ソードアートオンライン オリシュゼーション・リコリス (愁雨)
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【予告編】スーパーロニエちゃん:傍付きになったらその人がウルトラトンチキチートでした【ダイジェスト】

スーパーロニエちゃんとは 原作19巻、20巻を改めて買い直して読んだら
ソニックリープしてたロニエちゃんがかっこよかったので唐突に生えたロニエちゃん主人公のお話。アンダーワールドで戦うのが主だけどいきなりどっか別の世界でスラッシュアクションするかも知れないスタイリッシュアクション系のお話。

その内、鋼素と炎素 混ぜた銃弾みたいなものブッぱするんじゃないかな?ぐらいなノリ。

チートなお師匠様に育てられた結果、弟子もチートになるヤツ。
一ヶ月間でどれだけの地獄を見たのか……
尚、キリト君の持っていくはずの夜空の剣は【夜空】の銘が与えられた直刀剣(刀と片手剣の特性のある複合武器)となって彼女の愛剣となります。時系列が過ぎたらたぶん、月影と二刀流する。


~後にアンダーワールド大戦と呼ばれる事になった最終負荷実験終盤~

 

「ティーゼ。 後はお願いね?」

 

「ロニエ! いくらユート先輩が申しつけたからって……!」

 

 外には多数の外界人と思しきものたちが群れなして押し寄せている。

 肝心要の最強戦力は 整合騎士アリスを外の世界に誘うためにここには不在。

 

 騎士長も、副騎士長も割り振られた戦場に。

 東の大門から攻め寄せる闇の軍勢本隊のみならず、東西南北に別れた四方の要害、その全てからの侵攻。

 

 東の大門からの侵攻という予測は大きく崩された。

 その劣勢状態を再臨した最高司祭と司祭代行の両名の元に人界軍は反攻作戦に出た。

 

 創世主達が望む辿り着いた者(A・L・I・C・E)と呼ばれる存在、整合騎士アリス 青薔薇の剣士ユージオ。

 そのどちらかの外界への到達 と それを阻むために送り込まれてきた創世主達の敵対勢力との闘い。

 

 最終負荷実験と称された闇の軍勢と人界軍との大規模な戦争。

 

 二局面の作戦と選抜された両名を同時に送り届ける事の難しさ。

 各人の気質ともしもの場合の予備まで含めて考えられた結果。

 

 最強戦力を自らも戦いうる準最強格の整合騎士アリスの直衛に当て外界に。

 青薔薇の剣士ユージオを最悪のケースに備えた予備として残し、また、本人の希望から北帝国の要害、北の洞穴からの侵攻に対する戦力として残す事となった。

 

 再臨した最高司祭(アドミニストレータ)のその力量と祈願により 創世神話の三女神の来訪。

 司祭代行(カーディナル)の招聘により 黄昏の魔女 と呼ばれる存在とその強大なる使い魔 災厄の鎧 が外界より呼び込まれる。

 足りぬモノはあるところから引き込むと言わんばかりの手法はしかし。

 

「……闇の軍勢も同じ手を使う事が出来る。そう言ってはいたしね。その為に、先輩は私をここに残したわけだし」

 

 そう言うとロニエは その装具を修剣学院女子制服から師より譲られた白い外套とその合わせの具足たる異界に於いて誂えられた【レギオンストームジャケット・レギオンストームブーツ】に。

 

 立て掛けられた 師直伝のチートによって使用を許された黒き直刀剣【夜空】。普段であればその重さに耐えられないはずのそれを【使用権限拡張処理】という源流は最高司祭様の秘術を施され使用権限を自らに移した神器を腰に吊るす。

 只一度のみ【武装連結連奏(ウェポンオーバーライド)記憶解放術(リリース・リコレクション)次元斬・界境崩落(ディメンジョンスラッシュ・ワールドエンド)】と言う師がもっとも得意とする神器相当と目された閻魔刀の極技を再現する事が許されたチートも甚だしい魔改造神器である。

 

 手甲、脚甲も自らの体躯にあわせて 装飾品店の主人と師と三人で幾日もかけて調整した近接格闘技に特化し、尚、武具の扱いに影響を及ぼさぬようにした逸品。

 

 そう。

 最終局面、敵方の詰みの一手を突き崩す。

 その為に 彼女は選ばれた。

 

 リアルワールド、外界より呼び込まれた者を次元の壁を切り裂いて 仮想現実(VR)から現実拡張(AR)に送り返すという脳の処理すらも上書きするもはや意味不明の不可解極まりない一斬を再現するために。

 

 よりにもよってその担い手がこの少女であるなどとは、現実世界から来る者、誰にも秘したまま。

 

~それより溯って学院生活~

 

「ああ、確かに偉いのだろうな。お前の家は」

 

 少年は吐き捨てるように。

 この世界で知り合い、ここまで共に歩んできた友と言ってもいい男を侮蔑した二人の貴族を明らかに 敵 と認識した。

 その目は かつて そう。ここではない遥か遠くの。今ではない時を溯った先の。

 天空城アインクラッドに於いて 絶殺を誓ったとある男に向けた視線と同質。

 

「ライオス・アンティノス と ウンベール・ジーゼック だったか? 僕はな。おまえ達の【家格】には敬意を表するが、おまえ達個人に表するモノはない」

 

 そうでなければ、身分の差を持ち出してしまえば、指導する者と指導される者で逆転現象が起きうるだろう?

 

 語るのならば剣で語るが良い。

 

 少年は

 

「……貴様……帝国基本法を軽んじると言ったのか……?」

 

「耳が悪いな。僕は『個人』を指しているぞ。天職によって家を継ぐ事が決まっているのならば、こんな所にいる価値も意味もない。さっさと貴族のお役目を果たしに家に帰れば良い。そのまま、主席となり栄誉在る騎士になりたいのなら、死ぬ覚悟の一つくらいはあるんだろう?」

 

 冷えた言葉は世界の条理に真っ向から反する。

 そう、本来であれば禁忌目録に反するこれらの言動はしかし。

 不可思議なる不可解なる現象を持って【元老院】の監視を逃れる。

 

 彼等、ライオスとウンベールは気が付かない。

 

 余りに隔絶した力の差が 異常を異常と感知させず 世の理 をねじ曲げているなどと。

 

 そう。『少年が既にして人界の守護者たる最高司祭と同質の存在によって祝福とその庇護を受けている』など理外にもほどがある。

 

 そも、無登録民である少年は 原則的に 禁忌目録の逸脱を監視される対象ではない。

 翻って絶対の法にそもそも従う立場にない少年にとり、その他の如何なる法も従う縁はないのである。

 

 生粋の無法者が其処にいた。

 

 視線を切り、その手に引っ提げた練習用の木剣で これまた練習用の打ち込み用の木人形を。

 

 鞘はない。されど、鞘があるかのように納刀の形に構え。

 振り抜く横一閃。

 それはアインクラッドに於いて 刀スキルに属するソードスキル『絶空』。

 

 型も何もないそれは只弾かれて終わる。そう信じて嘲笑ってやろうとした彼等の目の前でそれは。

 

 真横一文字にずれて木人形が切断される。

 

「同じ道具で同じ事が再現できないのなら、土台にすらたてない。……試合の場で無惨な屍にならなければ良いがな。試合の中、一撃であれば。修剣士の至る騎士の目指す剣戟の極致。一撃必殺が為されたのであれば天命全欠損もやむを得ない と特例を持って許された事項だ。貴族裁決権が処刑を許すようにな」

 

 それは彼等すら及びもつかぬ処刑宣告。

 次の公式の試合の場で出合えば 切り捨てる。

 それが嫌なら うまく調整して下に落ちろと。

 

 真の殺意、殺の心意に充てられ 凍り付いたように動けなくなるライネスとウンベール。

 彼等の心に貴族の自負が甦った頃には既に彼はその場から消えていた。

 

 

~北セントリア修剣学院のとある上級修剣士の部屋~

 

「……ロニエ・アラベル か」

 

「は、ハイ! ユート主席上級修剣士の傍付として一年間、お側に控えさせていただく事になります!」

 

「じゃあ、最初の命令というか、お願いだけど」

 

「ハイ!」

 

「……その口調、やめない? もう少し砕けて良いよ。礼法合切は君の方が理解しているだろうから時と場合と人を選ぶ目はあると思うし。その上で、僕にはもう少し砕けて良い」

 

 そんな事を言いながら、窓を眺めていた視線を切り、少年は少女を見据える。

 修剣学院の制服に身を包む少年の目は それまでの彼とは違い意志の強さに装われている。

 

 砕けても良いと言われて彼女は困惑する。

 何しろ、そう言う意識は欠片もないのだから。

 その礼法自体が、自分の傍付きにこそ礼儀正しく接すべしとしているのだから仕方ない。

 

「まぁ、アレだね。こうしよう。 僕は無位無冠の流浪の稀人だ。仮にも貴族の家系である君と比べた場合、家格の差がある。故に、貴族として気を使わねばならない部分を守れば良い」

 

「……流浪の稀人……?」

 

「そう。僕はやがてはここを去る……その前に……」

 

 空間が歪む。まるでそこが切り離された異空間のように。

 其処にいてはいけない誰かの気配を 才覚在るロニエは感じ取る。

 

 揺らぐように 三人。

 見えざる人たちの庇護を受けているかのよう。

 

 後のロニエは知る事になる。このときに感じた気配こそが。

 彼を電脳の世界において庇護する【転生司祭。司祭代行、黄昏の魔女】と呼ばれる三聖人であったと。

 

「僕は君の手を採った。選択権は此方にあり、最後に残されるであろう家の格の差で弾かれていく君たち二人を選ぼうとユージオと相談して予め決めていたからね」

 

 ロニエは幻視する。

 見えてはならないモノ、あるいは、稀人という言葉が正しいのならば、この歪みの先にある者こそが、彼の帰るべき場所に繋がっているのか。

 

「その手を採った以上、僕には君を傍付きとして指導する義務がある……とは言え、僕が教えてあげられるのは お上品な騎士としての戦い方ではなく その先をつかみ取るための 戦士、闘士としての戦い方だ」

 

 心意 と呼ばれる強大な力があると。

 ロニエはお伽噺の中でそれを知った。

 世の理すら、意志の力でねじ曲げてしまえる者。

 

 虚空に手をかざし 武器を引き抜く。

 それだけであるのに、それを行える事の異常をロニエは理解する。

 目の前の人はきっと。人の姿をしている神と同じかそれ以上の存在なのだと。

 

 一振りの剣を ロニエの前に。

 

「……本来、その剣は僕の代わりにここに立つはずだった男の手に委ねられる剣。銘を 夜空」

 

 【夜空】の銘に恥じぬほどに黒く重い。

 悪魔の樹と呼ばれたギガスシダーを削り剣の形に整え直した一振り。

 

「君にこれから先を生き抜くための力を与えてあげる事は出来る。でも、力を振るう意味と理由は自分に生じたモノ、自己の裡に見つけるんだ」

 

 その剣を指で招き寄せると握り取り、無造作に構える。

 それが構えであると理解できたのは僥倖だった。

 

「秘伝剣技として各流派に語り継がれている【秘奥義】。それらが形となる前の源流、アインクラッド流の剣技 と ここより遠く。選ばれた者しかこの世界より渡る事が出来ぬ異界、リアルワールドの戦闘術理論」

 

 その言葉は異様、異質に響いて、尚、少女の裡に刻まれる。

 そう。目の前の人は 並み居る貴族の嫡子。その選ばれた者達を押しのけて主席に立つ剣士。

 無位無冠、爵位すらもたず、どこより来たのかすら定かではない。

 されど、誰よりも深く 神聖術 法学 史学 にすら精通した才人。

 

 どこよりその知識を仕入れているのかすら定かではない領域で、各教師陣と丁々発止とやりとりすらしているのだ。

 

 それがいわゆる 不正行為(カンニング)の賜であろうなど誰が知ろうか。

 

「ロニエ。君に僕の持てる手管を徹底的に仕込む。僕の域になれば、くだらない貴族の手が及ぶ事はないけど、5等貴族、6等貴族である君やティーゼは次席まで引き上げたユージオを蹴落とそうとする者や僕自身をやっかむが手が出せぬ者達の手によって貴族裁決権を使って貶めるには最適の的だ」

 

 爛々とした目にロニエは捕らわれていく。

 それが正しい事か否かは横に置いて、彼女の命運はこのとき、明らかに変転した。してしまった。

 

「傍付き錬士たる君に 僕という異物の後を追えとまでは言わない。その手で大切な者を守れるように。護るべき者を守り抜く力を手にするために。命の価値をその手に掴むために」

 

 くるっと向きを変えた【夜空】の柄を差し出すようにして。

 

「その手に剣を帯びる覚悟があるのなら、これを握るんだ。重くても、辛くても、誰かのための刃になると。友を守るための力になると」

 

~時は戻って 最終負荷実験終盤(2日目)~

 

「あの時。差し出されたこの子の柄を握ったときに決めたの」

 

 腰に佩いた【夜空】の柄を撫でるように。

 

「私は、この人の傍付きで居ようと。例え、その道が辛くても、師の示す道を。剣術以外のあらゆるを受け継ごうと。その上で 守ると決めたの。大切なお友達を」

 

 ロニエは回想する。

 

 あの時、一手遅れたせいで不覚をとった。

 貴族懲罰権を持って、女性の尊厳を傷つける邪淫。

 

 彼等はそれを主席と次席にまで駆け上がった無位無冠の少年達を蹴落とすために。

 傍付きすら守れぬ無能者に貶めるために。

 

 目の痛みさえなければ、抉られそうな痛みを堪えたせいでティーゼが人質に取られ。

 遅れてきたユージオともども 貴族懲罰権を盾にしてティーゼを嬲ろうとする二人の悪漢の前に身動きが出来なくなり。

 先に自由を取り戻し、青薔薇の剣でウンベールの腕を切り飛ばし、されど弾けた目の齎す激痛で動けなくなったユージオ。

 ティーゼの身を案じ傍による事を優先した自分を横目にして。

 遅れてきたユートは状況を確認し、即座にライオスの背後をとり、一切の抵抗の余地なく首を折った。 

 

 自分がなんのために、ユートから「もしもの時に正しさを貫ける力」を学んだのかすら解らなくなった瞬間だった。

 

 師である彼はそれを咎めず、『その条件ならティーゼの身を守るのが最適解だ。手札を斬らずに終わらせた事。それが次に繋がる』

 

 そうとだけ言葉を残した。『次』。

 そう。次が来たのだ。

 もし、あの時、自分が対処しきってしまえば、その先を無事にやり過ごせたのかは解らない。

 あの条件下で、ユージオが ALICE に至らなければ。

 ユートが 明確に禁忌目録を破り、ユージオと共に行く事を選択しなければ。

 

「ティーゼはここに居て。負傷者がたぶん、一気に増えてる。救護、救援も大事な仕事だから……それじゃあ、伏せ札としての仕事をしてくるね」

 

 そうしたそれぞれの選択が。

 今、このときに繋がってる。

 師と仰いだ ユート主席上級修剣士のその薫陶を胸に。

 

 敵の思惑の一番骨子を破壊する。

 

~人界軍 駐屯地 防衛ラインにて~

 

「あなたが再起できてるとは思わなかった」

 

 肩口を抑えアスナは息を荒く吐く。

 PoHと呼んだ男。SAOに置ける茅場晶彦と同等か、あるいはそれ以上の悪意の持ち主。

 

 この男の危険度を理解していたからこそ、発見次第最大攻撃を見舞ったというのに。

 マザーズロザリオ。ユウキの作り上げたそれは確かにあの男の胸元に風穴を開けた。

 だが、それではなかった。

 この男をこの世界より退場させるつもりがあったのならば。

 頭蓋を断ち割る唐竹 か 首と胴体を切り離すネックカットの必要があった。

 頭が残って思考できる限り、この男のソレは止まらないのだと。

 

 自身が不利に追い込まれて漸くアスナは理解した。

 スーパーアカウント【創世神ステイシア】の力を。その権能を駆使しても尚。

 

「あの女はどこだ……?」

 

 メイトチョッパーが戦場の死を吸い上げ、PoHに強大なリソースとして力を与えていく。

 

「あの最高司祭だとか言うクソ女はこの世界に居やがるんだろう……?」

 

 憎悪に塗れた声は只ひとりの女に焦がれる。

 復讐、報復に彩られた感情はしかし。

 

「……最高司祭様ならば、ここにはおられませんよ。そもそも最高指揮官が前線に出なければならない軍隊は破綻します。あなたたちの指揮官、暗黒神ベクタが此方の最強戦力に潰されるように」

 

 白いコートを羽織った少女 が そうなる事を確信した声で未来を決定づける。

 

 誰しもが目を見張る。

 SAOからその姿に慣れ親しんだ者も居る。

 違うゲームですら、彼はそれを装っていた。GGOですらそれをモチーフにした白の防弾コートを誂えていたのだ。

 その彼を代表するかのような【レギオンストームジャケット・レギオンストームブーツ】を我が物かのように着込んだ少女。

 

「……ロニエさん? アレ、その恰好……え?」

 

 アスナをして驚愕する。

 彼があの装備をこの子に与えた。

 その意味するところは。

 

 クラインもエギルもシリカもそれを見て驚く。

 つまりはそれの意味する事は。

 

「ロニエ・アラベル。ユート主席上級剣士傍付き錬士。名も知らぬ外界の外道。あなたを終わらせる者です」

 

 【夜空】を鞘内に腰だめに構え彼女はPoHの前に立つ。

 

 抜刀の構えからの抜打ちの刀ソードスキル 絶空。

 黒い【夜空】の元となったギガスシダーの持つリソース吸収能力と重なり合ったその一斬は。

 PoHに付き従うかのようだった赤鎧の暗黒騎士達は痛みを感じる間も無く退場させる。

 

 PoHが言葉を放つその前に被せるようにロニエは言葉をつなぐ。

 そう。彼と戦うときに必須なのは会話をしない事、させない事。

 煽動PKたる彼はその言葉で人を玩弄し操る。

 

「私にあなたを怖れる理由はありません。同じ世界より来られた方々は、あなたのしてきた悪意を知っているようですけど」

 

 アンダーワールドはリアルワールドより死が近い世界である。

 人の死はいつでもどこでも近くにあった。

 それ故、怖れないのではなく。

 恐怖の感情を持ってこの者と接するという事は。

 

 負の心意が相手に力を与えてしまう。

 相手が強いと知る者がPoHに強さを与え、恐怖が力を与える。

 誰かしらがどこかで感じるそうしたイメージが無意識のうちのPoHの力へと変わっていく。

 

 故に。この魔人を切り伏せるのは。

 

 PoHという者に何の因縁もない者が一番望ましい。

 そう、執着する者の手で終わるなどという幸福を与えてはならず、また、無意味に無価値に終わらせなければならない。

 路傍の石の如く。

 

 事実、ロニエの為した最初の一斬から彼は正気を取り戻せていない。

 そう。『いきなり現われた小娘に乱入されて、俺の目的が叶わなくなる』という意識に囚われたのである。

 そして、それまで戦っていたSAOからALOにGGOへと戦い抜いてきた歴戦の猛者達の共通意識『PoHという最低最悪の殺人鬼』という思い込みによって強化されていたPoHを。

 全く知らぬと吐き捨てる事で凶悪無比なイメージの鎧を剥ぎ取る。

 

 そのイメージを剥ぎ取った瞬間、彼の総身を悍ましい寒気が襲う。

 けして癒えたとは言えぬ彼に刻まれた電脳世界でのキズ。

 自分の全く見知らぬ女と敵対するという事は彼にとり絶大なる負荷が起きている。

 

 戦士として鍛えられた精神性がそれを取り繕い、即座にこの女を斬り殺さんとメイトチョッパーを。

 

 【夜空】と【友切り】が鍔攻リの如くにぶつかる。

 それが敗因になった。

 ギガスシダーの持つリソース吸収能力をその刀身に秘める【夜空】。

 ロニエは己が愛剣となったその剣に。

 

「……【記憶解放術(リリース・リコレクション)】!」

 

 瞬間膨れ上がる圧倒的な闇。あらゆる光、あらゆるリソースを吸い上げ成長した悪魔の樹。

 その記憶は正しく、吸収の力。

 友切りの力は命を吸う、死を吸うに過ぎず。リソースであれば全てを吸う 夜空 の前に。

 

 打ち合わせた刹那に解放された夜空の記憶が 友切りから凄まじい勢いでリソースを吸い上げていく。

 

 そう。アスナのマザーズロザリオはけして効いていないわけではない。

 彼の肉体は死に体であり、それを戦場に充ちた死を吸収する事で強引に動かしている。

 その身体を動かすためのリソースが奪われてしまえば。

 

 がくりと身体から抜けていく力。

 PoHの身体に充ちていた偽りの生命力が。

 

 崩れ落ちるPoHの身体を一切の加減と容赦なく。

 打ち合わせた剣を強引に振り抜き、後追いするように【夜空】専用に誂えた鞘を振り抜く。

 その動きは駒の如く遠心力を活かした鞘による殴打術。直伝抜刀術【旋風独楽】。

 血こそは流れぬそれは戦場において許される天命欠損の一打となる。

 

 頭蓋を砕いた感触すら感じて。

 事ここに至り、ロニエには一切の無駄はなかった。

 夜空が吸い上げたリソースをそのままに流転し、最大の一手につなげる。

 

 一呼吸。目視。広域にわたる戦場の全ては見えない。

 二呼吸。天眼の目付。俯瞰するかのように戦場を把握する。

 三呼吸。【夜空】を納刀する。次の一手は抜刀の業の極致。

 

 顔を引き攣らせるアスナ。もし、彼女が真実彼の直弟子であるというのならば。

 この局面、敵対するものがどこから来たのかすらわからず、圧倒的なまでに多いという数の理不尽。

 それを覆してしまえるヤバめな技を教えられていないわけがない。

 

 四呼吸。四拍が調う。意思は定まる。この世界に来た敵意持つ稀人をもれなく想起する。

 五呼吸。不可能な事はない。出来ない事もない。なぜならばこの一斬こそは。

 六呼吸。抜刀一閃。

 

武装連結連奏(ウェポンオーバーライド)記憶解放術(リリース・リコレクション)次元斬・界境崩落(ディメンジョンスラッシュ・ワールドエンド)

 

 式句は告げられ やってはいけないレベルの一斬が再現される。されてしまう。

 如何なる意志を持っての事か。何故とかどうしてとか理屈とかそういったことをすっ飛ばして。

 その一斬は次元の壁、世界の壁を切り裂く。

 閻魔刀と呼ばれた刀の持つ原典の力とこの世界において定義された力が融合し剣の記憶として宿り。

 その記憶を解放するが故に。

 世界の壁は崩落する。

 

 納刀する音が響く。

 

 音が消えた世界に静寂が戻る。

 数万人規模いた闇の軍勢に加勢していた外界人達は敵意のないものを除いて一切の加減なく強制転移させられた。

 

 残るのは鞘打ちで即死しないまでも死に体となったPoH一人。

 

『ようやったの。見事じゃ。わしが広域術式を使わずとも、アスナがステイシアの力を使わずともすんだな。お手柄じゃ』

 

 司祭代行リセリスがその声を放つと同時に現われる。

 二手に分かれた作戦指揮。中央統括と全域をクィネラが担当し、転移術を持って各領域の指揮と修正を行うのがリセリスであり、その直下に整合騎士がおかれた。

 

 そしてこの場に用意されていた特級の鬼札が 異界より舞い降り乱心召された最高司祭の目を覚まさせたる人界最強の剣士が 見出したその後継。

 

 後に界境の守り手(ゲートキーパー)と呼ばれるロニエ・アラベル。

 整合騎士番外となる少女の伝説がここに幕を開けたのである。

 

 

 

 

 




学院規則とか帝国基本法とか禁忌目録とか全貌解らないと抜け穴作れない……


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スーパーロニエちゃん 人物設定

ざくっと人物設定的な何か。


 

 主人公

1:ロニエ・アラベル

 どうしてこうなった。キリトの代わりにチートなオリ主が自重しなかった結果、真綿に泥水が染み込むようにそれを吸収していってしまった。

 が、根っこは優しい少女のままなので 無駄な追い打ちはしないし、無為に苦しめずに一撃で終わらせたい系の剣士になった。

 悪魔の樹 ギガスシダーを元に削りあげられた黒き神器剣【夜空】の担い手を押し付けられる。が、意外に 貪欲に学んで強くなる成長性と リソース吸収能力が噛み合う事になり、程なくして、その重さにも慣れる。

 刀スキルと片手剣スキルを軸にしたユート直伝の我流剣士。

 破界流と名付けられたそれは従来通りの【秘奥義】の他に様々な抜刀術を扱う。

 神聖術と組み合わせる 紫炎抜刀(炎素を抜き放ちの一斬と共に解放して、斬撃と炎熱効果を同時に対象に与える)など彼女固有の派生がある。

 

 白いコートを譲り受けそれを愛用している。着用するだけで相当なバフ効果がある事を彼女は識らない。

 

2:ソルティリーナ・セルルト

 リーナ先輩。無敵のポニテ大剣使い。朱に交われば染まるの第二号。

 ユートの指導の結果、強さがえげつない事になっているロニエと組む事になる女性。

 ユートを傍付きに指定したらトンデモだった。指導するはずが逆に手解きされるとはこれ如何に。

 セルルト流の【秘奥義】たるソードスキルを最大昇華し5連斬まで成立させるようになった。

 無論の事、これのみならず、無数の本来ならば各流派の秘奥義と秘せられた両手剣ソードスキルを知らぬままに教え込まれている。【災禍業斬】(カラミティディザスター)と呼ばれる深奥に最近辿り着いた。

 

 セルルト流は無数の武技を操るため、その担い手の彼女は歩く戦術総覧とも言われる。体術も修めており、最近は投げも駆使する。投げ倒して復帰する前に大剣でどかんとぶち抜くえげつなさ すら彼女の武器である。

 

 

3:転生司祭様(アドミニストレータ)

 甦ったのかそれとも別人なのか。解っているのは良く姿を消すというか、こっちの世界に来る事の方が稀。が、かつての自分のやりようで色々面倒くさい事になっている責任を感じているのかどうか定かではないが 禁忌目録の再編纂など、自分がやった方が面倒が少ない事柄をちまちま進めているらしい

 

 

4:ティーゼ・シュトリーネン

 ティーゼちゃん。ユージオ先輩ラブの人。アリス様が人界特別大使としてリアルワールドに赴かれたその隙を狙っているわるい子。

 が。 クソ貴族に弄ばれてしまう定めは変わらなかった。ロニエがロニエちゃんになってしまった結果、其の分二人がかりであれこれされそうになってしまった不幸な子。

 本来はロニエと組む事になるのだが、彼我の力量差がえげつない事になったのでバディアクションからは降格してしまったが、ユージオ先輩のお伴で諸国漫遊する事になって内心すごい悦んでいる。

 

5:メディナ・オルティナノス

 メディナ先輩。ツンデレ風味の刀使い。ロニエちゃんとは刀術談義で花が咲く。

 同じ 辻風 なのに 抜刀抜打ち と 1斬飛び退き真空刃 とか明らかに別技だ。

 同じ 浮舟 なのに 全力屈伸切り上げ と 諸手逆袈裟切り上げ で全然違うとかそう言うの。

 どっちも成立してすごい不思議な顔してる。

 元老院統括代理 絶対殺すガール。

 家系に影差したのアイツが原因と転生司祭様に全部教えられているらしい。

 ハァシリアンは最高司祭様のご乱心(ユートのクィネラに入れ替わった)を見て発狂してどこかに消えたらしい。

 

6:アリス・シンセンシス・サーティ

 騎士アリスちゃん。人界特別大使として現実界に行ったり戻ってきたりで忙しい。

 セントラル・カセドラルでのユートのウルトラトンチキの餌食になった人。

 曰く『他の誰と戦う事になろうとも、ユートともう一度ガチでやり合うのだけは御免蒙ります(真顔)』

 

 そら。他のゲームから持ち込んできた武装を記憶解放してくる×3とかヒドイ目に遭ったよね(表シナリオなのでエロい目には遭わされていない というか合ってても言えない)

 

7:創世神ステイシア・アスナ

 アスナさん。色々あってこんな所まできて、神様ムーブ決める嵌めになった人。

 これまでの経験を重ねた結果、無制限地形操作の権能は一切の苦も無く扱える。

 過去の話に言及されると表だって話せないので口に濁す。

 言える事と言えない事はきっちり選んでます。

 が。ユートのウルトラトンチキの始まりを知っている内の一人ではあるのとアンダーワールドに来るまでのトンチキをもっともよく知る少女ではある。




気が向いたら人物は追加される模様


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ミッション1 まじゅうとうばつ なかまをそろえよう!

【ミッション1:魔獣討伐】
 
 発:司祭代行カーディナル・リセリス
 宛:人界軍予備役に属する人員

 エリア  北セントリア

 作戦目的 闇の軍勢の襲撃後、その余波に当てられてか魔獣達が活性化している。
      整合騎士を派遣するか否か、威力偵察を敢行する。
      魔獣の脅威度を測る事を目的とする。
      神獣の発生こそは確認されていないが門外の領域には封印禁足地がある。
      最終目標として、禁足地の封印の石碑の状態を確認する事。
    

 注意事項 本作戦は生還が第一義となる。その為、単独での作戦遂行は厳禁とする。
      必ず力量の差が開いていない二名以上を持って作戦に臨む事。


~セントラルカセドラル・大図書館 兼 カーディナル執務室

 

『駄目じゃ』

 

 にべもなく一言で司祭代行はロニエとティーゼの進言を却下した。

 二人よりも背が低い、されど威厳と位格は比較にならない人界においてのトップの一人はその眼鏡越しの叡智溢れる眼で判断した。

 

「え……でも、ティーゼとは修剣学院でも組んでやってきました」

 

 だからじゃよ。 と前をおいて、司祭代行は問題点を挙げる。

 ティーゼ と 今現在のロニエでは 力量差が装備の関係も相俟って釣り合わなくなっている事。

 結果、生還を目的とした本作戦に従事するには彼我のバランスがわるくなる事。

 もし仮に神獣の発生が確認された場合、最悪のケースは討伐任務に移行する可能性があるため、戦線維持と戦線離脱が可能な人材が望ましい事。

 

『後、肝心な事じゃがな。わしはその作戦の終了後、青薔薇の剣士ユージオを供回りにした外遊巡察を予定しておる。あやつ(クィネラ)め。自分でやりたがらん事は悉くこっちに回しおる……まぁ、何が言いたいかというとユージオと一緒にしばらく旅回りするのとどっちが良いのかという事じゃが。その為の準備等々もあるから此方に回るならこの作戦には参加させられんぞ』

 

「「え」」

 

~北セントリア修剣学院 女子寮 ロニエ私室~ 

 

 ロニエは友情の儚さを思い知る事になってしまった。

 まぁ、それも仕方ない事だと意識を切り替える。

 そうなると相方がいなくなり、単独となるため作戦任務には従事できなくなる。

 

 当てが全くないわけではない。

 刀使いとして意気投合した先輩筋にあたるメディナ・オルティナノスも居る。

 同期の修剣士達から望むのはいささか厳しい。

 傍付きの影響を受けて大戦で活躍した事で成績回りや実績評価が著しいため、敬遠されがちなのだ。

 自分の勲功評価でもって実家の貴族爵位をあげる事に振り分けてもらった結果、4等爵位まで押し上げる事が出来た。

 ゴリ押しも甚だしいやり方 と 勲功評価大なりとされたのを良い事にティーゼの実家も四等まで引き上げてもらった。

 貴族社会には成り上がりだのとか色々良くないようには言われる事だろう。

 

 それゆえに実績を積み重ねていく必要があった。

 

「うぅ……最初っから躓いちゃうとは……」

 

 ベッドの上で丸くなりどうしたものかと考える。

 傍付き錬士であった数ヶ月前ならばそのまま指導生である師に頼めば良かったのだが。ユートもユージオも特例処置で一足飛び以上の間を飛ばして人界軍中枢に据えられてしまった。

 

 ノック音が響く。

 来客の予定は訊いていなかったが、身を咄嗟に整える。

 入出の許可をだすと 1拍おいて。

 

 ガチャリと開けられ、そこから現われたのは。

 

「大戦以来といったところかな。 ロニエ・アラベル修剣士」

 

~北セントリア コールディア平原~

 

「はぁ!」

 

 振り下ろす大剣の一撃が真っ向からハジケアリを両断する。

 知能も知識もなく人の領域を喰い漁る魔獣は ダークテリトリーに住まう者達よりも近しく人間の脅威だった。

 衝撃を与えると体液を弾けさせ爆発するこの魔蟲もまた対処できないものには脅威以外の何ものでも無い。

 質のわるい事に養蜂などで生産されるハチミツを主食とするため、人の領域に良く出没する。

 更に面倒なのはこのハジケアリが確認されるようになると養蜂に使われるハチも凶暴化し人に危害を加えだすという連鎖反応が起きる。

 

 修剣学院の修剣士はこう言った害虫駆除などもその責務となる。

 なるのだが。

 

「……これは、想定以上に数が多いな。のみならず、脅威度も普段より高い……」

 

 四匹 五匹が群れなして現われるのはいつもの事ではある。

 だが、恐らくはその算定される脅威度は。

 ソルティリーナ・セルルトは冷静に判断しながら敵を屠る。

 敵を処理するタスク と 状況分析を行うタスク に思考を振り分ける。

 歩く戦術総覧 と評される彼女はその思考を止めない。

 

 考えながら戦う のではなく その二つを切り分けて戦える類い希なる才の持ち主であった。

 

 五匹を誘い込むように引き寄せる。

 脇構えに大剣を備える。緻密に厳密に定められた位置に身体を収める。

 

 セルルト流秘奥義【輪渦】。

 両手剣ソードスキル・サイクロンたるそれはかつて 彼女自身の傍付き錬士だったユートという破格の剣士の手によって最大五連斬まで行える事を証明された。

 その時、ユートが握っていたのが レイトウカジキマグロ と呼ばれる何故かカテゴリが両手大剣にされてしまうものだったのはいささか納得していないのだが。

 

 だが、それであるがゆえにそのイメージは峻烈だった。

 正しく身体を運べば セルルト流の秘奥義は一斬のみでは終わらず連続攻撃にすらなるのかと。

 

 彼はその扱いを 源流(オリジン)流派 アインクラッド式 と呼んだ。

 そうしてソルティリーナは蒙を啓かれた。

 己の主として扱う両手剣の秘奥義はあくまでその一部でしかないのだと。

 

 秘奥義と秘奥義を連結させる【秘奥義連結】という極峰。

 輪渦すらもその入り口であったなど誰が思おうか。

 

 輪渦が切り裂く5匹のうち、一匹が強化された個体である事を確認する。

 彼女の意識はその一匹を確実に斬滅することに切り替わる。

 輪渦を振り切った五連斬。秘奥義の後には大きな隙が出来るのがそれまでの彼女の常識だった。

 だが、今の彼女にそのイメージはない。

 わずかに身体が硬直する刹那に連続する秘奥義のイメージと動く身体のイメージを重ねる。

 セルルト流秘奥義よりの連結秘奥義。両手剣ソードスキル・カタラクトと呼ばれるそれは特定の条件下において敵を打上げる。

 

 流れるような秘奥義から秘奥義をつなげるこの連携をスキルコネクトと呼ぶ。

 本来であれば。正史であれば黒の剣士ですら5割を切る成功難度のそれを。

 

 ソルティリーナは一切の失敗するイメージを抱く事無く成立させる。

 

 追い打ちをする事はない。本来であればもう一斬加える事すら可能なそれに対して。

 横に飛び退く。

 その影から走り寄る白い影。

 自らの持ち回り分を一足先に片付けたのだろう。

 その余裕が此方へ救援となる。

 

「ハッ!」

 

 源流(オリジン)流派 アインクラッド式 刀術スキル 浮舟・古式。

 

 下段から舟を浮き上がらせるほどの一斬。故に浮舟 と称される斬撃で浮き上がり落下する無防備な対象を再度打上げ。

 

 強化されたハジケアリは散滅した。

 その斬撃を為した者は。

 

「……うむ。見事だ。ロニエ。此方の方が一手間遅かったようだな」

 

 残心を解きその剣を納刀するとロニエと呼ばれた少女はソルティリーナに向き直る。

 

 白コートに黒い直刀剣。大戦において一躍その名を馳せた少女剣士。

 

 奇なる縁はここに結ばれた。

 

 一人の異界より来た稀人を縁にして。

 人界軍将軍 【歩く戦術総覧】ソルティリーナ・セルルト 

 と 

 初等修錬士でありながらもはや番外として扱われる 【源流の担い手】ロニエ・アラベル 

 はこうして邂逅した。

 以後に渡り、長らくの間、轡を並べる事になる二人の最初の任務の始まりであった。

 




りざると

 ロニエはティーゼとコンビ解消しました。
 ユージオ先輩と一緒に旅できるのでウッキウキになってるのを見送る事にしました。

 ソルティリーナが来訪しました。
 何でも、上からの命令で釣り合いが取れそうというか、大体似たような度合の無茶が出来るという判断が出たらしいですよ?

 リナロニと言う新機軸のバディアクション。


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ミッション1 まじゅうとうばつ なかまをそろえよう! 1-2

~とぴっくす~
 直刀剣【夜空】
 夜空の剣のこと。
 本来は黒の剣士キリト、あるいは人界統一会議代表剣士キリトが担い手となるはずだった。が 本作では何の因果かロニエの愛剣となる。
 原作においてキリトはこの剣を 片手剣から両手剣サイズに微調整して即時使用したりしてる。
 このことから担い手の心意に応えてその形状を調整しうる特性がある。
 本作においてのロニエはカタナスキルと片手剣スキルのハイブリッドスタイルを使うため、片手剣と刀の双方の特性を持った複合属性となっている。

 記憶解放術・武装支配術ともに到達しているため、斬り合わせた相手と鍔迫り合いになったらリソース吸収したり、巨木の姿を解放しつつ旋風車で全周囲をいっきに薙ぎ払って軍勢を壊滅させたりわりと容赦ない組合せが可能。

 後に月影の剣と合わせて【月影 夜空】と呼ばれる二刀一対の神器として知られるようになる。


~北セントリア コールディア平原~

 

 周囲の探索と調査は並行して行われる。

 外壁に守られた市街以外にも居住エリアは存在し、また、本来であれば、貴族が守るべき私領民も 領域内に住まうが故に生死も自由であるなどという理屈で守らない貴族の方が多い。

 

 コールディア平原にもそのような村が存在している。

 鉱石採掘場や農場など長閑な風景のなかでありながら。

 

 それらを睥睨するかのような位置合いに 封印禁足地は存在している。

 

「……これは……神聖語で刻まれている碑文か」

「……ちょっと読んでみますね…… コールディア平原 ミルディア平原……」

 

 黒い石板に刻まれる文様は赤が既にいくつか灯されている。

 

「……ミルディア平原は西帝国の領域だな。そうなると……ふむ……いや、もしかするとそう言うことなのか……?」

 

「セルルト将軍。何かお気づきになられたんですか?」

 

 見上げる碑文の色は赤が物々しい。

 近くに居る事すら忌避したくなる気配。

 魔獣や魔蟲、凶暴化した獣、それらの強化個体よりなおも肌に刺す警戒感。

 

 神獣の封印された地。封じられても尚、その場にある者に警告を発する偉容。

 

「……ああ、私を呼ぶときはリーナで良いぞ。余り堅苦しくても息がつまるだろう? それからだ……この石碑が示す地名、そこに存在し、現状確認されている強化個体の数と石碑に灯る赤光円の数……一致しているわけなんだが……偶然と思うか?」

 

 顔を見合わせ、同意の見解を得る。

 

「実証してみる必要がありますね……確か、農場の近くに魔獣の発見報告があがっています。そちらを対処してから、引き上げ際にここを確認してみれば検証可能だと思います」

 

「そんなところか……よし。では、西の農園近くだったな。行こう」

 

~コールディア平原 西の農園近く 養蜂小屋近くの休憩地~

 

 パチパチと火が燃える。

 何時の時代も夜営には欠かせないもの。

 炎素を使い火種に火をつけて、暖をとる。

 

「ほぉ…… セントリア煮 か。懐かしいな」

 

 ロニエがテキパキと用意する夕食を見て懐かしいとソルティリーナは評した。

 

「いや。何。私の家は爵位が爵位でな。形式張ったものはよく食べるが、そう言う料理は学院時代の夜営でユートやユージオの二人が作るのを食べるのが主だったものでね」

 

「なるほど。あの二人は私と出会ったときも夜食を作る担当だったが、普段からそう言う立ち位置だったんだな」

 

「「ってだれっ!?」」

 

 しゅたっとてをあげる。

 赤い跳ねたようなボブショートが特徴的な刀使い。

 メディナ・オルティナノスが其処にいた。

 

「不躾な登場失礼致します。セルルト将軍。つい、悪戯心が働き、隠業と軽業にてどこまで近寄れるか試してみた次第です。お叱りは如何様にも」

 

 ぺこりと頭を下げるその姿に毒気を抜かれる。

 

「いや、良い。それだけ、今宵の夕食に気をとられていたという事だろう。つまりは我等の未熟だ。気にするな」

 

「お、驚きました。……ああ、でも、敵意や害意がないのなら気配察知しにくいですし。あ、メディナ先輩も召し上がりますか?」

 

 ロニエは予備の食器を即座に引っ張り出し、見せるようにして可否を問う。

 煮込まれた鍋に目を落とし、その材料に余裕があるのを見て取るとメディナは首肯し。

 

「では、一杯だけ。此方も携行食は持ってきているので其方とあわせるのでそれで充分だ」

 

 黙々とした食事。

 貴族としてのマナーは夜営でも生きている。

 歓談をするなら食べ終わった後でも充分だからだ。

 無論の事、食事が会話のスパイスとなるケースもあるので状況に応じたものはある。

 

「……では、其方は最高司祭様の勅令で此方に合流したのか」

 

「ああ、そうなるとこれ、どうも整合騎士案件になりそうですね……」

 

「8割方。どうも、神獣発生には一定の周期があるところまでは見えているらしいのだが、その周期が偶発的なのか あるいは条件的なものなのかを最終定義するつもりらしい」

 

 ロニエとソルティリーナは顔を見合わせる。

 それを見て、メディナは首肯し、手に持つ白湯で唇を湿した後。

 

「特定の地域に周期的に発生する魔獣や強化個体は 神獣の封印禁足地に設置された石板と関係はあるらしい。だが、これまではダークテリトリーとの大戦の関係もあって、わざわざ整合騎士を派遣して確定調査をする余裕がなかったそうだ」

 

「つまり、大戦が一段落した今だからこそやれる事をやると?」

 

「人心の荒廃に繋がりかねない案件をこの際、一気に改めなさる御積もりです。魔獣討伐然り、腐敗貴族の一掃然り。司祭代行様直下において行脚を行うのもその一環だそうです」

 

「……て言う事はこれ……ひょっとするとひょっとしませんか?」

 

「「つまり?」」

 

「……神獣封印禁足地の観測観察をこの面子で行えとかそういうお話になってません?」

 

「うん? いや、待て。流石にそこまでは……いや、しかし、確かにこれは報告義務はあったが終了についての詳細は申し添えられてないな……」

 

「司祭代行様の巡察について行く場合は、こちらには参加させられないという事でティーゼはあちらに行ったので少なくとも北セントリアのコールディア平原の魔獣討伐だけでは終わらない気がしてきました……」

 

 三人官女は顔をつきあわせて溜息を吐く。

 溜息を吐くと幸せが逃げるとは言うが吐きたいときに吐かない溜息は内に淀む。

 

「しかし、そうなると後もう一人は欲しいな。火力偏重に編制するにせよバランスに整えるにしても どう整えるにしても三人は歪だ。 ロニエがユートの直伝のトンチキっぷりを発揮したとしても1:2だ」

 

「ええっと……そのトンチキって……?」

 

「ユート主席上級修剣士に続く北セントリア修剣学院に置ける特例第二号。ロニエ・アラベル特別修剣錬士。それが学院復帰した君の公式の場に置ける呼び名だ」

 

 ああ、だから教員や師範の先生が腫れ物触るような扱いしてたのか。と今更ながらに遠い目になってその扱いを実感するロニエ。

 

「まぁ、仕方ないだろうな。ロニエ。お前のそれはほんと、アイツにそっくりだ。ユートの学院に入ったばかりのやらかし以後の扱いとほんと同じだ」

 

 クスクスとメディナが笑う。懐かしいものを思い出すように。

 ソルティリーナも釣られて笑う。

 この二人には共通して 初年時のユートのやらかし と言う理解がある。

 

「あの……先輩って初年時に何をやったんですか? リーナ先輩の傍付きだった事は訊いてるんですけど……」

 

 ソルティリーナとメディナは顔を見合わせ笑う。

 快活な笑み。昔話を笑い話を愉しむかのような顔で。

 

「そうだな。夜は長い。少しばかりそう言う話をして共通見解と話題の共通を図ってみるのも良いだろう」

 

 




~りざると~

 メディナが合流しました

 パーティーメンバーにあと一人空きがあるようです

 一名メンバーを追加出来ます(アンケート発生)


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みっしょんえくすとら ユート初等錬士のウルトラトンチキチート列伝 きこりのわざ

とぴっくす
 記憶解放術
 アンダーワールドにおける武装に纏わる最終奥義と言えるもの。
 神器と呼ばれるモノにはその前段階となる存在がある。

 金木犀の剣ならば、文字通り 金木犀 がその大元である。
 記憶解放された金木犀の剣は その花びらの一つ一つが最高ランクの優先度を持つ。
 結果、その吹き荒れる花びらに巻き込まれたモノはその花びらによって瞬壊させられる。

 神器ごとに特色ある記憶解放の形となるため、どのような形で解放されるのかは蓋を開けてみるまでは解らない。
 記憶解放術には様々な派生が存在するとみられる。
 本作においてのロニエの場合は 瞬間解放 と呼ばれ即座に【夜空】のリソース吸収能力のみを引き出す手段がある。
 原作でキリトがやった剣の記憶そのものを相手に打ち込んで樹に成長させるのも記憶解放術の一環と言える。


~北セントリア市街 北セントリア修剣学院~

 

 木こりの技が見たい。とそうおっしゃったか。

 その声は食堂に重く響いた。

 

 ゆらりと立ち上がる。

 

 このユートという少年は兎角 同年代の上級貴族と折りがわるい。

 一定線の礼儀を払えぬ者には一切の容赦を持たないのである。

 メディナ・オルティナノスやソルティリーナ・セルルトのような人間のできたものであれば、敬意も表するし、相応に礼も採る。

 

 ただ無意に己が貴族である。と言うだけのガキに一切屈する余地などないと言わんばかりに真正面から反意するのである。

 故に。彼等はユートという少年にではなく、彼と共に此方にやってきた少年ユージオに貴族特有の特権意識から来る蔑視と悪罵をするのである。

 

 不幸だったのは。

 

 悪魔の樹、ギガスシダーを切り倒す。

 その為の天職を授かっていたユージオを手助けし文字通りの 木こりの技 となさしめたのが、ユートという少年であるという事実と真実。

 然るに。木こりの技を見てみたいという天職蔑視の発言は。

 

 この機を持って彼等に真実を見せる事になるのである。

 

「……ユート。ステイクール! 落ち着けって! いくら彼等が上級貴族だからと言っても 君のアレや僕の青薔薇に耐えられるわけがないだろう!?」

 

「何を言うんだ。ユージオ。彼等が見たいと言われたのだ。それは翻って言えば『自らの天命を削ってでもいいから味わいたい』と天命欠損を自ら申し出たに等しいだろう?」

 

 え? そんなことひとこともいってない・・・と言う顔つきになるライオス。

 無論反論しようと試みる。

 だがしかし、ユートは理解している。この手合いには一切の発言の余地を認めてはならない。徹頭徹尾、此方の発言で飲み込むのだと。

 

「それにだ。彼等は己が貴族であるがゆえにひとつ気が付いていないんだ。己の立場故に、他者の天職を下に見下げるのが常である彼等には、重大な法理に反する行いがあると」

 

 そこでユートの眼は罪ある者を裁くが如き断罪者の眼を持ち、ウンベールとジーゼックを見る。

 

「天職とは即ち 世界がそれを与える。貴族を貴族たらしめるように。ユージオ。君の【ギガスシダーの刻み手】とは 世界が定めた公理に他ならない。それを蔑視し下に見下げる事は転じて 公理教会が定めた禁忌目録違反に該当する行いだ。軽微な一例故、目敏く罰せられる事はないし、貴族という立場のみで守られているだけで彼らはすで禁忌目録に違反する行いを幾つも犯している」

 

 良かったな。お貴族様で。

 とその立場故に守られてる身を口にせずに見下す目線をもって断じる。

 

「こうした貴族達が修剣学院を優秀な成績で卒業し、騎士として迎えられるとき、その時までに行ってきた軽微な罪の総算を持ってその処遇が決まる。だから、こう言う手合いのお貴族様は騎士にはならず箔をつけたら領地に引き込むのが条理。騎士になろうものならそれまでの微罪の清算が起きるからな」

 

 そこまで言って場を収めるように乾いた拍手の音が響く。

 咄嗟に立ち上がり、その拍手の主を迎える。

 

「「アズリカ寮監」」

 

 ユートとユージオは咄嗟に騎士礼を採る。

 

「見事です。そこまで、法理に通じてるとは思いませんでした。彼等高等貴族にこの学院での下等貴族への横柄な立ち振る舞いを禁じていないのは総じてそのような理由がある。それをこの段階で知っているとは。よほど良い師に恵まれ、この学院に送り出されたのですね」

 

 他の者達は何故、最上級の礼の表し方を寮監にするのかが理解出来ない。

 理解出来ないところが彼等の限界であった。

 

「はい。この身には加護が常にあります故。この世界を渡るに不足無い知識、智慧を与えてもらいました」

「はい。僕は彼を通じ、その智慧を。知識を。僕らが共に目指す場所に至るために」

 

 ライオスやウンベールには理解が出来ない。

 何故、自分たちにはあれほど、横柄に貴族たる身を下に見下げる男があの寮監如きにあれほどの敬意を払うのか。

 

「……仮にも修剣学院に通い、その寮生ならば、自分たちの生活を管理する寮監がどのような方なのか理解しておいた方が良いぞ?」

「七年前の四帝国統一大会における元ノーランガルス北帝国第一代表剣士。その気になれば、この学院の中でも1か2の剣士。そう言う方が僕らの寮監だ」

 

 未だ、礼を採らない者達を牽制するように伝えると。

 彼女はそれを手で軽く横に振り。

 

「良いのです。私の天職はそれをするにたり得ません。剣を振る事は出来るが、それを指導する立場ではありません。もっとも、寮則を違反したのであれば特別指導も定かではありませんが」

 

 そこまで言うと彼女は居住まいを正し。

 

「ユート初等錬士。申請があった武器について、教官各位との協議が終わりました。神器相当である事 その上で通常保管が可能である事を踏まえ、所持を認める形になりました。また、剣以外の武装においても、所持についてではなく、保管の形においては随時協議する事になっています。史学や遺物学の教員が目を剥いていましたよ」

 

 それを訊くやいなや。

 ユートは腕を振り。

 その手に一振りの剛剣を。否。それは冰気を纏うが故に巨剣に見える。

 斧であり剣。斧剣【氷魔 ニーズウォック】。

 竜骨斧剣たるそれは重く鋭い。

 

 ノーランガルス北帝国 その最北にある北の洞窟。

 そこは寓話に語られる ベルクーリと白竜 の逸話に語られる白竜の棲まう地。

 その地にあった死したる白竜の骨をユートは如何なる神技を持ってか武装に誂えた。

 それは神獣とまで言われた白竜より作られた神器となる。

 ユートはその名も無き白竜に名を与える。

 これにより、その白竜には記憶が与えられる。

 命名則による因果転写。【冰龍 イヴェルカーナ】。

 それより武装を作り出し、具足と武具を無数に生み出したのである。

 

 見るだけで畏縮してしまいそうになるそれは。

 担い手に対して敵意持つものに 武器の形を持ってして、殺意の代わりに凍てつくような冰気を感じさせる。

 既にして、その武装を完全なる支配下に置いている証左である。

 

「……ありがとうございます。これで、あの【木こりの技】が見たいと言ったあのお二人に、存分にその技を示す事が出来ましょう………ん? あの二人はどこに?」

 

「君がその剣を呼び出した瞬間にさっさと逃げ出したよ…全く、そいつを持ち込むのか君は」

 

 ち。逃がしたか。

 と分かり易い悪罵を吐いて何事もなかったようにその武器をイベントリに収納する。

 

「アズリカ先生。時に確認したいのですが」

 

「なんでしょう」

 

「もし仮に、整合騎士の秘奥たる記憶解放術にて 神獣や魔獣のような獣を元にした記憶が再現された場合、それが自律行動する条件において、敵対象の天命が削がれた場合、それはどこに責任が行きますかね?」

 

「…あなたは…いえ。深くは追及はしません。その問いへの回答は、『不遇なる事故』になるケースもあり得ますとだけ」

 

 

 




~りざると~

 ユート(ウルトラトンチキチートオリ主)の初等錬士時代。
 モンハンの古龍種のデータをクロスオーバーで叩き込む。

 これによってベルクーリは整合騎士でありハンターになる意味不。
 北の洞窟の白竜は 冰龍イヴェルカーナ だった事にされた。されてしまった。
 結果、冰龍シリーズの生産とEXラヴィーナγ防具が作られた。作られてしまった。

 この世界線においてのユートの抜刀術はこれを着用する事で 冰気練成+抜刀術を扱う。
 あと、南帝国の砂漠辺りにはディアブロスが居た事にされた。
 西帝国にはジンオウガを初めとした雷属性のモンスター、東帝国には険しい山岳地帯である事から飛竜種リオレウス、レオレイアの両希少種。

 アルバトリオンやミラボレアス、ネルギガンテを持ってこないだけ穏当だと後程彼は語った。

 いつの間にか居た事にされたモンスター達のデータが混じったとき、ラースの管理をしている菊岡、比嘉の両名はレイプ目になった。


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みっしょんえくすとら ユート初等錬士のウルトラトンチキチート列伝 えんはんすあーまめんと・たいじゅつのすぺしゃりすと

~とぴっくす~
 武装完全支配術:エンハンスア-マメント
 記憶解放術の前段階とされる。
 
 神器に類する武器を扱いこなしている証左とされる。
 その武器の持つ性能を引き出し リソース解放による天命回復、損傷修復など様々な用途がある。

 青薔薇の剣であれば その剣を中心として氷のフィールドを形成する。
 夜空の剣であれば かつての姿を一時的に取り戻し巨木の枝葉で相手を打ち据える。

 本作のロニエの【夜空】の場合は 悪魔の神樹剣とも呼ぶべき大型大剣に姿を変える。その形態からの最上段振り下ろし『天蓋崩』 や 旋風車による全周囲薙ぎ払い などといったソードスキル連動を行う。
 
 ユートが『外の世界』から持ち込んできた武装には本来あり得ないが、アンダーワールドに持ち込む事で武装支配術、記憶解放術が定義されるようになった。

 冰龍シリーズであれば、記憶解放術によって、かつての姿を取り戻した『冰龍イヴェルカーナ』による過冷却水による氷結ブレス、周囲全周に発生する霧氷嵐など単体広域殲滅型というアンダーワールドに設定してない攻撃タイプになった。比嘉は泣いていい。

 武装支配術においても 打ち込んだ相手の傷口を冰気によって凍結させた後、物体強度を低下させ氷砕するなど オブジェクトの持つ個体強度を無視する攻撃 や 冰龍イヴェルカーナの持つ天命最大値と同等強度の氷壁を展開する防御技など無数存在する。

 ユートはこれを使ってギガスシダーを反対側から刻んでいったため、彼に対して木こりの技を見たいという事はもれなく、冰龍シリーズを味わいたいと同義になる。
 



 式句を唱える。

 

「エンハンス・アーマメント…ッ 吠えろ!イヴェルカーナ!」

 

 本来属する正しき世界において。

 スラッシュアックス:属性解放突きと呼ばれるそれは。

 

 その鋒から吠え猛る冰龍の咆哮の如くに 冰気を炸裂させた。

 

 突き刺した鉄塊は その本来の姿を忘れるかのように氷塊に如くに凍りそして破砕された。

 

「…これが、先ずは第一段階。 冰気咆哮 とでも名付けておくかな」

 

 特別に用意させた鉄塊をただの一太刀、ただの一回でなんのようも為さない鉄くずに為してのける。

 アレがもし同等の人体に向けて打ち抜かれたのであれば、確実に天命を全損させうるだろう。

 そも、彼の扱う武装のほとんどは人外を相手にする前提だ。

 対人用の装備もあるし、スキルもある。

 

 その証左に。

 

 武装を解除し、何も持たぬ素手。

 

 ユートはこの世界がこれまでの世界より、より人体の再現に優れている事を実感したのは 体術、格闘技に分類されるものに違和感がない事を感じたときだった。

 投剣、体術 と言ったものは 本道ではないが故に、流派立てられたものにならず、各流派に手管として残るのみではあった。

 

 重撃、不意打ち と呼ばれる技法がアンダーワールドにはある。

 それは相手を失神させる技法であったり、歩法を使い相手の背後に廻り込み、相手の後頭部を打撃しスタンさせるなど正道からは嫌われるような動きであったりはする。

 

 ユートはそこより発展させて、体術スキルを定義させる。

 源流流派 アインクラッド式体術であり 現実世界より持ち込んだ格闘武術である。

 厳密に定められた型に身体を収めたとき【秘奥義】は発動する。

 担い手無くして使うものがなかった【閃打】と呼ばれる基礎の体術ソードスキル。

 ユートはユージオにこれを先ずは使えるようになるように仕込んだ。

 

 ソードスキルの隙に打ち込み片手で行える牽制の技。

 続いては【前方宙返り回転蹴】:ペイルライダー と。

 大道芸の如くと揶揄されるのであればそれをとことんまで極める。

 その上で、揶揄したものを地に這いつくばらせる。

 

 片手剣においてはユージオは紛れもなく天才であった。

 それは、殊の外ユートには喜ばしかった。

 剣腕を自らで磨くセンスがあるのであれば、切れる手札を増やせば良いのだから。

 

 そう。明確に天命を欠損させずとも、対象を制圧する術を身につけさせる。

 

 修練の元、特別指導と監視をアズリカ寮監に依頼しその許諾の上、天命を削ぐか削がないかのギリギリのバランスでの組打ち。

 それに伴う痛みに対する痛撃耐性訓練。

 

 これから挑む先を思えばこそ、痛みで次の一手が打てなくなる。などという事は許されない。

 

 ユートはユージオの目指す先を見据えていた。

 

~北セントリア セントリア修剣学院 早朝の広場~

 

 少年が特徴的な構えと共に。

 手の型は拳を握るのではなく掌の型。

 左手を手首で軽く曲げ、肘もまた曲げて目前備え。

 右手は丹田に備えるように掌の型。

 屈伸運動に備え、両膝は軽く曲げられている。

 

 刹那。

 早朝の広間に 響く音。

 瞬時に動いた少年の動作が一連の流れの中に 震脚 と呼ばれる固有の動作を織り交ぜたのだ。

 

 飛び上がる虎が猛襲するが如き動き。

 前方に飛び込むように脚を動かすと同時に、伸ばし振り下ろす左の手。虎の左前脚の爪による攻撃を模す。

 振り下ろす左の掌と踏み込む脚。その動きが同時に至る。

 足が地に着くと同時に右足を前に蹴り出す。前方に引きのばさるかのように急激な運動。

 右の手もまた同じく振り上げ振り下ろすように。

 右足の接地。それと同時に左の手を突き出すように打ち込む。

 一連の流れを素早く、正確に辿る。

 反復を重ねる。

 

 八極拳は猛虎硬爬山の動きを象り真似る。

 肘撃からの鉄山靠。

 流れを組み、一連の動作として連環する。

 その最中に特色あるものとして、震脚が織り込まれる。

 

 地を鳴らすその踏み込みはもはや早朝の寮の前では風物詩となっていた。

 

 誰もそれを止める事は叶わない。なぜならば、その動きの一つ一つに【秘奥義】の発動と同じくして、纏うものがあるのだから。

 体術の【秘奥義】として成立しているそれは、既にして五体が剣と同等の破壊力を持つに等しい。

 繰り出す肘 も 背中からの体当たりも肩口からの体当たりも。

 掌底も。何もかもがイメージの補強を受けて絶紹の域に上っていた。

 

 開門式から歩法、猛虎硬爬山、肘撃、鉄山靠。往復するように。

 

 動きを切り替える。

 身体の伸縮動作を大きく伸び伸びと行うように。

 劈掛拳(ひかけん)と呼ばれる動きの要諦は柔の動作。

 振り下ろしと振り上げを掌打の形で行い、大きく動きをとる。

 その動きは直線的ではなく曲線的。

 いっそコミカルにさえ見えるが、上下の運動は激しい。

 全身の力を抜き腰を支点にして上体は上下左右に揺れる。

 その揺れさえも振り回し振り下ろす掌打の威力に繋がる。

 激しく飛び上がり、激しく着地する。

 その反動で振り上げる掌打の威力を高める。

 

 八極拳と劈掛拳。

 その双方をイメージを補強する事でアンダーワールドに引き下ろしたのである。

 

 相手の背後や側面を採るように動く劈掛拳。

 直線的に動き絶大な破壊力を持つ八極拳。

 それらを絶大な威力に引き上げる発勁。

 轆轤の如くの反発を勁力に取り入れしなやかでありながら素早く。

 

 この修練を見たアズリカは後にこう評した。

『徹底した対人戦闘技巧。人型大の存在ならば、彼は武器無くしても征する事が出来る。あの動きに神聖術による補正を加えたのならば、その五体全てが武器と言えましょう』と。

 

 そしてそれは事実であった。

 

 初年次において彼は最初の入学試験において木刀一本。学院の正式剣術とは懸け離れた技で優秀な成績を収めた。

 相手の攻撃に合わせて先を採る 後の先による制圧。

 ハイ・ノルキア流の天山烈波 を未熟な使い手なれば。と言ってその鼻先に剣を突きつけて征する。

 ノルキア流の雷閃斬 を 真横一文字に発動前に打ち据える。

 などといった対人において、これまでにない素早さで圧倒。

 それだけならいざ知らす、その木刀の構えを片手剣の型に備えてもまた。

 

 始まりの合図共に即時発動し相手の剣を叩き落とす【ソニックリープ】。秘奥義を持って初手を征する立ち回り。

 打ち込んできた相手を剣で弾き、生じた隙に袈裟で切り落とす【スラント】。

 

 自在に剣を繰り、明らかなる格の差を見せつけたのである。

 

 だが、それに留まらず 120名の中で総合の1位を 姓 持たざるものが持ち去るという学院始まって以来の快挙であり、貴族出身者達からは看過せざる暴挙を成し遂げたのである。

 

 二年の傍付き錬士を選ぶ権利を持つ上級修剣士達は、苦慮と己の立場から、最上位のものを敬遠するという事態となり、最終的にソルティリーナ・セルルトが初等錬士最強を示したユートを指定する事になった。

 

 武技、剣技ともに優れ、姓持たざるものとは思えないほど、深く深奥に至る知識の数々。

 これほどの存在であればと過去を調べてもその正体に当たらず。

 

 彼は嘯いてこういった。

 

 僕は三女神の寵愛と三聖人の庇護を受けていますから。

 

 と。

 




~りざると~

 体術スキルに八極拳と劈掛拳のような何かの要素を加えられた。

 ユートがイメージ補強して持ち込んで成立させた。させてしまった。

 ユートがトンチキに強い理由は キリト君と違い己に抱くイメージが強固で絶対である事で補正が凄まじい。彼はリアルワールドに回帰するまで己が不破で不敗で不倒であると定め、敵対するものは必ずや打破すると決めている。相手がどれだけの自負があろうがそれすらもねじ伏せると。


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