ラブライブ!命を燃やす者達! (火野ミライ)
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明日がある事を信じて疑わなかった若き命は窓から差し込む満月の光が照らす部屋の中でただ一人、静かに胸の炎を燃やしきった。
「うん…?」
………はずだった!
夜空の星々の輝きが人口の光によって遮られる現代。そんな日本首都においても月は太陽の恩恵を受け、夜空に輝く。たいていの人が眠る夜の街だが、コンビニなど夜勤に努める者たちや夜更かしをする者もいる町の一角。一組の男女が人通りのが少ない道を歩いていた。
男性の方はギリギリ成人しているぐらいの容姿と体格であり、両手をズボンのポケットに入れた歩みを続ける。そんな男性の後を付いて行くのは黒いフードを深く被った少女。
少女の方は歩きなれて無いのか、辺りをキョロキョロと辺りを見渡しがらも前を歩く男性を追いかける。そんな少女の様子を気にも留めず目的地に向けて進む男性。昼間でも異常な光景のそれは、月明りしか届かない道を歩運でいる事もあり、第3者が目撃すれば通報まっしぐらだろう。
「…いた」
突然、少女が歩みを止め視線を一点に集中する。少女が小さく呟いた言葉で初めて表情を変化させた男性が少女が見つめる場所に視線を向けるが、そこには只々道が広がっており、多少ゴミが散らかっているだけだった。
「ホントにいるんだ…」
何もいない道に震える声を絞り出す少女。そんな少女の心情を示すかのように冷たい風が吹き、二人の髪を靡かせる。気温のせいか、もしくは少女に見えているナニカに対する恐怖せいか、少女の体はかすかに震えており、そんな少女対して心配の声一つかける事無く失望に近い視線を向ける男性。
「大丈夫」
そんな男性の視線を知ってか、軽く深呼吸してから自身を落ち着かせる意味を込めて呟く。
微かに震えるを抑え、腰回りに手をかざす。するとオレンジの炎を共に単眼の怪物の思わせる特殊なベルトが出現。続いて懐から取り出した黒い手のひらサイズの道具、一見眼球にも見えるそれのスイッチを押し、いつの間にか展開していたベルトにセット。
その瞬間少女の姿は消える。つかの間の静寂が辺りを支配したかと思えば、コンクリート壁に何かで斬られたかのような傷跡が突然出現する。そこから不可思議な現象が次々と起こるが、男性は意に介せず只々その場で立ち尽くす。
その眼差しは何かを選別するような…いや、期待外れな不良品を見るかのような何処までも冷たく残忍な瞳。自身の周囲で舞うゴミ袋など意に介さず達観する彼を余所に突然、火の手が上がりゴミを燃やす。燃え盛る炎の中心地点には、先程消えた少女が膝に手を乗せた状態で現れた。
「はぁ……はぁ……」
ゆっくりと呼吸するその手には黒を基調とし銀色の模様が入った両刃剣が握られている。
「ふん!下の下だな」
「初陣にしては上出来じゃないですか…」
周囲の悲惨な状況を見て少女を責めるように呟く男性。その言葉にムッスとしながらも反省混じりの反論を口にする少女。
「俺の目的の為にも、早急に強くなれ。とりあえずは今日中に1個は手に入れろ」
淡々と作業の如く少女にかけられた言葉。その発言を聞き少女はなにも発しないが、炎に照らされた口元では苦笑いの様な笑みを浮かべていた。
「それが
少女の答えに満足したのか男性は来た道を振り返り、闇の中に消えていく。その背中を見守り、その場で回転切り。剣の風圧で火を消したあと、少女は幽霊の如く消えていた。
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