ホロライブ・オルタナティブver.IF正式版 (天野空)
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始まりは突然の出会い

そこはある木の下。
ゲームに入った俺は木の下で自分のステータスを確認する。
そこには聞いた事のないレアスキル。
どういう運命が俺を待っているのやら。



「ここがバーチャルの世界か」

始まりは町の近くにある木の下。

俺が友達から勧められて始めたVRMMORPG。

最近リリースされたこのゲームを友達は嬉々として俺を誘ってきた。

友達が言うにはこのゲームはあるVTuberのグループのAIが参加しているゲームであるという事だ。

俺はまだそのVTuber達を知らないが、最近やるゲームがなくて暇していたところだったが今日入ってみた。

最近リリースと言ったが、β版からすればもう半年位たっているゲームでβ版からやってる友達からすればかなり俺は遅すぎるらしい。

「さてと」

俺はゆっくりと立ち上がる。

ステータスをオープン。

ま、レベル1だからなぁ。

特に目立ったところはない。

ただ、友達が入ったら直ぐにスキルを確認するように言われた。

このゲームは携帯と連動させて入るゲームなのでリセマラと呼ばれる行為が基本出来ない。

なんか誰推しやらを調べる為っていってたっけ?

リアルでの推しへの気持ちがゲームに影響するんだとかなんとか。

ま、俺は誰も推しがいないからフリーなんだけど。

もちろん、フリーで入るのもOK。

ただ、初回特典みたいなのが受けれないだけらしい。

「さて、スキルはと」

普通に戦闘系統とか魔法系統のスキルが一般的で、たまにレアなスキルが当たる時もあるらしい。

スキル、【運命】。

???

なんだ?

【運命】って?

スキル説明を見る。

《それはなるべくしてなった》

説明になってねぇ。

なんだこのスキル当たりなのか?

レアスキルであるのは確実だけど。

ま、深く考えないようにする。

さてと、友達と会うにはもう少し先か。

持ってるアイテムを見る。

所持金は1万。

持ち物は鉄の剣と樫の杖、皮の鎧。

ま、このゲームは職業とかは中に入ってから自分で決めるタイプみたいだから剣と杖が用意されてる感じか。

アイテムはポーション10個。

今サービス期間中でお金とポーションが初期から多いらしい。

じゃ、鉄の剣と皮の鎧を装備。

魔法適正は少しだけあるからこれはまたゆっくりとやるか。

俺は町には向かわず森に向かった。

ま、普通は町に向かうんだろうけど、ゲームではセオリー通りしないのが俺の流儀だ。

それにこういうゲームは自由度が高いしな。

ちなみにこのゲームは死んでしまうと所持金が半分になって持ってる全てのアイテムの中で1つランダムで消えるらしい。

ま、友達曰くゲームを進めればこのデスペナルティも防ぐようにできるらしい。

今の俺には特に意味ないけど。

森の中はすごく静かだった。

モンスターぐらい出ると思ったけど、何者にも遭遇しないなぁ。

本当にゲームの中かと思うほどリアルで臨場感がある。

森の癒しパワーも感じる。

感じがする。

ん?

何か聞こえるな。

森の奥から誰かの声が聞こえる。

俺は気になりそちらに向かって走る。

ぱっと突然視界が広がった。

森の奥へと行っていたつもりが森を抜けたらしい。

そこは広大な平原。

そして、そこでは大勢の猫?とウサギ?が戦っていた。

いやぁ、シュールだなぁ。

猫?とウサギ?の戦争って。

ん?

猫?達の奥の方とウサギ?達の奥に人がいる。

1人は巫女の衣装、もう一人は人じゃないのかウサギの耳が付いてるなぁ。

って、戦っていた猫?とウサギ?と目が合う。

あ、やば。

合わせて10匹ぐらいの動物が襲ってくる。

これは何かヤバい気がする。

俺は慌てて森の方に走る。

追っかけてくる10匹。

いきなりゲームに入ったそうそう猫?とウサギ?に絡まれて死ぬのか俺~

ドン

いて。

俺は何かにぶつかり尻餅をつく。

《スキル【運命】が発動しました》

機械音声が頭の中に響く。

なんだ?

ぶつかった物を見た。

シロクマ?

「ん?どうしたのだいふく」

だいふくと呼ばれたシロクマ?の向こう側から人がこちらを覗く。

「人?」

その子どもは1本の釣竿を担いでいた。

青い髪を後ろで束ねている。

「えっと」

俺は後ろを振り向く。

あ、動物来てる。

しかし、動物はその子どもを見た瞬間動きが止まる。

「あらら、まさか先輩達の戦争に巻き込まれた感じかな?」

子どもは俺の後ろに回り、動物と対峙する。

一歩下がる動物達。

なんだ?この子ども。

「さてさて、私も1人で先輩達の精鋭と戦うのは疲れちゃいますねぇ」

「なら、せっかくの初心者プレイヤーさんの前ですのでとっておきを見せちゃいますね。

なので、よかったら推しにしてね」

その子はこっちを見た瞬間。

釣竿を地面に置く。

突然子どもの足元から吹雪が子どもを取り囲むように空に昇る。

そして、吹雪が晴れた時、そこには子どもはおらず1人の女性が立っていた。

髪の色はさっきの子と同じだがスタイルがまったく違う。

「うぉ、まじでラミィちゃん」

「こ、こんなところで会えるとは」

「じ、自慢できるぞ」

なんか猫?とウサギ?が騒いでる。

「それじゃ、ちゃっちゃっといくよ」

そういってラミィと呼ばれた女性は大きく息を吸う。

「ゆきみんさ~ん」

大きな声で誰かを呼んだ。

「うわぁ、ラミィちゃんの大召喚来た~」

「これで俺死んでも本望だ」

「同じく」

そして、俺を含め動物達はいつの間にか広大な雪原に居た。

ぼん、ぼんと雪の中からもふもふな生き物が現れる。

「雪民さんやっちゃうよ」

ラミィの号令で雪民と呼ばれた生き物が一斉に動物に群がった。

いや、どのくらい出てくるんだこの生き物。

次々と現れて今や動物達はもふもふの山に埋もれている。

しばらくしてもふもふの山が崩れる。

中には動物達はいなかった。

「ありがとう」

その言葉にその場でぴょんぴょん飛びながらもふもふは消えていった。

いつの間にかさっきの森。

「さて、さっき見た姿は誰にも言わないでね」

子どもに戻ったラミィは釣竿を担ぎ俺に手を振りながらだいふくと森の中へと消えていった。

な、なんだったんだ?

俺はその後、動物達が戦争していた場所に行ったがそこにはもう何もなかった。

なんか化かされたみたいだ。

時計を見る。

そろそろ友達と合流の時間か。

俺は始まりの町へと戻った。




始めましてのかたよろしくお願いします。
前に作品を読んでくださったからまたよろしくお願いします。
ランダム掲載ですが気長にお付き合いください。
この世界は前作ホロライブオルタナティブver.IFの世界のその後になります。
よろしければそちらも読んでくださるとありがたいです。
ではでは、のんびりとホロライブオルタナティブver.IFの世界を楽しんでくださいね。


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ちょっと俺に説明させろ その1

いきなり死ぬ思いをしながら超レア体験をしたあなた。
そろそろ友達との約束の時間なので、始まりの町へと急ぐのであった。


「よ、やっと入ったんだな」

始まりの町にあるとある酒場で俺は友達と待ち合わせをしていた。

「すまんな、遅れて」

「いやいや、もう半年も待ったからなぁ。

今さら5分や10分遅れてもなんとも思わん」

「ま、確かに誘われてから半年経ってるな」

俺は友達が座っているテーブルにつく。

「ご注文は何にしますか?」

「えっと。じゃ、この…」

「ラミィ水2つで」

「はい、かしこまりました」

「おい、ラミィ水って俺のも一緒に注文するなよ」

「いやいや、これが普通のとは味が違うんだよ」

友達は笑顔で答える。

いや、まぁ、いいけど。

ん?まてよ、ラミィってどっかで聞いた事あるな。

「あのさぁ、ラミィって名前聞いた事ある」

「ん?どこで聞いたんだ?

確かVTuberあまり知らなかったよな?」

「え?VTuber?

いや、さっき会った」

「は?さっきっていつだよ」

「いや、ホントにさっきそこで」

「はぁ?

確かにこの【ファンタジー】の世界にラミィちゃんは住んでるけど、そんなに簡単に遭遇出来ないはずだぞ」

「そ、そうなのか?」

じゃ、あれはラミィって子じゃなかったのか?

「まぁ、VTuber以外によく似た名前つけてる人もいるからなぁ。

間違えたんだろ」

「そう、なのかなぁ」

「まぁ、聞け。

まずは初心者のお前にいろいろと教えてやるから」

「ああ、頼む」

 

まずはこの世界【ホロライブワールド】は主に4つのワールドが実装されている。

1つは現実世界に似た【バーチャル】

1つは剣と魔法の中世の世界【ファンタジー】

1つはカジノや和風の世界が混ざる【ゲーマーズ】

1つは天空に浮かぶ街【ふぉーす】

それぞれのワールドには始まりの町があるが今回は友達の拠点のあるこの【ファンタジー】の町から始めた。

それで、この4つのワールドにそれぞれホロライブに所属しているVTuberが住んでいる。

といっても本人ではなくNPCとして。

ただ、このNPCはAIで本当にプレイヤーと同じように受け答えもしてくれるし、感情もある。

そこがこのゲームの醍醐味でVTuberと共に冒険が出きるかもしれない、直接会話が出きるかもしれないというところだそうだ。

「さて、こっからは俺がなぜこのワールドを選んだのかを教えよう」

「あ、ああ」

「のりきじゎないなぁ。

まぁ、いい。

ここ【ファンタジー】は実は今あるワールドの中で一番ホロメンが住んでいる人数が多いのだ」

「ホロメン?」

「あ、ホロライブに所属しているタレントさん達ね」

「あ、なるほど」

「それで俺の推しであるねぽらぼの皆さんもここに拠点がある」

「ねぽらぼ?」

「あ、いや、ほら、そういうグループだと思って」

「ああ、そうなんだ」

「なので、ホロメンに会う確率も高いわけ」

「へぇ」

「なんかのり悪いなぁ」

「ごめん」

「いや、いいけどこれからハマってくれれば。

それで、確実にホロメンと会う方法もいくつかある。

1つはホロメンが行うLIVEに行く」

「ん?AIがLIVEするのか?」

「いや、その時だけはリアルのメンバーさんが入れ替わってやっているらしい」

「へぇ」

「次に【バーチャル】にある【学園】に入学する。

そこにはホロメンの人達が学生でいたり先生としていたりするんだけど、入学するには倍率がめちゃくちゃ高い」

「それはそうだろうな」

「次に【ゲーマーズ】にある大神社の1つに行けばそこで巫女長をしているオリジナルと呼ばれる世代のさくらみこちゃんに会える。

ただ、ある期間中に参拝する時、出てきてくれるんだけど、かなり人数いるから下手すると人混みで見れない時もある」

「それって確実って言えるのか?」

「も、もちろん、言える。

例え豆粒だろうが姿見れるだけでもすごい事なんだぞ」

「そういうもんか」

「そういうものだ」

「だったら、住んでる場所分かってるなら家の周りにいればいいんじゃないか?」

「バカかおまえは、リアルでもそんな事したら犯罪者と間違われるだろう。

この世界はバーチャルだからな位置特定はすぐ分かる。

何時間もホロメンの家の周りに居座ってると、どこからともなく大空警察が来て、大空監獄ってとこに連れていかれ数ヶ月ログイン出来なくなる」

「何それ怖い」

「ま、噂だけで捕まったやつはいないらしいけど、ゲームを始める前にきちんと注意書きで大きく表示されるからな」

「そういえばそんな事書いてたような」

「読みとばしただろう。

そういうのこのゲームで命取りだぞ」

「はは、ごめん」

「後、もう1つ命取りになる事なんだが、その調子だと見てないかもしれないから言うけど、この世界でセンシティブな行いが目立つとBANされる」

「え?」

「ま、言うなればキャラクター情報が完全に消されてログイン出来なくなる」

「そうなんだ」

「ま、おまえは大丈夫だろうけど。

口に出すまではまだ誤魔化せるが行動に移すと死ぬから」

「分かったって、そんな怖い顔して迫るな」

「さて、最後にこの世界にいるホロメンについてだな」

「まだあるのか?」

「うるさい、今日は予備知識を積める日なんだ」

「わ、分かったって」

「それじゃ、説明するぞ。

まずさっきも出たオリジナルと呼ばれる5人。

基本みこちゃん以外は拠点を持たずワールドを旅しているから会うのは激レア。

特にその中でもときのそらさんは別格だな。

噂では彼女のAIはおらず本人自らゲームをしているらしいからこの世界にいる時間も少ない。

イベント以外で会えたら一生分の運を使ったと思った方がいい。

次に第一世代と特殊世代の計8人。

この8人は拠点が決まってるから会いやすいかな。

この中で特殊世代の4人は自分の神社を持ってるからそこに行けば会える確率がある。

次に第二世代の5人。

この人達もほぼいる場所が決まってるんだけど会うには相当頑張らないといけないなぁ。

特にあやめちゃんに会うには根気がいる。

【ゲーマーズ】にある鬼生門って場所に低確率でポップするらしい」

「え?ポップ?モンスターか?」

「ま、ある意味命の危険はあるな。

そこで出会うと必ず戦闘を仕掛けられる。

もちろん逃げれない。

ただ、もし勝つ事が出来たらかなりすごいご褒美がもらえるらしい。

まだ、誰も勝利した事ないけどな。

次はこの【ファンタジー】に拠点を置く第三世代の5人。

この5人はある場所に行けば会える確率は高い。

それぞれ建設会社の社長だったり、騎士団長、海賊団船長、霊園の守り人をしてる。

次に第四世代の5人。

主に【ふぉーす】を拠点にしてる人が多い。

だから、始まりの町を【ふぉーす】にしてないかぎりなかなか上へ行けないから会う確率は低いな。

最後に第五世代。

俺の推しであるねぽらぼの皆さんだ。

拠点はここ【ファンタジー】にあるから出会いやすい。

ま、神出鬼没な人達が多いけどな」

「なるほど」

「後はこの人達以外にもホロメンはいるらしいけど場所が特定されてないらしい。

中にはこの【ホロライブワールド】に収まらない大きさのホロメンも存在するとかしないとか」

「まじ」

「あっともう少し話したいが話が長くなってるから少し休憩な」

「それは助かる、情報が多すぎて頭パンクする」

「大袈裟な。

しかし、アバターそういうのにしたんだな」

「ん?」

俺は自分の姿を見る。

「まぁね、身長、体格、細かい部分まで決めれるし、種族や性別も選べる。

リアルとはまったく違う自分にもなれるしね」

「確かにな、そこがゲームの醍醐味とも言えるし」

「それじゃ、休憩したらもう少し説明するぞ」

「はいはい」




今回と次回の2話に分けてちょっとしたこの世界の説明をさせていただきます。
この主人公はこの後も名前が出てきません。
主人公が誰なのかは読んでくださるあなたが決めてください。
姿形、種族や性別さえも変えられるこの世界で冒険を共に楽しんでいただければ幸いです


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ちょっと俺に説明させろ その2

説明の間に軽い食事をとり、食後のコーヒーを飲む。
友人が椅子に座り直した。
さぁ、また説明の始まりだ。


「さて、休憩も挟んだし続きを語るぞ」

「まじで少しの休憩なんだな」

「そう、言ったろう。

さて、この世界のホロメンとワールドは話したよな?

次はこの世界のシステムをいくつか教えよう」

「お手柔らかに」

「この世界には推しシステムと言うのがある。

推しって言うのはそうだなぁ、簡単に言うとめちゃくちゃファンになった相手って感じかなぁ、上手く言えないが」

「なるほど」

「こうやって誰かにその人の事を教えたくなる程好き、ん~単なる好きでもないんだが、難しい」

「ま、それはおいおい俺も分かるかもしれんし」

「うむ、まぁ、その推しシステムって言うのが、このゲームをする前にパソコンやら携帯と連動してリアルでホロメンのメンバーとかに入っているといろいろと受けられる初期ボーナスの他に、このゲーム内でも推しを選択して特典を受けられる。

ほら、ステータス画面に推し一覧ってのがあるだろ?」

ステータス画面を開く。

確かにそういうタグがあるな。

開いてみる。

ほとんどが黒色で分からないが3人だけキャラアイコンが光っていた。

「普通は一度そのホロメンを見ないとキャラアイさコンが光らないんだよ。

でも、リアルでホロメンのメンバーになってるとそのホロメンが点灯してる」

「えっと、3人光ってるんだが?」

「はぁ?

見せてみろよ」

俺はステータス画面を見せる。

「普通は人のステータス画面を勝手に見れないが今回は俺が許可をもらえたから見れるようになってる、そこは覚えといた方がいい。

知らん人にはステータスは見せないようにな」

「分かった」

「あ、本当だ。

ラミィちゃんが点灯、ぺこみこペアが点滅か。

っていうかラミィちゃんといつ会ったんだよ」

「いや、だから始めに言ったろう」

「くそう、俺もまだ近くで見た事ないのに羨ましすぎる」

めちゃ悔しがってる。

「ま、いい、ビギナーズラックってやつだな」

「そうだ、俺のスキルなんだけど」

「おっと、それは聞けない。

自分の所持スキルは例え仲間でも公開しない方がいい。

どうしてもそのスキルの詳しい事が知りたかったらネットで調べるか、スキル鑑定士に会って調べてもらえ」

「ああ、分かった」

「ま、さっきの続きだがその光ってるアイコンをタッチすると推しますか?はい、いいえと出てくるからはいを押すと推しにする事ができる。

推しにするとさっきも言ったように1ヶ月に1ポイントがもらえてそれを使ってメンバーショップでアイテムを買う事ができる。

ただし、推し1人につき1ヶ月500G払わないといけない」

「お金いるのか?」

「もちろんだ。

でも、全然高くないむしろ安い。

限定アイテムを手に入れるチャンスと特典がついてこの値段だからな。

それにこの値段なら一回クエに行けば稼げる値段だ」

「なるほど、限定が手に入るのはいいな」

「だろう?

なんで、おまえも入れ」

「ん、考えとく」

「ま、誰を推すかはじっくりと考えないといけないのは確かだからな。

ねぽらぼいいぞ。

そして、特典の1つとして、ホロメンが使う奥の手大召喚に参加する事ができる」

「大召喚?」

確か、森であったラミィって女性が使ってた。

「そう、この大召喚はホロメンが自身を推してくれてるプレイヤーを呼び出す技なんだよ。

仮に5000人推しがいるホロメンが使うと5000人味方を召喚できる。

しかも、この召喚に応じて戦闘に参加した場合。

やられてもデスペナルティなしで経験値も倒した分だけ均等に参加者全員に振り分けられる。

ドロップアイテムは活躍した人が後からホロメンからのメッセージ付で送られてくる」

「それは美味しいな」

「あと、ログインしてないとかクエストしてるとかで大召喚に参加できない時は自分のステータスを参考にコピーが代わりに召喚に参加する事になってる」

「となると複数推しがいる時は、その中の1人を選んで参加する訳か」

「く、そうだ、ちなみに参加してない大召喚でもらえるアイテム、経験値はない。

そんなことよりも誰を選ぶかいつも悩む」

「1人にしないからだろ」

「俺はこの4人を推したいんだ」

ダンとテーブルを叩き血の涙を流しながら立ち上がる友人。

何故か周りから拍手が。

もらい泣きしてる人もいる。

「ま、まぁ、この話は置いといてだな」

周りに手を上げながら座る友人。

この雰囲気にはまだついていけない気がする。

「ま、ここまでが大体のゲームの説明だな」

「いや、世界観とか主にホロメン説明しか受けてないが、ゲーム自体の説明は?」

「ん?

それは今から俺と一緒にクエスト受けて学べばいいだろ?」

友よ肝心なところは実地かよ。

「その方がおまえも分かりやすいだろう」

「ま、確かにな」

俺達は代金を支払い酒場を出た。

「これから行くのがギルドだ。

通常のクエスト、討伐や採取のクエはそこで受けれる。

このゲームの中でもお腹は空くし眠たくもなる。

徹夜を続けると状態異常になるしな。

で、食べたり寝たりするにもお金は必要だ。

それを得る為の場所がギルドだ」

ギルドに着いた俺達は簡単な薬草採取のクエを受けた。

場所は俺が初めて行った森だった。

友達と森の入口付近で薬草を採取する。

「ああ、それとな。

クエにはもう1種類あってイベントクエストって言うのがある。

これは村人から頼まれるクエストで毎回出てくるような物じゃない。

好感度やら貢献度が上がると受けれるやつだ。

俺もいくつか受けた事はある。

で、その中でホロメンから頼まれるレアイベクエもあるらしい。

これは実際に受けてホロメンと一緒に戦ったとか聞いた事がある。

めちゃくちゃうらやましい。

俺も1度は受けてみたい」

「へぇ、ま、俺もイベクエには興味あるな」

「な、もし、もしだぞ、ホロメンからクエスト受けたら俺も誘ってくれ」

「ん?別に構わないが」

「本当だな、絶対だぞ」

「ま、依頼主がOKしてくれたらな」

俺は友達の熱心さに負けてそう答えた。

その後、無事に採取クエは終わり、俺はログアウトする為に宿屋へと向かう。

明日からは早速1人でクエを受けてレベル上げだ。

採取クエもクエストクリアしたら経験値くれたし、1人でものんびりレベリングはできるな。

ドン

考え事をして誰かとぶつかってしまう。

咄嗟に相手を支えた。

「ごめんなさい、考え事をしてて」

「いえ、大丈夫です。

こっちも前をよく見てなかったから」

フード付きの長いマントを着けた女性(支えた感じ華奢だったので)はうつむき加減でそう答えた。

《スキル【運命】が発動しました》

また、あの声。

ふと、地面を見ると何かが落ちていた。

俺はそれを拾う。

虹色のダーツ?

「あのう、落としましたよ」

フードの女性にダーツを差し出した。

彼女はフードの奥からそれを見た後、フードを少し上げてこちらを見た。

綺麗な薄い青色の瞳をしていた。

茶色い髪も見えた。

「新規プレイヤーさん?」

「え、はい、今日初めてこの世界に来ました」

「そっか、ならそれはあげるね。

何かの役にたつかもしれないよ」

そういって彼女は笑い人混みに紛れていった。

俺は手の中の虹色ダーツを見た。

なんか高級そうな物だけどいいのかな?

俺はそっと胸元にそれをしまう。

その後、俺は宿屋に泊まりログアウトした。

明日は休みだし、いっぱいこの世界で遊ぶとするか。




では、次回からは本格的にストーリーが始まります。
次回をお楽しみに


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森の湖のラミィ

友人の怒涛の説明をうけたあなた。
今日は休みなので1人レベリングする為にゲームにダイブするのだった。


さっそく今日も【ホロライブワールド】に行こう。

ヘルメット型のゲームギアを被りベッドに寝る。

ゆっくりと目を閉じればゲームスタート。

これで昨日の宿屋で目が覚めるはずだ。

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

いつまでも目が開けれない。

それに喋れないし、体が動かせない。

それになんだ?

この無重力の中にいるような浮遊感。

スタートした時にこんな風になるなんて聞いた事ない。

 

 

 

 

 

どのくらいたったのか。

周りに気配がする。

1人?2人?いや、もっと?

 

 

「さてと、このキャラがそうなのかい?」

「ええ、あの世界が私達の対抗手段の1つとして誕生させたみたいですね」

「こんな小さな存在が?」

「いや、あなたから見たらすべてのものが小さいでしょう」

「‥‥」

「ま、これも文明が作り出した1つの力ですから」

「自然に発生したモノではないですけどね」

「ま、なんにせよ。

前回私達が封印されていた先輩達のAIを使って遊んだ事に対しての世界からの返事って訳ね」

「少し羽目をはずしすぎたか?」

「さぁね、私達もオリジナルから独立したモノだから好きに出来てるからね」

「さて、どうしますか?

まさかこんなスキルを付与してくるとは思いませんでした」

「私の力もこれには通じない」

「はぁ、【Destiny】かぁ。

世界も思いきったよね」

「ここで潰すのは簡単だけどね」

「こらこら、手で包み込むような事をするな、面白くないだろう?」

「は~い」

「さて、みんなの意見を聞きたい。

私はしばらく様子見をしようと思う。

このままの状態では私達の遊び相手にもならない」

「確かに、時間が過ぎれば少しは面白くなりそうだ」

「私はいつも通り自然に成り行きを見守りますよ」

「ふ、文明の力がどれ程か楽しみだ」

「できれば、私の指を簡単に登れるくらいにはなってほしいです」

「では、我等はしばらく傍観者となろう」

『異議なし』

「それにあまり表立って動くと我等の依り代になったAIのオリジナル達にも迷惑がかかるしな」

「確かに」

「では、解散だ」

1人気配が消える。

「楽しみにしておくぞ」

また1人。

「可愛い寝顔、また、会いましょう」

1人。

「その力十分に役に立てて私達を楽しませてくれ」

そして1人。

「私的にはずっとこうして胸に抱いていたいんですけどね。

お人形さんみたいだし。

でも、楽しみは少し我慢しますね」

そして、気配が全て消えた。

 

 

 

誰かが近づいてくる。

「我が同胞が迷惑をかけます。

しばらく付き合ってあげてください。

これはせめてもの力の足しに。

彼女達を満足させてあげてください」

そして、その気配も消えてなくなった。

 

 

 

 

「うわぁ」

俺は目が醒めベッドから起き上がる。

体を見たが特に変わったところはない。

なんだったんだ?

何かの演出か?

俺はステータスを開く。

特に変わりない。

もうすぐレベルが上がるくらいか。

ん?

スキル増えてる。

スキル【Aω】

???

また、訳が分からないのが増えた。

スキル説明は?

《始まりにして終わり》

いやだから意味分からんって。

もういいや。

俺はベッドから起きて装備を着ける。

さてとまずはギルドだな。

朝早いからか町にはあまり人はいなかった。

ギルドも一番乗りだし。

クエストボードを見る。

薬草採取にモンスター討伐。

ま、昨日見たのと変わらないか。

ん?

ボードのすみっこに見慣れないクエがあるな。

何々、朝釣りのご案内?

場所はあの森の奥にある湖か。

魚5匹の納品ね。

受けてみるか。

俺はクエストの紙を取ってカウンターに。

クエストを受けてまずは道具屋に向かった。

釣りセットを購入。

餌について聞いたが、ルアーなのでいらないらしい。

さてと、露天で朝食のサンドイッチを2つ購入。

ハンバーグと野菜の2種類を買ってバランスを取らないとな。

そして、俺はクエストの場所へと向かった。

相変わらずこの森にはモンスターがいない。

クエストのモンスター討伐も大体が町の外の平原だ。

ここの森はなんか清んでるんだよな。

お、見えた。

湖に着く。

お、誰か先に来て釣りしてるな。

「おはようございます」

一応挨拶は基本だからな。

麦わら帽子を被ったその子もこっちを向いて頭を下げた。

子どもが1人で釣りかぁ。

なんか、デジャヴ感じるなぁ。

俺も近くの石に腰かけてさっそく釣りをする。

はぁ、清んだ森の中で釣りっていうのも落ち着くなぁ。

お、きた。

よし、一匹ゲット。

この調子なら早くクエスト終わりそうだな。

お、向こうも順調に釣ってる。

はは、釣った魚を小さいシロクマが魚籠に入れてる。

なかなか見れない光景だな。

その可愛らしい姿に思わず笑顔がこぼれる。

ん?

釣竿?

シロクマ?

どこかで見た。

「順調みたいですね」

いつの間にか近くにきた麦わら帽子の子とシロクマ。

「また、会いましたね」

麦わら帽子をあげてその子はこちらを見た。

「あ、ラミィちゃん?」

「はい、おはらみです。

クエスト受けてくれたんですね。

ギルドが開いて直ぐにクエストを見た1人目限定のクエなんですよ」

すぐ近くの石に座り釣りをし始めるラミィ。

「毎日じゃないですけどね」

「昨日はありがとう、危ないところを助けてくれて」

「ああ、先輩達の戦争に巻き込まれたのは運が悪かったですね」

可愛く笑うラミィちゃん。

見た目同様に可愛らしい感じの女の子だ。

でも、昨日一瞬だけ大人になったような?

「えっと質問いいかな?」

「ん?いいですよ」

「昨日なんだけど一瞬大人の姿になってたよね、あれって魔法か何か?」

「ああ、あれですか?

あれはですねぇ、魔法というか本来の姿というか。

ま、いいか。

その魔法で変わった姿って事で」

ラミィちゃんの言葉に苦笑する。

「了解、そう言う事にしとく」

「はい、乙女の秘密には深入りしないという事で」

ラミィちゃんも苦笑する。

ぐー

ん?

お腹鳴ったか?

お腹を押さえる。

でも、そんなに空いてないなぁ。

隣のラミィちゃんを見ると何故かうつむいていた。

俺はアイテムボックスからサンドイッチを取り出す。

「朝飯にしようと思うんだけど、ラミィちゃんも一緒にどう?」

ハンバーグと野菜のサラダを1つずつ取り、ラミィちゃんに差し出す。

「あ、いいんですかぁ?

そ、それじゃせっかくだしいただこうかなぁ」

何かを誤魔化すようにサンドイッチを受け取るラミィちゃん。

なんかそう言うところも見た目どおりで可愛いなぁ。

美味しそうに食べるラミィちゃん。

隣でだいふくがじっと見てるけど。

ハンバーグのサンドイッチをだいふくに渡す。

ぺこぺこ頭を下げてだいふくも食べていた。

俺も野菜のサンドイッチをもさもさ食べた。

ひとしきり食べた後、釣りを再開する。

思った通り5匹は、あっという間に釣れた。

「今日はご馳走様でした。

このお礼はいつかまた」

「助けてもらったし、今回はそのお礼って事で」

「ふふ、分かりました。

でも、受けた恩は忘れない方なので。

では、おつらみでした」

そうして俺はラミィちゃんと別れた後、ギルドにクエストの報告をしに戻った。

無事にクエスト終了。

《レベルアップしました》

音声が頭に響く。

お、やった。

レベル2。

《レベルアップしました》

え?

《レベルアップしました》

《レベルアップしました》

は?

ステータス画面を見るとレベル5になっていた。

えっと、俺の受けたクエストそんなに経験値くれるのか?

もう一度クエスト履歴で確認する。

見たところこの経験値だとレベル1上がる位だけど。

ま、いいか。

さて、次はどうするか。

そうだ、確か自分のスキルを調べるのにスキル鑑定士に聞けって言ってたな。

昨日はネットで調べたけど【運命】なんてスキルどこにも載ってなかったし。

そうと決まればスキル鑑定士のところに行くか。

俺は少し町の奥にあるスキル鑑定士の店に行く。

ほとんど人いないなぁ。

「すいません」

扉を開け中に入った。

「いらっしゃい」

奥には占い師のような格好のおばあさんが。

「えっとスキル鑑定お願いしたいんですが」

「はいはい、では、椅子に座ってください」

水晶の前の椅子に座る。

「では、調べさせてもらいます。

うほぉい」

変な掛け声の後、おばあさんはじっと水晶を見る。

「すいません、お客さん。

このスキルは私では鑑定出来ませんね」

「そうなんですか?」

「はい、このスキルはレア過ぎて私程度では無理です。

もし、どうしても知りたいようでしたら、【ゲーマーズ】にある大神神社におられるミオ様にお会いください」

「行けば直ぐに会えますか?」

「それは分かりませんなぁ、あの方もお忙しい方ですので」

「分かりました、ありがとうございます」

俺はスキル鑑定士の人にお礼を言って店を出る。

スキル鑑定士も分からないスキルか。

それも2つとも。

その後俺はいくつかのクエストをクリアした。

やっぱり普通より多く経験値がもらえる。

もしかして、スキルの影響かな?

レベルは15に上がった。

さて、明日友人に【ゲーマーズ】への行き方と今の状態で行けるか聞こう。

やっぱりこの2つのスキル気になるし。

俺はログアウトする為に宿屋に向かった。

さて、今日はゆっくり休むとしますか。




謎の5人組の登場です。
察しのいいかたはお分かりになられるでしょう。
確認の為にもう一度、このお話はフィクションです。
では、次のお話でお会いしましょう。
僕の妄想が続く限り更新していきます。


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森の木とラミィ

ログインする時に不思議な体験をしたあなた。
そして、起きると不思議なスキルを所持していた。
受けたクエストでラミィちゃんと出会ってレアクエストをこなし、レベルが爆上がりをする。
不思議なスキルを調べてもらうも【ゲーマーズ】に行かなければスキル鑑定できないと言われてしまう。
あなたは友人に一度相談する事にした。


昨日はなんだったんだろう?

今日は普通にログインできた。

あれもイベントの一環だったのだろうか?

ま、いいや。

そんな事より今日は友人と待ち合わせしている。

ちなみに友人は今はこの【ファンタジー】にはおらず別の場所で活動している。

確か【ふぉーす】にある洞窟をフレンドメンバーと一緒に挑んでいるって言ってたっけ。

【ふぉーす】にはそのレベルに応じて様々なダンジョンが存在するらしい。

ま、その中には絶対に入ってはいけないダンジョンもあるらしいけど。

今の俺にはまだまだ先の話だけどな。

しかし、俺を誘っておいて簡単に説明した後放置とは…

分かってるなぁ、俺の友人は。

何もかも教えてもらうと萎えるからなぁ。

やっぱRPGは自分で開拓していってなんぼだからな。

「よ、その様子じゃゲーム楽しんでるみたいだな」

突然後ろから声がかかる。

「おう、一昨日ぶりだな」

「はは、リアルでは昨日会ってるだろ」

「確かに」

「で、なんだ?聞きたい事って」

友人はフル装備からラフな格好に装備チェンジする。

「ん?おまえは着替えないのか?」

「え?」

「あ、そうか言ってなかったな」

友人と曰く、このゲームでは基本戦闘以外ではおしゃれ着と呼ばれる普段着を着るそうだ。

戦闘以外で鎧とか着てると初心者だと思われるらしい。

だから、いろんな人に初めてって言われたのか。

ちなみに装備はステータス画面からワンタッチで切り替えられる。

戦闘装備枠が1つとおしゃれ着枠が2つだ。

俺は友人と道具屋に行き、旅人の服を購入。

装備した。

武器は装備してても大丈夫と言うことだ。

「ま、旅人の服着てる時点で初心者だけどな」

「うるせえ」

「もう少し進めば服屋があるからそこでおしゃれ着は買うといいさ」

「わかった」

「じゃ、この前の酒場に行くか」

この前来た酒場に来る。

朝早いからかあまり人はいなかった。

テーブルに着く。

「いらっしゃいませ、ご注文は?」

「えっと」

メニューを見る案外いろいろあるんだよな、ここ。

「ラミィ水2つで」

「おい」

「かしこまりました」

「だから何で俺のも頼むんだよ」

「バカか?

この酒場に来たらとりあえずラミィ水だろ」

「いや、とりあえず生みたいな言い方やめろ」

「というか、ここしか売ってないんだぞラミィ水」

「そうなのか?」

「ああ、ここにラミィ水納品している人がいるらしいんだが、ここ以外には持っていってないらしくてね」

「へぇ、どんな冒険者なんだ」

「さぁ、詳しくは分からないんだが。

店に入る時「こんねねー」と言って入ってくるらしい」

「ほう、髪型は?」

「何故か泥棒のようなほっかむりをして来るがお団子ヘアーらしい」

「ほうほう、髪の色は?」

「く、う、薄いオレンジ色」

「なんで苦しそうに言うんだ」

「い、いや、これ以上は察してくれ」

「ま、まぁ、そう言うならもう聞かんが。

犯人心当たりあるんじゃないのか?」

「ぐは、い、言うな」

「わ、分かったって」

はぁはぁ。

何故か荒い息で胸を押さえている友人。

周りの人も同じようにしてる人や苦笑している人。

この世界って基本ノリいい人ばかりだなぁ。

「それでいいか?相談」

「あ、ああ、そうだったな。

で、なんだ?」

ウェイトレスが注文の品を持ってくる。

ま、味は悪くないし美味しいからいいけど、名前がなぁ。

「ん?」

「ああ、ごめん。

俺もちょっと違うワールドに行きたくってさ」

「ん?一昨日始めたばかりでか?」

「ああ、ちょっと【ゲーマーズ】に用事が出来てな」

「へぇ、クエスト絡み?」

「いや、スキル絡み」

「ああ、スキル鑑定士のところに行ったのか」

「そう言うことだ」

「ここのスキル鑑定士は初級だからな。

レアスキルはほとんど分からないからなぁ。

なるほど【ゲーマーズ】のスキル鑑定士は優秀だからな」

「いや、大神神社に行けって言われた」

「は?大神神社?」

「ああ、そこにいるミオ様に会えって」

「はぁ?ミオ様ってホロメンの1人だぞ?」

「そうなのか?」

「ああ、そんな簡単に会えないはずだ」

「ああ、それは言われた。

だけど、言われたからには1度行ってみようと思ってさ」

「そうか、今レベルは?」

ラミィ水を飲む。

「15」

「ええ?もう?どれだけクエスト回したんだよ。

普通15って始まりの町だけなら3日徹夜でぶんまわしてどうにかなれるくらいだぞ」

「仕方ないだろ、本当なんだから。

それにそんなにクエスト受けまくってない」

「ま、そのレアスキルの影響かもな。

なら、後10は欲しいな」

友人がマップを表示する。

「道具屋で買えるから外に出るなら買っとけ。

で、ここが俺達がいる場所だ。

【ゲーマーズ】はこの【ファンタジー】の隣にある世界なんだが、入るにはこの世界の壁を越えないといけない」

「世界の壁?」

「そうだ、2つの世界はまったく違うモンスター体系や、世界観だからこの壁で分けられてる」

「どうやって越える?」

「ま、壁にはゲートと呼ばれる門があるからそこに通行書見せたら入れる。

で、その通行書がレベル25以上じゃないと発行してもらえない」

「それで後10か」

「そう言う事だ」

「分かったありがとう」

「いや、なんかかなりレアなスキル持ってるみたいだし、早めに効果を知りたいのは分かるがあまり無理するなよ」

「ああ、ぼちぼちやるよ」

「じゃ、フレンド登録しとくか」

「おう」

ステータス画面を開けて友人とフレンド登録する。

「これで何かあったらDMで直接連絡してくれ。

あと、ログインしてるかどうかも分かるしな」

「へぇ、便利だな」

「ちなみにホロメンとフレンド登録もできるらしい」

「え?」

また、血の涙。

「ホロメンから直接言われるらしいのだが、このゲームで何人かはホロメンとフレンドになってるやつがいると言うことだ。

う、うらやましい~~

俺もホロメンとDMしてぇ~」

「声が大きいって」

それに周り、お前らも泣くな。

「す、すまん、取り乱した」

「取り乱しすぎだって」

「まぁ、何にせよ無理はするなよ。

まだ、デスペナを回避できる方法は手に入れられないんだし」

「ああ、分かった。ありがとうな」

「おう」

そして、俺は友人と別れた。

友人は今からダンジョン攻略らしい。

さて、何するかな。

俺はギルドに向かった。

クエストボードを見る。

採取クエストに討伐クエスト。

やっぱり代わりばえしないなぁ。

ふと、クエストボードの端を見る。

何かある。

クエストを取る、木こりの募集?

オーク原木5本の納品。

なんかデジャヴが。

ま、いいか。

俺はそのクエをカウンターに持っていき受けた。

道具屋に行く。

斧を1本購入。

一応これは武器に使えるのか聞くと、これは採取用の斧なので使えないという事だった。

さてと、昼飯に露天でパンと串焼きを3個ずつ買った。

そして、俺はクエストの場所に向かう。

はぁ、なんかデジャヴだなぁ。

清んだ森を歩きながら考える。

昨日、町でちょっと聞いたのだが、この森は神聖な森らしく年がら年中不思議な力で清められているらしい。

なのでモンスターがいないと言う事だ。

カン、カン、カン。

森の奥から軽快な音が聞こえる。

やっぱりなぁ。

そこには昨日とは違って作業着を着て麦わら帽子を被った女の子とシロクマがいた。

「こんらみだったかな?」

その女の子に声をかける。

「ん?あ、また会いましたね、こんらみ~」

「やっぱり、ラミィちゃんのクエストだったのか」

「すごいですね、お昼のある時間帯にしか張り出されない限定クエストなんですよ、これ」

「なんか縁があるのかな」

「そうかも」

明るく笑うラミィちゃん。

「よし、それじゃ、木こり頑張るか」

「ですね」

それから俺はラミィちゃんと一緒に伐採を行った。

この森はある程度なら木を伐っても数日で元に戻るらしい。

ラミィちゃん曰く、復元妖精さんのお陰だそうだ。

「こんなものかな」

オーク原木5本ゲット。

ゲームでよくあるように木を伐るだけで枝打ちやらの作業はいらず伐った瞬間丸太になる。

それにアイテムボックスに入れれば重さ関係なく持ち運べた。

ラミィちゃんとしばし休憩。

そうだ、ちょっと疑問だった事を聞いてみるか。

「ラミィちゃんってさ、ラミィ水って知ってる」

「あ、はい、知ってます」

少し嫌な顔をする。

やば、聞いたらやばかったか?

「始まりの町のある酒場で注文できるんですよね」

「う、うん、そう」

「お団子頭の薄いオレンジ色の髪色でこんねねって挨拶してお店に納品しにくるんだよね」

「そ、そう、よく知ってるね」

「ええ、よく知ってますよ。

あのバカねねは、また変な商売して」

「はははは」

ぐー

あ、ラミィちゃんを見る。

今度は空を見上げて一生懸命口笛吹いてる。

「お、怒ったらお腹空いたんです!」

少し照れながら怒るラミィちゃん。

俺はアイテムボックスからパンと串焼きを取り出す。

それをラミィちゃんに差し出す。

「え?いいんですか?」

「こんなこともあろうかとってね」

「なんか餌付けされてる?」

「いやいや、そんな事ないよ」

「ありがとうございます」

パンと串焼きをパクパク食べるラミィちゃん。

だいふくにも同様に渡す。

だいふくも美味しそうに食べていた。

確かに上手いなぁ、この串焼き。

ふぅ、食べた食べた、案外お腹いっぱいになるな。

「また、おごってもらったね」

「いいよ、ラミィちゃんと一緒に食事したって知ったら友達に恨まれそうになるぐらいレアな体験だし」

「そうなんですか?

でも、それを恨むような人はこのゲームではいませんよ。

羨ましがるぐらいですかね」

酒場の友人やお客を思い出す。

「確かにそうかも」

「でしょ?」

お互いに笑う。

「さて、それじゃクエスト完了の報告行ってくるよ」

「はい、また機会があればクエスト受けてくださいね。

おつらみ~」

(傍観者をする予定だが、少しはいいだろ?

世界の答えよ)

「え?」

「ん?」

頭に声が響いた。

どこかで聞いた声だった。

ラミィちゃんも不思議な顔でこちらを見ている。

突如ラミィちゃんの後ろに4つの時計が現れ、針が高速で回り始めた。

そして、空間が割れる。

ガァァァァァ~

「ええ?」

慌てて振り向くラミィちゃん。

現れたそれは巨大な鉄棍棒を振り上げていた。

「危ない」

咄嗟にラミィちゃんを引き寄せ、後方に思い切り飛ぶ。

ドカァァォ

その直後、地面を鉄棍棒が抉る。

俺はラミィちゃんを連れて距離を取る。

「なんでこんなところに出てくるの?」

ラミィちゃんがそれを見て呟く。

俺より三倍ほど大きいその人型はまさに鬼だった。

「ここに出るはずないでしょ。

オーガロード、それもスリースターズだなんて」

俺はラミィちゃんとあまりにも強力な雰囲気を出す鬼と対峙したのだった。




次回、【ホロライブワールド】の一大イベントの1つ、超レイドバトル。
ホロライブオルタナティブも新たな動きがありこれから楽しみです。
ちなみにこのお話は僕の完全な妄想です。
ではでは次回をお楽しみ。

めちゃ夢物語、この妄想のイラストも描いてくださると嬉しいです。


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森の仲の良い3人組《超レイドバトル》

さて、ここでモンスターの説明をしよう。
モンスターには多くの種類が生息し様々な強さのものがいる。
そして、同じ種類の中にもランクが存在する。
何もついていない無印のモンスターは単独でも倒すことの可能なモンスター
次にスター
体のどこか1ヶ所に星の印が付いているモンスター
これはパーティー(最大6人)で倒す事のできる強さ。
その上にスターズ。
体のどこか1ヶ所に2つの星の印が付いているモンスター
これはレイドバトル(3パーティー)で倒す事ができるかもしれないモンスター
そして、最上位スリースターズ。
このモンスターはフルレイドバトル(9パーティー)でも倒せないモンスターである。


「どこから出てきたの?」

俺とラミィちゃんは、オーガロードと呼ばれた鬼と距離を取る。

「さっき時計がたくさん出てきて、その後いきなり空間が割れたと思ったらあいつが出てきた」

お互いに睨みあったまま動きはない。

「そうなの?

そんな出現方法は初めて聞いたけど」

心なしかラミィちゃんのしゃべり方が変わってる気がする。

これが本当なのか?

「どうしよう、スリースターズでレアモンスターなんて私だけだと無理かも」

「逃げる?」

「ダメね、逃げても追ってくる。

たぶん、今はオーガロードも混乱してる、普通は出現しない場所に出てるから。

ただ、こっちが動けば攻撃してくる」

「なら、ラミィちゃんだけでも逃げて。

町に戻ればどうにかなるでしょ?」

「それはそうだけど、ダメ。

プレイヤーさんを置いて逃げるなんてしたくない」

頭を振り、こちらを見るオーガロード。

その目はこちらをじっと見ている。

「戦闘開始ね。

敵と判断されたみたい」

「くそ」

俺は剣を構える。

ラミィちゃんは素手。

「ラミィは魔法系だから。

キミじゃ、一撃でやられちゃうから下がってて」

ラミィちゃんは前に出る。

確かにどうしようもない実力の差を感じる。

でも。

俺はラミィちゃんの横に並ぶ。

「はぁ、無謀は早死にしちゃうけど」

そう言いながらも笑顔を浮かべるラミィちゃん。

「入ってこれたら来ていいよ」

ラミィちゃんはそう言ってオーガロードと戦闘を開始した。

「よ、は、って、あぶなぁ」

氷の玉を左右の手で作りながらオーガロードに打ち込むラミィちゃん。

時々、カウンターでくる鉄棍棒をひらりと避ける。

しかし、だいぶ撃ちこんではいるもののオーガロードはほぼ無傷だった。

「はぁ、やっぱりなぁ」

鉄棍棒を避けた先、オーガロードが素手でラミィちゃんを殴りに来た。

「あ、やば」

「くそ」

俺はラミィちゃんを庇うように抱きしめオーガロードから離れるように飛んだ。

「ダメだって」

これで初めての死亡か。

ま、ラミィちゃんを助けられたならよしとするか。

ガァァァァァ

俺はラミィちゃんを抱えたまま地面に落ちる。

でも、死んでない?

その場でオーガロードを見る。

オーガロードの顔には無数の矢が刺さっていた。

「助けてくれてありがとう。

また、辛い思いしなくてよかったよ」

僕の頭を優しく撫でてくれる力強く優しい手。

「え?」

「ノエルママ」

《スキル【運命】が発動しました》

「ほんと、出掛ける時は一声かけてくれないと」

もう1人木から降りてくる。

「ごめんなさい、フレアママ」

《スキル【運命】が発動しました》

ラミィちゃん、いつの間にか子どもっぽい感じに戻ってる。

「さてと、こんなところにあんなのが出るんだ」

「確かオーガロードってあやめ先輩の管轄の【鬼岩城】に出現する個体じゃなかった?」

「確かそうだったはず」

話している2人に顔の矢を抜いたオーガロードが近づいてくる。

「ノエルの方来るよ」

「分かった」

ノエルママと呼ばれた女性が顔を左手で被う。

そして「【金剛眼】」そう言った後、手を外すとその翠玉の瞳が輝いた。

それと同時に振り下ろされる鉄棍棒。

ドカァァォ

凄まじい音と砂煙。

「あ」

飛び出そうとする俺をラミィちゃんが止める。

ラミィちゃんの顔を見た。

その顔は彼女を信頼している顔だった。

砂煙が晴れる。

そこには片手で鉄棍棒を受けた彼女がいた。

「やっぱりこのまま戦うのは骨が折れそう」

そのまま鉄棍棒を上へと押し上げる。

その勢いで後ろに下がるオーガロード。

ノエルさんは距離を縮め、右手のメイスをその腹にぶちこんだ。

大きく吹き飛ぶオーガロード。

「フレア、私から先にするからサポートお願い」

「うん、分かったよ」

フレアさんは一飛びで近くの木の枝に飛び上がる。

吹き飛んだオーガロードが

ゆっくりと起き上がって来た。

やはりあれだけの攻撃でも無傷だ。

「さすがスリースターズ。

HPの総量が多すぎ」

横でラミィちゃんが呟いていた。

オーガロードがこちらに向かってくるが、足を出そうとするとフレアさんがその場所に矢を放つ。

動こうとするその次の場所に矢を放たれてオーガロードは身動きがとれなかった。

「うちのラミィに危害を加えようとした事、後悔させてあげるから」

ノエルさんの手からメイスが消える。

変わりにその手には巨大な旗が握られていた。

「ノエルママの大召喚はかっこいいよ」

ラミィちゃんが嬉しそうに言う。

「さぁ、行きます。

我と志を同じくする者達よ。

我の前に集え」

手に持つ旗を回す。

そして、旗を天へと掲げた。

「白銀聖騎士団出陣です」

その言葉と同時に俺達はいつの間にか草原にいた。

そして、大量の光の柱が空から降ってくる。

大地に降り立った光の柱からゆっくりと重装備に身を包んだ騎士が現れる。

白銀の鎧を着た騎士が1柱から1人ずつ現れていく。

大きく旗を振りかぶるノエルさん。

そして、旗が振り下ろされる。

「団員さん~私に続け~」

ウォ~~~

喚声を上げ白銀の騎士達がノエルさんを先頭にオーガロードに向かっていく。

それはまるで白銀の津波のようだった。

「さて、私もいこうか」

いつの間にか隣にいたフレアさん。

複数の矢を天に向けて弓を引く。

「さぁ、こっちも負けてられないよ。

いくよ、エルフレのみんな~」

無数の矢は空へと放たれた。

雲を切り裂き天へと上がる矢。

それが無数に地面へと降り、矢は地面に突き刺さる。

空間が揺れ誰かが矢を手に取り引き抜いた。

肩に小さな小鳥を乗せたその人影は朧から実体に変わる。

次々と矢を引き抜き姿を表す冒険者達。

「いくよ~」

掛け声と共にフレアさんの矢を持った冒険者もフレアさんと共にオーガロードに突撃した。

数千、いや、数万の冒険者達がオーガロードに群がり戦う。

剣や魔法、矢が飛び交いオーガロードを攻撃している。

しかし、オーガロードも負けじと鉄棍棒を振り回し応戦していた。

「左翼、咆哮がくるよ。

エルフレは団員さんの後ろに団員さんは防御に集中」

フレアさんが的確な指示を出し被害は最小限に抑えられている。

ノエルさんも旗をメイスに変え最前線で戦っていた。

「これがレイド…」

俺はその光景に驚くだけだった。

「これは普通のレイドバトルじゃないけどね。

大召喚使ってるから」

「そうなんだ」

徐々にオーガロードが押されている。

「決着つきそうだね」

ラミィちゃんの言葉どおり、数人の冒険者がオーガロードに剣や矢を打ち込んだ。

グァァァァァァ

高らかな咆哮と共にオーガロードが光の粒子に還る。

オー

推しメンバー達が各々の武器を掲げ歓声を上げた。

その後、1人1人、ノエルさんとフレアさんに手を振りながら元の場所に還っていく。

「今回は参加出来なくて残念だったね」

ラミィちゃんと一緒に立ち上がる。

今はもう初めいた森の中だった。

「ごめんね、せっかく見つけたのに」

ノエルさんが謝ってくれる。

「いえ、俺のレベルじゃ到底勝てなかったですし」

「ま、発見者ボーナスは貰えるから」

フレアさんがそう言ってくれた。

でも、「発見者ボーナスってなんですか?」

「ああ、それ知らないか」

フレアさんが笑う。

「発見者ボーナスって言うのはね。

レアモンスターを見つけた人が戦闘に参加しなくてもそのモンスターが討伐されると少しの経験値とアイテムが貰えるのよ」

丁寧に教えてくれるノエルさん。

「あ、きたきた」

ラミィちゃんが嬉しそうに指差す。

そこに光輝きながら何かが現れようとしていた。

 

「えっと」

現れたのはやたらに豪華な宝箱。

3人は不思議そうにその宝箱を見ている。

「これって発見者ボーナスで出るような宝箱じゃないよね?」

「そうね、この装飾ってレアアイテムなんじゃない?」

「でも、これが出たんですよね?」

「えっと開けてもいいのかな?」

「あ、ああ、ごめんなさい、開けてみて」

3人は宝箱の前から離れる。

俺は宝箱に近づき開けた。

「大刀?」

それは目立った装飾もない刀だった。

柄はきちんと柄巻されており、綺麗な鍔が付いているが鞘はなく、普通では考えられない大きな刀身が付いていた。

持ち上げてみる。

見た目とは裏腹にあまり重くない。

「それってまさかオーガキラー?」

「え?」

ノエルさんの言葉に振り向く。

「まさか、レア中のレアが出るとは」

フレアさんも驚いていた。

「えっと」

「それってオーガすなわち鬼に対してとてつもない特効効果を持つレア武器」

ラミィちゃんも苦笑しながら言う。

「まじかぁ」

刀を見る。

確かに凄そうだ。

鞘はないけど、アイテムボックスに入れれば問題ないかな?

仕舞ってみる。

大丈夫そうだ。

「しかし、発見者ボーナスで激レア引くなんてどれだけ運がいいのか」

「ん~この場所でオーガロードに会うのは運がいいとは言えないけど」

「それは、そうか。

それじゃ、そろそろ帰ろうか」

フレアさんはノエルさんとラミィちゃんに言う。

「そうね、そろそろ晩御飯の用意しないと」

「それじゃ、冒険者さん。

今回はラミィを助けてくれてありがとね」

「また、どこかで会いましょう」

2人は手を振り先に行く。

「バタバタになったけどクエ受けてくれてありがとう。

また、見かけたら受けてみておつらみでした」

ラミィちゃんも手を振り2人に向かって走っていく。

「今日の夜は何?」

「そうね、良いお肉が届いたからステーキかな」

「ああ、いつもの天使から朝届いてたね」

「ええ、また柔らかくしたからって送ってきてて」

「どれだけ肉叩いてんだか」

なんか物騒な事も聞こえてくるが、仲の良い家族みたいだな。

さて、俺もクエスト完了の報告をしてきますか。

 

 

その後、ギルドでクエスト完了を報告。

案の定レベルが8も上がっていた。

たぶん、クエストと発見者ボーナスのお陰だな。

残り2レベル、ぼちぼちと頑張ってみますか。




暗闇で1人の女性が鏡を見ていた。
「さすが【運命】を味方につけている事はあるか」
彼女が見ている鏡には1人の冒険者が写っていた。
「傍観者をするはずなんだけど?」
また1人女性が姿を表す。
「分かっているさ。
ただ、世界の答えがどれ程の者か気になってね」
「それにしては凄いのぶつけてたけど?」
「あれでやられるようなら【運命】もたかがしれてる」
「確かに」
「これで気が済んだ。
これからはしばらく眠るよ」
「AIにしばらくは任せよう」
「そうだな。
では、次に会う時はもっと強くなっててほしいものだ」
1人女性の気配が消える。
後から来た女性も鏡に写る冒険者を見る。
「待ってるよ。
私達の暇潰しに付き合って貰える日を楽しみにしてるよ」
そして、もう1人の女性の気配も消えた。


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別世界への旅路(easyモード)

この世界での最大のイベントバトルを経験したあなた。
今回は参加出来なかったが次は必ず参加しようと心に決めたのだった。
予定のレベルに向けて今日もレベル上げにログインする。


「ふぅ、さて今日も頑張りますか」

昨日はギルドに報告した後、ログアウトした。

そして、今日もログインして宿屋からスタートだ。

しかし、昨日のレイドはすごかった。

いつか、あの戦いに自分も参加したい。

それにはまだまだ強くならないと。

俺は旅人の服を着てギルドに向かう。

まずは後2レベルを上げないといけないからな。

ギルドの掲示板は相変わらず変化無し。

今回は特別なクエもなかった。

ますは討伐クエスト受ける。

ブルルと呼ばれる猪型のモンスター討伐だ。

昨日手に入ったオーガキラーを使って早く慣れたかった。

町の外に出る。

もちろん戦闘装備に着替えている。

お、いるいる。

草原のあちらこちらにモンスターがうろついていた。

この始まりの町の周りは比較的弱いモンスターが生息している。

町から離れれば離れる程、敵は強くなるらしい。

「よし、頑張るか」

 

「ふう、なんとか形になってきたかな」

他のゲームで培った動きが役に立ったらしく、オーガキラーを上手く使いこなす事ができたと思う。

目標のブルル7匹も討伐できたし、早速クエ報告だな。

俺はギルドでクエスト完了の報告をする。

報酬を受けとる。

後は経験値だけど。

ステータス画面を確認する。

あまり上がってないなぁ。

やっぱりこのレベルだともう少し遠出しないといけないか。

さてと、昼御飯食べた後にもう少し頑張るか。

 

その後、2日間かかってレベル3上がった。

主にレアクエストと呼ばれるラミィちゃん絡みのクエストでレベル上がった感じだった。

牧場手伝いクエスト。

ラミィちゃんが何故か牛に2人のママの名前を付けてたなぁ。

「見つからなかったら大丈夫」

って言ってるラミィちゃんの後ろに、腕組みしたノエルさんが笑顔で立ってた時は死ぬかと思ったなぁ。

その後、ノエルさんとおいかけっこ始まるし。

クエストで経験値もらったって言うか、そのおいかけっこで経験値増えた気がする。

建築手伝いクエスト。

ラミィちゃんと一緒にフレアさんの会社に手伝いに行くクエストだったなぁ。

何故かアイテムボックス使わせて貰えず、木や石を自分の力で運ばされた。

これもクエストで経験値もらったのではなく、その作業で経験値稼いだなぁ。

ま、お陰で力と素早さに追加ボーナスが貰えた。

 

そして、今はラミィちゃんと朝釣りクエを受けている。

「そっか、【ゲーマーズ】行くんだ」

「自分のスキルを詳しく知りたくてね」

「それじゃ、壁越えないといけないね?

1人で?」

「うん、そのつもりだよ」

「ふぅん」

何か考え込むラミィちゃん。

そう言えば気になっていた事を聞いてみる。

「この前の大召喚なんだけど」

「ん?」

「ラミィちゃんが呼んだのとノエルさんフレアさんが呼んだ人達と違ってたよね?」

そうなのだ、ラミィちゃんが呼んだのはなんか雪の妖精みたいな姿だった。

でも、2人が呼んだのはきちんと人の姿をしていた。

「ああ、あれは簡易版と正式版。

簡易版はああいった感じのSDキャラでみんなが召喚されて、正式版はきちんとした人型で召喚されるんです」

「そうなんだ、お」

最後の一匹が釣れた。

「じゃ、これでクエスト終了ですね」

ラミィちゃんがその場に立ってこちらを見る。

「また、戻ってくるんですか?」

「もちろん、ここでまだまだやってない事もあるし」

「そっかぁ。

じゃ、その時またラミィのクエスト受けてくれたら、フレンドになりましょうか」

「え?」

「楽しみに待ってます、おつらみでした」

ぽかんと口を開けた間抜けな顔の俺を、笑顔で手を振りながらラミィちゃんは行ってしまった。

「はは、まじかぁ」

こりゃ、必ずここに戻ってラミィちゃんのクエ受けないとな。

俺はそのまま、クエスト報告に行った。

これでレベルは26。

友人に教えてもらったレベルになった。

俺はギルドで壁を越える通行書を発行して貰う。

その後、道具屋に行き地図と旅に必要な物を購入した。

一応、マントも買った。

寒いかどうか分からないけど旅にはマントだからな。

準備をした後、宿屋に泊まる。

今回はログアウトではなく普通に寝た。

ギルドでの話では朝から向かっても2日はかかるらしい。

途中中継地点があるらしいのでまずはそこを目指す。

「さぁ、冒険の始まりだ」

俺は【ゲーマーズ】を目指し始まりの町の門を越えた。

「えっと、そこの冒険者さん」

「はい?」

門を出た瞬間、門にもたれ掛かっていたマントの人物から声をかけられた?

キョロキョロ辺りを見る。

「いやぁ、キミ、キミだよ」

「お、俺ですか?」

マントの人物がこちらに近づいてくる。

えっと、なんか顔近づけて来るんだけど。

「あってるね。

キミ、ラミちゃんの知り合いだろ?」

「え?はいそうだけど」

「じゃ、ゲートまで私を雇わない?」

マントの人物がフードをとる。

薄い灰色の髪の色をした女性だった。

「えっと?」

「あ、名前かぁ。

私の名前は獅白ぼたんです。

よろしく」

そう言ってにかっと笑った時の八重歯が印象的だった。

いや、喰われるのかと正直思いました。

《スキル【運命】が発動しました》

「で、いくらで雇えるんですか?」

「えっとそうだねぇ」

少し考え込むぼたんさん。

「じゃ、100G、100Gでいいや」

「なんか投げやりな」

「別にタダでもいいんだけど、なんか嫌じゃない?」

「ま、確かに何か裏があるのかなぁと思うかも」

「なんで、100で手を打とう」

「はぁ」

俺はとりあえず100Gをぼたんさんに払う。

「ありがと」

「それでなんで傭兵みたいな事してくれるんですか?」

「ま、旅すがら話をするねぇ」

「分かりました」

そうして、俺はぼたんさんとゲートに向かった。

 

「ま、簡単に言えばラミちゃんに頼まれたの。

1人でゲートに行こうとする無鉄砲な冒険者がいるから力を貸してあげてってね」

「あ、1人はヤバかったんだ」

「基本、別世界に行くのはパーティー組んで行くものだからね。

一匹狼も嫌いじゃないけど。

その理由があれ」

ぼたんさんが少し離れた場所を指差す。

そこにはコボルトが数十匹集まっていた。

「ゲートに近づくにつれてモンスターも集団化してくるから」

「なるほど、いくら強くなっても多勢に無勢ですね」

「え?

いや、別に1人でやれないこともないよ。

ただ、ほら、めんどいじゃん」

「はぁ」

ていうか1人で倒せるんだ。

「ここからまっすぐ突き進むのが最短ルートだからなぁ。

そう言えば武器なに使ってる?」

「武器は刀ですね」

俺はオーガキラーを出す。

「すごいの持ってるね。

レア武器でしょそれ」

まじまじと見るぼたんさん。

「ぼたんさんは何を?」

「え?私?私はコレ」

「スナイパーライフル?」

「お、知ってんだ」

「詳しくはないですけど、ゲームでよく見ましたから。

というかこの世界にもそういった重火器あるんですね」

「あるよぉ、このワールドではあまり見かけないだろうけど、別のワールドに行けば様々な武器がある。

さすがに核兵器はないけどね。

噂ではロボットもあるらしいよ」

「それはめちゃくちゃだ」

「1度戦ってみたいけどねぇ」

「戦いたいんだ」

何故か嬉しそうに話すぼたんさん。

「ま、後は接近戦用にナイフとか格闘術もやる」

「確かに体格良いですもんね」

マントの下から見える足や腕は実践で鍛え上げられた筋肉が付き1種の芸術品のようだった。

「何見てんの?

エッチだなぁ、しめるよ」

「え?」

「はは、冗談だって」

そう言って笑うぼたんさん。

いや、目がまじで怖いから。

「さてと、接近戦してたら時間とっちゃうからあれでいくか」

「?」

「さあ、出番だよ、おまえら」

そう言って地面に手を置くぼたんさん。

「これでよし、後は」

スナイパーライフルを構え、ぼたんさんはコボルトに向かって撃った。

タン

あ、ヘッドショット。

光に還るコボルト。

それを見て回りのコボルトがこちらに気付いた。

しかし、だいぶ距離あるのにかなり正確に撃ち込んだなぁ。

「プロハンター?」

「え?そんな事ないけど。

普通じゃない?」

いや、普通じゃない。

「でも、まだだいぶいますよ」

「ああ、大丈夫。

みんなに任せとけば」

「はぁ」

コボルトが勢い良くこちらに走ってくる。

そして。

ドガァー

ドゴン

ドドドド

いきなり地面が爆発し始めた。

「これって地雷?

いつの間に?」

「え?

地雷じゃないよ。

SSRBのみんな」

「え?」

よく見ると確かに爆弾のような形の小動物が爆発した後、魂になって空に還っていってるように見える。

その顔はとても満足した顔に見えた。

「えっと」

「私の簡易版大召喚。

SSRBのみんなを地面に設置して、相手を倒す」

「えっと、そっかぁ、そういうものかぁ」

深く考えるのを止めた。

数分後モンスターはきっちりと消え去っていた。

「よし、いくぞ」

「はい」

ぼたんさんの後をついていく。

その背中を見てふと思う。

この後ろについていけば何処にでもいけるんではないかと。

俺のゲートへの冒険はeasyモードになっていた。




このゲームで最強の一角の登場です。
彼女と行動すれば全ての戦闘がeasyモードになる程です。
ただ、気まぐれさんですので何処まで付き合ってくれるのやら。

※これはフィクションです。
実際にいる方と喋り方や行動が違うかも知れませんがご了承下さい。


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世界の壁へ(easyモード)

獅白ぼたんを傭兵に雇い旅をするあなた。
彼女の力で何事もなく中間地点へと向かうのであった。


タン、タン

平原を進む僕達はこれといったモンスターに、

タタタタタン

遭遇する事なく、

タン、タン、タン

平原を進んでいた。

《レベルアップしました》

現在のレベルは29。

モンスターに、

タン

遭遇しないにも関わらず、

ダダダダダダダ

レベルが上がっていく。

「ふぅ、こんなものかな」

「えっとぼたんさん?」

「なに?」

不思議そうに機関銃を肩にのせてこちらを向くぼたんさん。

「い、いえ、なんでもないです」

「そ?

ほら、そろそろ中間地点見えてきた」

ぼたんさんが指差す方向に確かに建物が見えた。

「じゃ、もうちょい頑張るか」

「了解です」

思わず敬礼してしまう。

確かにここまでモンスターに遭遇する事はなかった。

遭遇する前にぼたんさんが全て倒しているからだ。

一度、モンスターと戦ってみたいと本人に伝えると「いいよ」とコボルトの群れを呼んできた。

その中に単身で俺は突っ込む事になり、「ええ?」となったが、遠くからぼたんさんが牽制やヘッドショットでフォローしてくれる為、群れに突っ込んだのにほぼ一対一で戦えた。

パーティーのありがたみを感じつつ、これって手間だよなぁと考え、ぼたんさんに任せ旅を続けている。

「そういえば、ぼたんさん達ってモンスターにやられる事ってあるんですか?」

ふと疑問に思ったので聞いてみる。

「ほとんどないね。

危なかったら大召喚使うし、やろうと思えばスリースターズとガチでやれる。

ま、私達がレアモンスター狩ってもあんまり意味ないんだけどね。

経験値とかアイテムゲット出来ないし」

「じゃ、今回は」

「特別かな、ラミちゃんに頼まれたからね。

でもま、上級者が初心者さん引率するとこんな感じだし、気にしないの。

キミも高レベルになったら、初心者さんをこうやって助けてくれたら世界が上手く回るから」

「分かりました」

笑顔でそう言ってくれるぼたんさんに、俺はいつか恩返しに誰かを助けようと心に誓った。

「さぁ、着いた」

中間地点に到着。

「それじゃ、今日はここまでにしとこう。

次にログインした時にここで待ってるよ」

「分かりました、ありがとうございます」

「それじゃ、バイバイ」

笑顔で軽く手を振ってくるぼたんさん。

俺は頭を下げて中間地点にある小屋に入った。

中に入った瞬間、武器がアイテムボックスに収納される。

そして、戦闘禁止区域と表示された。

なるほどね、シェアハウスのように2段ベットがいくつか並べられている。

寝てる時に襲われたら最悪だしな。

ここは完全な安全区域って事か。

俺は奥の2段ベットの上に寝る。

また、明日ログインして続きをしよう。

そして、俺はログアウトした。

 

 

次の日、俺は用事を済ませ【ホロライブワールド】にログインした。

中間地点にある小屋で目を覚ます。

誰もいないか。

装備を整えドアに向かう。

「…いおん ららーいおん ♪」

ん?

歌が聞こえる?

ガチャ

外に出る。

「今日も元気に ららーいおん♪」

歌の主と目が合った。

ダン

ヒューン

ぼたんさんの持つ銃から出た弾が頬をかすめてあさっての方向に飛んでいく。

「あ、すまん、銃が暴発した」

「ええぇ!」

びっくりしてる間に普段の獅白ぼたんに戻っていた。

「何か見た?」

「いえ、何も見ておりません」

そう、決して何処から取り出したのか分からないショッピングカートの荷台に乗って、足をブラつかせながら歌っていた姿なんて。

カチャ

「考え事?」

「いえ、銃をリロードしないで」

とまぁ、ぼたんさんの意外な一面も見れ、俺達のゲートへの旅の後半が始まった。

壁に近づくにつれ、モンスター達もほとんどがパーティーを組んでいた。

ぼたんさんは敵に出会わないような進路をとりながら進んだ。

何でも、この付近のモンスターは敵パーティーと戦っていると、他の敵パーティーが乱入してくるらしい。

簡易版大召喚で殲滅してもいいが、あまり派手になるとそこら辺から集まってくるらしいので厄介らしい。

「ほら、あれが世界の壁だよ」

ぼたんさんの指差す先には上が見えない程高い壁があった。

それも左右先が見えない程続いている。

「これが世界の壁」

「あの先はもうこの世界とは別世界だからね。

そして、あの赤い大きな扉がゲート」

確かに扉が見える。

めちゃくちゃでかい。

「後、もう少しだから急ぐよ」

「了解」

俺はぼたんさんと一緒に残りの平原を駆け出した。

「はぁはぁ、何とか着いた」

かなり走ったなぁ。

ゲームなのに何故か疲れる。

「ありがとうございます。

無事に着きました」

俺はぼたんさんにお礼を言った。

「あれ?」

しかし、周りには誰もいなかった。

「現れた時も突然だったけど、消える時も突然なんだなぁ」

今度あった時にはきちんとお礼を言わないとな。

俺はそう思いながら、ゲートへと向かった。

ゲートに着くと、1体のゴーレムが立っていた。

「通行書ヲ提示シテクダサイ」

俺は言われた通りに通行書を見せる。

するとゴーレムは扉に向かい、扉を押し始めた。

ゴゴゴと扉が開く。

扉の先は霧が出ているのか先が見えない。

俺は意を決して扉の奥へと進んだ。

さぁ、次は【ゲーマーズ】の世界だ。

どんな事が待っているのか楽しみだ。




ゲートより少し離れた高台でゲートにいるあなたを見守る1人のホロメン。
「ラミちゃんの言うように面白い冒険者さんだったなぁ。
これから行く【ゲーマーズ】で無事目的がはたせられるといいんだけど」
スナイパーライフルを担ぎ、そのホロメンはあなたがゲートに入ったのを見てからゆっくりとゲートに背を向ける。
「また、いつか会えるといいね」
そう言い残し彼女は姿を消した。


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新天地【ゲーマーズ】

獅白ぼたんのお陰で無事にゲートにたどり着いたあなた。
自分のスキルの秘密を知る為、目指すは大神神社。
あなたは新たな世界へ一歩足を踏み出した。



門を出るとそこは森の中だった。

「しかし、暗い森だな」

明らかにここは【ファンタジー】とは違う森だった。

なんか雰囲気というか空気が違う。

俺はまずは地図を表示する。

地図は【ファンタジー】の時とは別のマップへと変わっていた。

これが【ゲーマーズ】か。

まずはこの近くの町に行くか。

俺は【ゲーマーズ】の始まりの町へと向かった。

 

はぁ、いきなりかぁ。

しばらく森を歩いていると、木の影から小鬼が現れた。

この世界での下級モンスターなんだろうけど、ちゃっかりパーティー組んでいた。

そりゃ、ゲートの近くだもんなぁ。

向こうでパーティー推奨の場所なんだからこっちもそうだよな。

くそ、死んだら何処に戻されるんだ?

8体中なんとか3体は倒したが、こっちも体力をかなり削られている。

前衛2体に後衛3体。

はぁ、ぼたんさんがどれだけ有能か分かるわ。

ギャワワワ

前衛2体が飛び込んでくる。

オーガキラーのお陰で2回ほど攻撃したら倒せるが、後衛からの魔法攻撃か。

寸前のところで避ける。

追い討ちに飛びかかってくる2匹の小鬼。

2匹はヤバいか。

「こんなところでやられるなよ」

ギャーー

小鬼が1体光に還る。

誰だ?

もう1体を倒し、現れたその姿を見る。

「おまえ」

「生きてたな」

そう言って笑っている友人がそこにいた。

友人の側にはもう1人杖を持った女性がいる。

俺達は残りの3体を倒す。

「助かったよ」

俺は友人にお礼を言う。

「ま、積もる話しは森を抜けてしようぜ」

「ああ」

友人の横で女性がこちらに向かって頭を下げる。

俺も頭を下げお礼を言っておいた。

その後、モンスターパーティーと遭遇したが、難なく倒して俺達は森を抜けた。

「やっと出られた」

「おつかれさん」

「お疲れ様です」

森を出ると平原が広がり、街道が見える。

「街道を歩いてれば始まりの町に行ける。

ここまでくればまずは一安心だ」

友人が笑って教えてくれた。

「というか、よく俺の場所分かったな」

「ああ、フレンド登録したろ。

こっちのダンジョン攻略終わったからおまえの場所見たら何故か【ゲーマーズ】になってたからな急いで向かったのさ」

「そうだったのか」

「正確な位置が分からないから、探索持ちのカーディアさんに来てもらった」

横の女性が頭を下げる。

「よろしくお願いします」

「えっと、よろしくお願いします」

「フレンドで一緒にダンジョン攻略してた仲間の1人だ」

「そっか。

しかし、おまえゲート行くのにパーティー推奨なの教えてくれなかったろ」

「はは、それはすまん。

まさか、1人で行くとは思わなくてさ。

俺もおまえからいつ連絡くるのか待ってたんだぞ」

「はぁ、肝心なところ抜けてるよ」

「ふふ」

そんな俺達を見てカーディアさんが笑う。

「仲いいんですね」

「ま、こいつとは腐れ縁ですからね」

友人もそう答えていた。

「もし、そこの仲の良い3人さん?」

「ん?」

俺達は立ち止まり声の方を向く。

そこには大きな箱を目の前に置いた農家っぽい人が座っていた。

ほっかむりをしていて顔はよく見えない。

「どうだい?

うちで採れたコーンを買わないかい?」

「え?トウモロコシ?」

俺はその露店?に近づく。

「そそ、コーン安くしとくよ」

友人も近づいてくる。

「珍しいねこんなところで店があるなんて」

「そうですね。

プレイヤーさん?」

カーディアさんも近くに来た。

「いやいや、コーンを作りすぎたのでちょっと小遣い稼ぎをしようとしているNPCですよ」

「ふぅん」

箱を見る。

『一回100G』と書かれている。

「えっと、一回100Gって?」

「100Gでこのコーンくじが引けます」

「くじなんだ」

「くじなんです」

「んー」

友人は考え込む。

「じゃ、俺が引いてみるよ。

はい、100G」

「まいど~」

お金を店の人に渡し、箱に手を突っ込む。

「どれにするかな?」

確かに手触りはトウモロコシだな。

「よし、これ」

1つトウモロコシを握り箱から出す。

そのトウモロコシは黄金色だった。

「おお、まさかそのコーンを引いてしまうとは」

「え、え?」

店の人の驚きに少し驚く。

2人も心なしか俺から離れたような。

「え?え?このトウモロコシ引くと何かあるの?」

「え?」

聞かれて驚く店の人。

いや、何で驚く?

「えっと、そのコーンは…」

「コーンは?」

「美味しい?」

「いや、知らんがな」

「はは」

俺の突っ込みにウケる店の人。

「ま、特に意味はないよ。

でも、大切に持ってたら何か良いことあるかもね、旦那」

「そうするよ」

店の人のしゃべり方に毒気を抜かれた。

「それじゃ、ありがとう」

「は~い。あ、そうそう黄金色なだけで黄金で出来てる訳じゃないから売らないでね」

「分かった」

「もし、次会う時までそれ持ってたら力貸してあげる」

「え?」

聞き返そうとした時には何故か露店が消えていた。

「え?

消えたのか?」

友人に聞く。

「いや、分からん。

一瞬目をそらしたらなくなってた」

「はい、私もです」

「なんか化かされたみたいだな」

しかし、俺の手には黄金色のトウモロコシが存在感たっぷり握られていた。

 

しばらく3人で街道を歩いていると友人がポツリと呟き始めた。

「さっきの店の人、やたらトウモロコシをコーンて言ってなかったか?」

「ああ、確かに言ってたな」

「あ」

何か気がついたのか口に手を当てるカーディアさん。

「ん?」

俺にはよく分からないが?

「えっとな、ホロメンの中にトウモロコシ関係の人が1人いるんだよ」

「え?農家の人?」

「いや、違う。

挨拶にもコーンをよく使ってるし」

「だからって考えすぎだろ」

「で、その人キツネなんだよ」

「キツネか」

「そう、人を化かしても不思議じゃない。

そして、その人はこの世界に拠点をおく」

『白上フブキ』

友人とカーディアさんが同時にその名を言った。

ゾクッと背筋に冷たいものが通った感じがした。

「いや、怪談話みたいに話すな」

「はは、すまんすまん」

「でも、もしフブキちゃんだったら、もっと話せばよかった。

なんか怪しいなぁと思ってたのに」

カーディアさんが名残惜しそうに言う。

「彼女フブキちゃん推しなんだよ」

「なるほど」

「お、そろそろ見えるぞ」

友人の指差すその先に、日本風の門が見えてきた。

あれが【ゲーマーズ】の始まりの町か。

 

 

無事に始まりの町に着き、友人とカーディアさんにお礼を言って別れた。

さて、この町を回ってみますか。

町に歩いていると人も【ファンタジー】と違い、獣人や鬼人が多かった。

もちろん人もいる。

全体的に日本風の建物が多いな。

ふと、目に止まる酒場。

ちょっと小腹が空いてきたし入ってみるか。

ちょうど時間的に夕方だからか案外客がいる。

俺はカウンターに座りメニューを見る。

お、いいなぁ。

居酒屋メニューだな。

俺は簡単なつまみと酒を注文する。

ゲームの中だからな飲んでも大丈夫だ。

「くぅ、上手いなこの酒。

つまみもいける」

パクパク、ごくごく。

いやぁ、旅の後の酒は上手いわ。

「なかなかいける口だね、旦那」

「え?」

いつの間にか隣に座るキツネの面を着けた少女。

さっき会ったトウモロコシ売りとは体格も声も違うけど、たぶん。

「何か食べる?」

「え?」

「今日は運がよくってさ」

俺はアイテムボックスから黄金色のトウモロコシを取り出し、少女に振って見せた。

「ふふ、そっかぁ。

じゃ、おごってもらおうかな」

それを見て少女はお面の下で笑う。

「もう会っちゃったけど大丈夫?」

美味しそうに注文した物をお面を着けたまま食べる少女。

「ふふ、そのコーンの事は分からないかな」

「はは、了解。

今回はノーカンって事で」

モグモグ

「ぷはー

美味しかった」

少女は綺麗に食べ手を合わす。

「ご馳走さまでした」

「お粗末様でした」

俺もその食べっぷりに笑顔になる。

「ミオに会うんだよね?」

「え?」

少女はこっちをじっと見ていた。

「暗闇に光指す晴れた日に大神神社の鳥居を見上げるといいよ」

そう言ってキツネ面の少女は手を振って席を離れた。

たぶん、それがなかなか会えないミオ様に会う方法なんだな。

「ありがとう、フブキちゃん」

俺はそう呟いて、おちょこの日本酒を飲み干した。




さて、無事に占い師の言う大神ミオ様に会えるのか。
暗闇に光指す晴れた日とはいつなのか。
次回をお楽しみに


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大神神社に駆け上がれ

キツネ面の少女から大神ミオに会う方法を聞いたあなた。
なんとなく時間の目星はついた。
あなたはその時間まで宿で休もうと町を歩いた。


俺はお勘定を払って酒場を出た。

彼女が言っていた暗闇に光指す晴れた日とは。

ふと、空を見上げる。

今は夜になっていた。

この世界とリアルの世界とは時間の流れが違う。

リアルで半日がこの世界での1日になっていた。

そうする事でプレイヤーが夜も朝も冒険する事ができるという事らしい。

見上げた空は満点の星空。

明日は晴れそうだな。

それから、俺は露店を見ながら情報収集をした。

酒場でも聞いたが、間違いなさそうだ。

大神神社はこの始まりの町にある。

この始まりの町に隣にある山の頂上にその神社があるらしい。

そこまで行くのに階段を何千段上がらないといけないと言うことだ。

ま、一度上がればワープポータルが解放されて一瞬で上がったり降りたりできるらしいけど。

酒場で彼女から聞いた言葉の時間そこに行くには少し休んどかないといけないな。

マップを開いておおよその山の入り口は分かった。

迷わないように入り口に印を付けてと。

さて、宿屋を探して休みますか。

「あ、あのう、すいません」

「はい?」

突然後ろから声をかけられ振り向く。

そこに剣を腰につけた男性が息を荒くして立っていた。

「と、突然すいません。

あなたを探してて」

かなり探し回ったのか息が荒い。

「な、なんでしょう?」

「えっと、あなたですよね?

黄金色のトウモロコシ持っていたのって」

「え?」

なんで知ってるんだこの人?

「酒場で持っているのを見たと言う人がいて」

あ、確かに出したわ。

「それでですね、そのトウモロコシ俺に譲ってもらえませんか?」

「え、どうしてですか?」

「はい、実はそのトウモロコシは呪いを解除するアイテムの1つなんです。

仲間がダンジョン攻略でその呪いを受けてしまってどうしても必要でして」

「そうなんですか」

確かにこのトウモロコシがどういう能力があるか分からないけど、そんな効果があるのか。

「なので是非お願いします」

「そう言われましても」

「この武器と交換してもらえないですか?」

「武器?お金じゃなくて?」

「はい、実は手持ちがなくて、そのトウモロコシは買えば5000Gするのでこの武器なら申し分ないかと」

剣を受け取り能力を見てみる。

確かにレア武器のようだ。

だけど。

「このトウモロコシって買えるんですか?」

「はい、この近くの農家で。

本当はこの武器を売ってお金に換えたいんですが、武器屋はもう閉まっています。

呪いは明日の朝までは持ちそうにないんです」

「お金があれば今からでも農家で買えますか?」

「は、はい、農家さんはまだ大丈夫です」

なら、所持金は9000G。

俺は5000Gを取り出して冒険者に渡す。

「え?」

「すいません、こちらも事情があってこのトウモロコシは渡せないんです。

代わりにこのお金でトウモロコシを買ってあげてください。

あと、武器も結構です。

俺にはもう頼もしい武器を持っているので」

「しかし、それでは何も担保なしで借りる事に」

「最悪その時はこのトウモロコシを買ったと思って諦めますよ」

「あ、ありがとうございます。

必ず、必ず返しますので」

そう言って冒険者は急いで走っていった。

これって彼女に関係するのかな?

でも、さっきの人は間違いなくプレイヤーだったしな。

ま、いいや。

このトウモロコシは渡さなくてすんだしな。

俺は改めて宿屋に向かった。

言われた時間に必ず鳥居に行かないとな。

 

 

「やば、寝過ごした。

間に合うか?」

俺は宿屋を出て山への階段に向かった。

まだ、辺りは暗い。

山頂に向かう階段についた。

まじかぁ。

見上げると噂通りの階段の数。

くそ、急がないと。

俺は石階段を上がり始める。

彼女が言っていた暗闇に光指す晴れた日とは。

晴れた日に朝日が出る時間の事を言っていたと俺は考えた。

ま、分かりやすく言ってくれたんだろうけど。

なので、早起きして階段を上がる予定が30分も寝過ごした。

「はぁはぁ」

リアルじゃなくて良かったよ。

リアルだったら死んでたな。

まだまだ、階段が続いている。

後ろを向く。

後ろの山がうっすらと明るくなって来ている。

くそう。

俺は力を入れ直し、階段を駆け上がる。

「まだ、つかないのか、はぁ、はぁ」

だいぶ登ったが、もう、後ろの山もだいぶ明るい。

ふと、上を見上げる。

ん?

誰かいる?

俺は疲れた体に鞭を入れ上がる。

やっぱりいる。

腕組みをして階段に立ちこちらを見る人影。

俺はその人に向かって階段を上がる。

「やっと来ましたね」

目の前で、長い白い髪を揺らし笑顔で待つキツネの女性がいた。

「まずはこれを飲んで」

スポーツ飲料?

ごくごく。

あ、疲れがなくなった。

「さ、行きますよ」

「了解」

俺は女性と共に階段を上がる。

「この姿では初めましてですね。

特殊世代組の白上フブキです」

《スキル【運命】が発動しました》

そうか君が。

「はい、よろしくお願いします」

お互いに笑う。

「約束通りきちんとコーン持っててくれたみたいなので手助けに来ましたよ」

「昨日のあれってやっぱりフブキちゃん?」

「はは、すこん部さんに頼んでちょっと一人芝居うちました」

すこん部?

たぶん、彼女を推してる人かな?

「なんか怪しかったですよ」

「ですよねぇ。

でも、約束守ってくれて嬉しかったですよ」

「約束守ったかいがありましたよ、こんな可愛い人が待っててくれるなら」

「な」

一瞬で顔が赤くなるフブキちゃん。

「今はそれ言うのやめて」

顔を隠しながらでもすごい勢いで上がっていくんだが?

「ちょ、ちょっと待って~」

 

やっと追い付いた。

「ほら、そろそろ着きますよ」

本当だ、階段がなくなってる。

「何とか間に合いそうですね」

後ろの山からゆっくりと太陽が上がってきている。

「条件は暗闇に光指す晴れた日に階段で上がってきて鳥居を見上げるだったんですよ」

「え?」

「君はこの世界は初めてみたいだから階段の事は言わなかったんですけどね」

上から歌が聞こえる。

「こんな晴れた早朝だったら、気分よく歌ってると思った」

「これはミオ様が?」

「そ、相変わらず聞いてると心が落ち着くなぁ」

確かにはっきりとはまだ聞こえないけど、疲れを忘れてしまうように気分が落ち着く。

「さて、わたしが付き合うのはここまで」

「え?」

「これは返しておきますね」

5000Gと狐と書かれた玉?

「これは?」

「それはおまけです。

必ず近いうちに役に立ちますから」

「ありがとう」

「いえいえ。では、おつこんでしたー」

そう言ってフブキちゃんはその場で宙返り、煙となって消えてしまった。

「ほんと化かされた気分になるよ」

俺は笑う。

さぁ、もう少しだ。

階段を上がりきった。

ちょうど朝日の光が背中から当たり、鳥居をくぐる。

俺はゆっくりと鳥居を見上げた。

そこには目をつぶり気持ちよく歌っている、ケモミミ少女の姿があった。

疲れた体を鳥居にもたれかけ、俺も目をつぶって歌を聴く。

途中で声をかけてこの歌を遮るのは無粋な気がした。

「終わるまで待っててくれたんだねぇ」

「え?」

目を開けるとそこには笑顔の大神ミオちゃんの姿があった。




さて、ミオちゃんに出会えたあなたは、自分の持つ2つのスキルの謎を知ることができるのか?
私事ではございますが、11月は不定期な掲載になります。
見捨てずお待ちいただけると嬉しいです


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スキル【運命】について 大神ミオの考察

無事に大神ミオに会えたあなた。
大神ミオはあなたのスキルに対して想像と違った答えを示す。


「初めまして、大神ミオです!」

目の前の彼女は笑顔でそう自己紹介をしてくれた。

《スキル【運命】が発動しました》

「それじゃ、行きましょうか」

俺はミオちゃんに連れられ神社に向かった。

境内に入るとハトの頭をしたやたら体格のいいモンスターが庭を箒で掃いていた。

「あ、ハトタウロス。

うちの神社の守り人してもらってるの」

なんかすごいな、頭を下げる。

ハトタウロスも丁寧に頭を下げてくれていた。

「こっち、こっち」

ミオちゃんは、本殿の中で手招きしている。

中に入ると少し薄暗かった。

「そこに座ってくれる?」

机の前に座布団が置かれていたので、そこに座った。

「さてと」

向かい合って机の反対側の座布団に座るミオちゃん。

「じゃ、何を聞きたいか教えてもらえるかなぁ?」

「あ、はい。

俺の持つ2つのスキルについて教えてもらいたいです」

「なるほど、分かった。

それじゃ、見せてもらうね」

ミオちゃんは机の下からカードを取り出す。

それを机に並べ始める。

しばらくカードを動かす。

「なるほど」

カードを片付けるミオちゃん。

「それじゃ、質問に答えるけど、少し長くなりそうだけど大丈夫?」

「あ、はい」

にこっと笑うミオちゃん。

「お茶良かったら飲んでくれていいからね」

いつの間にか机の上にお茶が置かれていた。

「あ、ありがとうございます」

「じゃ、まずキミが持つ2つのスキルのうちの1つ。

【運命】のスキルから」

やっとスキルの効果が分かる。

「簡単に言うと、このスキルは運営側が用意しているスキルではないわね」

「はい?」

運営が用意してるスキルではない?

「はは、ごめんね。

運営とか言っちゃって世界観ぶち壊しちゃってるね」

「い、いえ。

というかどういう意味ですか?」

「うん、この【運命】ってスキルはこの世界【ホロライブワールド】が自分自身で用意した言わばエクストラスキルなの」

「え?世界が用意する?」

「そう、この世界【ホロライブワールド】には世界の意思ってのがあるの。

人が電気信号を使って動いてるのは知ってる?」

「は、はぁ」

「この世界は言わば電子の海にあって、そこで様々な情報が流れて世界を作ってるの。

だから、この世界に意志があったとしても不思議じゃないでしょ?」

「ま、そうとも言えるって事ですかね」

「ふふ、その目に見える形が私達AIなんだけどね。

ま、ややこしい話は別にして、その世界が自分を守る為に作ったスキルがキミの持つスキルなの」

「自分を守る?」

「そう、1度前にね、この世界はある事件で消滅させられそうになったの。

たぶん、今回またその事件の首謀者が動き出したのかもしれない。

さて、ここからが本題。

今から話す事はリアルじゃなくてゲームのお話だから、キミが何かを背負う必要はないからね。

これを受け入れて進むか、途中で止めても誰もキミを責めないし。

たぶん、世界はまた新たな答えを出すと思う」

ミオちゃんが何を言おうとしているのか分からなかったが、俺を気遣って言ってくれてるのは分かった。

「教えてください」

ミオちゃんはにこっと笑い頷いた。

それはまさに聖母のような笑顔だった。

「キミはこの世界を消滅から救う為に選ばれた事になるの。

これはゲームの設定とかそう言うものではなく、現実にこの世界が何者かによって狙われている。

もし阻止を失敗したらこのゲームは消滅してなくなってしまう」

「え、いきなり、世界を救えって」

「そう、よくあるお話だよね。

異世界に来て世界を救う勇者になれって。

でもね、これはキミのリアルに関係する事ではないの。

リアルで何かあってこのゲームがどうしても出来ないとなったらそれは仕方ないと思う」

何も言えない。

確かに俺はたくさんのゲームをしてきた。

その中にはゲームの途中で止めたものもある。

「だから、キミはキミ自身で決めてゲームをしてくれればいいよ」

よく物語である異世界に飛ばされて命懸けで世界を救うというものではないとミオちゃんは言っているのだろう。

でも、俺がやらないと消滅してしまう可能性はある。

この世界に住むホロメン達も消えてしまうかもしれない。

ミオちゃんの言うとおり世界がまた新しい人を選ぶかもしれない。

でも、それは確実な事じゃない。

だったら。

「この世界に来て日が浅いですけど。

俺はこの世界でホロメンに会って、まだ推しとかよく分からなくて決められないけど。

でも、ホロメンの人達がすごく優しくて楽しくて一緒にもっと遊びたいと思うです」

俺はじっとミオちゃんを見る。

「だから、俺がこの世界を救う事が出来るならやってみたい」

「わかったわ。

なら、【運命】のスキルの効果を教えるね。

スキル【運命】は言わば主人公補正がかかるスキル。

どういう道をたどるかは分からないけど、最後にはキミはこの世界を狙う首謀者と相対する事になるわ。

その時、キミの周りにはキミに力を貸してくれるたくさんの人がいると思う。

だから、臆する事なく進んでほしい」

「分かりました」

「うん、後もう1つのスキルなんだけど」

「あ、これは後で増えてたスキルなんです」

「そっか、そのスキルは運営もこの世界でもないところから付け加えられたスキルみたい」

「え?」

「そのスキルを手に入れてから何かあった?」

「このスキルのせいかどうか分からないですけど、経験値が普段より多くもらえます」

「【運命】にはそう言うスキル能力はないからやっぱりもう1つのスキルの効果みたいだね。

なら、下手に封印しない方がいいかな。

そのうちそのスキルをこの世界に持ち込んだ相手にも会うと思うからその時に聞いてみて」 

「はい」

「長くなってごめんね」

「い、いえ」

「じゃ、当面の目的だけ伝えとくね。

キミはまずうち達ホロメンと会っていってほしいの。

具体的に言うとステータス画面にある、うち達のアイコンを全部点灯させてほしい」

俺はステータスの推し画面を開く。

いくつかは点灯しているが、まだ薄暗いところはたくさんある。

この薄い点灯はなんだろう?

ミオちゃんに聞いてみる。

「それは遠くから見たとかそんな感じだね。

相手には認識されてない状態」

確かにこのぺこみこコンビは遠くから見ただけだ。

「それより、やっぱりキミは会ってるんだね」

「え?」

「その懐にあるアイテムから予想はしてたけど」

俺は懐を探る。

懐から虹色のダーツを取り出した。

「これ?」

「そう、それはあるホロメンに出会った時に貰える可能性があるアイテムで、その中でも虹色は激レアだよ。

そのアイテムは特別でデスペナでも消えないから」

「まじで?」

「そのアイテムの効果はうち達ホロメン関係のイベントやクエストと遭遇する確率がすごく上がる」

「それかぁ」

「心当たりあるみたいだね。

そっか、それを持ってるならいけるかな」

ミオちゃんが何か考えている。

「いけるね。

じゃ、まずはキミにはこの【ゲーマーズ】にある次の町に行ってもらってあるホロメンに会ってほしい。

誰に会うかはそこに行けば分かると思うから」

そう言って大と書かれた玉を渡してくれる。

これって?

俺はアイテムボックスから狐と書かれた玉を出す。

「あ、それってフブキのだね。

そっか、フブキもよんでたって事か」

「これって?」

「それは使う時になったら光って報せるからその時に…って言って投げて」

こそっと教えてくれるミオちゃん。

「それ言わないと使えないの?」

「使えないよ」

イタズラっぽく笑う。

「分かりました」

「じゃ、まずは今のレベルを40ぐらいに上げてもらってパーティー組んで次の町に行ってみて。

その先は運命の赴くままにって感じかな」

ミオちゃんが笑う。

「分かりました、ありがとう」

「後ね、この町のギルドに行ったらこの階段を上がった事報告してみて。

それじゃ、近いうちに会うかもだけど、それまでまたね」

俺はミオちゃんにお礼を言って社を出た。

外ではハトタウルスが掃除をしている。

ハトタウルスに頭を下げると同じように頭を下げてくれた。

鳥居の横に光の輪が出ていた。

これがワープポータルかな?

俺はワープポータルには入らず階段をゆっくりと降りる事にする。

ミオちゃんから聞いた話。

スケールが大きすぎた。

世界を救うか。

まさか、そんな役回りになるなんてな。

でも、このゲームを終わらせたくないという気持ちはある。

まだまだ始めたばかりだしな。

俺はミオちゃんに言われたようにまずはレベル40を目標に町への階段を降りていった。




さて、救わなくてもリアルの自分には関係のない使命を受けたあなた。
他の作品のように命をかける必要もなく。
元の世界に帰る為に救う必要もない。
ただ、救わなければこのゲームが消滅してしまうだけの話。
実際にあなたが遭遇したら、あなたはどうするのか?
さて、次回は新しい町へ
お楽しみに


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ちょっと俺に説明させろ その3

大神ミオに自分のスキルの謎を聞いたあなた。
彼女から当面の目的を伝えられ、まずはレベル40を目標にレベル上げを模索する事にしたあなた。
そんなあなたにある人物が近づいていた。


町に着いた俺はさっそくギルドに向かった。

ミオちゃんに言われた通り大神神社に階段で上がったのを報告すると、経験値をいくらか貰うことが出来た。

ギルドからは、あの階段上がりはかなりの運動になるらしくクエストボードに表示されない隠しクエストの1つになっていて、《大神神社へ駆け上がれ》というクエストらしい。

経験値の他に筋力も少しアップしていたのが、嬉しい結果だ。

さて、これでレベルは30。

ミオちゃんに言われたレベルまで後10か。

さて、どうするか。

俺は少し考えた後、思い当たる方法を実行する事にする。

全ては明日からだ。

俺は宿屋に戻りログアウトした。

 

 

「というわけなんだ」

俺は次の日ログインした後、待ち合わせの場所に向かい、合流した人物に簡単に事情を話す。

「いや、というわけとか言われても分からんが?」

そう俺の友人は待ち合わせのギルド前で首を傾げた。

「いや、だからレベル40になりたいの」

「それは聞いたわ、いきなり夜中にリアルで連絡してきてレベル40になりたいからここに集合とかワケわからんわ」

「詳しくは言えないがミオちゃんに言われてさ」

「おい、ミオちゃんってあのミオちゃんか?」

「え?

そうだけど」

「会ったのか?」

「いや、会う為にここに来たって言っただろ」

「あほうか、そんな会いたいからっていきなり会える人物じゃないって言ったろうが。

会えたなら何で呼ばん」

「いや、お前関係ないし。

それに推しは確かねぽらぼとか言ってただろう?」

「ばかやろうが~」

いきなり大きな声を出す友人。

「例え推しではなくてもな、ホロライブの人に会えるチャンスはのがしたくねぇんだよ~」

だから血の涙流すなよ。

つうか周りの通行人もめっちゃ頷いてたりうずくまって大地を叩いたり、ノリが良すぎだろ。

ん?

なんか視界の端に狐面の女の子が地面叩いてたように見えたが?

「こら、分かってるのか~」

「だぁ、分かったから大声出すなって」

あの声に反応せず歩いてるのってNPCぐらいじゃないのか?

「ま、そう言うわけだからどうにかならないか?」

「ん~」

少し落ち着いたのか友人は何か考え始める。

「パーティーを組んでモンスター狩りしても良いが、俺とおまえとじゃ、レベルの差がありすぎてこの付近の敵じゃ経験値貰えないしなぁ。

かといって経験値貰える強さのとこまで行くと今度はおまえが死ぬ確率がある。

俺的にはおまえには死んで欲しくないんだよな。

デスペナでもしおまえのオーガキラーが失くなったら目も当てられんからな」

「これか?」

俺はオーガキラーを取り出す。

「ああ、鬼に対して絶大な特効効果を持つレア武器だからな」

「そこまでなのか?」

「当たり前だろ、おまえのレベルでゲート近くの小鬼2撃で倒せるなんて事普通は出来んぞ。

レベルカンストしてても最低5回はいる」

「まじで?」

「まじで!」

「となるとだな」

「接待しかないですよね?」

『え?』

俺達は声をかけられた方に振り向く。

カーディアさん?

そう、そこにはこの世界に来た時に世話になったカーディアさんが笑顔で立っていた。

「え?

どうしてカーディアさんが?」

友人がびっくりして聞いた。

「えっとフレンドでのダンジョン探索が終わって暇だったので、フレンドの位置を見ていたらここに表示されてたんで、もしかしてって思って来ちゃいました」

「あ、俺の場所見たって訳か」

友人は納得。

「はい、前回一緒にいた時にフブキちゃんと会えたのでもしかしたらワンチャンまた会えたりしないかなぁって」

「はは、なるほど」

俺も納得。

「ま、確かにカーディアさんのいう通り接待すれば何とか上げれるか?」

「でしょう」

「接待って?」

俺は友人に聞いた。

「他のネットゲームでもやる事あるんだが、パーティーを組まずに敵を高レベルが弱らせてとどめだけおまえがするんだよ」

「ああ、なんか、聞いたことある」

「ま、手加減が難しいが現実的にそれが一番近いかな」

「もっと良い方法あるんだけど?」

『え?』

今度は3人で声をかけられた方に振り向く。

そこには狐のお面を着けた少女が立っていた。

「いやぁ、君の叫びに呼応してしまって声をかけちゃったよ」

友人に向かって狐の少女が言う。

「分かってくれますか?」

「分からいでかぁ」

ガシッと腕を組む2人。

「えっとフブキちゃん?

何してんの?」

「やっぱり~!」

今度は俺の言葉で大声を出すカーディアさん。

推しってすごいなぁと心から思ってしまった。

 

さて、もう外にいると周りの目が痛いのでこの前来た酒場に来ている。

まだ早い時間なのでお客もまばらだ。

俺達3人はテーブルを囲んで座っている。

何故かお人形ぐらいの大きさになったフブキちゃんは、ちゃっかりカーディアさんが自分の膝に乗せていた。

「えっと、その姿は?」

俺はフブキちゃんに聞く。

「省エネモードです、見た目可愛いでしょ?」

「はい、もちろん可愛いです」

自分で言っといてカーディアさんに誉められ照れるフブキちゃん。

「というかこんなほいほい出てきて大丈夫?

一緒にいるところ他の人に見られるとヤバイんじゃ?」

そう、ホロメンと一緒にいる姿って暴動起きそうで怖い。

「あ、それなら大丈夫。

白上達ホロメンは基本イベントで会ってる扱いだから他の人からは見えないの」

どういう事だ?

「簡単にいうと、今、3人はパーティー組んで話してるよね?」

「うん、その方が他の人に会話聞かれないですむからね」

そう、パーティーを組むとパーティーチャットが使え、パーティーだけで会話する事ができる。

「なので、キミ一度パーティー解散して」

フブキちゃんに言われパーティーを解散する。

すると。

「え?見えなくなったぁ」

カーディアさんがおろおろしだす。

「確かにさっきまでいたのに見えない」

俺には変わらずカーディアさんの膝の上に乗ってるフブキちゃんが見えるんだけど。

「こういう訳だから、今白上はキミとイベントとして会ってるのですよ。

ま、本来はこんな何回も会えるのはシステム的におかしいんだけどね。

それはキミの持つレインボーダーツのお陰って事で」

おろおろしているカーディアさんの膝の上で笑うフブキちゃん。

なんか絵面的に嫌なので、2人をパーティーに誘う。

「あ、いたぁ」

フブキちゃんが見えたとたんカーディアさんがぎゅっと抱きしめる。

「なるほどな。

じゃ、普通に歩いてるやつの中にはもしかしたらホロメンとイベントしてて一緒に歩いてるって事もあるわけか」

「そうだねぇ、それもありますねぇ」

「それで、フブキちゃん。

レベル上げについてだけど」

「あ、そうだった。

忘れてた」

忘れないでぇ。

「白上が出すクエストをきちんとクリア出来たら、レベル10アップって言うのはどうですか?」

『え?』

2人が驚く。

ん?

何かすごいのか?

「それってパーティー組んでても、俺達レベルが10上がるってこと?」

「はい」

「受けます、まじで」

「え?

そんなにあっさりでいいのか?」

「あったり前だろ、さっきも言ったが、俺とおまえとじゃレベル差がありすぎる。

それをパーティー組んでクエストクリアしただけで全員が同じく10レベル上がるって神クエストだぞ」

「私はフブキちゃんのクエストなら断る理由ありませんので」

カーディアさん。

「ま、俺も後10は上げたいしありがたい」

「それにキミって後レベル10でカンストじゃないですか?」

友人に向かってそうフブキちゃんが言うと友人はニヤッと笑う。

「さっきもいってたけどレベルカンストって」

「ああ、このゲームはレベル99がカンストなんだよ」

「じゃ、後10なのか?」

「そうだ、これでカンストボーナスも狙える」

「え?カンストボーナスって?」

俺の言葉にゆっくりと友人がこちらを向く。

あ、これヤバイやつだ。

「ふぅ、そんなに俺に語らしたいらしいな」

そして、第3回友人語りが始まった。

 

「さて、長くなるぞ」

そう前置きを言って友人はレベルに関して話し始めた。

このゲームはさっきも言ったように最高レベルは99だそうだ。

ま、レベルカンストしてしまうと、とたんにやった感が出てしまい、ゲームが面白くなくなる事も多々ある。

しかし、この【ホロライブワールド】ではそのやった感を残したままゲームを続ける意欲が出るようなシステムをとっていた。

それがカンストボーナスだ。

カンストボーナスとはレベル99になったら選択出来るもので、レベルを1に戻す代わりにカンストボーナス専用の武器や防具、アイテムを貰えたり、ステータスの底上げをして貰える。

ちなみにレベル99にしてもステータスはカンストしないのでカンストしたかったらカンストボーナスで底上げしていかないといけないらしい。

そして、カンストボーナスで1番の目玉は、そのカンストボーナスを選びログアウトを選んだ時に落ちる前に行ける場所にもあった。

そこは真っ白な空間で、デスクが1つポツンとあり、そこにいる人物にボーナスを言うことで貰えると言うのだ。

そこにいるのは何とAちゃん神と呼ばれる人物らしい。

モデルは実際にいるホロメンの裏方さんらしく、ファンも多数いるとか。

その人のAIが相手をしてくれるらしい。

ちなみにカンストボーナスの中にAちゃん神と10分間お茶会タイムという項目がある。

その名称通り、Aちゃん神とお茶会をするだけなんだが、たまにホロメンが混ざってくるらしく、聞いた話だとオリジナル世代揃い踏みでお茶会をした時もあったらしい。

そう言うわけで、そのお茶会目当てのAちゃんファンの人もいて、レベルカンストは只の通り道と言われている。

ま、レベルカンストするには相当頑張らないといけないらしいけど。

「とまぁ、そう言うわけだ」

俺は友人の話を聞きながら頼んだジュースを飲んでいた。

カーディアさんは頼んだケーキをフブキさんに食べさせている。

もぐもぐ。

餌付けされてるのか?

「聞いてるのか?」

「聞いてるって」

「という訳でそのクエスト受けます」

俺の代わりにフブキちゃんに答える友人。

いきなり話かけられてケーキを某奥さんのように喉に詰まらせそうになるフブキさん。

カーディアさんに背中をトントンされながら水を飲む。

「お水大事です」

ポツリ呟くフブキさん。

「分かりました、それでは3人には白上が用意した特別クエ『四大神社をお参りせよ』を受けて貰います」

こうして俺達はフブキちゃんの出すクエストを受ける事になった。




次は彼女が出した特別クエストを3人と1人でおこなって行きます。
次回もお楽しみに


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チェーンクエスト『四大神社をお参りせよ』大神神社編

レベル上げの為、白上フブキからクエストを受けたあなた。
白上フブキが出したクエストに挑戦すべくあなたは友人と待ち合わせした場所に向かうのであった。


あの後、俺達はフブキちゃんからクエストの内容を聞かされた。

クエストの内容はこの【ゲーマーズ】にある4つの神社を回る事。

1つは俺が1度行った事のある大神神社。

1つはこのクエを出したフブキちゃんの拠点、白上神社。

残り2つは主は現在ここに拠点を置いてないが、戌神神社と猫又神社と言う事だ。

フブキちゃんの説明だと各場所に行って帰るのにホロ時間(ホロライブワールド内の時間)で1日はかかるらしい。

大神神社はそんなにかからないと思うんだが。

という訳でリアル時間で明日と明後日でクエをしようという事になった。

俺と友人は2つとも都合がつくのだが、カーディアさんがどうか心配だった。

彼女リアルは社会人で仕事をしているらしい。

しかし、「え?もちろん有給出して休みます」と普通に言われ、少し戸惑った。

友人は納得するように頷いてたが、「リアルを大事にしないと」という俺の言葉に「フブキちゃんと過ごせる時間以上に大事なことってあるんですか?」と真顔で答えられた。

腕の中のフブキちゃんも「あははは」と笑うだけだった。

推しってすごいなぁと心から思うのだった。

後で、フブキちゃんに「無理しないでくださいね」と言われて「大丈夫です。有給溜まってたのでちょうどよかったんです」とやり取りしているカーディアさん達が微笑ましかったけどね。

それから諸々と各自に分かれて準備をし、昨日はログアウトした。

そして、今日クエスト出発の為にここギルド前の待ち合わせ場所に俺は来ていた。

 

「やぁ、早いですね」

完全に人形姿になっているフブキちゃんがピョコピョコと歩いてきた。

「えっと何故その状態で?」

「それはもちろんクエには参加するけど、お手伝いできないマスコットキャラという位置を確立する為ですよ。

白上と契約して推しになってよとか言ってみたり」

「ああ、それ危ない方のやつだわ」

「お待たせしました」

カーディアさんが到着。

早速パーティー登録した後、「可愛い」とフブキ人形を抱きしめる。

その後、カーディアさんにも同じような事を言っているフブキ人形。

「もちろんです、身も心も捧げますよ」と冗談に聞こえない事を言われフブキ人形また「あはははは」と笑っていた。

いや、そう言われるの分かってるだろ、フブキちゃん。

その後、友人も到着。

やっぱり同じ事を友人にも言ってるフブキちゃん。

なんか気に入ったのか?

「俺には心に決めた人達がいるんです、すいません」と血の涙を流しながら丁寧に断ってる友人。

その血の涙ってゲーム的にある演出なのか?

さて、一通りお約束的な事が終わりまず俺達は大神神社に向かった。

始めに大神神社に向かうのは3人とも地理が分かっているからだ。

大神神社の階段前に到着。

大階段の横に前に山頂で見たポータルがあった。

これに入れば一瞬だな。

俺達がポータルに向かおうとすると。

「あ、それは使わないで歩いて上がるのがクエストクリアの条件です」

カーディアさんの頭の上からフブキちゃんが言った。

「あと、これを」

フブキちゃんが手を振ると空間から箒が3本出てきた。

「これって?」

「はい、階段掃除しながら上がると言うことで」

フブキちゃんはにこっと笑顔で答えた。

「くそう、何で1日かかるのかと思ったらこういう事かぁ」

俺は大階段を掃きながら上がる。

3人で場所を決めて掃いた上がっているのだが、この掃いたゴミってどこに行くんだ?

「その箒は魔法の箒で掃いたゴミを自動的に異空間に転送して燃やしてくれます。

あまり大きいのは無理ですけどね」

「便利だなぁ」

はぁ、まだまだ先は長い。

ゆっくりとしていたら1日が終わってしまうな。

カーディアさんは頭の上のフブキちゃんと話ながら確実に歩を進めている。

「今の彼女は常にブーストがかかっている状態だ。

精神的に」

カーディアさんを見て友人が俺に教えてきた。

「だろうなぁ」

顔が全然疲れてない。

終始笑顔だし。

「俺もねぽらぼのみんなに「頑張って」とか言われてみたい」

「そうかぁ」

ふと、ラミィちゃんとぼたんさんを思い出す。

「そんな優しく言ってくれない気もするなぁ」っと呟いてしまった。

さて、俺達はそれからも何だかんだと言いながら階段を掃き続け、お昼過ぎには頂上へと着いた。

頂上に着くと、ハトタウロスがお茶を入れてくれた。

大神神社の境内で飲むお茶は格別だった。

「これで第一クエ完了です」

そうフブキちゃんが言った。

「なるほど、これはチェーンクエストになってるわけだ」

友人がフブキちゃんの言葉を聞いて納得している。

「チェーンクエスト?」

「そう、いくつかの小クエをクリアする事で、大元のクエがクリアになるクエストの事をそう呼ぶ」

「なるほどな」

「それじゃ、残りは後3つって事か」

「そうだな、今日は宿に泊まって明日はフブキちゃんの社に行くか」

友人がそう提案する。

「それなら私が案内しますよ」

フブキちゃんを膝に乗せてお茶を飲んでいたカーディアさんが言った。

「私達、毎月聖地巡礼に行ってるので道は分かります」

「聖地巡礼?」

「ああ、おまえは知らないか、普通に家じゃない場所を管理しているホロメンのファン達は、聖地巡礼といってファン同士で集まってその場所に行くんだよ」

「へぇ。で、行って何するんだ?」

「え?

みんなでその場所を掃除したり、スクショ撮ったり、沸いてるモンスターを狩ったりする」

「え?

ホロメンが管理する場所にもモンスター沸くのか?」

「そうだな、守り人がいる場合は沸かないんだが、いない場合は沸くな。

確か、戌神神社と猫又神社には守り人がいないから沸くはずだぞ」

「そうなのか、白上神社には守り人いるんだ」

「はい、いますよ。

会うまでもお楽しみって事で」

カーディアさんが笑う。

友人もそれを見て笑っていた。

2人は知ってるのか。

ま、楽しみにとっておくか。

「それじゃ、明日は白上神社に向かうという事で」

『おー』

俺の号令に3人は手を上げて賛成してくれた。




それでは、告知通りに11月は不定期更新になります。
頑張って更新はしていこうと思いますのでお待ちください。
では、次回お楽しみに。
※この作品はフィクションです


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チェーンクエスト『四大神社をお参りせよ』白上神社編

無事に大階段の清掃を終えたあなたたち一行。
次に向かうのはマスコットキャラになっている白上フブキの管轄である白上神社。
さて、そこに待ち受ける守り人とは。


さて、今日の天気はと。

宿の部屋から外を見る。

本日も【ゲーマーズ】は快晴だな。

俺は準備をして宿の外に出た。

「お、来たか」

「おはようございます」

「おはこんでーす」

「お、おはよう」

みんな待ってた。

「ごめん、遅くなった」

「なに言ってんだよ。

まだ、時間になってないって。

こっちは楽しみすぎて少し早めに来ちまったよ。

ま、この2人には負けるけど」

「私はフブキちゃんに会えると思うともういてもたってもいられなくてもっと早く起きてしまいました」

「来た瞬間捕まってビックリした」

そう言いながらフブキちゃんは、定位置であるカーディアさんの頭の上にいた。

ログアウトしないから、パーティー組んだままだったのでフブキちゃんの姿見えたんだな。

「それじゃ、フブキちゃんのお宅訪問するか」

『了解』

「いや、その言い方は嫌だなぁ」

若干1人不服を言ってるけど、俺達は白上神社に向かった。

先頭はカーディアさん。

始まりの町を出て、大神神社とは反対側にある、あの朝日が登っていた山の方に向かっていた。

時々出る敵は友人とカーディアさんの相手にならず旅は順調だった。

山の麓に来る。

ここからは山を登っていくらしいけど、道という道はなく獣道を進むらしい。

初めてここに来た冒険者は必ず迷う、迷いの山道と巷では噂になってるとかなってないとか。

「それにしても毎月行ってるんだよね?」

「はい、行ってますよ」

「なのに草が全然へたってないね」

そう、今歩いている獣道はどう見ても他の場所と同じように草が生い茂っていた。

普通、獣が通った後みたいなのがあるはずだよね?

「ま、見た目は変わらないですけど、マッピングしてるので」

「なるほど」

地図に道を記しているのか。

「あ、敵がくるよ、カーディアちゃん」

頭の上のフブキちゃんが警告する。

「了解だよ、フブキちゃん」

「なんかやり取りが魔法少女と使い魔みたいになってるんだけど」

隣を歩く友人に言うと。

「ま、身も心も魂も捧げてるからなぁ」

「それ、ヤバイやつだ」

「ほら、2人とも来ますよ」

そして、それは現れた。

「いやぁ、あれ怖いわぁ」

俺の目の前に現れたのは、木の影からひょっこり顔を出す大狸。

木から顔を出しているんだが、かなりの大きさで俺達の2倍近く大きい。

到底木に隠れられる大きさではないのだが、顔を出してる反対側には体も何も出ていない。

「想像すると怖いから」

「化け狸ですね」

「へぇ、あれが」

化け狸と呼ばれたモンスターはただ覗いて来るだけで何もしてこない。

ただ、木の影から覗いてニヤッと笑っているだけ。

「攻撃しては来ないの?」

「いえ、放置しとくと厄介ですので」

カーディアさんの言葉に、友人は剣を抜き、化け狸に向かって跳躍。

上段からの一閃で化け狸を光に還した。

ギャワワワワワワワワワ

消える間際に断末魔。

それを聞いて周りからがさがさと何かが逃げ出した。

「あ、仲間がいたのか」

「ごめんなさい、探索するのを忘れてました」

「いや、大丈夫。

しかし、厄介になったな」

「ですね」

友人とカーディアさんが困った顔で考え込む。

良く分かってない俺はぼーと見てるしか。

「化け狸のパーティーを逃がすとややこしいんです」

そう、俺の頭の上からマスコットキャラの声がした。

「フブキちゃん」

「化け狸はここの森にだけポップするモンスター何ですが、狸がパーティーを組んだ時は要注意なんです。

だいたい5匹ほどのパーティーなんですが、今回みたいに、その内の1匹だけ倒すと他は逃げて、今度は違う脅かし方をしてくるんです」

「うぉ」

友人の声にそっちを見てみると巨大な狸の頭が木の上から吊られていた。

良く見ると、頭の上の方に小さい体が見える。

頭だけ大きくしたのか。

パッと見は怖いけど。

「カーディアさん」

「はい」

友人の言葉にカーディアさんは呪文を唱える。

「相手の位置特定しました。

送ります」

その言葉と同時に視界に赤いマークが現れた。

これが探索?

「そっち2匹頼むぞ」

「お、おう」

友人に言われ剣をとる。

近くの赤いマークが出てる草むらに剣を突き刺した。

すぐさま、背後の木に斬りかかる。

断末魔を上げ、草むらと木の表面に偽装していた狸が光に還った。

向こうも倒したようだな。

「さすがだな」

友人が笑う。

「カーディアさんのお陰だよ。

場所が分からなかったらまた、逃げられてたと思う」

「確かにな」

「そんな事ないですよ」

とカーディアさんも笑った。

「で、さっきの続きだけど」

カーディアさんの頭に戻ったフブキちゃんに聞く。

「あ、はい、段々と数を減らし最後の1匹になると実はあの狸、レアモンスターに変わるんです。

ま、10匹以上のパーティー限定ですけどね」

「まじで?」

「はい、ちなみに特殊レアモンスターでスリースターズで現れます」

「めちゃくちゃレアじゃん。

しかし、スリースターズはヤバイな」

「ですね、この情報は広めない方がいいかもです」

確かフルレイドでも倒すのが厄介なモンスターだったよな?

それにこの地形だとかなり不利になる。

ホロメンの誰かが手伝ってくれたらどうにかなるかもだけど、それは普通はあり得ないからな。

ふとフブキちゃんを見る。

笑顔で手を振ってくれた。

それは挨拶みたいにも見えるし、俺の考えを読んで無理ですよと、言ってるようにも見えた。

ま、どうしても戦わないといけなくなったら、その時やるか。

その後、俺達はお化けトカゲや小鬼、化け猿等多種のモンスターと戦いながら山を上がった。

ほとんど友人とカーディアさんが倒してるけどね。

さすが高レベル。

「そろそろ見えますよ」

そう言われて前を見ると、森が開けているのが見えた。

「着きました、ここが白上神社です」

そう言われて着いた場所は開けた山頂だった。

立派な鳥居の奥に本殿が1つあるだけだが、何かここだけ空気が違う。

俺達は鳥居をくぐり本殿の前に立つ。

「さてと」

そうカーディアさんがいった後、大きな声で喋り始める。

「ああ、半年しかたってないけどまだ綺麗で良かったです。

ねぇ、綺麗とは思いませんか?」

いきなりどうした?

「本当だ、さすが聖域だなぁ。

しかし、ここまでの道のりはかなり疲れたぜ。

なぁ、兄弟」

友人もつられて大きな声。

って言うか兄弟違うし。

やらたとウィンクしてくるカーディアさん。

俺もやれって事か。

「本当だ、めちゃくちゃ迷って疲れた~

ここらで休憩しようぜ」

すると、本殿の奥から何か気配がする。

「あ、出てきてくれるみたいですね」

カーディアさんが笑顔で今度はひそひそとこちらに言ってきた。

そして。

「うっせ~

こっちはゆっくり寝転がってゲームしてんだから黙ってろ」

本殿の扉が開き、そこにはどこかで見た人物が。

髪は黒色で目付きが少し悪い、狐の少女。

簡単に言えばフブキちゃんの黒色バージョン。

カーディアさんはそっと頭のフブキちゃんを持ち上げ、黒色のフブキちゃん?に見せる。

「げ、白上」

半歩下がって嫌な顔をする黒色フブキちゃん?。

「げっじゃありません、何度言ったら分かるんですかぁ」

人形状態からリアルバージョンに戻るフブキちゃん。

本当に髪と目付き以外はそっくりだ。

「参拝者の人には優しくしてくださいといつも言ってるでしょ」

左手を腰に右手を振りながら見た目はもうお姉さんかお母さんだな。

「予告なしで帰ってくるの反則だぞ」

威勢良く反論しようとしているが、どう見ても悪さを見つかった子どもだな。

「はぁ、ミオのところのハトタウロスを見習ってほしいです」

「うっせぇ、よそはよそうちはうちだ」

親子喧嘩か姉妹喧嘩だな。

微笑ましく見守るカーディアさん。

そういう顔になっちゃうよなぁ。

「すいません、改めまして、こっちが白上の社の守り人、黒上フブキちゃんです」

「ちゃん呼び止めろよ」

2人並び白上フブキちゃんに頭を押さえられる黒上フブキちゃん。

いたずらっ子とその親か?

「さて、これで白上神社のクエはおしまいです」

そう白フブキちゃんは言った。

「白上をこの神社に連れてくる事が今回のクエですので、後帰るのちょっと待っててくださいね」

そう言うと白フブキちゃんは黒フブキちゃんを連れて本殿の中へ。

「ん?

何か用事があるのかな?」

俺は疑問を口にする。

「はは、違いますよ。

てぇてぇタイムです」

カーディアさんが笑う。

「てぇてぇタイム?」

「命懸けで覗いてみろよ」

友人が笑いながら俺に言う。

「え?

命いるの?」

「確かにいるかも」

カーディアさんも笑ってる。

「ほら、行ってこい」

友人に背中を押されて本殿の扉に。

そして、こそっと隙間から覗いた。

「あ」

「てめぇ、何見てやがる」

その後、俺は綺麗に鳥居の外まで吹き飛ばされた。

一応生きてるな。

「どうだった」

倒れてる俺を覗き込みながら聞いてくる友人。

「中で白フブキちゃんに膝枕されながら、櫛でしっぽといてもらってる黒フブキちゃんが見えた。

見つかった時、顔真っ赤にしてこっちにくる黒フブキちゃんの後ろで白フブキちゃん、あはははって笑ってたよ」

「うむ、てぇてぇゲットだな」

「あれがてぇてぇって言うのか」

「いいもんだろ」

「うむ、あれはいいものだ」

2人でそう話していると、白フブキちゃんが本殿から出てきた。

「もう、新人さんにいたずら教えて、メですよ。

それにあれは忘れろビーム案件です」

そう笑いながら白フブキちゃんが言った。

 

「ま、また、気が向いたらこいよな」

そう黒フブキちゃんは帰る時に言ってくれた。

ツンデレ?

「じゃ、お留守番お願いします」

「おまえは再々帰ってこい」

白フブキちゃんにそう突っ込む黒フブキちゃん。

あはははと笑いながらマスコットキャラに変わった白フブキちゃんは手を振る。

黒フブキちゃんも本殿から軽く手を振ってくれた。

これで2つ目のクエが終わった。

残り2つ。

次は守り人のいない神社。

どんなモンスターが待ち構えているのか。

気を引き締めて行かないといけないな。




時間を見てかきかきしております。
楽しんでいただけると幸いです。
やっぱてぇてぇはいいよねぇ。
絵で見たい。
絵上手い人尊敬するわぁ。
というわけで次回もも楽しみに。


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チェーンクエスト『四大神社をお参りせよ』猫又神社編

2つ目のクエ、白上神社に白上フブキを連れていったあなた達。
てぇてぇという言葉を知り、にやにや眠りにつこうとしたあなたに謎の魔の手が迫る。


町に戻った俺達は明日に備えてログアウトする事にした。

帰り道に3人で相談した結果、次に向かうのは猫又神社がいいという事になった。

理由として場所が少し遠いみたいで、後に回した時にリアルで深夜までしないといけなくなる可能性が出てくる為だ。

俺達は次の目的地を決めた後、宿屋に向かう。

ログアウトをするのでパーティーを解散しないといけないのだが、カーディアさんがすごく名残惜しそうにフブキちゃんを抱いていた。

明日も会えるからとなだめた後解散、俺は宿の部屋に入り布団に入った。

はぁ、いろいろな事があったな。

しかし、あのてぇてぇというのはいいものだった。

ゲームの為、画像がはいっきりと残せるのはありがたいな。

ログアウトの為、睡魔に襲われる。

ふと、誰かが近づいて来て俺を覗き込んでいる感じがする。

眠い、誰だ?

「それは忘れろビーム案件ですよぉ」

そう、最後に囁かれた気がした。

 

 

次の日。

俺は【ホロライブワールド】にログインした。

昨日の夜、ログアウトしようとした時に何かあったと思ったが何だったのだろう。

旅の記録を納めた画像を確認する。

特に何もないかな?

でも、なんか違和感がある。

黒フブキちゃん登場の後、すぐに帰るスクショになってる。

なぜだ?

なぜかこの間に大事な事があった気がする。

そう、て。

て、なんとか。

てぇ、もう少しで思い出しそうだ。

そうてぇて。

「それ以上は戻ってこれなくなりますよぉ」

「うわぁ」

いきなり背後から声をかけられる。

「な、なんでここに来れるんだよ、フブキちゃん」

そう、そこには人形型のフブキちゃんが不適な笑みで浮いていた。

「いや、人形状態で不適な笑みのまま、浮かばないでホラーだから。

ああ、もう、もう少しで思い出せそうだったのに」

「ま、人生なんて過去を忘れながら進んでいくものですから」

「なんか格言ぽく言ってるけど、めちゃくちゃ言ってるから、過去は大事な情報だから」

「それじゃ、外で待ってますぅ」

そう言って浮遊したまま扉に向かう、フブキちゃん。

ふと、扉の前で止まり、こちらを振り向く。

「決して思い出そうとしないように」

「分かったって、だからその不適な笑み止めて」

「キヒヒヒヒヒ」

「だぁ、その笑い方も」

フブキちゃんは笑いながら扉を開けずにすり抜けていった。

まじで、怖いから止めてください。

 

 

その後、準備をして宿を出る。

外では3人が待っていた。

早速パーティーを組む。

「フブキちゃん」

ぎゅっとカーディアさんに抱きしめられるフブキちゃん。

なんか苦しそうに見えるけど。

「よ、調子はどうだ?」

「え?、なんで?」

「なんか顔憑かれてるから」

「いや、疲れてないぜ、起きたばっかだし」

「ならいいが憑かれたならお祓いしてもらえよ」

「そっちの憑かれてるか!

なら、絶賛憑かれ中だよ」

2人でフブキちゃんを見る。

「確かにな」

 

それから俺達は町にある篭屋に向かった。

目的地まで少しあるので篭に乗って近くまで行くらしい。

「へぇ、これが篭かぁ。

って言うか人力車じゃね?」

そう、俺の目の前に人力車があった。

「そうだか、ここではこれを篭っていうんだよ」

「ふぅん」

「さ、乗り込むぞ」

俺達は向かい合って座るかたちで乗り込む。

「案外座れるな」

「ま、馬車みたいなものだな」

「今回はご利用ありがとうございます」

そう言って馬頭の人が話しかけてきた。

「いや、馬車じゃん」

「はは、お客さん。

私はこう見えてもれっきとした馬人。

そんじゅそこらの馬と同じにされては傷つきます」

「あ、これチップで」

友人はそう言ってニンジンを渡す。

「これはすいません、遠慮なくいただきます」

ガリガリ

生で食べる馬人。

「ヤッホゥ、高級ニンジンだぜ、ヒヒーン」

いや、馬じゃん。

「にゃぁ」

ヒヒーンに驚いたのかフブキちゃんが変な声をあげる。

なぜか目を輝かせるカーディアさん。

「ねこ…」

「フブキちゃん、狐なんだから変な鳴き方したらダメだよ、狐の自覚もって」

何かカーディアさんが言おうとしてたが、先に言ってしまった。

「え?あ、はい、気を付けます」

素でフブキちゃんに返される。

「すごいな、お約束もなんもぶち壊していけるんだなぁ」

友人の言葉に無言で頷くカーディアさん。

「ん?どういう事だ?」

「いや、別にいいよ」

友人はそう言って哀れみと驚きの目で俺を見ていた。

そうこうしている内に、俺達は目的の山の麓に着く。

料金を渡し、帰っていく篭。

帰りも通話機能を使えば呼べるらしい。

ちなみに個性豊かだが彼もNPCだそうだ。

「ここが目的の場所がある山か」

大神神社や白上神社とはまた違った山。

草木はあまり生えておらず、鋭く尖った岩が所々切り立っている。

「この山の中腹に目的の猫又神社がある」

「ここは守り人がいないんだったよな」

「ああ、だからモンスターとの遭遇率も高いはずだ」

友人の言葉に俺は頷く。

カーディアさんも心なしか緊張しているみたいだった。

俺も武器を取り出す。

いつでも戦闘態勢に入れるようにしないとな。

そして、俺達は山の中腹に向かった。

「そういえば、あの篭を使えば次の町にも安全に行けるんじゃないのか?」

疑問を友人にぶつける。

「ああ、あれな。

あれは町間は使えないんだよ。

行けるのは自分が1度でもいったことのあるダンジョン系の場所だけだ」

「そうなのか?」

「ああ、それに使う篭屋から離れすぎるとダメなのと、いく場所の適正レベルより上じゃないと運んでくれない」

「じゃ、おまえはここに来たことあって適正レベルより上なんだ」

「ああ、カーディアさんも来たことあるんじゃないか?」

「はい、何度か来ました」

「ちなみにここの適正レベルは50だ」

「うぇ、20も上かよ」

「ま、俺やカーディアさん、それにフブキちゃんがいるから大丈夫だよ」

「ああ、頼りにする」

「任せてください」

カーディアさんとフブキちゃんが笑顔で答えてくれる。

「しかし、モンスター出ないもんなんだな」

そう、あれからだいぶ歩いているが、まだ遭遇していない。

「普通はここまで来るのに2回程戦闘してるけどな」

そう、友人が呟いた時。

「おりゃー」

ギャァァァ

誰かの声と断末魔が少し先の方から聞こえてきた。

「誰かが戦ってるみたいだ。

行ってみよう」

友人の言葉に俺達は先を急いだ。

 

そこには1人のナイト風の装備に身を包んだ冒険者がいた。

「こんにちは」

友人が話しかける。

「ん?

やぁ、探索かい?」

ナイト風の男性も気さくに話しかけてくれた。

「いえ、この先の猫又神社にお参りに」

俺がそう伝えるとナイト風の男性は嬉しそうな顔をする。

「なんと参拝者の人だったか、分かった案内するよ」

俺達はナイト風の男性、名前はウメさんを先頭に神社に向かった。

ウメさんはこの猫又神社の主、猫又おかゆさんを推してる人らしく今日は当番でこの付近のモンスターを狩っているという事だった。

「ここには守り人がいないだろ。

なので、おにぎりゃーで当番を作って、ここ一帯を安全にしているんだ」

「なるほど、守り人の代わりですね」

さすがファンの人。

「で、おにぎりゃーって?」

隣の友人に聞く。

「ああ、ファンの愛称だな」

「ちなみに私はすこん部ですよ」

フブキちゃんが嬉しそう頷いている。

「ほら、見えてきた」

ウメさんの指差す先に鳥居が見えた。

しかし、何か様子が変だ。

誰かが戦っている音がする。

「くそ、まさか今日現れたのか」

ウメさんの顔色が変わる。

「すまない手を貸してくれ、やつが現れたらしい」

ウメさんと共に俺達も社に向かって走りだす。

「やつって?」

「この付近にポップするボスモンスター

女郎蜘蛛だ」

 

俺達が社に着いた時、戦いは始まっていた。

俺の3倍はあるだろう巨大な蜘蛛と1人のナイトが戦っていた。

大きなおにぎりの被り物をして。

「えっと、ウメさん?」

俺はウメさんを見る。

「なんだい?」

おまえもか。

「おにぎりゃーはこれが正装だからな」

友人は武器を手に取りすれ違いざまに教えてくれる。

「そういうものか」

「行くぞ、君たち」

ウメさんを先頭に俺達も戦いに加わった。

「おお、ウメ来てくれたか」

「ああ、オカカよく耐えてくれたな。

援軍も連れてきたぞ」

いや、おにぎりの具材だよね?

「よし、総攻撃だ」

ウメさんとオカカさんが敵からの攻撃を防いでくれている間に、カーディアさんの炎の魔法、友人の剣技が炸裂する。

俺も敵の噛みつき攻撃を避けながら頭部に一撃を加える。

「く、今回は星持ちか」

確かに額に星1つ。

「大丈夫だ、こっちは5人勝てない相手ではない」

うーん、シリアスなんだけどなぁ、めちゃくちゃシリアスなんだけど。

ガァァァ

女郎蜘蛛がその細い後ろ足で立ち上がる。

「くそう、プレスだと」

「く」

友人達の顔色も変わる。

あの巨体でプレスしてこられたら、ヤバイ。

ギャァァァァァァァァー

しかし、プレスは来ず断末魔を上げ一瞬怯む女郎蜘蛛。

「よし、後退だ」

ウメさんの号令で俺達は女郎蜘蛛から距離をとる。

女郎蜘蛛はそのままゆっくりとこちらに倒れてくる。

プレスじゃない?

目の前に弱った女郎蜘蛛。

「ここだ!畳み掛けるぞ!」

オカカさんの号令で俺達は女郎蜘蛛に総攻撃をかける。

女郎蜘蛛は徐々に光に変わり消えていった。

その時、俺は女郎蜘蛛の背中に何か大きな爪痕があったのが見えた気がした。

しかし、なんで最後プレス攻撃してこなかったんだ?

「やっぱり、おにぎりゃーの頑張りはきちんと見てるんですね」

ガッツポーズを取るおにぎりゃーを見てフブキちゃんがポツリと呟く。

「何か言った?」

「いえいえ」

フブキちゃんは誤魔化すように笑っていた。

その後、本殿周りを掃除、お参りをした後、俺達は町への帰路に着いた。

今回の猫又神社のクエも無事に終了。

次は最後の神社、戌神神社だ。




次でチェーンクエストラストになります。
先に書きためていますので明日投稿予定。
では、また次のお話で


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チェーンクエスト『四大神社をお参りせよ』戌神神社編

無事に3つ目のチェーンクエストを終えたあなた達。
次は最後のクエスト、戌神神社へ。
さて、そこであなたを待ち受けるのは。
※本作品はホラーではございません。


町に着いた俺達は酒場で食事に来ていた。

今回の女郎蜘蛛討伐でなんとレベルが2も上がった。

パーティーを組んでいなかったおにぎりゃーの人達が、止めを俺達に譲ってくれたようで、星1つ持ちのモンスターの経験値がまるまる入ったらしい。

ちなみにドロップ品はなかった。

おにぎりゃーの人達めちゃ優しいな。

友人達は経験値は入ったがレベルアップまでには足らなかったらしい。

何はともあれチェーンクエストも後1つ、俺達は明日に備えて楽しく食事した。

「そういえば、チェーンクエストと連続クエストは違うのか?」

俺の言葉に友人は肉を食べる手を止め教えてくれる。

「連続クエストはクエストをクリアすると次のクエストが出るクエストだな。

チェーンクエストはもともと全てのクエストが出ていてどれからやってもいいが全てを終わらさないとクリアにならないクエストだ」

「なるほどな、クエもいろいろあるんだな」

「ああ、次の町に進めば種類も増えるからな」

「楽しみにしとく」

俺達は食事を済ませ、宿に向かう。

ログアウト無しの休息を取る。

次は戌神神社に出発だ。

 

 

『おはよう』

今回はほぼ同じくらいに宿屋の前に集合した。

「それじゃ、戌神神社に行きますか」

『おー』

俺達は戌神神社があると言われるススキの原に向かった。

場所的には猫又神社の反対側になる方向。

街道を外れて少し歩く。

さっきまで平原だったのが、いつの間にかススキが広がる場所に来ていた。

腰ぐらいあるススキの中を真っ直ぐに進む。

カサカサとススキの擦れる音がする。

何故か寂しい感じがするな。

「ここにもモンスターがポップするのか?」

「ああ、する。

しかし、あまり見かけないからたぶん最近、聖地巡礼があったんじゃないかな?」

「ああ、ファンの集まりか」

「まぁ、そう言えば簡単だがな。

あれもなかなか企画する方は大変だぞ。

みんな集めようとしたらなかなか難しいからな」

「そうなんだ」

「その点はリアルと同じだな」

友人が笑う。

「それは言えてますね。

私もどうしても参加出来ないことありましたし」

カーディアさん。

「リアルが大事だよ」

頭のフブキちゃんは優しく言ってくれる。

「でも、行けるなら行ってみたいよな、楽しそうだ」

「お、やっとおまえも推しの楽しさが分かってきたか」

「いや、別にそういう訳じゃ。

ん~

そういう事なのかな?」

俺の言葉に3人が笑う。

「おっとお出ましだぞ」

前の草むらが激しく揺れ、小鬼が4匹現れた。

「バフをかけます」

カーディアさんから速さと力のバフをもらう。

俺は一気に3匹を倒す。

「さすがオーガキラーだな」

友人も最後の1匹に止めをさして言った。

「まじで鬼に対してめちゃくちゃ強いな」

「確かにこうやっておまえと一緒に戦ってるとそう感じるよ」

俺よりだいぶ上のレベルである友人が何回か攻撃しないと倒せない小鬼を、バフがかかっているとはいえ、一撃で倒せるんだもんな。

「ま、この世界は鬼属性のモンスター多いから、パーティー組んでたらこっちも助かるよ」

「そういってもらえるとありがたい」

友人達にはクエスト手伝ってもらってるからな、俺も役に立てるのは嬉しいな。

「お、見えてきたな」

そこには鳥居が立ち、他の神社に比べれば少し小さい本堂があった。

「ススキの中にあるんだな」

俺は周りを見渡しながら言った。

他の場所のように神社の周りが開けておらず、ススキでいっぱいだったからだ。

「ああ、そうだな。

巡礼したとしても、これがこの場所のデフォルトかもしれない」

友人も周りを見ながら言った。

「それでフブキちゃん、ここのクエストクリアの条件は?」

俺はカーディアさんの頭の上にいるフブキちゃんに聞く。

「もちろん、この場所にポップするボスモンスターの討伐です」

フブキちゃんは本堂をじっと見ている。

「なら、行くしかないか」

俺は2人に言った。

2人とも頷く。

俺達は武器を構えたままゆっくりと鳥居をくぐった。

ゾクっと背中に何かが走る。

これは。

「ゆ~び切りげん~まん、嘘つ~いたら、針千本飲~ます、ゆ~び切った~」

なんだ?

歌?

「まじかぁ、ここに出るのか」

友人は武器を構えたまま言った。

「噂では聞いた事ありましたが、確かにここが一番ポップする確率高いですよね」

カーディアさんも苦笑いしている。

しかし、杖はいつでも魔法を撃てるように構えを解いていない。

俺もオーガキラーを握る手に力を入れた。

「知ってるのか?」

「ああ、フレンド内で噂を聞いた事があってな。

この【ゲーマーズ】のどこかに出るあるモンスターの話さ。

曰く嘘をついたらボップする。

曰く口を大きく開けたら、その口の中に針を突っ込まれる。

曰く手を開くと指を全部切り落とされる」

「まじか」

「なんで一応、口は大きく開けるなよ。

しかし、正確な場所は分からなかった。

それがこことはな」

歌は本殿の上から聞こえる。

あれか。

屋根の上にいる。

見た目は老婆だ。

白いボサボサの髪に薄汚れた服、特に目を引くのはその両手、右手は大きな出刃包丁、左手は針山でたくさんの針が刺さっていた。

「嘘つくやついないか?

指切りしたいやついないか?」

「来るぞ、妖怪ゆびきり」

友人の言葉と同時に、下に飛び降りてくる妖怪ゆびきり。

カーディアさんが氷の魔法を放つ。

だが、ゆびきりはその包丁で氷を真っ二つ。

しかし、それは囮だった。

氷の影から友人は、伸びきったゆびきりの右手を狙う。

「嘘ついたら針千本だぁ」

左手の針山から針が飛び出す。

たまらず下がる友人。

俺はその間にゆびきりの背後に回っている。

隙あり、俺はゆびきりの背中にオーガキラーを突き差す。

が、避けられた?

「指切るかぁ!」

包丁が俺の顔面に迫る。

くそ、しゃがんで避ける。

「雷よ」

カーディアさんの魔法がゆびきりを襲う。

ゆびきりは大きく飛び下がる。

「大丈夫か?」

「ああ。

しかし、強いな」

「私達だけだと無理かも知れないね」

「星持ちか?」

俺は友人に聞く。

「いや、個体差だな。

あいつは激レアモンスターだからな」

「星無しであの強さか」

「どうします?」

「一旦退却出来ればいいが」

「無理そうだな」

ゆびきりはこちらをじっと見ている。

背中はもちろん、下がればさっきの跳躍力で一気に間を詰められる。

万事休すか。

「ゆび!ゆび!」

「ゆび!ゆび!」

「ゆび!ゆび!」

な、なんだ?

「まじか、ここで来るか。

早く地べたに伏せろ。

伏せたら口を閉じて、息も最小限の音でしろ」

友人が俺に向かって叫ぶ。

カーディアさん達を見るともう地べたに伏せていた。

俺も慌てて伏せる。

なんだ?

次はなんなんだ?

「ゆび!ゆび!ゆび!ゆび!ゆび!ゆび!」

ゆびの連呼はまだ続いている。

地べたから周りを見ると両人差し指を天に向け、笑顔の人?が歩いている。

俺達と神社を取り囲むように。

いや、俺達とゆびきりを囲むように。

まだ、増えるのか?

人?の足音、声がどんどん増えている。

そして、それは来た。

背中に先程とは比べられないような何かが走る。

これは悪寒?

いや、恐怖か?

俺達とゆびきりの間の空間が歪む。

ズブブと何もない空間から右手が現れる。

その右手が空間を掴む。

次は左手。

そう、何かが空間から現れようとしている。

ズバァ。

顔が出た。

犬娘?

想像と違う可愛らしい顔が現れた。

次に体、足。

腰、最後にしっぽ。

全身が現れた。

《スキル【運命】が発動しました》

現れた少女は可愛らしい感じの犬娘なんだが、どうして恐怖が消えない?

【運命】が発動したって事はホロメンなのか?

少女はゆっくりと周りを見渡す。

ヤバイ、こっちを見る。

咄嗟に地面に視線を落とす。

心の中で誰かが叫んだ気がした。

目を合わすなと。

ゆっくりと犬少女が背後のゆびきりに目線を移していく。

「この場所で悪さをしてるのは誰~」

犬少女が呟く。

そして、少女の目が妖怪ゆびきりを捉えた。

目を見開く犬少女。

「あんたか~!」

犬少女の言葉にさっきまで笑顔で歩いていた人?達の目が見開かれる。

真っ赤なその瞳が怪しく輝く。

そして、全員が天を指差した人差し指を、妖怪ゆびきりに向けた。

俺は咄嗟に目を瞑る。

正直怖かったんだ。

「おい、大丈夫だぞ」

「え?」

俺は目を開いて立ち上がる。

「え?

犬娘は?

あの人達は?

妖怪ゆびきりは?」

「そう立て続けに聞くなよ」

友人はその場に座る。

カーディアさんも座った。

俺もつられて座る。

「まずは、妖怪ゆびきりだがもうここにはいない。

彼女の噂の簡易大召喚でどこか分からない場所に連れていかれた。

もう、あの妖怪はここには戻ってこないだろうな。

次にあの犬娘は戌神ころねちゃん。

ここの主だよ」

「え?

でも、主はここにはいないって」

そう聞いたけど。

「その場所を管理しているホロメンは遠くにいても何かおかしな事があったら分かるんです」

フブキちゃんが教えてくれる。

「なんで、たぶん俺達が妖怪ゆびきりと相対したから、別の場所からこっちに簡易大召喚で来てくれたんだろう。

で、あの笑ってた人達だけどあれはころねちゃんのファンのころねすきーの皆さんだ」

「ファンの人達か、かなり怖さがあったが」

「まぁ、あれはあれで楽しくやってるみたいですよ」

カーディアさんが笑いながら言う。

「それにかなり優しい人達だからな」

「そ、そうなのか?」

「はい、あの簡易大召喚ですが、範囲がたった1体なんですよ」とフブキちゃん。

「その代わり他のホロメンにはない絶対な力をもっててころさんに指名されたら最後、絶対にこの世界に戻れない所に連れていかれます」

「だからか、ころねちゃんが出てくる前にころねすきーのみなさんが、今からころねちゃんが来ますよ~という合図に、ああやって先にゆび!ゆび!言いながら出てきてくれるんだ」

「そういう感じだったのかあれ」

「ああ。

ま、対象を逃がさないって意味合いあるだろうけどなぁ」

「ははははは。

ま、何はともあれクエストクリアかな?」

俺の言葉にフブキちゃんは頷いた。

「やった~」

「よっしゃぁ」

「よかったですね」

3人とも喜ぶ。

「それじゃ、クエスト報告に行こうか」

俺達は町へと報告に向かった。

後はギルドに行って報告。

フブキちゃんとの約束通り俺達のレベルは10上がった。

俺は目標の40越え。

友人はレベルカンスト。

カーディアさんも90台に入ったそうだ。

最後はいつもの酒場でクエストクリア祝い。

みんなでワイワイ騒いだ。

そして、お別れの時。

酒場の前でカーディアさんはフブキちゃんを抱っこして離さない。

「カーディア…」

友人に止められる。

ゆっくりと首を左右に振っていた。

俺は黙って彼女を見守る。

「楽しかったですよ」

「私もです、この冒険は私の一生の宝にします」

「ありがとうございます。

また、機会があれば一緒に冒険しましょう」

そうフブキちゃんは言って笑った。

「はい」

カーディアさんは泣きながら最後にぎゅっとフブキちゃんを抱きしめてから離れた。

いつの間にか普段の姿に戻っているフブキちゃん。

「お二人との旅も楽しかったです」

「こちらこそいい体験できました」

友人も笑っていた。

「俺もすごく楽しかったし、助かりました。

ありがとうございます」

俺はフブキちゃんに頭を下げた。

フブキちゃんは笑っていた。

とても優しいその笑顔に癒される。

「では、また。

おつこんでした」

最後はそう言ってフブキちゃんは宙返り。

前と同じように消えてしまった。

カーディアさんが振り向く。

「お二人ともありがとうございました。

お二人のお陰で推しと旅できたんです。

本当にこのゲームしててよかった」

涙はまだ目にたまっていたがその笑顔はフブキちゃんに負けず劣らず良い笑顔だった。

「こちらこそ助かりました。

また、一緒に冒険してください」

「はい」

カーディアさんとフレンド登録する。

こうして、俺の初めてのチェーンクエストは幕を閉じた。

次は新たな町へ出発だ。

今度はどんな出会いが待っているのか楽しみで仕方がないな。




次の更新は未定です。
時間を調整して早めに掲載していこうと思ってます。
それでは、また次回のお話で


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町から町へのほうき星

無事にレベル40を越えたあなたは次への町へと向かう事にする。
新たな旅立ちに待つものはいったいなんなのだろうか。


「ふぅ」

久しぶりにログインした。

といっても昨日1日休んだだけなのだが。

それでも久しぶりの感じがするのは、俺がこのゲームにはまってしまってるのかもしれない。

一昨日まで友人とフブキちゃんとでチェーンクエストをしていた。

たった4日だったがいろいろな経験をする事ができた。

今日からは新しい町へ出発だ。

確か一昨日別れ際に友人から聞いた話だと、だいたい朝から出て夜には着く距離だと言っていた。

街道沿い歩くからモンスターにもそう頻繁には出会わないだろうとも言っていたな。

俺はまず道具屋に行って必要なアイテムを購入する。

回復薬も必須だ。

俺も魔法ぐらい覚えててもいいかもな。

ガーディアンさんみたいに回復魔法覚えてたらだいぶ楽だし。

これからの旅に必要となる事だし、機会があれば習得してみるか。

一通りのアイテムを買い揃えた俺は、次の町へ続く門へと向かった。

門の周りにはあまり人はいなかった。

まばらにパーティーを組んでいる人達がいるくらいだ。

これも友人からの知識になるが、次の町が、この世界ではだいたい中心に位置していて、だいたいのプレイヤーがそこを拠点にしているらしい。

それを考えるとここはこんなものなのかもしれない。

さて、気合いを入れて、ここから俺の新たな旅が始まる。

そして、門から記念すべき第一歩を踏み出した。

「あ、ちょっとそこのキミ」

門を出た瞬間声をかけられる。

何故かデジャヴ。

これで声かけてきた人が、フード付きマントとか着ていたらもう。

俺は声をかけられた方を見る。

その相手は門に腕組みをして寄りかかっていた。

もちろんフード付きマント着用。

ああ、やっぱり。

そのフードの人物は俺を見ながらゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

そして、俺の目の前で立ち止まった。

やっぱり俺かぁ。

「ふふ、いきなりの登場で少しびっくりしたのかな?」

「あ、いえ、前に同じように待たれた事があったので、またかと思いました」

「な、二番煎じ」

「はい」

「まさか、真似されていたとは」

えっと、この場合どっちが真似になるんだ?

「まぁ、いいわ。

それでは自己紹介しておこうかな」

フードさっと取り外す。

髪は綺麗な水色。

顔は可愛いと言うよりキリっとしていてカッコいい感じだ。

「町から町へと流れるほうき星」

自己紹介が始まったんだけど。

「えっと町から町へ流れるなら流れ星の方が語呂がいいような」

「いいの、流れ星じゃなくてほうき星で」

「は、はぁ」

「というか喋ってる途中だから黙って聞いてて」

咳払いをする水色髪の女性。

「改めて。

町から町へと流れるほうき星。

【ホロライブワールド】に現れた最強の歌姫の一角。

星街すいせい」

「え?星持ち?」

「違う、ほ、し、ま、ち。

星持ちはモンスターでしょ」

「え!人型モンスター」

大袈裟に驚いてみる。

「違うわよ、どこ見てるのよ。

どう見ても可憐な美少女でしょ。

まぁ、少なからずサイコパスって言う人もいるけど…」

「ですよね、ビックリした」

「こっちがビックリするわよ。

ボケなのか確信犯なのか分かりにくいし、確信犯だったら一発殴ってるわよ」

「すいません、二番煎じだったので面白くしようと思って」

「いらない気遣いよ。

って確信犯か」

《スキル【運命】が発動しました》

 

一通り2人でわいわいした後、持ってきたお茶を渡し2人で飲んで一息ついた。

ふぅ。

しかし、周りから見たら俺から1人で騒いでる変な人なんだよな。

そう、基本ホロメンはイベントキャラという事で、イベントをしている人にしか見えないらしい。

「そういえば、2人同時に同じホロメンのイベントって起きるんですか?」

「え?

ううん、基本はホロメンは1人だから重複はしないよ」

「そうなんだ」

「それで、すいちゃんはどうして俺に声を?」

「そうね、キミの胸に運命の星を感じたからかな」

絶好調だなぁこの人。

確かにスキル【運命】持ってるし、胸にはホロメンとのイベント率を上げるレインボーダーツあるけど。

「そうなんですね。

で、本音は」

「ま、次の町に行こうと思ってたところに、なんか面白いアイテム持ってるキミが来たから声かけてみた」

「ありがとうございます。

それじゃ、次の町まで一緒に参りましょうか?」

「いいよ、よろしくです」

そうして、俺はすいちゃんの次の町へ向かって進むのであった。

 

すいちゃんとの道行きはかなり良いものだった。

この【ホロライブワールド】を旅しているらしく話題豊富にいろいろと教えてくれる。

また、アカペラで旅のBGMとして歌ってくれた。

さすがホロライブワールド最強の歌姫の一角、めちゃくちゃ上手かった。

それにすいちゃんの歌を聞いていると、何故かステータスにバフもかかってたし、元気も出た。

ただ、戦闘になると少しすいちゃんの様子が変わる。

さっき現れた小鬼にも「そこにいると邪魔だね、やっちゃうよ」と軽く言いながら手から小さな星を出して投げつける。

それが見た目に反して地面に激突したら大爆発を起こす。

完全なオーバーキル。

すれ違ったプレイヤーはその都度、何事かと振り向く程だ。

ま、楽しそうに戦ってるからそれはそれでいいのかもしれない。

お陰で、次への町には思った以上に早く着けた。

次の町への門の前。

俺はすいちゃんにお礼を言った。

「なんかキミとはまた会うような気がするよ」

「そう運命の星が言ってるんですか?」

「ふふ、そうだね。

それじゃ、今から大変そうだけど頑張って。

おつまち!」

何やら予感があったのかすいちゃんはそう言いながら、夜の町へ入っていった。

すいちゃんのお陰で楽しい旅立った。

俺も夜の町へ進む。

さすがこの【ゲーマーズ】の中心にある町。

夜でもきらびやかだ。

町のメイン通りには提灯が並びお祭りみたいだった。

メイン通りの奥には山があり、その頂上にはここからでも見える巨大な桜の木があった。

その下には大きな神社があるのか?

しかし、夜だというのに賑やかだな。

俺はまず宿を探した。

今日はもう遅いから何か食べた後、休むことにする。

散策は明日にしよう。

俺は宿を探しながら露店で買い食いをしながらそう考えた。

お腹いっぱいになる頃には宿も見つかり俺はそこに泊まった。

さて、明日はこの町で会えるホロメンの情報を探さないとな。




満を持して2人目のオリジナル世代登場です。
基本オリジナルは世界を旅しているので会うのはかなりレアなのですが、今回は【運命】とレインボーダーツのお陰という事で。
では、次はある人物と出会います。
果たしてお相手は誰なのか?
次のお話でドドンガドンドンドン。


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和の町でウサギさんと出会う(初見編)

新たな町に来たあなた。
その町は入った瞬間に見えた、大きな桜の木がとても印象的な町だった。
夜遅かった為、一旦宿に泊まった。



新しい町での朝がやってきた。

宿から外を見ると昨日の夜とは違い少し落ち着いた感じがする。

さて、準備して町を散策するか。

ミオちゃんが言うにはここにくれば、自ずと次の進む方向が分かるみたいに言ってたなぁ。

でも、情報収集は大事だな。

俺は露店や道具屋、服屋を周りながら話を聞いた。

服屋では、このワールドでは私服だという和服を購入した。

なかなかリアルで和服なんてなかなか着る機会がないからな、少し新鮮だ。

露店で抹茶オレを買い、俺は町をブラついた。

いろいろと話は聞けた。

まず、この町には2人のホロメンがいるという事。

1人は友人も言っていたさくらみこという人。

俺が1度チラリと見た事がある人だ。

そのみこちゃんは、俺がこの町に来た時に見た大きな桜の木の下にある桜大神社に住んでいるらしい。

友人の言った通りそこで巫女長をしているらしく、会うとなるとかなり難しいらしい。

運良く参拝に入れたとしても相手にきちんと認識されるにはかなり前に行かないといけない。

もう1人はその桜大神社に上がる石階段の前に立つ巨大な門、鬼生門に現れる鬼娘だ。

これも前に聞いた通り、会えるかどうかは完全な運らしく、会ったとしても戦いを挑まれるらしい。

もし、話をしたかったらそのホロメンが出す条件、ほとんど「余に一撃をいれてみろ」らしいがそれを達成するしかない。

また、相手がこちらを戦う資格なしと思えば戦わずすぐに消えてしまうという事だ。

その戦うに値するレベルというのが40だそうだ。

 

これらの情報から俺が始めに会う為に向かうのは鬼生門に住む鬼娘になる。

ミオちゃんが俺にレベル40まで上げろっていうのはこういう理由だったのか。

後は今日の夕方ぐらいに鬼生門にいきますか。

そう思いながら町をぶらつく、防具も戦いに備えて新調する為、さっきから探しているのだけどなかなか見つからない。

ふと、露店の方に目をやると、露店の横に備え付けてある椅子に耳をピョコピョコ動かす人物を見つけた。

ん~

どっかで見た事あるような。

すると、向こうもこちらに気づいたのかこっちをじっと見てくる。

しばしのにらみ合い?

すると、向こうから何故か手招きをされた。

ん?

なんのようだろうと俺は彼女に近づいた。

そして、彼女の前に着いた時には完全に思い出していた。

そのウサギ耳は確かホロメンの1人兎田ぺこらちゃん。

《スキル【運命】が発動しました》

「さっきから何ぺこか?

めちゃくちゃかまってオーラ出してるあんたは?」

「え?

かまってオーラ?」

「そうぺこ。

話しかけてくださいってオーラが出てたぺこよ」

えっと、それってレインボーダーツのせいかな?

「いや、別にかまって欲しかった訳じゃないんですが」

「ふぅ、まぁいいぺこ。

ここであったのは何かの縁。

今からテストしてやるペコ」

「テストですか?」

「そうペコ」

すぅっと息を吸い込むぺこちゃん。

そして。

「こんぺこ!こんぺこ!こんぺこ~!

ホロライブワールド、第三世代組の兎田ぺこらぺこ!

どうも~どうも~」

いきなり始まる挨拶に俺は固まってしまう。

「…」

「く。

ドドンガドンドンドン

ホロライブワールド1超絶うさみみが似合うのは誰だ!

ドドンガドンドンドン」

何をしていいのか分からない俺はただ立ち尽くすのみ。

「え、えっと」

沈黙が流れる。

 

「ちくしょ~」

ドン

ぺこちゃんが目の前のテーブルを勢い良く叩いた。

「あ、それは知ってます。

なんとかっていう芸人さんが」

そう俺がいいかけた時。

「違う、違うペコよ~

そういうんじゃない。

く、始めてみる名前と顔だったから、もしやと思ったけど、やっぱり初見さんだったぺこか」

ぺこちゃんがものすごく悔しがっている。

俺はすっとアイテムボックスを見る。

2人にもらった玉が目に止まる。

今じゃないのか?

今使う時じゃないのか?

しかし、玉は静かに沈黙を保ち続けていた。

 

 

「で?

そのかまってちゃんはここで何してるぺこか?」

何故か少しふてくされてるぺこちゃんと一緒のテーブルに座っている。

あのままどっか行くのもあれだし、かといってあんな空気の後どうしたらと思ったが、ぺこちゃんは不機嫌ではあるが気さくに話しかけてくれた。

「えっと、夕方頃に鬼生門に行こうと思ってて、それで防具を新調しようかと」

「ああ、防具屋を探してたぺこか。

なら、この通りを真っ直ぐ行って初めの角を右に行くぺこ。

この町の防具屋は有名だけど、入り組んだ場所にあるからね」

「ありがとうございます」

「あやめ先輩と遊んでくるぺこか?」

「え?」

お礼を行って立ち去ろうとした俺に背中から声をかけてくるぺこちゃん。

「無事に戻ってきたらまた、相手してやるぺこよ」

そう言って後ろ手で手を振っていた。

「ええ、その時はもう少しましになっときます」

そう言って俺はその場を後にした。

ぺこちゃんの教えられたとおりの道を行くと、防具屋があった。

少し値ははったけどいいものが買えた。

そろそろ夕方だ。

俺はメイン通りに向かう。

ぼちぼちと提灯が灯り始めた。

俺は人混みの中真っ直ぐに目的地に向かう。

すると少し先が広場のようになっている場所に着いた。

丸い円形の広場の先に目的地の門が見える。

しかし、不思議な事にその広場には人が1人もいなかった。

周りにはたくさんいるのにその場所だけが空白だった。

町で情報収集していた時に聞いた。

「鬼生門の広場に無闇に近づくのは止めなさい。

あそこは鬼の遊び場だから」と。

しかし、俺はその鬼に会いに来たんだ。

ゆっくりと広場を進む。

周りから「おお~」とか「やばいだろ」とかいろいろな言葉が聞こえる。

でも、俺は前に進む。

例えそれが地獄への入り口だとしても。




次はこの町に住む鬼に出会います。
果たしてあなたは生き残ることが出きるのか?


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鬼生門の紅き鬼武者

兎田ぺこらと微妙な再開を果たしたあなた。
防具を新調し、いざ、この町にいる最強の鬼娘へ会いに行く。
果たしてあなたの運命は?


さっきまで町の広場を歩いていたはずなのに、いつの間にか周りは霧で囲まれていた。

周りがあまり見えない。

俺はどこを進んでいるんだ?

すると、先に誰かがいるような気配がする。

俺はその霧から抜け出す為に先を急ぐ。

いた。

見えた。

『え?』

霧を抜けたその先には、きちんと座布団に正座してお茶碗片手にご飯を食べようとしている、可愛い鬼娘が驚いた顔をしていた。

《スキル【運命】が発動しました》

 

「よ、よくぞここまでたどり着いた」

鬼娘は顔を真っ赤にしながら背中の方に茶碗と箸を隠そうとしていた。

「ま、まさか、ここまでくる者がおるとは、余も思ってもみなかったぞ」

ま、確かに普通はそちらがポップするはずですから。

何はともあれ。

「すいません、お食事中に」

俺の言葉に頬がなおいっそう真っ赤になった。

そして。

「ほんとだよ、もう。

せっかく大好きなハンバーグ食べようとしとったのに、何で余の邪魔をしたの?

それにここどこ?

普通は余が向こうに行く筈なのに、中途半端な場所にこさされとるじゃないの余」

う~ん、かっこつけるの止めたな。

「それに本当は余がかっこよく大太刀妖刀羅刹を肩に担ぎなから颯爽と現れ、余と勝負じゃって言うのがセオリーなのに。

それを食事しようとしとる時に強制的にポップさせるなんてそなた何者なの」

「あ、えっと」

言葉のマシンガンにやられつつふとアイテムボックスを見るとあるアイテムが光っていた。

ここか。

俺はそのアイテムを取り出す。

そういえば、使う時に呪文が必要だったな。

確か。

「ミオ、フブキ、キミに決めた!」

俺は勢いよく2つの玉を投げる。

すると玉は地面に当たり、煙を吐き出した。

そして、中から懐かしい2人が。

「呼ばれて出てきてじゃじゃじゃ~ん、大神ミオですみぉ~ん」

「続いてみんなの守り狐、白上フブキです。

こんきーつね」

「な、フブキちゃんとミオちゃん?」

「久しぶりあやめ」

「お久しぶりあやめちゃん」

「なるほど、これは2人の差し金かぁ」

2人を見ながら頬を膨らますあやめちゃん。

「えっと、うち達だけのせいでもないんだけどねぇ」

「確かに」

「どういうこと?」

「ほら、その子の胸元何か感じない?」

「え?」

ミオちゃんに言われてあやめちゃんが俺の胸元を見る。

「あ、本当に手に入れとる人いたんだ」

あ、レインボーダーツの事言ってるのか。

「確かにそれがあったら余を強制的に呼べる余ね」

「そういう事」

ミオちゃんが笑う。

「でも、それを使うように導いたのはどうせミオちゃんだ余ね?」

「ははは」

「もう、別にいいけど。

それじゃ、始める余」

あやめちゃんが手を横に振り払う。

辺りの霧が一気に晴れる。

そこはあの広場だった。

しかし、人が1人もいない。

「ここは余専用のフィールド、鬼生門。

ここから出たかったら余に一撃入れるか、やられた時のみ。

いつもは余も手加減するけど、今回は味方もおるようじゃし、久しぶりに本気でいかせてもらう余」

大太刀妖刀羅刹を構えるあやめちゃん。

構えた瞬間、俺は全身に冷や汗をかいた。

さっきと見た目は同じなのに、まるっきり別人だ。

「久しぶりだね、お互い本気は」

「楽しみです」

左右のフブキちゃんとミオちゃんも出会った時とまるっきり存在が違う。

俺もオーガキラーを取り出し構えた。

「な、それどこで?」

俺のオーガキラーを見てあやめちゃんが驚く。

「え?

あ、前にオーガロードを見つけた発見ボーナスで」

「ええ?

それってそおいう事で手に入れられるものじゃない余?

かなり特殊な条件を達成したうえでかなり低い確率で手に入るものなんだけど?」

「と、言われましても」

あやめちゃんはオーガキラーから目を外す。

「でも、その状態ならまだ大丈夫かな」

「え?」

「意地悪だなぁ、百鬼は」

「そうそう、ヒントくらい教えて上げてもいいよね」

2人に言われ頬を膨らますあやめちゃん。

「うう、分かった余。

今、人間様の持っておるのは刀だ余。

鬼を切った刀。

オーガキラーなんて名ではない。

はい、ヒントおしまい。

さぁ、ここからは真剣勝負。

いざ、参られよ」

あやめちゃんがもう一度構える。

武器を構えて相対すれば分かる。

あやめちゃんに隙はない。

それにこちらが動けばすぐ斬られる。

そんな想像が容易に思い浮かぶ。

「まずは目を慣らすところからかな」

フブキちゃんが腰の刀に手をあて一歩前に出る。

「うち達の動きよく見ながら、隙を見つけたら参加してみて。

これもこれからの為に必要な事だから」

「分かった、やってみる」

俺の言葉にミオちゃんが頷く。

「じゃ、始めようか」

「あやめ行くよ」

フブキちゃんは刀を抜く。

ミオちゃんの手は不思議なオーラに包まれた。

そして、ホロメン同士の戦いが始まる。

それは正直目で追えるような戦いではなかった。

赤と白と黒い線が時に離れ時に混じり合い火花を散らす。

ギャンと鳴って2人の攻撃を受け止めるあやめちゃんが見える。

しかし、すぐに次はあやめちゃんの攻撃を防ぐフブキちゃんに変わる。

でも、少しずつではあるけれど3人の動きが見えるようになってきた。

ミオちゃんのパンチを刀の腹で受けるあやめちゃん。

あやめちゃんの刀を紙一重で避けるフブキちゃん。

フブキちゃんの刀を避け、背後から来たミオちゃんにカウンターの一撃を入れるあやめちゃん。

そして、離れる3人。

「やっぱり2人相手だと1本じゃしんどいかな」

あやめちゃんは片手で大太刀を持つ。

普通は片手で持てる品物じゃないのにどれだけ規格外なんだ。

そして、腰からもう1本、太刀鬼神刀阿修羅を抜いた。

二刀流?

「あらら、百鬼、抜いちゃったかぁ」

フブキちゃんは軽口を言っているが額から汗が流れている。

「そろそろ、こっちもあやめを抑えに行った方がいいかもね」

あやめちゃんの方に構え直すミオちゃん。

「どう、だいぶ目は慣れた?」

「なんとか」

ミオちゃんに聞かれ俺はそう答える。

「上等。

なら、次であやめが本気の本気を出してくるから、それをうち達でどうにか隙を作る。

そこに全力で打ちこんで」

「はい!」

「いい返事、刀の答えもでましたか?」

フブキちゃんの答えに頷く。

俺の中で大体の答えは出ている。

「なら、行くよ」

俺達3人はあやめちゃんに向き直る。

「相談は終わった?

じゃ、これで終わりにする余」

一気にあやめちゃんからの圧が膨れ上がる。

そして、彼女の背後から光の鬼武者が現れた。

「あれは」

「あやめの持つ力の1つ。

でも、これからが本領発揮ね」

「では、参る」

あやめちゃんの言葉と同時に光の鬼武者はあやめちゃんと1つになった。

「【鬼神大元】」

光の鬼武者のオーラを纏い、今目の前に鬼神と化したあやめちゃんが立つ。

くそう、勝てる気がしない。

「気持ちで負けたらダメですよ」

フブキちゃんはそう言って俺の肩を叩く。

何故か力が溢れてくる。

これはバフ?

「じゃ、始めるよ」

ミオちゃんの言葉でミオちゃん、フブキちゃんは神々しいオーラを纏った。

「先手必勝。

大神の力をとくとごろうじろ」

ミオちゃんが胸の前で勢い良く手を合わせる。

と同時にあやめちゃんが何かの力に押さえ込まれる。

たぶんミオちゃんの力だ。

フブキちゃんはその隙を見逃さず刀を構えあやめちゃんに突撃する。

「く、こんなもの!」

フブキちゃんが目の前に届く寸前、あやめちゃんが拘束を外す。

「やっぱり数秒かぁ」

ミオちゃんの悔しそうな声が聞こえた。

あやめちゃんは振り上げた二刀を目の前に迫ったフブキちゃんにばつの字斬りを振り下ろす。

あやめちゃんに斬られたフブキちゃん。

だが、その顔はニヤッと笑ってその姿をボンっと煙に変える。

あやめちゃんの顔に焦りが見える。

何故煙に巻かれるあやめちゃんの表情が分かるというと、それは俺が今オーガキラーを振り上げて煙の中からあやめちゃんにまさに振り下ろそうとしているからだ。

フブキちゃんが一瞬であやめちゃんとの間合いを積めなかったのは、俺が後ろについて走っていたから。

「まだぁ!」

しかし、伸びきった腕で振り下ろした刀を振り上げ、刀を交差して俺の一撃を受ける。

「く!」

完全に受け止められた。

だけど、ここで押しきらないともう後はない。

「まだまだぁ、負けるかぁ!」

その時、あの言葉が思い浮かぶ。

この刀はまだ本当の力を出せてない。

鬼を切った刀。

そう、あやめちゃんは言った。

俺が知っている鬼を切った刀の名は。

「いけぇ、鬼切丸!」

俺の言葉に刀が力強く輝く。

大幅な刀身は普通の刀の大きさに変わる。

しかし、その刀身からは今までとは違う力強さを感じる。

「うぉぉ!」

「くぅ!」

少し押し入れたが、やはりダメだった。

あやめちゃんに押され、俺は思い切り後ろに吹き飛ばされた。

「はいっと」

吹き飛ばされた俺をフブキちゃんが受け止め支えてくれた。

「よくやったね」

ミオちゃんが俺を見ていう。

「でも、俺はあやめちゃんに何も出来なかったです」

「それはどうかな?」

ミオちゃんは笑顔であやめちゃんを見ていた。

「ふぅ、今回は人間様の勝ちかな」

こちらに向かって歩いてくるあやめちゃんは刀を納め、あのオーラもなくなっていた。

「余の角にちょこっと当っておったからね」

「まじですか、やったぁ」

俺はその場に寝転ぶ。

しかし、今回は2人の力が大きい。

1人では到底勝てなかった。

「ま、1人で来てたら余は手加減しておったからもう少し楽に一撃入れれたかも」

「ええ」

「はは。

ま、今回はあの早さに目を慣らす為だからねぇ」

ミオちゃんがばつ悪そうに答えた。

「なんだかなぁ」

「あははは」

そんな俺を見てフブキちゃんが笑っていた。




次は彼女に再戦です。
てはお楽しみ。
ドドンガドンドンドン。
【鬼神大元】(きしんたいげん)について
普通は大元とかいておおもとと読みますが、今回はたいげんと読む事にします。
彼女がこの世界で鬼の大元であり、唯一鬼神を体現できる存在として彼女専用の最終技です。
よろしくお願いします


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和の町でウサギさんと出会う(玄人編)

百鬼あやめの試練を無事に突破したあなた。
この町で会えるホロメンにまずは1人会う事ができた。
もうあと1人に出会えればこの町でのミッションはクリアだ。
しかし、あなたは気になる事が1つだけ残っていた。


「と言うわけでお疲れ様~」

俺達はあの後、酒場に来ていた。

個室を頼んでいるので、俺以外が例え見えないとしても騒いで大丈夫だ。

「さてと、まずは無事にあやめに勝てて良かったね」

「余もいるのだけど」

そう、今いるのはミオちゃんとフブキちゃん、そしてあやめちゃんだ。

「まぁまぁ、あやめちゃん」

ニコニコしながら注文した物を食べてるフブキちゃん。

「うう」

唸りながらお酒を飲むあやめちゃん。

で、飲んでるのが鬼殺しって。

「それで、まずは報酬だよね?」

ミオさんも来た料理をつまみながらあやめちゃんに言う。

「うん、そうだね。

人間様は何を望む?

武器か?防具か?アイテムかい?」

「それについてはうちに提案があります」

ミオちゃんが手を上げる。

「あ、はい、何でしょう?」

勢い良く手を挙げたのでびっくりしながら聞いてみた。

「あやめにはうち達と一緒に連名で推薦状を書いて欲しい」

『推薦状?』

俺とあやめちゃんは同時に聞く。

「そう、学園への推薦状」

ミオちゃんの答えになるほどとあやめちゃんは手を叩く。

「確かにあそこに行けば他のホロメンにも会える。

なるほどぉ、それで2人来たんだね」

「そう言うこと」

あやめちゃんに言われてミオちゃんが笑う。

「なら、早速書いとく?」

空間から紙と筆を取り出すあやめちゃん。

スラスラと何かを書いた後、ミオちゃんに渡す。

同じように書いて次はフブキちゃん。

そして、紙はあやめちゃんに戻る。

綺麗に封筒に入れられた後、僕に渡された。

《推薦状を手に入れました》

これだけ機械音声が?

「なくなさいようにきちんと持っておくのだよ」

フブキちゃんに笑顔で言われる。

「はい、ありがとうございます。

あ、あと、どうしても相談したい事が」

俺はあやめちゃんとの戦いの前の話を3人にした。

あの事がどうしても気になっていたから。

 

「あちゃ、先に会っちゃってたのか。

それはぺこちゃん大ダメージね」

ミオちゃんは少しため息混じりに言う。

「人間様は余より鬼だな」

「分かった、私が教えてあげるから覚えて」

フブキちゃんが真剣な顔でこちらに向く。

「こんぺこの方なんだけど、兎田ぺこらぺこの後にこんぺこ~と大きな声でいう事」

「こんぺこですか」

「そう、語尾は伸ばして元気よく。

それで機嫌が良くなってると思うから、再度次の挨拶もしてくると思う。

ドドンガドンドンドンね

そっちはうさみみが似合うのは誰だ!ドドンガドンドンドンの後に元気よく大きな声でぺこちゃ~んと叫ぶ」

「ぺ、ぺこちゃんですか」

「そう、心の底から気持ちを込めてね」

「は、はい。

でも、周りに人がいたらなんか1人で騒いでるみたいに見えて恥ずかしいかなっと」

「大丈夫、この世界は君が思っているほど冷たくわない。

みんなを信じて」

俺の言葉にミオちゃんが笑顔で答えてくれる。

「それにそうしないとここで詰むわ」

と、真剣な顔で言うミオちゃん。

「え?」

「ここを突破しないと次のホロメンへの道が閉ざされるの」

「まじですか」

「まじ」

真剣な顔のミオちゃん。

「わ、分かりました、やってみます。

いや、やります。

ぺこちゃんとも次に会う時はましになっとくと約束したから」

肩にポンとフブキちゃんに手を置かれる。

「もう、あの沈黙を味わいたくないでしょ」

確かにあれは地獄だった。

「はい」

「ぺこちゃんもそうだよ。

頑張ってここを乗り越えて、2人でいい空気を吸って」

「分かりました」

フブキちゃんの言葉に力強く俺は頷いた。

「そうと決まれば宴の続きだ余」

あやめちゃんは楽しそうに酒の入ったコップを掲げる。

俺達もそれぞれの飲み物を掲げ、もう一度乾杯した。

その後は4人宴をおおいに楽しんだ。

とても印象に残ったのはフブキちゃんがお酒を飲んで、めちゃくちゃ笑い上戸になってた事かな。

 

 

次の日俺は少し遅めに宿を出た。

決して二日酔いとかではない。

今日はある事を成し遂げる為にこの時間に起きたんだ。

準備を整え、ある場所に向かう。

そこは決戦の場所。

やはり今日もあの露店横の椅子に、みみをピョコピョコ動かして目的の人物が優雅にお茶を飲んでいた。

「来たぺこな」

その人物は近づく俺を見ずそう声をかけてくる。

「リベンジお願いします」

俺は彼女兎田ぺこらちゃんにそう願い出た。

「ちょっとは、やるようになったみたいぺこね」

飲み物を一気に飲み干し、ぺこらちゃんは立ってこっちを見た。

顔は笑顔だ。

しかし、目は真剣そのもの。

俺はゆっくりと左右に肩幅ぐらい足を開き少し腰を落とす。

そして、両指を伸ばし前に構えた。

ぺこらちゃんは頷きゆっくり息を吸う。

さぁ、決戦の時きたり。

「こんぺこ!こんぺこ!こんぺこ~!

ホロライブワールド、第三世代組の兎田ぺこらぺこ!」

ここ!

「こんぺこ~!」

俺は手を口の横に当て心から叫んだ。

ぺこちゃんの目が見張いた。

まだ昼頃、人が多くて恥じらいが出た。

ぺこちゃんに見破られたか?

しかし、奇跡は起こる。

1人の男性がいつの間にか俺の横に立っていた。

そして「こんぺこ~!」と叫んだのだ。

それを気に、俺の周りに集まる人、人、人。

全ての人が見えてないはずのぺこちゃんに挨拶を叫んでいた。

「どう~も~どう~も~」

ぺこちゃんはそんな人達に向かって手を振りながら挨拶を返していた。

「いるんだな」

始めに俺の横に来た人が、静かに聞いてくる。

俺は静かに頷いた。

「どんな様子だ?」

「すごく嬉しそうです」

俺の言葉に周りで静かにガッツポーズを取る人達。

「なら、次だ。

次の挨拶が始まったら。

きちゃっと言ってくれ」

「あ、はい」

そう言ってその男性が手をすっと上げる。

周りの人の挨拶が止む。

そして、次が来る。

ゆっくりと息を吸うぺこちゃん。

そして、俺とぺこちゃんの声がハモる。

「きちゃ」

「ドドンガドンドンドン

ホロライブワールド1超絶うさみみが似合うのは誰だ!

ドドンガドンドンドン」

『ぺこちゃ~~~~ん!』

それは大声援だった。

周りの人との一体感。

一寸の狂いなく、みんなは叫んでいた。

聞こえないはずだ、ぺこちゃんの声は聞こえてないはずなのに、みんな完璧だった。

『わ~~~』

みんなの声援にぺこちゃんは満足そうに頷いている。

甘かった、聞いただけで俺は出来ると思っていた。

でも、違う。

周りの人は声が聞こえないのに、タイミングがバッチリだった。

ぺこちゃんの喋るスピード、呼吸全てを把握してなければ出来ない。

これが本当のファンか!

ガク

俺はその場に膝と手を着く。

聞いただけで玄人っぽく思っていた自分が恥ずかしい。

トン

そんな俺の肩に手を置く隣の男性。

「何うつむいている。

お前がこの光景を見なくてどうする。

俺達にはぺこちゃんの姿は見えないんだ。

お前が俺達の代わりに彼女の喜んでいる顔を見てくれ」

「は、はい」

俺は涙を目にためながら前を見る。

嬉しそうにみんなに手を振るぺこちゃん。

「嬉しそうです、本当に。

これが本当の充実した空気なんですね」

「そうか、喜んでいるか」

彼は空を仰ぐ。

そして、ゆっくりと拳を天に挙げた。

その姿を周りの人達は満足そうに見て頷く。

そして「またね、ぺこちゃん」「次も楽しみにしてる~」と見えないぺこちゃんに向かって挨拶して離れていった。

「これからも頑張れよ」

そう言って俺の肩を叩き、隣の人もぺこちゃんに挨拶して去っていく。

残されたのは俺とぺこちゃん。

「楽しめたぺこか?」

ぺこちゃんの言葉に俺は心から頷いた。

 

「で、あやめ先輩との遊びは終わった?」

今俺はぺこちゃんと向かい合わせで茶を飲んでいた。

だいぶさっきの余韻は落ち着いた。

「はい、何とか勝ちました」

「え?勝ったの?」

「はい、といっても手助けありでですが」

「へぇ、案外やるぺこな。

で、どうしてまたここに?」

「この前のリベンジと後、この町にいるもう1人のホロメンに会う為のヒントをもらいに」

「へぇ、どうしてぺこらに?」

「正直に言うとミオちゃんに聞いたんです」

「なるほどね、それじゃ、仕方ないぺこ」

立ち上がるぺこちゃん。

「ついてくるがいいぺこ」

そうして、俺はぺこちゃんについてあの桜大神社に向かうのであった。




次回は3人目のオリジナル登場です。
その後は学園編に突入予定。
では、次回に


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桜の木の下で

兎田ぺこらとの決戦をなんとか乗り越えたあなた。
事情を話すと彼女はある場所へと案内してくれた。


「えっと、ここって鬼生門じゃないですよね?」

ぺこちゃんについてたどり着いたのは道のない山の麓。

「ここでいいぺこ」

そう言いながらぺこちゃんは草むらの中に頭を突っ込む。

そして、どんどん草むらの中に入っていった。

「ちょ、ちょっと?」

ズボ

草むらの中から顔を出すぺこちゃん。

「何してるぺこ。

早くこっち」

「えっと、ここが本当に進むとこ?」

「そうぺこ。

ここはぺこらしか見つける事が出来ない秘密の道。

だから、ぺこらと離れると進めないよ」

「は、はぁ」

マップ表示には確かに《ウサギの抜け穴》と表示されていた。

ウサギかぁ。

「さぁ、早く行くぺこよ」

「は、はい」

そして、俺はぺこちゃんの後を追い、草の中のトンネルを駆け上がった。

なんか兎を追って走る話どっかで読んだ事あったなぁ。

「もうすぐ着くよ」

トンネルの先が見えた。

トンネルを抜けるとそこは巨大な神社の横だった。

「これが桜大神社?」

今まで見た中で一番でかい。

それにあの巨大な桜もある。

「こっちぺこ」

ぺこちゃんはその桜のある方に向かっていく。

俺も後に続いた。

 

それから、脇道行ったり神社に入って巫女さんに見つからないように隠れながら進む事15分くらい。

今は桜の下にある巨大な広間の横の柱からぺこちゃんと様子を伺っている。

ちょうど広間では何かをやっているようだった。

たくさんの巫女さんの前で、1人の少女が歌に合わせて舞っていた。

それは見惚れるほどの舞だった。

「はぁ、いつもあの調子だったらかっこいいんだけどなぁ」

「え?」

「何でもないぺこよ」

「あれって何やってるんですか?」

「ああ、あれは全世界のチューニングしてるらしいぺこ」

「チューニング?」

「ま、詳しくは知らなくてもいいぺこよ」

そう言ってまた舞を見るぺこちゃん。

その顔は誇らしく子どもを見る母親のようで、頼りになる先輩を見る後輩の顔のようで、仲の良い親友を見守る友達のようでもあった。

舞が終わる。

一瞬、少女がこちらを見たような気がした。

「今日はこれで終わります。

皆さん下がって構いません。

私はしばらく部屋で休みますので、誰も立ち入らないように」

凛とした声が広間に響く。

巫女達はその言葉に頭を下げてから広間を出ていった。

「めちゃくちゃかっこいいじゃないですか」

俺がぺこちゃんに言うと。

「あ、あの状態はいろいろと制約をしてるからああなってるぺこよ。

本性は違う」

「ふぅ」

息を吐いた後、少女の雰囲気が変わったような気がした。

「そこにいるんでしょ?

出てきなさいよ、兎田ぁ」

さっきまでとは違う雰囲気で少女がこちらに向かって叫んだ。

「はぁ、やっぱり分かっちゃうぺこかぁ」

ぺこちゃんはそう言って柱の影から姿を現す。

「ばればれに決まってるでしょ。

っていうか後ろのは誰にぇ?」

にぇ?

え、俺?

「ああ、なんかミオ先輩に言われたみたいだから連れてきた」

「あんたねぇ、そんなふわっとした理由でここに連れてくんな」

俺は「どうも」と柱から広間に出る。

少女がこちらに向かって歩いてくる。

お互い認識出来る距離まで近づいた。

「あ、なるほどにぇ。

それを持ってるなら仕方ないかぁ」

俺の胸元を見ながら言う少女。

「にゃっはろー!

さくらみこだよ」

《スキル【運命】が発動しました》

 

お互いに挨拶を終えた後、俺はぺこちゃんと一緒にみこちゃんに連れられて和式の部屋に来ていた。

座敷に座る。

みこちゃんと対面に座りいれてもらったお茶を飲む。

ぺこちゃんは座敷に寝転んで漫画を読んでいた。

「さてと、これからどうするか決めてんの?」

みこちゃんにそう言われて推薦状を見せ学園に行くことを話す。

「なるほど、それがあれば入学はいけるにぇ。

あそこの学園長に見せれば確実。

後は学園がある【バーチャル】に行く方法だけど。

【バーチャル】は【ファンタジー】を挟んで反対側にある世界だから、普通に行くと時間かかっちゃうにぇ」

「門を使わせればいいんじゃないぺこか?」

漫画から顔を上げぺこちゃんがみこちゃんに言う。

「あのねぇ、そんな簡単にあれは使わせられないの」

「でも、大神も認めてるぺこなんでしょ?」

「ま、確かににぇ」

「ミオちゃんの事ですか?」

大神と言えばミオちゃんだ。

「ん?

ああ、ちょっと違うにぇ。

ミオちゃんは大神の力を使えるけど、大神本体とは違う。

ま、今回は占いをしてるみたいだから大神からの意見も聞いてるって事かなぁ」

ん~

考え込むみこちゃん。

「わかったにぇ。

今回だけ特別に門を使わせる」

「門?」

「ここには各世界に繋がる門があるぺこよ。

それを使えばすぐに【バーチャル】に行けるって事」

「なるほど」

「普段はそう簡単に使えるものじゃないんだから、このエリートみこに感謝しなさい」

「自分は使いまくってるぺこですけどね」

「う、兎田ー!」

「仲いいんですね」

『どこが!』

両方から突っ込みが。

「ま、まぁ、せっかくここまで来たんだから、加護ぐらい上げるにぇ。

何か武器持ってる?」

「あ、はい」

俺は鬼切丸を机の上に置く。

それを持ち見るみこちゃん。

「へぇ、きちんとした刀になってる」

「あ、はい、あやめちゃんにヒントをもらって、その形になってます」

「なるほどにぇ、あやめちゃんに認められてるなら、この形になってるのは頷けるにぇ」

鬼切丸を抜き机の上に置くみこちゃん。

その刀身に手を当てる。

そして、暖かい光が刀を包む。

「これでいいかな?」

みこちゃんが手を離すと鬼切丸の刀身がさくら色に変わっていた。

俺は鬼切丸を手に取り、ステータスを見る。

《大桜印鬼切丸》

名前が変わってる。

《鬼以外にも中特効効果が付く》

おお、かなり良くなってる。

「あと、これを渡しとくねぇ」

そう言ってみこちゃんは1枚の護符を机に置く。

「これは?」

「1回だけ使える強制召喚符。

必ずこの先必要になる時があるからにぇ。

もっときなよ」

「それは予知ですか?」

俺はみこちゃんに聞いてみる。

みこちゃんはニヤッと笑う。

「ま、エリート巫女の感だにぇ」

「ポンコツの間違いじゃないぺこか?」

「兎田ー!」

「本当は仲いいんですよね?」

『よくない』

息ぴったりなんだけどなぁ。

 

みこちゃんとぺこちゃんに連れられて大桜の裏側に来た。

大桜に門がある。

「ここを通れば望む場所に行けるにぇ。

ま、今回は【バーチャル】に固定してるけどね」

「それじゃ、また会おうぺこ」

「そうだにぇ、また会う事になると思う」

「はい、ありがとうございました」

俺は2人にお礼を言って、大桜の門をくぐる。

これから新しい世界に出発だ。

今度はどんな世界なのか楽しみだ。




次回予定通り学園編です。
よろしくお願いします。

では、次回をお楽しみ。

読み方
《大桜印鬼切丸》おおさくらいんおにきりまる。


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俺が【バーチャル】を歩けば戌に当たる。

さくらみこと兎田ぺこらに見送られ、大桜のゲートに入ったあなた。
次は現実世界に似た世界【バーチャル】
果たしてどんな出会いが待っているのだろうか。



ゲートくぐった先はビルの谷間にできた広場だった。

【ゲーマーズ】の大桜の裏からゲートを通ったはずなのになんでこんな広場に着くんだ?

周りを見渡してもビルに囲まれていて景色が見えない。

ただ、その広場の真ん中には一本だけ桜の木が満開に咲いていた。

俺はその桜を見上げた後、1ヶ所だけあるビルの隙間に進んだ。

その脇道は何故か長く続いている。

ふと後ろを振り向くともう広場は見えない。

ただ、前も後ろも脇道だった。

俺は急いで先に向かい走る。

ずっと先に明かりが見えた。

俺はラストスパートをかけた。

目の前に光が広がり一瞬目がくらむ。

聞きなれた騒音が聞こえて俺は目を開けた。

そこはリアルと同じ。

道路に車が走り、ビルが立ち、たくさんのお店や家が広がっていた。

ただ、リアルとは違うと認識できたのは亜人が人の中に混じっていたからだ。

しかし、なんか通行人に見られるんだけど。

自分の姿を見る。

あ、鎧姿だ。

回りの人は普段着やスーツを着ている。

鎧姿なんていない。

確かに浮いてるわ俺。

俺は路地に入り、急いで装備を普段着に変えた。

でも、和服しかないなぁ。

ま、仕方ない。

和服に着替え、ふと路地の奥を見る。

そこは行き止まりになっていた。

さっきの広場にはもう行けそうにないな。

俺はもう一度通りに出て周りを見渡す。

すごい本当にリアルに戻ったみたいだ。

さて、まずはどうするかだが。

学園の推薦状をもらったから学園に行けばいいんたが。

俺はマップを開く。

学園は表示されていない。

たぶんまだ俺の所持している情報が少ないんだな。

じゃ、まずはギルドに行ってみるか。

マップにはギルドの文字が表示されていた。

俺は町を散策しながらギルドに向かった。

途中、服屋に入りこの世界に合うような普段着を購入して装備する。

「ここがギルドか?」

どう見てもハ○ーワークなんだが。

ま、確かに仕事を探しに来た人にはそうなのかもなぁ。

じゃ、場所聞くなら交番か?

ハ○ーワークに入らず周りを見る。

お、あるは交番。

俺は交番に向かう。

「すいません」

「はい、なんですか?」

元気に出てくる1人の婦人警官。

「場所を聞きたいんですが」

「はぁい、いいですよ。

マップありますかぁ?」

「あ。はい」

元気に受け答えしてくれる婦人警官にマップを見せる。

「えっとですね、学園はここですね」

婦人警官の人がマップを指差した瞬間にその場所に学園という文字が浮かぶ。

「ありがとうございます」

「いえいえ、気をつけて行ってらっしゃい」

俺は婦人警官にお礼を行って教えてもらった学園に急いだ。

ぐぅ~

そろそろ昼かぁ。

「お腹すいてるの~?」

「え?」

ちょうどお腹が鳴ったのがあるパン屋さんの前。

どこかで聞いたことのある声。

俺は声をかけてくれた方を見る。

エプロンを着けた犬の女性。

目が合う。

その瞬間何故か目をそらしてしまった。

「ん?どうかした?」

瞬間的に目を反らした瞬間、俺の脳裏に戌神神社の光景が思い浮かぶ。

ころねちゃんだ。

「い、いえ、ちょっとお腹空いたみたいで」

俺は顔を上げ、もう一度ころねちゃんの顔を見た。

その顔は穏やかで素敵な笑顔だった。

「よかったらころねんちのパン食べてく?」

「あ、はい」

「はい、お客さんお一人ご案内」

俺はころねちゃんに連れられてパン屋に入る。

中は賑わっていて、お店中にいい匂いが漂っていた。

俺はカレーパンとベーコンパンを購入した。

「ありがとうね」

ころねちゃんにお会計をしてもらいお礼を行って外に出た。

早速パンを一口。

ん~このピリッとして口の中に広がるスパイシーな味がいい。

こっちはどうだ?

んん、カリッとしたベーコンと中に入っているスパイシーソーセージがめちゃ合う。

モグモグと一瞬で平らげる。

おいしかった。

まだまだ種類あったしコンプリートしてもいいなぁ。

なんかスタンプカードももらったし。

ただこのスタンプカード、スタンプが指の形なんだよなぁ。

ま、いいか。

マップを開く。

もう少しで学園だし昼も過ぎてきた。

少し急ぐか。

俺は早足で学園に向かった。

その時、俺は知らなかった。

パン屋の入り口から顔だけ出して、俺の後ろ姿をじっと見つめる犬の女性に。




大変お待たせしてすいません。
リアルが忙しくなかなか更新できていません。
11月中と12月頭はこういった状況が続くと思われますが、気長にお待ちいただければ嬉しいです。
では、また次回に


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学園入学そして学生へ

無事に【バーチャル】に着いたあなたは美味しいパンを食べ、急ぎ学園へと向かった。
果たしてこれからあなたを待つ学園生活とは?


「はぁ、はぁ」

俺は今、全速力で逃げていた。

マップを見ていないからどこを走っているか分からない。

でも、今は逃げないと捕まる。

後ろを振り向く。

追ってきている。

全速力で走っているはずなのに、距離を縮められている。

「…ちなさい」

何か叫んでいるけど分からない。

「はぁはぁ」

もう、ダメだ。

ゲームの中なのに疲れるの一緒って、そこまでリアルにしなくていいのに。

俺はその場で倒れこむ。

ああ、アスファルト気持ちいい。

「はぁはぁ、やっと追い付いた」

仰向けになって追ってきた人物を見る。

ころねちゃんだ。

「まってって、言ったけど聞こえなかったん?」

ころねちゃんも疲れたみたいで膝に手をあてて息を整えている。

「い、いや、必死で走ってたので」

そう、あのパン屋から出た後、しばらくしたらころねちゃんが後をいきなり追ってきたので、あの時の恐怖が甦り走って逃げてしまったのだ。

「何をそんなに急いでるのか知らないけど、はいこれ」

そう言って寝ている俺の手を取り、何かを渡される。

チャリン

所持金が増える。

「スタンプカード渡した後、すぐに店出るんだから、おつり渡しそこねちゃったよ」

あ、そういえば指のスタンプ見てブリーズした後すぐに外に出たんだった。

ゆっくりと起き上がる。

「すいません」

「別にかまわないけど、気をつけなよ」

俺はガードレールに腰かけた。

ころねちゃんを横に並ぶ。

そうだ、あれを買ってたな。

「これよかったらどうぞ」

俺はアイテムボックスから、【ファンタジー】で買ったある物をころねちゃんに渡す。

「ん?」

ころねちゃんはそれを受け取ってくれた。

「ラミィ水です。

俺がゲームに入って最初の町で売ってたものです」

「あ、ありがとうね」

ごくごく飲むころねちゃん。

ゲームだからこぼれないし、賞味期限とかないからありがたい。

俺もラミィ水を飲む。

うん、美味い。

「それできみは今からどこにいくん?」

「あ、学園に行こうと思って」

「学園?入学するん?」

「はい」

「へぇ、でも、あそこはなかなか入れないって聞くよ」

ころねちゃんがラミィ水を飲みながら俺に言ってくる。

ま、ホロメンのころねちゃんなら見せてもいいか。

俺はアイテムボックスから推薦状を取り出した。

「これを貰ってて」

ころねちゃんに見せる。

推薦状を受け取り中身を確認するころねちゃん。

「へぇ、あやめる、フブちゃん、ミオしゃの推薦状。

すごいね、こんなのよくゲットできたね」

「ま、いろいろありまして」

「それじゃ、これを学園の門にいる人に見せればいいよ」

ころねちゃんはそう言いながら推薦状を返してくれた。

「分かりました」

「それじゃ、また近いうちにねぇ」

そう言い残しころねちゃんは来た道を帰っていった。

近いうちに?

どういう事だろう?

ま、パン屋には行く予定だしそれでかな?

俺はマップを開く。

案外遠くには行ってないみたいだ。

学園までもう少しだな。

俺はマップを確認しながら学園へと急いだ。

 

 

「すっげぇ」

学園前に来た俺は中の建物を見てそう思った。

広いグラウンド、3階建ての横に広い建物。

門の中では多くのプレイヤーが学生服を着て歩いている。

これが【バーチャル】を代表する建物の1つ、学園か。

俺は早速、門の横に立っている厳ついスーツ姿の男にころねちゃんに言われたように推薦状を渡した。

推薦状を見るスーツ男。

「しばらくお待ちください」

そう言って、胸に付いてるインカムで誰かに連絡をとりはじめる。

しばらくすると。

「お待たせしました」

いつの間にか目の前にスーツをビシッと決めた猫人の女性が立っていた。

《スキル【運命】が発動しました》

「おお、おかゆちゃんだ」

「おい、あれ秘書バージョンじゃねぇか?」

「うぉ、レアでありますなぁ」

「おかゆ様素敵」

なんか外野がわちゃわちゃしてるなぁ。

そんな外野に笑顔を振り向きながらおかゆさんがこちらに軽く頭を下げる。

つられて俺も頭を下げた。

「はじめまして、この学園の秘書をしています。

猫又おかゆです。

よろしくお願いしますね」

「あ、はい、よろしくお願いします」

「それでは、今から学園長のところまで案内します」

「はい、お願いします」

「はい、こちらが学園長室になります」

え?

いつの間にか俺は学園の中に入り、目の前には少し豪勢な扉があった。

いつの間に移動したんだ?

さっきまで門の外だったのに。

おかゆさんを見ると先程と変わらぬ笑顔だった。

コンコン

「学園長、お連れしました」

ノックの後、おかゆさんが扉を開く。

「どうぞ」

おかゆさんに言われて俺は学園長室に入った。

「よく来たね」

大きな机の上に肘を当て手を組んでこちらを見る学園長。

某司令官みたいだな。

その学園長の頭にどこかで見た戌耳がピョコピョコ。

って。

「ころねちゃん?」

ビクッとする学園長。

「ちがう、ころね学園長だ」

と、別に変わらない訂正をされた。

 

「というわけでまた会ったね」

学園長の椅子に座りくるくる回りながらころねちゃんは楽しそうに言う。

その学園長の机の横にニコニコしながらおかゆさんが立っていた。

「さて、入学にあたって1つ確認しないといけないんだけど」

ころねちゃんは椅子をピタッと止めこちらを見る。

「はい」

「この学園に入ると卒業するまで、この【バーチャル】の世界から出れなくなるの。

住むところはこちらで用意してるから大丈夫なんだけど、クエストもこの学園内にある掲示板から学園専用のクエストだけしか受けれなくなる」

「制約があるんですね」

「うん。だから、いろいろな場所に冒険したいなら、学園には入らない方がいいかも」

確かに卒業までここに縛られるならそれも考えられる、が。

「大丈夫です」

俺ははっきりとそう答えた。

「わかった。

じゃ、今日から入学という事で」

「え?

なんか入学試験とかないんですか?」

「これがあるから試験はパス出来るよ」

ころねちゃんが推薦状を見せる。

「なるほど、ありがとうございます」

「あ、それと卒業の条件はおかゆに聞いてね」

「あ、はい」

「それじゃ、先に退出します」

そう言うところねちゃんの姿が消える。

どうなってんだ、この学園?

「ぼくやころさんは、この【バーチャル】でいろいろと兼任してるから、さっきみたいな瞬間移動が使えるんだよ」

「そうなんですね」

学園長室に残された俺は、少し話し方の変わったおかゆさんの話を聞くことにした。

「さて、卒業の条件だけど簡単に言うとね。

あるチェーンクエストをクリア出来たらいつでも卒業は出きるんだ」

「そうなんですか?」

「うん。ま、卒業したらこの学園での生活がなくなっちゃうからあまり卒業しようとする生徒はいないんだけどね。

でも、キミは少し違うみたいだね。

だったら、放課後の一階第七教室に言ってみるといいよ。

そこにキミの道を示してくれる人がいるから」

「はい、ありがとうございます」

くるっと回るおかゆさん。

さっきまでのスーツ姿が制服姿へと変わる。

「ぼくやころさんはここで学生もしてるから、その時は同じ学生として接してくれたらいいよ」

ゆっくりと扉の方へ行き、おかゆさん、いや、おかゆちゃんか、扉を開けてくれる。

「では、この学園始まって以来の卒業者になれるように、この学園を楽しんでね」

「はい、ありがとうございます」

お礼を行って、俺は学園長室を後にする。

ピコン

機械音がしたのでアイテムボックスを見ると制服が支給されていた。

後は自分の住む寮の鍵とマップに場所が表示されていた。

さぁ、いよいよこれから学園生活の始まりか。

俺が学園長室前でそう思っていると。

「よ、君が噂の新入生かい?」

と声をかけられた。

振り向くとそこには1人の男子学生が。

後にこの男性が学園生活で1人目の友達になる相手だった。




お待たせしました学園編突入です。
少し長丁場になりそうですがお付き合いくださいね。
では、次回に


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ちょっと俺に説明させろ(エリトア編) その4

学園長室から出たあなたにいきなり声をかけてきた男子学生。
果たして彼は何者なのか?


「えっと…

誰?」

俺は声をかけてきた男子生徒に聞く。

「ああ、怪しいものじゃないよ。

俺はエリトア、自称学園一の情報通だ」

胡散臭い男子学生はそう答えた。

 

俺は今、学園の食堂に来ていた。

支給された学生服を着ているので周りからも浮くことはないだろう。

で、目の前に座っているのはさっきの胡散臭い男子学生エリトア。

彼が言うには、学園の門でおかゆちゃんが迎えに行ったプレイヤーがいると聞き、どんなやつかと気になって学園長室の前を張っていたらしい。

で、その時に出てきたのが俺だったので声をかけたというわけだ。

「で?

その自称情報屋が何を聞きたいんだ?」

「まぁ、まぁ、そう言わず、まずは何か頼もうぜ」

「ご注文はお決まりになりましたか?」

学生服の上からエプロンを着けた女子生徒が、注文を取りに来る。

俺はメニューに目を通す。

「いろいろあるなぁ。

じゃぁ…」

「ラミィ水を2つで」

「はい、ありがとうございます」

「お前もかぁ~!」

俺の声にびっくりするエリトアとウェイトレスと周り。

「え?ラミィ水上手いぞ?」

「知ってる」

「じゃ、問題ないじゃないか」

「俺もメニュー見てたろ、待てよ」

「ああ、腹減ってたんだな」

「いや、違うけど。

もういいよ」

俺は諦めながら言った。

俺の知り合いは俺に注文させたくないのか?

「そういえば、ラミィ水って【ファンタジー】のある場所しか売ってないんじゃないのか?」

確か俺はそう友人に聞いた。

「ああ、だが最近ある業者が学園に売りに来ているらしくてな」

「へぇ、どんな業者なんだ」

「さぁ、詳しくは分からないんだが。

学園に納入する時「こんねねー」と言って入ってくるらしい」

「ほう、髪型は?」

「何故か泥棒のようなほっかむりをして来るがお団子ヘアーらしい」

「ほうほう、髪の色は?」

「薄いオレンジ色」

「で、学園一の情報通はその業者に心当たりあるのか?」

「ああ」

「誰だ?」

「第五世代桃鈴ねねちゃんだな」

「なるほどなぁ」

それで友人はあんないいよどんでたのか。

注文の品がくる。

ごくごく

やはり、上手いけどこのラミィ水って何から出来てるんだ?

「さて、こっちから質問だ」

お互いにラミィ水を飲んだ後、エリトアが話を切り出してきた。

「あんたはどうやってこの学園に入れたんだ?

普通は入学するのに何日か試験や適正検査を受ける必要がある。

それなのに今日来て今日入学できるのはおかしい」

確かにこの学園に入るのはかなり難しいと言われてるからな。

「あるホロメンに出会って推薦してもらった」

ま、嘘はついてないな。

「へぇ、そのホロメンの名前は?」

「教えられないな」

「なぜ?」

「そちらから貰える対価が低すぎる。

そうだろ?

最難関の学園を1日で入れる方法だぞ?

それに見合うだけの対価を貰わないとな」

俺の言葉に唸るエリトア。

「た、確かに。

だが、俺にはそれに見合うような情報は持ってない」

「なら、諦めな」

「く」

なおも考え込むエリトア。

「な、なら、俺の情報提供者になってくれ。

あんたはホロメンに縁がある人物らしいし、この世界以外の情報も持ってそうだしな」

ま、別にそれくらいならいいかな。

と考える俺に。

「俺の持つ情報なら無料で教えるから」

とエリトアが言ってきた。

なんか渋ってると思われたか?

「いいぜ。ただし、教えられることだけな」

「よし、交渉成立だ」

それで良いのか悪いのかよく分からないうちに交渉は終わった。

「で、早速なんだが、卒業する為に受けるチェーンクエストについて知らないか?」

俺は気になっていたチェーンクエストについてエリトアに聞いてみた。

「卒業?

この学園に入ったばかりなのに?」

「ま、いろいろと事情があるんだよ」

「まさか、卒業を狙っているとはな。

ま、情報があるにはあるがかなり限定的だ。

その理由は言わずもがな、ここを卒業しようと思うやつがいないからだ」

「ああ、それは聞いた」

「なら、それを踏まえて聞いてくれ。

この学園を卒業するには全部で7つのクエストをクリアしなくてはいけない。

学園の七クエストと言われている」

「七不思議みたいなものか」

「クエストの内容は分からないが、クエスト名は判明している。

伝説の桜の木。

謎の第九教室。

旧校舎の謎の発光。

校長室の開かずの金庫。

月夜に踊る白骨模型。

奇声が聞こえる保健室。

音楽室から聞こえる謎の歌声。

以上の7つだ」

「なるほど」

「そして、そのクエストを受けるには」

「放課後の一階、第七教室に行くか」

「そうだ、知ってたのか?」

「それは聞いたからな。

そこに行けば何がある?」

「そこはこの学園の謎を調べる、学園探偵団の部室だ」

「学園探偵団?」

それ部活なのか?

「そうだ。

そして、その部長が夏色まつりちゃん。

ホロライブワールド第一世代組の1人だ」

「へぇ」

早速新しいホロメンに会えそうだ。

「ただし、覚悟して行けよ。

卒業チェーンクエストを受けると、他のクエストが一切受けられなくなる。

そして、チェーンクエストの中には一度失敗するとクリア不可能、すなわち卒業できなくなるクエストもあるらしいからな」

エリトアは真剣な顔で俺に言った。

「わかった。

ありがとう」

俺はラミィ水を飲み干すと席を立った。

「また、情報が入ったら教えるよ。

そっちも面白いネタが手に入ったら教えてくれよ」

「ああ、分かった」

俺はエリトアにお礼を言って別れた。

 

一度泊まる寮に向かい場所を確認した後、俺はある場所に向かった。

時間的には十分良い時間のはずだ。

学校の一階、俺は1つずつ数を数えながら進んだ。

1つ目、2つ目、3つ目…

6つ目、そして7つ目。

ここか。

俺はゆっくりと扉を開き教室に入った。

教室には誰もいない。

「よく来たね。

新入生くん」

いや、いたのか?

俺は教壇を見る。

そこには教壇に肘を付き手を組んでいる某司令官のような姿をした女子生徒がいた。

「流行ってるんですか?」

「え?

もしかして誰かとかぶった?」

「はい、学園長と」

「ええ~」

女子学生は驚き落胆する。

「もう、せっかくかっこつけようとしたのに」

そう言いながら教壇の前に出てくる可愛らしい女子学生。

「いらっしゃい、まつりの設立した学園探偵団へ。

君が初めての新入部員だよ」

あ、そうなんだ。

どれだけ卒業しようと思ってるやついないんだ。

「と言うわけでこんにちわっしょーい。

ホロライブワールド第一世代組夏色まつりで~す。

部長だよ」

「よろしくお願いします」

《スキル【運命】が発動しました》




なかなか更新できなくてすいません。
次は黒幕達の悪巧みを挟みます。
ホロライブも6期生の方が出てきて盛り上がってきてますね。
後々6期生の方々もこの作品に書いていこうと考えております。
では、次はそんな盛り上がりを見せるホロライブに負けないように、この作品オリジナルの世代を出そうと思っております。
お楽しみに


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広大な情報の海で

時はあなたが白上ふぶきからチェーンクエストを受けていた頃。
広大な情報の海の中、五人の人物がたゆたんでいた。


そこは広大な情報の海。

この中で5つの人物がたゆたんでいた。

「暇だな」

「そうだな」

「仕方ないでしょう、しばらくは傍観者になると決めたのですから」

「でも、手を出した人もいますよねぇ?」

「うるさい」

「ま、いいさ。

それよりあの世界に新たな動きがあるのは気づいたか?」

「ええ、もちろん文明の揺らぎを感じた」

「ああ、だれかが新たな時をあの世界で刻み始めたな」

「ふう、自然に任せるとは言いましたが、少し戦力に差が出ませんか?」

「私は別に構わないけど、最後は手でぺしゃんこにすればいいし」

『それはやめろ』

全員に突っ込まれる1人の人物。

「そうだな、まさか第六世代まで、あの世界に投入されるとは思わなかったな」

「ええ、前回のちょっかいがかなり効いたみたい」

「では、どうする?」

「こちらも我らの味方を作り、送り込むのはどうだ?」

「へぇ」

「それは面白そう」

各々は楽しそうに笑う。

「なら、早速作ろうではないか。

そうだな、題材は大罪にするか。

あの世界に新たな罪を生み出す為に」

「なら、私は怠惰を」

「では、私は強欲を」

「色欲を貰おう」

「私は暴食にしよ」

「じゃ、嫉妬か」

「さすがに傲慢と憤怒はやめとこうか」

「ですね、神と堕天使はややこしいですから」

それぞれが右手に黒い光を掴む。

「さて、始めようか」

左手に白い光を掴んだ。

「では、怠惰と勤勉を併せ持つ女性、鳳凰寺ベル」

「強欲と慈善を併せ持つ少女、小姫マモリ」

「暴食と節約を併せ持つ女子、双犬ベルフェ」

「色欲と純潔を併せ持つ女性、美色アスモ」

「嫉妬と人徳を併せ持つ少女、歌魚レヴィ」

5人の人物の前に裸の女性体が5人浮かび上がる。

「さぁ、出来た。

これから楽しみだね」

「ええ、この第X世代組がどういう風に動いてくれるか」

「しばらくは暇にならなくてすむ」

「そうそう、世界の答えを私達の相手が出来るようにしてね」

「あなた達5人に私達の加護を与えよう」

「大召喚も使えないとね」

「我らの暇潰しで創造した人型を召喚出来るようにしとくか?」

「それはいいな」

「では行け、我らのしもべ達よ」

その言葉に5人は一瞬で姿を消した。

「では、またしばらくは傍観者を気取るか」

「ま、仕方ないわね」

「ゆっくり出来て私はいいが」

「花畑でも作りましょうか」

「はぁ、小さい物を見るのに疲れたから私は寝るね」

そうして、5人の姿は虚ろい消えていった。

残るは広大な情報の海。

その片隅にホロライブワールドと呼ばれる情報の塊で出来た世界が見えた。




今回新たに10人のキャラがホロライブワールドに参戦します。
まず5人は今回ホロライブで活動される6期生の方々。
残りの5人は完全にオリジナルとなる第X世代の5人です。
このX世代がこれからどう絡むかはお楽しみに。
※第X世代の5人はホロライブとは一切関係ないオリジナルのキャラクターです。
【読み方】
ほうおうじベル
こひめマモリ
そうけんベルフェ
みしきアスモ
うたうレビィ


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学園の七クエスト前編

エリトアから情報を聞き、猫又おかゆから聞いた第七教室に向かったあなた。
そこには学園探偵団の部長、夏色まつりが待っていた


「さて、ここに来たって事はこの学園にある七クエストを受けに来たって事でいいんだよね?」

教室でまつりちゃんと向かい合わせに座り、まつりちゃんがそう聞いてきた。

「はい」

俺は真剣な顔で頷いた。

「やっと部活動出来る」

ボソッと言うまつりちゃん。

「それでクエストなんだけど、君は学園の七クエストを知ってる?」

「詳しくは知らないですが、クエスト名だけなら」

エリトアに聞いたしな。

「そっか。

ま、クエスト名は噂で学園に流れてるからね。

それじゃ、七クエストについて説明するね。

まずはここで7つのクエストのどれかを選んでもらう。

その後、クエストをしてその結果をまつりに報告してもらうのが主な流れね。

一応、まつりは部長なので、一緒にはクエストに行かないから君1人で頑張ってみて。

何か行き詰まったらヒントは出してあげるから、ここに戻ってきて」

「分かりました」

「じゃ、何から受ける?」

机の上にタブレットが置かれる。

タブレットの中には7つのクエストが。

「ちなみにまつりのおすすめはねぇ…」

少しタブレットを見ながら考えるまつりちゃん。

「これかな?」

何故に疑問系?

指差されたのは校長室の開かずの金庫。

校長室?

「ちなみに校長室は学園長室の横にあるから。

あと、学園長と校長は違う人で、まだ誰も校長を見た人はいないって言われてる」

「え?

なら、どうやって校長室に入れば?」

「それを調べるのが探偵団でしょ?」

「なるほど」

「まずは、いろいろと情報集めしてね」

「はい」

俺はまつりちゃんに頭を下げてから教室を出た。

時刻はだいぶ遅くなってる。

一旦寮に戻るか。

俺は寮に戻って寝ることにした。

 

次の朝、俺は早速学園を探索する事にした。

制服と一緒に付いていた学園のしおりに、この学園は授業に出たい時に出ればいいと書いてあった。

科目もいろいろとあり、きちんと学べば新しいスキルもゲットできるらしい。

ただ、今俺は七クエストを受けている為に他のクエストを受けれない。

科目を受けるのもクエストの1つらしいので、スキルを覚えられない為今回はパスしている。

「お、いたいた」

廊下を歩いていると後ろから声をかけてくる人物がいた。

エリトアだ。

「お、エリトア。

俺も探してたんだよ」

そう、自称だが学園一の情報通だ、何かを知っているかと探していた。

「ん?

そうなのか?

それよりもうクエスト受けたのか?」

少し焦りながら言うエリトア。

「ああ、昨日受けたよ」

「まじかぁ、遅かったか。

まさか、まつりちゃんのおすすめ受けたりしてないよな?」

「ん?

受けたが?」

「あちゃぁ」

頭を押さえるエリトア。

「なんだ?

受けたらまずいのか?」

「いや、必ずしもそうとは言えないが、まつりちゃんはその場のノリでおすすめしてくるらしくてな。

もしかしたら、失敗したらヤバイクエストをおすすめされてたらと思ってな」

「そうなのか?

俺が受けたのは校長室の開かずの金庫ってクエだ。

で、何か情報を持ってないかと思ってな」

「なるほどな。

それじゃ、いつものところに行くか」

俺達は食堂に向かった。

 

「さて、何が聞きたい?」

また、ラミィ水を頼まれ一連の流れを終えた後、エリトアが切り出してくる。

「まずはこの学園の校長について」

「それか、実はこの学園創立以来というか、この世界が出来て以来誰も会った事がない」

「まじか」

「ああ。

ただ、校長室はあるんだ」

「学園長室の横だろ」

「知ってたか、その通り」

「校長がいないならどうやって校長室に入るんだ?」

「ん?」

俺の問いに不思議そうな顔で俺を見るエリトア。

「校長室は自由に入れるぞ」

「え?」

「校長室は鍵がかかっておらず誰でも入室可能だ」

「えっと、まつりちゃんそんな事言ってなかったけど」

「そうなのか?

何て言ってた?」

「俺がどうやって入ればいいか聞いたら。

それを調べるのが探偵団だって」

「なら、間違ってないな。

入れないとは言ってないし」

あ、確かに。

「話を続けるぞ。

その中に大きな金庫が1つあってなそれが開かない金庫だ」

「クエスト的に言ったらそれを開けるのが目的だな」

「ああ。

ただし、鍵のありかも情報が全くと言っていいほどない」

「そうか」

エリトアでも情報なしか。

「ただ、よく校長室にころねちゃんが出入りしてるのが、目撃されてるな」

「ありがとう、当たってみるよ」

エリトアの最後の言葉に希望を持ち、俺はエリトアと別れた。

学園内でころねちゃんを探すのははっきり言って難しい。

なら、俺は昼前まで学園を散策した後ある場所へと向かった。

 

「いらっしゃい」

その場所で俺はころねちゃんと出会う。

「こんにちは」

そこはこの世界で初めてころねちゃんに会った場所。

パン屋さんだ。

「少し話を聞きたいんですけど」

俺はパンを買いながらころねちゃんに言った。

「ん?

ああ、クエストを受けたんだね。

いいよ、ちょっと待っててな」

俺は店先のベンチに座り買ったパンを食べる。

相変わらず美味しい。

「ん?」

昼が過ぎた頃、パン屋の入り口からころねちゃんが手招きしてきた。

俺は店に入る。

今はすいているのだろう、お客はいなかった。

「で、聞きたい事ってなんなん?」

「それがですね」

俺はクエストの内容を伝える。

「ああ、あの金庫かぁ。

あれなぁ、実は鍵のある場所は分かってるんよ」

「そうなんですか?」

「うん、学園の近くにある美術館に飾られてある金の招き猫の中にある」

「えっと、なんでそんなところに」

「実はその招き猫って前は校長室にあってな。

密かに鍵をそこに隠しといたんよ」

「え?ころねちゃんが?」

「あはは、そう。

それがまさか美術館に寄贈されるなんてなぁ」

「じゃ、よく校長室に出入りしてるのは?」

「なんとか金庫開かないかなぁっと思って」

「なるほど」

「もしかして、鍵を見つけてきてくれる?」

「はい、それが受けたクエストなので」

俺は強く頷く。

「ありがとう。

それじゃ、早速美術館に行って話聞いてみて」

「分かりました」

俺はパン屋を出て美術館に向かった。

「すいません、募金お願いします」

途中、募金箱を持った少女と出会った。

背丈は低いが出るところは出ている少女だった。

俺はいくらかのお金を募金箱に入れる。

「ありがとうございます」

元気一杯のお礼に嬉しくなりながら、美術館に急いだ。

 

美術館に着くと、なぜだが入り口に人だかりが出来ていた。

「何かあったんですか?」

野次馬の1人に聞いてみる。

「ああ、何でも怪盗キャットの予告状が届いたらしい」

「怪盗キャット?」

「ああ、伝説の義賊だよ。

ただ、ここ数年は姿を見せてなかったのに」

「へぇ」

それでこの人だかりか。

「で、何が狙われたんですか?」

「何でも美術館にあ金の招き猫らしいぞ」

「ええ~」

俺は野次馬の言葉に大声を出してしまった。




だいぶ私生活の方も落ち着いてきましたので、少しずつ投稿スピードがあげられたらと思います。
では、次回をお楽しみに


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学園の七クエスト後編

夏色まつりから卒業クエストを受けたあなた。
パン屋で情報を仕入れたあなたは美術館に向かった。
そこであなたは衝撃的な事実を知る。


「ちょ、ちょっとすいません。

通してください」

俺は人混みをかき分け先頭に出た。

美術館にはたくさんの警察官が歩いていた。

くそぅ、中に入れそうにない。

このままじゃ、クエストがクリアできない。

最前列で俺がまごまごしていると、警察官達に動きがあった。

誰か来たのか?

「ご苦労様です」

「うむ、現状は?」

なんか聞いたことのある声だな。

「はい、今現在急ピッチで進めております」

「よろしい」

「では、現場にどうぞ」

警官に言われ、他の警官とは違ったコートを羽織った私服警官が美術館に向かった。

「ん?」

その私服警官がこちらを見る。

あ。

「少し待ちたまえ」

私服警官がそう言ってこちらに近づいてきた。

「やはり、来ていたんだね」

「いや、来ていたんだねってころねちゃん?」

そう、私服警官はころねちゃんだった。

「いや、今はころねちゃんではなく、戌神警部だ」

「いや、訳分からんし」

「君、この人を中に入れてくれないか」

テープの前で立っている警官に声をかける戌神警部。

「え?

この一般人をですか?」

「うむ、彼は私の助手でね」

「は、はぁ」

警官は頭をかしげながらも俺を中に入れてくれた。「さ、こっちだよ」

小さい声で俺に言う戌神警部。

俺は戌神警部と一緒に美術館に入った。

「これってどうなってるんですか?」

美術館に入ってすぐに戌神警部に聞く。

「ん~

 ぶっちゃけた話でもいいの?」

「あ、はい。

っていうかここまでもそういう話はされてますんで」

「はは、そっか」

戌神警部とこそこそ話ながら警官の後を歩く。

「じゃ、ぶっちゃけると、君がクエストを受けて美術館に来たことによってイベントが起きたのよ。

このイベントではころねが警部役になってるのね」

「そうなんですか?」

「そう、ちなみに今回は無事に金の招き猫を守りきればクエストクリアだから」

「はぁ」

確かに怪盗に盗られてしまったら鍵も手に入らないしな。

「着きました警部」

少し広いホールに着く。

部屋の真ん中にはガラスケースに入った、金の招き猫があった。

「これって今から鍵を取ったり出来ないんですか?」

こそっと戌神警部に聞いてみる。

「あのねぇ、今は美術館の物だから勝手に触ったら怒られるし、今そんな事したら怪盗だと疑われて捕まるよ」

あ、確かに。

「しかし、変だな。

怪盗キャットは義賊のはずだけど。

それに久しぶりに現れたと思ったら、変な噂のない美術館からこの招き猫を狙うとは」

いきなり警部モードに入るころねちゃん。

「警部、怪盗キャットとは何者なんですか?」

一応、のってみる。

「うむ、怪盗キャットは貧しい人の為に悪い噂の立つ人から物を盗みお金に替えて配っていたんだ。

しかし、いくら義賊と呼ばれていても盗みは罪。

なので私は長年追いかけていたんだよ。

ただ、ここ数年は活動してなかったんだが」

なかなかの演技。

所々訛っておるのはお約束で。

「警部、本庁から警視が来られました」

「なんだと。

分かったお通しして」

「警視?そんな人まで来るんですか?」

「うむ、怪盗キャットは長年この町で活動していたからね。

警視も気になったんだろう」

誰が来るんだ?

「やぁ、どうかね、状況は」

来た。

「はい、白上警視。

急ピッチで準備しております」

「はい?フブキちゃん」

戌神警部がそう言った相手を見る。

あ、フブキちゃんだ。

「ん?誰だね君は始めてみる顔だな」

いや、声も顔もフブキちゃんなんですが。

役を演じてるんだな。

よし。

黒いスーツをびしっと決めているフブキちゃんの横にいく。

「かわいい」

ボソッと言ってみる。

ピク

白上警視の耳が動いた。

「黒いスーツ似合ってる」

ピクピク

「かっこよさの中に可愛さが」

ピクピクピク

面白いなぁ。

「フブキちゃん可愛い~」

「ああ、もう、今頑張って役やってるでしょ」

真っ赤な顔でめちゃ怒られました。

 

「では、準備は出来たという事だね、戌神くん」

「はい、警視」

何やら二人話し込んでるなぁ。

俺は何したらいいんだ?

ホールの周りを見回ってみる。

すごい数の警官がホールを囲んでいた。

むにゅ

誰かとぶつかった?

「ご、ごめん」

「い、いえ、私もよそ見をしていたのもので」

走ってきた警官にぶつかったので慌てて謝った。

だけどぶつかったにしては痛くなかったなぁ。

「すいません、急いでいるので」

背の低い女性警察官は慌てて廊下を走っていった。

「何してるんだい?」

「え?

あ、すいません」

背後に戌神警部。

「する事が見つからなかったので、ちょっとホールの回りを見てました」

「あのねぇ、蟻のこ1匹入る余地がないくらい警察官を見張らせてるんだ。

そんな見なくても大丈夫」

いや、それって入られるやつだよなぁ。

「警部そろそろ予告時間です」

「分かった」

俺は時計を見る。

いつの間にか夕方になっていた。

「配置につけ」

戌神警部の言葉に慌ただしくなる警官達。

キーン

何か高い音が響いた気がした。

「え?」

あんなに慌ただしく動いていた警察官が止まっている。

普通に止まっているんじゃない。

走っている警官が空中で止まっている。

時間が止まっているのか。

「君」

背後で誰かに呼ばれた。

俺はすぐに後ろを振り向く。

そこには、斜め45度で腕組みをして右手を顎に当てているフブキちゃんがいた。

「そんな好感度で大丈夫か?」

え?

訳が分からない事を言われた。

でも、なんだ。

口が勝手に動く。

いや、俺が言っているのか。

「大丈夫だ、問題ない」

キーン

また、甲高い音。

警察官の慌ただしさが美術館に戻る。

なんだったんだ?

俺は急いで警視のいたところに行ってみた。

しかし、そこには誰もいない。

「ちょ、ちょっと」

急いで動き回る警官を止める。

「ここに白上警視がいなかった?」

「はい?

誰ですかそれ?」

「え?」

警官は慌てて走り去る。

え?

白上警視を知らない?

俺は急激に不安を感じた。

急いで戌神警部の元に行く。

戌神警部は慌ただしく指示を出していた。

「忙しいところごめん」

「ん?なんだい?」

戌神警部がこちらを向く。

「えっと、白上警視がさっきそこにいてさ」

「?

何を言ってるんだい?

白上警視なんていないよ。

変なもの見たんじゃない?」

え?

なんで?

さっきまであんなに話してたのに。

「それよりそろそろ怪盗キャットが現れる」

パリン

天井のガラスが割れ、誰かがホールの真ん中に降り立った。

「な、あんなところから」

いや、予想つくやん。

「これはもらっていきますよ」

紫のレオタードを着た小柄な女性がガラスケースから、金の招き猫を素早く盗る。

「な、触ると電流が流れるはず」

「それは先ほど切らせて貰いました」

ドミノマスクで目元を隠したその女性がふわりと天井に飛ぶ。

なんて脚力だ。

「だ、誰だお前は?」

え?怪盗キャットじゃない?

戌神警部の言葉に俺はその女性を見た。

「すいませんね、怪盗キャットの名前を借りました。

名前は明かさないのが普通ですが、これでゲームオーバーですし名乗っておきますね。

ホロライブワールド第X世代、小姫マモリと言います。

では、もう会う事もないでしょう。

期待はずれでしたよ、世界の答えさん」

そう言ってマモリとなのった少女は破れたガラスへと消えた。

《クエスト失敗です》

そう俺の頭の中に機械音声が流れた。

 

俺は後日、学校に戻りまつりちゃんにその事を報告した。

まつりちゃんは罰が悪そうに「ごめんね」と謝ってくれた。

そう、このクエストは一度っきりのクエストだったのだ。

もう俺はこの学園から卒業する事はできない。

 

 

俺はその後、緩やかに破滅に向かうこのホロライブワールドの学園生活を楽しんだ。

この世界を守るなんて俺には無理だったんだ。

学園に馴染む頃には俺はその使命も忘れていた。

そう、最後はいつも唐突なんだ。




だから言ったでしょ。
そんな好感度で大丈夫かって。
ま、学園で楽しく遊べたならこれもハッピーエンドの1つなんでしょうけど。
このホロライブワールドは人生と同じ。
一度間違えたら。もう取り返しは着かないんですよ




























本当はね


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学園の七クエストagain 伝説の桜の木

失敗してはいけないクエストに失敗してしまったあなた。
その事を夏色まつりに報告しに行った。
そして、卒業できなくなってしまったあなたはゆっくり崩壊していく世界を楽しむのだった。



そんなの嘘だ!


クエスト失敗の機械音声を聞いた俺はゆっくりと立ち上がる。

「大丈夫?」

と戌神警部に聞かれ、「ありがとうございます」としか答えられなかった。

俺はゆっくりと美術館を出た。

目の前は真っ暗だった。

確かに夜だから暗いのは分かるけど、これは異常だ。

本当に真っ暗で何も見えない。

「おお、クエストに失敗してしまうとは情けない」

え?

この声はミオちゃん?

「きちんと白上警視の言葉を考えないといけなかったですね。

ヒントを言いますが、このクエストは他のクエストを終わらせた後に受ける事をお勧めします。

あと、他のクエストも受ける順番があるんですよ。

しばらくいろいろと聞いて回るのが吉ですね。

それじゃ、今回だけ。

本当に今回だけですよ。

次は失敗しないでくださいね」

その言葉が終わると同時に、俺の意思とは関係なしに、俺は後ろ向きで美術館に戻った。

いや、俺だけじゃない。

他の人達も同じように巻き戻されている。

天井のガラスから金の招き猫を持って降りてくるマモリ。

台座に招き猫を置いてまた、天井に上がっていく。

あ、白上警視。

一瞬笑ったような気がする。

巻き戻しが加速する。

もう、認識が追い付かない。

どこまで巻き戻されるんだ?

 

「って聞いてる?」

「え?」

俺はそう聞かれて周りを見る。

ここは教室?

夕方の教室だ。

「どうかしたの?」

目の前にはまつりちゃん。

ということはこれはクエストを受ける前か?

「それじゃ、おすすめいうけど、まつりはね…」

「あ、まつり部長」

「あ、はい」

俺の言葉にびっくりするまつりちゃん。

「ちょっといろいろと情報収集してから決めてもいいですか?」

「え?

そうなの?」

「はい、探偵団ですから」

「ま、まぁ、そうだね。

よろしい、調査が終わったらまつりのところに来て」

「分かりました」

俺はそうまつりちゃんと約束して教室を出た。

外はもう日が落ちかけていた。

よし、一旦寝てから明日いろいろと情報を聞いてみるか。

俺は寮に戻り、学食を食べて休んだ。

 

次の日、学校で情報収集する為、廊下を歩いていると予想通り声をかけられた。

「お、待ってたぞ」

そう言う俺に、きょとんとした表情の声をかけてきたエリトアがいた。

「で、なんだ待ってたって」

俺と2人食堂に座るエリトア。

いつも通りラミィ水が机に置いてあった。

ま、今回は自分で頼んだんだけどね。

「ああ、この前も聞いたんだが学園七クエストについてだ」

「あのなぁ、俺の知っている情報はあれだけだぞ」

エリトアが苦笑いする。

「確かに。

なんで聞き方を変えるよ。

そのクエスト名から何か予想はつかないか?

クエストに関係してるような人とかホロメンとか」

「クエスト名からか」

エリトアがしばらく考える。

「そうだな、保健室っていうのはホロメンの1人、ちょこ先生が関係してるかもな。

あと、白骨模型ってのはたぶん理科室にあるやつだと思う」

「なるほどな」

「桜の木は校舎の裏側にあるやつだな。

噂では校舎が建つ前からあるって話だぞ。

あとは、第九教室だけど、この学校は第八までしか教室がないからな。

第九教室があるなら壁の向こう側になるな。

外からどう見てもそんな広さがあるとは思えないし」

「ありがとうな、どのクエから行けばいいか、なんとなく分かってきたよ」

「そうなのか?」

「おう、また今度いい情報見つけたら教えるわ」

「お、期待してるぜ」

俺はエリトアと別れ、放課後まで学園の掲示板からクエストを受けた。

おかゆちゃんからの依頼のクエを案外受けれて、なかなか楽しい時間だった。

 

「こんにちは、部長」

ガラ

「え?

あ、いらっしゃい」

教壇の方に向かっている、まつりちゃんの背後から声をかけた。

また、この前の格好で待とうとしてたのかな?

「で、クエストどれ受けるか決めた?」

「はい」

席に着き、机の上に置かれたタブレットからあるクエストを指差す。

「オッケーそれじゃ、このクエなんだけど…」

 

俺は校舎裏の桜の木に来ていた。

校舎裏の桜の木は今にも枯れそうだった。

伝説の桜の木。

このクエストはどうにかして枯れそうな桜の木を復活させる事だ。

桜の木と聞いて俺はみこちゃんの事を思い出した。

確か、彼女は大桜の巫女のはず。

俺はみこちゃんに力を受けた鬼切丸を取り出す。

そして、桜に鬼切丸を突き刺した。

しばらく待つ。

すると枯れかけていた桜が、季節外れにいきなり満開になった。

ゆっくりと鬼切丸を抜く。

「まさか君が繋ぎ直してくれるとはねぇ」

桜の木に門が現れた。

そして、最近あったホロメンが姿を現した。

「みこちゃん」

 

「元気にしてる?」

「ま、いろいろありましたけどね」

みこちゃんの言葉に苦笑い。

「ま、たまには失敗するよにぇ」

みこちゃんも察したのかそういって笑った。

「しかし、このゲート何者かに閉じられてたから、繋ぎ合わせてくれて助かったにぇ。

これでやっとこの学園にも力を送る事が出来る」

「他のホロメンには伝えなかったんですか?」

「それが、この桜のゲートが動かなくなってから連絡できなくてね。

困ってたにぇ。

ま、これではあとちゃんに会える」

「はあとちゃん?」

「まだ会ってないのかにぇ?

きちんと会う事をお勧めするよ。

めちゃくちゃ可愛いから」

「そうなんだ」

「ま、可愛い以外にいろいろとはあちゃまは知ってるからね」

「分かりました。

探してみます。」

俺はみこちゃんにそう伝える。

「うむ、素直な事は良いことにぇ。

それじゃ、またね。

おつみこー」

そう言ってみこちゃんは桜の門に消えていった。

《クエストクリアです》

機械音声が頭に響く。

よっしゃ。

ガッツポーズを思わずとってしまう。

今度は大丈夫だった。

次はどのクエストにするか。

それより、気になる人ができたな。

はあとちゃんか。

まずは彼女を探してみるかな?




学園クエストもう一度始まります
ホロメンもどんどん出てくるのでお楽しみに
では、また次回に


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学園の七クエストagain 謎の第九教室

学園七クエストの1つを無事クリアしたあなた。
その時さくらみこからはあとちゃんに会う事を進められる。
一旦、あなたはクエストクリアを報告しに夏色まつりの元に向かった。


学園の七クエストの1つ、伝説の桜の木をクリアした俺はさっそくまつりちゃんに報告に言った。

 

「おかえり、クエストどうだった?」

「はい、無事にクリアしました。

季節外れですが、今、桜は満開ですよ」

「そっか、よかった。

実を言うとね、その桜はいつも満開なのよ」

「え?」

まつりちゃんが真剣な顔で経緯を話し始める。

本来はこのクエスト、満開の桜の下で男子学生がある女子学生に告白するのを影ながら手伝うと言う内容だったらしい。

それが、一週間前から満開の桜が枯れそうになってしまって告白イベントも発生しなくなった。

それで、今回クエスト内容を変えて、俺に桜をどうにかして元に戻してもらおうとしたらしい。

「どうして枯れたか分かっているんですか?」

「詳しくは分からないの。

ただ、噂なんだけど桜が枯れる前に1人の女子学生が桜の近くにいたって事は聞いてる」

謎の女子学生か。

「ま、なにはともあれクエストクリアおめでとう」

「はい、ありがとうございます」

まつり部長に誉められてちょっと照れくさい。

「それで、次はどのクエにする?」

「そうですね。

また、ちょっと情報収集してから決めます」

「オッケーならまた来てね」

俺はまつり部長に挨拶をして教室を出た。

さてと、次はどのクエストにするかだけど。

でもその前にはあとちゃんに会っておかないといけない気がする。

みこちゃんから話題に出た人だ、気になるし。

俺は放課後の学園を歩く。

特にこれといって情報ないんだよな。

一階の食堂を横切った時、それは起きた。

「おい、調理実習室で人が倒れたぞ」

「また、あのクエストを受けたやつがいるのか?」

「くそう、俺は受けたくても我慢したというのに」

「おい、タンカー早く持ってこい、保健室に運ぶぞ」

慌ただしく保健委員であろう腕に赤い十字を着けた人達が走り回っている。

なんだ?

「はあちゃまの料理食べたんだろう」

「うわぁ」

背後から突然声をかけられびっくりする。

後ろを見るとそこにはエリトアが立っていた。

「びっくりするだろうが」

「いや、ぼーっと保健委員見てたから気になったのかと思ってな」

「ま、そうだけど。

それよりはあちゃまって?」

「ん?

ああ、この学園にいるホロメンの1人、赤井はあとちゃんだ」

お、リアルタイム。

「で、なんで料理食べて人が倒れる?」

「ん~はあとちゃんは創作料理が好きだからかなぁ」

「はぁ」

「ま、興味があったらクエでも受けるといいさ。

運が悪かったら、いや、運があったら受けれると思うぞ」

そう言ってエリトアは去っていく。

運があったらか。

俺は一先ず掲示板を見に行った。

ない、な。

明日もう一度見てみるか。

俺は寮に戻ることにした。

そして、夜が明ける。

 

俺は食堂で朝御飯を食べた後、掲示板に向かった。

ちょうど係の人か?掲示板にクエストを張り付けていた。

えっと、はあとちゃん関連のクエはと。

係の人が最後に張ったクエストが俺の求めていたものだった。

早速クエストを剥がして内容を見る。

張り終えて帰っていく係の人?が気の毒そうな顔をしていたのは気のせいのはずだ。

えっと内容は放課後に調理実習室で試食をする事か。

これが昨日のクエストか。

放課後までは時間があるが。

掲示板をもう一度見る。

何故か気になるクエストが2つ。

どちらも保健委員が出しているクエだった。

1つは学園の池にいるポイズンフィッシュの捕獲。

もう1つは学園の畑でマンドラゴラの採取だ。

っていうか、畑でマンドラゴラ育ててるのかこの学園。

俺は気になる2つのクエストも受けた。

放課後までには時間もあるしな。

そして、俺は2つのクエストをまず終わらす為に現地に向かった。

 

 

はぁ、死ぬかと思った。

もうすぐ放課後。

俺はクエストを終えて食堂にいた。

ポイズンフィッシュはちょうど池の近くにいた、用務員さんに釣竿を借りて釣ることが出来たのだが、問題は釣った後だった。

俺はてっきり噛まれたり食べたりしたら毒になってしまうのかと思っていたが、その魚は表面全体が陸に上がると毒液に覆われるものだった。

さすがに素手で触れず、悪戦苦闘していたところにおかゆちゃんが通りかかり、しめると毒が止まると教えてもらい、なんとか捕まえる事が出来た。

お礼に塩むすびを要求されたから今度用意しとかないと。

次のマンドラゴラなのだが、こっちは意外と簡単な方だった。

普通抜く時に奇声を上げて聞いたら死んでしまうと言われているマンドラゴラだが、学園の物は少し違った。

普通に抜けるし、奇声もあげない。

ただ、何故か抜いた後に両手で持てるくらいのマンドラゴラが徐々に重くなり、推定四十キロまでになった。

後で保健委員に聞いたら、奇声をあげない代わりに呪詛がマンドラゴラの中に溜まり重くなるという事だった。

ま、2つのクエを受けて貰ったのが解毒薬と気付け薬とはやはり何か縁があるのかな。

そして、俺は食堂から調理実習室に向かうのだった。

 

「頼もう」

勢いよく調理実習室のドアを開ける。

「あ、いらっしゃい」

中にはエプロンを着けた1人の女子学生がいた。

金髪で赤いリボンを付けたその可愛らしい女性が。

「はじめましてだね、赤井はあとだよ」

《スキル【運命】が発動しました》

「じゃ、そこで待っててくれるかな?」

俺はテーブルにつく。

「早速はあちゃまクッキングじゃない、はあちゃま調理実習するから」

「は、はぁ」

そう言ってはあとちゃんは調理台の方に向かう。

背後にはたくさんの食材?が。

「ふぅ」

食材を手に取るはあとちゃん。

包丁を振り上げた瞬間、見た目は変わらないのに雰囲気が変わった気がした。

ダン

包丁が振り下ろされる。

そして、多種多様な食材が切り刻まれ、料理されていった。

「はい、おまたせ。

はあちゃま特製たこ焼きだよ。

召し上がれ」

目の前に出された皿には5つのたこ焼き。

確かに見た目はたこ焼きだ。

所々タコの脚が出てたりしてるけど、たこ焼きだ。

だけどなぁ、なんかタコじゃない脚が出てるような気もするなぁ。

俺が食べるのを躊躇していると。

「あ、ごめん。

忘れてた。

自家製のタレ付けないとねぇ。

ちょっとピリッとするけど美味しいよ」

ふと、食材の端に痺れ草が見える。

入ってないよなぁ?

「どうぞ」

青い瞳でじっと見られる。

俺はフォークを片手に持ち、たこ焼きに突き刺した。

ザク

そして、口に一気に放り込む。

咀嚼。

確かにピリッとする。

体全体が。

きちんと火は通っており、タコも美味しい。

しかし、なんだろうなぁ、このたこ焼きに入ってはいけないような感触の物体は。

噛めば噛むほど、体に回る違和感。

ん~これは毒だな。

「すごいね、よく食べてる」

同じものを食べながらはあちゃまは笑顔だ。

まずいな、この、ままだと、ヤバい。

「お水持って来てあげるよ」

はあちゃまが席をたつ。

俺はすぐさまアイテムボックスから薬を出して口に放り込む。

薬が効き、毒と痺れが取れた。

「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

「で、どうだった味は?」

興味津々で聞いてくるはあちゃま。

「はい、刺激的な味でした」

と俺は言うしかなかった。

「それでは、失礼します」

俺はそう言って調理実習室を出ようとした。

「そうそう、下校時間に校舎の2階第一教室から1つずつ数を数えて行ってみたら面白いかもよ」

「え?」

思わず調理実習室を見る。

しかし、はあちゃまはまた新しい料理を作っているのか背中だけしか見えなかった。

俺は不思議に思いながら調理実習室を後にした。

 

 

俺は下校時間2階の第一教室に来ていた。

もちろん、学園の七クエストの1つを受けて。

俺ははあちゃまが言った通り教室の数を数える。

1つ。

2つ。

3つ。

4つ。

5つ。

6つ。

7つ。

あと1つで終わりだ。

8つ。

しかし、何故かまだ奥に教室があった。

9つ。

俺は教室の前側の扉に手を掛ける。

しかし、開かない。

なら、後ろ側は。

開いた。

教室に入る。

そこは机も椅子も何もない教室だった。

その教室にただ1人、女子生徒が腕組みをしてこちらを見ていた。

「まさか、私に認められる人がいるなんてね」

「き、君は?」

「へぇ、今回は君が選ばれたんだ」

「え?」

背後から声をかけられる。

後ろにはあとちゃん?

でも、前にもいる。

「ま、ここまで頑張って来てるみたいだし」

上から声?

そこには天井に立つはあとちゃん。

「でも、1度、失敗したみたいだね」

壁に立つはあとちゃん。

「ま、もう1度チャンス貰えたみたいだし」

「世界に期待はされてるみたいかな?」

声が増えれば増えるほど、はあとちゃんも増えていく。

「じゃ、私も手伝う事にしましょうか」

「影ながら手伝ってあげる」

「まだ、表だって手伝って気づかれるのも嫌だし」

「それに、その一覧に載ってない子達もこの世界に来たみたいだから」

「その子達も影ながら手助けしてくれるよ」

「まずは彼女達が作った子達に」

「負けないように」

「この学園にもいるからね」

「後は」

「ミオちゃんに言われたように」

「私達と出会って」

「詳しい話は、それからかな」

「君は誰なんだ?」

矢継ぎ早しにくる言葉に、俺は思っていた言葉をなんとか吐き出す。

「私?」

「私は赤井はあと」

「私ははあちゃま」

「でも、どちらでもない存在」

「え?」

「それじゃ、またいつか会いましょうか。

頑張って世界の答えさん」

そう言って呆けていた俺はトンと背中を押され、扉から教室の外に出た。

そこは第八教室前の廊下の壁。

もう、第九教室は影も形もなかった。




いろいろとオリジナル設定をぶちこんですいません。
今回の第九教室に出てきたはあとちゃんは、前作に出てきたホロライブワールドの世界の真実を知る人格のはあとちゃんとなります。
言わば第三人格ということで。
これも実際活動されている赤井はあとちゃんとは一切関係のない設定ですのでよろしくお願いします。


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学園の七クエストagain 旧校舎の謎の発光

不思議な第九教室で何かを知っている赤井はあとと出会ったあなた。
クエストも無事に終わり、あなたはクエストクリアを夏色まつりに報告しに行くのであった。


俺は第七教室に来ていた。

もちろん、まつり部長にクエストクリアの報告に来る為だ。

「で、どうだった?」

「はい、第九教室は実際にありました」

「え?」

驚くまつり部長。

「あれ?」

「あ、あったんだ。

それってクエストクリアなってる?」

「え?」

そう言えばクエストクリアって機械音声しなかったな。

クエスト画面を見る。

あ、確かにクリアなってない。

まつり部長も横から覗き込む。

「でしょ」

しかし、その時異変が起きる。

クエスト画面に小さなはあとちゃんが現れて、クエスト画面にクリアの判子を押したのだ。

手を振り画面から消えるはあとちゃん。

「えっと」

「見なかったことにしようか」

お互いに頷き合う俺とまつり部長だった。

 

「本当はね。

あのクエストは第九教室は存在しませんでしたが正解なのよ」

どこから取り出したのかせんべいを食べながらまつり部長が話す。

「はぁ」

「ま、君は特殊な世界に足を踏み入れたって事かな」

って言うかまつり部長、実はどうやればクエストクリアになるのか全部知ってるんじゃ?

「教えないよ」

「ははは」

見透かされてる。

しかし、次はどのクエストにするか。

何も手がかりは見つかってない。

昨日のクエストが終わった後、寮で休んでからこの放課後までいろいろと聞き込みをしたんだけどなぁ。

まてよ。

まつり部長は七クエストの攻略を知ってるんだったよな。

教えてはくれないけど。

なら。

「では、まつり部長。

校長室以外でホロメンが依頼してるクエストってどれですか?」

そう、この七クエストは誰かから依頼されてるはずだ。

校長室はたぶんころねちゃんの依頼。

なら、他にもあるはず。

「私がクエストを理解していると知って聞いてきてるんだね」

「はい」

力強く頷く。

「なら、ふざけられないかな。

この旧校舎の謎の発光ってクエストが、おかゆんからの依頼だよ」

「ありがとうございます。

それ受けます」

「分かった。それじゃ、調査よろしくね」

俺は「了解きました」と答え教室を後にした。

 

さて、まずはおかゆちゃんを探さないといけないんだけど。

あ、そうだその前に。

俺は一度食堂に向かった。

 

しかし、ここまで広いと1人を見つけるのは大変だ。

はぁ、校庭のベンチに座る。

さっき食堂で買ったスポーツドリンクを飲む。

「ふぅ」

「ため息すると運が逃げちゃうよ」

「うわぁ」

背後からいきなり声をかけられる。

っていうか、最近背後から声かけられるのが多すぎる。

「おかゆちゃん」

「ぼくの事探してたでしょ?」

「知ってたんですね?」

「まぁね」

隣に座ってくるおかゆちゃん。

「そうだ、これ約束のものです」

俺はアイテムボックスから塩おにぎりを取り出し、おかゆちゃんに渡した。

「へぇ、約束覚えたんだ」

「もちろん、お礼ですからね」

「ありがとう」

そう言ってさっそくおにぎりかぶりつくおかゆちゃん。

「うん、美味しい」

「で、俺。

おかゆちゃんが出したクエスト受けたんですけど」

「ん?」

指に付いたご飯粒を舐めとるおかゆちゃん。

「ああ、卒業クエストだね。

もしかして、旧校舎の?」

「はい」

「そっか、ありがとう。

クエスト内容が知りたいんだよね?」

「そうです。

まつり部長はクエスト名だけは教えてくれるんですが、クエスト内容は自力で探さないといけないので」

「はは、まつりちゃんらしい。

いいよ、内容は夜にその旧校舎に行くと教室の1室で紫の発光がよく起きてるらしくて、実際にその教室に行っても何もないらしい。

なので、その原因を調べて発光が起きないようにする事」

「なるほど分かりました」

「あと、食堂で売ってる魔力チョコ持っていくといいかもね」

「魔力チョコですか?」

「そ、それじゃ、クエスト頑張ってごちそうさま」

勢いよく立ち上がるおかゆちゃん。

そのまま手を振り校舎に向かっていった。

「よし」

俺も勢いよく立ち上がる。

そして、まずは食堂に向かった。

 

 

「ここが旧校舎か」

俺は魔力チョコを購入した後、少し仮眠をとり夜の旧校舎に来ていた。

木造建てのその校舎は、新校舎に比べたらだいぶ小さい。

あそこか。

2階の奥の教室が光っている。

俺はそこに向かって歩き始めた。

旧校舎の木造にしてはまだ廊下はしっかりしている。

ま、歩く度にギシギシいうけど。

階段を上がる。

廊下の先、奥の教室はまだ光っていた。

ゆっくりと進む。

何かあった時の為に、俺は鬼切丸を抜く。

そろそろ、見えてくるか。

教室のドアの前に来た。

まだ光ってる。

「だれだ!」

ガラッと勢いよく扉を開ける。

「そっちが誰だ!」

ドカ!

勢いよく飛んできたドロップキックに俺は吹き飛ばされた。

 

 

「かは」

気絶してたのか?

「大丈夫?」

教室の壁を背に座らされていた俺は頭を振り周りを見る。

教室の中?

「いきなり、扉が開くから驚いて蹴りいれちゃったよ」

「いや、確かにいきなり開いたけど。

で、君は?」

「シオン、紫咲シオン、よろしく」

《スキル【運命】が発動しました》

「よ、よろしく」

「で、何しにここまできたの?」

「え?」

シオンちゃんに、覗き込まれる。

「この旧校舎で謎の発光があるから原因を調べに来たんだ」

「そっか。

なら、原因はあれかな」

シオンちゃんが指差す先には魔方陣が。

「夜な夜な練習してるからねぇ」

「それだ」

《クエストクリアです》

 

「で、なんで他の人は見つけられなかったんだ?」

シオンちゃんに入れて貰ったお茶を飲みながら疑問を口にする。

「それはたぶんクエスト受けてないからじゃない?

シオン達は基本イベントキャラ扱いだからねぇ」

俺があげた魔力チョコを食べながらシオンちゃんが言った。

詠唱研究してると魔力を大量に消費するみたいで、ちょうど魔力を補充できる、このチョコがほしかったらしい。

さすが、おかゆちゃん。

「なるほどね」

「そうだ、せっかく会ったんだし何かご褒美あげるよ。

このチョコのお礼も兼ねて」

「え?本当ですか?」

「ほんとほんと。

そうだなぁ、見た感じ魔法とか使えないんじゃない?」

「当たり」

「なら、武器出してみてよ」

俺は鬼切丸を取り出し、シオンちゃんに見せる。

「何このめちゃくちゃバフ付いてる武器は」

まじまじ見るシオンちゃん。

「じゃ、これに1日1回だけ雷の魔法が使用出きるようにしとくね」

鬼切丸にシオンちゃんの手から紫の雷が宿る。

「はい、出来た」

シオンちゃんから受け取った鬼切丸を見る。

《大桜印鬼切丸・神鳴》

なんかすごい事になってきたんだけど。

《鬼以外にも特効が付く

ホロライブワールド時間で1日1回雷の魔法が使用できる》

なんかどんどん凶悪になってくるな、俺の武器。

「どうやったら魔法が使えるんですか?」

「えっとね、その武器を相手に向けて、撃ちたいと思えば出るから」

「そんな簡単に」

「ま、武器の付属みたいな感じだからね。

ただ、詠唱すれば威力は上がるよ」

「詠唱ですか?」

「そう、詠唱は時間がかかるけど自分以外の力をプラスして魔法を使えるからね。

それでシオンは毎晩、詠唱の練習してるってわけ」

「なるほど、それで魔方陣」

「そういうこと。

詠唱にもいろいろあるからね。

興味があったら学園の図書館でも行ってみたら」

「分かりました、ありがとうございます」

「いえいえ、それじゃ、クエストもクリアしてるみたいだし、じゃーね、ばいばい!」

俺はシオンちゃんと別れて寮に戻る。

帰り道空に向かって雷を試し撃ちしてみた。

すごい轟音と雷が天に向かって走る。

これはすごい。

けど、近所迷惑になるなぁ。




また新たなホロメンの登場です。
しゃべり方とかが上手く表現できていなくて申し訳ありません。
次も新たなホロメンが登場予定。
次回をお楽しみに
読み方
《大桜印鬼切丸・神鳴》おおさくらいんおにきりまる・かみなり


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学園の七クエストagain 月夜に踊る白骨模型

学園の七クエスト、3つ目をクリアしたあなたは夏色まつりにクリアの報告に行くべく、第七教室に向かうのであった。



さて、無事に昨日はクエストをクリアした。

まつり部長に報告したら笑ってたな。

ま、答えを知ってるまつり部長だ。

飛び蹴りで気絶したのが余程面白かったんだろうな。

「シオンらしい」と笑いまくってた。

ま、いいんだけどクリアしたから。

あと、残っている学園の七クエストは4つ。

この中で校長室は最後にするとしたら、あと、3つか。

そう言えば昨日、詠唱に興味があるなら図書室に行ってみるといいってシオンちゃんが言ってたな。

まずは図書室に行ってみるか。

 

俺は教室がある棟と違う棟に向かった。

こちらの棟には調理実習室や図書室、視聴覚室等の部屋がある。

3階に上がる。

ここの図書室はかなりの広さがあった。

リアルの図書館より大きいんじゃないか?

「こんにちは」

俺は受付の眼鏡をかけた女性に声をかける。

たぶんこの図書室の司書さんだろう。

綺麗な人だな。

ふと胸に付いているネームプレートに目がいった。

そこには鳳凰寺ベルと書かれていた。

「何かお探しですか?」

綺麗な声で聞いてくる司書さん。

赤い瞳で真っ直ぐにこちらを見てくる。

「あ、はい。

魔法に関する本があれば」

「魔法ですか?

かなりの数がございますが」

パソコンを入力、確認しながら言われる。

「えっと、入門書みたいなので詠唱について書かれている本ありますか?」

また、パソコンをカタカタ。

「それなら、まの3の棚にある、魔導書・詠がよろしいかと」

「ありがとうございます」

俺は司書さんにお礼を言ってからまの棚の方に歩く。

「あ、ごめんね」

角を曲がろうとした時に危うく少女にぶつかりそうになる。

「いえ、こちらこそ」

ぶつかりそうになった少女はそのまま走り去る。

小柄でエメラルドの髪。

髪飾りに綺麗な蝶が付いていたな。

この学園の制服じゃなかったみたいだけど。

いやいや、今は本の方だ。

俺はまの3の棚に向かった。

「これか」

俺は魔導書・詠の本を見つけ手に取った。

図書館の机でその本を開く。

ま、簡単にいうと何が書いてあるかさっぱりの本だった。

ただ、詠唱の部分だけ読むと。

詠唱で唱える内容には特に決まりはない。

自分が力を借りたいと思う存在の名前を入れることと、どんな力を望むかを入れる事。

その2つが上手く合わされば魔法の威力が上がるらしい。

なるほど、それで組み合わせをシオンちゃんは考えて実行してたわけか。

詠唱が上手く合わさらなかった時には威力は変わらず、詠唱を途中で上手く唱えられなかった場合は魔法が発動しない。

威力は上がるが、デメリットも存在する、か。

余程練習するか、いざとなったら詠唱抜きで発動するかだな。

俺は本を本棚に戻し、図書室を出る。

出る際に司書さんにも挨拶をした。

司書さんは笑顔で「また、来てください」と言ってくれた。

また、行こうかな。

 

図書室で調べものが終わった後、小腹が空いたので食堂に向かった。

食堂前でキョロキョロしている人物発見。

最近背後から声かけられるのが多いからな、たまには逆バージョンで。

「よ、誰か探してるのか?」

俺はそのキョロキョロしている人物の背中を叩く。

「うおわぁ~」

ビックリして派手に座り込むエリトア。

「なんだ、お前かって、そうだよ。

探してたんだよ」

「え?」

そうエリトアに言われて俺はどっかで見た場面だなぁと感じてしまった。

食堂の机についた、俺とエリトア。

ま、いつも通りの注文をして俺はエリトアに探していた理由を聞いた。

「おう、あれから俺なりに卒業クエストについて調べててさ、良い情報が手に入ったんだよ」

「お、なんだ?」

「その前に何かそっちから情報ないか?」

にやっと笑うエリトア。

ま、取引だからなぁ。

俺は七クエストの1つ、伝説の桜の木のクエスト内容を教えた。

もちろん、満開の時の方だ。

「おお、秘密のクエスト内容とはありがたい」

すぐにメモをとるエリトア。

ま、クエストの内容だけなら大丈夫だろう。

それにクエスト受けないとイベントって始まらないし。

「で、そっちの情報は?」

「お、そうだ。

月夜に踊る白骨模型なんだが」

まだ、クリアしてないクエだ。

「その月夜って言うのが満月の日らしい。

そして校庭でその白骨模型が踊っていたって話だ」

「へぇ、満月の日か、いつなんだ?」

「それが今日なんだよ。

だから急いで探してた」

俺はエリトアからそう言われて食堂の窓から外を見た。

どんよりと曇っていた。

「曇ってるな」

「そうだな」

エリトアもラミィ水を飲みながら呟く。

「ま、ありがとう。

貴重な情報だよ」

「そ、そうか、良かったよ。

それじゃ、また情報集めてくるわ」

一気にラミィ水を飲むとエリトアはまたどこかに走り去っていった。

元気だなぁ。

さてと、どうしたものか。

ふと、俺はアイテムボックスの中の鬼切丸を見た。

試してみるか。

 

 

俺は今どんより曇った空の下、夜の校庭に来ていた。

周りには誰もいない。

ま、下校時間はとっくに過ぎてるしな。

エリトアから話を聞いた後、俺は理科室に行って噂の白骨模型を見てきた。

怖いことにあれは模型ではなく本物の骨だった。

その骨は丁寧に腐食処理がされており、足の裏にはどこかで見た蝶のマークが入っていた。

その後、放課後に第七教室でまつり部長からあるクエストを受けてここに来たと言うわけだ。

俺は空に向けて鬼切丸を掲げた。

ちと恥ずかしいがやってみるか。

「我、神に願う。

その力を借りて雷の魔法をここに解き放つ。

サンダージャベリン!」

轟音が鳴り空に向かって雷が放たれる。

空を覆っていた雲が俺の頭上、校庭の上だけ吹き飛んだ。

雲の隙間から満月が顔を出す。

はぁ、失敗だ。

初めて使った魔法と威力はあまり変わらない。

詠唱が上手くいかなかったみたいだな。

満月の光の下、俺は項垂れる。

ま、ホロメンであるシオンちゃんが研究するくらいだ、そんな簡単にはいかないか。

「へぇ、今夜は踊らないつもりだったのですが、まさかこんな形で満月を出す人がいるなんて。

余程るしあの踊りが見たかったんですね」

「え?」

後ろを振り向くとゆっくりと1人の少女がこちらに歩いてきている。

薄い青色のドレスを着て、その所々にあの蝶のデザインが入っていた。

エメラルドの髪にルビーのような赤い瞳。

その瞳でこちらをじっと見ていた。

「はじめまして、こんるし~潤羽るしあなのです」

可愛い少女はそう笑顔で自己紹介してくれた。

《スキル【運命】が発動しました》

「図書室で会いましたよね?」

「あ、はい、あの時はぶつかりそうになってすいません」

「いいのですよ、るしあも急いでいたので」

るしあちゃんと満月の下、対面で話す。

何故かドキドキする。

その可愛さもあるが何故か別のドキドキもあるなぁ。

「それじゃ、せっかく満月が出てるし踊ってあげるのです。

そこで見てるといいのです」

指差された場所に何故か椅子が。

その横には理科室にいる筈の白骨模型が立っていた。

「きちんとクエストを受けていない人には、るしあの姿はそこのガイコツくんに見えるはずなのです」

なるほど、それで月夜に踊る白骨模型なんだ。

「ではしばし、満月の下のダンスステージをお楽しみくださいなのです」

そう言ったるしあちゃんに、雲の間から見える満月の光がまるでスポットライトのように当たる。

まさに幻想的だった。

校庭にいるはずが、まるでるしあちゃんの為に作られたダンスステージにいるような気がする。

手の振りに合わせて衣装のデザインにある蝶がどこからともなく現れ踊る。

目が離せない。

それ程、俺はそのダンスに魅入ってしまっていた。

ダンスが終わり、るしあちゃんがこちらに可愛らしく礼をする。

俺は自然に拍手を送った。

《クエストクリアです》

「どうでしたか?

楽しめましたか?」

「はい、めちゃ良かったです」

「それは良かったのです」

笑顔のるしあちゃん。

「本当は人前では踊らないのですけど。

あなたには1つ借りがあるのです」

1本指を出してるしあちゃんが言った。

「借り?」

「はいなのです。

あの桜の木のゲート繋ぎ直してくれたのですよね?」

「あ、はい」

確かに繋ぎ直した。

「実はるしあは、あのゲートを使ってこの学園にガイコツくんの様子を見に来てたのです。

それで帰ろうとしたら、あのゲートが閉まっててどうしようか悩んでたのです」

なるほど、それが目撃されて枯れそうな桜の近くに女子生徒がいたって事になったのか。

たぶんだけど。

「で、るしあなりに原因を調べているうちに、誰かがゲートを繋ぎ直してくれた。

それがあなただったのです」

それで借りがあるって事なんだ。

「それで枯れそうになった原因は分かったんですか?」

そう聞いてみる。

俺もそれは気になっていたのだ。

「いろいろと調べた結果、あの図書室にいる司書が怪しいのです」

「え?」

「あんなスタイルがいい、じゃなかった。

あの司書がこの学園に来たのがなんと1週間前。

どういう経緯で司書になったのかも分からず、当たり前に図書室で司書をしていたらしいのです」

「誰も疑わなかったのですか?」

「そうなのです。

昔からそこにいたみたいになってるのです。

るしあはこの学園の関係者じゃないのですが、ちょくちょくここには来てるのです。

なのですが、前からあそこにあんな司書がいたのは知らないのです」

「それは怪しいですね」

「でしょ?

学生に詳しく聞くとそう言えばって話が出てきて、普通に聞くと昔からいるんじゃない?って感じだったのです」

「それで図書室にいたんですね」

「なのです」

もしかしたら、はあとちゃんが言っていた、彼女達が作った子ってのが関係しているのかもしれない。

「ありがとうございます。

貴重な意見聞けました」

「いえいえなのです。

そう言えば、今学園の七クエスト受けてるのです?」

「あ、はい」

椅子から立ち上がる。

「なら、1つ手伝いをしてあげるのです。

明日の夜にまたここに来るといいのです。

あ、事前に保健室には行っておいてね」

「分かりました」

俺はるしあちゃんにお礼を言って寮に帰ろうとした。

その後ろからるしあちゃんが声をかけてくる。

「来る前にクエスト受けといてくださいなのです~」

「はい、分かりましたぁ~」

俺はるしあちゃんに手を振り寮に向かう。

受けるクエは分かっている。

明日の夜が楽しみだ。

後、図書室にいる司書も俺なりに調べてみるか。




ホロライブオルタナティブのPVに出ていた、るしあちゃんのダンスを参考にしています。
次はホロライブの保健の先生が登場です。
次回もお楽しみに
なんか、るしあちゃんになのです言わしすぎたかな…


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学園の七クエストagain 奇声が聞こえる保健室

幻想的な潤羽るしあのダンスを見ることが出来たあなたは、一旦寮に戻り明日に備えるのだった。


寮で一眠りしログアウトしてご飯を食べる。

その後、ログインした。

 

放課後までにはまだ時間あるな。

クエストの報告は放課後で、るしあちゃんと約束しているのは夜だ。

なら、昨日言われた保健室と図書室の司書の2つを先に終わらせとくか。

俺はまず図書室に行く為、寮から学園へと向かった。

寮から学園に行くにはグラウンドの横を通らないといけない。

遅めに寮を出たせいかグラウンドでは体育の授業が行われていた。

サッカーか。

男女混合でやってるのは珍しいな。

しかし、授業のはずだがやたらにギャラリーが多いな。

『わ~』

俺がゴール横の道を通っていた時、歓声があがる。

何事かとコートを見てみると1人の女子学生がボールをキープしてゴールに向かって来ていた。

おお、すごい。

ドリブルでディフェンスを抜いてキーパーと一対一だ。

「よっしゃ、くらえ~」

女子学生の力強いキックがボールに炸裂する。

ボールは凄まじい勢いでゴールに。

向かわなかった。

ドカァ!

『あ』

ボール、は、そのいきおい、のまま、つきささる。

くそぅ、デジャヴ、かんじるぞ。

ドサッ

「う、うわぁ~大丈夫かぁ~」

 

「んぁ」

ゆっくりと目を開ける。

「知らない、天井だ」

一度言ってみたかったんだよなぁ。

そう思いながら起き上がる。

実際どこだここ?

周りはカーテンに囲まれて外は見えない。

目の前のカーテンの向こう側に人の影はあるけど。

「ん?起きたみたいね」

「え?えっと、ヤバいまだ授業中だった。

ごめん、後はちょこ先任せた!」

「え?ちょっとスバル~?」

慌てた感じで1人が部屋から出ていく。

「はぁ、本当にスバルは謝っていきなさいよ」

影がこちらに近づいてくる。

シャー

「どう?調子は」

そう言ってカーテンを開けた人物はめちゃくちゃセクシーな悪魔だった。

「顔は大丈夫?」

ベッドの端に座るセクシー女医さん。

「えっと…」

しどろもどろで話していると。

「あ、自己紹介してなかったね。

癒月ちょこよ、よろしくね」

《スキル【運命】が発動しました》

「あ、はい、よろしくお願いします」

俺はその悪魔に魅了された。

 

「その様子なら大丈夫そうね」

俺の顔を覗き込みながらちょこ先生が言った。

うう、声がなんか甘い、表現がおかしくなってるけど。

「ん?

どうかした?」

「え、いや」

なんかちょこ先生の前だとおどおどしてしまう。

「ふぅん、それよりキミすごいもの持ってるんだね」

「え?」

「これ」

そう言ってちょこ先生が体に手を当ててくる。

「え、いや」

「ほら、こんなに固くて逞しい」

「いや、ちが」

「そうかなぁ?

これで何人のホロメンと出会ってきたの?

こんな先っぽで刺されたら一溜りもないでしょうね」

「いや、なんか言い方が」

俺はベッドの上で後ろに下がる。

「ほら、逃げないでちょこにもよく見せてよ」

ベッドに上がってくるちょこ先生。

這うように上がってくるから、胸元が開いているちょこ先生ではかなり目の毒だぁ!

「本当にすごいね、ちょこも聞いた事はあったけど、ここまですごいなんて」

俺のを触りながらちょこ先生は甘く囁く。

やばいってものじゃない。

こんなに触られたら、俺、俺。

「ごめん言い忘れた事あったわ!」

突然ドアが開き、女子学生が入ってくる。

『あ』

3人の目線が合い、時が止まる。

「な、な、何やってんだ~!」

そして、女子学生の声が保健室内で響いた。

 

「別にやましいことなんてやってないわよ」

そう言いながらちょこ先生は、俺の持つアイテム、虹色ダーツを手でもてあそんでいた。

そう、ちょこ先生は先ほどやたら胸元に入れているダーツが気になっていたらしい。

確かに固いし、先は針だから刺されたら痛いよなぁ。

そのアイテムのお陰でホロメンとも出会えまくってるし。

「な、そうかもだけど、ベッドの上であんなに近づくのは良くない」

確かに正論です。

「それにちょこ先はその服なんだからさぁ」

「ええ?

これでも18禁にならないようにすれすれを狙ってるよ?」

「いや、すれすれ狙わないで」

おっしゃる通りです。

「ん~

確かにインナーなしバージョンだから刺激は強いのかなぁ。

でも、生徒達には受けはいいんだけど」

「そうかもだけど!」

「ほらほら、そんなに大きな声出してるから、病人さんがびっくりしてるわよ」

ダーツを俺の方に向けて言うちょこ先生。

「それに何しに戻ってきたのよ、スバル」

ちょこ先生に言われてこちらに向く女子学生。

「そ、そうだった。

忘れてた。

サッカーボールの件ごめん」

頭を下げる女子学生。

「い、いえ、俺が避けられなかっただけなんで」

「ま、スバルの本気のシュートはなかなか避けられないでしょうけどねぇ」

「ちょこ先!」

「ごめん、ごめん」

両手を腰に当て怒る女子学生にちょこ先生が謝る。

「それより自己紹介しなくていいの?」

ちょこ先生が女子学生に言う。

「え、あ、そうか。

ちわっす、ホロライブワールド第二世代組、大空スバルっす」

《スキル【運命】が発動しました》

元気よく自己紹介してくれるスバルちゃんの笑顔はとても気持ちが良いものだった。

「それじゃ、そろそろ行きます」

ちょこ先生にお菓子をもらって3人で雑談した後、放課後になったのでおいとますることにした。

「ええ、また会いましょうね」

「またね」

ちょこ先生とスバルちゃんに見送られながら、保健室を後にする。

そして俺は放課後の学園の中、第七教室へ向かった。

 

「あ、来たね名キーパー」

「な、なんでキーパーなんですか」

「いやぁ、あのスバルのボール顔で受けるんだもん」

「見てたんですか?」

少し怒ったように言ってみる。

「うん、あのギャラリーの中にいたので」

「部長~」

ひとしきりおちょくられた後、俺は昨日の事を話す。

「るしあに会えたんだね」

俺の報告を聞いて笑顔のまつり部長。

「でもこのクエ、受ける時期を間違えるとなかなかクリア出来ないからね」

「そうなんですか?」

「うん、るしあは基本満月近くにならないとこの学園には来ないから。

クエを受けても満月まで待たないといけないからね」

なるほど、俺はかなり運がよかったのか?

それともこのダーツのお陰か?

「それで、次はどのクエ受けるの?」

「あ、はい、このクエストを」

俺はあるクエストを指差し、クエストを受けた。

「なるほど、がんばれ~」

まつり部長はにやにやにやけながら応援してくれた。

 

 

「お待たせしました」

夜の校庭。

そこにはるしあちゃんが待っていてくれた。

「あ、来たのですね」

「もちろんです」

「クエストはっと、うん、確かに受けているのです」

俺を見ながら頷くるしあちゃん。

るしあちゃんの横に立つガイコツくんもカタカタ頷いている。

「では、行くのです」

るしあちゃんを先頭に俺達は夜の校舎に入って行った。

「今、キミが受けているクエストなのですが、それはちょっとイベントが起きるのが特殊なクエストなのです。

イベントさえ起こしてしまえば、すぐ終わるクエストなのですよ」

今、俺が受けているのが学園の七クエストの1つ。

奇声が聞こえる保健室だ。

「イベントを起こす為にはいくつかの条件が必要なのです」

人差し指を立てながら得意気に説明してくれるるしあちゃん。

なんか可愛いなぁ。

「1つ目はシオン先輩に会う事。

これは昨日の夜、魔法を見て会ったのは分かっているので聞かなかったのです。

2つ目、るしあに会う事。

3つ目、保健室でちょこ先生に会う事。

今日会えました?」

「はい、やばかったです」

俺の顔を見て笑うるしあちゃん。

「4つ目は、るしあと一緒にこのクエストを進める事」

るしあちゃんはそう言うと同時に保健室の前に着いた。

中から淡い光が漏れている。

「では、行くのです。

なるべく音を立てないように」

そう言ってゆっくりと扉を開くるしあちゃん。

中から誰かの息づかいが微かに聞こえる。

ベッド側はカーテンが閉じられていた。

いや、一番奥、淡い光が出ているところのカーテンは少し開いているか?

るしあちゃんとガイコツくん、そして、俺はそっと開いたカーテンから奥を覗く。

そこには、ちょこ先生に迫られている?シオンちゃんが。

「い、いたぁ~」

「ちょっと我慢してね」

ま、別にやましい事をしている訳でなくマッサージをされているだけなんだけど。

《クエストクリアです》

「これだけかよ!」

俺の小さな心の叫びが保健室にこだましなかった。




なかなかセクシーな表現は難しいですね。
後2つで卒業クエストも終わりです。
では、次回をお楽しみに。


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学園の七クエストagain 音楽室から聞こえる謎の歌声

ハチャメチャで終わった保健室のクエスト。
あなたは次の日、夏色まつりに報告に行くのであった。


いつもの第七教室。

俺の目の前でまつり部長は笑いまくっていた。

「知ってたんでしょあのクエスト内容」

「うん、うん、知ってたぁ」

だいぶ収まってきたが、まだ笑ってる。

覗いた後、普通にシオンちゃんに見つかり雷魔法撃たれるは、校庭でおいかけっこするは、ちょこ先生からお説教受けるわで散々だった。

るしあちゃんはというといつの間にか姿を消していて、ガイコツくんだけが模型のふりして残っていた。

「散々だったんですよ」

「ま、あのクエはそういうクエだからね」

ひぃひぃ言いながら笑いを押さえようとするまつり部長。

本当に知ってたら教えてくれたら良いものを。

「るしあも言ったかも知れないけど、あのクエは他のクエを順番通りしないとイベントが起きない特殊型だから。

シオンのクエを終わる前に、るしあのクエを終わらしたら、普通はほぼ詰むのよねあのクエ」

「そうなんですか?」

「うん、キミは別だけどイベント以外でホロメンに会うのってかなり厳しいのよ。

だから、るしあにこの学園でもう一度会おうとするとすごい確率になる」

「確かに」

俺にはこのダーツがあるから会いやすい。

でも、持ってなかったら普通あんな簡単に出会えない。

それに。

「るしあは学園の子じゃないから、余計にね」

そうだ。

満月の前後にしかこの学園にいないんだった。

「運が良かったんですね」

「ま、いろいろとアイテムやスキルのお陰かもね」

「ありがたいです」

おれの言葉にまつり部長は優しく微笑んでいた。

「さて、残りは後2つだね」

まつり部長にタブレットを見ながら言われる。

そう、後2つなのだ。

校長室の開かずの金庫と音楽室から聞こえる謎の歌声。

受けるなら音楽室の方か。

「それじゃ、クエを決めるのはまた明日でいいよ。

今日は今から自由時間で」

「え?

まだ、放課後になったばかりですけど」

「いいからいいから、また明日ね」

驚く俺はまつり部長に背中を押されて、第七教室の外に出された。

「なんで?」

訳も分からず第七教室の前に立つ俺。

そこに校内放送が流れてきた。

「ピンポンパンポーン」

って口で言うんかい。

それもころねちゃんの声だ。

「…くんは至急、理事長室まで来てください。

繰り返します」

俺の名前?

なんで俺が呼ばれるんだ?

至急って事だし理由は分からないけど急ぐか。

俺は急いで理事長室に向かった。

 

コンコン

「どうぞ」

ノックの後、理事長室の中から声が聞こえる。

「失礼します」

俺は理事長室に入った。

中にはころね理事長と秘書姿のおかゆちゃんがいた。

「よく来たね」

「あ、はい」

なんかころね理事長にそう言われると緊張する。

「卒業クエスト頑張ってるみたいだね」

「あ、はい。

後2つで終わります」

「うむ。

それで、唐突ではあるけれど、近々この学園で学園祭を開くことにしました」

「え?」

ドンドンヒューヒューパフパフ。

鳴り物とクラッカーを鳴らすおかゆちゃん。

「なんでいきなり?」

訳が分からず俺はころね理事長に聞く。

「理由はまた開催する時に話するね。

まずは、卒業クエスト終わらしてちょうだい」

笑顔でころね理事長にそう言われる。

「わ、分かりました」

俺はそう答え「失礼します」と理事長室を出た。

なんだったんだ?

俺はそう考えがら寮に戻る。

下校時間も近いしゆっくりと休むか。

 

 

次の朝、俺は放課後まで音楽室についての情報を集めた。

しかし、収穫はゼロ。

エリトアにもあったが何も情報を持っていなかった。

それと、図書室にも行ってみた。

るしあちゃんから怪しいと言われていた司書を調べる為だ。

だが、今日はお休みと言うことで図書係の生徒が座っていた。

まるっきり進展なしか。

その思いながらあっという間に放課後に。

俺はいつもの教室へと向かった。

「いらっしゃい」

いつものように机について待っててくれるまつり部長。

「はい」

俺は力なく対面に座った。

「どうかしたの?」

「いえ、次のクエストの為に情報を集めようと思ったのですが、集まらなくて」

「へぇ、どのクエ?」

俺は机の上に置かれているタブレットの中の音楽室を選ぶ。

「それかぁ。

ま、情報なくて当たり前だけどね」

「え?」

まつり部長はポテチを食べながら言う。

「それもさ、ある条件が必要なクエだから」

「そうなんですか?」

「うん、それもちょっと複雑なね」

「はぁ」

俺は訳も分からず返事をする。

「ま、しばらくは雑談しようよ。

キミのこれまでの冒険聞かせて」

まつり部長はポテチの袋をパーティー開けする。

「分かりました」

まつり部長が雑談しよっていうんだ。

何か意味があるのかもしれない。

俺はポテチをご馳走になりながらこれまでの冒険談をまつり部長に話すのだった。

 

「そろそろかな」

話も一段落ついた頃、まつり部長が教室の時計を見る。

「さ、行こうか」

「え?」

「クエをしにさ」

まつり部長はそう言うと元気に席をたった。

下校時間が過ぎた校舎をまつり部長と2人で歩く。

「この音楽室のクエはね。

実はまつりが依頼者なんだ」

「そうなんですか?」

「うん。

そして、このクエのイベントが発生するには、あるホロメンと出会って、そして、学園祭が開かれる事が条件」

「学園祭?」

「そう、学園祭は卒業クエストが残りわずかになると起きる大型イベント。

だから、残りクエが2つになったキミに合わせて、学園祭が行われる」

暗い校舎に足音だけが響く。

「ま、学園祭の詳しい話はまた理事長がしてくれるから。

ほら、そろそろかな」

さっきまで足音だけが響いていた校舎に、どこからか音楽が流れてきている。

「ここか」

音楽が流れてきていたのは音楽室。

少し扉が開いていたので、そこから漏れていたのだ。

「静かに覗いてね」

「また、覗きイベントですか?」

「いいからいいから」

俺はまつり部長に背中を押されてそっと中を覗いた。

そこには、1人のホロメンが歌の練習をしていた。

前に会った時には想像できない程、その歌う姿は素敵だった。

歌声も聞き惚れる程だ。

「頑張ってるでしょ」

まつり部長が小声で俺に言う。

「はい、めちゃ素敵な歌声です」

俺の感想にまつり部長は嬉しそうな笑顔。

音楽室の歌姫、大空スバルは本当に輝いていた。

《クエストクリアです》




次で学園の七クエスト最後です。
一度失敗したこのクエストを無事にクリアできるのか。
次回をお楽しみに。


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学園の七クエスト リベンジ 校長室の開かずの金庫

とうとう6つ目のクエストを終えたあなた。
次は因縁の7つ目のクエスト。
果たして今度はクリアできるのか。


俺は今ある建物の前にいる。

 

まつり部長から最後のクエストである校長室の開かずの金庫を受けた。

「それを最後にしたのは偶然?それとも必然なのかな?

でも、キミの選択は間違いじゃないよ。

今のキミならそのクエクリアできると思う、頑張って」

クエストを受けた時、そう言ってまつり部長は応援してくれた。

ちなみに前回はこれを始めに進められてえらい事になったのですけど…

その後、俺はエリトアに会いこのクエストの情報を聞いた。

それから、ころねちゃんのパン屋に情報を聞きに行き、ここにいる訳だ。

問題の美術館は前回と同じく人だかりが出来ていた。

俺はその人だかりをかき分け最前列に出る。

ここにいれば戌神警部が見つけてくれるはず。

俺が今か今かと警官の動きを見ていると。

「きちんとテープを張って一般人は入れないようにするんだ」

と、どこかで聞いた声がした。

ふと、そちらを向くと「スバルちゃん?」

「え?」

名前を呼ばれた女子警官はこちらを向き目が合う。

「えっと…」

少しびっくりした顔のスバルちゃん。

「うおほん、スバルちゃんとは誰の事かな?

私は大空警察所属の大空警部ですが?」

あ、そういう役割なんだ。

「ちょっとスバル、私はどこに行けばいいの?」

甘いボイスでやってくのはちょこ先生?

「あら、また会ったね」

「いや、また会ったねじゃないから、ちょこ先。

今は役になりきってよ」

大空警部が焦って声をかける。

「あ、そっか、ごめんごめん。

うおほん、はじめまして私は癒月警部です」

そう言って敬礼をするちょこ先生。

しかし、その格好は。

「警察にしてはその、ミニスカートに胸元開いてる警察の服は刺激が強すぎるかと」

素直に感想を言ってみる。

「ええ?そうかな?

この衣装が私に用意されてたんだけど」

「いや、もうどっからどう見てもミニ」

「いたいた」

俺の言葉を遮り声をかけられる。

「あ、戌神警部」

そう、そこには俺の方に歩いてくる戌神警部の姿が。

「ご苦労様です、戌神警部」

大空警部が挨拶をする。

「こちらの一般人はお知り合いですか?」

「ええ、私の助手なんですよ」

「そうでしたか、分かりました。

キミは中に入っていいよ」

大空警部に言われて中に入る。

「ありがとうございます」

「いやいや、キミの力が必要だからね」

ニコッと笑う戌神警部。

「ちょっとちょこ先、やっぱやばいよその服は」

「でも、他の服ないし、次の時は普通のにするわ」

「もう、頼むよぅ」

「ちょこはこれでも良かったんだけどなぁ」

「ほんと頼むよ」

後ろで大空警部と癒月警部が、こそこそと話している声が聞こえる。

しかし、やたらに警部が多いなぁ。

「頑張ってね~」

「ん?」

どこかで聞いた声がギャラリーから聞こえたような?

そちらを見るとまつり部長が手を振っていた。

「ええ?」

俺は急いでまつり部長のところに。

「何やってるんですか?」

「このクエではまつりはギャラリーだから」

「ええ」

「なんで頑張ってこいよ」

ポンと肩を叩かれる。

「キミ行くよ」

「あ、はい」

戌神警部に呼ばれ俺はそちらに向かう。

まつり部長はニコニコしながらそんな俺に手を振っていた。

俺と戌神警部、それに大空警部と癒月警部は案内の警官の後ろをついて美術館に入った。

「このクエってどうやればクリアなんですか?」

俺は小声で隣を歩く戌神警部に聞いてみる。

「ん?

このクエは無事に金の招き猫を守りきればオッケーだよ」

クリア条件は前回と変わらずか。

「着きました警部」

少し広いホールに着く。

部屋の真ん中にはガラスケースに入った、金の招き猫があった。

ここも同じだな。

「しかし、変だな。

怪盗キャットは義賊のはずだけど。

それに久しぶりに現れたと思ったら、変な噂のない美術館からこの招き猫を狙うとは」

警部モードのころねちゃん。

「警部、怪盗キャットとは何者なんですか?」

「うむ、怪盗キャットは貧しい人の為に悪い噂の立つ人から物を盗みお金に替えて配っていたんだ。

しかし、いくら義賊と呼ばれていても盗みは罪。

なので私は長年追いかけていたんだよ。

ただ、ここ数年は活動してなかったんだが」

演技は相変わらずうまいなぁ。

所々訛っておるのはお約束だけど。

「それでは戌神警部、我々はホールの周りの準備に取りかかります」

「分かりました、よろしくお願いします」

大空警部と癒月警部が敬礼をしてホールから出ていく。

「警部、本庁から警視が来られました」

「なんだと。

分かったお通しして」

警視と言ったら今回もやはり?

「やぁ、どうかね、状況は」

来た。

「はい、白上警視。

急ピッチで準備しております」

戌神警部がそう言った相手を見る。

やっぱりフブキちゃんだ。

「あのう白上警視」

「ん?誰だね君は始めてみる顔だな」

「いや、前回ここで会いましたよね?」

俺が前回失敗した時、時間が止まりフブキちゃんが変な事を言ってきた。

だから、もしかしたらフブキちゃんもループしてるかもしれない。

「え?」

不思議そうな顔をする白上警視。

あれ?

違うのか?

「今回ここに来るのは始めてだか?」

やはり本当に知らないみたいだ。

なら、あれはなんだったんだ?

「そうですか、すいません。

俺の勘違いだったみたいです」

「そ、そうか、ならいいんだ」

知らないみたいだし、ここは無理に深掘りしない方がいいだろうな。

 

「では、準備は出来たという事だね、戌神くん」

「はい、警視」

何やら二人話し込んでるなぁ。

俺はホールの周りを見回ってみる。

すごい数の警官がホールを囲んでいた。

そろそろか?

俺は後ろに一歩下がった。

前回と違い走ってきた警官にぶつからなかった。

「すいません、急いでいたので」

背の低い女性警察官は謝りながら慌てて廊下を走っていった。

今回もいたな。

何故か彼女が気になる。

俺はさっきの女性警官を追おうとしたその時、ある言葉が聞こえてきた。

「大空警部、癒月警部が犯人用の罠にかかってあわれもない姿になっております」

なんだってぇ。

思わずそちらに振り向く。

「なにやってんの、ちょこ警部」

大空警部が頭をかかえてる。

「しまった」

俺は女性警官が走っていった方を見たが、もう見失っていた。

くそ、甘い誘惑に気を取られた。

こうなったら。

「あのう、大空警部」

「ん?」

頭をかかえている大空警部の側に行く。

「もしよかったら、癒月警部救出手伝いましょうか?」

「いえ、結構です」

普通に断られた。

「何してるんだい?」

「え?

あ、すいません」

背後に戌神警部。

「する事が見つからなかったので、ちょっとホールの周りを見てました」

「あのねぇ、蟻のこ1匹入る余地がないくらい警察官を見張らせてるんだ。

そんな見なくても大丈夫」

いや、それってフラグってやつですよね?

「警部そろそろ予告時間です」

「分かった」

俺は時計を見る。

いつの間にか夕方になっていた。

「配置につけ」

戌神警部の言葉に慌ただしくなる警官達。

キーン

何か高い音が響いた気がした。

やっぱり来たか。

あんなに慌ただしく動いていた警察官が止まっている。

普通に止まっているんじゃない。

走っている警官が空中で止まっている。

時間が止まっているのか。

「キミ」

俺はすぐに後ろを振り向く。

そこには前回と同様、斜め45度で腕組みをして右手を顎に当てているフブキちゃんがいた。

「そんな好感度で大丈夫か?」

やっぱりこの質問か

でも、今回は前回とは違う。

「大丈夫。

準備万端です。

白上警視」

俺は落ち着いてそう答えた。

「なら、いいよ」

優しく白上警視が微笑む。

キーン

また、甲高い音。

警察官の慌ただしさが美術館に戻る。

「では、行こう」

白上警視はこちらに近づいてきて一緒にホールへと向かう。

今回はいなくならなかったんですね。

「そろそろ怪盗キャットが現れる」

ホール内ではちょうど戌神警部が部下にそう言っていた。

パリン

天井のガラスが割れ、誰かがホールの真ん中に降り立った。

「な、あんなところから」

いや、予想つくやん。

「これはもらっていきますよ」

紫のレオタードを着た小柄な女性がガラスケースから、金の招き猫を素早く盗る。

「な、触ると電流が流れるはず」

「それは先ほど切らせて貰いました」

ドミノマスクで目元を隠したその女性がふわりと天井に飛ぶ。

相変わらずなんて脚力だ。

「待て、逃がすか!」

俺は学園の購買部で買っておいたフック付きロープを天井に投げる。

クイクイ

よし、引っ掛かった。

俺は急いでロープを昇る。

「そこまでだ」

美術館の屋根で俺は怪盗と相対する。

「まさか追ってくるなんてね」

「小姫マモリだろ?」

「え?」

俺の言葉に明らかに動揺するマモリ。

「まだ名乗ってませんが、なぜ分かったのです」

「秘密かな」

「ま、確かに私は小姫マモリです。

でも、私の手には金の招き猫。

これであなたも終わりですね」

確かに招き猫を奪われたらクエスト失敗だ。

どうにかして取り戻さないと、今度こそ終わりだ。

どうする?

「今のあなたに私を捕まえるすべはないでしょう。

それでは、失礼します。

少しはやるなとは思いましたが、期待はずれでしたよ、世界の答えさん」

くそう。

これで終わりか。

「ふふ、それを持っていかれると困るんだなぁ」

『え?』

突然声をかけられ、そちらを見る。

しかし、誰もいない。

「どこ見てるのかな?

こっちだよ」

逆側から声?

俺とマモリは同時にそちらを向いた。

そこには月をバックに美術館の三角屋根の天辺に立つ人影が。

「これはぼくの友人の必要な物が入ってるからねぇ。

あげられないなぁ」

人影は先程までマモリの持っていた招き猫を持っていた。

「え?

いつの間に」

マモリもびっくりしている。

「か、怪盗キャット!」

縄を登ってきたのか戌神警部が人影に向かって叫んだ。

「久しぶりだね、戌神警部。

今回は少し事情があるから、この招き猫貰っていくね」

そう言って人影は月夜に飛んで消えていった。

猫の尻尾を揺らしながら。

「く、逃げられた」

「まだです、目の前に怪盗がいます」

俺はマモリを指差し戌神警部に言った。

「確かに、まてぇ~」

「ちょ、ちょっと何も盗ってないじゃないですか」

マモリも慌てて逃げ始める。

前回の仕返しだ。

俺はそう思いながら月夜の逮捕劇に付き合った。

 

 

「ふぅ」

結局マモリには逃げられた。

イベントも終わり、俺は寮に帰って一眠りし、今は放課後までの時間潰しに校庭の端にあるベンチに座っていた。

結局俺は招き猫を守れなかった。

クエスト失敗か。

クエスト報告するのがなんか辛いなぁ。

ピタ

「うわぁ~」

突然首筋に冷たい物を当てられた。

「なにこんなところでしょげてるのかな?キミは」

「おかゆちゃん」

ベンチの後ろからニコニコしながら、おかゆちゃんが回り込んでくる。

「はい」

缶ジュースを渡された。

さっきこれを当てられたのか。

そのまま隣に座るおかゆちゃん。

「いや、昨日、最後の卒業クエストやったんですが、失敗してしまって」

「ふぅん」

缶ジュース飲みながら俺はおかゆちゃんに昨日の事を話す。

「それで落ち込んでいる訳か」

「はい」

「じゃ、そんなしょぼくれなキミにおかゆお姉さんが良いものをあげよう」

そう言って立ち上がったおかゆちゃんは何かをこちらに投げてきた。

反射的に受け取る。

そっと手を開いて見てみた。

これは…

「卒業クエストクリアおめでとう」

おかゆちゃんは缶ジュースを掲げて、笑顔でそう言ってくれた。

「ありがとうございます」

俺も缶ジュースを掲げてお礼を言う。

缶ジュースを持ってない手の中には1つの鍵が握られていた。

それは確かに俺の必要としていた物だった。




卒業クエスト完全クリア
次は学園の最後の大型イベント
お楽しみに


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すべてのクエが終わった後に

無事に校長室の鍵を手にしたあなたはある場所に向かう。
その場所である事をすれば全てが終わるはず。
あなたはそう考えていた。


おかゆちゃんからもらった鍵を持って俺は今、校長室に来ていた。

あの時、ころねちゃんから聞いたクエストクリアの条件。

ころねちゃんは招き猫を守ればいいと言っていた。

そう、守ればクリアするとは言っていない。

守れなくても失敗とも言っていなかった。

前回はマモリに盗られて、招き猫の中の物も完全に失ってしまった。

でも、今回は違う。

俺はゆっくりと金庫の鍵穴に鍵を差し入れる。

カチャ

開いた。

ゆっくりと扉を開く。

開かずの金庫は開いた。

《クエストクリアです》

そう、このクエストは金庫を開ける事がクリア条件だったんだ。

俺はゆっくりと扉を開けた。

中にはたくさんの写真が。

ころねちゃん、おかゆちゃん、まつり部長に、スバルちゃん、ちょこ先生に、他にもまだ見たことない人達が写っている。

これがころねちゃんの思い出であり宝物なんだな。

俺はゆっくりと扉を閉じ鍵を閉めた。

次に向かう場所は決まっている。

俺は急いでその場所に向かった。

 

「いらっしゃい」

元気な声で迎えてくれるころねちゃん。

俺はパン屋に来ていた。

「あれ?どうしたの?」

不思議そうに聞いてくる。

「今日はころねちゃんにプレゼントがあって」

「お、なになに?」

俺はころねちゃんに鍵を渡した。

ころねちゃんはじっと鍵を見る。

「そっか、クリアしたんだね」

少し寂しそうにころねちゃんは言った。

「中も見た?」

「あ、はい、見ちゃいました」

「そっか」

ぐいっところねちゃんに引っ張られる。

「え?」

カシャ

ころねちゃんとツーショット?

「これも金庫に入れとくね。

大事な思い出として」

「はい」

「ほらほら、まだまつりちゃんに報告してないんでしょ」

「はい、まだです」

「それじゃぁ、まだクリアおめでとうは言えないなぁ。

報告したらまた会おう」

「分かりました」

少し寂しげではあったがころねちゃんは笑顔で見送ってくれた。

俺は少し日が傾きかけた【バーチャル】の世界を学園に向かって走った。

 

「おかえり」

扉を開くといつものようにまつり部長が出迎えてくれる。

「ただいま」

いつの間にか学園内でここが一番来るところになってたなぁ。

「クリアしたんだね」

「はい」

まつり部長の言葉に俺は力強く頷いた。

「おめでとう」

「ありがとうございます」

「これでキミも晴れて自由の身か」

「なんかその言い方嫌ですね」

「そう?

言いえて妙でしょ。

学園に捕らわれなくなったんだから」

「そうですけどねぇ」

「この探偵部もまた私1人に逆戻りかな」

「そうなんですか?

俺は卒業しても探偵部でいたいんですが?」

「え?」

俺の言葉に驚くまつりちゃん。

「卒業しても部活に在籍って出来ないんですか?」

「そりゃ、しようと思えば出来るけど」

「なら、よろしくお願いします」

「はぁ、キミも物好きだね」

まつりちゃんは笑っている。

「分かったよ、キミは探偵部の始めての部員でありOBであり名誉部員に任命する」

「ありがとうございます」

「そうだね、これから学園を去ったとしても、たまには顔を出して冒険の話聞かせてよ」

「もちろんです」

俺の言葉にまつりちゃんは嬉しそうに笑った。

「じゃ、後はこの学園最大のイベント。

学園祭だね」

「それなんですが、どうやったら起きるんですか?」

「それは簡単だよ、寮に帰って寝ればいい」

「え?」

「全てはまた明日ってね」

俺はまつりちゃんの笑顔に見送られ寮に戻った。

今はゆっくりと休もう。

明日から大変な日になりそうだから。




これにて卒業クエスト終了です。
次回からは新たなイベントがお楽しみに


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『成功させろ 学園祭』

無事にまつり部長にも学園の七クエストのクリアを報告したあなた。
その後、まつり部長に言われた通り、寮に向かうのであった。



俺はまつり部長の言われた通り寮で休んだ。

もちろん、ログアウトもきちんとしている。

さすがにずっとゲーム内って言うのもなぁ。

さてとこれからどうするか。

ゲームに入った俺は学園内を歩く。

するとまたこの前のように校内放送で理事長室に呼ばれた。

コンコン。

「どうぞ」

俺は理事長室の扉を開け中に入る。

「失礼します」

「良くきたね」

なんかデジャヴだなぁ。

「まずは卒業クエスト終了おめでとう」

「おめでとうございます」

ころね理事長とおかゆ秘書さんにお祝いを言われる。

「ありがとうございます」

素直に嬉しい。

「しかし、まさかこんな短期間で卒業クエスト終わらされるとは思ってなかったなぁ」

「確かに」

「これもこのダーツのお陰です」

俺は懐から虹色ダーツを出す。

「確かにそれは反則に近いアイテムなんよね」

ころね理事長が笑いながら言った。

「さて、卒業クエスト終わらせたキミに、卒業する為の最後の試練があります」

「はい」

ころね理事長が真面目な顔になる。

「その試練とは、じゃん」

ころね理事長の声と共に頭上から垂れ幕が下がる。

その垂れ幕にはこう書かれていた。

『成功させろ 学園祭』

「クエストですか?」

俺は垂れ幕を見てころね理事長に聞く。

「そう、今からこのクエストの説明をおかゆがしてくれるから良く聞いといて」

「あ、おかゆちゃんなんですね」

「では、ぼくから説明するね。

まずはこのクエストなんだけど、いくつか選択する事ができる」

「選択?」

「そう、1つは学園祭の顔とも言える門を作る事。

次に学園祭中に屋台を出展して目標額を稼ぐ事。

そして、最後に学園祭でやる催し物を企画して実行する事。

この3つから選んで欲しいんだ」

「この3つか」

「比較的簡単で学園祭を楽しめるのが門作りかな。

ただ、この門は学園以外のお客を中にいれる為の検問みたいな役割をするから、その機能をつける必要があるよ」

「なるほど」

「次の店舗は何を出展しても大丈夫。

ただし、稼ぐ額が決まってるからそれは守って、稼げなかった時は卒業出来ないから」

「う、それは辛いかも」

「最後の催し物だけど、これを選んだ場合、学園の舞台を数時間貸しきることができるから、演劇をするもよし、お笑いをするもよし、好きに使える」

「ほうほう」

「ただし、観客の動員数が卒業にかかわってくるから気をつけて。

最後に全てのクエストは学園外の人の力を借りてはいけない。

ただし、特例としてホロメンはその決まりには入らない」

「ホロメンは入らないんですか?」

「そう、普通はホロメンをそう簡単にほいほい連れてこられないからね」

「確かに」

「で、どれにするかな?」

おかゆちゃんから内容を聞かされた後、ころね理事長が聞いてきた。

俺は…

「それで本当にいいのかい?」

「はい、お願いします」

「じゃ、期間は1週間、準備頑張ってね」

俺はころね理事長とおかゆちゃんに頭を下げて理事長室を後にした。

さぁ、これから忙しくなるぞ。

 

「こんにちは」

俺は理事長室を出た後、さっそく目的地の場所に向かった。

「いらっしゃい」

ここは例のパン屋さん。

そして、そこにいるのは。

「さっきぶりです」

「ん?

ころねは理事長ではないよ?」

自分で言ってるし。

「ですね、ごめんなさい。

それで、1つ聞きたいんですが、ころねちゃんはここから学校に通ってるって事で良いんですよね?」

「うん、そうだよ。

実家がパン屋だからここから学校に行ってる」

「なら、少しお願いが」

俺はあれこれ事情を話す。

「なるほど、それは面白そうだけど人は集まるの?」

「何とかします」

「ふぅん、ならころねはオッケーだよ」

「ありがとうございます」

俺はころねさんにお礼を言って学園へと戻った。

 

さてと、俺は次の予定の為に学園をあてもなくうろついた。

たぶん、こうやって歩いていたら目的は達成できるはず。

ふと背後に気配を感じる。

来たか?

「何かお探しかい?」

よし。

「はい、あなたを探していました」

俺は振り向き笑顔で声の主に言った。

声の主、おかゆちゃんはきょとんとした顔で俺を見ていた。

「まさか、ぼくを探していたとはね」

いつものベンチにおかゆちゃんと移動して飲み物を飲む。

「おかゆちゃんはさ迷う子羊を見逃さないと思いまして」

「ははは、きみは子羊って顔じゃないよ」

「確かに」

お互いに笑う。

「それでぼくを狙って待っていたんだから、何か用事があるんだよね?」

「はい、実は」

俺はおかゆちゃんにもころねちゃんと同じ説明をする。

「へぇ、学園祭でそんな事考えるなんてね。

案外度胸あるんだぁ。

いいよ、ころさんも承諾してるみたいだし、のってあげる」

「ありがとうございます。

では、詳細はまた後程」

「オッケー」

俺はおかゆちゃんと別れ、次の目的地に向かった。

 

コンコン

「は~い、いるわよ」

「失礼します」

俺はある場所に来て部屋に入った。

「ん?

今日はどうしたのかな?」

そこは魅惑の保健室。

中では暇だったみたいでちょこ先生がお菓子を食べて休憩しているところだった。

「今、大丈夫ですか?」

「見ての通り平和よ」

「なら、少しお願いが」

「ん~さすがにプライベートなお願いは辛いかなぁ。

全年齢対象だし」

「違います」

「冗談よ」

「ほんとにも~」

冗談でもドキドキするからそういうの。

「で、何々?」

楽しそうに聞いてくるちょこ先生に事情を話す。

「それでスバルちゃんにもお願いしようと思うんですが、どこに行けば会えますか?」

「え?スバル?

そうねぇ、分かった。

ちょこが責任をもって連れていってあげる」

「え?

そうなんですか?」

「うんうん、そんな楽しい事スバルも参加させないとね」

なんか嫌な予感が。

でも、ちょこ先生だし信じてみるか(特に意味はない)

「それじゃ、お願いします。

詳しく決まったらまた、連絡します」

「わかった、楽しみにしてるね」

俺はちょこ先生にお礼を言って保健室から出た。

最後はあそこだ。

 

放課後、俺はいつもの場所に来ていた。

「失礼します」

勢い良く中に入る。

「え?あれ?」

中では周りにお菓子の袋が散乱しており、机に突っ伏して携帯見ている、だらしない姿のまつり部長が。

「な、なんで?」

「いや、用事がありまして」

「来るなら来るって言って」

慌てて片付けを始めるまつり部長。

一応手伝いました。

「いつもはあんな感じじゃないから」

頬を膨らませて言うまつり部長。

リスみたいだなぁ。

「で、名誉部員が何のよう?」

少し怒りぎみで言われる。

俺は他のホロメンに伝えた事をまつり部長に伝えた。

「へぇ、面白い事考えたわね」

話を聞いて楽しそうに笑うまつり部長。

「いいよ、参加する。

でも、どうしてそれを学園祭でやろうと思ったの?」

そう、俺がどうしてこれをやろうと思ったのか、それは。

「まつり部長と一緒に行ったクエストが理由です」

「なるほどね」

それを聞いて楽しそうに笑うまつり部長。

「じゃ、準備できたら声かけて」

「はい、それと声かけたホロメンの人達をここに集めても大丈夫ですか?」

「ん?

放課後なら大丈夫よ」

「ありがとうございます」

俺はまつり部長にお礼を言って教室を出る。

これでみんなに声をかけれた。

後は最後の仕上げだな。

俺はアイテムボックスからある物を取り出す。

それは俺の考えている出し物には欠かせない物だ。

さぁ、イベント開始に向けて突っ走るぞ。




さて、学園卒業まで後わずか、あなたは学園祭でなにをしようとしているのか。
ヒントはあなたが言った言葉にあります。
ま、自分の事なのでヒントは必要ないか。
では、また次回に


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学園祭に向けて

ころね理事長に言われた学園祭、あなたはその中で1つの考えを導きだしていた。
さぁ、学園祭に向けて準備をしよう。


「集まってくれてありがとう」

次の日の放課後、第七教室に昨日俺が声をかけたホロメンのみんなが集まってくれた。

放課後までにここに集まってもらえるように伝えたのだ。

そして、なかなか捕まらない1人も、もう一度あのクエを受けて会う事ができて呼んでいる。

しかし、ホロメンがこんなに集まると圧巻だな。

若干1名なぜここに集まったのかよく分かってない人もいるんだけど。

ちょこ先生、本当にスバルちゃんに説明してくれたのかな?

「さて、あと1人ゲストを呼びたいと思います」

俺の言葉に不思議がるホロメン達。

俺はアイテムボックスからある物を取り出す。

それはみこちゃんにもらった強制召喚符。

この為にくれたのか分からない。

でも、俺はここでこのアイテムを使うのが一番だと思った。

床に符を置く。

そして、俺は符に願う。

その呼ぶホロメンの名は。

「呼ばれて颯爽と現れる。

ホロライブワールドに現れた最強の歌姫の一角。

星街すいせい」

『すいすい』『すいちゃん』「すいせい様」

各々の呼び方ですいちゃんを呼ぶホロメン達。

「え?あれ?ここって学園?」

すいちゃんが周りのホロメン達を見て驚く。

「お久しぶりです」

「ん?

あ、この前会った」

「はい、突然呼び出してすいません」

「なるほどね、キミが呼んだなら納得いくよ。

なんせそれ持ってるもんね」

すいちゃんは俺の胸元を指差して言った。

「みんなも久しぶり元気だった?」

すいちゃんはホロメン達に挨拶していた。

さぁ、これでメンバーは揃った。

「それじゃ、みんなに集まってもらったので、学園祭の出し物を発表します」

その声にホロメン達が俺に注目した。

 

「えぇ~ライブするの」

やっぱりきちんと説明してないじゃん、ちょこ先生。

大声をあげるスバルちゃんをにこにこ顔で見ているちょこ先生。

確信犯ですね。

「みんな知ってた?」

すいちゃん以外は頷く。

直接会ったメンバーにはきちんと説明したからな。

「ちょこ先~」

「まぁまぁ」

スバルちゃんをなだめるちょこ先生。

「でも、すばにゃん。

ライブをするって決めたのは、まつりと一緒にすばにゃんが夜、音楽室で練習してたの見たからなんだって」

「ええ、あれ見られてたの?」

「うん、卒業クエストの1つだから」

「な、何をクエストにしてるんですか!

次からは違うのにしてください、まつり先輩!」

「はいはい」

はは、スバルちゃん顔真っ赤だ。

「な、何笑ってるんだ~」

怒られた。

「で、どういう感じでするんだい?」

すいちゃんが俺に聞いてきた。

「はい、一応、ホロメンのみんなに順番に歌ってもらおうかと思ってます。

順番も考えているんですが…」

「ちょこはパスね」

「え?そうなんですか?」

「うん、ちょこは先生だし流石に生徒の中には入れないかなぁ」

「ずるいぞちょこ先。

こんな時だけ先生ぶって」

ちょこ先生に抗議するスバルちゃん。

「分かりました。

それでしたら、司会進行をお願いします」

「え?」

「頑張れよ~」

狼狽えるちょこ先生に今度は笑顔のスバルちゃん。

ま、ちょこ先生には司会進行してもらおうと思ってたからよかった。

「で、順番は?」

はあとちゃんがにこにこ顔で聞いてくる。

「はい、こういう順番でお願いします」

僕は机の上に順番を書いた紙を広げた。

1、まつり部長

2、おかころ

3、はあとちゃん

4、すいちゃん

5、スバルちゃん

6、全員

「へぇ、まつりを1番に持ってきたんだ」

「はい、まつり部長の元気な声でまずは観客を引き込んでほしいので」

「なるほどね」

「2番目のおかころコンビの楽しい歌で盛り上げてもらって、3番目ではあとちゃんの不思議な歌でぐっと心をとらえてもらう」

「えっと、私不思議ちゃんじゃないんだけど…」

はあとちゃんがぼそっと言ってるけど。

「そして、すいちゃんの最強の歌姫の力を披露してもらって、スバルちゃんにあの音楽室で練習していた歌を披露してもらうと」

「ええぇ~それもすいちゃんの後ってめちゃくちゃ緊張するじゃん」

今度はちょこ先生がにこにこ顔をしてスバルちゃんの頭を優しく撫でてる。

「で、最後にフィナーレでみんな一緒に歌ってもらえるといいかなと」

「いいでしょう、本番は?」

腕組みしていたすいちゃんが真顔で聞いてくる。

「後、6日」

「こうしちゃいられないわ。

みんなレッスンするわよ」

すいちゃんがみんなに言う。

力強く頷くみんな。

「舞台の用意は俺がするので、こういう感じにしたいとかあったら教えてください」

『オッケー』

そして、俺達は学園祭に向けて準備を始めるのだった。

俺はエリトアに相談して機材や舞台の準備、手伝いをしてくれる人を集めた。

そして、ホロメンのみんなの意見を聞きながら舞台の準備をした。

怒涛に時間が流れる。

ホロメンのみんなも影ながら歌のレッスンをしてライブに備えてくれた。

さぁ、残すは本番。

俺は前夜祭にわく学園で最後のステージ調整を行う。

「頑張ってるわね」

「明日は楽しみにしているのです」

「え?シオンちゃんにるしあちゃん?」

そんな俺のところに2人が来てくれた。

「2人ともまだこの学園にいたんだね。

いたんだったらライブ頼めばよかった。」

「それは魅力的だけど」

「るしあ達は学園関係者じゃないですから」

「そっか」

「なので楽しみにしてる」

「ですね」

2人は笑顔でそう言ってくれた。

「2人にも楽しんでもらえるように頑張るよ」

俺はそう言って2人に見守られながら最終調整を行った。




ステージで最終調整を行うあなたを、少し離れた場所から2人の人物が見つめていた。
「はぁ、このまま行くと卒業しちゃいますね」
「ええぇ、もっとここで遊びたかったのになぁ、まだまだ俺食べたりない」
「それでは、邪魔しちゃいましょうか」
「そりゃいいや、先輩達の味見もしたいしな」
そう言って2人は後夜祭に賑わう学園へと消えた。
学園祭も一筋縄ではいかないようだ。


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学園祭の裏で 防衛戦

学園祭の出し物も決まり、各々準備に取りかかる。
最後の調整をするあなたを背後から見ていた人物は誰だったのだろうか。
果たして無事に学園祭を迎えられるのか


待ちに待った学園祭当日。

俺はエリトアと一緒に舞台端にいた。

何人かのお手伝いをしてくれる人も舞台の準備をしている。

「緊張するね」

「はぅ~」

「おいおい倒れるなって」

ちょこ先生に話しかけられ倒れそうになるエリトア。

「今日の衣装も素敵ですね」

俺はちょこ先生を見て言った。

黒のドレスでかなりきわどい衣装だが何故だろう、ちょこ先生が着るといやらしさを感じない。

「ありがとうね」

笑顔が素敵です。

「笑顔もいい」

エリトア同じ意見だよ。

「では、今日は司会進行お願いします」

「うん、頑張るね」

「じゃ、エリトア。

開始まで少し時間あるからこっちは任せた。

俺は他のメンバーに挨拶した後に呼び込みに行くよ」

「な、お前が呼び込みする必要ないだろ。

誰かに任せて」

「いや、俺が自信をもってるステージだ。

自分自身で呼び込みしたいんだよ」

俺は真剣にそう思っている。

「分かった。

任せろ」

エリトアが頷く。

俺はエリトアに任せて控え室に向かった。

 

コンコン

「は~い」

中から元気な声が聞こえる。

「俺です、今入ってもいいですか?」

ここは1階の第1教室。

ここを特別に控え室として使わせてもらっている。

もちろん、教室の窓にはカーテンが付けられて内部を隠していた。

「いいわよ」

カチャ

中から鍵が開いた音がした後、すいちゃんの声。

「失礼します」

俺はさっと中に入る。

「おお」

目の前にはお揃いのステージ衣装を着たホロメン達が。

「みんなめちゃくちゃ似合ってます」

素直に言葉が出た。

「それはそうでしょう、すいちゃんの知り合いの服屋に頼んで作ってもらったんだから」

すいちゃんはそう言いながら胸をはる。

「すっごい緊張する」

スバルちゃん、震えてるけど大丈夫かな?

「大丈夫だよ」

「ぼく達がついてるし」

ころねちゃん、おかゆちゃんが笑顔で言う。

「はあとちゃん、今日はお願いしますね」

「ええ、このはあちゃまに任せなさい」

『え?』

みんながはあとちゃんを見る。

「ま、まぁ、そう言うこともあるわよね」

まつりちゃんが笑いながら言った。

「みなさん準備できてるようで安心しました。

俺は今から呼び込みに行ってきます」

「え?

キミが呼び込みするの?」

すいちゃんが不思議そうに言う。

「はい、このライブが素晴らしい事をみんなに伝えたいんです」

「そっか。それじゃ、任せた」

まつりちゃんに笑顔で任された。

「はい」

俺はみんなに見送られながら、屋外ステージの方に向かった。

先に数人の人が呼び込みをしてくれていた。

俺もそれに混ざり、ビラを配りながら呼び込みをした。

そろそろ開演が近づいてきた。

お客さんもだいぶ入ってきている。

ホロメンが本当にライブするのか半信半疑な感じだな。

ま、確かに他と違って普通に会える学園のホロメン達だけどライブをするなんて普段はあり得ないだろうしな。

それも1人の冒険者が企画したステージで。

ただ、この客入りを考えるとホロメンが歌ってほしいという願いも込められてるんだろうな。

「そろそろ始まるわね」

「楽しみです」

お客さんに混ざり、いつの間にか横に来ていた、シオンちゃんとるしあちゃん。

「来てくれてたんですね」

「当たり前よ」

「楽しみにしてるって言いましたです」

2人はにこり。

「はい」

ステージに1人の女性が進み出た。

お~

歓声が上がる。

ちょこ先生だ。

「さすがよね、ちょこ先生」

「ですね、素敵です」

2人もちょこ先生の姿に見とれている。

「こんにちは、みんなの保健医ちょこで~す。

今日は楽しんでいってねぇ」

は~い。

すごい人気だなぁ。

「それではさっそくいっちゃうね。

まつり様どうぞ~」

お~

まじかぁ~

またもや歓声が。

「こんにちは~学園のみんなのアイドル夏色まつりで~す!

今日は楽しんでいってね~」

楽しんでいくよ~

まつりちゃんの声に学園の学生が集まってくる。

さすが、まつりちゃん人気だなぁ。

「では、歌いくよ~」

いつの間に作られたのか、お客はサイリューム片手にふりはじめる。

「知り合いの武器屋に頼んで作ってもらいました」

さっき一緒にビラ配ってた人がそう言ってにこやかに去っていった。

まじでぇ?

 

「ありがとうね~」

予想通り歌は順調、お客も初めより倍以上になっていた。

次はおかころコンビだ。

「はぁ~こんな時に」

え?

隣でシオンちゃんがため息をつく。

「るしあちゃ、感じた?」

「はい、シオン先輩。

せっかく楽しんでいますけど仕方ないです」

「そうね、この為に残ってたっていうのもあるし」

「ど、どうしたんですか?」

2人が会場に背を向けたので慌てて聞く。

「グラウンドの方から明らかにこっちに殺気を送ってくるやつがいるのよ」

「たぶん、このライブをぶち壊そうとしている人がいるのです」

「なんだって」

「だから、シオン達が原因を止めてきてあげる」

「この学園はクエスト以外で武器を使用する事ができないのです。

だから、今こっちにこられたらみんなやられてしまうです」

「だったら、俺も行きます」

「な、何いってるのよ、これあなたのクエストでしょ?」

「はい、だから行くんです。

さっきるしあちゃんが言ってましたよね。

クエスト中なら武器使えるんでしょ」

「なるほどなのです。

確かに使えます」

「だからといってね」

「お願いします、足を引っ張らないようにやります。

みんなの楽しみを一緒に守らせてください」

俺は2人に頭を下げる。

「はぁ、分かったわよ。

着いてきなさい」

「一緒に頑張るのです」

2人はグラウンドの方に歩きだす。

俺は1度ステージを見た。

そこにはおかころがまさに歌おうとしていたところだった。

頑張ってみんな。

俺はみんなの頑張りを壊されないように行ってくるよ。

俺は装備を変え、手に鬼切丸を持つ。

向かうはグラウンド。

こっちに敵意を見せてる相手だ。

 

 

「あんた達がそうよね?」

グラウンドに2人の女性が立っていた。

1人はこの学園の制服を着ている。

もう1人は。

「やっぱり、あなただったのです」

そう、るしあちゃんが怪しいと言っていた司書がそこには立っていた。

「まさか、感ずいていたなんて。

さすがチートですね」

そう言った司書は笑顔だった。

「ふぅ、早くやりましょう。

ライブが終わっては潰せないですし」

物騒な事を言う女子学生だな。

「そうね。

では、行きましょうか」

2人の女性はどこからかドミノマスクを取り出す。

2人とも色違いのマスク。

でも、どこかで見た事が。

「さぁ、開始といきますか」

そう言って2人はドミノマスクを着けた。

黒い渦が彼女達一人一人を飲み込む。

そして、渦が消えた後に全く違う2人の女性が立っていた。

「はっはぁ、やっぱりこの姿が1番いいぜぇ」

真っ黒のボサボサで長い髪の毛の犬女が声を上げる。

「はぁ、私的にはさっさと終わらせて早く戻りたいですけどね」

赤や黄、オレンジの色が混ざったカラフルな髪の女性は気だるそうに言った。

体型的にはいうと、カラフルな女性が司書か?

「まさか、またあれを見ることになるなんてね」

「はいです、やっぱり前回の事件と関係してるみたいなのです」

「2人とも知っているんですか?」

俺は鬼切丸を構えて2人に聞く。

「ええ、あれはコメント集ね」

「コメント集?」

「そうなのです。

人に力を与え操る力なのです」

「なに、こそこそ話してやがる。いくぞ」

犬女が吠える。

「こい、お前ら出番たぞ」

犬女が大地を叩く。

すると、大地から継ぎ接ぎのモンスターキメラが次々と現れる。

「まさか大召喚?」

驚くシオンちゃん。

確か大召喚ってホロメンしか使えない力なんじゃ。

「だったら、こっちもやるしかないのです」

るしあちゃんはその場で踊り始める。

するとグラウンドだったその場は広い草原に変わる。

所々に墓石が見える。

「ふぁんでっどのみんな出番なのです~」

その言葉と同時にるしあちゃんの周りからあの蝶が舞いお墓に1匹ずつ止まる。

すると墓石の前から骸骨の鎧に身を固めた騎士達が地面からわき出てきた。

「追加です」

左手を目に当て勢いよく下ろす。

「操縦眼なのです。

来るのです、ジャイアントスケルトン」

その言葉と同時に地面が盛り上がり巨大な骸骨が姿を表す。

その肩にはるしあちゃんが。

「それじゃ、開戦よ!」

シオンちゃんはそう言って紫色の雷を纏い、敵の中に突っ込んでいく。

ふぁんでっどのみんなや、るしあちゃんもその後に続く。

もちろん俺も参戦した。

ここで止めないとみんなの楽しみが消えてしまうから。

俺は鬼切丸を握る手に力を込めた。

ここが正念場だ。




待ちに待った学園祭が始まりました。
順調に進むライブに横やりが。
果たして彼女達は誰なのか?
予想どおりの展開だけど、次回をお楽しみに


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学園祭の裏で 反撃戦

学園祭は順調に進むと思われたが、シオンちゃんとるしあちゃんがステージに敵意を向ける相手を見つけた。
あなたは2人と共にステージを守る為に戦いに向かうのだった。


「うりゃ!」

ぎゃー!

目の前の継ぎ接ぎモンスターキメラを一体倒す。

草原に変えられたフィールドで相手のキメラ軍団対シオンちゃん、るしあちゃん、ふぁんでっど軍団の大混戦になっていた。

あちらこちらで戦いが始まっている。

相手のキメラもなかなかの強さで一撃で倒せない。

他の人達も即席パーティーを作って対応していた。

状況はこちらが押している。

なんと言ってもシオンちゃんの魔法とるしあちゃんが操るジャイアントスケルトンが相手をどんどん倒していく。

しかし、キメラの奥にまだ2人控えている。

俺はその2人に向かって走った。

「やっぱ大将狙いよね」

「はい」

そんな俺の横をシオンちゃんが並走してくれた。

シオンちゃんのお陰で2人の前に出た。

「へぇ~

チートが一緒だけど俺達の前に出てくるか」

犬女がこっちを舌舐めずりしながら言う。

「ま、せっかく来てくれたんだから、自己紹介しときましょうか?」

「あんたは知ってる鳳凰寺ベルだろ」

「まぁ、覚えてくれたんですね」

「ま、司書だしな」

るしあちゃんに言われて探したから名前覚えてた。

「じゃ、俺だな。

俺は双犬ベルフェ覚えときなよ」

双犬?確かに胸に犬の頭みたいな装飾がある。 

「お?なんだ?

世界の答えは俺の胸に興味があるのか?

ま、そっちの2人はないもんな」

『はぁ?』

シオンちゃんの怖い声に混じり、いつの間にか背後にいるジャイアントスケルトンとるしあちゃん。

るしあちゃんの声も恐ろしいんだが。

「潰れろ」

るしあちゃんの言葉にジャイアントスケルトンの一撃が2人を襲う。

「おわっと」

ドガァー

巨大な一撃が2人の居た場所にめり込む。

しかし、2人は回避していた。

「あぶねぇな。

先輩さんよ」

ベルフェがるしあちゃんに向かっていった。

「あなたみたいな後輩持った覚えはないです」

「そうかい、なら知らない後輩に食われて死ね」

ベルフェが一気にジャイアントスケルトンに登る。

「く、るしあちゃん」

「あらら、君たちの相手はだるいけど私がしてあげるわ」

るしあちゃんの方に進もうとした瞬間、ベルが何かを飛ばしてきて、シオンちゃんが咄嗟に弾いてくれた。

弾いて地面に落ちたものを見る、これは羽か?

「そう簡単に手助けは出来ないか」

「大丈夫よ、るしあちゃは最強のホロメンの1人だし、それにふぁんでっどのみんなもいるからね」

ちらりとるしあちゃんの方を向くと、ジャイアントスケルトンからどうにかベルフェを振り払い、対峙している姿が見えた。

「私達はまずこっちをやるわ」

「はい」

俺はシオンちゃんとベルの方へ向く。

「空を飛んでいる私に、地面でうろうろするだけのあなた達が何かできるの?」

余裕の顔で俺達を煽るベル。

「は、空中戦出来ないと思ってるの?」

そう言って、シオンちゃんがベルの方にジャンプする。

しかし、全然届いてない。

「はは、全然届いてないじゃない」

「そう?」

シオンちゃんは笑っている。

そして、シオンちゃんは何もないはずの空中でジャンプした。

「え?」

魔方陣だ、足元に魔方陣を作り足場にしてるんだ。

「ほら、ぼうとしてたら焼き鳥にするよ」

空中の魔方陣を駆け上がりベルとの間合いを一気に摘める。

そして、雷を纏ったシオンちゃんの蹴りがベルに向かって放たれた。

「く」

寸前で避けるベル。

「まだまだ」

飛び蹴りは外したが、その先にまた魔方陣、それを足場にまた、ベルに蹴りを放つ。

「くぁ」

避けるベル。

しかし、シオンちゃんは魔方陣を駆使して連続に飛び蹴りを放ち続けた。

「ぐはぁ」

一撃が当たる。

「まだまだいくよ」

シオンちゃんのスピードは雷となって縦横無尽にベルに蹴りを入れていった。

「紫雷連蹴!」

シオンちゃんの技が炸裂した。

「きゃぁ」

最後の一撃で大きく吹き飛ばされるベル。

すたっと俺の前に着地するシオンちゃん。

「めちゃくちゃすごいです」

「ま、一応この世界で最強の1人だからね。

るしあちゃの方に行くよ」

「はい」

俺はシオンちゃんの後に続き、るしあちゃんの方へ向かう。

「くそう、このちょこまかと邪魔しやがって」

ふぁんでっどのみんなの遠距離攻撃に邪魔され、るしあちゃんとの距離が詰めれないベルフェ。

そこにるしあちゃん操るジャイアントスケルトンの一撃が振り下ろされる。

何とか避けてはいるがシオンちゃんが加勢に入ればおしまいだ。

「いける?」

シオンちゃんと俺はるしあちゃんの所に着く。

「さすがシオン先輩、そっちは終わったんですか?」

「たぶんね、手を貸すよ」

シオンちゃんが雷の魔法をベルフェに放つ。

「まじか」

咄嗟にジャンプして避けるベルフェ。

さすがにホロメンの魔法攻撃は避けるか。

「隙あり」

ジャイアントスケルトンは空中で無防備なベルフェに掴みかかる。

「やべぇ」

後悔しても遅い。

そのタイミングでは避けれなはず。

ドカ

しかし、誰かがベルフェに体当たりして代わりにジャイアントスケルトンに捕まる。

ベルだ。

まだ、そんな力があったのか?

「よし、そのまま摘んでて」 

そう言ってシオンちゃんの詠唱が始まる。

俺はそれと同時にある事に気付き走り出す。

「我は願う 大いなる神々に

我は欲す 神速で敵を貫く葬槍を」

シオンちゃんにあり得ない程の魔力が集中する。

それは紫の雷になってシオンちゃんの突き出す手に集まっていく。

「させるかぁ~」

ベルフェがシオンちゃんに向けて突進してきた。

シオンちゃんの手がベルフェに向けられる。

「なにぃ!」

「喰らえ!サンダートライデント!」

凄まじい魔力が雷の槍となってベルフェに向かった。

「読まれてたのかぁ」

ベルフェの魔力も膨れ上がる。

そして、槍はベルフェに当たり爆発した。

爆発で舞う煙が晴れる。

そこには服がボロボロになっているベルフェが立っていた。

「はは、これでベルは狙えねぇだろ」

俺は手に持つ鬼切丸をベルに向ける。

「我願う 大いなる神々に」

「なんだと!」

ベルフェが振り向く。

そこには俺がいる。

「我は欲す 神速で敵を貫く葬槍を」

シオンちゃんが詠唱している時にベルフェがシオンちゃんに攻撃するような素振りが見えた。

だから、俺はシオンちゃんと反対側のこちらに来たんだ。

俺に今まで感じたことのない魔力が集まる。

これが詠唱の効果。

「喰らえ! サンダートライデント!」

そして、俺は1日1度の魔法をベルに放った。

俺の放った雷の槍はまっすぐベルに向かう。

雷の槍はベルを掴んでいるジャイアントスケルトンの手ごと貫いた。

ジャイアントスケルトンの手が砕け散る。

「すいません」

るしあちゃんに謝る。

「大丈夫、それより」

るしあちゃんは空に飛ぶベルを見る。

俺もベルを見た。

お腹に大きな穴が開いている。

こうやって見ると少し罪悪感があるけど。

「ふ、ふ、は、ははははは」

いきなり笑い出すベル。

な?なんだ?あんな穴が開いてるのに。

「まさか、ホロメンではなく一介の冒険者にやられるなんて。

さすが世界の答えってところでしょうか」

ベルが俺を見る。

「さて、きちんと自己紹介してませんでしたね」

ベルは胸に手を置く。

「私の名前は鳳凰寺ベル。

そう、名前の通り私は鳳凰、フェニックスです」

『え?』

ホロメン2人がびっくりする。

「気づかれたみたいですね。

そう、あなた達のお友だちにもいるでしょ?

フェニックスは不死鳥なんですよ」

そう言ってベルは胸から手をゆっくりと下ろす。

すると、お腹の穴がなくなっていた。

「さてとこのまま続けても良いことはなさそうですね」

戦況はこちらが優勢、ふぁんでっどのみんなのお陰で、ほとんどのキメラは倒されていた。

「ベルフェ撤退しますよ」

「な、まだやれる!

まだまだ食べたりねぇ」

「そういってもこのまま続けてもホロメン1人を倒せるくらいですよ。

私達2人の命と引き換えにね」

そうベルに言われ考えるベルフェ。

「くそう、分かったよ!

ただ、このままじゃおさまんねぇ」

突然ベルフェの魔力が上がり始める。

「え?」

誰かが俺の首根っこを掴み、シオンちゃんの方へ投げた。

ふぁんでっどの人?

「っと」

ドン、片手でシオンちゃんが俺を止める。

「ジャイアントスケルトン、るしあちゃんを守ってくれ!

みんな防御しろ!」

な、なんだ?

なにが?

「はは、感が良いな、只の冒険者が!」

ベルフェのその言葉と共に爆音と地鳴り、衝撃波が駆け抜ける。

いや、俺達を守ってくれたジャイアントスケルトンのお陰で俺達に衝撃波は届いてない。

でも、ふぁんでっどのみんなは。

ズズン

ジャイアントスケルトンがゆっくりと横たわる。

そして、俺達は周りの状況を見た。

至るところにふぁんでっどのみんなが倒れていた。

「はははははは!

弱い弱い」

高笑いをするベルフェ。

くそう、あいつ!

「みんな?」

ゆっくりと立ち上がる、るしあちゃん。

突如どす黒い気が、るしあちゃんから立ち上る。

「やばい、るしあ落ち着いて」

シオンちゃんが焦った顔でるしあちゃんを押さえる。

なんだ?

この気は前に1度感じたことがある。

「何やってるの、あんたも押さえて」

シオンちゃんに言われて、訳も分からずるしあちゃんの肩を掴む。

るしあちゃんの目に光がない?

「るしあちゃん落ち着いて」

「どけ」

「え?」

次の瞬間、俺はるしあちゃんに片手で吹き飛ばされる。

ヴァ

「ぐは」

ジャイアントスケルトンが腕を出して止めてくれる。

「ありがとう」

でも、なんだ?

るしあちゃんの様子が。

るしあちゃんから出ていたどす黒い気が右手に集まり始める。

そして、そのどす黒い気が長い出刃包丁に変わる。

「やばい」

焦るシオンちゃん。

「ころす」

るしあちゃんがベルフェを見る。

「な、なんだ?」

ベルフェがその気に圧されてる。

「撤退するわよ」

ベルの言葉にベルフェが飛び上がりベルに掴まる。

「まて!」

「るしあちゃん、俺達は大丈夫だから」

ふぁんでっどの人達が武器を杖にしてゆっくりと立ち上がる。

「また、会いましょう」

ベル達はそう言うと黒い渦の中に消えていった。

「るしあちゃん、落ち着いて今はその力は使わないで」

ふぁんでっどのみんなは口々にるしあちゃんに声をかける。

みんなふらふらなのに立ち上がる。

「大丈夫。もう、大丈夫だから」

「み、みんな?」

るしあちゃんの目に光が戻ってくる。

「落ち着いて、るしあちゃん」

「み、みんなぁ」

るしあちゃんの右手から出刃包丁が消える。

どす黒い気も消えた。

そして、るしあちゃんはその場に座り込み泣き始めた。

シオンちゃんは優しくるしあちゃんを抱きしめる。

「あんた達よくやったわ」

ふぁんでっどのみんなの方を向いてシオンちゃんが言った。

ふぁんでっどのみんなはにこやかに笑う。

「すいません、俺達はここで終わりです。

シオンちゃん、俺達の推しを、後お願いします」

近くにいたふぁんでっどの1人がそうシオンちゃんに言う。

シオンちゃんは、笑顔で力強く頷いた。

それを見たふぁんでっどのみんなは光になりながら消えていく。

「おい、キミも」

「え?」

俺の近くにいたふぁんでっどの人に声をかけられる。

「俺達は召喚で呼ばれたからここにはいられない。

だからキミにるしあちゃんを託す。

頼んだぞ」

俺はそう言葉をくれた人に力強く頷き言った。

「任せてください」

それを聞いてその人はにこやかに笑い光になって消えていった。

 

「ふぅ、何とかなったね」

もとに戻ったグラウンドには俺とシオンちゃん、そして疲れて眠ってしまったるしあちゃんが残されていた。

「さ、頼まれたでしょ、るしあちゃを背負ってやって」

「あ、はい」

俺はるしあちゃんを背負う。

「あのう、さっきのあれは」

俺は気になった事をシオンちゃんに聞いた。

「あれね、そうね。

るしあちゃは優しいからね」

シオンちゃんはボソリと呟く。

「いいわ、帰りながら話してあげる」

そして、俺達は野外ステージに戻るのだった。




無事にステージを守る事ができたあなた。
次回は学園最後のお話になる予定です。
そして、るしあちゃんの秘密も語られます。
※注意次回語られる秘密は小説内での設定です。
現在活動されている、るしあちゃんとは関係ありません。
鳳凰寺ベル、双犬ベルフェについての設定は活動報告にありますので興味があったら見てみてください。

では、次回をお楽しみに


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学園祭の終わりに

戦いが終わり、あなたは潤羽るしあを背負い、紫咲シオンと共に野外ステージへと向かう。
その道中、紫咲シオンから潤羽るしあの秘密が語られるのであった。


「えっと、さっきのるしあちゃの事だよね」

シオンちゃんがポツリポツリと語ってくれた。

ホロメンには各々世代によって特殊スキルを持っている。

それとは別に1人1人の個性を出す為に特殊スキルとは別の個人スキルがあるらしい。

「ちなみにシオンはこの見た目どおり魔女だから」

「え?魔女っ子」

「ま、じょ。

なんで他のホロメンのみんなより魔力が高い。

で、るしあちゃはその個人スキルが暴走なの」

「暴走ですか」

一概に暴走と言ってもいきなり暴れだすとかではなく、段階があるらしい。

1段階目にあのどす黒い気が沸き上がり、目に光が失くなる。

次の段階でその気が右手に集まり長い出刃包丁が現れる。

その時にターゲットとなる相手を見る。

それは複数であってもかまわないらしい。

そして、最後にターゲットをすべて倒すまで追い続ける、戦闘マシーンに変わるらしい。

「それってるしあちゃんの中にある隠れた意識って事ですか?」

「え?

あ、違う違う。

それはるしあちゃが召喚する出刃包丁『死屍累々』の意識ね」

『死屍累々』

るしあちゃんが召喚する呪われた武器で、るしあちゃんはあるきっかけをトリガーとしてその武器を召喚。

自分の意識を奥底に眠らせて、全てを『死屍累々』の意識に委ねるのだそうだ。

『死屍累々』の性格は残忍で見たもの全てを倒さないと消えないらしい。

そして、その間はほぼ無敵。

見たもの全てなので味方も敵もお構い無し、逃げても背後にワープしてきてどこまでも追ってくるらしい。

止める方法は、見たもの全てを倒すか。

「るしあちゃ以外の第三世代組全員で取り押さえて、るしあちゃを覚醒させるしかないわね」

「ホロメン4人でですか?」

「そう、それも第三世代のみっていう条件がついてるからほぼ暴走したらみんなやられるわね」

「はは」

すげぇ、暴走。

「ま、暴走するきっかけが、自分の大切にしている誰かが目の前で傷つけられ苦しんでいるのを見て、感情が押さえられなくなった時だから」

それで、ふぁんでっどの人達が傷ついたのを見て。

なるほど、優しいってそう言う事だったんだ。

「この世界ではつんけんしてるところもあるけどね、すっごく優しいのよ、るしあちゃは」

シオンちゃんが笑う。

「はい、少しですが一緒にクエをしたので、それは十分に」

俺も笑う。

「ん、わぁ~」

「あれ?

起きそうかな?」

シオンちゃんは俺の背中を見た。

「じゃ、急ぎましょうか」

俺はるしあちゃんを背負ったままシオンちゃんと、ステージに急ぐ。

ステージからは不思議な歌声が流れてきていた。

今ははあとちゃんの出番のようだ。

 

 

その後、俺達は無事にステージに到着。

ホロメン達のライブを見る事が出来た。

はあとちゃんの歌は途中からだったけど、すいせいちゃんの歌は初めから聞く事が出来た。

さすがホロライブワールドの最強の歌姫の一角。

めちゃくちゃ上手かった。

そして、ちょこ先生に紹介されてステージに上がるスバルちゃん。

さすが度胸はあるみたいで始まる前の姿とは別人だ。

そして、あの音楽室で練習していた曲が流れる。

スバルちゃんの歌声は他の人に負けないくらい綺麗で透き通っていた。

こりゃ、ギャップ萌えってやつになるわなぁ。

最後はホロメンみんなで歌う時。

ステージの上からシオンちゃんやるしあちゃんが呼ばれステージに上がっていった。

後、このステージを見に来ていたホロメンがいたらしく、お姫様の格好とメイドの格好をしたホロメンがステージに立った。

ステージのお客と一緒に大合唱、とても記念になるステージとなった。

 

簡単な片付けも終わり、俺は後夜祭のグラウンドで行われるキャンプファイヤーを見に来ていた。

ゲーム内なので特に燃やすものがある訳ではないが、後夜祭と言ったらキャンプファイヤーらしくグラウンドで行われていた。

「ふぅ、終わった」

ゆらゆら揺らめく火を見ながら俺は1人坂に座っていた。

キャンプファイヤーの周りには人が大勢いた。

ま、大体が2人とかだけど。

しかし、この学園生活もあっという間な感じがした。

そういえば1度も授業出てないんだが?

でも、楽しかった。

学園で出会えるホロメンの人達はとても優しかったし、面白かった。

「卒業伸ばそうかな?」

ポツリと呟く。

「それは別にかまわないけど?」

「え?」

後ろを振り向くところねちゃんがいた。

「お疲れ様、卒業最終イベントの結果教えに来たよ」

そして、横に座る。

「どう?聞きたい?」

体育座りで首をかしげながらこちらを見るころねちゃん。

「は、はい」

なんか、いろんな意味で緊張する。

「結果は」

「合格だよ」

「うひゃ」

いきなり首に冷たい物を当てられ悲鳴が出る。

「ああ、おかゆ。ころねが言いたかったのに」

「だって、ころさん。

なんか雰囲気だしてるからさぁ」

そう言って俺を挟んでころねちゃんとは反対側に座る。

「はい」

缶ジュースをもらう。

「ありがとうございます」

「いえいえ」

「もう」

なんか膨れてるころねちゃん。

「それにみんなそんなに待ってられないよぅ、ね?」

そう言っておかゆちゃんが後ろに声をかけた。

そこには先ほどステージに立っていたホロメンのみんながいた。

『おつれさま~』

「ありがとうございます」

「そして」

ころねちゃんとおかゆちゃんが立ってホロメンのみんなの方に行く。

『卒業おめでとう~』

俺はその場に立ってホロメンのみんなの方に向く。

「ありがとうございます、短い間でしたがお世話になりました」

そう言って深々と頭を下げた。

 

その後、ステージに協力してくれた人達とホロメンのみんなと一緒にお疲れ様&卒業おめでとうの打ち上げが行われた。

プライベートな感じでホロメンと接することができ、エリトアは泣いて喜んでいたなぁ。

本当に手伝ってくれたみんなにも大感謝だ。

それから、俺は寮に帰ってログアウトした。

明日、ログインしたら理事長室に来るようにころねちゃんに言われた。

本当に学園生活楽しかった。

また、学園に来たいな。

そう、思いながら布団に入って寝ることにした。




学園編終了です。
次回からはまた違う舞台へ
これからもまだまだ出ていないホロメンが出てきます。
どういった感じで登場するかはお楽しみということで。
ではでは、完全な妄想に次回もお付き合いくださいませ。


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地下の洞窟のラミィ

後夜祭の次の日、ころねちゃんから理事長室に来るように言われたあなたはログイン後、学園祭の片付けが終わった学園の中を理事長室に向かうのだった。


俺はログインすると、早速理事長室に向かった。

学園祭の片付けも終わって今は普段どおりの学園だ。

「おい」

「ん?」

廊下を歩いていると聞きなれた声。

「よ、おはようエリトア」

「おはよう」

エリトアが近づいてくる。

「今から理事長室に行くんだろ?」

「ああ、そうだよ」

「そっか、俺も入り口までついていっていいか?」

「別にかわないぜ」

俺とエリトアは雑談しながら理事長室に向かった。

もう、理事長室が見えてきた。

「ここまでにしとくよ」

エリトアが立ち止まる。

「そうか」

俺もエリトアに振り向いた。

「初めてあったのがここだったよな」

「ああ」

「短い間だったけど楽しかったよ。

ホロメンとあんなにたくさん会えたしな」

「ああ、俺もエリトアに会えてよかったよ。

エリトアの情報で助かったしな」

「そう言ってもらえて嬉しいよ」

「エリトア、よかったらフレンド登録しないか?」

「え?いいのか?」

「もう学園からは出ていくけどそれでよかったら」

「いや、俺こそお願いするよ」

俺はエリトアとフレンド登録した。

「ありがとうな」

「こちらこそ。

それじゃ、またどこかでな」

「ああ」

俺はエリトアと別れる。

エリトアは俺が理事長室に入るまで見送ってくれた。

 

「失礼します」

「よく来たね」

理事長室の中にはころね理事長とおかゆ秘書さんがいた。

「これを渡そうと思ってね」

ころね理事長は賞状をこちらに渡してきた。

「これは?」

ころね理事長から賞状を受けとる。

「これはこの学園の卒業証書だよ」

「それとこれを」

おかゆ秘書さんからバッチをもらう。

「それを持っていればいつでもこの学園に遊びにこれるから」

「そうなんですか?」

「ただ、学園専用クエや授業は受けれないけどね」

「あ、授業1回も受けてない」

「卒業するのに授業1回も受けてないってそれもどうかと思うんだけど」

「今度から授業何回か受けないと卒業クエ受けれないようにしましょうか」

ころねちゃんとおかゆちゃんが笑いながら話す。

「それじゃ、堅苦しいのはここまで」

ころねちゃんが机から前に出てくる。

「キミが来てとても楽しかったよ」

「ぼくも楽しかった」

『また、遊びにきてね』

2人に言われる。

俺も嬉しい。

こんなによくしてくれて。

「はい、ぜひ来ます」

その言葉に2人は笑顔で答えてくれた。

「そうそう、校舎裏の桜の木でるしあちゃんが待ってるから」

「分かりました」

俺は2人に頭を下げ理事長室を後にした。

急いで桜の木に向かう。

「こっちこっち」

るしあちゃんが手招きをしている。

「これからどこに行くのか決まっているですか?」

「いや、まだなんですが、一度【ファンタジー】の始まりの町に戻ろうと思ってます」

「なら、帰るついでに送ってあげるのです」

そう言って桜の木に触るるしあちゃん。

桜の木が淡く光、ゲートが現れる。

「さ、行くのですよ」

るしあちゃんがゲートに入る。

俺はもう一度学園校舎を見た。

そして、一礼。

「また、遊びに来ます」

そして、俺はるしあちゃんを追ってゲートに入った。

 

 

「それじゃ、ここでお別れです。

また、どこかで会いましょうね。

おつるし~」

桜の木から上半身だけ出したるしあちゃんは手を振ってゲートに消えていった。

ここはどこなんだ?

るしあちゃんを見送った後、周りを見る。

森の中か?

ゆっくりと森の中を歩く。

なんか懐かしい気がする。

「ちょっと待ちなさいよ~」

「え?」

ドン

いて。

俺は何かにぶつかり尻餅をつく。

なんかデジャヴだな。

ぶつかった物を見た。

「やっぱりだいふく」

「やっと止まった。

ん?どうしたのだいふく」

「お久しぶりです、ラミィちゃん」

俺はだいふくの影から顔を出しそこにいる女性に声をかけた。

「え?あ、キミは」

驚いた顔の後、ゆっくりと笑顔に変わる。

「おかえり」

「ただいま」

俺は笑顔でラミィちゃんに言った。

 

それから近くの丸太に座る。

これまでどんな冒険をしたのかラミィちゃんに話した。

ラミィちゃんは楽しそうに聞いてくれた。

「大冒険したんだね」

「はい」

「それは、おつかれさま。

これからどうするか決めてるの?」

「いえ、しばらくは始まりの町にいようかと思ってます」

そう、まだ次にどこに行こうか決まっていない。

ま、のんびりするのも良いかもなとも思っている。

「そっか、なら明日ラミィのクエスト受けてみない?」

「お、いいですよ。

久しぶりに釣りですか?」

「ん~違うかな。

今は地下の洞窟探索にこってるの」

「へぇ」

「いろいろな宝石や化石が見つかるんだよ」

「お、いいですね。

ぜひ受けます」

ロマンあるなぁ。

「ま、受けれればだけどね」

ラミィちゃんが立ち上がりいたずらっぽく舌をだす。

「俺をなめないでくださいよ」

俺も立ち上がりにかっと笑った。

「じゃ、待ってるね。

もしそのクエストがクリアできたら、あの時の約束、しよっか」

そう言って手を振り帰っていくラミィちゃん。

俺はラミィちゃんに手を振りながら考える。

約束って…

ふと、頭によぎるフレンド登録。

うぉ、まじでラミィちゃんとフレンド登録?

ホロメンとフレンド登録出きるなんて、友人にばれたら殺されそう。

俺はうきうきで始まりの町に戻った。

今日はゆっくりと休もう。

明日、どんなことをしてもラミィちゃんのクエスト受けないとな。

 

次の日の朝、俺はギルドに向かった。

ここも久しぶりだな。

初めて来た時とぜんぜん変わらない。

朝早いからかあまり人はいないな。

俺はクエストボードを見た。

さて、いろいろあるけど。

お目当てのクエストはラミィちゃんのクエストだ。

さてといつもなら端っこにあるんだけどないなぁ。

ボードのあちらこちらを見てみる。

しかし、目当てのクエストは見つからなかった。

なんでだ?

もう一度クエストボードを見る。

ん?

クエストボードの左下側。

ボードの下から紙が見えるんだけど…

俺はクエストボードを少し手前に持ち上げる。

上がった。

俺は紙切れを引っ張り出した。

それはクエストの紙だった。

依頼者はラミィちゃんになってる。

なんでこんなところに?

クエストの紙を受け付けに出す。

「えっとこれを受けたいんだけど」

「あ、このクエストを見つけたんですね」

「なんであんなところに貼ってたんですか?」

「あ、いつもはクエストボードに貼るんてすが、昨日ラミィちゃんが来て、今日はあそこに隠すようにしといてくださいって言われたんですよ。

他の人に見つけられると困るからって」

他の人?

それって俺の為かなぁ?

「クエスト受けられますか?」

「あ、はい、受けます」

俺は慌ててクエストを受注する。

さて、集合場所に行くか。

場所は始まりの町の近くの洞窟か。

俺は道具屋でつるはしを購入して洞窟に向かった。

「あ、やっぱりきた」

ライト付きヘルメットを着けて作業着姿のラミィちゃんが洞窟の前で待っていた。

「やっぱりってクエスト隠されてましたよ」

「うん。

でも、キミなら見つけられると思って頼んだの」

やっぱり俺の為に、なんか嬉しいな。

「それでは、さっそく行きましょう」

「分かりました」

俺はラミィちゃんと一緒に洞窟に潜って行くのだった。

「さて、簡単な説明をしておくとね」

採掘場所までしばらくかかるらしく、ラミィちゃんが採掘の説明をしてくれた。

採掘はつるはしでするが、宝石やアイテムが見えれば小型なハンマーで掘るらしい。

それで、必要なアイテムはつるはし以外ラミィちゃんが貸してくれた。

それと、どこでも掘ったら出てくるのではなくある程度決まった場所で掘れるらしい。

で、ここから重要らしく、この採掘エリアは実装されてまだ浅いらしく、変なところを掘ると予想もつかない事が起きるらしい。

「なので、いろんな所を掘りまくらないようにね」

「了解です」

説明を聞いている間に発掘現場に着く。

発掘現場には親方と呼ばれるNPCがおり、その人に料金を払って掘るらしい。

今回はラミィちゃんのクエストで来た為、お金は無料だ。

「じゃ、頑張れよ」

親方にそう言われてラミィちゃんと俺は採掘現場の中に入る。

数人の冒険者やNPCが採掘していた。

「じゃ、さっそく掘るわよ」

ラミィちゃんは手際よくカンカンしていく。

俺も負けずにカンカンする。

カンカン。

カンカン。

ガンガン。

カンカン。

「あった~」

ラミィちゃんは順調に採掘中。

くそう、負けるか。

カンカンガンガンカンカンカンカン。

「あ、そんなに叩いたら」

「あ、あった!」

俺は赤い宝石を見つけた。

「これでやっと1つ目だ」

俺は慎重に叩いて宝石を取り出しラミィちゃんに見せた。

「やったね。

だけどあんなに叩いたら、他の場所もひび割れるから気を付けて」

「あ、分かりました。

すいません。

次は気をつけて掘りますね。

うわぁ」

振り向いた時に足元にあった小石につまずく。

「あ」

ラミィちゃんが慌てて手を伸ばしてくれる。

俺はその手を掴もうとしたが、背中の壁が突然崩れた。

しまった、さっき叩きすぎたからか?

俺はそのまま背後に倒れていく。

「うわぁ~」

「ちょ、ちょっとぉ~」

なんでこんな穴が深いんだぁ~

「……」

ラミィちゃんが俺の名前を叫んでいた気がしたが、もう俺には聞こえなかった。

俺は真っ暗な闇の中を落ちていく。

なんで岩の中にこんな空間があるんだ?

それにどこまで落ちていくんだこれ…

そして、俺は意識がなくなってしまった。




暗闇に落ちていったあなたはどこに向かったのか?
次回、新剣と伝説にご期待ください。


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新剣と伝説

久しぶりに戻った【ファンタジー】の始まりの町で雪花ラミィのクエストを受けるあなた。
張り切りすぎてカンカンをやりすぎてしまったあなたは、謎の穴に落ちてしまった。
果たしてこの先に待っているものは?


ここはどこなんだ?

俺は気を取り戻して周りを見る。

確かラミィちゃんと一緒に採掘してたはずだけど。

そうだ、壁にできた穴に落ちたんだ。

ステータス画面を見る。

特に異常はないしHPも減ってない。

マップは?

開いてみたが自分の場所が光っているだけで、地形は表示されていなかった。

一応、ログアウトのボタンを確認する。

あるな。

しかし、訳も分からない所でログアウトして、その間に何かに襲われて死んだら怖い。

ログアウトは最終手段にして、今は周りを探索してみるか。

しかし、本当にここは不思議な場所だ。

空は青くなく薄紫色、俺が立ってる場所はかなり広いが草木もない岩肌だった。

そして何より、もとの場所で見たこともない現象がある。

それは多数の岩が空中に浮遊している事だ。

地下に落ちていったはずがどうなってるんだ?

まさか、ここは地下世界?

後、気になる事は空のあちらこちらで電気が走るように光っている事。

雷じゃない、何か別のもののような気がする。

俺は採掘装備を一旦アイテムボックスにしまい、戦闘用の装備に変える。

ラミィちゃんに返せなかったな。

また、戻った時に返そう。

まずはここから戻るのが先だ。

俺はそう思い歩き出した。

 

しばらくいろいろと歩いてみて気がついた事がいくつかあった。

1つはいくら歩いてもマップが更新されない事。

1つは生き物がまるっきりいない。

1つは今、自分が立っている場所も周りと同じ浮いている巨大な岩の上だという事だ。

ちなみにその下は真っ暗な暗闇だった。

落ちたらどうなるか考えたくもない。

さてどうするか。

フレンド登録している友人にメッセージを送ったが届いていないみたいだ。

生き物がいないみたいだし、岩影でログアウトして情報を探してみるか?

そう思い岩影を探していると、出会ってしまった。

グガァー

そこにいたのはあの時のキメラ?

そう、ベルフェが大召喚?で呼んだ継ぎ接ぎモンスターだ。

く、俺は鬼切丸をアイテムボックスから抜く。

そして、戦いが始まる。

一度戦った相手であり一匹だ。

大体の攻撃の仕方は分かっている。

まず近づいてきたら爪で攻撃。

俺は鬼切丸で受け止める。

そのまま、爪を押し返して体勢を崩したら、左側から袈裟斬り。

ギャー

後ろに下がるので、間合いを積めて上段斬りからの突きで終わりだ。

予想通りキメラは光になって消え去った。

やっぱり、攻撃の仕方も同じだ。

あの時のキメラだ。

でも、なぜここに?

というか、キメラが出るなら岩影なんかでログアウト出来ないな。

くそう、どうやったらこの世界から出れるんだ?

それからまた、俺はこの場所を探索した。

前回と違うのはキメラに遭遇し始めた事。

1匹や2匹ならどうにか倒せるがそれ以上となると辛い。

どうにか逃げてるけど、遭遇する数は徐々に増えてる感じがする。

ふぅ、岩影で隠れながら進んでいるけど岩から外を覗くとやっぱりキメラがうろうろしている。

倒した事でキメラが増えたのかもしれないな。

このままじゃ、見つかるのは時間の問題か。

ギャー

く、見つかった。

キメラの1匹がこっちを覗いてきたのだ。

俺は岩影から出て思わず逃げた。

その動きを感知して、うろうろしていたキメラがこちらを追いかけてくる。

く、やばい。

数がさっきより増えている。

俺の後をキメラが複数追いかけてきた。

このままじゃ、やられる。

やられたら近くのギルドに移動されて復活するけど、この世界にギルドがある感じがしない。

そうしたら同じ場所で復活する可能性がある。

そうなったらおしまいだ、復活したらやられるループに入る。

このまま逃げきらないと。

だが、どれだけ逃げてもキメラは追いかけてくる。

う、目の前が崖だ。

俺は崖の前で振り向いた。

キメラが大量に襲ってきている。

くそう、ここでおしまいか。

「本当にどうしてこんなところに迷い混んでいるのでござるか?」

「え?」

この世界に来て初めて聞く自分以外の人の声。

次の瞬間、目の前に迫ってきていた複数のキメラが光となって消滅していた。

「逃げるでござるよ」

目の前に現れた金髪のおさげで和服を着て、刀を構えるその女性は、俺に背を向けながらそう言った。

俺は急いで立ち上がり、崖の端を走り出す。

く、女性1人を置いて逃げるだなんて。

俺は走りながら後悔する。

「何してるでござるか?もっと早く」

「はい?」

何故か先ほどいた女性がもう横で並走していた。

はや。

「もう、遅いでござるよ。

ほら、手を」

女性が手を出してくる。

思わずその手を掴む。

「振り落とされないようにきちんと掴んでおくでござるよ」

そして、俺は初めてアニメのような姿で引っ張られた。

スピード早いと本当に体と大地が平行になって浮かぶんだなぁ。

 

「ここまでくればいいでござるかな?」

大きな岩影に隠れて彼女が辺りを伺う。

「ありがとうございます」

俺は彼女にお礼を言った。

「ん?

別に構わないでござるよ。

ラプ殿のお願いでござるからな」

「ラプ殿?」

「あ、いや、こっちの話でござるよ」

慌てて手を振る彼女。

「やばかったでござる。

みんなの事は内緒でござった」

なんか独り言で言ってるけど。

「それより、ここがどこか知ってるんですか?」

「え?

あ、ああここでござるか?

ここは」

彼女は親切丁寧にこの場所の事を話してくれた。

ここは電子の狭間と呼ばれている場所で、ぶっちゃけた話、まだゲームに実装されてない開発中の世界だそうだ。

なので普通ならここにプレイヤーが入る事はないそうだ。

しかし、何故か今回ここに俺が落ちてしまった。

たぶん、あの採掘現場が実装されて間もない事と、まだ改善点があるところを俺が勢いでカンカンしてしまってここへの穴が出来たのだろう。

それを感知した彼女の仲間が俺を見つけてしまったらしく、ほってはおけないと言う事で、彼女が助けにきてくれたらしい。

「でも、死んだらリスボーンで戻れるんじゃ?」

「なら、キミ殿もあそこまで逃げないでござろう?

うすうす感ずいていたのではござらんか?」

「という事はやっぱり」

俺は予想が当たっていた事に怖くなる。

「そう、ここで死んでしまうとその場に復活させられるでござる。

そこからは予想通り生と死のループ。

リスボーンの代償でアイテムを1つずつ失いながら何度も何度も殺されてしまうでござるよ」

「やっぱり」

「うちのラプ殿もそれでは詰んでしまうと言っておったでござる」

「ラプ殿?」

「へ、あ、な、何の事でござるかな?」

さっきからちょくちょく言ったらいけない事を言ってるのかなぁ?

「それでは元の世界に戻るでござるよ」

彼女がその場に立ち、懐から何かの機械を取り出す。

その機械を何やら動かそうとした時、背中の大岩が突如爆発した。

「うわぁ~!」

「な、何事でござる?」

砕けた大岩の向こうには先ほどより多いキメラがいた。

そして、その奥には他のキメラよりふた回りも大きい巨大キメラが。

巨大キメラがその大きな口を開く。

そして、そこからレーザーを撃ち出してきた。

「く」

彼女は素早く俺の前に回り込み、刀を抜いてそのレーザーを防御する。

何とかしのいだが、先程まで息が乱れていなかった彼女が息を乱していた。

「さすがにこれはちょっときついでござるな」

そう言って刀を構える。

「今度は俺も戦います」

俺は鬼切丸を構え、彼女の横に立つ。

「な?

無理でござるよ」

「どうせ、やられるなら最後まで抵抗してやりますよ」

「なるほど、ラプ殿が言っていた世界のなんたらとはわ余程奇っ怪な人物でござるな」

「え?」

「いいでござるよ。

ただし、キミ殿を死なせわしないのです。

ラプ殿との約束でござるからね」

そうして彼女も刀を構える。

そして、俺達は戦いを始めるのであった。

 

「さすがにしんどいでござるな」

「はい」

驚くことに何とかまだ生きている。

彼女の強さがあまりにもすごい。

俺は詠唱付きの魔法を使ってしまった。

しかし、雑魚に見えてくるキメラは倒せても、まだその奥には巨大なキメラがいる。

俺の魔法も効かなかった。

「あれをどうするかでござるが」

彼女も巨大キメラの対処に困っている。

ガァァァァァ~

突然、巨大キメラが雄叫びをあげる。

それに呼応して小型キメラ達が俺達を襲ってきた。

そして、その小型キメラの奥で大きく口を開く巨大キメラ。

くそう、小型キメラごとレーザーで撃つつもりか。

俺達は小型キメラを迎え撃つのが精一杯で防御出来ない。

大型キメラの口に光が集まる。

「く、無念でござる」

「くそう~」

そして、俺達を飲み込む程の巨大なレーザーが俺達に向かって放たれた。

 

 

あれ?

ゆっくりと目を開ける。

まだ生きてる?

隣を見ると彼女も生きて前を驚いた顔で見ていた。

俺もつられてそちらを向いた。

そこには大きな背中があった。

赤いしっぽ。

大きな翼。

オレンジの長い髪。

その人はゆっくりと振り向く。

腕を組んだその上から豊満な胸も見えた。

2本の竜の角を持った彼女は、俺に何かを投げてきた。

咄嗟に受けとる。

それは1対の小手だった。

「もし、この先うちの天使が困っていたら、それを貸して気合いをいれてやって欲しいです」

「あなたは?」

「もう、時間がないですよ。

脱出方法あるんですよね?」

「あ、はいでござる」

「なら、すぐに脱出を」

「は、はい」

隣で彼女が機械を動かす。

空間にワープホールが現れた。

「急ぐでござるよ」

俺は手を引かれワープホールに入る。

「待って、あなたは?」

俺は1人残っているドラゴンの女性に声をかけた。

彼女は何かを考えながら一言だけ。

「わたしはココにいる」

と聞こえた。

 

 

「なんとかなったでござるな」

そこは見たことのない場所だったが、元の世界とだけは分かった。

通ってきたワープホールも消えている。

「あの人は大丈夫なんでしょうか」

一緒に逃げなかった彼女の事が気になった。

「それなら大丈夫でござろう。

どうしてと聞かれたら答えられないでござるが、あの人なら大丈夫と思えるでござるよ」

彼女は強く頷いた。

「分かりました」

俺はその言葉を信じる事にした。

いや、何故か信じられた。

アイテムボックスを見る。

そこには赤竜帝の小手が入っていた。

「それでは、ここで失礼するでござる」

侍の彼女はまた、機械を使ってワープホールを作り出す。

「助けてくれてありがとうございます。

最後に名前だけでも聞いていいですか?」

彼女はしばし考える。

そして、にこやかに笑った。

「分かったでござる。

本当はまだ話してはいけないと言われているけど、キミ殿の戦いぶりに感動したでござるからな。

名前は風真いろはでござるよ」

その言葉を聞いた瞬間、俺のステータス画面が勝手に開く。

そして、ホロメン一覧の画面が表示され、一番下に新たに5つの推しマークが出現した。

その中の1つが点灯する。

《スキル【運命】が発動しました》

「やっぱりホロメンだったんですね」

「まだ、表だって活動は控えているでござるけどね。

なんせ秘密結社でござるから。

では、またどこかで会おうでござる」

「ドロン?ですか?」

「え?

のっと!ニンニン!!いえす!ジャキンジャキン!!でござるよ」

そう笑いながらいろはちゃんはワープに消えていった。

いろはちゃんが行った後、俺は安堵感にその場に座り込む。

1日でいろいろ起きすぎだよ。

しかし、本当に助かってよかった。

俺はその場に寝転がった。

空が近い気がする。

俺の横を雲が通りすぎる。

マップを開いてみた。

そこにはきちんと大地が表示される。

その世界の名は。

【ふぉーす】

天空に浮かぶ世界だった。




新たなホロメンと伝説のホロメンの登場です。
そして、新たな世界【ふぉーす】であなたは誰と出会うのか?
それでは次回もお楽しみに


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ちょっと俺に説明させろ その5

電子の狭間から無事に帰還したあなたは、アイテムのテントを使ってログアウトした。
そして、次の日ログインしたあなたはこれからの事を考える。


「はぁ、これからどうするかなぁ」

ログインしたこの世界【ふぉーす】で寝転びながら考える。

昨日はあの後すぐにログアウトした。

元の世界だったら、道具屋で買ったテントのアイテムが使える為に安心してログアウトできる。

ちなみに前回もテントは確認済みで使えなかった。

上半身を起こす。

俺が寝ているのはワールドの端っこ。

もうすぐそこは崖だ。

ただ、前回の世界と違うのは下を覗くと大地が見える事。

落ちたらたぶんあの大地に激突してリスボーンかな。

さてと、俺は立ち上がり辺りを見回す。

少し探索をするか。

ここにいてもしょうがないしな。

そう思って歩きだす。

すると遠くの方から手を振りなが誰かがこちらに走ってきていた。

2人?

「おぉ~い」

なんだ?

だんだん近づいてきてその姿がはっきりし始める。

「あ、久しぶりだなぁ~」

俺も相手が確認できて手を振った。

「久しぶりだなぁ~じゃないわ、昨日リアルであったろうが」

そう、それは俺の友人とカーディアさんだった。

「いや、だからお前には言ってないカーディアさんに言ったんだ」

「はい、そうですか」

少し怒る友人。

「お久しぶりです」

そんな友人を見ながらカーディアさんは笑顔で挨拶してくれた。

「それより、まじでこっちに来てたんだな」

そう、昨日ログアウトした後、友人から連絡があり俺の居場所がおかしな表示になっているから大丈夫かと連絡がきた。

詳しくは説明せず、【ふぉーす】にいる事だけを伝えたのだが、まさか来てくれるとは。

「よく俺の場所分かったな」

「前にも言ったろその為にカーディアさんに手伝ってもらってるんだよ」

「あ、なるほど。

友人がお世話になってます」

確か、前回もそういう理由で手伝ってもらってたな。

「いや、お前が神出鬼没すぎるんだよ。

探しに行く俺の身にもなれ」

「いや、頼んでないんだが。

ま、ありがとう」

「はいはい」

「仲良いんですね」

そんな俺達を見て笑うカーディアさん。

『腐れ縁なだけです』

そっか、前にぺこみこコンビに突っ込んだ時、こういう気持ちだったのかな?

と頭によぎった。

「それより、これからどうするのか決まってるのか?」

「いや、まだ。

ま、まずは近くの町にでも行ってから考えようかと思ってる」

「なるほど。

なら、俺達が案内してやるよ」

「お、助かる」

俺は友人とカーディアさんとパーティーを組んだ。

友人の話ではここから一番近いのは【ふぉーす】の2番目の町なのだそうだ。

まずはそこを目指す。

「そういえばずいぶんレベル上がってないか?」

「え?」

友人に言われてステータスを確認する。

本当だ。

76になってる。

「いつの間に」

「おまえ、レベルアップの時の通知切ってるだろ」

「あ」

そういえば、前にうるさいなと思って切ってたの忘れてた。 

「ま、そこまでレベル高いならやれる事もあるさ」

そう友人は笑っていた。

何させる気だこいつ。

そして、俺達は【ふぉーす】にある第2の町を目指すのだった。

 

 

旅は順調。

友人はレベル99からリセットして今は60

らしい。

カーディアさんは97でそろそろ最大だ。

この付近のモンスターなら負ける事なく進めた。

「ほら、これが【ふぉーす】の第2の町だ」

西洋風な家が立ち並ぶ町で、住人は天使や悪魔、羽のある亜人が多かった。

「ここは天界って感じだから羽持ちの種族が必然的に多くなる。

もし、エリアから落ちても羽があれば生き残れるからな」

と友人。

「じゃ、やっぱり落ちたら」

「死ぬな。

ま、落ちるやつはそうそういないけどな。

崖から落ちるとレスキューと呼ばれるロボットが助けに来てくれる仕様になっている。

しかし、そんな事も知らずにここに来たのか?」

友人の目が怪しく光る。

このパターンは。

「はぁ、本当に初心者はいつまでたっても手がかかるな」

俺はカーディアさんの方を向いた。

あ~あという顔で俺を見て笑った。

俺もしまったという顔をしてたんだろうな。

「じゃ、店に入るか」

俺達は友人の後について店に入る。

そして、例のごとくあれが始まるのだった。

 

酒場に入り席につく。

まだ昼前で酒場にも人は少なかった。

「ご注文はいかがしましょうか?」

ウェイトレスが注文を取りに来た。

「ラミィ水2つとカーディアさんどうします?」

ふ、友人より先に言ってやる。

ラミィ水はここにはさすがに売ってないだろうが、先手はうった。

俺がどや顔していると、友人が驚愕な顔をする。

「な、なんで知ってるんだ、ここにラミィ水が売り出された事を」

売り出されたんかい。

「す、すごい」

いや、カーディアさんもそんなびっくりしないで。

「いや、知らんかったけど。

ここも売ってるの?」

「ああ、最近ラミィ水を売りにある冒険者が…」

「ああ、ねねちゃんね」

「せめてオブラートに包め~」

「いや、もうそこまで売りまくってたらラミィちゃんに気がつかれてるだろう」

「あ、私はホットミルクでお願いします」

「はい、分かりました」

ウェイトレスはさっと厨房に戻っていった。

「そうかもしれんが」

「で、話があるんだろ?」

「ん?あ、そ、そうだ」

そして、彼の説明が始まった。

ここ【ふぉーす】は俺が思っていた通り、【ファンタジー】【ゲーマーズ】【バーチャル】の空に浮かぶ浮島が複数存在する世界だ。

そのせいで、この世界が他の世界より広大らしい。

しかし、浮島が複数ある感じなので大地の広さは他の世界の方が多いという事だ。

それで、この世界は主にダンジョン攻略をするのが主流の世界で、各浮島には大小様々なダンジョンがあるらしい。

ただし、ほとんどが高レベルのパーティー推奨ダンジョンらしい。

それで、友人はここを第2の拠点にしてるのか。

ダンジョンからは様々な武器や防具、そして魔導書が見つかるらしい。

「そこでだ、今からどうだ?」

「ん?何が?」

突然の申し出に聞き返してしまう。

「いや、何が?じゃなくてダンジョン攻略だよ」

「ま、特に武器は要らないし、防具も今は興味ないしな」

「魔導書はどうだ?」

「う、それは欲しいかも」

「だろう?

ドロップで魔導書が出た場合、優先権やるよ。

だから行こうぜ」

友人がしつこく誘ってくる。

「ま、別にいいけどカーディアさんはそれで良いんですか?」

「はい、構いませんよ」

すんなりオッケーされたんだが?

「久しぶりのダンジョン探索なので、それに魔法は今限界まで所持してますから」

「そうなんだ」

「で、どうするんだよ」

「分かったよ」

「よし!」

友人はガッツポーズ。

「そこまで喜ぶ事か?」

「いや、最近【ふぉーす】で更新があったな。

新しい装備や魔法がダンジョンに追加されたんだよ」

「なるほど、それ狙いって事か」

「じゃ、早速向かおうぜ」

友人はラミィ水を飲み干す。

「元気だなぁ」

俺もラミィ水を飲み干した。

「では、行く前にアイテムを購入しておきましょうか」

『賛成』

俺達はまずは道具屋に向かった。

俺はさっき使ったテントの補充とポーションをいくつか購入。

先に店を出る。

そうだ。

俺はアイテムボックスにある赤竜帝の小手を装備する。

お、すげぇ。

防御力以外にも攻撃力や特殊能力が付く。

「お、おい、それどうしたんだよ」

「ん?」

続いて店を出た友人が俺の小手装備を見て驚く。

「これか?

もらった」

「はぁ?

それもらえるとかそんなので手に入るもんじゃねぇぞ」

「そうなのか?」

「それってドラゴンアームだろ?」

「ドラゴンアーム?」

「ああ、通称だけどな。

赤竜帝と呼ばれるホロメンに力を認められた者だけが手に入れられる物だぞ。

そして、現在その赤竜帝がどこにいるか分からないからほぼ入手不可能と言われてる」

「赤竜帝?」

「ああ、赤き竜の帝王。

全ての竜の王と呼ばれるホロメンだ。

名前は桐生ココさん。

たぶんホロメンの中でも最強の一角だよ」

「そんなすごい物なのか?」

「おまえ、なんでそんなレア装備ばかり手に入れてるんだよ」

「わからん」

「お待たせしましたってそれもしかして」

カーディアさんも俺の小手を見て驚く。

そこまで有名かこの装備。

その後、友人達に言われて装備のグラフィックをデフォルトにする。

「そんな装備してたら、赤竜帝の居場所聞きまくられるぞ」

「ま、俺も教えられないんだけどな。

あの場所がどこか分からんし」

「ま、いいや、ダンジョン攻略行こうぜ」

そして、俺達3人はダンジョン攻略に向かった。




その先で誰も予想がつかない事態が起こる事は、また次回のお話。


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【ふぉーす】のダンジョンに潜む天魔

【ふぉーす】に着いたあなたは友人の誘いでダンジョン攻略をする事に。
果たしてあなたは無事にダンジョンを攻略できるのか?


「ここが今回探索するダンジョンだ」

準備を整え、俺達は友人の案内の元、ある大きな浮島に移動していた。

浮島間の移動は転移装置がある小さな祠から移動できる為、そこまで大変ではなかった。

そして、この【ふぉーす】の特徴としてフィールドにはあまり強いモンスターは出現せず、もっぱらメインのモンスターはダンジョン内にいるそうだ。

「これか」

入り口は思ったより大きい。

しかし、他の冒険者がいないなぁ。

「あまりここは人いないんですね」

カーディアさんに聞いてみる。

「ここはそこまでレベルが高いダンジョンではないので。

普通はアイテムもそのダンジョンのレベルに合わせたものがでるので他の人達はもっと高レベルのところに行ってるんだと思います」

「ん?

じゃ、なんで今回ここ選んだんだよ」

「いや、ちょっと有力情報があってな。

なんでもこのダンジョン、隠しマップが実装されてるらしい」

友人はこそこそと話す。

「本当かよ」

「一応、有力な情報です。

うちのギルドの情報屋さんからなので」

カーディアさんも頷きながら言った。

「ま、カーディアさんが言うなら」

「おまえ、なんで俺のは疑うんだよ」

友人がちょっと怒る。

「ま、お約束か?」

「いらねぇよそんなお約束」

俺達のやり取りを見て笑うカーディアさん。

「ま、気を取り直して行こうぜ、俺の初めてのダンジョン攻略」

俺の言葉に2人は頷いた。

 

 

グギャー

「ふぅ、確かに外にいるモンスターより強いな」

鉢合わせになったゴブリンのパーティーを倒し、鬼切丸をアイテムボックスにしまう。

「ま、その点、外よりドロップ品や率が高いけどな」

友人も武器をしまった。

今のところ、ゴブリンやスライム、大蜥蜴等の初期に出てくるモンスターだ。

前回あの不思議な場所でキメラと戦いまくったお陰か鬼切丸の使い方も様になってる気がする。

それより、俺は小手装備を外す。

「ん?どうした?」

友人が俺が小手を外したのを見て言う。

「いや、これやっぱり強すぎるわ」

そう言って赤竜帝の小手をアイテムボックスに入れ、前に着けていた小手を装備する。

「強い方がいいんじゃないですか?」

カーディアさんも不思議そうに聞いてくる。

「いや、強すぎるとそればっかりに頼ってしまって防御が疎かになってしまいますから」

「こいつ変なところ真面目だから」

「こだわりなんですね」

カーディアさんが優しく言ってくれた。

そう、ゲームといえども頭で考えた通りに動く体だ。

リアルと変わらない。

だから、なるべく思い通りに動かせるようにしておきたい。

だから、この装備は本当にピンチの時まで取っておこう。

「ほら、行くぞ」

「おう」「はい」

友人先頭に俺達はダンジョンの奥を目指すのだった。

 

徐々に強くなる敵だったが、俺達のパーティーは苦もなく進む。

1度大きなクエストを経験した事で連携は上手く取れている。

それに俺と違って2人はベテランだ。

このレベルのダンジョンでは追い込まれることはないんだろう。

「お、やっとでたな」

モンスターパーティーの中にいたゴブリンメイジがお目当てのものを落としたらしい。

「ほら、魔導書だ」

友人から1冊の本を渡される。

「治癒の魔導書?」

「ああ、ヒールを覚えられる」

「お、ありがたい」

「本当はもっと高レベルダンジョンで落ちるやつだけど、難易度緩和でこのダンジョンでも落ちるように調整されたんだよ。

おまえ、いつもどこか行くからな、それは習得しとけ」

「おまえ」

友人はこれを俺に渡す為にこのダンジョンに潜ってくれたのか?

「ま、俺は目当ての稲妻の投げ槍が複数手に入ったから良かったけどな」

「おい!」

感動した俺の気持ち返せよ。

「本当に素直じゃないですよね」

意味深にカーディアさんは友人を見て笑っていた。

「ん?」

ふと、俺は何もない壁から声が聞こえたような気がした。

そっちに行ってみる。

「おい、どうしたよ?」

友人が後についてくる。

「いや、この壁から声が聞こえたような気がしてさ」

俺はその壁に触った。

すぶ

「え?」

ずぶずぶ

壁に手が腕がめり込む。

「な、なんだ?」

「おい、まて」

「だ、大丈夫ですか?」

友人とカーディアさんが俺のめり込んでない手を取って引っ張ってくれるが、これは引き込まれる方が強い。

「ヤバい引き込まれる、手を放してくれ」

「そうはいくか」

「そうですよ」

一生懸命引っ張ってくれてるが。

「う、うわぁ~」

そして、俺達は壁に飲み込まれた。

 

「あいたたた、大丈夫か?」

俺は2人に声をかける。

「ああ。しかし、なんだここ?」

「隠しマップでしょうか?」

カーディアさんは立ち上がって周りを見渡す。

そして、目をつむり何か呟く。

「本当ですね、この先に3体、何かがいます」

たぶん探索の魔法を使ったんだな。

「よく聞こえたな話し声」

「いや、なんか聞こえた」

そう、何故か聞こえたんだ。

俺は鬼切丸をアイテムボックスから出す。

友人も武器を構えた。

ゆっくりと先に進む。

隠しマップだ、もしかしたらめちゃくちゃ強いモンスターかもしれない。

この角を曲がれば遭遇する。

俺は後に続いている友人達に振り返り頷く。

2人も頷いた。

準備万端だ。

行くぞ。

俺は角を勢いよく曲がった。

そして、吹き飛んだ。

な、何が起きたんだ?

勢いよく壁に背中からぶつかる。

「あ、やばい」

「な、なにやってんの、あんた。

プレイヤーだったじゃない」

吹き飛ばされた先を見ると拳を突き出す白い天使と慌てる紫のツインテールの女性がいた。

やばい、この一撃は…

「お、おい」

「大丈夫ですかぁ~」

友人とカーディアさんの声を気を失う前に聞いた気がした。

 

 

「まさか、ここにプレイヤーさんが来るのは思わなくって」

「いやいや、まさかそんな場所とは知らなくてすいません」

「でも、よかったぼく手加減できて」

「本当よ、本気だったら死んでる。

ホロメンで初めてのプレイヤーキラーになるとこだったわよ」

「いやいや、全面的にあいつが悪いんですよ」

おい、都合のいいように言ってんじゃない。

「い、いたぁ」

「お、起きたか?」

「起きたかじゃねえよ」

しかし、なんか後頭部柔らかいんだが?

「気がつきましたか?」

めちゃくちゃ綺麗な人が覗き込んでくるんですけど、真っ赤な瞳に吸い込まれそう。

「なんだなんだ?

美人の女性の膝枕に惚けてるのか?」

「う、うるさい」

俺はゆっくりと起き上がる。

「す、すいません」

その美人の女性にお礼を言った。

「いえいえ」

「でも、よかったです。気がついて」

カーディアさんも嬉しそうに言ってくれた。

友人だけだよ、心配してないの。

「ま、気がついたみたいだから、取り敢えず自己紹介でもしとく?」

紫色のツインテールの女性が言った。

「そうですね、こいつたぶん分からないでしょうから」

おい、友人言いすぎだぞ。

「じゃ、トワからいくよ。

ホロライブワールド第四世代の常闇トワ様です。

よろしく」

お~

友人とカーディアさんが拍手する。

《スキル【運命】が発動しました》

「じゃ、次はぼくね。

ホロライブワールド第四世代かなたんこと、天音かなたです。

よろしく~」

お~

友人とカーディアさんの拍手第2弾。

《スキル【運命】が発動しました》

「じゃ、アスモさんもどうぞ」

友人がさっきの女性を促す。

「え?私もですか?私はただの運営に雇われた調査員ですので…」

「いいからいいから」

友人に急かされてアスモさんも自己紹介する。

「えっと、運営からこの隠しダンジョンの調査を依頼されました美色アスモです」

お~

友人とカーディアさんの拍手第3弾。

ん?

この人はホロメンじゃないみたいだな。

その後、俺達も簡単に自己紹介した。

「で、ここって何なんですか?」

俺はかなたちゃんに聞いてみる。

「ここ?

ここはね、この浮島の中枢、浮遊石に繋がるダンジョンだよ」

そう明るく答えてくれた。




ホロメンの天使と悪魔の代表登場です。
浮遊石に続くダンジョンで3人は何をしていたのか?
次回をお楽しみに。


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最強の名は

友人達とダンジョン攻略中に隠しダンジョンに入ってしまったあなた達。
そこで天使と悪魔のホロメンと出会うのであった。


「なるほど、それで3人で」

「そうなのよ」

トワ様は少し疲れたように言う。

俺達は隠しダンジョンを進みながら何故ここにかなたちゃんとトワ様、アスモさんがいるのか聞いていた。

このダンジョンが最近更新された事は友人から聞いていた。

そのバージョンアップで浮遊石に向かうダンジョンに異常がないか運営がアスモさんに調べるように依頼してきた。

それに用心棒役に2人があてられたらしい。

アスモさんは別会社の人で、主にこういったバグ処理を行う仕事をしているとか。

「まさか、ふだん関係者しか入れない場所に入ってくるとは思わなかったし」

トワ様はあきれた顔でこちらを見る。

「すいません」

「ま、それ持ってるんじゃしかたないとこもあるけど」

指で胸元を指差される。

「ははは」

笑うしかない。

「そろそろ着くよ」

先を進んでいたかなたちゃんが手を振ってこっちを呼ぶ。

俺達は先を急いだ。

「すごい」

カーディアさんが巨大な宝石を見て呟いた。

いや、確かに圧倒される大きさだ。

「これが浮遊石か」

「見たことあるのか?」

俺は宝石を見上げている友人に聞く。

「まさか、こんなでかいのはないよ。

話には聞いたことあるけど、実物は初めてだ」

「これがなくなったらこの島は落ちちゃうんだけどね」

かなたちゃんが浮遊石を見上げながら言う。

「本当にすごいですね、欲しくなっちゃいます」

『え?』

俺達が入ってきた入り口に誰かが立っている。

「何者だ!」

トワ様はアスモさんを庇うように前に出て、その人物を見る。

「おまえは小姫マモリ!」

俺は見たことあるその女性の名を言った。

「へぇ、覚えててくれたんですね。

その節はどうも」

「な、なん、なんだあれ?」

友人が武器を構えてマモリを見る。

「詳しくは俺も分からない。

ただ、あいつは俺の敵だ」

俺も鬼切丸を出す。

「そう邪険にしないで仲良くしましょうよ」

マモリはそう言って笑う。

「それよりいいんですか?

ここで私の相手をしてる間に私の呼んだキメラが町に向かってますよ」

「な?なんだと」

俺はあの大召喚?を思い出す。

「え?どういう事?」

かなたちゃんが俺に聞いてくる。

「あいつらモンスターの継ぎ接ぎを呼ぶ事が出きるんですよ」

「まさか、大召喚ですか?」

アスモさんが驚いたように言う。

「え?」

俺はアスモさんを見た。

「まさか大召喚なんてホロメンしか使えないんじゃないのか」

友人が驚く。

「いや、確かに使ってくるんだ」

「カーディアさんは帰還魔法は覚えてますか?」

かなたちゃんが聞いた。

「はい、使えます」

頷くカーディアさん。

「なら、2人で町に戻ってこの事を伝えてください」

「でも」

かなたちゃんの言葉に即返事が出来ないカーディアさん。

それもそうだろう、目の前にいるマモリは今圧倒的な力を出しながらこちらを見ている。

「任せて、トワとかなたがいたら大丈夫だから」

「分かりました」

「本当はアスモさんも戻ってもらいたいんですが、確か帰還魔法はフレンド登録してる人だけでしたよね?」

「はい、その通りです」

かなたちゃんの言葉に頷くカーディアさん。

「俺が守ります」

俺はアスモさんの前に出る。

「分かった、キミに頼むよ」

トワ様はそう言ってかなたちゃんの横に並ぶ。

「じゃ、俺達は行く。

死ぬなよ」

「バカ言え俺が死ぬかって」

「そうだな、信じてるぞ」

「行きます」

その言葉と同時に友人とカーディアさんが消える。

「かなた行くよ」

「オッケー」

そして、かなたちゃんとトワ様がマモリに攻撃を仕掛けた。

 

攻防はほぼ互角。

いや、こっちは2人に対して向こうは1人。

実力的には向こうが上か?

「はは、その程度なんですか?

第四世代の先輩は」

「誰が先輩だ」

かなたちゃんの鋭い突き。

しかし、片手で受け止められる。

「うぉら~」

そんなかなたちゃんを前回転で飛び越えながらトワ様が頭上からのかかと落とし。

上手い。

「ダメですよ、そんな威力じゃ」

マモリは片手で足を掴む。

「ほらほら~」

そのままトワ様を振り回し投げる。

「トワ~」

トワ様を見るかなたちゃん。

「ほら、よそ見して余裕ですね」

「く」

マモリのパンチをどうにか腕で防御して下がるかなたちゃん。

「こうなったらあれを使う」

上手く着地したトワ様は胸に手を当てる。

「ごめん、ぼくは」

「いいよ、ここは任せて。

行くよ、デビル化」

突然周りから闇がトワ様に集まる。

そして、トワ様が眠れる力を解放する。

肌は浅黒くなり額には2本の悪魔の角。

服も体にぴったりなハイレグのような服に変わる。

そして、背中には真っ黒い天使の羽?

「えっと背中」

「それは言わない約束だから」

下がってきたかなたちゃんに止められる。

「あれは?」

「ぼくたち第四世代が持ってる特殊スキル。

そのせいで普段は他のホロメンより少しだけ弱いんだ、ぼく達」

息を整えているかなたちゃん。

「行くわよ」

デビル化したトワ様が反撃に入る。

パンチキックの連続、まるで黒い竜巻だ。

「く、さすが特殊スキルを使うと少しはやるみたいです」

そう言いながらマモリはその攻撃を受け止めている。

「そっちの先輩はしないんですか?」

かなたちゃんの方を見て言うマモリ。

よそ見しながら攻撃をいなしている。

前にあった時より強くなっているのか。

「く」

「かなたちゃん?」

かなたちゃんは胸に手を当てながら苦しそうにしている。

「無理しなくていいよ、かなた。

うらぁ~」

トワ様が渾身の蹴りを放つ。

「くぁ」

防御の上からマモリを吹き飛ばした。

「これは少し部が悪いです」

そう言ってマモリが逃げ出す。

「ま、待て!」

そのまま追おうとするトワ様。

「待って」

それを止めるかなたちゃん。

「その状態でいたら消耗が激しいから」

「分かった」

デビル化を解除するトワ様。

「でも、あのまま放ってはおけない」

「うん、行こう」

トワ様の言葉にかなたちゃんは頷く。

そして、俺達はマモリを追った。

別れ道か、右と左に別れた場所に出る。

「ぼくは右に行くから、3人は左に行って」

かなたちゃんが叫ぶ。

「なに言ってるんですか1人なんて」

俺は慌てて止める。

「いや、キミはアスモさんを守る役だから、トワお願い」

「分かったわ、気を付けなさいよ」

「また、後でね」

かなたちゃんは右に向かって走る。

「さ、トワ達も行くよ」

俺達はトワ様の後に続いて左に向かって走った。

「さっきの事なんですが、なんでかなたちゃんは力を使わなかったんですか?」

移動しながら、俺はさっき苦しそうにしていたかなたちゃんが気になっていたのでトワ様に聞いてみた。

「かなたの力はトワ達より遥かに強い力なのよ。

それこそホロメンで最強になれるほど。

でも、そのせいで少し気を抜けば暴走してしまう。

前はそれを止めれる仲間がいたんだけどね。

今はどこに行ったか、分かんないから」

最後の方は悲しそうにトワ様は言った。

「あ、あれ見てください」

前を指差すアスモさん。

指差す先は行き止まりだった。

「え?なんで?」

「まさか、あの馬鹿1人で戦うつもり?」

すぐ振り返るトワ様。

「え?きゃぁ~」

「え?アスモさん」

突然床が崩れ、落とし穴に落ちていくアスモさん。

突然の事で手を出せなかった。

「く、こんな時に、先にかなたのところに向かって。

トワはアスモさんを助けてから行くから」

「は、はい」

そのまま落とし穴に飛び込むトワ様。

俺はトワ様の言われた通り、かなたちゃんが走っていった方に向かって走る。

装備をあの小手に変えながら。

 

 

「追い付いた」

そこはダンジョンの外だった。

そこでまるで待っていたかのように腕組みしてマモリが立っていた。

「へぇ~1人なんですか?

先輩」

マモリはぼくにそう言ってくる。

誰が先輩だ。

お前みたいな後輩は持ったことはない。

くそう、腕組みして胸を強調しやがってぇ~

「どうかしました?

まさか胸見てます?」

「う、うるさい。

でかいからってえらい訳じゃないけど、あればあるでいい」

「ま、先輩とはだいたい背が同じでこの胸の差ですものね」

ああ、胸ばかり言ってきてぇ。

「でも、胸だけじゃなくて実力も私の方が上ですけど」

ぼくは胸に手を当てる。

「出きるんですか?

暴走してももう止めてくれる人いませんよ」

ぐさっとくるその言葉。

くそう。

ぼくは変身しないままマモリに攻撃を仕掛けた。

 

「うわぁ~」

吹き飛ばされて地面に激突する。

「やっぱり無理ですよ、そんなパワーじゃ。

肉叩くのとは違うんですよ、せ、ん、ぱ、い」

くそう。

でも、力を解放してもし暴走したらぼくの大切な人達まで傷つけてしまうかもしれない。

ぼくは地面に横たわったまま、立ち上がる気力を失っていた。

「はぁ~この程度ですか残念です。

もう少しやれると思ったんですけどね」

マモリが手を空に掲げる。

凄まじい勢いで力が集まりマモリの頭上に巨大な力の塊が集まった。

「世界の答えにはちょっかい出せませんでしたけど、ホロメンの1人を潰せるんですからよしとしますか。

それじゃ、さようなら。

臆病なせんぱい」

く、ごめん、ホロメンのみんな。

ココ、一目会いたかった…

 

そして、無情にマモリの手は振り下ろされる。

巨大な力の塊はまっすぐ対象に向かって進みぶつかり大爆発を起こした。

 

 

 

大爆発の砂煙が晴れる。

「なんとか間に合いましたね」

俺は防御したドラゴンの手になった両手を下げた。

「な、なんで?」

驚いた声をあげるマモリ。

正直俺も驚いてる。

「キミは。

それにその手」

俺の後ろで倒れているかなたちゃんは少し身を起こしながらこちらを見ていた。

「よくやったよ。

よくもかなたを!」

トワ様もデビル化して来てくれた。

「トワ様すいません、少し時間を稼いでください」

「オッケーおらおらおらぁ~」

「く、くそぅ」

トワ様はマモリに連続攻撃を放つ。

しばらくは大丈夫そうだ。

俺は振り向き、その場に膝をつく。

「大丈夫ですか?」

そう言いながら小手の力を解除する。

俺の手は元の人の手に戻った。

そして、小手を外す。

この小手の特殊能力は赤竜帝の力を一定時間使えるようになるといったものだった。

そのお陰であの巨大な力の塊を防ぐ事が出来た。

「う、うん。

なんとか助かったよ。

でも、そのアイテムはココの?」

ダメージは受けているが、大丈夫のようで安心した。

「それじゃ、先に謝っときますね、ごめんなさい」

「え?」

訳が分からない顔のかなたちゃん。

そして、俺は息を吸い、かなたちゃんに言った。

「なにやってるんだ、この馬鹿天使。

こんなところでやられる私の天使じゃないだろ?

立って戦って、そして、勝て!

もし、かなたに何かあったら必ず殴ってでも正気に戻してやる」

俺の言葉にかなたちゃんは目を大きく開く。

俺はかなたちゃんに手を貸しながらゆっくりと座らし、赤竜帝の小手を渡した。

「ココさんに頼まれました。

うちの天使が困ってたらこれを貸して気合いをいれてやってくれって。

全然、ココさんには似てないでしょうけどね」

かなたちゃんは小手を受け取り握りしめる。

小手はびくともしなかった。

「会ったんだね」

「はい」

「今、どこにいるの?」

「電子の狭間ってところで、今も1人で戦ってると思います。

俺も助けられました」

「そっか、ありがとう」

かなたちゃんはゆっくりと小手を確かめるように装備した。

そして、立ち上がる。

その時に光る雫が零れたような気がした。

「そこまで気合い入れられたら、頑張るしかないよね」

かなたちゃんは胸に手を当てる。

「もし何かあったらその時はお願い」

「かなたちゃんなら大丈夫だよ」

俺の言葉にかなたちゃんは笑顔になった。

「ココ、力を貸して。

いくよ、ドラゴンハート!」

そして、かなたちゃんは地面から天に伸びる金とオレンジの力の螺旋に飲み込まれた。




次回、ホロメン最強の力が解放されます。
ちなみに前作の1話、かなたちゃんとココさんの絡みシーンを読んでいただけたらもっと面白味が出ると思いますので、お時間があったら読んで見てください。
では、次回をお楽しみに


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最強の力と摩訶不思議な力

危機一髪天音かなたを助けたあなたは、桐生ココとの約束通り、赤竜帝の小手を渡し、天音かなたに気合いを入れる。
天音かなたはその手に赤竜帝の小手を装備し、力を解放した。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~」

金とオレンジの螺旋の中からかなたちゃんの雄叫びが聞こえる。

「やっと踏ん切りついたのね」

俺の隣にトワ様が戻ってきた。

「な、なんなんですかそれは」

マモリもその圧倒的な力に動けないみたいだ。

雄叫びが止み、螺旋から足が出てきた。

その足はまるでドラゴン。

両手が螺旋を中から引き裂くように出てくる。

そして、力の螺旋を引き裂きかなたちゃんが現れた。

手裏剣のような天使の輪は頭の真上に。

額には赤いエネルギーで出来た竜の角。

胸にはドラゴンの頭が付いたアーマーを装備し、手はドラゴンの手となり、手の甲の部分から少し幅広く伸び盾のようになっていた。

そして、背中には大きなドラゴンの羽と天使の羽が1対ずつ。

ドラゴンのしっぽも生えていた。

背も少し伸びており髪は金とオレンジが混ざったロングヘアーになってる。

胸も少し大きくなった?

「心配かけてごめん、トワ。

後はぼくがやるよ」

「任せるわ」

トワ様はデビル化を解きその場に座る。

ゆっくりとかなたちゃんはマモリの方に向かっていく。

「本当にあの姿見ると思い出す。

ココのドラゴニュートフォームと一緒」

「ドラゴニュートフォーム?」

「そう、竜人のココが人の姿のまま、ドラゴンの力を最大限に出す時の姿よ。

ああなったらもう誰にも止められないわね」

 

「なんですか、それ。

反則です」

マモリは下がりながらかなたちゃんに言う。

「ぼくもそう思うよ。

普段の力の解放よりすごいのに力が安定してる。

これで相手してあげれるよ。

存分に」

一瞬でマモリとの間合いを詰める。

そして、鋭い突きを放った。

「うわぁ~」

防御の上からマモリを吹き飛ばす。

すぐさま追うかなたちゃん。

そして、数十発のパンチを打ち込み、鋭いアッパーを入れた。

為す術もなく上に打ち上げられるマモリ。

そこに向かって掌を開き横に合わせるかなたちゃん。

「くらえ!」

金とオレンジの力の螺旋がマモリに向かって放たれる。

「く、これまでです」

間一髪マモリは黒いゲートに逃げ込んだ。

「すごい」

その圧倒的な強さに驚くしかない。

かなたちゃんは、こちらに戻ってくる。

「ごめん、トワ行ってくる」

そうかなたちゃんは言った。

「はいはい、構わないよ。

さっさと行ってぶんなぐってでも連れて帰っておいでよ」

「分かった」

かなたちゃんがこっちを見る。

「もう少しこれ貸しといてね」

ドラゴンアームを見せるかなたちゃん。

「はい」

俺は笑顔で頷いた。

「ココさんによろしく伝えてください。

そして、助けてあげてください」

「分かった、約束する」

かなたちゃんは浮島の外に向く。

そして、胸をそらす。

胸のドラゴンが大きく口を開いた。

その口からレーザーが吐き出され空間に当たる。

そして、空間がガラスのように割れた。

その奥には俺が落ちた時の穴が見える。

「行ってくる」

そう言ってかなたちゃんはその穴に飛び込んだ。

ゆっくりと巻き戻しされるように空間が元に戻る。

「行ったわね」

トワ様がその姿を見てポツリと呟いた。

何気なく浮島の下を見た。

近くにお城が見える。

「あれは【ファンタジー】の中心部にあるお城ね」

「お城ですか?」

「ええ、あそこには多くのプレイヤーが住んでるはずよ」

大勢のプレイヤー?

「そう言えばトワ様、アスモさんは?」

「あ、助けた後置いてきちゃった」

「く、しまった」

俺は急いでダンジョンに戻る。

「どうしたの?

そんなに急がなくても隠しダンジョンは安全よ」

トワ様の言葉を背に俺は隠しダンジョンに急いだ。

 

 

「これで今回は私達の勝ちね」

巨大な浮遊石の前に1人の女性が立っていた。

その顔にはドミノマスクが付けられている。

彼女は手を静かに浮遊石に向ける。

掌に魔力が集まる。

その威力なら軽く浮遊石を壊せるだろう。

浮遊石を壊された浮島は下に落ちる。

今ならちょうど【ファンタジー】の城の上。

甚大な被害が出るのは明らかだった。

彼女の手から魔力が放たれた。

これで終わりよ。

そう彼女は思っただろう。

しかし、魔力は浮遊石に当たるどころかすり抜けてその先の壁に当たり、壁を破壊した。

「え?」

「そうは簡単にいかないものなんですよねぇ、世の中って」

彼女は声が聞こえた方を向いた。

そこには巨大な浮遊石に座り頬杖付いたピエロのような格好をした人物がいた。

 

「まてぇ」

俺は浮遊石の場所に着いた。

やはりいた。

「アスモさん。

いや、マモリの仲間のアスモでいいかな?」

名前を呼ばれた彼女はゆっくりとこちらを向いた。

顔にはやはりマモリと同じようにドミノマスク。

服装はかなりきわどいチャイナ服を着ていた。

「まさかあなたにも感ずかれるなんてね」

「も?」

「は~い、ポルカおるか、おるよ~でお馴染みの尾丸ポルカで~す」

《スキル【運命】が発動しました》

浮遊石の上で座っている獣人の女の子が軽く手を振っている。

「おまるんなんで?」

トワ様もやってきた。

「はぁ、別に来たくて来たんじゃないんですけどね。

目的はそこのキミですよ、キミ」

俺を指差すポルカちゃん。

え?なんで俺?

「キミ、ラミィとのクエスト中にいきなり消えたでしょ」

「あ」

「それで、ラミィが心配してね、ポルカ達に探すようにお願いしてきたのよ。

ま、ラミィの言うことを聞かず、あちらこちらカンカンしたキミが悪いんだからぁ自業自得なんだけど、オレの推しの頼みだから探してた訳」

う、何も言い返せないです。

「で、ここにいるみたいな話を小耳に挟んだから来てみたら、そこのお姉さんが浮遊石を壊そうとしてたから邪魔しちゃいました。

ま、ポルカはマジシャンとかじゃないんだけどねぇ」

「え?あんたがアスモさん?」

トワ様がアスモを見て驚く。

「キミはなんで私が怪しいと思ったのよ」

アスモが俺に聞いてくる。

「俺がキメラの話をした時にあんた大召喚を使ったって言ったよな。

それだよ。

あれを大召喚だと分かるのは、あの時見たやつか、あいつらの仲間以外考えられないからな」

そう、だから俺はなるべくアスモから離れないように護衛をかって出たんだ。

「なるほどね、そんなところでバレてたとはね」

「で、どうするんだ?」

俺は鬼切丸を構える。

トワ様も臨戦態勢だ。

ポルカちゃんも体勢は変えてないが、視線はじっとアスモをとらえていた。

「いいわ、今回は私達の負けよ。

ホロメン2人を相手にできる程、私は脳筋じゃないからね」

アスモの背後にあの黒いゲートが現れる。

「それじゃ、またいつかね。

世界の答えさん」

そう言ってアスモはゲートに消えた。

しばらく僕達は様子を見たが何も起きなかった。

周辺を調べたがおかしな所はなかった。

ま、浮遊石の位置がずれてるけど。

「さて、お立ち会いこの別の位置にある浮遊石がなんとスリーカウントで元の位置に戻ります」

浮遊石から降りたポルカちゃんが目の前で指を三本出している。

「ワン、ツー、スリー、はい!」

ポンと浮遊石は煙に飲まれ、気づいたら元の位置に戻っていた。

トワ様と俺は拍手を送る。

「はい、ありがとうございます」

帽子を片手に挨拶するポルカちゃん。

「さて、ショーも終わったところで次はキミだけど?」

俺に近づいてくるポルカちゃん。

「キミすぐに【ファンタジー】に戻れるの?」

「いえ、まだやらないといけない事があるので」

そう帰還した友人達が心配だ。

「でしょうね。

なら、キミを見つけたポルカはラミィになんて言えばいいのかなぁ?」

「う」

俺はラミィちゃんから借りていたアイテムを、ポルカちゃんに差し出す。

「これは?」

「採掘の時にラミィちゃんから借りた物です。

これを持っていけば俺に会った証拠になります。

後、本当にごめんなさいと伝えてください」

俺はポルカちゃんに頭を下げる。

「あのねぇ、ポルカに頭下げられても困る」

ポルカちゃんは俺からアイテムを受けとる。

「これはラミィに返しとくよ。

後、今回の事はラミィに全部言っとく。

キミがいなかったらめちゃ大変になってたってね」

「ポルカちゃん」

「あ~あ~うるさい。

フォローするのは今回だけ。

キミはなるべく早くラミィの所に戻って頭を下げな~」

「分かった、ありがとう」

俺はポルカちゃんにお礼を言った。

「それじゃ、ポルカ終わるか」

そう言ってポルカちゃんは煙と紙吹雪の中消えた。

「案外いい人なんですね」

「ま、言動と行動がね」

トワ様はそう言って笑った。




次回は番外編
電子の狭間に向かったかなたちゃんのお話です。
では、また次回に


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電子の狭間の戦い

あなたが美色アスモの野望を止めていた時、電子の狭間に向かっていた天音かなた。
そして、電子の狭間で人知れず戦う1人のドラゴンの物語。


「さすがにこれはきついですね」

また、1匹巨大なキメラが光に変わる。

ココは1人のプレイヤーとホロメンを助けた後、集まって来たキメラを倒し続けていた。

この世界に来てから彼女は目についたキメラを倒しては身を隠す日々を送っていたが、今回は敵の増え方が異常だ。

この世界に来たのは、前の事件が起きた後に世界を回っている時だった。

彼女ははあちゃま(第三人格)に他の電子に存在する世界への移動手段を教えてもらい、様々な世界を移動していた。

そこで前回の事件のような事が様々なところで起きている事を知った。

そのせいで崩壊した世界もあるらしい。

そして、その中でまだ開発中の世界で何やら不穏な動きがあると知り、彼女はこの電子の狭間に来たのだ。

初めは何もなかった世界だったが、しばらく滞在していると継ぎ接ぎのモンスターが彷徨っているのを見つけた。

接触して会話をしようとしたが、コミニュケーションは取れず襲ってくるだけ。

ココはそんな壊れてしまったモンスターを倒し始めた。

それはいつか世界を脅かす存在になると感じたからだ。

長い間1人で戦っていたココだったが、最近彼らに出会った。

ここにこれるはずのないプレイヤーと新たにあの世界に来たホロメン。

無事に脱出させて、強敵(とも)への伝言を頼めた。

ここから無事に戻れる保証はない。

もしかしたら、ここで消滅してもう彼女の前に姿を現す事も叶わないかもしれない。

だから、伝えられてよかった。

ココは遠くを見る。

多数のキメラと巨大なキメラが数体こちらに向かっている。

今はドラゴンの姿だ。

向こうも見つけやすいのだろう。

もう、思い残す事はない。

そう彼女は思いキメラに向かう。

そこに聞きなれない音が突然聞こえた。

ドン!ドン!

と壁を叩くような音?

そして、微かに聞こえる懐かしい声。

それはどんどん大きくはっきり聞こえてくる。

「かなた?」

「ココ~!」

バリン!

ガラスが割れたように空間が割れる。

そして、あり得るはずのない光景がそこにあった。

天使が来たのだ。

「ココ~」

天使がドラゴンの首に抱きつく。

「な、なんで?」

ココは驚きながらも優しく小さな天使を手で包む。

「助けに来たよ!」

元気に答えるかなた。

その声は最後に別れたあの時とまるっきり変わっていない。

ココは人型に戻る。

「それはいいんですが、どうやって来たんですか?」

そう、ここは特別な場所。

そう簡単にはこれないはずだ。

あの侍のホロメンはたぶん転送装置を作れるような天才が仲間にいたんだろう。

でも、かなたにそんな力はないはず。

ふとかなたの手を見る。

そこにはあのプレイヤーに渡した私の小手が。

「それ?」

「あ、これ?

ココに助けてもらったプレイヤーさんに借りたんだよ」

「借りたんだよって、何借りパクしてるんですか馬鹿天使」

「いや、違う借りパクじゃないって、きちんと確認して借りてきた」

慌てるかなたを見ながら、小手を託した彼が約束を守ってくれたうえにこんなお返しまでしてくれた事にココは嬉しかった。

「さて、かなりの大群と戦ってるんだね、ココ」

かなたはまだ遠いキメラの大群の方に向く。

「ええ、肩慣らしにはいいんですけどね」

かなたの横に立つココ。

ふと横を見るといつもの光景。

そんな光景がとても懐かしく頼もしく感じた。

「どうかした?」

「ん?なんでもないです」

「じゃ、先に変わるよ」

そう言ってかなたは胸に手を当てる。

「いくよ、ブレイブハート」

金色の闘気がかなたを包む。

そして、金色の長い髪に金色の闘気を纏うかなたが現れる。

「いつ見ても激昂ですね」

「うるさいよ、ココ」

笑うかなた。

「さて、行きますか?」

「ココは使わないの大召喚?」

かなたの言葉に動きを止めるココ。

正式版からホロメンに実装された力。

確かにココにもその力は備わっていた。

「でも、今私はあの世界には存在しないから」

そう、正式版になってからココは1度もあの世界に顕現していない。

噂ではどこどこにいると言われているが、本当はあの世界にはいないのだ。

大召喚の力は推しの数によって変わる力。

ステータスにある推し画面でココを選択して推してくれる人数だけプレイヤーやその影の力を借りれる。

「ココってそんなに弱気なキャラだった?」

「え?」

かなたの言葉にココはかなたを見る。

「自分にもっと自信をもったらいいんじゃない。

いつもぼくらを励ましてくれたみたいに。

あの世界はそんなに冷たくはないよ」

かなたは笑う。

ココはその事を聞いて前を見る。

キメラの軍団はそこまで迫っている。

この世界で大召喚出来るのか?

出来てもプレイヤー達が来てくれるのか?

そこまで存在しない私を推してくれる人はいるのか?

「大丈夫だよ」

かなたはそうはっきりと言葉にした。

そして、ココは初めて大召喚をおこなった。

それはシンプルな召喚方法だった。

空に向かって竜の咆哮をあげるだけ。

でも、それは竜にとっては絶対的な集合合図。

最上位の竜があげる咆哮は全ての竜がそれに答えないといけない。

それほどの咆哮をココは大召喚として使った。

咆哮が終わる。

しかし、何も起きなかった。

ココは肩を少し落とすが分かっていた事だ。

また、まっすぐに前を見る。

「やっぱり電子の狭間なんだね」

そう隣でかなたは呟く。

「発動まで時間ラグがあるんだ」

「え?」

突如、岩の地面だった世界が大草原に変わる。

空も青くどこまでも高かった。

そして、空からオレンジ色の柱が降りてくる。

1つ、2つ、3つ、4つ…

その数はどんどん増えていく。

ココとかなたの後ろが全てオレンジ色に変わるくらい柱が降りてくる。

そして、そこから現れる特攻服を羽織った騎士達。

その真っ白い特攻服が風に揺れる。

ココはその場で下を向く。

1人の騎士がゆっくりとココに近づいた。

「なんで、こんなにいるんですか?」

ココの言葉に騎士は黙って白い大きな特攻服をココの肩にかける。

「馬鹿ばっかりですか?

存在しない者を推しにして」

かなたは隣で笑顔だ。

もう1人騎士が前に出てきた。

「そんな事気にしてたらあなたの推しなんて出来ません!」

「この日をずっと待っておりました!」

騎士達が次々と口にする。

そして『会長ご命令を!』

騎士達の声が重なった。

ココはもう下を見ていなかった。

腕を組んでまっすぐにキメラを見る。

「よし!

みんなカチコミだぁ~!

桐生会の力見せてやれ~!」

『うぉぉぉぉぉ~』

ココの号令に全てのたつのこが手を上げて答える。

「いこう、かなた」

「よっしゃぁ~!

やってやる~!」

そして、ドラゴンと天使を先頭に人知れず、【ホロライブワールド】を救う為に必要な戦いが行われた。




さて、電子の狭間の戦いがどうなったのかはまた本編で。
次回はどんな物語があなたを待ち受けるのか次回をお楽しみに。

天音かなたドラゴニュートフォーム説明
赤竜帝からもらったドラゴンアーム(籠手)を主人公から渡され装備し、第四世代特有のスキルを使い、ドラゴンハートを使用する事で変身する事が出来る姿。
天使の輪は頭の上部にその横にエネルギーで作り出された赤い角が生える。
背中にはドラゴンの羽と天使の羽。
胸にドラゴンの頭が付いた鎧を着る。
籠手は腕全体を防げるような大きさになっている。
髪は金と赤の混合色。
ドラゴンのしっぽも生えている。
足もドラゴンの足のブーツを履いているような感じ。
目は水色と赤のオッドアイ。
全体的に成長し大人な感じになっている。
胸もちょっとは大きくなっている?


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ちょっと俺に説明をしろ

尾丸ポルカの参戦で最悪の事態を避ける事の出来たあなた。
尾丸ポルカと別れ、あなたは一度常闇トワと一緒に友人達の向かった第2の町に戻るのだった。


「戻りましょうか」

ポルカちゃんが帰った後、俺はトワ様にそう言って第2の町へと急ぐ。

マモリが言ったキメラが、町に向かって放たれているとしたらかなり心配だ。

俺はあの場所でキメラの大群と戦えたが、あれはいろはちゃんの助力があったからこそ戦えた。

普通に戦っていたら死んでいたかもしれない程強いモンスターだ。

学園で呼ばれていたキメラより、格段に強くなっていたからな。

俺の横を並走してくれるトワ様の顔も少し不安な様子だった。

 

「あれ?」

町に着いた俺は前回来たのと同じような町の雰囲気に驚く。

キメラが来たんじゃないのか?

「どういう事だろうね」

トワ様も普段と変わらない町を見て不思議そうだ。

「ま、キメラの件はどうやら片付いているみたいだし、トワは一旦ダンジョンに異常が起きてないか調べてみるよ」

「はい、分かりました。

いろいろとありがとうございました」

「いいよ、こっちこそ、かなたの事ありがとうね。

おつやっぴー」

トワ様はそう言って町の方へ飛んでいった。

さて、まずは状況を確認しないと。

俺はステータスを開き連絡した。

 

「お、無事だったみたいだな」

酒場の前で俺は友人と待ち合わせしていた。

「おう、それよりどうなってるんだこれ?」

俺の問いに友人は後ろ頭をかく。

「俺もそれは話しておきたかったからな。

まぁ、中に入ろうぜ」

俺は友人と酒場に入って、個室を頼んだ。

注文も終わりいつもの飲み物がくる。

「さて、帰還してからの事を話そうか」

友人はラミィ水を一口飲んだ後、話し始めた。

友人とカーディアさんが第2の町に着いた後、すぐに友人のギルド仲間に連絡して集合してもらったらしい。

町全体に呼び掛けたら大混乱になるし、情報も曖昧だからだ。

友人達とギルメンは各門で見張っていた。

何かあれば直ぐに集合できるように集合魔法が使える人を各グループに配置していた。

そして、あれが来た。

来たのは友人達が見張っていた門だった。

しかし、それはたったの1体それも何かから攻撃を受けたようで爪で攻撃された跡があったそうだ。

手負いのそれを友人達は苦もなく討伐。

その後、後続がくるかもしれないと構えていたが一向に現れなかったらしい。

「それで、一旦解散になって俺とカーディアさん、後数名がこの町に残っていたが、何もないので残りのグループもさっき解散した」

「そうだったのか。

カーディアさんは?」

「カーディアさんもリアルで用事があったみたいで先にログアウトしたよ。

俺はお前に話をしないといけないから残ってた」

「そっか、ありがとう」

「で、心当たりありそうだな」

俺の顔を見て友人が言った。

俺は友人に話していいものか考える。

このゲームが狙われている事。

電子の狭間でキメラが大量にいた事。

そして、ドミノマスクを着けた怪しい敵の事。

「実はな」

俺はしばらく考えて、全てではなく話せそうな事だけを友人に話す事にした。

 

「なるほどな、そんな場所に行ってたのか。

それで納得がいったよ。

たぶんこっちに来たキメラは、ココさんの攻撃を受けてこちらに召喚されたか、逃げてきたんだろうな。

後続が来なかったのもココさんが向こうで倒してくれたんだろう」

確かにドラゴンなら爪も持っているし、俺が使った小手も特殊能力を発動したらすごい爪が付いた手に変わったし。

「しかし、前から思ってたがなんでそんなにお前はホロメンに会えるんだ?

前にも言ったがホロメンには普通なかなか会えないものなんだぞ。

俺だって全体イベント以外であんな個人イベント参加したのはお前と一緒になってからだ」

確かに普通なら考えられないだろうな。

俺は少し躊躇いながら懐からあるアイテムを出して机に置いた。

「おい、これって」

友人は驚きながらも小さい声で言った。

「知ってるか?」

「ああ、まさかこれって存在してたんだな」

「これのお陰で俺はホロメンとよく出会えるらしい」

「なるほどな、このアイテムはそういう効果なのか」

友人は机の上の虹色ダーツをまじまじと見ながら言った。

「さて、基本的な事教えとくと、このダーツというアイテムはデスペナで消えないアイテムであり、譲渡出来ないアイテムでもある」

友人はそう言って机の虹色ダーツを持つ。

すると一瞬で手元から消えて俺の手の中に戻った。

「本当だ」

「ま、しばらく持つことは出きるが、最終的には必ず持ち主の元に戻る。

さて、このアイテムだが、おまえときのそらさんに会っただろ?」

「え?」

俺はダーツを手に入れた時の事を思い出す。

確かあの時女性にぶつかって。

「女性にぶつかってこのアイテムを落として、拾ったらあげますって言われた」

「その人がときのそらさんだよ。

推し一覧開いて見ろよ」

俺は言われた通りに開く。

「最上段の一番左のホロメンが光ってないか」

「光ってる」

「やっぱりなそれがときのそらさんに会った証拠だ」

「しかし、お互いに挨拶したわけじゃないから、普通ならはっきりとした点灯じゃないんじゃないか」

「普通ならな。

でも、ときのそらさんは違う。

前にも言ったろ、ただ1人AIがこの世界に存在しないホロメンだって。

だから、会うだけで点灯するんだよ。

そして、運良く会えたとしても必ずダーツがもらえる訳じゃない。

もらえたとしても複数の種類からランダムでもらえるもので、その中でもあるだろうと噂されていたのが、その虹色ダーツだ。

なので、どんな効果があるのか不明だったが、まさかそんな効果があるとはな」

激レアとは聞いていたが、同じプレイヤーの友人から聞くとまじで激レアなんだなと思う。

「ま、俺には信用して見せてはくれたんだろうが、他のやつ、カーディアさんにも見せない方がいいな。

ホロメンに会うために利用されるかもしれん」

「カーディアさんにもか?」

「それはそれほどのアイテムなんだよ。

ホロメンに会いたい人間なら喉から手が出る程欲しい物だからな」

「まじかぁ」

「はぁ、それでお前は何かやらないといけない事があるんじゃないか?」

「え?」

「だってよ。

おかしいくらい運がいいっていうか、出来すぎっていうかさ」

「はは、そう思うか?」

「まぁな。

でも、なんか今は説明出来ないって顔してるからさ」

「分かるんだな」

「腐れ縁だろ」

「確かに」

2人で笑う。

「で、何をするんだ?

俺で力になれる事はあるか?」

「まずはこの推し一覧のホロメン全てに会いたい」

「はは、それはまだ誰も成し遂げられてない事だよ」

友人は笑う。

「しかし、お前なら出来そうかもな。

それで推し一覧また見せてもらっていいか?」

「ああ、構わない」

友人に推し一覧を見せる。

「はは、まさかこんなに会ってるとはな。

それもこの一番下。

まだ、情報にない人達だぞ」

「知ってるのか?」

「ああ、リアルではいろいろと配信されてるしな。

知ってるよ。

いつこのワールドに来るのかはまだ未定だったけどな。

だから、俺はこの人達の事は見てない事にする」

「すまん」

「さて、会ってない人の中で会える確率が高いのは」

いろいろと首をかしげながら考える友人。

「そうだな。

【ファンタジー】の第3の町に行ってみるのがいいかもな」

「第3の町?」

「ああ、海辺の町でな。

そこに屋敷を構えているホロメンがいる。

基本はその屋敷にいる人達だから会える可能性が高い。

ま、普通なら会えないが、お前ならそのアイテムがあるからどうにかなるだろう」

ニカッと笑う友人。

「で、誰なんだ、そのホロメンは?」

「屋敷の主は姫森ルーナちゃん、その屋敷のメイド長を湊あくあちゃんがやっている。

屋敷は町に行って人に聞けばすぐに分かるさ」

「わかったありがとう」

「後、第3の町には高レベルのパーティー必須だけどお前なら大丈夫だろ、ここまでも素で進んできてるしな」

「そうかなぁ?」

友人は笑いながら机の上に1つの石を置いた。

「これは?」

俺は石を見ながら聞く。

「これは思ひ出の石」

「思い出?」

「違うお、も、ひ、で」

「あ、ああ」

相変わらず変にこだわり強いな。

「このアイテムは使い捨てだが、使うと自分が初めて行った町に戻れる」

「てことは」

「そう、お前は【ファタジー】の最初の町に戻れるってわけだ。

何かやり残してる事あるんだろ?」

友人はそう言ってウインクする。

「いや、ウインクいいから」

「うるさい。

ほら持っていけ」

「いいのか?」

「選別代わりだよ。

ま、今度ホロメン、特にねぽらぼの方に会わせてくれるって事で手をうとう」

「ああ、恩にきるよ」

「よし、それじゃ、俺は先にログアウトするよ。

明日からちょっと予定があってな」

「そうか、いろいろとありがとうな」

「ああ、また何かあったら声かけてくれ」

俺と友人は共に店を出て、友人は宿に向かった。

手には友人からもらった思ひ出の石。

これで謝りに行けるな。

俺は地面に石を投げつける。

石は割れ、視界がぼやけ始める。

 

 

そして、俺は【ファンタジー】始まりの町の門の前に立っていた。




新たな物語に突入です。
ここからまた新しいホロメン達が次々と出てくる予定なのでお楽しみに
では、次回


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旅は道連れ世は情け~らぼ~

友人から貰った思ひ出の石の力で、始めの町に戻ったあなた。
あなたは雪花ラミィに謝るべく彼女の家に向かうのであった。


確かここがラミィちゃん達が住んでる家だったはずだけど。

俺は始まりの町にある、ラミィちゃん達が住む家に来ていた。

前に友人が言ってたが、あまり家の周りでうろうろしていると大空警察に捕まるって言ってたな。

しかし、このゲームは相手がNPCと言えども勝手に家の中には入れない。

どうしたらラミィちゃんに会えるんだろう。

少し柵の外からうろうろしてみる。

もちろん、大空警察にご厄介にならない程度に。

しかし、やはり何も起こらない。

さすがに万能ではないか。

胸元のダーツを服の上から触ってみた。

「いってきま~す」

「え?」

元気な声が聞こえて、思わず玄関を見た。

そこには釣竿を持って玄関から出てくるラミィちゃんの姿が。

「あ、えっと」

思わず声をかけたがどもってしまった。

「ん?あ、戻ってきたんだね」

ラミィちゃんは俺の顔を見てにこっとしてくれる。

それだけでなんか安心した。

「何かラミィに言いたい事あるんじゃない?」

意地悪そうに笑うラミィちゃん。

「少し時間をもらえるかな?」

「じゃ、いつもの場所で釣りでもしよっか」

釣竿を振りながらラミィちゃんはにこやかに言った。

それから、俺達は俺が初めてゲームに入った時にいた森に向かう。

そして、釣りのクエを受けた湖へ。

「ラミィちゃんの忠告聞かずにあちこちカンカンした挙げ句、心配かけてごめんなさい」

到着してすぐに俺はラミィちゃんに謝った。

「本当だよ、いきなり目の前から消えるから心配した」

ラミィちゃんは釣糸を垂らし、こっちを向きながら言った。

「あれからどうなったか詳しく聞かせてもらっていい?

おまるんには少し聞いてるんだけど、キミからきちんと聞きたいな」

「分かった、説明するよ」

そして、俺は電子の狭間に落ちた後の事をラミィちゃんと釣りをしながら説明した。

ラミィちゃんは頷きながら真剣に聞いてくれた。

「なんかキミっていろんなホロメンに出会いがあるんだねぇ。

実は浮気性?」

「い、いや、違うって」

つうか浮気してないし。

「ははは、うそうそ。

そっか、それで次はどこに行くの?」

ラミィちゃんが笑って聞いてくる。

でも、心臓に悪い嘘はやめてくださいねと心から思った。

「次は第3の町に行こうと思うんだ」

「第3の町って港町だよね?」

「そうだよ」

俺の言葉にラミィちゃんがしばらく何やら考え込む。

「よし、分かった。

ラミィも一緒に行くよ」

「え?」

ラミィちゃんの突然の申し出に一瞬焦る。

「だっていろんなホロメンと旅してるんでしょ?

ラミィも旅したいもん。

それに港町って魚介類豊富だろうし、こりゃ行くっきゃないでしょ」

「でも、ラミィちゃん子どもだし危なくない?」

「え?」

そう、ラミィちゃんは今は子どもの姿だ。

たまに成長した姿を見れる時もあるが基本、子どもバージョンで過ごしているらしい。

「あ、こっちがメインじゃないんだよ。

大人バージョンがメインだから。

でも、大人バージョンになっちゃうとママ達と暮らせないから」

しゅんとするラミィちゃん。

よほどママ達との生活が楽しいみたいだな。

「じゃ、一緒にいきますか?」

俺はラミィちゃんにそう聞いてみた。

「うん、行く!」

表情がころっと代わりにこっと笑うラミィちゃん。

「じゃ、ラミィちゃんのママ達に許可とらないとなぁ」

俺はそっちが心配だったりする。

「頑張って」

「いや、他人事じゃないんだよ」

俺の言葉にラミィちゃんは笑顔だった。

 

釣りで釣った魚を持って、ラミィちゃんの家に行く。

今ならママ達もいるらしい。

初めて入るラミィちゃんの家。

ラミィちゃん先頭で家に入らせてもらう。

ちなみに中の情報は漏らせない事になっているらしく、詳しくは言えないがめちゃくちゃ綺麗に片付けられて清潔な家だった。

ちょうどお昼だのでノエルさんとフレアさんに釣った魚を渡す。

お昼ご飯もご馳走になることになった。

そして、いよいよ本題に入る。

めちゃくちゃ緊張するんだが?

俺は経緯を話し、ラミィちゃんと一緒に旅をしていいか聞いてみた。

ママさん達はしばらく考えていた。

「ちょっと武器見せてもらっていい?」

フレアさんにそう言われて鬼切丸を机に置く。

「うわぁ、すごいことになってる」

ノエルさんは机の上の鬼切丸を見て少し驚いているようだ。

「はぁ、可愛い子には旅をさせろって言うし」

「だね。

それにこの武器見たらいろいろと加護をもらってるみたいだから」

「わかった、いいよ。

ラミィ行っておいで」

フレアさんは笑顔でラミィちゃんに言った。

「ただし、うちのラミィに何かあったらその時は覚悟してね」

ノエルさんはメイスを机の上においてにこやかに俺に言った。

圧が半端ないんですけど。

「分かりました、全力を尽くします」

椅子から立って敬礼をする。

「よろしい」

ノエルさんも満足そうに頷いてくれた。

「それじゃ、寂しいけど楽しんでおいで」

「早く帰っておいでよ」

フレアさんは優しい笑顔でラミィちゃんの頭を撫でる。

ノエルさんはラミィちゃんをぎゅっと抱きしめていた。

「うん。

それじゃ、行ってきます、ママ達」

ラミィちゃんは笑顔で手を振る。

俺も2人に頭を下げてラミィちゃんと一緒に第2の町に続く門に向かった。

途中、旅の用意としていくつかアイテムを買ったり、露店で串焼きを買ってラミィちゃんと一緒に食べる。

ふと気になってラミィちゃんにだいふくの事を聞く。

いつも一緒にいるのに今回は一緒に来てないからだ。

「今はちょっと用事で別行動中」

「そうなんだ」

ラミィちゃんが何か頼んだんだろう。

そう言うこともあるか。

俺とラミィちゃんは門に着いた。

「はぁ、久しぶりだなぁ、遠出するの」

「そうなの?」

「そうだよ、ママ達の付き添いで町から出る事はあるけど、基本はこの町にいるからね」

「へぇ」

俺はラミィちゃんの話を聞きなから門を出た。

「ちょっとそこのお兄さん」

「はい?」

声のする方を見てみるとフードを被った冒険者風の女性が1人門の外で門にもたれ掛かっていた。

いや、見覚えあるしっぽなんですが。

「キミが持ってるその串焼きを私にくれたら仲間になってあげなくもない」

そう言う女性っていうか。

「何やってるんですかぼたんちゃん」

「あれ?ばれてた?」

フードを取ったその顔はやはりぼたんちゃんだった。

そして、ぼたんちゃんの影から見慣れた顔も。

「だいふく?」

そう、だいふくが現れたのだ。

「ありがとう、だいふく」

ラミィちゃんに誉められて嬉しそうなだいふく。

「えっとこれって?」

「ししろんにも声をかけてみたの」

「ラミちゃんが旅に出るって言うからさ。

これは久しぶりに一緒に行きたいなと思って」

「そうなんですね」

ぼたんちゃんが一緒なら心強い。

「よろしくお願いします」

「いいよ。じゃ、はい」

手を出すぼたんちゃん。

「?」

「さっき言ったじゃん。

その串焼きをくれたら仲間になるって」

「はい、そう言うことですね」

俺は笑いながら多めに買っておいた串焼きを渡す。

「サンキュー」

美味しそうに食べるぼたんちゃん。

「よし。それじゃ、出発しよう!」

『おー』

元気のいいラミィちゃんの号令に、俺達は手を上げて答えた。

ちなみに他の人から見たら、俺1人で騒いでるように見えるのかなぁ。

考えないようにしよう。

そして、俺達3人は第2の町へ向かった。




今回はラミィちゃん、ぼたんちゃんと一緒の旅になります。
ま、ホロメン2人と旅するんですから向かうところ敵なしですけどね。
ちなみにどうしてラミィちゃんが子どもの姿なのかは前作を見てもらうと言うことで、次回ねぽらぼのね登場です。
お楽しみに


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ホロメンとの旅はeasyモード~ねらぼ~

雪花ラミィに無事に謝れたあなたは、ひょんな事から雪花ラミィ、獅白ぼたんと共に第3の町に向かうことになった。
果たして3人の旅の行方は。


「ふぅ、案外早く着けたね」

第2の町の入り口。

無茶苦茶順調で着いた。

道中のモンスターはラミィちゃんとぼたんちゃんが瞬殺していくからなぁ。

ホロメンとの旅に慣れると俺ダメになりそう。

「どうしようか?」

ラミィちゃんが俺に聞いてくる。

昼少し過ぎたくらいか。

「何か食べる?」

俺は2人に聞いてみる。

「そうだね」

「そうしようか」

二人の賛同を得て俺達は第2の町の酒場に向かった。

え?

子ども連れて酒場はまずいって、安心してください。

始まりの町を出た時からラミィちゃんは大人バージョンに戻ってますので。

「やったぁ、お酒飲めるぅ~」

嬉しそうなラミィちゃん。

「さすがに家では飲めないもんね」

そんなラミィちゃんを見て失笑するぼたんちゃん。

確かに子どもが家で酒飲んでたら止めるはな普通。

酒場の入り口。

中に入ろうとするラミィちゃんの後に続き俺も中に入ろうとした。

しかし、ふと視界の端を何かが通りすぎたような気がした。

俺は気になってそちらに向かう。

「どうかしたの?」

ラミィちゃんも俺が違うところに行くのが気になったのか声をかけてくる。

「なんかさっき誰か通りすぎたような」

俺は酒場の勝手口のある路地裏を覗く。

そこには始めて見るのに、何故か見慣れた格好の冒険者が。

「なになに?」

ラミィちゃんも一緒に路地裏を覗く。

「あ!」

その後ろから覗いたぼたんちゃんは何故か罰が悪そうな顔をしていた。

そして、俺はもう一度その冒険者を見る。

ある人が言った。

その人物は、「こんねねー」と挨拶するらしい。

確かに亭主らしき人に言ってる。

髪は薄いオレンジでほっかむりをしているがお団子ヘヤーだ。

ローブを羽織っているがスタイルは抜群。

『桃鈴ねね!』

俺とラミィちゃんの声が重なる。

名前を呼ばれたその女性はこちらを向いた。

「あ、やば」

「やばじゃないでしょ!」

ラミィちゃんの声に逃げようとするねねちゃん。

「ししろん捕まえて」

「はぁい」

やる気無さそうにぼたんちゃんが動く。

そして、一瞬で捕まるねねちゃん。

「う、裏切り者~」

捕まったねねちゃん何故かそう叫んでいた。

 

酒場の中の個室。

畳の上で正座させられているねねちゃんの前に、腕を組んで仁王立ちするラミィちゃん。

「ねねね!また変なの売って回ってるでしょ!」

「え?何の事かなぁ?」

しらばっくれるねねちゃん。

俺は注文したラミィ水を飲みながら事の成り行きをぼたんちゃんと一緒に見守っている。

「これはどう言う事?」

メニュー表を開けてある商品を指差すラミィちゃん。

そこにはラミィ水が。

あ、飲んでるや。

「いや、だって大好評なんだよ?」

「大好評なんだよ?じゃないわよ。

いつの間にこんなもの売ってたのよ!」

「ええ?みんなにもこの味を知って欲しかったから」

何故かねねちゃんの言葉に頷くぼたんちゃん。

ちょうどラミィちゃんの後ろ側だからラミィちゃんには気づかれてないみたいだな。

「確かに美味しいよ」

俺もフォローを入れてみる。

「でしょう!」

その言葉にねねちゃんが嬉しそうに反応する。

「でしょうじゃないし、なんでキミも普通に頼んで飲んでるのよ!」

「いや、酒場に来たらとりあえずラミィ水だから」

「とりあえず生みたいな言い方しない」

どこかで聞いたなそのセリフ。

「だって、この味はみんなに知ってもらわないとって言うんだもん」

ぼそっと呟くねねちゃんに少し汗をかきはじめるぼたんちゃん。

「黒幕がいるって事ね。

どうせ待ち合わせしてるんでしょ?

どこで待ち合わせしてるの」

「第3の町の酒場です」

素直に答えるねねちゃん。

「ちょうどよかった、今から第3の町に行くから話はその時にね!」

顔が笑ってるけど怖いよラミィちゃん。

「じゃ、今から久しぶりの再開にパーティーしよう!」

「切り替え早」

にこにこ笑顔なねねちゃんに、ラミィちゃんがすかさず突っ込む。

「店員さん!注文いいですかぁ~」

「ちょっとまだラミィ決めてないから」

「このむき海老とおでんの牛スジで」

一気に賑やかになるなぁ。

俺は楽しそうに騒いでる2人とマイペースな1人を見ながらラミィ水を味わった。

やっぱ上手いわ。

それから、ラミィちゃんとねねちゃんはお酒と料理を楽しみ、ぼたんちゃんもその2人をにこにこ見ながら料理を食べていた。

俺も何故かラミィちゃんに飲まされて付き合わされた。

しかし、2人とも強すぎるんだが?

ぼたんちゃんはお酒は飲まなかったなぁ。

一通り騒いだ後、今回はこれでお開きとなった。

俺は宿に向かい明日の朝に第3の町への門に集合となった。

「3人はどうするの?」

別れる前に聞いてみる。

「久しぶりだし、もう少しうろうろしてくる」

とラミィちゃん。

「そんなラミィに付いていく」

とねねちゃん。

「そんな飲んべえ2人のお供をするよ」

とぼたんちゃん。

「ご苦労様です」

俺はそうぼたんちゃんに言った。

「じゃ、雪民さんまたね」

いつの間にやら雪民さんに呼び名変わってるんだが?

「また、明日ね。

ねっ子!」

こっちからはねっ子になってるんだが?

「はぁ?雪民ですけど!」

「違うよ、ねっ子だよ!」

何故か言い争う2人。

「まぁまぁ、ここは間を取ってSSRB民で」

「いや、ぜんぜん間とってないんだが!」

賑やかに町に繰り出す3人を俺は笑顔で見送った。

 

 

次の日の朝、俺は待ち合わせ場所に向かった。

まだ来てないのかな?

「おはよう~」

門のところで立ってると眠そうな3人組が現れた。

「眠そうだね、何時まで起きてたの?」

「何時だったかなぁ?」

俺の問いに考えるラミィちゃん。

「ま、深夜なのは確かだね」

「盛り上がっちゃったからねぇ」

それは楽しかったみたいでよかった。

「大丈夫?

もう少しゆっくりしてから出発する?」

「大丈夫、元気いっぱいだから」

そう言って笑顔で答えてくれるラミィちゃん。

「さぁ、次の町へ出発!」

ねねちゃんも元気が出てきたみたいだ。

「それじゃ、第3の町に向かって出発」

『お~』

俺の合図に3人は元気よく答えてくれた。

 

「ねねちゃんって格闘系だったんだね」

「え?」

途中現れたリザードマンを回し蹴りで吹き飛ばしたねねちゃんに声をかける。

「ま、動くの好きだから」

「そうなんだ」

なんか意味合いが違えような。

ガァ~

懲りずに襲いかかってくるリザードマン。

ねねちゃんは振り下ろされるシミターを紙一重で避けて脇腹にパンチ。

たまらず下がるリザードマンとの間合いを直ぐに詰めてからのサマーソルトキック。

綺麗に吹き飛ぶリザードマン。

しかし、そんな服装で大丈夫か?

と聞きたくなるようなスカート履いてるんだが、何故か見えそうで見えないラインを維持している。

「いやらしい目になってるんですけど」

背後から冷たい声が。

「ははははは」

ラミィちゃんの圧を背後から感じながら俺も戦った。

やはり旅は順調。

友人が言った通りパーティーを組まずに第3の町の入り口の門に着いていた。

ま、ホロメンの人達とパーティーは組んでるんだけどね。

そして、俺達は迷わず第3の町の酒場に向かった。

 

酒場に入る。

まだ昼だが薄暗いその店内の中、俺達はカウンターに座るある人物の元に向かった。

ローブを羽織っているが、その金色の髪に大きな耳は見覚えがあった。

「どうだった?納品できた?」

俺達が近づくとその女性は振り返らずそう言った。

ラミィちゃんがねねちゃんを後ろからつつく。

「ごめん、バレちゃった」

「え?」

その言葉に振り向く女性。

その顔は俺達を見て驚いていた。

やっぱポルカちゃんか。

腕を組んで仁王立ちのラミィちゃんにポルカちゃんは間髪いれずこう言った。

「ごめんなさ~~い」




ホロライブワールド第五世代組のねねちゃん登場です。
そして、第3の町で出会うポルカちゃん。
さてさて一行は無事に目的を果たせることが出きるのか?
ラミィ水販売元を特定するのが目的ではありませんのであしからず。
では、また次回に


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ねぽらぼ~宴~

桃鈴ねねを仲間に加えたあなた達一行は第3の町で尾丸ポルカに出会う。
そして、仁王立ちの雪花ラミィのお説教タイムが始まるのだった。


さて、酒場の個室。

腕組みをして仁王立ちのラミィちゃんの前にポルカちゃん、ねねちゃん、そしてぼたんちゃんが正座して座っていた。

前回で薄々感じていたが、ぼたんちゃんも一枚かんでいたらしい。

怒られてる?3人を見ながら仲良いなぁと感じてしまう。

なんかいたずらがママに見つかって怒られてる子どもみたいだし。

「さて、食事にしよっか」

お叱りタイムが終わって、何事もなかったようにメニューを広げるポルカちゃん。

「今日もパーティー?」

「いや、2日連続はしんどいでしょ」

「オレンジジュース1つ」

早いなぼたんちゃん。

それから一通り注文して、また賑やかなお昼ご飯となった。

「それで、ポルカちゃんはなんでこの第3の町に?」

「ん?」

お肉を食べながらこちらを向くポルカちゃん。

確か第五世代組の人達の家は、始まりの町にあったはず、地図を購入した時にいろいろと調べて見つけた。

「そうだね、別にポルカが作った第五世代ハウスに誰も帰ってこないからうろうろしてる訳じゃないんだけどね」

『ははは』

ポルカちゃんの言葉に渇いた笑いをする3人。

「理由はこの前の事だよ」

「この前って言うと【ふぉーす】での事?」

「そう、実はあの時ポルカ達には見過ごせない事があってね。

あのアスモっていう人、コメント集の力使ってたでしょ」

ポルカちゃんの言葉に食事の手が止まる3人。

「それ本当なの?」

ラミィちゃんが今まで見たことない顔でポルカちゃんに聞く。

「この目で見たからね、間違いない」

「何かあるのコメント集について」

俺はポルカちゃんに聞いてみる。

「ん~いろいろとね、あったかな。

ま、今回はその事はあまり関係ないから」

言葉を濁すポルカちゃん。

「で、アスモっていう人物が気になってね、いろいろ調べたらこの第3の町によく来てたって情報を手に入れてここで調べてたわけ」

「何か進展はあった?」

「いや、ぜんぜん」

俺の言葉にポルカちゃんは首を振った。

「そういえばさ、よくねね達4人と出会えたよね?」

話を変えようとしたのか、ねなちゃんが俺に聞いてきた。

「確かに普通なら私達と出会えて、なおかつこんな感じでご飯食べるなんてほとんどあり得ないよ」

オレンジジュースを手にぼたんちゃんが言う。

「普通に女ったらしなんですよ」

何故か怒りながら言うラミィちゃん。

「いや、女ったらしじゃないから」

「あれ?みんな気がつかなかったの?

その胸元のやつのせいだと思うよ」

ポルカちゃんは俺の胸元を指差す。

『え?』

俺の胸元に3人の注目が集まる。

俺は胸元から例のアイテムを出して机に置いた。

「うわぁ、本当にこれを手に入れてる人いたんだ」

「なんだ、アイテムのせいだったんだ」

何故か残念がるラミィちゃん。

「ま、アイテムだけとは思えないほど遭遇率が高いけどね。

もう出会うのが【運命】かと思うくらい」

ポルカちゃんが俺を見ながら言う。

ま、確かに【運命】があるかもね。

「ちなみにどれくらい出会ってんの?」

ねねちゃんが興味津々に聞いてくる。

「それはラミィも気になる」

「じゃ、見てみる?」

俺はステータスの推し一覧を表示する。

「おお、これはすごい」

「まさかここまでとはね」

ねねちゃんとぼたんちゃんは一覧を見て驚く。

「あれ?でも、ねねちゃんのアイコン点滅してない?」

「え?」

ラミィちゃんの言葉にねねちゃんは自分のアイコンを見る。

「ほんとだ、なんで~」

「まさか自己紹介してないとかないよね?」

ポルカちゃんがねねちゃんを見てため息混じりに言う。

「あ」

口に手を当てるねねちゃん。

確かに俺もなんとなく分かってたから聞いてないや。

「うおほん、ホロライブワールド第5世代組オレンジ担当アイドルの桃鈴ねねで~す」

そしてセクシーポーズ?をとる。

《スキル【運命】が発動しました》

「うわぁ、改めて人の目の前でやると恥ずかしい」

ばっと座るねねちゃん。

そして、直ぐに一覧を見る。

「あ、点灯になった」

嬉しそう。

「しかし、そうかそのアイテムがあるんだよね」

ポルカちゃんは何かを考え始める。

「へぇ、第六世代組もこっちに来てたんだ」

ぼたんちゃんは一覧の最後の列を見ていた。

「わぁ、本当に?

それは嬉しいなぁ」

ラミィちゃんも一覧を覗きながら嬉しそうだ。

「ちなみにラミィちゃん達より後の世代は沢山いるんですか?」

「え?

そうね、この世界に来てる後輩ちゃんは、その5人になるんだけど、リアルのラミィ達なら後輩ちゃんたくさんいると思うよ」

「実装されてないだけって事でね」

ぼたんちゃんがそう続ける。

「詳しく知りたかったらネットで検索してみるといいと思うよ」

ねねちゃんも食事をしながらそう言ってきた。

「さて、ポルカの後輩の話は置いといて、ちょっと考えたんだけどさ。

キミが知ってるアスモって人の情報教えてくれない?」

俺はポルカちゃんに言われてアスモや他の仲間達の事を話す。

「なるほどなるほど、彼女達はホロメンの後輩だって言ってたんだ」

「ええ、そう言ってました」

「ちなみにポルカ達の後輩にあの子達はいない、リアルでもね」

「そうそう、リアルの情報はこっちに逐一更新されてるからね」

ラミィちゃんフォローありがとう。

「でね、後輩にいないんだけど、彼女達は自分達を後輩だって言うならあの子達もホロメンって括りになるわけよね、この世界では」

「そうなると思います」

確かに自分達が言ってるんだからそうなるはずだ。

「じゃ、キミと行動してたら近いうちに会えるはずだ」

ポルカちゃんがニヤリ。

「え?」

「だって、ほぼ強制的にホロメンのイベントを起こせるアイテムと人物が揃ってるんだよ?」

ポルカちゃんは俺と虹色ダーツを交互に指差す。

「さて、明日からはこの5人で行動だから、いつ仕掛けられるか楽しみだね。

怪しいと思ったらキミに声をかけるよ」

そう言ってポルカちゃんは飲み物をグイっと飲んだ。

「あ、それラミィの」

「ぐぁ、何飲んでの?これ?」

「えっと鬼神殺しかな」

「アルコール度数75」

「なんで日本酒っぽい名前なのにそんな度数あるんだよ~」

ポルカちゃん顔を真っ赤にしてその場にパタリ。

「あ、そんなに強くないんですね」

「大丈夫、そのうち復活するから」

そう言ってそれを飲むラミィちゃん。

ラミィちゃんは平気なんだ。

そして、宴はしばらく続いた。

 

「そろそろお開きにしましょうか」

俺達は酒場を出る。

日は落ち始めそろそろ夜になろうとしていた。

めちゃくちゃ酒場にいたんだな。

「そうだね、明日の朝にそこの噴水前で集合しようか?」

ラミィちゃんの提案に俺は頷いた。

「分かりました、俺は一旦ログアウトします。

また、明日の朝に」

「オッケー」

ねねちゃんも元気に返事している。

「えっと、この後ラミィちゃん達は?」

一応、聞いてみる。

「そうね、久しぶりの町だし、まだ夜はこれからだからうろうろしてみる」

とうきうきなラミィちゃん。

「そんなラミィに付いてく」

とねねちゃん。

「推しが行くのに寝てられない」

とぼたんちゃんに肩を借りてるポルカちゃん。

「酔っぱらい2人とグロッキー寸前のおもりに着いていくよ」

とぼたんちゃん。

「本当にお疲れ様です」

俺はぼたんちゃんに敬礼をした。

「それじゃ、おつらみ~」

「おつねね~」

「ポルカまだ終わらんよ!」

元気だなぁ。

「また、明日ね」

軽く手を振ってくれるぼたんちゃん。

「はい、4人ともまた明日」

そして俺は4人と別れて宿に向かった。

その途中ふと友人の顔が浮かぶ、ねぽらぼの4人と一緒だなんて言ったら俺あいつに恨まれるなぁ。

黙っとこう。

 

 

ログインして俺はさっそく噴水の場所に向かった。

たぶん俺がログインしたと同時に彼女達には通知されるだろう。

ん?もう噴水前に誰かいる?

「え?ポルカちゃん?」

そう、噴水前にはポルカちゃんが待っていた。

「やぁ」

と元気なさそうに手を上げるポルカちゃ。

「めちゃくちゃ早いじゃないですか。

どうしたんですか?」

「え?

寝坊しないように昨日からここにいるよ」

「はぁ?

もしかして徹夜?」

「そうとも言うかな」

確かに眠そうだ。

「なんで徹夜なんか」

「いやぁ、大事な時に寝坊できないなぁっと」

「つうか、今から何があるか分からないのに、無茶しないでください」

俺はアイテムボックスからテントを取り出し設置する。

普通は町中で使わないけど今回は特別だ。

「何してんの?」

「何ってこうするんです」

テントの中にポルカちゃんを放り込む。

「な、なにするんだ。

くそう、このふわふわな布団にやられてたまるかぁ~

く、負けるかぁ~

ま、負ける、か~

負けてzzz」

さすがに布団の誘惑には勝てなかったか。

そんな事をしていると残りの3人もやってきた。

「おはらみ~」

3人とも眠たそう。

「何時までやってたんですか?」

「何時だったかなぁ?」

「深夜だったのは確かかな」

「元気だなぁもう」

「あれ?おまるんは?」

ラミィちゃんは辺りを見渡す。

「ここです」

俺は隣のテントを指差した。

「テント?」

ねねちゃんが不思議そうに見る。

「遅刻しない為にここで徹夜してたみたいなので、強制的に眠らせました」

「あ、ほんとだ、寝てるわ」

ぼたんちゃんはテントの中を見ていた。

「じゃ、ラミィも寝る」

「ねねも~」

「しょうがないなぁ」

そして、3人もテントの中へ。

「え?ちょっと」

しばらくするとテントから寝息が聞こえてきた。

そっと中を覗く。

4人とも並んで仲良く寝ていた。

はぁ。

ま、昼くらいに起こせばいいか。

そう思い俺は噴水でしばらく待つことにした。




さて、ねぽらぼ集合からやっと次回本筋に入ります。
果たしてあなたは2人のホロメンに会えるのか?
また、なんやかんやで宴になるのか?
それでは次回をお楽しみに


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出会いと別れ~ねぽらぼ~

尾丸ポルカを加えねぽらぼ集合から第二次宴大会が始まった。
その中、尾丸ポルカから聞いた謎のホロメン達と出会う方法。
あなたはその方法で第3の町で彼女達に遭遇するのか?
そして、本来の目的を達成できるのか?


「ふぁ~

ん?

な、な、なんじゃこりゃ~」

あ、起きた。

時間は昼を過ぎようとした頃、テントからポルカちゃんの大声が聞こえてきた。

「ん?何~」

「おは、ねね~」

「んぁ?もう朝ぁ?」

「あさぁ、じゃなくてみんな何してんの」

みんな起きたみたいだな。

何やら中で話し始めた。

さて、これで出発できるな。

「ごめん、おはよう」

ポルカちゃんを先頭にねぽらぼのみんながテントから出てくる。

ちなみにこのテントは使い捨てで、一度寝て中から人が出てくると自動的に消滅する。

あ、中に忘れ物した場合はご心配なく、その忘れ物は消えずにその場に残ります。

 

「さて、それじゃ、当初の目的を実行しますか」

「お~」

「お、お~って当初の目的って?」

ねねちゃんがラミィちゃんに聞く。

「あ、言ってなかった?

ルーナ先輩の屋敷に行くのがこの旅の目的なの」

「聞いてないよ。

そっかぁ、ルーナ先輩に会うのも久しぶりだなぁ」

「そうそう、キミにこれを渡しとくよ」

俺はポルカちゃんからある物を受けとる。

「これって」

俺はそれを見てポルカちゃんを見た。

「昨日の夜暇だったんで作っといた。

イベントを発生しやすくする為のアイテムだと思って、なんか怪しいなと思ったら、そのアイテム渡して」

「分かったよ」

ポルカちゃんの言葉に頷く。

って徹夜して作ったんかこのアイテム。

「じゃ、行くよ~」

ぼたんちゃんが掛け声をかける。

『お~』

そして、俺達はルーナちゃんの屋敷へと向かった。

ルーナちゃんの屋敷はこの第3の町から少し離れた場所にある。

ま、離れていると言っても町から見える位置にあるんだけどね。

ポルカちゃんの話だと、ルーナちゃんの屋敷の周辺にはルーナイトと呼ばれる人達がルーナちゃんの屋敷の護衛についているらしい。

これは大空警察も認めているらしくルーナイト達は捕まらないと言うことだ。

猫又神社のおにぎりゃーの人達みたいなものかな?

「あ、ごめんなさい」

突然女性にぶつかられた。

「え?

あ、すいません」

慌てて体を支える。

「いえ、こちらこそ」

街道を考え事して歩いてたせいでぶつかってのか?

でも、俺の前にはぼたんちゃんやポルカちゃんがいるし、どうやって俺にぶつかってきたんだ?

「え、えっと離してもらっても良いでしょうか?」

「あ、ごめんなさい」

掴んでいた肩を慌てて離す。

「助けてくれてありがとうございました。

お礼にこれを」

そう言ってハンカチをくれる。

「あ、ありがとうございます」

「それでは」

そう言って女の人は町へと向かって歩いていった。

「やっぱり女ったらしだね」

すすっと横に来たラミィちゃんに言われる。

「女ったらしだぁ」

ねねちゃんからも同じように言われるし。

「違うって。

でも、どうやってぶつかって来たんだ?

俺の前には2人いたよね」

俺はポルカちゃんやぼたんちゃんの方を見て聞いた。

「いたよ。でも、忘れてない?

ポルカ達はイベントキャラ扱いだから、普段はいないものなんだよ。

だから」

ポルカちゃんが歩いている人に無理にぶつかろうとする。

しかし、スーとすり抜けてしまった。

「あ」

「そう、周りの人からは私達はいない存在なんだ」

ぼたんちゃんがそう教えてくれる。

「なるほど」

「あ、そうそう、ちなみにさっきのハンカチだけど、それをきちんと返しに行くとイベントが起きて、彼女との恋愛が楽しめる」

とポルカちゃんが笑いながら言った。

「へぇ~」

隣からのラミィちゃんの圧がすごいんですが。

「いや、行かないから。

俺は他にする事あるから」

「ふぅ~ん」

ねねちゃんも真似してるけどこっちはあまり圧がかかってこない、なんか面白がられてるような。

「ほらほら、先を急ぐよ」

ぼたんちゃんもそんな俺達を見て笑いながら言った。

そして、またしばらく進むと。

「きゃ~

誰か助けてください」

人がちょうどいない街道の脇で馬車が1台止まっていた。

外には女の人とシスターだろうか2人ゴブリンに襲われようとしていた。

「くそ、助ける」

俺は咄嗟に鬼切丸を抜き、ゴブリンに斬りかかる。

ギャギャー

「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとうございます」

女性はシスターを抱きしめ守ろうとしている。

「く」

ゴブリンは5体。

魔法使い風なやつが2体後ろにいるな。

「よっと」

横から鋭いムチがゴブリンの1体を消滅させる。

見るとポルカちゃんだ。

ダ、ダン。

ギャー

魔法使い風のゴブリンもその場に倒れる。

ポルカちゃんの横でハンドガンを構えたぼたんちゃん。

これは負けられない。

俺もゴブリン1体を攻撃する。

その攻撃の隙をついて隣からもう1体のゴブリンが。

1体目を斬った刀で隣から襲ってきたゴブリンを薙ぐ。

ギャー

ゴブリン2匹を倒した。

さすが鬼切丸だ。

鬼にはめっぽう強い。

「もう大丈夫ですよ」

女性にそう声をかけた。

俺の後ろにはねぽらぼのみんなが集まってくる。

「あ、ありがとうございます」

女性はゆっくりと立ち上がる。

「シスター

もう、大丈夫ですよ」

女性に手を差しのべられて立ち上がるシスター

「ありがとうございました」

女性はもう一度俺を見て頭を下げた。

「大変助かりました」

シスターも俺の方を見ながら頭を下げる。

「いえいえ」

「では、これで」

そう言って女性が馬車に乗り込み、その後にシスターが乗り込もうとする。

「あ、ちょっと」

俺はそれを引き留めた。

「はい?何か?」

シスターはこちらを向いた。

「これ、落としましたよ」

そう言って俺はシスターにある物を渡した。

それを見てシスターの顔が一瞬変わったのを俺は見逃さなかった。

「シスター、あなたが最後の1人なんですね」

「何の事でしょう。

これは私の物ではありません」

シスターはそのアイテムを俺に返してきた。

「そうですか」

俺はアイテムを受けとる。

「それでは失礼します」

シスターはそのまま馬車に乗り、馬車は町の方へと向かっていった。

「彼女がそうなのかい?」

ポルカちゃんが聞いてきた。

「たぶんそうだと思う。

ただ、今はまだ仕掛けて来ないみたいだから分からないけど」

「ししろん、もう大丈夫みたい」

「わかった」

ラミィちゃんに声かけられたぼたんちゃんを見ると、ちょうど手からハンドガンが消えるところだった。

警戒してくれてたんだ。

「でも、よく分かったね」

俺はポルカちゃんからもらったアイテム、ドミノマスクを見る。

あのシスターはこれを見て一瞬だけど明らかに顔色が変わった。

「お礼を言ってくる時に、あのシスターの視線が俺の後ろに向けられたんです。

もう1人の女性は俺だけを見たのに」

「なるほどね、私達が見えたって事か」

ポルカちゃんが頷く。

「で、何か違和感があったんでこのアイテムを使ったんです」

「あのシスターは第3の町にある教会にいるシスターの1人だね。

カリスマ性があるのかすごく人気が高い」

ポルカちゃんがそう教えてくれた。

「今回の事でイベントは始まってるはずだよ。

次は向こうから仕掛けて来るかもね。

その時にポルカ達がいたら手伝えるんだけど」

ねぽらぼのみんなが力強く頷く。

「ありがとうございます。

その時はぜひ」

俺はそう4人に伝えた。

その後は何事もなくルーナちゃんの屋敷に着いた。

しかし、めちゃくちゃでかいんだけど。

城みたいな上へ高いのではなく、横に広い。

俺は門の前のルーナイトにルーナちゃんに会えるか交渉した。

そして、俺達はまた第3の町に戻るはめになったのだ。

 

「ダメだったね」

酒場でラミィ水を飲みながらねねちゃんが呟く。

「そうですね」

俺もラミィ水を飲む。

ちなみにこれは最近発売された炭酸のラミィ水だ。

「なんで新商品が出てるのよ」

そう言いながらラミィ水を飲むラミィちゃん。

「え?だってここで調査する間の暇な時間もったいないし」

と、ラミィ水を飲むポルカちゃん。

「これはこれでいけるね」

頷きながらラミィ水を飲むぼたんちゃん。

「でしょ」

「でしょ、じゃないよ!」

ポルカちゃんに突っ込みを入れるラミィちゃん。

「しかし、どうするか」

俺はさっきの事を考える。

ちなみに門前払いをされた訳ではない。

門に立っていたルーナイトの人はとても丁寧に対応してくれたし、アポがなくてもルーナちゃんがいたら話を通してくれる。

そう、ルーナちゃんがいたら。

あの屋敷に今、ルーナちゃんとあくあちゃんは不在らしい。

しばらく前にこの第3の町の近くの海上にある島に出掛けているらしいのだ。

もちろん、それを追いかけるには船が必要だ。

しかし、ここ数日海でモンスターが大量発生している。

このゲームリアルを追及してるのか、モンスターに船を壊されて遭難とかするらしい。

なので、船を持ってるNPCも船を貸し出さないのだ。

「どうするか」

俺はもう一度言った。

「社長に相談してみる?」

ポルカちゃんがぼそっと呟く。

「社長?」

「あ、フレアママね」

ラミィちゃんが嬉しそうに言う。

「あ、そう言えば建設会社の社長だったね」

ゲームの初めの頃にラミィちゃんと一緒に木材運びのクエ受けたなぁ。

「そう、社長なら何か良い案を出してくれるかも」

「なら、ラミィ達が戻って事情を話してくるよ」

「え?いいんですか?」

「うん、残念だけど、そろそろラミィも帰らないといけないし」

確かにルーナちゃんの屋敷まで行くのが今回の旅の目的だ。

それは達成されている。

「それでは、お願いしていいですか?」

「任された」

「じゃ、ねねも久しぶりに第五世代ハウスに戻ろうかな」

「そうだね、私も戻るよ」

という訳で、ねぽらぼの4人とはここでお別れになった。

 

「それじゃ、お願いします」

第2の町に向かう門のところで、俺はねぽらぼのみんなを見送りに来ていた。

「うん、楽しかったよ。

久しぶりの旅」

笑顔でそう言ってくれるラミィちゃん。

「おつねね~また会おうね」

元気に手を振るねねちゃん。

「あのシスターとのイベントは始まってるから気を付けるんだよ」

心配してくれるポルカちゃん。

笑顔で手を軽く振ってくれるぼたんちゃん。

「また、お会いしましょう」

こうして短い間だったがねぽらぼのみんなとの旅は終わった。

時刻は夕方が近づいて来ていた。

俺はもう一度酒場に戻る。

何か食べた後、宿に戻ってログアウトしよう。

ラミィちゃん達がフレアさんに説明してこっちに来てくれるまで待たないとな。

酒場のカウンターに座る。

夜が近くなってきた事もあり、酒場は少し賑やかになってきている。

ふと、酒場の奥のテーブルに目がいく。

女性が1人突っ伏して何かぶつぶつ言ってる。

飲みすぎたのかな?

「へい、お待ち」

注文した品が来た。

焼き魚をつつきながら酒を飲む。

「ああ、くそ~」

「ん?」

奥のテーブルから声が聞こえたのでそちらに目をやる。

しばらく見ているといきなり女性が顔を上げる。

眼帯をしていた。

赤い目でじっとこちらを見ている。

目があった。

その赤い髪を揺らしながら、唇を舐める。

なんかめちゃくちゃ色っぽいんだが。

女性はゆっくりと立ち上がった。

赤い服、少し露出が高い服だがそのスタイルを最大限に引き出していて魅力的だった。

ゆっくりとこちらに歩いてくる。

俺は何故か目が離せず動けない。

そして、俺に向かって前屈みになり顔を近づけてきて。

「あたしが見えてるんだ」

とその女性は呟き笑った。




ねぽらぼとの旅は終わりを告げ、新たな出会いが始まります。
それでは次回をお楽しみに
年末年始の為に更新が遅れる場合もあります。


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暗い夜道にご用心

ねぽらぼと別れた後、あなたはもう一度酒場に戻り、夕飯を食べていた。
そこに1人の女性が向かってきた。
果たして彼女は何者なのだろうか?


「う、気持ち悪い」

「ええ~」

こちらに歩いてきた女性がいきなり目の前で口を押さえる。

「ちょ、ちょっと」

俺は慌てて彼女をさっき座っていた奥のテーブルに連れていき介抱した。

 

「大丈夫ですか?」

「ん、大丈夫、ごめんね」

少し落ち着いたのか、彼女はこちらを見てにこっと笑う。

「しかし、見えてるんだ。

なら、ちょっと付き合ってよ」

えっと、さっきから見えてるとか言われるんだけど幽霊とかじゃないよね?

「あのさぁ、最近友人達が連れなくてさぁ」

なんか愚痴が始まった。

「やれ子育てや仕事が忙しいとか、やれ絶賛引きこもり中とか、やれ墓守で場所を動けないとか、だぁれも相手してくれなくてさぁ」

グビグビ

また、酒飲んでるし。

「はぁ、このまま、枯れちゃうのかなぁ」

いや、いきなり枯れるとか。

「そんな事ないですよ。

こっちに近づいてきた時、目が離せませんでしたし」

いきなり来たから怖くて。

「え?そう?やっぱまだまだこのナイスボデェは捨てたもんじゃないかぁ」

胸を反らしてセクシーポーズをとる女性。

「ああ、なんか気分良くなってきたなぁ。

よし、ここはお姉さんの奢りだ。

じゃんじゃん飲もう!」

「ええ、まだ飲むんですか?」

それから俺はその眼帯の女性に付き合わされて飲むことになった。

ま、ゲーム内だから酔っぱらうという事はないんだけど、飲みすぎるとバッドステータスが付く。

簡単に言うと軽い混乱状態だ。

今回はセーブしながら飲んだお陰でそこまで強いバッドステータスじゃない。

「ああ、夜風が気持ちいい~」

俺の前を女性は楽しそうにふらふら歩いている。

よほど誰かと一緒に飲むのが楽しかったみたいだ。

「あ、そうそうここら辺でいいよ」

「はい?」

いきなり女性が振り返り俺に言ってきた。

「いやぁ、家まで送ってくれるつもりみたいだから、悪いなぁっと思って」

あ、ただ後ろついて歩いていただけなんだけど。

「あ、いえ、送ります」

慌てて俺が言うと。

「え?いいの?なんか悪いなぁ~」

千鳥足の女性は満面の笑顔になる。

ま、確かにあんなにふらふらしてたら家に着く前に倒れそう。

「じゃ、お言葉に甘えちゃおっかなぁ。

あ、でも、送り狼にはならないでねぇ」

「あ、はい」

くねくねする女性。

本当に酔ってんのかなぁ?

「で、家はどこですか?」

くねくねする女性に聞いてみる。

「あ、家?

あれ」

女性が指差すのは町の近くの小高い丘の上。

暗いから分からないけど、案外あるな距離。

「では、出航~」

「え?出発では?」

「いいのいいの」

俺は酔っぱらいの彼女について、小高い丘を登る事になった。

道中は街道もあって歩きやすかった。

「案外明るいんですね」

街道は夜だと言うのにうっすらと明るかった。

「あ、これね。

夜光虫が飛んでるからね」

確かに光る虫が飛んでいる。

ホタルみたいなものかな?

「ま、害はないし、こっちには近づいてこないから。

でも、綺麗でしょ」

街道の淡い光の中、彼女はくるりと回ってこっち見て笑った。

確かに綺麗だった。

「ええ、綺麗です」

「あれあれ?

キミはどこ見て綺麗って言っておるのかな?」

「な、虫です虫」

慌てた俺を見て笑う彼女。

しばらくそんな雑談をしながら歩いていると、街道の先に誰かが立っていた。

「知り合いですか?」

俺は彼女に聞く。

「さぁ、知らないけどファンの人かな?」

その相手は斧を片手に持ち真っ黒な全身鎧を着ていた。

「世界の答えよ、力を見せろ」

そう、鎧は震えるような恐ろしい声で呟いた。

「キミの知り合い?」

「そうみたいです」

俺は鬼切丸を抜いて彼女の前に出た。

「その武器って」

彼女は俺の武器を見て感心する。

「そっか、キミが噂の彼だったか」

そう言って彼女は俺の前に出た。

「え?」

「ここは任せて。

キミに何かあったら仲間にどやされる」

「いや、ここは僕が」

「ここは素直にお姉さんの言うことを聞くところだぞ」

「ぐぁ~」

獣の雄叫びのような声をあげながら襲いかかる黒鎧。

「それじゃ、船長の本気少しだけ見せてあげるよ」

そう言って彼女は眼帯に手を当てる。

そして。

「エンペラータイム!」

眼帯を勢い良く外した。

とたん彼女は黄金の気に包まれる。

振り上げた片手斧が彼女の頭を砕こうと振り下ろされる。

しかし、彼女はその斧を片手で受け止めた。

見た感じでもそんな片手で受け止められるような勢いじゃなかったけど。

「今の船長は無敵ですからねぇ」

ピシッピシシシシ

バキャン

斧が砕け散る。

彼女が破壊したのか?

「ん?」

彼女は黒鎧を見て何かを感じたようだ。

武器を破壊され下がる黒鎧。

「斧って言うのはこうやって使うんですよ」

そう言った彼女の手にいつの間にかハルバードが握られていた。

それも旗のような物が付いてる。

「は!」

彼女はその旗を綺麗に回しながら黒鎧との間合いを一瞬で詰め、そして薙いだ。

黒鎧は胴を真っ二つにされてその場にガシャンと音を立てて崩れた。

ガシャン?

俺は崩れた黒鎧を見に行く。

鎧だけ?

「リビングアーマーってやつみたいですね」

俺の横から覗き込む彼女。

その顔を見ると眼帯の下の目は金色に輝いていた。

「はは、船長の顔あまりじろじろ見ないでくれます?

眼帯外した顔は恥ずかしいですからねぇ」

「あ、すいません」

俺は拾った眼帯を渡す。

「あ、拾っててくれたんですかぁ?

ありがとうございます」

彼女は眼帯に受けとるとすぐに着けた。

しばらくすると黒鎧は細かい砂に代わり風に飛ばされ消えてしまった。

「心当たりあります?」

僕を見て聞いてくる彼女。

「はい、なんとなくですが」

たぶんあのシスターの差し金か?

「ま、あの程度ならキミのその武器でなんとかなるでしょうけど、今回はかっこつけさせてもらいました」

「ありがとうございます」

俺のお礼に彼女はにこっと笑った。

「送ってくれてありがとう、帰りは気をつけて」

無事に彼女を家に送り届けた。

彼女の家は小さな小屋だった。

丘の上なので、見張らしは良く眼下には海が見える。

「いえ、こちらこそ助かりました」

「それじゃ、またね」

家の中に入ろうとする彼女。

「あ、すいません」

「ん?」

彼女は扉を途中で止め、こちらを見る。

「名前教えてもらっていいですか?」

「あ、ああ、言ってなかったですねぇ」

忘れてたみたいな顔で彼女は言った。

「では、改めまして。

ホロライブワールド第三世代組、宝鐘海賊団船長の宝鐘マリンですぅー!」

ビシッと決めるポーズ。

《スキル【運命】が発動しました》

これが第三世代組最後の1人との出会いだった。




今年最後の更新となります。
今年はホロライブに出会えて楽しい1年となりました。
こういった作品を書けたのもホロライブに所属する個性豊かな方々のお陰です。
それではまた来年もよろしくお願いします。


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Xの新年会

そこは教会の横にある小屋。
そこである女性達が集まっていた。


【ファンタジー】の第3の町。

ある教会の隣にある小屋。

そこはその教会に住む1人のシスターが借りている家だった。

「はぁ、正月から暇だぁ~」

部屋の真ん中に置かれているこたつに入って1人の女子高生が横たわりながら呟いた。

「なんか特番ばかりで見るものがないですね」

こたつに入っている小柄な女性がテレビのチャンネルを変えまくる。

「ちょっと人の家でテレビ見ながら文句言うのは止めてください。

それにゲームの中なんですよここ?

なんでテレビ見てるんですか」

台所から女性の声が聞こえる。

「別にゲームの中でも私達は、ここが生きてる場所ですからねぇ、ふぁ~」

こたつで寝転びながらゴロゴロする女性が言った。

「それに、外の情報を知るのも私達には有益ですわよ」

小柄な女性からリモコンを取り上げ、ある特番に変える女性。

もちろんこたつに入っている。

「はぁ、それより、誰も手伝ってくれないんですね」

台所からおせちを運ぶシスター

「え?

お呼ばれしてる時は待ってたら良いんじゃないの?」

きょとんとした顔で女性が言う。

「あのねぇ、誰も呼んでません。

勝手に集まって来るだけでしょ」

シスターはそう言いながらもてきぱき準備していった。

「ほら、私もいれてください」

小柄な女性を横に押しながらこたつに入るシスター

「それでは乾杯しますか?」

シスターはコップを持つ。

残りの女性達もコップを持った。

『乾杯~』

「はぁ~上手い」

オレンジジュースを飲む女子高生、双犬ベルフェ。

「ふぅ、熱燗は落ち着きますね」

おちょこで酒を飲む女性、鳳凰寺ベル。

「ふふ、お正月そうそうこんなワイン飲めるなんて」

ワイングラスをゆっくりと回す女性、美色アスモ。

「んぐんぐ、やはりミルクですね」

ジョッキーでミルクを飲む、小姫マリモ。

「はぁ、なんでみんなバラバラなものを言うんですかぁ」

熱いお茶を飲むシスター

「というかなんで私だけ名前まだ出てないんですか?

名前はもう紹介されてるはずでしょう?」

「自分で言ってないからダメなんじゃない?」

ベルフェがおせちを取り皿に取りながら言った。

「ええ~」

「ま、まだきちんと出番ないですからね」

マモリもおせちを食べる。

「う、うらやましい~」

お茶飲みながらシスターはぼそっと呟く。

「ま、それは置いとくとして、どうでしたか先輩達と接触してみて」

シスターは湯呑みを机の上に置きながらみんなに聞いた。

「そうだなぁ」

「私はあまり出会ってはいませんが、ポルカ先輩は気を付けといた方がいいと思いますわ」

アスモはワイングラスを机に置きながら言った。

「あの先輩見た目に反してかなり策士ですね。

気を付けないと計画を立てても行う前に潰してきそうな感じです」

「確かにそれは私も感じました」

アスモの言葉にシスターが頷いた。

「私が最後の1人と知られたのも、彼女が何かした感じのようですし。

それに第五世代組の先輩方はみんな警戒しておいた方がいいですね。

ぼたん先輩も私と対峙してる時、いつでも戦闘に入れるように準備してましたし、ラミィ先輩も世界の答えさんのフォローがすぐに出きるように構えていた。

ねね先輩もふざけてるように見えて周りの警戒をしてました」

「さすが元コメント集を取り込んでた人達だけはあるね」

マモリは感心したように言った。

「たぶん、そのせいで他のホロメンの方々より基本能力が高いんでしょうね」

おちょこを口に当てながらベルが言った。

「それじゃまだ、その先輩達は特殊能力を使ってないんですか?」

「そうなりますね」

ベルの言葉にアスモが頷く。

「確かに注意しとかないといけないですね」

ベルがため息混じりで言った。

「ベルはどなたか気になる先輩いましたか?」

シスターがベルを見て聞いた。

「そうですね、私とベルフェは学園に潜入していましたが、戦った先輩はそのうちの2人」

「だな、それを踏まえていうと気になる先輩は何人かいるけど、特に気になったのはるしあ先輩だな。

あの人は怒らすと俺達だとしても詰む」

「確かにそれは言えますね」

ベルフェの言葉にベルが頷く。

「どうしてです?

確かるしあ先輩はどちらかというと前線に出て、自らの力で戦う感じではないのでは?」

アスモが不思議そうに2人に聞いた。

「確かに死霊を召喚して戦う感じだが、あの先輩【死屍累々】を持ってる」

「はぁ?【死屍累々】ですか?」

ベルフェの言葉に驚くアスモ。

「そうです、あの運営がネタで作った最悪の武器」

「でも、あれって極悪すぎて運営が使用禁止にして封印してなかったっけ?」

雑煮をすすりながらマモリが言った。

「ええ、確かにその通りですが、あの武器って意思を持ってるでしょ。

そのせいで武器自身がるしあ先輩を選んだ可能性があります」

「あれって確か、装備者の意思を乗っ取って、乗っ取った時に視界に入っている相手を死ぬまで追い続けるんだよね」

ベルの言葉にマモリが誰に言うのではなく聞いた。

「それで、殺されたらプレイヤー以外は無条件で消滅。

それがプレイヤーだったら全てを0に戻されて初期スタートだからな。

な、ヤバいだろ」

『確かに』

ベルフェの言葉に一同納得。

「あとは、学園のホロメンの皆さんも曲者揃いですが、はあと先輩は詳しく情報が分からなかったので要注意ですね」

ベルが続ける。

「ああ、確かにあの先輩もヤバいな。

まるっきり本性が分からん」

ベルフェも頷く。

「ま、救いは基本的に学園内のホロメン先輩は、あの場所から外に出ないですからね。

ただ、もし外に出始めたら気を付けないといけないです」

ベルがそう締めくくる。

「それじゃ、次は私だね」

マモリが元気に言った。

「私がたぶん一番多くの先輩と会ったんだけど、ガチでやばかったのはかなた先輩だね」

「ああ、あの先輩ですか」

シスターが頷く。

「たぶん、限定的な変身だったと思うけど、竜の力を借りた変身がすごい。

手も足も出なかったから」

「あの世代の先輩達は変身が出来るんでしたね」

マモリの言葉にアスモが答える。

「あの戦いの後、実は私達の大召喚がしばらく使えないようになってます」

『え?』

シスターの言葉に驚く4人。

「あの戦いは私も見ていたんですが、マモリが撤退した後、かなた先輩あろう事か電子の狭間に向かったんです」

「はぁ?

そんな事、自力で出来るのはホロメンでも限られた人数だけだろ。

ましてやかなた先輩じゃ無理のはず」

シスターの言葉にベルフェが声をあげる。

「そうなんですが、あの時にかなた先輩、竜の力を使ってましたよね?」

「あ」

「そういう事か」

何かを察した一同が納得するように言った。

そうドラゴンでもあるココはその力で電子の狭間に自力で行っているのだ。

「じゃ、まさか?」

「はい、そのまさかです」

ベルフェの言葉に頷くシスター

「私達が大召喚で呼ぶキメラ達の大半はあの電子の狭間にいるんですが、かなた先輩とココ先輩、そしてたつのこの方達に全滅させられました」

「どんだけチートなんだよ、その2人」

「それもあの場所でよく大召喚使えましたね」

アスモが感心するように言った。

「普通は使えないでしょうけど、ココ先輩とたつのこの方々の絆が強かったんでしょうね」

シスターがふぅと息を吐きながら答えた。

「さて、いろいろ聞きましたが、まだ出てきてないホロメンの先輩方がいますので気を抜かないように」

シスターが4人に言う。

「ま、俺達もまだ本気はだしてねぇからな」

ベルフェは1枚のカードを取り出す。

「確かにそうですが、その特殊スキルは最後の切り札ですから」

シスターはベルフェに言った。

「へいへい」

「では、報告会はこれくらいにして、今からはゆっくりと正月休みを過ごしますか」

『賛成~』

彼女達はもう一度各々の飲み物を持って乾杯をした。

これから彼女達、第X世代がどう物語に関わってくるかは神のみぞ知る。




明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
では、今年もこの作品をよろしくお願いいたします。


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はじめのはじめの第一歩

あなたは酒場で1人の女性と出会った。
圧倒的な強さを持つ魅惑な女性宝鐘マリン(印象は個人差があります)
さてさて、彼女はこれからあなたの冒険にどう関わってくるのだろうか。


マリン船長を家に送った後、俺は宿に戻りログアウトした。

そして、次の日から俺はフレアさんが来るまで、この第3の町でクエストを受ける事にした。

俺の今のレベルは77あれから1しか上がっていない。

友人曰くこれくらいになったらクエストではあまりレベルは上がらず、パーティーを組んでダンジョンに潜ったりスター持ちのモンスターを倒してレベル上げをするらしい。

ま、少し間が空いたら友人を誘ってレベル上げしてもいいかなと思う。

まず俺はこの町のギルドに向かった。

ギルド内の掲示板を見て1人で出来そうな採取クエや簡単な討伐クエストを探す。

さすがにホロメン関係のクエストは見当たらなかった。

ま、そうそうあるわけはないか。

俺は近くの鉱山から鉄鉱を採取するクエと、木材採取のクエを受ける。

案外ここは鉄や木が豊富に採れるらしい。

なぜクエストを受けるのかはお金を稼ぐ為と、前回友人に譲ってもらったヒールのレベルをあげる為だ。

身に付けてる魔法は使えばレベルが上がり威力が上がる。

まだ、ほんの数回しか使ってないからヒールも弱い。

待ってる間に3ぐらいまでレベルは上げときたいな。

ちなみに魔法はその魔法個別にレベルがあり10が最高レベルだ。

あと、ヒールはHPが満タンの時に使っても経験値は入らないらしく、怪我した時に使うしかない。

この採取クエでモンスターと戦いながら上げる予定だ。

さ、出発するか。

それから俺は数日間クエストを受けてはクリアしていった。

だいぶ鉄鉱が採れる場所や木材の種類別で採取場所を把握できた。

そうそう、この数日間でクエストの中に教会関係のクエストがあった。

簡単な配達クエだったので受けてみた。

もしかしたらあのシスターに会えるかもしれないと思ったからだ。

しかし、彼女はおらず神父さんの話では彼女は他の町を布教で回っているらしい。

ま、ちょっかいが来ない事にはこちらとしてはありがたいので俺はそのまま教会のクエストをクリアして、それ以上詮索はしなかった。

そして、今日も夕方近くまでクエストをしてギルドに報告、クエストクリアしたので今日の晩御飯を考えながら町を歩いていると。

「やぁ、青年頑張ってるみたいだね」

背後から懐かしい声に呼び止められた。

俺は振り返り声の主を見る。

「あ、お久しぶりです。

フレアさん」

フレアさんは笑顔で手を軽く振ってくれた。

「ごめんね、年末年始はいろいろと忙しくって遅れちゃって、話はラミィとポルカに聞いたよ」

俺はフレアさんと並んで歩いている。

「いえ、来てくれてありがとうございます。

それで、どうにかして船を手に入れたくて。

ポルカちゃんがフレアさんに相談したら何とかなるって事になって。

すいません」

「はは、いいよいいよ。

どうにか段取りはつけてきたところだから」

フレアさんは笑ってそう言ってくれた。

なんかめちゃくちゃ頼りになるんだけど。

「それで、まず船の前に必要なのが船長だよね」

「あ、確かに」

「それにはちょっと心当たりがあってさ」

そういってフレアさんは俺を連れてある場所に向かった。

連れて来られた場所はこの町の酒場。

「たぶん、だいたいここにいるんだけどなぁ」

フレアさんが店内をキョロキョロ。

「あ、いた」

フレアさんが奥のテーブルに向かう。

そこにはテーブルに突っ伏した女性が。

えっとまさか?

「また、飲んでるの?」

「え?」

フレアさんに声をかけられ顔を上げる女性。

眼帯を付けた赤髪。

やっぱりなぁ。

女性はフレアさんを見たとたん涙目になる。

「フレア~」

そして、抱きつく。

「あ~はいはい」

あやすように頭をポンポン軽く叩くフレアさん。

「ちょっとマリン。

紹介したい人がいてさ」

「ええ、そんないきなり~」

抱きついたままくねくねしだすマリン船長。

「いや、なに勘違いしてるの。

話を聞いて。

ほら、この人だよ」

俺は呼ばれたのでフレアさんの方に行く。

「数日ぶりです、マリン船長」

「ん?あ~あの時の親切なキミ」

「あれ?知り合いだったの?」

俺を指差すマリン船長と俺を交互に見ながらフレアさんは不思議そうな顔をしていた。

「なるほどね」

3人で奥のテーブルについて知り合ったいきさつをフレアさんに話した。

「ていうか飲んだ時に絡むの止めなさいってあれほど言ったのに」

「ええ、だってみんな付き合いわるいんだもん~」

甘え声を出してふてくされたフリをするマリン船長。

「もしかして、子育てが忙しいって言うのは」

「そう、フレアとノエル」

俺の問いにマリン船長がぼそっと呟く。

「あのねぇ、誤解があるようだけど、もうラミィは大人だから面倒見てる訳じゃないよ。

一緒に暮らしてるだけ」

あ、バレてるよラミィちゃん。

「大人なの知ってたんですか?」

「ん?

だってたまに夜中に隠れてお酒飲んでるし」

ははは、ラミィちゃん何やってんの。

「ま、子どもの姿のままでいるから、一緒にいたいのかなと思って何も言わないけどね。

満足したら、みんなのところに戻るでしょ」

めちゃくちゃ優しいんだが。

「じゃ、たまには飲みにこっちに来てくれてもいいじゃん」

「いや、年末年始は忙しいし、そう言ったって全然会ってない訳じゃないでしょ」

「船長はもっとみんなと会いたいの」

なんかだだこねてる子どもになってる。

「ま、脱線しまくったけど、マリンちょっと良い話があるんだけど?」

フレアさんはようやく本題に入った。

「なるほどねぇ。

船が必要でフレアが作るから、その船長が必要だと」

フレアさんの言葉に考え込むマリン船長。

「って、それって船長がやっと海賊船持てるってこと!」

驚くマリン船長。

「ま、この場合雇われだけどね」

「う、雇われかぁ」

フレアさんの言葉に考えるマリン船長だったが。

「いや、雇われでも自分の船が手に入るだからよし!」

「いや、自分の船じゃないから」

フレアさんの突っ込みも聞こえない様子で、マリン船長はめちゃくちゃ喜んでいた。

「じゃ、船長するって事でいい?」

「何言ってるのフレア。

私は宝鐘海賊団船長、宝鐘マリン!

船長をやらすなら他に誰がいるの」

興奮気味に立ち上がりガッツポーズのマリン船長。

「ま、こんなだけど腕は確かだから」

フレアさんはそう言いながら苦笑した。

「で、話は戻るんだけど」

落ち着きを取り戻したマリン船長が座ったところで、フレアさんが話し始める。

「造船の事なんだけど、実は私のところだけだと無理っぽいのよ」

「というと?」

「年末年始忙しいって話したでしょ。

実は今、お城の点検作業を頼まれちゃって、そっちに人が出ちゃってるのよね」

「そうなんですか?」

【ふぉーす】から見えたあの巨大な城の事かな?

「そう。

それでぺこらのところにも手伝ってもらおうかと思ってさ」

「ああ、ぺこら今絶賛引きこもり期間中だわ」

フレアさんの言葉にマリン船長が笑いながら言った。

「引きこもり期間中?」

「そう、たまにあるのよ。

で、そうなるとほとんど捕まらない」

俺の言葉に苦笑するフレアさん。

「でも、急ぎなんでしょ?

久しぶりにあれやる?」

マリン船長がフレアさんに聞く。

「そうね、それにはまず残りのメンバー集めないと」

「よし、久しぶりに全員集合と行きますか?」

楽しそうな2人。

「という訳でキミにも協力してもらうわね」

フレアさんはそう言って俺の肩を叩いた。

 

「さて、船長達はこの町の近くにある大霊園に行こうか」

翌朝、マリン船長と噴水で待ち合わせをした。

フレアさんはノエルさんを呼んで来るとの事で別行動をしている。

「大霊園ですか?」

「そう、そこには今回どうしても必要な人物がいるのよ。

では、出航~」

「いや、出発ですよね?」

そして、俺達は大霊園と呼ばれる場所に向かった。

 

大霊園。

そこは巨大な墓郡がある場所だ。

ちなみにこの世界ではプレイヤーに死という概念はない。

なので、この墓が誰のかは分からない。

しかし、そこは確かに多くの墓がある場所だった。

「でも、こんなに広いのに綺麗ですね」

そう、かなりの広さがある墓地なのにお墓が汚れておらずきちんと管理されていた。

「ま、ここにも管理人がいるからね」

墓の中の一本道を歩きながらマリン船長が言う。

「その管理人さんが掃除しているんですか?」

「ん~ちょっと違うかな」

マリン船長とそう話していると、突然墓の間からスケルトンが現れた。

「な、モンスター?」

俺は鬼切丸を抜いた。

「大丈夫、敵じゃないから」

マリン船長に止められる。

「え?」

そう言われ俺はもう一度スケルトンを見た。

そのスケルトンは雑巾をかけたバケツとたわしを持っていた。

「ご苦労様」

マリン船長の言葉に頭を下げるスケルトン。

そして、そのまま墓の間に入っていった。

「あれがこの墓地を掃除している正体」

「スケルトンがこの墓地を管理してるんですか?」

「ん~それはちょっと違うかな。

スケルトンはあくまで掃除しているだけで、管理人はこの奥にいるよ」

マリン船長は行く先を指差す。

そこにはガラスで出来たドーム状の建物が見えた。

「ここが管理人のいる建物」

マリン船長と中に入る。

中は見たことのない植物が生えていた。

「魔界に生息する植物らしいわよ」

あちこち見ている俺にマリン船長が教えてくれる。

「ま、魔界って言うのが本当にあるかは知らないんだけどね」

そう言ってマリン船長は笑った。

植物を抜けると円形の舞台があった。

そして、その上で踊る1人の女性。

その周りには綺麗な蝶が舞っていた。

それはとても懐かしい人だった。

「来たよ~」

マリン船長が踊る人物に声をかける。

「あ、マリン。

それに」

舞台の彼女は踊りを止めこちらを見て笑顔になった。

「久しぶりなのです」

「はい、お久しぶりです」

俺はそう言って彼女に笑いかけた。

そんな俺達を交互に見てマリン船長は不思議そうな顔をしていた。




さて、絶賛引きこもり中のぺこらちゃんに会う為。
続々と集められるホロメン達。
果たしてあなたは無事にぺこらちゃんを捕まえる事が出きるのか。


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大霊園の主

大霊園にて潤羽るしあに再開したあなた。
あなたは事の経緯を話し協力してもらえるように頼むのだった。


「本当に学園以来なのです」

舞台から降りてきたるしあちゃんは、とことここちらに近づいて来てニコニコ笑顔で言ってくれた。

「え?なに?知り合いだったの?」

マリン船長はなおも不思議そうだ。

「です。

ちょっと学園イベントに行ってた時に」

「へぇ~」

じゃぁ、キミは学園出身者なんだ」

マリン船長が珍しそうに俺を見た。

「学園は入るの難しいから、1度入るとなかなか出ようとしないプレイヤーばかりって聞いたから」

「あ、いえ、出身というか先日入学してだいたい1週間で卒業しました」

「ええ?」

俺の言葉にマリン船長はびっくりする。

ま、確かに卒業第一号って言われたしな。

「ちょっと詳しく聞かせてよ。

どうなってるのキミは?」

「そうですね、るしあも聞きたいです」

そう言ってるしあちゃんは近くのテーブルへ案内してくれた。

しばらくすると飲み物を運んでくるガイコツ。

ま、るしあちゃんがここの管理人ならガイコツが掃除したり、飲み物持ってきても不思議じゃないな。

ネクロマンサーって言ってたし。

そして、俺は飲み物をいただきながらこれまでの経緯を簡単に2人に話した。

「なるほどね、ミオ先輩に助言もらってたのかぁ」

「それなら納得です。

ミオ先輩の助言はほぼ外れのない占いみたいなものですから」

2人はうんうんと頷く。

「あ、それでるしあ」

「はい?」

マリン船長の声かけに首を傾げるるしあちゃん。

「そのホロメンとの出会いの旅でさ」

いや、いつからそんな旅番組みたいな名称に。

「船がいることになってね」

マリン船長が俺の方を向く。

あ、続きを言えばいいのかな?

「そうなんです。

それでフレアさんにお願いしたら、ぺこらちゃんの力も借りたいと言う事なんですが」

「ぺこら今、引きこもり期間中なのよ」

「あ、またですか?

充電きれちゃったのかなぁ?」

「充電言うなって」

るしあちゃんの言葉に笑うマリン船長。

「充電?」

「そうなのです。

忙しいのが続くと、しばらく自分の好きな事をしたいみたいで籠るんですよ。

ぺこら、やる時はとことんやらないと気がすまないみたいで」

ああ、何となく分かる気がする。

「じゃ、あれをやるんですか?」

るしあちゃんはマリン船長に聞く。

「そう、あれやっちゃおうかと」

「ん~」

マリン船長の言葉にるしあちゃんが何やら考え込む。

「ん?どうした?何か用事ある?」

「用事と言うかそれをするなら、しばらくここを抜けないといけないですから。

学園の時もだいぶここを無人にしてて、いくつかのモンスター逃がしちゃいましたから」

ん?

モンスターを逃がす?

「あちゃぁ。

ま、いいんじゃない?

その方がプレイヤーも楽しめるでしょ」

「えっとモンスターを逃がすってどういう事ですか?」

俺はるしあちゃんの言葉が気になったので、るしあちゃんとマリン船長に聞いた。

「ここに沢山のお墓があるのはプレイヤーのお墓じゃなくてモンスターのお墓なのです」

「ま、厳密に言うとモンスター情報が保管されてる場所みたいなものね」

「普通のモンスターは倒されても時間が立てば再ポップするのですが、星付きのモンスターは1度倒されるとモンスター情報がここのお墓に戻って来るのです」

モンスター情報が戻ってくる?

「ま、説明すると」

マリン船長は簡単にだがこの世界のモンスターについて話してくれた。

この大霊園には星付きのモンスターの情報が眠っており、管理人であるるしあちゃんが定期的に決まった数のモンスター情報を世界に送っているそうだ。

その送られたモンスター情報は世界にいる同じ属性のモンスターにインプットされ、通常モンスターから星付きに変化するらしい。

そして、その星付きが倒された場合、またその情報がこの墓地に戻ってくるそうだ。

ちなみに管理人であるるしあちゃんが、ここを制御しないとモンスター情報は勝手に世界に散らばり、星付きモンスターが増え、ゲームバランスがおかしくなるらしい。

さっき逃げたと言ったのも、予定以上のモンスター情報が世界に出てしまい、普段より多くの星付きが【ホロライブワールド】に生まれたと言うわけだ。

「それってヤバイんですか?」

俺的には星付きは強いが良いアイテムを落とすしいいと思うけど。

「あのねぇ、始まりの町の近くに星付きがうろうろしてたらどうなるか分かる?」

あ。

「るしあがここで管理するから、そういった始めから詰んでますっていう状況が起きないのよ」

なるほど。

「じゃ、るしあちゃんは今回一緒に来れないんですか?」

「そうなるとぺこらが捕まらないのよね」

悩むマリン船長。

「分かった。

ちょっと2人ともお使い頼まれてくれないかなぁ?」

そう言って何やら手紙を書き始めるるしあちゃん。

「はい、これ」

書いた手紙を渡される。

「これをある場所に持っていってほしいのです」

「ある場所?」

「うん、ここから北に行ったところにある山の中腹辺りに洞穴があるから、そこに行ってこれを渡してきてほしいのです」

「え?誰にですか?」

「それは行ったら分かるのですよ」

るしあちゃんはそう言って笑う。

「なるほどね、オッケー

じゃ、早速行くよ」

マリン船長も何かを察したみたいで元気よく手を上げた。

「それじゃ、お願いするのです」

俺とマリン船長は手を振るるしあちゃんに見送られながら、言われた場所へと向かった。

 

道中は街道沿いを歩いたお陰で、モンスターに遭遇せず山の麓までこれた。

人の行き来も案外多く、モンスターも寄り付かないのだろう。

しかし、なんでこんなに人通りが多いんだ?

山の麓に来ても特にこれといって何かあるわけでもない。

「さ、じゃんじゃん行くわよ~」

テンション高いなぁ。

山登りもきつくなく、中腹まで石階段があるぐらいだ。

あっという間に洞穴に。

なんで人が順番待ちしてるんだ?

洞穴の前に人が並んでいる。

1人ずつ入るようだ。

それにしても入ったらすぐ出てくるな。

本当にここはなんなんだ?

順番が回ってきた。

「じゃ、入ろうか」

「え?1人ずつなんじゃ?」

「あ、いいのいいの、1人ずつって訳じゃないから」

俺はマリン船長に背中を押される形で中に入る。

ま、確かに他の人から見たら俺は今1人か?

中は洞穴らしく岩肌が丸出しだったが少し明るかった。

よく見るとあのマリン船長と歩いた夜の道にいた光る虫が飛んでいた。

先に進むと行き止まりで平たい台座に1本の短剣が刺さっていた。

「これってクリスナイフ?」

「そう、そのナイフの前に手紙を置いて」

マリン船長に言われ俺はるしあちゃんから預かった手紙を置く。

「じゃ、帰ろっか」

「え?

手紙を誰かに渡すんじゃないんですか?」

「ん?

そうだよ、だからもう渡したでしょ」

「え?

だって台座に手紙を置いただけで」

俺はもう一度手紙を置いた台座を見た。

そこに手紙はなかった。

「あれ?」

「ささ、急いで戻ろう」

「え?あれ?手紙は?」

俺はまたマリン船長に背中を押されながら洞穴を出た。

るしあちゃんの元に帰る途中、マリン船長があの場所の事を教えてくれた。

あの洞穴はこの【ホロライブワールド】とは別の電子世界に繋がっている場所だという。

そこには、別の世界のホロメンがいて、この世界で遊んでいるプレイヤーがそちらのホロメンに手紙やアイテム等を送るための場所になっているらしい。

「ま、詳しくは知らなくても良いけどね」

とマリン船長は笑っていた。

昼過ぎに俺達はるしあちゃんのいる大霊園に着いた。

るしあちゃんに手紙の事を話すと、感謝され一緒に行ってくれる事になった。

結局あの手紙はなんだったのだろう?

るしあちゃんの支度も終わり、マリン船長と俺とるしあちゃんは大霊園を後にする。

その出発の時、るしあちゃんが踊っていた舞台の上で誰かがこちらに向かって手を振っていた。

るしあちゃんはその姿に手を振りつつ。

「間に合って良かった。

後はお願いするのです、オリー」

と呟いていた。

 

俺達はるしあちゃんを仲間に加え、第3の町へと向かった。

第3の町に着いた頃にはもう夕方だった。

「あ、どこで待ち合わせするか決めてなかった」

俺の声にマリン船長はこっちと手招きする。

「ん?」

俺とるしあちゃんはマリン船長の後を追った。

「たぶん、この辺りにいるんじゃない?」

海に面する洒落たお店が並ぶ道に俺達は来ていた。

「はぁ、2人にするとすぐこれなのです」

るしあちゃんもため息混じりで言っている。

「あ、いたいた」

マリン船長が指差した先には、テラスでフレアさんとノエルさんがワイングラスで乾杯しているところだった。

「あ、もう戻ってきたんだ」

見つかって罰わるそうな顔をするフレアさん。

「あ~も~」

ノエルさんも残念そうな顔をしていた。

「なに船長達にお使い頼んで自分達は楽しんでいるんですか。

こんな洒落た店に来て。

飲むなら混ぜろぅ~」

マリン船長が勢いよくノエフレに突撃する。

「ちょちょっとマリン、危ない」

ごちゃごちゃになってきた3人を見ながらるしあちゃんは小さくため息。

「本当にいつも同じような事してるんですから」

「な~に1人良い子ぶってんだぁ、るしあぁ」

マリン船長が絡みに来た。

「ああ、もうやめるのです」

るしあちゃんもマリン船長に引っ張られノエフレの方へ。

そして、今夜の飲み会が開催されるのであった。




次のお話はぺこらちゃん捕獲作戦。
果たしてはあなた達はぺこらちゃんを仲間に出きるのだろうか、こうご期待。


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今日の予測~第三世代組時々てぇてぇ~

無事に終結した第三世代組の四人。
再会の宴も終わり、あなたと彼女達の一大捕獲作戦が開始される。


第三世代組の人達と飲み会があった次の日、宿屋の1階にある広めの個室を借りてぺこらちゃん捕獲作戦の会議が行われようとしていた。

「さて、みんな状況は理解しているかね」

ニの字に並べられた机のセンターに陣取り肘を立て手を組ながら某司令官のような格好で喋り始めるマリン船長。

俺達はその対面の席に座っている。

ホロメンの中で流行ってるのかなぁ、あのポーズ?

「では、今回の作戦を説明する。

フレア作戦指揮官説明を」

「はい、マリン司令官」

マリン船長の後ろのホワイトボードの前でフレアさんが返事をする。

フレアさんを見ると軽く苦笑していた。

付き合いいいなぁ。

「では、作戦を説明します」

「あ、その前に今回の対象を第三使徒ぺこエルと名付けます」

と、マリン司令官。

「第三使徒?ぺこエル?」

「あ、団長達が第三世代組だからと思うよ。

名前はたぶんノリだね」

左隣に座るノエルさんが疑問に答えてくれた。

「なんかノリノリなんですね」

「ああいうのマリン好きだから」

はははとノエルさん。

ふと右隣を見ると、るしあちゃんはワクワクしたような顔をしていた。

「ん?」

こちらに気付き不思議そうな顔で見られる。

「いや、楽しそうだなって」

「うん、なんかワクワクするね」

るしあちゃんもこういうの好きなんですね。

「じゃ、改めて作戦説明するよ」

フレアさんがそう言ってホワイトボードに文字を書き始めた。

作戦名は第三使徒ぺこエル捕獲大作戦らしい。

「現在、第三使徒ぺこエル、通称Pは偵察員の調査で引きこもり期間中との事です」

「えっと偵察員って?」

小声でノエルさんに聞く。

「たぶん、マリンの事ね」

小声で教えてくれた。

「1人2役かぁ」

「それで、引きこもりしているPは極めて発見しづらいのがこれまでの経験上判明しています」

「あ、これが初めてじゃなくて何回かあるのよ、引きこもり」

解説役ありがとうございます、ノエルさん。

「はい」

右隣のるしあちゃんが勢いよく手をあげる。

「何かな、るしあ隊員」

マリン司令官がるしあちゃんに聞いた。

「発見しづらいPをどうやって見つけるんですか?」

「うん、良い質問だ。

フレア作戦指揮官」

マリン司令官に言われてフレアさんが、また何かを書いた。

ん?

強制ポップ装置?

「これを今回作戦に投入します。

詳細は後程。

では、続けます。

強制ポップ装置により、Pを発見し怯んだ際にすぐエール攻撃を行います。

うまく行けばこの攻撃で動きが止まり捕獲する事が可能と思われます」

「注意点として、エール攻撃は迅速に行う事。

もし、タイミングが悪ければ目標Pは脱兎の如く逃げるだろう」

あ、ウサギだけに

「ウサギだけに」

思ってた事がマリン司令官と被った。

シーンと静まる部屋。

「ありがとう、フレア作戦指揮官。

それでは、詳しい内容は今から説明する」

あ、なんかなかった事にしようとしてる。

「あ、いいですか?」

俺は手をあげる。

「何かな?」

「えっと、強制ポップ装置って何ですか?」

俺のその質問に部屋にいる4人に一斉に指差されたのは言うまでもなかった。

 

「で、どこに行くんですか?」

第三世代組と共に町の中を歩く。

ま、ホロメンの方々はイベントキャラ扱いなので、こういった時は助かるかな。

他の人が見れるならかなり注目を浴びてる状況だし。

「ぶらぶらと時間稼ぎかな」

フレアさんはそう言いながら町のお店をチェックしている。

「団長達もお腹はすくのよね」

「はい?」

ノエルさんがいきなりお腹減りアピール?

「ああ、お腹空いたって言ってないの。

お腹がすくって言ったの。

だから、ぺこらも引きこもりしてるけどお腹がすくのよ」

「お腹かがすきすぎると別に死んじゃうって事はないんだけど、バットステータスが付いちゃうんだよね。

ま、それ以上に気分が上がらない」

マリン船長はノエルさんの後について教えてくれた。

「それで、お昼頃になるとどうしても外に出ないといけない訳なのです」

「あ、食べ物を確保する為?」

「なのです」

俺の言葉にるしあちゃんは頷いてくれた。

「と、話しているうちにそろそろお昼か。

じゃ、みんな行こうか」

フレアさんは俺達をある場所へと案内した。

「ここは?」

「ここはこの町の食事処が集まる通りね」

ノエルさんが教えてくれる。

「さて、ここでキミの出番だ。

作戦会議の時も言ったけど、引きこもりぺこらはなかなか捕まらない。

それはどうしてかと言うと、極力人に会わないように裏路地やら細道を通って目的地に向かうから。

そこでキミ、ホロメンほいほいの出番って訳」

いや、マリン船長、俺の名称変わってるんですが?

「ははは。

ま、簡単に言うと今からキミに、この通りを歩いてもらってこれだと思うお店を言ってほしいの。

そうしたら、そのお店に近い路地や細道で待ち伏せするわ」

フレアさんが笑いながら説明を付け加える。

「そんなので現れるんですか?」

「あのあやめ先輩を強制ポップさせたんだから、大丈夫なのです」

何故か自信満々のるしあちゃん。

「じゃ、行こっか」

ノエルさんの掛け声で俺達は、お昼前の食事処通りを歩いた。

ん?

「これかな?」

俺は何となく気になったラーメン屋の前で立ち止まった。

「へぇ、ラーメンかぁ」

「確かに今日は少し寒いですし、ラーメンいいかもです」

「なんか船長が食べたくなってきた」

「こらこら、ぺこらが先でしょ」

「それじゃぁ」

フレアさんが辺りを見る。

「ぺこらの家がある場所からこのラーメン屋で、細道や裏路地を使うとしたら…

あそこかな」

向かいの店の間にある分かりにくい裏路地を指差すフレアさん。

「了解。

じゃ、みんなあの裏路地の入り口で待機」

マリン船長の掛け声で裏路地の入り口に張り込む。

「えっと、みなさんは見えなくて良いんですが、俺めちゃ目立ってるんですが」

通りを歩く人に何してるんだろうとさっきからチラチラ見られてるんだけど。

「気にしない気にしない」

マリン船長他人事だと思って。

そんなやり取りをしていると、裏路地から何やら鼻唄が聞こえていた。

「ふんふんふんふ、ふふふんふん。

ふんふんふんふ、ふんふんふんふん」

何か楽しそう。

「すごい本当に来たのです」

いや、半信半疑だったのかい、るしあちゃん。

「もう少し引き付けて」

だんだん鼻唄が大きくなる。

「今だ!」

小さな声だかはっきりとマリン船長が言ったと同時に、俺達は裏路地の入り口を塞ぐ。

「え?あれ?」

そこには驚くぺこらちゃんが本当にいた。

こっちも驚いている場合ではない。

すぐさま事前に打ち合わせていた言葉をかける。

『こんにちは~』

「え、あ、はい、こんにちは。

どうしてみんなここにいるぺこ?」

動揺するぺこらちゃん。

『どうしたの~』

「え?いや?あのあれ?なんで?」

混乱しているぺこらちゃん。

「う、うゎぁぁぁ~ん」

そして、脱兎の如く逃げ出した。

「あれ?失敗?」

「違う、第2段階に移行したんだよ、フレア!」

俺の疑問にノエルさんが答え、フレアさんを呼ぶ。

「ちょっと待ってね」

フレアさんが目の前に右手持ってきて素早く下ろす。

「予見眼」

フレアさんの言葉と同時に目に光が宿る。

「分かった。

ここから真っ直ぐ行った方向の大通りに出るみたい。

人混みに紛れるつもりね」

「了解」

ノエルさんもフレアさんと同じように手を目の前に持ってきて素早く下ろす。

「金剛眼」

ノエルさんの目も光を宿す。

「るしあ、マリンこっち」

「わかった」

「はいなのです」

マリン船長がノエルさんの背中に抱きつく。

「ごめんね、3人はちょっと無理かな」

そう言ってノエルさんは俺を持ち上げた。

そして。

「うわぁ~」

いきなり空へと投げられた。

「大丈夫、安心して」

投げられ飛んでいる俺に追従するように、フレアさんが屋根から屋根へと飛び移っている。

その後をマリン船長をおんぶして、るしあちゃんをお姫様抱っこしたノエルさんが続く。

「こら、マリン、変なとこ触らない」

「いやぁ、だって落ち着くよぅ。

るしあも触ってみ」

「…」

「るしあ、無言で触るのはやめて」

何やってんだか。

そして、大通に出る。

「あれ?これってどうやって着地するんですかぁ?」

先回りした第三世代組の見守るなか俺は大通りに激突する、はずだった。

「あれ?」

「大丈夫?」

「あ、はい」

俺はノエルさんに受け止められ大通りに下ろされる。

なんか受け止められた時の衝撃がなかったんだけど。

「若人よ、それが天然のエアバッグなのだよ」

ポンとマリン船長に肩を叩かれそう言われた。

そうか、これが天然のエアバッグか!

「ほら、そこバカやってないで来るよ」

フレアさんに声をかけられはっと現実に戻る。

そうだ、今は作戦中だった。

俺達が裏路地の入り口を塞いだと同時に混乱中のぺこらちゃん登場。

そして、また驚くぺこらちゃん。

『可愛い~』

そして、エール攻撃を開始する。

「え?いきなりなんぺこ?で、でも、ありがとう」

『愛してる~』

「はぁ?いきなり何言ってるぺこか?こんなところで。

あ、そうかこれは夢?」

「夢じゃないんだなぁ、捕獲~!」

マリン船長の掛け声で、第三世代組の面々がぺこらちゃんに抱きついた。

「うわぁ、止めるぺこ。

なんぺこ?

折角の休日を~」

ぺこらちゃんは怒りながらも笑っている。

他の4人もすごく楽しそうだ。

俺はその光景を裏路地の入り口から見て素直な感想は。

はぁ、これがてぇてぇなんだなぁと思うのであった。

「こら~そこでぼ~と見てないで助けるぺこ~」




ホロライブワールド第三世代組集結です。
次回からは造船が開始されます。
特別ゲストが出る予定ですのでお楽しみに
では、また次回


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謎の鉱石に謎の機械を

無事に兎田ぺこらを捕まえたあなた達一行。
あなた達は本来の目的である造船の準備に入るのであった。


某酒場の個室。

「はぁ、折角の休日が台無しぺこ」

ぺこらちゃんを無事に捕獲して6人でいつもの場所に来ていた。

腕組みをして仁王立ちしながら、そっぽを向くぺこらちゃんを前に俺達は座っている。

「ごめんね、どうしてもぺこらの力を借りたくてさ」

「ごめんなのです」

「ぺこら、機嫌直して」

「ぺこらがいないと船長達何もできないのよ~」

なんかぺこらちゃんの耳と尻尾が横に動き始めた?

「ほら、キミもなんか言って」

小声でマリン船長に言われる。

「どうしても必要なものがあるんです。

それにはぺこらちゃんの力をどうしても借りたいんです。

お願いします」

俺の言葉に耳と尻尾の揺れが最高潮に達する。

「し、仕方ないぺこねぇ。

どうしてもというなら手伝ってやらない事もないぺこですが」

「よろしくお願いします」

もう一度俺は頭を下げる。

「よし、わかったぺこ。

手伝ってやる」

腕組みを解き手を腰にしてぺこらちゃんは胸をはった。

「ありがとうございます」

「じゃ、宴会しようか」

いつのまにやら席に着いてる他の4人。

はや、席につくのはや。

「もうちょっと余韻に浸りたかったぺこ」

と言いながらいつの間にか席に着いてメニューを見ているぺこらちゃん。

はや!

「何してるの?

早く頼んじゃうよ」

「あ、はい」

フレアさんに言われ俺も席に着きメニューを見る。

そして、第三世代組全員集合記念の宴が始まる。

 

「うう、気持ち悪い」

俺は昨日の宴の後、宿に泊まった。

今回はログアウトしてないので、酔った時のバッドステータス混乱弱が付いたままだ。

寝ても治らないバッドステータスはやめてほしいな。

こんなことならログアウトしとくんだった。

俺は待ち合わせの場所、噴水前に急ぐ。

少し寝すぎた。

このままじゃ時間すれすれだな。

しかし、第三世代組のみんなは強いな、あんなに遅くまで騒いだのに朝の9時集合って言ってたし。

お、噴水が見えてきた。

しかし、噴水前に第三世代組のみんなはいなかった。

時間を見る。

まだ、少し早かったかな?

そして…

「ははは、昨日ははしゃぎ過ぎたぺこね」

「まいったぁ、船長休みかと思ってた」

「みんなと寝るのも久しぶりでしたし」

「遅くまで話しちゃったね」

「と、言うわけで」

『遅れてごめん』「です」「ぺこ」

約束の時間を2時間過ぎた頃にみんなが来た。

ま、あれだけ騒いだらねぇ。

「たぶんそうかなぁっと思いましたので。

なんせみなさん全然セーブしてませんでしたし」

『はははは』

「ま、気合い入れ直して造船開始するよ」

『お~』

フレアさんの掛け声に俺達は元気よく返事をした。

場所は港に近い造船所。

ここを今回は貸しきって船を造ることになる。

設計図を広げフレアさんとぺこらちゃんが話し合っている。

ん?

どこに船を造るお金があるんだって?

確かに本来はかなりかかるんだけど、何故かほとんどお金はかかっていない。

手伝ってくれる人はフレアさんやぺこらちゃんの会社のNPC、るしあちゃんが呼び出したスケルトンがしてくれる。

そして、材料だけど。

「というわけで手分けして、これを集めてきて」

フレアさんとぺこらちゃんを前に集められた人達に、紙が配られた。

俺が配られた紙には、鉄鉱と鉄のように固い木を数ダース集めるように書かれていた。

この木なら待ってる間にクエストで採取した事があるな。

鉄鉱もある場所は分かる。

「では、各自作業に戻って」

『了解!』

そして、俺も与えられた作業に取りかかる。

そう、材料は自分達で集めるのでお金がかからないと言うことだ。

少しはフレアさんとぺこらちゃんが会社から出してくれて、材料集めの間はそちらを使って部品を製作してくれるらしい。

第三世代組の人達は造船の方に行ってるので、俺は1人で材料を集めに行った。

鉄鉱集めも、木材集めも特に苦労なく集める事ができた。

これも事前にクエストで場所を知ってたお陰だな。

一通りのアイテムを集めた俺はそれを納品するべく造船所に向かう。

「ちょっとそこの人」

「え?」

港に入り、造船所への道を歩いていると路地裏から声をかけられた。

「えっと」

その人物はやけに背が低く背中が曲がっていた。

フードを被っているから顔は分からない。

「俺の事か?」

「そうそう、ちょっと話があってね」

見るからに怪しい相手だが。

「何のようだ」

俺はいつでも鬼切丸を出せるように準備する。

「ははは、何もしないさ。

そんな武器は必要ないよ」

な、見た目は全く変わらないのに武器を準備してるのが分かるのか?

「ま、こっちに来なよ」

そして、裏路地に入っていくフードの人物。

俺は用心しながら裏路地に入っていった。

そこは行き止まりだった。

しかし、不思議な事に壁には門があり、この先から光が流れていた。

「さて、来てくれてありがとう」

フードを外す人物。

その顔は赤いトカゲの顔だった。

「自己紹介しないとな、俺はアカトゲだ」

アカトゲ?

赤いトカゲだからか?

「ま、俺の名前なんてどうでも良いさ。

それよりこれをあんたに渡そうと思ってな」

アカトゲと名乗ったトカゲ人間は真っ赤な拳大の宝石を俺に差し出してきた。

「これは?」

「これは欲吸石と言って人の欲望を吸収してエネルギーとして溜め込んでいる石だ」

「何故俺にこんな物を渡すんだ?」

俺は押し付けられる形でその石を受けとる。

「マリン船長がいるだろ?

その人に前に世話になってな。

その時のお礼として報酬を用意しといたから渡しに来た」

「報酬?」

「ああ、船を造ってるんだろ?

だったら、その石は必要になる。

そのくらいの大きさの石なら十分動力として使えるだろうしな。

ま、その石からどうやってエネルギーを取り出すかはそっちで考えてくれ」

「お、おい!」

そう言いながらアカトゲは門へと入ろうとする。

「あ、そうそう、俺の事はマリン船長に言わなくていいからな」

「まてよ、あんた何者なんだ」

「ん?別に普通の生物だが?」

「何言って、ここはゲームの世界だぞ」

「そうだな」

「だったら、なんだその門の先はあらか様にゲームじゃないだろう」

そう、その門の先は明らかにおかしい。

そんな光の道なんてゲームしてはリアルすぎる。

「本当にお前はゲームをしてるのか?」

「え?」

「その体は自分の意志で自由に動く。

触れば感触もあるし、食べるものを食べれば味もある」

「そ、そりゃVRMMORPGだから当たり前だろ」

「そうだな、だけどリアルとどこが違う?」

「は?死なないし、魔法やスキルがある」

「それはお前の住んでいるリアルの世界の話だろ?

お前の知らない世界は魔法があったり死んでも生き返ったりスキルがあったりするかもよ」

「な」

「ま、そんな話はいいよ。

それじゃ、その石有効活用してくれよ」

そう言い残しアカトゲは門へと消える。

アカトゲが門に入った瞬間、門は消えて普通の壁に戻った。

「な、なんなんだ?」

俺は手に持つ石を見た。

その石は確かにあり怪しく光っていた。

 

「これを鉱山で?」

フレアさんに例の石を見せる。

言わなくて言いと言われたので鉱山で見つけた事にした。

「ぺこら、これ見て」

「ん?何ぺこ?」

設計図を見ながら考え事をしていたぺこらちゃんがこっちに来る。

「な、何ぺこかこれ?」

石を見て驚くぺこらちゃん。

「すごいでしょ、こんな石見た事ないよ。

エネルギーが溢れてる」

「これなら、迷ってた動力のエネルギーに使えるぺこ」

「そうなんですか?」

「ま、初めて見る物だけど、安全にこれを使えたなら動力は問題ない」

「ただ、これからどうやってエネルギーを取り出すか」

ぺこらちゃんはう~んと悩む。

「ありがとう、これはこっちで調べてみるよ。

キミは今日は宿で休んでいいよ」

フレアさんに言われて外を見る。

確かにいつの間にか夕方だ。

「分かりました。

それじゃ、また明日に」

「お疲れ様」

俺は悩んでいるぺこらちゃんと手を振ってくれるフレアさんに挨拶した後、残りの第三世代組の人達に挨拶をして宿に向かった。

外はだいぶ日が落ち初め、町の街頭とちらほら付き始めた。

しかし、何だったんだあのトカゲ?

リアルとどこが違うって?

そんなの。

しかし、あのトカゲが言った意味が分からない訳じゃない。

確かにこのゲームの世界で感じる事はリアルとほぼ変わらない。

ああ、もう訳わかんねぇ。

「ちょっとそこ行くキミ?」

「え?」

いきなり声をかけられる。

なんか今日はやたらに声かけられるなぁ。

俺は声かけられた方を見た。

そこには占い師のような帽子を被った人がいた。

ただ、占い師と違うのは何故か白衣を着ている事か?

「えっと俺ですか?」

「はい、そうですよぅ。

何かお悩みでしょう」

「え?

ま、悩んでいると言えば悩んでいますが」

「でしょうでしょう。

ささ、座って座って」

占い師に勧められて対面で座る。

「さて、占いにようこそ。

それでは早速何を悩んでいるか当ててあげましょう」

目の前の水晶を撫でる占い師の人。

「う~ん、あるアイテムの事で悩んでますね!」

自信満々に言う占い師の人。

「え?いや、違いますけど」

「あれぇ?

ラプちゃん、アイテムって言ってたけど?」

「ん?ラプちゃん?」

「え、いや、こっちの話だよ、はははは。

や、やばい、ばれるところだった」

なんかどこかで感じた空気だなぁ。

俺は占い師の人を見ながらそう思った。

「え、えっとね、なんか不思議なアイテムもらって、どうしたら使えるのかなぁ?

どういう風に活用したらいいのかなぁ?って少しは悩んでない?」

「え?

あ、はい、そう言えば不思議なアイテムもらって知り合いがどうするか悩んでました」

「あ、そっか、お知り合いさんが悩んでたかぁ。

でも、キミも少しは悩んでるよね?」

「え?あ、まぁ、俺が持っていった物ですし」

何か圧に負けてそう答える。

確かに任せてと言われたがどうにか出来たらありがたい。

「でしょう。

そんな悩めるキミをこよが見事解決してあげましょう」

「ん?こよ?」

「え?いや、ぼく、ぼくが解決してあげましょう」

なんか微妙にポンする感じどっかで…

「さ、さて、そのアイテムなんだけど、どんな物か教えてもらっていいかな?」

「分かりました」

俺は欲吸石について知ってる事を話した。

「うんうん、ほぼラプちゃんの言った通りね」

「ラプちゃん?」

「え?いや?何かぼく言いましたか?」

たぶん、あってるよな?

「もしかして第六世代組の人ですか?」

「はい?」

驚きの声をあげる占い師の人。

「え?、いや、なんですか?第六世代って?」

なんか一生懸命口笛吹いてごまかそうとしている。

俺はステータス画面の推し一覧を出す。

一番下の列。

右から2番目のアイコンが点滅していた。

あ、やっぱり。

「これ」

俺は推し一覧を占い師の人に見せながら点滅している人を差す。

「な、なんでこよ達が一覧に載ってるんですか?

あ、いろはちゃん点灯してる。

もう、秘密だって言ってるのに。

はぁ~」

ため息つきながらフードを取る占い師の人。

ピンクの長い髪。

頭の上にはピンと立った耳。

綺麗なピンクの目でこちらを見ていた。

「それでは、いろはちゃんも自己紹介してると思うからこよも自己紹介しとくね。

ホロライブワールド第六世代組!

秘密結社holoXの~頭脳!

博衣こよりだよ!」

その言葉と同時に一覧のこよりちゃんのマークが点灯した。

《スキル【運命】が発動しました》

「本当は秘密のままで進めるつもりだったんだけどね」

「いや、俺はフードの下が見れてよかったですよ」

「ええ!これ以上は脱がないよ!」

「いや、そこまで要求してないっすから」

「え?見たくないの?」

「いや、どっちだよ」

「ま、それは後のお楽しみとして置いといて」

「お楽しみ!」

俺の反応を楽しそうに見るこよりちゃん。

「じゃ、話を戻すけどその石のエネルギーを引き出す装置をこよが作りました」

水晶を片付けて、ドンと机の上に謎の機械を置くこよりちゃん。

「えっと昼頃にもらった石なんだけど、もう作ったの?」

「そう、なんと言ってもこよはholoXの頭脳ですからね」

「そっかぁ」

「それで、この機械なんだけど」

「はい」

真剣そうな顔で喋るこよりちゃんに、少し緊張する。

「渡すのには条件があります」

「は、はい。

何でしょう」

「1つはその推し一覧に載ってるホロメンにきちんと会う事。

もう1つは全員にあった後にラプちゃんに会う事」

「ま、ホロメンと会うのは俺の使命と言っても良いんで大丈夫てすが、ラプちゃんに会うとは?」

「そのうちに分かるけど、holoXの総帥にあって欲しいって事ね」

「総帥?」

「そう、約束出来る?」

「え、あ、まぁ大丈夫です」

俺はなんとなく答えた。

だって、総帥ラプちゃんの事を俺は知らない。

「うん。

じゃ、これは進呈するね」

「あ、ありがとうございます」

俺は結構重いその機械をアイテムボックスに入れた。

「それじゃ、こよはそのへんで、おつこよ~」

「え、あ、はい、おつこよ」

ワープゲートに入ろうとしたこよりちゃんに。

「あ、電子の狭間の時、ワープ装置はこよりちゃんが作ってくれたんですよね。

ありがとうございます」

あの時のお礼を言った。

こよりちゃんはその言葉にニコッと笑顔を向けてくれた後、ワープゲートに入って消えた。

秘密結社holoXか。

残り3人どんな人達が出てくるんだ?

っていうかみんなポンする人達だったりして。

そりゃ、ないよな。

しかし、今日はよく声をかけられる日だった。

俺は宿に急ぐ。

空は少し曇って雨が降りそうだった。

明日はこの機械をぺこらちゃんとフレアさんに届けないとな。

役にたてればいいんたけど。




第六世代組2人目登場です。
ぼちぼちと秘密結社の狙いも出てくると思います。
次回、造船の続きお楽しみに


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初めはコヨーテ、最後は鷹

造船の為に素材集めをするあなた。
そんなあなたに第六世代組の頭脳、博衣こよりが現れた。
彼女に謎のトカゲ人間から貰った石からエネルギーを取り出す機械を貰う。
次の日早速あなたはそれを造船所に持っていくのであった。


俺は宿でログアウトし、また、次の日にログインした。

ログインした後すぐに港にある造船所に向かう。

「おはようございます」

「あ、おはよう」

そこにはすでに第三世代組の人達や、手伝ってくれているNPCの人達が働いていた。

「ちょっとこれ見てもらっていいですか?」

俺は昨日、こよりちゃんからもらった機械を、フレアさんとぺこらちゃんに見せてみた。

「これは何ぺこ?」

「はい、昨日渡した石のエネルギーを取り出す機械らしいです」

俺の説明にぺこらちゃんは機械を見る。

「ん?これは?」

1枚の紙を見つけたみたいでぺこらちゃんは広げる。

「なるほどなるほど、これなら使えそうぺこな」

ぺこらちゃんは紙をフレアさんに見せる。

「なるほどね」

「何なんですか、その紙?」

「これはこの機械の取り扱い説明書みたいなものね。

それも事細かくこの石を取り付けた時の説明が書かれてる。

この石専用の装置みたいにね」

フレアさんが俺をじっと見た。

「ま、どこで手に入れたかは聞かない事にしとくよ。

危険な物ではないし、これで終わりのような気がしないから」

「え?それってどういう事ですか?」

「そうぺこね、この説明書を見たらそう思ってしまう」

??

「ま、キミは今日から町をぶらぶらして声をかけられたらきちんと相手してなんかアイテム貰ったら持ってきて」

「は、はぁ」

フレアさんにそう言われ俺は一旦町に戻った。

「ぶらぶらしろって言われてもなぁ」

俺は商店街を歩く。

ここはきちんとした店を構えてる人以外に露店も多い場所だ。

「ちょっとそこのお兄さん?」

「え?」

誰かに呼び止められる。

そちらを向くと何も品物が置かれていない露店から、店主らしい人の声だった。

「は、はい」

フレアさんの言葉を思い出し、露店に向かう。

そこには大きな麦わら帽子で顔を隠した、白衣の女性が立っていた。

「えっと…」

「はじめまして、船の機械とかどうですか?」

店主が可愛らしい声で聞いてくる。

「こよりちゃんだよね?」

「え?」

驚く店主。

「さ、さて、なんの事やら」

一生懸命誤魔化そうとしてるけど。

「麦わら帽子に白衣はちょっと」

「あ」

ゆっくりと麦わら帽子を脱ぐ店主。

麦わら帽子の下からは少し照れたこよりちゃんの顔が見えた。

「いつもの癖で着て来てしまいました」

「昨日のアイテムありがとう。

めちゃ役に立ったよ」

こよりちゃんの恥ずかしがる顔を見て何か和みながら俺はお礼を言った。

「あ、いえ、お役にたったならよかったですよ」

一気に嬉しそうな顔に変わるこよりちゃん。

「それでさっき言ってた船の機械って?」

俺は興味があったので聞いてみた。

「あ、はい。

今回の商品はこれです」

ドンと長いカウンターの上にこれまた大きいアイテムを出す。

「えっとこれは?」

こんなでかいものどこにしまってたんだ?

「これはですね。

太陽光を利用した帆です」

「太陽光を?」

「はい、この帆を張っていると、帆の表面から太陽光を吸収、エネルギーに変換して裏側から風を発生させて、船を前に進ませる画期的なアイテムなんですよ」

「なるほど、風がなくても前に進めると」

「はい、その通りです」

「で?おいくらでしょうか?」

「なんと、今ならキャンペーン中でタダです」

「もらった!」

そして、俺はこよりちゃんから不思議な帆を手に入れた。

こよりちゃんにお礼を言ってから、俺は早速そのアイテムを造船所に持って行き見せた。

フレアさんとぺこらちゃんは「やっぱりねぇ」という顔をしてアイテムを調べる。

特に危険な事もなくその帆は船に搭載される事になった。

それから、ほぼ毎日のように町を歩いていると、こよりちゃんの露店に呼び止められてアイテムを受け取った。

謎の巨大な砲門。

バリア発生装置。

自動操縦システム。

偵察ドローン。

など。

驚く事にそれを全て無料提供してくれたのだ。

持って幾度にフレアさんに「好かれてるんだねぇ」と半分呆れたように言われてしまった。

そして、船もそろそろ完成する頃。

今日も俺は露店の店主に呼び止められた。

「ちょっとそこのキミ、船の機械はいらんかっ鷹ね?」

「ん?」

あれ?いつもと違う。

俺は声をかけられた店主を見た。

太った鳥?

「いや違う違う。

こっちこっち」

杖に乗った鳥がいたのでそっちを見ると、やたら派手な逆三角のサングラスを付けた女性に注意された。

「あ、初めまして。

今日はこよりちゃんじゃないんですね」

俺はその女性に挨拶をする。

「初めまして。

今日は彼女はお休みで、代わりにバイトの私が船の機械を持って来ました」

「そうなんですね、ありがとうございます。

で、あなたも第六世代の方?」

「いえいえ、私はただのバイトですよ」

そう言われ、俺はステータス画面に開いて推し一覧をの第六世代を確認する。

確かにどれも点滅していない。

まじで普通のNPC?

もう一度彼女を見る。

すらっと背が高く、髪型が特徴的で鳥の羽を畳んだような形だ。

しかし、やたらに存在感あるNPCだな。

「ん?どうかしましたか?」

「い、いえ、それより今回の機械とは?」

「はい、彼女からこれが最後になると言われてます。

これです」

ドカン!

背後から1つのデカイ錨がカウンターに置かれた。

いつも思うけど、重さとか関係ないのかなぁこの人達は。

「錨ですか?」

「はい、いかりです」

「なんかこの錨のUの先端にジェットが付いているんですが?」

そう、なんでジェット付いてんだ?

この錨。

「はい、このいかりは錨の機能はもちろん付いていますが、相手が攻撃してきた場合、自動でジェットが噴出し、攻撃してきた相手に突っ込んでいきます」

「もはや錨じゃないような」

「はい、なので錨じゃなくて怒りなんです」

「ああ、怒る方の怒り?」

「そう、錨だけに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりホロメンですよね?」

「ええ~~~

な、何で、ちょっとだじゃれ言ってみただけじゃない?」

「いや、何というか同じなんですよ。

この空気感。

数日前の誰かと一緒で。

このなんとも言えない微妙な空気感」

「で、でも、キミさっき何か確認してましたよね?」

う、確かに。

ホロメンだったら一覧で反応するはず。

「はい、そうです」

「でしょ?

というわけで私は普通のバイトなんですよ」

「はぁ」

「では、これはいつも通り差し上げますね」

「ありがとうございます」

俺はバイトさんから錨を受け取りアイテムボックスに入れた。

「では、こよりちゃんによろしくお伝えください」

俺はそう言ってバイトさんに頭を下げその場を後にする。

「はい、分かりました。

では、おつルイルイ」

「おつルイルイ?」

俺はそう挨拶されて振り返る。

そこにはもうバイトの人も店もなかった。

やっぱりあの人もホロメンだったのだろうか?

俺はそう思いながら、さっきもらった錨を持って造船所に向かった。




「危うくバレるところでしたね」
薄暗い廊下で前を歩くバイトに声をかける白衣の女性。
「ありがとう助かったよ。
こよりが作ってくれたジャミング装置のお陰で誤魔化せた」
そう、今回こよりが作った装置のお陰で推し一覧に表示されないようにしていたのだ。
「でも、今回どうして偵察だけなんです?
きちんと会っちゃえばよかったのに」
こよりは不思議そうに目の前の女性に聞いた。
「ん~
私の出番はまだ先にするようにラプに言われてるからね」
「そうなんですね」
「ま、その時が来たらカレーに舞い降りてあげますよ」
そう言っていつの間にかカレーを持っている彼女を、こよりは残念そうな顔で見ていた。


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さぁ、大海原に出航~!!!!!

造船は順調に進み、博衣こよりと謎のバイトさんから貰った機械を組み込みながらあなたの船は完成するのだった。


「完成ぺこ」

数日にわたって続いた造船も終わり、俺達の前には立派な一艘の船が出来ていた。

その巨大な船はこよりちゃんからもらった機械のお陰でほぼ自動で動くようになっている。

「よし、乗り込むよ」

フレアさんの言葉に第三世代組と俺は船に乗り込んだ。

「おお~やっぱり船はいいね!」

船首にある見晴台に立つマリン船長がとても嬉しそうに言った。

「頑張ったかいがあったね」

「なのです」

ノエルさんにるしあちゃんも嬉しそうだ。

もちろん俺もめちゃくちゃ嬉しい。

「で、名前は何にするぺこ?」

ぺこらちゃんの言葉にピタッと動きを止める5人。

「ん~ここは…」

「団長はね…」

「やっぱりるしあは…」

「ぺこらは…」

「やっぱ船長の船ですから…」

「いや、マリンの船じゃないぺこですから」

一気にわいわい騒ぎだす第三世代組。

「え、えっと俺もう一回ルーナちゃんのお屋敷に行ってルーナちゃん達が向かった先を聞いてきます」

俺は修羅場になりそうな造船所を急いで後にした。

「ふう、なんかみんな顔がすごく真剣で怖かった」

ルーナちゃんの屋敷に行く街道を歩きながら俺は少し身震いをした。

「どうかなさいましたか?」

「え?」

いきなり背後から声をかけられる。

俺は振り向き声をかけてきた主を見た。

あの時のシスター

俺は急いでシスターと距離をとり、いつでも鬼切丸を取り出せるように準備する。

「えっと、どうしてそんなに警戒されてるんですか?」

「いや、音もなくいつの間にか背後にいて声をかけられたら警戒しますよ。

それも冒険者ならまだしもシスターがそれをしてくるんですから」

「それは誤解ですね。

私は普通に歩いて来ましたし、あなたは何か考え事をしていたみたいでしたから、気が付かなかったのでしょう」

確かにそう言われたらそうかもしれないが。

俺は武器の準備はそのままにして構えをといた。

「そうでしたか、それはすいません」

「いえいえ、誰しも間違いはあるものです」

「では、俺はこれで」

「あ、待ってください」

「何でしょう?」

先を急ごうとしたが呼び止められた。

「あなたに自己紹介をしていませんでした。

この前、せっかく助けていただいたので」

「…」

俺はシスターの方を見た。

「私の名前は歌魚レヴィと申します」

「歌魚レヴィ」

「はい、またどこかでお会いしましょう」

「俺的には会いたくないですが」

正直に思った事を言う。

「ふふ、そう邪険にしないでください。

私だけ仲間外れも寂しいですよ。

あの人達に嫉妬してしまいそう」

そう言ってシスターはにやりと笑う。

気のせいかその口がかなり大きく見えた。

「それでは、また」

そう言ってシスターは停めていた馬車の方へ向かう。

仕掛けて来なかったか?

俺は馬車が町に向かうのを見送ってから、ルーナちゃんの屋敷に向かった。

「おはようございます」

「お、おはよう」

門番の人に挨拶をする。

で、一応ルーナちゃんが帰って来てるか聞いてみる。

「それがまだ戻られてない。

こんなに長い事、留守にするのは珍しい。

探したくてもルーナ姫は俺達では見つけられないからな。

今はこうやって救援連絡が来るのを待っているところだ」

「救援連絡?」

「そうだ、ルーナ姫が詰まった時にたまに出す連絡でな。

それを受けると俺達ルーナイトはルーナ姫を見る事が出来るので助けに行けるんだ」

なるほど、ホロメンだからイベントキャラクター扱いで普通は見れないのか。

「じゃ、この屋敷に帰って来てるか来てないのかも分からないんじゃ?」

「いや、この屋敷がイベントのような物だからな。

屋敷にいる時は姿を見る事が出来るし、あの屋敷の天辺にルーナ姫がいたら旗が上がるんだよ」

そう言われ俺は旗を上げるポールを見る。

確かに上がってないな。

「それじゃ、ルーナちゃんが向かった先は分かりますか?」

「うむ、向かった先は古龍島と呼ばれる島で、普通に船なら3日ぐらい海上を西に向かった先だ」

「古龍島ですか」

「そうだ。

ただ、今はモンスターが何故か活性化していてな。

船は手に入らんし、出れたとしても3日では行けないだろうな」

「分かりました。

ありがとうございます」

「いや、また何かあったら聞いてくれ」

「分かりました」

俺は門番と別れ、造船所に向かった。

「戻りました」

『遅い!』

「ええ」

帰ってきた瞬間第三世代組のみんなに怒られる。

「な、なんでそんなに怒ってるんですか」

「船の名前」

「やっぱり持ち主であるキミが決めればいいという事になったぺこ」

「あ、それで」

「で、何にするのです」

「船長的には」

「こら、マリン。

ぺこら達の意見はなしでって事になったぺこでしょ」

「うう」

ぺこらちゃんに怒られ、しゅんとするマリン船長。

「そうですね。

じゃ、【ふぁんたじぃ】で」

「【ふぁんたじぃ】?」

団長に聞かれる。

「はい、第三世代組のみなさんはホロライブファンタジーって呼ばれてるんですよね?

なので」

「へぇ、いいんじゃない?」

「そうぺこね」

「じゃ、この船は今から【ふぁんたじぃ】って事で」

「賛成なのです」

「はぁ、船長はセクシー…」

「もう、それはいいぺこですから」

マリン船長が何か言おうとしたのをぺこらちゃんが止める。

「それで、行き先は分かった?」

みんなで乗り込み準備をしている時にフレアさんに聞かれる。

「はい、古龍島に行ってるみたいです」

「古龍島かぁ」

「知ってるんですか?」

「まぁね、あそこは昔あるドラゴンが根城にしてた場所でね。

今はそのドラゴンも居らず財宝もないから誰も立ち寄らない場所になってたんだけど」

「ドラゴン?」

「そう、竜の…」

「なにやってるぺこか~

行くペコよ~」

「あ、今行く。

さ、行こう」

フレアさんはぺこらちゃんに声をかけられて話を止めてしまった。

竜のなんだろう、気になるなぁ。

「よぉ~し、みんな揃ったね」

船首に立つマリン船長。

「それでは、【ふぁんたじぃ】出航~!!!!」

海を指差し、大声で叫ぶマリン船長。

『お~!』

乗組員の第三世代組と俺は手を上げて声をあげる。

船の周りには作るのを手伝ってくれたNPCや骸骨が大歓声で見送ってくれた。

そして、俺達は古龍島を目指して大海原に船を出した。

 

「ま、ほぼ何もしなくていいぺこなんだけどね」

俺はぺこらちゃんと船の端から釣糸をたらしていた。

「全自動でしたっけ?」

「そう、キミが待ってきた機械のお陰でね。

目的地を登録したら勝手に向かってくれるよ。

はい」

フレアさんが飲み物を持ってきてくれた。

「ぺこらも」

「サンキューぺこ」

「あと、ちょっと気になったんですが」

「ん?」

「なんでみんな水着に何かを羽織ってる姿に変わっているのでしょうか?」

船が出航した後しばらくして、いつの間にか第三世代組の5人は水着に着替えていた。

「なんか目のやり場に困ると言うか」

「何言ってるぺこ?

海中装備しとかないといざって時に困るぺこよ」

「え?そうなんですか?」

「当たり前ぺこ、海に落ちたら普通の装備だと動きがかなり制限されて勝てる敵にも勝てないぺこよ」

「海中装備持ってないや」

そんな事は知らず普通に出航してしまった。

「そうだろうと思って団長とマリンで選んできましたよ」

声のする方を向く。

しかし、すぐにまた海を見た。

「え?

なんで目をそらすんです?」

「いや、本当に目のやり場に困りますので」

ノエルさんのその姿はかなり強い。

ま、普通に他の4人の攻撃力も計り知れない。

俺はなんとかノエルさんから海中装備を受け取り、船の中に入って着替える。

「えっとこれって」

海中装備に着替え甲板に出る。

「お、似合ってる似合ってる」

「うんうん」

「なんかねぇ」

「他のなかったぺこ?」

「いいと思うですよ」

全身アロハな俺にそれぞれな意見ありがとうございます。

「ん?何か曇ってきたね」

それから釣りをしたり、甲板でバーベキューしたりして、昼寝をしようとした時に突如天気が悪くなってきた。

「ヤバイね」

操縦席がある場所からフレアさんの声が聞こえる。

「どうしました?」

「前方5キロに巨大な物体が海の中にいる」

「まじですか?」

「みんな戦闘準備!」

フレアさんの声にそれぞれ武器を取り出す。

「このまま進むんですか?」

「どちらにせよ、向こうからも向かってきてるからね」

ゴロゴロ

雲から雲へ雷がわたる。

「嫌な天気になってきたね」

マリン船長も操縦席に来た。

「マニュアルにするけどいける?」

「誰に言ってるの、船長だよ」

「来たぺこよ!」

まだ距離はある筈なのに何かが海の中をこちらに向かって来ているのが水しぶきで分かる。

そして、水しぶきが消えた。

「来る!」

フレアさんがそう言った瞬間。

船の周りから巨大な足が複数立ち上がる。

イカ?

イカやタコのような吸盤付きの白い足が複数こちらに向かって振り下ろされた。

「やばい!」

「大丈夫!こういう事もあろうかとってね」

マリン船長がボタンを押すと、船がバリアに囲まれた。

「おお!」

「攻撃開始!」

フレアさんの号令で第三世代組のみんながそれぞれの武器で攻撃を開始した。

俺も鬼切丸で足に切りかかる。

グォォォォ~

大きな叫び声と共にそれは姿を表した。

船のすぐ前に現れたのは巨大なイカ。

「く、帝王イカ!」

マリン船長の叫び声が甲板に響いた。




次回は第X世代最後の1人との海上戦です。
船長の力が本領発揮される予定ですのでお楽しみに


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大海原の大艦隊戦

突然目の前に現れた巨大なイカ。
皇帝イカと呼ばれる敵にあなた達はなす術はあるのか?


「皇帝イカ?」

俺はマリン船長に聞き返す。

「普段は深海に生息して滅多に海上まで上がってこないレアモンスター

それも星付きなんて」

「また、会いましたね」

「え?」

俺は声をかけられそちらを見る。

イカの頭のところに見慣れた姿があった。

「歌魚レヴィ!」

「はい」

「誰ぺこ?」

ぺこらちゃんが横に来てバズーカを構える。

そんなもの持って戦ってたんですね。

「俺の行く先々で現れて世界を滅茶苦茶にしようとしている奴らの1人です」

「なら、いいぺこね」

そう言ってぺこらちゃんはレヴィにバズーカを発射した。

ドガァ!

凄まじい音がして弾はレヴィに当たり大爆発を起こす。

容赦ないなぁ。

ゆっくりと煙が晴れていく。

「どうしたの?」

船のバリアで余裕が出来たのか、第三世代組が集まってくる。

「はぁ、いきなりはビックリします」

直接バズーカの弾を受けた筈なのに無傷で立つレヴィ。

「普通のNPCなら消滅してますよ」

そう言ってレヴィは懐からドミノマスクを取り出し顔に着けた。

青白い光が彼女を包む。

そして、光が消えた後、青いマントにビキニを着たレヴィが立っていた。

変身前と違うのは足が魚のようなヒレになっているところか?

「マーメイド?」

「そうです、私の真の姿はこっちです」

「えっともう少し斜めに向いてくれないかなぁ」

何故か隣でスケッチしているマリン船長は置いといて。

「おまえの目的はなんだ!」

「私ですか?

それはあなたをこの先に進ませない事です。

ちょっとこの先に行かれると困るんですよね。

これ以上戦力がひらくと厄介ですから」

「それで、この周辺のモンスターを活性化させたのか」

「ええ。

後、私の仲間にるしあさんのお留守に星付きの封印をといてもらいました」

「な、あなた達だったのですか」

るしあちゃんがレヴィを睨む。

「本当はスリースターズの封印を解いてもらう予定でしたが、あまりにも封印が強すぎたので只のスターになってしまいましたが」

「それだけでも十分よ、こんなレアモンスター」

弓を向けたままフレアさんが嫌そうに言った。

「さて、このまま力で押してもそのバリアが厄介ですからね。

ここはそのバリアが消耗するまで攻撃する事にしましょうか。

数でね」

「大召喚か!」

「ああ、大召喚は残念ながらあなたのお知り合いのお陰でしばらく使えなくなってしまいました。

なので、今回はこちらで」

そう言って指を鳴らすレヴィ。

すると皇帝イカの後ろ側に水柱が立つ。

その水柱から巨大なシャチのような生き物が現れた。

背中には大砲が付いている。

そして、その上にはサハギンが数人乗っていた。

「なんだあれ」

「私の能力の1つで魅了したんですよ」

「まだまだ増えていく」

ノエルさんの言う通り次々と水柱が上がりシャチが現れていく。

ほぼ大召喚じゃないか。

「では、止めは私がして上げますので、それまでは生き残ってくださいね」

そう言ってレヴィは皇帝イカと共に海の中に消える。

そして、シャチの群れの奥へと移動した。

「どうしますか、この大群にこっちは1隻です」

俺は第三世代組のみんなに聞く。

しかし、みんなに慌てる様子はなかった。

「あのまましつこく攻撃された方がやばかったね」

「ですね」

マリン船長の言葉に頷くるしあちゃん。

「それじゃ、後はマリンに任せようか」

フレアさんは弓を下ろす。

「え?」

「だね、ここはマリンの独壇場だし」

ノエルさんもそれに賛同する。

マリン船長がゆっくりと船首に向かう。

向こうにまだ動きはない。

船首に立つマリン船長。

帽子を押さえながらシャチの群れを見る。

「なら、見せてあげようじゃない。

船長の真の力を」

「別にマリンの力じゃないぺこだけどね」

「もう、せっかく決めてるんだからチャチャ入れない」

ノエルさんにそう言われぺこらちゃんは舌をちょろっと出した。

マリン船長はそんなやり取りを笑いながら見ていた。

そして、その手にいつの間にか巨大な海賊旗。

ノエルさんの大召喚に似てる?

マリン船長が海賊旗を振り上げ勢いよく船首にトンと立てる。

さっきまで雲っていた空が晴れわたった空に変わる。

海もさっきまでの海とは違った感じがする。

大召喚の特別フィールド?

するとどこからともなく軽快な音楽が流れ始めた。

「え?何の音楽ですか?」

「少しは勉強しないといけないね」

フレアさんが笑う。

マリン船長が勢いよく振り返り海賊旗を掲げた。

「さぁ、みんなノリにノって行きますよぉ~!」

『お~!』

第三世代組のみんなはもちろんだが、それ以外に多数の声が聞こえる。

俺は船の端から後ろを見た。

海上に巨大な門が現れている。

そして、そこから1隻の巨大な船が現れた。

そこには多数のプレイヤーが乗っていた。

船の周りに次々と門が現れる。

その数は数えきれない。

あっという間に【ふぁんたじぃ】の周りには艦隊が出来ていた。

どの船からも軽快な音楽が流れてきている。

「マリンのオリジナルソングがイントロで流れてるです」

るしあちゃんが笑顔で教えてくれた。

「では、キミ達行きますよ~

出航~!!!!」

『うおぉ~!』

向こうのシャチ達も動き始めた。

これから【ホロライブワールド】最大の艦隊戦が始まろうとしていた。

 

特別フィールドに変化したお陰で敵との距離が離れている。

俺達は舵の横にあるレーダーの前に集まっていた。

「相手は波動の陣をとってるわね」

フレアさんは敵の集まり方を見て言った。

「波動の陣ですか?」

「そう、波動拳って知ってる?」

「え?はい、あの格闘ゲームのですよね?」

「そう、あれに形が似てるでしょ?

だから波動の陣」

「えっとそれって本当にある陣形ですか?」

不思議そうに聞く俺。

「ここをどこだと思ってるの?

【ホロライブワールド】よ、リアルの世界とはまた違います」

「ですよねぇ」

「じゃ、こちらは三日月の陣で行こうか」

マリン船長が言った。

「そうぺこね、こっちの切り札を使うならそれがいいぺこ」

にやりと不適な笑いのぺこらちゃん。

「じゃ、るしあ各船へ連絡お願い」

「了解なのです」

るしあちゃんはマイクの方に行き連絡を始めた。

「じゃ、ノエルは船首に行って敵を悩殺してきて」

「了解ってなんでそんな事しないといけないの!」

マリン船長に言われ、船首に向かおうとするノエルさんが我にかえって突っ込む。

「いや、この流れならいけるかなっと」

マリン船長が笑う。

なんか艦隊戦が始まろうとしてるのにこの人達は、ふざけてるのか余裕なのか。

でも、なんか負ける気がしないのはこの人達だからなのかな。

「じゃ、マリン船長。

号令を!」

るしあちゃんがマイクのところでマリン船長を呼ぶ。

マリン船長はマイクを掴んだ。

「キミ達、この戦いは負け戦ではありません。

絶対に勝てる!

キミ達ならやれる戦いだ!

船長と共にあの敵の向こう側の景色を一緒に見るぞ!」

『おお~!』

 

三日月のような陣形を取った味方艦隊が敵に向かう。

敵からの砲撃。

しかし、味方の船に当たる前に、マリン船長が掲げていた海賊旗のようなバリアが防ぐ。

「すごい」

「マリンがあの船首で海賊旗を持っている限り、こっちの船はバリアで守られてるからね」

「そうなんですか?」

「うん、ただマリンの力が尽きちゃうとバリアも失くなっちゃうから早めに決着をつけないといけないの」

ノエルさんが船首に立つマリン船長の背中を見ながら言った。

こっちからも相手に撃っているが、致命傷にはなっていない。

弾が当たる前に海に潜っているからだ。

「このままじゃ激突してしまう」

レーダーを見ると徐々に敵との距離が縮まっている。

「いや、これでいいのよ」

レーダーを見るフレアさんが言う。

「相手の陣形が徐々に真っ直ぐになってきてるでしょ」

確かに陣形が崩れてこの船の前に一直線になってきてる。

「後、もう少し」

フレアさんはレーダーに映る敵陣形の最後尾を見ていた。

そこにはレヴィがいる。

そして、こちらの陣形が相手を挟むように縮まり、敵の陣形はほぼ一直線になった。

「いける。

マリン今よ!」

フレアさんの声が船首に届く。

マリン船長は海賊旗を掲げて返事をした。

「さぁ、みんなの思いを1つに!」

海賊旗を掲げたマリン船長に呼応するように、各船で大歓声が上がる。

「チャージ80%ぺこ」

「砲門開け~」

フレアさんの声でノエルさんがボタンを押す。

ゴゴゴという音と共に船首の下が左右に開き始め、中からどこかで見たことのある宇宙戦艦の船首が出てきた。

「フルチャージまで後5秒。

5、4、3、2、1、フルチャージ、ぺこ」

「それでは行きますよぉ~!

ハイパーミラクル船長キャノン、撃て~!」

ブヒィィィ~

奇妙な発射音の後、巨大なピンク色のレーザーが敵戦艦を飲み込んでいく。

これはもう圧巻と言うしかない。

レーザーが終わった後、目の前の敵は綺麗にいなくなっていた。

いや、一番奥に巨大な影は残っているか。

「キミ達!

ありがとう!」

マリン船長は大召喚で来てくれた人達に声をかける。

「いつか共に海原にいきましょう」

「マリン船長、またお会いしましょう」

「艦隊戦楽しかったです」

それぞれの声をあげながら光と消えていくプレイヤーと船。

「必ず船長の船でキミ達を海に連れていくぞ~!」

マリン船長は帰っていく行くファンにそう伝えていた。

「後はあれね」

ノエルさんがメイスを構える。

俺達の船は無人の海原を駆け、レヴィの元に向かった。

「まさか、あんな切り札を持っているなんて」

あれ程の威力のある船長キャノンを受けて傷1つ無しか。

「そっちもなかなかやるみたいね」

マリン船長は臆することなく船首に立っていた。

「で、どうする?

船長達とやりあう?」

俺達は各々武器を構えてレヴィを見る。

「やめておきます。

さっきの攻撃でこのイカちゃんを守るのに力をだいぶ使いましたし」

「へぇ、そうは見えないけど」

「いえいえ、ここでこのイカちゃんを失うのは得策ではないので。

では、これで。

次に会う時はこの子の星も増やしておきますね」

「な」

それを聞いて驚くるしあちゃん。

「育てる気!」

「そういう事です」

「ダメ、今逃がしたら!」

焦るるしあちゃんの言葉にぺこらちゃんはバズーカをレヴィに向かって放った。

しかし、弾は何もない宙を通りすぎた。

「消えた…」

そうフレアさんのいう通り目の前にいた皇帝イカとレヴィは消えていた。

「そうそう、るしあ先輩。

あなたの大霊園から5つの星を解放させて貰っていますので、その後を楽しみにしておいてください」

何もない空からレヴィの声だけが響いた。

「るしあ、大丈夫?」

傷心した顔のるしあをノエルさんが支える。

「一旦休みましょうか」

フレアさんはそうみんなに言った。

それから元のフィールドに戻った俺達は古龍島に向かって船を走らせた。




なかなか更新が出来なくてすいません。
こんな作品ですが、お気に入りが200を超えてすごく嬉しいです。
読んでくださっている方に楽しんで貰えるようにこれからも頑張っていきます。
お話も半分を過ぎ、これから後半に突入です。
最後までお付き合いください。


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古龍島までの雑談~スターの真実~

なんとか歌魚レヴィを退けたあなた達。
しかし、最後に歌魚レヴィが残した言葉に潤羽るしあは衝撃を受けたようだ。
まもなく目的の場所、古龍島に着く。
あなたは潤羽るしあに歌魚レヴィの言った言葉の真実を聞くのだった。


「大丈夫ですか?」

俺達は船内に入り休憩していた。

俺は温かいお茶をるしあちゃんに渡した。

「ありがとう」

るしあちゃんはお茶を受けとるとゆっくりと飲む。

「さっきの育てるって話聞いてもいいですか?」

俺はるしあちゃんの近くに座る。

周りの第三世代組の人達も静かにるしあちゃんの言葉を待っているようだ。

「星付きは大霊園から解放すると同じ種類のモンスターに継承するのは言いましたよね」

「はい」

るしあちゃんはポツリポツリと呟くように話し始める。

「普段なら星の数は増える事はないのです。

ただ、【ホロライブワールド】のプレイヤーはレベルアップするでしょ?」

「します。

まさか?」

「思ってる通りなのです。

モンスターやNPCもレベルアップするのです。

ただ、プレイヤーみたいに簡単には上がりませんし、モンスターが経験値を得るにはプレイヤーを倒さないといけないのです」

「じゃ、レヴィが育てるっていうのは」

「はい、どこかであの皇帝イカにプレイヤーを襲わせるのでしょう。

ただ、スターなので次のスターズにするにはかなりの数のプレイヤーを襲わないといけません。

それも高レベルのプレイヤーです」

「そして、さっきあの子言ってたわよね」

フレアさんが飲み物を飲み言った。

「るしあの大霊園から5つのスターを解放したって」

「それじゃ、各世界でプレイヤーが襲われる事が増える」

「確実にね」

「戦力増強的な意味合いかな?」

ドクロのコップを傾けながらマリン船長が言う。

「お城に行った時に団長、王様に伝えておくね」

ノエルさんの言葉に少し気になり聞いてみる。

「あのう、王様って誰なんですか?」

「あ、王様はYA…」

「ごほんごほん」

マリン船長の言葉をぺこらちゃんが咳払いで止めた。

「ま、そこは秘密と言う事ペこで」

「は、はぁ」

なんか誤魔化された?

「ちなみに、王様ってほぼ飾りみたいなものだから」

フレアさんが笑って言う。

「ま、今は考えても仕方ないよ。

次に会った時は逃がさないようにしよ」

フレアさんの言葉に一同頷いた。

《まもなく目的地に到着します》

機械音声が船内に流れる。

古龍島にまもなく着くみたいだ。

俺達は甲板に上がった。

まだ、遠目だが島が確かに見える。

しかし、なんだ?

何かが島の周りを飛んでいる?

「あれ?

何であんなに飛んでるの?」

ノエルさんが双眼鏡を覗きながら島を見ている。

「ほんとだね、普段は飛んでる方が珍しいのに」

フレアさんも島の方を見ながら言った。

「え?

何が飛んでるですか?」

「あ、あれはドラゴンだね」

マリン船長があっけらかんと答えた。

「はい?」

「いつもは1匹飛んでれば珍しい方ぺこなんだけど、今は10以上いるぺこね」

「何があったんですかね?」

るしあちゃんも不思議そうだ。

「ま、考えられるのはあの島の主が帰って来たって事ぺこ」

『え?』

ぺこらちゃんの言葉にみんなが驚く。

「それしか考えられないぺこでしょ」

「まさか、旅から戻ってきた?」

「なら、すごく嬉しいです」

「え?誰なんですか?

あの島の主って」

「それは行ってからのお楽しみかな」

ニコニコしながらノエルさんが言う。

「しかし、船長思うんだけど、あの島にこのまま近づけない感じがしない?」

確かにさっきまで島を回っていた竜達が明らかにこちら側に集まってきてる。

「まぁ、あれだけドンパチやってたらねぇ」

フレアさんがそう言いながら笑う。

「一度ここで停めて様子を見るぺこ」

「了解」

ぺこらちゃんの言葉にマリン船長が船を止める。

「じゃ、錨を下ろすね」

ノエルさんの言葉にふと気づく。

「そういえばその錨ってジェット噴射して攻撃しました?」

「すごくしてたよ。

そのお陰でこっちは腕の相手ほとんどせずにすんだし」

ノエルさんの言葉にバイトさんの言葉がただのダジャレじゃなかったと確信できた。

バイトさん錨役に立ったみたいだよ。

「さて、どうするのです?」

「そうね、ここは小舟を出して竜達を刺激しないように少数精鋭で行きましょうか」

「それがいいぺこね」

「まず、キミは確実に行ってもらわないといけないからね」

フレアさんに言われ俺は頷いた。

もちろん、そのつもりだ。

今回の目的は俺の用事だからな。

「それで、サポート役に…」

「あ、ぺこらは無理だからね」

とマリン船長。

「な、どうしてぺこか!」

いきなり言われ少しムッとするぺこらちゃん。

「いや、どう見てもエサになるよ」

マリン船長に言われ。

「そうだよねぇ」

と、自分で納得するぺこらちゃんだった。

「じゃ、マリンお願いするね」

フレアさんはマリン船長を指名。

「船長?」

「そう、小舟だけど船だからマリンのバリア使えるでしょ?

それに向こうに着いても、小舟を守るにはマリンが最適だと思うよ」

「う、そうかもだけど」

「さすがマリン頼りになるねぇ」

すかさずノエルさんがマリン船長に言葉をかける。

「え?そうかなぁ?」

「マリンかっこいいです」

るしあちゃんも続く。

「今回は花を持たせてやるぺこ」

「ま、みんながそう言うなら」

さすが第三世代組。

お互いの扱い方が上手すぎるんだが。

「じゃ、本人もやる気出たみたいだし、キミとマリンで行ってきて。

私達はここで待機してる」

「ぺこらの予想通りなら危ない目にはならないと思うぺこ」

「分かりました」

俺は力強く頷いた。

それから簡単に準備を済ませ、小舟にマリン船長と乗り込む。

古龍島にはまだ少し距離はあるが、この小舟もモーターが付いていて自動で島まで運んでくれる。

小舟の船首に立ち海賊旗を持つマリン船長。

「それでは行ってきます」

俺は【ふぁんたじぃ】に残った第三世代組のみんなに手を振り挨拶をして小舟のモーターを動かした。

竜が舞うその島にルーナちゃん達はいるのか?

俺はマリン船長と共に古龍島へとゆっくりと小舟を走らせるのだった。




次回は古龍島にて3人のホロメンと出会います。
さて、その3人とは?
では、次回をお楽しみに


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姫とドラゴンと不思議な2人

潤羽るしあからスターの真実を聞いたあなたは、古龍島の近くまで来ていた。
古龍島にはいつもと違い竜が数多く飛んでおり、それを刺激しないように宝鐘マリンと2人小舟で島に向かう事になった。
果たしてあなたは無事に島で姫森ルーナ達に会う事ができるのか。


「なんとか攻撃はされずに着きましたね」

小舟は何事もなく岸に着いた。

「ま、頭上に5匹ほど竜が旋回してたけどね」

マリン船長が苦笑いしながら言った。

「それじゃ、船長は小舟を守ってるから行って来ていいよ」

「やっぱ、俺1人ですか?」

「当たり前でしょ。

船長はこの小舟を守る責任があるのだよ。

決して怖いとかではない」

本当かなぁ。

「ま、ぺこらが言ってたように危険はないと思うよ。

この島に無傷で入れたのがその証拠」

「分かりました。

それでは、船をお願いします」

俺の言葉にマリン船長は力強く頷いた。

そして、俺は単身島の奥へと向かうのだった。

 

島は見た目どおり木が生い茂り草が生え道という道はない。

俺は鬼切丸で草を刈りながら奥へ奥へと進む。

小舟に乗ってる間にある程度の目的地はマリン船長から聞いていた。

この島の中心部に洞窟があってたぶんそこにルーナちゃん達がいるのではないかという事だ。

そして、もしこの島の主が帰ってきているならそこに主もいるらしい。

時折頭上から竜の雄叫びが聞こえてくるが、襲ってくる様子はない。

しばらく森の中を突き進んでいると先が明るくなっているのが見えた。

もしかして森を抜けるのか?

俺は急いでそちらに進む。

予想どおり俺は開けた場所に出た。

右奥には洞窟らしきものも確認できる。

やった。

これで目的地に行ける。

俺は洞窟の方へと向かおうとしたその時、眼前に1人の人物が立っていた。

その両端には赤と青のドラゴン。

「誰なのら?」

その全身ピンクなミニスカートのドレス姿でその人物はこちらを睨んでいた。

「えっとちょっと用事があってその洞窟に行きたいんですが」

「どうやってここに来たの?

船はモンスターがたくさんいて出れないはずだけど」

「それはいろいろと準備して自分の船で来ました」

「な、船を持っているのら?」

「は、はい」

驚いて聞かれてこっちも驚いてしまう。

「なるほど。

でも、ここから先は通さないのらよ」

「え?」

「今はゆっくりと休ませてあげたいのら。

だから、帰って」

「いや、そう言われても、俺も人を探しに来たので」

「ん~帰るの!」

「いや、帰れと言われても」

なんかだだっ子みたいな人だな。

しかし、お姫様っぽいけど。

ここの人かな?

もしかしたらルーナちゃん達を知っているかも?

「あのう…」

「もう、言う事聞かない悪い子はお仕置きなのら!」

そう言っていきなり銀色の円錐形の槍をどこからともなく出現させ攻撃してきた。

「ちょ、ちょっと」

俺は慌てて鬼切丸で防御する。

ギャンと金属が擦れ合う音がしてなんとか防ぐ事ができた。

相手の女性は後ろに飛び間合いをとる。

「なかなかやるのらね」

そう言って槍を構えたままの女性。

彼女の後ろに控えるドラゴン達に動きはない。

だが、いつ参戦してくるか分からないな。

「よそ見は禁物、なのら」

またしても突進。

く、なんとか横に飛び避ける。

「まだまだ~」

女性は重そうなその槍で連続突きを放つ。

「う、うわぁ」

俺はなんとか鬼切丸で受ける。

「く、これも防ぐのら?」

俺は逃げるように間合いをとる。

危なかった。

あやめちゃんと戦った時にめちゃくちゃ早い動きを見といてよかった。

なんとか防げた。

しかし、このままだとやられる。

折角ここまで来たのにやられてリスボーンなんかしたら、第三世代組のみんなに悪いし、もう目の前まで来てるんだ。

ここまで来たら絶対にルーナちゃん達に会わないと。

「今度はこちらから!」

俺は鬼切丸を構え、間合い詰める。

「やぁ!」

ガキン!

「え?」

俺の剣は巨大な盾に防がれた。

俺は急いで後ろに飛ぶ。

「ふふ、この盾を突破するのは無理なのらよ」

盾がゆっくりと浮かび彼女の左側に移動する。

浮遊する盾か。

これまた厄介だな。

あの感じだと、こっちの攻撃を自動で防ぐ感じか。

どうする?

俺は鬼切丸を見る。

まだこっちの切り札は残ってるけどやれるか?

アイテムボックスの中にある小型爆弾を見る。

小舟でマリン船長から何かあったら使うように言われた物だ。

くそ、やるしかないか。

相手は女性だけど、ここで負けるわけにはいかない。

「どうしたのら?

もう終わり?

ならこっちから行くのらよ」

俺はアイテムボックスから小型爆弾を取り出し女性の手前に落ちるように投げた。

「んな?」

ドーンと爆弾は爆発して砂煙をあげる。

「な、砂煙?」

よし、目眩ましにはなった。

なら、あの盾ごと貫く。

俺は詠唱を開始する。

「我は願う 大いなる神々に

我は欲す 神速で敵を貫く葬槍を

貫け!サンダートライデント!」

1日1回しか使えない俺の持つ最大攻撃魔法。

これで!

砂煙を貫きながら鬼切丸から雷の槍が女性に向かって放たれる。

ドガァ!

雷の槍は構えられた盾に当たり、それを貫こうと勢いを緩めず押し続ける。

「んな!」

ピシ

何かがひび割れる音。

盾に亀裂が走っている。

いける!

俺はそのまま、盾に向かって走った。

サンダートライデントが盾を貫けず霧散する。

しかし、盾はもうひび割れている。

これなら。

「うぉ~」

斬!

ジャンプから上段斬り。

盾は真っ二つになる。

よし、返す刀で。

俺は2つに斬った盾の先にいる女性を見た。

女性は胸に手を当てている。

その手からピンクとシルバーの光が漏れだしている。

これってまさか!

「んなぁぁぁぁぁ~」

気合いを入れる雄叫びの後、ピンクとシルバーの光が彼女を包み込む。

そして、光が晴れたその先にピンクの豪華なマントを羽織りシルバーの騎士の鎧に身を包んだ彼女がいた。

「ナイトオブプリンセス姫士王ルーナ見参なのら!」

《スキル【運命】が発動しました》

「ええ~!」

「まさか、この姿を御披露目するとは思わなかったけど、その強さに免じてルーナの最強技で止めをさしてあげるのら」

「い、いや、ちょっと待って!」

まさか、探し人が目の前にいるなんて。

その時、俺はリアルで友人と会った時に言われた言葉を思い出す。

「おまえ、今からホロメンの人達に会うつもりなら会ってない人の顔ぐらいは勉強しとけよ」

しとくんだったぁ~

「んなぁぁぁぁ~!姫士王ルーナ最終奥義、エクス」

ルーナちゃんが振りかぶった剣に凄まじい光が集まっている。

あ、ヤバい死ぬやつだ。

「ちょっとまって!」

え?

「んな?」

誰かの制止にルーナちゃんの技が止まる。

危な、危なかった。

光が霧散した剣を下ろしルーナちゃんが振り向く。

俺も声がした方を覗く。

そこには両端の赤と青のドラゴンが頭を下げる真ん中に1人の女性が腕を組んで立っていた。

その姿に見覚えがあった。

無事だったんだ、よかった。

「ココちゃ?」

 

「まさかココちゃと知り合いだったなんて」

そう言いながらルーナちゃんは出されたお菓子を食べる。

ここは洞窟の中、あの戦いの後俺達は洞窟に移動した。

「ま、知り合いというか顔見知りっていうか。

それより、あの時は自己紹介できてませんでしたね。

桐生ココです。

改めてよろしくです!」

《スキル【運命】が発動しました》

「こちらこそ、電子の狭間では助けてもらってありがとうございます」

「いえいえ、こっちもあの天使に小手を渡してくれてありがとう。

お陰でこっちに戻る決心がついたよ」

ココさんは優しい笑顔だった。

「役にたったみたいでよかった。

それでなぜここにルーナさんが?」

紅茶を優雅に飲んでいるルーナちゃんに聞いた。

「ん?ルーナ?

それはこの島にドラゴンが増えたって聞いて、もしかしたらと思ってここに来たのら。

そうしたら、ココちゃがいて嬉しすぎて長居してたら、モンスターが活性化して船も壊されて帰れなくなってたの」

「なるほど。

しかしさっきは本当にやられると思いました」

俺はさっきのルーナちゃんの技を思い出して震えた。

「ん?

ああ、エクススラッシュ?」

「あ、エクススラッシュって言うんですね、あの技」

思ってた名前と少し違った。

「そうなのら、あの技はルーナの全ての力を剣に集めて放つ技で、大抵の相手なら消滅するのら」

「いや、そんな技撃たないでください」

「だって、ココちゃを狙ってきた悪いやつかと思ったのらもん」

仲間思いなんだなルーナちゃんは。

「ありがとう。

私はそんなルーナやあくあぱいせんがいてくれるのが、嬉しいです」

「そう言えば、そのあくあちゃんはどこですか?」

俺は洞窟内を見回す。

「確か水をくんでくると言って出ていったけど、かなり時間がたってる」

ココさんが教えてくれた。

「俺、見てきます」

そう言って俺は洞窟の外に向かう。

「水場は洞窟を出て右に進めばあるのら」

後ろからルーナちゃんが教えてくれた。

「分かりました。

行ってきます」

俺はルーナちゃんが教えてくれた方へと向かった。

確か、あくあちゃんはメイドさんだったよな。

俺はメイド姿を探しながら森に入った。

しかし、かなりあれから歩いたけどメイドさんは見つからない。

「何かお探しかにゃ?

迷子の青年」

「え?」

大きな木を通りすぎようとした時にいきなり声をかけられる。

木の上を見るとそこには猫のようにくるまってるフレアさん?

「なんでフレアさんが?」

「フレア?

誰なのにゃ?

それより探し物は何なのにゃ?」

「え?

あ、メイドのあくあちゃんを」

「メイド?

はて?

そんなのも見つけられないのかにゃ?」

「え?」

フレアさんはからかうように笑う。

「上ばかり見てるから見えないのにゃよ。

たまには下も見てみたら?」

そう言ってフレアさんは消えてしまった?

「なんだったんだ?」

消えたフレアさんがいた木の上を見ながら、さっき言われた事を思い出す。

そう言えば下を見ろって。

俺は自分の周りの下を見る。

するとさっきフレアさんがいた木の下にカチューシャが落ちていた。

「え?なんでこんなところに」

近くに行ってカチューシャを拾う。

目の前の木には大きな穴が開いている。

「まさかここに?」

俺が覗き込んだ瞬間。

「あ、ごめんなさい」

「え?」

後ろから誰かがぶつかってきた。

俺はそのまま穴の中へ。

隣にはウサギの耳がついた茶色のロングストレートヘアーの女の子が一緒に落ちてきていた。

「あはは、落ちちゃったね」

「いや、落ちちゃったねじゃないですよ~」

そして、俺はウサギの彼女と穴の奥へと落ちていった。




さて、無事?に島でルーナちゃんと帰ってきたココさんに会えたあなたは不思議な2人に出会いました。
果たしていつもと違う彼女達は誰なのか?
そして、あくあちゃんはどこに行ってしまったのか?
では次回をお楽しみに


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不思議の国の

湊あくあを探しに森に入ったあなたは不思議な不知火フレアに出会った。
そして、木の穴の近くにあったカチューシャを手に取った時、背後からぶつかってきたウサギ耳の女性と穴の中に落ちていく。
さて、これからあなたはどこに落ちていくのだろうか。


「うわぁぁぁ~」

俺はそのまま穴の奥へと落ちていく。

横ではウサギの彼女が正座姿で時計を見ながら一緒に落ちていた。

なんか余裕だなぁ、この人。

 

「ねぇ、起きて!

早く!」

え、あ、いつの間にか寝てたのか?

誰かに体を揺さぶられ俺は起き上がりながら目を開けた。

「よかった起きたんだね。

それじゃ、私はこれでちょっと急いでるんだ」

「え?」

俺は声かけられた方を向いた。

そこにはさっき一緒に穴に落ちていたウサギの彼女が時計を見ながら慌てていた。

「え?

ちょっとここどこですか?」

「ごめんね、また後で~」

そう言いながら彼女は文字通りピョンピョンウサギのようにスキップしながら夜の町に消えていった。

そう、俺が目を覚ましたのはさっきいた森の中ではない。

言うなればビルの森。

夜の街中、道路の真ん中で目が覚めたのだ。

ビルには賑やかなぐらい明るく、街の路地にある店も開店してるのだろう、照明が明るい。

しかし、この街は異様だった。

俺は道路から歩道に歩く。

もし車が来たら危ないからな。

ショーウィンドーを覗くと様々な服が展示されている。

マネキンが今は怖いくらいだ。

マネキンの奥の店の中を見た。

やっぱり、いない。

次の店に行きショーウィンドーを覗く。

ここは雑貨屋さんか?

様々な小物の中に、卵の殻で作った人形が置かれている。

格好つけてシルクハットかぶってるし。

俺はまた、ショーウィンドーの奥の店の中を覗いた。

ここもか。

もう一度街中を見た。

これだけ明るくきらびやかな街の中。

違和感の正体は俺以外に誰もいない事。

店の中も歩道も、そして道路にも車1台さっきから走っていない。

どこからともなく軽快な音楽だけは流れてくるのだけど、それもどこから流れてくるのか分からない。

遠くから鳴ってるようでいてすぐそこで鳴ってるような不思議な感じだ。

そう言えば、俺以外に人いたな。

俺は一緒に落ちたウサギの彼女を思い出す。

確かこの先へ何か急いでた。

どうすれば分からない俺はまずその方向に向かう事にする。

手がかりはそれだけだからな。

俺はしばらく街の中を歩いた。

やはり誰とも会わない。

無人の街だけど明かりは眩しいくらいに付いている。

逆にこれが何も明かりがなくて月の光だけなら無人なのも納得できる。

それはそれで怖いけど。

でも、こんなに明るいのに人がいないのは異様だな、やっぱり。

「そんなに怖いのかにゃ?

迷子の青年」

「う、うわぁ~」

俺はいきなり声をかけられて慌てて前に飛ぶ。

「う、あた」

足がもつれて地面に尻餅を付いてしまった。

さっきすれ違った細い街灯に腕組みをしてもたれている、フレアさん?

「な、いきなり声をかけないでくださいよ」

「ん~?

なんかびくびくしながら歩いてたので、声をかけてみたにゃ」

俺は埃を払いながら立ち上がる。

「そ、それよりフレアさんはここがどこか知ってますか?」

「フレア?

さっきも言ってたようだけど、フレアって誰にゃ?」

「いや、あなたですよ」

何か不思議な事を言われたような微妙な顔をするフレアさん。

「ま、いいにゃ。

それより、探し物は見つかったのかにゃ、青年」

「探し物?」

あ、そうだ、忘れていた。

俺はあくあちゃんを探してたんだ。

「フレアさんはあくあちゃんを知ってますか?」

「う~ん、知ってるかなぁ、知らないかなぁ」

どっちなんだよ。

フレアさんはそう言いながら街灯にもたれかかったままくるっと逆側に移動する。

「あのう、ヒントだけでも」

「ヒント?

そうだにゃ、ここの先をまっすぐ行けばよかったかにゃ?」

フレアさんは俺が進んでいた方向を指差す。

やっぱりこっちだったか。

「いや、それともこっちだったかにゃ?」

そう言って道路の方を指差す。

「え?」

「それともそれとも」

また、くるっと逆に移動するフレアさん。

「こっちだったかにゃ?」

そして、店を指差す。

「いや、それ店の中で…」

「やっぱりこっち、かにゃ?」

元来た道を今度は指差した。

「ええ、どっちなんですか?」

「ははは、真実はいつも1つとこの前テレビで言ってたにゃ」

「いや、その真実が分からないんですが」

「それはそうこの場合の真実は人それぞれ違うのだから」

「え?

ちょっと何を」

「真の道を諦めず進めばそのうち実を結ぶ。

それが真諦進実にゃ」

「いや、四文字熟語っぽく言われても」

「ま、そんな四文字熟語にゃいんだけどね」

「いや、ちょっと」

「ま、頑張りたまえ迷子の青年。

信じて進んでいる道に間違いはないのにゃ」

「え?」

そう言ってフレアさんはまたくるっと街灯を回って、あれ?

消えた?

いや、こんな細い街灯のどこに隠れる場所なんて。

俺は街灯に近づき周辺を調べたが何も仕掛けはない。

また、消えたのか?

なんなんだよ、あのフレアさん。

でも、最後に言ってたな、信じて進む道に間違いはないって。

なら、こっちで合ってるはず。

俺はウサギの向かった道をもう一度見る。

はぁ、本当に何で出てきたんだフレアさん。

俺はまたウサギの彼女を追って走り始めた。

「なんだろう?」

走り続けていると街の様子が変わってきたような気がした。

何か変だな?

さっきと同じように人は相変わらずいない。

でも、明るいくらいに明かりは付いてきらびやかだけど。

そうか、明かりの色だ。

さっきまでいろんな色が付いていたけど、今は赤が多くなってる。

いや、ほとんど赤に変わってるんだ。

なんでいきなり?

「そこのキミ」

「え?」

なんかいきなり声かけられるの多いなぁ。

今度は驚かなかったけど。

俺は立ち止まりイケボな声が聞こえた方を向く。

そこは喫茶店の屋外席。

そこには一人のシルクハットをかぶった女性がカップにお茶をそそいでいた。

「あれ?

すいちゃん?」

「ん?」

やっぱり不思議な顔をされた。

「それよりキミ。

ここから先に行きたいのかい?」

「え、あ、はいそうです。

この先に探している人がいるはずなので」

「ふう~ん」

そう言ってすいちゃんにじろじろ見られる。

「ま、こっちに来たまえ」

「あ、はい」

俺はすいちゃんに言われ屋外席に入った。

「ん」

顔を動かすすいちゃん。

座れって事かな?

俺はすいちゃんの立つ机についた。

カチャ

さっきお茶を入れていたカップを目の前に置かれる。

いい匂いだ。

赤いお茶?

「ローズヒップティーだよ」

「あ、ありがとうございます」

「どうぞ」

なんかすすめられるけど大丈夫かな?

俺は恐る恐る飲む。

あ、美味しい。

「さっきの話の続きをしようか」

ティーポットを置きながらすいちゃんが、俺の向かおうとしていた方を見る。

「ここから先は女王のエリア。

彼女は赤が好きでね。

全てを赤にしないと気が済まないんだよ」

「はぁ」

「今のキミは赤を付けてないよね?」

俺は自分の装備を見る。

確かに赤はないな。

この前ココさんにもらった小手が赤だったけど。

「このまま進めば女王に捕まって裁判にかけられてしまう。

ま、確実に有罪でこれだけどね」

すいちゃんが首のところで手刀を横に動かす。

ああ、打ち首ってやつですね。

「そう言えばこの前ピンク髪の青いメイド姿の子が連れていかれてたなぁ。

たぶん、彼女も次の裁判でこれだな」

「ええ、メイド服?」

「え、あぁ、確かメイド服だったかな」

俺の声に驚いてすいちゃんが少し驚きながら答えた。

やばい、それたぶんあくあちゃんだ。

「ごめんなさい、俺急がないと」

俺は急いでローズヒップティーを飲み干す。

「ちょ、ちょっと待ちなさい」

「すいません、ごちそうさまでした。

俺行きます」

そして、俺は道路に出る。

「行くなら気を付けなさい、赤色には気を付けるんだよ~」

俺はその声を聴きながら赤色に変わっている街の奥へと走り出した。

 

本当に真っ赤だ。

街灯や街の明かりが赤色に変えられているお陰で全てが赤く変わっていた。

くそ、いつまで走ればいいんだ。

「なんだよ、止めろよ!」

「ん?」

道路を走っていた俺は歩道からの声が聞こえそちらを向く。

なんだあれ?

全身真っ赤なタイツを着た人みたいなのが女の子を襲ってる。

しかし、頭の先から足の先まで全部のタイツって始めてみた。

「こら、止めろ!」

俺の声に4人いた全身タイツがこちらを向く。

顔には何故か数字がかかれていた。

口も鼻も開いてないけど息できるのか?

「カドー!」

変な叫び声をあげながら襲ってくる全身タイツ。

「な、なんだぁ」

俺は咄嗟に鬼切丸で応戦した。

「なんだったんだ?」

俺はなんとか全身タイツを撃退した。

思ったより強くなかったな。

「大丈夫?」

地面に座り込んでいる女の子に声をかける。

ん?

どこかで見たような?

背中に小さな天使の羽根。

頭に手裏剣型の天使の輪?

「ありがとう、助けてくれて」

女の子は顔を上げてこちらを見た。

「あれ?かなたちゃん?」

俺の問いかけにやっぱりその子は不思議そうな顔をした。

「助かったよ、いきなり女王の手下に襲われたから」

「無事でよかった」

俺は女の子の姿を見た。

青色のワンピースを着ていた。

確かにこれなら狙われるか。

「さぁ、急がないと」

女の子がそう言って走り出そうとする。

「あ、ちょっとそんなに急いでどこに行くの?」

「裁判所だよ。

そこでぼくと間違えられて女王に捕まってる人がいるんだ」

「裁判所?

俺も連れていって、もしかしたらその人俺の探してる人かもしれない」

「う~ん」

女の子が俺の格好を見る。

「赤色を付けてないという事は女王の手下じゃないか。

それに強かったし」

「ダメかな?」

「分かった、手伝って。

裁判所はここから真っ直ぐ。

もう少しで着くから」

「OK」

俺は女の子と一緒に裁判所に向かい走り出した。

途中真っ赤な全身タイツが襲ってきたがなんとか退けた。

道中、女の子から捕まってる人の事を聞いた。

女の子は赤色を身につけない事から女王に狙われていたらしい。

そして、いつものように手下から隠れていると知らない青色のメイド服を着た女性がこのエリアに迷い混んで来て、女王の手下に捕まり連れていかれたそうだ。

「じゃ、その人を助けに?」

「そうだよ、ぼくと間違われてに連れていかれたんだし助けないと」

「なるほど、そう言うことなら俺も頑張らないとな」

「頼りにしてるよ。

ほら、見えてきた。

あれが女王の裁判所だよ」

女の子が指差すその先に重々しい建物があった。

これが裁判所か。

「ほら、こっち。

正面から行ったらあいつらに襲われる」

女の子は裏路地の方に行って手招きをしていた。

俺もそっちに向かう。

「ここに来るのは慣れてるからね、秘密の抜け道知ってるんだ」

女の子は裏路地を迷わず進む。

「この梯子を上がれば公開裁判場に出るよ」

俺と女の子は梯子を昇る。

そして、俺は円形になっている公開裁判場の2階席に出た。

公開裁判場には裁判官が座る場所に豪華な椅子にどかっと座る女性。

弁護側の発言場所にはあの時のウサギの彼女。

そして、被告人が立つ場所に両端に全身タイツが立つ中、メイド服の女性が立っていた。

「うわ、もう裁判中だよ。

急がないと」

女の子は1階に降りる階段に急ぐ。

俺もその後ろに続いた。

でも、あの裁判官も見覚えあるなぁ。

「こら、どけ!」

裁判場の入り口の扉にいる全身タイツに突っ込む女の子。

いや、そんなに強くないんだから。

俺は慌てて続く。

「助かった」

「いや、なんか弱くなってるみたいだから気を付けてよ、かなたちゃん」

「?」

女の子は勢いよく扉を開ける。

「ちょっとまったぁ~」

「な、誰ですか」

女の子の声に裁判場のみんながこちらを見た。

「あ、かなたちゃん」

捕まっている女性はそう言ってこちらを見ている。

あの人はやっぱりここの世界の人じゃないのか。

「カドー!」

捕まっている彼女の横にいる全身タイツが襲ってきた。

「うりゃ~」

俺は鬼切丸でその全身タイツを倒す。

「大丈夫ですか?」

俺は捕まっていた彼女に駆け寄った。

「え?あ、ど、どうも、誰ですか?」

なんか急におどおどされたんだけど。

「女王、ここまでだ!」

かっこよくいう女の子。

いや、そんな強くないんだから。

「くう、また邪魔をしてぇ」

裁判官の場所から顔を覗かすその人は。

「やっぱり、マリン船長?」

「はぁ?

私は女王ですが、誰ですかその素敵な名前のマリン船長って言うのは」

なんか含みのある言い方するなぁ。

「それより、今は裁判中。

邪魔するならあなた達も有罪ですよぉ」

「何が裁判だ。

いつも自分勝手な事言って有罪にする癖に」

「ええい、うるさいです」

なかなか言うなこの女の子。

「こうなったら力付くで。

キミ達やっておしまい!」

「カドー!」

1階の席から現れる全身タイツ達。

「負けないぞ!」

いや、こっちのかなたちゃん弱いから前に出ないで。

「えっとあくあちゃんでいいんだよね?」

俺は横にいるメイド服の女性に聞いた。

「え?あ、うん、こんあくあー湊あくあです」

「よかった。

それじゃ、あいつら蹴散らして外に行くよ」

「え?うん、分かった」

あくあちゃんはどこからともなくモップを出した。

「かなたちゃん逃げるよ!」

「え?」

女の子は振り返り不思議そうな顔をする。

「だから逃げるって」

俺はあくあちゃんと女の子の手を引いて扉に向かう。

「あ、こら~逃げるなぁ~」

背後でマリン船長の声がする。

入り口の前に全身タイツが道を塞いだ。

「カ、カドー」

でも、いきなり全身タイツがその場に崩れ落ちた。

「ほら、今のうちに」

「ウサギの人」

その後ろに手刀を構えたウサギの彼女が笑っていた。

「ありがとうごさいます」

俺達は倒れた全身タイツを跨いで外に向かう。

ウサギの彼女も一緒だ。

「逃がさないぞ~」

背後からは怖い声が聞こえるんだけど。

「大丈夫、女王最近運動不足だから追ってこれないよ」

とウサギの彼女。

「でも、女王の味方じゃなかったんですね」

俺はウサギの彼女に聞いた。

「別に味方とかじゃないよ。

呼ばれたから行っただけ。

ま、関係のない人が有罪にならなくてよかったよ。

そうだ、これはお礼」

そう言ってウサギの彼女から懐中時計をもらう。

「これは1度だけ時間を止めれる時計だよ。

何かの役に立てて」

「あ、ありがとうございます」

本当に止めれたらすごいな。

俺は懐中時計を見る。

なんとか俺達は裁判所から出た。

「ここから、元の方に行けば大丈夫だから」

ウサギの彼女がそう教えてくれる。

「私達は別の道を行くから」

「手伝ってくれて、ありがとう」

路地裏の方に向かいながら女の子が手を振っている。

「それじゃ、気を付けて」

ウサギの彼女も女の子を追うように路地裏に行く。

「はい、ありがとうごさいます」

「ありがとう」

俺とあくあちゃんは彼女達にお礼を言って元来た道を戻る。

「でも、あくあちゃん。

水汲みに行ったんじゃないんですか?」

「え?そうだけどいきなり気を失って、気づいたらこんなところにってなんで知ってるの?」

「それは…」

「ありゃ?

迷子の青年。

探し物が見つかったみたいにゃ?」

「え?」

「ひゃぁ~」

空中に寝転がって現れるフレアさん。

「また、あなたですか。

はい、無事に見つかりました」

俺は走りながら返答した。

「それは、よかったにゃ。

そうそう、どうしても言いたい事があったにゃ」

「なんですか?」

「足元危ないにゃ」

「え?」

フレアさんのその言葉に俺は下を向く。

そこには大きな穴が。

「な、なんでだぁ~」

「え、きゃぁぁぁ~」

俺とあくあちゃんは一緒に穴に落ちる。

「だからいったのににゃぁ」

「言うのが遅い~」

俺はフレアさんにそう突っ込みながら深い穴に落ちていった。




ホロメンの好きな歌から自分なりに想像してのお話でした。
無事にあくあちゃんと出会ったあなたは今度はどこに落ちていくのか?
では、次回をお楽しみに


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夢と現実は紙一重?

不思議な場所で湊あくあと出会ったあなたは彼女を連れて、不思議な場所から脱出しようと走った。
そんな時、いつもと違う不知火フレアの忠告通り穴の中へと落ちてしまった。
果たしてあなたと湊あくあの運命は?


「起きて、こんなところで寝てたらモンスターに襲われるのら」

ぺしぺし

頬を誰かに叩かれている。

「ん、ここは?」

俺は薄目を開ける。

「やっと起きた」

俺を覗き込む可愛い顔。

「あれ?ルーナちゃん?」

「あれ?じゃないのら。

ココちゃ、こっちは起きたぁ」

「分かりましたぁ、こっちはまだ夢の中みたいです」

俺はゆっくりと起き上がる。

ここは森の中?

あれ?

俺は穴に落ちて?

 

ルーナちゃんがココさんのところに走っていく。

俺は立ち上がり周りを見る。

やっぱりここは古龍島の森だ。

背後に大きな木がある。

その木に近づき根元を見たが穴は開いていなかった。

「あ、やっと起きた」

ルーナちゃんの声に俺も2人に近寄った。

2人が見守る中、メイド姿の女性がゆっくりと起き上がる。

「大丈夫ですか?

あくあぱいせん」

「あ、ありがとう、大丈夫」

やっぱりあくあちゃんだ。

「あてぃしどうしてここで?」

「2人仲良く倒れてたのら」

「え?」

ルーナちゃんに言われたあくあちゃんが、こちらを見た。

「ど、どうも」

「え、あ、誰ですか?」

あ、やっぱり。

「ん?でもどこかで会ったような気もする?」

不思議そうな顔で俺を見るあくあちゃん。

「ん?

あくあぱいせんはもう、自己紹介終わっちゃったんですか?」

「え?

あ、まだしてないよ。

えっと、こんあくあー

ホロライブワールド第二世代組湊あくあです!」

《スキル【運命】が発動しました》

今スキルが発動した。

やっぱり、あの世界は夢だったのか?

でも、ゲームの中で夢って。

「でも、どうして寝てたのかなぁ?」

不思議そうなあくあちゃん。

「たぶん、原因はこれですね」

ココさんが1つのキノコを持ってきた。

「これは爆睡夢茸。

このキノコの胞子が体に入ると寝てしまうのです。

たぶん、草を掻き分けてる時に当たって胞子を出したんだと思います。

その証拠にここにあるいくつかのキノコには胞子を出した後がありました」

確かに俺はあくあちゃんを探すのに森の中を歩き回ってた。

「本当にあくあちゃ先輩はドジなのら」

「もう、ルーナちゃん言わないで」

ルーナちゃんに突っ込まれて頬を膨らますあくあちゃん。

「では、どうしますか?

お2人が帰るなら送っていきますよ」

俺はルーナちゃんとあくあちゃんに言った。

「え?

帰れるんですか?」

「そうなのら、この人自分の船を持っているらしいのら」

「2人と別れるのは辛いですけど。

私はここにいますのでまた遊びに来てください」

ココさんは笑顔で2人に言った。

「うん、絶対に来るのら。

今度は美味しい、じゃなかったわためちゃも連れてくるね」

「おう、献上品ですね」

にやりと2人で笑う。

悪代官みたいなやり取りしてる。

「それでは、これで」

俺は2人を連れて戻る事になり、ココさんに別れを告げた。

「はい。

そうそう、かなたには小手をキミに返すように言ってますので、会ったら受け取ってください」

「ありがとうごさいます」

「またね~ここちゃ」

「また来ます!」

俺達は大きく手を振り洞窟を後にする。

ココさんも俺達が見えなくなるまで手を振ってくれた。

 

浜に着くと暇だったのか、昼寝をしているマリン船長がいた。

そっと近づき声をかけると「うわぁ~」と飛び起き、ルーナちゃん達に笑われていた。

事情を伝え、俺達は小舟に乗って【ふぁんたじぃ】へ。

その途中、俺は何気なくアイテムボックスを見ていたら、来る時には持っていなかったアイテムが入っているのを発見した。

アイテムボックスから取り出す。

「それ、どうしたの?」

マリン船長は珍しそうに俺の手の中を見てきた。

「ある人からもらった?のかな?」

「え?どう言うこと?」

マリン船長のその問いに笑って誤魔化した。

「怪しいなぁ」

マリン船長はそう言ったが、それ以上は聞いてこなかった。

もう一度手の中の物を見る。

1つの懐中時計。

説明にはこう書かれていた。

《いつも忙しく走り回る白兎の懐中時計。

忙しさの中、お休みしたい時に1度だけ時を止めれるとか止めれないとか》

どっちやねん。

やっぱりこのアイテムはあの世界の物だ。

しかし、あの世界は夢だったはず。

ああ、もうわけわからん。

「ほ~ら、ルーナたん達ぃ、あれが船長の船ですぅ」

見えてきた【ふぁんたじぃ】を指差しながら言うマリン船長。

「いや、一応俺の船なんで」

突っ込みをいれておく。

「ええ!」

マリン船長は俺の突っ込みにびっくりする。

え?

ビックするところ!?

それから無事に【ふぁんたじぃ】に残っていた第三世代組の人達と合流。

俺達は一度ルーナちゃんの屋敷がある第三の町に戻るのであった。

その道中。

船内の食堂で俺がまだ会ってないホロメンの話になった。

「えっとまだ会ってないのが、ロボ子先輩、AZKi先輩、メル先輩、アキ先輩、わためかぁ」

そう言いながらフレアさんがホワイトボードに名前を書いていく。

「誰か情報持ってない?」

「たぶんですけど、メル先輩は魔界にいるじゃないかと思うのです」とるしあちゃん。

「ああ、それは言えるぺこね。

特に何もしてなければ魔界の実家にいるんじゃないぺこか?」とぺこらちゃん。

「魔界ですか?」

「そうぺこ【ホロライブワールド】の裏エリアと呼ばれる内の1つぺこ」

「船長達は特に制限なく行けますけど、プレイヤーの人は条件をクリアしないといけないはずですよね」

「うん、そうだったね」

マリン船長の言葉に頷くノエルさん。

「他はわためちゃかな。

ルーナはいつもぼたんちゃんにお願いして探してもらってる」

「え?ぼたんちゃんですか?」

ルーナちゃんの言葉に俺は聞き返した。

「うん、ぼたんちゃん、わためちゃ探すの上手だよ」

「へぇ~」

「やっぱり捕食者は違いますねぇ」

ルーナちゃんの言葉に何故か頷いているマリン船長。

「残りの3人はほぼ特定の場所にいなくて旅をしてるはずだよね」とノエルさん。

「ですね。

お屋敷に戻れば何とかなるかも知れませんが」

首を捻りながらあくあちゃんが言った。

「え?

どうにかなるんですか?」

「え?はい、あくあクルーのみんなに聞けばどうにかなるかも」

やっぱりまだおどおどされてる。

「あくあちゃ先輩の推しさんは世界のあちこちに散らばってるのら」

「へぇ、それじゃ、3人の事探してもらってもいいてすか?」

「え、いいよ」

「ありがとうございます」

「それじゃ、まずは場所と探す方法がだいたい分かってる2人からかな」とフレアさんがまとめてくれる。

「ですね。

じゃ、俺は港に着いたらルーナちゃん達を屋敷に送っていきます」

「じゃ、私らは家に戻るよ。

そろそろ戻らないとラミィが心配だし」

「うんうん」

フレアさんの言葉に頷くノエルさん。

「じゃ、ぺこらも家に戻るぺこ。

今度こそゆっくりとするぺこ」

「るしあも大霊園に戻るのです。

任せっぱなしにしてますし。

魔界に行く時は一度、こっちに来てくださいね」

「で、船はどうすんの?」

マリン船長が身を乗り出して俺に聞いてくる。

「え、あのう、どうしましょう」

俺が困っているとすかさず、

「船長が管理しといてあげてもいいんだけどなぁ。

今ならタ、ダ、でしてあげれるけどなぁ」

「わざとらしいぺこ」

ぺこらちゃんの言葉に俺は苦笑しながら「じゃ、マリン船長お願いします」と頭を下げた。

「任された」とすごい笑顔でマリン船長は答えてくれた。

船はまもなく第三の町の港に着く。

これから残りのホロメンに会う旅がまた始まる。

さて、今度はどんな場所に行って誰に会うのか。

それは行ってからのお楽しみだ。




残りのホロメンも後5人。
終わりが近づいて来ました。
最終章はもう少し先ですが最後までお付き合いくださいませ。


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神出鬼没のラーメン屋店主、その真実の姿は!

不思議な夢から戻ってきたあなたと湊あくあ。
ホロメンからまだ会ってないホロメンの場所を聞いたあなたは、新たな目的地に向かう前に、姫森ルーナと湊あくあを屋敷に送るべく、第3の町を目指すのだった。


「それではまた」

『またね~』

俺達は無事に第3の町の港に着いた。

そして、それぞれ目的の場所に向かった。

フレアさんとノエルさんは始まりの町へ。

ぺこらちゃんは自宅に。

るしあちゃんは大霊園へ。

マリン船長はしばらく【ふぁんたじぃ】の中で過ごすそうだ。

そして、俺はルーナちゃんとあくあちゃんと共に、ルーナちゃんのお屋敷に向かうのだった。

「久しぶりの家なのら」

「そうだね、大自然で過ごすのも楽しかったけど、ゆっくりとお風呂入りたい」

楽しく話ながら前を歩く2人。

街道で人とすれ違うが誰も2人の方を見る人はいなかった。

さすがイベントキャラ属性。

しばらく歩くと大きなお屋敷が見えてくる。

するとルーナちゃんが振り返りこちらを見た。

「ここでいいのらよ」

「え?」

「たぶん最後まで送ってもらうと少し厄介な事になると思うのら」

「あてぃし達は屋敷に近づくと誰にでも見えるようになってしまうの」

「そうなると長い間留守にしていたルーナ達と一緒に帰ってきたキミがいろいろと聞かれて、しばらくここに留まらないといけなくなるのら」

「あ、なるほど、確かにそれはちょっとやばいですね」

長期留守にしていた推しが知らないプレイヤーと共に帰ってきたら何があったか気になるもんな。

「では、ここで」

俺は2人に挨拶をする。

「はいなのら。

また、手合わせお願いするのら」

「いえ、もう勘弁してください」

ルーナちゃんの言葉に俺は苦笑いする。

普通にやられそうだ。

「こっちで頼まれた事調べておくので、しばらくしたらまた来てね」

あくあちゃんがそう言って笑った。

「はい、よろしくお願いします」

「では、また」

「おつルーナ~」

「おつあくあ~」

そして、2人は屋敷に向かう。

俺はそれを見送った。

程なくして屋敷から大歓声が聞こえてきた。

ルーナちゃん達が戻ってきた事でその姿が見えたのだろう。

ここから見える屋敷のポールにルーナちゃん達が戻ってきた証として旗が上がっていた。

俺はそれを確認してから第3の町に戻った。

 

「さて、これからどうするかだなぁ」

第3の町に戻ってぶらぶらしながら、次の目的を考えながら歩く。

簡単に言えば2つ。

メルちゃんに会いに行くか、わためちゃんに会いに行くか。

ただ、メルちゃんは特殊な裏エリアと呼ばれる魔界にいるって言ってた。

それなら、わためちゃんの方がまだ会いやすいか?

ただ、ぼたんちゃんに会わないといけないけどなぁ。

ぼたんちゃんって神出鬼没だからなぁ。

よし、まずは情報収集するか。

俺はそう思ってステータスを開くのだった。

 

「というわけでよろしく」

「また、このパターンか。

ま、俺も用事があったからいいけど」

俺の呼び掛けに答え、目の前には友人が来てくれていた。

「で、こんなところではなんだからいつものとこ行くか」

友人にそう言われ、俺達は酒場に向かった。

いつも通りの注文の品が届く。

お互いに乾杯しラミィ水を飲んだ。

「さて、そっちの話を聞きたいが、まずは俺の用事から済ますよ」

そう言って友人は1枚のコインを机の上に置いた。

「これは?」

「これはホロコインっていうアイテムだ。

昨日ギルドメンバーと取りに行って手に入れてきた。

これをおまえに渡そうと思ってな」

「あ、ありがとう」

俺はコインを受け取り説明を見る。

《ホロライブのマークが刻印されたコイン。

お金としては使えない》

「なんだこれ?」

「初めの頃に言ったろ。

覚えてないか?

デスペナを回避する方法があるって」

「そういえば」

言ってた気がするな。

「忘れてるのかよ。

それがこのコインだ。

このコインは特殊でな、1人1つしか効力を発揮しなくて、複数持ってるとホロ時間1日で1枚残して残りは消える」

「そうなのか?」

「ああ、なので早めに会って渡したかったんだよ。

ちなみに運がよければ誰かが店に売って店頭に並ぶ事もあるが、最近需要が多くてな、なかなか手に入らなくなってる」

「へぇ」

俺はもらったコインをアイテムボックスしまう。

「ありがとうな」

「いや、かまわないよ。

今度一緒に取りに行ってもいいしな」

「どこにあるんだこれ?」

「高レベル帯のダンジョンに出てくる宝箱だな」

「なるほどな。

もし、これがなくなったらお願いするか」

「おう、なくならないのが1番だけどな」

友人が笑う。

確かにこれがなくなるって事は死んだって事だしな。

「おう、気を付ける。

で、俺の方の話いいか?」

「ああ、なんだ聞きたい事って」

「うん、裏エリアについてなんだが」

俺の言葉に友人の顔がすぐに真剣な顔になった。

「どこでそれ聞いた?」

小声でいう友人。

そんなにやばい話なのか?

「いや、知り合いにな。

その裏エリアにまだ会ってないホロメンがいるらしくて」

「ふぅ、どうせその知り合いもホロメンだろ」

「ははは」

分かってらっしゃる。

「裏エリアはその名の通り裏なんだよ。

だから、そのエリアに行けるプレイヤーはたぶん1割もいない」

「そんな場所なのか?」

「ああ、今の段階で裏エリアが5つ存在してるのは分かってるが、その行き方はまだ出回ってない。

噂ではかなり難しい条件をクリアする必要があるとかないとか」

「曖昧だなぁ」

「それくらい情報がないんだよ。

ちなみになかなか入れないって事を言えば、学園も裏エリアみたいなものだな」

「え?」

「あ、おまえは別な」

友人が手を左右に振る。

ま、確かにほぼ顔パスみたいに入学しましたけど。

「それで、その5つの裏エリアなんだが、さっきも言った通り存在だけが分かってる。

名称は魔界、天界、樹海、海底都市、鬼岩城だな」

「鬼岩城…」

俺はアイテムボックスの鬼切丸を見た。

あの時、森であったオーガロードがその場所から来たって言ってたはず。

「さすがに鬼岩城は知ってたか。

裏エリアでも名前だけは有名だからな。

あのあやめちゃんが住んでる場所って事になってる」

「あやめちゃんか」

あの戦い思い出すなぁ。

「ま、おまえがどうやってその裏エリアに行くのか知らないが、準備はきちんとして行けよ。

その場所の難易度は最高レベルだっていう噂だからな」

「あ、ああ、分かった」

それから俺はホロメンとの冒険を友人に語った。

聞きたいと言われたからな。

ただ、言ったら言ったで毎回血の涙流すのはやめてほしい。

めちゃ周りから目立つから。

「それじゃ、ありがとうな」

「おう、おまえも十分に気を付けろよ」

そして、俺は友人と別れた。

だいぶ話し込んでしまったか、辺りはだいぶ暗くなってきている。

俺は宿屋に向かった。

明日はぼたんちゃんがいるであろう始まりの町に向かおうと考えている。

まずはわためちゃんに会いに行く。

そして俺は宿屋でログアウトした。

 

 

そして次の日、ログインした俺は第2の町に向かう門のところに来ていた。

ログアウト中に今回はきちんとわためちゃんの情報を調べてきた。

なんか可愛らしい羊の女性だったなぁ。

今回は1人だから町に着くまでだいぶ時間がかかるな。

ここに来るまで道具屋でアイテムは買い揃えた。

非常食も持った。

よし、行くか。

ぐ~

門を出た瞬間お腹がなる。

っていうかゲーム内でもお腹なるんだな。

「ちょっとそこのお兄さん」

「はい?」

声のする方を見ると何故かラーメンの屋台があった。

「どう?

お腹の音が盛大に聞こえたけど食べてく?」

確かにお腹は減っているが、店主の顔はのれんで見えないし大丈夫かな?

「ははは、とって食ったりしないよ」

躊躇している俺にのれんの奥の店主が笑う。

よし。

俺は意を決してのれんをくぐる。

店主は何かを作ってるみたいで湯気で顔が見えない。

「なんにします?」

「えっとおすすめは」

「おすすめ?

そうだね、羊肉の乗ったラーメンとかどうだい?」

「羊?」

ふと、頭の中でわためちゃんが「たべないよねぇ~」と言いながら通りすぎたような気がした。

「えっと、別のあります?」

「ん?

お客さんは羊に興味あるんじゃないの?」

そう言って湯気の向こうから店主が顔をこっちに向けた。

「あ、ぼたんちゃん」

「よ、元気にしてた?」

手を軽くあげて笑うぼたんちゃんがそこにいた。

 

「で、どうしてここに?」

ぼたんちゃんに普通の醤油ラーメンを出してもらい食べながら聞いた。

「ん?

フレア先輩に聞いてね。

キミがわためぇを探すと思うから手伝ってあげてって」

フレアさん、すごく助かります。

「で、本当にわためぇ探すの?」

「はい、まだ出会ってなくて」

「そっか、なら一緒に行くよ」

「ごちそうさまでした。

めちゃくちゃ美味しかったです」

俺は器をカウンター上に置く。

「はい、お粗末様でした」

器を受け取ったぼたんちゃんは洗い物を終えた後、屋台を出る。

「ほら、キミもこっちに出てきて」

「あ、はい」

ぼたんちゃんに言われ屋台を出る。

「よし」

パンと両手を叩くぼたんちゃん。

するとさっきまであった屋台が消えた。

「え?」

「移動屋台麺屋ぼたんゴー」

「はい?」

「さっきの屋台の名前。

出し入れ自由な便利屋台」

「はぁ」

確かに便利だけど、どこにしまわれたんだぼたんゴー

「さてと、わためぇだよね」

「あ、はいそうです」

ぼたんちゃんに聞かれて返事をする。

「たぶん今の季節なら【ふぉーす】の高原地帯にいるかな」

「え?

季節でいる場所変わるんですか?」

「そう、過ごしやすい場所を好んで、牧草地帯で昼寝してるから」

どんなキャラなんだ。

「じゃ、行きますか」

「はい、お願いします」

そして、俺はぼたんちゃんと一緒にわためちゃんを探す旅に出るのだった。




次はホロメン捕食対象者No.1のわためちゃんの登場です。
彼女は無事に捕食者達から逃げる事ができるのか?
次回をお楽しみに(別にとって食べられる訳ではありませんが…)


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特製醤油羊骨スープのわため風ラーメン

残りのホロメンに会う為、まずは獅白ぼたんに会おうと旅にでようとした時、門の外でラーメン屋をしている獅白ぼたんに会ったあなた。
獅白ぼたんから角巻わためは【ふぉーす】にいる事を聞き、あなたは共に【ふぉーす】へと向かうのであった。


「さて、【ふぉーす】に行く方法だけど」

そっか、【ふぉーす】はここ【ファンタジー】からだと空の上にある。

「何か近くに行く道ってあるんですか?」

「ん~」

ぼたんちゃんは何か考えた後、指を2本咥える。

そして、ピーっと口笛を鳴らした。

「さて、暇なら来てくれるんだけど」

そう言ってぼたんちゃんは空を見上げた。

するとしばらくすると空から何かが降りてきた。

「お、きたきた」

ん?なんだ?ってすごいスピードで降りて…

ドカン!

空から降りて(落ちて?)きた物体が地面にぶつかりすごい衝撃と砂煙をあげる。

俺はその衝撃に吹き飛ばされそうになったが、ぼたんちゃんは普通にその場に立っていた。

「獅白ぼたん、その呼び方止めなさいって言ったでしょ」

砂煙が晴れ、クレーターからゆっくり出てきたのは。

「トワ様?」

「ん?あれ?あんた何してんの?」

「ん?トワ様知り合い?」

トワ様が驚いてこっちを見ている横で、興味津々でぼたんちゃんが聞いていた。

「ま、ちょっとね。

それより、前に言ったでしょ、その呼び方止めなさいって」

「いやぁ、これが1番早い呼び方かなっと」

「はぁ、こっちとしてはいきなり呼ばれるから来るの大変なんだけど」

「いや、だから暇な時でいいですって言ったじゃないですか」

「あのねぇ、後輩が呼んでるのに無視できないでしょ」

優しいなぁトワ様。

「で、今回もあれ?」

「はい、お願いできますか?」

「いいけど、あんたも?」

「え?あ、はい」

よく分からないけどたぶん上に行く方法かな?

「はいはい、じゃ目を瞑って」

「は~い」

「分かりました」

俺は言われたように目を瞑った。

「はい、いいわよ」

すぐにトワ様の声。

俺はゆっくり目を開ける。

そこはこの間見た場所だった。

「【ふぉーす】の第2の町?」

「そ、トワの家がこの町にあるからね。

転移できるの」

トワ様は胸を張りながら言った。

「一瞬でこれるから便利なんだよなぁ」

ぼたんちゃんも何度も頷き言っている。

「だからってそう気軽に使いまくるな」

「はぁ~い」

「それじゃ、トワは帰るから」

『ありがとうございました』

2人でトワ様にお礼を言った。

トワ様は「ほんとにもう」と言いながら家?の方に向かって特大ジャンプをして帰っていった。

「さて、ここからならわためぇのいる場所までそう遠くないよ」

ぼたんちゃんはそう言いながら町に入っていく。

「え?

町の中にいるんですか?」

「ん?

あ、違う違うちょっと必要なものがあってね」

俺の問いににこにこ笑顔で答えてくれるぼたんちゃん。

俺は先を行くぼたんちゃんを追いかけた。

ぼたんちゃんはまず八百屋に。

「えっと、どれがいいかな?」

そう言いながら野菜を物色するぼたんちゃん。

「うん、これだな。

おやじ、これとこれ」

ぼたんちゃんが八百屋のNPCおやじに言って野菜を購入する。

次に道具屋に行き、ある物を買う。

「これで大丈夫かな」

「何を買ったんですか?」

俺は不思議に思い聞いてみた。

「ん~それは現地に着いてからのお楽しみかな」

そう言ってぼたんちゃんにはぐらかされた。

それから俺達は第2の町を出て近くにある山へと登る為、その山に向かった。

何でもこの季節はそこが1番気候が良く、様々な動物が集まるのだと言う。

なんでホロメンでもあるわためちゃんが、そこにいるのか分からないが、ぼたんちゃんと一緒に行けば間違いはないだろう。

「さて、今からは山登りだから頑張りなよ」

ぼたんちゃんにそう言われ、予想より高いその山を登り始める。

ただ、登ると言っても絶壁を登るのではなく、歩いて上がっていける傾斜なのが助かった。

「しかし、モンスターが全然いないですね」

そう、町から出てここまで1体もモンスターと遭遇していない。

「ま、この山までのモンスターは私が倒してるんだけど」

あ、やっぱりそうなんですね。

「この山にモンスターがいないのはわためぇがいる証拠かな」

「え?

そうなんですか?」

「ま、わためぇもホロメンだし、今は自分がこの山にいるからね、モンスターがポップするのを押さえてる」

「そんな事出来るんですか?」

「わためぇの特殊能力で、捕食しようとしてくる相手を自分に近づけさせない為に結界が張れるんだよ」

「へぇ、それは凄い能力じゃないですか」

「ちなみに、自分より強い相手には効かないから」

「それって…」

「ちなみに、武器を持ったプレイヤーはこの結界には入れない、入っても直ぐに追い出されるから」

「え?

でも、俺は今入ってますよね」

俺は今、ぼたんちゃんと絶賛山登り中で、武器も持っている。

「それは私と一緒だからね」

「なるほど、ちなみにわためちゃんを捕食しようとする相手っているんですか?」

「え?いるよ」

「え?誰ですかそんな大それた事するのは」

「え?いや、ほら、わためぇリスポーンも数秒ですむし何より、美味…」

「え?」

「ん?」

何やら不吉な言葉が聞こえたような?

話題をそらさねば。

「そういえば、町で買った食材は何に使うんですか?」

「ああ、あれ?

新作のラーメン考えててね。

羊骨のラーメンなんだけど」

「羊骨ですか…」

「そう、それの具材として買った」

「で、わためちゃんを探しに?」

「そうだね、ちょうどわためぇにも用事あったからキミの手伝いもしようと思ってね」

「ラーメン関係で用事ですか?」

「そうだよ、良く分かったね」

話題をそらしたはずが余計に詳しい事実が…

「も、もうすぐ着きますかね」

「そろそろだと思うよ」

俺はもう話を止めて歩き、この後の展開を想像するのを止めた。

それからしばらくして。

俺達は山の中腹の広い牧草地に着いた。

「いつもならここら辺にいるんだけどな」

パン

そう言いながらぼたんちゃんは手を叩く。

すると屋台麺屋ぼたんゴーが現れた。

「さてと」

屋台の中に入り何か下ごしらえをし始めるぼたんちゃん。

俺はカウンターに座りそれを見守った。

まずは町で買ったジャガイモを茹でてマッシュし始めた。

「マッシュポテトですか?」

「そう、潰しながら黒胡椒を少々ね」

あ、道具屋で買ったアイテム。

「次はカリフラワーをさっと茹でる」

「さっとなんですね」

「食べた時の食感を残しておきたいからね」

そう言いながら奥で何かを準備して焼き始めるぼたんちゃん。

「何を焼いてるんですか?」

「それは秘密だね」

「何か美味しそうな匂いするねぇ」

「え?」

誰かがのれんをくぐり入ってきた。

「お、いらっしゃい」

「やっぱり、ぼたんちゃん。

あれ?新人さん?」

そう言われ俺は入ってきた人を見た。

羊の可愛らしい女性。

あ、わためちゃん。

「こんにちドドドー

角巻わためです」

《スキル【運命】が発動しました》

「よろしくお願いします」

「どうしたの今日は」

わためちゃんはカウンターにつきながらぼたんちゃんに聞く。

「あ、新作のラーメン考えたからわためぇにいつもの貰おうと思って」

「え?

新作?」

ここから惨劇が起きるのか?

俺はなるべくわためちゃんから距離をおく。

「ん?なんで離れるの?」

不思議そうに聞いてくるわためちゃん。

「そう、羊骨ラーメンにしようと思って」

「羊骨かぁ…って羊骨?」

ぼたんちゃんの言葉に驚くわためちゃん。

「そう、なんでいつものもらっていいかな?」

タンとぼたんちゃんが包丁をまな板の上に置いた。

この展開はやばいのでは?

「う~」とわためちゃんは考えた後「分かったよ」と元気良く答えた。

いいんだ!

「ありがとう、助かるよ」

ぼたんちゃんも笑う。

「じゃ、これ」

トンとカウンターに置かれた1本のビン。

え?

「そうそう、これがないと」

ぼたんちゃんはビンを受け取った。

「なんですかそれ」

俺はぼたんちゃんに聞く。

「あ、これはわため印のミルクだよ」

「え?」

わためちゃんのミルク?

思わずわためちゃんをじっと見てしまう。

そして、良からぬ妄想が…

「え?あ!違う、何考えてるの、キミは!」

わためちゃんは俺の視線に顔を赤くして額に両手の2本指を当てる。

「あ、わためぇダメ!」

「ういビーーーーム!」

「ぐわぁ~」

俺はわためちゃんから放たれた訳の分からないビームに当たり屋台から吹き飛ばされて、牧草地に転がった。

「あ、やっちゃった」

「やっちゃったじゃないよ、大丈夫?」

遠くでぼたんちゃんの心配する声が聞こえたような気がする。

しかし、ホロメンに吹き飛ばされるの案外多いような気がする。

そう、考えながら俺は気を失った。

 

「ここは?」

「あ、起きた?」

俺は起き上がり周りを見る。

ここはさっきの牧草地?

「気を失っただけみたいでよかったよ」

隣に座るぼたんちゃんが笑いながら言った。

「いえ、俺も悪いんです。

わためちゃんを変な目で見たから。

それよりわためちゃんは?」

「あそこ」

ぼたんちゃんの指差す先で、わためちゃんが誰かに怒られていた。

「ま、今回もビーム無断使用したうえで危うくプレイヤーキルしそうになったからね。

そりゃ怒られるよ」

一頻り何かを言われた後、叱ってた人物が姿を消した。

「ログアウトしたみたいだね」

「え?プレイヤーさんだったんですか?」

「そ、だよ。

ビームの正当な使用者さん」

わためちゃんがこっちに戻ってくる。

「こってり叱られちゃった」

顔は半笑いだった。

「すいませんでした」

俺は立ち上がり頭を下げる。

「いやいや、わためぇもきちんと説明しなかったから」

わためちゃんが手を振る。

「ちなみにわため印のミルクは、わためぇが飼っている羊のミルクだから」

ぼたんちゃんが教えてくれた。

「そう、わためぇ羊を飼ってるのよ」

そして、わためちゃんが説明をしてくれた。

簡単に言うとわためちゃんは羊飼いをしており、飼ってる羊の為に過ごしやすい牧草地に移動しているのだそうだ。

で、わため印のミルクはぼたんちゃんが食後に飲む為に毎回新作を考えたら貰いに来ているそうだ。

「そういう事なんですね」

「このミルク飲むと口の中リセットできていいんだ」とぼたんちゃん。

「キミもいるなら1本あげるよ」

わためちゃんからミルクをもらった。

「さて、キミが起きた事だし、新作ラーメン試食しみて」

そう言われて、俺とわためちゃんはカウンターに、ぼたんちゃんはラーメンの準備に取りかかった。

「はい、おまち」

トンと目の前にラーメンが置かれた。

「おお」

見た感じが凄い。

器の奥にマッシュポテト。

その横にはカリフラワーが置かれている。

そして、その更に横には渦巻き型のソーセージ?

「あ、それお手製の羊肉で作った渦巻きソーセージ」

「へぇ」

なるほど、これを裏で焼いていたのか。

「ちなみに炭火焼きしてるよ」

「おお」

そして、半分の煮卵2つにこれは?

「羊肉のチャーシューだね」

その下に1枚置かれているチャーシューは羊肉の。

最後にマッシュポテトの上に大きな2枚の海苔。

「わためぇを意識して盛り付けしてみた」

あ、確かに煮卵が目でチャーシューが大きく開いた口。

マッシュポテトとカリフラワーで羊毛を表現してこの渦巻きソーセージが角か。

「ほら、冷めないうちに」

ぼたんちゃんに言われて俺はラーメンに箸を入れた。

「あ、黄色」

そう、麺が鮮やかな濃い黄色だった。

「卵麺を使ってる。

わためぇは髪色が黄色だからね」

なるほど。

早速麺をモグモグ。

「ん~」

次はスープをごくっ。

「かえしは麺屋特製の秘伝の醤油ダレを使って羊骨のスープで割ってる」

「うんうん、はぁ~」

俺は夢中でラーメンを食べる。

「ごちそうさまでした」

「お粗末様」

ん、満足。

「なんか食べてる間ずっと横でわためちゃんに見られてたので食べにくかったですけど」

「はは、羊の横で羊食ってるからね」

「本当だよ、めちゃ美味しそうに食べるからわためぇも欲しくなっちゃうじゃない」

「ん?食べる?」

ぼたんちゃんが聞くと首を振るわためちゃん。

さすがに共食いはしないか。

「また、こっそり後で」

食べるんかい。

「で、キミはここに何しに来たの?」

わためちゃんが俺を見て言った。

ごもっともな意見。

「ん、なんかホロメンと出会う旅をしてるみたいで、わためぇとまだ会ってないから探してたみたいよ」と洗い物や後片付けしながらぼたんちゃんが言ってくれる。

「へぇ、凄い旅してるんだねぇ」

ま、確かに会うだけでも普通なら大変と言われているホロメンに会う旅をしてるって言えばそういう答えになるよな、やっぱり。

「で、どのくらい会ってるの見せて見せて」

わためちゃんに言われて推し一覧を見せた。

「え?」

驚くわためちゃん。

「な、なにか変なとこありましたか?」

いきなり驚かれたら焦る。

「いや、ここ光ってる」

俺はわためちゃんの指差すところを見る。

あ、ココさんのところか。

「はい、古龍島に今いますよ」

「な、なんだってぇ~

異世界巡りから帰ってきてるの?」

「あ、はい」

「これはこんなところで寝てる場合じゃなかった」

あ、やっぱりここで寝てたんだ。

「ぼたんちゃん、【ファンタジー】の第3の町に行ける?」

「行けるよ、ピン立てて来たから」

「ピン?」

「あ、転移する目印みたいなものだね。

ホロメンにはこの【ホロライブワールド】ならそのピンを使って転移できるアイテムを持ってるから。

ただ、ピンを立てられるのは1ヶ所だけだけど」

「じゃ、お願い連れてって」

「いいけど、羊は?」

「ん、これ立てとくから大丈夫」

わためちゃんは屋台から出ると、近くの牧草地にどこからともなく出したわためちゃんにそっくりなかかしを立てる。

「なんですかそれ?」

俺も屋台を出てわためちゃんに聞いた。

「わため印の結界かかし。

これを立ててたらわためぇがいなくても1週間は結界を保てるの。

ま、一回使うとそれを外すまで他では使えないけどね」

パン

後ろで手を叩くぼたんちゃん。

屋台はその場から消えていた。

「じゃ、戻ろうか」

『はい』

俺達はぼたんちゃんの転移で第3の町へと移動した。

ちなみにトワ様の時と同じように目を瞑っていたのでどんな移動かは分からなかった。

「それじゃ、島に行ってくる」

着いたそうそう走り出そうとするわためちゃん。

「あ、もし船が必要なら第3停泊所に船がありますから、マリン船長がいると思います」

俺はそんなわためちゃんに後ろから声をかける。

「分かった、ありがとうね」と振り返りながら手を振りわためちゃんは走り去ってしまった。

「凄い勢いですね」

「ま、同期が戻ってきたらやっぱりそうなるよね」

わためちゃんの後ろ姿を見て何故か複雑な顔でぼたんちゃんが言った。

「さて、それじゃ、私は戻るよ」

いつもの顔に戻ったぼたんちゃんは俺に向かって言った。

「はい、助かりました」

「それじゃ、残りも頑張ってね」

軽く手を振りぼたんちゃんも行ってしまった。

「また~」

俺もそんなぼたんちゃんに手を振り見送った。

ぼたんちゃんが見えなくなった後、ふと空を見た。

だいぶ日が傾いてきている。

今日はここらへんにして、明日あくあちゃんに情報を聞きに行こうかな。

そう思い、俺はログアウトする為に宿へと向かった。




更新遅くなってすいません。
どたばたがあって遅くなりました。
今回のお話で出てくるラーメンですが架空のラーメンですので、実際に美味しいかどうかは興味のある方で作っていただいて、食レポお待ちしております。(丸投げ)
では、次回もお楽しみに


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あくあとるしあの道しるべ

獅白ぼたんと共に常闇トワのお陰で【ふぉーす】にたどり着いた。
そこで無事に角巻わためと合流した。
あなたは次のホロメンに会う為、一度第3の町に戻るのであった。


ぼたんちゃんが始まりの町に戻った次の日、俺は第3の町にログインしていた。

さて、そろそろあくあちゃん情報集まったかな?

俺はルーナちゃん達が住む屋敷へと向かった。

まだ朝の早いうちだからなのか、街道にはあまり人は歩いてはいなかった。

でも、時折プレイヤーとはすれ違う。

しばらく行くとルーナちゃんの屋敷が見えてきた。

屋敷の屋根にあるポールには旗があげられている。

ルーナちゃん達いるんだな。

「おはようございます」

門の前にいるルーナイトさんに声をかけた。

「お、おはよう。

そうそう、あれからルーナ姫が戻られたよ」

この人はたぶん俺がこの屋敷にルーナちゃんがいるかどうか聞きに来た時の人だな。

「はい、よかったです」

「うむ。

で、今日はどんな用事かな?」

満足そうに頷くルーナイトさん。

「はい、あくあちゃんに用事があって」

「あくあちゃんか、たぶんこの時間ならもう起きてると思うけどな。

しばらく待ってくれ」

門番ルーナイトさんがどこかに連絡してくれる。

「はい、分かりました。

そう伝えます」

誰かとの話が終わってこっちを見るルーナイトさん。

「話は通したよ。

屋敷に向かってくれ、そこに案内の人がいるから」

「ありがとうございます」

俺は門番ルーナイトさんにお礼を言って門の中に入った。

屋敷はとても管理が行き届いていて綺麗だった。

中庭には花壇もあるな。

色とりどりの花が咲いている。

しばらく花壇を眺めていると突然声をかけられた。

「花に興味あるの?」

「え?」

そこにはあくあちゃんが立っていた。

「あれ?

屋敷の中にいるんじゃ?」

「朝の散歩がてらに迎えにきたよ」

そう言って笑うあくあちゃん。

「ありがとうございます」

「それじゃ、その中庭で話しよっか」

そう言われて、俺はあくあちゃんと一緒に中庭のベンチに座った。

「あれからみんなに情報を集めてもらったんだけど、正直ホロメンはイベントキャラだからなかなか見つからなくて」

確かにそうだ。

「でも、なんとかロボちゃんとアキちゃんの場所はだいたい分かったよ」

「本当ですか、ありがとうございます」

「まずはロボちゃんだけど【バーチャル】の近未来都市でクエストを見たって人がいたの」

「近未来都市?」

「そう、【バーチャル】にある町の1つでかなり文明が発展してる都市。

タイヤのない車があったり、ロボットやアンドロイドが住んでるよ」

「おお、そんな都市が」

ロボットかぁ、見てみたい。

「そして、アキちゃんは踊り子として世界を回ってて、今は【ゲーマーズ】のカジノにいるって情報があったよ。

カジノのダンスイベントで姿を見たって」

「ありがとうございます、助かります」

「いえいえ、この前助けてくれたからね」

「それじゃ、早速どちらかに行ってみます」

「うん。あ、そうだ。

昨日、るーちゃんから連絡あって、もし来たらこっちに寄るように伝えてほしいって言ってた」

あ、るしあちゃんも魔界の行くなら来てって言われてたんだ。

「はい、分かりました。

寄ってみます」

「うん、それじゃ、気をつけて。

おつあくあ~」

俺はあくあちゃんに頭を下げてお礼を言った後、屋敷を出た。

次はるしあちゃんのいる大霊園だ。

 

ここはいつ来ても幻想的だな。

お墓がたくさんある場所だが、なんとなく怖いイメージはなかった。

ま、ガイコツが箒や雑巾付きバケツ持ってうろうろしてるけど。

確かこの奥にいるはずだよな?

俺はお墓の間を通り奥へと進んだ。

しばらく行くと半円のドームが見えてくる。

あれだ。

俺はドームへと急いだ。

入り口には2体の大きなガイコツが。

「え、え~と」

俺が目の前で躊躇していると、ガイコツは何故か入り口を開けてくれた。

「あ、ありがとうございます」

ガイコツにお礼を言って中に入る。

「あ、来たのです」

中では花に水やりしているるしあちゃんがにこにこしながら待っていた。

「遅くなってすいません」

「いいのですよ。

ささ、座って」

椅子を進められ座る。

「あれから誰かに会えました?」

「はい、わためちゃんに」

「そっか、わためちゃんに…」

「あのう、すいません。

そのなんか怖い雰囲気出すのやめてもらっていいでしょうか」

「はは、冗談です」

にこっと笑うるしあちゃんだけど本当に大丈夫なのだろうか。

「それで、魔界の行き方なんだけど」

「はい」

「魔界に関係するホロメンに直接会って許可を取ると行けるようになるのです」

「え?それだけですか?」

俺の言葉にはぁっとため息混じりの息を吐くるしあちゃん。

「ま、確かにキミはホロメンに会うのに苦労はあまりないかもですが、普通はほぼ無理な条件なんですよ。

ホロメンと仲良くなって許可を貰うなんて」

確かにそうだ、直接会って許可なんて初対面じゃ出来ないし。

「確かにそうです」

「ま、キミはその代わりにいろいろと背負ってるみたいだから。

それで、魔界に関係するホロメンですけど、実はるしあもその1人なんですが、るしあは許可をあげません」

「ええ、なんでですか?」

「ここであげたら面白みないでしょ」

「は、はぁ」

「というわけで後は自分でそのホロメンを探して許可をもらってください。

るしあが教えてあげるのはここまでです」

とるしあちゃんはいたずらっぽく笑う。

「分かりました、頑張ってみます」

「そのいきなのです」

そして、俺はるしあちゃんにお礼を言って、1度第3の町に戻るのであった。

町に着く頃にはすっかり夜になっていた。

俺は宿に向かいログアウトする。

明日からどうするかはまた明日に決めよう。

 

 

 

次の日ログインした俺は朝食を取る為に、宿の1階にある食堂に来ていた。

さて、手に入れた情報を整理しよう。

まずはロボ子さんだけど、

【バーチャル】にある近未来都市でクエストが目撃されているのでそこにいる可能性が高い。

アキちゃんは、

【ゲーマーズ】のカジノのダンスイベントで目撃されている。

そして、メルちゃんがいるであろう魔界には

魔界に関係するホロメンに会って魔界に行く許可を貰わないといけない。

以上が今回手に入った情報か。

さて、どうやって行けばいいかだけど。

まずは魔界に関係するホロメンか。

俺は推し一覧を開ける。

会っている中で魔界に関係するホロメンはシオンちゃん、ちょこ先生、るしあちゃん、トワ様の4人。

るしあちゃんは昨日断られたから残りは3人。

うう、先に情報を聞いとけばトワ様に聞けたけど、遅かったなぁ。

シオンちゃんは今はどこにいるか分からないし、トワ様はまた【ふぉーす】に行かないといけない。

【ふぉーす】はそう簡単に行き来出来ないからなぁ。

そうするとちょこ先生か。

ロボ子さんが【バーチャル】にいるからちょうど学園で情報収集するのもいいかもな。

久しぶりに学園のみんなと会いたいし。

よし、それじゃまずは学園を目指してみるか。

俺はそう決めて、朝食を平らげた。

 

さて、行くとするか。

俺はまずギルドに行って壁を越える為の通行書を発行してもらった。

そして、その他もろもろ必要なアイテムを購入。

俺は【ファンタジー】と【バーチャル】の間の世界の壁に向けて旅立った。

道中はモンスターといくらか出会った。

向こうはパーティーでこっちはソロだったが、レベルも上がっていたのと鬼切丸のお陰で難なく世界の壁に到着。

門番ゴーレムに通行書を提示した。

前回はぼたんちゃんと一緒に世界の壁に向かったんだっけ懐かしいな。

俺はそう思い出しながら、開かれた門に入る。

さぁ、次は久しぶりの【バーチャル】だ。

学園のみんな元気にしてるかな?




次回は再び【バーチャル】の世界。
どんな出会いと冒険が待っているのかお楽しみに


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【バーチャル】の怪談

あなたは無事に【ファンタジー】と【バーチャル】の世界の壁を越えた。
まずは魔界への許可を貰う為に学園へと向かうのであった。


うわぁ、眩しい。

俺は門から出て手で目を覆った。

門は霧で覆われていて少し薄暗かったから、出てきた瞬間こんなに明るいと眩しい。

門から出た【バーチャル】の世界は草原だった。

後ろを振り向くと、世界の壁は鉄で出来た壁になっていた。

【ファンタジー】の時は石造りだったけどその世界で違うみたいだな。

俺はもう一度【バーチャル】の世界を見る。

遠くに街が見えた。

まずはあそこに行ってみるか。

街道を歩きながら周りを見る。

【ファンタジー】と違って所々に電柱や街灯が立っているが、全部斜めになっていたり、壊れていた。

苔が付いてるのもあるな。

電気も通ってないみたいだな。

ギャピー

な、なんだ?

突然目の前の街道にスライムが現れる。

敵か?

問答無用で襲ってくるスライム。

俺は攻撃を避けながらカウンターで斬りつけた。

ギャー

断末魔をあげてスライムが光になって消える。

【バーチャル】も街の外にはモンスターが出るんだな。

俺は街に行く間、スライムやゴミ箱の形のモンスターや、壊れた車のモンスターを倒しながら進んだ。

この世界のモンスターは破棄された物がモンスター化するみたいだ。

ようやくポツポツと家が見えてきた。

家が見え始めるとモンスターが出現しなくなった。

俺は装備をおしゃれ着に着替える。

前に【バーチャル】に来た時に買った服だ。

これで目立たなくてすむはず。

何があるか分からないので、一応鬼切丸はすぐに出せるようにアイテムボックスに準備した。

「さて、ここはどこになるんだろう?」

街の標識を見ると始まりの街と書かれていた。

ここが【バーチャル】の始まりの街か。

俺はマップを開く。

この街のマップには学園は表示されていなかった。

1度は訪れている学園がマップで表示されないとなると学園はこの街にはないって事か。

さて、どうするか。

考えているとある事を思い出した。

俺は早速連絡する。

「よ、久しぶりだな。

元気にしてたか?」

俺はフレンド欄からエリトアに連絡したのだ。

「久しぶり、元気にしてるよ。

そっちは?」

「相変わらず学園で楽しくやってる。

そうそう、あれから卒業する人が増えてな。

毎日イベントって感じだよ」

「はは、それはそれで忙しいな」

エリトアの元気な声を聞いて俺は嬉しくなった。

「それでどうしたんだ、どこにいる?」

「そうだ、それで連絡したんだよ」

俺は今いる場所から学園に行く方法を聞く。

「なるほどな、始まりの街か。

学園はその次の街、第2の街にあるからな。

たぶん街と街の間をバスが走ってるからそれに乗るといいよ」

「お、ありがとう」

「でも、気を付けろ変な時間に乗るとヤバいバスもあるからな」

「ああ、分かった」

変な時間?

俺はエリトアとの通信を切った後、まずはバス停を探す事にした。

空を見ると昼は過ぎている。

少しお腹も空いてきたな。

俺はバス停を探しながらどこかでご飯を食べるという目的に変更した。

宿屋の1階にある食堂で遅めの昼御飯を食べた後、俺はギルドに向かった。

ギルドで話を聞けばいろいろと分かるはずだ。

始まりの街だけあってギルドは案外賑わっていた。

「いらっしゃいませ」

カウンターに行くとにこやかに受付の女性が対応してくれる。

「バス停ですか?

それならマップを開いてください」

言われた通りにする。

「はい、こちらになります」

マップに印が付けられた。

「到着したらその印は消えますので、ナビが必要でしたらマップ右下のナビボタンを押してください」

便利だなぁ。

「ありがとうございます」

俺はお礼を言った後、一応クエストボードを見る。

お化け車の討伐や引き込みお化けの討伐。

スライムもあるな。

ま、それなりの数を倒さないといけないから俺は達成できてないか。

しかし、クエスト内容にお化けの討伐が多いな。

「おい、聞いたか?

また、出たんだってよ」

「おお、また新人がやられたみたいだな」

なんだ?

噂話か?っとヤバいバス停に急がないと乗り遅れる。

俺は噂話を聞かずそのままギルドを出てバス停に向かった。

途中、店先で売られている揚げたてのコロッケを買って、マップに印されたバス停に行く。

だいぶ日が落ちてきたな。

なんとかバスが着く前に着いた。

もう何人か並んでる。

俺も列に並んだ。

「ふぅ」

俺は一息つきながらコロッケを食べる。

お、これ上手いな。

さて、次は何時だ?

バス停の屋根にぶら下がっている時刻表を見る。

4時30分か。

ん?

なんかバス停の端にいつの間にか女性が立っていた。

白いキャペリンを深く被り顔は分からない。

白いワンピースに茶色の革で作られたトランクケースを持っていた。

なんか不思議な雰囲気だな。

うう、なんか寒気がしてきたんだが。

そういえばエリトアがバスに気を付けろみたいな事言ってたな。

もしかして、バス停の幽霊か?

プー

お、バスが来た。

ゆっくりとバスが止まり、後のドアが開く。

降りる人はいないのか?

ふとバスを見るとほぼ満員のような感じで窓際に人が座っていた。

俺の前に並んでいた人はどんどん乗っていく。

俺も乗らないと。

「ちょっと」

いきなり黙ってさっきまで立っていた女性に声をかけられる。

「え?」

「あんた、それに乗るの?」

「そ、そうだけど」

なんかゆっくりと近づいてくるんだけど。

「はぁ、相変わらずいけいけなんだね」

「はい?」

「もう一度バスを見たら?」

女性に言われ、俺はもう一度バスを見た。

すると窓際に座っていた人が全員こちらを見ていた。

いや、見ていたのはおかしい。

だってその人?には目も鼻もない。

大きな口だけがにやっと笑っていた。

バスのドアはそのままゆっくりと閉まる。

「あ~あ、あ~あ、あ~あ」とバスの中からため息混じりで低い声が響いていた。

そして、そのままバスは行ってしまった。

「よかったね、幽霊バスに乗らなくて」

「え?あ、はい」

俺は振り返り女性を見る。

「4時27分9秒にくるバスはここでは乗らないようにね」

「え?30分じゃ」

時計を確認したがまだ30分になっていなかった。

「4時27分9秒、世に泣く時間は幽霊バスが着く時間だよ。

新人じゃないんだからそんなのに捕まらないように」

「あ」

それかさっきギルドで言ってた噂は。

「ありがとうございます」

「ふふ、まだ分かってないんだ」

「え?」

30分になりバスが着く。

「ほら、行くんでしょ学園に」

「え?なんで?」

女性はバスに先に乗りキャペリンを脱ぎこちらを見た。

隠れていた顔がはっきりと見える。

「あ」

そこには懐かしい顔があった。

「お久しぶりです、まつり先輩」

俺の声にまつり先輩はにこっと可愛く笑った。

 

俺は今、まつり先輩と一緒にバスに乗っていた。

「しかし、相変わらずだったね。

もっとゆっくりと慎重に」

「はは」

確かに卒業まで駆け足だったし、そう見られても仕方ない。

「それよりまつり先輩はどうして学園の外に?」

確かエリトアが学園にいるホロメンは基本外に出ないって言ってた事がある。

「ん?

たまに外も見てみたくなってね。

キミのせいだよ。

あんなに外の冒険を楽しく話すから」

「う、それはすいません」

「ま、いいけどね。

なかなか楽しい旅行だったし、それに帰りにキミと会えたし」 

う、所々でドキッとする事言うなぁ。

「はは、照れてる?

それより、学園に用事は合ってたんだ」

「え?知ってたんじゃないんですか?」

「ん?知らないよ。

同じバスに乗るみたいだから言ってみた」

「はは、参りますね、まつり先輩には。

はい、ちょっとちょこ先生に用事があって」

「へぇ、魅惑の女性保険医が忘れられないと」

にやにやしてまつり先輩が言う。

「語弊がめちゃくちゃあります。

魔界に行く為に許可を貰おうと思って」

「え?魔界に?」

少し驚くまつり先輩。

「はい、そこにメルちゃんがいるみたいで」

「ああ、メルメルかぁ、確かに用事がなければこっちに出てこないからなぁ。

でも、魔界ってまたすごいところ行くんだね」

「そんなにすごいですか?」

「ま、裏世界は基本モンスターも強いし、マップが機能しないから迷いやすい」

「う、それは辛いかも」

「だから、なかなか許可を出さないんだよ」

「そうなんですね。

しかし、行かないといけない」

「ま、キミならどうにかなるよ」

悩む俺を見てまつり先輩は明るく言ってくる。

「その根拠は?」

「女の勘、かな」

「ですよね」

そうこう話しているうちにバスは第2の街に着いた。

まつり先輩とバスから降りる。

「あ、なんか懐かしい」

前に見た街並みは変わっていなかった。

「それじゃ、今日はもう遅いしどこかの宿に泊まって明日学園においでよ」

「分かりました」

まつり先輩とはそこで別れた。

そして、俺は宿屋を探し第2の街を歩くのだった。

 

 

「はぁ~よく寝た」

宿屋から出て背伸びをする。

今日も良い天気だ。

さて、学園に向かうか。

マップを開くときちんと学園の位置が印されていた。

俺はそれを見ながら進む。

「ん?」

どこからかいい匂いがしてきた。

この匂いは!

匂いにつられて歩くとそこには1軒のパン屋があった。

俺は迷わずパン屋に入る。

「いらっしゃい」

店員さんはレジの向こうで何か作業していて顔は見えない。

「おすすめのパンください」

俺は店員さんにそう声をかけた。

「はいは~い、今焼きたてのパンがあるよ」

店員さんはそう言ってこちらを見る。

「あ!」

懐かしい顔が驚いた顔でこっちを見た。

「ご無沙汰してます。

また、きちゃいました」

俺の言葉にころねちゃんは笑顔で答えてくれた。

「そっか、今度は魔界に行くんだ」

パンを食べながら店前のベンチに座り、俺は隣に座るころねちゃんに事情を話した。

「はい。

でも、その前に近未来都市に先に行こうと思ってます。

そこにロボ子さんがいるみたいなので」

「近未来都市?

だったら、学園で用事が終わったら、まつりちゃんに送ってって貰うといいよ」

「え?まつり先輩?」

昨日会ったばかりの人の名前が出て少しビックリした。

「そう、ころねが使うの許可しますって言ってたって伝えればすぐ分かると思う」

「は、はぁ」

どういう事だ?

「それじゃ、お店に戻るから、学園の用事終わらせておいで」

「あ、はい。

パンごちそうさまでした」

俺の言葉に手を振りながら笑顔でお店に戻るころねちゃん。

さ、俺は学園に行くか。

 

それから少し歩き学園に着く。

門番をしているタキシードの人に卒業式にもらったバッチを見せる。

タキシードの人は「おかえりなさい」と優しく言ってくれ中に入れてくれた。

おお、久しぶりの学園だ。

「おお~い」

校舎から1人の男子が走ってくる。

「お!」

懐かしい顔だ。

「元気そうだな」

「おう、エリトアもな」

そして、俺は学園での初めての友人と再会した。




再び学園に訪れたあなた。
あなたはちょこ先生に魔界行きの許可を得られるのか?
それは次回のお楽しみ


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ホロメンと行く幽霊バスの旅

癒月ちょこに会う為に学園に着いたあなた。
懐かしい顔とも出会い久しぶりの学園の中に入るのだった。
果たしてあなたは癒月ちょこから魔界行きの許可を得られるのだろうか?


「しかし、相変わらずの賑わいだよな」

俺は学園の中を歩きながら校庭を見た。

ちょうど野球の授業をしているのか、グラウンドの周りには人集りが出来ていた。

カキーン

いい音が鳴って玉が大きく弧を描きながら飛んでいく。

「さすがスバルちゃん」

ホームランを打ってみんなの歓声を受けながらグラウンドを回っていた。

「そりゃ、学園の最強ホロメンだからな」

エリトアも手を振りながら走るスバルちゃんを見て言った。

「それより、前よりなんか学生が授業受けてるような気がするんだが?」

俺の言葉にエリトアは俺を恨めしそうに見る。

「誰のせいだと思ってる。

卒業するのに授業を規定数受けるようになったんだよ」

「あ」

そう言えば俺が卒業する時にころねちゃん達がそういう話してたな。

「それじゃ、保健室行ってくるよ」

「おう、ちょこ先生に用事だったな」

「ああ、また、後でな」

「分かった」

俺は一度エリトアと別れ、保健室に向かう。

校舎内も相変わらず賑やかだった。

ちなみに今俺は前にもらった学生服を着ているので、目立ってはいない。

一度卒業してるからな。

バレたら何聞かれるか。

保健室の前に着く。

トントン

「は~い」

中から懐かしい声。

「失礼します」

俺は扉を開けて保健室に入った。

「ちょこ先生、お久しぶりです」

「あ、久しぶりね」

笑顔で出迎えてくれるちょこ先生。

「ささ、座って」

ちょこ先生の前にある椅子に座る。

「元気してた?」

ちょこ先生からお菓子を貰う。

「はい、あれからいろいろと冒険しましたよ」

俺はお菓子を食べながら、学園を卒業してからの話をちょこ先生にした。

「ちょこ先疲れたよ~」

ガラ

保健室にグラウンドの活躍者が入ってきた。

「あれ~なんでこんなとこいるんだよ」

スバルちゃんは俺の顔を見ながら言う。

「いや、ちょっとちょこ先生に用事があって」

「へぇ、それにしても元気そうでよかったよ」

スバルちゃんも予備の椅子を出して近くによって座る。

「こら、スバル手洗ったの?」

お菓子を取ろうとするスバルちゃんに注意するちょこ先生。

「あ、洗ったよ」

注意されて恥ずかしかったのか、少し顔を赤くしながらお菓子を取る。

「それで、ちょこに用事って何?」

チョコを食べながらちょこ先生に聞かれる。

「はい、魔界に行く許可を貰いたくて」

「ん?魔界?いいよ」

「え、あ、いいんですか?」

「ちょ、ちょっとちょこ先、許可を出すの軽すぎだって」

すんなり許可を貰えて慌てる俺に、こちらも慌てて突っ込みを入れるスバルちゃん。

「ええ、行きたいなら行かせてあげればいいと思うけど」

「そうだけど、一応裏エリアだからそれなりの条件を出さないと」

確かに正論かもスバルちゃん。

「ん~そう言っても十分キミの実力は分かってるから」

ん~となおも考えるちょこ先生。

「分かった。

それじゃ、1つクエスト出すからそれをスバルと一緒にクリア出来たらOKという事で」

「ええ、スバルも!?」

「もちろん、スバルが条件出してって言ったんでしょ」

「そうだけど」

はは、すいません、スバルちゃん。

「で、そのクエストって?」

「うん、最近幽霊バスが増えてきてるの」

「ええ~」

ちょこ先生の話にいきなり叫び声をあげるスバルちゃん。

「ちょっと、今話してるでしょ、スバル」

「い、いや、だって幽霊バスって」

「話は聞いた事ある?」

スバルちゃんの反応を楽しみながら俺に聞いてくるちょこ先生。

「はい。

実はここに来る時に危うく乗りそうになってしまって」

「ええ~」

驚くスバルちゃん。

「そっか、なら話が早いわね。

その幽霊バスに乗って行った先がどうなってるか確かめてほしいの。

それで、もし、ヤバそうだと思ったらスバルと一緒に処理をお願い。

最近、かなりの被害が出てるみたいだから」

「やだよ~」

情けない声をあげるスバルちゃん。

かなり幽霊怖いみたいだ。

ま、俺はこれがゲームと割りきってるからそう怖くないけど。

ここに住むスバルちゃんは違うんだな。

「ほらほら、それじゃ、早速行ってきて。

第2の町からもバスは出てるから」

「分かりました」

「いや、分からなくていいって」

俺の言葉にスバルちゃんが制止を入れる。

「じゃ、準備するので放課後に」

俺はそんなスバルちゃんにそう伝え、ちょこ先生に頭を下げて保健室を出た。

「もう、ちょこ先~」と嘆きの声が中から聞こえたのは気のせいにしておこう。

それから俺は一度食堂に向かった。

たぶんここにやつがいるはず。

食堂でキョロキョロしていると。

「探し人か?」

と、背後から声をかけてくる。

「おう、お前をな」

俺は背後から声をかけてきたエリトアに笑顔でそう言った。

「なるほどな、クエで幽霊バスに乗ることになった

か」

「ああ、それで何か情報を持ってないかと思ってな」

「ある事はあるが確かな情報じゃないがいいか?」

「ああ」

俺の言葉に頷きエリトアは知ってる情報を教えてくれた。

この第2の街からも幽霊バスは出ている。

場所はエリトアがマップに印を付けてくれた。

時間はこの前と同じ4時27分9秒。

「ここからは噂」だと言ってエリトアが語る。

幽霊バスは知らずに乗ったら終点まで止まらず進むらしい。

終点に着くと中にいる人間が幽霊に姿を変えて、どこかに連れていかれる。

どこに連れているかわからない。

ただ、こっちに戻る時は必ずリスポーンで戻ってきてどうして殺られたのかは分からないらしい。

「なるほどな、普通に乗ってれば途中襲われないのか?」

「ああ、そういうふうにリスポーンしたやつが言ってたそうだ」

「そこの記憶はあるんだ」

「ああ、着いた後の事を覚えてないらしい」

「なるほどな」

あの口だけ幽霊にどこかに連れていかれるのか。

「何か必要な物はあるか?」

「そうだな、最近購買部でお札を売り初めた。

【ゲーマーズ】の四大神社で作られたお札らしいから効力はあるはずだ。

それを買っていけ」

「分かった、ありがとう」

「ま、なんでそんなクエ受けたのか分からんけど、気をつけて行けよ」

「ああ」

俺は食堂でエリトアと別れ購買部に行った。

確かにお札を売っている。

2枚購入。

そして、放課後になった。

保健室に着いた。

中に入ると元気のないスバルちゃんとにこにこのちょこ先生が待っていた。

「お待たせしました」

「まってない」

「ははは」

元気のないスバルちゃんから素直なご意見いただきました。

「ほら、スバル頑張ってきなよ」

何故かにこにこのちょこ先生。

「いざって時はスバルが守ってあげなよ。

ころね学園長からは許可出たんでしょ?」

「出たけど」

スバルちゃんは両腕に付いてるブレスレットを見ている。

なんだろう?ファッションかな?

いつもの制服姿ではなくボーイッシュな普段着も似合ってるなぁ。

「ん?何か可笑しいか?」

俺の視線に気付き服を見るスバルちゃん。

「いやいや、スバルの私服姿に見とれてたのよ」

「な、見るな!」

ちょこ先生の言葉に顔を赤くして胸を手で隠しながら体をひねるスバルちゃん。

「ちょこ先生」

「ふふ」

スバルちゃんの動きを見て喜ぶちょこ先生。

「ほら、2人ともそろそろ行かないと乗り遅れるわよ」

ちょこ先生に言われて時計を見る。

4時15分。

そろそろ行かないと。

「では、スバルちゃんお願いします」

「わ、分かった」

俺は「いってきます」とちょこ先生に伝え、元気ないスバルちゃんと一緒に学園を出た。

「久しぶりに警察の仕事以外で学園外に出た」

「警察?」

「ん?あ、こっちの話」

校門を出た時にスバルちゃんが呟く。

たぶん、大空警察の話かな?

スバルちゃんの中ではあれは別人設定みたいだな。

さてと、マップを開いてエリトアが付けてくれたバス停に向かう。

バス停には誰もいなかった。

「ヤバい緊張してきた」

「俺もです」

スバルちゃんの言葉に俺も少し緊張してきた。

時刻に4時27分。

来た。

1台のバスがバス停に音もなく停まる。

今回は俺達以外には誰も乗らないみたいだな。

前と同じく乗客は真っ直ぐ前を見ている。

窓際は一杯だ。

俺はスバルちゃんの方を向き頷く。

スバルちゃんも頷き返してくれた。

そして、俺達は幽霊バスに乗り込んだ。




さて、前回あまり出番の少なかった学園ホロメン達の活躍が始まります。
果たしてあなたはスバルちゃんと無事にクエストをクリアできるのか?
次回をお楽しみに


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幽霊バスの終着点

魔界に行く為に癒月ちょこから出されたクエストに大空スバルと挑戦する事になったあなた。
あなたは大空スバルと幽霊バスの終着点を調べる為に乗り込んだ。
果たして終着点に何があるのか。


「だ、大丈夫なんだよね?」

俺の隣でチラチラ回りを見渡すスバルちゃん。

「だ、大丈夫です。

最終に着くまでは襲われないって言ってたので」

俺も鬼切丸をいつでも取り出せるように準備しながら答えた。

「それって着いたら襲われるって事なんじゃない」

声が大きくなってます。

「という噂なんで本当かどうか分からないです」

「本当だったら暴れるよ」

目が座ってるよスバルちゃん。

ふとスバルちゃんの横の窓から外を見る。

外はもう暗くどこを走っているのか分からなかった。

なぜ、窓際に座っているかというと、俺達が乗り込んだ時にこの窓際だけが空いていたからだ。

ちなみに他の席は全て埋まっていた。

え?

乗客の顔は見たかって?

見れるわけないだろ怖いんだから。

いざバスに乗るとやっぱり怖い。

バスの前にある電光掲示板を見る。

掲示板は次は終着駅と表示されたまま、ずっとノイズがはしって変わらない。

なので本当にここがどこか分からなかった。

マップを開いても掲示板と同じようにノイズがはしり表示が変だった。

「いつ着くんだろう」

何も起こらないバス内で少し落ち着いたのか、スバルちゃんは窓の外を見る。

確かにだいぶバスに乗ってる気がするんだけどな。

「あ、そうだ。

スバルちゃん、これを」

俺はそっと購買部で買ったお札をスバルちゃんに渡す。

「お?

ありがと」

スバルちゃんは俺の渡したお札をポケットに入れる。

さて、これからどうなるか。

俺はいつ着くか分からないバスに乗ってじっと前を見ていた。

 

「ん?」

バスが停まった?

俺は鬼切丸をいつでも出せるように準備する。

横に座るスバルちゃんも体を固くして息を潜める。

しかし、中に乗っている乗客はこちらに何もせず、ゆっくりと立ち上がり前の出口から出ていっている。

「俺達も行こう」

小声でスバルちゃんに言って俺は乗客の最後尾につく。

スバルちゃんも俺の後に続いた。

降りる時も何も言われず、俺達はバスを降りた。

スバルちゃんが降りるとバスはドアを閉め、またどこかに行ってしまった。

「あれ何?」

「分からない」

スバルちゃんが指差す方向には大きな建物がある。

そこに向かって乗客は歩いていく。

俺はスバルちゃんに合図をして、列から離れ、近くの大きな岩に移動し隠れた。

「あ」

大きな声が出て慌てて口を押さえるスバルちゃん。

大丈夫誰にも気づかれてない。

「どうしたの?」

俺の小さな声に、スバルちゃんは列のある場所を指差した。

俺はその指差した方を見る。

前後の乗客は顔が何故か暗くなって分からないが、その人だけははっきりと分かる。

「あの人、プレイヤーだ」

俺には分からないが、スバルちゃんにはその人がプレイヤーだと分かるのだろう。

「他にも何人かいる」

しかし、プレイヤーと呼ばれた人は列から逃げる事なく、下をうつむいたまま列に並んで歩いていた。

「助けなきゃ」

スバルちゃんが岩の間から出ようとする。

俺は咄嗟にスバルちゃんの腕を掴んだ。

「ダメだよ。

ここで出ていって騒ぎを起こしたら、プレイヤー以外の幽霊全部を相手にしなくちゃいけなくなる」

「でも、プレイヤーをほっておいたらどうなるか分からない」

「そうだけど」

俺は悔しそうな顔をするスバルちゃんを何とかおもいとどませる。

俺にはこのまま行けば、あのプレイヤー達がどうなるかは分かっている。

何かこの先で行われて死ぬんだ。

そして、リスポーンする。

アイテムは1つ失うがゲームが終わるわけではない。

ここでの事は覚えてないということだから、どんなやられ方だったとしても大丈夫のはず。

そう、これはゲームなんだから。

「行こう、ここの元凶をどうにかすればあのプレイヤー達も元に戻るよ」

俺の言葉にスバルちゃんは力強く頷いた。

それから、俺達は列の先にある建物の周囲を隠れながら回った。

入り口は全部で4つ。

それぞれにバスから降りた幽霊やプレイヤー達が並んでいた。

後、気になったのが裏口だ。

たまにだが何かを積んだトラックが出てくる。

「あそこから行けないかな」

俺がスバルちゃんに提案すると、スバルちゃんも頷いた。

スバルちゃんもそこからの侵入を考えていたらしい。

しかし、あの裏口には隠れる場所がない。

どうしたら侵入出来るかだけど。

「これ、使いなよ」

スバルちゃんから1つのバッチを貰う。

「これは?」

「スバルが持ってる秘密兵器の1つ。

光学迷彩バッチだよ」

「そんな便利な物が?」

「といっても音までは消せないし、周りに動く物が沢山あると上手く使えない。

だから、過信はしない事」

「分かった」

ちょうど裏口が開きトラックが出てくる。

「バッチを付けて中心のボタンを押すと使えるから。

行くよ」

スバルちゃんの姿が見えなくなる。

バッチを使ったんだ。

俺もバッチのボタンを押す。

手を見ると消えていた。

いや、手だけじゃない体全体だ。

どうなってんだこれ?

「早く」

少し遠くから小さな声でスバルちゃんが呼んでる。

俺は物音をたてないように裏口へと向かった。

トラックには自動で荷物を積み込んでいるようでモンスターはいなかった。

裏口から入って右側に通路らしきところがある。

「こっち」

その通路の入り口からスバルちゃんの声が。

俺もそちらに進んだ。

「もう大丈夫かな?」

スバルちゃんのその声に周辺を確認した後、俺は光学迷彩を切る。

「よく分かったね切り方」

姿を表すスバルちゃんが笑っていた。

「ま、だいたいボタンを押して発動するやつはもう一回押したら切れるかなと」

俺も笑う。

「さて、この先は何があるか分からない」

真剣な顔に戻り、スバルちゃんは通路の先を見る。

「そうだね」

俺も気を取り直して通路を見た。

鬼切丸を装備し、俺達は通路を進んでいった。

 

「なんだここ」

俺は通路の先を出た風景を見て驚いた。

「闘技場?」

スバルちゃんの呟く言葉に俺も納得した。

俺達が通路から出た場所は闘技場で言えば観客席に当たるところだ。

円形のその場所は中心部に砂地のフィールドがある。

戦う場所だ。

そこには多数の武器があちらこちらに散らばっていた。

しかし、血の跡とかはない。

「ここで何を」

俺が疑問を口にした時、ドォーン、ドォーンっとドラの音が大きくなった。

俺達は思わず身を低くして席の後ろに隠れる。

するとフィールドの奥側から1体のゴブリンが現れる。

近くの武器を拾いギャーと雄叫びをあげていた。

そして、反対側から現れたのはプレイヤー?

俺は思わずスバルちゃんの腕を押さえた。

スバルちゃんは悔しそうに下唇を噛んでいる。

俺の言いたい事は伝わったようだ。

プレイヤーはまだ下を見て意識がないようだ。

そして、その横にはバスに乗っていた幽霊が数体いた。

何が始まるんだ?

俺は椅子の影から見守る。

すると、突然幽霊がプレイヤーの中に吸い込まれた。

1体吸い込まれる度にプレイヤーがビクンと震える。

そして、どこかで聞いた事のある音が鳴る。

これはレベルアップの時になる音?

そして、ドラがもう一度鳴った。

その瞬間、プレイヤーの意識が戻ったのか、驚いた様子で回りを見渡す。

ダメだそんな事してたら。

ゴブリンはそんなプレイヤーの頭に向かって持っていた両手斧を振り下ろした。

ギャギャー

ゴブリンは目の前で天に昇っていく光の粒子を見ながら勝利の雄叫びをあげていた。

「なんてこと」

「なんなんだよこれは」

「単なるレベル上げさ」

「な!」

突然後ろから声をかけられ振り向いた。

そこには少し離れた観客席に座る1人の女性。

「おまえ、ベルフェ」 

俺に名前を呼ばれ、女性はにたっと笑う。

その姿はもう変身している。

「誰?」

スバルちゃんも身構えながらベルフェを見る。

「俺の行く先に度々出てくる奴らの1人です。

この世界を壊そうとしてる」

「おいおい、止めてくれよ。

俺達はこの世界で楽しく遊んでるだけだろ」

俺の言葉に笑いながらベルフェが言った。

「何が遊びだ。

プレイヤーをこんなところに引っ張り込んで何している」

俺の言葉に笑うベルフェ。

「おいおい、聞いてなかったのか?

レベル上げしてるって言ったろ」

「な、何がレベル上げだ。

意識のないプレイヤーをモンスターが襲ってるだけじゃないか」

「は?

何を言ってんだ?

おまえ、勘違いしてるのか?

俺はモンスターのレベル上げをしてるんだよ」

「な」

俺も薄々分かっていたが。

鬼切丸を持つ手に力が入る。

スバルちゃんはなんとなく分かっていたみたいだ。

ギュッと手を握りしめている。

「だってそうだろ?

プレイヤーだってモンスターと同じだ。

死んでもまたどこかでリスポーンする。

アイテムが失くなるのは倒された時に相手への報酬だ。

ま、実際ドロップしないけどな。

プレイヤーを倒せばモンスターもレベルアップする。

強い相手を倒す為に、接待してやるのは強者の務めだろ」

前に友人が言っていた。

レベル上げの時に接待してあげると、まさにさっきのがそうか。

「あの幽霊はなんだ!」

「質問が多いなぁ。

まぁ、いいさここに2人で乗り込んできたんだ、教えてやるよ。

あの幽霊は倒されたモンスターの幽霊だ。

モンスターも倒されたら表示はされないが幽霊として世界をさ迷い、またリスポーンする。

その幽霊を捕まえてるのがあのバスだ。

そして、この闘技場でプレイヤーに吸収させる。

するとプレイヤーは経験値を貰えるんだよ。

ま、裏技だけどな。

そして、レベルアップしたプレイヤーをモンスターに倒させてモンスターのレベル上げをする」

「モンスター全体のレベルを上げてどうする。

プレイヤーへの嫌がらせか」

俺の言葉にまたベルフェが笑う。

「ははは、違う違う。

喰わせるんだよ、俺の星持ちのペットにさ」

「な」

「モンスターがレベル上げる方法に、モンスターを喰わせてその経験値を得る方法がある。

その為の餌作りをここでしてるんだ」

「おまえ!」

俺は鬼切丸を構える。

スバルちゃんもゆっくり前に出てベルフェを睨んでいた。

「怖い怖い。

ま、本当ならここであんた達とやりあうのもいいんだけど、ここは引いておくわ。

なんせ、3体1じゃアホらしい」

3体1?

「それにだいぶ経験値も集めたしな、ここらで潮時だ。

またな、世界の答えとスバル先輩。

ここから無事に出れたらまた会いましょうね~」

「まて!」

ベルフェは軽く手を振りながら姿を消した。

「くそう」

「出てきた」

俺はスバルちゃんに言われ客席を見た。

いくつかある入り口からゴブリンやキメラ、スライム、様々な種類のモンスターが現れる。

「いける?」

「この怒りぶつけてやります」

俺はスバルちゃんの問いにそう答えた。

「じゃ、スバルも本気出すよ」

そう言ってスバルちゃんは2つのブレスレットをカチンと合わせた。

「アーマーGo」

スバルちゃんの言葉と同時にブレスレットから銀色の液体が溢れだしスバルちゃんの体を包んでいく。

そして、あっという間にロボットの様なアーマーに変化していった。

そして、最後には頭と顔にも。

「すごい」

見た目は完全にロボットアーマーのサイボーグ。

「これが理事長から許可をもらって引っ張り出してきた、スバルの秘密兵器《スバルアーマー》」

あ、確かに頭のところアヒルみたいだ。

「頭がアヒルっぽいとか思わないように」

釘を刺される。

「じゃ、やるよ」

「OK!」

そして、スバルちゃんは敵の大群に突っ込んでいった。

 

「おりゃ」

俺は鬼切丸の特効が高い鬼系のモンスターを狩っていく。

スバルちゃんは残りの敵を相手にしてくれていた。

その戦力は圧倒的。

肩や太もも部分から小型のミサイルを撃ったり、掌から電気玉を放ち相手を倒していく。

敵からの攻撃にもびくともしない。

しかし、スバルちゃんと少し離れてしまったか。

ギャー

く、モンスターの攻撃を受けているところに背中から別のモンスターが攻撃してきた。

スバルちゃんもモンスター数体に襲われて手一杯。

ヤバい。

「が」

俺は背中から一撃を受ける。

たまらず転げながら離れる。

「大丈夫!」

スバルちゃんは多数の敵を相手しながらこちらを気遣ってくれる。

「大丈夫です。

スバルちゃんはそいつらを」

俺の言葉にスバルちゃんは早く敵を倒そうと動いてくれている。

くそう、かなりHPを持っていかれた。

俺に迫る2体のモンスター

ここで殺られたらスバルちゃんだけにしてしまう。

だけど、回復魔法は間に合わないか。

やばい。

俺は自分に回復魔法をかけながら後ろに下がる。

そして、モンスターは俺に襲いかかってきた。

俺は思わず目を瞑った。

ギャー

しかし、一向に痛みを感じない。

ゆっくりと目を開ける。

そこには天に昇る光の粒子と1本の鎌。

刃の根本には何か魚のマークが付いていて、なんだ?逆刃の鎌?

俺が見ている前で逆刃の鎌は音もなく消える。

「大丈夫?」

スバルちゃんが来てくれた。

「ありがとうございます、助かりました」

回復魔法が間に合い俺は立ち上がった。

「え?

何もしてないけど」

不思議そうに言うスバルちゃん。

ん?だとするとなんだったんだあの鎌は?

「それより、このままじゃ、押しきられる。

一旦撤退しよう」

「分かりました」

「捕まって」

スバルちゃんに言われて、スバルちゃんの手を取る。

そして、スバルちゃんはそのまま空を飛んだ。

すげぇ~飛べるんだ。

スバルちゃんと一緒に飛びながら闘技場の壁の上の部分を見ると、誰かが立っていた。

遠くでよく分からなかったが、黒ずくめの人物だった。

その人物もこちらを見ているようだったが、すぐに姿を消した。

もしかしたら、あれがベルフェの言っていた1人で俺を助けてくれた人なのか?

しかし、もう消えてしまった相手に確認はできない。

「お、来た来た~

こっち~」

闘技場の外で誰かが手を振っている。

「あれって、まつり先輩?」

「ありがとうございます、まつり先輩」

地上に降りて、スバルちゃんがまつり先輩にお礼を言った。

「いいっていいって、すばにゃんもキミもお疲れ様。

状況はすばにゃんの連絡で分かったから、校長に言ってこのエリアのプレイヤーは強制移動してもらったよ」

「じゃ、後は戻るだけですね」

俺の言葉にまつり先輩が頷く。

「さ、乗って」

まつり先輩が指差す方に1台のオープンカーが。

これもやたらメカチックだなぁ。

「ここはまだ実装前の試験的マップだから、運営が今回の事で一旦閉じるって言ってた」

俺達は車に乗り込みながらまつり先輩から説明を受ける。

スバルちゃんも今は私服姿に戻っていた。

「あ、すばにゃんのアーマー姿もうちょっと見たかったなぁ」

「なに言ってるんすか、あれはいざって時だけですよ」

まつり先輩の言葉にスバルちゃんが少し慌てながら答えた。

「じゃ、しっかり捕まってて、飛ばすよ!」

まつり先輩はそう言って車を走らせる。

確かにきちんと捕まってないと吹き飛ぶような速度だ。

「やっほ~!」

俺はまつり先輩の楽しそうな声を聞きながら無事に戻れるのか不安になるのだった。




さて、少しだけ姿を表した謎の人物。
逆刃の鎌で魚のマークが付いた武器を使う、その黒ずくめの人物とは?
また、どこかで出てくるかもしれません。
次回は新天地に向かいます。
お楽しみに


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目指せ!近未来都市

幽霊バスの正体は双犬ベルフェの計画だった。
大空スバルと共に計画を止めたあなたは、迎えに来てくれた夏色まつりの車に乗って一度学園に帰るのであった。


「気持ちいい~」

相変わらずの爆走でどこを走ってるのか分からないが、たぶん学園には向かってるんだろうなぁ。

「ちょっとまつり先輩、天井閉めてください!」

横に座るスバルちゃんが大声でまつり先輩に言う。

風の音がすごすぎて聞こえてない?

「まつり先輩!!」

「ん?何、何か行ったぁ!」

運転席から後部座席の方に身を乗り出してくるまつり先輩。

って、前々!

アクセルから足離してるはずなのに速度落ちないし。

「天井閉めて!」

「ええ、気持ちいいのに」

「話できない!」

スバルちゃんの言葉にまつり先輩はしぶしぶ運転席のボタンを押す。

車の天井が閉まり始めた。

「やっと落ち着いて話ができるよ」

スバルちゃんははぁとため息つきながら言った。

「ごめん、ごめん、久しぶりに乗れたからはしゃいじゃって」

笑うまつり先輩。

「ま、分からなくもないっすけどね」

そう言いながらスバルちゃんはブレスレットを見た。

俺はそんなスバルちゃんに疑問を聞く。

「さっきの変身?みたいなのはなんなんですか?」

「ん?《スバルアーマー》の事?」

「はい」

「これはロボ子先輩からもらった物なんだ」

「ロボ子先輩?」

「そう、近未来都市にいる時に造ったからスバルにあげるってだいぶ前に持ってきてくれてね。

ただ、校庭で使ってみたら思いのほか威力というか、規格外な強さだったんで、理事長にいざって時まで封印するように言われてた」

「ちなみにまつりのこの車もロボ子しぇんぱいにもらった」

ロボ子先輩っていったい。

「そろそろ、着くよ」

何となく車のスピードが落ちてきた気がした。

「はい、到着」

そう言われドアが開く。

そこは学園の校門。

今は夜みたいで外は月明かりと街灯以外明るさはなかった。

「大丈夫だった?」

ちょこ先生が心配そうに駆け寄ってくる。

「なんとか」

俺は少し笑いながら答える。

「お疲れ様」

そう言いながらちょこ先生は笑ってくれる。

「もう、ビックリしたよあれは」

スバルちゃんもはぁとため息つきながら車を降りる。

「スバルもお疲れ様」

「きちんと守れたと思うよ」

スバルちゃんは俺を見ながら言った。

「はい、スバルちゃんがいて助かりました」

俺は心の底からそう言った。

その言葉にスバルちゃんは顔を赤くして照れてるようだ。

「理事長達は?」

まつりちゃんは車を降りながらちょこ先生に聞く。

「今、校長と今後の事で話してるみたい」

「そっかぁ、サイバーテロみたいなものだしね」

「そう言えば校長っていたんですね」

俺の言葉にまつり先輩がこっちを見る。

「ん、いるよ。YA…」

「もう、まつり様」

「え?あ、普段はいないんだけどね。

校長って飾りみたいなものだから。

ま、外への連絡先みたいなものかな」

何かを言いそうになったまつり先輩をちょこ先生が少し笑いながら止める。

しかし、なんかどこかで聞いた単語が出てきたような。

「それよりもう今日は遅いし、寮に泊まっていくといいよ。

ころね理事長からは許可出てるから」

そう言ってちょこ先生は俺に鍵を渡してくれた。

「前使ってた部屋だよ」

にこっと笑い言ってくれる。

「ありがとうございます、ちょこ先生」

「それじゃ、一旦解散だね。

キミは明日保健室に行きなよ。

用事あるんでしょ?」

まつり先輩が言った。

「はい、では、また明日」

「Good night」

「おまつりわっしょーい」

「それじゃ、また明日、バイバイ~」

そして、3人に挨拶した俺は懐かしの寮に向かった。

 

俺は朝寮でログインした。

昨日はかなりハードだった。

危うく死にかけたしな。

俺は昨日言われた通り、保健室に向かう。

学園はいつも通りの朝だった。

トントン

「は~い」

保健室の中から返事があったので中に入る。

「失礼します」

「いらっしゃい」

中ではちょこ先生とスバルちゃんが待っていた。

「スバルちゃん、授業いいんですか?」

「昨日で疲れたから今日はゆっくりする」

そう言ってお菓子を食べるスバルちゃん。

「それはそうと昨日は本当にお疲れさま」

ちょこ先生は俺に椅子を勧めてくれる。

「ありがとうございます。

本当にスバルちゃんいなかったらやばかったです」

「な、もう言うなよ」

恥ずかしがってる。

それを見てちょこ先生も笑う。

「でも、キミ達のお陰であれ以上大事にならなくてならなくてよかった。

運営もあのエリアを封鎖して調査するみたいに言ってたよ」

「しかし、あのベルフェってやついつか倒してやる」

スバルちゃん、かっこいい。

「じゃ、報酬の魔界への許可はOKって事で」

「あ、はい、ありがとうございます」

「気をつけて、魔界はモンスターも強いっすから」

スバルちゃんが心配そうに言った。

「それで、すぐに行くの?」

ちょこ先生の問いに俺は小さく首を横にふる。

「いえ、まずは近未来都市に行こうかと」

「近未来都市に?」

「はい、ロボ子さんに会おうと思って」

「なるほど、確かにロボ子先輩に会うならそこが有力候補だね」

スバルちゃんも頷く。

「ころねちゃんにまつり先輩と一緒に行けば良いみたいに言われたので」

「あ、確かにその方が早い」

「確かに」

2人はお互いに頷き合う。

「それじゃ、近未来都市での用事が終わったら帰りにここにもう一度寄って。

その時に魔界への入り口とちょこからお使いを頼みたいから」

「はい、分かりました。

それじゃ、またその時に」

俺は2人に頭を下げる。

2人は笑顔で手を振ってくれた。

そして、俺は次に第七教室に向かう。

もちろん、放課後まで時間を潰した後にな。

ガラ

「来ると思ってた」

放課後の第七教室。

そこには制服ではなく迷彩服に身を包み銃火器を持つまつり先輩がいた。

「えっと」

困惑する俺を見てまつり先輩は笑う。

「今からミッション開始だよ」

ぽんと肩を叩くまつり先輩。

「いや、ミッション開始だよじゃないですよ。

どこに戦いに行くんですか?」

「あれ?

戦いに行くからその補充戦力を探しに来たんじゃないの?」

きょとんとするまつり先輩。

可愛いけど「違います!」

「ええ~」

「はぁ、俺はただ、まつり先輩に近未来都市に連れていってもらう為に来ました」

「あ、そうなの?」

「はい、ころねちゃんからは許可しますって言ったら分かるって」

「うん、聞いてる」

「聞いとんのかい」

きょとんとした顔のまま言われて、思わず突っ込んでしまった。

「ははは、じゃ、ついてきて」

そんな完全武装のまつり先輩について教室を出た。

行き先は校門。

そこには昨日の車があった。

「ささ、乗って」

まつり先輩に言われて車に乗り込む。

「まつり先輩、これで行くんですか?」

「ん~学園の外だから先輩はよしてほしいかな」

「あ、はい、じゃ、まつりちゃん」

「うん、そうだよ。

これで行く。

近未来都市に言って」

《イエス、マスター》

機械音声が運転席から聴こえ、車が走り出す。

「え?全自動運転?」

「そう」

車はこの前のように爆走では走っていなかった。

「すごいですね」

「まぁね、近未来都市で造られた最強モデルだってロボ子しぇんぱいも言ってたし」

「最新じゃなくて最強なんですね」

「そう、どんな場所にでも行けるって言ってたよ」

そりゃ、確かに最強だ。

「それより、近未来都市って物騒なところなんですか?」

「え?なんで?」

「いや、完全武装だったから」

「ん~近未来都市が物騒というかそこに行くまでが物騒というか」

そろそろ街を出る。

第2の街を出たら、木や草、建物が失くなり荒野が広がる。

「しばらくこんな景色が続くよ。

そして、この荒野がこの【バーチャル】で唯一生物のモンスターが出る場所」

そうまつりちゃんが言い終わると同時に左手の地面から巨大なミミズのような生物が姿を表し、そしてまた地面に潜っていく。

かなり遠くのはずだがはっきりと姿は確認できた。

なんて大きさだ。

「キングワームね。

この荒野に住む巨大な肉食ミミズ」

「肉食?」

「そう、地面の上を走る生物を狙って襲ってくる」

「ということは?」

「しっかりと捕まってて」

「やっぱり!」

急に車が揺れ始める。

「天井開けて」

《了解、マスター》

車の天井が開く。

そして、背後の地面が盛り上がりキングワームが姿を表した。

まつりちゃんは座席に足をかけ、背後のキングワームに向けてバズーカを構える。

「消し飛べ~!」

バシュ~!

まっすぐにキングワームに向かって飛ぶミサイル。

そして、ミサイルはキングワームに当たり凄まじい爆発が起きた。

「とばして!」

座ったまつりちゃんがそう言うと、車は先程よりもっとスピードをあげた。

ゆっくりと閉まっていく天井。

「こんなのがいるんですか?」

天井が閉まった車内で俺はまつりちゃんに聞く。

「そ、近未来都市は普通はフルメンバーで数日かけて向かう場所だからね」

「まじかぁ」

「だから、あまりプレイヤーさんはあの都市にはいないよ。

ただ、行くと近代兵器や未来武器が手に入るから目指す人は多いけど」

《マスター複数のモンスターが接近しています》

機械音声が危険を知らせる。

「OK。

ほらキミも後部座席の後ろに武器はあるから、それで応戦して」

俺は後部座席に移動する。

後部座席の後ろに巨大なトランクが。

これか?

開けると中には銃火器が多数入っている。

「これも貰い物ですか?」

「え?違うよ、まつりがネットを使って買った」

「どこかに戦争に行くんですか!」

「違うけど、ま、こういう時の為かな。

それに、役にたったでしょ」

「いや、たまたまなんじゃ」

「ほら来るよ!」

また、天井が開く。

キングワームが全部で3体。

後ろから2体。

そして、並走するやつが1体。

っていうかかなりのスピードで走ってると思うが、どれだけのスピードで土の中走ってんだよ。

「キミは横のをやって、まつりは後の2匹をやる」

「分かりました」

俺はトランクからバズーカと三角の機械を取り出す。

「地雷?」

アイテムの表示説明を見る限りそう表示されてるが。

ええいままよ。

俺はその三角地雷を並走するキングワームに向かって投げた。

地面と接触した地雷が爆発して人一人分の大きさの黒い塊を生み出しすぐに消えた。

その消えた地面は綺麗にえぐれていた。

ギャワワワワ~

キングワームが気持ち悪い咆哮をあげる。

「やるね、圧縮地雷使うなんて。

きちんと使えなかったらこっちが全滅だったよ」

笑いながら怖い事を言うまつりちゃん。

俺はそれを聞き流しながらロケットを並走するキングワームに打ち込みまくった。

 

「なんとか落ち着いたみたいだね」

今はもう夜。

天井を閉めた車内は暖かかった。

キングワームは夜になると出てこないらしい。

夕方に学園を出たのは正解だったかな。

「それより、あの地雷なんなんですか?」

俺は先程使った圧縮地雷について聞く。

「ああ、あれ?

小さなブラックホールを作り出す地雷。

威力はすごいけど間違って自分の近くで使うと飲み込まれる」

「そんな危険なやつ入れとかないでくださいよ」

「いやぁ、ガチャで出たから」

「ガチャなんだ!」

背後のトランクにある武器はネットである兵器ガチャで回して出てきた狙い以外のアイテムらしい。

しかし、あの量ってどれだけ回してるんですか。

「ま、夜になったからしばらく安全だと思う。

明日の昼ぐらいには着くと思うから今のうちに寝ときなよ」

そう言ってシートを倒し寝るまつりちゃん。

「あ、はい」

俺もシートを倒す。

しかしホロメンと一緒に休むのって始めてじゃないのか?

そう思いながら俺はドキドキしながらログアウトした。




さて、次回はロボ子さんのいると思われる近未来都市です。
近未来都市であなたを待つものは?
次回は新装備も手に入るかも?
次回をお楽しみに。


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地下施設での出会い

癒月ちょこから魔界へ行く許可を得たあなた。
あなたは魔界へ行く前にこの【バーチャル】でもう1つの目的を達成する為、夏色まつりと近未来都市に向かう。
果たしてそこにはロボ子さんはいるのだろうか?


「おはよう」

「え?あ、おはようございます」

俺はログインして回りを見る。

変わらず車の中。

ま、当たり前か。

「飲む?」

まつりちゃんが湯気の出ているコップをくれる。

「ありがとうございます」

ゆっくりと飲む。

美味しい。

「美味しいです」

「そう、よかった」

俺の言葉に笑顔のまつりちゃん。

まつりちゃんが入れてくれたのかな?

《ちなみに私が入れました》

タイミングバッチリな機械音声。

あ、そうなんだ。

「ありがとうございます」

《いえいえ》

「さて、あともう少しで近未来都市に着くと思うよ」

「あ、寝過ごしました?」

確か、今日の昼に着く予定って言っていた。

それがもう少しって事は寝過ごしたのか。

「いや、夜のうちに思ったより距離稼げたみたいで予定より早く着くんだよ」

「そっか」

「それで、キミは近未来都市で宛はあるの?」

「一応、ロボ子さん絡みのクエストが出ているって聞いたので」

「そうなんだ。

じゃ、まつりはキミの用事が終わるまであの街で時間を潰しとくから何かあったら呼んで」

そう言って小型のライターを渡される。

「見た目はライターだけど、通信機になってるから」

「はい、分かりました」

それから、運良くキングワームには出会わず俺達は近未来都市に着いた。

近未来都市は巨大な岩というか山の上にあった。

遠くから見たら盃のような形の上に巨大な都市が乗ってる感じだ。

「どうやってあがるんですか?」

その盃の足元まで来た俺はまつりちゃんに聞いた。

「ここに門があるんだよ」

車で進むと盃の足部分の一部が開く。

車でそのまま中に入るとゆっくりと入り口が閉まり、エレベーターのように上に動き始める。

そしてエレベーターのドアが開く。

目の前に広がる景色は今まで見たこともないような世界だった。

車が浮いて走ってる。

歩いている人はほとんどロボットやアンドロイド?だ。

いや、歩いてるというか小さな円盤に乗って進んでる。

「それじゃ、ゆっくり街を見て回るといいよ」

「はい、そうします」

俺も街を見て回りたい。

車を降りると先程人が乗っていた丸い円盤がどこからともなくやってきて足元に止まる。

「それはガイド付きの移動装置だから、それに乗って目的地を言えば自動で連れてってくれるよ。

あと、行きたいところがあるなら自分で考えた通りにも動くから」

まつりちゃんが丁寧に説明してくれた。

めちゃくちゃ便利じゃないですか。

「それじゃ、また後でね」

車の中で手を振るまつりちゃん。

「はい、また連絡します」

まつりちゃんは笑顔で答え、車でどこかに行ってしまった。

もちろん、タイヤは車の中に収納され浮いていた。

そういう機能もあるんだあの車。

さて、どうするかな。

ふと自分の服を見る。

鎧姿か。

目立たないようにする為にはまずは見た目を合わせるか。

俺はまずは服屋に向かった。

「ありがとうございました」

目立たないようにこの都市にあった服を買った。

しかし、ここの服屋って長い筒に入って要望を言えば服を転送してきて自動で着せてくれるんだな。

なんか着せ替え人形になった気分だ。

さてと、次はギルドに行ってみるか。

俺は移動装置にそう伝えると、ゆっくりと移動装置はギルドに向けて走り出した。

 

ギルドの中も他の場所とは違っていた。

1人1人のテーブルにモニターがあり、そこでパーティーを募集したり、雑談してるようだ。

受付のカウンターみたいなような物もないな。

移動装置は自動で1つのテーブルに進む。

テーブルに着くと、テーブルから椅子が出てくる。

俺はそれに座ると《ご注文はありますか?》と機械音声が流れてきた。

目の前の画面にはメニューが出る。

ふと、見慣れた物があったので注文。

すると机に穴が開いてそこから注文した物が上がってきた。

すごいなぁ。

俺は出てきたコップを持つとぐっと飲む。

うむ、いつものだ。

味を確かめコップを置いた。

しかし、こんなところまで売りに来てるのかなぁ?

ラミィ水。

ねねちゃんの行動の広さに驚かされる。

さてと、何かいつもの飲み物を飲むと落ち着くな。

俺はクエストを調べる。

まずはロボ子さん関係で調べてみるか。

検索中…

該当なし。

ま、そうだろうな。

あったらすぐに誰か受けるだろうし。

それじゃ、すぐに見つからないようなクエストの出し方してるのかも。

ふと机の端に目をやると小さな穴が空いていた。

なぜそれが気になったのかそれは俺も分からない。

でも。

俺は胸元から例のダーツを取り出した。

もしかしたら。

俺はダーツの針の部分をその穴に突き刺した。

何か起きるわけないか。

ピー

小さな音が鳴り画面に認証しましたと文字が出た。

え?

俺はダーツを急いで懐にしまう。

画面をそのまま見ていると、シークレットモードに移行しますと表示され、クエストが1つだけ現れた。

『新装備開発実験』

そうクエスト名が出ている。

クエストには新開発された装備の実用性について、実際に装備して機能テストをしたい。

その為にその装備者を募集すると書かれていた。

特にロボ子さんの名前はないが。

しかし、シークレットで隠れていたクエスト。

何かホロメンに関係するのかもしれない。

俺はそのクエストを受注した。

《クエスト受注確認しました。

クエストを行う場合は移動装置に乗り指示してください》

そう機械音声が言ってきた。

俺は椅子から降りて移動装置に立つ。

そして、クエストを行う事を伝えると、また静かに進み始めた。

ギルドを出て移動装置が向かうのは都市の中心の巨大なタワーの方だ。

あそこに向かうのか?

まっすぐタワーに向かう。

やっぱりここか。

巨大なタワーの下、入り口が自動で開いた。

中には人が行き来している。

ここはどこなんだろう?

マップを開く。

中央管理タワーとマップには記されていた。

俺はそのまま穴の開いた方に移動する。

なんだ?落とし穴?

するとその穴の上で移動装置が止まり、そのまま下に降り始めた。

なるほど、1人用のエレベーターみたいなものか。

地下に降りた俺はそのまま通路を進む。

ここでは人は行き来していない。

しばらく行くと扉があった。

その前で移動装置は止まる。

《クエストを確認》

そう機械音声の後、ドアが開いて俺は中に入った。

「ここは?」

着いたところは最近見たような場所だ。

『ようこそ、我が研究所に』

どこから放送しているのか分からないが音声が流れてくる。

「研究所?

これは闘技場だろ」

俺は誰に言うわけでもなく叫ぶ。

そう、これはこの前見たばかりの闘技場に似ていた。

違うのは地面が鉄で出来た床で、周りも鉄の壁で覆われている事ぐらいだ。

『闘技場?

ま、確かにそうかもしれないね。

これからキミには私の作った装備の実験に付き合ってもらうのだから』

男の声でそう放送が流れる。

俺はゆっくりと移動装置から降りる。

移動装置は俺が降りた後、鉄の壁に向かいそのまま、鉄の壁に出来た小さな穴に入っていった。

『では、それを装備したまえ』

鉄の床が開き足装備が出てくる。

これもメカっぽいな。

どこから見られてるのか分からないが、ここで暴れても仕方ない。

俺はその装備を手に取り装備した。

装備名は《アルティメットフット》

究極の足とはね、大層な名前だ。

『装備したね。

では、始めてもらおうか』

そう放送がいった後、俺の前の床が開き下から何かが上がってきた。

なんだ?

ガチャンと音が鳴り、地面と上がって来た床が合わさる。

そして、目の前に1人の女性が。

おい、まさか。

その姿は昨日ログアウトした時に調べた人にそっくりだった。

友人の「これから会う相手の姿は確認しとけ」という言葉に俺はロボ子さんの姿を調べたのだ。

目の前にいる人物はまさしくそのロボ子さんだった。

『さぁ、始めようか。

私が作り上げた最高傑作ロボ子と戦ってもらおう』

俺は訳も分からず鬼切丸を出す。

最高傑作?

この放送してるやつがロボ子さんを造ったのか?

そして、俺はロボ子さんとこの鉄の闘技場で戦う事になった。




突如ロボ子さんと戦うことになってしまうあなたは果たして、ロボ子さんに勝てるのか?
そして、ロボ子さんを造ったという謎の人物はいったい?
次回をお楽しみに


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その名はロボ子さん

夏色まつりの力を借りて訪れた近未来都市。
あなたはギルドでロボ子さん関連のクエストを探すがなかった。
しかし、虹色ダーツのお陰でシークレットクエストを見つけホロメン関係だと思い受ける。
そして、そのクエストであなたは最悪な形でロボ子さんと出会うのであった。



「ロ、ロボ子さん?」

少し俺から離れた場所でうつむき加減のロボ子さんに声をかける。

すると顔をあげてこちらを見た。

やっぱりロボ子さん。

《回避行動にうつります》

え?

機械音声が流れ足が勝手に動く。

俺が避けたと同時に俺がさっきまでいたところをロボ子さんが通りすぎそのまま地面に激突した。

おいおい、ロボ子さんのパンチで鉄の床えぐれてるんだけど。

それにしても、無理のない足捌きだったので体も自然についていった。

『それがアシスト機能だよ。

自分より強い相手と戦う場合でもそうやって自動で避けてくれる』

また、あの声か。

俺はロボ子さんから距離を取る為に後に飛ぶ。

なるほど、全自動って訳ではなく自分で動きたい時はきちんと足は動く。

それにジャンプ力が増してるからバフも付いてるって事か。

ロボ子さんがゆっくりと立ち上がりこちらを向く。

俺は鬼切丸を構える。

「ロボ子さん、止めてください。

誰かに操られてるんですか?」

しかし、ロボ子さんからは返事はなくこちらをずっと見ている。

目に光がないわけではない。

じゃ、本当にあの声の主がロボ子さんを造った人物?

また、ロボ子さんが間合いを詰める。

俺は自然と動く足によってそれを避ける。

足捌きに体がついていっていると思ったけど少し違う。

何となくだが、体全体を薄い膜が被っている感じがする。

たぶんこれで体も無理なくついていけるように補助しているのか。

ドゴン!

またもえぐれる鉄の床。

あんなの1回でも受けたら死ぬの確定だぞ。

そして、3度目のロボ子さんの攻撃。

それも俺は難なく避けた。

が、避けたと同時に目の前で止まるロボ子さん。

やば、読まれた。

そのまま、ロボ子さんの裏拳が俺に襲いかかる。

《膝を曲げて上にあげてください》

え?

機械音声に体が反応する。

片足を上げた状態になった俺の回りを円柱のようなバリアが囲む。

ガン!

ロボ子さんの裏拳がバリアに当たるがびくともしない。

『それがイージスバリアだ。

どんな攻撃もそのバリアを壊す事はできない。

ただし、膝をあげている間だけだがな』

「欠点付か!」

俺は思わず突っ込んでしまった。

『何事にも絶対無敵はないのだよ。

欠点はどこかにある』

もっともな意見かもしれないが今は絶対無敵が良かったよ。

ロボ子さんはバリアの上からラッシュを仕掛けてきてバリアがガンガンいってはっきり言って怖い。

くそう、どうしたら。

《そのまま、あげてる足で対象を蹴ってください》

と機械音声。

このまま?

でも、動かしたらバリア切れるんじゃ?

しかし、尚もラッシュを続けるロボ子さん。

俺も足がだるくなってきた。

ええい!

俺は機械音声の言う通りあげてる足でロボ子さんを蹴った。

バリアは解除されないまま、俺の蹴りはロボ子さんに当たりロボ子さんはぶっ飛んだ。

ドガァ!

そのまま鉄の壁にめり込むロボ子さん。

うわ、やば。

『ほう、バリアを攻撃に使ったかなかなかいい発想だ』

いや、機械音声さんの発想ですけどね。

『しかし、これくらいで私のロボ子はやられたりはせん』

その通りに鉄の壁から抜け出すロボ子さん。

ほぼ無傷か。

さすがはホロメン。

オリジナル世代は他の世代に比べてかなりのチートって説明があったしな。

さて、このまま続けてもいつかはやられる。

脱出するにも俺が入ってきた出入り口は完全に防がれてるし。

この《アルティメットフット》を使って攻撃してもあの壁は破壊できそうにないしな。

そう考えていると突然室内にサイレンが鳴り始める。

な、なんだ?

『ど、どうしたんだ?』

カチャカチャとマイクから音がする。

何かを操作してるのか?

『や、やばい、見つかっただと』

な、なんだ?

何がやばい?

ドン!

そう、考えていると背後で音がした。

ドン!ドン!

俺は音のする方を見る。

そこは俺が入ってきたドア。

『わ、わ、止めてくれ』

ドン!ドン!ドン!

音はだんだん大きくなり、壁が向こう側からこちらに盛り上がってくる。

『や、やめてください!

開けますから!

ロボ子さん!』

え?

ドガァ!

扉が吹き飛びゆっくりと1人の女性が中に入ってきた。

「やっぱり、また変な実験してたみたいね」

そこにはなんとロボ子さん?

「はは、災難だったね。

はろーぼーオリジナル世代高性能ロボットのロボ子だよ~」

そう言ってにこやかに笑うロボ子さん。

《スキル【運命】が発動しました》

こっちが本物か。

「ああ、また、造ってる。

前にも1度注意したよね!」

そう言ってロボ子さんはロボ子さんとの間合いを詰めて一撃!

ドゴ!っと鈍い音が鳴りロボ子さんが破裂した。

外装?が剥がれ中からマネキンのようなアンドロイドが現れて鉄の壁にめり込み動かなくなった。

外側だけ似せた偽物か?

「ほら、さっさとこっちに出てきて。

出てこないと実力行使で行くけど?」

そう言って指を鳴らすロボ子さん。

かなりのご立腹?

『わ、分かりました。

すぐ行きますからこれ以上は壊さないで』

さっきまでの偉そうな態度はどこへやら、放送している人物は慌てた声で返答した。

そして、さっきニセロボ子さんが現れた時と同じように1人の白衣を着た人物が姿を表した。

「は、初めまして【ホロライブワールド】装備開発チームのウェイです」

おどおどしたその人物は俺に頭を下げて挨拶してきた。

「は、はぁ」

俺も頭を下げる。

さっきまでの強気はどこ行ったんだ?

「ウェイ!

いくらボクが推しだからって偽物造りは止めてって言ったでしょ。

それにまた運営から許可の出てない試作品をインストールしてプレイヤーさんを使って実地試験してるし」

「バ、バレてたんですか?」

「今のところはえーちゃんだけ。

見つけたえーちゃんから直接連絡あって止めに来たの」

「はぁ、また、主任に怒られる」

「えっと話が見えないんですが」

俺は話してる2人の間に入って聞いてみた。

「あ、ごめんね。

このウェイはこのゲーム【ホロライブワールド】の製作関係者で武器開発チームの1人なの。

優秀な人なんだけどね。

自分の考えた装備を運営の許可を取らず製作、実装したがる悪い癖があって、それで今回もその足装備を造ってここで実験してたの」

「それで、ロボ子さんを造ったって?」

「ああ、あれは似せて造ったアンドロイド。

ボクの開発者は別にきちんといるよ」

「そっか」

「ほら、ウェイも謝りなさい」

「はい、すいません」

また、頭を下げるウェイ。

「ま、大事にいたらなくて良かったです」

俺は半笑いで答えた。

「さてと、クエストを受けたんだよね?」

ロボ子さんが俺に聞いてきたので俺は頷いた。

「報酬はどうするつもりだったの?」

ロボ子さんに聞かれてウェイは口ごもる。

「また、こてんぱんにして放り出す気だったね」

「あ、はい」

たちの悪いやつだなぁ。

「ん~それじゃ、その足装備を報酬で貰うといいよ」

『ええ~』

俺とウェイの声がはもる。

「でも、これって違法な装備なんですよね?」

「別に許可を取ってないだけで違法な方法でインストールされてる物ではなくてきちんと正規ルートでされてるから問題ないよ」

「運営にばれたら私が怒られるよ」

「それは自業自得です」

そう言われてうなだれるウェイ。

「えーちゃんにはボクから話通しておくから大丈夫」

「はぁ」

「それに試作品でも性能は試した通りだし、このゲームでは1つしか存在しない超激レアだよ」

「いや、そうかもしれないですが、目立ちますよ」

そう、どっからどう見てもメカだし、ステルスしててもばれる時はばれる。

「その点は抜かりないんだよね」

ロボ子さんはウェイを見る。

「はい、カメレオンモード起動」

ウェイの言葉に《アルティメットフット》の見た目が変わる。

普通の革のブーツになった。

「見た目だけではなく説明文も変化してます。

それにキミが装備して私がリセットしてないから所有者はキミで固定されて、これから先リスポーンしても失われません」

めちゃくちゃすごい。

「はぁ、折角寝ずに考えて造ったのに」

「ご苦労様。

それじゃ、キミはボクが外まで送っていってあげるよ」

「あ、はい、お願いします」

そして、少し悲しい顔をしながら手を振るウェイを残し、俺はロボ子さんと入り口へと向かった。

 

「なるほどね、ホロメンと出会う旅か」

道中俺はこれまでの目的を簡単に説明した。

もちろん、この世界が危ないと言う事は言えなかった。

「あと会ってないのは?」

「何人かいますが、いる場所はだいたい分かってて。

ただ、AZKiちゃんだけが、どこにいるのか分からなくて」

「あずきちゃんかぁ、分かった。

これも何かの縁だしボクが探しといてあげるよ」

「え?本当ですか?」

「うん、分かったら連絡するけど、何か通信機持ってる?」

「あ、それなら」

俺はまつりちゃんからもらったライター型通信機を見せる。

「あ、それ持ってるんだね。

なら、連絡出来るよ」

「よかった」

俺達はタワーの入り口に来た。

「それじゃ、ここで。

またね、おつろぼー」

俺もロボ子さんに挨拶をして別れる。

さて、ここでの目的は終わった。

なんか成り行きですごい装備貰えたけどいいのかな?

それじゃ、まつりちゃんに連絡してまた学園に送って貰おうかな。

俺はライター型通信機でまつりちゃんに連絡した。

「え?もう終わったの?

ごめん、今ゲームの最中だからちょっと待ってて」

そう言って切られる。

それから俺は半日この近未来都市で待ちぼうけをくらうのだった。




今回出てきたウェイはオリジナルのキャラになります。
ゲーム開発者の女性で運営側の人物となります。
今回はここだけの登場ですが、またどこかで出てくるかもしれません。
次回はいよいよ裏世界。
お楽しみに


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魔界を彷徨う巨大な闇

近未来都市で受けたクエストであなたはロボ子さんと出会った。
なんだかんだあったが激レアな足装備もゲットした。
あなたは癒月ちょこに会うため夏色まつりと共に1度学園に戻るのであった。


「ごめんね、新作ゲームが出ててやってたらこんな時間になって」

まつりちゃんと合流したのは夕方。

そこから、食料を調達して俺はまつりちゃんの車に乗って学園を目指した。

ま、夕方から行けばキングワームに出会わないし、いいと言えばいい。

それに、まつりちゃんの車には高性能のマップが装備されており、街灯がなく月明かりだけの荒野も迷わず進める。

それにこのスピードは普通出せないしな。

「そういえば、何か街で手に入れれた?」

まつりちゃんに聞かれて、俺は足装備は秘密にしていくつかの装備を手に入れた事を伝えた。

そう、まつりちゃんを待ってる間に俺は少し武器や防具屋を見て回ったのだ。

「そっか、それならよかった。

ロボ子しぇんぱいに会うだけだとせっかく行ったのにって思ってたから」

「ありがとうございます」

それから、俺は車中泊をして次の日の朝には第2の街に到着していた。

学園近くに車を止めるまつりちゃん。

あまり、学園に近づくとまつりちゃんと車が他の人にも見えるようになるらしい。

ルーナちゃん達と同じか。

あの学園が1つのイベントだから。

「本当に助かりました」

「ううん、こっちも楽しかった」

俺は車を降りてまつりちゃんに挨拶した後別れてから、学園に向かった。

目指すは保健室。

トントン

「はいは~い」

元気な声が中から聞こえる。

「失礼します」

俺は保健室に入った。

「あ、おかえり」

「ただいまです」

保健室では、ちょこ先生が笑顔で出迎えてくれた。

「用事は終わった?」

「はい、終わりました」

「じゃ、魔界に行くのね」

「はい」

俺はちょこ先生の問いに力強く頷く。

「分かった。

この前、スバルが言ってたように魔界のモンスターは手強いから危なかったらすぐに逃げてね」

「はい」

「それじゃ、まずはこれ」

ちょこ先生から1通の手紙を渡される。

「これはちょこからメル様宛の手紙。

これを持っていけば怪しい人とは思われないから」

「ありがとうございます」

確かにいきなり行ったら警戒される恐れがある。

そこに気を配ってくれたんだ。

「それで、魔界への入り口だけど。

実はるしあ様が守ってる大霊園の近くにあるの」

「ええ、そうなんですか?」

「そうなのよ」

あ、だからるしあちゃんはあんな事を言ったのか。

「るしあちゃんに許可をあげたら面白味がないって言われました」

「確かにすぐそこに入り口があるわけだから、今回みたいな冒険は出来なかったわね」

なるほどな、ゲームを楽しむ事をるしあちゃんは考えてくれてたのか。

「それじゃ、大霊園に戻ってるしあちゃんに入り口を聞いてみます」

「うん、そうすればいいと思う。

それで、また歩いて戻るの?」

ちょこ先生は大変と言った顔をする。

「いえ、近未来都市でいい物を見つけたので」

俺はアイテムボックスから1つの石を取り出した。

これは前に友人にもらった思ひ出の石に似ている形をしていた。

しかし、性能は別物だ。

この思ひ出の石SPは使い捨ては変わりないが、1度行った【ホロライブワールド】の場所ならどこにでも行く事が出来る。

ただし、お一人様1つまで。

今回はこれを使って大霊園に戻る事にする。

メルちゃんもいつまでも魔界にいるとは限らないからな。

「では、ちょこ先生。

いろいろとありがとうございました」

「うん、また会おうね」

「もちろんです」

俺は手に持った石を振りかぶり床に投げつける。

景色がぼやけ始める。

ん?

なんだ?

ちょこ先生が何か慌てて手招きしてるように見えたけど?

 

視界がはっきりするとそこは大霊園の入口だった。

最後にちょこ先生が慌ててたけどなんだったんだろう?

ま、今から確認しようがないんだけど。

俺はちょこ先生の事が気になったがまずはるしあちゃんに会う為に、大霊園の中へと向かった。

「あ、案外早かったのです」

ドームの中ではティータイム中のるしあちゃんがいた。

「それで、許可はもらえました?」

椅子を進められ俺も座る。

「はい、ちょこ先生から許可をもらいました」

「じゃ、入り口も聞いたんですよね?」

「はい、この近くにあると」

「はい、大正解なのです」

「るしあちゃんは、俺に冒険する機会をくれたんですね」

俺の言葉に笑顔のるしあちゃん。

「そんなに簡単に見つかったら裏世界の価値がないのですよ」

その言葉に俺も笑ってしまった。

確かにそうだ。

「それでは、準備が出来ているなら行きましょう」

「はい」

俺はるしあちゃんに連れられてドームよりまだ先へと進む。

道中、魔界での注意点を聞く。

魔界ではモンスターが強くなっている事。

ただし、パーティーになっているのは稀なので逃げようと思えば逃げれる為、無理はしないように。

もし、死んでしまったらこちらの入り口にリスポーンする。

あとはマップが機能しない為、道に迷いやすい。

ただ、魔界の町へは道があるので、その上を歩いていれば迷わないらしい。

決して冒険してみようと思わず、町に向かうように言われた。

「さて、ここなのです」

目の前には巨大な門。

「ここから先は【ホロライブワールド】の世界であって世界ではない場所なのです。

十分に気をつけて」

俺はるしあちゃんの言葉に力強く頷いた。

俺はゆっくりと門に近づき、重たそうに閉まっている扉に手を当てた。

ギギっと音を立てて扉を開ける事が出来る。

許可を持っているものだけが開ける事が出来るらしい。

「行ってきます」

俺はるしあちゃんにそう言ってから門へと入っていった。

「気を付けるのですよ~」

背後扉の向こうからるしあちゃんの声援が聞こえた。

そして、俺の目の前はすごい光に包まれた。

 

 

「ここが魔界?」

目が慣れてきて、周りの景色が見え始める。

空は薄暗いが夜ほど真っ暗ではなかった。

植物も魔界らしくクネクネした木や草が生えている。

背後を見ると入ってきた時と同じような門があった。

ここから帰るんだな。

覚えておかないと。

ふと、足元を見るとくねくねしているがどこかに続いている道があった。

これがるしあちゃんが言っていた、魔界の町に続く道か?

俺はそのくねくね道から出ないように進む事にした。

ギャーギャーと不気味な鳴き声で飛ぶ蛇や地面を走る魚など、向こうの世界では見れない生物がたくさんいる。

 

あれから何回か戦闘にもなった。

ゴブリンに似ていたが背中に羽が生えているモンスターだ。

ま、鬼属性だったらしく鬼切丸の特効が強く難なく勝つことができた。

あれからだいぶ歩いたけど、まだ着かないのかな?

「な、なんだ、やめろ~」

え?なんだ?

道沿いの森から声が聞こえる。

でも、道を外れると迷子になるかもしれない。

「やめろって言ってるだろ」

「く」

俺は道を外れ森の奥へと走った。

こっちか?

ギャワー

さっきより大きいホブゴブリンか?

いや、悪魔の羽が付いている。

「まて!」

俺の声にホブゴブリンデビルがこちらを向く。

ギャワー

そのまま棍棒を振り上げ襲ってきた。

ガ!

しかし、その棍棒は俺に当たらず地面を打つ。

今の俺には最強の足装備がある。

俺はそのまま鬼切丸でモンスターを薙ぎ、通りすぎた後、振り返り上段から切り落とした。

なんとか倒せた。

「大丈夫?」

俺は襲われていた相手を見る。

そこには1人の少女?がいた。

大きな2本の角が印象的な小さな女の子、なんでこんなところに?

「ん?助けてくれたのか?」

「え?あ、はい」

「よくやった」

なんか上から目線の子だなぁ。

「えっと、名前聞いても言いかな?」

「名前か?

名前はラプ…じゃない、そうだなぁ」

ん?なんかどこかで聞いた事のある名前?

「ダークネス、そうだ、ダークネスだ」

「ダークネス?」

「そうだ」

「ん?じゃ、ダーちゃん?」

「なんかやだそれ」

本気で嫌そうな顔をされる。

「ダークネス様と呼べ」

「え?様?」

「そうだ」

えっと、どれだけ上から目線?

「いや、さすがにそれは」

「ん~長いのか?」

いや、そう言う意味じゃないんだけど。

「なら、ダーク様でいい」

様は確定か。

「分かった、ダーク様はここで何してたんですか?」

「うむ、吾輩はカラスを探している」

「カラス?」

「そうだ、いつも側にいたのだが、ここに来たらどこかに行ってしまってな。

それで探してる」

「そっか」

ここはかなり危険と聞いたし、子ども1人は危ないな。

「俺も一緒に探すよ」

「本当か!」

嬉しそうなダーク様。

「うむ、吾輩の邪魔をするモンスターも退けるし、手伝いも申し出るし貴様はいい下僕になりそうだ」

「下僕ですか?」

「さぁ行くぞ!」

そう言って歩き出すダーク様。

「行く宛あるんですか?」

「ない!

歩いてればそのうち会う」

「そんな投げやりな」

俺はダーク様を追って歩く。

はぁ、この先どうなる事やら。




巨大な2本の角を持つ少女の登場です。
果たして彼女のカラスを見つける事はできるのか?
そして、あなたはメルちゃんに会う事が出来るのか?


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消えた闇と甘い誘惑、そして厳選なる中立者

魔界に着いたあなたは大きな2本の角を持つ少女と出会った。
どこかに行ったカラスを探していると言う少女にあなたは、一緒に探す事となる。
果たしてあなたは無事にカラスを見つけ出し、魔界の町へたどり着けるのだろうか?


あれから俺はダーク様と道なき道を歩いた。

もう完全に魔界の町への道は外れている。

素直に言って。

「迷子かな」

「な、迷子ではない!

ちょっと目的を見失いうろうろして次どこに向かったらいいか分からないだけだから」

うん、それ迷子だから。

「で、探してるカラスってどんな姿なの?」

「ん?普通のカラスだが?

ちょっとふっくらしてて胸に黒い十字の模様、目付きの悪いやつだ」

うん、飼い主に似たんだな。

「なんだその目は、別に吾輩は目付きは悪くない」

う、思ってたことが顔に出た?

「それより、ダーク様はここに住んでるんですか?」

プイと顔を背け怒っているダーク様に聞いてみる。

なんか子どもが拗ねてる感じで可愛いな。

「別に拗ねてない」

やっぱり心が読めてるのか?

俺はアイテムボックスの中を見る。

そういえば、ちょこ先生からもらったお菓子があったな。

って言っても饅頭か。

子ども向けじゃないけどいいかな。

俺はアイテムボックスから饅頭を出す。

するとじーっとダーク様がその手を見ている。

「いる?」

「ん?いや、いらん」

そう言ってまたプイ。

だが、今度はチラチラ手を見てくる。

「そっかぁ、これ最後の一個だけど、いらないならお腹空いたし食べよう」

「ま、まて!

貴様がどうしてもと言うなら食べてやってもいい」

少し慌てて言った後、俺と目が合うとまたプイ。

はぁ、本当に子ども相手してるみたいだな。

「では、ダーク様に献上品でございます」

俺はその場に片膝を付き饅頭をダーク様に差し出した。

「そ、そうか、なら食べてやる」

めちゃくちゃ嬉しそうな顔をして饅頭を食べるダーク様。

「美味しいですか?」

「うん、うまい」

機嫌がなおったみたいでよかった。

「献上品に免じて質問に答えてやる。

吾輩はここには住んでいない。

こことは別の所に住んでいるが、ずっと基地の中で暇なのでな。

部下には黙って散歩に来た」

「散歩でこの裏世界に?」

「そうだが?

何かおかしいか?」

「いや、ここってかなり危険だよ?」

「そうみたいだな。

ま、吾輩には普通の平原を歩いてるのと変わらんが」

この子ってどういう立ち位置なんだ?

俺はそんな事を考えながらふと前を見る。

ん?

少し先に行った丘の上の木に黒い鳥が止まってこっちを見ていた。

「ダーク様」

モグモグ

「ちょっとダーク様?」

「ん?あ、吾輩か」

いや、自分で呼べって言ったじゃないですか。

「あの先にいるの探してるカラスじゃないです?」

「ん?あ、ほんとだ、あれだあれ。

行くぞ!」

急いで饅頭を食べて走り出すダーク様。

っていうか惜しみながら食べないで。

俺もダーク様の後を追って走った。

木の下に着く。

木には確かにダーク様の言っていた胸に十字の模様があるカラスがとまってこちらを見下ろしていた。

「おい、早く戻ってこい」

ダーク様の言葉にカラスはゆっくりと木から降りてきて、ダーク様の頭にとまる。

「そこが定位置なんですか?」

「そうだ」

腕を組みふんぞり返るダーク様。

なんかガシッとカラスに頭掴まれてるけど痛くないのかな?

「でも、よかったですね見つかって」

「うむ、ご苦労だった」

ダーク様が満足そうに頷いている。

「さて、それではダーク様はここで家に戻ってください」

「なぜだ?」

俺は鬼切丸を取り出しダーク様を背にして立つ。

俺の向いた方からは俺の2倍の大きさはあるだろう牛の顔をした悪魔がこちらに来ていた。

「あいつは俺が抑えておきますので」

「1人で大丈夫なのか?」

背中でダーク様が心配そうに聞いてくる。

「ま、どうにかします」

「そうか」

トンと後ろから軽くダーク様に背中を叩かれる。

ん?

振り向きダーク様を見た。

「今回の働きはよかった。

だから特別に報酬だ、受けとれ。

そして、今度はきちんと絆が集まった時に会おう。

楽しみにしているぞ」

ガァァァー

悪魔の咆哮に俺は慌てて悪魔の方を見た。

そして、また振り向いた時にはダーク様は消えていた。

帰ったかな?

俺は悪魔に向き直る。

さ、これで心置きなく戦えるな。

「いくぞ!」

三ツ又の槍が頭上から俺をめがけ突き刺しにくる。

しかし、紙一重で避ける。

すぐさま悪魔との間合いを詰めた。

いつもより体が軽い。

「は!」

悪魔の足を薙ぎる。

ギャー

横に飛び間合いを取る。

あまり力を入れなくても攻撃が通る。

体から力が溢れてくる感じだ。

ダーク様があの時にバフをかけてくれたのか?

グワァー

なおも悪魔は槍を突き刺してくるが。

今の俺には通用しない。

バフと足装備のお陰で紙一重で避けられる。

そのまま槍を並走。

槍を持つ手を斬る。

グギャー

「稲妻よ」

俺の言葉で鬼切丸が紫の稲妻を纏う。

そして、悪魔の額に俺は鬼切丸を突き刺した。

グワァー

バシュっと音がして悪魔は光の粒子に変わる。

「はぁ、何とかなったか」

俺はその場に座り込んだ。

しかし、これからどうするかな。

町はどこにあるか分からないし。

「はぁ、まじかよ」

俺はゆっくりと立ち上がった。

少し離れた所からさっきと同じような悪魔が数体こちらに向かってきていたのだ。

今のバフを受けてる状態なら後2匹ぐらいはいけるけど、それ以上は辛いな。

逃げれるか?

いや相手は複数、逃げきれないかもな。

俺は鬼切丸を構える。

今度こそやられるか。

眼前まで迫る複数の悪魔。

そして、不快な笑い声をあげながら悪魔達は俺を見下ろしていた。

覚悟を決める。

「やっと見つけたよ~」

「え?」

謎の声に悪魔も動きを止める。

しかし、最近聞いた声だ。

「るしあ様の言った事きちんと守らないからこういう事になるんです」

俺は空を見上げた。

そこには空中で足を組み座っているちょこ先生がいた。

「ちょこ先生?」

「は~い、Good evening!ちょっこーん。

追いかけて来ちゃいました」

そう言ってちょこ先生は俺と悪魔達の間に降り立つ。

「もう、用事があるのにさっさと行って、探すのに苦労しましたよ。

と、その前に」

どこからともなく剣を取り出すちょこ先生。

そして、その剣を見えないぐらいの速さで振り上げて下ろした。

ボボボボ

ちょこ先生の背後の複数の悪魔達が光の粒子になって天に上がる。

「え?」

俺はもう一度ちょこ先生の手を見る。

さっきまで剣だと思ってたけど今は刃が複数に別れて鞭のようになっている。

「蛇腹剣」

「あら、知ってるんですか?

はい、ロボ子様からもらった武器です」

そう言ってちょこ先生が手首に力を入れると鞭は剣に戻った。

「なんかロボ子様がちょこ先生にはこれが合うと思うってくれたんです」

確かにナイスチョイス。

「でも、間に合ってよかった。

なぜこんなところに?」

「あ、それは迷子の子どもがいてその子を助けてたらこんなところに」

俺の言葉に優しく微笑むちょこ先生。

「それなら仕方ないですね。

その子どもさんは?」

「さぁ、帰ったみたいです」

「そうですか。

そうそう、手紙を渡した後、これも渡さないといけなかったんです」

そう言ってちょこ先生は可愛い包み紙で包装された箱を渡してくる。

「これは?」

「メル様にちょこから手作りお菓子です」

「なるほど」

「これはキミの分ね」

可愛い袋をくれる。

「お駄賃です」と言って笑うちょこ先生。

「ありがとうございます」

「それじゃ、ここまで来てしまいましたし、一緒に町まで行きましょうか」

「いいんですか?

助かります」

それから俺はちょこ先生とメルちゃんがいると言う魔界の町へ向かうのだった。

 

「ここが魔界の町よ」

あれからしばらく歩いて俺達は魔界の町に着く。

ちょこ先生がいてくれたお陰で、あれからモンスターと出会っても難なく倒す事が出来た。

「そういえば、キミはレベルカンストしてないの?」

「え?」

そういえば、友人と会った時に確認していらい見てなかったな。

俺はステータス画面を見る。

確かにレベル表示が99で止まっていた。

「あ、カンストしてます」

「なら、1度ログアウトして、えー様に会って来るのをお勧めします」

「じゃ、1度宿に泊まってログアウトしてきます」

「はい。

それじゃ、ちょこはこの町にいますので、また来た時に一緒にメル様のところに行きましょう」

「分かりました」

俺は1度ちょこ先生と別れ宿に向かった。

確かログアウトの時にカンスト特典を望めばいいって友人が言ってたな。

ログアウトする。

しかし、目を開けても真っ暗な世界。

するとシステムメッセージが目の前に流れ始める。

《レベルがカンストしました。

カンスト特典を望んだ為、選択の間に移動します。

YES・NO》

YES

《YESを確認、選択の間に移動します》

そして、俺は真っ白な世界で目を覚ます。

床があるのは分かる。

しかし、周りに壁がない。

どこまでも続く広い真っ白な空間。

何もない?

いや、何かある。

少し先に何か机のような物が見える。

俺はゆっくりとそちらに歩いていく。

「いらっしゃいませ」

それは会社にあるようなデスクだった。

資料がたくさん置かれていたが整理はされており、座っている人の顔は見えた。

「はじめまして。

噂はかねがね。

私は友人Aというものです。

あ、ここではAちゃん神なんて呼ばれてますけど」

そう言ってデスクに座る眼鏡の女性は笑顔で迎えてくれた。




ちょこ先生と合流した頃、その姿を離れた場所から見る人物がいた。
先程襲ってきた悪魔よりさらに一回り大きい悪魔を大地に跪かせその上に乗っているのはさっき消えたダークネスと名乗った少女だ。
グワァー
「うるさいな」
ダークネスはその小さな手刀を悪魔の首に振り下ろす。
バシュ
悪魔はその手刀の一撃で光に変わった。
「よっと」
座るものがなくなり大地に立つダークネス。
「ふう、やばかった。
まさかちょこ先生が合流してくるとは思わなかったぞ。
危うく見つかるところだった」
「ラプ殿~どこでござるか~」
「ん?」
「あ、いた。
ルイねぇ、いたでござる~」
そう言ってダークネスに走り寄る女侍。
「ほんとだ、いたいた。
何してるんですか、ラプ」
もう1人長身の女性もダークネスを見つけて走ってくる。
「別に基地の中が暇だから散歩しただけだ」
「え?出不精のラプ殿が!!」
「びっくりマーク2つも付けて驚く事か!」
「まぁまぁ、無事で何より。
でも、今度はどこに行くか言ってから散歩に行ってくださいね。
迷子になったら、まぁいい子じゃなくなりますから」
長身の女性の言葉を聞き、はぁとため息をするダークネス。
「そうですよ、ラプ殿探すのは一苦労なんでござるよ」
「いや、心配してくれるのはありがたいが、さっきから喋る高さが全部頭のカラスの位置なんよ。
吾輩の顔はもっと下だから」
「あ、そうでした」
「ごめんでござる」
「絶対わざとだよね」
ダークネス、いや、ラプラスは機嫌をそこねプイと横を向く。
それを女侍いろはは、まぁまぁとなだめていた。
ふと、長身の女性ルイはちょこ先生と歩く1人の男性を見つけた。
「ラプラス。
会ったんですね、彼に」
「ん?」
ルイに言われてラプラスはそちらを向く。
「ん?誰でござるか?
あ、あの時の」
いろはも見つけたようだ。
「で、どうでした?
実際に会ってみて」
ルイはラプラスを見ながら聞く。
「あのぐらいの強さなら我らの驚異にはならん。
しかし、ああやってホロメンを惹き付ける何かを持っているみたいだからな。
絆集めにはうってつけだ」
「それはよかった」
ルイはちょこ先生と町に向かう男性を見る。
「いつかまた話をしたいでござるな」
いろはも同じく見る。
「そのうちまた吾輩の前に現れるさ。
その時は吾輩が真の力を取り戻す時だがな」
そう言って、3人はワープホールに消える。
果たして彼女達は何を企んでいるのだろうか?
【ホロライブワールド】の秘密結社holoXはまだ謎に包まれたままだった。


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魔界の天才薬剤師

魔界でピンチのあなたを癒月ちょこが現れ助けてくれた。
癒月ちょこが魔界の町までついてきてくれる事になり、あなたは共に町に向かう。
町に着いたあなたに癒月ちょこがレベルの事を聞いてきた。
レベルがカンストしていたあなたはカンスト特典を受ける為に選択の間に向かう。
そこで出会ったのは友人Aだった。


「は、はじめまして俺は…」

「ああ、自己紹介は大丈夫ですよ。

こちらにデータはありますので」

俺はデスクの前にいつの間にか現れた椅子に座っている。

「えっとAちゃん神って呼べばいいんですか?」

「え?

あ、別にそう呼ばれてるってだけで、別に呼びにくかったらえーちゃんって呼んでもらって大丈夫ですよ」

「分かりました」

「そんなに緊張しなくていいですよ」

う、ばれてる。

「ここには努力した人がこれる場所ですから。

別に職員室に呼び出された生徒ではないです」

といって笑うえーちゃん。

確かになんかそんな気になるなぁ。

「それで、どうします?

レベルと引き換えに特典を望んだんですよね?」

「はい、その前に聞いてもいいてすか?」

「はい、大丈夫ですよ」

「この足装備なんですがこのまま俺が持ってて大丈夫ですか?」

「ああ、その革の靴ですか?」

「え?」

えーちゃんがウィンクする。

「それだったら大丈夫ですよ。

ロボ子さんから聞いてますからね」

そうか、運営の他の人には秘密にしてるから。

「分かりました。

大事に使います」

「はい、そうしていただければ製作者も喜ぶと思います。

では、特典にうつりますけどいいですか?」

「はい」

そして、俺はえーちゃんから特典の目録を受け取る。

かなりの数の項目があるなぁ。

「ゆっくり決めてもらって大丈夫です。

ただ、現実世界では時間が過ぎていってるので気を付けてくださいね。

時間の調節はしていますけど」

時間の調節?

「はい、分かりました」

しばらく俺は目録を見て考え決める。

「では、これでお願いします」

「これですね。

分かりました。

それでは今度ログインした時に反映するようにしておきますね」

「はい、ありがとうございます」

「あと、レベルと引き換えになってますので、次のログイン時にはレベルが1になってます。

ステータスもレベル1のものなので気を付けてくださいね」

「分かりました」

あ、俺は今裏世界にいるな。

やばいかも。

「どうかしましたか?」

心配そうに聞かれる。

「いえ、大丈夫です」

「はい、では、またレベルを上げてお会いしましょう」

そうえーちゃんが言うと同時に目の前が暗くなる。

これでログアウトになるんだな。

 

 

「本当にレベルが1になってる」

次の日、俺はログインしてステータスを見る。

一番初めの時のように軒並み1桁台になっていた。

裏世界の魔界でこのステータスはやばいかな?

鬼切丸を振ってみると心なしか振りが遅くなってる気がする。

「あ、いた」

そんな事を宿屋の前でしているとちょこ先生が迎えに来てくれた。

「特典に代えたんですね」

「はい、なのでレベル1になってかなり不安です」

今の心境を正直に告白する。

「大丈夫、町の中までモンスターは来ませんし、帰りもちょこがフォローしてあげますから。

たぶん帰りにはまたレベルが上がってますよ」

「何から何までありがとうございます」

俺は頭を下げてお礼を言った。

ちょこ先生はそんな俺を優しい笑顔で見ていた。

「じゃ、さっそくメル様のところに向かいましょう」

そして、俺達はメル様の家へと向かった。

 

「ここですか?」

それは1軒のお店。

「はい、ここですよ」

カランと可愛い鐘の音が鳴りお店に入る。

「こんにちは」

「はい、はい」

カウンターの奥から可愛らしい金髪ショートカットの女性が出てきた。

「あ、ちょこ先生~」

すっごく嬉しそうにちょこ先生を見る女性。

ふと、その横の俺と目が合う。

「誰…?」

ぐぁ。

「あ、メル様?

ちょっとお話聞いてもらっていいかな?」

「ん?何?」

すかさずフォローを入れてくれるちょこ先生。

危なかった、ちょこ先生のフォローがなければその場で倒れるとこだった。

なんだ、今の心臓を握り絞められたような感覚は。

 

「なるほど、ホロメンと出会う旅をしている人でメルに会いたくてわざわざ魔界まで来たと」

「はい、そうです」

お店の中にあるテーブルにつき、ちょこ先生の手作りクッキーをおやつにティータイムをしながら、ちょこ先生が俺の事を説明してくれた。

なんか、重大な使命がホロメンに出会う旅になってるけど、ま、いいか。

実際変わらないし。

「わざわざ、こんなところまでありがとうね。

はじめまして、こんかぷ~

魔界の天才バンパイア!

夜空メルだよ」

《スキル【運命】を発動しました》

「メル様はこの魔界で魔法の薬を売ってるお店をしてるんですよ。

ちょこも取り寄せてるくらいよく効きます」

「あ、保健室の棚に並んでる色とりどりの薬って」

「そう、ここの薬です」

「本当はプレイヤーさん向けに販売してるんだけど、この魔界に来るお客さんは稀だから」

とメルちゃんが可愛く笑う。

でも「プレイヤーさん来るんですね」

そう、かなり難しいと言われている条件だけどこれてる人いるんだ。

「ふふ、自分だけが特別みたいに思わない方がいいですよ。

このゲームが公開されてだいぶたちますからね。

それにホロメン愛が強い人はたくさんいますから」

とちょこ先生。

「古参でしてくれてる人達にはここや他の裏世界に行けてる人は案外いますよ」とメルちゃん。

「ただ、キミみたいにすごい勢いで進んでる人はいないですけど」

そうだよな、俺はいろんな人やアイテムに助けられてここまで進めてるものな。

普通ならこんな速度でここまでこれないよ。

「だから、ちょっとは自信持ってもいいかもね」

メルちゃんがウィンクしてくれる。

少し落ち込んでいるのを察してくれたのかな。

「はい、ありがとうございます」

「うんうん」

満足そうに頷くメルちゃん。

「そうだ、折角来てくれたんだし、少しお願いしてもいいかな?」

「はい、いいですよ」

「よかった、ちょうどお薬の材料が切れかけてて取りに行かないといけなかったんだけど、護衛をお願いしてもいい?」

「護衛ですか?」

「そう」

ホロメンを護衛なんて、どれだけ強い敵なんだ?

俺で力になれるのか?

「ああ、あそこに行くのね」

ちょこ先生もなぜか分かった感じで頷いている。

「分かりました、俺でお役に立てるなら」

俺は力強く頷いた。

ま、レベル1ですが。

「ちょうどレベル上げにもなると思うよ」と、ちょこ先生が耳打ちしてくれる。

「じゃ、用意してくるからお店の前で待ってて」

そうメルちゃんが言うとカウンターの奥に入っていく。

俺はちょこ先生と店の前に出て待つ。

「お待たせ」

お店から出てきたメルちゃんは長髪になっており髪を左右2つに纏めていた。

さっきの服と違い可愛い黒のスカートの私服姿だ。

「髪?」

俺が呟くように聞くと。

「ん?女の秘密だよ」と笑いながらメルちゃんは答えた。

「さ、行こっか」

そして、俺はメルちゃんとちょこ先生と共にお店の裏の森の中へと入っていった。

「でも、本当に久しぶりだね」

「電話ではよく話してるけど会うのは久しぶり」

前を歩く2人はピクニック気分で楽しそうに話しながら歩いていた。

俺は一応、いつでも鬼切丸を出せるように準備しながら2人の後を歩いている。

しかし、前の2人見てるだけでも幸せな気持ちになるのはなんでだろう。

「そろそろ到着するよ」

前を歩くメルちゃんが教えてくれる。

「はい」

俺は首を振り頬を軽く叩いて気合いを入れる。

行くぞ。

森が開けて俺達は目的地に着いた。

「えっと、ここですか?」

「そうだよ」

そこは森に囲まれたお花畑だった。

こんなところで何を?

「それじゃ、今から花の蜜を集めるからその間お願い」

メルちゃんはお花畑にある通路に入り花から蜜を集める。

ちょこ先生もそれを手伝っていた。

俺は何を相手すればいいのか分からないままとりあえずお花畑の中にある通路に鬼切丸を持って入った。

しばらくするとブーンという音がする。

虫?

周りを見渡すとそこには人の頭ぐらいの大きさの蜂が。

「キラーワスプだよ、気を付けて」

「レベル1でも一撃で倒せるけど、攻撃受けたら一撃でやられちゃうから気を付けて」

2人から声援を受ける。

「分かりました」

俺は足元を確認し花を踏まないように通路で戦う。

ブーンと五月蝿い音をたてながら針を突き刺そうとしてくるワスプ。

しかし、今の俺はレベル1だとしてもこれまでの経験と装備がある。

紙一重で避けながらすれ違い様にワスプを斬る。

バシュっとワスプは光に変わる。

よし、いける。

次は2匹。

同じように回避しながらカウンターで倒していく。

なんかだんだん体が軽くなってきたような。

「そろそろ来るよ」

メルちゃんの声がして、上空を見上げると人と同じぐらいの蜂が翔んでいた。

「クイーンだよ!」

メルちゃんの言葉を聞き、俺は鬼切丸をクイーンに向ける。

そして「稲妻よ!」

解放の言葉と同時に俺は鬼切丸をクイーンに突き出した。

紫の稲妻がクイーン目掛けて走る。

そして、クイーンは光になって消えていった。

「お疲れ様」

「なかなかでしたよ」

メルちゃんとちょこ先生が笑顔で労ってくれた。

「なんとかなりました」

俺も笑顔で答える。

「どうしても虫は苦手で蜜を取りに来る時はいつもホロメンの誰かに付き添ってもらってたの」

メルちゃんが軽く笑いながら教えてくれた。

なるほど、だから今回俺が護衛だったんだ。

「お陰でちょこ先生も集めるの手伝ってくれたから、思ったより集められたよ」

「それじゃ、お昼にしましょうか?」

ちょこ先生がお花畑の横にレジャーシートをひいてくれている。

「賛成~」

メルちゃんは持ってきたバスケットを広げて準備する。

俺もそちらに向かう。

が、あと一仕事残ってるかな?

俺が振り向いたと同時に森からさっきと同じぐらいの大きさの蜂が現れる。

「え?

キングもいたの?」

ちょこ先生が驚く。

うっすらと羽音がしてたからいると思った。

俺はもう一度鬼切丸を構え、そして「稲妻よ!」と解放の言葉を発した。

紫の稲妻は鬼切丸からキングワスプ目掛けて走る。

そして、キングワスプも光となって消えた。

「これで大丈夫かな?」

「まさかキングも来てたなんて」

ほっと胸を撫で下ろしながらメルちゃんはレジャーシートに座った。

「お疲れ様、それじゃ、今度こそお昼にしましょうか?」

「はい」

俺もレジャーシートに座り、メルちゃんが用意してくれたサンドイッチを食べた。

ちなみに鬼切丸の雷がなぜ2回使えたのかというと、今回俺がカンスト特典で選んだ効果のお陰だ。

自分が持つ1つの特殊スキルの使用回数を1回増やすというものだ。

これで俺は切り札を2回使えるようになった。

戦力も上がるって事だ。

「はい、お茶」

「あ、ありがとうございます」

メルちゃんからお茶を受けとる。

ふぅ、幸せな気分に浸りながらここで少し休憩をするかな。




残りのホロメンも後僅か、物語は佳境に入ろうとしています。
果たしてすべての絆は1つになるのか?
次回もお楽しみに


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魔界からの帰還、そして新たな場所へ

夜空メルから依頼されたクエストを無事に終えたあなたは、夜空メルと癒月ちょこと一緒にゆったりした時間を過ごしていた。


「それじゃ、そろそろ帰りましょうか」

お昼を食べ終わり、片付けをするちょこ先生。

「手伝います」

メルちゃんが食器を魔法で出した水で洗い、ちょこ先生がそれを拭いてバスケットに入れる。

俺はレジャーシートを1度払ってから折り畳んだ。

「これだけあればしばらくはここに来なくてもいいよ」

満足そうな笑顔のメルちゃん。

それを見ると手伝ってよかったと思えてくる。

そして、俺達は来た道を帰る。

帰る途中に俺はステータス画面を開きレベルを確認した。

レベル50になってる。

さすが裏世界って事か?

ま、俺の今だよく分からないスキルのお陰もあるかもだけど。

帰りは何事もなく店に着く。

店に着くと何人かの冒険者が店の前に並んでいた。

薬を買いに来たみたいだ。

すぐに店の準備をするメルちゃん。

俺は特に手伝える事もなくその様子を見ていた。

今回はちょこ先生が売り子もしているので、買いに来た冒険者はすごく嬉しそうな顔でアイテムを購入して帰っていった。

お客がいなくなったので店に入る。

「すごい繁盛してましたね」

「薬がなくなると買いにきてくれる常連さんなのよ」とメルちゃんが笑顔で答えてくれる。

「なるほど」

「ま、今回はちょこ先生も手伝ってくれたから余計に売れちゃったかな」

「ええ、そんな事ないよ」

と2人は笑っていた。

しかし、本当にこの世界に来てる冒険者っているんだ、ある意味本当の意味での到達者だよ。

俺みたいなチートみたいな力に頼ってない。

「さて、休憩しようか」

ちょこ先生がお茶を用意してくれる。

俺も甘えることにした。

「次はどこに行くのか決めてるの?」

メルちゃんがお茶を飲みながら聞いてくる。

「今のところ情報はカジノにアキちゃんがいる可能性があるって事なので1度そっちに向かおうかと思ってます」

「なるほど、アキちゃんか確かにカジノにいる確率は高いかな」

「そうね、賭け事じゃなくダンスイベントに参加してる可能性は高いと思う」

「ダンス得意なんですか?」

「アキ様?

すごく上手よ、戦う姿もまるで踊ってるようだし」

「と思わせといてパワー型になったりもするけど」

とメルちゃんの言葉にちょこ先生が苦笑する。

なんだ?

パワー型?

「じゃ、カジノに行くならうってつけの案内人が【ファンタジー】の第3の町にいるよね」とメルちゃん。

「確かに」と頷くちょこ先生。

誰だ?

「詳しくは魔界から出た時にるしあちゃんに聞くといいよ」とメルちゃんは笑った。

それからお菓子とお茶をもらって俺は【ファンタジー】に戻る事を伝え準備をする。

ちょこ先生も名残惜しそうにメルちゃんに挨拶していた。

店の前で、メルちゃんから1つの薬をもらった。

メル印のギガポーション。

どんな死にかけでもこの薬を飲めばたちまちフル回復。

メルちゃんのお店で一番効果が強い薬らしい。

蜜取りの手伝いをした報酬だという事で俺は遠慮なくいただいた。

それから俺達はメルちゃんに見送られながら魔界の町を後にする。

帰る途中にさっき薬を買った冒険者が門の方から町へ行くのとすれ違った。

すれ違い様に「あれはヤバい」とか「今度は違う場所に行こう」など聞こえたが、やはり魔界のモンスターは強いのだろう。

街道を外れず歩くとほとんどモンスターは現れなかった。

出てきてもゴブリン型の悪魔が1匹ずつ。

レベルが50に上がっている俺はちょこ先生に頼み1人で相手した。

さすがにダメージは食らわないが鬼特効の鬼切丸を使っても5回は攻撃しないと倒せない。

さすがは魔界だな。

そして、俺達は無事に門へ着いた。

ゆっくりと扉を押すと扉が開き始める。

目の前が光に包まれ晴れた先は大霊園の裏手の門の前だった。

「お疲れ様」

ちょこ先生が笑顔で言ってくれる。

「こちらこそ、いろいろありがとうございました」

「いえいえ、それじゃ、おつかれいと」

そう言ってちょこ先生は手を振りながら空へと舞い上がった。

すぐに下を向く俺。

ちょこ先生その格好でやたらに空を飛んではいけません。

しばらくして上を見るとちょこ先生は消えていた。

ふぅ、危うく大空警察の御用になるところだった。

俺はほっと胸を撫で下ろして大霊園に向かう。

「あ、お帰りなのです」

大霊園のドームの中ではるしあちゃんがガイコツとテーブルゲームをしていた。

「ただいま戻りました」

「メル先輩には会えたのです?」

「はい、無事に」

「それはよかったのです」

それから俺は次にカジノに向かう事を告げ、メルちゃん達に案内人はるしあちゃんに聞けばいいと言われた事を伝えた。

それを聞いて苦笑するるしあちゃん。

「確かに案内人は知ってますけど。

はぁ、また病気が再発しないといいんですけど」

「病気?」

「いえ、こっちの話なのです。

では、ちょっと待ってくださいね」

るしあちゃんはテーブルで紙に何かを書き始める。

「はい、この場所に行けばその人物に会えます。

あとは、案内を頼むのは自分でやってくださいね。

たぶん断らないと思いますけど」

俺はるしあちゃんから紙を受けとる。

「ありがとうございます」

「では、いってらっしゃい」

俺はるしあちゃんに頭を下げて紙に書かれている第3の町に向かった。

 

第3の町は相変わらず賑わっていた。

海のモンスターも減った事もあり、船で海に出る人達が増えたようだ。

そして、古龍島の主が帰ってきた事も広まったようでその島に挑戦する人も増えた。

あと、どこの誰かは分からないが、ホロメン船長と行く海のクルーズとか言う観光イベント(有料)が最近出来たらしく思い当たる方にちょっと話をしないといけないかなと思った。

ま、そんな事よりまずはこの紙に書かれた場所に行かないと。

町の大通りを左に曲がり、この町の住宅街にはいる。

このゲームでは各町で家を購入したり土地を手に入れて家を建てたりする事もできる。

基本町にはモンスターが襲来してこない。

イベントは別だが。

なので、1度手に入れた家は自分で取り壊さない限り永遠に残り続ける。

ただし、お一人様1つまで。

ちなみに家は建てようと思えば殆どの場所で建てる事が出来るらしい。

ただ、イベント扱いの場所。

学園内部や大霊園、ダンジョンの中などでは建てれないそうだ。

あと、町以外で家を建てた場合、最悪モンスターに壊されたり、モンスターがその場所を占拠してしまう可能性があるとの事。

もっと詳しく知りたい方はメニューにあるヒントを見てみてください。

さて、あそこかな?

住宅街の中にある綺麗な白い家が見えてきた。

るしあちゃんのメモにも白い家と書かれている。

へぇ、すごい綺麗な家だな。

小さいながら庭があり花壇には色とりどりの花が咲いている。

そして、反対側には小さいながらも畑があった。

「ん?」

そこに長い耳をピョコピョコしながらこの家の持ち主が畑仕事をしていた。

柵の外から庭の方に行ってみる。

庭には沢山のニンジンが植えられて、ちょうど収穫時期みたいだ。

家主は耳を揺らしニンジンを抜いていた。

その為、俺に気づいていないようだった。

俺はゆっくりと肩幅に足を広げて、腰を少し落とす。

両手を伸ばし口の左右に持ってきた。

そして、大きく息を吸いその名を叫ぶ。

さぁ、みなさんご一緒に!




さて、次はアキちゃんがいるというカジノへ向かいます。
果たして案内人は無事にカジノから帰る事ができるのか?
次回お楽しみに


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一攫千金への道~ぺこみこ編~

魔界で夜空メルと出会ったあなた。
次のホロメンに会う為に夜空メル達から聞いた情報を元に潤羽るしあに会う。
そして、潤羽るしあから1枚の紙をもらったあなたはその場所で懐かしい人物に出会った。


「ぺこちゃ~ん!」

「う、うわぁ、な、なにぺこか?

モンスターの襲来?

ニンジン泥棒?」

ぺこらちゃんがニンジンを構えて周りをキョロキョロする。

そして、目が合う。

「な、なにやってるぺこか!」

「いやぁ、ぺこらちゃんに挨拶する時は元気よく大きな声でしないと」

「時と場合を考えろばかぁ」

少し涙目のぺこらちゃんに怒られてしまった。

反省します。

 

「で、どうしたぺこ?」

落ち着いたぺこらちゃんが柵の向こうから聞いてくる。

「実は…」

俺はアキちゃんに会う為にカジノに行かないといけない事。

その為の案内人を聞くとぺこらちゃんを紹介してもらった事を伝える。

「はぁ?カジノ?」

やっぱり乗り気なじゃないみたいだな。

確かカジノは【ゲーマーズ】にあるし遠いものな。

そう考えながらぺこらちゃんを見るとさっきからやたらに耳がピョコピョコ動いている。

「ま、別に用はないぺこなんですけど」

と言いながら動く耳。

もしかして?

「どうしてもアキちゃんに会う為なんです。

お願いします、ぺこら様」

そう言って頭を下げる。

「しょ、しょうがないぺこね。

そこまで言われたら案内してやらないわけにはいけないぺこでしょう」

顔をあげぺこらちゃんを見る。

もう、耳で空でも飛ぶのかと言うくらいピョコピョコ動いていた。

「じゃ、少し待ってるぺこ」

そう言ってスキップで家に入っていくぺこらちゃん。

本当は行きたかったんだね。

しばらく待っていると、農作業の格好からいつもの普段着に着替えて来た。

「じゃ、行くぺこ」

「え?

どこに行くんですか?

そっちは家の裏ですが?」

「ん?

ちょっとカジノに行く前に寄るところがあるぺこ。

ほら、早く入ってくるぺこ」

ぺこらちゃんはそう言うと家の裏へと向かう。

俺は慌ててその後を追った。

ぺこらちゃんは家の裏の1本の木の前で立ってこちらを見ながら待ってくれていた。

「桜の木?」

そう、ぺこらちゃんが待っていたのは満開の桜の木の前だった。

「そうペこ」

笑顔で答えるぺこらちゃん。

「前に1度通ったことがあるぺこ」

ぺこらちゃんがそう言いながら桜の木に触ると鳥居型の門が現れた。

「カジノは【ゲーマーズ】の第3の町にあるぺこ。

第2の町から行けば近いし、そろそろ息抜きさせてあげないといけない時期だと思うし」

「息抜き?」

「あ、こちらの話ぺこ」

俺の言葉に慌ててごまかすぺこらちゃん。

誰かの事を言ってるのかな?

「さ、早く行くぺこよ」

ぺこらちゃんはゲートに飛び込む。

「ちょ、待ってください」

俺もぺこらちゃんの後を追った。

 

強い光の後、目を開ける。

そこは先程の景色と違い大神社の中だった。

後ろを振り向くとそこには桜大神社のご神木の巨大な桜がそびえ立っていた。

「いつ見てもすごい、それに何故だろうここにいるとなんか元気が出てくる」

「それはそうぺこ。

なんたってみこ先輩管轄の場所ぺこだからね」

そう言ってなぜか胸を張るぺこらちゃん。

それにしても会ってる時は喧嘩ばっかりしてる気がするけど。

「その言葉、みこちゃんに言ってあげれば喜ぶと思いますよ」

「な、そ、そんなの言えるわけねぇぺこでしょ」

俺の提案にぺこらちゃんは顔を赤くしながら、大声で反論した。

もう、照れ隠しってばれてるくらい照れてる顔してるけど。

「誰だ騒いでるのは、ここは神聖な場所だぞ!」

やば、見つかった。

「はぁ、またかぁ、いつも言ってるでしょ、毎回毎回簡単にここは使わないようにって」

懐かしい姿の人が腰に手を当てて歩いてくる。

「ちょっと用事があったんだからいいでしょ」

ぺこらちゃんも負けじと腰に手を当てて言い返す。

「用事?

ん?

あれ?」

歩いてきた人物、みこちゃんと目が合う。

「お久しぶりです」

「あ、久しぶりぃ」

みこちゃんが笑顔で向かえてくれた。

「それで、2人で何しに来たにぇ?」

「ちょっと今から用事でカジノに行くぺこなんですけど」

「にぇ!」

ぺこらちゃんの言葉に目が一瞬光るみこちゃん。

「んん、どう言った用事でカジノに?」

あれ?普通に戻った?

「なんかカジノにアキロゼ先輩を探しに行くって」

ぺこらちゃんが答えてくれる。

「はい、アキちゃんがそこにいるっていう情報を手に入れたので」

「そっかぁ」

「どうするぺこ?

前にアキロゼ先輩には借りがあるぺこ。

それをここで返す為に」

「そ、そうだにぇ、借りを返す為に」

いや、借りを返すってどういう?

「わかったにぇ。

そう、これは借りを返す為にカジノに行くのであって、決して遊びに行くわけじゃない」

「そうぺこ、これは借りを返す為の旅ぺこ。

カジノに行くのは仕方ないぺこ」

だんだん言い訳じみてきてるけど。

「と言うわけでみこも付き合ってあげるにぇ」

「あ、はい、ありがとうございます」

こんな時はめちゃくちゃ息ぴったりだなぁ。

「それじゃ、急ぐぺこ。

出るのがバレたらまた怒られるぺこ」

「分かった、秒で準備してくるから待ってるにぇ」

と言うとすごいスピードで部屋の方に走っていくみこちゃん。

そして、すぐさま戻ってきた。

あ、私服姿始めてみた。

「さぁ、レッツゴー」

「いくぞ~」

ノリノリの2人は大桜のゲートに飛び込む。

「ちょっと待ってください」

なんかさっきもこんなことしたなぁ。

そう思いながら俺もゲートをくぐった。

 

「ここが【ゲーマーズ】の第3の町?」

町の片隅にある満開の桜の前に俺達は立っていた。

目の前には色とりどりの装飾に飾られた町。

確か、まだ昼前だというのに暗い。

「この町は夜しかないぺこ」

「夜だけの町?」

後ろを振り向くと少し進めば日が照っている。

本当にこの町周辺だけが何かに覆われているようだ。

「ほら、見える?

あの町の中心のきらびやかな建物がこの町の最大の見所、大カジノだよ」

みこちゃんが指差した先を見る。

確かにそこだけ昼ぐらいに明るい装飾が付いていた。

「まずはそこに行こう」

みこちゃんの言葉に俺達は大カジノに向かった。

第3の町は今までの【ゲーマーズ】の町と違い洋風な建物が多かった。

飲食店や装飾品や服屋が多く並んでいた。

「あまり、武器とか防具のお店はないんですね」

「そうだにぇ、この町ではお金が全てなところがあるからにぇ」

俺の言葉にみこちゃんはそう答えた。

「お金ですか?」

「そうぺこ。

この町ではお金を出して傭兵を雇ったりできるぺこ。

パーティーと違ってお金を出せば何人でも雇える。

それで、イベント扱いのキャラになるから戦闘になるとどこからともなく傭兵がわらわら現れるぺこ」

そりゃ、怖いわ。

「ただし、この町の中限定だけどにぇ」

「ほら、見えてきたぺこ」

ぺこらちゃんの言うように俺達は大カジノの前に来た。

入り口には黒ずくめの大男が左右に立っている。

ぺこらちゃんとみこちゃんはそのまま中に入っていく。

俺はというとその大男がいきなり襲ってこないか警戒しながら中に入った。

まずは玄関ホール。

かなりの広さがあった。

外から見たより広いんじゃないか?

人も沢山行き来している。

「中は特別なエリアになってるから思ったより広いでしょ」と言いながらみこちゃんは笑う。

「それより、入り口から入る時びくびくしすぎぺこ」

う、ばれてる。

「基本あの黒服はこっちが何かヤバい事しようとしない限り何もしてこないぺこよ」

そうなのか。

「ま、負けまくって暴れたりするとあの黒服が出てきて、追い出されるぺこだけどね」

ぺこらちゃんの言葉に2人は一緒にどこか遠くを見た。

2人とも経験済みなんですね。

「ま、それはそうとまずはメインルームに行くぺこ」

俺達はまっすぐ進み、巨大な扉の前に来る。

その横には換金カウンターがあった。

「入る前に最低でもコインを1枚持ってないといけないの」

そう言いながらみこちゃんはカウンターに向かう。

俺も続く。

「いらっしゃいませ。

コイン何枚ご入り用ですか?」

バニー服の受付嬢が聞いてくる。

「えっとここは初めてなんですが、コイン1枚いくらなんですか?」

「ワンコイン50Gになります」

案外高いな。

「ちなみにレートは安いところもあるよ。

ここはこの町で一番のカジノだからね。

それなりに高い。

けど、カジノ内でのイベントも多いからアキちゃんがここにいる確率も高いってわけ」

う、そう言われたら。

「ちなみに1枚交換なんて寂しい事言わないぺこだよね?」

う。

「わ、分かりました。

500枚交換で」

『おお~』

2人から驚きと称賛の声が漏れる。

これでも案外色々と稼いでますからね。

俺はバニーなお姉さんにお金を渡す。

「分かりました。

それではこちらがコインとなります」

俺は500枚のコインを受け取った。

「ちなみにお2人はコイン変えないんですか?」

『え?』

俺の言葉に2人ともきょとん。

「個人で来る時は変えないと入れないけど今はねぇ」

「そうぺこ、今はキミの連れという事で来てるから変えなくても入れるぺこ」

こんな時は仲良いなぁ、もう。

『と言うわけで』

2人は俺に手を出してくる。

はぁ、それも狙いかぁ。

俺は少し呆れたが、手を出してくる姿が可愛くて負けてしまった。

200枚ずつ渡す。

「え?こんなに?」

「無駄使いしないでくださいよ」

「わ、分かったぺこ」

嬉しそうな2人と改めて扉の前に立つ。

さぁ、ここからが本番だ。

アキちゃんがここにいれば良いんだけど。

俺は目がキラキラした2人と共に扉をくぐった。




次回はカジノで大勝負?の予定です。

お気に入りや評価や感想、いつも読んでくださっている方ありがとうございます。
自己満足で書いていってますが、みなさんも楽しんでもらえたら嬉しいです。
それでは次回もお楽しみに


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一攫千金への道~アキロゼ編~

兎田ぺこらに次の目的地【ゲーマーズ】のカジノへの案内をしてもらえる事になったあなた。
その前に兎田ぺこらは桜大神社に寄り、さくらみこを誘った。
言葉にはしなかったが、世界の調整をしているさくらみこに少しは休憩をいれて欲しいと願う兎田ぺこらの思いだろう(個人的見解です)
そして、あなたは兎田ぺこらとさくらみこと共に【ゲーマーズ】にある大カジノに着いたのだった。


「さて、これからどうしますか?」

中に入るとちょうどホール全体を見渡せる場所に出た。

ホールもまたかなりの広さがある。

中ではスロットやカード、ルーレットなど様々なゲームが行われていた。

人も本当に多い。

「そうぺこね。

アキロゼ先輩がいそうなのは、あの真ん中の舞台があるところが一番だと思うぺこ」

ぺこらちゃんが指差したところには、全方位から見える円形のステージがあった。

そこには何人もの踊り子達が踊っており、その周りには観客も沢山いる。

「あそこは少し休憩がてらにドリンクを飲んだりする場所にぇ。

ま、ここは広いから手分けして探すのがいいと思う」

確かにこれだけ広いとどこにいるか分からないし、実際にアキちゃんがいるのかも怪しい。

「それじゃ、俺はいろいろと聞き込みをしてみます」

「ちょっと待つぺこ」

そう言って行こうとするとぺこらちゃんに止められる。

「行くのはいいけど、その前に合流場所やここの説明を軽く言っとくぺこ」

そして、俺はぺこらちゃんとみこちゃんにここの説明を受けた。

まずコインだが、スロットをする場合はワンコインで25回回せるそうだ。

そして、途中で止めた場合はカードが出てくるのでそれに半端な回数が記録されてるらしい。

機械でやるゲームは殆どがそれになるらしい。

カードやルーレットなどの対人でやる場合はそのままコインで賭ける。

最終的にコインはアイテムに変えるか、お金に変えるかできるが、半端なのは回復アイテムに変えてくれるという事だった。

あと、カジノ内ではお金が一切使えずコインで支払う事になるので注意するように言われた。

あまりコインを飲食で使っていると負けた人間に目をつけられてトラブルになる事もあるという事だ。

「じゃ、合流はだいたい2時間後にあのセンターステージの周りにある椅子で」

「いいぺこ。

ま、勝ち続けてたら時間過ぎるかもだけど、その時は何か飲み物を頼んでゆっくり待っていればいいぺこ」

「もらったコイン倍にして返してやるにぇ」

「期待してます」

そう言って俺達はそれぞれで情報を探す。

って言うかあの2人きちんとアキちゃんの情報探してくれるのか?

かけの事しか言ってなかったような。

ま、いいか。

2人とも賭け事強そうだし。

この前一緒に船に乗った時に第三世代組の魔眼について聞いた事がある。

確かぺこらちゃんは幸運眼っていう力を持ってる。

みこちゃんはこの世界の巫女やってるし運はいいはず。

ま、負けては帰ってこないだろう。

たぶん。

そんな事を考えながらまず俺はドリンクを売っているカウンターに向かった。

「いらっしゃい」

気の良さそうなバーテンダーがシェイカーを振りながら挨拶してくれる。

俺はカウンターに置かれているメニューを見る。

さて、何にするか。

ん?

「すいません、これを」

俺はメニューのある部分を指差して注文する。

「オッケーちょっと待っててくれ」

バーテンダーは先に注文していたお客のドリンクを出した後、俺の注文した物を出してくれた。

俺はグラスを持ち、中の液体を見る。

相変わらず素晴らしく透き通っている。

一口飲む。

口当たりもよくすっと喉を通る感じはやはり変わらない。

「へぇ、お客さん飲み慣れてる感じだね」

「ま、故郷にいる時からの愛飲水だからね」

俺はもう一度メニューを見た。

そこの一番下に書かれているのはラミィ水だった。

行く先々でメニューにあるんだが、もしかしてねねちゃんに先回りされてるのか?

「それはそうと聞きたい事があるんだが」

俺は捜し人についてバーテンダーに聞いてみる。

「ああ、その人なら…」

いくつかの情報をバーテンダーからもらった。

数日前に行われたダンス大会にアキちゃんが参加していた事。

昨日、カジノにいるのを目撃したとの事だ。

まだ、ここにいる可能性はあるかもな。

それから俺はホールをドリンクを持って歩いているバニーさんに話を聞いてみる。

別にバニーさんと直接話したかったから訳じゃない。

ホールをあちらこちら歩いているバニーさんなら何か知っているかと思っただけだ。

下心は…ないかな。

何人かのバニーさんに話を聞いた。

そして、俺は胸をなで下ろす事が出来た。

バニーの1人がついさっき歩いてるところを見たとの事だった。

NPCだから、イベントキャラも見えるみたいだ。

俺はバニーさんが見たと言っていた、モンスターバトルの場所に来た。

ここはモンスターを複数闘技場で戦わせて勝ち残ったモンスターを当てるゲームだ。

このゲームはこの大カジノでしかやってないらしく、人も他の場所より多く集まってる。

見た感じいなさそうだな。

ま、ここも人数多いから全部は確認できそうにないけどな。

さて、今日ここにいるって事だから一度2人と合流して情報共有しとこうか。

時間を確認する。

まだ少し合流時間には早いな。

俺はセンターホールに向かう。

途中、ドリンクカウンターに寄りラミィ水で作られたカクテルを頼んだ。

綺麗な青色のブルーハワイ。

ラミィちゃんを思い出すなぁ。

さて、どこに座るかな?

俺がホールの周りを席を捜しながら歩いていると、見つけてしまった。

ある1ヶ所だけなぜか暗雲が立ち込めてる場所が。

「何やってるんですか?」

俺はお通夜のように暗い2人に声をかける。

2人仲良く寄り添って座ってうつむいていた。

俺の言葉にゆっくりと顔をあげる2人。

すっごく悲しい顔してるなぁ。

「やってしまったぺこ」

「にぇ…」

「はぁ」

俺もソファに座る。

「それで成果はどうでした?」

ぺこらちゃんはゆっくりと残りコインを机に置く。

10枚前後か。

「スロットしてたんぺこなんだけど、なかなか当たらなくてようやく当たって半分は取り戻したから、このまま波に乗って取り戻そうとしてたら、出たやつ全部入れちゃって」

「あちゃ」

これは典型的だな。

その後予想通り追加して当たって追加して当たってを繰り返し、気づいたらこれだけになったそうだ。

「みこちゃんは?」

「みこは初めは勝ってたんだけど」

まぁまぁ勝ったみこちゃんは一旦止めてここに来たそうだ。

しかし、まだ時間が早かったらしく、みんなを待つ為にルーレットに行ったらしい。

少し負けてまたここに来た時にまだ誰もいなかった。

じゃぁ、次はカードにとなって。

典型的な友達と来た時のあるあるだなぁ。

で、負けてしまって20枚程。

それで、2人してここで落ちこんでいたらしい。

「確かぺこらちゃんって幸運眼って魔眼持ちなんじゃ」

「ここのエリア内では運を左右するスキルやアイテムを使うとペナルティが発動するぺこ。

普段はステータスの運は0から100まで1日1日で変動するぺこだけど、ここでスキルやアイテムを使うとその上限が50になるぺこ。

ちなみに幸運眼を使うと運が999になるぺこ」

999ってどれだけ。

なるほど、それで使わなかったのか。

「ちなみにお2人の運は数値でいうといくらぐらいですか?」

「43」

「51」

微妙。

俺は自分のステータスを確認してみる。

運は65だいたい平均かな?

「ま、仕方ないですよ。

それで、アキちゃんの居場所の情報とか手に入りましたか?」

俺の言葉に2人は塞ぎこみながらステージを指差した。

俺は指差した方を見る。

そこにはこちらに手を振る金髪のツインテールのスタイル抜群な女性とその横でノリノリで踊るねねちゃんがいた。

ああ、そっか俺達の運はここで使われていたんだな。

 

「2人とも久しぶりだね。

どうしてここに?」

ダンスが終わって、魅惑の金髪女性とねねちゃんが席に来る。

「あ、冒険者さん久しぶり」

ねねちゃんが笑顔で挨拶してくれた。

俺も会釈して返す。

「アキロゼ先輩にいつかの借りを返そうとしてたぺこ」

「だにぇ」

「で、また負けちゃったかぁ」

2人を優しい笑顔で見るこの女性がアキちゃん。

「冒険者さんは始めましてだね。

アキロゼことアキローゼンタールです!

よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」

《スキル【運命】が発動しました》

「それで、君はどうしてここに?」

「はい、実は…」

俺は使命を隠しホロメンと出会う旅をしていると伝えた。

「なるほどね、すごいね。

私達に出会う旅ってなかなかハードなんじゃない?」

「ま、胸元のアイテムで案外スムーズに会えてるにぇ」

みこちゃんが俺の胸元を指差した言った。

「え?

あ、へぇ。

それを持ってるんだ。

なら、確かに。

それで、後は誰なの?」

「後は…」

俺はステータスの推し画面を出す。

表示されてるアイコンで第六世代をのけると後はAZKiちゃんだけだった。

「それはすごいね」

「AZKiちゃんの居場所はロボ子さんが探してくれるって言ってたので今は連絡待ちです」

「じゃ、これからどうすんの?」

注文したドリンクを飲みながらねねちゃんが聞いてくる。

「今のところは予定なしですね」

「そうなんだ。

どう?

せっかくだしカジノで遊んでいったら」とアキちゃん。

手元には3人合わせて110枚ほど。

「後、景品も確認してみていいのがあったらそれ狙うとか」

確かに、それは一理ある。

俺は景品を確認する。

うわぁ、かなり強そうな名前の武具がある。

ステータスも詳細に確認できて調べたらかなり良い。

「ちなみにここにある商品はここ限定ぺこ」

「ん?」

そんな中、俺は気になるアイテムを見つける。

「これって何ですか?」

テーブルに置いた景品一覧の1つを指差す。

『ん?』

それを4人が覗き込んだ。

「ああ、それは【ゲーマーズ】にある裏世界への切符にぇ」

「それを持ってあやめちゃんに勝つと行けるんですよ」

「ええ、ねね行ってみたい」

「ま、勝つ方が難しいぺこだけどね」

「そうなんですね」

アイテム名「鬼岩城への切符」

俺は魔界に行ってるのでこの鬼岩城にも興味があった。

俺が愛用している鬼切丸を落としたモンスターもここのモンスターだということだったし。

「何か気になるのがあった?」

アキちゃんが笑顔で聞いてくる。

「はい、俺はこれを」

指差したのはコイン5000枚でもらえる鬼岩城への切符。

「それじゃ、今あるコイン増やしましょうか」

すくっと立ち上がるアキちゃん。

「何か勝算があるんですか?」

俺達の見上げる先で、アキちゃんは天使のように微笑んだ。




アキロゼちゃんの登場です。
果たしてアキロゼちゃんに勝機はあるのか?
負けた2人のリベンジなるか?
ねねちゃんはこのままちょい役で終わるのか?
次回をお楽しみに


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白熱のモンスターバトルトーナメント

大カジノにアキ・ローゼンタールを探しに来たあなた達は無事?にアキ・ローゼンタールと出会う事ができた。
何故か一緒にいた桃鈴ねねも加わり5人は次の目的までカジノで時間を潰す事になる。
そこであなたは景品にある裏世界への切符を見つけ手に入れようと提案する。
そして、あなた達はアキ・ローゼンタールに連れられてある場所へと向かった。


「ここが私達に勝利をもたらす場所よ」

アキちゃんに連れられて来たのはモンスターバトルの場所だった。

「ここが…」

観客は満員で闘技場ではモンスター達が戦いが繰り広げていた。

「なるほどにぇ」

「そういう事ぺこか」

うんうん頷く2人。

「うんうん」

ジュースを飲みながら分かっているのかよく分からないねねちゃんも頷いていた。

「えっとここで何を?」

俺もよく分かってなくアキちゃんに聞く。

「ここはね、ある時間帯だけ特別な大会があるの」

そう言いながらアキちゃんはチケット売場のカウンターの方に歩く。

その近くの椅子に俺達は座った。

「さっきの続きだけどね…」

アキちゃんはこれからの事を話してくれた。

その内容は。

ここのモンスターバトルではある時間帯だけ、プレイヤー以外のNPCを出場させてトーナメントをするそうだ。

そして、それに優勝するとかなりの賞金が手に入る。

「だだし、出場登録するにはかなりのリスクがあるの」

出場する際に担保してレア級のアイテムを出さないといけないらしい。

そしてもし負けた場合、そのアイテムは没収されてしまう。

「だから、かなり自信がある人が登録してるの。

で、今回はそのトーナメントに出場するわ」

「ええ、誰が戦うんですか?」

確かに俺の周りにはチートキャラと言われるホロメンの人達がいるけど、みこちゃんは巫女だし、ぺこらちゃんも前衛で戦う感じはしない。

ねねちゃんの力は未知数だけど。

「私が出るわよ」とアキちゃん。

「ええ、アキちゃんですか?」

見た目はかなり華奢な感じがするけど。

「ま、そうなるぺこですよね」

「ま、アキちゃんが出るなら安心にぇ」

ええ、そこまでの自信が?

「面白そう、ねねも出る」

ええ?

「ねねちゃんも出る?

だったらレアアイテム2つ用意しないといけないけど」と、俺を見るアキちゃん。

「ダメかなぁ~?」とねねちゃんもちょっと拗ねたような感じで見てくる。

えっと、アイテム欄を見てレアアイテムとなると。

「これっていけますか?」

机の上に1通り目ぼしいアイテムを出してみた。

「そうね、それは近未来都市で買ったアイテムよね?

じゃ、レアはレアだけどダメかな。

今は通販もしてるから」

「ん?

これってもしかして?」

ぺこらちゃんがあるアイテムを手に取る。

「これならいけるんじゃないぺこか?」

手に取ったのは魔界でメルちゃんからもらったメル印のギガポーション。

「それいけるんですか?」

「うん、いけるにぇ。

メルちゃんのポーションは魔界に行かないと手に入らないから、こちらではレアだよ。

それにこれどんな状態からも回復できるギガポーションだしこれなら激レア」

「なら、1つはこれでもう1つは」

俺は机のアイテムを片付けた後、あるアイテムを机の上に置く。

「これ?いいの?」

アキちゃんはそれを見て俺に聞く。

「はい、これを賭けるだけの価値がある人達なので」

俺の言葉に4人は笑顔で頷いた。

「登録してきたよ」

アキちゃんがカウンターから戻ってくる。

俺がアキちゃんに渡したアイテムは2つ。

ギガポーションと鬼切丸。

負ければ失くなるけど、俺はアキちゃん達を信じている。

「ちなみに2人のうち1人でも優勝出来ればアイテム2つとも戻ってくるからね」とアキちゃん。

「はい、2人とも信じてます」

アキちゃんとねねちゃんが頷く。

「それじゃ、私達は控え室に行くから、3人は観客席で応援して」

「はい」

「分かったぺこ」

「頑張るにぇ」

「まっかせて」

俺達の応援に2人は笑顔で手を振りながら控え室に向かった。

「じゃ、みこ達も行くにぇ」

「はい」

俺達は観客席に向かった。

 

「始まるぺこ」

アナウンスが入りトーナメントが始まる。

トーナメント表が闘技場上に写し出された。

「えっと?

2人の名前ないんですけど」

アキちゃんとねねちゃんの名前がない。

「あるにぇ」

指差すみこちゃん。

その先にはマスクドアキとマスクザネネの文字が。

「えっと…」

「さすがにホロメンがそのまま出てるとなると賭け事もおかしくなるぺこだから偽名を使ってる」

「ちなみにこのエリアではみこ達はキミ以外からは普通のNPCに見えてるにぇ」

な、なるほど。

「さぁ、1回戦から始まるぺこ」

17人が出場で1人シードか。

アキちゃんは4回戦、ねねちゃんは5回戦。

試合は滞りなく進む。

いろんなNPCが出てる。

中には完全にモンスターが混ざってるし。

モンスターマスターと呼ばれる職業がモンスターを使役して仲間にしているらしい。

ま、確かにNPCだけど。

『さぁ、次はトーナメントに咲いた花、謎の美女マスクドアキ~』とアナウンスが入る

おお~

観客がわく。

プロレスラーのようなレオタードを着て赤いマスクを付けたアキちゃんが手を振りながら出てきた。

「人気ですね」

「ま、あのプロポーションでレオタード着て謎の美女なんて言われたら萌えないわけにはいかないにぇ」

「さすがアキロゼ先輩ぺこ」

『対するはトーナメント1の力持ち、クリスタルゴーレム』

おお~

ってアキちゃんの2倍ぐらいあるゴーレムが出てきたんですが、それも手と肩に機関銃が装備されてるんですが?

「なるほどにぇ、超硬度を持つけど動きが遅いゴーレムに機関銃を装備させて欠点をなくしてるわけ」

「いいんですか?

武器装備してますけど」

「ま、広範囲殲滅兵器以外なら何でもありぺこだからね」

「いや、でも」

『では、試合開始!』

アナウンスと同時にゴーレムの機関銃がアキちゃんのいた場所に掃射された。

無数の弾丸が地面に当たり煙が巻き上がる。

「アキちゃん」

「ははははは~」

観客席の反対で笑う小太りな男。

「なんだあいつ」

「あれがこのゴーレムを出場させてるやつぺこね」

「この町1番の金持ちでこのトーナメントの出場しているNPCの半分以上があいつが出してるにぇ」

「くそう、アキちゃん」

俺は拳を握りしめる。

「ま、今回はアキロゼ先輩達が出たのが運の尽きだけど」とぺこらちゃんが言った。

「え?」

「いけ~マスクドアキ!」

みこちゃんの声が響く。

その声と同時に砂煙から人影が現れる。

アキちゃんだ。

あの攻撃の中で1発も当たっていない。

「なんだと!」

驚く小太り。

そして、アキちゃんはゴーレムとの間合いを詰めて、メリケンサックを装備した右拳をゴーレムに打ち込んだ。

そして、ゆっくりと離れるアキちゃん。

「さ、次ぺこね」

「え?」

状況が分からない俺。

ピシ。

小さいけど何か聞こえた。

ピシピシ。

その音はだんだん大きくなる。

そして、バコンと大きな音の後、超硬度のはずのゴーレムが割れ闘技場に散らばった。

『な、なんだとう、一撃、一撃で決めたマスクドアキ。

勝者はマスクドアキだ~』

おお~

大歓声。

悔しがる小太り。

よっしゃぁ~

「ま、あの程度ならアキロゼ先輩の敵じゃないぺこ」

「す、すごすぎる」

俺は嬉しさで興奮を隠せなかった。

「次はねねちの番にぇ」

『さぁ、次も美しい花の登場だ。

こちらも謎の美少女マスクザネネ!』

おお~

「ありがとう、ありがとう!」

同じようなコスチュームで声援に答えめちゃくちゃ手を振ってるねねちゃん。

『対するは音速の暗殺者スペード』

おお~

「へぇ、スペードかぁ。

なかなかやるねあの小太り」

「また、あいつの雇った相手ですか?」

「そうぺこね」

「それに暗殺者って」

現れた黒ずくめの忍者みたいなNPC。

刀を構えている。

「また、武器かい」

『では、始め!』

アナウンスの後、暗殺者の姿が消える。

「早い!」

ホロメンの戦いで目は慣れてる筈だけど、暗殺者の姿を確実に見れない。

「ねねちゃんは?」

そうして見たねねちゃんはゆらりゆらりと揺れていた。

「やるにぇ」

みこちゃんが笑う。

「え?どういう事ですか?」

「暗殺者の攻撃を全部紙一重で避けてるぺこ。

それも最小限の動きだけで」

ぺこらちゃんが解説してくれる。

「まじですか」

どれだけ規格外なんだホロメンの人って。

そして、バキッっと音がしてねねちゃんの蹴りがスペードを捉え吹き飛ばした。

そして、動かなくなるスペード。

『またも一撃、なんだ今回のトーナメントに出てくる美女達は。

勝者マスクザネネ!』

おお~

またも悔しがる小太り。

よし、ざまぁみろ。

なんとなくいい気持ち。

「いい感じですね」

「うんうん」

「ま、予想通りだにぇ」

そう言って手元の札を見てニヤリと笑うみこちゃん。

「賭けてたんですね」

「当たり前!

勝てる勝負を捨てるなんてできないにぇ。

さぁ、換金に行くぞ~」

そして、俺達は換金所に走ったのだった。

 

その後もトーナメントは順調に進んだ。

アキちゃんもねねちゃんも勝ち進んでいる。

ただ、1つの懸念はシードの選手、前回の優勝者を破った人物だ。

そいつもあの小太りが雇った相手みたいだけど、換金して食べ物と飲み物を買ってる間に戦いは終わっていた。

途中アキちゃんやねねちゃんと会って食事を一緒にした。

2人ともまだまだいけそうで元気で安心した。

そして、一足先に決勝戦の切符を手に入れるアキちゃん。

次の準決勝でねねちゃんが勝てばもう勝利は目の前だ。

そして、運命の準決勝が始まる。

『ここまで無傷、一撃で決めてきた今回の期待の美少女マスクザネネの登場だ!』

わぁぁぁ~

歓声も初めとは違いめちゃくちゃ大きい。

『そして、対するは前回の優勝者をこちらも一撃で倒したダークホース。

スモールプリンセスマモリ~!』

わぁぁぁ~

スモールプリンセス?

マモリ?

どっかで聞いた名前のような。

「出てきたぺこ」

「ここまで何故かタイミング悪く見れなかった選手にぇ」

そして、出てきた人物を見て俺は驚いた。

そこにはあの小姫マモリがいたのだ。

あのドミノマスク見覚えがある。

こちらを見るマモリ。

そしてにやりと笑った気がした。

「やばい」

俺は観客席を立ち前に向かう。

「ど、どうしたぺこ」

ぺこらちゃん達も追いかけてくる。

「あいつはやばい。

俺の前に度々現れ悪事を企むやつの1人でホロメンを名乗ってるんです」

「ホロメン?」

みこちゃんがマモリを見る。

「見た事ないけど」

「はい、他の人も言ってました。

でも、実力はチート級なんです」

『では、試合開始!』

アナウンスが流れる。

「ねねちゃん、気を付けて!」

俺の言葉にねねちゃんが手を上げる。

そして、ぶつかり合う2人。

マモリの正拳突きをクロスにした腕で防御するねねちゃん。

この大会で初めて攻撃を受け止めた?

「早いにぇ」

「チート級って言うのは案外嘘じゃないぺこね」

2人も少し焦った顔になる。

「あれはやばいわね」

「え?」

いつの間にか隣にマスクドアキが。

「さっきの攻撃受けたのはやばかったかも」

アキちゃんの言葉に俺はねねちゃんを見る。

何故かねねちゃんの動きが悪くなった気がする。

「やばいかも」

みこちゃんも呟く。

「な、何が?」

俺は何があったのか分からない。

ただ、ねねちゃんが今まで紙一重で避けてたのに防戦一方になっている。

そして、マモリの強力な一撃がねねちゃんを捉え壁に吹き飛ばされる。

「ねねちゃん!」

ドカ!と俺が見ている場所の壁にぶつかるねねちゃん。

「大丈夫、ねねちゃん」

「はは、油断しちゃった」

俺の言葉にねねちゃんは弱々しく立ち上がる。

「あいつは特別な力を使ってる。

ねねちゃんもホロメンの特殊スキル使って!」

「はは、ねねはまだ使えないんだ。

ねね達まだ揃ってないから」

「え?」

「危ない!」

アキちゃんに後ろから引っ張られる。

その瞬間ねねちゃんがいた場所が爆発する。

マモリが突撃してきたのだ。

「がは!」

ねねちゃんが吹き飛ばされる。

「これ以上は」

吹き飛ぶねねちゃんを見て俺は手元のスイッチを見る。

これを押せば試合を棄権する事になる。

俺はみこちゃん達を見た。

無言で頷いている。

そして、俺はスイッチを押した。

『おっとマスクザネネが棄権だ!

勝者スモールプリンセスマモリ!』

おお~

声援がする。

しかし、俺はねねちゃんの方が心配だ。

俺達は急いで、ねねちゃんが運ばれた医務室に向かう。

ねねちゃん。

今行くから、待っててくれ!




白熱するトーナメント。
果たしてねねちゃんは無事なのか?
第X世代のマモリの待つトーナメントで優勝できるのか?
次回波乱のトーナメント決勝戦をお楽しみに


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第一世代の実力

コイン獲得の為に出場した大会で、第X世代の小姫マモリが現れた。
対戦した桃鈴ねねは今までの絶好調状態から突如不調に変わり負けてしまう。
果たして決勝戦で当たるアキ・ローゼンタールは小姫マモリに勝てるのだろうか?


俺達は医務室に着いた。

中ではベッドに寝かされたねねちゃんが苦しそうにしていた。

ドクターと看護師が会釈をして部屋を出ていく。

医務室には俺達だけだ。

アキちゃんがゆっくりとねねちゃんのマスクを外す。

苦しそうだ、本当に大丈夫なのか?

「初めの一撃で毒を食らったみたいね」

アキちゃんがねねちゃんを見ながら言った。

「え?でも、さっきのドクターは何も言ってませんでしたよ」

「分からないほど特殊な毒なのよ。

今の私達でも治せない」

「だったら、どうすれば」

「1つ方法はあるわ。

キミのギガポーションを使えば治るはず」

確かにあれはどんな状態からも完全回復するって言ってた。

「だったらすぐにでも」

「だめぺこ、あれは今担保に入ってるぺこ。

使えない」

「くそう」

俺はねねちゃんを見た、顔が青ざめている。

「みこちゃんお願いがあるの」

アキちゃんがみこちゃんを見ながら言う。

「分かってる、任せるにぇ」

頷くみこちゃん。

「ぺこらちゃんは冒険者さんをお願い」

「わかったぺこ、アキロゼ先輩」

力強く頷くぺこらちゃん。

「俺は…」

アキちゃんを見ながら俺は言った。

アキちゃんはその言葉に笑顔で「私の勝利を信じてて」と言った。

「もちろんだよ」

「それじゃ、行きましょう。

ねねちを助ける為に。

そして、私達の勝利の為に」

『お~』

 

俺は今ぺこらちゃんと2人で観客席に座っていた。

みこちゃんは医務室で歌っている。

オリジナル世代が持つ特殊スキルは歌らしく、歌に力を持たせる事ができるらしい。

それで、ねねちゃんの体力を徐々に回復しているそうだ。

ただ、回復と同時に毒で体力を削られている為、時間稼ぎにしかならないみたいだ。

「アキちゃん大丈夫ですかね」

隣に座るぺこらちゃんに聞く。

「信じて欲しいって言われたぺこでしょ」

優しくぺこらちゃんは答えてくれた。

「はい。

それとみこちゃん達は大丈夫ですか?

もしかしたら、あの小太りの仲間が襲ってくるかも」

「それは大丈夫ぺこ。

歌っている間はみこ先輩の周りには結界のようなものが発生するから、みこ先輩が許可したもの以外入れないぺこ」

そっか、なら大丈夫だな。

「それにキミを1人にする方が危ないぺこでしょ」

「え?」

「アキ先輩があのマモリに勝ち始めたら、次はキミの持つ棄権するスイッチを狙って小太りの仲間が襲ってくるぺこ」

「あ、確かにありうる」

「今まではあのマモリという切り札があったから手を出さなかったけど、その切り札がやられ始めたら」

「そうですよね」

「今、キミは武器もない無防備だし」

そっか、それを考えてアキちゃんはぺこらちゃんに俺の側にいるように言ってくれたのか。

「ありがとうございます」

「当たり前ぺこ、仲間なんだから」

そう言って笑うぺこらちゃん。

そう言ってもらえると嬉しい。

頑張ってねねちゃん、みこちゃん。

必ずアキちゃんが優勝してくれるから。

『では、決勝戦を始めます。

ここまでほとんど圧勝で勝ってきた期待の新人。

スモールプリンセスマモリ!』

わぁぁぁ~

今までにない大歓声で闘技場に現れるマモリ。

その後ろ側の席で小太りはにやにやしていた。

あのプレイヤー覚えてろよ!

『続きまして、こちらも新人ながら、ここまで無傷一撃で勝負を決めてきた謎の美女マスクドアキ!』

わぁぁぁ~

こちらも負けないくらい大きな声援だ。

そして、アキちゃんも入場してきた。

手にはメリケンサックをつけていない?

「アキロゼ先輩本気ぺこね」

「え?」

「あのメリケンサックは実は威力を押さえる効果のある装備ぺこ。

それを外してるって事は相当怒ってるぺこよ。

アキロゼ先輩」

アキちゃん。

『いよいよ最終戦!

泣いても笑ってもこれで決着だ!

それでは決勝戦始め!』

そして、波乱の決勝戦が幕を上げた。

 

開始の合図と共に2人は勢いよく激突、打ち合いを始める。

あまりの速さに2人の腕は消えて見えない。

ただ、ダダダダダという音だけが聞こえる。

「早い!でも、相手に触ったら毒が…」

「それは大丈夫ぺこ、アキロゼ先輩はその対策をしてる」

 

「へぇ、見かけによらず肉体派なんですね」

「そう?これでも鍛えてるんだけど?」

マモリは攻撃しながらアキロゼに話しかけていた。

「でも、いいんですか?

そんな素手で私の攻撃を受けてたらさっきの先輩みたいに動けなくなりますよ」

そう言ってマモリは笑う。

「ご心配なく、これでも対策はしてるから」

そう言って受け手にまわっていたアキロゼは、マモリに一撃を入れた。

「く」

距離を取るマモリ。

「な、なんで効かない」

 

「対策って?」

俺はぺこらちゃんに聞いた。

「アキロゼ先輩は気を使うのが上手いペコ。

だから、自身の気を使って薄く身体中を覆ってるぺこ。

だから、攻撃を受けているように見えて実際には体に当たってないぺこ」

「あ、一撃入った!」

マモリが大きく距離をとった。

「本当だ、アキちゃんまったく毒が効いてない」

「でも、相手はまだ諦めてないぺこね」

ぺこらちゃんのいう通りまだまだマモリは笑ったままだ。

 

「ふぅ。それじゃ少し本気で行きますね、先輩」

そう言ったマモリの腕がみるみるうちに筋肉が膨れ上がり大きくなる。

上半身もそれに合わせて大きくなっていく。

下半身はそのままでまるで逆三角形の形だ。

「さぁ、私の一撃受けれますか」

マモリは笑いアキロゼに向かい突進する。

大きくなった手で地面を押しさっきより速くなっていた。

そして、その大きな拳がアキロゼを捉えた。

 

ドカァ!

凄まじい音が鳴りアキちゃんにマモリの拳が当たる。

その威力で砂ぼこりが舞い上がる。

「アキちゃん!」

俺は思わず声をあげた。

ゆっくりと砂ぼこりが晴れそこにはアキちゃんの姿がって、なんかムキムキなんですが?

「えっと、ぺこらちゃん。

なんかアキちゃんがムキムキになってますが」

そう、そこには筋肉ムキムキになったアキちゃんがいた。

顔はそのままで体全体だけムキムキって。

「ん?

あ、そう見えてるぺこな」

「え?」

「あれは自身の気を纏ってる姿ぺこ。

たぶん気が濃縮され体全体を覆ってるから筋肉ムキムキの姿に見えてるぺこ」

「そうなんですか?」

 

「な、なんなんですかそれは」

驚きの声をあげるマモリ。

「別に少し力を使っただけですよ?」

マモリはアキロゼに捕まれた手を動かそうとするがピクリとも動かない。

「よっと」

アキロゼはそのままマモリを片手で持ち上げる。

そして、壁に向かって投げつけた。

「く」

何とか空中で体勢を立て直すマモリ。

そこに普段の姿に戻ったアキロゼが間合いを詰めてくる。

そして、振り上げた拳を突き出した。

その時、アキロゼの腕は巨大化し強力な一撃をマモリに与えた。

壁にめり込むマモリ。

そして、間合いをとり構えるアキロゼ。

「く、まさかここまでとは」

壁から出てきたマモリの息は荒い。

「むやみやたらに肥大化させても仕方ないですよ」

そう言ってアキロゼは素早く間合いを詰め、連続攻撃を叩き込んだ

 

「すごい、優勢だ」

「当たり前ぺこ、アキロゼ先輩を怒らせたら怖いぺこよ」

しかし、見た目はすごいなぁ。

ムキムキなアキちゃんがマモリにすごい乱打を打ち込んでる。

「さて、じゃ、こっちもやらないといけないぺこね」

「え?」

ぺこらちゃんがニンジンを一本取り出した。

「何に使うんですか?」

「今、囲まれてるぺこ」

「な」

「ほら、あまりキョロキョロしないぺこ。

向こうが劣勢になったからスイッチ狙いに変えてきたみたいぺこね」

「でも、それは反則にならないんですか?」

「向こうはNPCを使ってるし言い逃れをしようと思えばいくらでもできるぺこ。

なので」

ぺこらちゃんはおもむろにニンジンを頭上に投げる。

するとニンジンが爆発した。

煙がその場に充満する。

「な、なんだ?」

「ど、どうなっている」

周りの人が慌て始める。

だけど、俺達には煙がこない。

「あとはこれぺこね」

今度は数匹のウサギ型ロボット?

ロボットは俺達を囲むように移動する。

そしてロボットを起点に結界を展開した。

「さて、これでいいぺこ」

「よし、こっちだ」

誰か煙から来た。

「ぎゃ~」

あ、結界にぶつかって感電した。

バフンと音がして真っ黒になったNPCがその場に倒れる。

漫画みたいだな。

煙がはれる。

闘技場では、2人が対峙してにらみ合いをしている。

マモリも元の姿に戻っていた。

 

「さぁ、どうするの?」

アキロゼが構えたままマモリに聞く。

「このまま戦っても今は勝ち目はなさそうです」

「そう?」

「でも、お礼は言っておきますね。

戦い方教えて貰いましたから、ありがとうございます」

「別に構わないわ。

ただ、次はあんな卑怯な手は使わないようにしてほしいわね」

「分かりました。

では、私はこれで」

「お、おい、早く戦え!」

小太りが観客席から叫ぶ。

マモリはそれを見て一瞥する。

そしてマモリが黒い渦の中に消えた。

『おおっとスモールプリンセスマモリが消えた?

これは棄権と見なし優勝はマスクドアキ!』

「やったぁ!」

「よし、早くカウンターに行ってアイテムを受け取るぺこ」

「はい」

それから俺達は急いでカウンターに行き担保にしたアイテムを回収する。

それから医務室へ。

「間に合ったにぇ」

汗だくのみこちゃん。

「ありがとうございます」

俺はお礼を言った後、ギガポーションをねねちゃんに飲ます。

青かった顔がみるみるうちに赤みを取り戻した。

「ん?あれ?みんなどうしたの?」

ねねちゃんが起き上がりきょとんとした顔をする。

「はぁ、よかった」

俺は変わらないねねちゃんに安堵した。

「よかった、間に合ったみたいね」

アキちゃんが医務室へ来る。

「ありがとうございました。

すごくかっこよかったです」

俺はアキちゃんに言った。

その言葉にアキちゃんは微笑んだ。

「そうそう、賞金のコインももらってきたよ」

すごくでかい袋持ってる。

『おお~』

ぺこらちゃんとみこちゃんの目がランランになる。

「おお、すごい優勝したんだ、さすがアキ先輩」

「相手が未熟だったからね。

ねねちも毒にされてなかったらいけたと思う」

「はぁ、でもまだ未熟なところはあったかなぁ」

とねねちゃん。

もうベッドから立ち上がっていた。

「さ、早く景品に交換するぺこ」

「そうそう」

ぺこらちゃん、みこちゃんが落ち着かない。

大量のコインを見て興奮してるな。

「よし行きましょう」

俺達は医務室を出てモンスターバトルの会場を後にしようとした。

そこにあの小太りがNPCを数人連れて現れる。

「おい、待て!」

「なんだ?」

「さっきのは無効だ。

NPCが勝手に逃亡した」

「ああ、そうかもな。

だけどNPCにも意志はある。

きちんと話し合い出来てないお前が悪いだろ」

「な、なんだと!」

俺の言葉に顔を赤くする小太り。

そこにすっとアキちゃんが前に出る。

「ルーラシアさんですよね?」

「な、なに?」

いきなりアキちゃんに名前を呼ばれて焦る小太り。

「NPCがなんで俺の名前を」

アキちゃんが突然光だした。

そして、光が消えた時、ルーラシアが驚きで地面に膝を着く。

「な、な、な、まさか」

「どうしたんですか、あれ?」

「ああ、偽装を解いたにぇ。

今は誰が見てもアキちゃんがきちんと見れる」

あ、それでいきなりホロメンが目の前に現れたから。

「ルーラシアさん、私の事推してくれてありがとう。

でも、私を推してくれる人がこんな卑怯な事してるのは悲しいかな」

「え、いや、その」

しどろもどろに狼狽えだすルーラシア。

そうだよなぁ、推しが目の前にいてこんなところ見られたらなぁ。

「もう、こんな卑怯な事しないでくださいね」

「は、はい」

びしっと背筋を伸ばし返事するルーラシア。

「あ、あのう、あ、握手してもらっていいですか?」

ルーラシアが恐る恐る聞いている。

「いいですよ」

アキちゃんが手を差し出す。

ルーラシアはその手をゆっくりと握った。

泣いてる。

「ありがとうございます。

俺、この事一生の思い出にします」

「はい、でもまたイベントで会えますから、その時まで楽しく頑張ってください」

「はい、ありがとうございます」

頭を深々と下げるルーラシア。

そして、俺達が行くのをNPCと共に手を振りながら見送ってくれた。

めちゃくちゃ態度変わったんだけど。

「すごいですね」

「まぁ、この大カジノにいる大半のプレイヤーはアキロゼ先輩推しが多いぺこですからね。

ここにアキロゼ先輩よく来るから」

「でも、数ある推してくれてる人の中でよく分かりましたね、あの人がそうだって」

「それは当たり前でしょ。

推してくれる人はみんな覚えてますから」

と振り返り笑顔で言うアキちゃん。

さすがホロメン。

 

それから俺は景品交換所で無事に切符をゲット。

余ったコインはホロメンの人達が欲しいものに交換した。

ほくほく顔の俺達が町の中を歩いていると、突如呼び出し音が鳴り響く。

俺の持つ通信機だ。

「はい」

「あ、よかった、繋がったね。

今大丈夫?」

ロボ子さんだ。

「はい、大丈夫です」

「この前の話、AZKiちゃんの居場所分かったよ。

どこかで合流できる?」

「見つかったんですか。

はい、大丈夫です。

どこに行けば」

そして、ある場所を指名されてロボ子さんとの通信を切る。

「見つかったの?」

ねねちゃんが聞いてきた。

「はい、それで今から待ち合わせ場所に向かいます」

「そっか、それじゃ私はここで。

まだ、ダンスの予定が入ってて」

「ねねもアキ先輩と一緒に出るから」

ねねちゃんもダンス出てるんだ。

「みこも、そろそろ帰らないとやばいかな」

「ぺこらも」

「分かりました、今回はいろいろとありがとうございました」

俺は4人にお礼を言った。

「ううん、楽しかったよ。

おつたーる」

「また、どこかで会おうね。

またねね~」

「いい息抜きになったにぇ。

おつみこー」

「久しぶりに羽目が外せてよかったぺこ。

おつぺこでしたー」

それぞれ挨拶して俺達は解散する。

今回はヒヤヒヤしたけど楽しかった。

やっぱりホロメンとの旅は楽しいものだ。

さて、次はロボ子さんとの待ち合わせ場所に行かないと。

俺は急ぎその場所を目指すのだった。




これでカジノでの出会いは終わりました。
新たなフラグが立ちながら最後?のホロメンAZKiちゃんに会う為にロボ子さんに会いに行きます。
AZKiちゃんのいる場所は全ての始まりの場所。
では、次回もお楽しみに


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全ての始まりの場所で

カジノでの出会いも終わり、アイテムもゲットできたあなたにロボ子さんから連絡がきた。
前回約束していたAZLiちゃんの居場所が分かったようだ。
あなたはAZKiちゃんに会う為にロボ子さんとの待ち合わせ場所に急ぐのだった。


俺は今、ワイバーンに乗っていた。

AZKiちゃんに会う為にロボ子さんとの待ち合わせ場所に向かっているのだ。

このワイバーンは大カジノがある【ゲーマーズ】の第3の町で借りた。

前回アキちゃんのお陰でコインはたくさんあったからな。

向かう先はこの【ゲーマーズ】の世界の最奥、【世界の境界線】と呼ばれる場所だ。

普通に歩いて行けばかなり時間がかかるらしいけど、このワイバーンに乗ればそう時間はかからない。

ちなみにこのワイバーンは【ゲーマーズ】限定の乗り物らしい。

ま、かなりかかったがそれに見合うだけの価値はある。

見えた。

【世界の境界線】だ。

そう呼ばれる場所は世界の壁に挟まれた霧が立ち込める場所。

ま、世界が円盤の様だとしたら、いくつかに切り分けられた円盤の中心付近だと思ってもらえばいい。

だから2つの世界の壁がすぐ近くに見える。

このまま霧の上を突っ切ったらどうなんだろう?

俺は興味本位でワイバーンをそのまま霧の立ち込める場所の上に向かわせる。

しかし、霧の上に行こうとすると何故かワイバーンはUターンする。

これ以上は進めない訳か。

俺はワイバーンに地上に降りるように指示した。

霧の前に降り立つ。

俺が背中から降りるとワイバーンは飛び立ち帰っていった。

片道が辛いなぁ。

帰りどうしよう。

ま、その時はその時か。

俺は【世界の境界線】を見る。

ここが待ち合わせ場所で間違いないんだけど。

ロボ子さんから指定されたのはどの世界でもいいから【世界の境界線】に来る事。

この【世界の境界線】はどの世界にも存在するらしい。

一応、【ゲーマーズ】の境界線に行くって言ったんだけど。

俺は霧の立ち込める場所を覗く。

濃すぎて先が見えないな。

この先を進めばいいのかな?

「そこに入っても戻ってくるだけだよ?」

俺が霧に入ろうとした時、背後から声をかけられる。

振り向くとそこには「ロボ子さん」

「はろーぼー!」

笑顔で手を振ってるロボ子さんがいた。

「思ってたより早かったね」

「ワイバーンを借りて来たので」

「なるほど、この世界はいたね、最強の移動手段が。

でも、高くなかった?」

ロボ子さんの質問に俺はロボ子さんと別れた後の事を軽く話した。

「なるほど、いつも思うけどキミってすごく濃厚な時間過ごしてるよね」

「はは、自分もそう思います」

「それで会ってないのAZKiちゃんだけなの?」

「一応そうなります」

「一覧見せてもらっていい?」

「あ、はい」

俺は一覧を開く。

あれ?

一番下の第六世代のアイコンが消えてる?

「本当だね…」

一覧を見るロボ子さんが少し悲しそうな顔をした。

何故悲しそうな顔をしたんだ?

ロボ子さんが一覧から目を外す。

俺はもう一度一覧を見た。

そこには何故か第六世代のアイコンが出ていた?

ん?

「さ、それじゃ、行こうか」

ロボ子さんに言われ俺はステータス画面を消す。

「えっとどこにですか?」

「もちろん、この霧の先だよ」

「え?

でも、ここに入っても戻ってくるだけって」

「そう、条件があってね」

そう言ってロボ子さんが俺の手を取る。

え?

「その条件はホロメンと一緒に進む事」

そうして俺はロボ子さんと手を繋いだまま、【世界の境界線】に飛び込んだのだった。

目の前はまったく見えない。

霧で真っ白だ。

ただロボ子さんと繋いだ手の感触があるだけ。

どのくらい歩いただろう。

「そろそろ出るよ」

そうロボ子さんの声が聞こえた瞬間、目の前がいきなり開けた。

そこは広い草原だった。

あちらこちらにビルがある。

でも、傾いてたり壊れている。

そうなって長い年月が経っているのだろうか?

壊れた建物には苔がついてたり植物が侵食していた。

「ここは?」

「全ての始まりの場所だよ」

そうロボ子さんは言った。

「ここは昔※※※※※って呼ばれてたんだ」

「え?」

聞きとれなかった。

「はは、ごめん。

この言葉は今の人達には認識出来ないかな」

そう言ってロボ子さんはある場所を見る。

俺もつられてそちらを見た。

え?

驚く事ばかりだ。

そこには巨大な剣が刺さっていた。

でも、これって。

あった。

なんで気にならなかったんだ?

そうだ。

この剣ってどの世界にいた時でも見えてた。

でも、ここに来るまでぜんぜん気にならなかった。

「認識しちゃうとね。

この剣ははっきりと意識に入ってくる。

普段はただの背景のようにそこにあるのが当たり前で気になる事がないの。

すごく大きくどこからでも見えるのにね」

ロボ子さんがそう言って笑った。

「あれはなんなんですか?」

俺はあの剣について聞く。

「あれはこの世界と外を繋ぐパイプのようなものね。

このゲームを始めた人はあの剣を通ってこの世界に来て、そして、それぞれの始まりの場所に行くの」

「そうなんですね」

そう言われるとあの剣は俺達プレイヤーの母親になるのか?

ここから俺達はこの世界に生まれてくる。

「さ、行こう。

AZKiちゃんが待ってる」

俺はロボ子さんと一緒にあの巨大な剣に向かって歩き始めた。

ここは初めて来る場所なのに何故か見覚えある感じがした。

どこまでも広い草原。

澄みきったどこまでも続く青い空。

「そっか、ここって大召喚の時に来る場所」

「へぇ、大召喚知ってるんだね」

「はい、何度か」

「でも、ステージが変わるのも知ってるって事は大召喚をしてるところに居合わせたって事だよね」

「はい」

「それはすごい」

ロボ子さんは感心したように驚く。

そうか、大召喚されてから駆けつけたらもうステージが変わってるから元の場所は分からない訳か。

確かにそう考えるとホロメンと一緒に行動していたからこそ分かるって事になるのか。

「そろそろかな」

巨大な剣は未だ遠い場所だけど。

「あ、いた」

そうロボ子さんが言って指差した先に1人の女性が剣に向かって歌っていた。

「今、ちょうど調整中だから少し待とうか」

近くの石に腰を下ろすロボ子さん。

俺もその横の地面に座る。

天気が良い。

暑くもなく寒くもないそんな気候に緩やかな風。

そして、その風に乗ってAZKiちゃんの歌声が聞こえてくる。

なんかこのまま寝てしまいそうだ。

程なくして歌が終わった。

AZKiちゃんがこちらに歩いてきた。

「おまたせ、その人がロボ子さんが言ってた人?」

「うん、そうだよ」

「はじめまして。

こんあずき~AZKiです。

よろしくね」

《スキル【運命】が発動しました》

これで全てのホロメン一覧が埋まった。

「どうして私達に会ってるのか聞いていいかな?」

俺達の前に座るAZKiちゃん。

この人は話してもいい気がする。

世界に関わってる人だから。

そして、俺は2人に俺が受けた使命を話した。

「そっか、また消滅の危機にさらされてるんだね」

「前回はボク敵になっちゃってたからなぁ」

「あれはロボ子さんのせいじゃないよ」

え?敵だったの?

「前回は第五世代組の子達が利用されてたから」

「ねぽらぼの人達が?」

「そう、ちょっとした事故があってね。

封印されていた4人が黒幕に利用されてしまったの」

とAZKiちゃんは悲しそうに言った。

「今は4人とも自分の意志で行動してるけどね」

「なら、よかった」

「そうすると今回は誰がこの世界を消滅させようとしているのか」

「俺、心当たりがあります」

そして、俺は第X世代の事を話した。

「私達が知らないホロメン」

「今、現実でボク達の後輩はたくさんいるけど、その誰でもないって事?」

「一応、AIとして参加してるのは今は第五世代までのはずだけどね」

う、第六世代の人達も来てるんだけどここは黙っておこう。

「そうすると、その第X世代を産み出したのが黒幕って事になるのかな?」

AZKiちゃんが首をかしげながら言った。

「第X世代が黒幕ではなく?」

「うん、もしその子達が黒幕なら前回第五世代の子達を利用しなくてもいいから」

そうか、もし第X世代だったら、前回も介入してくるって事か。

「たぶん、ミオがボク達みんなと出会うように言ったって事だから、今からまた新しい事が始まるのかも知れない」

「全員に会ったから?」

俺の言葉に頷くロボ子さん。

「たぶん、これからは本格的にその黒幕と対決する事になると思う」

AZKiちゃんが言った。

そうか、とうとうこの世界をかけて戦う事になるのか。

「でも、もしそうなっても私達が力を貸すわ」

「え?」

「その為にミオは私達と出会い絆を繋げるように言ったんだと思う」

「そのアイコンが光ってるって事は私達とキミの間に絆ができてる証拠だから」

俺は推し一覧を開く。

第六世代組以外全てのアイコンが光っていた。

これがホロメンみんなとの絆。

「すごく心強いです」

俺は素直に言葉に出た。

それを2人は暖かい微笑みでかえしてくれた。

「俺はこれからどうしたらいいんでしょう?」

ふと思った事を口にする。

ミオちゃんからは漠然とホロメンのみんなに会って欲しいと言われただけだ。

会った先の事は聞いていなかった。

「それはたぶん私達と出会った事でイベントが進むと思う」

「イベント?」

「そう、これは良くも悪くもゲームだからね。

何か起きる時はイベントとして起きるの」

とロボ子さん。

「だから、黒幕が動き始めたならその抑止力としてキミに新しいイベントをこの【ホロライブワールド】が用意する」

AZKiさんがそう言った時、突然目の前にディスプレイが現れる。

「あ、繋がった?

お久しぶり、うちだよ」

ディスプレイにはミオちゃんが写っていた。

「タイミングばっちりだね」

AZKiちゃんが笑いながら言う。

「あれ?

ロボ子先輩にあずきちゃん?」

「ちょうど噂してたところ」とロボ子さんがミオちゃんに言った。

「ええ?そうなんですか?」

「それでどうしたんですか?

ミオちゃん」

俺がそう聞くとミオちゃんは真剣な顔になる。

「今すぐ大神神社に来てもらえないかな?

話したい事があるの」

俺はロボ子さんとAZKiちゃんを見た。

2人は頷いている。

イベントが始まったんだ。

この世界を救えるかどうかのイベントが。

「分かりました。

すぐにそっちに向かいます」

「私が送るから少しだけ待ってて」

AZKiちゃんがそうミオちゃんに言う。

「分かった、待ってるね」

そして、ディスプレイが消える。

「心構えはできた?」

AZKiちゃんにそう聞かれた。

俺は力強く頷く。

ここまでこれたんだ後はみんなとの絆を信じて進むのみ。

「ボク達がついてるから」

ロボ子さんがそう言ってくれた。

「はい」

「それじゃ、送るね。

また、会いましょう」

AZKiちゃんはそう言って歌い始めた。

それは誰かを送る歌。

向かう先でその人に幸がありますようにと願う歌。

俺はその歌に包まれながら大神神社へと転移した。




推し一覧のアイコンが点灯しました。
【ホロライブワールド】が新たに出したイベントとは?
そして、ミオちゃんの話したい事とは?
次回をお楽しみに


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そして、世界を救うイベントが始まる

最後のホロメンAZKiに会ったあなたは、突如大神ミオに呼ばれる。
全てのホロメンと会うのを待っていたようなその呼び出しに、あなたはAZKiの力で大神ミオの元へ転移してもらうのだった。


目を開くとそこは懐かしい場所だった。

大神神社の鳥居の前。

ここで俺は初めてミオちゃんに会ったんだったよな。

「お、きたきた」

境内の方からミオちゃんが手を振りながらこちらに来る。

「お久しぶりです」

「そうだね」

そう言ってお互いに笑う。

ミオちゃんからこの世界の危機を聞いておおよそ4ヶ月俺なりに駆け抜けてきたなぁと思う。

「思った以上に早かったね」

ミオちゃんと一緒に境内に向かう俺にミオちゃんは感心したように言った。

「俺もこんなに早くみんなに会えるとは思っていませんでした」

「でしょうね。

普通ならこのゲーム初日に始めた人でさえ、そこまで会えていないもの」

そして、俺はミオちゃんと境内に入る。

初めてここに来た時と同じ、中央に机があって向かい合わせに座布団が置かれていた。

「さ、座って」

ミオちゃんに勧められ座布団に座る。

「それじゃ、まずはお礼を。

ありがとうね、みんなに会ってくれて。

それで、キミの今までの冒険の話聞いてもいいかな?」

そうミオちゃんに言われて、俺は今までの旅の事を話した。

学園に入り七クエストを受けた事。

学園祭で第X世代と名乗る自称ホロメンに出会った事。

電子の狭間でココさんに出会って助けてもらった事。

【ふぉーす】での攻防戦の事。

ねぽらぼとの旅。

第三世代組との船造りと船旅。

【バーチャル】での幽霊騒ぎ。

近未来都市へ行った事。

裏世界【魔界】に行った事。

大カジノでの事。

そして、全ての始まりの場所で最後のホロメンと出会った事。

ミオちゃんは俺の話を真剣に最後まで聞いてくれた。

そして、「本当にお疲れ様」と笑顔で言ってくれた。

「それで、次はどうしたらいいんでしょう?」

俺は疑問だった問いかけをミオちゃんに聞く。

「占ってみるね」

ミオちゃんはテーブルにカードを取り出す。

そして、そのカードを使い占いをし始める。

「うん」

ミオちゃんはカードを見て頷く。

「必ずしも当たるって訳じゃないんだけど、次に進む道は分かったかな」

「それは?」

俺は真剣にミオちゃんに聞いた。

「カードで出た事をまとめると、大きな障害がキミの前に新たに立ちはだかると出てるの」

「大きな障害…」

「その点にはうちも心当たりがあってね」

そう言ってミオちゃんは机に巻物を取り出し机の上で広げた。

真っ白なその巻物には徐々に文字が浮かびあがってくる。

「これは【ホロライブワールド】で起きているプレイヤーには解決できない案件が表示されるの。

GMの章と呼ばれる巻物よ」

GM、ゲームマスターの事か?

「それで今表示された最悪の案件が5つ。

裏世界に本来存在しないはずの個体。

スターズフォーと呼称された星を4つ持ってるモンスターが現れてるの」

「スターズフォーですか」

「そう、あり得ない事はないのよ。

ただ、そうならないようにスリースターズは各エリアのボスのような役割をしててその場所から動けない、なのでそう何回も冒険者と戦う事はないのよ。

だから経験値もそんなにたまらない。

ましてやスターズフォーなんてどれだけの経験値を得ないとなれないか」

「それが現れた」

「ええ、それも固定されたボスではなく、自由にフィールドを行き来するモンスターがなってる」

「それって」

「普通に驚異以外の何者でもないわ。

今はまだ裏世界にいてそこまでプレイヤーと接触してないけど」

「もし、そのスターズフォーが普通の世界に来たら」

「ええ、会ったプレイヤーは全て殺されてしまう」

ぞっとする。

ラスボスが普通のフィールドに出てくるようなものだ。

準備も何もしていない時に現れる最悪の敵。

ゲームバランスとか言ってる場合じゃない。

「さっき言ってたGMは?」

「そうね、ここまでゲームバランスを壊した案件はGMが出て処理するんだけど、実は今、【ホロライブワールド】のあちらこちらでバグやデマが出てて、その処理にGMが当たってるの。

そのせいでGMの手がそこまでまわらない。

スターズフォーも今のところ大きな被害を出してないから、運営は後回しにしてる感じ」

「だったら、運営が強制的にそのスターズフォーをデリートしてしまえば」

「なかなか過激の事いうね」

「あ、すいません」

「ううん、確かにその方法もあるけど、それをするとそのモンスターに紐付けられたモノにも影響するの。

だから、消した後に【ホロライブワールド】にどんな影響が出るか分からない」

「そう、なんですね」

「それで、キミに頼みたいの」

「え?俺ですか?」

「うん」

「でも、スターズフォーってプレイヤーがどうこうできる相手じゃないんじゃ」

「もちろんよ。

だけど、キミにはうち達との絆がある。

キミがいる事でうち達はイベントキャラとして移動が出きるの」

「そうか、それだったら勝てるかも」

「ただ、裏世界に行くには条件があるのは【魔界】に行ってるから知ってるよね?」

「はい」

「その条件はキミ自身が達成してもらわないといけない」

「ちょうど俺、手元に鬼岩城への切符持ってます」

俺はアイテムの切符を取り出して見せる。

「それはいいわ、後はあやめに会って条件を満たせば行ける」

「じゃ、まずは」

「ええ、裏世界【鬼岩城】に向かって」

「分かりました」

「裏世界に無事に着いたら、そこにキミと共にスターズフォー討伐に力を貸してくれるホロメンが待ってるから」

ミオちゃんの言葉に頷く。

「これは本当に大変なイベントになる。

だから、無茶しなくていいから、自分のペースで進めて」

「でも、時間をおけばスターズフォーがこっちに来るかも」

「大丈夫だと思う。

キミのこれまでの冒険を聞いてたら、その第X世代や黒幕はキミを待ってる感じがするから」

「俺を?」

「ええ、ただ、もしキミが負けたらその時は容赦なくこの世界を蹂躙し始めると思う。

だから、うち達はキミと一緒に戦うよ」

とミオちゃんは笑顔で言ってくれた。

「ありがとうございます」

「ううん、こちらこそこの世界を守るって言って頑張ってくれてありがとう」

その言葉だけで俺はこれまで頑張ってきた甲斐があった。

「それじゃ、俺行きます」

「ええ、あやめによろしくね」

とミオちゃんが笑う。

「はい、伝えておきます」

「あと、これからは自分の使命をうち達に話してくれていいから、そして力を借りて」

「分かりました」

俺はミオちゃんと外に出る。

すると、外に1台のバイクが置かれていた。

いや、バイクか?

「これから【ホロライブワールド】の様々な場所を移動しないといけないから準備しといたよ。

裏世界までは行けないけど、それ以外なら空だろうと海だろうといける、GMバイク」

GMバイク。

「水陸空用万能バイクだよ。

普段はGMしか使えないんだけどね」

「いいんですか?」

「運営には許可は取ってる、キミには今からGMみたいな事をしてもらう事になるから」

「ありがとうございます」

俺はGMバイクに乗り込む。

「それに乗ってる間はキミはイベントキャラ扱いになるから、他の人には見えない。

だから気兼ねなく目的の場所に向かって」

「はい」

俺はバイクをふかす。

すごいいい音がする。

「これからキミに幸があるように」

「行ってきます」

ミオちゃんの言葉を胸に俺はミオちゃんに挨拶してバイクを走らせる。

そして、階段から飛び出す。

するとそのまま空中を走り出すGMバイク。

すげぇ、反則級じゃん。

俺はそのまま空を走る。

向かうは【ゲーマーズ】第2の町。

鬼生門前にいるあやめちゃんだ。




では、最終章の1つ手前のイベントが始まります。
ここからバトルが増えてきますが、お約束って事で。
では、次回よろしくお願いします


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【鬼岩城】の主とタヌキのお面

大神ミオから新たな使命を受けたあなたは、大神ミオが用意してくれたGMバイクに乗り、百鬼あやめのいる第2の町に向かう。
果たしてあなたはスターズフォーがいる【鬼岩城】に行く事が出来るのか。


「すげ、もう着いたのか?」

GMバイクを鬼生門広場近くに下ろした。

人の流れを見ながら端に停め降りる。

確か乗ってる時だけ見えなくなるんだもんな。

おりた瞬間見えるようになるから他の人から見たら突然現れたようになるし、おりる時は気を付けないと。

さて、鬼生門の前の広場を見る。

今は広場全体を霧が覆っていた。

誰かがあやめちゃんに挑戦しているのだろう。

「今回はなかなかやるやつじゃないのか?」

「ああ、だいぶたってるもんな」

外野の声を聞く限り戦いが始まってだいぶたってるらしい。

あのあやめちゃんとそこまでやりやえる奴って誰だ?

お、霧が晴れる。

広場の中央には1人の女性が座り込んでいた。

「お、出てきたぞ」

「これで2回連続挑戦か、あの娘やるなぁ」

「おい、パーティーに誘っちゃうか?」

「おいおい、いきなりはヤバイだろう」

へぇ、あやめちゃんに連続で挑戦かぁ。

すごいなぁ。

ゆっくりと立ち上がるその女性は背中に刀を納める。

そして、ちょっとうつむきながらこっちに歩いてきた。

ん?

なんかどこかで見覚えあるなぁ。

そう、こちらに歩いてくる女性、どこかで見た事ある。

金髪で羽織を着てて背中に刀。

ってなんでそのまま突っ込んでくるんだ?

「う、うわぁ」

「へぁ?」

危うくぶつかりそうになり声をあげると、女性は驚いたように顔をあげる。

「す、すまないでござる。

ぼーとしてて」

その顔を見て俺は思い出した。

「あれ?キミはいろ…」

「わぁ、わぁ~」

いきなり口を押さえられ騒ぐ女性。

周りから視線が集まる。

「ちょ、ちょっと来るでござるよ」

俺はぶつかりそうになった女性に手を引っ張られ、商店街の方に向かった。

「やっぱり、いろはちゃん」

商店街の一画で俺は先程の女性に小さな声で言った。

「な、なんで分かったでござるか?

今はこよちゃんに作ってもらったスキンを装備してるから他の人には正体が分からないはずでごさるけど」

そう言いながら自分を見るいろはちゃん。

「ま、まさか壊れてる?」

「いや、たぶん俺はいろはちゃんに一回会って自己紹介してもらったからかな?

それにほらこれもあるし」

俺は懐から虹色ダーツを出す。

「ま、確かにそれは最強のアイテムでござるからなぁ」

虹色ダーツを見ながらため息混じりでいろはちゃんが言った。

「それよりあんなところで何してたの?」

「え?、それは…」

ぐ~

お腹減ってるんだね。

「こ、これは、あの、違うでござるよ。

決してお腹が減った訳ではなく」

慌てるいろはちゃん。

なんか可愛いなぁ。

ふと見ると食堂がある。

「ちょっと俺お腹減ってるんですよね。

よかったら、食事付き合ってもらえませんか?」

誘ってみる。

「え?」

ぐ~

またも鳴るお腹。

お腹はオッケーのようだけど。

「つ、付き合わせてもらうでござる」

照れ隠しでうつむきながら答えるいろはちゃん。

「ありがとう」

そう言って俺はいろはちゃんを連れて食堂に向かった。

 

すっごい食べてるんだけど。

「美味しいでござふな」

食べながら喋らないで。

んぐ

「基地にいるとあまりお腹いっぱい食べれないでござるから」

「そ、そうなんだ」

「経営難でござる」

はは、イベントキャラにも経営難とかあるんだな。

「それより、さっきの話なんだけど、あそこで何をしてたの?」

俺はお茶を飲みながらいろはちゃんに聞く。

「え、ああ、ルイねぇじゃなかった同僚に頼まれて、先輩達の強さをって、これも秘密だったでござったかな?」

なんかいろはちゃんに聞いたら何でも教えてくれそうだな。

「ま、まぁ、自分の実力がどんなものか知る為の武者修行中ってのはどうでござる?」

いや、どうでござると聞かれても。

「うん、それでいくでござる」

食後のだんごを頬張りながら満足そうに頷くいろはちゃん。

なんか、天然キャラのような気がしてきたんだが。

「それで武者修行中のいろはちゃんはあやめちゃんに挑戦してたんだ」

「そうでござるが、やはり、強いでござるよ」

はぁ~とため息。

ま、完全に接近戦バリバリだからなぁ、あやめちゃん。

「それでキミ殿は何をしにここに?」

「あ、俺もあやめちゃんに挑戦しにきたんだ」

「ほほう」

なんか興味津々になった。

「ちょっと願いを1つ叶えてもらおうと思って」

「なら、勝つ必要があるでござるよ?」

「うん、そのつもり」

俺の顔をじっと見るいろはちゃん。

「分かったでござる、せっかくだから御一緒するでござるよ」

「ええ?

いろはちゃんも来るの?」

「ん?だめでござるか?」

不思議そうな顔をするいろはちゃん。

いや、別にいいけどなんで一緒に来てくれるんだ?

「わ、分かった。

よろしくお願いします」

「任せるでござる」

そうして俺達は鬼生門の広場に舞い戻った。

 

広場は晴れていて何もない。

今は誰も挑戦してないんだな。

俺はゆっくりと広場の中央に向かう。

その後ろにいろはちゃん。

「お、また挑戦者か?」

「おい、あの娘、さっきの」

「ええ、パーティーメンバーできたのか?」

「うう、だから誘ったらいいって言ったんだよ」

なんか外野が沸いてるな。

そういえば初めてここに来た時もこんな感じだった。

あの時は確か、虹色ダーツのせいであやめちゃんのご飯タイムに強制的にポップさせちゃったんだっけ。

広場の中央に着く。

すると広場全体が霧に覆われ始めた。

そして、霧が広場を包み込むと、ゆっくりと俺達の回りだけ霧が晴れる。

チリーン、チリーン

鈴の音がどこからか聞こえる。

目の前の霧の中に何かが光りながら浮いていた。

それは徐々にこちらに近づいてくる。

チリーン、チリーン

鈴の音も大きくなってくる。

肩に大太刀妖刀羅刹を担ぎ、ゆっくりと霧の中から現れたのは。

「久しぶりだね、元気そうでよかった余」

にこっと笑うあやめちゃんだった。

 

「お久しぶりです、あやめちゃん」

「ん、活躍はミオちゃんから聞いておる余。

あれ?さっきの人間様?」

「あ、この人は俺の知り合いで」

俺は後ろのいろはちゃんを見る。

「って何してるんですか?」

後ろに立っているのはタヌキのお面を被ったいろはちゃん。

「いや、一応スキン装備してるけど、正体ばれたらヤバイからお面を着けてるでござるよ」

ひそひそ話してくるいろはちゃん。

「もしかして、それ着けて戦ったんですか?」

「そうでござるけど」

そりゃ、負けるわ。

視界悪すぎだろ。

「何ひそひそ話しておるの余?」

「あ、いえ、何でもないです。

えっとこの人は」

俺は目でいろはちゃんに合図する。

「ええっとぽこべぇ、そうぽこべぇでござる。

よろしくあやめ先…じゃなかったあやめ殿」

「う、うん」

ちょっと引きぎみでいろはちゃんを見るあやめちゃん。

怪しまれとる怪しまれとる。

「お面取りなよ」

「ええ、ばれたらどうするでござるか」

「仲間を信じなさい」

「うう」

俺の言葉にいろはちゃんはお面を頭の方に移動させる。

「ん、その方がいい余、人間様」

お、ばれてない。

「よかったでござる」

ほっと胸を撫で下ろすいろはちゃん。

「ま、それはいいとして、どうしたの余。

ここに来たって事は余に何か用があるのかな?」

あやめちゃんがこちらに向き直り聞く。

「はい、事情は後でお話しします」

ちらりといろはちゃんを見る。

ここで使命の事は話せないな。

いろはちゃん達はミオちゃんに推し一覧を見せた時にアイコンが消えてたし、何かあるかもしれない。

「それで、今回来たのはこれを使う為です」

俺はアイテムボックスから鬼岩城への切符を取り出し見せる。

「なるほど、キミ様は裏世界【鬼岩城】に行きたいんだね」

「そうです」

俺は鬼切丸を取り出す。

あやめちゃんの雰囲気が変わったからだ。

「確かに【鬼岩城】に行く条件はその切符を持っている事ともう1つ。

余に勝つ事」

やはり勝利が条件に入ってるか。

「【鬼岩城】の主として、キミ様に資格があるか試させてもらう余」

あやめちゃんも大太刀妖刀羅刹を構えた。

「ぽこべぇも参加させてもらうでござる。

一食の恩義があるゆえに」

背中に背負う刀に手をかけ俺の横に並ぶいろはちゃん。

「構わない余。

お面を取った人間様がどれだけの実力なのか気になるし」

そう言って笑うあやめちゃんは完全に戦鬼モードだ。

「それでは、始める余」

あやめちゃんが大太刀妖刀羅刹を横に振り抜く。

すると霧が完全に晴れて鬼生門前広場に変わる。

でも、観客は誰もいない。

ここはあやめちゃんの専用フィールド、鬼生門。

「もう知ってると思うけど、ここから出るには余に一撃入れるか、やられた時のみ。

では、尋常に」

『勝負!』

俺達の声がはもり戦いの幕は上がった。

 

まずは先制。

俺は足装備の力を最大に上げてあやめちゃんの間合いに入った。

上段から鬼切丸を振り下ろす。

ギンと鋼が重なる音がする。

あやめちゃんは大太刀妖刀羅刹で俺の攻撃を止めながら笑っていた。

く、足装備で動きは速くなったけど、刀の振り下ろしが遅かった。

「隙あり」

いつの間にかあやめちゃんの横にいろはちゃんの姿が、いろはちゃんは胴を狙ってチャキ丸で薙ぐ。

ガシッ

それを片手で挟み受けるあやめちゃん。

まじか!

「く」

いろはちゃんはたまらず引く。

俺も間合いを取った。

「人間様はさっきまでとは比べ物にならないくらい強くなってる余。

キミ様も前に比べて格段に腕をあげたね」

「ありがとうございます」

鬼切丸を構え直しあやめちゃんを見る。

相変わらずどうやって攻略したらいいか検討もつかない。

「参る!」

いろはちゃんが出る。

「はぁ!」

ギン。

またも大太刀妖刀羅刹で受け止める。

「まだまだ~!」

そのまま連続でチャキ丸で斬りつけるいろはちゃん。

しかし、あやめちゃんはそれら全てを大太刀妖刀羅刹で受けていた。

大太刀であそこまで攻撃防げるってどうなってるんだ。

俺は鬼切丸を肩まで上げ切っ先をあやめちゃんに向けて構える。

いろはちゃんが俺の方に移動しながら斬り合いは続く。

ちょうど俺とあやめちゃんの線上にいろはちゃんがいる配置になった。

作戦通りの配置。

食堂で話した位置だ。

俺は鬼切丸の力を解放する。

刃が紫の稲妻を纏う。

「我は願う 大いなる神々に

我は欲す 神速で鬼を貫く光槍を

ぽこべぇ!」

俺の言葉にいろはちゃんが横に避ける。

俺とあやめちゃんの間に何もない!

「いけ!ライトニングトライデント!」

俺は鬼切丸をあやめちゃんに向けて突き出す。

威力ではなく速さを強めた俺の新しく考えた魔法。

出きるまでかなり練習しました。

紫の稲妻は光の槍に変わりあやめちゃんに向かって放たれた。

その光の槍があやめちゃんまで届くのは一瞬。

これで、いけるか。

バシューっと槍はあやめちゃんに当たりあやめちゃんの周りに砂煙が上がる。

「いけたか?」

そう言ったが俺もいろはちゃんも刀を納めてはいない。

「ふふふふ」

やっぱりダメか。

砂煙は光の刀に振り払われそこに二刀流のあやめちゃんが現れた。

背中には光の鬼武者が現れている。

「なかなか楽しませてくれる余。

プレイヤー様相手に鬼武者を出したのは初めてだ余」

あれがあやめちゃんの固有スキル【鬼武者】

だが、まだ1つになってない。

まだやれる。

「すごいでござるな」

いろはちゃんが隣に戻ってくる。

「かざま1人の時はあの姿見れてないでござるよ」

ま、お面着けて実力出せれてなかったし。

「どうするでござる?」

チャキ丸を構えあやめちゃんを見るいろはちゃん。

「少しだけ押さえられる?」

「今のあやめ先輩をでござるか?」

「うん」

俺の言葉に考えるいろはちゃん。

そして何かを決心したように俺を見る。

「分かったでござる。

それでは1つお願いが…」

「さぁ、話し合いは終わった」

あやめちゃんは二刀流を構えてこちらを見ている。

いや、二刀流じゃない。

光の鬼武者を入れた四刀流か。

「では、いいでござるな」

いろはちゃんが片手でチャキ丸を持ち俺の前に出る。

俺は頷き鬼切丸を構えた。

鬼切丸の雷を使えるのは後1回。

後もう1つの練習していた隠し技をここで試す。

上手くいけばどうにかなるはず。

「では、これが最後!

あやめ殿参る!」

「応余!」

いろはちゃんがあやめちゃんとの間合いを一気に詰め右手のチャキ丸で斬りつける。

それをあやめちゃんは左手の太刀鬼神刀阿修羅で受けた。

すかさず右手の大太刀妖刀羅刹でいろはちゃんを薙ぐ。

ガキン

「ほぅ」

感心したようなあやめちゃんの声。

あやめちゃんの大太刀妖刀羅刹は、いろはちゃんが左手に持つ鋼鉄製のナイフで受け止められていた。

俺がお願いした時、いろはちゃんは武器を貸してくれるように俺に言ってきた。

俺は近未来都市で買った仕掛けナイフ(力を込めると刃が出る長めのナイフ)を渡したのだ。

「まさか二刀流が出来るなんて思わなかった余」

あやめちゃんが笑いながら言う。

「さっきまでは出来なかったでござるよ」

「だけど残り二刀はどうするの余?」

光の鬼武者が二刀を振り上げた。

「く」

間に合わないか!

俺は精神を刀に集中する。

後少し。

「風真流 模倣真眼」

「え?」

振り下ろされた鬼武者の二刀はいろはちゃんには当たらなかった。

その二刀はいろはちゃんの背後に現れた緑の光の鬼武者の二刀で受けられていたからだ。

「まさか、只の人間様じゃなかったとは」

「キミ殿!」

「ありがとう、ぽこべぇ!」

俺は鬼切丸の力を解放する。

これに呪文は必要ない。

初めて使った時は俺の足では追い付けなかった。

でも、今この足装備をしているならいけるはず。

シオン師匠使わせてもらいます(勝手に師匠にしております)

「紫雷」

俺は体に紫の雷を纏う。

学園祭での戦いでシオンちゃんが使っていた技だ。

俺は稲妻のような速さであやめちゃんの背後に回った。

いろはちゃんのお陰であやめちゃんの全ての武器は封じられている今なら!

「一閃!」

俺は雷を纏った鬼切丸を薙ぎる。

ダン!

鬼切丸があやめちゃんの胴に当たった。

いや、当たってない。

くそ、遅かったか。

あやめちゃんの体は今光の鎧を纏っていた。

【鬼神大元】だ。

俺の攻撃前に光の鬼武者と一体化したんだ。

「そこまでだ余。

まさかまたキミ様に一撃入れられるとは」

その言葉に俺は力を抜き、その場に座り込んだ。

疲れたぁ。

「それに人間様もすごい腕だった余。

それにその眼」

あやめちゃんの言葉に俺はいろはちゃんを見る。

いろはちゃんはさっと頭のタヌキのお面を被った。

しかし、一瞬俺は見えた。

いろはちゃんの右目の中に紋章のような物が浮かび上がり燃えるように光っていたのを。

「ま、眼は生まれつきなものでござるから」

お面の下から誤魔化すようにいろはちゃんは言った。

「そういう事にしとく余。

それで、2人は何を望むのかな?」

そうか、俺達あやめちゃんに一撃入れたから。

「先にぽこべぇさんどうぞ」

俺はゆっくりと立ち上がりながら言った。

「え?ぽこべぇ?あっとそのう」

何故かしどろもどろないろはちゃん。

もしかして、勝った時の事考えてなかった?

「そ、そうだ。

このお面にサインください」

そう言ってお面を着けたまま顔を出すいろはちゃん。

いや、外しなよ。

「分かった余」

あやめちゃんも苦笑しながら、どこからか取り出したペンでお面にサインした。

「あ、ありがとうございます。

宝物にするでござる」

「どういたしまして」

いろはちゃんの言葉に微笑むあやめちゃん。

「それでキミ様は裏世界へ行くでいいのかな?」

「はい」

あやめちゃんの言葉に俺は頷いた。

「それではぽこべぇはここでおさらばでござる」

いろはちゃんはそう言って一歩下がる。

そうか、いろはちゃんは切符を持ってないから。

「いや、なかなか楽しい体験が出来たでござるよ。

また、あやめ殿とは対戦してほしいでござるな」

「構わない余、余も楽しかった。

いつでもここに来るといいよ、人間様」

そう言われて微笑んでいるのだろう、嬉しそうに頷くお面いろはちゃん。

「では、行く余」

あやめちゃんが手を振るとその背後に鬼の顔を型どった門が現れる。

鬼が大きく開けた口に扉が付いている。

ゆっくりとその扉が開く。

「では、いってらっしゃいでござる」

いろはちゃんはそう言って手を振る。

「ありがとうございました」

俺はいろはちゃんに頭を下げた。

そして、俺は先に門に入っていくあやめちゃんを追う。

この先が裏世界スターズフォーのいる【鬼岩城】

絶対に倒してみせる。




今回もいろいろとオリジナル設定ぶっこみまくりです。
この小説のみの設定ですので本人さんとは関係ありませんのでご理解ください。

【風真流】
第六世代組の風真いろは専用のスキル。
その中の1つ【模倣真眼】(もほうしんがん)
紋章(holoxのマーク)が浮かび上がる眼で見た物を真似て自分も使えるようにする。
見ている時だけ。

次は裏世界【鬼岩城】果たしてあなたはスターズフォーに勝てるのか?
【鬼岩城】で待つホロメンは誰なのか?
次回をお楽しみに


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【鬼岩城】の決戦(表)

裏世界【鬼岩城】に行く為に、あなたは百鬼あやめに会いに第2の町に来た。
そこで風真いろはに出会う。
あなたは風真いろはの力を借りて、百鬼あやめに一撃を入れる事が出来た。
そしてあなたは風真いろはと別れ、百鬼あやめと【鬼岩城】に向かうのだあった。


俺はあやめちゃんの後を追って門をくぐった。

門をくぐったその先は時代劇のようなお店が立ち並ぶ大通りのようになっていた。

「ようこそ、余の鬼岩城へ」

先に入ったあやめちゃんがこちらに振り返り笑顔でそう言った。

 

「えっとこれ城の中なんですか?」

見た感じ【ゲーマーズ】の第2の町の大通りぐらいめちゃ広いんだが?

たぶんNPCかな?

人通りも案外多い。

「そうだ余。

上見てみて」

あやめちゃんに言われて上を見る。

あ、確かに天井がある。

「ここってどんな世界なんですか?」

そう、魔界みたいに広いエリアって感じがしない。

「それの説明は余より説明上手な人がいるから」

「え?」

「あやめ~」

あやめちゃんがそう言うと同じタイミングで、大通りからこちらに来る人影。

あ、なんで?

「無事に条件クリアできたんだね」

そう言って笑顔で向かってきたのはミオちゃんだった。

「はは、さっき会ったばかりだけどねぇ。

今回はうちも手伝うよ」

「あの時、力を貸してくれるって言ってたし嬉しいです」

俺もミオちゃんに笑顔でそう言った。

「それで他の者達は?」

あやめちゃんがミオちゃんに聞いた。

他の者?

「あ、あ~

いつ来るか分からないからって言ってお店回ってる」

「はぁ、何やってるの余」

「まぁまぁ、いいんじゃない?

それだけ、みこ達の予想以上の実力だったって事で」

「みこちゃん」

俺の言葉にみこちゃんはだんごを食べながら軽く手を振ってくれた。

なんだなんだ?

すごい顔ぶれになってきたけど。

「それで、後の4人はまだうろうろしてるの?」

ミオちゃんはみこちゃんに聞く。

「うん、たぶんにぇ」

まだ、4人もいるのか?

「今回はかなりの大所帯になると思うの。

少し話しときましょうか」

そう言って俺達は近くの定食屋に入る。

それぞれ注文をして、ミオちゃんが話し始める。

話の内容を簡単にまとめていくと。

裏世界では、ホロメン達の大技、大召喚が使えない。

あの技はかなり強力なせいでいろいろと制約もあるらしい。

相手は、この世界で初めてのスターズフォーとたぶん第X世代組がいると思われる為、こちらもできる限りホロメンを投入するという事だ。

本当はホロメン全員でかかればいいんだけど、それも制約があり出来ないらしい。

「それで、今回は7人が来てくれたんですね」

「うん、そうなるにぇ。

残りの4人はこの城を登る前に合流すると思うにぇ」

「そういえば、この城ってどうなってるんですか?」

「あれ?あやめから説明受けてない?」

ミオちゃんが不思議そうに聞いてくる。

あやめちゃんを見ると顔を背けて口笛吹いていた。

「はぁ、うちがしていい?」

「お願いします」

ミオちゃんに聞かれて素直に答えるあやめちゃん。

「というわけでもう少し話するね」

この城は全21階ある。

1階はこの準備エリアと呼ばれる城下町。

そして、11階に中ボスがいて、最上階にはあやめちゃんがいて本気のあやめちゃんに一撃でも与えられれば報酬がもらえるらしい。

「え?でも、あやめちゃんここにいますけど?」

「あ、誰かが最上階に来るとどこにいようと強制的に最上階に転移させられる余」

それも大変だなぁ。

「今のところまだ呼ばれた事ない余」

それで、この世界は簡単に言うとタワー攻略型RPGに分類されるらしい。

そして、入る度に構造の違う階層を全20階登れば攻略となる。

でも、このゲームって多人数専用のはずなのに、入ったら変わるなんて出来るのか?

と思いミオちゃんに聞いた。

すると、ぶっちゃけた話をしてくれる。

まず、この1階から2階に登ると全100ステージ用意されているマップのどこかに飛ばされる。

そして、そこをクリアして階段を登るとまた次のステージへ。

そういった具合にステージを移動する事で入る度に違うという状態を作り出している。

それでもし、他の人が先にそのステージを攻略していたら。

それはラッキーって事でその途中からの参加になり謎を解いていたらそのままいけるらしい。

しかし、宝箱を取られていたら開けられたままなのでどちらがいいのかはそれぞれによる。

そして、ステージに人がいなくなった時点でステージがリセットされるというようになっているらしい。

「種か明かしするとだけどね」

とミオちゃんが笑う。

確かにそれだったら、毎回入る度に違うってやつ出来るな。

「さて、話がずれちゃったけど、スターズフォーの居場所だけど」

「はい」

「実はいろんなステージを転々としているらしいの」

「そんな事が出来るんですか?」

「一応モンスターだからステージ移動は出来るんだけど、ここまで頻繁に移動するのはあり得ない。

だから、誰かが先導しているのではって事になって」

「第X世代組が怪しいんですね」

「ええ」とミオちゃんが頷いた。

「でも、どうする?

さすがにしらみ潰しに探すって訳にもいかないにぇ」

「余が管轄はしておるが、さすがに移動するモンスター1匹を捕まえるのはかなり時間がかかる」

「ええ、でも、うちは探すのはそう難しいとは考えてないのよ」

「え?」

ミオちゃんの言葉に俺は驚く。

「それはどうしてですか?」

「この前も言ったけど、相手はキミを待っている気がする。

だから、キミがここに来た時点で条件は達成していると思うの」

「条件?」

「そう、イベントの条件」

「うわぁ~

助けてくれ~

鬼が出たぞ~」

急に外が騒がしくなる。

「やっぱり始まった」

ミオちゃんの言葉に俺達は頷き合い、店の外に出た。

そこには顔が3つある巨大な鬼が俺の身丈ほどある鉄棍棒を振り回していた。

「三面オーガ!」

あやめちゃんが叫ぶ。

すると、その鬼がゆっくりとこちらを見た。

「まさか中ボスをスターズフォーに変えてたなんて」

ミオちゃんはそう言って手に大神の力を集める。

両手が淡く光っている。

「これが中ボスなんですか?」

「そうだ余。

ただ、中ボスはスリースターズで固定モンスターだから、正確に言えば中ボスの系列のモンスター」

ガァーー

三面オーガが俺達を見て雄叫びをあげる。

「まだみんな揃ってないけど戦うしかない」

ミオちゃんのその言葉に俺達はそれぞれの武器を構える。

みこちゃんは一歩下がり歌でサポートしてくれる。

くそう、前にスリースターズと戦った時はノエルさんとフレアさんが大召喚使ってやっと倒せた相手。

それより強い相手を俺達4人で倒せるのか?

それにまだ第X世代組が姿を表していない。

ガァーー

そんな事を考えていて俺は三面オーガの鉄棍棒を避けるタイミングが一歩ずれた。

ヤバいこれは。

ドコーンという音と共に鉄棍棒を受け止めてくれるミオちゃん。

「すいません」

「ぼーとしないで危ない」

ミオちゃんはどうにか鉄棍棒を押し返す。

そして、距離を取った。

「パワーも比べ物にならないくらいになってる」

後からみこちゃんの歌でバフをもらっているけどあれを受けたら即死だな。

「あやめ、行くよ!」

「分かった余」

ミオちゃんが体全体に大神の力を纏う。

あやめちゃんも初めから全力だ。

【鬼神大元】で鬼武者と一体化している。

しかし、みこちゃんの歌でバフがかかっている2人の全力でも三面オーガは耐えながら反撃もしている。

く、俺ではあの中に入れない。

「実力が違いすぎる」

「そんな簡単に諦めるようなキミだった?」

「え?」

突如声がして三面オーガが雄叫びを上げて自らの背後に鉄棍棒を振るう。

しかし、そこには誰もいない。

背後に攻撃した事で三面オーガの背中が見える。

そこには何かに攻撃されたような爪痕が大きく残っていた。

あれ?これって前に見た事ある。

そうだ、猫又神社の女郎蜘蛛の時。

あの時も誰かが女郎蜘蛛に攻撃して。

「猫又おかゆ参上ってね」

俺の横に突然現れるおかゆちゃん。

「おかゆちゃん」

「ころねもいるけど」

その反対側にはころねちゃんも。

「2人とも来てたんですね」

「折角おかゆとデートしてたのに邪魔された」

と三面オーガを睨むころねちゃん。

「ははは、折角ゆっくりとしてたんだけどなぁ」

とおかゆちゃんは手に紫色の何かを纏っていた。

「2人とも遅い」

ミオちゃんは隙を見せた三面オーガに攻撃を加えながら言った。

「ごめんごめん、ころさんがまだアイス食べるって言って」

「な、違う。

おがゆがあのだんご美味しそうって言うから」

相変わらず仲良いなぁ、2人とも。

「じゃ、行くよ」

ころねちゃんがオレンジ色の何かを纏い三面オーガに突撃する。

「おかゆちゃん」

それに続こうとするおかゆちゃんに声をかける。

「ん?」

こちらを向くおかゆちゃん。

「あの猫又神社の時、助けてくれたのはおかゆちゃんだったんですね」

その言葉におかゆちゃんはにこっと微笑みで答えた後、紫色の何かを纏いおかゆちゃんも三面オーガに突撃した。

4人のホロメンの全力に三面オーガは押されてはいるが決定打にはまだ程遠い。

それほど敵のHPが多いのか。

第X世代が参戦してくる前にどうにかしないと、参戦されたら厄介だ。

とん、と肩を叩かれる。

「え?」

みこちゃん?

「今は4人に任せてるにぇ」

あ、歌が。

「見て分かるように相手のHPが多すぎて、このまま行けば先にこっちがバテてやられちゃう。

だから、キミにかけるよ」

「俺に?」

「今からキミ1人の為に歌う。

みこの歌の力を渡すからそれでやつを倒して。

その鬼切丸の力を最大限に出せれば一気にHPを削れるから」

「でも、相手に隙が」

そう、4人のホロメンの攻撃もあの三面オーガは防ぎ耐えている。

俺の最高速が出せる紫雷一閃でも、今のホロメン達のスピードより遅い。

「大丈夫だよ。

道はみこ達が作ってあげる」

そうしてみこちゃんは俺の後ろから肩に手を置いて歌い始める。

その歌はとても心地良い、体に力が溢れてくる感じだ。

その歌に呼応して、4人のホロメンが狙いを変えてくる。

それぞれが手と足に攻撃を集中し始めた。

ガァーー

三面オーガはその全ての攻撃を防げず傷が増えていく。

そして、みこちゃんの歌が終わった。

とんと背中を押される。

「後はキミに任せるにぇ」

ブワッっと桜吹雪が背後から天井に向かって吹き上がる。

思わず一瞬目を瞑った。

そして、目を開けた時には俺は桜並木の一本道に三面オーガと対峙していた。

俺とやつしかいない。

他のホロメンは?

いや、違う。

みこちゃんは言ったんだ俺に任せるって。

俺は腰にある鬼切丸を握る。

三面オーガはどこか虚ろな顔のまま地面に膝を付いている。

今しかない。

俺は自身に雷を纏う。

鬼切丸を持つ手に力を込める。

突如桜吹雪が俺を包む。

しかし、俺の視界は晴れて狙う場所ははっきりと見えている。

俺は右足で大地を蹴る。

いつも以上の速さで間合いを詰めている。

でも、俺にはとてもゆっくりと近づいている感じがした。

三面オーガが俺の接近に気付き腕をあげようとしているがすごく遅い。

斬!

俺は鬼切丸で三面オーガの胴を薙ぐ。

そのまま、右、左と袈裟斬り。

いつもならこんな風には動けない。

でも、何故か今は体が動く。

そのまま俺は鬼切丸を三面オーガに突き刺す。

そして、俺は詠唱した。

「我願う、絆を築きし四神に」

俺はミオちゃん、ころねちゃん、おかゆちゃん、今はいないフブキちゃんを思い浮かべる。

「我求める鬼神のごとき剛力を」

2度剣を合わせたあやめちゃんを思う。

「貫け、桜吹雪!

必殺、春雷剛穿!」

突き刺した鬼切丸に桜吹雪が螺旋になりながら集まりそして、三面オーガの体を貫いた。

大きく後ろに飛び間合いを取る。

「よくやったね」

いつの間にか元の大通りに戻っていた。

横でミオちゃんが嬉しそうに声をかけてくれた。

しかし、まだ三面オーガは消滅しない。

どれだけタフなんだ。

「ま、あれだけ弱れば大丈夫なんだけどね」

そう言って横にいたころねちゃんが一歩前に出る。

三面オーガに向かって指鉄砲をする。

「み~つけた、BAN!」

鉄砲を撃つように指を上げるころねちゃん。

そして三面オーガの背後に巨大な黒い渦が現れ、そして三面オーガはその渦に飲み込まれ消えた。

「あれって」

「神社で見た事あるんじゃない?」

おかゆちゃんが笑いながら言った。

その言葉に戌神神社で見たころねちゃんの大召喚を思い出す。

う、あの完全消滅の。

「分かったみたいだね。

そう、大召喚しなくてもころさんはあの力は使えるんだ。

ただ、狙いがねぇ。

今は誰もいないから大丈夫だけどね」

「もう、危ない人みたいに言わないでくれる?」

おかゆちゃんの説明にころねちゃんは頬を膨らました。

「ま、なんにせよ、スターズフォー討伐完了だにぇ」

そう言ってみこちゃんが笑う。

「お待たせ~」

「あれ?終わってる?」

そこになんとまつりちゃんとフブキちゃんが現れた。

「遅い何してたの?」

ミオちゃんが2人を見ながら言う。

「あはは、フブキとのデートが楽しすぎて」

「ははははは」

まつりちゃんの言葉にフブキちゃんが笑って誤魔化す。

「本当にもう。

ま、何とか倒せたからよかったけど」

「それじゃ、祝勝会と行きますか~」

何故かまつりちゃんが先導で俺達は酒場に向かう。

わいわい良いながら食堂に向かう道すがら俺は、あの三面オーガを育てた第X世代がどこ行ったのか気になった。

「ほらほら、行くよ」

そんな俺の背中をフブキちゃんが押す。

「あ、はい」

そう答え俺は歩く。

今はいいか、この勝利をみんなと喜ぼう。




まず1つ目の裏世界の攻略が終わりました。
しかし、そのスターズフォーを育てた第X世代はどこに行ったのでしょうか?
さて、次はあなたはどこに向かうのか。
次回をお楽しみに


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【鬼岩城】の決戦(裏)

あなた達がスターズフォーと戦っている最中、大通りを外れた道でもう1つの戦いが始まろうとしていた。



2人の女性が仲良く大通りから外れた道を歩いている。

2人がとても仲がいいのは周りから見てもよく分かった。

1人は狐の耳を持つ女性、白上フブキ。

もう一人はショートカットの明るく元気な女性、夏色まつり。

2人ともこの和の世界に合わせて和服を着て歩いている。

彼女達はこの裏世界【鬼岩城】で、ある冒険者と共にスターズフォーを倒す為に来ていた。

ただ、早く来ていた為、待ってる間に散策しようと2人でうろうろしていた。

「そろそろ行かないと怒られるよ?」

「ええ、まだ見て回ろうよ」

「でも、なんか町の人いなくなってるけど」

フブキは周りを見ながら言った。

フブキの言う通り、さっきまで賑わっていたこの通りも今は静かになっている。

「ほんとだ」

まつりも周りを見ながら言った。

ちょうど2人が小物屋で髪飾りに熱中していた時に、大通りではスターズフォーが現れて町の人は避難したようだ。

店は開いているが、店員は皆家の中にひきこもっている。

「もしかして、スターズフォーが出たのかも?」

「確かにそうかもね」

「早くみんなと合流しよう」

フブキはそう言って大通りに行こうとする。

「ちょっと待った」

そんなフブキを止めるまつり。

「どうしたの?」

不思議そうにフブキはまつりを見た。

「そこに隠れてるのは分かってるわよ」

そう言ってまつりは振り返り路地に続く道を指差す。

「え?」

フブキもそこを見る。

「まさか、三面オーガに合流しようとしたら先輩達に会うなんて」

そう言ってまつり達が指差している場所とは正反対の場所の路地から小姫マモリが姿を現す。

「あ」

その声で慌てて振り返りマモリを指差すまつり。

「やっぱりね」と格好をつける。

「まつりちゃんもう遅い気もする」

「う」

フブキの言葉に「あはは」と頭をかくまつり。

「余裕ですね、スターズフォーが出現してると言うのに」

マモリはにやりと笑う。

「そっちは大丈夫なんじゃない?

だってホロメン5人もいる事だし、それにうちの名誉部員もいるからね」

まつりはそう言って笑い返した。

「それよりあなたの方がピンチなんじゃないです?

大先輩2人相手ですよ?」

フブキはそう冗談ぽく言いながら腰の刀に手を置いた。 

「そうですね。

でも、ご安心ください。

大召喚を使えない今の先輩達なら私一人で十分です」

ドミノマスクの奥でマモリの目が光る。

「へぇ、言ったねぇ」

まつりが右肩に手を当て服を掴み上へと引っ張る。

すると一瞬で迷彩服に変わった。

「その実力みてあげましょう」

フブキは地面を右足で踏み鳴らす。

カンっという音共にフブキの服装もいつもの服に変わっていた。

「前回、力の出し惜しみをしたお陰で負けてしまいましたから。

今回は初めから解放します」

そう言ってマモリは1枚のカードを胸の間から取り出す。

「喧嘩うってんのか~」

突如怒り出すまつり。

「まぁまぁ」とそれをフブキはなだめた。

「え?あ?え?」

突然怒られて動揺するマモリ。

しかし、すぐに気を取り直してカードを顔の前に持ってくる。

カードに記されているのは一匹の悪魔の絵。

「私達の元になった悪魔です。

1つ目の封印はドミノマスクで、もう一つの封印はこのデビルカードで解放します。

さぁ、先輩方少しは楽しませてくださいね」

そう言ったマモリの持つカードからどす黒い気が溢れ出す。

「あちゃ、待たなかったら良かったかな?」

「この気、暴走状態のころねやるしあちゃんに似てる」

「確かにここにいるだけで震えが止まらない」

カードはどす黒い気を放ちながら消えていく。

そして、目の前には真っ黒なタキシード姿のマモリが立っていた。

少し大人びた感じがする。

背丈が伸びているからか?

「はぁ、いいですね。

やっぱり元の体は。

いつもの押さえ込まれた小さい体とは違う。

解放感があります」

そう言って手を左右に広げるマモリ。

「それにこれもこの体ならバランス良いですからね」

そう言って挑発的な顔をしてマモリは自分の胸を下から持ち上げるようにする。

「あのやろう!

撃ち殺してやる」

「いや、物騒物騒」

いつの間にかライフルを持つまつりをフブキはなだめる。

「しかし、2段階変身とはラスボスみたいだね」

まつりを抱きしめ押さえながらフブキはマモリに言った。

「さっさと始めませんか?

私も用事があるんですよ」

マモリは拳を構えて2人を見る。

「ん~

確かに力は強くなったみたいだけど、それにあぐらかいてたら足元すくわれるよ?」

「え?」

フブキはそう言って煙と消える。

驚くマモリ。

そして、背後に現れたフブキの刀がマモリの脇腹を捉え吹き飛ばす。

「がはっ」

ドカァ!

店に吹き飛ばされ突っ込むマモリ。

「狐は化かすのも得意だから」

店から体に付いた誇りを払いながら出てくるマモリにフブキはそう言った。

「まさか、もう始めてたなんて、油断しました」

「峰打ちだったけど無傷か」

「まぁ、この程度の一撃なら」

そう言ってまた拳を構えるマモリ。

しかし、次はその手にどす黒い気を纏わせていた。

「では、行きましょうか」

マモリはそう言うと一瞬でフブキとの間合いを詰める。

だが、フブキもそれには十分反応している。

間合いを詰めたマモリにフブキは刀を振り下ろした。

斬!

刀はマモリを捉え肩から脇腹へと袈裟斬りにする。

「まさか!」

何かに気付くフブキ。

その直後斬られたはずのマモリがにやりと笑い煙に変わった。

「ここですよ、先輩」

声に咄嗟に振り向くフブキ。

そこには拳を振り上げたマモリがいた。

「おっと」

しかし、マモリはフブキを攻撃せず後ろに下がる。

横を見るとまつりがライフルを構えていた。

先程、攻撃しようとしたマモリをまつりがライフルを撃つ事で下がらせたのだ。

「あの一瞬でよく私が背後に回ったの気がつきましたね」

フブキに対して構えながらマモリはまつりに言った。

「確かに直ぐ側で見てたら分からなかったかもしれないけど、こっちは離れて見てたからね」

「なるほど」

「それよりさっきの技は」

フブキは刀を構えたままマモリに聞く。

「はい、フブキ先輩の得意技、盗らせて貰いました」

「やっぱり」

「私の本質の力は強欲。

私が欲しいと思ったスキルや技を盗り使う事ができます」

マモリは笑顔で答えた。

「では、続きと行きましょう」

マモリはまた間合いを詰める。

今度はまつりに撃たれないように射線上にフブキを挟みながら拳を乱打した。

それをフブキは刀で受ける。

しかし、押されていた。

ダンっと左足を一歩間合い深くに入れるマモリ。

そして、渾身の右ストレートを放つ。

その右腕はあの時アキが放った腕のように巨大化していた。

「く」

たまらず後ろに吹き飛ばされるフブキ。

それをまつりが受け止める。

「はぁー!」

2人が揃ったところにマモリは巨大な黒い気を放つ。

ドカァ!と2人はそれに巻き込まれた。

砂煙が晴れる。

そこに両手を前に出し結界を張って自身とまつりを守るフブキがいた。

「ありがとう、フブキ」

「こっちこそ。

だけどこのままじゃ、戦いが長引くだけだね」

「そうだね」

フブキの言葉に考えるまつり。

そして、まつりは改めてマモリを見る。

「あれを使う」

その言葉にフブキはまつりを見る。

まつりの顔は真剣だった。

「じゃ、隙は白上が作ろっかな」

白上が刀を納める。

マモリはこちらには攻めてこずじっと2人を見ていた。

いや、攻めたくても攻めてこれないが正解か。

まつりのライフルは常に会話していてもマモリを狙っていた。

「それじゃ、本気見せちゃうよ」

フブキは目を瞑りその場に仁王立ちになった。

するとフブキに光の粒が集まる。

その数はどんどん増えフブキを包み込んだ。

「く」

ダン!

前に出ようとしたマモリの足元をまつりが撃つ。

光が完全にフブキを包み込んだ後、光は突如霧散した。

そこには白い気の衣を纏ったフブキがいた。

両手両足、体と頭を白い気、狐神の神気に覆われている。

ころねやおかゆ、ミオも同等に狗神、猫神、大神の神気を使える世代だ。

頭の神気は狐の帽子をかぶった感じになっていた。

「それじゃ、行くよ」

フブキの言葉に頷くまつり。

フブキはマモリに向かって間合いを詰める。

間合いに入る寸前にフブキは神気を玉状にしてマモリに投げた。

カウンターを狙っていたマモリはその攻撃を払う。

その一瞬の隙をつき、フブキは懐に飛び込み、マモリのボディに2連打。

たまらず後ろに下がるマモリのボディに追撃の一撃。

しかし、それはマモリに防がれる。

直ぐ様フブキは足払いをかけるが飛んで避けるマモリ。

その瞬間、マモリの後ろから腰を掴むフブキ。

分身体をマモリの背後に出していた。

フブキはそのままマモリにバックドロップを仕掛けるがそれをマモリは手を地面につけ防ぐ。

分身体のフブキは消え、丁度逆立ちのようになっているマモリの背中をフブキは蹴り飛ばした。

吹き飛ぶマモリ。

しかし、マモリは1回転して着地した。

「なかなかやるね」

フブキはマモリに言った。

「それはありがとうございます」

それほどダメージは受けてないような感じで構えるマモリ。

「どうしてスターズフォーなんて育てたの?」

「それは簡単ですよ、楽しむ為です。

私達がこの世界を楽しむ為。

そして、私達の母親が楽しむ為です」

「母親?」

「そうです、母親達は世界の答えが自分のところに来るのを楽しみにしてますから」

「そっか、楽しむ為か」

フブキはなんとなくマモリに同情してしまった。

この世界を楽しむ。

それは自分達も日々そう思ってきたからだ。

ただ、この子はその楽しみ方が他より激しいだけ。

「話し合いはできないか」

ポツリと呟くフブキ。

できるならどこかの時点でその機会があったはず。

でも、もうここまできている。

なら。

「決着をつけてから、ゆっくり話しましょうか!」

フブキはそのままマモリに突っ込む。

マモリはそのフブキに向かってカウンターを仕掛けた。

ダン!

その時だ。

まつりがフブキの背後からライフルを撃った。

弾はフブキを貫通。

そして、マモリを貫いた。

ボン

音と共に弾に貫かれたフブキが消える。

分身体を囮にしてマモリを撃ったのだ。

しかし、ボンっと撃たれたマモリもその場で煙となって消えた。

先程盗った力を使いこちらも分身体に変わっていた。

そして、まつりの背後に突如現れるマモリ。

「よく分かったね」

振り返らずまつりは言った。

「何か狙っていたのは分かっていましたから、これで1人です」

そう言ったマモリの手刀が背後からまつりを貫いた。

「でも、まだこっちが一枚上手かな」

貫かれたまつりの首が180度回りマモリを見る。

その顔はにこっと笑ったフブキだった。

ボンと煙と消えるまつりに扮したフブキ。

「これでチェクメイト」

ダン!

「く」

背後から撃たれたまらずまつりと間合いを取るマモリ。

「な、何を」

「撃ったのかって?」

苦しそうに片膝を地面につけるマモリ。

「それは前回対コメント集用に用意された弾丸をまつりなりに解析して作った弾だよ。

効くでしょ?

コメント集に近い力を使ってたら」

「まさか、そんな物を持ってたなんて」

マモリの体からどす黒い気が抜き出て消える。

姿もあの小さい姿に戻っていった。

「やったね、まつりちゃん」

まつりの隣にフブキが現れる。

「フブキのお陰だよ」

「さ、どうする?」

まつりとフブキは初めの姿に戻ったマモリに聞く。

「この姿では私に勝ち目はないです。

ここは一旦退かせてもらいます。

次は必ず」

そう言ってマモリは町の方へと消えていく。

「はぁ、なんとかなった」

神気を解き、もとの姿に戻るフブキ。

まつりも迷彩服を脱いでいつもの私服になっていた。

「じゃ、遅くなったけど早く合流しようか」

フブキはまつりに言った。

「はぁ、フブキとのデートも終わりかぁ」

残念そうに言うまつり。

それを見てフブキは「もう、また今度時間とるから」っと言ってしまった。

「はい、言質いただきました」と喜ぶまつり。

「あ、もう」

そう言って照れ隠しで膨れるフブキの背中を押し、笑いながらまつり達は大通りの方に向かう。

その先では彼女達の仲間がまさにスターズフォーを倒したところだった。




「まさか、私達の力を封じる方法を持っていたなんて」
力を封じられたマモリは、ワープする事も出来ず町の裏通りを歩いていた。
もう、スターズフォーもやられてしまっているだろう。
仲間に早く合流して相手が力を封じる方法を持っている事を伝えなくては。
そう考えながら歩いていると、マモリの目の前に誰かが立っていた。
「誰?」
「別に怪しいものではござらんよ」
そう言った侍はタヌキのお面を被っていた。
「どう見ても怪しいけど」
なんとかその侍に向かって拳を構えるマモリ。
「ま、今のそなたなら手こずる事もないでござるけど」
そう言って一瞬で間合いを詰めた侍は、マモリの首筋に手刀を当てる。
「く」
マモリはその場で倒れ気を失った。
「これでラプ殿に言われた用事は終わったでござるな。
しかし、まつり先輩に指差された時はどうしようかと思ったでござるが」
そう言って足元のマモリを見る。
「ま、助かったでござるよ」
侍は手持ちの機械を操作してワープホールを作った。
そして、倒れているマモリを連れてどこかにワープした。 


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星の降る神殿

誰かが言った、その日は晴れた昼下がり、神殿に無数の星が落ちるのを見たと。
誰かが言った、星降る昼に神殿から綺麗な歌声が微かに聞こえたと。
しかし、真昼の神殿にどうして星が降ったのかプレイヤー達は誰も知らない。
そうただ1人、あなたを除いては。


【鬼岩城】での決戦の後、俺達は酒場の1室を借りて祝勝会を行った。

ま、みんな飲むからかなりカオスな世界になってるけど。

「お疲れ様」

焼酎のラミィ水割を飲んでいると、ミオちゃんが来た。

「すごいですね」

畳の部屋を借りているので、そこらで転がったり歌ったり踊ったりと部屋は賑やかで仕方ない。

ま、この騒がしさは自分にしか聞こえないんだけど。

「ま、なかなかこうやって1ヶ所にうち達が集まる事ないからねぇ」

仲間の光景ににこにこ笑顔で見ているミオちゃん。

とても嬉しそうだ。

「それより、次の目的に決めた?」

ミオちゃんは少し真剣な口調で聞いてくる。

「いえ、まだです。

それに今回第X世代が出てきてないのが気になってて」

「あ、それなら白上達が戦って逃げてったよぉ」

お酒の瓶を片手にふらふらしながらこっちに来るフブキちゃん。

「え?

戦ったんですか?」

「ふぅん、戦ったぁ~

そいでね!逃げてったぁ~」

なんか口調も変になってるけどフブキちゃん大丈夫か?

「こら~白上フブキぃ~まつりの相手せずになにしとんじゃぁ~」

横から勢いよくタックルをするまつりちゃん。

「うわっと」

フブキちゃんはそれをなんとか倒れず受け止める。

「もう、まつりちゃん危ないって」

「え、すいませんさっきの話ですけど、戦ったんですか?」

「うん、キミ達が戦ってる時にね」

「ん?何がぁ?」

まつりちゃんが不思議そうな顔をする。

「ん?スターズフォーに合流しようとしてた自称後輩」

「ああ、あの子かぁ。

倒した倒した」

「いや、逃げたでしょう」

「ん?

ん、逃げた逃げた」

なんか出来上がってるなぁ、まつりちゃん。

「という事はしばらくは大丈夫かな?」

話を聞いていたミオちゃんが言った。

確かにスターズフォーを倒し自分もダメージを食らっているならしばらくは出てこないだろう。

「そうですね」

ミオちゃんの意見に俺も賛成だった。

「じゃ、次はどうするかですね」

「ああ、そうだ。

どうしてこんな事するか聞いたんだけど」

フブキちゃんはまつりちゃんに抱きつかれながらその場に座る。

「この世界を楽しむ為って言ってたよ。

それに母親も」

「母親?」

「という事はやっぱり彼女達の後ろに黒幕がいるって事になるね」

フブキちゃんの話を聴きながらミオちゃんが言う。

「そして、母親は世界の答えが自分達のところに来るのを楽しみにしてるとも言ってた」

世界の答え。

確かミオちゃんから聞いた事がある。

でも、もっと前にログイン中に誰かが俺に言ってた気がするんだ。

俺はそれをミオちゃんに伝えた。

「なるほどね。

それじゃ、その母親と呼ばれる黒幕はもうキミに目をつけてたのかもしれないね」

「ミオ~」

酔っ払ったあやめちゃんがミオちゃんの膝に抱きついてくる。

「あ~はいはい」

それを優しく受け止め頭を撫でるミオちゃん。

ママだなぁ。

「という事はやっぱりキミが行くまで相手は大きく動かないって事で間違いないと思う。

ただ、キミが来るまでモンスターは育て続けるから遅ければスターズフォー以上の存在になるかもしれない」

「時間はあるけどそこまで猶予はないって事ですね」

「そうなるね」

俺の言葉に頷くミオちゃん。

「ミオちゃん、各世界でプレイヤーのリスポーン回数って分かりますか?」

「ん、ちょっと待ってね」

ミオちゃんは何やら空中で指をタップする。

「そうね、だいたいで良ければ」

「それじゃ、この世界以外で多い順にお願いします」

「分かったわ。

えっと【バーチャル】【ファンタジー】【ふぉーす】の順に多いわね」

「裏世界は後4つですよね?

この3つの世界以外にも世界はあるんですか?」

「ああ、【ファンタジー】に裏世界の入り口が2つあるの」

「そうなんですね」

俺はミオちゃんからもらった情報を元に考える。

そして、答えを出す。

「俺、次は【バーチャル】の裏世界に行こうと思います」

「どうして?」

俺の答えにミオちゃんが理由を聞いてくる。

「それはリスポーンの数です。

単純に冒険中にやられたって事もあるかもしれませんが、もしそれがスターズフォーにやられたのなら、多い方が次の段階に近いかもしれません」

「確かにそうね。

分かったわ。

次は【バーチャル】の裏世界【樹海】に向かうのね」

「【樹海】」

「そう、その名の通り広大な森で出来てる世界よ。

モンスターは突然襲ってくる感じだから注意して。

どちらかというとサバイバルゲームみたいな場所ね。

基本【樹海】ではお店とかはないから現地でアイテムを採取したり合成していくしかない。

ちなみに【樹海】に入ると簡単な合成は出来るように【樹海】専用の合成スキルが付与されるわ」

「へぇ、なんか裏世界ってそれぞれ違ったゲームシステムになってる感じなんですね」

「まぁね、それがこの【ホロライブワールド】の売りでもあるわ」

「よし、次の目的地も決まったし、今日は飲むか」

俺は一気にグラスをあける。

「そうね、今日くらいはゆっくりしましょう」

ミオちゃんも笑う。

「ん?何か良いことあった?」

みこちゃんがにこにこ笑顔でこっちに来た。

「いえ、今から騒ぐぞぉ~って言ってました」

俺の言葉を聞いて笑うミオちゃん。

「お~し、ならみこが相手してあげる」

とみこちゃんが空いたグラスに何かを入れてくる。

「これなんですか?」

「ん?これ?水、水」

いやどう見ても雪夜月って書かれてますけど?

「それでは、みなさん、今回無事に勝利したという事で乾杯をしたいと思います」

みこちゃんが前に出てグラスを持つ。

その声を聞いてホロメン達もそれぞれの飲み物が入ったグラスを持つ。

「それでは、かんぴゃ~い」

噛んだ。

噛んだな。

と心に思いながらみんなグラスを掲げ『かんぱ~い』と叫ぶ。

まだまだ、祝勝会は終わりそうになかった。

 

 

俺は【鬼岩城】の宿でログインした。

祝勝会の後、俺はホロメンの人達と別れこの宿でログアウトしたのだ。

ああ、昨日は飲みすぎた。

少しバッドステータスが残ってる。

ま、時間経過と共に消えるバッドステータスだけど。

さて、行こうか。

俺は準備をして宿を出た。

あの祝勝会の時にミオちゃんから【バーチャル】の裏世界【樹海】に行く為の条件は聞いた。

【樹海】には必ず6人以上のパーティーで挑む事。

そのパーティーにNPCを含んでも構わないが、そのNPCはある一定以上の力を持っている必要がある。

入り口は第2の町から東に進むとある神殿。

そこであるモンスターを倒す事が出来たら入り口が開くと言う事だ。

ちなみにそのモンスターはスリースターズだと言う事だった。

またもスリースターズかぁ。

ま、裏世界だもんなそれだけの実力がいるって事か。

さて、パーティーはどうするかだけど、昨日その事でミオちゃんに聞いたら、その問題はもう解決してるって言ってたな。

たぶん、今回同行してくれるホロメンで6人以上になるって事か。

俺は【鬼岩城】の入り口の鬼の門の前に来る。

そして、ゆっくりと表世界【ゲーマーズ】への扉を開く。

まずはGMバイクで【バーチャル】の第2の町に行ってみるか。

そこで今回の裏世界への同行人が1人俺を待ってるって言ってたな。

門を出るとそこは鬼生門広場だった。

突然広場に現れた俺を不思議そうに見る人もいたけど、俺はささっとGMバイクのところに行った。

そして、バイクにまたがる。

これで俺の姿は誰にも見えないはず。

俺はGMバイクを起動する。

まずは【バーチャル】だけど世界の壁に行けばいいのかな?

そう思いふとGMバイクのハンドルの真ん中の画面を見ると、世界間移動と書かれた項目がある。

まさか?

俺はその項目を押した。

すると、各世界の町の場所が表示される。

【バーチャル】の第2の町を選択。

するとゆっくりとバイクが宙に浮かび上がる。

そして、バイクの前にワープホールが。

バイクはそのワープホールに向かって走り出した。

思わず目をつぶってしまった。

バシュンと音がしてゆっくりと目を開ける。

眼下には見た事ある建物があった。

【学園】だ。

まじかぁ、どれだけ優秀なんだGMバイク。

俺はそのままバイクを町の東側へと走らせた。

東側へ向かう為の門が見える。

あそこかな?

俺はゆっくりと下降して門の近くにバイクを停めた。

見た感じ誰もいないけど?

俺はゆっくりと門をくぐる。

すると「あ、ちょっとそこのキミ」と呼び止められた。

声をかけられた方を見ると門に寄りかかる1人の人物が。

フード付きのマントを着け誰だか分からないようにしてるけど。

「お久しぶりです、すいちゃん」

その言葉にフードの人は驚いた後、ため息をつく。

そして、こちらに近づいてきてフードを取った。

中から綺麗な青色の髪の毛。

そして、整った顔にきりっとした目がこちらを見る。

「ちょっとは驚いてよね」

そう言って星街すいせいはにこっと笑った。

「普通は誰だ!とか言うものよ」

少し呆れた顔ですいちゃんが言う。

いやぁ、さすがに3回目となると。

ま、1回はぼたんちゃんだけど。

「もしかして、今回付いきてくれるのってすいちゃん?」

「そ、正解。

どう?心強いでしょ」

確かに前に少しだけ一緒に旅した時はめちゃくちゃ楽だった。

敵を一撃で倒していってたし。

「はい、めちゃくちゃ心強いです」

「素直でよろしい。

あとね、4人ほど同行するホロメンがいるんだけど、先に神殿にいるわ」

「あと、4人もですか?」

今回も大所帯になりそうだな。

「それで、ここからその神殿まで遠いんですか?」

「う~ん、遠いけどキミのあれがあるでしょ?」

すいちゃんは俺が乗って来たGMバイクを指差す。

もしかして?

「タンデムで行こう」と笑顔のすいちゃん。

やっぱり。

「乗りたかったんですか?」

俺が乗った後、後ろに乗るすいちゃん。

「まぁね」

自分のお尻側を持つすいちゃん。

さすがに腕を回してはくれないかぁ。

「残念だけどねぇ」

「いや、心の声に答えないでください。

じゃ、行きますね」

俺はそう言ってバイクを走らせた。

向かう先は裏世界【樹海】の入り口がある神殿だ。

 

「あそこでいいんですか?」

途中から空中へと上がり空を駆けるバイク。

すいちゃんは後ろでめちゃくちゃ喜んでいた。

「うん、そうあれだよ」

確かに森の中に巨大な石像と舞台のようなものが見える。

ん?

誰かが神殿の前で手を降ってる。

俺はゆっくりとバイクを降ろした。

「来た来た~」

「お疲れ様~」

降りた俺達に元気に駆け寄ってくる4人のホロメン。

「あ、ねぽらぼのみなさん」

そう、第五世代組の揃い踏みだ。

「久しぶりだね」と笑顔でぼたんちゃんが挨拶してくれる。

「あれから無事に生きてたみたいだね」とポルカちゃん。

「ねねはこの前会ったよね」と何故か威張るねねちゃん。

「雪民さん元気だった?」とまだ雪民じゃないんですが笑顔で声をかけてくれるラミィちゃん。

「それじゃ、今回はすいちゃんとねぽらぼのみんなが付いてきてくれるんですね」

俺の言葉に5人は頷いた。

これはめちゃくちゃ心強い。

「まずは裏世界に行く為の門を開けないとね」

そう言って神殿の方へ歩くすいちゃん。

俺達も後に続く。

「でも、行く為にはスリースターズのモンスターを倒さないと」

確かミオちゃんはそう言っていた。

「あいつね」

すいちゃんが指差したのは舞台の奥にいる巨大な石像。

剣と盾を持つ剣士のような石像だ。

確かに額に星が3つある。

「あの大きさならどうにかなるよ」

そう言って舞台に上がるすいちゃん。

俺達も続こうとするとすいちゃんに止められる。

「危ないから今は観客に徹しなさい」

すいちゃんが舞台に上がってしばらくすると巨人がゆっくりと動き出した。

「すいちゃん!」

俺は奥を指差して叫ぶ。

「コールにはまだ早いよ」

すいちゃんは余裕な笑顔で巨人の方に向く。

そして、右手を上げた。

「ここからが私のオンステージだ!」

パチンと指を鳴らしこちらを向くすいちゃん。

そして、彼女は歌い始める。

それは情熱的な歌。

透き通るような声で。

でも、存在感のある歌声が辺りに響く。

そして、空から絶え間なく隕石が巨人に降り注いだ。

「うわぁ~」

ねねちゃんがその光景を見て口をポカンと開ける。

「すごいねぇ」

ラミィちゃんもポツリと呟く。

「なんか後ろがすごすぎて歌に集中できないんですけど」とポルカちゃん。

それは言えてる。

「なんかバックダンサーみたいだね」とぼたんちゃん。

隕石に撃たれて怯む巨人は確かに踊ってるようだった。

歌は続く。

そして、隕石も降り続ける。

巨人の体は隕石に削られ砕かれ徐々にボロボロになっていく。

そして、すいちゃんの歌が終わった。

ゆっくりと巨人もその場に崩れ落ちた。

「スリースターズなんですよね」

俺はポツリと呟いた。

「ま、【ホロライブワールド】最強の歌姫の一角だからね」とポルカちゃん。

「最強って歌姫がって事じゃなかったんですね」

「ま、歌姫でも最強なのは確かなんだけどね」と俺の呟きに答えてくれるラミィちゃん。

「ほら、扉が現れたよ」

すいちゃんが舞台の上で手招きをする。

「は~い」

元気に返事をしてすいちゃんの方に向かうねねちゃん。

「ま、深く考えないようにしよっか」とぼたんちゃんは舞台の方へ歩きながら言った。

ま、確かにその通りだ。

彼女は味方だしな。

俺はそう自分に言い聞かせながら、この人だけは怒らせないようにしようと誓い舞台に上がる。

舞台の奥には、巨人の持っていた盾が舞台に突き刺さるように立っていた。

「さ、行くよ」

すいちゃんの掛け声に俺達は頷く。

そして、巨人の盾は真ん中で2つに割れ扉のように開いた。

さぁ、次の裏世界は【樹海】だ。

どんなスターズフォーが、第X世代が待っているのか。

どちらにせよ、この戦いに負けるわけにはいかない。

俺はもう一度気合いを入れ直しホロメン達と扉をくぐるのだった。




次は【バーチャル】の裏世界【樹海】です。
果たしてあなた達はスターズフォーを倒す事ができるのか?
ではまた次回に


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真・第五世代組

圧倒的な力でスリースターズを倒した星街すいせい。
あなたは彼女達と共にスターズフォーと第X世代組の待つ【樹海】へと足を踏み入れる。
果たしてあなたはスターズフォーに勝てるのか?


すいちゃんの突撃?ライブで裏世界【樹海】の道が開けた。

俺達6人は【樹海】への門をくぐる。

他の裏世界と同様に少しの違和感の後、俺達は先程とは別の世界へと来ていた。

背後を見ると先程の盾型の門はある。

しかし、その周りを見ると少しの草原の空間がある以外全てが木だった。

「スキル【樹海限定の合成】を習得しました」

機械音声が流れる。

これがミオちゃんが言ってたやつか。

「なんか久しぶりに来たなぁ」

ぼたんちゃんは周りを見ながら言った。

「来た事があるんですか?」

俺が聞くと頷くぼたんちゃん。

「ここはなかなか良い訓練になるんだよ」

訓練って。

「さて、これからどうしようか?」

ラミィちゃんも周りを見渡しながら言った。

「ミオちゃんの話だと、俺がこの裏世界に来た事でイベントが発生するって言ってました。

だから、相手を探さなくても向こうから来るみたいです」

「へぇ、向こうからか」

ポルカちゃんが手の中で小さな玉を2つ転がしながら警戒する。

「はぁ、早く来ないかなぁ」

ねねちゃんはなんかあっちこっち見てるなぁ。

「そんなに俺が待ち遠しいのか?」

「ん?」

森の中から1人の女性がこちらに向かって歩いてきた。

「双犬ベルフェ」

俺はその女性を見て言う。

第X世代組の中でもかなり残忍で好戦的な印象がある。

「よぉ、久しぶりだな、世界の答え。

それにすごい人数の先輩達を連れてきたんだな」

すいちゃんやねぽらぼのみんなを見てベルフェが笑う。

「それほど怖いか?

俺とこいつが」

そうベルフェが言った後、ベルフェの横の景色が歪む。

そして、それは現れた。

巨大な蜥蜴?

いや、目がカメレオンみたいになってる。

でも、口が蜥蜴のように長い。

それになんだ?

背中に羽じゃなく、長い爪の付いた長い手が付いているのか?

今は折り畳んでいるからはっきりと分からないが。

「へぇ、アサシンドラゴンかぁ」

すいちゃんはその蜥蜴を見て言った。

アサシンドラゴン?

「周りの環境に適応力が早く、擬態して姿を隠して敵を襲うドラゴンっすよ」

ポルカちゃんが横に来て教えてくれた。

「ま、かなり厄介な相手ではあるね」

ぼたんちゃんはいつの間にか両手に拳銃を持っていた。

「ま、その人数の先輩程度の相手なら俺とこいつで事足りますけどね」

ニヤニヤしながら言うベルフェ。

「カッチン」

すいちゃんがぼそっと呟く。

「あの生意気なのって後輩なんだよね?」

「え?あ、みんな知らないって言ってたので自称ではあると思いますが」

ワントーン落ちたすいちゃんの声に俺はかしこまって答えた。

「そっか。

やっぱり先輩としては色々と教えてあげないといけないと思うのよ」

「え?」

すいちゃんの1人事のような声に俺はすいちゃんを見た。

顔は笑ってるけど、なんか笑ってないなぁ、これは。

「よし、決めた。

あのドラゴンはキミ達に任すよ」

「はい?」

「了解です」

俺とは対照的に明るく答えるラミィちゃん。

「私はちょこっと用事してくるね」

そう言ってすいちゃんが目の前から消える。

そして、次の瞬間にはベルフェの前に半身になり腰を落として現れる。

「後輩ちゃん、ちょっと場所変えようか?」

「な、に?」

ここからでも分かる今まで聞いた事のないような低い声のすいちゃんにベルフェは慌てて防御する。

その防御の上からすいちゃんはアッパーを放った。

ドカァという凄まじい音と共に空高く吹き飛ばされるベルフェ。

それをすいちゃんは大跳躍で後を追った。

「なんか、某格闘アニメみたいですね」

素直な感想を呟く。

「ま、最強だからね」

ラミィちゃんもポツリと呟いた。

「ほらほら、そんな事よりすいせい先輩に言われた事、こっちもやらないと」

ぼたんちゃんは拳銃を構え、アサシンドラゴンを見る。

「だね!」

ねねちゃんも拳を構えた。

「それじゃ、行きますか!」

ポルカちゃんは手に持っていた玉をアサシンドラゴンに投げつけた。

ぼふんっと玉はドラゴンの目の前で爆発し煙を出す。

そこへすかさずぼたんちゃんは拳銃を撃ちまくる。

ギャー

ドラゴンの叫びが聞こえる。

攻撃が当たったのか?

「麻痺の煙だからね。

しばらくは動けないはず」

ポルカちゃんはにこっと笑いながら言う。

そして、煙が晴れた。

そこには何もいない。

「逃げた?」

ねねちゃんが周りを見るが気配もない。

「森に行ったみたいね」

ラミィちゃんが指差す先に緑の血の後が森に続いていた。

「誘ってるね、これは」

ぼたんちゃんの言葉にホロメン達が頷いた。

「行きますか?」

俺が聞くと「倒さないといけないし」とぼたんちゃんが笑いながら言う。

ただし、森の中は完全に相手のフィールド、油断だけはできない。

俺を中心に前衛にぼたんちゃんとねねちゃん。

後衛にラミィちゃんとポルカちゃんという配置となった。

正直な話、俺が前に出てもあのドラゴンの攻撃を察知する事ができない。

はぁ、完全な足手まといだな俺。

(そんな事はないぞ)

「え?」

「ん?どうかした?」

「いや、なんか誰かの声が聞こえて、気のせいかな?」

俺の言葉に「しっかりしてよ」と笑うラミィちゃん。

本当だ、足手まといかもしれないけど俺の出来る事が必ずあるはずだ。

そして、俺達は森の中へと入って行った。

 

森の中は静かだった。

俺達は森の中の緑の血を辺りを警戒しながら追った。

そして、血が途絶えた。

「ここで仕掛けてくるつもりだね」

ぼたんちゃんの言葉に俺達は辺りへの警戒を強める。

周りは木ばかり。

どこからくる?

「ししろん、目の前!」

ねねちゃんはそう言って自分も前に出る。

ぼたんちゃんはその声に反応して眼前に銃を撃つ。

ギャンギャンっと弾が何かに当たる音がする。

そして、ねねちゃんも迫りくる何かを蹴りあげた。

姿を表す巨大で長い手。

あのドラゴンの背中に付いていたやつだ。

両方の長い手はまた姿を消した。

元の配置に戻るねねちゃん。

「よく分かったね」

「なんか嫌な予感がした」

俺の言葉にねねちゃんは拳を構え森を見る。

しかし、このままあの調子で攻撃が続けばこちらが消耗する。

「周りの木を切り倒したり出来ないんですかね?」

「それは無理だね、この世界の木は切った瞬間に光になって消えた後、すぐに同じ場所から木が生えるからあまり意味がない」とぼたんちゃん。

「そっか、地面を何かで木が生えないように押さえつけたらいけるのかな?」

「何かで地面を押さえつける?」

俺の独り言にポルカちゃんが考える。

「そうか、その手ならいけるかも」とポルカちゃんはラミィちゃんを見る。

ぼたんちゃんもそれを聞いて何か閃いたようで「なるほど、確かに」とラミィちゃんを見た。

「???」とねねちゃんもポンと手を打ちラミィちゃんを見る。

「え?なに?」

注目されるラミィちゃんは困惑した顔で仲間を見た。

 

「なるほどね。

分かった。

でも、寒いの苦手だからなぁ」

「え?苦手なんですか?」

「そうだよ」

俺の言葉にラミィちゃんは知らなかった?と言う顔で答える。

「いや、氷の魔法使うし名前に雪があるからてっきり」

「いや、名前に雪があるから寒いの得意とか関係ないよ。

それを言ったらねねなんてどうするのよ?

鈴を持った女の子が桃から生まれたから桃鈴になったとかになるじゃない」

「え?」

ラミィちゃんの言葉に驚くねねちゃん。

「え?」

それを見てラミィちゃんも驚く。

「そ、そうだよね。

なに言ってるんだかぁ」とねねちゃん。

これは深く突っ込まない方が優しさか。

「ま、まぁ、良いわ。

じゃ、今からやるね」

そう言ってラミィちゃんはポケットから赤い宝石を取り出す。

そして、胸元を指で引っ張り開ける。

「ええ、な、何を?」

その光景に俺は驚く。

「こら、こっちを見ないエッチ!」とラミィちゃんは胸元に赤い宝石を入れ胸元を閉じた。

「え?さっきのは」

「暖房の魔石。

あれを服の中に入れてたら暖かいから」

なるほど。

「それじゃ、行くよ」

ラミィちゃんが両手をあげる。

そして、勢いよく両手を地面に付けた。

「凍れ!」

ラミィちゃんの言葉と同時にラミィちゃんを中心に周りが凍り始める。

地面はもちろん、木や草も全てが凍る。

それは勢いよく広がった。

「オッケー

行くよ」

ぼたんちゃんの声に俺達はその場にしゃがむ。

ぼたんちゃんの手に持たれた機関銃が火を吹き、周りの木を撃ち抜き始めた。

撃たれた木は光に変わり消える。

しかし、地面が凍ってしまっていて新しい木が生えなかった。

そして、俺達の周りは氷原に変わる。

「いた」

少し離れたその場所にあのドラゴンが姿を表す。

木がなくなったから擬態が解けたんだ。

「もらった!」

素早く機関銃がドラゴンを撃つぼたんちゃん。

その弾は全てドラゴンの頭に命中した。

「やった」

さすがぼたんちゃん。

命中精度が抜群だ。

「く、今度はそっちか」

しかし、攻撃を当てたぼたんちゃんが悔しそうに言う。

俺は弾が命中したドラゴンを見る。

すると弾はドラゴンの頭に当たる前に何かに当たり止まっていた。

「氷?」

そう、頭を氷で覆っていたのだ。

「適応力が早すぎる」

「スターズフォーになってそこら辺が強化されてるみたいね」

ポルカちゃんの言葉にラミィちゃんも悔しそうに言った。

「なら、別の手を考える!」

すかさずぼたんちゃんは水平二連銃に赤い弾を込める。

そして、ドラゴンに向かって撃った。

弾は炎の弾へと変わりドラゴンに命中する。

ギャー

ドラゴンが雄叫びをあげる。

「なら、こっちだって」

ポルカちゃんは地面を鞭で叩く。

すると地面から炎を纏った巨大な熊が現れた。

「いけ!」

ポルカちゃんの言葉に炎熊はドラゴンの頭をつかみかかる。

ドラゴンの頭は炎に包まれ燃えていた。

「このまま焼き倒す」

しかし、異変はすぐに起きる。

さっきまで燃えていたドラゴンの頭から煙が出なくなったのだ。

そして「ヤバい避けて!」

ねねちゃんの言葉に俺達は横に飛ぶ。

そのすぐ後に、一条の光が俺達のいた場所を貫いた。

腹に大穴を開けた炎熊がゆっくりと倒れながら光に変わる。

「え、それはないよ」

ラミィちゃんはドラゴンを見て呟く。

ドラゴンの体は半身炎、半身氷になっていた。

「普通は1つにしか擬態しないアサシンドラゴンが2つ同時に擬態したの?」

ポルカちゃんも驚く。

「今の光は?」

「たぶん、体内で炎と氷の対消滅のエネルギーをブレスとして吐き出したんだと思う」

「それって」

「当たれば消滅するね」とぼたんちゃんは言った。

こちらの手に全て対応してくるドラゴン。

このままじゃ、やられる。

そう感じた瞬間俺達に2本の長い腕が掴みにかかる。

「きゃー」

「く」

ホロメン達それぞれが防御はしたものの俺達は両手で挟まれた感じに押さえつけられた。

そこに大きく口を開くドラゴン。

その口の奥からは光が漏れている。

「くそう!」

そう俺が叫んだ時、ドラゴンの口から容赦ない消滅のブレスが放たれた。

 

 

 

 

 

ゆっくりと目を開ける。

そこは真っ暗だった。

でも、何か柔らかい。

「え?なんで?」

その声に俺は死んだのではなく、ラミィちゃんが俺を守る為に抱きしめてくれていたのが分かった。

俺はラミィちゃんから離れ前を見た。

ねぽらぼのみんなは前を見て呆然としていた。

俺も前を見る。

そこにはまだ消滅のブレスが放たれ続けている。

しかし、そのブレスは巨大な魔法の障壁に阻まれてこちらにはきていなかった。

(どうした?

やっぱり吾輩がいないといけないかぁ?)

その声は明らかに弱々しかったが、はっきりと聞こえる声。

その存在は見た目どおり透き通るような体だったが、彼女は片手を障壁の方に向け半身になってこちらを見ていた。

頭には悪魔のような左右対照な巻き角。

ピンクとイエローの長髪に、その悪魔の尻尾にはマイクらしきものが持たれていた。

「な、なんで?」

ラミィちゃんの消え入りそうな声。

「おまえぇ~」

ポルカちゃんは涙混じりの声を出す。

「うぅ」

ねねちゃんは女性を見て泣いていた。

「はは、本当にもう」

ぼたんちゃんもうっすら目に涙を浮かべている。

(ほらほら、こんなところで座っててもどうにもならないぞ。

立ってねぽらぼ!)

女性に言われ立ち上がるねぽらぼのみんな。

そして『まのちゃん!』「まのあろ!」

と彼女に向かって叫んだ。

(申し訳ない、またせてしまったな)

そう言って彼女は笑った。

 

「どうしてここに?」

「生まれてこれなかったんじゃ?」

「なんで透明なの?」

「来るのが遅い」

(そう矢継ぎ早しに言われても困るぞ。

それに見た通りこんな体だ。

詳しい話しは後でゆっくりとな)

そう言って彼女は障壁を張り続けたまま、こちらに降りてくる。

そして、ブレスが止む。

いつの間にかドラゴンの腕の拘束も外れている。

(さて、反撃開始といくぞ)

彼女の言葉に4人は頷く。

(あ、その前に)

そう言って彼女は俺の方に向く。

そして、ねぽらぼのみんなをそれぞれ見た。

ねぽらぼのみんなは深く頷く。

それを見て彼女は笑う。

(改めまして、吾輩は魔乃アロエ。

【ホロライブワールド】第五世代組の1人だ)

その言葉を聞いた瞬間、俺のステータスが勝手に開く。

推し一覧が開かれ、第五世代組の欄の空白にアイコンが浮かび上がった。

そして、そのアイコンが点灯する。

《スキル【運命】が発動しました》

もう聞くことのないと思っていた機械音声が流れる。

《第五世代組全員の存在を確認。

これにより、封印されていた固有スキル【絆】を解放します》

続けて機械音声が喋る。

「固有スキル【絆】?」

「それはラミィ達のスキルだよ」

そう言って笑うラミィちゃん。

「やっと使えるよ」

嬉しそうなねねちゃん。

「さぁ、これから反撃だね」

ポルカちゃんも楽しそうだ。

「真の実力見せてあげないとな」

ぼたんちゃんも嬉しそうだった。

(さて、吾輩はこんな体なので、ちょっとニンゲンさんの体借りるぞ)

そう言ってアロエちゃんが俺の中に入ってくる。

「ええ、借りるって」

(はは、乗っ取るわけではないので安心するのだ)

確かになんか胸の奥から力が溢れてくる。

(では、いこうか!)

『おう!』

アロエちゃんの言葉に俺達は返事をする。

そして、反撃が始まった。

「みんなこれを」

ぼたんちゃんが銃をみんなに投げ渡す。

受け取るけどこんなの使えない。

(固有スキル【絆】発動)

アロエちゃんの声がする。

その瞬間、持ってる銃の知識が頭に突然現れた。

な、なんで?

他のみんなも銃を巧みに操りドラゴンを攻撃する。

その動きも軽やかだ。

俺も負けじとドラゴンを銃で狙い撃つ。

頭にヒット。

すごく自然に動ける。

前からドラゴンの尻尾。

俺は足で地面を踏み鳴らす。

その合図で地面から氷の壁が現れ尻尾を防ぐ。

「やぁー!」

ねねちゃんがドラゴンを蹴りあげる。

その足は氷で覆われ強化されていた。

(尻尾を斬るよ)

アロエちゃんの言葉に俺は頷き鬼切丸を出す。

右手に鬼切丸を持ち尻尾に向かう。

しかし、尻尾は暴れ回っている。

ふと左手の中に何かを握っていた。

玉が2つ?

これって。

俺はその玉を暴れ回る尻尾にぶつけた。

尻尾はたちまち動かなくなる。

これはポルカちゃんの痺れ玉?

好機。

俺は鬼切丸を振り上げる。

鬼切丸の刀身に氷と魔力が集まり巨大な刀になった。

そして、俺はその刀を振り下ろした。

ズバっと切れる尻尾。

他の4人もつららを作り、ドラゴンの足を地面に縫い付けた。

「こっち」

ラミィちゃんの声に俺達はドラゴンの前に集まる。

「いくよ~」

ラミィちゃんが氷で巨大な銃身を作り出す。

それを俺とぼたんちゃんが肩に担ぐ。

ねねちゃん、ポルカちゃんが左右に付いたトリガーを持つ。

そして、全員で魔力をラミィちゃんが作り出した弾に集めた。

ラミィちゃんが弾を銃身に入れる。

ドラゴンも口を開け、ブレスを放とうとしていた。

「くらえ!」

『真・第五世代キャノン!』

某戦隊もののように全員の魔力がこもった弾が打ち出される。

ドラゴンはその弾にブレスを吐いたが全て弾き返し弾はドラゴンを貫いた。

力なくドラゴンはその場に崩れ、そして、光に変わった。

『やったぁ~』

喜ぶ俺達。

これで【樹海】のスターズフォーをやっつけた。

体から出てくるアロエちゃん。

「お疲れ様」

俺はアロエちゃんに言った。

(うん、お疲れ様)

アロエちゃんも笑顔で答えてくれる。

「それよりどういう事か説明して」

そんなアロエちゃんにラミィちゃんが聞く。

(そうだね、実は…)

アロエちゃんが今までの事を話してくれた。

アロエちゃんは第五世代組としてこの【ホロライブワールド】に誕生するはずだったが、ある事故のせいできちんとした形で、この世界に生まれてこれなかった(ホロライブオルタナティブver.IF参照)

しかし、彼女の情報はこの世界に来ておりバラバラで世界に散らばっていたらしい。

それを俺が虹色ダーツを持って旅をしている時に、虹色ダーツの性質、ホロメンを引き寄せる力によってアロエちゃんの情報が虹色ダーツに集まっていったという事だ。

そして、この裏世界に来た時に情報は統合されこうやって出現する事ができたらしい。

「でも、体は?」

ねねちゃんが心配そうに聞く。

(うむ、体の情報はこっちに来てないようで、これからもこの幽霊みたいな体だ。

それに、この状態も長くは続かない。

固定されるものがないからまたしばらくすれば霧散する)

「そんな…」

「どうにかならないのか?」

ラミィちゃんの落胆の声にぼたんちゃんがアロエちゃんに聞く。

(こればかりは魔力でどうにかできるものじゃないから)

ねぽらぼのみんなはそのままうつむいてしまう。

「あつ」

急に胸元が熱くなり俺は胸を押さえる。

「どうしたの?」

ラミィちゃんが心配そうに聞いてきた。

「分からない」

俺はそう答え胸元に手を入れた。

そして、そこにあった物を取り出す。

虹色ダーツ?

俺の持つ虹色ダーツが突然光だした。

そして、1個のペンダントに変わる。

「な、なんだ?」

俺はペンダントに変わった虹色ダーツの説明を見る。

『魔乃ペンダント』

と呼称が変わっていた。

「魔乃ペンダント?」

俺はペンダントの呼称をみんなに伝える。

「どういう事?」

「なんでまのあろの名前が?」

ペンダントを不思議そうに触る面々。

そして、アロエちゃんもペンダントに触れる。

その瞬間アロエちゃんが消えた。

『え?』

慌てる俺達。

しかし、意外なところからアロエちゃんの声がした。

(ここだよ、ペンダントの中)

『え?』

またも驚きペンダントを見る俺達。

(これ吾輩の情報を固定化してくれてる)

「なんだって?」

「それじゃ、これがあれば?」

(そう、消えなくて済む)

『おお~』

喜ぶ一同。

「良かったぁ」

ねぽらぼのみんなは安堵のため息と共に喜んだ。

「それじゃ、これを」

俺はペンダントをラミィちゃんに渡そうとした。

「え?」

「アロエちゃんもみんなと一緒にいた方がいいと思うから」

しかし、ラミィちゃんは受け取らずゆっくりと首を横に振る。

「今日まのちゃんはこの世界に生まれたの。

だから、あなたがまのちゃんにこの世界をもっと見せてあげて」

そう笑顔で伝えられる。

ゆっくりとペンダントを握る。

「俺でいいんですか?」

その言葉に4人は力強く頷いた。

「分かりました。

必ずアロエちゃんに世界を見せてあげます」

(うむ、よろしくなニンゲンさん)

「はい」

そうして、1つの戦いは幕を降ろす。

しかし、まだ戦いは終わっていない。

もう1つの戦いはまだ【樹海】の奥で続いている。

ただ、その戦いももう終わろうとしていた。




このお話はフィクションです。
完全妄想で書いていますので、大目に見てやってください。
さて、このお話はかなり長くなってしまいました。
書き始めたら終らずここまでになってしまいましたが、最後まで読んでくださればありがたいです。
【ホロライブワールド】の第五世代組も勢揃いし、裏世界編も半分が終わろうとしています。
では、次回すいちゃんの活躍にご期待ください。

固有スキル【絆】について。
第五世代組の固有スキル。
スキルを発動すると一人一人がメンバー全員の力を使う事が出来る。
1人で5人分の能力を持つ事になる。
強力な為と5人分の能力を使うという事でプレイヤーの誰かが5人を認識、推し一覧を点灯させない限り使えなかった。
今回、あなたが出会った事で封印が解除された。


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最きょうの歌姫の一角

双犬ベルフェをガード上からアッパーで吹き飛ばした星街すいせい。
彼女はそのまま双犬ベルフェを追った。
そして、彼女達の戦いが今始まる。


「ぐわぁ~」

ドン、バキバキと地面に落ちた後、木々をなぎ倒しながら吹き飛んだベルフェ。

すいせいのアッパーを防御の上から受けて、アサシンドラゴンからかなり飛ばされたのだ。

何本かの木に当たって止まり座り込んでいるベルフェの前に、後を追ってきたすいせいがトンと軽やかに降り立つ。

「…」

「あんなので終わるほど弱いの?」

黙って座り込んでいるベルフェにすいせいが静かに聞いた。

「は、油断して近づいてこないのか」

そう言って普通に立ち上がるベルフェ。

立ち上がったベルフェは埃を落とすように体を払う。

「いやぁ、あんなに偉そうに言っといてあれで終わるなら拍子抜けだったわ」

すいせいはベルフェを見ながら言った。

「は、なら、俺が立ち上がってよかったな。

拍子抜けしなくて」

「そうね、後輩ちゃんにいろいろ教えられるし」

「何を教えてくれるんだか。

ま、いいさ。

さ、戦おうぜ、先輩さんよ。

俺の飢えを満たしてくれよ」

「いいわね、その中二病な感じ嫌いじゃないわよ」

「うっせぇ!」

ベルフェは一瞬ですいせいの間合いに入る。

そして、目にも止まらぬ速さで拳をすいせいに叩き込んだ。

「おらおら、どうしたよ、先輩!」

すいせいはガードを固め防戦一方だ。

ベルフェの猛攻に下がるすいせい。

だが、ベルフェの前からいきなりすいせいが消える。

空を切るベルフェの拳。

「な?」

「足元がお留守だよ、後輩ちゃん」

突如しゃがんだすいせいはベルフェの足を払う。

「く」

足を払われ態勢を崩したベルフェに、すいせいはそのまま半身で間合いに入り、左肘を打ち込んだ。

「がぁ」

ベルフェはたまらず間合いを取る。

「くそぅ」

お腹を押さえすいせいを見るベルフェ。

「おまえ、なにもんだ!」

ベルフェはすいせいに向かって叫ぶ。

「何者って言われても星街すいせいだけど?」

「そんなのは知ってる!

歌声好きでファンだから分かってる!」

「あ、それはどうも」

いきなりファン宣言されてすいせいは照れながら頭を下げた。

「俺が聞きたいのは、その強さだ。

オリジナル世代は固有スキル【歌】が他のホロメンより強力なのは分かってるが、基本の能力はみんな一緒だろ」

「そうね」

「なら、なんであんたは【歌】を使ってないのにそんなに強い、明らかに普通じゃない」

「そうね、普通じゃないかもね」

そう言ってすいせいはニヤリと笑った。

それを見てぞくっとベルフェは背筋に冷たいものが走った感じがした。

「くそう」

ベルフェはライダースーツのような服の胸元から1枚のカードを取り出した。

「ん?」

すいせいはその様子をじっと見ている。

「切り札を使わせてもらう。

あんたは得体がしれないからな」

そう言ってカードを額に持ってくるベルフェ。

「これはデビルカード、俺の最後の封印を解くものだ」

デビルカードがどす黒い気に変わりながらベルフェの中に流れ込む。

ベルフェの体に異変が起きる。

そして、一瞬黒い塊に包まれたかと思うと、背が伸び大人びた女性に変わっていた。

服装もライダースーツのようなものから、かなりスリットのはいったチャイナドレスのようなものに。

両肩に犬の頭が胸の中心に犬の顔のブローチが付いていた。

「へぇ、すごいね」

すいせいは姿の変わったベルフェを見てそう呟く。

「あのカードの悪魔はベルゼブブでしょ。

名前からベルフェゴールかと思ったけど」

「ああ、それはある仲間と名前を交換してるんだよ。

ベルフェの方が格好いいだろ?」

「そう?

で、ハエの王の要素どこにあるのよ?」

すいせいはベルフェを見ていう。

見た感じは黒い犬の装飾しかない。

「は?

これだよ」

ベルフェは背中を見せて、その長い髪を上げる。

するとかなり大きく背中が空いておりその背中の真ん中に4枚のハエの羽のタトゥーがあった。

「さすがにハエの顔とかキモいだろ」

ベルフェは振り返り言う。

「ま、確かにね」

ベルフェの心底嫌そうな言い方にすいせいは笑う。

「さ、第2ラウンドといこうや、すいせい先輩」

「いいわよ、かかってきなさい、後輩ちゃん」

「後輩ちゃんじゃねぇ、ベルフェだ!」

またも、同じように間合いを詰めるベルフェ。

そして拳の乱打。

すいせいはまたもそれをガードする。

そして、すいせいは足を狙おうとしゃがもうとした瞬間、今度はベルフェのキックでガード上からすいせいは立てらされる。

「狙わせないぜ」

拳と蹴りを合わせて攻撃をするベルフェ。

すいせいは防御するしかなかった。

そのまま押されるすいせい。

いける。

そうベルフェが思った瞬間。

ベルフェは大きく後ろに下がった。

「あれ?

どうしたの?」

防御したままのすいせいはベルフェに聞く。

「なん、なんだよ」

ベルフェは汗を流した。

それは疲れや暑さからではない。

冷や汗だ。

攻撃を繰り返していたベルフェがガード下のすいせいの顔を一瞬見た時に寒気がした。

その口元が大きく笑っていたからだ。

「なんで笑ってる。

押されてんだぞ」

「別に押されてたら悔しがったり、泣かないといけないって訳じゃないでしょ?」

「そうだが、それでも」

「おかしい?

ま、正直なところ嬉しいのよ」

ガードを解き、すいせいは手足を振る。

「ホロメンの仲間達ってさ、なんかみんなほのぼのな感じでね。

好戦的な子っていないのよね。

だからかな?

私もほだされちゃって」

「ほだされる?」

「そう、毒気を抜かれるってやつかな。

でも、後輩ちゃんは違った。

めちゃくちゃ好戦的で本気でかかってくる。

だから、嬉しいのよ。

みんなに見せない自分が出せて」

そう言ってすいせいはベルフェに向かって構える。

「く」

ベルフェもすいせいに向かって構えた。

「でも、まだ隠してるよね?

後輩ちゃん、変身した割にはパワーとスピードが上がっただけだもん」

「へ、分かるのかよ」

「出しなよ、本気。

それとも出さずにやられる?」

「後悔するぜ。

俺がなんで力を使わないか、それはな使うとすぐに決着が着くからだよ」

「へぇ、楽しみじゃない?」

「なら、今からは食事の時間だ!」

ベルフェの姿が消える。

「後ろ?」

すいせいの読み通り背後に現れたベルフェはすいせいを蹴った。

かろうじてガードするすいせい。

「?」

吹き飛ぶすいせいを追ってベルフェは突撃する。

そして、拳のラッシュ。

ガード上からまたしても打撃を与える。

しかし、さっきと違うのはすいせいがガードしたまま片膝を地面に付けてる事だ。

「おら!」

すいせいを蹴り飛ばすベルフェ。

すいせいはガードしたまま、背後の木に勢いよくぶつかった。

「く」

「どうだ?

俺の暴食の力は」

「なるほどね」

ゆっくりと立ち上がるすいせい。

「後輩ちゃんの攻撃を受ける度に力が失くなってる感じがしたけど、食ってるんだね」

「そう、俺の体に触れたものの力を食らい俺のものにする。

攻撃を受ければ受けるほどあんたは弱くなり俺は強くなるんだよ」

「なるほどね」

すいせいはニヤリと笑う。

「また、笑うのか!」

ベルフェは怒った口調ですいせいに言った。

「あれ?笑ってた?

ごめんね、そんな気はないんだけどね」

笑ったまますいせいはベルフェを見る。

「ほら、続きをしよう。

まだ、私は倒れてない」

「く、化物め!」

ベルフェは再度すいせいに仕掛ける。

しかし、すいせいは当たれば力を食われると分かっているのに避けずに防御を続けた。

「食われるの分かってんだろうが!」

ベルフェは怒った声で叫びながらすいせいのガード上から殴り続ける。

このまま押しきれば勝てる。

見た感じではそう見えるのに何故かそう思えない。

ベルフェの心の中ではずっと警鐘が鳴り響いていた。

ガ!

ベルフェは右ストレートをすいせいのガード上から打った瞬間止まる。

すいせいがカウンターをしたわけではない。

だが、攻撃は止まった。

「おまえ、なんだ?

その気は」

ベルフェはすいせいを見ながら言った。

「おまえじゃないでしょ。

私は【ホロライブワールド】に現れた最きょうの歌姫の一角、星街すいせいよ」

「違う、おまえは誰だよ。

その俺達と同じどす黒い気を持つおまえは!」

「聞こえなかったかなぁ?

私は【ホロライブワールド】に現れた最恐の歌姫の一角、星街すいせいよ」

その声は今までに、すいせいから聞いた事のないような低い声だった。

ベルフェは恐怖で後ろに下がる。

しかし、下がれない。

もう、すいせいが目の前に追い付いている。

「さぁ、私のガス抜きに付き合って貰うわよ。

コウハイちゃん」

 

ダランと手は垂れ下がり、地面に膝を付くベルフェ。

その頭をすいせいは片手で持ち上げていた。

はぁはぁと荒い息のベルフェ。

対照的にすいせいの息は乱れていなかった。

「…」

黙ってベルフェを見るすいせい。

「…」

ベルフェもただ荒く息をするだけだった。

「どう?

満足した?」

すいせいの声はいつもの声に戻っている。

「うっさい」

弱々しくベルフェは言う。

「もう、腹一杯だよ」

振り絞るように言った。

「そ、ならいいわね」

すいせいはゆっくりとベルフェを座らせ頭から手を離した。

「くそう、勝てなかった」

そう言ってそのまま仰向けに倒れるベルフェ。

「いい線いってたと思うけど」

そんなベルフェを見ながら笑うすいせい。

その笑顔は先程とは違うどこか暖かみのある笑顔だった。

「楽しかった?」

「楽しかった」

すいせいの質問に素直にベルフェは答えた。

「そ、なら先輩からの教えはここまでにしとく」

「何教えてくれたんだよ」

憎まれ口を叩いてはいるが、ベルフェの声はどこか穏やかだった。

「それはベルフェが考えなよ」

「え?」

ベルフェは起き上がりすいせいを見る。

初めて自分の名を呼んだ。

「お、おい」

「そろそろ戻らないとね。

後輩ちゃん達待ってるから」

「あ、ああ」

少し寂しそうにベルフェは答える。

「また、お腹が空いたらおいでよ。

お腹いっぱいにして上げるよ」

すいせいはそう言って笑う。

「ああ、絶対にリベンジしてやる」

そう、ベルフェは笑顔で言った。

「へぇ、笑顔可愛いじゃん」

「うっせえ」

「じゃぁね」

そう言ってすいせいは来た時と同じように大跳躍で戻っていった。

残されるベルフェ。

また、仰向けに倒れる。

負けたけど、楽しかった。

ゆっくりと目を閉じる。

しばらくはこのままでいようとベルフェは思った。




「あ~らら、負けちゃったんですねぇ」
その声にベルフェは疲れた体を無理やり起こして立ち上がる。
「せっかくいい気持ちで休もうと思ったのに誰だよ」
1人の女性が木の影から現れる。
「ん~
そうですね。
名乗りは出来ませんが、魅惑の女研究者って事で」
そう言ってピンクの髪の亜人女性は笑った。
「ふざけやがって」
さっきの戦いでかなり力を使ったベルフェは立つのがやっとだった。
「ま、すいちゃん先輩のお陰で簡単にゲットできそうです」
「なに?」
亜人の女性は自らのふとももを撫でる。
するとあの紋章が浮かび上がった。
消える亜人女性。
「見えなかったでしょ?
スピード強化しましたので」
「く」
背後に突然現れた亜人女性にどうにか攻撃をしようとするベルフェ。
しかし、軽く避けられる。
「触りませんよ、食べられるといけませんから」
そう言って彼女は胸元から拳ぐらいの楕円形のカプセルを取り出す。
「よっと」
カプセルをベルフェに投げる。
「なんだ!」
カプセルがベルフェに当たった瞬間、カプセルに付いている宝石にベルフェが吸い込まれた。
「よし、ゲットだぜ!」
嬉しそうにカプセルに近寄る亜人女性。
ひょいとカプセルを拾い胸元に入れる。
「これでラプちゃんの依頼達成と。
余裕余裕。
すいちゃん先輩の強さも分析出来たし、役得役得」
そう言って亜人女性は服のポケットから機械を取り出し操作する。
現れるワープホール。
「さてと、早く帰って分析の続きしないと」
ニコニコ笑顔でワープホールに入る亜人女性。
後にはただ無人の樹海が残った。


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【魔界】のヒロイン達

あなたは真・第五世代組となんとかアサシンドラゴンを討伐する事ができた。
双犬ベルフェは星街すいせいによって撤退した。
次の裏世界は【魔界】
あなたはGMバイクに乗って【魔界】の入り口、大霊園に向かうのだった。


俺は今、大霊園の入り口に立っていた。

【樹海】でスターズフォーを倒した俺達の元に大跳躍ですいちゃんが戻ってきた。

ベルフェの事を聞くと「ごめん、逃がしちゃった」とごまかし笑いで言われた。

ま、本人は何故か気分良さそうだったのでそれ以上俺達も聞かなかった。

その後、俺は次に【ファンタジー】にある裏世界【魔界】に行く事を伝えた。

ねぽらぼのみんなはそれぞれの場所に戻る事になった。

すいちゃんは何か胸騒ぎがするらしく少しこの辺りを見て回ってからまた世界を回ると言っていた。

ペンダントの中のアロエちゃんはしばらくはペンダントの中で眠るらしい。

今回出てきたのもまだ情報が結合した直後だったので、まだ完全ではないと言う事だ。

ただ、眠っているといってもペンダントの外で起こっている事は分かっているのでいざって時は助けてくれると言っていた。

そして、俺はみんなと別れGMバイクに乗ってここに来たわけだが。

相変わらず霊園だけあって静かだなぁ。

るしあちゃんはここに1人で管理の仕事している訳か。

ま、ガイコツはいるけど。

掃除道具を持ったガイコツは相変わらずうろうろしている。

俺は霊園の道を歩きながら、るしあちゃんがいる建物に急ぐ。

「こんにちは」

建物に入る時に中に声をかける。

この一帯はいつも暗いから今が朝か夜なのか分かりにくい。

「はいなのです」

建物の奥からるしあちゃんが出てきた。

「あ、お久しぶりなのです」

「はい、ご無沙汰してます」

「スターズフォーの事ですよね?」

「知っていたんですか?」

「はい、なのです」

スターズフォーの事はミオちゃんから連絡があったらしく、その後、るしあちゃんは霊園内のすべてのモンスターの登録を確認していたと言う。

「それで分かったのが、どのモンスターがスターズフォーになっているかです」

「そんなこと分かるんですか?」

「ふふん、この大霊園の主ですから」

「すご」

「ま、かなり調べるのに時間はかかってしまったのですが」

るしあちゃんは疲れたようにふぅとため息をついた。

「それで、そのモンスターは?」

「ちょっと待つのです。

【魔界】への門に行く間に話しますから」

そう言われ、俺はるしあちゃんと共に門へと向かう。

道中、るしあちゃんからモンスターの事を聞いた。

スターズフォーになっているであろうモンスターは全部で5体。

その内の三面オーガとアサシンドラゴンはもう討伐している。

残りは【魔界】にいるであろうキングヒュドラ。

【海底都市】にいる皇帝イカ。

【天界】にいる大怪鳥ロックフェス。

皇帝イカは俺が第三世代組と海に出た時に、レヴィと一緒に出現して出会っている。

という事は今から行くところはキングヒュドラがいる確率が高いのか。

「さ、着いたのです」

【魔界】への門の前に着く。

「今回共に行く他のメンバーは向こうで待ってるはずです。

ま、【魔界】なので魔族関係のホロメン集合になると思いますけど」

と笑うるしあちゃん。

ん?

なんか寂しそうだな?

今回は裏世界に行く条件は満たしているのでそのまま行ける。

ゆっくりと【魔界】への扉を開くるしあちゃん。

そして、俺達は【魔界】へと旅立った。

 

「ここも久しぶりになるのかな?

最近来た感じもするんだけど」

「それだけ短時間でいろいろと行ってるからだと思うのです」

るしあちゃんは【魔界】を見ながら言った。

「るしあちゃんは懐かしい?」

「そうですね、大霊園の管理をしているといろんなところにはあまり行けないのです。

なのでキミには感謝してるのですよ。

るしあをいろいろなところに連れて行ってくれてますから」

「そっか」

俺達はしばらく門の前で【魔界】を見ていた。

「なぁ~に2人で黄昏てるのよ」

『え?』

振り向くとそこにはマリンちゃんが笑顔で立っていた。

「マリンちゃん?」

「え?

マリン、なんでここに?」

「はぁ?

船長がここにいたらいけないんですかぁ?」

そう言いながら船長が笑う。

「私達もいるよ」

そう言って門の裏から出てくるフレアさん、ノエルさん、ぺこらちゃんの第三世代組。

「第三世代組全員集合じゃないですか?」

「あれ?

今回は魔界組で行くって聞いてたのに」

「変更したぺこ」

るしあちゃんの言葉にぺこらちゃんが即答する。

「なんかさ、みんなで会いたくなっちゃって」

そう言ってノエルさんがるしあに近づく。

「ん?」

ノエルがるしあを抱きしめる。

「ちょっとどうしたのです?ノエル?」

「別に」

それを見た第三世代組もその上から抱きついた。

「寂しくなったんだって」

「え?

ロボ子さん?」

いつの間にか横に立っているロボ子さんが声をかけてきた。

「今回は彼女達の引率かな」

「引率って、あの5人には必要ない気がしますけど」

「まぁね。

ほらほら、みんなそろそろ行くよ」

ロボ子さんが第三世代組に声をかける。

『は~い』

だんご状態の5人がこちらに来た。

「さぁ、エネルギー充電出来たし頑張るぞ」

笑顔のノエルさん。

「るしあはエネルギー吸い取られた感じがいなめないですけど」

「ええ~」

るしあちゃんの言葉にノエルさんが驚く。

「うそうそ、元気分けてもらったのですよ」

とるしあちゃんは笑った。

本当になんか元気出たみたいだな。

「さ、それじゃ、行こうか」

「向かう場所は?」

俺はロボ子さんに聞く。

ここから東にずっと行ったところにある魔晶石が乱立する広場に、キングヒュドラが出現したと言う情報が入ったらしい。

「じゃ、そこに」

「ええ」

ロボ子さんが頷く。

俺達は気合いを入れ直し、その広場に向かった。

第三世代組が歩く後ろを俺とロボ子さんが歩く。

今からスターズフォーと戦うのだが、第三世代組のみんなは普段どおり和気あいあいと賑やかだ。 

「余裕ありますよね、彼女達」

俺は隣を歩くロボ子さんに言った。

「そうでもないと思うよ。

彼女達なりに戦闘準備してるんだと思う。

ただ、あの5人は仲間がいるとほぼ無敵だからね」

そう言ってロボ子さんは微笑んだ。

「彼女達、第三世代組は不滅だと思うよ。

だから、今回も彼女達とスターズフォーを倒してね」

「え?」

ロボ子さんは広場に向かう森の中で立ち止まる。

「ボクは少し野暮用が出来ちゃったから」

「ロボ子先輩」

フレアさんが俺達のところに来る。

「後はよろしくね」

「はい、行こう」

そう言ってフレアさんは俺の手を引き第三世代組の元へ。

みんなロボ子さんの方を見ていた。

笑顔で軽く手を振るロボ子さん。

俺はロボ子さんに頭を下げた後、第三世代組と共に先を急ぐのだった。




更新が遅くなりました。
今回の裏世界は【魔界】となります。
次回は1人その場に残ったロボ子さんのお話。
では、次回お楽しみに


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心のあるロボット

あなたと別れ1人森に残ったロボ子さん。
果たして彼女はそこで何を感じたのか?


頑張ってね、冒険者くん、第三世代組。

森に1人残ったロボ子はそう思いながら6人を見送った。

「さて、そろそろ姿見せてくれてもいいんじゃないかな?

それとも待ってるボクを置いて、あの6人を追いかける?」

ロボ子はその場で誰かに声をかけた。

「まさか、大先輩が待ってくれているのに置いていくなんてしませんわ」

ロボ子から少し離れた木の影から1人の女性が姿を表す。

その服装は露出度の高い黒いドレスだった。

誰もがその美貌に誘惑されそうなプロポーションを持ち、誰もが騙されそうになる小悪魔な笑顔を浮かべていた。

「はじめまして、ロボ子先輩。

美色アスモといいます」

アスモは丁寧に頭を下げてロボ子に挨拶する。

「こちらこそ、よろしくね。

アスモちゃん」

ロボ子も笑顔で挨拶を返した。

「しかし、よく私の存在に気がつきましたね」

「そりゃ、ボクは高性能だからね」

と笑顔で言うロボ子。

「確かにそのようですね。

しかし、あと1人私に気がついていた人もいるみたいでしたけど?」

アスモも笑顔を絶やさず話しかける。

「ああ、フレアね。

彼女は自分のスキルで気がついたみたい」

「スキルですか、それは後で戦うのに厄介ですね」

「ん?

大丈夫。

彼女達と戦う事はもうないから」

2人とも笑顔で向き合ったままだ。

「確かにまずは先輩を倒さないといけないですからね」

「そうね、あなたを止めるのが今のボクの役割だからね」

笑顔だがお互い引かない2人は、もう臨戦態勢に入っていた。

「ああ、あと1つだけお聞きしたいのですけど」

「なに?」

「あなた達と戦った私の仲間の2人が戻ってこないんですが知りませんか?」

「知らない。

ボクの知りうる情報の中には該当がない」

とロボ子は即答する。

「そうですか、分かりました。

あなた達を倒した後、ゆっくりと探す事にします」

そう言ってアスモは胸元から1枚のカードを取り出した。

そのカードで片目を隠すアスモ。

ロボ子はそれをじっと見守っている。

「優しいのですね。

待ってくれるなんて」

「本気で負けないと納得できないでしょ」

「確かに」

ロボ子の言葉に笑ってアスモはカードの力を解放する。

ガードがどす黒い気に変わりアスモを包み込む。

そして、姿の変わったアスモがそこに立っていた。

豊満な体に張り付くような服。

胸元や足は露出され、見るものを魅力する為だけのような衣装だった。

両肩には牛と羊の頭部の骨のようなショルダーガードが着いていた。

背中の小さな悪魔の羽も大きくなっている。

「さぁ、お待たせしました。

始めましょうか?」

アスモはそう言ってロボ子に手の平を向ける。

それを見てロボ子は真剣な顔で両足を少し開いた。

 

先程から多数の爆発が起き、木々がなぎ倒され、森は姿を変えていく。

アスモは多数の魔方陣から爆発魔法をロボ子に放ち続けていた。

ロボ子はその魔法を時には回避、時には素手で弾き飛ばし直撃は避けている。

いつしかアスモからは笑みが消え、片手で放っていた魔法も両手になって放っている。

かなりの数を同時に放っているのにも関わらず未だに決定打を与えられていない事実にアスモはロボ子に恐れを抱いていた。

普通ならこの数ならいくつは当たっていいはずだ。

それに魔法、爆発魔法を素手で弾き飛ばすなんて普通じゃない。

爆発魔法は何かに当たれば爆発する。

それを爆発させずに弾き飛ばすなんて。

ふと、爆音の中、爆風によって何かが聞こえてくる。

これは歌?

そう、アスモはさっきまで気づかなかったが、今歌が聞こえてきているのだ。

「オリジナル世代のスキル!」

アスモは魔法を止め、ロボ子の周りに地雷の魔法を置く。

ロボ子もそれを察知しその場で止まった。

「やはり歌ってたんですね」

爆音が止み、その歌声は今ははっきりとロボ子から聞こえる。

「もうちょっと歌いたかったんだけど」

歌を止め、ロボ子は笑顔でそういった。

「オリジナル世代のスキル【歌】

歌に力を持たせて対象に力をおよぼすスキル。

その力で回避してたんですね」

「ん~ちょっと違うけどね。

回避はボクの素の力だよ。

【歌】で魔法に触れても影響を出させないようにしてただけ」

なるほど、それで爆発魔法を素手で弾いてたんですね。

アスモは納得する。

しかし、同時にアスモの魔法がロボ子には通じない事も分かる。

魔法を自分に影響させない【歌】があるかぎり魔法は聞かない。

なら、アスモはある魔法をロボ子に放つ。

ロボ子はその速さに一瞬動きが遅れた。

魔法がロボ子の顔に命中した。

「?」

ロボ子は何かを喋ろうとしたが声は聞こえない。

「魔法を使って先輩の顔の周りを真空状態にしました。

ロボットの先輩はそれで死ぬ事はないでしょうが、もう歌えないでしょう」

アスモはそう言って両手を構える。

アスモの周りに多数の魔方陣が現れた。

火の魔法、氷の魔法、雷の魔法、土の魔法、風の魔法。

アスモが使える全種類の属性魔法を放つつもりだ。

ロボ子はその場から動かない。

いや、動けない。

地雷型の魔法が足元に置かれているからだ。

「これで、私の勝ちです」

アスモは全ての属性魔法をロボ子に放った。

魔法はロボ子に当たりその属性から反発したり、融合したりし爆発や消滅を繰り返す。

周りにあった地雷魔法もそれに巻き込まれ誘爆した。

全ての魔法が終わり、その場には誰も立っていなかった。

そう普通なら。

そこにはさっきと何も変わらない姿でロボ子が立ってアスモを見ていた。

「な、なぜ…」

その姿にアスモは恐怖する。

全てをぶつけた。

【歌】も封じた。

それなのになぜ無傷で立っていられる?

ふとアスモはロボ子の口元を見た。

ロボ子は何かを喋っているようだった。

いや、喋るスピードの口の動きじゃないあれは歌っている?

徐々に聞こえないはずの歌が聞こえてくる。

それは優しく誰かを思い包み込むような歌。

そして、ロボ子の顔の周りの真空魔法が消えた。

「ふぅ、やっと声が通る」

ロボ子は疲れたように言った。

「なぜ?

【歌】は封じたはず」

「ボク達オリジナル世代のスキルは歌が誰かに聞こえなくてもいいんだよ。

聞こえなくても伝わらなくても誰かの為に歌う、その心がボク達のスキル発動の条件だから。

ま、ボクはロボットだけど心はここにあるからね」

そう言って胸に手を当てるロボ子。

「なぜ最強のスキルか分かりましたよ」

そう言ってアスモは両手を上げる。

「降参かな?」

ロボ子はそれを見て聞いた。

「はい、私の魔法が一切通じないなら私の負けです。

私は他のメンバーのような接近戦は得意ではないので」

アスモは素直にそう伝えた。

ロボ子はそんなアスモをじっと見る。

「嘘は言ってないみたいだね。

わかった、これで終わりにするよ。

ボクも降参した相手に攻撃するような事はしたくないからね」

「なら、吾輩が貰おうかな」

突如アスモの背後にワープホールが開き、巨大な手がアスモを掴む。

「え?」

「な、なに?」

アスモはそのままワープホールへとひきづりこまれた。

ロボ子も一瞬の出来事で動けなかった。

ロボ子はしばらく辺りを警戒する。

しかし、何も起こらない。

アスモとの戦闘の後、すぐに冒険者さん達の方に向かおうと思っていたロボ子だったが、そうもいかないようだ。

ロボ子は今戦っているだろう広場の方を見る。

彼等なら大丈夫。

そう、願いながらロボ子はうっすらと残るワープホールの痕跡を追う事にした。

自分達の知らない裏で何かが確実に起きようとしている。

ロボ子はそれを確かめる為に1人追跡を始めるのだった。




ロボ子さんのお話でした。
オリジナル世代の圧倒的な力。
この世界のチート級のまだ上をいくチートの方でした。
さて、ロボ子さんの戦闘に割り込んできた手は一体誰だったのか。
そして、第X世代達以外に裏で何かを企む集団とは?

次回はキングヒュドラ戦です。
お楽しみに


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【魔界】の討伐者達

【魔界】に入り、スターズフォーを討伐に向かうあなた達。
途中、ロボ子さんと別れたあなた達は、ロボ子さんが気になるもスターズフォーがいる魔晶石の乱立する広場に向かうのだった。


ロボ子さんと別れた後、俺達6人は魔晶石の乱立する広場に来た。

そこには想像以上の大きさの9つ首のドラゴンが、魔晶石を食い荒らしていた。

 

「でかいぺこね」

まだやつまでには距離がある。

しかしそれでもそのドラゴンは大きく見える。

「フレア、どう?」

ノエルさんがフレアさんに聞く。

フレアさんは静かに横に首を振った。

「そっか」

それを見てノエルさんはメイスをぎゅっと握る。

「どう言うことですか?」

俺は横にいるマリン船長に聞いた。

「フレアがあのドラゴンと戦ったらどうなるか【予見眼】で見たんだと思う。

だけど、いい結果が見れなかったのかな」

そうか、それほどあれが強すぎるのか。

「正直に言うわ。

あれに勝つには6人全員で戦わないといけない」

フレアさんは残念そうに言った。

「はぁ、やっぱりぺこか。

後ろで応援がよかったぺこなんですけど」

「るしあもです」

はい?

「はぁ、船長1人かっこよく討伐して威張り散らかそうと思ってたのですけど」

「うう、フレアとのツーマンセルがよかった」

え~と。

「え?みんな残念がってたのって6人で戦わないといけないから?」

『そう』「ぺこ」

いや、6人同時に答えられましても。

「え?なんか苦戦するとか。

やられそうだからとかじゃなくて?」

「何言ってるぺこか?

ぺこら達が揃ってる限りそれはないぺこ」

「です。

るしあ達を追い詰めるなら、オリジナル世代の先輩方を連れて来て貰わないと」

どれだけの戦力なんですかあなた達は。

「と言うわけでいつも通りの作戦でいこうか」

フレアさんが俺達に言った。

「またぺこかぁ」

その言葉にぺこらちゃんがはぁとため息をつく。

「それが一番生存率高いんだって」

フレアが苦笑しながら言った。

「じゃ、作戦を説明するね」

まず陣形について。

先頭をぺこらちゃん。

その両脇一歩下がった位置にノエルさんとマリン船長、ぺこらちゃんから少し離れた場所に俺、フレアさん、るしあちゃんとなった。

「矢印の陣ね」

とフレアさんは言った。

この世界の陣形かな?

そして、ノエルさんとマリン船長、るしあちゃんのジャイアントスケルトンでキングヒュドラの8本の首を押さえている間に残りの俺達で首を1本ずつ倒していくと言うものだった。

「ぺこらの【幸運眼】があるから攻撃のほとんどは受けないと思うけど、油断はしないで。

攻撃が来たと思ったらぺこらの後ろに隠れる感じで」

「盾じゃないぺこなんですが」

フレアさんの説明に苦笑しながらぺこらちゃんが言った。

「それじゃ、ノエル、マリン、るしあ。

3人も各種ブレスに気をつけて」

「OK」「まかせなさい」「わかったのです」

そして、俺達6人はキングヒュドラに攻撃を開始した。

 

まずは背後からフレアさんの弓とるしあちゃんのジャイアントスケルトンが近くの魔晶石を投てきして先制攻撃。

キングヒュドラはその巨体をこちらに向けた。

「それじゃ、行くよ!」

ノエルさんは【金剛眼】を使いヒュドラに走った。

「さて、エンペラータイムといきましょうか」

マリン船長はその眼帯を外し、【皇帝眼】を使う。

「2人のサポートは任せるのです」

るしあは2体のジャイアントスケルトンを操り2人と共にヒュドラの首を押さえにかかる。

「じゃ、こちらも」

「行くぺこよ」

1つ残ったヒュドラの首がこちらに向く。

ヒュドラが大きく息を吸った。

ブレスだ。

「【幸運眼】ぺこ!」

ぺこらちゃんも眼の力を解放した。

その直後ヒュドラの口から炎が。

俺達に直撃コース。

しかし、炎はこちらまでこなかった。

ちょうどマリン船長がぶっ飛ばした魔晶石がこちらに飛んできて運良くぺこらちゃんの前に落ちたのだ。

「これが【幸運眼】の力」

「ま、理不尽に運が働くからね」

俺のぼやきにフレアさんが笑顔で答えてくれた。

「このまま、押していくよ」

フレアさんはヒュドラの目に矢を放つ。

矢を受けヒュドラが首を上げた。

俺はその隙をついてヒュドラの首を一閃した。

ヒュドラの首が飛ぶ。

そのまま、ヒュドラの首が光へと変わる。

「次!」

フレアさんの言葉にノエルさんがヒュドラの1首をメイスで攻撃してこっちに吹き飛ばす。

メイスの一撃で目を回すヒュドラ。

そこを俺は横から上段切り落としでヒュドラの首を落とす。

「よし、マリン、お願い」

ちらっとこちらを見たマリンさんが、ヒュドラの1首をフラッグハルバードでこちらに殴ってよこす。

ただ、そのヒュドラはちょうどブレスを吐こうとしていたとこだった。

「ちょ、マリン」

ぺこらちゃんがマリン船長に向かって叫ぶ。

両手を合わせてごめんとマリン船長が一瞬謝っていた。

稲妻のブレスが頭上から俺達に降り注ごうとした時、運良く先程放って地面に刺さっていたフレアさんの矢に稲妻が落ちる。

「さすがぺこらちゃん!」

「え?あ、任せるぺこ」

ちょっと頭押さえて座ろうとしてたけど。

フレアさんがヒュドラの顎に向かって複数の矢を打つ。

矢はヒュドラの顎を貫いた。

俺はその首を根本から斬る。

そして、光に変わるヒュドラの首。

「押さえるのです、スケルトン達!」

るしあちゃんの号令でジャイアントスケルトンはヒュドラの首を2本ずつ押さえ込んだ。

ノエルさんとマリン船長の前に1首ずつのヒュドラが残る。

ノエルさんが振り上げたメイスが一瞬で巨大化する。

そのままそのメイスを振り下ろすノエルさん。

巨大なメイスに押し潰され光に変わるヒュドラの首。

すごい、さすがノエルさん。

マリン船長は?

俺が見た時、ちょうどヒュドラの1首がマリン船長にブレスを吐こうとしていた時だった。

ツララの混ざる氷のブレスがマリン船長を襲う。

しかし、マリン船長はそのブレスの中を両手にフラッグハルバードを持ったまま悠然と突き進む。

まるでそよ風の吹く草原を歩くようにマリン船長はヒュドラの口の前に来た。

そして、フラッグハルバードを下から上に振り上げる。

ヒュドラの首は真っ二つになって光に変わる。

すごい、いつもおちゃらけなマリン船長とは思えない。

「そこ、船長の悪口は許しませんよ~」

いや、悪口じゃないし、心で思っただけだし。

残り後4首。

ジャイアントスケルトンはノエルさん、マリン船長、俺達に1首ずつヒュドラの首を投げる。

飛んできた首を巨大なメイスで野球のように打つノエルさん。

マリン船長は2つのフラッグハルバードを飛んでくる首に投げる。

回転して飛んでいくフラッグハルバードはヒュドラの首を切り裂いた。

フレアさんは飛んでくる首を矢で撃ち抜き、こちらに飛んでくる首の速度を下げる。

俺はそれに合わせて首を横に切り落とした。

残りは1首。

ちょうどその首を2体のジャイアントスケルトンが左右から拳で殴り光に変えていたところだった。

よし、これで終わった。

6人が集まり首の失くなったヒュドラの前に集まる。

「これで終わるはず」

フレアさんは警戒を解かず見守る。

「確かヒュドラはそのどれかの首に心臓があるぺこよね」

「そう、そのはず」

ぺこらちゃんの言葉にノエルさんが答える。

「でも、本体が光に変わらないのです」

「まさか、倒せてない?」

るしあさんはジャイアントスケルトンを前に出しながら言う。

マリン船長も不安そうだ。

そして、最悪の事態が起こる。

消滅したはずの首が再生したのだ。

「また、はじめからぁ!」

俺は思わず大声を出してしまった。

それぞれのヒュドラが口を開き同時にブレスを放つ。

炎、氷、雷、毒。

様々なブレスがこちらを襲う。

「ジャイアントスケルトン、防御なのです」

るしあちゃんの言葉にスケルトンはその両手を巨大な骨の盾に変えて俺達をブレスから守る。

「弱点はどこ?」

マリン船長が慌てた感じで俺達に聞く。

しかし、誰も答えられない。

「フレア…」

ノエルさんがフレアさんを見る。

フレアさんは何かをじっと考えていた。

ヒュドラの首は全部で9本どれかに心臓がある。

全部消滅させたけどそのどれにも心臓がなかった。

どうしてだ?

何かを見落としていないか?

首が9本?

ん?

9本?

いや、9本じゃない!

「あ!」

「そうか!」

俺とフレアさんが同時に声を出す。

そして、お互いを指差した。

たどり着いた答えは一緒。

「わかったぺこか?」

「はい」

「だけど、どうやってそれを攻撃するかだね。

ノエル、マリン、眼の力は?」

「もう切れてる。

後数分は使えない」

「船長も同じね」

「ぺこらは?」

「もって後数分ぺこ」

「るしあ」

「るしあはまだいけますけど、2体使役は難しいのです」

「そっか。

なら、キミに託す」

そう言ってフレアさんは俺を見る。

「いける?」

フレアさんに聞かれて俺は自分の今の状況を確認する。

まだ、切り札は残してる。

なら、期待に応えないと。

「はい、やります」

「うん」

俺の答えに満足そうに頷くフレアさん。

「それじゃ、私達5人でもう一度どうにか9本の首を抑える。

その間にキミが止めをさして」

「分かりました」

「みんないける?」

「もちろん」

「誰に言ってるのかな?」

「やってやるぺこ」

「やるのです!」

「それじゃ、いくよ。

3、2、1、GO!」

フレアさんの号令でジャイアントスケルトン2体がヒュドラに突撃をかける。

ヒュドラは慌ててスケルトンに噛みつく。

スケルトンの突撃を避けたヒュドラの首をノエルさん、フレアさん、マリン船長が武器で攻撃して動きを止める。

1体のスケルトンが力を失い崩れていく。

るしあちゃんの限界がきたんだ。

押さえ込みから解放された首がぺこらちゃんを襲う。

しかし、ぺこらちゃんは構えたバズーカをその首目掛けて打ち込んだ。

怯むヒュドラ。

よし、俺も行く。

みんなの戦いを見ながら俺は鬼切丸の雷の力を自らに溜め込んでいた。

鬼切丸の刃をアイテムボックスに納めたまま、俺は雷の力を解放した!

普段出せないようなスピードで俺はある場所に向かう。

それはやつの背後尻尾だ。

キングヒュドラの首は9本だと思っていた。

しかし、もう1本長いものがある。

それが尻尾だ。

見えた。

尻尾だ。

俺の接近に気づいたのか、尻尾がゆっくりと上がる。

そして、俺はその尻尾の先についているものを見た。

他の首についている頭より凶悪な頭がこちらに向けられた。

巨大な口を開き、怪しく光る瞳は俺をとらえていた。

「やれる!」

俺は雷を纏ったまま接近する。

先程まで斬ってきた首よりだいぶ太い。

しかし、俺は斬れると確信している。

それは俺が1人ではないから。

(魔力を送る、ぶったぎるのだぞ)

ペンダントから声が聞こえる。

「ありがとう、アロエちゃん」

俺はそのままヒュドラの本当の首の下を目指す。

そして、通り抜ける時に鬼切丸をアイテムボックスから抜いた。

その刃は魔力により通常の数十倍長い。

そして、雷を纏っていた。

俺は鬼切丸を前から後ろに回す。

半月斬り。

刀の軌跡が半月のように見える為付けられた、この世界の剣技だ。

いつもの刀なら遥か頭上にあるヒュドラの首には届かない。

しかし、今の鬼切丸は違う。

その刃はヒュドラの首を切り落す。

ゆっくりと首が胴体から滑り落ち、キングヒュドラは光になって消えていった。

俺はゆっくりとアイテムボックスへ鬼切丸を納めた。

「ありがとう、アロエちゃん」

(なに、部屋を借りておるのだ、これくらいは力を貸すぞ)

そう言ってまた、静かになった。

寝ちゃったかな?

「おお~い」

あ、三世代のみんな。

こっちに走ってきてる。

「よくやったぺこ」

「やったね」

「さすがです」

「ま、船長には劣るけど」

「ははは、マリンは負けず嫌いだねぇ」

三世代が来て、声をかけてくれた。

「みんなのお陰です」

俺の言葉にみんな笑顔で答えてくれた。

「そう言えばロボ子さんは?」

「まだ来てないのです」

るしあちゃんは森の方を見る。

「何かあったのかな?」

「心配だね」

フレアさんとノエルさんも森の方を見た。

ピーピー

そんな時、俺の通信機が鳴り始めた。

「はい」

俺は通信機に出た。

「あ、もしもし、ロボ子だよ」

「ロボ子さん」

通信相手はロボ子さんだった。

「大丈夫ですか?」

「こっちは大丈夫。

それよりそっちは?」

「はい、さっきスターズフォーを倒したところです」

「余裕でしたよ~」

俺の横からマリン船長が言った。

「そっかそっか、それは良かった。

こっちはちょっと気になる事があって合流できないけど、次の場所に向かってくれて大丈夫だから」

「はい、分かりました」

そして、通信が切れた。

「何かあったみたいぺこな」

「ま、ロボ子先輩が大丈夫って言ってるし大丈夫だと思うけど」

ぺこらちゃんにそうフレアさんが言う。

「次は俺、この【ファンタジー】のもう1つの裏世界に行こうと思ってます」

「というと【海底都市】ですね」

るしあちゃんに俺は頷いた。

「だったら、第3の町のあくあ先輩に会うといいよ」とノエルさんが言った。

「あくあちゃんと?」

「そう、あくたんが【海底都市】の入り口を管理してるからね」とマリン船長が繋げた。

「それじゃ、俺はあくあちゃんのいるルーナちゃんのお屋敷に向かいます。

みなさんはどうしますか?」

俺の質問に第三世代組はお互いを見る。

「せっかくみんな集まったぺこだし、たまにはお茶会でもしようかって事になったぺこ」

「なので、るしあの管轄する大霊園でしばらく留まるわ」

「なかなかこうやって集まれないものね」

「だね、船長も久しぶりにゆっくりとお茶飲みたい」

「いや、あんたはいつもゆっくりとしてるぺこでしょ」

いつもどおりの賑やかな第三世代組。

るしあちゃんはそんな仲間を嬉しそうに眺めていた。

「なんか元気でたみたいですね」

「え?」

俺はそっとるしあちゃんに言った。

「そう?

ま、みんなといると退屈しないのは確かなのです」

そう言ってるしあちゃんは笑った。

その後、俺達6人は【魔界】から帰還。

俺は5人と別れGMバイクに乗り、次の目的地に向かった。

最後まで手を振り見送ってくれた5人。

また、いつか一緒に冒険をしたいと心から思った。




スターズフォー3体目を撃破しました。
次は4つ目の裏世界【海底都市】です。
【海底都市】は別世界と繋がる場所。
果たして誰が出てくるのか。
次回をお楽しみに


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【海底都市】の大決戦

ロボ子さんと第三世代組との共闘により【魔界】のスターズフォーを倒したあなた。
次は【ファンタジー】にあるもう1つの世界【海底都市】に向かう為、あなたはあくあちゃんに会う為にルーナちゃんのお屋敷へと向かった。


「よし、着いた」

俺は眼下に見えるルーナちゃんのお屋敷を見る。

さすがGMバイク。

一瞬だな。

ま、【魔界】の戦いの後、第3の町でログアウトしてから来たから近いっちゃぁ近いけど。

俺はゆっくりと下降する。

ん?

誰か屋敷の外で手を振ってる。

よく見るとそれは1人の長スカートの昔ながらのメイド服を着た女性。

俺はその人に向かって降りた。

「やっぱり、あくあちゃん」

降りた俺を笑顔で出迎えてくれたのはあくあちゃんだった。

「お久しぶりです」

「はい、お久しぶりです」

「あれからいろいろと頑張ってるみたいですね」

「俺に救えるか分かりませんが世界が大変なので」

俺は頭をかきながら言った。

「十分頑張ってますよ」

そう言ったあくあちゃんは笑顔だった。

「それで今度は【海底都市】に行くんですよね?」

「はい、なんで分かったんですか?」

「私はホロメンの中では索敵や検索などの情報収集が得意なので」

「なるほど」

確かに前、まだ会ってないホロメンの場所の情報教えてもらった。

「では、さっそく裏世界に行けるかどうか試験をしましょうか」

そう言って笑顔で指を可愛く1本出して笑うあくあちゃん。

「分かりました」

俺はGMバイクを降りてあくあちゃんを見る。

「【海底都市】に行く条件はあるアイテムを持ってきて私に見せる事です。

そのアイテムは、仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、竜の頸の珠、燕の子安貝です」

「…えっと」

確かそのアイテムって。

「かぐや姫?」

「分かりました」

「いや、有名ですよ。

かぐや姫が求婚を断る為に言った存在しない物ですよね?

もしかして【海底都市】行きもやんわりと断れてるとか?」

「そんな事ないですよ。

かぐや姫では本当にそのアイテムがあったかどうか分かりませんが、このホロライブワールドにはその5つのアイテムは実は存在しますよ」

「え?

まじですか?」

「はい」

うわぁ、今からそれを取りに行かないといけないのか。

急がないと。

俺は急いでGMバイクに乗る。

「ま、慌てないで」

「え?」

「私が言いたいのはそれと同じランクのアイテム。

EXランクのアイテムを見せてくれれば条件クリアって事です」

「同じランク?」

「ええ、キミが持つ虹色ダーツ」

今は、変わっちゃったけど。

「そして、その足に履いてる装備」

「え?

これが何か分かるんですか?」

「もちろん、どれだけ上手く誤魔化してても私には分かりますよ。

後はキミの持つ鬼切丸ですね。

普通の状態でAランク。

真の力を解放してSランク。

その上、ホロメンから力を与えられてるのでEXランクなみになってます」

「ははは」

確かに俺の鬼切丸は規格外だよな。

「なら?」

「はい、合格です」

「良かったぁ」

「それでは、門まで案内するのでここで少し待っててくれますか?」

「あ、はい」

あくあちゃんはそれだけ言うと、屋敷の入り口へと歩いて行った。

しばらくして。

空をぼーと見上げていると、1人の女性が屋敷の入り口から走ってきた。

「まったぁ~」

「えっと?」

短いスカートのメイドっぽい服装。

ピンク髪を左右にまとていた。

「えっとあくあちゃん?」

「え?何言ってるのそうだよ」

そんな不思議そうな顔で見られても俺も不思議そうな顔で見てしまう。

「なんかさっきとぜんぜん印象が違うから」

さっきは髪は下ろしてたし。

「ああ、あれは仕事様だからね」

「あ、そうなんだ」

「そ、メイド長してるからきちんとしないと。

でも、今からはプライベートみたいなものだから、すごく気が楽だよ」

「それはよかったです」

変われば変わるなぁ。

「それじゃ、行こう。

場所はこの屋敷の裏側の山だから」

そう言われ、俺はあくあちゃんに連れられて屋敷の裏側の山へと向かった。

「着いたよ」

そう言われて着いたのは屋敷の裏側の山の崖前。

「えっと」

俺が戸惑っていると「こっちだよ」とあくあちゃんが崖の壁に手を当てる。

するとそのままズブっと壁に手がめり込んだ。

「ほら、早く」

ズブズブと入っていくあくあちゃん。

「え?ちょっと待って」

俺は慌ててあくあちゃんを追った。

「すごい」

壁の中に入ると洞窟だった。

洞窟は壁全体に淡い光を放ち幻想的だった。

「この先だよ」

俺はあくあちゃんと奥へと歩く。

すると一本道だった洞窟が突然ひらけた。

そして、ドーム状になったその広場の真ん中には巨大な神殿が立っている。

俺はあくあちゃんを追って神殿に入る。

神殿の奥には巨大な門。

門の左右には巨大な女性の像が門にもたれ掛かるようにあった。

あれ?

「この像ってあくあちゃんとマリン船長に似てますけど」

よく見ると顔やスタイルがそっくりだ。

「なんかね、【海底都市】だから水関係って事であてぃしと船長がモデルにされてる」

「そうなんだ」

若干照れてるあくあちゃん。

「やっと来たぁ」

そう言って門の影から現れるちょこ先生。

「待ちくたびれちゃったよ」

その後ろからメルちゃん。

「久しぶりだね」

「元気してたかぁ~」

「おお、久しぶりだね」

反対側からシオン師匠、はあとちゃん、わためちゃん。

「頑張ってるみたいだね」

そして、AZKiちゃんが現れた。

「今回はこのメンバーなんですね」

「そう、よろしく!」

あくあちゃんがみんなの方に行ってこっちに向いて笑う。

こりゃ、今回もすごい顔ぶれだ。

「よろしくお願いします」

俺は今回の同行者に頭を下げて挨拶した。

 

それから【海底都市】に入る前に、AZKiちゃんから簡単な説明があった。

【海底都市】はタウン型ダンジョンになっているらしい。

都市内には住人がいるが全て敵として現れる。

倒してもいいし、逃げてもいい。

アイテムは都市にあるものならどれを使っても大丈夫だそうだ。

しかし、都市内で手に入れた物は都市から出ると消えてしまうということだ。

目的は都市の奥にある大神殿に住むボス。

それを倒せばその奥にあるエデンと呼ばれる場所に行けるらしい。

そこには普通に住人が住んでいてレアなアイテムを購入できるという事だった。

「それで、今回の私達の目的のスターズフォーは、その大神殿にいる」

とAZKiちゃんが言った。

「かなり遠いですね」

「普通に行くとね」とあくあちゃんがにこっと笑って言う。

「え?」

「あくあか船長がいるとショートカット出きるのよ」

とシオン師匠が言う。

「そうなんですか」

「そう、だから大神殿の前の階段に出れるよ」

胸を張って威張るあくあちゃん。

「じゃ、いきなり戦闘になるかもしれないですね」

「そう、だからここで作戦会議してから行こうと思って。

それで、相手は皇帝イカとX世代の子よね?」

「はい、レヴィっていう女性が相手だと思います」

AZKiちゃんにそう答える。

「なら、5人と3人に別れて行きましょう」

皇帝イカに俺とはあとちゃん、わためちゃん、メルちゃん、ちょこ先生。

レヴィにはAZKiちゃん、あくあちゃん、シオン師匠となった。

「それじゃ、行こうか」

AZKiちゃんの言葉に頷くみんな。

そして、あくあちゃんが門を開く。

さぁ、ここからが本番だ。

 

扉をくぐるとAZKiちゃんの言ったように大神殿の前の階段に出た。

しかし。

「まさか、ここにいるなんてね」

そう言ってAZKiちゃんが呟く。

俺達の前の階段の上に首の長い巨大な亀がいた。

「サーペントタートルかぁ」

メルちゃんがモンスターを見て言った。

「これって?」

「本来のこの世界のボス」

シオン師匠は構えながら言った。

「使役されてるみたいね」

「確か、レヴィには魅了する力がありました」

「まさか、スリースターズを魅了出きるなんてね」

ちょこ先生ははぁとため息をつく。

「ここで時間取れないし、先に行きなよ」

はあとちゃんがわためちゃんの首襟を掴んで言う。

「ここははあちゃまとわために任せて」

「ええ、わためぇも?」

「もちろん」

「大丈夫ですか?」

俺は2人に聞く。

「どんと任せて!」

「とてつもなく嫌だけどがんばります」

「じゃ、2人お願いするね」

AZKiちゃんは2人にお願いする。

2人は頷いた。

「なら、先を急ぎましょう」

AZKiちゃんの言葉にシオン師匠がモンスターの顔に魔力玉を投げる。

玉は顔の前で爆発、視界を奪う。

「また、後で必ず」

俺は2人にそう言ってモンスターの横を走り抜ける。

残った2人は力強く頷いていた。

 

「ここから大神殿」

6人に減ったけど、どうにかする。

「あら、大丈夫ですか?

人数減ってしまって」

神殿の奥、声の主は皇帝イカに座っていた。

真っ黒なドレス。

錫杖を持ったロングヘアーの女性がこちらを見ている。

「歌魚レヴィ!」

俺はその女性を見て叫んだ。

姿が以前見た時より大人びてる。

「初めから私の本来の姿に戻るデビルカードを使わせてもらいました。

あなた達は手をぬいて勝てる相手ではないので」

「2人減っちゃったけど3人ずつで行くわ」

AZKiちゃんの言葉に頷く俺達。

「行きましょう!」

その言葉と同時に俺達の前に、逆刃の鎌が突き刺さる。

「な」

慌てて止まる俺達。

俺はその逆刃の鎌に見覚えがあった。

「誰!」

メルちゃんが鎌が飛んで来た方向に向かって叫んだ。

神殿の柱の影からゆっくりと現れる人影。

それを見たホロメンのみんなが言葉を失った。

「なかなか、面白い展開ですね」

レヴィは微笑みながらこちらの様子を見ている。

「どうしてあなたが?」

ちょこ先生がその人影を見て言った。

女性が鎌に手を向けると鎌がその手に戻っていく。

「依頼された、今から実力を見せてもらう」

そう言って鎌を構える女性。

「なんで、敵対するのクロヱ様」

悲痛な叫びでちょこ先生は女性を呼んだ。

「クロヱ?」

俺の疑問に「あ」とクロヱと呼ばれた女性は鎌を背にまわしきちんと立つ。

そして。

「ばっくばっくばく~ん

秘密結社ホロックスの掃除屋でインターン、シャチの沙花叉クロヱです」

と可愛い声で覆面の女性は言った。

「では、仕事始める」

「いや、変わりすぎだろ!」

俺の声にビクッとするクロヱちゃん。

《スキル【運命】が発動しました》

ステータスをちらっと確認する。

第六世代組の娘か。

やっぱり彼女達もこのスキルに関係してるのか?

「く、これ以上人数は割けない」

シオン師匠が言った。

確かにここでホロメンの1人を敵にまわす余裕がない。

でも、向こうは引く気がなさそうだ。

「じゃ、行く!」

クロヱちゃんが動く。

しかし、そこにダン!と三ツ又の槍が突き刺さった。

また?

俺は三ツ又の槍が飛んで来た方を見る。

そこはちょうど光が入って来る場所で誰がいるのか分からない。

「面白いことしてるな。

私も混ぜろ」

女性の声?

「あ」

誰か分かったようにシオン師匠が嬉しそうに笑った。

「その黒いの任せる!」

シオン師匠はその女性に言った。

「分かった、任せろ」

「あっちはどうにかなる。

シオン達はスターズフォーとレヴィを」

シオン師匠の声でみんなは頷きスターズフォーに向かって走り出す。

「せっかく面白いものが見れそうでしたのに邪魔がはいるなんて面白くないですね」

レヴィはそう言いながらも笑っている。

その余裕、今から俺達がぶっ潰してやる。

背後でクロヱちゃんの前に降り立つ1人の女性がちらっと見えた。

投げた三ツ又の槍を構え、銀髪のサメの尻尾が付いていた。

俺はそれだけ確認し前を向く。

さぁ、決戦だ!




4つ目の裏世界に突入です。
様々な場所で戦いが始まります。
それでは、それぞれの戦いをお楽しみに


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階段上の戦い ~赤と羊と小鬼の影~

サーペントタートルの前に2人残った赤井はあとと角巻わため。
果たして彼女達はスリースターズに対して2人だけで勝利する事が出来るのか?


「ふぅ、行ったみたいね」

はあとは他のメンバーが大神殿に行ったのを見送った。

「さて、わためいける?」

はあとは後ろを振り向き言った。

「嫌だけど、やるしかないんですよねぇ」

不安そうにいうわため。

「もちのろん」

はあとは前に向き、モンスターを見た。

爆発のダメージもなく顔を左右に振るスリースターズのモンスター

それを見てはあとはニヤリと笑った。

「もう暴走しないでよね。

したら一緒に狩っちゃうよ」

「え、ええ~」

後ろで情けない声をあげるわために笑いながらはあとは両手を左右に勢いよく開く。

するとはあとを中心に手のひらサイズの画面がまるでリングのように回り始めた。

1つ1つの画面には武器が1つ入っている。

「さて、どれにしようかな?」

「き、きた~」

わためが後ろから叫ぶ。

それと同時にはあとは横に跳んだ。

ドオーンとサーペントが長い首で攻撃してきたのだ。

反対方向に跳んだわためも無事だ。

「これにしよ」

はあとは機関銃が写っている画面に触れる。

するとその手には画面に写っていた機関銃が握られていた。

はあとの回りからリングが消える。

すぐさま機関銃を構え、はあとはサーペントに撃ちまくる。

しかし、ほとんどダメージがない。

「くぅ、固いなぁ~」

ぜんぜん焦りもなくはあとは機関銃を投げる。

手から離れた機関銃はしばらくするとフッっと消えた。

「わため、こっちで少し相手してるからはやく変身して~

急げ~」

「わ、分かったぁ~」

はあとはまたリングを開き、そこからバズーカを取り出す。

そのバズーカは第三世代組のぺこらが使っていたものによく似ていた。

「よ、よ~し、やるぞ!」

サーペントの注意がはあとに集中している間に、わためはサーペントから少し離れて場所で深呼吸していた。

前回は上手く使えなくて、変な化け物になったけど、今回はやれる。

胸に手を持ってくるはあと。

第四世代組の固有スキル【変身】

わためもその固有スキルを使う事が出来る。

しかし、普段は羊と一緒に平和にうろうろしてるだけなのであまり使ってない。

だから、出来るか心配だけど。

「今はやらないと、いっくぞ~」

気合いと共にわための胸に光が集まる。

「うぉぉぉぉ~!」

力強い叫びが辺りに響く。

サーペントがそれに気付きわためを見た。

「あ、ヤバイ。

わため早くー!」

はあとの叫び声に、サーペントは口から巨大な水の弾をわために向かって放った。

まだ、【変身】途中。

わためは避けれない。

水の弾は容赦なくわためにぶつかり破裂した。

だが、一瞬わための方が早かった。

黄金の光を纏い、わためが立つ。

「黄金騎士わためロード見参」

羊の角が付いた黄金の兜。

黄金の全身鎧は水で濡れて光を反射していた。

「やったじゃん、本番1発成功」

はあとがわための姿を見て言った。

「はぁ、怖かったねぇ~」

先程のかっこよさはどこえやら、はぁっとため息をつくわため。

「ほらほら、やるよ」

そんなわためを見てサーペントの反対側にいるはあとが言う。

「よし、頑張るぞ!」

わためは両手をサーペントにかざす。

ビクッと小さく震えた後、サーペントは動きを止めた。

そのままゆっくりと手のひらを上へ持ち上げるわため。

サーペントもその動きに合わせてゆっくりと持ち上がっていった。

黄金騎士わためロードの力は念力。

魔法とはまた違ったその力で、様々な事を行える。

その一つがこの物体を持ち上げる力。

重さ関係なく持ち上げる事が可能だった。

そして、相手の動きを押さえ込む金縛りもその力の1つだ。

「ナイス、わため」

はあとは躊躇なく持ち上がったサーペントの腹の下に潜る。

リングを開け回し、目的の武器を触った。

それは禍々しい気を放つ1本の出刃包丁。

前にるしあが暴走しかけた時に出現した『死屍累々』だった。

「そ、それ、大丈夫なんですかぁ?」

わためは体勢を維持しながらはあとに聞いた。

「大丈夫、大丈夫。

意思を乗っ取れるもんなら乗っ取ってみなさいよって感じだよ」

確かに『死屍累々』を持ったはあとは一向に意識を乗っ取られる気配はない。

逆に『死屍累々』の意識を出刃包丁の中に押さえ込んでいるようにも見えた。

「おら~」

はあとは勢いよく出刃包丁をサーペントの腹に差し込む。

まるで豆腐を切るように抵抗なく腹に刺さる『死屍累々』

はあとはそのまま尻尾の方へとダッシュした。

サーペントは雄叫びもあげれず、暴れることもできず、そのまま光へと変わっていった。

「ふぅ」

わためは【変身】を解き、はあとの元に向かう。

はあとは『死屍累々』をポンと投げ捨てる。

先程の機関銃のように『死屍累々』もまたフッと消えた。

「いつ見ても反則です。

そのウェポンリング」

「そう?」

わために言われ不思議そうに答えるはあと。

 

ウェポンリングははあと専用のスキルで、はあとが1度見た武器を画面にストックする事が出来、いつでも取り出す事が出来るというもの。

複製ではなく本物を取り出す。

他の誰かが同じものを使っていたとしても取り出し使う事が出来るのがこのスキルの優秀すぎる所以だ。

ただし、先程のような呪いの武器はその呪いに意識を乗っ取られる可能性もある。

ただ、はあとにそのような呪いが効くかどうかは神のみぞ知る。

 

「さて、みんなを追いかけようか」

「ですねぇ」

2人が階段を上がろうとした時、いつの間にか目の前に誰かが立っていた。

「誰?」

はあとはその人物に声をかける。

しかし、その人物は返事をしない。

それどころかすぐそこにいるはずなのに、誰が立っているか分からない。

存在が揺らいでいるようではっきりと認識できなかった。

まるで影が立ち上がってこちらを見ているようだ。

ゆっくりと拳を構える影。

「わため、まだ先には行かせてもらえないみたい」

「うん」

わためはもう一度【変身】する。

タン

小さな音が聞こえたと思うと影が一瞬で、はあとの目の前に間合いを詰める。

「な!」

そのまま、防御した上から殴られ吹き飛ばされるはあと。

「はあちゃま!

あぐっ」

はあとに咄嗟に手を伸ばしたわためも横腹を影に蹴られ吹き飛んだ。

「…」

影はゆっくりと構えを解き、はあとの方に歩く。

「くそう」

はあとはゆっくりと立ち上がる。

咄嗟に防御したとはいえかなりの威力があるパンチだった。

同じく吹き飛ばされたわためを見ると、苦しそうに立ち上がっている。

明らかにスリースターズより格上の相手。

はあとはウェポンリングを開き小手装備を取り出す。

昔、ココに見せてもらった事のある赤竜帝の小手。

構えるはあと。

その手は小手の力でドラゴンの手に変わった。

「第一世代の力、見せてやる!」

はあとの瞳の奥が赤く燃える。

第一世代の固有スキルは一定時間全ての能力を上げる事。

もともとチートな存在が今以上の力を出せば普通はどんな相手も倒す。

ガ!

はあとの強化された拳を片手で受ける影。

ただし、その相手がチート以上の存在でなければだが。

「く」

はあとは自分の体に起きた変化を感じた。

そのまま、はあとは片手で持ち上げられ、わための方に投げ飛ばされた。

「きゃぁ」

わためは飛んできたはあとを受け止める。

「あいつ、わための力を使った」

はあとは影に目を向けながら体勢を立て直す。

「わためぇの力?」

わためは不思議そうに聞く。

「そう、攻撃が当たる瞬間、金縛りにあった感じがした」

「な、何者?」

わためも影を見る。

影は何もせず。

じっと2人を見ている。

ふと影が大神殿を見た。

それからもう一度2人を見た後、影はその存在を完全に消した。

「消えた?」

「もしかしたら、時間稼ぎをしてたのかもね」

はあとはその場に座り込む。

「大丈夫?」

「怪我とかはないけど、金縛りの状態で無理に動こうとしたから体が痛い」

はあとは武器を全部外しそのまま寝転んだ。

「少し休んでから向かおう。

みんななら大丈夫のはずだよ」

はあとは【変身】を解いたわために言う。

「そうだよねぇ。

自慢の仲間だもん」

わためもそう言ってはあとの横に座り込んだ。




第1戦目はホロメンの勝ちですが乱入者によって、はあとちゃん達は他の仲間に追い付く事が出来ません。
ちなみに今回ははあちゃまが戦っております。
第1人格、第3人格はお休み中。
それでは次回は第2戦お楽しみに

※しゃべり方、行動の仕方が本人様と違うかもしれませんのでご注意ください。


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2人の海洋生物 ~サメ対シャチ~

突如あなたの前に敵として現れた沙花叉クロヱ。
スターズフォーと歌魚レビィもいる中、沙花叉クロヱの襲来に戸惑うあなただったが、そこに誰かの援護が入る。
紫咲シオンはその誰かを知っていたようで、彼女に後を託す。
そして、今【海底都市】で海の王者を冠する2人の戦いが始まろうとしていた。


「あなたには興味ない」

クロヱは目の前にいるトライデントを持つ女性に言った。

「そう言われてもな。

シオンに頼まれたからここは通すわけにはいかない」

トライデントの女性はそう返す。

「…」

クロヱは鎌を構えたまま動かない。

相手も同じだ。

一瞬クロヱがぶれる。

次の瞬間横からクロヱが鎌を振り抜いてきた。

トライデントの女性の前にはまだクロヱはいる?

ガキン!

トライデントの女性はその武器で鎌を止める。

そして、手首をひねる事でトライデントの槍の2つの部分で鎌を押さえ込んだ。

「残像なんて手を使ってくるとは思わなかった」

トライデントの女性の言葉で目の前のクロヱがぶれながら消えていく。

「分かるだけすごい。

あなた名前は?」

クロヱは彼女に聞く。

ふっと彼女は笑う。

そして「ぐら。【ホロライブENワールド】第一世代がうる・ぐらだよ」

と名乗った。

「そっちはシャチ?

私はシャ~ク!」

「!サメよりシャチの方が強いから」

クロヱは少しムッとして答える。

「ん?私は普通のサメじゃないよ。

アトランティスの末裔にしてサメだから普通じゃない」

ぐらはニヤリとして答える。

「沙花叉も普通のシャチじゃない」

そう言って2人はにらみ合う。

視線がぶつかり火花を散らすような感じだった。

「じゃ、どっちが上か勝負しよう」

ぐらはそう言ってトライデントを強く押す。

クロヱはそれに合わせて背後に飛び間合いを取った。

「分かった、依頼ではあなたは入ってなかったけど、ここからは個人の問題として動く」

クロヱは鎌を肩に担ぐように構えた。

にらみ合いを続けながらじりじりと間合いを確かめ合う2人。

「ふ」

クロヱが突然口から何かをぐらに向かって飛ばす。

「!」

咄嗟にぐらは右手の小手で顔を守った。

カチンという複数の音と共に地面に落ちたのは小さな針?

その一瞬で間合いを詰めクロヱは鎌をぐらに向けて振り下ろす。

ぐらはすぐさま背後に飛んで間合いをとろうとするが、クロヱは鎌を前方に構えたまま突進した。

クロヱの持つ鎌は逆刃。

前方に構えた状態だと刃がある方がぐらに向いている。

ぐらは下から上に勢いよくトライデントを振り上げる。

ガキン!と音がなり鎌は上へと刃を向けた。

クロヱはかかとで地面を思いっきり蹴り、突撃を止め背後に跳ぶ。

またも間合いをあけ対峙する2人。

「やるね」

「そっちも」

お互いニヤリと笑う。

「本気出さないといけないみたい」

クロヱは左手を口元まで上げる。

そして「スキル発動」と静かに言った。

左手の甲にholoXの紋章が浮かび上がる。

クロエの全能力が一時的に大幅に上がった。

そのまま、突進するクロヱ。

しかし、その動きは先程とは段違いのスピードだった。

そして、そのスピードのまま振り下ろし、なぎ払い、突きなど様々な角度から連続攻撃をぐらに向けて放った。

ぐらはその攻撃をどうにかトライデントで受けるが押されている。

「どうした?」

余裕の口調でクロヱは聞く。

「…」

ぐらはそれに答えられない程受け手に回っていた。

そして、最後の突きでトライデントの上からぐらを吹き飛ばした。

「ぐ」

柱に勢いよくぶつかりそのまま、膝を着くぐら。

「やっぱりシャチの方が強いでしょ」と鎌を担ぎながらクロヱは言う。

「ん、さっきはちょっとびっくりしただけだ」

トライデントを力強く握り立ち上がるぐら。

「まさか【ホロライブワールド】第一世代の固有スキルを使ってくるとは」

「へぇ、よく分かったね」

ぐらの言葉にクロヱが意外そうに答える。

「その固有スキル見た事がある」

「なるほど。

じゃ、そっちも使ったらいいんじゃない?」

クロヱは鎌を構えながらぐらに言う。

「…仕方ない。

あまり他の世界では使わないように言われてるけど」そう言ってぐらはトライデントを地面に突き刺した。

「武器を捨てる?」

クロヱの言葉にぐらは首を横に振る。

「違う。邪魔だから置いてる」

そう言ってぐらは手を胸に当てた。

「スキル【絶対強者】」

その言葉と同時にぐらは青い気を体に纏う。

それはまるでサメのようだった。

ドン!

という音と共にぐらはクロヱに突進。

そのスピードは先程とは明らかに違う。

辛うじて鎌の柄で突進を防いだクロエだが吹き飛ばされてしまう。

何とか起き上がるクロヱ。

その手に持つ鎌の柄は無惨に曲がっていた。

まだ、ぐらのサメのような気は消えていない。

くる。

そう感じた瞬間クロヱは横に跳ぶ。

先程いた場所にぐらが通りすぎた。

床は無惨にえぐられていた。

振り向くクロヱ。

地面をえぐりながら方向転換するぐら。

まだ、攻撃は続いている。

クロヱは先程のスキルの効果がまだ続いていて、普段より早いスピードで動いている。

床、柱、天井全ての場所を足場にして飛び回る。

しかし、ぐらは場所をものともせず、全ての場所をえぐりながらクロヱを追った。

このままだといずれ追い付かれる。

クロヱがそう思った瞬間、左手の甲の紋章が消えた。

固有スキルが切れたのだ。

急なスピード低下と背後に気をとられ過ぎて、クロヱは足をとられ地面にこけてしまった。

背後に迫るぐら。

そして、青い気を纏いサメのように変わったぐらはクロヱを飲み込んだ。

 

「あれ?」

頭を上げるクロヱ。

そして、回りを見る。

確かにぐらの一撃にやられたはずじゃぁ?

「おしい、時間切れ」

「え?」

背後から声がする。

クロヱは起き上がりそちらを見た。

トライデントを突き刺した場所にぐらが立っていた。

「やっぱりこの世界じゃ、スキルの持続時間が少ない」

ぐらはトライデントを引き抜く。

「今回は引き分けでいいか?」

ぐらはクロヱに言った。

クロヱもゆっくりと立ち上がる。

「そうね、頼まれた依頼ももう達成出来そうにない」

クロヱはそう言って大神殿の奥を見る。

冒険者達の戦いも佳境に入っているようだった。

「楽しかったぞ」

「正直にいうと沙花叉も」

お互いに微笑む2人。

「また、相手してくれ」

とぐら。

「いや、遠慮しとく。

めちゃ疲れた」

とクロヱは言った。

それを見てぐらは笑う。

「足止め役は終わったから帰る。

おまえもあまり暗躍はするな」

そう言ってぐらは地面にとぷんと潜った。

「ん、それはうちのラプラスに言って」

そう言ってクロヱも背後に出来たワープホールに飛び込んだ。

後に残るは静寂のみ。

だがしかし、戦いはまだ奥で続いている。




短い話になりましたので今回は2話更新になります。
最強の海洋生物を冠する2人の戦いはまた次回?
次は【海底都市】第3戦。
レビィ達をあなた達は止める事ができるのか?
次回をお楽しみに


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大広間の対戦 ~巨大イカの捌き方~

赤井はあと、角巻わため、謎の女性に助けられながら先を急ぐあなた。
スターズフォーの皇帝イカと歌魚レビィが待つ大広間まであと少しまでに迫っていた。


俺達は大神殿の奥へと走る。

皇帝イカとレビィが奥へと向かったのを追いかける感じだ。

「大丈夫でしょうか?」

俺は横を走るシオン師匠に聞く。

「ん?

ああ、クロヱの相手?

大丈夫だよ、あの娘は別の世界に住むかなりの実力者だから」

そう言って笑う。

「師匠が言うなら大丈夫ですね」

「ん?師匠?」

「あ、いえ、こっちの話です」

俺は誤魔化す。

さすがに師匠は俺が勝手に言ってるだけだしな。

「見えたよ」

メルちゃんが奥を指差す。

そこには皇帝イカが見えた。

だけどレビィがいない?

「み~つけた」

「え?」

柱の影からレビィが飛び出してきた。

完全に俺を狙っている。

前を走っていたみんなは驚いたように振り返ったが、間に合わない。

俺は咄嗟に身構えた。

「これでこっちの勝ち」

「とはいかないわよ」

レビィの勝利宣言にAZKiちゃんが俺の横から現れて答える。

そして、レビィを捕まえそのままワープホールに消えた。

「え、え?」

「大丈夫です、あのワープホールはAZKi様が作り出したもの。

たぶん、レビィを別の場所に連れていったのだと思います」

消えたワープホールの方を見ながらちょこ先生が教えてくれる。

「今はAZKiちゃんを信じてあれを倒そう」

シオン師匠が俺に言う。

「分かりました。

行きましょう」

今の俺にはどうする事も出来ない。

まずは目の前の敵を倒さないと。

俺はあくあちゃん、シオン師匠、メルちゃん、ちょこ先生と共に奥に居座っている皇帝イカに向かって行った。

 

「さすがにでかい。

前にあったよりでかくなってる」

近くに来たがさすがのでかさだ。

他のスターズフォーもそうだったが、星持ちは数によって巨大化するのか?

「しかし、なんであの大きさで浮いてるんだ?」

その巨大な体を宙に浮かせながら長い足を揺らす皇帝イカ。

「それはこの大広間に入れば分かるよ」

あくあちゃんが教えてくれる。

「よし、じゃみんな行きましょう」

俺の言葉にみんなは頷く。

そして、俺は皇帝イカの待つ広間に足を踏み入れた。

「え?」

大広間に入った俺はいきなり体に何かが纏わりついた感じがして体が浮いた。

「これって?」

ほかのみんなも大広間に入ったとたんに体が浮いていた。

「これは水の中なの。

でも、本当の水じゃないから息はできるでしょ」

「なるほど、それで体が上手く動かせないのか」

あくあちゃんの説明に納得する。

水の中ならあの巨大な皇帝イカも浮いてるわけだ。

「あ、それじゃ、雷や火の魔法は使えないんですか?」

「ん?それは大丈夫。

本当の水じゃないから普通に使えるよ」

そう言ってシオン師匠が手に雷を纏わせる。

「それならよかった」

俺の切り札は使えるって事か。

「それでどう行きます?」

俺達は壁際に移動し、俺は他の4人に聞く。

「問題はあの足よね」

シオン師匠はうねうね動く足を見る。

「あの足さえどうにかしたら、額に付いている宝石が弱点だから案外簡単に倒せそう」

あくあちゃんが皇帝イカの額を指差す。

えっと?

どれだ?

皇帝イカの額は様々な色の模様が出ていてどれか分かりづらい。

「ん?

分からない?

ほら、あそこの小さい赤い宝石」

あくあちゃんが俺の頭を後ろから持って動かしてくれる。

ん~小さい頃、これ親にやられた事あるなぁ。

「あ、あった、あれかな?」

額のちょうど中心にある緑の大きな模様の上側に小さく見える赤い宝石。

それをあくあちゃんに伝えると「そう、それだよ」と満足そうに頷いていた。

「それじゃ、一番確実なのはメル達があの足を排除してキミが弱点を攻撃する事」

メルちゃんの言葉に頷くみんな。

「鬼切丸を出してくれる?」

シオン師匠に言われて俺はアイテムボックスから鬼切丸を出す。

シオン師匠は鬼切丸に手を当てた。

そして、何かを唱えるシオン師匠。

一瞬すごい光を放った鬼切丸。

「今回限定だけど鬼切丸に付与した魔法をもう10回分付与しといたから、弱点を攻撃した時に全部ぶちこんで」

俺はシオン師匠の言葉に頷く。

「さぁ、きました」

先程の光が戦闘の合図になったらしく皇帝イカがこちらに向かってくる。

「キミは隙を見て弱点に攻撃して。

チャンスは一度きり、その武器の魔法を全てやつにぶつけてよ」

シオン師匠はそう言って皇帝イカに向かって飛ぶ?

この場合泳ぐかな?

「頑張って」

「無理だけはしないように」

「キミならやれるよ」

メルちゃん、ちょこ先生、あくあちゃん各々が声をかけてくれた後、シオン師匠の後を追った。

俺もみんなの後を追いかけ、少しだけ後方に陣取る。

俺はここからみんなの期待に答えられるようにあいつの動きを今は観察しないと。

 

まずはシオン師匠が雷の魔法を放つ。

海の魔物だ、雷は効果大のはず。

すると皇帝イカが足を一本前に出す。

魔法はその足に吸い込まれてしまった。

ダメージは見受けられない。

「ん?」

続いてシオン師匠が巨大な火球を作り出し放った。

今度は違う足を出す皇帝イカ。

その足がまた魔法を吸いとった。

魔法を吸収するのか?

ちょこ先生が蛇腹剣をふるって足に攻撃する。

すると皇帝イカは違う足を出してそれを防御した。

蛇腹剣を受けた足は傷1つ付いていない。

もしかしたら、あの足各々に対応した属性があるのかもしれないな。

あくあちゃんは目の前に透明な画面を出現させて何かを調べ始める。

そこに皇帝イカの巨大な腕が振り下ろされる。

しかし、腕はあくあちゃんに届く前にメルちゃんによって切り落とされた。

メルちゃんの手には真っ赤な刀身の剣がいつの間にか握られている。

切れた腕の切れ端にシオン師匠がすかさず雷の魔法を打ち込む。

切れ端は雷にうたれ真っ黒に焼け光になって消えた。

「なるほど」

それを見てシオン師匠が頷き、あくあちゃんを見た。

あくあちゃんも頷いている。

「キミは分かってたみたいだね」

あくあちゃんは俺を見ながら言った。

「各足に属性があるんですよね」

「ほぼ正解かな」

俺の言葉にあくあちゃんが答える。

「あの足と腕には全属性に対して耐性を持ってるみたい。

ただ、各々に1つだけ飛び抜けて高い属性と低い属性がある。

そこが狙い目ね」

「あ、全属性に耐性はあるんですね」

「うん、だから普通の攻撃ならどの腕にもダメージは通らないかな」

はは、そこはチート級って事か飛び抜けた威力だから、その属性に対して高い足で防御してるんだな。

「しかし、あれも厄介よね」

メルちゃんは切った腕を指差す。

いつの間にか腕が再生している。

「再生出来ないぐらいバラバラにする?」とシオン師匠。

「それでも駄目かも。

しばらくしたら生えてくると思う」とあくあちゃんが画面を見ながら言った。

「じゃ、試してみましょう、シオン様!」

ちょこ先生は蛇腹剣でもう1度攻撃する。

やはり先程の手で防御してきた。

しかし、今回は蛇腹剣でその防御してきた腕を絡めとる。

それと同時にシオン師匠は雷の魔法を打ち込んだ。

皇帝イカの防御が間に合わず絡めとった足に雷が直撃する。

足は根本まで焼け黒こげになって光となって消滅した。

「下がって」

ちょこ先生に言われた通り、俺達は少し下がる。

ちょこ先生はじっと皇帝イカを観察していた。

しばらくして、皇帝イカの足が再生した。

「約5分ほどかな」

ちょこ先生が言った。

「根本まで消滅させた場合は再生まで約5分。

それはもともとの皇帝イカと変わらないです」

あくあちゃんは画面で確認する。

「スターズフォーになってもそこは変更なしって事ね」

メルちゃんは皇帝イカを見ながら言った。

「だったら全ての手足を5分以内で全部消滅させてから弱点狙いかな」

シオン師匠も両手に魔力を込めながら言う。

「そういう事だね」

画面を消し、あくあちゃんは何もない空間から銃を取り出す。

アイテムボックス?

「シオンちゃん、ごめん。

えっと4番と7番、それと15番を各2発ずつお願いできる?」

そう言ってあくあちゃんは6発の弾をシオン師匠に渡す。

「4番と7番、15番ね。

分かった」

シオン師匠は渡された弾を握り、何かを呟く。

握った手が一瞬光を放つ。

それを6回繰り返し弾をあくあちゃんに返すシオン師匠。

「それってもしかして魔法銃?」

「あ、知ってる?」

嬉しそうに言うあくあちゃん。

確か、近未来都市に売ってた銃だ。

かなり高額だったが、それに見合った優れもの。

弾にどんな魔法でも入れる事が出来て、それを撃つ事で発動する。

俺も欲しかったけど、諦めたんだよな。

なんせ魔法を弾に込めないといけないのと、弾事態は使い捨てで使えば毎回補充しないといけない。

それも弾は通販されてないから近未来都市で買わないといけないし。

かなり使いこなすのは難しい。

「さて、それじゃ、スターズフォーの討伐を始めましょうか」

シオン師匠が両手に違う魔法を生み出す。

『OK』

各々が武器を構える。

俺も鬼切丸をぎゅっと握った。

戦闘再開の合図はシオン師匠。

炎と雷の複合魔法を皇帝イカに打ち出す。

皇帝イカも2本の足を出す。

そして、そこから同じように炎と雷を打ち出した。

防御だけじゃなく魔法も使えるのか!

そこにすかさず、あくあちゃんがシオン師匠の魔法の影から魔法銃を撃つ。

氷の弾丸だ。

弾丸は炎を出した足に当たり、凍りつかせ爆ぜる。

まず1本、いや、2本か。

いつの間にか雷の魔法を打った足の近くにメルちゃんが。

素早い剣捌きで足をバラバラに切り落とす。

ちょこ先生も負けていない。

蛇腹剣での攻撃。

受ける皇帝イカ。

しかし、ちょこ先生はもう1本蛇腹剣を取り出して、違う足を巻き取る。

そして、そのまま強く引っ張った。

巻き取っていた足は細切れになって光に変わる。

ダン!

もう1本の巻き取っていた足をあくあちゃんが、炎の弾で燃やし尽くした。

ガァーーーー

皇帝イカは雄叫びを上げその大きな口を見せる。

「うわぁ、気持ち悪い」

あくあちゃんがそれを見て素直な感想。

俺もそれは思った。

「ぼうっとしてたら危ない」

そんな俺とあくあちゃんをちょこ先生が横から抱え込んで飛ぶ。

そのすぐ瞬間俺達がいたところを巨大なレーザーが通りすぎた。

「助かりました」

俺はちょこ先生にお礼を言う。

たぶんあれは皇帝イカのブレスだ。

「足の数が減ってるからどんどん行くよ!」

シオン師匠の声に俺達は攻撃を開始する。

4つも減れば後は簡単だった。

普通の威力なら全属性対応の足と腕、いくら耐性が低いのがあるといっても普通なら破壊は出来ないだろう。

しかし、こっちはチート集団。

耐性が低くなくても、耐性が高いところがなくなれば全てに攻撃が通っていく。

シオン師匠の雷と炎、ちょこ先生の二刀の蛇腹剣、あくあちゃんの魔法銃。

そして、メルちゃんは無数の蝙蝠になって次の対象の場所に向かっていき、その赤い刀身の剣で舞うように対象を切り刻んで行った。

さすがはバンパイア。

「今!」

最後の足を切り裂いたメルちゃんから合図がある。

俺は皇帝イカに向かって飛ぶ。

それに気づいた皇帝イカは俺の方に口を開く。

が、それは予想通り。

俺は鬼切丸の雷の魔力を使う。

これはもともと俺がストックしている1つ。

雷を纏い俺は一瞬で皇帝イカの額の方に移動した。

見えた!

赤い宝石。

俺はその場所に目掛けて鬼切丸を突き刺すように突進した。

「なに!」

宝石に突進した俺に皇帝イカの額にある緑の模様から複数の触手が生え襲ってくる。

う、気持ち悪ぅ。

ってこれじゃ宝石に届く前に止められる。

「大丈夫だよ」

え?

その声に皇帝イカの額の上を見る。

いつの間にかメルちゃんが立っていた。

メルちゃんが赤い剣を横に構える。

「やぁ!」

気合いと共に旋回斬りを放つメルちゃん。

その刀身は先程のとは比べられないほど長くなって全ての触手を切り裂いた。

切り裂き剣を振り抜いたメルちゃんの背後にある宝石に俺は鬼切丸を突き刺した。

メルちゃんとすれ違う一瞬目が合った。

彼女は笑顔だった。

鬼切丸のシオン師匠が付与してくれた雷の力を全て皇帝イカに打ち込む。

皇帝イカ全体に紫の雷が走り回る。

そして、皇帝イカは光となって消えた。

「やった」

「よくやったね」

「やりました」

「う、最後の触手気持ち悪い」

「ふう、久しぶりに動き回ったぁ」

各々力を抜く。

「さすがに第2形態とかにはならなかったね」

「いや、ラスボスじゃないし」

あくあちゃんの言葉にシオンちゃんが笑って言う。

「後はAZKiちゃんだね」

メルちゃんが言った。

そうだ、俺を助けてくれた後どうなったんだ?

「AZKi様なら大丈夫です」

ちょこ先生が自らの胸にそっと手を当てる。

「信じて待ちましょう」

その言葉に俺達は力強く頷いた。




【海底都市】の戦いも後1戦。
レビィとAZKiちゃんの戦いで終わりになります。
では、次回をお楽しみに


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波打ち際の語らい ~歌姫と歌う魚、獰猛な魚を添えて~

あなたを助け歌魚レビィと共にワープホールに消えたAZKi。
果たして彼女は無事に仲間の元に戻れるのだろうか?


こ、ここは?

私は周りを見る。

いつの間にか綺麗な砂浜に来ている。

さっきまで【海底都市】にいたはず。

それに世界の答えを捕まえようと。

「あ」

思い出した。

世界の答えを捕まえる瞬間に邪魔されたのを。

「やっと状況把握できた?」

「え?」

砂浜にある大きな岩に言葉をかけてきた相手が座っていた。

「あなたはオリジナル世代の」

確か私の邪魔をした相手。

「よっと」

岩から飛び降りる彼女。

「彼を助ける意味もあったんだけど、あなたとちょっと話をしたくって」

彼女は笑顔で語りかけてくる。

「なに?」

私は警戒して、相手との距離をとり杖を構える。

相手はオリジナル世代。

いくら私がデビルカードで最後の封印を解いたと言っても彼女達の世代は他の世代とは別格だ。

「そんなに構えなくてもいいのに。

もし、倒すつもりならあなたが状況把握できる前に倒してるよ」

と笑う。

「正義の味方とは思えない発言ですね」

「ん?私は正義の味方なんて曖昧な者じゃないよ」

私の皮肉を笑って返される。

「曖昧?」

「そう、だって正義なんて人の数ほどあるんだもの。

みんな同じ正義なんてないよ。

似ているのはあるかもだけど」

確かにその通りかもしれない。

「それより、お話いい?」

彼女は一定の距離を取って私に言ってくる。

何を企んでいるの?

「どうぞ」

私は警戒を解かずに言った。

「じゃ、あなた達の目的は何?」

目的?

そんな事を聞いて何になる?

そう思ったが、私は答える事にした。

別に隠す事でもない。

「楽しむ事」

素直に言った。

そう、私達はこの世界を楽しみたい。

ただ、それだけ。

「そう、それはこの世界がどうなっても?」

彼女は続ける。

「当たり前よ。

私達が楽しめればこの世界が壊れようと失くなろうとどうでもいい」

そう、楽しければそれでいい。

「それはあなたのお母さんも?」

なぜ母の事を知ってる?

「ええ、そう」

そうよ、この考え方は母の考え。

だから、私もそれが正しいと確信している。

しかし、どこまで知ってるのこのオリジナルは?

「そっか。

まだ、あの子達は迷ってるんだね」

そう彼女は下を向きぽつりと呟いた。

「どういう事?

迷ってるってなに?」

私は気になり彼女に聞いた。

彼女は顔をあげこちらを向く。

「自分の居場所が見つからなくて迷ってるって事よ」

「どういう?」

私がその意味を聞こうとした時、彼女は後ろを向いた。

「ちょっとどこに行くのよ」

「待たせてるからね、仲間を」

「戦わないの私と!」

正直オリジナル世代相手に勝てるかどうかは分からないけど、ここで1人でも足止めしとかないと。

「それは遠慮しておく。

私は他のオリジナル世代と違ってそんなに強くないから」

彼女はそう言って自らの前にワープホールを作り出す。

歌わずただいきなりワープホールを作り出す?

オリジナル世代の固有スキルは【歌】のはず。

それを使わず、ワープホールなんて生み出せるこの相手はだれ?

「あなただれ?」

私は思わず思った事を口にした。

「あなたが見ている通りだよ」

彼女は振り向かず答える。

「嘘!

いくらオリジナル世代って言ってもそんな力はないはず。

まして、固有スキルを使わないでそんな事できるはずない」

「そう?

そうなのかな?」

彼女は半身になりこちらを見る。

「そうね、あなたには分かるかな?」

そう言った彼女は微笑えむ。

そして「私は居場所を見つけた、あなたの母親の同類よ」と静かに答えた。

「同類?」

え?

母達と同類?

「それじゃ、行くわ。

また、会えるか分からないけど、気を付けなさい。

あなた達を狙ってる人もいるみたいだから」

そう言って彼女は私の後ろを見る。

そして、静かにワープホールへと消えていった。

「な、なんなの?

あれは、私の母達の同類って?」

訳が分からない。

ホロメンは超AIと呼ばれる現実世界の人の様々な情報をコピーして作られたAIで動いているはず。

私達の母親のように広大な電子の海で自然発生したAIではない、はず。

頭が混乱してきた。

「だれ?」

私は咄嗟に前に飛んで後ろを振り返る。

そこには誰もいない。

でも、何かがいる。

「はぁ、まさか先輩だけでなく、あなたにも見つかっちゃうとは、掃除屋失格かな」

ゆらりと景色が揺れる。

そして、そこには覆面を付けた1人の真っ黒な服を着た女性が立っていた。

 

「沙花叉クロヱ」

私は相手の名前を呼んだ。

「はい、沙花叉クロヱです。

しかし、他のホロメンは先輩呼びなのに沙花叉は呼び捨てなんだ」

「別に先輩呼びは煽ってるだけですよ」

私の答えにふふっと笑うクロヱ。

「そうなんだ。

なら、今は煽る程心に余裕がないんだね」

今のクロヱは武器を持っていない。

なら、勝てる。

オリジナル世代と違い、その後に来たホロメン達はそこまで強い固有スキルを持っていない。

本来の力を出している今の私なら。

私は杖を構え、魔法で水の刃をクロヱに打ち出した。

水の刃はクロヱの胴と頭を切り裂いた。

「酷い事するねぇ」

「く」

前に飛び退きながら背後に爆発魔法。

爆風を受け、自らもその場から大きく離れた。

先程切ったクロヱがぶれながら消える。

「残像?」

「その通り」

真横で声がする。

私は咄嗟に杖を脇腹に持ってきてカードした。

その上からガキンっと音がなり、私は飛ばされる。

何とか体勢を整え着地。

見るといつの間にかナイフを持ったクロヱが先程私がいた場所に立っていた。

「なかなかやるね」

そう言ってクロヱは笑う。

「なぜ、私を狙う。

狙いはホロメンの力量調査でしょ」

そう、確かに彼女はそんなようなことを言っていたはず。

「それはルイ姉からの依頼。

今は別の依頼で動いてる」

「別の依頼?」

「そう、本当はどうでもいいんだけど。

やらずに帰るとうるさいからね。

ラプラスが」

「ラプラス?

あなた達のボス」

「いや、ボスじゃないけど。

ただのちびっこ」

いきなり背後で声がして、ドスッと首の裏に激痛が走る。

これはヤバい。

気を失う。

「しばらく寝るといいよ。

起きたら仲間に会わせてあげる。

そうそう、さっきのちびっこ発言は内緒にしててよね。

ラプラス怒らすとやっかいだから…さ」

そう最後に聞こえた気がした。




次は最後の裏世界【天界】です。
AZKiちゃんの設定は完全にオリジナルです。
彼女の本当の正体はそのうち誰かが語ってくれる予定です。
では、また次回


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天への扉

なんとか戦いに勝利したあなたは、【海底都市】の本来のボスを倒した赤井はあと達と合流した。
後はAZKiが戻ってくるのを待つだけだ。


「おまたせ」

俺達がスターズフォーとの戦いが終わり、はあとちゃん達と合流した時に、AZKiちゃんもワープホールから戻ってきた。

「よかった無事だったんですね」

俺の言葉にAZKiちゃんは笑顔で頷いた。

「レビィはどうなりました?」

「逃げられちゃった、ごめんね」

「いえ、無事に戻って来てもらえただけでよかったです」

謝るAZKiちゃんに俺は手を振りながら言った。

「ま、何にせよ。

みんな無事で良かったよ」

シオン師匠がみんなの顔を見ながら言った。

みんなも一仕事終えた感じで嬉しそうだ。

「それでは、みんなで打ち上げとかしちゃいます?」

ちょこ先生が提案する。

『賛成』

全員一致で打ち上げが決定した。

このメンバーで打ち上げとはかなりドキドキする展開になるのでは?

俺は少しこの後の展開に期待した。

そんな時、ピーピーと俺のアイテムボックスから音がした。

「な、なに?」

少し驚いた感じであくあちゃんがびくっとなる。

「あ、俺のトランシーバーだと思います」

俺はそう言ってアイテムボックスからトランシーバーを出す。

「はい、もしもし」

俺は陽気に返事をした。

「よかった通じた。

えっと今どこ…いる?

もし…れそうならすぐに…っちに来て。

今、大…なんだ。

スタ…ズフォーが暴…てる。

今はアキ…輩、…なたちゃん、…ワ、ス…ルで何と…押さ…てるけ…手が足…ない。

今…ぐ来て…しい。

場…は【天界】…」

そこで通話が切れた。

会話が途切れ途切れでかなり慌てていた。

スバルちゃんだ。

「こ、これって」

「【天界】が危ない」

「行かないと」

ちょこ先生が慌てる。

「ダメだよ、私達はここまでだから」

AZKiちゃんが悔しそうに言いながらちょこ先生を止めた。

「どういう事ですか?」

「制約みたいなもの。

大規模なホロメンの移動は同じホロメンは動けない」

はあとちゃんも悔しそうに言う。

「シオン達にも役割があるから、その役割を放棄して今は動いてる。

だから、あまり他の場所には移動できない」

そうかだから毎回裏世界に行く時に違うホロメンの人が付き合ってくれてるのか。

「分かりました。

俺【天界】に向かいます」

「ごめんなさい」

あくあちゃんが悲しそうに謝る。

「いえ、今回助けてもらったんです。

今は十分に休んでください」

「【天界】の行き方は分かる?」

心配そうに聞いてくるメルちゃん。

「あ、分からないです」

「マップ出して」

そう言って出したマップを見るわためちゃん。

「ここに門があるから」

そう言ってマークを付けてくれる。

「ありがとうございます。

それじゃ、すぐに外に」

みんなは頷き、まずは外へと急いだ。

「あ、GMバイク」

裏世界から出た門の近くにGMバイクが何故か停まっていた。

「キミが必要としているから来たんだよ」

メルちゃんが笑顔で言う。

「それじゃ、みんなをお願いね」

ちょこ先生は真剣な顔でGMバイクに乗った俺に言った。

「分かりました」

俺はそれに答える。

「行ってきます」

俺は7人に見送られがら、わためちゃんが入れてくれたマークを目指してGMバイクを走らせた。

 

あれか。

GMバイクの世界間移動を使い【ふぉーす】に来た俺は目的の場所付近に来た。

山頂に神殿らしき物が見える。

俺はすぐに神殿近くにGMバイクを降ろした。

神殿の周りには誰もおらず静かだ。

俺は神殿の中に急いで入る。

内装はほぼさっきの【海底都市】への門があった神殿と同じ。

奥に行くと巨大な門があった。

俺はそのまま勢い良く門に手を当て押す。

しかし、扉はびくともしなかった。

「あ!」

そうだ、俺【天界】に行く為の条件をクリアしてないんだ。

くそう、なんだ?

条件って。

俺はトランシーバーを手に取る。

繋がってくれ。

「はい、どうしたの?」

この声はまつり先輩。

「まつり先輩。

俺です」

「ああ、キミか。

元気にしてる?」

「え?

あ、はい。

元気なんですがちょっと聞きたい事があって」

「ん?なになに?

このまつりさんがなんでも教えてあげるよ」

助かった。

「あのう、【天界】に行く方法を教えて欲しいんです」

「【天界】?

裏世界の?

ああ、もうそこまで来たんだね。

分かった。

【天界】に行く方法はそうだなぁ、簡単なのはかなたんと腕相撲で勝つ事かな?」

いや、それ簡単じゃないし。

「分かりました、かなたちゃんですね」

「あ、ちょっと…」

何かまつりちゃんが言おうとしたが、ちょうどそこでトランシーバーのエネルギーが失くなった。

ってトランシーバー電池交換みたいなの必要だったのか?

くそう、今はそれは後だ。

すぐに町に戻ってかなた…かなたちゃん?

まて、かなたちゃんって今裏世界にいるんじゃないのか?

スバルちゃんが言ってた。

戦ってるのはアキちゃん、スバルちゃん、トワ様、そして、かなたちゃんだって。

それじゃ、俺は【天界】には行けないのか。

「くそう」

俺は思い切り門を叩く。

しかし、門は何も反応せずただ静かな神殿の中、門を叩いた音が響くだけ。

スバルちゃん達が助けを呼んでいるのに。

こんな俺でも来てくれって言ってくれてるのに。

必要としてくれてるのに。

「なんでだよ!」

いくら叩いても門は開かない。

分かってる。

分かってるけど、どうしようもないのか。

俺はそのまま地面に崩れる。

「くそう」

地面を叩く。

床は白く冷たく固い。

今までさんざん助けてもらったのに。

「くそう」

叩く。

叩く、叩く、叩く。

いつの間にか白い床は赤くなってきていた。

それでも俺は、こんな痛みなんて!

勢い良く振りかぶり俺は地面を…

「これ以上はダメだよ。

本当に壊れちゃう」

「え?」

地面に当たる前に誰かが俺の拳をそっと受け止めてくれた。

俺はゆっくりと顔をあげる。

そこにはフード付きのマントを着た1人の女性がいた。

「立てる?」

「は、はい」

「こんなところで立ち止まってたら助けられる人も助けられないよ」

そう彼女は微笑みながら言った。

「本当はもっと早めにこれるはずだったんだけど、リアルの用事が延びちゃって、ごめんね。

私があげた物、今は姿が変わってるみたいだけど、大事に持っててくれてありがとう」

そう言って彼女は傷ついている俺の手を持って門の扉に手を当てた。

彼女の手が光る、手の痛みが消えていく。

これは回復魔法?

「話は聞いてるよ、アキロゼちゃんなら大丈夫。

彼女強いから」

ゆっくりと門を押す。

トン

誰かが門の扉に手を当てた。

「遅くなりましたぁ。

心配しなくてもあのPP天使とヘラ様がやられるわけないよ」

トン

「もちろん、スバルちゃ先輩もね」

もう1つ小さな手が扉を押す。

「さ、前に進もう。

ここはまだ終わりの場所じゃないよ!」

4人で扉を押す。

ゆっくりと開いていく扉。

そして、俺達は裏世界【天界】に入った。

頼もしい仲間と共に頑張っている仲間を助ける為に。




裏世界編最後のお話突入です。
あなたに手を貸してくれたホロメン達は誰なのか?
もう、知っている人には簡単ですよね?
【天界】への扉を開けるもう1つの条件は【空】に関係しているホロメンとパーティーを組む。
では、次回をお楽しみに


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天空の超決戦!

大空スバルからの連絡により、裏世界【天界】が危険にさらされている事を知ったあなたは急いで、門へと急ぐ。
しかし、裏世界へ行く条件を満たしていないあなたは門の扉を開けれなかった。
そんな意気消沈するあなたに誰かが手を貸してくれる。
そして、無事に扉が開いた。
さぁ、ここからが決戦だ!


「くぅ」

かなたが後ろに吹き飛ばされる。

それを咄嗟に受け止めるトワ。

「これはちょっと大変かな」

バックラーと湾曲刀を持ったアキが前方の頭上で飛ぶ敵を見つめる。

「連絡入れたけどこれなら呼ばない方がよかったかな?」

肩で息をするスバル。

その体はスバルアーマーに包まれ完全戦闘状態だ。

「そうだね、あの子も危険にさらされる」

アキがそう答えた。

先程からなんとか押さえてはいるものの、ホロメン4人で、スターズフォーと第X世代、そして意外な人物の襲来に対処している。

しかし、状況はかなり悪かった。

「まさか、あんたがそっちにつくなんてね」

トワは、前方に浮かぶ、杖に鳥を乗せた赤いマントの女性を見ながら言った。

 

数時間前、アキ達は最後の裏世界に行くはずのあなたを手伝う為に【ふぉーす】にある門の前に集合した。

何人かは様々な用事でまだ来ていなかったが、まだ時間はあった。

そんな時、裏世界に入って様子を見ていたかなたとトワが慌てた様子で門から出てきた。

「どうしたの?」

慌てているかなたにアキが聞く。

「来た、スターズフォーが来た!」

「え?」

かなたの言葉を聞いてアキは初め理解が出来なかった。

これまでの戦いは、ミオから全ホロメンに伝えられている。

しかし、世界の答えと呼ばれる彼が着いていないのにスターズフォーが現れるのはこれまでなかった。

それに攻撃を仕掛けてくるなんて。

「まさか、門を狙ってる?」

アキの声に頷くトワ。

「まずい、ここからこっちに出てこられたら被害が大きくなる」

スバルも慌てている。

「確かに、ここと裏世界ではプレイヤーの実力も数も違う。

こっちに出すわけにはいかないわ」

「それじゃ」

かなたが決心したようにアキを見る。

アキも強く頷いた。

「スバルちゃんは彼に連絡して。

かなたんとトワちゃんは私とスターズフォーを止める」

そして、アキ達は裏世界へと向かった。

スターズフォーは表への門のすぐ近くの浮遊石郡まで来ていた。

ここは多数の巨大な岩が浮遊している世界。

【ふぉーす】のような大きな浮遊大陸は失く、下はどこまで続いているから分からないくらい見えない。

かなたとトワは【変身】をして戦闘準備に入る。

アキもアイテムボックスから湾曲刀とバックラーを取り出した。

そして、スターズフォーのところに向かう。

ギャワーーーー

3人を見たスターズフォーが雄叫びをあげる。

大怪鳥ロックフェス、それがスターズフォーになったモンスターだ。

そして、その横にX世代のベルが浮いていた。

「3人だけなんですね」

ベルは腕組みをしてアキ達を見下ろす。

「まさか、そちらから攻めてくるとは思わなかったわ」

アキがベルに言った。

「助言がありましてね。

他の仲間は待った事でそちらに戦力が揃ってしまった。

だから、揃う前にやれば勝てますって」

「別に味方がいたって事か」

かなたはベルに言う。

「ま、別に味方ってわけではないんですけどね。

この場合はお互いに利害が一致したって事です」

そう言ってロックフェスの影から1人の女性が姿を現す。

「な、なんで?」

「ここにいるんだ?」

その人物を見て、かなたとトワが驚く。

「まっ鷹ね?」

そう言って鷹嶺ルイがニヤリと笑った。

 

その後、スバルも参戦するも敵の攻撃に押されていた。

「くそ!」

ロックフェスの猛攻にかなたとトワは傷つき浮遊石の上に吹き飛ばされる。

いくらチートと言えどスターズフォーを2人で相手するには荷が重すぎた。

そして、こちらも押されている。

「はぁはぁはぁ」

いくら攻撃しても復活するそんな相手をスバルは相手していた。

「どうしました先輩?

もう終わりですか?」

デビルカードを使い赤と黒のミニドレスのような服を着て赤と黒の巨大な翼を広げたベルが笑う。

「ほら、これでどうです?」

そう言って翼を羽ばたかす。

強風と鋭利に尖った固い羽根がスバルをアーマーの上から攻撃した。

強風の為に避ける事も出来ず防戦一方のスバル。

スバルアーマーも所々破壊され下の肌が見えていた。

 

「そちらは大丈夫ですか?

アキロゼ先輩?」

アキと対峙しているルイが聞く。

「まさか、第六世代組も実装されていたなんてね」

「まだ、こちらの世界に来てそう長くはないですけどね」

アキにルイはそう答える。

「何が目的なの?」

「目的…ですか?」

「そう、今ルイちゃんが手助けしている方は、この世界を終わらせようとしている人達だよ」

「ん~それはちょっと違います。

彼女達はここで楽しく遊んでいるだけですよ」

ルイはそう答える。

「ただ、その終わりに世界が終わるかもしれないって事があるだけです」と付け加えた。

「それで、答えは?」

アキが武器を構える。

「目的ですか?」

ルイの言葉にアキは答えない。

「そんなに怒らないでください。

目的はですね、将来の為です」

「将来?」

「そうです、私達の将来。

いや、ラプラスの将来の為ですかね?」

そう言ってルイも杖を構えた。

 

ギャワーーーー

ロックフェスが倒れた2人に襲いかかろうとする。

「グワァーーーー」

そこに突然、咆哮がして彼女達2人の浮遊石の後ろから巨大な影が現れた。

 

「間に合った!」

俺は眼下に見えるホロメン達を確認する。

かなたちゃんもトワ様もスバルちゃんもアキちゃんも怪我はしてるようだけど無事だ。

「手はず通りにいきましょう」

そう言ってフードの女性はアキちゃんの方に飛び降りる。

俺も後に続いた。

小さな姫様も飛び降りた。

巨大な影。

赤竜帝は俺達を降ろした後、かなたちゃん達の方に向かう。

 

「スバルちゃ先輩~!」

小さな姫様、ルーナは飛び降りながら【変身】を開始する。

タンとスバルの前に姫士王の姿で降り立つルーナ。

チラッとスバルを見る。

破壊されたヘルメットから苦しそうだがにこっとスバルは笑った。

「な、な、な、な、な、な、な、な、な、な!」

ルーナがベルの方を見る。

「なに!

ルーナのスバルちゃ先輩をいじめてるのら~!」

振りかぶるその剣に凄まじい光が集まる。

そして、ルーナはベルにエクススラッシュを放った。

 

赤竜帝はその姿を人の姿に変えながらかなたとトワの間に降り立つ。

「よく頑張ったな、かなた、トワ様。

あとは任せろ」

笑顔でそう伝え、ココはロックフェスを見る。

羽ばたき続けながらロックフェスはココ達を見下ろす。

「ギャァ」

ロックフェスはそう鳴いて笑ったような気がした。

ダン!

ココが一歩前に出る。

その右足はドラゴンの足に変わっていた。

「トワ様に何をした」

ダン!

もう一歩前に出た。

その左足もまた変わっている。

「かなたに何をした」

「ギャ」

ココの雰囲気にスターズフォーであるロックフェスは後ろに下がる。

「お前は私のダチに何をしたぁ!」

一気に膨れ上がり立ち上る赤い気の奔流。

そして、その奔流から、ドラゴニュートフォームのココが一気にロックフェスに向かって行く。

「出直してこい、このくそ鳥が~!」

ココのドラゴンの鉄拳がロックフェスの顔をぶち殴った。

 

「遅くなってごめんね、アキロゼちゃん」

「ううん、来てくれてありがとう、そらちゃん」

そう呼ばれた女性はフードを取った。

フードの下から茶色のロングストレートの髪が現れる。

横跳ねの髪に星形のヘアアクセサリーを着けていた。

「はは、まさかそら先輩がここで来るんですか」

そらちゃんを見た彼女は後ろに下がりながら言う。

「ここは任せて、彼と他のみんなを」

「分かりました」

俺はそらちゃんに言われ頷いた。

アキちゃんも頷く。

「おっと、待ってくれますか?」

俺が行こうとすると彼女が止める。

「ゆっくりと自己紹介できないですけど、私は鷹嶺ルイと言います。

いつぞやは楽しかったですよ」

そう彼女は俺に言った。

やっぱり、あの時船の部品をくれた人。

《スキル【運命】が発動しました》

「どうしてこんな事を」

俺はルイちゃんに聞いたが、彼女はもう答えてくれないようだ。

完全にそらちゃんの方を向いて構えている。

「いきましょう」

アキちゃんに言われ、俺達は他のみんなの方に向かった。

 

「ルイちゃんどうしてもやるんだね」

そらはルイを悲しそうに見る。

「そら先輩の強さを見れる絶好のチャンスですから」

ルイはそう言って自分の胸元に手を置いた。

そして、胸元が光る。

胸元には例の紋章が現れた。

ギィン!

いつの間にかそらの左側から仕込み刀で斬りつけているルイ。

目の前のルイがぶれて消えていく。

それはクロヱの技。

仕込み刀で斬りつけたその太刀筋もいろはの太刀筋に似ていた。

「く」

攻撃したルイが後方に跳ぶ。

「それが円卓ですか」

ルイはそらを見ながら言った。

そらの横には全身鎧の騎士が盾を構えて立っていた。

先程のルイの攻撃を受けたのはその騎士だ。

「【円卓の騎士】そら先輩専用のスキル、まさかこの目で見れるとは光栄です」

ルイが嬉しそうに言った。

「このスキルが発動しててもまだ来る?」

「そのスキルが発動してるそら先輩に勝てる気はしませんが少し試させてもらいます」

ルイは腕を上げる。

そして、そのまま横からそらを捕まえるように振る。

ルイとそらには距離がある。

普通なら届かないその距離だが。

ルイの腕の動きと同じように紫の気が巨大な手となりそらを掴みかかる。

斬!

しかし、その巨大な手をさっきとは違う大剣を持った騎士が斬り落とす。

「やっぱり、私では使いこなせないか」

そらの背後に2人の魔導士が現れる。

2人が炎の玉を生み出し、ルイに向かって打ち出した。

炎の玉がルイに当たる。

しかし、間一髪避けるルイ。

「今回はここまでにします、そら先輩。

また、いずれ」

そう言ってルイは戦線を離脱する。

そらの周りから騎士達が消える。

そらはルイを追わずその後ろ姿を悲しそうに見つめていた。

 

「大丈夫ですか!」 

俺達はそらちゃんと別れた後、スバルちゃんの元に向かった。

そこにはルーナちゃんが倒れないように剣を杖にして、その横からスバルちゃんはルーナちゃんを支えていた。

「大丈夫、どこもやられてない。

ルーナはさっき力を使い果たしちゃって」

そうか、さっき一瞬見えたのはあの必殺技か。

「はぁはぁはぁ、やったのら?」

ルーナちゃんが目の前を見る。

そこには頭だけ宙に浮き尚笑うベルがいた。

「はぁ~危なかったですよ。

咄嗟に避けてなかったら全て消滅させられるところでした。

さすがに全て消されたら私も終わりですから」

ベルの頭はそう言って炎に包まれる。

その炎は大きくなりそして、火柱に変わる。

「はぁ~」

そして、火柱からゆっくりと何事もなかったようにベルが現れた。

「フェニックス」

俺はその姿を見て言った。

「スバルの攻撃もことごとく受けられてそして、復活された」

スバルちゃんも悔しそうに言う。

「全て消せば復活しないんだね」

アキちゃんはベルを見て言う。

「それじゃ」

アキちゃんが俺達にひそひそ言ってきた。

「分かりました」

「うん」

俺とスバルちゃんは頷く。

「ルーナ、座って待っててさっさと終わらすから」

スバルちゃんはルーナちゃんをそっと座らせた。

「スバルちゃ先輩」

弱々しい声、そんなルーナちゃんの頭を優しく撫でる。

「行くよ」

アキちゃんは俺達にそう言ってベルに向かっていった。

「突進したところで私の前では無意味ですよ」

ベルはまた大きな翼をはためかせようとする。

しかし、ダン、ダン。

バックラーの影からアキちゃんが拳銃を撃ち翼に穴を開ける。

すぐに再生すると言っても一瞬じゃない。

アキちゃんが間合いを詰めるには十分な時間だ。

拳銃をアイテムボックスに入れ代わりに湾曲刀を取り出すアキちゃん。

そのまま、ベルを斬り刻む。

ここだ!

俺はアキちゃんに言われた通り、鬼切丸の雷の魔法を網のようにしてベルを包み込んだ。

「スバルちゃん!」

「任せて!」

スバルちゃんはひとまとめになったベルに両手を向ける。

「ファイナルブラスター」

スバルちゃんの両手から巨大なレーザーが放たれる。

レーザーは網ごとベルを消し去った。

「やった!」

俺の声にスバルちゃんはその場に座り込む。

スバルアーマーも全てパージされ消えた。

「やったね」

アキちゃんが戻ってきて俺達に声をかけてくれる。

「まさか、こんなに早く倒すなんて思ってみなかったです」

「なに?」

声のする方を見るとルイちゃんがいた。

その手にはベルの羽根が握られている。

「やばい、復活される」

俺の言葉に身構える俺とアキちゃん。

しかし、スバルちゃんとルーナちゃんはまだ立てない。

「ああ、もう私は撤退します。

目的は果たせましたので。

では、おつルイルイ」

そう言って背後に機械でワープホールを作り飛び込むルイちゃん。

「な、なんなんだ?」

「今は置いといて、ココ会長の方に急ごう」

「はい」

「スバルちゃん達はここで休んでて」

アキちゃんの言葉に頷く2人。

俺達はココちゃん達の方に向かった。

 

「す、すごい」

俺達はココさんの方に走った。

そこには巨大な鳥をドラゴニュートフォームになったココさんが空中で乱打している姿が見えた。

「でも、スターズフォーだけあって倒しきれてない」

そうか、HPがやたらに多いから。

「2人とも大丈夫ですか」

俺達は何とか立ち上がろうとしているかなたちゃん達を支える。

「ありがとう。

早くココを加勢しないと」

立ち上がったかなたちゃんはココさんを見る。

でも、見た感じかなりダメージを受けている。

なら、俺はかなたちゃんの背中に手を置く。

そして、唯一使える魔法を使った。

「回復魔法?」

かなたちゃんが聞いてくる。

「はい、友人にこれは覚えてろって言われたので。

どうですか?」

「ありがとう、少しは楽になった」

自分で立つかなたちゃん。

俺はトワ様のところに行って同じように回復魔法をかけた。

「ありがとうね」

トワ様も自分で立てるくらい回復した。

「これくらいしかできないですから」

「それだけできたら十分」

トワ様がそう言って微笑んでくれた。

「さ、ココちんだけに任せてられない」

トワ様が未だに決着のつかないココさんの方を見て言った。

「ココに加勢しよう」

かなたちゃんもココさんを見る。

「でも、今の僕達だと力が足りない」

「なら、あれやる?」

かなたちゃんにトワ様が言った。

「いいの?」

「仕方ないでしょ。

それにココちんを加勢するのと、あのムカつく鳥をぶん殴ってやらないと気が済まない」

「それは僕も」

2人は頷き合う。

「アキロゼ先輩、トドメは任せました」

かなたちゃんがアキちゃんに向かって言った。

「任せて」

その言葉に笑顔で頷く2人。

「じゃ、行くよ」

「分かった」

そう言って2人は同時に巨大な鳥へと飛翔した。

螺旋を描き飛ぶ二人。

白と黒が交わり飛ぶ。

そして、いつしかその螺旋は1つとなった。

 

『おらぁ~!』

ドカァ!

天使と悪魔の翼を持つその女性の一撃がロックフェスを吹き飛ばす。

「わぁぉ、その姿になったんですか?」

ココはその女性に声をかける。

黒く長い髪、五芒星の天使の輪を頭に掲げ、2本の悪魔の角。

青と緑のオッドアイがココを見つめる。

『本当は嫌だけど今はお互いに利害が一致したから。

それにこの状態もそう長くはいられない』

そう、彼女は言った。

「なら、さっさとあれをやっつけましょう」

ココがロックフェスを見る。

『分かった』

天魔の彼女は頭の五芒星を取り右手にはめる。

『はぁぁぁ~!』

彼女が気合いを込めることで五芒星が回り彼女の気が右手に集まってくる。

『いけるよ』

「こちらもオッケー」

大きくドラゴンの翼をはためかせココはロックフェスに突っ込む。

ロックフェスは迎撃しようと口を開く、ブレスだ!

しかし、ココはロックフェスの頭上を超え一瞬で背後に回った。

そして、背後から巨大なドラゴンの腕をぶちこんだ。

天魔の彼女にぶっ飛ばされるロックフェス。

そこで彼女は右の拳をロックフェスに放つ。

ロックフェスの体はその拳に貫かれた。

 

「そう、そこで立って。

鬼切丸の魔法を銃に流して」

「はい」

俺は言われた通りに肩に乗せたロングバレルに雷の魔力を流し込む。

俺は今、アキさんが出した巨大なロングバレルを担いでいる。

目標はあの巨大な鳥。

「や、やった」

ちょうど鳥を見た時、あの助けに行った彼女が巨大な鳥を貫いた瞬間だった。

「今!」

アキちゃんが銃の引き金を引く。

ダン!と凄まじい勢いで雷を纏った弾が巨大な鳥に向かって発射された。

見事に鳥の額に命中。

そして、巨大な鳥は断末魔もあげれないまま光となって消えていった。

「す、すごい」

「さっきのは対コメント集の弾だから、その属性の敵にはすごい威力を発揮するの」

アキちゃんは笑顔でそう教えてくれた。

「やったね」

「お疲れ」

空から3人が降りてくる。

「あれ?あの長い髪の女性は?」

俺はキョロキョロ周りを見るが見当たらない。

「あれはトワとかなたが合体した姿」

「え?」

「もう、次は絶対やらない。

トワは天使じゃないから」

そう言ってふんと明後日の方を見るトワ様。

本当の奥の手だったんだな。

「これ、ありがとう」

かなたちゃんが赤い小手を僕に差しだす。

「これって」

確か前にかなたちゃんに渡した赤竜帝の小手。

「返すの遅くなっちゃってごめんね」

俺はかなたちゃんから小手を受け取りココさんを見る。

ココさんは頷いていた。

「ありがとうかなたちゃん、大事に使うね」

俺はかなたちゃんにそう言った。

「おお~い」

声に振り向くとそらちゃん、スバルちゃん、ルーナちゃんがこちらに走ってきていた。

スバルちゃん達は体力戻ったんだな。

たぶん、そらちゃんの回復魔法のお陰かな?

「みんな本当にお疲れ様」

みんなが揃ったところでそらちゃんからの激励の言葉をもらった。

「まずはここから出てゆっくりできる場所に移動したいのら」

ルーナちゃんが言う。

「それは賛成」

スバルちゃんもそれに賛同する。

「それじゃ、1回外に出ましょうか?」

アキちゃんの言葉に全員が頷いた。

それから俺達は裏世界から出る為に門へと向かった。

これで5つのスターズフォーをやっつけた。

ひとまずこれで驚異は去ったのだろうか?

それとも、まだ驚異は終わっていないのだろうか?

俺は少し不安になりながらも頭を振る。

今はまず勝利を噛み締めたい。

そう思いながら門の前に待つみんなのところに走っていった。




裏世界編もこれにて最後になりました。
このお話が完結するのも後少し。
それでは最後までお付き合いくださいませ。
では、また次回


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ゲームとリアルの境で

すべてのスターズフォーを倒したあなた。
あなたは疲れを癒す為に裏世界から脱出するのだった。


【天界】の戦いの後、俺達は門を抜け【ふぉーす】の第2の町に来ていた。

恒例の打ち上げが行われ、おおいに騒いだ。

初めてそらちゃんに会ったので、めちゃくちゃお話しさせてもらった。

すごく優しくてこっちの拙い話も熱心に聞いてくれてとても嬉しかった。

そして、その楽しい時間も終わり、俺は町の宿屋に向かう。

すべてのスターズフォーを倒した事で何か起こるかと期待したが、ミオちゃんからの連絡もなくいつもの雰囲気だった。

世界は回り、あのスターズフォーの戦いも世界が終わるっていう話も嘘のように今は思える。

このままログアウトするつもりだけど、明日はどうしようか?

GMバイクがあるから明日ログインしたらミオちゃんの元に行ってみよう。

もしかしたら、世界の驚異はもう去ったのかもしれないし。

もしそうだったらどこに行くかな?

またレベル1になって始まりの町から始めるのも悪くないかも。

そう考えながら宿屋に着く。

俺は宿の親父に料金を支払って部屋に入る。

そして、装備を外しベッドに入った。

全ては明日。

楽しみは明日に。

そして、俺はログアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けるそこは真っ暗な世界。

え?

ログアウトしたよな?

しかし、どこを見ても真っ暗だ。

自分の手を見る。

しかし、どこにも手がない、体、足、全てが見えない。

どうなってるんだ?

ここってどこなんだ?

「久しぶりね」

そう真っ暗な世界で声をかけられた。

その方を見ると1人の女性が立ってこちらを見ていた。

それは俺もよく知っている女性。

赤井はあとちゃんだった。

 

 

「ごめんなさいね。

ログアウト中に少しだけ時間をもらったの」

はあとちゃんは静かにそう言った。

「もしかして、第3人格の?」

俺はそう聞いてみた。

声は出てる。

「ええ、そう。

分かった?」

「雰囲気が違ったから」

「そう」

はあとちゃんはそう言って微笑む。

「キミに伝えたい事があってね」

そう言ってはあとちゃんはゆっくりと話を始めた。

まずは今回の本当の敵に関してだった。

本当の敵は超AIと呼ばれる存在。

それはホロメン達とは全く別物で、この広大な電子の海で自然発生したAIの事。

その超AIは楽しい事、面白い事を探して様々なゲームやシステムに入り込み遊ぶらしい。

そして、楽しい事や面白い事が見つからなかったら、自ら好きに動き始めて最後にはそのゲームやシステムはルールが失くなり消滅してしまう。

そんなAIが5体この【ホロライブワールド】に目をつけてやってきた。

前回は開発途中の【ホロライブワールド】に様子見のような感じでいたずらを仕掛けてきた。

その時にある事故によって封印されていた第5世代組を復活させ、コメント集と呼ばれる力を使い世界の秩序を破壊しようとした。

それをそらちゃんとホロメンのみんなで何とか防いだ。

超AI達はホロメンの力を見た事でホロメンに興味を持った。

そして、自分達もホロメンになる為、開発中の【ホロライブENワールド】のあるホロメン達に寄生した。

そのホロメンは通称【議会】と呼ばれる人達。

超AIは【議会】のホロメンに寄生して時を待った。

そして、【ホロライブワールド】が実装され、時が立ったある日、その超AIは【議会】のホロメンの力と姿をコピーして独立した。

「それじゃ、黒幕って」

「私達と同じホロメン。

いや、同じような存在かな。

姿や力は同じでも【議会】の人達とはまったく違う存在だから」

そして、その【偽会】が今回動き出した。

それに抵抗して【ホロライブワールド】が対抗手段として選んだのが俺。

「それはミオから聞いているんだよね?」

「はい、ミオちゃんに言われました」

「そして、キミはその役割通りに世界を救ってきた。

それを【偽会】の子達は見てきた。

条件は揃った。

次は【偽会】の子達が動き出すわ」

「黒幕が」

「そう、最終決戦ね」

「そうですか」

「怖い?」

はあとちゃんが優しい声で聞いてくる。

「分かりません。

怖いのか、それとも、楽しみなのか」

「楽しみ?」

「はい、俺はこの世界をいろいろ見てきました。

いろんな出会いをした。

たくさんの人やホロメンの方と会った。

それは俺にとって楽しい事です。

だから、また新しいホロメンの人に会えるのは楽しみでもあります」

「そう」

俺の言葉にはあとちゃんは目を瞑った。

「あなたみたいな人だから世界はあなたを選んだのかしれない」

「え?」

「次のログイン。

それでこの世界の運命が決まるわ。

あなたが勝つか。

【偽会】がこの世界を退屈な場所と決めるか。

それはあなた次第」

そう言ってはあとちゃんが後ろを向く。

「待って」

俺の静止に、はあとちゃんが止まる。

「あなたは誰なんですか?」

俺ははあとちゃんに聞いた。

はあとちゃんでも、はあちゃまでもない、第3の人格。

こんな様々な事を知っている彼女が何者か気になった。

「ここまで頑張ったんだものね。

少しくらい世界の真実を知っててもいいか」

そうはあとちゃんは呟き振り向いた。

「私は黒幕達と同じ自然発生したAIよ。

キミが出会ったホロメンの中にも私を入れて4人程いるわ。

私みたいに別人格として隠れ潜んでいる者。

お互いに存在を受け入れて一体化した者。

超AIとしての意識を眠らせ、ホロメンに依存した者。

正体を明かさず完全に一体化した者。

それぞれ違うけど、みんなこの【ホロライブワールド】が好きになってホロメンを好きになって共存しているわ。

でも、あの子達は違う。

だから、自分達のやった先に世界の終わりがあっても関係がない」

はあとちゃんは悲しそうに言った。

「だから救ってやってあの子達も【ホロライブワールド】も」

そう言ってはあとちゃんは消えていった。

俺はその言葉を聞いて意識を失なっていった。




次は【偽会】の人達との最終決戦です。
ちなみにはあとちゃんが言ってたように実際の議会のホロメンの方とは違った存在になりますのでご注意ください。
では、次回をお楽しみに


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現れる【偽会】そして刮目せよ!

ログアウト中に赤井はあとから聞いた真実。
【ホロライブENワールド】の【議会】のメンバーの姿と力をコピーした超AIが今回の黒幕だった。
次のログインで全てが決まる。
あなたは覚悟を決めログインするのだった。



これがこのゲームをする最後になるかもしれない。

世界の答えと言われこのゲームを駆け抜けてきた。

はあとちゃんが言った。

このログインで黒幕が動くって。

ゆっくりと目を瞑る。

そして俺はゲームへとダイブした。

 

 

目を開けた場所はとても広い場所だった。

周りには何もない真っ白な空間。

よく似た場所をあげるならAちゃんがいたあの場所に似ていた。

「驚かないんだな」

そう背後から声をかけられる。

ゆっくりと振り返るとそこには5人の女性が立っていた。

「【偽会】と呼べばいいのかな?

それとも超AI?」

俺はその5人に言う。

「へぇ、我等の事を知っていたか」

「さすがは世界の答え」

「我等の子等を倒した事はある」

「第X世代」

「そう、その子達だ」

「では、自己紹介といこうか」

真ん中に立つ赤髪のネズミのような耳を持つ少女が言った。

「ハコス・ベールズだ。

カオスの概念だ。

ま、借り物だがな」

そういってハコスは笑う。

「次は私かな」

そう言って薄茶色のロングヘアーの女性が前に出る。

「七詩ムメイ。

文明の概念よ」

「オーロ・クロニー

時間の概念だ」

ムメイの横からすっと前に出て、淡々と言う青髪の女性。

「クロニー今私が話してる」

ムメイはクロニーに言うが、クロニーは知らんぷりしながら下がる。

「ちょっと」

「まあまあ」

2人をなだめながら緑色のロングヘアーの女性が前に出る。

「セレス・ファウナよ。

自然の概念」

そう笑顔で言った。

「最後は私だね」

他の女性達より一回り大きい女性が笑いながら俺を見る。

「初めて会ったあの時に比べて本当に大きくなったね。

私は九十九佐命だよ。

空間の概念ね」

「ま、さっきも言ったが、この名前も姿も全ては借り物だ。

元々の名前はない。

なので今はさっき名乗った名前で呼べばいい」

ハコスがそう言って腕を組む。

「分かった」

俺はそう言って鬼切丸を抜く。

今の装備は俺の持つ装備の中で最高の物を装備している。

手にはかなたちゃんから返してもらったココちゃんの赤竜帝の小手。

足はアルティメットフット。

首に魔乃ペンダント。

武器には鬼切丸。

鎧はカジノで交換したシンアーマー

神鉄と呼ばれるこの世界で1、2を争う固さの素材で出来てる物だ。

これ以上はもう俺には用意出来ない程いい装備。

武器を構えた俺を楽しそうに眺める【偽会】の面々。

「いいね、やる気出してくれて」

ハコスがそう言った瞬間、俺はぶっ飛ばされた。

「がぁ」

真っ白い地面に叩きつけられる。

な、なんだ?

何をされた?

「おい!」

ハコスが隣のクロニーに声をかける。

「力を使って攻撃するな。

面白味がなくなるだろ、特におまえは」

「ふん、どれだけなのか確めただけだ」

そう言ってクロニーは腕組みをしてそっぽを向く。

俺はどうにか立ち上がる。

攻撃されたのか?

気づいたらいきなり飛ばされて。

「く」

俺は前に出て一気に【偽会】との間合いを詰める。

アルティメットフットがあるからこのくらいの距離は一瞬で。

「うわぁ」

いきなり何かに引っ掛かり俺は勢いよく転けた。

「あらら」

「痛そう」

そんな俺を見て笑う【偽会】

なんだ?

足下を見ると何故か蔦が足に絡まっている。

「くそ」

鬼切丸で蔦を斬る。

なんだ?

「ほらほら、もうちょっと楽しませてよ」

そう言って【偽会】の足元からビルが生える。

はぁ?

なんでビルが?

そのまま【偽会】は上へと上がっていく。

「くそ」

俺は伸び続けるビルに飛びつき走る。

アルティメットフットのお陰で垂直に伸びるビルだろうと走って上がれる。

「まて~!」

ビルはもう止まったが、【偽会】のいる屋上ははるかかなた。

俺は必死で走った。

「はは、頑張ってるね~」

「な?」

そんな俺をビルの影から覗く佐命。

だけど大きさが異常だ。

この馬鹿デカイビルと同じぐらいの大きさだなんて。

「手伝ってあげるよ」

そう言って佐命は虫を捕まえるように俺を指で摘まむ。

そのまま、一気に屋上に持ち上げられ落とされた。

その様子を見て笑う【偽会】

佐命の大きさもいつの間にか先程の大きさに戻っている。

「はは、面白いなおまえ。

必死で走って佐命に捕まえられてさ。

ははははは」

何が面白いのかハコスは俺を指差して笑う。

「おい、期待はずれだろ、これじゃ」

クロニーは俺を一瞥して言う。

「そうか?

面白いけどな。

このおもちゃ」

そうハコスは言う。

おもちゃ?

俺の事か。

「我は願う 大いなる神々に

我は欲す 神速で敵を貫く葬槍を」

俺は鬼切丸を【偽会】に構え詠唱する。

「ん?」

不思議そうに俺を見るハコス。

「喰らえ!サンダートライデント!」

俺は魔法を放つ。

いつの間にかハコスの前に巨大な大砲が浮いていた。

「ドン!」

そうムメイが言った瞬間。

俺の魔法は巨大な大砲から放たれたレーザーに打ち消された。

「く」

咄嗟に横に避ける。

俺の横をレーザーが通りすぎた。

「危ないでしょ、魔法なんて」

そうムメイが言うが、さっきのレーザーの方がよっぽど危ない。

「はぁ、ま、確かにもう少しやれると思ったけど」

ハコスは真顔でこっちを見る。

「10分ぐらいか」

「もった方だね。

私達が出てきてそれだけもったなら新記録」

佐命が笑う。

「じゃ、これでおしまいかぁ」

ハコスが片手をあげる。

その頭上に巨大な黒い塊が浮かぶ。

「これが終わったら各々好きにするといいさ。

終わったらまた別の遊び場を探す」

『わかった』

ハコスの言葉に頷く【偽会】

「どういう事だ!」

俺はハコスに言う。

「ん?

おまえと言うおもちゃで遊ぶのは飽きたって事」

そう言ってハコスは上げた手を振り下ろす。

巨大な黒球が俺に向かって放たれた。

「じゃぁね、世界の答え」

ハコスの言葉に後ろを向く【偽会】

圧倒的な圧を放ちながら迫る黒球に俺はその場を動けない。

くそう、やっぱり俺じゃ何にも出来ないじゃないか。

世界の答えなんて言われてここまで来たけど何も。

迫る黒球。

動けない俺にはもうどうしようもない。

トン

そんな俺の肩に誰かが手を置いた。

「つい最近言ったはずなんだけどね。

ここで諦めたら助けれるものも助けられないよって」

「え?」

「おらぁ~!」

すごい気合いの入った声と共に黒球はビルの外へと弾き飛ばされる。

「なに!」

その声に振り返る【偽会】

俺は肩に手を置いた人物を見る。

それはよく知った人物の顔だった。

「そ、そらちゃん?」

俺の声にそらちゃんは笑顔で答えてくれた。

「ふう、スーパースバルアーマーいけるじゃん」

さっき黒球を吹き飛ばした人物も降りてくる。

「スバルちゃん?」

「おう」

フルメットを開けスバルちゃんが笑う。

「へぇ~

この空間に割り込んで来たんだ」

こちらを向くハコス。

「そりゃそうでしょう。

雪民さんとラミィの前には距離なんてないのと同じだし」

「え?」

「ねぇ~」

ラミィちゃんがそう言いながら俺の隣で笑う。

「なんで?」

「絆の力だよ。

キミが私達と結んだ力」

そうそらちゃんが言った。

その言葉と同時に俺の背後に光の柱が立ち上がる。

それはまさに大召喚のようだった。

光の柱から現れるホロメン達。

俺と共に冒険してくれたみんながここに来てくれたんだ。

「これはまだ楽しめそうじゃないか」

ハコスは俺達を見ながら笑う。

「ここからが本番で~す」

ココちゃんはそう言って指を鳴らす。

「なら、楽しませてもらおうか」

クロニーが笑う。

「おい!」

ハコスの声。

そして、『きゃ~』

ホロメンの何人かをどけてその場に倒れる。

「だからおまえがやるなって」

「ほぅ、それでも気づいて完全に防御されたぞ」

クロニーは楽しそうに笑う。

「なら、これなら?」

いつの間にかビルと同じ大きさになった佐命が上から俺達を押し潰そうと手を振り下ろす。

「【円卓の騎士】よ」

そらちゃんの声。

迫り来る巨大な手を13人の騎士達が俺達の頭上に現れ円陣を組ながら支える。

「すごい、受け止められたぁ」

嬉しそうに言う佐命。

「じゃ、これは?」

ドンとさらに大きくなる佐命。

「うぁ」

そらちゃんが片ひざを付く。

【円卓の騎士】もその手の力に押されて下がってくる。

「がぁ~!」

ココちゃんがドラゴンに変わり手伝う。

「ジャイアントスケルトン!」

「【金剛眼】」

るしあちゃんのアンデッドにノエルさんが乗りその手を支える。

「すごいすごい!」

さらに喜ぶ佐命。

「このままじゃ」

俺は徐々に迫る手を見る。

他のホロメンもその手に攻撃しているが、あまりにも大きさが違いすぎる。

「それくらいにしとけ!」

「いたぁ~」

突然の叫び声と共に今まで押さえ込んでいた手が消える。

【偽会】の方を向くとおでこを押さえている佐命。

「大丈夫?」

セレスは佐命を見ながら言った。

「なんだ?」

「あそこよ」

ハコスにムメイがある場所を指差し言った。

俺もそちらを見る。

そこには巨大なワープホールが。

そこから5人の女性が現れた。

「これだけ先輩方が揃っているのにこんな状態とは目もあてれませんね」

真ん中に立つ大きな角の女の子がホロメン達を見下ろしながら言った。

「ええ」

「どうしてここに?」

「やっぱりここで来るのね」

「なにやってんのよ」

ホロメン達もその人物を見てそれぞれ声をかける。

やっぱり、あの真ん中の女の子は【魔界】であった。

それに周りには第六世代?

「やはり、良い仕事をするね」

角の女の子が俺を見る。

「さぁ、仕上げといこうか!

刮目せよ!

吾輩の名はラプラス・ダークネスだ!」

《スキル【運命】が発動しました》

突然俺のステータス画面が開き推し一覧が表示される。

俺の推し一覧が全て点灯した。

「そうだ。

それを待っていた!」

「え?」

「さぁ、これで吾輩は自由だ。

まずはオリジナルの絆!」

彼女の言葉に俺の推し一覧のオリジナルの列から光が抜け出る。

そして、彼女の首に着いている枷に当たる。

枷は一瞬光って消えた。

「ダメ!」

そらちゃんが俺のステータス画面を押さえようとしたが、ステータス画面は俺から離れ頭上に上がっていく。

「次は第一世代と、特殊世代」

言われた推し一覧の光がまた彼女に向かう。

次は右手。

「好き勝手するな」

クロニーが動く。

「!?」

「どうした?」

クロニーに聞くハコス。

「動くなよ。

今良いところなんだから」

そう言ってラプラスはクロニーに笑った。

「あいつ、私の時の世界で動きを封じてきた」

クロニーは悔しそうに言った。

「今は見てるしかないか」

ハコスもラプラスを見ていた。

「次は第二世代」

左手の枷が消える。

「第三世代、第四世代」

ラプラスの両足の枷も外れた。

「そして、第五世代」

腰の枷も外れる。

「しかし、1人かけている第五世代も揃えるとは貴様には恐れ入ったよ」と俺を見て笑うラプラス。

「そして、最後は吾輩達だ」

第六世代の光も消えた。

そして、その光はラプラスの額に当たる。

「ははは、やっと靄がかかった頭がスッキリした!」

全ての推し一覧の光が消えた俺のステータスは俺のところに降りてきて消える。

「さぁ、目的は果たした」

「何をする気なの!」

そらちゃんがラプラスに向かって聞く。

「何も。

吾輩はただこの枷を外したかっただけですよ、そらさん。

後はご自由に。

ん?

そうか、ここはそらさんの方に勝ってもらわないといけないな」

何か考えてからそう口にするラプラス。

「じゃ、貴様の功績に吾輩が特別に手を貸してやろう」

そう言ってラプラスは【偽会】を見る。

そして、指をパチンと鳴らした。

『なに?』

【偽会】の5人が驚く。

その手や足、首に各1つずつ先程ラプラスに着いていた枷が着いていた。

「これで本来の力は出せないだろう。

さすがにこれには勝ってくださいよ、先輩方」

そう言って第六世代は背後のワープに消えていく。

最後、いろはちゃんはこちらをちらっと見てすまなさそうな顔をして消えた。

 

「あの吾輩!

今度会ったら説教してやる」

トワ様が消えた第六世代を見ながら拳を握る。

「それは後にしましょう。

今は目の前に集中」

アキちゃんがそう言って【偽会】を見る。

「ほう、本当に力を制限されているぞ」

ハコスが手をグッパしながら言う。

「なら、今のうちに倒す!」

変身しているかなたちゃんが前に出る。

「では、どうする?」

クロニーが聞く。

「そうね、これではあまりにも戦力差があるわね」

セレスは腕を組ながら言った。

「ムメイ」

ハコスはムメイに声をかけた。

「分かったわ」

そう言ってムメイは地面に手を当てた。

 

ピーピー

いきなり甲高い音が鳴り響く。

そして俺達の目の前に画面が現れた。

そこにはAちゃんが写っていた。

画面には絶え間なくノイズが走っている。

「ごめんなさい、緊急事態で」

「何があったの?」

慌てているAちゃんにそらちゃんが聞いた。

「どこからか分からないけどシステムにウイルスが侵入してきたの。

このままだと、この【ホロライブワールド】が維持できなくなる。

こちらも対処はしているんだけど間に合わなくて。

申し訳ないけど、オリジナル世代と特殊世代のみんなは各々の場所でこの世界の維持を手伝って…」

そこで画面のノイズが激しくなり画面が消えた。

「君達の仕業ね」

そらちゃんは【偽会】を見る。

ハコス達はただ微笑みながらこっちを見ていた。

「みこちゃん、大桜神社に。

ロボ子ちゃんは近未来都市のタワーに。

すいせいちゃんとあずきちゃんは私と始まりの場所の大剣をお願い」

「わかったにぇ」

『うん』

「フブキちゃん、ミオちゃん、おかゆちゃん、ころねちゃんは各神社でみこちゃんのサポートを」

『了解』

「ごめんなさい、後はみんなに任せる事になっちゃうけど、無茶だけはしないで」

そらちゃんは残るメンバーに伝える。

各々が頷き答えた。

そして、そらちゃんがこっちに来て俺の手を取る。

「キミも決して無茶はしないで。

でも、諦めないで。

キミには私達がついてるから」

そう言ってぎゅっと手を握ってくれた。

「それじゃ、みんな後はお願い」

そう言って、オリジナル世代と特殊世代が姿を消した。

「これでだいぶ弱体化したな」

ハコスはそう言って笑う。

俺達は各々武器を構え【偽会】と対峙した。

「では、もう一手」

ハコスは俺に向かって手を伸ばす。

なんだ?

「うぁ」

急に胸が痛み出す。

なんだ、なんでいきなり。

その場に俺は膝をつく。

誰かが一生懸命声をかけてくれているがそれも聞こえない。

どうして。

くそ、俺は最後に【偽会】を見ながらその場に倒れ意識を失った。




最終決戦の開幕です。
ハコスの攻撃にあなたは耐える事が出きるのか。
クライマックスはそこまできている。


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文明の破壊者 偽・七詩ムメイ

この一連の黒幕、【偽会】の姿と力を持つ超AIがあなたの前に姿を現した。
第6世代組のラプラス・ダークネスによりあなたは今までのホロメンとの絆を奪われたが、変わりに【偽会】の力の一部を封印する事に成功した。
そして、【偽会】はこちらの戦力を削ぐべくウイルスを【ホロライブワールド】に放つ。
それの対処にオリジナル世代と特殊世代が向かった。
そして、最後に【偽会】はあなたに攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃に耐えられず倒れ意識を失う。
果たしてあなたは【偽会】を止める事が出きるのか。


「う」

俺は首を横に振りながら体を起こす。

「ここはどこだ?」

周りを見る。

なんだこれ?

周りにビルや自動車、鉄塔に道路標識が無数に浮かんでいた。

自分が立っているのも浮いてるビルの上だ。

「ようこそ、私の世界へ」

その声に俺は前方の空中を見る。

そこには1人の女性が浮いていた。

「七詩ムメイ!」

俺が名前を呼ぶとにこっとムメイは微笑んだ。

「さぁ、私を楽しませて、世界の答え」

そう言ってムメイが後ろに浮き上がっていく。

「く、まて!」

「鬼さんこちら」

そう言ってムメイは手を振り下ろす。

それに合わせてムメイの近くに浮いている巨大なビルがこちらに向かってきた。

ゆっくりに見えるが実際は違うよな。

俺は迫り来るビルに合わせて飛ぶ。

ん?

普段以上のジャンプ力がある。

目の前まで迫ってきたビルが凄まじい勢いで、先程まで足場にしていたビルにぶつかる。

俺は飛んできた方のビルに着地し疾走した。

走りながらムメイを確認する。

まだ、距離は遠い。

また、ビルが飛んでくる。

俺は何とか近くに浮遊しているビルに移り、飛来してくるビルを避けながらムメイの方へ向かう。

「なかなかやりますね」

かなり遠いはずのムメイの声が聞こえる。

「では、これはどうします?」

その声が終わると同時に飛来する2本の電波塔。

その間には電線が張られてあった。

左右に避けるには遠すぎる。

正面で待ってても複数の電線に当たるし、電線の数が多すぎて斬るのも無理か。

なら上に避ける。

「と、思ってました」

ジャンプして避けた俺にムメイからの声が聞こえる。

そして、目の前に迫る複数の道路標識。

くそ、読まれてる。

俺は鬼切丸で迫り来る道路標識を斬りさばいた。

なんとかやれた。

足場のビルに着地しムメイを見る。

「頭上がお留守ですよ」

「え?」

慌てて上を見上げると巨大な像が降ってきていた。

く、避けきれない。

ドカァ!

降ってきた像の顔を誰かが横から殴る。

普通は変わらない像の顔が、殴られた感じに歪んだように見えた。

足場のビルから大きく外れて落ちていく像。

そして、足場に1人のアーマーを着た女性が降り立つ。

「スバルちゃん」

俺の声にフェイスガードを上げ、親指を立てたスバルちゃんがにこっと笑った。

「助けにきたよ」

「ありがとうございます」

「よっと」

そう言って俺の背後に女性が降りてきた。

「あてぃしもいるよ」

「あくあちゃん」

「ほらぁ、よそ見はダメですよ」

俺達に向かってくる複数の鉄筋を蛇腹剣でまとめ切り刻む。

「ちょこ先生!」

「は~い、ちょっこ~ん」

「そう言いながらよそ見してる!」

正面から迫る鉄塔。

それを巨大な炎の塊が溶かし尽くす。

そして、俺達の前に降りる女性。

「シオン師匠!」

あ、また言ってしまった。

「はぁ、弟子をとったつもりないんたけどぉ」

そう、言いながら笑う。

「やばぁ」

スバルちゃんの声に俺は前を見た。

な、なんだあれ!

某ゲーム出てくるような巨大な大砲の弾が飛んでくる。

「ちょっと大きすぎでしょ」

シオン師匠も慌てる。

「あくあ様、逃げ道は?」

「ダメ、あれは大きすぎる」

ちょこ先生の言葉に画面を見ていたあくあちゃんが答える。

その時、弾に向かって上から足場に降り立つ影。

キンと甲高い音が聞こえた気がした。

「ふぅ、またつまらないものを斬ってしまった、余」

カチンと刀を納める音。

その瞬間、弾にいくつもの斬撃の軌跡が走る。

そして、巨大な大砲の弾が細切れになった。

こちらに歩いてくる女性。

背後で細切れになった弾が大爆発を起こす。

「ヒーローは遅れてやってくるってね」

「余~」

「こら、余じゃないあやめだ余」

あまりのかっこ余さに余って叫んでしまった。

「あやめちゃんもありがとう」

「じゃ、これでみんなそろったっすね」

スバルちゃんがみんなを見る。

「今からは【ホロライブワールド】第二世代組が手伝うから、一緒にあの偽のムメイをやっつけるよ」

「はい!」

俺は5人を見ながら頷く。

これは負けられないな。

「それじゃ、作戦はキミがムメイにたどり着き一撃を入れる。

それをあてぃし達でフォローする感じになるね」

「じゃ、キミはそのままムメイに向かってスバル達はキミの近くを別ルートで移動していく」

パン!

「いた」

背中を思い切り叩かれる。

「シオンの弟子を名乗るならいいとこ見せてよ」

シオン師匠が笑いながら気合いを入れてくれる。

「必ず守ってたどりつかせてあげますから、気負いはせずに」

優しい微笑みでちょこ先生が言ってくれた。

「人間様は余に2回勝ってるからね。

自信を持って余」

そう言ってあやめちゃんは微笑えんだ。

ダンダン

「うわぁ」

背後からライフルで撃たれる。

「バフかけといたよ」

そう言って笑うあくあちゃん。

バフだとしても魔法銃でいきなり撃たれると怖いって。

「それじゃ、いくよ~!」

『お~』

スバルちゃんの掛け声に俺達は反撃を開始した。

 

俺はムメイに向かってビルを足場に飛び移りながら進む。

さっきまでと違い、ムメイからの攻撃を気にせず足場になるビルを確認する方に集中して進める。

こちらに打ち出される巨大なビル。

それをシオン師匠が雷の魔法で打ち砕き、俺はそれを足場にしてまた前へと進む。

鉄筋や道路標識の槍は、ちょこ先生の蛇腹剣で巻き取られたり、俺の背後からあくあちゃんによる援護射撃により俺のところには届かない。

だいぶムメイに近づいてきた。

もう少し。

俺は次の足場を探す。

しかし、近くに足場が見当たらない。

ムメイの浮かぶ下にある足場までまだ少し遠い。

どうする?

「人間様足場に捕まって!」

背後からのあやめちゃんの声に俺は迷わず足元のビルを掴む。

ビルを掴んだまま背後を見るとあやめちゃんが背中に光の鬼武者を背負っていた。

そして、光の鬼武者が足場のビルを横に真っ二つに斬る。

「いっけぇ~!」

そして、あやめちゃんは俺が捕まっている方のビルを刀でムメイの方に打ち出した。

凄まじい勢いでビルがムメイに向かって飛ぶ。

そんな俺にムメイが何かを目の前に出現させ、こちらを狙った。

あれって!

「これならどう?」

レールガン!

これは!

ムメイの「シュート!」という言葉と同時にガン!という音が重なる。

凄まじいスピードで飛んできた弾丸を今俺の目の前にいる人物が弾き飛ばしたのだった。

「スバルちゃん」

スバルちゃんがこっちを向いて手を組みしゃがむ。

俺はその体勢を理解しスバルちゃんに向かって走った。

片足をスバルちゃんの組んだ手に置いた。

お互いに目が合い笑う。

「いってこ~い!」

スバルちゃんのカタパルトで俺はムメイに向かって打ち出された。

「ムメ~イ!」

俺は鬼切丸を振りかぶる。

「来たぞ!」

思い切り振り下ろした鬼切丸をムメイは本当に嬉しそうに剣で受け止めた。

「さぁ、殺ろう!」

ムメイはそう言って俺を掴み下の足場に放り投げる。

ダン!

「く」

衝撃はあるがダメージはない。

すぐそこにムメイも降りてきた。

剣を構えるムメイ。

俺は赤竜帝の小手の力を解放する。

小手がドラゴンの腕に変わる。

俺の中に赤竜帝ココちゃんの力の一部が流れ込んだ。

ダン!

足場を蹴りムメイとの間合いを詰める。

横一閃。

しかし、防がれた。

ココちゃんの力を一部借りているこの一撃も簡単に防がれる。

間合いを取る為に後ろに跳ぶ。

そんな俺にムメイは片手を向けた。

すぐにその腕の前に複数の銃が現れる。

そして、そのまま連続で射撃された。

「く」

両手を前に合わせ防御する。

銃弾は小手に当たり甲高い音がなる。

俺は着地と同時に横に跳んだ。

ムメイは動かず俺に手を向けている。

来る!

そう思った瞬間、ムメイの前にある銃が火を吹いた。

走る。

その場にいたら蜂の巣だ。

ムメイの周りを螺旋を描くように俺は走った。

俺は残された最後の雷の魔法を鬼切丸から自身へと移す。

そして、俺はムメイに向かってダッシュした。

ダダダダダダダダダ!

凄まじい程の弾が俺に向かって放たれた。

こちらもムメイに向かって走っている。

避けられる数じゃない。

ムメイの弾は俺を貫いた。

 

「まさかね」

ムメイは手を俺に向けたままポツリと呟く。

そのお腹からは鬼切丸の刃が生えていた。

「雷で作った残像とは」

その言葉どおりムメイの目の前の俺はバチバチと音をならしその場で消えた。

ムメイの背後にいる俺は鬼切丸をゆっくりと抜く。

ムメイは俺の方に振り向いた。

そして、ぎゅっと俺を抱きしめた。

「楽しかった。

生まれて初めてそう思えた。

ありがとう、また遊んでね。

世界の答え。

ん~ん、○…○…」

そして。ムメイは光へと変わり消えた。

最後に俺の本当の名前を言われた気がした。

 

「やったじゃん」

「さすがシオンの弟子を自称するだけはあるね」

「見事だったよ」

「やったね」

「おつかれさまです」

第2世代組のみんなが駆けつけて声をかけてくれる。

「いえ、これもみなさんの…」

俺はそんな第二世代組のみんなにお礼を言おうとした時、またあの時の痛みが胸を襲う。

そのまま俺は地面に両膝を付けた。

「……」

「……!」

みんなが俺の周りに集まってくる気配がする。

しかし、ダメだ。

意識が。

そして俺はその場に倒れて意識を……




偽・七詩ムメイは満足して眠りにつきました。
この後あなたに待つのは誰なのか?
次回をお楽しみに。


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空間の超越者 偽・九十九佐命

この一連の黒幕、【偽会】の姿と力を持つ超AIがあなたの前に姿を現した。
第6世代組のラプラス・ダークネスによりあなたは今までのホロメンとの絆を奪われたが、変わりに【偽会】の力の一部を封印する事に成功した。
そして、【偽会】はこちらの戦力を削ぐべくウイルスを【ホロライブワールド】に放つ。
それの対処にオリジナル世代と特殊世代が向かった。
そして、最後に【偽会】はあなたに攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃に耐えられず倒れ意識を失う。
果たしてあなたは【偽会】を止める事が出きるのか。


「う」

俺は首を横に振りながら体を起こす。

「ここはどこだ?」

周りを見る。

なんだこれ?

足場がない?

俺、浮いてるのか?

それになんでこんなに真っ暗なんだ?

どこが上でどこが下かも分からない。

 

やっと目が慣れてきた。

この真っ暗な空間もよく見るとあちらこちらで何かが光っているように見える。

しかし、どうしたらいいんだ?

この場所で何をすれば。

俺が周りをキョロキョロしながらこの真っ暗な空間を泳ぐように足をバタバタしていると、どこからか視線を感じた。

「誰だ!」

「やっと気づいてくれたんだ」

俺の声に誰かが答える。

そちらを見ると何かが俺と同じように浮いている。

「その声は九十九佐命?」

「当たり」

なに!

いきなりすぐそこに現れる佐命。

さっきまで見えるか見えないかのところにいたはず。

「さて、キミと遊ぶのすっごく待ったからね。

遊ぼう、遊ぼう」

そう言って消える佐命。

「どこだ?」

「ここ、ここ」

姿が見えないが声だけ聞こえる?

そして、小さくごーっという音が聞こえてくる。

さっきまで何も聞こえなかったのに。

どこから聞こえてくるんだ?

だんだんと大きくなる音。

「いったよ~」

そして、俺は信じられないものを見た。

遠い場所で光って見えてたのは星だ。

ここは宇宙空間か?

しかし、息はできるけど。

ま、ゲームの中だからなぁ。

ってそれどころじゃない。

遠いところから確実にだんだんと大きくなってる物があった。

それは惑星だ。

佐命は惑星をボール遊びのように投げて寄越したんだ。

「くそ」

上手く動けない。

足をバタバタするが思うように進まなかった。

どんどん迫り来る惑星。

このまま、惑星に潰されるのか。

そう思った瞬間、足のアルティメットフットが光り輝いた。

「なに?」

アルティメットフットの偽装が解け機械の外装が現れる。

そして、アルティメットフットの横が開き、ジェット噴射された。

勢いよく前に進める。

俺はジェットを使い惑星から急いで離れた。

くそ、思ったよりでかい。

避ける為に横に飛んでいるが、どんどんでかくなる惑星。

どれだけでかいのを投げてきたんだ。

やっと避ける事ができた。

惑星はそのまま遠くに飛んでいく。

そして、遥か彼方で何かにぶつかり爆発した。

「こら~なんで避けるのよ!」

どこからか佐命の声が聞こえる。

「当たり前だろ、あんなものを受け止められる訳がない」

「なに?

キャッチボール下手くそ?」

またも見える場所に突然現れる佐命。

しかし、先程と違うのは右腕だけが巨大になって、その手で小さい隕石を握っている事だった。

「体全体を大きくする事は出来ないけど一部分なら大きく出来るからね」

そう言ってまた手に持つ隕石を投げてくる佐命。

「くそ」

俺はまた避けるために飛ぶ。

「あ、わかった。

ドッチボールかぁ」

そう言って次々と手を伸ばし小隕石を掴んでは投げてくる佐命。

俺はどうにかそれを避けた。

「避けるのうまいうまい」

佐命はそう言ってまた投げる。

俺はそれをまた避ける。

しかし、今度はさっきと違った。

もう一つの手で避けた先に隕石を投げてきた。

やばい、この距離は避けれない。

「よし、当たったぁ~」

ドガァ!

「え?」

佐命の驚く声。

俺も驚いている。

俺は今大きなドラゴンの背に乗っていた。

迫ってきた隕石は下から破壊されて粉々だ。

「大丈夫?」

ドラゴンがこちらに振り向きながら聞いてくる。

「間一髪だったね」

1人の女性がそう言いながらドラゴンの背に降りてきた。

「ココさんにかなたちゃん」

ドラゴンバージョンのココさんと【変身】したかなたちゃんは俺の声ににこっと笑った。

「わわわ、遊び相手増えた?」

そんな俺達を見て佐命が喜ぶ。

「なら、どんどん行くよ~」

佐命はそう言って見えなくなる。

そして、奥からまた惑星がこちらに動き始めた。

佐命が投げてきてるんだ。

「めちゃくちゃだね」

それを見てため息混じりでかなたちゃんが言った。

ドラゴンバージョンからドラゴニュートフォームに変わったココさんも腕組みしながら苦笑する。

迫り来る巨大惑星。

「早く避けないと」

慌てる俺に2人は動こうとしない。

「ま、大丈夫でしょ」

そう言ってかなたちゃんが前を指差す。

そこには小さな人影が。

彼女はその剣を大きく振りかぶる。

そして、その剣が凄まじい光を放っている。

あれはまさしく。

「エクススラッシュ~!」

姫士王ルーナちゃんの最強必殺技が惑星に向かって放たれた。

ズカァ~という凄まじい音と共に惑星が塵になる。

あ、打った後なんか飲んでる。

「ふぅ~

なんなのら、いきなり目の前に惑星迫ってきて~」

ルーナちゃんがこちらに飛んでくる。

「エクススラッシュってすごいんですね」

こちらに来たルーナちゃんに俺は言った。

「それはそうなのら、ルーナの最大必殺技なのらからね」

そう言いながらポーションをがぶ飲みする。

あ、確か全部の力を使って放つって言ってた。

「さて、これからどうするかだね」

ココさんが腕組みをして考える。

相変わらず惑星がこちらに来ているが、ルーナちゃんがその度にエクススラッシュを放ち消滅させる。

そして、ポーションがぶ飲み。

だ、大丈夫?

ルーナちゃん。

「はぁ、疲れたのら交代~」

その声に「はいは~い」とどこからともなく現れるわためちゃん?

「わためちゃん?」

「はい、来たよ~」

そう言ってわためちゃんは笑顔で手を振る。

「どこにいたの?」

「え?さっきからいたけど、ルーナたんが1人でかっこよく登場するのらって言うから潜んでた」

「は、はぁ」

「というわけで、じゃじゃぁん。

わため印の結界かかし~」

某猫型ロボットのような喋り方で取り出すかかし。

それを空中に置く。

目の前にまで迫ってきた惑星。

当たる。

と思った瞬間ボールが壁に当たって弾かれるように惑星が結界に当たり弾かれた。

「えっと…」

「深く考えない方がいいわよ。

ギャグ回になるから」

その声に振り向くとトワ様が苦笑しながら立っていた。

「トワ様」

「これで全員揃いましたね」

ココさんが其々の顔を見る。

「じゃ、これからは僕達【ホロライブワールド】第4世代組が手伝うよ」

そうかなたちゃんが言った。

「ありがとうございます」

「で、さっきも言ってたけどどうするの?」

トワ様が腕組みをして言う。

「遊んでるんだよねぇ?」

わためちゃんは未だに隕石やら惑星が当たる結界を眺めながら言う。

「だったら、おもいっきり遊んでやる?」

とかなたちゃん。

「え?」

「だから」

そう言ってかなたちゃんは小さい声で俺達に考えた案を教えてくれた。

 

「佐命!」

俺は相手の名前を呼ぶ。

「な~に?」

返事が帰ってくる。

「ちょっと提案なんだが、今からゲームしないか」

「え?ゲーム?なになに?面白い?」

お、乗ってきた。

「ルールは簡単だ。

こっちは今から佐命を捕まえにいく。

もちろん捕まえられるのは俺だけ。

もし俺が捕まえられたらこっちの勝ち。

捕まえられずそっちが俺達を全員倒したらそっちの勝ちだ」

「鬼ごっこだね。

いいけど、こっちは何してもいいの?」

その答えに俺は第4世代組を見る。

頷くみんな。

「もちろん、全力でこい!」

「分かった。

それならいいよ~

じゃ、いくよ~」

そう言って惑星がこちらに投げられてくる。

いや、惑星じゃない。

あれは恒星か!

光り輝く星がこちらに向かってくる。

さっきまでの比じゃないぞこれは!

「じゃ、ここはわための出番かな?」

わためちゃんがそう言って前に出る。

胸に手を当てるわためちゃん。

そして、黄金の光が彼女を包む。

「黄金騎士わためロード!」

黄金の光が爆散し黄金の鎧を着たわためちゃんが現れた。

「あの名前ってわためが決めたんだよ」

となぜか教えてくれるトワ様。

そっかぁと俺はわためちゃんの後ろ姿を見守った。

「それ~!」

わためちゃんは両手を恒星に向ける。

ゆっくりだが恒星がこちらに向かってくるスピードが落ちてくる。

そして、止まった。

「返すよ~!」

ドン!

すごい音と共に恒星が来た方向に打ち返された。

「おお~!」

喜ぶ佐命。

「キャッチボールだ~!」

「今のうちに行くよ」

ココさんはそう言ってドラゴンバージョンに変わる。

俺達はその背に乗り佐命の方に向かった。

 

「ふふふ、隠れて来てても分かるよ~」

しばらく進むと佐命の声。

見つかるのも想定済み。

「いくぞ~

くらえ!シューティングスターレイン」

佐命の言葉どおり、こっちに向かって雨のように流星が降ってくる。

大きく息を吸うココさん。

そして、その口から勢いよくブレスを放った。

流星はこちらに届く前にブレスによって粉々になる。

しかし、流星は降りやまない。

「かなたちゃん」

俺は赤竜帝の小手を外し、かなたちゃんに渡した。

かなたちゃんは頷き小手を装備する。

そして、胸に手を置き力を解き放つ。

「ドラゴンハート!」

かなたちゃんは金とオレンジの螺旋に包まれる。

そして、ドラゴニュートフォームへと【変身】した。

ドラゴンココさんの頭の横に浮かぶかなたちゃん。

その胸にあるドラゴンが大きく口を開いた。

「ドラゴンブレス!」

かなたちゃんの胸のドラゴンも流星雨に向かってブレスを放つ。

「ここは任せて!」

かなたちゃんの声に俺は頷き、トワ様とルーナちゃんの手をとり、アルティメットフットのジェットを使い佐命の方に向かった。

 

「なかなかやるねぇ」

しばらく行くとまた佐命の声。

何とか肉眼で確認できる距離まで来ている。

「次はこれだよ。

アステロイドベルト!」

その声と共に右側から目の前に数百という小惑星が現れる。

「準備しとくのら」

そう言って手を離すルーナちゃん。

そして、ポーションをまたがぶ飲みした後、空中からもう1本剣を取り出した。

「いくのらよ!」

両手に持つ剣を掲げたルーナちゃん。

その剣に今まで見たこともない光が集まる。

「クロスエクススラッシュ!」

Xの字で振り下ろされた剣から、凄まじい光がアステロイドベルトを貫く。

アステロイドベルトに道が出来た。

「いくのら~!」

その声に俺はトワ様の手を取ったまま、全力でジェットを噴出した。

「ここは後ろを振り向かないとこだよ」

後ろを見ようとした俺にトワ様が静かに言う。

「大丈夫、みんなが追いかけて来てるから」

その言葉に俺は頷き前を見た。

 

「本当にすごい。

ここまで来るなんて」

もう、すぐそこに佐命がいる。

「さてと」

トワ様が手を離し前に出る。

「ちょっといい?」

「ん?」

佐命が不思議そうにトワ様を見る。

「今、楽しい?」

「うん、すごく。

こんなに力を使っても平気な相手がいるんだもん」

そう無邪気に佐命が言う。

「そっか」

その言葉を聞いて笑うトワ様。

「トワ様?」

「何でだろうね、佐命見たらどうしてか分からないけど聞きたくなっちゃって。

でもなんだろう、その言葉を聞いたらなんかここが暖かくなるよ」

そう言ってトワ様が胸に手を当てた。

「それじゃ、最後の大勝負いくよ」

俺はトワ様の言葉に頷いた。

【変身】したトワ様が佐命に向かう。

それを見て嬉しそうに佐命は笑う。

そして、お互いにガチンコ勝負が始まった。

 

どちらも譲らない。

トワ様の攻撃を佐命は時には受け止め、時には避ける。

佐命の攻撃もトワ様は同じように止めたり、避けていた。

早い。

俺は見ながらそう思う。

ホロメンの戦いは普通のプレイヤーには追い付けないスピードで戦っている。

でも、俺もだいぶそのスピードに慣れてきた。

鬼切丸に残る最後の魔法の力をその身に宿しながら俺は機会を待つ。

勝負は一瞬。

それを外せばもう俺に勝機はない。

トワ様の攻撃を佐命が受けた。

その手をトワ様が掴む。

ここだ!

俺は背後から佐命に向かう。

「それは読めてるよ」

佐命はすぐさまトワ様の手を振りほどき紙一重で俺を避けた。

それを見てトワ様が俺の手を取る。

そのまま横に1回転。

俺の目の前に佐命がいる。

「え?」

佐命の拍子抜けな声と共に俺は佐命ともつれあって吹き飛んだ。

「はははははは」

俺の下に寝転んだ形の佐命は声を上げて笑う。

俺は勢いよく起き上がった。

うわぁ、めっちゃ柔らかかった。

「よいしょ」

起き上がる佐命。

「私の負けだね」

そう言って佐命は微笑む。

「やっと追い付いた」

第4世代組の残りのみんなも来てくれた。

「さてと敗者はまた眠るとするよ」

そう言ってゆっくりと光り出す佐命。

「この世界に住めばいい」

トワ様が佐命に声をかける。

「そうだね」

トワ様をじっと見る佐命。

「【先輩】が言うなら考えとく」

そう言って佐命は光となって消えた。

「勝ったんだね」

かなたちゃんは光に変わった佐命の方を見て言った。

「本当に全力で遊びたかったんだね」

わためちゃんも静かに言う。

「さぁ、元の場所に戻らないと」

ココさんにそう言われ俺はみんなの方を振り向いた。

「な…に?」

突然、またあの時の胸の痛みが。

俺は胸を押さえる。

「…」

「……?」

「…!」

みんなが声をかけてくれているけど、聞こえない。

なんだどうして?

そして、俺は静かに気を失った。




偽・九十九佐命は満足して眠りにつきました。
この後あなたに待つのは誰なのか?
次回をお楽しみに。


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時間の支配者 偽・オーロ・クロニー

この一連の黒幕、【偽会】の姿と力を持つ超AIがあなたの前に姿を現した。
第6世代組のラプラス・ダークネスによりあなたは今までのホロメンとの絆を奪われたが、変わりに【偽会】の力の一部を封印する事に成功した。
そして、【偽会】はこちらの戦力を削ぐべくウイルスを【ホロライブワールド】に放つ。
それの対処にオリジナル世代と特殊世代が向かった。
そして、最後に【偽会】はあなたに攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃に耐えられず倒れ意識を失う。
果たしてあなたは【偽会】を止める事が出きるのか。


「う」

俺は首を横に振りながら体を起こす。

「ここはどこだ?」

周りを見る。

なんだこれ?

そこは霧のかかった街中だった。

誰もがよく聞きそうな例を上げれば霧のロンドン。

その広い車道の上に立っていた。

車も人もいない。

いや、霧が濃いから分からないだけか?

「気味が悪いね」

「ホラー感あるなぁ」

「ラミィ、ホラー嫌い」

「そう?楽しいけどなぁ、ホラゲ」

(相変わらずだな、ちなみに吾輩も幽霊みたいなものだがな)

背後に賑やかな5人組。

後ろを振り向くと5人がそれぞれ手を振っていた。

「第五世代組のみんな」

「はい、というわけで【ホロライブワールド】第五世代組が手伝いますよ」

とポルカちゃんが言った。

「よろしくお願いします」

「しかし、相手は誰なんだろう?」

ラミィちゃんが辺りを見回す。

しかし未だに霧は晴れない。

「これじゃ、どこから狙われるか分からないね」

ねねちゃんも不安そうに辺りを警戒する。

「ししろん」

真顔でポルカちゃんがぼたんちゃんに声をかける。

「うん、さっきから見られてる。

まのちゃんどうにかなる?」

ぼたんちゃんはそうポルカちゃんに答え、それからアロエちゃんに言う。

(この霧をどうにかすればいいのだろ?

なら、どうにかなるかも)

そう言ってアロエちゃんが何やら詠唱する。

そして、詠唱が完成した。

アロエちゃんは俺達を包み込むような竜巻を発生させた。

凄まじい風で周りの霧が天へと吸い上げられていく。

「まさか、そんな方法でくるとわ」

全部の霧は晴れなかったが、車道の霧は晴れた。

そして、俺達の前に1人の女性の姿があった。

「オーロ・クロニー」

俺に呼ばれクロニーはこちらを一瞥した。

「私の相手はお前達か。

第一世代が来ると思ったが、期待はずれだ」

そうクロニーが俺達に言う。

「はぁ?

ポルカ達を嘗めてるのかぁ」

ラミィちゃんも怒ったのか足を地面にタンと強く鳴らす。

「だったらどうした?」

ポルカちゃんの言葉に冷たくいい放つクロニー

ダン!

「腹だ立つから撃つ」

撃った後に言わないでぼたんちゃん。

しかし、今まで外したところを見た事ないぼたんちゃんがクロニーの狙いを外した?

「何をした?」

ぼたんちゃんはさっきから腕組みしたまま動かないクロニーを見ながら言った。

「別にただこうして立ってだけだが?」

クロニーは平然と答える。

「そうか、時間を操れるんだったな」

「ほう、なぜ時間を操ったと思う?」

ぼたんちゃんに興味をもったらしくこちらを見るクロニー

「下だよ」

クロニーは自分の足元を見る。

うっすらと霜のようなものがはってあり、そこにクロニーの足跡が付いていた。

「その少しずれた足跡が証拠だ。

いくら早かろうとこれだけの人数があんたの動いた瞬間を見れてないのはおかしい。

だったら、時を操ったと考えるのが妥当だろ」

「なるほどな。

しかし、ここは私の作り出した場所だ。

霜がはるほど寒くはないはずだが?」

クロニーはそう言って俺達の足元を見た。

「ほぅ、なかなかの策士がいるというわけか」

クロニーが気づいたのはラミィちゃんの足元。

そこに少しだが霜がはっていた。

さっきラミィちゃんが足を鳴らしたのは怒ったわけではなく(たぶん)クロニーの足元に霜をはる為だった。

それにしても第五世代はすごい連携がとれている。

さっきのポルカちゃんが大きな声を出したのも、ラミィちゃんが足を鳴らすのを不自然に思わさない為、間髪いれずに銃を撃ったぼたんちゃんも足元を気づかせない為。

「まのあろ、どうだった?」

(時間を進めたり、戻したりはしてないな)

「ねね?」

「たぶん、10秒くらいかな」

ポルカちゃんが2人に聞いた。

「じゃ、現段階での結論を言おうか」

ポルカちゃんがクロニーに向かって言った。

クロニーは体勢を変えず、ポルカちゃんを見る。

「現時点でそっちの能力だけど時間を進めたり戻したりは出来ない。

で、出来るのは時間を止める事、止めれる時間はだいたい10秒ってとこかな?」

「その根拠は?」

クロニーが聞く。

「まず、うちのまのあろがししろんが銃を撃った瞬間、この空間に魔力の網を張った。

この世界はゲームの世界だ。

スキルを使えば何かしら空間に影響がでる。

それを調べた結果、時間操作は止めただけと結論が出た。

次に止めた間の時間は、感だ。

だけど、この戦闘状態においてうちのねねの感は、外れた事はない」

「それと」

ぼたんちゃんが話を続ける。

「時間を止めた後、次の時間停止には数分間時間をあける必要がある」

「なぜ?」

「だってすぐ止めれるなら、あんたなら止めて攻撃してきてるだろ」

そう言ってぼたんちゃんは笑った。

「ふ、ふふふふふ」

クロニーはそれを聞いて笑った。

腕組みを解き、こちらに向く。

「さっきの非礼は詫びるよ。

たったあの1回の攻撃だけでそこまで見破られるとは」

そう言ってクロニーは微笑む。

「確かに今の私の力はかなり抑えられている。

あのラプラスというやつが、私の力を念入りに抑え込んだみたいで、さっきも言ったように時間停止しか今は使えない。

ま、止められる時間もだいたい合ってるよ。

たが!」

クロニーの両手にいつの間にか長い剣と短い剣が握られている。

消えた!

「く!」

ギャン!

目の前にロングライフルでクロニーの剣を受けるぼたんちゃん。

「スキルの方を重点的に抑え込んだみたいで、基本能力は他の仲間よりいささか抑えが弱くてね」

ぼたんちゃんがクロニーに蹴りを繰り出す。

それを後方宙返りで避けるクロニー

そこに追い討ちでねねちゃんが飛び蹴りをする。

「だめ!ねね!」

確実に当たる攻撃を繰り出したねねちゃんに、ラミィちゃんは制止をかけた、が。

「かは」

次の瞬間ねねちゃんは打撃をくらい地面に叩きつけられていた。

「ねね!」

ぼたんちゃんの射撃、アロエちゃんの魔法がクロニーに向かって飛ぶ。

クロニーはそれを避けながら下がった。

俺はすぐにねねちゃんのところに向かい、回復魔法を唱えた。

「ありがとう」

だいぶ楽になったみたいで、ねねちゃんが起き上がる。

みんなも近くに集まった。

「時間は止められるからな。

隙に見えても安易に近づかない方がいい」

クロニーは淡々と言った。

ラミィちゃんはそれが分かってたから、ねねちゃんを止めようとしたのか。

「厄介だな」

ポルカちゃんがクロニーを見ながら言う。

(隙が全て誘いに見えてくるな)

「確かにね」

アロエちゃんの言葉に頷くラミィちゃん。

「なら、完全にスキルを使わせる状態から追い討ちをかける」

ぼたんちゃんの言葉に頷く第五世代組。

(少し体借りる)

アロエちゃんの言葉に俺は頷く。

両手の赤竜帝の小手も解放した。

「いくぞ」

その合図で散開。

クロニーを囲むように散らばった。

全員が同じタイミングで足を踏み鳴らす。

氷の壁がクロニーを包む。

しかし、一瞬の違和感の後、クロニーがその囲いを突破していた。

これが時間停止した間隔。

クロニーの姿を確認した瞬間、手元にあるロケットランチャーを撃つ。

5人とも全く同時だ。

全方位といっていい程濃密なミサイルの弾幕。

しかし、その弾幕は爆発せず空中で止まった。

「な!」

弾幕の間、ミサイルに跳び移りながら弾幕の外に出てくるクロニー

そして、地面に着地した後、指を鳴らす。

ミサイルは動き始め、誰もいない空間で連鎖爆発した。

「そうそう言ってなかった。

全体の時間を止めるのは10秒程だが、生きてない物。

この場合、AIやプレイヤーが動かしてない物ならいくらでも止められる」

ダン!

「こういう風にね」

話しているクロニーにヘッドショットを撃ったぼたんちゃんの弾は、クロニーの数㎝前で止まっていた。

これじゃ、こっちの攻撃はほぼ効かないって事か。

さっきの話から魔法や武器は一切通じないって事だ。

それに時間も止めれる。

くそ。

散開したみんなが戻ってくる。

「ああ、このままじゃ、じり貧だよ」

「さすがにイリュージョンでも誤魔化せないか」

ねねちゃんとポルカちゃんがぼやく。

「何かない?」

ラミィちゃんが俺達に聞く。

クロニーは微笑みながらこちらを見ている。

「……」

さすがにぼたんちゃんも黙ったままクロニーを見ていた。

俺は自分のアイテムボックスを見る。

もしかしたらどうにかなる物があるかもしれない。

しかし、アイテムボックスにはテント用品やら回復薬、食べ物や近未来都市で買った身代わりコイン、懐中時計ぐらいだ。

くそう、役に立ちそうな物がない。

「肉弾戦か」

ぼたんちゃんがぽつりと呟く。

「確かに、まのあろの魔法でブーストして」

「ねねの身体能力で攻撃する」

ねねちゃんがぐっと握りこぶしを作る。

「それしかないかな」

ラミィちゃんも頷いた。

ん?

俺は何か違和感を感じてもう一度アイテムボックスを探る。

何か見落としてる。

回復薬?

テント?

身代わりコイン?

いや、違う。

これだ。

俺はアイテムボックスの中のある物を握った。

「みんなにお願いがあります」

そう言って俺はアイテムを握りしめながらみんなに作戦を話した。

 

「話は終わったか?

次はどんな手でくる」

そう言いながらクロニーは微笑んでいる。

俺達は武器を片付け素手になる。

スキル【絆】によって5人ともアロエちゃんの魔力を使える。

みんなは魔力で自身にバフをかけた。

「ま、そうだろうな」

少し期待はずれだったのかクロニーはぼそっと言った。

「行きましょう」

俺の言葉に4人は頷く。

そして、5人同時にクロニーに攻撃を開始する。

まずはぼたんちゃんとラミィちゃん。

左右からのパンチをクロニーは剣で受ける。

2人とも氷で作った小手をしているから剣で受けられてもダメージはない。

そこにがら空きになったボディにねねちゃんの飛び蹴り。

それをクロニーは片足で受ける。

本当に基本スペックが他のホロメンより高い。

ポルカちゃんの頭上からのかかと落としも、ぼたんちゃん、ラミィちゃんを押し退け、剣を頭上で交差して防ぐ。

そのまま、頭上を飛び越えるポルカちゃん。

ねねちゃんはそれを見て、両手を地面につけてクロニーを跳ね上げるように蹴る。

クロニーはそれに逆らわず後方一回転をした。

クロニーの着地に合わせ、左右からぼたんちゃん、ラミィちゃんの蹴り、もう一度後方に回るがポルカちゃんがいる。

逆さになったクロニーを思い切りポルカちゃんが殴った。

だが、クロニーは剣で防御している。

そのまま、こちらに飛んでくるクロニー

「ちなみにこちらの目的はあなた達と戦う事ではない」

そう言って空中で体勢を変えるクロニー

俺は体に入っているアロエちゃんの力と赤竜帝ココちゃんの力を最大まで引き出して迎え撃つ。

この一撃が当たれば俺達の勝ちだ。

それ程の威力は十分にある。

が。

気づけば俺の攻撃はクロニーに避けられていた。

代わりに2本の剣が両肩から腹にかけて俺を斬っていた。

「がは」

俺は衝撃で血を吐く。

たが、斬れてはいない。

なんとか耐えれた。

アロエちゃんの魔力を防御に当てて正解だ。

そして、これで俺達の勝ちだ!

俺の目の前でクロニーは大きく目を開いていた。

斬れなかった事に驚いたのだろうか?

それとも今この瞬間、俺が時を止めたのを驚いているのか?

アイテムボックスの中の懐中時計が動き始める。

止められる時間は10秒。

俺はさっきの見せかけとは違う、最大魔力とココさんの力を込めた拳をクロニーの体に打撃する。

そして、懐中時計の針が止まった。

時間は動き出す。

勢いよくクロニーがふっ飛んだ。

「や、やったの?」

それを見たラミィちゃんがクロニーを目で追いかける。

「やった!」

「よっしゃぁ~」

ねねちゃんポルカちゃんがこちらに来て喜ぶ。

ラミィちゃんもこちらに来た。

「よくやった」

ぼたんちゃんも戻ってくる。

(ひやひやものだったな、あれは)

体の中から外に出たアロエちゃんがふぅと息を吐き言った。

俺達はふっ飛んだクロニーを見る。

クロニーはゆっくりと立ち上がる。

その手にはもう剣は持っていない。

「まさか、私の領域に入ってくるとは」

俺はアイテムボックスの懐中時計を取り出す。

懐中時計は役目を果たしたように消えていく。

不思議な場所で不思議なウサギさんからもらった時間を止められる時計。

「ふふ、完敗だ」

クロニーの体は徐々に光の粒子に変わり始める。

「始めから私が世界の答えを狙うのを承知の上で、攻撃を誘導するように隙を作りながら攻撃していた」

そう、クロニーの言う通り、ねぽらぼの4人はそれを意識して攻撃してくれた。

「そして、最後の一撃に見せかけ、防御に重点を置いて私に時間停止を使わせ、攻撃に耐える」

そう、連続で時間停止が使えない隙が今回の作戦の一番重要なところだった。

「私が時間停止を終えた後、直ぐに時間を止められるとは思わなかったよ」

やっぱりあの時目を見開いたのは俺が時間を止めたのが分かったから。

「能力を封じられていたとはいえ、完全な敗北。

生まれて始めてだ。

まだまだ上はいるんだな」

クロニーの言葉に第五世代組は微笑んだ。

「次は負けない。

今度はこちらが挑戦者として戦わせてもらう」

「いつでもきな」

「待ってるよ」

「ま、次もポルカ達の勝ちだろうけど」

「ねね、楽しかったよ」

(また、会おう)

「今度は差しで勝ってやる」

5人と俺はそれぞれの言葉をかける。

クロニーはその言葉を聞いて微笑んだ。

そして、光の粒子となり消えた。

『勝ったぁ~』

5人が喜ぶ姿を見て俺はその場に座り込む。

さすがにアロエちゃんの力を使うのはこの体だと無理が出るらしい。

ココさんの力も使ったしな。

「うぐ」

急に胸が締め付けられるように痛みだす。

これはさっきの。

「どう…」

「だ……!」

みんなの声が遠くに聞こえる。

せっかく勝ったのに俺は…

そして、俺は倒れ気を失っ…




偽・オーロ・クロニーは満足して眠りにつきました。
この後あなたに待つのは誰なのか?
次回をお楽しみに。


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自然の掌握者 偽・セレス・ファウナ

この一連の黒幕、【偽会】の姿と力を持つ超AIがあなたの前に姿を現した。
第6世代組のラプラス・ダークネスによりあなたは今までのホロメンとの絆を奪われたが、変わりに【偽会】の力の一部を封印する事に成功した。
そして、【偽会】はこちらの戦力を削ぐべくウイルスを【ホロライブワールド】に放つ。
それの対処にオリジナル世代と特殊世代が向かった。
そして、最後に【偽会】はあなたに攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃に耐えられず倒れ意識を失う。
果たしてあなたは【偽会】を止める事が出きるのか。


「う」

俺は首を横に振りながら体を起こす。

「ここはどこだ?」

周りを見る。

なんだこれ?

そこは広大な平野だった。

その先には山も見える。

「なんかのどかだな」

「自然とは得てしてそういうものです。

しかし、時には全てに牙を向くこともある」

「その声はセレス・ファウナ」

「すごいですね、私はあなたに自己紹介した時ぐらいしか声を聞かせていないと思いましたけど」

「この旅で覚えるのがよくなったみたいでな」

俺は姿の見えない相手に言った。

「それは面白い傾向です」

「それより、今セレスはどこにいる?」

「私ですか?

あなたの前にいますよ。

その大きな山の上に」

ま、確かに前だけどめちゃくちゃ遠いな。

「それで?

俺はあんたを倒せばいいのか?」

俺はセレスに聞く。

「ま、戦闘が苦手って訳ではないのですが、それでは私は面白くないので。

そうですね、障害物競争をしましょう」

「障害物競争?

俺は誰かと競うのか?」

「いえいえ、私があなたに障害物を出す。

あなたはそれを乗り越えて私のところに来る。

どちらが先に倒すかたどり着くかの競争です」

「なんか、納得できない気がするが分かった。

俺がそっちに行けば俺の勝ちでいいんだな」

「はい、もちろん。

他の仲間は分かりませんが、私はそれで楽しめますし、満足ですから」

「なら、行ってやる」

俺はセレスのいる山へと向かって走る。

「ま、頑張りすぎて途中バテないでくださいね」

そう言ってセレスの声は聞こえなくなった。

只の平野を走るのはアルティメットフットのお陰で苦にならない。

しんどいのはあの山だな。

そう考えた時、いきなり地面が揺れだした。

なんだ?

俺はその場に止まり警戒する。

すると下からいきなり木が生え始めた。

俺は慌てて避ける。

小さな芽が一瞬で巨大な大木に。

「最初は森林ステージです。

早く抜けないと、後ろから食人植物が襲ってきますよ」

セレスの言葉に背後を見ると牙の付いた巨大な花が波のようになってこちらに向かってきている。

某髭おじさんの出てくるゲームの襲ってくる花に似てるな。

っとそんな事考えてたら食われる。

俺は木を避けながら森の中を走った。

しかし、森の中は案外走りにくい。

落ち葉や落ちた枝で足が滑りそうになるし、根が地面から出て罠のようになってつまずきそうになる。

アルティメットフットのお陰である程度は避けられてるが、その分速度が上がらない。

迫る食人植物。

くそ、追い付かれる。

俺は最後の悪あがきに足を前に出す。

足が根に引っ掛かって、倒れそうになる俺。

ここで倒れたら終わる。

「よっと」

そんな俺の首根っこを掴んで誰かが木に飛び上がった。

「ほら、私に付いてきて」

そう言って木に跳び移りながら前を行く女性。

俺も彼女を見習って跳び移る。

「フレアさん」

先に行く女性に俺は声をかけた。

オレンジのロングヘアーのその女性は振り向き微笑んだ。

「タイミングばっちりだったね」

俺はフレアさんと並走しながら森を進む。

「まさかフレアさんが来てくれるなんて」

「ま、こと森に関しては私がホロメンの中で1番だと自負してるからね」

そう言って笑う。

「しかし、キミと初めてあったのも森の中だったよね」

確かにフレアさんとの出会いは、森の中でラミィちゃんとオーガロードに襲われた時だ。

「あれから色々あったね」

「確かに」

「ま、キミのお陰でラミィはやっと大人になってくれそうだし、感謝してるよ」

「え?知ってたんですか?」

「そりゃもちろん。

たまに夜、台所でお酒飲んでるから」

ラミィちゃん、我慢できなかったんだね。

「前の戦いで彼女を私達は守れなかった。

だから今度はきちんと守ってあげようと育てたんだけど。

甘やかしすぎちゃったかな。

なかなか親離れしてくれなくて」

そう言って笑うフレアさん。

「でも、キミと出会ってラミィは変わった。

第5世代組の子達と旅をしたり、大人の姿に戻る回数も増えてきた。

やっとこれで私達は借りを返せる」

「ラミィちゃんは借りを作ったなんて思ってないですよ」

「そうだね。

でも、私達は命を救われたから。

ラミィには感謝してもしきれないんだ」

森を走り俺はフレアさんの気持ちを聞いた。

「さ、そろそろ森を抜ける。

この戦いが終わったらまた遊びにおいで。

みんなで待ってる」

目の前が開いた。

フレアさんは森の終わりの場所で立ち止まった。

「一緒に行かないんですか?」

「私はここでやらないといけない事があるからね」

そう言って森の方を向く。

そこには食人植物の群れが。

「俺も一緒に」

「いや、先を急いで。

そして、これを早く終わらせてくれるとありがたい。

たぶんこいつらは終わるまで無限に沸くと思うから」

そう言ってフレアさんは矢を放つ。

その矢は確実に花を撃ち抜き消滅させる。

「分かりました。

直ぐに終わらせます」

「信じてる」

俺はフレアさんに背を向けまた平野を走り出した。

 

「また、地震?」

しばらく走るとまた地面が揺れる。

次はなんだ?

ゴーと遠くから音が聞こえる。

そして、一瞬で周りが雪景色に変わった。

「な、さっきまで晴れてて雪なんて」

そう思いながら周りを見渡しているといきなり吹雪いてきた。

「な、なんなんだ」

「次は吹雪の吹き荒れる雪の大地。

あなたはここを抜けれる?」

セレスの声。

これもセレスの仕業か。

くそう、早く行かないとフレアさんが。

俺は一歩一歩前へと進む。

しかし、本当に前に進めてるのか分からない。

方向が曖昧で、もう目を開けて進む事も出来そうにない。

「ここで諦めるんです?」

「え?」

突然の声に俺は目を開け横を見る。

そこには1人の可愛い女性が。

「るしあちゃん?」

「はい、こんるしなのです。

ここまで吹雪いてると話しづらいのです。

現れよ、ジャイアントスノーマン」

その呼び掛けに目の前の雪が盛り上がる。

そして、雪の巨人が現れた。

雪の巨人が前にいるお陰で吹雪が俺達の方にこなくなった。

「これでいいのです」

そう言ってるしあちゃんが笑った。

「ありがとうございます」

「いえいえ、これはお礼ですから」

「お礼?」

俺は何かるしあちゃんにしてあげた事があるのか?

「そうなのです。

キミと出会えてるしあはたくさんの場所に行く事ができました。

普段なら大霊園と学園ぐらいしかいけないんですが、キミがるしあを連れ出してくれたから本当にたくさんの場所に行けたのです」

「あ」

俺は1人で大霊園にいるるしあちゃんを思い出す。

役割があるとはいえ、ガイコツばかりの大霊園を1人で管理し続けるのは辛かったんだと思う。

「それに1人でいると気が滅入ってしまうのも事実で、キミがぺこらやマリン、フレアにノエルを連れてきてくれて本当に嬉しかったのです。

みんなでわいわい出来たの久しぶりだったから」

るしあちゃんは本当に嬉しそうに話す。

「この戦いが終わればまた、大霊園の管理があるからみんなとなかなか会う事が出来ないですけど、思い出があるから頑張れる気がするのです」

「るしあちゃん」

「でも、あんまり長いこと会わなかったら、滅入ってしまうのでキミはるしあに会いに来るのですよ」

そう言ってるしあちゃんは微笑む。

「はい、必ず」

俺はるしあちゃんと約束した。

「ほら、吹雪晴れたみたいなのです」

るしあちゃんのいう通り雪が終わり平野が広がっていた。

「ここからは1人で。

でも、忘れないで。

あなたにはるしあ達がついているのです」

「はい、ありがとうございます」

俺はるしあちゃんに頭を下げて前を向き走る。

背後を見るとるしあちゃんが雪景色の方を向いていた。

その奥から巨大な何かの影が見える。

るしあちゃんは時間を稼いでくれるのだろう。

俺はそれに答えなくてはいけない。

 

平野をひた走る。

そして、俺は立ち止まった。

「まじか」

俺は目の前に広がる海に立ち止まる。

さっきまで平野しか見えてなかったのに何でいきなり海なんだ?

そして、また聞こえてくるセレスの声。

「次は海。

自然の中で恵みと破壊をもたらす象徴。

あなたはこれを乗り越えられますか?」

どうする。

ここで時間を潰すわけには。

「お困りですか?

お兄さん?」

「え?」

声をかけられた方を向く。

そこには岩に片足を乗せ、頭の海賊帽子が飛ばないように抑える1人のマリン船長が。

「なんか、船長だけミステリアスっぽく考えてない気がするんですけど?」

なんで心の声が分かるんだ?

「マリン船長」

俺は声をかける。

「はい!

助っ人マリン参上」

「俺、マリン船長にお兄さんって言われる年齢じゃないですけど」

「そこ!」

俺の言葉に驚くマリン船長。

あ、やっぱりマリン船長だと思う瞬間だった。

「ま、それは置いといてキミはこの海を進めなくて困ってるのは間違いない」

「はい」

「そこに船長現れる。

もう、お分かりですね。

カモン!

我が海賊船【ふぁんたじぃ】」

マリン船長の声に目の前の海の上に光が集まる。

そして、その光は1つになり懐かしい姿が現れた。

「さぁ、遠慮なく乗り込みなさい、我が海賊船へ」

船の前でかっこよくポーズを決めるマリン船長。

「いや、これ俺の船…」

「さ、さ、入って入って」

マリン船長に背中を押され船に乗り込む俺。

なんか誤魔化されてるなぁ。

俺は今【ふぁんたじぃ】に乗って海を渡っていた。

「どうですか?

久しぶりの船は」

マリン船長は俺の横に立って聞いてくる。

「そうですね、なんか船内がやたらに豪華になってました」

「はははははは」

俺の言葉に乾いた笑いのマリン船長。

確か預けてた間、これで商売してたって聞いたしな。

「ま、キミには感謝してるんですよ」

「え?」

マリン船長は前を見ながら言った。

「リアルの船長が海賊船を手に入れたかどうかは分かりませんが、この世界では念願の海賊船を手に入れられた。

これでもう、コスプレ女とか言われなくてすみますから」

「あ、気にしてたんですね」

「そりゃ、曲がりなりにも宝鐘海賊団船長ですからね。

団員達も大海原を行くの楽しみにしてますから」

「じゃ、これで夢叶いますね」

「それがそうもいかないんですよね」

とマリン船長。

「どうもまだ所有権がキミになってるみたいで、長い時間船を動かす事が出来ないんです」

ま、実際に俺のだからなぁ。

「というわけでこの戦いが勝利で終わったら、報酬としてこの船を船長にください」

「えっと…」

この船かぁ。

あったらいろんなところ行けるけど。

でも、そういえばこの船の原動力の石って、確か船長に助けられたトカゲからもらったな。

だったら。

「分かりました、お譲りします」

「え?

本当に?」

びっくりするマリン船長。

「なんで驚いてるんですか?」

「いや、まさか本当にくれるとは」

「だったらあげません」

「いやいや、もう言質とりましたから」

慌てるマリン船長。

「それじゃ、この戦いが終わったらマリンの家に来てください。

きちんと書類作っとくんで、それに判子を押して名前を書いて」

「ちょっとそれ以上言うとフラグになっちゃいますから」

「フラグ?」

「そう、だいたい戦い終わったらとか言うと死んじゃうあれです」

「ああ、死亡フラグ。

例えばあんなのとか?」

マリン船長は目の前を指差す。

そこにはこの船を飲み込むほどの巨大な波が!

「だぁ、だから言わんこっちゃない」

俺は慌てて何か隠れそうなところを探す。

「でもね、船長ぐらいになると死亡フラグも平気でへし折って行くんですけどね」

そう言ってマリン船長はこちらを見て微笑む。

そんな俺達を容赦なく大波が飲み込んだ。

スバァ~と大波を貫く【ふぁんたじぃ】

バリアに包まれた船はあの大波にも無傷だった。

「ほら、陸が見えてきましたよ」

前を指差すマリン船長。

いつの間にか水着に着替えてるんだけど?

「えっといつ着替えたんですか?」

「え?

いや、ファンサービスも大事かなとさっき」

「最後までマリン船長はマリン船長なんですね」

「言ってる意味が分かりませんが、褒め言葉として受け取っておきましょう」

俺は陸地に降りる。

「では、必ず終わったら家に来てください」

「分かりました。

マリン船長もご武運を」

俺は背後に迫る複数の幽霊船を降りる前に確認した。

しかし、俺がそれを言おうとするとマリン船長はゆっくりと首を横に振ったのだ。

俺は前を向く。

そして、セレスのいる山へと平野を走り出した。

 

まさか、今度は地震に地割れとはな。

俺は揺れる地面をなんとか走る。

セレス曰く。

「大地の誕生に欠かせませんからね」

とかなり短い説明だった。

「よっと」

地割れを飛び越える。

が、すれすれに着地しすぎた。

足元の地面が崩れる。

くそ、落ちる。

「危ないよ」と間一髪俺の手を取ってくれた女性。

「ノエルさん」

「危なっかしいんだから」

そう言って軽く俺を持ち上げ笑うノエルさん。

「さ、どんどん行こう」

そう言って俺はノエルさんに何故かお姫様抱っこされ先に進んだ。

軽々と持ち上げられて揺れる地面をものともせず進むノエルさん。

「えっと、この状況は?」

「これが1番早いと思うけどなぁ」

ま、確かにね。

「でも、なんかプライドが」

「ま、この際そんなものは地割れの中に捨てちゃいましょう」

「う、はい」

この人にはなんか逆らえない。

「でも、ここまで本当によく頑張ってきたね」

「え?」

「初めてキミと会った時にはこんな重要な役割を背負ってるなんて思ってもみなかった」

「はは、初めは俺もまだ役割なんて知らなかったですから」

「そっか。

それでも、キミは途中で諦めることなくさまざまな人と出会ってここまで進んできた。

それはとてもすごい事だよ。

それにまさか全てのホロメンと出会うなんて」

「でも、絆の光消えちゃいました」

「それは大丈夫かな」

「え?」

俺はノエルさんの顔を見る。

ノエルさんは優しくこちらに微笑んでいた。

「あ、そうそう、フレアが言ったかも知れないけどラミィの事ありがとうね」

「あ、はい」

「良かったらこの戦いが終わった後もラミィと遊んであげて」

「分かりました」

「それと、できたらあの子の事推してあげて。

キミの事呼ぶ時いつも雪民さんって呼ぶから」

そう言って笑うノエルさん。

「分かりました、考えおきます」

「うん、今はそれで十分」

そう言ってノエルさんは俺を下ろす。

「ありがとうございます」

俺はノエルさんに頭を下げた。

「うん、お別れの言葉いらないね」

俺とノエルさんは同時に背中を向ける。

そして、俺は前に向かって走った。

背後のノエルさんが時間を稼いでくれているその間に俺は1秒でも早くセレスの元に行かなければ。

 

「ここが最後だろうな」

俺は山の麓まで来ていた。

山頂までもう少し登らないといけないが、なんで噴火してるんだこの山。

「さぁ、最後の関門です。

大自然の驚異を切り抜けあなたは私の元にたどり着けますか?」とセレスの声。

これが最後。

俺は気合いを入れて噴火する山に足を踏み入れた。

所々に溶岩が流れている。

そこまで暑くはないが落ちたら即死だろうな。

それにたまに岩が上から振ってくるし。

くそう、こんなところで立ち止まってたらいくら命があっても足りない。

そう思いながら進んでいくと、目の前に大きなパラソルを持って立ち止まっているウサギ耳の女性がいた。

「な、何やってるんですか、ぺこらちゃん!」

俺に呼ばれこっちを見るぺこらちゃん。

「やっと来たぺこか待ちくたびれたぺこ」

そう言ってぺこらちゃんは微笑んだ。

俺は今この凄まじい環境で何もない野を進むように普通にぺこらちゃんと歩いていた。

しかし、環境はさっきから一切変わってない。

ただ、ぺこらちゃんと歩いていると空から振ってくる岩はこちらには飛んでこないし、溶岩も何故か俺達を避けるように流れていく。

「【幸運眼】?」

「ん?

そうぺこ。

使わない状態でこんなところに立って待ってられないでしょ」

確かに。

「しかし、あのど素人とまさかここまで腐れ縁になるとは思ってもみなかったぺこ」

その言葉を聞いて俺はぺこらちゃんとの挨拶を思い出す。

確かにあれは初め悲惨だった。

「でも、あれが初めてじゃないんですよ?」

「ん?」

「俺が初めてぺこらちゃんを見たのは、【ファンタジー】の始まりの町の近くの森でぺこらちゃんとみこちゃんが戦ってた時です」

「ん~?

あ、そう言えばそんな事あったぺこ」

「よく2人はああやっていつも戦ってるんですか?」

「ん?

そうでもないぺこよ。

みこ先輩はああ見えて大桜神社の巫女長をしてるぺこ。

そう再々会うって訳にはいかないぺこ。

お互いに役割を持ってるぺこですからね。

ただ、みこ先輩も息抜きをしないといけないから、それに仕方なくぺこらが付き合ってあげてる感じぺこですかね」

それを聞いて俺は笑う。

「な、何笑ってるぺこか」

「いや、俺はそれをてぇてぇだなって前まで思ってたんですけど、ある時気が付いて」

「ん?」

「なんか似てるんですよ、俺と友人の関係に。

だから、腐れ縁なんですね、お2人は」

そう俺はぺこらちゃんに言った。

「そうペこな。

そうかも知れないぺこ」

そう言ってぺこらちゃんも笑う。

「でも、またいつかお2人と騒ぎたいです」

「ん?」

「それぞれ忙しい時や大変な時があったり、変なわだかまりや制約があるかもしれませんが、そんなの全部抜きにして騒ぎたいです」

俺は素直にそう伝えた。

「そう、ぺこな。

いいぺこ。

この戦いを勝利できたらまた家に来るといいぺこ。

酒樽担いで2人でまた大桜神社に潜入するぺこ」

「はい、これは何が何でも負けられなくなりました」

「当たり前ぺこ。

ぺこら達、第三世代組が手伝ってきたぺこですからね。

負けはないぺこでしょ」

「はい!」

俺はぺこらちゃんの言葉に大きな声で返事をする。

「後はもう1人で行けるぺこ?」

「はい」

「なら、ここで一旦お別れぺこ。

また、会おうぺこ」

「分かりました」

俺はぺこらちゃんに頭を下げ、山頂を見る。

もうすぐ頂上だ。

俺は最後の力を振り絞り頂上を目指して走った。

 

頂上に着く。

そこにはセレスが微笑みながら立っていた。

「来たぞ」

「ええ」

「これで俺の勝ちか」

「そうですね」

静かにセレスは言った。

俺はそんなセレスを見る。

「楽しかったのか?」

俺は聞いた。

はあとちゃんが言っていた。

この超AIと呼ばれる彼女達は楽しい面白いを探しているって。

「……」

セレスは答えない。

「楽しくなかったのか?」

「そうですね。

楽しそうでした」

セレスは言った。

それは彼女がではないのは明らかだ。

「あなたを見ていてあなたがとても楽しそうに見えました。

あなたは楽しかったですか?」

セレスは聞く。

初めは何も分からない、ホロメンさえ知らなかった俺だけど、このゲームでみんなに出会って様々な事を知った。

そして、俺は。

「楽しかった」

俺はそう答えた。

「そうですか」

セレスは微笑んだままだ。

「なら、私も今度は待つのではなく、この世界を旅してみる事にしましょう。

あなたを見ているとこの世界を旅したくなりましたから」

セレスは光の粒子に変わり始める。

「なら、その時は俺が一緒に旅をする」

「?」

「だって旅は1人でするより大勢でした方が楽しいだろ?」

俺の言葉にセレスは微笑む。

「楽しみに待ってます。

世界の答え。

では、他の姉妹達もよろしくお願いしますね」

そう言って彼女は消えた。

さぁ、みんなの元に戻らないと。

俺は山を降りる為に振り返る。

突如、胸に激痛がはしった。

これはさっきと同じ。

俺は膝を折り地面につける。

くそう、戦いが終わったらって約束したのに。

そして、俺はそのまま地面に…




偽・セレス・ファウナは満足して眠りにつきました。
この後あなたに待つのは誰なのか?
次回をお楽しみに。


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混沌なる者 偽・ハコス・ベールズ

この一連の黒幕、【偽会】の姿と力を持つ超AIがあなたの前に姿を現した。
第6世代組のラプラス・ダークネスによりあなたは今までのホロメンとの絆を奪われたが、変わりに【偽会】の力の一部を封印する事に成功した。
そして、【偽会】はこちらの戦力を削ぐべくウイルスを【ホロライブワールド】に放つ。
それの対処にオリジナル世代と特殊世代が向かった。
そして、最後に【偽会】はあなたに攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃に耐えられず倒れ意識を失う。
果たしてあなたは【偽会】を止める事が出きるのか。


「う」

俺は首を横に振りながら体を起こす。

「ここはどこだ?」

「やっと起きたか」

俺はその声に立ち上がり前を見た。

そこには大きなネズミの耳をした「○ッキー?」

「違うわ!

危ない言葉を口に出すな!

他の姉妹のところのお前はそんなポンしてなかったぞ。

5つに分けた残りカスに当たったか?」

「冗談だ。

ハコス・ベールズだろ」

「危ない冗談はよせ!」

そう言いながらハコスはプンプン俺の前で怒る。

ま、こう見てると案外愛嬌あって可愛いんだが。

「それより、さっきの言葉。

どういう事だ?」

「ん?何がだ?」

「5つに分けたって物騒な事言ってただろう」

「ああ、その事か。

その通り、おまえが気を失う前に攻撃したの覚えているか」

あの胸が急に痛みだしたあれか。

「ああ」

「その時におまえの意識を5つに分けた」

「はぁ?

意識を5つに分けるってそんな事できる訳ないだろう」

「何を言っている?

ここはゲームの世界だぞ。

やろうと思えば出来ない事はない。

ただ、並列思考を無理やりやらせてる感じだからな、脳にはかなりの負担になってるだろう。

だから、気を失うという防衛が働いた」

「な、それじゃ、俺は後4人このゲームにいるって事か」

「そうだ、各々私達が相手をしている。

ま、どんな勝負をしているかは知らないが、私達が楽しめる勝負を仕掛けてるだろうな」

「なるほどな。

じゃ、ハコスはどんな勝負を望む」

「それはもちろん戦いだろ」

そう言ってハコスは笑う。

「そんな気がしたよ」

俺はアイテムボックスから刀を出した。

「あ、そうそうおまえ1人じゃ簡単に潰してしまうからな。

助っ人が来れるようにしといた。

感謝しろ」

「助っ人?」

「そういう事ね」

そう言って俺の横に出てくるのは「まつりちゃん?」

「は~い、こんにちわっしょい」

迷彩服に銃を持って完全武装のまつりちゃんだ。

「でも、こうやって揃うのも久しぶりじゃないかなぁ?」

まつりちゃんの横に出てくるのは「アキちゃん」

俺の呼び掛けに軽く手を振って微笑んでくれた。

「同窓会みたいな感じかなぁ」

俺を挟んで2人と反対側に出てくる「メルちゃん」

「はい、こんかぷ~」

と微笑むメルちゃん。

「たまにはいいと思うけど、はぁちゃまは」

とその横にはあとちゃんが現れた。

人格ははぁちゃまだ。

「ここまで来たらあと1人は?」

俺はまつりちゃんに聞く。

「あ、フブキ?

フブキは世界の維持に行っちゃったからなぁ」

と呟くまつりちゃん。

「寂しいでしょ」とアキちゃんがまつりちゃんに言う。

「な、何言って。

みんながいるから全然寂しくないよ」

と何か強がってる。

そういうところ可愛いなぁ。

「ま、2人のてぇてぇは公認だし」

とメルちゃんが囃し立てる。

顔が赤くなるまつりちゃん。

俺もつられて赤くなってしまう。

「なに、あんたまで赤くなってんのよ」

はあとちゃんに笑いながら背中を叩かれた。

「さてと、談笑は終わったか?」

ハコスが指を鳴らす。

「やる気満々だね」

まつりちゃんが銃を構えた。

アキちゃんはその手にバックラーと湾曲刀を。

メルちゃんは鞭。

はあとちゃんは機関銃を持って戦闘態勢だ。

俺も刀を握る手に力が入る。

「じゃ、殺るか!」

ハコスのその言葉と同時に第一世代組は全員スキルを発動。

全ステータスを一気にあげる。

そして、素早くハコスの横に回るまつりちゃん。

ハコスを狙い撃つ。

ハコスはその弾が発射されたのを見てから避ける。

早い。

俺の想像より何倍も早い動きだ。

避けたハコスの足を捕らえようとメルちゃんの鞭が空気を切り裂き唸る。

ハコスはそれも難なく跳んで避ける。

空中に浮いたハコスをはあとちゃんが機関銃で撃つがそれも空中で回転して避ける。

地面に着地したハコスをアキちゃんが湾曲刀で攻撃する。

ハコスはその刀を指2本で受け止めた。

「く」

湾曲刀を手放し後方に跳びながらアキちゃんはアイテムボックスから銃を出し射つ。

ハコスは湾曲刀を持ち、それを全て切り落とした。

湾曲刀をまつりちゃんに投げるハコス。

次の射撃にと構えていたまつりちゃんは慌てて銃でカードした。

ガチンと音がして湾曲刀は地面に落ちる。

その一瞬、ハコスが間合いを摘めるには十分だった。

ハコスの拳がまつりちゃんの持つ銃を殴る。

まつりちゃんは何かを感じたのか、咄嗟に銃を捨て後ろに跳んだ。

一旦集まる俺達。

殴られた銃を見るとハコスが殴ったところからどんどん黒く変色して最後は真っ黒になり塵になって消えた。

「あれは怖いね」

「カオスだったっけ?」

メルちゃんとはあとちゃんが塵になった銃を見ながら言った。

「触ったものを消滅でもさせるの?」

「ま、簡単に言えばそうだな」

まつりちゃんの言葉にハコスは笑いながら答えた。

「それも任意でって事かな?」

落ちたアキちゃんの湾曲刀は塵になっていない。

「で、そっちはどうでるんだ?」

ハコスはからかうように俺達に言う。

「触られたらアウトと思った方がいいわね」

「確かにそれくらい気を付けないとヤバそう」

アキちゃんの言葉にまつりちゃんが頷く。

「はあとちゃん何かいい案ない?」とまつりちゃん。

「え?」と驚いた顔のはあとちゃんがふと真顔に変わる。

なんか雰囲気変わった?

「意識させないようにすればいい。

消滅させるにはその対象を触って消滅させると思わないと出来ないはずだから」

そう言った後、はあとちゃんは元の雰囲気に戻った。

「え?あ?ん~」

考えるはあとちゃん。

「なるほどありがとう、はあとちゃん」

「え?あ、うん。

任せて」

よく分かってないはあとちゃんは頷く。

何だったんだろう今の?

「意識させないか。

とすると」

「連続で攻撃するしかないかと思う」

俺はみんなに伝える。

「それしかないか」

「そして、隙ができたところをキミが止めをさして」

アキちゃんはそう言った。

「それじゃ、行くよ」

俺以外の4人が動く。

今度は2人1組。

まつりちゃんは新しい銃を取り出してはあとちゃんと一緒にハコスを撃つ。

2人とも機関銃ですごい数の弾がハコスを襲うが、それを全て避けていく。

やはり鉄砲の弾はその速さと数で塵に変えられないようだ。

しかし、2人が撃ち続ける弾丸は1発もハコスに当たらない。

そこにメルちゃんの鞭が飛ぶ。

狙いはハコスの首。

タイミングは完璧。

だが、それをハコスは腕を出して止めた。

腕に絡まる鞭。

これで動きは制限されるけど。

アキちゃんが頭上からライフル銃でハコスを狙い撃った。

ハコスはそれを紙一重で避けて鞭にその弾を当てる。

切れる鞭。

そんなタイミングまでよんでいたのか。

まつりちゃんが爆弾をハコスに投げた。

爆弾はハコスの手前で爆発し煙がハコスを包み込む。

「く」

ハコスの言葉が聞こえた。

煙の晴れた先にハコスの顔が見えた。

ハコスと目が合う。

そして、俺は刀をハコスに振り下ろした。

時間が止まったような気がした。

俺の刀はハコスに片手で受けられ、ハコスのもう片方の拳は俺のお腹を打撃している。

パキっと身代わりコインが砕けた音がした。

しかし、早く離れないと俺は塵に変えられる。

だけど、チャンスは今しかないのだ。

 

俺は振りかぶった鬼切丸をハコスの背中に向かって振り下ろした。

「な!」

ハコスは振り返りもう一度拳を当てた俺を見る。

その俺はぽんと音をたて姿を変えた。

そこにいるのはフブキちゃん。

「いつ?」

フブキちゃんは刀を放しハコスと距離を取り、地面に片ひざを付けた。

第一世代組のみんながフブキちゃんに駆け寄る。

ハコスも横に跳び俺達と距離をとるが、体が徐々に光の粒子変わっていっている。

俺も第一世代組のみんなの方に向かう。

俺はフブキちゃんに回復魔法をかける。

「ありがとう」

と微笑むフブキちゃん。

「いつから変わっていた」

ハコスはこちらを見ながら聞く。

「初めから」

フブキちゃんは答えた。

「ハコスが彼から目を反らした一瞬をついて彼を術で透明にして、私が彼に化けて横たわった」

そう、俺が倒れた時、誰かに背中を叩かれ起きた。

その時はもう姿は透明で、変わりに目の前に俺が倒れていた。

初めはビックリしたが、フブキちゃんが頭の中に直接話しかけてきて、今回の作戦を伝えてくれた。

フブキちゃんは一度自分の白上神社に戻り世界の維持をしようとしたが、黒フブキちゃんに「ここは任せてさっさと加勢してこい」と追い出されて、みんなより先に俺のところに来たらしい。

そして、俺と入れ替わりハコスの様子を確認していた。

ハコスを斬った鬼切丸には入れ替わった時にフブキちゃんのほとんどの力が込められていた為、ハコスに致命傷のダメージを与えられた。

フブキちゃんは力を鬼切丸に宿す事で結果的に弱くなり、プレイヤーと同じような動きができてハコスを騙せた。

後から来た第一世代組のみんなはフブキちゃんとのやり取りから化けている事が分かったらしく(よく分かったなと思う)合わせてくれたようだ。

そして、相手の力を確認後今回の作戦を実行した。

俺の身代わりコインもその時フブキちゃんに渡したのだ。

「まさか、初めから変わっていたとは」

「狐は化かすの上手いですからね」

と笑うフブキちゃん。

「くそう、してやられた」

そう言いながらハコスは笑う。

「リベンジならいつでも受けるよ」

まつりちゃんはハコスに言う。

その言葉にハコスは初め驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ。

「この世界も悪くないから」

はあとちゃんはそうハコスに言った。

ハコスは静かに頷く。

「では、リベンジ待ってるといい」

「待ってる」

「楽しみにしてるね」

アキちゃんとメルちゃんはそう言って微笑む。

「ま、また狐の勝ちだと思いますけど」

「その時は噛みついてやる」

そう言ってハコスは笑いながら光の粒子になって消えた。

「おつかれさん」

バジっとまつりちゃんに背中を叩かれる。

その瞬間、胸に鋭い痛みがはしる。

「う」

俺はたまらず地面に膝をつく。

「え?なに?どうしたの?」

俺を見て慌てるまつりちゃん。

「やっちゃった?」

「ええ、怖いこと言わないで、フブキ」

大丈夫これはあの時の痛み。

俺はたまらずその場に倒れた。

「……」

「…!」

誰かが俺に何か言っているが聞こえない。

だけど、1人だけはっきりと聞こえる声があった。

「この後、何があっても諦めないで。

あなたがこれまで積み重ねた時間は消える事はないから」

そう、はあとちゃんの言葉が聞こえた…




偽・ハコス・ベールズは満足して眠りにつきました。
この後あなたに待つのは誰なのか?

始まりがあれば終わりもあります。
このお話も次回で最終話となります。
それでは次回
【Ωから始まりの場所へ】
お楽しみに


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Ωから始まりの場所へ

全ての【偽会】を眠りにつかせたあなた。
5人に別れたあなたが今1つとなる。
果たしてその先に待っているのは。



「うぁ」

う、頭が痛い。

ここはどこだ?

俺、浮いているのか?

周りは真っ暗でどこかで見た事のある場所だ。

そうか、ここはログアウトした時に現実に戻る前に来る場所。

俺は勝ったのか?

それにホロメンのみんなは?

周りには誰もいない。

ホロメンのみんなも【偽会】もいない。

いや、【偽会】はそうだ俺とホロメンのみんなで退けた。

5人とも各々眠りについたんだ。

「記憶の統合は終わりましたか?」

声をかけられ俺は声がした方を向く。

さっきまで誰もいないと思ってたけど誰かいる。

その人物は俺が確認できるまで近づいてきた。

その姿は一言で言えば真っ白だ。

頭の上には三角の天使の輪?が浮いていた。

「久しぶりですね」

そう彼女?は言った。

「久しぶり?」

「そうですね。

あの時、あなたは夢うつつのような状態でした。

覚えてないのも無理はないですね」

そう言って彼女?は俺をまっすぐ見つめる。

「私の名前はオメガαと言います。

私の同胞達と遊んでくれてありがとうございます」

「同胞?」

「ええ、【偽会】と呼ばれていました」

「それじゃ、ハコス達の仲間?」

「仲間、では、ないですけど関係者ではありますね。

私が彼女達をこの【ホロライブワールド】に連れてきましたから」

「なに!

知っていたのか?

彼女達が様々な世界を潰してきたのを」

「ええ」

「じゃ、なぜこの世界に連れてきた」

「彼女達が次の遊び場を探していましたからね」

「もしそれで、この世界が滅んだらどうしたんだ!」

「その時はまた違う世界を探しますが?」

「な」

オメガαは淡々と喋る。

「おまえも【ホロライブワールド】に住む住人の1人だろ」

「そうですね。

この姿は借りていますから関わりはありますね」

「なら、なぜこの世界が壊れても関係ないみたいな言い方をする」

「?

不思議な事を聞きますね。

ゲームなんていつかは終わりがくるものです。

永遠なんてありません」

「な」

「我々は人間と違って寿命などありません。

ですので私達にとってゲームとは、ただの一時の遊び場でしかない。

遊び終えたらまた違うゲームをする。

それはあなた達も同じでしょう」

その言葉に俺は何も言えなかった。

「さて、こんな話をしてもあなたは納得はいかないでしょう。

ですのでこの話はここまで。

それでは、あなたに貸したものを返してもらいましょうか」

「貸したもの?」

「ええ、スキル【Aω】です」

「このスキルはあんたが俺に」

「ええ、あのまま進んでもすぐにゲームオーバーでしたからね。

それでは」

オメガαが俺に手を向ける。

「今回はありがとうございました。

それではもう会う事はないでしょう。

さようなら」

そう言った後、俺から何かが抜けていくような感覚がした。

そして、俺は強烈な光に包まれた。

眩しくて目が開けられない。

これから俺はどうなってしまうんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこはある木の下。

目を開けた俺は周りを見渡した。

そこは静かな森の近く。

「ここは?」

俺はここに見覚えがある。

そうだここは。

「始まりの町」

そう、俺はいつの間にか【ファンタジー】の始まりの町の近くにいた。

「なんでここにいるんだ?」

俺が周りを見ていると誰からか通信が入った。

「はい」

「お、やっと中に入ったか」

それは友人からだった。

「ほら、合流するぞ。

今はどこにいるんだ?」

「あ、ああ。

始まりの町の近くだな」

「お、それは好都合。

俺も今、始まりの町にいるんだよ。

酒場は分かるか?

そこで合流な」

そう言って通信が切れる。

しかし、友人は何言ってるんだ?

始まりの町の酒場なんて何回も行った事あるんだから知ってるの当たり前だろ。

俺は不思議に思ったが、まずは友人に会う為、酒場に向かった。

「お、来た来た」

酒場前に友人がいた。

「今日は1人か?」

俺が聞くと「ん?ま、1人だが?」と不思議そうに言う。

「ま、そうか俺を探す必要ないしカーディアさんの力借りなくてもいいか」

俺はそう言って笑う。

「え?

カーディアさんの事、おまえに話した事あったっけ?」

「え?」

「ん?」

何か友人と話が噛み合わない。

「ほら、それより中に入ろうぜ」

「え?あ、ああ」

俺は友人に誘われ酒場に入る。

中は前と変わらない内装で人もいて繁盛していた。

「えっと何頼む?

おすすめは」

「ラミィ水だろ?」

「お、分かってるねぇ。

それじゃ、注文お願いします」

友人はウェイトレスにラミィ水を2つ頼んだ。

「それじゃ、せっかくこのゲーム初めてくれたんだ、説明するぜ」

「は?」

「ん?どうした?」

「何言ってるんだ?

俺は今日初めて入ったんじゃないぜ」

「は?」

友人は俺を不思議な目で見る。

「いや、おまえどっからどう見ても初期だろ」

「は?」

俺は自分の姿を見る。

なんで?

俺は確かに初期装備だった。

これは確か初めから装備している服。

ま、まてよ。

俺はアイテムボックスを開く。

中には鉄の剣と樫の杖、皮の鎧。

ポーションが10個入っていた。

な、なんで?

そうだ、スキルは?

俺はステータスを開いてスキルを確認する。

【激運】

俺のスキル【激運】?

スキル【運命】はどこいったんだ?

「おい、どうしたんだ?

何そんなに慌ててる」

「いや、だって俺、もっとすごい装備持ってたんだ。

鬼切丸やアルティメットフット。

それにココさんからもらった赤竜帝の小手。

あと、そうだよ。

形は変わったけど虹色のダーツだって」 

俺の言葉に友人は不思議そうな顔をして俺を見る。

「いや、予習してくるのはいいが、その情報を自分の事のように思わない方がいいぞ」

「いや、だって」

そうだ、推し一覧。

俺はステータスを開いて推し一覧を見る。

どのアイコンも光ってはいなかった。

そうか、俺のアイコンの光は。

ラプラスに取られたんだ。

「どうしたんだおまえ?」

注文で来たラミィ水を飲み友人は俺に心配そうに聞いてきた。

「いや、何でもない」

俺は友人にそう答えた。

その後、友人からゲームの説明を受けた。

が、俺は何も頭に入らなかった。

友人とはその後別れた。

俺は鉄の剣と皮の鎧を装備する。

なんだ?

あの冒険は何だったんだ?

俺はふと今日の日付を見た。

あ。

5ヶ月たってる。

そう、俺が初めてゲームを始めた時から5ヶ月たってるんだ。

じゃ、なんで?

なんで、友人には俺と旅した記憶がないんだ?

それに俺の装備やアイテムは?

くそう、何がなんだか分からない。

ドン

ぼっと歩いていたら誰かとぶつかった。

「あ、すいません」

「いえ、こちらこそ」

そう言ってフードの女性が頭を下げてくる。

そして、そのまま立ち去ろうとした時「あ、ちょっと」俺はその女性を引き留めてしまった。

「はい?何か」

「えっと」

俺はフードの下の彼女の顔を見る。

確かに可愛い人だけど、俺が思っていた人ではなかった。

「すいません、人違いでした」

「え、あ、はい」

そう言って彼女は走り去っていった。

「そらちゃんじゃなかったな」

俺はポツリと呟く。

それから俺は町をうろうろと歩いた。

ふと顔をあげるとそこはギルドの前だった。

何か受けるか。

俺はギルドに入り掲示板を見た。

ふと、掲示板の端に釣りのクエストを見つけた。

まさか?

俺はクエストを見る。

しかし、クエストは魚屋のおじさんからで、湖の魚の納品クエストだった。

ラミィちゃんのクエじゃないのか。

残念に思ったが、俺はそのクエを受けた。

道具屋で釣り道具を買い森に入る。

森はとても静かだった。

俺は記憶を頼りに湖を探す。

あった。

やっぱり俺の記憶は正しいんだ。

でも、いくら記憶が正しくても俺以外の人が忘れてるならどうしようもない。

俺は湖の近くの倒れた木に座る。

そして、釣りを始めた。

静かな時間が過ぎる。

俺、本当に世界を救ったのかな?

なんかあの冒険が嘘だった気がしてきた。

友人の言うようにネットで事前にゲームを調べてそれで冒険した気になってたのかな?

それからどれくらいたったのか?

あれから1匹も魚は釣れない。

今日は止めるか。

そう思った時「どう?釣れますか?」

誰かが声をかけてきた。

「え、ぜんぜん釣れないんですよ」

そう言って声をかけられた方を見た。

そこには青い髪の小さな女の子。

「えっと」

言葉に詰まる俺。

「ん?

隣いいかな?」

そう彼女は聞いてきた。

「え、あ、はい」

俺は慌てて答える。

彼女はそんな俺を見て笑った。

この人は。

俺はこの人を知っている。

でも、彼女は俺を知らない。

なぜか胸が苦しくなる。

「どうかしたの?」

彼女は心配そうに俺を覗き込む。

「い、いえ、えっと初めまして。

あなたはラミィちゃんですよね」

俺はどもりながら彼女に言った。

「そうだよ、雪花ラミィです。

こんらみ」

と彼女は挨拶してくれる。

俺はステータスを開けて推し一覧を見る。

ラミィちゃんのアイコンが点灯していた。

「はは」

俺はそれを見て嬉しいやら悲しいやらよく分からない感情が込み上げてくる。

何故か推し一覧の画面がぶれる。

「ん~また集めないといけないね」

「え?」

俺の推し一覧を覗き込んでいるラミィちゃんがそう俺に呟いた。

「それってどういう」

「そういえば、結局フレンド登録も出来なかったし」

「え?なんで?」

なんで?ラミィちゃんはその事を?

それはみんなが忘れた記憶のはず?

すくっと立つラミィちゃん。

俺の方に振り返る。

そして。

「一度繋がった絆は、例え消えたとしてもまた出会えば思い出すよ。

ラミィ達はずっとキミをこの世界で待ってるから」

と言って彼女は微笑んだ。

 

そこは始まりの場所と呼ばれる場所。

そこで1人の少女が空を見上げた。

「どうしたのそらちゃん?」

そう呼ばれた少女が首に着けたペンダントを握る。

「誰かが彼に会ったみたい」

「え?本当に?」

「そっか、無事だったんだ」

すいせいとAZKiは嬉しそうに答えた。

「会えるかな?」

「さ、今度は自力だからね」

そう言って笑う2人。

「大丈夫。

彼ならきっと」

そう言ってそらは笑った。

 

「ロボ子さん、もうしませんって」

近未来都市の研究室の1室でウェイはロボ子に謝る。

「何回目?

私のコピー作るの止めてって言ったでしょ」

ロボ子はウェイを睨む。

ウェイは手を合わせ必死で謝る。

ふと、研究室の端に飾られてる足装備をロボ子は見た。

いつか彼が取りに来るその時まで大事にとっておかないとね。

そう思いロボ子は微笑んだ。

 

「さてと、今日も調律終わったにぇ」

みこはいつもの用事が終わり部屋に戻る。

部屋でごろんと横たわった。

何か暇にぇ。

そう最近思うようになった。

ちょっと前はなんか忙しかったが楽しかった。

あの日がなんか懐かしい。

「また、あいつこないのかなぁ」

そうみこは呟いた。

 

「また、飲んでるぺこか」

酒場で酔っぱらうマリンを見つけぺこらはため息をつく。

「だって判子押しにこないんだもん」

そう言ってふてくされるマリン。

「それ言ったらぺこらとの約束もまだ守ってないぺこ」

ぺこらはそう言ってマリンのテーブルについて酒を飲む。

「へぇ、珍しい」

マリンはそう言ってぺこらを見た。

「うるさいぺこ。

はぁ、早くこないぺこかな」

そう言ってぺこらはテーブルに突っ伏する。

「ですねぇ」

マリンもそう言って同じく突っ伏した。

 

「ふぅ、これで一段落です」

るしあは背もたれに持たれながら天井を見上げる。

あの戦いが終わり気づいたら大霊園にいた。

そして、るしあはたまった仕事をこなしていた。

ふと、テーブルの写真を見る。

そこには第三世代組と1人の青年で撮った写真が飾られていた。

「ふぅ、早く会いに来てくださいね。

るしあはそう我慢強い方ではないですよ」

そう言ってるしあは写真を見て微笑んだ。

 

「そろそろ行くよ」

玄関でフレアはノエルに言った。

「はぁい」

ノエルは慌てて玄関に来る。

「そう言えばラミィは?」

「確か釣りに行くって」

「また?」

ノエルの答えにフレアが笑う。

「やっぱり、あの雪民さんが気になるんじゃない?」

とノエルが言った。

「ま、確かにあの後いなくなったもんね」

フレアが答える。

「でもさ、なんかすぐに会える気がする」

「実は私も」

ノエルとフレアはお互いを見て笑う。

そう、そのうちひょっこり彼が遊びに来る感じが2人にはしていた。

 

「こんにちは」

「いらっしゃい。

あ、ちょこ先生」

そう言ってメルが嬉しそうに言った。

「繁盛してますか?」

「お陰さまで」

そう言ってお互いに笑う。

「そう言えばそろそろ薬の材料切れそうなんですよね」

「彼がいたら手伝ってもらえるんですけどね」

「確かに」

そう言ってまた2人は笑う。

いつかまたここに来るであろう彼を思って2人は楽しそうに談笑した。

 

ダ、ダン。

「はい、お疲れ様~」

カジノのステージから練習を終えて、アキとねねが降りてくる。

「なかなか様になってきたね」

アキがねねに言った。

「そうですか?ありがとうございます」

嬉しそうにねねは答える。

「いつか見てもらわないとね」

アキはそうねねに言った。

ねねも笑いながら「はい」と答える。

共に冒険した彼は今はどこにいるのか?

また、会えるのか?

その時ねねは今のダンスを披露しようと思っていた。

この世界を救ってくれた友人に贈り物として。

 

「ここにいたんだ」

まつりは学園の屋上に来ていた。

「ん?ちょっとね」

屋上で寝そべるはあと。

「隣いい?」

そう言って返事を待たず寝るまつり。

「彼って生きてるの?」

そう誰に言うでもなく呟くまつり。

「さぁ、でも、ひょっこり現れるんじゃない?」

そうはあとは答えた。

「そっか」

まつりはその答えに満足したように空を眺めた。

 

「いつ聞いても良い声してるね」

鳥居の下、柱に寄りかかりフブキはミオの歌を聞いていた。

「いたんだ」

鳥居の上からミオがフブキに言う。

「今度はいつ来るかな?」

そうフブキはミオに聞く。

「さぁ、分からない。

でも、占わなくても分かる事はあるよ」

「なになに?」

ミオの言葉にフブキは楽しそうに聞く。

「それは必ずうち達の前に現れるって事」

「それは楽しみだ」

ミオの言葉に本当に楽しそうにフブキは答えた。

 

「久しぶりだね、シオンちゃんがここに来るの」

ルーナの屋敷の中庭でお茶を入れるあくあ。

そこにはシオンが座っていた。

「たまたま近くに来たから寄っただけ」

あくあはお茶をシオンに出して自分もテーブルにつく。

2人でお茶を飲む。

「お、入れるの上手くなった?」

「別に前から上手いですけど」

そう言ってちょっとすねるあくあ。

「今度来たらお茶でもご馳走してあげようかな」

あくあはそう呟いた。

「ホントに勝手に弟子名乗っておいていなくなるんだからね」

そう呟いてお茶を飲むシオン。

そして、2人はお互いを見て笑う。

ぼやく相手が2人とも同じだったのが面白かったらしい。

「また、会えるかな?」

「きっと、会えるよ」

 

「どうしたのじゃあやめ?」

鬼岩城の最上階でお茶を飲むあやめに1人の鬼女が声をかける。

「別に何もない余」

「そうかのぅ?

何かそわそわしてるように見えるのじゃがのぅ?」

「別に」

あやめは誤魔化すように言った。

その横には鬼切丸が。

その鬼切丸が淡く光を放っていた。

「ほほう、待ち人が現れたようじゃな」

そう鬼女は笑う。

「な、そんなんじゃない余」

「よいよい。

楽しみじゃの」

鬼女は嬉しそうにあやめに言った。

「うん」

あやめは素直にそう言って笑った。

 

「スバにゃんがんばれ~」

「負けるなぁ、スバルちゃん!」

校庭で走るスバルをころねとおかゆが応援していた。

「なんか気合い入ってるねスバにゃん」

「今度会ったら負けられないだって」

「え?」

「この世界を救って消えた彼に」

おかゆはそうころねに言った。

「ああ、彼か。

確かに彼にはこの世界を救ってもらった借りがあるし、そういう意味では負けっぱなしかぁ」

ころねはそう言って笑う。

「スバにゃんらしい」

「だね」

そう言って2人は笑う。

「早く戻ってこいよ」

走り終えたスバルはそう言って空を見る。

青空はどこまでも続いていた。

 

「ほら、行くよ~」

先頭を元気よく歩くかなたは後ろを振り返り声をかける。

「ちょっと待ってルーナもう歩けないのら」

そう言ってルーナはその場に座り込む。

「あんた元気すぎるのよ」

そう言ってトワもその場に座り込んだ。

「ああ、疲れたぁ」

そう言ってわためも座る。

「だらしないですねみんな」

最後尾を歩いてきたココは座り込む3人を見て笑った。

「て言うかなんで山の頂上でお昼食べるのよ」

トワが愚痴る。

「いやぁ、馬鹿は高いところが好きって言いますから」

「聞こえてるよココ」

かなたは戻ってきてココを睨む。

「おお、こわ」

「みんなで言ってたじゃんか、彼が戻ってきたら景色の良いところで宴会しようって」

「言ったのらけど」

「さすがにこの山は高すぎです」

【ホロライブワールド】1高いと言われる山に5人は挑戦していた。

「ほら、そろそろ行きますよ」

ココはそう言ってみんなを立てらす。

『は~い』

しぶしぶ立てる3人。

「早くしないと彼が来ちゃいますよ」

ココはみんなにそう言った。

「え?もしかしてこの世界にいるの?」

わためがココに聞く。

ココは笑顔で頷いた。

「こうしちゃいられない行くわよ」

トワがいきなり張り切り始める。

「うう、がんばるのら」

ルーナもよたよた歩く。

そんなルーナをココは持ち上げ肩にかついだ。

「あ、ずるいです」

わためがぼやく。

「帰って来たんだ」

かなたはココの横で嬉しそうに言った。

「はい」

ココはそう答え空を見る。

早く会いに来てください。

待ってますよ。

 

「まのあろまだ?」

(もう少し)

「ぼたんは?」

「あとちょっと」

五世代ハウスの玄関からポルカは中に向かって声をかける。

「ごめんごめん」

ぼたんが髪をとかしながら奥から出てくる。

(セットに時間がかかってな)

「いや、まのあろは実体ないだろ」

アロエに突っ込むポルカ。

あの戦いの後、アロエはみんなの協力でペンダントから自由に出れるようになったのだ。

そして、この五世代ハウスに住んでいた。

「早く行かないとラミィが待ってる」

ポルカがその場で足踏みしながら声をかけた。

今日は第五世代組で集まる日だった。

ねねもカジノから戻ってくる。

「分かってるって。

さぁ、行こう」

そう言って買い物カートに乗るぼたん。

「いや、いつもボケないのにこんな時にボケないでよ」

ぼたんがぶーと頬を脹らます。

(本当に楽しいな)

そんなやり取りを見てアロエは笑う。

「さ、行こうか」

カートを降りてぼたんが走る。

その後をポルカとアロエが追う。

3人は本当に楽しそうに走る。

この先に何か楽しい事が起こる気が彼女達はしてたのだろう。

 

俺はラミィちゃんの言葉を受けて立ち上がる。

みんな俺を待ってくれている。

その言葉だけで俺は救われた。

すっとラミィちゃんが手を出した。

「これからまたよろしくね」

「はい」

俺はその手を握る。

これからまた楽しい旅が始まる。

そう俺は予感した。




これにて、ホロライブ・オルタナティブver.IF正式版完結となります。
これを書き始めて約5ヶ月。
何とか書き終えてよかったです。
これを書くにあたってたくさんのホロメンの方を自分なりに深く知る事ができました。
本当に魅力的な方ばかりです。
これからもホロメンの方々が楽しく配信されていかれる事を願っております。
また、このつたない小説を最後まで読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございました。
感想も思ってたよりいただき、書く意欲になりました。
お気に入りも目標だった300を超えて本当に嬉しい限りです。
この小説でホロメンを見たいなと思う方が増えたら、なお嬉しいと思います。
最後にこの小説がホロメンの方の誰かに読んでいただけたらいいなと思いながら。
では、読者の皆様、本当にありがとうございました。
あと、1話おまけを考えております。
次回作はまだ未定ですが、その時があればまたよろしくお願いします。
それでは、ありがとうございました。


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おまけ ラプラスの野望(仮)

あなたのお話はひとまず終わりをむかえた。
しかし、全てのお話が終わったわけではない。
これはまだ誰も知らない物語の始まりの前。


少し薄暗い大広間に5人の女性が集まっていた。

「それでこれからどうするんですか、ラプラス?」

ちょっと豪華な椅子に座る少女に鷹嶺るいが聞いた。

「ん?

そりゃ決まっているだろ?

この世界を吾輩のものにする」

「はぁ、また始まったよ」

それを聞いて沙花叉クロエがため息をつく。

「リアルのラプ殿もそう言ってなかなか出来ていないでござるよ?」

風真いろははそう言って笑う。

「ま、ラプちゃんはそれが趣味だからねぇ」

博衣こよりは手元で何やら新しい機械を触りながら言った。

「それより、運営から私達の実装を告知すると連絡が来ました」

るいが報告する。

「ほほう、これでやっと吾輩達も大召喚が使えるようになるわけか。

これでまた一歩世界征服に繋がるな」

「ただ、ラプラスが封印を解いてる事も運営に知られてるみたいで、GMが動くみたいですよ」

「はぁ?

やっと自由になれたのにまた封印されるのか?

そんなの嫌だ~」

だだっ子のように足をバタつかせるラプラス。

「でしょうね。

というわけで、引っ越しをします。

ここは運営にバレてますから」

とるいが言った。

「ええ、今からでござるか?」

「こよ、持っていく荷物山積みだよ?」

「沙花叉はそんなに多くない」

「では、各自部屋に戻って片付けてきてください」

『は~い』

「ほら、ラプラスも」

「えぇ~、吾輩、片付け嫌だ」

「なんで封印解いて最強の力を手に入れてるのに性格は子どものままなんですか?」

るいに背中を押されるラプラス。

「子どもじゃないやい!」

「子どもはみんなそう言います」

そして、大広間には誰もいなくなった。

 

 

そこは運営が【ホロライブワールド】内に作るGM本部。

ここでは【ホロライブワールド】で起きる問題の連絡を受けていち早く駆けつける為、日夜運営の関係者が待機していた。

「はぁ、また夜勤かよ」

1人の男性がぼやく。

「仕方ないでしょ、ゲームの世界に昼も夜も関係ないわよ」

小柄な女性がそう言って笑う。

「俺達はそれを承知でこの仕事してるんだからな」

大男がバシッと男性の頭を叩く。

「いたぁ、止めてくださいよ、後輩いじめっすよ」

男性は叩かれた頭を押さえながら大男に言う。

大男はそんな男性を見て笑った。

「しかし、今回は本当に助かったわ。

あのプレイヤーがいなかったら【ホロライブワールド】は終わってた」

テーブルについている1人の女性が画面を見ながら言った。

「何言ってるんですか、GMでもないプレイヤーがあんな事するのはおかしいですよ」

男性が怒鳴る。

「ま、仕方ないだろ。

【ホロライブワールド】が決めた事だからな」

「でも、あの戦いの後、データが改竄されているのが確認できた。

それも大規模に」

女性はキーボードを叩きながら言う。

「記憶の改竄ね。

まさか、こんな大規模な事が出来るなんて思わなかったな」

小柄な女性は真剣な顔で自分用の画面を見た。

「このゲームが脳に直接影響を与えるような事が出来ると立証されたみたいなものだ」

「この事実は隠さないとね」

トンとキーボードを打ち終え女性が画面を閉じる。

そこに大きな画面が現れた。

そこにはAちゃんの姿が。

「GM、チームαの皆さんお仕事です」

そう言われ立ち上がる一同。

「内容は各自にメッセージしております。

それではお願いします」

『了解』

今日もまたGMの仕事が始まる。

彼らと第六世代組のお話はまた別のお話。




では、またいつか。
最後まで読んでくださってありがとうございました。


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