スーパーロボット大戦Z 魔王たちの新たに歩む物語リメイク (有頂天皇帝)
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破界編
第一話 魔王の復活


まえがき

現在作者が投稿している『スーパーロボット大戦Z 魔王たちの新たに歩む物語』をリメイクして投稿することにしました。前作を読んでくださった皆さんには申し訳ありませんがこの作品も読んでもらえるとありがたいです。それでは本編へどうぞ!


◆◆◆

 

───かつて優しい世界を望んだ魔王は優しい世界を創るため、世界の全ての悪意を無くすためにその命を世界に捧げた。

 

───魔王のために戦っていた騎士は魔王が死んだ時、かつて魔王に騎士の忠誠を誓った神殺しの島でその命を自らの手で絶った。

 

───最後まで魔王の隣に立ち共犯者として共にいた魔女は魔王が大切にしていた箱庭にある教会で涙を流しながらただ祈りを捧げていた。

 

本来ならば彼らの物語はこれで終わるはずだった。しかし何の因果か彼らは別世界にて新たな生を得て再び世界に反逆するのだった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

別々の歴史を辿っていた平行世界が『大時空震動』によって溶け合い、新たに『多元世界』とかした世界から13年の月日が経った多元暦13年の夏、二つに分かれた日本の内南東側にある日本に対して宣戦布告と同時に戦争を仕掛けた世界三大国家の一つであるブリタニア・ユニオン。日本側は旧型MS(モビルスーツ)であるゲイレールやアンフ、装甲車などの旧時代の兵器を用いて迎撃しようとしたがブリタニア・ユニオン側は新たな人型兵器『KnightMareFrame』通称KMF(ナイトメアフレーム)の実戦投入の他、新型MSフラッグとジェノアスを投入するなど圧倒的な軍事力で日本を侵略するのだった。

 

そして日本の敗北の決定打となったのは当時日本内閣総理大臣でありタカ派としてブリタニア・ユニオンと徹底抗戦を唱えていた枢木ゲンブ首相の突然の自害によりトップがいなくなったことで、日本は混乱し、軍部と政府、関係各所はろくな連携を取れなくなり日本は力を出し切る事が出来ないままあっという間に敗北した。そして日本は結果的に国も名前も人種も自由もそれら全てを奪われ日本は『エリア11』と日本人たちは『イレブン』と呼ばれるようになってしまったのだった。

 

そしてブリタニアが宣戦布告以前、人質として日本に送られた3人の皇族は戦後の混乱から消息不明となり、この戦争でその幼い命を散らしてしまったと目されていた。しかし、その情報も死亡したと目された3人の皇族に近しい一部の関係者以外には、些事としてすぐに忘れ去られてしまうだろう。

 

 

───────しかしこの時、とある魔女と騎士を除いて誰もが知る由もないことだった。

 

 

「・・・ボクは・・・いや、オレは、ブリタニアを・・・いや、この腐った世界をぶっ壊すっ!!!」

 

ブリタニアの侵攻により瓦礫と化した街並みの只中で、その紫水晶のような美しい瞳に燃え滾る焔を宿した、一人の「魔王」が再びその誕生の産声を上げた事を────

 

ブリタニア・ユニオンと日本の戦争の『極東事変』で実の妹である第12皇女リリーシャ・ヴィ・ブリタニアと第13皇女ナナリー・ヴィ・ブリタニアと共に、祖国に見捨てられた第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは戦後、テロにより命を落とした母である皇妃マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアを後援していたブリタニア貴族アッシュフォード家に保護された後、本名を捨てルルーシュ・ランペルージと名乗るようになった。───その胸に自らの願いを抱きながら

 

ルルーシュは自らの願いを叶えるための手段として戦うことを選び、そのために必要な知識、資金力、軍事力を手に入れるためにその類稀なる優秀な頭脳を駆使するのだった。先ず知識を得るためにルルーシュはアッシュフォード家に保護されてから2年、政治・経済・軍事・科学等の多岐に渡る分野の他、世界情勢など様々なことを学びそれら全ての高度な知識を自らの血肉とした。

 

次にルルーシュが求めたのは資金。ルルーシュは資金確保の手段として株の売買をしてある程度の資金を稼ぎその資金を使いルルーシュは会社を設立しまともに職につくことが出来ないが手先が器用な日本人たちを雇用することで良質な製品を製造しそれらを販売することで順調に資金を稼ぐことが出来た。

 

そして最後に軍事力。手に入れた資金でKMFやMSの大量生産したり、宇宙のデブリ帯にある半壊したMSやエイハブリアクターなどを回収して使えるようにしたりなどして機体や武器を集めることは順調に進んでいた。

 

そして秘密裏に関係を持っている『キョウト六家』の重鎮の1人である桐原泰三やコロニーの表と裏の両方で大企業として活動しているマフィア『テイワズ』のマクマード・バリストン等の協力者たちの力もあって整備士やパイロットなども着々と集めることに成功し、ルルーシュの為の戦力『黒の騎士団』は徹底した情報管理の元で秘密裏に組織として完成に近づいていた。

 

─────そして、時は流れ多元暦20年。エリア11に『魔王』と呼ばれる存在が表舞台に現れるのだった。

 

 

◆◆◆◆

 

元日本──『エリア11』の首都である『トウキョウ租界』にはブリタニア人の学生が通う学園が幾つもあるが、その中で変わっている学園と言えば『アッシュフォード学園』が上がるだろう。

 

ブリタニア貴族のアッシュフォード家が管理、経営を行っているこの学園ではブリタニア人が経営しているには珍しく、ブリタニア人とナンバーズの区別なく入学を受け入れており数は少ないが名誉ブリタニア人の生徒も在籍している。

 

人種も異なる生徒がいるこの学園では、生徒たちの個性を大事にしているためか他の学園では絶対に行わいないようなイベントを生徒会長の指示の元月に数回はやっており、それがまた生徒たちに好評でこの学園の生徒たちは日々を楽しく過ごしていた。

 

そんな生徒の中で最も有名な人物として上がるのは誰かといえば1人の男子高校生の名が挙がるだろう。高等部2年のアッシュフォード学園副生徒会長ルルーシュ・ランペルージの名を。

 

ルルーシュ・ランペルージ。端正な顔立ちと、その優雅な佇まいから彼の周りには男女問わずよく人が集まっていた。また外見こそ細く見えるものの、その実身体はしっかり鍛えているらしく、運動部からひっぱりだこ!というほどではないものの、容姿端麗・文武両道を地で行くルルーシュは正に非の打ちどころの無い『優等生』であり、彼を狙う女生徒は両手に余るほどいた。ただ彼の欠点として上げられるのは無断で授業を欠席したり、賭け事に手を染めるなど普通の学生らしくない事が上がるだろう。しかしそれでも彼の人としての良さは損なわれないのか男女ともに生徒たちから慕われていた。

 

そんな彼は今日もまた学園を抜け出して彼の友人にして同じ生徒会メンバーであるライ・アルトリウスとリヴァル・カルデモンドと共に賭けチェスの代理人としてトウキョウ租界のとあるビルにあるバーにてブリタニア貴族とチェスを行った。

 

ルルーシュにとって不利な盤面から始まった上に黒のキングから動かしたルルーシュを侮ったブリタニア貴族だったが、結果はルルーシュの圧勝でありそのことを信じられないでいるブリタニア貴族を尻目に3人は報酬を貰ってバーから出ていった。

 

「いやーさっすが貴族!プライド高いから支払いもしっかりしてるし言う事無いねー」

 

「相手の持ち時間も少なかったしな。それにぬるいんだよ貴族って。特権に寄生しているだけだから」

 

リヴァルは先程ルルーシュに敗北した時の貴族の引き攣った顔が面白かったのか笑いなからそんなことを言うがルルーシュは特に思うことも無いのかつまらそうにそう言った。

 

「なら次はもっとお偉い貴族様かイレブンとでも相手にしてみるか?そうすればルルーシュにとっては戦いがいのある相手がいるかもよ?」

 

「あまり調子に乗らない方がいいよリヴァル。貴族なんてプライドだけが高い連中が多いんだ。任した腹いせに闇に葬る・・・なんて事を平気でするんだからね」

 

「こ、怖いこと言うなよライ・・・」

 

ライの言葉にリヴァルはビクッとしながら苦笑いを浮かべるが、ライ自身は冗談を言った気はない。実際に知られていないだけでも過去にそういった噂が存在しており証拠がないだけで真実かは分からないがブリタニア貴族のことを考えればその噂も真実の可能性が高いが、わざわざその話をリヴァルにする必要はないかとライはそれ以上のことは言わなかった。

 

「2人共無駄話はそれくらいにしとけ。そろそろいかないと授業に間に合わなくなるぞ」

 

ルルーシュがコインパーキングの支払いをしながら2人に声をかけたちょうどその時だった。

 

『只今より緊急ニュースをお伝えします』

 

街頭の巨大スクリーンに租界で起こったテロに関する報道が流され、訪ねようとしたことは記憶の彼方へと飛び去ってしまった。

 

「あ~りゃりゃ。こりゃ悲惨~~」

 

「テロ・・・か」

 

今朝のニュースから流されている一連のテロ事件とは、研究施設にテロリストが侵入し多くの人命と研究資産の一部を強奪した後、各地で連鎖的に発生している事件のことだ。ブリタニア人だけでなく、その他多くのナンバーズにも被害が出ているらしい。

 

そして一連のあらましをキャスターが伝え終えると、このエリア11総督であるクロヴィス・ラ・ブリタニアの会見放送を流し始めた。

 

『帝国臣民の皆さん、そして勿論協力頂いている大多数のイレブンの方々も――――』

 

しかしルルーシュはそれには目もくれず、パーキングの支払いを終えてさっさとリヴァルのバイクに取り付けてあるサイドカーへと乗り込んだ。そしてライもヘルメットを被ってまた隣に止めてある自分のバイクに跨る。

 

「あれ、ルルーシュとライは会見は見ないの?総督の姿なんてめったに見れるもんじゃないけど・・・」

 

「どうせ似たようなニュースがまた後で放送されるだろうからね。わざわざここで見る必要は無いよ」

 

「そうだな、ライが言うように画面越しに見る機会ならいくらでもあるだろう?そんなことより次の授業に間に合う方が大事だ。さ、早く出してくれ」

 

「りょーかい」

 

リヴァルがもまたバイクに乗ると3人は黙祷を死者に対して黙祷を捧げる一般市民達を尻目に、バイクは走り去っていく。

 

ルルーシュはサイドカーに乗りながらチラリと周囲を流し目に見る。律儀に黙祷を捧げる人も少なからずいるが、大半の人間は関係ないとばかりに歩み続けていた。黙祷を捧げない人間はAEUや人革連などの他国出身の人間だけではなくブリタニア・ユニオンの人間もいた。

 

ブリタニア臣民の全てが皇族を敬愛している訳では無い。その権威と権力の大きさに恐れて表立って皇族を非難するものはいないが、ブリタニア・ユニオンの国是である「弱肉強食」に対して反対する「主義者」と呼ばれる者たちはブリタニア人全体を見てもその数は決して少なくはない。

 

本国から遠く離れた地であるこのエリア11にブリタニア人が多いのは、日本から大量に採れるエネルギー資源の1つ『サクラダイト』の利権目当てでやって来た貴族やそれらの仕事に関係するものたちだけではなく、『弱肉強食』というブリタニアの国是に嫌気が指して発展の著しい植民地エリアに逃げたのも理由の一つだろう。

 

「(確かに競い合わせることで人は成長するのは確かだ。しかしそれも度が過ぎれば毒となり争いが起こる)」

 

他者から奪うことに慣れたブリタニアはその欲を満たすことのみを考え自らの足元を顧みない。軍の人間は汚職に塗れ、貴族や皇族は欲を満たすために他者を陥れ、その他の市民たちは危機感も抱かず他人事のように日々を過ごす。何奴も此奴も自らの利だけを求め他者を顧みようともしない

 

───あまつさえ交通事故が起こっても助けを呼ばないで事故の様子を物珍しそうに写真すら取るのだ。これが皇帝の言う『前へと進む民族』の姿だと言うのならばどれほど愚かなのだろうか?

 

「(尤も、そういう意味ならば俺も大して変わらないな)」

 

名と身分を偽り、自分の心に蓋をしてブリタニアから隠れるように生き、その息苦しさを払うように憂さ晴らしとして賭け事をしている自分もまた無気力・無関心な民と変わらないだろう。寧ろそれを理解していながら何もしない自分の方がタチが悪い。それでもルルーシュは何時か自らの望む世界を創り出すためにその日を悔いのないように生き、来るべき時のために備えるのだった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

ルルーシュ達がアッシュフォード学園に向かっているのとちょうど同じ頃、アッシュフォード学園の生徒会室にてルルーシュ達を除いた殆どの生徒会メンバーが揃っていた。

 

「あれ・・・ルルーシュたちは?」

 

「リヴァルが連れてっちゃって・・・」

 

「まぁた代打ちか。ポーカーかな、チェスかな・・・」

 

遅れてやって来た生徒会長であるミレイ・アッシュフォードは同じ生徒会メンバーであるルルーシュがいないことに疑問を感じたが、ルルーシュと同じクラスであるシャーリー・フェネットが困ったようにその事を伝えるとミレイはそれだけで大体の事情を察した。

 

「あの・・・代打ちってどういう事です?」

 

「ルルーシュはね、誰かに頼まれてチェスやポーカーの勝負の代役をやってるの。もちろん、お金を賭けてね」

 

「そんな事を・・・」

 

なんの事か分からないでいる先日転校してきたばかりのリリーナ・ドーリアンがミレイに尋ねると代わりにルイス・ハレヴィが答えてくれた。リリーナは学園でのルルーシュの事を知っているために賭け事をしていることに驚いていた。

 

「あいつ・・・とんでもなく頭がいいからね」

 

「その頭の良さの使い方を間違ってるのよ!」

 

沙慈・クロスロードは苦笑いを浮かべながらそう言うとシャーリーは頬を膨らませながら文句を言う。

 

「うちのルルちゃんは本当は真面目な子なのにねぇ・・・ふふ、シャーリーとしては心配よね」

 

「ちょ、ちょっと会長・・・!」

 

「ルルーシュの事なら大丈夫よ。あいつがナナリーとリリーシャを置いて無茶をするはずないから」

 

目を細めて笑みを浮かべながらシャーリーを揶揄うようにミレイがそう言うとシャーリーは顔を赤くさせながら思わず慌てる。そんなシャーリーを安心させるようにミレイがそう言うとシャーリーもルルーシュが妹の2人を大事に思っていることを知っているので一応納得した。

 

「ルルーシュさんはナナリーさんとリリーシャさんの事を本当に大事にしていらっしゃるのですね」

 

「あいつにとって、大切な残った肉親だもの(そう・・・ルルーシュにとって大切な肉親はあの2人だけ・・・。あとは全て憎悪の対象・・・)」

 

リリーナはルルーシュが本当に妹である2人の事を大切にしているのだと思い、ミレイはそれに同意しつつ内心はルルーシュたちの正体を知っているためにそれは悲しい事だと思うのだった。

 

 

◆◆◆

 

ミレイたちがルルーシュ達のことを話している頃、ルルーシュはというと・・・

 

(どうして俺がこんな目に・・・)

 

現在ルルーシュはトレーラーのコンテナの中にいた。アッシュフォード学園に早く帰るためにシンジュクゲットーを通っていたところにトレーラーの事故が発生し、それを遠くから見ているだけの野次馬連中に苛立ったルルーシュがトレーラーの運転手の安否を確かめるために近づいた。

 

ルルーシュがコンテナの上に登ったその瞬間、治安警察が現れるとシンジュクゲットーに攻撃を仕掛け、その攻撃の余波でルルーシュとトレーラーはハイウェイから落下してしまった。

 

落下する直前、ルルーシュは治安警察が遅れて現れた2機のコロニーのガンダムとAT(アーマードトルーパー)スコープドッグ、白い人型機動兵器と戦っているのが見えた。

 

「運転手は既に逃げた後か・・・トレーラーが大破した以上、積荷は放置するしかなかったか。ガンダムと治安警察が現れたという事はどうやらレジスタンスが何かを奪って逃走中だったようだな・・・」

 

トレーナーの運転席を確認するとそこには運転手の姿がなくコンテナの中にある幾つかの銃火器や工具、そしてその中央には突起のついた巨大な球体のカプセルが鎮座していた。

 

そのことからルルーシュはトレーラーの運転手はこのエリアのレジスタンスであり、このカプセルはブリタニアの施設から盗まれたものだと予想する。

 

「しかしこの巨大なカプセル・・・。一体何が入っている?」

 

レジスタンスが盗んだらしきこのカプセルが何なのか気になり、カプセルに触れたその時だった。

 

(見つけた、私の・・・)

 

頭に直接響くように女性の声が聞こえ、それに驚いたルルーシュは思わずカプセルから手を離す。

 

「何だ、さっきの声は・・・?直接、頭に響いてきたようだが・・・まさか、このカプセルの中からか・・・?」

 

頭に響いた正体不明の声に最初は驚いたルルーシュだが、カプセルに触れたことで聞こえたことから手段は分からないが声の主はこのカプセルの中にいるのではないかと考える。

 

「確かめてみるか・・・」

 

声の主の正体を確認するためにルルーシュはカプセルを開けられないか確かめるためにもう一度カプセルに触れようとしたその瞬間、背後から足音が聞こえ咄嗟に後ろを振り向くとブリタニアの旧式戦闘服を身に着けた兵士がこちらに飛んでくる様子が目に入った。

 

その常識外れの跳躍力に目を見張り、次いで浴びせられた蹴りを慌てて腕でブロックするが、威力を押し殺すことはできずコンテナの床に叩きつけられてしまう。

 

ルルーシュは立ち上がって抵抗しようとしたが、その前に兵士に右手で首を捕まれ抑え込まれてしまった。

 

「殺すなっ。これ以上!」

 

「待てっ、俺は巻き込ま・・・」

 

「しかも、毒ガスなんて!」

 

「っ・・・」

 

「とぼけようとしても!」

 

「っ、だからっ・・・!」

 

最初は兵士が自分の事をテロリストの一員だと勘違いしていると思いその誤解を解こうとしたが毒ガスと聞いてルルーシュは頭に血が上り兵士を蹴りあげようとしたが後方に飛び下がった。ルルーシュはゆっくりと立ち上がると兵士にゆっくりと歩み寄る。

 

「どうせこの毒ガスだって敵を効率よく殺すためにブリタニアが作ったものだろう!」

 

兵士が言うようにこのカプセルが毒ガスだというのならばそれを開発した目的は自分たちの手を汚さずにテロリストなどを殺すための可能性が高い。そんな兵器を作っておきながら『殺すな』などとほざく目の前の兵士に苛立ちが止まらない。

 

「殺すな?だったら、ブリタニアをぶっ壊せ!」

 

ルルーシュは思わず目の間にいる兵士に対してそう叫んでしまった。

 

「ルルーシュ?」

 

「何?」

 

「僕だよ。スザクだ」

 

ルルーシュの言葉を聞いて呆然としていた兵士はルルーシュの名前を呟くとヘルメットを外した。最初は自分の名前を知っている兵士に警戒をしたルルーシュだが、兵士の顔を見て驚愕すると同時に何故自分の名前を知っているのか理解した。

 

兵士の名は枢木スザク。このエリア11がブリタニアによって支配される前の日本の時に出会ったルルーシュにとって大切な友人だった。

 

 

◆◆◆

 

「ルルーシュ、一体どこにいるんだ?」

 

治安警察の攻撃によって事故ったトレーラーと共に落ちたルルーシュを探すためにシンジュクゲットーに降りたライだが、あちこちにブリタニア兵がいるので見つからないように行動しているため中々ルルーシュを見つけられないでいた。

 

「携帯で連絡を入れたいけど流石にここだと目立つしどこか人目のつかないところに・・・」

 

ライはルルーシュの安否を確認するために携帯で連絡を入れるために人目のない場所を探していると遠くの方から爆発音と銃声が響いてきた。

 

「何だ?」

 

ライは音が聞こえた方に足を走らせると彼の目の前にブリタニアの主力兵器の一つである第五世代KMF『サザーランド』三機が逃げ惑うゲットーの住人である旧日本人であるイレブンをその手に握るアサルトライフルや胸部下面に外装されている内蔵式対人機銃で撃ち殺していた。

 

それは目の前だけでなくシンジュクゲットーの至る所から爆発音と銃声が聞こえることからこの惨状はシンジュクゲットーの各地で起こっていることが分かる。ライは目の前のあまりの光景に立ちすくんでしまったが、サザーランドの内蔵式対人機銃の銃口がライの方に向けられたのを感じその場から急いで離れる。

 

三機のサザーランドはライに向けてアサルトライフルと内蔵式対人機銃から銃弾が放たれるがライは瓦礫や建物など周りの物を利用しながら何とか銃弾の嵐をかわし、倒壊したビルの中に入りそのまま地下に降りたことで何とか振り切ることに成功した。それを確認したライはフゥっと息を吐いた。

 

「まさかKMFまで出てくるなんて・・・」

 

恐らくコロニーのガンダム達が治安警察を倒したことでブリタニア軍が出撃したのだとライは考えるがそれにしては規模が大きすぎる。コロニーのガンダム達を倒すならば戦力を集中させるべきだしわざわざゲットーの住人を殺しまくる必要なんてない。

 

「ルルーシュが危ない」

 

確信はないがあのトレーラーには何かブリタニアにとって都合の悪いものがありそれを回収または破棄するために治安警察やブリタニア軍が出撃しているとライは考え、それならばトレーラーと共に落ちたルルーシュは危険な目にあってるかもしれないし最悪の可能性も頭によぎってしまう。

 

「とにかく今やれることはやっておかないと」

 

ある人物の元に今の状況を知らせながら必要なものなどをまとめた一通のメールを送り、今ライにとって必要なものがある場所に向かって走り出すのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

「クソっ!なんでこんなことになったんだ!?」

 

シンジュクゲットーの地下を拘束衣を着た緑髪の少女の手を引きながら走っているルルーシュは怒りを隠さずについそう叫んでしまっていた。

 

あの後、兵士の正体がスザクだと知ったルルーシュは何故ブリタニア軍に所属しているのか問いただそうとしたのと同時にカプセルが開き、煙が漏れ始めたことに気づいたスザクは持っていたガスマスクを押し当てた。

 

それは事前にミーティングで回収するものを毒ガスと聞かされていたスザクはカプセルから溢れているものを毒ガスだと判断しルルーシュだけでも守ろうとしての行動だった。

 

しかし、カプセルが完全に開き光とともに中身が顕になるとそこには気絶している拘束衣を纏った緑髪の少女がいた。ルルーシュとスザクは見て見ぬふりも出来ず少女の拘束を解いている途中、クロヴィスの親衛隊に見つかってしまった。

 

親衛隊隊長は目撃者の存在を消すためにスザクにルルーシュを撃つように命令したがスザクはその命令を拒否した。そして命令を拒否したスザクはそのまま親衛隊隊長に撃たれてしまった。スザクが撃たれて倒れたのを確認すると親衛隊隊長は部下たちにルルーシュを射殺するよう命令し部下たちも射撃体制を取ろうとしたその瞬間、ルルーシュの後ろのトレーラーが爆発したことで親衛隊たちは爆発による爆風によってルルーシュと少女の姿を見失ってしまった。

 

しかし、これによって少女を回収するためにブリタニア軍は総督であるクロヴィスの命令によりシンジュクゲットーの殲滅を開始した。

 

それに対抗するようにシンジュクゲットーのレジスタンスたちとその協力者たちが民間人を守りながらブリタニア軍と戦っているが圧倒的物量の差でレジスタンスたちは追い込まれていた。

 

「(このまま逃げ続けても見つかるのは時間の問題だ。それに例え俺たちが見つからなかったとしてもこのままではゲットーの人間は間違いなく皆殺しだ)」

 

ルルーシュはそんな最悪な未来を簡単に予想出来てしまうだけに今の自分が情けなく思いながらもそんな最悪な未来を打開するための案を模索し始める。ルルーシュのその表情は見たものに恐れを抱かせると同時に美しさを感じるような悪人然としているが、ルルーシュの紫水晶の瞳にはそれと対になる輝きが宿っているのを感じた。

 

「─────終わりたくないのだな?」

 

「なに?」

 

今まで一度も口を開かなかった少女がいきなり話しかけてきた。ルルーシュは少女を警戒しながらも少女の言葉に耳を傾けた。

 

「お前は余程生に執着があるようだな。力があれば生きられるのか?」

 

「当然だ。例え人として優れていたとしても力がなければ簡単に淘汰される」

 

ルルーシュは少女の言葉に答えながらかつて自分を捨てた父親のことを思い怒りを抱いた。母を守ることも出来ず自分たち兄妹を捨てたあの日からルルーシュは力を求めていた。ルルーシュには力があるが、今のままでは確実にいずれ死を迎えるのは確定的だった。

 

「(────こいつはこの状況を打開出来る『何か』を持っているのか?)」

 

ルルーシュが少女にそれを尋ねるより先に少女はルルーシュの手を握った。突然の行動にルルーシュは声を出そうとしたその瞬間、ルルーシュの頭の中に閃光が走った。

光が弾け、頭の中にいくつもの風景が脳に直接焼きつけるように鮮明に映し出される。数え切れないほど繰り返された戦争、躯となった我が子を抱いて泣き崩れる母親、虐殺が行われ血に染まった大地。人類の愚かしい闘争の歴史――――そして赤い鳥を象った文様に巨大な遺跡群、人形のように立ち尽くし、紋章をその身に刻んだ大勢の巫女。

 

『これは契約────力を得る代わりにお前は私の願いを一つだけ叶えてもらう』

 

耳ではなく、脳に直接響くように聞こえる女性の声。これはあの少女のものだろうか、ルルーシュは叩きつけられるように移り変わる光景を目にしながら、まるで悪魔いや、魔女の契約のようだなとルルーシュはそんなことを考えた。

 

『契約すれば、お前は人の世に生きながら人とは違う理で生きることになる』

 

─────人とは異なる理だと?

 

『異なる摂理、異なる時間、異なる命・・・・・王の力はお前を孤独にする────それでもお前は力を望むか?』

 

再び脳に様々な光景が焼きつけられる。

磔にされ、火あぶりにかけられる女性。壁に追い詰められ槍衾にされる貴族の男。誰もいない雪の降る平原で一人孤独に倒れ伏す少女────誰もが悲しみと絶望と虚無を抱えている。これが与えられた力に負けた者の末路と言うのか・・・・?

 

──────下らない

 

力を得たから孤独になる? 違う、力を得て他者を省みないから孤独になるのだ。

そうだ、彼等はあのブリタニアと同じだ。力を得て他人を見下し、全てが自分の思い通りになると思い込んだ哀れな道化。そうなったら最後、その者についていくのは同じく力を求めた奴や、おこぼれにあずかろうとする愚者だ。いずれその者達は力持つ者に対し反旗を翻すだろう。それが欲のためなのか、理念の違いかはともかく。

 

だが自分は絶対にそんな轍を踏みはしない!

 

「例えどんな力を得ようとも、絶対に俺は屈しない──────結んでやろう、その契約を!!」

  

その宣言と共にどこかで歯車が噛み合う音が鳴り、ルルーシュの左の瞳に赤い光が差し込み契約の証による力が宿るのだった。

 

 

────本来の歴史通りであればルルーシュはこのまま力を受け取りこのシンジュクゲットーにてその力を発揮させていくのだった。

 

しかし、運命のイタズラなのかはたまた人々の願いによるものなのか歴史の歯車は狂い始めるのだった。

 

 

◆◆◆

 

「─────ようやく見つけたぞ」

 

地下の出口から出てくるルルーシュと少女を見ながら親衛隊隊長は銃を構えながらルルーシュに対してそう言った。親衛隊隊長の周りには彼の部下たちが同じように銃を構えて銃口をルルーシュに向けていた。

 

「よく頑張ったと言っておこう。流石は誇り高きブリタニア人だ。だが君の命運もここまでだ」

 

親衛隊隊長はルルーシュを褒めるような言葉を言うがその目は明らかにルルーシュを見下していた。

 

「なぁ最後に一つだけ聞いてもいいか?」

 

「なんだ?」

 

親衛隊隊長は銃を向けながらも恐怖を感じずに普通に話しかけてくるルルーシュを不気味に感じながらも気の所為と判断しルルーシュの言葉を聞こうとした。

 

「貴様たちは撃たれる覚悟があるか」

 

「下らんな。強者である我々ブリタニア人が負けることなど有り得んのだからそんなことを考える必要などあるものか」

 

親衛隊隊長はルルーシュの言葉を聞いて鼻で笑った。与えられた特権と力を自分の力と勘違いし人を人と思わないような人種────ルルーシュが最も唾棄すべきタイプの人間だ。

 

「撃っていいのは撃たれる覚悟のあるヤツだけだ。しかし、お前たちからはその覚悟も理念すらも感じない。故に────ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様たちは『死ね』」

 

ルルーシュの開かれた瞳の瞳孔が収縮し、変わりに赤い告死鳥が羽ばたき、親衛隊達の脳裏を犯す。

そしてその先に待つのは、理不尽な命に対する圧倒的な従属感だった。

 

「ククッ・・・クフフッ─────Yes,Your Highness!!」

 

親衛隊隊長と親衛隊たちは銃口を自らの額に首元に持っていき、笑みを浮かべながら彼等は引き金を引いた。

後に残ったのは狂気の笑みを浮かべた親衛隊の遺体とそれを冷たい目で見下ろすルルーシュだけだった。

 

「────この世界でもブリタニアは変わらないか」

 

ルルーシュは赤い鳥のようなシンボルが浮かんでいる両目(・・)を抑えながらそう呟く。

 

「だがそれでも俺の選択は変わらない。俺は俺の願いのために、『優しい世界』のために戦う!!」

 

ルルーシュは悪魔のような笑みを浮かばながら力強くそう宣言するように言うのだった。

 

 

────この日、シンジュクゲットーにて別世界にて世界の全てを支配しそして平和な世界のために全ての悪意を背負ってその命を捧げた優しき魔王が再び誕生の産声を上げるのだった。

 

 

◆◆◆




あとがき
前作『スーパーロボット大戦Z 魔王たちの新たに歩む物語』のリメイクとして書き直しました。前作の変更点としては今のところ以下の通りです。

・ライが最初からルルーシュ側にいる
・ウルガルや火星騎士などが元からこの世界にいる
・火星はヴァース帝国が支配しており、鉄血メンバーはコロニー出身に変更予定(やめた方がいいならやめます)
・ルルーシュ、ライ、C.C.はルルーシュのギアス契約をきっかけにゼロレクイエム(原作)までの記憶を思い出す。

変更点は増えるかもしれませんが、頑張って投稿を続けていきたいです。色々と拙いところはあると思いますが感想・意見など貰えるとありがたいです!!それではまた次のお話で!


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