時空を操るもの (旭姫)
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プロローグ

例の新作です


司馬家

 

それはただの一般の家ではない

 

魔法師界で【触れてはならない者達(アンタッチャブル)】と呼ばれ、恐れられている四葉家のルーツにあたり、さらにCAD産業ではFLT(フォア・リーブス・テクノロジー)という会社の経営も行なっている

 

そしてFLT社長に代々受け継がれる椎原という苗字

 

これを受け継ぐものは、政財界でもトップに立つことを意味し、日本国内でも数少ない四葉家のスポンサーとなることを意味する

 

そして、FLT社長は司馬家のトップ、つまり当主が受け継ぐことになっている

 

2079年司馬家当主である司馬達郎と彼の妻司馬小百合の間に男の子が生まれた

 

その子供は達也と名付けられ達郎と小百合の元、英才教育を施された

 

まずは魔法を使えるかどうかを調べる為にスポンサー権限で魔法適性を調べることができる四葉家2代目当主四葉英作を呼び出して調べさせた

 

そこからわかったことだが、達也は魔法力がとても高く、想子量も父達郎からの遺伝で膨大であり、母小百合からの遺伝で干渉力がとても強いそうだ

 

さらに、固有魔法として『時空間操作』を持って産まれた

 

英作は達郎に、『時空間操作』を悪用させないよう提案した

 

達郎としても『時空間操作』に嫌な予感しかせず、英作の調べた『時空間操作』の性能を聞いて、その案を認めた

 

それからは英作のアドバイスを受けながら達也への英才教育を施し、10歳になる頃にはCADの調整技術やソフトウェア知識を利用してFLTの研究員達に混じって会社の利益を生み出していった

 

一方では【今果心】と呼ばれる九重八雲に弟子入りして徒手格闘術を学んだ

 

そんなこんなで迎えた2092年

 

ついに事件が起こってしまった

 

偶々沖縄に旅行に来ていた達也達司馬家の3人は大亜連合軍による侵略を受けた

 

達也達は一般人と共に避難用シェルターに避難していた

 

そこでそとで聞こえた銃声を調べに達也が出ると、入れ違う形でゲリラ兵による反乱に巻き込まれる

 

達郎と小百合はそこで撃たれてしまった

 

達也が戻るとそこには血に染まった両親や一般人が転がっていた

 

「父さん!!母さん!!」

 

達也の『時空間操作』は時間や空間に作用することが出来るが、空間はともかく時間の方はうまく使いこなせておらず、他人には使えなかった

 

「…たつ…や…」

 

「父さん!!」

 

「『再生』を使う必要はない…。」

 

「どうして!!」

 

「俺は…もう…もたない…」

 

「父さん…」

 

「達也…明日を生きろ!これを乗り越えろ!その先にお前の幸せがあらんことを…」

 

そういって、司馬達郎は亡くなった

 

「父さん!!!!」

 

その後、やってきた国防陸軍の人間に頼んで軍属になると同時に前線へと向かった

 

前線では突如現れた背の小さな兵士に驚きつつも進軍を続けた

 

しかし、大亜連合の侵略軍には驚きの光景が広がった。

 

その兵士が右手を向けると、突如の氷の槍が出来上がり自分達へと襲いかかる

 

さらに、別の場所では、火の玉が沢山飛んでいたり、風の刃が飛んでいたり、そのまた別の場所では突如体が浮かび上がり100mほど浮かぶと落とされる

 

そしてその兵士が左手を向けると、負傷した兵士が()()()()()()()()かのように傷がなくなり、何事もなかったかのように立ち上がり戦線に復帰した

 

気付けば大亜連合軍は撤退を余儀なくされた

 

しかし・・・

 

「報告!南東30km程に大亜連合連合艦隊が出現!」

 

『前線に告げる!捕虜を連れて内陸部へ』

 

陸軍兵達が内陸部へと戻るなか達也は動かなかった

 

そんな達也に当時の恩納基地のトップである風間晴信が声をかけた

 

「君も早く戻るんだ」

 

「風間大尉。敵艦を撃退する術があります。」

 

「な、なんだと!?」

 

「だから、風間大尉が下がってください」

 

「いや、私も残ろう。」

 

「しかし、成功するかわかりませんよ?」

 

「100%成功する戦争なんて無いし、兵士は死と隣り合わせ。覚悟なら出来ている」

 

「わかりました。では、私の近くへ」

 

すぐに自身の異能を発動する

 

達也と風間大尉の回りに空間障壁が生まれた

 

「これは…」

 

達也は風間大尉の呟きに反応せず想子を活性化させる

 

達也は『時空神の眼』で艦隊を見つける

 

「見つけた。『作り替えし世界(リクリエイション・ワールド)』、発動!!」

 

大亜連合軍の旗艦を中心に()()()()()()

 

次の瞬間には()()()()()()()かのように消えた

 

「ふぅ…。終わりました。戻りましょう。」

 

「君はとんでもないことをする少年のようだな」

 

「そうですね。では改めて自己紹介しましょうか。FLT社長()()()()こと司馬家新当主司馬達也です。これからよろしくお願いします。風間大尉殿」

 

 




新作です。

まだ入学編には入りません。

七草泉美との出会いや両親のいなくなった後の達也の動きなど書くことが多いので…

これからもこの作品をよろしくお願いいたします

ではまた次回お会いしましょう


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両親無きその後

連続投稿です


2092年8月上旬に起こった沖縄防衛戦

 

日本側の戦死者は殆どいなかったが、達也の両親は亡くなった

 

その報告を聞いたFLT社員達は嘆き悲しんだ。

 

そして、達也がその後を継ぐと宣言すると社員達は大喜びし、それと同時に両親を失った達也がそれを受け入れ前に進もうとしているのに自分達が落ち込んでどうすると、気持ちを入れ替えた

 

ここに3代目FLT社長椎原辰也が正式に誕生した

 

ちなみに、FLTは達郎の父、つまり達也の祖父に当たる人が起業した会社だった。

 

最初は小さな町工場のような規模であったが、2代目社長となった達郎によって規模も拡大し、CAD産業界で一二を争う程の大企業へと成長した

 

そんな達郎を達也は尊敬しているし、そんな父を見ていた達也だからこそこの会社に対する思い入れが強かった

 

達也が就任して2年後にはFLTは日本で一番のCAD会社へと成長することとなる

 

――――――――――――――――――――――

 

一方、沖縄防衛戦を経て、正式に軍属となった達也は未成年でありながら、沖縄防衛戦での功績を認められて少尉での配属となった

 

それから数日後、佐渡にも新ソ連軍からの侵攻を受けた

 

達也が配属された部隊はすぐにそこへの援軍に向かった

 

そこでは一条家が率いる義勇軍が応戦していた

 

達也はその持てる力を駆使して敵を追い払い

 

その功績から中尉へと最速での昇進を果たした

 

さらに、2092年11月には少将へと昇進した佐伯広海が第一○一旅団を設立

 

少佐へと昇進した風間玄信を隊長とする独立魔装大隊が作られ達也もそこへと配属になった

 

それから1年経ったある日、達也はFLTで想子が続く限り同じ魔法を停めること無く永続的に使える新たなシステム〈ループ・キャスト〉システムを発明した

 

そして、FLTと国防軍(第一○一旅団)の業務提携の一環として達也の所属する隊に〈ループ・キャスト〉システムを搭載したCADをいち早く導入した

 

その点もあり達也の階級は気付けば大尉となっていた

 

―――――――――――――――――――――――

 

早速だが、司馬家と四葉家の関係について

 

四葉家とはとある民間企業が運営していた〖『精神干渉』魔法を利用した精神改造による魔法能力の付与・向上〗を生み出す研究をしていた魔法技能師開発第四研究所から生まれた一族である。

 

その研究所から生まれた四葉家だが、四葉家という正式な一族として活動を始めたのは3世代目の四葉元造の時からである

 

ではその前はどうであったか。

 

四葉という苗字を使い始めたのは2世代目から

 

では、初代は?

 

初代、現在では長老と呼ばれるのは2名のみ

 

司馬空哉と東雲真彩

 

この司馬空哉という男は当時の司馬家の次男であり司馬家の元祖とも言える司馬洸哉の弟に当たる

 

そして、司馬家は四葉家独立の手助けもしたことから四葉家のスポンサーの1人として四葉家と密接な関係を持っている

 

2093年某日

 

達也の姿は四葉家にあった

 

「お初にお目にかかります、四葉真夜殿。亡き父に変わりまして、FLT社社長に就任いたしました椎原辰也こと司馬達也にございます。以後龍谷とお呼びいただけると幸いです」

 

「お顔をお挙げください、龍谷閣下。亡き達原閣下のことは聞いています。よくぞ耐え抜いてくれました」

 

「いえ。私の尊敬する父に言われたのです。『明日を生きろ』と。その言葉が活力になりました。…しかし、死とは、悲しいものなのですね。お世話になった英作お爺様の死も父から聞かされて、さらには自分の両親まで」

 

「それはさぞお辛いでしょうね。私も先月、姉を亡くしておりまして…。」

 

「これ以上大切な人を失うわけにはいかない。だからこそ私自身が国防陸軍に入りました。今の私には大切なものが沢山あります。FLTの社員達や所属する部隊の仲間達。」

 

「私は、いや我々四葉家はこんな今こそ龍谷閣下に、いや達也さんに全力で協力いたしましょう」

 

「…ありがとうございます。」

 

達也は宣言の中に隠した感情を押し止めていた

 

しかし、精神関係を研究テーマとしている四葉家の当主にはそれが気付かれていた

 

「その年齢でそこまでしっかりして…今は私しかいないのですよ。」

 

その言葉がきっかけになり約1年程溜めた感情が爆発した

 

およそ1時間程経って感情を押さえると、若干頬を染めつつも離れた

 

「…お見苦しい所をお見せしました…。」

 

「いいんですよ。可愛い1面も見れましたし。あ、そうだ。姉さんの娘さんで達也さんと同い年の女の子を紹介しましょうか。」

 

そういって真夜は四葉家筆頭執事である葉山忠教を呼び出して、指示を出すと葉山が部屋を出る

 

それから数分のうちに扉がノックされる

 

「御当主様。深雪様をお連れしました」

 

「通しなさい」

 

扉が開かれると1人の少女が部屋に入ってきた

 

「失礼いたします。叔母様、御用件はなんでしょうか?」

 

「紹介しましょう。私の姪に当たる四葉深雪です。今は四葉との関係を隠すために偽名を名乗らせていますが。」

 

「なるほど。はじめまして深雪嬢。司馬達也と申します。」

 

「深雪さん。こちらは司馬達也さん。私の友人の息子よ。」

 

「そうでしたか。はじめまして、四葉家直系、四葉深夜が娘、四葉家次期当主候補の東雲深雪と申します」

 

「よろしくお願いします、深雪嬢」

 

「こちらこそよろしくお願いしますね。」

 

「達也さんはあのFLTの社長であり軍人なのよ」

 

「ちょっと真夜さん!!」

 

「あのFLTですか!?」

 

「はぁ…確かに私はFLTの社長をしています。秘密ですよ。」

 

「も、勿論です」

 

「ところで深雪嬢は私と同い年だそうですね。高校はどうする予定で?」

 

「私としましては、魔法大学附属第一高校を受けようと思っていまして」

 

「そうですか。では、私も第一高校を受けましょう」

 

「あら、軍やFLTの方はいいのかしら?」

 

「あの人達も俺には学生生活を送って欲しいみたいで…」

 

「そうですか。では、試験頑張りましょう!!あ、それと私のことは深雪と呼んでください。敬語の必要もありません」

 

「……わかった。ならこれからもよろしくな、深雪。」

 

「はい!これからよろしくお願いします、達也さん!」

 

 




今回はここまでです

今回は達郎が亡くなってからの達也の動きを書きました

FLT内部でのこと、国防軍内でのこと、そして四葉家のこと

一応、これをきっかけに真夜は達也の親代わりとなり、今後あらゆる面で達也は真夜と関わっていきます

そして、深雪とも仲良くなり、(ここは本編では書くかわかりませんが、)深雪の入試のための家庭教師もしています。

次回は、メインヒロイン、七草泉美が登場

ちなみに、年齢操作のタグが適用されるのは七草の双子です

では、また次回


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新たな出会い

メインヒロイン七草泉美ちゃんの登場です




達也がFLTの社長となってから2年

 

この2年間は大変だった。

 

まずは、2094年4月、達也の所属する部隊に適用した〈ループ・キャスト〉システムを発表した

 

特許はFLTが持ちつつも、技術を利用した開発を認め、その対価として他社に1年ごと(毎年4月)にFLTへと使用料としてお金を支払うことを世界各地のCAD関連会社に約束させた

 

2つ目は、達也が椎原の名を受け継いだことで、政財界のトップ達に挨拶をしに向かった

 

彼等は前社長椎原達郎が沖縄防衛戦に巻き込まれて亡くなって息子である新社長として椎原達也が就任したことは知っていた

 

そして、その椎原辰也が社長となったことで他起業との競合に勝利し、CAD業界でも一番に経ったことから達也の手腕を認めている

 

2094年6月某日

 

横浜の某所にある政財界のトップしか知らない秘密の場所、〈V.I.P.会議室〉に達也含め、全員が集まっていた

 

〈V.I.P.会議室〉にいるのはそれぞれの業界でのトップた呼ばれる大企業の社長や様々なジャンルに触れている大きな財閥のトップ達だけ

 

そして〈V.I.P.会議室〉の場所は財務大臣を含めた閣僚や日本魔法協会や十師族ですらその場所や名前すら知らない

 

そんな公然には知られていない〈V.I.P.会議室〉では全員が揃って椅子に座っていた

 

「はじめまして、皆様。本来ならば就任してすぐに顔を出すべきだったのでしょうが、色々と立て込んでしまって顔を出すのが送れてしまいました」

 

「いや、それは気にしてはいない。たしかに達郎さんの後を継ぐのは大変だろうし、さらにそこからCAD業界No.1の業績を生み出すことが出来た手腕を我々は買っている」

 

「そうですか。それはありがとうございます。改めまして。2092年9月付けでFLT社社長に就任しました椎原辰也こと司馬達也です。」

 

「よろしく頼むよ、椎原辰也社長」

 

「皆さん、これからもよろしくお願いします」

 

「では、自己紹介も終わったことだし、最初の議題に入ろう」

 

それからは多くの議題について話した

 

他の参加者達も最初はただ経営ができるだけの子供だと思っていたが、今ではその考えは消え去り、共に財政界を支える同士の1人として認識するようになっていた

 

「以上で議題全て終わりだ。…お疲れ様でした。にしても達也君は素晴らしいね。我々大人に混じっても負けることなく議論に参加できる。父親も優秀なら子も優秀というわけだ」

 

「ありがとうございます。私としても尊敬する父を知る皆さんにそう言っていただいて嬉しい限りです」

 

そんなわけで〈V.I.P.会議室〉での顔見合わせを含めた会議も終わった

 

その帰り道、達也は街中で誘拐事件に出くわした

 

達也はすぐに助ける為に魔法を発動した

 

魔法を発動したのは誘拐犯の男達がCADを腕につけていたからだ。

 

達也は男達のいる空間に催眠効果を持つガスを作り出して男を眠らせる

 

その後、連れされようとしている女の子を助け出し、眠らせた男どもを車に入れて達也はその場を去った

 

もちろん、その時に男達から達也が関与した記憶を消した

 

―――――――――――――――――――――――

 

2080年、7月

 

七草家にとある双子が生まれた

 

先に生まれた方を香澄と、後に生まれた方を泉美と名付けた

 

七草家は魔法適性を調べることのできる守秘義務を絶対とする専門家を読んで調べさせた

 

すると、七草香澄は【万能】の七草家にぴったりな魔法力を持っていた

 

しかし、七草泉美は『分解』と『再生』という2つの異能のせいで魔法演算領域が占有されてしまった為に魔法力はあるものの【万能】の七草家に相応しくはなかった

 

そこで七草泉美をいないものとし、戸籍は香澄のだけ作った

 

彼女の魔法を研究しようにも泉美が持った魔法はまだわかっていないことも多かった為にうまくできなかった

 

そんなこんなで14年経った2094年

 

泉美が14歳になったことでついに七草弘一は彼女の魔法を研究することに正式決定した

 

まずは、怪しまれないように誘拐を装って研究所へと運ぶ算段をつけた

 

―――――――――――――――――――――――

 

一方の七草泉美は一族に認められていなく、使用人にまでも馬鹿にされる毎日だった

 

ある日、父弘一よりお使いを頼まれたのでそれの為に家から出ていた

 

そこで襲われた

 

泉美は対処しようとするが、自分の異能についてはよく理解できておらず、魔法もうまく使いこなせていない

 

男達がCADを付けていることからこれの主犯が父であることを察した

 

しかし、〈アンティナイト〉による『キャスト・ジャミング』によって上手く行動ができずに連れ去られそうになった

 

その時、突然男達が眠り始めて、浮いて車の中に押し込まれる

 

すると自分の体が浮かび上がり気づけば少年の腕の中に収まっていた

 

「大丈夫か?」

 

「あ、貴方は?」

 

「自己紹介は後で。それよりもここを離れよう」

 

少年は自分を抱えてなってきたと思われる車に乗った

 

「達也様。彼女はどういたしますか」

 

「穂波。急いで家まで向かってくれ。」

 

「かしこまりました。」

 

そこで落ち着いたのか、眠りについた

 




次回はこれの続きを書いてプロローグ全部終わらせます

それが終わったら入学編の前に簡単なキャラ設定を挟みます

本編はその後です


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義妹との出会い

ここで先に告知をしますが、キャラの多さ的に入学編から一部台本形式になると思います




目が醒めると、そこには誘拐を阻止してくれた少年とその少年の乗っていた車の運転手が目の前にいた

 

「あ、あの…貴方は?」

 

「あ、すまない。俺の名前は司馬達也だ。そういう君は?」

 

「…七草泉美です。」

 

「…七草家の令嬢がどうして?」

 

「一族から腫れ物扱いされていたのです。おそらくあの誘拐は父の差し金…です。」

 

「穂波、すぐに戸籍を調べろ。もし()()()()()()()()俺に知らせろ」

 

「はっ!」

 

それからその少年、達也と名乗る男は自分のことを看病してくれた。

 

「達也様。やはりありませんでした。」

 

「わかった、真夜さんに連絡を入れておけ」

 

ん?真夜さん?

 

「御当主様にもですか?」

 

「ああ。彼女なら何か知っているだろう。彼女の魔法適性は【万能】の七草家というには異質すぎる。」

 

「私の魔法適性を見たのですか?」

 

「すまない。誘拐犯が魔法師だったのに違和感を覚えてな、悪いが調べさせてもらった」

 

「そ、そうですか…それで真夜さんっていうのは…」

 

「四葉家当主の四葉真夜さんだ。幼い頃からお世話になっていたからな。親代わりみたいなもんだ」

 

「そうだったんですか。」

 

「ああ。とりあえず、君の対応については後で決めるから今はこのまま寝ていてくれ。」

 

その言葉を皮切りに再び眠ってしまった

 

――――――――――――――――――――――

 

泉美が眠ったのを確認して達也は下に降りた

 

達也の家は地上2階、地下2階の計4階構成になっている

 

地下の構成は地下1階が闘技場、地下2階が研究所になっている

 

達也は現在地上1階にある巨大フィルターを使って通話をしていた

 

相手は四葉真夜

 

「ご用ですか、龍谷閣下。」

 

「今は普通でいいです。」

 

「そうですか。では、どういった用件ですか?達也さん」

 

「七草泉美という少女はご存知ですか?」

 

「七草?七草の令嬢は真由美嬢と香澄嬢だけだと記憶しているわ」

 

「やはりか…実は――」

 

達也はそこで泉美の魔法についてや境遇を話した

 

「そうでしたか。十師族が嫡子に求めるのは魔法力のみ。たしかにその泉美ちゃんの異能は素晴らしいものだけれども、そのせいで魔法力が少ないのならその境遇の悪さも納得できる。それに、あの狸の事ですから余計にそうでしょうね」

 

「狸というと弘一殿のことか。たしかあの事件の前までは婚約者であったと記憶している。その時から狸と呼ばれるような男だったのか?…別に思い出したくないなら話さなくてもいいのだけれども…」

 

「いいのよ。私もあの事件のことは今でも忌々しいと思っているけども、何時までも目を背けるのは駄目だとも思っているから。」

 

「そうでしたか。とりあえず彼女については戸籍がないので私が保護しようと思います。」

 

「そうね。下手に私とかが関わるよりか貴方に任せた方が穏便には過ごせるわね。でも、その為だけに連絡してきたの?」

 

「こっちはさっきのが報告で、本題はこっちにあります。『分解』と『再生』。これは明らかに魔法と言うには()()()()()。」

 

「……そうね。貴方の調べた効果は世間に出せるようなものではない」

 

「万物を物質レベルまでに分解する『分解』と万物を再構築する『再生』、俺の異能も規格外だが、彼女の異能もその比じゃない」

 

「もし四葉家の持つユニークな魔法適正から頼ったのならば、残念ながらその2つの魔法については記録に無いわ。」

 

「そうか…。何か記録でも残っていればなんとか出来たのだが、とりあえずは彼女がこの2つの異能を使いこなし、なおかつ少ないとはいえ魔法力はある。日常生活に苦にならない程度の魔法知識や実力は身に付けさせるべきか…」

 

「なら、先生に頼めばいいんじゃない?」

 

「九島閣下にか?だが、彼女は戸籍がないとはいえ七草家の人間、変に感づかれれば厄介だ。」

 

「そっちじゃないわよ。九重先生に頼めばいいのよ。貴方の魔法の修行も行えていた彼処ならば彼女の魔法もなんとかなるんじゃない?」

 

「そうか。その手があったか。」

 

「ええ。彼女のことは貴方に任せます。理想としては彼女を貴方の妹にすることがいいわね。その方が疑われずにすむと思うわ。」

 

「では、それで頼む。真夜さんなら可能でしょう?」

 

「…条件があります。」

 

「条件次第ですが、何でしょう?」

 

「来年度から貴方も深雪さんと一緒に第一高校を受けるのよね。なら、彼女を貴方の家に下宿させて欲しいのよ」

 

「……はぁ!?」

 

「家も人手不足で深雪さんに回せる人材がいないのよ。それに、この冬に深雪さんを正式に次期当主として発表するからその護衛的な感じのこともお願いしたくて。」

 

「はぁ…、わかりましたよ。」

 

「交渉成立ね。ならば用意しておくわ。あと、風間少佐達には私から伝えておくわ。」

 

「しばらく彼女につきっきりになるかもしれないからな。お願いします。」

 

「まかせなさい。それと、たまにはこっちにも来てね~。」

 

そういって真夜は通信を切った。

 

翌日には作成された泉美のPDが送られ、仕事のはやさに驚きつつも、戸籍上義理の妹となった泉美と今後の話し合いをしていた(ちなみに、戸籍には1歳の時に両親がなくなり、知り合いであった司馬家に引き取られたことになっている)

 

年齢が達也と同い年だったので少し急ぎ気味に、泉美の魔法技術や一般知識等を習得させ、さらには深雪と泉美の親睦を深めるために四葉家を行ったり来たりしたり、体術を身に付けさせるために八雲に弟子入りさせたりしていた

 

そして、ついに入学試験も終えて、2095年4月

 

引っ越しも終えて深雪も含めた4人で住む司馬家のメンバーは入学パーティーをしていた

 

「今年の総代は深雪か。」

 

「さすが深雪さんですね。」

 

「納得行きません!!どうして達也さんが主席じゃないんですか!!」

 

「いや、俺は深雪よりも実技の成績悪いし…」

 

「FLTの社長ともあろう人間がそんな覇気の無い様子でどうするんですか!!」

 

「そうですよ、達也兄様!!」

 

「深雪はともかく泉美もか…」

 

「たしかに深雪さんも凄いですけど、達也兄様の方が凄いですよ!私なんて異能のせいで二科生ですし…」

 

「そんなに落ち込むことはない。確かに魔法力では二科生だったかもしれないが、誰にも真似できない物を持っているだろ?」

 

「そ、それはそうですけど…」

 

「俺達は深雪の晴れ姿を一緒に見ようじゃないか」

 

「そうですね!一緒に見ましょう」

 

2095年4月、ついに波乱を巻き起こす3人が魔法科高校に入学する




プロローグはここまでです

次回はキャラ設定を挟みつつ、本編に入ります。

新シリーズということでちょっと緊張していますが、暖かい目で見てくださると嬉しいです

では、また次回


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キャラ設定

予告どおりキャラ設定です


司馬達也

 

・FLT社長椎原達郎こと司馬達郎と同社の研究員である司馬小百合を両親に持ち、幼い頃から両親についてFLTに行っていたので魔法工学の知識が凄い

・固有魔法は『時空間操作』、『時空神の眼(クロノス・アイ)

―『時空間操作』:空間の物質を操作する『空間操作』という異能と空間の時間を操作する『時間操作』(といっても過去や未来にタイムトラベルすることはできない)を掛け合わせた異能。沖縄防衛戦を経て人体という空間にも作用することが出来るようになった

―『時空神の眼』:空間を流れる時間や想子の流れを見ることが出来、その範囲は達也の意識が持つ限りは何処までも見渡せる

・2092年9月からFLTの3代目社長椎原辰也を名乗り、財政界のトップや四葉家のスポンサーとして秘密裏に活動している

・国防陸軍第一○一旅団独立魔装大隊所属大尉で『作り替えし世界(リクリエイション・ワールド)』を操る非公式の戦略級魔法師で、沖縄での戦いから世界で【時空神(クロノス)】と呼ばれ、恐れられている

―『作り替えし世界』:対象から指定した範囲を1つの空間と定め、その空間の時間を1万年程進めて消滅させる戦略級魔法。あくまで空間内の物体に作用させるので二次災害の可能性がない

・CAD調整技術は一級品でライセンスを持つ

・九重八雲に弟子入りし、徒手格闘術を習う

・2094年某日、誘拐されそうになった七草泉美を助けると、七草家に悟られないように義理の妹としての戸籍を真夜に作らせた

・司馬泉美、四葉深雪、桜井穂波、藤林響子、四葉真夜のCADの調整をしている

・魔法大学付属第一高校に一科生(筆記1位で次席)で入学する

・軍属魔法師である点から十師族(四葉家を除く)をあまりよく思っていない

・第一高校内では、生徒会にも風紀委員にも入っていない

 

 

司馬泉美(原作達也ポジション)

 

・七草家の三女として生まれるももって生まれた異能により上手く魔法が使いこなせず、不良品の烙印を押される

・固有魔法は『分解』と『再生』

・2094年某日、父の差し金で誘拐されそうになったが、たまたま通りかかった達也に救われ、紆余曲折あって達也の義理の妹になる

・達也に魔法や勉強などを教えてもらったり、日常を一緒に過ごすうちに達也に惹かれていった

・深雪とは親友であり恋のライバルである

・魔法大学付属第一高校に二科生で入学する

 

 

四葉深雪

 

・四葉深夜の卵子と四葉家が保有する男性魔法師の精子を人工受精させて産まれた自他共に認める四葉家の最高傑作

・四葉家直系としては素晴らしい程の魔法力に母四葉深夜の精神干渉系への適正を根強く受け継いでおり、固有魔法に精神干渉系系統外魔法『コキュートス』をもって生まれ、世界的にも珍しい振動・減速系―冷却系魔法に高い適正をもって生まれた

・新しくFLT社長になったことで叔母である真夜に会いに来た達也と出会い、仲良くなっていって、次第に達也に惹かれていた

・泉美とは親友であり恋のライバルである

・魔法大学付属第一高校に新入生総代で入学する

・第一高校内では達也と泉美と一緒に帰るために生徒会も風紀委員も蹴る

 

 

桜井穂波

 

・四葉家が研究する調整体魔法師〈桜シリーズ〉の第一世代

・元々は四葉深夜のガーディアンだったが、深夜が亡くなった為、真夜の命で一人暮らしである達也の住み込みのメイド的な感じのことをしている

・真夜と達也を繋ぐ仲介人も担っている

・FLT内ではビジネスネーム佐倉穂波として椎原辰也の秘書をしている

・響子とは年齢が近いもの同士仲が良く、休日は2人でお茶をしたりする

・ちなみに、達也に多少惹かれている

 

 

藤林響子

 

・沖縄防衛戦以後に国防陸軍に入隊した藤林家のご令嬢

・婚約者であった男が沖縄で戦死した為に自分も入ったという経緯を持つ

・年齢が近いということで達也とも仲がいいが、特に穂波との仲が良く、休日は2人でお茶をしたりする

・達也と独立魔装大隊の連絡を仲介する役割を担う

・ちなみに、達也に多少惹かれている

・達也と四葉真夜が知り合いなことに一番驚いていた

 

 

四葉真夜

 

・四葉家3代目当主にして達也の親代わり

・スポンサーとの関係性を表向きにしつつ、裏では達也が心配で穂波を送り出した

・月に1回は達也との電話又は直接の対面を楽しんでいる

・また、泉美や深雪を溺愛していて、2人に対して不埒な行動を取ろうとしたものを許さない

・ちゃっかりFLTの株を持ってたりする

・達也が深雪か泉美のどちらかと結ばれれば良いなと思ってる(本音を言うと自分も達也に甘えたいと思っている)

・達也が感情的に接せる唯一の人間

 

 




さぁ、設定としてはたついずでもたつみゆでもどちらでも出来る感じにはなりましたね…

どうしよう

というわけで次回から本編です


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入学編
入学編 第一話


さぁ、やっと本編が始まります


『魔法』

 

それが伝説や御伽噺の産物ではなく、現実の技術となったのは何時のことだったのか。

 

当初は『超能力』と呼ばれていた力は研究が進み、それは『超能力』から『魔法』への名前が変わっていった。

 

『超能力』から『魔法』に変わったことで〝超能力者〟と呼ばれる人間はいつしか〝魔法技能師〟と呼ばれ、各国の管理下におかれた

 

核兵器すらねじ伏せる強力な魔法技能師の存在こそが国を左右するとも考えられた。

 

そんなこんなで二十一世紀後半、今だ統一される気配すら見せぬ世界の各国は魔法技能師の育成に競って取り組んでいる。

 

 

国立魔法大学付属第一高校

 

毎年、国立魔法大学へ全国9つある魔法科高校で最も多くの卒業生を送り込んでいる高等教育機関として知られている。

 

それは同時に、優秀な魔法技能師(略称〝魔法師〟)を最も多く排出しているエリート校ということでもある。

 

魔法教育に、教育機会の均等などという建前は存在しない。

 

この国にそんな余裕はない。

 

それ以上に、使えるものと使えないものの間に存在する歴然とした差が、甘ったれた理想論の介在を許さない。

 

徹底した才能主義と残酷なまでの実力主義

 

この学校に入学を許された事自体がエリートということであり、入学の時点から既に優等生(ブルーム)劣等生(ウィード)が存在する。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「納得できません!!」

 

「おい、深雪…。この話は何回目だと思っているんだ…。」

 

「私は何度だって認めません!泉美、貴方もそう思うわよね?」

 

「確かにそうですけど、さすがに言いすぎて達也兄様の疲労が…」

 

「いや、それは気にしなくて良いんだ…。疲労なんてさんざん経験している。だが、さすがにこの話を何度も聞かされるとちょっとアレだな。」

 

「達也さん!!」

 

「わかった、わかった。今度入学祝いで買い物に行こう。それに、深雪の晴れ姿を俺に見せてくれって言ったろ?」

 

「ぐぬぬ…わかりました。達也さんが私と2人きりでデートに行ってくれると信じて私は行ってきます!」

 

「はっ!?ちょっと、達也兄様!?冗談ですよね!!」

 

「え、、、」

 

達也が驚きで固まっているうちに深雪はリハーサルのために行ってしまった。

 

「深雪は行ったか。なら、どっかで座らないか?」

 

「座ったら話聞きますからね」

 

達也と泉美は座れる場所を目指してあるいていた

 

道中では

 

「ねぇあれカップルかしら?」

 

「男の人かっこいいわね。」

 

「それに比べて彼女はウィードよ。彼氏がかわいそうね」

 

といった言葉が良く流れていた

 

「泉美、気にしなくて良いぞ。」

 

「でも…」

 

「気にしたら負けだ。それにあいつらは将来後悔するタイプだ。心配する必要はない。…よし、ついたぞ」

 

達也は泉美と席に座ると、空間に干渉して認識阻害の結界を張った

 

達也は端末を取り出すと、会社から上がった研究資料を確認していた

 

その間にも泉美からの言葉責めは続き、達也も確認しながら返したり、言葉を濁したりしていた

 

やがて新入生の入場時間になると達也達は認識阻害を解除しながら、講堂へと歩いていった

 

すると、

 

「新入生ですか?もうすぐ入学式が始まりますよ?」

 

「あ、すみません。今行きます。(CAD…構内での所持は禁止されている筈…それに泉美が顔を見て反応している…まさか!?)」

 

「あ、私は生徒会長の七草真由美です。」

 

「あ、…自分は司馬達也です。こっちが妹の泉美です」

 

達也は一瞬七草真由美の眉が動いたのを見逃さなかった

 

「はじめまして…」

 

「へぇ~、貴方達が()()司馬兄妹なのね」

 

「すみません…あのとは?」

 

「あ、ごめんなさい。2人のことは先生方の間で話題になってたのよ。」

 

「はぁ…。」

 

「兄の司馬達也君は筆記試験の平均点98点で1位。特に魔法工学と魔法理学に関しては平均点70点にも満たない中で小論文も含めて満点。実技試験も主席の四葉さんに及ばずとも2位で総合でも次席。そして妹の司馬泉美さんはお兄さんと同じく筆記試験の平均点が94点で3位。魔法工学と魔法理学は満点とは行かなくても90点は取っている。そういう意味で話題になっているのよ!!」

 

「は、はぁ…。そうですか。というか生徒会長なら行かなくて良いんですか?」

 

「私たちも行きますので」

 

「あ、そ、そうね。」

 

「では、失礼します」

 

―――――――――――――――――――――――

 

講堂に入ると、綺麗に別れていた

 

何がとは言わなくてもわかるだろうが、一応伝えておくと、前半分は一科生、後半分は二科生

 

つまり、差別を差別だと受け入れているのは二科生も同じということ

 

「泉美、後に座ろう」

 

「え!?でも…」

 

「俺は泉美と座りたいんだ。」

 

「わ、わかりました。」

 

達也と泉美が後ろに座ると、全員が2度見した

 

しかし、達也は気にせずに泉美と話していた

 

その後は、達也のとなりに座ってきた千葉エリカという少女と柴田美月という眼鏡をかけた少女も含めて4人で話していた

 

気になるのは眼鏡をかけている点

 

この時代、視力が悪いから眼鏡をかけるという行動は絶対にあり得ない。

 

その為だて眼鏡という可能性もあるが、別のケースで眼鏡をかける場合もある

 

それこそが霊子放射光過敏症という目の病気

 

簡単に言うと、霊子が視えるということだ。

 

霊子とは日常生活に溢れる全ての事象で出る物

 

通常では見ることが出来ないので、病気扱いされることも多い

 

そんな物を恐らく患っていると考えつつも達也は自然に接していた

 

それともう1つ、達也の記憶上千葉家にエリカという同年代の少女がいたという情報はなかった。

 

これは千葉家の問題だから関係ないと早々に考えを消した

 

『ただいまより入学式を開始します』

 

入学式が始まると、校長の話、現生徒会長の話、新入生総代の話が順番にそって始まった

 

ちなみに、深雪のスピーチだが、「魔法以外」とか「一高生として」というような一科生の精神を逆撫でするようなワードを自然に盛り込んでいたことに達也は内心ハラハラしつつも、一高生達が深雪の美貌に見惚れてそんなことに気づいていないことに気づいて一瞬ホッとした。

 

そんなこんなで2095年度入学式が終了した





今回はここまでです。

次回から学校生活が無事スタートします。

今後はどうなることか。

それはまたのお楽しみということでまた次回をお楽しみに

では、また次回


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入学編 第二話

入学式が終わると達也達は生徒証を受け取りに向かった

 

それぞれがIDを受け取ると、クラスを確認しにいった

 

「ねぇ、達也君、なん組?」

 

「俺はB組だ。」

 

「やっぱ同じクラスにならないか…。そういう泉美は?」

 

「私はE組です。」

 

「同じクラスね。美月は?」

 

「私もです」

 

「わかってたけど達也君とは違うクラスか。」

 

「確かにクラスは違うが昼や放課後は会えるだろう。」

 

「そうですね。」

 

「ねぇ、この後暇?何処かで何か食べようと思うんだけど」

 

「すまない。友人と待ち合わせしてるんだ。」

 

「友人?」

 

達也達が話していると、後から声をかけられた

 

「達也さん!!」

 

「お疲れ様、深雪。クラスはどうだった?」

 

「達也さんと同じくB組です。…ところで、私や泉美がいるのに、デートですか?」

 

「…はぁ!?そんなわけ無いだろ。それに彼女達はたまたま席が隣で仲良くなっただけだ。それは、彼女達に失礼じゃないか?」

 

「も、申し訳ありません。」

 

「いいのよ。」

 

「ごめんなさい、1-Bの四葉深雪です。」

 

「四葉!?」

 

深雪の名乗った四葉という名前に美月やエリカが驚いた

 

無理もない、四葉と言えば魔法を使う者の中でも禁忌、触れれば消されるとも言われていた【触れてはならない者たち(アンタッチャブル)】の家系

 

そして、四葉家は徹底した秘密主義を掲げ、四葉家の人間は当主の真夜と次期当主に決定した深雪だけしか世間ではその正体を知られていない

 

中には、四葉家の分家などの情報を持っているものもいるが、それもごく少数(達也とか九島烈とか)

 

「じゃあ達也さんも四葉の縁者なんですか?」

 

「いや、違うよ。俺はただ個人的に四葉真夜殿に良くしていただいただけだ。それに、俺としては深雪とは四葉とか関係なく仲良くして貰いたいな。」

 

「世間では、【触れてはならない者たち】と一種の禁忌扱いされていますけども、私としては普通の交友を深めたいと思っておりまして」

 

達也の言葉に深雪が追随する

 

「そ、そうだよね。ごめんなさい。あ、私の名前は千葉エリカ。よろしくね、深雪。」

 

「私は柴田美月と言います。これからよろしくお願いします、深雪さん。」

 

「エリカに美月ね。よろしく。それと、エリカは随分とフランクなのね?」

 

「そういう深雪もね。まさか四葉家の次期当主がこんなにいい人だなんて思わなかったわ。」

 

「ふふ。よろしくね、2人とも。」

 

深雪が2人と仲良くなったのを見て達也が気になっていたことを聞いた

 

「なぁ、深雪。生徒会の方々はいいのか?」

 

「いいんですよ。私は忙しくて入れませんし…」

 

「だそうですよ、生徒会長さん。」

 

達也が名指しすると、後ろに人を沢山引き連れた生徒会長、七草真由美が歩いてきた

 

「そうみたいですね。では、司馬くんが入るって言うのはどうかしら?次席だし筆記試験はトップだものね。」

 

「俺も入りませんよ。詳しくは言えませんが、忙しいので。それに、十師族となんて仲良くなる必要はありませんしね。四葉だけで十分です。」

 

達也の言葉は周りをビックリさせるのに十分なワードだった。

 

それはつまり、十師族に興味がないと言外に言っているようなもの。

 

真由美は完全に固まってしまった。

 

「さて、話は終わりっぽいので俺達は失礼します。」

 

達也を先頭にして、深雪達は学校を出ていった。

 

一方、達也が出ていった後の七草真由美達は…

 

「おい、服部。どうして真由美が固まってるんだ?」

 

「主席と次席の生徒に生徒会などの生徒機関への参加を断られまして。」

 

「へぇ~、それはなかなかすごいな。」

 

「それに、片方は四葉の次期当主、もう片方は十師族に喧嘩を売ってましたね。」

 

「それはそれは、そういう喧嘩っ早いやつは嫌いじゃないぞ。」

 

「どうするんですか?新入生推薦を考え直さなくちゃ行けないんですよ!!」

 

「まぁ、真由美や十文字が上手くやってくれるさ。」

 

「風紀委員長がそんな覇気のない状態でどうするんですか?」

 

「明日、四葉さんと司馬くんを生徒会室に呼び出すわ。」

 

「あ、再起してたのか。それで、断られてるのにどうやって呼び出すんだ?」

 

「そんなの明日のお楽しみよ。」

 

――――――――――――――――――――

 

七草真由美の変な考えなど知らない達也達はエリカの誘いでスイーツを食べに行った

 

そして、家に帰ると達也は急激に嫌な気配を感じた

 

「……まさかな」

 

扉を明けると、見覚えのある顔が2つあった

 

1つは穂波の顔

 

もう1つは…

 

「お帰りなさい、たっくん、いーちゃん、みゆちゃん!」

 

「はぁ、どうしているんですか、真夜さん。」

 

「お、叔母様!?」

 

「なんでって、可愛い姪と息子(のような子)達の晴れ舞台よ!行かないわけには行かないわよ」

 

「はぁ…勘弁してくれ…」

 

真夜がどうやって入ったのかとかその点を考えながら、ちょっとした頭痛を覚えたりしつつも、真夜を含めた5人で食事をとった

 

 

 

食事を取り終え、真夜も帰宅し、深雪や泉美も寝静まった夜中

 

達也の姿は一階のとある部屋にあった

 

そこにあるのは、一般的な仏壇

 

そこに建てられた2枚の写真

 

写っているのは父達郎と母小百合

 

沖縄で亡くなった達也の両親である

 

「父さん、母さん。今日は魔法科高校の入学式でした。自分でもよく次席を取れたなと驚いているよ。」

 

お線香を一本置いた

 

「FLT社も2人が亡くなって一時期混乱してたけど落ち着いて来た。他の政財界のトップの人達も優しく迎え入れてくれて、今ではよく連絡をくれているよ。」

 

「でも、やっぱりこういう入学祝いは父さんと母さんにもいて欲しかったな…。」

 

自然に達也の頬を涙が伝った。

 

「もう、泣かないって決めていたんだが…、まぁ無理もないな。さて、明日も師匠の元に向かわなきゃいけないから、今日はここまでにするよ。じゃあ、おやすみ。」

 

達也が部屋を出ようと後ろを向くとそこには少し涙目の穂波がいた

 

「あれ?穂波はまだ寝てなかったのか?」

 

「ええ。達也君が久しぶりで感情が暴走するじゃないかと心配で」

 

「うっ…。」

 

「にしても掃除でよく入ったりはするんですけど、いつ入っても緊張しますね。」

 

「そうだな。この部屋だけは迂闊には入れない。泉美や深雪には中を教えてないしな。」

 

「いつか教えられる日が来るといいですね。」

 

「俺の気持ちが完全に落ち着いてから、かな。」

 

「ふふ。しばらくは私達2人だけの秘密ですね。」

 

「そうだな。それと、穂波。話は変わるが、第一高校にきな臭い動きがあると報告があった。詳しい情報を調べてくれるか?」

 

「お任せください、達也様。」

 

怪しい影は、達也の知らぬ間に、もうすぐそこまで来ている




というわけで入学式の日が終了しました

とりあえず、達也が一科生なのでB組、深雪も同じクラスでB組

一方、泉美が二科生ですのでE組です

次回は、九重寺からです

では、また次回


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入学編 第三話

そういえば、言っていませんでしたが、深雪がB組なのは、達也がB組というだけでなく、年齢操作された七草の双子が同じ学年にいるという理由です

ちなみに、七草香澄はA組です。


達也の朝は早い

 

何時も、家から数キロ離れた九重寺まで走っているので、朝が早めでなくてはならないのだ。

 

そんなわけで達也は何時も早起きだった

 

しかし、今日の朝が早いのは達也だけではなかった

 

「達也さん。先生への挨拶ですよね。私も行ってもよろしいでしょうか?」

 

「深雪…良いけど、その格好で行くのかい?」

 

「ローラーシューズを持っていますので、」

 

「わかった。穂波、家の留守は任せた」

 

「行ってらっしゃい」

 

――――――――――――――――――

 

達也達3人は坂道を走りながら九重寺へと向かっていた

 

勿論、達也は魔法で重圧を上げてだが

 

そんなわけでおよそ60m/hの早さで駆け抜けてった一行は九重寺に到着した

 

「深雪、下がっていなさい。」

 

「今日は乱取りらしいので」

 

「わかりました。」

 

達也と泉美が境内に入ると突然襲われた

 

勿論、九重寺の弟子達である

 

それを2人で返り討ちにさせながら訓練を行っていた

 

深雪はその様子を見ていた

 

「深雪君」

 

すると、深雪に声がかけられた

 

深雪は声のした方を探すが、見付からない

 

すると、頬に触れられた感触を感じた

 

「!?せ、先生!!」

 

「久しぶりだね、深雪君。泉美君の紹介の日以来だね」

 

「先生!どうして私と会う時は気配を消して近付いてくるんですか!!」

 

「どうしてって、僕は忍びだからね~。気配を消すのは忍びの性だから~」

 

「今の時代『忍者』はいません!更正するべきです!」

 

「ちっちっちっ!深雪君は甘いね~、僕は『忍者』じゃなくて『忍術使い』の忍びだ。そこは大事だよ。」

 

「ですが、、、」

 

「ところで、それは第一高校の制服かい?」

 

「はい。…先生?」

 

「う~ん、いいね!」

 

「え?」

 

「真新しい制服が初々しくて、清楚な中にも隠しきれない色気があって……まるでまさに綻ばんとする花の蕾、漏れ出る新緑の芽、そう……萌えだ、これは萌えだよ!……むっ!」

 

先生こと、九重八雲が危険を察知して受け止める

 

それは達也の踵落としだった

 

ちなみに、乱取りを終えて泉美はその場に立ち尽くすままだった

 

「くっ!……ねぇ、達也くん。僕じゃなかったら死んでたよ?」

 

「セクハラはやめてくださいね、師匠?」

 

「達也君、僕の後継がない?」

 

「お断りします」

 

達也は空間を操作して氷の剣を作ると、八雲に斬りかかった

 

「それは残念。じゃあ僕とも始めようか」

 

達也は剣を消して、八雲へと迫った

 

達也と八雲の攻防には弟子達も、そして泉美と深雪も魅入っていた

 

達也は体術で攻めつつも、『時空間操作』を使用して、空間に火の玉を作り出したり、氷の礫を飛ばしたりと果敢に攻めていた

 

ちなみに、達也はよほどのことがない限り時への干渉はしない

 

現在の達也が時間に干渉してできることと言えば、体の動きを一時的に停めたり、人の傷を巻き戻したり、位しか出来ないが、そんなものを稽古で使うような真似はしなかった

 

一方の八雲は達也の攻めを読みきりながら、異能による攻撃を防ぎつつ、達也へとカウンターを決めていった

 

やがて、そのまま10分くらい経つと、達也が地に伏せ、八雲は近くの石の上に立っていた

 

「はぁ…はぁ…。今回も駄目か…」

 

「それはそうだ。何せ、ここは僕のホーム。僕に利があるのに負けるわけはないだろう?負けたら弟子達が居なくなっちゃうし…。にしても、達也君も成長したね。体術だけじゃ僕に勝ち目は無いかもね、異能に限らず」

 

「それは…皮肉…ですか?」

 

「達也さん、そこは素直に受け取りましょうよ。」

 

「そうだよ、達也兄様!かっこよかったし!ね、深雪」

 

「ええ、そうですね。」

 

「達也君も隅に置けないね~。」

 

「達也さん、ご飯にしましょう。先生も如何ですか?」

 

「じゃあ頂こうかな。お茶を出してこよう。」

 

その後、達也が復活して、縁側に座ると、八雲がお茶を出した

 

「ああ、達也君。それに2人もだけど。七草には注意しておきなさい。特に泉美君はね。それと、達也くんは知ってるかもしれないけど、第一高校にきな臭い動きがあるみたいだ。赤と青のトリコロールのリストバンドには気を付けなさい」

 

「赤と青のトリコロール…助言ありがとうございます」

 

「うん。それと、みんな入学おめでとう」

 

「ありがとうございます、先生」

 

―――――――――――――――――――――

 

九重寺から帰ってきた3人は、そのまま学校に向かった

 

学校の前でエリカ達と会って、入っていった

 

達也と深雪がB組に入ると、B組の生徒達が静かになって達也達の方を見た

 

正確には深雪の方をだが、

 

「おはようございます、皆さん」

 

「おはようございます」

 

達也は自分の席に座ると、履修登録を始めた

 

すると、後ろの席から声をかけられた

 

「へぇ~、キーボードオンリーだし、随分と早打ちなんだね。」

 

「この方が慣れていてな」

 

「へぇ~、そうなんだ。あ、僕の名前は十三束鋼。よろしくね、司馬達也君。」

 

「十三束の【レンジ・ゼロ】か。まさか、こんなところで会えるとは…。ところで、どうして俺の名を?」

 

「君は結構有名だよ?総合2位で、筆記においては2位以下を寄せ付けずに、平均98点で1位。さらに、入学式当日に七草を含めた十師族に喧嘩を売って、四葉さんと仲がいい。まぁ、こんな感じかな」

 

「別に喧嘩を売ったわけじゃないんだが…。」

 

「まぁ、いいや。それよりも四葉さんと仲が良いみたいだけど、四葉の縁者なの?」

 

「いや、俺は縁者じゃないよ。ただ、幼い時から四葉真夜殿に懇意にしてもらっていたんだよ。だからその関係で深雪とは仲が良いんだ。」

 

「へぇ~」

 

 

一方の深雪も、達也と同じように1人の生徒に話しかけられていた

 

「貴女は主席の四葉深雪さんね?」

 

「え、ええ、そうですけど…。」

 

「私は明智詠美。エイミイって呼んでね?」

 

にぱっ!という効果音がつきそうな笑顔で話しているエイミイに深雪は緊張を和らいでいた

 

「わかったわ、エイミイ。改めて、私は四葉深雪。深雪って呼んで下さいね。」

 

「よろしく、深雪!…ところで、あの男の子。司馬達也君だっけ、彼とどういう関係なの?」

 

「え!?」

 

「ほら、今日一緒に登校してきたじゃない!」

 

「達也さんは…幼馴染です…」///

 

「へぇ~幼馴染ね~」

 

エイミイの笑みに黒い何かを見た深雪は達也のもとへと向かった

 

「達也さん」

 

「深雪か、どうしたんだ?」

 

「あ、貴方が司馬達也君ね!私は明智詠美って言うの!よろしくね!」

 

「エイミイって呼んであげて下さい。」

 

「そうか。よろしくなエイミイ。そして横にいるのが十三束鋼だ。」

 

「十三束鋼です。よろしくね、明智さん」

 

「むぅ~。エイミイ!」

 

「え?」

 

「エイミイ!!」

 

「…え、エイミイ…さん。」

 

「さんは要らないんだけどな~。にしても2人とも良い男ね!」

 

「鋼はともかく俺はそこまで良い男じゃないんだが…」

 

「そんなことありません!!」///

 

「ん?深雪?」

 

横でエイミイが意味ありげな顔で微笑んでいるが、そんなことも理解できない達也はチャイムの音に気付いて3人を席に座らせた




一旦切ります

次回はこの続きです。

ちなみにですが、A組は選民思想の塊でB組は選民思想を持っていません。

今後のためにも言っておきます

それと、対森崎・七草家用にアンチ・ヘイトをつけるべきか…

というわけで、また次回


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入学編 第四話

一応、アンチ・ヘイトのタグをつけます


HRが終わり自由時間として校内見学をすることになった

 

「ねぇ、達也。何処行く?」

 

「俺は工房かな?」

 

「奇遇だね。僕も工房に行こうと思ってたよ」

 

「何々?鋼くん達は工房に行くの?」

 

「達也さん、私もご一緒して良いですか?」

 

「いいよ。」

 

「よし、じゃあ4人で行こう!!」

 

そんなわけで、達也達4人は工房に向かった

 

工房につくと、達也は見覚えのあるメンバーを見つけた

 

「泉美」

 

「あ、達也兄様!!」

 

「あ、達也君、それに深雪も」

 

「エリカ、美月もここにいたのね」

 

「まぁ、ここなら達也君達が来るって、泉美がね。」

 

その後は、達也達はお互いで自己紹介をした

 

「にしても、達也君達は知ってたけど、鋼くんとエイミイは二科生を見下さないんだね?」

 

「まぁ、僕は4位だけど、魔法は苦手だから…」

 

「あんな思想してるやつの気が知れないわ」

 

「まぁまぁ、人間って言うのは誰かを見下さないとやっていけないんだよ」

 

「達也が一番ディスってんじゃん…」

 

その後、計9人で工房や闘技場を見て回った一行はお昼を食べていた

 

周りからは一科性と二科生が混ざる複雑な様子が見えていた

 

そんな時に、とある一科性の一団が達也達に声をかけてきた

 

「なぁ、君たち、俺達も一緒に食べていいか?」

 

「構わないが…」

 

「ありがとう、じゃあそこの二科生は席を譲ってくれないか?」

 

その言葉はこの9人に、怒りを浮かび上がらせた

 

「はぁ!?なんでそんなことしなきゃいけないんのよ!!ふざけんじゃないわよ!」

 

「はっ!まぐれで合格した補欠の癖に。補欠は俺達ブルームの言うことを黙って聞いていればいいんだよ。なっ?」

 

「そうだそうだ!」

 

そんな中声を発したのは達也と深雪だった

 

「はぁ…くだらん。」

 

「ええ。くだらないですね。」

 

「なっ!?どうしてだ!俺たちは君たちのことを思って…」

 

「たかが魔法力が少し高いからって他人を見下すとは…幼稚すぎるな」

 

「なんだと?」

 

「ん?よく見れば、お前の顔は見覚えがあるな。確か、年下の門下生に負けた森崎家の御曹司じゃないか。まさか、年下に負けた腹いせで成績が自分よりも下のやつを見下してるのか?」

 

達也の爆弾発言に、声をかけてきた一科性の軍団は固まった

 

「達也さん、それ本当なのですか?」

 

「結構有名な話だぞ。森崎家はボディーガード業を営む百家支流の家。そう言った話はよく舞い込んでくる。」

 

「へぇ〜ってことは達也君の家って実は名家なの?」

 

「そうだな…名家といえば名家なんじゃないかな?でも、司馬家として表舞台には立ったことないしなぁ〜。」

 

「そういえば、そうですね。ところで、貴方達はいつまでそこにいるのですか?はっきり言って邪魔なのですけど」

 

深雪は四葉の次期当主だけでなく新入生総代としても顔が割れている

 

そんな深雪と同じクラスになれなかった人達が仲良くなろうと近づくことは達也の中では予想できていた

 

まぁ、深雪の嫌いなことを平然とするとは思わなかったが

 

しかし、これだけでは終わらなかった

 

放課後、泉美達と待ち合わせしようと約束した達也達は校門前で合流を果たした

 

が、またしても例の一団が現れてしまった

 

「四葉さん、一科性同士で親睦を深めませんか?」

 

「いいえ、結構です。私は達也さん達と帰るつもりですから。では、さようなら。」

 

そこで止まればよかったものを、彼らは止まらず、あろうことか二科生を侮辱し、さらには達也をも侮辱し始めた

 

深雪は自然と怒りを浮かび上がらせた

 

その証拠に深雪の周りがだんだんと冷気で包まれていく

 

「深雪、落ち着け。」

 

「あ、達也さん…。」

 

達也はなんとか深雪を落ち着けると、この抗争を観察していた

 

すると、

 

「いい加減にしてください!!深雪さんは達也さんと帰ると言っているのです!なんの権利があって引き裂くんですか!」

 

美月が遂に堪えきれずに感情を爆発させた

 

「美月…そ、そんな、引き裂くなんて…」///

 

「ん?深雪?」

 

「なんの権利だと?そんなの決まっているじゃないか。一科性は一科性同士で親睦を深まればいい。たかが補欠の分際で生意気なんだよ。」

 

「だいたい、同じタイミングで入学してきたのに差なんてあるわけないじゃないですか!!」

 

「ほぅ…ならば見せてやる。これが差だ!!」

 

すると、一団の代表格、森崎駿が懐からCADを取り出した

 

それも、

 

「嘘っ!特化型!?」

 

しかし、魔法は発動されなかった

 

「この間合いなら二科生の方が早いみたいだね。」

 

エリカが伸縮警棒で弾き飛ばしたからだ

 

「ウィードの癖に!!」

 

「なめないで!!」

 

深雪が達也に目で訴えてきた

 

「はぁ…動くな!!」

 

達也は声に威圧感を加えて相手を萎縮させた

 

しかし、1人だけ動こうとした人がいた

 

ー森崎だ。

 

「動くなと言っているだろうが!」

 

「ぐはっ!」

 

達也は森崎へと回し蹴りをして、動きを止めた

 

「貴様、よくも堂々と魔法を使えたな。」

 

「な、なんだと、、、」

 

「いいか。自衛目的以外の魔法の使用は法律で禁じられている。特に、森崎。お前は知っていて当然だろう。まさか、自分より劣る人間になら魔法を使っても犯罪になら無いなんて考えてないよな?なぁ?」

 

その間も達也は森崎を踏みつけている

 

「まぁ、こんなことでここまではしないが。そういえば、森崎。お前の家は俺の会社の警備を担当していたな。」

 

「俺の会社…だと?」

 

FLT(フォア・リーブス・テクノロジー)…聞いたことあるだろう?ボディーガード業で名を馳せた森崎家ならば安心だろうと思ったが、その御曹司がまさか家の会社に泥を塗るとは…」

 

「俺はそんなことはしていない」

 

「良いことを教えてやろう。我がFLT社が誇る技術員の殆どが今お前が見下した二科生クラスの人間だ。」

 

「な、なんだと、、、」

 

「これだから、魔法でしか物事の解決できない奴は嫌いなんだ。そうですよね?そこで魔法を待機して隠れている七草生徒会長?」

 

達也が声をかけると横の茂みから2人でてきた

 

片方は七草真由美で、もう片方は風紀委員長渡辺摩利

 

「まぁ、今更でてきたところで貴方達にできることはないですけどね。」

 

「コホン、1-Aと1-Bと1-Eの生徒だな。話を聞きたいので風紀委員室に同行してもらおうか」

 

「何を白々しい。今更でてくるくらいならそれなりの態度を示していただかないと。例えば、お二人が起動中のCADを解除していただけませんかね?」

 

「な、何故わかった。」

 

「それを貴方に言うとでも?たかが学校の先輩ってだけの人間に」

 

「わかったわ。」

 

「真由美!?」

 

「彼の言う通りよ。私達が出るにしては遅すぎたのよ。」

 

「そうです。じゃあ話の続きをしようか。さすがに、家の会社に泥を塗られたんだが、今日社内で臨時総会を開いて森崎家の処遇について議題にさせてもらおう。だが、その前に」

 

達也は声を整えるとこの辺にいた人によく聞こえるように大きな声で言った

 

『FLT社、社長椎原辰也の名において命じる。森崎家はクビだ。』

 

「な、なんだと!?」

 

「最大大手のFLT社が森崎家を切ったと聞けば他の企業も続々と契約を切るだろうな。」

 

「な、そ、それだけは…。」

 

「残念だよ、森崎。お前が家を潰したんだ。」

 

達也は森崎を回し蹴りで飛ばすと、達也は振り返って友人達と帰り始めた

 

「ま、待て!!」

 

「せっかくあの方々が第一高校は良い学校だと紹介してくれたのだが、買い被りだったようだな。」

 

達也はそれだけ言って完全に校門をでた

 

 




というわけで、森崎家崩壊ですね。

個人的に森崎の態度があんまり好きじゃないので、個人的にストレス発散させてもらいました。

さて、次回はこの続きですね。

七草香澄はいつ出ることやら…

ではまた次回。


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入学編 第五話

あまりにも人が増えてきたので台詞の前に名前つけます


達也達がいなくなった校舎内では摩利が森崎の治療と残っていた1-Aの聞き取りを部下に命じていた。

 

その一方で

 

「行ってしまったか…ん?真由美?どうしたんだ!?」

 

「司馬達也…まさかあのFLT社の社長だったなんて」

 

「社長なだけだろう?なんか不味いのか?」

 

「摩利、不味いなんてものじゃないわよ。FLTは今一番のCAD製作会社で、日本魔法師界の殆どがFLT社製のCADを使用している」

 

「まぁそれは知っているが。」

 

「今FLT社が正式契約しているのは四葉家と国防軍のとある旅団のみ。それ以外は社長の一言ですぐに契約破棄させられることもある。」

 

「な、なんだと!?何者なんだ?」

 

「FLT社長が持つ権限は政財界にも及ぶ…こんなことなら父の言うことを聞かなければよかったわ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

昨日

 

七草邸の書斎にて

 

「司馬達也と司馬泉美か。少し気になるな。接触できないか?」

 

「どこに気になる点が?」

 

「気になるのは司馬達也の方だが、香澄を負かして総合2位で筆記のあのテストで平均98点と言う頭の良さが気になる。是非ともうちに来てもらいたいくらいだ。」

 

「そ、そうですか。」

 

「どうにか自然に接触できないか。」

 

「わ、わかりました。でも、それなら香澄ちゃんの方がいいんじゃないですか?同学年ですし」

 

「香澄がこう言う交渉ごとを素直にできると思うか?…わかったら話は以上だ。下がりなさい」

 

「はい。」

 

真由美が消えた書斎では、七草弘一が端末に向かっていた

 

「司馬泉美…まさかな…。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方の達也の方は

 

エイミイ「にしてもさっきの達也君凄かったね。」

 

達也「すまないな。見ていて気持ちのいいものじゃなかっただろう。」

 

美月「いえ、にしても社員を大切にしているんですね。」

 

達也「まぁ父から受け継いだ大切な家族みたいな人だからな。それは大切になるさ。それと、さっきのやつは内緒にしていてほしい。」

 

エリカ「勿論。」

 

達也「だが、さすがにやりすぎだったかな?」

 

泉美「いえ、そんなことはありませんよ、達也兄様。とてもかっこよかったです!」

 

達也「ありがとう、泉美。」

 

達也は泉美に感謝をしつつ、頭を撫でた

 

その時深雪が羨ましそうな視線を達也に向けていたのは誰も知ることはなかったが

 

そんなわけで、仲良く話しつつ帰宅した達也はすぐに準備してFLTへと向かった

 

「しゃ、社長!!どうしたのですか?」

 

達也「すぐに臨時会議を開く。幹部達を集めろ。」

 

「はっ!」

 

FLTには3つの部署がある。

 

販売等を担当する第一課、お客様トラブルや外からの交渉事等の事務を担当する第二課、新作CADや新技術の開発に取り組む第三課

 

それぞれに課長がいて、その上に本部長がいる

 

本部長は社長の代わりに表に出て新商品等の発表を行う対外担当と技術者を含む社員達の取り纏めを行う対内担当の計2名いて、その上に社長が位置している

 

そして、この会社の重役、つまり会議に参加できるのは課長3名、本部長2名、社長と社長秘書の計7人

 

そんなこんなで集められた重役達はどんな話をするのか不思議だった

 

達也がこうして何もない時期に呼び出すのは、〈ループ・キャスト〉システムの発表を決定したとき以来だからだ。

 

「社長。本日はどのような用件ですか?」

 

達也「森崎家を警備担当契約を解約する」

 

森崎家をクビにする。

 

それはつまり、FLTの警備を担う部門を失くすことを意味する

 

「なっ!?それは本当ですか?」

 

達也「森崎家の御曹司が彼処まで選民思想に呑まれているとは思わなかった。とりあえず、正式決定の前に翌日、直接話を聞きたいので森崎さんを呼ぼう」

 

「御曹司というと森崎駿殿か。たしか社長と同じ学校に入学したと聞いていますが、」

 

「第一高校には一科生と二科生の間で差別意識が生まれていると聞いています。まさか、そういうことですか?」

 

達也「わが社には、第一高校で二科生と呼ばれる魔法師の技術者が多い。関係ないものなら咎めれば良いが、森崎家は別だ。」

 

「確かに、差別発言をするものが護衛をしても不信感しか生まれない…」

 

達也「その通り。よって私個人ではクビにしたいところだが、まずは森崎さんを召集。ここで話を聞こう。全ての決定はその後だ。」

 

「「「「はい!」」」」

 

「さて、森崎家の話はおいておいて。社長、学校はどうでしたか?深雪嬢以外のご友人はできましたか?」

 

達也「あぁ出来たよ。」

 

「なんだと!?あの唐変木で鈍感な社長にご友人だと!?探せ、感謝状を贈らなければ!!」

 

達也「ちょっ、ちょっと待て!!さすがにそれは相手方が困るだろうが。それに、俺に友人が出来たのがそんなにおかしいのか?」

 

「おかしいのではありません。成長したことに喜んでいるんです。」

 

「そうですよ!社長はなかなか休まずに会社を大きくすることだけをしてきたんですから」

 

「少しは息抜きは必要です。」

 

「だから高校入学を進めたんです。」

 

達也「しかし…」

 

「深雪嬢や泉美ちゃんと通うのも立派な息抜きです。」

 

「我々の事は良いので、3年間学校を楽しんできてください。」

 

達也「…わかった。」

 

―――――――――――――――――――――――

 

翌日、達也の姿は学校に無かった

 

その代わりに、達也は車に乗ってFLTへと向かっていた

 

「社長、お待ちしておりました。」

 

達也「森崎は来ているか?」

 

「ええ。応接室にて子息の駿殿とお待ちしております。」

 

達也「会議室に呼び出せ。臨時会議を始める。」

 

「はっ!」

 

それから社長室で少し時間を潰していると、準備が出来たと合図が来たので、会議室に向かった

 

達也が穂波を後ろに控えさせ席に座ると、会議が始まった

 

達也「さて、森崎殿。本日は呼び掛けに応じてくれて感謝する。」

 

「お久し振りです、椎原社長。貴方の就任以来ですね。」

 

達也「ああ、そうだな。それで、昨日の件は聞いているな?なにか申し開きはあるか?」

 

「我が家の愚息が申し訳ないことをいたしました。まさか駿が選民思想を持っていたとは、一門の恥。本当ならば破門にしていましたが、あれでも森崎家の嫡子。現在は監視下の元、一週間の謹慎を命じております。」

 

達也「流石に息子を破門といわれたらこっちに流れ弾が来そうだったが、一週間の謹慎処分か…。ならば、息子が一人前の護衛となるよう教育せよ。」

 

「はっ!お任せください。」

 

達也「うむ。ならば、森崎家との警備担当契約は継続。但し、森崎家への3ヶ月の減給を言い渡す。但し、子息の態度が直らなかったらまた話は変わるからな、注意するように。」

 

「寛大なご処置、ありがとうございます。」

 

達也「話は以上。あとは、森崎家でのやることをやりなさい。」

 

「はっ!では、失礼いたします」

 

森崎(父親の方)は達也に一礼すると会議室から出ていった

 

達也「ふぅ…これで良いんだろう?」

 

「ええ。流石に森崎家をクビにするのはまだ早いと思います。」

 

「ご子息殿の態度が直らなかったら、またその時判断すれば良いのです。」

 

達也「そうだな。では、これを持って臨時会議を終了とする。各自、持ち場へと戻りなさい」

 

「「「「はい!」」」」

 

 




というわけで、森崎君はギリギリセーフでした

次回、生徒会室訪問です。



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入学編 第六話

前回話した台詞の前に名前をつけるのは、五人を越えた時です。

あとは、名前がでていない人や、初出しの人には名前はつけません。


翌日、達也はいつも通り3人で登校していた

 

「昨日は一緒に行けなくて悪かったな。」

 

「問題ありません。それと、森崎君ですが、禁止用語の使用や法律違反未遂だったということで1ヶ月の謹慎処分となり、教職員推薦枠での風紀委員入りが取り消されたそうです。」

 

「そうか。まぁそうなる前に森崎は家から一週間の謹慎処分を受けているからな。それが延びたと考えるのが妥当だろう。」

 

「ところで、達也兄様。今日帰ったらCADの調整をお願いしたいのですが…」

 

「あ、私もお願いします!!」

 

「2人とも最後の調整は1ヶ月前だったな。わかった、やろう。」

 

やがて校門前まで辿り着くと、声をかけられた

 

「司馬君、司馬さん、四葉さん。」

 

「なんのようですか、七草生徒会長?」

 

声をかけてきたのは第一高校の生徒会長七草真由美だった

 

「一昨日の話を聞きたいので昼休みに生徒会室に来てくれないかしら?」

 

「その言葉、なにか別の目的もありませんか?言っておきますが、生徒会にも風紀委員にも入りませんので」

 

「…!?そ、そんなものはありませんよ。」

 

「本当ですか?」

 

「……」

 

「わかりました。俺も聞きたいことがあるので向かいましょう。」

 

「ほ、本当に!?」

 

「ええ。俺たち3人で向かいます。但し、勧誘だった場合問答無用で部屋からでますね。」

 

「わ、わかったわ。じゃあ、お昼休憩に生徒会室で。ちなみにお昼はダイニングサーバーが生徒会室にあるので持ってこなくても問題ないですよ。」

 

「生徒会室にダイニングサーバーがあるのですか?」

 

「ええ。2代ほど前の生徒会役員が仕事が多くてご飯を取りに行く時間がなかったことから設置されたのよ。」

 

「そうだったんですか…。わかりました、では後程。」

 

「ええ。待ってるわね。」

 

―――――――――――――――――――――

 

昼休み、達也達3人の姿は生徒会室にあった

 

「1-Bの司馬達也です」

 

「1-B四葉深雪です」

 

「…1-Eの司馬泉美です。」

 

「どうぞ~!」

 

生徒会室には達也、泉美、深雪の順番で入った

 

深雪が入る時に深雪の丁寧なお辞儀に部屋の中にいた人たちが一瞬固まっていた

 

そんなわけで、3人が席に座った

 

真由美「さて、お昼だけど、精進、肉、魚、どれが良いかしら?」

 

達也「では、精進で」

 

深雪と泉美も同じ物を頼むと、真由美がダイニングサーバーを操作した

 

それから1分もかからずに昼食が出され、3人がそれぞれ手に取った

 

真由美「まぁ理由も言わずに来て貰ったわけだけど、その前に自己紹介をするわね。ええと、右から摩利、りんちゃん、あーちゃんよ!」

 

「…会長、いつも言っていますが、りんちゃんは止めてください。」

 

「わ、私も後輩の前であーちゃんはやめてくださいよ!」

 

真由美「…仕方無いわね。左から副会長の中条あずさ、通称あーちゃん。真ん中は書記の市原鈴音、通称りんちゃんで、右側にいるのは一昨日も見たわね、風紀委員長の渡辺摩利よ。まぁ、摩利は生徒会役員じゃないけどね。あとは、ここにはいないけどもう1人副会長に服部君もいるわ。」

 

あずさ「2-Aの中条あずさです。間違ってもあーちゃんなんて呼ばないでくださいね!!」

 

(((あーちゃんだな。)))

 

鈴音「市原鈴音です。よろしく」

 

(((これは、鈴音さんだな。)))

 

達也「それで、俺たちはどうして呼ばれたんですか?」

 

摩利「一昨日の事を聞きたくてな。済まないが来てもらった。」

 

深雪「一昨日の事と言われましても、最初からいたではありませんか?何を聞くんですか?」

 

真由美と摩利はまさかバレてるとは思わずに一瞬固まった

 

真由美「確かにいたけど、詳しいことはわからないのよ。」

 

達也「知覚系魔法『マルチ・スコープ』。そういえば入学式の日も使ってましたね。この魔法なら多少遠くても視ることはできます。」

 

真由美「どうしてそれを!?」

 

達也「分析は得意なんで。それで、一昨日の事ですか。では、簡単に説明すると、森崎が二科生を禁止用語を使って侮辱し、挙げ句の果てには魔法の不正使用をしようとした。俺はそれを止めただけです。」

 

摩利「だが、あれはやり過ぎだと思うぞ。」

 

達也「関係ありません。それに、奴らにもいい薬になったでしょう。魔法なんてただの道具でしかないと。魔法だけでは戦闘で勝てないと。特にそれを実戦を営みとする森崎家の御曹司が証明してしまったんですから。」

 

深雪「達也さんの言う通りです。あれは全面的に一科性が悪いのですから。」

 

真由美「確かに、魔法は道具でしか無い。それはそうよ。でも、流石にこれはやりすぎよ。森崎君が再起不能になったらどうするの?」

 

達也「そんな低レベルな事を考えているんですか?やっぱり実戦経験のない師族の家は嫌いです。是非とも契約を解除したいほどに。ところで、一昨日の事、他言していないでしょうね?」

 

真由美「……。」

 

達也「言ったんですか…誰ですか?」

 

真由美「父に…」

 

達也「(七草弘一か、まぁ突っかかってきたら社会的に殺すか。はぁ面倒臭い)……ちっ。わかりました。もう他言はしないように。」

 

達也の舌打ちに生徒会室はどんどん空気を悪くしていた

 

真由美は完全に青ざめ、あずさも恐怖で顔を歪める

 

そんな空気を壊したのは摩利だった

 

摩利「…こほん。ところで、司馬達也君。君にお願いがある。」

 

達也「何でしょう?物によってはお断りしますが、」

 

摩利「君が忙しい理由も私は知っている。だから、風紀委員入りは打診しない。だが、四月というのは新入生争奪戦のために一時期風紀が荒れる。だから、助っ人として手伝ってくれないか?」

 

達也「答える前に、1つだけいいですか?」

 

摩利「なんだ?」

 

達也「校内でのCADの装着は許可されてないのでは?」

 

摩利「この時期は、九校戦の為の準備も兼ねて部活動の新入生獲得合戦が起こるんだ。九校戦は学校の威信をかけているからな。優秀な生徒の獲得の為のオリエンテーションとしてCADの携行が認められている。つまり、この期間は無法地帯となるわけだ。」

 

達也「なるほど。」

 

摩利「さらに、新入生の入試情報は秘密裏に回っている。だから、その時期にCADを持てるという利点はある。」

 

達也「期間は?」

 

摩利「ざっと1週間だな。」

 

達也「……わかりました。では、受け入れる代わりに1つだけお願いがあります。」

 

摩利「それを出来たら、受け入れてくれるのか?」

 

達也「ええ、もちろん。」

 

摩利「聞こう。出来るかどうかはその後だ。」

 

達也「では、魔法大学の秘密文献の閲覧優先権をください。」

 

摩利「……教員に聞いてみよう。そろそろ昼は終わりだ。放課後改めて話そう。」

 

達也「わかりました。では、失礼します。2人とも、行くぞ。」

 

「「はい」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

達也達が部屋を出て、あずさも次の授業が実習だったので、いなくなった生徒会室では、真由美が固まっていた

 

「はぁ…司馬達也か。真由美の得意技を見抜いたその目を見込んで風紀委員へと誘おうと思ったが、」

 

「はぁ、私って駄目ね。完全に嫌われたわ。」

 

「あの、会長。司馬達也君は何者なんですか?」

 

「りんちゃんなら黙ってくれそうだし、大丈夫かな。彼はFLTの社長よ。」

 

「なるほど。会長が固まった理由がわかりました。確かにあの秘密主義を掲げるFLTの社長の正体を知らぬ間に他人に教えているわけですからね。」

 

「そうだな。さて、私は達也君の助っ人参加のための交渉をしてくるから。市原、真由美を任せた。」

 

摩利は交渉の為に生徒会室を後にした

 

「ねぇ、りんちゃん。私どうすればいいかな?」

 

「どうと言われましても。こればかりはなんとも…。それよりも私はFLT社長が掲げた研究テーマが気になっていたのですが、まさかこんな近くにいるとは思いませんでした。是非ともテーマについて語り合ってみたいです。」

 

「はぁ、にしても彼。十師族に何か恨みでもあるのかな?」

 

「そういえば司馬君はどうしてこの歳で社長をやっているのでしょうか?」

 

「なんでだろうね。何かそうなる理由があったのかも。」

 

「気になりますね。」

 

「気になるけど、これ以上嫌われたくないわね…。どうしましょう…」

 

 





後味悪っ。これはアンチじゃないんです。

そんなつもりはなかったんです!!

いつか回復することを願って、続きを書いていきます。

今作では達也を風紀委員に入れないと決めていたけど、達也がなんかしらの形で巡回をしていないと話が進まないと思い、助っ人参戦としました

次回から達也は働きます(たぶん)。

では、また次回


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入学式 第七話

教室に戻ると、早速鋼が聞いてきた

 

「なんの話をしていたの?」

 

「簡単にいえば、一昨日の話を聞かれた。それで、風紀委員の手伝いをしてくれないかと。」

 

「へぇ〜。あ、そういえば、僕教職員枠で風紀委員入りが決まったから」

 

「助っ人期間だけだけど、よろしくな。」

 

「よろしく。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

放課後、達也は改めて生徒会室にいた

 

今回は深雪だけで、泉美にはエリカ達と先に帰るように伝えた

 

達也「司馬です。ただ今参りました。」

 

生徒会室に入ると、昼に見た人に加えて知らない男子生徒が1人いた

 

摩利「お、よく来たな。四葉も入ってくれるのか?」

 

深雪「いえ、私は達也さんの付き添いです。」

 

達也「それで、例の件はどうでした?」

 

摩利「もちろん成功した。というわけで、一時的にだがよろしくな。」

 

「ちょっと、待ってください!」

 

摩利「なんだ、服部刑部少丞半蔵副会長?」

 

「フルネームは止めてください!!」

 

摩利「じゃあ、服部半蔵」

 

「それは昔の人間です。今は服部刑部で届け出を出してます!」

 

摩利「刑部はお前の家の官職だろ?」

 

「そんなことはいいんです。それよりも、自分は司馬達也を助っ人とはいえ風紀委員入りさせるのは反対です」

 

摩利「これは決定事項だ。今更お前1人で却下させることはできない。」

 

「ですが、彼は一科生でありながら、〝ウィード〟と仲良くしていました。これは〝ブルーム〟としての誇りを感じられません。」

 

摩利「ほぅ、私の前で禁止用語の使用とは言い度胸だな」

 

「学校の1/3を摘出するするおつもりですか?それに、彼は一昨日のあの現場にいたのでしょう?」

 

摩利「彼はあの現場を止めに入ったんだ。」

 

「ですが、彼は一科生ではなく二科生を擁護したそうですね?」

 

摩利「あれは完全に一科生が悪い。それに終わった話だ。また、彼は事情があって風紀委員入りすることは出来ない。そこで、力を借りたい私達が期間限定で風紀委員入りをお願いしたんだ。」

 

「その事情とはなんですか?」

 

摩利「教えられないな。守秘義務に値する」

 

「生徒会役員である俺にも言えないことですか?」

 

摩利「そうだ。それでさっき真由美がやらかしたところだ。」

 

達也「全く、往生際の悪い方ですね。」

 

「貴様!」

 

達也「現生徒会長七草真由美は第一高校の差別撤廃のために動いている。これは結構有名な話です。しかし、副会長が差別を助長する人では差別撤廃なんて夢のまた夢ですね。」

 

「なんだと!?」

 

達也「俺としては是非とも生徒会副会長を辞めたらどうですか?それなら今のまま二科生を見下して優越感に浸れますよ」

 

「やはり俺は認めません。一科生は一科生と切磋琢磨していくべきです。二科生と過ごす向上心の無いやつはいりません」

 

達也「服部副会長。一科生と二科生の違いはなんですか?」

 

「魔法力だ。」

 

達也「ですね。ですが、それだけです。例えばこれが剣術になれば一体何人の生徒が一科生に残れるでしょうか?」

 

「どういう意味だ?」

 

達也「一科生は満遍なく魔法が使えるよく言えばオールラウンダー、悪く言えば普通の魔法師。一方の二科生は1つのことに特化した魔法師です。そして、どんなに魔法が使えたところで、魔法が使えない状況で頼りになるのは自分自身の力です。つまり、魔法は万能ではございません。……そうですね、服部副会長。俺と模擬戦をしませんか?」

 

「いいだろう。」

 

達也「というわけで、模擬戦の申請をお願いします」

 

摩利「わかった。場所は第三演習室だ。30分後に執り行う」

 

――――――――――――――――――――――

 

30分後

 

「貴様、舐めてるのか?どうしてCADを持っていない」

 

達也「必要ないからです。」

 

「貴様!!ふざけるな!!」

 

達也「ふざけてませんよ。ただ、魔法こそ絶対と考えてる人の鼻っ柱をおるには最高のカードでしょう?」

 

摩利「さて、ルールを説明するぞ。

直接攻撃、間接攻撃に問わず相手に死をもたらす術式は禁止。回復不能な障碍を与える術式も禁止。相手の肉体を直接損壊する術式も禁止する。ただし、捻挫以上の負傷を与えない直接攻撃は許可する。

武器の使用は禁止。素手による攻撃は許可する。蹴り技を使う場合には学校指定のソフトシューズに履き替えること。

勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不可能と判断した場合に決する。フライングは反則だ。

このルールに従わない場合は私が強制的に止めるから覚悟しておけ」

 

達也と服部刑部は5メートル程離れて立つ

 

達也と服部の顔には余裕が見える。

 

不思議に思った真由美は横にいる深雪に聞いてみた

 

真由美「はんぞーくんは校内で5本の指にはいる実力者。入学してから負け無しだけど、どうして司馬君は余裕そうな顔をしているの?」

 

深雪「達也さんは勝ちます。私でも達也さんに勝てる確率は3割行くか行かないかぐらいです。おそらくこの部屋にいる全員でかかっても達也さんが勝つでしょうね。」

 

真由美「それは言いすぎじゃない?」

 

深雪はその言葉に答えずに達也のことをみていた。その目は達也の勝利を疑っていなかった。

 

摩利「はじめ!!」

 

最初に仕掛けたのは服部だった。

 

達也の足元に魔法式がロードされる

 

基礎単一系移動魔法

 

達也はそれを1歩後ろに下がるだけで躱した

 

驚愕がこの部屋を覆い尽くした

 

達也「言ったでしょ。“魔法は絶対ではない”と。では、次はこちらから」

 

達也は言い終わると同時に高速で動き回った

 

服部は達也を目で追えず魔法を変えた

 

複数現れたドライアイスの弾丸が達也を襲う

 

収束・発散・移動系系統魔法『ドライ・ブリザード』

 

だが、達也はそれを全て躱した

 

服部はもう一度CADを操作した

 

今度は達也を電撃が襲う

 

振動・放出系系統魔法『這い寄る雷蛇(スリザリン・サンダース)

 

『ドライ・ブリザード』の副次効果で発生する霧雨を利用して雷撃を与えるコンビネーション魔法

 

達也は今度は手を翳すと、達也の手から想子の奔流が飛ばされた

 

すると、服部の発動していた魔法が全て破壊された

 

達也はそのまま服部の前に現れて腹を殴ると、そのままの勢いで回し蹴りを食らわせた。

 

服部はそのまま壁にぶつかり、気を失って倒れた

 

摩利「…勝者、司馬達也!!」

 

達也はたいして表情を変えずに深雪の元へと向かう

 

摩利「待て!今の動きは自己加速術式を使っていたのか?」

 

達也「使っていないのは貴方もわかっていたでしょう?あれは正真正銘身体的な技術です。」

 

深雪「私も証言します。達也さんは忍術使い・九重八雲先生の教えを受けています」

 

摩利「九重八雲って【今果心】のことか?」

 

達也「ええ。あの九重八雲です。」

 

摩利「そうか。ならあの高速移動技術は納得がいく。」

 

真由美「ねぇ、さっきはんぞーくんの魔法を消した魔法は『術式解体(グラム・デモリッション)』よね?」

 

摩利「グラム、なんだっけ?」

 

真由美「『術式解体』よ。想子の奔流をイデアを経由せずに直接魔法式に当てることで魔法式を破綻させる対抗魔法。一回打つのに通常の魔法師が持つ想子の何10倍の量の想子を必要とするから使い手は少ないわ。射程がそこまで広くないという欠点以外に欠点がない、現最強の対抗魔法よ。」

 

本当は『術式解体』ではなく、分解魔法の『術式解散(グラム・ディスパーション)』なのだが、なまじ知識のある真由美の勘違いは達也にとって好都合だった。

 

達也「ええ。よくご存じで。今回は『術式解体』以外に魔法は使っていません。」

 

「なるほど…“魔法は絶対ではない”か。どうやら向上心がないのは俺の方だったようだ。」

 

真由美「はんぞーくん、大丈夫?」

 

「あ!はい!司馬、申し訳なかった。」

 

達也「いえ。俺の方こそ生意気な感じで申し訳ありませんでした。」

 

「渡辺委員長。司馬達也の臨時風紀委員入りを認めます。」

 

摩利「うむ。」

 

「司馬。次は魔法ありで戦ってくれ。」

 

達也「はい。」

 

「では、しつれいします。」

 

服部が部屋から出ていった

 

摩利「じゃあ、風紀委員室に向かおうか。」

 

 





というわけで、達也と服部の模擬戦でした。

服部は原作でも森崎と違って意識が変わっているので、今回もそうさせていただきました。

次回から活動が始まります。

あ、そういえば深雪は達也と同じく一週間の臨時生徒会役員とするつもりです。

では、また次回


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入学編 第八話

達也が風紀委員室には入って最初に思ったことはやはり、汚いの一言に尽きるだろう

 

「委員長?これはどういうことですか?」

 

「いや、すまないな。風紀委員は男所帯でな。片付けができてないんだ。」

 

「はぁ、片付けるので手伝ってください。それに、魔工士達と過ごす身としてはこの状況は耐えられません。」

 

「アレだけの対人スキルがありながら、FLTの社長とはね。なかなか君も大変だな。学生でありながら軍人として活動している者を知っているが、君の多忙さはそれ以上なんじゃないか?」

 

「そうですね。あの日からFLTだけは守り抜くと決めましたから。」

 

「そういえば、答えなくてもいいんだが、どうしてその年齢で社長なんてやっているんだ?」

 

「……すみません。さすがにそれは言えません。」

 

「すまん。変なことを聞いたな。」

 

「いえ。正体を知ってしまったからにはその質問をされる可能性はわかっていましたから。それと、昼にも言いましたが、絶対に他言無用ですからね?もし他言した場合は、こちらとしても消さなくてはならなくなるので」

 

「消すって大袈裟な…いや、すまん。だから睨まないでくれ。(これは本気で殺しに来るだろうな。真由美が変な地雷を踏まなければいいんだが)」

 

「ところで、委員長。どうして片付けずに机の上に座っているんですか?」

 

「わ、私は片付けが苦手なんだよ…」

 

「委員長って彼氏か許嫁がいますよね?」

 

「ど、どうしてそれを!?」

 

「お昼の時にお弁当を持ってきていた様ですし、その指についた傷も大切な人の為に頑張って作ったのではないかと思いまして」

 

「観察眼は超一流といったところか。それよりも、それがなんだというんだ?」

 

「片付けできない女は捨てられますよ?」

 

「シュウはそんなことしない!!」

 

「冗談ですよ。ですが、男目線で言えば片付けは出来た方が得ですよ。」

 

「そ、そうなのか…。」

 

その後は、摩利と片付けを続けていき、ついに片付けが終わった

 

「さて、一応片付けは終わりましたね。」

 

「そうだな。暇な時だけでいいから非常勤の風紀委員になってもらいたいくらいだ。」

 

「暇だったらですけどね。」

 

話をしていると、風紀委員室の扉が開いた

 

「おい、沢木。ここって風紀委員室だよな?」

 

「にわかには信じられませんが、確かに風紀委員室です」

 

「へぇ〜。あ、姐さん!もしかして姐さんが片付け…痛っ!」

 

「いつも姐さんと呼ぶなと言っているだろう!」

 

「ぽんぽん叩かねぇでくださいよ、姐s…委員長。」

 

大きな音はノートを丸めた摩利によるものだった

 

「ったく、片付けは私も手伝ったが、やってくれたのは、こいつだ。」

 

摩利が達也の方にノートを指を指すように向けると、2人の口から驚きの声が上がる

 

「例の一年坊主か。」

 

「期待できますね。」

 

どうやら先日の事件を知っていた様だが、この2人は先ほどの服部とは違って好印象だったようだ。

 

達也はそのことに驚いていた

 

「驚いただろう。うちは実力主義の人間が多いし、真由美も十文字も差別意識の少ない人を呼んでくれるからな。君も受け入れられるはずだ。まぁ、教職員枠は別だが。」

 

「そうだったんですね。臨時で入ることになりました、1-Bの司馬達也です。」

 

「3-Cの辰巳鋼太郎だ。腕があるやつは大歓迎だぜ。臨時とは言えよろしくな。」

 

「2-Dの沢木碧だ。」

 

達也は辰巳、沢木と握手を交わした

 

その時沢木に強く握られた

 

「くれぐれも、下の名前で呼ばないでくれよ。」

 

「了解しました。」

 

達也はその手を振りほどいた

 

その様子を辰巳が面白げに見ていた

 

「ほぅ…握力100㎏近くある沢木の腕を振りほどくか。なかなかやるな。」

 

「ここだけの話だが、彼はさっき非公式に服部を破っている」

 

摩利の話を聞いた2人は目に見えるように驚いた

 

「あの、入学以来負けなしの服部をですか?」

 

「ああ。彼は魔法無しで勝っていたぞ」

 

「素晴らしい。臨時であるのがとても惜しいですね」

 

「だろう。というわけで正式決定してみないか?」

 

「さっきも言ったはずですが、忙しいので正式決定は無理ですね。申し訳ありません」

 

「まぁ、なんにせよ、実力があるなら文句はない。構内でもなんかあればなんでも聞いてくれ。」

 

「それは、ありがとうございます。」

 

「さて、来週から君にも働いてもらうからな。頼りにしてるぞ、達也君。」

 

「1週間ですが、よろしくお願いします。」

 

達也は風紀委員のメンバー達との出会いに悪い気がしなかった。

 

その後、生徒会室を閉めるという話をしに来た真由美が同じように片付いた風紀委員室に違和感を覚えたり、深雪が達也を迎えに行った時に摩利との仲がよかったことに変に勘違いし、風紀委員室を氷が包み込んだりといったハプニングが起こったこともあったが、最終的には何事もなく、達也達は帰宅した

 

帰宅した後は深雪と泉美と穂波のCADを調整してその日を終えた





次回から達也の風紀委員活動、アレが出ますね。

では、また次回


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入学編 第九話

風紀委員室にて辰巳や沢木といった先輩と顔を合わせてから土日を挟んだ月曜日

 

達也は鋼とともに風紀委員本部へと向かっていた

 

「ねぇ、達也。今年の部活連推薦誰か知ってる?」

 

「いや。俺は知らないよ。鋼は確か教職員枠か。」

 

「そうだよ。ちなみに達也は臨時だけど、非常勤の風紀委員として生徒会推薦枠で名前は書かれてるよ。」

 

「俺は入ることは認めてないんだがな。」

 

「僕としては入ってくれた方が楽なんだよね。」

 

達也達が入ると、既に風紀委員メンバーが委員長である摩利以外揃っており、その中には部活連推薦枠と思われる生徒がいた

 

2人が着くと、すぐに摩利が入ってきた

 

摩利「全員揃っているな。今年も馬鹿騒ぎの時期がやってきた。そして今年からのメンバーも紹介する。立て」

 

摩利が合図を出すと、達也を含め3人が立ち上がった

 

摩利「教職員枠の1-B十三束鋼、部活連枠の1-A七草香澄、臨時であり非常勤メンバーとして生徒会枠の1-B司馬達也の以上三名だ。」

 

「使えるんですか?」

 

摩利「十三束も司馬も使えるし、七草も真由美の妹であり真由美からのお墨付きもある。気になるならお前が付いてみるか?」

 

「いえ、大丈夫です。」

 

摩利「話は以上だ。新人は残るように。出動だ!!」

 

全員が立ち上がり、敬礼をする

 

その点では、この組織は纏まっているらしい

 

部屋に摩利と達也達新人だけとなった時に摩利が口を開いた

 

「さて、3人にはこれを渡そう。」

 

達也達は摩利から端末を受け取った

 

「レコーダーは胸ポケットにいれておけ。ちょうどレンズ部分が外に出る大きさになっている。スイッチは右側面のボタンだ。…今後は巡回時には常に携帯しておけ。違反行為を見つけたらすぐにスイッチをいれろ。ただし、撮影を意識する必要はない。風紀委員の証言はそのまま証拠になるからな。レコーダーは念のためだ。」

 

摩利は自分の端末出すように指示すると、自分の端末を操作する

 

すると、達也達の端末にコードが送られた

 

「今のは委員会用の通信コードだ。報告の際は必ずこれを使え。」

 

全員が頷いたのを確認して摩利は話を続けた

 

「CADだが、風紀委員はCADの携行を認められている。携行するCADは生徒会室で照会しておけ。不正利用は風紀委員除名に加えて、一般生徒より厳しい罰があるということも覚えておけ。」

 

「質問があります。」

 

「なんだ?」

 

「委員会の備品を使用してもよろしいですか?」

 

達也の質問に何故という考えが摩利の頭によぎった

 

「構わないが理由は?あれは私の記憶では旧式だった筈だが…」

 

「あれは確かに旧式ですが、エキスパート仕様の高級品ですよ。」

 

「なんだと!?…我々はそんなものを粗末に扱っていたのか。いいだろう。もともとうちでは埃を被っていたんだ。自由に使ってくれて構わない。」

 

「では、()()お借りします」

 

達也の言葉に3人が戸惑いの顔を向ける

 

「二機?本当に面白いな、君は。構わないが、普段使いするCADは一応照会しておけよ。」

 

「わかりました。」

 

「では、出動だ!」

 

部屋を出ると、一緒に出てきた鋼に声をかけられた

 

「CAD二機使って何をするの?」

 

「ちょっとやってみたいことがあるんだ。」

 

「へぇ~それは楽しみだね。」

 

すると、後ろから突然声をかけられた

 

「待ちなさい!!」

 

「お前は…七草香澄か。何のようだ?」

 

「何故二機使うの?二機を同時に使えば想子波が干渉しあって上手く発動はできないわ。まぐれで私に勝った分際で調子に乗らないことね。」

 

「想子波の干渉は織り込み済みだ。それに、想子波なんて自分で上手く調整すれば魔法の阻害にはならない。七草の癖にそんなことも知らないのか?やはり温室育ちのアホ種族どもは揃いも揃ってアホなのか?」

 

「誰がアホですって!?ふざけんじゃないわよ!覚えてなさい!七草家を馬鹿にしたことを後悔させてやるわ!」

 

そう言って七草香澄は反対側の道を歩いていった

 

「どうやら噂通りのようだね。」

 

「噂?」

 

「七草香澄は七草家の最高傑作。その魔法の威力・精度は【エルフィン・スナイパー】とも呼ばれた七草真由美よりも上。そして、七草真由美とは違い、七草香澄は魔法力至上主義。君とは反りが合わないのは当然かな。」

 

「みたいだな。」

 

「にしても君も十師族嫌いという噂は本当なのかな?」

 

「さあな。どちらかというと嫌いというよりは苦手なだけだ。いわゆる思想の違いかな?考えが昔から変わっていない四葉家とは違って、他の師族達は考えをコロコロ変えたり、自分勝手なんだよ。だから苦手なんだ。九島烈が何のために師族会議という制度を作ったのか理解できていないようだし。」

 

「詳しいことは今度聞かせてよ。今は巡回に入ろうか。」

 

「そうだな。」

 





さぁ、七草香澄は思想を変えることが出来るのか。

今後に期待というわけで、今回はここまでです。

次回は入学編最初の山場(?)です。

では、また次回


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入学編 第十話

達也は校内から出て鋼と別れると、早速抗争が聞こえた

 

「ちょっ、やめっ、」

 

「おい!彼女は俺達が見付けたんだ!!」

 

「違うわよ!私達が見つけたのよ!」

 

どうやら非魔法使用部活達が新入生の取り合いをしているようだ

 

その輪を観察していると、どうやら輪の中心にいたのはエリカだった

 

やがて、彼らの動きが過激になってきたのか、エリカの服がはだけかけていた

 

さすがにそれ以上は少し危険と判断して介入することにした

 

達也はエリカを囲う上級生達の地面に干渉して、よろけさせるくらいの一時的な揺れを作り出した

 

「走れ!」

 

「えっ!?」

 

達也はエリカの手を掴むと、声をかけて走った

 

やがて、校舎の裏手に来ると、達也は足を止めた

 

「大丈夫か…。」

 

「見るな!!」

 

達也はすぐに後ろを向く

 

どうやら、エリカの服がはだけていたままだったようだ

 

「…見た?」

 

「す、すまない」

 

「馬鹿!」

 

エリカが達也の脛を蹴る

 

しけし、達也の脛は木刀で叩かれても痛くないほどに固くなっており、達也はエリカの足の心配をしていた

 

「悪いと思っているなら付き合いなさいよ」

 

「?」

 

「部活回るのよ。それに、風紀委員は良い壁になるしね。」

 

「俺は番犬か?」

 

「言葉の綾よ。」

 

それからは、達也はエリカについて巡回をしていた

 

道中ではレオ達の部活の話になり、美月が美術部に、レオが山岳部に入部したそうだ。

 

見た目と一致してて面白かったとはエリカの感想だ。

 

そんなわけで、エリカにとっての本命である剣道場へとたどり着いた

 

今の時間は剣道部のデモンストレーションだ。

 

したからは「面!」や「胴!」といった声がよく聞こえてくる

 

「ふ~ん。魔法科高校にも剣道部はあるのね」

 

「普通じゃないのか?」

 

「……意外ね。」

 

「なんだよ」

 

「達也君にも知らないことがあるんだね。」

 

「俺が知ったかぶりに見えたか?」

 

「違う違う。達也くんってなんでも知ってるイメージだったから。」

 

「俺でも知らないことは多いよ。それより、どうして剣道部があるのがそんなに意外なんだ?」

 

「魔法科高校ともなるとみんな剣道から剣術に流れちゃうのよ」

 

「なるほどな。てっきり剣道も剣術も同じだと思っていたよ。」

 

「もしかして、達也くんって武器術に魔法を併用するのは当たり前だと思ってない?ついでに言えば闘気とかプラーナだとかで体術を補填するのは当たり前って」

 

「そうじゃないのか?体を動かしているのは筋肉だけじゃないんだから。」

 

「達也くんには当たり前かもしれないけど、選手にとっては当たり前じゃないんだよ」

 

「そうか。ところで、そろそろおとなしく見学しないか?」

 

「あ、あはは…」

 

エリカも静かになって2人で演目を見ていた

 

「なんかつまらないわね。」

 

「見栄を意識した演習だろ。何を求めているんだ」

 

「だって試合じゃなくて殺陣だから、予定どおりの1本って感じがして」

 

「演舞なんだから仕方無いだろ。」

 

達也とエリカは近くで見るために一階に下りた

 

達也達が一階に下りた時に、突如悲鳴が鳴り響いた

 

どうやら剣道部と剣術部が小競り合いを起こしていたようだ。

 

達也はすぐに胸元のレコーダーのスイッチを押してしばらく見守ることにした

 

「ちょっと桐原君!剣術部の時間はまだ先じゃない!なんて事をするのよ!」

 

「心外だな壬生。お前の実力じゃこいつらは相手にならないだろ?一回面したくらいで泡を吹くようなやつだからな。だから、特別に俺が相手をしてやるよ」

 

「魔法に頼る剣術部の桐原君が純粋に剣の腕を極めた私に勝てるとでも?」

 

「大きく出たな壬生。いいぜ、見せてやるよ。肉体の限界を超えた剣術の戦い方をな!」

 

エリカはこの2人を見て不機嫌そうだった顔色を明るくした

 

「これは良い組み合わせだね!」

 

「知っているのか」

 

「剣道部の方は壬生紗耶香、2年前の全国中学生剣道大会の準優勝者で、【剣道小町】と呼ばれていたわ」

 

「優勝者じゃないのか?」

 

「優勝者はルックスが…」

 

「なるほどな」

 

「で、剣術部の方が桐原武明、2年前の中学生剣術大会東日本部門での優勝者」

 

「なるほどな。」

 

最初に面を仕掛けた桐原だが、それはブラフだと見てわかった

 

しばらくすると、2人が相互に振りかぶる

 

結果、桐原の竹刀は壬生の腕に、壬生の竹刀は桐原の鎖骨部分に当たった

 

「勝負ありだな。」

 

「すごい…私の知ってる壬生紗耶香の実力じゃない」

 

「それだけ努力を重ねたと言うことだな。」

 

「真剣なら致命傷よ!」

 

()()()()、か。は、ははは…」

 

桐原が薄気味悪い笑い声を出す

 

「残念ながら真剣なら俺の身体は斬れてないぜ。壬生、お前は真剣がご所望か?なら見せてやるよ。これが真剣ってやつだ!」

 

桐原がCADを操作する

 

すると、桐原の竹刀からガラスを引っ掻いたような音が鳴り響く

 

(あれは、振動系近接戦闘用魔法『高周波ブレード』)

 

達也は壬生と桐原の間に入り腕をクロスさせた

 

すると、達也の腕から乗り物酔いにも近いような気持ち悪い感覚が流れ出る

 

それと同時に、桐原の魔法が()()()()()()

 

「なっ!?魔法が」

 

達也はすぐに桐原の竹刀を蹴り飛ばすと、桐原を床に叩きつけた

 

そのまま鎖骨を折って取り押さえる

 

「風紀委員の司馬です。桐原先輩には魔法の不適正使用で御同行願います」

 

「なっ!?」

 

「どういうことだ!壬生も同罪だろ」

 

「私は魔法の不適正使用といったんですが、貴方の耳にはそう聞こえませんでしたか?それか壬生先輩がなにか魔法でも使いましたか?」

 

「ちっ!ふざけんな!」

 

剣術部の男が達也に殴りかかる

 

が、達也はそれを受け止めて、その腕だけで男を投げた

 

「逮捕者数名ですので、応援を要請します。全員気絶させますので担架を」

 

「一年の癖に舐めるな!!」

 

達也の物言いに逆上した剣術部員達が全員達也へと攻撃を始めた

 

達也はそれを躱したり、受け止めたりしながらいなしつつ、魔法を使用しようとCADを操作するものを見付けては腕をクロスさせて魔法を掻き消す

 

「はぁ…はぁ…ちょこまかと」

 

達也はしばらくいなしていたが息を切らしていない

 

一方の剣術部員達は息が上がってきてしまっている

 

「もう終わりか?俺も飽きたしそろそろ担架を持った応援が来ることだろう。だからすぐに終わらせてやる」

 

達也が指を弾くと剣術部員達が押し潰されるようにうつ伏せに倒れた

 

「どうだ?重力を加えるだけで人は立っていられなくなるんだ」

 

「き、貴様…」

 

達也はその場で濃密な殺気を浴びせた

 

その殺気に耐えきれずに剣術部員達が気絶していく

 

しかし、観客達には何が起こったのか理解できていない

 

達也の異能『時空間操作』をもってすれば剣術部員だけに殺気を浴びせることなど容易い

 

そんなわけで担架を持った応援が駆けつける頃には剣術部員は全滅だった

 

その様子を怪しげに見守る1人の男がいた





今回はここまでです

次回は達也が十文字克人と初対面します

では、また次回


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入学編 第十一話

「ーー以上が事の顛末です。」

 

達也は武道棟での小競り合いの報告の為、部活連の本部に来ていた

 

本部には摩利のほかに真由美や、部活連の会頭がいた

 

今回の件については、達也と真由美の仲が険悪なので摩利が対応していた

 

「ご苦労だった。にしても剣術部員相手にこれほど圧倒するとは、やはり正式採用されないか?」

 

「遠慮しておきます。」

 

「冗談だったんだが、まあいい。それで、桐原の容態はどうだ?」

 

「鎖骨が折れていましたので、保健委員に引き渡しました。」

 

「じゃあ達也君。この際はどうするべきか、君の考えを聞かせてくれ。」

 

「今回、魔法を使ったのは桐原先輩のみです。そして、桐原先輩は非を認めています。なので今回は剣道部と剣術部の()()()()()として喧嘩両成敗、というのはいかがでしょう?」

 

「うむ。いいだろう。という事で、十文字。我々風紀委員は今回の件を懲罰委員に送ることはない。」

 

「寛大な処置に感謝する。司馬、魔法を使ったのは桐原だけでいいんだな?」

 

「(十文字克人…まるで巌のようだな…。)…ええ、その通りです。」

 

「わかった、話は以上だ。それと、お前の事は聞いている。他言はしない事と仕事の強制をしない事は約束しよう。」

 

「!?(また七草か。だが、これはこれで好都合。広めないのならそれでいい。)わかりました。」

 

「今日は帰って構わない。」

 

「はい。では失礼します。」

 

達也が部屋に出てから、摩利が口を開けた

 

「どうだ、十文字。」

 

「渡辺のいう通り、確かに実力があるように見える。」

 

「面白いだろ?」

 

「ああ、是非とも戦ってみたい。」

 

「それはやめてくれ、学校が壊れる。」

 

「そのようだな。…ところで七草、お前は、いや()()()()()()()()()()()()んだ?」

 

「!?わ、私は知らないわよ!!」

 

「じゃあどうして自分から地雷を踏み抜くようなことを?」

 

「…父が彼に興味を持っていたのよ。まさか社長だとは思わずに…これで懲りてくれるといいんだけど…」

 

「俺は七草家が破滅しない事願うばかりだ。」

 

「まぁ、真由美がそこまで気に病む必要はないぞ。」

 

「だけど…。」

 

「なんかあったら相談には乗る。だから少しは落ち着け。さっきも達也君相手に怯えすぎだ。」

 

「だ、だって…。」

 

「泣くな七草。それに渡辺もあまり言い過ぎるものじゃないぞ。」

 

「わ、わかっている。」

 

「なら、俺は仕事に戻る。鍵は任せた」

 

十文字克人が部屋から出ると自然に話は終わっていた

 

―――――――――――――――――――――

 

その様子を『時空神の眼』で見ていた達也は、話が終わったのを確認して認識阻害を保ったままその場を離れた

 

下駄箱付近で認識阻害を解除した達也はそのまま下駄箱に向かった

 

すると―

 

「ねぇ達也くん。話は終わったの?」

 

「待っていてくれたのか?」

 

いつものメンバーに+αしたメンバーが下駄箱で待っていた

 

「はい。達也兄様と帰ろうと待っていたらレオ君達と会いまして、」

 

「達也を待つって言うから一緒に待ってたんだ。」

 

泉美の説明をレオが補足したことで達也も状況がよくわかった

 

だが、1つだけわからないことがあった。

 

「ところで、そちらの2人は何方かな?」

 

「あ、達也さん。この2人は1-Aの北山雫さんと光井ほのかさんです。光井さんは私の代わりに生徒会役員になった方で北山さんは光井さんのご友人だそうです。」

 

「(北山雫…潮さんの言っていた同い年の愛娘とは彼女の事だったのか。)そうだったのか。はじめまして俺は司馬達也だ。よろしく」

 

「私は北山雫。よろしく」

 

「み、みちゅいほのかでしゅ!!!」

 

北山雫は落ち着いていたが、どうやら光井ほのかは緊張しやすい人間らしい

 

「あ、す、すみません。改めて光井ほのかです。よろしくお願いします」

 

どうやら達也が来るまでに全員で自己紹介を済ませていたらしく、すでに仲の良い雰囲気だった

 

「ところで、待ってくれたお礼だ。1000円迄なら奢るぞ」

 

「え!?いいの!?」

 

「まじ!?ダンケ、達也。」

 

達也のご飯の誘いにエリカとレオがすぐに乗った

 

「じゃあ、僕もご馳走になるよ。」

 

「私も行く!」

 

鋼とエイミイも便乗した

 

彼等には遠慮と言う言葉が無かった…

 

「え、で、でも…会ったばかりですし…」

 

「大丈夫よ。達也さんが良いと言っているのです。受け入れてください」

 

「いや、深雪…。強制しているわけではないんだが…」

 

「いえ、達也さんのご厚意を受け入れないのは万死に値します!」

 

「そんなにか…まぁ、とりあえずアイネブリーゼでいいか。」

 

それからは毎日抗争に襲われていた

 

一科生同士の喧嘩からの騙し討ち、隙をついた不意打ち、果てには二科生からも攻撃を受けていた

 

そして、達也を襲った二科生は共通して赤と白のトリコロールのリストバンドをつけていた

 

特に本格的に対策しようと思い始めたきっかけは最終日、並木道を通っていた時のこと

 

突然、地面に魔法式が現れたのだ

 

「道を陥没させる魔法…厄介な」

 

達也は腕をクロスして〈ジャミング波〉を放って魔法を掻き消した

 

やがて、魔法が破綻した事に気付いた犯人が飛び出して、魔法を発動する

 

魔法式が身体にロードされる

 

「『自己加速術式』…それにトリコロール。泳がせるか。」

 

達也はその男を捉える事はせず、そのまま見逃した

 

 





今回はここまでです。

次回はこの続きです。

では、また次回


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入学編 第十二話

今回は休日回です。

次回から後半部分です


部活動勧誘期間も終わり達也と深雪は臨時だったと言うこともあり、無事に仕事から離れることが出来た

 

ちなみにだが、風紀委員をしていた時は検挙率No.1で、剣術部を倒した謎の1年生と呼ばれているらしい

 

要は、達也あるところに事件ありという巻き込まれ体質のようになってしまったのだ

 

そして、本日は休日ということで、家でまったりしていると達也達のところに電話が鳴り響いた

 

穂波が出ると、そこには『藤林響子』とかかれていた

 

『やっほー、達也君たち。元気にしてる?』

 

藤林響子は藤林家に嫁いできた九島家の人間との間に生まれた子であり、血縁上九島烈の孫に当たり、穂波と同い年である

 

彼女は沖縄防衛戦の後に軍人となって、現在の階級は少尉である

 

「ちょっと色々ありすぎて元気はないかもしれませんね。」

 

『まぁ、達也君の巻き込まれ体質は一級品だからね…しょうがない。ね、深雪ちゃん?』

 

「そうですね。」

 

このままだと話が変な方向に進みそうだと感じた達也は話の話題を変えるために動いた

 

「それで、本日はどんな要件ですか?」

 

『要件は2つ。1つ目は、穂波から頼まれていた、例の情報を調べ終わったから渡そうと思って。穂波、明日空いてない?』

 

「明日は大丈夫よ。」

 

『そう。じゃあお茶でもしながら話しましょうか。』

 

「ええ、そうね。」

 

『2つ目は、泉美ちゃんについて。』

 

「わ、私ですか!?」

 

『達也君から頼まれていた件でね。七草からの干渉を防ぐためという意図もあって話し合った結果、泉美ちゃんには偽名を使った特務士官として仮加入という形になったわ。』

 

「達也兄様、私こんな情報初めて聞いたんですけど、どう言うことですか?」

 

「泉美、お前は戸籍を操作したとはいえ、元七草家の人間だ。お前を実験台として利用しようとしていた七草弘一の事だ。隙を見てお前を捕らえてくる可能性がある。そこで、仮に国防軍に所属することで、十師族、特に七草からの干渉を防ぐ目的がある。そして、俺や響子さんが入っている第一○一旅団は佐伯少将が作った()()()()()()()()()()()独立した戦闘魔法師集団だ。」

 

『泉美ちゃん。これは達也君が泉美ちゃんのために上に掛け合った結果なの。だから、泉美ちゃんの特務士官としての最初の任務は、偽名を考えること。達也くんとは違って非正規だからね。じゃあ決めたら私の端末に送っといてね。』

 

「達也兄様が私のために…わかりました!」

 

『うんうん。やっぱり達也くんの周りの女の子はこんな感じよね。』

 

「響子さんは俺の事をどう考えてるんですか…まったく…。」

 

達也は響子の言葉辺りから冷気が漏れ出ているのに気づいた

 

「達也さん…?その話詳しく聞かせていただけませんか?」

 

「み、深雪?や、やましいことはないからな、な?」

 

「じゃあ、一回デートしてください!それで許します」

 

「なっ!?それなら私もデートしてください!!」

 

「ちょっと待て。飛躍しすぎだ」

 

『大変そうね。そうだ、私と穂波もデートに立候補するわ!というわけで、私達4人と休日に1人づつデートね。よろしく~』

 

「わ、私もですか!?」///

 

『そうよ。これで休日の予定は決まったね。じゃあね、達也君。日時の連絡は今度するわ。バイバ~イ。』

 

最後に爆弾だけ投下して通話を切った

 

「はぁ、どうしてこうなった…」

 

「達也さん!!いつ行きましょうか」///

 

「達也兄様、明日行きましょう!」

 

「待ちなさい、泉美ちゃん。私が先よ!」

 

「いえ、私が先です。これは例え深雪さんだろうとも譲りません」

 

そんな言い争いをしている2人を他所に、穂波は達也の元に近付いていた

 

「達也君、明日一緒に行きませんか?例の情報はもともと達也君が調べるように言ってきたわけですし…。」

 

「そうだな。じゃあそうするか。」

 

「よかったです。じゃあ、その後はデートですね」///

 

「「あっ!穂波さんずるい!!」」

 

「私の勝ちですね。」

 

そんなわけで明日は穂波と響子のお茶会に参加することが決まった

 

―――――――――――――――――――――――

 

翌日、達也と穂波はとあるカフェで響子を待っていた

 

このカフェは穂波と響子がお茶をする時にいつも使っているところで、なんと個室付きだった

 

そんなプライバシーを守れるカフェにて、2人で飲み物を飲みながら待つこと15分

 

待ち人が現れた

 

「ごめんなさい、少し準備に手間取っちゃって」

 

「大丈夫ですよ、約束時間よりは早いので。」

 

「お疲れでしょう?何を飲む?」

 

「じゃあ、アイスティーで。」

 

響子からのオーダーに穂波が端末を操作して注文を済ませると、1分もしない内にアイスティーが届いた

 

「うん。美味しい」

 

「この後は私達で達也君を独占ですので、早めに話しちゃいましょうか」

 

「ええ、そうね。じゃあ、まずはこれを」

 

達也の元にデータチップが置かれた

 

達也はそれを自分の情報閲覧用端末にそれを挿入した

 

端末に表示されていた情報のタイトルは〈反魔法国際政治団体ブランシュ〉とかかれていた

 

「これを2週間も経たない内に纏めるとは…さすがですね。」

 

「いいのよ。私達も別件で調べていたから」

 

「その話は初耳なんですけど?」

 

「私達が仲間に迫りそうな危険因子を調べるのは当たり前でしょ?」

 

何か問題でも?という感じで見つめられた達也は諦めて話を戻した

 

「にしても、ずいぶんと細かく調べられてますね。俺でもここまでは調べられないですから。」

 

「達也君が褒めるなんて珍しいこともあるのね。」

 

「響子さんは俺をなんだと思っているんですか?」

 

「近寄りがたい完璧超人?それとも近くで見てないと危なっかしい子供?」

 

「はぁ…、帰りますよ。」

 

「それはダメ。」

 

「ええ…。」

 

「…コホン。それで、達也君が望むのはこっちの情報よ。」

 

響子が達也の端末を操作すると、とあるページで止めた

 

「東京近辺で活動する〈エガリテ〉…表向きは〈ブランシュ〉と関係がないとされていたが、予想通り下部組織だったか。」

 

「単刀直入に言うわ。〈ブランシュ〉及び〈エガリテ〉の魔の手は確実に第一高校に忍んでいます。」

 

「〈ブランシュ〉東日本支部リーダー司一…(司、聞き覚えがあるな。嫌な予感が的中しなければいいのだが…)」

 

「達也君、司一は表だけでなく、裏のテロ行為も取り仕切ってます。警戒しておくべきでしょう。」

 

「そうですね。もしかしたら隊を頼るかもしれなかったので、その時はよろしくお願いします」

 

「もちろん。まかせなさい!それに、隊長からも事前に言われてるから何かあったらすぐに言ってね」

 

「1人で溜め込まないでください」

 

「わかりました。じゃあそれで」

 

話が一段落したところで、穂波が部屋の空気を変えた

 

「話が終わったみたいですし、デート行きましょう」

 

―達也が逃避したいと思う方向へ

 

「話も終わったことだし、いいわよ。」

 

「はぁ…」

 

「そうと決まれば、早く行くわよ!まずは、腹ごしらえね。その後は、服とかアクセサリーとか、下着売場にも行きましょう!!」

 

「私は食器とか見たいです」

 

「いいわね、いろいろ行きましょう」

 

「ほどほどにしてくださいね…」

 

「「フフフ…嫌よ!」」

 

翌日、家と学校では精神的に疲れ果てた達也が目撃された





というわけで、前半と後半の間のハーフタイム的な回でした

今回はあまり書けませんでしたが、デートのシーンとかは別の機会で書けたらいいかなと思います(多分無理かもしれない…文才が欲しい…)

今回は達也が正規士官ということで、響子が達也の出した調査依頼の報告をして、ついでにデートをしたという回です

次回から〈ブランシュ〉が動き出します

では、また次回


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入学編 第十三話

部活動勧誘期間が終わり、第一高校は一時的な平穏を享受していた

 

まぁ、それも経ったの数日ぐらいだったが、

 

やっと落ち着いて資料を漁れると毎日のように図書館に入り浸っていたのだが、

 

そんなある日、達也は待ち伏せにあった

 

壬生紗耶香…剣道部の部員で達也が初日に魔法から守った人だ。

 

話したいことがあると言われて、とりあえず深雪と泉美に先に言って貰うように頼んで自身は紗耶香と共にカフェテリアへと向かった

 

……これが後に面倒な事態を起こすことになるとは、今の達也には想像もしていなかった

 

それこそ、〈ブランシュ〉の始末なんかよりももっと面倒な事に

 

カフェテリアへとたどり着き、2人がそれぞれドリンクを受け取ると、席に着いた

 

達也はコーヒーをブラックで、壬生紗耶香はオレンジジュースをそれぞれ1口飲んだ

 

紗耶香はジュースを飲んでいる時に達也に見られていたのに気付いて顔を赤くした

 

「な、何よ…」///

 

「いえ、俺は見る目がないなと思いまして。」

 

「私がジュースを飲むのがそんなに意外なの?」

 

「そういうわけでは…それに俺だって家ではジュースだって飲みますよ。」

 

「へぇ~、意外ね。」

 

「俺の方こそですよ。俺は貴方の事をただの剣道美少女だと思っていたものですから。」

 

「け、剣道美少女って…」///

 

このままだと変な方向に行きかねないので、早速本題へと入った

 

「で、俺を呼び出してまでする話は世間話ですか?」

 

「違うわ。お願いがあるのよ。司馬くん、剣道部に…」

 

「お断りします。」

 

「え、はやっ…。ど、どうしてかしら?」

 

「逆にお聞きします。俺が使ったのは徒手格闘術であって剣道ではありません。それでも誘う理由はなんですか?あ、言っておきますが剣道も出来そうだからという理由なら問答無用で帰らせていただきます。」

 

「……。じゃあ、せめて協力はしてくれないかしら?」

 

「…聞くだけ聞いてみましょう。」

 

「私達は二科生だから魔法が下手なのは自覚しているわ。でも、魔法だけで全てを否定されるのは許せない!だから、私達非魔法系部活で生徒会でも部活連でもない独立した組織を作ろうと思うの。」

 

「(優遇を冷遇と履き違えているのか?)ちなみにですが、魔法だけで全てを否定されると言っていましたが、例えばどんな事ですか?部活動の予算ですか?それとも設備の使用時間などについてですか?」

 

「そ、それは…。」

 

「残念ですが、部活動の予算はその部活の活動実績に基づいています。それに、設備の使用は許可さえあれば一科二科関係なくできます。貴方は何が不満なんですか?」

 

「じゃあ貴方はどうも思わないの?妹やお友達が二科生だと馬鹿にされて!!」

 

「別に。例え周りがあいつらを馬鹿にしてようが、あいつらは気にしません。それにあいつらは魔法がないなりの努力をしています。だから俺はあいつらを尊敬しているんです。」

 

「ど、どうしてそこまで割り切れるのよ!」

 

「それはご自分でお考えを。それに、先ほどの質問に貴方は答えていません。残念ですが、それが答えられないようでは協力するか決められませんので。では。」

 

達也はそのままコーヒーを飲み干して、カフェテリアから出た

 

―――――――――――――――――――――――

 

翌日の朝、達也の元に連絡が入った

 

送り主は摩利で、昼に生徒会室で話したいということだった

 

それを許可すると、達也は泉美と深雪を誘った

 

2人はそのまま承諾したので、3人は昼に生徒会室に行くことになった

 

「やぁ、達也君。壬生を言葉責めにしたって本当かい?」

 

達也達が生徒会室に入って最初の言葉はそれだった

 

「言葉責めなんて淑女が使っていい言葉ではありませんよ。」

 

「ほぉ…私を淑女扱いしたのは君だけだったよ」

 

「おや?先輩の彼氏は紳士出ないんですか?」

 

「なっ!?そんなことはない!シュウは!!」

 

「……」

 

「何故何も言わない」

 

「何か言うべきことでもありましたか?」

 

達也の意趣返しも成功したようで、横では真由美や深雪は口元を押さえつつも笑い声が若干声に出てしまっていた

 

「それで、壬生を言葉責めにしたって言うのは本当なのか?」

 

「そんな事実はありませんよ?」

 

「おや?そうか。カフェテリアで壬生が顔を赤くしていたと言う目撃情報があるんだがな。」

 

この摩利のカウンターに達也自身はダメージがなかったが、それ以外でダメージを受けたものがいた

 

―――そう、深雪と泉美である

 

「達也さん?どう言う意味か、説明を要求します!」

 

「嘘…ですよね?あの達也兄様に限ってそんなことはない…ですよね…」

 

その証拠に深雪からは冷気が、泉美からは何とも言えないプレッシャーが、達也を含めた生徒会室を襲った

 

特に、深雪の冷気は部屋にいた全員のお弁当凍らせてしまったので、それも含めて復元するのが面倒臭かったりした

 

ちなみに、入学後の生徒会室での一件の後から深雪と泉美は交互にお弁当を作っているし、真由美達もお弁当を作り始めたようだ。

 

最後にお弁当を作り始めたのは真由美らしい

 

そして、達也は2人の対応をした後に、会ったことを話した

 

「―――と言うわけなんです。確認ですが、風紀委員は名誉職だと聞いているのですが、そう言う点数稼ぎはあったんですか?」

 

「いや、そんな話は聞いたことがないし、この代では起こっていない。だが、風紀委員には一科生達しかいないからな。二科生からしたらそう言う見方をされる可能性もあるだろう。」

 

「なるほど…ならば印象操作の点を調べるべきですかね。」

 

「印象操作?その噂を流している人のこと?」

 

「それもありますが、それはあくまでも小物でしょう。その大元です。例えば〈反魔法国際政治団体ブランシュ〉とか」

 

達也の発言、特に組織名に真由美と摩利は驚いて椅子から立ち上がった

 

「どうしてそれを!!」

 

「情報統制は敷かれてあったはずよ!」

 

「たしかに情報統制完璧でしょうね。ですが、噂の出所を全て塞ぐのは不可能です。」

 

「はぁ…たしかに、達也君の言う通り、我が第一高校は〈ブランシュ〉の影響を受けています。」

 

「やはりそうですか。では、忠告を、赤と白のトリコロールのリストバンドには目を光らせておくことをお勧めします。」

 

「それって、まさか!?」

 

達也の忠告の意味を理解した真由美は必死にその可能性を消そうと首を振る

 

「ええ、そのまさかです。」

 

そんな暗いテンションのまま昼休憩終了のチャイムが鳴った

 

「もう時間ですね。深雪、泉美、戻るよ。」

 

「はい!」

 

達也が2人を連れて部屋を出ようと扉のドアノブに手をかける

 

その時に摩利に呼び止められた

 

「ま、待ってくれ!例の組織作りの件、どうするつもりだ?」

 

「彼らの回答次第、と言ったところですかね?現在質問しているのはこっちですのでね。」

 

「そうか。わかった。頼んだぞ」

 

「…何を頼まれたのかはよくわかりませんが、とりあえずお任せください。」

 

そのまま達也は振り返ることもなく生徒会室を後にした





今回はここまでです

次回も壬生紗耶香出ます

では、まだ次回


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入学編 第十四話

生徒会室で達也が摩利達と話した日から日付の空いた2日後、達也の元に壬生紗耶香から例の組織作りの件について話がしたいという連絡を入れてきた

 

達也は今後の対応の為にも乗っておくことにした

 

会合の集合場所は前回同様カフェテリア

 

達也がつくと、席から手を振って場所を示してくれた

 

「さて、俺も忙しいので手短に行きましょうか。組織を作ってどうするつもりですか?」

 

「部活連でも生徒会でもない独立した機関を設置するわ。そして、私達はその機関から意識を変えて行くつもりです。」

 

「なるほど…具体的には?」

 

「学校に待遇改善の要求をします」

 

「ほう…なんのですか?」

 

「部活動予算について」

 

「(随分と踏み込んだな。)先日も言いましたが、部活動予算はその部活の実績に基づいています。それでも改善を要求しますか?」

 

「ええ。私達の決意は変わらないわ。」

 

「そうですか。ここまでですね。貴方と私では主義主張が違いすぎる。大方色仕掛けで釣ろうと思っていたようですが、私をあまり舐めないでいただきたい」

 

「ま、待って!どうしてそんなに割り切れるの?」

 

「私…いや俺は深雪に誘われたから入っただけで、この学校に思い入れは無い。…話すだけ無駄でしたね。では、失礼します」

 

――――――――――――――――――――

 

翌日、放課後に入ったタイミングで達也は鋼と話していた

 

すると、突然放送が鳴り響いた

 

『皆さん!!』

 

「音量の調節をミスったのかな?」

 

「どうして達也はそう呑気なんだい?」

 

「俺はもう風紀委員じゃないからな。気にする必要も無くなった。ただ、相手は犯罪者だからな、何か困りごとがあれば連絡してくるといい。」

 

「じゃあその時は頼むよ。」

 

『僕達は、学校内の差別撤廃を求める有志同盟です。僕達は学校に待遇改善の要求をします。これはこの要求をする為の必要な行動なのです!』

 

鋼は既に呼び出しに応じて、部屋を出ている

 

それから数分後、達也の元に案の定鋼からの連絡が入った

 

「何だ?」

 

『ごめん達也。お願いがあるんだ。」

 

「内容次第だが」

 

『彼らの言い分はわかるけど、あのままでは彼らはただの犯罪者となる。だから放送室を開けたいんだよ。』

 

「彼らを外に出せばいいのか?それとも鍵を開ければいいのか?」

 

『穏便に済む方で頼む。』

 

「じゃあ今から鍵を開ける。合図をしたら飛び込め」

 

『わかった。』

 

達也は座席の情報端末を起動してキーボードを叩いた

 

「よし、あと10秒で開く。」

 

『了解!』

 

「よし、開いた!」

 

ここまでの所要時間は2分にも満たなかった

 

それから達也は鋼経由でこの件を生徒会が解決する事、この件から討論会を実施する事を聞かされた

 

――――――――――――――――――――――

 

討論会が2日後に決まったその日、達也は自分の作業室で電話をしていた

 

相手は風間晴信、達也の上官の少佐であり、所属する独立魔装大隊の隊長である男だ。

 

『こんなタイミングに連絡とは、どのような用件かな?大尉』

 

「今から2日後。いや、もう翌日か。俺の予想では〈ブランシュ東日本支部〉が第一高校に攻めてきます。それを殲滅してから、本部を叩こうと思っているのです。」

 

『それで、貴官は何を望むんだ?』

 

「援軍。それから後始末をお願いしたいのです。」

 

『少し待て』

 

それから5分後に風間は戻ってきた

 

『許可が出た。当日、タイミングを見計らって柳と藤林を送る。殲滅後に連絡を入れろ。』

 

「ありがとうございます。」

 

『気にするな。それと、上からの要望だが、東日本支部リーダー司一の生け捕りを命じる。それ以外は殺しても構わん。』

 

「かしこまりました。」

 

『じゃあ当日はそれで。また今度会おう。』

 

「はっ!」

 

達也の当日のプランが決まった

 

―――――――――――――――――――――

 

翌日、放課後の時間を使って討論会が行われることになった

 

有志同盟側は4人、対する生徒会側は生徒会長七草真由美1人

 

本来なら4人の方に分があるが、相手は十師族七草の長女であり、生徒会長として学校を動かしてきた張本人

 

そして有志同盟が〈エガリテ〉のメンバーであることは調べがついているので、それとなく警戒を促しているし、たった2日では真由美を言い負かす程の答弁など考えることは不可能だろう。

 

‘言葉で勝てないのなら武力で’という考えは昔から同じ

 

彼らが仕掛けるとすれば、真由美が同盟を言い負かし、討論会が終了したタイミング。

 

そして、講堂にほとんどの生徒が集まるとなれば、攻めるのには好都合である

 

そんなわけで達也の姿は講堂……ではなく、図書館の中にあった

 

講堂の中には深雪と泉美を待機させており、内容を代わりに聞くというのを建前にして何か起こった際には対処してもらうよう頼んだからである。

 

泉美には『分解』と『再生』は達也の許可があるまで使わないように言い聞かせているので、勘繰られる必要はない。

 

達也は『時空神の眼』で外の状況を確認しながら待っていた

 

既に、応援に駆け付けた独立魔装大隊のメンバーは第一高校の管理システム外に待機してもらっていて、いつでも準備可能な状態になっていた

 

それから30分後、学校裏手にある駐車場からロケットランチャーが火を噴いた

 

ロケットランチャーから発射されたミサイルが校舎に激突し、爆風で校舎の窓ガラスが割れた

 

すると、講堂内でも同盟メンバーが動き始めて、それを風紀委員が取り押さえているところが見えたので、達也は深雪に連絡を入れた

 

「深雪、聞こえるか?」

 

『達也さん!』

 

「奴らが動き出した。深雪は泉美と作戦通りに行動してくれ。それと、近くにいるであろう渡辺委員長に司甲の捕縛をするよう伝言を頼む。」

 

『司甲だと!?』

 

「ああ、聞こえていたんですね、渡辺委員長。そうです。司甲が、今回の襲撃の仲介役です。情報を持っている渡辺委員長には話しますが、司甲の義理の兄が〈ブランシュ東日本支部〉のリーダーです。第一高校内の〈エガリテ〉の増加は彼が原因とみて間違いないでしょう。」

 

『わかった。司甲の捕縛の指示は出そう。ところで、達也君。君はどこにいるんだ?』

 

「俺は図書館にいますよ。俺には差別だとかそういうしょうもない事には興味ありませんから。それに、今回の討論会もどうせ結末は見えていましたし。」

 

『しょうもないって…まあいい。達也君、襲撃の鎮圧に協力してほしい。』

 

「了解です。まぁ、言われなくてもやる予定ですけどね。」

 

『では、また後で会おう』

 

「ええ。」




今回はここまでです。

次回で入学編完結したいなと思ってます

では、また次回


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入学編 第十五話

次回で入学編完結です


討論会終わりからの襲撃は達也の予想通りの展開となった

 

達也から促された警戒を意識して、正門前を十文字克人が守っていた為に侵入した賊の数は駐車場付近にいた者だけだった

 

そして、その侵入者も達也の予想通り図書館、そして実技棟へと向かっていた

 

達也の指示通り動いていた深雪と泉美は校内を走っていた

 

「泉美ちゃん、賊は?」

 

「今、図書館と実技棟のようですね。実技棟の方は収束するみたい。」

 

泉美が『精霊の眼』で確認しながら深雪に状況を話す

 

「なら、図書館に向かいましょう」

 

「そうですね。早く達也兄様の所に」

 

2人が進む道には賊が何人かいたが、深雪は魔法で、泉美は八雲直伝の体術で片っ端から倒していく

 

「2人とも!」

 

ふいに深雪達を呼ぶ声は上から聞こえた

 

「「達也さん(兄様)!!」」

 

達也が上から飛び降りてきたのだ

 

「2人とも無事か?」

 

「ええ。」

 

「問題ありません」

 

「よし、じゃあ図書館に行こうか。サポートはするが、メインは任せるぞ」

 

「「はい!」」

 

図書館に向かっている途中で、交戦中の友人を見付けた

 

すぐに深雪が加重魔法で賊を押し潰した

 

「レオ!!」

 

「達也か?これどういう状況だ」

 

「レオー!って終わってた?」

 

「いや、エリカもいるとは好都合だ。」

 

「それどういうこと?」

 

エリカはレオにCADを渡しながら聞いた

 

「賊が入った。狙いは図書館だろう。ついてくるか?」

 

「勿論!」

 

それから図書館にたどり着くと、達也は後ろを振り返った。

 

「深雪、泉美、先を進め。」

 

「「はい!」」

 

「私も行ってくるわ。」

 

「レオは残れ。興味が出てきた」

 

「おうよ!」

 

深雪と泉美、そしてエリカが図書館の中に入っていった

 

「さて、テロリストの諸君。ここから先は通行止めだ」

 

「うるせぇ!ぶっ殺す!」

 

テロリスト達がその言葉を合図に銃を向けた

 

「達也!」

 

「まぁ落ち着け。」

 

達也が指を鳴らすと放たれた銃弾が空中で停止した

 

「なっ!?」

 

「そうだな…この銃弾は返してやろう。ありがたく受けとれ」

 

達也が手を銃弾に向けると、銃弾が全てテロリストの方を向いて動き始めた

 

「グワッ!」

 

「うわっ!?」

 

「ギャァァ!」

 

本来の撃った速度そのままで返ってきた銃弾は容赦なくテロリスト達を射貫いていく

 

「レオ。俺はお前に期待をしている。さぁ、どんどん敵が湧いてくるぞ。」

 

「なんだあれは?」

 

「俺の魔法だ。詳しいことは言わないぞ。」

 

「だよな…よし、やってやるぜ『Halt(ハルト)!』」

 

レオが大きな声を出して突撃をする。

 

それを迎え撃とうとナイフを持った男達がレオに襲いかかる

 

しかし、ナイフはレオを貫通することはなく、皮膚にも触れずにナイフのみが壊れた

 

まるで、固い金属を殴っているかのように。

 

(逐次操作…十年前に流行った音声操作で魔法を使う技術。まさかこんなところでその使用者に会えるなんてな。)

 

数分も経てばレオが襲ってきた男達を蹴散らしていた

 

――――――――――――――――――――――

 

達也とレオが図書館の前の敵を撃退している時、図書館の中に入っていった深雪達は一時的に隠れていた

 

「泉美、わかる?」

 

「一階に2人、二階に4人。おそらく特別閲覧室にいる筈ですね。」

 

「へぇ~、泉美わかっちゃうんだ。泉美相手に不意打ちは無理かな」

 

「エリカ、無駄話はよして。」

 

「じゃあ下は私がやるわね。」

 

「そう、なら泉美ちゃん。私達は先にいきましょう」

 

「はい!」

 

深雪は『跳躍』の魔法を、泉美はその身体能力で二階へと跳び上がり、目的地である特別閲覧室へと向かっていった

 

「さすがの行動力ね。これが達也君の関係者って奴か。さて、貴方達の相手は私よ!」

 

―――――――――――――――――――――――

 

特別閲覧室には、魔法大学の文献へとアクセスできる特別な端末が置かれている。

 

魔法大学の文献は国家機密の代物。

 

その為、この専用端末以外では文献にアクセスすることはできない。

 

だからこそこのテロリスト―〈ブランシュ〉はここを狙った。

 

若干の予想外は幾つかあったが、無事当初の目的を達成することが出来そうだった。

 

―――壬生紗耶香は悩んでいた

 

これが、本当に魔法による差別の撤廃になるのか?と

 

ここまで〈ブランシュ〉を招いたのは紗耶香自身だ。

 

それは、剣道部の部長司甲の兄、〈ブランシュ〉リーダーである司一が示した差別撤廃への唯一の道

 

そう言われていた。

 

しかし、今やっていることはどうだろうか。

 

冷静に考えれば考える程、これがただの犯罪であることには気付き始める。

 

だが、こういう思考になるのは()()()()()()()

 

悩んでいると何時も司一がいた。

 

そして、気付くとその悩みは()()()()()

 

そうやって考え込んでいるとハッキングをしている人達がアクセスに成功したのか歓声を上げた。

 

その時、特別閲覧室の扉が外側から綺麗に切り取られたかのように自分達の方へと倒れた

 




いい感じにキリのいい場所が無かったのでここで切らせていただきました

おそらく次回かその次くらいで入学編が完結します。

九校戦どうしましょう…

では、また次回


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入学編 第十六話

特別閲覧室の扉が外側から綺麗に切り取られた

 

この部屋の重要性とその為の扉の状態を理解している男達はその現象に驚いていた

 

「馬鹿な!?」

 

「扉が!?」

 

一方、紗耶香はそれをやった犯人を見て驚いていた

 

「四葉さんと司馬さん!?」

 

それと同時に泉美が右手を男達へ、正確にはハッキング用ツールに向けて伸ばしていた

 

泉美の手から想子光が出ると、ハッキングツールが部品ごとに分解された

 

「これで貴方達の企みは潰えましたね。」

 

「司馬さん…。」

 

驚き固まっている紗耶香の横で、〈ブランシュ〉の実行犯のうちの1人が拳銃を泉美に向けた

 

「ふざけるな!!」

 

しかし、次の瞬間には拳銃ごと腕が凍った

 

「ぐわっ!?」

 

「おやめなさい。私がそんな見え見えの殺気に気付かないとでも思いましたか?」

 

「……して……どうして!!私は差別を無くそうと思ってやったことなのに!」

 

「壬生先輩、確かに貴方は差別撤廃の為に動いたのかもしれません。ですが、これはただの犯罪行為です。」

 

「司馬さんは悲しくないの?兄や四葉さんとかと比べられて」

 

紗耶香は同じ二科生(ウィード)である泉美を取り込もうと、疑問を問いかけた

 

「冗談じゃありません!!」

 

しかし、それを泉美は一喝した

 

「確かに、私はこの力のせいで普通の魔法が使えません。それで見下されることもありました。でも、達也兄様は言ってくれました。『お前には誰にも真似できない力がある。それを上手く生かせば、普通の魔法なんかよりずっと大きな価値がある。』と。

確かに、この言葉がなければ、〝平等〟という言葉につられてしまうでしょう。自分の持つ本当の価値に気付かずにね。

壬生先輩にはそういう方はいらっしゃらないのですか?自分を心配してくれる人、認めてくれている人は。」

 

「えっ!?…私には…」

 

突如帰ってきた疑問に紗耶香は答えることができずに、固まってしまう

 

それを現実に戻したのは非情にも〈ブランシュ〉の仲間だった。

 

「壬生!指輪を使え!」

 

紗耶香はその声で我に返って中指につけていた指輪に想子を流す

 

〈キャスト・ジャミング〉による魔法阻害のジャミング波

 

そして、声をかけた男が投げた煙幕によって辺りは煙に包まれ、〈ブランシュ〉は逃走を図った。

 

しかし、

 

「グワッ!」

 

「うわっ!」

 

泉美の体術によって紗耶香以外の賊が床に倒れた

 

そこに深雪が『収束』魔法によって煙を収束して消した

 

「さて、仕事終了ね。壬生先輩は…エリカに任せましょうか。」

 

「そうですね、深雪さん。」

 

「あら、深雪姉様でもいいのよ?」

 

「駄目です。達也兄様は私のですから。」

 

「いいえ、私のよ。なぜなら知り合ったのは私の方が先だからね。」

 

「でも、長く一緒にいたのは私です。」

 

いいムードの筈が、やはり馬が合わない様だ。

 

―――――――――――――――――――――

 

その頃、壬生紗耶香は走っていた

 

あのまま残っていれば良かったものを…

 

無心で走っていると一階で通せんぼに合った

 

「せ~んぱい!」

 

「…貴方は?」

 

「1-Eの千葉エリカで~す。」

 

「どきなさい!じゃないと痛い目見るわよ。」

 

「交渉決裂かな?」

 

その瞬間、エリカが()()()

 

否、高速で動いたのだ。

 

「……渡辺先輩と同じ?」

 

それを直感で受け止めた紗耶香は〈アンティナイト〉を起動した。

 

剣道部として魔法を使わない技の面では目の前の少女より上であるという自信から守りから一転攻めへと切り換えていった

 

「……はぁ…はぁ…。」

 

いずれ、相手よりも先に自分の方がバテてしまった

 

それに加えて目の前の少女は〈キャスト・ジャミング〉を受けたにも関わらず息がまだ持っている

 

気付けば、持っていた脇差は刀身が半分で折られていた

 

「拾いなさい!あの女の幻影を私が断ち切ってあげる。」

 

紗耶香はその辺に落ちていた刀を持って、〈アンティナイト〉をその辺に捨てて呟く

 

「私には分かる。貴女の剣は渡辺先輩と同じ」

 

目の前の少女、千葉エリカは微笑みながら脇差しを折った伸縮警棒を向けた

 

「私の剣はあの女とは一味違うわよ。」

 

掛け声はなかった

 

しかし、踏み込むタイミングは同じだった。

 

2人が交差すると、次の瞬間、紗耶香の刀がこぼれ落ちて右肩を抑えて姿勢を崩した

 

「……鎖骨にヒビが入ってるわね。まぁ、いいわ。手加減できなかったってことでしょ。」

 

「そうね。それに貴女は誇っていいわ。()()の女に本気を出させたんだから。それはあの女、渡辺摩利でも出来なかったこと」

 

「貴女千葉家の人間だったのね…」

 

「ちなみに、渡辺摩利はうちの門下生。剣の腕は私の方が上」

 

「そうなのね…。」

 

気が抜けたのか、紗耶香はそのままここで倒れた

 

それと同時に達也達が入ってきた

 

「どうやらもう終わったみたいだな。」

 

「終わるの待ってたくせに。まぁいいわ。達也君、彼女運んでくれない?」

 

「構わないよ。」

 

達也は紗耶香を担ぐと合流してきた深雪達と共に保健室へと向かった

 

 





次回、入学編最終回です。

〈ブランシュ〉の破壊方法はどうしようかな…

ってな感じで、次回をお楽しみに

では、また次回


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入学編 第十七話

保健室に入るとそこには真由美達学校トップ陣が揃っていた

 

達也は紗耶香をベッドに寝かせると、しばらくして彼女が起き上がった

 

それから真由美の取り調べにポツポツと話し始めた

 

「ー今思えば、つけあがっていたんですよ。全国で2位になって。だからあの時渡辺先輩に断られた時に放心状態みたいになって…」

 

「摩利、そんなことしてたの?」

 

「うーん、確か、去年の新歓のことだったか?」

 

「はい。あの時は『お前とは釣り合わないから断る。』って感じで断られちゃって…」

 

「待て壬生。それは違うぞ。私は『私では実力的に釣り合わないから断らせていただく。』って言ったはずだ。決して壬生よりも強いからとかそんな理由では無い。むしろ、純粋な剣技のみだったら私の方が負けていただろうからな。」

 

「嘘っ!?それじゃあ、私は今まで勘違いを…。」

 

「壬生先輩は悪くありませんよ。」

 

「達也くん?」

 

「エリカが言ってました。『2年前に見た時よりも強くなっている』と。あの千葉家の令嬢が言ったんです。それは誇ってもいいことだと思いますよ。それに、貴方のその記憶違いの検討もついています。」

 

「記憶違い?」

 

「ええ。壬生先輩も含めた同盟メンバーには1つの共通点があります。」

 

「共通点だと?それって腕に巻くリストバンドじゃないのか?」

 

「それもありますけど、メインは違います。彼らは共通してマインド・コントロールをされています。」

 

「マインド・コントロールですって!?」

 

「おそらく使わらた魔法は精神干渉系系統外魔法『邪眼(イビル・アイ)』。相手の網膜に催眠効果のある光信号を送り、精神を支配すると言う精神干渉系魔法の中ではおそらく一番簡単な魔法ですね。まず、映像媒体でも再現できますし。まぁ、それが偽物ならの話ですが」

 

「偽物だと?」

 

「ええ。あの魔法はベラルーシあたりが積極的に研究していた所謂手品のような魔法でして、本物の『邪眼』には劣るもののある程度の効果を保障した物となっています。本物には精神干渉系と光波振動系に適性がないと使えませんから。」

 

「なるほど、つまり今回の件は壬生は操られていただけで、悪いのは〈ブランシュ〉だけだと言いたいわけだな?」

 

「その通りです。さすがは風紀委員長、理解が早くて助かります。」

 

「私は、悪くないってことなの?……司馬くん。少しこっちに来てくれない?」

 

達也の言葉に気が少し楽になったのか、紗耶香が達也を近くに立たせた

 

そして、達也の服を掴むと、そこに顔を押し当てて、涙を流した。

 

それを、達也は黙って見届けた。

 

涙を流し終え、落ち着いた紗耶香は達也に一言礼を言うと、達也はそれを受け取って離れた

 

「待って!どこに行く気?」

 

「それを聞いてどうするつもりですか、七草会長?」

 

「事によっては止めるわ。」

 

「そもそも俺が本当に言うとでも思っているんですか?」

 

「もしかして、〈ブランシュ〉を叩く、なんて言わないよね?」

 

「……。」

 

無言を肯定と捕らえた人のうちの1人、壬生紗耶香は達也を止めようと声を出した

 

「ちょっと待って!」

 

達也は動き出した歩みを止めた

 

「何でしょう?」

 

「私のためならやめて。」

 

「貴方のため?」

 

「私は然るべき処罰を受ける。その覚悟がある」

 

「それは貴方がご自分で行うことであり、俺がどうこう言うものではありません。そして、これは貴方のためではありません。俺は当事者であり、被害者ですよ?やられたらやり返す。当たり前の話じゃないですか。」

 

「それでも、それは危険すぎるわ!」

 

「では、俺が〈ブランシュ〉殲滅をやめて警察を招き、壬生先輩を家裁送りしますか?」

 

達也の言葉に一同が黙るが、1人、十文字克人は言葉を発した

 

「確かに警察の介入は好ましく無い。だが、当校の生徒にそこまでやってもらう必要はない。」

 

「そう言うことなら問題ありませんよ。俺1人で行きますから。」

 

「なっ!?」

 

「何を考えてるんだ、達也君!危険すぎるぞ!」

 

「わかってますよ。わかってるからこそ俺が行くんです。」

 

「ならば俺もついて行こう。この学校の生徒として、そして十師族十文字の人間としてこの状況は好ましくない」

 

「そうね…十文字君なら安心できるわ。司馬君も十文字君についていっt…」

 

真由美の言葉を達也は遮りながら、少し機械的に言葉を放った

 

「その必要はございません、()()()()()殿()。ここから先は()()()の仕事です。十師族だろうが、何だろうが()()()()である貴方にはここから先に関わる資格はございません。」

 

それは克人の参戦を事務的に、そして機械的に却下する言葉だった

 

さらに、この言葉にはこの場を一瞬にして支配する別の空気があった

 

「どう言う意味だ?」

 

「そのまんまの意味ですよ。〈ブランシュ〉はもともと我々がマークしていた組織。そして、ついに今日大義名分ができた。ただそれだけです。第一民間人に殺しなんて作業させるわけないじゃないですか。」

 

「俺は師族会議に所属する人間としての責任の為に言っている。」

 

「はぁ…。」

 

「ちょっと司馬君!その態度はないでしょ!」

 

達也の態度に物申したくなった真由美が口を挟む

 

「どいつもこいつも、師族会議だろうが何だろうが関係ない。確かに魔法師関連の事件に関する解決は師族会議が背負うもの。だが、これは違う。」

 

「どう違うと言うんだ。」

 

「これは国防に関する問題。そして、国防に関する問題を解決するのは師族会議でも魔法師でもない。」

 

達也は普段抑えている殺気を少しだけ解放した

 

()()()、軍人だ。」

 

その殺気に、慣れている泉美と深雪以外が足を震わせて、人によってはその場に膝をついているものもいる。

 

「すでに本件は政府からの要請に従い、我々国防軍が行うことになっている。お前たち一般人が関わる問題ではない!手を出すな。」

 

達也が指を鳴らすと、その空間でフラッシュが焚かれ、光が消えるとそこからは達也と泉美と深雪が居なくなっていた

 

そして、そこには達也たちの消えた空間と無作為に開け放たれた保健室の扉があった

 

「達也君!?」

 

「おい、泉美も深雪さんもいねぇぞ。」

 

「まさか、あの短時間で移動を…?」

 

「……司馬達也…何者なんだ…。」

 

達也たちの消えた部屋には何とも言えない空気が漂っていた

 




散々今回で完結させるって言ってたのに、次回で入学編が完結になります

字数平均2000文字を目標にやっているせいで、中途半端な切り方が多く、恐らくは前作『星々の王と妃』よりもスローペースだと思います

本当に申し訳ございません。

次回こそ入学編を完結できると思いますので次回をよろしくお願いします


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入学編 第十八話

間に合わなかったぁぁぁ!!!

というわけで新年1発目の投稿です。


達也は保健室という空間に干渉して光を起こした時に深雪と泉美に干渉して、空間転移をさせていた

 

現在、3人がいるのは達也が頼んで待機させた独立魔装大隊のメンバー、柳大尉と藤林少尉の2名との合流地点である。

 

そして、そこには穂波もいて、響子と話していた

 

「まさか翔んでくるとは。なんかいざこざでもあったのかな?」

 

「まぁ色々ありましてね。とりあえず、今から向かいましょう。」

 

「分かった。藤林、車を出せ。」

 

「了解しました。」

 

そんなわけで、計6人を乗せた車は〈ブランシュ〉東日本支部を目指して動いていた

 

道無き道を進むと、廃工場が現れた。

 

「あれが、〈ブランシュ〉東日本支部のアジトだ。」

 

「爆発物などの危険物は無かったようです。」

 

「そうか。なら、泉美と深雪は俺についてこい。柳大尉と穂波は裏から、藤林少尉はこの車の防衛をお願いします。」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

施設の前の扉を達也が異能で破壊すると、それぞれが仕事を始めた

 

―――――――――――――――――――――

 

一方、達也達が本拠を攻め始めた頃、学校に残っていたメンバーはせわしなく動いていた

 

「司馬の居場所は予想できるが、こちらとしても〈ブランシュ〉に対してなにも思わないわけではない。車は俺が出す。千葉、西城。働いて貰うぞ。」

 

「「はい!」」

 

「でも場所を知らないわよ?」

 

その疑問に答えたのはこの中の人間ではなかった。

 

「私が教えてあげる。」

 

「小野先生!?」

 

この学校のスクールカウンセラー小野遥、実はこの中のメンバーは知らないが、公安の秘密捜査官でもあり、【ミス・ファントム】という異名を持っていて、尚且同じ九重一門に所属していて達也の妹弟子である。

 

まぁ、そんなことを知らない彼らにはなぜ小野先生が情報を持っているのか知る由もなかった。

 

「なぜ小野先生が持っているんですか?」

 

「ごめんなさいね…守秘義務なの。」

 

小野先生はそのまま紗耶香の所へと向かい紗耶香の手を取った。

 

「ごめんなさい、壬生さん。最後まで悩みを解決できなくて…」

 

「い、いえ。先生のせいではないので…私が悪いんです」

 

「そんなことはないわ。カウンセラーとしてもっと気付いてあげれば…」

 

その後、小野先生から場所の情報を受け取った克人は車を出して、本拠へと向かった

 

その時、克人を納得させる理由を出した剣術部の桐原武明も連れて4人で車が発進した

 

ちなみに、真由美と摩利はお留守番となった。

 

しかし、〈ブランシュ〉東日本支部へと通じる唯一の道には別の車が止まっていた

 

「ここから先は通行止めです。」

 

車の近くに立っていた軍服の男が克人達の車に近付いていた

 

「すみませんが、ここから先に用があるのですが、」

 

克人が代表として軍人と交渉した

 

「申し訳ございませんが、上からは誰も通すなと言われておりますので、」

 

「師族会議、十文字家の人間として来ているのです。通していただけませんか?」

 

「残念ですが、貴方方の通行を認めることは出来ません。」

 

「どうしてですか?」

 

「上からは誰であろうと入れてはならないと言われております。もし、入りたいのであれば上に交渉してください。」

 

こんなわけで克人達の〈ブランシュ〉攻略は難航していた

 

――――――――――――――――――――――

 

達也達は正面の入り口から中へと侵入していた

 

その時の敵の少なさに違和感を覚えながらも、一際大きな部屋へとたどり着いた

 

「ようこそ!司馬達也君!その横にいるお姫様達は司馬泉美嬢と四葉深雪嬢かな?」

 

「お前が司一だな?」

 

「調べているとは関心、関心。いかにも私が司一だ。〈ブランシュ〉東日本支部のリーダーとして表も裏も私が仕切っている」

 

達也はシルバーホーンを向けた

 

「武器を置いて降伏しろ」

 

「それはCADだね?魔法が一番だと思っているならそれは勘違いだよ。…弟が報告してきた君のアンティナイトを使用しない〈キャスト・ジャミング〉の理論は素晴らしい。これなら今回の被害の埋め合わせも出来る。」

 

「なるほど、壬生先輩を使ったり弟に襲わせたのもそれが理由か?」

 

「よく回る頭だな。あまり好ましくはないね。まぁいい。」

 

司一が右手で眼鏡を上に投げた

 

「司馬達也!仲間になれ!」

 

右目が妖しく光ると達也の腕から力が抜けた

 

「ハハッハ!君はもう私の仲間だ。さて、お仲間の居場所はどこかな?」

 

深雪と泉美が少し心配していたが、顔には出さなかった

 

それに司一が一瞬顔をしかめるが冷静に仲間になった筈の達也へと指示を出した

 

「司馬達也、後ろのお嬢さん2人を殺せ」

 

達也がシルバーホーンを深雪達に向ける

 

達也の口が動く

 

深雪と泉美の顔が驚愕に染まる

 

司一はその様子に笑顔で微笑んだ

 

しかし、その顔は次の瞬間に驚愕に染めることになった。

 

達也がシルバーホーンを引いた瞬間、司一の部下が持つ銃が部品に()()()()()

 

そして悟る。

 

彼は操られていないということを

 

「な!?ば、馬鹿な!?」

 

「精神干渉系系当外魔法『邪眼(イビル・アイ)』…と称しているが、本当は光波振動系系統魔法の偽物。催眠効果のある光信号を網膜に写して狂わせる、ベラルーシ辺りが研究していた魔法だな。」

 

「ど、どうして!?」

 

「眼鏡を投げる右手に注目させ、その隙に左手でCADを操作する。種が分かれば防ぐのは簡単だ。」

 

「ヒ、ヒェェェェ!!」

 

司一が部下を置いて奥へと逃げていく。

 

「後を追う。深雪と泉美はここを任せた」

 

達也がそういって先へと進む。

 

「行かせるか!!」

 

対応するためにナイフをもって達也へと突進してくる

 

しかし、そのナイフを持った手が凍り、悲鳴を上げながら倒れた

 

「程々にな。」

 

達也が部屋を出ると同時に2人から殺気があふれでた。

 

「さて、死にたくなければその場に跪きなさい」

 

深雪の宣告と溢れ出た殺気に男達が冷や汗をかく

 

「そう。泉美ちゃん、魔法の練習よ。殺さずにね。」

 

「魔法の練習台が欲しかったんですよ。」

 

泉美が達也の作ったオーダーメイドのシルバーホーンSを取り出して引き金を引く

 

男達の関節を穿ち、倒していく

 

――――――――――――――――――――――

 

そんな様子を眼でみながら先に進む達也は司一のいる場所まで進んでいた

 

目の前に扉を挟んで司一とその部下がいることを確認した達也はシルバーホーンの引き金を引いて相手の銃を部品ごとに巻き戻した

 

扉を介して驚愕の声が聞こえる

 

そのまま扉を蹴破った達也を向かえたのは沢山のジャミング波だった。

 

「どうだ?魔法師。本物の〈キャスト・ジャミング〉の味は」

 

達也は使用媒体であるアンティナイトの量から敵の裏を推測した

 

レアメタルに含まれるアンティナイトはその希少性から中々入手できず、多く入手する方法は産出国から直接仕入れるしかない。

 

この組織にそんなコネがあるとは思えない。

 

つまり…

 

「大量のアンティナイト…なるほど、雇い主(パトロン)はウクライナ・ベラルーシ再分離独立派、そのスポンサーは大亜連合か。色々馬脚しすぎだ。」

 

「うるさい、相手は魔法の使えないガキ1人だ。殺せ」

 

「悪いな、俺に〈キャスト・ジャミング〉は効かない。」

 

達也が指を鳴らすと、部下達に電流を浴びせて重力で押し潰した

 

その光景に司一は恐怖で後ずさる

 

その時、横の扉が蹴破られ中から人が現れた。

 

「達也、目当てはそいつか?」

 

「ええ。こいつが今回の重要参考人司一です。」

 

「分かった。達也、気絶させてくれ。俺が運ぶ」

 

「分かりました。」

 

達也が指を銃のような形にして、バーンと呟けば威力の弱いとドライアイスの弾丸が司一の右腕を吹き飛ばした

 

「えっ…ギャァァァ!!腕が!!」

 

そこを柳大尉が首にチョップで黙らせると血の出ている部分を肉を焼くことで塞いで運んでいく。

 

それから数分後には後処理の部隊が到着し、司一の身柄をそちらに引き渡して、その日の作業を終えた

 

後日、司一の供述も含めて〈ブランシュ〉の下部組織を全て検挙したことで、〈ブランシュ〉に関わった学生は『邪眼』による洗脳を受けたというのもあってお咎めなしということになり、一応入院することになった。

 

特に、司甲は高校に入る前から洗脳されていたということで長い期間入院し、自主退学することになった。

 

それから入院中の紗耶香の退院祝いに駆け付け、知り合いの内閣情報局に所属している壬生紗耶香の父、壬生勇三と会話したり色々あって、〈ブランシュ〉事変は無事に解決した

 

 




というわけで新年明けましておめでとうございます。

今年も私―旭姫をよろしくお願いいたします。

さて、今回で入学編が完結です。

ちなみに、達也が2人の方を向いて呟いた言葉は、
「操られてないから安心しろ」です。

次回からは九校戦編となります。

さぁ、達也はどう関わっていくのか?

お楽しみに

では、また次回。


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九校戦編
九校戦編 第一話


入学編見返したら量が多くて驚きました

というわけで、今回から九校戦編です。

今回アンケートがございますので、解答お願いします




〈ブランシュ〉事件から2ヶ月程たった6月後半に行われた期末テスト

 

これは魔法科高校に通う生徒たちにとって大きな意味を持つ

 

そう、8月に行われる全国魔法科高校親善魔法競技大会―通称九校戦に出場出来るか否かが決まる

 

そんな期末テストに置いて色々と驚かせるような事態が起こった

 

まずは総合順位、今回の総合1位は達也で2位は深雪、3位に七草香澄が入った

 

そして、問題の筆記試験、上位20人に二科生の人間が入ったのだ。

 

特に、3位に泉美、4位に幹比古がランクインしたのも相当大きかった

 

そんな大きな事件の中心人物達は学校近くの喫茶店〈アイネ・ブリーゼ〉に来ていた

 

「達也さん、総合1位おめでとうございます!」

 

「ありがとう、ほのか。それにほのかだって総合6位で良い方じゃないか。」

 

「そうよ、ほのか。そういえばここにいる一科生メンバー全員トップ10に入ってるのね。」

 

「あ、そういえば。」

 

「達也君が1位で、深雪が2位、鋼君が4位で雫が5位、6位がほのかで8位にエイミイ。」

 

エリカが1人ずつ名前と順位を上げてくと、美月やレオが少し大袈裟に褒めた

 

「にしても筆記試験の結果発表の時のあいつらの顔見たか?」

 

レオが話題に上げたもの、それが例の筆記試験の事だった。

 

「ここにいるメンバーだと、レオだけトップ20に入ってないけどね。」

 

「う、うるせぇ!にしても幹比古やるじゃねぇか!」

 

「い、いや…僕はいつも通りやっただけだから…」

 

「そのいつも通りでも4位が取れるのがすごいんですよ!」

 

美月に褒められて幹比古の頬が少しだけ朱く染まる

 

それを皆がニヤニヤしながら見たりしていた

 

そして、話題は九校戦へと移っていった

 

「所で、達也君は総合1位になったわけだけど、九校戦は何で出るの?」

 

エリカが話題を変えて達也に種目を聞いてみた

 

全員が興味ありげに見つめている

 

「その事なら、俺達は出ないぞ。」

 

「えっ?」

 

「達也さん、出ないんですか!?」

 

「俺は用事があってな。まぁ、もし出るとしたらスピード・シューティングとアイス・ピラーズ・ブレイクだろうな。」

 

達也の予定というのは、FLTだけではない。

 

――――――――――――――――――――――

 

遡る事3日前

 

いつものように部屋で目標の為の研究をしていた達也の元に電話があった

 

『久しぶりだな、大尉。』

 

「階級で呼ぶと言うことは秘匿回線ですか。よくもまぁ一般家庭の回線にアクセスできますね、風間少佐」

 

相手は達也の上官風間玄信

 

達也も所属する第一○一旅団独立魔装大隊の隊長を務める国防陸軍少佐で、九重流における達也の兄弟子でもある。

 

そんな風間が達也の家の回線をジャックして連絡を入れてきたのだ

 

『簡単ではなかったがな。大尉の家は少しセキュリティが厳しすぎないか?』

 

「まぁ、俺の立場を考えたら妥当でしょう。色々と見られてはいけないものもありますしね。」

 

『確かに。それはそうだ。』

 

「ところで、わざわざ世間話をする為に秘匿回線を使ったんですか?」

 

『いや、違うぞ。今回は大尉に伝えとかないといけないことがあるからな。』

 

「それは緊急ですか?」

 

『八月に九校戦がある。会場は国防軍富士演習場。まぁ、これはいつも通り。実は最近ここで関係者以外の不法侵入の形跡があった。』

 

「不法侵入?軍の演習場でですか?」

 

『おそらく敵は大陸系国際犯罪シンジケート〈無頭龍(No Head Dragon)〉だろう。壬生に確認させた』

 

「壬生と言うと…ああ、情報局の。」

 

『ああ。彼は私の同期で宿舎を共にした仲だ。退役後は内閣府情報管理局へと配属された。』

 

「なるほど。それで、俺にどうしろと?」

 

『表向きはFLT社長の護衛という形で会場入りする。つまり、大尉にも参加するしないに関わらず会場入りしてもらう。』

 

「なるほど。了解しました。」

 

『うむ。さて、そろそろ新人オペレーターが慌て始めるだろうからこの辺で終わろう。師匠によろしく言っといてくれ。』

 

「はい。では、失礼します。」

 

――――――――――――――――――――――

 

こんな経緯があり、達也は出場せずに社長として会場入りすることを選んだのだ。

 

「ちなみに深雪は出るの?」

 

「私は参加する気が無いって言いますか…叔母様次第ですかね…。」

 

「やっぱ、七草と四葉って仲悪いのかな?」

 

「別にそう言うわけではないぞ。ただ七草が勝手に四葉を恨んでるだけだ。もう四葉は七草なんて気にしてないだろう。」

 

「やっぱり達也君は詳しいね。」

 

「まぁ伊達に社長なんてやってないからな。情報収集は経営者の基本だ。何かする時に情報は持っているだけで有利になる。それは交渉事だったり戦闘に置いても大事だ。皆も覚えておくと良いぞ。」

 

達也の経験則から来るアドバイスに雫がその通りといった感じで首を縦に振る

 

彼女はおそらく父である北方潮から色々と学んでいるのだろう。

 

翌日、達也は生徒会室に呼び出された




今回はここまでです。

ちなみにアンケートの内容は達也の参加種目です。

つまり、最終的には試合に出ますし、深雪たちのエンジニアをします。

選択肢はそれぞれ、最初から参加(本戦)(新人戦)、最後のモノリスのみの三択です。

ちなみにモノリスをやる都合上、どちらも一種目です。

アンケートのご協力よろしくお願いします

では、また次回。


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九校戦編 第二話

アンケートご協力ありがとうございました

まだまだこの章ではアンケートがありますので、そちらの回答もよろしくお願いします


翌日、達也は生徒会室に呼び出された

 

内容は言うまでもなく九校戦のこと。

 

ちなみにだが、深雪は真夜の命で出場することが決まっていて、泉美はそもそも選考すらされていない

 

深雪がする種目はおそらく新人戦二種目

 

1つは、魔法の危険度に制限が無いアイス・ピラーズ・ブレイク

 

もう1つは、持久力と保有想子量がものを言うミラージ・バット

 

このうちアイス・ピラーズ・ブレイクは深雪に最も適した種目といってもいいので練習する必要が無く、問題があるとすればミラージ・バットの方

 

こちらは明日から自宅や九重寺での練習を要するだろう。

 

そして、達也は正直出場する気が無い。

 

と言うことで、今回の呼び出しで断ろうと、達也は生徒会室の扉を叩いた

 

達也が部屋に入ると、真由美と摩利が座って待っていた

 

「ようこそ、達也君。」

 

「ご用件はなんでしょう?」

 

「8月に九校戦があるの知ってるわよね?」

 

「勿論。運営側として近年は会場入り経験がありますからね。」

 

「じゃあ話が速いわ。司馬達也君。九校戦に選手とエンジニアでエントリーしてくれませんか?」

 

「残念ですが、お断りさせていただきます。」

 

2人はこんな解答が来ると思っておらず、少し固まってしまった。

 

暫くして、回復した2人が理由を聞いてきた。

 

「なぜ、エントリーしないの?」

 

「逆にこっちが聞きたいですね。何故俺がエントリーしなくてはならないんですか?そもそも九校戦に出る出ないは自由でしょう?」

 

「そ、そうだけど…。」

 

「あのな、達也君。私達魔法科高校生にとって九校戦は1年に一度のビッグイベントなんだ。それこそ普通はエントリー出きるだけでも相当喜ぶものなんだが…」

 

「それに、私達第一高校はほぼ毎年優勝していて、私達3年生も三連覇がかかっているの。」

 

「そうですか。ですが、それは俺が参加しなくてはならない理由にはなりませんね。第一たかが学生の大会にどうして俺が出なくてはならないんですか?」

 

「おい、言い過ぎだ!」

 

「そもそも、1年生でエンジニア任命なんて前例が無いですし、どう説明するつもりなんですか?」

 

「前例は覆すためにあるのよ!」

 

「そんなのは知りませんし、興味ありません。」

 

「そんなこと言わないでよ!」

 

「はぁ…わかりました。エントリーします。ですが条件があります。」

 

「出てくれるの!?」

 

「選手かエンジニアのどちらかにしてください。俺もそこまで暇じゃ無いので。」

 

「うーん、どうする、摩利?」

 

「選手の方は普通に埋められるだろう。ならばエンジニアにしたほうがいいんじゃ無いか?」

 

「そうよね…でも司馬くんが選手として出てくれれば安心だしね…。」

 

「さぁ、どっちにするんですか?あ、それと俺も忙しいので選手の場合は一種目、エンジニアの場合は個人的に仲良い人しかやりませんので。」

 

「じゃあ、エンジニアだな。」

 

「うん。エンジニアね。と言うわけで、司馬達也君にはエンジニアでエントリーしてもらいます。」

 

「わかりました。では、その前例を覆す努力はそちらでお願いしますね。最も、こちらが不利益になるような説得方法の場合は容赦なく行きますので、ご了承を。では、話は以上みたいなので失礼します。」

 

「あ、ああ。わかった、明後日メンバーの張り出し、明々後日に張り出されたメンバーに集まってもらうから、その日には学校にいてくれ。」

 

「明日は予定があって来ないつもりでしたが、他の日は空いてますので、約束通り向かわせていただきます。」

 

達也が部屋を出ると、2人の顔が少しだけ強張った

 

「はぁ…前例を覆す為の努力は任せた、か。随分と面倒なものを…」

 

「こればっかりはしょうがないわよね。そもそも社長って言う忙しい役職をしているのにもかかわらずこっちの都合でお遊びの大会に出てもらおうとしてるのだから。」

 

「お?真由美にしては随分と珍しいな。目的の為なら手段を選ばなかったあの真由美が。」

 

「ちょっと摩利?どう言う意味かしら。」

 

「にしても、真由美はいつになったら達也君を名前で呼ぶんだ?だって本人がいない時は呼んでるだろ?」

 

「第一印象が最悪な人間がいきなり自分の事をフレンドリーに呼んでたらそれこそ嫌われるでしょ!」

 

「確かに。あいつ十師族をやたらと恨んでるようだな。四葉は別だが。」

 

「彼の国防軍寄りの思考が何か関係してるのかしら?そうだとしたら確かに四葉以外には良い印象は持てないわよね。なにせ、四葉家はいるだけで抑止力になるもの。」

 

「【触れてはならない者たち(アンタッチャブル)】か。しかしあれは何十年も前のことだろ?今更な気もするが。」

 

「たったの()()3()0()()で1つの国を潰したのよ?そんなの恐怖しないわけないじゃない。」

 

「四葉家は一種の禁忌とされていて、その素性も現当主と次期当主しか知られていない。まぁ、達也君は全て知ってそうだな。」

 

「本当に何者なのかしら?」

 

「秘密が多すぎる。私は彼がただの社長だとは思っていない。軍人か、それとも四葉の人間か。そのどちらかだと思っている。」

 

「私も同意見よ。まぁ、あの狸親父が何考えてるか知らないけど、私は達也君とは善良な関係を得たいと思ってるわ。」

 

「なら、その為にもまずはこの問題を解決してからだな。」

 

 





今回はここまでです。

アンケートの結果は下の欄を見てくださると、わかると思います。

皆様のご協力ありがとうございました。

また、次回にもアンケートを実施します。

詳細は次回おしらせしますので、そちらの協力もよろしくお願いします。

さぁ、真由美は達也と善良な関係を築けるのか?

今後の展開をお楽しみに。

では、また次回。


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九校戦編 第三話

今回もアンケートがございますので、ご協力お願いいたします。


翌日、達也の姿は車の中にあった

 

目的地は学校ではなく、FLT第三課に与えられた研究室

 

何故今日FLTにいるのか、理由は遡る事2日前

 

期末テストの結果が出されて〈アイネ・ブリーゼ〉でパーティーを楽しんだ日の夜

 

達也は地下の自身の研究室にずっと籠っていた

 

部屋に籠って2時間が経った頃

 

「…出来た…遂に完成したぞ!!」

 

達也はすぐに穂波に連絡をいれて深雪と泉美を呼び出した

 

穂波は達也の行動の理由を理解しているが、2人はそうではない。

 

籠ってる理由を知らない2人はなんで呼ばれたのか、その理由を考えながら達也の研究室に入った

 

「達也さん。あれ、達也さん?どこにいるんですか?」

 

「達也兄様?」

 

すると、後ろにいた穂波が突然浮き上がった

 

それに驚いて後ろを振り返った2人はそこにいたもう1人の人物に驚いた

 

「達也さん!?何時から…それに穂波さんも浮いて…」

 

「もしかして『飛行術式』…」

 

「そうだ。俺は異能で飛ぶことが出きるが、誰もが使える魔法にするために研究していた。その結果がこれだ。」

 

横で穂波が自由に動き回る。

 

「なっ、す、凄い…」

 

「流石です、達也さん!」

 

「試してみるかい?」

 

「「勿論!!」」

 

達也は泉美と深雪に『飛行術式』専用CADを渡す

 

「いいか、このCADは〈ループ・キャスト〉じゃない別のシステムを使っている。そのシステムは〈ループ・キャスト〉と違って想子を自動吸引する。ボタン操作で想子の自動吸引のオンオフをする。だからペース配分は考えろよ。」

 

「はい!」

 

という感じで、泉美達も体験したこの『飛行術式』を第三課にいる相方へと渡しに行くのだ。

 

FLT第三課にたどり着くと、達也を慕う社員達が達也を出迎えた

 

「社長!」

 

「ようこそ、第三課へ!」

 

「牛山主任はどこですか?」

 

「研究室の中です。お呼びしますか?」

 

「じゃあお願いします。」

 

達也に呼ばれた牛山主任という男は、達也が最も信頼するエンジニアの1人で、彼と達也の2人のコンビを〈トーラス・シルバー〉という

 

「お呼びですかい、ミスター。いや、社長様かな?」

 

「やめてくださいよ、いつも通りで結構です。」

 

「やっぱりそれが一番ですね。ところで、今日はどのようなご用件で?」

 

「例のT-7の試作です。とりあえず、穂波と数名に試してもらいました。ですが、俺たちは普通の魔法師とは程遠いものでしてね…。」

 

「なるほど」

 

研究室に入ると牛山が1人のスタッフを呼び出した

 

「テツ、T-7の予備はいくつある?」

 

「10機です!」

 

「……馬鹿野郎!そんなんで足りると思ってんのか!?あるだけ全部コピーしてこい!……なんだと?テスターが全員休みだぁ!?今から呼び出せ!魔法史に残る偉業だぞ!首に縄巻いてでも連れてこい!」

 

「はっ!」

 

それから15分程経ち、テスターが揃ったことで実験が開始された

 

『実験開始』

 

一人のテスターがCADを起動してその場で上昇を始めた。

 

『離床を確認。上昇加速度の誤差は許容範囲内』

 

テスターがその場で停止する

 

『加速度減少ゼロ……等速。加速度マイナスにシフト……停止』

 

「ここまでは普通の移動魔法だな。……問題はここから。」

 

テスターが水平移動を始めた。

 

『水平方向へ毎秒1mで移動。停止。』

 

「テスターより観測室へ。……俺は飛んでる……自由だ。」

 

その言葉で観測室が成功を確認し、大喜びする。

 

また、他のテスター達が更に飛び始める。

 

―1時間後―

 

実験の成功によって完成へと近付いた『飛行術式』は、〖加重系魔法の三大難問〗に数えられている程の、研究者泣かせのテーマとされてきた

 

それが解決に向かっていると考えれば、それをいち早く使えるという喜びで興奮状態になったテスター達は想子の自動吸引があることを忘れて『飛行術式』を使って空中鬼ごっこを始めてしまったのだ。

 

「お前達は馬鹿なのか?……実験が終わったからって鬼ごっこを始めやがって。超勤手当出さねぇからな。」

 

『そりゃないすよ。主任』

 

牛山とテスターの言い合いを横目に達也は少しだけ悩んでいた

 

「ん?どうしたんですか?ミスター。」

 

それに気づいた牛山がその悩みを聞いた

 

「サイオンの自動吸引スキームをもっと効率化しないといけませんね」

 

「それは俺の方で考えますよ。タイムレコーダーも専用回路にしましょう」

 

「実は同じことを考えていました」

 

「そいつぁ光栄ですなぁ!」

 

それから試行錯誤を重ね、『飛行術式』は完璧へと近付いていた

 

()()()使()()()『飛行術式』の完成を目指して達也達は必死に研究を重ねた

 

そして、『飛行術式』の試作形の完成から1週間後、FLTから『飛行術式』が発表された

 

達也のもとには、達也の正体を知っている人間達が祝電を送っていた

 

例えば、四葉真夜だとか、佐伯広海だとか、北方潮を含む〈V.I.P.会議室〉のメンバー達から

 

特に佐伯広海からは独魔での『飛行術式』を導入した新たな戦闘スーツの作成をしてみてはどうか?という提案を受けた

 

達也と佐伯広海の話し合いにより、設計図を達也が作り、作成を真田大尉が主導となって行うことになった。





とりあえず『飛行魔法』が完成いたしました。

次回は、少しだけ寄り道してから九校戦の準備に戻りたいと思います。

なお、今回のアンケートは三高優等生キャラの登場についてです。

前回同様、次回投稿迄を期限とします。

投票よろしくお願いいたします

では、また次回


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九校戦編 第四話

アンケートの回答ありがとうございます。




『飛行術式』の実験終了後、達也はそのまま帰らずに、本社の中の自室に戻っていた

 

何故ここにいるのか、

 

それは達也がこの日のうちに会ったり、電話したりする予定があるからである。

 

そして、社長室に籠って30分程経った後、遂に待ち人が現れた

 

「お待ちしておりましたよ、真田大尉。」

 

達也を訪ねた客人の正体は達也と同じ所属で同じ階級で同じようにエンジニア気質な人間。

 

名前を真田繁留という。

 

「しかし、突然連絡を入れてきて、プレゼントとは。一体何をくださるのでしょうか?」

 

「まぁまぁ、達也君。いや、椎原社長にピッタリの新しいCADを入学祝いにプレゼントしようと思って作っていたのですが、最近遂に出来ましたので、渡しに来ました」

 

「なるほど。」

 

真田大尉が取り出したのは、全長45cm程の小さめなスティックだった

 

「初めて見るCADですね。」

 

「これは達也君の異能に合わせて作った特注品でね。それに想子を流してみてくれ。」

 

真田大尉の指示で想子を流した達也は驚きを隠せなかった

 

達也の想子を取り込んだこの特注CADはなんと、達也の身長程ではないが、ざっと見積もって150cm程の大きさへと変わった

 

「これは…『空間魔法』に特化しているのか…」

 

「その通りです。達也君の異能『時空間操作』には専用のCADが無く、〈シルバー・ホーン・トライデント〉を専用に見立てて使っていました。ですが、このCADは完全思考操作型デバイスとなっていて、達也君の異能にピッタリなんです。それに、このスティックがあることで、『時空間操作』の効率が良くなり、少ない想子でいつも以上の実力を出せるでしょう。」

 

達也の持つ異能『時空間操作』はその魔法の性質上、とても燃費が悪い

 

それも、泉美の持つ『分解』と『再生』に並ぶ程、いやそれ以上に

 

そこで、真田大尉が思い付いたのが完全思考操作型CADだった。

 

完全思考操作型は汎用型や特化型とは違い、完全に自分の脳で魔法を思考し、その思考をCADが読み取って操作無しに魔法を発動させる新たなCAD

 

現在でも多くの魔法関連の企業が研究を進めている未だ市場に出回っていないCADである。

 

「まさか、完全思考操作型CADを完成させているとは…やはり貴方は世界でもトップクラスの技術者ですね。」

 

「おほめに預かり光栄です、椎原社長。それと、そのCADのソフト面はご自由に書き換えて下さい。これは貴方のCADですから。」

 

「ちなみに、これはどれくらい耐えるんだ?」

 

「完全思考操作型なので、術者の脳によります。汎用型のような起動式制限はありません。まぁ、恐らくは戦略級魔法にも耐えられるのではないかと踏んでいます。」

 

「素晴らしい!是非とも使わせていただきます。」

 

「ふふふ…。喜んでくれて嬉しいです。さて…最後に、隊長から伝言があります。」

 

喜びムードから一点、険しい表情になった真田大尉に緊急性を察して達也は気持ちを切り換えた。

 

「『富士演習場南東エリアで侵入者を再び確認。犯人は〈無頭龍〉だと思われる。よって司馬大尉には九校戦前に一度、出頭を命じる。』だそうです。いつにしますか?」

 

達也はすぐに自身のデスクから予定表を取り出して、空いてる日を確認した

 

「今週の…土曜日ですかね。午前は『飛行術式』の調整があるので、午後から出頭します。」

 

「了解です。場所は追って連絡するのでそちらを確認してください。」

 

「わかりました。わざわざありがとうございます。」

 

「いえいえ、日頃の感謝の気持ちですよ。それと、『飛行術式』の完成に向けてラストスパート、頑張ってください。」

 

「ありがとうございます」

 

「はい。じゃあ、九校戦の会場で会いましょう。では」

 

最後に次に会う約束を結びつけて、真田大尉は社長室から出て行く

 

達也はその背中が部屋から見えなくなるまで、その場を動かなかった

 

―――――――――――――――――――――――

 

真田大尉が去ってからしばらく経ち、今度は電話があった

 

『社長、本日予定のあった方から連絡が来ました。』

 

「わかった、繋げてくれ。」

 

『はい。』

 

そして、内線を経由して達也の元に通話がつながった。

 

ビデオ通話でモニターに映ったのは、高齢のご老人だった

 

「お久しぶりです、()()()()。ここでは【老師】とお呼びした方が?」

 

電話の相手は一般的に【老師】と呼ばれたいる日本魔法師界の第一人者にして元九島家当主で元国防陸軍少将の九島烈

 

第三次世界大戦において世界から【トリック・スター】という異名で恐れられ、現在も十師族をまとめる役割を行う御歳90を超えてもまだ現役で活動するご老人である

 

そして、四葉真夜、四葉深夜、七草弘一の魔法の先生でもあり、達也が魔法を教わっていた四葉英作やその兄で【死神】という異名を持つ四葉元造の友人でもある

 

そんな関係もあって達也と九島烈は顔見知りである

 

『そこまでかしこまらなくて大丈夫だ。そして久しぶりだね、達也君。いや、私の方が君を椎原社長と呼ぶべきかな?』

 

「いえいえ、私なんてただ経営ができるだけの若輩者。閣下相手にフランクに話せだなんて無理な話ですよ。」

 

『昔は随分と孫のように可愛がったんだがね。まぁ、今でも孫のようには思っているよ。』

 

「それはとてもありがたい話ですね。閣下にそう思ってもらえるなんて。ところで、突然予定を入れてこられましたが、どのようなご用件でしょうか?」

 

『これはいつも言っていることだが、改めて七草には気を付けなさい。弘一が何を考えているのかは予想できるが、()()()()()()()()ことがないようにな。』

 

「分かっております。すでに私と関係のあるもの達に頼んであります。泉美の特尉としての国防軍入隊、四葉家や私の所属する旅団、九重寺所属の九重流忍術使い達などによる影からの護衛、七草からの刺客の撃退などをまかせております」

 

『うむ。その調子で進めてくれ。これ以上魔法師を道具として使わせるわけにはいかない。今の弘一は魔法師道具にしてしまう危険を孕んでいる。』

 

烈は日本魔法師界を仕切るようになってから()()()()()の魔法師の利用を防ぐことを目標としている

 

そしてそれはここ十数年でその想いはどんどんと強くなっている

 

『話は変わるが、達也君。君にも九校戦の最初の懇親会に出てもらいたい。と言っても君は会場にはいそうだが。例えば選手とか、エンジニアとか、FLT社代表としてとか』

 

「そうですね、一応エンジニアとして参加することがほぼ確定みたいなので。それに最近どうやらきな臭い動きがあるとかで、そちらの方もありますから、今年はどのみち、最初から最後まで会場入りするつもりです。」

 

『そうかそうか。君がエンジニアか、知らないとはいえ他校の生徒は可哀想じゃな。』

 

「言わないでくださいよ、それ私も思っていたのですから。」

 

『じゃあ会場で直接会える機会を楽しみにしているよ。』

 

「はい、その時は一緒にお茶でも致しましょう。」

 

『ああ。楽しみにしているよ。では、会場でな。約束、違えないでくれ給えよ。』

 

そうして九島烈との通話は終了した

 

そして、翌日。

 

真由美からの報告通り、九校戦の出場者名簿が貼られ、案の定達也のエンジニア入りに賛否が湧き上がった

 

 




というわけで、今回はここまでです。

今回、達也の今後のメインウェポン、追加要素である達也と九島烈の関係を書かせていただきました。

達也のメインウェポンについては名前が決まってないので、案待ってます。

それから前回行ったアンケートの結果は下の通りです。

また次回、多分これが一時的に最後になると思われるので、あと一回アンケートに付き合ってください

では、また次回


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九校戦編 第五話

お待たせしました。

久しぶりの投稿になります

今回がおそらくこの章最後のアンケートになる予定です

もしかしたら今後にまだ建てるかも知れませんが、今のところはそんな予定はないのでこれが最後だと思います

今回の内容はズバリ、達也の三高メンバーとの友好関係についてです。

吉祥寺真紅郎、一色愛梨の2名が対象です

今回も投票よろしくお願いします


名簿が貼り出された翌日、達也は深雪と共に部活連本部へと向かっていた

 

理由は勿論、九校戦について

 

今回泉美はこの会に呼ばれてないので生徒会室で仕事をしている

 

なんでも、1人残って作業するほのかのサポートを探していたらしく、達也たちを待つために泉美が立候補したそうだ

 

達也達が部屋に入ると、エイミイに呼ばれたのでエイミイ達の輪に混ざることになった

 

「あ、紹介するよ。彼は司馬達也君。クラスメイトで、確かエンジニア候補だっけ?」

 

「ああ、そうだ。改めて、司馬達也だ。よろしく頼む。」

 

「そして、達也君の隣にいるのは四葉深雪さん。彼女もクラスメイトで一年生のエースよ!」

 

「四葉深雪です。よろしくお願いします」

 

「で、こっちがD組の里美スバル。女の子だけどカッコイイんだよ!男装の麗人ってやつ」

 

「里美スバルだ。よろしく、司馬くん、四葉さん。」

 

「(…ん?『認識阻害』?BS魔法師か。)よろしく頼む。」

 

「なるほど、司馬くんには気付かれたようだね。」

 

里美スバルという少女の違和感に若干表情を歪めた達也に驚いたように微笑む彼女の言葉はエイミイと深雪に疑問を残した

 

「僕はね、生まれつき『認識阻害』の術式を持っていてね、こういう動きは昔から僕を認識させるためにやっていたことが習慣付いていたのさ。要は、SB魔法師ってやつだ。」

 

「なるほどな。だからあの違和感だったのか。」

 

「その通りだよ。にしても、理論1位というのは伊達じゃないようだ。」

 

「まぁな。エンジニア候補として呼ばれてるんだ。これくらいは出来なくては。」

 

「ハハハ。気に入ったよ、司馬君。是非とも僕のエンジニアもして欲しいところだ。」

 

「話し合いが終わればだがな。」

 

4人で談笑をしていると、真由美や摩利、克人といった一高の生徒自治活動のトップ陣が入室したことで話はストップした

 

早速、一高の参謀こと市原鈴音から3年生から順番に選手を紹介、続いてエンジニアの紹介へと移った

 

最後に達也の名前が呼ばれたことで会議室は空気が一変した

 

曰く、「1年生がエンジニアは前例がない」だとか、「実力の足りない1年にエンジニアは勤まらない」だとか

 

しかもこれを言ってるのが全員達也が二科生(ウィード)と仲良くしていることが気に入らないとしている者達である

 

そんな中達也は目を瞑りながら黙って聞いていて、そろそろ帰ろうかと思い始めた時に、一高首脳陣の1人、十文字克人が声を出した

 

「黙れ!これは選手とエンジニアを決める会議であり、ここにいるのは生徒会が選び推薦した者のみ。その決定に口を出すということは生徒会に対しての侮辱と見るぞ」

 

この発言に生徒達(特に達也を嫌う面々)は顔を青ざめた

 

「だが、実力を疑うのは無理もない。前例がない1年生のエンジニア。ならば、その実力を見ればいい。司馬、お前が一高エンジニアとして活動するに値する実力を示して貰う」

 

全員の視線が達也へと向かう

 

「(はぁ…やっぱりこうなったか。)分かりました。そこまで言うのであれば示して見せましょう。して、誰のCADを使うつもりでしょうか?」

 

「そうだな…ここは責任をもって俺のCADと言うべきだろうが…」

 

「それは危険です!!」

 

「そうですよ!実力もわからないんですから!」

 

「なんて言われるからな…」

 

克人が自分のをと出したところを周りが止めに入る

 

これは予想できていたことではあった

 

「その役目、俺にやらせてくれませんか?」

 

立候補したのは達也とは因縁に近い関係を持つ桐原だった

 

「いいのか桐原」

 

「はい。」

 

「わかった。司馬、お前には桐原のCADを調整して貰う。幸いにもこの部屋にはCADの調整器があるからな。それを使え」

 

達也は黙って立ち上がると、調整器の前に座り、桐原も達也にCADを渡す

 

「お前にやって貰う課題は、桐原の日常使いするそのCADのデータを競技用CADにコピーすることだ。なお、手を加えることは禁じる。」

 

「了解しました。…しかし、同じ種類ならともかく違う種類のCADのコピーはあまりおすすめしませんが……。まぁいいでしょう、安全第一で行きます」

 

その発言に理解できたのはエンジニアのメンバーのみ、他はどうして?と頭に?を浮かべている

 

それもその筈で、桐原が普段使っているCADは競技用のCADよりも性能が高い

 

その為性能の高いものをそのスペックの落ちた物にそのままコピーすると必ずエラーを起こしてCADが機能しなくなる

 

そうなってしまえば魔法師は魔法を発動しづらくなってしまう

 

そんなわけでスペックの違うCAD同士のコピーは世間的にもあまりオススメされていない

 

達也は早速CADを2台おいて、桐原を誘導する

 

桐原が想子測定器に手を触れると想子のデータが画面に表示される

 

「桐原先輩、もう離して貰って結構です」

 

桐原が手を離すと、達也はキーボードを叩いた

 

周りの面々が画面を覗こうと画面の見える位置に立つと全員が息を飲んだ

 

普通、想子のデータとは特定の振動周波数などのグラフで表示される

 

しかし、達也の画面にはそのようなグラフは無く、あるのは何万にも及ぶ程の数字の羅列

 

それが幾つものタブで分けられてそれが付いたり消えたりしている

 

これが達也が【シルバー】たる所以であり、世界最高峰の技術者と言われた【トーラス・シルバー】の十八番、〝完全マニュアル調整〟である

 

達也の画面を覗き見る者の1人、中条あずさは無意識に息を止めてしまっていた

 

目の前で行われている行為を理解できるものは少ないだろう

 

何せ、日本にも出来る人がほとんどいないとされている〝完全マニュアル調整〟をやってのける人間がいるのだ

 

その実力は自身を含めたエンジニア達よりも2ランク以上上

 

あずさはなんとしてでも達也をエンジニアに率いれようと決めた

 

「終わりました」

 

「……そ、そうか。桐原、試してみろ」

 

達也から競技用CADを受け取った桐原は早速魔法を発動させた

 

発動させた魔法は『高周波ブレード』

 

発動させた桐原から、誰もが予想しなかった、否、達也と深雪だけが予想できた言葉が帰ってきた

 

「嘘だろ…!?」

 

「感触はどうだ?」

 

「違和感がありません。むしろしっくり来ました」

 

「だが、仕上がりのタイムも遅いから当校のエンジニアとしては認められないんじゃないか?」

 

「私は賛成です!!」

 

声を上げたのは達也を引き込もうと決めたあずさ

 

「司馬君がやったのは〝完全マニュアル調整〟であり、技術力は我々よりも数段上です!」

 

「中条の言う通りだ。桐原のCADは競技用に比べて高スペックだ。それに関して違和感を与えなかったとすれば、その技術は称賛に値するだろう。」

 

「だが、前例が…」

 

「前例など関係ない。勝つためにはより良い成果を得る必要がある。司馬はその実力を見せつけた。ならば認めるべきだろう。十文字会頭、俺は司馬達也のエンジニア入りに賛成します」

 

あずさに加え実力主義者の服部が賛成したのだ

 

これには嫌悪感だけで動いていたメンバー達も認めざるを得なくなってしまう

 

「そうだな。服部の意見はもっともだ。俺としても司馬のエンジニア入りを認めよう。」

 

一高一番のエンジニアに実力者の服部、さらに首脳陣の十文字までもが賛成に回った

 

これにより達也のエンジニア入りが確定した




前書きにも書きましたがアンケートのご協力よろしくお願いします

なんかアンケートが多くてごめんなさい…私が優柔不断だから…

と言うわけでいつも通り締め切りは次回投稿日までです。

よろしくお願いします

ではまた次回


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九校戦編 第六話


まだ会場入りしてないのにも関わらず今六話までやってるんですね。

果たして九校戦編の完結はどれほどかかるのか…

心配です。

前作を越えなければいいのですが…(前作は確か30話超えだった気が…)

とりあえず九校戦編第六話です


会議室でのメンバー面会が終わり、翌日には壮行会が行われた

 

驚くことと言えばエリカ達が珍しく前の方に座っていたことだろう

 

そんな壮行会の翌日

 

達也に割り当てられた部屋には数人の女子がいた

 

彼女らは全員九校戦の選手である

 

ではなぜ男子がいないのか。

 

理由は単純であり、達也が憎いからである

 

深雪と話したい、お近づきになりたい、でも達也が近くにいる

 

達也は二科生と仲良くしている

 

それがいやだから男子メンバーは達也のエンジニアは拒否した

 

そんなわけで達也は1年の女子数人を担当することとなった

 

その中には達也と仲のいいメンバーもこぞって参加していた

 

「改めて、今回君達のエンジニアを勤めることになる司馬達也だ。よろしく頼む。この中には二種目ともを担当する人や一種目だけを担当すると言う人もいる。どちらも手を抜くつもりはないので安心して貰いたい。」

 

「よろしくお願いしますね、達也さん。」

 

「よろしくね、達也君。」

 

「早速だが、君達のCADを預からせて貰う。」

 

その言葉に達也と面識がほとんど無い生徒が顔をしかめた

 

何せ、CADは自分自身を写した鏡と良く言われているように、自分の得意魔法や、使用する魔法が、CADには含まれている

 

まさに自身の半身なのだ

 

その後、深雪やエイミイがCADをなんの抵抗もなく預けたことから多少怯えつつもCADを預けた

 

「ありがとう。さて、種目の確認には入ろう。」

 

今回達也が担当するのは新人戦女子の部のスピード・シューティング、アイス・ピラーズ・ブレイク、ミラージ・バットの3種目

 

バトル・ボードにも出場するほのかやクラウド・ボールに出場するスバルは一種目だけの調整となる

 

「いいな~雫。私は達也さんに1つしか調整して貰えないんだもん。」

 

「安心しろ、調整しない代わりに戦術を立てる手伝いはするから。」

 

「本当ですか!!」

 

「ああ、任せろ。ただし、ほのかの担当は中条先輩だから、中条先輩の指示を第一に考えるんだぞ。」

 

「はいっ!!」

 

「よし、じゃあ明日から練習を開始する。練習メニューは預かったCADを元に決めるからそのつもりで。解散!」

 

―――――――――――――――――――――

 

夜、FLTの修練所に達也と深雪の姿があった

 

「穂波、電気を消してくれ」

 

「はい。」

 

電気が消え暗くなった室内で達也が先日真田から貰ったスティック型のCADを用意する

 

「深雪、準備はいいな?」

 

「勿論です。いつでもいけます」

 

「じゃあ、始めるぞ!」

 

達也がスティックを振り上げると、2人の頭上に幾つかの光の玉が現れる

 

深雪がその場で『跳躍』を利用して飛び上がると、持っていた杖で光の玉を叩く

 

そう、今達也達がしているのはミラージ・バットの練習であった

 

師匠である八雲に頼めば同じことが可能なのだろうが、八雲が深雪を見て何をしでかすかわからないからFLTの修練所を利用して練習している

 

達也がしているのは『時空間操作』のうちの『空間操作』であり、修練所という空間に干渉して不定期に幾つかの光の玉を出すように魔法を使うという作業で

 

深雪は本番同様に現れた光の玉を『跳躍』を使って飛び上がって叩いている

 

試合時間と同じ長さを休憩をいれて4回程したところでこの日の修練を終了した

 

「深雪、どうだったか?」

 

「達也さんは性格が悪すぎます。」

 

「本番を想定したんだが…」

 

「本番はあんなに性格悪くありません!」

 

「そ、そうか…それはすまないな。だが、その実力なら新人戦では負けることはないだろうな。アイス・ピラーズ・ブレイクはほとんどの確率で深雪の勝ちだろうし」

 

「勿論、達也さんに両種目優勝を届けて見せます!」

 

「楽しみにしているよ。」

 

「はい!」

 

「じゃあ帰ろうか。」

 

―――――――――――――――――――――――

 

それからは達也の示した練習メニューに沿って選手達が練習を重ねていった

 

ある日、達也達との待ち合わせ場所でみんなを待っていた美月は突如目の違和感を感じ、その方向を向いてメガネを外した

 

見た先に()()()()が浮かんでいるのが見えた

 

気になった美月はその発生源へと無意識に進んでいった

 

たどり着いたのは薬学準備室

 

扉がすこし開いていたのでそこから覗き見るとそこにいたのは…

 

「吉田くん…?」

 

「誰だ!?」

 

魔法の練習中に意識外からの干渉があった場合どうなるか

 

答えは簡単だ

 

―魔法に向けた意識が乱れることで感覚が崩れる

 

この例にのまれずに、術者が練習中の魔法が乱入者へと暴発する

 

美月は自身に向かってくる幾つかの攻撃的な水色の塊を視認した

 

次の瞬間にはその玉が沈静化された

 

横にいたのは待ち合わせ相手の1人、達也

 

「よせ、幹比古。ここでやりあうつもりはない。」

 

「達也…それに柴田さんまで!?」

 

「それに、元はと言えば術者の意識を乱した美月が悪い」

 

「ふぇぇっ!?」

 

「柴田さんは悪くないよ。僕が意識を乱しちゃったことが原因だから…」

 

「酷いですよ!達也さん!」

 

「悪いな。だが、人払いの結界の中に入ってきたらさすがに驚くだろ」

 

「そんなことまで分かるなんて…さすがは総合1位を取った人間ってとこかな」

 

「まぁね。一応知識だけが取り柄なんでな。ところでこれは精霊……それも水霊か?」

 

「そうだよ。」

 

「俺にはただ霊子の塊が浮かんでいるようにしか見えないが…美月はどうだ?」

 

「ふぇ!?わ、私には水色の塊が浮かんでいるように見えました」

 

「色の違いが見えた!?」

 

「えっ!?あ、あの…!?」

 

幹比古が突如目の色を変えて美月の手を握る

 

その時体勢を崩したことで幹比古が美月の上に乗るような絵になってしまった

 

「同意の上なら外すが、それ以外なら問題だぞ?」

 

「あ、ご、ごめん…」

 

幹比古が美月の上から離れて美月を立たせると、頃合いを見計らって達也が疑問をぶつけた

 

「さっき色の違いがって話をしていたな。そんなにすごいことなのか?」

 

「すごいなんてものじゃないよ。下手したら柴田さんは命を狙われるレベルだ」

 

「えっ!?」

 

「どう言うことだ?お前達精霊魔法の使い手も色の違いを見れる筈だ。それが美月の目とどう違うって言うんだ?」

 

「確かに僕達精霊使いは精霊の違いが見える。だけど具体的ではないんだ。例えば水霊に関して言えば水の精霊だから水色や青色とかそういう系統の色だと仮に定義して大まかに分けているだけで、()()()()を見ることは出来ないんだ。」

 

「なるほど。」

 

「対して柴田さんの目はそんなあやふやに定義されていた精霊の色をはっきりと見える…いや、視ることが出来るといった方が正しいかな。これを僕らの界隈だと〝()()()〟という。一年前の僕なら殺してでも手に入れようと思ってしまう程に貴重な存在なんだ。」

 

「なるほどな。美月は精霊使い達にとって喉から手が出る程欲しい人材だと言うわけだな。…しかし安心したよ。もしここで美月を殺すと言っていれば今すぐにお前を殺していただろうな。」

 

「ふぇっ!?こ、殺す!?」

 

「つまり分かりやすく言うと幹比古達精霊使いは美月の精霊の色が見える目が欲しいんだそうだ。それこそ手に入れるためならばどんな手段だって使ってね。ならば美月の目についてはこの場のメンバー内での秘密ということで。それに何かあれば俺の権限で美月の保護も出来るが…」

 

「助かるよ。僕も出来る限り守ってみせる。」

 

「そうか。美月、命を大事に考えているならば今話したことはあまり他言しない方がいい。」

 

「わ、分かりました。」

 

「よし、じゃあそろそろ戻ろうか。皆集合場所についてる頃だろう。幹比古もそろそろ片付けた方がいい。」

 

「そうだね。じゃあまたあとで」

 

 




アンケートのご協力ありがとうございます

いつも通り結果は以下の通りです。

次回からは会場入りです。

ではまた次回


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九校戦編 第七話

前回行われたアンケートにおいて、

両方友人であるとなっているので、それぞれの関係を

真紅郎→佐渡侵攻以前に数回会っただけで、現在はごくたまに連絡を取り合う(一条家はそれを知らない)

愛梨→愛梨の父が達郎と同じ学校の同級生で、達也が両親が亡くなってから四葉真夜と出会うまでの間は一色家が達也を気にかけていた

こういう感じにしたいと思います

頑張って辻褄を合わせてみました

正直真紅郎は同じ研究者な両親を持つということで、関係作りは難しくなかったのですが、愛梨に関しては繋がり作りが難しかったです

やはりアンケートに『両方あり』って枠を作るのは危険だなと今学びを得ました。

というわけで、第七話です


九校戦の会場である富士演習場

 

正確には富士演習場南東エリアは国防軍が九校戦の為に貸し出した場所であり、9校の代表選手やその関係者を収容するには充分な大きさを誇っている

 

九校戦の前に懇親会があるお陰でそれぞれの学校の生徒は懇親会に間に合うように学校を出ることになっている

 

そして、そのタイミングは会場と学校の距離が遠い学校から順番にと決められている

 

北海道の第八高校や九州の第九高校から順に、最後に東京の第一高校や静岡の第四高校が集まる

 

時は過ぎてついに第一高校が会場へと移動する日になった

 

今回、生徒会を代表してほのかや雫が出欠確認をしていた

 

「暑い…」

 

「冷却魔法はかけてるけど、足りない…深雪がいれば…」

 

「そういえば深雪と達也さん見てないね。何してるんだろう?」

 

「2人で一緒にいたりして…」

 

「雫に連絡来てないの?」

 

「来てない」

 

2人で雑談しながら来ていないメンバーを待っていると

 

「光井、北山。出欠状況はどうなっている?」

 

摩利が状況確認の為に降りてきた

 

「現在は七草生徒会長と、深雪と達也さんが来ていないです渡辺委員長。」

 

「そうか。先ほど真由美からすこし時間かかると連絡が来たのでな。達也くんと四葉からも現地集合を進言してきたからバスの中に戻っていいぞ」

 

「「はい!」」

 

本来なら真由美の連絡を受ける頃には達也達の遅刻は確定していたので先に向かう予定だった

 

しかし、メンバー達は真由美との合流を望んだ

 

勿論、深雪の合流や、1部の女子メンバーから達也の合流を求められたが、真由美はともかくとして他の2人は完全に来れないことが確定していたので、真由美だけを待つことになった

 

摩利は出欠確認をしている後輩2人をバスに送ると自身はバスの入り口の近くに待機していた

 

それから10分経つと遂に真由美はやって来た

 

「ごめんなさ~い!」

 

「遅いぞ、真由美。」

 

「ごめんね、摩利。家の仕事が忙しくて…」

 

「そうか。真由美が最後だ。早くバスの中に入れ」

 

―――――――――――――――――――

 

「で、司馬君と四葉さんが現地集合なのね。」

 

「ええ。にしても、会長も残念でしたね。」

 

「え?」

 

「その服も司馬君に見せるために張り切ってきたのでは?」

 

「え、り、りんちゃん?わ、私はそんなことは…」

 

「そうですか?ですが、1部の女子メンバーには人気な様で、優先順位も会長以上という方もいましたよ。」

 

「へ、へぇ…そ、そうなんだ…」

 

「会長、御気分が優れないのですか?」

 

「え?はんぞーくん?」

 

「服部副会長はいったいどこを見つめているのですか?」

 

「い、市原先輩!?わ、私はただ、会長にブランケットを、…」///

 

「副会長自らブランケットをかけてくれると。よかったですね、会長。では、どうぞ」

 

「え、」///

 

バスの中では達也がいないことですこしだけしょげてしまった真由美を鈴音がいじって、なにも知らない服部を巻き沿いにしたり、達也が来なかったことで若干機嫌が悪くなった1部の女子生徒がいたりといろんな意味で賑やかな移動だった

 

そんな状況を見ながら摩利は横に座っているやや落ち込み気味の少女―千代田花音を見た

 

「なぁ、花音。そんなにそわそわしているが、たかが2時間静かに過ごせないのか?」

 

「あ、摩利さん酷い!私だって2時間ぐらいじっと出来ますよ。でも、なんでバスはこんなに空いてるのにエンジニアと違うバスなんですか!今日も啓とバスデートだと思ってたのに…」

 

千代田花音は五十里啓という婚約者がいて、その関係は周りが1度見るとブラックコーヒーを頼むほどのいちゃつきっぷりである

 

そして、そんな啓とのデートを期待しながらバスに乗った花音は窓を見ていると、たまたま怪しい車を発見した

 

対向車線を不規則な速度で走る車

 

その車が突然スリップを起こした

 

ただスリップをするだけならよかっただろう。

 

しかし、その車はガードレールにぶつかって、バスへと降ってきた

 

「危ない!!」

 

花音は大きな声で警告すると自身のCADに触れた

 

その声に気付いて窓の方を見た生徒達のなかで何人かがCADに触れた

 

触れたことで魔法が準備される

 

狭い空間で多くの魔法が同時に別系統で使われたらどうなるか

 

―想子が相殺し合うことで魔法式が乱れ、魔法が上手く発動されず、想子だけが取り残される

 

やがてその取り残された想子が増えることで擬似的な『術式解体』状態になってしまう

 

「魔法を止めろ!十文字、行けるか?」

 

「守ることはできるだろうが、消火は無理だ」

 

摩利が生徒達を止めると、この中で一番の実力者である十文字克人へと声をかけた

 

しかし、受けた克人は渋い顔をしていた

 

すると、突如想子の乱れが掻き消えたのを知覚した

 

それと同時に車を消火する程大きな冷却魔法と車を止める謎の魔法が立て続けに放たれた

 

摩利が窓の外を見ると、空に会場で合流予定だった2人の代表メンバーがいた

 

「間一髪だな。助かったよ、深雪。」

 

「あの程度達也さん1人でも出来たのでは?」

 

「まさか。消火は無理だよ。」

 

摩利達一高メンバーは現地集合予定の2人のメンバーによって救われた

 

 




今回は九校戦会場への移動シーンでした

続きがありますので、次回をお楽しみ

次回以降に行うアンケートは具体性を持ったものに出来るように頑張りたいと思います。

なお、辻褄合わせでほぼ強引に作った設定ですが、意見は求めてますので、色々書いてくれると助かります

ではまた次回


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九校戦編 第八話

飛行魔法の取り引きの関係で忙しかった達也だが、会場入りは前日までに終わっていた

 

今回、達也はエンジニアの司馬達也の部屋だけでなく、FLT社長椎原辰也としても一部屋借りている

 

さらに、今回は七草対策として泉美も連れてきているし、達也がそばにつかない時は基本的に風間達独立魔装大隊のメンバーに護衛について貰っている

 

部屋も椎原辰也の部屋を使ってもらう事で対策をしっかりとした

 

そんなわけで会場で色々と仕込みをしている時に一高選手団がどこにいるのかを調べようと『時空神の眼』を起動すると、一高のバスの周りに()()()()()を感じた

 

達也はすぐに深雪を呼び出すと、2人で空間を転移した

 

転移した先で見たのは魔法が相殺され乱れたバス内と炎上した車がバスに突っ込もうとしているところだった

 

達也はため息を吐くと右手を車へと向けた

 

「深雪、消火は任せた」

 

「はい。お任せください」

 

達也はまず相殺している想子を巻き戻して失くすと、車の動きを停めた

 

すかさず深雪が冷却魔法で火を消した

 

「間一髪だな。助かったよ、深雪。」

 

「あの程度達也さん1人でも出来たのでは?」

 

「まさか。消火は無理だよ。」

 

「た、達也君!?」

 

「あ、お久しぶりですね、摩利さん。」

 

「お久しぶりです。」

 

「四葉まで!?なんでそんなところで()()()()()んだ!!」

 

摩利が驚いたのは達也達がここにいるのもそうだが、何よりも一番は2人が浮いていること

 

「ああ、これですか。俺の持つ先天的な魔法技術である『重力制御魔法』です。」

 

本当は『時空間操作』で空間に透明な板のようなものを作り出してその上に乗っているだけなのだが、そんなことは教えるわけにはいかないので偽情報を教えた

 

「1人ぐらいならこっちで調整できるのでね、こうして皆さんの助太刀に参りました」

 

「まさか、襲われるとは思いませんでしたけどね。」

 

「そ、そうか。」

 

「それより、先に行っててください。俺達がここをやっておきますので」

 

「分かった。」

 

摩利は余計な詮索をすることなくバスの運転手に声をかけて会場へと向かった

 

「さて、調べるか。」

 

達也が目を閉じると、眼を停めた車へと向けた

 

達也の脳に情報が流れていく。

 

「なるほど。どうやら単なる事故ではないようだ。」

 

「それって…!?」

 

「合計3回。魔法が車内から放たれた回数だ。それぞれ車をスリップさせる魔法、車を隣の道路に飛ばす魔法、車を炎上させる魔法、の計3つ。それも知覚できないギリギリを狙った高度な魔法のようだ。」

 

「つまり、運転手の自作自演…ということですか?」

 

「そのようだ。(妨害工作とは…やってくれたな、〈無頭龍〉)」

 

達也が『時空神の眼』を解除すると、ほぼ同じタイミングで一台の軍用車が達也の目の前に停車した

 

「大尉、遅くなりました。」

 

軍用車から出てきたのは独立魔装大隊に所属する兵士達でそれぞれ階級が曹長2人に少尉が1人の計3人だ

 

「問題ない。さて、隊長には私から報告するのでまずはそこにある工作車の撤去を頼む。」

 

「はっ!」

 

少尉の男性が指示を出すと2人の曹長が事故車の検分を始めた

 

5分ほど経つと、検分を終えて達也の元へと戻ってきた

 

「報告します。車内の工作員は焼死体で、遺体の状況から脳内の記憶スキャンは不可能だと思われます。また、車には魔法の媒体となるものは無く、焼失したか無媒体での魔法の行使だと思われます。そしてこの車ですが、盗難車だったようですので、車の方は後程警察に引き渡しいたします」

 

「わかった。遺体の詳しい調査や車の引き渡しは帰投してから行うことにする。まずはその事故車を連れて帰投せよ。人員が必要なら要請するので言ってくれ。全ての行動が終わり次第持ち場へ戻れ」

 

「はっ!」

 

少尉から頼まれた人数分の応援を要請した達也は受理されたことを確認した後、深雪と共に『時空間操作』の『空間転移』を発動して会場へと戻った

 

「にしても大会前の段階から干渉してくるとは…今回は荒れるな」

 

「ええ。そのようですね。」

 

「まぁ、深雪と泉美は必ず守るよ。」

 

「あまり1人で溜め込まないでくださいね。」

 

「…善処しよう。」

 

達也は深雪を部屋に送ると(部屋はエイミイと同じだった)自室に戻って風間に暗号文で今回の件を報告した

 

報告が終わって部屋で寝ていると、誰かが扉をノックした音が聞こえた

 

扉を開けると外にいたのは深雪だった

 

「達也さん、これから懇親会ですから、一緒に行きませんか?」

 

「構わないが、選手としては行かない。俺には仕事があるのでな。一緒に来るか?」

 

「よ、よろしいのですか!?」

 

「構わないよ。見た目の変装はするし、バレる心配は無い さ。」

 

達也は深雪を連れてもう一つの部屋に向かうとその部屋でそれぞれ着替え(達也はスーツ、深雪は水色のドレス)を済ませて会場の控え室へと向かった

 

「久しぶりだね、達也君。」

 

「お久しぶりです、九島閣下。」

 

「今回は社長としての参加かな?」

 

「ええ、それに一高メンバーとはあんまりいい関係とは呼べないので。」

 

「そうか、そして君の横にいるのは…」

 

「お初にお目にかかります、九島閣下。四葉深夜が娘、四葉深雪でございます。」

 

「やはり深夜の子か。深夜に似て美しい子だ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「達也君はすぐに両親を亡くしている。一色家や真夜、それに私も気にはかけていたが、当時は不安だった。そんな時に君や泉美さんが現れた。今後とも達也君をよろしく頼むよ。」

 

「勿論です!達也さんは死んでも離しません!」

 

「はっはっは、達也君は両手に花か。将来安泰なようだ。これは今後が楽しみだよ。ところで、2人共九校戦期間中のどこかのタイミングでお茶でも如何かな。」

 

「俺は構いませんが、深雪は?」

 

「私も問題ありません。閣下からのお誘いを無碍にするわけにはいきませんから。」

 

「そうか。では、達也君を通じて予定を伝えよう。ところで、真夜は元気かな?」

 

「ええ。今日も私と達也さんが出場すると聞くと会場に向かうと駄々をこねていたと先日使用人の方からお聞きしました。」

 

「そうかい。真夜は昔から変わらんな。」

 

3人の雑談は途中で入ってきた大会委員の移動アナウンスによって終わりを迎えた

 

「…さて、もうそろそろ移動の時間か。深雪君、達也君にも言っていることだが、強大な魔法には責任が伴う。それに君は四葉家という国一番の魔法組織の当主になる人間だ。他の一魔法師よりも断然持つべき責任は大きい。責任の重さに打ち拉がれそうになることもあるだろう。深夜の娘で真夜の後を継ぐというのもその重さの一つだろう。真夜だってあの辛い過去に加えて元造や英作と言ったビッグネームの後を継ぐことに弱気になることもあった。だから、そこまで根を張る必要はない。流れるままにやればいいんだ。それに君には達也君もいるからね。困ったことがあれば彼が助けてくれるさ。次代のトップを担う2人の活躍を期待しているよ。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます、閣下。…ではそろそろ向かいましょうか。」

 

「そうだな。達也君には前もって伝えたが深雪君も私のスピーチを楽しみにしてほしい」

 

「はい。」




今回はここまでです

原作との違いは達也が懇親会に参加していないことです

真紅郎や愛梨との再会は後日ということになります。

さて、次回から九校戦が始まります(試合はまだ先だろうが…)

九校戦は基本原作通りでいきますので、お楽しみに

ではまた次回


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九校戦編 第九話

今回七草香澄は本戦ミラージ・バットと新人戦クラウド・ボールに出場します

言い忘れて申し訳ありません

決勝の深雪VS愛梨VS香澄をお楽しみに


達也と深雪が選手団としての懇親会の参加を蹴ったことに真由美は呆れていた

 

達也は面子的にはいなくてもそこまで問題ないが、深雪に関しては1年生のエースなので挨拶周りに連れていこうと思っていた

 

達也達は九島烈といるのだが、そんなことを知る由もない真由美は妹であり、総合3位で九校戦入りを果たした香澄を連れて挨拶周りへと向かった

 

 

そしてもう1人達也がいないことで不思議に思っている選手がいた

 

それが――

 

「あの、一色愛梨さんですよね!」

 

「よかったらお話を…」

 

「誰よ貴方たち、名家?それとも大会での優勝経験がおありなのかしら?」

 

「え、その…」

 

「話しても無駄ね。行きましょ。」

 

興味をなくしたかのようにその場を離れる赤い三高の制服を着た三人組の1人、一色愛梨

 

「にしてもいないわね…どこにいるのかしら?」

 

「愛梨よ、誰を探しておるのじゃ?」

 

「栞と沓子は知らないと思うんだけど、私には幼馴染みがいるのよ。父が彼の父親と同期でその関係でよく会ってたの。」

 

「へぇ~そんな人がいたのね。それで、名前は?」

 

「司馬達也って名前よ。世間的には無名の家なんだけどね。」

 

「つまり、その司馬達也という男が愛梨の好きな人というわけか。」

 

「そ、そんなんじゃないわよ!!」///

 

「図星ね。愛梨は一途なのね。」

 

「ち、違うわよ…。私と達也はそういう関係じゃ…」///

 

「名前で呼ぶほどには親しいということか。」

 

「私と達也は幼馴染みなんだから、名前で呼んだっていいじゃない!」///

 

「……」

 

「なんでなにも言わないの!」///

 

「ぷっ、アハハ。はぁ…さて、愛梨を弄るのはこのくらいにして、その司馬達也なる男はどういう人間なんじゃ?ここで探すということはそれなりに実力を持っているようだろうし。」

 

「達也は賢くて強くて、CADの調整も出来るのよ。私の普段使いのCADも達也が定期的に調整してくれるのよ。だからもしかしたら選手かエンジニアとして来ていると思ったんだけど…」

 

「なるほど。選手ならともかくエンジニアならば愛梨が認める実力に警戒するべきですね。」

 

「達也には私も勝ったことがないのよね…。知識面でも模擬戦でも。もしかしたらこの会場にいるメンバー全員で攻めても負けるかもしれないわ。」

 

「そんなに!?…それは恐ろしいですね。」

 

『それでは、この九校戦をご支援したくださっている、かつて世界最強とも称され第一線を退いた後も日本魔法師界の為にご尽力くださいました、【老師】こと九島閣下よりお言葉を頂戴いたします。』

 

3人の会話は司会のこのアナウンスにより途切れることになった

 

3人もそうだが、会場内で話をしていた今年の代表選手団は全員話を止めて体を舞台の方へと向けた

 

【老師】こと九島烈は九島家前当主で国防軍の退役少将

 

かつて起こった第三次世界大戦にて世界から【最巧】と謳われ、大戦後は日本魔法師界を引っ張ってきた日本魔法師界の第一人者

 

現在も十師族をまとめる立場にあり、この場にいる全員が無視することが許されない程の大物

 

さらに言えば現在の魔法師界の先頭を行く四葉真夜や七草弘一、今は亡き四葉深夜の魔法の先生でもある

 

そんな誰もが無視できない大物なご老人は出てこなかった。

 

出てきたのはご老人ではなく()()()()()()()()()()()()()()だった

 

会場が驚いてざわめき出した

 

「なるほど…閣下も人が悪いですね…。」

 

「ん?どうしたんだ、愛梨。」

 

「沓子と栞は気付いてないみたいね。あの女の人の後ろを見てみなさい。」

 

2人は愛梨の言葉にしたがい女性の後ろを見た

 

そして2人して驚きで固まった

 

「あれはよく達也が私にしてきた悪戯の1つよ。まさか閣下の受け売りだったとはね。」

 

「ど、どういうことじゃ!?なぜ()()()()()()()()()()()んじゃ!?」

 

「閣下はこの会場に微弱な、それこそ意識しないと気付かないレベルで『精神干渉魔法』を放って前にいる女性に意識を向けさせるのよ。そしてその魔法を切った時まるで瞬間移動でもしたかのように突然閣下が現れるように認識させる。それがこの流れの全貌よ。おそらくこれに気付いてるのは殆どいないわ。実戦経験のある一条君でも気付けるかわからないわ。」

 

愛梨は2人に小声で解説すると、烈に目を向けた

 

すると、烈はその視線に気付いて微笑み返した

 

その目はまるでいたずらが成功した子供のようだった

 

そして烈が女性に声をかけると、女性が捌けて烈にスポットライトが当たる

 

そこで殆どの生徒は初めて烈の居場所に気づく。

 

愛梨は達也に食らってなかったら自分も同じような反応をしてるだろうと思いながらも、ここにはいない1人の男(達也)を少しだけ恨むと同時に彼に感謝した

 

「魔法を学ぶ諸君。私が九島烈だ。今の余興は魔法というよりは手品のようなものだったのだが、それに気付いたものは見たところ4()()()()だった。特にその中でもこの手品のタネにまで辿り着いたものは1人だけだ。」

 

この発言により栞と沓子は説明してみせた愛梨以外に気付いた人間がいないことを知り、さらに驚いた。

 

なにせ、タネを聞いてみれば、多くの人が気付いてもおかしくないほど単純なものだったからだ。

 

「つまり、私がテロリストでこの瞬間に大量殺戮や毒殺、爆弾テロを敢行しようとした場合、それに対応できたのは辛うじて4人だけだったと言うわけだ。」

 

「今のは意識さえすれば()()()対処することができるほどに小規模な魔法だった。しかし君達はそんな小さな魔法すらも検知しなおかつ対処することができなかった。確かに魔法力を鍛え、大きな魔法を使いこなすのもいいだろう。しかし、これだけは忘れないでほしい。」

 

『使い方を間違えた大魔法は工夫を凝らした小魔法に劣る。』

 

「私は君達の“()()”を楽しみにしている。」

 

九島烈の話でどれほどの人間がその真意を理解できただろうか。

 

九島烈はあえて小規模な魔法で実演までして言葉の通りに実行してみせたのだ。

 

あの精神干渉魔法も普通なら生徒達には効かないレベルに小さな魔法だ。

 

しかし、それでも彼らはそれに掛かってしまった。

 

つまり、九島烈の工夫に生徒達は劣ってしまったのだ。

 

この中には自分達こそが優秀だと考えている魔法力至上主義の人間も多い。

 

そんな中で自分達よりも強い人間によってその主義を破壊されてしまった

 

真意を理解したものはこれに気付いて心を入れ替えるだろう。

 

入れ替えず、主義を改めない人間はその程度の人間であったと世間的に決められるだけ

 

【老師】と呼ばれる人間のスピーチは良くも悪くもこの生徒達に根強い影響を与えていったのだった。





九島烈のスピーチでした

今回、アンケートの設定通りに一色愛梨を登場させました

吉祥寺真紅郎はもう少し先の登場になりそうです

また達也達は前回で出したように懇親会に参加していませんので、一条将輝が深雪に一目惚れするのもまだ先になりそうです(最初から四葉と出しているので果たして将輝が深雪に惚れるのかというのも怪しいですが)

次回は懇親会を抜け出し、仕事のモードの達也です

では、また次回


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九校戦編 第十話

達也のビジネスネーム、椎原達也のたつやの字を“辰也”に変えています

全話に対応させているつもりですが、変更されてない回がありましたら、誤字報告又は感想にて指摘してくださると助かります




九島烈のスピーチをステージ脇で聞いていた達也達も烈の偉大さに尊敬の意を示していた

 

「これが日本魔法師界を引っ張る【老師】か。」

 

「四葉家次期当主として見習わなくてはなりませんね。」

 

そこへスピーチを終え、ステージ脇に烈が戻ってきた

 

「どうだったかね?なかなかに面白いスピーチだっただろ。」

 

「ええ。しかし、あのスピーチをしっかり理解できた人間は何人いたでしょうかね?」

 

「魔法科高校生にそこまでは望んでおらんよ。社会に出れば嫌でも分かる。」

 

「確かに。現在の魔法師達の就職状況は工夫して魔法が使える者の方が就職して成功する確率が高いですからね。」

 

「そういうことだ。さて、次は君の番だ。準備はできてるかね?」

 

「もちろんです。」

 

達也は自身と深雪にとある細工を施すとステージへと歩き始めた

 

――――――――――――――――――――――

 

『続きまして、今回の九校戦の開催にあたりまして、毎年競技用CADの提供をしてくださっております、FLT社の社長、椎原辰也様よりお言葉を頂戴いたします。』

 

九島烈の次に行われるスピーチは、こちらもビッグネームの1人

 

2092年9月に就任してから、元々トップクラスであったFLTをCAD産業一位に押し上げ、さらに国内シェアナンバーワンも達成させた敏腕社長

 

見た目は僅か二十代前半のような感じだが、その経営力は五十代の社会慣れを迎えた大ベテランのようである

 

そんな、人によっては尊敬の念を抱く人もいるであろう人物だが、この人物は滅多なことがない限りなかなか表に出ないことで有名なのだ。

 

普段の新商品発表や会見、株主総会であろうとも顔を出さず、出るのは外部担当の本部長

 

唯一顔を出すのは他の企業の社長との会合の時のみ

 

ついにその若い社長はこの時を持って秘密のベールを解き放った

 

――――――――――――――――――――――

 

達也と深雪は変装状態でステージ上を進む

 

周りには大柄で若い黒髪の男とその後ろにブロンドヘアーの若い女性がついて歩いているように見えているが、中身はしっかりと達也と深雪である

 

「諸君、はじめまして。私がFLT社長の椎原辰也だ。今回は九島閣下にお声をかけていただいたので、スケジュールの合間を縫ってスピーチをすることになった。…しかし、大体のことは閣下に言われてしまったのでな。何を言おうかと考えたのだが、魔法科高校に通う君達に向けて少しだけ話そう。」

 

「先程の閣下の言葉に工夫を凝らした小魔法という言葉があったな。小魔法とは魔法に関わる人なら殆どが無条件に使うことのできる魔法だ。つまり、閣下が仰られた言葉を私的に解釈して伝えるとするならば、『大きな魔法をただ使うよりも、簡単で小規模な魔法を極める方が社会では重宝される』と言うことだ。一方で、力の誇示のために大きな魔法を使うこともあるだろう。それがしっかりと制御できていて見るものにもその凄さが大いに伝わるものならそれで結構。しかし、力の誇示のためにわざわざ低レベルでろくに制御できていない大魔法を使われるよりは、高レベルでかつ、制御が完璧な小魔法を使う方が我々一社会人にとっては好印象だ。これは我がFLTが求める就職希望者の条件の一つでもある。果たしてこの中の何人がその条件を満たせるかな。」

 

「さて、では最後に私達は()()()()()だろうか?」

 

会場がはてなに包まれた

 

どう見ても目の前にいるはずなのに

 

すると、椎原辰也が右手を上にあげて指を弾くと同時に椎原辰也とその付き人の女性が消えた

 

そして会場の人間がその場で目をキョロキョロしながら探しているところを見ていたとある男に一つの視線が届いた

 

その視線に気付くと、男は静かに微笑み返した

 

――――――――――――――――――――――

 

一色愛梨はスピーチが始まってから1人違う方向を眺めていた

 

それはステージの近くにある司会席の方向

 

勿論、横にいた栞や沓子はそれに疑問を抱きながら話を聞いていたが、ついにその意味に気付くことになる

 

『私達はどこにいるだろうか?』

 

愛梨の向く方向には司会者とその後ろの少し下がったところに2人の人影があった

 

それも注視して見なければわからない程に影が薄い

 

「まさか、愛梨最初から…」

 

「彼のことだもの。そのくらいはすると思ってたわ。」

 

『さて、答え合わせだ。』

 

舞台に向けていたスポットライトが消え、次の瞬間には司会者の斜め後ろにスポットライトが当てられた

 

そこにいたのはスーツとドレスを着ているが、とある一団にとってはとても見覚えのある人物達だった

 

「今のは先程の閣下の使った精神干渉魔法よりも遥かに使いやすい単なる光魔法による幻影を使った手品だったのだが。我々がここにいることに気付いた人間はたったの1人だけだった。」

 

「魔法を習う魔法科高校生の諸君。魔法とは何かをする為の手段にしか過ぎない。それは大魔法だろうが、小魔法だろうが同じこと。そして魔法を使うものには魔法を使うことに対しての責任がある。人とは違う力、それが意味することを理解するのも責任の一つだ。君達がこれを機にどう行動するのかは知らないし興味もない。だがこれだけは忘れないでほしい。」

 

『君達が魔法を使う以上、責任から逃れることはできない。』

 

「これを心に留め、この九校戦を楽しんでほしい。以上で私椎原辰也のスピーチを終わる。諸君の活躍を楽しみにしている。」

 

スピーチが終わると会場を大きな拍手で包み込み、達也はそれに口角を上げると深雪を連れてステージ脇へと去っていった

 

「さすがはFLTの社長、説得力が違う」

 

「そうね。それでこそ日本魔法師界を引っ張る人間だわ」

 

「一色家のご令嬢にそう評価されるのは光栄だな。」

 

「なっ!?」

 

「にしても、俺を見つけるとは、成長したな愛梨。」

 

「た、達也!?」

 

「俺はあのいたずらに気付いてくれた幼馴染みがいることを誇りに思うよ。」

 

「何度も何度も似たようなことをするからでしょうが!」

 

「あれ?そうだったかな…?」

 

「あなたね…はぁ…もういいわ、それよりもやっぱり来てたのね。」

 

「ああ、うちの会長がうるさくてな。別で来るつもりではいたんだが、結局エンジニアとして来ることになった。」

 

「そうなのね、一高の会長といえば達也が嫌ってる七草家の人間ね。」

 

「そうだな。七草ってだけで関わる気は一切無いからな、本当なら今頃は会社で仕事か、九重寺で修行だったのにな…」

 

突然現れた見覚えのある男と愛梨が仲良さげに話しているのを見て栞と沓子は驚くと同時にどうやって?と疑っていた

 

「なぁ栞、今の男って確か…。」

 

「ええ、椎原辰也としてスピーチしていたわね…。」

 

「ステージ脇にはけたように見えたのだが…」

 

「まさか、光魔法で?」

 

「正解だ。もう1人は実際に戻ったのだが、俺は視線を受けたのでね、もう一回幻影を使って周りを騙してみたという事だ。さて、改めて挨拶しよう。はじめまして十七夜栞さん、四十九院沓子さん。俺の名前は司馬達也。椎原辰也としてFLTをまとめる若き社長であり、愛梨の幼馴染みだ。よろしく」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「よ、よろしくなのじゃ」

 

「それよりも何で名前を?」

 

「ああ、九校戦の競技用CADを出しているのはうちの会社だろ。だがら気になる選手またはエンジニアは事前にチェックしているんだ。まぁそれとは別に愛梨から君達のことは聞いていた。俺の調整したCADを使う愛梨を追い詰めた先読みの天才と古式魔法と現代魔法を使いこなす天才がいるってね。月並みな言葉しかいえないけど、これからも愛梨をよろしく頼むよ。」

 

「うむ。任されたのじゃ」

 

「勿論です。」

 

「さて、そろそろ俺は戻るよ。時間が合えば会えるかもね。じゃあまた。」

 

今度こそ達也はステージ脇へと戻っていった

 

「にしても最初は無名と言っていたがこういうことか。それなら愛梨の言葉も理解できる。」

 

「FLTでは社長につく人間は椎原というビジネスネームを使うの。だから司馬家としては無名の一般の家なのよ。」

 

「そういうことね。だから愛梨は無名の家って表現したのね。」

 

「そうなんだけど彼の後ろにいた人はどういう関係なのかしら…。」

 

「案外彼女だったり…おお、顔が怖いぞ、愛梨。」

 

(後で会いに行っても…怒らないわよね?)///

 

「なぁ栞。愛梨が乙女な顔しておるぞ」

 

「あの【エクレール・アイリ】といえど1人の女の子、というわけね。」

 

「ちょっと2人とも!!なにこそこそ話してるのよ!」

 

「初めて見た愛梨の乙女な部分に驚いてただけよ」

 

「なっ!?」///

 

「さて、戻るぞい。懇親会も終わったことだし」

 

 




なんか愛梨が達也のせいで魔改造超人みたいになってますが、あんまり気にしないでください。

一応今回の達也の言葉なんですけど、オリジナルで考えてみました

大変でしたが、なんとか作りきることが出来ました

次回はこの表舞台にたった達也がどの方向へ動くのか

お楽しみに


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九校戦編 第十一話

一応、前回の補足として

達也は一高代表選手(エンジニア)として会場入りする予定でしたが、合流は現地で、先に仕事で会場入りしています

達也が深雪を連れだしたのは達也の気まぐれと敵が七草家であることを烈と確認するためです

さらに、達也が椎原辰也として懇親会に参加したのは七草の牽制であり、深雪という四葉の次期当主を後ろに従わせる事で、四葉家よりも上の立場であることを言外に示しています

ざっと、補足はこんな感じです




日本魔法師界のツートップのいたずらという波乱が巻き起こった懇親会が終わり、達也は自室に戻っていた

 

「ふう。これでしばらくは安心かな(七草弘一が何を考えているかはわからんが、これに関しては動かないのが正解だからな。…さぁどう動く。)」

 

「達也さん、大丈夫ですか?」

 

「ああ。問題ない。ところで明後日から本番なんだが、深雪に合わせたい人がいるんだ。」

 

「それって我々の場所に気付いていた三高の女性ですか?」

 

「そうだ。一応俺の幼馴染だからな。この九校戦期間中に会う予定だったし、丁度いいから深雪と泉美を紹介しようと思ってな。」

 

「彼女は幼馴染だったのですね。道理で仲がよろしいようで、途中で幻影に切り替えてまで会っていたようですし…。」

 

「なんだ、気付いたのか?」

 

「当たり前です!私が気付かないとでも思っているのですか?」

 

「冗談だよ。ただやはり見つけてくれたのは正直嬉しかったからな。見破った報酬だと思ってくれればいいよ。それに、そろそろ完全契約を一色家とも結ぼうと思ってたんだ。それもあって好都合だ。」

 

「四葉家と一○一旅団としか正式契約を結ばなかったのはなぜですか?一色家は家同士の付き合いがあったのでしょう?」

 

「それは俺の当時の状況がアレだったからな。当時、父さんが亡くなった事で仕事に慣れる必要があった。それはFLTの社長業もそうだし、国防軍の人間としても、四葉のスポンサーにしても。全てに慣れるのに時間がかかったんだ。だからスポンサーとしての契約の見返りや自分の所属する隊の強化にしか手が回らなかったんだ。でもそれも最近になって落ち着いてきた。だから正式契約を増やす。といっても今のところ一色以外の選択肢は無いに等しいけどね。」

 

「そうでしたか。では私もご一緒します(ただでさえライバルが多いのにこれ以上増えては困ります!)」

 

「そ、そうか。(妙に張り切ってるな。)」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

翌日、達也は深雪を連れてホテルのロビーで待っていた

 

その時、自分達を()()()()()()人間については無視を決め込んでいるし、話し始めれば遮音障壁を張るつもりなので気にしていない

 

そんなわけで待ち人はやってきた

 

「ごめんなさい、遅れたわ。」

 

「いや、気にしなくていい。呼び出したのはこっちだしな。」

 

「そう。ならその気持ちだけ受け取っておくわ。」

 

「そうか。さて、紹介しようか。俺のとなりにいるのは四葉深雪。うちのお得意様である四葉家の次期当主だ。深雪、こっちは一色愛梨。俺の幼馴染みで、一色家のご令嬢だ。」

 

「四葉深雪です。よろしくお願いします。」

 

「一色愛梨よ。よろしくね、四葉さん。」

 

「深雪で結構ですよ。」

 

「じゃあ私も愛梨でいいわ。…ところで、達也。呼び出した理由は何なの?」

 

「ああ、その事だが、少しだけ待って欲しい。」

 

達也は腕に巻いていた腕輪型CADを操作すると、障壁を張った

 

「あまり、外に聞かれるわけにはいかないのでな。遮音障壁と()()()()()()()の幻影魔法を使わせて貰った。これで、覗き見られることも盗み聞きされることもない。」

 

「それって…(やはりここを見られていた感覚に関すること…もしかしてこれは七草先輩の『マルチ・スコープ』)」

 

愛梨は分かっていないことを考えるにまだ詳細を知らないらしい

 

「さて、俺がこうして愛梨を呼び出したのは、お前に、いや一色家に用があるからだ。FLTとの専属契約を一色家と交わそうと考えている」

 

「それ本当!?」

 

「ああ、本当だ。」

 

「これで3か所目ですね。」

 

「そうだな。そしてこれには少し問題があるんだ。ここからは一色家当主殿も交えた上で話をしようと思う。だからとりあえずこれから一色家と専属契約を交わすつもりだということだけ知っておいて欲しい。それと、後日その話をしたいので空いてる日を御当主殿から聞いて欲しい」

 

「分かった、そのくらいならすぐ調べてみるわ。…ところで、達也が前に電話で言ってた泉美って子に会ってみたいのだけど…彼女は今どこへ?」

 

「すまないな。泉美にはまだやることがあってな。泉美とは競技開始後になる」

 

「そう。ならその時を楽しみにしているわ。」

 

「用はこれで最後だ。俺は離れるから2人で少し話しているといい。遮音障壁は維持しておく。終わったら連絡をくれ」

 

「わかりました。では、愛梨。少しお話をしませんか?」

 

「ええ、もちろんよ。これからじっくりと話しましょう。これからの事をね。」

 

達也が障壁を抜けると、2人は秘密の女子会を始めた

 

そして、障壁を抜けた達也は1人、歩いていた

 

正確にはさっきこっちを見ていたであろう人間のもとへ

 

「無様ですね。()()から言われたのでしょうか?それとも独断?だとしても俺が貴女の行動に気付かないわけがないじゃないですか。ねぇ、そうでしょう?七草先輩」

 

「司馬君!?」

 

「貴女の為に遮音障壁と幻影魔法を使ったんです。なので今でも監視しようとしている貴女に気付かれること無く話を終わらせ、なおかつ監視の犯人のもとに気付かれずに近づく。このくらい誰でも出来ますね。…いや、訂正します。貴女方のような魔法力至上主義の方々では出来ないかもしれませんね。」

 

「監視!?わ、私はそんなことはしてないわ。」

 

「では、何のために?わざわざ『マルチ・スコープ』まで使って何がしたかったのでしょうか?」

 

「それは…一高の代表メンバーが何をしているかを見回っていたらたまたま2人がロビーで人を待ってるように見えたから気になって…」

 

「(とっさに理由を考えたか。その機転の良さはさすが七草家の長女だと称賛すべきだな。)そうですか。ならばこれからはそのような行為は慎んで貰いたい。これで癖がついてこういう場所以外で魔法の不正使用があった場合、私は貴女を捕縛しなくてはならないのでね。その『マルチ・スコープ』も場所を間違えれば不正利用の対象ですよ。」

 

「そ、そう。忠告ありがとうね。」

 

「今回は見逃しますし、使用者が貴女だと言うことも気付いてました。ですが、もし次もやった場合、もしかしたら貴女を()()()()かもしれません。重要職に就いてる人間としてはプライベートは守りたいですから、盗撮・盗聴は防ぐのが基本です。では、忠告はしましたからね。ああそうそう。貴女の父親に伝えておいてください。『次はない』とね。では」

 

 





最後の話、真由美が達也を監視していたのは、九校戦に2人が参加することを知った七草弘一の指示で期間中の2人の監視する事を命じられました

なお、七草香澄にはただ十師族七草の力を見せつけろと命じています

さらに、七草弘一はFLTの監視をしようとしていますが、警備には森崎家の警備会社だけでなく四葉家の私兵が混じっているので上手く監視出来ていないという現状です

そして司馬家の方も監視しようとしていますが、そこには八雲の弟子がついていて、泉美が家にいるかどうかも掴めていません

一方の泉美は椎原辰也名義で取られた部屋にいて、穂波と響子が部屋の中で、部屋の前には独立魔装大隊の隊員が護衛として立っています

この対七草包囲網(仮)に対して、七草の運命や以下に

というわけで、次回は九校戦のもう1つの問題についてです

そのまま競技に入れたらいいなって思ってます

メモもいくつか更新しようと思っているのでそちらもチェックしていただけると嬉しいです

ではまた次回


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九校戦編 第十二話

愛梨との待ち合わせ、そして七草への釘刺しを終えた達也は一応の仕事であるエンジニアの作業をしていた

 

「司馬君はまだ出番あとだし、もう戻っても大丈夫だと思うよ。」

 

「五十里先輩は、どうするのですか?」

 

「僕は明日から早速仕事だからね。残って作業をするつもりだよ。」

 

「そうでしたか。では、お言葉に甘えて、失礼します」

 

一高エンジニアの技術車を出ると、自室に戻ろうと歩き始める

 

やがて、宿泊地のエントランスに近づくと、突如達也の異能が異常を察知した

 

すぐに達也は『時空神の眼』を起動すると辺りを見渡した

 

すると、拳銃を持った男達3人が明確な害意を持って向かってきている

 

さらに、もう1人これに気付いたのか迎撃しようとする者がいた

 

その手には呪符が握られていた

 

(あれは幹比古!?…それでは間に合わない!?)

 

達也は右手を突き出すと、拳銃の時間を巻き戻した

 

部品に分解される、そこに三本の雷が侵入者を射抜いた

 

幹比古がそれを見つけたのは偶然だった

 

父から「本来自分が立つべき場所を見てこい」と言われたのもあってエリカの誘いを受けた幹比古は夜に1人で精霊魔法の練習をしていた

 

その時、放っていた精霊が害意を検知した

 

「拳銃!?侵入者か!!」

 

幹比古は持っていた呪符を起動した

 

すると、賊が幹比古に気付いて拳銃を向ける、その時彼らの持っていた拳銃がバラバラになった

 

それに驚きつつも起動した魔法『雷童子』を放ち、賊を気絶させた

 

自身をアシストしたのは誰だったのか?

 

それを考えていると、突如気配を感じた

 

「誰だ!?」

 

「俺だ、幹比古。」

 

「た、達也!?」

 

暗闇から現れたのは達也だった

 

達也はすぐに賊の首に手を当て脈を測った

 

「死んではいない。的確に気絶させるとは、いい腕だ。」

 

「いや、達也がいなかったら死んでいたのは僕の方さ」

 

「はぁ…幹比古。お前は馬鹿か?」

 

「え?」

 

「お前は1人で対処するのが正しいと思っているだろうが、そんなものは理想論でしかない。現実を見ろ、俺がアシストをしてお前が賊を気絶させた。それが唯一の事実じゃないか。そんな卑下することはない」

 

「わからないよ、君には。色々と恵まれている君には…」

 

「俺が恵まれている…ね。まぁお前からしたらそうか。俺のことなんて何も知らないんだからな。だが、何も知らない人間にそう言われるとこれがどうして、吐き気がする。」

 

「!?」

 

「幹比古。俺はな、中学生の時に両親を亡くしているんだ。だから俺は自分が恵まれているなんて思ったことはない。」

 

達也の突然の剣幕に驚き、幹比古は固まっていた

 

「唯一の家族だった。今でこそ泉美という妹はいるが、それでも義理の兄妹。血の繋がりはないんだ。だから俺は今も心の中では唯一の家族である両親の死を乗り越えられてないのかもしれない。」

 

「そう…なんだ。」

 

「ところで、お前のさっきの贅沢な悩みは魔法の発動速度か?」

 

「!?…エリカか?」

 

「いや。俺はな、一度見ただけで魔法式の構造を理解することができる。それで見た限り、お前の術式には()()()()()()()

 

「なっ!?君は、吉田家が長い時間と労力をかけて作り上げた魔法を()()()()つもりかい!?」

 

「そうだな、その答えは後日空いてる時間を使って説明しようか。だから今はコレを対処しよう。警備員を呼んできてくれ」

 

「わかった。」

 

幹比古がその場から去ると同時に達也は視線を茂みの方へと向けた

 

「なかなかに容赦がなく、それでいて深いアドバイスだったな、大尉。」

 

「風間少佐。覗き見ですか?」

 

達也の視線の先から出てきたのは達也の上官であり、所属する部隊の隊長でもある風間だった

 

「まさか。ただこの辺の警備をしていてね。見つけたのは偶々だ。」

 

「そういうことにしておきましょう。ところで、この賊についてですが。」

 

「そのもの達はこっちで引き受けよう。ご苦労だった。」

 

「はっ!」

 

「とりあえず、また後日会おう。部屋の場所も知っているだろうから、いつでも来てくれて構わない。」

 

「そうですか、わかりました。後日、泉美を連れて伺おうと思います」

 

「うむ。気を付けろよ、()()。」

 

「わかってますよ、()()()。」

 

会話は階級から友人・兄弟弟子の関係へと変わっていった

 

達也がその場から去るのと、警備員がたどり着くのはほぼ同じだった。

 

翌日、達也の元には捕まえた賊が〈無頭龍〉東日本支部の末端メンバーであったことが知らされた




前回までで結構書いたので、今回は比較的短めです

達也の過去(一部)が幹比古に話されたり、風間と会ったりと内容的には濃いめだと思っています

そんなわけで次回からやっと競技スタートです


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九校戦編 第十三話

ついに九校戦が始まった

 

九校戦最初の試合は本戦スピード・シューティング

 

全体も含めたオープニングゲームを務めるのは【妖精姫(エルフィン・スナイパー)】七草真由美

 

このスピード・シューティングでは既に2連覇しており、今年も優勝候補筆頭とされている

 

達也は泉美と深雪を連れて、この会場に来ていたレオ達と合流した

 

「オープニングゲームは七草先輩か。まぁ、観客相手に魅せるにはそれが妥当か。」

 

「選手にとっては心穏やかじゃないけどね。」

 

「にしても、女性ファンが多いですね。裏では会長の同人誌なんかも出回っているらしいですし…」

 

「えっ?」

 

「美月…私貴女との友達付き合いを考え直そうかしら…」

 

「ふぇ?…え、あ、あの。」

 

「フフ。冗談よ。」

 

試合が始まると、七草真由美は圧倒的な実力をPERFECTというスコアで魅せつけた

 

「流石は十師族。それに、今の魔法は対戦形式で真価を発揮する」

 

「ん?どういうこと?」

 

「見たらわかるさ。さて、渡辺委員長の試合を見に行こうか。」

 

達也達は七草真由美の次の試合までの間に、バトル・ボードの会場にいた

 

バトル・ボードの会場に着くと、観客席は女性で溢れていた

 

「渡辺委員長は女子受けがいいのか。」

 

「悪趣味ね…」

 

「でも確かにわかります!渡辺先輩はお姉様って感じがするので。」

 

試合は、相手の自爆戦術から始まるが、摩利はそれに意を介さずに先に進んでいった

 

そのまま、特に見せ場もなく勝ち進みが決定した

 

「面白いな…。〈マルチ・キャスト〉、それも2種類だけじゃなく3種、いや4種ほど混ぜている。なるほど、硬化魔法の使い方が上手いな…」

 

「ん?硬化魔法?どこで使ってるんだ?」

 

「ボートと自分の相対位置の固定に使ってるんだ。言っておくが、固めているから硬化魔法って言うんじゃなくて、相対位置を固定するから硬化魔法なんだ。固まっているように感じるのは魔法の副作用のようなものだ。(うまく洗礼されている…これは使えるかもな)」

 

「へぇ〜」

 

―――――――――――――――――――――――

 

午後に入ると、達也は一人でホテルの中を進んでいた

 

やがて、護衛の兵士が立っているフロアにたどり着いた

 

「此処から先は立入禁止となっております。」

 

「関係者ですので」

 

達也は自身の階級証を見せつけた

 

「ああ、大尉!申し訳ありません。さぁ、こちらへ」

 

達也は護衛の一人に連れられて一つの部屋の前まで来た

 

達也がそこをノックすると、中から入れと声をかけられた

 

「失礼します。」

 

「よく来たな、大尉。掛けろ」

 

「では、お言葉に甘えて」

 

中にいたのは、達也の所属する独立魔装大隊の幹部たちとプラスで泉美と穂波だった

 

ここは大佐以上の階級を持つ人間しか使えないようになっているのだが、隊長である風間は少佐ながら、その隊の特性やその他諸々の事情から大佐クラスの待遇を受けているため、こういう場を使うことができていた

 

「泉美はやっぱりここにいたんだな。」

 

「響子さんがこの部屋に行くというので穂波さんとご一緒させていただきました。」

 

「なるほど、泉美を入れてくれてありがとうございます。」

 

「気にするな、泉美嬢ももうじき我が隊のメンバーになるし、何しろ彼女はお得意様の妹君だ。」

 

「それに学業に専念する達也君の情報も教えてくれるからね。一石二鳥さ。」

 

「真田大尉…それは知る必要があるんですか?」

 

「もちろん、あのFLTの社長さんのプライベートを知るいい機会だし。ところで、アレは使ってくれてるのかな?」

 

「ええ。最近は深雪の練習で使いました。やはり真田大尉の作ったハードは素晴らしいですね。どうですか、うちで働きませんか?」

 

「そうだね、この隊が無くなったら、そっちに行くかもね。」

 

「おい、真田。変なこと言うな。っと、久し振りだな、達也。ブランシュのとき以来か?」

 

「ええ、そうです。その節はお世話になりました。」

 

「礼なんていらねぇよ。第一あれも仕事のうちだ。」

 

「確かにそうですね。ところで、いつまで触ってるんですか?響子さん」

 

「久し振りの達也君を堪能してるの!だからしばらく待って!」

 

「ええ…」

 

「そのへんにしておけ、藤林。そろそろ本題に入りたいんだ。」

 

困ってる達也を見て隊長自ら助けに入った

 

流石に上官に言われては従うしかない響子は(イヤイヤながらも)達也から離れた

 

「さて、改めて久し振りだな。それと飛行魔法開発おめでとう。」

 

「ありがとうございます、風間少佐。そして、先日はどうも。」

 

「ああ、あれか。あれについてだが、やはり〈無頭龍〉だった。しかし、あれは組織の中でも下っ端だったようで、情報は掴めなかった。」

 

「そうでしたか…」

 

「ところで、達也君はあんな時間まで警戒してたの?」

 

「いえ、見つけたのはたまたまです。エンジニアの仕事をしてましたので…」

 

「そうか…しかし、かの有名な【シルバー】が高校生の大会のエンジニアか。知らないとはいえとんでもないな。」

 

「まぁ、出る気は無かったんですけどね。生徒会長がうるさくて。」

 

「七草か…。まぁ達也が楽観視してるならあんま気にする必要はないか。」

 

「楽観視はしてないんですけどね…。それに僕はこれでも学生ですので、出場資格は有してますよ?」

 

「そういう問題じゃないけどね…選手としては出ないの?」

 

「出ませんよ。なんでそんな面倒なことを」

 

「面倒って…」

 

「まぁそれが達也君ですから。」

 

「同感ね。でも一高いいな〜。私も達也君の調整で試合出たかったもの。」

 

「そうですか。ところで、泉美の軍属の件ですが」

 

「ああ、その件だが。先程話がまとまってな。()()()にも今後訓練に参加してもらう予定だ。まぁ師匠の教えを受けているなら我が隊でも下手な兵士には勝てるだろうな。魔法もあるし」

 

「そうですね。」

 

「それと、達也。もし選手になった場合だが、『時空間操作』の使用はなるべく控えてくれ。特に“時間”に関するものはな。」

 

「わかってますよ。あれは泉美のアレ同様、機密指定している魔法ですから。まぁそんな時が来ればの話ですし、“時間”を使う程の相手が魔法科高校生にいるかも怪しいですからね。」

 

「流石は大尉だ。それで、このあとはどうするんだ?」

 

「それが、幼馴染に呼ばれてまして。」

 

「そうか。我々はここに残っているから何かあったらここに来るか連絡を入れてくれ。対応できるものはしよう。」

 

「了解しました。では、失礼します」




次回は再び幼馴染さんの登場です

そこで1日目、プラスで2日目も終われたらなと思ってます

それと、泉美の偽名ですが、3つぐらい案が出ているので、アンケートで決めてもらいたいと思います

神白彩乃(かみしろあや)

大山玲那(おおやまれいな)

榛名結衣(はるなゆい)

アンケート回答締め切りは、いつも通り次回作登校日までです

作者が優柔不断な為に、ご協力よろしくお願いします

では、また次回


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九校戦編 第十四話

今回ですが、達也と真由美の仲があまり良くないので、クラウド・ボールの助っ人の話は無しです

不用意に近付けて悪化させるのはあまり望んでないので…




風間達の部屋を後にした達也は一高の友人達が待つ所、ではなく会場の入り口付近に向かっていた

 

「あ、来たわね。達也、こっちよ!」

 

「すまない、愛梨。少し時間がかかってしまった」

 

「別にいいわ。じゃあ、行きましょう。」

 

「ああ。」

 

待ち合わせていた愛梨と合流した達也はスピード・シューティングの会場に来ていた

 

「午後からは対戦形式だ。まぁ、対戦だからこそ【エルフィン・スナイパー】の敵では無いだろうな。」

 

「でも七草真由美のあれは予選だからできる芸当よね?」

 

「見てたらわかるさ。七草真由美の『魔弾の射手』は対戦形式でこそ真価を発揮する」

 

お目当ての試合が始まると、早速七草真由美の狙うクレーが相手選手のクレーで隠れてしまった

 

しかし、()()()()()()()()ドライアイスの弾丸によってクレーが破壊された

 

「え!?後ろから?」

 

「『魔弾の射手』が、作るのはドライアイスの弾丸ではなく、その銃口だ。『マルチ・スコープ』で標的を調べて『魔弾の射手』で敵を射抜く。まさにスナイパーだ。」

 

「なるほどね。だから後ろからドライアイスの弾丸が飛んだのね。」

 

「そうだ。そしてこれをフル火力でぶっ放せば、敵は全滅する。これこそが最強の魔法師集団十師族というものだ。」

 

そのまま七草真由美は全試合パーフェクトで優勝を決めた

 

達也と愛梨は会場の近くにある売店で、色々買って近くの席で話しながら買ったものを食べていた

 

「流石ね。あ、これ美味しい。」

 

「【万能】にふさわしい試合だったな。」

 

「明日はクラウド・ボールの試合よね。やっぱり参考にするべきかしら?」

 

「その必要はないだろう。前回までの情報を見ればわかるとおり、愛梨と戦略というか戦い方が違うからな。」

 

「確かにそうだけど…」

 

「まぁもし対戦するとしたらどんな戦い方がいいだろうとか考える分にはいいんじゃないか?」

 

「そうね。明日も一緒に回る?」

 

「俺が予定なければそれでも構わないよ。」

 

「決まりね。じゃあ明日は朝からクラウド・ボールの会場の前で待ってるわ。」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

翌日、達也は愛梨と合流すると、クラウド・ボールの会場で席を見つけて座っていた(その前に会場内の売店で飲み物を購入していた)

 

「今日はクラウド・ボールとアイス・ピラーズ・ブレイクの予選だな。それぞれの注目選手はクラウド・ボールは前年度王者七草真由美、アイス・ピラーズ・ブレイクは前年度で新人戦を優勝した千代田花音と前年度王者十文字克人。まぁ試合の面白さでは千代田花音が一番だろうな」

 

「確かに彼女の使う『地雷原』は見た目のインパクトが大きいものね。」

 

「そうだな。あ、そういえば今日の夜開いてるか?」

 

「夜?」

 

「『飛行魔法』を体験してみないか?」

 

「え?いいの?」

 

「ああ。今日の夜、宿舎の練習場に来てくれ。」

 

「わかった、空けておくわ。」

 

そして色々な選手を見ていると、ついにお目当ての七草真由美が登場した

 

七草真由美は小銃形態のCADを、対戦相手はラケットを持っている

 

ちなみに、達也達は見れていないが、初戦、2回戦をともに圧倒している

 

試合が始まると、相手の返してきた球を含めたすべての球を1つの魔法で打ち返している

 

「ベクトル反転…移動系系統魔法『ダブル・バウンド』か。」

 

「相性の悪い相手ね…速さでないと勝てないけど、試合の形態的に持久力勝負を強いられるから私では勝ち目ないわね。」

 

「良くて引き分けってことか?」

 

「さぁね。そこは戦ってみないとわからないわ。戦う前から諦めるなんてありえない。一色愛梨の名が廃るわ。」

 

「確かに、愛梨は昔から負けず嫌いだもんな。」

 

「貴方に負けてからだけどね。」

 

やがて、七草真由美が試合に勝利したことで彼女の準決勝進出が決まった。

 

お目当ての試合が終わったので、二人は昨日と同じように出店を回っていると、見知った顔と遭遇した。

 

「あれ?達也さん?」

 

「なんで三高の人と一緒に?」

 

「雫にほのかか。彼女は俺の幼馴染みでな、たまたま会ったから普通に話したり試合見たりしてたんだ。」

 

「あら、達也は私というものがありながらよその女に向かうの?」

 

「何言ってるんだ、愛梨。ただ学校の同級生と会ったから話してただけだよ。そんなやましいことはないから。」

 

「それは良かったわ。(これ以上ライバルを増やしてたまるもんですか!)」

 

「ところで、二人で一緒に回ってたのか?」

 

「さっきまで深雪がいたけど、エリカが連れてった。」

 

「そうか。」

 

「そういえば会場に泉美がいるって本当?」

 

「なぜそこで泉美の名前が出てるんだ?」

 

「なんか会長が、達也さんはいるのに泉美がいないのは珍しいって呟いてて…」

 

「ふーん。(七草が泉美を狙い始めたか?)他にはなんか言ってなかったか?」

 

「そんなに聞いてない。」

 

「なるほど。ならば無視していいだろう。俺には関係ない話だからな。あ、愛梨。これ食べてもいいぞ。」

 

「いいの?じゃあありがたく貰うわ。」

 

達也が食べかけのクレープを愛梨に渡した

 

「ふぇ!?た、達也さん!?それか、間接キスじゃあ…」

 

「そうだが、なんでそんなことを気にするんだ?こんなこと昔からやってたわけだし。」

 

「ふーん、なるほどね。君は達也のタラシにやられた口ね。確かに達也は昔から成績優秀でスポーツ万能だから人気だったからその気持ちはわからなくないわ。何回か告白されたってのも聞いたことがあるわ。」

 

すると愛梨はほのかの耳元に近付いて小さな声で呟いた

 

「達也のことを好きになるのは構わないけど、もう少し平常心を保たないと勝てないわ。早いこと諦めるのが吉よ。」

 

「ふぇ!?」///

 

「私だって達也を譲るつもりはないし、ましては深雪になんて絶対渡さない。勿論、貴女にもね。」

 

「おい、愛梨。俺はタラシじゃないぞ。」

 

「どの口が言ってるのよ!」

 

「達也さん1年女子から人気ですからね…担当した人が私物のCADを持ってきたっていうのは結構有名ですよ。」

 

「ふーん。流石タラシね。いっそ清々しいまであるわ。」

 

「あはは…」

 

 





アンケートの回答ありがとうございました

結果は以下の通りです

次回は原作通りの事故シーンと愛梨の飛行魔法体験の二本です。

ではまた次回


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九校戦編 第十五話

アンケートの協力ありがとうございました

結果としましては、泉美の偽名は

神白彩乃(かみしろあや)

となりました

使う場面が出てきてからの使用となるのでおそらく本編の後の方に出てくると思います

そして、ここで1つ設定を加えておくと、達也と真紅郎の件ですが、面識はあるけど記憶にないという程で、2人が思い出すのはモノリスの時とします


その日の夜

 

達也はアタッシュケースを持って練習場に向かっていた

 

達也の周りには()()()()の護衛である軍服を着た軍人2名と黒服2名が少し離れたところを歩いていた

 

達也が練習場にたどり着くと、赤いジャージを着た一人の少女が立っていた

 

達也は到着してから軍人の方を周辺警備に当たらせて、黒服を扉の前に待機させて中に入った

 

「待たせたな、愛梨。」

 

「大丈夫よ。」

 

「そっか。待たせてすまなかったな。準備をしていたら少し時間がかかってしまった。愛梨は準備できてるか?」

 

「これを脱いだらね。だから少し待って」

 

愛梨は赤いジャージを脱ぐと、リブール・エペーの衣装を着ていた

 

「それは、リブール・エペーの…もしかしてミラージ・バットはそれで出るのか?」

 

「そうだけど、変かしら?」

 

「いや、とても似合ってるよ。」

 

達也はアタッシュケースを開けると中に入っている飛行デバイスを愛梨に渡した

 

ちなみにアタッシュケースの中には飛行デバイスが2つ入っているので、1つは予備として入れられている

 

「このデバイスは〈ループ・キャスト〉を搭載してない。その代わりに想子の自動吸引用のシステムが搭載されている。一度スイッチを押すともう一度押すまで想子は永遠に吸収されてしまうからな。注意しろよ。」

 

「わかったわ。」

 

「それと、ペース配分は特に考えろよ。今回は練習だからそこまで使わせるつもりはないが、それでも普通の人が一時間で動けなくなるレベルで操作を使うからな。今後のことも考えて今は10分が目処だ。」

 

「心得たわ。じゃあ、始めていい?」

 

「いいぞ、最初の飛行を存分に楽しんでくれ」

 

愛梨がCADのスイッチを押すと、愛梨の身体が宙に浮き始めた

 

「本当に浮いてる…凄い…」

 

「やはり飛行魔法を作ってよかった。大変だったが、こうして完成したものを楽しんで使ってくれる所を見るのはいいな。」

 

「さすが達也ね。私も誇らしいわ」

 

「それは良かった。」

 

「ねぇ、達也は飛ばないの?」

 

「え?」

 

「だから達也は飛ばないのって聞いてるんだけど?」

 

「飛行デバイスは一つしかないぞ?」

 

「達也はデバイスいらないでしょ?」

 

「それもそうだな。じゃあそっちに向かおう」

 

達也が指を弾くと達也の身体が中に浮き上がった

 

「いつ見ても便利ね…達也の魔法」

 

「これのせいで昔はうまく魔法が使えなかったんだがな。努力の賜物ってやつだ。」

 

「そうね。」

 

そして十分が経過すると、達也は愛梨から貸していたデバイスを回収してケースを黒服に預けると、愛梨を連れて宿舎へと戻っていった

 

「にしてもあの達也がエンジニアね…羨ましいわ。」

 

「エンジニアなんてどこも変わらないだろ。メインは選手なんだから」

 

「それはそうだけど…でも私は達也に調整してほしかったわ。」

 

「はぁ…じゃあ九校戦が終わったら調整しよう。それでどうだ?」

 

「いつもやってるじゃない。じゃあ、達也の一日を頂戴」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「達也の一日をもらうのよ。つまり、一日だけ私に独占させなさいって言ってるのよ。」

 

「しょうがないな…一日だけだぞ。」

 

「もちろん!じゃあまた会場で会いましょう!じゃあね、達也。」

 

「ああ、またな、愛梨。」

 

———————————————————————

 

九校戦3日目

 

この日は本戦の前半最後の日でアイス・ピラーズ・ブレイクとバトル・ボートの決勝まで行われる

 

達也は今日は愛梨とではなく深雪と泉美を含めた5人で見ていた。

 

その中には表向きは友人として、裏では泉美の護衛ということで穂波と響子も一緒である

 

「達也さん、昨日は一色さんといらしたようですが、随分と仲がよろしかったようですね」

 

普通に競技の話をしていると、思い出したかのように深雪が達也と愛梨の話を持ち出し、自身から冷気をまき散らした

 

ちなみにだが、深雪は既に冷気の制御はできているのだが、達也のことになると冷気を撒き散らすようになってしまったらしい

 

依存とは恐ろしい…

 

「ちょっ、み、深雪!?冷気…」

 

「私も気になったわ。達也兄様は私が外に出られないのをいいことに他の女性と逢引されたのですか?私たちというものがありながら!」

 

「ふ、2人とも…落ち着けって。幼馴染と会うくらい自由だろ?流石のお前達でもそこまで制限される謂れはないぞ。」

 

「ですが!私ももっと達也さんと観戦したかったんですよ!!」

 

「いや、今日やってるじゃないか…」

 

「それとこれとは話が違います!」

 

「とりあえず、バトルボードの試合。始まるぞ」

 

「渡辺先輩が出るのはまだ先ですから。それよりも2人きりで観戦なんて羨ま…は、ハレンチな!!」

 

「ん?深雪さん今羨ましいって…」

 

「言ってません!!」

 

「2人で見るののどこがハレンチなんだ?」

 

「それは…」

 

「まぁまぁ、3人とも落ち着きなさい。別にやましいことは何もなかったみたいだし、いいんじゃないかしら?そこで突っかかってたら嫌われちゃうわよ」

 

「「それは嫌です!!」」

 

やがて、バトル・ボードの試合も摩利の出番になった

 

準決勝第2試合

 

出場選手は摩利と三高の水尾選手と七高の選手

 

去年の決勝カードとなったこの試合

 

スタートの合図が鳴ると、摩利が先行した

 

その後ろを七高、三高と続いていく

 

最初のカーブに差し掛かった時、達也の“眼”が危険を知らせた

 

(なんだ?何を検知した?コース…まさか!?)

 

達也が気付き始めたがもう遅かった

 

摩利が通過したその後ろで七高選手のスピードが()()()()()

 

その時に達也の眼が七高選手のCADから一瞬発光していたのを捉えていた

 

(今のは…まさかこれもか!?厄介な)

 

摩利が加速して制御不能になった七高選手のボードを移動魔法で飛ばして抱きかかえる形になった

 

その時、水面が不自然に揺れた

 

バランスを崩した摩利は七高選手と衝突してそのままフェンスに突っ込んだ

 

「お前たちは来るな。穂波、ついてきてくれ」

 

「はい。」

 

達也は穂波を連れて現場へと走っていった

 

バトル・ボードで起きた事故は会場に緊張した空気をもたらした

 

 





今回はここまでにします

次回から事故の後処理だとか新人戦になります

ではまた次回


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九校戦編 第十六話

 

医務室

 

「…り、ま…、摩利!!」

 

「ん…なに…」

 

「良かった…無事なのね…」

 

「無事って…はっ!?そういえば試合は!?…ってて」

 

「もう、安静にしてないと駄目じゃない。」

 

「すまんな、真由美。」

 

「焦る気持ちはわかるわ。でも今は安静にしててね。幸い、摩利のおかげで七高選手は無事よ。でも二人ともフェンスに直撃したことで骨にヒビが入ったみたいだから少なくとも一週間は運動禁止ね。」

 

「それじゃあ…」

 

「試合に関してはあの試合は二人棄権による無効試合で三高選手の不戦勝。もう一つの試合で小早川さんが三位決定戦に回ったわ。」

 

「そうか…小早川なら大丈夫だ。緊張で空回りしなければいいんだが…」

 

「そうね。ちなみにここまで摩利や七高選手を運んだり指示を出したのは司馬君だから」

 

「達也君か…」

 

「随分と手慣れていたみたいね…」

 

「なるほど…後で感謝しなければな」

 

「彼、摩利の試合のデータを受け取って検証してるみたいよ。」

 

「あれは明らかにおかしかったからな。流石に調べるだろ。」

 

「私はその時アイス・ピラーズ・ブレイクの方に行ってたからよくわからないのだけど…」

 

「まぁ後で達也君から検証結果を聞けばいい。それでだいたい理解できるだろう。」

 

「ところで話し変わるけど、おかしかったってどこがおかしかったの?」

 

「そうだな…七高選手の加速もそうだが、あの時水面に、詳しく言えば私のいた場所に不自然な揺らぎを感じたんだ。本来ならばあの程度でバランスが崩れることはなかったんだが…」

 

「あ、今司馬くん達から連絡が来たわ。」

 

――――――――――――――――――――――――

 

一方、その頃、達也は自分の部屋で検証をしていた

 

その時、扉の方からコンコンとノックする音が聞こえた

 

「泉美、出てくれ。」

 

泉美が達也の指示に従って扉を開けると、一組の男女が部屋の前にいた

 

「五十里先輩に千代田先輩?」

 

「ああ、俺が呼んだんだ。すみませんね、千代田先輩は試合終わりだったっていうのに…」

 

「気にしなくていいよ。それほどまでにあの事故は無視できないものだったからね。」

 

「そうですか。こんな状況で言うのもなんですが、千代田先輩、優勝おめでとうございます」

 

「ありがとう。でもこんな状況だからあまり喜べないわね。」

 

「さて、始めようか、司馬君。」

 

達也と泉美、それから五十里と千代田の4人で検証を始めた

 

ちなみに深雪は普通に部屋に戻っている

 

検証開始から数十分がたった頃

 

「うーん、これは難しいな…」

 

「どうして?」

 

「何者かの妨害があったと考えるのが妥当なんだが、会場の警備は厳しくて人による妨害工作は難しいんだ。」

 

「それって司馬君が間違えてるだけじゃないの?」

 

「それはないよ。司馬君の検証は完璧だ。だけど、妨害のトリックがわからない」

 

「では、人以外の可能性を探ってみましょうか。」

 

示し合わせていたかのようなタイミングで部屋にノック音がしたところで、達也が泉美に視線で指示を出した

 

泉美がそれに察して扉を開ける

 

「紹介しましょう、泉美のクラスメイトの吉田幹比古と柴田美月です。吉田は精霊魔法の大家吉田家の人間で、柴田は霊子に対して有効な察知能力を持っています」

 

「精霊魔法…まさか!?」

 

「ん?どういうことだい、達也。なんにも話が浮かび上がらないんだが…」

 

「順序を立てて説明しよう。まずはこの映像を見てくれ」

 

達也が示したのは摩利と七高選手が衝突するシーン

 

「ここで不自然な揺れが起きてる。幹比古、精霊魔法には()()()()()()()()()()を仕掛けることは可能か?」

 

「達也はこの事故で精霊魔法を疑ってるのかい?」

 

「五十里先輩の言うとおり、九校戦は規制が厳しく、常に妨害を防ぐための係員が導入されている。魔法を使えばまず気付かれるだろう。しかし、予め仕掛けられていてそれを時間とタイミングが合うようにすれば、気付かれずに妨害することが可能になる。というのが俺の考えだ。」

 

「なるほど…確かに精霊魔法には遅延発動式の術もある。だけど、それには充分に土地を理解した上でタイミングを完璧に合わせなきゃならない。それに、術のみでは渡辺先輩の体勢を崩すことはできない。」

 

「そう、普通ならな。じゃあ、次はこれを見てくれ」

 

達也が次に示したのは七高選手がカーブで加速し始めたところだった

 

「本来ならば、ここで一回減速をしなければならないのだが…」

 

「九校戦に選ばれる選手がそんなヘマをするはずがない!」

 

「俺はこの七高選手のCADに細工が施されたと思っています」

 

「じゃあ七高選手団の誰かに裏切り者が!?」

 

「いえ、疑うべきは選手団ではなく大会委員会の人間でしょう。」

 

「しかしどうやって…?」

 

「競技用CADは一度回収されます。タイミングとすればここでしょう。しかし、手口がわからないのが厄介です。というわけで五十里先輩も気を付けてください。それと、この件はどうか内密にお願いします」

 

「わかった。」

 

「じゃあ私達は戻るわ。吉田君達はどうするの?」

 

「僕達も戻ります」

 

「そう。じゃあまた明日。司馬くんは明日から頑張ってね。」

 

話が終わり、4人が部屋から出ると達也が準備を始めた

 

「達也兄様、どこへ?」

 

「老師のところだ。用事ができた」

 

「私もご一緒します」

 

「そうだな、部屋に一人で残しておくのは少し不安だし。じゃあ行くぞ。」

 

 





今回はここまでにします

次回から新人戦スタートです



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九校戦編 第十七話

 

九校戦4日目

 

この日をもって一時的に本戦を中断し、一年生のみの新人戦が行われる

 

スケジュールはほぼ本戦と同じなので、この日は新人戦のスピード・シューティングとバトル・ボードの予選が行われる

 

達也はこの日のスピード・シューティングから仕事が始まることになる

 

余談だが、昨日は烈のいるVIP専用の部屋に向かうと、そこにはなぜか会場入りしていた真夜と深雪の言い争っている現場に遭遇した

 

そこで少し真夜と話をしたあと、本命となる烈に向き直り、妨害工作の件の相談をして、この日が終わった

 

そんなわけで迎えた新人戦

 

達也は最初からエンジニアの仕事のため、スピード・シューティング用の一高控え室にいた

 

「さて、調整が終わったぞ、確認してみてくれ。」

 

「ん。……家のより完璧。やっぱり雇われn…」

 

「断る。」

 

「むぅー。どうして?金額が足りなかった?」

 

「それは関係ない。そもそも誰かの元につく気はないからな。(そもそも一大企業の社長を自分のCAD調整用にヘッドハンティングするか!?やっぱりその辺の豪胆さは潮さん譲りといったところか。)」

 

「やっぱりだめ?」

 

「だめだ。どう転ぼうとも契約はしない。」

 

「……ケチ。」

 

「知らん。…さて、冗談話はこのくらいにして、雫の実力なら優勝はほぼ確実だろう。」

 

「別に冗談じゃなかったんだけど…。でも、たしかに達也さんの調整のお陰で勝てそう。達也さんの調整は最強だから」

 

「そうか…そう言ってもらえると嬉しいな。さぁ、行ってこい」

 

ちょうど呼ばれたところで雫を送り出すと、達也は次の人の調整を始めつつ、モニターの方に若干意識を向けた

 

——————————————————————————

 

一方、達也が他のメンバーとモニター越しに観戦準備をしていた時、スタジアムの方では真由美達が席を取って観戦しようとしていた

 

なぜ、絶対安静の筈の摩利がいるのかというのは長年培った友情から大体察していて、呆れつつも流しているようだ。

 

「これが達也くんの初めての九校戦か…何をしてくるか楽しみではあるな。」

 

「そうね…ここで彼の実力を測って見せるわ!」

 

「そうですね…秘密に包まれた彼の実力は私も素直に脱帽するレベルですから、楽しみですね。作戦立案なども担当してくださってますから、そこも見所ですね。」

 

雫の試合が始まると、ライフル形態のCADを構えて引き金を引いた

 

そこには大きなキューブ状の領域が現れた

 

飛んできたクレーが領域を通過するタイミングで引き金を引くと、クレーが全て破壊されていく

 

「あれは空中を大きな箱と見立て、その箱の各頂点と箱の中心点を震源地とした9つの10m四方のエリアに分けます。このエリアに関しては変数化されているので、標的が侵入したエリアの番号を入力すると、入力された空間内にある固形物に対して仮想的な波動を送る事ができ、仮想的な波動をうけた固形物は疎密波が引き起こされることで中から破壊される、という魔法です。」

 

「そんなのよく思いつくな…」

 

「この魔法の名前は『能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)』。司馬君のオリジナルだそうですよ。」

 

 

「すごいな…真由美のやつとはまるで真逆だ。」

 

「本当ね…。でもこれって精密というよりかは大雑把に位置を把握して使う魔法よね。それってこういう個人戦ならともかく、対戦形式じゃあ意味ないんじゃない?」

 

「そこに関しても聞いています。が、それはその時までのお楽しみで。」

 

「むぅー。リンちゃんのケチ!少しくらい教えてくれたっていいじゃない!」

 

「だめです。司馬君にも口外しないようにと釘を刺されていますから。誰であろうと教えることはできません。」

 

「そんなぁ…」

 

「しかし、こんなとんでもない新魔法を開発するなんて…流石だな。」

 

「流石ですよね、調整ができて、さらに新魔法まで開発できる。今日も彼のところに私物のCADを調整してもらおうとする女子生徒が沢山押しかけていたそうですよ。」

 

「ふぅーん。」

 

「どうしたんだ、真由美。あれか?自分は構ってもらえないのに他の人は構うんだって、嫉妬してるのか?(笑)」

 

「ち、違うし!何を言ってるのよ、摩利ったら。」

 

「そんなことをしている間に北山さんがパーフェクトで試合を終わらせましたよ。」

 

「流石だな。」

 

「まずは順調な滑り出しね。」

 

「達也君を入れれたのが結構大きいな。」

 

「そうですね。どうやら司馬君は三高に幼馴染みがいるそうですから敵になっていた可能性もありますね。」

 

「考えただけでも恐ろしいな」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「お疲れ様、雫。」

 

「なんか拍子抜け」

 

「そうだな。意識の隙間を縫うようなクレーの出し方を予想していたんだが…」

 

「考えすぎ。新人戦だよ?」

 

「そうだったな。(それに、CADへの細工に関しても杞憂に終わって良かった。)」

 

「ねぇ、達也さん。Bグループ見に行きたい」

 

「目的は…ああ、三高の十七夜選手か。」

 

「そう。同じ優勝候補だから、見ておきたくて。」

 

「なるほど、じゃあ行こうか。」

 

Bグループの会場では、丁度目当ての選手が試合を始めていた

 

「ナイスタイミングだな。」

 

「間に合った。」

 

お目当ての選手、十七夜選手は雫同様パーフェクトで予選を突破した

 

「流石だな…これは想像以上だ。」

 

「移動魔法…かな?」

 

「そのようだな。砕いたクレーの破片を他のクレーに飛ばす。それを連鎖的に行っている。狙ってやってるとしたら彼女は結構な強者だ。」

 

「そう言ってもらえるとは、光栄ですね。」

 

「十七夜選手、それと愛梨か。」

 

雫と話していると背後から聞き慣れた声がした。

 

その声の方向に向くと、いたのは先日会った幼馴染みとその友達だった

 

「懇親会以来ですね。」

 

「2日ぶりね、達也。」

 

「そうだな。ここにいるということはさっきのも聞かれていたわけだ。」

 

「そうですね。まさか、貴方にそこまで言われるとは思ってもみないことですが、やはり来て正解でした。」

 

「なるほどな、目的は雫で、内容は宣戦布告か。」

 

「流石です。よくわかりましたね、というほど難しい内容ではないですが。ちなみに愛梨はただついてきただけです」

 

「だろうな。愛梨だし」

 

「そうですね。愛梨ですから」

 

「ちょっとそこの二人!私がなんだって?」

 

「なんでもないぞ。さて、雫。お目当ては雫のようだから、少し話してくるといい。」

 

「わかった。」

 

達也は愛梨を連れて少し離れると、雫と十七夜選手が向き合った

 

「北山さん。私は貴方に勝って優勝します。だから()()()()会いましょう。」

 

「こっちも負けない!」

 

「楽しみにしています」

 

「確か十七夜さんは第一研の所属だったな。」

 

「やっぱり私の目に狂いはなかったわ。」

 

「何故愛梨が得意げなんだ…」

 

「それはね。私が栞を第一研に誘ったからよ。」

 

「間接的には関わっていたというわけか。」

 

「司馬君。お願いがあるんだけど、聞いてもらってもいい?」

 

「ものにはよるが…」

 

「そんな難しい話じゃないわ。今後私のことは苗字じゃなくて名前で呼んでほしい」

 

「名前で?」

 

「そう。栞って呼んで。」

 

「わかった、じゃあこれから宜しくな、栞。」

 

「よろしくおねがいします、達也君。」

 

「さて、そろそろ予選が終わる頃だ。対戦形式の準備をしよう。」

 

「うん、わかった」

 

「じゃあ、愛梨、栞。また会おう。」

 

「ええ、ではまた。」

 

 

 




切りどころがわからん…

とりあえず、こんなところで

次回で新人戦一日目、終われば嬉しいなって思ってます(多分終わらない…)

次回もお楽しみに


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九校戦編 第十八話


最近、pixivでの投稿を再開しまして、達也×夕歌のやつと、『ネタ帳』から『銀の太陽(達也×遥)』を引っ張ってきました

詳しいことは、pixivサイト又はアプリに飛んで確認してみてください。




 

新人戦スピード・シューティングも予選が終わり、トーナメントまでの長いインターバルが取られた

 

インターバルで暇になった達也はバトル・ボードの会場に来ていた

 

「あ、達也さん!!」

 

「ほのか、大丈夫か?」

 

「少し、緊張してます。…いいな、雫と深雪は2個とも調整してもらってて」

 

「まぁまぁ、ミラージでは担当するじゃないか。それに、作戦だって考えてやったろ?」

 

「そうですけど…」

 

ほのかと合流して話していた達也のもとにほのかの担当エンジニアとなった中条あずさがやってきた

 

「あ、司馬君も来ていたんですね。」

 

「予選が終わったので本選待ちです。」

 

そして、ほのかが呼ばれた

 

「ほのか。お前ならできるって信じてるから、勝ってきな。」

 

「はい!」

 

ほのかが会場に向かうと、達也が内ポケットからサングラスを取り出した

 

あずさも同じようにポケットからサングラスを取り出した

 

「にしても、光井さんのCADに光系魔法が多いのはどうしてですか?」

 

「このバトル・ボードという競技は、()()()()()()の魔法の使用は禁止されています。しかし、()()()()()()は禁止されていません。まぁ見てたらわかります。」

 

あずさが首を傾げて思考の海に飲み込まれていた

 

「中条先輩、始まりますから、サングラスをつけてください。」

 

「あ、は、はい!」

 

達也とあずさがサングラスをつけて待機していると、ほのかのレースのスタート合図が始まった

 

レースが始まってすぐに、ほのかの足元を中心に、とんでもない光量のフラッシュがたかれた。

 

その光にバランスを崩す選手たちの横を流れるようにほのかは走り去っていく

 

それこら難なく3週回りきって一着でゴールした

 

「なるほど、こういうことだったのですね!」

 

「ええ。あのフラッシュは水面に干渉した物で、他校の選手達はその光が水面に反射したことで出来た光の巻き沿いを食らったわけです。なので、選手自体には干渉してませんので、ルール違反にはならないというわけです。」

 

「だから光系魔法が多かったり、サングラスを付けるように言ってきたんですね。」

 

「はい。でも結構驚くんですね?こんなの誰でも思いつくような手だと思ったのですが。」

 

「これが、閣下の言う『工夫をこらした魔法』というものなんですね。流石です。」

 

「達也さん!私、勝ちました!」

 

「おう、見てたぞ。まずは一勝おめでとう。だが、まだ試合は始まったばかりだ。気を引き締めていけよ。」

 

「はい!私、今までこういう大会で勝てたことなくて…勝てて本当に嬉しいです!!」

 

「そ、そうか…」

 

達也はほのかの剣幕に一瞬驚きつつもたまたま後ろを通っていた雫がこっそり耳元に来て「小学生の頃の話だよ。」と言って来たときに少し、笑ってしまった。

 

それから、達也に摩利から電話が届いて、先程の光について質問攻めされた

 

一応鈴音には伝えていたので、意地悪さえしなければサングラスを用意していた筈だが、どうやら鈴音は2人が巻き込まれるところを楽しんでいたようだ。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

そして、ほのかが2日後の本選への出場を決めたところで、スピード・シューティングが再開された

 

雫の試合は最終試合なのだが、3試合目が始まる頃には既に準備を始めていた

 

「調子はどうだ?」

 

「バッチリ。」

 

「雫、このCADは今まで使っていたものとは違う。だが、十七夜選手と戦うにはこれを使いこなす必要がある。」

 

「もちろん、そのためにも練習を重ねてきた。」

 

「彼女と戦うまではあえて()()()()戦ってもらう」

 

「うん。」

 

「ボロは出すなよ。作戦通りに行けば優勝だ。」

 

「みんな、勝ったんだよね。」

 

「そうだな。」

 

「安心して、私は勝つ。私はあの鳴瀬紅緒の娘。こんなところで、負けるわけにはいかない。」

 

「うん。その粋だ。頑張れよ。」

 

「任せて。」

 

この試合を勝利した雫は次の試合で十七夜栞と戦うことになっていた

 

三高控室では、栞と担当エンジニアである【カーディナル・ジョージ】こと吉祥寺真紅郎が作戦をねっていた

 

ちなみに、余談だが、達也と真紅郎は昔何回かあったことがあるのだが、お互い忘れているようだ。

 

「この客達は真紅郎君目当て?」

 

「まさかね。でも、この観客達は君と北山選手が見たくてきてるんじゃないかな。」

 

「どうかしらね。」

 

「さて、北山選手だが、彼女の持つ()()()CADに入っているのはおそらく、振動系魔法であり、予選でも見せた例の新魔法だろう。対戦用に多少はアレンジを入れているようだけど、こっちはすでに完成された術式だ。つまり、君に勝機は充分にある」

 

控室に選手呼び出しの係員が来たことでCADを持って部屋から出ると、前を雫が歩いていた

 

「北山さん。」

 

「十七夜さん。」

 

「勝つのは私です。」

 

「私だって負けない!」

 

「「勝負よ!」」

 





案の定、この回で終わらなかったので、次回でこの日を終わらせて翌日に入ります。

次の日の回もまた2、3話もしくはそれ以上消費するかもしれませんが、暖かく見守っていてください。

では、また次回は


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九校戦編 第十九話


もしかしたら気づいている方もいらっしゃると思いますが、一応報告として、

『時空を操る者』のタグに『達也×深雪』『達也×愛梨』を追加しました。

最終的にはあらすじ通りのカップリングになると思いますが、確定するまではこういう形で残しておきます。

もしかしたらカップリング目標が変わるかもしれませんので…

そんなわけで報告でした


北山雫と十七夜栞の試合には多くの人が会場に押し寄せ、席が満員になっていた

 

達也もステージ袖に移動して観戦しようとしていたのだが、なんの目的か、幼馴染みの愛梨もその隣りにいた

 

「いいのか、こんな敵陣の真ん中にいて。」

 

「構わないわ。それに、私だって関係者なんだからここにいても構わないでしょう?」

 

「関係者であるのは確かだが、お前は三高の生徒だ。俺は一高の生徒。このタイミングには一緒にいないほうがいいはずだが?」

 

「まぁそんな細かいことはいいじゃない。私だってこの試合を間近で見届けたいだけなんだから。」

 

「はぁ…そういうことにしといてやるか。」

 

試合が開始されると、2人の狙撃手は高い精度でクレーを打ち砕いていく

 

「なかなかやるわね、あの北山って選手は。」

 

「彼女はあのA級魔法師である鳴瀬紅緒の娘だ。これくらいは当然だろう。」

 

「へぇ〜、あの振動系統の。ならこの実力は納得ね。まぁ、勝つのは栞の方だけど。」

 

「それはどうかな。」

 

試合が開始されると、お互いがクレーを割り始めた

 

やはり目を瞠るのは十七夜選手の『数学的連鎖(アリスマチック・チェイン)』による綺麗で洗練された破片飛ばしだろう

 

しかし、それがお互いの破壊数が60を越えた頃、異変が起きた

 

先程まで洗練された破片飛ばしをしていた十七夜選手が的を外した

 

「栞が外した!?」

 

「……頃合いか。」

 

達也の言う頃合いという単語に愛梨は違和感を覚えた

 

「どういう意味?」

 

「『数学的連鎖』は優れた魔法だ。しっかりと雫の魔法に対して対策を取っている。しかし、雫のCADが()()()だったらどうだろうか?」

 

「それって…でも待って!()()()()()()の汎用型CADなんて聞いたことがないわよ!?」

 

「まぁそうなるな。何せ、これは去年発表されたからな。当時は失敗したみたいだが、うちはそれを完成させたのさ。雫のスピード・シューティングはその試作品の検証にピッタリだったというわけだ。」

 

「じゃあ、今までの試合は全てあのCADを特化型だと()()()()()()ためのブラフってわけ!?」

 

「その通り。そして【カーディナル・ジョージ】は去年の発表を知らなかったか、まぁ知っててもありえないと思って可能性から消していたかという予想通り、あれを特化型だと思いこんでくれた。」

 

達也は自然に悪い笑みを浮かべながら愛梨に語っていった

 

「つまり、あれを特化型だと()()()()()()()で、俺たちの勝ちは決まっていた、というわけさ。」

 

結果、善戦はしたものの、96-89で雫が勝利した

 

その後、栞はその試合の負けを引きずってしまったのか、その後の3位決定戦も負けてしまい、一高の上位独占という結果となった

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「凄いじゃない!上位独占よ!」

 

「俺は何もしてません。頑張ってくれた選手達の努力の成果ですよ。」

 

「それでも達也さんが調整してくれたから勝てた」

 

「そうそう、司馬君に調整してもらってから魔法が上手くなったように錯覚しちゃったもん!」

 

「女子は好調だな。早撃ちでは上位独占、波乗りでは3人中2人が本選出場か。幸先のいいスタートを切れてよかったよ。」

 

「ただ、男子の方は不調ですね。森崎君が準優勝をしたとはいえ、他はすべて予選落ちですから…」

 

「まぁ、まだ新人戦は始まったばかり。これからに期待しましょう。」

 

「そうですね、ところで話は変わりますが、司馬君が作って北山さんが使った『能動空中機雷』についてですが、魔法大学より〈魔法大全(インデックス)〉への記載を打診されました」

 

〈魔法大全〉とは魔法大学が作成する系統魔法・無系統魔法・系統外魔法・古式魔法など多数の魔法について記された魔法の図鑑であり、そこには魔法名・系統・作成者の3つの項目が記載され、魔法関連の研究者の多くはこの〈魔法大全〉に自分の名を残すことを目標としている

 

「我が校から〈魔法大全〉記載者が出るなんて、我が校始まって以来の快挙よ!」

 

「〈魔法大全〉ですか…。断っておいてください。」

 

そんな一高テント内の空気とは真逆の言葉を言い放つ達也に空間が凍り付いた

 

「え?どうして快挙なのよ!」

 

「そんな快挙など興味ないですし、自分に利がなにもありません。」

 

「新魔法を作ったのよ?」

 

それでも登録させようと話を続ける真由美に嫌な顔をしつつも答えた

 

「新魔法を1つ作った程度で快挙とは。この国も落ちたものですね。いいですか?新魔法なんて理論と魔法に対する理解を深めれば誰だって作れます。…まぁ魔法を学ぶ身であり、理解の浅い唯の魔法科高校生に言ってもわからないでしょうが…。」

 

達也はそのままテントを出るために足を進めるとテントの出口手前で立ち止まった

 

「この際だからはっきりいいます。俺は自分の作った魔法を〈魔法大全〉とかいう馬鹿げた物に登録する気は一切無いですからそこら辺の研究者と一緒にしないでください。そして二度とその話題を出さないでください。正直不愉快です」

 

最後に空気感を破壊してからテントを後にした

 

テントを出た達也は追いかけてきた深雪を自分の部屋に招待して、2人で話していた

 

「〈魔法大全〉の件ですが、泉美ちゃんを守るためにあのような行動を?」

 

「それもある。魔法大学は登録する人間に対しての調査を細かく行う。もし俺があれに登録したならば、今まで秘密になっていたFLTのことや泉美のこと、そして軍のことが全て表に出てしまうからな。後は単純に自分の研究成果をあんなしょうもない物に纏めたことで変な抗争などに巻き込まれないようにするという意図もある。」

 

「そこまで考えられて…理解が及ばず申し訳ありません。」

 

「気にする必要はない。俺だって父さんや母さんが生きていたならば載せることも考えていただろうな。だが、もう二人はいないし、沢山の社員を抱える立場になってしまったんだ。余計な争いは裂けたいんだ。」

 

「私も叔母様も泉美ちゃんも一色さんもいつだって達也さんの味方ですから。困った時は頼ってください。力になります」

 

「頼もしい限りだ。これからもよろしく頼む。」

 

「はい!」





今回はスピードシューティングの結末で予想よりも文字数を使ったのでここで切ります

達也の価値観が原作に似せているつもりですが、結構違うところがあるので、そこが大変でしたが、なんとか次に繋げれました

次回は、三高の会議シーンから入ろうと思います

ではまた次回


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九校戦編 第二十話

 

新人戦一日目を終えて、第三高校の使用する会議室では重苦しい空気が流れていた

 

「まさか、優勝候補とされていた十七夜さんが負けてしまうとは。やはり腐っても一高ということか!」

 

「男子は大したことないが、女子の上位独占は予想外すぎる」

 

「確かに一高の上位独占は予想外だった。でも、優勝した北山選手以外は飛び抜けて強い選手達ではなかった」

 

「どういうことだ、一条。」

 

三高幹部陣の視線が発言者、一条将輝の方を向く

 

「そのまんまの意味だ。彼女達の実力はうちの女子と変わらない。」

 

「では、何が違かったと言うんだ!」

 

「技術…エンジニアだ。」

 

「将輝は気付いた?北山選手が使っていたCAD」

 

「ああ。あれは汎用型だった。」

 

「馬鹿な!?照準補正付きの汎用型CADなど存在しないはずだ!」

 

「それが実は出ていたんだよ。()()()に。」

 

「一年前だと!?」

 

「それじゃあ最新技術じゃないか!」

 

「僕も改めて調べてみるまで知らなかったんだけど、去年ドイツのデュッセルドルフで照準補正付きの汎用型CADの研究が行われていたんだ。だけど、当時の研究では汎用型CADに強引に特化型の機能を付けた為に失敗に終わってしまった。」

 

「つまり、一高には昨年失敗したその研究を成功させるほどの凄腕のエンジニアがいる。」

 

「何だと…!?」

 

「一高にそんな隠し玉が!?」

 

「真の敵は一高ではなく一高の凄腕エンジニアか。」

 

「そうだな。目算だが、彼が調整している試合は気を付けたほうがいい。具体的には2,3世代分のハンデを背負っていると考えるべきだ。」

 

将輝の言葉とともに締められた会議を終え、幹部陣が部屋を出ていく

 

「司馬達也…何処かで聞いたような…」

 

その時の吉祥寺真紅郎の呟きは誰にも聞かれることはなかった

 

―――――――――――――――――――――――――

 

九校戦が始まって5日目、新人戦は2日目の今日はクラウド・ボールの全試合、アイス・ピラーズ・ブレイクの予選が行われる

 

達也もクラウド・ボールに出る愛梨の試合が気になっているが、一応仕事なのでアイス・ピラーズ・ブレイクの準備をしていた

 

「おはよう、皆。昨日はよく眠れたか?」

 

「おはよう!司馬君!眠れたよ!」

 

バッチリとでも言う態度を見せたエイミイだったが、達也による調整作業によりその態度が一変した

 

「エイミイ、昨日あんまり眠れてないだろ。」

 

「ふぇぇ!?わ、わかります?…親よりも厳しいかも…」

 

「フィードバック強めに設定しておくから。試合が終わったら〈カプセル〉で休息を取ることだ。」

 

「ええ〜。私〈カプセル〉嫌いなのよね〜。あの超音波?って言うやつ。アレの感覚が好きじゃないのよね…」

 

「その気持ちはわかるが…」

 

「司馬くんも仲間じゃん!」

 

「でも駄目だ。深雪、〈カプセル〉の申請を頼む」

 

「かしこまりました。」

 

「私、ここで負けたら…皆の玩具にされちゃうよ〜」

 

エイミイの突然のカミングアウトに達也が戸惑いつつもなんとか言葉を返した

 

「お前達は普段何をやっているんだ…」

 

「い、いや、わ、私達は何もやましいことなどしていません!」

 

「なるほど、深雪のところは平気なのね!」

 

「ちょっと、エイミイ!?どういうことよ!」

 

返した結果、深雪が何故かダメージを受けた

 

「じゃあ、明智英美。行ってまいります!」

 

「頑張ってこい!」

 

「はい!」

 

エイミイの服が普段の部活で使用している乗馬服で軍服に似てるのもあって達也との掛け声も様になっていた

 

今日の予選は、大雑把に言うと一回勝てば翌日の本選への出場権を得ることができる

 

そして一高女子の出番で言えば、エイミイが今日の最初の試合、午前中の最後の方に雫、そして午後の中間あたりに深雪が出場することになっている

 

達也の気になっている愛梨の試合は準決勝と決勝は時間が被っていないので見ることができる

 

決勝は愛梨と七草香澄の試合である事はほぼ確定しているようなものなので、一高には悪いが達也は七草が嫌いなので、愛梨がどういう戦い方で、七草香澄に対してどういう勝ち方をするのかが今から気になっていた

 

エイミイの試合は達也の予想通り、エイミイが勝利し、翌日の本選への出場権を得た

 

―――――――――――――――――――――――――

 

エイミイの試合から1,2時間、今度は雫の番になった

 

達也の待つ控室に入ってきた雫は振り袖を着ていた

 

アイス・ピラーズ・ブレイクは服装が決まっていなくて、自由なので、エイミイのように普段部活等で着る服を着る人や私服の人、今回の雫のように普段は着ないような服を着る人もいる

 

「その振り袖似合ってるぞ。」

 

「ありがとう。」

 

「だが、試合中邪魔じゃないか?」

 

「大丈夫。試合の時は襷を使うから」

 

内心でじゃあ振り袖じゃなくていいんじゃないかと思ったが、口には出さずに、本題に入った

 

「さて、まぁ雫の実力なら問題ないだろうが、本番は何が起こるかわからない。」

 

「達也さんは心配しすぎ。」

 

「それもそうだな。じゃあCADの確認をしてくれ。」

 

「ん、いい感じ。やっぱり雇われない?」

 

「断る。」

 

「…ケチ。」

 

「そろそろだな。」

 

「頑張る。」

 

櫓に立った雫は試合開始と同時に腕のCADを操作する

 

すると、相手の氷柱の下に大きな魔法陣が浮かび上がり、そこから地震のように振動が起こってすべての氷柱を破壊した

 

「あれは『共振破壊』の応用ですか?」

 

「そうだ。スピード・シューティングでもそうだが、彼女は母親である鳴瀬紅緒の才能を強く受け継いでいる。だから、振動系統は彼女の持ち味となっているんだ。それに、北山家は家長の北山潮さんが魔法師ではないのだが、魔法師への理解も強く、雫は幼い頃から魔法の英才教育を受けていたわけだ。」

 

「なるほど。それであの実力なら納得ですね。」

 

「そうだな。強い魔法師ほどいい先生に恵まれる傾向があるのかもしれないな。俺だってそうだったし。」

 

「達也さんの魔法の先生は大叔父様でしたよね?」

 

「ああ。父さんがスポンサーの立場を利用してなった形だったが、とても優しく指導してくださったよ。」

 

「私はまぁ、環境が環境でしたので。」

 

「まぁ四葉の次期当主になるほどの実力だ。誇っていいだろうな。」

 

「これからもよろしくお願いいたしますね。」

 

「ああ。じゃあ深雪の出番はまだ先だから、お昼でも食べに行こうか。」

 

「ええ、是非。」

 

 





九校戦編では泉美の出番があんまりないかもしれないですが、それでも深雪と愛梨で我慢していただけると嬉しいです


次回は達也と将輝が初めて出会うシーンです

果たして達也と真紅郎はお互いに会ったときの記憶を思い出すのか。

私にもわかりませんが、次回をお楽しみに。

では、また次回


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九校戦編 第二十一話


皆さん気になる摩利のミラージ代打の決定シーンはこの回で発表いたします

まぁ、深雪なんですけど

順番前後しちゃったのでここで発表します

申し訳ございませんでした


 

お昼を食べ、深雪の番に向けて控室に向かうと、控室の前で出待ちにあった

 

「はじめまして。俺は第三高校一年の一条将輝だ。」

 

「同じく第三高校一年の吉祥寺真紅郎です。」

 

「第一高校一年の司馬達也だ。さて、いくら【鮮血の王子(クリムゾン・プリンス)】と【カーディナル・ジョージ】といえど、試合前に来られるのは不愉快だ。俺自身は出ないからいいとしてもこちらも選手を抱えている。その辺を弁えて貰えないか?」

 

「それは失礼。だけど、こちらとしても君に用があるんだ。」

 

「ほぅ…。プリンスと天才技術者からの用事とは光栄だな。場所とタイミングさえ良ければの話だが。深雪、こいつらの話は長いだろうから先に控室の方まで行っててくれ。」

 

「はい、了解しました。」

 

深雪が控室に向かうと、それを無意識的に一条将輝が目で追っていた

 

どうやら深雪に惚れているらしい

 

「プリンス、お前も試合じゃないのか?」

 

「確かに試合はあるが、まだ先だ。それに見た感じ俺とまともに戦えそうな奴はいないから多少の問題はない。」

 

「司馬達也…界隈では聞かない名前です。まさに能ある鷹は爪を隠す状態といったところでしょうか。」

 

「弱冠十三歳にして〈基本(カーディナル)コード〉の一つである〈加重系プラスコード〉を見つけた天才にそう言われるのは光栄なことだが、場所と時間を考えてもらいたいものだ。貴様ら十師族とその関係者は一つ一つの行動が周りの流れよりも優先なのか?」

 

「そんなことはない!あまり十師族を舐めたような発言をしないでもらえるか?」

 

「断る。俺は十師族が嫌いなんだ。…四葉を除いてな。」

 

「何故四葉を好意的に見る。あの家は【触れてはならない者達(アンタッチャブル)】として恐れられている一種の禁忌だ。」

 

「果たして本当にそうだろうか?四葉ほどまともな家はないと思うが?」

 

「どういう意味だ?」

 

「まず貴様ら十師族の態度が気に入らない。国を守るための十師族とかほざきながら、内心では自分達が国を動かしていると錯覚し、横暴な態度ばっかり取る。その癖、自分達が何かダメージを受けると、自身を正当化して相手を一方的に悪と決めつけて弾圧する。」

 

「そんなことはしていない!!」

 

「貴様はしていないのかもしれないが、他がいるだろう?特に有名な奴が。」

 

心当たりがあるのか、将輝は黙り込んでしまった

 

おそらく頭に浮かんでいる人物は達也の想像する人物と一緒だろう

 

「もう少し詳しく話してやろう。例えば俺とお前が戦うとしよう。傍から見れば一般の男と十師族直系の男。周りは十師族だからとお前が勝つと思い込む。これでもし、俺が勝ったら?師族たちはどう出る?」

 

達也の問に一条将輝は答えられなかった

 

おそらく内心ではそんなことはあるはずがないとでも思っていそうだが…

 

「まずは自分達の面子を考えるだろうな。「一般の家の者に我ら十師族が負けるはずがない」とね。そうして勝った俺を十師族に婿入りさせてこうしたトラブルを無かったことにする。俺が師族に婿入りすれば最終的に師族と見られ、最初から師族同士の戦いだったかのようにする。もしくは、観客がこれを期に師族の力に疑問を持つ可能性がある。だから俺を無力化して「たまたま師族が手を抜いてあげた結果負けてしまった。本当なら彼は一条将輝の足元にも及ばない」こうしてしまえば、一般の家のことも考えていて優しいとアピールできる。違うか?」

 

「試合は全てフェアだ。勝てば勝ちだし、負けたら負けだ。そこに家柄など関係ない。」

 

「それがお前の感想でいいのか?」

 

「ああ。俺は家柄で判断などしない。実力があるならそれを認め、お互いに高め合うように努力する。」

 

「なるほど。ならば最初の言葉は訂正しよう。貴様は好ましい部類だ。後は実際に戦って俺が勝ったとき、一条家の御当主がどういう行動をするか。まぁ俺は九校戦に選手として出場しないし、貴様と戦うこともないだろうがな。」

 

「あれだけの調整技術がありながら、選手として出ない?どうしてだ」

 

「俺は一高の男子達とは馬が合わなくてな。まぁあの幼稚な精神に付き合うつもりはないし、関わろうとも思ってないんだけどな。その結果、選手として出ることを取りやめた。もしかしたら状況が状況なら一条、お前とモノリス・コードで戦っていたかもな。」

 

「ならばその時を楽しみにしてるさ。俺はお前のような凄腕のエンジニアであろうとも油断はしないし、手加減なんて以ての外だ。全力でぶつかって、最後には俺が勝つ。」

 

「その言葉、期待しているぞ。」

 

達也はそういうと深雪の待つ控室へと向かった

 

「深雪に気があるなら()()()()()()()()をすることだ。四葉は一度決めた決定を覆す真似は絶対にしないからな。」

 

「なっ!?お、お前!!」///

 

最後に将輝の耳元で爆弾を投下するのを忘れずに

 

――――――――――――――――――――――――

 

「先程の一条さんとどういう話をしていたのですか?」

 

「ちょっとした世間話さ。まぁ敵情視察だろうな。」

 

「そうですか。ところで達也さん。この服似合ってますか?」

 

そう言って立ち上がるとその場で一回転して達也に服の全体を見せつけた

 

「巫女服か…よく似合っているな。まるで本物の巫女さんのようだ。」

 

「そうですか?そう言って頂いてとても嬉しいです!」///

 

「アイス・ピラーズ・ブレイクは深雪の為の競技と言っても過言ではない。ここでその圧倒的な力を見せつけて、ミラージ・バットも大丈夫だと示してやれ。」

 

深雪は本来、新人戦のミラージ・バットに出場することが決まっていたが、摩利の事故があった為に繰り上がりで本戦に出場することとなったのだ。

 

ミラージに補欠を設けていなかったことと、摩利の事故があまりにも予想外だったから仕方なくということになった

 

ちなみに、この発表により、十師族の“2強”である“四葉”と“七草”が出場するので、どっちが勝つかという内容で観客達が盛り上がっていたのはまた別の話である。

 

なお、本戦に移動してもエンジニアは達也が担当することになっているので、深雪は喜んで本戦移動を受け入れた。

 

達也の仕事が増えるのには変わりないが…

 

「深雪」

 

「何でしょうか?」

 

「最高のショーを見せてくれ。」

 

「はい!お任せください!」

 

優勝候補とされている四葉深雪の試合には多くの観客が押し寄せ、満員状態だった

 

あの秘密主義を徹底する四葉が唯一公開した後継者である深雪を一目見てみたいと言う客が押し寄せた結果だった。

 

そして深雪が会場に現れると騒がしかった会場が一瞬にして静まり返った

 

深雪の巫女服に見惚れていたというのもあれば、深雪の出すその空気間に圧倒された人が入り混じっていた

 

ちなみに、一条将輝は前者である。

 

「うわぁ〜、えげつないわね…。」

 

「その存在感がな。四葉という名前もあって、完全に空気を自分のものとしたか。」

 

「とんでもないですね。流石は四葉家次期当主…。」

 

試合が始まると、深雪が速攻でCADを操作する

 

魔法陣がコート全体にかけられた。

 

その効果範囲は()()()()()()()()()()()

 

自身の氷柱を含むフィールドを凍らせ、相手の氷柱を含むフィールドを熱で温める

 

「これは…!?」

 

「振動系系統魔法『氷炎地獄(インフェルノ)』!?」

 

「これが高校生だというのかっ!?」

 

振動系系統魔法『氷炎地獄』

 

対象エリアを二分割し、片方の運動エネルギーを減速させてもう片方のエリアにその余剰エネルギーを逃がす魔法である

 

そして隣接するエリアに灼熱と極寒を同時に発生させる

 

この様子から氷と炎が共存した地獄のような光景であったことから氷炎地獄、インフェルノと名付けたという説もある

 

この魔法はとても難易度の高い魔法であり、魔法師の国際ライセンスA級の試験にたまに出てくる魔法で、この魔法がうまく使えず多くの受験者が涙すると言われている

 

そんな高等魔法を十師族とはいえただの高校一年生の女子生徒が使っているのだ

 

恐怖以外何者でもない。

 

空気感・フィールド・全てを自分のものとした深雪は『氷炎地獄』の出力を上げて、一瞬で氷柱を破壊した

 

「やはり、高校生レベルでは深雪の相手になるようなやつはいないようだな。」

 

達也の呟きは会場の歓声によって誰にも聞かれることはなかった





今回は達也と将輝の会合と深雪の予選を行いました

本当ならクラウド・ボールの方にも行きたかったのですか、達也のキャラ上、将輝との会合が長くなってしまい、結局次回に回すことにしました

次回は、クラウド・ボールの決勝と行ければ新人戦3日目に行こうと思います

ではまた次回


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九校戦編 第二十二話

 

四葉深雪の衝撃のデビュー戦から少し経ってから行われたクラウド・ボールの準決勝で勝ち進んだ一色愛梨と七草香澄が決勝戦をこれから行う

 

クラウド・ボール女子だが、準決勝の時点で、一高二人、二高が一人、三高が一人だった

 

そこから一色愛梨は準決勝第1試合にて一高の里美スバルを負かして決勝に進出し、一方の七草香澄は二高の選手を負かして決勝に進出した

 

そして、十師族と師補十八家の対決を一目見ようと、会場には多くの観客が押し寄せていた

 

達也はそれを深雪と共に会場の一番前の席で観戦していた

 

「愛梨、頼むぞ。」

 

「達也さん?一応ライバル校の選手ですからね?」

 

「わかってるよ。でもやっぱり幼馴染を応援する気持ちが勝ってしまったよ。」

 

「もう…しっかりしてください!」

 

「そうだな。ところで、深雪はどう見るか?方や七草家の最高傑作、もう片方はリブール・エペーの大会優勝常連の【エクレール・アイリ】だ。」

 

「そうですね…この競技から考えるに一色さんの方が有利ではあるのですが…。七草香澄さんは七草の【万能】を色濃く受け継いでいます。なので勝つのは七草さんの可能性が高そうです」

 

「なるほど。たしかに筋は通ってる。」

 

試合が始まると、愛梨が先制した

 

そのまま、愛梨は第1ゲームを先取した

 

「お互いに力を抑制した形か。七草香澄も最初は様子を確認するような感じだ。」

 

「では、ここからが本当の勝負。」

 

「ああ。七草香澄の本領はここからだ。」

 

達也のその言葉通り、第2ゲームは愛梨と七草香澄の接戦の末に七草香澄が取った

 

第3ゲームが始まってから、愛梨が押されていた

 

「愛梨がバテ始めたか…。七草香澄は1ゲーム目に温存していたからまだ問題なさそうだ。これはキツイな。愛梨、どうする。」

 

達也の内なる思い、愛梨の勝利という願いが届いたのかどうかはわからないが、愛梨は点差をどんどんと縮めていった

 

しかし、それでも最初の温存が効いていたのか、第3ゲームは七草香澄が取ったことで、彼女の優勝が決まり、愛梨は準優勝となった

 

愛梨は、達也の方を見ながら、少し哀愁を漂わせるような表情をしていた

 

―――――――――――――――――――――――――

 

十師族が力を見せつけた新人戦2日目が終わった次の日

 

新人戦バトル・ボードと新人戦アイス・ピラーズ・ブレイクの本選が行われる

 

達也の方もアイス・ピラーズ・ブレイクで仕事があるのでそっちの方に意識を割いていた

 

特にいま現在の達也の知名度は相当高い

 

新人戦スピード・シューティングで女子を上位独占に導いたその技術は周りからしてみれば異常であり、アイス・ピラーズ・ブレイクでも担当した女子選手が全員揃って予選を突破している

 

それに、鮮烈なデビューを飾った四葉深雪の『氷炎地獄』や、北山雫の新魔法にも関わっていることが、その知名度向上に拍車をかけていた

 

ちなみに達也は『能動空中機雷』の〈魔法大全〉入りを大会委員や真由美がしつこく打診してくるので、若干のストレスが溜まっていた

 

「達也さん、大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ。」

 

「ここ最近は魔法大学もしつこいですね。叔母様に相談してみましょうか?」

 

「確かに、四葉家当主が圧をかけてくれるならありがたいが、そんなことに権限を使いたくはないな。」

 

「そうですね」

 

「おっはよ〜!司馬君!深雪!」

 

達也と深雪が会話をしていると、エイミイと雫が少し遅れて控室に入ってきた

 

既にいた深雪を含め、出場選手3人は試合用の衣装に着替えていた

 

「おはよう、二人共。昨日はよく眠れたか?」

 

「もちろんっ!!」

 

「さて、今日は雫からだな。準備しよう」

 

本選に出場しているのは計12人

 

3つのグループに分かれたトーナメント戦の形で行われる

 

そして対戦組み合わせの結果、一高の3人は全員違うグループに含まれていた

 

懸念要素とすれば、エイミイのいるグループに十七夜栞が入っていることである

 

「お前達は必死に練習を重ねてきたんだ。その努力の成果を他校に見せつけてやれ!」

 

「「「はい!!!」」」

 

最初のグループに入った雫は、予選同様に『共振破壊』で勝ち進み、そのままグループ首位となった

 

続くグループに入ったエイミイは第1試合を勝つと、第2試合で勝利した栞との試合となった

 

「エイミイ、相手は雫に負けたとはいえその実力は相当のものだ。だから1つだけ伝授しよう。」

 

「うん。」

 

「エイミイ、『魔法とは世界に対する願い』だ。」

 

「世界に対する願い?」

 

「そうだ。これは俺の魔法の先生の受け売りでな。意味を理解するまで時間がかかった。だが、エイミイならばすぐに理解できるはずだ。」

 

「司馬君が時間かかったのに私じゃ無理だよ〜。」

 

「エイミイがこの言葉の意味を理解した時、間違いなくエイミイの勝ちは確定する。」

 

「?」

 

エイミイは理解できないまま試合に駆り出された

 

「達也さん、先程の言葉は?」

 

「ああ、俺の魔法の先生である英作殿が言っていたんだ。」

 

「大叔父様の!?」

 

「魔法というのは想子がイデアを経由することで発動される。これは教科書にも載るような当たり前な内容だ。そして想子の量は多ければ多いほど威力の高い魔法が放てる。」

 

「それはもちろん。」

 

「なら想子の量はどうやって増減させる?」

 

その言葉に深雪も雫も答えられなかった

 

雫の場合は達也の魔法の先生の名前に驚いていたというのもあるだろうが、それでも答えられなかった

 

魔法に対する想子の量など考えたことがないからだ。

 

自分の保有想子量から放てる魔法を考えることはあれど、その逆を考える人間などほとんどいない

 

「答え合わせはエイミイの試合でやろうか。」

 

櫓に立ったエイミイと栞は開始と同時にCADを操作した

 

エイミイは予選と同様に氷柱を移動魔法で相手の氷柱へと飛ばした

 

そして、その氷柱が栞の氷柱にぶつかると、その氷柱は壊れずに後ろへと滑り、後ろの氷柱と重なって固定された

 

「失敗した!?」

 

「なるほど…氷柱の摩擦係数をゼロにしたな。摩擦係数がゼロになることで慣性を無くし、氷柱による破壊を防いだということか。こんな短時間でこんな作戦を思いつけるのは、やはり【カーディナル・ジョージ】か。」

 

「このままだとエイミイが…」

 

二本目も同じように移動魔法で飛ばすが、やはり同じように重なって固定された

 

「さて、エイミイ。あとはお前の願い次第だ。願いの、()()()()で戦況はすぐに変わる。」

 

達也の呟きから少し経って、エイミイの疲れ切った顔が吹っ切れたようになった

 

――――――――――――――――――――――――――

 

予選から使っていた作戦が不発に終わり、エイミイは試合を諦めかけていた

 

―自分に戦う力はもうない

 

―もう疲れてしまった

 

どんどんとマイナス思考に陥ってしまった

 

その隙にも栞の魔法でエイミイの氷柱はどんどん破壊されていく

 

―嫌だ…負けたくない!

 

―勝って、深雪に認められたい!

 

しかし諦めきれず、思考がだんだんと回復してきた

 

その時、エイミイは昔、母国にあるゴールディ家で暮らしていた時のことを思い出した

 

当時から魔法の才能があったエイミイはある日、友達と勝負をしてその子を負かした

 

その友達は負けて泣き始めてしまった

 

笑顔でいることが大好きなエイミイにとって人の涙は辛いものだった

 

そこで、エイミイは無意識のうちに手加減をするようになった

 

全ては相手の笑顔が見たいから

 

そんなとき、エイミイの祖母がとある言葉をかけた

 

―いいかい、エイミイ。魔法はね、()()()()()()()()()()。さらに言えば魔法は()()()()()に応じて強くなるのよ。

 

昔はよくわからなかったこの言葉も、達也の先程の言葉の意味もすべて理解できたエイミイはその言葉のとおり、自分の()()()()()力を解き放った

 

突如飛ばされた氷柱は意表を突く形で栞の氷柱を破壊した

 

「行っけぇぇぇぇ!!!!」

 

2発目も同様に氷柱を破壊していく

 

「深雪、雫。先程の答え合わせをしようか。想子の量は、発動者の思いの丈で増やしたり減ったりできるんだ。『絶対に勝ちたい』という思いがあればその意志が人知れず魔法に反映されて、強い魔法になる。今のエイミイの様にな。」

 

「ですが、エイミイはさっきまで疲れているような顔つきでしたけど。」

 

「エイミイはとある厄介な癖を持っていてな。それが、無意識に手を抜くことなんだ。どうしてかは知らないが彼女は今まで本気を出せていなかった。それを解き放ったんだ。そしてエイミイの勝ちたいという願いが、魔法を強くした結果、戦況は一気にエイミイ側に傾いた」

 

そして、飛ばされた氷柱が重なって強度を上げた氷柱と衝突して、その結果、エイミイの氷柱が競り勝った

 

それと同時に試合終了のブザーがなった

 

エイミイの氷柱が残っているのに対して、栞の氷柱は全て破壊された

 

つまり、第2グループの首位にエイミイが輝いた





次回で新人戦3日目を終わらせます

予告というか投稿予想になりますが、モノリス・コードに関しては少し話数が増えるかもしれないです

多分結構刻むことになるか、一話分の文字数が増えるかの二択だと思います。

では、また次回


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九校戦編 第二十三話


本編とは関係ありませんが、メモ帳を二、三個投稿しようかなと思ってます

魔法科・ハイスクールD×D・ありふれ・SAOのうちまだ2種類しか出せてないので、そっちのメモも出したいですが、なかなか難しくて大変なのでこちらは時間がかかります

なので出るのはおそらく魔法科ですが、確認してくださるとありがたいです

では、本編をどうぞ


 

「凄いわ!これは快挙よ!」

 

深雪のグループ首位が決まり、一高の上位独占が決定したことで、一高首脳陣(特に真由美)が大袈裟に褒め称えた

 

「まぁ、選手達が頑張ってくれたので。」

 

「謙遜も度が過ぎれば嫌味だぞ。」

 

「事実ですから」

 

「つれないな…」

 

「そうですか。それで、彼女達を決勝前に呼び出してどういう用件なんですか?」

 

「大会委員から3人を同時優勝にしてはどうかと提案がありました。」

 

「ふ〜ん。楽したいだけか。私としては構いませんが、選手たち次第ですね。あ、エイミイは辞退をお勧めしますが」

 

「はい、私はもともとそうするつもりでした。」

 

達也の嫌味はあっさり流れ、エイミイが辞退した

 

そして・・・

 

「私は…戦いたい。深雪と闘いたいです!!」

 

「と言ってるが、深雪はどうする?」

 

「決闘の申し出は断らないのがモットーです。いいでしょう、四葉の実力を見せて差し上げますわ!」

 

深雪と雫による決勝戦が決定した

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

達也は、2人の調整を終えると、一高首脳陣と合流した

 

「さて、この争いに板挟みになっている達也君は誰を推す?」

 

「どうでしょう。まぁ大方予想通りの結末になると思いますよ。」

 

「君も悪いやつだね。」

 

「一応、二人に対して最善は尽くしましたから。試合は最後までどう転ぶかわかりませんよ。」

 

「それはそうだ。」

 

そして、決勝の舞台に立つ二人の選手が櫓に上がった

 

会場が歓声に包まれる中、開始の合図が鳴り響いた

 

両者予選と同様、『氷炎地獄』『共振破壊』による応戦から始まった

 

しかし、干渉力の差から雫が若干押され始めた

 

(届かない…さすが深雪)

 

雫は苦悶の表情を浮かべながら、次の手を考えていた

 

これは、達也から授けられた対深雪用の攻撃

 

雫が右手を袖に手を入れると、一機の()()()C()A()D()を抜いた

 

そしてそのCADから放たれた一筋の熱線が深雪の無敵だった氷柱に穴を開けた

 

「まさか、CADの同時操作に振動系系統魔法の『フォノン・メーザー』…どちらも超高等テクニックだ。」

 

「もしかして、司馬くんが北山さんに授けたのはこれ?」

 

「そうです。まぁ、同時操作はともかく『フォノン・メーザー』はそこまで難しい魔法じゃないですし、雫の適正にもあってるので使いやすいんじゃないですか」

 

「いや、『フォノン・メーザー』はA級魔法師にしか魔法式が公開されない高等魔法だぞ?…ってそういえばお前は社長だから知ってるのか。」

 

「それはもちろん。ですが、まだまだですね。練度が甘い」

 

「え?あれでも相当凄いことよ?」

 

「見てたらわかります。深雪を、【四葉の最高傑作】を相手するのに生半可な力を使うとどうなるか。」

 

深雪は達也の十八番であるCADの同時操作を雫が使ったことと、そして今まで傷一つ付かなかった深雪の氷柱に穴が空いたことに驚き、一瞬固まったが、すぐに気を取り戻し、意識を切り替えた

 

(さすがね、雫。でも、甘いわ!」

 

深雪がCADを操作すると、雫の氷柱から熱気が、深雪の氷柱から霊気が、消え去った

 

それをチャンスと再び『フォノン・メーザー』で穴を空ける雫

 

発動準備が完了すると、場にある氷柱全てに先程までとは比べ物にならない程の冷気が送られた

 

「まさか、これは『ニブルヘイム』か!?」

 

「いったいどこの魔界よ、ここは。」

 

振動・減速系系統魔法『ニブルヘイム』

 

この魔法は、領域内の物質を比熱、相フェーズに関わらず均質に冷却する領域魔法。

 

A級魔法師ですら使用出来る人間はほとんどいないとまで言われており、魔法式もその使用できる極小数のA級魔法師にしか公開されていない

 

そして、深雪の『ニブルヘイム』により、氷柱に付着させた液体窒素を再び『氷炎地獄』で急激に加熱。一瞬で気化した液体窒素の膨張率は約七百倍。

 

ただの氷柱にそれを防ぎきれる力はない

 

そのまま全ての氷柱が音を立てて崩れ落ちた

 

その結果、深雪が勝利し、優勝者となった

 

「これが【四葉の最高傑作】であり、四葉の次期当主の実力です。あの四葉真夜殿ですら先制を取らないと負けると踏んでいる彼女には身分など関係なく、誰であろうと叩き潰される。それこそが、四葉が求めた身内を守る絶対的な力です。」

 

達也の呟きは真由美たち3人にのみ聞こえる声であったが、その言葉の重さはとても大きかった

 

「四葉は家族愛で最凶になった一族。これほど好感が持てる家はなかなか存在しない。強い人ほど()()()()()なんですよ。変に作戦を練りまくったり複雑に物事を進めようとするのは()()()()です。皆さん覚えておくといいですよ。」

 

そして、これとほぼ同じタイミングに行われた新人戦女子バトル・ボードの決勝はほのかの作戦勝ちで優勝、同じく優勝候補とされていた四十九院沓子選手は準優勝となった

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「どういうことだ!」

 

「新人戦は第三高校が有利だったのではないのか!」

 

「先程行われていた新人戦のアイス・ピラーズ・ブレイクでは第一高校の四葉深雪選手が『ニブルヘイム』を使ったらしい」

 

「四葉とはいえただの高校生だぞ!?『ニブルヘイム』は超高等魔法だ。大の大人でも使うのが難しいとされている。それを高校生が涼しい顔をして使いこなすなど異常だ!」

 

「それが四葉というものだ。」

 

「だが、どうする?このままでは我々の大敗。大赤字で組織から首切りだぞ!」

 

「死ぬだけならまだいいが…な。」

 

「では、明日のモノリス・コードで一高には退場してもらおう」

 

「そうだな、モノリス・コードはポイントの高い競技、三高から一条選手が出ているとはいえ、保険は幾重にもかけておくべきだ。」

 

「ならば、協力者に使いを出そう。…なに、死ぬことはないさ。もし死ぬことがあればそれはただ運がなかったというだけだ。」

 

中華風の建物の中で大きな机を囲んで座る5人の男達が大袈裟に笑いながら話を咲かせた

 

狙いはモノリス・コード。何が起こるかなど、達也たち九校戦関係者は知る由もなかった




というわけで、一応これで中間地点に来れたのかな…

次回からモノリス・コード、ミラージ・バットの新人戦に入ります

暫く前にアンケートで答えていただいたモノリス代理出場は字数が増えるか次の回にまわすかになるのでそのつもりで

今回ほのかと沓子のバトル・ボード決勝シーン、達也・深雪・雫・ほのかの小規模な祝勝会シーンはカットしました

では、また次回


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九校戦編 第二十四話

 

深雪が圧倒的な力を見せつけて優勝した新人戦アイス・ピラーズ・ブレイクの翌日

 

この日は、ミラージ・バットとモノリス・コードの予選が行われる

 

ミラージ・バットは、一グループ4~5人でそれを6グループに分けて行い、それぞれのグループで勝利した計6名で決勝を行う

 

モノリス・コードは全九校の選手団が2つのグループに分かれ、2日間かけて総当たりで対戦し、各グループ上位二校が準決勝に進出する

 

達也の役目はミラージ・バットにでる選手の調整だけで、それも御幸が本戦に移動したので二人分の仕事をするだけで、あとはフリーであった

 

そのため、ミラージの一試合目、二試合目に出場し、勝利した2名の担当選手、ほのかと里美スバルの決勝迄、予定がないので部屋で休息をしていた

 

休息を始めて何時間か経った頃だろうか、

 

達也の部屋の前が少しだけ騒がしく、気になった為に部屋を出ると、そこには深雪達が立っていた

 

「みんなお揃いでどうした?」

 

「達也さん!モノリスで事故が!」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「ほのか…それじゃ伝わらないでしょ…」

 

「モノリス・コードで一高の第2試合中、市街地フィールドだったのですが、そこで『破城槌』が使用されました」

 

「それも、開始と同時にだよ!」

 

「スタート位置は屋内だったか?」

 

全員が首を縦に振る

 

「フライングの可能性に、屋内では殺傷性ランクAに該当する『破城槌』か。ちょっとここで待っててくれないか?」

 

「え?どこかにいかれるんですか?」

 

「行く場所ができた。」

 

そんなわけで、達也が向かった先は会場のVIPルーム

 

そこには烈と大会委員長、そして十文字克人がいた。

 

「司馬…なぜここに」

 

「大会委員長、これはどういうことだ!」

 

「椎原社長…君も来たのか」

 

「九島閣下。あなたも居られましたか。」

 

「私もあれがただの事故とは思えないのでな。ここに来ていたのだ。」

 

「そうですか。それで、十文字殿はどうしてここにおられる。」

 

「先の事故について、話しに来た」

 

「ならば、後にしてくれ。今は立て込んでいるんだ。」

 

「済まないが、克人くんは部屋を出てくれないかね?ここからの話は君に聞かせるわけにはいかないんだ。」

 

「なぜ、私だけなのですか?」

 

「彼はこの大会の関係者だ。だから残るんだよ。君はここにおいては十師族だろうが、一選手でしかない。」

 

「…わかりました。」

 

克人が渋々部屋を出ていく

 

「さて、邪魔はいなくなったな。では、改めて。私は直接見たわけではないので状況を詳しく説明してもらいたい」

 

達也の質問を大会委員長のそばについていた一人の大会委員が答えた

 

「モノリス・コード、Aグループ第3試合、第一高校と第四高校の対戦において、『破城槌』の使用が確認されました。これにかけられた疑いは『破城槌』の使用タイミングが早く、狙いが正確だったことです。」

 

「『破城槌』は屋内だと殺傷性ランクAに跳ね上がる。屋内だとわかっていてそんな魔法を放つか?」

 

「どうやら四高は『破城槌』を入れていないと主張しているようだ。」

 

「では、これもバトル・ボードのように何者かによる妨害工作だというのか?」

 

「おそらくはそうだろう。そして何より怪しいのは四高が例の試合で使ったCADが何者かに盗まれたそうだ。」

 

「はぁ…一高の移動時の自爆攻撃、開催前の不審者侵入、バトル・ボードの事故、そしてモノリスの事故。これで4件目だ。」

 

「大会委員に裏切り者がいる可能性があるな。」

 

「そうだね。さて、大会委員長。どう落とし前をつけるつもりかね?この九校戦で4回もドロップアウトが起きかねない事故が発生している。妨害工作を施しているであろう不届き者にも問題はあるが、事前に防げなかった君たちの責任も大きい。それは理解しているかい?」

 

「はい…申し訳ありません」

 

「大会委員に裏切り者がいる可能性が高い。一度大会委員全員の再調査が必要だな。」

 

「それは風間君に任せよう。彼らも調査を勧めているはずだ。」

 

「確かに風間少佐なら調べていそうですね。」

 

「そうだね。そして、もし代替え選手の希望を出してきたら受けようではないか。」

 

「そ、それは!?いや、しかし…」

 

「四高は断ってもいいが、一高は被害者だ。出る権利ぐらいはあるだろう?」

 

「それはそうですが…」

 

「何なら達也君が一人で出るかい?」

 

「はい?なぜそこで私の名前を?」

 

「久しぶりに君の実力が見たくなった、って理由じゃだめかね?」

 

「出ませんよ。選手とは仲悪いですから。」

 

「そうかい…残念だね。じゃあ、話は以上かな?」

 

「ええ。このあと、担当選手の決勝ですので。」

 

達也が部屋を出ると、克人が再びは部屋へと入っていった

 

それを確認して達也は部屋へと戻った

 

―――――――――――――――――――――――――

 

戻った達也はミラージ・バットの準備を始めた

 

決勝戦は一高二人、二高一人、三高二人、七高が一人の計6人で行われる

 

「さて、二人共。無駄な小細工は無しだ。自分の精一杯の実力を他校に見せつけてやれ!」

 

「「はい!!」」

 

始まった決勝戦では、ほのかもスバルも自分の持ち味を最大限に発揮した結果、達也の予想通り、ワン・ツーフィニッシュを達成した

 

ちなみに、ほのかが一位でスバルが二位だった

 





次回、会議室からスタートです

出場していることは確定している達也ですが、その過程がどこまで幅を取るか、未だに分かってませんが、お楽しみに

それと、メモ帳は現在進行形で作成中です

では、また次回


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九校戦編 第二十五話

 

新人戦ミラージ・バットのワン・ツーフィニッシュを支えた達也は、その日の夜に呼び出しを受けた

 

そんなわけで、達也の姿は一高が九校戦期間中に借り受けている会議室にあった

 

「まずはお疲れさまでした。女子の上位独占が多く、総合優勝に限りなく近付いたでしょう。」

 

「選手たちが頑張ってくれたおかげです。私は何もやってません。」

 

「貴方もその要因を担っています。そしてここからが重要ですが、現在新人戦の一高は一位。2位の三高との差はおよそ30P」

 

「いきなり呼び出されたと思えば、報告ですか?私は忙しいのですが。」

 

「我々は新人戦も優勝しようと考えています。現在の点差から考えると新人戦の優勝を目指すには最後に残ったモノリス・コードで2位以上を取る必要があります。」

 

「なるほど…それで、私を呼んだ理由は?」

 

「司馬達也君。モノリス・コードに出ていただけませんか?」

 

真由美の結論は達也にモノリスに出てもらうことだった

 

もちろん、予想通りに。

 

「出る出ないに関係なくいくつか質問します。」

 

「どうぞ。」

 

「では率直に伺いましょう。なぜ私なんですか?」

 

「ええと…それは…」

 

「お前が適任だと思ったんだ。モノリス・コードはあくまでも実戦向けの競技だ。それにそもそもモノリス・コードに代理を用意していなかったことも理由の一つだ。」

 

「代理を用意していないんだとしても、()()()()されている選手を選べばいいじゃないですか。私は()()()()()です。」

 

「達也君…では逆に聞くが君以外に一条将輝を相手に()()()人はいるか?」

 

「さぁ?そんなことはどうでもいいですし、興味もないです。そしてもう一つ、私はエンジニアに限って特別に参加すると約束しましたよね?ただでさえどうでもいい学生のお遊びに付き合うつもりはなかったところをお情けで引き受けたというのに。」

 

「そ、それは…」

 

()()()()、司馬!」

 

会議室に流れた重苦しい空気を変えたのは、目を閉じ、座りながら話を聴き込んでいた克人であった

 

「どんな理由であれ九校戦に参加しているのならば、チームリーダーである七草の指示を仰ぐ義務がある。お前の言い分は間違っていない。だが、代表メンバーである以上、その責務を全うしてもらう。チームリーダーである七草が間違っているならば、俺や渡辺で対処するが、この件に関しては誰も反対しなかった。だからお前にはモノリス・コードに代理出場する()()()()()。」

 

克人の発言の後、達也は少しの間不気味な笑いを続けた

 

「ククク…ハハハハハ……。甘えるな、だと?あまり図に乗るなよ、十文字!」

 

突如会議室を異質な重圧が包み込んだ。

 

「では逆に聞くが、貴様ら十師族は自分達で結んだ契約すら自分の都合で破棄するのか?」

 

「どういう意味だ…」

 

「俺は七草真由美とエンジニアでのみ参加するという契約を結んだ。しかし、それは今貴様らの発言により破棄されたも同然だ。まったく…いつから貴様らは自分が偉いと()()()()()()んだか…」

 

「それは俺達に対する侮辱か?」

 

「侮辱…?ハハ…俺がそんな()()がやるようなことをするとでも?十文字。」

 

「一年のくせに生意気だぞ!」

 

「十文字にすら勝てない雑魚が粋がるなよ。それ以上生意気なら…殺すぞ。」

 

達也は殺気を少しだけ開放し、その反応を見て落胆すると、呆れたようにため息をついて、後ろを振り返った

 

「…何処へ行くつもりだ。」

 

「部屋に戻る。貴様らのようなエリート気取りの()()には興味がないのでな。」

 

扉を開けて外に出ようとすると、透明な壁のようなものが建てられた

 

「なんの真似だ?こんなしょぼい壁なんて建てて」

 

「まだ返事を聞いていない。そして、我々に対して謝罪してもらう」

 

「断る。」

 

達也が右手を手刀の形にして克人の建てた壁を()()()()()

 

「馬鹿な…『ファランクス』を何もまとっていない手刀で破壊した…」

 

「これでは【首都防衛の要】の名が廃るぞ、未熟者。」

 

達也が最後に克人を馬鹿にして部屋をあとにすると、達也のはなっていた殺気が収まった

 

「何だったんだ…今のは」

 

「わからない、だが司馬が何かをしたのは事実だな。」

 

「司馬達也…何者なんだ…」

 

達也のいなくなった会議室では、達也の威圧・重圧にほとんど動けない状態(一部の人間は気を失っていた)から開放されてはいたが、未だに祝勝ムードは戻って来なかった

 

そして達也と第一高校の人間との友好度はさらに低くなった





お久しぶりです

少し今後の構成を考える為に休載していましたが、少しずつ復活していこうと思います

しばらくは、この作品とpixivにて登校中の『銀の太陽』のみやって、キリのいいタイミングで一度他の物も触れたりしていこうと思います

では、また次回


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九校戦編 第二十六話


お久しぶりです

すみません、ここから先の展開を考えるのに時間がかかってしまいました


最後に少しだお知らせがあります


部屋に戻った達也は、すぐに別の場所に移動した

 

宿舎のエレベーターで普通は入れない最上階へと上がった

 

上がった先にあるBARにはお目当ての人物達が揃っていた

 

「お待たせいたしました。」

 

「よい、気にするな。」

 

「真夜さんもここまでご足労感謝します。」

 

「堅苦しいのはやめてくださいな。貴方と私は持ちつ持たれつの関係。それに、貴方や深雪さんの活躍を見るためなら現地まで来るのは苦ではないわ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「ところで達也君。先程の殺気はどういうことかね?」

 

「殺気…?ああ、会議室の。あれは別になんでもありませんよ。ちょっと頭に来てしまって。」

 

「それは弘一の娘かな。達也君を怒らせるなんて、私でもしたくないのだがね。」

 

「まぁ、七草真由美もそうですけど、今回は十文字の当主代理にね。」

 

「当主代理というと、克人君かな。まったく…」

 

「閣下に怒るなど万に一つもありませんよ。それともなんですか?七草よりもたちの悪いことでもしようとお考えで?」

 

「そんなまさか。私は今でも君と良好な関係を続けたいと思っているんだ。君を怒らせるなんてそれこそありえない。」

 

「まぁ、そんなことは置いといて、モノリスの選手に推薦されました。これも全て貴方の思惑ですか?」

 

「いやいや、私は克人君に許可を出したが人選には口を出していない。」

 

「どうなんでしょうね…まぁやり方次第では受けても良かったんですが、あの対応ではね…断らせていただきました」

 

「ふむ…本当に出ないのかい?私としても君が一人で優勝するところが見たいのだが…」

 

「貴方は私をなんだと思ってるんですか!!」

 

「あら、出ないの?」

 

「出る意味はあると思うがね」

 

「試合に出て、後で絡まれるのが面倒なのですよ。」

 

「一条将輝が出ているがそれでもかい?」

 

「それでもです。試合展開をちょっとだけ確認しましたが、実戦経験済みとはいえまだまだひよっこ。余程のことがない限りは勝てるでしょう。」

 

「それは是非とも見てみたくなったな。」

 

「本当ですわ。達也さん、今から出れないかしら?」

 

「はぁ…。彼らの対応次第とだけしておきます。」

 

「フフフ…吉報を期待しているわ。」

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

烈・真夜との会合も終わって部屋に戻った達也はドアのノックの音で意識を外に向けた

 

達也は外にいるのが誰なのかわかった上で無視をした

 

「司馬君?話があるのだけど。」

 

「私にはありません。お引取りください」

 

「そう言わずに話だけでも聞いてくれないか?」

 

「なぜそちらが上から物を言えるのですか?そもそも私がモノリスに出ないのはそちらとの契約もありますが、あなた達の態度に問題があったからです。」

 

「問題だと?私達は君の実力を認めた上で決めた」

 

「そう、そこです。確かにあなた方に認めてもらうのは悪くないです。ですが、それが人に物を頼む態度でしょうか?」

 

達也は外に真由美たち3人がいるのをわかっていて、部屋に入れずに話を進めた

 

「人に物を頼む時、頼む側は下手に出るのが普通です。これは社会における一般常識であり、人間誰しもが出来て当然なマナーです。それをあなた方はできていない。それをおわかりですか?」

 

「あなた方の高圧的な上からの物言いは極めて不愉快であり、交渉ですらなく論外です。二度とそのようなことはやめていただきたい。」

 

「そ、それは…」

 

「話は以上です。お引取りください。」

 

「司馬…すまなかった。確かに、我々は自分達の利の為に強引に引き入れようとした。だが、司馬に出てもらいたいのは本当だ。」

 

「だが、それは貴方の勝手な都合だ。それに巻き込まないでもらいたい」

 

「…それでも、俺は司馬に出てもらいたい。なぜならそれが我が校に…いや、回りくどい言い方はやめるか。俺にとっても都合がいい。」

 

「ふふふ…ハハハ。面白い、その良くも悪くも真っ直ぐなその態度。実に不愉快だが、いいだろう。その話に乗ってやる。」

 

「本当か!?」

 

「ああ。ただし、条件がある。これを全て履行できるなら参加してやる」

 

「条件だと?」

 

「なんだ、出なくてもいいんだぞ?」

 

「…わかった。」

 

それから達也はいくつかの条件を提示した

 

「俺は出るなら優勝を目指す。いや、優勝してみせよう。」

 

「断定するのか?相手は一条だぞ?」

 

「ああ、問題ない。そして、俺が優勝したときに起こるであろうことが一つだけ存在する。」

 

「言ってみろ。」

 

「『十師族が一般の家系に負けるなどありえない。』」

 

「……そういうことか。その点は俺が受け持とう。」

 

「ほう。この一言だけでわかるとは。どこかの師族は理解していないようだがな。…まぁいい。貴方にはその対応をしてもらいたい」

 

「いいだろう。司馬は試合に集中しろ。」

 

「契約成立だな。改めて第一高校の代表としてモノリス・コードに出場しよう。」

 

「お前の相方はどうする?」

 

「そうですね…では、1-Eの西条レオンハルトと同じく1-Eの吉田幹比古で。」

 

「その人選の理由は?」

 

「俺は他の男子たちの試合を見てないから実力を知らない。」

 

「なるほどな。二人なら実力も知っていると。」

 

「そのとおり。あとは、彼らのほうが他の一年よりも強いから。」

 

「ほぅ…いいだろう。では二人を呼ぼう。司馬、今からもう一度会議室に来てくれ。」

 

 




改めまして、このシリーズを読んでくださっている皆様、お久しぶりでございます

ここ半年は私個人も忙しいため、二次創作の制作自体が止まってしまいました

(それでも新たな作品の設定だけは思いついたりとかしているのですが…)

そして皆様に一つお伝えしたいことがあります。

現在pixivの方で出させていただいている『一の令嬢と四の青年』シリーズについて、リメイクを考えております

読んだことのある方ならわかるかと思いますが、結構辻褄のあってない部分や、原作的にもこれどうなの?な部分が多々あったと思います。

私自身も読み返してそう思った部分がある為、個人的にはリメイクするべきだろうと考えております。

具体的には、今現在までに投稿された回までの設定を辻褄が合うように纏め合わせ、新たな設定の元、再スタートという形です

中にはハーメルンのみでpixivの方を知らないという方もいらっしゃると思います。

何か意見等あれば、感想欄にてご記入の方、お願い致します。



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九校戦編 第二十七話

 

「なぁ、達也。…マジ?」

 

「マジだ。諦めろ。本当なら俺だって出る気はなかったんだぞ。」

 

「にしてもあの達也君がモノリス・コードに助っ人って…世も末ね。」

 

「エリカは俺をなんだと思ってる」

 

「二人共落ち着いて…。」

 

「そういう前にミキが落ち着きなよ」

 

「僕の名前は幹比古だ!…ったく、それで達也。なんで僕とレオなんだい?」

 

「俺が単純にお前たちの戦い方を知っているのと、一科の奴らよりも強いと判断したからだ。」

 

「へえ〜、それは光栄なことだけど、その前に一ついいかい?」

 

「なんだ?」

 

「九校戦が始まる前に達也言ってたよね。僕の術式には無駄が多すぎるって。」

 

「ああ、言ったな。」

 

「じゃあ、達也は僕に術式を教えてくれるのかい?」

 

「いや、俺がするのは術式の()()()()だ。」

 

「アレンジ?」

 

「幹比古、俺が思うに幹比古自身に問題はない。問題はその術式そのものにあると思ってる」

 

「やっぱり()()()()術式に問題がある。そう言いたいんだね?」

 

「ああ。発動を妨害される可能性のあった昔とは違い、CADで高速化された現代において、偽装を施す必要がなくなったのさ。」

 

「つまり、吉田家の術式に施されている偽装が、達也の言う問題の原因ってことだね。」

 

「その通りだ。偽装を施すという工程があることで、発動速度が犠牲になっていた、というわけだ。」

 

「なるほどな。古式魔法が現代魔法に勝てないわけだ。」

 

「それは違うぞ。確かに発動速度に関しては現代魔法に分があるが、威力・隠密性においては古式魔法の方が優れている。」

 

「わかった。そこまで言うなら、達也に任せる。」

 

「任された。」

 

「ねえ、達也君。ミキの話で盛り上がるのはいいんだけど、周りがついていけてないわよ。もちろん私も。」

 

「エリカ達には関係ないよ。それに、僕の名前は幹比古だ!」

 

それから達也が調整しながら、本題を切り出した

 

「さて、一通り話したところで、試合のフォーメーションを伝えるぞ。ディフェンスはレオ。オフェンスは俺。幹比古は遊撃だ。」

 

「なぁ、達也。人を直接攻撃するのはルール違反なんだろ?俺はどうやって戦えばいいんだ?」

 

「それについてはこれを使う」

 

達也は自分の部屋においてある縦長の少し大きめのアタッシュケースをレオに渡した

 

「これは?」

 

「渡辺委員長の使ってた硬化魔法にヒントを貰って作ったCADだ。どういうものかは説明書を見ればある程度は理解できるだろう。」

 

「なるほどな。」

 

「相手に直接攻撃するのは駄目だが、飛翔体を飛ばして当てることは禁止されていない。…さて、レオ。試してみるか?」

 

「…いいのか?」

 

「もちろんだ。」

 

部屋で話し込んでいた面々(達也を除く)は気付いていなかったが、途中で防護服を持ってきたあずさと鈴音に調整の様子を目撃され、その技術の高さに持ってきたものをそのままに固まっていた

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

全員が部屋に戻ったあと、残っていたレオを連れて軍の演習場に来ていた

 

既に達也は観察用端末、レオは実物をケースから取り出していた

 

それはまるで大剣のようだが、長さが通常の剣くらいの極めて異質な形をしていた

 

名前を〈小通連〉という

 

「さて、説明書を読んでもらった通りだが、他に説明はいるか?」

 

「いいや。使ってみたくてウズウズしてるところさ。」

 

「ならいい。始めるぞ。まずは、その場で上に飛ばしてみろ」

 

達也の指示通りにレオがCADを起動する

 

すると、刀身が半分に別れ、切っ先の部分が宙に浮かび上がった 

 

「はは、おもしれぇ〜。ういてら〜」

 

「―――3,2,1,0。」

 

合図と同時に浮いていた刀身がもとに戻った

 

「しっかし、おもしれぇなこれ。どうなってんだ?見たとこくっつけるための金具が付いてるわけでもなさそうだし…」

 

「形状記憶合金を使ってるんだ。魔法で切り離そうが、最終的には元に戻る。硬化魔法は切り離して刀身が伸びたものを維持していると考えたほうがわかりやすいな。」

 

「なるほどな。」

 

「さて、早速実践だ。」

 

達也が端末を操作すると、的が出現する

 

「おいおい…誰の趣味だよ。」

 

出現したのは藁人形に的をつけたものだった。

 

それから数分かけてレオの練習とデータ取りに取り組んだ。

 

「よし。ここまでだな。レオ、続きはまた明日だ。」

 

「おう。もう感覚は掴んだからな。当日は任せろ。」

 

 





皆様、たいへんお待たせいたしました。

再開します。

が、次の投稿がいつかは未定です。

とりあえずこのまま横浜騒乱までは終わらせたいので頑張ります。

感想は感想欄に、ご意見などはメッセージボックスで受け付けます。

では、また次回。


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