樹たちに足止めされ、ハジメに洗脳を解かれ今に至る。と言う事だった。当然事情を知ったウィルは…

 

「……ふざけるな」

 

思った通りの反応である。

 

「……操られていたから…ゲイルさんを、ナバルさんを、レントさんを、ワスリーさんをクルトさんを! 殺したのは仕方ないとでも言うつもりかっ!」

 

「キレたってしょうがないぞ。少年!」

 

そう言ってのはバローネである。もちろんその言葉にもウィルは反論する。

 

「大体、今の話だって、本当かどうかなんてわからないだろう! 大方、死にたくなくて適当にでっち上げたに決まってる!」

 

「…本当に嘘をついているならばそういう匂いがする。それに生き残った君が本当にやるべきことはその黒竜を恨む事か?違うだろぉ!」

 

ドガッ!!

 

バローネの拳がウィルに刺さった。

 

「少しは頭を冷やしてくれ、生き残った君がやるべきなのは死んだ仲間の分も生き抜く事だ。」

「う…グスッ!わかりました。申し訳ないです。」

「わかれば良いのさ」

 

ウィルの頭を撫で、バローネは笑顔を向ける。

 

“もし妾が許せないのであれば、これから攻めてくるであろう魔物たちを倒してから妾の命を奪えば良い。そう思うのじゃ〟

 

この言葉に対しての解答は、

 

「いえ、僕が大人げなかったです。復讐に呑まれても虚しいだけですから。」

 

と答えた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「ねえ、黒竜さん、元の姿に戻ってくれないかなあ?」

 

ウィルと黒竜の話にバローネが入って揉め事を止めてすぐ、ミレディの一言に全員が納得したのでそうしてもらうことにした。

 

“承知したのじゃ。少し待っておれ〟

 

そう納得した黒竜。直後、その体を黒色の魔力で繭のように包み完全に体を覆うと、その大きさをスルスルと小さくしていく。そして、ちょうど人が一人入るくらいの大きさになると、一気に魔力が霧散した。

光が晴れるとそこには…

 

黒髪金眼の美女がいた。腰まである長く艶やかなストレートの黒髪が目立つ。 見た目は二十代前半くらいで、身長は百七十センチ近くあるだろう。見事なプロポーションを誇っており、息をする度に、乱れて肩口まで垂れ下がった衣服から覗く二つの双丘が激しく自己主張し、今にもこぼれ落ちそうになっている。シアがメロンなら、黒竜はスイカで、ミレディはグレープフルーツ、ユエは桃である。双葉はシアとミレディの間で、優花は双葉より下である。

 

まあそんなのはどうでも良いとして…

 

黒竜は自己紹介を行う。

 

「面倒をかけた。本当に、申し訳ない。妾の名はティオ・クラルス。最後の竜人族クラルス族の一人じゃ」

 

そう律儀に挨拶をする。もちろん樹たちも自己紹介を返す。

 

「星龍 樹だ」

「星龍 ルルーシュ」

「南雲 ハジメです。」

「…ユエ、吸血鬼の元姫」

「シア・ハウリアですう」

「解放者のリーダー ミレディ・ライセンだよお」

「中村 双葉よ。よろしく。」

「園部 優花、よろしくね。ティオさん」

「そして、俺が月光騎士のバローネだ」

 

樹たち3人は自分達が龍騎士である事も明かした。するとティオは

 

「そうか…お主たちが竜を救う者であるか?」

「どう言う事」

「そういう伝説があるのじゃ。”邪神により世界、危機に瀕し時、龍の騎士目覚め、世界を救いせん“とな」

「「「「「「「「「成る程〜〜」」」」」」」」」

 

全員が納得していると…

 

ビリリリリリ!!

 

バローネの通信機が鳴った。

 

「失礼、どうした?ミスリル?」

『どうしたもこうしたもねえよ!今、ウルの町に向かって3〜4万の魔物の軍勢が迫ってるのよ!応援、頼めるか?』

「何!わかった、すぐ向かう。」

 

通信を切るとすぐに指示を出す。

 

「山を降りて、防御を固める!迎撃するぞ!」

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」

 

全員の返事がこだました。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

ここはとある異次元。ここには邪神 エヒトルジュエがいたとされている。だが今はここにはエヒトはおらず、1人の男がいた。その男は二股に分かれた帽子を被り、縦縞模様の服を着て、右手に鎌を持っており、どこから見てもトランプの『ジョーカー』をイメージする姿だった。

 

「そろそろ大軍が着く頃だな〜俺も行くか!この”道化師“もな!フハハハハハハ!」

 

ついに大きな悪が動き出そうとしていた。

 




《イメージボイス:樹》

慌ててウルの町に戻り、迎撃準備を行う俺たち!はあ、忙しい!
愛子先生とルルーシュの2人に激励してもらい、戦闘に赴く。いざ決戦へ!
ここに揃った龍騎士と聖騎士!さあ、戦闘の始まりだ〜

次回 降臨!黙示録の騎士たち さあ!地獄を楽しみなあ!


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第36節 降臨!黙示録の騎士たち

はい、こんにちは、こんばんは。
Warewareでございます。

前回は何度も修正を重ねてしまい、申し訳ございませんでした。
読みづらいことこの上無いと思いますが、お付き合いください。

今回は戦闘準備です〜みなさんが思う戦闘準備の曲を聞きながらお楽しみください。

ではどうぞ!


樹たちがウルの町に着くと、樹たちから『魔物が攻めてくる』と言う話を聞いた愛子達は足をもつれさせる勢いで町長のいる場所へ駆けていった。本来ならさっさとウィルを連れてフューレンに行ってしまおうと考えていたのだが、むしろ愛子達より先にウィルが飛び出していってしまったため仕方なく後を追いかけた。

 

ハジメ達が、ようやく町の役場に到着した頃には既に場は騒然としていた。ウルの町のギルド支部長や町の幹部、教会の司祭達が集まっており、喧々囂々たる有様である。皆一様に、信じられない、信じたくないといった様相で、その原因たる情報をもたらした愛子達やウィルに掴みかからんばかりの勢いで問い詰めている。

 

 普通なら、明日にも町は滅びますと言われても狂人の戯言と切って捨てられるのがオチだろうが、何せ〝神の使徒〟にして〝豊穣の女神〟たる愛子の言葉である。そして最近、魔人族が魔物を操るというのは公然の事実であることからも、無視などできようはずもなかった。

 

そこへ騎士のバローネが町の人を全員町に籠城させ、防御壁を作り敵の攻撃を防ぎつつ、殲滅を行うと説明した事により、町の人間が『なんでも騎士様たちに頼っていられない!自分達も手伝うぞ〜〜!!』と一致団結して、材料や障壁を張る準備、防衛兵器の準備を行っていく事になった。

 

ーーーーーーーーーーー

 

「オーライ!オーライ!ストップ!そこに建てて」

「これ、どうします?」

「立てかけておいて、組み立ては行うから。」

「「お願いします」」

 

現在、ルルーシュは町の防御用のバリアを張っており、その外側にハジメが防御と反撃を兼ねた壁を築城していた。本来、作製するのに何年もかかりそうな壁も、材料さえあればハジメの『錬成』によりあっという間に完成してしまう。ハジメは手を地面に当て『錬成』と唱えるだけで、頭に思ったものを錬成、つまり作ることができる。

(某錬金術師の漫画の様に、手を合わせて錬成してみろと樹が無理難題を押し付け、ハジメとケンカになった事は内緒である。)

 

「これで最後だ〜〜〜!!!」

 

ハジメが大きな声で最後の錬成を行う。この錬成により、ウルの町をぐるっと囲む防壁が出来上がったのだ。辺りから歓声が湧き上がる。

 

「みんなお疲れ様でした!後は任せて避難をして下さい。」

 

手伝ってくれた錬成士や、冒険者たちもそれぞれ避難をする者、町に籠城する者とに分かれ、行動していった。

 

「ふう、これでOKっと。さてどうするか…」

 

ハジメは一仕事を終えて、ため息を吐く。ハジメも正直言って混乱していた。というのも『龍騎士』のメンバーは今まで自分達が何かを求める戦いをしても、何かを守る戦いは行ってこなかったのだ。つまりこれが初めてなのである。それはルルーシュもハジメも同じ事。樹は最初に覚醒した時に2人を守るために戦っていると、先に伝えていたので問題はなかった。

 

要するに初めてが多すぎて緊張しているのだ。そこへ…

 

「緊張しているのか?あの時より成長した顔をしているが、それでもまだまだだな。」

「! あなたは…」

「久しぶりだな…『龍騎士』よ。いや、『光龍騎神』と言うべきか?」

 

そこにいたのは、かつてオルクス大迷宮で樹、ルルーシュ、ハジメと手合わせをした

『騎士王 ミスリル』だった。

 

「なぜここに?」

「バローネから聞いていないのか?私も今回は参戦する。『聖騎士』は全員来ているぞ。」

「そうですか…でも、あなた方には関係ないのでは?なぜ人助けを?」

「人間に亜人、魔人といったこのトータスに生きる全ての種の平和のために戦う。それが理由じゃダメか?」

 

そこまで言われてハッとした。今は聖騎士を名乗っているが、元は龍騎士の仲間である。エヒトを倒し、戦争を終結させるために活動しているので、正義感が強くて当たり前だった。

 

「すまなかった!」

 

その一言でハジメが気がつく。するとミスリルは頭を下げていた。

 

「君たちを焚きつけるために戦ったが、辛いめに合わせてしまった!申し訳ない!」

 

ミスリルは謝罪した。やはり彼なりに思うところがあったのだろう。まだ年端も行かない少年たちに全てを押し付けるのは酷すぎる。ハジメも樹やルルーシュ、ユエたちに出会わなければ強くなれなかっただろう。

 

それどころか、もし奈落に落ちた際に1人だった場合は、ユエに会って原作通りに。会えなかった場合は闇堕ちしてしまい、全てを滅ぼす化け物になってしまう可能性すらあった。ミスリルはそのことを危惧していたのだろう。

だからこそ…

 

「ミスリルさん、頭を上げてください。僕は望んで龍騎士になったんです。辛いこともあったけど、それでも前に進んできました。僕たちは恨んでいませんよ。」

 

その一言に救われた。ミスリルはかけられると思っていなかった言葉をかけられ、驚愕していた。ここまで心が清らかな人間にあったのは初めてである。

 

「ありがとう」

 

それが心から出た感謝であった。

 

「では、明日は戦争だ。今夜はゆっくり休んでくれ。“ハジメ”

 

そう言うとミスリルは去っていった。

 

「ミスリルさん、今ハジメって…名前名乗ったっけ?」

 

ハジメは知らない。かつて『滅龍大戦』で命を落とした『光龍騎神』の名前が“ハジメ”だったことを。

 

ーーーーーーーーー

 

そして次の日、樹、ルルーシュ、ハジメ、ミスリル、バローネはユエにシア、ミレディとティオらと共に、防御壁の上に立っていた。何故かというと、これから、戦闘に際しての激励とある者の到着の報告を待っているのである。

 

「じゃあ、やってくるわ〜後よろしく〜、先生頼むぞ!」

「え…ええ」

 

ルルーシュは愛子を連れてみんなから離れる。

 

「何が始まるんですか?」

「シア、ごめん。ここからはルルーシュのちょっとヤバい所が見えるから注意して」

 

シアにそう伝える樹。ルルーシュは大きく息を吸い込み、演説を始めた。

 

「注目せよ!同志たちよ〜〜〜!!」

 

ルルーシュの一言に全員が注目した。

 

「私は『黒の騎士団』団長の龍騎士『オメガ』である。この緊急事態によく集まり、我々の手助けをしてくれた!礼を言う、ありがとう」

 

『オメガ』の言葉ということもあり、全員が一言も話さず、真剣に聞いている。

 

「今、この町に魔物の群勢が攻めてきている。私はこの町を救うために、仲間を連れてやってきた!これが私の仲間たちだ〜〜〜〜!!」

 

樹たちはその一言で一歩前に出る。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

と歓声が挙がった。

 

さらに今日、この勝利を確実なものにするために私は女神を連れてきた!そう、皆も知っている〝豊穣の女神〟愛子様だ!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!女神様〜〜!愛子様〜〜〜!!!」

 

ルルーシュは愛子の背中を押して、前に出す。

 

「我らの傍に愛子様がいる限り、敗北はありえない! 愛子様こそ! 我ら人類の味方にして〝豊穣〟と〝勝利〟をもたらす、天が遣わした現人神である! 私は神ではない。神ではないので奇跡を起こす事はできない!しかし、愛子様によって私は奇跡を起こす力を手に入れた!見よ! これが、愛子様により教え導かれた私の力である!」

 

そう言い終えると、上空が曇ったかと思うと稲妻が発生した。それが収まると、赤い体色をした身体の長い龍が空から現れた。大きな顔に龍の顎を持ち、2つの口があった。その龍を樹とハジメは知っている。

 

「「オ、オ、オシリスの天空龍だと〜〜〜〜!!」」

 

現れたオシリスは口に雷のブレスを蓄えると一気に放った!直後、魔物の群勢から大爆発が起こった!

 

全てが終わるとルルーシュの演説も最終局面に入る。

 

「恐れせるな!怖がるな!君たちはここで待っていてくれれば良い!私たちが奇跡を起こす!その先に、真の平和がある! All Heil Black knight!

 

「「「「「All Heil Black knight!All Heil Black knight!All Heil Black knight!All Heil Black knight!All Heil Black knight!」」」」」

「「「「「All Heil Black knight!All Heil Black knight!All Heil Black knight!All Heil Black knight!All Heil Black knight!」」」」」

 

人々の声は、長く響き渡っていた。

 

ーーーーーーーーーー

 

演説を終えて戻ってくるルルーシュ。全員が笑顔で迎える。

 

「ルルーシュさん、お疲れ様ですう」

「カッコよかったわよ、ルル君!」

 

皆が口々に褒め言葉を言うが、樹は…

 

「よく言うぜ…夜遅くまで『どんな内容にするかな〜』と考えた挙句、俺に助けを求めてきたくせに!」

「おい〜それは言わない約束だろ〜〜!」

 

樹のヤジにブチギレるルルーシュ。そこへ…

 

スタッ!!

 

上空から人が降ってきた。白と青を基調とした鎧に緑の翼、両腰に刀と後ろの腰に銃を装備している、腰のバックルはルルーシュのにそっくりだった。

 

「スザク、ありがとう。俺の作戦に乗ってくれて」

「構わないよ。人の心を掴むには必要だからね。」

「あり?知り合いか?」

「ああ、樹には言ってなかったな。スザクに昨日会って、奇跡を見せるために手伝ってもらったのさ。」

「ふ〜〜〜ん」

 

ルルーシュの奇跡のカラクリを知り、興醒めになってしまった樹。ちなみに樹は今回、龍の鎧ではなく、コンバットスーツにコンバットベルトを着用、黒い首マントと腰にナイフ2本、銃2丁、背中に巨大な鎌を装備している。

 

ハジメも同じ装備であり唯一違うのは、鎌の代わりにガトリングガンの『フラウロス』を装備していることだろう。ルルーシュは都合上、こんなアサシン装備はできないので羨ましそうだった。

 

「そろそろ会敵するよ〜準備して。」

 

ミレディの一言に全員が壁を降りる。目標の数はいくら減ったと言えど、2万から3万ぐらいはいそうだ。

 

「よし、行くか!」

「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」

 

そう言うと全員が魔物の群れに突っ込んでいく。が…樹は一瞬足を止める。その頭には昨夜、ティオから聞いたある話がよぎった。

 

(大丈夫だ、何も起きない。気にするべきではないはずだ)

 

そう迷いを振り切り、樹も敵に突っ込んでいった。

 

「踊るぜ!死神のパーティータイムだ!」

 

だが、この時は誰も気づかなかった。この戦いには、

 

この戦争を操作する者が潜んでいたことを!

 

樹がかつて立ち向かった悪意があったことを!

 

そして…

 

封印された禁忌が、再び封印を解こうとしていたことを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

禁忌の復活まで、あと2時間…

 




《イメージボイス:ロマノフ》

お久しぶりです。ロマノフです。次回予告です。

樹殿が聞いたある予言。これは何かの前兆?
群れを操っていたのは、まさかの彼!一体何が?
そして、謎の襲撃が!ま…まさか?

次回 深淵の支配者 深き闇へ誘います。


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第37節 深淵の支配者

今回…物語が動く!


前回!樹が突撃前に思い返したティオの話!それを知るためには、一度…時間を昨日の夜に遡らなければならない!

 

ーーーーーーーーーーー

 

時間はちょうど深夜をまわったところである。樹は既に参戦準備を済ませて、防御壁の上でくつろいでいた。久しぶりにボルバルザーク紫電ドラゴンと小さくして実体化させたマスタードラゴン、さらにシャガルマガラを実体化させて食事を摂っていたのだ。

 

「紫電、ところで友達とは喋れたのか?」

「ええ、久しぶりにゆっくりできました。また戦場なのが残念ですけどね。」

「そうか」

 

そんな話をしていると、

 

「ここにおったのか。」

「あれ?ティオさん…だっけ?」

「覚えておいてくれて嬉しいのう」

 

黒地にさりげなく金の刺繍が入っている着物に酷似した衣服を大きく着崩して、白く滑らかな肩と魅惑的な双丘の谷間、そして膝上まで捲れた裾から覗く脚線美を惜しげもなく晒した黒髪金眼の美女の名を呼ぶ。

 

「こんな夜更けに申し訳ないのじゃ。お主に頼み事があっての」

「俺らの旅に同行したいんだろ。問題ないけど…」

「え…そ、そんなにすぐ決めてしまって良いのか?」

 

ティオは狼狽えた様子で聞き返した。とんとん拍子で話が進んでしまい、驚いたのだろう。

 

「問題はないさ。他のみんなもそう言うだろうし。それに断ってもついてくる気でしょう?」

「ばれておったかの?」

「いや、なんとなくだけど…昔の龍騎士たちと協力関係にあったならついてきたいと思うのが妥当でしょ。俺だったらそうするしな〜。」

 

そう言うと樹は持っていた酒瓶の中身をコップに注ぎ、ティオに渡す。

 

「飲んでみて。お酒じゃないけど美味いよ。」

 

ティオが恐るおそる呑んでみるとシュワシュワした喉越しと共に甘い味がした。

 

「随分甘いのじゃな」

「コーラって言う俺の世界の飲み物さ。俺は好きでよく飲んでいるのよ。みんなに勧めたんだけど、いかんせん受け入れてもらえなくて…」

「妾は好きじゃよ。これくらい甘いものがのう。」

 

そう言うと中身を一気に仰ぐ。飲み終えたコップを樹に渡し、中身を注いでもらう。樹はコップを渡しながら訊ねる。

 

「で、本命は何しに来たの?」

 

樹の一言にティオは固まる。

 

「ああ、別に怒ってる訳じゃない。ただ、さっきのことを聞くだけにわざわざ来ないと思って。」

「やれやれ、お見通しかの?」

 

観念した様にティオは答える。

 

「実はあの預言に続きがあってのう。それを伝えに」

「なんか続きがあるの?」

「そうじゃ」

 

ティオは息を吸うと、心を落ち着かせて語りだした。

 

”邪神により世界、危機に瀕し時、龍の騎士目覚め、世界を救いせん その悪意、龍を蝕みし時、禁忌の龍、異界より出で、世界を滅ぼさん“と

 

語り終わったティオは続ける。

 

「これがこのトータスに伝わる『禁忌の龍伝説』じゃ。この話に出ておる禁忌の龍と関係を疑われ、妾たちは滅ぼされたのじゃ。」

「ふ〜〜〜〜ん。その龍?の名前は?」

「名前は…わからないのじゃ。知ってはおるが、龍の名前というより、その龍の関わった現象の名前なのでのう」

 

ティオはそう言うとキセルを蒸した。その姿は月明かりに照らされ、絵になった。樹はその姿を見ると一緒にいた龍たちをカードに戻し、その場を離れようとする。

 

「もう休むわ。明日は忙しいから。」

「わかったのじゃ。おやすみ。」

 

樹は去っていく。が途中で立ち止まるとティオの方を振り向く。

 

「誰にも言わないからさ…俺だけに教えてくれるか?」

「なぜじゃ?」

「一応、気になったから…」

「はあ…仕方ないのう。名前は…」

 

その言葉は風に遮られ届く事はなかったが、樹はその名を聞き、戦慄した。

ーーーーーーーーーーー

 

「とおりゃあああああああああああ」

 

樹は「冥府鎌 ガイア」を振り回し、魔物達の首を刎ねる。そのまま「短剣型ナイフ エターナル」を突き刺し、魔物を上に持ち上げて投げる。さらにハイブリッドマグナムを撃ちまくり、上空に飛ぶと上からツインバスターライフルを高出力に切り替え、狙い撃った。

 

「よし、ここまでかな?」

 

樹の猛攻で1万の敵を始末した。

 

「はあああああああああ」

 

ルルーシュは相転移砲を撃ち、大量の魔物に一気に当て倒す。側にいるシアもキマリスを振り回しながら突撃し、

 

「ぶっ飛びやがれ!ですう!」

 

なんて物騒なことを言いながら攻撃する。

 

「いっちゃうよ〜〜〜〜」

「…邪魔」

 

ハジメは自分が開発した『回転銃砲 レオパルド』という所謂ガトリングガンで魔物を撃ち抜き、見るも無惨な塊に変える。

 

そばではユエが、連続で魔法を詠唱し使っていた。

 

「“天鱗” “咆哮” “鋭牙”」

 

“天鱗” はユエのオリジナル魔法で、空に氷塊を発生させて落とすと同時に、地面では熱風を起こし、圧縮解凍する。所謂 フリーズドライの原理で敵を撃つ技である。“咆哮”は風の塊をぶつけ相手を押しつぶす技で “鋭牙”は鋭い風の刃で切り裂き、塵にするのである。

 

(どの技も某有名ハンティングゲームの素材の名前なのは目を瞑っておけと樹たちを脅かしたのは余談である)

 

「ユエちゃんやるねえ!さてと…久しぶりに腕が鳴るよ!」

 

ミレディは両手を上に伸ばし、一言呟いた。

 

「“麒麟”」

 

その直後、大量の雨が降り注ぎ、すぐに大きな雷が落ちた!もちろん魔物は黒焦げである。

 

「やりすぎちゃったかな…」

 

ミレディはそう呟いた。

 

ミスリル、スザク、バローネの3人は連携で一気に殲滅していた。バローネが地面に振動を与え動きを封じ、上空からスザクのオシリスとミスリルのブルーアイズホワイトドラゴンが葬る。

 

その側では、ボルバルザーク紫電と親友の邪眼皇ロマノフⅠ世が同時に敵を倒していた。

 

「楽しいなぁ!我が友よ!共に戦うのは。」

「全く…はしゃぐな!大人げない!もっと静かに喜べ!」

 

満更でもなく楽しそうに話しながら、紫電は剣を振り、ロマノフは銃を連射した。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

気づけば沢山いた魔物も全滅してしまった。そもそも原作ですらオーバーキルっぽい所があったのだが、それよりも人が多く、強者だらけであり、武装や力も桁違い!

 

こんな状況で長くもつとは考えられず、あっという間に全滅した。それだけなのである。

 

「呆気なかったなぁ」

 

ミスリルは呆れながらつぶやき、

 

「本当にザコばっかでしたね。」

 

ロマノフが頷き、

 

「「そりゃ俺たちが強いからだろ!」」

 

星龍の兄弟が大声で突っ込む。

 

これは10人見たら10人が『やりすぎだ!』と言うであろう。それほどな惨状だ。

 

「でだ…この者はどうする?」

「「「ああ〜〜〜」」」

 

スザクの一言に樹、ルルーシュ、ハジメの3人は反応に困っている。何故なら今回の首謀者は、今まさに行方不明になっていた『清水幸利』その人だったからだ。

 

「襲ってきたわけじゃないですし、縛って連れて行きましょう。」

「ん…賛成。理由は尋ねるべき。」

 

シアとユエが声をそろえて言い、他のみんなも同じ反応を示す。というわけで愛子達も呼び、町のはずれで話を聞く事にした。

 

ーーーーーーーーーーー

 

この場にいるのは、愛子と生徒達の他、護衛隊の騎士達と町の重鎮達が幾人か、それにウィルとハジメ達だけである。流石に、町中に今回の襲撃の首謀者を連れて行っては、騒ぎが大きくなり過ぎるだろうし、そうなれば対話も難しいだろうという理由だ。町の残った重鎮達が、現在、事後処理に東奔西走している。

 

未だ白目を向いて倒れている清水に、愛子が歩み寄った。

デビッド達が、危険だと止めようとするが愛子は首を振って拒否する。拘束も同様だ。それでは、きちんと清水と対話できないからと。愛子はあくまで先生と生徒として話をするつもりなのだろう。

 

 やがて、愛子の呼びかけに清水の意識が覚醒し始めた。ボーっとした目で周囲を見渡し、自分の置かれている状況を理解したのか、ハッとなって上体を起こす。咄嗟に、距離を取ろうして立ち上がりかけたのだが、まだ後頭部へのダメージが残っているのか、ふらついて尻餅をつき、そのままズリズリと後退りした。

 

「清水君、落ち着いて下さい。誰もあなたに危害を加えるつもりはありません……先生は、清水君とお話がしたいのです。どうして、こんなことをしたのか……どんな事でも構いません。先生に、清水君の気持ちを聞かせてくれませんか?」

 

と聞かれたがそれには答えず。

 

「うわあああああああああああああ!」

 

と悲鳴を上げた。

 

「どうしました?」

 

愛子が尋ねると清水はこう言った。

 

「い…い…樹とルルーシュとハジメが…化けて出た〜〜〜!」

 

「「「いやなんでなんで?」」」

 

どうやら清水は、奈落に落ちた樹たちが生きていたことを知っていたようだ。だが、目の前に本物がいきなり現れ、少々驚いてしまったらしい。

 

「ほ、本物…なのか?」

「ああ、そうさ」

「久しぶりだな、幸利」

「元気だった?」

 

「み…みんな〜〜!」

 

いくら呼ばれた『神の使徒』とは言えど人の子であり、まだ10代の子供。清水は、久しぶりの友との再会に喜び…泣いた。

 

ーーーーーーーーーー

 

樹、ルルーシュ、ハジメは清水からの話を聞いていた。なぜウルの町を魔物で襲ったのか?を聞きたかったのだ。だが…

 

「「「知らない?」」」

 

清水の口から出てきた言葉はそれだった。

 

「覚えてないんだ。どうしてそんなことをしたのか。もしかしたら俺の心の中にあるやましい気持ちを利用されただけなんだと思う」

 

これには樹たちも、聖騎士の3人も驚きを隠せない。いや、言葉が見つからないと言った方が正しいだろう。小さな手がかりでさえ無くなってしまったのだから。

 

「ただ…」

 

清水はつぶやく。

 

「操られる前に見た気がする…何者かが『ちぃ、時間のかかるやつだ』って言っているのを。」

「どんなやつだった?」

 

「ピエロのような帽子を被って、ピエロの服を着て、変な鎌を持っていた。一瞬だったからわからないけど…」

 

清水は特徴を見ていたのだ。これで探すことができる。樹たちは唯一の手がかりを知ることが出来たのだ。

 

「なあ、樹…ルルーシュ…ハジメ…俺、どうしたら良いんだ?やり直せるかなぁ」

 

清水は泣きながら訪ねた。そこにミスリルが話す。

 

「誰かに呆れられるのは簡単だ。だが認められるのはそうはいかない。」

 

ミスリルはそこまで言うと、清水の頭に手を乗せる。

 

「だが、やり直す事はできる。それは難しいことだが、きっと出来るだろう。」

 

その後、愛子が続ける。

 

「清水君。もう一度やり直しましょう? みんなには戦って欲しくはありませんが、清水君が望むなら、先生は応援します。君なら絶対、天之河君達とも肩を並べて戦えます。そして、いつか、みんなで日本に帰る方法を見つけ出して、一緒に帰りましょう?」

 

「ありがとう先生」

 

 

 

 

 

「バ〜〜〜〜〜〜カ!一度間違えた奴が…やり直せるわけねえだろぉ!」

 

その声と共に放たれたレーザー光線は、清水の心臓を直撃!清水はそのまま倒れてしまった。

 

「「「清水!」」」

 

「え…ちょっと!俺は褒めてくれない訳?せっかく人でなしのカトンボを駆除したのにさ。」

 

声の聞こえた方を向くとそこには…

 

黒いピエロ帽にピエロの服、怪しく刃が光る鎌を装備した、トランプのジョーカーのような姿をした男が浮いていた。

 

「お前は何者だ!」

 

樹が訊ねた。

 

「俺か?俺は『道化師』だ。それ以外の何者でもない!だが、あえて名乗るなら『ハーメルン』そうだ、『ハーメルン』と名乗ろう!」

 

ハーメルンと名乗った男は怪しく笑った。

 

 

 




はい、どうも。いかがでしたでしょうか?

今回、この話のラスボス、『ハーメルン』が登場しました。このキャラクターは、
『日常組』の動画シリーズ『マイクラ脱獄』に出てくるキャラクター『道化師』にオリジナル設定を加えた、オリジナルキャラクターとなっております。このキャラクターの関わりをお楽しみください。

今回は、次回予告はありません。次回もお楽しみに!


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第38節 

はい、こんにちはこんばんは。Warewareでございます。
今回はあえてサブタイトルを乗っけていません。本編の最後に書いてあるので、
ぜひ楽しんでください。

後書きに報告がありますので、よろしくお願いいたします。


ハーメルンと名乗った道化師は空に浮かびながら、怪しい笑みをこぼす。

 

「ハーメルン…だと…」

 

樹が事実を飲み込もうと、繰り返した時、

 

「いや…どうして?お前が…年を重ねていない?」

 

ユエが驚いた表情を浮かべていた。彼女とハーメルンに何があったのだろう?その疑問は、すぐに解明された。

 

「おや…誰かと思えば”アレーティア”ちゃんじゃあないか?叔父様と国を滅ぼして以来かな?」

 

「「「もしかしてユエ(さん)を襲った奴って」」」

 

「そうだよ!俺だ!」

 

かつて存在していた吸血鬼の王国。史実では300年前に滅んだと言われているが、ユエを封印させることで再起を後世に託す事にしたのだ。

 

その張本人が今目の前にいるのだ。

 

「一体なぜ?そんな事を?」

 

ハジメが訪ねる。その返答はあまりにも身勝手だった。

 

「そんなの簡単だよ〜!新しい力、『エヒトの力』を手に入れたら嬉しくなっちゃって、近くにあった国を滅ぼしたのさ!フハハハハハハ!」

 

そう高笑いをするハーメルン。

 

「…よくも…よくも叔父様を〜〜」

 

さすがのユエも怒りを露わにして、叫びながら飛びかかっていく。が

 

「だから言ったでしょ…あの時も…そう言う仇討ちとか…虫唾が走るんだよ!」

 

「ワシに任せてもらいます〜!ハーメルン殿!」

 

「ッ!? ダメです! 避けて!」

 

 そう叫びながら、シアは、一瞬で完了した全力の身体強化で縮地並みの高速移動をし、ユエに飛びかかった。

 

 突然の事態に、全員が動けなかった。シアがユエを抱きしめ、何かから庇うように身を捻ったのと、その側を包帯がかすめ、大地を割ったのがほぼ同時だった。

 

「危機一髪ですぅ」

 

「あかんなあ…あの不意打ちを交わすとか…未来でも見えてるんとちゃうか?」

 

気がつくと、ハーメルンのそばに同じく道化師のような身なりだが、デスマスクのような仮面を付けた男がいた。ハーメルンと同じく胡散臭さが目立つが、そいつは腕から包帯を生やしていた。

もう一度言おう、

 

腕から包帯を生やしていたのだ!

 

その姿を見た樹が、一気に怒気を解放した。

 

「てめえ!ギョウか?」

「お久しぶりどすう。イツキくん?せやで〜ワシが“寄成ギョウ”や。元気そうどすなあ。」

「俺は会いたくなかったな」

 

樹はギョウを睨み返した。その眼はもはや許すまじ、と言う程である。ここまで怒っていたのは、ユエやシア、ミレディはもちろんのことだが、ハジメやルルーシュですら、覚えがなかった。

 

「樹、アイツは一体?」

「アイツは俺が最も嫌いな人種だ。誰彼構わずイジメ倒し、そいつを生きがいとしているヤバい奴さ。俺はコイツ以上のクズを知らない!

そして… 雫と美玖を1番虐めていた奴さ。」

「「な…なんだと〜!!」」

 

あまりに衝撃的な内容だった。ルルーシュもハジメもそれは知らなかった。というのも、ルルーシュとハジメは、雫と美玖が虐められていたのは知っていたが、誰に虐められていたかは樹から聞いていなかった。

 

「その反応…なるほどやなあぁ、雫はんも美玖はんもここにおると言うことやなぁ。これは楽しみやなぁ。ギョッギョギョギョ!」

 

ギョウは少し特殊な笑い方で笑った。

 

この男、寄成ギョウについて解説しておこう。某カードゲームアニメを観たことがある方は知っているだろうが、この男は、自分の目標の為には手段を選ばない特徴がある。

 

もちろんこの世界でもその狡猾さは健在で、中学時代…雫との剣道の試合では、直前の雫の飲料に毒を混入させて飲まし、さらに美玖を人質に取ることで戦えなくしようとした。もちろん雫はその状態では戦えず、ギョウはその状態で勝利してしまった。

 

これを知った樹は大激怒!雫と美玖を利用した事に我慢ならず、ギョウを問い詰めたのだが、そこに例の勇者(笑)

天之河光輝がギョウの味方として立ち塞がる。ギョウは自らの話術で天之河の思い込みが激しいところを検知し、樹が雫を戦わせないようにして勝った。と言い、樹を倒すと言って味方に引き入れたのだ。

 

しかし、雫は倒れながらもその瞬間を撮影・録音しており、ギョウの悪事はバレ、剣道界を永久追放となった。それだけではなく、学校でも『ギョウが八重樫姉妹をいじめていた』ことがバレてしまい、ギョウは転校を余儀なくされた。

 

それ以来、樹はギョウに会う事なく暮らしていたのだが…

 

今回数年ぶりに再会してしまったのだ〜!

 

「てめえがそっちについたって事は…報酬はもしかして…」

「そやそや…雫はんと美玖はんをワシの彼女にする〜!あん時はイツキくんの邪魔で出来へんかったからな〜今度は本気や〜」

 

言っていることはすごくロマンチックだが、相手を煽っている言葉のせいであまりにもゲスい雰囲気しかしない。

 

「お前一回振られてるだろ!それに頭に来て2人をいじめていたくせに!それを棚に上げて、『付き合ってください』って…どの口が言うんだよ!」

 

樹は怒りながらギョウに近づこうとする。だが…そうは問屋が卸してくれない。

 

ドッカ〜〜〜〜ン!!!

 

後ろで大きな音がしたかと思うとすぐに魔物の雄叫びが聞こえ、少し間隔を空けて人々の悲鳴が聞こえた!聞こえるはずのない悲鳴に、樹たちは驚く。前を向くとハーメルンとギョウがしてやったりの表情を浮かべていた。

 

ギョウの方はよっぽど面白かったのか、地面をのたうち回り、『ギョッギョギョギョギョギョッギョギョギョギョ』と笑いながら、地面を叩いていた。

 

「いや〜バカだよねえ〜」

 

今まで話していなかったハーメルンがいきなり話し出す。その顔は………………

 

笑顔だった!

 

ただの笑顔なら問題はないだろう。だが、その笑顔は右の口角を上げただけである。

 

「「「「「「「「「「「「!!!!!」」」」」」」」」」」」

 

底知れぬ恐怖を与える冷たい笑み。今戦っている者たちは全員動けなかった。『動いたら殺される』そう思わせるような笑顔に、恐怖を覚えたのである。

 

「俺らが何もしないと思った?爆弾仕掛けて、壁壊して、魔物で攻める。こんなの常識だよ〜!騙し討ちは戦場で当たり前でしょう?フハハハハハハ!」

 

「せや〜こんなの常識!こんなのに気付かない君らが悪いやん?君らの努力は…

               む…だ…や…っ…た

ギョ〜ッギョッギョギョギョギョギョギョギョギョ!ギョ〜ギョッギョギョギョギョ!」

 

蹂躙して、全てを壊し、人を襲う魔物たち。聖騎士が人々を救っているが、それでも全員は救えない。他のメンバーがやってきた事は全て無駄だった。そう言われても反論は出来ない。彼らの心に絶望が降りかかったきた。

 

だが…ギョウとハーメルンは気づいていなかった。怒らせてはいけないモノを怒らせてしまった事に…

 

ーーーーーーーーーー

 

---樹side ---

 

何も出来ない。それは事実だった…俺は一番許せなかった…元々正義感が強かった訳ではない…だが、いつからだろう?誰かが泣くのを見たくなかった。だから力をつけた。人の役に立ちたかった。それだけだった…

 

だが…いざ力を手に入れてもどうだ?結局何も変わっていない。人を守れず、悪を逃し、そして今も悪の総大将に決意も一蹴され、もう俺には何も残っていない…ナニモ

 

《ホシイカ…チカラガ》

 

声が聞こえる。マスタードラゴンではない、何かの。振り返るとそこには…

 

四本足で大きな翼を持ち、禍々しい眼と邪悪な角を持った黒龍だった。

 

「…嘘だろ…お前は…」

《ホウ…ワレヲシッテイルノカ? カツテコノセカイヲホウカイサセタ コノワレヲ…》

 

黒龍は樹に対して冷たく話した。その冷たさは『興味がない』と思わせるようだった。

 

《シテ…ドウスル? チカラヲエルノカ?》

 

改めて問われた俺。どうするかは、もう決まっていた。

 

「チカラを貸してくれ。おまえのチカラが必要だ」

 

《ソウカ…フハハハ…フハハハハハハ!》

 

黒龍は満足そうに笑った。

 

《デハ ワレノチカラヲ ゾンブンニツカエ! ワレノナハ…》

 

その声を聞きながら、俺は意識を失っていった。

 

---樹side off---

 

〈BGM エヴァンゲリオン新劇場版Q より バベルの光 GOD Message〉

 

グォォォォォォォ!

 

突如放たれた咆哮に、ルルーシュが、ハジメが、そして他の者たちが振り返る。それは敵であるハーメルンたちも同じことだった。

 

「イ…イッ君…どうしたの?」

 

ミレディは話しかけるが、絶句してしまう。何故なら樹の眼は 紅く染まっていたからだ!

 

その眼の色はルルーシュやハジメはおろか、ユエやシア、ティオですら驚く程である。それどころか、

 

「そんな…」

「あの眼は…」

「まさか…」

 

聖騎士のミスリル、スザク、バローネも動揺していた。

 

「アレは…マジかよマジかよ!」

「嘘やん…あいつがアイツを?」

 

ハーメルンとギョウが顔を見合わせ、震え上がった時…

 

ピシッ!ビキビキ!パリン!

 

と空が割れると、

 

ゴオオオオオオオオオオ!

 

渦を巻き、その渦の中から5体の龍が現れた。そのうちの2体は何処かへ飛び去っていき、残りの3体はウルの町に降り立った。

 

「あ…あれは…そんな」

「あれは…叔父様が言っていた…」

「父様から聞いたお伽話の龍…」

「ふむ、やはりこうなる宿命じゃったのか?」

 

お伽話を知っている者は尚更、そうでない者も驚きである。それだけその龍は恐ろしく、それを呼び出した樹も恐ろしく感じてしまった。

 

”邪神により世界、危機に瀕し時、龍の騎士目覚め、世界を救いせん その悪意、龍を蝕みし時、禁忌の龍、異界より出で、世界を滅ぼさん“

 

これがトータスに伝わる黒龍伝説である。この話には続きがあり、そこにはその者の名が記されていた。

 

                  数多の飛竜を駆遂せし時

                   伝説はよみがえらん

               数多の肉を裂き 骨を砕き 血を啜った時

                   彼の者はあらわれん

                    土を焼く者

                 鉄【くろがね】を溶かす者

                   水を煮立たす者

                    風を起こす者

                    木を薙ぐ者

                   炎を生み出す者

 

                    その者の名は

 

 

                    封印されし禁忌(ミラボレアス)

 

 

 

                   ここに伝承が現実になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

               目覚めし龍たちはありふれない能力で反逆する

 

 

 

 

 

 

                   第38節

              

 

 

 

 

 

 

 

                  封印されし禁忌たち




次回:ミラボレアス

今年分は以上で投稿を終了します。そして『冬眠期間』と題しまして、冬の間は投稿をお休みさせて頂きます。
障害の都合、冬の間は動きにくくなってしまうので投稿が難しくなってしまうので…

年明け一発目に季節の話を投稿はします〜

ではまた来年お会いしましょう〜 良いお年を〜


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第39節 ミラボレアス

皆さん、こんにちはこんばんは。Warewareでございます。
お久しぶりです。そしておはようございます!

冬眠より復活しました。今年もよろしくお願いします〜


「グアァァァァァァァ!」

 

とその伝説の龍は雄叫びをあげ、ハーメルンとギョウに突っ込んでくる。

 

ハーメルン「おいおいおいおいおい…マジかよ!あんなの呼べるって聞いてないぞ!」

ギョウ「ハーメルン殿、ここは撤退した方がええ気が…」

 

だが、その龍が2人に突っ込んでくる事はなかった。その2人をスルーして、はるか遠くから見張っていた人間に直撃した。龍はその人間を咥え、美味そうに頭から飲み込んだ。なお、彼らは気づいていないが、この人間は魔人族であり、とある理由で清水を監視していたのだが、見事に伝説の龍のエサとなった。

 

魔人族を飲み込んだ龍は、次に近くにいたルルーシュに襲いかかった。ルルーシュが回避するが、回避された龍は腹が立ったのか、手当たり次第にブレスを吐き出した。

 

「「「「「うおぁぁぁぁぁぁ」」」」」

「「「「「キャアアアアアアアアアアアアアア」」」」」

 

龍騎士や聖騎士だけではなく、ユエやシア、ミレディに優花、双葉までもが悲鳴を上げた。水はおろか、鉄や龍ですら跡形もなく溶けてしまうブレスに地面すらダメージを受ける。なお、同じタイミングで出てきた紅い龍と白い龍は、全く動く事なく、光り輝くと、そのままカードになった。そして地面に落ちていった。

 

 

一方、樹が呼び出した黒い龍は未だ暴走を続けていた。魔物を喰らい尽くすだけではなく、他の生物…特に人間を狙って襲っているのだ。幸い、近くに他の人はいないので、狙っているのは、戦闘に特化した聖騎士や龍騎士のみだが、もしここに他の人間がいたら間違いなく滅ぼされていただろう。そもそも黒龍は『滅龍大戦』時に居たであろう伝説の生き物なので、その時の記憶から人間を敵視しているのかもしれない…

 

ミレディ「イッ君!落ち着いて!正気に戻って!」

 

流石のミレディも、樹が力に飲まれたと思い止めようとするが…

 

ミスリル「落ち着け!」

 

ミスリルに引き止められる。

 

ミレディ「離して!このままだと、あの時の二の舞に」

 

ミスリル「大丈夫だ、見ろ」

 

聖騎士に促され目線を向けると… 樹は右手で眼を抑え、左手で懸命にコントロールしようとしていた。その様子を見たミレディは立ち止まる。そして駆け寄ることをやめた。自分の愛する少年を信じて…

 

--- 樹 side ---

 

今、俺は自分の深層心理の奥で伝説の黒龍『ミラボレアス』と対峙している…訳ではない!なぜなら

 

ボレアス「そう、そうだ!その調子だ!」

 

カーレースに使うコックピットに乗り込み、必死に操縦していた。どうもコイツの力を使うには、こうやるらしい…

 

数千年前は、人間嫌いで龍騎士の言う事も碌に聞かなかった龍が、ここまで人間の文明に興味を持つとは思えない。と言うか、さっきまでカタコトの言葉を話していたヤツが、急に流暢な日本語で話し出した事にビックリだ!

 

現在、『ミラボレアス』に指示されながら運転をしている。ちなみにこのコックピットに描かれている障害物は、人間を模しており彼らを避けないと、ちゃんと現実で襲われるシステムになっている。こりゃマジで大変だなぁ…

 

ボレアス「右・左・右だ!」

 

樹「ちょ・ちょ・ちょ、待てって」

 

ボレアス「ア〜ほら見てみろ〜危ないじゃないか」

 

こんな感じで怒られながら運転中である。全然上手くいかないけど。というか俺はバイク派なんだけどなぁ…

 

ボレアス「しかし何でワシの力を使うのか、教えてくれんか?」

 

ミラボレアスは俺に尋ねる。

 

樹「…賭けだよ」

 

ボレアス「賭け?」

 

ますます気になって尋ねるミラボレアス。それに対して俺はこう答えた。

 

樹「一応、『ミラボレアス』と呼ばれるモンスターの事は知っていたさ。前の『龍騎士』から聞いていたしね。その上でこの能力を使いこなすには、怒りに飲まれそうなところで、本気でやらないとね。そうしないと…

 

                 意味ないからな!

 

俺は、龍の眼にしながら力強く応えた。

 

ボレアス「……アイツと同じか…覚悟を決めたのだな。」

 

ミラボレアスはその姿を見て、昔の龍騎士に重ねる。人の可能性を信じ続けた1人の男に。

 

ボレアス「…その覚悟、その心意気、その上でその冷静さ、賞賛に値する!」

 

ミラボレアスは大きい声で喜ぶと、俺の周りを回りだした。流石に大きな体の龍が俺の周りを回るのは驚きだがな。

 

ボレアス「あ…そうそう、もうお前は力をコントロールできるから、運転の練習はいらないぞ!」

 

樹「おいおい、それを早く言ってくれよ。まあ結構楽しめたけどな」

 

俺はそういうと準備を整える。向こうに戻り、暴走を止めるために。

 

樹「ありがとうな。『ミラボレアス』」

 

俺はアイツにそう言うと、精神世界からでる扉から外に出た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ボレアス「しかし、アイツらはまだ若いなあ。」

 

誰もいなくなった精神世界で、ミラボレアスは1人で呟く。

 

ボレアス「あの『剣の精霊』も『四天の龍』のボスも、そして…『裏切りの龍(ユダ)』もそろそろ動くだろう。

 

負けるなよ!子供達!」

 

1人でそう言ったミラボレアスであった。

 

ーーー 樹 side off ーーー

 

ミスリル「クッ!まだ終わらないのか?」

 

「グギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

未だに伝説の黒龍、『ミラボレアス』は暴走を続けていた。止まる様子はなく、寧ろ最初の頃より強くなっている気がする。

 

双葉「お義兄さん」

優花「樹さん」

ユエ「…イツキ」

シア「イツキさん」

ミレディ「イっ君」

ティオ「樹殿」

 

6人は全く動かないが信じていた。目の前の少年が暴走を止めることを…

 

次の瞬間、急に黒龍が光り輝いたかと思うとカードになり、その場に落下した。

 

「「「「「「樹(さん)」」」」」」

 

「おわっ!」

 

6人は片目を抑え、膝をついている樹に飛びついた。まさか飛びつかれると思っていなかったのか驚く樹。全員分の体重を支えきれず倒れる樹。

 

ルルーシュ「樹、お疲れ様。良く制御出来たな。」

樹「いや〜マジでエグかったよ〜 お前もやると思うよ」

ルルーシュ「…遠慮したいなあ」

 

ハジメは離れた場所で、1体の黒龍の白い姿、『祖龍』の力で清水の回復を試みており、この場にはいなかった。

 

樹「ところで奴らは?」

 

「「これで終わったと思うなよ(や)」」

 

どこからか声が聞こえた。さらに

 

「クハハハハハハハハハ」

「ギョッギョッギョッギョッギョッギョッギョッ」

 

という笑い声も聞こえてきた。空をみあげると、空間に渦が現れておりその中に2人はいた。

 

ハーメルン「良くも恥を掻かせてくれたなぁ!次会った時は俺たちの本気を見せてやるぜ!」

ギョウ「他にもおる仲間と共に滅ぼしてやるさかい、楽しみに待っとれよ!」

 

そう言うと渦の中に消えていった。渦は2人を飲み込むと消えてしまった。

 

樹「やっぱり他にもいるのか?仲間が…」

ルルーシュ「だが、俺たちが止めてみせる!」

 

「2人だけで背負わないでよ。」

「俺らにも背負わせてくれ」

「僕たちにできることなら協力するよ。」

「…まあ、そう言うことだな」

 

ハジメ、ミスリル、スザク、バローネが集まり、肩を組んだり手を合わせる。

 

「「これからも頼むぜみんな」」

 

2人はそう答え、サムズアップした。新たな力を得た3人の龍騎士はさらなる戦いに身を投じて行く決心をしたのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

???「流石ですね。やはり同じ名前だからですかね。…またよろしくお願いします、マイマスター」

ハジメ「うん?」

 




〈イメージボイス:???〉

皆さん、初めまして。次回予告です。

マスターはどうやら夢を見るらしいです。そこには私の姿が…
そこで名前と指名を知る。自分の力の事も…
目が覚めると、目の前に私がいて…

次回: 剣の精霊  お会いできる日を楽しみにしています。


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第40節 剣の精霊

はい、こんにちはこんばんは。Warewareでございます。
今、特に書くことがないので、本編行っちゃって下さい!

※ ネタが切れなくて大変!早くヒロインとの再会書きたい…


そこから先は、あっという間だった。破壊された防護壁を、ハジメが強化された『生成魔法』で作り直したり、魔物に襲われ負傷した人々をルルーシュと『治癒騎士』の天職をもつ双葉が治療をしたり、他に残ったメンバーで、復興の手伝いをしたりして1日があっという間に過ぎていった。

 

なお、レーザー攻撃を受けて意識不明の重体だった清水だが、自分の装備していたお守りとそれに気づいたハジメの適切な処置において一命を取り留めた(彼が眼を覚ますのはしばらく経った後になるが、それはまた別の話)

 

結局、新たな力を手に入れたは良いが誰一人としてその凄さに気付くことなく、その日はお開きとなった。だがむしろ知らなくて良かったのかもしれない。なぜなら…その力は…開けてはいけない… 『パンドラの箱』なのだから。

 

---ハジメ side---

 

ここが『深層心理の世界』とわかるまでに時間はかからなかった。どこまでも広がる白い空間。樹とルルーシュから聞いていたから驚くことはないけど、多少は似ているのかな?

 

でも…流石に…これはないでしょう!

 

今、僕の眼の前には巨大な神殿?教会?の様なものが建っていた。壁面や床は白い大理石で造られ、すごく荘厳な感じがする。

 

ギィィィィィィ

 

大きな音を立てて扉を開けて中に入る。時計をイメージされた絵が描かれ、山を現す彫刻が彫られ、この世のものとは思えない素晴らしさを感じる。

 

ハジメ「ん?」

 

奥にピアノをモチーフにした祭壇があり、その上に剣を刺せる台座があった。そこで僕は眼を疑った!

そこには紺碧に輝く掬と白銀の刃が着いた一本の剣が突き刺さっていた!

 

ハジメ「この剣って…まさか」

 

???「それが、『マスターソード』あなたが現在使用しており、かつての『光龍騎神』が使用していた伝説の剣です。」

 

ハジメ「え?…」

 

ハジメが振り返ると台座の近くに、全身が青く無機質に見えるが、彫刻の様に見える人がいた。いや人間と言うよりは『精霊』の方が近いだろう。

 

ハジメ「あ…あなたは?…」

 

???「申し遅れました。私、『マスターソード』の精霊『ファイ』と申します。あなたの力が一定の領域に達したため、こうして深層心理の世界でお会いできた次第です。」

 

ハジメ「一定の領域って事は…昼間の『黒龍』の話?」

 

ファイ「肯定。神話の中で最も謎に包まれている『祖龍』の力があなたを選び、神の力が強まったため、剣の記憶と共に私が目覚めました。」

 

ハジメ「どう言う事?」

ファイ「唐突過ぎて理解出来ていない確率85% では説明いたします。」

 

ファイの説明を要約すると、

 

禁忌の龍は同じ名前の別種の龍でありそれぞれ『黒龍』『紅龍』『祖龍』と分かれ、3匹が自分に合った宿主を見つけ力を与えるのだそう。そして、それぞれの龍騎士の名前である『龍王』『覇王龍皇帝』『光龍騎神』は、相性の良い禁忌の龍の力を得る事で、その先の姿に進化できるのだとファイは言った。

 

ハジメ「そうだったんだ。じゃあこうなる事は決まっていたんだね。でも『祖龍』が僕を選んだのは?」

ファイ「おそらくあなたの『勇気』に龍が惹かれたのでしょう。私をずっと使っていた『時の勇者』に似た勇気を持つあなたを」

ハジメ「『時の勇者』?今までも『光龍騎神』がそこに進化した事があるの?」

ファイ「いいえ全く…なんなら『解放者』たちが戦いをした際も、目覚めませんでした。」

ハジメ「なっ!!」

 

その事を聞くや否や、ハジメはファイに詰め寄った!

 

ハジメ「どうして…どうしてそんな大事な時に助けなかったんだ!あなたが助けなかったから、沢山の人が死んだんだ!死んでいった人や、生き残ったミレディさんがどれだけ苦しんだと思っていたんだ!」

 

ハジメは詰め寄ったが、そこまで言って『しまった』という顔をした。これは今まで彼が思っていた事だったのだ。天之河と同じ、よく知らないままで否定するのは良くないと知っている。にもかかわらず否定してしまった。

ハジメはすぐに謝った。

 

ハジメ「ごめんなさい!何も考えず否定してしまった。あなたにも事情があったのに」

ファイ「…それですよ。マイマスター」

ハジメ「え?」

 

ファイの言葉にハジメは驚く。

 

ファイ「今までの『光龍騎神』は皆優し過ぎたのです。『神の使徒』と呼ばれる、神の作り出した人形や操られた人間にも情けをかけるほどでした。申し訳ありませんが、それは勇者とは言えません。」

 

ファイは一息つくとさらに続ける。

 

ファイ「“優しさだけでは人は救えません。人を許す優しさ、悪を倒す強さ、そして人々が傷つくかわりに自分が傷つく勇気を持つものが勇者と呼ばれるのです” 失う事を恐れ大事な所で敵を倒す覚悟を持たない者は『勇者』のフリをした『偽善者』です。」

 

そこまで言われてハジメはハッとした。ファイは自分の覚悟を見るためにここに呼んだのだ。確かに自分は正義感が強い。天之河にも引けを取らないくらいに。だが、この2人には決定的な違いがある。それは、「信じる(偽善者)疑う(勇者)かである」

 

天之河はご都合解釈により都合の良い事だけを受け入れ、都合の悪い事は自分に都合の良い方に解釈してしまう。さらに人を助けるだけで、アフターケアをしない。

一方、ハジメは聞いた事を間に受けず、きちんと調べて真実を見極めてから動く。もちろん人助けもそうだ。ハウリア族のボディーガードだけではなく、その後の強化まで行うのがハジメクオリティ。

戦争をすると決めた際もそうだ。出来ると決めつけて勝手に戦争をすると決めた天之河には、人の命を奪う勇気を持っているのだろうか?

密かにそう思ったハジメであった。

 

ファイ「そろそろ時間が迫って来ました。大事な事を伝えておきます。」

ハジメ「なんですか?」

ファイ「3つの神殿で『マスターソード』を強化して頂きたいのです。聖なる力が失われているので…」

 

『グリューエン大火山』『メルジーネ海底遺跡』『神山』にある『バーン大迷宮』

これらの場所の最深部で、聖なる炎を剣に捧げる事で強化されると言う。

 

全ての話を聞き終えると、ハジメの意識が遠くなってきた。ハジメはファイにお礼を言う。

 

ハジメ「ありがとうございます。ファイさん。」

ファイ「いえ、それほどでもありません。何かあれば、剣越しでいいので話掛けてください。では…」

 

その言葉を最後にハジメは意識が遠くなっていった。

 

--- ハジメ side off ---

 

ハジメ「ん?」

眼が覚めるとそこは、『ウルの町』にある宿だった。どうやら一晩中、夢の中で会話していたらしい。壁に立てかけてある『マスターソード』に眼がいく。今までより輝いて見えた。

 

ユエ「ムウ…ハジメ。コッチも構って。」

 

どうやらこっちのお姫様は嫉妬しているようだ。時計を見ると朝の9時。完全に遅刻である。ハジメはユエをお姫様抱っこで抱え、部屋を後にした。

 

ーーーーーーーーーー

 

誰もいない部屋に、緑の帽子に緑の服、盾と剣を持った青年がいた。耳は尖っていてエルフのようだった。だが精神体なのだろう。体が透けていた。彼の名は『リンク』 始まりの時の勇者である。

 

リンク『ファイを頼むよ!現在の『時の勇者』、応援しているから…」

 

リンクはそう言うと、部屋から消えていった。自分の意思を託して…

 




〈イメージボイス:ハジメ〉

次回予告です。
僕たちはフューレンに戻ります。双葉さんと優花を連れて。
樹はある化学者の元へ、僕は任務の報告へ、
するとルルーシュが何やら不思議な落とし物をしてきて…え、嘘でしょ!

次回 海人族 拾いました! …なんで?


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